遊戯王 ~Fake Origin~ (SOD)
しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~1

※このSSは、完全オリジナルのストーリーによるラブコメ臭が漂うものになります。
カードはOCGのみ、ただし、三幻神の扱いのみ例外があります。
嫌悪感を感じない方のみ、次のページへどうぞ。


【挿絵表示】



春。それは新しい季節。入学式だ。

桜の花びらが空を舞い、学校へと続く坂道を桃色に染め上げる。

だが、今俺の意識は桜では無くパンチラを求めている。

そして、先を歩く女子はミニスカである。だと言うのに…。

「帰りたくなって来ちゃったな」

桜の花弁の桃色にくらべる、俺の心は灰色だ。

新しい季節だの、ピンク色の坂道だの、そんなことどうでもいい。

「くそっ…!何でだよ。何でこうなるんだよ…っ」

「どうしたの?にー。

朝はあんなにウキウキだったのに。」

「妹よ…この絶望はお前には理解し難い物なんだ……。だが、聞いてくれるか?」

「うん。聞いてあげるよ」

ニッコリと微笑む双子の妹の聖母のような慈悲に甘えて、俺は心の内をさらけ出した。

「じゃあ、聞いてくれ…。何で女子は皆スカートの下に短パンを履いているんだ!!?

俺はこの坂の下から毎朝パンチラを見ながら登校するためだけに、この伝統だけで何の取り柄もない学校に入学したのに!!」

「うわ~やっぱり聞かなきゃよかったかも。」

「毎朝勉強したんだ!!!ノイローゼになるほど!

物を見るたびに名前が漢字で浮かび上がるほど書き取りしたし、数字を見るたびにそれ以下の数字の素数の数が分かるほど計算したし、学校で習う薬物は全部教科書無しで調合出来るようになった!!!世界史に出てくる全ての人物の肖像と名前と生年没年も覚えたぞ!」

「頑張ったねーところで効率って知ってる?にー」

「全ては坂の下からパンチラを見ながら登校するために!!それなのに…っ!!!

見渡す限り短パンと野郎のケツ。俺が見たかったのは、こんな絶望の光景じゃねえ…っ」

「よーしよし、レナさんが慰めてあげよう。にーは頑張ったねーなでなで」

「もう俺帰る…家で自宅警備員の試験受ける」

「ニートの試験って何するの?」

「親の涙や白い目にめげずにクズになるテスト。」

「ついでにレナさんも非難してあげるねー。」

妹に慰められて涙ぐむ自分…涙で視界が歪む。もう短パンすら見えねえ…。

「終わった…俺の学園生活。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新入生の皆さん。もうすぐ始業式が始まります。急いで体育館に移動してください」

女教師が体育館の前で生徒達に呼び掛ける。

これから校長だの来賓だのの似たような長話が始まって、在校生の挨拶だの新入生代表のアイサツが始まるのだろう。

生徒の大半は既に親しくなったクラスメイトとヒソヒソと話したりしていて、ハナから入学式になんざ興味は無い。

俺だってそうだ。学校だの社会だの、今時そんなものに真面目に参加する奴は少ない。

「ハア…まじ帰りてえ。」

どうやら兄妹そろって考えは同じようだ。レナも外を眺めるだけで、校長の話なんて聞いちゃいねえ。

《校長先生、ありがとうございました。続きまして、来賓の皆さまからご挨拶を賜りたいと思います。》

何となくレナの見ているものが何なのかとか考えてみた。

アイツの目に視えている景色が何なのか。兄弟とはいえ他人の考えとか、そいつの目に世界がどう映ってるのかとか、マジで考えてる俺は、シャレにならないくらい暇人だろう。

レナは『出会った』時から剣道をやっていて、中学で三年連続全国制覇した天才美少女剣士とか呼ばれるやつだが、俺には何も無い。

打ち込む趣味も、人に褒められる才能も、何にも無く、暇なだけだ。女子のパンチラ追いかけるくらいしかない。それも短パンによって全て潰された。おのれ短パン、許すまじ。

《それでは続いて、部活紹介に移ります。部の代表の生徒は、準備をお願いします。》

「なあ、レン。見てみろよ、水泳部。女子が水着で出てるぞ!」

「……俺はスク水よりパンツ派なんだよ」

隣に座っていたスク水フェチの旧友その1。鈴木はやたら目を輝かせている。

「うむ!あの部長。実にケシカランおぱーいであるッ!!」

一方その隣では、寺の後継ぎであるおぱーいマニア。旧友その2、朝倉が1人自己主張の激しいおっぱいに興奮していた。

「けっ!この変態共が…」

ポカッ!

「にーが言うなー」

後ろにいたレナに殴られた。外を観るのに飽きたのかこいつ。

「お前、さっきまで何見てたわけ?」

「ん~?滅びのバーストストリームだよ?」

「え?何ソレ」

「さっき空に上がったんだよ。ドカーンって。多分誰かがデュエルしてるんだね~。

レナさんも参加したいっ!」

「えーマジで?誰かバックれてんじゃんそれ!」

「ゴホン、ボイン。しかし『滅び爆裂疾風弾』とは、また無駄に使い辛い魔法カードであるな。

世界に三枚しか無い『青眼の白龍』も今は昔。世界中から消息を絶った幻のレアカード専用カード。

ダイアモンドガイでも無ければそも発動不可能という存在意義を疑われたカードであると言うのに。

通か?」

「違うよ。アレ、魔法カードのバーストストリームじゃ無い。

本物のブルーアイズのバーストストリームだよっ」

「何?そんなはずはなかろう。第一何故分かるのだ。ボイン妹?」

「中学の時、めちゃくちゃバーストされたもん。」

「・・・・・・・・・」

「ほむん、ボイン。なるほど。フカシであるか」

「フカシてないよ!!」

「いやいや~レナちゃんや。幻のレアカードを持ったデュエリストが身近にいたとかーちょーっと盛り過ぎっしょw」

「ぶー本当なのに~ブルーアイズを倒したことだってあるんだよ!……デュエルは負けたけど」

「そーいやレナちゃんデッキ何系?」

「ふっふっふ~レナさんデッキは戦士族統一のデッキなのだ!」

「・・・・・・・・・」

「何でドヤ顔?」

「ふむん、ボイン。戦士族と聞くと『真六武衆』の悪夢を思い出すのう…」

「それあるわ~ってかむしろそれしかないわ~

ありえないっしょーアレ。何で『真』付いただけであんなガチ化しちゃったわけ?

あそこまで露骨だと最早『六武衆』ただの落ちこぼれレベルまで要らない子じゃね?」

「まったく同意じゃ。拙僧、ぶっちゃけ最初『真』なんて只の名前じゃと思うとった。

なのにフタを開ければなんじゃアレ。絶望のあまり気を失いそうになったわい」

「そんなこと言っちゃかわいそうだよ~カードは全部必要な役割が出てくるんだよ。

環境次第で(ボソッ」

 

「「身も蓋もねえ!!!」」

そんな無駄な話をしていると、部活紹介の部で、聞きなれない部活名が聞こえた。

《続きまして……えっと……『でゅえる部』?の紹介です。部長の坂上みくさん。お願いします。》

「……デュエル……部…?フリント・ロック銃でも撃つのか??」

欠伸を噛み殺しながら檀上を見ると、カチューシャをした美少女が出てきた。

 

《待たせたわね新入生!!あたしがあなた達が入るべき『でゅえる部』の部長、坂上みくよ!!

我が部は優秀な部員も、無能な部員も分け隔てなく迎え入れるわ!

何にも心配なんかしないで、黙ってあたしに付いて来なさい!

そうね、新入部員の中で最も優秀な者は、あたしから直々にご褒美をあげてもいいわ。

放課後入部届けを持って部室に来なさい。我が部の雑用が強さを測ってあげる。それから――》

 

ただ、パッと見美人なのに、何か残念なオーラを感じる。

「ほむん…それは察するにおっぱいぱいが断崖絶壁だからではないか?戦闘力5のゴミだな」

「自然な流れで人の心を読むんじゃねえ、生臭坊主」

「これは異なことを。迷いを抱く者に対して悟りの手を差し伸べるのは坊主である拙僧の天命である」

「煩悩の塊が悟りを語るな。」

「おっぱいとは宇宙の真理と見つけたり。

小賢しい知恵で理性を封殺した賢しい『つもり』の莫迦猿(イエローモンキー)には、この真理は分からんのですよ」

「とても坊さんの吐く説法(ねごと)とは思えねえ言葉(ざれごと)だなオイ……」

「あははっ。にーも言外の本音が隠し切れて無いよ~」

《ちょっとそこの新入生!!私の有り難い挨拶を無視してんじゃないわよ!!》

「「「へ?」」」

いま何かマイク越しで誰かに話しかけられたような…?

《しかも今、私の身体的なごく一部分に対して言っちゃならないことを言ってなかった……?》

「……マジかよあのでゅえる部部長。

檀上からマイク越しで、初対面の相手に堂々と喧嘩売ってやがる。しかも部活紹介で」

「ほむん。ボイン。なんとも度胸の据わったご仁よ。あの人を寄せ付けぬ断崖絶壁の無いムネには、拙僧らが及びもつかぬ器のデカさを備えておるのやもしれんな。パイおつは小さいが。おっぱいパイは小さいが。大事なことなので(ry」

「上等じゃないの!!この私に喧嘩売るなんて良い度胸してるわね!!登って来なさい!赤髪の一年!!」

入学早々から物凄いことになったな。朝倉。

言いながら坊主用に髪が反られた頭を撫でる。

「あれ?今あの女、赤髪って言わなかったか…?お前ハゲじゃん」

「ほむん、ボイン。確かに赤髪と明言したぞ。拙僧は…見ての通りベリーショートである。ハゲとか言うな」

「じゃあレナか?」

「レナさんメジャーな金髪ポニーテール。それに…レナだって一応女の子なんだよ?」

「じゃあお前か鈴木。そのロン毛」

「えぇ?オレ呼ばれちゃった感じ?

檀上上がるとか初体験だわ~でもやっぱ違くね?

オレっちずっとスクミズの先輩達観ててぶっちゃけ今何起こってんかわかんねーべ?」

「じゃあ一体誰を……」

「アンタよ、アンタ!!」

「ダレヲヨンデルノカワカラナイナー」

見上げた空は快晴。きっと今日も良い1日になるだろう。女子は全員短パンだったけど、明日こそはパンチラが見られると信じて今日と言う素敵な1日をーー

 

「無視してんじゃ無いわよ!!」

 

目の前に残念美人の顔がどアップで出て来た。

見れる顔してたのが救いだな。ブサだったら顔パン確定だぞこの距離。

「何ですかセンパイ。

部活説明しないんですか?」

「このあたしが直々に説明してやってんのに私語なんかしてる部員(しもべ)を注意するのも、部長であるあたしの仕事なのよ」

「誰が(しもべ)だコラ。短パン脱いでから出直して来いや洗濯板が」

「ほむん、ボイン!その通り!!Cカップ以下は女に在らず!無いムネに勃たせる ピー は無い!豊胸して出直してくるがいいわ!!!」

「……いや、俺そこまで言って無い」

「ムッキィー!!!上等じゃない、そこまで言ったからには死ぬ覚悟くらい出来てるんでしょうね!!?」

「ほむん、ボイン!当然である!何を隠そうこの男、クリスマスに巨乳と付き合っていたリア獣をひたすら狩ることによって黒かった髪が真っ赤に染めた

赤髪のレンと呼ばれた男よ!!!」

「ねえよ!そんな経歴!!ヘアカラー染めだバカ野郎!!」

「な、何ですって……あの伝説の血色のサタンクロース作戦を実践した猛者がいたって言うの!」

「テメェも何言ってんだ糞アマがぁっ!!!」

「そこまでの猛者だったと言うのなら、尚更あたしの下僕として調教しておかなくちゃね!あんた、あたしとデュエルしなさい。あたしが勝ったら、あんた、あたしの奴隷よ」

 

壇上の美人がちょっと残念だなと思ってたらいつの間にか俺、奴隷にされそうになってやがるんだが。

 

「おお~レナさんのにーが、高飛車な女の奴隷にされそうになってる」

「つかレナちゃん。オレら置いてけぼりじゃね?寂しいわwww」

 

(……だったら替われや、コラ)

「デュエルは明日の放課後!部室に来なさいよね。逃げたら死刑だからね!!!」

「そんなもん行くわけーー」

「「「おおー!いいぞ坂上ー!!」」」

「負けんなよいちねーん!」

「明日見に行ってみよーぜ!」

 

 

 

 

 

パンチラ目的で長く高い坂があるだけの伝統校に入学したレン・ファムグリットは、女子が全員スカート下に短パンを履いていたことに絶望した。

更に新入生部活紹介で残念な美人部長に絡まれたレン・ファムグリットは、己の人間としての尊厳を賭けて、全校生徒の前でデュエルをさせられることになったのだが……?

 

「……カードが無い」

「「「は?」」」

放課後、ただでさえ長ったるいだけの坂を足取り重く降る一行の足を完全に止める発言が出た。

「ほむん…どういう意味じゃ?巨乳モンスターで組んだデッキでなければ嫌と言うことか?」

「言葉通りの意味だ生臭坊主。あと巨乳モンスターって何だ」

「ほむん…BMGを筆頭にした一切のシナジーと戦略を否定し男の欲望のみを肯定したハーレムデッキである。作り方はまず…」

「いらん。そんな戯言。」

「カードが無いって割りと聞くけどさ~案外押し入れとかに当時のデッキとか漬け込んでたりすんじゃん?発掘してみればいんじゃね?」

「ねえよ」

「諦めるなよwどうしてそこで諦めりゅー……かみまみた」

 

「お前ら全員、何で俺が遊戯王カード持ってたテイでナシ進めてんだよ」

 

「「「ハハハーそんなの遊戯王だからに決まってるじゃん」」」

「何その初心者殺し。超理不尽じゃねーかコラ」

「ほむん。だがしかし、本当にカードが無いならば仕方がないな。明日、水泳部の更衣室に忍び込んでキャメラを仕掛けてこようと思っているのだか、同行せんか?レン」

「……そうだな、たまには良いか。侵入経路はどうなっていrーー」

「ダメだよ。にーはこれからレナさんとお買い物行かなきゃだもん」

急に腕を捕まれてバランスを崩したレンを抱きしめるレナ。

「買い物だぁ?何か切れてたか?冷蔵庫の中身は昨日俺が買い足ししたし、トイレットペーパーの特売は明後日だぞ?」

「うわー…カードゲームの主人公が滅茶苦茶所帯染みてるとか引くわwいや、良いことだけどもさ」

「ほむん…不良が家事に精通しているとは、これはアレじゃな。ボインな女子のハートとパイおつをわしづかみにするための策略であるとみた」

「テメーら全員頭割るぞ。あとレナもいい加減離せ。その無駄な脂肪が俺の顔を圧迫してんだよ」

心底メンド臭そうな表情で頬に密着しているレナの胸部を手でどかすレン。

「ほむん…相変わらず何ともケシカランパイおつであるな、ファム妹よ」

「えっへん!レナさんはナイスバディーなのだ!ボォーン、キュッ、ボーン!」

「げへへへ…姉ちゃんエエカラダしとるのお…」

「あ、おさわりはNGで~」

「フフフ。良いではないか良いではないかー」

「あははは~つかまえてごらんなさーい」

「いつもどーりの下校風景なー。レン」

「そうだな。中坊の頃から大して変わりゃしねえ……」

「大きな変化って制服とレナちゃんの胸ぐらいじゃね?ぶっちゃけどうよ、兄としてあの成長ぶりは?」

「カラダはもういいから、脳ミソとか中身とか磨いてしいな。真剣に。

部屋の中にはなんかよく分らんモンスターのフィギュアがあったり、脱いだ服は脱ぎ散らかすで、片付ける身になってほしい」

「……何か、だんだんレン君のヤンキーっぽいイメージが崩れてきたんだけど…」

「ああ?俺がヤンキー?何でさ」

「いや、だって髪赤いし、しゃべり方アレだし、喧嘩上等って感じじゃん?

あと、暴走族が着るような服とか持ってんじゃん?」

「特攻服か?アレ着るとバイクのエンジンが調子よくなるんだよ。もう5年の付き合いになる」

「僕たち、ついこないだまで中学生だったんですけどね……」

いつも通りのメンバーで、いつもように他愛もない話をして。それが日常。

(これからも変わらずに続くんだろう。きっと、いつまでも……)

「っと、さあみんな!!到着だよ~!!」

「……ん?どこに着いたって?」

「ほむん、お主ついさっきあの残念美人に喧嘩売られとったの忘れたのか?」

「あと、アレじゃん。戦うためには武器がいる。的な?」

「どういう意味だ?」

「だから、今日はここに来たんだよ!」

レナが指さす方向を見上げると、そこにあった看板は

 

カードショップ――ATM

 

「………銀行?」

「じゃなくって、カードショップ。だよ!」

「お主、本当に遊戯王やったことないんじゃのお。

ちなみに、ATMの読み仮名はアテムである。何の略かはその内分かれ」

「いらねえよそんな情報。」

「はいはい。まずは中に入ろうよ!こんにちわーレナさん他三名様でーす」

「他とは何だコラ……ってか、買い物ってこれのことか」

「いらっしゃいませYOー無駄乳女と坊主とチャラ男ご来店アルー」

レン以外の三人が入店すると、店員とは思えない言い草でレジの奥にいた中国人女性が出迎えた。いきなり毒舌の中国人が登場したことで、若干店の治安に不安を覚えたレンだけは、ショーウィンドウのカードを見るだけに留まった。

「久しぶりだね、飛娘(フェイニャン)ちゃん。元気だった?」

「ええ、ゲンキだったヨ。そのサイコーにムカつく乳袋の脂肪見るまでわネ!!

ワタシあなたに言ったはずネ!次会うまでにその牛乳そぎ落として来いト!!」

「ほむん。ボイン!!そのような暴挙、仏が許容しても拙僧が許さんぞ。まな板チャイニーズ!!!

断崖絶壁など女子に非ず!!!」

「ヨロシイ、戦争ヨ生臭ボウズ!!」

「ハア……何であいつは次から次へと騒ぎを起こすんだよォ」

「さあ?譲れないものとかあるからじゃね?火種のレナチャンが全く気にせずカード見に行ってるけどね」

中々店に入らないレンを迎えに来た鈴木が、ヘラヘラと笑いながら答えた。

「あいつら実は側にいないほうが良いんじゃねえか……」

「グンバツでDQNっぽいレン君がマジで一番苦労してるって図は好きだよオレwwまあ…時々同情するけど。

ほら、まずは店入るべ?」

「ああ、そうだな。鈴木(りんぼく)

いつまでも放っておくと本当に戦争(イタズラ)しかねないので、レンは意を決して店の中に入ることにした。

「オラ、その辺にしとけや朝倉」

話で事態を収めるのが面倒だったので、軽めに蹴り飛ばして強制退場させる。

「ギャフン!!」

「ギャフンって…マジで言う奴はじめて見たぞオイ」

「あ、アイヤー!

どちら様アル!??この不良は!?

いきなり攻撃したアル!」

「紹介するね、飛娘(フェイニャン)ちゃん。

この人はレナさんのお義兄さんのレン・ファムグリットさんです。

趣味は夜遊びで好きな物はお酒。愛用してる煙草の銘柄はーーあ痛ッ!?」

「人の個人情報を駄々漏らすんじゃねぇ!!!

あと最近まで受験勉強に缶詰めだったから夜遊びはしてねえよ」

「あww他はやってるんだ。夜遊びだけはギリ警察に逮捕されない可能性があるラインなのに。

ソコだけ止めちゃったかぁ…お酒とタバコは二十歳になってからっしょ」

「うぅ…いつもはクールなフリしてるけど、気に入らないことがあるとゲンコツしてくる手の早い

にーです…」

「ど、どっからどう見ても不良アル!この店には渡せるようなお金は無いアル!!店長が稼ぐ度にバクチでスって来るから毎日スかんピンアルよ!!?」

「ーーろくでもねえ店だなオイ!?」

「ヒィィィィー!!不良が怒ってるアル!ワタシ、ぺたんこダカラ何処にも売れるとこ無いアルよぉ!?」

「こっちのチャイニーズ姉ちゃんは身の保身のためならコンプレックスすら武器にするんだね…」

「……ほむん、ボイン。た、たしか…に。断崖絶壁に…出すお布施など………ガク」

「……ヒィィィー(ガクガクガクガク)」

「うぅ…あたま痛ぃ」

 

「……オイ、どうしてこうなった」

 

 

 

 

 

 

 

 

「コホン。改めまして、こちらは(ワン)飛娘(フェイニャン)ちゃんです。レナさん小学校からのお友達ですっ。ね?飛娘ちゃん」

「お友達じゃないアル。

あなた、ワタシの敵アルよ!」

「だってよ?レナ」

「ヒィッ!?で、でもワタシ悪い子じゃないアルよおニイさん?虐めないでほしいデスよぉ…!!」

涙目になりながらレンと距離をとる飛娘。

立っているのも精一杯なようで、凄まじく怯えている。

「オイ何で俺こんなビビられてんだよ?若干ウザいんだけど」

眉を潜めながら、頭を掻きむしるレン。

 

「ご、ごごごごメンなさいー!」

 

「あのね、にー。

飛娘ちゃんは、子供の時に怖い人達にお金で売られて来たの。だから、暴力振るう男の人が怖いの。だから苛めないであげてね?にーは只でさえ顔怖いんだからね!」

「………あ?怖い??」

「ほらーまた怖い顔する」

「うぅ…おっかないアル……っ」

いつの間にかレナの後ろに隠れていた飛娘が一層怯えている。

「……なぁ、レナ」

「なぁに?」

「俺、顔怖いのか?」

「うん!」

満面の笑みで返されると、レンは二人から少し離れた場所にあるテレビの方へ歩み寄った。

「あれ?にー何処に行くのー?」

「………結構凹むな」

「あー…ごめん、ごめんね?にーがまさかそんなに繊細だとは」

「下着脱ぎ散らかして兄に洗濯させる女に比べりゃ、誰だって繊細だバカ野郎…」

「落ち込まないでーほーら、よしよし。撫でなで~あ、ほらほら、テレビやってるよ~」

「ほむん…もしやこれは、前回の前々回の大会の映像ではないか?

確か、大会優勝者とディフェンディングチャンピオンが戦うという」

「お~この店大会の映像なんか流してんの?

……あれ?つーかこの人って、伝説のデュエリストとか言われてる人じゃね?」

「お客サンお目が高いアル!

この人はまさに真のデュエリストに相応しいアルヨ!!

大会中に完全試合を幾つも決めたり、フィールドにあの『青眼の白龍』を三体揃えてみたりしたヨ!」

伝説アル!!」

「……伝説?」

「うん。そうだよ。

にーの大好きな『伝説を残した人』だよ」

「………」

レンの視線が大会中のデュエルに向けられた。

 

《いかにキミが伝説のデュエリストと言われていても、ここからの逆転など不可能だろう!

ついにこの私が伝説になる時が来たのだ!フハハハハハ!!!!》

テレビの中の対戦相手は、勝利を確信していた。

場に存在しているのは 『幻獣機 ドラゴサック』 と 『幻獣機トークンが二体』

そしてリバースカードが一枚。

LP2700

 

一方、伝説のデュエリストの方は……。

場は空っぽ、手札が三枚。LP100

追い込まれている。

 

「なあ、レナ。これはピンチなのか?」

「………」

レナもテレビに見入っているのだろうか。レンの言葉にすぐには反応しなかった。

「…レナ?」

「………ん。なぁに?にー」

もう一度声をかけると、今度は反応した。

「これはピンチの状況なのか?」

「んーそうだね。『普通の人』には、少し厳しい状況かもね。」

「……そうか。あのリバースカードは、『奈落の落とし穴』か何かだろうか……」

「……デュエルは知らないんじゃなかったのかな?レン君」

「……自分のカードが無いだけさ。ダチから借りたカードでやってたことくらいは、な」

「そっか。じゃあよく見ててね。あの人の…ライアス・ヴァーレントのデュエルを」

「……ライアス・ヴァーレント、か」

 

《……俺のターン。ドローカード》

≪さあ、ここで歴戦のデュエリスト、ライアス・ヴァーレントのターンです。

過去から現在に至るまで、他の追随を許さないデュエルを我々に見せてくれた伝説のデュエリストがこの状況をどう覆すのか!注目のターンです≫

《フフフ…ありえないよ。ここから見られるのは彼が私の前に跪く姿だ!》

≪おおーっと、挑戦者-ロイド・マケルノーダ選手、ここで早くも勝利宣言だ!!

このセリフにチャンピオンどう応えるのか!?≫

《………》

≪あの~チャンピオン…?≫

《………手札から、モンスターを召喚。》

《フフフ…どうやらショックで口も利けないようだね。

無理もない。キミの伝説は今日、終わりを迎えるのだから!!

せいぜい最後のターンを楽しむがいい!》

《……チューナーモンスター『デブリ・ドラゴン』》

 

「チューナー?」

「シンクロ召喚のためのモンスターだよ。」

「シンクロ召喚?」

「うん。融合召喚とは異なる、モンスター同士の組み合わせで行える新しい召喚方法だよ」

「でも、チャンピオンの場にはあの鼻の長いドラゴンしかいないじゃないか」

「すぐに分るよ。よそ見してる内に見逃さないようにね?」

 

《『デブリ・ドラゴン』のモンスター効果発動。

墓地に存在する攻撃力500以下のモンスターを特殊召喚できる》

《フフフフ…何が来ようとも恐れるに足らず!》

《『ダンディ・ライオン』を特殊召喚》

 

「へえ、ドラゴンの次はライオンかよ。何か花みてえなモンスターだな。」

「だってタンポポだもん」

「――ああ、ライオンってそういう事か」

 

《さあ、シンクロしたまえライアス・ヴァーレント!》

《……レベル3の『ダンディ・ライオン』にレベル4の『デブリ・ドラゴン』が調和する!》

《ククク…レベル7でのシンクロモンスターなどたかが知れている。

『DDB』が良いところだろう。だが届かぬ!!私のライフは尽きぬ!!》

 

「ほむん。この後あんなカードが出てきたのも、こうして当時を振り返ると、この死亡フラグの乱立のせいだったのかのお……」

「いや、死亡フラグだけでああはならないっショ」

「……何だ急に?」

「まあ見ておれ」

「……?ああ。」

 

 

《約束はこの大地に、誓いはこの種に。結ばれた子種の邂逅は、未来を切り開く華を咲き誇らせん。

シンクロ召喚!!深紅の華竜『ブラック・ローズ・ドラゴン』!!》

この瞬間、会場に真っ赤な華竜(はな)が咲いた。

《な、なぁに…これ?》

《咲き誇るは血飛沫の花弁(かべん)。開け、黄泉路への扉よ!! 『ヘブンズ・ゲート』!!》

《ブ、ブラック・ローズ・ドラゴンだって!?何だそのカードは!??聞いたことも無いぞ!!》

《泣きわめいている暇は無いぞ。『ブラック・ローズ・ドラゴン』は大地に根付く命を養分とし、現世の全てをその身もろ共冥府へと誘う奈落の華。

場の全てのカードをシンクロ召喚時に破壊する!》

《く…だ、だが私の場の『幻獣機ドラゴサック』は、『幻獣機トークン』が場にある限り破壊されない!!

更に、リバースカードオープン!『禁じられた聖衣』!このカードの効果により、場に存在する『幻獣機トークン』を効果破壊から護る!これで貴様の目論見は外れた!!どこで手に入れたか知らんが、存在を知られていないカードであっても、効果さえ分れば対処は容易い!!》

《フン…その通りだ。どんなカードにも必ず対処方法は存在する。しかし、この世にはどうしようもないこともある》

《何…!?》

《カードそのものに対しては対処は可能だ。しかし、それを使うデュエリスト本人の力量の差は、一朝一夕には埋まることは無い。人が神にひれ伏すようにな……リバースカードオープン。

決して届かぬ境地にてその力は奮われる。さあ、天を仰ぐが良い――『超融合』!!!》

《融合……超、融合?》

《俺のデッキには、この地上に知られていない幻のレアカードが湯水の如く溢れている。

さあ、ここに至れ竜たちの始祖よ!!『始祖竜ワイアーム』を融合召喚!!》

《そ、そんな…融合素材なんてどこにも……!??

わ、私の『幻獣機トークン』が!?》

《貴様の場のカードを、融合素材として使ってやった。これで貴様の幻獣機は、華竜の開く冥府の渦に飲み込まれる》

ワイアームの召喚により対象を失った『禁じられた聖衣』は不発となり、『ブラック・ローズ・ドラゴン』の全体破壊効果が適用される。

自身の身を守る盾を無くした『幻獣機ドラゴサック』も耐性を失い、崩壊していく。

《ぐっ…だが!貴様の融合したワイアームも、その華に飲み込まれて…!!》

《竜の始祖たるは、この世に生きうる全ての存在の頂点であると同義であると知れ。

始祖竜はその膨大な寿命により得た知識と経験は、モンスターが得た全ての効果に対して対処が可能だ。

よって、『始祖竜ワイアーム』は、モンスター効果を受けない》

《そ……そんなイカれたカードがあるかァ!!!》

《落ちろ、驕り高き者よ。己が未熟さを恥じるなら、力を付けて奈落の底から這い上がって見せろ》

《――ッッ!?》

《終幕だ。『始祖竜ワイアーム』の攻撃。天解息吹波(ラグナロク・バースト)!!》

《おのれ…おのれェ……!!!必ず這い上がって――》 LP0

勝利目前で理不尽に敗れた挑戦者に出来るのは、心が潰れてしまわぬように、声を上げることだけだった。

 

 

 

「……なんだこりゃ」

大会の様子を見終わったレン・ファムグリットは、驚愕していた。

チャンピオンの戦術にでは無く、子供のころに遊びで行っていたデュエルの記憶とのあまりのギャップに驚いていたのだ。

「モンスターを召喚するモンスター?

場のカードを全て破壊する?

相手のターンに融合召喚?

全てが違いすぎる。俺の知っていた頃の遊戯王と……あの時のデュエルが、まるで、子供のじゃれ合いじゃねーかよ、オイ」

「びっくりした?にー

これが現代のデュエルだよ」

「ほむん。子供の遊びとは過去の話。

今となっては知識力、財力、運命力、発想力、洞察力、直観力、判断力。

おおよそ人が生きる上で欠かすことの出来ない全ての要素をプレイに要求される、云わば人間としての本質を試される競技である。

デュエルは子供の遊びと言う大人もおるが、子供の遊びなら大抵は大人が勝てるようになっとる。

しかし、これは子供が大人に簡単に負けるゲームだ。ゆえに興味深い。研鑽する価値がある」

「………人間力…か…成程なァ」

「にー?」

「………伝説…人間としての…

……………ああ、くそ。負けられねえじゃねえかよ」

その言葉がトリガーだった。レン・ファムグリットにとっては。

それまで、ここに来るまで一度も見せなかった、戦う男の貌を見せた。

「久しぶりだね。にーがそういう顔するの」

「うう……不良のオニーサン。益々怖くなたアルぅ…」

「ほむん。気合の入ったTSU☆PPA☆RIの表情じゃ」

「っべー顔してる、レン君ww

これアレじゃん?何かこれから学校戻って校舎のガラス全割してくるかんじだべ?」

「でもレナさん。こういう活き活きしたにーが一番好きっ。

これから楽しみだよ」

「さて、レンよ。先ずは何をする?」

「………決まってる。先ずは俺のいない間に増えたシンクロ召喚の勉強だ。」

「ほむん。見かけによらず、堅実じゃのお。慢心の無いその心意気が、ワシは気に入っておるよ。

協力しよう。ワシは最新召喚法として『ペンデュラム召喚』を教えてしんぜよう」

「んじゃ、オレは家からカードカタログ持ってくるべ。

今まで発売された公式カタログ全部もってっからさ~調べるなら役立つじゃん?

つーかエクストラ増えたのシンクロだけじゃねーしさ~」

「じゃあレナさんは、待ってる内ににーがデュエル出来るように新しい召喚方法をコーチします。

『エクシーズ召喚』を教えたげちゃおう。」

(伝説…俺がまだ知らない人間の境地……。

俺が興味を失った世界が、あそこまで進化を遂げているのなら、俺も……。)

 

こうして、自称平凡のつまらない男、レン・ファムグリットは、伝説のデュエリスト、ライアス・ヴァーレントのデュエルを見たのを機に、デュエルの世界に足を踏み入れることになる。

それが、自分の人生に幕を下ろすための、自殺行為だと知る由もなく。

 

 

「おもしれえ。伝説……上等だ」

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

でゅえる部部長、坂上 みくが入学したての一年生とデュエルする。

その情報はたった一日で学園中に知れ渡り、なんやかんやあって場所が体育館ステージに変更されていた。

体育館のステージは着々と装飾が進められていて、体育館内にはすでに物好きな生徒たちで座席は満席になっており、更にどういうわけか、体育館内を埋め尽くす勢いで出店が並んでいた。

ポップコーンやたこ焼き、焼きそばに綿あめ、人形焼き等、レパートリーは本物の祭りと大差が無いクオリティーになっている。既に多くの生徒が出店の食品に手を出しているため、売り上げは上々と言ったところだろう。

 

そんな誰もがお祭り気分で騒ぐ体育館の中に、一人だけ心配そうな顔をしている女生徒がいた。

 

「これは大変よろしくないよ……にーが来てないよ」

 

今回のデュエルの主役の一人、レン・ファムグリット――の妹、レナ・ファムグリットだった。

「ほむん。小僧の頃からの付き合いだが、お主がそこまで青い表情しとるのは初めて見るな。

妹よ、お主が慌てることもないのではないか?」

ファム兄妹の友人寺、朝倉 英心が綿あめを舐めながら言った。

「慌ててるんじゃないよ、英心君。レナさんは最悪の未来を危惧してるんだよっ!」

「と、言うと?」

「レナさんの知る限り、にーはやるって言ったら絶対やる人なんだよっ。遅刻とかしない人なんだよ。

………あることさえしてなければ」

「あること?………ほむん。理解した、自慰だな」

「G??ゴキのこと?」

「性格には自身の高ぶりを己が手にて封じ込め、最終的に一気に解放する

男特有の儀式であるところのオナ――」

「それ以上言ったら、エーシン君レン君に殺られるんじゃネ?」

「ファム妹よ、今言ったのは無しの方向で」

「え~~!!途中で止められたら気になるよ!」

公共の場において適切ではない会話をギリギリで止めたのは友人その2、波平 鈴木(なみひら りんぼく)だ。

話し方、見た目、共にチャラ男丸出しの男子学生だ。

「で、レナちゃん。レン君がナニシてるって?」

「あ!うん。そうだよ大変だよリンリン君!!

にーがこういう時に遅刻してきてるのは大変なんだよ!!」

「うんうん。もうちょっと分りやすくヨロ」

「ちょっと!!そこのアンタ達!あの赤髪の男はどうしたのよ!!

どこにも居ないじゃない!」

レナがまさに状況を説明しようとした時に突然、一人の美少女が現れた。

「ほむん。何かと思えばぺちゃパイの部長殿では無いか。

貧乳に用など無い。しっし!」

「ひんにゅ――!?アンタ…喧嘩売ってんなら買うわよ!??」

「ちょ!?ま!!あんたはどうしてそう断崖絶壁に対して喧嘩上等な訳さ!?エーシン君。」

「小は大を兼ねない!!言わば出来そこないであり、欠陥品であり、劣等種である!!!

貧乳は猿とでも子作りしておれい!!」

「あんた本当に寺の跡継ぎか!??人種差別ってレベルじゃねーッスよ!!」

「――ッ!!………ッッ!!」

「うわぁ…部長さんショックで声もで出なくなった……」

「可哀そうだよ、英心君。身体的特徴で誰かを苛めるなんて、人としてやっちゃダメなことだよ。

部長さんだって、好きでおっぱいがペチャンコなわけじゃないんだからね。

大丈夫だよ、部長さん。おっぱいが小さくたって、部長さんは出来そこないなんかじゃないよ。

もしも大きくならなかったら、今は豊胸手術だってあるから心配ないよ。

貧乳でも生きていけるよ!」

「………ッッッ!!!う……うわああああああああぁーーーん!!!

見てなさいよデカ乳女!!!アンタ達の仲間あたしの奴隷にしてやるんだからあああああああーー!!!

うわあああーーーん!!!」

とうとう耐えきれなくなったでゅえる部部長は、物凄く泣いて走り去って行った。

「英心君、後でちゃんと謝りに行こうね?レナさんも行くから」

「………ほむん。そうじゃのう。妹は少し、やり過ぎかもしれんのう…なあ、鈴木よ?」

「………うん。何て言うか…。

圧倒的に『持つ者』から送られる心からのエールって、持たざる者を一番傷つけるんだーって感じ?

マジべんきょーになったわ。あと、レナちゃんは後でレン君と一緒に謝りに行くべ」

「あれ!??何でいつの間にかレナさん悪者なのっ!?何でぇー!?」

 

同時刻、学校近くのコンビニから一人の学生が出てきた。

「懐かしいなー

ほら、昔カード買う時ってさ、大体コンビニだったじゃん?

んでさ、レア抜き出来る奴とかヒーローだったじゃん?

