〈※凍結中〉IS インフィニット・ストラトス 高専生がIS世界に転生!? (瑞翼 翔)
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FRAME-00 青年はなぜ転生したのか

修治side

 俺、新城修治は、どこにでもいる二十一歳の高専生だ。とはいっても、ある点でついさっき人とは違うことになった。それは―――

 

「俺、死んだよな…………」

 

だとすれば、此処はどこだろう?遠い遠い昔にもここに来たことがあるようなないような……。

「それで、なにしてたっけ?」

 そういって、俺は記憶を手繰り寄せていった。

(確か、久しぶりに外出して欲しいプラモ買って、ウキウキ気分で寮に帰ろうとした時に5トントラックがこっちに突っ込んできて、死んだんだったな)

 

「そのとおりです」

「誰だ、お前」

 

 俺が記憶をたどって行っていたら、急に後ろから15歳くらいで、セーラー服を着た、黒髪で後ろで髪を縛った女性(というか、女子?)が現れた。というか、どっかで見たことのある顔だな~

 

「私は、あなたたちの世界で言うところの神です」

へ~そうなんだ~(棒読み)

「信じてないんですね?」

そらとーぜんだ。――――ん?ちょっと待て、今俺の心の中読んだ?

「そうですよ、だって私は神なので」

「そうか、なら信じます」

「ありがとうございます。それで、スミマセンでしたっ!」

 

そういって、頭を下げた神サマ。

 

「えっ、何で頭下げてるんですか!?」

「実は………。私がミスをしてしまって、あなたが死んでしまったんですよ」

 うわぁ。かなりショックだわ~。

「なので、私があなたに対する罪滅ぼしという形で『転生』をしていただきます」

「『転生』って、あれですよね。二次小説なんかでよくある」

「まあ、そうですね。その解釈で合っています。それで、転生先の世界は何がいいですか?」

「そうですねー。〈インフィニット・ストラトス〉の世界でお願いします」

「ガンダムの世界でもいいんですよ?君好きですよね」

「そうですけど……。ISのほうが、死ぬ確率低いので」

「確かにそうですね。それで、何か希望はありますか?六個くらいなら実現できますよ」

「わかりました。一つ目は、容姿のことなんだが、『ガンダムEXA』の主人公で。二つ目は、記憶は転生しても消さないでくれ。三つ目は、体のスペックについてだが、『ガンダムSEED』の『スーパーコーディネーター』並みの体力で、『更識楯無』に余裕で勝てるようにしつつ、一度見たものは絶対忘れない記憶力を持ってて、ISを独力でコア込みで一から作れるような頭脳にしてくれ。あ、もちろん、ISを動かせるようにもしてくれ」

「もう、この段階でチートですね」

「そうかもしれないですね。それで、四つ目は、専用機を頼む」

「何にするんですか?」

 

うーむ。『ユニコーン』、『バンシィ』、『フェネクス』のどれがいいかな~

 

「あ、言い忘れていましたが、専用機をモビルスーツにした場合、同じ系統もしくは同じ型番の機体を一つにすることができます」

「そうですか。なら、『ガンダムUC』の『RX-0』の全ての機体で、『ユニコーン』と『バンシィ』の装甲を『ヴァリアブル・フェイズシフト装甲』に、『フェネクス』の装甲を『ヤタノカガミ』にして、武装はFAバージョンを込みで全てでお願いします」

「わかりました。五つ目は何ですか?」

「IS世界に『アナハイム・エレクトロニクス』を作って、親を其処の社長にしてくれ。そんで、『篠ノ之束』を匿っていることにしてくれ」

「うわぁ、すごくでっかいことになりそうですね。それで、他には?」

「最後に、織斑一夏、篠ノ之箒、鳳鈴音と幼馴染にしてくれ」

「あ、最後になって、ようやくまともなものですね」

 

 すんげー失礼なこと言われた気がするけど、それは置いといて、

 

「以上です」

「では、IS世界に転生しますよ。あ、そうそう。私の方で、少し矛盾していると思えることとかは直しておきますので、気にしないでください」

「わかりました」

 俺がそういうと、俺が立っていた床が二つに割れ、落ちていった。

 

(あ、あの神サマ。『艦これ』の『吹雪』に似てるんだ…………)

 

 そう思うのを最後に、俺の意識は無くなった。

 

修治side out

 

神サマside

(ハァ~。一日に別の場所で()()間違えて殺してしまったな~神サマ辞めさせられそう……。どうしよう)

 そう思いつつ、上の立場の神様に報告をしに行った。

 

 




4/12修正。
2018年7月、一部修正


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FRAME-01 えっ!妹!?

前の投稿から、約四か月後にこの話を投稿します。遅くなってすみませんでした。
それと、一つ報告があります。五月の初めに、『艦これ』をプレイし始めました。(つまり、艦これ未プレイでこの小説を書こうと思ったわけです。)鎮守府サーバーは、大湊です。ネームは、ペンネームと同じですので、もし演習で逢った時には、どうぞお手柔らかに。

さて、『IS インフィニット・ストラトス高専生がIS世界に転生!?』第二話、抜錨です! 


修治side

 俺が意識を取り戻した時、

「祐里さん。元気な男の子ですよ~」

と、俺の上の方で女の人が言った。どうやらその人に俺は抱きかかえられているようだ。

 

(ん?ちょい待て。このパターンってまさか………)

 

 そして俺は頭の中でできた仮説を実証するために自分の手を見た。結果は、仮説通り。つまり、俺は、赤ちゃんから人生をやり直すようだ。ちなみに、このことを考えている間にも、俺は本能で泣いている。理性と本能が同時に動いているのにも、自分でもビビッている。

 さらに驚いたのは、俺の母さんの顔を見た時だ。

 

(俺の母さんが、『艦これ』の『翔鶴』だと……。私は聞いていないぞ!神様!)

 

 まあ、なったもんはなったで、置いといて、俺の第二の人生が始まった。そして、物心ついた(と世間では言う)頃に知ったことは、

①俺のこの世界での名前は、『神上修治』であること。(あんまし名前が変わっていない気がするが………。)

②俺の父さんの名前は、『神上光次』、母さんの名前は、『神上祐里』であること。

③神様にお願いした通り、父さんは『アナハイム・エレクトロニクス』の社長になっていて、さらに、母さんが其処の副社長になっていたこと。

そして、最後だが、これが一番重要である。それは………

 

④父さんと母さんは、何か重要な隠し事をしている。そう、例えば、()()()()にかかわっているような………。

 

ということである。

 

 まあ、それはおいといて、今俺は、五歳になり、何度か目の日曜日の朝。俺が朝食を食べている時、父さんが、

 

「なあ、修」

 

と、声をかけてきた。ちなみに、『修』とは、父さんと母さんが付けた、俺の愛称みたいなものだ。

 

「どうしたの?お父さん」

「父さんと母さんは、修に伝えないといけないことがあるんだ」

 

えっなにその言葉の切り方。チョー怖え~。

 

「実はな…。母さんのお腹の中に赤ちゃんがいるんだ。」

「へっ?」

 

 待て待て!俺前世で一人っ子だったから、弟か、妹が生まれてもどうすればいいのかわからんだけど!

 

「だから、修は、お兄ちゃんになるのよ」

と、母さんが言った。

「そうなるのか~。あ、そういえば、会社はどうするの?お父さん」

「そういえば、そうなんだよなー」

 父さんがそういったとき、ふいにつけていたテレビの戦隊モノが止まり、アナウンサーが出てきた。

 

『緊急ニュースをお伝えします。先程、全世界のミサイル基地が何者かに同時ハッキングされ、日本を攻撃可能なミサイル2341発が発射されました。日本政府は直ちに各地にある鎮守府と警備府、それに航空基地に対して迎撃命令を出しました。繰り返しお伝えします。――――――』

 

 白騎士事件が始まった。

 

だけど、原作通りの展開になったから、割愛!

 その後、原作通りに女尊男卑社会になってしまい、会社側から解雇、つまりはクビになってしまった男性たちがたくさん出てきた。しかし、父さんはそのようなことはせずに、失業した男性たちを雇いなおしつつ、女尊男卑の風潮に染まってしまい、男性社員に対して差別的な態度を取った女性に対しては、即刻解雇したりして、売り上げを伸ばしていって短い期間でアナハイム・エレクトロニクスを大企業にさせた。――スゲーよ、父さん。

 そして、何回か父さんと母さんと一緒に産婦人科に行って、お腹の中の赤ちゃんについて聞きに行った(むしろ検査というべき?)ときに、産婦人科のお医者さんから、

「これは珍しい。二卵性双生児と一卵性双生児の四つ子ですね」

 それを聞いて、父さんは、

「性別は、なんですか?」

と聞いた。するとお医者さんは、

「全員女の子ですね。」

と言った。

 

 そして、母さんのお腹が日に日に大きくなっていった。父さんの方は、会社の方を信頼ができる専務の人に頼んで母さんをサポートしている。もちろん、俺もサポートに回っている。しかしながら、俺はまだ子供。できることは限られてくるので、その限られた中でできる仕事を頑張った。

そんなある日の深夜。俺は珍しく目が覚めた。(というか、前世でこんな時間まで起きていたことはよくあったので、転生してから初めてっていうこと。いつもは、しっかり子どもとして正しい時間に寝て、正しい時間に起きている)だが、やることもなく、とりあえず台所で水でも飲もうとしたので、一階に降りた。(つまり、俺の部屋は二階にある)すると、一階にある、父さんの部屋から明かりが漏れていた。

(どうしたんだろ?父さん)

そう思って、部屋のドアを開けて部屋の中へと入った。どうやら、父さんは机に突っ伏して寝ているようだ。俺は、その机に乗っかっている図面を見つけ、それを見た。

 それは、ISの設計図だった。名前は『G』で、形やカラーリングはモロ『ガンダム』の『ジム』だった。だが、全身装甲では無かった。ま、当然だけど。

 

その数か月後、アナハイム社が世界初のISとして『G』を発表した。これで、アナハイム社の名前が、世界中に広まった。

 

 それからほんの少し経ち、母さんが妊娠してから約十か月後の1月9日に丁度なった時間帯。俺は、母さんの、

「う~。痛い痛い痛い!」

という声で起きた。

 すぐに階下に行き、父さんと母さんの部屋に転がり込むようにして入った。

「父さん!」

「分かっている。修はすぐに外に出られる格好で待っていなさい」

「わかった」

 

 俺はすぐに二階の自分の部屋に行き、タンスから服を取って着替えをした。

 

「修、行くぞ。病院に」

「うん。母さん、歩ける?」

「なんとか、ね」

 

俺のこともこんな大変な思いをしてまで産んでくれたと思うと、感謝してもしきれないな。本っ当。

 

 俺たちは、父さんの運転する車に乗って、最寄りの産婦人科に行った。ちなみに席についてだが、俺は助手席、母さんは楽な姿勢でいられるように後部座席にいる。

 そして、安全運転ながらも、急いで産婦人科に行き、着いたらすぐに母さんは分娩室へ、父さんはお医者さんに連れられて分娩室の方に連れて行かれ、俺はひとりで分娩室の前にいた。

(あ~。すっげー不安だ!)

 とりあえず、神に祈る。情けないかもしれないが、これが俺の今できる最大の仕事だ。

 

それから何分か経った時、分娩室の方から、赤ちゃんの泣き声がした。しかも四人分!

 

(良かった~無事に生まれた~)

 俺は安心してしまい、力が抜け、その場にへたり込んでしまった。それを見た看護師さんが心配してくれたが、『大丈夫です』といい、自力で立ち上がった。

 そして、分娩室のドアが開いて産婦人科の先生が出てきた。

「あ、あの……。赤ちゃんは……」

「全員無事に生まれて来たよ。勿論、君のお母さんも無事だよ」

「ありがとうございます!」

「いいの、いいの。私の仕事は赤ちゃんとそのお母さんが健康に将来過ごせるように最善を尽くすことだから」

 

うわ、スゲーいい話聞いた!

 

「それじゃあ、私は行くよ」

そういって、先生は向こうへ行った。

(珍しく、いい先生だな~)

 

その次に父さんが出てきた。

 

「父さん!」

「修、良かったな。お兄ちゃんになるぞ」

「うん、そうだね。それで、母さんは?」

「元気だけどな、様子を見るために、しばらく入院するんだ。だから、しばらくは父さんと一緒だぞ」

「うん」

 

 そして、俺と父さんは、病院から出て、車で家に帰った。その道中でのこと、

「ねえ、父さん」

「何だ?」

「名前決めた?四つ子の」

「そういえば、まだだな。それに、全員髪色違ったし」

「どんな色だったの?」

「生まれた順で行くと、紺、銀、茶、茶だったな」

 

(へ?ちょい待って。その順番ってあれだよね?)

 

「なぁ、修。何かいい案無いか?四つ子の名前」

「うーん。有るけど…」

「そうか。じゃあ、聞かせてくれ」

「紺の方が『暁』銀髪の方が『響』先に生まれた方の茶髪が『雷』残った茶髪が『電』で、どうかな?」

「そうか…。うん。いいと思うぞ。母さんにもあとで聞いてみるか」

「うん」

 

 そのような会話をしながら、家に帰った。そして、帰ってすぐに寝た。まあ、今はもう空が白み始めた時刻だけどね。

 

 後日、母さんに四つ子の名前について、俺の出した案を言ってみたら、

「それはいい案だわ。それにしましょう」

と言って、俺の出した案で四つ子の名前は決まった。さて、四つ子の世話、俺も頑張りますか!




 誤字、脱字があれば、ご指摘よろしくお願いします。感想もできればよろしくお願いします。

4月6日修正


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FRAME-02 名もなき日常 

 前話投稿から七か月ぶりに投稿します。遅れてしまい、申し訳ありませんでした。本来は、昨年の十二月に投稿予定でしたが、執筆中の一部データが飛んでしまい、遅れてしまいました。(それに加え、艦これのイベント、リアルでのごたごたも重なってしまいました)
 前置きが長くなってしまいましたが、『IS インフィニット・ストラトス高専生がIS世界に転生!?』第三話、抜錨!


修治side

 どうも、神上修治です。ISの世界に転生して、小学校から人生やり直しています。すごく勉強が退屈です。なぜかって?こっちがわかっていることを、ダラダラと聞かされているからだよ。某メガネの少年探偵の気持ちがすごく分かるよ。本っ当、テストがちょろ過ぎてすぐに終わっちゃいます。時間が余ったので、寝ます。そして、テストが終わった後に、そのことについて担任のBB…もとい、先生に怒られます。それをいつも聞き流しています。そして、言い忘れていましたが、今も怒られています。

 

「―――――分かりましたね!」

「はい」

 

 あ。今気づきました。聞き流しても、ある程度はつなげられました。驚きです。

 

「戻っていいよ。神上くん」

(テメエに『くん』付けされる筋合いねえよ。BBA)

 

 そう思いつつ、自分の席へと戻ります。席に座ったら、机の中からいつも読んでる『龍●がゆく』を読もうとした時、

「しんじょう……くん?」

と声をかけられた。なので、俺は声が発せられた方向を向いた。

「織斑か、どうしたんだ?」

「オレのことは『いちか』でいいよ。しんじょうくん」

「だったら俺のことも修治でいいぞ、一夏。それで、どうしたの?」

「あのな、べんきょうおしえてほしいんだ」

 おおう。急にタメった。ま、いっか。ちなみに、さっきから俺が話しているのは、読者の皆さんがお察しの通り、織斑一夏。勿論ご存知原作主人公。

「おう、いいぞ。見せて」

「ありがとう」

 

そういって一夏は教科書を渡してきた。

 

(確か、今は43ページやってるよなぁ)

 と思ってぺらぺらと教科書をめくって行って、43ページに着いた。

(ふんふん、素因数分解かぁ~。どう教えたら一夏が理解してくれるかなぁ~。ん?ちょい待ちぃ)

 俺は、この教科書に感じた違和感に対する仮説を立証するため、教科書の表紙を見た。検証の結果、仮説通り、そこには、『数学 三』と書かれていた。まあ、俺が渡されたときに気づけよって話なんだけどな。

 

「なぁ、一夏。なんで中三の教科書持って来てるんだ?」

「えっ、ウソ!」

 

オレの手から教科書を取り、一夏は見ていった。

 

「……ほんとうだ。ちふゆおねえちゃんのきょうかしょもってきちゃった!」

「じゃあ、お姉さん困ってんじゃない?」

「でも、おねえちゃんこーこーせーだよ」

「そうなのか。じゃあ、一夏の算数の教科書ってどこにあるの?」

「たぶん、いえだとおもう」

「そうか…。じゃあ、先生に教科書忘れたこと言ってきたら?」

「わかった」

 

そういって一夏は先生の所へ行った。

 

(そういえば、母さん大丈夫かな?暁たちの世話)

 

そう思いつつ、『●馬がゆく』を読んでいると、

キーンコーンカーンコーン

 昼休みが終わった。それにしても、小学校って昼休みが終わってから五時限目が始まるまでの間が何で五分多いんだろう?

 

そうして、退屈な日々が過ぎていく。

 

(つーか、俺って対人スキル低くね?)

 

……。明日からは、しっかりと人と遊ぼうか。やっぱり。

(それにしても、やはり俺の見立ては正しかったな。俺の妹たち、艦これの第六駆逐隊の四人だもん。まあ、名前はそっちからとっているのはナイショだけどね)

 

 それから、およそ四年が過ぎた八月の十五日。それは俺の十回目の誕生日の前日。俺は夏休み真っ只中のため、一日中家で妹たちと遊んでいる。―――――宿題…?いえ、知らない子ですね。

 

 暁、雷、電と俺が遊び、響がひとりで本を読んでいる。

(響、何読んでるのかな~?)

と思って響の方を見ていると、

「おにいちゃんは、いなづまたちとあそぶのです!」

「そうよ、それに、れでぃのいるまえでほかのひとをみるのは、しつれいなことなのよ!」

暁と電に両頬を引っ張られた。

 

(果たして、これは教育をミスったというわけではないよな…。三歳児が『レディ』という単語を使っているということは)

 

 そうして、妹たちと遊んでいて、ふと時計を見るとお昼近くになっていた。

「さて、と。お兄ちゃんはご飯を作るから、待っててね」

と言って俺は台所に行こうとした。すると、

「おにいちゃん、わたしにたよってもいいのよ」

雷がそういった。それにのっかるように電が

「いなづまもほんきでたすけるのです!」

といってきた。

 

(うーん。この積極性を喜ぶべきか、はたまた危なっかしいと思うか。それが問題だ。さて、と。昼飯どうしよう)

 

 俺がそう考えていると、

ピンポーン!

(ん?こんな時間に誰だ?)

 

 そう思いつつ、俺は妹たちに、

「絶対玄関には出てくるなよ~」

と言ってから、玄関のドアのカギを一番上以外、外してからドアを開けた。すると、

「なんだ、一夏か」

「おう。どうしたんだ?」

「それはこっちのセリフだ」

「わりぃ。飯作ってくれ」

「またか…。まあ、いいけど。ちょうど今から作ろうと思っていたところだし」

「そうか!よかった~」

「そうだ、千冬さんいる?」

「おう。それがどうした?」

「なんだ?私がいるとダメか?」

 

 ドアの陰から長門…じゃなくて、千冬さんが出てきた。

「いえ。ただ、人数の把握をしておかないと分量がわからなくなるので」

「それもそうか。すまない。」

「いえいえ、大丈夫ですよ。では、立ち話もなんですし、中入ります?」

 

そういって、一度ドアを閉めて、一番上のドアロックを外し、またドアを開けた。

 

「どうぞ」

「「お邪魔します」」

 

そういってはいる織斑姉妹。そう言えば、今思ったことなんだが、よく学校側から渡される、『夏休みの決まり』なるプリントがあるのだが、その中に『親のいない家に遊びに行くな』っていう文言があるのだが、ムリじゃね?守るの。まあ、作者さんは守っているらしいがな。そもそも、あの人ボッチ状態らしいし。

 

 それはおいとくとして、俺の家に入った織斑姉妹を暁、雷、電が出迎え、響だけがそっちの方を見てまた本の方に目を落とした。

 

(これこれ、挨拶くらいしとけよ、響。もしかして、人見知り?いや、何回も一夏は来てるはずだが…。あ、千冬さん?千冬さんに人見知りしてるのか?響)

 

 シスコンだと!?冗談じゃないわ!俺はただ単に妹たちの先のことを考えてだな………。

 

「どうしたんだ?修治」

「すまんな。少し考え事してた。昼飯はそうめんでいいか~?」

「ええ~また~?」

「そうめんはもうあきたのです!」

 

雷と電が反対し、

 

「あかつきはれでぃだから、おにいちゃんがきめたことにはしたがうわ!」

「хорошо(すばらしい)」

 

暁と響が賛成した。つーか、響にロシア語教えたの誰さ?俺しか家族の中でロシア語訳せる人いないから、父さんたちは?マーク浮かべるだけなんだが……。そういえば、去年買った日露辞典どこ行ったんだろ?

 

「なんで、またそうめんなのよ!」

「今の時期にそうめんを片付けないといけないからだよ」

「じゃあ、ふゆににゅうめんたべればいいのです!」

「それもそうなんだが、大人数になったからそうめんにしないといけないんだよ。手間があんまりかからないから」

「「それならしょうがない(わ)(のです)」」

 

 やっぱり双子だね。こういうことで声がそろうのは。

 

「分かってくれたんだったらいいよ。それじゃあ、作ってくるよ」

「俺も手伝うよ」

「悪いな、客なのに」

「いいよ。俺は良く修治の家に飯食べさせてもらっているいるから、こういう時にその分の恩を返したいんだよ」

「そうか。なら、早く作るぞ」

 

 そういって、俺たちはそうめんを作り(と言っても茹でて麺をざるに出して冷水で冷やして、つゆを作るだけだけど)、リビングへと持って行った。

 

「できたぞ~。響は本を片付けとけよ~。こら、雷電!今から新しい遊びを始めるな!」

「「名前をまとめないで(なのです)!」」

「すまんな」

 そう言いつつ、そうめんをテーブルへ置いていく。そして、一夏がつゆを2つ持ってくる。

(これ、お盆で持って行った方がよくね?)

と思ったので、俺は台所へ行き、残っているつゆをお盆にのっけて持っていった。

 

 そして、各席へとつゆを置いて行って、各々が全員席に着いたところで、

「それじゃあ、いただきます」

「「「「「「いただきます!」」」」」」

 そして、俺たちはそうめんを食べ進めていき、しばらくして、全員がそうめんを食べ終わろうかという時に、

 

ガチャッ!

