上賀 輝積は勇者でない 【完結】 (風墳K)
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主人公説明
主人公説明+オリキャラ説明


主人公とオリキャラの説明です。

主人公の説明が話しと違う時もたまにありますが気にせず読んで下さい。

それでは…


上賀 輝積(かみが きせき)

 

性別 男

年齢 14歳?(一応中学二年なので)

誕生日 5月20日

血液型 A

身長 通常時 165cm

   変身時 176㎝

趣味 料理 運動 

好きな食べ物 うどん 麺類 お茶

 

見た目

黒髪で少々髪が長い。瞳の色も黒。結構細い体つき。身長はそこそこ。

 

性格

真面目であり、不真面目。中学生の勉強を退屈になるほどの知識量を持つ。だが、馬鹿。

麺類に対しての愛情が凄い。(特にうどん)

手伝いなども、自分に対してリミットが無ければしない。だが、人を見捨てないタイプ。自分の欲求に以外と素直。時たま天然も入る。記憶は無いが普通の生活をおくれている。

時より記憶の一分を思い出す。いつもどこで手に入れたらわからないお守りを持っていた。ひそかに記憶を取り戻そうとしている。

記憶は取り戻してはいるが、凄く断片的。本人曰く、「本の結末や内容がわかるのに、一つ一つの話しが思い出せない」みたいな感じ。何故か九尾に対して好戦的。

 

変身時の能力

身体的強化、想像した武器の生成。

 

人間関係(輝積からの目線)

 

友奈 普通の女友達。元気一杯な女の子。

東郷さん 友奈のことに対してはヤバイけどいい人。普通の女友達。でも、どこかで…

夏凜 お隣さん。ちょっと可愛い面もあるな~。女友達。誰かに…似てる?

樹ちゃん 同じ勇者部。とてもいい後輩。

風先輩 ボケが半端無い人。一応先輩として見る。

九尾 サポートしてくれる。でも、なんか気にくわない…

銀 同じ、記憶の無い者同士仲良くやろう。でも、どこかで見たような…

 

 

九尾

 

性別 男?(一応男らしい)

年齢 不明

誕生日 不明

血液型 不明(てか妖精だから無い。)

身長 妖精状態 25㎝

   人化状態 180㎝

趣味 家庭的なこと。

好きな食べ物 狐うどん

 

見た目

銀髪で髪が長く、イケメン。頭に狐耳がある。目は金色。

 

性格

輝積の妖精であるため、輝積の言うことには大抵従う。だが、反抗なども良くする。イケメンで、愛想も良い。だが、輝積が絡むと何故か残念な奴になる。

料理、洗濯、掃除など、家事全般を得意としながら、それをやることを生き甲斐に思うほど家事が好き。だが、料理対決で輝積に負ける。

輝積が学校に行く時は輝積の携帯の中に入り、勇者部など、妖精を見せる際には妖精の状態でいる。

涙脆いところもある。

元ネタは同じ秋アニメのコッ〇リさんだったりする。

 

妖精としての役割

輝積のサポート。(家庭的なことも)

 

 

 

性格 女

年齢 大体12歳だと思われる

誕生日 不明

血液型 A

身長 半透明状態 12㎝

   肉体があるとき 145㎝

趣味 漫画を読むこと

好きな食べ物 うどん

 

見た目

灰色に近い色の髪で、そこまで長く無い。大体小学生くらいだと思われる。

ウォークマンにいるときは半透明だが、ウォークマンと携帯を繋げると実体化する。

 

性格

記憶を無くしているためか、自分がどんな人だったのか覚えていない。そのため、その場その場で性格が違う。だが、決めた事は突き通そうとする。自分が何者なのか常に知りたがっている。

 

ウォークマン

携帯に繋ぐことが出来るなぞのウォークマン。携帯の充電を減らすことにより銀を実体化させることが出来る。

ウォークマンの中にいるときは基本お腹は空かないが、実体化したときにお腹が空いてしまう。

ウォークマンの中にある漫画やアニメなどのデータをウォークマンの中で見ることが出来る。(銀だけ)




一応、銀はオリキャラです。
理由としては、
1、鷲尾須美は勇者である を読んでない。
2、結城友奈は勇者である 樹海の記憶 をプレイしていない
ため銀のキャラがWikiでしかわからず、ならオリキャラにしようと思ったからです。

では、本編をお楽しみ下さい。


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本編
第1話 目覚め


始めてのの小説投稿です。
酷い文章ですが、頑張りたいです。
あと、オリ主は強いです。


 

 

俺は…なぜ、ここにいるんだ?

 

その疑問からだった。

まず、俺は何処かの家の中にいた。あまり物が置かれていない。パソコンに調理器具、扇風機、テレビ…

さらに、ここは一軒家ではなくアパートみたいだ。

 

俺が気が付いた時、そう、疑問を抱いた時、俺はリビングに立っていた。そして、リビングの机の上に紙が置いてあることに気が付く。

 

俺は、何も考えずその紙に書かれていることを読んだ。

 

 

上賀 輝積へ

 

このメッセージを読んでいるということは、気が付いたということだろう。

さて、本題だ。

君にはいろいろな試練があるだろう。だが、記憶を頼りに切り抜けてほしい。それと、今は記憶が曖昧だろうが、その内思い出す。だから、気にしないでくれ。

あ、忘れてた、この部屋は君の自由に使っていいから。

あと、"満開"という言葉に気を付けてくれ。

最後に…己に従え。

 

 

 

手紙を読み終わり、考える。まず、俺は…上賀 輝積(かみが きせき)というらしい。

そして、思い出す記憶…ぼんやりだが、誰かと話していること、そして…

 

「う!!」

 

この感じ…気持ち悪い…この記憶は…人の…死骸?なんなんだ?でも、体がその記憶を拒絶するかのように、吐き気を襲う。

なんとか堪えることが出来た。

 

とにかく、しばらくは、普通に生活しよう。

 

俺は、感覚的に風呂を沸かしに行く。もう、既に夕方だ。

 

俺は何も考えずに家事をこなしていく。まるで、体が覚えているかのように。

 

時間が過ぎ、吐き気のためあまり晩御飯が進まず、風呂に入ることにした。

 

自由に使っていいと書いてあったんだ。ということは、ここは俺の家なのだろうか…

 

浴槽に入りながら考えていたが、なんか、めんどくさくなったのでやめた。というか、俺の家でいいんじゃね、と考えてしまった。

 

風呂を上がり、着替えて家の中をいろいろと探ってみる。リビングのタンスの中には…通帳が…。恐る恐る見てみる…貯金のところに0が一、二、三、四、五、六、…まだ続く…いや!おかしいでしょ!

…突っ込んだら負けかもしれない。

 

そう思い、さらに探ってみる。すると、何処かの学校の制服と学生証明書があった。学校は…讃州中学校、第二学年か…

あれ?俺は中学生なのか?

確かに、さっき、風呂で全身を洗っていたが、異様に背丈などが低いと感じていた。そうか、俺は中学生なのか。あれ?この言い方だと俺は中学生よりも歳上に感じる…気にしないようにしよう。ただ、精神年齢が高いだけだろう。

 

他にも、転校手続きの書類やこの部屋の書類など…

 

学校は…明後日から通うわけか…なら明日はここら辺を散策してみよう。

 

 

次の日

 

俺は、外に出た。

まずは、学校の位置や、スーパーなどの位置を確認する。歩いていて気が付いたが、かなり距離がある。なので、移動手段として自転車を買っておこう。

そういえば、あのアパート…仮に俺の家にしておこう。俺の家の冷蔵庫には食べ物が少しだけあった。そのため、昨日は夕飯を作ることが出来たが、いつあの食べ物がなくなるかわからない。なので、スーパーを確認ついでに買い物をしておこう。

スーパーで買い物を済ませ、道を歩いていると、いい臭いがする。その臭いが元となったのか、俺の胃袋が鳴く。そういえば、昨日、あまり夕飯を食べていないし、朝食も軽めにしていた。散策をしていたため昼食を取っていなかったことに気が付く。臭いの元はどうやら、うどん屋のようだ。鰹節の臭いが食欲をそそってくる。

俺は真っ直ぐうどん屋に入る。

以外に大きなうどん屋で、人も結構いる。仕事終わりのサラリーマンやOL、中には学生もいるようだ。実は今日は平日だったりする。

注文を取りにおばちゃんが歩いてくる。おばちゃんは途中で隣の席にいる、中学生なのか、それくらいの女子四人組と世間話を軽くした後、俺の所にくる。

おばちゃんは、注文はなんですか?とやさしく聞いてきた。俺は、なぜか、その一言に安心してしまう。まあ、すぐに気を取り直して注文をする。

 

「えーと、肉うどんとざるうどん、それと釜あげうどん下さい。」

 

おばちゃんが、よく食べるわね、と一言やさしく言った後に厨房に行く。

あれ?俺、おかしなこと言ったかな?

 

その後、運ばれてくるうどん達、俺は勢い良く食べ進める。うどんはのど越しだな。

しかも、ここのうどん、めちゃくちゃうまい。学校に通いだしたら毎日通いたいレベルだ。

 

それに、気が付いたが、俺はどうやら大食いと呼ばれるらしい。隣の席の中学生の三人程がこちらを見て顔色を悪くしている。その点、その中学生と一緒にいる、黄色髪のツインテールの子は俺と同じぐらいうどんを食べている。どうやら、俺や、そのツインテールの中学生が食べている風景を見ているだけでお腹が一杯になってしまったようだ。

 

あっという間にうどんを食べ終わり、俺はお金を払い席を立つ。隣の席の中学生達も食べ終わったようだ。

俺はうどん屋を後にして、自転車を買いに行く。時間ギリギリで自転車屋で自転車を買って、早速自転車をこいで家に帰る。途中、夕日が綺麗に見える砂浜を見つけて、少し眺めていると、どうやら、先客がいたらしく、砂浜で、その人は走っていた。逆光のため、顔は見れなかったが、ツインテールで、背丈もそこまで高くなかった。どうやら女の子のようだ。

俺は、夕日を眺めるのをやめて家に帰ることにした。

 

明日から、俺の学校生活が始まるのか…

実感がわかない…

取り合えず…夕飯を作ろう。




読んでいただきありがとうございます。
まだ緊張しています。
ですが、頑張って小説を投稿していきたいと思います。


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第2話 出会い

なんとか、第2話出来ました。

漢字などが間違ってたらすみません。

文字数は少ないですが、どうぞ…


「え~、今日から転校してきた、上賀 輝積です。よろしく。」

 

黒板に名前を書き自己紹介。ありきたりだな。特に何も無く、席に座り、授業を聞く。

授業の内容が、簡単過ぎて、頭に入らない。

なぜだろう。こういう勉強をしたことあるような…

 

いつの間にか本日の授業が終わり放課後になる。

 

さて、早速、うどんを食べに…でも、そこまでお腹は空いていない。どうしようか…

 

「ねえ、上賀君…」

 

教室で、考え事をしていると男子生徒(同じクラスの)に話しかけられた。たしか、名前は…木村君…だっけ?

 

「どうしたの?」

「上賀君、運動は得意な方?」

「まあ、それなりに…」

「良かった…実は、お願いがあるのだけどいい?」

「まあ、いいけど…」

「良かった…実は、今、俺の所属している剣道部で、女子と模擬試合をやってるんだ。」

「へ~」

「けど、女子はそこまで部員がいないから勇者部からスケットを頼んだんだ。けど、そのスケットが強すぎて、俺達じゃ、話しにならないんだ。だから、頼む!俺達の変わりに勇者部のスケットと戦ってくれ!」

「報酬は?」

「え?」

「報酬がなければ、やる気にならないよ。」

「えーと…報酬は…」

「…よし、わかった。報酬は、試合が終わった後、みんなでうどんを食いに行く!!」

「え?えーー!」

「決まったら、早速案内してくれ。」

「ちょっ!」

 

木村の手を引っ張り、無理矢理案内させる。

 

そして、剣道場に着く。

 

中には、男子生徒と女子生徒がいて、お互いに、代表を応援しているようだ。

男子部員の代表が弾き飛ばされる。

どうやら、細かいルール無しの試合らしい。てかいいのか?それで…

弾き飛ばされた男子部員が起き上がる。

 

「く、くそ…」

「まだまだね。これじゃあ、私の練習相手にもならないじゃない。」

 

ツインテールの少しおでこが出ている女の子がそういう。どうやら、彼女が勇者部のスケットらしい。

 

「なあ、次、俺と勝負しない?」

 

俺は、剣道場に入り、勇者部のスケットに向かってそう言った。

 

「あんたは?」

「今日付で転校してきた、帰宅部の上賀 輝積。」

「そう。私は一応、勇者部の三好 夏凜よ。」

 

俺は、竹刀を二本持つ。どうやら、相手も二本のようだ。

 

「手加減した方がいいか?」

「まさか。あんたくらい、余裕よ。」

 

そうか…なら、安心してやれるな。

あれ?この子…どこかで…いや…

 

その時、考えてしまったため、試合始めの合図が聞こえなかった…

 

いきなり上から降り下ろされる竹刀。俺はそれを…無意識に左手の竹刀で止めた。

 

「へぇ…なかなかやるじゃない。」

「どういたしまして。」

 

夏凜は後ろに下がりこちらの様子を見る。

どうやら、初手で決める予定だったらしい。

 

「なら、こっちから行くよ。」

 

俺は、猛スピードで夏凜の竹刀の届く範囲内に入る。夏凜は竹刀で俺に当てようとするが、左手の竹刀を、俺は右手の竹刀で弾き、同じように右手の竹刀を左手で弾く。

どうやら、俺の右手の力が強かったらしく、夏凜の左手の竹刀が夏凜の手から離れる。

 

「く!」

「隙やり!!」

 

俺はいつの間にか、夏凜の後ろに立って竹刀を頭に向けていた。

 

「…嘘…私が負けた…?」

「はい、これで一本。」

「…」

 

夏凜は顔を赤くして、剣道場から出ていく。

 

その後俺は、追いかけようとしたのだが、剣道部に捕まり、是非剣道部に入らないかと凄く勧誘された。

 

勿論、全て断ったけど…。

 

その後、夏凜のことを考えて帰路に立っていた。あの子…強かったけど…なんかこう…剣道とは違う何かがあった…。俺の戦い方もそうだけど…

 

夕日の見える砂浜に着く。うどんを食べる約束をすっかり忘れていることに気が付かずに。夕日の見える砂浜には、やはり先客がいた。いや、前回は走っていたが、今回は、木刀を振っている。

…あの動きは…

 

「おーい!三好 夏凜!」

 

ピクッと反応する。そしてこちらを見る。どうやら当たりのようだ。

 

「あ!あんた!なんでここにいるのよ!」

「帰り道がこっちなんだ。それで見たことのある女の子がいたもんで、声をかけてみた。ただそれだけだけど?」

「あ、あんたね…」

「にしても、なかなか強かったよ。」

「ふん!皮肉にしか聞こえないわ。」

「え?本当のことを言ってるだけなんだけど…」

「それを皮肉って言うのよ!」

「マジか!ごめん。」

「…あんた、馬鹿じゃないの…」

「なら、馬鹿なんだろうね。」

 

夏凜は呆れた顔でこちらを見ていた。

 

「で、なんの用よ。」

「え?別に用なんて無いよ?」

「…本当呆れたわ…」

「しいていうなら、ただ話したかったからかな。」

「は?」

 

俺は夏凜の隣まで行く。

 

「あのさ、この前もこの砂浜にいたよね?」

「まあ…毎日の日課だから…」

「へ~」

 

 

少しの沈黙が訪れる。その沈黙を壊したのは俺だった。

 

「ねえ、勇者部って何?」

「えっとね…確か人々が喜ぶ校外活動を勇んで行う部活…だった気がする…」

「へ~そうなんだ~。あ!それともう一つ聞いていい?」

「今度は何よ?」

「…満開って何?」

「花の話し?それなら…」

「いや、知らないならいいんだ。知らないなら。」

「ちょ!人の話しを!」

「いや、俺は花の話しをしている訳じゃないんだけど…あ、やっぱり忘れて!」

「…そう言うなら…」

 

俺はとっさに夏凜から離れて自転車のあるところに行く。

 

「そんじゃ!また明日!」

 

俺は直ぐ様自転車をこいで家に帰る。多分だが夏凜は満開を知らない。なら、この話しは無かったことにした方がいい。それととっさに帰ったのは関係ない。いや、関係はあるか。ただ…恥ずかしかったのだ。変なことを喋っている人見たいに見られるのが。だから話しを羽生らかして帰ったという訳だ。

 

俺はそのまま家に帰る。

 

こうして学校初日が終わった訳である。




はい、一応、ヒロイン(本当は予定)の夏凜が出てきました。
時季的には6月上旬です。
それと、主人公はかなりの馬鹿です。
次も頑張って書いていきたいです。


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第3話 依頼

第3話出来ました。
感想なども大歓迎です。


では、本編、どうぞ。


俺は夢を見た。

勇者と呼ばれる3人が、怪物と戦う夢。

3人の顔まではわからなかったが、小学生くらいで、全員女の子だった。一人は弓を持ち、一人は斧を持ち、一人は槍を持ち。必死に戦ってた。バーデックスと…

バーデックス?怪物の名前か?なぜ、俺は怪物の名前を知っている?それに、戦っている女の子達…勇者ってわかる。なんで勇者ってわかるんだ?格好が?違う…力でわかる。なんなんだ?

 

俺は目を覚ます。朝だ。

時間は5時。起き時だ。俺は布団から出て顔を洗ってジャージに着替える。

さて、ジョギングをするか…

 

6時頃になり家に戻る。そこから朝食を作り、食べる。制服に着替えて鞄を持ち家を出て家の鍵を閉めて自転車に乗る。

時間は7時半を回っていた。腕時計を見ながら自転車をこぐ。8時頃に学校に到着。少し早かったかな。

教室に行くとちらほらとしか生徒がいない。

早速自分の席に座り考え事をする。まず、勇者ってなんだ?あの女の子達のことなのだろうけど…そして、勇者と満開は必ず関係がある。そんな気がする。なら、まずはあの勇者達を探さないと。…顔、わからないよ…。どうしよう…。

 

俺はその時思い付いた。そうだ!昨日、夏凜が言ってたじゃないか!勇者部とい部活のことを。確か…人々の喜ぶ校外活動を勇んで行う部活とかなんとか…勇者を探してほしいっていうのは、学校と関係無いし、何より俺はある意味喜ぶ。よし!依頼してみよう!

…待てよ。俺が直接行ってこの事を話したら、なんだこの痛い人は…と思われてしまう。転校そうそう痛い人と見られるのは嫌だ。そうだ!手紙でも部活に入れておけばいいんだ!そうだよ!その方がある!

 

俺は、ルーズリーフを取り出して依頼内容を書く。

 

勇者部さんへ

 

夢に出てくる勇者を探してほしいのです。

一人は槍を持っていて、一人は弓を持っています。さらに一人は斧を持っています。この3人を探してほしいです。もし見つけたら、このメアドにメールしてほしいです。

 

匿名希望Kより。

 

出来た…完璧だな。ちなみに、俺はスマホを持っている。このスマホも家にあった物だ。登録は俺の名前でしてあった。

 

放課後

 

誰よりも先に教室を出て勇者部部室へ行く…

まあ、案の定迷った…

 

俺がキョロキョロとしていると…

 

「どうかしたの?」

 

声をかけられた。彼女は…確か同じクラスの…結城 友奈だったっけ。

 

「いや…少し迷子になっちゃって…」

「えーと…輝積君だよね。転校してきたばっかりだから仕方がないよ。で、どこに行こうとしてたの?」

「え~と…勇者部部室。」

「そうなの!ならこっちだよ!」

 

俺は腕を捕まれ走るように連れていかれる。

廊下は走ってはいけません!なんて、この元気取り柄の女の子には言えない…

 

目を回しながら、勇者部部室前に着く。

 

「ここが勇者部です。」

 

自信満々に言うな…見ればわかるよ。勇者部って書いてあるし。

 

「友奈~遅いわよ~」

 

勇者部部室の扉中からを開ける女の子…黄色い髪で長めのツインテール。

 

「あら?その人は?」

「勇者部に用があるそうです。」

 

まあ、そうなんだけど…まさか既に部員が部室にいるなんて…あ、俺、迷子になったから遅れたんだ。

 

「で、なんの用?依頼?」

 

黄色い髪のツインテールの人が言う。はいそうです。依頼です!

 

「あ、あの…これ…ある人に言われてこの紙を渡せと…それでは!」

 

俺は紙をツインテールの人に渡して逃げるように走る。

その後…先生に怒られました。廊下は走るなと…。

 

 

 

 

俺は夕食を食べ終え、片付けをしていた。

その時、インターホンが鳴った。

俺の家を知っている奴は学校では先生くらいだ。しかも午後8時半を回っている。先生の可能性は低い。なら誰か…

俺は玄関のドアを開ける。

そこには、仮面を着けた大人達がいた。ざっと十人ほどか。

 

「すみません。少しお話があります。」

 

一人の仮面を着けた大人が話しかけてくる。

俺は怪しいと思った半面、何か俺の記憶に繋がるとも思った。

 

「外だと目立つんで中に入ってください。」

 

俺は大人を家の中に招いた。確かに目立つ。

だが、それだけではない。もし、奴等が襲ってきた場合、家の中の方が被害を最小限に押さえられる。

 

俺は大人達を家に入れ、お茶を淹れる。お茶にはうるさい俺だ。ちゃんとしたお茶葉でお茶を淹れ、お茶菓子に羊羮を出す。てか、出してから気が付いたが、彼等、どうやってお茶飲むのだろう…ある意味気になる。

 

「お茶やお茶菓子ならいりませんよ。」

 

案の定、俺のおもてなしは断られた。残念。

 

「早速ですが、本題です。」

 

おっと、忘れていた。

 

「あなたは何者ですか?」

「逆に知りたいです。」

 

俺はそう返す。すると、ザワザワと大人達が話し始める。

 

「どういう意味ですか?」

「俺、記憶が無いんですよ。」

 

さらにざわめく。

 

「記憶が…無い?」

「そう。と言っても時々思い出すんですけど、自分が何者なのかまでは思い出せません。」

「そう、ですか…」

 

大人達はこちらを見つめる。

 

「思い出したことで何かありますか?」

 

一人の大人が聞いて来た。本当のことを話す…しかないかな。

 

「えっと…勇者という単語と三人の女の子、それと…その中の一人が…死んだこと…」

 

この時になって、夢に見た女の子の一人が、死骸になってしまったことに結び付いた。俺は少し気分を悪くする。

 

さらにざわめく大人達。

 

「ほ、他には?」

 

さらに聞いてくるか…

 

「すみません…これ以上は…」

 

俺は顔色を青くして言う。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

やさしい人もいるもんだな。俺を心配するなんて…

 

「大丈夫です。」

 

そう答えるしか無かった。

 

その後、大人達…通称大赦というところの人達は、俺に連絡先を教えて帰っていった。

 

彼等のやさしさ…いや…どちらかといえば崇めている感じだったな。

あまり関わりたくはないが、関わらないと前には進まないだろうな…

 

兎に角、風呂入って寝よう。




はい、鷲尾須美の話しが出てきました。
私は鷲尾須美は勇者であるを読んでいません。
Amazonで買おうとしたら、0の数四つに1が左端…諦めました。

大赦も出てきました。というか、ほとんど押し掛け…

まあ、それはさておき、次回予告でもしてみたいと思います。


次回予告

「なにしてんのよ。」
「あ…紹介がまだだったね。」
「今、メールしました。」
「これ、すごーい!」
「な、なんで俺なの!」
「…なんて言ったらいいか、わかんないのよ…」


次回 うるさい日曜




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第4話 うるさい日曜日

今回の話しは結城友奈は勇者であるの第3話の話しだったりします。

楽しんで読んでもらえると幸いです。

それでは…どうぞ~


今日は6月12日 日曜日。

休日だ。

 

と言っても、何も無いけどな。

大赦とも連絡はしてるけど俺の事は何もわからないらしい。

俺が来て数日が立つ。今では教室の端で本を読んでいるキャラが定着しつつも、運動神経もそれなりに良いため、運動部から入部してくれないかとオファーがある毎日。押しに弱い俺はこのままだと何処かの運動部に入部してしまいそうだ。それはそれで刺激があって記憶を取り戻すいい機会なのかもしれないけど。

 

兎に角、今日、日曜日は俺の自由の時間だ。午前中は体を動かし、もしもの時のために鍛える。そして、午後は曲を聴きながら読書。と言っても、曲のジャンルはアニソンだし、読んでいるのは、小説から漫画、ラノベ、百科事典、ゲームの攻略本などなど。

ようは、暇さえ潰せればいいのだ。まあ、曲のジャンルがアニソンっていうのは、歯痒い曲が好きだったりするからだ。以外に中二病みたいな言葉が入っている歌詞とかも好きだったりする。

 

そんな感じで時間が過ぎて行く。

 

6時頃を回った時、インターホンが鳴る。

 

こんな時間に誰だろう。

大赦…ではないだろうな。だってこの前来たし。

俺は玄関のドアを開ける。

そこには、女の子四人が立っていた。

てか、この四人は…

 

「あれ?輝積君!?輝積君だよね!!」

 

結城 友奈だ。あの元気印の美少女、結城 友奈だ。

 

「えーと…な、なんの用でしょうか…」

「あ!えっとね、この住所ってここで合ってる?」

 

俺は入部届けと書かれた紙を見せられる。確かに、住所は合ってる。けど…

 

「それなら、隣の部屋だよ。」

「そう。」

 

…気が付いた。いや、もし、そうだとしたら、凄い偶然になる。

勇者部で俺が知っているのは、友奈と夏凜だけだ。だが、夏凜の姿が見えない。ということは…お隣さんは…夏凜!?

 

「あ!そういえば、あの依頼、なんなのよ!」

 

黄色い髪のツインテールの人がこちらに声をかけてくる。

 

「あ!えっと…」

「あ…紹介がまだだったね。」

 

友奈…なんて気遣いを…このままだと、この黄色い髪のツインテールの人という、めんどくさい言い回ししか出来ない状況だったよ。依頼のことは…誤魔化せばなんとかなる。

 

「こちら、勇者部部長の犬吠埼風先輩。」

「で…あの依頼は何?」

「えーと…他の人から渡されたから、一緒に付いてたメアドにメールすればわかるはず…」

「今、メールしました。」

 

風に敬礼する、車椅子の少女。彼女は同じクラスの東郷 美森さん。彼女も勇者部だったのか。友奈といつも一緒にいるからもしかしてと思ったけど…

 

そう思っていると、俺のスマホのバイブ音が鳴る。あ…バレた…。

 

「さて…依頼のことは、後で聞くとして…今は夏凜の家に行くわよ。」

 

あ…この人…いや風先輩と呼んでおこうか。風先輩は以外に大胆な性格のようだ。

さてさて、俺は部屋に戻って…

 

「なにしてんのよ。あんたも行くのよ。」

「は?」

「ごめんね、お姉ちゃんが決めたことだから…」

 

そう言ってくれる女の子…少し幼さが残るこの子は…

 

「あ、この子は、犬吠埼樹ちゃん。風先輩の妹なの。」

 

友奈、解説ありがとう。

 

「で、なんで俺まで行かないといけないんだ?」

「だってあんた…」

 

少しの沈黙。息を飲む俺。

 

「暇そうなんだもん♪」

 

おい!俺のシリアス返せ!!

 

「お姉ちゃんに何を言っても無駄だと思うよ。」

「そうだな…」

 

そうですな…樹ちゃん。観念しますか。

 

俺は渋々と友奈達もとい風先輩についていくことに…てか隣だから、三秒もしないで来れた。中にいるのは…三好夏凜だと思う。

 

風先輩が連続でインターホンを押す。普通ならキレるレベルです。

風先輩…ある意味大胆ですな…。

 

「誰よ!!…あれ?あんた達…」

 

案の定、木刀を持った夏凜が出てくる。予想通り。そして、木刀を持った夏凜が出てきたことで驚く四人。俺だけリアクションが無かった…ある意味悔しい…。

 

「あ、あんたね、何度も電話したのに、なんで電源オフにしてるのよ!」

 

風先輩、何度も連絡してたんだ…何かあったのかな?

 

「そ、そんなことより何」

「何じゃないわよ。心配になって見に来たの」

「心配?あ…」

 

どうやら、部活か何かを連絡無しに休んだらしい。

 

「良かった~寝込んだりしたんじゃ無かったんだね。」

「え、ええ。」

 

友奈…夏凜のことを思ってたんだ…スゲーいい奴やん。これまで元気だけが取り柄の美少女だと勘違いしてた俺が恥ずかしいわ…。

 

「んじゃ、上がらせてもらうわよ~」

 

おい!勝手に上がり込むのかい!

本当に上がり込む風先輩、さらにその妹の樹ちゃん…

 

「あ!ちょっと!何勝手に上がってるのよ!意味わかんない!!」

 

夏凜…その反応が当たり前です。

玄関に入り、リビングに行く。

 

「はあ…殺風景な部屋。」

「どうだっていいでしょ!」

「まあ、いいわ。ほら、座って座って。」

 

おい!ここ、夏凜の家だろ!

 

「な、何言ってんのよ!」

 

夏凜のツッコミが心地よく感じてきている俺。風先輩のボケ…恐るべし。

 

「これすごーい!プロのスポーツ選手みたい。」

「勝手に触んないでよ」

 

樹ちゃんは走る機械(名前が思い出せない)を触る。

 

「うわー、水しかない。」

「勝手に開けないで!!」

 

冷蔵庫を開けて中を見る友奈。この子達にプライバシーという言葉は無いのだろうか。

 

「うわ!なんであんたいるのよ!」

 

やっと俺の存在に気が付いてくれた夏凜。俺の存在感て…

 

「なんか、ある意味のノリでついて来ました。(連れて来られました)」

「そ、そうなんだ…」

 

哀れみの目でこちらを見る。俺が、一瞬目線を風先輩に向けたらのがわかったのだろう。

 

テーブルの上におかしやジュースを置く夏凜を除く勇者部。な…なんなんだ、この部は…。

 

「ね、やっぱり買ってきて良かったでしょ。」

 

そういえば、常に袋を持ってたな。まさか、全ておかしとジュース!?そして、テーブルの上、スナック系やチョコ系と一緒にある和菓子。なんで?

 

「なんなのよ。行きなり来て何なのよ!!」

 

確かに、俺も同じことされたら、同じこと言うな。

だが、彼女は違った。

 

「あのね、ハッピーバースデー、夏凜ちゃん。」

 

白い箱を取り出してその箱を開ける友奈。

箱の中にはハッピーバースデーと書かれたケーキがあった。まさかのサプライズすか!

 

「え?」

 

鳩が豆鉄砲を食らった顔してる。写真撮りて~。

 

「夏凜ちゃん、お誕生日おめでとう♪」

「おめでとう。」

 

いい子達やわ~

 

「え?どうして?」

「あんた今日、誕生日でしょ。ちゃんとここに書いてあるじゃない。」

 

風先輩はそういい入部届けを出す。

 

「友奈ちゃんが見つけたんだよね。」

「えへへ。」

 

友奈スゲーな。そんな所って言うのも悪いけど普通気付かないよ…。

 

「あ!、って思っちゃった。だったら誕生日会しないとって。」

「歓迎会も一緒に出来るね~て。」

「うん。」

「本当は、子供達と一緒に児童館でやろうと思ってたの。」

「当日に驚かせようと思って黙ってたんだけど…」

「でも、当のあんたが来ないんだもの。焦るじゃない。」

「家に向かえに行こうと思たんだけど子供達も激しく盛り上っちゃって。」

「結局この時間まで解放されなかったのよ。ごめんね。」

 

何なの、この子達…本当いい子やわ!いや、もう天使レベル。

静止する夏凜。どうしたのかな?

てか…俺関係無くね…。

 

「ん?どうした?」

「夏凜ちゃん?」

「あれー?ひょっとして自分の誕生日も忘れてた?」

 

いや…それは無いでしょ。だって、カレンダーの今日の日付に赤丸してあるもん。

 

「アホ…馬鹿…ボケ…おたんこなす…」

「え?」

「何よそれ!」

「誕生会なんてやったこと無いから…なんて言ったらいいかわかんないのよ…」

 

夏凜~顔が少し赤いですよ~。

てか、なんか、ギャップがあっていいな…

友奈は、カレンダーの赤丸に気が付いたみたいだ。

 

「お誕生日おめでとう、夏凜ちゃん。」

 

その後、乾杯をする。

そして、いつもの調子?に戻る夏凜。

 

「てか、なんであんたがいるのよ。」

「いや…俺が聞きたいです…」

「あ、こいつ、明日から、勇者部だから。」

「「「「え!?」」」」

 

え!?聞いてない。てか、なんで俺なの!?そしていつ決まった!?

 

「いつ決まったんですか?」

 

友奈、ナイス質問!!

 

「今。」

 

速答!!

 

「な、なんで俺なの!」

「そうよ!なんでこいつなのよ!」

「聞きたい?」

「え?なんか、そう言われると聞きたくなくなるな…」

 

聞きたいと聞かれると聞きたくなくなる衝動が…

 

「まあ、その内話すわ。そんじゃ、改めて、夏凜の誕生会と歓迎会、さらに輝積の歓迎会をふまえて、乾杯!!」

 

改めて乾杯する訳ですが、どういうことですか?なぜ、俺は勇者部に?

そんな疑問をよそに、夏凜をいじる勇者部一同(本人達は意識無し)。その間、風先輩から勇者部専用SMSアプリを貰う。

そして、最後の最後に残される俺と夏凜と、おかしのゴミ達。

俺はゴミの片付けの手伝いをする。

 

「なんで、あんたまだいるのよ。早く帰りなさいよ。」

「いや、俺、家が隣だからさ、手伝っていくよ。」

「は!?」

 

偶然って怖いな。

黙々と片付けをする夏凜と俺。

 

「あんた、なんで勇者部に入部させられたかわかる?」

「知らん。」

「さっき、携帯の電源を入れたんだけど、今日、大赦から、あんたを見張るようにメールが来てたわ。」

 

あ~。それで。

 

「そんなこと、俺に言っていいのか?」

「いいわよ。どうせ、いつかは言わないといけないもの。それに、あんたも、私達の正体に気付いてるんでしょ?」

「なんのこと?」

 

なんのこと?本当に知りません。

 

「…本当に知らないみたいね。何なのよあんた。勇者のことを知っていて、満開のことも知ってるくせに、私達のことを知らないなんて…」

「?」

「もう、いいわ。片付けも大体終わったし、帰っていいわよ。てか、帰りなさい。」

「わかったよ。じゃあね、夏凜ちゃん。」

 

俺は夏凜の家を出て家に帰る。(約数秒)

そして、夕飯を作って、風呂に入って、貰ったアプリを開いてみる。SMSで皆が会話をしているようだ。俺は残念ながら、アカウントをまだ持っていないため、参加出来ない。アカウントの作り方を明日でも風先輩にでも聞こう。




はい、まんま第3話でした。

これを書くために3話の最後を結構見返しました。

さて、次回予告やりますか。



次回予告

「どうしたの?輝積君?」
「友奈ちゃんに手を出したら…」
「お姉ちゃん!早く!」
「これで、あいつらを倒せと…」

次回  樹海


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第5話 樹海

はい、第5話です。

なんとか、書けました。
感想など、絶賛募集です。

それでは、どうぞ。


月曜日。皆はどんな感情なのか。大抵が、今日も学校か~とか、学校サボりたいな~とか考えているだろう。(一部例外を除いて)

俺、上賀輝積も同じだ。正直、学校めんどい。

だが、行かなくてはならない。昨日、俺は勇者部に入部することになった。大赦からの連絡がない今、大赦繋がりである夏凜がいる勇者部に入った方が何かと都合がいい。てか、今更だけど、なんで夏凜が大赦の連絡先知ってるの?ある意味疑問ではあるし、監視って?俺を監視してなんかいいことあるの?俺は普通の中学生ですぜ?

