涼宮ハルヒの家庭 (碧河 蒼空)
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キョン

 この小説は、「もしSOS団が一つの家族だったら」というコンセプトの基で書かれます。
立ち位置は以下の通りです。

お父さん:キョン
お母さん:朝倉 涼子
長男:小泉 一樹
長女:朝比奈 みくる
次女:涼宮 ハルヒ
三女:長門 有希
四女(ハイハイ赤ちゃん):キョンの妹
ペット:シャミセン
叔母(キョンの姉):鶴屋さん
叔母夫:谷口
叔母息子:国木田

以後、変更するかも。

 この時点で不快感を感じた方はお引取りを。


 以下、補足情報。
・基本、短編集。
・所により、涼宮ハルヒちゃんの憂鬱・長門有希ちゃんの消失・にょろーん ちゅるやさん要素有り。
・ネタが浮かんだら更新。
・パロディネタ有り。


 とある家庭の朝食風景。

「キョン、醤油取って」

 肩にかかる程度の長さで揃えられた黒髪に黒い瞳の少女がテーブルの反対側にある醤油注ぎと指差して言う。

「ハルヒ、父さんの事をキョンと呼ぶなって何回言ったら分かるんだ?」

 醤油の近くに座っていたキョンと呼ばれた男性は講義するが、

「いいから早く取りなさいよ」

 ハルヒと呼ばれた少女は聞き入れる気0である。

「ったく、お前は親に対する口の利き方をだな」

「まあまあ、キョン君落ち着いて。はい、ハルヒ」

 キョンを落ち着かせてハルヒに醤油を取ってあげたのは、キョンの隣に座っていた女性、キョンの妻の涼子だった。

「まったく、そもそもお前がいつもキョン君なんて言うから」

「あら、私はキョンって名前素敵だと思うわよ」

「そういう問題じゃなくてだな…はあ、もう良いよ」

 諦めて、今日も溜息を吐くキョンであった。

「何辛気くさい顔してりのよ」

 ハルヒが醤油のかかった目玉焼きを口に運びながら言う。

「お前が言うかっ、それをっ!」

「は、ハルちゃんっ」

 キョンの発した空気を感じ取った栗色ロングヘアーの少女、みくるがハルヒを窘める。

「みくる・・・俺の見方はお前だけだよ・・・」

 感動するキョン。“僕にも帰る所があるんだ”の某ニュータイプと同じノリ……なのだろうか。

 キョンは左のお誕生日席に座る自分を除くと唯一の男である一樹に目を向けた。彼はキョンの視線に気付くと、微笑んでアイコンタクトを送ってくるが、キョンはその意味を受け取ることが出来なかった。