 

「ただいま~」

「あ、母さん。お帰り~」

 

 母さんが会社の昼休みに帰ってきた。そして、リビングへと向かわず、台所へと向かい(うちは、玄関と台所が引き戸でつながっているタイプである)、帰り道に買ってきたのであろう食材を冷蔵庫に入れ、リビングへと来た。

 

「あら、一夏君と千冬ちゃん来てたの?」

「「お邪魔しています」」

「そう固くならないで。そうだ、暁たちはどう?修」

「うん、大丈夫。ケンカもなかったし」

「そう。それなら良かった。そういえば、千冬ちゃん。モンド・グロッソ優勝おめでとう」

「ありがとうございます。おばさん」

「それにしても千冬ちゃん。試合観てて思ったんだけど、『暮桜』っていうんだっけ?あれって太刀しか搭載していないの?」

「まあ、そうですね。ワンオフアビリティの方に容量使っているので」

「そうなの!?だったら、遠距離の敵を倒すときはどうしてるの?」

「近づいて一刀両断していますね」

「よくそんな戦術で勝てたね」

「自分でも驚いていますよ」

「そうなのね……。話は変わるけど、修。学校の宿題ちゃんとやってる?」

 

おおう。急に話、俺に振られた。

 

「うん。もう終わってるよ」

 

「それならいいわ。それで、一夏君は?」

 そういって母さんは一夏の方を見た。すると一夏は母さんから目をそむけた。

 

(まさかとは思うが……)

 

「まさかお前、宿題やってないとか言わないよな……」

「え?やってないけど?しゅ―――ぐえっ!」

 

千冬さんのチョップが一夏の喉にクリティカル!一夏は50のダメージを受けた。

 

「一夏、お前はカ●オかよ!」

 

 つい、某ご長寿アニメの坊主頭の小学五年生の名前を口走ってしまった。反省。反省。

 

「いま、ふせじがはいったのです」

「さくしゃ、ちょさくけんにふれるのこわがっているみたい。だから、なんかいもこのしょうせつすいこうしてるのよ。まあ、そのおかげでとうこうがおくれているみたいだけれども」

「Извините(すまなかった)、さくしゃさんもそういってる」

「しっかし、だれにむけてはなしてるのかしら?」

「このさくひんをみているどくしゃのかたがたにむけてなのです!」

「Спасибо(ありがとう)、こんなちせつなぶんをよんでくれて」

 

 どうしよう。一夏のことも心配だけど、うちの妹たちもメタ発言バンバン出していることも、別の意味でかなり心配だ。

 

「一夏、俺たちの夏休み、後10日しかないぞ」

「うえっ!マジで!?」

「マジだぞ。しょうがない。俺の貸そうかな。ただし!」

「きよみ?」

「何ぞ?その返しは」

「ん~、何となく?それで?」

「今すぐ宿題すべてここにもってこい。ここでやるぞ」

「分かった」

「一夏、早くとってこい。さもなくば死ね」

 

(うわぁ、実の弟に言うセリフか?これ)

 

そのような事を思いつつ、暁たちに声をかける。

 

「俺たち此処で勉強するから、部屋で遊んでて」

「「「わかった(わ)(のです)」」」

「りょうかい」

 

 そういって暁たちは部屋へと戻って行き、一夏は宿題を取りに行った。

 

「それじゃ、私は仕事に戻るから。午後も暁たちのこと、よろしくね」

「あれ?母さん。昼ご飯食べたの?」

「帰ってくる途中で食べて来たわ」

「そう、それなら良かった。行ってらっしゃい」

「いってきます」

 

そう言い、玄関のドアを開け、母さんは外に出ようとした――――が。

 

ビターンッ!

 

「母さん、大丈夫?」

 

 コンクリに躓いて盛大にコケた。

 

「うん、大丈夫よ、修。いつものことだから。改めて、行ってくるわね」

そう言い、今度は転ばずに歩いて行った。

 

 リビングに戻ったら千冬さんが煎餅食べていた。

 

「千冬さん………。なにくつろいでるんですか?」

「ああ、済まないな。ところで、おばさんっていつもあんな感じなのか?」

「まあ、はい。でも、母さんが高校生の時、登校中に転びそうになった時に受け止めてくれた人がいてくれて、それがどうやら、父さんらしいんです」

「なんだその少女漫画チックな話は」

「そう思いますよね。でも、現実は小説よりも奇なりとよく言いますし」

「まあな」

 

 千冬さんと談笑していたら、一夏が戻ってきたんだが……。

 

「箒、どうしたんだ?」

 

箒もいたのだ。地味に驚いた。

 

「わ、私も宿題終わっていないのだ!だから…、その、何だ…」

 

あ~。察した。とどのつまり、『勉強という口実で一夏と二人っきりになりたい!』ということか。一夏よ、もう少し女心考えろよ。年長者からの教えです。

 

「分かった。なら、一夏と箒はここに座れ」

 そういって、俺は()()()二人を隣同士にするようにして座らせた。

「千冬さん、この後予定ありますか?」

「いや、な…。あったな、そういえば。私はそろそろ帰る。一夏、修治と篠ノ之に迷惑をかけるなよ」

 千冬さんはそういった後に俺の方へと向かってきて、小声で話しかけてきた。

「修治、篠ノ之のフォロー頼むぞ」

「了解です」

「しかし、一夏は女心というものを知らんな」

「全くです」

 

 ここまで言ったところで千冬さんは離れ、

「ではな」

と言って出て行った。

 

「さて、と。一夏、お前がわからないところは箒に聞け。箒もわからなかったら俺に聞けよ。というわけで俺は二階にいる」

 

 そういって俺は二階へと向かった。

 

(さて、と。妹たちと遊ぼうにも、一夏たちの勉強を見ないといけないしな~。あ、そうだ!『大和』建造しよう!)

 

 というわけで、部屋に入りクローゼットの中から、デカい箱の赤と青の星がついた『大和』のプラモデル(旧版)を出し、箱を開けた。

 

(旧式のプラモデルだけれども、やっぱりいいな~、大和は。というか、前世でこれ買いに行った帰りにトラックに轢かれて死んだんだよな~。だって、その時にはもうほとんど売ってなかったんだよ!ガチで)

 

 そのような事を思いつつ、ランナーからパーツを切り、接着していく。ちなみに、俺は塗装に関しては組み途中にする派だ。作者は先にする派のようだ。

(大和って、就役した時と沈没した時とでかなり印象違うんだよね~、印象が。俺は、沈没した時の方がかっこいいと思うんだよね。だって、高角砲や機銃がたくさんある方がカッコ良くない?)

 

 ちなみに、クローゼットの中には旧日本軍艦船のプラモとして『大和(1/350)』の他にも、『大和(1/700)』、『矢矧(1/700)』、『霞(1/700)』、『初霜(1/700)』、『朝霜(1/700)』『磯風(1/700)』、『浜風(1/700)』『冬月(1/700)』、『涼月(1/700)』それと『雪風(1/700)』が入っている。要は、『坊ノ岬沖組』だ。それに加えて、『夕張(1/700)』と『島風(1/700)』が入っている。飛行機は、『ラファール』、『F-35』、『F-22』、『心神(仮)』、『零式艦上戦闘機21型丙』、それに『烈風』がある。自衛艦としては、『いかづち』、『いなづま』、『ひゅうが』、『いせ』、『いずも』、『かが』がある。戦車としては、『10式戦車』がある。ほら、そこ!積みプラ常習者とかいうな!

 そのような事を思いつつ、大和を組みあげていく。そして20分くらい経った頃に、階段を上がってくる音が聞こえてきた。

「修治、わからないところがあるのだが…」

(箒か。聞きに来たのは)

 

そう思って、接着剤と塗料の入った瓶のふたをしっかり閉めているのを確認してからからドアを開けた。

 

「説明するから下に降りるよ」

「わかった」

 

そうして、箒と一緒に一階へと降りて行った。

 

「それで、どこがわからないんだ?」

「ここなのだが…」

 

そこは、数学もとい算数の、面積を求める問題だった。しかも応用を利かせないといけないタイプの。だが、俺にとっては朝飯前だ。

 俺は、一夏と箒に丁寧に、そしてわかりやすくその問題について解説していった。すると、一夏と箒の持っていた鉛筆がさらさらと進んでいった。

「すげえ、解けた!」

「ありがとう、修治」

「どういたしまして。さあ、次の問題も解いて行け。特に一夏、お前はほとんど宿題やってないらしいから、口よりも手を動かせ。そして、死ぬ気でやれよ。死なないから」

 

 そう言い残し、俺は台所へと行く。なぜなら、暁たちにおやつを作らないといけないからである。今日はプリンを作ろうと思う。

 材料は、卵3個、砂糖60グラム、牛乳400ミリリットル、バニラエッセンス少量、バター少量、カラメルソースとしての砂糖50グラム、水が45ミリリットル、それにお湯である(6人分)。用意する調理器具は、プリン用の方、鍋を2つ(あ、そういえば前、アルミ製の金色の鍋を響が被っていたなあ。勿論、写真はしっかり撮ったよ!)、ボウル2つ(ボールじゃないよ。というか、それだったら丸い形の棺桶だよ)、茶こし、菜箸とそこが少し深い天板とオーブンです。

 

そして、プリンを蒸しているのを待つ間に洗い物をすましておく。ここまでで30分ほど。気づいたら、もう3時に近くなっていた。ちょうど、プリンが蒸し上がったようなので、オーブンから出し、冷やしておく。その間に2階に上がり、暁たちの様子を見に行く。

 そして、暁たちの部屋のドアを開けたら、すごい光景があった。

(うわぁ。響が座って寝ているし、雷は布団から出て床で寝ている)

 

 とりあえず、起こしておく。

「響、起きて~」

トントン

「……うにゅっ。доброе утро(おはよう)、にいさん」

「おはよう、と言いたいがもう3時だぞ。もう」

「そうなのか?」

「そうだぞ。あ、暁たちを起こすから、手伝ってくれ。おやつの時間だし」

「わかった」

 というわけで響と手分けして残りの3人を起こしていく。まず俺は、床で寝ている雷を起こす。

「お~い、雷。起きて~」

トントン

「……ひゃっ!おにいちゃん!?おはよう」

「おはよう、と言いたいけど、3時だぞ。もう」

「ほんとう!?」

「ああ、本当だ。もうおやつ作っているから、先に降りて待っていてくれ」

「わかったわ」

 そういって雷は部屋から出て下へと降りて行った。次は電かな~?

 

side out

 

響side

 初めまして、響だよ。今、私は兄さんと一緒に暁たちを起こしている。まずは、近くに寝ている暁を起こそうか。

「あかつき、おきて」

「…んっ。ひびき?どうしたの…」

「にいさんがおやつをつくってくれたみたいだから、したでたべよう」

「わかったわ。じゃあ、したにいこ、ひびき」

「わたしはにいさんといっしょにいくから、さきにいってまっていて」

「え~」

「いちにんまえのれでぃは、ひとのいったことにもんくはいわないんだよ。あかつき」

「そ、それもそうね。じゃあ、あかつきはしたにいってるわね」

 

 そういって暁は下へと行った。なんというか…暁、人の言ったことをすぐ信じちゃうのは止めた方がいいよ。()()()()心配だよ。

 そう思いつつ、兄さんの方を見てみると、電を起こしている途中だった。そういえば、電ってあまり朝スッキリと起きれない方なんだよね。どうするんだろうか、兄さんは。

 

side out

 

修治side

 さて、今俺は電を起こしているのだが――。

 

「電~。起きろ~」

「…ふにゅんっ。zzz…」

 

とまあ、こういう感じで起きてくれません。眠り姫よろしく、キスをすれば起きてくれるのでしょうか?(まあ、実行する気はないが…)

 

 そして、数秒考えて導き出した電の目を覚まさせる方法は、

「ていっ!」

ポカッ

軽く頭をチョップすることだ。

 

「はにゃっ」

「起きたか?電」

「おはようなのです。おにいちゃん」

「おはようの時間じゃないけどまあ、いいや。おやつの時間だから、下に行ってて。お兄ちゃんもすぐに行くから」

「わかったのです」

 

 そういって、下に降りて行った電。やっぱり、安全のために角クッションつけた方がいいかな?

 

「にいさん、はやくしたにおりようか。あかつきたちがまっている」

「それもそうだな、響」

 

 そういうわけで、響と一緒に一階へと降りた。

 

「おーい、一夏。休憩だぞ~」

「おう、そうだな。ところで、修治の宿題見せてもらうって話はどうなったんだ?」

「ナ…、ナンノコトカナ…?」

「目をそらすな」

「ごめん、忘れてた。とりあえず、休憩しようか?」

「ああ。そうするか」

「それじゃあ、俺はおやつ運んでくるわ。あ、まずは、飲み物運んで来て。勿論、箒と暁たちも」

 

 俺がそういったので、俺以外の全員が台所にある冷蔵庫へとバラバラに向かったが、戻ってくるのはそろっていた。なぜなら、みんなが飲みたかったのはどうやら――。

「みんな麦茶飲みたかったんだな」

 つまりはそういうこと。けれども……。

 

「飲み物だけ持ってきておいて、コップとかないよな……」

「「「「「「あ!」」」」」」

『あ!』じゃねーよ、『あ!』じゃ。

「ったく~」

 

 俺は、台所へ行ってコップ二つと、暁たち用のストロー的なやつがついた、幼児用のコップを持ってきた。

 

「はいよ」

「サンキュー、修治」

「あ、ありがとう」

「どういたしまして、箒。さて、暁たちのを先にそそぐから、一夏。ペットボトル貸せ」

「分かった」

 

そして、暁たちの分の麦茶を注ぎ、一夏にペットボトルを渡したところで台所へと向かい冷やしていたプリンとスプーンを六つずつ持ってきて、一夏と箒、それに暁たちの所に置いて行った。

 

「あれ?修治の分は?」

「俺は昨日作ったスコーン食べるからいいんだ」

「そうなのか」

「修治」

「どうした?箒」

「いつも妹たちにお菓子を作っているのか?」

「時間があればな」

「今度、教えてくれないか?私にお菓子の作り方を」

「ああ、いいぞ」

 

まあ、一夏に作るんだろうな、箒は。それはさておき、俺は冷蔵庫に行き、スコーンを取り出し、テーブルまでもって行った。

 

「さて、いただきましょうか」

と、俺が言うと、みんなが食べ始めた。

(おいしそうに食べるな~みんな。作った甲斐があったよ)

 

 その後、一夏たちは午後5時までうちにいた。重ねて言っておくが、明日は俺の誕生日である。まさかあんなことになるとは、この時の俺は予想だにしていなかった。




誤字、脱字があれば、ご指摘よろしくお願いします。感想もできればよろしくお願いします。

4月6日修正


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FRAME-03 嵌まる歯車

 前回の投稿から一か月後です。最速記録更新です。リアルの方では、ようやく生活が軌道に乗って来ました。それと、『艦これ』以外にもいろいろとネットゲームに手を出し始めました。
 それでは、『IS インフィニット・ストラトス高専生がIS世界に転生!?』第四話、どうぞ!



修治SIDE

 今日は、八月十六日。本日天気晴朗ナレドモ浪高シ……って違うか。もう夜だし。今日は、俺の十歳の誕生日だ。今は、誕生会の真っ最中です。いるのは、両親と暁、響、雷、電(あたりまえだけどね)、織斑姉弟、それに篠ノ之箒である。

 

「修、誕生日おめでとう」

 そういって、父さんと母さんは少し大きめの箱を俺に渡してきた。

「ありがとう!」

といって、俺は箱を受け取り、包装を解いた。すると中には、

「携帯?しかも絶滅危惧種のガラケーだし」

ガラパゴスケータイ、略してガラケーがあった。

 

「子供にはそれで充分だろ?子どもにとって、最近危なっかしいからな」

「そうよね。それに、私たちが仕事で遅くなる時に、すぐに連絡ができるし」

確かに正論だ。それに、こんなに早く携帯がもらえるのはすごく驚いている。

 そんな事を思っていると、ふいに、

 

ピンポーン

 

と玄関のチャイムが鳴った。

「だれかしら?こんな時間に」

「俺、ちょっと見てくる」

「一人じゃ危ないわよ」

「では、私がついて行きます」

「じゃあ、頼んだわよ。千冬ちゃん」

ということで、俺と千冬さんとで見てくることに。

 

ドアを開けようとしたら、俺の第六感が働いた。

「あ、束さんだ。これ」

まあ、たぶん近所迷惑なことになりそうにないだろうから、ドアを開けた。

 

「ちーちゃん、修君久しぶり~♪」

やはり、束さんがいた。しかしながら、()()()いつものようにふざけた格好ではなく、ツーピーススーツであった。

「束、どうしたんだ?その格好は。頭のねじがようやく見つかったのか?」

「む~、ちーちゃん辛辣~。私だって、TPOをわきまえるよ~。それはそうと、修君。誕生日おめでとう!ハイ、これ。絶対気に入るよ」

そういって、束さんは俺に長細い箱を手渡した。そして俺がその箱を開けてみると、一角獣、獅子、不死鳥らしきものが彫りこまれたペンダントが出てきた。

 

(なんぞ?これ)

そう思いつつ俺はそれに触れた。

 

キィィン!

 

 そんな音が脳内で聞こえると同時に、俺の頭の中に様々な情報が流れてきた。そして、『貴婦人と一角獣』の『天幕』が現れた時、俺は悟った。

 

(これが俺の望んだ機体……。『RX-0』)

 

それを悟った時、周りを見る余裕ができた。千冬さんの驚いた顔、束さんが笑っている顔、そして、いつの間にかいた箒の千冬さん以上に驚いた顔。まあ、そりゃそうだろ。男がISを展開しちゃったんだから。

 

「な、なあ。修治がまとっているのは何だ?束。ISに見えるのだが…」

「その通りだよ、ちーちゃん。機体名『RX-0』。白騎士の前に私が作った、正真正銘のISの基礎となった機体。だけど、起動の条件が、高い空間認識力を持ち、なおかつ機体が認めた人しか乗れなかったから、しょうがなく誰にでも扱えるように作ったのが白騎士なんだ」

 

ふーん、そうなんだ。って、なんか今、さらっと凄いこと言ったよね。

 

「だが、なぜ待機状態になっていたのだ?」

「持っていきやすくするため」

「あの~」

「ん?どったの?修君」

「どうやって解除すればいいんですか?これ」

「メニューの解除の欄をアイコントロールすれば解除できるよ」

「ありがとうございます」

 

そうして、ようやく俺はISを解除した。

 

「束さん、『RX-0』って無駄に拡張領域の容量大きいですよね。何でですか?」

「この機体の骨格…『ムーバブルフレーム』っていうんだけど、それに数種類の材質を使った同形状の装甲をつけることで、様々な状況に対応できるようにしたんだよ。そのために拡張領域の容量が大きいの」

「それで、そのなんたかフレームの材質は何なのだ?」

「最初はチタン合金セラミック複合材だったんだけど、去年偶然できちゃった材質がとても面白いものだったから、それを量産してこの機体のムーバブルフレームにしたの」

「それってなんですか?」

「正式な名前は今のところないけど、性能としてはIS操縦者の動きを先読みして動かせるようにできる性能だね」

「束、それ、タダの金属にできる芸当か?」

「まあそこはほら~、全能の、この束さんがすることだから、できちゃうのだよ」

「それにしても、たくさん武装ありますね」

 

「あ、そうだ!もう一つここに来た理由有ったんだ!」

 

 そういって、束さんは靴を脱いで居間の方へといった。…料理を食べに来たのだったら、追い出しますよ(笑)。たぶん、千冬さんと一緒に。

 

そう思いつつ、居間の方へと向かったら、すごく珍しい光景があった。というか一夏、寝てたのか。ちなみに、暁たちは眠そうにしていたので母さんが寝床へさっき運んで行った。

 

「なぜ束が修治の父親と話しているのだ?」

 

いや~、まさかと思うけどね~。もしかしたらあれかな~。

 

「私をアナハイム・エレクトロニクスに匿ってください!」

 

 そういって、束さんはDOGEZAした。

 

「修治、話は大体聞いた。アナハイム・エレクトロニクスについては知っているよな」

「もちろん。父さんが社長をしている会社でしょ」

「そのとおりだ。篠ノ之束をアナハイム・エレクトロニクスに匿いつつ、雇用するから、修、お前もアナハイム・エレクトロニクスに入れ」

「ちょっと待ってくれ、父さん。俺まだ小学生だよ」

「だが、事情が事情だ。修が束くんからさっきもらったISなんだが、コアの方が未登録のやつらしい」

「まじで!?」

「本当なんだよ。ごめんね、修君。騙すようなことしてしまって」

「いえ、大丈夫ですよ。ですけど、そのコア自体がオーバースペックということはないですよね…」

「うん、大丈夫。そこら辺のコアと同じだよ」

「それで、どうするんだ?」

「俺、アナハイム・エレクトロニクスに入る」

 

 俺のその発言に対して一同かなり驚いた顔をしていた。

 

「ほ、本当にいいのか!?修」

「当然。俺が決めたことだから、俺にしか責任はないよ」

「そうか、なら決まりだ。明日から、アナハイム・エレクトロニクスに来てくれ。勿論、修は学校の帰りにな」

 

 言われなくてもわかっていたんだが……。

 

「今、俺夏休みだよ。父さん。」

「そういえば、そうだったな。だったら、長期休業中は9時から来てくれ」

「わかった」

 

 そういうわけで、今までで一番予測不能な俺の誕生日が終わった。

 

修治side out

 

???side

()()()()に来てもう十年か。専用機ももらえたし、とうとう行動が起こせる。拾ってくれた()()のためにも、俺『清水紘太』は、あの『織斑一夏』を殺さなければならない。むしろ、願ったりかなったりだ。有効に活用させてもらおうか。

 

紘太side out

 

修治side

翌日、俺は束さんと共にアナハイム社に向かっていた。勿論、束さんは変装をしてだが。

 

「束さん、後でコアの作り方を教えてくださいませんか?」

「うん、いいよ~」

「ちょっと待ってください。そこは悩むところでしょ!?なんですんなり教えるんですか!?」

「ん~。修君なら信頼できると思ったから、っていう答えだったらダメ?」

「いえ、それでも大丈夫ですよ」

 

 とりあえず、一歩前進。といったところかな?この世界での生活も。

 

side out




誤字、脱字があれば、ご指摘よろしくお願いします。感想もできればよろしくお願いします。

9月26日一部修正。


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SIDE-STORY Savior Phoenix

 お久しぶりです。取り敢えず生きています。さて、皆様。今回は初めての短編にしています。多分、読み進めていくうちに察する人もいるかもしれない伏線があります。それでは、どうぞ!

