遊戯王ARC-V 異世界転生の召喚指導官 (神聖SmD)
しおりを挟む

1章 F組vsエリート編
俺、講師になります。


期待不安の未来。


『人生何があるか分からない』

あぁ。きわめてよく使われる言葉だな。俺も使うしみんな使う……よね?

人間、明日の朝日を拝んで朝食にパンをかじれるのすら奇跡と

思う人もいるだろう。まぁ、自分はご飯派なんですけどね?

 

っと、話が脱線した。

 

つまり何が言いたいかと言えば、人間ちょっと先のことなんて分からない

訳で……つまり今生きていることが奇跡なんだよ。

そんなことは置いておいて、目の前の光景がまさに『意☆味☆不☆明』

っていう感じです。はい。

 

『レディース&ジェントルマーンッ! ――――お楽しみはこれからだ!』

 

“うォおおおおおおおおおッ!!!!”

 

やや幼い青年の爽快な声、そしてそれに沸く声援。どこかのドームだろうか?

けど俺は知ってる。この光景を知っているんだが……既視感とかじゃない。

 

なんたって――――アニメで見た。2話辺りの遊矢君がペンデュラムを

決めたあたりだろうか? 相手の何とかってのも苦戦してるし。

そんなことより、

 

「なんじゃ、こりゃあ……」

 

俺は学校の帰りに行きつけのカード屋に寄ろうとして帰りに、え……?

だってあそこにいるの榊遊矢君でしょう? え、何が起きたの?

二次元に行きたい欲求が閾値に達してしまったの?

 

「ッ……思い出せねぇ」

 

ビリッとした頭痛が襲う。まるでそれは思い出すことを拒んでいるようだった。

あぁ、こういう時こそ冷静に且つ客観的に状況を見るんだ。

恐らく末城遊介こと俺は、超常現象の類に巻き込まれてアニメの世界に

来ちゃったんだな。うん。こまったなー「※巻き込まれません」ってコメを

毎週つける側だったのに。逆に巻き込まれちゃったかー参ったねこりゃ。

 

「笑えねぇ……」

 

どうすんのこれ。単純に考えて遭難するよりヤバいでしょ? 

次元超えちゃったもん。帰れないよこれぇ!? 

よく、「無人島に一つ物を持って行けるなら何を持っていく?」みたいな

質問あるじゃん? 俺はそう言う系に「家かな(笑)」って答えるクソ人間

だからこういう状況に置かれたときどうすれば……分からない。

とりあえずツ〇ッターで「異次元きたったww」とでも呟けばいいんか?

と思ったらスマホがねぇ! 代わりになんか変なPADがある!!!

 

「ってこれ、デュエル・ディスクじゃねぇか……ッ! 意外に軽いッ!」

 

……驚きのあまり微妙なとこにコメントしてしまった。

なんだよ「意外と軽い」って。そういう言葉は女の子に言ってあげたい。

 

「そんな事じゃねぇ!? あの! オジサン、俺はどうしたらいいの!?」

「知るかッ! お前、さっきから一人で悶えたり叫んだり鬱陶しいんだよッ!」

 

やはり遊戯王の世界の民度は低いみたいだ。

 

ブルブルブル……

 

「お、おぉッ!!? ディスクが震えてるッ!? 何ッ!? え、「鏡花」!

女の子かッ! そういや、これ電話機能あんだっけ? あ、はい? もしもし!」

『兄さんッ! アルバイトサボって何やってんのッ!』

「はぁ? アルバイト? そんなんお前……す〇屋のバイト昨日クビになった

ってかバックれたばっかだろうが。制服は郵送するからって……君誰?」

 

アルバイトって単語に反応して思わず喋ったけど、この人誰ぇ!?

しかもさっき俺のこと「兄さん」って言わなかったか?

 

『何言ってんのぉ! いい加減働けよ、働けぇえええええええッ!!!』

「ちょ、うるせッ電話で叫ぶなって習わなかったんかよ」

『折角《LDS》の講師のバイト受かったのに棒に振る気なの!」

「《LDS》ッ!? え、それマジ?」

 

《LDS》って言えば、この世界の大企業っていうか赤馬零児さんのアレだよな?

さっきから状況が分かんねぇんだけど。

 

『いいからさっさと行きなさいよッ! いいッ』

 

ブチッ

 

そのまま会話が終わる。えーなにがどうなってんの?

この世界の俺は、天下の《LDS》のバイト講師ってわけなの?

 

「だれか、教えてくれよ……」

 

そんな呟きは虚しく、絶叫にかき消された。

 

 

「もう嫌だ。帰りたい。働きたくない」

 

今、この世界に「ペンデュラム」が現れ決闘界震撼って状況の中。

俺は《LDS》へやって来た。近くに転がってた鞄に俺の証明書とか財布、

デッキが入っていたのだ。元の世界の誰かと入れ替わったのか、それとも

この世界に俺という存在がぱっと現れたのか。そんなことは分からないし、

考えても無意味な事だろうからやめた。

とりあえず《LDS》へ行くというフローチャートがある以上、従わないわけには

いかないだろう。……さっきの妹?怖そうだし。

 

「え、あぁ……今日からお世話になるって話の末城ですが?」

「え、あぁ! スイマセン。今日は休みになったので明日また来てください!」

「は? え、……は?」

 

受付の女性はそれだけ告げるとそそくさ何処かへ行ってしまった。

俺、え? どうすればいいの?

 

「あの、今日からここで講師をやる予定なんですけど……?」

「あッ!? あんた何言ってんだ! それどころじゃない!」

「うッ……すいません」

 

え、なんで今日こんなに皆気が立ってるの? やっぱ遊矢君の「ペンデュラム」

の出現っていうビッグニュースで決闘界があわただしいのかね?

 

「しゃーない。帰るか」

 

俺は、手帳に記載されていた住所をポリスマンに聞いて帰路へ着くことにした。

 

「た、ただいま……?」

 

俺は、まるで他人の家に入るような心境で玄関をくぐる。外装や内装はごく

普通の一軒家だ。日本にありそうな2階建てだった。

 

「ちょっとぉおおおお! 何、帰って来てんのぉおおおおおおッ!!!」

「え? ぐぉぉおおおおああああッ!!!」

 

「え?」から1秒、俺の腹に2本の足が突き刺さる。瞬間、腹痛というか

なんというか激痛に襲われる。吹っ飛ばされる瞬間に見えたのは俺の

腹に直撃しているスラっとした女の子の足。世の男性諸君。これがご褒美

なのでしょうか? 僕には理解できません。

更にその先。スカートから覗……ご期待の光景は見えませんでした。

 

「うぎぎぎいいいい……腹が、われ、割れる!!!!」

「ふんッ! 割れてればいいわ」

 

一体、今日は何なんだ? まるで夢を見ているようだ。

支離滅裂な事ばかり起きる。

 

「兄さん。あんた状況ってもんを分かってないようね」

「え、あ? そうね……別の世界に飛ばされて、意味の分からない状況に

揉まれて挙句、妹と思しき人物からドロップ食らわされたってのは今把握したよ」

「はぁ? 何言ってんのぉ?」

 

凄い。俺は一人っ子だったからわからないけど妹って存在は兄をまるで

ゴミのように見るのか。初めて知った。いや、知りたくなかった。

 

「今日の兄さんは、変。いつも変だけどまるで別人みたい」

「いや、まぁ別人だし」

 

いつも変って酷いな。とりあえず俺はこの妹にありのままを語った。

勿論。俺が本物の兄ではないことは隠したが……

 

 

その日の夜。この家のことを大抵把握した。ウチの両親は今、2人で

海外へ出ているらしい。はい出たー。両親不在のラノベ展開だーって

思った人。いいんだ……俺もそう思った。

で、さっきの妹と俺の2人で暮らしているらしい。で、問題は元の俺の職業。

 

――――ニートだってさ。

 

「俺、元の世界じゃただの高校生だったんだぜ……」

 

どうやらこっちの俺は高校受験に失敗し、そのままニートをしていたらしい。

ただ決闘の腕は立ったので、それなりに功績を残してはいたらしいのだが、

俺からしてみればただのニートである。鏡花ちゃんの話では相当の屑だった

ようで、まるで自分が罵倒されているような気分になりました。悔しいです。

まぁその決闘の腕を買われて《LDS》でとりあえずバイト講師ってことで雇って

貰えたようだが……

 

「はぁ、明日から頑張ろう。しかし、俺が講師……」

 

人前でモノ教えるとか分かんねぇよ。

「今でしょ?」みたいなこと言っておけばいいの? 

 

とりあえずまだ何一つ状況が飲み込めていない。が、やることは目の前に

ある。今はそれをこなしていきたいと思ってる。

 

「っしゃ、やってやるか」




《末城 遊介》 男 17歳 高校生 

超常現象か、神の悪戯か。何かに巻き込まれてスタンダート次元に
入れ替わる形でやって来た青年。
元の世界の遊戯王OCGでは【スクラップ】を好んで使用していた。
フェイバリットカードは《スクラップ・ツイン・ドラゴン》。
《LDS》のバイト講師として働くこととなる。




次はあの《LDS》の三人組がでるかな。遊矢君らとの絡みは後々かと。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Teaching1 初めての講義

俺がこの世界。アニメで言うところのスタンダート次元に来て

2日目の朝がやって来た。

 

「しっかし、ここは日本と変わらないなぁ……

ってここも日本か。どれどれ、今日のニュースは」

 

俺はリビングの新聞を手に取る。やはり何よりも大切なのは情報だ。

NOWでHOTな情報を常に仕入れておくのが情報社会の基本だって、

社畜の親父が言ってたもんだ。

 

新聞の盤面を彩るのはやはりと言うか「ペンデュラム」の文字だ。

……負けたストロング某についても触れて差し上げろよ。な?

けど、俺は前の世界でペンデュラムデッキを組んではいなかったものの、

原理自体は理解しているが、この世界の人にとってはまさにNOWでHOTな

ニュースなんだろうな。

同時にモンスターを召喚だぁ!? インチキ効果も(ry

ってどこかのホーガン氏も驚かれることだろう。だが、BFが言うな。

しかし、これがまた賛否両論で「システムを偽装したチート行為」だとか

何だとかいう意見もあるみたいだな。

 

「なるほどな……」

 

ガッチャーンッ

 

「えッ、なんだ!?」

 

後方から食器類が割れた音がした。驚いて振り返ると妹が驚愕の顔つきで

俺を見ていた。え、何……何かした? 俺?

 

「おはようさん。ど、どうしたんだ……? そんな顔して」

「に……」

「に?」

「兄さんが、新聞を読んで……ううん。朝に起きるなんて」

「そりゃ新聞くらい読むだろって、それに朝になりゃ起きる。

ほれ、そこ食器あぶねぇから動くなよ? 後、箒あるか?」

 

俺は、とりあえず新聞で食器の残骸をまとめていく。

いや、箒より掃除機の方がいいかもしれない。

 

「おーい、聞いてる? って……なんで泣いてんのッ!!!!」

「やっとまともな人間に……なってくれたんだ」

「やめよ! その言葉はやめよ? 俺に向けられた言葉じゃないって

知っててもなんだか心苦しい! 無性に謝らないといけない気になる!」

 

こっちの俺! こんな可愛い妹にどんだけ心労かけてんだよッ!

その後、とりあえず掃除機の場所を教えて貰い食器を方付けた。

 

 

閑話休題を入れ。2人で朝食の準備を再び始める。

 

「けど、兄さんは昨日から本当に別人みたい」

「え?」

 

鏡花は指折りしながら言う。

 

「朝に起きるし、夜は寝るし。新聞読むし、トイレに入って手を洗うし」

「ほぼ人として当たり前のことなんだよなぁ……それ。それより、学校の

時間は大丈夫なのか?」

「え、あ……やっばッ! じゃ、後お願いね!」

「ハンカチは持って行けよー!」

 

そのままドタバタと学校へ向かう妹。学生さんは大変だぁ。

……俺も昨日までそうだったんだけどね。

 

「仕事すっかなー俺もなー」

 

それから食器洗いを終え、洗濯に取り掛かる。俺はこう見えても基本的な

家事はほぼこなせるんだ。何故なら、元の世界では両親が共働きで、一人っ子

だった俺は大抵のことは一人でやる必要があったから。

《LDS》でのバイトは午後だし。少しでもこの家に貢献すべきだろう。

 

「さて、まー洗濯機は何処の世界も同じだよな、流石に」

 

見ればごく普通のドラム式洗濯機だ。

 

「はッ……!? こ、ここっこれは!」

 

ほぼ大抵の家事をこなせる高スペック()な俺だが、今まさに危機に

直面してしまった。それは……

 

「女子物の下着……だと。くっそ! どうすりゃいいんだ!?」

 

俺のと混ぜていいのか? それとも別にしてネットに入れて洗うべきか?

やっぱり年頃の子だし……「お兄ちゃんのパンツと洗わないでッ!」って

怒られるよな? ましてや元をたどれば俺は他人だし。他人のパンツと

自分のパンツ一緒に洗濯されるとか嫌だろうな? てか、犯罪じゃねこれ?

 

客観的に見て、中学生の女子のパンツを持ったまま苦悩してる自分が

凄くヤバい奴に思えたので洗濯は後回しにした。これ正解~(クイズ君感)

 

洗濯は後回しにして、とりあえずバイトの用意を始めることにする。

なんでも、自分のデッキを持って来て欲しいらしい。そりゃそうか。

なんたって教えるのはデュエルに関することだしな。

実際に実技を交えつつってことなんだろうか?

しかし、この世界に俺のデッキは無いわけで。とりあえずこっちの俺の

カードを拝借することにした。いいよね多少は。

 

「はぇ~すっごい量……」

 

自分の部屋のクローゼットにはこれでもかってくらいのカードがあった。

流石カードの腕にしか自信の無いニート。こういう時は役立つな。うん。

 

「さてと。あっちの俺のデッキを思い出しつつ組んでみるか、な」

 

俺はカードの山に手を付け始めた。

 

……

………

…………

 

「出来た。心配してたけど、なかなかのものが出来たな」

 

組んだデッキは【スクラップ】デッキだ。俺の好きなテーマ群で、

シンクロは勿論、エクシーズやペンデュラムにも割と柔軟に対応

してくれるフェイバリットデッキだ。

 

「けど、エクストラデッキがなぁ。流石にビュートとかカステルとかは

ないよなぁ。けど別に教材って感じだしまぁいいか」

 

元々カジュアル勢だった俺も高かったし持って無かったからなぁー。

シンクロ、エクシーズ、融合って各種召喚も取り入れられたし。

え? 儀式? ……知らない子ですね。

影霊衣はアレはもう「ネクロス」って召喚法でしょう?

 

「っと。そろそろ洗濯しないとなぁ折角のいい日が勿体ねぇ」

 

俺はデッキをディスクにセットして、洗濯へと戻った。

鏡花のパンツは極力無心になって、俺のとは別に洗濯した。

 

 

夕方、バイト場である《LDS》へ向かう。しっかしデカい。

姿はスーツだ。鏡花に「講師なんだから形くらいはしっかりして」と

言われ着たものの、どうにも動きづらい。

とりあえず時間ももったいないので、フロントへ行く。

 

「こんにちは。あの……今日からここでお世話になる末城ですけど」

「あ、はい。伺っています。では案内しますので――――」

「どうも」

 

昨日とえらい反応違うなーおい。

 

「え、っと。俺はどんな生徒を教える感じですか?」

「はい。末城先生には――――」

 

先生。先生か~……いい響きだぁ。

こう、人の上に立ったという気分になる。

 

「あの……聞いていますか?」

「あ、はいッ! 大丈夫ですツ!!」

「そうですか。では、お願いします。教室はあちらですので。

マニュアルはお読みになりましたよね?」

「えぇ、一応」

 

やっべ、話聞いて無かった。

 

「では私がまずは紹介するので、後について来てください」

「はい」

 

受付の女性は、さきに教室へと入っていく。中からは「えー!」だとか

「楽しみ!」といった声が聞こえる。どうやら俺の担当は、小学生くらいの

ようだ。

 

「では、お願いします」

「はい」

 

出てきた女性と入れ替わる形で中へ入る。さぁ、第一印象が大事だぞ。

かっとビングだ俺ぇ!

 

「どどどど、どうもぉおお……きょ、今日からこのクラスのたん、担当に

なった――――あ、末城遊介でっすツ!」

 

「「「………」」」

 

もう帰りたい。

教室には小学生と中学生が半々くらいでいた。人数は4×3の机あり。

12人いることが分かった。そのほぼ全員が、まるでごみを見るような

目で俺を見ている。

 

「っと、すすまん。緊張して取り乱した。ハハハ……だからその目やめてぇ!」

 

「先生」

 

前の女の子が手を上げる。見た目的に中学生だろうか? どこかのお嬢様

だろうか。気品があふれているといえば聞こえはいいが、どうも「委員長」

って感じの子だ。

 

「な、なにかな?」

「先生は、「ペンデュラム召喚」についてどう思いますか?」

 

お、おお! いきなり質問か。

 

「そうだな。え、っと……君は――――」

「私は、栄昌子です。他塾の塾生が、前代未聞の召喚方法を見せた今。

今後、決闘界は変わるでしょう。それを知りつつ私たちは手をこまねいて

いるだけでいいんでしょうか?」

「手をこまねくって……まぁ確かにペンデュラム凄いけどねぇ。そうだな。

じゃあ、皆はどう思っているんだ? ペンデュラムについて知りたい人!」

 

クラスの中からちらほら手が上がる。やっぱなー今話題だもんなー

 

「先生!」

「ん? どうしたんだ? えー……名前も教えてくれるか?」

「あ、俺。秋月修也な。今日、クラスの連中がさー遊勝塾に見学に行くって

言ってたんだよなー。やっぱ、ペンデュラムってあそこでしか習えないのか?」

 

遊勝塾ね。遊矢君たちの塾だよなぁ。

 

「そんなことないぞ。よし。今日はペンデュラム召喚について授業しよう。

きっと、皆は「あんな召喚法見たことない。きっと特別な技術が必要」って

思っているだろう?」

 

皆俺の言葉に首肯する。なんだ、俺案外しっかり講師出来てね?

俺はホワイトボードにペンでカードを描いていく。

 

「まず、ペンデュラムに必用な物がある。じゃあ、えー昌子さん分かる?」

「あの件の少年。榊遊矢でしたか……彼がペンデュラム召喚を行う時に、

デュエルディスクにセットしていたカードですよね? アレはフィールド魔法

でも永続魔法でも無かったわ」

「そうだ! GOOD!」

「なんでそこだけ英語なんですか?」

 

深い意味は無いよ! 悪かったね!

 

「ん゛……そうだ。今、昌子さんが言ってくれた通りペンデュラムには特別な

カード。「ペンデュラムカード」が必要なんだ」

 

俺はでかでかとカードを描く。

 

「そしてこのカードは「スケール」という特別な数値を持つ。レベルでも

ランクでもない、ね。ペンデュラム召喚に必用なカードは2枚だ」

「なんで2枚必要なんだよ! それってアドバンテージを損してないか?」

 

おいおい、少年がアド損なんて言葉遣うのか……

 

「いや、そうも言えないぞ。とりあえず順を追ってこうな。次だ。

このスケールは1~12まである。これは何を指してると思う?

だれか、答えられる子いる?」

 

すると、3列目から手が上がる。

 

「はい、そこの子!」

「え、っと……モンスターのレベルですか?」

「その通りだ。ペンデュラムカードにはスケールがある。そしてこれは

1~12までだ。そしてペンデュラム召喚はこの2つのセットしたスケール

の間のレベルのモンスターを手札とエクストラデッキから特殊召喚できる」

 

俺は板書の2枚のカードの間に付け加えて情報を描く。

メモを取っている生徒も何人かいた。

 

「なるほど。2つのスケール……たとえばスケール1から12までなら、

レベル2から11までのモンスターなら召喚が可能という事ですね?」

「その通りだ。だが、「通常召喚できるモンスター」に限るから注意な」

「なんだよそれぇ! じゃあ、いくらデカイスケールをセットしても

最上級モンスターのほとんどが出せないじゃないか?」

「そうだな。「特殊召喚が行えないモンスター」や召喚方法に規定があるもの

なんかは出せない。けど、例えばの話だが、ノーコスト。リリースなしで

《青眼の白龍》が出し放題って考えたら強くないか?」

「そんなレアカード持ってねぇっての! けど、確かにすげぇなペンデュラム」

 

やっぱ青眼ってこの世界でもレアなんだなー。

 

「皆、ペンデュラムのことが大体は分かっただろう?」

「えぇ。確かに強力ではあるけれど、対策がないってわけでもなさそうね」

「あぁ。そうだ! 皆、それを覚えておいてくれ。まぁ後は後々ってことで。

じゃあ次は実技やるぞ。君らの実力を見せてもらうから」

 

俺はスーツの上着を脱いでニヒルに笑った。

 




《末城 鏡花》 女 14歳
スタンダート次元の遊介の妹。

《栄 昌子》 女 15歳
遊介のクラスの生徒。典型的な「お嬢様&委員長タイプ」

《秋月 修也》 男 11歳
遊介のクラスの生徒。活発な少年。


ペンデュラムの講義部分はすごく自信ないですけど、見逃してください。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Teaching2 実技決闘、3つの召喚法

《LDS》の決闘場へ移動する。

 

「さぁ、次は実技の時間だ。まずはペア組め~」

 

手をぱんぱん叩いて指示を飛ばす。生徒たちは好きな物同士ペアになる。

 

「昌子さん、どうした? あ、……ペア組めなかったのか」

 

やっぱりあぶれちゃう子は出ちゃうか。俺の配慮が足りなかった。

 

「違います! 何ですかその気を遣った目はッ!

私、先生とデュエルしたいです。今後、このクラスの担当に

なる以上。その実力を皆知っているべきだと思いますわ」

 

周りからも「そうだ、そうだ」的な視線が……困ったな。

 

「んー俺は構わないけど、そうすると余りが出るだろ? とりあえず

最初はペアでやろう。それが終わったらお相手させて頂くよ」

「……分かりましたわ」

 

渋々了承してくれたみたいだ。

 

「よし。じゃあ、始めてくれ!」

 

夕焼け空に少年少女の声が響いた。

 

 

「終わりました。さぁ、先生。私とデュエルしてください」

「早いな~よし、分かったよ……けど、俺は遠慮なんてできないぞ?」

「そんなものは必要ありません」

 

「ならばよし」俺は、デュエルディスクを展開させる。

 

周りにはデュエルを終えた生徒達が集まって円を作っていた。

 

「それじゃあ始めようか」

「えぇ。見せてもらいますわ」

 

「あの先生大丈夫かな……」

「あぁ。前の先生も栄さんが決闘で負かして辞めちゃったんだよな……」

「そうそう」

 

あの、聞こえちゃいけないひそひそ話が聞こえたんだけど!?

何、この子そんな強いの!! 

――――まぁ、《LDS》の生徒だし当たり前っちゃ当たり前なのかもだけど!

 

「どうか、しましたか?」

「え、……あ、あぁ! 何でもないさ! さぁいくぞ!」

 

「「デュエル!!」」

 

システムが自動で先攻後攻を告げる。先攻は俺か。

 

「じゃ、俺が先攻ってことでいいかな」

「はい。

分かってらっしゃると思いますが、先攻1ターン目はドロー出来ませんよ」

「あぁ。そうだったな。じゃあ俺のターンからだ」

 

デッキからカードを5枚引いて準備完了だ。

 

「いいか。このデュエルで皆に、3つの召喚を見せてやる。俺のターン!

俺は《ゴブリンドバーグ》を召喚!」

 

《ゴブリンドバーグ》☆4

攻1400/守0

このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスター1体を

特殊召喚できる。この効果を使用した場合、このカードは守備表示になる。

 

「コイツの召喚に成功したとき、手札からレベル4のモンスターを

特殊召喚できる。俺は《スクラップ・ビースト》を特殊召喚!

ゴブリンドバーグはその効果で守備表示になる」

 

《スクラップ・ビースト》☆4

攻1600/守1300

フィールド上に表側守備表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された場合、

バトルフェイズ終了時にこのカードを破壊する。

このカードが「スクラップ」と名のついたカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、「スクラップ・ビースト」以外の自分の墓地に存在する「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える事ができる。

 

俺の場に2体のモンスターが並ぶ。

 

「アレは、チューナーだ!」

「ってことは、先生はシンクロ召喚をするのか?!」

 

「いい発想だな、君たち。だが俺がするのはシンクロじゃあない。

俺は、2体のモンスターで――――オーバーレイ」

 

2体のモンスターが混ざって渦に消える。

 

「エクシーズ召喚! 来い! 炎樹海の溶岩獣《ラヴァルバル・チェイン》!」

 

《ラヴァルバル・チェイン》★4 エクシーズ

攻1800/守1000

レベル4モンスター×2

(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、以下の効果から

1つを選択して発動できる。

●デッキからカード1枚を選んで墓地へ送る。

●デッキからモンスター1体を選んでデッキの一番上に置く。

 

「すげぇええ! エクシーズモンスターだ!」

「カッケぇええええええ!!!」

 

よくよく考えると、「溶岩獣」っていったけどチェインって「海竜族」

なんだよなぁ。恥ずかしい……

 

「ま、まだまだ行くぜ。俺はチェインのモンスター効果発動! ORUを一つ使い、

2つ目の効果を発動! デッキからモンスターを1枚デッキトップに置く。

さぁ、仕込みは終わりだ。俺はこれでターンエンドっと」

「何かと思えば、エクシーズモンスターと言えど攻撃力1800。

そんなモンスターすぐに墓地に送って差し上げる」

「勉強不足だな。このモンスターの役割は戦闘じゃあないんだぜ」

 

チェインの真価はその効果にあるのだから。

 

「なら結果で証明して見せます! 私のターンドロー!」

「さぁ来い! 初めはノーガードでいてやるよ」

「後悔させてあげます! 相手の場にのみモンスターが存在する時、

このモンスターを特殊召喚できます。出でよ、《サイバー・ドラゴン》!」

 

表サイバー流か。その爆発力はアカン。こりゃ下手するとヤバいんじゃね?

ノーガードどころか1Killされる恐れもあるよね?

 

《サイバー・ドラゴン》☆5

攻2100/守1600

相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが

存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 

「さらに《サイバー・ドラゴン・コア》を召喚します!」

 

《サイバー・ドラゴン・コア》☆2

攻400/守1500

このカードが召喚に成功した時、デッキから「サイバー」または「サイバネティック」と名のついた魔法・罠カード1枚を手札に加える。

また、相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、墓地のこのカードを除外して発動できる。

デッキから「サイバー・ドラゴン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。

「サイバー・ドラゴン・コア」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

このカードのカード名は、フィールド上・墓地に存在する限り「サイバー・ドラゴン」として扱う。

 

ほら回りだしたぞ……。

 

「効果を発動します。デッキから《サイバー・リペア・プラント》を手札に

加えます。さらに魔法カード発動、《機械複製術》」

 

《機械複製術》魔

自分フィールド上に表側表示で存在する攻撃力500以下の機械族モンスター

1体を選択して発動する。

選択したモンスターと同名モンスターを2体まで自分のデッキから特殊召喚する。

 

「げ、マジか……こりゃやべぇ」

「攻撃力500以下の機械族モンスター。私は《サイバー・ドラゴン・コア》を

選択します。先生、この意味分かりますわよね?」

 

「え、どういう事だ?」

「いや、分かんねぇよ」

 

周りの生徒は今一つ分からないようだな。

 

「コアはフィールド・墓地では《サイバー・ドラゴン》として扱う。複製術

の効果は選択したモンスターと“同名”モンスターを特殊召喚できる。つまり……」

「えぇ、デッキから2体《サイバー・ドラゴン》を特殊召喚しますね」

 

このコンボは俺もやられたことがある。インチキだよなぁ?

 

「すげぇ! サイバー・ドラゴンが一気に3枚も並んだぞ!?」

 

「ぅあ……圧巻ってのはこういう事をいうんだろうなきっと」

「行きなさい! サイバー・ドラゴンでチェインを攻撃! 

<エヴォリューション・バースト>!」

 

末城遊介:3800LP

 

「くッ……」

 

ソリッドヴィジョンシステムの衝撃が身体を襲う。

 

「終わりですわ! 2体のサイバー・ドラゴンでダイレクト・アタックッ!」

 

2体のサイバー・ドラゴンが折り重なるように襲い掛かってくるッ――――

 

「く、クソッ!!」

 

ドォーン……

 

「やりましたわ! 大口を叩いていた割に他意無いですわ」

 

衝撃で煙が舞い、やがてそれも収まる。

 

「な、ッ!! なんで……ッ!? 攻撃は通ったはずです!」

「――――俺は、一体目のダイレクト・アタックの時にこいつを手札から

特殊召喚した。《バトルフェーダー》」

 

《バトルフェーダー》

攻0/守0

相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。

このカードを手札から特殊召喚し、その後バトルフェイズを終了する。

この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

「コイツの効果で君のバトルフェイズを終了させてもらった」

「首の皮1枚でつながったという訳です、か」

「どうだろうな。さて、ここで少し授業をしよう。あの場面。サイバー・ドラゴン

を並べたまでは良かった。なら、なんでエクシーズするなり、融合するなり

しなかったんだ?」

 

正直サイバーが並んだ時に、

《パワーボンド》→8000のエンドが飛んでくる→\(^o^)/

って流れが見えたんだけど。もしくは、インフィニティで蹂躙されるか。

あっぶね……ホントどきどきしたわ。終わったかと思った……。

 

「それは……別に、いいじゃないですか!」

「つまり君はまだ、融合召喚とエクシーズ召喚を知らないという答えで

いいかな?」

「くッ……そうですが! なにかいけませんかッ!」

 

なるほど。やはり、エクストラデッキを用いた召喚はこの世界じゃ、

割と敷居が高いって事だろう。

けど、エクストラなしのサイバー流って構築が気になるなぁ。

エルタニンとかが切り札なのだろうか? 

 

「いや、何も悪いことはない。むしろ君には……君たちはまだ強くなれる!

さぁ、次はこっちから行くぞ! その可能性を見せてやる」

「……ならどうぞ。私は、ターンエンドです」

「あぁ俺のターンだな。ドロー! 《スクラップ・キマイラ》を召喚」

 

さっきチェインで持ってきたのはコイツだ。

 

《スクラップ・キマイラ》☆4

攻1700/守500

このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に存在する「スクラップ」と名のついたチューナー1体を選択して特殊召喚する事ができる。

このカードをシンクロ素材とする場合、「スクラップ」と名のついたモンスターのシンクロ召喚にしか使用できず、他のシンクロ素材モンスターは全て「スクラップ」と名のついたモンスターでなければならない。

 

「効果発動! 甦れ、《スクラップ・ビースト》。行くぞ、2つ目の召喚法を

見せてやる! 俺は、レベル4のキマイラにレベル4のビーストをチューニング!

鉄翼を広げ、今ここに降臨しろ! シンクロ召喚! 

――――レベル8《スクラップ・ドラゴン》ッ!」

 

「今度は、シンクロ召喚だッ!」

「すげぇ……かっこいい」

 

《スクラップ・ドラゴン》☆8 シンクロ

攻2800/守2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

1ターンに1度、自分及び相手フィールド上に存在するカードを1枚ずつ選択して

発動する事ができる。選択したカードを破壊する。

このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、シンクロモンスター以外の自分の墓地に存在する「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。

 

「これが、シンクロ召喚……」

「そうだ。……けど、これくらい皆すぐに覚えられる」

 

「え? 俺達でもできるのか、先生!?」

 

俺はその問いに強く首肯する。

 

「あぁ! 俺が教えてやるさ。シンクロもエクシーズも、融合もな!

さあ行くぞ、スクラップ・ドラゴンの効果! 自分と相手のカードを1枚づつ

破壊しする。俺が選択するのは《バトルフェーダー》と《サイバー・ドラゴン》!

やれスクラップ・ドラゴン、<Scrap destroy>!」

 

フェーダーとサイバードラゴンがスクラップドラゴンの一撃で砕け散る。

サイバードラゴンも機械族だしホントのスクラップになってしまった。

 

「フェーダーは効果で除外される。さあ、お次に融合召喚を見せてやるよ」

 

「マジかよ! シンクロ・エクシーズ・融合。全部使えるってのか!?」

 

「言ったろ? 3つ全部見せてやるって。

俺は、魔法カード《ミラクルシンクロフュージョン》を発動ッ!

場の《スクラップ・ドラゴン》、墓地の《ゴブリンドバーグ》を除外し、

融合! 融合召喚! 烈槍携えし竜騎士、《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》ッ!」

 

《ミラクルシンクロフュージョン》魔

自分のフィールド上・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、シンクロモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

また、セットされたこのカードが相手のカードの効果によって破壊され墓地へ送られた時、自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》☆10 融合

攻3200/守2000

ドラゴン族シンクロモンスター+戦士族モンスター

このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚する事ができる。

1ターンに1度、墓地に存在するドラゴン族のシンクロモンスター1体をゲームから

除外し、エンドフェイズ時までそのモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を

得る事ができる。

また、このカードがフィールド上に表側攻撃表示で存在する限り、相手のカードの効果によって発生する自分への効果ダメージは代わりに相手が受ける。

 

「――――さぁ、本日の授業の最終段階だ」




ドラゴエクィテスはただのロマン。深い意味はないんだ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Teaching3 融合召喚! 《サイバー・ツイン・ドラゴン》

「先生……少々大人げないとは思いませんか?」

 

結局デュエルは俺の勝ちだった。いや、勝ってよかったのか聞かれると

どうも……釈然としないわけだが。今も「うわ……アイツやりやがった」的な

視線を送られてるわけで。じゃあどうしろってんだ!

 

「――――すまん。熱が……入っちゃって。け、けど皆融合・シンクロ・

エクシーズとみて貰ったわけだが。次から早速やってくからなー」

「マジで!? 俺、シンクロやりてぇ! 先生、シンクロ覚えれば

強くなれるのか!?」

「それは自分次第さ。なぁに。原理さえ知ってりゃ後はどうとでもなるだろうさ。

――――というわけで、今日の授業はここまでだ」

 

そう言うと、それぞれわいわい言いながら帰って行った。

なんとかやり遂げたなぁ……疲れた。

 

「先生」

「ん? どうした、帰らないのか?」

 

俺も帰るかと思っていると声を掛けられる。相手は、デュエルしていた

昌子さんだった。

 

「……あの、私に――――融合召喚を教えてくれませんか?」

「どうした急に? 授業で追々扱っていくつもりだぞ?」

「それまで待てません。私はすぐにでも強くなりたいのです」

「そう言われてもなぁ……」

 

この子だけ特別って訳にもいかないしなぁ。

俺がどうしたものかと逡巡していると、彼女は上目づかいで見てくる。

うっ……そんな目をされると俺がいじめてるみたいじゃないか。

 

「なんでそんなに強くなりたいんだ? 俺の前の講師を負かしたって

いうじゃないか。君は今日を見ている限りだと頭も良いみたいだし、

そんなに焦る必要はないんじゃないか、十分強いだろう?