久々にヤっちゃったぜ」

「………。(ガクガク)」

赤い髪を揺らしながら、幼少の頃の思い出に僅かに浸る学生。

そもそもの来店の目的は、只の買い食いだったのだが、たまたま視界に入ったカードパックに後ろ髪惹かれ、つい眺めている内に時間が経ち過ぎてしまっていた。

「人間いつ死ぬか分らないからこそ、思い出は美しいに越したこと無いし、たまに浸るべきだよな、うん」

「………。」

全く意味の分らない言い訳を自分にしながらカードパックを購入し、ついでに肉まんを二つ買った。

「ありがとうございましたー」

久しぶりに思い出に浸り、少し上機嫌な学生は、そのまま家に帰るため、自転車をこいだ。

右に左にペダルを踏み続け、スピードに乗った自転車で風を切る。

「単車もいいけど、たまにはチャリで飛ばすのもいいな」

「………。」

気持はふわふわと浮いて行き、風は心地よく肌を撫では後ろへ吹き抜ける。

ここまで心安らかだと思えるのは、いつ以来だっただろうか。学生は心のアルバムを開き考える。

仲の良かった仲間や友達と、尊敬していた先輩の顔が浮かんだ。

そして、最後に今の仲間たちが浮かぶ……。

 

「………あ。今日ってあの残念な人とデュエルじゃん」

 

ほぼ家に着きかけたころ、赤髪の少年、レン・ファムグリットは、初めて今日の予定を思い出した。

 

 

 

時刻を遡ること15分前。

レン・ファムグリットは、いつもの三人が教室に残っていないことを確認すると、特に探すこともせずさっさと家路に着くことにした。

元々単独行動を好む彼は、周囲に友達がいなくても気にしない。

一人には1人の楽しみがある。

先ず最初に寄ったのはパチンコ。

慣れた手つきで千円札を入れて、5分もすれば噴く。金額にして大体三万円前後の勝ちを拾う。が、彼はそれをお金ではなく全て景品のドロップにつぎ込む。

一つだけ口に入れると次に向かうのは喫茶店。ゴンザレスと呼ばれるマスターが経営する寂びれた店だ。

入店するたびに舌打ちして『チッ、客が来やがった』と言うのがお決まりだ。そして心底めんどくさそうにコーヒーを煎れ始める。五分ほどで飲み干すと、コンビニへ寄った。

肉まんを二人分と、カードパックを一つ買うと、一旦自宅へ寄ってから、昨日に寄ったカードゲーム屋へ足を運んだ。

ブンブンブンブンブン……!!

景気良く音を鳴らす紅いバイクを店の前に止めると、それまで一言も話さなかった少女に話しかける。

『………。』

『おい、着いたぞ。中国人』

『………わ、ワタシ、お家帰して貰えるアルか……?』

『ああ。用事思い出した。付き合ってくれてありがとな。これお土産。』

さっき買った肉まんを手渡す。

『うう……ワタシ、無事に帰ってこれたアル……おかあさーん!!』

最後にパチンコへ行く前に偶然出会って拉致した王・飛娘を送ってあげた。

 

以上、レン・ファムグリットの放課後。

 

「さすがにこのままじゃ遅刻だな。」

すでに十分に遅刻しているレンだったが、一応待ち合わせをしていたこともあって急ぐことにした。

移動中の今の彼の状況を簡単に説明しよう。

暴走族が着る特攻服(赤)。背中には刺繍入り。

ノーヘル。

信号は無視。法定速度は無視。交通規制は無視。

そして背後には……。

 

≪そこの暴走車!!直ちに停まりなさいッ!!!!≫

 

ボディを白黒に塗った車が、サイレンを鳴らして付いてきていた。

 

「ポリ公共が煩いな…まったく、近所迷惑だろうに。暴走行為は慎まなきゃいかんだろうに……」

レンは後ろの追跡車を振り切るためにアクセルを開ける。

メーターには120kmを超えた数字が出されている。無論、ここは公道である。

並木道を5秒で通過し、赤信号を突破し、立体歩道橋を潜り抜ける。

その時――誰かから声を掛けられた。

「そこの明らかに色々な法律を犯してる人ー!!犯罪次いでに二人乗りさせてくださーい!!!」

すると、次の瞬間。

立体歩道橋から坂上学園の制服を着た少女が飛び降りてきた。 少女はそのままバイクに着地すると、レンにしがみ付いた。

「はじめまして。レン・ファムグリットさん」

少女は笑顔であいさつすると、自己紹介を始めた。

「私、坂上学園新聞部部長、文月 ひよの 二年生です。あなたを取材したくて探していたんです!」

「……取材?この状況でか?」

「そうですねーさすがにこの状況じゃ無理ですねー。メモも取れませんし。

とりあえず、坂上学園まで行きましょう!です!」

 

良い笑顔で滅茶苦茶な事を言う女生徒は、何故か既に自前のヘルメットをかぶっている。

つまり彼女は最初からレンがバイクに乗っていることを知っていたのだろうか?

というか、立体歩道橋から時速120kmを超えるスピードのバイクに飛び乗れる人間がこの世にいるのだろうか?

更に彼女は何故自分の居場所を見つけられたのか?

様々な疑問が浮かんでいたレンが出した答えは――。

「 ……ようこそ共犯者。目眩く逃亡生活への入り口へ」

(もうどうでもいいからさっさと学校戻ろう。そんなことよかデュエルだ)

極めて適当で投げやりなものだった!!

「逃亡生活はいやです!私は嫌だって言ったのに、この人に無理やりー!

あとイヤラシイこともされそうになりましたー!私の魅力に当てられてんですねー!!」

「降ろすぞテメェ」

「………コホン。

改めて運ちゃん、坂上学園までよろしく!です」

「良い時代になったもんだなオイ。今時はこんなナリして単車乗り回してても、雇ってくれるタクシー会社があんのかー……ゼッテーそこ潰れるわ…。因みに俺、持病があってノーライセンスだが、そんな奴でも大丈夫かァ?」

「大丈夫です!バレなきゃ犯罪じゃないですよ!!スピード違反とノーヘルと二人乗りは見つかっちゃってるから擁護出来ませんけどね!!」

「最後のはアンタのせいだろ」

気がつくと、後ろの車は電信柱に当たったりしてクラッシュしていた。おそらく数時間は渋滞だろう。お気の毒に。

「で、アンタ俺に何の取材したいんだ?」

後ろを気にする必要が無くなったレンは、速度を落として運転し始めた。

ついでなので、取材とやらも受けることにした。元々悪い気もしていなかったのが理由だが。

「もちろん決まってるじゃん。入学早々に全校生徒の話題と関心をかっ攫ったレン・ファムグリット君と、出来立てほやほやの部であるでゅえる部の部長にして、学園長の孫娘であらせられる坂上 みくさんとのデュエルですよ!!」

「ふーん。物好きだなアンタも。騒ぎになっただけで、面白味も無いだろうに」

「そんなことありませんよ?

坂上 みくさんはデュエルを初めてたった三カ月で全国でも指折りのデュエリストのロイドさんに勝った才女ですから」

「へえ…あの残念な美人がねえ」

「おやおや、レンさんは坂上部長のような女性がタイプですか。メモメモ」

「タイプか…抱いた女は沢山いるが、惚れた女はあんな感じじゃないな。

髪は長かったけど、ウェーブが掛ってたし。乳は無かったけど、背は低かったし。

性格は大人しい子だったよ」

「ふむふむ。今は好きな人いないんですか?」

「最初からそいつしかいないよ。今じゃ遠くにいるから会えないけどな」

「おお~遠距離恋愛ですか!ヤンキーみたいな恰好してるくせに一途なんですね!!

これは反響ありそうです!!です!!!」

「どんな反響だか……っと、着いたな。学園」

「みたいですね。いや~優秀な運ちゃんでした。出来れば専属ドライバーになってほしいです。ですです!」

「乗せるたびに犯罪(二人乗り)を犯す専属ドライバーなんざ聞いたこともねえな。ほら、降ろすぞ」

校門を潜ってバイクを止める。

少女を降ろしてみると、意外と身長が低いことに気がついた。

「最後に、一言お願いします」

「何だ?」

「デュエルへの意気込みをどうぞ!」

ご丁寧に録音機まで準備されていた。

「………。」

「………。」

お互いに沈黙が続く。

何を言えばいいのかと考えるレンと、レンが口を開くまで急かさずに待つつもりのひよの。

そして、長い沈黙の後、レンはようやく口を開いた。

「勝つ!!」

そう一言だけ答えたレン真剣な表情に、ひよのは一瞬だけ魅入っていた。

「………素晴らしい答えですっ。私、キミのこと応援することにします。

がんばるのです!!」

ひよのは、満足したような笑顔でエールを送ると、走り去って行った。

と思ったらまた戻って来た。

「まだ何かあるのか??」

「レンくん。これあげます!!ひよのからの『頑張れのプレゼント』なのです!!」

その小さな手に持っていたのは、一枚のカードだった。

「『白き龍は勝利をもたらす。されど、黒き竜がもたらすのは可能性なり。』

このカードも、勝利はもたらさないけど、可能性を導くのです。」

「勝利の可能性…か」

「ただ、召喚条件があるので、どんなデッキでも使えるわけではないのですが……ごめんなさいです」

「いや、せっかくだ。デッキに入れておくわ」

使えるかわからないカードを、レンは迷わずデッキに入れた。

「レンさん……優しいですね。」

「別にそんなんじゃないさ。枠が余ってたから入れても入れなくても同じってだけさ。

だったら折角だから入れるのも一興だと思っただけだよ」

「そうですか。フフッ」

「じゃあ、行くか。どうせ観に来るんだろ?一緒に行こうぜ」

「もちろんです。しっかり取材させてもらいますよ!!」

 

 

「………。」

「………。」

「遅い…遅い……遅ーい!!!!」

レンとひよのが会場に着くと、痺れを切らした坂上みくが暴れまわっていた。

辺りには壊された出店や飾りが無残に散らかっている。

「うがああああああああああーー!!!!」

その姿を目の当たりにしたレンは……。

「なあ、センパイよぉ……。」

「はい。なんでしょうかレンさん?」

「………帰っていい?」

「ダメです」

「マジで?アレもう人じゃないぜ?めっちゃ暴れてるぜ?誰だよ動物園からゴリラ逃がしたの」

「女の子にそんなこと言っちゃダメですよ。デリカシーに欠けますよ?」

「………アレを女の子扱いするくらいなら、アンタをレディとか呼称する方がまだ救いがある……いや、無いか」

「失礼ですよ!私は背が低いだけで出るとこは出てます!!マニア垂涎のロリ巨乳なんですよ!!」

制服のブレザーを脱いでみせるひよの。確かに出るとこは出ている。でゅえる部部長、哀れ。

「そのそこそこ立派な乳は隠しておけ。あそこに巨乳マニアの生臭坊主いるから。襲われるぞ」

「それは嫌です。」

サッと上着を着なおそうとしたようだが、かなりもたついている。自分で服着られないのだろうか。

「さてと……おい、そこのゴリ―――ゲフンゲフン!!!―――でゅえる部部長。

待たせたな。デュエルの時間だぞ」

「あああああ!!!待たせたなですって……って、ええェー!?」

待ち人来る。さんざん待たされたみくは、怒り心頭だったがレンの恰好を見て血の気が引いた。暴走族御用達の特攻服姿である。ちょっとビビってチビった。

「遅刻したのは悪かったよ。ほら、土産だ」

「わわ!??って、何よこれ!!ドロップ!?」

「パチンコの景品だ。なんならコンビニで買ったコーヒーも付けるか?ブラックでよければ」

「あんた……あんたねえ………!!!この私を待たせておいて……パチンコして……コンビニ行ってたわけ?」

「ああ。あと、家帰って着替えて、ショップに寄って女を1人送ってから来た。」

「どれだけあたしのことバカにすれば気が済むのよーー!!バーカああああああぁぁぁー!!!!うわあああああーーん!!!!」

「あーわかったわかった。ウザいから泣くな。ウザいから」

「アンタ、絶対…ぜったい……負かして奴隷にしてやる……っっ!!

誓いなさいよね!!あたしが勝ったら、あんたは一生あたしの奴隷よ!!」

その言葉に、レン・ファムグリットの目つきが変わった。

「ああ。誓う」

「いい度胸ね!!じゃあさっそく――」

「お前はどうするんだ?」

「………は?」

「お前は、俺に負けた時…その人生と幸福を、全て俺の都合のために浪費できるのか?

一生奴隷になると言うのは、家族にも友達にももう会えなくなるんだ。お別れも言えない。

それどころか、自分が今どこにいるのか。生きているか死んでいるのかさえも知られずに、忘れられていく。

――その覚悟がお前にあるのか」

その言葉には、泣く子も黙る重みがこもっていた。

「…………っっ!?」

「まあいい。俺が勝ったら、好きにさせてもらう。アンタの人生を。

まあ、気に住んなよ……アンタが勝てばいい話だからな……。

はじめようか?」

「そ、そうよ。あたしは…負けない。負けないんだから!!!」

 

 

「「決闘(デュエル)!!!!」」

 

 

これから行われるのは、文字通りの決闘。

自分の人生を賭ける戦い。

もちろん、坂上みくは、そこまで深く考えてなどいなかった。悔しかっただけ。見返したかっただけ。

何も相手の人生を狂わせようとしたわけじゃない。

だが、レンは違う。完全に本気に捉えていた。

 

『この決闘の敗者は、人生を相手に譲渡する』

 

自称平凡な男の何処にそんな冗談みたいな言葉を本気にする要因があったのか?

ここにいる誰一人、それを知る者などいなかった。

 




実はつい最近、このSSが検索しても出てこないようになっているという致命的な設定がされていることに気付きました。本気で絶望した……そりゃ見てもらえねえッスよね。

感想・ご意見などお待ちしております。
ディスっても良いのよ?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~2

実はここまでの話、三話ぐらいに分けて書かれていたのですが……遊戯王SSでそれは無いよね?
と言うことで、超融合しました。読みづらかったらごめんくさい


――ピーン。

金属音が静かに響き、室内の空気を震わせる。親指から放たれたコインが宙を舞い、坂上みくの足元に落ちた。上を向いているのはみくが選んだ十字架の描かれた面。

先ほどまでお祭りの雰囲気で包まれていた体育館では今現在、張り詰めた空気が漂っている。

ここで行われるのは見世物的なデュエルのハズだった。誰もがデュエルと、その空気を楽しむつもりでいた。

しかし、開始直前のレンの言葉で一変してしまった。

坂上みくもまた、それまでの騒がしさが嘘のようで、借りてきた猫という言葉を彷彿とさせる。

「あ…あたしのターン」

相手のドローと同時に、レンの目の鋭さが増す。その目はみくの一挙手一投足を決して見逃さないように、刺すような視線を放つ。

「………っっ!!」

(何なのよあいつ…人生を捨てるとか家族と会えないとか、バカじゃないの!?

何本気でキレてんのよ。わけわかんない……っ。絶対倒して土下座させてやる!!)

「アタシのターン!!

手札から、雷帝家臣ミスラを特殊召喚!!」

ミスラの効果により、レンの場には『家臣トークン』が特殊召喚される。

「……雷帝……??ザボルグでも出てくるのか…?」

「あんな時代遅れのカードなんか使うわけないでしょ!

ミスラをリリース。手札から、炎帝テスタロスをアドバンス召喚!」

 

炎帝テスタロス ☆6 2400/1000 炎属性 炎族

このカードがアドバンス召喚に成功した時、相手の手札をランダムに1枚捨てる。捨てたカードがモンスターカードだった場合、そのモンスターのレベル×100ポイントダメージを相手ライフに与える。

 

「さあ、手札を捨てなさい。一番右のカードよ」

「あいよ」

レンが捨てたのは魔法カード『死者蘇生』

「最後にカードを一枚伏せてターンエンド」

「ほむん。どうやら、あの断崖絶壁(ナイムネ)な高飛車部長は、帝デッキのようだのう」

「つか、今はむしろ蛇に睨まれたカエルじゃん?めっちゃビビってるし。

レンくんてば温室育ちのお穣さんにガン付けたらマズいって」

「にーは勝負事になると目の色変わるから。

普段は本当にいい人なんだよ?人の意見と法律は無視するけど…( ボソッ」

「「ダメだろそれ。」」

義妹の必死のフォロー空しく、レン・ファムグリットは擁護出来ない。

「俺のターン。ドロー」

カードを引いたレンの眼光は、一層鋭さが増していく。おそらく子供が見れば泣き出すだろうし、親御さんがいれば通報待ったなしのヤバい人の目だ。

「手札から『古のルール』を発動する。」

「古のルール?ってことは、バニラデッキなのかな?レナさん、ちょっとワクワク」

「む?ファム妹。お主、家でレンにデュエルを教えたのではないのか?」

「そうなんだけど、デッキは当日まで隠しておきたいって言われちゃったから、レナさんも全然デッキ内容知らないんだよ」

「手札から『真紅眼の黒竜』を特殊召喚!!」

「「「え!?」」」

デュエルディスクにカードがセットされる。

光とともに現れたのは黒い翼を持つ竜。遊戯王の歴史の中でも最初期に登場したドラゴンだった。

「レッドアイズ…ですって?

アンタ、それがどういうカードか分かって使ってるわけ?」

「どういう意味だ?」

「はあー…いいわ、教えてあげる。

そのカードはね、星7 攻撃力2400守備力2000のモンスター。

星6バニラでもデーモンの召喚ってカードが有る。同じレベル、属性でもそのカードより攻撃力の高いカードは幾らでもあるわ。要するに弱いカードなのよ!」

「ほむん。まさか今そのカードを実戦投入するとは…挑戦的であると言わざるを得ないのう」

「レナさんは好きだよ。あのカード可愛いもん。頑張れーレッドアイズー!」

レナの応援に雄たけびで答えるレッドアイズ。やる気は十分である。

「そんなカードで戦うなんて、アンタあたしのこと舐めてるんじゃないの!?」

「………真紅の眼を持つ黒竜。怒りの黒き炎はその眼に映る者全てを焼き尽くす」

「?」

「黒い炎は、カラダよりも精神を蝕む…気がする。魔法カード『黒炎弾』!」

 

通常魔法:黒炎弾

自分フィールド上の「真紅眼の黒竜」1体を選択して発動する。選択した「真紅眼の黒竜」の元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。このカードを発動するターン「真紅眼の黒竜」は攻撃できない。

 

坂上みく LP5400

 

「くそっ、先制された!」

「――更に、二枚目の『黒炎弾』を発動!!」

 

「むっきぃーー!!」

 

坂上みく LP3000

 

「おお~!!一度はやってみたかった黒炎弾二連発だー!!」

「三枚目の『黒炎弾』を発動!!焼きはらえ!!」

「「「「おおおーー!!」」」」

まさかの『黒炎弾』三連発に、それまでお通夜モードだった会場の雰囲気を払拭するほどのインパクトを会場に与えた。

坂上みく LP600

「く…っ!」

「弱いカードだか何だか知らねえが、要は使いこなせてないだけだ。負け犬の遠吠え――いや、雑魚が知ったかぶってるのか。」

「……ふん。そういうセリフは勝ってから言いなさいよね!!ライフなんて投げ捨てるものよ!」

「んじゃ、そのまま命も人生も投げ捨てろ。俺は『家臣トークン』を守備表示にして、ターンエンドだ」

 

これでターンは一巡。

ここまでの状況は

 

坂上みく LP600

手札3枚 場 テスタロス 伏せ1 

 

レン・ファムグリット LP8000

手札0枚 場 真紅眼の黒竜 家臣トークン

 

「ほむん…互いに大きくアドバンテージを失っているな…。

しかし大丈夫なのかレンは。あやつ、現代の遊戯王において如何に手札が重要でライフが軽視されているのか知らんようだが……」

このターンで全ての手札を使い切ってしまったレン。

対してガンマンで落ちるLPのみく。

「ま、手札的には仕方ないんじゃね?今までのカード全部見たから言えるけど、アレもう他に手無いじゃん?『古のルール』『真紅眼の黒竜』『黒炎弾』×3とか、オレ普通にココロ折れるわー」

「他にバーンカードがあるにしても、次のターンに決着出来るカードなどあったかの?」

「無いねー少なくとも自分のカード一枚だけで600削るようなカードは『昼夜の大火事』みたいな実戦で使われないカードばっかじゃん?レッドアイズにシナジーあるとも思えないし」

「フフフ…!手札を使いきった状況じゃ、もうアンタに打てる手なんてない!!

あたしのターン。ドロー。

行くわよ!!永続魔法――帝王の開岩!」

 

帝王の開岩 永続魔法

このカードがフィールド上に存在する限り、自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。また、自分がアドバンス召喚に成功した時、以下の効果から1つを選択して発動できる。「帝王の開岩」のこの効果は1ターンに1度しか発動できない。

●アドバンス召喚したそのモンスターとカード名が異なる攻撃力2400/守備力1000のモンスター1体をデッキから手札に加える。

●アドバンス召喚したそのモンスターとカード名が異なる攻撃力2800/守備力1000のモンスター1体をデッキから手札に加える。

 

「更に、手札から『風帝家臣ガルーム』を召喚。

更にリバースカードオープン。『連撃の帝王』。

これで私は、1ターンに1度、アドバンス召喚出来る!

ガルームをリリースして、『邪帝ガイウス』をアドバンス召喚!!」

 

邪帝ガイウス 星6 闇 悪魔族 2400/1000

①:このカードがアドバンス召喚に成功した場合、フィールドのカード1枚を対象として発動する。そのカードを除外し、除外したカードが闇属性モンスターカードだった場合、相手に1000ダメージを与える。

 

「私は、帝王の開岩の効果を発動。更に邪帝ガイウスの効果を発動。更にガルームの効果を発動。」

「へえ、ガルームの効果。どんな?」

「ガルームは、アドバンス召喚のためにリリースされた場合に、デッキから「風帝家臣ガルーム」以外の攻撃力800/守備力1000のモンスター1体を手札に加えられるのよ。

私は『地帝家臣ランドローブ』を加えるわ。そして――」

「………いいね。」

レンは口の端を吊り上げながら狂気染みた笑みを浮かべ始めた。

「は?」

「……俺のいない間に、デュエルは進化した。ゲームと呼べるほどの戦略を携えて。」

「何よ突然?」

 

ククク…と心底愉快そうに笑うレンの姿は一層畏れを増していく。

 

「……アンタはいつからデュエルをしてるよ?」

「三ヶ月くらい前からかしら?それが何」

「俺は、両親に捨てられてしばらくしてからだった。6歳の時かな」

「捨てられた…?」

「あの時はさ、今みたいな平和なデュエルは無かった。強いカードも弱いカードも、完全に決まってた。

デッキに入れるカードも大体固定されてて、ただひたすらに相手をつぶし合ってきた。

だから今、少し楽しいと思うよ。こんなにも幅広い戦術とカード。

選択の余地が広がり、戦略を考え、実現できるだけの環境。

ああ…ここはまるで、虹のかかった露天風呂のようだ」

「意味の分かんないことばっかり言ってんじゃないわよ!!

何が露天風呂よ!!だったら熱湯で火傷させてやるわ!

ガイウスの効果は場のカードを除外する。真紅眼の黒竜を除外する!」

「………ガゥ…」

これで出番終わりかと言わんばかりに、悲しそうな泣き声を上げたレッドアイズ。

サラサラと砂のように消えていった。

「へえ、雷帝の除外番か。強力だ」

「まだよ!更に除外したカードが闇モンスターの場合、相手に1000ポイントのダメージを与える。」

レン・ファムグリット LP 7000

「おめでとさん。ファーストダメージだ。」

このデュエル、初めてのダメージがレンに入った。しかしレンは愉快そうに口元だけで笑う。

「最後に、開岩の効果でデッキから『風帝ライザー』を手札に加える。」

「ああ…本当に、良い時代だ。」

「バトル!!」

家臣トークンがガイウスによって破壊される。

「アンタが黒い炎なら、こっちは怒りの真っ赤な炎で灰にしてやる!!」

炎帝テスタロスの炎撃がレンを包む。

炎帝テスタロス ATK2400

レン・ファムグリット LP 4600

「フフフ…楽しいなァ、オイ……!!」

「ひっ…!?」

過去の記憶とのあまりの違いにテンションが上がって来たレンは、段々と狂気染みた笑みを浮かべ始めた。

「どうした…?まだ何かあるのか……?」

その瞳は目の前のみくを獲物として認識し始めている。

その口元は今にもみくに喰らいついて来そう。

1秒先にも犯されるのではないかという錯覚に陥りそうで、恐ろしい。

「た…ターン、エンド」

「ああ、んじゃあ俺のターンだな……フフフ…!」

(……何よあいつ!!なんなのよ!!本気で意味がわからない!!!

勝負に遅刻してきたと思ったら、暴走族みたいな恰好で現れるし!

何か怒ってるし!!しかもめっちゃくちゃ怖い!!もう逃げたい!!)

いっそこの場から逃げ出してしまおうかと思った。その時――。

「え…!?」

ヒュン――!!

バキッ!!!

「――超痛ぇ!??」

コロンコロンと中身の無い音が床で鳴る。

そこに落ちているのは、なんと木刀だった。

「にー!!少し落ち着きなさい!!」

レンに怯えるみくを見かねたレナがわざわざ教室まで行って取って来たのだった。

「ゑ……俺??」

しかし、デュエルに夢中(?)になっていたレンは、今までみくが怯えていたことにすら気が付いておらず、何の事を言われているのかさっぱり理解できていない。

それをすぐに理解すると、レナはステージまで上がって来た。

外野もその光景にざわつき始める。

「何だ今の?」

「あれって木刀!?」

「あの子可愛くね?」

「あれって、レナ・ファムグリットじゃね?テレビで観た!」

ステージに上がりきったレナはみくのもとへ駆け寄った。

「部長さん。タイムね!」

「へ…?うん」

それまでの恐怖のせいで急な横やりに頭が付いて行かず、腰が抜けてしまったみくは、言われたとおりにするしかなかった。するとさっさとレンの元へ踵を返した。

「……何の用だ、レナ。ジャマだ」

一方、当初デュエルのこと自体すっかり忘れていたはずのレンは、早く続きがやりたくて仕方ないらしく、このタイム自体が不本意で堪らなかった。

「にー。ちょっとその服脱いで」

「ああ??何でだ」

「何ででも。はい、これ着替え」

レナは何故持っているのか不明な、レンの着替えを手渡し、そのまま上着を脱がせた。ついでに服も着せようとした。

「はい、ばんざーい」

「そしたらお前上まで手届かねえだろうが…」

物理的に難しかったので諦めた。

「ねえ、レン君」

「……何だ。レナ」

「キミは、自分の身長が何センチか把握してる?」

「……183㎝」

「レナは?」

「……………160前後。多分」

「163㎝。正解」

「何が言いたい?」

「あのね。レン君は、自分が思っている以上に怖い顔してるの」

「え…???」

レナにしか分からないが、明らかにショックを受けたような表情で落ち込んだ。

「レナは知ってる。にーが本当は優しいこと。でもね、あの人は何も知らないんだよ?

飛娘ちゃんだって、そう。たとえばにーが仲良くなりたくて街中をバイクで連れまわしたりしたら、仲良くなるどころか怖がらせて余計に仲良くなれなくなるの。」

「…………。」

「にーは楽しいんだよね。部長さんとのデュエル。

名前を知っているカードと、初めてみるカードが同じデッキの中で力を発揮している姿を見て、凄くうれしかったんだよね?最初はムッとしたけど、今はとっても楽しいだけなんだよね。」

「………。」

「だったら、にーも相手を楽しませるデュエルを、見せてあげようよ。ね?」

「…………。」

レンはすっかり黙って意気消沈してしまった。

「部長さん。怖がらせてごめんなさい。」

「え…?」

そんなレンの代わりに、レナは謝罪した。

「でも、怖がらなくても大丈夫だよ。にーは……。

レン君は、怖い人じゃないから。だから…」

「あなた……。」

レナは優しく手を差し伸べる。

「ぜったい、だいじょうぶだよ。」

「………。」

みくは、レナの手を受け入れて立ち上がった。

これで大丈夫だ。そう確信したレナは――

「二人とも、あと、観てるみんな!!中断してごめんねー!!」

バイバイと手を振りながらレナは去って行った。

「あと、にーもごめんねー。お詫びに今夜はご馳走!勝ったらにーの大好物スペシャルってことで!!」

 

「…………。」

「…………。」

 

レナの乱入で中断したデュエルが仕切りなおされる。

レナが観覧席に戻ると、友人二人が迎えた。

「ファム妹よ。お主何がしたかったのだ?」

状況がつかめない英心は、レナに説明を求めた。

「ん~?もちろん、レナさんの大事な大事なにーが、楽しくデュエル出来るようにしてきたんだよ。

主に肩の力を抜いてもらうためにお着替えしてもらった」

「何ゆえに?」

「それは恋ゆえに?」

「なぬっ!??お主よもや実の兄に恋心を!???」

「冗談は置いといてさ、レナちゃん。とりあえずもう楽しいデュエルってのは無理じゃん?」

「どーして?」

「だって、レンくん手札0じゃん。」

「そうだね。しかも、部長さんの手札には疑似ドローロックの『ライザー』!場には『連撃の帝王』!

罠なら負け、場に出さなきゃ効力を発揮しないモンスターなら負け。絶望的だねっ!」

「ほむん。おまけに墓地は空っぽで貪欲も期待できぬ。確かに、これを何とか出来れば奇跡じゃのお…」

「ま、負けちゃっても死んじゃう訳じゃないし。

その時は慰めてあげようよ。膝枕でもして頭でも撫でながらさ」

にっこりと笑うと、レナはデュエルの観戦に戻った。

みくはそれまでの恐怖を振り払い、デュエルに集中することにした。

(そうよ。どんなカードが来たって、1枚しかないのなら、全部ライザーで凌げる。

次のターンに直接攻撃すればあたしの勝ち!)

「…………。」

「どうしたの?アンタのターンよ。打ちどころでも悪かった?」

レンはドローフェイズにドローすることなく、観客席を眺めていた。

「…………。」

「ちょっと?ねえ、アンタ!?」

「…………レン。」

「え??」

「レン・ファムグリット。今の俺の名前だ。」

「レン…?」

「ああ。よく考えてみたら、俺達はまだ、自己紹介すらしてねーからな。

お互い勝手に自分の感情を押しつけるだけで、相手を理解しようとしてなかった。」

「…でもあたしは名乗ったじゃない。部活紹介の時に」

「そうだったかな……悪いけど俺、その時全く話を聞いていなかったんだ」

「なあっ…!?あたしのありがたい部活紹介を聞いてなかったですって!?」

「後で聞かせてもらうさ。1年全員に向けた言葉ではなく、俺に向けた部活紹介を、な」

「あ…」

笑った。さっきまでの狂気染みた笑みではなく、もっと温かみのある、そういう笑顔で。

「さて、そんじゃデュエルを続けようぜ。

俺のターンだったよな」

「ふん!そうよ、かかって来なさい!!言っておくけど、半端なカードを使ったって無駄よ!

『風帝ライザー』は、場のカードをデッキトップへ戻す。

すでに王手はかかっているのよ!」

「フフフ…いいぜ。だったら呼び込んでやるよ。

半端じゃない、最高のカードを。ドロー!!」

会場に緊張が走る。

一体何を引いてくるのか。

「………俺が引いたのは」

「………。」

長い沈黙が漂った。それはほんの一瞬だったのかもしれないし、何秒もかかったのかもしれない。

沈黙を解き放つ言葉が響く。

「魔法カード『カップ・オブ・エース』!!」

「なんですって!?」

そのカードを知る者は、そのカードの投入を決めたレンに驚き、そのカードを知らないものは、ただただそのカードの効果説明を待った。

するとレンは、最初に使ったコインをみくに向けて弾いた。

「受け取れよ。俺とアンタの運命を決める1枚だ」

「アンタ…本当に何考えてデッキ組んでるのよ??」

 

カップ・オブ・エース 通常魔法

コイントスを1回行う。表が出た場合、自分はデッキからカードを2枚ドローする。裏が出た場合、相手はデッキからカードを2枚ドローする。

 

「……これでも運命に身を任せて生きてきた身でさ、采の目に一喜一憂して、コインの裏表でその日の飯が食えるかどうかって日も少なくなかった。遊びでギャンブルが出来る。良いゲームだ。」

「アンタいったい何者よ??」

「レン・ファムグリット。」

「………もういいわ。コイントス!」

ピーン!!

放たれたコインが宙に舞う。今日の運命は表か裏か。1枚のコインにデュエルの行方は託された。

「裏が来ればあたしの勝ち」

「表が出ればデュエル続行。」

コインが地に落ちる。せわしなく跳ね続けた後、ようやく落ち着いた。それに続き、結果が見えない観客がざわつく。

「おい、どっちだ!?表か!?裏か!?」

「見えねえぞ!!」

「どっちどっち?終了?続投?」

「………。もしもここで終っていたのなら、俺はその程度だった。

いつ死ぬかもわからないものに、常に命を掛け続けてきた。」

「へえ…なんのために?」

「……死なないために。」

「そう……。まさに、今の貴方そのものね。」

「ああ。俺は勝つためではなく、殺されないために命を掛ける。その矛盾の中でいつ破滅するかもわからない綱渡りで、俺は今日も破滅から逃げ続ける。このコインが、俺にとどめを刺すその日まで。」

示し合わせるでもなく、二人のデュエリストは同時にコインを見た。

「ほむん…とりあえずは……」

「だね。うん。」

「さっすがだよ、にー!表!表だよーー!!やったーー!!!」

カップ・オブ・エースのコインの出目は、レン・ファムグリットのドローだった。

「さあ行くぜ。ドロー!!」

「後は、レン君のドロー次第……」

「ほむん。何を引くか?」

引いたカードを確認する。

「………俺は一体、あと何度逃げ続けられるのかな。」

引いたカードは、魔法カードと罠カード。

「行くぜ、坂上みく」

「……来なさいよ。」

「生きとし生きる者を飲み込み、命そのものを還す力。その歪みを召喚する。

魔法カード『ブラック・ホール』!!」

「何ですって!?」

「おおー!!」

レンの引いた魔法カードは『ブラック・ホール』。

場に存在する全ての命を飲み込み、自身すらも破壊する破壊のカード。

この重力の暴力によりモンスターは消滅した。

「ギャンブルに勝って、ピンポイントに必要なカードを引いてきた……。『ブラック・ホール』。現代入れる人の方が少ない大量破壊カード。でも、この場でアレ以上に必要なカードは無いね」

「む?そうなのかファム妹?サイクロンで『連撃の帝王』を割れば同じことであろう?」

 

「残念だけど、それじゃあモンスターが残る。仮にミラファや激流葬だったとしたら1ターン待つ必要がある。それじゃあまた次のターンにならないと反撃出来ない。

 

しかも、あのデッキに『連撃の帝王』は文句なしでキーカード。仮に二枚そろえば1ターンに3回。相手のターンで2回召喚権を得ることになる。あれは名前指定の1ターン制限じゃないから。

ぶち壊しても湧いてくる可能性の高いカードを破壊するくらいなら、いっそその発動条件を封殺してた方がいいんだよ。

今の状況ならチェーンされてもライザーの効果で戻せるカードが無い。彼の場を考えれば、これ以上はないよ。帝がどっちか残ってればゲームエンドになるんだかr……って何?英心君??目を丸くして」

「お主、詳しすぎんか?まるでプロの解説のようではないか。」

「そう?この程度なら普通だよ」

「普通な事あるか。あろうはずが無い。あってたまるか。あれほど詳しい解説が出来るのは、実際に使用しかつ使いこなすだけの腕が無ければプロ以外になかろう。お主、剣道以外にもデュエルでも一流であったのか?」

「ちょっと昔、専門的に勉強してるんだよ。今でもバイトで使う知識だからね。………にーには内緒ね?コンビニで肉まん買ってもらえなくなるかもしれないし。」

「ほむん。フライドチキンで手を打とう。」

「おっけーおっけー。ついでにポテトも付けちゃおう。ん?……いいの??お寺のお坊さんになるのにお肉って」

「拙僧は破戒僧になる。」

「すごい言い訳だね~ハハッ。っと、デュエルデュエル。」

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド。」

 

 

レン・ファムグリット LP 4600

手札 0 場 伏せ×1

 

坂上みく LP 600

手札 3枚 場 『連撃の帝王』 『帝王の開岩』

 

「あたしのターン。」

(手札にはさっきサーチした家臣がいる。そして、手札にはライザー。

攻めるには十分…問題は、あのリバースカード。あのカードがフリーチェーンなら、『連撃の帝王』の発動時にチェーンすれば、ライザーの強制効果はあたしのデッキに疑似ロックを掛ける。

手札の不要な魔法・罠を場に出せば、どうせ開岩でサーチ出来るから手札交換にはなる…。)

みくは、レンの公開情報を確認する。

(もし、あのカードが激流葬だったら、また振り出しに戻る。ランドロープがいるから家臣には困らないけれど。)

「………。」

「ずいぶん長考しとるのう。」

「………警戒してるんだね。LP600だから下手すれば終わる。だから大胆に動くことができない。サイクロン系か召喚反応系。そのどっちかなら、負けがかなり大きくなる。」

「む?どちらもさっきイラネと言っておらんかったか?」

「あの場ではね。でも今は部長さんのターン。レナさんなら、あの場で怖いのはサイクロン。手札にもよるけどね」

「たとえばどのような?」

「あの手札一枚が、二枚目の『連撃の帝王』か魔法・罠に対処するカード以外なら全部。」

「む?あの絶壁部長の手札は三枚ではないか?一枚とは?」

「公開情報だよ。あの三枚の内、二枚はモンスター。一枚は家臣。一枚は帝。

あの人は軽率すぎたんだよ。もしあの家臣が雷帝家臣なら、召喚反応でも壁モンスターを召喚する機会は得られた。でも、あれは『地帝家臣ランドロープ』。相手の場にモンスターもいない、魔法・罠も無い。

