IS~二人の空と一人の天才~ (みっくん)
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プロローグ
プロローグ(前編)


私は空が好きだった 空を見ていれば嫌なことも忘れることができる。

 

その私の考えもやがて空を見るだけでは満足できず、空を飛ぶことができたらという方向へと向かっていった。

 

しかし運命というものは残酷だった。

 

念願の航空会社に勤めることが出来、なおかつパイロット養成プログラムを受けることとなった私は夢が叶うと思っていた。

 

悲劇は訓練中に起きた。

 

私と同じ志を持っている皆と苦しいプログラムをこなしていると近くで火事が起きたらしく、周りが慌ただしくなった。

 

皆を落ち着かせることに勤めたが効果はなく、それどころか皆を現場へと向かわせてしまった。

 

その時に自分だけでも行かなければよかった。変な正義心を持たずに自分の事だけを考えていたらと今でも思う。

 

 

 

そこで夢は覚めた。

 

周りを見渡す、自分の近くでスヤスヤと寝息を立てているのは自分が世話になっている家の家主である篠ノ之束さんだ。

 

彼女には昔から世話になっている。

 

先に目が覚めたことだし、朝ご飯でも作っておこう。

 

そう頭を切り替えて私は台所へと立った。

 

 

料理のいい匂いにつられてか束さんが起きたらしく、寝室から物音が聞こえてきた。

 

「起きたんですか?束さん」

 

「ん~、その呼び方はゆーくん?」

 

「はい、そうです」

 

まだ寝ぼけているのかフラフラとやってくる。

 

「フラフラしていると危ないのでまずは顔を洗ってきてください」

 

「はーい」

 

これではどちらがお世話になっているのか分からない。

 

束さんが顔を洗っているうちに料理をテーブルへと運ぶ。一緒に生活するにあたって私たちが決めたルールの一つである。

 

束さんは自分の研究で普段は部屋に籠っているのだが、食事だけは一緒にテーブルで向かい合ってとると昔に決めたのだ。

 

「では、いただきます」「いただきまーす」

 

私の合図で一緒に食べ始める。

 

今日のメニューは炊き立ての白米に、味噌汁、昨日安く売っていたサバを使ったサバのの味噌煮だ。

 

朝ご飯に味噌煮はどうかと思うが、束さんを正常に動かすにはこれぐらいの濃い味付けの方が良いとこの10年で学んだのだ。

 

「そういえばゆーくん」

 

「はい?どうかしました?」

 

「えっとね、そろそろいっくんも高校受験を受ける季節になってきたからさ、それを機にゆーくん達も受けたらと思って」

 

「……私はともかく空には俺も受けてもらいたいと思いますよ。まだアイツだって子供だ。世間を全く知らないだろうしな。でも、私たちには現在親という者がいないので受けれるのでしょうか」

 

私たちは親に捨てられている。捨てられて生活もままならない時に束さんと出会い、その時からお世話になっている。

 

空自身は自分は高校に行く気はないとまで言っている。理由としてはこれ以上束さんの迷惑になりたくないのだろう。中学に通わさせてもらっているだけでも十分と思っているに違いない。だから現在の空の進路は中学を卒業したらそのまま束さんのお手伝いをすることだ。

 

でも私は空には高校を受けてほしい。何故なら今の時代中卒というのはあまりよろしくない。これからの空のことを考えたら最低でも高校は出てもらいたい

 

「大丈夫!君たちの親には私がなります。ってちーちゃんと決めたのさ。親権を今日の午後から本来の君たちの親と話し合って貰ってきます。だから安心してそらくんに受験を受けさせることができるのだー」

 

「そう、ですか…… ありがとうございます。私と空に不自由ない生活をさせてくれている上に親にまで……」

 

「私は10年間初めて他人と暮らしたよ。でも、他人ってのも案外悪くないって思わせてくれたのがゆーくんとそらくん。だから私は君たちに恩返しをしたかったの、ってことじゃダメかな?」

 

彼女はずるい。何時も私たちが断れないようにして私たちを幸せにいつもさせる。

 

「分かりました。ならばこれからは束さんではなく母と呼べばいいのですか?」

 

「あははは、それはイイネって言いたいけどちーちゃんが許してくれないかな。私の弟になんてことを言わせてるんだーって怒っちゃうし」

 

「言いますね、確実に」

 

織斑千冬 先ほどから束さんがちーちゃんと呼んでいる人物だ。

 

彼女とは束さんをを通じて知り合ったのだが、どういうわけか彼女も私と空のことを弟のように思ってくれている。

 

それは嬉しいのだが幾らなんでも過保護すぎないかって思う事が時々あるのだが彼女の尊厳に傷がつくので言わないでおく。

 

「お昼食べたら話し合いに行ってくるね。午後にはいっくんが遊びに来るらしいから遊んで待ってて」

 

「分かりました。一夏と遊ぶのは多分空でしょうが」

 

「??どうして」

 

「私はちょいと眠いのでその間はお昼寝をさせてもらおうかと」

 

「なるほどなるほど。じゃあ、午前中はゆーくんが行動するんでしょ?」

 

「ええ、まぁ」

 

「私と一緒に外で遊びに行きましょー」

 

「……午前中だけですよ?」

 

「うん!」

 

そう言うと彼女は食べ終わった皿を台所へと運んでいく。私も後に続き皿を水につけておく。

 

彼女は現在追われている身なのに遊びに行っても大丈夫なのだろうか……

 

少し不安になりながらも身支度を済ませ、外で待つことにした。

 

 

 




全部で三部構成となりますプロローグです。



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プロローグ(中編)

かなりぐだった内容になってしまいました。

早く原作の内容に入りたい


 

身支度を済ませ玄関で待っていると、同じく身支度を済ませた束さんがやってきた。

 

「じゃあ行こうかゆーくん」

 

彼女は俺の手を取ると元気に街へとくり出した。

 

もちろん家の鍵は閉めていった。

 

 

街で宛もなくブラブラと二人で歩いていると突然彼女が立ち止った。

 

「ん、どうかしました?」

 

「あそこにクレープ屋があるよ」

 

「そうですね。朝ご飯を食べたばかりですよ?」

 

「束さんにはクレープは別腹に入るのだ!」

 

良く女子が口にする甘いものは別腹という言葉を一点に絞った言い方だな。

 

「……はぁ、仕方ありませんね。ちょうどあそこに公園がありますしベンチに座りながら食べましょう」

 

クレープ屋で列に二人で並ぶ。

 

「ねぇねぇ、私はイチゴの奴にするからさ、ゆーくんはバナナのにしてくれない?」

 

「ん?いいですけど」

 

「えへへ、これで束さんは二ついっぺんに味わうことが出来るのだ」

 

「あー、なるほど」

 

どうやら私の分から少し頂くって事だろう。まぁ、束さんはそういうのを気にしない人だから私もあまり気にしない。

 

クレープを受け取ると二人してベンチに座る。

 

「ん~、偶にはこういう和なのもいいねぇ」

 

「その言い方、年よりくさいですよ」

 

「そう?私はまだ若いから気を付けないとね」

 

束さんは見た目だけなら私と同い年ぐらいに見える。こんな口調だがこれでも私はまだ中学生だ。

 

「うん、美味しい」

 

クレープを食べて幸せそうな顔をする束さん。甘いものが好きでよく作ってくれとせがまれるほどだ。

 

「頂きます」

 

自分も手にしているバナナを使っているクレープを口にする。バナナの風味が口に広がり一緒に口に含んだコーンフレークの歯ごたえを感じる。

 

「どうどう?そっちも美味しい?」

 

俺の返事を待っているかのように目を輝かせながら聞いてくる。

 

「ええ、美味しいですよ。一口食べます?」

 

「わーい、じゃあ一口貰うね」

 

「俺も束さんのいただきますね」

 

お互いのクレープを一口ずつ食べる私たち。傍から見れば恋人のように見えるが、知っている人から見ればいつもの様子だ。

 

 

 

クレープを食べ終えると、街を再びブラブラ歩く。

 

「今日は天気もいいし、お散歩日和だね」

 

「ですね。洗濯物も乾きそうな天気です」

 

暖かな風が俺たちの頬を掠める。

 

「っと、そろそろ束さんは行かなきゃいけないね。じゃあゆーくんは家に先に帰っといて、いっくんもあと少しで遊びに来るだろうし」

 

「分かりました。では、お言葉に甘えて先に帰りますね」

 

家の近くで束さんと別れて帰路につく。

 

家の前に着くと一夏がちょうど来たようだ。

 

「おっ、一夏じゃん。こんちわ」

 

「その反応は祐樹か。こんちわ」

 

挨拶をし、家の鍵を開けて一夏を家に上げる。

 

「じゃあ、一夏。俺は寝るから空によろしく伝えといてくれ」

 

「分かった。おやすみ」

 

「ああ」

 

 

Side 一夏

 

目の前の人物が先ほどまで凛々しく喋っていた様子から一転、ほんわかとしたオーラを纏っている少年となった。

 

「ん?一夏くん、遊びに来てたの?」

 

「今日約束してたしな」

 

「誰と?」

 

「束さんと」

 

束さんに今日暇なら午後から遊びに来ないかと誘われたので遊びに来たのだ。しかし、誘ってきた本人は千冬姉と何処かへ行くらしい。

 

そう、朝告げられた。

 

 

「さて、何して遊ぶ?」

 

「うーん、僕は何でもいいから……取りあえずゲームでもしよっか」

 

「そうだな。じゃ、空の部屋に行こうぜ」

 

「うん」

 

空の後を追って2階へとのぼる。

 

束さんと空、祐樹が住んでいる家は2階建てなので、空たちにも自室がある。

 

ゲームは空の部屋に置いてあるので、空の部屋に行く必要があるのだ。

 

 

部屋へと上がると、テレビを付ける。

 

「さて、何やろうか」

 

目の前に積んであるソフトの山に目をやりながら問いかけてくる。

 