 反対側のお誕生日席では、携帯ゲーム機を弄りながら食事をしている灰色ショートヘアーの有希。それを発見した涼子がゲームを没収する。

 幸か不幸か、いつもの朝だ。そんな事を思いながら、キョンはコーヒーを飲みだした。

「あら、どうしたの?」

 隣の部屋の布団で眠っていた赤ちゃんがはいはいして涼子も元に来た。涼子に抱き上げられた赤ちゃんはみくるの方をじぃ~っと見ている。

「どうしたの?」

 頭にクエッションマークを浮かべて赤ちゃんに話しかけるみくる。

「~~……ネーネ」

「!!?今、私の名前を呼びましたっ」

 感動するみくる。実は、赤ちゃんが喋ったのはこれが初めてだった。

「え~、何であたしよりみくるちゃんの方が先なのよ?」

 ハルヒはどうやら、同じネーネなのに自分が呼ばれなかった事が不満なようだ。

「待ってっ、まだ何か喋るわ」

 涼子の言葉を聞き、ハルヒは黙って、緊張した面持ちで赤ちゃんを見つめる。

「~~……キョン君!!」

「ブブーーーーっ」

 予想外の事に、キョンはコーヒーを噴出したのだった。




涼子「…ちょっとキョン君の事を話しすぎたかしら?…」

 いつも話しかけてる自分よりも先にキョンが呼ばれたことにショックを受ける涼子であった。 


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休日のヤンデレ

「やあ、キョン君」

 とある休日の昼過ぎ。外から帰ったキョンを待ち受けていたのは緑色の髪を膝まで伸ばした女性。

「姉さん、今日はどうしたんだ?」

 キョンの姉、谷口 鶴屋(たにぐち 鶴屋)である。

 読者の諸君、君達の言いたいことは分かるぞ。だが仕方がないんだ。鶴屋さんの名前が分からないんだっ。

「つれないねぇ。うちの夫が昨日から開発室に籠もっちゃったから、遊びに来たのさっ」

 鶴屋の夫とは、彼女の名字でもって分かるように、WAWAWAである。彼は谷口商店の店主で、何か閃くと店を閉め、研究室に閉じ籠もるのだ。

「あいつはまた碌でもない物を作ってるのか」

「まあ、そんな事よりキョン君、ちょっと……」

 そう言い、キョンに手招きをする。

「キョン君も隅に置けないねぇ」

「一体何のことだ?」

「またまた惚けちゃって。一昨日、隣街の駅前で綺麗な女の人と待ち合わせをしてたでしょ?」

「ばかっ!そういう話を家でするな……って……」

 キョンの目の前、鶴屋さんの後ろの扉の所に立っていたのは、

「大丈夫だって。涼子ちゃんは今、買い物に行ってる、って、どうしたの、さ?……」

 キョンの視線を追って振り向いた先には、

「……キョン君」

 買い物袋を下に落とした涼子が立っていた。二人の顔が青ざめる。

「そんな…、キョン君が他の女の人と……」

 キッチンへ歩いていく涼子。

 気付かれないように音を立てずに逃走を試みるキョン。

「キョン君っ」

 涼子に呼び止められてピクリと止まるキョン。逃走は失敗した。

「何でしょう?……」

 キョンはギギギッっと振り返る。彼の目に映った涼子の右手には包丁が握られていた。

「キョン君が他の人に取られるんだったら……」

 涼子の目には涙が溜まっていた。そして……、

「死んで、キョン君っ」

 そう言い、包丁を構えてキョンに突っ込んでいった。

「ちょ、それはマズイって、うぉぉぉぉぉ……」

「涼子ちゃん、落ち着いてっ」

 

 心当たりはある。だが、それは取引先の方を迎えに行った時のことだろう。あの時は、よもやこんな事になるとは思ってもいなかった。

 

 

 

 

「にょろーん」

 そう呟くのは、キョンに説教を受け、今も正座させられてる鶴屋である。キョンと涼子はというと、ソファーに並んで座っている。

「ねえ、キョン君は私のこと好き?」

キョンの方に頭を預ける涼子が言う。

「ああ……」

 そう答えるキョンはぐったりしている。

 あの後、事情を説明し、涼子への愛を十数分間説き続け、事無きを得た。

 部屋に扉を開ける音が響く。

「キョン、遂に出来たぞっ」

 入って来たのは、目の下に隈を作り、手には傘を持った谷口であった。

「おお、鶴屋もここに居たか。いいか、よく見ろ」

 そう言い、手に持っていた傘を広げた。その傘はまるでざるの様に穴が開いていた。

「風が強い日に傘を差すと、風に飛ばされたり傘が壊れる事がよくあるだろ?だが、この傘なら大丈夫。穴から風が抜けていくから、風なんてへっちゃらだっ!!鶴屋っ、今から店を開けるぞ。それじゃあ、邪魔したな、キョン」

 谷口は鶴屋を連れて帰って行った。キョンは更に疲れた顔をするのだった。

 姉さん、絶対に嫁ぎ先間違えてるよ、と心の中で呟くのだった。

「キョン君……」

 涼子はキョンの頭を抱いた。

「やっと二人きりですね……」




谷口「なぜ売れん…」

谷口商店の倉庫。積み上げられたダンボールに手を掛けて項垂れる谷口の姿があった。


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【過去編】星に願いを

 まだ学生の頃。俺は彼女と出会った。そう、あれは田舎へ遊びに行った夜、海岸沿いを散歩していた時だった。

 

 