 

疑問はいろいろある。でも、それを解決するにはまず…

 

学校に行かないとな。

 

自転車をこいで学校に向かう。

 

学校に着き、クラスに入る。そこには、今日から同じ部活の友奈と、車椅子が特徴的美少女、東郷美森さんがいた。

 

「あ!輝積君!おはよう!」

「おはよう。」

 

朝から元気だな…

 

「おはよう。」

「あ、おはよう、わ…美森さん。」

「?」

 

なぜだろう、今、俺は無意識に誰かの名前を言おうとした…。目の前にいるのは、美森さんなのに…。

 

「美森じゃなくて、東郷って呼んで。」

「わかったよ。東郷さん。」

 

それにしても、東郷さん…でかいな…何がとは言わないが。

 

「これからよろしくね。」

「よろしく。」

 

俺は東郷さんと手を繋ぐ。

 

「友奈ちゃんに手を出したら許さないから。」

 

俺だけに聞こえるぐらいの声で、そう東郷さんは言った。しかも、真顔で。

俺は一瞬、恐怖した。

 

「どうしたの?輝積君?」

「いや、なんでもないよ。」

 

友奈が声をかけてくれなかったら、そのまま恐怖に飲み込まれてたかもしれない。

東郷さん…そこまで友奈のことが…

 

俺は東郷さんを見る。

そこには、あの大和撫子の東郷が笑顔でいた。勇者部は美少女が多いのになぜ彼氏がいないのかと疑問に思っていたが、友奈と東郷さんが彼氏がいないのは何となくわかった気がした。

 

いつも通りにチャイムが鳴り授業が始まる。

 

時は過ぎお昼休み。昼食を終え眠くなる。もうそろそろお昼休みも終りの時間。友奈と東郷さん、夏凜は勇者部部室にて昼食を取っているとのこと。

いや~眠い。本を読みながらあくびをする。その際に手が滑り本を落としてしまう。

 

「あ…」

 

拾おうとした時携帯が鳴る。だが、今は本を拾わなければならない。まさか、読書してた本が漫画、しかも少女漫画だとばれたらある意味破滅だ。

 

だが、本は床に着かなかった。そう、途中で止まっているのだ。

 

「なんだ?」

 

音が…ない。クラスの人達を見渡す。動かない。まるで時が止まっているように…

いや…これは…

時計を見る。時が…止まってる!?

 

そして、地震のような震動が起きる。窓の外を見ると光の壁がこちらに向かっている。しかも、かなりのスピードだ。走っても間に合わないだろう。右手の手の甲に違和感があったが関係無い。

 

俺は死を覚悟した。

 

 

 

 

 

いつの間にか目を閉じてしまったみたいだ。

 

生きてる…生きている…俺は死んでない。

そう確信したのは、自分の心臓の音を聞いたからだ。異様にドキドキしている。まるで運動した後のように。

 

目を開ける。

 

そこは、幻想的な色とりどりの木の根のようなものが広がっている世界だった。

色合いが目にやさしい。まるで和を象徴するかのような色合いだ。

 

だが、それだけでは無かった。空に変なものが大量に浮いていた。あれは…バーデックス?いや、バーデックスではあるけど星屑だ。

あれ?なぜ俺は奴等の名前を知っているんだ?

そして、右手の手の甲を見る。光っている。いや、正式には六星に光っているのだ。

俺は、この力を知っている!?

だが、まずは、誰かいないか連絡を…

携帯の画面が変わっている!?と、兎に角適当にやれば…

俺は携帯のアプリを一つ開く。そのアプリは画面の真ん中に種が発芽する模様が描かれていた。だが、ボタンは押せなかった。なぜなら、×が発芽のマークの所に出ていたからだ。一応押してはみたが、なにも起きなかった。

 

と、兎に角、何か…

 

その時、俺は光っている右手の手の甲を改めて見る。

 

…わかる。あのバーデックスを倒せば、元の世界に戻れる。それが何となくだがわかった。

 

右手を体の前に翳す。

 

「風圧武装!!」

 

何を言っているのかわからないが、辺りの木々が煽られている。俺の周りで凄い風が起きているみたいだ。

いつの間にか手袋をしていたり、スパッツのようなものを着ていたり、さらに、その上に装甲みたいのが着いたり、髪の毛が黄緑になったり…

気が付くと変身は終わっていた。

 

「あれ?」

 

動きやすい…

 

軽くジャンプすると、結構高く飛べた。

 

「おおー!スゲー!!」

 

そして、重力落下が始まる。その時、俺の右肩の上辺りに変な生き物が出現する。

 

「なんだこれ?」

 

生き物は狐に似ている。さらに特徴としては尻尾が九本あり、首には鈴らしき物が付いている。てか可愛い…。なんだ、この癒し系生物は!?

 

だが、俺はそんなことをしている場合では無かった。星屑の2、3匹がこちらに気が付いたようで、こちらに向かって来る。俺は地面に軽く着地をする。

 

武器は無いか…

 

頭の中で考える。その時、俺は拳銃を思い浮かべる。すると、右手に何か握っている感触がする。見てみると右手に拳銃が握られていた。

 

「これで、あいつらを倒せと…」

 

拳銃を構えて2、3発星屑に撃ち込む。どうやら効いているようで、一匹がゆらゆらとしてこちらに来る前に落ちる。だが、残り二匹。拳銃を撃ち込むが当たらない。ならどうするか…

答えは簡単。近接で倒せばいい。

 

俺はナイフを思い浮かべる。両手に感触があり、拳銃の替わりにナイフを片手三本、両手で六本持っていた。二匹の星屑はこちらに向かって真っ直ぐ向かって来る。俺は指と指の間でナイフを支え、近付いてきた星屑を切り裂く。

一匹は傷口が浅かったため旋回してまだこちらに向かって来る。一匹は脳天を切り裂いたため破裂して消えた。

向かって来る星屑に対して俺はナイフを全部投げる。運良く脳天を直撃したため、そのままの勢いで俺の真横を過ぎて後ろで破裂する。

 

さて、なんとかなったな。

 

そう思っているとあの狐がナイフを持って来る。もしかして…

 

俺はロケランとその弾を思い浮かべる。すると、左手(左手全体)にロケランを持っており、ロケランの弾を狐が持っていた。

 

こいつは俺のサポートか。

 

そう確認した。

 

遠くで爆発音がする。どうやら俺だけでは無いようだ。もし戦っているのが人間なら味方になるかも。正直あの数は多いからな。

 

俺はジャンプしてその場所に向かう。

 

途中、星屑達がこちらに気が付いたみたいなのでロケランを撃ち込んでおいた。

一匹の星屑に当たり爆発する。さらにその爆発に周りの星屑達にもダメージを与える。

 

その間に狐が弾をロケランに入れてくれる。マジ、何なのこの狐。可愛いし優秀だし。

 

狐が弾を入れて直ぐに星屑に向かって撃つ。

だが、この弾はさっきの弾とは違う。

思い浮かんだ武器が出てくるのなら、思い浮かんだ武器の弾も出るはずだと、思い思い浮かべておいた。

 

弾は撃たれると一匹の星屑に当たる。だが、当たった評しに周りに小さい弾が拡散する。そして、その弾一つ一つが小さいながらも爆発する。

 

これは、拡散弾だ。あのゲームにあるやつを思い浮かべてみたのだ。イメージ通りにいった。まさか、本当に出来るなんて。まあ、ロケランなのは威力と範囲を広げるためだから、もし、ボウガンで出来るなら今度やってみよう。今度があればの話しだけど。

 

俺はジャンプしながら、星屑にロケランを撃ち込み、遠くで起きている戦闘を見る。

 

女の子が…五人…

 

何だろう…この光景見たことあるような…ていうか、星屑やこの世界も見たことがある。

それに、あの五人…凄く見たことある気がする。

 

俺はあの五人にわからないように隠れながら様子を見る。武器も音が出ないように、拳銃(サプレッサー付き)と小刀に変更する。

因みに、狐には予備の拳銃を持たせておく。

 

一人の女の子が地上で戦っていた。近くにいる星屑が近づいた瞬間にバラバラにされていく。あれは…ワイヤー?いや、糸?

それに、あの子…あれ?あの犬吠埼樹ちゃん!?

な、なんでこんな所に!?

 

だが、考えている隙は無かった。樹ちゃんの後ろには星屑が一匹迫っていた。

 

このままだと危ない。と思い、小刀を投げる。因みに、小刀には細工がされており、小刀の柄の部分にワイヤーが付いてる。小刀は星屑に刺さり、俺はワイヤーを引っ張る。バーデックスの一本釣りだ。星屑を近くまで引っ張って拳銃で蜂の巣にする。そして星屑が破裂するのを見届け、樹ちゃんの方を見ようとした。だが、体が動かない。

 

「お、お姉ちゃん!!変なの捕まえた!!」

 

樹ちゃんが近くに近付いて来た。俺の姿は木の根で丁度死角になっており見えていない。

 

俺は必死に動こうとする。だが、両手、両足、さらに首まで動かないのだ。よく見ると、何か、糸のような物が俺の身体中から樹ちゃんのいる方に伸びている。ということは、これは、ワイヤー?だとすれば、人の力では解けないし、下手したら筋肉が真っ二つ。さらには、首にワイヤーが付いていることからして本当に下手したら、首の無い胴体を自分で見る羽目になる。

 

俺は狐に小刀を渡す。狐は小刀で一本一本、ワイヤーを切っていく。

 

「お姉ちゃん!早く!」

 

どうやら、樹ちゃんは途中で足を止めたらしい。都合がいい。狐、早くワイヤーを切ってくれ!

 

因みにだが、なぜ、俺がここまで焦っているかというと、まず、戦っていることを心配されたくないということと、もし、登場するなら、カッコよく登場したいと思っているからだ。もし、新しい仲間が仲間のワイヤーで捕まってて、今日から仲間になりますと、言って仲間になるよりも、仲間のピンチに颯爽と表れた方がカッコいいだろ。そういうことだ。なら、なぜ、さっき樹ちゃんがピンチになっていたときに表れなかったのかって?そんなの…まさか、知り合いだとは思わなくて、少し恥ずかしかっただけです。(見た目が中二病だと思われる)あ…俺、中二だった。

 

なんやかんやとやっている内にワイヤーが切れた。よし!逃げるぞ!

こちらに向かって来る影が二つほど見える。一人は樹ちゃんにもう一人は…さっきお姉ちゃんって言ってたから、多分風先輩だろう。

 

二つの影が来る前にジャンプして、高速で動きその場から離れる。

 

よし。うまくいった。

星屑達はまだまだいる。早くコイツらを倒さないと。

 

俺は、少し高い木の根から戦闘が行われていると思われる場所を見た。そう、ここは…樹海だ。




誤字脱字があったら教えてください。

はい、主人公の能力はオリジナルです。後、主人公は結構いろんな戦い方をします。ロケランのシーンは高くジャンプしながらで、元ネタはbattle fieldの戦闘機から飛び降りて空中でロケランを当てる技です。
ナイフは…元ネタと言うのもなんですが、東方projectの咲夜だったりします。

小型のバーデックスの名前がわからなかったので(Wikiに載ってなかった…)何かの二次創作で出てた名前をそのまま付けました。

それでは、次回予告やっていきましょう。

次回予告

「あ!輝積君!」
「うん!頑張る。」
「あなた、誰?」
「そのことについて…」
「凄いな…」
「な!何危険な物持ってるのよ!」

次回 仲間


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第6話 仲間

第6話目です。

何とかなりました…。
主人公の性格がおかしくなって来ていますが使用ですので、気にしないでください。

それでは…どうぞ…


「凄いな…」

 

樹海を見下ろしながら戦闘を眺める。一人の少女が星屑を狙撃しているのだ。しかもかなりの命中率。その腕前に凄いと言葉に出てしまったのだ。

 

俺もここから、狙撃すれば…何だろう…なんか、真似事はしたくない。もし、真似事をした後に、あの狙撃をしている少女と仲間になって、同じ立ち位置(狙撃キャラ)になったら、この場合、ゲーム化した時に男性キャラだからと俺は切られるだろう。そんなのヤダ!

てか、まず、ゲーム化する前提の所でおかしいがな。

 

俺は、ワイヤーと手裏剣を出す。手裏剣は大きめで中央の穴に手を入れて持っているほど。約一メートルぐらいか?

 

狐は相変わらず可愛い…じゃなくて、一緒にいる。この狐、敵からの攻撃なども防いでくれる。まるで、俺を殺されないようにしているかのようだ。

 

さて、もうそろそろ、観戦から、参戦しますか。

 

俺は、戦闘が行われている所に向かった。

 

戦闘が行われている所の近くまで来ることが出来た。そこには近接で戦う二人の少女の姿があった。その姿を俺は知っている。夏凜と友奈だ。まさか…樹ちゃんや、風先輩、夏凜と友奈。ってことは、狙撃してるのは東郷さん!?あれ?全員勇者部じゃね!?

 

だが、俺に考えている時間は無かった。

 

夏凜と友奈が星屑達に囲まれているのだ。

東郷さん(?)も狙撃はしているが、数が減らない。樹ちゃんや、風先輩の姿が見えないことから、少し遠くにいるのだろう。

 

俺は、手裏剣を投げる。手裏剣は回転をし、円上の刃と化し次々と星屑達を真っ二つにしていく。しかし、星屑達も、一直線しか飛ばない手裏剣は簡単に避けてしまう。だが、その手裏剣は俺が投げた物だ。

俺の両手の指にはワイヤーが付いている。ワイヤーの付いている指を少し動かすと、手裏剣が命を吹き込まれたように、曲がる。そう、俺は、手裏剣自体をワイヤーで操っているのだ。この技術は、誰からか教えてもらった記憶がある。確か…人形遣いと傀儡使いだっけ?ま、そんなことはどうでもいい。

 

「な!何!?」

 

驚くのも無理は無いだろう。いきなり、手裏剣が星屑達を切り裂いていくのだから。しかも、その手裏剣が自由自在に動くのだから。

 

だが、その手裏剣も、星屑に止められてしまう。しかし、それも計算の内。

 

俺はワイヤーに細工をしておいた。ワイヤーを指から離し狐にある物を持たせておく。それは…ライターだ。ワイヤーを一ヶ所に纏めておき、狐が火を着ける。その火はワイヤーを伝わり手裏剣の所までいき、爆発する。勿論、手裏剣を止めていた星屑は爆散。

手裏剣内部には火薬が詰まっていた。そのため、爆発したのだ。さらに、ワイヤーは、導火線の役割も果たしていた。

 

俺は、かなりの数の星屑達を倒した後にスタと効果音が付くかのように友奈と夏凜のいるところに着地する。

 

「よう!」

 

元気よく挨拶してみる。だが、二人は呆然と俺を見るだけだ。

 

「あ、あんた、誰よ。」

 

最初に口を開いてくれたのは夏凜だった。だが、俺の姿を見てわからないようだ。

 

「え?俺だよ。俺。」

「夏凜ちゃん、知り合い?」

「全然。知らないわ。」

「え?」

 

そこまで変わっちゃったの!?変身したら、ほとんどわからないほどに変わっちゃったの!?俺!?

 

「友奈ちゃん!!」

 

東郷さんが足を使わず、ロープのような物を足変わりにしてこちらに来る。

 

そして、俺に銃口を向ける。

 

「あなた、誰?」

「ちょ!銃口向けないで!!怖いから!」

 

いや、銃口を向けられるって結構怖いからね。

 

「友奈!夏凜!東郷!」

 

風先輩と樹ちゃんも到着。

 

「!!あんた誰!?」

 

そして、風先輩に剣を突き立てられる。いや、それも以外に怖いからね!

 

「俺ですよ!」

 

右手を翳して、力を解くようにイメージしてみる。すると、変身が解ける。

 

「あ!輝積君!」

「やっと気付いてくれた。」

「なんで輝積がいるのよ!」

「俺が聞きたいくらいですよ!風先輩!」

「全く、もしかしたらって、大赦から連絡はあったけど、まさか本当に樹海に来れて、しかも、変身までして…もう、訳がわからないわ。」

「取り合えず、後で大赦に連絡してみよう。」

「ていうか、変身している時の輝積さん、一見見わかりませんでしたよ。」

「そうかな?」

「髪は黄緑色だし、身長は伸びているし、わからなかったわ。銃口向けてごめんなさい。」

「いや、いいよ。普通、そうするし…」

 

俺はもう一度変身する。

 

「それに、まだ、星屑はいるしな。」

「それもそうね。」

「それに、この現象について、後で聞いていいですか?風先輩?」

「そのことについて話そうと思ってたところでこれだったからね…ちゃんと放課後話すわ。」

「取り合えず、コイツらを殲滅するわよ」

「シュツジン」

「うん!頑張る。」

 

樹海の空には、6体の星屑がいる。一人一体の計算だ。

 

一気に飛び出す俺と風先輩、友奈に夏凜。

樹ちゃんと東郷さんは援護のようだ…

 

東郷さんは移動して、狙撃ポイントを探して、樹ちゃんはワイヤーが掛かる範囲に星屑を誘い出す。

 

風先輩と夏凜、友奈は近接に持ち込む。

俺も近接に持ち込む。風先輩が太剣、夏凜が刀を二本、友奈は何も武器を持っていないことからして素手で攻撃するみたいだ。

俺も、武器を取り出す。

 

はい、手榴弾♪

 

「な!何危険な物持ってんのよ!」

 

夏凜、その突っ込みはここにいる全員に言えるぜ。

 

俺は、少し高い木の根に行き、そこで止まる。素手に東郷さんは狙撃で星屑を撃ち抜き、樹ちゃんも星屑をワイヤーで絡めて粉々に切り裂く。風先輩は星屑を真っ二つにして、夏凜は星屑を十字に切り裂く。友奈は星屑を打ち砕く。

 

残りの星屑は一体。俺に物凄いスピードで接近してくる。星屑は口を開いて俺の首から上を喰らおうとしている。

ギリギリまで接近したところで手榴弾のピンを抜き星屑の開いた口の中に投げ込み、横に転がり星屑の攻撃を避ける。

 

星屑は口の中の手榴弾を気にせず旋回をしてこちらに向かってくる。だが、途中で手榴弾が破裂し、星屑は汚い花火と化す。

 

そして、目の前が真っ白の光に包まれる。

 

 

気が付けば、学校の屋上。そこには、風先輩、東郷さん、友奈、夏凜、樹ちゃんの勇者部一同がいた。

 

「え、えっと…お疲れ。」

 

俺は、五人にそう言った。

 

「まさか、輝積君が勇者だったなんて思わなかったよ!」

 

友奈がそう言う。俺が勇者?違う。俺は、勇者なんて立派なものじゃない。

 

「兎に角、今日、部室に来ること。いいわね。」

 

風先輩に命令的に言われる。というか、命令だ。

 

「わかりました。風先輩。」

 

俺はそう、答えて教室に戻る。

 

この時、気が付かなかった。自分の体に起きている異変に。




主人公の妖精は狐です。

あ…結城友奈は勇者である 樹海の記憶 が欲しい…。
まずはps vitaを買わないと…いつになったら買えるのだろうか…
あと、手裏剣のシーンですが、モデルはNA〇〇TOの少年時代のサ〇ケだったりします。あの頃が懐かしい…。
まあ、そんなことは置いといて、次回予告。

次回予告

「私には、そのメールは…」
「え?でも、十二体以上…」
「でも、なんで、そんな…」
「夏凜ちゃん、病人を…」
「…ありがとう。」

次回 説明を


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第7話 説明を

第7話です。

まあ、ただの説明会みたいなものです。

にぼっしーネタは四話からなのですが、素手ににぼっしーネタをやっている設定です。(書き終った後に見返して気が付いた)

では、どうぞ。


あの後、教室に戻り落としてしまった本(幸いにも誰も気が付かなかった。)を拾い、放課後、勇者部部室に向かっていた。

 

にしても…なんか、体が重いような…気のせいかな。

 

そう思いながら、勇者部部室に到着する。

 

「失礼しま~す。」

「お、来たわね、輝積。」

 

風先輩が出迎えてくれた。

 

部室に入る。そこには、風先輩、東郷さん、友奈、夏凜、樹ちゃんがいた。

 

「さて、輝積も来たところだし、説明するわね。」

 

結構軽い感じで言う風先輩。結構重要なことだと思うんだけどな~。

 

勇者部部室の奥、黒板があるところに連れていかれ座らせられる。座ってるのは友奈、樹ちゃん、東郷さん(東郷さんは車椅子)そして俺。どうやら、説明をしてくれるのは風先輩と夏凜のようだ。

 

「まず、今日起きた出来事について話すわ」

「おい、ちょっと待て、俺については何も話さないのかよ。」

「えっとね、夏凜や私が大赦から来たメールは、輝積を監視しろってことだけなのよ。」

「そう。だから、あんたが樹海にいるなんて思わなかったし、まさか、勇者になるなんて考えもしなかったわ。」

「あのアプリが原因だと思うんだけど…」

 

俺はそう言って携帯を取り出し、風先輩からもらったアプリを表示する。

 

「それね。そのアプリは勇者の適性がないと発動しない筈なのよ。なのに…」

「発動したと…」

「それにね、女の子じゃないと発動はしない。」

「輝積君、心は乙女だもんね~」

「おい、どういう意味だ?友奈?」

「あれ?今日、教室で読んでたの少女漫画だったよね?」

「いつそれを!!」

「東郷さんが気が付いて、それを教えてくれたの。」

「おい、東郷…」

 

俺は東郷さんを見つめるが目を合わせようとしない。というか、目を背ける。しかも、少し笑いながら。

 

「そんなことより、風先輩、今回の出来事は一体…」

 

話しを反らしやがったな、東郷。今度からさん付しないぞ、この野郎。

 

「今回の事は、今日、しかも、昼休み終りにメールが来たのよ。しかも、それを読んだ直後にあいつらが表れてね。」

「私には、そのメールが来なかった。」

 

夏凜が少し不機嫌そうに言う。

 

「まずは、説明するわね。」

 

風先輩は真面目な顔になり説明を開始する。

 

「まず、今回戦った奴等、あいつらもバーデックスよ。」

「え?でも、十二体以上いたよ。」

「樹の言う通り、十二体以上いたわ。けどあいつらは、バーデックスでも、星屑って呼ばれてる奴等なのよ。」

「星屑?」

「星屑は、十二体のバーデックス…星座型のバーデックスとは違い、数が多い。その分力は弱いけどね。」

「でも、なんで、そんな奴等が来たんですか?神樹様の預言では、十二体の星座型のバーデックスが表れると…」

「そこは、大赦が調査中よ。」

「結構、大赦もわからないのよ。」

「そうなんだ…」

 

少し暗くなるな。わからないことばかりだもんな。

 

「でも、わからない事ばかりじゃないわよ。」

 

風先輩が突如として話し始める。

 

「あいつらは、十二体のバーデックスを全部倒せばいなくなるらしいの。」

「良かった~」

 

樹ちゃんが少し安心した顔になる。他の皆も一緒だ。

 

「けど、なぜ、今頃、そんな奴等…星屑が表れたのかしら…」

 

東郷さんが悩みながら言う。また、雰囲気が暗くなる。

 

「まあ、わからないことは置いといて、勇者部の活動するわよ。」

「切り換え早!?」

「風先輩はいつもこんな感じたよ。」

「お姉ちゃんらしいけどね。」

「そうですね。暗く考えても仕方がないですよね。」

「はぁ…本当に能天気ね…あんた達は…」

 

夏凜が飽きれて見ている。まあ、暗くなってもしょうがないか。

 

「て、ことで、勇者部の活動をするわよ。」

「すみません、今日は帰っていいですか?」

 

俺は、風先輩に言う。理由は簡単だ。体が重くなってきて、苦しいのだ。多分、戦いの疲れや緊張が今頃来たのだろう。

 

「え?どうかしたの?」

「いえ、なんか、変に緊張したのか、疲れてしまって…」

 

それと、もうひとつ原因がある。それは、この勇者部だ。よく考えて欲しい。美女が五人、そこに、男子俺一人。ある意味でプレッシャーがかかるのだ。

 

「大丈夫?輝積君?」

 

友奈が近くで聞いてくる。あれ?友奈って…こんなに可愛かったっけ?

 

「全く、あんな戦闘で疲れるなんて、本当にやる気あるの?」

「やる気あるなしの前に、ほとんど強制のような…」

「しょうがないわね…疲れてるなら、無理はさせられないわ。」

 

風先輩がそう言ってくれる。

 

「夏凜、輝積のこと家まで着いてってやって。」

「「は?」」

 

ハモる俺と夏凜。え?夏凜と一緒に下校?

 

「な、なんで、こいつを家まで送ってやらなきゃいけないのよ!!」

「え~だって、夏凜の隣に住んでるの輝積じゃん。」

「あ!そういえば、そうですよね。夏凜さんと輝積さんはお隣同士でしたよね。」

 

少しニヤニヤとしてる風先輩。そして、純粋にお隣であることを思い出した樹ちゃん。なんなんだ、この姉妹の差は…

 

「夏凜ちゃん、病人を責任持って家まで送って行く。これも、歴とした勇者の活動だよ!」

 

友奈、それは、違うと思う。しかも、俺、病人じゃねーし。

 

「そうよ!例え新人部員だとしても、ちゃんと送ってやらないと!!」

「い、嫌よ!!な、なんでこんな奴を!」

「はーい、四の五の言わない。行かないと、明日からにぼっしーって呼ぶわよ。」

「にぼ…夏凜さん、お姉ちゃんに何を言ってももうダメだと思いますよ。」

「樹、今、にぼっしーって言おうとしたわよね!?」

「俺、疲れたので、先に上がります。明日からはちゃんと活動しますんで…」

 

俺はお疲れさまでしたと言って話している勇者部部員を勇者部に取り残し部員を出る。因みにだが、お疲れと返してくれたのは、友奈と東郷さんだけでした。

 

俺は、疲れが溜まったであろう体に鞭を打って自転車に乗る。スピードは疲れているためか出ていないが、歩くよりはマシだろう。

 

「ちょっと!待ちなさい!!」

 

後から夏凜が追いかけて来る。

 

「おう、どうした、にぼっしー?」

「あんた、次にその名前で呼んだら殴るわよ。」

「ごめん。冗談だよ。」

「本当、疲れてるの?」

「ああ。体が重く感じるんだ。」

「戦ってる時は?」

「何も…放課後になってからかな…重く感じて来たのは。」

「そう。」

 

自転車に乗りながら、話す俺と夏凜。

話しをして、疲れを忘れようとするが、逆に体が重く感じて来る。途中から、息切れが起こる。

 

「あんた、大丈夫?」

「大丈夫…じゃ、ない、かも。」

 

家まで後少しだ。

アパートに到着して、夏凜に肩を借りて玄関前まで送って貰う。素手に意識が朦朧としているのだ。

 

「あ、ありがとう。」

「本当に大丈夫なの?いきなり疲れ始めたように見えるけど…」

「大丈夫じゃない…そんじゃ…送ってくれてありがとう。」

 

俺は、玄関の鍵を開けて家の中に入り玄関を閉めて、靴を脱ぎ、そのままの格好でベットに上半身だけ乗せて倒れてしまった。

 

体が重い…最初は疲労だと思っていた。だが、まるで、色々なものが体に流れ込んで蓄積してくるかのようなそんな感じで体が重いなっていき、意識も朦朧としてきたのだ。

 

その時、覚えていることは、右手に、いつもポケットに入れているお守り…いつ、どこで手に入れたかわからないがいつも持っている。俺は、このお守りを右手に握り締めて、意識を手放した。




はい、主人公に異変が起きました。

次回、急展開です。

お守りの話しは、後で主人公説明の時に書きます。

それでは、次回予告とうぞ~

次回予告

「ほら、昨日君と一緒に…」
「少し、静かにしてくれ。」
「起きなさい!!」

次回 同居人


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第8話 同居人

第8話です。

なんか、一日があっという間に感じる。
そんな俺です。

では、第8話、どうぞ。


「起きて。」

 

うーん。まだ少し…

 

「起きて!」

 

後、十分…

 

「起きなさい!!」

「は、はい!!」

 

俺は、いきなり女の子の声で起こされる。

誰かと思い、周りを見渡すが誰もいない。というか、俺、制服で、しかも上半身だけベットに乗せて寝ていたようだ。時計を見てみる。朝の5時だ。5時!?

 

昨日、朦朧だが、帰ってきた時間を見た時、夕方5時でそのまま、ベットに…

え!?俺12時間も寝てたの!?

 

「やっと起きた。」

 

声が聞こえる。また周りを見渡すがやはり誰も…

 

「ここよ。ここ。」

 

右手の方から声が聞こえて来た。俺は、右手を見てみる。朦朧としていたが、昨日、右手にお守りを握っていたはずだ。なのに持ってるのは、謎の端末。ウォークマンに似てはいるが…何なのだろう。

 

「やっと気付いてくれた。」

 

ウォークマンから声がする。

 

ビックリしてウォークマンを投げてしまいそうになるが、なんとか受け止める。

 

「ちょっと、投げようとするなんて失礼だよ。」

 

そうウォークマンから聞こえた後、ウォークマンの画面辺りから半透明の女の子(約十㎝ぐらい)が出てくる。

 

「あ!あんた、誰!!」

 

俺はウォークマンから出てきた女の子に指を指して言う。

 

「私は…誰だっけ?」

「知らねーよ。」

「え~、知らないの~。」

「いや…」

 

なんなんだ、この子。あれ?けどどっかで見覚えが…

 

「取り合えず、質問攻めにしたい所だけど…」

 

俺は、女の子にそう言う。ウォークマンみたいな物から女の子が出ている不思議現象よりもっと大事なことがある。

 

俺は、耳を澄ます。

 

「ねえ、どうしたの?」

「少し、静かにしてくれ。」

 

キッチンの方からだ。音がする。普通に考えて泥棒と判断するだろう。生憎、手元に武器になりそうな物はない。いや、あるが、このウォークマンを投げて壊したら、この女の子がどうなることやら…

 

俺はウォークマンをベットの上に置いて、キッチンに繋がる襖をゆっくりと開ける。

 

「あ、おはよう。」

 

俺は、襖を目にも止まらないスピードで閉める。ありのまま、今起きたことを話すぜ。襖を開けてキッチンを見たら、銀髪の長髪で身長が高いイケメンが、エプロンつけて料理してた上に朝の挨拶をしてくれた。しかも猫耳ぽいようなのが頭の上に付いていた。何を言ってるのか俺にもわからねぇが、本当に目の前で起きたんだ。

 

「おい、挨拶も無しに襖を閉めるなよ。」

 

イケメンが襖を開けて言ってくる。ここは寝室だぞ?は!まさか、所謂腐女子向けなことを俺に…

 

「なんだよ、その軽蔑するかのような目は。」

「俺に乱暴するんでしょ!〇〇〇〇みたいに!!」

「しねぇーーーよ!!」

「あの…ネタ中にすいませーん、何が起きてるのか説明して欲しいんですけど…」

「俺も聞きたいよ…」

「まあ…兎に角、朝食でも取りながら話そうよ。」

「…ここ、俺の家なんだけど…」

 

俺はウォークマンを持って、リビングまで行く。イケメンは料理をリビングのテーブルの上に置いて来る。

 

「まず、お前誰だよ。」

 

俺は、イケメンに話しかける。

 

「俺の名は九尾。神樹様からの命令で君の妖精になったんだけど、イレギュラーが起きて、今の姿になっているんだ。」

「妖精?」

「ほら、昨日君と一緒に星屑を倒したじゃないか。」

「…え?あの狐!?」

「そうそう。」

 

あの可愛らしい狐が…銀髪イケメンに…腐女子が大喜びの展開だな。

 

「で、イレギュラーって?」

「そう。イレギュラー。って言っても推測だけど、神樹様を超える何かの力によって俺が人化してしまったのだと思われるんだ。」

「神樹を超える力!?」

「俺達妖精もわからないけど、実際に起きたんだ。それに、そのイレギュラーは俺だけじゃないみたいだしね。」

 

九尾はウォークマンを指差す。ウォークマンの上で足組をして考えている女の子もそのイレギュラーに巻き込まれてしまったのだろう。

 

「なあ、九尾、この子は?」

「それは、俺にもわからないな。でも、わかる事としては、その子からも、少しだけ神樹様の力を感じるって所かな。」

「ヒントはそれだけか…せめて名前がわかればな…」

 

俺は女の子の方を見る。そういえば、ウォークマンからなんか変なコードが出てるけど何なんだろう…携帯に挿せそうだけど…

 

俺は試しに携帯にそのコードを挿してみた。

 

「うわ!!」

 

その瞬間、女の子が消えた。そして、近くで大きな光りが起きる。俺と九尾は目を瞑ってしまった。そして、目を開けると…そこには…

 

「…あれ?私、肉体がある!?」

 

半透明だった体が人間の体そのものになり、身長約145㎝、代々小学生ぐらいの女の子になっていた。半透明の為わからなかったが髪の毛が灰色に近く髪もそこまで長くない。

 

「おいおい…何がどうなってんだ…」

 

俺が聞きたいです。

 

「で、名前は?」

「思い出せないな…」

「なんか思い出せるものはあるだろう?」

「…うーん…友達がいたような…いないような…」

「はあ…」

 

ため息をする九尾。

 

「ならさ、俺と一緒だな。記憶が俺も無いんだ。だから、一緒に探そう。」

 

俺は、女の子に手を差し伸べる。所謂握手だ。この女の子も俺と同じで記憶が無い。なんというか、親近感が湧いたのだ。

 

「うん。よろしく。」

 

女の子と握手する。

 

「なあ…この携帯に表示されている時間…何なんだろう?」

 

九尾が携帯の画面を見て言う。俺と女の子も見る。時間が一時間四十分と表示されている。俺はある予想を建てる。

 

「これさ…君の実体化出来る時間じゃないの?」

「え!?」

 

それに、恐ろしいスピードで携帯の充電が減っている。

 

「もしかして…携帯の充電=君の実体化出来る時間?」

 

俺は試しに携帯を充電器に挿してみる。すると、時間がほんの少しずつ増えていく。

 

「これは…その確率が高いな…。」

 

九尾がそう言う。

 

「あ、俺も携帯の充電が無くなったら輝積が自殺や死にかけそうになった場合を除いて出てこれないから。」

「なんだよ、自殺とか死にかけるとか…」

「まあ、俺の役目は、樹海で神樹様のために戦う者が死なないように監視するのが第一だからな。」

「ふーん…」

 

九尾の言っている事が正しいと思う。戦う者が死なないようにしている。勇者は絶対死なないってことだろ。ようは、戦いに置いて不死身ってことだろ。スゲーじゃん。

 

「まあ、そんなことはしないけどな。」

 

俺はそう言った。

 

「で、これから君をなんて呼んだらいい?」

 

九尾は女の子を見る。確かに、名前が無かったら話しにくいし、何より女の子って呼んでるのも、なんか悪い気がするしな。

 

「…銀…」

 

俺は咄嗟に名前を出した。

 

「銀?この子の名前かい?」

「いや…何となく出た名前だよ。時々思い出す記憶で、君に似ている人がいて、その人の名前が銀って名前っぽかったから…」

「銀…うん、なんかそんな感じの名前だった気がする。」

「なら、君はこれから銀だな。」

「えっと…よろしく。銀。」

「よろしく。…名前何だっけ?」

「上賀輝積。」

「輝積…」

 

俺は銀を見る。うん。やっぱりあの子にそっくりだ。

 

「なあ、もうそろそろ、朝食を取らないか?」

 

九尾に言われて気が付く。

 

俺と銀、九尾は朝食を取る。

 

その後、学校に行く時間まで、銀と九尾と話して、今後、どうするか決めた。

まず、銀と九尾のことは大赦と勇者部には内緒…というのも、多分神樹様関連じゃないと九尾が決めたことだから。大赦は神樹様関連じゃないとあまり動けないし、勇者部は元々関係無い。

次に、九尾は、常に俺と共に行動しなきゃならないらしい。基本、携帯の中にいるらしく、しかも人化と妖精の状態を自由になれるらしいし。勇者部などで紹介するときは妖精の状態でいるように頼んだ。

最後に銀だ。ウォークマンみたいなやつに常にいることと、やはり携帯の充電が無くなればウォークマンに戻ってしまう。なので、家にいるとき以外は基本ウォークマンの中にいてもらうことになった。それと、ウォークマンなので、イヤホンが付けられて、しかも曲まで聞けたし、アニメを見れたり、漫画を読めたりした。それは、中の銀も同じようだ。てか、容量が96GB…どんだけ入るんだよ!しかも微妙な数字!