モンスターに耐性も与えられない。

そんな状態でライザーをサーチするのに、家臣が地帝なもんだから特殊召喚も出来ない。

連撃にチェーンされたら、ライザーは自分の場をデッキバウンスする。ね?最悪」

「しかし、あんな事故みたいな手札補充など、視野に入れるのは難しかろう?」

「でも自分のデッキ内で対応可能なレベルの可能性だよ。

あんなの事故じゃない。舐めプのしっぺ返し。自業自得だよ。

相手のデッキ内容も知らないのに、『だろう運転』なんかするから事故に会うんだよ。

舐めプ、かっこわるい。」

「…レ、レナちゃんがキツい。」

「ほむん。ところで拙僧、一つ思ったのだがのうファム妹」

「なぁに?」

「お主の兄は素人であろう?」

「うん。そうだと思うよ。『サイクロンで魔法・罠は無効化できないの知ってる?』って聞いたら最初信じてくれなかったもん。苦労したんだよ。ちゃんと教えたげるの。『何!?破壊=無効ではないのか!?』って」

「何それ懐かしい」

「ほむん。ではあやつ。『風帝ライザー』の効果知らなくね?」

「……………………。」

 

二人のデュエルはまだ続く。




オリ主ってイイよNE☆

原作者NattoMikanは性格が破綻した主人公が好きなので、ヘタレ系とか童顔系の主人公を見ると
『シャキッとせいや!!ち●こもぐぞ!!』
ってなります。

多少引くぐらい我が強い方がマンガとか小説とかギャルゲーとかやってて楽しいな~。
因みに好きなギャルゲーはCLANNADです。


ご意見・感想書いてくれてもいいのよ?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~3

レンは最近の環境に出るカードは覚えてきていますが、マイナーカードは殆ど知りません。
あとこれを描いた時期が半年以上前なので、観客は神通の存在を知りません。
ま、あんな高いカード入れるのはガチ勢だろうけどな☆←青眼デッキにガン積みしてる奴。


みく「あたしのターン。」

みく(手札にはさっきサーチした家臣がいる。そして、手札にはライザー。

攻めるには十分…問題は、あのリバースカード。あのカードがフリーチェーンなら、『連撃の帝王』の発動時にチェーンすれば、ライザーの強制効果はあたしのデッキに疑似ロックを掛ける。もちろんそれで連撃と開岩を同時に除去されないのなら、そのまま攻撃すればあたしの勝ち。攻撃が通らないとしても、開岩でサーチすれば手札交換。連撃が残れば次のドローに掛けても勝算は決して低くは無いわ………でも)

みくはこれまでのレンのプレイングを思い出す。これまで確認したカードは、死者蘇生を除けばどれも真剣勝負に持ち込むカードとしては優先度が高くないマイナーカードばかりだ。

みく(もし、あのカードが激流葬だったら、また振り出しに戻る。ランドロープがいるから家臣には困らない。けど、もしあのカードがあたしが知らないようなカードだったら、何が起こるか分からない。)

みく「……………。」

英心「ずいぶん長考しとるのう。」

レナ「………警戒してるんだね。LP600で、十分ゲームエンドの可能性がある。だから大胆に動くことができないんだよ。サイクロン系か召喚反応系。そのどっちかなら、かなり苦しくなる。」

英心「む?どちらもさっきイラネと言っておらんかったか?」

レナ「あの場ではね。でも今は部長さんのターン。レナさんなら、あの場で怖いのはサイクロン。手札にもよるけどね」

英心「たとえばどのような?」

レナ「あの手札3枚が、2枚目の『連撃の帝王』か魔法・罠に対処するカード。あと他の帝以外は全部つらい。」

英心「む?あの絶壁部長の手札は5枚ではないか?3枚とは?」

レナ「公開情報だよ。あの5枚の内、2枚はモンスター。1枚は家臣。1枚は帝。もしあの家臣が雷帝家臣なら、召喚反応でも壁モンスターを召喚する機会は得られた。でも、あれは『地帝家臣ランドロープ』。相手の場にモンスターもいない、魔法・罠も無い。モンスターに耐性も与えられない。そんな状態でライザーをサーチするのに、家臣が地帝なもんだから特殊召喚も出来ない。連撃にチェーンされてライザーしかいないなら、自分の場をデッキバウンスする。」

英心「しかし、あんな事故みたいな手札補充など、視野に入れるのは難しかろう?」

レナ「自分のデッキ内で対応可能なレベルの可能性だよ。あんなの事故じゃない。舐めプのしっぺ返し。自業自得だよ。相手のデッキ内容も知らないのに、『だろう運転』なんかするから事故に会うんだよ。舐めプ、かっこわるい。」

鈴木「…レ、レナちゃんがキツい。」

英心「ほむん。ところで拙僧、一つ思ったのだがのうファム妹」

レン「なぁに?」

英心「お主の兄は素人であろう?」

レナ「うん。そうだと思うよ。『サイクロンで魔法・罠は無効化できないの知ってる?』って聞いたら最初信じてくれなかったもん。苦労したんだよ。ちゃんと教えたげるの。『何!?破壊=無効ではないのか!?』って」

鈴木「何それ懐かしい」

英心「ほむん。ではあやつ。『風帝ライザー』の効果知らなくね?」

レナ「……………………あ。」

 

 

 

 

外野が議論に興じている内に、みくの決心は固まった。

みく「……いいわ。あたしはアンタに勝ってアンタを部に入れるんだもの。こんなところでビビって逃げるようなやつ、あたしなら認めない。チャンスには攻める!行くわよレン!!」

レン「来い!みく!!」

みく「手札から、『地帝家臣ランドロープ』を召喚!プレイヤーにダイレクトアタック!!」

レン「うっ…!」

 

レンLP1000

 

みく「これでまた、あたしの場にはリリース要員が補充された。アンタが何をしようとあたしの勝ちよ!」

レン「いいや。まだ終わらせない。お前はこんなところで諦めるような軟弱な部員が欲しいのか?」

みく「言うじゃない!だったら見せてみなさい。あたしを納得させられたのなら、副部長の座を与えてやるわ!!ターンエンド」

レン「もちろん、断るけどな!ドロー!!」

レナ「にー楽しそう。」

英心「ほむん。まるで熱血バトルマンガの友情を見とる気分じゃのう」

鈴木「レン君あー見えて単純だかんねー。あいつ自分のピンチって分かってんのかね?」

レン「俺はカードを更に伏せる!!」

既に鎮座するリバースカードの横に新たに出現するリバース。手札は無く、ライフは1000の状況で、レンは自身の不利に怯える様子は無かった。

レン「さあ、この2つの俺のカードに、お前はどう対処する?

エンド宣言の前に『ライザー』を召喚するか?」

みく「アンタ、ライザーの効果は知っている?」

レン「さあな。だが、俺に有利に働かないことは知っている。」

みく「それでも挑発するわけ?強気ね」

レン「何だ?怯えたか」

みく「………。」

レン「………。」

観客A「おい…どうするんだデュエル部部長は。」

観客B「バッカ。発動するに決まってんだろ。ここで使えばあのリバースはチェーン出来ないだろ。」

観客C「……あれは囮で、最初に伏せた方が本命では?例えば、『インターセプト』なら、アドバンス召喚したモンスターのコントロールを得られますよ?」

観客D「そんなクソカード入れるわけねーじゃん。『神の宣告』で召喚無効だろ。」

観客A「いや、もしかしたら『サイクロン』で『連撃の帝王』を破壊して、召喚そのものを不発にするかも…」

会場内でも様々な憶測が飛び交っている。実戦的なメタカード。その場だけで有効だが使用されればそれ以上に困るマイナーカード。全く見当違いでタイミングを逃し発動すらできないカード。本来なら考えもしないようなカードを、ふと思い出させる。レン・ファムグリットのデュエルはそのくらい予想が付かないものになっていた。

レン「何もしないなら…俺は、ターンエンドだ。」

みく「…………。」

レン「どうしたんだみく?」

みく「…言っておくけど、怯えたわけじゃないから。ただ…ただ、アンタを軽く見るのを止めただけ」

レン 「……?」

みく 「ドロー、あたしは、ランドロープでレンにダイレクトアタック。」

レン 「………。」

 

レンLP200

 

みく 「あと一度攻撃が通ればあたしの勝ちね。モンスターをセットして、ターン終了。」

 

 

みくLP800

手札4

場 地帝家臣ランドロープ ATK/800 伏せモンスター

連撃の帝王 帝王の開岩

 

レンLP200

手札0

場 リバースカード×2

 

 

観客F「なんだよ。部長のくせにチキンプレイかよーつまんねー」

観客G「うわー萎えるわー」

観客H「プライドとか無いのかなー。勝てばいいわけ?サイテー」

みくの一種消極的ともとれるプレイングに、観客は不満を露わにする。

みく「……軽蔑した?レン」

そう尋ねる声音がほんの少しだけ震えていた。それでも、レンを見つめるみくの瞳は、しっかりとレンを見据えていた。

レン「……しない。あれだけ手の内を見せて、その対策を取られていないと思うのは早計だ。大きく動かなくても有利だって言うなら尚更だ。

俺は楽しいゲームは好きだが、相手がバカなポンコツAIじゃ萎えるだけだ。」

その言葉に、みくは今度こそ迷いをふっ切った。

みく「それでこそ、あたしの部員にふさわしいわ!さあ、今度は貴方の番よ!!貴方持ちうる全力で、あたしと戦いなさい!」

レン「言われるまでもねえよ!!付いて来やがれ、俺の全力に!!リバースカードオープン!罠カード『運命の分かれ道』!」

みく「『運命の分かれ道』ですって!?」

『運命の分かれ道』このカードの登場に、会場全体が騒然とした。

 

運命の分かれ道 通常罠

お互いのプレイヤーはそれぞれコイントスを1回行い、表が出た場合は2000ライフポイント回復し、裏が出た場合は2000ポイントダメージを受ける。

 

英心「ほむん…なるほど。はっきりしたな。レンのデッキが」

鈴木「うわ~レン君マジ博徒だわー。さっきのカップ・オブ・エースと言い、アレと言い」

レナ「きゃー!!!レン君すっごーい!!!レッドアイズにギャンブルカード!!凡骨デッキだーー!!漢気溢れてるよー!!しびれるぅーー!!!」

鈴木「お、おお…レナちゃんが今まで見たことも無いテンションで喜んでるわ。剣道の全国大会優勝したときだっていつもどーりだったのに…」

英心「ほむん。妹と言うのは、兄が男気を魅せると喜ぶものなのだ……きっと。」

観客C「おい、すげえデッキ組んでるぞアイツ!!」

観客F「この状況で運命の分かれ道とかアツイ!!めっちゃアツイ!!」

観客H「頑張れー!!一年生ー!!」

 

みく「アンタって、もしかしてそんなカードばっかりでデッキ組んでるの?」

レン「さて、どうかな。俺としては、見返りがデカイカードを選んだわけなんだがな。」

みく「何が見返りよ、もう。自分のカードで負けるなんて間抜けすぎるでしょ。これで沈むのだけは絶対止めてよね!!」

レン「そんなもんは、コインとギャンブルのカミサマが決めるだろ。ほら、コイントス!」

みく「って言うかあたしだってこんなので負けるのヤよ!!」

 

ピーン!

両者の指から放たれたコインが宙を舞う。裏に表に表に裏に。目で追いかけることが馬鹿馬鹿しくなるほど目まぐるしく変わる表うらに、みくは念を送るように睨み続けて、レンはとりあえず目で追って結果を確認する。自然と重力に従い地に落ち、反動で弾かれる。

 

鈴木「出目で考えられる展開は4つ。レンくんが負けるか、あの部長が負けるか、二人ともLP0で終るか…あるいは」

英心「ほむん…どうなるかのう?」

しばらく跳ねたコインがいずれ力を失い、結果が現れた。

鈴木「さて、結果は…っと」

みくのコインは

 

みく「よ、よかった……表ね…こんな終わり方なんて冗談じゃないわ」

 

そして…レンのコインは

レン「………。」

観客A「おい!どっちだ!?」

観客D「見えねえよ!どっちだ!!」

観客H「まさか裏じゃないわよねえ!?」

 

レン「………結局お互いにライフ回復になっちまったか」

 

レンのコインも表だった。

 

観客C「よっしゃ、セーフ!!」

観客E「オッケオッケ!!まだイケるぞ!!」

 

レンLP2200

みくLP2600

 

レン「俺のターン。ドロー」

鈴木「うーん。レン君どうにもじり貧だなぁ…そろそろ反撃の一つもしてくれないと、飽きてくるぜ」

英心「ほむん。しかし、どうやってもライザーが出張ってくるのではのう…」

鈴木「やっぱ序盤のハンデスと黒炎弾の大盤振る舞いが利いてきたかねえ」

レン「カードを伏せてターン終了」

レナ「………まただ。リバースカード。」

英心「ほむん。アレではいつまでも攻めに行けん」

レナ「……多分これで良い筈だよ。下手なモンスターカード引いたって使えないんだから」

みく「あたしのターン!

手札も十分潤ったし、そろそろ行くわよレン!!あたしはランドロープをリリース。」

英心「ここでライザーを出すか?」

鈴木「あるいは別の帝か…」

レナ「何が出るかのお楽しみだね!」

みく「来なさい!『邪帝ガイウス』」

 

観客A「何でここでガイウス?」

観客B「敬遠のためのキープじゃねだろう」

観客D「いいや、ここでガイウスを除外してバーンダメージだろ」

観客F「バーンなら伏せモンスターが闇属性なんじゃね?」

 

鈴木「この展開をレナちゃんはどう見る系?」

レナ「ここでリバースを対処したいなら、最初にライザーを出してデッキバウンスしても、対処しなくちゃいけないカードの絶対数が変わらない……デッキトップに置かれたカードは次のターンに引けるから。だからガイウスなんじゃないかな。そう考えると、それまでガイウスは手札に無かったってことになるね。」

鈴木「一見、開岩を使えば似た動きは可能だが、それが出来るくらいならもうとっくに帝が場に出てきてた。よっぽど警戒してるんだな。今までのカードもほとんどがブラフみたいなもんだったのに、何をあそこまでビビってるんだか……」

レナ「確かにそうだよね。でも、部長さんの気持ち、分からないでも無いよ。」

英心「どういうことじゃ?」

レナ「レン君の場に伏せられたカード。ブラックホール発動以降全然使う素振りを見せてない。そして、部長さんもそれ以降帝を召喚していなかった。何か対策が取られてるかもって思うんだよ。」

みく「チェーン1ガイウス。チェーン2ランドロープ。チェーン3。開岩で効果発動!2枚カードをサーチして、最初に伏せられていた方のカードを除外する!!」

レン「………フッ」

みく「何がおかしいのよ?」

レン「待ってたんだよ、この時を!!お前が除外しようとしたのは、触れてはいけないセーフティーラインだ。リバースカードオープン!『安全地帯』」

みく「安全地帯ですって!?」

 

安全地帯 永続罠

フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターは相手のカードの効果の対象にならず、戦闘及び相手のカードの効果では破壊されない。また、そのモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃できない。このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターがフィールド上から離れた時、このカードを破壊する。

 

みく「開岩とランドロープの効果を処理。『怨邪帝ガイウス』と炎帝家臣を手札に……くっ、ガイウスが…!!」

安全地帯を除外したことで安全地帯に守られていたガイウスはその身を滅ぼし跡形も無く消え去っていく。

レン「邪帝撃破!」

みく「やってくれるわね」

レン「まだまだ行くぜ」

みく「え?」

レン「これでお前の手札、何枚になった?」

みく「え…?6枚だけど??」

レン「俺は0枚。圧倒的な不利と、圧倒的な敗北を約束された…敗者がその立場を逆転できる方法があるとしたら、その方法に、人は何と名前を付けるか知ってるか?」

みく「……??な、アンタって時々凄い難しいこと口にするわね…全然意味が分かんない」

レン「そうか?簡単な事だ。このままでは殺されるというとき、人は一縷の望みを掛けて、命すらもベットにして、賭けをする。今の俺のように。鬼が出るか蛇が出るか。さあ、薄汚れた欲望のため、不誠実な博打に勤しもうか!!リバースカードオープン。『ギャンブル』」

 

 

ギャンブル 罠

相手の手札が6枚以上、自分の手札が2枚以下の場合に発動する事ができる。コイントスを1回行い裏表を当てる。当たった場合、自分の手札が5枚になるようにデッキからカードをドローする。ハズレの場合、次の自分のターンをスキップする。

 

 

みく「ギャンブル…!??なんて言うバカカード使ってんのよアンタ!?本当に勝つ気ある?」

レン「表か裏か、生か死か…ただの物質の『表裏二分の一』(ひょうりにぶんのいち)に命すら掛ける人間がいる。」

みく「何それ、ただのバカじゃない」

レン「そうだよ。親友を信じて、その娘を助けるために保証人になったばっかりに、身を滅ぼし、破滅し、家族と無理心中を図った大馬鹿者だよ。」

みく「え?それ、誰の話……?」

レン「そしてその息子は、父親を目の前で殺した男にギャンブルを挑み、勝った。別に復讐したかった訳じゃない。仇を取る気なんて無かった。ただ、ひとりぼっちで残っても仕方が無かったそいつは、勝負の結果に従って殺されたかった。でも結果として、そいつの幸運は悪運と呼べるほどに勝利を運んだ。」

ピーン。

レン「そんな少年は、ここ一番のギャンブルをいつも外さない。」

みく「そんなオカルトあり得るわけ…」

レン「あり得るさ。このコインは表で落ちる。」

カン――!カカン――!!

放たれたコインが地面に降りた。……表だ。

みく「……たしかに、運が良いみたいね。ギャンブラー」

レン「俺はカードを5枚ドローする。さあ、これで手札の不利は解消された。どう出る?でゅえる部部長」

みく「…………。」

みく(……たしかに強い。デッキはどう考えても素人なのに…それを支えているのは、ギャンブルカードを含む魔法と罠カードを的確なタイミングでドロー、かつ使用できる所。戦術のメインはおそらく魔法・罠でモンスターを除去しながら、バーンで勝利を狙うことのハズ……なんだけど)

みくの脳裏に映る二枚のレッドアイズが、その考えを肯定させなかった。

みく「………………。」

次いで手札の6枚のカードを確認する。『風帝ライザー』三枚の『家臣』『帝王の烈風』……そして、最後の一枚は……。

みく「…………よし!」

レン「ん?」

何かの決心をした坂上みくは、観客席にいた部員の一人に声を掛けた。

みく「タリズマン、来なさい。」

呼ばれた冴えない顔の部員は不思議そうにステージに上がっていった。

みく「『アレ』を使うから、観客全員追い出しなさい」

タリズマン「……はぁ!?『アレ』は使わないようにっていつも理事長に言われてるだろ!?」

みく「うるさいわね!あたしは、あいつにだけは絶対に負けちゃいけないの!!分かる!?」

タリズマン「分かんねえよそんな私情!!」

みく「いいからさっさと観客を避難させなさい!!」

タリズマン「ぎゃー!?」

背中を蹴り飛ばされたタリズマンは、泣きながら観客全員の避難を始めた。

レン「何だ?何が始まる?」

みく「……正直言って、アンタがここまであたしを本気にさせるとは思わなかった。だからこのデュエルは、部活紹介の延長位にしか考えてなかったわ。あ、もちろんデュエル始める直前までだからね!?デュエル始まってすぐにアンタが凄い奴だって分かったから、慎重にプレイするようになったんだし。そこは勘違いしないでよね!!?あくまでもデュエル前の考えだからね!?」

レン「何だその彼氏に元彼の写真見られた彼女みたいな反応は」

みく「だ、誰が彼女だ!!あたしは今デュエルで世界取るって目標があるんだから、そんな浮ついたこと考えてられないのよ!」

レナ「おお~!部長さん可愛い。」

英心「ほむん。ペチャパイのツンデレなどいらぬな」

鈴木「そう?不細工のツンデレの方がめっちゃ殺意湧かねー?」

みく「そこのギャラリー!!好き勝手言ってるんじゃないわよ!!ってか、さっさと出てけー!!これから出すカードは物凄い危険なカードなんだからね!!」

レン「――ちょっと待てコラ」

みく「え?あ、はい。何?」

レン「何じゃねえよ。何だそのギャラリー散らさなきゃ出せないカードって。んなヤバいブツ学校に持ち出すなや!」

 

何を言っているか分からないかもしれないが、遊戯王にはよくあることだ。

 

みく「だ、だってしょうがないじゃない!!勝ちたいんだもん!!」

レン「理由になってねえんだよ!!」

みく「もー!仕方ないわね!!だったら場所替えよ。ついて来なさい!!」

レン「は?おい、ちょっと待て勝手に――」

みくは突然レンの手を握ると、体育館を走り去って行った。

レナ「わっ!?ちょ、ちょと待ってよー!にー」

英心「ほむん…よいボインが揺れておる。足の速いボイン娘と言うのは良いな。

のお、鈴木」

鈴木「それはいいけどさー。どうするべ?オレら着いて行っちゃう系?」

英心「拙僧は行くつもりだが、貴様はどうするのだ。あやつのことを一番見ておきたいのは貴様であろう」

鈴木「おやおや、いったい何の話だか。」

英心「ふん…まあ良い、これ以上話している暇は無い。ファム妹の立派な揺れるボインを観察せねばならぬからな。……む?」

鈴木「どうしたのさ?エーシン君」

英心「いや、今小柄な体躯ながらも立派なボインを持った幼女が走って行くのが見えたような気がしたのだが…。」

鈴木「胸が出かけりゃ幼女も守備範囲内かよ!?」

英心「何を言う!?ロリ巨乳はもっともパイオツを引き立たせる神秘のボインなるぞ!!」

鈴木「……あーもういいから行くべ。エーシン君」

英心「心得た!!お主も好きよのお」

鈴木「テメェと一緒にするんじゃねえよこのおっぱいバカ!!」

英心「何だと!?スク水フェチめ!!」

 

 

二人の変態の不毛な言い合いは、次のステージまで続く。




レナ『にーって時々ポエマーみたいな語り方するよね?』
レン『ポエマー?…ヘルポエマーか?
分からん。何の話だ?』
レナ『‐‐自覚無いの!?』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~4

みくに連れられて校舎の外に出たレンは、学校の裏山まで移動していた。

先程の閉鎖的な空間から打って変わって開放的なシチュエーションでのデュエルになる。

レン「さっきまでとは全く違う場所になっちまったな。

だが良かったのか?せっかくあそこまで賑やかにしていたってのに。

チラッと見たが、祭りの屋台見たいなのが出てたよな。アレ学割とか利くのか?」

みく「学割ってアンタ……欲しけりゃ後で幾らでもあげるわよ。アレお爺ちゃんが用意したものだから」

レン「マジか!?一度綿あめってのを食ってみたかったんだ。

あんな糸くずだか掃除して集めた埃だかみたいなのがどんな味がするのか、密かに気になってたんだ。」

みく「そんなに欲しけりゃ、買えばいいじゃない。」

レン「旨いか不味いか分からないものに金なんて出せるかよ。もったいない。」

みく「………アンタって、いろいろズレてるわよね。ギャンブラーのくせに」

レン「俺だって、生きるに困らなきゃギャンブルなんてしなかった。多分。

うん。平和に暮らせる今になってもパチンコやら競馬やらしてるのは、昔の暮らしが原因なんだ。きっと」

みく「……因みにそれ、いくら使ってるの?」

レン「一日5万くらいかな」

みく「…………アンタって、もしかして嘘つき?」

レン「失礼だな。俺は嘘なんかついてない。1日5万使って、5万以上稼いだ分は全部ドロップと交換してる健全な高校生だ」

みく「虫歯にならない?」

レン「自慢じゃないが、交換したドロップが俺の口に入ることはまず無い。いろんなところにばら撒いてるから。アレ大量にばら撒くと宝石のように輝くんだ。」

みく「食べ物が食べられない国の人たちに謝れ!!!」

レン「あれ??俺なんか怒られるようなこと言ったか……?」

 

顔に似合わず首をかしげていると…

 

レナ「お~い!にー!!」

 

後から追いかけてきたレナ一行が追いついて来た。

 

ひよの「や…やっと、おいついたのです……ぜぇぜぇ…」

そこには、レンがデュエル前に出会い、学校まで相乗りして来た新聞部の部長、文月 ひよのの姿があった。

息を切らしていないレナと相反しひよのは息切れに汗だくである。

レン「あれ?アンタ来てたのか?会場でも全く姿が見えないから帰ったのかと思ってた」

ひよの「おやおやぁ?私の姿が見えなくて寂しかったのかなぁ?

大丈夫ですよ~ちゃんと観てましたよ。メモだってばっちりです。

そして明日の一面は【意外!不良ギャンブラーは寂しいと死んじゃう!?おねえちゃんといっしょ】で決まりです!!

だから安心してデュエルしててくださいねー。お姉さんが見守ってあげますですよ~」

レン「お姉…さん??」

ひよの「そこに疑問を持たないでください!!

年上です!センパイです!お姉さんですよ!!」

レン「こんな小さな女じゃ、お姉さんと言えるだけの色気も包容力も見当たらないな。」

ピキッ――!!

ひよの「ほほ~う。そうですかそうですかー。

ていっ!」

レン「おっと!?」

ひよのは突然レンに全力の体当たりをし、レンを押し倒した。

みく「ちょっと、アンタ。話はデュエルの後にして――なっ!??」

むにゅん。

レン「ん?」

英心「おお、ここにおったか。ようやく追いつい――ってえええええええええ!??」

鈴木「あらま。レン君ってばw」

レナ「に、にーが……ちっちゃい女の子に…お、お、おっぱ……」

英心「ぱふぱふーーー!!!!」

そして、レンの顔を自身の胸と腕で包んだ。

身長の低いひよの胸は、体格に対して明らかに成長していた。

ひよの「さあ、どうですかー?レンさん。

たしかに身長は低めですが、胸はちゃーんと成長しているのですよ?

クラスメイトの子たちにも羨望の眼差しで見られるくらいには~。胸が大きければ身長なんて多少小さくたって、むしろ背が低いからこその、発する色気だってあるのですよ~?どうです~?ですー?」

みく「アンタもあたしの敵かちっこいのーー!!!デカけりゃ良いと思うなよおおおおおーー!!!」

レナ「何でもいいからにーを放してあげてー!そんないけないお店みたいなのはノーセンキューなのー!!」

レン「………。」

英心「いいいいいいぃぃーなぁああああああああああーーー!!!

拙僧もお!!拙僧も豊満なパイオツにパフパフされたいいいいいいぃぃぃぃーー!!!!」

レン「……………キモ」

ひよのに怒り狂うみくと、レンを放してほしいレナ。そしてパフパフされたい英心がそれぞれ絶叫している。

傍(鈴木)から見れば、男を取り合う女たちと、それを嫉妬する男。というなんとも男冥利に尽きる状況にも見えるのだが……。

鈴木「実際のところどうよ?レン君」

レン「………昔チームで走ってた頃を思い出す。悪夢的な意味で。

あとひよの胸で息がヤバいし、みくの髪がくすぐったくて辛いし、レナが俺を庇おうとして上に乗ってるから重い。タスケテ。」

鈴木「あ~なるほどー。いやーでもほら、ラブコメの主人公とかってさ、ラッキースケベの二三倍くらい罰を受けるからこそその存在を受け入れてもらえるって、あの人も言ってたっしょ?」

レン「………そもそもすでに飽きるほど味わった俺には罰しか残ってねえじゃねえか……」

鈴木「それはホラ、ご褒美の前倒しした分罰受けろってことじゃん?」

レン「親に捨てられて孤児になって命がけのギャンブルで生計立てるような人生でも罰が足りねえってか??」

鈴木「――うん!!!」

即答した鈴木の表情は、満面の笑みだった。

ひよの「どうですレンさん!これでもまだ私を子供扱いするですか!?色気無いですかー!?どうですかー?」

みく「胸があれば色気があるとか思ってんじゃないわよこのちびっ子!!」

レナ「部長さん達、喧嘩の前ににーを放してー!」

レン「………………てめえら……」

ついに我慢できなくなったレンは、拳を思いっきり握って

レン「いい加減にしろゴルアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァーーー!!!!」

三人のつむじに振り下ろした。

三人「いったあああああああああああああああああああーーーい!???」

 

みく「痛ぃ……」

ひよの「ああー頭の上で星がまわってましゅう」

レナ「うう…レナ、にーを助けようと頑張ってたのにぃ……」

三者三様の不満や講義をガン無視してみくとある程度の距離をとったレンは、左腕のデュエルディスクを構え直した。

レン「オラ!!さっさと続きやるぞみく!!お前のターンのメインフェイズだ」

みく「――っっ!!よくも遠慮なしに殴ってくれたわね!!倍返しにしてやるっっ!!」

ひよの「そうです!!やってやるのですみくさん!!私たちの分も!!!

乙女の身体に暴力を働いた罪は重いのです!!」

レナ「わ……元凶になったはずの新聞部部長さんまで敵に回ってる。」

レン「ついさっき俺を応援するとか言ってたけどな」

鈴木「仕方ないよレナちゃん。『女は禿げ親父の頭より薄っぺらな仲間意識と理不尽な程の自己愛で出来てる』って、昔お世話になった人が言ってたべ。」

レナ「あ…アハハ。どうしよう。レナさんその言葉に『違うよ』って言えない……。」

レン「因みに男は『5割以上の欲望と3割以下の見栄で生きている』だそうだ。」

レナ「………。」

どんな人だったんだろうなぁ。そう思いながら絶句したレナであった。

みく「さあて!気を取り直してあたしのメインフェイズ。

手札から三体の家臣を特殊召喚!!

『炎帝家臣』『邪帝家臣』『雷帝家臣』守備表示。

炎帝家臣コストで怨邪帝ガイウスを手札から墓地へ送って、邪帝家臣コストで怨邪帝ガイウスを墓地から除外。そして相手の場に家臣トークンを特殊召喚。

これであたしのターンは終了よ。」

 

レンLP2200手札5枚

家臣トークン

みくLP2800手札2枚(『風帝ライザー』『???』)

家臣×3DFF 1000

帝王の開岩 連撃の帝王

 

 

レン「さて、俺のターンだ」

レナ「キャーー!!レン君頑張れーー!!」

レン「――!???」

英心「ぬお!?なんじゃファム妹その明らかにオーバーリアクションな声援は!?」

レナ「だってほら!!このデュエル初めて、レン君の手札が6枚になったんだよ!

後攻だって言うのにハンデスされたり、かと思ったらレン君も一切躊躇なく手札使い切ったし!!

とても安心して見ていられなかったデュエルが今やっと、まともな状態になったんだよ!!すごいよ!!!」

レン&みく(あれ……?俺(あたし)らもしかしてディスられてね??)

レナ「だからレン君がまともに攻撃できる初ターンだよ!!

頑張れー!レン君ーー!!」

レン「うるせえ外野!!

俺のターン、ドロー!」

改めて自身の手札を確認するレン。

そしてドローカード。

レン「………ん?確かエクストラデッキに…。墓地は……うん。家臣トークンって……だったな。」

みく「何よ?今までに無く慎重ね……。まあ、あたしの切り札を相手にするんだから、そのくらい慎重になって当然よね!なんたってコイツは――」

レン「手札から魔法カード発動!」

みく「って結局動くんかい!!」

レン「『龍の鏡』!」

 

龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)

自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、ドラゴン族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)

 

みく「何よそれ、墓地に居るのってレッドアイズだけでしょ?どうやって融合なんて……。」

レン「ひよの、お前のカードを使わせてもらう!」

ひよの「え?あれ??だってみくさんが言うように融合素材が……」

レン「墓地の真紅眼の黒竜と、場の家臣トークンを融合する!!」

みく&ひよの「何その融合素材!?」

レナ「ここで、レナさんのワンポイントレッスン!

『トークン』は、効果の有無に関わらず、通常モンスターとして扱われるのです!」

みく「それが何よ…??」

ひよの「マジですか!?じゃあ、ダンディライオンとか御用達になるじゃないですか!!」

みく「アンタ達何言ってるの???」

レン「『紅き瞳の黒竜』よ、『輪廻を外れる命』と共に、全ての命の先を行く始祖と成れ!!

融合召喚!恐れるものは物言わぬ力『始祖竜ワイアーム』」

 

 

 

始祖竜ワイアーム 星9

融合モンスター

闇属性 ドラゴン族

2700/2000

通常モンスター×2

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

①:「始祖竜ワイアーム」は自分フィールドに1体しか表側表示で存在できない。

②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードは通常モンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されず、このカード以外のモンスターの効果を受けない。

 

ひよの「これこそ、総ての効果モンスターを無価値にするモンスターです!

まさかレンさんのデッキで召喚できるとは…」

レン「こいつは、アンタの全ての帝の効果も受けない!

これならアンタの切り札は怖くない。」

みく「こいつは……確か全国大会決勝でライアスが使ったモンスターカードだったわね。」

英心「ほほお…あやつ、思わぬ切り札を用意していたのだな。やりおる」

鈴木「こりゃ、部長さんかなりキツイんじゃね?

手札ってあとはライザーくらいだろ?残りの一枚も多分モンスターだろうけど、三体のモンスターを速攻で召喚したところを見ると、バルバロスってところか?」

英心「ほむん!こうして悪の貧乳は成敗されたのだ!!フハハハハハ!!!」

みく「それはどうかしらね?」

英心&鈴木「何!?この状況でレンを倒せる切り札が有るとでも言うのか!?」

レン「オイこらテメエら、人のデュエルで勝手に死亡フラグ建設してんじゃねえぞ!」

みく「さあ、どうするの?レン」

レン「………。」

レン(ワイアームにはモンスター効果が一切利かない。

その上でワイアームに対処するモンスターがいるとしたら、圧倒的な攻撃力か?

あるいは……くそっ、今ワイアームを失ったら、さすがに勝つのはキツいか……?)

レンの手札にはモンスターのカードは無い。

デュエル中からレッドアイズのカード以外を見せていないことからも分かるように、手札事故をおこしていた。

ここでワイアームを失えば、後半には帝に手も足も出ない非耐性モンスターばかりで戦うことになるだろう。

今までのみくのプレイングから考えて、それは決して歓迎できる状況では無い。

レン(一応今の状態ではまだワイアームを倒せるカードはみくの場に存在していない。

そして、手札からモンスターの効果を無効化する魔法・罠カードは、ここ数年で出たカードの中には無かったはず。)

昨夜徹夜でカードの知識を非効率に叩きこんだレンのライブラリーの中に、検索に引っかかるカードは無い。

攻撃しても問題は無い。しかし、藪をつつくことになるのではないかという懸念もある。

レン(………どうする?)

 

 

レナ「にー……」

みく「悩んでるわね…でも結果は同じよ!あたしがアイツを召喚すると決めた瞬間に、アンタの負けは決まったのよ!!でもそれは恥じることじゃないわ。光栄に思いなさい。あたしを本気にさせたこと!」

英心「おのれ貧乳め!悪あがきを!!」

鈴木「……反撃の機会…捨てるか?レン君」

レン「俺は――」

 

ひよの「あーもうじれったい!!レンさん!やっちゃうのです!!ワイアームは無敵です!!」

 

レン「あ?」

ひよの「レンさんデュエルの前に言ってたじゃないですか!!

『勝つ!!』って!!

私あの言葉本気でかっこいいって思っちゃったんですよ!?ここであなたがヘタレたら、私安い女みたいじゃないですかー!!」

レン「……んな理不尽な…」

ひよの「責任とれー!!負けたら明日の一面あること無いことボロクソに書いてやるー!!バカー!!勝てーー!!勝って下さいぃーー!!」

レン「……………。」

 

《いいかレン。女ってのは、女は禿げ親父の頭より薄っぺらな仲間意識と理不尽な程の自己愛で出来てるもんだ。》

《なんだよそれ!?すっげえ嫌な奴じゃん!》

《そうだな。けど、大変遺憾ながら、俺達男は、連中を機嫌良くしておく義務が有るんだ。》

《えぇ~!?何でだよ!そんな我儘なやつらを何で偉ぶらせておくんだよ!?》

《ハハッ。ガキにはまだ難しいかもな。だが、俺達男だってそう褒められたもんじゃ無い。

男は5割以上の欲望と3割以下の見栄で生きているんだ。

《それ残り二割どこ行ったんだよ?》

《ああ、そいつはな………》

 

レン「――残り二割は、男の欲望と見栄を5割以下に抑えてくれる女が出来た時に生まれる……”戦うと言う意志”。最期はそれで全てが埋まる。だからそれまでなるべく女は機嫌よくさせておけ。だったな…フライヤー」

ひよの「はえ??」

鈴木「レン…!!」

レン「ったく、アイツの言葉はいつも最後に台無しだったな……。――バトルだ!!ワイアームで炎帝家臣に攻撃!!」

ひよの「それでこそレンさんです!!」

みく「覚悟は決めたってわけね!!なら見なさい、あたしの最強のしもべ…大地の神の存在(すがた)を!!」

レナ「大地の神……ってまさか!??」

みく「三体の家臣を生贄に捧げる。」

鈴木「ちゃんとリリースって言えよ。教育上よろしくない。訴えられるぞ」

みくが三体の家臣を生贄に捧げたその瞬間――。

ひよの「きゃあ!?」

英心「な、何じゃ!??」

突如として、大地が揺れ始めた。その場にいた次第に地割れが起き、その内に木々は支えを失いその巨躯を地に伏せた。

鈴木「おっと、あっぶねえ!!」

レナ「ひよのちゃん!危ないからこっちに来て!!」

ひよの「何で一年生に子供扱いされるんですかー!?」

英心「しかし無暗に動いては危険じゃ!!ここは一番運動神経があり、剣道で見切りを習得しておるファム妹に従うべきだ!!」

そしてついには、地の底から巨大な腕が表れた。

レン「こいつが…この地震の正体か……!!くそっ、相変わらず地球と生き物に優しく無いカードゲームだなオイ!!」

みく「問題無いわ。この裏山は、あらゆる魔を封じ込めた霊山なの。だから、こいつの召喚の反動も、この山一帯だけのはずよ。」

レン「ハズって…!!そんなアバウトな保険でこんなもの召喚したのかテメェ!!」

みく「――その者、降臨せしむれば、灼熱の疾風大地に吹き荒れ、生きとし生ける者すべて屍とならん。」

レン「――ッッ!!!」

みく「さあ、来なさい。かつて大地をリセットした大地の災害。

三幻神の一柱(ひとつ)。『オベリスクの巨神兵』を召喚!!!」

『オオ……オオオオオオオオオオオオオオオォォォォォーーー!!!!』

強大な腕を伸ばし、その極大の巨躯(カラダ)が、大地に立つ樹木をなぎ倒し、熱風により木の葉を焼き払い大地に降臨した。

レン「ぐっ…!!!」

レナ「うそ…うそだよ……。何でオベリスクが…三幻神がまだ地上にいるの!?」

みく「ああ…!!やっぱりこいつを召ぶと気持ちいいわ!!みんなあたしに平伏しなさい!!」

レン「くそっ……相変わらず傍迷惑なカードばっかり存在するゲームだぜ!!」

レナ「レン君!!オベリスクを倒せる!?」

レン「知るか!!カードを一枚伏せて、ターン終了だ!!