 俺は現在、足を止めて夜空を見上げていた。

 上を向いて歩くのは危険だ。涙が溢れそうな時は立ち止まってくれ。

 閑話休題。特に天体観測が趣味という訳では無いが、そんな俺でも見惚れる位、今日の星空は綺麗だった。

 立ち止まって数分経っただろうか。そろそろ帰ろうかと思い、視線を下げようとしたその時、視界の端に流れ星を発見した。

「平和な日常、平和な日常、平和な日常」

 流れ星が消える前に三回言いきった俺は心の中でガッツポーズをとる。

 だが、俺は気付いてしまった。未だに流れ星が消えて無い事に。

 後になって考えた事だが、これに気付いていなかったらほんわか気分のまま帰宅できただろうか?いや、それは無理だろう。なぜならば次の瞬間、俺が流れ星だと思っていた物は傍の海に落ちたからである。

 俺は轟音を耳にしながら唖然と沿岸道に立ちつくす。そんな俺にお構いなしに、非日常は次々とやってくる。今度は海の上空から宇宙服の様な格好をした人がパラシュートでこちらに降りて来たのだ。俺に直撃するコースで。

「ぐはっ」

 頭の処理速度が追いつかず、固まっていた俺はそれを回避する手段を持ち合わせてはいなかった。そいつは俺を跳ね飛ばし、仰向けに倒れた俺の上に着陸した。

 俺の上に居るこいつはヘルメットを外し、俺に素顔を晒す。それと同時にヘルメットに収まっていた長い黒髪が靡(なび)いた。

「ふう。無事、着陸成功」

 言ったのは、星空なんかよりも綺麗で、可憐な少女だった。俺は少女に見惚れていると、彼女は自分の下にある存在に気付く。彼女は暫し考えた後、自身の喉を軽くチョップを連打して言葉を紡いだ。

「我々ハ宇宙人」

 

 

 これが俺と涼子の出会いである。彼女は家で少女だった。追跡を逃れるため、多重ワープを繰り返していたら、失敗して墜落したらしい。

 証拠隠滅といって、彼女が宇宙船を爆破した時は心底驚いた。

 何だかんだで、涼子がうちに住む事になったのだが、まさか生涯を添い遂げる関係になるとは、この時は微塵にも思っていなかった。

 それにしても、流れ星に平穏を願った途端、俺の非日常は始まったのだ。なんだかな。




キョン「そういえば、津波は大丈夫なのか?」

涼子「……禁則事項です♪」

作者「ギャグ補正です」


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風船犬

 前回はギャグが薄かった。反省。


「拾ってきた」

 帰って来るなりそう口にした有希の腕の中には四足歩行の動物の形をした黄緑色の風船があった。

「……一応、聞こう。それは何だ?」

 俺は有希の腕の中にある何かを指差し、彼女に問う。

「犬」

 有希の返答を聞き、指差ししてた右手でこめかみを抑える。

 ただの風船ならばそれで良かった。イベントか何かで貰ってきたのだろうと、それだけで済ませていたであろう。だが、この風船の様なボディーをした何かは有希の腕の中で動いているのだ。キョロキョロと頭を動かし、何が嬉しいのか、尻尾と思われる物を振っている。しかも、どう見ても作り物の動きじゃない。どう考えても地球外生命体|(?)である。

「名前はキミドリ」

 我が娘は名前まで付けていた。既にうちで飼う気満々な様子。

「うちで飼いたい」

 そら来たっ!!