「……じゃあ上から適当にとって遊ぼうぜ」

 

大抵のソフトは空と祐樹の手によってクリアされているので、適当にとっても問題がない。

 

 

ゲームを初めて数時間が経ったときに、空から急に質問をされた。

 

「ねぇ、一夏は高校受験するの?」

 

「ああ、本当はする予定はなかったのだが千冬姉が高校は最低でも出ておけって五月蠅いからさ」

 

「へぇ、僕も出ておいた方がいいのかな」

 

「束さん的には出てもらった方がいいんじゃないか?どうせ千冬姉と同じ考えだろうし」

 

あの二人は根本的な考えが似てるので、千冬姉が言ったことは大抵束さんも言う。

 

「……僕はさ、束さんの迷惑にならないかなって思ってるんだ。ここまで良くしてもらったんだから、これ以上の迷惑をかけるのは気が引けるんだよ」

 

俯きながら言葉を口にする空。傍から見れば迷惑を掛けれるのは子供のうちだけって言う人が多いだろう。でも、彼らの生活は特殊なもので世話になっているのにその上に迷惑を掛けたくないと

いうものだろう。

 

「なんていうか、上手く言えないけどよ。迷惑かけてもいいんじゃねえか?正直、お前は年不相応の行動ばっかりだし。だから偶には年相応の迷惑をかけるっていう行為をしてみたらどうだ?お前が普段迷惑をかけてるって思っても、束さんは迷惑だと思ってないんじゃない?むしろ、喜ぶと思うよ。」

 

「喜ぶ?」

 

「ああ。だってあの空が初めてお願いをするんだぜ?俺の記憶が間違ってなければ、空がお願いしてるのを一度も見たことがない」

 

「そりゃあ、世話になっているのにお願いって……」

 

「ま、俺にも空の気持ちも分かるよ。俺とおまえは似てるから。境遇っていうか考えっていうか。だからさ、一度言ってみろよ。もし反対だと束さんが思ってるなら言ってくれるさ。

あの人は思っていることをズケズケ言う人だし」

 

「……」

 

俺の言葉を聞いてか、空は何も言わなくなってしまった。空が何も行動しないので、俺は手持無沙汰なったので近くにあった漫画を読むことにした。

 

 

Side Out

 

 



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プロローグ(後編)+本編ちょこっと

安定のグダグダな内容に薄っぺらさ


暫くして一夏が帰った後に束姉が入れ替わるようにして帰ってきた。

 

「ただいまー」

 

「あ、束姉おかえりなさい」

 

夕飯を作っていたので台所から顔を出す形で挨拶をする。

 

「おっ、今日の晩御飯は何だい?」

 

「今日はハンバーグにでもしようかと。ちょうど具材が冷蔵庫にあったので」

 

「やったね。束さんはそらくんのハンバーグ大好き!」

 

本当にうれしいのかその場で大はしゃぎな束姉。ハンバーグを夕飯に選んだのは正解だったようだ。

 

 

「それで、束姉は何処に行ってたの?」

 

「あり?ゆーくんからは何も聞いてないの?」

 

「はい、祐兄は僕と入れ替わる感じで寝ちゃったので」

 

束姉が今日の午後していたことを知らされる。どうやら僕たちの本当の親から親権を奪う形で取ってきたらしい。

束姉らしいと言えばそれで済むのだが、問題はないのだろうか。

 

「……」

 

「め、迷惑だったかな。束さん的にはこれで本当の家族になれるから嬉しいんだけど」

 

「僕も嬉しいですよ。僕と祐兄をここまで育ててくれた人が親になってくれるんですから。でも……」

 

「でも?」

 

「今度からは今回みたいな無茶はしないでくださいね?」

 

「うっ……」

 

僕や祐兄の為に頑張ってくれるのは凄く嬉しい。でも、それで体を壊してしまったら申し訳がない。

束姉は天才学者とも言われているらしいし、僕らのせいで研究ができなくなってしまったら……

 

「じゃあ、もう少しで夕飯ができるので手を洗ってきてください」

 

「はーい」

 

先ほどまでのしょげた様子が嘘のかのように元気に返事をし洗面所へと走って行った束姉。

 

 

 

テーブルの上に料理を並べると向かい合って座る。

 

「「いただきます」」

 

食事前の挨拶を言って料理に箸を付ける。

 

 

ほとんどの料理が皿の底を見えてきたときに、束姉が箸をテーブルに置いた。

 

「ねぇ、そらくん。今から大事な話をするからゆーくんを起こしてあげて」

 

何時になく真面目な声で話しかけてくる。大事な話というので僕も頷く。

 

『祐兄、束姉が大事な話をするって』

 

僕は自分の中にいるもう一人の人に心の中で声を掛けた。

 

『ん?大事な話か……分かった』

 

どうやら起きていたようなので、ホッとする。祐兄は一度寝ると起きるまでかなりの時間を要する。

でも、一度起きるとかなりの時間起きているので均等は一応取れているらしい。

 

「そらくんは高校行く気はない?」

 

大方予想ができていた質問だ。あと数か月後には大事な人生の節目とも言われている受験が僕にはある。

 

「……」

 

「私はね、そらくんには行って欲しい。そう思ってるんだ、私は……そらくんはゆーくん達と出会うまでは独りだった。

自分には研究といっくんやちーちゃん、それに大事な妹がいるから、他はいらない。そう考えていたんだ。でも、そらくんやゆーくんと出会ってからは他人も悪くない、そう思えるようになったんだ。だからそらくんにも此処だけじゃなくもっと広い世界を見てきてもらいたいんだ」

 

僕は束姉の言葉を聞きながら自分の手をある機械に触れさせた。その機械は仕組みこそ理解は出来ないが、束姉が作ったもので簡単に言えば祐兄の思っていることが声として聞こえるものだ。

 

『空、私も束さんと一緒の考えだ。今、お前の世界はあまりにも狭すぎる。それは私のせいだろう。だからこそだ、広い世界に行ってみないか?

今以上に楽しいことがあるはずだ』

 

「僕は……」

 

先ほどまで楽しい会話をして、暖かかった部屋の温度が心なしか少し寒くなった気がする。

 

「僕は……迷惑をかけてもいいのかな?僕は本当の親なんてもう覚えていない。いや、多分忘れたんだと思う。生みの親を忘れるような僕が迷惑をかけてもいいのかな」

 

泣きたいと思っていないのに涙が頬をつたる。

 

そんな僕を束姉は優しく抱きしめてくれた。

 

「いいんだよ。そらくんはもっと束さんやゆーくんに迷惑をかけてもいいんだよ。だって私たちは家族……なんだから。それに親を忘れたのなら、私を覚えてくれれば良い。これからは私がそらくんとゆーくんのお母さんなんだから」

 

僕の頭を優しく、ゆっくりと撫でてくれる。

 

『空』

 

祐兄が優しく僕の名前を呼ぶ。

 

『私や、束さん。それに一夏や千冬さんもそうだろう。お前は今まで迷惑を掛けなさすぎだ、これからは頼れ』

 

「うん……うん」

 

 

僕たちはその日、本当の意味での家族になったのだろう。

 

 

それから僕は一夏君や冬姉に受験をすることを告げた。冬姉というのは千冬さんが「束をそう呼んでるのだから私も呼べ」と言っていたので呼んでいる。

 

学校でもそれなりの成績を取っていたので最悪の事態は免れた。

 

それに束姉や冬姉、祐兄や一夏君の力を借りて、僕たちは受験に臨むことが出来た。

 

 

「な、なぁ空。此処は何処だ?」

 

「ぼ、僕に聞かれても……」

 

現在僕たちは迷っています。

 

今日は受験なので一夏君と張り切って試験会場に行ったはずなのに、どうしてこうなったんだろう。

 

『全ては一夏のせいだな。あんなに自信満々だったのに』

 

一夏君は僕に道案内は俺に任せろと自信満々に言ってきたので案内を任せていた結果、迷った。

 

「取りあえずは人を探そうか。人に聞けば大丈夫だよ」

 

「……そうだな」

 

僕たちは試験会場と思わしき建物にはいるので人に聞けば席に座れるだろう。

 

 

 

そう思っていました

 




これで次回からは本来の内容に進める……



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第1章
IS起動


なんかいつも以上にグダグダした中身になった。

多分、後日訂正を加えます


「こ、ここか?」

 

静かにドアを開けて中に入る一夏君。

 

「ちょ、ちょっと入って大丈夫なの?」

 

「入ってみなきゃ人がいるかも分からないだろうが」

 

尤もらしいようで何処か的外れなことを言っている気がするが、それを突っ込むだけの余裕が現在の僕にはありません。

 

「お、おい空。見てみろよ」

 

奥の方から彼の声が聞こえる。

 

声が聞こえる方へ歩んでいくと、そこには2台の静かに佇んでいるISが置いてあった。

 

「これって確か……」

 

「ISだっけ?」

 

IS 正式名称をインフィニット・ストラトス 元は宇宙での活動をサポートするパワードスーツとして製造されたらしいがどういう訳か現在では兵器として扱われている。

 

しかも起動できるのは女性だけという難儀な機械だ。

 

「なぁ、空。触ってみてもいいかな」

 

「まぁ、壊さなければ大丈夫じゃない?」

 

「そうだよな、壊さなければ大丈夫だ」

 

何処か自分に言い聞かせるかのように言葉を口に出しながらISへと手伸ばす一夏君。

 

彼の手がISに触れた途端、まぶしい光が部屋全体を照らした。

 

「うおっ、何だこれ」

 

その光を起こすことになった本人もどうやら分からないらしい。

 

光が消えるとそこには何とISを纏っている彼の姿があった。

 

「い、一夏君!?そ、それは一体?」

 

「うん?俺の姿が……なんじゃこりゃあああああああ」

 

「どうして一夏君はISを起動させることが出来たのだろう……」

 

「俺が聞きてえよ。……そうだ、空 お前も触ってみろよ。もしかしたら此処にあるのは男でも起動できる奴だったりして」

 

「ん~可能性はかなり低いと思うけど……まぁ、やってみるよ」

 

僕も先ほどの一夏君と同じようにISに手を触れた。

 

その瞬間、先ほどと同じような光が部屋を明るく照らした。その時、ドアが突然開いた。

 

「君たち一体なに……をして……って男の子!!!」

 

試験会場の担当者なのか誰なのかよく分からないが女性の方が入ってくるなり、僕たちを見て驚いた。

 

それもその筈、女性にしか起動出来ないISを一夏君が起動を……って僕も纏ってる!!!