これから皆一緒に強くなっていこうじゃないか」

 

俺がそう言うと彼女の表情が少し陰る。

 

「……先生には関係ないじゃないですか」

 

「あーそうだよな、スマン立ち入った事聞いたな。

……よし。ならこうしよう」

「?」

「明後日も授業があるだろ? その時、少し早く来てくれ」

「そこで教えて頂けるという訳ですか? 融合を!」

「さぁ、そいつはどうだろうな」

「何ですかそれ! おちょくってるんですか!」

 

ここで教えるって言ってしまうと、色々規則に引っかかるんですよ。

講師ってのは様々な決まりごとがあるんだ。

 

「ま、強くなりたいなら来るといいよ。損はさせないさ」

「……分かりました。楽しみにさせて頂きます」

 

そう言って彼女も帰って行った。これでようやっと俺の初授業が終わった。

俺も事務処理を済ませ、家に帰ることにした。

 

「帰ったぞ~……疲れた」

 

初出勤で緊張していたのか、玄関に入った瞬間に疲れが襲ってくる。

まぁ本当の家では無いのかもしれないが……。

 

「ん、兄さん。お帰りなさい。初めての授業はどうだった?」

「どうって言われてもなぁ。まぁそれなりには何とかなったんじゃない」

「何そのあたり触りのない言い方。まぁいいや。さ、ご飯にしよ」

「……あー悪い、先に食っててくれ。俺まだちょっとやることがある」

「え? まぁ、いいけど……別に待ってたわけじゃないし」

 

え、何その薄いツンデレ。やだ、逆に申し訳なくなる。

 

「じゃあさ、なら手伝って貰ってもいいか。ちょっと探し物なんだよ。

それ終わったら一緒に食うってことでどうだ?」

「探し物?」

 

確かあのカードも部屋にあったはずなんだが……

俺は鏡花と再び部屋のクロゼットへ行くことにした。

 

「いつ見ても汚いわねぇ……片付けようとは思わないの?」

「と、言われてもなぁ。んじゃ、さっき言ったカードを探すのを手伝ってくれ。

見つけてくれたらうま〇棒買ってやるから、な?」

「たった10円で人を使おうってその魂胆が気に入らないわ、全く。

えっと……こっちかしら? 全く、なんでカテゴリーで分けたりとかそういう

整理整頓ができないの――――」

 

そう言いながらも手を動かす辺り、この子は凄く優しいのだろう。

だが、そんな子に俺は嘘をついていることになる。いずれは話さないと

いけないんだろうな。

 

「さて。宝探しと行きますか」

「けど、今更何に使うの? 《融合》の魔法カードなんて」

「授業に必用なんだ。ちょっとした特別授業にな……」

 

それからは2人であぁだこうだ言いながら探し物を探していった。

 

「ふぅ。あらかた揃ったな。しっかし、凄い量だな……

全部売ったら家が建つかもなぁ」

「自分で集めたのに何をいっているのよ。さ、ご飯にしましょう」

「あぁ……そうだったねぇ」

 

翌日はバイトは休みなので、俺は家事をやりつつごろごろ過ごした。

高校生だった時、平日は勿論。テストの結果次第では土曜日も学校が

あった。なので、平日に休みだとなるとどうしたらいいものかと悩む。

結果、家事だけをこなしTVと睨めっこを決め込むことになった。

 

『君もレオ・コーポレーション直営の《LDS》でデュエルを磨け!』

 

ストロング石島がCMキャラでなくなっていることに哀愁を感じた……。

 

そんなこんなで休日の時間の流れは速い。日曜日とか、

「……あぁもう6時半なのか。また明日から月曜日――――」

とついついサ〇エさんを見つつ思ったことは誰しもあるだろう?

 

……

 

「はぁ……バイトか今日」

 

この次元に来て3日目の夕方がやって来た。午前は相も変わらずだらだら

と掃除、洗濯をこなし、デッキの調整を行っていた。今後様々な状況があるかも

知れないと考え、他にも3つほどデッキを組んでみた。

まぁ主人公サイドから離れている俺が何かに巻き込まれることは無いだろうけど。

 

「よし。行くか」

 

鏡でネクタイのズレを直す。今日は例の約束があるので、早く行く。

目的のカードも鏡花に手伝ってもらって見つけられたし。準備は完了だ。

 

 

「先生。来ましたけど」

 

《LDS》の教室。授業開始まで1時間はあるが、そこに昌子さんがやって来た。

 

「来たか。よし、時間もないし早速始めようか。――――融合の特別授業を」

「教えて、頂けるんですか!」

 

その顔は年相応の女の子の顔で、改めてそういう反応をされると照れる。

 

「まぁそういう事だ。だが、一つ約束してくれ」

「なんですか?」

「このことは誰にも言うな。これは俺の一個人としての善意でしかない。

けど、上に知られると面倒なんだよ……色々。分かるよな?」

 

彼女は「約束します」と真顔で了承してくれた。

毎回こう素直だといいな。きっと最初は試していただけだと思いたい。

 

「よし。ならこれを渡すよ」

「これが……《融合》の魔法カードですか!」

「そうだ。じゃあ次に融合召喚についてだ」

 

俺は黒板にカードの絵を3枚描く。

 

「まず、融合について知っていることを教えてくれ。なんでもいい」

「え、そうですね……2体以上のモンスターから新たなモンスターを召喚

する。ですか? 後は、《融合》の魔法カードが必要なんですよね?」

「まぁ、及第点か。今はその認識で構わないさ。詳しいことは授業で、な」

 

俺は1枚のカードに《融合》と書入れる。そして、他の2枚を

渦のようなものでグルグル囲う。

 

「融合召喚は基本的に《融合》の魔法カードを使用する。だが、この類の魔法カード

にも多種様々な物があるな」

「先生が私との決闘で使った、《ミラクルシンクロフュージョン》……ですね?」

「あぁそうだ。他にもHERO専用のもの、ドラゴン族専用のもの……etc。

他にも、罠カードで融合できる場合もある」

 

ジェムナイトのサポートであった《廃石融合》などだろうか。

まぁこの辺はごっちゃになるから省くか。

 

「兎に角融合については下手に説明しだすと、枚挙に暇がないから今日は

《融合》の魔法カードを使用する場合のことだけ教える」

「よろしくお願いします」

「あぁ。じゃあ時間もないし早速始めるか。っと……忘れてた。

肝心なヤツ渡してない。はら」

 

俺は用意してきたもう1枚のカードを渡す。

 

「これは?」

「君のデッキは《サイバー・ドラゴン》が中心のデッキだろう?

そいつは、《サイバー・ツイン・ドラゴン》。サイバー・ドラゴン2体で

融合できる融合モンスターだ」

「これも貰ってしまっていいんですか?」

「好きに使ってよ。どうするかは任せるから、さ」

 

どうせニートの部屋で腐ってたであろうカードだし、3枚くらいあったし。

いいだろう。なら必要としている人が持っている方がいいしな。

 

「実際、決闘しながら説明しよう」

「分かりました」

 

俺たちは決闘場へ移動することにした。

 

決闘が3戦目を数えた時だった。状況は俺の優勢で、彼女の場には

《サイバー・ドラゴン・コア》がいる状況だ。

未だに融合は成功していない。が、今回はどうだ。

 

「私のターンですね」

「あぁそうだ。君の場にはコアが一体。俺の場には攻撃力2100の

上級モンスター《スクップブレイカー》。この状況で君が勝つには――――」

「引きますわ。あのカードをッ! ドロッーー!!! 来た!」

 

俺は無言でうなずき、「手順は把握してるな?」という。

 

「勿論です! 私は魔法カード《サイバー・リペア・プラント》を発動!」

 

《サイバー・リペア・プラント》魔

自分の墓地に「サイバー・ドラゴン」が存在する場合、以下の効果から1つを

選択して発動できる。

自分の墓地に「サイバー・ドラゴン」が3体以上存在する場合、両方を選択できる。

「サイバー・リペア・プラント」は1ターンに1枚しか発動できない。

●デッキから機械族・光属性モンスター1体を手札に加える。

●自分の墓地の機械族・光属性モンスター1体を選択してデッキに戻す。

 

「墓地には《サイバー・ドラゴン》が一体。私は上の効果を使いますわ。

デッキから、《サイバー・ドラゴン》を手札に加えます! そして――――

魔法カード《融合》を発動ッ! フィールドの《サイバー・ドラゴン・コア》、

今加えた《サイバー・ドラゴン》を融合!」

 

2体の機械竜(コアは竜か定かではない)が混ざり合う。そして、

 

「二頭を持つ機械竜、《サイバー・ツイン・ドラゴン》を融合召喚ッ!」

 

サイバー・ツインが咆哮を上げる。

 

《サイバー・ツイン・ドラゴン》☆8 融合

「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」

このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。

このカードは一度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

 

「よくやったぞ! 成功だッ!」

「これが……融合召喚――――私にもできた……!」

「さぁ、来い! まだ決闘は終わってないぜ!」

「あ……はいッ! 行きます、《サイバー・ツイン・ドラゴン》で攻撃ッ!

<エヴォリューション・ツイン・バースト>ッ!!!!」

 

1つの頭からの奔流にブレイカーが飲まれ、もう片方が俺に直撃する。

当然俺のLPは0になる。

 

「うッ――――……今の感覚忘れるなよ?」

「先生。ありがとうございました」

「よし。今日の授業はここまでだ! はぁー疲れたな」

 

今日も働いた働いた。帰って――――

 

「先生、まだ授業はやってませんよ?」

「あ」

 

講師ってのはなかなか大変だが、俺はその日講師としての喜びというか

楽しみを実感していた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Teaching4 打倒、《LDS》TOPクラス

講師としての生活にも慣れてきたころ。俺がこの次元に来て、

早くも2週間が過ぎようとしていた。

今日は、《LDS》の講師たちが会して会議を行う日なのだが……

 

「あの、すみません……遅れました――――」

 

俺は盛大に遅刻していた。でもさ、交通機関の乱れだし

しょうがないよね! え、社会でそんな事通じない! 社会って怖いね!

 

「君は?」

「あぁ、俺――――いや、私は2週間前からここでお世話になってる末城遊介です。

遅くなってすいません」

 

強面の老講師に頭を下げる。うわこえぇ……

 

「君が、か……なるほど。会議の場に送れてくるとは、ねぇ」

「あぁあの、落ちこぼれの担当ですか……(嘲笑)」

 

複数の講師からも笑いが落ちてくる。それより気になったのは、

「落ちこぼれ担当」ってところだ。なんだよそれ……

 

「え? ……ちょっと待ってください。あの、落ちこぼれというのは――――」

「あぁ済まない。口が滑ったようだ。歳をとると口がしゃべりたがって

仕方ないようだ。気にしないでくれ」

 

ハハハと周りの講師からも笑いが出る。いや、笑えねぇよタヌキが。

 

「俺のクラスの生徒たちが落ちこぼれだって……そういう意味ですか?」

「そうは言っていないさ。ただ《LDS》にはいささか……ね?」

「えぇまぁ……正直、ね」

 

なんだよそれ、俺のクラスの生徒が「落ちこぼれてる」って言ってるような

反応しやがって。流石にカチンと来たぞオイ。

 

「撤回してくれませんか?」

「ん? 今、なんと」

「撤回してくれませんか? 塾で学んでいる以上、上とか下とか無いじゃない

ですか。彼らは今、必死に強くなろうと頑張っています」

「初めて2週間足らずの君に何が分かる?」

「何もわかりません」

 

周りから「なんだそれは」的な笑いが起こる。

 

「ただ、2週間彼ら彼女らと接してきて思いました。彼らには才能も

それに相応の意志があると」

「ハハ、話にならん。さぁさっさと席に着くといい。話が進まん」

「ウチには多くのエリートが居ますからね。正直、君のいう才能というのも

ねぇ……ただの感情移入じゃないのかね?」

「――――そうかも知れまんね。けど、人の上で胡坐かいてるエリート君()に

比べればまだ俺の生徒の方が強いかもしれませんよ?」

 

その言葉に今度は彼らが怒鳴る番になる。

 

「なんだと……ッ。君、今のは聞き捨てならないぞ」

「各コースのエリートを馬鹿にするつもりか!」

「おっと、口が滑りました。けど、俺のクラスの生徒は馬鹿にしても、

エリートの生徒が馬鹿にされると怒るんですね」

「こいつ……言わせておけばッ!」

 

場が一気に殺気立つ。

 

「そこまで末城君がおっしゃるなら、試してみるのは……どうです?」

「ま、マルコ先生。何を――――?」

 

マルコという顎がデカい先生が言う。

ん? あの人黒咲さんにカードにされて――――

 

「彼のクラス……総合コースF組と各、シンクロ・融合・エクシーズコースの

生徒達。どちらが勝つのか。はっきりさせるのはどうですか?」

「おぉ、それがいい」

「そうだわ。そうすれば白黒はっきりします」

 

周りは賛同の雰囲気。だが、俺としても願っても無いことで。

 

「分かりました、お受けします。彼らの実力を……見せて上げますよ」

 

俺はそう言うと堂々と会議室を後に――――

 

「き、君! 会議はまだ終わってないぞ! 席に着きなさい」

「あ、すいません――――」

 

 

「――――と、いう事で君らには各コースのエリートたちと決闘してもらう」

 

「「「は?」」」

 

俺は教室に入ると、生徒達にそう告げた。

 

「先生。それは一体、何があったんですか?」

「うん。よく聞いてくれた昌子さん実はな――――」

 

俺はありのままを語ることにした。

 

「……という事なんだ」

「それは先生が悪いような気がしますが?」

 

他の生徒もうんうん頷く。

 

「いや、このクラスのことを馬鹿にされたんだ。引けるに引けないさ。

それに君らは今日までに他の生徒が一生懸命机上で勉強していることを

すでにできるようになっているはずだ。な、そうだろ、修也!」

「あぁ! その通りだ。俺達も《LDS》ってところを見せてやろうぜ!

それに早く“力”を試してぇ……血が――――“滾る”ぜ」

「お、おぉ……熱いな」

 

彼らには俺が前の次元、世界で知り得たデュエルのことを教えてきた。

そこら辺の決闘者には負けないはず。何故ならもう既にほとんどの生徒

が3つの召喚法を覚え、使えるからだ。

 

「そうだ君たちも《LDS》なんだ。その事実に上も下も無い! 

勝てるはずだ、いや勝つ!」

「ですが先生。《LDS》の各コースのエリートとなると、

大体どの人も今期の勝率80%オーバーの人たちですよ?」

「あぁ、勿論知ってるさ。だからこそ!」

 

俺はホワイトボードに書き殴る。「打倒、TOPクラス」と。

 

「約束の日は1週間後。それまでに数回しか授業は無いが、君たちには

今までのような「一般知識の講義」では無く、「勝つための講義」を

する。いいか。決闘でものをいうのはなんだろうか? 

カードパワーか? 知識か? タクティクスか? レイ、君はどう思う?」

 

俺は2列目の斎賀レイという生徒を指名する。彼は、これまでの授業で

特にエクシーズの扱いに秀でた生徒だ。

 

「そうだな……俺は、知識だと思うが」

「なるほど。――――だが答えは、“全部”だ」

「なん……だと」

 

レイが驚く。

 

「あぁそうだ。けど最も重要なのは、知識だ。知識あってこその戦略であり、

カード選択――――デッキビルドに繋がるからだ。さて、授業に入ろうか」

 

俺は融合・シンクロ・エクシーズと書く。

 

「昌子さん。融合召喚説明を頼む」

「はい。融合召喚は、《融合》魔法カードなどで2体以上のモンスターから

新たにモンスターを特殊召喚する召喚法です」

「ありがとう。今の説明で大体あってる。じゃあ、対融合に対してどうすれば

いいか。これはどうだろう? 融合使いとして、わかるか?」

「え、と……それはちょっと」

「そうだな。例えば、召喚を邪魔するカードを使うんだ。例えばこれだ」

 

俺はカードを1枚取り出す。

 

《昇天の黒角笛》罠

相手モンスター1体の特殊召喚を無効にし破壊する。

 

「《昇天の黒角笛》のカード。《融合》などのカードを使用しての融合

ならこいつみたいな効果で無効にしてやればいい。後はルール効果に

よる融合なら召喚された後に罠カードで破壊するとか、だな」

「なるほど。逆に自分で使用するときはそういったことに気をつければ

いいのですね」

「そうだ。融合に限った話じゃないが、相手の場を確認してから

踏み込むことは決闘の初歩だ。罠があるのに切り札を出して破壊されて

しまうとそこから追い込まれることになるからな。

自分の好きな動きをするためのデッキ構築も必要だ。だが、同時に

相手の動きを“止める”ってのも視野に入れるんだ。ここまでOK?」

 

生徒達は頷きながらメモを取る。それから俺はシンクロ・エクシーズに

ついても同様に説明を進めていった。

 

「さぁて、次は実技だ。いつも通り始めろ~」

 

俺たちはいつものように決闘場に移動して実技を始める。

生徒達の決闘は見るからに2週間前より高次なものになっている。

 

「いいぞ。皆……その調子だ!」

「おい、先生よぉ! 俺とやってくれないか? 新しいデッキ、考えて

来たんだよな。今度のは“熱い”ぜ」

「ん? 修也か。いいぞやっても~後、君はいつも熱いだろうが」

 

修也はシンクロ使いだから、俺はじゃあこのデッキで行くか。

 

「先生、早くしろよな!」

「あーはいはい。焦らすなよ」

 

「先生よぉ。今日のデッキは……“熱い”ぜ?」

「もうそれはいいって……じゃ君の先攻な」

「そっけねぇ!? くそ、見てろよ!」

 

「「デュエル!!」」

 

末城遊介:4000LP

秋月修也:4000LP

 

「やけどすんなよ! 俺のターン。俺はこのモンスターだ!」

「そいつぁ……ッ! 《トーチ・ゴーレム》か!」

 

なんで先攻1ターン目にそんな奴を?

確か修也のデッキはローレベルシンクロだったはず……

 

「俺の場にトーチトークン2体を特殊召喚し、先生の場に《トーチゴーレム》

を特殊召喚!」

 

《トーチゴーレム》☆8 

攻3000/守300

このカードは通常召喚できない。

このカードを手札から出す場合、自分フィールド上に「トーチトークン」

(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を2体攻撃表示で特殊召喚し、

相手フィールド上にこのカードを特殊召喚しなければならない。

このカードを特殊召喚する場合、このターン通常召喚はできない。

 

「このターン通常召喚は行えないぞ?」

「知ってらぁ! 俺は、魔法カード《磁力の召喚円 Lv2》を発動!」

 

《磁力の召喚円 Lv2》魔

手札からレベル2以下の機械族モンスター1体を特殊召喚する。

 

「俺は《ワンショット・ロケット》を特殊召喚!」

「ワンショット・ロケットだと!?」

 

ら、ラリィイイイイイイイイイイイイッ!!のモンスターか!

ってことは……やっぱり。アレだよな……

 

《ワンショット・ロケット》☆2 チューナー

攻0/守0

このカードが攻撃する場合、このカードはその戦闘では破壊されない。

また、このカードが攻撃を行ったダメージ計算後、攻撃対象モンスターの

攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える。

 

「俺は、レベル1のトーチトークンにレベル2の《ワンショット・ロケット》

をチューニングッ! その一撃、相手を焼き尽くす! シンクロ召喚ッ!!

――――来いッレベル3、《ワンショット・キャノン》!!」

 

《ワンショット・キャノン》☆3 シンクロ

攻0/守0

「ワンショット・ロケット」+チューナー以外のモンスター1体

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。

フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して破壊し、

そのコントローラーに破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える。

 

「やっぱそいつか……ってことはこのトーチは……」

「あぁそうさ! ワンショット・キャノンの効果発動だッ! フィールドの

モンスターを一体破壊! その攻撃力の半分のダメージを与える!

行けぇワンショット・キャノンッ! トーチ・ゴーレムを破壊ッ!

<ファイナル・キャノン>だぁあああああッ!!!」

 

ワンショット・キャノンから放たれる電子方がゴーレムを貫く。

その衝撃が俺を襲う。なんつぅコンボだ。

 

末城遊介:2500LP

 

「か、考えたな……修也」

「へッこれだけじゃないぜ先生ッ! 燃え尽きんなよ?

俺は、カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

単純に攻撃表示でモンスターを出せば、あいつの餌食って訳か。やるな。

先攻1ターン目から相手にダメージを与えるか。せっかちなアイツらしい。

 

「なんだか俺も楽しくなってきたぞ!」

 

講師として生徒の成長を見るのがこんなに楽しいとは思わなかった。




《斎賀 レイ》 男 14歳
遊介のクラスの生徒。クールで静かな少年で、エクシーズ使い。


・『総合コース』
シンクロ・融合・エクシーズを万遍なく学びたい人のためのコース。
各シンクロ・融合・エクシーズコースに専門性は劣るが、多種多様に
学べるメリットがある。A~Fまであり、Aが最高でFが最低の格付けとなる。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Teaching5 Fの選抜

「俺のターンだな。ドロー!」

 

末城 遊介:2500LP

秋月 修也:4000LP

 

相手の場には、《ワンショット・キャノン》、《トーチトークン》

そして伏せカードが一枚という状態だ。

 

「俺のターンだ。俺は、フィールド魔法《スクラップ・ファクトリー》を

発動! そして、《ゴブリンドバーグ》を召喚!」

 

《スクラップ・ファクトリー》魔

このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上の「スクラップ」と名のついたモンスターの攻撃力・守備力は200ポイントアップする。

また、フィールド上に表側表示で存在する「スクラップ」と名のついたモンスターがカードの効果によって破壊され墓地へ送られた時、自分はデッキから「スクラップ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。

「スクラップ・ファクトリー」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

俺の周りにソリッドヴィジョンの機械工場が広がる。

 

「ドバーグの召喚に成功したとき、俺はレベル4モンスターを一体特殊召喚

出来る! 来い! 《スクラップ・ビースト》! ドバーグは効果で守備になる」

「チューナーを出したな……」

「あぁ! 今度は俺の番だッ! 行くぞ、レベル4の《ゴブリンドバーグ》に

《スクラップ・ビースト》をチューニングッ! シンクロ召喚ッ!

――――鉄翼を広げ、今ここに降臨しろ! 《スクラップ・ドラゴン》!」

 

「来たなッ……先生の“エース”が」

「まだまだ。俺は、手札から《スクラップ・オルトロス》を特殊召喚!」

 

《スクラップ・オルトロス》☆4 チューナー

攻1700/守1100

このカードは通常召喚できない。

自分フィールド上に「スクラップ」と名のついたモンスターが表側表示で存在する

場合、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。

この効果で特殊召喚に成功した時、自分フィールド上に表側表示で存在する

「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して破壊する。

このカードが「スクラップ」と名のついたカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、「スクラップ・オルトロス」以外の自分の墓地に存在する「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える事ができる。

 

「モンスター効果発動! このモンスターの特殊召喚時、自分のスクラップを

一体破壊する! 俺はオルトロスを破壊!」

「え、今だした奴を!?」

「この時、ファクトリーの効果が発動する! デッキから《スクラップ・ゴーレム》

を特殊召喚ッ! オルトロスの効果は発動しない」

 

《スクラップ・ゴーレム》☆5 

攻2300/守1400

1ターンに1度、自分の墓地に存在するレベル4以下の「スクラップ」と名のついた

モンスター1体を選択し、自分または相手フィールド上に特殊召喚する事ができる。

 

「ゴーレムの効果発動! 甦れ、《スクラップ・ビースト》」

 

ゴーレムの冷蔵庫?的なところからビーストが排出される。

 

「見せてやるよ、真のエースを! 俺はレベル5の《スクラップ・ゴーレム》

に、レベル4の《スクラップ・ビースト》をチューニングッ!!

――――重なる鉄が、二頭の機械竜を呼び覚ます! シンクロ召喚ッ!!!!

レベル、9ッ! 《スクラップ・ツイン・ドラゴン》ッ!!」

 

《スクラップ・ツイン・ドラゴン》☆9 シンクロ

攻3000/守2200

「スクラップ」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

1ターンに1度、自分フィールド上に存在するカード1枚と、相手フィールド上に

存在するカード2枚を選択して発動する事ができる。

選択した自分のカードを破壊し、選択した相手のカードを手札に戻す。

このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、シンクロモンスター以外の自分の墓地に存在する「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。

 

「に、2体目のシンクロモンスター……うっそだろ――――」

「カードを一枚伏せて準備完了だ。さぁ、行くぜ。俺は、ツイン・ドラゴンの効果発動! 自分フィールドのカード1枚、そして相手のフィールドのカード2枚を選択。

俺のカードを破壊し、君のカードを君の手札に戻す! 

鉄の咆哮(Roaring of iron)>ッ! 俺が破壊するのは今伏せたカード。

君の手札に戻すのは《ワンショット・キャノン》とその伏せカードだ!」

 

修也の場にはトーチトークンのみが残される。

 

「くッ……手札に戻されたんじゃコイツはつかえねぇ」

「大方、その伏せは蘇生系罠だろう? 次のターンもキャノンの効果を使う

予定だったんだろう? 戦略は凄かったぞ、一瞬ビビった」

「ハハ……けど先生にゃまだまだ遠いなぁ。バレてら」

「いや、君は強くなる。俺が保証する。さぁ、終わりするぞ。

次はスクラップ・ドラゴンの効果だ! 相手のカードと自分のカードを

1枚ずつ破壊する。俺は、ファクトリーとトーチトークンを選択。

やれッ! <Scrap destroy>!

そして、2体のドラゴンでダイレクトアタックッ!!」

 

2体合わせて3つの頭から放たれたブレスが襲う。計、5800ダメージだ。

 

秋月 修也:0

 

「くっそ~! 負けたぁッ!!」

 

修也はバタンと地面に倒れる。

 

「ハハ、いいデュエルだったぞ。さぁ今の決闘の反省点は分かるか?」

「ん~そうだな。さっき先生が言ってた、相手を止める動き?が出来て無かった

とこかな。後は、……分かんね」

 

そうだな。今の点が分かってれば今回は合格だが。

 

「あぁそうだ。コンボを決めたところまでは良かったな。だが、アレだと

返しに脆くなる。あくまでバーンダメージを狙うならてっとり早く《連鎖爆撃》

辺りで削れば一瞬だからな。4000なんて」

「何言ってんだよ。バーン魔法なんて男の恥だ!」

 

エグイコンボ使ってきた奴のいう事じゃねぇな……

 

「ま、兎に角もう少し練ってみろ。他は大丈夫だ。トップクラスとの決闘

俺は、シンクロの代表としてお前に頼もうと思ってる。頑張れよ?」

「え、マジ!? 俺がトップクラスの奴とやれんの!?」

「あぁ。このクラスでシンクロを使いこなせるのはお前くらいだしな」

 

修也は「うおぉおおおおおッ!! 燃えて来たぜぇええええ!!!」と言いながら

何処かへ消えた。落ち着きが無いなぁ……

そんなこんなで授業の終わり時間となる。

 

「お~し、皆今日はここまでだ! 気を付けてな」

 

それぞれが決闘場を後にする。さて、俺も帰るかな。っと、その前に

やることがあるのだった。

俺は、皆が帰ったことを確認すると講師室へ戻った。

今日の決闘内容を確認し、誰を選抜するかを選ばなくてはならない。

 

「そうだな……やっぱ、融合は昌子さん。シンクロは修也、エクシーズはレイ。

この面子で行くべきだな」

 

ここ2週間。どの生徒も一通り召喚を身に付けた。が、使いこなすという段階

まで来ている者は現状この3人だ。

俺は、この次元の《LDS》トップクラスの生徒達を知っている。

融合使いの光津真澄、シンクロ使いの刀堂刃。エクシーズ使いの志島北斗。

彼らがトップで出てくるとすれば……

 

「俺の生徒は、勝てるッ――――」

 

 

俺は次の講義の終わり、3人を呼び出した。約束の決闘の日まで

もうあと2日と迫っていた。

 

「揃ったな」

 

「先生。お話というのは、例の決闘のことですか?」

「あぁ、そうだ。俺は君たち3人をこのクラスの選抜にする。

栄昌子、秋月修也、斎賀レイ。君たちには《LDS》各コースのエリート

と決闘してもらう。が、どうする?」

 

俺は、「辞退するなら代わりに他の人に頼む」と告げる。

だが、反応は3人とも同じだった。

 

「はッ、見せつけてやるさ。進化した俺の全てをな!」

「いいだろう……」

「勿論。そのお話受けます」

 

「そうか。ありがとう。なら、これを君たちに渡そう」

 

俺は数枚のカードを取り出し、皆に手渡す。

これこそ彼らの切り札足り得るカードだ。勿論ニートの部屋から頂戴した。

 

「まずは、修也。君にはこれを」

「おお? おぉおおおお! KAKEEEEEEEッ!!!!

こんなん貰っちまっていいのかよッ!?」

 

「昌子さんにはこいつらだ。君なら、使いこなせるだろう」

「これはッ……! 面白そうですわ――――」

 

「レイ。お前にはこれを渡す」

「ふッ、なるほど……俺好みのカードだ」

 

「さて、皆。約束の日は2日後。後は各自デッキの研鑽に励んでくれッ!」

 

「以上だ」と付けたし締める。さぁ、エリートさん達よ……ゲームを始めようか。

主人公サイドが苦戦していた《LDS》各コースのエリート生徒達に、俺の2週間

育て上げた生徒……どちらが勝つのか、なぁ。

 

 

そして、いよいよ約束の日がやって来た。場所は《LDS》の俺達が

いつも実技の時に使っている決闘場だ。

そこには《LDS》の講師、生徒がギャラリーを作っていた。

 

「来ましたね末城先生。彼らが、《LDS》の各コースのTOPの生徒です」

 

マルコ先生が示す先には、当然彼らがいた。

 

「《LDS》融合コース。光津真澄」

「同じくシンクロコースの刀堂刃だッ!」

「僕が、エクシーズコースの志島北斗だ。

正直こんな茶番は早く終わらせたいんだけどねぇ」

 

やっぱこの3人トリオか。

 

「次は私のクラスの生徒を紹介しますよ。さぁ挨拶するんだ」

 

俺は後ろにいた3人に促す。

 

「総合コースF組、栄昌子よ。融合召喚を使うわ」

「へぇ、なら私の相手は貴方かしら?」

 

女同士の戦いを呈したな。このカードも面白そうだ。

 

「俺は、秋月修也だ。俺の“力”を見せてやるよ。刀堂刃ッ!」

「なるほどなぁ、お前気合入ってんじゃねぇか。気に入ったぜッ!」

 

修也の相手は刀堂刃。これも同族っぽいな……。

 

「俺は……斎賀レイ」

「なるほど、僕の相手は君かい? 少しは楽しませて欲しいものだねぇ」

「先ほどから聞いていれば……雑魚ほどよく吠えるものだ――――」

「何だとッ!!」

 

レイの相手は志島北斗だ。これはどうなるやらなぁ。

 

「では、早速始めていきますかな?」

「えぇ、始めましょうか。じゃあ最初はだれが行く?」

 

名乗り出たのは、

 

「私が、行きます。私のお相手は誰でしょうか?」

「私よ。融合使いなのでしょう、貴方? 総合コースの貴方に見せてあげるわ。

《LDS》融合コースの融合召喚を、ね」

 

早速融合勝負となった。

 

「真澄、手加減してあげなよ? 相手はF組なんだからさ」

 

北斗が昌子さんを遠回しに煽る。コイツは全くブレないねー。

 

「手加減? 何を仰っているのかしら? 勝つのは――――私です。

私のタクティクス。見せてさしあげましょう」




《LDS》の各コースのTOPといえば彼らしかいません。
記憶改ざんされたり、一人はカードになったりしてますが。
それは気にしない方向で。ね。また出てこないかな……

次回からオリジナルAカード等が出てくる予定です。ご了承を。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Teaching6 Fの真価 光津真澄VS栄昌子

「勝負はアクションデュエルで行います。では、始めましょう」

 

リアルソリッドヴィジョンシステムのシステムが駆動する。

 

「フィールド魔法、《クリスタル・コルドー》発動!」

 

マルコ先生が指をパチッと鳴らす。すると周りの景観が変わり始める。

ものの数秒で景色は、煌びやかな回廊とその姿を変えた。

マジですげぇ……オーバーテクノロジーってこういう事を言うんだろうな。

 

「「戦いの殿堂に集いし決闘者達が、モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、

フィールド内を駆け巡るッ! 見よ、これぞデュエルの最強進化系ッ……」」

 

い つ も の

やっぱこれ言うんすねぇ……

 

『アクショォオオン――――……』

 

「「デュエルッ!!!」」

 

パリーンと音がして、Aカードがフィールドに散らばる。

両者はまず距離を取った。

 

「先攻は、私のターンね」

 

先攻は光津真澄。さぁどう出てくるんだ?

 

「私は、手札から《ジェムナイト・アレキサンド》を召喚!」

 

《ジェムナイト・アレキサンド》☆4

攻1800/守1200

(1):このカードをリリースして発動できる。

デッキから「ジェムナイト」通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

「さぁ行くわよ! 私はこのカードをリリースして、デッキから

《ジェムナイト・クリスタ》を特殊召喚!」

 

《ジェムナイト・クリスタ》☆7 

攻2450/守1950

通常モンスター

 

「いきなり、上級モンスターッ!!」

 

昌子さんは怯む。が、ジェムナイトの本質は連続融合だ。

これはあくま前座に過ぎないだろう。ちなみに俺は光津真澄が

ジェムナイト使いだと知っている。が、それを彼女には言っていない。

もし俺が「光津真澄はジェムナイト使いで~こうこうこうすれば勝てるよ。

ね? 簡単でしょう?」なんて言えばそれはもはやチートだし、そんなことで

勝ったとしても誰の為にもならないからな。

 

「私はターンエンド! さぁ貴方のターンよ」

「私のターンッ! ドロー! 相手の場にのみモンスターがいる時、

このモンスターは特殊召喚できる! 来なさい、《サイバー・ドラゴン》!」

 

「来たぜぇ!! 《サイバー・ドラゴン》だ!」

「だが、相手のモンスターの攻撃力には……及ばない」

「あぁ、レイの言うとおりだ。が、これはアクションデュエルだからな」

 

Aカードがある。

すると、昌子さんは何かを探すようにフィールドを走り始める。

 

「早速、Aカード頼みってわけ? 高が知れてるわね」

「何ですってッ!」

 

昌子さんは落ちていたカードを掴み、発動する。

 

「Aマジック、《アブソーブ・エナジー》ッ発動! このターン、自分の

モンスター一体の攻撃力を相手のモンスター一体の攻撃力の半分の数値

上昇させるわ! 私は、《ジェムナイト・クリスタ》の攻撃力2450の

半分、1225を《サイバー・ドラゴン》の攻撃力に加える!」

 

《アブソーブ・エナジー》A魔

相手のモンスター1体の攻撃力の半分の数値分、自分のモンスター

1体の攻撃力をそのターンのエンドフェイズまでアップする。

 

《サイバー・ドラゴン》攻2100→3325

 

うわ、すげ半端ッ! ヴェルズもビックリだなぁ。

 

「バトルよ、サイバー・ドラゴンで攻撃ッ! <エヴォリューションバースト>!」

 

サイバーの電子荷電ブレスがクリスタを襲う。

 

「やったぜッ! 昌子のねぇちゃんが先手を取ったぜッ!」

「いや―――あの女……今」

 

やがて煙が晴れる。

が、そこには無傷のクリスタと光津真澄が立っていた。

 

「なんでッ!?」

「私はAカード《回避》を発動したの。攻撃は――――無効よ」

「くッ……」

「もしかして私がAカードを使わないとでも思った?」

 

《回避》A魔

フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターの攻撃を無効にする。

 

でたな……あれ、チートだろ! 「ピ〇チュウかわせッ!」並みに反則だろ!

 

「私はカードを1枚伏せてターンを終了よ」

 

「ははッ! にわか仕込みで僕らエリートに先手を取れるわけないだろう!」

 

「私のターン! ドロー! さぁ、見せて上げるわ。本当の融合をね、

私は手札から《ジェムナイト・フュージョン》を発動! 

雷を帯びし輝石よ、瑠璃の煌めきよ一つとなりて現れよ! 融合召喚ッ!