P.S.一部人物名に関しては、構想中の小説の人物名を使用しています。


――これは、IS世界でも神上修治がもといた世界でもない、もう一つの世界の話――

 

 

 

 日本の広島にある岩国基地。そこの庁舎にある執務室に二人の男がいた。

 

「―――それでいいのか?」

「はい。元はといえば自分が南西諸島の天候をよく確認していなかったが故です」

「気に病むことはない。どうも()()()()は突発的なものだったらしい」

「しかし、提督――」

「だが、不思議なのだよ。常崎君。()()()()が無いのにも関わらず、何故()()が行方不明なのか。そして、()()と共に濃霧へ入ってしまった()()()()()は何故帰還できたのか、というところが」

 

 

 事の発端は、約九時間前に執務室に入った情報からである

『南西諸島ニテ濃霧ガ発生。鼠輸送中ノ駆逐隊、之レニ突入ス。ナホ、近クニ敵ノ反応無シ』

 

 この数分後、濃霧に突入してしまった駆逐隊の旗艦から無線で連絡が入った。

『我、濃霧カラ脱出セリ。ダガ、一隻ガ応答無シ。捜索隊ノ派遣ヲ乞フ』

 

 その連絡を受け、提督――白石昴は、軽空母、軽巡洋艦、潜水艦から成る捜索隊を派遣し、駆逐艦()()の行方を探した。結果として――

 

()()の行方は不明。周辺海域にも艤装の残骸や破片はなく、その上、敵の残骸も見つからなかった。事実に相違はないな」

「はい。ですから、自分は大切な艦を行方不明にしてしまった責を取って、遠征統括の任を降りたいと思います。」

 

「ふむ。私も君の来るほんの10分前まではそのつもりだった。だが、たった10分で状況は変わった。これを見てくれ」

 

 そう言って昴が取り出したのは縦長の八面体のクリスタル様の物体であった。

 

「これは…?」

「伊58が()()の消失点からたった200メートルしか離れていないところで見つけたものだ。最初、私はただのごみだと思った。だが、どうも私の勘がこれを調べるべきだと告げてね、人見くんに調べてもらったんだ。その調査結果が来たのが君の来る10分前だ」

「それで、結果は…?」

「結果なのだが、どうやらこれはかなりスペックが半端無いコンピューターのようなものらしい」

「この透明なのがですか?」

「ああ、そうらしい。最初は私も信じられなかったよ。だが、『篠ノ之束』という名前を聞いたとき、すべてが繋がったよ」

「誰でしょうか?その人は。それに、そんなにすごいものがあるのでしたら、何故私たちは知らないのでしょうか?」

「質問は二つだな。まず一つ目の質問である、『篠ノ之束』が誰なのか、についてだが、そもそも『インフィニット・ストラトス』というアニメを知っているか?」

「いいえ、知りません。それがどうこの話と繋がるのでしょうか?」

「実はな、『篠ノ之束』は、そのアニメの登場人物なのだよ」

「まさか。そんなことあるはず無いじゃないですか」

 

常崎はそう言った。だが、それを否定したのは、昴のとなりにいた黒いセーラー服を着た金髪で、髪が長く下の方でその長い髪を二つに結んだ()()であった。

 

「それが案外あり得る話なんだよ。この宇宙とは別の宇宙――簡単に言ってしまうとパラレルワールドだね。――それがごくたまにこちらの宇宙と重なってしまうことがあるんだ。そして、そこに迷い込んだこちらの宇宙の人もいる。その現象のことを昔の人は『神隠し』ってよんだんだ。さらに、場合によっては、向こうの技術がこちらに()()()()こちらに伝わることもあるのさ。ボクとしては、電子レンジがそうなんじゃないかなって思うんだ。だって、何十年経ってもほぼ同じ大きさのままだし。少し話が逸れちゃったね。それで、この宇宙と向こうの宇宙とが重なるときに、極めて稀にその宇宙世界の地球の光景を感じて、それを本にして出版した人もいるんだ。それの有名な作品が――」

 

 ここで、その少女が言葉を区切り、その続きを昴が言う。

 

「『H.P.ラヴクラフト』の『クトゥルー神話』なのさ」

 

「一応は、それで納得しますが、その『インフィニットストラトス』はどのような話なんでしょうか?」

 

「まず、篠ノ之束がインフィニットストラトスというパワードスーツを開発した。――今後はインフィニットストラトスをISと省略させてもらうが――しかし、それには一つ大きな欠点があった。女性しか動かせなかったんだ。そして、社会は女尊男卑に傾いた。そして、物語が大きく動くのは十年後に一人の男性が出てきたことだ。名前を『織斑一夏』という。彼がISを動かした、ということはどういうことになるかというと、まあ簡単に言うと、どっかのマッドな科学者によって細胞の隅々まで調べられて、用が済んだら()()()()()っていうことになるわけだから、日本政府は『IS学園』っていう百パーセント女子しかいないISを学ぶ学園に強制的に入学させて、そこで起こるドタバタを描くハイスピード学園ラブコメのことだよ」

 

「なるほど…って、『艦娘』と同じじゃないですか!?」

「その通りだ。だから、『Верный』も早く順応するんじゃないのかと思うんだ」

 

「そうですか。それで、自分の処遇はどうなるのでしょうか?」

「まあ、体面のことを考えると……二ヶ月の減給処分かな。」

「有難う御座います!」

「だが、この事は私と常崎君とあと()()()()だけの秘密として箝口令を敷く」

「もう一人というのは?」

「大湊に私の高校時代の友達で大学で工学系を学んだ後に防大に入った奴がいるんだが、そいつに詳しい解析を頼んだ」

「その人は信頼できるんですか?」

「勿論だ」

「名前は?」

「松山薫少佐だ」

 

 

――この世界の歯車も嵌まり、廻っていく――




次の話はIS世界の話に戻ります。
ご指摘、ご感想お待ちしています。

5月29日 前書き、後書きの修正
6月9日 一部修正


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FRAME-04 電灯とSAN値と信頼

 さて、五話です。珍しく、早く投稿できました。あ、そういえば、前回の話なんですが、一応補足です。

・金髪でセーラー服の少女は誰か→皐月ちゃんです。
・出てきた提督にモデルはいるのか?→すみません、私のリアルの友達です。勿論、許可は取っています。
・いつ公開予定か→こっちの小説が落ち着いたらです。

では、第四話をどうぞ!


……私、テスト前にこんなことしてて良いのかな?


修治side

 どうも、神上修治です。あれ(10才の誕生日)から大体3年経ち、色々とありました。まず、箒の転出と鈴こと鳳鈴音の転入。次に、原作10巻で記述があった『焼き栗騒動』。そして、束さんが保護(?)してきた双子の兄妹。何故ここで言ったかというと、兄の方がISを動かし大騒動(社内限定)。あれよあれよと彼とその妹の専用機が出来、アナハイム社直轄の特設IS部隊が出来てしまった(勿論、ISの()()()使い方である『宇宙開発』の為の技術の実験部隊という側面が強いが)。彼が隊長、彼の妹が副隊長、俺はその他A(笑)。まあ、いいけどね。

 あ、もう一つ有ったんだった。それは―――。

 

「私たち、付き合いま~す!ね~薫」

「う、うん。まあ…。はい」

「「「えええええ~!?」」」

 

 ということがありました。はい。驚きの交際宣言ですよ、束さんの。

 ああ、言い忘れていたけど、彼の名前は十六夜薫で、彼の妹さんは、十六夜莉央。歳は今年で18才です。高校に入っていません。受験しなかったんではなく、()()()()()()んですよ、二人とも。まあ、その話は後々。でも、二人とも大学レベルの問題スラスラと解けますけどね。リアルチートですよ、二人とも。俺が言えたことじゃないけどね。ちなみに、束さん、薫さん、それに莉央さんは家に居候しています。

 

 さて、今日は九月の始め頃。2015年の今ごろは艦これの夏イベで発狂していた方もいらっしゃるかもしれません(難易度鬼畜過ぎて)。時刻は二十時過ぎ。俺と妹たちは夕食を食べ、今は妹たちが風呂に入り、俺はリビングで『ビ●リア古書●の事●帖』を読んでます。

 

(さて、俺が設計したISは12機ほどになってきたな~。少し自重しようかな、そろそろ)

 

 そう思いつつ、読み進めている。ちなみに、夕食についてだが母さんが基本的に朝に作ってくれているが、仕事が忙しかったりしたときは、俺が部活と会社の方を休んで作るようにしている。ああ、言い忘れていたが、部活は弓道です。理由?前世でもやっていたし、母さんもしていたから。

 

閑話休題(それはさておき)、俺が本を読んでいたら、風呂場の方から

「「「キャアアアアアアッ!」」」

という声がした。

 

「どうした!?変質者でも入ってきたのか!?」

 

 そう言いつつ、風呂場へと向かった。勿論、手にはデザートイーグル(エアガン)を持って。

 

 風呂場のドアを開けたら響以外がピーピー泣いていた。そして、俺が風呂場に着たことに響が気づき、声をかけてきた。

 

「どうしたんだい?兄さん」

「どうしたもなにもないよ。今、暁たちが悲鳴を上げただろ」

「ああ、なるほど。どうやらあれを見て悲鳴を上げたらしい」

 

 そう言って天井――いや、正確には天井にある電球の傘(っていうのか?とにかく、電球をカバーしている半球でプラスチック製の半透明のヤツ)――を指差した。俺もそれにつられてそっちの方を見てみると――

 

カササササーッ

 

「ゑっ?」

 

 なんか、百足らしき虫(?)が電灯の傘の電球側で動いていた。

「響、よくお前悲鳴上げなかったな」

「こんなの軽母ヌ級(・・・・)と比べたらましな方だよ」

 

そうか、そうか軽母ヌ級よりかはましか。……ってちょっと待て。

 

「今、何って言った?」

「だから、軽母ヌ級って…。あっ!」

 

 おいおい、待て待て。まさかの響がこっちに来て、その上俺の妹になっていたのかよ。(錯乱中)

 

「――響。風呂から上がったら俺の部屋に来てくれ。話があるから」

「了解。けど、あの虫は?」

「響との話が終わってから駆除する。――暁、雷、電。早く風呂終わらせて!あれは放っておいても何もしないから、気にしないで!」

「うぐっ…。はいなのです」

「わ…分かったわ…。ぐすん」

「わ、わかっ…ひっく、わかったわよ…」

「兄さん…」

 

俺は響に背を向けてリビングへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、響。いや、特Ⅲ型駆逐艦2番艦の『響』。君は何故、こちら側(・・・・)に来た?」

 

 場所と時は変わり、二十一時過ぎ、場所は俺の部屋。そこで俺は響と話していた。

 

「兄さん。驚きもしないし、怒らないんだね」

「勿論さ。俺だってこちら側(・・・・)にいるはずの無い人だからな」

「それってどういうことだい?」

「実は俺は俗に言う『転生者』っていうものだ。ああ、それと君の姿はかなり見慣れていたから、あまり驚かなかったんだよ」

「どういうことだい?」

「俺が元いた世界でな、『艦隊これくしょん』っていうネットゲームがあってな。そのゲームはプレイヤーが『艦娘』と呼ばれる少女たちを未知の敵『深海棲艦』と戦わせるゲームだった」

「兄さん。もしかしてだと思うんだが、その『艦隊これくしょん』とやらって、私の元いた世界ということなのか?」

「多分そうだと思う」

「そうなのか…」

 

ここで、ふと気づいた。

 

「そういえば、あの3人(・・・・)はその記憶があるのか?」

「私もそれとなく聞いてみたんだが、どうやら無いみたいだ。というか、私をこちらの世界(・・・・・・)に送った神様が補正した結果なのかもしれない」

「そうかもしれないな。だが、いつから向こうの記憶があったんだ?」

「この世界に生まれたときからかな」

「その時からあったのか」

 

「兄さん、私の方から質問をしてもいいかい?」

響が俺の方に質問をしてきた。

「ああ、いいぞ。それで何だい?」

「兄さんはさっき『転生者』って言ったよね。それはつまり、兄さんが元々いた世界で一度死んだということであっているのかい?」

「その通りだ。原因はトラックが暴走して、こちらに突っ込んできたことによる轢死――つまり、轢かれたっていうことだね――それで、気づいたら不思議な空間にいて目の前に特Ⅰ型の『吹雪』のカッコをした神様が居て、なんやかんやでここに転生してきたってわけ」

「なるほど。そういえば、私も会ったな。『吹雪』の格好をした神様に」

「マジか。あ、響。少し聞きにくいことなんだが、響ってもしかして『轟沈』したのか?」

「いや、そうじゃなかったんだ。私の場合は、遠征中に急な濃霧が出て、それで第六駆逐隊とはぐれてしまって通信を入れようにも、ノイズが走っていて途方に暮れていたら、目の前に『吹雪』の格好をした神様が出てきてこの世界にきたんだ」

 

成る程。そういうことがあったのか。ん?

 

「なあ、そこまではっきりと向こうの記憶があるんだったら、『艤装』の展開が出来るかもしれない。試したことはあるか?」

「いや、無いな。だったら試してみるか。少し離れてくれ」

 

 俺は、響から離れた。すると、響から眩い光が発せられ、それが収まると、響が艤装を着けた状態で立っていた。

 

「やっぱり生で見ると迫力が違うな」

「そういうものなのか?」

「ああ、そうだな」

 

ここでふとあることを思い付いた。

 

「なあ、響。艤装を外すことって出来るか?」

「出来なくはないけど……、重いよ。大丈夫?」

「大丈夫だ、問題ない」

「…それ、フラグ」

 

(失敬な、俺はフラグをへし切る男だぞ。RX-0を部分展開すればこのくらい……)

 

 そう思いつつ、俺は響のバックに立ち、RX-0の腕部を部分展開させ、艤装の持ちやすい箇所を持つ。

 

「外すよ、兄さん。1、2の…3」

カシャンッ!

 小気味のよい音を立てて響から艤装が外された。

 

「案外重いな、これ」

「それで、兄さん。これをどうするんだい?」

「その答えはもうすぐ分かる」

 

 俺は壁掛け時計を見てそう言った。

(まあ、兎さん(・・・)はたまに遅いけど、大体定時だからね)

そう思っていると、

 

ガチャ

 

「たっだいま~!今日も疲れた~!ねぇ~薫」

「そうだね、束」

「兄さん、義姉さん。私の前でイチャつくの止めてくれない?口から砂糖が出るから」

「ゴメン。私も束も悪気は無いんだ」

「無自覚な悪意っていう言葉知ってる?」

 

「あ、束さんたちが帰ってきたね」

「響。束さんたち呼んできて」

「もしかして兄さん。まさかと思うけど…」

「そう、そのまさかさ」

 

修治side out

 

響side

 私は兄さんの部屋から出て1階へと向かった。

 

「束さん、おかえりなさい」

「お~。まだ起きてたの?ひーちゃん」

「うん。それで、束さん。兄さんが束さんを呼んでいるんだ」

「そうなの~?珍しいねぇ。修くんがこの束さんを呼ぶなんて。明日は空から槍が降ってくるかな~」

「義姉さん。いい加減冗談止めてください。響ちゃんが困っています」

 

(いえ、私はただ単に、作者が私と莉央さんの台詞の書き分けが難しくなっているらしいので私が少ししゃべり方を変えるべきかどうかで困っているんですが…)

 

「それもそうだね~。それじゃ、冗談はそのくらいにして、行こうか。修くんの部屋に」

 

 そう言って階段を上る束さん。私はその後ろについて行く。

 

響side out

 

修治side

 

トタトタトタ

 

(お、響達が来たか)

 

 俺は、響達が俺の部屋に入る前に居住まいを正しておく。

 

ガチャ

 

「ただいま~、修くん。それでどったの?この束さんを呼ぶなんて」

「えっと、実は、これの解析をしていただきたいのです」

 

 そう言って、響の艤装を見せる。すると、束さんは新しい玩具を見つけた子供みたいな目をしてこう言った。

 

「なにこの機械!というか、どこで見つけたの!?私が好きそうな匂いがプンプンするよ」

「えっと、これはすぐそこの川原の橋の下に有りました」

 

ここで響が俗に言う『転生者』であることをおくびにも出さない。束さんに嘘をつくのは忍びないがしょうがない。

 

「ふ~ん、そっか。それで、これを解析してどうするの?修くん」

「解析して、もし面白いことが分かったら量産出来るようにしてください」

「合点承知の介。もしこれがただの鉄屑だったら私の方で処分してもいいよね?」

「勿論ですよ、束さん」

 

多分そんなことは無いけどね。

 

「それじゃ、持ってくね~。って重っ!?」

 

 そう言って、束さん達は俺の部屋から出て行った。そして、響だけが残った。

 

「何で束さんに本当の事を言わなかったんだい?」

「響のことをばらしたくなかったし、俺と響の秘密を守るべきだろう」

「それもそうだな」

「ついでに、君のために専用機(・・・)を作ってあげよう。そして、暁たちを守ってやれ、Верный。俺では手の回らないことがあるかもしれない。その時には、君の力が必要だ。信頼しているぞ」

「…というか、何で私が『響』じゃなくて『Верный』だと分かったんだい?」

「簡単なことだ。『Верный』の艤装の方が実は白いんだ。だから分かった。そして響、そろそろ寝なさい。明日も早いんだから」

「分かったСпокойной ночи(おやすみなさい)。兄さん」

 

 そう言い、響は自室へと向かう。

 

(さて、俺は、天井にある電球の傘の内側にいる百足らしき虫の駆除をしてきますか)

 

 そう思い、1階へと降りて風呂場へと向かった。そして、電球の傘を外すと―――。

「死んでる」

百足らしき虫が死んでた。

 

(多分、電球の熱で死んだのか)

 

 というわけで、手厚く供養して(ティッシュでくるんで、ゴミ箱に入れて)、2階へと戻った。

 

今日は色々とあって疲れたため早く寝ることにした。やっぱり、響の専用機は蒼の翼(・・・)で良いよね?

 

side out




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2016年6月12日 前書きの修正
2017年7月1日 一部年齢の変更と後書きの一部修正


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FRAME-05 大事なときに居ない人っているよね

 さて、6話です。一つだけ言っていいですか?珍しく、一月に2話分投稿できました!

では、第6話をどうぞ!


修治side

 どうも、神上修治です。今日は10月の中頃。今ごろドイツでは、第二回モンドグロッソが行われています。

 

(そういえば、原作では一夏が誘拐されるんだったなあ)

 

 ちなみに俺はそういうときに限ってインフルエンザに罹っているので、ただいま絶賛隔離中。勿論、外出は厳禁です。看病してくれているのは、なんと束さんです。そして、料理を作ってくれているのは薫さんと莉央さんです。ん?束さんは料理を作らないのかって?あの人、料理じゃなくて炭か生物兵器作っちゃうから、台所に立たせられないんだよ。

 

ガチャ

 

「修くん、どお?体の具合」

「まあまあです、げほげほ」

「う~ん、もう少し頑張れ!修くん」

「ありがとうございます。それで、『例の件』どうなりましたか?」

「ああ、あれね。ゴーレムを向かわせて、今頃社会的にも物理的にも抹殺していると思うよ」

 

 『例の件』というのは、一夏を誘拐する予定の皆さんを一夏の誘拐前に土の下に送るということである。ほら、そこ!俺の事腹黒いとか言うな!

 

 そういえば、俺のもう一つの専用機も作っておいた。しかも、俺の作ったISのコアを積んだ機体。名前は『クアンタ』。待機状態は、左腕に着けたエメラルドグリーンの腕輪。

 

「そうですか。ありがとうございます」

「い~の、い~の。もしいっくんが誘拐されることになったら私もちーちゃんも黙ってないから、その芽を早めに摘めてよかったと思うよ」

 

そう言って束さんはドアを閉めた。にしても、暇だな~。

 

 そう思ってると、ドアの前で、

「もしもし、ちーちゃん、どったの?………ふんふん……………………………ちょ、落ち着いて!………………えっそれ本当!?……………うん。修くんにも伝えとく。………………………うん。分かった。それじゃ、切るよ…」

という会話が聞こえた。

 

そして、ドアが開かれ、束さんが現れた。しかし、いつもつけているうさ耳カチューシャが垂れ下がってしまっていた。

 

「修くん。いっくんが誘拐された」

「えっ!?」

 

(一夏の誘拐を未然に防いだのになぜこういうこととなった。いや、待て。もしかして、俺と響以外にも転生者がいる(・・・・・・)?もしそうだとして、仮に俺にとってどういう立場になるのか?こういうときは、最悪のパターンを想定すべきか。そうなると――――)

 

「『亡國機業』」

「?」

「束さん。俺の案で抹殺した連中と密に連絡していたところを調べられる?」

「勿論。すぐに調べるね」

 

 そう言って、束さんは俺の隣室である自室へと向かう。俺は、考察を続ける。

 

(仮にそうすると、向こうも専用機を持っているだろう。薫さん達を向かわせても良いが、束さんに料理をさせるのは危険すぎる。そうすると、道は一つしかない、か)

 

「修くん。調べたよ」

「ありがとうございます。それで、結果は?」

「さっき修くんが言った『亡國機業』――正確には『ファントム・タスク』っていうみたいだけどね――それが関わっていたみたい」

「やっぱりそうですか」

 

 時刻は1530。時差はおよそ七時間だからドイツは0830だな。

 

「なら、束さん。千冬さんに電話してこう伝えてください。『試合に出て』」

「判ったよ。でも……」

 

俺は、運命に抗えないからといって諦めたくはない。

 

「動かせる駒がいないんだったら自分が動きますよ、束さん」

 

抗えないくらい強大な力であっても、抗って砕ければいい。

 

修治side out

 

束side

えっ、修くん今何て言った?

ちーちゃんに『試合に出て』って?