 

「はははは、空。お前にも起動できたじゃないか」

 

この状況下で呑気に笑っていられる彼の精神力をこのときは凄くうらやましかった。

 

 

 

それから暫くして事態を聞いて駆けつけてきた人たちが僕たちの周りに集まってきた。

 

その人たちは皆口をそろえて同じことを聞く。「どうして男の君たちが起動できたの」と。

 

 

当然このことはテレビで大々的に紹介された。それもそうだろう、女性しか起動できないと言われていたISを男が起動させたのだから。

 

僕たちは起動させてしまってから数日、束姉の家で静かに生活をしていた。

 

本来は一夏君の家で冬姉に助けを求めるのが最善なのだろうが、聞いたところによるとISを作ったのは束姉だという。

 

なので僕たちは事態が幾らか大人しくなるのを待つため、静かに生活をすることにしたのだ。

 

 

「ねぇ、いっくんにそらくん。二人はさ、これからどうしたい?」

 

「どうしたいって?」

 

「君たちには今、二つの道があるの。一つはISと縁のない生活を送る。でも、それを実現させるにはちょっと難しいかな?そしてもう一つはISについて丁寧に教えてくれるIS学園

に通う。その二つだね。束さん的にはIS学園かな?女子しかいないけど、そこでならいっくん達の身柄の保証は出来る」

 

「空はどうする?」

 

「……ISって束姉が作ったんだよね?」

 

「うん、そうだよ。ちょっと予想外の用途で現在は使われてるけど」

 

「なら、僕はIS学園に行く。そして、束姉の手伝いを出来るように頑張ってISについて学んでくる」

 

「……本当にいいの?私の手伝いをする必要はないんだよ?」

 

「束姉が僕たちを拾ってくれたように、今度は僕が束姉を手伝います。それが今の僕にできる精一杯の恩返しだから」

 

「分かった。いっくんは?」

 

「俺は……俺も一緒に行く。空を一人で行かせるのは不安だしな」

 

「僕的には一夏君の方が不安だけどね。でも、有難う。僕の為に一緒に来てくれるって言って」

 

「水臭いな俺たち兄弟当然だろ?」

 

「うん!」

 

 

 

僕たちがIS学園へ行くことを決意してから数日が凄い密度で過ぎていった。

 

僕はISについて全く知らなかったので束姉に教わり、その間一夏君は冬姉と一緒に荷造りや自宅の事などでバタバタする日々だった。

 

それからさらに数日。ついにIS学園へ行く日がやってきた。

 

これからは寮住まいなので束姉のお世話ができないが、彼女もそれなりに生活能力は人並みにあるので不安はなかった。

 

 

「じゃあ、行ってきます」

 

「うん、いってらっしゃい。あ、姫ちゃんもちゃんと持った?」

 

「うん、ほら」

 

僕は自分の指にはめている指輪を見せた。

 

束姉が急きょ僕のために作ってくれた僕だけの……いや、僕と祐兄の専用機〈神姫〉 僕たちは姫ちゃんと呼んでいる。

 

この数日に飛行テスト等も済ませているので、ISの経験も幾らかある。

 

「定期的に連絡くれないと束さん泣いちゃうからね」

 

「分かってますよ。2日に1回ぐらいに連絡します」

 

「うん、待ってる。あ、ゆーくんは大丈夫?」

 

『私も大丈夫です。空のサポートはバッチリしますよ』

 

束姉特製の機械も指輪として簡易化されたので以前よりも他の人に祐兄の声を聞かせることが出来る。

 

「よし、じゃあ二人とも頑張ってきてね」

 

「『はい!』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これにてIS学園への入学までのプロローグ的なのはおしまいです。



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自己紹介と代表決め

山田先生は個人的にできる人だと思っている。

その結果がこれだよ!?

全くの別人になってしまいました。

反省はしてるけどこれはこれで良いと納得


まるで動物園の動物を見ているような視線が僕たちに集結している。

 

「な、なぁ空。俺たち場違いすぎじゃね?」

 

「うん、僕もそう思う。だけど……」

 

「だけど?」

 

「ここから逃げれないから慣れるしか……」

 

「……」

 

僕たちが固まっていると教室のドアが開いた。

 

「みなさん席に着いてください。SHRを始めますから」

 

ドアを開け中に入ってきたのは女性の方だった。

 

「私は今日からこのクラスの副担任を務めさせていただく山田真耶です。これから一年間よろしくお願いしますね」

 

と簡単な挨拶を済ませた。ん?副担任?ってことは担任は別の先生になるのか。

 

「では、私の挨拶はここまでですので、担任の先生が来るまでの間に自己紹介をすませましょうか。では、出席番号が一番の方からよろしくお願いしますね」

 

ほんわかとしたオーラを纏っていながらキビキビと行事を進行させてく。どうやら張り切って副担任をしているようだ。

 

 

 

「では、次は……‟お”なので織斑君。お願いできますか?」

 

「は、ハイ!」

 

緊張した様子で隣に座る一夏君が返事をする。

 

「お、織斑一夏です!よ、よろしくお願いします」

 

自己紹介というより唯名前を言っただけになってしまった。まぁ、この状況でなら仕方がないだろう。

 

僕は隣にガチガチに緊張している一夏君がいる分幾らか冷静でいられる。

 

「お前は満足に挨拶もできないのか」

 

一夏君が名前を言ったところで教室にもう一人の良く見知った女性が入ってきた。

 

「げぇ!関羽!!」

 

「誰が三国志の武将だ!」

 

一夏君の驚きの反応に手に持っていた出席簿で一夏君の頭を叩く女性。あれ?これって不味くない?まぁ、大丈夫だよね。

 

頑丈さは彼の取り柄の一つでもあるし。僕はそう納得することにした。

 

「な、なんでここに千冬姉が!?」

 

「もう一発やるか?公私の区別はつけろ、織斑」

 

「ちふ……分かりました。織斑先生」

 

渋々と自分に言い聞かせるように名前を呼ぶ。

 

先ほど教室に入ってきて、一夏君の頭を出席簿で叩いたのはふゆ……織斑先生だった。

 

「私の挨拶の前に続きをお願いしようか。織斑の次の奴自己紹介を」

 

今の件を無視して、次の人へと進行していく。隣で頭を押さえている彼を見るとそれなりに不憫に思えてくる。

 

 

「では次の奴」

 

どうやら僕の番のようだ。一夏君のような失態は許されないな、気を付けないと。

 

席を立ち、後ろへ振り向く。僕と一夏君の席はクラスのど真ん中の最前列だ。なので後ろを向くと全員女子。

 

「僕の名前は高見空です。趣味は料理と読書。一応世界で2番目にISを起動させた男ですが、気にせずに声を掛けてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」

 

紹介を済ませ、皆に向けて一度頭を下げる。

 

……あれ?何の反応もない?こういう時はどうすればいいのだろう。困った顔をし織斑先生の方へと見ると、彼女は何かを察したのか耳に手をやる。

 

え?耳に手?僕の紹介は聞くきが「「「「「「「きゃあああああああああああああ」」」」」」」

 

な、なんだ!?僕の自己紹介から数秒後にクラス中、いや校舎中に響き渡るような黄色い声が響いたぞ!?

 

「一夏君もまさに男子って感じな挨拶だったけど、高見君はかわいらしい男の子みたいな挨拶だったわ」

 

「男の子っていうより男の娘?」

 

「「「「それだ!」」」」

 

……何やら聞きたくない発音の言葉が聞こえた気がするが……

 

「貴様らはもう少し静かに騒ぐことが出来んのか!これでは校舎中に聞こえるぞ。もう少し慎め」

 

騒ぐことはそこまで問題があるとは言わずに、皆のボリュームを下げるように告げる織斑先生の怒声。

 

まぁ、女子校に男子ですからね。諦めたのでしょう。

 

 

 

「どうやら落ち着いたようだな。次!さっさと自己紹介をしろ」

 

投げ出しのように言う先生。

 

 

 

 

 

「さて、これで君たちの自己紹介は終わりだ。最後に私の挨拶をしよう」

 

先ほどまで少しざわざわとしていた教室が一瞬で静かになる。まるで嵐の前の静けさのようだ。

 

「私の名前は君たちも知っているだろうが、織斑千冬だ。これからは君たちの担任として1年間頑張るつもりだ。だから君たちも私の後を付いてきてほしい。

しかし!適度に休憩することも大事だ。ただ私の後を付いてくるだけでなく、立ち止り助け合い、そうしてこの1年間を乗り切ってもらいたい。1年間仲の良いクラスにしよう」

 

まるで教師の模範のように僕たちを教壇の上から見下ろしながら堂々と言う先生。本当にカッコいい人だなぁ。

 

……

 

「「「「「どこまでも付いて行く所存です千冬様!!!」」」」」

 

クラス一丸となった瞬間だった……

 

あれ?このクラスって宗教のクラスだっけ?そう勘違いするほど女子の声援は凄かった。

 

やはり困惑したような顔で先生は言った。

 

「慎めと言っただろうが……はぁ。山田君!」

 

「は、はい!」

 

「次の予定は?」

 

「えーと……授業に入る前にクラス対抗戦の代表の取決め……ですね」

 

山田先生は手に持っているファイルを見ながら次の予定を告げる。

 

「ふむ、クラス代表か。みんな、静かにしてくれ」

 

やはりこの一言でクラスが一瞬で静かになる。まるで軍隊だね。

 

「授業に入る前にクラス代表を決めることにする。誰か立候補、もしくは推薦はいないか?」

 

「私は織斑君を推薦します」

 

「あっ、私も」

 

「私は高見君かなぁ?」

 

「それいいね。高見君を推薦!」

 

ザワザワとクラスの女の子たちが思い思いに推薦者を上げる。あれ?僕と一夏君以外の名前を聞かないよ?