――――《ジェムナイト・プリズムオーラ》!」

 

《ジェムナイト・プリズムオーラ》☆7 融合

攻2450/守1400

「ジェムナイト」モンスター+雷族モンスター

このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚できる。

(1):1ターンに1度、手札から「ジェムナイト」カード1枚を墓地へ送り、

フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。

その表側表示のカードを破壊する。

 

「融合モンスターッ……!」

 

プリズムオーラかッ……効果を使われてクリスタと殴りに来られたらッ!

 

「融合素材となった《ジェムナイト・ラズリー》の効果発動!

このカードが墓地へ送られたとき、通常モンスターを手札に加える。

私は同じく融合にしようした《ジェムナイト・ルマリン》を手札に加える!」

 

実質手札消費2だぞ? オイ! お得! けど、俺はシャドールなる

キチガイ融合集団を知っているので驚かない。アイツらはおかしい。

 

「さらにプリズムオーラの効果発動! 手札からジェムナイトと名の付く

カードを墓地に送って、フィールド上の表側のカードを破壊する!

《サイバー・ドラゴン》を破壊!」

「きゃッ!」

 

プリズムオーラの電撃を喰らいサイバー・ドラゴンが爆ぜる。

 

「ヤベぇよ! 昌子のねぇちゃんの場ががら空きだ!」

「……いや、まだ大丈夫だろう」

 

「これで終わりよ! プリズムオーラと、クリスタでダイレクトアタック!」

「――――手札から、《速攻のかかし》のモンスター効果を発動!

このカードを捨てて、相手の攻撃を無効。バトルフェイズを終了させます!」

 

《速攻のかかし》☆1

攻0/守0

相手モンスターの直接攻撃宣言時にこのカードを手札から捨てて発動できる。

その攻撃を無効にし、その後バトルフェイズを終了する。

 

「少しは楽しめそうね。私はターンエンドよ」

 

「よし。しっかり相手を“止める”動きが出来てるな」

 

さぁ今度は君の番だ。存分に見せてやれ!

 

 

 

彼女の場には攻撃力2450のモンスターが2体。状況はこちらが

圧倒的に劣勢ですか……けど。なんだか、楽しくなってきました。

けど、ここで状況を覆すのであれば……アレが必要でしょう。

 

「私のターンッ! ドロー! 私は《サイバー・リペア・プラント》

を発動! デッキから《サイバー・ドラゴン》を手札に加えます。

そして、特殊召喚! さらに私は魔法カード《簡易融合》を発動!

1000LPを払い、エクストラデッキから《重機装甲 パンツァードラゴン》

を融合召喚!」

 

さすが光津真澄。《簡易融合》での融合召喚では驚かないか。けど、

私の技はこれだけではありません!

 

「私は2体のモンスターで――――オーバーレイッ!!」

「――――オーバーレイッ!!?

エクシーズ召喚ですってッ!? 貴方、融合を使うんじゃないの!?」

 

光津真澄は驚愕する。やはり、先生の言っていた通り。

 

 

「先生! 昌子のねぇちゃんがエクシーズって……どういうことだ!?」

「ん? いや、だって融合使いだから融合しか使わないなんて誰が言った?」

 

驚く修也に俺はそう返す。にやけが止まらねぇ。だってそうだろ?

融合使いだから融合だけ、シンクロ使いだからシンクロだけってのは。

――――芸が無さ過ぎる。そして、視野が狭い。

 

「私は確かに「融合使い」と言いました。が、「融合しか使いません」

なんて……言ってませんよ?」

「くッ、卑怯者!」

「なんとでも。星の輝きを伴って生まれ変わりなさい、サイバー・ドラゴン! 

エクシーズ召喚! ランク5ッ! 《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》!!」

 

《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》★5 エクシーズ

攻2100/守1600

機械族レベル5モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

自分の墓地の「サイバー・ドラゴン」1体を選択して特殊召喚する。

また、1ターンに1度、自分の手札・フィールド上の「サイバー・ドラゴン」1体を

除外して発動できる。

このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、2100ポイントアップする。

この効果は相手ターンでも発動できる。

このカードが相手の効果によって墓地へ送られた場合、機械族の融合モンスター1体

をエクストラデッキから特殊召喚できる。

 

「あ、あいつエクシーズ召喚までッ!!」

 

エクシーズ専門の志島北斗が外野で驚く。

 

「これが、総合コースの――――私たちの真価ですッ!

ノヴァの効果発動ッ! ORUを一つ使い、墓地の《サイバー・ドラゴン》を

特殊召喚ッ!」

 

場に、ノヴァとサイバーが並ぶ。大切なのは、サイバーを蘇生させたことじゃ

ない。大切なのは、ORUとしてサイバー・ドラゴンを墓地に落としたことだろう。

ならきっと彼女はあのカードも引いているに違いない。

 

「さらに、私は《サイバー・ドラゴン・ドライ》を召喚! このカードは

場と墓地ではサイバー・ドラゴンとして扱えます! そして、今度こそ

見せてあげましょう。私の融合召喚をッ!」

「何ですって!」

「魔法カード《オーバーロード・フュージョン》を発動!」

 

「確かに、俺たちは半端者の総合コースかもしれない。専門性じゃ彼らに

劣るだろうさ。けど、俺たちの武器それが――――専門性という枠組みに縛られない

柔軟性だ」

 

《オーバーロード・フュージョン》魔

自分フィールド上・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材

モンスターをゲームから除外し、機械族・闇属性のその融合モンスター1体を融合

召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

「私は、墓地の《サイバー・ドラゴン》、場の《サイバー・ドラゴン・ドライ》

をゲームから除外して、融合ッ! 荒れ狂う合成竜、出でて力を振るいなさい!

融合召喚ッ! 《キメラテック・ランページ・ドラゴン》ッ!!」

 

《キメラテック・ランぺージ・ドラゴン》☆5 融合

攻2100/守1600

「サイバー・ドラゴン」モンスター×2体以上

このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。

(1)このカードが融合召喚に成功した時、

このカードの融合素材としたモンスターの数まで

フィールドの魔法・罠カードを対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

(2)1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。

デッキから機械族・光属性モンスターを2体まで墓地へ送る。

このターン、このカードは通常攻撃に加えて、

この効果で墓地へ送ったモンスターの数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃できる。

 

「嘘……こんなことが――――」

 

3体の機械竜。サイバー・ドラゴン、サイバードラゴン・ノヴァ。そして、

キメラテック・ランページ・ドラゴン。こんだけ並ぶと爽快だなぁ。

サイバー流は進化してるなぁ(白目)

 

「――――さぁ、覚悟はよろしいかしら?」




サイバー流は進化し過ぎ。けどインフィニティは出さないから(良心)

毎度、これ終わり方半端じゃねぇ?と思われると思います。
これは大体4000字程度で締めたほうが、読みやすいし書きやすい
という私の勝手な都合です。
なるべく出せ時に出すようにしていますので、何卒お願いします。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Teaching7 xyz対決! 志島北斗VS斎賀レイ

栄 昌子:3000LP

光津 真澄:4000LP

 

「――――さぁ、覚悟はよろしいかしら?」

 

互いにLPはほぼ減っていないものの、決闘は最終局面と言っていいだろう。

光津真澄の場にはクリスタ、プリズムオーラの2体。

一方、昌子さんの場にはノヴァ、サイバー・ドラゴン、キメラテック・ランページ

といった布陣だ。

 

「覚悟ですって? 何を言っているの、貴方のモンスターの攻撃力は全て

2100。一方こちらは2450。攻撃力はこちらの方が――――」

「果たしてそうでしょうか?」

「え、……」

 

光津真澄は気が付いていない。

彼女の場に伏せられていた、カードの存在を。

 

「まずは、《キメラテック・ランページ・ドラゴン》の効果発動!

デッキから2枚まで機械族・光モンスターを墓地へ送り、このターン

その枚数分追加攻撃が出来ます。

私はデッキから《サイバー・ドラゴン・コア》、《超電磁タートル》を

墓地へ送ります。これにより、ランページ・ドラゴンはこのターン3度

攻撃が可能になりましたッ!」

「攻撃回数を上げても、攻撃力はこちらが上よ!」

「貴方はこのカードの存在を忘れていませんか?」

「そのカードは、――――あなたが最初のターンに伏せた……」

「そうです。私は罠カード《ライジング・エナジー》を発動します!」

 

《ライジング・エナジー》罠

手札を1枚捨て、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで1500アップする。

 

「この効果で、手札を1枚墓地へ送りフィールドのモンスター一体の

攻撃力を1500アップさせます! 対象は勿論――――ランぺージ・ドラゴン!」

「このタイミングでそんなカードをッ!」

 

《キメラテック・ランページ・ドラゴン》攻2100→3600

 

「よし。これでランページ・ドラゴンはこのターン3回攻撃可能の

攻撃力3600のモンスターとなった」

 

欲を言えば、《ライジング・エナジー》はバトルフェイズ発動でもよかった

気もするが。今回はきちんと相手の動きを止められていたし、俺は大満足だ。

 

「バトルですッ! ランページ・ドラゴンでクリスタを攻撃ッ!

<エヴォリューション・ランぺージ・カノン:三連打(バースト)ッ!!」

「きゃぁああああああああああッ!」

 

光津 真澄:2850LP

 

一撃目でクリスタを粉砕し、

 

光津 真澄:1700LP

 

2撃目がプリズムオーラを破壊、彼女の周りを焦土と化す。

 

光津 真澄:0LP

 

そして自身を守るモンスターがいない彼女を3撃目が襲いLPを削り取る。

やや暫く周りは沈黙に包まれ、数秒後、時が動き出した。

 

「しょ、勝者! 栄 昌子!」

 

「よっしゃッ! 俺たちの1勝だぜッ!!」

「……見事だ」

「あぁ。最後はエグかったが……とてもいい決闘だったな」

 

俺たちは戻ってくる彼女に拍手を送る。

 

「先生! 私、勝てました……勝てましたよ」

「あ、あぁ。見てた。素晴らしい決闘だった。この2週間の集大成だ!

頑張ったな……本当に。とりあえずゆっくり休んでくれ」

 

俺は、「さぁ」と残った2人を振り返る。2人は彼女の勝利に当てられて

コンディションは良好と見える。

 

「次は誰が行く?」

 

「俺は、当然最後さ! なんたって、主役は遅れてやって来るからな」

「それちょっと意味違うぞ……」

「………なら、俺が行こう」

「そうか。君が行くかレイ。あ、言っておくが――――」

 

俺は注意を促そうとするが、レイはそれを手で制する。

 

「……分かっている。師の言うことに従うさ」

「ならいいんだけど……後、師ってのはちょっと――――」

 

パーカーのフードから覗く目は獲物を狩る鷹のそれだ。

志島北斗、大丈夫かなぁ……アイツと決闘してトラウマにならないといいけど。

こいつはなぁ。基本何考えてるか分からないけど、エグいからなぁ。

 

「今日の彼、なんだかいつもと少し変わってますね」

 

昌子さんもそう思うのか、俺も「そうだな」と首肯する。

 

「きっと、君の決闘で何かしら影響を受けたんだろう。いい意味でな。

なに、まぁアイツなら大丈夫だろうさ。むしろ……」

「そうですね。まぁ、若干相手の彼の方が心配ですが……」

 

本当にそれな。

 

 

 

「次の試合を始めよう。次は、志島北斗と斎賀レイだな」

 

「言っておくが、僕は真澄のようには行かないよ? なんたって――――」

「……御託はいい。さっさと始めるぞ」

「くッ……その余裕も今の内だ」

 

遠目からは見えないけど志島北斗と何か言い合ってるの、か?

 

「それでは、フィールド魔法《忍屋敷》発動!」

 

マルコ先生の声と同時に、リアルソリッドヴィジョンシステムが駆動。

今回は時代劇でよくありそうな屋敷へと景色を変える。

忍屋敷かーレイに合ってるかもなぁ。

 

「戦いの殿堂に集いし決闘者達が!」

「………」

「宙を舞い!」

「………」

「オイ! 君も言えよッ!!!」

「……そんな必要はない」

 

おい、これ言わないとアカンやつじゃないのか?

 

「まぁ、彼ですからね……こういうのは好かないかと」

「そ、そうだよなぁ」

 

だが、周りは空気を読んで「アクションー」の部分を言う。

 

「デュエルッ!」「……」

 

志島 北斗:4000LP

斎賀 レイ:4000LP

 

なんだか一悶着あったようだが、決闘がスタートする。

先攻は、志島北斗か。先攻でアイツを立てられると厄介だな。

 

「どこまでもふざけた奴だ。これだから落ちこぼれは。

僕らと決闘できるだけでも感謝して欲しいくらいなんだけどねぇ」

「……」

「今度はだんまりって訳? いいだろさ、すぐに終わらせてあげ――――」

 

それを言い終わるか否か、レイは志島北斗と逆の方向へ走り出す。

Aカードを探しに行ったのか、単に顔を見たく無いのかは定かではないが。

 

「くッ、舐めやがって! 僕は、《セイクリッド・ポルクス》を召喚!

このターン僕はもう一度セイクリッドと名の付くモンスターの召喚が

可能となる! 僕は、《セイクリッド・カウスト》を召喚するッ!」

 

《セイクリッド・ポルクス》☆4

攻1700/守600

このカードが召喚に成功したターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ、

自分メインフェイズに「セイクリッド」モンスター1体を召喚できる。

 

《セイクリッド・カウスト》☆4

攻1800/守700

このカードはS素材にできない。

フィールドの「セイクリッド」モンスター1体を対象として以下の効果から1つを

選択して発動できる。

この効果は1ターンに2度まで使用できる。

●対象のモンスターのレベルを1つ上げる。

●対象のモンスターのレベルを1つ下げる。

 

「僕は、カウストの効果発動! ポルクスのレベルを一つ上げる!

そしてカウスト自身のレベルも同じく一つ上げる!」

 

あちゃーこの布陣は……先攻プレアデスかッ!

 

「レベル5となった《セイクリッド・ポルクス》と同じくレベル5となった

《セイクリッド・カウスト》でオーバーレイ! 星々の光よ! 

今大地を震わせ降臨せよ! エクシーズ召喚ッ! 

ランク5ッ! 《セイクリッド・プレアデス》ッ!!」

 

《セイクリッド・プレアデス》★5 エクシーズ

攻2500/守1500

光属性レベル5モンスター×2

1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、

フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを持ち主の手札に戻す。

この効果は相手ターンでも発動できる。

 

くッ、出ちまったか。プレアデス。単純な効果だが強力だ。

何人の決闘者がこいつを前に苛立ちを感じたか。最近じゃプトレマイオス

からも出てくるから本当に厄介だ。今は関係ないけど。

 

「僕はこれでターンエンドだ」

「……俺のターン。ドロー」

 

さぁ、プレアデスをどう攻略するんだ。

 

「……俺は、《機甲忍者アース》を特殊召喚」

 

《機甲忍者アース》☆5

攻1600/守1200

相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが

存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 

フィールドにニンジャが現れる。サイバー・ドラゴンと同じ効果を持つ

アース=サンならプレアデスの効果を受けても痛くない。が、プレアデスの

攻撃力には届かない。

 

「……カードを3枚伏せ、ターン終了」

「くっく、怖気づいたか。まぁいい。僕のターン! ドロー!

《セイクリッド・プレアデス》の効果発動! ORUを一つ使い、アースを

手札に戻す!」

「……なるほど。貴様に似た小賢しい効果だ。だが、永続罠発動。

――――《忍法 影縫いの術》」

 

《忍法 影縫いの術》永続罠

自分フィールド上の「忍者」と名のついたモンスター1体をリリースして発動できる。

相手フィールド上のモンスター1体を選択してゲームから除外する。

そのモンスターがゲームから除外されている限り、そのモンスターカードゾーンは

使用できない。

このカードがフィールド上から離れた時、この効果で除外したモンスターを同じ表

示形式で元のモンスターカードゾーンに戻す。

 

「……アースをリリースし、プレアデスをゲームから除外する」

「何ッ!」

「……さらにそのモンスターが除外されている限り、そのモンスターゾーンは

使用不可能になる」

 

考えたな。手札に戻される前にリリース。プレアデスを退場させたか。

 

「クソッ僕のターンはまだ続いている! 

僕は、《セイクリッド・ソンブレス》を召喚!」

 

《セイクリッド・ソンブレス》☆4

攻1550/守1600

「セイクリッド・ソンブレス」の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか

使用できない。

(1)自分の墓地の「セイクリッド」モンスター1体を除外し、自分の墓地の

「セイクリッド」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを手札に加える。

(2)このカードの(1)の効果を適用したターンのメインフェイズに発動できる。

「セイクリッド」モンスター1体を召喚する。

(3)このカードが墓地へ送られたターン、「セイクリッド」モンスターを召喚する

場合に必要なリリースを1体少なくできる。

 

「僕はソンブレスの効果発動! 墓地の《セイクリッド・ポルクス》を

ゲームから除外し、墓地の《セイクリッド・カウスト》を手札に加える。

そして、このターン僕はもう一度セイクリッドモンスターを召喚できる!

《セイクリッド・カウスト》召喚!」

「……ふん」

 

レイはそれを見ると、走り出した。Aカードを探すつもりか?

 

「僕は、カウストの効果発動! カウストとソンブレスのレベルを1つ上げる!

2体のモンスターでオーバレイッ!」

 

「また、プレアデスを出すつもりだぜアイツ!」

「立て直しが――――早い」

 

「エクシーズ召喚! 《セイクリッド・プレアデス》ッ!!

どうだ! もう、忍法は使えないだろうッ!! さらに、プレアデスの効果

発動! ORUを1つ使い、《忍法 影縫いの術》を手札に戻す!」

 

プレアデスが自身の周りに浮いているORUを切り裂く。すると、

《忍法 影縫いの術》がレイの手札に戻ってくる。

 

「……《忍法 影縫いの術》が手札に戻ったことで、貴様の場に

除外されていたプレアデスが戻る」

「ハッハハハッ! 小賢しいのは君の方だったねぇ」

 

「なんだよアイツ! けど、プレアデスのORUはもうないぜ、ざまぁみろ!」

「いや、修也。セイクリッドにはまだアイツがいるんだ」

「あいつ?」

「――――まあ、見てろ」

 

「さらに、僕はプレアデスでオーバーレイ!」

「えッ! 一体でエクシーズ召喚ですかッ」

「あぁ、そうだ。エクシーズモンスターの中には特定のエクシーズモンスター

に重ねることでエクシーズ召喚できる類のものもある」

 

俺が元居たとこだと、CNO,とかあったけど。ここじゃないだろうな。

 

「眩き光もて降り注げ! エクシーズ召喚! 《セイクリッド・トレミスM7》!!」

 

《セイクリッド・トレミスM7》★6 エクシーズ

攻2700/守2000

レベル6モンスター×2

このカードは「セイクリッド・トレミスM7」以外の自分フィールドの

「セイクリッド」Xモンスターの上にこのカードを重ねてX召喚する事もできる。

この方法で特殊召喚した場合、このターンこのカードの効果は発動できない。

(1)1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、自分または相手の、

フィールド・墓地のモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを持ち主の手札に戻す。

 

「バトルだ! まずはプレアデスでダイレクト・アタックッ!」

「………ッく」

 

斎賀 レイ:1500LP

 

レイは攻撃を受け、後方に飛ぶ。だが、

 

「……Aマジック発動、《土遁の術》。バトルフェイズを終了する」

 

転がった先に運よくAカードを見つけたようだ。ちなみに土遁の術とは

掘った穴に隠れて敵がいなくなるのを待つ忍法だ。

 

「ちッ、ターンエンドだ」

「……俺のターン。ドロー。俺は、永続罠《安全地帯》をプレアデスを

対象に発動」

 

《安全地帯》永続罠

フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターは相手のカードの効果の対象にならず、戦闘及び相手のカードの

効果では破壊されない。

また、そのモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃できない。

このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。

そのモンスターがフィールド上から離れた時、このカードを破壊する。

 

「……このカードの対象になったモンスターは相手の効果の対象にならず、

戦闘、カード効果では破壊されない」

「ハッハハハハ、血迷ったか! 僕のモンスターを手助けしてどうするんだい?」

「……俺は魔法カード《マジック・プランター》を発動。場の永続罠を1枚

墓地へ送りカードを2枚ドローする」

 

《マジック・プランター》魔

自分フィールド上に表側表示で存在する永続罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。

デッキからカードを2枚ドローする。

 

「……送るのは《安全地帯》だ。安全地帯が場を離れたとき、プレアデス

は破壊される」

「何だとッ! ぼ、僕はその発動にチェーンしてプレアデスの効果を発動!

その残ったもう1枚の伏せカードを手札に戻すッ!」

 

タダでは死なないと、プレアデスは最後のORUを使いレイのカードを

手札に返す。

 

「クソ、よくも僕のモンスターをッ……!」

「……俺は2枚ドロー。《成金忍者》を召喚」

 

《成金忍者》☆4

攻500/守1800

1ターンに1度、手札から罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。

デッキからレベル4以下の「忍者」と名のついたモンスター1体を表側守備表示、

または裏側守備表示で特殊召喚する。

 

恰幅の良い忍者が、屋敷の塀に現れる。アレでも忍者なんだ……

 

「……効果発動。手札の罠を墓地へ送りデッキから忍者を特殊召喚。

俺は、《忍者マスター HANZO》を守備表示で特殊召喚」

 

《忍者マスター HANZO》☆4

攻1800/守1000

このカードが召喚に成功した時、デッキから「忍法」と名のついたカード1枚を手札に加える事ができる。

また、このカードが反転召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「忍者マスター

HANZO」以外の「忍者」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる。

 

「……効果発動。俺は《機甲忍者アース》を加える。そして、2体のモンスター

でオーバーレイ。エクシーズ召喚ッ」

「なッエクシーズ召喚だとッ!」

「……闇に紛れ、忍び。音も無く闇に舞え――――

ランク4、《機甲忍者 ブレード・ハート》」

 

《機甲忍者 ブレード・ハート》★4 エクシーズ

攻2200/守1000

戦士族レベル4モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、自分フィールド上の「忍者」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。

このターン、選択したモンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

 

「……行くぞ。ブレードハートの効果発動、ORUを1つ使い、このターン

2回攻撃できる」

「だが、攻撃力はたかだが2200! 僕のトレミスは2700だ!」

「……俺が先ほどから無意味に走り回っていたと思うか」

「何ッ……どういう事だ!」

 

そういうや、レイは茂みに飛び込み――――

 

「――――Aマジック、《火遁の術》発動」

 

やはりあの行動はAカードを探し、位置を把握していたのか。

 

「すげぇ!! レンにいちゃんの動き忍者みてぇだッ!!!」

 

《火遁の術》A魔

フィールド上のモンスター1体の表示形式を変更する。

 

辺りを煙が覆う。

ちなみに火遁の術とは、煙で相手の行動を攪乱する忍術だ。

そして、トレミスは守備表示になる。

 

「……戦闘だ。ブレード・ハートでトレミスM7を攻撃。<一陣二閃>」

 

ブレードハートは、一の太刀でトレミスを破壊、二閃目で志島北斗を斬る。

 

「がっはぁ……!」

 

志島 北斗:1800LP

 

「……俺は、カードを一枚伏せ終了」

 

斬られた北斗は揺らりと立ち上がり叫ぶ。

 

「よくもッ! よくもこの僕にダメージをッ――――許さないッ!」

「……取り乱した時点で貴様の敗北だ」




4000字うんぬん言いつつ、6000字超えてました。
申し訳ないです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Teaching8 シンクロ勝負 VS刀堂刃

【4.23】意味不明な個所を修正&加筆しました。


志島 北斗:1800LP

斎賀 レイ:1500LP

 

「よくもッ! よくもこの僕にダメージをッ――――許さないッ!」

「……取り乱した時点で貴様の敗北だ。精々喚くがいい」

「ふざけるなッ僕のターンッ! ドロー! 魔法カード《セイクリッドの超新星》

を発動!墓地からセイクッドと名の付いたモンスター2体を手札に加える!」

 

《セイクリッドの超新星》

自分の墓地の「セイクリッド」と名のついたモンスター2体を選択して手札に加える。

このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。

 

「僕は、ポルクスとカウストを手札に加えるッ!」

 

あの2枚ということは、またプレアデスを召喚するつもりだろうか。

 

「僕は、《セイクリッド・ポルクス》を召喚ッ! その効果で、

《セイクリッド・カウスト》を召喚する! そして、カウストの効果

発動! ポルクスとカウストのレベルを1つ上げる!

レベル5のポルクスとカウストでオーバレイッ! エクシーズ召喚ッ!

《セイクリッド・プレアデス》ッ!!」

「……またそいつか。芸が無い」

「何とでも! 僕は、プレアデスの効果発動ッ! ORUを1つ使い!

お前の《機甲忍者 ブレード・ハート》を手札に戻すッ!」

 

プレアデスがORUを斬り裂き、その光がブレード・ハートを襲う――――

 

「ヤベぇ! このままブレードハートを戻されて、ダイレクトアタック

されたら、レイにいちゃんの負けだぞッ!?」

「いや、それは大丈夫だ。《セイクリッドの超新星》を使用したターンは

バトルフェイズは行えない。――――だが、厳しい」

 

それでもブレードハートを戻し、次のターンにレイが出すモンスターも戻せば

戦線は維持できると踏んだのだろう。

あるいはエクシーズ使いとしての意地かもしれないが。

 

「――――カウンター罠発動、《エクシーズ・ブロック》」

 

《エクシーズ・ブロック》カウンター罠

自分フィールド上のエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

相手が発動した効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する。

 

「何だとッ!!?」

「ブレード・ハートのORUを1つ取り除き、プレアデスの効果を無効。

――――破壊するッ」

 

ブレアデスの光を光の壁が阻害。それを押し返す。あいつ、あんなものを

張っていたなんてなぁ。マイナーすぎて俺の居たとこじゃ【BK】に入るか

どうかというカードだったぞ。

 

「う、嘘だ……ぼ、僕が……負け、る」

「……言ったはずだ。取り乱した時点で貴様の負けだと。自尊心が高い貴様の

事だ。次のターンでプレアデスを出してくることはある程度想定できた」

「クソックソクソッ!!! 僕は認めないッ!!」

 

志島北斗は、叫びながらレイとは逆方向に疾走する。

そして、木に引っかかっていたAカードを掴む。

 

「Aカード発動ッ! 《歩兵の矢》ッ! お前に800のダメージを与える!」

 

《歩兵の矢》

相手に800ダメージを与える。

 

斎賀 レイ:700LP

 

「……満足か」

「くッ――――ターン、エンドだ。だが、僕はまだ終わらないッ!」

 

志島北斗はエンド宣言と共に、Aカードを探し求めフィールド内を駆ける。

これでダメージを与える類のAカードを発動されると厄介ではある。

 

「……俺のターン。終わりだ」

「――――――え」

 

志島北斗の背後にブレードハートが現れる。流石忍者、実際速い。

そのまま、二刀で音も無く斬る。

 

志島 北斗:0LP

 

「勝者――――斎賀、レイ!」

 

「よっしゃ! レイにいちゃんの勝ちだッ!!」

「……おぉ。アイツらしいクールな戦いだったな」

 

けど、これで融合、エクシーズのTOPの生徒には勝った。

俺の生徒達は確実に強くなっているんだ。

 

「……師。あんたとの約束は果たした」

「うぉ!? いつの間に! まぁ、そうだな……けど、煽り過ぎじゃないか?

相手にトラウマ植えつける気かお前は」

 

いつの間にか、帰って来ていたレイが背後に居た。

 

「……そうでもない。ただ」

「ただ?」

「……俺は、煩い奴が嫌いなんだ」

 

それただの私怨じゃねぇか!? 

 

「あーまぁいいや。今度会ったら誤っておけよ?」

「ッ!? 何故俺が……」

 

あからさまに動揺するレイ。こいつは案外恥ずかしがり屋なのか?

 

「そうですよ。斎賀君。あのような相手を敬わないプレイは決して

褒められたものではありません」

「……煩い女だ」

「なッ!?」

 

一瞬で態度が戻るレイ。俺は喧嘩が勃発しそうだったので止める。

 

「おーい。まだ終わってないんだから。やめろ2人共」

「そうだぜ。ここで問題を起こされちゃ、俺が決闘出来ねぇ!」

 

まだ決闘前の修也も止めに入る。ってお前は自分の心配か!

 

「……すまない」

「すみません。私としたことが……はしたない真似を」

「……全くだ」

「なッ!」

「はいはい。そこで終わりだ」

 

ようやっと二人は鎮まる。だが、互いにそっぽを向いてしまう。

ん~同じクラス同士仲良くってのは難しいのだろうか?

今度なにか考えてみるか。

 

けど、今は目先の決闘だ。

 

「さぁ、修也。次はお前の番だ」

「先生。俺はこの日の為に最高のデッキを組んできたぜ」

「最高のデッキ?」

「あぁ。ま、見ててくれよ」

 

なるほどそれは楽しみだ。さて、シンクロ対決。どうなる事やら。

見れば、既に刀堂刃はスタンバイしていた。

 

「よぉ。待ちくたびれたぜ。お前が俺を指名すっから出番が最後に

なっちまったじゃねぇか。言っとくが、俺はさっきの2人みたいな

大人しい決闘はしねぇぞ」

「あぁ! 俺だって。大人しい決闘なんかしてやるものかよ!」

「はッ! お前、威勢がいいな。気に入ったぜ」

 

刀堂刃と修也は互いに笑いあう。

 

「それでは、最後の試合を始めよう! フィールド魔法発動!

剣闘士の決闘場(クラディエーターズ・コロシアム)》ッ!!」

 

例の如く、リアルソリッドビジョンが起動する。今回のフィールドは

ヨーロッパのコロッセオの様なコロシアムだ。

こうして見ているだけで、闘士の怒号が聞こえるようだ。

 

「へぇ、こいつは俺好みのフィールドだ」

「俺もこういう男ぽいのは好きだ!」

「そうかい。じゃあ――――いくぜ!」

 

「「戦いの殿堂に集いし決闘者達が、モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、

フィールド内を駆け巡るッ! 見よ、これぞデュエルの最強進化系ッ……」」

 

『アクショー……ンッ』

 

「「デュエルだッ!!」」

 

刀堂 刃:4000LP

秋月修也:4000LP

 

「先攻は俺だ。坊主。お前もシンクロ召喚を使うみてぇだな!」

「あぁ! そうだ!」

「そうか。なら、先輩として見せてやるぜ俺のシンクロをなぁ!

俺は、《XX‐セイバーボガーナイト》を召喚ッ!」

 

《XXセイバーボガーナイト》☆4

攻1900/守1000

このカードをS素材とする場合、「X-セイバー」モンスターのS召喚にしか使用

できない。

(1)このカードが召喚に成功した時に発動できる。

手札からレベル4以下の「X-セイバー」モンスター1体を特殊召喚する。

 

「こいつの召喚に成功したとき、俺はもう一体《X‐セイバー》と名の付いた

モンスターを特殊召喚できる! 俺は、《XX‐セイバーフラムナイト》を

特殊召喚ッ! まだまだ行くぜ! 場に、X‐セイバーが2体以上存在する

とき、《XX‐セイバーフォルトロール》は特殊召喚できる!」

 

《XX‐セイバーフラムナイト》☆3 チューナー

攻1300/守1000

(1)このカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、相手モンスターの攻撃宣言時にそのモンスター1体を対象として発動できる。

その攻撃を無効にする。

(2)このカードが戦闘で相手の守備表示モンスターを破壊した場合、自分の墓地のレベル4以下の「X-セイバー」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

《XX‐セイバーフォルトロール》☆6

攻2400/守1800

このカードは通常召喚できない。

自分フィールドに「X-セイバー」モンスターが2体以上存在する場合のみ特殊召喚できる。

(1)1ターンに1度、自分の墓地のレベル4以下の「X-セイバー」モンスター1体を

対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

「す、凄い! 一気にモンスターが3体もッ!?」

 

Xセイバーの展開力に昌子さんが驚く。

 

「あぁ。爆発的なまでの展開力。あれこそあのデッキの真価さ

……この勝負。どちらが展開するか。それが鍵となるだろう」

 

「行くぜ! 俺は、レベル4のボガーナイトに、レベル3のフラムナイト

をチューニング! 光差する刃持ち屍の山を踏み越えろ! シンクロ召喚!

《XX‐セイバーソウザ》ッ!!」

 

《XX‐セイバーソウザ》☆7 シンクロ

攻2500/守1600

チューナー+チューナー以外の「X-セイバー」モンスター1体以上

(1)自分フィールドの「X-セイバー」モンスター1体をリリースし、

以下の効果から1つを選択して発動できる。

その効果をターン終了時まで得る。

●このカードがモンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動する。

そのモンスターを破壊する。

●このカードは罠カードの効果では破壊されない。

 

「1ターン目から、シンクロだって……!」

「ぼさっとしてんなよ! さらに、フォルトロールの効果発動!

1ターンに一度、墓地からレベル4以下のX‐セイバーを特殊召喚できる!

甦れ! フラムナイトッ!」

「チューナーが……! ってことは!」

「あぁそうだ! 俺は、レベル6のフォルトロールに、レベル3のフラムナイト

をチューニングッ! 白銀の鎧輝かせ刃向かう者の希望を砕け! シンクロ召喚!

レベル9ッ! 《XX‐セイバーガトムズ》ッ!!」

 

《XX‐セイバーガトムズ》☆9 チューナー

攻3100/守2600

チューナー+地属性モンスター1体以上

(1):自分フィールドの「X-セイバー」モンスター1体をリリースして発動できる。

相手の手札をランダムに1枚選んで捨てる。

 

1ターンでソウザ、ガトムズと25打点以上のモンスターが2体並ぶ。

流石Xセイバー。展開力が凄まじいッ!

 

「なんだよ、これ……ッ!」

「言っただろう。俺はさっきまでの2人みたいに大人しくはねぇってな。

見せてやるよ、真のシンクロ召喚って奴をなぁ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Teaching9 若き社長、赤馬零児

刀堂 刃:4000LP

秋月 修也:4000LP

 

「1ターンに2体もシンクロモンスターを出すなんてッ……」

「どうした? ビビっちまったか? 俺はこれでターンエンドだぜ」

 

修也の決闘が始まり、先攻は刀堂刃。先攻初ターンにソウザ、ガトムズという

布陣を手札三枚で揃えた。やはりその展開力は恐ろしい。彼の手札に、さらに

《ガトムズの非常招集》があればさらにガトムズが並んでいたと考えると、

本当に恐ろしいな……Xセイバー。

 

「くッ俺のターンだッ! ドロー!」

 

いきなり相手の場に、2500打点以上のモンスターが2体という非常に

不利な状況での後攻1ターン目。修也のプレッシャーも尋常ではないだろう。

そう考えると手軽に2500打点以上が並ぶ征竜はやっぱりキチガイ(偏見)。

けど、修也の奴。デッキを変えたって言ってたけど……どうしたんだ?

 

「俺は! 《魔の試着部屋》を発動ッ! 800ポイントライフを払い、

デッキから上を4枚見る!」

 

秋月 修也:3200LP

 

《魔の試着部屋》魔

800ライフポイントを払う。

自分のデッキの上からカードを4枚めくり、その中のレベル3以下の通常モンスター

を自分フィールド上に特殊召喚する。

それ以外のカードはデッキに戻してシャッフルする。

 

試着部屋か。ってことはアイツのデッキは【ローレベルバニラシンクロ】?

といったところだろうか? さぁ、どうなる。俺の渡したカードをどう

生かすつもりだろうか。今のところ見当がつかない。

 

「よし。俺は、《ジェリービーンズマン》とチューナーモンスター

《ジェネクス・コントローラー》を特殊召喚! 残りはデッキへ戻す。

さらに、手札から《音速ダック》を召喚ッ!」

「そんな奴ら並べても、俺のモンスターは倒せねぇぜ?