いや、重要な所はそこじゃ無くて、イヤホンを付けると銀は姿が出せなくなり、声もイヤホン越しになる。しかも外の様子や音は聞こえないようだ。それと、銀も、同じようにお腹が空くみたいだが、ウォークマンの中にいる時はお腹が減らないとのこと。

ということで、今日から、3人?で学校に行くことにした。勿論、二人?はバレないようにしながら…

 

「学校か…小学校以来かな…覚えて無いけど。」

「時にはイヤホンを外してやれよ。何が原因で銀の記憶が戻るかわからないからな。」

「了解だよ。九尾。てかさ、九尾は妖精の状態でも話せるの?」

「あ…無理。」

「そうか…。」

「なぜ安心した顔をする!?」

「いや…なんでもないよ。」

 

こうして、同居人が二人(?)増えた。






はい、銀というキャラクターが出てきました。
予想出来ている人もいると思いますが、あのキャラクターです。てか、名前に捻りが無かった…というか思い付かなかった…
銀は一応オリキャラとしておきます。

それでは、いつもの恒例次回予告

次回予告

「わかったわ」
「でさ、早速なんだけど…」
「了解です。」
「同じく…」
「仕方がないな。」
「ふふふ、そうだろう。」
「挑むところだ。」

次回 勇者部活動


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第9話 勇者部活動

はい、第9話です。

新キャラが増えましたが、活躍するのはまだ先です。

では、どうぞ。


時間が過ぎて、放課後。

俺は勇者部部室に直行した。

 

「こんちわ~」

 

元気よく部室のドアを開ける。

 

「あら、大丈夫?」

 

早速話しかけて来てくれる風先輩。さすが先輩ですな、後輩に気を使っていらっしゃる。

 

「大丈夫ですよ。帰って寝たら体が軽くなりました。」

 

そう、昨日の体の重みが嘘のように無くなっていた。

 

「そう。それなら良かった。」

「本当に大丈夫でしょうね?」

 

言い寄る夏凜。

 

「大丈夫だよ。」

「てかさ…夏凜が他人を心配するなんて珍しいじゃない。」

「べ、別に、昨日あんな調子だったから、少し心配しただけよ。」

「ははーん♪」

 

風先輩が少し怖い笑いをする。なんか企んでるな…

 

「作戦成功ね…」

「風、何か言った?」

「いや、何も言ってないわよ。」

 

何が作戦成功なのか、俺は聞こうとはしなかった。聞けば、ある意味地雷を自ら踏みそうな気がしたからだ。

 

「で、何をするんですか?風先輩?」

「うーん、まず、自己紹介してもらえる?」

「わかりました。」

 

勇者部奥の黒板の所に名前を書く。

 

「えーと、みんな知ってるとは思うんですけど、昨日から強制的に勇者部に入った輝積です。これから、よろしくお願いします。」

「改めてよろしくね。輝積君。」

「よろしく、輝積君。」

「よろしくね、輝積。」

「よろしくお願いします。輝積さん。」

「よろしく。」

 

いや…改めて見ると、全員美少女だよな。両手に華というより一面華だよ。

 

「でさ、早速なんだけど、いいかしら。」

 

風先輩が言い始める。

 

「まず、夏凜。夏凜は剣道部の練習相手を頼まれてるから、そっち行って。」

「わかったわ。」

「それから、東郷。東郷はパソコン部の方から手伝って欲しいって言ってたからそっちをお願い。後、友奈も一緒に行ってやって。」

「了解です。」

「わかりました。」

「そんで、残った私と樹、輝積は川のごみ拾い。」

「うん。わかった。」

「はーい。」

「それじゃあ、活動開始!」

 

それぞれ移動する。俺と風先輩、樹ちゃんは川に行く。

 

そして、川の中に入ってごみを拾う。

 

「…」

 

無言の時間が過ぎる。

ごみを見つけては拾って袋に入れる。それを淡々と繰り返す。

 

「あ、あの…輝積さん…」

「ん?何?」

 

以外にも沈黙を破ったのは樹ちゃんだった。樹ちゃんは飛躍的近い場所でごみ拾いをしていたため、話しやすかったのだろう。それに、風先輩は少し遠い場所にいる。

 

「昨日はすみませんでした。」

「昨日?…あぁ…」

 

昨日、俺のことをワイヤーで捕まえたことを言っているのだろう。

 

「別に、気にしてないからいいよ。」

「そ、そうですか…」

「おーい!樹!輝積!」

 

遠くで俺達を呼ぶ風先輩。

 

「友奈達が依頼終わらせたらしいから、私達も上がるわよ!」

「はーい。」

「了解でーす。」

 

もう、そんな時間なんだと思う。

 

川から上がり、ごみを分別して、勇者部部室に行く。素手に依頼を終わらせた友奈と東郷さん、夏凜がいた。

 

「みんな、いるわね。」

「結城友奈、無事依頼を終わらせてきました。」

「同じく、東郷美森、依頼を終わらせました。」

 

敬礼する友奈と東郷さん。夏凜はやらないようだ。

 

「まあ、相手にならなかったけどね。」

 

自慢そうに言う夏凜。またボロボロにしたんですか…何だろう、前もスケットやって、今回もやって…てかさ、本当相手にならなかったみたいだな。これはその内俺に依頼来るんじゃね?てか、夏凜に黒星なのは俺だけじゃね?

 

「さーて、部活も区切りがいいし、今日はこれで終わりますか。」

「帰りにうどんでも食べて行く?」

「んじゃ、うどんを食べに行く人挙手!!」

 

風先輩の指示で手を挙げる友奈に樹ちゃん。さらに東郷さん。以外ですな。勿論俺も手を挙げる。

 

「あれ?夏凜ちゃん、うどん嫌い?」

「ち、違うわよ。どっちかというと好きよ。」

「そんじゃ、参加多数でうどん食べに行きましょうか。」

「そう。なら、私は帰るわよ。」

「何言ってるの?夏凜、あんたも行くのよ。」

「はぁ!?」

「あ、これ、部長命令だから。」

「な、なんで!?」

「みんなと食べるうどんは美味しいよ」

「んじゃ、行くわよ~」

「ちょ!?人の話しを!?」

 

こうして、俺達はあのうどん屋に行った。

 

あの、親切なおばちゃんが注文を取りに来る。

友奈と東郷さん、風先輩は肉うどん。樹ちゃんは天ぷらうどん。夏凜は狐うどん、俺はザルうどんだ。

 

「あら、輝積、ザルなんだ。」

「熱いうどんも良いけど、この季節はザルうどんが一段と美味しいんだよ~」

「輝積さん…顔がにやけてますよ。」

「いや~なんか、久々なんだよね~うどん。」

「輝積君もうどん好きなの?」

「ふふふ…俺はな…うどんが大好きでな…週に一回以上はうどんを食べる日を作っているほどだ。」

「そんなに…」

「てか、輝積のキャラ壊れかけてるし…」

「この部の部員は全員うどんが好きですよね。」

「確かに、そう言われてみれば…」

 

そう話していると、うどんが到着する。

 

「そんじゃ、」

「「「「「「いただきます!!」」」」」」

 

うどんを食べ進める俺達。たわいもない会話をしながら、みんなと食べるうどん。なんか、普通より美味しく感じるな。

 

「おばさん~おかわり!!」

「風先輩、そんなに食べたら、夕食食べられませんよ?」

「輝積さん、あのね、お姉ちゃんは、ちゃんと夕飯食べるよ。」

「うそ…女の子なのに!?」

「ふふふ、うどんは私の女子力の源なのだ~」

「なん…だと…うどんは女子力の源だと…だからか…俺がよく料理をするのは…」

「へ~、輝積君ってよく料理するんだ。」

「まあ、人並みにはな。」

「そのお隣さんである夏凜は料理があまり出来ないと見た。」

「う、うるさいわね!やる気になれば、料理の一つや二つ簡単よ!」

「それでは、料理対決しますか。」

「なんで東郷がのる気なのよ!?」

「夏凜さん…」

「なによ、樹。」

「大丈夫です。私も料理はあまり出来ない方ですから。」

「何もフォローになってないわよ!?」

「さて、時間も遅くなってきたし、もうそろそろ帰りますか。」

 

風先輩の一言により、東郷さん以外が立ち上がり、お金を払う。

 

そして、それぞれの帰路に立つ。

 

俺は夏凜と帰り道が同じなので、一緒に自転車を押しながら帰る。

 

「あ、あのさ…」

「何?」

 

話しかけてきたのは夏凜だった。

 

「こ、今度、料理教えて…」

 

勝負を申し込まれたようなものだ。仕方ないか。あれ?俺も参加じゃ…

 

「別にいいよ。基本暇してるし。」

「いい!べ、別に料理が苦手な訳じゃないんだから!!」

「はいはい。わかってるよ。」

 

夏凜…その言い方をツンデレって言うんだよ。

 

そんなことを思っているうちに玄関前に着いた。

 

「そんじゃ、夏凜。また明日。」

「ええ…また明日。」

 

そう言って玄関の戸を開ける。

 

制服を脱ぎ、私服に着替える。

あ…そういや、昨日からずっと制服だったな。

制服の予備をだして、私服に着替えて、キッチンに立とうとする。

 

「おいおい、俺が作るぜ?」

 

いつの間にやら人化している九尾。

 

「いや、俺がやるよ。」

「なんだよ、一応、俺はお前の下部みたいなものなんだぞ?遠慮しなくていい。」

「そうじゃない。」

「じゃあ、なんなんだい?」

「正直言うよ。」

「うん。」

「九尾は料理が上手い。」

「ふふふ、そうだろう。」

「ただ、普通の人よりは、だ。」

「?」

「言うなら、俺の方が上手い。」

「…それ自分で言います?」

「まあ、九尾は俺の料理を食べたことがないから、わからないんだろうけどな。」

「…そこまで言うのなら、勝負します?」

「挑むところだ。」

 

こうして、俺と九尾の料理対決が始まった。

 

「てなわけで、銀、判定よろしく。」

「そんなわけで呼び出されたの…私。」

「そんなこと言わずに、お願い。」

「仕方がないな。」

 

こうして、勇者部料理対決の前挑戦、上賀家料理対決が始まった。

まあ、結果だけ言うなら…

 

「うん、輝積の方が美味しい。」

 

勝ったのは俺だった。

 

九尾は落ち込むが、今後、夕食などは交互に作っていこうという話しで纏まった。

 

時間が過ぎ、もうそろそろ寝ようと思った時間。

 

充電を挿しウォークマンを挿した携帯で、勇者部専用のSMSアプリを開く。俺のアイコンに九尾(妖精状態)がなっていて、会話が出来るようになっていた。

 

あ、因みにだが、九尾は携帯、銀は実体化して、別の部屋で寝ています。

 

友奈が、俺が参加してきたことに気が付いたようで、

 

友奈 輝積君が参加してきたよ~

風 遅いわよ~

東郷 ぼたもち

夏凜 また、東郷が会話おかしくしてるわね…

輝積 なに、このカオス…

友奈 輝積君が喋った!!

樹 本当です。

東郷 ぼたもち ぼたもち

風 東郷、止めなさい…

輝積 ぼたもちがどうかしたの?

夏凜 わかんないわよ…

東郷 今年こそ、ぼたもちを流行語大賞に…

樹 それは…ちょっと…

風 いくら、東郷でも難しいと思うぞ…

東郷 ぼたもち

友奈 頑張れ!!東郷さん!!

夏凜 友奈…それは応援しちゃいけないタイプよ。

友奈 え!?そうなの!?

輝積 取り合えず、また明日~

風 おう、おやすみ~

樹 お休みなさい。

東郷 お休みなさい。ぼたもち

夏凜 お休み。

友奈 お休み、輝積君。

 

アプリを閉じろとしたとき…

 

友奈 きっと毎日が楽しくなるよ

 

…毎日が楽しくか…

 

俺は、それを見たあと、携帯を枕元に置いて、考えた。

 

記憶は無い。けど、今、とても楽しい。友奈や東郷さん、風先輩に樹ちゃん、さらに、九尾に銀。

まだ始まったばかりだけど、とても楽しい。

樹海やら、勇者やらで色々あるが、楽しくのは変わらない。

 

…変わらないで欲しいな…

 

そう思い、夢の中に入って行った。




最後、フラグのようなものを建ててしまいました…
まあ、それを折ってこその主人公ですけど…

アニメイトでゆゆゆのカードが…ルールわからんけど欲しかった…しかもスリーブで東郷さん以外売られてた…夏凜が欲しかったが、財布の中身が…

そんなことより次回予告

次回予告

「え!?ちょっと!?」
「内容次第には…」
「そうなんですか!!」
「お姉ちゃん?」
「次やったら…」
「どっか出かけるのか?」
「鷲尾…」

次回 歌を



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第10話 歌を

第10話です。

早くも第10話です。

今回はシリアス入れのギャグ回に…

と、兎に角どうぞ…


ある日

 

俺はいつも通りに勇者部に行った。だが、その日は日直のため少し遅れて…だ。

 

「すいませーん、日直で遅れまし…た…」

 

勇者部部室に入るとみんな鞄を持って部室から出ようとしていた。

 

「どうかしたんですか?」

「いや~今日の活動は終わりにしようかと。」

 

唐突だな…しかも、来たばかりなのに…

 

「それと、輝積、明日空いてる~?」

「一応空いてはいますが?」

「そう。なら、明日ここに集合ね。」

「あ、はい。」

 

俺は紙を渡される。紙には場所と時間、制服を着てくることとしか書いてはいなかった。多分、勇者部の活動だろう。

 

「それじゃあね、輝積君。」

「おう、さようなら、友奈、東郷さん。」

「さようなら。輝積君。」

 

友奈が東郷さんの車イスを押しながら帰る。

 

「それじゃ、明日遅れないでよ。」

「輝積さん、お疲れ様です。」

「ああ…お疲れ。」

 

そう言って脇を通っていく犬吠埼姉妹。お疲れって…何もしてないよ…俺…

 

「そんじゃ、帰りますか。」

 

俺は夏凜の方を見る。

 

「何よ…」

「え?帰らないの?」

「帰るわよ。」

「なら、一緒に帰った方がいいよ。」

「な、な、なんであんたなんかと一緒に帰らなきゃいけないのよ!」

「そうか~それなら、俺は一人で帰るね~」

「え!?ちょっと!?」

 

俺は部室から出て走るように(厳密には走ってない)帰った。

 

家に着き、玄関を開ける。そして、九尾と銀が出てくる。

携帯を充電器に挿し込み俺はジャージに着替える。

 

「どっか出かけるのか?」

 

九尾がエプロンを着けた状態で聞いてくる。

 

「少しジョギング。」

 

俺はそう言って外に出て時間を計りながらジョギングをする。この頃、暑くなってはきたが、夜は少し冷える。

俺はそんな中ジョギングをした。

俺は勇者なんて立派な者ではない。だが、戦えるのなら、戦う。記憶を失っても、体を動かしていた。もしかしたら戦うことが無意識にわかってたのかな。

無力なのは嫌だ。だから、俺は体を鍛える。ただそれだけだ。

 

俺はそんなことを考えて走っていた。素手に夕食時だ。

 

次の日

 

制服を着て俺は集合場所に行く。

 

「…」

 

集合時間より少し早く来てしまった。正直少し眠かったりする。

現在朝8時半。集合は9時半。一時間早い。

 

さて、何をしようか…

 

「あら、輝積君早いね。」

 

集合場所近くに車が止められ、そこから東郷さんが降りてくる。勿論車イスだ。

 

まさか、東郷さんが来るとは…

 

正直に言うなら、東郷さんは可愛いし料理も上手、更にはスタイルも。だが、彼女は友奈をとても大切に思い過ぎなくらい過保護だ。しかも、時よりの毒舌はかなり心にくるものがある。あ、付け足すなら愛国者だ。

 

「おはよう。東郷さん。」

 

東郷さんは車イスで此方に来ようとする。俺は直ぐ様東郷さんの所まで駆け寄り車イスを押す。

 

「ありがとう、輝積君。」

「いやいや、普段ここは友奈の特等席だけど、一回は同じ勇者部として押してみたいと思ってさ。」

 

俺は後ろから東郷さんを見る。

 

「鷲尾…」

「?どうかしたの?輝積君?」

「!?あれ?俺なんか言った!?」

 

俺は小さな声で誰かの名前を言っていたらしい。鷲尾って誰だよ。

 

「輝積君…」

「どうしたの?」

「私のことを知ってるの?」

「どういう意味?」

 

その後、聞いてしまった。東郷さんは交通事故にあって両足の機能と約2年間の記憶を無くしてしまったらしい。

 

「そうか…」

 

少しの沈黙。これは本人が一番辛いはずだ。

 

「それなら、俺もその2年間の記憶を取り戻せるように手伝うよ。」

「ありがとう。でも、私は今が楽しいから、いいわ。気持ちだけ受けとるわ。」

「それに、俺の記憶も関係ありそうだし…」

「記憶?」

「えーと…誰にも話さない?」

「内容次第には…」

 

俺は東郷さんに自分も記憶が無いことを話す。いや、東郷さんより重症で自分に対して全部だ。

 

「そんな…こと…苦しくは無いの?」

「苦しく無い…て言ったら嘘になるな…でも、勇者部のおかげで毎日が楽しいよ。」

 

そう話していると、友奈が走って来る。

 

「東郷さん、待って~」

「もう、友奈ちゃんが起きないのが悪いんだよ。」

「ごめん!東郷さん。」

 

俺は東郷さんを押す権利を友奈に渡す。

 

「おはよう、輝積君。それと、ありがとうね。でもここは、私の特等席だから。」

「おはよう。いや、勇者部としては、やっておきたかったからさ~」

 

友奈と東郷さんと会話をする。東郷さんは俺の話しを内緒にしてくれるみたいだ。いや、俺が自ら話さないといけない。その時まで話さないだろう。

 

そして、集合時間。勇者部六人が揃い、いざカラオケへ…カラオケ!?

 

「ちょ!風先輩、聞いてないっすよ!」

「あれ~言って無かったっけ?」

 

絶対面白半分で俺のこと誘ったな…。と思ったけど、なんでも樹ちゃんの歌の練習をするらしい。そして、なんで制服かというと学割が効くそうだから。あれ?これなら、俺、制服の予備があるから、九尾とカラオケ…やめておこう。いや、制服的に。

 

カラオケに着いて、早速風先輩が歌う。

目茶苦茶上手い。点数が92点。因みになのたが、ここのカラオケは採点付きだ。

友奈が夏凜と一緒に歌おうとしたが、夏凜が嫌がる。だが、風先輩が油に火を注ぐ。ようは、夏凜を挑発するわけだ。

そして、友奈と夏凜が歌う。どんだけ歌が上手いんだ!?この部活は!?また92点だよ。

しゃあない、今度は俺か。

 

「あれ?この曲誰が入れたの?」

「俺す。」

 

カラオケの画面に赤いツインテールの女の子が写し出される。

 

「Why? 君と問いたい そのアツい情熱の進化~♪」

「まさかのアニソン…」

「私、このアニメ知らない…」

 

歌いきる。他の勇者部達は圧巻しているようだ。点数は…

 

「97点…」

「これが、アニソンじゃなきゃ、凄かったのに…」

「え~でも凄く上手いよ~」

 

そして、次…

樹ちゃんの番だ。

率直な感想だが…

 

「緊張し過ぎな気がするな…」

 

そう、声が緊張してしまい、折角いい声を出し切れていない。点数は…まあ、見ないようにしよう。

 

「樹は一人で歌う時は凄く上手いのに。」

「そうなんですか!!」

 

友奈のオーバーリアクションが本当いいところで出てくれるよ。友奈は素でわかる人だ。

 

風先輩も樹ちゃんのことを励ます。それぞれ勇者部で樹ちゃんに出来ることを考えることにしよう。

風先輩は兎に角カラオケを楽しもうと言って来たので楽しむことにした。

 

そして、東郷さんの出番…

これは…軍歌…

さ、流石愛国者。もしかりたら、艦〇レやってたり…いや、もしや、ガ〇パンなども知っていたり…なんか、東郷さんのキャラが俺の中で崩れ始める。しかも、勇者部(夏凜と俺を覗いた)は敬礼をする。何なのこの部活…

 

「それじゃ…今度は私が…」

「現実は何となく超絶な私達の日常…~♪」

 

はっはっは!先に入れたのは俺だ!

 

「夏凜ちゃん、もう一回やろう。」

「嫌よ。」

「いくつもの星の名前を知って キミと出会った 幼い日~♪」

「あ~輝積はほっとこう。」

「けど、輝積さん、歌上手いですよ。」

「アニソンじゃ無かったら…ね。」

「『限界なんて無い』ってキミの言葉に憧れてこの手を伸ばしたんだ~♪」

「また歌ってる…」

「あれ…これって…」

「どうかしたんですか?風先輩?」

「いや、気のせいよね…」

「ケモケモケモ けもけもけ~♪」

「…」

「お姉ちゃん?」

「ねぇ、友奈、樹、夏凜、東郷、少し耳塞いて置いて。」

 

風先輩がなんか指示を出しているが、関係な…

 

「あんた!それ、2014秋アニメばっかじゃない!てか、一応放送局が一緒なのもあるけど、そんな万々に別アニメのOPを歌うな!!ある意味引っかかるわよ!」

「…確かに…」

「それに、皆でカラオケしないと意味ないじゃない。」

「わかりました。風先輩。あと、メタ発言ありがとうございます。」

「もう、やらないわよ。てか、なんで私がツッコムのよ。」

「いや~風先輩ならわかってくれると…」

「次やったら、容赦しないから。」

「本当すんません。」

 

俺は、初めて風先輩が怖いと感じた。

 

「皆、耳塞ぐのやめていいわよ~」

 

友奈達には聞こえてないようだ。東郷さんが一瞬手を離したように見えたのはなぜだろう。だって、さっきの風先輩の言葉は聞こえてないはずなのに…

 

何とかゼスチャーで耳を塞ぐことを止めさせた。これでいい。よし、俺は出来るだけ自粛して歌いますか。

 

こうして、楽しいカラオケが…

 

「ねえ、夏凜、一緒に歌おう~」

「な、なんであんたと歌わなきゃいけないのよ!」

「あー、輝積君と夏凜ちゃんのデュエット聞きたい!」

 

友奈が賛成してくれる。

 

「アニソンじゃなきゃいいわよ。」

「私も気になります。」

「応援するわ。」

 

皆ノリノリですな。引き下がれません。

 

「…しゃあない、やるわよ、輝積。」

「よし、きた!」

「「~♪」」

 

いや~楽しい時間だった。

 

次の日、樹の歌のテストのために、夏凜が喉にいいサプリメントを部室に大量に持ってきた。

 

「夏凜さん…これは…」

「樹、これを全部飲めば、声が良くなるはずよ。」

「なら、実践お願いします。」

 

俺が言う。

 

「それなら、輝積もやってみれば?少し声枯れてるわよ。」

 

確かに、昨日歌い過ぎた。そのため少し喉がガラガラする。

風先輩は夏凜に挑発をするわけで…

 

「いいわよ、全部飲んでみせるわ!」

「あの…俺もやらなきゃダメ?」

「ダメ。」

 

風先輩に笑顔で返された。

 

「くそ!やけくそだ!」

 

その後、トイレに直行する勇者部の二人がいた。てか、その内の一人は俺の訳で…

いや、味がどうとかそういうレベルではない。なんか…体にいいものを大量に摂取した時に逆に良くない感じがする、そんな感じだ。二度とサプリメントをオリーブ油で飲まない。いや、普通しないか。

 

その後の部活中、友奈や風先輩の閃きで樹に激励のメッセージを書くことに。

俺は…

 

樹ちゃんなら、きっと出来るよ。俺が、いや俺達がついてる。

 

と書いた。

いや、本当なら、ネタに走って、

お前を信じる俺を信じろ

とか書いてみたかったけど、やっぱり、こういう時は真面目にしないとね。

 

結果から言うと樹ちゃんは合格した。

今度、緊張していない樹ちゃんの声を聞けたらいいな…。




はい。

ネタのアニメは、風が言う通り、2014年秋アニメOPです。はい、一応謝っておきます…スミマセン。
でも、後悔してない。

まあ、メタ発言はこの話しだけなので(予定だと)次の話から普通にしていきたいと思います。

ではでは、次回予告を…

次回予告

「あんた達…」
「よーし…」
「言われなくても…」
「わ、私も叶えたい夢が…」
「頑張って皆を、国を…」

「あれは…満開…」

次回 守りたい者


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第11話 守りたい者

はい…第11話です。

では…どうぞ…


ある日、また、俺はカラオケに来ていた。

だが、メンバーはこの前と違う。九尾と銀と俺の三人だ。

まあ、それぞれ好きな歌を歌う。

そんな中、俺は、トイレに行っていた。

トイレから帰る途中、綺麗な歌声がどこからともなく聞こえてきた。俺は、ハンカチで手を拭きながら、その声の主を探した。

本当に綺麗な歌声だ。

そして、ある一室を覗く。(こういうことはやってはいけません)そこにいたのは、あの樹ちゃんだった。

やっぱり、樹ちゃんは歌が上手い。

パソコンを使いながら自分の歌を録音している。多分だが何かに応募でもするのだろう。

 

俺はそこで見るのを止めた。これ以上は本人から聞こう。

 

そう、この日々を楽しもう…。

 

 

現実は時に残酷だ。

 

現在、樹海が発生している。

そう、バーデックスだ。数は大型が七体。星座型だ。

 

「残り七体…全部来てるんじゃないの…これ…総攻撃…最悪の襲撃パターンね。やりがいあり過ぎてサプリも増し増しだわ。」

 

そう言うと夏凜はサプリメントを飲む。

 

「樹も決めとく?」

「その表現はちょっと…」

 

確かに。

 

だが、奴らは結界の外にいる。

勇者はなんでも神樹様の加護が届かない外どは戦えないらしい。

 

「決戦ね…皆もそろそろ準備を。」

 

緊張をほぐしたりする友奈。

 

「よし!勇者部一同変身!!」

 

一同は変身をする。俺もその一人な訳だ。

 

「敵ながら圧巻ですね。」

「逆に言うとさ、こいつら殲滅すればもう戦いは終ったようなもんでしょ。」

「殲滅ね…」

「皆、ここは、あれいっときましょ。」

「あれ?どれ?」

「?」

 

友奈、東郷さん、樹ちゃん、風先輩が円陣を組む。

 

「え、円陣?それ必要?」

「決戦には気合いが必要なんでしょ?」

「は…」

「夏凜ちゃん!」

「たく、しょうがないわね。」

「輝積君!」

「いや…女の子と円陣組むのは…」

 

ある意味ご褒美…いやいや、ある意味犯罪では…胸が…特に東郷さん。

 

「いいから、やる!」

「は、はい…」

 

俺は樹ちゃんと夏凜の間に入る。

 

本当、改めて見ると勇者部全員可愛いな…

 

「あんた達、勝ったら好きなもの奢って上げるから、絶対死ぬんじゃないわよ!」

「よーし、美味しいものいっぱい食べようと!肉ぶっかけうどんとか!」

「言われなくても殲滅してやるわ!」

「わ、私も叶えたい夢があるから。」

「俺も、精一杯、皆と戦うよ。」

「頑張って皆を、国を守りましょ。」

「よーし!勇者部ファイト!!」

「「「「「「おーーー!」」」」」」

 

そう、意気込む俺達。

だが、何だろう…この胸騒ぎは。

 

俺は基本中距離だ。接近戦は夏凜と友奈、風先輩。遠距離は東郷さんの担当。

ポジション的には樹ちゃんと被る。

 

俺と樹ちゃんはポジション的にも近い所にいる。だが、戦いではあまり意味を成さなくなる。バーデックスと友奈達の戦いが過酷を極める。俺は別のバーデックスと戦う。

 

そして、友奈達がバーデックスを一体倒す。早い!これなら余裕!

俺はこの時そう思ったが、それは大間違いだった。

 

一体のバーデックスが友奈達の動きを止める。あれは鐘!?鐘の音で友奈達を止めている!?

 

俺も援護に入ろうとするが俺の前に二体のバーデックスが道を阻む。

 

東郷さんも遠距離から撃ってはいるが、別の敵に阻まれて援護出来ていない。

 

鐘の音が止まる。どうやら、樹ちゃんが止めたらしい。

 

だが安心したのもつかの間だった。四体のバーデックスが一ヵ所に集まっているのだ。

こ、これは…合体!?あの少年が一度は夢見る合体をバーデックスがしたのだ。いや、ダメだろう。合体は正義の味方の特権みたいなもんだぞ。

 

合体したバーデックスは赤い玉を次々に作る。あれは…火の玉?

 

それが次々と放たれる。火の玉は追尾で友奈達に襲いかかる。風先輩は剣でガードするが、吹き飛ばされ、夏凜や東郷さんの攻撃も融合バーデックス(合体だと少しかっこよく思えるから)には効かない。樹ちゃんも被弾してしまい、夏凜、東郷さん、更には友奈までやられる。

 

「う、嘘だろ…」

 

俺はそう言うことしか出来なかった。片手に拳銃、片手に小刀を持っているが、夏凜の刀や東郷さんの銃が効かなかったんだ。俺の武器の威力は星屑を倒せる程度。差ははっきりしている。だからといって引き下がるか?答えは否だ!

 

俺はあの強度を越える威力の武器を考えた…

ロケラン…爆風で威力が…

手裏剣…ワイヤーが火の玉でやられる…

なら…

 

対戦車機関銃だ!

 

少し大きな銃を持つ。能力なのか意外に軽い。俺はバーデックスに近付く。火の玉が向かってくる。なら、盾だ!

盾を生成しガードする。威力が高く爆風で飛ばされる。だが、受け身を取りバーデックスを睨む。この距離なら…いける!

 

俺は対戦車機関銃を撃つ。反動が馬鹿にならないが、変身による身体強化により反動を押さえられている。対戦車機関銃…名前の通り対戦車用の機関銃だ。戦車に大ダメージを与えるほどの威力。しかも、俺の武器にはなぜかバーデックスを倒せる効果がある。因みになのだが、対戦車機関銃を人間に撃つと破裂するらしい。良い子も、悪い子も、いい大人も悪い大人も人に対して撃つなよ。てかそんな機会ないだろうけど…

 

俺の攻撃は効いていた。だが、俺の頭上に火の玉が集まっていることに気が付かなかった。

 

「!?」

 

俺は頭上にある火の玉に気が付く。そして、その火の玉は俺に落ちてくる。対戦車機関銃という反動の大きな武器を使っている以上、簡単に動けない。こうなれば、限界まで撃ち続ける!

 

だが、それもあっという間、すぐ俺の視界は奪われる。火の玉が眩しすぎるのだ。そして、全身に激痛が走る。

 

「ぐああああー!」

 

焼けるように痛い。いや、焼けているのだ。

 

その痛みは数十分、数時間に感じた。

 

意識が飛びそうになる。いや、何度か飛んだのかもしれない。だが、痛みでまた意識が戻る。変身しているせいか、死なない。目の前では九尾が頑張ってバリアのようなものを張っているが、九尾以外意味を成さない。

 

突如、俺は火の玉から解放される。

 

外の気温が冷たく感じ逆に痛い。

 

俺は飛びそうな意識を保ちバーデックスを見るそこには…

 

「風…先輩…」

 

風先輩だ。だが、あの格好…

 

風先輩の格好はどこか神々しさを出していた。

 

「あれは…満開…」

 

満開…そうだ、あれは満開だ。

 

その時、俺の記憶の一部が甦る。

満開をした二人の少女。その後、散華した。

満開の代償…散華。

二人の少女、一人は片目、一人は両足の機能を失った。そう、体の一部が生け贄となる。一瞬の力のために。

満開をすれば散華する。彼女達はそれを…知らない。都合のいい神様なんていない。それは神樹も同じだ。彼女達は、利用されている…神樹に…。だが、俺がそれを思い出して何になる?力はあるか?

…いや、ある。

彼女達が真実を知る必要はない。神樹は別に悪いことをしている訳でもない。ただ、望まれたから、与え、その対価を貰うだけ。

そう、なら、その対価…

 

俺が払う。

 

いつの間にやら、バーデックスを二体倒していた。だが、代わりに東郷さん、樹ちゃんも満開を使っていた。残るは融合バーデックス。

 

だが、融合バーデックスも封印を始めていた。

 

俺は焼けるような体を鞭を打って起き上がらせる。こんな所で人焼肉のままではいられない。

 

風先輩の満開が解かれている。

 

俺は、自分の出来ること…いや、出来る可能性に賭けた。

 

背中から翼が生え、俺を包む。なぜ翼が生えたのか、なぜ俺を包むのかわからない。でも、体の痛みは消えていく。

そして、力が湧いてくる。

 

翼を広げる。姿が変わっていた。装甲は薄くなり、所々の色が変わっている。そして、右目に違和感がある。異様に右目が見える。遠くのことがよくわかる。

 

俺は、風先輩の元に駆け寄る。恐ろしく速いスピードで。俺はそのスピードを完全に制御して、風先輩に寄る。

 

「風先輩!」

「…あ…輝積…そうか、輝積も満開を…」

「少し待っててください。」

 

俺は右側の翼を風先輩に被せる。

 

「輝積?」

「今、怪我を直しています。」

 

そして、翼を戻す。

 

「ありがとう…少し楽になったかも…」

「風先輩…俺、皆の援護に行って来ます。」

「そう、私は少しここで休んでいるわ。」

 

俺はそう言ってバーデックスが封印されている所に行った。そこには、樹ちゃんと夏凜しかいなかった。

 

「すまん、遅くなった。」

「輝積、遅い…て何よその格好!!」

「輝積さんから翼が生えてる!?」

「そんなことより、友奈と東郷さんは!?」

「あそこよ。」

 

夏凜は上を指差す。

 

上には、大きなミタマが…て大きいってサイズじゃねー!

てか、俺はこんな大きなミタマに気が付かなかったのか!?灯台下暗しだな。

 

「早くしないと、拘束時間が…」

 

バーデックスの下では時間がドンドン過ぎている。

 

「俺も加勢しに行ってくる。」

「あんたには無理よ!」

「何なのための翼だと思ってるんだ?」

 

俺はそう言って飛び出す。翼を広げて空を飛ぶ。スピードを上げていく。途中で爆発の光が見える。

上から…何かくる!?