 

「では、織斑とたか「待ってください先生!」

 

先生の言葉を遮るかのようにクラスの後方に座っていた女の子が声を上げる。

 

「ん?どうしたオルコット」

 

「私は納得がいきませんわ!なぜ、クラス代表に男子が推薦されなければいけないのですか!?ここはIS学園。例えイレギュラーの彼らが前に立つ必要わ無いと思いますわ」

 

「ふむ……たしかに男女比率を考えたら女子がリーダーとして立つ必要がある。いや、立つ方が多いだろう。なんせ、このクラス以外には男子はおらんからな」

 

「そうです!だからこのクラスだけ男子というのはこのクラスが変に目立ってしまいます。それに織斑さんは先生の弟さんだから実力があり、推薦されるのは分かりますが、なぜ高見さんが?

確かに彼も男子ですが、推薦されるだけの実力はあるのでしょうか」

 

「……たしかに織斑は私の弟だ。しかしそれと織斑……いや一夏の実力があるというのは関係がないだろう。親と子なら遺伝という形で納得ができるが私たちは姉弟だ。それに高見は

一応だが、私と互角に戦ったぞ。さすがに私も本気を出すわけにはいかなかったが」

 

……クラス中がカミングアウトに静まる。ここでその話題出しちゃいます?

 

「な、なぜ!?か、彼は先生と互角にたたえたのでしょうか」

 

「それは先ほどオルコットも言っただろうに。間違いなく彼の実力だ」

 

「……」

 

そう先生が言うと、オルコットさんは黙ってしまった。

 

「えっと……僕……どうすれば……?」

 

黙っていれば確実に変な方向へと行きそうなので声を出す。

 

「私は代表候補生ですわ。普通に考えたら私がトップとして立つべきではないのでしょうか」

 

ボソリと彼女が思っていたことを口にする。

 

「先生!」

 

その言葉を聞いてからか先ほどまで静かに話を聞いていたもう一人の男子ー一夏君が手を挙げた。

 

「うん?どうした織斑。やる気になったのか?」

 

「いえ、そうではなくてですね……代表候補生って何ですか?」

 

「「「「……」」」」

 

クラス中が先ほどとは別の意味で静かになった。

 

「織斑、貴様は教科書を呼んでいないのか?私は確か1週間以上も前に渡したはずなのだが……」

 

「教・科・書?」

 

まるで何かわからないかのように言葉を反芻する。

 

「あっ!もしかしてあの分厚い本ですか?」

 

「それだ」

 

「……」

 

「どうして黙る」

 

「古い電話帳と間違えて捨ててしまいました」

 

「馬鹿か貴様は!後で手配する。3日で中身を丸暗記しろ! 織斑はダメだと分かった。高見、貴様は教科書、大丈夫だろうな」

 

「はい、僕は大丈夫ですよ」

 

「よろしい、ならば代表候補生の意味をそこの馬鹿に伝えてやれ」

 

僕は束姉とマンツーマンでISについての勉強をしたので、知識はここにいる人とは少なくとも大きな差はないだろう。

 

「えっと、代表候補生ってのはその名の通りで、各国の代表者候補って意味なんだよ。オルコットさんは……イギリスの候補生、だったよね?」

 

本人に確認するように尋ねる。

 

「え、ええ。そうですわ。あなたはどうやら馬鹿ではないようですね。先ほどの言葉は謝らせていただきます。すみません、あなたを貶めるようなことを言って」

 

先ほどまでの敵対していた感じの視線ではなく、本当に申し訳ないという視線で彼女は言った。

 

「あはは、大丈夫ですよ。確かに僕は男子だし、ISの世界で考えると前に立つのはおかしいもん。それに僕自身目立つのは少し苦手で」

 

僕も先ほどの言葉はそこまで深く受け止めていたわけではなかったので、彼女の反省を素直に受け止める。

 

「ゴホン。……織斑、先ほどの説明で分かったか?」

 

「はい、分かりました」

 

「では改めて、代表を決める。が、どうやら現状3人のようなので、総当たり戦と行こうじゃないか。お前らも彼らの実力、知りたいだろ?」

 

少し悪ふざけの顔をしながら生徒に聞く。やっぱり冬姉は凄い。素直にそう感じた。

 

「私はそれで構いませんわ」

 

「俺も問題はないぜ」

 

「僕も問題……あれ?先生ひとつ質問が」

 

「ん?どうした」

 

「オルコットさんは代表候補生ですのでISに乗りなれているでしょう?僕もそれなりには載っていますが、一夏君は大丈夫なんですか?」

 

束姉ととある事でISに乗る機会があったので少なくともこのクラスの生徒で2番目ぐらいに乗っていると思っている。

 

「それについては大丈夫だ。織斑には専用機が付くこととなった。と言っても実際に届くのは1週間ぐらいかかるだろう。だから代表決定戦は1週間後にする」

 

「わかりました。僕のことは聞いてますよね?」

 

僕はとある事情で専用機を貰っている、それもどこの研究所にも所属しない形で。

 

「ああ、それについてからはあのバカから聞いている。データはある程度政府に送られるのだろう?」

 

「はい、そう言ってました」

 

僕が専用機を内緒で持つ際、束姉と政府の間でとある交渉がされたらしい。僕の起動データが8割がた政府に送られるという形で結ばれたらしい。

 

「では、代表の話はここまでだ。授業に入るぞ 高見はすまないが織斑に教科書を見せてやってくれ」

 

姉として申し訳ないという感じの顔で僕に聞いてくる。それについては問題がないので頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 




これより先のお話はある程度、原作通りに進めていきます。

ヒロインとのイベント等で内容が変わるかも?

登場人物紹介については代表決定戦が終わってからで


感想や誤字脱字報告等お待ちしております。


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同室者は生徒会長

今回は地の文とセリフがかなり多めです。


今日は学校初日ということで授業も簡単なISについてのことを触れていた。

 

お昼休みになると、一夏君はポニーテールの女の子に連れていかれたので、仕方なく一人で昼食をとるために食堂へと行こうと腰を上げたら声を掛けられた。

 

「ちょっといーい?」

 

「ん?君は確か……布仏さんですよね?」

 

初対面の対相手にも失礼がないようにと敬語で聞く。

 

「うんそーだよー。そういう君はたかみー」

 

「た、たかみー?」

 

「うん、高見だからたかみー」

 

何がどうなったら僕の名前はたかみーというゆるキャラみたいな名前になるのだろう。

 

「えっと、それで何かな?」

 

「お昼ご飯 今から食べに行くの?」

 

「うん。そのつもりだよ」

 

「じゃあ、私が案内してあげるー。お礼はお話聞かせてー」

 

「お話?」

 

「うん。ここに来る前のお話」

 

「……」

 

「あ、もしかして話辛いー?なら、無理して「大丈夫だよ」

 

此処に来る前、つまり束姉との生活の事だがそれを言わずに中学時代のことを言えばいい。

 

「じゃ、案内してくれるかな?」

 

「うん、こっちだよー」

 

ゆっくりと歩く布仏さんの後を追う僕。なんか外から見るとすごい絵面だな。

 

 

 

「ここがー食堂ー。基本的にはあっちで食券を買ってから商品を頂いて、そこのテーブルで食べるの」

 

「基本的には?」

 

「うん、普段は食堂で食べるのー。でも時間がないときやお外で食べたいなーって時には食堂の奥にある購買でパンを買うって感じかな?」

 

「……なるほど。ありがとう」

 

「いえいえー。じゃ、早速注文しにいこー」

 

「うん」

 

彼女の後を再び付いて行く。

 

 

空いてる席を見つけて布仏さんと向かい合って座る。あまり交流のない女性と向かい合って食事をするのは初めての経験だ。

 

基本的に今まで食事を取ってきたのは中学までの同級生か、一夏君や束姉、それに冬姉ぐらいだ。

 

「ではいただきます」「いただきます」

 

食事の挨拶をして手を付ける。

 

今日頼んだのは日替わり定食だ。今日は生姜焼きをメインとして置かれている。味付けも申し分なく美味しく食べていく。

 

「えっと、それで僕の中学時代だけど何を聞きたいの?」

 

「んー、私はね、ちょっと特殊な環境で育ったからあんまり普通の学生ってのを知らないの。だって、今の時代は女尊男卑でしょ?」

 

「じゃあ中学生活でいいかな?」

 

「うん、お願い」

 

彼女のお願いなので覚えている限りのことを話す。

 

 

中学時代は一夏君に彼の親友であり僕の親友でもある五反田弾君、それに中国から留学生として訪れていた凰鈴音ちゃんと共に行動していた。

 

毎日4人でバカ騒ぎをしていた。まぁ、あくまでも常識の範囲内だけど。

 

たとえば、一緒に市民プールに行ったことがある。その時は人がいっぱいだったので遊ぶのが大変だったけど、4人で穴場を見つけてはしゃいだりしたのは今でも覚えている。

 

とにかく、僕の中学時代は彼らがいなくては成り立たなかっただろう。

 

それに一夏君同様、彼らも僕の中にいる祐兄の存在を知っている。話したのではなく、彼らから聞かれたのだ。

 

『今のお前は空じゃないな。誰だ』と。その一言は僕の中では凄く嬉しかった。僕という人間をよく見ない限り分からないだろう。

 

口調は変わるが表に出てきたときの祐兄は僕の真似をする。おかげでバレた時は焦ったけど、それ以降より仲が深まったって感じだ。

 