ってか突風がやべええええええーー!!」

みく「あたしのターン!さあ、行くわよオベリスク!!」

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!』

 

オベリスクの巨神兵 星10

神属性 幻神獣族

4000/4000

このカードを通常召喚する場合、3体をリリースして召喚しなければならない。①:このカードの召喚は無効化されない。②:このカードの召喚成功時には、魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。③:このカードは効果の対象にならない。④:自分フィールドのモンスター2体をリリースして発動できる。相手フィールドのモンスターを全て破壊する。この効果を発動するターン、このカードは攻撃宣言できない。⑤:このカードが特殊召喚されている場合、エンドフェイズに発動する。このカードを墓地へ送る。

 

みく「ワイアームに攻撃よ!!

神の鉄槌―ゴッドハンド・クラッシャー!!!!」

 

オベリスク4000 VS ワイアーム2700

レンLP2200

 

 

レン「さあ、行くぜ!

リバースカードオープン!!『モンスターBOX』!!!」

 

モンスターBOX

永続罠

相手モンスターの攻撃宣言時、コイントスを1回行い裏表を当てる。当たった場合、その攻撃モンスターの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで0になる。このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に500ライフポイントを払う。または、500ライフポイント払わずにこのカードを破壊する。

 

英心「この男はギャンブル以外の戦術を知らんのか!??」

レナ「でも、実際今これ以上のカードは無いよ!」

英心「………。」

レナ「いっけえー!にー!!」

レン「……。」

レナ「あれ?どうしたのにー?」

風に煽られて立つことが精一杯な中、強気を崩さなかったレンの表情が初めて青ざめている。

レナ「にー??」

レン「………突風が強すぎてコイントスが出来ねえ…!!」

召喚時から吹き荒れる突風が邪魔して、まともにコインが投げられないでいるのだった。

少しずつ弱まってはいるが、まだトスするには辛い風だ。

英心「バカかおのれは!!!」

鈴木「うわー…神どころか地球まで敵に回ってるじゃん。レン君マジ四面楚歌だわ~」

ひよの「レンさん!神に向かって投げつけるのです!!」

レン「――それだ!!いっけええええええーー!!表出ろおおおおおおおーー!!」

ブンッ!!前代未聞のワインドアップからの全力投球コイントスが、神に挑んで行く。

だが…。

英心「そんなことしたら何処行くか分かんらんだろう!!この風向かい風であろうが!!――って、痛ェ!?」

逆風に煽られて戻って来たコインが、英心の頭に直撃し、『裏』側で落ちた。

レン「くそっ!!徳の低い坊主のせいで裏目に出ちまった!!」

英心「拙僧の責か!?否、ギャンブルなどに仏が力を貸すものか!!」

レン「相手は神だろ!!異教徒との戦いくらい助力してくれたっていいだろ!」

レナ「レン君前ー!!神来てるーー!!」

レナ「あああああああああああーー!??」

 

レンLP900

 

レン「くっそ…使えねえな仏!!」

英心「それ以上仏を侮辱するなら仏敵とみなすぞ貴様!!ってか泣くぞ!!!」

レン「泣けよバカ野郎!!その涙で神が倒せるならな!!」

みく「フフフ…いつまで持つかしらねえ?そのワイアーム。カードを一枚伏せて、ターン終了。」

ひよの「うう…殴られたワイアームが痛々しいですぅ……。

レンさ~ん」

レン「涙目で見るな涙目で!俺のターン、ドロー!」

みく(どうせあいつに出来ることなんて、モンスターBOXを維持しながらラッキーヒットを狙うだけ…。だったら攻撃しなければ勝手に自滅する――)

レン「スタンバイフェイズ、モンスターBOXを維持せずに、破壊する!」

みく「はれぇ??」

レン「ワイアームを守備表示に変更。そして、カードを一枚伏せて、ターン終了。」

レナ(もし部長さんのリバースがモンスター効果無効カードだったら、ワイアームは倒される。

確かに維持コスト500は明暗を分けるかもしれない。でもLP900も400も普通は大きく変わらない。まして攻撃力4000の前じゃ尚更だし、可能性に賭けた方がまだマシな場面だって幾つもある。そんなことギャンブルデッキを使ってるにー自身が一番最初に考え着くはず。何でレン君は、可能性を潰したんだろう?あのリバースカードが、そこまでして使いたいカード……?でもだったら尚更ライフを払ってでも残した方が良い。まだ一枚も相手はサイクロンを使ってないんだし、囮として残しておく価値はあったはず……。)

みく「まあ、いいわ。維持しないならしないで、何の問題も無い!!あたしのターン、ドロー。オベリスクで攻撃!!」

英心「バカめ!ワイアームは守備表示だぞ。殴ってところで何の意味がある!

これだからパイオツに栄養が行かぬ愚かものは!!ハッハハハハ!!!」

レナ「やっぱりアレが伏せてあるんだ!にー逃げてー!ワイアームがー!!最後の希望がーー!!」

みく「さあワイアーム!そこのハゲもろ共沈みなさい!!」

英心「誰がハゲじゃ!!ベリーショートじゃ!!」

みく「リバースカードオープン『帝王の熔撃』!

これでワイアームのモンスター効果を無効化する!」

英心「何!?それではワイアームが只のバニラモンスターになってしまうではないか!!

おのれ貧乳め!!余分な養分を頭に回す暇があったら乳に回さぬか!!」

みく「フフフ…このデュエルが終わったら、次はアンタの番よ。首を洗って待ってなさい……!!

ゴッドハンド・クラッシャー!!」

レン「…………。」

神の拳に触れたワイアームは粒子レベルに粉砕され、跡形もなくなってしまった。

ひよの「あぁ…ワイアームが……レンさぁん……ううぅ…」

ワイアームが破壊されたことで、ひよのは一層目に涙をためてレンを見つめた。

レン「だから恨めしそうな目で…」

ひよの「ワイアームの敵を取ってくださぃ……うぅ…。このまま負けたら在学中ずっとレンさんの悪評を一面に書き出してやるのですー!カッコつけて負けたカッコ悪い人ってレッテルを学校中に広めてやるのですぅ……!!」

レン「………女ってのは本当に理不尽だ。」

ひよの「だから負けないでくださいぃー!ワイアームがいなくても、まだ勝つ方法はある筈ですぅ!」

レン「え……??」

レン(もしかしてコイツ、俺がワイアームを失って心が折れそうになってると思ってるのか…?今までのってこいつなりのエールだったのか……??)

 

不器用過ぎて引くわ…などと考えるレン。

 

ひよの「『勝つ!!』って言ったレンさんの言葉を信じて、公平な立場として見るべき試合にカードまで送っちゃったんです!ここで負けたら無様なのはあなただけじゃないのですぅ!

あなたの勝負には、二人分のプライドが掛ってるんですよ!!」

 

しかし、心で悪態を突きながらもその心は燃えていた。

 

レン「………心配すんなよ、ひよの。」

ひよの「ふぇ??」

レン「俺はまだ、負けちゃいない。そろそろ良い風だ。見てろよ。

リバースカードオープン!『運命の分かれ道』」

みく「そのカードは…」

英心「コイントスの結果次第で2000ポイントのライフを回復するカードか!

しかし、今外せば即負けじゃぞ!?」

鈴木「しかも、向こうさんはLP2800外しても負けじゃない。これはあまり分の良い賭けじゃないべ?レン君」

レン「このままじゃ死ぬ。やっても勝ちじゃない。命を今日つなぐだけ。そんなギャンブルは幾らでもやって来た。別に珍しいことじゃない。コイントス――!」

みく「もう今日何回目かしらね。コイン弾くの。トス」

レン「そう言うなよ。俺なんて普通の人生送ってたら絶対しない回数弾いてんだ。今日ぐらい付き合えや。みく」

みく「これで最後だといいけどね。もちろん、こんなカードの効果でライフを失うなんて許さない。

当然表を出してくれるでしょ?」

レン「その答えは、投げたコインだけが知る」

レナ「にー…!」

ひよの「うう~!」

二人の少女は祈るように手を合わせた。表か裏か。そのどちらかで勝敗すら左右する。

このデュエルは、普通のデュエルよりも、見ている方がドキドキするデュエルだ。

フサッ。

草の生えた僅かな茂みに落ちたコインは、双方異なる面を向けていた。

みく「ふん。ライフなんてもう只の飾りよ!」

レン「当然、俺は勝つ!!」

みくのコインは裏、レンのコインは表だった。

レナ&ひよの「やったーー!!!」

祈りをささげた少女二人は手を取り合って喜んだ。

 

みくLP800

レンLP2900

 

みく「ターンエンド!」

レン「……手札はそろった。ベットは用意した。あとは、このドローに賭ける!紅き瞳の可能性に!!

ドロー!!!」

みく「まさかアンタ、レッドアイズを三枚積んでるわけ?よくやるわね。ギャンブルカードにマイナーカード。何でそんなカードばっかりでデッキ組んでるの?」

レン「………分からないな」

みく「はあ!?自分で組んだデッキでじゃない!!分からないってどういうことよ!?」

レン「カードそのものには確かに強弱が有るんだろう。俺も『ツイスター』を使うくらいなら『サイクロン』を入れるよ。だが、可能性に賭けた時、勝った方がより良い状況を生むカードが有るのなら、俺はそいつを信じたい。

埋もれた凡夫や非才でも、這い上がれば生まれる可能性があるってこと、俺は教えてもらったから。

分からないのは、人が決めた価値観でカードを決めることだ!使いもせずに弱いとなじり、笑い物にすることだ!!」

レナ「おお~!!レン君カッコいい!!」

ひよの「………素敵なのです」

みく「ご立派ね!でも残念。先輩として教えてあげるわ!!いくら使いこなしても、使えないカードってのは出てくるのよ!!デュエリストの努力と実力では、どうにも出来ない限界がある!!それが事実よ!!」

レン「だったらセンパイに教えてやるぜ。カードにはそのカードに相応しい、最高のデッキ構築が必ずあるって。

この『真紅眼の黒竜』でな!!」

みく「――っっ!?三枚目!!

でも召喚出来なきゃ意味が無いわ!!」

レン「手札から魔法カード発動!!『スター・ブラスト』!!!」

 

スター・ブラスト

通常魔法

500の倍数のライフポイントを払って発動できる。自分の手札または自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選び、そのモンスターのレベルをエンドフェイズ時まで、払ったライフポイント500ポイントにつき1つ下げる。

 

レナ「これでライフを1500払えば、レッドアイズのレベルは4で召喚できる!」

レン「俺はライフを2500支払う!!」

全員「何で!??」

 

レンLP400

 

レン「これで準備は整った。

‐‐紅き瞳の黒竜よ、主と共に力を奮い、神を砕く力と成れ!!

召喚!真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)!!」

 

英心「何をやっとるんじゃあやつは!?何故あのような無意味な過払いを!?」

レナ「まさか…レン君!!」

レン「ライフは投げ捨てるもの。だそうだな、みく」

みく「ええ、そうよ。」

レン「俺そいつはやっぱり勿体ないぜ。俺にとってライフは、ギャンブルのための軍資金みたいなものらしいからよ。投げ捨てちゃならねえ。手札から『下剋上の首飾り』を発動!」

 

下剋上の首飾り

装備魔法

通常モンスターにのみ装備可能。装備モンスターよりレベルの高いモンスターと戦闘を行う場合、装備モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみレベルの差×500ポイントアップする。このカードが墓地へ送られた時、このカードをデッキの一番上に戻す事ができる。

 

みく「そ……そのカードは!?」

レン「これにより、俺のレッドアイズは、オベリスクとのレベルの差分攻撃力を500ずつ上げる。」

英心「なんとお!!」

レナ「だから限界までレッドアイズのレベルを…!!」

 

真紅眼の黒竜

星2

オベリスクの巨神兵

星10

10-2=8×500=4000

 

真紅眼の黒竜 ATK6400

 

みく「そんなバカな…!!神を…超えるなんて」

レン「さあ、バトルだ!!行け、レッドアイズ」

みく「でも甘いわよ!!あたしの手札にはライザーがいる!『連撃の帝王』の効果発動――!」

レン「チェーン2!『サイクロン』!!」

みく「何ですって!?」

レン「『ツイスター』では無く『サイクロン』を使うと言ったはずだ!!」

みく「ぐっ…!!」

レン「レッドアイズの攻撃!!リベリオン・メガ・フレア!!!」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーー!!???』

『ギャオオオオオオオオオオオーーン!!!』

 

大地の神が屠られる。可能性を携えた黒き竜の炎に焼かれ。

神の消滅により、神の召喚の被害を受けた大地は、オベリスクを吸収し再び元の姿を取り戻した。

そして……

 

みくLP 0

 

この攻撃が決まった瞬間、レン・ファムグリットの勝利が決定した………。




弱いと言われ続ける真紅眼の黒竜が神に対して下剋上。
はい、言いたかっただけです。

ご意見・乾燥お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~5

神と竜の決闘が終わった翌朝、彼らは新たな席に着くことになる。


生徒A「なあ、昨日の地震って何だったんだ?震源地が分かって無いらしいじゃん」

生徒B「アレもう明らか大震災並みの揺れだったのに、何故か家で話したらさ、地震なんて無かったってお母さん言うんだよねー」

生徒C「でゅえる部の部長さー、まるで知ってたみたいなタイミングで俺ら体育館から避難させたよなー」

生徒たち「「「謎だよなー」」」

昨日あれだけ大々的に行われたでゅえる部部長、坂上みくと、新入生レン・ファムグリットのデュエルなどどこ吹く風で、神の召喚時に起こった災害レベルの召喚余波の影響により被害を受けた学園校舎を揺らした超局所的大震災の話題で持ちきりだった。それと言うのも――

先生「ほらみんなー話してないで片づけしろー」

教室には割れたガラスの破片が辺りかまわず散らばり、壁や黒板にはひびが入り、どうこうしても本日中に授業が行えない状態になっていたせいだろう。とばっちりを受けて後片付けをさせられている生徒からしたら、愚痴の一つも言わずにはいられまい。

生徒D「せんせー。やっぱり生徒が震災の片づけさせられるのはおかしいと思いまーす。」

生徒E「ってか業者呼ぼうぜー。ここ進学校だろー?こんなことさせといて良いわけー??」

先生「仕方無いんだ。だってどういうわけか世間的には地震なんて起こって無かったことになっているんだもの。そんな状態で業者なんざ呼んだらクーデター疑われるレベルだぞこれ。生徒が暴徒と化したとか新聞の一面飾るぞ?下手したらお前らの進学に響くぞ?良いのか?良いのか?本当にいいのかー??」

生徒A「キタナイ。大人ってキタナイ…」

生徒F「ちょっと月海くん、寝てないでどいてよー掃除できないじゃない」

生徒G「アレ?そういえば月海の隣の席のやつい無くね?」

 

 

そのころ、現場にいた目撃者の1人は。

飛娘「………。」

レン「………。」

店長「おーい、飛娘ちゃーん。そろそろ休憩行っていいよー。新しく出来た彼氏とお昼行ってきなよ」

飛娘「〜〜ッッ!!!店長!何度も言ってるアル。違うですヨ!!この人が何でここにいるのかワタシもさっぱり分からないヨ!!助けてほしいアル!!」

カードショップATMのアルバイトスタッフこと、王 飛娘(ワン フェイニャン)は、幼いころに強面の男達に拉致されて日本に来た中国人である。その経緯から目つきの悪い男に対して恐怖心を持つようになってしまった。だと言うのに、一昨日初めて店に来てからと言うもの、午後4時過ぎ位になると、この赤髪の少年‐レン・ファムグリットは店に来る。因みに今は正午。思いっきり学校の時間なのだが…。普段なら自分の苦手なこの男が来る時間ではないため、すっかり気を抜いていた飛娘は突然の『よぉ、中国』と挨拶して来たレンの顔を見た瞬間、思わず泣きそうになってしまったほどである。

飛娘「だ、だいたいアナタ!何でいつもいつも店に来るアル!?昨日なんて無理やり自転車乗せられて、またどこかの国に拉致されるかと本気で思ったアルよ!?」

レン「まあ、色々あったんだ。聞きたいか?」

飛娘「もうこの際だから聞かせてもらうアル!!いつまでもワタシやられてばかりじゃ無いネ!!追い詰められたら窮鼠でも猫を噛むアル!!ウガー!!」

レン「よし、じゃあ腹も減ったしまずは飯行くか。ラーメンと肉まんどっちがいい?中国」

飛娘「じゃあまずはその中国呼びから改めるアル!ワタシ、王 飛娘ネ!!」

レン「そうだな、俺は今日ハンバーガーの気分だなー。毛須バーガーにでも行くかー中国」

飛娘「無視アルか!!ワタシの言ってること聞いてないアルか!!しかもラーメンと肉まんって言ってたのに全然違う物出てきたゾ!どんだけ気分屋アルか!言葉のキャッチボールをするヨロシ!!」

レン「んじゃレッツゴー」

飛娘「ま、待つネ、ワタシエプロン着たままアルよ!」

レン「いいじゃねえの。料理するならエプロンだって着けるし。あ、アンタに昼飯作ってもらうのもアリか」

飛娘「言ってることが変わり過ぎるアル!!おまえ実は情緒不安定な人だろ!!」

店長「いってらっしゃーい」

 

 

飛娘「………アレ??」

レン「何だ?」

道中、レンが気ままに発言し、飛娘がツッコむ漫才のような会話をしている内に、レンが『よし、ここにしよう』と適当入った店が本日の昼食の場所に決まった。それ自体は別に文句はなかった。飛娘は好き嫌いも無く何でも食べる良い子だ。エレベーターで展望室まで上り、高級感溢れる入口を潜り、ウェイターに椅子を引いてもらい、ワイングラスのようなコップに水を注いでもらい、食器の横と縦にフォークとナイフとスプーンが整列しているテーブル。

高級感溢れる内装ながら他に一切の客はおらず、テーブルには【本日貸し切り】と書いた物が置いてある。更には

飛娘「………何アルか…??このメニューに書いてある金額…」

0が四つほど付いた一品で万単位の値段が書かれたメニューを見て、ようやく飛娘は、ここが超高額のレストランであることに気が付いた。少なくとも昼食のために高校生同士で来るような場所では無い。

飛娘「ちょ、ちょっとアナタ、ここ何処アル?!」

ウェイターに聞こえないように小声でレンにたずねる。

レン「は?飯屋だろ」

しかしレンはそんなことお構いなしでメニューを見ている。値段を見ていないのか?そんなはずが無い。どういうことなのだろうか?飛娘は訳が分からなかった。レンの目にはこの場所が、街の寂びれた定食屋にでも映っているんだろうか?

レン「…決まったのか?」

飛娘「何言ってるアルか!?こんな高いところでご飯食べるお金なんて持ってないヨ!!」

レン「……ん、そうか。そういやアンタいつもバイトしてるもんな。苦学生か。ま、心配するな。金ってのは常に、金持ちの所にあるものだ。」

飛娘「へ…??」

ぽかーんとする飛娘をよそに、腹が減ってとりあえずさっさと食事がしたいレンは、ウェイターを呼んで

『一番良いヤツを頼む。5人分』

と言ってコースを決めた。

注文を決めたレンはくわぁ~と欠伸をして背伸びする。どう見てもテーブルマナーにうるさそうな店なのだが、誰も彼もスルーだった。

レン「あ、そーいやー、俺は今日学校休みなんだが、アンタは何であんな時間にバイトしてたんだ?」

飛娘「え…?ああ、ワタシ夜間の学校行ってるカラ…」

レン「ふーん。学校楽しいか?友達はいるのか?」

飛娘「………なんかお父さんと話してるみたいネ。あんまり楽しくは無いアル。友達も出来ないし。でも、ワタシ人より勉強しないと就職も出来ないネ。訳ありの外人ダカラ…」

レン「そーか。苦労してるんだな」

その心のこもって無い適当な言葉に、少しだけムっとし飛娘は、ちょっとだけ嫌味を言ってみた。

飛娘「そうアルよ。ワタシ苦労してるアル。昼間からこんな高いレストランでご飯食べられるボンボンとは違うネ。」

その言葉に、レンは特に気分も害さずに言う。

レン「ファムグリット家は一般の中流階級の一家だよ。俺の金は、ガキの頃命がけで勝ち取った泡銭だ。レナの親父さんから小遣い貰ってないしな。レナも大概貯金をやりくりしてるみたいだが」

飛娘「レナ『の』親父さん…??」

レン「ああ。レナの親父。エックス・ファムグリット。趣味は愛娘とデートすること。座右の銘は娘大好き。」

飛娘「アナタ達、兄妹じゃ無かったアルか?」

レン「ああ。義兄妹だよ。もっとも俺は拾われた側だがな」

飛娘「……複雑な家庭の事情アルか」

レンのお察し下さい的な発言は、あまり踏み込んで聞いていいものでは無いように思えた。

だがレンはさらっと話し出す。

レン「全然。ざっくり言えば『父親がギャンブルで破産して売られちまった俺は、ギャンブルで成り上がり、仲間を作りながら冒険して、売られた母さんを助けるために旅をしていた。長い長い冒険の果て、ようやく母を見つけたはいいけど、実は親父は俺が邪魔だったから、一芝居打って俺を売っぱらって金貰ってて、母ちゃんもグルだったから、これを機に独り立ちしようとした結果失敗して拾われた』ってだけだから。」

飛娘「………あの、ゴメンナサイ、長くて良く分らなかったアル…」

レン「母を訪ねて三千里したら実は母親に捨てられていた。」

飛娘「………っ」

さらっととんでもない身の上話を聞かされてしまった飛娘は、背筋が凍るのを感じた。彼女自身も、拉致されて母校に帰国出来ず家族にも会えず、割りと常識外れに不幸な方だが、レンのそれは、更に常軌を逸している。そして、何よりも恐ろしいのは、そんな当の本人が、それを他人事のように平然と語っているだ。少なくとも飛娘から観ていたレンは、その過去に何か感情を抱いているようには全く見えなかった。本に書いてあったことを音読でもしているかのように、淡々としている。

 

 

飛娘「あの…っ」

何を言ったら良いか分からないまま口を開いた。その時、

みく「あら、レン。先に来てるなんて、いい心がけじゃない。誰よりも早く来ているなんて、部下の鏡だわ。」

昨日レンと戦った少女が、その場に現れた。

レン「やっと来たのか。人を呼びつけておいて遅刻してしかもその態度は何事だ。俺がアンタをペットとして仕付けるべきか?」

みく「何よ、細かいこと気にするとモテないわよ?」

全く悪びれないみくに対して無言になるレン。

レン「………。」

みく「………あー…ま、まあ?あたしが悪い所は、ゴメンだけど?べ、別にモテなくてもアンタの居場所はあたしの部につくってあげるわ。大丈夫よアンタ見た目は良い方だからさ」

レン「………。」

みく「………っっ分かったわよ!!ごめんなさい!呼びつけておいて遅刻したあたしが悪かったですっ。」

レン「………。」

みく「……だ、だからそうやって不機嫌そうに睨むのもう止めてよぉ……ほ、本気で怖いんだから…」

レン「……アンタは人の上に立つ前に、人に対するある程度の礼節と敬意を知るべきだ。」

みく「………。」

レン「返事は?」

みく「…………はい。」

今のみくの姿を見て、実は彼女の方が先輩だと分かる人はいるまい。年下にこれでもかと言うほど更正させられている…しかも説教までされて小さくなっている彼女を……。

パシャッ。

突然シャッター音が鳴った。

ひよの「おお~高飛車で有名なあの坂上みくさんが男性に手玉に取られてます!これは人目に付きそうな記事が書けそうです~!タイトルはーそうですね~~。『でゅえる部の部長、年下ご主人様にタジタジ。メイド部への改名は秒読み!?~~イケないみくを、もっと叱って下さい。ご主人様っ!!~~』で行きましょう」

みく「ちょっと何撮ってんのよ!!消しなさいよソレ!!」

ひよの「もちろんお断りします~。記者の報道の自由と権利は、永遠に不滅!正義は我に在り!!ですっ」

ひよのは啖呵を切ると脱兎の如く逃げ出す。

みくは追いかけるが追いつかない。すさまじく速い。しかも小さいから小回りも利いてよけいに辛い。

レン「……どうでもいいが、凄まじいAV臭がするタイトルだな。本当に学校新聞か。実は裏ビデオのタイトルなんじゃね?」

そのAVのタイトルに主役級の扱いで記事にされそうになっていると言うのに、レンは完全に他人ごとである。

みく「変なこと言ってないで手伝いなさいよ!もしこれが出たらアンタも変な目で見られるのよ。いいの!?」

レン「おー……人の目とか興味ないな。それでアンタが危ない趣味に目覚めたってことにすれば、丸く収まるだろ。」

レン(……と言うか、今の写真でそこまで想像出来るやつがいたら、そいつこそ変態の猛者だろ。ただ俯いてるだけの写真だぞ)

レン本人の目つきが悪いことが坂上みくが手玉に取られている感が出ていることは全く気が付いていないレンなのだった。

 

 

ひよの「よっし!!レンさんからもお許しが出ました。これで天下御免で記事が書けますよー!!」

みく「あたしの許しは出てないでしょ!!」

ひよの「有名人に肖像権はないのです!」

みく「ふざけんなぁー!!んもうーー!!レン!!お願いだから手伝ってよ!!もう本当にムカつくーー!!レンー!」

レン「………さっきから何でアンタは俺にばかり助けを求めてくるんだ。ハァ…面倒くせえ。」

レンはため息を吐くと、心底めんどくさそうに腰を上げた。

ひよの「むむっ!レンさんが敵に回りますか。しかし私は挫けませんよ!報道の自由のために、私は最後まで戦います!」

レン「レナ、木刀でカメラごとフィルムを叩き壊せ。」

ひよの「………ゑ?」

名前を呼ばれると、室内にはみく、ひよのの入室と同タイミングで入室したレナがレンの方を見た。

レナ「お~レナさんすっかりハブられてるかと思ったのに必殺仕事人役だったんだ。……では、いざ参る!」

どこから出したのか分からない小太刀サイズの木刀を腰の位置に構え、突進するように腰を低くした。

ひよの「ちょ!??待ってくださいレナさん。降参です!!って言うか良いんですか!?レナさんって確か剣道の有段者ですよね!?一般市民に剣向けていいんですか!!」

レナ「う~ん……ダメかな?」

レン「何言ってんだレナ。犯罪ってのは捕まるまではセーフなんだよ。最悪『時効』ってのがあるだろ。」

レナ「おお!そうか、にー頭良い!それじゃあ、改めて…」

ひよの「……こういう考えの人がいるから、わたしは『時効』って廃止した方がいいと思いました、まる。」

レナ「必殺奥義!スターライト・セイバー!!」

ひよの「きぃやあああああああああーー!??」

レナが振りぬいた木刀は、どういう原理かカメラの中のフィルムだけを一刀両断したのであったとさ。

 

飛娘「なにアル?この状況……??」

 




食事の席でしたとさ。


さらっとレンの過去を書いておきましたが、ギャンブル系の主人公にはありがちな話しなので、特に深く語る予定はありません。

両親に捨てられたからギャンブルで生きてきた子。とざっくり思っていればいいと思うお。
つまり6歳から自立しているわけですね。キャッ☆レン君大人~
これだけ書いてると、情緒不安定と言うよりは単にコミュ障な気もいたします。


ご意見・感想お待ちどうさまでした


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~6

ひよの「うう…せっかくの()()()()が真っ二つになっちゃいました……。」

レナ「うーん…本当は最後に撮った写真の所だけ上手く消しちゃうつもりだったんだけど……ごめんね、ひよのちゃん」

みく「いいのよ。他にもどんな写真があったか分かったもんじゃないんだから。世のため人のためよ。」

レン「つーかさらっと神業しようとしてたんだな、レナ。いつものことだが、練習くらいしてからやれよ」

全員好き放題話しながら仲よさ気に話し続ける様に、1人ポツンとしていた飛娘がようやく口を開いた。

飛娘「ちょ、ちょっと待ってほしいアル!レナ・ファムグリット、ここにいる人たちは誰アルか!?説明してほしいアル!!ワタシさっぱり分からないヨ!!」

レナ「あれ?ここにいるってことは、にーが説明してくれたんじゃないの?」

飛娘「ワタシ何も聞いてないヨ!!」

レナ「……にー?」

む~っと唸りながら、レンを非難の目で見るレナ。

レン「うむ。中国に会いにカードショップまで行ったはいいが、何で行ったのか目的を忘れちまってそのまま飯に誘ったら、たまたま待ち合わせ場所に来ていたんだ。運命って凄いな、ハハッ。」

レナ「うう~っ…にーの鳥頭~。ごめんね、飛娘ちゃん。ちゃんと説明するから。あと、にー、今晩はおしおきとしてにーの嫌いな梅干しの料理です。」

レン「それ、俺が外で食えば問題無くね?」

レナ「じゃあ、にーがちゃんと食べるまで、レナさんもご飯抜きです。伝え忘れたのはレナがにーに頼んだのも悪かったから、レナも一緒に反省します。」

レン「………。」

レンは冷や汗を掻いて黙った。自分に対する火の粉は幾らでも逃げられるが、自分の行動で他人が不利益をこうむるのは、レンのポリシーに反することだ。こうなるともう、従うより他に無い。レンを知り尽くしたレナならではのお仕置きだった。

レン「………せめて、少しでも小さいのにしてくれ…」

負けを認めたレンはお手上げとポーズを取った。

レナ「うん。分かったよ、にー」

ひよの「おお~人をおちょくるのが得意なレンさんも、妹には勝てないんですねぇ!」

レン「………(グリグリグリ)」

ひよの「ひゃあああああああぁぁぁーー!??痛いです、痛いですぅぅぅぅーー!!頭グリグリしないで下さいーー!!圧力はそうでもないのに的確にツボを突いてきて洒落にならない痛さですううぅぅぅーー」

飛娘「ずいぶん元気な子どもアルねぇ」

ひよの「子ども!?失礼ですねぇ!!」

子供扱いされた少女は、レンの両腕の拘束を外して(外してもらって)小さなカラダでめいっぱい胸を張って自己紹介する。

ひよの「私は文月 ひよの。坂上学園に通う新聞部の美少女部長、二年生!!ですっ」

レナ・飛娘「二年生!??」

レナ「そうだったのかぁ…」

飛娘「し、信じられないアル…」

ひよの「まったく、失礼ですねえ!!プンすかプンすか!!私はちょ~~っと背が低いだけで、胸はこの通り立派な大人の女性なのですよ!」

そう言って子供のような小さなカラダとは相反する大人のような豊かな胸部を両腕で寄せて上げて強調して見せる。確かにそこには、自分で言うだけの膨らみがあった。

飛娘「うう…ま、まさかこんな所にも敵がいるとは思わなかったアル!!」

レナ「にーは知ってたの?」

レン「ああ。知ってた。合法ロリだろ。部活動は違法のようだが。」

レナ「なるほど~。ああ、そう言えばレナ達って、お互いに自己紹介もしてなかったね。」

飛娘「ウソだぁ……ありえないアル」

お互い良く知らない間柄とは思えない弾け方をしていたこのメンツが、実は出会って2・3日。信じられる者がどの位いるのだろうか。

 

 

みく「そうね。とりあえずきちんと自己紹介しましょうか。

これから『長い付き合い』になるかもしれないし」

飛娘「何の話アル…??」

何で今日初めて会ったばかりで長い付き合いになることになるのか?その理由が分からなかった。

すると、横にいたレナからこっそりと耳打ちされる。

レナ「……この人は、オベリスクの所持者よ」

そう語るレナの目は、少しだけ真剣なモノだった。

飛娘「……分かったネ。」

その一言だけで、両者の会話は終了し、そして全てを理解した。

みく「じゃあ、まずはあたしからね。あたしの名前は坂上 みく。坂上学園の理事長の孫で、二年生の生徒。新設したデュエルモンスターズの研究会活動をする部活、でゅえる部の部長をしているわ。今日は、ある報告をするために、この集まりを開いた主催者よ。ここは坂上の分家が経営するレストランで、貸切にしているの。だから、ここでの会話は誰にも聞こえない。つまり他言無用であるということを忘れないで。」

みくはそう言いながら、レンとひよのの方を見た。

ひよの「改めまして、文月 ひよのです。同じく二年生です。自己紹介はさっき流れでやったので省きます。」

言い終わると、隣にいたレンに目配せする。

レン「……レン・ファムグリット。この中じゃ多分一番全員と接点があることだし、俺がどういう人間かは大体分かるだろう。次」

レナ「……レナ・ファムグリットです。レン・ファムグリットとは、義理の兄妹です。」

その発言に、レン以外の三人がぎょっとした。双子にしては似ているとは言い難いが、それでも実際に聞くと驚きがある。

レナ「剣道で女子中学全国大会の優勝記録があります。……『七皇』の1人、NO.2としてこの集いに参席するものです。」

レン「『七皇』…??」

飛娘「王 飛娘(ワン フェイニャン)ヨ。カードショップでアルバイトしながら、夜間の学校行ってるネ。同じく『七皇』の1人、NO.6として、参席スルヨ。」

レンが分からないまま、レナと同じく『七皇』を名乗る飛娘。

みく「……レン。あんたは『七皇』について、何も知らないの?」

レン「知らん。」

みく「そう、ならまずはここで私たちの話を聞いていて。」

レン「ハブですかそうですか。」

レン(察するに、ひよのも何が起こっているのかは分かっているようだしな。ハブか…寂しい。)

みく「では、まずあたしから報告します。『三幻神』の一柱、『オベリスクの巨神兵』を、一般人とのデュエルで召喚しました。被害地は、我が坂上学園の敷地内です。」

飛娘「とんでもないことしてくれたアル。いくら既に神の力が封じられているとはいえ、現状オベリスクの巨神兵は、『三幻神』の中では最強クラスの力を取り戻して来ているカードアル。弾みで覚醒なんかしようものなら、世界また滅ぶアルよ!!」

レナ「落ち着いて、飛娘ちゃん。問題はそこじゃない。そもそも、何故あなたが持っているの?そのカードを」

みく「拾ったのよ。私がでゅえる部を立ち上げる前に。中々強そうだったから、デッキに入れていたの。あたしなら操れると思って。」

飛娘「バカアルね。そんな気持ちで『三幻神』を使って。おかげであなたは神の怒りに触れることになったアル。」

レン「……神の怒り?」

ひよの「レンさんもみましたよね?オベリスクの召喚で、大地が割れたのを。」

レン「ああ。見た。」

ひよの「あれは、選ばれたデュエリスト以外が、神を召喚すると起こる、地球の崩壊現象なんだそうです。」

レン「崩壊現象ねえ…」

レナ「今回、この集まりが開かれたのは、『三幻神』の存在が再び力を取り戻してしまっているかどうかを確認するためなの。そして、その結果次第で二人に安心してほしかったの。もう二度と、『大神災』なんて起こらないって。」

ひよの「……っっ。怖いですね、またあんなことが起きるかもしれないなんて思ったら。」

レン「………。」

飛娘「だから、今回ワタシ達が呼ばれたネ。オベリスクが覚醒していないかを、見定めるために。デュエルで」

レナ「もっとも、間置かずに召喚すれば、それこそオベリスクを覚醒させることになるかもしれないから、少し間を置いて、ね。」

みく「ええ、分かったわ。面倒掛けるわね。」

レナ「そうですね。最初にオベリスクを見た時には、一瞬デュエルを中止させようかと思いました。それだけ危険なカードなんです。

本当なら、私が預かりたいところなんですが、残念ながら、現在はそれが難しい立場なんです。」

飛娘「ワタシには、そもそも()()()()()()()()()()()()ネ。

不安だけれど、貴女に持たせておく以外に無いアル。」

レン「…………。」

飛娘「身勝手のせめてもの償いとして、責任持って保管しておいて下さいネ」

みく「ええ。分かったわ。」

レン「ちょっと待てよ、中国」

飛娘「何アルか?」

レン「さっきから全く状況が掴めないが、要はそのオベリスクが元凶なんだろう?」

飛娘「元凶とはちょっと違うアル。でも、その一因であることは間違いないネ。というか、貴方もしかして、『三幻神』のカードのこと――」

レン「だったら破っちまえばどうだ?そんな物騒なもんならよ」

レナ「――それはダメっ!!」

レンの提案を慌てて否定するレナ。その表情は、これまでレンが見たことが無いほどに真剣で、焦っていた。

レナ「お願いだから、間違ってもそんなことしないで!!」

レン「何でさ?」

レナ「なんででも!!にー、お願いだから約束して。絶対に『三幻神』のカードを破ったり燃やしたりしようとしないで!!過去にやろうとして、死んじゃった人が何人もいるのっ!!だから…!!」

レン「分かった。約束する。だから取り乱すな。アンタらしくもない。」

レンを必死に止めるレナの目には、涙が浮かび、瞳には大切なものを失うかもしれないことに対する怯えが浮かび、両手はレンの両腕を痛いくらいに掴んでいた。まるで意図せず自殺しようとしている人間を止めようとするかのように。