 

俺は、両手に拳銃を持つ。石のような物が次々と降ってくる。スピードを落とし、その石のような物を拳銃で破壊する。もし、この石が下の皆に当たったら…けどそんなことさせない。

 

石を破壊している間にミタマが破壊される。友奈と東郷さんがやったのだ。

 

そして、落ちてくる友奈と東郷さん

 

それを俺が受け止めるが、何せ自由落下だ。素手に隕石レベル。

 

俺は翼を広げて抵抗を大きくする。途中で翼を二人に被る。

 

「ぐぐぐ!!」

 

受け止めるのが精一杯だ。

 

「輝積さん!!」

 

下から樹ちゃんの声が聞こえる。

 

樹が満開で増えたワイヤーを使って受け止めようとしているのだ。

友奈と東郷さんはつぼみのような物の中にいるが、俺は生身だ。もしこの速度でワイヤーに当たれば、みごと人間の刺身の完成だ。そんなのは嫌な訳だから、俺は、受け止めるのやめて空に飛び出す。翼を広げるがボロボロだ。

 

ボロボロの翼を使って何とか着地する。

 

樹ちゃんも何とか友奈と東郷さんを止めることに成功した。

 

「やった!樹!貴女が止めたのよ!!」

「早く、友奈さん達の所に行ってください。」

 

夏凜は樹を置いて友奈と東郷さんの元に駆け寄る。そして樹ちゃんも倒れる。俺も何とか歩いて樹ちゃんの元にいき、翼を被せる。

 

「…輝積さん?」

「少し待ってろ。傷を治すから…」

 

少し立ち、翼を元に戻す。

そして、俺も倒れる。

 

その後、夏凜の呼び掛けには何とか答えたが、意識は朦朧としていた。

元の世界に戻り、そして、意識を手放した




主人公が変な力に目覚めました…てか、完全に回復キャラですね。(と言ってもほとんど回復させてる描写が…)

勇者といったらDQ。DQといえば、回復キャラ。
(因みにDQは8を少しとジョーカを少し、スラもりのDS、あとダイの大冒険を13刊まで読んだだけ)
あれ…俺DQ知らなすぎじゃ…

そんな事より次回予告。

次回予告

「え?私じゃないよ。」
「意味がわからないし…」
「俺って改めて…」
「気が付いたかい?」

次回 現実の厳しさ


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第12話 現実の厳しさ

はい、第12話です。

主人公が最強というタグを付けていましたが、今回それが明らかとなります。

ですが…たぶん賛否両論かも…

ではでは…どうぞ…


…知らない天井だ

 

なんてネタをしてみる。体はそこまで痛くない。それに、ここは…病院…だろう。てか病院にしては薄暗い。

俺は回りを見渡そうとしてみた。その時、ある異変に気が付いた。左側があまり見えないのだ。試しに右目に手を当ててみると、真っ暗になる。左目は、ちゃんと開いている。ということは、左目が見えないということ。

 

「気が付いたかい?」

 

声が聞こえた。だが、少し遠くに聞こえる。

 

俺は声のした方を見てみる。左側にいるため見えずらいが、仮面を被った人だ。それにこの声、前に俺の家に押し掛けてきた大赦の人だ。

 

「…」

 

あれ…返事をしたいが声が出ない。まるで、声自体を無くしたように。

 

「輝積君、君は今、左目の視力、左耳の聴力、味覚、そして、声を失ったんだよ。」

 

…満開の代償…か。

 

「なぜ、君が失ったのかはわからない。だが、現勇者の満開を使った四人は君よりは軽かった。しかも、時間が立てば治ってしまう。」

 

…完璧には救えなかった。でも、彼女達を少しは救えたのかもしれない。

 

俺は上半身だけ起き上がる。そして回りを見る。やはり、病院ではある。だが薄暗く、まるで俺を祀っているかのようだ。

 

「コミュニケーションが取れないのは厳しいだろう。これを使ってくれ。」

 

ペンと紙を貰う。

 

『友奈達は?』

「さっきも言ったけど、満開を使った四人は各器官に損傷を少し残しているけど、時間が立てば治る。それに、もう一人は素手に退院しているよ。」

 

良かった。改めたそう思う。

 

「さて…本題だ。君はどうやって散華を奪ったんだい?」

『わからない。どうやったのか、自分でもわからないんだ。』

「まだ、記憶が戻らないのかい?」

『少しずつは戻ってる』

「何か思い出せたかい?」

『満開のこと、散華のこと。』

「そうか…。出来ればこの事はあの子達…現勇者達には言わないでほしい。」

『はい。』

 

二つ返事で返す。散華のことを知れば、彼女達は勇者をやめるかもしれない。いや、もしかしたら神樹に対して反旗を…

 

考えたくない。

 

俺は暗い部屋を見渡した。何も無い。いや、あるのはあるが、神社などにあるような物ばかりだ。

 

「何か望むことはあるかい?」

 

望むこと…

 

『友奈達に俺の無事の報告と、退院するまで面会禁止にしてほしい。』

「わかった。」

『それと、俺の携帯を返してほしい。』

「最後のは難しいな。」

『大丈夫、交換条件がある。』

「交換条件?」

 

俺は、九尾の人化、銀のことについて教えた。大赦の人は驚いていた。

 

「それは、本当かい。」

『本当。』

「銀とは、三ノ輪銀のことかい?」

『いや、俺が銀と言っているだけだ。』

「これは、園子様に連絡しなければならないかもしれない。」

 

大赦の人はそう言って病室から出ていく。

 

それから、何日過ぎたのだろう。と言っても朝昼晩とご飯が運ばれているから、何日過ぎたかはわかる。約三日だ。

その日は医師がきて、明日から普通に生活してもいいと言われた。

 

次の日に病室を出る。

四日間、薄暗い病室にいたため外が眩しい。

因みにだが、携帯は戻ってきた。大赦の人が俺にだけ特別に戻してくれたそうだ。

九尾が人化して、俺の近くに来る。

 

「大丈夫か、輝積。」

『大丈夫。』

 

俺はプラカードにそう書く。なぜプラカードかって?魅力があるだろ。

 

「声が出ないのか。それと、なぜプラカードなんだ。」

『俺のプラカードは希望の絶望が詰まってる夢のプラカードだ。』

「意味がわからないし、矛盾してる…」

 

俺は九尾と一緒に家に帰る。

 

体が重く感じる…。始めて樹海に行った後の放課後のようだ。

 

「大丈夫か?輝積?」

『大丈夫。』

 

そう答えたが、体は重くなるばかりだ。体の重みは入院してる時からあったが、外に出たとたん、さらに重くなった。

 

家を目の前にして、俺は意識が無くなった。

 

そして…

 

目を開ける。知ってる天井だ。

なんてネタをやって、回りを見る。

 

「おお!起きたか!」

 

凄く心配したんだぞ!というのがわかるほどの顔をしている九尾。さらに、銀もほっとした顔をしている。駄目だな、俺、皆に心配かけて。

 

「ごめん」

 

声が…出た。

 

「驚くなよ、お前に起きたことを話すからな…」

 

九尾はこちらを見ながら話した。

 

 

信じがたいことだったが、本当の事なのだろう。

俺は九尾の話しを聞いてそう結論ついた。

俺は何者なのか…記憶を思い出せばいい話しなのだが、思い出せないのだからしょうがない。思い出せるのは勇者や神樹、力の使い方ばかり。

 

「俺って改めて何者なのだろう…」

 

俺は皆の代わりに散華した。なのに、失った声が戻っているし、視界は広い、耳も良く聞こえる。さっき銀が水を持ってきて飲んだら水の味がした。

散華が治っている。

 

俺は何者なんだ。

 

「大丈夫?輝積?」

 

銀が話しかけてくれる。…あれ?銀!?

 

「銀、どうしたの!」

 

俺は銀を二度見する。身長と髪が伸びていて、顔も少し幼さが残ってはいるが、成長していた。

 

「お前が目を覚ます寸前であの姿になったんだ。」

「き、記憶は?」

「思い出せない。ごめん。」

「謝る必要はないよ。」

「それと、もうひとつ、重大なお知らせだ。」

 

俺は、そう言った九尾を見る。

 

「まず、バーデックスの殲滅おめでとう。」

「あ、ああ。」

「そして、次のバーデックスの襲撃に備えておいてくれ。」

「…そうか…」

 

わかっていた。バーデックスは十二体じゃない。無限にいることに。いや、倒す方法はある。天の神を倒すことだけだ。

 

俺にはそんな力は無い。だって、勇者じゃないから。いつも魔王を倒すのは勇者だ。

俺は…魔法使いや戦士みたいなものだ。

 

「あまり驚かないな。」

「わかってた…てのは嘘になるが、記憶でそういう情報があったんだ。」

「尚更君が何者なのかわからないね。」

「少なくとも人間では無い…自分で言うのもなんだけど。」

「でも、輝積は輝積だよ。」

 

銀がそう言ってくれる。その言葉は俺の暗く沈んだ心に光を射し込ませた。

そう感じた。

 

その時、お腹の音がする。

 

「はぁ、シリアスが台無しだね。銀、なんか食べておけって言ったろ?」

「え?私じゃないよ。」

「ごめん、俺だわ。」

「…そうだよな。倒れてから12時間立ってるからな。」

「12時間…え!?」

 

昨日退院したのが、午後3時で、家に着いたのが…

 

外ではチュンチュンと雀が鳴いている。

 

ただ今午前4時…

 

朝食を食べよう。深く考えたら負けだな。朝食は九尾に任せよう。

 

「よし、腕を降るって良いもの作るからな!」

「あ!私、うどんがいい!」

「朝うどんか…俺も頼む!!」

「朝からうどんって…結構ヘビーだぞ。」

 

その後、朝うどんを食べて、大赦に連絡。

大赦も勇者のことを思っているのだと、わかったから、仲良くしないとな。

 

それに、自分の正体もわかるきっかけがあるかもしれない。

 

大赦からの連絡は何回か身体検査のために病院に来てほしいということと、銀と九尾に会わせてほしいとのことだった。

 

まあ、全部都合が良かったらという条件付きだけどな。

 

さて、俺は学校に行く用意をする。

 

自転車をこいで学校へ…

 

その時の俺はカレンダーを見ていなかった。

そう、今日が日曜日ということに。




はい…散華を解決してしまいました。


てか、主人公がここからチート化…

謎が増える主人公…


取り合えず、次回はアニメで言うと第7話…
あの回です。

では、次回予告


次回予告

「残念そうに言え…」
「東郷、その情報は…」
「まあ、その時は私が…」
「そうだよ、輝積君…」
「でも、お姉ちゃん…」
「うーん…私も風先輩と…」

「無いに決まってるじゃないですか。」

次回 合宿


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第13話 合宿

第13話です。

この頃暑くて熱中症になりかけた作者です。
水分はこまめに取りましょう。

では…どうぞ…


夏休み!!

皆は何をする?

海で泳ぐ?山を登る?家でぐーたらする?彼女でもつくって毎日エンジョイする?

 

しかし、学生、しかも部活でなくては出来ないことがある。それは、合宿だ!

 

遡ること数日前。

 

十二体のバーデックスを倒した勇者部の五人。五人はもう一人の勇者の安否を確認していた。

 

「東郷、その情報は確かなのよね?」

「ええ。少し前に退院しています。」

「でも、どうして学校休んでるのかな?」

「わがりません。でも輝積ざんなりに何があったのだど思いまず。」

 

樹はまだ喉が治っていない。そのため時々ガラガラ声になってしまう。

 

「今日、このあと押し掛けてみる?」

 

夏凜が提案を出す。

 

勇者部の部室が開く。

 

「ずいませーん、上賀輝積、復活しまじだ~」

 

少し喉の…ていうか、声の調子が悪い。

実は、散華で失った気管は戻ったが、まだ少しだけ能力が低下しているのだ。まあ日に日に良くはなっているが。

 

皆、俺に駆け寄る。やっぱり、この五人…美少女揃いだ。

 

「輝積、無事ならちゃんと連絡しなさい。」

「ずみません」

「そうだよ、輝積君。心配したんだから。」

「本当よ。病室もわからなかったし、大赦の人が無事を伝えに来てはくれたけど。」

「げど、輝積ざんが無事で本当良かったよ。」

「ええ、本当に…まあ、良かったわ。」

「夏凜ちゃん、素直じゃないな~」

「う、うるさいわね!」

「まあ、勇者部全員揃った訳だし、今年の夏は、合宿するわよ!」

「「「「「合宿?」」」」」

 

という訳だ。なんでも、大赦がナニから何まで用意するとか。なんだよ大赦。太っ腹じゃねーか!

 

そして、数日過ぎて合宿の日。場所は海!

 

青い空、白い砂浜、一面(壁があるけど)の海!

 

砂浜には、勇者部の女性陣が水着でいた。

 

俺は、その時気が付いた。東郷さんが大きいのはわかっていた。(何がとは言わないが)だが、友奈や夏凜、風先輩もそれなりにあるのだ。(何がとは言わないが!)

 

「何よ。」

「あー輝積、いらやしい目でこっち見てる。」

「輝積君はそんな人じゃないよね~」

「そ、そうだよ、そんな、人間じ、じゃないよ」

「輝積さん、目が泳いでます。」

 

さらに俺は気が付いた。樹ちゃんの水着の露出度の低さに。まだ中学年一年だから、そんなに成長していない…なんて考えていたら終わりだ。多分、樹ちゃんは勇者部のダークホースだ。何がとは言わないが!!

 

そして、海で遊び始める。

 

「…」

 

夏凜と風先輩は泳ぎで勝負。東郷さんと友奈、樹ちゃんも楽しく遊んでいる。俺は…

 

砂に埋められてます。しかも縦に。簡単から言えば頭だけ出して友奈達を見ている。

埋められた理由?そんなの、目が泳いでいたからに決まってるだろ。それと、風先輩の気まぐれと夏凜に一言余計なことを言ったのも理由だろう(夏凜に「日差しで干からびるなよ。にぼっしー」って言った)。でも、本当の所、皆可愛いのは同意する。(性格を除いてな)

 

こうなれば、変身して脱出しようかな~

 

「おーい、輝積君~、早く泳いだら~」

「そうですよ~」

 

友奈と東郷さんが手を振っている。

 

俺は変身せず、自力で脱出。決めた。折角の海で砂に埋めた奴等(夏凜、風先輩、影で協力してた東郷さん)にデスソース食わせてやる。暑い夏だけに食べると熱くなるデスソースを食わせてやる!

 

俺の怒りのボルテージが上がる。愛と怒りと憎しみの~

 

まず、海で泳いでいる二人を捕まえる!

 

二人は海の遥か彼方。それでも追いかける!

 

数分後、海で漂う俺。あの二人…どんな体力してんだ。てか、俺のハンデが大きい過ぎる。あの二人、結構遠くの浮きに掴まってる。あそこまでまだまだあるぞ。あー、デスソースは今度にして、普通に泳ごう。

 

俺は海の中に潜る。

 

友奈と樹ちゃんが潜り合っているのが見える。微笑ましい。

 

その後もスイカ割りなどをして楽しんだ。

(俺はまた埋められて危なくスイカ同様にかち割られるところだった)

 

そして、旅館。いや、この表現は間違ってるな。高級旅館に着いて部屋に案内される。

 

「おーー!」

 

目の前にはずらりと並んだ料理の数々。蟹、海老、ウニ…やばいな。

 

「でも、なんで輝積まで一緒の部屋なのよ。」

「そんなの俺だって知りたいですよ。」

「いいじゃないですか。ねー東郷さん。」

「うーん…私も風先輩と同じ意見かな。」

 

因みになのだが、なんでも旅館の空き部屋が無かったらしい。この場合しょうがない。

 

「まあ、そんときは私が輝積を殴るから安心しておいて。」

「さすが、夏凜。頼りになる。私みたいなか弱い女子は襲われる確率高いもの。」

「でも、お姉ちゃん、ナンパすらされてなかったよね?」

「樹…それは言わない。」

「と、兎に角、料理を食べよう。」

 

運ばれて来た料理を食べる。うん。旨い。流石高級旅館。

 

そのあとは、旅館自慢の露天風呂。ここの旅館は男女混浴…では無い。ある意味安心ではある。

 

脱室所で服を脱ぎ体を洗いいざ、温泉へ!

ゆっくりと湯船に浸かる。

 

「ふぅ~」

 

やっぱり日本人は温泉だな。まあ、俺は日本人の前に人間かどうか怪しいけど。

 

ん?誰か温泉に入って来た。

 

「よう、輝積。気持ち良さそうだな。」

 

九尾だ。

 

「あー折角の貸しきりが~」

「残念そうに言え。少し棒読み入ってたぞ。」

 

俺は改めて九尾を見る。肌は白く、筋肉がしっかりしているのに細い体。顔立ちも良く、黄色い瞳が余計に肌白く見せる。

俗にいうイケメンだ。なんか腹立つ。

 

九尾も温泉に浸かる。何気九尾と一緒に湯船に入るのは初めてだ。

 

「あー、妖精で温泉に入れるなんて俺だけだろうな。ある意味お前に感謝だな。」

「そうか。」

「あれ?いつも余計な一言を言ってくるのに?」

「いや、この前のバーデックスとの戦闘の時、身を呈して俺を守ろうとしてたからさ。なんか、お互い様のような感じがして、悪口とか言えなかったんだよ。」

 

俺はそう言う。

 

こんなシリアス混じりの空気の中、隣(女湯)から声が聞こえる。

 

「話しは変わるけど…」

 

九尾が話しを変える。

 

「この場合、君は隣の女湯を覗くのが定番だと俺は思うんだが。」

「その場合、俺に対しての対価が損しかない。やめておくよ。」

「うーん…思春期ではよくやると思うんだがな…」

「それに…」

「それに?」

「生物学的にも社会学的にも死にたくはないからな。」

「普通に言ったな。」

 

こうして温泉を堪能した。

 

そして、部屋に戻る。

 

布団が引いてある。

 

俺は一番端の布団に横になる。隣は友奈、向かいは夏凜。運動派の二人に囲まれている。

 

「さて、輝積、変な気を起こさないでね。」

「ごめん、俺、ド〇ゴン〇ールみたく気を扱えません。」

「馬鹿なこと言ってるんじゃないの。」

「ははは。」

 

このあと、女子同士の恋ばなが始まる訳なのだが、風先輩しかその話しが無く(しかも友奈と東郷さん、樹ちゃんは耳にたこが出来るほど聞かされているらしい)どうも年頃の女の子として恋ばなの無さに気が付いたようだ。(友奈は東郷さんのせいでもあるだろう)

 

「輝積はそういう話しあるの?」

 

俺に振るな!!

 

「無いに決まってるじゃないですか。」

「何よ、誰も恋ばな無しなの。」

 

と話しているうちに寝ている夏凜。良く動き良く食べて良く寝る。それを実現するするかのような女の子だ。は!?まさか、あの水着の時の大きさ(何がとは言わないが!!)はこの生活週間による成長の賜物なのか!?

 

そして、消灯の時間。電気が消える。

 

東郷さんが悪ふざけで怪談を話し始める。

友奈と樹ちゃん、風先輩が怖がる。

俺?俺はそういうことには何となく慣れているらしく、怖くはなかった。

 

そして、俺は夢の中へと誘われる。

 

朝、目を覚ます。

 

時間は…わからないけど、外がほんのり明るい。

どうやら、友奈と東郷さんが起きているらしく二人で話している。俺は布団でその会話を聞く。(二度寝しようと思ったが目が冴えて眠れない。)

 

東郷さんがバーデックスは他にもいるのではないかと推測を始める。

東郷さん…確かにバーデックスは他にもいる。でも、俺が…戦うから。絶対、死なせない、生き地獄にさせない。勇者部全員、守るから。

 

俺は心の中でそう誓った。

 

合宿が終わり家に帰る。

 

まだ、夏休みだ。楽しむぞ。

 

関係無いが、風先輩に抱き付いて寝ている夏凜の姿を写真で撮った。

意外と可愛かったので、皆に後で送っておこう。

 

次の日に夏凜に殴られたのは、彼女なりの友情の証なのだろう。

あまりの威力に気を失ったけどな。




ポロリなんて最初から無かったんだ…

改めてゆゆゆを見たけどデカイな(何がとは言わないが)本当に中学生か?…そこは考えたらいけないな。

では次回予告

次回予告

「…」
「おい、次回予告始まってるぞ。」
「え~だって次回、手抜き回じゃん。次回予告する意味あるの?千文字そこらしか書いてないんだから意味無いじゃん。」
「おい、お前主人公だからってメタ発言力するな!輝積!!」
「わかったよ。次回予告するよ。」

次回 手抜き回

「違ーーーう!」

次回 妖精観察日記


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第14,2話 妖精観察日記

第14,2話です。

では、どうぞ…


夏休みといけば、宿題…だ。気が重くなる話題ではあるが、俺、上賀輝積は既に全ての宿題を終わらせている。

なら、なぜそんなことを話題とするかと言うと、個人的に調べたいことがあるからだ。

九尾…俺の妖精で人化できる唯一の妖精だ。

 

これは、暇潰しにやった九尾の観察日記だ。

 

日記一日目

 

朝 朝食を作ってくれた。

前よりも美味しくなっていたのに驚いた。

昼 買い物をする九尾。こっそり油揚げを買っていた。まあ、そこまで財布の負担にはならないからいいか。

そして、近所の奥さん方と世間話。兎に角これが長かった。二時間立ちながら話していた。

夜 洗濯物を畳む九尾。入浴後、化粧品を使っていた。肌荒れが気になるのだろう。

 

二日目

 

午前中は勇者部の活動。

新たにわかったことがある。九尾は家に居させても携帯で呼び出せる。

呼び出した後も家に戻る(徒歩)が出来る。

凄く迷惑そうな顔をしていたが。

 

三日目

 

他の妖精と九尾を比べてみた。

まず、人化出来ることが大きなポイントだ。

次に触り心地。前に少しだけ風先輩の妖精…犬神と樹ちゃんの妖精、木霊に触ったことがあるが、どちらもモフモフだった。だが、九尾の(妖精の状態)の尻尾は異常だ。気持ち良すぎて依存症になってしまう。

まあ、その事は置いといて、九尾は今日は妖精の状態だった。でも、なんか様子がおかしかった。ので、放置してみた。

 

四日目

 

九尾が妖精の状態で喋りやがった!喋った瞬間おもいっきし蹴ってしまった。九尾はまるでボールのように跳ねていた。

そのあと、ちゃんと謝った。それに、あとでキツネうどんをおごってやることにした。

昨日様子がおかしかったのは、神樹から力を授かってたからだそうだ。それで喋るようになったと言う。

 

五日目

 

九尾が妖精の状態で家事してた。

もう、九尾は戻れないところまで来てしまった…。喋らないモフモフだったからよかったのに…喋るモフモフはちょっと抵抗が…

 

六日目

 

人化した九尾と銀と一緒にカラオケに行った。銀は色々な歌を歌って、九尾は少し古い歌を歌っていた。

九尾の年齢が少し気になってきた。

 

七日目

 

一週間立ってしまった。今、九尾にわかることとしては、

 

家事が大好き

肌荒れが酷い

妖精状態でも喋るようになった

俗にいうイケメン

妖精状態のモフモフはいい

井戸端会議が恐ろしく長い

九尾はやはり、油揚げが好き

九尾=キツネ

九尾=馬鹿

 

 

 

 

「おい、この日記はなんだ?」

「あ…ばれた。」

 

部屋に置いといた九尾観察日記を見られた。

 

「この頃視線がおかしいなと思ったらお前か!」

「いや、それは、妖精状態でそこら辺に行くからだよ。」

「いや、百歩譲ってそこはいい。最後の馬鹿ってなんだ!」

「え?いや…なんかさ…お前馬鹿じゃん?」

「誰が馬鹿じゃ!」

 

このあと凄く怒られました。





…ネタ回でした。

たったの千文字…

まあ、兎に角次回予告

次回予告

「あ、あのさ…」
「頑張って!お姉ちゃん!!」
「出来ました」
「俺だけどな。」
「本当に、申し訳ない!!」
「「私だけどね。」」

次回 料理対決


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第14,4話 料理対決

第14,4話です。

遅れて申し訳ございません…

べ、別に忘れた訳ではございません…

と、兎に角どうぞ…


暑い…

 

病院で検査を受けた帰り、丁度一番暑い時だ。俺は家に向かう。今日は勇者部の活動だったが病院での検査のため休んだ。

 

多分、家では九尾と銀がクーラを付けて待っているだろう。あと、別の携帯でも銀を実体化出来ることに気が付いてそれで、銀は今家にいる。

 

家に着くととんでもないことになっていた。

 

俺のパソコンが火を噴いていた。

 

「おおお!おい!どうしたんだ!」

「えっとね…九尾がパソコン触ったら…壊れた…」

 

おいおい、九尾さん、それは、やっちゃいけないネタだよ。しかもそれ、君のモデルのネタだからね。

 

九尾は妖精の状態でどけ座していた。

 

「本当、申し訳ない!!」

「いや、いいよ。壊した物は。」

 

しゃあない。そう思い新聞と一緒についているチラシに目をやる。なんという偶然か。

チラシの一つに

 

料理教室

 

参加資格 高校生以下

お題 うどん

優勝商品 新型パソコン

 

と書いてあった。料理なら得意だ。てか、料理教室じゃなくて料理対決だろ、これ。

日にちは…明後日か。勇者部の活動も検査も無い。よし、行こう!

 

その日の夕方

 

チャイムが鳴る。俺は玄関を開けてみる。

そこには、夏凜がいた。

 

「あ、あのさ、料理、教えて。」

 

いやー、ツンツンの夏凜がここまで柔らかくなったか。良いことだ。

 

「いいよ。何料理?」

「うどん料理何だけど…」

 

うどん料理か。これまた得意分野だ。

 

俺は夏凜の家に行って料理を教える。材料は夏凜が事前に買っていた。

夏凜は料理初心者ながらもなかなかいい腕をしている。だが、ちょっと力が入り過ぎな気がする。

 

うどんの麺を作るところまで教えた。

 

「で、次はつゆね。」

「つゆか。それは教えられないな。」

「な、なんで!」

「つゆにも色々あってな、関西使用、関東使用、だしの量などなど。人によって味は変わるんだ。俺が作るのは俺のうどんのつゆだ。夏凜のじゃない。それでも、教えて欲しいならスタンダードなやつを教えるよ。」

「輝積…本当に恩に切るわ!」

 

このあと、基礎となるつゆの作り方を教えて俺は帰った。

 

 

料理教室(という名の料理対決)

 

俺はその会場にいた。お嬢様系の女の子から凄く小さい小学生、ムキムキのマッチョまで。てか、最後のマッチョは絶対年齢違反だろ。(その後調べたら讃州中学のボディービルダー部の部長でした)

 

そんな中に知っている人がいた。

東郷さんと風先輩、更には友奈と夏凜だ。

東郷さんと風先輩は強敵になるかもしれない。友奈の腕はわからないけど夏凜はこの前教えた。もしかしたらビギナーズラックがあるかもしれない。油断ならないな。

 

「あれ?輝積君!なんでいるの!」

 

友奈が俺に気が付いた。

 

「あ、輝積もいたんだ。」

「その表現、心にきますよ。風先輩。」

「輝積君もパソコンを?」

「まあ、家のパソコンが壊れたから。」

「そうなの。実は勇者部のパソコンも壊れたのよ。」

「な、なんだって!」

「だから、私達が優勝してパソコンを貰おうとしてるのよ。そのためにあんたに料理教えて。貰ったんだから。」

「へ~、夏凜は輝積から料理教えて貰ったっだ~」

 

少し怪しい顔になる風先輩。まあ、どっちにしろ、お金を出さないといけないな。出費が重なるぜ~(勇者部が優勝すれば、自分のパソコンは、自腹。俺が勝てば勇者部のパソコン代を俺が払う)まあ、勝負を楽しもうとしますか。

 

「頑張って!お姉ちゃん!!」

 

樹ちゃんが観客席から応援してる。

 

「おう!まかしておいて!」

「まあ、優勝するのは…」

「俺だけどな。」

「「私だけどね。」」

 

俺と風先輩、東郷さんとの間で火花が散る。

 

そして、料理開始。

 

まずうどんの生地から…

 

黙々と料理をしていく。

 

まわりを少し見てみる。マッチョの人がアメリカンなハンバーガーを、作っているが、あれは何なのだろう。

 

取り合えず、料理を…

 

「出来ました!!」

 

最初に言ったのは以外に友奈だった。

だが、正直言おう。うどんは手打ちみたいだが少し荒い。つゆはめんつゆを使っている。そして、うどんの上にはレトルトの牛丼の牛肉がのっていた。

おい、友奈…お前…

 

俺はそれ以上みていられなかった。

 

次に風先輩。

風先輩のうどんはどこか家庭的な天ぷらうどんだった。つゆの匂いが此方まで漂ってくる。やはり、一番危険視するべきは風先輩か!?

だが、東郷さんも凄かった。いや、東郷さんのほうが凄かった。

東郷さんの出したうどん…白つゆだったがなぜか輝いて見えたのだ。何なんだあのうどん!?てか本当にうどんか!?

そして、夏凜。夏凜は、まあ、普通のつゆをかけたうどんだ。俺の教えた通りに作っていた。

 

審査員の人達はうどんを次々と食べていく。

 

そして、俺の番

 

審査員は驚いていた。そう、俺の作ったうどん…肉汁うどんだ!

少し太いうどん、醤油ベースのつゆに豚肉、油揚げネギを入れた熱々の浸けつゆ。

更に俺はうどんの甘味を最大限出すように工夫をした。

 

審査員は俺のうどんを食べた瞬間、その旨みが全身を走るかのような衝撃に襲われた(ような気がしただけ)。

 

俺は頭に巻いていたハチマキ(いつの間にか巻いていた)を取って一言…

 

「お粗末」

 

その一言はある定食屋の亭主の息子を思い出させるかのようだった。

 

審査員からの評価は絶賛だった。

 

因みになのだが、この料理は四国ではなく本土の料理だったりする。

 

その後、マッチョがハンバーガー出してそれがうどん味だったりして驚きはした。そして結果発表。

 

優勝は…上賀輝積。

 

俺だ!

 

「まさか、輝積に負けるなんて…」

「予想以上に…出来る。」

「今度、輝積君の家にうどん食べに行っていい?」

「全く、流石と言えざる終えないわね。」

「まあ、皆の料理上手いから驚いたよ。いや~いいお嫁さんになるよ。」

「まあ、私なら当然。だって女子力高いもの。」

「料理は女性として当たり前ですから。」

「ま、まあ、今回はあんたのお蔭だったけどね。」

「いいお嫁さんか…私、頑張る。」

「うん、友奈はもっと頑張れ。」

「どういうこと!?」

 

こうして、パソコンは俺の物となったが…

 

「これ…勇者部に献上します。」

「え!?いいの?」

「まあ、家のパソコンは何とかするし、まずは勇者部のパソコンだろ。あれがなかったら俺達活動出来ないからな。」

「ありがとう、輝積。」

 

まあ、料理対決は俺の優勝で終った。

 

家に帰る前に新しいパソコンを買って家に戻る。

家に着くとテレビから煙が…九尾…お前…

 

またどけ座する九尾だった。

 

明日はテレビを買いなおさないとな。出費が重なる今日この頃だった。




GWは予定も何もない作者…

なのに投稿が遅れる…

取り合えず次回予告


次回予告

「え!見てたんですか?」
「いや、正直いうなら…」
「…そうね、不本意だけど…」
「ねえねえ、輝積君…」
「だ、大丈夫よ…」
「…結婚しよう?」

次回 夏祭りの花


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第14,6話 夏祭りの花

第14,6話です。

とうとうGWが終わる…。

まあ、話し的には夏休みだし関係ないな。

ではどうぞ…


俺は神社前…鳥居の下で待っていた。

まあ、浴衣を着ているのだが、以外に空気制が良く涼しい。時間は夕方。それでも日中の暑さは残っている。

 

集合場所としてここに来た。今日は夏祭り。大赦が昔の文化を残すために毎年行われているそうだ。

時間は…まだあるな…

 

境内の中ではお祭りがおこなわれている。屋台なども出ていて焼きそばやたこ焼の匂いが此方まで漂ってくる。いい匂いだ。

 

「お待たせ~」

 

声のする方を見る。そこには…

 

「いや~着付け以外にかからなかったわ。」

「ねえねえ、輝積君、似合ってるかな?」

「友奈ちゃん、そんなに動いたら着崩れするよ。」

「わ、私も浴衣着てみました。」

「な、何よ…」

 

五つの花が…いや、勇者部の女性陣がいた。

 

「ねえ、輝積、なんか感想言ってみて。」

 

風先輩に言われる。感想…

 

「…結婚しよう?」

「「「「「ブッ!!」」」」」

 

予想外の言葉で吹き出してしまった。

 

「ききき、輝積!何言ってるのよ!」

「いや…なんか、言葉が見つからないて…もう、似合ってるとか綺麗とか通り越してる気がするから。」

「ちょ!私の女子力が皆にも…」

「お姉ちゃん、それはないと思うよ。」

「友奈ちゃんは誰にも渡さないわ。」

「そそそそ、そうだよ。私は東郷さんの…ってあれ?」

 

おい、東郷さん…どさくさに紛れてなんかとんでも発言したぞ?それに疑問を持った友奈。

 

「東郷さん、なんかおかしくなかった?」

「え、友奈ちゃんは私の友達だからってことを言ったのよ。」

 

東郷さん…確信犯だ。

他の三人はその会話を聞いて無かったみたいだ。

あたふたする勇者部(女性陣)

なんか、悪いことした感じが…

 

まあ、気を取り直して(何を直すかはわからないが)お祭りを楽しむ。

それと、付け足しておくが、勇者部は屋台で売っている品物が半額だそうだ。(大赦、本当ありがとう)

 

「さ、さてと、なんか食べますか。」

 

早速行動したのは風先輩。流石、先輩ですな。

 

「ま、待ってお姉ちゃん!」

 

それを追いかける樹ちゃん。

 

焼きそば、たこ焼、かき氷、おでん、クレープ…屋台は魅惑の宝庫だな!

あ、俺、花より団子だから、浴衣の女性陣は気にしません。(けど、あの発言は素で言いました)

 

「それでは、いただきまーす!」

 

風先輩が大きな口を開けてたこ焼を食べようとしている。

ここは、ネタに走ってデスソースかけてやろうかなと思ったけど、なんか殺されそうなのでやめた。(九尾にやろう)

 

「あふあふ!」

 

どうやら熱かったようだ。デスソースをやってたら…間違いなく俺が死んでました。

 

「それじゃあ、俺も、食べよう。」

 

それぞれ食べ物を買って来ている。

俺は焼きそば、風先輩はたこ焼、友奈はリンゴ飴、樹ちゃんはわたあめ、東郷さんはチョコバナナ、夏凜は煮干し…煮干し!?

 

「おい、夏凜…なんで煮干しなんだよ。」

「いや、正直いうなら、屋台の食べ物って太るから…」

 

その時、勇者部の女性陣の動きが止まった。

 

「わ、私は今日のためにおやつ抜いて来たし…」

「え、栄養調整はちゃんとしてたわ…」

「ち、朝食を抜いてきました…」

「だ、大丈夫よ。これくらい、私は女子力になるから…多分…」

 

女子ってめんどくさいな。なんか可愛そう…

 

「輝積はいいわよね、太るとか考えて無さそうで。」

「え?」

「男の人はそういうのあまり考えてないですよね。」

「いや、俺だって…昨日から野菜ばっかり食ってるんだぞ。」

「そんなの!?」

「今日、食べるために昨日からちゃんと調整してたんだ。」

「輝積のこと見習おうかしら…」

 

風先輩に言われる。いや、あんたは大丈夫だろう。その女子力に回ってるみたいだから。

まあ、皆、結局普通に買った物を食べる。

 

「それにしても…」

 

東郷さんがチョコバナナを食べている。なんだろう、なんかこう…いや言わないようにしよう。

 

そのあと、俺達は射的の屋台に来た。

 

「あーあれいいな~」

 

友奈が言った。それはぬいぐるみだ。(黄色くて梨をモチーフにしたゆるキャラの)

 

「俺が取…」

「私が取るわ。」

 

先に東郷さんに言われた。そんなことやられたら…

 

「なら、どちらが取れるが勝負しようじゃねーか。」

「いいわ。受けて立つ。」

 

俺と東郷さんとの壮絶な戦いが始まった。

俺は射的の銃にコルクを入れて目標を見る。

 

目標はゆるキャラ。狙いは外さない。

 

「狙い射つぜ!!」

 

コルクが発射される。だが、別のコルクがぶつかって変な方向へ飛ぶ。

 

「ふぎゃ!」

 

あ、夏凜に当たった。よっしゃ!夏凜ゲット…じゃねー!

 

「おい!」

 

見ると東郷さんがコルクを当てたようだ。なんと外道。

 

「…」

 

東郷さんが狙いを付けて射つ。だが、別のコルクがぶつかる。

 

「!?」

「ふふふ、その技術は俺だって持ってる。」

「そう、ならそれがフェイクということもわかってたのかしら?」

「何!?」

 

東郷さんは片手からもうひとつの銃を取り出し射つ。それは真っ直ぐふ〇っしーに当たる。が…倒れない。

 

「な、なんで…」

 

あーこれは…

 

「東郷さん、協力しよう。」

「…そうね、不本意だけど、今回は同盟を組みましょう。」

 

俺も二丁銃を構えて東郷さんと一緒に一斉射撃をする。四つのコルクが同時にぶつかりぬいぐるみが落ちる。よっしゃ!

 

「はい、友奈ちゃん。」

「ありがとう、東郷さん、輝積君。」

 

東郷さんが友奈にぬいぐるみを渡す。喜ぶ友奈。いや、女の子してますな。

 

「ねえ、あれなんかやってみない?」

 

風先輩が指差す。金魚すくいだ。

 

「つまり、勝負ね。」

 

燃える夏凜。

 

「私、金魚すくい苦手…」

 

落ち込む樹ちゃん。

 

そして、金魚すくい…

 

「あ…」

「破けたわ…」

「難しい~」

「やっぱり…」

「難しいわね…」

 

女性陣が全滅。その点俺は、ドンドン金魚をすくう。だいたい九匹捕る。

その内の五匹をそれぞれ別の袋に入れて貰う。それをひとつひとつ皆に渡す。

 

「え?」

「いいの?輝積君?」

「いいよ、いいよ。皆欲しかったんでしょ。これで平等。残りは俺の知り合いに渡すから。」

 

それぞれ金魚を一匹ずつ持つ。どうやら、女性陣は満更でもない様子。

 

時間が立つに連れて境内に人が増えてくる。

俺は目を放した隙に皆いなくなってしまった。

 

人がかなりいるのではぐれてしまったのだろう。

 

俺は人をかき分けながら皆を探す。

 

「き、輝積さん!!」

 

声のした方を見る。樹ちゃん発見。

俺は樹ちゃんのところまで行く。

 

「よかった、輝積さんがいるなら…」

「え?もしかして、樹ちゃんもはぐれたの?」

「え…輝積さんも?」

「うん…」

「どうしよう…」

「取り合えず、人混みを避けるか。」

「そ、そうですね。」

「なら、はぐれないためにこうしよう。」

「え?」

 

俺は樹ちゃんの右腕(手首の少し上)を掴む。

 

「え、えー」

「どうかしたの?」

「い、いえ…」

 

少し顔が赤い樹ちゃん。多分暑いのだろう。俺は樹ちゃんを引っ張りながら人混みを離れるように歩く。

 

そして、屋台が並ぶところから少し離れたところに出る。

 

「大丈夫?樹ちゃん?」

「だ、大丈夫です!」

 

少し声が裏返る樹ちゃん。まだ声治ってないのかな。

 

「声、大丈夫?」

「声?あ!ええ、今は何ともありません。」

「よかった。」

 

俺は安心した。樹ちゃんの歌はどうしても聞きたい。声が治って本当よかったと思う。

 

「輝積さんこそ、声大丈夫なんですか?」

「俺?俺は、カラオケの行き過ぎだよ。」

「そうなんですか。」

「樹ちゃんもよく一人でカラオケ行ってるよね…」

 

あ、つい流れで言ってしまった!!俺の馬鹿!!(ほとんど自滅である)

 

「え!見てたんですか?」

「いや、よくカラオケにいるな~と…」

「歌とか聞いたりとかは…」

「してない、してない。」

「なんか、それはそれでショックかも…」

「なら、聞いておけばよかった?」

「いえ…それはそれで恥ずかしいです…」

 

改めた見ると樹ちゃんって可愛いよな…

 

「どうしたんですか?私のことジロジロ見て…」

「いや、なんか…」

 

言葉が思い付かない…

 

「あ!こんなところにいた!」

 

声の方を振り替えると友奈と東郷さん、夏凜に風先輩がいた。

 

「お姉ちゃん!!」

 

樹ちゃんは風先輩の元に行く。やっぱり不安だったんだな。

 

これで、全員そろったな。

 

俺達は手頃な長椅子を見つけそこに座る。と同時に花火が上がる。それは夜に咲く花だ。

 

「うわ~綺麗…」

 

友奈の一言に皆同意だ。花火は次々と打ち上げられて行く。咲いて、大きくなり、消えていく…それを花火は繰り返している。

変身して、満開し、散華する…まるで花火は勇者のようだ…

 

俺は皆の方を見る。花火を見る皆は何よりも花なのかもしれない。

俺はこの花達を守れるのか?