僕は祐兄のことを除いて話をした。

 

「こんな感じかな?僕の中学時代は」

 

「ふむふむ。何だか楽しそーだね」

 

「うん、楽しかったよ。弾君とは今でも連絡取り合ってるし、鈴ちゃんとは鈴ちゃんが国に帰ってもメールでのやり取りもしてるし」

 

「ほえー、いいなー」

 

「そう?」

 

「うん!そこまで仲が良いってのは羨ましい。私にも家族同然の友達はいるけど、たかみーの友人のような対等な友人ってのは少ないから」

 

「……なら、僕がなるよ。その対等な友人ってのに」

 

「ほんと?」

 

「うん、それに布仏さんは良い人だし」

 

「???」

 

「僕の話をしっかりと聞いてくれたからさ。よほど興味を持ってくれたのかなーって」

 

「うん、とっても楽しかったよー」

 

布仏さんは腕をぶんぶんと振る。周りに迷惑が掛かってないのがある意味凄い。

 

「あ、ならさー、たかみーも私のことは布仏さん何て堅苦しい感じじゃなくて本音で良いよー」

 

「なら本音さんって呼ばせてもらう」

 

「おっけー」

 

おしゃべりに夢中で時間が無くなってきたので二人で急いで食事を再開する。

 

 

 

 

午後は簡単なオリエンテーリングが行われた。主に、ISを借りる時や、訓練場の使用許可の取り方等。

 

様々なことを教えてもらった。

 

放課後になると僕と一夏君は山田先生に呼び出された。

 

 

「先生、俺たちに用事って?」

 

「えっとですね、お二人のこれから生活する部屋の事で呼び出させてもらいました」

 

「なるほど。では、部屋割りは?」

 

「……大変申し訳ないのですが、とある事情で二人は別々の部屋になります。もちろんその部屋には先に生活している人がいるので、その人と仲良くしてください」

 

「とある事情って?」

 

「すみません、それに関しては私の口からは」

 

「分かりました。では、部屋番号は?」

 

「あ、こちらです。織斑君は1025室で、高見君はその奥に行ったところの1040室ですね。こちらが鍵となりますので失くさないように」

 

「有難う御座います。それで、僕たちの荷物は?」

 

「荷物なら先ほど、部屋に運び込まれました。お二人とも準備してあったようなので運ぶのが楽だったと業者さんから言われました」

 

「あはは一夏君、言わないと全然荷物準備しなかったもんね」

 

「空のおかげだな」

 

先生に頭を下げ、二人で職員室を後にする。

 

 

 

「じゃあ、俺はここのようだ」

 

「ん、僕はまだ奥のようだから。何かあったら連絡頂戴ね」

 

「ああ」

 

 

一夏君と別れ自分の部屋前までやってきた。

 

「えーっと、ここが1040室で間違いはないな」

 

扉に標識として『1040室』と書かれているので間違いはないだろう。

 

コンコン

 

同室者が分からない以上ノックをする。

 

『はーい』

 

中からは女性の声が聞こえた。

 

「えっと、今日からこの部屋で生活するようにと言われた高見です。入ってよろしいでしょうか」

 

『ええ、大丈夫よ』

 

鍵を開け、中へと入る。

 

中にいた女性は、ショートカットで綺麗な水色の髪の毛を持っている方だった。

 

「えっと……失礼ですがどちら様でしょうか。これからの生活を考えてお互いのことを知った方がと思い」

 

「……」

 

僕が話すと目の前の女性は肩をプルプルと震わせる。もしかして僕、失礼なことをしたのだろうか。

 

……初対面の女性に名を訪ねるのってNG?

 

「……僕はどうすれば……」

 

「……あはははは」

 

遂に堪えるのが無理だったのか声に出して笑い始めた。

 

「もしかして僕、失礼なことしました?」

 

「ははは、はぁーはぁー。んっ、大丈夫よ。ただ、私にそういう質問をしてきたのは君がはじめてなもんで」

 

「???」

 

「私は更識楯無。これでも一応ここの生徒会長を務めているわ」

 

「……え?」

 

生徒会長?生徒会長ってあの?僕の記憶が正しければIS学園の生徒会長ってイコールでIS学園最強じゃなかったっけ?

 

「君は高見空君だよね?」

 

「あっ、はい」

 

「これからよろしくね?」

 

「此方こそよろしくお願いします」

 

 

それから彼女とはこの部屋で生活するにあたってのルールを決めた。

 

朝は先に起きた方がシャワーを使うと決め、着替えは洗面所のみでと決める。

 

ある程度決め終わったら、僕は荷解きを始める。

 

「ねぇ、空君。それ何?」

 

彼女は僕の荷物を入れている段ボールの中のものを指した。

 

因みに彼女が僕のことを空君と呼んでいるのは『これから一緒に生活するんだからお互いのことは名前で呼び合いましょ』と言ってたからだ。

 

「これですか?これはとある親切な人が作ってくれた機械です。僕ぐらいしか使用者でしょうが」

 

とある親切な人とは束姉だ。相手がたとえどんなお偉いさんでも僕と束姉の関係をいう訳にはいかない。なので親切な人としておいた。

 

「へぇー、何に使う物なの?」

 

「あまり詳しくは言えませんが、簡単に言えば他人とコミュニケーションを取る時に使用するものだと」

 

僕の中にいる祐兄の声を他人にも聞かせることが出来る機械。

 

IS学園では一夏君と話すときか、僕が祐兄と声を出し合って話すときしか使用することはないだろう。

 

そういえば、今日一日祐兄が話しかけてこないと思ったらまだ寝ているらしい。

 

「コミュニケーションに道具???」

 

彼女はこの道具について色々と考えているようだ。祐兄の事と制作者以外の事ならバレてもいいので、彼女に手渡す。

 

「思って以上に軽い」

 

「よく言われます」

 

「これをコミュニケーションにか……今使えるの?」

 

「いえ、今は使えないですね。色々と事情があって」

 

主に祐兄が起きてないこと。

 

「そっか。じゃ、使える時になったら教えてよ、興味わいたし」

 

「ええ、いいですよ。でも、基本的に使用することはないですが」

 

祐兄と声を出して話したかったら僕の右手にはめている指輪に触れながらすればいい。小型化もしてあるので持ち運びやすさと便利さを考えれば此方で事が足りる。

 

 

「よし、こんなものかな」

 

僕自身、あまり荷物を持ってきてなかったので早く終わらすことが出来た。

 

それにもし何か足りなかったら土日に取りに行けばいい。

 

「夕飯どうします?」

 

「んー、この時間だと食堂は混んでるわね」

 

今は時間にして焼く7時半。同じような考えで食事を取りに来た学生でいっぱいのようだ。

 

「なら、僕が作りましょうか?先ほど冷蔵庫を見たら食材があるようですし」

 

「あら?料理できるの?」

 

「ええ、趣味なもんで」

 

「じゃあ、お願い♪」

 

笑顔で言われたので頷いておく。照れたのは内緒だ。

 

 

 

「すみません、遅くなりました」

 

米をたく時間を含めて予定よりも少し遅くなってしまった。

 

「大丈夫よ。それにしても美味しそうね」

 

「あはは、お口に合うと良いんですが」

 

二人して挨拶をして食事に手を付ける。

 

今日の晩御飯は冷蔵庫にあったもので作った有り合わせなものだ。

 

 

「あー、美味しかった」

 

食後のお茶をしてたら彼女から良い評価を頂けた。

 

「お口にあったようで何よりです」

 

「うむ、大儀であった」

 

「何ですかそれ」

 

二人してふざけた話で盛り上がってしまい、気付いたらそろそろ就寝時間だ。

 

「私、先にシャワー借りるわね」

 

「ええ、どうぞ」

 

「覗いちゃだめよ?」

 

「覗きませんって」

 

「なら、いいけど」

 

人で遊ぶのは止して欲しい。なれていない生活で意外と緊張しているのだ。

 

僕が明日の準備をしようかと思ったときに祐兄が起きたようだ。

 

『おはよ、空』

 

「祐兄今起きたの?」

 

『ああ、今日は初日だろ?迷惑を掛けたら不味いと思ってな。今日は一日寝てることにしてたんだ』

 

「気を遣わなくてもいいのに」

 

楯無さんがシャワー室に入っているので声を潜めて、会話する。

 

本来なら心の中で会話すればいいのだが、今は知っている人と話せることに安堵してその事がすっかりと頭から抜けていた。

 

「今起きたってことは暫くは起きてるんだよね?」

 

『ああ、そのつもりだが』

 

「じゃあさ、明日は祐兄が体を使ってよ。僕はちょっと緊張のしっぱなしで疲れちゃった」

 

『構わないが、大丈夫なのか?』

 

「大丈夫だよ。祐兄の事は誰にも話してないし、弾君たちみたいに気づいた人もいない」

 

『分かった。ま、もう10年以上もお前の真似をしてるんだ。簡単にはボロを出さないように気を付けるよ』

 

「うん、明日はよろしくね」

 

ちょうど僕らの会話が終わったと同時にシャワー室から楯無さんが出てきたので指輪から手を離した。

 

「次、いいわよ?」

 

「はい、じゃあお借りしますね」

 

シャワーで簡単に汗を流して、今日は寝ることにした。

 

 

 

 




今回は簡単に同居者までの事を書きました。

感想や誤字脱字報告等お待ちしております。

しっかし、キャラがブレブレ 一体何時になったら落ち着くんだろ?