 

「判ったよ。でも……」

 

私にはこういう風にしか言葉を紡ぐしかできなかった。だけど、修くんはその言葉に続けてこう言った。

 

「動かせる駒がいないんだったら自分が動きますよ、束さん」

 

修くん。君は何を考えているんだい。

 

束side out

 

修治side

 俺がそういうと、束さんが驚いた顔をした。

「な、何を考えているの!?君、インフルエンザなんだよ!?なのに、どうやっていっくんを助けるつもりなの!?」

「束さん、一つ質問なんだけどさ」

「何」

「RX-0の『フェネクス』の外装って何?」

「生体同調機能を付与させた多重ナノ結合ハイブリッドハニカム装甲」

「その生体同調の機能は?」

「命に関わる怪我や病気であったとしても、装甲内のナノマシンによって修復、治癒する機能……って!?」

「そういうことです。それなら問題ないでしょう」

「ハァ~。修くんの発想って結構ブッ飛んでるとき有るけど、ここまでとは……」

 

貴女には言われたくないです。

 

「では、行っていいですか?」

「いいよ。だけど、一つだけ約束して。絶対にいっくんを助けて」

「勿論です。では、行ってきます」

 

 そう言って、俺は自室の窓を開け、外に出るとRX-0の『フェネクス』を展開し、その上で『FAパック』を装備し、出現した三枚のシールドにアームドアーマーDEを、追加でコールした三枚のシールド全てにビームガトリング、ハイパービームジャベリンをコールした後にアームドアーマーDEをコールした。そして、動作確認を行った後で、ドイツに向かって飛翔した。

 

修治side out

 

一夏side

 よっす。俺は織斑一夏。今俺はドイツにいるのだが、

 

(ここ、どこ?)

 

 今俺は、黒服の男達にミニバンに押し込まれ、その上目隠しまでされている。まあ俗に言う誘拐っていうものによって何処かにいる。

 

 だが、少し普通と違うと思うのは(と言っても、これが初めてなんだが)、身代金目当てで誘拐したっていう雰囲気ではなくて、何か少しだけ嫌な予感がするんだ。例えて言うならば、背中にナイフを突きつけられている感覚。どうしよう、この状態。

 

一夏side out

 

修治side

 およそ1時間経ち、現在ドイツ上空。4か国の領空を通り、その度に撒いてきました。ちなみに、一番しつこかったのはロシアだったりする。さて、一夏を探しますか。

 

「修くん、ゴーレムがいっくんを見つけたよ。場所を転送するね」

 

 束さんから通信が入り、一夏が誘拐されて連れ込まれた場所が地図上に現れる。俺はその場所に向かって全速力で空を駆ける。

 

(千冬さんが決勝戦に出たことで連中は一夏を用無しとして処分するだろう。一夏が居てこその『IS』だ。それを無視するとか本末転倒じゃないか!)

 

『それならオレ様が力を貸してやろうか?』

 

(ああ、誰だっていい。一夏を助けるなら悪魔だろうが鬼だろうが関係ない!力を貸してくれ!)

 

『決まりだ。まずはこの機体の能力を全て解放する!』

 

RX-0 Compliance rate:150% over.

Versus gravity ability:Check the highest value breakthrough.

PCYCHO-Frame:No damage.

Do you stop the man?

YES or NO

 

 謎の声が聞こえた後、機体のモニターにこのような文章が浮かんできた。

 

「ああ辞めてやるよ、人間。この世界を護るためにだったらな」

 

The word was received with YES.

Destroy-mode boot.

 

 モニターにこの言葉が浮かんだ瞬間、自分の額から電撃が走って機体が止まり、変化が起きた。装甲の継ぎ目から虹色の光が発生し、モニターに『NT-D』と浮かぶと同時に脚部、腕部、胴体が伸長し、肩と腰部の装甲板がスライド、バックパックからはビームサーベルが展開し、スラスターが出現。頭部では側面が回転しフェイスガードが収納され二つの目が出現し、RX-0の特徴である一本角が二つに割れた。変化は本体だけではなかった。機体の周りに浮いている六枚のシールドが上下に割れて伸長し、装甲板が内部から展開、そして中央には『Iフィールド発生装置』が常時露出した状態になった。

 

(そうか、これが能力の全ての発現した姿。『Destroy-mode』)

 

 そう思い、機体のコンディションを確認した後、先ほどとは速度が段違いとなったRX-0で空を駆ける。

 

ただ、俺はまだ知らなかった。この光景を地上から見ている銀髪の少女(・・・・・)がいることに。

 

修治side out

 

千冬side

 一夏が誘拐されるなんて考えられなかった。だが束にに聞いたところ、修治が助けに行ったらしい。インフルエンザなのにそれを押して助けに行ったんだ。それなのに私がこれ(モンドグロッソ)をがんばらないと、意味がない。それに、修治が助けに行ったんだ。私でも一度も勝てなかった(・・・・・・・・・)あいつが。なら、大丈夫だろう。私は自分が今までしたことを信じてそれを出せば優勝できる。よし、頑張ろう。

 

『We now go to the finals. Please start preparing athletes.』

 

 決勝戦の準備を始めるように選手に告げるアナウンスが鳴った。さて、私は気持ちを切り替えて頑張りましょうか。

 

千冬side out




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8月7日前書きの修正


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FRAME-06 Turning point

 皆様、お久し振りです。かれこれ一ヶ月ぶりの更新です。心配かけてすみませんでした。リアルの方でかなりごたつき、あと少しでヤバイことになるところでした。

 そして、気が付いたらUA7000超えしていました。皆様、有難う御座います!

 さて、第7話をどうぞ!


修治side

 さて、五分もたたずに目的地である廃屋に到着し、俺は『Destroy-mode』から『Unicorn-mode』に変化したRX-0を停止させた。何故かって?理由は簡単。三機のISに囲まれたから。そのうちの二機は『ラファールリヴァイヴ』もう一機は、『アラクネ』だった。

 

『そこのIS。何してやがる』

 

と、『アラクネ』のパイロットから通信が入った。やはり、アラクネのパイロットはオータムか。となると、残りの機体のパイロットも亡國機業の構成員だな。

 

「貴女方が拉致監禁している少年を奪還しに来ました。速やかに此方に引き渡してください」

 一応、ボイスチェンジャーを使用してオータムに通信を返した。

『其れはできねえな。織斑千冬を誘き出す餌だからな』

 まあ、そうなるよね。だったら――――。

 

「力ずくで奪還するだけだ。あげゃげゃげゃ(・・・・・・・)

 

(あれ?俺ってこんな笑い方してたっけ?)

 

 そう思いつつ、俺は左右に浮遊しているシールド六基に攻撃に入るよう念を送った。するとすぐに六基のうちの二基がハイパービームジャベリンを展開させ、二機のラファールリヴァイヴにそれぞれ向かい、すぐに二機のラファールリヴァイヴが沈黙。残りの四基が、ビームガトリングを発砲しながらアラクネに向かっていった。当然、ビット兵器など今だ実用化されていないため、対応できずにすぐに沈黙してしまった。

 

「そんじゃ」

 

と言い残して、廃屋に入ろうとすると、突然。

 

バシューンッ!

 

と、機体側を黄色いビームが通り過ぎた。そして、現れた機体は―――

 

「リバウ、か」

 

この世界にあるはずのない技術、そして、あるはずのない機体。つまり、相手(リバウのパイロット)同類(転生者)だな。

 

『お前は何者だ』

 

リバウからオープンチャネルで通信が入った。

 

「貴方と同じ存在ですよ。リバウのパイロットさん」

 

向こうが生の音声を送ってきたため、俺もボイスチェンジャーを使用せずに通信を返した。というか、向こうも男かよ。まあ、いい。

 

「一夏を返してもらおうか」

『ああ、良いぞ』

 

え?

 

「すまん、良いのか?」

『もちろんだ。こういう誘拐紛いのことは私の美学に反するからな。ただ、―――』

 

ここで彼が言葉を切った

 

『私と戦ってもらおう!』

 

と言って、ビームサーベルを持ち、俺の方に突っ込んできた。

 

修治side out

 

三人称side

 リバウとフェネクスが刃を交えた。二、三十秒打ち合った後、リバウが間を開けた。それを好機と見て修治は、

 

「Destroy-mode」

 

とコールして『変身』。圧倒的な加速力でリバウに接近しビームマグナムを放つ。

 

 リバウは回避をしたが、左腕にかすってしまい、SE(シールドエネルギー)が三割程削れた。そして、お返しとばかりにリバウはフェネクスにビームライフルを放つ。しかしフェネクスは回避せずにシールドの『Iフィールド発生装置』を起動させて防御した。

 

 其れならばと、リバウはグレネードランチャーを発砲した。フェネクスは上に向けて(・・・・・)ビームマグナムを放つ。その先にはあらかじめ飛ばしていたシールドがあり、通常のビームライフルの四倍の威力を持つビームがシールドの金色の部分(・・・・・)に寸分違わず当たり、ビームは屈折(・・)してリバウに降る。咄嗟のことに反応が出来なかったリバウはビームの直撃を受け、残りSE(シールドエネルギー)は一割となった。

 

三人称side out

 

修治side

 リバウのSE(シールドエネルギー)が一割となったことを確認した所でリバウのパイロットから通信が入った。

 

『私の負けだな』

「まあ、そうなんだが……」

『一夏の場所は、此処の地下だ』

「それを教えてくれたのは有り難いが、何故そこまでするんだ?」

『理由は二つ。一つは誘拐というのは私の美学に反するということ。もう一つは、一夏と共に君ともう一回戦いたいから』

「そうか。其れで、君の名前はなんだ?」

『清水絋太だ。では、また会おう。フェネクスのパイロット』

 

 そう言って、リバウのパイロットである『亡國機業』の清水絋太は去っていった。―――さて、場所も聞けたことだし、俺のなかで気になっていることを解決しますか。

 

「(おい、『フォン・スパーク』。いや、『ロバーク・スタッドJr. 』)」

「(あげゃ、神上修治。何故オレ様がお前の第二の人格だと分かったんだ?)」

「(簡単に言ってしまうと、前に見た本で同じようなことがあったからだ)」

「(成る程)」

「(質問いいか?)」

「(ああ、良いが)」

「(お前はRX-0に封印されていたのか?)」

「(厳密には違う。オレ様はお前の中にいて、RX-0の『Destroy-mode』の発現がオレ様の解放の鍵になったんだ。ちなみに、オレ様がいる理由はお前が前世で神に願ったことに関係している)」

「(ああ、成る程。体力をスーパーコーディネーター並みにしたところで、生身での戦闘経験が俺は皆無だから、お前が俺の第二の人格となって、楯無に勝つようにしたわけだ)」

「(その解釈で間違ってはいないだろうが、楯無って誰だ?)」

「(俺は二年後にIS学園というところに入る。そこの生徒会長は生徒の中で最強でなくてはならない。そんで、楯無は生徒会長である。となれば?)」

「(楯無は生徒の中で最強、というわけか。で、IS学園って何だ?)」

「(まず、ISは知っているよな?)」

「(ああ、お前の幼馴染みの姉が作った物だろ?)」

「(そうだ。それで、束さんは日本生まれ日本育ちで、日本国籍を持っている。結果として、日本はISの技術を独占的に持ってしまった。そうなると、次はどうなるか分かるか?)」

「(それを世界中が狙い、世界は混乱する)」

「(That's right.それを防ぐために各国の技術を平等にするために作られたのがIS学園っていう訳だ)」

「(それは理解したが、そこまで大きい施設なら、そこの運営資金はどっから出ているんだ?)」

「(日本だけの負担です)」

「(……普通、各国分担だろう)」

「(確かに。さて一夏の救出をするか、フォン)」

「(そうだな)」

 

 というわけで、俺の第二の人格のフォンと話したところで、一夏を助けにいった。

 

「(で、アイツ地下って言ったよな。階段なんてねえぞ)」

とフォンが言ったが、俺は

「(こういうとことは、本棚の後ろに隠し階段があるんだよなあ)」

と言って、目についた少し怪しい本棚を動かすと、やっぱり、地下へと続く階段があった。

 

(よし、降りよう)

 

と思って階段を降りていった。

 

修治side out

 

一夏side

 どれくらい時間が経っただろうか。突然、

 

カツ、コツ、カツ、コツ…

 

と足音が聞こえてきた。そして、俺の前でその足音が止まった。

 

(ああ、俺の人生短かったなあ)

 

 そう思ってたら、不意に前のほうから、

 

「おい、一夏。なに覚悟して死のうとしている人みたいな顔をしてんだよ」

「えっ、修治か!?」

 

修治の声がした。インフルエンザで日本にいるのに、どうやって来たんだ?

 

「ああ、そうだぞ。……じっとしていろ」

 

 そういって、修治は俺の後ろに回り、そのあとに、

 

プツン

 

という音が聞こえて、縄が切れたことが分かった。これでようやく手足が自由になった。そして俺は目隠しを取った。

 

「助かったよ、修治。というか、何で―――」

「其れよりも、此処から早く出るぞ。お前を心配してくれた人達に連絡するから」

「それって、千冬姉か?」

「千冬さんもだけど、束さんも心配したんだぞ」

「えっ、そうだったのか!?」

「そうだぞ。そんじゃあ、行こうか」

 

 俺は、修治の先導でこの監禁場所から出た。

 

一夏side out

 

千冬side

『Winner――――Chifuyu Orimura!』

 

ワァァァァァァァッ!

 

 私は、モンドグロッソを二連覇することが出来た。だが、私にとってはその事による高揚よりも、一夏の安否を心配する気持ちの方が大きい。

 

 そのためだろうか、私は優勝インタビューで話した内容を覚えていない。変なことを言っていないだろうか?

 

 そのようなことを考えながら着替えを終えて、ロビーに出たところで携帯が鳴った。

 

「もしもし、織斑です」

『どうも、修治です。千冬さん、一夏を無事救出しました』

「本当か!?」

『千冬さんに嘘をつく理由が俺には無いですよ。………ああ、分かってる。そのつもりだよ。………取り敢えず、本人に変わります』

 

 それから二秒ほど経った様だが、私にとっては長く感じられた。

 

『もしもし、千冬姉。一夏です。心配かけてゴメン』

「ああ、大バカ者め。でも、無事なのだな」

『ああ、無事だぞ』

「そうか。良かった………」

 

ああ、目から汗が出て止まらない。

 

『千冬姉、泣いているのか?』

「な、泣いてなどいない!」

 

「いいえ、泣いていますよ。千冬さん」

 

 その声がして、振り返ったら修治が居た。

 

「………何時からそこに居た?」

「一夏に電話を変わった後から此処にいました」

「なぁ、一夏は大丈夫なのか?」

「ええ。大丈夫ですよ。束さんの作った無人機が護衛していますから」

「一夏の居る場所は?」

「会場の外のとても大きいモニターの下です」

「そうか」

「早く一夏のところに行ってあげてください。俺は病み上がりなので早急に帰りたいんです」

「分かった。だが、お前はインフルエンザで一昨日から寝ていなかったか?」

 

 私は先程から気になっていたことを修治に聞いてみた。

 

「ええ、その通りです。ですが心配ありませんよ。貴女が前に乗っていた機体(・・・・・・・・・)と同じ外装を持っているタイプで此処まで来ましたから。『ブリュンヒルデ』いや、『白騎士』」

 

 修治が言った発言に私は心の中で少なからず動揺した。だが、動揺しながらも私は此処で言葉を紡ぐことが出来た。

 

「………束に聞いたのか?」

「いえ、私の(・・)推理ですよ。千冬さん」

「……お前はいったい何者だ?」

「少なくとも、千冬さんに害するものではないですよ」

「そうか。―――――気をつけて帰れよ、修治」

 

 私はそう言って修治に背を向けて一夏の方に行った。

 

千冬side out

 

修治side

(あ~。緊張した!やっぱ、慣れない鎌かけするもんじゃないね~)

 

 千冬さんに対しての鎌かけがこんなに疲れるものだと思った俺は、目立たない所でRX-0の『ユニコーン』を展開し、飛翔して日本へと向かう。勿論、最初の5分間は『Destroy-mode』にして、残りは『FAパック』を装備してだが。そのお陰もあって、三十分後には家に着いた。ちなみに、時刻は1900だ。

 

「ただいま戻りました」

 

 俺は部屋の中で待っていた束さんにそう言った。

 

「おお~、修くん。早かったねえ、いっくんを救出するのも、『RX-0』がセカンドシフトするのも」

「えっ、あれセカンドシフトだったんですか?」

「そだね。どうやら、四年前に組み込んだ『サイコフレーム』に『RX-0』が適合してセカンドシフトしたみたい」

「でも、何故ファーストシフトとセカンドシフトのシフトチェンジが自由に移行出来るんですか?」

「流石の私でも其れは分からないな~」

 

ガチャッ

 

「束~。ご飯出来たよ――お帰り、修治」

「ただいま戻りました。薫さん」

「それで、『作戦』は?」

「勿論、成功しました」

「了解。それで、大丈夫なの?体の方」

「ええ、大丈夫です」

「そう。だったら、一緒に食事を摂ろう」

「そ~だね~。だったら修くんも一緒に食べよう!」

「はい」

 

そうして、俺は束さんと薫さんと一緒に階下へと向かい、二日ぶりに妹達と一緒に夕飯を食べた。

 

 さて、一夏の専用機は『天使の名を冠する機体』にしようか。




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FRAME-07 俺の家が凄いところだった件について。by修治

作者「さて、第8話です!」

修治「それで、今回投稿が約四ヶ月遅れた理由は?(怒)」

作者「スミマセン。外国に研修に行っていたり、テストで執筆が進みませんでした」

修治「本当にそれだけか?(激怒)」

作者「ほ、本当は『艦これ』をやっていました!」

修治「最初っからそういえば良いものを………。それで今回の夏イベ、秋イベはどうだったんだ?」

作者「夏イベは『伊26』『水無月』をゲットして、秋イベは『コマンダン・テスト』『瑞穂』『親潮』をゲットしました」

修治「そうか(その内〆よう)」

作者、修治「「それでは、第8話をどうぞ!」」



修治side

 Buongiorno.神上修治です。さて、俺は今父さんに『お前も14歳になったからあれ(・・)を知らないとな』と言われ、父さんに着いていき、本社の地下一階に来た。というか、此処資料室だよね?

 

 と思ったら、おもむろに父さんがある本棚に入っている本を引き出した。すると、

 

ゴゴゴゴゴッ

 

という音が鳴って、本棚の奥からエレベーターが出てきた。

 

「(なあ、修治。これ、去年のあれに似ているな)」

「(まあ、そうだな)」

 

 そして、父さんがそのエレベーターに乗ったので、俺もついていく。俺がエレベーターに乗り込んだのを確認して父さんがエレベーターのドアを閉め、父さんは社員証をエレベーターのボタンの下の黒い所にかざした。すると、ボタンを押していないのにも拘らず、エレベーターは下降していった。

 

「修。昨日お前に貸してもらったお前のIDカード。今返すぞ」

「ありがとう。でも、なんで俺のID必要だったの?」

「お前のIDにここに立ち寄ることができる権限を与えたからな。その操作をするために必要だったんだ」

「そうだったんだ。それで、此処は何なの?」

「ここは、神上が神上たる由縁(・・・・・・・・・)、そして、『アナハイム・エレクトロニクス』がここまで大きくなった理由の場所だ。」

 

そういうと同時にエレベーターの扉が開き、驚くべき光景が広がった。

 

(『ヴェーダ』、だと……)

「(厳密には『ヴェーダ』の『メインターミナル』だけどな)」

「(細かい訂正ありがとう、フォン)」

 

 そこには、『ガンダムOO』に出てきた『ヴェーダ』の『メインターミナル』があった。本来は月の裏側にあるんだけどね。ホント、神様やり過ぎだよ……。

 

「ここは、限られた人しか入れない隠された部屋。そして、この部屋にあるのは『アナハイム・エレクトロニクス』いや、『対暗部情報収集用暗部』である『槇上』の根幹をなす『VEDA』だ」

 

え?神上家(うち)が暗部の家系だって?なんでそうした!?神様!こんな特典入れてねーよ!

 

「……えっと、頭がこの現状について行けないんだけど」

「暗部の意味は分かるよな」

「まあ。つまりは裏稼業だよね」

「そうだ。その襲撃目標を割り出すことによって、それを対暗部用暗部に流して襲撃を未然に阻止するのが私たち『槇上』の仕事だ」

「それは理解したけど、なんで名前が『神上』じゃなくて『槇上』なの?」

「そんなの簡単だ。敵に本名が分かられたらどうなるかわかるだろう」

「あっ(察し」

「察しが良くて助かる」

「それで、俺をここに呼んだ理由は?」

「お前を『槇上』の次期当主に任命する」

「……まじで?」

 

まあ、そうなるとはわかっていたけどね。ここまで話したんだもん。

 

「それはいいとして、うちの親戚の『枢木家』も暗部なの?」

「まあ、そうだな。厳密には親戚じゃなくて分家だから、同じ『槇上』なのだが。東の方は神上、西の方は枢木で情報を収集している。」

「なるほど。それで、摩耶と鳥海のどっちが『枢木家』の次期当主なの?」

「鳥海だと思うぞ。摩耶は柄じゃないからな」

 

 さっきから俺と父さんの話に出ている『摩耶』と『鳥海』は俺の従姉妹で同い年なんだけど、まあ御察しの通り『艦これ』の『摩耶』『鳥海』です。ちなみに、俺にはこの二人の他に母方の俺の一個下の従姉妹もいるんだけど、彼女に関してはいつか説明すると思う。

 

「そうなの。それにしても、『VEDA』って要はなんなの?」

「まあ、かなり精度の高い予測ができる量子コンピューターだな。現に『白騎士事件』も予測していた」

「マジかよ……」

 

 まさかと思うけど、神様が辻褄合わせのために此処までやったんじゃね?

「(多分そうだな)」

 

「社長。お話は終わりましたか?」

 

 そう言って暗がりから出てきたのは人事部の『九嶋 静(くのしま しずか)』さんだった

 

「おお、来たかRAFALE(・・・・・・)

 

へ?

 

「改めて紹介しよう。彼女は人事部副部長兼槇上実動第弐部隊、通称『ノーマン・ウィッチ』所属艦『龍飛』の無人戦闘機パイロットである『RAFALE』だ」

 

(゜д゜)エッ?