 

 

いや、守るんだ。

 

「どうしたの?輝積?」

「いや、なんでもないよ。」

 

俺が皆の方を見ていることに風先輩が気が付いたようだ。そして、俺はそう言った。

そして、花火を見る。

 

改めて決心がついた。




夏休みか…懐かしい…(まともに夏祭りとか行ったこと無いけど)

というか、焼きそばを食べ過ぎた…苦しい。


まあ、そんなことより次回予告

次回予告

「えっと、銀です…」
「君達…」
「お姉ちゃん、それじゃ…」
「私は始まって…」
「貴方が…」
「よろしくね、銀ちゃん。」
「言うなら…復讐…かな…」
「ここから出ていけー!」

次回 勉強会


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第14,8話 勉強会

第14,8話です。

タイトルと内容が合っていないような…

ではでは、どうぞ…


夏休みも少し後半。夏休みの友という強敵を倒した俺にとっては勇者部、検査、体を動かすことしかない日々だ。

そんな中、俺は海沿いを走っていた。いつでもバーデックスの出現しても大丈夫のように体を鍛えておかないと。

 

時間もお昼時。俺は家に帰る。

 

今日は九尾が昼食担当だ。だから、こうやって走っていられる。

 

家に着いて靴を脱ぎ暑い外からクーラーが効いている室内に入る。だが、俺はリビングには行かず、そのままシャワーを浴びる。汗をかいた後のシャワーほど気持ちいいものはない。俺はシャワーを浴びた後、事前に用意していた服に着替える。タオルを首に掛けてリビングに入る。

 

「あ!お邪魔してまーす。」

 

俺は無意識にリビングに通じるドアを閉め玄関を見る。靴が俺のを合わせて8足…

もう一度リビングに入る。

 

「もう、なんで閉めるのよ。」

「なんでいるのーーーー!!」

「あれ?今日勉強会をするって言ってたじゃない。」

「言ってない、言ってない。」

「先輩、連絡いつ出したんですか?」

「今。」

「お姉ちゃん、それじゃあ意味が…」

「てか、どうやって入った!!」

「輝積君のお兄さんが入れてくれたよ。」

 

友奈がそう言う。

お兄さん?…九尾の野郎…

 

「にしても、びっくりしたわ、輝積のお兄さんがあんなにイケメンなんて。」

「ま、まあな…」

 

お兄さんでもなければ人間でもないよ。あいつ妖精だぞ。まあ、俺も人間かどうか怪しいけど…

 

「おーい、輝積、少し来てくれ…」

 

九尾がキッチンで料理をしていた。

俺もキッチンに向かう。

 

「おい、いつ入れたんだよ…」

「輝積がシャワーを浴びてる時。あ、お茶出してやれ。」

「わかってる。」

 

俺はお茶を用意してリビングに持ってくる。

 

「で、なんで俺の家に?」

「いや~それがね…」

 

風先輩が言うには、勇者部の部室では暑すぎて死者でる可能性があるため勉強出来ないということになり、風先輩の家は節電のためクーラーが使えず、東郷さんの家にはクーラーなく、同じく理由で友奈の家も却下。そして夏凜の家に来た訳だがなんでもクーラーが壊れてしまったとか。それで白羽の矢が俺に立たと。何とも身勝手な…

 

「輝積…お腹減った…」

 

悪いタイミングで銀が来てしまう。

 

「…誰?」

 

ゆ、勇者部から冷たい、夏でも味わいたくない冷たい目線が…

 

「えっと…し、親戚の銀です、今俺の家に遊びに来てるんだ!」

「え?何…」

 

俺は、察しろと目線を銀に送る。どうやら、それに気が付いたようだ。

 

「えっと、銀です。よろしく。」

「よろしくね、銀ちゃん。」

 

友奈がフレンドリーで助かる。

 

「君達、昼食まだだろう、食べて行きなさい。」

 

九尾がざるうどんを持ってくる。

 

「うわー、丁度お腹減ってたんだ~」

「ありがとうございます。」

 

東郷さんがお礼を言う。

 

そして、昼食をとって、本題に…

 

「さて、お腹も膨れたし、勉強会するわよ。この中で宿題終わってない人~」

 

風先輩が言う。多分だが、宿題が終った人が終わってない人に教えるという恒例のイベントをやろうとしているのだろう。

 

シーンとする。

 

「え?まさか、全員宿題終わってるの…」

「私は、始まって一週間で終わらせたわ。」

「私はコツコツと…」

「私は東郷さんと一緒に…」

「私も、友奈ちゃんと一緒終わらせたわ。」

「俺は、初日にほとんど終わらせた。」

「えー」

 

まさか、全員やってないという展開はよくあるのに全員やっているという掟やぶりのことが起きるとは…

 

まあ、勉強する意味も無い訳だ。帰るよな…

その俺の願いは無情に散った。

 

「にしても、輝積の家ってそんなに散らかってないわね…」

「私の家より綺麗かも…」

「まあ、掃除はマメに(九尾が)してるからな。」

「友奈!なんか、輝積の弱味になりそうな物持ってきて!!」

「おい!」

 

この人達がただで終わる訳は無かった。

 

俺の部屋に特攻する友奈。俺はそれを止める。だが、その間をぬって風先輩と樹ちゃんが俺の部屋に入っていった。

 

俺も後を追おうとしたが、友奈はこちらをガッチリ掴んで離さない。てか、力強…

無理矢理友奈を振り払って部屋に行く。

 

「うお…何もない。」

「本当に何もない…」

「おい、勝手に人の部屋に入っておいて何もないとか言うな。少し傷つくぞ。」

「そうだ!こういう時はアルバムを見ればいいんだ!」

「ねーよ。」

「なんで無いのよ!」

「そ、それは…あれ!実家にあるんだ。」

「そう、なら仕方がないわね。」

 

と言いながらベットの下に手を突っ込まないで下さい。

 

「やっぱり失礼だよ。」

 

と言いながら本棚を漁らないで下さい。樹ちゃん。

 

「本当に何も無いわね。」

 

と言いながら押し入れを探らないで下さい、東郷さん…あれ!?東郷さん!?いつの間に!?

 

「いつからいたの?」

「貴方が友奈から離れた後。」

「兎に角、出ていけ。」

「まあまあ、何も無いことはわかったから、ここにいても…」

「ここから出ていけー!」

 

出力全開であるものを押し出す白い何かに乗った少年のようなことを言った後、風先輩達は部屋から出ていった。

 

あー嵐や。

 

リビングに行くと銀と夏凜が仲良く話していた。以外な二人が仲良くなった。

 

俺は、お茶菓子が切れていることに気が付いた。

 

「すまん、少しお菓子買ってくるわ。」

「あ、なら…」

 

皆からお菓子を要望される。それをメモって財布と携帯を持ち(銀は別の携帯)外に出ようとする。

 

「私も行くわ。」

 

風先輩が着いてきた。以外だな。

 

俺と風先輩は近くのコンビニに向かう。

 

「あんたさ…この頃集まり悪いけどどうしたのよ。」

「あ、少し病院に…」

「そんなに満開の後遺症が酷いの?」

「いや、少し検査でね。」

「そう。」

「風先輩…」

 

俺は話しを切り出す。

 

「風先輩はなんで戦ってるんですか?」

「なんで戦って…か…」

「と言っても俺は曖昧なことですけどね。」

「言うなら…復讐…かな…」

 

以外な答えだった。風先輩は復讐のために戦ってるのか。

 

「私の両親はね、バーデックスが起こした事故で死んだの。だから…」

「それを樹ちゃんは知ってるんですか?」

「知らないわ。私だけ。酷いわよね…神樹様の勇者なのに、復讐のために戦ってるなんて…」

「…そんなことないと思いますよ。」

「なんで?」

「復讐のためでも、誰かは守れてるはずですから。」

「誰かを守れてるはず…か…」

「人のために戦うってかなり難しいと思います。けど、自分のためなら戦える。風先輩ら正しいと思いますよ。」

「そういう、輝積はどうなのよ?」

「俺は…探してるんですよ。自分を」

「あんた、頭大丈夫?」

「冗談ですよ。まあ、死にたくないから戦うって理由かな。」

「ふーん…」

「それに…」

「それに?」

「勇者部全員が好きですから、誰も傷付けられているところを見たくない。」

 

俺は笑顔で風先輩を見て言った。俺は友達として勇者部の皆が好きだ。だから、そう答えた。

 

「な!」

 

顔を赤くしている風先輩。熱でやられたのかな?

 

「どうしたんですか?風先輩?もしかして日射病?」

「な、なんでもないわ!」

「コンビニでなんか飲み物を買いますよ。」

「え、えっと、お願いします。」

「?」

 

本当、風先輩どうしたんだろう?

兎に角、早く家に戻って休ませてやらないとまずいな…

 

その後、コンビニでお茶菓子を買って荷物を全部持って家に戻る。家に戻る頃には風先輩は普通に戻っていた。良かった。

 

その後も時間が過ぎて、皆それぞれ帰っていく。

 

俺と九尾、銀は部屋の掃除をして夕食を取り、風呂に入って新しく買ったテレビでバラエティーを見て、今日一日が過ぎた。

 

風先輩の戦ってる理由には驚いたけど、俺が守ることには変わらないな。

一日も長く日常が続きますように…




やっとの思いで『鷲尾須美は勇者である』の漫画版を見つけた。いやー嬉しかった~。けど小説版は…

取り合えず次回予告。

次回予告

「ねえ、ここはどこ?」
「わかった。」
「もう、何も怖くない。」

次回 旧勇者


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第15話 旧勇者

第15話です。

まあ、銀主役の回(?)です。

と言っても多分というか殆ど銀じゃない…

まあ、記憶を無くしているので…

兎に角どうぞ…


夏休みも終わりに近付き、俺と九尾と銀は家で自分の時間を過ごしていた。その時だった。携帯が鳴ったのだ。

 

俺は慌てて携帯を見る。樹海だ。

 

「いくぞ!九尾!!」

「わかった。」

 

時が止まり、樹海になっていく。

 

樹海になり回りを見渡す。九尾が妖精の状態で俺の近くにいた。

 

「ねえ、ここどこ?」

 

!?銀!?

 

目の前に銀がいた。いや、ウォークマンが置いてあり、半透明で銀がいたのだ。

 

俺はウォークマンと携帯を繋いで実体化させる。理由は何となくだ。

 

その時、携帯に異変が起きる。それは、携帯の変身画面の×が消えているのだ。だが、俺が押してもならない。もしかしたら…

 

「銀、このボタンを押してみてくれ。」

「これ?」

 

銀がボタンを押す。

 

その瞬間に銀が変身する。色は白を基調としているが、ところところ赤が入っている。

 

思い出した。銀…君は…

 

「うわ!凄い!まるで漫画みたい!」

「おおお、おい!この場合俺はどうすれば!?」

 

焦る九尾。そうだよな。携帯の所有者の俺ではなく、一緒に住んでいる銀が変身してしまったんだからな。

 

「銀を守ってやってくれ。」

「お、お前がそう言うなら…」

 

俺も変身する。

 

「輝積の方が格好いい!!」

「そうかな…」

 

この時、俺はある違和感があった。

 

バーデックスはほとんど星屑。星座型は来ていない。いや、そこじゃないな。静かなんだ。

 

まるで、俺達と星屑しかいないかのように…

 

「なあ、銀、勇者のアプリ開いてくれるか?」

「こう?」

 

銀は慣れた手つきでアプリを操作する。やっぱり彼女は…

 

俺は銀が持っている携帯(俺の)を見る。

やっぱりだ。友奈達がいない。ということは、まだ友奈達に携帯が戻って来ていないということだ。

 

「この数を一人か…」

 

銀を変身させたのは自分を守るためであって戦わせるためではない。

 

「九尾、銀を安全な所に連れていってくれ。」

「え?どうしてだ?」

「私も戦うよ!」

 

銀は無意識に戦うことがわかっているようだ。本人はわかっていないようだが、感覚でわかっているのかもしれない。

だが、戦わせる訳にはいかない。彼女を二度と死なせない。そう、俺は誓ったんだ。

 

「ダメだ。」

 

俺は力強く言う。その声はまるで怒っているかの様に聞こえた。怒っていた訳ではない。ただ…心配なのだ。

 

「なんで…」

「なんでも。兎に角、隠れていてくれ。」

「それでも、戦う!」

 

銀は一度決めたことは貫き通す子だ。一緒に生活していたのだから良くわかる。だからこそ、戦わせてはいけない。もう、この子を死なせたくない。この子を死なせるくらいなら、俺が死んでやる。

 

「戦うなら、俺を殺してから行け。」

 

俺は銀の前に立つ。

 

「輝積!?」

「輝積、どういうことだ!!」

「俺はお前に戦って欲しくない。ただそれだけだ。」

「なら、心配いらない。俺が銀を守る。だから…」

「なら、身を守ることだけしててくれ。必要に戦うな。」

 

俺はそう言う。戦えば身を守ることより敵を殲滅させる方を優先させてしまう。

 

「輝積にこの数は無理だよ!だから私も…」

「なら、交換条件だ。身を守ること以外で戦った場合、俺は過去の君のことを話さない。」

「!?」

 

俺は銀の過去…いや、過去の一部を思い出した。記憶を取り戻したい銀にとっては最大の交換条件だろう。

 

「銀…」

 

悩む銀。心配そうに見る九尾。九尾は俺の味方でもあり、銀の味方だ。だから、銀の答えに従うし、俺の条件にも従う。

 

「…わかった。身を守ることだけね。」

「うん。それでいい。」

 

俺はその言葉を確認して空へとジャンプする。そして、星屑の数を確認。20~30体ほどか。

 

星屑達がいる辺りの中央に俺は降りる。星屑達は俺の様子を見ている。隙を伺っているのだろう。

俺は、武器を辺りに突き刺すように置く。と言っても全部マスケット銃だ。

 

「さて…」

 

マスケット銃を二丁片手ずつに持つ。そして、痺れを切らした一匹の星屑が此方に襲いかかってくる。それに吊られるように次々に襲ってくる。

そんな光景を目にする。まあ、この時点で恐怖なんてものは感じない。

 

「もう、何も怖くない。」

 

どこかの魔法少女みたいな死亡フラグを無意識に建築してしまったが、そんなの、折ればいい話。

 

マスケット銃で次々と星屑を撃ち抜く。狙いは外さない。一丁のマスケット銃に弾は一発。一匹撃ち抜いたら地面に刺さってるマスケット銃を抜き撃ち抜く。それを坦々と繰り返す。

 

少しずつ数を減らしていくバーデックス。

 

だが、重大なことに気が付く。地面に突き刺したマスケット銃が無くなっているのだ。まあ、一丁に一発な訳で大体近場に突き刺せるとしても十丁ほどが限界(俺の避ける空間も予想して)。そのためマスケット銃がもう無いのだ。

 

一匹の星屑が俺の頭部を噛み砕こうと近く。事故などではスローモーションに見えると話しなんかで聞くが、まるでそうだ。凄いスピードで近付いているのだろうが、まるでゆっくりと俺の頭部を噛み砕こうとしている様に見える。この時、俺は何も…恐怖も後悔も何も感じなかった。そう、目の前に死があることも。妖精のいない俺が星屑の、バーデックスの直撃を受ければどうなる?答えは簡単。この後、俺は首の無い肉片へとなる。

 

だが、それは起こらなかった。

その星屑は俺の真横まで来て消えたのだ。いや、正式には、連れて行かれたのだ。

 

俺は星屑が連れて行かれた方を見る。そこには星屑が根に刺さっていた。いや、星屑は根にくっついていたと言った方がいいのだろうか。まるで、星屑は昆虫標本のように打ち付かれていたのだ。ただ、昆虫標本はピンなのに対して此方は斧だが。

 

俺はその星屑が絶命するのを見届けた後、その斧を投げたと思われる方向を見る。そこにいたのは、狐の妖精を連れた白を基調としている勇者の姿。銀の姿だった。

 

「な…なんで…」

 

俺は言った。身を守ること以外戦ってはいけないと…

 

「輝積…言ったよね。身を守ること以外戦っちゃダメって。でも、誰のとは言ってない。私は今、輝積の身を守ることのために今の怪物を攻撃したの。」

 

盲点だった。ただの言葉遊びのようなものだ。でも、そのお陰で俺は生きている。怒ればいいのか、感謝すればいいのか…良くわからない感情だ。でも…何だろう…俺の言ったことは間違っている気がしてきた。もしかしたら、銀が戦うって言ったのは、勇者としての感覚とかじゃなくて、俺を心配したから?

それなら、俺は酷い奴だ。銀の心遣いを無駄にした。更にはこの子の記憶まで利用して戦わせないようにまでしまった。

 

「ごめん…」

 

俺は、謝罪の言葉を言った。

それしか今言えることはなかったのだ。

 

「別にいいよ。輝積は私のことを思って言ってくれたんでしょ。それに、きっと私の記憶のことも関係してると思うし。」

 

全部わかってたのか…銀は努力家で色々やっている。家にいる時は勉強などをやっているし家事なども率先してやっている。(全て九尾がやってしまうため意味をなさないが)

俺は、この子に背中を託すことに決めた。その代わりにこの子の背中は俺が…この子の命は俺が守る。

 

「なら、俺の身を守ってくれよ。銀。」

「わかった。」

 

俺と銀は同時に攻撃を開始する。銀の動きは精練されており、俺はそれに合わせる。

 

銀の使う武器は斧だ。武器の生成は俺の携帯(九尾だけの能力)で、俺の変身とは関係がない。だが、俺は携帯が無くても武器を生成出来ている。不思議なことだが、気にしている暇などない。

 

俺はその点短刀だ。しかも二刀流。まるで夏凜だな。いや、俺は夏凜に勝ってる訳だから俺の方が強いか…。

 

銀は大きめの斧を投げる。それはブーメランのように軌道を描き星屑を真っ二つにしていく。俺も刀で星屑を捌いて行く。銀の後ろに来た星屑を俺が刀を投げて星屑を突き刺して倒す。その間に銀が俺の後ろにいた星屑に斧を投げる。

そして、また両手に武器を生成する。

 

もし、俺の立場に夏凜がいれば俺より上手く連携が取れていたかもしれない。

 

俺は、銀と夏凜が重なって見えた。いや、夏凜の変身の格好が昔の銀の格好に似ていた。

夏凜と銀には何か繋がりがあるかもしれない。けど、今は星屑を倒すことが先決だ。

 

だが、そんな考えは意味がなかった。銀と連携をとってからは次々と星屑が倒されている。そのため、残る星屑は一匹。星屑は逃げようとする。俺と銀は斧と刀で斬りつけ星屑を三つにする。

 

そして、戦いは終った。

 

「銀…話すよ。俺が思い出したこと全部。と言っても全て思い出した訳じゃないけどね。」

「いいよ。私が何者なのかわかれば。」

 

君は…勇者だ。いや、前の…勇者だ。

 

樹海が解除され元の世界に戻る。

 

だが、俺にとっても、銀にとっても予想外なことがこれから起きようとしていた。





とうとう後半に入って来た…

さて…主人公は何者なのか…

ではでは次回予告


次回予告

「行ってみようよ輝積」
「どうして俺を?」
「今すぐとは言わない…」

「私は、乃木園子。」

次回 傍観者


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第16話 傍観者

第16話です。

遅くなってすいません…
二日に一つは上げる予定だったのに…

と、取り合えずどうぞ…


そこは、夕陽と海が見える高台だった。近場に大きな橋が見える。だが、橋は折れ曲がっており、橋としての機能は果していない。

 

俺達はなぜこんな所にいるのか。携帯は充電が切れている。これでは銀が実体化出来ないし九尾も呼べない。だが、高台には…海が見える方とは逆の方には人の気配がするのだ。

だが、その気配は…なぜかか弱く、消えそうな、それでも偉大な、そんな感じがした。

 

「行ってみようよ輝積。」

 

半透明の銀が言う。確かに行ってみなければわからない。

 

俺はそっちの方へと足を進める。

 

そこにいたのは…ベットに横たわる女の子だった。左目と口元以外包帯で巻かれていてとても痛々しい。さらには、薄い布団がかけられてはいるが、そこから見えるのは、足が無く見えるのだ。

 

俺は彼女を見たことがあった。いや、あんな痛々しい格好にはなっていなかった。

 

「会いたかったよ。輝積君」

 

少女が俺の名前を言った。

 

「君は…」

「私は、乃木園子。」

「やっぱり…」

「それと、久しぶり、ミノさん。」

「?」

 

銀は自分が言われていることに気が付かない。

 

「今、銀は記憶が無いんだ。」

「そう、なの…」

 

園子は落ち込んでいた。

銀はその事に気が付いたのかもしれない。だが、気が付いた所でもう遅いのだ。自分に記憶が無くて、そのせいで友達を悲しませてしまう。だが、死ぬよりは遥かにいいことなのだろう。それでも…彼女…園子にとっては生き地獄だ。

 

「俺達をここに呼んだんだろ。」

 

確信は無い。でも、彼女なら出来る。

そう判断した。

 

「うん。私が輝積君を呼んだんだよ。」

「どうして俺を?」

「君はね…本当はこの世界の人間じゃないの。」

 

この世界の人間じゃない?

 

「君はね、神樹様に選ばれた傍観者なの。傍観者は神樹様が選んだ別の世界の住人にこの世界の惨状を見てもらいその世界でこの世界の惨状を話してもらい、そして、いつかこの世界を救ってくれる人を探す。その話す役割になったのが、輝積君。あなたなの。」

「俺が…」

 

別の世界の住人で、この世界の惨状を話す?

俺はそれだけのために、ここにいるのか?

 

「でも、君は特別なんだよ。」

「特別?」

「そう。傍観者は普通、結界の中、神樹様の近く、一番安全な所で勇者とバーデックスの戦いを見るの。それに、傍観者は結界の外には出れない。樹海から出れないの。でも君は出ている。」

「…」

「それに、力もある。神樹様を超えるかもしれない大きな力、それが君にはある。」

「俺は…どうすればいい…」

「神樹様はまだ傍観者を必要としているの。だから、まだ元の世界には戻れない。」

「いや、戻る戻らないの話しじゃない。俺はバーデックスと戦っていいのか、勇者を助けていいのか、俺は!」

「神樹様だってそれは知らないよ。」

「!」

「それは、君が決めることだよ。神樹様が決めることでも、私が決めることでも無いんだよ。」

「…そうだよな。」

 

俺は園子に近寄る。包帯で巻かれていてとても痛々しい。銀の入っているウォークマンも近付ける。銀も園子を見る。

 

「その体は散華だよな。」

「うん。そうだよ。」

「俺は君達が…乃木園子、三ノ輪銀、鷲尾須美が戦っている所を安全な所で見ていた。」

 

俺の記憶…それは、少女達の戦いを遠くから見ているだけ。ただそれだけだ。

だが、ある日、一人の少女が死に直面していた。俺はその子を守りたかった。神樹により、安全な所には中から出れないように結界が張られる。俺はその子を守りたくて…その結界を破り駆け付けた。だが、そこに残っていたのは…その子であったであろう物だけだった。

俺は自分の無力を知った。その子を守りたかった。だが、結果は残酷だった。

自分の無力の証明を残して起きたかった。例え記憶が無くなっても、自分の無力を悔いることが出来ないようにするため。俺は銀の髪の毛を何本かお守りとして持っていようと決心こた。自分への戒めも含めて。

現に目の前の二人…園子の体、銀の記憶を取り戻していない。

少女達が満開した後も後悔をした。散華を見てしまったからだ。

記憶がだいたい戻った今、元の世界のことなど、どうでもいい。どうせまだ元の世界の記憶は戻っていない。なら、勇者部の皆を守りながら、彼女達を元に戻す方法を探す。

 

「俺が…園子と銀を救うよ。」

「ありがとう。でもいいよ。それに、君は色々なものを背負い過ぎてる。」

「こんなの…園子や銀の気持ちに比べれば、小さなものだよ。」

「輝積…」

「散華を彼女達から奪ったんだね。」

「奪った…のか…」

 

奪ったと言うよりも俺が引き受けたという感じかもしれない。

 

「満開をさせてはいけない。俺が見つけた紙に書いてあったんだ。そして、記憶が戻ってきた。あれは、君達を、見た俺からの忠告だったんだな。」

「そういえば、記憶が戻ってきてるらしいね。」

「君の言う元の世界以外のことはだいたい思い出してきている。」

「よかったな。輝積。」

 

だが、正直嬉しくない。こんな記憶…忘れていた方がいい。

 

「なあ…園子…」

「何?」

「もし、もしだよ、君の体が、戻って、銀の記憶と体も戻って、鷲尾須美も戻って来たら…うどんでも食べにいなかいか?」

「輝積君…」

「輝積…」

「いや、もしじゃない!絶体に俺が何とかする!園子も銀も樹ちゃんも友奈も東郷さんも風先輩も夏凜も須美も!」

「欲張りだね。」

「俺はただ…貪欲なんだよ。人間だから、貪欲なんだ。」

 

俺は何者か…俺は傍観者だった。でも今は…讃州中学勇者部上賀輝積、勇者ではない!でも、皆を守り、全てを解決する!

そのために俺は!!

 

「輝積は本当に強情だよな。」

「それが俺ですから。」

「ふふふ、面白い人…」

 

園子は俺を見てそう言った。面白い人か。そんなこと始めて言われたかもな。

 

「そういえば、どうしてその事を俺に話すんだ?」

 

俺は単純に思った。いや、最初から疑問に思った。

 

「もし、満開のこと、勇者のこと、傍観者としての記憶のこと、知らないと辛いから。私も、知っていれば、もっと時間を…大切にしたのに…」

「いや…知らない方がいいこともある。」

「それは、大人の考えだよ。私はまだ子供だから…そんなことは思えないよ。」

「…満開のことを誰かに話すのか?」

「わっしーに話そうと思うの。」

 

鷲尾須美…俺は彼女と瓜二つの人物を知っている。その子は…記憶が…二年間の記憶が無い。その記憶は、たぶん、園子と銀との大切な…

 

「お前が辛くなるぞ。」

「大丈夫。もう、辛いから。」

 

銀の記憶のことか…

そのことだろう。普通の女の子なら耐えきれない。それも、彼女、園子だから耐えたのだろう。動けない彼女にとってどれ程の苦痛か…

 

「俺は、話すなら、話した方がいいと思う。それを受け止めるのも、勇者としての…素質なのかもしれないしな。」

 

俺はそう言った。これは、傍観者として、そして、彼女達を信じているからこそ言ったのだ。

 

「ごめんね…もうそろそろ時間みたい。」

 

仮面を着けた大人達が続々と近付く。

銀が少し怯えている。だが、この人達は、敵じゃない。

 

「家まで送ってあげて。」

 

園子はそう、仮面の人物に命令した。

 

その後、仮面を着けた大人の一人、よく俺と話す人が俺と銀を家まで送ってくれることになった。

 

助手席に座る。運転席に仮面を着けていただろう男性が運転席に座る。

そして、運転を始める。

銀は、俺の膝の上にいる。

 

「本当に…銀だな。」

 

その男性はそう言った。

 

「…」

 

俺も銀も何も言わなかった。いや、その言葉への返答を知らないのかもしれない。

 

「銀は、記憶が無いんだよな。」

「うん。」

 

銀は返事をする。男性はまるで、銀を幼いころから知っているような言い方だ。

 

「そうか…」

 

残念そうに言う男性。

 

「自己紹介がまだだったな。私は、三ノ輪。」

「銀と同じ名字!」

「そう。銀は俺の兄の子だ。だから、幼い頃の銀をよく知ってるよ。」

「私の…叔父さん?」

「そうなるな。」

 

男性は…三ノ輪さんは泣いていた。

それに俺は気が付いた。

 

「兄は…毎日悔やんでいたよ。銀を勇者にしたことを。」

「お父さん…」

「今すぐとは言わない。その体を元に戻して、記憶も取り戻した後、兄の所に行って欲しい。」

「わかった。」

 

銀は約束した。俺はその約束を全力で支援する。

 

「その間、銀を頼むぞ。輝積君。」

「わかりました。絶対に銀の体と記憶を元に戻します!」

 

俺はそう答えた。

 

いや、そう答えるのが一番だと思ったからだ。絶対なんてありえない。でも、俺は…

 

守るべき者とやるべきことが多くなった。

 

別の世界の住人だろうが、何だろうが、俺は俺だ。やりたいことを全てやる!




とうとう主人公の正体がわかってきました。
さらに銀の親戚まで…

とうとうクライマックス…主人公はこの後どうなるのか…

てか、次回予告やろう…

次回予告

「違うわ。妖精の話しを…」
「いや~これで…」
「いや、充分起きてるよ。お姉ちゃん」
「東郷さん、君は…」
「友奈ちゃん!大丈夫!」
「勇者キック!」

次回 偽りの最後


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第17話 偽りの最後

遅くなって申し訳ない。

新しい小説を書いていたら遅くなってしまった…

まあ、兎に角どうぞ~


園子にあった次の日、俺は勇者部の部室にいた。

そこで聞かされたのはまだバーデックスがいるということだ。

更には、妖精が増えたこと。(夏凜だけ増えなかった)

妖精は散華した数に比例して増える。

今回、友奈、東郷さん、樹ちゃん、風先輩が一回ずつ散華しているため、東郷さん以外は二体ずつになってる。東郷さんは…四体目だ。

俺は…東郷さんの正体を知ってる。だからこそ、俺はその事を言わない。いや、その事を言わなくてはいけない人がいるのだ。

 

それから…一ヶ月

 

夏休みが終り二学期になってしまった。

残りのバーデックスを待つ勇者部。

この一ヶ月…俺の方では進展無し。

けど、まあ、いつも通りに生活をしている訳で…

 

「ちわーす。」

 

俺は少し遅れて部室に行く。

 

「遅いわよ、輝積。」

 

風先輩が出迎えてくれた。

だが、俺はその後ろである意味凄い光景を見る。

 

妖精が…いっぱいいる…

 

「何ですか…妖精の同窓会でもやるんですか?」

「違うわ。妖精の話しをしてたら、皆出ちゃったのよ。」

 

夏凜、説明ありがとう。

 

俺はこの百鬼夜行状態を外に見せないために勇者部の戸を閉める。

 

「そういえば、輝積君の妖精って可愛いよね。」

「え?」

 

この流れからして、九尾を出さなきゃいけないのか…でも、今日、九尾、家にいるんだよな…呼ぶにも…

 

「ねえ、輝積、今頃思い出したんたけど…」

 

風先輩が言った瞬間だった…

 

時間が止まる。そして鳴りやまない携帯のアラーム。

バーデックスだ…

 

樹海になり、敵の位置を携帯のアプリで確認する。

そんでもってから、円陣を組む勇者部。

 

「あの…また俺もやらないといけないのか…」

「早くしなさい、バーデックスが来るわよ!」

 

いつの間にかに円陣にいる夏凜。もう、夏凜は勇者部の色で染められていたか…それはそれで微笑ましい。

 

俺も円陣に加わる。

 

その後、戦闘に入る訳だが。

 

「あれ?あの変態、樹が倒さなかったっけ?」

 

そう、あの個体は樹ちゃんが倒した個体である。あいつはふたご座のバーデックス。バーデックスの中でも一番弱く小さい個体だ。だからこそ、生成に時間はかからない。

 

奴は猛スピードで走って行く。だが、誰も…奴を追わない…

俺はこの時疑問に思った。

 

「ちょっと、皆!どうしたのよ!」

 

夏凜はいつも通りに見える。

 

彼女達は気が付いたのかもしれない、満開の代償…散華により失う各種の機能、それは戻らないことに。妖精が増えた時点でおかしいとは思っていたのかもしれない。

前回が特別だったのだ。

その後に聞いたのだが、機能障害は本当はとても酷いものだったらしい。友奈は味覚、風先輩は左目の視力、東郷さんは左耳の聴力、樹は声を完全に失った。だが、日が立つ頃にはだんだん良くなっていたそうだ。三ノ輪さんは、俺のことを思って軽くすんだと言ったのだろう。

たぶん…皆辛かったのだろう。

俺は完全に散華を引き受けられなかったのだ。まだ、俺は弱い。

彼女達は怖いのだ。また、機能障害が起きるのが…

 

「しょうがないわ。輝積!行くわよ!」

「わかった!」

 

俺と夏凜はバーデックスの所まで飛んでいく。

 

「私も!」

 

友奈も来てくれた。流石、友奈だ。機能障害をもたらす満開…そして戦えば戦うほど溜まる満開ゲージ、次に満開すれば…戻らないかもしれない。そう思ってしまったかもしれない。だから、動けなかった。だが、友奈は…そんな状態でも戦う。自分のためじゃない。見知らぬ誰かのために。

俺には、そんな覚悟なんてない。俺は俺のために戦う。

 

「勇者キック!!」

 

友奈と夏凜が思い切り蹴りをバーデックスにする。(俺も蹴ろうとしたのだが、外れたとは言えない…)ダメージを与え、東郷さんがバーデックスの頭(だと思われる部分)を狙撃する。

 

そして、駆けつけた風先輩と樹ちゃん、夏凜が封印を行い、ミタマが出てく。

 

「ちょ、何よこの数!」

 

ミタマの数が多すぎる。それに、皆は満開ゲージを溜めたくない。だから、戦えない。

なら、俺が、このミタマを破壊する。

 

「皆!俺がミタマを破壊する!だから少し下がってくれ!」

 

俺は皆に指示する。

 

「わかったわ。」

 

下がる風先輩と樹ちゃん、夏凜。

俺は缶を生成してミタマの上に投げる。そしてほんの少し距離を起き、黒い四角い者をミタマの群れにばらまく。

 

「東郷さん!缶を撃ち抜いてくれ!」

「わかったわ。」

 

携帯越しにお願いして上に投げた缶を撃ち抜いてもらう。撃ち抜かれた缶から液体がばらまかれる。

それを確認した後に俺は逃げる。

そして、右手に持っている起爆スイッチを押した。

 

「勇者キック!!」

 

友奈が炎を纏った蹴りをバーデックスに放つ。

それと同時に爆発。友奈は…大丈夫みたいだ。てか、バーデックスに対してオーバーキルだ。

 

「友奈ちゃん!大丈夫!」

 

友奈を心配したのか、東郷さんも駆け付ける。

 

「大丈夫だよ。」

 

友奈は怪我もしていなかった。流石、神樹の加護だな。

だが、友奈の右手…満開ゲージが溜まっていることに気が付いた。

他の皆も同じようだ。

 

「友奈…」

 

風先輩が友奈のことを心配していた。いや、全員心配していたのだ。

 

そして、元に戻っていく。

 

俺達は、学校の屋上にいた。

 

「いや~、これでお勤めは終わりね。」

 

心配していたことを誤魔化すように風先輩は言った。だが、皆ある異変に気が付いた。

 

「あれ?東郷先輩と友奈さんは?」

 

樹ちゃんがその事を話した。

俺はこの現象に覚えがある。

 

「園子か…」

 

俺は小さな声で言った。

 

「友奈達がいないわ。」

 

夏凜は周りを見渡して確認する。やはりいないようだ。

 

「大丈夫だよ。あの二人だし」

 

俺は三人にそう言った。

 

「そう…よね。そうよね。あの二人は私の後輩だから、大丈夫よ!」

「あ…なんか、風先輩の後輩と聞いて不安が…」

「輝積さん…そういうことは…」

「何私は頼りにならないっていうの!樹も思ってたの!?」

「いや、ただのネタなんで気にせず…」

「気にするわよ!」

 

そんな話しをしながら、勇者部の部室に戻る。

 

「そういえば、バーデックスのせいで聞けなかったけど、あの依頼って何だったのよ?」

 

あの依頼?