今回の一番のキャラ崩壊者はのほほんさんでした。


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篠ノ之箒


今回からの2日目の話は全部祐樹です。

ですのでセリフは僕。内心は私

打ち間違えってわけではありません


目が覚め、時計に目をやると時刻はまだ朝の5時半だった。

 

空が昨日早く寝たので、体の方はバッチリ元気のようだ。私自身も元気なので起きることにした。

 

隣のベッドに目をやると水色の綺麗な髪をした女性 更識楯無が静かに寝息を立て、寝ていたので静かにベッドから出た。

 

そのまま着替えを持って洗面所へと入る。

 

寝間着から部屋着に着替えると財布に携帯、それに普段は使用していないもう一つの携帯を持って部屋を出た。

 

寮を歩き、エントランスに行くとエントランスに設置されているソファーに座りコーヒー片手に新聞を読んでいた千冬さんを発見した。

 

「おはよう、冬姉」

 

周りを確認して挨拶をする。一生徒と一教師が親密な会話をするのを誰かに見られると騒ぎになるので確認をして挨拶。

 

「ん?」

 

千冬さんもそれに気づいたのか周りをキョロキョロと確認する。

 

「ああ、おはよう祐樹」

 

「バレてましたか」

 

「当たり前だろう、お前と空とは長い付き合いだ。分かってやらない方が失礼だろう」

 

「面と向かって言われると恥ずかしいですね」

 

「その様なものか?まぁ、いい。お前はこんな時間に何しに来たんだ?」

 

「ちょっとあの人に電話をと。この時間で私たちがいないとなれば絶好の研究日和ですから」

 

「成程な。確かにお前らがいないとなると喜んで研究してそうだ。私からと伝えといてくれ身体を壊すのだけは勘弁してくれと」

 

「分かりました、しっかりと伝えておきます」

 

「頼んだ」

 

千冬さんと別れてエントランスを出る。

 

少し歩いたところに森というほどではないが、沢山あり涼しそうな場所があったのでそこで電話を掛けることにした。

 

勿論、かける際には周りをチェックする。誰かに聞かれると処理が面倒なものだから。

 

「もしもし、束さんですか?」

 

『その声と呼び方はゆーくん!!元気にしてた?』

 

「元気ですよってか昨日の朝に見送ってくれたじゃないですか」

 

『心配だったんだよ。ちゃんと着いたかなぁとかイジメられなかったかなぁとか』

 

「小学生の親ですか」

 

『それぐらい大事なの!』

 

「ありがとうございます。取りあえず、今電話を掛けたのは無事に学園に着いたことの報告と千冬さんからの伝言を伝えるためです」

 

『ちーちゃんから!?なになに』

 

「身体を壊されるのは迷惑だから勘弁してくれ だそうです」

 

少し言い方を変えたが伝えたいことは同じなので気にしない。これぐらい強く心配していると伝えないとこの人は無茶をするから。

 

『えー、ちーちゃん私に冷たくない?ぶーぶー束さんだって健康管理ぐらいできますよーだ』

 

「嘘ですね」

 

『即答!?』

 

「だって、ほんの2週間前にも風邪を引いたじゃないですか。主に研究のし過ぎで。あの時は千冬さんがまだ忙しくなかったからお見舞いに来てくれたから大丈夫だっただけで、今は一人なんですからいつも以上に気を付けてください。千冬さんだけでなく、私や空、それに一夏も心配しますよ」

 

『うー、そこまで言われちゃうと頷くしかないなぁ。分かったよ何時も以上に気を付けます』

 

大方、少ししょぼくれた様子で受話器を持っているだろう、そんな様子が想像できた。

 

「じゃあ、今日はこの辺で。そろそろ朝ご飯等の支度もしないといけないので」

 

『うん分かった。気を付けてね。いつでも電話しても大丈夫だからねー』

 

「はい」

 

電話を切り、ポケットにしまう。

 

さて、同室者の楯無が起きる前に支度を済ませるか。昨日の晩御飯は空が作ったみたいなので、朝ご飯を作るというのも可笑しくはないだろう。

 

 

 

部屋に戻ると楯無は既に制服に着替えていた。

 

「あら、おかえりなさい。どうしたの?まだこんな時間に出歩いて」

 

「ちょっとした用事があったもんで」

 

「……??? そう?ならいいけど」

 

彼女に一言声を掛け調理に取り掛かる、パンがあったのでトースターで焼き簡単にスクランブルエッグとベーコンを焼いた。それに珈琲でもつければ立派な朝ごはんだ。

 

 

「まだ、ジャムは用意していませんが。バターで良ければ」

 

皿にのせた食パンと一緒にバターを差し出す。

 

「ありがとう。それにしても意外ね」

 

「何がですか?」

 

「昨日の夕食は和食がメインだったから、洋食系は苦手だと思ったのだけど。だから朝ご飯を作るならご飯かなって思ってた」

 

「朝は早く食べれるようにパンを食べることが多いですね。時間がある日ならご飯にしますが」

 

ある程度は間違っていない。私は洋食派で空が和食派。うまいこと二人の好みが違ったのでお互いの得意料理がはっきりと分かれている。

 

「ま、朝は時間がないからね。じゃいただきます」「いただきます」

 

 

朝ご飯を食べ、必要な教科書をバッグに詰め込むと登校の準備は完了だ。

 

「じゃあ、私は朝一で仕事をしなければいけないからお先に」

 

「はい、いってらっしゃい」

 

彼女を見送ってから、電話を取り出す。

 

掛ける先は一夏だ。

 

『空か』

 

「残念、祐樹だ」

 

『おー、祐樹かぁ。どうした?』

 

「そろそろ起きないと、遅刻するぞ。5分待ってやるから早めに支度しろ」

 

『マジで!?そんな時間』

 

電話の向こうから慌ただしい声が聞こえる。

 

因みに時刻はまだ7時半だ。この時間に出ると遅刻どころか一番先に教室に入れるだろう。

 

『って、まだ7時半じゃねえか。驚かすなよ』

 

「お前の事だからな、早めに起こさないと覚醒するまで時間がかかる」

 

『それは助かったが』

 

「そういえば、一夏、お前の部屋の住居人は誰だ?」

 

『あ、俺と相部屋なのは箒だよ。知ってる?』

 

「……すまない、誰だ?」

 

『ってことは束さんから聞いてないのか。じゃあ、説明しておく絶賛喧嘩中の妹の篠ノ之箒だ。束さんとは姉妹』

 

「……マジか。てか、ケンカって何だ」

 

『あー、それに関してはまた後で話すよ。取りあえず支度する』

 

「わかった」

 

電話を切り彼が部屋を訪れるのを待っている間、テレビを付ける。

 

テレビでは私と一夏のことが報道されていた。変なものだな、自分の顔をテレビで見るという感覚は。

 

 

暫くボーっとテレビを見ていたらインターホンが鳴った。

 

来客のようだ。つまり、一夏が準備を済ませてやってきたという事だろう。しかも一夏の性格だ絶対に相部屋の箒を連れてきているだろう。

 

私や空とは一度も会ったことがないのでお互いに束さんとの接点があるとは知らない。なので、私は初めて会う人のように心掛けないとと思いながら扉を開けた。

 

「よっ、空」

 

「うん、おはよう一夏君……後ろの人は?確か、同じクラスの人だったような」

 

後ろに人、正確には箒の事なのだが彼女は俺の方を静かに睨んでいる。

 

あれ?私の知らないところで空が何かをやらかしたのだろうか、それとも別の何かで恨まれているのか。

 

「紹介しておくよ、俺の幼馴染の箒だ」

 

「篠ノ之箒だ、よろしく頼む」

 

先ほどの雰囲気とは変わり、挨拶をしてくる。

 

「あー、彼女が例のファースト幼馴染?」

 

「まぁ、そんなところだ」

 

私たちの会話を理解できていないようで頭の上で?を浮かべたような顔をしている彼女。

 

「僕は高見空です。一夏君とはそれなりに付き合いが長いので、会う機会はそれなりにあると思いますので此方こそよろしくお願いします」

 

「ふむ、一つ疑問なのだが、私が一夏と知り合ったのは小学1年からなのだが記憶が正しければ、君を知らないのだが」

 

「そういうことですか。僕と一夏君が出会ったのは小学5年。その時には君がいなかったから知らなかったんだと思う」

 

「私が転校してしまった後に出会ったわけか。納得した」

 

彼女は何時私たちが一夏と知り合ったのかを聞きたかったようなので、答えておいた。

 

小学5年の時に知り合ったが正確に言えば、千冬さんの紹介で出会ったのだ。

 

同年齢の子供として自分の弟がいるから仲良くやってくれと言われたものだ。

 

「そろそろ時間も少ないし、二人とも行こうぜ」

 

俺たちを先導しながら先に歩いていく一夏。

 

彼の後を追って私たちも学園へ足を向けた。

 

 

 

 

 

 




正直好みなキャラなのに何故か苦手なキャラ1位な箒さん。

多分彼女のキャラはブレないと思う。武士っぽく書けばそれっぽい雰囲気が出るので。

感想や誤字脱字報告等お待ちしております

ヒロインについて要望が来ましたが、現在のタグに書いてあるキャラも予定名だけで変わるかもしれないでご了承ください


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ここまでの主要キャラ紹介


空の周りの大事な人間を紹介しておきました。

原作との違いも書いてあります。


 

 

主人公

 

高見 空

 

一人称 僕

 

小さいころに両親に捨てられ、束に保護される。

 

彼女には恩を感じており、迷惑を掛けないと心掛けてきた、だが、プロローグにて蟠りが解消され、本当の意味での家族としての迷惑をかけることになった。

 

性格は温厚で滅多なことでは怒らない。しかし、自分の大切に思っている人たちのことを馬鹿にされると怒る。

 

怒ると一人称が僕から俺に変わる。

 

余談だがこの設定のせいで祐樹が『私』キャラになった。

 

黒髪茶目で目立たないキャラ。だけど彼自身の性格で皆が集まっている。

 

基本的には自分に向けられている関心を素直に受け取ることが出来ない、上辺だけで受け取ることが多い。

 

それは幼いころに捨てられたせいなのか、簡単に人を信じないようにしてる。

 

祐樹の事は兄と思っている。

 

 

 

もう一人の主人公 

 

祐樹

 