 

モンスターが3体並ぶが、どれもレベルの低い通常モンスターだ。

刀堂刃の言うとおり、戦闘破壊は出来ない。だが、問題なのはそこじゃない。

修也の場のモンスターの攻撃レベルは、9。さぁ見せてやれ。お前のシンクロを!

 

「今度は俺のシンクロを見せてやるよ! 俺はレベル3の《ジェリービーンズマン》

、《音速ダック》に《ジェネクス・コントローラー》をチューニングッ!

猛々しい太古の巨人ッ! 出てこいッ! レベル9! 《鬼岩城》ッ!」

 

激しく地面が揺れ、岩の巨人が現れる。それはただただデカイ。

コロッセオには足を含む下半身しか入らず、上半身はコロッセオより

高い。で、デカすぎ……

 

《鬼城城》☆9 シンクロ

攻2900/守2800

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードの攻撃力・守備力は、このカードのシンクロ素材としたチューナー

以外のモンスターの数×200ポイントアップする。

 

「な、なんだぁ! こいつッ!!」

「これが俺のモンスターさッ!」

「だが、攻撃力は2900! 俺のガトムズの方が上だぜ! 図体だけの

木偶じゃねぇか! 驚かせやがって……」

「それは違うぜ! 鬼岩城はシンクロ素材のチューナー以外のモンスターの

数×400ポイント攻撃力が上がるんだぜ! だから攻撃力は3300だ!」

「なんだとッ!」

 

巨人はズズズ……と音を立てる。コイツが動いたせいでシステムがダウンしたり

しないだろうか心配だ。

 

「行くぜ! バトルだ! ガトムズを粉砕しろッ! <ガイア・クラッシュ>ッ!!」

 

巨人がガトムズを踏みつけ、ガトムズはたまらず爆発。闘技場を衝撃が覆う。

 

「くッ――――なんつぅパワーだッ!!」

 

刀堂 刃:3800LP

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ!」

「俺のターンだぜッ! ドロー! けどなぁ図体だけで勝てるほど決闘は

単純じゃねぇぜ! チッ……俺はモンスターをセット、カードを2枚伏せて

エンドだ! おら、そっちのターンだぜ!」

 

モンスターと伏せを1枚ずつでターンを渡す。どうやらこのターンは下準備

に回り、次のターンで返すつもりなのだろうか?

 

「よっしゃ俺のターンだ! ガンガン行くぜ! 俺は、《鬼岩城》で

モンスターに攻撃ッ! ついでにこいつも発動だッ!

Aカード、《ブレイク・アタック》ッ! このターンモンスター1体を

選び貫通効果を与えるぜッ! <ガイア・ブレイク>ッ!!」

 

《ブレイク・アタック》A魔

モンスターを1体選ぶ。このターン、そのモンスターが守備表示モンスターを

攻撃したとき、攻撃力が守備力を上回っていればその数値の差だけ相手に

ダメージを与える。

 

「くッ、うおぉ!!」

 

破壊されたのは、《XX‐セイバーエマーズブレイド》だ。確か、リクルーター

効果を持ったXセイバーだったはず。

 

刀堂 刃:1300LP

 

「よし! いいぞ修也!!」

 

貫通ダメージで一気にLPが削られる。よし、これなら勝てる!

 

「うッ……俺はエマーズブレイドの効果で《XX‐セイバーレイジグラ》を

特殊召喚! こいつの効果で、フォルトロールを手札に加えるぜ」

 

《XX‐セイバーレイジグラ》☆1

攻200/守1000

 

このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地の「X-セイバー」

モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを手札に加える。

 

「よっしゃ! 俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ!」

「随分、やるじゃねぇか……けどなぁ俺だってやられっぱなしって訳には

いかねぇんだよ! ドロー! 俺は、《X‐セイバーパシウル》を召喚ッ!」

 

《X‐セイバーパシウル》☆2 チューナー

攻100/守0

このカードは戦闘では破壊されない。

相手スタンバイフェイズに発動する。

自分は1000ダメージを受ける。

この効果はこのカードがモンスターゾーンに表側守備表示で存在する場合に

発動と処理を行う。

 

「この状況で、攻撃力のモンスターを攻撃表示!?」

 

隣の昌子さんが驚く。確かに知らない人から見れば正気じゃないだろうな。

 

「パシウルはチューナーモンスターなんだ。きっとシンクロするだろうさ」

「なるほど。裏側守備表示ではシンクロできませんものね」

 

「俺は、手札から《XX‐セイバーフォルトロール》を特殊召喚するぜッ!」

「またそいつかッ」

 

先ほどレイジグラで加えたヤツか。ってことはまた連続シンクロがくる。

だが、鬼岩城の攻撃力は3300だ。ガトムズでも届くことは無いだろう。

 

「フォルトロールの効果発動! 墓地から一体特殊召喚するぜ!

甦れ! 《XX‐セイバーフラムナイト》ッ! 行くぜ! 俺は、レベル6の

フォルトロールに、レベル3のフラムナイトをチューニングッ! 

白銀の鎧輝かせ刃向かう者の希望を砕け! シンクロ召喚ッ!

《XX‐セイバーガトムズ》ッ!」

 

2体目のガトムズ。だがこれだけで止まるXセイバーではない。

 

「罠発動! 《ガトムズの緊急指令》発動! 自分の場に、X‐セイバーが

存在している時、墓地から2体X‐セイバーを特殊召喚できる!

俺は、フラムナイトとボガーナイトを墓地から特殊召喚だッ!」

「なんだってッ!?」

 

修也が驚く。やはり伏せていたのはガト緊こと《ガトムズの緊急指令》か。

これで場には、レイジグラ・パシウル・ボガーナイト・フラムナイト・ガトムズ

と揃う。すげぇなこれ……!

 

「俺は、レベル4のボガーナイトにレベル2のパシウルをチューニング!

赤きマントひるがえし、剣の舞で敵を討て! シンクロ召喚ッ!

レベル6、《XX‐セイバーヒュンレイ》ッ!!」

 

《XX‐セイバーヒュンレイ》☆6 シンクロ

攻2300/守1300

チューナー+チューナー以外の「X-セイバー」と名のついたモンスター1体以上

このカードがシンクロ召喚に成功した時、フィールド上の魔法・罠カードを3枚まで

選択して破壊できる。

 

「ヒュンレイの効果発動! その伏せカードを破壊するぜッ!」

 

ヒュンレイの剣撃で修也の伏せカードが破壊される。

 

「俺の、秘蔵の罠が!」

「残念だったなぁ! まだまだ行くぜッ! 俺は、レベル6のヒュンレイに

レベル3のフラムナイトをチューニングッ!」

「まさかッ!?」

 

「また、ガトムズを出すつもりかッ! 何のために――――」

 

どれだけガトムズを出そうと、鬼岩城の攻撃力は超えられない。

なら、何故……だ。

 

「白銀の鎧輝かせ刃向かう者の希望を砕け! 三度現れろッ!

シンクロ召喚ッ! 《XX‐セイバーガトムズ》ッ!! バトルだ!

一体目のガトムズで鬼岩城を攻撃ッ!」

「え、な――――なんで! 攻撃力はこっちが上なのに!?」

 

刀堂刃は笑う。それはもはや勝利を確信した笑みだった。

 

「こうすんの、さッ!」

 

背負っていた木刀で地面を薙ぐ。すると風圧を受けたAカードが宙を舞う。

刀堂刃はそれを掴み――――

 

「Aマジック発動ッ! 《オーバー・ソード》発動ッ! ガトムズの攻撃力を

500ポイントアップだッ! これで攻撃力は――――3600だ!」

「何だってッ!!!」

 

《オーバー・ソード》A魔

アクション魔法

フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

バトルフェイズ中のみ、そのモンスターの攻撃力は500アップし、

その攻撃は無効化されない。

 

ガトムズの剣が煌めき、鬼岩城の頭上まで飛ぶ。そして、一刀両断した。

 

「うわぁッあああああ!!!」

 

秋月 修也:2900LP

 

「これで終わりだ! お前のシンクロなかなか良かったぜ。けど、

まだまだだな! ガトムズでダイレクト・アタックだッ!!」

 

ガトムズが剣を振りかぶり、振り下ろす。その衝撃波が修也を襲う。

 

「わぁあああああああああッ!!!!!」

 

秋月 修也:0LP

 

「勝者! 刀堂刃!!」

 

「ってて……俺、負けちまった――――」

「修也!!!」

 

俺は、フィールドに倒れる修也の元へ駆け寄る。身体には大事は無いようだ。

 

「大丈夫みたいだな。安心した」

「大丈夫じゃねぇって。負けちまった……」

「そんな気落ちするなって。次また勝てばいい、だろ?」

 

俺は、刀堂刃の方へ視線をズラす。すると、

 

「お前、筋はわるくねぇ。……また決闘してやるよ」

「本当か! 次は負けないぜ!」

「ふッ」

 

俺は心の中で礼を言った。明確な好敵手。その存在が、修也をもっと

強くしてくれるだろう。

 

「あークソ! もっとシンクロしたかったぜぇ!」

「まぁ、そういうなって。高レベルのシンクロを出しただけでも大したものさ」

「先生。俺はもっともっと強くなりてぇ」

「あぁ。勿論だ。お前はまだまだ強くなれるさ」

 

一人、一人通る道は違うが、皆格段に強くなってる。

 

「――――何やら面白そうなじゃないか」

 

この声は――――ッ!!

俺は、振り返る。そこには……

 

「しゃ、社長!」

「あ、赤馬社長がどうしてここへッ!!!」

 

他の講師の顔が驚愕に張り付く。勿論俺を含めだ。

そこには、レオ・コーポレーションの若き社長、赤馬零児がいた。

マジかよ。ここへきて初めて実物をみたが、こうカリスマオーラがすげぇ。

 

「今日ここで、塾生同士の決闘をしていると聞いて来てみたんだが……なるほど。

随分予想外の結果が出たようだな」

 

赤馬零児は顎に手を当てて思案する。この人、ずっと見ていたんではないか?

 

「総合コースの生徒が、各コースのTOPクラスの生徒相手に2勝……

ここ最近の総合コースFの成績の伸び具合の良さは私の耳にも入ってきている。

そして――――君が彼らの担当講師と言う訳か。……末城遊介」

「へ、あぁ。そうです……俺がこの子たちの担任です、ごめんなさい!」

 

凄い威圧的な視線だ! この人俺と同じくらいの歳だよなぁ?

なんでこんな怖いの!? つい謝っちゃったよ! 立場がそうさせるの!?

 

「末城遊介。プロ昇格の話も上がったという噂もあったが、その話を蹴り

暫くはフリーで活動していたそうだが……なぜ、今になって我が《LDS》へ?」

 

え、何その設定俺聞いて無い! ニートだったんじゃないの俺!?

 

「え、あぁ……いや、家に妹が一人なんで家事しないとなって――――

でも働かないとなって……あ、はい」

 

その場の誰もが「え、なにそれシスコン」みたいな視線を送って来る。

やめて! 俺が聞きたいくらいなんだよ!

 

「なるほど。妹さんを思ってか……」

 

え、納得! 納得しちゃうの社長!!?

 

「それでは、どうだろう私と決闘してくれないだろうか?」

「はぇ?」

 

はい?と、え?が重なる。一体どうしてそうなった?

 

「しゃ、社長! どういう――――」

「何、ただの余興に過ぎない、が、私は本気で行かせてもらおう」

「マジっすか!?」

 

いや、この人使用デッキが【DDD】だからガチそのものなんだけどね。

 

「それでは、始めようか」

 

赤馬零児は眼鏡のブリッジを指で押し上げる。その奥の瞳は、冗談を

言っているような顔では無い。どうやら、やるしかないようだ。

というより了解する前から始めようって言ってるし。実際拒否ないのか。

 

「わ、分かりました。やります」

 

俺は、今セットしてあるデッキを外し懐からデッキを出す。

彼の相手を務めるならこのデッキじゃダメだ。

 

「先生、デッキを変えるのかしら?」

「……赤馬零児は相当の手練れだ。師とて、それは理解している」

「つまり、本気のデッキって訳か!」

 

そういうことです。

 

「で、では始めます! フィールド魔法《荒野の決闘タウン》発動!」

 

本日4回目のシステム起動。システムさんご苦労様ッス!

今度は――――あれ、なんか見たことあるような景色。満足タウン?

西部劇のワンシーンのような景観が広がる。あのコロコロする草もある。

 

「「戦いの殿堂に集いし決闘者達が、モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、

フィールド内を駆け巡るッ! 見よ、これぞデュエルの最強進化系ッ……」」

 

『アクショー……ン』

 

「「デュエル!!」」

 

成り行きとはいえ、《LDS》の社長と戦うことになってしまった……

どうなるんだ、この決闘。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Teaching10 意地

各コースのTOP生徒と、俺の生徒の決闘。結果は2対1となった。

各々、2週間前とは変わりそれぞれの強さを見せてくれた。

そして俺はといえば―――――

 

「「デュエル!!」」

 

《LDS》の若き社長、赤馬零児との決闘に臨んでいる。

先攻は、俺。彼のデッキは知っての通り【DDD(ディメンジョン・ディファレント・デーモン)】。

融合、シンクロ、エクシーズ。果てにはペンデュラムまでを幅広い

展開手段をもつ恐ろしいテーマだ。恐らくまだペンデュラムは時期的に

完成してはいないだろうか? いや、既に完成していると考えて然るべきだ。

システム関係の不備とかはあるかもしれないが、基本は彼のデッキは俺の知る

【DDD】と考えるのが妥当だ。

 

(油断するな。相手はプロだ――――)

 

確か社長は15歳くらいでプロ資格?認定?を受けていたはず。

一方の俺は悲しいかな、知識だけはそこそこあるが結局はファン勢。

戦略面では当然劣る。なら、やれることは全てやってやる。

 

「俺は、永続魔法《炎舞―「天キ」》を発動ッ! デッキから

レベル4以下の獣戦士族、《速炎星‐タイヒョウ》を加える! そして召喚!」

 

《炎舞―「天キ」》魔

「炎舞-「天キ」」は1ターンに1枚しか発動できない。

(1)このカードの発動時の効果処理として、デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスター1体を手札に加える事ができる。

(2)このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分フィールドの獣戦士族モンスターの攻撃力は100アップする。

 

《速炎星‐タイヒョウ》☆3

攻0/守200

このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンのメインフェイズ時に、自分フィールド上の「炎星」と名のついたモンスター1体をリリースして発動できる。

デッキから「炎舞」と名のついた魔法・罠カード1枚を選んで自分フィールド上にセットする。

「速炎星-タイヒョウ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

「ほう、……どうやら報告とはデッキの内容が違うようだが」

「えぇ。あれは授業ようですから、ね。俺はタイヒョウのモンスター効果発動!

このモンスターをリリースして、デッキから《炎舞―「天枢」》をセット!

そして発動!」

 

《炎舞―「天枢」》魔

このカードがフィールド上に存在する限り、自分のメインフェイズ時に1度だけ、自分は通常召喚に加えて獣戦士族モンスター1体を召喚できる。

また、このカードがフィールド上に存在する限り、自分フィールド上の獣戦士族モンスターの攻撃力は100ポイントアップする。

 

「天枢の効果発動! 手札からチューナモンスター《炎星師‐チョウテン》を召喚!

効果発動! 墓地からタイヒョウを特殊召喚するッ!」

 

《炎星師-チョウテン》☆3 チューナー

攻500/守200

このカードをシンクロ素材とする場合、獣戦士族モンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。

このカードが召喚に成功した時、自分の墓地から守備力200以下の炎属性・レベル3モンスター1体を選択して表側守備表示で特殊召喚できる。

この効果で特殊召喚した場合、このターン自分は獣戦士族以外のモンスターで攻撃できない。

「炎星師-チョウテン」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

今のうちに回転させるんだ、デッキをッ! 【DDD】には阻害系のカードは

ほぼない。Gも飛んでくる心配ないだろう。あっても発動させるならここだし。

ちなみに今回使用しているデッキは、元の世界で唯一組んでたガチデッキ。

まぁ自分で思ってただけだが……【炎星】だ。

 

「俺は、レベル3のタイヒョウにレベル3のチョウテンをチューニングッ!

炎纏いし武人、勝鬨を上げろッ!! シンクロ召喚ッ! レベル6

《炎星候‐ホウシン》ッ!」

 

《炎星候‐ホウシン》☆6 シンクロ

攻2200/守2200

炎属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードがシンクロ召喚に成功した時、デッキから炎属性・レベル3モンスター1体を特殊召喚できる。

また、このカードがシンクロ召喚に成功したターン、自分はレベル5以上のモンスターを特殊召喚できない。

 

「ホウシンの効果発動! デッキから《立炎星‐トウケイ》を加える。

トウケイの効果発動! 《炎星》の効果で特殊召喚されたとき、デッキから

《炎星》と名の付いたカードを手札に加える。俺は、《炎星師‐チョウテン》

を手札に加える」

 

《立炎星‐トウケイ》☆3

攻1500/守100

このカードが「炎星」と名のついたモンスターの効果によって特殊召喚に成功した時、デッキから「炎星」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる。

「立炎星-トウケイ」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。

また、1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する「炎舞」と名のついた魔法・罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。

デッキから「炎舞」と名のついた魔法・罠カード1枚を選んで自分フィールド上にセットする。

 

「トウケイの2つ目の効果を発動。場の《炎舞―「天キ」》を墓地へ送り、

デッキから同じく《炎舞-「天キ」》をセットする。これでターンエンド」

 

場にはホウシン、トウケイ。「天枢」、伏せ《「天キ」》。

まずまずの出だしだろうか? 

 

「それでは私のターン。ドロー。私は手札から永続魔法《地獄門の契約書》、

《魔神王の契約書》をそれぞれ発動」

 

《地獄門の契約書》魔

「地獄門の契約書」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)自分メインフェイズに発動できる。

デッキから「DD」モンスター1体を手札に加える。

(2)自分スタンバイフェイズに発動する。

自分は1000ダメージを受ける。

 

《魔神王の契約書》魔

「魔神王の契約書」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)自分メインフェイズに発動できる。

自分の手札・フィールドから、悪魔族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

「DD」融合モンスターを融合召喚する場合、自分の墓地のモンスターを除外して融合素材とする事もできる。

(2)自分スタンバイフェイズに発動する。

自分は1000ダメージを受ける。

 

「私はこの2枚の効果で自分のメインフェイズにそれぞれ1000ポイント。

合計2000ポイントのダメージを受ける」

 

「な、なんだぁ! それ! デメリットの塊じゃねぇか!?」

 

外野で修也が叫ぶ。だがその契約は大概破棄されるけどな。

 

「私は、地獄門の契約書の効果を発動。デッキから《DDナイト・ハウリング》

を手札に加える。さらに、魔神王の契約書の効果。1ターンに一度、《融合》

のカードを使用せず、悪魔族融合モンスターを融合できる。私は、手札の

《DDケルベロス》、《DDリリス》で融合。

牙むく地獄の番犬よ、闇夜にいざなう妖婦よ! 冥府に渦巻く光の中で、今ひとつ

となりて新たな王を生み出さん! 融合召喚! 

――――生誕せよ! 《DDD烈火王テムジン》!」

 

「赤馬社長が、融合使いだったなんて驚きです……」

 

外野で昌子さんが驚きを漏らす。融合だけなら誰だけ良かったろうか。

 

《DDD烈火王テムジン》☆6 融合

攻2000/守1500

「DD」モンスター×2

「DDD烈火王テムジン」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)このカードがモンスターゾーンに存在し、自分フィールドにこのカード以外の

「DD」モンスターが特殊召喚された場合、自分の墓地の「DD」モンスター1体を

対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

(2)このカードが戦闘または相手の効果で破壊された場合、自分の墓地の「契約書」

カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。

 

「攻撃力2000。それだけじゃあ……ないですよね?」

 

俺は、勘ぐるように聞く。まぁー終わるわけないんだけどね。

きっと融合、シンクロ、エクシーズ全部並ぶよ(白目)

 

「あぁ。そうだ。私はチューナーモンスター《DDナイト・ハウリング》を

召喚! このモンスターの召喚に成功したとき、墓地の《DD》と名の付くモンスター

を特殊召喚できる。私は《DDリリス》を特殊召喚!」

 

《DDナイト・ハウリング》☆3 チューナー

攻300/守600

(1)このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の「DD」モンスター1体を対象

として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力・守備力は0になり、そのモンスターが

破壊された場合に自分は1000ダメージを受ける。

この効果の発動後、ターン終了時まで自分は悪魔族モンスターしか特殊召喚できない。

 

奇妙な声を囁きながら場に戻るリリス。墓地で眠ってて、どうぞ。

 

「私は、レベル4の《DDリリス》にレベル3の《DDナイト・ハウリング》を

チューニングッ! 闇を切り裂く咆哮よ。疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!

シンクロ召喚! ―――――生誕せよ! 《DDD疾風王アレクサンダー》!」

 

「シンクロ召喚まで使えんのかよ!?」

 

《DDD疾風王アレクサンダー》☆7 シンクロ

攻2500/守2000

「DD」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「DDD疾風王アレクサンダー」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)このカードがモンスターゾーンに存在し、自分フィールドにこのカード以外の

「DD」モンスターが召喚・特殊召喚された場合、自分の墓地のレベル4以下の

「DD」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

「烈火王テムジンのモンスター効果発動。このカード以外の《DD》と名の付く

モンスターが特殊召喚されたとき、墓地から《DD》モンスターを特殊召喚できる。

私は、《DDケルベロス》を特殊召喚。さらに、アレクサンダーの効果発動!

このカードが存在し自分フィールドに《DD》と名の付くモンスターが特殊召喚された

時、自分の墓地からレベル4以下の《DD》と名の付くモンスターを特殊召喚できる。

甦れ、《DDリリス》よ!」

 

また戻って来たよ、あの妖婦(過労死認定)。

 

「……レベル4モンスターが2体。まさか」

 

「私は、レベル4の《DDケルベロス》、《DDリリス》でオーバーレイッ!

この世の全てを統べるため、今 世界の頂に降臨せよ! エクシーズ召喚!

――――生誕せよ! 《DDD怒涛王シーザー》ッ!」

 

はい、ここまでテンプレです。めっちゃ増G撃ちたいッ!!

てか、生誕しすぎィ!! 俺で、皆赤馬社長が融合、シンクロ、エクシーズの全て

を使えると分かったことだろう。うん。さて、どう突破しますか。

 

「バトルだ。アレクサンダーで《炎星候‐ホウシン》に攻撃!」

 

アレクサンダーがその剣でホウシンへ向かう、あの時《「天セン」》でも伏せて

おけば良かったか。

 

「くッ」

 

末城 遊介:3800LP

 

「次だ。テムジンで《立炎星‐トウケイ》を攻撃」

 

テムジンの炎を纏った刃がトウケイを両断する。

 

末城 遊介:3400LP

 

まだだ、まだ耐えられるッ……次のターンのことを考えれば場が空いてるほうが

好都合と思えば。

 

「そして、怒涛王シーザーでダイレクト・アタックッ!」

「ぐぅッうう……!!」

 

シーザーの攻撃をモロに喰らい後方へ吹っ飛ばされる。乾いた砂のリアルな

感覚が背中越しに伝わる。

 

末城 遊介:1000LP

 

「私は、カードを1枚伏せてターン終了」

「流石、《LDS》の社長……容赦ないですね」

 

立ち上がり顔を拭う。赤馬零児の顔は1ミリも笑ってはいない。

 

「私は本気を出す。そう言ったはずだが」

「そうでしたね。なら俺も立場関係無しで行かせてもらいますよ」

 

少し虚栄を張る。実はもう精一杯だっての。まず立場考えろ!

バイト講師が社長と戦ってんだぞ! 接待しないと首切られるのか?

とか考えちゃうのは自然の摂理。けど、

 

(負けたくない)

 

主人公の榊遊矢でも勝って無い?関係ない。俺は自分の生徒の

前でみっともない姿を見せる訳にはいかねぇんだ。

そう、これは男の意地だ。




やや多忙で投稿がやや遅れました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Last Teaching さぁ、授業を始めよう

俺の生徒達と《LDS》の各コースTOPクラスの生徒達との決闘が終わり、

俺はレオ・コーポレーション社長、赤馬零児との決闘に臨んでいた。

 

赤馬 零児:4000LP

末城 遊介:1000LP

 

赤馬零児の巧みなカードプレイングによって俺のLPは1000まで追い込まれる。

相手の場には《烈火王テムジン》、《疾風王アレクサンダー》、《怒涛王シーザー》

が並んでいる。正に絶体絶命と言える状況だろう。

 

が、俺も負けるわけにはいかない。

何故ならば後ろで生徒が見ているからだ。

 

「ほう……ここまで追い込まれてなお、そこまでの闘志を――――」

「はは、どうやら俺もだいぶ先生ってのが板についてしまったみたいです。

以前までだったらサレンダーしていたと思うんですけどね。

何故だか「退く」って思考が何処かへ行ってしまったようだ」

 

かと言っても、俺の場には《「天枢」》と伏せの《「天キ」》。

この状況、どう覆す。

 

(考えろ)

 

どう考えても、相手の伏せは《契約洗浄》のカードだろう。何故なら、

放っておけば赤馬零児は次のターンに2000ダメージ受けることになる。

いや、それ以外の可能性も捨てきれないが、攻めるなら今だ。

 

「俺のターン! 俺は、セットしていた永続魔法《炎舞―「天キ」》を発動!

デッキから《炎星師‐チョウテン》を手札に加える。そして、召喚!

チョウテンの効果発動! 墓地から、《立炎星‐トウケイ》を特殊召喚する。

トウケイの効果発動。炎星の効果で特殊召喚されたとき、デッキから炎星を

一体手札に加える。俺は、《微炎星‐リュウシシン》」

 

「先生! 頑張れよぉぉぉおおおおおお!」

 

後方から修也の怒鳴る声が聞こえる。俺は「あぁ!」と頷き答える。

さぁ、こっからだ。見せてやる。

 

「俺は、レベル3のトウケイにレベル3のチョウテンをチューニング!

シンクロ召喚! レベル6 《獣神 ヴァルカン》ッ!」

 

《獣神 ヴァルカン》☆6 シンクロ

攻2000/守1600

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「獣神ヴァルカン」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがS召喚に成功した場合、自分及び相手フィールドの表側表示の

カードを1枚ずつ対象として発動する。

その自分及び相手の表側表示のカードを手札に戻す。

このターン、自分はこの効果で手札に戻したカード及びそれらの同名カードの効果

を発動できない。

 

「ヴァルカンの効果発動。俺は《炎舞-「天キ」》とあなたの《怒涛王シーザー》

を手札に戻すッ!」

 

「これで先生は、次のターンにもう一度《「天キ」》を使用でき、かつ相手の

場のモンスターを1体退くことが出来ました!」

「けど、なんでシーザーなんだ? 戻すなら攻撃力の高いアレクサンダーの

方がよくないか?」

 

その問いには俺が答えるとするか。

 

「シーザーには厄介な効果があるんだ。そのターンに破壊されたモンスターを

特殊召喚できる蘇生効果、それと墓地に送られたときにデッキから契約書を

持ってこれる効果が、な」

「お見事……だが、まだ私の場のモンスターは残っている」

「えぇ。だから俺はこれを使います! 魔法カード《真炎の爆発》!」

 

《真炎の爆発》魔

自分の墓地から守備力200の炎属性モンスターを可能な限り特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターはこのターンのエンドフェイズ時にゲームから

除外される。

 

「俺は、このカードの効果で墓地からトウケイ、チョウテン、タイヒョウを

特殊召喚! さらに、《「天枢」》の効果で《微炎星‐リュウシシン》を召喚」

 

これで俺の場にはヴァルカン、トウケイ、チョウテン、タイヒョウ、リュウシシン

が並ぶ。

 

「俺は、レベル3のタイヒョウにレベル3のチョウテンをチューニング!

炎纏いし武人、勝鬨を上げろッ! シンクロ召喚! 《炎星候‐ホウシン》!

ホウシンの効果! デッキから《英炎星‐ホークエイ》を特殊召喚!」

 

《英炎星‐ホークエイ》☆3 

攻200/守1500

このカードが相手によって破壊された場合、デッキから「炎舞」と名のついた魔法

カード1枚を選んで自分フィールド上にセットできる。

また、自分フィールド上に「炎舞」と名のついた魔法・罠カードが存在する場合、

自分フィールド上の全ての「炎星」と名のついたモンスターの攻撃力・守備力は

500ポイントアップする。

 

ホークエイの効果で俺の場の炎星の攻撃力は500上がり、天枢の効果で100上がる。

 

《炎星候‐ホウシン》攻2200→2800

《微炎星‐リュウシシン》攻1800→2400

《英炎星‐ホークエイ》攻200→800

 

「すげぇ、先生のモンスターが赤馬社長のモンスターの攻撃力を超えたぜ!」

 

よ、よしこれで行ける!

 

「バトル! ホウシンで《疾風王アレクサンダー》を攻撃ッ!」

 

ホウシンが馬の速度を上げつつ、アレクサンダーに迫る。が、

 

「――――残念だが、この決闘。私の勝ちのようだ」

「えッ、」

 

何故、なぜホウシンが戦闘破壊されて―――――!

 

「……永続罠《戦乙女の契約書》を発動させてもらった」

 

《戦乙女の契約書》魔

「戦乙女の契約書」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)手札から「DD」カードまたは「契約書」カードを1枚墓地へ送り、フィールド

のカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

(2)このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分フィールドの悪魔族モンスター

の攻撃力は、相手ターンの間1000アップする。

(3)自分スタンバイフェイズに発動する。

自分は1000ダメージを受ける。

 

「戦乙女の契約書ッ!? な、なんでッ!!!?」

「この効果で私のモンスターの攻撃力は1000ポイント上昇する」

 

末城 遊介:300LP

 

クソッ、読み間違えた! 完全にその可能性を忘れていたッ―――――!

 

「君は、どうやら熱くなりすぎているようだ」

「俺、が」

「しかし意外だよ。聞いていた君のプレイスタイルとは大分違うようだ。

私が聞く限りでは、君は実に堅実な決闘者だと聞いていたが」

 

赤馬零児は指で眼鏡を押し上げる。そして、

 

「期待外れだ」

 

と呟いた。そうか……俺は全てに於いて何か勘違いしていたのかもしれない。

この世界における情報アドバンテージを手に入れていたと錯覚し、決闘者の

腕を図り間違え、そして今、自分自信それを痛感している。

 

「俺は、ターンエンドだ」

「私は、3枚の契約書の効果で合計3000のダメージを受ける」

 

赤馬 零児:1000LP

 

「そのまま戦闘に入る。私は、アレクサンダーでヴァルカンに攻撃ッ!」

 

アレクサンダーの雷を纏った刃がヴァルカンを貫通、爆散させる。

 

「負け、た――――――――――」

 

末城 遊介:0LP

 

俺は乾いた砂の上に倒れ伏した。敗因は分かっている。相手のデッキを

ある程度“知っている”という傲り。それから自分の実力不足だ。

俺はデュエル場から去っていく赤馬零児を見ることしかできなかった。

その距離は実際の距離よりも遠く、遠く感じた。

 

「先生!」

「大丈夫ですか!」

 

暫くすると、三人が駆け寄ってくる。

 

「悪い。カッコ悪いとこ見せちまった」

「何、言ってるんだよ! そんなことないぜ」

「えぇ。そんなことありませんよ、先生」

「……敵が強大過ぎたまで」

「敵って……けど、ありがとうな。俺、馬鹿だったよ」

 

そうだ。簡単な事だった。ようは俺ももっと強くなればいいんだ。

一からやり直せばいいんだ。この世界で。

そう思うと、先ほどのドロッとした不快感が無くなった。

 

「よしッ!!! 俺も強くなる」

 

俺は立ち上がり拳を握る。そして、傾いてきた太陽に掲げた。

 

「そんで次は勝つ!」

 

 

「兄さんッ!!!!!!!!!!」

「なななな、何ッ!??」

 

それから2日後の朝のことだ。いつもと変わらない朝とはいかなかった。

 

「講師のバイト、辞めたってほんと!?」

「あ、やめた」

「このアホがぁあああああッ!!!!」

 

そのまま丸めた新聞で頭を殴られる。結構尖ってて痛い。

 

「痛い! 角ッ! 角が、刺さってる!! せめて丸めて!」

「なんで辞めたの! 折角、入れたのにッ!! 時給高いのに!!

たった二週間で辞めるな、ニート!!!」

「まぁ、落ち着け! 落ち着いて話を! 痛い!」

 

ようやっと話を聞いてくれる気になったのか、鏡花は新聞を置く。

 

「辞世の句なら、聞くわ」

「殺すなよ! まぁ、何。今持ってる生徒達も育ったし? 正直、俺に

向いて無いかなって思ってさ……」

「嘘よ。あんな生き生きしてた兄さんは久々だった」

 

実際、嘘だ。赤馬零児に負け俺は一からやり直そうと思った。

正直俺はこの世界を舐めてた節がある。実際には思っていなかったが、

心の何処かにそういう気持ちがあったに違いない。「俺はこの世界を

知っている」という思いが。それが慢心を生み、負けた。

なので、俺は与えられたここでの“末城 遊介”という人間を

ロールプレイするのではなく、俺としての道を一から行く必要があるんだ。

 

「そうかもしれないけど、もう決めたから。けど、安心して」

「え?」

「――――もう、次の働き口決めてるから」

 

俺はコーヒーを口に含む。そう、もう道は決ってる。

 

「それより、学校。時間はいいのか?」

「あッ! やばッ――――! 後、お願い! あ、私の下着は別にしてよ!?

一緒に洗わないでよ、菌つくから!!」

「菌扱いッ!?」

 

いつもちゃんと別にしてネットに入れ、形が崩れないように干すという配慮

までしているのに……ひどくない?