 

「そう、私も気になってたわ。」

 

あの依頼とは、最初に勇者部に依頼したあれだろう。

 

「あれですか…」

 

もう、わかってしまったからには依頼としての機能は果たせない。いや、果たし終わった。

 

「あれはいいです。もう、解決しました。」

「確か、夢に出てくる勇者を探して欲しいって書いてありましたね。」

「あれね…よく思い出したら、勇者ごっこをしていた女の子の夢だったよ。たぶん、アニメとかのキャラクターだよ。」

「何よ~なんか不思議なことでも起きると思ったのに~」

「いや、充分起きてるよ。お姉ちゃん。」

 

確かに…

 

「さーて、友奈達が戻って来たあとにでも打ち上げでもしましょう。」

 

そういえば、風先輩に奢ってもらう約束があったな。忘れてた。

 

「今度こそ、風の奢りね。」

「な!まだ覚えていたのか!」

 

そんな感じで話していたが、友奈からメールが届いて今日は戻って来れないと来た。

しょうがない。明日は休み…

友奈達なら大丈夫だと思う…

 

 

次の日

 

俺は東郷さんの家に来ていた。理由は東郷さんに呼ばれたからだ。

 

部屋に案内される俺。部屋には東郷さんが一人でいた。

 

「輝積君、いらっしゃい。」

「おう…」

 

東郷さんが車イスで出迎えてくれる。

 

「早速本題よ。」

「…」

 

東郷さんは昨日、園子にあった。だから、俺に確認するのだろう。自分の過去を…

 

「鷲尾須美…という少女を知ってるわよね?」

 

完全に俺が知っていることを前提に聞いてくる。嘘をつくことは簡単だ。だが、彼女は真実を知りたいのだ。

 

「知ってる。」

「そう。なら、満開の代償も?」

「知ってる。」

「いつから知ってたの?」

「最初から…だけど、思い出したのは風先輩が満開を使った時だ。」

「そう。なら、なんで教えてくれなかったの?」

「…教えれば…どれだけ心が傷つくかわかってたから。知らぬが仏…そう思ったから…」

「…」

 

東郷さんは何も言わない。俺なりに考えた答えだ。

 

「鷲尾須美は…私なのよね?」

「そう…かもしれない。」

「かも?」

「俺は鷲尾須美という少女を知っているだけで、その後がどうなってかは知らない。ただ…」

「ただ?」

「鷲尾須美は満開を二回使用した。その代償…散華で両足の機能、そして…二年間の記憶を無くした。」

「!!」

「東郷さん…貴女は二年間の記憶が無く、更には足が不自由…」

「…そして、妖精の数…」

 

気がついていたのか…

 

「ありがとう。これで確信したわ。」

 

東郷さんはそう言った。わかってる。一番辛いのは東郷さんだから。でも、俺も辛い…

 

「満開のこと…教えなかったのは貴方なりの配慮だったのよね…」

「ああ。でも…」

 

今頃、話せば良かったと思っている。後悔に似た何かを感じていた。いや、もしかしたら後悔だったのかもしれない。

 

「いや、なんでもない。」

 

俺はそう言った。

 

「輝積君は記憶が戻ったの?」

「ああ。でも、肝心なことが思い出せない。」

 

自分がいた世界のこと…でもそんなこと話せる訳がない。

 

「…もうひとつ聞いていい?」

「なんだ?」

「なぜ、私達は満開を使ったのに殆ど代償がないの?」

「…それは…俺が願ったからかな…」

「…何を?」

「君達を救うことを…」

 

俺は、変わりに散華をしたこと。そして、東郷さん達の散華を無くしたこと…鷲尾須美のことを話した。東郷さんはその話しをたんたんと聞いてくれた。

 

「…そんなこと…」

「だよね。信じられないよね。」

「…この頃の大赦の行動…大赦は、私達のことを祀っているのね。」

「…そうだな。」

 

東郷さんは大赦の行動も見ていたのか。俺はそれを知っている。

 

「…殆ど生き地獄よ。こんなの…」

「そう…かもしれないな。でも…視点を変えれば…違うものが見えるかもしれないよ。」

「?」

 

俺は、友奈達が勇者で良かったと思っている。だって…友奈達が…友奈が東郷さんが風先輩が樹ちゃんが夏凜が…勇者じゃ無かったらあえなかったし、友達にもなれなかったかもしれない。だから…

 

「でも…地獄は地獄よ…」

 

俺は東郷さんの手を握る。いきなりのことで戸惑った東郷さんに俺は…

 

「東郷さん…君は何がしたい?俺はしたいことがいっぱいある。だからそれをやる。君もやりたいことをやればいい。」

 

と力強く言った。

もしも、俺の力が及ばず、皆を守れ無くても、悔いが残らないように毎日を楽しんでくれ。そう伝えたかった。

 

「したいこと…」

 

東郷さんは、俺が東郷さんの手を握っているのを見て、ハっとなり、顔を赤くする。少し疲れたのかもしれない。

 

「それじゃあ、俺は帰るよ。」

 

俺は東郷さんの手を放す。

 

「あ…」

 

東郷さんが呼び止めようとしているのか、俺は東郷さんの方を見る。まだ少し顔が赤い。

 

「あ、ありがとう…輝積…君…」

「いや、俺も話せることは話したし…」

 

そう言って俺は東郷家を後にした。

 

「したいこと…」

 

東郷さんは家で考えていた…そして、この事を親友と先輩に話すことにした…。

 

俺は東郷さんを信じていた。信じていたのに、あんなことになるなんて…




本当、遅くなって申し訳ない。

この頃忙しくて…投稿する時間が…

取り合えず次回予告だけはやります。

あ、あと急展開です。


次回予告

「無理するなよ。」
「大丈夫。完全復活よ!」
「お姉ちゃん…」
「輝積君!?」
「私も…信じてはいる…」
「ありがとう、輝積。私ね…」

「讃州中学勇者部、上賀輝積、俺は…」

次回 己


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第18話 己

はい、第18話です。

ラストまであと二話。

急展開なのでご注意を…

それでは~


東郷さんと話して数日。

この頃、勇者部の皆がバラバラな気がする。なんというか、ギグシャクしてるというか…

まあ、あんなことがあったんじゃしょうがないよな。

 

休日、俺は少し遠くまで来ていた。何か東郷さん…こと鷲尾須美と銀、園子を救う方法を考えながら歩いていた。そしたら遠くまで来てしまった。休日だから、散歩も含めて歩いてはいたが…

 

しかも、携帯…家に忘れたし。

 

俺は取り合えず歩いていた。海沿いの道を歩いていた時、見たことのある女の子がいた。

 

「あ!夏凜!」

「輝積!?どうしてここに!?」

 

そこにいたのは夏凜だった。

 

「散歩してたらいつの間にかここにいた。」

「そ、そう。」

 

夏凜はそう答えると視線を目の前にあるアパートに移す。

 

「なんかしたのか?」

「あんたには関係ないわ。」

「そう言われると気になるな~」

「あーもー、監視よ。監視。」

「俺の?」

「違う!」

 

聞いた話しだと、風先輩が裏切るかもしれないということ。

風先輩は、東郷さんから色々と聞いたのだろう。そして、満開の代償…風先輩は左目、樹ちゃんは声を失うはずだった。俺が散華を代わりにしたが、本当は失うはずだった。その真実を聞いたのだろう。でも、風先輩はそんな人じゃない。もし、風先輩がそんなことをするなら、たぶん、樹ちゃんのためだろう…

 

「風先輩がそんなことするわけないよ。」

「私も…信じてはいる。でも…大赦からの命令だから…」

「そうか。」

 

そういえば、夏凜と二人きりとは案外珍しいのでは?いや、そうでも無いな。

 

「夏凜はさ、なんでそんなに頑張ってるの?」

 

正直な疑問だ。夏凜は努力家だ。でも、それには何か理由があるはずだ。

 

「…話す必要は…」

「話して。」

「しょうがないわね。」

 

夏凜は改めて話し始める。

 

「私にはね、兄さんがいるの。」

「お兄さんが…」

 

俺は元の世界の記憶が無い。なので家族がよくわからない。でも、夏凜の性格を見ている限りお兄さんはいい人そうだ。

 

「兄さんはね、運動、勉強、なんでも出来たの。でも、私はそこまで出来なかった。なんでも兄さんに負けてたわ。でも、勇者になれるって聞いて嬉しかったの。私にしか出来ないことがあるんだって。それが誇りだったの。だから、頑張るのよ。」

「…そうなんだ。」

 

彼女には、彼女なりの戦う理由があった。

 

「輝積~」

 

自転車に乗って銀が此方に向かっていた。

 

「銀!?」

「携帯、忘れてたよ~」

 

銀は汗をかきながら俺の携帯を持ってきてくれたのだ。

 

「銀!」

「夏凜!」

 

銀と夏凜は仲がいい。何故だか知らないけど。

 

「凄い汗ね。タオルあるわよ。」

「ありがとう。」

 

夏凜がタオルを出した。その時だった。夏凜は手に持っていた携帯を銀の足下に落としてしまう。銀は夏凜の携帯を拾おうと夏凜の携帯を持った瞬間だった。

 

「え!?」

 

銀が倒れる。

 

「銀!?どうした!」

「銀!どうしたの!?」

「だ、大丈夫だから…」

 

そう答え、銀は立ち上がる。

 

その時だった。アパートの一室から黄色い花びらが大量に出てくるのが見えた。

 

「なんだ!」

 

そこから飛び出す人影…風先輩だ!?

どうして!?まさか、裏切るのか!?

 

「風!?」

「夏凜は風先輩を追え!俺は銀を家まで連れていく。」

「わかったわ!そのあと、絶対に来るのよ!」

 

夏凜は銀が目の前にいるのにも関わらず変身して風先輩を追ってい行く。

 

「銀…大丈夫か?」

「ありがとう、輝積。私ね、記憶戻ったんだ。」

「!?本当か!良かった!」

「ねえ、須美は…」

「この前あったろ。東郷さん。彼女だ。でも彼女も記憶が無いんだ。だからわからなかったんだ。」

「よかった…皆生きてて。それと、園子に謝りたい。私…酷いことしちゃった。」

 

銀は泣いていた。

俺は…彼女を救えたのか?いや、まだだ。

 

「少し待ってろ。必ず肉体も取り戻してやるからな。」

 

俺はそう言って変身する。風先輩を追いかけないと。

 

「私も…」

 

銀も行こうとしていた。だが、俺は…

 

「待っていてくれ。必ず、戻るから。そしたら、園子との約束を果たそう。皆笑って…」

「輝積…」

「俺は、皆のことが好きだから…それは銀も同じだから。」

「え!?」

 

銀は顔が赤い。汗だくで顔が赤いのだ。たぶん、運動をしたせいで疲れたのだろう。

 

「それじゃあ、行ってくる。」

 

俺は、携帯を取り出して九尾を出す。

 

「行こう。九尾。」

「わかった。」

 

俺と九尾は飛び出す。

 

 

俺が来たときには終わってた。何がって?それは、風先輩が樹ちゃんに抱きついて泣いているのだ。これは、後で話しを聞こう。

 

てか、ここは…園子とあった場所じゃないか。驚きだな。いつの間にかこんな遠くまで来てるなんて。

 

俺は何もすることが無かった。でも、何か嫌な予感がしていた。

 

いきなり携帯が凄い音を立てて鳴り始める。

 

「な、何!?」

 

そして、樹海に…

 

そこで見たものは、空を被うような星屑の姿だった。数的には…万単位で済むかどうか…

 

そして、友奈が気が付く。結界のギリギリに東郷さんがいるのだ。そして、壁に空けられた大きな穴…東郷…お前…

 

「友奈、夏凜、東郷の所に行ってやれ。」

「輝積君!?」

「俺は、あの星屑を何とかする。」

「わかったわ、輝積。友奈行きましょう。」

「うん。無理しないでね輝積君。」

 

二人は東郷の元に向かった。

 

「さて…」

 

改めて見ると圧巻だな。俺は両刃刀を生成して右手に持つ。

 

「さあ、見せてやろうか、讃州中学勇者部上賀輝積の今の全力を。そして、決意を!!」

 

俺は星屑の群れに突っ込む。両刃刀を回転させて投げる。それはブーメランのように半円状の軌道を描き此方に戻ってくる。それを刃に気を付けて取り、更に次の星屑を倒す。

 

切り裂かれていく星屑。でもその数は減らない。

 

俺は一旦地面に着地する。星屑を踏み台変わりにしてジャンプしながら戦っていたが疲れる。しかも、星屑って結構柔らかいから足を取られてしまいそうになる。それに気を付けながら戦っているのだ。疲れる。

 

「輝積!?」

 

風先輩と樹ちゃんがいた。風先輩はいつもの風先輩に戻っていた。良かった。

 

「大丈夫ですか?風先輩?」

「大丈夫。完全復活よ!」

「お姉ちゃん、東郷先輩が…」

 

樹ちゃんが東郷の位置に気が付いたようだ。

 

「風先輩達も東郷の所に行ってやってください。」

「え!輝積は!?」

「俺は、ここで星屑を倒しておきます。」

「輝積さん…」

「東郷をお願いしますね。」

 

俺はそこからジャンプしてまた星屑を倒し始める。

 

壁の穴から次々と入ってくる。それを俺は倒していく。

 

「無理するなよ。」

「無理させろよ。俺が何とかしないと、ヤバイんだから。」

「まさか、勇者に裏切り者がいるなんてな。」

「満開システムが悪いんだろ。」

「満開システムが無かったら俺と会えなかったんだぞ!?」

「そもそも、俺勇者じゃねーし。」

「おいおい、そんなこと言わないでくれよ。」

 

九尾とそう話しながら戦う。

 

だが、それが油断だった。

 

俺は両刃刀をブーメランのように投げる。その時だった。横から攻撃を受ける。

 

「ぐ!?」

「ち!」

 

舌打ちする九尾。その攻撃は九尾によって止められたが、俺にも衝撃が来る。正直痛い。

 

攻撃した方を見ると、射手座のバーデックスが此方を狙撃していた。

 

「バーデックス!?しかも…」

 

星座型が四体。

 

乙女座のバーデックスがファン〇ルミサイルみたいなものを次々に撃ってくる。それを避けようとするが、射手座のバーデックスから大量な矢が打ち出されて移動範囲が狭まる。

此方は空を飛べない。なので常に星屑の上でバランスを取ったりしなければならない。更には武器の両刃刀が無い。投げたあと蠍座のバーデックスに叩き折られた。

 

武器を生成しようにも、避けるのが精一杯だ。ファンネ〇ミサイルが俺に当たる。だが、それを九尾がガードする。そう、ファンネ〇ミサイルだけを…

 

グサと嫌な音が響く。俺はそれに気が付き、その音の方向を見る。喉から、何か込み上げるものを感じながら見る。

 

大きな針のような物が俺の腹から出ていた。

 

口から何かを吐き出す。血だ。

 

「輝積!!」

 

九尾が呼んでくれているが、どんどん遠くに聞こえる。

針は蠍座のバーデックスの物。針は俺の背中から腹まで貫通していた。蠍座のバーデックスは俺を森の方へ投げ飛ばす。

 

全身に痛みが走り自分が地面に叩きつけられたことがわかる。

 

だが、同時に痛みがあるということは生きているということだ。

 

俺は半目でバーデックスを睨む。だが、意識は徐々に死に誘われて行く。

 

そうか…俺は死ぬのか…

 

…何か…大事なことが…

 

約束…皆でうどん…食べる。

 

この時、俺は、本当の…いや、元の世界の記憶が戻る。

 

自分が何者で、何をしていたか…そして

 

たとえ記憶を失っても心は変わらないことを。

 

 

 

九尾は焦っていた。自分の不注意で主人を…大切な友達を死なせてしまいそうだったから。

 

「おい!死ぬな!!」

 

九尾は必死に神樹の力を使い輝積を治そうとしていた。だが、神樹の力を拒絶するかのように傷口は塞がらない。

自分がいながら…

 

そう思った、その時だった。

 

輝積の背中から翼が生え輝積を包み込む。

 

これは…あの時と同じだった。だが、九尾は気が付いた。あの時にはない、神々しさを感じたのだ。

 

「輝積…君は…」

 

九尾はこの時、輝積の正体に気が付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その少年は白に近い黄緑色の翼を持つその姿は神々しさを感じる服を着ていてまるで西洋の天使の羽を持った、東洋の神のようだった。

 

少年は火の玉を出すバーデックスを見ていた。

 

「大丈夫なのか?」

「何がだ?」

「いや…何となく言ってみただけだ。」

「そうか。」

 

左上に浮いている狐と話す。

 

「よし、ちょっと前にも宣言したけど、もう一回、今度は完全版でやるか。」

 

少年は右手の拳をバーデックスに向けて言う。

 

「讃州中学勇者部、上賀輝積、俺は…」

「現人神である!!」

 

ここに、別世界からの神が現れた。




はい、とうとう主人公の正体が明かされました。

主人公が最強…やっとタグの意味が…

さてさて、後二話で最終回。

ではでは、次回予告

「全く…」
「お帰りなさい。…」
「そこかーーー!」
「ごめん!大事な時に!!」
「嘘よ!」
「友奈…お前は…」
「私は…」

次回 本当の力


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第19話 本当の力

はい、第19話です。

主人公はチートだった…

取り合えずどうぞ


俺は何者なのか…

 

そんなの簡単だ。俺は人じゃない。

 

俺は無意識に銀を魂だけ蘇らせて、九尾に肉体を与えた。

そんなことが出来るのは神かそれと同等の者だけ。そして、俺は人間の姿。そこからわかることは、俺が人の形をした神であること。

別世界で俺は、神と同等の力、そして、ある呪いを受けた。その結果、俺は神に等しくなり、現人神となった。

勇者の散華を俺が引き受けられた理由も納得がいく。そして、散華により失った機能を戻した方法…それは、頼んだのだ。自分自身に。神である自分と人である自分。人である自分が神である自分に願いをする。それを神である自分が叶える。変わりに供物としてかなりのエネルギーを使う。だが、俺にはある呪いが架かっている。生の呪い…絶対に生きていなければならない呪い。これは死ねない呪いと同じ類いで、簡単には死ねない。まあ元々死ぬ気なんて微塵もない訳だから、意味はない。でも、さっきみたく腹を貫通するような攻撃をされると意識は飛ぶ。それに、死なないとはいえ、痛いのは変わりないんだ。逆に生き地獄かもな。

 

神樹は俺が現人神とわからず傍観者として連れてきた。だが、それは正しいのかもしれない。俺には天の神を倒せるほどの力は無い。俺にはだ。元の世界に戻り、強くなれば話しは別だ。

 

空を見る。あの、星座型のバーデックス…たしか融合バーデックスのコアになった奴だ。奴は星屑を炎の弾にして次々と放つ。それは一種の追尾型ミサイルだ。

 

そのバーデックスの脇にいるのは東郷だ。東郷…お前はそういう道を選ぶのか。なら、俺は…俺には何も出来ない。彼女の本当の記憶を知っていても…何も出来ない。だが、伝えることは出来る。銀のことを…伝えることが。

 

俺はこんな状況でも冷静だった。逆に冷静になれたのかもしれない。

 

頭がスッとして、考えが浮かぶ。

 

皆を救い、笑顔にする方法…

 

今、俺が出来ること…

 

東郷を止めて、その方法を俺がする。

 

俺は死ぬことは無い。だから、大丈夫。

 

俺の考えはまとまった。よし。東郷を止める。

 

既に先客がいたようだ。バーデックスと戦いながら東郷を止めようとしている女の子…結城友奈だ。彼女は東郷の親友…止める権利はある。それに、彼女は俺が知る限りでは…

 

「友奈…お前は誰よりも勇者だよ。」

 

俺はそう呟いて空を飛ぶ。

 

炎を纏った星屑が此方に向かって来る。当たれば爆発する特攻野郎と化した星屑達は俺を標的としている。別に当たってもいいのだが、やっぱり痛いのは嫌な訳で、避ける。

 

「邪魔!!」

 

俺は右手で軽く扇ぐ。すると強風が起き、それが星屑達を誘爆させ次々と爆発させる。

 

そして、東郷の元へ行く。

そこでは、東郷と友奈が戦っていた。

 

「東郷!」

「輝積君!?」

 

東郷が此方に気が付く。

その時、友奈が満開をする。東郷も満開を使っていて、大きな戦艦?のようなものに乗っている。

 

「うおおおお!」

 

友奈は俺が来たことを知らずにバーデックスに攻撃をする。そしてミタマをさらけ出したバーデックス。

 

「だめ!!」

 

友奈の目の前を東郷の攻撃が横切る。それを見た友奈は少し下がる。

 

「東郷さん…何も知らずに暮らしている人達もいるんだよ。私達が諦めたらダメだよ。だってそれが…」

「勇者だって言うの!!他の人なんて関係ない!」

 

東郷は今、誰の為でもない…友達の為に裏切ったのだ。そう、友奈の為に。

俺にはそれがわかる。

 

「一番大切な友達を守れないのだったら勇者なんかなる意味なんて無い…がんばれないよ…」

 

東郷の目には涙があった。それは、園子と銀という大切な友達の…親友の記憶を無くしたことによる罪悪、そして、満開への憎しみも含まれているのだろう。いや、一番は友達を思い出せない悲しさなのかもしれない。あの時の銀と同じだ。銀はそんなことはしなかった。なぜなら、俺を信じていたから。でも、東郷は俺の事を完全に信用していなかったのだろう。何故なら、俺も…大赦と同じ、散華の事を隠していたのだから。俺がいくら取り戻すと言ってもいつになるかわからない。もしかしたら一生戻って来ない。そう思ったのだろう。

 

「友奈ちゃん…あのまま、じっとしていれば良かったのに…眠っていればそれで何もかも済んだのに…もう手遅れだよ。」

 

次々と星屑がバーデックスに集まり体を治して行く。

 

「東郷!」

 

俺は東郷に向かって叫んだ。友奈もそれに気が付いた。俺は友奈の隣へ飛ぶ。

 

「輝積君…君も、大赦と…神樹と同じよ。私達に何も言わないで、それでただ見ていただけで…」

「…そうだよ。何も言わなかったよ!でも、それは、お前を…お前達を信じて…」

「勝手に信じないで!!」

「嫌だ!!」

「!?」

 

東郷は目を丸くする。

 

「信じるよ!だって友達だから!」

「…そんなの嘘よ…」

「なんで嘘なんか!!」

「貴方も大赦や神樹と同じだからよ!!」

 

東郷は戦艦のようなものから巨大なビームを放つ。俺は…信用されていなかった。

 

あの時、話したのが不味かったのかもしれない。いや…あれで良かったのだ。でも、結果は最悪だ。だからこそ、東郷を止める!!

 

俺と友奈はそのビームを友奈は満開により増えた大きな腕で、俺は翼でガードする。

 

「戦いは終らない…私達の生き地獄は終らないの…たとえ、輝積君が変わりに散華してもいずれ、輝積君が辛い目に合うわ。」

 

…そうか…東郷は俺を信用しなかった訳じゃないのか…逆だったんだ。信用はしていた。だからこそ辛い事をさせない為にこんなことをしたんだ。

 

「東郷さん!!」

「東郷!!」

 

俺と友奈は叫んだ。

 

「地獄じゃないよ。だって東郷さんと一緒だもん!」

「そうだ!!」

 

ビームを弾き飛ばす。

 

「どんなにか辛くても東郷さんは私が守る!!」

「大切な気持ちや思いを忘れてしまうんだよ!大丈夫な訳ないよ!」

「それは、俺が何とかしてやる!!」

「いつになるかわからないじゃない!!」

 

更にビームが俺と友奈を襲う。そして、地面に叩きつけられる。

 

「友奈ちゃんや輝積君…皆の事だって忘れてしまう…それを仕方がないなんて割り切れない!!一番大切なものを無くしてしまうくらいなら…」

「忘れないよ。」

「どうしてそう言えるの!」

「私がそう思っているから!メッチャクチャ強く思っているから!!」

 

友奈はそう言った。

そうだ。強い思いとはなんでも通用する。たとえ思い出でも…大切な思い出なら尚更だ。

 

「私達も…きっと…そう思ってた…」

 

園子…銀…あの二人の事だろう…銀は記憶を思い出した。後は肉体と鷲尾須美の記憶だけだ。それを取り戻す為に俺は…

 

「今は…ただ…悲しかったという事しか覚えてない…自分の涙の意味がわからないの!!」

 

東郷は周りにビームを放つ。それはまるで何処に攻撃していいのかわからないような攻撃だ。乱雑にビームが放たれる。それが友奈に当たりそうになった時、俺がそれをガードする。

 

「輝積君!」

「全く…友奈!東郷に一発咬ましてやれ!」

「!…わかった!」

 

乱雑に攻撃する中、友奈が東郷に向かって行く。

 

「嫌だよ!!怖いよ!!きっと友奈ちゃんも私の事忘れてしまう!!だから!!」

 

友奈は東郷の戦艦の砲身を満開で追加した腕で掴み砲撃を止める。

 

俺も東郷の元に駆け付ける。

 

そして、友奈は追加された腕から離れて…

 

「東郷さん!!」

 

東郷を殴る。友奈の拳だ。痛いだろう。でも、その拳は、友奈の思いも詰まってるんだ。いや、友奈だけじゃない。勇者部全員の思いだ。不安なのは東郷だけじゃない。俺や友奈、風先輩、樹ちゃん、夏凜、銀、九尾、園子…全員そうだ。

倒れる東郷。それを抱き締める友奈。

 

俺は東郷の戦艦の上に立つ。

 

「忘れない。」

「嘘…」

「嘘じゃない!」

「うそ…」

「嘘じゃない!!」

 

泣き出す東郷。友奈の言葉には、それだけの力がある。いや、忘れさせないんだ。俺がいるから…

 

「ほんと?」

「うん。私はずっと一緒にいる。そうすれば忘れない。」

「俺も…東郷の記憶を取り戻す。」

「友奈ちゃん、輝積君!忘れたくないよ!思い出したいよ!!私を一人にしないで!」

 

更に強く泣く東郷。

 

「うん。」

「当たり前だ!」

 

俺と友奈は約束した。東郷を一人にしない。そして、記憶を取り戻す。それだけじゃない。皆を救う!!

 

「全く…したいことしろって言ったけど、こんなの予想外だったぞ。」

「ごめんなさい。」

「駄目だよ、輝積君。もう終わったことなんだから。」

「ごめん、つい…」

「全く、そう言うところが輝積の悪い所だ。」

「輝積君の精霊が喋った!?」

 

九尾が急に現れる。この際だから言ってもいいか。

 

「おう、こいつは九尾…て名前は教えたんだっけ。九尾は俺の力を貰って喋るようになったんだ。俺の家であったあの憎たらしいイケメンがいただろ?あいつが九尾の人間の姿なんだ。」

「おい、憎たらしいってなんだ?」

「口を開かなければいいヤツなのに…」

「おい!どういう意味だ!!」

「精霊を喋るようにするなんて…」

「輝積君…凄い!」

 

少しボケが過ぎたかも…と思い友奈と東郷を見ると俺を不思議そうに見ていた。

 

その時だった。熱風が皮膚を通り抜ける。それも凄い熱さだ。まるで身を焦がしたような熱さ。

 

その正体はバーデックスによるもの。九尾は危険を察知したのか、消える。いや、正直、九尾がいると九尾に被害が行きそうで怖くて本気出せなかったんだ。ある意味有難い。

 

「なに…」

「太陽?」

「あれは…バーデックス!?」

 

バーデックスはまるで小さな太陽と化していた。それは神樹の方へと向かって進んで行く。

 

「私…大変なことを…」

「東郷さんのせいじゃない!あいつを止める!」

「はい。」

「行くぜ!勇者のお二人!!」

「輝積君も勇者だよ。」

「あ、俺神様。」

「え?」

「まあ、追々話すとして行くぞ!!」

 

俺と友奈、東郷は飛んで太陽の進行方向に先回りして止める。だが威力だ高すぎる!てかデカすぎ!

 

「止まれーー!」

「止まらない!?」

「くっそ!」

 

俺も両手で止めようとする。

 

「絶対に…諦め…無い…」

 

友奈が力尽きて落ちていく。

 

「友奈ちゃん!!」

「友奈!!」

 

助けに行きたいが、威力が高すぎて止めるのに精一杯。いや、止められていない。友奈は東郷の攻撃をガードしていた。それでもダメージがあった。俺は耐えられる。死なないし。でも友奈は…女の子だ。あれほどのダメージ、今まで耐えられた方が凄い。

 

「くっそ!!」

 

俺は翼を最大限まで広げる。そして勢いを消して行く。

だが、それでも突き進むバーデックス。

 

「もう…ダメ…」

「諦めるな!」

「うおおおおお!」

 

バーデックスを押さえるように新たな二つの花…いや、勇者だ。

その正体は…

 

「樹ちゃん!!」

「風先輩!!」

「すみません!」

「ごめん!大事な時に!!」

「風先輩…私…」

「お帰り…東郷。」

「お帰りなさい。東郷先輩。」

「行くよ!!押し返す!!」

 

満開をする二人。

 

更に勢いを止める。だが、それを予測していたかのように更に勢いを強める。相手も必死なのだ。それは此方も同じ。

 

「このーー!四人でも…」

 

勢いが減らないバーデックス。そこへ…

 

「そこかーー!」

「夏凜!!」

「夏凜!?」

 

俺は夏凜を見る。あれは…散華をしている!?しかも何回も…夏凜…君は…

 

「勇者部をなめるなーーー!」

 

夏凜は俺や皆に気が付かないのか…目が見えないし、耳も聞こえないようだ。俺は…彼女の散華も受け持ってやる!!その前にこいつをどうにかしてやる!

満開をする夏凜。これで百人力だ!

 

「よーし!勇者部!」

「「「「「ファイトーーー!!」」」」」

 

大きな花と翼が太陽と化したバーデックスを止める。

 

「うおおおおおおおおお!!」

 

下から…友奈が落ちた所から友奈の声がする。友奈は携帯を使わず変身した。友奈は…真の勇者なのかもしれない。

 

「私は、讃州中学勇者部ーーー!」

「友奈!!」

「友奈さん!!」

「友奈!」

「友奈ー!」

「友奈ちゃん!!」

 

「勇者!!結城友奈!!」

 

友奈の拳が太陽と化したバーデックスに一撃を与える。

 

「うおおおおおおおおおー!」

 

バーデックスの太陽の中、友奈の満開の拳が消えていき、変身すらも消えていく。だが、それでも友奈は突き進む。ミタマを…皆を守るため。手を伸ばす。バーデックスのミタマに必死で手を伸ばす。

 

「届けー!」

 

その時だった。友奈の背中に翼が生えた。その事は友奈は知らない。だが、翼が生え、そして、友奈の手がミタマに触れる。

 

大きな爆発を起こして、バーデックスは消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其々倒れている勇者の五人…

 

最初に気が付いたのは東郷だった。

 

花びらが舞う。其々の花びらが皆を祝福するかのように舞う。その花びらはまるで勇者を労るかのように。その花びらには…花びらとは違う異質なものまで混ざっていた。羽だ。白い…いや、薄い黄緑色の羽が全員に落ちて来ていた。それぞれ目を覚まして行く。

 

「終わった…の…?」

 

最初に口を開いたのは風だった。

 

静かな世界。まるで、ここも時間が止まっているかのようだ。

 

東郷は友奈の方を見る。

 

「友奈ちゃん…」

 

東郷は友奈を見て言った。

 

「友奈ちゃん…」

 

東郷はここで気が付いた。友奈が…目を覚まさないことに…

 

「友奈ちゃん!友奈ちゃん!友奈ちゃん!」

 

東郷の叫びのような声に…友奈は反応を見せない。

 

そして、友奈の意識を置き去りにするかのように、樹海が…解けて行く。

 

友奈は…散華として、魂を…神樹に捧げたのだ。

 

そして、もう一人の勇者部部員も…そこに姿は無かった。まるで、友奈の魂と輝積が、この戦いの犠牲…いや、皆の無事と対価交換のように。

 

上賀輝積は勇者でない

 

続く…




とうとう次回で最終回

兎に角次回予告






次回

最終回 さよならは言えない


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最終回 さよならは言えない

とうとう、最終回です。

まさかの展開が…

まあ、その要素はあまりないですけど…

取り合えずどうぞ。


大きな樹の下、その樹のものだとわかるほど大きな樹の根。そこに少年は座っていた。

 

樹の名前は神樹。この四国を守った神の集合体。そして、勇者に力を与え、散華によりその代償を貰う。ただ願いを叶えるための存在。神とはそういうものだ。

 

神樹の樹の根で座っている少年…上賀輝積。彼は神樹に交渉するために来た。

 

上賀輝積、彼は別世界の住人でこの世界の傍観者。そして、現人神である。

だが、彼は、今、讃州中学勇者部部員としてここにいた。

 

「なあ、神樹…皆を元に戻してくれないか?」

 

輝積がそう言った。神樹はザワザワと音を立てる。ここは、樹海。風など起きない。ならば、なぜ音を立てたのか…神樹が輝積の言葉に反応したからだ。

 

「…そうか。そのつもりだったのか。」

 

神樹は人の言葉を知っている。だが、それは人と話す時のみ使う。だが、今いるのは人ではない。神樹は傍観者として連れてきた少年を自分同様、神として認めたのだ。だからこそ、神樹は人としてではなく、神として話したのだ。神同士に言葉は不要。特に大きな神としてこの世界に君臨する神樹にとっては尚更のことだ。

 

「…今来てもた何もならないぞ。友奈。」

 

神樹の木下にもうひとつの人影が現れる。

讃州中学勇者部、結城友奈。

 

「神樹様に話に着ました。」

 

友奈は輝積に気が付かず神樹に話しかける。

 

 

無視された…

 

そう、神樹と一緒にいるというとんでもないことしてんのに友奈に無視された。これは何としても気付かせるべきだ。

 

「おーい、友奈~」

「え!?輝積君!?なんでここに!?」

「言ったよね~俺、神様だよ。」

「嘘…」

「まあ、友奈がここに来たのもわかるよ。」

 

そう言い、樹の根から降り友奈の所に向かう。

 

「全く…流石、この世界最高の勇者だよ。こんな所まで来るなんて。」

「え?輝積が神様って?え?」

「うーん…今は説明している暇が無いから、後で大赦にでも聞いて。そんなことより、友奈はどうしてここに来た。」

 

来た理由なんて知っている。だけどあえて聞いたのだ。彼女の本当の意思を確認するために。

 

「そうだ!神樹様!!皆を元に戻して下さい!!」

 

友奈は神樹に向かって言った。

 

その言葉を待っていたかのように神樹はザワザワと音を鳴らす。

 

「神樹は嬉しがっているよ。」

「え!?どうして!?」

「神樹はね…真の勇者を探していた。それこそここまで来て自分に話しかける…いや願いを言いに来るほどの強い心を持っている人を。友奈、君は気がついているかい?」

「え?ちょっと待って…何言ってるかわからないよ。」

「君は今どうしてる?」

「え?神樹様に御願いを…」

「君は今、立っている。」

 

そう、友奈は立って話しているのだ。

 

「あ!本当だ!でもどうして…」

「散華で失ったはずなのにか?」

「もしかして、また輝積君が?」

「いや、今回は何もしてない。」

「じゃあ…どうして?」

「…強い者はね、魂が強い。友奈、君はとても魂が強い。それこそ、ここまで来れるほど。今の友奈には肉体が無いんだ。」

「え?えーーーー!」

 

え、しか言わない友奈。驚き過ぎだろ。まあそれが友奈何だろうけど。

 

「まあ、大丈夫。帰り道はあるから。」

「ちょっと待って…もう、何が何だか…」

「まあ、安心してくれ。皆元に戻ってるよ。」

「本当?」

「ああ。神樹はね、君みたいな勇者を探していた。これはただの試練。いずれ神樹は皆を元に戻す予定だった。」

「そう…だったんだ。」

「さて、友奈、皆が呼んでるぞ。」

 

友奈の回りから声がする。東郷の声…いや、勇者部全員の声だ。

 

「本当だ。じゃあ、早く行こう。」

 

勇者は俺の腕を掴む。だが、俺は動かない。

 

「どうしたの?輝積君?」

「俺はまだ戻れない。」

「!?どうして!?」

「やることがあるんだ。」

「でも…」

「一人でも戻れるだろ。」

「でも…」

「はあ…結城友奈!!」

「はい!」

 

俺は友奈を呼ぶ。友奈はそれに答えるように大きな声で返す。

 

「神樹の勇者、そして、俺公認の勇者の友奈だ。一人で先帰ってろ。」

「え?輝積君公認って?」

「まあ…神樹に勇者がいるように、神っていうのは、勇者を何人かもってるものなんだよ…俺の勇者が友奈って訳。」

「えーーーー!?私、輝積君の勇者なの!?」

「うーん…なんかそうなった。てか、友奈は俺と神樹の勇者な訳で…何だろう、話し難いな。取り合えず、先帰ってて。あ、風先輩にちゃんと奢って貰うから覚悟しておけって言っておいて。んじゃ~」

「ちょ!輝積君!?」

 

友奈はまるで蜃気楼のように消えていく。

 

そして、俺は神樹と向かい合う。

 

「なあ、神樹…少し時間をくれないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

讃州中学文化祭。

今、体育館では幾度となく試練を乗り越え勇者としての勤めを果たした勇者部が演劇を行っている。

 

「結局世界は嫌なことばかりだろ!?」

 

風演じる魔王がそう言う。

 

「そんなことない!」

 

勇者はそう言う。この世界を救った真の勇者。この会場にいる人の中で本当のことを知っている人は五人しかいない。今演劇をやっている勇者部の五人しか…

 

「大切だと思えば友達になれる。お互いを思えば何倍でも強くなれる!無限に力が湧いてくる!!」

 

勇者部の五人はまだ知らない…

 

「へ~良い演技だな…」

 

会場に勇者部の一人がいることに…

彼の役は頑張る勇者のサポートをする仲間役だ。だが、彼は…それが出来なかった…。

ここに来た時にはもう演技が始まっていた。

役しか言われず、この世界から消えた彼にとっては何をすればいいのかわからず、取り合えず今演劇を見ているというわけだ。

 

「世界には嫌なことも悲しいことも自分だけではどうにもならないこともたくさんある。だけど、大好きな人や友達がいればくじけるわけがない。諦めるわけがない。だから…勇者は負けない!!」

 

真の勇者は風演じる魔王を斬る。(実際には斬れてません。)

風は盛大に倒れる。少しオーバーな気はするがそこがいいのかも…

 

「ふう…」

 

一息する真の勇者…友奈。だが、異変は起きた。友奈は倒れそうになる…

 

俺は…無意識に友奈の体を支えていた。

 

「大丈夫か!?友奈!」

「あ…輝積君…やっと来た。」

「友奈ちゃん!!」

 

東郷や樹ちゃん、魔王役で倒れていた風先輩、夏凜が駆け付ける。

 

皆、俺に驚いたけどまずは友奈を心配した。

 

「大丈夫、立ちくらみがしただけだから。」

 

会場からは盛大な拍手が贈られる。俺何もしてない…

 

その後…新聞部と本当の新聞記者が来て勇者部の皆を撮っていった。てか、俺まで写ってたけどいいのかな?