一人称 私

 

この小説を書くにあたってキーキャラとなってしまったキャラ。

 

本来は兄として登場させるはずがタイトルを書くに至って空の中にいるもう一人の人格というポジションになった。

 

よく空とは表と裏を交換する。それは空が祐樹を他の人に存在を知らせたかったからなのだが、彼は空の真似をし空に悪い噂が起きないようにしている。

 

空とは別人格なので年齢に表わすと20前半 だから敬語を付ける対象が空とは違う。

 

彼の事を知っているのは拾ってくれた束、束と交流があり仲良くしてくれた織斑姉弟と空に違和感を感じている一夏のセカンド幼馴染+弾のみ。

 

性格は空と同じく温厚。違う点はキレると黙る。

 

空のことを第一に考えているので出過ぎた真似は極力しない。しかし、空の行動を弁解するときは意外とおかしい方向にズレル。

 

 

普通の人になった天才

 

篠ノ之 束

 

一人称 束さん、私

 

本来ならどこかネジの外れた性格だったのだが、空と祐樹を拾ったことにより真人間へと戻れた。

 

しかし、自分の興味のないものには冷たい点はあまり変わっていない。

 

空と祐樹の母となったので考えが少し変わってきた。動く時は第一に空たちのことを考えてから動く。

 

次々と新しい発明品を生み出しているが、それを使用しているのは空と祐樹だけ(千冬と一夏には断られた)

 

IS関係で箒とは仲違いをしている。その事を一回も空たちには伝えていない。

 

 

本来の主人公

 

織斑 一夏

 

一人称 俺

 

本来であれば主人公だった。

 

原作とは違う点として、空気の読めるキャラとなっている。

 

性格は熱血。千冬に尊敬の心を抱いているので千冬ならどう動くかと考えたりもしている。

 

空とは千冬を通して知り合ったが、彼としては一生切ることのできない縁となった親友と思っている。

 

そして原作同様自分への好意に対しては鈍感。

 

祐樹の事を知っている数少ない人間。祐樹のことは兄貴分として思っている。

 

 

ブリュンヒルデこと苦労人

 

織斑 千冬

 

一人称 私

 

一夏の姉で数々の苦労をしてきた人。

 

空の事を一夏同様、弟のように可愛がっているが表には出していない(空はその事を知っている)

 

原作だとズボラな一面もあるが、一夏と空達のおかげで人並みの生活能力は持っている。

 

束が他人と話すようになったことを一番喜んだ人間。何故なら、それで一番苦労したのは千冬だから。

 

空とは、一夏と自分と同じような境遇な空を束との会話で知って以来の付き合い。

 

生活能力は改善されたものの意外と面倒なことを避けるタイプ

 

 

 





ヒロインについてはまた別の形で書きます


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勢いで書いたのでめちゃくちゃな部分が多い気がします

そして安定の誰だコイツ状態


教室に入ると本音が駆け寄ってきた。

 

「おはよー、たかみー」

 

「うん、おはよう本音さん」

 

「朝はおりむーたちと一緒なんだね」

 

「うん、一夏君とは付き合いが長いし、ここでは唯一の男友達だしね」

 

ないとは思うが一夏と空の中が悪くなると大変だ。お互いがお互いのこの世界での唯一の男友達なのだから。

 

「今日、お昼ご飯一緒に食べない?まだまだ、たかみーの事知りたいし」

 

「構わないよ。それに僕としても早めにこの状況になれたいしね」

 

周りに目をやると私や一夏に相変わらず好奇の視線が向けられていた。

 

空という人間をある程度の人に知らせないと、この視線は消えないだろう。何故なら、好奇の視線とは知らない物に対して向けるものだから。

 

それに本音はこの中でも上位の方に入るぐらい普通の女の子だ。

 

今の時代を表している『女尊男卑』 その思想に染まってないというのは会話がしやすい。

 

「えへへー、決まりだよー?破ったら怒っちゃうからー」

 

そんなぽわぽわした感じに怒っちゃうよーと言われても何もすごさを感じない。

 

むしろ癒されるぐらいだ。

 

「破らないよ、本音さんに悪いからね」

 

「たかみーは優しいねー」

 

「そうかな?」

 

「絶対そうだよー」

 

と癒されていると教室の扉が開いた。千冬さんが入ってくる、その後をおって副担任である山田先生も入ってきた。

 

「朝のHRを始める。席につけ」

 

皆が次々と椅子に座り始める。本当に千冬さんの一言はこのクラスにおいて神のお告げみたいだ。

 

「今日からの授業はペースが速いからしっかりと付いてきてくれよ。それぐらいだ。号令!」

 

今日から本格的な授業が始まるらしい。

 

昨日は簡単な内容だったからね。幾らか知識があるとはいえ私と空、それに一夏はまだまだ知らないことが多すぎる。

 

今のうちに今日のやる範囲を見ておかなければ。そう決意すると鞄から教科書とノートを取り出した。

 

「なぁ、空」

 

「ん?どうしたの」

 

「今日の昼飯何にする?」

 

「君は朝から昼の事を考えているの?」

 

「いや、考えてみろよ。俺に限っては昨日の夜に千冬姉に教科書を貰ったんだぜ?それで知識詰められていると思うか?」

 

「無理だね。てか、早めに渡されていて結果がこれだし」

 

「その通りだ。だから、もう昼の事を考えるしかないかなって」

 

「……」

 

少し憐れむものを見るような目で一夏の顔を見る。

 

「な、何だよ!?悪いか!?」

 

「一夏君らしいなって思っただけだよ」

 

彼にそういうと手元で開いてある教科書に目をやった。

 

 

授業は滞りなく進み、隣で一夏が何度もオーバーヒートを起こしそうになったぐらいで特に問題はなかった。

 

さて、時間はお昼休み。本音と約束をしたので一緒に食堂へと向かう。

 

「あっ、昨日は食堂だったから今日は購買で買って外で食べない?」

 

「いいね。僕は賛成だよ」

 

あまりこのIS学園を詳しく案内されたわけじゃないから施設の場所などを知りたい。

 

「じゃあ、早速購買だー」

 

「おー」

 

彼女の後について購買でパンと飲み物を購入した。

 

え?お金だって?IS学園は日本だけでなく世界各国の候補生や未来の卵を育てる機関なので、基本的には入学前に必要な金は振り込まれているので唯で購入することが出来る。

 

最も、私と空、一夏は無理やり政府に学園に入らされた形なのでお金は請求されなかった。その代りの情報提供なのだろう。私たちのデータは一度束さんを経由するのだが。

 

 

IS学園の中庭をとでも呼ぶべき場所に出ると、そこには先客者が沢山いた。同じようなことを考える人は多いということだ。

 

「ここらへんでいいかな」

 

二人でゆっくりと出来そうな場所があったので、そこに腰を下ろした。

 

「此処は風が気持ちいいね」

 

「だねー」

 

二人してお昼ご飯をゆっくりと食べる。

 

「さて、今日は僕の何が聞きたいの?昨日は中学の事をお話ししたけど」

 

「んー、差支えなければ中学よりも前かなー?」

 

「中学よりも前……じゃあさ、とある男の話にしようか」

 

「とある男の話?」

 

「うん、ネットでこないだ見つけて面白かったからさ。ただ、僕の話ではないけど」

 

「んー、たかみーが面白いと思ったなら聞くよ。どんな話ー?」

 

「えーっとね」

 

私は彼女に話始めた。

 

 

男は昔から空が好きだった。嫌なことも好きなことも全てを忘れてボーっと見ているほどだ。

 

そんな男にも夢があった。それはパイロットになること。自分の好きな空を制限が幾らかあるとはいえ、自由に飛べるのだ。

 

その夢を見つけてから男は猛勉強をした。当然、今まで勉強に目もむけていなかったので全然頭に内容が入らない。

 

学校の先生に分からないことを次々と質問し、遂には質問王とクラスの人間に呼ばれるほどになってしまったが、男は夢の為に勉強をし続けた。

 

そんな男のもとに一つの手紙が届いた。それは先生が男が頑張っているのを知っていたため、飛行機に関する式典が開かれるので行ってきたらどうだという内容だった。

 

男は親を説得し、式典を見に行った。飛行機自体に憧れはなかったが自分が空へ飛ぶのに必要なもの 翼と感じるようになった。

 

それからというものの、勉強を必死につづけやっとの思いで念願の訓練生になれた。

 

でも、その訓練というのは厳しかった。毎朝太陽が昇るよりも先に起きてランニングに筋トレ さらには非常事態を予測しての訓練。

 

全てが厳しいもので何度投げ出そうと思ったかは分からない。でも、夢のために必要なものだと言い聞かせ、かつて苦手だった勉強と同じように必死に頑張った。

 

そんなある日、訓練生から正規パイロットへなれるという試験が彼のもとへとやってきた。

 

男は早速受けることにした。そこには自分以外の訓練生が多くいた。でも、皆と協力し自分の力を試験官に見せつけた。

 

そんな時だった、近くにあった燃料保管庫に火が付いたという知らせが入ってきた。皆が大騒ぎする中、男は燃料庫へ応援へと向かっていた試験管と一緒に向かった。

 

そこで彼がみたものは……

 

「っていう感じで男は死んでしまったらしいんだ」

 

「……面白いっていうか可哀想な話だったね」

 

「そう……かな」

 

「それで、その話からたかみーは何を感じたの?」

 

「んーと……空の凄さかな」

 

「空の凄さ?」

 

「男が今までの生活を180度変えるほどの影響力を持っている空。それに、夢を追い続けるっていうのが大変だということを僕は感じたよ」

 

以前この話を空に話したら、そう言われたので空の言葉として伝える。

 

「……何かに必死になることって凄い事じゃない?」

 

「凄い事?」

 

「だって、自分を変えてまで必死になるってことはどうしてもパイロットになりたかったんでしょ?それに私は夢を追いかける姿は尊敬されることはあっても笑われるようなものではないと思うな。だからたかみーもその話は面白い話ではなく夢を追う必死な話って思おうよ」