 

「どゆこと?無人戦闘機なのにパイロットって」

彼女達(・・・)は『アニマ』と呼ばれるアンドロイドで、彼女たちが乗る戦闘機は実質的に無人機となっているのだ」

「でも、九嶋さんにはお子さんがいるよね?」

 

その質問に答えたのは、九嶋さんだった。

 

「ええ。ですから、私の場合は事情が違うんです。私は雪乃を産んで3ヶ月したときの買い物帰りに自動車事故に巻き込まれたんです。幸い、雪乃を連れていかなかったんですが、私は重篤な状態になったんです」

「それで、どうなったんですか」

「私の家族のことを考えて社長は、『アニマ』の技術を応用してくださり、私は一命を取り留めました。その処置の結果、私は『アニマ』用にチューンされた戦闘機『ドーター』にリンク出来るようになったので、私は『ノーマン・ウィッチ』でパイロットをしながら人事部で働いているんです」

 

「そうでしたか。それで、父さん。彼女達(・・・)ってことは、他の『アニマ』も居るんだよね」

「ああ。『RAFALE』も含めて9人居る。そして、『RAFALE』以外を作ったのは―――」

 

「私だ」

 

 またも暗がりから出てきたのは、肥満体の中年男性と、エメラルドグリーンの髪色で、琥珀色の瞳を持った中学生位の少女だった。

 

「ようやく来たか。八代通」

「すまんな、社長。『イーグル』のご機嫌取りしてたら遅くなった」

「全く。あの脳天パッパラパー娘の愚痴なんて何回もループするわ突拍子の無いことを言うわで時間かかるの分かってますわよね」

「そう言うなよ。あいつのご機嫌取らないとシフトをボイコットするときあるんだから」

「えっと、どちら様ですか?」

 

 俺はこの二人の会話に割り込み質問した。それに答えたのは、父さんだった。

 

「こいつは『八代通 遥』でアナハイム・エレクトロニクス航空機部門主任で、『アニマ計画』の発案者だ」

「八代通だ。それで、こいつが―――」

 

と、肥満体の中年男性が言い、その次に

 

「初めまして。私は『始まりのアニマ』である『RF-4EJ ファントム』です。宜しくお願い致しますわ」

 

エメラルドグリーンの髪色で、琥珀色の瞳を持った中学生位の少女―――もといアニマが言った。

 

「ああ、宜しくな。ファントム。それに八代通さん」

「おいおい、俺はついでか?」

「いえ、そんなつもりは無いですよ」

「そうか、なら良いが」

 

「紹介は済んだか?」

「ああ」

「それじゃあ言うが、修のパスで行けるようにしたから、航空機部門の方にも顔を出して、他のアニマとの顔合わせをして欲しい。八代通、頼めるか?」

「ああ。良いが、一人だけかなり時間をかけないといけない奴(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)が居るんだが………」

「そうか。なら、修は明日の放課後直ぐに航空機部門に顔を出してくれ。それなら良いか?八代通」

「まあ、良いが」

「修はどうだ?」

「明日なら良いよ。部活も無いし」

「なら、今日はこれで良い。各自自分の持ち場に戻ってくれ」

 

「分かった」

「了解だ、社長」

「了解ですわ」

「分かりました、社長」

 

 というわけで俺たちは解散したのだが、翌日の放課後、俺は八代通さんが言った『一人だけかなり時間をかけないといけない奴(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)』という言葉の本当の意味を知ることとなった。




誤字脱字のご指摘、お願いします。
ご感想もお待ちしています。

2021年10月15日 一部を微修正


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FRAME-08 引きこもり姫

 皆さま、遅くなってすみませんでした!今年に入ってから執筆する時間がとれず、さらにリアルの方で様々な事が起きてしまいました。とりあえず、9話をどうぞ!

P.S.今回の話に出てくるキャラクターの一部の声帯の妖精さんがわかった方は感想にてお答え下さい。
(あくまでも私個人の想像で声帯の妖精さんを決めているので読者のイメージと違う場合があります。ご容赦下さい)


修治side

Bonjour.神上修治です。昨日は父さんにうちの会社(アナハイム・エレクトロニクス)が暗部組織であることと、航空機部門に立ち入りが許可されて、そこに所属しているアンドロイド――『アニマ』と言うらしいが――と顔合わせをしておけ、と言われました。そして、昨日からみて翌日、つまりは今日の放課後に俺はアナハイム・エレクトロニクスの航空機部門に来ていた。ちなみに、航空機部門はアナハイム・エレクトロニクス本社の建物と渡り廊下で繋がっている。

 

「どうも、八代通さん」

「ああ、昨日ぶりだな、少年。さて、こっちだ」

 

 そう言って、八代通さんは航空機部門のエントランスの向かって左側へと向かった。当然、俺はそれについて行く。するとその先には自動ドアがあった。

 

「少年、IDカードは有るよな」

「ええ」

「それをここに当ててくれ」

 

 八代通さんは自動ドアの右側にある黒いパネルを指差した。俺は八代通さんの言うとおりに俺のIDカードを当てた。すると、その下からテンキーが現れた。

 

「八代通さん、これの暗証コードはなんですか?」

「『3102054』だ」

「ありがとうございます」

 

 俺は八代通さんに礼を言ってその暗証コードを打ち込んだ。すると自動ドアが開き、中に入れるようになった。

 

「それで、此処は?」

「『アニマ』達の寮だ。まあ、九嶋(くのしま)は此処じゃなくて持ち家から通ってるんだがな」

 

 そのようなことを話していると前方からデニムのジャケットを着て、白のミニスカートを穿いた金髪の少女が歩いてきた。そして、俺達―――正確には八代通さんを見てこちらへと走ってきた。

 

「あ~、お父様だ~。ハグ~」

 

と言って金髪の少女は八代通さんに抱きついた。って、『お父様』!?

 

「八代通さん、この子は誰ですか?」

「こいつは『イーグル』。『アニマ』の内の一人だ。イーグル、少年に挨拶しなさい」

「イーグルだよ。よろしくね、少年さん(・・・・)

 

あ、今ので昨日のファントムが言ってた『脳天パッパラパー娘』がこの子だと実感できたわ。

 

「こちらこそよろしくな、イーグル。それと、俺の名前は神上修治だからな」

「わかった!」

 

この子、外見は俺と同じくらいか少し上なのに、精神年齢は幼稚園児レベルなのか?

 

「八代通さん。昨日言っていたかなり時間がかかる子の部屋って何処ですか?」

「左側の奥の部屋だ」

「ありがとうございます」

 

 八代通さんにそう答えると、俺は言われた部屋のドアの前に向かった。ちなみに、八代通さんはイーグルに連れられてどこかへ向かった。

 

(さて、どういう意味で時間がかかるのだろうか?)

 

 そう思いつつ、その部屋のドアを叩いた。

 

コンコンコンッ!

 

「………誰?」

 

 中から答えが帰ってきた。それに答えるように俺は言った。

 

「今日からここに出入りする事になった神上修治です」

「………」

 

返事が帰ってこない。

 

「あの~」

「………」

 

(どうしよう。って、八代通さんの言っていた『時間がかかる』というのはこの事なのか?)

 

 そう思った俺は床に座りドアの方に背中を預けた。何故かって?信頼度を上げるんだよ。

 

「早速で悪いけど、君の名前は?」

「………『バイパーゼロ』」

「そっか。じゃあ『ゼロ』って呼んでいいか?」

「いいよ……。別に」

 

 そういうような感じで俺とゼロとの交流が始まった。(今のところ俺が一方的に話しかける形だけど)

 

修治side out

 

ゼロside

(あの人……、いつも…来てる)

 

 あたしの部屋の前にあの人が来るようになってからもう二ヶ月近くになった。

 最初はすぐに諦めて来なくなると思っててあたしは黙ってたけど、一ヶ月を過ぎても来て話しかけてくれていた。あの人の話は自分の学校で起きたことや、自分の友達の馬鹿話とかがメインだった。

 あたしはその話を聞いていて少し心地よかった。そして、いつの間にかその話を聞いて笑っていることに気付いた。

 

(あの人は…あたしの声が、不快だと…思っていないよね……?)

 

 そう思ってあたしは今日あの人が来たらドアを開けてあたしを見てもらおうと決めた。

 

ゼロside out

 

修治side

 あれから二ヶ月くらい経った。俺は一日も欠かさずゼロの部屋の前に行き、話をした。まあ、そのお陰でこの寮に居るアニマほぼ全員と顔を合わせることが出来た。

 

「あっ!修治だ。ヤッホー」

「ライノか。今度お前の料理食べさせてくれ」

「分かったよ。腕に縒りをかけて作るから楽しみに待っててね」

 

 こいつは『ライノ』。まあ、分かりやすく名前を言うと『F/A-18E スーパーホーネット』だ。こいつはたまに滑走路を走って健康を維持している。それに加え、かなりヘルシーな料理を自室で作ることもある。趣味はそれらを含めた『健康』だそうな。ちなみに、味は一般家庭レベル。

 

「修治君、こんにちは」

「あ、『昴』さん。こんにちは」

「今日もバイパーゼロちゃんのところに?」

「はい」

「あの子、君が根気よく話しかけに来てから少しずつ明るくなってきてるよ」

「そうですか。では」

「たまには私の料理を食べに来てね」

「はい」

 

 この人は『昴』さん。この人もアニマでドーターの名前は『JFA-44 昴』。この機体は日本が世界に先駆けて量産化に成功した第六世代の戦闘機。量産化した当時は世界最高峰の性能を誇っていたらしいけど、量産一号機がロールアウトしたのはISが生まれる前年だったから生産数はかなり少ない。ちなみに、彼女の趣味は料理とVRゲームで、料理の腕前はシェフの方々が唸るほど。

 

「Расцветали яблони и груши~♪」

「ベルクト、食堂にバイトしに行くのか?」

「あ、修治さん。こんにちは。えっとそうですね。そろそろお昼ですし」

「頑張れよ」

「はい!」

 

 今すれ違った白髪(はくはつ)の子は『ベルクト』。正式な名前は『Su-47』。性格は真面目で俺がドーターの格納庫にたまに行くと高確率で整備員に混じって機体の整備をしている。二週間前からアナハイムの食堂にバイトをしに行っている。

 

(さて、と。何気にこのドアの前に立つのも慣れたなあ)

 

 そう思いつつドアを叩く。

 

コンコンコンッ!

 

「『ゼロ』、今日も来たぞ」

「う、うん……」

 

ガチャッ

 

(えっ!?)

「は、早く……入っ…て……」

 

 なんと、『ゼロ』が自らドアを開けて俺を部屋の中に招き入れようとしたのである。いや、何があったし。

 

「お、おう」

 

 とりあえず、『ゼロ』の部屋に入る。ちなみに、この寮の部屋の中はホテル(具体的には、東品川の臨海部にあるホテル)の部屋にキッチンがついている感じだ。

 

「ここ……座って」

「あ、ああ……」

 

 そう言って『ゼロ』が示したのは恐らくゼロが使っているであろうベッドだ。良いのか?それで。まあ、座るけど。そして、俺が座るとその左隣にゼロが座り、口を開いた。

 

「あ、あのね…その……しゅ、修治……にね、……あたしの……顔を……見てほしかったの……。そ、それでね、………あたしの顔を見て……、ふ、不快に……なったり………、してないかな……?」

 

……何をいってるんだ?『ゼロ』は。

 

「お前の顔を見て、不快になる奴が居たなら俺が殴るよ。だってお前、可愛いじゃん」

 

 ここで、『ゼロ』の容姿について説明する。髪の色はラベンダーパープルで、髪型はハーフアップで、前髪の左右を黒のヘアピンで留め、黒色のリボンで髪を留めている。どこからどう見ても可愛いんだけど。

 

「ほ……本当に…?」

「ああ」

「あたしの……声を…聞いても……不快じゃ……無い……?」

「当然だろ。むしろ、不快になる奴がいたら変だろ」「……そっか。じ…じゃあ、明日から…修治が…あたしの部屋に……来たら…入ってきても…良いよ……」

 

 いきなりの急展開である。実際、俺としては嬉しいけどね、ゼロが俺に心を開いてくれたことが。

 

「ありがとな、『ゼロ』」

「う、うん………」

 

 そういう感じで、アナハイムエレクトロニクス航空機部門所属の『アニマ』全員と顔を合わせることが出来た。メタい話になるが、残りの四人に関しては、多分そのうち紹介することになるだろう。




誤字脱字のご指摘、お願いします。
ご感想もお待ちしています。

2019.1.27 一部修正


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FRAME-09 虎と隼

 珍しく、早めに投稿出来ました。ちなみに、作者の地元では、某国の弾道ミサイルが飛んで来ないか心配している人がいます。取り合えず、存在Xに祈りましょう。それでは、どうぞ。

早速ミスをしました。すみませんでした。

P.S.活動報告にてアンケートを行っております。お暇であれば、答えてくだされば幸いです。


修治side

 どうも、神上修治です。アニマ全員との顔合わせが完了してからおよそ一年が経ち、今は十二月のとある土曜日だ。今となっては一週間に一度の頻度でしかアニマ達の寮を訪れていないが、その分俺が来たときのアニマ達の喜びようが微笑ましいというか、浄化されるというか……。まあ、言ってしまえば一週間に一度の楽しみというものだ。

 

(実際、昨日のことで少し癒されたい気分になってるし)

 

「あら、修治さん」

「ファントムか。髪を黒く染めてるってことは、今から外出か?」

「ええ。手間がかかりますけど、あまり目立ちたくないので。まあ、それでもナンパはされますけど」

「まあ、あれだ。やり過ぎるなよ(・・・・・・・)。ああ、それと。はい、お土産」

「ありがとうございます。毎週大変じゃないかしら?」

「いや、家にたくさん有るから大変じゃないよ」

「そうなのですね。それでは」

 

 そう言ってファントムは寮の出口へと向かった。というか、アニマ達との顔合わせの時に知ったのだが、あいつ(ファントム)は、『始まりのアニマ』じゃなくて『初めて安定した(・・・・)アニマ』らしい。それで、本当の『始まりのアニマ』は―――

 

「久しぶり、修治」

 

『Su-27M』こと、『ジュラーヴリク』だ。俺がこいつと会うときはいつも『MiG-29SMT』、通称『ラースタチュカ』と『T-50』、通称『パクファ』との三人で行動してる。ちなみに、三人を例えるなら、『ジュラーヴリク』はプライド高めのお嬢様、『ラースタチュカ』は『ジュラーヴリク』のボディーガード(というか、忠犬?)で、『パクファ』はいろんな意味で危なっかしいメイドさん。だっていっつもトカレフ持ち歩いてるから。

 

「久しぶりだな、『ジュラーヴリク』。ほら、お土産だ」

「お、『ニュ〇ヨ〇ク〇ン〇』じゃん」

 

 そう言って『ジュラーヴリク』が袋を取ろうとすると、『ラースタチュカ』がそれを遮った。

 

「お待ちください。ジュラが食べる前に私が毒味をします。こいつのことまだ信用していないので」

 

 うわ、辛辣。本当、『ラースタチュカ』には信用されてないのな。それと、『パクファ』。何気なく俺の左に立ってさりげなくトカレフ抜けるようにするな。ケジメの時間じゃないよ。

 

「モグモグ。毒はないですね。おい、もう二個あるか?」

「ああ。『ラースタチュカ』と『パクファ』の分も持ってきてる」

 

 俺はそう言って『ニ〇ー〇ー〇サ〇ド』二個を出すと、『パクファ』は左側のをを取り、『ジュラーヴリク』は右側のを取った。

 

「本当、修治が持ってくるお土産はハズレが無いな」

「その通りですね、ジュラ」

「ええ♪」

 

 上から『ジュラーヴリク』、『ラースタチュカ』、『パクファ』の順だ。

 

「じゃあね、修治」

 

 そう言って、『ジュラーヴリク』達は彼女らの目的の場所へと向かった。さて、俺も目的の部屋へと歩を進めるか。

 

「修治」

 

 そして、しばらく進んだところで後ろから声をかけられ、振り返るとグリペンがいた。

 

「グリペン、飲み物を買いに行ってたのか?」

「そう。それよりもあの三人にあげていたお菓子、私の分もある?」

「あるよ。ほら」

 

 俺はそう言ってグリペンに『ニュー〇ークサ〇ド』を渡した。しかし、グリペンは少し不満そう。

 

「どうした?もしかして、もう一個欲しいのか?」

 

 俺がそう問いかけるとグリペンは勢いよく首を縦に振った。

 

「はぁ、わかったよ。ほら」

 

 そう言ってグリペンに『ニ〇ーヨーク〇ンド』をもう一つあげると嬉しそうな態度を取った。

 

「ありがとう。大事に食べる」

 

 グリペンはそう言うと足早にここから去っていった。食いしん坊め。

 

(おっと。もう着いてたか)

 

 ようやく、目的の部屋―――『ゼロ』の部屋に到着した。

 

コンコンコンッ

 

「……修治?」

「うん」

 

ガチャ

 

「入って………」

「ああ」

 

 俺とゼロが扉越しに話さなくなってからは、ゼロは話すときにつっかえることが少なくなった。対人恐怖症は少しずつ改善されていってるかな?

 

「はい、ゼロ。今日のお土産の『ニュー〇ーク〇ン〇』」

「あ…ありがとう。うわぁ~~い」

 

ファッ!?

 

「ちょ、ゼロ」

「え…?」

「急にどうした?そんなに喜ぶとは思わなかったぞ」

「う…うん。でもね……修治が何か……疲れているみたい……だから………あたしが……元気に……させようと……思って………」

 

 その言葉を聞いた瞬間、俺は衝動的にゼロの頭を撫でていた。

 

「え…?…しゅ…修治……」

「ありがとな、ゼロ。少し元気になれたよ」

「ど…どういたし…まして……。それで…、何が……あったの……?」

「実はな―――――」

 

《回想》

 

 十二月と言えば、貴方達は何を思い浮かべるだろうか?新年の足音が聞こえてくる、それもいいだろう。クリスマス、とりあえずリア充は爆発しろ。え?急にどうしたって?それはな―――

 

「それでは、アナハイム・エレクトロニクスIS部門の忘年会を始めちゃうよ~。まずは、かんぱ~い!」

「「「乾杯~!」」」

「か、かんぱーい」

 

忘年会だ。拒否権というものは最初っから無かった。吹雪神(俺を転生させてくれた神サマ)以外の存在Xめ………。

 

(まあ、ソフトドリンク飲んでるからいいかな?)

 

 そのときはそう思っていた。そう、そのときは(・・・・・)

 

 そして、忘年会が進むにつれて、皆さんの飲酒量が増加していった。そんな中、

 

「修治~。楽しんでいるか~?」

「ええ」

 

 今、声を掛けてきたのはうちの部門で材質の強度検査をしている『橿原(かしはら) 陽子(ようこ)』さん。

 

「そんなシケたもん飲まないで酒を飲もうぜ」

「いえ、結構です」

「なんだよ~。せっかくの忘年会なんだからパーッといこうぜ~。パーッとな!」

 

(うわ、あの噂本当だったんだ)

 

 ちなみに、噂とは、『橿原さんは酒癖少し悪いし、人変わる。普段はあんなにお淑やかなのに…』というものだ。なるほど、本当だ。

 

(どうしよう)

 

 そう思ってふと束さんの方を見たら、

 

「ねえ~かおるん~。暑いから服脱いでいい~?」

「ちょ、束!?ダメだよ」

「いいじゃ~ん。あ、もしかしてその先の事もシたいの~?」

「そういう問題じゃないし、今外にいるんだよ!?せめて家に帰ってからにして!」

「え~。かおるんのイケズ~」

 

使い物にならないレベルの酔っぱらいになってた。

 

(何だ?この混沌は)

 

 そう思いつつ、グラスに入ったジンジャーエールを飲んだ。あれ?変な味する。一応ちゃんと中身見てみよう。

 

「………うぎゃあぁぁぁぁ!」

 

 なんと、ジンジャーエールがビールに変わっていた。いや、マジで。そして、陽子さんの手には俺がさっきまで飲んでいたジンジャーエールのグラスがあった。

 

「陽子さん!未成年になに飲ませてるんですか!?」

「何って、居酒屋(ここ)の裏の井戸水さ。なぁ、千歳」

「ええ、そうね」

 

 そう答えたのは『水上(みなかみ) 千歳(ちとせ)』さん。この人も結構飲むという噂があったけど、それも本当みたいだな。

 

「さあさあ、飲め飲め」

 

 そして、夜が更けるまで陽子さんと千歳さんにお酒をたくさん飲まされた。

 さらにお酒が好きではない薫さんと莉央さんに今朝聞いたところ、束さんが悪酔いしてウォッカのボトル二分の一本を俺に飲ませたらしい。ちなみに、そのとき俺は意識を失ってた。なお、薫さんと莉央さんが俺を救出した後にスポーツドリンクを飲ませたらしい。

 巷では、飲酒した後にスポーツドリンクを飲むのはご法度ということをよく聞くが、実は、飲酒後にスポーツドリンクを飲むのは二日酔いを防止するなど、逆に良いことらしい。

 

《回想終了》

 

「―――ってことがあったんだ」

「大変……だった…ね」

「まあな。だけど、ゼロを見てたら元気が本当に出てきたよ。ありがとな」

「ど…どういたしまして」

 

 その後、夕方までゼロと話していた。そして、家に帰ったら玄関先でDO☆GE☆ZAを束さんがしていた。まあ、昨日の悪酔いの事でやってるんだろうな、と思いつつ近所迷惑になるから薫さんを家の中から呼んで、束さんをシバいてもらった。

 

 ちなみに後日、束さん、陽子さん、千歳さんの三人は減給三ヶ月という処分が下ったそうな。皆様もお酒の飲み過ぎと悪酔いにはお気を付けて下さい。




感想、ご意見、誤字脱字のご指摘、お待ちしております。

2019.1.27 一部修正


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FRAME-10 流れ行く雲

 今回も早めに投稿することが出来ました。実はようやく艦これで翔鶴が出ました。しかし、長門が来てくれません。

フォン「嬉しかったのは分かった。だが、そろそろ始めろ。」

すみませんでした。それでは、どうぞ。


P.S.活動報告にてアンケートを行っております。お暇であれば、答えてくだされば幸いです。


修治side

 さて、今は三月。俺の中学校生活も終わりを迎える。アナハイムエレクトロニクスIS部門の現状としては、

 

①織斑千冬専用機『暮桜』のコアが譲渡された。

②それを知った束さんが『暮桜』の改修を決定。

③それにより、織斑一夏専用機との設計の互換性を俺が提案し、それが承認された。

④織斑一夏の専用機の完成度は98%である。

⑤織斑千冬の専用機の完成度は44%である。

⑥俺が理論提唱した(・・・・・・)ISの新しい形を実証する機体の開発が承認された。

⑦俺個人で中二の冬頃から秘密裏に作成した機体が完成し、アナハイムエレクトロニクスIS部門で新開発していたIS用の工具を搭載することにした。

⑧『アストレイシリーズ』の開発が完了した。

⑨束さんが『Верный』の艤装の解析を終了させ、量産化が承認され、それらの機体群の名称を『ICS』とした。

⑩『ICS』試作一号機のパイロットとして母さんが搭乗することとなった。

⑪それらの事に伴い、アナハイムエレクトロニクスIS部門に『ICS』開発部署が新編され、『ICS実用化班』が出来た。

 

という感じだ。そして、俺は卒業式に出席している。当然の事ながら、俺と一夏の進路はIS学園だ。

 ちなみに、俺は一応近くの高専を受験して合格してました。そして、俺がIS学園に行くこととなったきっかけは………

 

《回想》

 

 時は二月下旬。俺は高専からの合格通知が来て悠々自適な生活を送っていた。

 

(そろそろか。一夏がISを動かす事になるのは)

 

 そう思ってると、会社の方から電話が来た。

 

「もしもし」

『あ、修くん?今すぐアナハイムに来てくれるかな』

「いいですけど、どうしましたか?」

『いっくんがIS動かしたみたいだから、修くんの事を世界に公表しようかと思うんだ』

「そうですか。あれ?薫さんは?」

『………あ』

 

 この人、ガチで恋人がIS動かせるの忘れている上に、性別すら忘れてたのかよ。しかも、薫さんいつも女装してるけど結構似合ってるし、本物の女性と見間違うほどだし(ちなみに束さんが強制している模様。束さん曰く、『そこら辺の有象無象よりも可愛い』)。果たして、良いのか?それで。

 

「それで、どうするんですか?」

 

ゴンッ!