飛娘「………。」

みく「………。」

ひよの「………。」

ちなみに傍から見ると生き別れる寸前の恋人同士のように見えなくもなかった。

みく「……義理の妹ってことはさ…」

ひよの「ええ。結婚も出来ますし子どもだって出来ちゃいますね!お似合いです!」

飛娘「レナ・ファムグリットは昔からこういう、目つきの悪い不良みたいな男が好みだったアル。」

ひよの「その話詳しくお願いします!!」

レナ「あ……ゴホン。まあ、そんなわけで、とりあえず様子を見て、いつデュエルするか決めるってことで!」

ひよの「あ~誤魔化しました。」

 

 

話がとりあえずのひと段落を迎えたところで、コースの前菜が運ばれてきた。

みく「あら?料理注文したの?」

レン「ああ。腹減ったし。全員分。」

みく「もう、誰が払うと思ってるのよ…」

レン「?俺だろ」

みく「え?」

何を当然のことをと言わんばかりに言い切るとテーブルに座る。

レン「女4人に男1人なら、俺が払わずに誰が払うんだ?国か?ダメだな。高校生が高級レストランでバカみたいに飲み食いする金を血税で賄いまーすとか、殺されても文句言えねえな。」

みく「い、いやあたしが払うわよ!!そもそもここを選んだのだって、勢いで迷惑かけちゃったあんたにせめてものお詫びがしたくて……じゃなくて!!そう!!未来の部員の活躍の前報酬なんだから!」

レン「俺は入るつもりは無いぞ。第一俺勝っただろうが。何だかわからんが、ついでにオベリスクも倒してアンタのケツも拭いてやったわけだし。」

みく「いや、あの……。だから、えっと…。うぅ………。~~~~ッッ!!じゃあもういっそそのお礼でもいいわよ!!ものすっごく不本意ではあるけど……。」

レン「そんなヤケクソな礼、聞いたことねえが…まあ、いいや。素直になれないツンデレなりに頑張ったんだろう。仕方ないから驕らせてやろう。」

みく「その上から目線ムカつくー!!っていうかデレて無いから!!ただのお礼とお詫びだから!」

レン「ああ、それがいい。そうしておけ。俺には生涯1人と決めた嫁がいるからな。惚れられても傷つけちまうだけだ。」

みく「誰がアンタみたいな人殺してそうな目した男に惚れるかあああああーー!!!」

レン「ハッハッハ。ツンデレのテレ隠しの絶叫はいいな。最高の酒の肴だ。」

ひよの「わぁ~このお料理美味しいですねー」

飛娘「な、何て贅沢なものが……ゆ、夢のようアル…」

レナ「にー。昼間から飲んで良かったの?バイクは?」

レン「今日は歩きだ。問題無い。」

みく「………未成年が飲酒は問題じゃないかしら…?」

レン「何だ、アンタ普段あんなに偉そうにしてて酒の一つも飲めないのか?まあ、いいことだ。お酒は二十歳になってからだぞ。」

ひよの「うわぁ、現行犯が何かほざいてます~」

みく「……負けるもんか。(ボソッ」

お酒くらい飲めるわよ!パーティーの時とか、偉い人とお話しする時とかちょっと口に含むくらいするもん!!」

レン「ほう、なら一緒にやるか?」

みく「望むところよ!今度は負けないから!ウェイター。白ワインを持ってきて。」

レン「俺はワイルドターキー。ボトルごと二・三本。」

レナ「あ、一本にしてください。帰る時大変なのレナなんだからね」

レン「む、そうか…。」

ひよの「もう既に奥さんみたいですね~」

飛娘「けっきょく、騒がしいのは変わらないアルね。あ~美味しいヨ。」

途中、良く分らない話をされながらも、結局勢いで誤魔化したまま、五人は料理を満喫していった。




この作品はフィクションであり、実際の人物や法律は一切関係在りません。

何が言いたいかと言うと……






飲酒
ダメ絶対




でもヤンキーとかご令嬢とか口にしてそうなイメージあるよね……。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~7

今日は何の日?知 ら な い☆



飛娘「…話って何アルか、レンさん。」

レストランでの食事と酒を満喫した一行は、それぞれ学校、家、店など帰路に着いていた。レン・ファムグリットは、連れ出した責任としてしっかり送り届けると言って、王 飛娘と一緒に歩いていた。しかし、目的は他にもある。あの時、みんなの前では聞けなかったことだ。

レン「ああ。いくつか教えて欲しいんだ。たとえば、『大神災』(だいしんさい)とか『七皇』って、何なんだ?」

飛娘「呆れた人アルね。レンさんは。『大神災』は、六年前に起こった世界的な大災害のことアルよ。干ばつ、落雷、地割れ。それぞれ三柱の神が引き起こした災害は、半年も続いて、地球最後を予感させるほど凄まじいものだったネ。もちろん覚えているハズアル。」

 

レン「いいや、全然。」

 

飛娘「それは絶対おかしいアル!大神災の名前を知らないだけならともかく、あの大災害を覚えていないなんて、経験していない人間くらいのものアル。

経験して無いっていうなら、もう異世界にでも居たとしか言いようが無いアル。そのくらい世界規模のものだったアルよ?」

レン「ふーん。つまり要約すると『大神災』とは『三幻神』によって引き起こされた、世界規模の超異常気象ってことか。」

飛娘「……そういうことアル。しかし、本当に何で知らないアルか?」

レン「俺にとって”過去”ってのは、目標乗り越えた後に落ちてる残骸みたいなもんだからな。乗り越えちまったらその次の未来(もくひょう)に向かって行くだろう?だから覚えてないんだ。多分。きっと。」

飛娘「………変な人。」

レン「よく言われる。さて、大神災は便宜上簡単に聞いたが、こっからは本番だ。アンタと、そしてレナが属している『七皇』についてだ。」

飛娘「それは…」

レン「おい、中国。まず最初に一つ言っておく。」

飛娘「何アルか?あと中国って呼ぶの止めてほしい――」

 

レン「何か一つでも(フカ)そうとしたら全裸にひん剥くぞ」

 

飛娘「ひいっ!??や、やっぱりヤンキーだったアルか!!」

レン「さあ、言え。人生で二度目の怖い思いをしたくなけりゃな。今なら洩れなくアメをやる。ほら」

飛娘「う…うう。絶対誰にも秘密アルよ??約束してくれるアルか?」

レン「ああ。考えておく。ほら、指きりだ」

飛娘「………。」

差し出された小指を見て、怯えた表情が和らぎ少しだけ笑顔になった飛娘は、指切りをして、レンを信じてみることにした。

飛娘「……分かったある。でも、ワタシの権限では言えないこともアルある。だから、そこだけは、『言えない』って言うアル。それだけは、許してほしいネ。レン」

レン「……分かった。」

飛娘「あと、もうひとつだけ」

レン「条件が多いな。オイ…」

飛娘「――ワタシのこと、ちゃんと名前で呼んでくださイ。レン」

レン「気が向いたら呼んでやるよ中国」

飛娘「……やっぱりアナタ、嫌いアル。」

 

その頃、飛娘のバイト先では……。

店長「………どこまでお昼行ったんだろう飛娘ちゃん。……休憩時間、過ぎてるんだけどなあ……。」

 

 

飛娘「分かったアル。じゃあこうしましょう。」

歩みを止めないままカードショップへ向かう途中、飛娘は一つ提案をした。飛娘「『七皇』のこと、知りたかったら、ワタシとデュエルするヨロシ」

笑顔でそう言うと、デュエルディスクを構える飛娘。レンも利き手を上げて…。

レン「え、ヤダ。何でそんな回りくどいこと」

そのまま耳を掻き始めた。

飛娘「えぇ…アナタそれでもデュエリストか?剣士は言いたいことは剣で語り、デュエリストはカードで語るアルよ!」

レン「…拳で語るってのは聞いたことあるが、カードで語る……あ、中二病か。大丈夫だぞ。俺にも精霊は視える。最近枕元で恨み事を呟いてくる女がいてな」

飛娘「それ精霊じゃないアル!悪霊ネ!!って言うかアナタそのヒトに何したアル!!」

レン「ああ。一昨日の夜にな。何か物音が聞こえて、すぅ…っと目を覚ますんだよ。傍目には目が開いてるって分からないくらいの大きさで。すると、頭の上の方に……。『よくも晩御飯を残したなあ…自信作だったのにぃ~~。ハンバーグ好きだって言ったじゃないいいぃぃ』って、金髪の女が恨めしそうに座ってるから見なかったことにして二度寝したんだ。」

飛娘「それレナのことアルよね!?間違いなくレナのことアル!!」

レン「そんなはずは無い。その女は髪短めだったし、第一俺はあいつの作ったハンバーグを残した記憶など……あ」

ふと何かを思い出したかのように表情を変えたレンは、段々と表情が青ざめていった。

飛娘「な…何アルか?今の意味ありげな『あ』は!?」

レン「………まさか…いや、しかし…そんな…でも……りぃ……」

飛娘「りぃ?りぃ――何アルね!??」

レン「お、バイト場着いたな。じゃあ俺はこれで。」

飛娘「待つヨロシ!!ここで何も聞かずに帰られたらワタシの方が怖くて寝れないアル!!幽霊は話題にした人間の所に来るって言うアルよ!?」

レン「それで俺の所から消えるなら良いことじゃないか。」

飛娘「全然よく無いアル!!レンさんだけ助かろうなんて、神さまが許してもワタシが許さないアルよ!?今夜おねしょしたらそのパンツ明日顔に叩きつけるあるよ!?」

レン「――私は一向に構わんッッ。」

飛娘「……ゑ」

その変態発言に、飛娘は完全に硬直した。

レン「さて、ジョークが通じてない今のうちに俺は帰るとしよう。

……パンツってのは、きちんと朝シャンした女子が洗濯された状態のものを履いて、スカート或いはズボンから健全にパンチラしているのを鑑賞するからこそ、脳内にメモリーする意味が有るのであって、断じて黄ばんだシミが付いてるのが良いとか、オリモノがついてる臭いのが良いとかって趣味は俺には無いからな。俺はパンツは純白とか縞パンや水玉とかが好きなんだ。デザインが可愛ければ紐パンもアリだがな。パンツをプレゼントするなら、きっちり魅せ方を研究してからにしてくれ。ただ見せるだけのパンツでは布以上の価値は無く、また観賞する意味も無いのだ。例えば中国なら中国なのだからチャイナドレスのスリットから見えそうで見えない微妙なラインで焦らすとか、前の方が短くなってるやつを恥ずかしげにたくし上げてパンモロとか装飾品一つで様々なシチュが……」

飛娘「――一体何言ってるアルかアナタはあああああぁぁぁーー!??」

レン「……ちっ、しまった。無駄口話してる間に覚醒しやがったか。ん?」

 

パリーン!!

 

レン「おっと!」

突如カードショップから何かが飛んできて、レンの鼻を掠めた。

飛娘「わっ!!」

更に今度はガラスの破片と共にもっと大きな物が飛娘に向かって飛んで

飛娘「ハイヤー!!」

中国拳法によってあっさり地面に叩き落とされた。

レン「何だ、喧嘩でもしてるのか?カードで語るのが嫌になって拳で語りだしたのか」

飛娘「あわわわ!!大変アル!早く止めないと。」

飛娘は急いで店の中に入って行った。

レン「………。」

レンは飛娘に叩き落とされた何かを確認する。どうやら店の机のようだ。足が折れているわテーブルの面は割れているわで、おそらくもうこの机だったものが元の机の役目を再び果たせる日は来ないだろう。熱心な工作家でも来ない限りは。レンは机を地面に叩き伏せた張本人が向かった方向を見て一言呟く。

レン「()()()()()()()()()()の間違いじゃ無いのか…?」

 

飛娘の言葉に一部疑問を持ちながら、とりあえず中へ入って行った。

 

 

不良A「どうなってんだよこの店はヨォ!!?

何パック買っても狙ってるカードが来ねえじゃねえかァ!!細工してんじゃねえのかァ!!」

不良B「おうおう、店長さんよぉオレら客のこと舐めてんじゃねえのォ?」

店長「め、滅相もございません。ただ、お客様がお求めのカードは、通称ノーマルレアという種類のカードでして!」

不良A「ふざけてんなよてめえ!!ノーマルカードにレアもウェルダンもあるかあ!!もう6000円もパック買ってんだぞ!!ストレージに無いってテメエが言うからよお!!大体公式サイトみてもそんなレア度書いてねえぞこの野郎!!」

不良B「オレらお客様を騙そうって魂胆かぁ!!」

世紀末っぽい恰好の不良二人が、店長に因縁を付けていた。

レン(………なんだろう。良く分らないけれど、言い分だけは不良たちの言っていることの方が若干分がある気がする。)

 

しかし、レン・ファムグリットは初心者故に遊戯王ノーマルレア(レアリティがノーマルなのに封入確率が箱買いしてもワンチャン有るかどうか)と言う概念があることを知らない。故に暴れているのは悪いとはいえ、彼らの怒りも尤ものような気がしていた。

飛娘「そこまでアルお客様!!店内での暴力行為はこの用心棒 王 飛娘が許さないアル!!」

レン(……用心棒…只のカードショップに用心棒……やっぱこの店細工してんじゃね??)

レンの中の疑惑が広がった瞬間である。

 

レナ「一応ね、N‐レアって、知っている人は常識レベルで知ってることなんだよ。にー」

レン「へーそうなのかー」

少し疑惑が緩和されていく。

レナ「まあ、販売元は販売当初から20年近く経ってる今でもその存在を認めてないんだけどね」

レン「それって詐欺じゃん」

レナ「あはは。でもそれを楽しんでる人もいるから、ね」

レン「……………お前なんでここにいる?」

レナ「ふへ?レナさん達見つけたから入って来たんじゃないの?」

レン「全然。」

ひよの「私もヤジウマですっ!」

レン「……うわ、本当に気付かなかった。」

ひよの「なんだか悪意のある言い方ですねぇ、もっかいヘッドロック行きますか!?大人の魅力や女子力を味わいますか!?」

レン「女子力って書いて物理って意味にするのはそろそろ止めて欲しいもんだな。で?何でいる」

レナ「飛娘ちゃんがスマホ忘れて行っちゃったから、レナさん宅急便。」

レン「速すぎだろ。何で俺達より後に出たハズのお前らが俺達より先に店着いてんだよ。」

レナ「それはきっと愛だよ。愛!みくちゃん先輩は、ワインの飲み過ぎでとても走れそうにないから置いて来ちゃった。」

レン「その愛、少しでもいいから酔っ払いの介抱に向けてやれよ……。」

 

坂上みく、現在酔いを覚ますために公園ベンチにて休憩中。

みく「うぅ…きもちわるいよぉ……」

 

レナ「それは無理。だってレナさん回復よりも攻撃職だもんっ。生粋のアタッカーだよ」

満面の笑みで物騒なことを言うレナに対して諦めのため息をつくと、レンは不良の前に出た。

レン「おい、お前ら」

不良A「あァ!?何だてめえオレらに喧嘩売ろうってかあ?」

不良B「オレら平中工業(ひらなかこうぎょう)とやろうってのかぁ?」

飛娘「レンさん…?」

レン「うるせえ、能書きよりもデッキを出せ。」

デッキを手にして睨みを利かせる。レンは殴ってやった方が楽だが、デュエリストならカードで語るという飛娘の言葉を思い出したのと、ついでに店に迷惑を掛けないようにとの配慮から、デュエルで穏便に追い出すことにした。

不良A「おお~?何だてめえ」

不良B「ハハハハ!!何言ってんだコイツ!!」

レン(ちっ……やっぱ駄目だったか。デュエリストならデュエルで語るって言ってたじゃねえか。中国のヤロウ…。

まあいいや。俺は拳の方がよっぽど流儀だ――)

不良A&B「俺たちにデュエルで勝て――」

一瞬、レンの姿が消えたと思った瞬間。紅い閃光のような何かが視界に入り、同時に不良Aの視界が上下に揺られて真っ黒になった。

‐‐無言のアッパーカット。

 

 

不良A「!!?ぶるぅああああああああああああああああああーーー!???」

 

 

 

相手の発声とほぼ同時。一瞬にして不良Aの懐に飛び込んだレンが、高速の右アッパーを顎の先端目掛けて思いっきり叩きこんだのだった。

レン「あん――?」

メキャっ。顎の砕けた音がした。不良Aは数秒間宙に滞空し、重力に従って床に叩きつけられる。

レン「………何だよ。デュエルで良かったのか。よし、殺るか」

不良B「AIBOおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーー!!!!??」

飛娘「ひ…卑怯者がいるアル!!デュエルを挑んで置いてリアルファイトなんて」

ひよの「おお~さすがは『赤髪のレン』さんですね。クリスマスに自身の髪と純白のサンタ服を真っ赤に染めなおした伝説の流血アッパーは健在なんですね!!」

レン「待て。髪はちゃんとカラーリングだ」

飛娘「サンタ服は血に染めたアルか!!?」

レナ「相変わらずキレの良いパンチ。レン君かっこいい~!」

どう見ても人としてあんまりの行動を見て、レナ・ファムグリットは目を輝かせていた。

飛娘「相変わらずお前の()()()()()()()()()()()()()()はおかしいアル、レナ・ファムグリット!!」

レナ「レナさん好みの男性のタイプは『自分より強くて可愛い男性(ヒト)』だからね!好きな人は別にいるけど~」

満面の笑みで好きなタイプを語るレナ。ジョーク等一片たりとも含まれていないマジな目をしている。

飛娘「アレの何処が可愛いアルかァ!!只の手の速いヤンキーアルっ!!しかも手のつけられない暴走ヤンキーアル!!」

レナ「そこが可愛いんだよっ!!強くて短気で危なっかしくて我が儘で、一人ぼっちじゃ寂しいくせに気を抜くと殺されちゃいそうで。でもでもっ、耳かきとしてあげたりしちゃって無防備に寝ちゃったりして、耳にふ~ってするとビクっ、ってして起きちゃうの。でもやっぱり眠いから寝ちゃうんだよ!!レンくん可愛いよ、レンくん!!」

1人思いっきり盛り上がるレナ・ファムグリットだった。

飛娘「………最後の方は、滅茶苦茶具体的だったアル。あと、お前の愛は、我が子に対する母親のものに近い気がするネ。真っ当な恋するアル。レナ・ファムグリット。」

レナ「レナさんは、好きな時に好きなだけ依存してきて、普段は気にも留めないくせにこっちから離れていこうとすると寄ってくる猫のような人が大好きだよっ。」

ひよの「ぶっちゃけダメンズ好きですね!ルックス良しでスタイル良し。料理が得意で包容力大。世の中のダメな男が群がりそうな女性です~。メモメモ」

レナ「うん。後はレナさんに勝てるかどうかだね~。天国か地獄か。いざ勝負!だよっ」

ひよの「……天才剣士が何か言ってる。やっぱりそう美味い話は転がって無いんですね。」

レナ「アハハっ。どっちみち、レナさん好きな人いるから同じことだけどね~」

ひよの「では!その辺のお話も聞かせていただきましょう!!」

 

レン(………女子が三人集まると、本気でやかましいな。)

 

レン「さてと、準備は良いか。そこの……なんか世紀末ッぽい恰好のやつ。」

不良B「く…っ。」

不良B(『赤髪のレン』…聞いたことがあるぜ。たしか、クリスマス・イヴに街に蔓延るデート中のリア獣を根こそぎ刈りつくし、その髪と、純白のサンタ服、そして拳を血で真っ赤に染めた伝説のバーサーカー!!)

レン「………。」

レン(なんだろう、ドンドン俺のイメージがオカシイことになっていってる気がするんだが……俺の被害妄想か?)

お互いに睨み合いが続き、心中では戦いのイメージが展開されていく。

 

不良B(だが、赤髪のレンがデュエルに精通してるって話は聞かねえ……よし)

レン(そういえば、昨日のデュエルじゃデッキのモンスターを全く使えなかったんだったな。よし)

不良B(喧嘩じゃ勝てないがデュエルなら勝てる!!)

レン(モンスターを展開しまくって物理で殴り続ける。)

思考がまとまった二人のデュエリストは、互いにデュエルディスクを構えた。

 

レン・不良B「――デュエル!!!」




良い子のみんなはゲームの前と後にリアルファイトしちゃダメだよー。お兄さんとの約束だ。
途中なら良いんですね?とか言った奴出てこい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~8

レンと不良のデュエルが始まった頃、店の外には観客が来ていた。

ヴィジュアル系「……始まったようだな。」

舎弟系「そーっスねー。でもこっからじゃよく見えないっスよ、手塚さん。中入らないんっスか?」

手塚「……その必要は無い。このデュエルの勝敗は既に見えている。下駄箱にちょっとした『アイサツ』も入れて来た。なにより、俺の占いでそう出ていた。」

舎弟系「お得意の占いっスねー。じゃあじゃあ、今度競馬の当たり券教えて欲しいっスよ手塚さん」

手塚「断る。勝手に買って、勝手に自滅しろ。ケイト」

ケイト「あぁんヒドイ。じゃあ代わりにカ・ラ・ダ・でサービスするっスよ~。ほらぁ、オンナノコのカラダ、興味ないっスかぁ?」

そう言うと、胸元を少しだけ露わにして男に迫る。因みに大きさはお察し。

手塚「悪いとは思うが、一応俺にも好みがあるんだ。守備範囲外の女性から色仕掛けで迫られても、何と言うか……滑稽なだけだ。すまないが諦めてくれ」

ケイト「……本当に酷いっスね……ボク泣いちゃうっスよ、マジで」

手塚「済まないな。来世ではもう少しキミに興味が持てるように努力してみる。……きっと、努力すれば、人間は運命だって乗り越えられる……!」

ケイト「現世のボク全否定じゃないっスか!来世のボクの扱いも酷いっス!!ボクそんなに魅力ないっスか!?手塚君はもうちょっと心を開いて見聞を広めてみるべきっス!!

レン君なんて、ボクが涙流して『許して下さい』って懇願してもガン無視してボクのこと襲い続けたッスよ!涙はでるわ涎は垂れるわ舌は乾くわ一睡もさせてくれなくてクマが出来るわで!あ、血は出なかったスね。しかも朝起きたらオムツしなくちゃ服着れないくらい濡れ――」

手塚「そろそろ黙れ。キミの性格では公共の場で許される範囲を逸脱しても構わず話し続けるだろう。」

ケイト「ママにならなかったのが不思議――あ……」

周囲の奥さま方が『最近の若い子は~~』

とかこどもの「お母さん。あのお姉ちゃんオムツしてる――「しっ、見ちゃいけません!!」的な会話で周囲に迷惑がかかっていることを察した手塚は、即座にケイトを黙らせにかかった。

ケイト「……あ、あーアレでしたね。隠密ッス。はい」

手塚「……そこまでとは言わないが、今はあの男と会う時ではない、占いでそう出ていた。

会うのは勝手だが、俺はもう行く。今日は顔を見に来ただけだからな。」

ケイト「………行っちゃったっスね~。そんじゃ、ボクはもうちょっと見て行くっスかね、初めての相手の勇士を。」

 

レナ「………。」

ひよの「どうしたんです?レナさん」

レナ「ううん。なんでもない。ちょっと窓の外が気になっただけ」

ひよの「窓の外ですか。熱心なストーカーさんでもいたんです?」

レナ「くすっ…どうだろうね。」

ひよの「………。」

冷たく笑うレナの表情は、若干お漏らししてしまいそうになったしまったという。(ひよの後日談)

 

 

 

ストーカー(?)「な…何スかねえ??今おにいちゃんを取られた妹が真剣持ち出して斬りかかってくるイメージが見えたっスけど……っと、デュエルデュエル。」

 

 

レン「俺のターン。手札から、伝説の黒石(レジェンド・オブ・ブラック)を召喚する」

レナ・ひよの「へ?」

飛娘「あ”……」

レンがモンスターを召喚した瞬間、レナとひよのは信じられないようなものを見たように驚き、飛娘はこの世の終わりのような表情をした。

店長「……アレは確か、今度発売の新パックに登場する真紅眼サポートのモンスターですね」

飛娘「………そ、そうアルね。何処でフラゲしたんだカ……ハハハハ。」

店長「そう言えば昨日、飛娘ちゃんには新パックを運んでもらってましたね。ずいぶん遅く帰って来ていましたが」

飛娘「アワワワワワワ………!!!」

レナ「あれ、飛娘ちゃんが…?」

ひよの「ずるいです~」

飛娘「………昨日町中連れまわされテ、おっかなくてたまたま手元に有ったパック、渡してしまったアル……」

レナ「それって、にーが脅したってこと?」

ひよの「恐喝ですか!?それは記事になりそうです。」

飛娘「………うう…」

店長「そうなのかい?飛娘ちゃん」

飛娘「それは…ソノ……。」

 

レン「『伝説の黒石』の効果を発動する。」

 

伝説の黒石

星1 闇 ドラゴン族 

0/0 

「伝説の黒石」の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。①:このカードをリリースして発動できる。デッキからレベル7以下の「レッドアイズ」モンスター1体を特殊召喚する。②:このカードが墓地に存在する場合、自分の墓地のレベル7以下の「レッドアイズ」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをデッキに戻し、墓地のこのカードを手札に加える。

 

ひよの「………えっと、ゴホン。確かあのカードは、デッキのレッドアイズと名のついたモンスターを召喚出来るんでしたね。じゃあ、アレでレッドアイズ呼ぶんですかね~」

飛娘「……たぶん違うネ。バニラのレッドアイズは、『真紅眼融合』のために残しておいた方が良いアル。」

レナ「好みにもよるけど、炎と雷が両方入っているなら、レナならとりあえず雷かな」

ひよの「炎?雷?なんですソレ」

 

レン「伝説は誓いに。代償は過去の道に。辿り着きしは弱者を屠る悪魔の雷――紅き瞳よ、ここに来たれ。

特殊召喚、現れろ。『真紅眼の凶雷皇-エビル・デーモン』(レッドアイズ・ライトニング・ロード-エビル・デーモン)!!」

 

真紅眼の凶雷皇-エビル・デーモン

星6 闇 悪魔族

2500/1200

(1):このカードはフィールド・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。

(2):フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。

その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。

●1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。

このカードの攻撃力より低い守備力を持つ、

相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊する。

 

レン「カードを一枚伏せて、ターン終了。」

 

ひよの「あれも、新しいカードですね……もしかして、昨日みくさんとしたデュエルの時から、あのデッキだったんでしょうかね?」

レナ「………もし、そうだとしたら。昨日のデュエルは全く本気を出せていなかったってことだけど…どうなの?飛娘ちゃん」

飛娘「…カードは、昨日あげたアル。その時すぐにデッキに入れてるの見たカラ、多分昨日からネ。」

店長「へえ、そうなんだぁ。そんなにアドバンテージがあるんなら、もちろんキミの彼氏君は、勝って店を守ってくれるんだよね…?」

飛娘「ひぃ~!?(ガクガクブルブル)」

レナ「にー。絶対に勝ってね。飛娘ちゃんのクビがかかってるよ、このデュエル。」

レン「ああ、任せろ。」

 

ケイト(おぉ~真紅眼ッスか~~()()()()に見たッスねぇ。

やっぱりレン君は真紅眼似合うッス!!朱い瞳に紅い髪。マッチしてるッス!!

あぁヤバい…もっと近くで観たい………)

 

不良B「オレのターンだ、ドロー」

一瞬――不良Bの手が不自然な軌跡を描いた。

レナ「………。」

不良B「ヘッヘッヘ。こりゃあ、速攻で決まっちまうかもなあ。

行くぜ、手札から機械族専用融合魔法『パワー・ボンド』を発動!!」

レン「………。」

不良B「手札の三体の『古代の機械巨人』を融合だ!!」

飛娘「この融合素材は――!!」

 

不良B「オレの最強の切り札『古代の機械究極巨人』を召喚だあー!!」

 

古代の機械究極巨人

星10 地属性 機械族

融合/効果モンスター

4400/3400

「古代の機械巨人」+「アンティーク・ギア」と名のついたモンスター×2

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。このカードが破壊された場合、自分の墓地の「古代の機械巨人」1体を選択し、召喚条件を無視して特殊召喚できる。

 

ひよの「超重量級のモンスターじゃないですか!!」

飛娘「攻撃力4400 貫通 攻撃時の魔法・罠の封印。かなりの強カードアル。」

レナ「にー。『パワー・ボンド』にはもう一つ効果が――」

レン「知っているよ。

特殊召喚した融合モンスターの元々の攻撃力分攻撃力をアップするカード、だろ」

 

古代の機械究極巨人  ATK4400→8800

 

レナ「知ってたんだ」

レン「ああ。昨日みくに苦戦してから、カードの効果を片っ端から頭に叩きこんだ。一夜漬けだが」

飛娘「叩きこんだって、どのくらいアル?」

 

レン「歴代の大会出場者がデッキに入れていた『カード効果』・『コンボ』・『裁定』の全てだ」

 

ひよの「何か明らかに人間には不可能なことを言ってのけたです。………そんなの1から覚えるくらいなら、数学や古典の教科書丸暗記する方が楽ですよ…絶対に。」

飛娘「………ワタシも、そんなことするくらいなら日本の漢字1から覚えるほうがいいアル……」

 

 

ショップ内にいた何人かの人間も、様々な目でレンを見る。

レン「………??」

レンが周囲の人間に気を取られていた時だった。

不良B(今だ!)

不良B「バトルだ!!『古代の機械究極巨人』でエビル・デーモンに攻撃だぁ!!!」

レン「ン……?」

レナ「レンくん!!」

不良B「古代の機械究極巨人の攻撃宣言時に魔法・罠の発動は出来ない。よってこのままダメージ計算だ!!こ・こ・で・ぇ~~速攻魔法『リミッター解除』だあああああぁぁぁぁーー!」

 

古代の機械究極巨人 ATK8800→17600

 

不良B「オワリだぁ!!『赤髪のレン』破れたりいいいいいぃぃぃぃぃーーー!!」

岩をも砕く拳をもつ強大な古代の巨人は、その体躯を更に鍛え上げ、強大なものとし、遂にはその身の稼働の終息と引き換えに、持ちうる全ての力を解放し、大地をも砕く一撃を放つ。

不良B「アルティメット・マンマミーヤ・パンチ!!」

エビル・デーモンは成すすべもなく、その拳に五体をすり潰され、レン・ファムグリットに襲い掛かった。

レン「………。」

レンは目の前に降りかかる現実を視界に入れることなく、手札のカードに視線を注いでいた。

レン「………相変わらず恐ろしいな、アイツの占いは」

不良B「なんだぁ?なんですかぁぁ?負け惜しみなら聞いてやりますよぉぉ~~」

楽しそうな表情で少し手札を眺めた後、スッと瞳を閉じると、レンはデュエルディスクに少し触れ、腕を下ろした。

不良B「ギャハハハハハハ!!何もできませんってかぁ!?

自分から喧嘩売っといてワンターンキルかよ!!超だっせえ~~!!」

ひよの「うう…なんてマナーの悪い……わたしあの人きらいです」

レナ「………カッコ悪いのは、どっちになるのかな」

レンは懐からコインを取りだすと、ピーンと弾き『古代の機械究極巨人』に放った。頭部に当たり、コツンと音を音を立てた‐‐瞬間、レンに襲い掛かっていた拳が消えた。

 

不良B「何!?攻撃が止まっただと!!」

 

レン「余りにも目に余るカードの無駄使いだ。だからこんな占いが出てくる。

『アルカナフォースⅩⅣ-TEMPERANCE』‐‐節制のカード」

戦闘ダメージ計算時、このカードを手札から捨てて発動できる。その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、コイントスを1回行い、その裏表によって以下の効果を得る。●表:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分が受ける戦闘ダメージは半分になる。●裏:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手が受ける戦闘ダメージは半分になる。

 

レン「『無駄使いや浪費ばかりしていないで、少しはテメェの力量を上げることを考えろ』だそうだ」

 

ひよの「アレって防御用のカードですよね。いつの間に墓地へ送ったんですかねぇ?」

レナ「さっき墓地に手が行ってたから、その時だと思う。」

ひよの「むむむ…レンさーん!カードは発動していたって言うのはどうかと思うのです。ルールもマナーも無いのですー」

レン「勝負は非情だ。リスペクトなんて甘えた戦争ごっこは余所でやれ!」

不良B「テメェ…ゲームをなんだと思っていやがるんだ!!ルールとマナーを守れ!」

飛娘・ひよの・レナ「‐‐お前が言うな!!」

 

 

不良B「ぐ……カードを伏せて終了だ。」

レン「この瞬間、お前の発動した『パワー・ボンド』の制約により、究極巨人の攻撃力分のダメージが襲う。

不良B「ぐっ…!!」

不良B LP8000→3600

レン「更に、『リミッター解除』の反動により、究極巨人は破壊される。バカな指揮官を持つと、苦労するのはいつだって部下だ……同情するよ」

不良B「だが、この瞬間『古代の機械究極巨人』の効果発動!!融合素材として墓地に送った『古代の機械巨人』を蘇生する」

レン「さてと…オレのターン、ドロー。」

不良B(ククク。オレの伏せカードはミラフォだ…赤髪のレンが何を出してこようが怖くねえ)

ひよの「クンクン…」

レナ「どうしたの?ひよのちゃん先輩」

ひよの「この臭いは……死亡フラグ臭なのです!」

レナ「………しぼ…フラ??」

ひよの「どうやら今回は簡単に決着が付きそうですね!!レンさんファイトです!!」

レナ「………???」

レン「クス…そんじゃ、ご期待に応えて、少しサービスしてやるか。まずは手札から、『おろかな埋葬』を発動する。この効果で、『真紅眼の黒炎竜』を墓地へ送る。

そして、リバースカードオープン。罠カード『レッドアイズ・スピリッツ』を発動。

墓地からエビルデーモンを蘇生する。更にチェーン2で速攻魔法『銀龍の轟咆』を発動、真紅眼の黒炎竜を特殊召喚。」

蘇生カード二枚の連続召喚により、レンの場に真紅眼の『雷』と『炎』が肩を並べた。

ひよの「おお~!これがさっき言ってた雷と炎ですか!!壮観です~~」

レン「………。」

その光景に無邪気に喜ぶひよの姿を見て、レンは少し微笑んだ。

不良B「へへっ、何かと思えば、さっきボコった雑魚カードじゃねえか。」

レン「………。」

ひよの「雑魚なものですか!優秀なドラゴンなのです!!」

不良B「ハハハハ!!優秀!?さっきまで墓に眠ってたそのカードがか?