 

 

その日も俺は午前中、いつも様に家事をこなした。そして午後。

スーツに腕を通し、ネクタイの位置を確認。そして、仕事場へ。

 

「こんにちは」

「はい。こんにちは」

 

廊下で会う人へ軽く挨拶をし、持ち場へ急ぐ。

ドアの前で深呼吸し、そしてドアを開く。そこには12人の男女。

それぞれ別の表情を持って、俺を見る。

 

俺はホワイトボードの前へ立ち、ボードに書く。

「末城 遊介」と。そして振り返る。

最初の授業を思い出す。あの時は噛み噛みで、彼らにごみを見るような

視線を向けられていたのだった。そう考えると顔がほころぶ。

 

「えー今日から、ここのクラスの担当を任された末城 遊介だ」

 

「先生」

 

挨拶を済ませると、手が上がる。

 

「栄 昌子さん。なんですか?」

「“前任”の先生はどうなさったのですか?」

 

彼女は笑いながら問う。俺も笑い、そして答える。

 

「ハッハハ! いい質問だ! まぁ彼は彼で何処かに居るでしょう」

 

まぁ実際そこは分からない。この世界に本当に“末城 遊介”が存在したのか。

俺と入れ替わる形で彼が俺の世界へ行ったのか。そこは神のみぞ知る。

それに俺は本当に一回《LDS》を辞めた。そして改めて面接を頼んだ。

断られたらそこまでと思ったが、通った。だから本当に新しい担当になる。

変わりでは無い。本当の俺をここから始めるんだ。

 

「えー、今日からお前達の講師という立場になった。けど、その前に言いたい」

 

俺はワンテンポ置く。そして、

 

「俺も強くなりたい。だから皆で強くなろう! 一緒に!」

 

これが結局俺の選んだ道だった。一からここで講師をやる。成り行きではなく、

自分で決め選んだ道だ。彼らと共に強くなる。そして、ここに居る全員を

もっと、もっと強くする。そんな俺の言葉に、皆一様に頷く。

 

「さぁ―――――授業を始めようか」

 

俺の講師生活は今始まったばかりだ。




とりあえずここ2日ほど多忙でして更新が遅れてしまいました。
正直この話の決闘シーンは今まで以上に自信が無いです。
とりあえず「零児が勝った」とだけ認識頂ければ幸いです。

これにて“1章”が完結です。
遊介君がスタンダード次元の遊介としてではなく、本当の自分として
講師を始めるまでのお話でした。「多次元に同一人物がいるわきゃねぇだろ!」
と思います。私も何話か書いて気づきました。が、戻るに戻れないのでしょうがない!
このまま続行してまいりました。この設定はこの設定で行くしかない(白目)

できましたらまだお付き合い頂ければと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2章 舞網cs編 前
practice1、夕暮れの隼


舞網市。ここは《アクション・デュエル》によって栄えている先進都市だ。

そこには数多くの決闘者のための塾。《デュエルスクール》が立ち並ぶ。

ここ《LDS》もそれらの一つであり、またそれらのTOPに君臨する

《デュエルスクール》だ。

俺、末城遊介はそんな《LDS》でバイト講師をしている。

 

「えーという訳で今日からこのテキストを使っていくわけだが……

まぁとりあえずこれを見てくれ」

 

俺はスライドの画面を指す。画面には2枚のカードが表示されている。

1枚は《ブラッド・ヴォルス》。攻撃力1900。レベル4の通常モンスターだ。

古くは海馬瀬人が使用した往年のモンスターである。そしてもう1枚が、

《エルフの剣士》。ブラッド・ヴォルス同様レベル4通常モンスターだ。

こちらはキングオブデュエリスト、武藤遊戯が使用したカードである。

 

「ってことで。本日の講義は“エクシーズ召喚”だ」

 

俺は画面を操作する。この世界の映像技術は非常に発達しており、

PCで操作しただけで思いのままに画面を表示させることができる。

これもソリッドヴィジョン技術の応用なのだろうか。

俺は2体のモンスターを重ねる。

 

「さて、ここで“エクシーズ召喚”の基本についておさらいだ。

そうだな……エクシーズときたら――――レイ。説明頼んだ」

「……了解した」

 

俺が今指名した少年。斎賀レイは、俺の受け持つこのクラスの中で

一番エクシーズ召喚の使用に長けた生徒だ。案の定淡々と説明を行う。

 

「OKだ。エクシーズに関しては流石だな」

「……何ら問題ない」

「よし。さてじゃあ実践問題だ。テキストの14ページを開いてくれ」

 

俺自身も《エクシーズ入門~これで君もかっとビング!~》を開く。

そこにはいくつかの例題が書かれている。

 

「まぁこんな問題今更だと思うが、問題1だ。さて誰に答えて貰うか……」

 

「先生。私が」

 

誰を指名しようか迷っていると、一番前から手が上がる。

手を上げていたのは栄昌子という女子生徒だ。このクラスでいう

優等生キャラとでも言おうか。だが、非常に勤勉で真面目な生徒だ。

 

「昌子か。よし、それじゃ問題だ。

『エクシーズモンスターが場を離れた時、ORUとなっていたエクシーズ素材

はどうなるか』わかるか?」

「エクシーズ素材となっていたモンスターは墓地へ送られます」

「正解だ。よく勉強してるな」

「勿論ですわ」

「じゃ、応用問題な。エクシーズモンスターが《強制脱出装置》の効果対象

になったとしよう。この場合どうなる?」

「うッ……それは――――」

 

昌子が言いよどむ。流石にこれはむずかったか……

 

「あれ? 昌子ねぇちゃんでも分からない問題があるんだな~」

「わ、分かります!」

 

横からヤジが飛ぶ。彼は秋月修也。少々落ち着きが無い悪ガキ系の生徒だ。

 

「分かりました! 正解は、『エクシーズモンスターはエクストラデッキへ

戻り、エクシーズ素材のモンスターが手札へ戻る』です!」

「半分正解、だが半分間違えだ」

「ま、間違えですか……」

「ほかに、正解が分かる人いるか? 間違ってもいいぞ」

 

すると先ほどのレイから手が伸びる。意外だ。基本的に無口なアイツが

手を上げるとは……

 

「……正解は、『エクシーズモンスターはエクストラへ。素材は墓地』だ」

「そうだ、正解だ。よく勉強してるな」

 

流石我がクラスのエクシーズ専門だ。

 

「……そこの女には荷が重かったようだな」

「なッ!? なんですって!!!」

 

レイの余計なひと言が彼女に突き刺さる。レイは昌子に対して少々突っかかる

傾向がある。何故だろうか……

 

「斎賀君。少し間違えただけでそれは言い過ぎではなくて?」

「……すまない。本音が漏れた」

「なッ!」

「おいおい、まだ授業中だぞ。喧嘩はやめろ?」

 

2人の仲裁に入るが、言い争いは止まらない。

 

「おーい誰か止めてくれー……」

 

だが皆「無理に決まってるだろ」という顔を作り成り行きを見守っている。

どうするか逡巡していると、

 

「――――末城講師。いますか?」

 

教室のドアが開き、スタッフと思しきスーツの男性が入って来た。

 

「俺ですか? 一体、どうしました?」

「はい。緊急で講師会議を開きたく」

「え? だって今は授業中ですよ」

 

授業が終わってからでもいいのではないのだろうか?

 

「それが……そうも言っていられないようです。マルコ先生が

何者かに襲撃されました。他にも今日までに何名かの《LDS》の

関係者が謎の決闘者に襲われる事態が数件。ので、対策を立てたいと」

 

黒咲さんか。マルコ先生がついにやられてしまったか……

そうなれば行かないわけにはいかないか。生徒たちの顔にも不安が見える。

《LDS》関係者の襲撃事件と聞けばそうなるのも当然だ。

 

「了解しました。――――皆、今日の授業はここまでだ」

「では、こちらへ」

「はい」

 

俺はスーツ男性へ連れられ、何やら画面が多い指令室のようなところへ

連れて来られる。そこには既に多くの講師、職員がいた。

ここはアニメで「召喚方法は!」ってやってる部屋のようだ。

やがて、社長の赤馬零児が現れる。後ろには理事長のえー名前が思い出せない。

凄い頭のおばさんもいた。これ言ったらクビじゃ済まないな。後で確認しとこ。

 

「社長、ご苦労様です」

「マルコ襲撃事件の詳細を」

「はッ、発生したのは市内NLD38地区。発生時刻は17時54分です。

発生時刻、かなり強い召喚反応を付近で確認しました」

「それで、召喚方法は?」

 

理事長が問う。

 

「エクシーズです」

「エクシーズ? その時刻、榊遊矢は我々と――――」

「そもそも彼にはエクシーズを使う知識も技量もなかった。

しかしこれで榊遊矢が事の犯人でないことの裏が取れた」

 

後々に使いまくるけどね。エクシーズ。

 

「中嶋。マルコの消息は?」

「今だ不明です。が、―――――例の物を」

 

「はッ」と返事をし一人の講師が袋を持って来る。

そこにはかなり破損したデュエルディスク、そしてカードが入っていた。

 

「かなり損傷が激しいですが、彼の物だと判明しています」

「そうか……引き続き《LDS》の総力を挙げ、行方を追え」

「はッ」

 

ここで犯人を言ってしまえば俺が疑われそうだ……

 

「しかし、不可解な点がありますな。何故アクションフィールドでもないのに

そこまで彼のディスクは破損しているんだ……」

 

それに答えを出せるものはおらず。今日の所は警戒態勢を取る事、

マルコ先生については引き続き捜索とのことで会議は終わった。

 

「さて、どうするか……」

 

《LDS》のフロントまで下りてきた俺は、帰るかそれとも市内を

見て回るか悩んでいた。そこへ、

 

「――――なんで、合わせて貰えないのよ!」

「まぁ、落ち着きなよ」

 

この間のLDSの三人組がいた。そういえば、光津真澄はマルコ先生のことを

尊敬していたっけ。塾側も流石に消息不明とは言えず、「面会謝絶」という

扱いにしているのだろうか?

 

「沢渡の時見たく包帯ぐるぐるで他人に会いたくねぇんだろ?」

「マルコ先生をあんな奴と一緒にしないで!」

 

真澄が切れる。沢渡さんも報われない人だなぁ。

 

「あ! 貴方は!」

「やべ」

 

やがて俺を発見した彼らに見つかる。何故だか嫌な予感が……

 

「貴方は確か……そうよ! 総合コースの講師よね!」

「ま、まぁそうだけど。――――なんでタメ口……」

「何か?」

「いえ、なんでも」

 

幾ら成績優秀な生徒でもタメ口って……まぁいいんだけどね。

 

「貴方なら、マルコ先生がどうなってるか知ってるでしょう?」

「それが……こちらもよく把握して無くて――――」

 

そうはぐらかすことにした。

 

「くッ……つかえないわね。なら、私が犯人を見つける!」

「あ、おい! 待てよ真澄!」

 

刃の制止を振り切り、そのまま出口に向かって走り出す真澄。

 

「俺が行くから、君たちは今日は帰るんだ」

 

俺は彼女が走って行った後を追うことにした。相手は黒咲さんだ。

もし遭遇しても彼女では勝てないと思われる。

 

「――――あーもしもし鏡花? 今日遅くなる」

 

 

「おーい。ちょっと待ってくれよ!」

「何、貴方?」

「闇雲に探したっていい成果は得られないだろう? 他の講師やユースの

人たちも動いているんだ。今日はもう帰るんだ」

 

太陽も既に傾きかけている。これ以上女の子一人でふらふらしていれば

別の不審者に捕まりかねない。

 

「何を言っているの! マルコ先生が襲われたのよ!?」

「お、落ち着けって。《LDS》でも総力を挙げて調べてるとこだ。

君たち生徒まで危険にならないようにだ。なのに、自分から首を

突っ込んでもいいことはない。だろう?」

「呑気ね。私のことは放っておいて。――――犯人は私が捕まえる!」

 

そのまま彼女は走り出す。

 

「ちょっと待てって!」

 

負けたらカードにされるんだぞッ!

 

俺は追いかけることにした。

 

 

「くっそ……見失ったよ」

 

彼女を追いかけて暫く。ビルが入り組んでいる辺りで見失ってしまった。

 

「もう暗いし。俺も引き上げる、か……」

 

辺りはさらに日が傾き、間もなく月が顔をだす時間になって来た。

帰るかなと来た道を戻ろうとした時だった、

 

「――――見つけたぞ、《LDS》ッ!」

「え……」

 

背後からくぐもった声が聞こえる。なにこれ……え、やだ。凄い嫌な予感。

どうするのこれー。しょうがない。よし、振り返ろう。

 

「ッ!?」

 

振り返ると、覆面で顔を半分覆い、ゴーグルをかけた男がデュエル・ディスクを

展開させた状態で立っていた。場には既に鳥獣族モンスターと思しきモンスターが

彼の隣に存在している。

 

(まさかこんなところでお目にかかれるとは……)

 

「あのー何か御用ですかね?」

「《LDS》……《LDS》は俺が倒すッ」

「ちなみに理由を聞いてもいいか?」

「貴様に言う必要はない――――来ないならば、こちらから行くッ!」

 

ダメだ。聞く耳なんて持って無い! なら、

 

「――――やる前に、一つ聞いても言いか?」

「……」

「マルコって男をやったのはあんただな?」

 

俺は一応確認を取る。正直この辺のアニメはあまり見て無い。

ニコ〇コで動画は見たけどな。なので、情報を正しておきたい。

 

「マルコ、だと?」

「あぁ。俺と同じ《LDS》の講師の名だ。融合召喚を使う」

「融合……あぁ、あいつか。俺がやった」

 

黒咲は鼻で笑うようにそう言った。

 

「そうか。なら俺にもやる理由ってのが出来たよ」

「敵討ちか? 薄っぺらいな。あのマルコという男もそうだったが、

貴様等《LDS》の決闘には鉄の意志も鋼の強さも感じられん。貴様もそうだろう」

「そうかもしれないけど、アンタのやっていることは正しいのか?」

「何?」

「自分の都合で《LDS》の人たちを襲っているのが、正しいのかと

言っているんだ。話し合おうとは思わなかったのか」

「瑠璃を――――仲間を助けるためなら俺は何でもやる! 御託は沢山だ。

来ないのであれば、こちらから行くッ!!」

「くッ、倒して話すしかない!」

 

「「デュエルッ!!」」




もしかしたら半端な状態で一度UPしてしまった可能性があります。
申し訳ありません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

practice2、答え

夕暮れのビル群。偶然エンカウントした《LDS》襲撃事件の犯人こと

黒咲隼と戦うことになってしまった。

彼の目的は《LDS》関係者を襲い、アカデミアのTOP赤羽レオの息子である

社長の赤羽零児を人質にとり、レオと交渉に臨むことである。

全てはアカデミアに捕らわれた彼の妹の為だ。

 

その辺のいざこざは全て本編の話だ!

 

(だから、この決闘俺にメリットの「メ」の字もないんだが……)

 

逃げようものならあの不思議な技術でカードにされてしまうだろう。

……アレホントヤバいよね? 拉致監禁の域超えてるもんな?

だからビビッてる俺がいる。

 

「俺は、俺は瑠璃を救うためならば何でもする! 来ないのであれば、

こちらから行くぞッ! 俺は《RR‐バニシング・レイニアス》を、召喚!」

 

《RR‐バニシング・レイニアス》

攻1300/守1600

このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンの自分メインフェイズに1度だけ

発動できる。

手札からレベル4以下の「RR」モンスター1体を特殊召喚する。

 

黒咲の場にグリーンカラーの鳥獣が現れる。彼のデッキは【RR】。

鳥獣族のテーマである。まるで鳥が群れを成す如くわらわらと展開して

くる極めて展開力のあるデッキだ。

 

「バニシング・レイニアスの効果発動! 手札から《RR‐シンギング・レイニアス》

を特殊召喚ッ! 俺は2体のモンスターでオーバレイッ!」

 

モンスター2体ってことはフォース・ストリクスか。

 

「冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!

エクシーズ召喚! 飛来せよ、ランク4ッ! 《RR‐フォース・ストリクス》!」

 

《RR‐フォース・ストリクス》

攻100/守2000

レベル4モンスター×2

(1)このカードの攻撃力・守備力は、このカード以外の自分フィールドの鳥獣族

モンスターの数×500アップする。

(2)1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

デッキから鳥獣族・闇属性・レベル4モンスター1体を手札に加える。

 

「フォース・ストリクスの効果発動! ORUを1つ使い、デッキから

《RR‐バニシング・レイニアス》を手札に加える! 俺はカードを1枚

セットしてターン終了だ。さぁ、次は貴様のターンだ」

 

フォース・ストリクスの攻撃力はたったの100。

けど、あの伏せ……恐らく戦闘補助。ストリクスを除去するのは簡単では

無さそうだ。

 

「あんたが《LDS》を襲って回る理由は大体わかったよ。けどな。

こんなこと言えたもんじゃないかもしれないが、他に方法は無かったのか?」

「何、だと」

 

黒咲の眼光の鋭さがより一層増す。ぅわ……こえぇ。

 

「貴様に、安穏と生きている貴様に何が分かるッ俺たちは全てを奪われた!

仲間を……故郷をッ! 瑠璃を!」

「確かにそうかもしれない。毎日平和に暮らしている俺にはあんたの気持ちは

分からない。けど、別に方法だってあるんじゃないか?」

「方法だと。そんなものはありはしない」

「あるかもしれないじゃないか。例えば……俺達と一緒に戦う、とか」

「馬鹿げた話だ―――――」

 

「――――隼!」

 

ビルの上から人影が降ってくる。決闘者特有の身体能力か……すげぇ。

降ってきた人物は黒咲同様顔面を半分隠しているものの、独特のヘアスタイル

までは隠せていない。その男は黒咲の腕を掴む。

 

「これ以上、関係ない人を襲うのはやめるんだ!」

「離せ、ユート! これは、これは俺の戦いだッ! 瑠璃を取り返すためには

こうするしかない! 邪魔をするな!」

「そんなことをしても瑠璃は助からない!」

 

2人で言い争う不審者たち。あれ、俺放置? こうならば――――

 

「逃げるんだよぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

全力で逃げました。途中から割と酸欠で涙出た。

 

 

全速力、スタイリッシュ敵前逃亡を決め込んでから家の付近まで走った。

ユートが割り込んでくれて助かった。天は俺を見逃さなかったのだ!

 

「はぁッ……はッ……ここまでくれば安心だろ」

 

心臓がバクバクと早鐘を打つ。正直、相手と自分の戦力差は明らか。

あんなん主人公補正でもなきゃ戦えたもんじゃない。

事件に首を突っ込むのも得策とはいえない。いいことはない。

 

「はッ……はぁ」

 

面倒事は主人公らに任せておけばいい。俺には役割があるし、やる気もない。

なにより人類を超越したような決闘者達を相手取る実力もなにもない。

だからこうしてモブとして暮らすのが妥当だ。なのに……

玄関のドアノブにかけた手が止まり、震える。

 

「くそ……」

 

イイじゃないかモブでも。ここには本物じゃなくても家族がいる。

塾の仕事もある。それで十分だ。十分なはずだろう。

 

――――なのに、なんで後悔なんかしてんだよ。俺は……

変えられるわけないだろう俺なんかに。この先の展開を。

 

「……た、ただいま」

 

俺はドロドロとした思考を押しこめると、普段より重いドアくぐった。

 

「あれ、兄さん。今日は遅くなるって言って無かった?」

「あ、あぁ。なんか大丈夫みたいだった……ハハハ。悪い」

 

玄関に入ると、妹がリビングから出てきた。

俺はそれに取り繕いつつ応じる。

 

「どうしたの? 汗、すごいけど。先にお風呂入れば?」

「あ、あぁ……そうする、よ」

 

俺は言われた通りに無心で部屋に戻り、スーツを脱ぎ風呂に向かう。

そうだ。忘れてしまえばいい。今日あったことは忘れよう。

黒咲は後々《LDS》と協力関係になるはずだ。ならいいじゃないかそれで。

かわいそうだが、それまでにカードにされた人は……犠牲だ。

 

「俺の気にすることじゃない」

 

その呟きは、シャワーを流れる水の音にかき消される。

が、脳裏にはマルコ先生と講師室で談話したことやこの間の生徒同士の

決闘のときの彼の姿が浮かんでいた。

人は、関わった人との思い出をそう易々消せるものではないらしい。

 

「何か、俺にできることでもあれば……話は別なのかもな」

 

湯の上をゆらゆら揺れる湯気をぼーっと見ながらそう口に出ていた。

 

「兄さんまだー。ご飯冷めちゃうよ?」

 

風呂場の方から呼ぶ声が聞こえた。

 

「あぁ、今でるよ」

 

俺は無意識に風呂から出る。が、そこには妹がまだ居た。

つまりは、

 

「ななんな、なんで……」

「なんではこっちの台詞よッ! きゃぁああああああああ!!」

「ちょ、誤解だ!! ちょっと!! 洗濯籠で殴るのやめッ――――」

 

プラスチック製の洗濯籠が頭に容赦なく振り下ろされる。

 

「ちょっと! 帰って来た時からなんなの? ぼーっとしちゃって!!」

「説教は後で聞くから! 籠を置いて出てくれッ!!」

 

股間を手で隠しながら叫ぶ。なにこの光景新手のプレイか!

 

「痛ってぇ……」

 

 

「それで、何かあったの?」

 

風呂での一悶着のあと、夕食の席で鏡花が切り出す。

 

「あ、あぁ。ちょっとな……」

「言ってみた方が楽なこともあるんじゃないの?」

 

それもそうかもしれない。俺は、話してみることにした。

だが、言えないこともあるのでたとえ話でだ。

 

「そうだな。例えばの話だが……」

「うんうん」

「たとえば、白雪姫の内容は知ってるか?」

「まぁ、知ってるわよ。何回も読んだし」

 

まぁそれで例えればいいか。

 

「白雪姫ってさ、リンゴ食って姫が寝て、王子がキスして起きるって

ストーリーだろ?」

「適当……まぁ大体そんな感じよね」

「すまんな。童話はあんまり好きじゃ無かったんだよ。まぁ続けるぞ。

例えば、鏡花がさ白雪姫の世界に入ったとするだろ?」

「え、何それ……」

「まぁ聞いてくれよ。そんで白雪姫を助けられる可能性があるとしたら

どうする? 助けるか? それとも助けないか?」

「んー……話が見えないんだけど、要は私が白雪姫の世界に入ったと

して話を変えられるとしたらってこと?」

「まぁ大体そんな感じだ」

 

鏡花は「そうねー」と考え込む。そして、

 

「私だったら、助けるかな。やっぱり誰でも自分で言いように話を

つくりたいじゃない」

「けどさ、姫に意見できる立場になるとも限らないんだぞ?

平民が意見できるのか? 言ったとして、姫はいう事を聞くのか?」

 

俺は捲し立てるように質問をする。

 

「ちょっと、兄さん。落ち着いて」

「あ、……ごめん」

「何がなんだか分からないけど、やってみないと分からないって言うでしょ?」

「なるほど。やってみないと分からないか……」

 

鏡花は「それに」と継ぐ。

 

「物語って作者の作った一つの答え、でしょ?」

 

俺はその言葉にはっとなる。

 

「だったら私達一人一人の答えがあってもいいんじゃない?」

「そうか……そうだよな。ありがとう」

「ううん。さ、食べよう」

 

 

次の日、授業が休みなので一日フリーとなる。俺は午前中にすべての

用事を済ませると2階の自室。そのクローゼットと対峙していた。

みれば見るほどカードの山だ。けど、今のデッキは心もとない。

もし、あの時黒咲と決闘を続けていたら……俺は負けていただろう。

結局、俺はこの話の展開こそ知っているものの、彼らと同等に戦える

力は持ち合わせていないのだから。

 

「なら、もっともっと強いデッキを組むまでよ」

 

早速、カードを探す。こんな時に元の世界にある俺のカードがあれば……

多少なりともマシになるんだが。

 

「ん……このカード」

 

数あるカードの中、1枚のカードが気になった。そのカードは裏面がこすれ

ボロボロになったカードだ。形状から察するに随分前からあるものなのだろう。

けど、それ以上に気になったのは、

 

「これは! なんで、これがここにあるんだ!」

 

そのカードの裏面の右端にマジックで「ゆうすけ」と書いてある。

これは元の世界で俺が小さかった時に書いたもののはず。

なら表は、

 

「やっぱり! 《竜騎士ガイア》のカード!!」

 

母親にねだって買ってもらったパックで初めて当てたレアカード。

当時遊戯が使ってて憧れた俺がこのゲームにハマった思い出の1枚。

それがなんでここに……暫く見なかったからもう無くしたとばかり

思っていた。

 

「どうなってんだ。なんでこのカードがここに……」

 

目が回り、頭が痛くなる。一体何がどうなって……

 

「くッ……痛ってぇ―――――」

 

そのまま俺は床に倒れた。




遅れました。さて、黒咲さんとの決闘。主人公逃げましたけど、
絶対彼とは再戦するのであしからず……。
そして一言。

「何! GWなら休みがあるのではないのか!?」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

practice3、崩落都市ハートランド

「――――すけ、遊介ったら!!」

 

声がする。そういえば部屋でカードを探していて、《竜騎士ガイア》

を見つけたと思ったら頭が痛くなって……起きないと。

 

「うぅ……今、何時だ鏡花」

「鏡花? 誰よそれ。あんたまたおかしくなったの?

早く起きて用意しないと学校に遅れるわよ!!」

 

学校? 今は学校には通ってないじゃないか。

何を言っているんだと、俺はそこで目を開く。

 

「母さん……母さんじゃないかッ! 母さんが何故ここに!」

「はぁ? あんた、何を言ってるの? なんでも何もここが家だからよ」

 

目の前には母さんがいた。どうなっているんだ……

俺はベッドから飛び起きて周りを見渡す。

 

「ここは俺の……部屋、か」

「そうよ! あんた昨日ここで寝てたんだから。全く」

「ここで?」

 

母さんがクローゼットの方を指さす。

 

「どういう事だ」

 

考えても考えても益々分からない。

 

「2ヵ月くらい前も分けわからないこと言ってたわよね?」

「2ヵ月前?」

 

2ヵ月っていうと丁度俺があちらへ行ったあたりか。

 

「そんでそのときどうしたんだ?」

「ケツひっぱたいて学校へ行かせたでしょう? 覚えてないの?」

「鬼だ!?」

 

ウチの母親はこんなにも鬼だったのか……暫く会ってないから驚きだ。

 

「その後も「俺は極東のチャンピオンになる男だぞ」とか「決闘なら……」

とか言ってたわよね? もう、頭おかしくなったと思って心配したんだから。

やっぱり病院へ行った方がいいんじゃない?」

 

きっとスタンダートの俺だろうか……何、あっちの俺中二病も発病してんの?

けどまずいぞ。つまり何らかの原因か、また入れ替わったってことだよな。

 

「兎に角、早く降りて来なさいよ?」

「あ、あぁ……分かったよ」

 

そう言うと母さんは下へ降りて行った。

 

「どうしようこれ……何とかしてあっちへ戻らねぇと」

 

こういう時はそのことが起きる前のことを再現するのがいいんだっけ。

あの時俺は、クローゼットでカードを――――

 

「そうだ! 《竜騎士ガイア》は! ……あったあった」

 

ガイアは俺のベッドの下に落ちていた。間違いない、これは俺のものだ。

あれがどうしてあっちにあったのか分からないけど。

これはきっと、何らかの関係がありそうだ。

 

「兎に角クローゼットを確かめてみるか」

 

俺はクローゼットを開ける。が、そこには衣類が上に掛けられ、下には

雑貨が入っているのみだった。

 

「こうしてみると俺の部屋綺麗じゃん――――ってそんな事言ってる場合じゃない」

 

クローゼットは何もない。ならやはり……

 

「“鍵”はこのカード、か」

 

《竜騎士ガイア》があっちにあったとすれば、このカードが次元転送装置の

役割があるに違いない。SFチックな話だが。

 

「ハハ……我ながらイタいな」

 

如何にも中二病的思考に我ながら笑えてくる。

けど、あちらでまだやり残していることがある以上戻らねばならない。

 

「あ、そうだ……」

 

こっちからカードを持って行ければいいんじゃないか?

そうすれば俺のデッキがあっちで使えるはずだ。俺は机の中のデッキを

見る。好んで使っている【スクラップ】を含め数個のデッキ。それから

強化用カード、エクストラデッキがそこにあった。

俺はそのほかに必用となるかもしれない物をまとめて近くにあったバッグに

ねじ込む。

 

「よっし。こんだけもってけば……いけるッ! 

さぁ! 《竜騎士ガイア》よ!! 頼むぜ! 俺をスタンダード次元へッ!」

 

「――――え、あんた何をやってるの……」

 

《竜騎士ガイア》を天上に掲げ固まる俺。

何も起こらず、母さんの引いた視線だけが突き刺さった。

 

 

 

「おかしい。なんで何も起こらないんだよ……アニメだったらピカーっと

いけるはずだろ。もしかして、なにか条件みたいなのがあるのか」

 

母さんに蔑むように送り出され学校へ。しかし、学校も久々だな。

少し前は嫌々通っていた通学路も今となっては懐かしいほどだ。

 

「よ、遊介」

「お、おぉ。里中」

 

里中はクラスメイトだ。趣味も合い、付き合いも長い友人の一人だ。

 

「ん……お前。また雰囲気変わった? いや、戻ったの方が正しいか」

「え?」

「この間話しかけたらさ。「俺様に話しかけるな」って言ったじゃんか?

いやぁ、俺ビビっちゃったぞ」

「……すまん」

 

なるほど。こういう弊害が出てくるのか。

その後、久々の学校では色々誤解を解くのが大変だった。

 

 

 

放課後。男子用トイレで一人思案する。

 

「さて、こうしちゃいられない。そろそろバイトの時間だ……

このままではバックれになっちまう」

 

結局1日学校で過ごしてしまった。何度か試したものの戻ることはできない。

 

「何かエネルギー的な物が必要、とか? 

と、言っても俺には童貞力くらいしか……あーもうそれでいいか」

 

はぁっと体に力を入れる。もう自分で何が何だか分からないけど、兎に角

スタンダートに戻ろうという気持ちだけが原動力足り得た。

あちらには俺の役割がある。戻れ……戻れ、俺ぇ!

 

「《竜騎士ガイア》ッ!! 頼むッ!」

 

だが何も起こらない。クソ、何が足りないんだ……ッ!

 

「頼むよ……俺はあっちでやりたいことがあるんだッ! アイツ等に決闘を

決闘の楽しさを教えてやれて無いんだ! まだ、まだ何も始まっちゃいない。

だから――――俺を飛ばせぇええええええええええ!!」

 

男子トイレに俺の叫びが木霊する。すると、あの時感じた頭痛が襲う。

 

「きた……これで、帰れ、る」

 

俺はそのまま床に崩れた。

 

 

 

「う……うぅ――――痛てぇ」

 

頭は依然として痛むが、身体を起こす。

 

「成功か……」

 

が、周りの景観は俺の知っている場所では無かった。

 

「な、なんだよ……ここッ!」

 

周りには見慣れたスタンダート次元の風景では無く、荒廃した都市が広がって

いた。そこはまるで戦場。崩れたビル、煤けたアスファルト。それらがここで

起きたなにか悲惨な戦いを連想させた。

 

「まさ、か……失敗したってのか。ならもう一度だ! 何度でも――――」

 

俺は再び《竜騎士ガイア》を握る。

 

「――――おい! 見ろ、エクシーズの生き残りだ!」

「何?」

 

そこへ、2人の兵士風の青い服を来た男たちが現れる。

その風貌はまるで中世の兵士のようだ。

 

「エクシーズだって!?」

「本当だ、残念だがお前も仲間と同じ様にカードになってもらうぜ」

 

そうか、道理で見たことあるような気がした。ここはエクシーズ次元という

ことか。俺はスタンダードへ戻るつもりが、ここへ……

ということは、アイツ等は――――

 

「お前等、もしかして“アカデミア”……融合かッ!」

「そうさ。悪いが、お前はここで狩らせてもらうぜぇ。ハハ、最後に

いい土産話が出来そうだ」

 

エクシーズと融合の間で起きた次元間戦争。その真っ只中に来ちまったのか……

 

「……ついてねぇ」

「ああ、そうだな。お前はついてない。なんたってこれから――――」

「うるせぇ! 狩らせてもらうだぁ? てめぇはゲームでもしてんのか?

そうやって無抵抗の人たちを下衆く笑いしながら降したのか! 答えろ!」

 

そう言うとアカデミアの兵士たちは「あたりまえだよなぁ」と笑う。

 

「当たり前だとッ……クソ、やってやるよ。決闘しろ、俺とッ!!」

 

俺は元の世界から持ってきたデッキをデュエル・ディスクにセットする。

 

「「デュエルッ!!」」

 

アカデミア兵:4000LP

末城 遊介:4000LP

 

こいつらがエクシーズを侵略したから全ていけないんだッ!

こんな奴ら……許しておけるか。ぶっ倒してやるッ!

 

「俺のターンだッ! 俺は魔法カード《おろかな埋葬》を発動!

デッキから《スクラップ・ビースト》を墓地へ送るッ!

《スクラップ・キマイラ》を召喚ッ!! 効果で墓地からビーストを

特殊召喚ッ! 俺は、レベル4のキマイラにレベル4のビーストをチューニングッ!」

「何! シンクロ召喚だとッ!?」

「ここの奴らはエクシーズを使うのではないのかッ!?」

「鉄翼を広げ、今ここに降臨しろぉおおお!! シンクロ召喚ッ!

レベル8ッ! 《スクラップ・ドラゴン》ッ!!!!」

 

荒廃した街の空に《スクラップ・ドラゴン》が現れる。

不謹慎だが、その姿は今のこの風景によく似合った。

 

「こいつ、まさかエクシーズの残党じゃないのかッ!?」

「そんなもんは関係ない! お前は俺がぶっ倒すッ! 

俺はこれでターンエンドだ! さぁ、早くしろ!」

 

こいつ等を負かしてこの煤けた地面に這い蹲らせてやるッ!

 

「俺のターンだ! 俺は、《古代の機械猟犬(アンティーク・ギア・ハウンドドッグ)》を召喚!」

 

《古代の機械猟犬》

攻1000/守1000 ☆3

①このカードが攻撃する場合のダメージステップ終了時まで、相手は魔法・罠カードを発動できない。

②1ターンに1度、相手フィールドにモンスターが存在する場合に発動できる。

相手に600ダメージを与える。

③自分フィールドにこのカード以外の「古代の機械」モンスターが存在する場合に発動できる。自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、

その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「効果発動! 相手に600ダメージを与える!」

「くッ……この程度ッ」

 

末城 遊介:3400LP

 

「更に永続魔法《古代の破滅機械(アンティーク・ハルマゲドンギア)》を発動」

 

《古代の破滅機械》魔

①フィールドのモンスターが破壊された場合にこの効果を発動する。

破壊されたモンスターの攻撃力分のダメージをそのモンスターのコントローラーに

与える。

②このカードの発動後、次の自分のスタンバイフェイズにこのカードを破壊する。

 

「俺は、カードを一枚伏せターンエンド」

 

古代の破滅機械? アレの効果は……く、思い出せない。

 

「関係ねぇ! 俺のターン、ドロー!  

カードを一枚伏せ、《スクラップ・ドラゴン》の効果発動! 俺とお前の場の

カードを一枚づつ破壊する! 俺は、この伏せとお前の《古代の機械猟犬》を

破壊するッ! 砕けろッ――――Scrap destroyッ!!」

 

スクラップ・ドラゴンが上空からブレスを放つ。

 

「甘いんだよ! カウンター罠発動! 《古代の機械盾(アンティーク・ギア・シールド)》」

「カウンター罠、だとッ!?」

 

《古代の機械盾》罠 ☆オリジナル

自分のフィールド上の「古代の機械」と名の付いたモンスターが

相手のフィールドの効果の対象になった場合に発動できる。

その効果を無効にし破壊する。

 

「その効果を無効にし、《スクラップ・ドラゴン》を破壊する!」

「なんだとッ!?」

 

スクラップ・ドラゴンの効果を機械仕掛けの盾が防ぎ跳ね返す。

 

「さらに、古代の破滅機械の効果でお前はスクラップ・ドラゴンの攻撃力

2800分のダメージを受けろ!」

「ぐぁああああッ!!!」

 

破滅機械から放たれた砲撃を喰らい後方へ吹っ飛ぶ。

 

「いってぇ……」

 

これはソリッド・ヴィジョンの域を超えてやがる……

けどお陰で頭の血が下りた。

 

末城 遊介:600LP

 

「ハハッハハハ!!」

「……スクラップ・ドラゴンが相手の効果で破壊された時、墓地から

《スクラップ・キマイラ》を特殊召喚する!」

 

少し熱くなり過ぎたか。伏せカードの警戒すらしてなかった。

 

「ふぅ……」

「どうしたぁ。大人しくやられる覚悟ができたか?」

「いや、ちょっと熱くなり過ぎたってな。前に生徒が言ってた言葉を

思い出してなぁ。決闘は熱くなった方が負けるんだって、さ」

「なんだそれは、ハハ」

 

オベリスクの2人が笑いあう。まぁ笑ってればいいさ。

 

「落ち着いたところで――――反撃と行かせてもらうぞ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

practice4、選手権に向け

俺が遊戯王に触れ始めたのは、曖昧だが幼稚園くらいの時だった。

まだルールなんて分からず、ただただTVで見るかっこいいモンスター

達に、それを使いこなす登場人物達に憧れた。

そして年月は過ぎ、中学生辺りからだろうか。ルールを覚え、デッキを組み

友人達とデュエルするようになった。実力は中だったけど、デュエルもカード

も好きだった。高校生になった今もそれは変わらない。

そして、今俺は――――その世界にいた。

 

「反撃と行かせてもらうぞ」

「ハハ、たったLP600。攻撃力1700のモンスターで何ができる」

 

アカデミア兵:4000LP

 

確かに相手のLPは未だ4000。だが、この手札なら――――

こいつ等は遊戯王を、DMを戦争の道具として使う敵。

別に世界の敵を倒すとは言わないが……一介の決闘者として倒させてもらう。

 

「俺は、《スクラップ・キマイラ》をリリース! 《スクラップ・ソルジャー》

をアドバンス召喚ッ!」

 

《スクラップ・ソルジャー》☆5

攻2100/守700

フィールド上に表側守備表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された場合、

バトルフェイズ終了時にこのカードを破壊する。

このカードが「スクラップ」と名のついたカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、「スクラップ・ソルジャー」以外の自分の墓地に存在する「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える事ができる。

このカードをシンクロ素材とする場合、「スクラップ」と名のついたモンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。

 

「へ、上級モンスターを出したか」

「それだけじゃねぇ! 魔法カード《死者蘇生》を発動! 墓地のキマイラを

再び蘇生する! 行くぞ! レベル4のキマイラに、レベル5のソルジャーを

チューニングッ!」

「またシンクロだと!?」

「重なる鉄、今二頭の機械竜を呼び覚ますッ!