 

『まあ、公表しないことにしようかな。私の事は』

 

 あ、薫さんに変わってる。しかも、少し怒ってるし。これは今日の夜に夜戦(意味深)が行われるか?妹達に悪影響が出ないか心配だよ。

 

「そうですか。なら、そっちに向かいます」

 

そう言って俺は電話を切った。

 

 その後、俺はアナハイムへと向かい、緊急用に備え付けられている会見場へと連れていかれた。

《回想終了》

修治side out

 

三人称side

 

2月、多くにとって突然に、それは起こった。

原因不明の、ISを動かせる男性『織斑一夏』の出現。そして、複数のウイルスによる、各国サーバーの同時クラッキング。

その殆どは失敗したが、とあるデータのみが抜き出されていることに各国政府は気付いていない。

そして、アナハイム・エレクトロニクスと大天災篠ノ之束の連名で、ごく短い声明が、世界に発信される。

 

『To predominance of woman over men persons.Welcome to the Hell.』

 

それは、全ての女尊男卑主義者への、明確な宣戦であった。

国際IS委員会は、安全な定例会議(居眠りの場)を放り出し、詳細な説明を大天災とアナハイム・エレクトロニクスに要求することを余儀なくされ、

人々(女尊男卑主義者)は、その声明が意味することに気付かなかった。

 

三人称side out

 

修治side

 

 そして、記者会見が行われて、俺がISを動かせることが公表された。記者会見の内容?普通だったよ。

 

 メタい話だが、上に書かれたような声明は出してないみたいだ。束さんが本当に出した声明は、

 

『アナハイム・エレクトロニクスにISを動かした男の子がいるよ~』

 

だし、アナハイムが出したのも、

 

『弊社には本日発見されたISを稼働させた男性とは別の男性を保護している。詳細については14:00から会見をアナハイム・エレクトロニクス本社の会見場で行います』

 

だからな。本当だからね。………多分。

 

 さて、そんなことを思っているうちに、どうやら来賓の方々の有難い(長ったらしい)お話しが終わったようだ。

 

「校歌、斉唱。来賓並びに保護者の皆様もご起立願います」

 

ザッ

 

 そして、俺ら卒業生にとって歌うことが最後となる校歌を歌う。にしても、二度目の中学校生活は凄くめんどくさかったなぁ。女尊男卑がここまで広がっているとは思わなかったし。

 

(さて、ここからは原作の時間軸に入る。俺や響、亡國機業の清水絋太、それにアナハイム(此方側)もう一人の転生者(・・・・・・・・)がいるというイレギュラーでどういう事になるのか)

 

 あっ、そうそう。いい忘れてたけど、響だけに専用機渡すの不公平だから、妹達全員に専用機渡したんだった。コアの数の問題?政府脅してコアの数誤魔化して貰っているから問題なし。当然、俺の作っているコアも誤魔化しの対象範囲内。

 

 さあ…一緒に滅茶苦茶にしようじゃないか。なあ、『(ほむら)

 

「(おいおい、オレ様と『正義』を忘れてんじゃねえのか?)」

「(忘れてはいないさ。お前を頼る時と『正義』を使う時が来ればバトンタッチするし、使わせて貰うからさ)」

「(そうか。ならそれまで待たせてもらうぞ、修治(相棒))」

「(頼りにするさ。フォン(もう一人の自分))」

 

 




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五月三十日 一部修正。


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FRAME-11 英国のビット持ち

 先に言っておきますが、今回の話の後半は少々問題発言の目白押しになっています。もし意見があれば、後半部分の書き直しを視野に入れています。それでも良ければ、どうぞ。

P.S.活動報告にてアンケートを行っております。お暇であれば、答えてくだされば幸いです。


修治side

 

 四月上旬のある日、俺はIS学園の1年1組にいた。俺が座っている席の前方には一夏、それ以外の生徒全て女子というこの状況。

 

 普通の男性であれば少々取り乱してしまうところだが、残念ながら女子の比率が比較的高めになりがちな弓道をやってると耐性つくんだよね。うん。

 

 さて、今は副担任の山田先生が来て自己紹介をするように言って、一夏の前の名簿の人が自己紹介をするところだ。

 

忍野(おしの)麻里(まり)です。アナハイム・エレクトロニクスでテストパイロットやってます。趣味は読書と料理です。一年間よろしくお願いします」

 

(おうおう、猫かぶりやがって。もう少し自分を出しなよ)

 

 今自己紹介したのがもう一人の転生者、『忍野(おしの)麻里(まり)』。本人に聞いたところ、どうやら俺を転生した吹雪神とは別の神サマに転生させてもらったらしい。ちなみにだ、こいつの趣味について少し訂正がある。正しくは『ラノベを読むことと料理』だ。本当に一言抜くと意味って変わるんだね。

 

「(修治、一夏の自己紹介始まるぞ)」

「(サンキュー、フォン)」

 

 さて、楽しみだなあ。一夏の自己紹介(コント)

 

「織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

 ここで言葉を切った一夏。何を言うべきか迷っている模様。さあ、どうする?

 

「以上!」

 

 うん、分かってたよ。俺と一夏、それに麻里以外のクラスメイトがずっこけることが。

 

 そして、千冬さんもとい織斑先生がクラスに入ってきて一夏に向けて出席簿を振り上げた。

 

修治side out

 

一夏side

 

 俺の自己紹介が終わったら、修治と俺の前に自己紹介した人以外がずっこけていた。するといきなり

 

パアンッ!

 

という音を立てて俺の頭が叩かれた。恐る恐る振り向くと

 

「げえ、素戔男尊(スサノオノミコト)!?」

 

パアンッ!

 

「誰が日本神話で八岐大蛇(やまたのおろち)を退治した神だ。馬鹿者」

 

 というか、なんで千冬姉がここにいるんだ?

 

「諸君、私がこのクラスの担任の織斑千冬だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」

 

一夏side out

 

修治side

 

 俺は千冬さんの有難いお話しの後半らへんから耳栓を着けていた。理由は至極簡単。そのあとに続く女子の声が姦しいからだ。どうやら麻里も耳栓を着けていたようだ。

 

 しばらくして一夏がまた叩かれたところで耳栓を外した。その直後に織斑先生が、

 

「次の生徒、早く自己紹介をしろ」

 

と言ったため、次の生徒である俺が立った。

 

「神上修治です。非公式ながら『アナハイム・エレクトロニクス』のテストパイロットをしています。趣味は模型造りと読書、それに機械いじりです。一年間よろしくお願いします」

 

 すると、クラスの女子がざわつき始めた。

 

「『アナハイム・エレクトロニクス』って………」

「あの『スプーンからISまで』をモットーにしている大手の複合産業グループよね……」

「しかも、そこのISテストパイロットって倍率かなり高いらしいし………」

「ってことは……」

「忍野さんと神上君って超エリート!?」

 

 いやいやいやいらいけれ。そんな事ない、と思うよ。というより、うちの一次試験はただのペーパーテストだから突破しようと思えば突破できるけど、二次試験の面接はとある方法(・・・・・)で合否判定してるからそんなに人が入社しないから年々募集人数減らしているだけなんだよ。

 

「いえ、俺はエリートでも何でもないです。ですが、取り柄があるとすれば人よりも少しだけ記憶力がいいだけです」

「神上、席に座れ。次の生徒、自己紹介を」

 

 言われた通り俺は席に座った。そして、自己紹介は滞りなく―――いや、一人だけ長ったらしい自己紹介をしていたやつがいたが―――進んでいき、HRは終わった。

 

 HR終了後の一時間目はISの基礎理論である。俺は苦もなく授業についていけてるが、一夏は頭から煙を出している。どうやら分からないようだ。放課後みっちり教えてやろう。

 

 そのようなことを思っていると一時間目が終わり、休み時間に入った。というわけで、一夏に話しかけよう。

 

「ちす、一夏。どうだ?今の気持ちは」

「パンダになった気分だよ……」

「そうか。おっと、箒。久しぶりだな」

 

 そう言って目線を近くにやって来た箒に向けた。

 

「一夏、久しぶりだな。それに修治も」

「そうだな。そうだ、一夏。少しだけ俺は抜けるから、積もる話をごゆっくりしていいぞ」

 

 俺はそう言うと麻里の方に向かった。

 

「マリ」

「ん?修治、どったの?」

 

 麻里は早くも友人をつくって話していた。案外コミュ力高いな、おい。

 

「どうもしてないけど、向こうに入りたくなかっただけだ。えっと、鷹月(たかつき)さんと小鳥遊(たかなし)さん。初めまして、神上修治です。よろしくお願いします」

 

 俺は麻里と話していた鷹月静寐さんと小鳥遊有紗さんに向けて挨拶をした。

 

「此方こそよろしくね、神上くん。それと、なんで堅苦しい話し方なの?麻里とはフランクに話してるのに」

「あ~すまない。初対面の人とかにはこうしてるんだ。少しずつ直していくから気にしないでくれ。それと、呼びやすい呼び方で構わない。」

「そうなんだね。わかったわ、修治くん。私のことは名前呼びでいいよ」

「なあ、私の事忘れてはいまいか?」

「ああ、すまない。よろしく、小鳥遊さん」

「私の事は静寐と同じで名前で呼んでくれないか?当然、私も君の事を名前で呼ぶが」

「ああ、いいが。よろしく、有紗」

 

キーンコーンカーンコーン

 

「おっと、席に戻らないとな」

「そうだね、修治くん」

「そうだな、では戻ろう」

 

 そういうわけで、この場は解散となった。そして、俺が席についたと同時に織斑先生達が入ってきた。

 

「それでは授業を始めます」

 

と言って山田先生は教壇に向かったが、何も無いところでつまづいて、こけてしまった。

 

(ああ、やっぱりこの人母さんと同じだ)

 

と思ったり、色々考え事をしていると(当然、授業内容は頭に入っている)、山田先生が

 

「織斑君は何かわからない所はありますか?」

 

と聞いてきた。それに間髪入れずに、

 

「殆ど全て分かりません!」

 

と申告した。絶対これ俺が巻き込まれるわ。

 

「織斑、入学前に渡した参考書は読んだか?」

と、織斑先生が一夏に聞いてきた。それに一夏はこう答えた。

「タ●ン●ージと間違えて捨てました」

 

パアンッ!

 

 当然の事ながら、出席簿が降り下ろされた。本日三回目である。

 

「必読と書いてあっただろ。それに、何故表紙が黄色くないのに間違えるのだ。昨年度も同じことがあって、今年度からカラーリングに配慮しているというのに………」

 

 あれ?去年それをした人、俺知ってるよ。

 

「………すみません。昨年度それをしたのは赤木さんですよね。二年生の」

「まあ、そうだが………。ああ、なるほど」

 

 察してくれて助かります、織斑先生。去年の今くらいの時期の夕方にうち(アナハイム・エレクトロニクス)の社長室に抗議のお電話を頂いたのでよ~く覚えているよ(怒)

 

「それで、神上。お前はどうだ?」

「殆ど全て理解しています」

「そうか。何日で全てに目を通した?」

「徹夜で三日です。えっと、一夏にそれを貸しましょうか?」

「フム。その方がこちらの手間も省けるな。では、織斑。神上から参考書を借りて一週間で全て読みきれ。異論は認めん」

「―――分かりました」

 

 一夏が素直に従ってくれてよかった。そう思っていると時間は過ぎていき二時間目が終わりを告げた。あと二時間授業を受けたら昼休みだ。

 

「ちょっと宜しくて?」

 

 うわ、セシリア・オルコットだ。こいつが長ったらしい自己紹介をしたヤツだ。

 

「ああ」

「いいが?」

 

 上が俺、下が一夏だ。するとオルコットが

 

「まあ!なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないかしら?」

 

と言ってきた。

 

「(なぁ、修治。あいつ一発ブン殴ってもいいか?)」

「(やめてくれ、初日から暴力沙汰にしたくないから。あの時とは違って(・・・・・・・・))」

 

そして、それを聞いた一夏が、

 

「悪いが俺、君のこと知らないわ。修治は知っているか?」

「ああ。知っている。イギリス代表候補生のセシリア・オルコット。実家は確かイギリスの貴族で両親とは死別。IS適正はA+。ここまでで事実に相違は?」

「………ありませんわ。それよりもなぜそこまで―――」

「まあ、一種の職業病(・・・)だ。さて、一夏。代表候補生というのは、国家代表になる可能性のある人間のことだ。わかりやすく言えば、オリンピック指定強化選手のようなものだ。だが、イギリスの代表候補生がこんなにも高圧的な態度を取るとは………」

「あ、あなたイギリスの事をバカにしているのですか!?」

「いや、貴様の事しか馬鹿にしていない」

「なんでそんなにもアッサリとわたくしを馬鹿にしていることを認めるのですか!?大体―――」

 

キーンコーンカーンコーン

 

 タイミング良くチャイムが鳴った。するとオルコットが、

 

「とにかく、あなた達逃げないことね!よくって!?」

 

 ごめん、どうやって逃げれば良いのですか?というか、一夏に話振られなかったな。一夏の顔がキョトンとしてる。

 

「何だったんだ?」

「さあ?」

 

 そんな事を話していると、織斑先生が教壇に立った。山田先生じゃないってことは、そのくらい重要な授業ってことだ。

 

「それでは、授業を始める。ああ、その前にクラス代表と副クラス代表を決めたいと思う。簡単に言えば学級委員長と副学級委員長の事だ。自薦他薦は問わない」

 

織斑先生がそう言った瞬間、女子が声をあげた。

 

「はいっ。私は織斑くんを推薦します!」

「私も織斑くんに一票」

「じゃあ、私は神上くんに一票」

「私も神上くんに」

 

うわ。出てくる出てくる、俺と一夏の名前。

 

「他にいないか?いないのであれば、これで決まりだぞ」

 

 あ、ようやく一夏が自分の名前が挙げられているのに気がついた。

 

「ちょっと待って!俺も!?」

「そうだ。推薦されたものに拒否権はないぞ」

「だったら俺は修治を―――」

 

バンッ!

 

「納得がいきませんわ、そのような選出!大体、男がクラスの代表となるポストに就いているなんていい恥さらしですわ!実力からいけばわたくし、セシリア・オルコットがクラス代表となるのが必然。それに、副クラス代表も女性がなるのが当然ではなくって?それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!」

 

 あれ?これってさ、人種差別発言というものなんじゃね?これは不味いよ。このクラスにいる日本人全員を敵に回しちゃったね、オルコット。

 

「(殺ってもいいか?)」

「(その気持ちは良くわかるが、我慢してくれ)」

「(おう)」

 

オルコットの発言はまだ続く。

 

「わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!―――いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき。そしてそれはイギリスの代表候補生にして、入試次席(・・・・)の、このわたくしセシリア・オルコット以外有り得ませんわ。ISの操縦にしても、入試で唯一(・・・・)教官を倒したエリート中のエリートですわ!そこの自称エリートとは違って」

 

ん?自称エリートって………。まさかの俺!?

 

「アナハイム・エレクトロニクスのテストパイロットといえど“非公式”ということはどうせ金か何かを積んでその地位に就いたのでしょう?でしたら、忍野さんの方が数百倍も操縦技術としてはマシでしょうね」

 

「(フォン、すまない。俺の堪忍袋の緒が切れそうだ)」

「(………できれば穏便にな。お前がああいう手合いにガチギレすると怖すぎるからな)」

「(善処はする)」

 

「………先生、発言権を下さい」

「良いだろう。許可する」

 

 そう言った織斑先生の口元は笑みに歪んでいた。多分、先生もキレそうだったのか。そして、それとは対照的に山田先生は泣きそうになっていた。俺の顔、そんなにも怖くなっているのか?

 

 さて、反撃を開始しようか。そこのベラベラうっさいモノ(・・)を黙らせるために。




 誤解の無いように申し上げますが、私はセシリアが嫌いというわけではありませんし、セシリアの人格を否定する訳でもありません。セシリアファンの皆様には大変申し訳なく思っています。

 前書きでも書いた通り、後半部分の書き直しを視野に入れています。感想、ご意見、誤字脱字のご指摘、お待ちしております。


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FRAME-12 修治の反撃

 お久しぶりです。ようやく、最新話をあげることが出来ました。

 さて、私から読者の皆様に重要な話があります。私の事情により更新が長期間出来なくなります。私の作品を楽しみにしている皆様には大変申し訳なく思っています。

 現時点で募集しているアンケートに関しては、締切はそのままで、結果を活動報告にて報告を行い、執筆に関しては、私が書けるようになりましたら、書くようにさせていただきます。

 それでは、最新話をどうぞ。

7月8日追記:活動報告にてアンケートの結果発表を行っております。



麻里side

 

(はぁ~。修治怒らせちゃったね、オルコット)

 

 私は今凄く憂鬱だ。何故かって?そりゃあ、修治の実力を知らないオルコットが修治を貶したお陰で修治がガチギレしちゃったからだよ。ああ、遅くなったけど、忍野麻里だよ~。

 

「………先生、発言権を下さい」

「良いだろう。許可する」

 

 どうしよう。修治を見てたらエヴァの使徒のテーマが聞こえてきてるんだけど。

 

(ま、いっか。オルコットの自業自得だし)

 

 さて、どう反撃する?修治。

 

麻里side out

 

修治side

 

「さて、お前は先程言った言葉の意味を理解して言ったのか?」

「当然ですわ!」

「そうか。ならば、先程のヘイトスピーチのようなものは意図して言った事なのだな。日本人全体(・・)を貶める言動、男性を下に見る態度、全てお前が考えていることなのだな。そうかそうか。あ、そういえば先生」

「なんだ?神上」

「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国は男女平等を謳っていますよね」

「ああ、そうだな」

「分かりました。―――さて、お前今の自分の立場分かってんのか?」

「それは当然ですわ!わたくしはイギリス代表候、補…生………」

 

 そこまで言うと、前にいるモノ(・・)は顔面蒼白になった。

 

「ようやく気付いたのか。さて、先生。オルコットの入試のペーパーテストの点数、()と比較してどうなのですか?」

「普通は教えないが、仕方がない。入試のペーパーテストは神上の方が高い」

「そうですか。()よりもペーパーテストの点数が低いのはどういう事でしょうか?エリート中のエリート(・・・・・・・・・・)のオルコットさん」

「な、何をいっているのですか!?」

「そう興奮するな、オルコット。神上はな、IS学園開校以来の史上最高得点を叩き出したのだ」

 

 ええっと、はい。そういうことらしいです。ちなみに、点数に関しては、カンニング疑われてペーパーテストをもう一回先生達に監視されながらやらされるレベルです。

 

 遅れました。どうも、神上修治です。見事にガチギレして我を忘れていました。ちなみに、これでガチギレしたのは俺の二度目の生涯で二回目(・・・)です。そして、最初のガチギレは中学校の時です。

 

「そういえば、神上。お前あえて(・・・)自己紹介で端折った部分あるだろう。それを補ってもう一度自己紹介をしろ」

 

 隠したかったから端折ったんだけどなぁ。ま、いっか。

 

「分かりました。―――改めて自己紹介をさせていただきます。()は『アナハイム・エレクトロニクス』IS部門副主任兼“非公式”のテストパイロットを務めています、神上修治です。そして、この“非公式”というのは、六年前(・・・)事故(・・)でISを動かしたことにより、『アナハイム・エレクトロニクス』に保護され、テストパイロットとして公の場でISを稼働させることが出来なかったという理由で“非公式”という字を使っています。他は割愛させていただきます」

 

そして、織斑先生が俺の言葉に続けて言った。

 

「ああ、そうだ。神上の話が出鱈目だと思うのであれば、アナハイム・エレクトロニクスの人事課に放課後問い合わせればいい。それと、神上が言っていた六年前に初めてISを動かした、ということだが、私も事情があってその場にいた。そして、私の目で直に見た。それが答えだ」

 

俺の言葉と織斑先生の言葉で教室中がザワザワし始めた。

 

そのざわめきを打ち破ったのは、意外にも有紗であった。

 

「先生。神上はアナハイム・エレクトロニクス社長である神上光次氏の親類なのだろうか?」

 

やっぱり、そこに気づくよな。同じ名字だからね。

 

「神上光次といえば男のくせに(・・・・・)一代でアナハイムグループをここまで広げた人なのですよ。その方とそれが親類なんて有り得ませんわ!どうせ同姓なだけ―――」

「んな訳ねーだろ。()は神上光次の実の息子だよ」

「へ?」

「なんだ?理解出来ないのか?My father's name is Shinjo Koji. Do you understand?」

 

俺の言葉で更に教室は混乱した。

 

「なあ、修治。なんで俺に教えてくれなかったんだ?」

「簡単なことだ。言うタイミング逃してた」

「ひでえ」

 

一夏の返答を聞きつつ、俺はオルコットに聞いた。

 

「そういえば、オルコット。教官を倒したっていうのはあれか?織斑先生を倒したってことか?すげーな」

「「「え?」」」

 

 これにはクラス中が疑問の声を出した。ただ、麻里は笑いを噛み殺してたけどね。まあ、狙ったことだからな。

 

「神上。少し認識が他とずれているようだから言うが、お前以外は私以外の教員と対戦している。だがお前の場合、事情が事情だからな。仕方なく私と対戦することになったんだ」

 

 おお、先生も嘘がうまい。本当は、『神上の専用機は色々とえげつなさ過ぎて教員の心を折るかもしれないから私の方から志願した』なのにね。―――結果?ドローだよ。

 

「それで、オルコット。そんなに面積38万k㎡の極東の島国に三年間居たくないんだったら、今すぐ荷物纏めて面積24万k㎡のご自慢のお国にでも帰ればどうだ?」

「頭に来ましたわ!決闘です!」

「よろしい、ならば戦争(クリーク)だ」

 

なにげにこの台詞、一生に一度言ってみたいよね。

 

「それで、マリ」

「ん?何?」

「お前オルコットに名前挙げられてたけどどうするの?」

「私は面倒が嫌いだけど、仕方がない。先生、私も参加します」

「分かった。忍野は立候補で、四人で総当たり戦をしてもらうか」

「え?織斑先生、『総当たり戦』ってどういうことですか?」

 

 ようやく山田先生が発言した。影が皆無になりかけてたよ、本当に。

 

「そこの二人の間で『決闘(クリーク)』ってことになってるからな。いっそのこと、候補者四人で総当たり戦をさせようかと思ってな」

 

「(いいのか?それで)」

「(いいんじゃねえか、それに、久しぶりに暴れられそうだ)」

「(お前、この前の試験で暴れただろ。今回は俺にやらせて)」

「(りょーかい)」

 

「さて、一夏。お前も総当たり戦の頭数に入れられてるな」

「そうみたいだな」

 

 少しだけ自棄になってるな。大方、玄人と戦うことになったのが理由か?そうなると、これは朗報かな?