笑わせてくれるぜー!」

ひよの「……やっぱりわたし、あなた嫌いですっ」

不良B「アーっハハハハ!!!図星突かれてグゥの根も出ねえってかぁ~なっさけねえのwww」

不良Bの心無い言葉にひよのは少し落ち込んだ。その瞬間、レン・ファムグリットの目つきが変わった。

レン「………ヤメだ。」

不良B「は?何だぁサレンダーかあ?」

レン「お前のデュエルは力に頼るだけで芸が無い。しかも力を使いこなすどころか振り回されていると来た。これ以上長引かせてもイラつくだけだ……もう()()す。」

レン「魔法カード、『融合』を発動。場の『真紅眼の凶雷皇-エビル・デーモン』と『真紅眼の黒炎竜』を融合する。()()の雷よ()の業火よ悪魔竜の名のもとに重なりて、逆らう命を灰燼に帰()せ。融合召喚、『悪魔竜(あくまりゅう)ブラック・デーモンズ・ドラゴン』!!」

 

悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン

闇属性 ドラゴン族 星9

3200/2500

融合・効果

レベル6「デーモン」通常モンスター+「レッドアイズ」通常モンスター

自分は「悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。①:このカードが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。②:融合召喚したこのカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、自分の墓地の「レッドアイズ」通常モンスター1体を対象として発動できる。墓地のそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。その後、そのモンスターをデッキに戻す。

 

不良B「こ、攻撃力3200!?う…うそだろ、こんなモンスター見た事ねえぞ……何であんな雑魚モンスターからこんな化け物が!?」

レン「小さな力、大きな力、そのすべてに意味があり、価値がある。バトルだ。ブラック・デーモンズ・ドラゴンで攻撃。ライトニング・ウェーブ!!」

不良B「ククク…今攻撃って言ったなァ!リバースカードオープ…」

レン「ライトニング・ショート」

不良B「‐‐な、なんだ!?カードが発動しないぞ!!ミラフォが撃てない!!」

レン「たかが人間が、既に落ちてきている雷に反射神経が追いつくと思うか?」

 

BDD ATK3200 VS 古代の機械巨人 ATK3000

 

不良B「くそっ…だがまだライフは残っている!」

不良B LP3400

レン「そうだな、まだ殴る部分が残っている。」

 

 

レン「悪魔竜の効果発動。墓地の『真紅眼の黒炎竜』をデッキに戻すことで、相手に戻した真紅眼の攻撃力分のダメージを与える。

受けろ、真紅眼の炎を。”ブラック・インフェルノ”!!」

 

不良B「ぎゃああああああああーー!??な、何だ!??ソリットビジョンなのに熱い!!熱いいいいいいいいいいいーー!??!??」

不良B LP3400→1000

レン「カードを一枚伏せて、ターン終了」

 

 

悪魔竜の効果でダメージを受けた不良は、まるで本当に炎に焼かれているかのようなオーバーリアクションで苦しんでいる。

 

ひよの「あんな馬鹿にした演技までして、まだ余裕ってことですか!!レンさん!!もっとやっちゃってください!あんな人やッつけちゃうのですー!」

レン「アレって本当に演技なのかな?全然そうは見えないんだけど」

店長「……?なんでしょう、何か焦げ臭いような……??」

レン「さあ、テメエのターンだ、さっさとカードを引け!」

不良B「う……ぐひゃ…」

レン「()()

不良B「………ド…ロ……ガクッ」

ひよの「あ、倒れたのです。」

レナ「……黒こげだね、これどうしたの?にー」

レン「知るか、戦えないならもう用は無い。その辺捨てとけ!クソッ、不完全燃焼もいいとこだ、この雑魚がァ!!」

ドカッ

焦げて横たわる不良Bの腹にいい感じの蹴りを入れると、レンは店を出て行った。

レナ「あ、ちょっと、にー!ありゃりゃ…あれは本当に不機嫌さんだ……」

ひよの「というか、何でデュエル中に急に()()()になったんですかねこの人?」

レナ「なんでだろうね……。」

そう言いながら、レナは不良Bがドローしたカードを確認した。

レナ「……二枚目の『パワー・ボンド』か…この勝負は完全に、にーの勝ちだね。さっきリバースがミラフォだって言ってたし」

飛娘「おかしいアル、レナ・ファムグリット」

レナ「うん。知ってるよ」

ひよの「何がです?」

レナ「この人が使ってた『パワー・ボンド』っていうカードは、機械族専用の融合カードなんだけど」

ひよの「はい、知ってます。さっきレンさんも言ってましたね」

飛娘「この『パワー・ボンド』って言うカードは『薩摩サイバー次元流』と言う流派の道場で有段者のみに配られる一般の人間ではまず手に入れられないカードアルヨ。」

ひよの「じゃあこの人はデュエルの有段者ってことなんです?」

レナ「とてもそうは思えないよ…だってこのカード、レプリカだし」

ひよの「レプリカ!?」

レナ「多分デュエルディスクをいじって無理やり使えるようにしたんだね。」

ひよの「この野郎とんでもないヤツなのです……」

飛娘「でも、いったい誰がこんなことを」

 

???「あーあ、気づいちまったか。まさかレプリカだって分かるやつがいるとはなぁ……」

 

飛娘「誰アルか!?」

皆が入口の方を振り返ると、そこには制服姿の人間が何人もいた。

 

???「お前ら…タダじゃ帰れないよ?」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~8.5 気が向いたから番外編

この話は本編の進行とは特に関係の無いキャラクター設定の発表回です。
デュエルは、人の人格が大きく関わってくるものです。
なので、その人物の思考や思想を語らずして、真のデュエルは描けないと考えています。
単純に好きなのもありますが。 
遊戯王二次創作でデュエルが少なかったのもそれが理由ですね。


因みに視点はレナです。
作中の印象とは違う、彼女の本心に触れながら、人物設定をお楽しみください。


ここはアパートの一室。それも金の無い学生が借りるようなオンボロアパートだ。

部屋にあるのは炬燵とミカン。例え夏でも電源を入れたままにする家主のポリシーに従い、今日も炬燵は働き続ける。労働時間は労勤に訴えれば即勝訴だろう。

但し、コタツは人であるならば。

 

natto mikan「例えばそれは山の木々。たとえどれだけ永く生きながらえようとも、人にとっては己が領土を侵す害物。故に、樹木はその意思を黙殺され、人のためにその命を理不尽に奪われる。」

 

コタツの主であるミカンのような生物(ナマモノ)は、納豆の糸のような腕と、もう納豆そのもののような手を組んで、意味ありげに語りだす。

 

natto miksn「幾つの命を手折れども、ヒトはそれが人で無い物に慈悲を与えず、意思無き物と断じた者には、一縷の希望すら残しはしない。一体幾つの業を重ねれば、ヒトは愛を知るのだろうか……。」

レナ「作者(パパ)。ご飯出来たよー?」

なっとうみかん「‐‐わーい♪すぐ行くー」

 

 

遊戯王 ~Fake Origin~8.5  生きる者死に逝く物

 

 

作中のヒロイン兼解説役の少女レナ・ファムグリットは、文武両道・才色兼備、金髪碧眼の美少女である。

どこぞに居そうな必殺料理人な壊滅的な料理下手でも無ければ、恨みを買ってハブられるようなことも無い、誰から見ても非の打ちどころのない順風万藩な人生を送っているようにしか見えない‐‐理解されない少女である。

 

レナ「おいしい?昨日テレビで観たラタトゥーユっていうの作ってみたんだよ~」

 

笑顔で昨日視たテレビの話をするレナ。

 

なっとうみかん「むぐむぐ。ところで‐‐もぐもぐ、今回は、バクバク、じんぶちゅあぐあぐ、しょうかひをむしゅむしゃ、だね……」

 

レナ「食べ終わってからでいいよ。ちゃんと待ってるから、大丈夫だよ。

おかわりいる?」

 

‐‐満たされない。自分(レナ)という存在が。想いが、気持ちが。

一人ぼっちの孤独では無く、対等な相手がいない不満足。

あらゆるジャンルに拙僧無く手を出し、持ち前の才能とセンスであっさりモノにしてしまう。

ただ、私の料理を食べて美味しいと言ってくれる。おかわりを求めてくれる。

そんな存在に意味を感じられる人格には、僅かに救いを感じる。

もしそれすらも無かったら、私はいったいどうなってしまったのだろう。

考えない日は、無かった。

 

私には、四人の家族がいる。

義父の、エックス・ファムグリット。

実姉の、シャーロット・ファムグリット。

そして、赤い髪と、鋭い眼光が印象に残る義理の兄

‐‐レン・ファムグリット。でも、私が初めて会った時の自己紹介の時、彼は『グレ』と言いかけたのを覚えている。そして今でも、彼はレンと呼んでも反応しないことがある。

 

‐‐だから、きっと、義理の兄の名は、偽名なのだろうと思った。

 

誰しも語りたくない過去がある。

だけど、彼の過去は、自分の名前すら、語りたくないものなのだろうか…?

分からない。大抵のことは大体想像が付くし理解出来る。でも、彼のことは良く分らない。

だから、興味が湧いた。私が分からないあの人に、私は癒されていった。

あの人は、どんなひと?

 

レン・ファムグリット(15)

誕生日 不明

髪の色 赤

瞳 赤

身長183㎝

体重 69㎏

 

この年齢の男子にしてはかなり背が高い。

これは本人の身体計測のデータを学校のパソコンから勝手に閲覧したものだ。

別に本人に聞いても良かったが、秘密とか関係なくめんどくさいことを渋る性格だから、こういう手を取ったに過ぎない。正確なデータが欲しかったのも有る。

 

利き腕 左

 

視力 右0.4 左0.01

 

これは、本当に驚いた。もはや失明寸前の左目に。

それでもメガネを掛けないのはポリシーっていうものなんだろうか?

そんなことしてるから、怖がられるんだよ?

 

血液型A→AB

 

愛用の煙草 JPS

愛車 750RS

 

 

好きなもの

・昼にする街中の散歩

・夜のツーリング

 

これは、もしかしたらお家に居たくないから、家を出ているだけなのかもしれない。

朝学校へ行く時は一緒だけど、それすら実現するのには三年かかった。

嫌われている…わけではない。でも、きっと避けられているんだ。

お姉ちゃんは、今でも彼に避けられている。本人は初めてできた弟に愛情を感じているけれど、思春期とかそういうのじゃない遠ざけられ方をしている。何故…?

 

嫌いなもの

・自分のせいで誰かに迷惑をかけること。

・仲間を傷つける者

 

見た目に反して、律儀…とも言えるけれど、どちらかと言うと干渉されるのを避けるためにやっている節が見える。……まあ、主に私だけど。

 

月の小遣い

0円

月の収入

無し

 

義父、エックスは私達姉妹には毎月お小遣いをくれる。

でも、彼には渡していない。

本人も何処から手に入れているのか、お金に困っているようには見えず、自分だけ渡されないことに何の疑問も持っていない様子だ。

自分だけ除け者みたいにされて、嫌じゃないのかな…?

 

 

でも、そんな彼にも友だちがいる。

その1人は

 

朝倉英心(15)

実家は歴史ある朝倉家の本家で、住職。

いずれはその家を継ぐために修行中の身………のはずだが。

 

とにかく煩悩が凄い。

好きな物がおっぱい。

座右の銘は『大きいことは良いことだ』

もう救いようが無い。

ただ、なぜか彼の友人と言われると……何故だろう。

疑いようが無いほどに、彼の親友と思える雰囲気がある。

彼と並んでも見劣りしないほど背が高い。

 

並平鈴木(なみひらりんぼく)

 

友人その二

ルビが無いと絶対に所見で名前が分からない人。

ギャル男みたいな話し方の人で、見た目も軽いノリの人。

隠れカードコレクターで、彼がデッキを作る時に何枚か譲り渡したらしい。

 

なっとうみかん「ちなみに、『真紅眼の黒竜』二枚は、鈴木からの贈り物ですも」

レナ「‐‐!?え、なに??いきなりどうしたのパパ?」

なっとうみかn「ふっ…俺は作者(パパ)だぜ?

(キャラクター)の考えてることなど理解してて当然さ!」

レナ「………なら、あの人のこともっと教えてよ。何か私よりあの二人の方が彼の事情詳しそうな感じがするんだけど?」

納豆ミカン「詳しいよ。だって英心は大神災の後、つまりレナより先にレンに会ってるし、鈴木に至っては同じチームのメンバーでもあったんだもん。」

レナ「え、何それ初耳。…もしかして学校グループで私一番その変の事情ハブられてる…?」

納豆ミカン「うん。だってそうでないと彼ら存在意義疑われるくらいキャラ薄いし。」

レナ「」

 

納豆ミカン「それに、そんなに気になるなら、本人に聞いたら?」

レナ「そ、それができるくらいなら苦労して無いわ。

あの人そういうこと話してくれないし。第一本人もいない今、作者(パパ)がいるこの瞬間が一番チャンスじゃない?」

納豆ミカン「いるよ、レン。コタツに潜って寝てるし。」

 

レナ「……?何言ってるの?そんなことになってたら私が気付かないわけ……」

レナがコタツの毛布を捲る。

すると、そこにはどこの関節をどう曲げたのか気になるカタチでしっかりレンが入っていた。

しかも熟睡している。

その様子を認めたレナは、無駄のない動作でレンを炬燵から引っこ抜いて自分のすぐ隣に近くにあった自分の上着を掛けて寝かせた。

そして一言。

レナ「死ぬでしょこの寝かた!?何でこんな寝方してるのよ!?って言うか教えておいてよ!!聞かれてたらどうするのよ!!って言うか私何で気付かなかったの!?

いつもはすぐ分かるのに!??」

‐‐否。顔を真っ赤にしながら猛抗議を始めた。

納豆ミカン「うむ。たしかにレナには様々なチートスペックを与えている。

その中には気配察知もある。」

 

 

 

レナ・ファムグリット(15)

8月15日

身長163㎝

体重 52㎏

B89(E)W59H87

利き腕 右

視力 右3.0 左3.0

血液型O

 

IQ 170

 

資格 剣道二段

    危険カード取扱S級

 

好きなもの

・レンの作る朝食

・友達と一緒に遊ぶこと

・シャワー

・強い人

 

嫌いなもの

・他人を見下す人

 

月の小遣い

5000円

月の収入

七皇の給料(200000円)

ナンバーズハンターとしての実績(35000円)

 

お金の使い方

・親しい人へのプレゼント費用

・遊び費用

 

 

所属組織

・坂上学園1ーA

・七皇‐NO.2

 

デュエリスト・パラメータ

・所持カード数 A (探せばどんなカードも二・三枚ストックされているレベル。ただし、『生活している世界で市販されているもの』に限る)

・所持カード強さ A (大会へ行けば必ず見かけるレベル)

・カード知識 S (本来『世界』に存在しないカードの知識も完璧にマスターしているレベル)

・デッキ構築力 A (使用者に合わせて大会で上位に行ける程度の構築が出来るレベル)

・デュエル・タクティクス A (使用デッキの潜在能力を極限まで引き出せるレベル)

・運命力 B (パックのバラ買いでSレアやUレアを3パックに一度引き当てるか、ピンチ局面で死に札を引かない程度。Bまであれば大会で十分通用するレベル)

デュエル・スタイル

・場にカードを残し続けて必要なら回収し使い回す。

総合評価 A(大会に行けばほぼ必ず上位へ行ける実力)

 

二つ名 天才美少女剣士

      天体の聖剣姫

      

所持品

・七皇の剣(ペンダント)

・黒丸(木刀・小太刀)

・スマホ

 

髪 金

瞳 青

 

備考

天才剣士。小学5年生で始めたものが、子どもの頃からやっている姉をさっさと追い抜いて注目を浴びている。

敵の行動を呼吸と観察にる予測と、超直感で移動位置に竹刀をそっと置いておくカウンタータイプと、相手の隙を作り一瞬で斬り伏せるアタッカータイプを使い分けることが出来る。

 

かなり器用で天才肌の少女。どんなことでも一回やれば覚えてしまうが、そのせいで全力を出して臨んだ遊びは、相手の方がすぐに降参してしまう。

子どもの頃は勝ちに満足していたが、とある人物と戦って負けて以来、全力で戦う開放感と、負けるかもしれないという焦燥感の虜になってしまい、自分よりはるかに弱い相手と戦うことに対して鬱憤がかなり溜まっている。

そのため、中学生辺りから自分より強い人間が出てきてコテンパンに負かされることを心から望むMっ気が出てきている。

 

 

納豆ミカン「だいたいこんな感じ。もうレナ1人で良いんじゃね?ってなチートキャラその1。

だが、ここではその辺。主に戦闘系全部封印してあるから。」

レナ「なんでぇ…?なんでなのぉ…??」

納豆ミカン「フッフッフ…それはね?」

レナ「それは?」

 

納豆ミカン「この展開をオチに持ってきて締めるためさ!!」

レナ「なによそれえええええええぇぇぇぇー!!意味分かんない!」

 

納豆ミカン「なお、次回のキャラクター紹介があればまたやってもらうからよろしく。

レナ「私オチ要員だったんだ!?」

 

 

 

 




レナ「えーっと、『全員の紹介はやっぱり長くなるので、小出しにしていきたいと思います。
べ、べつに明日も仕事だから疲れて寝たいとかじゃないんだからね!!』
………これでいいの?パパ」
納豆ミカン「グッジョブ。」

ご意見、感想、アンチ等お待ちしております。
なおコメント返信はまた別で本編製作しながら面白おかしくやります。

もし、キャラクターのイラストが観たいなどのご意見がありましたら、ドシドシご応募ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~9

追記:
レナの肩書と飛娘の肩書が反対になっていたので訂正しました。

レナ・ファムグリット 七皇 特別遊撃隊長
王 飛娘 七皇 特別攻撃部隊隊長


カチン。

レンは愛用のジッポライターで愛飲の煙草に火を付けると、煙を肺の隅々まで満たし始めた。

それでも全くイラつきが収まる様子は無く、フラストレーションは溜まる一方だった。

???「……………。」

その様子を路地裏からこっそりと眺める1人の人物がいた。

レン「………フーー。」

あっという間にフィルターまで飲みつくすと、携帯用灰皿に吸殻を入れる。そのままもう一本の煙草を咥え、ライターに火を着けようとして……。

レン「……オイ、人の遊びに横槍入れて挨拶の一つもねえとはどういう了見だ…?」

イラつきを一切隠さないまま、隠れていた少女に声をかけた。

???「………。」

レン「出て来いゴルァ!!ケイト・ヴァルゼルド。」

???「ヒィッ!??わ、分かったッスよ!出て行くっス!!」

路地裏から姿を現したのは、どこか後ろめたそうな目をした女の子だった。因みに、手元にはライターとスプレー缶を持っていた。

ケイト「お…お久しぶりっス、レン君。あ痛ッッ!??」

レンは出て来た少女の頭に思いッッ切り拳骨を叩きつけた。

ケイト「う…うう……痛いよぉ…うわああああーーん!!」

殴られた痛みで少女はボロボロと涙を流した。しかし、そんなことで怒りが収まらないレンは物凄い剣幕で少女に怒鳴り散らす。

レン「痛いよぉじゃねえだろバカ野郎!!何だそのスプレー缶とライターはよぉ!」

ケイト「だって…!!だってアイツ、レン君のことバカにするんスもんー!!リーダーがバカにされだら悔しいぢゃないっスかあああーーっ!!」

レン「だからってカードショップで火炎放射するバカがどこにいるッッ!!紙ばっかだぞ、燃えるぞ!火事起こるぞ!!バカなのはテメエだ!!」

ケイト「ごめんなざいいいいぃぃーー!うあああぁぁぁーーん!!」

レン「いつも言ってあっただろう!!人間好き勝手やるなら絶対に他人に迷惑かけんな!!テメエでケツ拭けねえことは起こすな!」

そう、先程のデュエルでリアルに不良Bが黒焦げになっていたのは、ブラック・デーモンズ・ドラゴンの効果演出に紛れて窓の外からケイトが火炎放射したのが原因だった。それにいち早く気が付いたレンは、店の外に出て来て、彼女の存在を見つけたのだった。

 

レン「だいたい、お前何でここに居るんだ!?確か国に帰ったんじゃなかったか?」

ケイト「グスッ…帰ったッスよ…でも、寂しいから戻って来たッス。」

話題が変わると泣いていたのも落ち着いて、パアッっと笑顔を見せるケイト。

レン「犬猫かお前は。」

ケイト「ああ…半年ぶりの再会だってのに全くの血の通わない冷酷なセリフ……ボク帰って来たんスね!」

罵倒されたケイトは、より一層嬉しそうに目を輝かせて、仲間との再会を噛みしめた。

レン「お前も大概ヤバい奴だよな。ハア……もういいや、俺戻るわ」

ケイト「あ、ボクも行くっス!少し目を放した内にずいぶんハーレム形成してくれちゃってたみたいっスね~ここは先達として、指導してあげるッスよ。ニュッフフ~~」

レン「No Thank you」

ケイト「まあまあ、そう遠慮なさらずに~癒しのコーディネーター・ケイトさんのマル秘テク、披露しちゃうッスよ~」

レン「………そうなるとお前用済みな」

ケイト「ボクのマル秘テクは門外不出だったッス!誰にもおしえないッス!!ケイトさんの口はダイヤモンドより硬いっス!!アマテラスのように引きこもるッス!」

レン「ドロップ食うか?」

ケイト「え!?食べさせてくれるんスか。わーい。あーん」

簡単に開いた口に、レンはドロップを投げ入れた。

レン「……全然硬くねえじゃねえか」

ケイト「ふにゃっ!?騙したッスか!!」

レン「騙されんなよ……」

ケイト「もぐもぐ…うう…しかもこれハッカじゃないッスか……」

泣いたり怒ったり笑ったり、騒がしいながらも旧友との再会に少し懐かしさを感じながらレンが店に入ろうとする。

ケイト「待つッス、レン君。店の様子がおかしいっスよ」

レン「そりゃテメエがニンゲン一人を黒焦げにしたからだと思う…」

ケイト「じゃなくて!何かもめてるんスよ。どっか他校の学生ッぽいっスね」

レン「……そういや、さっきのアイツら、平中工業とか言ってたっけか。学校の看板の陰に隠れてるくらいだし、何か番長的なのが出て来たんじゃねえか?ま、店にインネン付けたってマッポが召喚されるのは目に見えてるんだ。ほっときゃ良いか。」

ケイト「でもアレ、レン君の仲間の人たちと揉めてるッスよ?」

レン「レナッッ!!」

ケイトが言い切る前に、レンは店の中に入って行った。

 

時間はレンが店を出てすぐの頃に遡る。

店の突然押し入って来た制服姿の学生達が、黒焦げにされた仲間と顎を砕かれた仲間を見てこう言った。

学生A「テメエら何オレらの仲間に手ぇ出しちゃってんの?」

学生B「あーあ、どうやら店の中で暴行があったみたいだなぁ。」

学生C「こりゃひでえや。治療も相当かかるだろうなァ。」

学生D「店の人も何でこうなる前に何とかしてくれなかったのォ?こりゃ店側にも慰謝料請求しないとなァ?」

学生F「もちろん、そこのお穣ちゃん達にもね。慰謝料と、あと献身的な介護もお願いしないとねえ?こりゃあ当分まともに動けないだろうな~メイド服でも来てご奉仕してもらおうかな~~」

学生G「ふおおおおぉぉぉぉぉぉーーー!!!美少女メイド達のご褒美キタこれえええええええええええええええええーーーー!!!!」

ひよの「………気持ち悪いです」

飛娘「頭に蛆が湧いテルようなセリフアル。キモ」

レナ「メイド服っていうところに発想の限界を感じるよね。アハハ…」

飛娘「……それジャア」

レナ「久しぶりに、やっちゃおっか♪」

二人の意見が一瞬で合致したところで、飛娘とレナはそれぞれヌンチャクと木刀を(どこからか)取りだすと、ニコッと思わず見とれそうな笑顔を浮かべると……

レナ・飛娘「『七皇』突撃班!」

レナ「遊撃隊長ーレナ・ファムグリット!」

飛娘「特攻隊長ー王・飛娘!」

レナ・飛娘「お仕置きターイム!!」

ひよの「………ふぇ?」

 

レン「また…守れなかった。」

レンが店に入った頃には、見るも無残な光景が広がっていた。

具体的には人肉で出来たサクラ●ファミリアのようなアーティスティックな物や、赤いナニかが飛び散ったことで、偶然にも描かれたム●クの叫びの絵が、床や壁に有ったりした。

ひよの「…………」

レン「大丈夫か、ひよの?」

レンはこの世のものとは思えない光景を間近で視界に入れてしまったであろうひよのに対して、それまでの人生で数えるほどしかしたことの無い『本気の気遣い』を見せていた。

ひよの「……レン…しゃ……」

おそらくは『レンさん』と言おうとしたのであろうが、涙目になりながら呂律が回っていないひよのを不憫に思い、レンは思わずギュッと抱き締めた。

レン「……少し昼寝でもすると良い、起きたころには、きっと夢だったと思える。起きたらドロップをやろう。」

ひよの「…………うぅ…」

頭を撫でながら優しい声でひよのを寝かしつけてやると、しばらくして落ち着きを取り戻し、眠りに着いた。

ひよの「…すぅ……すぅ……」

寝かしつけた後、思い出したように辺りを見渡すと、店にいた客は、あまりの地獄絵図に全員逃げ出してしまったらしく、その場にいたのはもう実行犯二人とレンの腕の中で安らかに寝息を立てるひよの、そしてスタッフゆえに逃げるわけにもいかなかったであろう店長だった。因みに、レンの後で入って来たケイトは……。

ケイト「敵が一瞬で全殺しになってる…しかも芸術的に。ウチの突撃隊長とはえらい違いっスね、レン君!」

それほど当てられた様子も無く平静である。

レン「………俺は、こんな状況を見て少しでも楽しそうにしているお前こそ、ひよのとエライ違いだと言いたい。俺の周囲には、普通の女子がいないのか……」

ケイト「何言ってるッスか。普通って言うのは多数派のことを刺すッス。この場で具合悪くなってるのはそこのちっこい子だけじゃないッスか。そこの美人二人も全然平気そうっス。よってこの場は、ボク達の方が普通の女の子ッス!!」

ドヤ顔でピースしながら、ケイトはそう言い切った。

レン「空は今日もこんなにも青いのに……どうして人の世はこんなにも理不尽と腹黒さで充満しているんだッッ!!!」

ケイト「出たっスね~レン君の現実逃避モード。悲しくなると詩人見たいになるんスよね~。」

レン「あと、人肉で出来たアートを見て、眉ひとつ顰めないお前らを『普通の女の子』とは断じて言わねえからッッ!!何考えてんだそこの実行犯二人!!」

レナ「女の子にハレンチなことする子にはレナさんの愛刀”黒丸”が唸るよ。えっへん」

飛娘「悪い不良はオシオキするものアルっ!」

反省の色・絶無

レン「…………」

ひよの「すぅ…すぅ……」

レン「……ひよの。今だけは、お前だけが俺の癒しだ……。」

頭痛が痛いなぁとか思っていたレンが口にできたのは、それだけだった。

店長「………この状況じゃ、今日はもう店仕舞いかな」

レン「………あそこのゴミと、店中の液体は、こっちで責任持って始末付けるわ。ウチの愚妹が迷惑かけてスマン。」

店長「いいんだよ…半分はウチのスタッフのせいだから。ハハハハ」

レン「ケイト、モップとバケツ」

ケイト「ボクもやるんスかぁ…??」

レン「頼む。手伝ってくれ」

ケイト「了解ッス♪」

目が死んでいる店長を哀れに思いながら、モップとバケツを調達する。

レナ「そう言えばこの人は誰なの?にー。

さっきのデュエルの時から外で観てたみたいだけど」

ケイト「気づいてたっスか!?物音ひとつ立てて無いのに!?」

レナ「レナさん気配に敏感。」

ケイト「た…達人がいるッス!!自分はケイト・ヴァルゼルドっス。是非弟子にしてください!!」

レン「先輩として指導するんじゃなかったんかい。」

ケイト「あ…!!あんまりの恰好良さについ…」

レン「莫迦…本物の莫迦め……っっ」

旧友のあまりの馬鹿さ加減に涙が出そうになったレンは、掃除ついでにケイトの脳みそも洗えないものかと本気で考え始めた。

その時、店の自動ドアが開いた。

店長「ん?ああ、申し訳ございませんお客様、誠に勝手ながら本日は早仕舞いに………」

ドゴッ―

 

 

レン「ん?何だ、今の鈍器で人殴った時のような音は?」

レンが振りかえると、そこにはさっきの連中と同じく平中工業の制服を着た男が四人。そして…

???「……あぁ、俺がこいつを殴った音だよ…」

蛇柄の皮ジャンを着た男がいた。

飛娘「また新しい奴が来たアルか。そろそろ飽きてきたアル…ネっっ!!」

男達を見た王・飛娘は、店長を殴った男に向かって攻撃を仕掛けた。

レン「止せ!飛娘!!」

飛娘「アチョー!!」

迷わず男の頭をヌンチャクで狙い、振りぬいた。

しかし…

???「ぬうんっっ!!!」

飛娘「おっと!?」

その攻撃は、三人の制服の男達の中で最も大柄な男によって阻止された。

飛娘「誰アルか。雑魚は退いておくヨロシ。」

???「それは聞けぬ相談だ。大蔵司 王城(だいぐうじ おうじょう)。ワシが退く時は、この身が朽ちた時と知れい」

飛娘「だったら今すぐに朽ちるといいネ、この王・飛娘の拳で!!」

中国拳法の構えを取り、大宮司を睨む飛娘。

???「ヒヒヒッ…熱いねえ、全く暑苦しいよ。そんなに身構えなくたって、どの道君達はもうタダじゃ帰れないんだしさっ。ボクの複製した『パワー・ボンド』と、改造したデュエルディスクを見ちゃったんだもんね。」

そう言って陰湿に笑うのは、ひときわ背の低い男だった。

レナ「へぇ…あのカードを作ったの、キミなんだぁ」

???「ああ、そうだよ。僕は北城 才人(ほうじょう さいと)。キミなかなか可愛いね。スタイルも良いし。キミがボクの彼女になるなら、君だけはボク達の仲間にして助けてあげるよ!!」

レナ「そう?」

ケイト「え!?あっさり裏切るッスか師匠!!可愛い顔して意外と薄情者?」

少し乗り気に見える返答に、初めてレナに出会ったケイトだけが、動揺した様子を見せた。

才人「ああ、大歓迎さ!!」

レナ「クス…でもごめんね。私こう見えて男の好みにちょっとうるさいの。」

しかしすぐに態度を変えると、普段からは想像出来ないほど色気ある仕草と妖艶な目つきで微笑み、北城才人をからかって見せた。

才人「な、なんだとー!?ボクのどこがダメだって言うんだ!!」

レナ「クスクス。昔からあんまりカッコいい男性(ヒト)が周りに居過ぎたから、贅沢になっちゃったのかもねぇ。強いて言えば、犯罪がばれた位で証拠隠滅しようと慌てて来るような人は恋愛対象には入らないわね」

才人「こ、こいつ…!!言わせておけば!!」

レナ「ちなみに好みのタイプは、私より強い人よ。あなたはどうかしら?坊や」

才人「も、もう絶対に許さないぞおーー!!!」

レナ「あ、ケイトちゃん。遅れちゃったけど、レナ・ファムグリット。高校一年生、レンくんの義妹です。

今はまだ、もう少しにーと遊んでいたいから、お兄ちゃんにカノジョが出来て欲しくないお年頃です。」

流れでケイトにも自己紹介したレナは、満面の笑みだった。

ケイト「……あ、あんなに可愛い笑顔なのに…同性でも惚れそうなのに……なんでこんなに足が震えるんスかね?」

???「ふむふむ……」

それまで黙ってパソコンをいじっていた眼鏡と頭が光る中年の男性が口を開いた。

???「ふむふむ。なるほど、分かりましたよ。

確かにそこの中国とポニーテールの女性は、伝説のデュエリスト『七皇』のようですね。」

レナ「………。」

レナ(………七皇のデータなんて一般に転がってはいない。この短期間に国家の機密データにハッキングしたのかな?)

飛娘「……お前達、一体何しに来たアル」

???「いえいえ、簡単なお話ですよ。

始め我々は、そこで黒焦げになっている同朋から『赤髪のレン』が居たという連絡を受けて来たのです。」

レン「……俺か?」

???「いかにも。始めまして、Mrレン。私はヤブイヌと呼ばれています。」

レン「……始めまして、レン・ファムグリットです」

飛娘「律儀にアイサツ返すアルかアナタ!?」

レン「………フン。」

レナ「にーって、その辺りきちんとしないと気が済まないんだよね。A型だからかな」

ヤブイヌ「さてさて、始めは貴方のデータが欲しかったのですが、『七皇』と呼ばれる彼女達のデータも欲しい。お付き合い頂ければ幸いですな。」

飛娘「データって、何アルか!!」

ヤブイヌ「もちろん、デュエルのデータです」

レン・レナ・飛娘・ケイト「デュエル!?」

ヤブイヌ「驚くことは無いでしょう?我々平中工業高校にも、デュエルの大会の出場を志す部活動があります。ならば、強いデュエリストやカードのデータを取っておくのは、常套手段ではありませんンか。ホホホホホ」

レン(解せねぇ……デュエルのデータが欲しいなら、何故最初のターゲットは俺なんだ?)

ヤブイヌ「さあ、我々とのデュエル受けていただけますか?丁度人数は四対四です。

もしも我々に勝ち越すようなら、どの道このままでは優勝は難しいので、皆さまへ手を出す意味は無くなりますが?」

才人「ま、あり得ないけどね~!」

レン(さっきのチビガキの言った『タダじゃ帰さねえ』ってセリフと言い、このヤブイヌってやつと言い……そしてな何よりも……)

レンは店長を殴った男に注目した。

レン(アイツの雰囲気……ありゃどう見ても昔散々見て来た、人を殺したこと人間のモンだ。

カードゲームで負けたヤツを殺すための人間か?)

ケイト「どうしたッスか、レン君。黙っちゃって。…おなか痛いっすか?それともおなかすいたッスか?携帯食くらいならあるッスよ…?」

ケイトが心配そうにレンを見つめている。

飛娘「えええい!!しゃらくさいネ!!受けてやるアル!そのデュエル」

レナ「…レナさんもやろっかな。最近全然デュエルしてないし」

レン「…………。」

ケイト「レン君…どうするっスか?レン君がやりたくないなら、ボクがさっきみたいにして道作るッスよ…?」

レン「ちっ」

ケイト「舌打ち!?えっ、えっ!?何スか?どうしたんスかレン君!?」

レン「もう面倒だ。後先考えて保身を選ぶのは、俺のやり方じゃねえ。俺もデュエルを受ける!!」

ケイト「???な、何か良く分んないっすけど、これボクも人数に入ってるんスよね?そこのおじさん」

ヤブイヌ「ええ、もちろんそのつもりですよ。Mrレンの腕の中で眠る少女をカウントするのは、些か可哀そうでしょう。それとおじさんでは無い!!まだ19だっっ!!!」

レン・レナ・飛娘・ケイト(留年してんのかよ……)

ヤブイヌ「まあいいでしょう。これで人数はそろいました。

それではさっそく、デュエルを始めましょう。……闇の、デュエルをね。」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~10

英心「もう限界だ!!こんなところに居られるか、ワシは家に帰らせてもらう!!」

神を召喚した余波の影響で色々荒れていた教室の片づけをしていた朝倉 英心は、我慢の限界に達していた。

英心「だいたい何故ワシらが片づけなどせにゃならんのじゃ!?元はと言えばあの貧乳部長の失態ではないかァ!!」

鈴木「いーんじゃん?これ終わらなきゃ授業も出来ないんだし。ダラダラやって先延ばそーぜ」

英心「………ダラダラと先延ばせば良いと言うものではない!!人生とは一瞬一瞬が貴重なのだ!!既に青春も未来も失われた教師陣達が教務室でコーヒー飲みながら腰を落ち着けている中、未来も希望も残されている我々若人が、馬車馬のようにこき使われる。このような事があって良いものか!?」

鈴木「おーwせーしょうねんの主張だわwwエーシン君マジで限界かwww」

英心「こんなことをしていても、我々の未来は暗いままだ!!負の連鎖は永久に断ち切れることは無い。勃てよ若人!!今こそ性戦時だあああああああぁぁぁーーー!!!」

鈴木「色々言ってたけど、途中からエッチしたいっていう欲望しか見えなくなったわ。んじゃコンビニ行くべ?袋とじでも求めてw」

英心「イく!!」

着々と生徒が逃亡して行くのだった。おそらく明日も授業は無い。

英心「………そう言えば、今日はレンもファム妹も姿を見ぬな。少し回り道して探してみるか。」

 

 

 

挑まれたデュエルから逃げるのはデュエリストの恥。受けないという選択肢は無い。

だが…

レン(……勝とうが負けようが、こんな狭いとこで囲みなんざ会ったら、いくらレナでも木刀振れるスペースが足りねえだろうな。かと言って、奥の皮ジャンの男の相手は俺以外じゃ荷が重いかもしれない。それじゃあ戦えねえヤツを守れねえ。つーか火責めとかされたらマジでヤバいだろうな……よし。)

レン「オイ、とりあえず表出ろ」

飛娘・ケイト「ヒィッ!?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

敵勢に言ったはずの言葉に、何故か飛娘とケイトがお互いに抱き合ってブルブル震え出した。その光景に、レンは頭を抱えて言う。

レン「……何でお前らがビビってんだよ?」

飛娘「い、いきなり何言うアルか!?怖いアル!!(ガクブル)」

レン(いや、お前さっきまでそこに転がってる不良相手に無双してたんじゃねーのかよ。何?実際に手ェ出してくる不良(ヤツ)よりただ喋ってる俺の方が怖いの?ちょっとショックだわ……)

ケイト「ま、また何かお仕置きされるのかと思ったッス……!!(ガクブル)」

レン「…そう思うなら自重しろやゴルァ!!」

レナ「にー。大声出すと、ひよのちゃん起きちゃうよ?めっ」

つい大声をだしたレンを諭すように人差し指を出して注意するレナ。

レン「………まあいい。ここじゃ狭い。場所を移すぞ。文句ねえな、チャレンジャー」

ヤブイヌ「ええ。構いませんとも。クックックックック…」

才人「え~そんな必要ないよ。何で僕達があいつらの言うこと聞いてやらなきゃいけないのさ!」

ヤブイヌ「いいではありませんか。移る移らないで時間を無駄にすることもありませんよ。それと…赤髪のレンさん。ご心配なさらずとも、そこで山積みにされている者達含め、これ以上の増員はありませんので、とりあえずはご安心を。クックックックック。」

レン(こいつ…)

ヤブイヌ「さてさて、それではご案内頂きましょうか。戦いの場へと」

 

 

レン達が店を出たころ、英心と鈴木は、買い物を済ませコンビニを出た後に河原へ向かっていた。

英心「フッフフフフ。大漁である。」

鈴木「……やっべーわ。オレまだ信じられない。エーシン君。どれも全部同じ袋とじのハズなのに…ハズなのに……」

朝倉のコンビニ袋ははちきれんばかりに大量の本が入っている。

鈴木「何で同じ雑誌買ってんの?ってか何で買占めちゃったのwww」

英心「この中の袋とじのどこかに、何かの間違いでアングルが異なる袋とじがあるかもしれぬではないか。そうなったら、ワシはこの女優のパイオツを完全に堪能したとは言い難く、またワシ以外の誰かが堪能するのが許せないからだ」

鈴木「無いわwwwその間違いは、まず無いってwwww」

英心「それならばそれで良いのだ。問題は『確かめる』ことだ。」

全く同じ雑誌を袋一杯に買占め、英心の財布は空になった。それでもこの男の顔は、極めて満足気である。

鈴木「後悔しないん?」

そう言われた瞬間、ほんの少しだけ英心の表情が変わった。

英心「……問題無い。ヤってすぐに頭を抱えるほど、あるいは絶叫して血の涙を流すほどの後悔が無いのだから、ワシは満足しておる。」

鈴木「………。」

英心「もう二度と後悔など、しとうないからのう。」

鈴木「そっかい。んじゃそろそろ二人ってのも飽きたし、レナちゃんに連絡取ってみよっか」

英心「ほむん。一日一度はあのボインを拝まねばな」

鈴木「ハハハ。またレン君にブッ飛ばされるよw

って、アレ?エーシン君。アレ、レン君達じゃね?」

英心「…む?」

 

 

 