シンクロ召喚ッ!! レベル9ッ! 《スクラップ・ツイン・ドラゴン》ッ」

 

二頭がアカデミア兵に向けられる。

 

「攻撃力、3000だとッ!?」

「更に俺は魔法カード《ミラクルシンクロフュージョン》を発動ッ!

墓地のシンクロモンスター、《スクラップ・ドラゴン》と戦士族モンスター

《スクラップ・ソルジャー》を除外して融合する!」

 

「「融合だとッ!!」」

 

2人の声が重なる。

 

「烈槍携えし竜騎士、その力振りかざし絶望を突き破れッ!!

――――シンクロフュージョンッ! 《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》ッ!」

 

「シンクロフュージョン……ッ シンクロモンスターを用いた融合だとッ!?」

 

兵士が驚愕する。

 

「さぁバトルだッ! ドラゴエクィテスで《古代の機械猟犬》を攻撃ッ!

――――スパイラル・ジャベリンッ!!!」

 

エクィテスの槍が古代の機械猟犬を貫き粉砕する。

 

「うぁああああッ!!」

「この時、《古代の破滅機械》の効果も発動する! 古代の機械猟犬の

攻撃力分のダメージも受けてもらうぞ!」

 

相手の場に発動している破滅機械の砲台が標的を変え、発射される。

 

「ぐぁあああああああああああああッ!!!」

 

アカデミア兵士:800LP

 

「これで終わりだッ! 《スクラップ・ツイン・ドラゴン》ッ!!」

 

ギギギ…と音を立て、ツインドラゴンの二頭が敵を捕捉する。

 

「や、やめ――――」

「噛み砕けッ! ――――Scrap Viseッ!!」

 

ツインドラゴンの顎が敵を噛み、飛ばす。アカデミアの兵士は

後方へ吹っ飛び、やがて気絶した。

これで決闘が終わる。俺はもう一人の方を睨む。

そいつは「ひッ」と声を上げる。

 

「さぁ、次はお前だ。――――俺と決闘しろ」

「ま、ま待て――――」

 

そいつは後ずさると尻餅をつく。本気でビビッてやがる……。

そういう風に怯えるここの人々をお前等は何人倒してきた?

そう言おうと思ったが、やめた。これ以上はやめておこう。

それにそれは俺なんかが言っていい台詞じゃない。

 

「ふぅ……そいつを連れてどっかいけ。俺はお前等みたいに決闘を戦争の

道具にはしたくない。仲間を連れてさっさと消えてくれ……」

 

俺がそう言うと、アカデミアの兵士は俺が倒した方を担ぐと消えて行った。

俺はその情けない後姿を消えるまで見ていた。そしてまた一人になる。

辺りには当然人など残っていない。

 

「さて、どうすっか……」

 

とりあえずもう一度試してみるかと、ガイアを取り出してみる。

するとカードが光っていた。できればこれまでのことが全て夢ならば。

そう思いながら今まで同様、頭痛に誘われるように目を閉じた。

 

 

 

「―――――ってぇ……」

 

頭痛を振り払うように首を振る。しっかし。なんでこうも毎回頭痛がするんだ。

バファリンでも飲んでおけばいいんだろうか? いや、それ以上にこんな不思議

体験はこれきりで勘弁願いたいものだ。

やっと慣れた頭で景色を見る。そこは、散歩で何度か訪れたことのある

川の土手だった。どうやら今回は成功のようだ。

 

「今、何時だ? ……あれッ」

 

着ていた制服のポケットからPADを出そうとして気が付く。

ガイアが無くなっている。おかしいな……ここに仕舞っておいたはず。

Yシャツ、上着とすべてのポケットを確認するがガイアは見当たらなかった。

 

「もしかして、落とした……」

 

始めて当てたレアカードだけに思い出もあったんだけどなぁ。

後ろ髪を引かれるが、時間が無いので急ぐことにする。幸い、ここから

本気走れば何とか着替えても間に合う。もしかしたら忘れたころに出てくる

かもしれないしな。俺は近くに転がっていたバッグを肩に引っかけると

家路を急いだ。

こういう時に不便だし、金を貯めて原付の免許でも取ろうかな……

しかし、今日の出来事は不思議な体験だった。が、それ以上にエクシーズ

次元の惨状は凄かった。アカデミアの目的は一体……? 今後の次元間戦争

はどのようになるのか?

色々謎が増えるが、今は足を動かすことに神経を集中させる。

 

 

 

もうダッシュで家に帰り、着ていた高校の制服を脱ぎ捨てスーツへ。

鏡花はまだ帰ってはいないようだ。仕事用の鞄に持ち替え《LDS》へと

急いだ。これでも今日は次元を移動するという何とも奇妙な体験をした上に

融合次元の決闘者との決闘もしているわけで……まるでトライアスロン。

だが、職務放棄だけはしたくないので足を動かす。

 

 

「揃ってるか! 授業を始めるぞ……」

「せ、先生……どうかしたのですか?」

 

シャツも髪も乱れ、さらに顔は汗だく。そんな俺を見て昌子が問う。

確かに酷い容姿だった。

 

「ちょっと、な」

 

未だ整わない息を整えつつ、テキストを開く。

 

「今日は16ページから進めていくぞ」

 

どうにかその日の授業をやりきった俺は、ふらふらの足取りで帰宅し

そのままベッドに倒れこんだのだった。

 

 

それから一週間が過ぎた。塾内には今だ襲撃事件という問題が残る。

上層部は今も調査に躍起になっている。その中、いよいよ選手権の準備が始まった。

この大会は、ジュニアユースの生徒は、ユースクラスへの昇格への一歩となる。

それは必然的にその先のプロへの一歩と同義となる。当然、俺のクラスも

その対策授業へとシフトしていた。

 

「選手権への出場資格は皆持ってる。けど、それはまだ遊園地で言えば

入場券を買ったに過ぎない。なら、どうすれば遊園地を楽しめる!

そう! アトラクションで遊ぶ!」

「いえ、あの意味が分からないのですが……」

「すまない。話が明後日の方向へ飛んだ」

 

俺は咳払いを1つして流れを変える。

 

「明後日ってレベルじゃないぜ……」

「さて、話を戻すが。もうすぐジュニアユース選手権が始まる。ジュニアクラスの

人はジュニア選手権か。で、今日からそれに勝つ方法を君らに教えていく」

 

生徒の目つきが変わった。流石は《LDS》の生徒と言うべきか、こういった

内容には真摯だ。

 

「では数々の相手を相手にどうすれば勝てるか? それはだな――――」

 

俺はホワイトボードに大きく書く。しかし、このホワイトボード俺が殴り書き

したりバンバン叩くから凹んできたかも……すまない白板さん。

 

「「自分にはこれだ」と言える戦略を見つけることだ」

 

皆は「意味不明」といった顔をする。あれ、何か間違ったかな。

 

「まぁ、平たく言えばだな……切り札っていうのか。そういうアレだ」

「先生。それはつまり、必勝パターンのようなものでしょうか?」

「そう! それだ! 流石、昌子だ!

んじゃ、このプリント配るから自分で考える必勝パターンを書くんだ。

野球でもなんでイメージすることは勝利への第一歩だ。どのカードで

自分はどう戦うか。そのイメージをこの紙に書いてみるんだ」

 

俺は前からプリントを配布する。どんな苦しい状況でも自分を助けてくれる

一枚とかって結構メンタル的にも助かったりするんだよな。

生徒は各自悩みながら、カードを見ながら色々考えている。

 

「出来た人いるか~?」

「先生! 俺は書けたぜッ!」

 

小学生の修也が手を上げる。

 

「おお、じゃあ前に来て、皆に紹介してみてくれ」

 

修也は前に出ると、プリントを掲げる。

 

「いいぜ。見ろッ! これが俺の必勝パターンだ!」

 

だが、それを前に皆困惑する他なかった。え、なにこれ?

 

「………なんですか、これは?」

「ふ、こいつを見ても分からないとは……昌子ねんちゃんも甘いな」

「いえ、勝ち誇られても……」

 

それはどう見ても何かが爆発している絵にしか見えない。これでは

ただの爆発事故か何かのイラストだ。

 

「修也、とりあえず説明してくれるか?」

「しょうがないなぁ。先生も分からないんじゃな~。

まぁ簡単に言えば、これはモンスターを破壊しているイラストだ。

要は相手のモンスターを破壊すりゃいいんだ」

 

全て壊すんだ!の原理であった。そんだそりゃわかるか!

 

「まぁ、よく分からないけど言わんとしていることはなんとなく伝わった……よ。

要は、相手のモンスターを破壊する戦術ってことでOK?」

「そうさ!」

「あぁ、そう……とりあえず席に戻りなさい」

 

この調子で授業を進め、終盤のまとめに入る。

 

「いいか。大会ともなれば、皆いつも以上に一枚、二枚上手の

決闘者と決闘をすることもあるだろう。決して楽な決闘ばかりでもない。

けど、忘れるな。相手は人間だ。君たちと同じくらいの歳の人間が相手だ。

つまり、何が言いたいかって言うとだな……決して勝てないわけじゃないんだ。

自分のデッキと、戦略。んで、今までやって来たことを信じるんだ。以上!」

 

そうして俺と生徒達の選手権に向けての挑戦が始まる。




レポートという名の螺旋にハマってました。つらたん。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

practice5、パワーボンド、新たなる切り札

その日、俺は街のカードショップを訪れてみた。休みで手持ち無沙汰

というのも時間が勿体ない。といえど、誘える友人がいる訳でもない。

ので、ここくらいしか行くあてが無いのだ。ボッチで悪いね……

 

「へぇ……こうしてみるとここもなかなか品揃えがいいな」

 

ストレージ(ノーマルカードが無造作に入っているケース)を物色する。

すると中には使えそうなものもある。が、やはりここはスタンダード次元。

エクストラデッキに入るカードはここにはない。あるとすれば……

ショウケースの中だ。俺はそちらに目を向ける。そこには俺の居た世界より

遥かに高額な値が付けられたカード達が輝き、存在をアピっていた。

この次元で融合やシンクロ、エクシーズが普及したのはつい最近らしいから

希少価値があるのだろうか?

これ、俺の給料じゃ1,2枚買ったら吹っ飛んじゃうよ……。

 

「あれ、先生……ですか?」

 

知り合いのあまりいないこの街で背後から声を掛けられるとは思わない。

俺が振り返ると、そこには昌子がいた。

 

「あれ、どうしたの? って、そうか今日は土曜日か。買い物?」

「はい。少しデッキの調整に詰まりまして……私服の先生は初めてですね」

 

俺は今日はジーパンにポロシャツという如何にもラフな服装だった。

いつもがスーツオンリーなだけに目新しいのかもしれない。

 

「ハハ……安物だけどね」

 

実際、元の世界のユニ〇ロのようなところで買ったものなので安い。

しかしこういう場面は男は女性の服を褒めるべき……だよな? 

 

「そういう君も……なんだ……似合ってる、な?」

 

ダメだスマートに台詞がでてこねぇ……めっちゃキモイ感じになってしまった。

 

「そそ、そうですか? そう言われるのは、初めてでよく分からないです」

 

そう言いつつ、俯かれてしまう俺。

 

「そうか。俺も女性の扱いがどうも……不快な事を言ったなら謝るよ」

「いえ! そういう訳じゃないんです。そう言えば、先生はここにはどういった

御用で? 買い物ですか?」

 

気を遣わせてしまったようで、話の流れが変わる。

 

「俺は、ただのウインドウショッピングだよ。家に居ても暇だしね」

「そうでしたか。なら……もしよろしければでいいんですが少しお時間

頂いても宜しいですか?」

 

デッキ強化に詰まったって言ってたしそれ関係だろうか。

 

「あぁ。いいよ俺でよければ」

「ありがとうございます! では、こちらです!」

 

そう言うと彼女は店を出ようとする。あれ? カード見るんじゃ……

 

「へ、カードは?」

「大丈夫です。さ、こちらです」

 

俺は言われるまま街道を進んでいく。

 

 

 

「ここ、は……?」

「はい。ここは父の友人の方が経営されているカードショップです。

さ、先生こちらです」

 

そこは、俺がさっきまでいたごくありふれたカードショップでは無かった。

何故なら佇まいが……これ、洋館だよね? オシャレというか英国チック。

そんな風貌の建物だ。てか、四階くらいあるけど全部カードショップなの?

 

「これ、舞踏会でもやってるのか……?」

「ふふ……先生、何を仰ってるんですか。さ、こちらです」

 

俺はその中へ足を踏み入れる。そこは――――

 

「ここが、カード……ショップ?」

「はい。そうです」

 

そこは俺の知っているような、デュエルスペースがあり、ショウケースが

あって、ストレージコーナーがあるものとは対極に位置していた。

店内(これを店内と言っていいのか既に変わらないが)には、ガラス張りの

まるで宝石ケースのようなものがいくつか置いてある程度だった。

デュエルスペースも無ければストレージもない。のに、広い。

 

「はッ! こ、これは栄家のお嬢様ではありませんか!

すみません! ご案内もせず……申し訳ございませんでした!」

 

そこに老紳士風の男が慌てたように走って来た。てか、今お嬢様って言った?

 

「黒瀬さん。ごきげんよう。父がよろしくと仰っていました」

「い、いえ! 勿体ないお言葉! 私こそいつも御贔屓に――――」

 

え、これ俺の知ってる世界じゃないんじゃ……

完全に取り残されてる。俺を置き去り2人は世間話に花を咲かせる。

その間にも「パーティー」がどうのとか、「総会」がどうの聞こえる。

やっぱり昌子ってお嬢様なのか……

 

「――――ところで、こちらの男性は?」

「そう言えば紹介がまだでしたわ。先生?」

「はい?」

「黒瀬さん。こちらは《LDS》での私のクラス担当の先生です」

「え、あ……末城遊介いいます! お、おみしりしおきいッ……」

 

場の空気が凍る。俺にはその一瞬が永遠にも感じられた。

 

「先生……」

「はっはは……随分愉快な方のようだ。どうも末城様。私は、当店の

オーナーを務めています、黒瀬と申します。お見知りおきを」

「……お見苦しいところを見せてしまい申し訳ないです」

「いやしかし講師という割に随分と若いようですね。失礼でなければ

お歳の方を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

俺は、一瞬昌子の方を見てから答える。

 

「あー、すみません。生徒の前で個人情報は――――」

「これは! すみません、配慮が足りずに」

「いや、完全にこちらの事情ですから。

実は休日一緒ってこの状況もだいぶグレーなんです。すみません」

「そこは大丈夫ですよ。ね? ……黒瀬さん?」

「はッ! このことは不肖黒瀬に変えて御内密にさせて頂きます!」

 

一瞬圧のようなものを感じたが……

はーなるほど。これが“権力ってやつか……”

 

 

その後は黒瀬さんの案内で店内を見て回ることにする。

 

「は……《ミラクルシンクロフュージョン》が――――12万ッ!?」

「はい。こちらはとても優秀な上、希少価値も高くなっております。

もっともシンクロモンスターがあまり普及していないので、こちらも

そう出回っておらず、必然的に希少となっております」

 

嘘だろ……俺は夢を見ているのか……今デッキケースに入ってるこれ

売ったら8万くらいにはなるよね? てかそれをさも当然のように

クローゼットに無造作に入れてるこの世界の俺の金銭感覚が危ぶまれる。

 

「先生はこのカードを使ってますよ。ね、先生? 先生? 

指折り何をやっているんですか?」

「はッ! すまない。ちょっと勘定を……」

 

もしかして、これ全部売れば家が建つってあの発言は……嘘じゃない?

他のカードも割と高価なのがありそうだったし、俺も元の世界からカード

持って来てるし。

 

「次にこちらですが……」

「なるほど、これは素晴らしですわ!」

 

次に黒瀬さんが見せてくれたカードは、《パワーボンド》のカード。

お値段、8万円。先ほどの衝撃か安く見えてしまう。おかしい……

俺の知ってるパワボンは再録もされて今やストレージの住人の筈だ。

 

「こちらは機械族専用の融合カードとなっておりまして――――」

 

黒瀬さんのカード紹介が入る。昌子はそれをふんふん聞いていた。

サイバーデッキ使いとしては惹かれるカードの一つだしな。

 

「このように、非常に強力なカードとなっております」

「が、このカードにはリスクがある。使ったターンのエンドフェイズに

召喚した融合モンスターの元々の攻撃力分のダメージを負う。確かに出した

モンスターの攻撃力は2倍になる。が、同時にそのターンである程度の決着を

付けなければ逆にこっちが不利になる。諸刃の剣ってやつだ」

「流石は、《LDS》の講師というわけですな」

「いや、まだまだですよ俺なんて」

 

黒瀬さんの世辞に否定を入れておく。ただの雇われバイトだしな。

 

「決めました!」

「何を?」

 

その間に何かを悩んでいた彼女は声を上げる。若干嫌な予感が……

 

「黒瀬さん。こちら、頂きますわ」

「うぇッ!?」

「かしこまりました。ただいまご用意いたします」

 

ちょちょちょっとまて、御嬢さん!?

 

「待て! は、8万だぞ!? 8万!? 大丈夫か? 800円じゃないぞ!」

「え、えぇ……先生、顔が―――近いです」

「だって、え? 8、え!? 8万とか、俺の給料より上だぜ……?」

「……今の一言は聞かなかったことにしますね」

 

金持ちは怖いなぁ。

 

 

「こちらになります」

 

やがて鍵を持って来て、商品を出した黒瀬さんがやって来る。

 

「ありがとうございます。これで私のデッキも強くなりますね、先生!」

「確かにそうだ。が、そうとも言えない」

 

先ほどのショックから立ち直った俺はその解説を始める。

 

「まずだ。コイツはさっきも言ったがリスクがある。使用するタイミングの

見極めが重要だ。そしてリスクヘッジも考えないとならない。ただ闇雲に

使って強いカードじゃないんだ。場合によっては相手に塩を送ることになる」

 

特にサイバーエンドを出して除去されたら一瞬でゲーム終了だ。

こいつを使った時点でダメージを受けることは決定しているからな。

 

「が、逆に言えば逆境を覆す正に切り札とも言える1枚だ」

「なるほど。――――では先生、早速やりましょうか」

「決闘か?」

「えぇ。そうです。切り札も手に入ったことですし。黒瀬さん」

「はッ! ただちに手配します。少々お待ちください」

 

 

俺が次に連れて来られたのは、店の地下だった。そこにはまるでBARのような

大人の雰囲気が漂っていた。実際カウンターなんかもある。ミルクでももらおうかな。

きっと夜ここで客たちが飲みながらデュエルしてるのだろうか?

如何にも高そうなデュエル台にデッキを置く。

 

「ルールはどうしましょうか?」

「そうだな。LPは4000点でいいだろう。先後攻はコイントスで決めよう」

「分かりました。黒瀬さん。ジャッジをお願いしてもいいでしょうか?」

「勿論でございます! お嬢様と、《LDS》の講師殿との決闘。間近で見れるとは

この黒瀬、感激でございます。喜んで務めさせて頂きましょう」

 

黒瀬さんは快諾。俺たちは互いにデッキをシャッフルし準備は完了だ。

 

「では、コイントスを――――裏の場合は末城様。表ならお嬢様の先攻となります。

それでは、ご注目」

 

コインが宙を回転し、卓に落ちる。そのコインは表だ。

 

「私が先攻、ですね」

「そうだな。じゃあ始めようか」

「えぇ。手加減なんていりませんからね?」

「そんな器用な事いつ俺がしたんだ? それに今日はオフだぞ? 

……本気で行かせてもらうさ」

 

「「デュエル!!」」

 

「私の先攻。私は、《カードカー・D》を召喚します」

 

《カードカー・D》

攻800/守400 ☆2

このカードは特殊召喚できない。

このカードが召喚に成功した自分のメインフェイズ1にこのカードをリリースして

発動できる。

デッキからカードを2枚ドローし、このターンのエンドフェイズになる。

この効果を発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。

 

なるほど、ドローソースを入れていたか。

 

「私はさらにカードを1枚伏せます。そして、カードカーの効果でこのカード

をリリースし、2枚ドローします。これでエンドですわ」

「なるほど。攻撃できない先攻を生かしたいい手だな。んじゃ、俺のターンだ。

ドローして、メインに入る。俺はこいつを特殊召喚だ、《太陽風帆船》」

 

《太陽風帆船》

攻800/守2400 ☆5

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚

できる。

この方法で特殊召喚したこのカードの元々の攻撃力・守備力は半分になる。

また、自分のスタンバイフェイズ毎にこのカードのレベルを1つ上げる。

「太陽風帆船」はフィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

 

「上級モンスターなのに、リリース無しですか?」

「こいつは自分の場にモンスターがいないと特殊召喚できるのさ。ただし、

ステータスは半分になるけどな。が、それは些細な問題だ。俺は、チューナー

モンスター《カラクリ小町 弐弐四》を召喚。さらにコイツの効果で俺はもう一体

カラクリモンスターを出せる。《カラクリ忍者 九壱九》を召喚する」

 

《カラクリ小町 弐弐四》

攻0/守1900 ☆3

このカードは攻撃可能な場合には攻撃しなければならない。

フィールド上に表側表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時、

このカードの表示形式を変更する。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分のメインフェイズ時に

1度だけ、自分は通常召喚に加えて「カラクリ」と名のついたモンスター1体を召喚

する事ができる。

 

《カラクリ忍者 九壱九》

攻1700/守1500 ☆4

このカードは攻撃可能な場合には攻撃しなければならない。

フィールド上に表側表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時、

このカードの表示形式を変更する。

このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、自分の墓地に

存在するレベル4以下の「カラクリ」と名のついたモンスター1体を選択して表側

守備表示で特殊召喚する。

 

「凄い、一気にモンスターが3体並びましたぞ……」

「俺はレベル5の《太陽風帆船》にレベル3の小町をチューニング。

シンクロ召喚ッ! 絡繰り仕掛けの大将軍、レベル8ッ! 

――――《カラクリ大将軍 無零怒》ッ!」

 

《カラクリ大将軍 無零怒》

攻2800/守1700 ☆8 シンクロ

チューナー+チューナー以外の機械族モンスター1体以上

このカードがシンクロ召喚に成功した時、自分のデッキから「カラクリ」と名の

ついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。

1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する「カラクリ」と名のついた

モンスターの表示形式が変更された時、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

「いつものデッキとは違うのですか?」

「まぁ、ね。今日のデッキは【カラクリ】さ。んで、無零怒の効果でデッキから

《カラクリ参謀 弐四八》を特殊召喚する。弐四八を効果で自身を守備表示に変更」

 

《カラクリ参謀 弐四八》

攻500/守1600 ☆3

このカードは攻撃可能な場合には攻撃しなければならない。

フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時、このカードの表示形式を守備表示にする。

このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、フィールド上に存在するモンスター1体

の表示形式を変更する。

 

「この時、武零怒の効果で一枚ドロー」

「なるほど、戦線補強に加え手札補充……すばらしいコンボですな」

「そして、今出したモンスターはチューナーですわ」

「あぁ、今度はレベル4の九壱九にレベル3の弐四八をチューニングッ!

絡繰り仕掛けの鎧武者、レベル7《カラクリ将軍 武零》ッ!」

「シンクロモンスターが2体……!」

「さて、少しばかり俺も楽しませてもらおうかなっと」

 

俺は大人げなく笑んだ。若干、黒瀬さんが引いていたのは気にしない。




今回はカラクリデッキを使用。カラクリデッキもスクラップ同様好きなテーマと
なっております。要は、シンクロが好きです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

practice6、休日

休日、街で出会った先生とひょんなことから決闘することになりました。

 

「さぁて、俺も少しばっかし楽しませてもらうぜ」

「今日は負けませんわ」

 

末城遊介:4000LP 

栄 昌子:4000LP

 

先生の場には無零、無零怒といった2体のシンクロモンスターが並ぶ。

 

「さらに無零も無零怒と同じ効果を持ってる。シンクロ召喚したとき、

カラクリと名の付くモンスターをデッキから呼べる! 俺は、

《カラクリ兵 弐参六》をデッキから特殊召喚だ」

 

《カラクリ将軍 無零》

攻2600/守1900 ☆7 シンクロ

チューナー+チューナー以外の機械族モンスター1体以上

このカードがシンクロ召喚に成功した時、自分のデッキから「カラクリ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。

1ターンに1度、フィールド上に存在するモンスター1体を選択し、表示形式を変更する事ができる。

 

《カラクリ兵 弐参六》

攻1400/守200 ☆4

このカードは攻撃可能な場合には攻撃しなければならない。

フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時、このカードの表示形式を守備表示にする。

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキからレベル4以下の「カラクリ」と名のついたモンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。

 

「さらにモンスターが! このまま攻撃が全て通ったら――――

合計、6800ものダメージを受けてしまいますぞ!!」

 

黒瀬さんが隣で言う。そのくらい分かってますわ。そして、先生が

このくらいモンスターを並べてくるということも含めて、

 

「分かっています! 罠発動! 《威嚇する咆哮》!」

 

《威嚇する咆哮》罠

このターン相手は攻撃宣言をする事ができない。

 

「咆哮か。それなら俺はこれでターンエンドだ」

 

このターン、先生はバトルを行えないのでエンドを宣言。

 

「そう簡単にはやられませんわ、今日こそ」

「あぁ。そう来ないとな1KILLじゃつまらない」

「なら今度はこちらが攻める番、ですね。私のターン。ドロー」

 

前のターンにカードカーで手札を増やしていたことが功を奏し、

私の手札は揃っています。

 

「私は魔法カード《おろかな埋葬》を発動します! デッキから《サイバー・

ドラゴン》を墓地へ送ります。さらに《サイバー・ドラゴン・コア》を召喚し

効果でデッキから《サイバー・リペア・プラント》と手札に加えます」

「防ぎようがないんだよなーいいぞ」

 

先生にはある程度の展開が読めているのか、若干表情が曇る。

けどまだパーツが足りません。あのカードを引けれなければ……

 

「私は《一時休戦》を発動します。効果で互いに1枚引きます」

「了解だ」

 

《一時休戦》魔

お互いに自分のデッキからカードを1枚ドローする。

次の相手ターン終了時まで、お互いが受ける全てのダメージは0になる。

 

「私はこれでターンエンドです」

「どうした。攻めるんじゃ無かったのか? 休戦にしちまっていいのか?」

「いいんですよ。今は」

 

次のターンにこの盤面は動きますから。

 

「なら俺のターンだなぁ。しっかし、ダメージ与えられないんじゃ動きようが

ない、か。よし。俺は手札から《借カラクリ蔵》を発動する。デッキから

《カラクリ守衛 参壱参》を手札に加える。さらに効果で弐参六を守備表示に

する。この時、無零怒の効果でカードを1枚ドローだ」

 

《借カラクリ蔵》魔

自分フィールド上に表側表示で存在する「カラクリ」と名のついたモンスター1体を

選択して発動する。

自分のデッキからレベル4以下の「カラクリ」と名のついたモンスター1体を手札に加え、選択したモンスターの表示形式を変更する。

 

「ダメージ無しだし、コアは立たせてた方がいいか……よし。俺はエンドだ」

 

決闘は停滞状態が続きます。が、それもこのターンで終わりです。

 

「私のターン! 先生。申し訳ありませんが、この決闘。私の勝ちですわ!」

「マジか!?」

「行きますよ! 速攻魔法《サイバネティック・フュージョン・サポート》を

発動します! 効果でLPを半分払います!」

 

栄 昌子:2000LP

 

《サイバネティック・フュージョン・サポート》魔

ライフポイントを半分払って発動できる。

このターン、自分が機械族の融合モンスターを融合召喚する場合に1度だけ、その融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分の手札・フィールド上・墓地から選んでゲームから除外し、これらを融合素材にできる。

「サイバネティック・フュージョン・サポート」は1ターンに1枚しか発動できない。

 

「ってことは……まさか?」

「えぇ! 引いてますわ! 魔法カード《パワー・ボンド》を発動します!」

 

《パワー・ボンド》魔

自分の手札・フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、機械族のその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は、その元々の攻撃力分アップする。

このカードを発動したターンのエンドフェイズ時、自分はこのカードの効果でアップした数値分のダメージを受ける。

 

「このターン私は手札・フィールド・墓地から融合素材を指定できます。

私は、場のサイバー・ドラゴン・コア、墓地のサイバー・ドラゴンで融合!

荒れ狂う合成竜、出でて力を振るいなさい! 融合召喚ッ!!

《キメラテック・ランページ・ドラゴン》ッ!!」

 

攻撃力4200のランページ・ドラゴン。ですが、これでは終わりません!

 

「攻撃力4200のランページかッ……やべぇな」

「けど、これじゃ終わりませんよ?」

「マジで!? まだあるのかよ!」

 

先生が驚きの声を上げる。

 

「私は魔法カード《アームズ・ホール》を発動します! デッキの一番上のカード

を墓地へ送り、デッキから装備魔法カードを1枚手札に加えます」

「まさか?」

 

先生は私の加えるカードに見当があるのか、若干顔が引きつります。

 

「《巨大化》を加えますわ!」

「デスヨネ……」

「では、《巨大化》をランページに装備します。LPは私の方が低いので、

攻撃力は2倍――――8400になりますわ!!」

 

「「8400ッ!!!」」

 

先生と、黒瀬さんが揃って声を上げる。

 

「更にランページの効果を発動します。デッキから機械族・光属性のカードを

2枚まで墓地に送ります。《超電磁タートル》と《サイバー・ドラゴン・ドライ》を

墓地に送ります。これにより、ランページ・ドラゴンはこのターン3回攻撃が可能です!」

「す、凄い……私はこれほどの決闘を見たことがありませんぞ!!」

「ふふふ……行きますね、先生?」

「ど、どうぞ……」

 

攻撃力8400のランページの3回攻撃の前には先生といえど歯が立たなかったようです。

 

 

「ここまで圧倒的な負け方は久しぶりだぞ……」

 

本気で決闘したのにああも呆気なく負けるとは、俺もまだまだだな。

 

「先生。今日はありがとうございました」

「ん? あぁ。いや、こっちこそ楽しかったよ。

久しぶりに休みって感じだった。ありがとうな誘ってくれて」

 

決闘を終えて、暫しデッキの調整につき合った後解散という流れになる。

 

「もう、遅いし送っていくよ」

 

辺りは薄暗くなってきているので当然そう提案する。

 

「そうですね。折角なので、お言葉に甘えても宜しいですか?」

「勿論だ」

 

暫し無言で並んで歩く。

 

「……こうしていると私達兄妹みたいです、ね?」

「そうだな。そう見えるかもな」

 

街の明かりが映し出す影は確かに身長差的に俺達を兄妹に見立てる。

 

「……私、実は、兄が居るんです」

「へぇ。本当のお兄さんが居るんだな」

「はい……けど、今は海外に居てあまり会えないんです」

 

海外留学か何かなのだろうか。元々一人っ子の俺にはその寂しさは理解できない

ものがある。今は、妹が居るには居るが……

 

「なるほどな。実は俺もさ、君と同い年の妹が居るんだ」

「そうなんですか? どんな子ですか?」

「へ……どんな子、かぁ……」

 

そう言われると困ってしまう。鏡花のことは俺自身あまり知らない。

俺は必死に彼女の特徴を探す。

 

「そうだな……気の強い子、かな」

「そうなんですか。ぜひ、会ってみたいです。塾には通って無いんですよね?」

「あぁ、そうだよ」

 

そういや鏡花は決闘に興味が無いようだったな。

 

「けど、妹さんがいるのに先生は女性に対する対応に慣れていないんですね?

今日も私の服装を必死に褒めていましたよね……ふふふ」

「すまない。ああいう場でどうすればいいか分からなくて、な」

 

女性となんて母さんくらいしか接してこなかったからな。

 

「私も男性とこうして過ごすのは無いですから……分かりません。けど、

あの時の先生の言葉は、うれしかったですよ?」

「お、おぉ……そう言ってくれると、助かるよ」

 

今の上目使いってのは卑怯だ。パワボンリミ解巨大化くらいの破壊力があったぞ。

それからしばらくまた歩く。

 

「――――ここまででいいですよ」

「え? ここでいいのか? 自宅に着いたのか?」

「いえ、迎えが来ているので。大丈夫です」

 

彼女が見る先には一台の車が止まっていた。黒塗りの高級車。車種は管轄外なので

分からないが、絶対高いはずだ。

 

「そうか。じゃあまた塾でな」

 

俺は手を上げて来た道を戻ろうとする。

 

「先生」

「ん?」

「また、つき合って……くれますか?」

 

俺はその問いに「勿論だ」と答えた。

こうして俺の休日は去っていく。

 

「たまにはケーキでも買って行ってみるか、な」

 

俺は寄り道の算段をしながら来た道を戻った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EX practice① エンタメ! 遊勝塾

リアル多忙につき不定期更新になってます。


「……それは一体なんの冗談なんだ?」

 

その日の朝食の席、ある一報が俺の箸を鈍らせた。

危うく落としかけた卵焼きを皿に一度戻す。

 

「だーかーら、ちょっとややこしいことになってね? 友達のお父さんが

やってる塾で一日講師やって来てほしいの」

「どうしてそうなったのか、経緯を聴く権利はあると思うんだけど?

とりあえずそれを聞いてからだな……」

「ダメ! 言ったら絶対行ってくれないでしょう?」

 

この娘っ子は詳しい事情を話さずに俺にタダ働きしろと言ってるのか?

世の中そんなに甘くないという事を教えるべきだろうか。

 

「お願い! お風呂掃除と食器洗い、3日間私がやるから!」

「安いな!? 俺の一日の働きってそんなものなの!?」

 

そこはせめて1週間とは言えなかったのだろうか? 

けど、まぁたまには妹の為に動くのもいいかもしれない。

 

「はぁ……分かったよ。受けるよ、その仕事」

 

こうして俺は一切の事情を知らぬまま、仕事を受けるのだった。

 

 

「嘘だろ……ここは――――」

 

その塾はこじんまりとした佇まいでそこにあった。看板には《遊勝塾》の文字。

これマジ? 俺、ここで講師やれっての?

入っていいの? これ、入っていいの?

 

「――――そこに居るのは、誰だッ!!」

「うわぁああああああ!! ごめんなさいッ! ごめんなさい!!!」

 

背後から一喝入れられる。咄嗟に俺は後ろ向きに土下座。

 

「む、見たことの無い顔だな……入塾希望の方か?」

「へ、あぁ俺はそうじゃなく――――」

 

その相手を見るとデカイガタイに、鉄下駄が見えた。

 

「権現坂……」

「む、俺の名を知っているのか? まさか! 貴様、《LDS》の刺客では

あるまいなッ! またも、遊矢が犯人だとかなんだと言いがかりをッ!