 

「お前の専用機、もうあるぞ」

「まじで?」

「大マジだ。とあるISのほぼ同型機(・・・・・)がちょうど有るからそれをお前にやる。当然、機体の方はアナハイム(ウチ)の持ち物だから、IS学園から卒業するときには余程のことがない限りアナハイム(ウチ)に返却することになる。そういう条件が付くが、それでも使うか?」

「ああ」

「よし、交渉成立だ。あ、そうそう。レンタル料は払わなくて良いから」

「え、何でだ?」

 

ここで織斑先生が口を挟んだ。

 

「織斑。お前は今の自分の立場というものが分かっているのか?それと、神上。少しえげつなさ過ぎだ。その内訴訟起こされるぞ」

「さすが織斑先生。そこまで知ってましたか。ですが、先にオーダーを出していた機体を放り出してネームバリューを優先させるような企業を()は信用することはできませんよ」

「それはそうだが、強引すぎる。向こうにも面子というものがあるのだ」

「知りませんよ、そんな安っぽい面子なんて。そもそも、信頼関係を重視する職種なのに飽きるか目新しいものが出た途端に積み上げた信頼関係を崩してそっちに向かうのはおかしいと思います。それに、こちらは穏便に(・・・)済ませたんですよ」

 

 当然の事ながら、俺と先生との会話で麻里以外の生徒はポカンとしていた。だって『倉持技研』という固有名詞を抜いて話しているし。

 

「………分かった。とりあえず上の方にはそう伝える。だが、データの方は提出してもらうようにお前の上司に伝えておいてくれ」

「善処はしますが、上司はあの人(束さん)ですよ」

「そういえばそうだったな。―――さて、今の話は聞かなかったことにしておいてくれ。大人の(・・・)話だからな。話を戻すが、織斑、神上、忍野、オルコット。来週の月曜日に四人で総当たり戦をしてもらう。恐らくだが、長時間かかると思われるため、授業中に行うことにする」

 

その言葉に生徒は歓喜の声を上げたが、織斑先生が続けた言葉にその声は失意の声に変わる。

 

「その為、四人以外の生徒には総当たり戦を見てもらい、レポートの提出をしてもらう。サボろうとは、思うなよ。さて、授業を始める」

 

その言葉と共に、残り三十分を使った授業が始まる。




感想、ご意見、誤字脱字のご指摘、お待ちしております。


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FRAME-13 はじめて知る事実

 大変ながらくお待たせしました。最新話です。(まあ、また数ヶ月間開けるんですが)

 さて、最初言っておきます。結構御都合主義入ってるかも知れません。

 あ、記念話の進捗ですか?大変申し訳ありません。まだ出来ておりません。多分、この小説の次の投稿をする時にあげるようにしますので、もう少しだけお待ちください。

 それでは、最新話をどうぞ!


修治side

 

 それから授業を二コマほど進めた昼休み。俺は一夏と箒と共に学食へとやって来た。そして食券を買い、少しして俺たちが頼んだものが出てきた。それを取り、空いている席に座った。

 ちなみに俺たちが頼んだものは、一夏が日替わりランチ、箒が鯖の味噌煮定食、そして俺は豚骨ラーメンだ。

 

「そういえば修治。中学の部活はなんだったのだ?」

「弓道。そういえば、俺も箒と同じで全国制覇してたな」

「そうだったのか………。というか、修治も知っていたのか!?」

「まあ、な」

「そうか。それで、ここの部活には入るつもりなのか?」

「いや、どこにも入らないかな。中学の時ですら部活と仕事(アナハイムのIS部門副主任)の両立が少しキツかったからな」

「それもそうだな。それで……い、一夏は何をしていたのだ?」

「バイトしてた」

 

 一夏のその発言に箒は固まった。まあ、そうなるな。その言葉だけを聞いたら。

 

「まあ、家計を助けるために仕方なく剣道を辞めたんだけどな」

「そ、それはどういう事だ?」

「だって、箒との唯一の繋がりだったからな、剣道は」

 

 ああ、うん。何か一夏が唐変木+鈍感の症状をいつの間にか自力で完治させやがって、さらに箒の好意に気付いて、その上箒の事が好きなのだと自覚したっぽいんだよな。俺の努力返せ。

 あ、ちなみに鈴についてだが、一夏に告ってフラれた。そこから鈴はそれを吹っ切って今では一夏の良き親友となった。

 

「そ、そうなのか。な、なら放課後に剣道の稽古をつけてやろうか………」

「頼む。少し体が鈍ってるからお手柔らかにな」

「善処はする」

 

そのような話をしつつ、箸を進める。

 

「そうだ、修治」

「どうした?」

「姉さんはどうしてる?」

「ああ、うん。元気だよ。それと、報告することがある」

「何だ?」

「束さん、彼氏作ったってよ」

 

「え?」

 

 今声を上げたのは一夏。箒は絶句してる。俺も知ったときには驚いたよ。結構前だけど。

 

「………修治。姉さんの彼氏の写真有るのか?」

「当然だ。ほら」

 

 そう言って俺は箒に去年俺に送られた、薫さんと束さんのデートの時のツーショット自撮りの写真を見せた。

 

「左が姉さんで、右が………」

「女の人か?この人」

 

箒と共に見ていた一夏がそう言った。

 

「パッと見は女性だ。だが、男だ」

「………本当なのだな」

「ああ。何なら本人に電話掛けようか?」

「頼む」

 

 箒にそう言われたので、俺は薫さんに電話を掛けた。数コール後、薫さんが出た。

 

『もしもし、修治?どうしたの』

「束さんの妹に薫さんと束さんのツーショット写真見せたんですけど………」

『なんとなく察した。大方私の容姿で女だと思われていると』

「その通りです」

『分かった。束の妹に電話を替わって』

 

薫さんにそう言われたので、箒に電話を替わった。

 

修治side out

 

箒side

 

 私は修治から携帯電話を受け取って耳に当てた。それにしても、修治の携帯電話ゴツいスマートフォンだな………。

 

「もしもし………」

『もしもし。貴女のお姉さんとお付き合いさせて頂いています、十六夜薫と申します』

 

 電話口から女性の声にしては低く、男性の声にしては高い声が聞こえた。恐らく彼が『薫さん』なのだろう。

 

「ご丁寧に有り難う御座います。私は篠ノ之箒です」

『ご丁寧にどうも。さて、本題に入ろうか。私の事、女性だと思ってるんだよね?』

「ええ、義兄(にい)さん」

『――ゲホッゲホッ。済まない、お茶でむせてしまった。………大丈夫だよ、束。ただ単に君の妹に意表を突かれただけだから』

「今近くに姉さん居るんですか?」

『うん、居るよ』

「替わってくれませんか?」

『いいよ』

 

それからすぐに姉さんの声が聞こえた。

 

『もしもし箒ちゃん、久しぶり。六年ぶりだね』

「ええ、姉さん。姉さんも変わり無いようで」

『うーん。変わったちゃあ変わったんだけどね。人を好きになっちゃった』

「ええ、わかっています。というより、本当に姉さんの彼氏は男なんですか?」

『もち。というか、昨日もヤっちゃったぜい』

「………公共の場でそんなこと言わないでください。この小説が規制掛けられるので」

『箒ちゃんもメタ発言するなんて、成長したねぇ』

「マイナス方面への成長です」

『そうかな~?』

「そうですよ。では、義兄さんに替わってください」

『あ~、ちょっと待って。箒ちゃん、専用機欲しくない?』

「………どういう事ですか?」

『修くんが箒ちゃんのためにISを用意してくれたんだよ』

 

 その言葉を聞き、電話を離して修治の方に話しかけた。

 

「修治。姉さんから聞いたんだが、修治が私のためにISを用意してくれたというのは本当か?」

「どういうこと?ちぃっと束さんに替わってくれるか」

「構わないが」

 

そう言って私は修治に電話を返した。

 

「ああ、主任(・・)。お疲れさまです。………それはそうと、主任。もしや『アストレイシリーズ』の一機を箒に渡そうとは思ってないですよね?………しらばっくれないでください、有給と休憩と給料減らされるのにプラスして、残業増やされたいんですか?………分かればいいんです。………はあ!?箒をパイロットにする手続きの書類もう(父さん)に出した?………え?(父さん)がさっき承認の判子押した?マジっすか………。ええ。本人に伝えておきます。とりあえず、薫さんにしばかれて下さい」

 

修治はそう言って電話から耳を離した。

 

「姉さんがすまなかった」

「箒が謝る事じゃない。とりあえず、うち(アナハイム)から専用機が渡される。だから、今週末にうち(アナハイム)に来てくれ。もちろん、一夏も」

「ああ」

「分かったのだが、良いのか?比較的一般人の私に専用機など」

「良いんだ。第一、自衛のために渡すからな」

「そうなのか」

「そうだ」

 

そう言って修治は電話をまた私に渡してきた。

 

「姉さんの無計画さは変わりませんね」

『そうかな~?とりあえず、薫に替わるね』

 

 それからすぐに義兄さんが出た。それと同時に頭を殴った音が聞こえた。恐らく、姉さんが殴られたのだろう。

 

『もしもし、ごめんね。君のお姉さんを殴っちゃって』

「いえいえ、千冬さんに前はよく殴られていましたから、たぶん殴られ慣れていると思います」

『そっか。それじゃあ、束がおイタをした時には遠慮せずにして良いんだね?』

「ええ。それはそうと、義兄さんは姉さんよりも年は上なんですか?」

『いや、君たちの五歳上で、束にとっては私は四歳下だよ』

 

 姉さん、年下の彼氏に殴られるというのはどういうことですか?

 

「そうだったんですか。では、今後も姉さんをよろしくお願いしますね」

『分かったよ。それじゃあね』

 

 そうして、電話が切れた。なので、携帯電話を修治に返した。

 

箒side out

 

修治side

 

 どうやら電話が終ったらしく、箒が俺の携帯を俺に返してきた。

 

「有り難う、修治。お陰で姉さんの近況が知れたし、姉さんの彼氏がまともな人だと分かった。」

「そりゃ良かった。まあ、あの人ある意味普通じゃないけどね」

「それ、どういうことだ?修治」

「そこら辺は社外秘だけど、普通じゃないことはいえるんだ、一夏」

「そうか、会社勤めも大変だな」

「まあな」

 

 そんな感じで旧交を温めた昼休みだった。ちなみに、俺は束さんとの電話の前までに既にラーメンを食い終わっていた。

 

 そして、時間は飛んでその日の放課後。俺ら三人は教室に居た。

 

「あ、織斑君に神上君。良かった、まだ帰ってなかったんですね」

 

 すると山田先生がやって来た。そして、俺と一夏が居たことに胸を撫で下ろしていた。

 

「どうしたんですか?」

「それがですね、織斑君と神上君の寮の部屋が決まりました」

「あれ?1週間は自宅から通学するんじゃなかったんですか?」

「大方、警備上の理由だろうよ、一夏」

「そうですね。神上君の言った通りです。それで、これが寮の鍵です」

 

 そう言うと、山田先生が寮の部屋番号が書かれた紙と部屋の鍵を俺と一夏に渡した。

 

「俺は・・・1025、か」

「何!?私と同じ部屋ではないか!?」

「本当か!?」

 

 一夏は原作同様箒と同室っと。さてさて、俺は何処かな~。

 

「えっと・・・1037か。山田先生、自分は1人部屋ですか?」

「いえ、神上君も女子生徒との相部屋です」

 

 え?それマジで?軽く(社会的に)死ぬ確率ぐんと上昇したわ。

 

「そういえば、俺達の荷物は・・・」

「大丈夫だ。織斑の荷物は私が手配した」

 

 後ろから急に出現&発言しないで下さい、織斑先生。寿命がほんの少し縮みますから。

 

「といっても、生活必需品だけだ。必要なものがあれば休日に自宅に帰るか学園の購買で買えば良い」

 

 やっぱり安定の千冬さんクオリティー。かなり大雑把過ぎません?それ。というか、あれ?

 

「私の魂の・・・じゃなくて、私の荷物の手配は?」

「何を言いかけたのかは知らんが、神上の荷物はおば・・・神上副社長が手配して放課後までに手の空いている社員に学園に運ばせると言っていたのだが・・・」

「?」

「放課後までに学園の総合受付に来たのは、段ボール二箱とアタッシュケース、それにスーツケースを台車に載せてきた女子小学生だけだった」

「はい?」

「いや、私も驚いたのだが、その女子小学生は『アナハイムの神上副社長に頼まれて、修治ちゃ・・・神上修治くんの荷物を渡しに来ました』と言ってきたらしいから、総合受付で今足止めをしている」

 

 ここでふと、スマホを開いて某無料通信アプリを開くと着信が11件も同一人物からあった。あ、今12件になった。

 

(うわ、やっぱり明香(めいか)さんだったか)

 

「ん?どうしたの、修治」

 

ここで麻里が教室に入ってきた。

 

「実はな、明香さんが俺の荷物を届けに・・・」

「ごめん、もうオチが見えた。大変だね、あの人も」

「神上、知り合いなのか?」

「ええ、先生。その人、私の同僚です」

「何!?あんなに背が小さいのにか!?」

「はい。というより、織斑先生と同い年ですよ。とりあえず、総合受付に私と麻里、それと加東先生も連れていってください」

「分かったのだが、なぜ加東先生まで連れて行くのだ?」

「一応、加東先生もうち(アナハイム・エレクトロニクス)の所属なので」

「そう言えば、そうだったな。では、神上、忍野は私についてこい」

 

 そう言って織斑先生は教室から出ていった。それに続くように、山田先生も教室から出ていった。

 

「まあ、そういうわけだから、一夏、箒、また明日」

「おう」

「ああ」

 

 織斑先生に続くように俺とマリは教室から出る。俺らの行動の実際の意図としては、一夏と箒の青春の一ページ作りの為である。ほら、夕方の教室に意中の相手と二人っきりっという王道シチュエーション。最高じゃない?そして、そっから先はやっぱりハッピーエンドでしょ!

 

 まあ、そんなことを考えつつも、職員室前へと到着した。俺とマリは千冬さんが加東先生を呼びにいくのを待っていた。

 

「そういえばマリ」

「何?」

「『ザバーニーヤ』の調子はどう?」

「まあ、いい感じ。というか、修治がアレ(・・)を量産しているっていうのが驚きだよ」

「それは仕方がない、か。だって俺もあれが成功するとは思わなかったからな」

 

 そんな感じで話していると、千冬さんが加東先生を連れて職員室から出てきた。

 

「久しぶりですね、頭・・・じゃなくて、修治くん。それに麻里さんも」

「ええ、お久しぶりです。加東先生」

「そうですね。それで、話は織斑先生から聞いていると思いますけど、明香さんが俺の荷物を届けに来たみたいなんです」

「それで何で私に声をかけたんですか?」

「明香さんのストッパーです」

「ああ、成る程。理由もわかったところで、行きましょうか」

 

 そして、俺達は総合受付へと向かった。その道中で加東先生もとい、結花さんが

 

「そういえば、修治くん。あれは少しやり過ぎでしょ」

「え~っと、はい」

「只でさえ筆記で話題をかっさらっていたのに織斑先生にサシでイーブンにもっていくのって、相当常識はずれだからね」

「はい、今後は多分自重します」

「それと今日、麻里さんと一緒にイギリスの代表候補生に喧嘩売られたんだって?」

「はい」

「それについては、自重せずにしっかりと落とし前をつけていいから」

 

 うぉい!?そこは自重して、と言う所じゃないの!?

やっぱり結花さんもキレてるの!?

 

「そもそも、私が聞いた状況からしておもいっきし向こうが悪いからね」

「もとから手加減無しで()ろうと思ってましたので」

「それなら良いわね」

 

 そういうことを話しつつ、歩いていると総合受付へとたどり着いた。

 

「失礼しm―――」

「修治ちゃ~~~~ん」

 

 ドアを開けた瞬間、明香さんが俺に向かって飛んできた。

 

「セイッ!」

「へぎゅっ!」

 

 それを結花さんが踵落としで迎撃(インターセプト)し、明香さんは床へとダイブした。え?結花さんの服装?パンツスタイルのレディーススーツだよ。

 

「神上、今の光景どっかで見たことあるんだが・・・」

「貴女がいつもあの人(束さん)にやっていることです。ただ、対象が俺になって、対処しているのが加東先生になっただけです」

「傍から見たら私たちがしていたのはこうだったんだな。今後は私も自重しよう」

 

 俺と千冬さんがこのように話していると、明香さんが俺の方に来た。

 

「修治ちゃん、今のは駄目だったのかな・・・」

「いえ。ただ、急すぎただけです」

「本当に?」

「ええ」

「本当の本当に?」

「はい」

「お姉さん、その言葉信じてもいい?」

「明香さん、俺が嘘ついたことありましたっけ?」

「無いけど・・・」

「ならそれが答えです」

「それなら・・・」

 

 そう言うと明香さんは俺を抱き締めた。多分傍から見たら、身長差ありすぎて訳わからん状態かも。

 

「修治ちゃん、寂しく無かった?ご飯ちゃんと食べれた?友達できた?」

「まあ・・・」

 

「明香、いい加減にしたら?」

「またそうやって修治ちゃんの意思を無視して結花ちゃんはそう言う」

「修治くんだって困ってるじゃない」

「そうなの・・・?」

 

 な~んでそう言って上目遣い+目がうるうる状態でこっちの方を見るんですかねぇ。明香さん。

 

「困ってはいないですけど、メタい話、そろそろ進まないと不味いです」

「それもそうね。また向こうに修治ちゃんが来たら好きなだけお世話出来るもんね」

 

「話は終わったか?」

「いっつもながら、長いねぇ」

「なんというかすみません」

「まあ、いい。それであなたは?」

 

 千冬さんは明香さんに向けてそう言った。すると明香さんは、

 

成島 明香(なるしま めいか)です。アナハイムでテストパイロットをやっています」

 

見事なまでに『お仕事モード』でそれに答えた。

 

「明香さん、俺の荷物は?」

「そうだった。これね」

 

 そう言って明香さんが転がしてきた台車には、横が長めで高さがそこそこ低めの段ボールと大きい段ボールが一つずつ、計二箱と大きいスーツケース、それに、とある架空の会社のロゴが入っている銀色のアタッシュケースが乗っていた。

 

「えっと、大きい段ボールとアタッシュケースの中身はわかるんですけど、残りはなにが入っているんですか?明香さん」

「確か、もうひとつの段ボールの中身は『二式』で、スーツケースの中身は・・・」

 

「銃火器と予備の弾倉、それにお手入れ用の道具一式だったかな?」

「なっ!?」

 

 明香さんの繰り出した言葉に千冬さんは驚愕の声をあげた。ま、当然かな?