 有希は目をキラキラさせて俺を見つめる。

 俺は彼女の腕の中の……まあ、仮に犬としよう。その犬に手を触れてみる。

「……ゴムだな」

 その感触は風船そのものだった。

「体は風船で出来ている」

 有希はドヤ顔で言う。

「……元居た場所に戻して来なさい」

 俺がそう告げると、有希は石の様に固まった。

「私、ちゃんと世話する」

 彼女はおろおろしながら言う。

「駄目だ」

 俺がそう言い放つと、俺達の会話に介入する者が現れた。

「有希ー、キョン。二人して何してるの?」

 我が家の次女にして有希の姉であるハルヒが自室から出て来たのだ。

「ハルヒ。いつも言ってるが父さんをキョンと呼ぶんじゃない」

 ハルヒを叱るが、そんな事はお構いなしに彼女は有希の腕の中にいる犬に目を留めると、脱兎の如く有希に詰め寄る。

「何これっ!!」

「……犬」

 嬉々として問うハルヒに有希がおろおろしたまま答えた。

「飼うの?ううん、飼うわよっ!キョンっ、何してるの?早速、ペットショップに行くわよ」

「飼わんっ。そして、父さんをキョンと呼ぶなっ」

 ハルヒの勢いに押されないように、少し強めに言う。

「何でよっ、良いじゃないの!!」

「こんな訳の分からん物飼えるか!!」

 犬を飼うか否かを巡ってハルヒとの言い争いが始まった。

「二人共どうしたの?」

 すると、台所から女性が表れた。有希とハルヒの母にして俺の妻、涼子である。

「涼子。お前からも言ってやってくれ。二人が訳の分からない物を飼うって聞かないんだ」

 俺が涼子に言うと、彼女は娘二人の方を向く。

「ハルヒも涼子もあまりキョン君を困らせちゃ駄目……」

 涼子の言葉は彼女の視線が有希の腕の中の犬に向いた瞬間、止まった。そのまま、犬を見つめる涼子。

 どこからともなく、切なげなピアノの伴奏曲が流れて来る。そう、一昔にCMで流れてたチワワを前にした時の曲。

「どうする?アイ○ルー……」

「……ハルヒ、何やってるんだ?」

 彼女は携帯で音楽を流し、最後のフレーズを口ずさんだ。

「演出よ」

「キョン君」

 彼女はうっとりとした表情で俺を呼ぶ。

 しまったっ、涼子が堕ちた!?そういえば、彼女も地球外生命体だった。

「動物を飼って、命に触れる事も大切だと思うの」

「ぬぅっ……」

 涼子のもっともらしい意見にたじろぐ俺。

「キミドリ、あなたもお父さんにお願いして」

 有希は抱えた犬にそう促し、床に下ろす。

「キョンさん、お願いします」

 黄緑色の風船犬が言葉を発した

「おい!?今こいつ喋ったぞ!!?」

 俺は驚愕のあまり声を上げたが、涼子は冷静である。

「あら、喋る犬なんて、この星では珍しいわね」

 右頬に右手を当てて、なんて事なく言葉を紡いだ。

「お父さん。キミドリ、うちで飼いたい……」

「良いんじゃない?キョンくん」

「ぐぅ……」

 娘に上目使いで見つめられ、妻には可憐な微笑みでお願いされ、俺は再びたじろぐ。

 そして、流れるのは切なげなピアノの伴奏曲。

「どうする?ア○フルー……」

 その後、ついに俺は折れ、キミドリを我が家で飼う事となった。




キョン「あ……ありのまま今日、起こった事を話そう
    俺は犬を飼う事になったんだが、
    そいつは風船で出来ている上に喋るんだ。
    な……何を言っているのか分からないと思うが
    俺にも何が何だか分からないんだ。
    頭がどうにかなりそうだった……。
    犬だとか風船だとか
    そんなチャチなもんじゃ断じて無い。
    もっと恐ろしいものの片鱗を味わった」





~没ネタ~

キョン「……ゴムだな」

有希「体は風船で出来ている」

キョン「UNLIMITED(アンリミテッド) BALLON(バルーン) WORKS(ワークス)!?」


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【過去編】時空迷子

 涼子と結婚して、生まれたハルヒも今年、小学校に入学した。

 そして今、涼子のお腹には新しい子が宿っている。

 ハルヒが特異な性格になった事を除けば、生活は順風満帆だった。

 そんな日の事である。

 

 

 

 

「あわわっ、出口を間違えてしまいました!!」

 俺は突然開いた机の引き出しに突き飛ばされ、床に背を着けている。何事かと机を見ると、引き出しの中からハルヒと同じ位の歳の女の子が顔を覗かせていた。

「あ、あの……ごめんなさいっ」

 そう言い残して、女の子は引き出しの中に戻って行く。

「……あれ?動かない!?」

 中を覗いてみると、四畳程の板に乗り、数本のレバーといくつものスイッチを涙目で弄る先程の少女が居た。

 

 