許さんッ! ならば、この男権現坂――――」

「ちょっとちょっと待てッ! 話を――――ぐぅッ!」

 

《LDS》の刺客ではないけど、関係者だからどういえばいいのか!

その前に、胸倉をつかまれ弁解も出来ない。

 

「ちょっと、権現坂! 何してるの!?」

「あぁ、柚子か。見ろ、こやつ《LDS》の刺客に違いない!」

「その人は違うわ! ――――あなた、鏡花ちゃんのお兄さんですよね?」

 

柚子ちゃんがそう言うと権現坂は「何? 柚子の知り合いか?」と

いい俺の胸倉を解放する。

 

「ごっほ……あぁ、そうだけど。末城遊介って言うんだけど。

今日ここで授業をしてくれって妹に言われてね……」

「むぅ……そうであったか。この男権現坂……よもや早とちりを――――」

「まぁ誤解が解けたなら、ね」

 

俺は乱れたネクタイを直しながら権現坂にそう言った。

いきなり敵扱いとは随分な歓迎だ。

 

「じゃあ、案内しますね」

「あぁ。お願いするよ」

 

こうして俺の《遊勝塾》での1日講師が幕を開けたわけだが……

開幕早々凄く不安だ。主人公サイドとの関わりはこれが初だが、

何事も無いことを祈るばかりだな。

 

 

「お父さん! 言ってた人を連れて来たわよ」

「おぉ!! 君が柚子の友達のお兄さんか?」

 

塾の中に案内された俺は、塾長の柊修造さんに出会う。

 

「はい。改めまして末城遊介です。娘さんには妹がお世話になっている

ようで。ところで、何故俺を?」

「あぁ。それなんだが……ウチの塾では融合・シンクロ・エクシーズに関して

詳しく教えられなくてね。話を聞けば君は――――《LDS》で講師をしている

そうじゃないか」

 

修造さんの言葉が一瞬重くなる。やはりこの人も元プロ決闘者。

それなりにオーラというか覇気というものを感じる。画面越しにはただの

熱い人だなという感想しか抱けなかったが、こうして対峙して分かる。

 

「なんだとッ! やはり《LDS》の刺客であったかッ!」

 

横から再権現坂の手が迫る!

 

「ちょっと、権現坂! いい加減にしなさい!」

「た、確かに。俺は《LDS》で講師をしてます。こちらの塾との話も耳に

届いてます。アレはこちらのとの行き違いというか……なんというか。

ですが、俺は刺客ではありません。今回は個人として来ました」

 

遊矢が犯人だと言われ、要らぬ喧嘩を吹っ掛けられたここは《LDS》とは

敵対関係とまではいかないが、よくない関係にはある。

 

「あぁ。それは分かっているさ。そこでお願いと言っては調子がいいが、

ウチの生徒達に一つ授業をお願いしたいんだ。いい刺激にもなるだろうしな。

あぁ、勿論お礼はさせてもらうよ! LDSほどではないかもしれなけどね」

 

そう言うと塾長は笑う。そこには先ほどの圧は感じなかった。

後、俺の給料はバイトなので決して高くはないんだよなぁ。

 

「なるほど、分かりました。俺も普段とは違う環境で教えるとなれば、

学べることもあると思いますし、やらせて頂いても宜しいですか?」

「あぁ、頼むよ」

 

こうして俺は《遊勝塾》の生徒達に授業をすることになった。

 

 

「こんちわーって。知らない顔が居るな?」

「本当だ! 貴方は塾に入るの?」

 

暫くすると、アユちゃんとタツヤ君それから……あれ、このぽっちゃりして

る子はえっと……マンソンじゃなく。そうだ! シビレデブだ。

彼らが塾にやって来た。俺は見た目的には高校生なので新規の塾生と

間違われたのだろう。

 

「こんにちは。俺は、今日1日ここで授業をさせて貰う末城っていうんだ」

「じゃあ、先生ですか?」

「あぁ。そうだよ」

 

ちびっこ達が興味深々といった目を向けてくる。

 

「あら、皆来てたの?」

「あ、柚子おねぇちゃん!」

「今日はこの人が授業してくれるってホントか?」

 

シビレデブが俺を指さす。ん~人を指さすのはやめような? 

 

「そうよ。この人は私の友達のお兄さんなの」

「へぇ~じゃあ今日はいつもの塾長の退屈な授業じゃないんだな!」

「やったー楽しみ!」

 

子供の素直さは時として凶器にもなる。ごらん皆、塾長が寂しそうだぞ?

俺は塾長の熱血授業を受けてみたいと思うんだけどなぁ。

 

 

「こんにちはー。掃除当番してたら遅くなっちゃたよ」

「遊矢が遅くてくたびれちゃったよ~」

「なんだよそれ、別に待って無くてもいいのに……」

 

最後に登場するのは、ペンデュラムの始祖こと榊遊矢だ。

その横にはキャンディを舐めながら紫雲院素良が続く。

おぉ。これが主人公というものなのか。なんだかこう――――普通だ。

何処にでもいるただの少年。そんな印象を受ける。

 

「あれぇ? 見たことない人が居る~」

 

素良が俺を見ながら言う。

 

「あれ、本当だ。あんたは?」

 

遊矢もそこで俺に気が付き尋ねてくる。俺は先ほどのように挨拶を繰り返す。

 

「こんにちは、今日1日ここで授業をさせてもらう。末城だ」

「へぇ~。ん? 待てよ……末城って名字、聞き覚えがあるぞ」

「鏡花ちゃんのお兄さんなのよ、その人は」

 

そこで柚子ちゃんがフォローしてくれる。説明の手間が省けるな。

しかし、鏡花はこの2人と同じクラスなのか。すげぇ偶然。

 

「そうだったんだ。俺、榊遊矢。よろしく」

「よろしく。妹がお世話になってるよ、それに遊矢君の話はよく聞くしね」

「え?」

「彼は、《LDS》で講師をしてるのよ」

「え! 《LDS》?」

 

そこからまた事情を説明するのに数分を要した。

 

 

「……という訳で授業をやって行こうと思うんだけど」

 

講義室に入った俺はホワイトボードの前に立つ。やっと始められそうだ。

なにせここには開始時刻というものの決まりが無いようで、やる時に

やるしやらない時はやらないという主義の様だ。だが、エンターテイメント

を重んじる此処らしい方針とも言える。それぞれの塾には特色があるのも

当然と言えば当然だ。

 

「それで今日は何を教えてくれるんだ?」

「ん~そうだな。召喚方法についてだらだら喋ってるのもあれだから、

実際見てもらいながらって考えてるんだけど」

 

俺は今日特にこれといって用意をしてきていない。何故なら、講師をやり始めて

分かったことだが、生徒にも様々いるのは当然として、どのような授業なら

ウケがいいとかは何回かやらないと分からないのだ。なら、単発の今日は実際

見てもらいながらの方がいいと俺は判断した。

……決して、面倒だったとかではない。無いんだからな。

 

「へぇ、なら僕がお兄さんと決闘しようかな。

お兄さん《LDS》の人なんでしょ? なら、当然強いんだよね?」

 

授業中でも相変わらずキャンディを舐めながら素良が言う。

 

「そうでもないさ。俺はあくまで雇われバイトだからね。

それに今日の相手はもう決めているんだ」

 

そう。もう俺の中には対戦する相手は決っている。

ここの塾が実戦形式で学ぶ塾であるなら、当然彼とやらないとな。

 

「というわけで、今回の授業の相手を頼むよ。榊遊矢君?」

「えぇ! 俺か!」

 

離れた席で聞いていた遊矢が素っ頓狂な声を上げる。

 

「ぜひ、見せてもらいたいな。君の――――ペンデュラム召喚」

 

こんな機会は滅多にないだろうし、ここでやらない方がどうかしてる。

 

「遊矢兄ちゃんと《LDS》の先生との決闘! 凄い面白そう!」

 

ちびっこ達も期待の声を上げる。さぁ、どうする? 

 

「……いいよ、分かった。その決闘、受けるよ」

「ありがとう、遊矢君」

 

こうして俺は晴れて主人公と決闘することになった。

 

 

塾内のリアルソリッドヴィジョンシステムのある部屋へ移動する俺達。

システムを投影する簡素な部屋には俺と遊矢のみが立っている。

残りの人たちは、ガラス窓の外で観戦という形になった。

 

『準備はいいか? 2人共!』

 

スピーカーを通して修三さんの声が響く。

 

「俺はいつでもいいよ」

「はい、こちらもいつでも。お願いします」

 

俺はYシャツの袖を捲ってデュエルディスクを装着する。

 

「すまないね、遊矢君。突然決闘なんて」

「いいや、俺ももっと強くならないとって思うし。

むしろラッキーって感じだよ」

「そうか。なら互いに全力でってことでいいね?」

「勿論! 父さんのエンタメデュエルを見せてやる!」

 

『よし! それじゃあいくぞッ! 

フィールド魔法、《マジカル・ブロードウェイ》……発動ッ!』

 

刹那、簡素だった部屋が煌びやかなサーカス会場のように姿を変える。

やっぱ科学の力ってすげぇ……

 

「戦いの殿堂に集いし決闘者達が――――」

 

遊矢が例のアレを言い始める。俺も言うのかそういや。

 

「モンスターとともに地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る」

「見よ! これぞデュエルの最強進化系!」

 

最後はガラスの向こうの皆も声を揃える。

 

「「「アクショォォォオオオオン……」」」

「「デュエルだッ!!」」

 

そして、宙でカードが散らばり決闘が始まった。

 

 

NEXT TURN→



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EX practice② エンタメ! 遊勝塾Ⅱ

「むぅ……講師殿と遊矢との決闘か、些か納得できん」

「もう、権ちゃんってばまだ言ってる~」

「権ちゃん!? その呼び方はやめんかッ」

「さて……どんな決闘になるかなぁ楽しみだなぁ。けど、柚子ってば

エクシーズ召喚が見たいなんて、融合の次はエクシーズに興味が出たの?」

「え、えぇまぁ……」

 

 

「遊矢君。今回はリクエストがあったからエクシーズデッキで授業しよう」

「エクシーズ召喚……いいよ。

どんな召喚だろうと俺は俺のエンタメデュエルを貫くだけだ!」

 

流石は主人公だ。なら、全力でお相手させて頂こう。

 

「なら、俺のターンからだ! 俺は手札から《星因士 ベガ》を召喚。

ベガのモンスター効果発動! 手札からベガ以外の星因士を特殊召喚する。

《星因士 シャム》を特殊召喚!」

 

《星因士 ベガ》

攻1200/守1600

「星因士 ベガ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。

手札から「星因士 ベガ」以外の「テラナイト」モンスター1体を特殊召喚する。

 

《星因士 シャム》

攻1400/守1800

効果モンスター

星4/光属性/戦士族/攻1400/守1800

「星因士 シャム」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。

相手に1000ダメージを与える。

 

「一気にモンスターが、2体もッ!」

「驚くのはこれからだよ、シャムの効果発動! 召喚に成功したとき、

相手に1000ポイントのダメージを与える! “フォトン・アロー”!」

 

榊遊矢:3000LP

 

「うッ!」

「俺はカードを1枚伏せて、ターン終了だ」

 

このターンでエクシーズする必要もない、か。

【星因士】デッキ。最近組んだこのデッキ。

それぞれのモンスターでボードアドバンテージを

稼いでいくこのデッキならエクシーズに御誂え向きだろう。

 

「俺のターン! そっちが来ないなら俺からいくぞ!

俺は、手札のスケール1の《星読みの魔術師》とスケール8の《時読みの魔術師》

でペンデュラムスケールをセッティングッ!」

 

宙に2体のモンスターが現れ、その中心で振り子が揺れる。

きたか、ペンデュラム召喚が!

 

「きたぜ、遊矢兄ちゃんのペンデュラムだッ! しびれるぅ~!」

 

ガラス越しにシビレデブが痺れる。

なるほどなるほど、これは――――ウザい。

 

「これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能! いくぞ!」

「来い!」

「揺れろペンデュラム、天空に描け光のアークッ! 現れろ、俺のモンスター達ッ!

《EM ウィップ・バイパー》! そして、二色の眼の竜、

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》ッ!」

 

オッドアイズ……遊矢のエースモンスターか。オッ素のことは忘れない。

この世界じゃ今はチート扱いのその召喚法。だが、その対策は出来ている。

 

「俺はその瞬間ッ! 罠発動ッ!! 《時空の落とし穴》ッ!」

「な、なんだ!」

 

ペンデュラム召喚された2体のモンスターが、突如現れた渦に飲まれる。

 

「このカードは、相手がエクストラデッキ、手札から特殊召喚したモンスター

をデッキに戻す!」

「何だってッ!」

 

《時空の落とし穴》罠

(1):相手が手札・エクストラデッキからモンスターを特殊召喚した時に発動できる。

手札・エクストラデッキから特殊召喚されたそのモンスターを持ち主のデッキに戻す。

その後、自分は戻したモンスターの数×1000LPを失う。

 

「そして俺は戻したモンスターの数×1000LPを失う」

 

末城遊介:2000LP

 

「遊矢兄ちゃんのペンデュラム召喚が……」

「ペンデュラム召喚も特殊召喚だからね。その裏をかかれたってことか」

 

「くッ、なら《EM ヘイタイガー》を召喚! 俺のデュエルはペンデュラム

だけじゃない! 行け、ヘイタイガー! ベガを攻撃!」

 

ヘイタイガーがベガを攻撃、撃破する。

 

末城遊介:1500LP

 

「ッ……やるね。ペンデュラムが挫かれたら、次の一手を出してきたか」

「ヘイタイガーの効果発動! モンスターを破壊して墓地に送った時、

デッキからEMのペンデュラムカードをを1枚手札に加える。

俺は、EMシルバークロウを手札に加える! これでターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー! 今度は俺の番だ、俺は《星因士 アルタイル》

を召喚! 効果で、ベガを守備表示で特殊召喚!

俺はベガ、アルタイル、シャム3体でオーバレイネットワークを構築!」

 

3体が重なり、光の渦へ消える。

 

「来るか、エクシーズ召喚ッ……」

「夜空を照らす星々、重なり合って描け希望ッ! エクシーズ召喚!

光輝けッ! ランク4、終わりを冠する輝士、《星輝士 デルタテロス》ッ」

 

《星輝士 デルタテロス》エクシーズ

攻2500/守2100

レベル4モンスター×3

(1):X素材を持ったこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、

自分がモンスターの召喚・特殊召喚に成功した時には、

相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。

(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、

フィールドのカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

(3):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。

手札・デッキから「テラナイト」モンスター1体を特殊召喚する。

 

「エクシーズ、モンスターッ!」

「デルタテロスのモンスター効果発動! ORUを1つ使い、相手のカードを

を1枚破壊する! ヘイタイガーを破壊する!」

 

デルタテロスの剣先から光が迸り、ヘイタイガーを焼く。

 

「ヘイタイガー!」

 

「まずい、今の遊矢は丸裸だッ!」

「遊矢!」

 

ガラス越しに権現坂と柚子ちゃんが叫ぶ。

 

「バトルだ! デルタテロスでダイレクトアタックッ!」

 

Aカードを探す隙を与えさせない。

デルタテロスが剣を構え、遊矢に迫る。

 

「う、うわぁあああああああああッ! くッ……」

 

そのまま一閃にして斬り裂く。

 

榊遊矢:500LP

 

「俺はこれでターンエンドだ」

「ってて……全く容赦ないな。けど、俺だって負けるわけにはいかない。

父さんのエンタメデュエルを、ユートとの約束を―――――守るんだッ!

俺の……ターン、ドロォオオオオッ!!」

 

その引きは今までと違い、光り輝く。

 

「来たッ!

俺は、セッティング済みの時読み、星読みでペンデュラム召喚ッ!

揺れろペンデュラム、天空に描け光のアークッ! ペンデュラム召喚!

来い、俺のモンスター! ――――《EM シルバークロウ》!」

 

1体をペンデュラム召喚……? しかも出したのは、先ほどヘイタイガーで

加えたシルバークロウ。なら、一体さっき何を引いた?

 

「更に俺は、《EM フレンドンキー》を召喚! フレンドンキーの効果発動!

墓地から、《EM ヘイタイガー》を特殊召喚!

俺は、レベル4のシルバークロウとレベル4のヘイタイガーでオーバーレイ!」

 

「もしかして! 遊矢が……」

「遊矢兄ちゃんもエクシーズ召喚を!?」

 

「漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う、反逆の牙! 今、降臨せよ!

――――エクシーズ召喚ッ! 

現れろ! 《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

漆黒のドラゴンが現れる。ダークリべリオン……ここで出て来たかッ

 

「ダークリべリオン・エクシーズ・ドラゴンの効果発動! ORUを使い、

相手のモンスターの攻撃力を半分にし、その数値をダークリべリオンに

加えるッ! “トリーズン・ディスチャージ”ッ!」

 

星輝士 デルタテロス:攻2500→1250

ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン:攻2500→3750

 

「まさか、君もエクシーズを使えるなんてね……」

「あぁ。これは、アイツに……ユートから託されて―――――」

「そうか。だからこそ、か。完敗だなぁ」

 

引き寄せる運命力、大切な物を守りたいという思い、そして強くなりたいと

願う思い。全て敵わない。――――完敗だ。

 

「行けッ! フレンドンキー! デルタテロスを攻撃!」

 

攻撃力の下がったデルタテロスには抗う術は無い。

 

「くッ」

 

末城遊介:1150LP

 

「これで終わりだッ! 行け、ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン!

“反逆のライトニング・ディスオベイ”ッ!!」

 

――――Aカードッ!

アレを取れば……もしかしたら――――。

 

「ッ!」

 

それを取ることなく、俺はその攻撃を受けた。

 

末城遊介:0LP

 

 

「いやぁ、負けたよ。完敗だ」

「いや、俺も危なかったよ」

 

デュエルの後、互いに今のデュエルについて言い合う。

 

「凄いデュエルだったぞ遊矢ぁ! この男権現坂、感動したぞ!」

「うんうん! まさか遊矢がエクシーズ召喚するなんてねぇ。僕、ビックリだ!」

 

権現坂と素良が遊矢にそれぞれ声をかける。それを少し離れたところから

見ていると、塾長が寄って来た。

 

「あぁ、柊塾長。今回はスイマセンでした。なんか、授業になってなかったような

感じで……」

「いや、遊矢も一皮剥けたみたいだし、他の皆も貴重なデュエルが見れた。

それでいいじゃないか! 今回は、ありがとう」

「……そう言って下さると、幸いです」

 

ふぅと息を吐く。何とかなったかな。

 

「お兄さん!」

「あぁ、素良君か。どうかした?」

 

壁にもたれて休んでいると、素良が来た。

 

「一つ、聞いていいかな?」

「あぁ。どうぞ」

「……最後の遊矢の攻撃の時、なんで足元のAカードを取らなかったの?」

「ッ!?」

 

気付いていたとは……

 

「それ次第では、まだまだお兄さんの反撃の余地もあったよね?」

「まさか、気づかれていたなんてね。たまげたな。でもね、

今回のデュエル。手を抜いた気なんてさらさらないよ」

 

これは隠しようのない、嘘偽りの本音だ。

 

「けどね、最後の攻撃の時の彼の眼。そこに感じたんだ」

「何を?」

「そうだな……言葉じゃ言い表せないけど、闘気とかそういう類のものだ。

君も遊矢君にそういうものを感じたんじゃない? 素良君」

「そーかもねー」

 

そう言って素良は皆の元へ戻って行った。俺も、そちらへ行く。

それに今回はあくまで授業。俺との決闘で、相手が何かを掴んでくれれば

それが俺の勝利なのだから。きっと、あの素直で真っ直ぐな思い。

それこそ彼が、主人公足り得る証明なのだろう。

 

「遊介さん。今回はありがとうございました」

「あぁ、柚子ちゃん。こちらこそありがとう。今回は俺も色々学べたよ」

「講師殿。先刻は疑って済まなかった。この男権現坂――――」

「いや、いいよいいよ。それはもう、な?」

「なんと、懐の深い御仁だ。男権現坂、感服したぞ」

 

なんかゴツイ手で握手をされる。

 

「遊介」

「あぁ、遊矢君。どうかした?」

 

いきなり呼び捨てかぁ……

 

「俺、今回のデュエルで何かを掴めた気がするよ。ありがとう」

「そうか。なら良かったよ」

「また、デュエルしてくれるか?」

「あぁ、勿論だ。今度は俺の生徒も連れて来るさ」

 

こうして俺の1日講師は幕を閉じた。別の場所での授業。

今回は貴重な体験だった。




何ッ! ダークリベリオンを遊矢が使うのは勝鬨戦からではないのか!?

……はい、すみません。

Aカードは使いどころが無かったなぁ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

S・S  Unknown Cord編
work1、不穏な路地裏で


ちょっとしたオリジナルのストーリーを何話か挟みます。
リハビリってやつです。スナック感覚で見て頂ければ幸いです。



舞網チャンピオンシップまで残り、一週間というところまで来た。

皆それぞれに緊張感とボルテージが上がっていく。

俺も講師として彼らをサポートし、上へさらに上へと目指し講義にも

熱が入る。

 

「いいか! 例えばの話、相手が初ターン2枚カードを伏せただけで

ターンを回してきたとしよう。この時、どんなことが予想される?

単純にモンスターが引けなかった場合もあるだろうな。

けど、俺ならこう考える。「相手の展開を誘い、妨害した次のターンに攻めてくる」

ってな。だから、伏せられたうち確実に1枚には召喚反応か、攻撃反応系の罠が

伏せられている可能性が高い」

 

俺はやや汚い走り書きになりつつホワイトボードへ書き込んでいく。

時間が惜しい。綺麗に書くなら少しでも彼らに情報を与えたい。

 

「とまぁ、このようにある程度盤面を見て展開を予想するというのは必要不可欠

なスキルだ。武士は相手の伏兵を警戒せずに攻めたりはしないだろう?

かと言って、攻め時を失えばなし崩しにチャンスを失う。だからこその駆け引き。

リスクヘッジの用意も大事だ。例えば伏せカードを除去するカードをデッキに採用

するとかだな。勿論、カウンター罠で無効にするのも構わない。相手の計算を狂わせる

事が出来る! そこは任せる。っと……時間か。早いな」

 

俺はまとめに数行文字を書くと、再び振り返る。

 

「以上! 各自次の時間までに今日の内容を踏まえてデッキを改造、調整

してくるように。チャンピオンシップまでにできる最後の調整だと思ってくれ」

 

「ありがとうございましたー」とやや疲れた声が各自から上がる。

ちょっと詰め込みすぎたかな。

さて帰ってテストの採点と次回のプリントを作らねば。

 

 

「お疲れです。先に失礼しますー」

 

残ってた講師から「お疲れ様ですー」と声が上がる。

これにて今日の業務終了。

フロントを抜け、《LDS》を出ると辺りはやや暗くなっていた。

市街を抜け、土手を歩く。リンリンと何かの蟲が鳴く音のみがしていた。

静かな夕暮れだ。

 

「ん? 着信か。……もしもし?」

『あ、兄さんー?』

「そうだけど。今から帰るよ」

 

電話主は鏡花だった。

 

『そうなの? じゃあ、帰りに野菜買ってきてくれる?

あのね。ニンジンと玉ねぎと、あとアボカド』

「その材料で何を作るのか分からないけど。まぁ、分かったよ」

『ありがとねー』

 

アボカド……。

俺は、今日の夕飯を想像しながらスーパーへ足を向けた。

 

そもそもアボカドって野菜なのか? ずっとフルーツだと思ってた。

そんな事を思いながら足を動かす。

 

『――――よこ……は……やしろ!』

 

ガン!

 

「なんだ?」

 

裏の路地の方向から男のドスの効いた声と、何かを打ち付ける音が聞こえた。

正直嫌な予感しかしないが、行くべきだろう。事件の可能性も0では無い。

俺は、こそりこそりと歩を進める。

 

「ハハ! こいつが……ついに手に入れたぜッ! ヒャハッハハハハ!!」

「返……し」

「っるせぇ! そこで堕ちてろッ!」

「ゥぐッ!?」

 

どうやら倒れている男性から、叫んでる奴が何かを奪った。そういうシーン

らしい。こういう時は……警察に電話だよなぁ。

俺は静かにそこを離れ―――――

 

カラン!

 

ようとした時に空き缶を蹴っちゃいました。僕はもう終わりみたいです。

 

「あ゛ぁッ!? そこに誰かいんのかぁッ!!」

 

心臓がドキッ!と飛び跳ねる。ヤバいヤバい! 逃げるか?いや待て。

相手の運動力が分からない以上逃げて捕まったら? なら出る?

 

「出てこねぇならこっちから行くぞッ!」

「すんませんんんんん!!」

 

俺は転がるように前へ出た。もうダメだ、終わりだ。

殴られて粗挽き肉団子にされるに違いない。BADENDだ。

 

「ッチ、見られたんじゃしょうがねぇ……

兄ちゃん、こっからタダで帰れると思ってねぇだろうな!」

 

思いたい!

 

「オラ、デュエル・ディスクをだしなぁ! 全部奪ってやっからよォ!」

「へ?」

 

デュエル・ディスク……デュエル?

 

「へへっへ……今手に入れたこいつの力を試してやるぜぇ」

「それ、は……使っては――――うぅ……」

 

倒れている男は何か言っている。

 

「あんた、大丈夫か?」

「気、をつけて……くれ、あの――――カード、は……」

「カード?」

 

なんのこっちゃ?

 

「兎に角じっとしててくれ。ここから無事に抜けられたら医者に連れてって

やるから。無事に抜けられたらだが……」

 

俺は倒れ伏す男に、自分のジャケットを掛ける。

 

「へッ、ようやく準備完了か!」

「やるしかない、か。」

 

俺もデュエル・ディスクを腕に装着。普段持ち歩いている中で一番強いと

思っているデッキをセット。

 

「俺が勝ったら、見逃してもらう」

「あぁ、いいぜ。ただし俺が勝ったらお前のカードは全て貰う!」

「……わかった」

 

「「デュエルッ!!」」

 

末城遊介:4000LP

男:4000LP

 

「先攻は、俺だ! フィールド魔法《スクラップ・ファクトリー》を発動!」

 

《スクラップ・ファクトリー》魔

このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上の「スクラップ」と名の

ついたモンスターの攻撃力・守備力は200ポイントアップする。

また、フィールド上に表側表示で存在する「スクラップ」と名のついたモンスターがカードの効果によって破壊され墓地へ送られた時、自分はデッキから「スクラップ」

と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。

「スクラップ・ファクトリー」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

「更に俺は、モンスターを裏側守備表示でセット! ターンエンド」

「俺のターン。俺は、3枚の永続魔法カードを発動する!」

 

……3枚の永続魔法、だと。

 

「《地盤沈下》、《天変地異》、《デーモンの宣告》だぁ」

 

《地盤沈下》

使用していないモンスターカードゾーンを2ヶ所指定して発動する。

このカードがフィールド上に存在する限り、指定したモンスターカードゾーンは

使用できない。

 

《天変地異》

このカードがフィールド上に存在する限り、

お互いのプレイヤーはデッキを裏返しにしてデュエルを進行する。

 

《デーモンの宣告》

1ターンに1度だけ、500ライフポイントを払いカード名を宣言する事ができる。

その場合、自分のデッキの一番上のカードをめくり、宣言したカードだった場合手札

に加える。違った場合はめくったカードを墓地へ送る。

 

「おら、デッキを裏しろ! 

さらに、お前はその2か所のモンスターゾーンを使用出来ねぇ!」

 

デッキを裏、つまりはカードが丸見えの状態で今後プレイすることになる。

そして《デーモンの宣告》のカード。あれは、デッキトップの名前を宣言して

当たってたら手札に加えられるカード。つまり、500LP払えば1ターンに一度

あいつはドロー出来るのと同じことになる。

《地盤沈下》はジャンド系なら痛かっただろうが、俺のデッキはそこまで

展開はしないから痛くないな。そもそもなんでそんなの入れてんだ。

 

「随分と大人しいデッキを使うんだな」

「そいつはどうかな。加えてコイツだ、《魔導書整理》デッキから3枚見て

順番を入れ替えるぜ」

「なるほど……」

 

《魔導書整理》で3枚デッキトップを弄れば、《デーモンの宣告》と次の

ドローカード分を操作できる訳だ。

 

「さらに、《デーモンの宣告》の効果を使うぜ。500LP支払、

《バッド・エンド・クイーン・ドラグーン》を宣言。当然、当りだよなぁ?」

 

男:3500LP

 

《バッド・エンド・クイーン・ドラグーン》☆6

攻1900/守2600

このカードは通常召喚できない。

自分フィールド上の永続魔法カードが3枚以上の場合に特殊召喚できる。

このカードの攻撃によって相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、相手は手札を

1枚選んで墓地へ送り、自分はデッキからカードを1枚ドローする。

また、このカードがフィールド上から墓地へ送られていた場合、自分のスタンバイ

フェイズ時に、自分フィールド上に表側表示で存在する永続魔法カード1枚を墓地

へ送る事で、このカードを墓地から特殊召喚する。

 

「俺の場に永続魔法が3枚以上あるとき、こいつは特殊召喚できるぜぇ!」

 

読めてきたぞ。コイツのデッキが。つまりは永続魔法を組み合わせたコントロール

デッキ。相手の計算を狂わせつつ、自分の有利なようにゲームを作っていく。

なんともいやらしい、それでいて繊細なデッキだ。

……使ってる本人に似合わないが。

 

「おら、攻撃だ! そのモンスターを粉砕してやらぁ!」

「攻撃されたのは、《スクラップ・ワーム》」

 

ワームはそのまま破壊される。

 

「へッ、ただの屑かよ。ターンエンドだ」

「このデッキには屑なんか入ってねぇ! 俺のターン!

俺は、《スクラップ・コング》を召喚ッ! このカードは召喚されたとき、

破壊される!」

 

《スクラップ・コング》☆4

攻2000/守1000

このカードが召喚に成功した時、このカードを破壊する。

このカードが「スクラップ」と名のついたカードの効果によって破壊され墓地へ

送られた場合、「スクラップ・コング」以外の自分の墓地に存在する「スクラップ」

と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える事ができる。

 

「は? ハッハ! コイツは傑作だぁ! 召喚したとき、破壊されるぅ……?

ハッハッハハハハ!!」

「そんなに笑えないだろ……回収効果は使わない。そして、この時ファクトリーの

効果が発動する! スクラップモンスターが、効果で破壊されたときデッキから

スクラップ1体を特殊召喚する! 来いッ! 《スクラップ・ゴーレム》!

さらにゴーレムは1ターンに一度、墓地からスクラップを蘇生できる。

俺は、《スクラップ・ワーム》を特殊召喚する!」

「モンスターの自壊が、有利に働きやがったッ」

「これが、スクラップだ! 俺はレベル5の《スクラップ・ゴーレム》に

レベル2の《スクラップ・ワーム》をチューニングッ!

鋼鉄の悪魔、その咆哮、大地を揺るがし敵を砕くッ! シンクロ召喚ッ! 

――――レベル7、《スクラップ・デスデーモン》ッ!」

 

《スクラップ・デスデーモン》☆7・シンクロ

攻2700/守1800

 

「シンクロ、モンスター……だと」

「スクラップ・デスデーモンでバッド・エンド・クイーン・ドラグーンを攻撃!

“scrap knuckle ”ッ!」

 

デスデーモンのナックルがバッドエンドに刺さる。

 

男:2700LP

 

「くッ、チクショウめ!」

「俺はターンエンドだ」

「俺のターン! へッ、来た来た来たキターッ!」

 

な、なんだ……! 何を引いたか、《天変地異》の効果で表になっていても

よく見えなかった。

 

「はは……ハッハハハハ! 引いちまった! アハハハハ……」

 

あの人ヤバいよ。病院行った方がいいんじゃねぇ?

《魔導書整理》で入れ替えたから順番知ってるはずだろうが。

 

「俺は! ――――“3枚の永続魔法を墓地へ送る”ッ!!」

「――――ッ!? 何だとッ!?」

 

俺は知っている――――その召喚法を!

だが、そのカードはこの世界じゃ伝説のはずじゃないのか!

 

「降臨しろォ! 《降雷皇ハモン》だぁ! 

――――アッハハッハハハ! 笑いが止まらねぇ!! 見ろ、見ろォ!!

この圧倒的なまでの、存在感をォおおおおお!!」

 

《降雷皇ハモン》☆10

攻4000/守4000

このカードは通常召喚できない。

自分フィールド上に表側表示で存在する永続魔法カード3枚を墓地に送った場合のみ

特殊召喚する事ができる。

このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、相手ライフに1000ポイントダメージを与える。

このカードが自分フィールド上に表側守備表示で存在する場合、

相手は他のモンスターを攻撃対象に選択できない。

 

「ハモン……だとッ! なんでお前みたいなモブがそんなカード持ってるッ!?」

「はぁ? 知らねぇなぁなんでだろうなぁ?」

 

ハモンは、アニメGXで三幻魔との1体として描かれていたカード。

このアニメ基準の世界じゃ三幻魔は勿論、オシリス・オベリスク・ラーの

三幻神も伝説となっている。ここに存在しているはずがない。

そもそも、あったとしてもディスクが認識しない可能性の方が高いだろう。

 

「俺はさらにコイツを召喚するぜ! 《トリック・デーモン》!」

 

《トリック・デーモン》☆3

攻1000/守0

このカードがカードの効果によって墓地へ送られた場合、または戦闘によって

破壊され墓地へ送られた場合、デッキから「トリック・デーモン」以外の

「デーモン」と名のついたカード1枚を手札に加える事ができる。

「トリック・デーモン」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

これはヤバいんじゃ……無いだろうか。




ハイ。三幻魔を題材にした話です。多忙の中、オリジナルでもやれればな。
と思いつつ考えてました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

work2、不穏な路地裏で②

「滾るッ……滾ってきやがるゥううう――――」

 

 たとえ話でなく周りの空気がびりびりと震える。《降雷皇ハモン》。

アニメの世界じゃ“伝説”として語られる一枚だ。それが今、目の前に

立ちふさがっているのだ。元の次元じゃよく友人の【宝玉獣】なんかに

アクセントとして入っていたハモンだが、もうしてリアルソリッドヴィジョン

として対峙すると、凄まじい圧迫感を感じる。上から押しつぶされるような視線、

圧倒的なまでのプレッシャーを感じる。

 

「……冗談じゃねぇ。なんで、そいつを持ってる、何処で手に入れたッ!」

「ハァ? 答えるわきゃねぇだろ……ハッハハハハ――――最高だァ」

 

相手は《降雷皇ハモン》を召喚できたことで達したような光悦とした顔で答える。

 

「さァさァ、こいつの力を見せてやるよォ――――バトルだァッ!

その木偶を蹴散らせェエエエエエッ! 《失楽の霹靂》ィィイイイイッ!!」

 

 ハモンの周囲に雷が収束、そしてそのまま――――デーモンに降り注ぐ。

そしてその雷はデーモンを焼き尽くすに留まらず俺を襲う。

 

「――――ッぐァァアアアアアアアッ!! ……ガハッ……はぁ――――」

「は、ぁッハハハハ……どうだァ? 今のが、《地獄の贖罪》だァ」

 

 身体を貫く電気。そのダメージはうっかりコンセントに触れちゃったときの

比じゃない。この本当にソリッド・ヴィジョンかよ。

 

遊介:1700LP

 

「さらに、さらにィ! デーモンで追加攻撃だァ!」

「ぐォオオオオッ!!!」

 

遊介:900LP

 

 4000フルであったLPが一瞬で消飛ぶ。ついでに意識すら消飛ばされそうだ。

そのままアスファルトに倒れ伏す。だが――――

 

「まだ、だ……」

「けッ、まァだ立てるだけの体力があったのかよ」

「はッ! モンハンは2乙から、デュエルはLP500からが本番……だろうが。

まだまだ序盤じゃないか」

「まァいい。次で刈り取ってやるぜェ。俺は、ターンエンドだ」

 

 虚勢を張ったまではいいが、正直万策尽きかけてるんだよなァ。

もうこのまま倒れた方が楽なんじゃないの?