 

「神上、今すぐ『武装所持許可証』の交付手続きをしてくれ。さもないと、少し厄介なことになる」

「あ、はい」

 

(あれ?『武装所持許可証』って何?というか、没収とかになんないの?銃火器お持ち込みとかって)

 

 そう思いつつ、千冬さんから神速の域で渡された『武装所持許可証』の交付手続き用紙に必要事項を書いていく。

 

「『所持許可対象の武装』の欄には、正式名称を書かなければならないんですか?」

「そうだ」

「分かりました。明香さん、スーツケースの鍵って持ってます?」

「もちろん」

 

 そう言って明香さんは、胸の谷間からスーツケースの鍵を取り出すと同時に結花さんに頭を叩かれた。この間0.5秒。

 

「少しは周りの目を考えなさい」

「駄目だった・・・?」

「むしろ、駄目じゃないほうが問題でしょう。明香は立派なもの持ってるんですから」

 

(どうすればいいんだ?俺が突っ込んだらセクハラ認定食らうこの状態)

 

 しばらくしたらそれが収まって、明香さんが口を開いた。

 

「改めて、これがスーツケースの鍵」

「あ、どうも」

 

 どう扱えばいいのか分からないスーツケースの鍵を明香さんから貰って、とりあえずスーツケースを開ける。

 するとスーツケースの中には、『FN Five-seveN』、『FN P90』、『H&K MARK 23』、『H&K G36』、『H&K HK33』、『L96A1』それに加えて『PGM ヘカートII』がそれぞれ分解されており、拳銃と小銃は袋に小分けにされて付箋が貼られ、狙撃銃は分解されてそれぞれ蓋と底の所に仮止めされていた。

 当然だが、各銃のデリケートな所と蓋と底の所には緩衝材を巻き付けるか敷き詰めるかのどちらかがされていた。

 弾倉は、各銃ともに四個ずつ入れられ、弾薬は『.45ACP弾』、『5.56x45mm NATO弾』、『5.7x28mm弾』、『7.62x51mm NATO弾』、『12.7x99mm NATO弾』が各三百発ほどが入っていた。

 あとは、浸透性防錆潤滑剤とチャンバーブラシ、銅の落とし剤それにキャブクリーナーが入っていた。

 

 まあ、それだけだったら良かったんだけどね、世間一般にエアガンとかで出回ってるから。

 

「明香さん、これ(・・)いれたの誰ですか?」

「ああ、それ?確か禾生(かせい)さんだったかな?」

「禾生さんってあの?」

「そうよ、麻里ちゃん」

「全く、地味に分類に困るもの入れないでくれよ、警備部隊責任者様」

 

 とりあえず、これは『スタンガン』で登録すればいいよね?この学園に(・・・・・)重犯罪者(・・・・)がいない(・・・・)限り(・・)

 

 そんなこんなで、『所持許可対象の武装』の欄を埋めて、『武装所持許可証』の交付手続き用紙を完成させ、織斑先生に提出した。

 

「確かに受け取った。許可証の発行は恐らく明明後日(しあさって)になるだろう」

「分かりました。では、荷物を持って寮に戻らせていただきます。そういえば、明香さん。荷物を載せてきた台車はどうすればいいですか?」

「修治ちゃん今週末来るでしょ。その時に一緒に持ってきてくれたら良いわ」

「了解です。では今週末にまた会いましょう」

「それじゃあね、修治ちゃん」

 

 そういうわけで、俺はマリは総合受付を出て寮へと向かった。

 

「あ、マリ」

「ん?」

「マリの寮の部屋ってどこ?」

「1052号室だよ」

「そうか」

 

 どうやら、俺は初対面の女子としばらく同居となるらしい。ある意味不幸だわ。

 

修治side out




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FRAME-14 接触

作者「さて、ようやく最新話です。大変長らくお待たせしました」
修治「ところで、何で遅れた?(怒)」
作者「大学受験です……」
修治「それは知ってる。だが、それ終わってからなにやってた?」
作者「………F●Oとアズ●ンと記念話の原作とのすり合わせ」
修治「最後は許す。だが、前二つは許さん」
作者「ええっと。何でチェーンソーを6つ束ねたやつ持ってるんですか?」
修治「いっぺんミンチになれ」ギュイイイイイイイイン


修治「という訳で、最新話をどうぞ」





修治side

 

 Добрый вечер.神上修治だ。俺は今、しばらく俺の自室となる1037号室の前に立っている。

 

「(いつまで立っているつもりだ?)」

「(心の準備が出来るまで)」

「(かれこれ五分経ってるぞ、ドアの前に立ってから)」

「(そうか。―――よし、入るか)」

 

 ようやく入る気になった俺は、自室のドアをノックした。

 

コンコンコンッ

 

「すみません。同室の者なのですが、入ってもよろしいでしょうか?」

 

 そう声をかけると、中から返答があった。

 

「空いてるから入って」

「では、失礼します。」

 

 そう言って入ると、中にはセミロングで内側に癖毛が向いている眼鏡っ娘がいた。

 

「今日から同室になる、神上修治です。よろしくお願いします」

「・・・・・・更識簪」

「では、よろしくお願いします、更識さん」

「・・・簪でいい。名字で呼ばれるのは嫌い」

「まあ、それもそうだな。俺も少し嫌だし。俺のことも名前呼びでいい」

 

 そう言いつつ、台車から段ボール等を降ろす。すると簪さんが、

 

「その、アタッシュケース」

「ん?」

「それって『ファイズギアボックス』?」

 

と聞いてきた。それに俺は、

 

「よく分かったな。簪さんって特撮好きなの?」

 

と返した。

 

「う、うん・・・。変、だよね」

「いや、うちの母さんも好きだから」

「え・・・?冗談でしょ?」

「本当に。ちなみに、母さんが好きなのは『鎧武』」

「あの虚淵脚本の?」

「そう。母さん曰く、『欲望が渦巻いていつつも人間の弱さが演出されているのがいい』ってさ」

 

 そこから話は続く。

 

「へえ・・・。じゃ、じゃあ、修治くんは?」

「まあ、『ファイズ』だね。理由は、俺が初めて見た作品だからだな。かく言う簪さんは?」

「『ドライブ』、かな。刑事ドラマと特撮がいい具合に調和されていて見ていて面白かったから」

「なるほど。と言うか、簪さんと結構話が合うな」

「そうだね、改めてこれからよろしく」

「ああ。ってあれ?」

 

 そこで俺はあることを思い出した。

 

「どうしたの?」

「簪さんってさ、日本の代表候補生?」

「そう、だけど?」

「倉持に専用機開発頼んでる?」

「うん・・・」

 

ちょっちマズイな、これ。

 

「色々とすまない」

「え?何で?」

「ヒントは俺の実家だ・・・」

「・・・そういうことね。それって修治くんは関係無いじゃない」

「あれ?伝わってないの?簪さんのクラスには」

「えっ、あの噂って本当の話なの」

「そう。ちなみに、ヒラの時にある程度は第二世代機の開発に携わってたんだけどね」

「それって『G-3』?それとも『ジェガン』?」

「『ジェガン』のほう。あれは少しヤバかった」

 

 だって、俺のISに関するノウハウはその時ゼロなんだぜ(コアについては除く)。だからイアンの技術を盗みまくってそれを形にするのもキツかったし、俺の知識の『ジェガン』の外観をISの形状に落とし込みつつも、『ジェガン』らしさを保つのに苦労した。

 まあ、その経験のお陰で、今では俺は一からISを作れるようになったんだけどね。

 

「そんな前から・・・。凄いね」

「いいや、凄くない。今までこれたのは会社の先輩方のお陰だし、支えてくれた家族―――いや、妹たちのお陰だよ」

「家族と仲良いんだね」

「そうでもないさ。ケンカだってする。だけども、後でなんのしがらみもなく腹割って話せば関係は治る。まだ俺と相手、両方とも生きているし、死んでから後悔しても遅いからな」

「そう・・・。―――私にもね、お姉ちゃんがいるんだ」

 

うん、それは知ってた(・・・・・・・)

 

「それでね、ある日お姉ちゃんから言われたの。『あなたは無能のままでいなさいな』って」

「うん」

「私、いつもお姉ちゃんと比べられていてね、陰で『出来損ない』とか言われてたの」

「すまん、何個か質問していいか?」

「いいけど・・・」

「それってさ、誰から聞いたの?」

「私の専属メイドから」

「簪さん()ってさ、なんか特殊な家系なの?」

「よく分からないけどそうみたい」

「そっか。やっぱりな」

「・・・え?」

「そっか。あの(・・)更識か。ちょっと電話かけていい?」

「・・・うん」

 

 簪さんの許可をもらったので、簪さんに聞こえないようにバスルームに向かい、スマホを出して父さんの番号にかける。

 

「あ、父さん?」

『なんだ、修か。どうしたんだ?仕事用の番号にかけてきて』

「『更識』の現当主ってさ、ロシア代表なんだよね?」

『・・・それがどうした』

 

少し父さんの話すトーンが下がった。これは裏のトーンだ。

 

「『更識』の現当主の妹と同室になってさ、相談受けてんだけど、現当主の妹に対しての暗部に巻き込みたくない気持ちが別の解釈されてるっぽいんだよ」

『他の暗部組織に関することに首を突っ込むな、と言いたいが、その子は家がそういうとこだと知らないのか?』

「話を聞く限りは」

『なら、姉妹間の仲を取り持ってやれ』

「いいの?」

『まあな。『更識』は大事なクライアントみたいなもんだからな』

「わかった」

『それじゃあ、切るぞ』

 

 そう言って父さんは電話を切った。それを確認して俺はバスルームから出た。

 

「簪さん、簪さんのお姉さんの名前教えて」

「え?何で」

「ちょっくら、後で殴りにいく」

 

 あら?急に何でフォン出てきちゃったの?

 

「早くしろ」

「・・・更識楯無」

「OK」

 

「(そんじゃあ変わるぜ)」

「(了解。だけど、何で急に出てきちゃったの?)」

「(・・・・・・ノーコメント)」

「(あっそ)」

 

「あ、そうだ。簪さん、御飯食べた?」

「まだ、だけど・・・」

「それじゃあ食べに行こうか」

 

 そういうわけで、(多少強引だけども)簪さんと一緒に御飯を食べに行くことにする。その道中、

 

「あ~。かみっか~とかんちゃんだ~」

 

やせいの ●カ●ュ●が あらわれた!

 

「・・・本音、その呼び方は止めて」

「それはムリなのだ~」

「あれ?簪さん。あのピ●チ●ウ、知り合い?」

「・・・不本意ながら、幼なじみ」

「なるほど。それと、『かみっか~』って俺のこと?」

「そ~だよ~」

 

 なんというか、ようやくあだ名らしいあだ名をつけられたかも。それに少し捻られてるし。

 こののほほんとしてる子、侮れん。

 

「かんちゃんと、かみっか~もごはん?」

「そうだが、君の名前は?」

「布仏本音だよ~」

「ふむ・・・じゃあ、『のほほんさん』って呼んでいいか?」

「お~。なんか私にぴったり~」

「そうだ。のほほんさんも御飯を食べに行くのなら、俺たちと食いに行くか?」

「行く~」

 

 途中でのほほんさんと偶然合流して食堂へと向かう。やはりというか、俺らが歩くと何故か道が開ける。不思議だ。

 

 そんな感じで到着した食堂。さて、今日の夕食何にしようかな?

 

 

 

 

 

(ヤバい、決まらん)

 

 券売機の前でフリーズすること三十秒。未だに食べたいものが決まらない。

 

「かみっか~どうしたの~?」

「・・・・・・食べたいものが決まらない」

「全部頼めばいいじゃ~ん」

「そんなことはしたくない。そもそも、そんなに夜は入らないからな」

「(その代わり昼はかなり食ってるけどな)」

「(まあな。それでバランス取ってるんだよ)」

 

「―――よし、これにしよう」

 

ピッ!

 

 そして食券が出てきた。

 

「かみっか~けっきょく何にしたの~?」

「日替わり定食」

「なんか・・・無難」

 

いいじゃん、別に。

 

「すみません、食券ここでいいですか?」

「あいよ。日替わり一つ・・・って、あんたが噂の御曹司かい?」

「御曹司かは知りませんが、おそらくあなたの指している人は多分私です」

「あんたんとこの調理器具、結構使いやすくて重宝してんのよ」

「そう言っていただくと嬉しいです」

「良いってことよ。はい、日替わり」

「ありがとうございます。あれ?この杏仁豆腐って?」

 

 日替わりを受け取った俺は、セット内容についていない杏仁豆腐があることに気づき、食堂の職員に聞いた。

 

「ああ、これかい?おばちゃんからのサービス。風当たりは強いかもしれないけど、色々と頑張んなさい、この学校で」

「ありがとうございます」

 

 食堂のおばさんによる好意で、杏仁豆腐150円がタダでもらえた。少しうれしい。こういった善意をもらったら、ほかの人にも善意をあげないとな。もちろん打算なしで。

 

「簪さん、空いてる席ある?」

「ちょっと待って……。あ、あそこが空いてる」

 

 そういって簪さんが示したのは窓側の四人掛けテーブルだった。

 

「よし、そこにしようか。」

 

 というわけで、俺ら三人はそこへと移動を始めた。ちなみに、簪さんはかき揚げうどん、のほほんさんは混沌としたお茶漬け。おそらくそれを直視したら削れてはいけない値がどんどん削れていくだろう。そして、俺の頼んだ日替わり定食の今日のメニューはご飯、みそ汁、ほうれん草のおひたし、豚の生姜焼きだ。

 

 全員の今日の夕飯を紹介したところで、目指していた席に着いた。俺が座った向かいに簪さん、のほほんさんが座った。

 

「では、いただきます」

 

 そうして食事を進めていると、のほほんさんが口を開いた。

 

「そういえば、かみっか~。セシリーに勝てるの~?」

「え…どういうことなの?修治くん」

「ああ。そういえば言ってなかったな。今日、ちょっくらセシリア・オルコットに喧嘩売られて買っただけ」

「セシリア・オルコットってあの?」

「そう、グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国の代表候補生」

「なんで正式名称……?」

「そっちのほうがいろいろとうるさくないから」

「ってそうじゃなくて」

「セシリア・オルコットに勝てるかどうかだったな。無論勝てる。そもそも稼働時間が違うし、初めて動かした期間も違う」

「………どういうこと?」

「まあ、口で説明するよりも実際に見てもらったほうがいいか。俺の専用機の稼働ログだ。本来なら、外部に漏らすのはご法度だがな」

 

 そう言いつつ、俺はRX-0の待機状態を外し、稼働ログを呼び出した。いつぞやのドイツ行きの時の稼働ログは、束さんに消してもらった。だって国際問題になるからね。

 

「なんか……イかれてない?」

「いんや、これが正式なログ。稼働日時も正しいものだし」

「ほえ~。こんなに動かしている人初めて見たよ」

「いや、それ以前の問題だよ、本音……。六年前から動かしてるんだよ、修治は。下手したら国家代表と戦えるんだよ」

「ほえ~。あれ?一番最後のログだけ動画がついてる。ポチッとな」

 

 あ、やべ。動画を束さんに送るの忘れてた。確か、五分だったかな。再生時間。

 

 

 

そして五分後

 

 

「「修治くん(かみっか~)、ここに何で来たの?」」

 

まあ、そうなるな。

 

「簡単に言えば、コネづくり」

「「ゲスい」」

「まあ、冗談だけどね。本当は、ISを本来の用途にするための知識を求めてここに来た。あと、解剖逃れと殺されたくないから」

「……その道のりは厳しいと思う。だって今はそういう風に世間はISを見ていないから」

「まあな。だけど、どのくらいかかったとしても、やり遂げたい」

「そっか。夢があるっていいね」

「まだ夢がなくてもさ、君らはまだ若いんだから、迷って悩んでいいと思うよ」

「かみっか~オジサンみたい~」

「ほっといてくれ。俺でもおっさんみたいなこと言うなぁ、って思ったんだから」

 

 

 

「ほんま、修やん変わってへんな」

 

 急に後ろから声がかけられた。振り返ると―――――――。

 

修治side out




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FRAME-15 交友関係

作者「ようやく最新話です。大変長らくお待たせいたしました。」
修治「九か月ほど放置してた理由は何だ?」
作者「まあ、大学の単位そのほか諸々ですね、ハイ……」
修治「まあ、作者って失踪常習犯だしな…」
作者「本当にすみません」

作者・修治「「それでは最新話をどうぞ」」


修治side

 

 前の話で、『ほんま、修やん変わってへんな』と、急に後ろから声がかけられた。―――はい、そこ。メタいとか言うな。

 

 それに反応して振り返ると、黒髪ロングの自由奔放そうな女子がいた。―――なんかどっかで見たような………。

 

「えっと。どちら様でしたっけ?」

 

 とりあえずその女子に声をかける。正直、覚えがないし。

 

「え?修やん、うちの事忘れたん?うちの稲荷でまーやんと(ちょう)ちゃんと綾華(りょうか)とで遊んだやん」

 

(『うちの稲荷』?『まーやん』と『鳥ちゃん』ってのは恐らく『摩耶』と『鳥海』だとして、『綾華(りょうか)』って………。あっ!)

 

「まさか、千春か?」

「気づくの遅うない?」

「すまない。あまりに変わったからわからんかった」

 

「えっと、修治くんその子とどんな関係なの……?」

「かみっか~、私も気になる~」

 

 千春と話してたら、簪さんとのほほんさんのことを見事に忘れてた。とりあえず、千春のことを説明しないと………。

 

「えっと、この子は『黒川 千春(くろかわ ちはる)』。うちの実家の近くの稲荷神社の神主の娘さん。んで、さっきの話に出てた『綾華』っていうのは、千春の幼馴染で千春の稲荷の大本の神社の神主の娘さん」

「せや。よろしゅうな、お二人さん」

「よ、よろしく……。更識簪です……」

「布仏本音だよ~。よろしくね~」

「せや。ウチも今から夕飯なんやけど、一緒に座ってもええか?」

「俺はいいけど、二人はどうだ?」

 

 千春が相席をしていいかと聞いてきたので一応二人に聞いてみる。こういうのは俺の一存だけで決めるのは無理だし。

 

「い~よ~」

「いいよ……」

「―――だそうだ。空いてるのは………あ~。俺の隣でもいいか?」

「ええよ。そもそもそこしか空いてないやん」

 

 そう言うと、千春は俺の隣の席へと座った。ちなみに、千春の夕飯はきつねうどんであった。

 

「そういえば千春は何でここ(IS学園)に来たんだ?」

宇宙(そら)の向こうを見たかったからやな。修やんが昔言ってた話が気になるし」

「昔なんか言ってたっけ?」

「言ってたやん。『宇宙(そら)にはたくさんの不思議なことがある』って」

「言ってたな………」

「ねえ、修治君。『そら』って『空』ってこと?」

「いや、『宇宙』って書いて『そら』って読むの。まあ、ある意味ロマンチックな言い方だな」

「そんな前からISの宇宙進出について考えてたんだ………。凄いなぁ………」

「修やんがそれ言った時にはそこまで考えてへんと思うわ。そんときうちら六歳やで」

 

ごめんなさい。そのときにはもう考えてました……。

 

「かみっか~ってあんまり深く考えてないよね~」

「そんなことないぞ。うん、多分」

 

 少なくとも、単位かかってる時期にこれを書いてたり、失踪認定されるレベルで更新止めるほど考え無しではないし。

 

「てか、最後に会ったの三年前だよな」

「せやな。中一のお盆以来やな」

「……なんで実家が近いのに会ってなかったの?」

「ちょっと会社のほうが色々とごたごたしててそもそも実家に行けなかったんだよ」

 

 主に響の艤装の解析とそれの量産化の為に設計の見直し、コアの作成、趣味レベルでクアンタとは別のISを作ったり(それが『(ほむら)』)、フォンのためにISを作ったり(それが『正義』)、アストレイシリーズの作成だったり、忘年会関連とか、アニマ関係のあれこれだったり、まあいろいろとあったんだよ。

 

「そうだったんやな。納得」

「納得してくれて助か………って待て。俺、千春にその時会社勤めしてること言ってたっけ?」

「修やんからは聞いてないけど、女子をなめたらあかんよ」

「OK。なんとなく把握した」

「……それで理解する修治くんもすごいよ」

「そうか?」

「断片的すぎるでしょ……」

「かみっか~は色々とずれてるよね~」

「そうなのか?」

 

 そう二人に尋ねると、そろって首肯した。やっぱり自分のことを知らないのは自分なのだな、と思った瞬間である。

 

「ところで、二人は食べ終わったのか?」

 

 ここでの『二人』とは、簪さんとのほほんさんのことである。ちなみに、俺は杏仁豆腐も含めてすべて食べ終わっている。千春?なんかもう食べ終わってんの。いつ食べてたの?

 まあ、見たところ簪さんはかき揚げ少しと少しの麺が残っていて、のほほんさんは三分の一が残ってるようだった。

 

 私のこの問いかけで、簪さんとのほほんさんの食べるスピードが上がった。時間的に、そろそろ閉まるというのも関係してるかもだが。

 

 そして、二人が食べ終わるまでに五分ほどかかった。そこから急ぐように食器を返却口に置き、食堂を出た。うん。千冬先生に初日からどやされたくないし。

 

 そして、千春に寮の廊下で気になってることを聞いた。

 

「ところで、千春の部屋ってどこなの?」

「修やんうちのとこに夜這いでもするん?」

「違うわ。時間があったら遊びに行こうかなと思ってんだよ」

「ならええわ。1036号室や」

「ん?俺と簪さんの隣の部屋じゃないか」

「そうなん?なら、遊びに行ってもええか?」

「いいかもだけど、簪さんはどう?」

「大丈夫だけど、私の私物に許可なく触らないで……」

「ええよ。そのくらいなら修やんにも言われてるから」

「………え?」

「だって修やん、私物許可なく触ると数日間、口きいてくれへんし」

 

 ああ、俺らが小五の時のお盆休みのときのやつか。

 

「いや、あれは千春が触ったのが触っちゃいけないものだったし、その時はまだ子供だったし……」

「………千春さん、何触ったの?」

「修やんの作りかけの模型」

「厳密には作りかけで、なおかつ塗料が半乾きの戦闘機の模型だな」

「それはまずいね……」

「まあ、流石にこっち(学園の寮)には相部屋の関係で模型は荷物には入ってないはずだから模型関連で怒ることはないけど、会社関連のは持ってきてるからその辺は触らないでほしいな」

 

 さすがにその辺の釘は刺しておかないと俺が首になるからね。情報漏洩はシャレにならないしね。

 

「それじゃあ、じゃあね~。かんちゃん、かみっか~、ちはちゃん」

「おう、のほほんさんまた明日」

 

 そう言ってのほほんさんは自室へと向かった。どこぞの戦車の名前みたいな千春のあだ名を口にして。

 

「……なあ、修やん」

「どうした?」

「『ちはちゃん』ってうちのこと?」

「たぶんそうなんじゃない?」

「おもろいニックネームやな………」

「気に入ったん?」

「まあね」

「後で本音に伝えとくね、千春さん」

「よろしく頼むわ、かんちゃん」

「私の名前は簪だから……」

「ごめんな~」

 

 そんな感じで三人で話しているうちに、俺らの部屋が近づいてきた。

 

「また明日な。修やんと簪ちゃん」

「千春、また明日」

「また明日」

 

 自室へと入った俺の目に飛び込んだのは、いまだに荷ほどきされていない段ボール二箱と、ファイズギアボックス(を模したIS保管ケース)、それに、銃火器が入っているスーツケースだった。

 

「寝る前に荷ほどきしよ…」

 

 そう考えた俺は、消灯時間ぎりぎりまで荷解きを行った。スーツケースはRX-0の拡張領域に仮置きしておいた。だって、他人に銃火器を荷解きしてるの見られたくないしね。

 

「ところで、修治くん」

「どうしたの?簪さん」

「これって……?」

 

 そういって簪さんが指示したのは、そこそこ大きい箱から出したものだった。それ(・・)は長さが88cm、幅が1.2mくらい、高さが28cmほどのものだった。

 

「『二式飛行艇』の1/32の模型だね。邪魔かな?」

「どうなんだろう…?」

「やっぱり、今度実家帰るときに戻してくるわ」

 

 実はこれ、ただの模型(・・・・・)じゃないんだけどね。まあ、そのうちお披露目できるかもね、本来の姿を。

 

修治side out




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