「で、君の名前は?」

「……朝比奈みくるです」

 俺の問いに少女は答えた。

 俺達は今、居間のテーブルを挟んで向かい合っている。

 みくると名乗った少女は落ち込んでいて、座ってから全く顔を上げていない。

「あれは何なんだ?」

 今度はみくるが出て来た机を指し、尋ねた。

「……タイムマシーンです」

 先程と同じ調子で彼女は答える。

「ということは、みくるちゃんは未来人って事なのか?」

「……はい」

 タイムマシーンでやって来た未来人が机の引き出しから飛び出してくる。お前は二十二世紀の猫型ロボットかと突っ込みたい衝動を俺はぐっと押さえる。

「それじゃあ、この時代に来た目的は?」

「……禁則事項です」

 ここに来て、初めてみくるは回答を拒否した。

「この時代に何があるんだ?」

「……禁則事項です」

 核心に踏み込もうとすると、みくるはそう言ってはぐらかす。

 俺が大した情報を手に入れられないでいると、廊下から玄関のドアが開く音が聞こえてきた。

「ただいま」

 続いて買い物に出かけていた涼子の声と、こちらへ走って向かってくる足音が耳に届く。

「帰ったわよ、キョン」

 勢いよく扉を開け放ち、元気よくそう言ったのは黒髪セミロングに凛とした琥珀色の瞳をした我が娘、ハルヒである。

「扉はもっと静かに開けろ。そして父さんをキョンと呼ぶなっ」

 もう何度目になるだろうか。我が家にて定番となっているこの言葉をハルヒに言い放つ。そんな俺の言葉をいつもの事ながら聞き流し、彼女が注目するのは先程まで俺と話していた少女、みくるである。

「何、この可愛いのっ?」

「ふぇ?」

 ハルヒは勢いよくみくるに抱きつき、俺に問う。だが、こいつは俺の答えを聞かずに言葉を発した。

「もしかして、キョンの隠し子?」

 彼女の止まらない好奇心が生んだこの一言がとんでもない事態に繋がる。

 ガサッとビニール袋の落ちる音が聞こえ、そちらに視線を向けると、呆然と立ち尽くす涼子の姿があった。

「……隠し子……キョン君に隠し子………キョン君の影に女…………女……」

 ゆらっとどこかに行った涼子。

「おい……涼子?」

 俺は恐る恐る声を掛けるが、彼女の足は止まらなかった。

「ねえ、キョン……。お母さんどうしたの?」

 戸惑いながらハルヒが尋ねるが、俺だってこんなの初めてだ。二人して戸惑っていると、涼子が戻ってきた。……右手に包丁を持って。

「死んで、キョン君っ」

 彼女は切先を俺に向け、肉薄する。

「ま、待てっ……それはシャレにならn……って、うおっ……」

 

 

 刃を避け、涼子を説得し、みくるの事を説明する。何分たったのだろうか。それを確認する余裕がないほど、俺は疲弊していた。

「何だ……そうだったの。それならもっと早く言ってくれれば良いのに……」

 恥ずかしそうに身を小さくする涼子。

「そうよね。キョン君が私を裏切るはずがないものね」

 彼女はそう言って、俺にしな垂れかかってくる。普段ならここで腕を回すものだが、今の俺にそんな余裕は残ってなかった。

「あの……」

 声を発したのはみくる。みくるは未だに震えながらしがみついているハルヒを抱きしめながら、あやす様に彼女の頭を撫でていた。

「あまり驚かないんですね。キョンさんも先程から冷静ですし……」

 彼女の疑問は最もだ。異常なのは慌てずに未来から来た来客の対応をしている。

「まあ、涼子は宇宙人でな。それ絡みで色々慣れた」

「宇宙人……」

 俺の回答にみくるは何やら考え始め、意を決して俺達に頭を下げる。

「あのっ、私をこの家に置いて下さい!!」

 

 

 

 

 こうして、みくるは家の娘となった。

 年を聞くと、ハルヒより一つだった。

 ハルヒも彼女の事をえらく気に入ってるが、ハルヒの態度は姉が出来ても相変わらずである。




 こうして、我が家に暗黙の了解が生まれた。

一家一同(涼子を除く)「お母さんの前でお父さんと女の人の話をしない」


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