 

そして、劇が終わり勇者部の部室。

 

とても久しぶりな気がする。

 

「さーて、劇には半分以上間に合わなかった幽霊部員も帰ってきたし…」

「すいません…」

「でも、帰って来たんだし許してあげましょう。」

「夏凜…あんた天使や。」

「なんで関西弁なのよ…」

「友奈ちゃんが言った通りだったね。」

「ね。言ったでしょ。輝積君は帰ってくるって。」

「友奈さん凄いです。」

「え…帰ってくるのに精一杯だった俺は?」

「輝積さんは…一応凄いと思います。」

「えー…ねえ、友奈…皆に大事なこと話してないよな?」

「え?何?」

「俺一応神様なのに~」

「あ~、言ってなかった。」

 

この野郎!!大事なことだろ!それと…

 

「え?神様って?」

「風先輩!」

 

俺は風先輩を指差す。

 

「は、はい!」

「うどん…奢って貰いますよ。」

「え…あれね…もうやっちゃった…友奈の退院祝いに…だから、私の財布の中無いのよ…」

「な、何だって…」

 

ショック!!ここまでそれを糧に頑張っていたのに!!

 

「なら、心配かけた輝積が奢りなさいよ。」

「そうよ!」

「文化祭の打ち上げだね。お姉ちゃん。」

「よーーし、いっぱい食べるぞ~」

「無理しないようにね。」

「あ~俺の財布の中身が消えていく感じがする…」

 

そう…勇者部はいつもこんな感じだ。

 

久しぶりの勇者部。安心する。

壁の外が絶望だろうと、ここには笑顔がある。大切な人達が…友人達がいる。

 

俺はこの笑顔を守れたんだ。そして、あの悲劇を繰り返さなかったんだ。

 

皆…体が元に戻った。銀は記憶も体も戻り今は自分のいた家に…そう、弟のいる家に戻っている。園子は体が完全に元に戻っていつか会えるだろう。鷲尾は…東郷はきっと記憶が戻って来ている。だって、あんな笑顔見たこと無いもん。

 

「しゃあない。幽霊部員の奢りだ。俺を神様と思って崇めなさい。」

「なんであんたなんかが神様なのよ。」

「夏凜…俺の正体…」

「兎に角、その話しは打ち上げの時に…ね。」

 

こうして、俺達勇者部はうどん屋に向かう。

 

一人の少年が七人の少女達を救う。

 

少年は勇者ではない。なぜなら神なのだから。

 

 

 

 

 

神我軌跡…

 

上賀輝積は勇者でない

 

 




はい。ここまで読んでいただきありがとうございます。

上賀輝積は勇者でない
はこれにて終わりです。まあ、その内後日談を書いていこうと思います。

ではでは、今度は別作品で会いましょう。

それでは~


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後日談
勇者部の九人


どうも。後日談が完成したので投稿します。

まあ…フラグは立っていたんだ…

ではどうぞ


讃州中学勇者部…一応文化部として登録されている部活動でもあり、ボランティアを積極的に行う部活である。

この勇者部には、部員が八人、顧問が一人いる。

 

犬吠埼風先輩

勇者部の部長で勇者部を創設した先輩だ。大食いで大雑把。何より中二病(中学三年なのに)。でも後輩思いのいい先輩。勇者部で唯一恋愛経験があるらしい。

 

犬吠埼樹ちゃん

風の妹で俺の後輩にあたる女の子だ。控えめの性格だが、やるときはやる根が確りした女の子。タロット占いが得意で良く占って貰っている。勇者部の中で一番歌が上手い。

 

三好夏凜

別名にぼっしー。…嘘です。夏凜は最初の頃はツンツンした態度だったが、今はノリがいい。勇者部の中でも剣道が上手い。煮干しが好きでよく食べている。俺の家のお隣さんでもある。

 

東郷美森

大和撫子の言葉が一番合っている女の子。発育もかなりのもので勇者部一だと思う。料理やパソコンが得意で、パソコンの技術に関しては勇者部一である。別名鷲尾須美という名前で、元勇者、記憶も確りとある。

 

結城友奈

この勇者部の中でも一番勇者ぽい勇者だ。活発系の女の子で、困った人をほっとけない性格。兎に角ポチティブで責任感が強い。一応、俺がこの世界で選んだ最初の勇者だ。

 

三ノ輪銀

友奈に続く活躍系女子。元の体、記憶を取り戻して讃州中学に転入、更には勇者部に入部した。トラブル体質で、よく銀の周辺では何かトラブルが起きる。よく部活に遅刻するが、大抵トラブルが原因である。鷲尾須美の友達でもある。

 

乃木園子

讃州中学に転入してきた、須美の友達。勇者部の全員にあだ名を付た女の子でもある。一応大赦の人間ということになっている。のほほんとしているが、それなりにリーダーシップがあり、次期部長候補である。

 

喜恵久尾

きえきゅうび…俺の精霊。いや。元精霊。今は精霊としてではなく人間としてこの勇者部の顧問をしている。どうやって教員免許を取ったのかは謎だ。一応、家庭科の教師であり、女子生徒から人気は高い。勇者部のみが久尾の正体を知っている。精霊の状態と人間の状態を使い分けている。

 

上賀輝積

そして、俺、上賀輝積。勇者部唯一の男子。その正体は半分神様の現人神である。別世界からこの世界に傍観者とて連れて来られた。

 

あの、戦いが終った後、いや、正式には讃州中学の文化祭が終った後、銀と園子は転入してきた。てか、一番驚いたのは九尾が人間の姿でこの学校の家庭科の教員として働くこととなったことだ。しかも、よりによって勇者部の顧問だし。

あれ?勇者部の部室って元家庭科準備室…

 

深く考えたら負けだな。

 

そんなこんなでもう11月後半。あっという間だった。いや、俺にとってはだ。

 

戦いが終った後、俺は元の世界に戻り修行した。別の世界に行って技術や能力を手に入れた。だが、それだけじゃない。仲間…いや、友達も増えた。

 

だから、勇者部のことを忘れそうになる。毎日が楽しかったから…でも、ここに戻って来た。そう、この世界を救うため。神樹の願いを叶えるため…友奈達を救うために。

 

後少しで天の神と対等…いや、それ以上の戦力がそろう。その準備が終わるのが大体2月28日。その時が最後の合戦になる。天の神対神樹と俺達の連合、戦力は五分五分。でも勝てる。そう信じている。

 

てか、そのために何百年て恐ろしい単位の修行したんだ。負ける要素がない。フラグを建てても破壊すればいい。

 

まあ、2月まで時間もある。その間、名一杯楽しもう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11月後半のある日

 

俺は何故か久尾と一緒に勇者部の外に出された。というか追い出された。何でも女子だけで話しがしたいとのこと。

 

「何でも、俺まで出さなくてもいいのに…」

 

文句を言っている久尾は無視する。こいつは一応男の姿をしているが、元は精霊だ。男女関係ない。その前に人間じゃない。

 

「てか、なんでお前は何も言わないんだよ?」

 

何気なく俺に質問してくる久尾。全く…

 

「いや…だってさ…」

 

追い出されたのはいい。でも追い出された方法が気にくわない。

 

 

 

数分前

 

「よーし、皆いるわね?」

 

風先輩が勇者部のメンバーを見渡す。

煮干しをかじりながら友奈と話している夏凜。対極的にぼた餅を食べながら話す友奈。それを微笑ましく見ながらパソコンを操作する東郷さん。樹ちゃんのタロット占いにハマっている銀。その銀の様々な占いを占っている樹ちゃん。そして、丁度日向で居眠りをしているのが園子。俺は久尾と指相撲中。今の所全勝中の俺。それをムキになって勝負を何度も仕掛けてくる久尾。既に久尾の右手の親指が赤くなっている。

 

「もう一回だ!」

「え~それ以上やったら、右手の親指切断レベルまで行くぞ?」

「…やめておこう」

「はーーい!注目!!」

 

風先輩が、俺達の気を引く。寝ていた園子もそれに気が付いて起きる。

関係ないが勇者部の端には水槽があり、あの夏祭りで俺が取った金魚が九匹仲良く泳いでいる。

その金魚達も風先輩を見つめる。あの金魚達も勇者部でいいのでは無いのだろうか?

 

「これから、大事な話しをします!ってな訳で、久尾先生、輝跡、少しの間出てって」

「なんで?」

「いいから。もし、入って来たら殺すから」

 

冗談無しの目で見てくる。ヤバイ。あれは本気で殺る気だ。

まあ、俺の場合、死なないから別に問題は無い。

 

「え~、別に俺死なないし…」

「社会的にって意味よ?」

 

そう言われたら出ていく以外の答えが無い。いや、だって俺神様だよ?信仰心が無いと死んじゃうんだよ?もし、神様が社会的に死ぬってことは、消えて亡くなるってことだよ?

 

「わかったよ…」

「俺も出ないとダメか?」

「ダメです」

 

キッパリとこの部室にいることを拒まれた久尾。ざま~

 

 

 

そんな訳で勇者部部室から追い出されたのだ。そして、さっきのところまで戻る。

 

そう、俺は気にくわない。神様を社会的に殺すという意味で気にくわないのだ。確かにね、俺にとってはその言葉すら効果抜群の四倍ダメージに急所に入ったよ。いや、神様の俺からしてね。でも、そこまで俺を(正式には俺達を)部室から出さなくてもいいのに。

 

てか、大事な話しをするって言ってたよな。

 

俺はこの時凄い悪い顔をしていた。あの夏休みの女湯を覗かなかった少年とは思えないほどの悪い顔だ。

 

「ど、どうした、輝積。顔色どころか顔悪いぞ」

「なあ、久尾、風先輩が言ってた、大事な話し…聞きたくない?」

「あ?どうせ、誕生日とかだろ?」

「それは無いな。誕生日だとしたら、あのメンツからしてサプライズを企画するはずだ。サプライズをするなら本人を部室から出す。そこまでは合っている。でも、俺もお前も誕生日はとっくに過ぎている」

「なら、俺達以外の誰かか?」

「その可能性は低い。なら、何故俺達を追い出す?」

「あ!」

「そう、俺達には話せない何かだ」

「だが、それが分かってどうするんだ?部室には入れないんだぞ?」

「ふふふ…俺は半分神様なんだぞ?」

「?」

 

屋上

 

誰もいないことを確認して久尾と共に屋上の角に座る。

 

「で、どうするんだ?」

「ふふふ。俺の右目はな、特殊で、風を見ることが出来る」

「?何を言っているんだ?」

「ようは、風…いや、その場の空気の流れを見ることが出来る」

「だから、それがどうしたんだって」

「ここから大事だから良く聞け。俺の右目の有効範囲は兎に角広い。計測出来ないくらいに。それも、障害物を通り越して。だが、大事なのは、特定の場所をピンポイントで見れるってことだ」

「おい!それって…」

「更に更に、俺は別の世界で培った能力が大量にある。それらを利用して…」

 

俺はあるものを、生成する。そう、TV。久尾がかつて壊したあの忌まわしきものだ。そのTVと俺の右目の視界、更に強化された聴力をリンクさせる。(一応無線?)

 

そして、TV画面に勇者部の部室が写し出される。

 

「おい、輝積。この能力ある意味犯罪だぞ?」

「俺も…今気が付いた。でもやってしまったものは仕方がない。それに、大事な話しとかってもの知りたいしな」

 

因みに、俺の右目でもTVと同じものが写っているが、タイムラグは殆ど無い。それに、音もラグ無し。現代家電に勝利を納めている。

 

それはさておき、話しが始まるみたいだ。

 

俺と久尾は画面を見つめる。いや、右目が見えてるけど一応画面でも見たいし…

 

『そんじゃ、話し始めるわね…』

 

なんか重い雰囲気があるぞ…普段の勇者部ではあり得ないぐらいのプレッシャーだ!あのほのぼのはどうした!?

 

『偽り無く言いなさいよ…』

 

風先輩の一言一言が重い。てか、生唾を飲むレベル。なんだこれ?本当に勇者部か!?

 

『この中で好きな人がいる人…』

 

…そんなことか。緊張して損したじゃん。だって風先輩達は花の中学生。恋の一つや二つ当たり前だ。なーんだ、そんなことか。

 

「おい…輝積。お前、これは見ない方がいい」

 

真剣な顔で俺を見てくる久尾。なんで、そんなこと言うのかわからない…

 

「なんでだよ?」

「気が付かないか?この部室に包まれるオーラ…そして、それぞれ緊張した表情…これは…もしかしたら、最悪の結末が…」

「なんの話ししてるの?」

「いや…これは本当に見ない方がいい」

 

いつにも増して真剣だな。

 

『はーい!』

 

画面の緊迫感が変わった。そう、園子が手を上げているのだ。意外だった。そう、園子に好きな人がいることが意外なのだ。彼女の性格状、最初にそういう彼女達にとっては大事なことを言うだろう。

 

『私ね、きっきーのことが好き~』

 

…はぁ?

 

いや、俺は園子からきっきーって呼ばれている。だが、今なんて言った?俺のことを好き?それは友達としてなのか?いや、この流れからすると、男女間の間の好きとなる。

 

「や、やはり…輝積!これ以上は!」

 

気になる…他の人…いや、勇者部の皆が好きな人が…何だろう、今から園子に告白すれば俺らカップル成立…リア充になる。それはそれでいい。なんというか、園子はスタイルもいいし、おしとやか…というよりもおっとりしていて、可愛い…あれ?なんか意識し始めると余計に可愛く見えてくるぞ!?

 

『やっぱりか…次!誰カミングアウトする?』

 

やっぱり?何がやっぱりなのだ?風先輩?まさか、園子が俺に惚れていたことを知っていたのか!?なんという観察眼!俺ですら気が付かなかったぞ!

 

『は、はい!結城友奈!言います!!』

 

手を上げて自らアピールする友奈。まさか、恋愛無関係第一位(俺の中で)の友奈に好きな人が!?ま、まさか、東郷さんじゃ…いや、百合展開も悪くはない。それに、もし、友奈に彼氏でも出来てみろ。その彼氏、殺されるぞ。主に東郷さんに。

ほら、東郷さんが友奈のことガン見してるから。もし、ここで、男の名前が出たら、その男は死刑確定だな。

 

『輝積君です!』

 

…\(^o^)/

 

死んだーーーー!俺が死んだーーーーー!

 

不老不死とか以前に死んだ。そう、俺は永遠に死刑判決を喰らったようなものだ。

まあ、友奈という超絶美少女から思いを寄せられていたのだ。それだけでも儲けものだな。うん。さて、遺書を書くために文房具屋にでも行くかな…

 

『友奈ちゃんもなの?わ、私も、輝積君のことが…』

 

へぁ!?え!東郷さん!?その乙女な表情、まさか…

 

『東郷もか…銀、あんたは?』

『私?うーん…輝積のことは好きだよ。うん。好きだ』

 

えーーー!銀まで!?ど、どういうこと!?

エイプリルフールじゃ無いよね!?

 

『樹、あんたも、輝積のこと好きなんでしょ?』

『う、うん』

 

待て待て待て!!どういうこっちゃ!

 

『わ、私も…輝積のこ、ことが…す、す…』

 

今にも爆発しそうなくらい顔が真っ赤になる夏凜。え!夏凜もかよ!

 

『はあ…勇者部の女性陣は全員輝積にベタ惚れと…』

 

おいおい、その言い方…風先輩まで惚れてるような言い回しじゃないですか!

 

「やっぱり…」

 

飽きれ顔で俺を見てくる久尾。おいおい、俺は悪くないぞ!

てか、俺、どんだけ愛されてんだよ!!

 

『勇者部全員が輝積のことが好きなのはわかった。でも、問題はそこから』

 

いつにも増して真剣な風先輩。てか、風先輩も俺に!?いやいや!どんなトラブってる主人公だよ!てか、そんな描写無かったよね!?

 

「で、輝積。誰を選ぶ?」

 

真顔でそんなこと言うな!!

結局どれを取ってもバットエンドだろ!

一人を選ぶ→他の部員から冷たい目→\(^o^)/

誰も選ばない→皆から冷たい目→\(^o^)/

全員選ぶ→ハーレム確定→変態的な目で世間から見られる→\(^o^)/

うん、バットエンドだ。

 

『ここは、勝負でいいんじゃない?』

 

そう言い出したのは銀だった。いや、勝負も何も俺が終ったことには変わりないですから。

 

『そうね。輝積争奪戦ね』

 

ノリノリになってる風先輩。何?俺が賞品なの?

 

『絶対、輝積君を手に入れる!!』

 

意気込む友奈。俺は物なのか?

 

『友奈ちゃん、今回、私は敵よ。手加減しないから』

 

マジだ。東郷さんがマジだ。友奈相手でも本気出す気だ。

 

『…』

 

樹ちゃんが地味にタロットで占って少し笑顔になってる!おいおい!まさか、俺との恋愛運を占ったのか!?

 

『負けないから~』

 

園子は笑顔ではある。だが、もう、オーラが出てる。だってゴゴゴってなんか見えるんだもん!

 

『はぁ?私が勝つに決まってるじゃない!』

 

まだ少し顔が赤い夏凜。てか、夏凜が言った瞬間、ドンって擬音が聞こえた気がしたぞ!?

 

『さて、何で勝負する?』

 

風先輩の一言で部室が凍ったように固まる。

おい、決めて無かったんかい!

 

「輝積、本当に誰を選ぶんだ?下手したら余計な血が流れるぞ?いや、あのメンバーではあり得る話しだから言っているんだぞ」

 

誰を選ぶ…うーん…

 

「一人を選んでも全員選んでも殆ど死刑と同等なんだよな…」

 

考えろ…どうするか…

 

そうだ!

 

「よし!決めた。皆俺のことを思ってくれているということはわかった。なら…」

「なら?」

「俺を落とした奴と付き合う!!」

「…」

 

冷たい目で俺を見る久尾。な、なんでそんな顔するんだよ。

 

「お前さ、この中で気になる子はいるのか?普通その子と付き合うんじゃないのか?」

「え?だって…勇者部の皆は友達だから、あんまり思ったこと無いよ」

「…少し考えて…」

 

俺は久尾に持ち上げられる。首根っこを捕まれて。

 

「こい!」

 

ここは屋上だ。そう、屋上。地上から十何メートルもある屋上だ。そこから落とされた。そう、落とされたのだ。勿論、落とされたということは、位置エネルギーが俺の体に加わりそのまま落下する。重力落下である。

 

…あれ?俺のことを最初に落とした(物理)のはまさかまさかの久尾?

 

いや、これはノーカンだな。

 

グラウンドにクレーターがこの後出来た。

 

 

 

勇者部部室

 

「よし!なら、誰が輝跡の心を射止めるか勝負よ!」

 

風先輩のこの一言によって勇者部女性陣による俺の争奪戦が始まった。




ハーレムルート確定か…
まあ、どうなるかは次のお話で…

後日談は大体四話ほどの予定です。

それでは…


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勇者部恋愛事情

はい、後日談その二です。

では、どうぞ。


そんなことがあって何週間か過ぎた。あれから、勇者部の女性からの目線が変わった。帰りは積極的に一緒に帰ろうと言ってくるし、休日はどこかに出かけないかと聞かれたり(所謂デート)兎に角忙しかった。

まあ、俺はいつも通りに過ごすけど。まあ、俺が惚れさせることが、彼女達の今の目標だ。

因みに、あの話しは聞いてないことにしている。

 

モテる男も辛いね。

 

そんなこんなで12月。

 

とある日、クリスマスまで残り二週間ほどのある日。

 

休日であるこの日は勇者部としての活動を午前中行い、お昼に勇者部部室に皆で集まっていた。(久尾は学校のお仕事で今日は来ない)だが、俺はここで違和感に気が付く。そう、皆、それぞれ弁当箱を持ってきているのだが、それぞれ一つ多い。俺も弁当は用意している。勿論手作りだ。だが、この展開からして、皆が持っている余計な弁当箱は…

 

「き、輝積…あの、べ、弁当、余計に作って来たからあげる」

「お、おう。ありがとう」

 

まあ、そうなる。夏凜は顔を真っ赤にしていた。夏凜のお弁当箱は赤色の可愛らしい小さな弁当箱だ。

 

「ちょ!夏凜!抜け駆けは許さないわよ!」

 

風先輩がそう言っているが、貰ってしまった物、特にお弁当などは仕方がない。

 

「それじゃあ、私も」

 

そう言われて友奈が弁当箱を渡してくる。

まあ、有りがたいことではある。普通の場合。友奈の弁当箱も小さめだ。だが、何故か質量がある感じがする。何を入れればこうなる?

 

「あ、ありが…」

「きっきー~私からもあげる~」

 

お礼を言う前に園子からも弁当を貰う。

園子のお弁当箱…ってか、なんか高級感溢れる弁当箱なんですけど!?

 

「あーもう!輝積!私からもあげるわ!」

 

投げやりな感じで風先輩からも貰う。風先輩の弁当箱は…銀色の保温が効くやつだ。

 

「わ、私からも…」

 

今度は樹ちゃん。少し小さめのお弁当箱だ。彼女らしい可愛らしいお弁当箱だ。

 

「今度は私!」

 

活発系女子の一人である銀からも貰う。いや普通の弁当箱だ。黒色の良く見かける弁当箱だ。

 

「ふふふ、勝ったわね…」

 

何故か勝利発言している東郷さん。何が勝ったの!?てか、この展開からしてやばそうなんですけど!?

 

東郷さんが取り出したのは…重箱だ。

 

おかしいだろ!

 

弁当箱が重箱とか!お正月か!生徒会にいる変態秘書か!

 

「愛情を詰め込んだわ」

 

それは、愛情ではなく、具を詰め込んだんだよ!いや、愛情もあるとは思う。でも、それはおかしいだろ!

てか、どこから重箱出した!?東郷さん、来るとき鞄以外持ってなかったよね!?しかも、サイズ的に鞄に入らないよね!?

 

「ま、負けた…」

 

風先輩!?何が負けたんですか!?庶民的に言ったら風先輩の圧勝ですよ!!

 

「か、完敗した…」

 

樹ちゃん!?いやいや、世の中量より質って言うよ!

 

「さ、流石、わっしー…」

 

流石も何も無いよ!!

 

「確かに…凄いよ!須美!!」

 

凄くない!普通の男子なら喜ぶよ!でも、自分の弁当があって、更には女の子七人からお弁当を貰う…俺はどんだけハングリーなんだよ!(まあ、ハングリーですけど…)

 

取り合えずお弁当を食べる。

 

まず、最初に手をつけ…

 

な、悩む…この場合、最初に手をつけた弁当箱によっては、好感度が…

うーん…

 

「あれ?輝積君、食べないの?」

「いや、食べるよ。でもここまで多くお弁当があるとどれから手をつければいいか迷うんだよ」

「ふふふ、そんなこともあろうと、じゃーん!クジを作って来たのだ!!」

 

風先輩の手元には割り箸に番号が書かれた割り箸、更には赤い色の付いた割り箸、合計8本。いや、これ、王さまゲームのやつですよね?たまたまですよね?

 

赤い色の付いた割り箸を除外してそれぞれクジを引く。誰が一番か…

 

「あ、私だ!」

 

風先輩が一番のようだ。

 

良かった…なんか安心した。

 

風先輩のお弁当箱を開けてみる。卵焼きは定番として、タコさんウインナーなど、色とりどりで、食欲が湧く。

 

「いただきます」

 

そして、卵焼きを口に運ぶ。お弁当といえば卵焼きは定番。更には卵焼きによってその女性がわかると言われるほどの定番である。

 

「どう?美味しい?」

「うん…美味しい」

 

いや、美味しい。率直な感想だ。ガッツポーズをする風先輩。いや、もっと女の子ぽくして貰えば可愛いのに。まあ、それが風先輩のいいところだ。

 

兎に角、このままゆっくりとお弁当を食べていたら日が暮れる。急いで風先輩のお弁当を食べ終わる。

 

「は、早!」

 

風先輩がそう言っているが、仕方がない。時間がないのだ。(主に東郷さんのお弁当の攻略に)

 

「風先輩、美味しかったです」

「あ、ありがとう…」

 

顔を真っ赤にする風先輩。おいおい、先輩のメンツ大丈夫か?

 

「そ、それじゃあ、次、私…」

 

自信無さげな樹ちゃん。確か樹ちゃんは料理が苦手なんだっけ?けど作ってくれたんだ。ありがたく思わないと。

 

小さなお弁当箱を開ける。やはり、定番の卵焼き、それに、ごはんと野菜が少々。うん、苦手でも頑張った方だ。

 

「いただきます」

 

卵焼きを口に運ぶ。うん、よく頑張った。美味しい。

 

「その…美味しいですか?」

「美味しいよ」

 

そう言える。比べる訳ではないが、風先輩よりは味は薄めだ。だけど、美味しい。本当によく頑張った。

 

卵焼きを味わった後、急いで樹ちゃんの作ってくれたお弁当を食べ終わる。

 

「き、輝積さん…よく噛んで食べた方が…」

「大丈夫。最低30回は高速で噛んでるから」

「普通に噛んでるように見えるんだけど…」

「ご馳走さま、樹ちゃん、美味しかったよ」

「聞きなさいよ…」

 

樹ちゃんは顔が真っ赤だ。

夏凜の突っ込みを無視して、次のお弁当…

 

「ま、まあ、不味かったら、残してもいいから…」

 

夏凜だ。夏凜のお弁当箱…さっきも思った通り、可愛らしい。てか、良くみるとリンゴの形をしている。いや~夏凜の可愛いポイント発見ですな。

 

お弁当箱を開けてみる。卵焼きは定番。鮭に、少しの野菜、栄養価をきちんと考えられたお弁当だ。

 

「いただきます」

 

やはり、卵焼きは最初。うん?しょっぱいかな?けど、なんか、夏凜らしい。他は少し味が薄めだ。うん、普通に美味しい。

 

「ど、どう?」

「うん。美味しいよ」

「よ、良かった…」

 

深く息を吐く夏凜。いや、本当に美味しいから安心してもいい。

 

また高速で食べ終わる。いや、ちゃんと噛んでるよ。この噛むスピードは神の領域なだけです。

 

「ご馳走さま」

「お、お粗末様…です」

 

終始赤かった夏凜。次のお弁当は…

 

「はーい!私のお弁当だよ!」

 

銀のお弁当だ。黒色のお弁当箱。よくサラリーマンとかが持っていそうなお弁当箱だ。

 

「いただきます」

 

お弁当箱を開けてみると、やはり卵焼きはある。だが、これは…海苔弁なのだ。黒色で、オカズもしっかりしている。てか、海苔の黒のおかげか、オカズが綺麗に見える。

 

やはり、卵焼きから食べる。うん、家庭的で美味しい。

 

「お、美味しい?」

「美味しいよ」

「良かった~」

 

夏凜や風先輩と違って顔が真っ赤になることはないが、俺が美味しいって言った瞬間の笑顔はとても可愛らしかった。

まあ、急いで食べないといけないので、銀には失礼だが、早めに食べ進み、食べ終わる。

 

「ご馳走さま」

「お粗末様~」

 

終始嬉しそうな銀。

 

「はい!次は私です!」

 

次のお弁当は…友奈だ。うん、あのお弁当だよな。質量がおかしいお弁当箱。

俺は恐る恐る開けてみる。

 

一面肉。しかもぎっしりと。

 

「いや~、輝積君って男の子だからさ、肉の方がいいと思って…」

 

いやいや!!肉が好きなのあんたなんじゃないの!?てか、ごはんが無いし!!

まあ、胃もたれを覚悟して食べてみよう。

 

「いただきます…」

 

箸で肉を掴み口に運ぶ。うん。肉。

 

「どう?美味しい?」

「うーん…美味しい…」

「良かった~」

 

良くないです。一枚肉を食べたと思ったらその下も肉。しかも、肉はあまり味付けされていない。いや、塩味しかしない。これ、ほんの数分で作ったろ。でも、それでも、作ってくれたことに感謝はする。

 

肉と格闘すること数分、流石の俺でも、胃もたれしそうだ。てか、どんだけ肉を敷き詰めた!質量おかしいぞ!

それでも、なんとか食べ終わった。

 

「ご馳走さま…」

「わーい!完食だ!」

 

まあ、喜んで貰えるのは嬉しい。でも、今度から栄養価を考えたお弁当を作るように言っておこう。

 

「次、私~」

 

次は…園子だ。園子の料理姿とか、想像出来ない。いや、家庭的な雰囲気は勇者部一だ。そう、雰囲気は…

高級感溢れるお弁当箱…少し金メッキが施させた黒い漆塗りのお弁当箱…

 

中を開けて見る。

 

「私、料理ってあんまりしたことが無いの~」

 

見た目は…普通だ。うん。普通。

 

「いただきます…」

 

やはり、卵焼きから最初に食べる。

 

 

 

 

うん、園子、お前は料理をしてはいけない人間なのかもしれない。

 

急いで食べ進める。

 

「どう~、美味しい~」

「…ノーコメントで…」

「えー!」

 

本人が一番驚きのようだ。いや、まだ、暗黒物質でないだけいい。

 

「ご馳走さま…」

 

食べ終わり、胃の中の感覚を確認する。うん、園子の料理は無事消化出来るようだ。

てか、この勇者部の女性陣は俺にどんだけ食べさせる気だ。いや、愛情なら込もっているなら、量を少なくしてほしい。

 

「さぁ、輝積君、最後は私のお弁当よ」

 

そして、最後に出てきたのは…東郷さんのお弁当だ。既にラスボスである。

 

東郷さんはおもむろに重箱を開け始める。

 

まるで、中のオカズ達が輝いているようだ。

 

「ま、まさか!東郷!あんた!」

「ふ…風先輩、銀…今回は、私の圧勝です…」

 

まるで勝ち取った表情の東郷さん。俺は、神々しいお弁当に箸を進める。そして、定番でもある卵焼き…いや、既に金色へと変貌している金の卵焼きを箸で持ち、

 

「いただきます…」

 

口に運ぶ。

 

 

美味しい…。それしか、わからない。いや、俺だって色々な料理を食べてきた。だが、美味しいってしかわからないなんてあまり無い。

 

「どう?輝積君?」

「いや…美味しいよ」

 

でも、なんだろう、いやな予感しかしない。

 

食べ進めて行く。流石に量があるため、時間がかかる。

 

そして、なんとかラスボスを攻略する。流石にお腹もいっぱいだ。

 

「ご、ご馳走さま…」

「お粗末様です」

 

お腹いっぱいだ…。

 

「で、誰のお弁当が美味しかった?」

 

風先輩の一言で皆俺を見る。誰って…

純粋に答えていいのか、それとも、偽善を入れた方がいいのか…

 

「輝積君、正直に答えて」

 

東郷さんがいつにも増して真剣だ。

 

なら、お弁当だけで答えさせてもらう。そう、味だけで…

 

「俺の」

 

部室が静まる。

 

俺は自分の弁当を出す。そして、お弁当箱を開ける。輝いている訳でも無い。栄養価もしっかりしている。

 

「まあ、試しに俺のお弁当を食べてみて」

 

皆恐る恐る俺のお弁当に手をつける。

 

そして、口に運ぶ。

 

「お、美味しい!!」

「輝積君がここまで料理が上手いなんて!!」

「負けたわ…」

「前より上手くなってる!」

「もう、お嫁に欲しいくらいよ!」

「すごーい!美味しいよ!きっきー!」

「お、美味しいです!」

「な、なんでこんなに美味しいのよ!」

 

まあ、結果的に言えば俺の勝利。あれ?肝心なことを忘れてる…

 

そのあと、解散となり、各々家に帰る。俺も、銀に遊ばないかと誘われたが、断った。いや…あれだけの量を食べたんだ。よくお腹を壊さないよ。まず、家に帰って横になりたい…

 

俺は帰路に立つ。

 

 

 

結果から言えばうやむやにされたお弁当対決。結局は誰も俺の心を射止めることが出来ず、しかも、料理の腕は俺の方が上という残念な結果に終わった。

 

因みになのだが、俺がなんでここまで料理が得意かと言うと、独り暮らしが長いし、修行も予て料理の練習や実験をしていたからだ。

それを何百年とやれば、料理の腕も嫌でも上がる。

前にここに住んでいた時よりは格段に料理の腕は上がったと思う。もう、そこらへんの料理人には負けない自信がある。

 

 

 

クリスマスまで後二週間。

クリスマスは幼稚園での活動の後、クリスマスパーティーをする予定らしい。まあ、どうせ勇者部の部室だろうけど…

 

この予想が、間違っていたことに、この時の俺は気が付かない。




残り後二話。

次回クリスマス回です。
うん、季節外れもいいところだな。

それでは…


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勇者部のクリスマスパーティー

はい…少し遅れました…

別の作品を書いていたもので…

では、どうぞ…


クリスマス。それは旧世代のイベントの一つ。って言っても、俺は色々な世界を飛んでるから、普通にいつものイベントなのだが。

だが、恋する乙女達にとってはかなりの高感度を稼げるイベントである。

 

しかし!勇者部にそんなもの無い!