 

「分かった」

 

少し説教をされてしまったが問題はない。

 

その男は夢半ばで倒れてしまったのだから一度倒れると再び立ち上がるのには時間がかかる。

 

「たかみーにも夢はあるの?」

 

「僕の夢……かぁ」

 

空に一度も聞いたことがない話。

 

空は迷惑をなるべくかけないようにしてきたから、明確な夢はないだろう。今度尋ねてみるのもいいかもしれないな。

 

「今はないかな。本音さんは?」

 

「私ー?私は……見つかってないかな?」

 

「見つからない?」

 

「うん。夢を追う姿に憧れる事はあっても、そうなりたいって思ったことがないの。だから今は夢を探している最中」

 

「早く見つかるといいね」

 

「たかみーも、でしょ?今はないなら一緒に探そ?」

 

「うん、探そう。一人よりも二人。そっちの方が楽しそうだ」

 

「だよねー」

 

お昼時間が残りわずかったとなったので彼女と一緒に教室へと戻ることにした。

 

 

余談だが、話に夢中になりすぎてご飯を全部食べ終えてなかった。




今回も今回とてのほほんさんが普通の喋り方ばかりでした。

私の表現力じゃ彼女のふんわり具合を出すのが難しい

扱いが多分、作中1番なのでこれからも登場回数が多いであろうのほほんさん。

これじゃあメインヒロインのようではないか()


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神姫

今日だけで片手分は投稿した気がする


午後の授業は一般科目だった。

 

IS学園ではISに関する知識だけでなく、一般科目も勉強しなければならない。つまり勉強の量が多いということだ。

 

一般科目なら大丈夫だろうと隣に目を向けたが、相変わらずオーバーヒートしていた。

 

こいつは何か胸を張ってできる科目はないのだろうか。

 

 

隣の一夏のオーバーヒートの様子にクラスメイトが慌てたりしたがそれ以外は特に目立ったことはなかった。

 

放課後になると私は織斑先生のもとへと向かうことにした。

 

職員室に入り、まずは頭を下げる。

 

「織斑先生はいらっしゃますか」

 

近くを通った人に聞くといるらしいので案内してもらった。

 

「どうした高見。私に用と聞いたが」

 

「ええ、先生にお願いがありまして」

 

「何だ?言ってみろ」

 

「今から代表者決定戦に向けての特訓がしたいので実技棟の一部屋を貸していただけないでしょうか。その申請書がほしくて来ました」

 

IS学園には大きく分けて4つの建物が存在する。

 

今私がいるほとんどの生徒が日中を此処で過ごす本館 多くの教室があり用途は沢山ある。

 

他には今借りたいといった実技棟 ISを自由に操作することが出来る部屋が幾つもあるが事前に申請を出さなければいけない。

しかも別申請で専用機もち以外の人はISも借りなければいけないので此処を本当の意味で使用できる人は数少ない。

 

他にはISの修理や改造をする場所である技術棟 此方にいる生徒は専用機持ちか、IS開発に関わりたい人ばかりだ。

 

最後に生徒や先生が寝泊まりする寮。

 

この4つにわけることが出来る。

 

「ふむ、ならばこの紙に名前を掛け。そしたらそれを持って実技棟に行け。後の事は向こうがしてくれるだろう」

 

「わかりました」

 

受け取った紙に名前を書く。

 

「ちょっと待ってくれ高見」

 

職員室を後にしようとしたところを止められた。

 

「何でしょうか先生」

 

「少し個人的な話がある。ちょっとの間だけ時間をくれ」

 

「分かりました。じゃあ屋上で話しましょうか」

 

屋上は放課後でも解放されているので話す場所には最適だ。

 

 

 

「それで何でしょうか千冬さん」

 

屋上には誰もいなかったので生徒と先生の関係ではなく、家族の会話へと変わる。

 

「その実技棟への申請書なんだが、今日は祐樹一人でも構わないが明日以降は一夏を連れて行ってくれないか?」

 

「何故でしょう?私たちは兄弟も当然です、しかしそれは試合とは関係がないと思うのですが」

 

「そうだがな、やはり心配なのだ。当日に届くのだが、ISに触れないでいると碌なことが起こらない気がしてな」

 

「……」

 

「私の方から申請は出しておく。勿論、一夏にISを慣れてもらうために打鉄も用意しておく」

 

「分かりました、別に断る理由はないですからね。それに空なら一夏とも特訓したいと言うでしょうし」

 

「言うだろうな、あいつはそういう奴だ。そうだ、今朝の電話の事なんだが」

 

「束さんですか?」

 

「ああ、元気にしてたか?私が最後にあいつと会ったのは一か月も前でな、少し心配なのだ」

 

「元気でしたよ。昨日も見送りの際に連絡くれなきゃ泣いちゃうっていう事が出来るぐらいには」

 

「そうか」

 

千冬さんはブリュンヒルデと言われているが、一人の女性だ。

 

自分の親しい人物の事を心配するのも当たり前だ。

 

「じゃあ、私いや僕は行きますね」

 

「ああ、分かった。怪我するなよ」

 

「勿論です」

 

屋上を離れ実技棟へと向かう。

 

 

 

実技棟に入り、入ったらすぐにある受付に先ほど名前を書いた紙を渡した。すると一つの鍵を渡された。

 

これが私が特訓することが出来る場所の鍵なのだろう。礼を言うとエレベーターへ乗る。

 

鍵には504室と書かれていたのでエレベーターで移動する方が早い。

 

5階で降りるとすぐ近くに目的の部屋があった。

 

鍵を通し、中へと入る。

 

 

 

「よし、ここでならコイツを使っても大丈夫だろう」

 

ちゃんと鍵もかけたので誰かが入ってくることはない。なので、束さん特性の会話機能を備えた指輪を指にはめた。

 

「空、起きてるか」

 

「うん、起きてるよ」

 

「今からISの特訓をする。私が指示を出すからお前が操作しろ。姫もサポートを頼む」

 

『任されました』

 

私たちのISのコアには人格がある。束さんが言うにはすべてのコアに人格が備わっているのだが、コアと会話できる人は私たちぐらいらしい。

 

姫というのは、私たちの専用機の名前である〈神姫〉から一文字取っただけのシンプルな感じだ。

 

名前は私がつけた。

 

姫は束さんから貰ったもので、最初はただの指輪を貰ったのかと思っていたんだよな。そしたらISだと知らされて二人で驚いたものだ。

 

「じゃあ、起動するね。姫ちゃん頼んだよ」

 

空は姫ちゃんと呼び私は姫と呼び捨て。性格の差が表れている。

 

一瞬あたりがまぶしい光に包まれたが、光が消えた後にはISを纏った姿の空だけが残った。

 

神姫の特殊能力として≪換装≫というのがある。その名前の通りで3つのパターンに装備を変更することが出来るのだ。

 

今纏っているのは中距離タイプであるヴァルキリーモードだ。

 

他には遠距離タイプであるアルテミスモード 近距離タイプであるペルセウスモードがある。

 

どれも名前を付けたのは束さんで私は恥ずかしいと感じている。

 

ヴァルキリーモードは片手に剣をもう片方には楯を装備している姿だ。剣は銃と持ち替えが可能で戦闘の状況に応じてチェンジができる。なので中距離タイプとされている。

 

剣の名前はダインスレイフという名前で青色の刃を持つ片手剣だ。

 

楯の名前はアイギスシールド 本来であれば最強の楯なのだが、名前だけ取ってきたようなものなので防げる限界がある。しかし、かなりの攻撃をかなりの回数防ぐごとができる素晴らしい楯だ。

 

銃の名前はまだ付けていない。それもその筈、私たちの生活には銃というのが日常的に意識してこなかったので名前も考えることが出来なかった。いずれ付けようとは思っているがな。

 

 

「じゃあ、まずは低空飛行からだな」

 

「分かった」

 

『サポートは私がするので鳥が低く飛んでいるイメージをしてください』

 

私の指示に従う空と、イメージをしやすいように噛み砕いて説明してくれる姫。

 

初めてというわけではないが、空はそれなりに飛べている方だ。多分、私が『空』を好きだと言っていたので、イメージが出来ていたのだろう。

 

「じゃあ、次は武器の早出しだな。多分それが一番重要になってくると思う。遅いと相手に攻撃のスキを与えてしまうからな」

 

『武器に関しては私が幾らか補えますが、基本的には空さんの想像力ですね』

 

「うーん、自分の手に武器があるっていうイメージでいいんだよね」

 

『はい、それで問題はないと思います』

 

「わかった、やってみる」

 

最初は出てくるまで時間がかかったが、後半では早めに出てくるようになった。

 

「ま、こんな感じで今日は終わりだな。疲れただろ?」

 

「うん、普段から武器を出すイメージを持っていた方がいいって分かったよ。後は祐兄に任せるね」

 

「ああ、任された」

 

身体の主導権が再び私に戻る。空は疲れたようなので寝てしまったようだ。

 

「じゃあ、姫。私も一度飛んでみようかと思う。サポート頼むぞ」

 

『はい』

 

空へ飛ぶイメージは昔から幾度なくしてきたので簡単にできる。気が付いた時には宙を飛んでいた。

 

「やはり飛ぶというものは良いものだな。それなりに年をくったが楽しいものだ」

 

空が寝ているので普段では絶対に口に出さないであろう、年齢の事を口にした。

 

空は私の事を兄と慕っているので20を超えた人だとは思ってないだろうからな。

 

 

 

 

飛ぶのも満足したので、鍵を返して今日は部屋へと戻ることにした。

 

 

 

 

 

 




ヴァルキリーモードについてのイメージとして某機動戦士の種の主人公機を想像していただければ分かりやすいはず……タブンネ

感想や誤字脱字報告等お待ちしております。

4/25日 誤字訂正しました。


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