レン「……ここらでいいか」

土を踏み慣らしながら辺りの様子を確認すると、上着を地面に置き、背負ってきたひよのをそっと寝かせる。

一行が移動して来たのは、大きな川の流れる場所だった。

才人「河原って…まるで不良の喧嘩みたいじゃないか」

ヤブイヌ「フッフッフ。大変結構。モチベーションが上がる場所で戦って頂いた方が上質なデータが取れそうだ。」

レナ「それで、ルールはどうするのかな。おじさん?」

ヤブイヌ「そうですね、一対一で戦って、先に三勝した方の勝ちとしましょうか。それとおじさんでは無い!!まだ19だッッ!!」

レナ「クス‐‐先に説明してから怒るんだね~」

ヤブイヌ「クッ…ゴホン。それでは、お互いに出る選手を決めましょうか。因みに、こちらは大蔵司君が出ます。」

そう言うと、敵側の一番ガタイの良い男が前に出て来た。

王城「我が名は大蔵司 王城(だいぐうじ おうじょう)!!平中工業3年、『関所の王城』である。我が望みは真っ向からの真剣勝負。我こそはと思う者は、この挑戦を受けられよ!!」

見た目通り大きなカラダに大きな声で、対戦相手を待ち受ける。

レン「へえ…おもしろそうだな。」

王城の真っ直ぐな言葉にニヤリと笑うレン。

レナ「意外と武人気質なのかな。あの中じゃ一番いい人そう…かも?」

ケイト「真っ向勝負ッスか。レン君が一番好きそうッスね。」

レン「ああ、そうだな。」

指をバキボキと鳴らし臨戦態勢に入ろうとするレン。しかし――

飛娘「あ、あのっ!!レン…さん」

レン「あァ?」

飛娘「ひぃ!?」

そこに飛娘が異議を申し立てた。

飛娘「あ、あのっ…出来れバこのデュエル、ワタシにやらせてほしいアル」

レン「何でだ?」

飛娘「さっき攻撃防がれたのが悔しいアル」

王・飛娘。意外と負けず嫌いである。

レン「そうか。じゃあ行って来い。」

飛娘「ありがとうネ!!行ってくるアルっ」

お許しが出た飛娘は、パアッっと顔を明るくして前に出た。

 

 

レン「フン…『ありがとう』って、ガキか」

ケイト「相変わらず、素直じゃないんスね、レン君」

レン「あ?何だ急に」

ケイト「最初から、あの中国の人に闘わせるつもりだったんスよねぇ?レン君戦うって決めたら黙って相手に一発入れて速攻喧嘩するタイプだったじゃないッスか~。本当に優しいくせに素直じゃないんスから~」

レン「黙れ、ブッ飛ばすぞ」

ケイト「アハハっ。テレ隠ししてるレン君、可愛いッス♪」

レン「………。」

グリグリグリ。

拳を握って中指だけを少し尖らせて頭を挟んでグリグリする。

ケイト「うきゃああああああああーー!???痛いッス痛いっス!!これマジのやつッスよレン君っ!!」

レン「………。」

グリグリグリ。

ケイト「う…ううっ……痛いよぉ…っっ」

ボロボロと涙をこぼし始めたころに、レナが止めに入ってその場は終息した。

レナ「女の子に泣くまで暴力振るっちゃダメっ!」

レン「ちっ……」

レナ「反省の色が見えないなら、今晩もまた嫌いなおかずの反省メニュー出すからね?」

レン「だったら外で食う。」

レナ「じゃあレナさんがご飯抜きっ!」

レン・ファムグリットは、自分のせいで誰かが辛い思いをするのが許せない性分なのであった。

レン「…………。」

こうして、レンは今日もレナの反省メニューを食うことになるのだった。

飛娘「…さっきの借りを返すネ。」

王城「うむ。七皇が相手だと言うのなら不足は無い!いざ、参られよ!!」

飛娘「七皇‐‐NO.6 『剛拳』王・飛娘。推して参いる!!」

 

飛娘・王城「‐‐デュエル!!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~11

今さらながらこのSSってキャラクターのビジュアルとか設定とか全然書いて無かったと気付いた。

レン・ファムグリット(15)
身長183㎝
体重 69㎏
利き腕 左
視力 右0.4 左0.01
血液型AB

愛用の煙草 JPS
愛車 750RS
IQ 140
資格 漢検一級
   英検一級
    


好きなもの
・昼にする街中の散歩
・夜のツーリング

嫌いなもの
・自分のせいで誰かに迷惑をかけること。
・仲間を傷つける者

月の小遣い
0円
月の収入
無し

お金の使い方
パチンコで財布の中身全部注ぎ込んで、飽きたら注ぎ込んだ分を取り返して余分をドロップに替えること。

所属組織
・坂上学園1ーF
・暴走族 有罪╋夜行 総長

デュエリスト・パラメータ
・所持カード数 E (65枚以下)
・所持カード強さ C (ノーマルでばら撒かれた必須カード所持のレベル)
・カード知識 B (大会の使用頻度が高いカードを軒並み暗記するレベル)
・デッキ構築力 C (構築済みデッキをギリギリ凌駕するレベル)
・デュエル・タクティクス C (パッと見てプレミやアドを蔑ろにしていない程度)
・運命力 B(-Z) (パックのバラ買いでSレアやUレアを3パックに一度引き当てるか、ピンチ局面で死に札を引かない程度。Bまであれば大会で十分通用するレベル)
デュエル・スタイル
・守りとデッキ回転をギャンブルに依存するタイプ
・実は儀式軸で組んでいるが、本来の運命力が一歩家の外へ出ると命の危険があるレベルの(もはや呪われている)ため、全く儀式が出来ていない。

総合評価 C (身内デュエルで上位へ行く程度の能力)

攻撃札
・『悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン』

防御札
モンスターBOX
始祖竜ワイアーム

通り名 赤髪のレン

所持品
コンタクト(左・赤)
誓いのレリーフ(爪)
約束の指輪
紅蓮の特効服
巻き煙草
ターボライター

髪 赤
瞳 オッドアイ(左・青 右・赤)

きっといつか、この設定全部拾えるはず。
十年ほど頂ければ。



【挿絵表示】


※笑顔です



王城「我が名は大蔵司 王城(だいぐうじ おうじょう)!!平中工業3年、『関所の王城』である。

飛娘「七皇‐‐NO.6 『剛拳』王・飛娘。」

 

決闘の形で向かい会う両者は、互いに盾となるデュエルディスクを構える。今はまさに二人の世界。

川を流れる水の音も、自身の肌を撫でる風の音も聞こえはしない。

その二人の間に、1人の男が歩み寄る。

レン「いつまでもガン飛ばしてても埒が明かねえだろ。

ほら、中国。コインだ。先行・後攻はこいつで決めろ」

飛娘「………。」

飛娘は、レンからコインを受け取ると無言のまま僅かに会釈をすると、すぐに王城に向き直った。

その表情はそれまでの飛娘からは想像も出来ないほど凛々しく、そして綺麗なものだった。

レン(ほう…良い集中力だ)

仲間のポテンシャルの高さを見定めて、心強いと感じたレンは‐‐

レン「ところで名乗りの時に学校名言わんかったのは夜間ってことを知られたくなかったからか?それとも貧乏を隠したかったのか?」

的確に飛娘のコンプレックスをさらけ出した。

その一言で、飛娘の集中は一瞬で持って行かれてしまった。

飛娘「~~~ッッ!!どうしてッ!!ここで、そういうこと言うアルかーー!ぶわぁかああああああああああぁぁぁぁぁーーーー!!!」

すっかりいつも通りに戻った飛娘は、目に涙を浮かべながら、心底悔しそうな表情でレンを批難する。

ケイト「さ…さすがッス、レン君。空気を一切読まずに仲間の足を引っ張りに行った……引っ張るどころか、もう大外刈りとか技掛けに行くレベルッス」

レナ「あ、あははは…飛娘ちゃん泣きながらグルグルパンチしてるね……中国拳法使いなのに」

飛娘「負けたらどうしてくれるネ!?ただでさえここのところ朝はバイトに夜は勉強で、デュエルしてる暇なんか無かったのに!うあああぁぁぁーーん!!」

レン「いや…中国がまともな人間っぽい表情しているのが気に入らなかった。後悔はしていない」

飛娘「懺悔しろ!!ワタシが負けたらお前のせいアル!!」

レン「だが断る。自分の負けを人のせいにするな、軟弱者め。負けたら裸にひん剥いてマネキンにするぞコラァ」

飛娘「ヒドイ!!酷過ぎるアル!!やっぱりワタシあなた嫌いアルーー!!!」

 

王城「………もう、始めてもよいかのう…?」

 

 

 

遊戯王 ~Fake Orizin~11話

 

 

飛娘「ワタシのターン。」

コインの結果、王城が裏を当て、後攻を選択し、デュエルは始まった。

飛娘は少し困った顔をしながらデッキに手を伸ばし‐‐

レナ「飛娘ちゃん!!先行はドロー無しだよ!」

飛娘「あ……わ、分かってるアル!!」

ケイト「ちょ…まさかあの人デュエルのルール知らない初心者ッスか!?」

その危なげな様子を見ながら、その場に居るほとんどの者が疑問を覚えた。

それは、このデュエルを挑んできた敵側に特に顕著に映った。

ヤブイヌ(ルールの改定があったことを知らない…?いや、覚えていないほどデュエルから離れていたのか?

どうやら先程の朝はバイトに夜は勉強という言葉にウソは無いようですね)

飛娘「うう……やりにくいネ」

飛娘は、自身の手札を見ながら困り顔でこの先の行動を考え始める。

レン「………なあ、レナ」

レナ「何?にー。」

レン「お前らが名乗ってる『七皇』ってのが、オベリスクみたいな神のカードをシキってるのは分かったんだがよお、俺は一つどうしてもお前に聞いておきたいことがある」

レナ「聞きたいこと?それはいいけど、あんまり詳しいことは教えてあげられないよ?レナさんこれでも雇われてる人だから。サラリーマンには守秘義務もあるんだよ?」

レン「なんだよ守秘義務って…まあいい。そんなことより、アイツだ。」

レナ「飛娘ちゃん?」

レン「アイツ、何でルールの改定が頭に入ってねえんだよ。アップデートが遅すぎるだろ。

マスタールールが変わってから四季が過ぎてんだぞ?」

レナ「それは仕方ないよ。だって飛娘ちゃん、夜間の学校行ったり生活費稼いだりでデュエル離れてたんだもん。もしかしたらデッキも変わってないかもだし……って、大変だねそれは」

レン「………大丈夫なのか、あの中国は。

あと、雇われてるのにバイトしなきゃ生活できないとか。どんなブラックだ。今すぐ取り潰してしまえ。」

 

王城「………どうしたのだ。ずいぶん長考しておるようだが?」

飛娘「ぐぬぬ…先行って一体何すれば良いアル…??」

 

レン「だめだアイツ、早く殴って気絶させて選手交代しないと……」

ケイト「やってくるッスか?」

レナ「ダメだよ二人とも!?ちゃんと見ててあげて!飛娘ちゃんも少しデュエルから離れて忘れちゃってるだけだよ!!」

 

飛娘「………とりあえず、手札から『素早いモモンガ』を召喚」

 

素早いモモンガ

星2 地属性 獣族

1000/100

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分は1000ライフポイント回復する。さらにデッキから「素早いモモンガ」を任意の数だけ裏側守備表示で特殊召喚できる。

 

飛娘「更に手札から永続魔法『強欲なカケラ』を発動シテ、ターンエンドアル。」

レナ「…………」

レナ(どうしよう。私まで不安になって来たかも。)

ケイト「攻撃力1000でリバースカードも無し。そしてカケラ。

レナさん、アレってもしかして『遅延』系のデッキじゃないんスか?」

レナ「ど、どうかな…?昔はそういう構成じゃなかったけど。」

レナ(そもそも構成以前に何でモモンガを攻撃表示なんだろう…?手札誘発のコンバット・トリックにモモンガをサポート出来るカードなんて無いし…まさかグリーンバブーン狙い?いや、いくらマスタールール3に慣れて無くてもバブーンがダメージステップに召喚出来ない裁定なのは、それこそ私達がまだデュエルに触れていた頃から知ってたハズだし。うーん…………うん。全然分からないから静かに観ていよう♪)

 

王城「行くぞ!カードドロー。

手札から速攻魔法『神の写し身との接触』(エルシャドール・フュージョン)を発動。

手札の『髑髏顔 天道虫』(どくろがん レディバグ)と『シャドール・ヘッジホッグ』を融合する。」

飛娘「‐‐速攻魔法の融合カード!?そんなカードがあるなんて…何だか浦島太郎になった気分アル」

レナ「飛娘ちゃん、気を付けて!シャドールは強いよ!!」

飛娘「何はともあれ、ワタシには打つ手は無いネ…」

 

王城「影の映し身よ、冥府の生気と一つになりて、地上の玉座に君臨せよ。

融合召喚、大地の影絵『エルシャドール・シェキナーガ』!!」

 

エルシャドール・シェキナーガ

星10 地属性 機械族

2600/3000

「シャドール」モンスター+地属性モンスター

このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚できる。「エルシャドール・シェキナーガ」の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。①:特殊召喚されたモンスターが効果を発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。その後、自分は手札の「シャドール」カード1枚を墓地へ送る。②:このカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の「シャドール」魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。

 

王城「ここで、素材にした『髑髏顔 天道虫』(どくろがん レディバグ)と『シャドール・ヘッジホッグ』の効果発動。

ライフを1000回復し、デッキから『シャドール・ビースト』を手札に加える。

 

 

王城「おそらく狙いはモモンガの効果によってそろう星2モンスター二体によるエクシーズかシンクロだろうが、それは諦めよ。このシェキナーガの関所は、貧弱なモンスターでは決して崩せはしない。」

飛娘「……そう思うなら、かかってくるヨロシ。」

王城「応ともよ!行くぞ、シェキナーガで攻撃!!」

シェキナーガ2600 VS モモンガ1000

王 飛娘 LP6400

飛娘「……この瞬間、モモンガの効果発動。ライフを回復して、モモンガを二体デッキからリクルートするヨ」

飛娘 LP7400

王城「無様だな。成すすべなくダメージを受けるとは。守備表示で出しておけば、ライフの回復だけが出来たものを…」

飛娘「そう思うアルか?」

王城「…策有りか?」

飛娘「バラすわけ無いアル。敵相手に」

ケイト「何か必死にプレミったのを誤魔化そうとしてるッスね。」

レン「…………。」

レナ「……そっか。そういうことか。大丈夫かもしれない」

レナはここまでの状況を鑑みて、手札にとあるカードがある予測を立ててみた。

何故攻撃表示で無くてはいけないのか?それがひっかかっていたが、小骨が取れたようにスッキリした。

ケイト「えー?アレ大丈夫な奴なんスか??」

一方、レンの方も何か思い当たることが出てきていた。

レン「………ケイト、お前携帯持ってるか」

ケイト「へ?あるッスけど……この状況でメアド交換スか?全然歓迎ッスけど」

良いながらケイトはスマホを取り出した。

レン「ちょい貸せ。どこだコラ」

そう言うと、ケイトのカラダを弄り始めた。

ケイト「ふぇっ!??ちょ、ちょっとま……何言って…やっ!?く、くすぐったい……あっ。そんな、何処さわってるッスか…んっっ!??」

レン「?……何だこのパーカー。内側のポケットの数が尋常じゃねえぞ……ここか?いや、ここ?」

ケイト「あ……ああっ!?そこ違…んんっ!!」

レン「何だこの小瓶?アロマか」

レンは勝手知ったる家のようにあっちこっちケイトのカラダを調べるが、全く見当たらない。

ケイト「ひゃあ!??…レン君…顔当たって…んんっ!?ちく…擦れて…やぁっ!!?」

レン「またノーブラかよ。いくら幼児体型だからって、外出るときくらい付けとけよめんどくせえ……(ゴソゴソ)」

ケイト「は、はいっ。ごめんなさ‐‐ひゃあっ!?」

探せど探せどガムやらクッキーやら塩やらコショウやら液体の入った小瓶やスプレーにライターに酒瓶。更にはサバイバルナイフにレジャーシートに救急セットなどしか出てこない。

その内全身の筋肉が痙攣し自分の体重を支えられなくなったケイトは、レンの頭を抱くようにカラダを預け、更に口から落ちる滴が、レンの顔を濡らすようになるが、それでもみつからない。

レン「な…何でこんな余計なものばっかり……」

ケイト「ら、らってぇ……何があるか分からないじゃないッスかぁ……んんっ!」

このまま探していたら、見つけてはいけないものや、倫理上描写出来ない物まで見つけてしまうかもしれない。

レン「そんなもんどうでもいいから携帯はどこだよ!?」

とうとう自分で探すことを諦めたレンは、ケイトに自分から出すように促した。

ケイト「だ…からぁ、最初から……持ってりゅじゃ…ないッスかぁ………」

レン「あ?どこに持ってんだよ?」

言われて初めてレンはケイトの手に視線を向けるが、目当ての物は見つからない。更にもう片方の手を見ると。

レン「…あるじゃねえかよ」

すると、一連の状況を見ていたレナから、冷たい視線が注がれた。

レナ「………にー?どう見てもワザとだよね」

その目は兄を見る目では無く、煩悩にまみれた男子を批難する女子の目だった。

レン「……まあ、アレだ。俺もたまにはボケをかましたくなるんだよ。ウン」

思いっきりレナから目を逸らすと、ケイトからスマホを借りて操作し始める。

 

王城「………。」

才人「………。」

ヤブイヌ「………。」

 

その間、敵側の男性陣数名が前かがみになっていた。

 

王城「……か、カードを一枚伏せて、ターンエンドじゃ」

 

 

大蔵司 王城 LP9000

手札3 場 エルシャドール・シェキナーガATK2600 伏せ1枚

 

王 飛娘 LP7400

手札3 『素早いモモンガ』×2 『強欲なカケラ』




この回でケイトのビジュアルが気になった方は・・・\\\


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~12

『帰る故郷が在ることと、故郷に帰れるかどうかは……別の話ネ』
星をも砕く剛拳女(カンフー・ガール) 王 飛娘(16)
身長166㎝
体重 52㎏
B74(A)W55H78
利き腕 右
視力 右2.5 左2.5
血液型O

IQ 130

資格 危険カード取扱C級

好きなもの
・ワンキル
・拳法

嫌いなもの
・怖い人


月の小遣い
0円
月の収入
七皇の給料(100000円)
カードショップATMのバイト代(90000円)

お金の使い方
・生活費
・生き別れの両親を探す探偵費用


所属組織
七皇‐NO.6
・(夜間)近林高等学校2ーE


デュエリスト・パラメータ
・所持カード数 C (とりあえずデッキをいくつか作るのに困らない程度)
・所持カード強さ B (大会でファンデッキに組み込まれるレベル)
・カード知識  D-(A+) (一年以上環境を把握していなかった弊害。)
・デッキ構築力 B+ (自身の目的に沿ったデッキを構築可能な程度)
・デュエル・タクティクス B- (自身の構築したデッキをミスなく回せる程度)
・運命力 B+ (追い詰められた状況で低確率でデステニードローが発動するくらいのレベル。)
デュエル・スタイル
・不動性ソリティア理論を駆使して強力なSモンスターを何体も呼びだすか、ジャンク・ウォリアーの一撃必殺。
総合評価 B

攻撃札
・ジャンク・ウォリアー

防御札
ガード・ブロック

二つ名 剛拳
      
所持品
・七皇の剣(ブレスレット)

髪 ピンク
瞳 赤

備考
子どもの頃に中国からさらわれた少女。その弊害で怖い男が苦手になっている。
しかし、店にいた不良などを怖がらずに鉄拳制裁が可能なため、本人の基準によるところが強いようである。
来日してすぐに自身を誘拐した組織が潰れてしまい、行く充ても無かった彼女は、そのまま別組織に拾われ、七皇となるべく教育されていた。
しかし、パラメーターや給料格差などから分かるように、素質はあまり高い方ではなかったらしく、天才であるレナに嫉妬心を燃やしている。最も、嫉妬している最大の理由は、才能よりも首から下の問題のような気がしないでもない。要するに、ド貧乳のまな板である。ぺっったんこなのである。

給料やバイト代を、生き別れの両親の探索に使っており、暮らしは常にド貧乏。


レンの故意のようでその実は事故な行動によって、敵側の男勢は前かがみになっていた。

 

レン「まったく、あいつらデュエル中に何を考えているんだか」

飛娘「お前のせいじゃああああーー!!」

当事者のレンの反応は極めて平常なもので、事故の被害者である少女、ケイト・ヴァルゼルドは少し放心状態だった。

そして、敵側の反応は男として顕著なものだ。

ただ1人を除いては…。

 

レン「…………。」

皮ジャンの男「…………。」

周囲が前かがみになっている中、店で店長を殴り倒した蛇柄の皮ジャンを着た男だけは危ない目をしたまま、レンを見据えていた。

レン(……なるほどな。アイツ似てるわ。あの戦闘狂(バトルジャンキー)に……)

ポカっ。

レン「ん?」

頭の方に衝撃を感じて振り向いて見ると、レナが拳を乗せていた。

レナ「にー!えっちなことしちゃ、めっ!ちゃんとケイトちゃんに謝らなきゃ」

レン「ん……ああ、悪ィ」

ケイト「あ、いえ。お構いなくッス。質素なものですが…」

レナ「………ありゃりゃ。」

全く心の籠っていないレンを諌めようかと思ったレナだったが、顔を赤くしながらもどこか嬉しそうに笑うケイトを見て、どうやらその必要は無いのだろうと悟った。

 

大蔵司 王城 LP9000

手札3 場 エルシャドール・シェキナーガATK2600 伏せ1枚

 

王 飛娘 LP7400

手札3 『素早いモモンガ』×2 『強欲なカケラ』

 

飛娘「と、とにかく仕切り直すネ。ドロー。

この瞬間、強欲なカケラにカウンターが一つ乗るアル。」

強欲なカケラ カウンター0→1

ケイト「これで次のターンになれば二枚引けるッスね…」

レン(わざわざモモンガを初手攻撃表示で来たのなら、おそらくこのカードが来る。

だとしたら、敵のカードは何を伏せたのか……。)

デュエルを観戦しながら、レンはケイトのスマホをいじりながら飛娘の戦略を予想していた。

もとい

ケイト「ああ、そうじゃないッスよ、レン君。そこはここを触れば…ほら、できた。」

レン「………」

そもそも自分のスマホを持ち合わせていないレンは、ケイトにあれこれ教わりながら操作していた。

レン「何でこう機械ってのはややこしいんだクソッたれ」

ケイト「あ…そこ押したらダメっすよ。」

レン「なっ!?何だ画面が真っ黒になったぞ!?」

ケイト「大丈夫ッスよ、レン君。そういう時は…ほら、ここを触ってみて?」

レン「お、戻った。」

ケイト「カードの特徴さえ教えてくれれば、ボクが検索するっスよレン君?」

レン「嫌だ。俺がやる。あ、また画面が前の画面に戻りやがった!?」

レナ「スマホの使い方分からないレン君、可愛いなぁ~」

そんなめんどくさい兄に、どう補正がかかっているのか、レナはまるで生まれたばかりの子犬か子猫を見ているように眺めている。

そんな時、デュエルを進めていた飛娘から声が上がった。

飛娘「よし!準備万端ネ!!このターンで終わらせるアル!!」

ケイト(あ、今何かフラグが立ったッスね……)

レン(あいつ…ヤムチャしやがって)

飛娘「手札から、チューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』を召喚。

さらに、召喚時の効果発動。墓地から最初のモモンガを特殊召喚!」

ヤブイヌ「これでNO.6の場にはレベル2のモモンガが三体に、チューナーのレベル3ジャンクシンクロンが揃ったわけですね」

才人「クックック。召喚範囲はSの5・7・9と、Xの2×{2・3}か。

さぁて、七皇のタクティクスがどれほどのものか見せてみてよ。」

飛娘「フッフッフ。果たして見た後にまだ生きていられるアルか?

こっちはもう笑いが止まらないアル」

ニヒルに笑いながら自分の勝利を確信し高笑いしている飛娘

レナ「気を付けてね、飛娘ちゃん!あのモンスターは特殊召喚したモンスターが効果を発動すると発動を無効にして破壊しちゃうよ!」

飛娘「え”……!?」

一気に表情が固まった。

レナ「やっぱり…知らなかったんだね。先に言っといてよかったよ」

レン「なあ、七皇ってマジなんなんだよ……何か強さの象徴みたいな感じで言ってたのに何であんな無知なんだよ。一夜漬けしてるだけでも目に付くカードじゃねえかアレ」

レナ「あ、アハハ。…ちょっとだけブランク長かったから」

飛娘「うわぁ…どうしたらいいネ!?あわわわわ!!」

才人「ぷっ…ギャハハハハハハーー!!何だコイツー本当に七皇なの?バッカみてぇwww」

飛娘「ぐぬぬぬぬ…!」

才人「悔しいか?悔しいだろうね!!名前が有名なだけだと大変だねwwwwwwギャハハハハハハーー!!!」

レナ「飛娘ちゃん。落ち着いて!ここで焦っても良いことなんてないんだよ」

ケイト「マズイッスね…見たところジャンク・ウォリアー出してモモンガで火力上げた後に物理で殴るつもりだったみたいっスけど、ウォリアーは強制効果だから出してもシェキナにやられるッス。かと言って先にガチガチガンテツをX召喚しても、火力が足りない……八方塞がりッスね」

才人の煽りと言う煽りを受けて、ついに我慢できなくなった飛娘は叫び出す。

飛娘「うああああーぐやじいネーー!!これじゃあ相手のエースを倒してワンショット・キルするというカッコいい勝ち方が出来ないアルーーー!!!」

才人「………へ?」

飛娘は、全力で悔しさを体全体で表現した後、仕方ないと割り切ってプレイを続ける。

そこからは、もはや遊びも慈悲も無かった。

飛娘「むぅ…仕方ないからとりあえず、そこのおっかない人形は倒しておくアル。

魔法カード『地砕き』」

王城「…………」

飛娘が発動した魔法カードに召喚された巨大な拳は、エルシャドール・シェキナーガの頭上に現れ、そのままゲンコツのカタチでシェキナーガを頭から押しつぶし、消滅させた。

跡に残る物は、肘から先だけ召喚された、何者かの腕だけだった。

 

シェキナーガの効果で『神の写し身との接触 』をサルベージした王城は、思わず口から出してしまった。

 

王城「な…何だこの情けない倒され方は…!?」

 

起こったことをそのままに話そう。

シェキナーガを召喚したら拳骨一発で破壊されてしまった。

 

王城「な、なんということだ……」

飛娘「さあて、邪魔なモンスターも消えたところで、次に移るネ。

まずは『素早いモモンガ』を二体リバースして一体に、魔法カード『巨大化』を発動するアル!

 

巨大化

装備魔法

自分のライフポイントが相手より少ない場合、装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力を倍にした数値になる。自分のライフポイントが相手より多い場合、装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力を半分にした数値になる。

 

飛娘「ワタシのライフは7400そちらは9000アル。よって効果は攻撃力倍アル!」

 

巨大化の効果を受けたモモンガは、倍の大きさになり、攻撃力が上昇した。

正直巨大化という割には元の大きさが大したことは無く、巨大化と言うよりはメタボ化に近いものが有るが。

モモンガ ATK2000

 

レン「あ、あった。」

飛娘がカードを発動した頃、ようやくレンも探していたカード『巨大化』の項目を発見した。

レナ「やっぱり巨大化狙いだったんだねー」

ケイト「いや~あの人見た目スレンダーなのに物凄い脳筋戦法ッスね~」

 

飛娘「そして巨大化してない『素早いモモンガ』に『ジャンク・シンクロン』をチューニング!」

王城「ぬううう!!ここで来るか」

飛娘「――限りなき研鑽の果て、大地(かみ)をも穿つ拳士有り。

その拳は絆を持って、その一撃は仲間と共に――シンクロ召喚。

神殺しは未来のために―『ジャンク・ウォリアー』」

 

ジャンク・ウォリアー

闇属性 戦士族 星5

ATK2300 DFF1300

シンクロ・効果

「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上

①:このカードがS召喚に成功した場合に発動する。このカードの攻撃力は、自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分アップする。

 

レン「あれは、シンクロ召喚か」

レナ「うん。条件の揃った『チューナー』と『非チューナー』の『レベルを足し算して合計がシンクロモンスターと同じ』ならエクストラデッキから召喚出来る召喚法だよ」

飛娘「ジャンク・ウォリアーの効果発動!『フレンドシップ・ハーモニー』

ワタシの場には、二体の素早いモモンガがいるアル!」

 

ジャンク・ウォリアー

2300+2000+1000=5300

 

才人「攻撃力5300だって!?」

ヤブイヌ「ふむ…しかし、全体の攻撃力が、王城君のライフポイントを上回ることは無かったようですな」

王城「ふぅむ。しかし単体で我がライフを越えられぬとは、『剛拳』の名も、大したことは無いな。」

飛娘「それは仕方のないことアル。

ひ弱な人間にジャンク・ウォリアーの本気の一撃は耐えきれないアル。

だから死なないように手心を加えなければならなかったネ」

王城「………。」

飛娘「『剛拳』の名はあくまで拳の強さを称えるもの。それは人殺しに与えられるような勲章では無いアル。」

王城「大きく出たな、剛拳!その驕り、貴様の疵になると知れい!!罠カード『和睦の使者』!

貴様はこのターンワシとワシのモンスターに戦闘ダメージを与えられぬ。」

飛娘「ターンエンド」

 

大蔵寺 王城 LP9000

手札 4枚

 

王 飛娘 LP7400

手札1

場 ジャンク・ウォリアー ATK5300 素早いモモンガ×2 ATK 2000 1000

 

 

王 飛娘のエンド宣言と共に、対峙する二人のデュエリストは不敵に笑った。

 

飛娘 王城

「さあ…本番はここからだ……!!」




お気に入り登録して下さった方、有難うございます。

感想とかも有ると、反映出来るところもあるかもしれません。多分


お待ちしてるネ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~13

※2016.8.25
挿絵が入ってませんでした。
あとがきで???となった人ごめんなさい。

朝倉 英心 (15)
身長182㎝
体重72㎏
利き腕 右
視力 右 2.0 左 2.0
血液型O

IQ 110

資格
無し

好きなもの
『おっぱいに決まっておるだろうがあああああああああああああああああーーーー!!!!』
・森林浴
・仲間達


嫌いなもの
・性犯罪者
・ロリコン


月の小遣い
500円
月の収入
50000円
(お祓いや除霊などをやった《ふり》で稼ぐ)

お金の使い方
・胸囲が大きい女子が写っている大人の絵本や、母性の象徴がプリンのように存在を主張している大人の女性が出演しているビデオ等の購入資金。

所属組織
・坂上学園1ーF

デュエリスト・パラメータ
・所持カード数 D 
・所持カード強さ D 
・カード知識 C
・デッキ構築力 A
・デュエル・タクティクス A 
・運命力 A
デュエル・スタイル

総合評価 B+ 

攻撃札
ブラック・マジシャン・ガール
防御札
マジカル・シルクハット
所持品
スマホ
夜の非常食

髪 そんなものは無い
瞳 黄緑

備考
レンとは河原の決闘で絆を結んだ友だち。



実はこの朝倉英心には秘密が二つあります。
一つは紳士であること。
もう一つは、正義の味方であること。

何を持って紳士と評し、何が正義なのかは、主観によるものが大きいと思います。おっぱいのように。(ドヤァ


…………本編どうぞ



(おと…音が聴こえる。)

ワタシのターン、ドロー!

(だれかがデュエルをしている。)

魔法カード発動!

(とても楽しそう。わたしもまぜてほしい。)

罠カード発動!

(どこでデュエルをしているんだろう?)

ターンエンド。

(どうしよう。デュエルが終わってしまうかもしれない。

どこ?ここはどこ?)

さあ、本番はここからだ!

(だれかわたしをつれていってほしい。

わたしにも見せて欲しい。このデュエルを。だれか……!)

 

『そろそろお昼寝も終わりの時間だ。さあ、目覚めろ』

 

(―――!!!?)

気が付くと、文月 ひよのは、でんぐり返しの途中のような格好になっていた。

 

ひよの「………ゑ??」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

大蔵寺 王城 LP9000

手札 4枚

 

 

王 飛娘 LP7400

手札1

場 ジャンク・ウォリアー ATK5300 素早いモモンガ×2 ATK 2000 1000

強欲なカケラ

 

 

現在3ターン目、大蔵寺 王城 VS 王 飛娘 のデュエル。

王城のドローフェイズから。

互いに大型モンスターを召喚するもペースを掴みかねており、譲らぬ攻防を見せていた。

 

ひよの「もう、レンさんヒドイですーー!!」

 

そんな中、外野の方でもちょっとした攻防が行われていた。

レン「スマン。なんか急にお前を叩き起こしてやりたい衝動に駆られてな。まあ良いじゃないか。ほら、アンタの大好きなデュエルをやってるぞ」

ひよの「それにしたってあんまりですっっ!!いきなり足つかんで持ち上げるなんて。しかもあんな体制じゃ、ぱ、パンツ丸見えになっちゃうじゃないですか!!」

レン「いいじゃねえか減るもんじゃ無いし。今時パンツくらい小学生だって自分から見せる時代だぞ?」

ひよの「そんな爛れた貞操観念は滅ぼすべきです!第一坂上学園に入学した理由が登校中にパンツが見たいなんて人に言われたくないです!」

レン「何言ってやがる。酒には花とツマミ。喧嘩には出血ってくらい、青春とパンチラは切っても切れねえもんじゃねえか。こういうのが大人になった時ちょっとした話題に出来たりするんだぞ」

ひよの「そんな男子の爛れた欲望なんざ知らねえですよ!!」

レン「ところでレナ。今の状況ってどっちが有利なんだ?」

ひよの「あ、逃げた!」

レナ「手札にもよるけど、今のところ五分五分かな。飛娘ちゃんは場にモンスターがいて、それはどっちも戦闘で不利になるカードじゃないけど、ブラックホールでも使われたら巻き返しがかなり難しいし。あっちの人はライフは多いけど、飛娘ちゃんは火力重視のデッキだから、ライフ9000や10000くらいなら、削りきれる。ただ、エルシャドールフュージョンが手札にあるから、少し苦しいかな。」

 

王城「行くぞ王 飛娘!スタンバイフェイズに手札から速攻魔法『神の写し身との接触 』を発動。

シャドール・ハウンドとドラゴンを融合し、『エルシャドール・ミドラーシュ 』を融合召喚!」

 

エルシャドール・ミドラーシュ

闇属性 魔法使い族 星5

2200/800

「シャドール」モンスター+闇属性モンスター

このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚できる。①:このカードは相手の効果では破壊されない。②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、その間はお互いに1ターンに1度しかモンスターを特殊召喚できない。③:このカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の「シャドール」魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。

 

王城「カード効果でシャドールが墓地へ送られたことで、ハウンドをチェーン1、対象を『ジャンク・ウォリアー』ドラゴンをチェーン2対象を『強欲なカケラ』として効果発動!!」

対象にされたカードに対し対抗手段が無い飛娘は、そのままエースカードの攻守変更を許し、ドローソースも失ってしまった。

飛娘「これは…かなりキツイアルね…。」

王城「バトルだ!エルシャドール・ミドラーシュ でジャンク・ウォリアーに攻撃!『破滅の咆哮』」

 

ジャンク・ウォリアーDFF1300 VS エルシャドール・ミドラーシュ ATK2200

 

王城「カードを二枚伏せて、ターン終了だ」

飛娘「ワタシのターン。ドロー」

レン「飛娘の場に残るは素早いモモンガ二体か…」

ひよの「でもまだ悲観する状況じゃないだけ儲けものですね。シャドール相手に『ジャンク・モモンガ』で挑んでるわりに、アドバンテージは飛娘さんに有る感じじゃないです?」

レナ「そうだねー。相手は手札〇枚で場にはエルシャドール・ミドラーシュ と伏せ二枚。モモンガを戦闘破壊したらこっちはライフ回復するだけ。それが二体だもん。下手に攻撃して場を悪くしなければ問題は――」

飛娘「手札から魔法カード『調律』を発動!ジャンク・シンクロンを手札に加えてデッキトップを墓地へ送るアル。」

レナ「………も、問題は…」

飛娘「手札からジャンク・シンクロンを召喚。効果でモモンガを特殊召喚ネ!」

レナ「………えっと……」

言ってる尻から簡単に攻撃に移る準備に入る飛娘。剛拳に後退の文字は無いのだった。

レン「問題はなんだって?レナ」

レナ「………。」

かつての仲間のあんまりの猪突猛進ぶりに言葉を失ったレナに、レンは更に問う。

レン「………こんな調子で大丈夫か?」

レナ「………。」

レン「おーい。レナ?」

レナ「………ぐすっ。ひっく」

レン「おい待て。さすがにお前のマジ泣きは予想外だぞ!?」

レナ「だって…にーが虐めるんだもん……グス」

レン「ったく、泣きたいのは俺の方だ。おい、中国!」

飛娘「飛娘!!」

レン「お前エルシャドール・ミドラーシュがいる限り特殊召喚が一ターンに一度だけしかできないっての知ってジャンクロンの効果使ったんだろうな!?」

ケイト「何言ってるッスかレン君。あんな有名な召喚制限モンスター知らないなんて、素人じゃないんスから」

ケイトがそんなバカなことあるわけないという表情で飛娘の方を見る。

飛娘「……何アルかそのしゃらくさい効果は!?それじゃあ、もうこのターンはシンクロ出来ないアル!!」

ケイト「とんだがっかり美人さんだったんスね。あの人…」

ひよの「七皇なのにあんな有名なカード知らないとは思わなかったです。」

仲間内からの物凄いさげすみの視線を浴びせられる飛娘。

レン「オメェこれで負けでもしやがったらその頭のボンボン引きちぎるぞ。特隊が負けて許されっと思うなよコラ」

飛娘「ひいっ!??そ、それは勘弁してほしいアルぅ!これはワタシの宝物ネ!!」

レン「だったら勝って来い!!」

飛娘「はいいいぃぃぃーーっっ!!!」

レンの恫喝にも似たエールに怯えながらも、更に負けられない理由が増えたこのデュエル。心なしか場に居るジャンク・シンクロンとモモンガ達も怯えているように見える。

 

 

 

飛娘「でもこれ以上出来ることも無いし、モモンガを守備表示にしてターンエンド」

王城「ワシのターンだ。」

 

大蔵寺 王城 LP9000

手札 0枚

場 エルシャドール・ミドラーシュ ATK2200

 

伏せ×2

王 飛娘 LP7400

手札1

場 素早いモモンガ×3 DFF100 ジャンク・シンクロンATK1300

 

 

王城「ワシのターンだ。ドロー」

カードを引いた王城は少し考える。

ケイト「どっちも動かなくなっちゃったッスね。ボク少し飽きてきちゃったッス。」

レン「俺もだ。ケイト。攻撃型のデッキが攻撃失敗して手札失うと動きにくくなる。

だって言うのに相手が行動阻害してくるから、動くに動けなくなる。ここらで何かアクションを起こしてくれんと、退屈で死にそうだ。」

レンはぼやきながらケイトの髪を玩び始めた。それを見た敵側の陣営は……

 

才人「けっ、何だよあいつ。あんな貧乳女が彼女なのかよ。羨ましくないぜ。イチャついてんじゃねえよ。リア充撲滅しろ」

ヤブイヌ「ええ、全くです。赤髪のレンは血に飢えた獣のような男だと聞いていましたが、その実只のスケコマシだったようですね…もげろ」

 

レン「えーっと、みつあみってどんな形してたっけ?」

ケイト「ボクの髪の長さじゃ無理ッスよ。……あと、敵が物凄い形相でこっち睨んでるッスよ?」

レン「男子校ってのは、女に飢えるもんだろ。それが奴らの青春だ。どこかにエロ本でも落ちてれば喜々として拾うというのが、奴らの最大級の青春のカタチなんだ。」

 

そんなモテない男達を侮辱するかのような言葉に対し、それまで飛娘に相対していた大蔵寺 王城は、レンに目を向け、言い放った。

王城「安心するがいい、赤髪のレンよ。今準備は整った所だ。今この瞬間から。貴様が退屈だと言える時間は無いぞ」

レン「……何?」

王城「貴様はしらんだろうが、この世には道のカードが幾つも存在している。

『大神災』を起こした三幻神は言うに及ばず、七皇達が持っているという、神に対抗する七つの力!」

レナ・飛娘「――!?」

王城「さらに、三幻神に対をなす神も存在しているという噂だ。」

レン・ケイト「――!!」

レナ・飛娘は自身のカードに。そしてレンとケイトもまた思い当たる節のカードに意識が行った。

王城「そのようなカードを手に入れるためにカード犯罪に手を染める者は後を絶たぬ。パワーボンドですら、所有しているのはサイバー流道場の後継者と一部の門下生のみ。『ミストデーモン 』を妥協召喚する。そして……」

王城が自身のエクストラデッキに手を掛ける。その瞬間。河原の雑草が発火した。

王城「ここにもまた、神に匹敵するだけの力を持つカードが存在する。

見るがいい。敵を焼きつくし骨も残さぬ火炎の化身を」

レナ「レアカード…まさか!?」

王城「太古の覇者はここに在り。骨まで焦がす炎を持って、行く手を阻む餌を焼け!