 現実で「めのまえが まっくらに なった ! ▼」ってなってポケセンに戻れたら

どれだけ楽だろうか。いや、ポケセンがないか。

 

「んなこと言っても始まらないよなァ……」

「何、ぐちゃぐちゃ言ってやがる! おう、あくしろよ」

 

 んなことはどうでもいいか。さて、どうしたものか。ハモンを突破しないと、

どうにもならないわけだ。攻撃力4000のハモンを戦闘で退かすのは不可能。

なら効果で退かすのがセオリーでありベストだが……手札のこいつと、トップが

《スクラップ・エリア》か。……ん、なんだ行けるやん。

 

「よし。やってみるか」

「ん、なんだァ? やられる算段は出来たかァ?」

「――――いや、“勝つ”算段が出来た」

「……お前、この状況が分かってんのかァ?」

 

知ってるが。

 

「関係ないね。相手が伝説のカードだろうが、神だろうが関係ないさ。

可能性は常に――――ここにある。俺のタァアアアアンッ! 魔法カード《スクラップ・

エリア》を発動ッ! デッキから《スクラップ・ビースト》を手札に加える。

さらに相手の場にモンスターが存在するとき、このモンスターを特殊召喚する!

《スクラップ・ブレイカー》ッ!」

 

《スクラップ・ブレイカー》☆6

攻2100/守700

相手フィールド上にモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する

事ができる。

この効果で特殊召喚に成功した時、自分フィールド上に表側表示で存在する

「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して破壊する。

 

「ブレイカーの効果発動! 自身の効果で特殊召喚されたとき、場のスクラップ

一体を破壊する! ブレイカー破壊! この時、ファクトリーの効果発動ッ!

デッキから、《スクラップ・ゴーレム》を特殊召喚!」

「チッ、んだよまたそいつかよ……」

 

 そういうガチな反応やめてね? こいつ、過労死かよみたいなね。

ゴーレム君過労死認定されちゃうから。けど実際デッキの要みたいなところ

あるから実際過労死要員。ゴーレム君マジ過労死。

 

「ゴーレムの効果、発動! 墓地からワームを蘇生。

俺はまだ通常召喚を行っていない。手札から、《スクラップ・ビースト》を召喚」

 

役者は揃った。さぁ、反撃と行くか。

 

「俺は、レベル5の《スクラップ・ゴーレム》にレベル4の《スクラップ・ビースト》

をチューニングッ!」

「またシンクロか、けど何を出そうとも無駄無駄無駄ァ、無駄なんだよォ!」

「お前の切り札がハモンだってんなら、今度は俺の切り札を見せてやるッ!

……双頭で敵を捕え、鋼鉄の双翼で敵を討てッ! シンクロ召喚ッ! 来いッ!

レベル9、《スクラップ・ツイン・ドラゴン》ッ!!!」

 

ツインドラゴンがハモンに向かって咆哮を上げる。

 

「切り札って奴はこう使うんだッ! 《スクラップ・ツイン・ドラゴン》の効果、

発動! 俺の場の《スクラップ・ワーム》を破壊し、お前の場のハモンとトリック・

デーモンを手札に戻すッ! ――――消えろ、Scrap Vanish」

「な、何だとッ!?」

 

効果耐性がないことを恨むんだな。

 

「これでお前のハモンは攻略した。さらに、ワームの効果発動。スクラップ・ビースト

を手札に加える。さぁ、お前を守るモンスターはいなくなったぞ? サレンダーするか? 今ならもれなくそのハモンのカードを置いて逃げればポリスマンに通報はしない

でいてやるぞ?」

「ふざけんじゃねぇッ! 逃げろだァ? 舐めんじゃねぇ! 俺たちは確かに

デュエルの表舞台から逃げた所詮は破落戸だ。それでも、無様な真似はしねぇん

だよォッ!」

「……そうかい。なら、その信念にだけは敬意を示してやるさ。

――――やれ! 《スクラップ・ツイン・ドラゴン》、Scrap Viseッ!」

 

 スクラップ・ツイン・ドラゴンの攻撃で男のLPは尽きる。あぶね……

ハモンとか出た時本当にビビったかんね、なまらびっくりしたべや!って感じ。

 ちなみに俺は北海道民では無かったです。埼玉県民でした。

 

「あんたの敗因は、伝説のカードを持っているという状況に奢ったからだ。

さて、それじゃあその物騒なカードは頂戴するぜ。然るべき機関に渡すから」

 

危険物は警察へって基本だよな。

 

「や、やめろォ! やめてくれ……俺は、俺はこいつでもう一度……勝ち続けて

やるんだァ。もう嫌なんだ、負けるのはよォ!!」

 

 男はハモンを抱きかかえるようにして覆いかぶさる。

大男が駄々をこねる子供用にアスファルトで暴れてる絵図らを想像して頂ければ

大体間違いない。

 

「俺は、俺はこいつで返り咲くんんだァ!! 見返してやるんだ、俺を、

俺を負かした連中をッ!!」

 

こいつの過去に何があったか知らんが、

 

「舐めんじゃねぇッ! 返り咲く? 見返す? お前が何者か知らないがなぁ、

それはお前のものじゃねぇんだろうが!? なら、それはお前の力じゃねぇじゃ

ねぇか!」

 

 状況からしてそこに倒れてる奴の物だったのだろう、ハモンは。

この倒れている男も普通じゃないだろうなぁ。

 

「負けることのどこが悪いッ! 甘えるな!」

「この世界じゃ弱者は生きられねぇんだよォオオオオ!!」

 

 男が立ち上がり拳を握り、俺に放つ! 俺はそれを顔面に受けた。

……躱せるわけないよ。来たパンチをスッと躱せるのなんてアニメだけだ。

 俺の鼻からヌルっとしたものが滴り足元のアスファルトに紅いシミを作る。

 

「ってぇ……」

「俺はある塾の門下生だった。その塾はプロの排出も多く周囲から期待されていた」

 

俺をいきなり殴った男が急に語りだした件。一丁前に説教垂れたらこうなった。

 

「俺も期待に応えようとデュエルに明け暮れた。毎日、毎日……

次第に俺にとってのデュエルはただの使命でしかなくなった――――」

「やっべ、Yシャツに鼻血が……これ帰ったら怒られるやつだ」

 

最悪捨てて帰ろうかな。どうせ1枚980円のやつだし。

 

「――――だから俺は示さねぇといけねぇんだ」

 

あー後半ほぼ聞いて無かった……

 

「へへ……こいつで俺はこの世界に証明すんだァ、俺の力を!」

「まだ言ってやがる」

 

だが、そんな下衆に天罰が下るのにはそう時間はかからなかった。

 

「――――な、なんだァ!? カードがッ!? ハモンが……燃えるゥッ!?」

「い、一体、何が起きてるんだ……」

 

男の持つハモンが燃えている? というより、火花を散らして爆ぜた。

 

「――――やはり、まだ未完成ですね。けど助かりました」

「あ、あんた大丈夫か……?」

 

背後で倒れていた研究者然とした男が俺に並び言った。

 

「えぇ。問題ありません。身体は負傷しましたが、いいデータが採れました」

「データ?」

「それでは、私はこれで。さて、他の2枚はどうなりましたかねぇ」

「あ、おいちょっと待ぃ!」

 

 俺の制止を聞かず、研究者男は不気味な笑みを浮かべて街へ消えて行った。

後には放心した男と俺のみが残る。どうすんのこれ……

 

「とりあえず、警察へ連絡だな」

 

 

「ってことがあってですねぇ、Tシャツが1枚逝ったんだ」

「なるほど」

「だから、俺は悪くない! ので、新しいTシャツ代を下さい!」

「小遣いから引くね?」

「あ、そっかぁ……」

 

 鼻血で実質逝ったTシャツを見て妹に「これなに?」と言われて説明したが、

俺の説得虚しく小遣いから1000円が消えた。ほんと今日は厄日だなぁ……

 

「けど、そんな伝説のカードがあったんだねぇ」

「あってたまるか。あのカードはどう見ても普通じゃない」

「普通じゃないのは当たり前でしょう? 伝説だもん」

「伝説のカードだろうと火花散らして爆発したんだぞ?」

 

 カードが爆発って……いや、考えてみればカードがスリケンとして使われる

世界だぞ、ここは。アイエェェ……

 

「爆発するんでしょう? 伝説だもん」

「伝説ってなんですか」

「皆知らないから伝説なのよ。じゃ、その私寝るから」

「あぁ。お休み……」

 

 結局、今日の事は分からず終いだった。けど、突っ込んでは行けないことの

類なのははっきり分かる気がする。

 

「あの男の最後の言葉、後2枚ってのはウリアとラビエルか。

その2枚もあるんだろうか」

 

情報が足りない。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EX work① シティの決闘者達

――――Dホイール

 デュエル・ディスクを進化させたそのマシンを駆使して闘う、

ライディングデュエルはスピードとスリルにあふれた最高のショーであり、

自由の象徴であった。

 というのも今は過去の話だ。今やライディングデュエルはトップスどもの

目の肥やしでしか無く、俺たちコモンズには自由はありはしない。

弱肉強食。そんな言葉がふさわしいこの自由競争社会。俺たちはそんな世界で

生きていた。強い者は上へ行き、弱い者は下で肩を寄せ合って暮らしている。

 

キュ……キュ……

 

「よし――――できたッ」

 

 俺は汗で滲んだ額をボロキレのようなタオルで拭う。

それから、目の前の今し方完成した“D・ホイール”を満足げに眺める。

 

「ユースケ“D・ホイール”は出来たか?」

「聞きつけるのはえぇ。まぁ、テスト走行してみないことには分からないが、

基盤はテスト済みだし、メイン基盤はこの辺じゃお目にかかれない上物だ。

裏市のおっさんとの交渉は大変だったんだぜ?」

 

俺は何処からか聞きつけてやって来た顔馴染に言う。

 

「しっかし、あの鉄クズ集めてこんな立派なもんを作っちまうなんてなぁ……」

「簡単さ。まぁ継ぎ接ぎみたいになったがな」

「機械の話はよくわからねぇが……てか、お前こういう技術何処で――――」

「いや……まぁ、な」

「まぁいいさ。それより本気か、ユースケ?」

 

顔馴染であるテツは怪訝そうな顔で俺を見た。

 

「あぁ。“上”行くならなんでもするさ。そのための手段が“こいつ”なら

俺はそれにしがみついてやる。そんでもって上に行ってやるんだ。

……そのために8年だ。俺は、“キング”になる」

「お前もユーゴみたいなこと言うんだなぁ。全く、ここの奴は似た者同士だな」

「そりゃそうさ。……いい加減上を眺めるのも首が痛くてしょうがねぇ。

それにここからじゃ満足に空も拝めないしな。そういや、ユーゴとリンは?」

 

 ユーゴとリンと言うのは同じ施設の子供だ。

ここでは俺のように両親に見放された子供も多く、施設育ちが多い。

そりゃそうだ。皆自分が上に行くなら、プライドでもそれこそ子供でも捨てていく。

 少なくても俺の親はそうだった。8年前、俺の親父は俺を今の施設に残し上へ行った。母さんが死んでから2週間後の事だった。それから俺は上に行くことを考えて

生きてきたんだ。このふざけた構造をひっくり返すために。

……フレンドシップカップに出場して、キング(頂点)になるために。

 

「いつものデュエル場だろうよ。お前も行ってみればいいじゃないか。

こんなカビ臭いところに詰めてると体に悪いぜ?」

「あぁ、そうするよ。……悪いな、いつも」

「なぁに、気にすんな」

 

 テツは同じ施設の出じゃないけど、いつも俺たちの事を気にかけている

兄貴みたいな存在だった。

俺は工具を片付けるとデッキを持って外に出る。ボロい建物が並んだ通りを

少し歩くと、子供たちが溜まっているのが見えてきた。

 

「――――俺は、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で攻撃だ!

“旋風のヘルダイブ・スラッシャー”ッ!!」

 

おぉ、という歓声が響く。その中心では見知った少年がデュエルをしていた。

 

「ユーゴ大人げねぇな、たまには手を抜いてみたらどうだ?」

「あ? おぉ、ユースケじゃねぇか。やっと小屋から出て来たか!」

「人を引き籠りみたいに言うなっての。ちょっと息抜きに、な」

「なら、どうだ。久々に」

 

ユーゴはそこにあるデュエルテーブル(箱)を指さす。

 

「勿論。そのつもりで来たからな」

 

 俺も応じてポケットからデッキを取り出す。周りの子供たちは、

「ユーゴとユースケの決闘だ!」と騒ぐ。ここじゃ皆がお隣さんみたいな

ノリなので、いつも賑やかだ。

 確かにここには何も無い。シティ全体の99%の資源をトップスの、

“上”の連中が占領して、残りの1%を分け合いながら細々生きてる。

けど、それでも俺たちは助け合って、上を見て生きている。

同い年くらいの奴は「ユースケの奴、生きてやがったか!」と言って笑ってやがる。

……だから引き籠ってたわけじゃないっつの。

 

「こうしてお前とやるのも久々だぜ」

「そうだな。お前はいつもリンと楽しくいちゃいちゃしてるからな」

「はぁ! べべっべ、別にそんんなことしてねぇっつの!」

「ふッ、まぁ、そういう事にしておいてやるか」

「相変わらずひねくれてやがる! いいぜ、かかってこいよ!」

 

「「デュエルだ!!」」

 

ユーゴ:4000LP

ユースケ:4000LP

 

「先攻は貰うぜ、ユーゴ。俺は手札からこいつを特殊召喚するぜ!

《ジャンク・フォアード》!」

 

《ジャンク・フォアード》☆3

攻900/守1500

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、

このカードは手札から特殊召喚する事ができる。

 

「さらに俺はチューナーモンスター、《ジャンク・アンカー》を召喚!」

 

《ジャンク・アンカー》☆2・チューナー

攻・守/0

このカードは「シンクロン」チューナーの代わりとしてS素材にできる。

(1):1ターンに1度、手札を1枚捨て、チューナー以外の自分の墓地の「ジャンク」

モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚し、そのモンスターとこのカードのみを素材として、

「シンクロン」チューナーを素材とするSモンスター1体をS召喚する。

その時のS素材モンスターは墓地へは行かず除外される。

 

「行くぜ、俺はレベル3の《ジャンク・フォアード》にレベル2の《ジャンク・アンカー》をチューニング! 鉄で鍛えしその拳で道を切り開くッ! シンクロ召喚!

レベル5、《ジャンク・ウォリアー》!」

 

《ジャンク・ウォリアー》☆5・シンクロ

攻2300/守1300

シンクロ・効果モンスター

「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがS召喚に成功した場合に発動する。

このカードの攻撃力は、自分フィールドのレベル2以下の

モンスターの攻撃力の合計分アップする。

 

「お出ましか、ユースケのシンクロモンスター!」

「俺はカードを1枚伏せてターン終了だ、そら次はお前の番だぜ」

「言われるまでもねぇ! 俺のターンッ! ドロー!

先にシンクロ召喚したことを後悔させてやるぜ、ユースケぇ! 

俺は、手札から《SR オハジキッド》を召喚!」

 

《SR オハジキッド》☆3

攻1000/守200

(1):このカードが召喚に成功した時、

自分または相手の墓地のチューナー1体を対象として発動できる。

そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚し、

そのモンスターとこのカードのみを素材として風属性のSモンスター1体を

S召喚する。

 

「俺は、オハジキッドの効果発動! ユースケの墓地の《ジャンク・アンカー》

を俺の場に特殊召喚して、シンクロ召喚する!

その躍動感溢れる、剣劇の魂! 出でよ、《HSR チャンバ・ライダー》!」

 

《HSR チャンバ・ライダー》☆5・シンクロ

攻2000/守1000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

自分は「HSR チャンバライダー」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。

(2):このカードが戦闘を行うダメージステップ開始時に発動する。

このカードの攻撃力は200アップする。

(3):このカードが墓地へ送られた場合、

除外されている自分の「SR」カード1枚を対象として発動できる。

そのカードを手札に加える。

 

「けど、攻撃力2000のチャンバラなんとかじゃ俺のジャンク・ウォリアーには

届かないぜ。残念だったな!」

「チャンバ・ライダーだって言ったろ! 残念なのはお前の記憶能力だ!

俺はさらに魔法カード《ヒドゥン・ショット》を発動! 墓地のオハジキッドを

除外して、《ジャンク・ウォリアー》を破壊する!」

 

《ヒドゥン・ショット》魔

①:自分の墓地の「SR」モンスター1体を除外し、

相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを破壊する。

 

「そんなのもあるのか……厄介だな」

「行くぜ! チャンバライダーでダイレクトアタァァック!

“クロス・スラァアアアッシュ”!!」

 

チャンバライダーの攻撃力は2000。この一撃は――――通す。

 

ユースケ:2000LP

 

「おおッ、ユーゴの一撃が決まったぜ!」

「ハハ、ユースケの奴、籠ってて腕がなまってんじゃねぇか」

「まだまだこれからだっての。次は俺のターン――――」

「いや、まだだぜ! チャンバライダーは2回攻撃が出来るんだ!

行けぇ! チャンバライダー! さらに、この時攻撃力が200アップするぜ!

“クロス・スラッシュ”!」

 

《HSR チャンバライダー》攻2000→2200

 

チャンバライダーの攻撃力は2200。どの道、これを喰らえば終わりってこった。

 

――――なら、

 

「俺は手札から《速攻のかかし》の効果を発動だ! このカードを墓地へ捨てて

攻撃を阻止するぜ!」

「ち、そんなカードを持ってやがったか。ターンエンドだ」

「ユースケの奴、首の皮1枚繋がりやがった!」

 

おぉ、と周囲が湧く。

 

「今度こそ俺のターンだ! ドローッ! 罠カード発動!

《ロスト・スター・ディセント》。墓地の《ジャンク・ウォリアー》を

守備表示で特殊召喚するぜ。だたし、レベルは1下がり、守備力は0となる」

 

《ロスト・スター・ディセント》罠

自分の墓地に存在するシンクロモンスター1体を選択し、

自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、

レベルが1つ下がり守備力は0になる。

また、表示形式を変更する事はできない。

 

《ジャンク・ウォリアー》☆4・シンクロ

守/0

 

「今更そんなポンコツ甦らせても意味ないぜ!」

「――――そいつはどうかな。

俺はチューナーモンスター《ジャンク・シンクロ》

を召喚! 効果で墓地から、《速攻のかかし》を特殊召喚!」

 

《ジャンク・シンクロン》☆3・チューナー

攻1300/守500

(1):このカードが召喚に成功した時、

自分の墓地のレベル2以下のモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

「行くぜ! 俺は、レベル4の《ジャンク・ウォリアー》とレベル1の

《速攻のかかし》にレベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューング!

集った希望が天駆ける双翼に宿り、未来を照らすッ! シンクロ召喚!

レベル8、輝け《スターダスト・ドラゴン》ッ!」

 

《スターダスト・ドラゴン》☆8・シンクロ

攻2500/守2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):フィールドのカードを破壊する魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、

このカードをリリースして発動できる。その発動を無効にし破壊する。

(2):このカードの(1)の効果を適用したターンの

エンドフェイズに発動できる。その効果を発動するためにリリースした

このカードを墓地から特殊召喚する。

 

「出たぜ! ユースケのドラゴンだァ!」

「かっけぇ!!」

「バトルだ! 《スターダスト・ドラゴン》で《HSR チャンバライダー》に

攻撃! “シューティング・ソニック”ッ!」

「く、やるじゃねぇか」

 

ユーゴ:3700LP

 

スターダスト・ドラゴン。こいつがデッキのエースモンスター。

そう簡単にはやられないだろう。

 

「今度は俺のターンだぜ! そっちがドラゴンなら、こっちもドラゴンだぜ。

俺は《SR ベイゴマックス》を手札から特殊召喚!」

 

《SR ベイゴマックス》☆3

攻1200/守600

「SR ベイゴマックス」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、

このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。

デッキから「SR ベイゴマックス」以外の

「SR」モンスター1体を手札に加える。

 

「ベイゴマックスの効果発動! デッキから《SR 赤目のダイス》を手札に加える。

そして召喚! 赤目のダイスの効果発動、ベイゴマックスのレベルを6に変更するぜ!」

 

《SR 赤目のダイス》☆1・チューナー

攻・守/100

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、

「SR赤目のダイス」以外の自分フィールドの

「スピードロイド」モンスター1体を対象とし、

1~6までの任意のレベルを宣言して発動できる。

そのモンスターはターン終了時まで宣言したレベルになる。

 

《SR ベイゴマックス》☆3→☆6

 

「レベル変動だって?」

「行くぜ、ユースケ! 俺はレベル6のベイゴマックスにレベル1の赤目のダイス

をチューニングッ! その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!

シンクロ召喚! 現れろ、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》ッ!」

 

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》☆7・シンクロ

攻2500/守2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):1ターンに1度、このカード以外のフィールドの

レベル5以上のモンスターの効果が発動した時に発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

(2):1ターンに1度、フィールドのレベル5以上の

モンスター1体のみを対象とするモンスターの効果が発動した時に発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

(3):このカードの効果でモンスターを破壊した場合、

このカードの攻撃力はターン終了時まで、

このカードの効果で破壊したモンスターの元々の攻撃力分アップする。

 

「すげぇ、ドラゴンが2体も!」

「どっちもかっこいいなァ」

 

場の2体のドラゴンにちびっこも大興奮だ。

これがユーゴのドラゴン、クリアウィングだ。相変わらずかっこいいな。

スターダストもかっこいいけどな!

 

「行くぜ、ユースケ!」

「来いッ!」

 

デュエルはいよいよ見せ場になる、そんな時だった。

 

「「――――貴様等ッ! そこを動くなッ」」

 

「「「!?」」」

 

2人の男――――制服から見てセキリュティ――――が叫ぶ。セキリュティと言っても

治安の維持なんぞしているのか分からない状況だ。俺からしてみれば、だが。

 

「セキリュティ……なんでここへ」

「分からないが、逆らわない方がいいって事はハッキリしてるな」

「どうする、ユースケ。子供達だけでも帰すか?」

「いや、従っておこう。それに奴さんら、そう簡単に許してくれんだろ」

 

ユーゴと言い合うと、セキリュティに向き合う。

 

「天下の番人のセキリュティ様方がこんなコモンズのスラム街くんだりまで

何の用ですか? あ、あれっすか? 社会科見学の視察っすか、大変っすね。

どうぞご覧下さいよ、俺たちの街を」

「……従ってねぇじゃねぇか」

 

ユーゴの小さい突っ込みはスルーしておこう。

 

「黙れ! お前等の中に窃盗を働いた者がいるという連絡を受けてな」

「なるほど。で、根拠はお有りで?」

「それを今から直々に検査させてもらうんだ!」

 

 なんだそりゃ。根拠もねぇのかいと思うが、これが今のシティの支配構造だ。

稀にセキリュティ連中が鬱憤晴らしにコモンズをいびりに来るのだ。

近年それは増している。

 

「検査させろって、ハイそうですかなんて言えるわけねぇだろ!」

「「そうだ、そうだ!」」

 

ユーゴの言葉を刃切りに、子供たちが反対の声を上げる。

 

「うるさい! いいから並べぇ!」

 

セキリュティの一人が近くに居た少女の手を無理やりに掴む。

 

「イヤァ! 離してぇ!!」

「いいから黙って従え!」

 

俺の身体は、自然に動いていた。

 

「――――おいおい、それじゃ窃盗云々どころかおたくが捕まっちまうぞ?

いいのか。セキリュティがそんなことしちまってよ。……手ぇ離せ」

「グッ……こいつッ! それなら貴様を公務執行妨害で連行してやる!」

 

 セキリュティ連中はデュエル・ディスクを展開する。

結局こいつ等は誰でもいいのだ、憂さが晴れれば。

 

「……おいおい、なんだァこの騒ぎは」

「テツ、デュエル・ディスク持ってるか?」

「全く、お前等は……御上に逆らうなってあれほど言ったろ? 

まぁいいさ。ほら」

 

 騒ぎを駆けつけたテツにデュエル・ディスクを借りる。

装着すると“強制モード”でディスクが展開される。

 

「“強制モード”……ッ! ちょいとお遊びにガチ過ぎじゃねぇ?」

 

 強制モードで始まったデュエルは途中で逃げることが出来ない。

さらに負けるとディスクが破壊され、そのままお縄になるおまけつきだ。

つまり、勝つか負けるかのデスマッチ。ってのは言い過ぎか。

 だが、負ければ俺もこいつ等も監獄行は決定事項だろう。

 

「黙れ! 貴様等コモンズの屑の掃除は我々の義務だ!」

「本性出しやがったな……トップスの犬がよッ」

「ユースケ、俺も助太刀するぜ!」

 

 ユーゴもデュエル・ディスクを展開すると俺に並ぶ。

セキリュティ2人vs俺とユーゴという図が完成した。

 

「助かる。こっちは俺が片すからそっち頼む。……やられんなよ?」

「馬鹿言うんじゃねぇ! 俺がこんな奴にやられるかよ!

お前こそ、籠ってて腕がなまってっからやられんじゃねぇぞ!」

「だから人を引き籠りみたいに……まぁいい、続きは犬を追っ払ってからだ!」

 

軽口をたたき合うとそれぞれの相手に対峙する。

 

「行くぞ、貴様等まとめて収容所に送ってやる!」

「そうは行くか。さっさと戻ってお偉いさんに尻尾でも振ってろ」

 

「「「「デュエルだッ!!!」」」」

 

 4人の声がハモリ、決闘が始まる。

シティ。俺たちの故郷に今は自由は無く、日々締め付けられ生きている。

そんな構造を変えるために俺たちは抗い続け、闘う。

 

これが俺たちの……シンクロ次元の現状だ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

work3、課せられた任務

路地裏でのデュエルから数日が経った。特に何が変化することも無く

俺は日々を過ごしている。きっとアレは夢だったんじゃなかろうか? 

そう思えるくらいだ。そう思っていた矢先――――

 

「末城先生。――――社長がお呼びです」

「……っえ、赤馬社長が……ですか?」

 

 何故俺のようなバイトが呼ばれるのか。いや、まぁ大体の想像がつく。

だが、色々分からない以上行くしかないだろうな。レオ・コーポレーション社長、

赤馬零児の元へ。

 

「……分かりました。ありがとうございます」

 

俺はそれだけ答えると、社長室へと行くことにした。

 

 

「失礼、します」

「入りたまえ」

 

 《LDS》の最上階に近いワンフロア。厳かな扉を開くと赤馬零児が立っていた。

傍には中嶋も共に立っていた。怖えぇ……なにこの威圧感。

 16歳が放っていい風格じゃないぜ全く。この場に置いて歳の差なんてどうでも

よくなるぜ(18歳)。

 

「あの、今回は――――」

「あぁ。君にこれをまずは見て貰おうか」

 

 赤馬零児は手元のコンソールを操作する。そこにはおそらく操作パネルが

あるのだろう。天井から大型の幕が降りてくる。なんだ、映画鑑賞でもしようって

のか?

 

「これは?」

「……先日、市内の路地裏で正体不明の召喚反応が検知された。反応は融合・

シンクロ・エクシーズどれとも一致しない。が、それ以上の値を示していた」

「それは――――」

 

 既に事を把握していたか。流石、レオ・コーポレーション。その情報力は

然ることながらってやつだな。で、ここに呼ばれたって事は「お前、関係あるよな?」

って事だろうなぁ。

 幕に画像が映される。それは、《降雷皇ハモン》とあの男だった。そして、

それと対峙する、俺。画質は延ばしているからそこまでよくは無いがこれは弁明

の余地はなさそうだ。

 

「ここに映っているのは、君で間違いないな」

「――――俺です」

「これはどういう事だろうか」

 

 どうやら、《LDS》側もその場は捕えたが情報は無いようだ。

だから俺がここに呼ばれたわけか。事情聴取、という事だ。

 

「あれは――――」

 

俺はあの日の事を全て話すことにした。

 

 

「……まるで信じられない話だ」

「いや、そうでもない。なるほど……」

 

中嶋が唸り、赤馬零児がそれを否定した。

 

「ってなことで俺はそろそろ――――」

 

退散しようかなぁと……

 

「そうはいかない」

「ですよねぇ……けど、俺の知っていることは全てお話しましたよ」

 

 これ以上何を望むんだよ。後はご自慢の情報力とかその辺でサクッとどうにか

してくださいよ。

 

「私は前々から、君に興味があるんだ」

「え……」

 

 もしかしてホモなんですか? って言ったら即刻首が飛ぶだろう。リアルで。

しかし、一目置かれる理由がわからん。俺は善良なアルバイトな訳だが……

 

「君が担当するようになってからは君のクラスの成績は目を見張るばかりだ。

そして君自身。融合・シンクロ・エクシーズを使いこなし、シンクロモンスターを

用いた融合召喚までやってのける。君は、それをどこで取得したのだろうか……?」

「え、まぁ……独学?ってやつですかねぇ」

「独学、ねぇ……」

 

 どうやら事情聴取だけだと思ったら、俺自身の身元聴取だったか。

弱ったなぁ。この場時点で丸裸にされているようなもんだ。

 

「私が知る限りの君のデュエルスタイルは罠カードを多く使い相手を翻弄し、

その隙を崩してゆくスタイルだった。だが、一方今の君は主にシンクロモンスターを

使い大型モンスターで攻め立ててゆくスタイルだ」

「何が、言いたい……んですか」

 

 言いたいことがあるならはっきり言えよ。後、こっちの俺。

中々いやらしい戦い方してたのな。きっと、メタビートみたいなデッキを

組んでたんだろうなぁ。それは置いておいて、だ。

 

「確かに決闘者のデュエルスタイルは往々に変化するのだろう。だが、

いや、言葉遊びはここまででいいだろう。

これは、あくまで私の仮説に過ぎないのだが……」

 

そして赤馬零児は仮説に過ぎる推論を俺に叩きつける。

 

「――――君はこの“次元”の人間ではないのではないか?」

「っ!? じ、次元? ――――それは一体どういう事ですか」

 

 こいつ完全に分かった上で言ってやがるッ……!

赤馬零児は確信したかのように俺をその眼光で捕える。

 

「我々は今、来る次元戦争に備えた準備を進めている」

「社長ッ!」

 

 中嶋が制止する。流石にそれを俺に言うのはマズイと考えたのだろう。

俺の原作知識は舞網チャンピオンシップまでだ。赤馬零児が融合次元、アカデミア

に対抗しようと、その戦士を集めようとしていることは知っている。

 知っているが……

 

「仮にそうだとして、何故俺にそれを言うんですか?」

「当然、君のいた次元は我々の敵になりえるのか分からないからだ。

我々の相手は強大。少しでも反乱分子は減らして然るべきだ」

「あーそれなら大丈夫ですよ。俺の元居た世界にはデュエル・ディスクなんてものも

ソリッド・ヴィジョンなんてものもありませんから。土俵に立てない」

 

あーもうバラしちまってるけど。もう隠しきれないだろう。

 

「ソリッド・ヴィジョンが……信じられない」

 

 おう、中嶋。俺の居た次元を発展途上みたいに言うのやめれ?

軍事力はこの次元より上だぞ。きっと……

 

「俺のいたところじゃ、デュエル・モンスターズは“遊戯王”って呼ばれてて、

ただのテーブルゲームとして楽しまれてますから」

「なるほど。君はそこで融合やシンクロを?」

「あぁ。俺たちの世界じゃ皆使ってる。それこそ幼稚園児でも、ね」

「そうか。そんな次元が存在していたとは……」

 

 赤馬零児は考え込むような姿勢を作る。少し皮肉を混ぜけど動じもしないよ……

そもそも幼稚園児が完璧にルール知ってデュエルしてたら凄いな。

 

「それで、どうするんですか? 結局、俺は異端分子ってやつでしょう。

此処から去れというなら、いなくなりますよ。勿論ここで聞いたことは

他言しませんし」

「……いや、その必要はない。むしろ、君の力を借りたい」

「社長!?」

 

反対の意思を示す中嶋を赤馬零児は手で制する。

 

「君は今まで通り我が《LDS》の一員でいてもらう。

当然今日この場での事は、口外はしない。中嶋」

「心得ております」

「はぁ……それで俺に何をしろって言うんです? 

態々今日、この場で言ったんだ。裏があるんでしょう?」

 

 この男の事だ。どうせ俺のことも前々から気づいてたんだろう。

多分この前のデュエルから。その上で泳がされてたんだ、癪だが。

 

「あぁそうだ。君に一つ、任務を与えようと思ってね」

「任務?」

「君が対峙したと同様の所謂伝説のカードの“レプリカ”はまだ存在する」

「まぁ、そんな感じがしてましたよ……」

「アレは独自に開発されたもので、デュエル・ディスクからシステムにハッキングし

情報改ざんを行うことで実現していると推測される」

「推測?」

「まだ、情報不足でね。あくまで仮説だが既に同様の事例が数件挙がっている」

 

 つまり、俺のように伝説級のカードと対峙したって奴が他にも居るのか。

どんだけ量産されたんだよ……

 

「これから、舞網チャンピオンシップという時期。このままこれらのカードが

蔓延したとしたら、どうなるかは想像に易いだろう」

「……伝説モンスターのバーゲンセールって訳ですね」

 

あちらこちらで神がポンポン出てくる……地獄絵図かよ。

 

「あぁ。つまり我々としては早急に事の究明に当たらねばならない」

「はぁ。そこで、俺……ですか?」

「話が早くて助かるよ。一度対峙し退けた君が適任だ。

勿論、報酬は用意させてもらう」

 

マジすか? 期待するからな。

 

「必要とあればカードも提供しよう。相手の強大さは理解している」

「……そこまでお膳立てされたならやらずにはいかない、ですね」

「そうか。なら、これはまだ試作段階だが持っていくといい」

「こいつはッ……本当にいいんですか?」

 

 赤馬零児は手始めに数枚のカードを俺に手渡す。

開発しているのは知ってたが、俺の元に来るとは思わなかった。

 

「君なら使いこなせるだろう。では、頼んだ」

「けど、情報も無しに闇雲に当たるんですか?」

 

 この間のようなことは早々無いだろう。なら、この街でそれらしい

カードを持っている人を特定するのも難しい話だ。

 

「それなら心配はいらない。大体の目星は付いている、中嶋」

「はッ。市街の外れのビルの地下に賭けデュエルを行っている集団が屯している。

事例の一件はそこから挙がっていると報告がある。まずはそこを当たって欲しい」

 

 裏ルートから手に入れただろうか。そういや、この前の相手も破落戸って感じ

だったし。あの研究者もまだ未完成的な事を言っていたことからして、そのカードは

まだ実験段階なんだ。試すならリスクの少ない奴を選ぶのが妥当。その連中は実験の

モルモットって訳か。

 

「では、頼んだ」

 

 俺は社長室を後にし、まずは家へと戻ることにした。

とりあえず、このカードを使って新たなデッキを組むために。

 

 

「社長、本当に宜しかったのですか?」

「……彼もまた、“ランサーズ”のメンバーとしてなりえるか、そのテストに過ぎん。

そのために渡した“ペンデュラムカード”だ。――――引き続き、彼の動向を監視しろ」

「はッ!」

 

「全てはこの戦争の――――赤馬零王に勝利する為に……」



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。