 

今、保育園で子供達相手に遊んでいる。まあ、今回は、子供達に玩具やお菓子を上げるサンタ役として来たのだが、子供達は、それをわかっていてなのか、俺達と遊びたいと言ってきて、遊んでいる。まあ、子供は嫌いではない。だからと言って好きかどうか言われるのは別だ。だって、好きと言えば女の子の場合ロリコン、男の子の場合ショタコン、或いはホモと呼ばれる。まあ、俺は好きでも嫌いではないだけだがな。

 

勇者部は全員サンタやトナカイの格好をしている。うん。全員それなりに合っていて可愛い。友奈、東郷さん、樹ちゃん、園子がサンタ、風先輩、夏凜、銀、そして俺がトナカイ。

 

俺は四つん這いになって背中に子供を乗せて歩き回る。これだけでも子供達は興奮する。本当、子供は元気だ。

 

てかさ、女性陣は可愛らしい格好なのになんで俺だけ着ぐるみなんだよ。いや、いくら女性陣が全員俺に惚れているからと言ってもいつもどおりに俺と対応しているのだ。デートに誘われることが多くなったけど、あのお弁当以来お弁当を俺に作って来てくれた人はいない。どうやら、相当ショックだったのだろう。まあ、仕方がない。

 

兎に角…暑い。冬なのに…

 

そして、子供達から解放される。

用は勇者部としての活動は終わりということだ。あ、因みに、久尾もいたよ。まあ、精霊の状態で逃げようとしてたから子供達のところに放り込んだけどな。そのあと久尾が凄くもみくちゃにされた。まあ、あのもふもふだからな。仕方がない。そう、仕方がないのだ。

 

久尾は人の姿に戻って一足先に帰った。今は久尾は独り暮らし。俺と別々に暮らしている。

友奈にこの後クリスマスパーティーがあることを聞かされた久尾だったが、子供達にもみくちゃにされたのが相当効いたのか、早く帰りたいと言って帰ってしまった。

 

 

 

そして、俺の家。時間は午後六時。辺りはすっかり暗く…って…

 

「なんで皆俺の家にいるの!」

 

そう、クリスマスパーティーをするとは言っていた。だがどことは言っていない。そう、最初からクリスマスパーティーは俺の家でやることとなっていたのだ。そのことを知らないのは俺だけだ。なぜ俺だけ知らなかったかというと、ある意味のサプライズのようだ。

 

「まあまあ、座って。今回は私達が全部用意したから」

 

そう風先輩に言われて一旦落ち着こうとする。

 

てか、自然な流れで俺の家に入って来たよな。銀に予備の鍵を渡していたのが失敗だったか…

 

それぞれ担当が決まっているらしく、ケーキ担当の東郷さんと風先輩。普通のショートケーキを東郷さんが鞄から取り出す。因みに手作りだ。てか、東郷さんの鞄ってあの青い猫型ロボットのポケットと同じなのではないだろうか…

そして、お菓子担当・食べ物担当の友奈と銀、樹ちゃん。まあ、普通のお菓子ばかりだな。異様にポッ〇ーやトッ〇が多いが…。料理はピザにチキン、ポテト。クリスマスには定番なものから、うどんまである。因みにうどんは俺の家で茹でて置いてある。後はつゆをかけて、それぞれ好きなものを乗せるだけ。天ぷらなども大量に買ってきた。

ジュース担当の夏凜、園子。園子がお勧めするジュースを持ってきたとのこと。まあ、ジュースなんてどれも同じようなものだから、大丈夫か。

 

そして、クリスマスパーティーが始まる。

 

ケーキを分けてうどんを分けて…

 

皆ワイワイとさわぐ。

 

この時、俺はある異変に気が付かなかった。

 

俺は夏凜が買ってきたスポーツドリンクを飲む。炭酸などもあるのだが、何となくスポーツドリンクが飲みたかったので飲んでいる。風先輩と東郷さんの合作のケーキはとても美味しかった。そう、ケーキを食べ終えて、ジュースのお代わりをした時に異変は起きた。

 

最初に異変が現れたのは友奈だった。異様に顔が赤い。

 

「友奈ちゃん?大丈夫?」

 

心配した東郷さん。友奈に話しかける。

 

「へへへ…東郷さん!」

 

今、恐るべき光景を見ている。友奈が東郷さんの…その…唇を…奪ったのだ。

 

突然の友奈の行動に驚いて動けない東郷さん。

 

それに気が付いたのは俺と、唇を奪われた東郷さんのみ。

他の女性陣はワイワイと騒いでいる。

 

「へへへ…東郷さん~輝積君~」

 

唇を奪われるというあまりにもの衝撃で東郷さんの脳内はパニックを起こし、顔を真っ赤にして現実から意識を飛ばす。要は気絶した。

 

そして、俺に寄ってくる友奈。ま、まさか…

 

友奈の飲んでいたジュースに目を向ける。コップに入っているのは透明な液体。普通、それは水と見れる。だが、違う。あれは、酒だ。しかも日本酒。

東郷さん以外のコップを見てみる。東郷さんは俺と同じ、スポーツドリンク。だが、他の皆は透明な液体。

これは…酔ってる!そして、友奈は酔うとキス魔になる!

 

「輝積君~」

 

甘い声で近付く友奈。止めろ!友奈!お前は今酔ってるんだ!目を醒ませ!!

 

俺は絡んできた友奈を引き離す。危ないぞ…

 

「ちょっと!輝積さん!私を差し置いて友奈さんとラブラブしないでください!」

 

強気に言っているのは、樹ちゃんだ!樹ちゃん!君のキャラ変わってる!!

 

「輝積さんは私のものなんですから!」

 

樹ちゃんが引っ付いてくる。や、止めろー!

 

「駄目だよ~きっきーは私のものなんだから~」

 

そう言って園子がどこからか槍を取り出して来た。何しようとしてるの!

 

「樹は、私が守るわ!そして、輝積も守るわ!そう!私は神賀風よ!」

 

風先輩!?なんか俺の苗字になってますよ!?勝手に結婚させないでください!

 

「にゃにをいってんだ!輝積はねぇ!私のおっとなよにょ!」

 

もう、何を言っているのかわからないよ!夏凜!てか、デレても良いけど言葉までデレなくていいから!

 

「はっはっはっは!あー面白い!輝積って本当面白い!!」

 

顔が真っ赤になりながら透明な液体を口に運ぶ銀。面白くない!この状況面白くないから!

 

「輝積君~」

 

くそ!キス魔がもう起きた!そして、俺に引っ付いてくる!

 

「もう!何してるのよ!友奈!そこは私の場所よ!」

 

風先輩が友奈を引き離そうとしてくれる。

普通ならその行動は嬉しいのだが、今回は違う。

 

「うふふ…輝積~」

 

だ、抱き付かないでください!

 

てか、なんでお酒が紛れ込んでるんだよ!

 

「ふふふ、気が付いた?」

 

俺は園子の方を見る。わかった。犯人は園子だ!

 

「園子!お前、本当は酔ってないだろ!」

「せいかーい。流石きっきー」

「てか、お前だろ!お酒持ってきたの!!」

 

普通、中学生でお酒なんて手に入らない。だが、大赦絡みなら別の話しだ。

 

神様に近付くためにお酒を飲む。そう風習があるらしい。生憎、俺は半神だ。だから、神様に近付く必要も無い。だが、同じ半神として崇められていた園子はどうだ?

絶対にお酒を飲んだことがある。そして、それ相応の耐性がある。だって、唯一顔が赤くない。それに、ジュースを担当していたのは園子のはずだ。

まさか…園子の言っていたお勧めのジュースって…

 

「きっきーは飲まないの?」

「飲むか!!てか、これ、どうやって収集つけんだよ!」

「大丈夫だよ~、皆親御さんから宿泊の許可は貰ってるから~」

「泊まる気かよ!」

「輝積~わたしゅね…きせきのことぎゃ…」

「待て待て!」

 

まさか、園子の狙いは!!

 

「私、知ってるよ~あのとき、きっきーが私達の会話を聞いてたの~」

「は?」

「皆、気になるんだよ~、きっきーが誰を選ぶか。でもね、それだと不平等なの。だから、もう皆と付き合えばいいって思ったの!」

「訳がわからないよ!」

「なら、きっきーは誰が好きなの?」

「う…」

「ほら…なら、全員恋人にすれば済む話しだよ」

「駄目!」

 

いきなり抱き付く樹ちゃん。このタイミングで抱き付くか?

 

「輝積さんは、私の彼氏になるのよ!」

 

ちゃかり告白してますよ!

てか、ちゃかり告白を連呼されてるのに今頃気が付いた!!

 

「大丈夫だよ。皆きっきーの彼女になれば…」

 

園子の中では、俺はハーレムルート確定らしい。

あー、そうか、園子は俺の本心を聞くために自白剤も予てお酒を持ってきたのか。でも、それは誤算だ。

 

「園子。俺はな…」

 

俺は、透明な液体の入ったコップを取る。因みに、誰のだかはわからない。

 

「お酒…駄目なんだ」

「もう…きっきーは嘘が下手くそ~」

 

コップを持って、一気に口に運び飲む。その液体が喉を通った瞬間、意識が途切れる。

 

俺は半神だ。でも苦手なものが世の中には幾つかある。動物が火を怖がるように、吸血鬼が日光が嫌いなように…

俺はお酒だ。お酒を俺が飲むと…

 

 

いきなり倒れる俺。

 

「あれ~、きっきー?」

「輝積、どうしたのよ?」

「にゃにしてるにょよ~」

「ははは!輝積がぶっ倒れた!ははは!」

「輝積さーん!どうしたの!」

「輝積~」

 

目を開いたまま倒れている俺。

 

「きっきー?」

 

園子はその異変に気が付いた。そう、ピクリとも動かない俺の体。それに最悪の予想を立てる。

 

「…あれ?輝積…」

 

風先輩もそれに気がつき始める。いや、少しずつ、赤かった勇者部一同(東郷さん以外)の顔色が真っ青になる。

 

「あ、あれ?輝積…君…」

 

友奈は俺の胸に耳を当てる。同時に銀が息をしているか確認する。風先輩は俺の右手を掴んで脈拍を取る。

 

「心臓が…動いてない…」

「息も…してない…」

「脈拍も無いわ…」

 

 

そう、俺はお酒を飲むと一時的に心肺停止、いや、死にます。まあ、10分ほどで蘇るけどな。

 

 

その後、どうなったのか、わからない。気が付けば俺は床の上にいた。どうやら移動させられたようだ。だが、周りの風景的に俺の家だとわかる。異様に胸が痛いが、気のせいだろう。

 

時間を見る。約10分死んでたのか。何故か悶絶している勇者部一同。何してんの?

てか、皆意識が無い。何があったし…

 

「…」

 

どうやら、意識がある人が一人だけいたようだ。

 

「東郷さん…これは一体…」

「それ…聞く?」

「なんか、聞かない方が良さそうだ…」

 

まあ、知ることも無いと思うが。

 

因みに何故皆意識が無いかというと…俺に人工呼吸をしたらしい。代わり番こで。まあ、そんなこと俺が知るわけも無い。そして、その行動に恥ずかしくなった勇者部一同は自ら意識を飛ばした。

 

ということだ。

 

「おーい、皆大丈夫か?」

「そっとして置いたら?」

 

まあ、このまま寝かせるのも何だし、俺は毛布を持ってきて皆にかける。

 

「ねえ…輝積君」

 

東郷さんと二人きりになった。俺は注意して東郷さんのコップを見る。良かった。スポーツドリンクのようだ。

 

「何?」

「もし…この勇者部の中で彼女にするなら、誰がいい?」

 

ストレートに来た。いや、少し変化球が加わっているが…

 

「なあ、東郷さん。俺は何者か知ってるよね?」

「え?半神でしょ?」

「そう。でもね…俺は…」

 

話すしかない。何故、俺が誰も選ばない訳を。いや、本当は園子の思惑通りハーレムルートだと思う。だが、俺はそれを避けている。それは、俺が半神ということが意味する。

 

「この世界の人間じゃ無い…」

「聞いたわ」

「でもな…俺にはまだ、別の世界でやらなきゃいけないことがあるんだ」

 

そう。俺は半神というイレギュラーな存在。そんなイレギュラーな存在が長い間その世界にいればどうなる?

それに、神樹がそうしたように、別世界でも救いの手を求めているところがある。俺はそれを知っている。

 

「なら、それが終わった後にまた戻ってくれば…」

「いや…それが、今回は出来そうにない」

 

天の神との戦いの準備をしている今、この世界は不安定だ。そして、合戦になれば、更に不安定になる。そうなると、合戦に勝っても負けても、この世界が自動的に安定するまで長い時間が掛かる。

その間、俺はこの世界にいれない。

イレギュラーだから。

 

その事を東郷さんだけに説明した。それを知った東郷さんは困惑しながらも、己の答えを導き出す。

 

「…なら、余計に聞くわ。誰と付き合いたいの?」

 

…俺は…誰が好きなのか…

 

「…決めないと駄目か?」

「当たり前よ」

「なら…」

 

 

 

この時の言葉に俺は責任を持てただろうか…

だが、責任を持たなければならない。そう、俺は半神なのだから。




次回…とうとう、最終回

なので…

次回予告やります。



次回予告

「輝積さん…」
「全く、後輩の癖に…」
「…国に誓って…」
「…絶対に行くから!!」
「きっきー、楽しみにしてるから~」
「逃げたら容赦しないからな~」
「うどん、絶対に奢ってね!」
「蚊帳の外の俺は…」

「そんな事だろうと思ったぜ!!」

「遅くなった」

「ヒデブシ!?」

次回

勇者部最終合戦


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勇者部最終合戦

はい、とうとう最終回です。

前置き無しにどうぞ…


天の神

 

地球を火で包み全ての生物を消し去り、更には神々の集合体である神樹を殺すためにバーデックスと呼ばれる怪物を送り込んだ張本人。

 

俺達はその大きな神に戦争を仕掛けようとしている。

 

日にちは2月28日

 

バレンタインデーに確かにチョコは貰ったが、東郷さんがあの話しをしたため急遽送別会みたいになった。

 

皆泣いてたけど、俺は、自分の選択に間違いは無いと思っている。

 

 

 

俺達勇者部一同と顧問は神樹の結界の外に出ていた。

 

「さて…最終決戦だな…」

 

皆黙っている。確かに、俺はこの戦いの後、この世界からいなくなく。いや、いなくなるだけだ。死ぬ訳では無い。だから、だからこそ辛いものがあるのだろう。

 

「はぁ…よし!なら、こうしよう。この戦いが終わったら、俺を探しにこい!」

 

勇者部の皆は呆気に取られたような顔をしていた。

 

「俺はこの世界に来れない。なら、皆が別の世界に行けばいい。簡単なことだろ」

「ちょ!そんな簡単に…」

「あー、その方法があったか…」

 

久尾は知っている。神樹が俺をこの世界に連れてきたこと。そして、その逆も出来ること。

 

「…そうだよね」

 

友奈が確信したように言う。友奈もその事を知ってるんだっけ。てか、勇者部全員知ってるよな。

 

「よし!なら、話しは決まり!別世界で会ったら死ぬほどうどんでも何でも奢ってやる!」

「…輝積君…」

「ほらほら、しんみりしてても、何にもならない。別に一生の別れじゃ無くなったんだ。元気よく行こう!!いつも通りに!」

「そうよね!良く言った!輝積!」

「きっきー…」

「皆、変身するよ!」

 

俺達は変身する。勇者部のアプリはこの時のためにアップデートされている。俺の力を媒体にすることにより、代償無しで満開を使うことが出来る。そう、今、勇者は、最高で最強だ。だが、俺はそれにプラスアルファする。

 

真っ暗な結界の外。そこに白い壁のようなものが表れる。そこから、数々のロボットらしきもの達が出てくる。そう、これが、俺が準備していた軍団だ。まあ、一部恐ろしく強い人達もいるけど。

 

もう、これで怖いもの無し!

 

勇者部の皆は満開を使う。

 

「さて、ここで円陣組むか」

 

前の俺なら拒んでいたことだ。だが、今は違う。皆のことを信頼してるし、友達だし、好きだから。

 

俺は友奈と夏凜の間に入る。

 

「さあ!部長!」

「全く、後輩の癖にデカイ顔しちゃって。まあいいわ!この戦いが終わったら絶対うどん奢らせるからね!」

「輝積さん…絶対に会いに行きますから!」

「そうね。この国に誓って会いに行くわ!」

「ま、まあ…絶対に行くから!」

「うどん、絶対に奢ってね!」

「きっきー、楽しみにしてるから~」

「逃げたら容赦しないからな~」

「途中からうどんの話しになるってるぞ!」

「ははは。よし!勇者部!ファイト!!」

 

「「「「「「「おー!!」」」」」」」

 

「蚊帳の外の俺はどうすればいい…」

 

離れたところで久尾がそう独り言を言っていたのに気付かないあたり勇者部ぽいな。

 

それぞれバーデックスや星屑を倒して行く。

 

俺の狙いは、本陣、大将首。そう、天の神を倒すこと。

 

翼を生やして空を…いや、もう宇宙か。宇宙を飛ぶ。

 

俺はあの時より強くなっている。その為に修行したんだ。

星屑が俺の羽に当たった瞬間に真っ二つになる。今や俺の羽は空を飛ぶだけのオプションでは無い。一つの強力な兵器だ。それこそ、触ればダイヤモンドだろうと真っ二つにする。柔らかい星屑はまるで切れ味のいい包丁で切ったトマトのように綺麗にスライスされていく。

 

だが、俺はまだ、ただ飛んでいるだけだ。

 

しばらく飛んでいるとバーデックスが大量に現れる。だが、全部小型や中型、12星座以外のバーデックスだ。

 

いや、一体を除く。

 

蛇のようなバーデックスを大量に連れているバーデックスがいる。そのバーデックスは12星座型とほぼ同等の大きさだ。あいつは…13番目黄道星座…蛇使い座。

 

「やっと強そうな奴を見つけた」

 

あのバーデックス…強いと俺の本能が言っている。いや…違うな。俺を楽しませてくれると何となくわかる。

強くなればなるほど、人とは強い者と戦いたいと欲求が生まれる。それは俺にも確りとある。半神だから、強くなった、だが、本質は人だ。願いや欲望、怒りがある人間だ。だから、俺は戦いに渇きが起きる。今がそれなのだ。

 

「お前は…俺を倒せるか?」

 

挑発をしてみる。まあ、バーデックスが人の言葉がわかる訳がない。

 

蛇使い座のバーデックスは次々と蛇座のバーデックスを飛ばしてくる。蛇座のバーデックスはまるでゲリラ豪雨の如く俺へ向かって来る。

 

一体のバーデックスが右の羽に当たる。その瞬間に爆発が起きる。俺は体を反らして避ける。だが、既に右の羽に当たっている。威力自体を弱めても意味が無い。

 

爆煙が止み、右の羽を見る。当たったところが黒く焦げていた。いや、それだけじゃ無い、所々紫色に変色している。これは…毒?

 

次々と迫る蛇座のバーデックス。

 

俺は右の羽を分離させる。右の羽は一瞬のうちに灰になる。

 

まあ、また生えて来るから問題は無い。

 

さて、蛇座のバーデックスをどうするか…

方法は…多すぎて困る。バリアを張ってもいいし、吹き飛ばしてもいい。どうしようか…

 

そうだ!

 

消し去ろう♪

 

やはり、ここはお決まりのビーム系だろう。だが、そうなるとレパートリーが多い。男の夢である〇〇〇〇波とかもいい。でもそれは、ある意味アウトだ。だから、違う技にしよう。

 

蛇座のバーデックスに右手の掌を向ける。

 

さて、ショウタイムだ♪

 

「マ〇〇ース〇ーク!!」

 

俺の掌から巨大なビームが放たれる。それに次々と蛇座のバーデックスが飲み込まれて行く。え?この技アウトだって?気にしてはいけない。ほら、どこかの誰かは常識にとらわれてはいけないって言ってたじゃん。

 

蛇座のバーデックスを一掃した後に蛇使い座のバーデックスを見る。

 

蛇使い座の下には蛇座のバーデックスがうじゃうじゃと作られていた。なるほど、本体を倒さないと終わらないということか。

 

なら、終わらせてやろう。

 

正直なところ、飽きた。こいつの戦い方に。いや~、最初は楽しめると思ったんだけどな~

 

 

残念だよ

 

 

俺は一瞬のうちに蛇使い座のバーデックスのもとに行く。そして、翼で蛇使い座を二つに分ける。そう、蛇使い座のバーデックスを右の羽で二つに切ったのだ。切られたバーデックスの中を見るとミタマが真っ二つになっていた。はい、御愁傷様。

 

砂になる蛇使い座のバーデックス。それと同時に主を失った蛇座のバーデックス達。蛇座のバーデックス達は共食いを始める。なるほど、蛇使い座は蛇座のバーデックスが共食いをして合体した姿なのか。

 

まあ、共食いしてるところ悪いけどまた蛇使い座のバーデックスを相手にするのは時間の無駄だから、ここで全滅してもらうか。

 

俺は共食いの所に突っ込む。そして、次々と蛇座のバーデックスを羽で切り裂いて行く。

 

数分後には、蛇座のバーデックス達はざく切りにされた後に砂へなっていった。

 

さて、本陣に突っ込むか。

 

 

 

 

 

太陽と化した地球。そのある場所。

 

その昔岩戸と呼ばれた場所。炎の海となったこの地球のその場所にはこの炎を造り出した神がいた。天の神。いや、別名天照。その名の通り、天…いや、太陽を司る神だ。

 

その神のいる場所は四国と以外に近かった。驚くべき真実だが、本当に近くにいたのだ。

 

俺は今、天の神の目の前にいる。天の神の見た目は女性というのはわかった。だが、それは人の姿として…だ。全身炎の体。そして、約500㍍はあると思われる巨体。

炎が着物に見えるが、顔も炎。表情は此方をずっと見ている。これが…俺達が倒すべき魔王。いや、ラスボス!!

 

グッと拳を構える。ここまでの巨体、一撃でも喰らえば最低潰されて圧死、火傷でショック死は確定だろう。しかも下は炎の海。常に宙に浮いている状態。下に落とされれば溶岩浴が可愛く見える程の放射能浴が待っている。

てか、よく放射能が此方に来ないよな。まあ、この太陽が原始分解で発光しているのかは知らないけど。

 

『貴様…神樹の使いか?』

 

声が低いけど、女性に良く似た声がした。天の神の顔を見ると口が少し動いていたので、話しかけてきたのは天の神で間違い無いだろう。

 

「いいや。お前にいちゃもんつけに来た別世界の半神だ!」

 

俺は拳を天の神に向ける。

 

『別世界の半神か…そして、我にいちゃもんとは…面白いな。人間』

 

少し嬉しそうに言っている天の神。何?この神様戦闘狂?やだ怖い。

 

「取り合えず、この炎とバーデックスを何とかして貰おうか!!」

 

声を大きくして言う。戦闘体制を取り天の神が一言言った瞬間に突撃、いや、先制攻撃をかける。

どうせ答えはわかっている。

 

『いいだろう』

「そんな事だろうと思った!行くぜ!!」

 

 

「あれ?」

 

俺は飛び出そうとした瞬間にフリーズする。あれ?可笑しくね?

 

天の神、今何て言った?

 

『何を固まっている』

 

いやいや、あれ?

 

「今何て言った?」

『同じ事を何度も言わせるな。この炎とバーデックスは何とかして消してやろう』

 

あれーーー?俺の想像では…

 

想像…

 

『ふははは!やれるものならやってみろ!だが、それには私を倒さなければいけないぞ!』

「そんな事だろうと思ったぜ!行くぜ!!」

 

 

てきな感じで俺と天の神か戦うんだけど…

 

予想外でした。

 

「戦わないのか?」

 

率直な疑問。ここまで人間を…神樹と対立していた天の神が予想以上に素直…てか、すんなりというか…

 

『何故戦う?我も神なのだぞ。人の信仰無くして生きていけぬ。残り少ない力を何故貴様と戦い消費しなければならぬ』

「いや…だって…神樹と対立してたし…」

『あれは、バーデックスが勝手にやっているものだ。バーデックスは、我の白血球のようなもの…その役目は異物と判断したものの排除。我の意識関係無しに行動しておる』

 

ん?

 

「バーデックスが白血球?ちょ…それじゃあ、まるでここがお前の体内みたいじゃないか!」

『今はそれに近い状態だ』

「!!」

『我が何故燃えているのか…そして、何故人間を我が絶滅に追い込んでしまったのか…それを話してやろう』

 

天の神は俺を見つめて言った。

 

『人間は…あるものを作り上げてしまった。それは、不死身に近いウイルスだ。こいつは、人間だけではなく、生物、果てには水や土などにも移り…全てを殺し始めた。これを殺せるのは、精々神の力を持つ我々のみ。その中でも、力が強い我がそのウイルスを殺すために、この炎を造り出した』

『だが、不運はだけでは終わらなかった。そう、太陽が死んだのだ。太陽が死んだ後、太陽の力を持つ我が太陽の変わりとなることで人間を救おうとした。だが、ウイルスの死滅も行わなければならない。そして、最終手段として、地球を火の海とした。それは、この地球自体を我と化すことと同位だ。そうなれば、守らなければならない人間も殺す必要があった。他の神々は勿論反対した。だが、手段を選んでいる状態では無かった。我以外の神々は一つに集まり、一つの樹へとなり、人々を守る結界を作り出し、そして、人々を守った。そう、我の炎とウイルスから。これが、真実だ』

 

 

俺は恨んでいいのか?この神を…

 

この神は誰よりも人間を心配していたのでは無いだろうか?

 

神の力は信仰と比例することが多い。これだけの力を持つ天の神は、昔、信仰が多くあったのだろう。だからこそ、人間を救いたいと思ったはずだ。なのに、選択肢が、人々を全滅に追い込むことしか無かったなんて…

 

更には同じ神々から反対されて…もしかして、天の神は今もなお、一人なのか?

 

「お前の話しはわかった。因みに、聞くが、お前は…一人なのか?」

『何故そんなことを聞く?』

「いや…何となくだ」

『そうか。我はこの地球を火の海にしてからずっと一人だ』

「…」

 

俺は、この神を…天の神を憎しみの対象として見れなくなっていた。この神は…ずっと一人で戦っていたのかもしれない。人々から崇められる神から、人々に恨まれる神になり、更には同じ神々からも反対された。もし、俺が天の神と同じ立場なら、同じことをした。そして、その事を後悔したはずだ。

 

『ウイルスは死滅した。長くかかったが、完全に死滅したことを確認した。さて、我は、最後の力を使い、もう一度太陽を造り出そう』

「最後の力…って、お前!!」

『我の今の力を使い、太陽のあった場所で我自身が爆発すれば、新たな太陽が生まれる。そうなれば、この炎とバーデックスは消え去る。我は人々の太陽となり、貴様らは生き延びる。お互いにメリットもある』

 

メリット…それじゃ…

 

「お前は、死ぬ気何だな」

『神は死なぬ。信仰さえあれば、甦る』

 

嘘なのはわかっている。天の神を信仰する人は四国にはいない。全員神樹を信仰している。それに、いくら太陽となっても、それはただの結果だ。天の神ではない。もし、新に生まれた太陽を信仰しても、それ自身は天の神では無くなる。

 

この神は…それを知っている。

 

そう、この神は、消えるのだ。

 

一人の孤独を味わいながら、この神は…

 

「させないよ」

 

させない。そんな悲しいことさせてたまるか!

 

『お前は何を言って…』

「天の神、お前が消える理由なんて無い!誰よりも人間を思ってたんだろ!だから、人間を助けようとして、余計な人まで殺して!矛盾していることをして!そして、自分自身を太陽にしようとしている!そんなの、俺が許せない!!」

『我は…人間により産み出された偶像に過ぎぬ。神とは大抵そんなものだ。偶像が消えようが、人間はまた神を造り出せる』

 

人間のみが神を持つ…誰かの言葉ではある。それは正しいとは思う。俺が半神なのもそれが原因だ。だが…

 

「知らねえよ!天の神はお前だけだろ!変わりなんていねーよ!」

 

人間的考えの方が今の俺の考え方だ。人はその人しかいない。神だって同じだ。

 

『ならば、我にどうしろというのだ?』

「太陽は俺が何とかしてみせる。だから、この火の海とバーデックスを何とかしてくれ。俺の望みはそれだけだ」

『…よかろう。だが、貴様がそれを出来なかった時は…』

「いや、成功させてみせる!」

 

俺は宇宙に向かって飛ぶ。

俺の右目の能力それを使う。空気の流れ…宇宙空間は真空である。だが、物質の移動などの痕跡などなら、俺の右目が見える。

その元の配置に太陽を戻せばいい。

まさか、天の神の討伐から太陽の工作になるなんて誰が思うか?

 

どうやら、地球の位置や他の惑星の位置は基本的に他の世界と代わっていないようだ。俺はこの世界が太陽の公転している時に来た訳では無いので、別世界を基本とするしか無い。

 

一度、他の仲間がいるところに戻る。別の世界から連れてきた俺の友達達…、俺は天の神のこと、この世界のこと。関節に話して太陽を造り出す話しをする。

 

神でもそんなこと無理だと言うだろう。だが、天の神は長年信仰が無かったため力が弱まっている。だから、自分が消える程の力を使わなければならない。神樹は守ることに精一杯で太陽なんて作っていられない。半神の俺なら作れる。いや、普通に作れるよ。けど、危ないからしないだけで…。まあ、前にここにいた時よりも強くなって帰ってきたから、出来るようになったんだけどね。

 

それから、関節に言えば、太陽を作ることには成功した。そして、俺達は余りにもこの世界で力を使い過ぎた。

 

太陽を作り、元の位置に戻した後…強制的にこの世界から追い出された。

 

そう。勇者部の皆に別れを言えぬまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二年後

 

私立讃州高等学校

 

元は大赦の役人などが通う名門校だったが、今は普通の生徒も受け入れるようになった学校だ。

 

友奈、東郷、園子、銀、夏凜は、先に進学した風先輩の後を追うようにこの学校に入学した。樹ちゃんも来年入学予定だ。

 

讃州高校勇者部

風先輩が作った部活。讃州中学勇者部の高校生バージョンだ。やはり風先輩が部長を勤めている。

 

中学の時と変わったことは特に何も無い。いや、勇者部によくラブレターが来るようになった。まあ、皆、読まずに捨てるけどな。

 

今日も勇者部に集まっている風先輩、夏凜、友奈、東郷さん、銀、園子、そして、何故かいる樹ちゃん(讃州中学と合同が多いため良く高校に話し合いに来る)それと久尾。皆それぞれに世間話しに花を咲かせている。

 

そんな中、廊下からバタバタと走ってくる音が聞こえてくる。

 

勇者部の新メンバー…

 

「遅くなった」

 

走って部室に入ってくる女の子。赤髪の短髪、顔は少しボーイッシュな感じの女の子、名前を天乃 照(あまの てる)と言う。そう、あの天の神である。天の神は、あの戦いの後、バーデックスを全て消し去り、火の海を無くしそして、無条件降伏したのだ。その後、無くした力を取り戻す多くの手段の中から、人間に興味を持ったと言うことで、人化して、人との生活を知ると共に力を回復させる方法を選んだ。力が回復し次第あることをしなければならない。

 

神樹…神々の集合体。いや、集合体だったもの。今や神樹はただの脱け殻だ。だが、この四国ではまだ神樹を信仰している。その内だが、新たな神として、神々の集合体としてでは無く、一つの神として神樹が現れるだろう。

 

神々は炎の収まった四国以外の場所に行き元の地球に戻す努力をしている。大赦はそれのサポートだ。

 

関係無いがまだ、四国の外は壁で覆われている。これは、神樹の名残である。ただ…外の光景は本物になった。

 

さて、話しを戻す。

 

照は急いで勇者部に来た。

 

「あまちゃん、そんなに急いでどうしたの?」

 

相変わらずの園子。二年前よりも顔立ち、スタイルが大人になっている。だが、相変わらずおっとりした性格は変わっていない。因みにだが、小説を書いていて、後少しで最優秀賞を取る寸説まで行った。照のことはあまちゃんと呼んでいる。一応照の監視役である。

 

「園子…今日はあの日でしょ?だから、勇者部全員揃ったんでしょ」

「うん。わかってるよ~」

 

風先輩…二年の時を得てモテまくりの先輩。勇者部部長である。スタイルは断然良くなっており女子力高め。この高校の彼女にしたい女子生徒ランキングでも堂々の二位だ。

 

「とうとうこの日か~」

 

赤髪のポニーテール、本来の主人公、結城友奈。二年前よりもスタイルも良くはなったが、本人曰く少し胸がキツいらしい。活発プラス体育会系の女の子である友奈にとっては胸の成長はマイナスだったらしい。

 

「そうね。長かった気がするわ」

 

そう答えたのは、黒髪で長い髪をした東郷さん。鷲尾須美の頃からスタイルは凄かったのに、今やそれは驚くレベル。勇者部の中でも一番胸が大きい。讃州高校の彼女にしたい女子生徒ランキングの一位でもある。

 

「とうとう、この日が来たのね。あの馬鹿、何も言わずに居なくなっちゃうんだから…友奈!あいつに一発咬ましてやるわよ!」

 

そう宣言したのは、夏凜。スタイル的には成長したが、そこまで…。ツインテールが二年前より伸びている。少し前の高校の剣道の四国大会で優勝したばかりである。

 

「私もそれに参加するよ」

 

夏凜の一言に参加したのは銀。髪は二年前よりも少し長めである。弟を可愛がり過ぎてこの頃ブラコン疑惑が流れたばかりである。スタイルはそれなりに良くなっている。

 

「輝積先輩…どうか死なないでください…あ、駄目だ」

 

タロットで占いをしている樹ちゃん。どうやら死神のカードのようだ。

勇者部の中でも一番変わったのは樹ちゃんなのかもしれない。歌い手として活躍をしながらも今や讃州中学勇者部の部長。スタイルは中学時代の東郷に近くなっている。

 

「あ~あ、輝積、死刑確定だな」

 

タロットの占いの結果を見る久尾。二年前とは何も変わっていない。いや、変わったとしたら、中学教師から高校の教師になったことくらいか。

 

「そんな馬鹿なことを言ってないで、さっさと準備する!我は以外にせっかちなんだ」

「全く、わかったわよ。さて、皆いるわね?」

 

風先輩が皆を確認する。一人…そう、上賀輝積以外の勇者部全員がここにいるのだ。

 

「さあ、別の世界へ行くぞ」

 

神樹が無くなり、別世界への行き方を一度は失った勇者部。だが、奇跡的にも照と出会い、別の世界に行ける手段を手に入れた。

そう、照は輝積という半人に興味を持った。だから、もう一度会いたい。

 

全員の目的は一致している。

 

照が空間に穴を開けているのがわかる。空間がねじ曲げられ、そこに黒い穴が空いている。

 

「ここを通るのは少し危険だぞ。まあ、貴様らなら出来ると思うが…一応変身はしておけ」

 

勇者部の久尾以外の全員がスマホを取り出しアプリを起動させる。普通なら変身などは出来ない。だが、あの大決戦の時、輝積にやってもらったアップデートにより、神樹の加護が無くても変身出来るようになった。

 

それぞれに変身する。

 

「なんか、変身するの久しぶりだね」

「そうね。でも、少し胸が…」

「東郷はいいわよね…胸が大くなって…」

「え?夏凜だって大きくなったじゃん?」

「銀も、前よりは大きくなってるよね…」

「でも、わっしーが一番だね」

「まあ、私の次に女子力高いから」

「お姉ちゃん…お姉ちゃんと東郷先輩の女子力は次元が違うよ。東郷さんの方が上だから」

「樹…あんた、毒舌になって来てるわね」

「さて、顧問として、異世界旅行をサポートするか」

「皆、準備出来たな。ならば行くぞ!!」

「「「「「「「「おーー!」」」」」」」」

 

その日、この世界から勇者部の姿が無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある世界

 

友奈はある男の顔面を思いっきり殴った。

 

「勇者パーンチ!!」

「ヒデブシ!?」

「友奈ちゃん!その人違う!!」

「え?」

 

男は変な声を出しながら地面に倒れる。

東郷さんの言葉でその男を見る友奈。

上賀輝積…自分達全員をフッて、友情を選んだ勇者部唯一の男子部員。それに良く似た男を殴ってしまった友奈。だが、それは別のお話。

 

 

 

 

上賀輝積は勇者でない

 

これにて完結




はい、上賀輝積は勇者でない はこれで完結です。

勇者部の皆は輝積を探しに異世界を旅するendという中途半端な感じなのですが、これで完結です。
しかも、輝積は全員フるという、男としてあるまじき行為をするという酷さ…

最初は夏凜がヒロインだったのですが、書いていくうちに、「全員ヒロインでいくね?」と思ってしまったのでこんな結末になりました。
というか、最初から上賀輝積は別世界に戻る予定でしたが…

最後に誰か友奈に殴られていますが、本当に別の話しです。てか、そっちの方にその内ですが上賀輝積を出そうと思って(企んで)います。まあ、その内ですが…

3月の後半から投稿を初めて何とか完結まで持ってこれた…途中で失踪しようか悩んだけど、何とかなりました。ここまで読んでくれた人達に感謝の言葉しかありません。本当にここまで読んで下さりありがとうございます。

それでは、別の作品で会いましょう!

では!


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