エクシーズ召喚!マグマの化身『NO.61 ヴォルカザウルス』」

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアアーー!!!』

 

王城の召喚したヴォルカザウルスの咆哮が響くと、それまで小さな草だけを焼いていた炎が突如プレイヤーとレン達を包み込んだ。

 

王城「フッフッフッフッフ。これこそがかの三幻神にも匹敵する力。NO.(ナンバーズ)だ!!」

ひよの「な、何ですかこれ…すごく、熱いです。やっぱり起こされなければよかったです…」

ケイト「うう…これならサウナにでも入ってた方がましッス…」

周囲は炎で焼かれ、温度はドンドン上昇し文字通りの火炎地獄に少女達はみるみる体力と水分を奪われて倒れこんでしまった。

レン「ちっ、オベリスクといい、アレと言い、あのナンバーズってのと言い、『神に匹敵するカード』は迷惑極まりねえな。もう纏めて『闇のカード』って呼べばいいんだクソッたれ。」

だが、店から出たのは正解だったな。と思いながら、レンはケイトの服のポケットから水を三つ取りだした。

レナ「何で都合よく水が…?」

レン「よし、相変わらず色んな物が入ってるポケットだな。良い子だ。ご褒美に水をやろう」

ケイト「えへへ~褒められたッス……ゴクゴク」

レナ「ひよのちゃん、大丈夫?飲める?」

ひよの「有難うございます……ごくごく」

この有様を、飛娘は苦々しい表情で観る。

飛娘「な、なんてことアル。三幻神だけでなく、ナンバーズまで出てくるなんて…この町はどうなってるアル」

王城「ふん。貴様はヴォルカザウルスの熱に当てられていないのか」

飛娘「七皇はみんな特別なカードによって、モンスターの影響を最小限に抑えられているネ。この熱でワタシのプレイミスを誘おうと言う魂胆なら、失敗アル。」

王城「まさか。この程度でへばられては興ざめだ。死ぬのならまず存分にヴォルカザウルスの炎を味わってからにしろ!!ヴォルカザウルスの効果発動!!オーバーレイユニットを一つ取り除き、相手モンスターを破壊し、攻撃力分のダメージを与える!

素早いモモンガを焼き尽くせ!!『マグマ・バーン』」

『キュウウウウウー!!』

飛娘「ぐあああああああーー!!?」

 

飛娘 LP6400

 

王城「さらに、ヴォルカザウルスでジャンク・シンクロンに攻撃!!『火炎砲台』!」

 

ヴォルカザウルスATK 2500 ジャンク・シンクロン ATK1300

 

飛娘「ぐううううっっ!!」

 

飛娘 LP5200

 

飛娘「ぐ…はあっ……さ、さすがに、ダメージまでは防げないアルね。」

王城「ほれほれ、早く何とかせんと、仲間諸共焼け焦げて死ぬぞ!フハハハ!

ターンエンドだ。」

 

大蔵寺 王城 LP9000

手札 0枚

場 ヴォルカザウルス ATK2500

 

伏せ×2

王 飛娘 LP5200

手札1

場 素早いモモンガ×2 DFF100 

 

レナ「まずいなぁ…かなり旗色が悪くなっちゃった。」

レン「そんなにまずいのか、今の状況。」

レナ「うーん…もし次のターンまでヴォルカザウルスが残ってたら、飛娘ちゃん、負けるかもしれない。なのに、相手はリバースが二枚。飛娘ちゃんの手札はまず魔法・罠破壊系のカードじゃないだろうし、厳しいね」

レン「何故魔法・罠破壊じゃ無いと思うんだ?」

レナ「飛娘ちゃんが地砕きでシェキナーガを破壊した時、ワンショットキルし損ねたって言ったのは……覚えてる…かな。にー?」

レナはほんの少し前の出来事に対し、もしかしたら覚えていないかもしれないという気持ちでレンに聞いてみた。

レン「………なんとかな。」

その答えにほっとすると、レナは説明を続ける。

レナ「あれはきっと、『モンスターがいれば相手にダメージを与えることが出来る』カードだと思うんだ。

それも9000あった敵のライフを削り取れるくらいのダメージになるカード。」

ケイト「それはありえそうな話ッスよ、レン君」

レン「あ?心当たりあんのか?」

レンが聞き返すと、ケイトはうなずき返して未だレンが持ったままのスマホを指でたどたどしく操作する。

ケイト「……これ。」

目的のカードが表示されると、ケイトはレンのカラダに身を預けるように眠った。

体力の限界がきたようだった。

レナ「うん。レナもこのカードが一番可能性高いと思う。」

レン「………。なるほどな。そりゃあ、キツイわな……」

ケイトが見せたカードは、レベルの低いモンスターカードだった。たしかに、これならさっきのターンでケリが付いていた。和睦の使者が伏せられていたあの状況では、あまり意味のない仮定かもしれないが。

レン「このデュエル…負けるかもしれないな」

 

 

ラッシュ・ウォリアー

風属性 戦士族 星2

300/1200

 

「ラッシュ・ウォリアー」の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:自分の「ウォリアー」Sモンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時、このカードを手札から墓地へ送って発動できる。その戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力は、そのダメージ計算時のみ倍になる。②:墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の「シンクロン」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。

 

 

 

飛娘「ワタシのターン。ドロー。」

飛娘は、自身の手札を見ていた。最初のターンから持っていたモンスターカード。『ラッシュ・ウォリアー』のカードを。

 

飛娘「…………。」

七皇‐NO.6 王 飛娘。その戦術は、徹頭徹尾ワンショットキル。それ以外の戦術を良しとしない不後退(さがらず)の拳士。しかし、デュエル・モンスターズにおいて、攻撃札のみに頼ったデッキ構成は自身の不利な状況に対し恐ろしく脆さを露見させる。そして、対峙する敵側はしっかりと身を守る防御札を用意して、相手の行動の制限などを利用して上手く自分の有利な千強へ運んで行く堅実なデュエル。独りよがりの攻撃一辺倒なデュエルは、敵をリスペクトし、対策を怠らないデュエリストには勝てない。それを相手との読み合いと一瞬の隙の探り合いの中で戦う『剣道』で天才と呼ばれたレナは知り尽くしていた。自分を凡才と語り、一夜漬けでカードの特徴や戦術を叩き込んだレンは、過去のギャンブル尽くしの生活から、対策を怠る愚かさと恐ろしさを思い知らされた。

 

なら、王 飛娘は……?

 

飛娘(とにかく、今はドローしたカードを確認……。)

そのカードを確認した飛娘に衝撃が走った。

飛娘「‐‐これなら行ける!ワタシはモンスターカードをコストに、魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動!メインデッキからレベル1モンスター『ジェット・シンクロン』を特殊召喚。」

ヤブイヌ「これで場の合計レベルは5になった。ここから呼び出されるモンスターは…」

王城(ふん。大した問題では無いわ。ここで『ジェット・ウォリアー』を呼ばれようともな!)

王城「ならば『ジェット・シンクロン』の特殊召喚時、リバースカードオープン。

『安全地帯』これをヴォルカザウルスを対象に発動する。」

 

安全地帯

永続罠

フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターは相手のカードの効果の対象にならず、戦闘及び相手のカードの効果では破壊されない。また、そのモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃できない。このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターがフィールド上から離れた時、このカードを破壊する。

 

レナ「……ここで安全地帯か。これが吉と出るか凶と出るか…だね。頑張ってね、飛娘ちゃん。」

飛娘「ふん。お前にいわれるまでも無いアル。レナ・ファムグリット。ワタシは、モモンガ二体に、ジェット・シンクロンをチューニング。不動の要はここに有り。調和と進化を繰り返し、我は竜へと昇華する。シンクロ召喚。調和の使者 『TG ハイパー・ライブラリアン』」

王城「な…んだと。そのカードは……っっ!」

このデュエル。初めて大蔵寺の顔が青ざめて行く。

レン「……あのカードは確か、制限カードに指定されている奴だよな?

なんかの雑誌で読んだんだが…死ぬほどメンドクサイことが書いてあったような……。」

その状況に今一つ理解が及んでいない初心者レン・ファムグリットは僅かに首をかしげる。

レナ「うん。戦術を研究する『学会』の戦術理論で、最も有名なソリティア理論の二大巨頭。『不動性ソリティア理論』の必須カードだよ。」

 

この世界には、デュエルに関する研究や実戦指導を行う機関が幾つも存在する。

規模の小さいものは『塾』と呼ばれ、これが最も数多く存在する。学習塾などと同じくデュエルの理論や戦術を学ぶことが出来る。

その塾の中で特に優秀な成績を収めたものは、塾の推薦状をもらい『道場』と呼ばれる塾よりも規模の大きく複雑な勉強をすることが出来る場所へ赴くことが出来る。

大抵は山の上や砂漠のド真ん中など、普通なら人間が立ち寄らない場所に多く存在するため、推薦状無しでは場所の特定すら困難である。

更にその道場の中で師範代の資格を得た者の中で選りすぐりの者だけが入会を許されるデュエルモンスターズのエリートの集まり。それが『学会』なのである。

その学会のエリート達の中でも特に優秀なものの多くが研究の題材に選ぶのが『既に完成されていながらも時代と共に貪欲に力を喰らい、そのデッキは人の寿命すらも喰らい、もはや実際のデュエルには使用不可能』と言われる。究極の理論デッキを構築できる『満足ソリティア理論』と『宇宙の如く成長と膨張を止めず、決闘者の手を離れて進化し続ける、その真価を見るのは運命を支配する『超律者』のみ』究極の理想デッキの構築を目指す『不動性ソリティア理論』なのだ。

 

レナ「その不動性ソリティア理論の研究生は、優秀な論文と、実技試験での結果次第で、手に入れることが出来るカード。それこそが『TG ハイパー・ライブラリアン』なんだよ。」

レン「ZZZ…ZZZ……」

レナ「にー?聞いてた…ねえ?」

レン「はっ…………!お、おう。良い子のお昼寝の呪文のような説明アリガトウ。

あやうく眠って焼け死ぬところだった。要するに、ウザいくらい長ったるい時間をかけて、アホみたいに勉強を繰り返した先にしか手に入らない、金持ちボンボンザマァ(www)のスーパーレアカードってわけだ。」

レナ「むぅ…なんか表現がすごく乱暴だけど…にーがそれで分かるんならいっか。」

レン「んで、そのガリ勉君御用足のカード効果は…っと」

 

TG ハイパー・ライブラリアン

闇属性 魔法使い族 星5

2400/1800

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

①:このカードがフィールドに存在し、自分または相手が、このカード以外のSモンスターのS召喚に成功した場合に発動する。このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、自分はデッキから1枚ドローする。

 

レン「ふーん。まあ優秀なカードだな。でも中国のやつの手札は0じゃねえか。敵のシンクロに期待でもすんのかこれ?」

飛娘「フッフッフッフ~。そんなことでは不動性ソリティア理論の単位なんて未来永劫貰えないアルよ?レンさん。」

レン「欲しくねえ…俺、強いて言えば融合メインだし。ガリ勉とか勘弁してくれ。一夜漬けが毎日とか、イラつきすぎて目が合う人間片っ端から殴りに行きたくなるじゃねえか。」

飛娘「ひぃっ!?と、ととと兎に角!レンさんは黙って観てるアル!!今まで散々バカにされた汚名挽回ネ!!」

レン(手札〇枚からどうやってシンクロ召喚する気だか……。あと、汚名挽回は突っ込まないし突っ込ませない。)

 

飛娘「――ここからは、ずっと『オレのターン』ネ!!墓地から『ラッシュ・ウォリアー』を除外して効果発動!墓地の『ジャンク・シンクロン』を手札に加えて、通常召喚アル!更に、モモンガを特殊召喚!」

王城「ぬう…もう何度も観た効果だが…っっ!」

飛娘「さあ、真髄はここからアル!シンクロ召喚。アクセル・シンクロン。カードを一枚ドロー。そして今ドローした『レベル・スティーラー』を捨てて、墓地から『ジェット・シンクロン』を特殊召喚。そしてアクセル・シンクロンのレベルを一つ下げてレベル・スティーラーを特殊召喚。レベル1のレベル・スティーラーをとレベル1のジェット・シンクロンでチューニング。『フォーミュラ・シンクロン』をシンクロ召喚。ライブラリアンの効果発動、チェーンでフォーミュラ・シンクロン効果。で合計2枚ドロー!!」

 

飛娘 場

TG ハイパー・ライブラリアンATK2400 星5 

アクセル・シンクロン DFF2100 星4(レベル・スティーラー影響)

フォーミュラ・シンクロン DFF1500 星2

手札2

 

レン「――!?!?は?おい、待て・・・」

レン(な、何だ!?俺いつの間にか気でも失っていたのか!?)

飛娘「更に、魔法カード『調律』」

 

調律

通常魔法

①:デッキから「シンクロン」チューナー1体を手札に加えてデッキをシャッフルする。その後、自分のデッキの一番上のカードを墓地へ送る。

 

飛娘「手札に加えるのは、もちろん『クイック・シンクロン』その後トップを墓地へ。手札の『チューニング・サポーター』ーを墓地へ送り、クイックロンを特殊召喚。ハイパー・ライブラリアンのレベルを下げて、レベル・スティーラーを特殊召喚。レベル・スティーラーとフォーミュラ・シンクロンでシンクロ召喚。星3『霞鳥クラウソラス』。1枚ドロー。」

レン「な、何がどうなってやがる…なんか気持ち悪くなってきたぞ」

飛娘「フッフッフ~。この程度でスピード酔いアルか?レンさんも意外と意気地なしアルね!」

レン「あぁ!?んだとコラァ!誰がスピードで酔うか。こっちとら今でも現役で走り屋だバカ野郎!!」

レナ「まだそんなことしてたの?にー。危ないからやめてって何度も言ってるのに……。」

レン「あ”しまった…‐‐してません。」

飛娘「さあ、まだまだスピードを上げて行くアル!」

王城「おのれ…!!貴様いつまで続けるつもりだ!!」

飛娘「ワタシが満足するまでアル。喧嘩売って来ておいて、ヴェーラーも握ってないなんて甘ったれたこと言わないヨロシ。クイックロンのレベルを下げてレベル・スティーラーを特殊召喚。そして霞鳥クラウソラスとスティーラーにクイックロンをチューニング。‐‐戦士達の主はここに。蔑まれし非力さを武器に昇華し、今指導者が君臨する。シンクロ召喚。『ロード・ウォリアー』。

 

ロード・ウォリアー

光属性 戦士族 星8

3000/1500

「ロード・シンクロン」+チューナー以外のモンスター2体以上

①:1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。デッキからレベル2以下の戦士族・機械族モンスター1体を特殊召喚する。

 

飛娘「1枚ドローして、ロードの効果発動。デッキからシンクロン・キャリアーを特殊召喚。そして手札から、三枚目のジャンク・シンクロンを通常召喚。」

レン「おい待て、お前さっきジャンク・シンクロンを召喚してなかったか!?」

飛娘「シンクロン・キャリアーの永続効果。通常召喚に加えてシンクロンモンスターを通常召喚可能アル。」

レン「…もう俺は着いていけない。メインフェイズが終わったら起こしてくれ。」

ヴォルカザウルスの炎ですっかり炎の絨毯になりつつある芝生に何の迷いも無く寝そべり始めるレン。

レナ「ちょ!?ダメだよ、にー。火傷するよ!?」

レン「大丈夫大丈夫。俺、神龍に頼んで熱湯300℃まで耐えられるカラダにしてもらってるからよ」。

レナ「鉄でも溶ける温度だよ!?そんなカラダ上島隆平ぐらいしか喜ばないよ!!っていうか神龍って何!?ツッコミどころが多すぎてレナ1人じゃ捌けないよ!正気にもどってー!!」

 

飛娘「むぅ…外野がなんだか不味いことになって来たアル。やっぱりこの熱さは常人には辛いアルね。早く終わらせないと。アクセル・シンクロンの効果発動。シンクロン・エクスプローラーをデッキから墓地へ送り、レベルを2下げて星2にする。

シンクロン・キャリア―とチューニング。星4 『波動竜フォノン・ドラゴン』

ハイパー・ライブラリアンでドロー。そしてロード・ウォリアーのレベルを下げてスティーラー。ジャンクシンクロンとシンクロして『アームズ・エイド』召喚。ドロー。ロードのレベルを下げてスティーラーを特殊召喚。」

 

王 飛娘 LP 5200

手札2枚

 

『ロード・ウォリアー』 ATK3000 星6

『波動竜フォノン・ドラゴン』 ATK1900 星4

『TG ハイパー・ライブラリアン』 ATK2400 星4

『アームズ・エイド』 ATK1900 星4

『レベル・スティーラー』 DFF0 星1

 

飛娘「さあ、そろそろ関所崩しを始めましょうネ……。」

 

 

 

 

 

 

レン「………七皇すげえ」

 




何がとは具体的に言いませんが、初の試みをした回でした。
レン君は一体どこまで傍若無人なのでしょうかね?


ほむん。ご意見・感想を待つ所存である。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~14 NO.106消火する剛拳

燃えている。

…燃えている。

……燃えている。

何が……?

真っ赤な水に濡れた、白いナニか。でも焦げていく。焦げて行く。黒く、黒く、黒く…。

???「何故だ…」

???「なんだよ…お前まだ泣けるんじゃん。」

チリチリと燃えている。自分の身体が。

???「………俺は…また……」

???「お前は生きろよ?総長としての命令だ。」

その言葉を最後に、白いナニかは息絶えた。

 

???「また…護れなかった………レンさん…っっ」

 

次回、炎の総長。【世代交代】。お楽しみにね♪

 

レン「………ZZZ」

レナ「にー!こんなところで寝たら焼け死ぬよ!?」

レン「………んあ?」

レナ「だいじょうぶ?焦げてない?」

レン「昨日見たアニメの夢視てた」

レナ「……はい?」

 

前回のあらすじ

 

レン「バトルフェイズに起こしてお」

7(´д`;)「 」

飛娘「ま、ちょっと運命力が有ればこんなもんアル。」

レン「な……七皇すげえ…」

 

王 飛娘 LP 5200

手札2枚

 

『ロード・ウォリアー』 ATK3000 星8

『波動竜フォノン・ドラゴン』 ATK1900 星4

『TG ハイパー・ライブラリアン』 ATK2400 星5

『アームズ・エイド』 ATK1800 星4

『レベル・スティーラー』 DFF0 星1

 

王城「………。」

 

大蔵寺 王城 LP9000

手札 0枚

場 ヴォルカザウルス ATK2500(安全地帯 対象)

伏せ×1

安全地帯

 

 

 

 

王城「………どうしてだ。何故あの状況からこうなった!?」

飛娘「フッフッフ~これが七皇の力アル!ひれ伏すがいいネ!ワーッハッハッハッハハ!!」

レン「おい、中国」

飛娘「どうしたアルか、レンさん。……はっ。これはもしかして、ワタシの余りの凄さにとうとうワタシのことを名前で呼ぶ気になったアルか!?」

レン「いいからさっさとヴォルカザウルスを倒せ!!幼女が焼け死ぬだろうがバカ野郎!!」

ひよの「ぅぅ…幼女じゃない~~……」

飛娘「あ……」

大蔵司 王城がヴォルカザウルスを召喚してすでに10分が経過していた。

もちろん今でも火炎地獄祭りは絶賛継続中で、その炎の勢いは衰えることを知らない。

気絶から目が覚めて数分で熱にあてられて脱水症状寸前のひよのは、レンがなんとか水を与えてギリギリの淵で堪えているが、これ以上続けば命の保証は無い。

水を持って来ていたケイト本人もなんとか自分で水を飲めているが、そろそろカラダが言うことを聞かなくなってきた。

レナ「ケイトちゃん。もうちょっとだよ。頑張ってね…」

ケイト「うう…」

ヤブイヌ(……しかし、炎に巻かれていると言うのに、何故あの二人は無事なのでしょうかねぇ?王 飛娘さんの話しでは、七皇には『モンスターの影響を最小限に抑える何か』を所有しているとのことですが……)

炎の外で対岸の火事を決め込んでいたヤブイヌは、女子二人に水を飲ませ上着を被せてなんとか炎の影響を最小限に抑えようとしていたレン・ファムグリットに注目した。

ヤブイヌ(彼が全く疲労の色を見せていないのが不可解ですね……。)

レン「おい、まだ死ぬなよ。カードで人が死にましたなんてサツに説明できねえだろうが」

ひよの「もう少し……もう少しだけでいいから愛が欲しいですぅ……」

レン「バカ野郎、愛があるから介護してんだろうが」

ひよの「うう……せめてもう少しマシな言い方出来ないんですかね。この赤いあくまは……」

レン「だれが悪魔じゃ。火の中投げるぞコラ。ネグレイトすんぞ。」

ひよの「うう~~!!子どもじゃないんですーー!!」

レンは腕の中で思いっきり駄々をこねるように反論するひよのを持ちあげると、高い高いし始める。というより、大分ひよのの身体が宙に浮いている。具体的には炎の上に上がるくらい。

元気☆ハツラツ。

ヤブイヌ「……ひ、疲労感ねえええええええええええええーー!??」

 

飛娘「ヤレヤレ。仕方ないアルね。それじゃあお望み通りあの誰にとっても迷惑なトカゲ野郎を駆除するアル。」

炎で焼かれ死にかけている仲間がいるにも関わらず、飛娘には全く緊張感が無く、慢心している。

王城「愚かな!ヴォルカザウルスには『安全地帯』が在ることを忘れたか!!」

飛娘「ふははははははー!!そんなもの。今から出すカードの前では無いも同然ネ!!ワタシにはお前の絶望に歪む顔がハッキリ見えるアル。聞いて驚け見てひれ伏すネ!これぞ大型モンスタービートのワンマンショー」

 

レン≪‐‐調子こいてんじゃねえぞゴルァ。さっさと殺れ‐‐‐!!≫

 

飛娘「‐‐ひぃッ!????の、脳内に直接!!?目が覇王みたいに成ってるアル!!これ以上は命が危ないネ。あわわわわわ!??て、てて手札から魔法カード『サイクロン』を発動!!これで『安全地帯』を破壊すればワタシの勝ちネ!!ほ、ほらレンさん。ワタシちゃんと勝ったアル!!倒したアルよ!!」

とうとうレンの怒りと殺気が脳内に直接言葉を届けるほどになり、命の危機を感じ始めた飛娘は、さっさとサイクロンを発動してしまう。ショーも減ったくれもあったものではない。

王城「関所を舐めてもらっては困る。リバースカードオープン。『ナンバーズ・ウォール』!!」

 

ナンバーズ・ウォール

永続罠

自分フィールド上に「No.」と名のついたモンスターが存在する場合に発動できる。このカードがフィールド上に存在する限り、お互いのフィールド上の「No.」と名のついたモンスターは、カードの効果では破壊されず、「No.」と名のついたモンスター以外との戦闘では破壊されない。自分フィールド上の「No.」と名のついたモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。

 

飛娘「……これって、まさか……!?」

王城「これで、ワシのナンバーズは破壊されない!!よって、『安全地帯』は破壊されるが、ヴォルカザウルスは残る」

飛娘「うわああああああああああーー!??」

レン「おい、誰が勝ったって?」

飛娘「ひいいいいいぃぃぃーー!??ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃー!!!」

レナ(何で『NO.』専用のサポートカードなんか持ってるんだろう?)

飛娘「いや、落ち着くアル。まだこっちには手札を増やすチャンスはあるアル。もう一度シンクロして次のドローに賭けるネ」

 

『ロード・ウォリアー』 ATK3000 星6

『波動竜フォノン・ドラゴン』 ATK1900 星4

『TG ハイパー・ライブラリアン』 ATK2400 星5

『アームズ・エイド』 ATK1900 星4

『レベル・スティーラー』 DFF0 星1

 

飛娘「フォノン・ドラゴンとレベルスティーラーでチューニング!シンクロ召喚。HSRチャンバライダー!!」

 

王城「まだシンクロを続けるか。しかし良いのかな?このままではお仲間が焼け死ぬぞ?」

飛娘「ウルサイ!!こっちの命も大概大ピンチネ!!ライブラリアンでドロー。」

王城「ふん。無駄な足掻きをしているが良い。」

飛娘「……ぐっ、来ないアル。仕方ない。場のアームズエイドの効果発動。HSRチャンバライダーに装備。攻撃力1000上昇」

 

HSRチャンバライダー ATK3000

 

飛娘「このままバトル。まずはチャンバライダーでヴォルカザウルスに攻撃!。ダメージステップに効果発動。攻撃力が200アップ!」

 

HSRチャンバライダー

星5 風属性 機械族

2000/1000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

自分は「HSRチャンバライダー」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。①:このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。②:このカードが戦闘を行うダメージステップ開始時に発動する。このカードの攻撃力は200アップする。③:このカードが墓地へ送られた場合、除外されている自分の「スピードロイド」カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。

 

 

レン「…………。」

レナ「もうこれ以上の展開は出来ない。なら、攻撃して勝率を上げるしかない。」

王城「クッカッカ。惨めだな。」

 

ヴォルカザウルス ATK2500 VS チャンバライダー ATK3200

大蔵司 王城

LP9000→8300

 

飛娘「チャンバライダー、『二度斬り』」

王城「何、2回目の攻撃だと!?」

攻撃を終えたチャンバライダーは飛娘の命令に応じて即座に旋回。鋭利な刃に更なる加速を叩き込み、速度を増した2度目の攻撃。ヴォルカザウルスに突進する。

 

ヴォルカザウルス ATK2500 VS チャンバライダー ATK3400

大蔵司 王城 LP8300→7600

 

王城「攻撃力上昇に加えて二度の攻撃権とは…むぅおおおお!?!」

飛娘「攻撃、ロード・ウォリアー!」

王城LP6700

 

王城「フ…フハハハハハハハハーー!!ほぼ一話分の尺を使って‐‐では無く、シンクロ召喚を行っておきながらこの程度か!?情けないにもほどがあるわ!」

飛娘「……ターン、エンド」

王城「それではようやくワシのターンだ。ドローさぁて、まずはヴォルカザウルスの効果じゃ。さらに炎の威力を上げて、貴様の仲間にさらなる地獄を見せてやろう!効果発動じゃ!対象は『ロードウォリアー』。そして元々の攻撃力分のダメージを受けろォ!!」

 

飛娘「ぐうううあああああーーっっ!??」

飛娘 LP2200

 

王城「ヴォルカザウルスで、ライブラリアンに攻撃!!」

ヴォルカザウルス ATK2500 VS ライブラリアンATK2400

飛娘「うああああああーー!!」

飛娘 LP2100

 

王城「カード伏せ、ターン終了。」

 

王城 LP6700

手札0

場 ヴォルカザウルス ATK2400

ナンバーズ・ウォール 伏せ×1

 

飛娘 LP2100

手札3枚

『HSRチャンバライダー』 ATK3400 星5

 

飛娘「う……うう。ゴホ、ゴホッ。」

レナ「まずい…護りの効力が切れちゃってる。ヴォルカザウルスの攻撃に耐えきれなくなっちゃったんだ」

ヴォルカザウルスの攻撃を受けた飛娘は、いつのまにか身体も服もボロボロになってふらついていた。

更に、前のターンにかなりのシンクロ召喚を行ったことで、エクストラデッキの枚数は半分を切っている。

カード同士のシナジーを持ってデッキを展開しエクストラデッキからのモンスター召喚をメインとする飛娘は、心身に加えて、デッキまでボロボロになっていた。

レナ(飛娘ちゃんの残りのエクストラデッキ枚数は最高で7枚。『七皇しか所持していないカード』が二枚。

既に大量の中級シンクロモンスターを吐き出していることと、不動性ソリティア理論の目指すデュエルを考えれば、多分残っているのはシンクロ召喚の境地に位置するような召喚条件に重い制限があるようなカード……。

多分一枚はそういうカードがある筈。『永久に揺るがぬ決意(クリア・マインド)』の中でのみデュエリストが創造と召喚が出来ると言われる『アクセル・シンクロモンスター』が最低1枚くらいあるかもしれない。

けど、今その召喚を狙えるかは怪しい。

だとすれば、現状飛娘ちゃんが現実で鑑みて使用できるカードは、残り5枚。いや、エクシーズが入っていれば、さらに少ないかもしれない。現状で彼女が同レベルのモンスターをそろえるのは、多分それなりに手間なハズ。せめて『あのカード』が引ければ……。)

レン「………。」

レナ「…?にー??」

ふとレンの方を見たレナは、レンがなにやら呟いているのが見えた。その手に有るのは、一枚の黒いカード。その目はいつに無く真剣で、その表情は、仲間を救いたいと願う少年のものだった。

レン「‐‐契約の名の下~~が命じる。

廻れ、運命のダイス。」

 

飛娘「うぐ……わ、ワタシのターン……っっ。」

 

レンが何かを言い終わった瞬間、飛娘のターンが始まり、右手がデッキに届けられる。

視界の脇には、熱にやられ意識を失った仲間達。もう、外せない‐‐。

 

レン「……さあ、目覚めよ。剛拳の切り札よ。」

飛娘「ドロー!!」

力強く、美しく、デッキから解き放たれる一枚のカードは、彼女の切り札を呼び起こす逆転の一手。

飛娘「こ、このカードは!!」

レナ「まさか、本当に……!?」

ヤブイヌ(……何だ?何を引いた?この局面でヴォルカザウルスを倒せるカードを引いたのか?)

王城(だが無駄じゃ。ワシのリバースカードは、どんな状況でも対処可能!!)

飛娘「‐‐ワタシが引いたカードは、これネ。」

ヤブイヌ「(自ら手札を公開しただと!?)

王城「慢心のつもりか!わざわざ手札を公開するとは」

飛娘「このカードは、強すぎるアル。故に我々は、このカードを使うに当たって制限を定めたネ。デュエル中に一度だけ効果の適用を許すこと。ドローしたこのカードを相手に公開すること。

メインフェイズの開始時に発動すること。」

王城「何だ……そのカードは?RU…マジック?」

レナ「本当に引いたんだ…三幻神の戦い以降、七皇の誰も『引けなかった』カードを」

 

飛娘「ワタシが引いたのは『RUM-七皇の剣』(ランクアップマジック‐ザ・セブンス・ワン)!! 」

 

RUM-七皇の剣

通常魔法

自分のドローフェイズ時に通常のドローをしたこのカードを公開し続ける事で、そのターンのメインフェイズ1の開始時に発動できる。「CNo.」以外の「No.101」~「No.107」のいずれかをカード名に含むモンスター1体を、自分のエクストラデッキ・墓地から特殊召喚し、そのモンスターと同じ「No.」の数字を持つ「CNo.」と名のついたモンスターをその特殊召喚したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。「RUM-七皇の剣」の効果はデュエル中に1度しか適用できない。

 

飛娘「このカードの効果により、ワタシはデッキから

オーバーハンドレット・ナンバーズを召喚する!!」

王城「お、オーバーハンドレット……」

才人「ナンバーズだって!?」

 

飛娘のメインフェイズに入った瞬間。七皇の剣から凄まじい光が飛び出し、大空へと舞い、七つの星へと姿を整える。その配置は、まるで星座のようだ。そして、七つの星の内の一つが一層激しく煌めくと、何かが地上へ降りて来た。

 

飛娘「握れ、握れ、握れ。敵の力も、命も、降伏する意思すらも。

掌握(にぎれ)。握り‐潰セ。

現れろ。No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド !!」

 

No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド ATK2000

 

ヤブイヌ「こ、これがかつて三幻神に挑んだ七皇達が、自らの切り札を召喚するために使用した召喚の媒体と、その切り札…!!まさかナンバーズだったとは!!」

 

王城「だ、だが攻撃力は2000。しかも正規召喚でも無く、オーバーレイユニットすらも無い!

これではただデカイだけの手だ!!」

 

そう、No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド の姿は、巨(おお)きく、ゴツゴツした岩の右手。

そのままではただの攻撃力2000のモンスターだ。

レン「あれが、中国の切り札か?」

レナ「そうだよ。そうだけど、アレはまだ第一段階。」

レン「第一段階?」

レナ「そう。七皇の剣は、二度煌めく。NO.に新たな力を与えるために。」

飛娘「さあ、活目せよ。七皇の星が二度煌めく時、大地に仇成すもの在らば、己がカラダをカオスに変えて、剛なる裁きを下すだろう!!No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンドをランクアップ・エクシーズ・チェンジ!!

溶岩流の赤き剛炎、『CNo.(カオス・ナンバーズ)106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド』」

 

 

飛娘「これこそが、七皇の切り札、カオス・オーバーハンドレット・ナンバーズ。

三幻神の横暴から世界を守った七皇の剣の姿アル。」

王城「ま、まさかランク5のナンバーズを手札一枚で呼び出すとは……!!」

飛娘「もう、余計なことは言わないネ。バトル。CNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッドで、ヴォルカザウルスを攻撃。『溶岩掌・煉獄』!!」

 

CNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド ATK2600 VS ヴォルカザウルス ATK2500

 

王城「ば、バカなああああああ!?」

LP6600

飛娘「永続罠のナンバーズ・ウォールは、NO.と名の付くモンスター同士の戦闘以外でのNO.の破壊を防ぐ。

でも、CNO.はNO.のモンスターでもあるネ。

よって、自身の効果により、ナンバーズ・ウォールも自壊するアル」

更に、ヴォルカザウルスが破壊されたことで、辺り一面の炎も消火されて熱も逃がされ始めた。

レン「こ、これで…ようやく火が消えた……か。」

仲間の安全を確認したレンは、今まで涼しい顔をしていたのがウソのように汗を掻きはじめた。

レナ「レン君、大丈夫!?」

レン「あ、ああ。ハァ…ハァ…へ、平気だ。」

よく視ると所々火傷やソレに近い痕があるレン。

殆ど距離が離れていない中、逃げ出すことも出来ない温度と大きさの炎に囲まれて、自身はひよのを寝かせていた上着を今度はケイトとひよのをなるべく炎の熱から護るために使っていた為にずっと半袖姿のままだった。

この条件で火傷をしない方がおかしいのだ。

レナ(もう、やっぱり普通に無理してたんだ。あんまり自然だから私でも気付かなかった。やっぱりこの人は目を離しちゃダメだね……それと)

レンが突然取り出した黒いカードとの関連性も気に成るところではあったが、病人が3人になった以上、一層気が抜けなくなったレナは、三人の看護に意識を向けた。

 

飛娘「行け、チャンバライダー!!この攻撃で終わりアル!!自身の効果で攻撃力上昇!!」

王城「ここで負けるわけにはいかん!!カウンター罠『真剣勝負』。これでチャンバライダーを破壊」

 

真剣勝負

カウンター罠

ダメージステップにモンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。

 

 

飛娘「…カードを一枚伏せて、ターン終了ネ」

王城「おのれ…ワシのターン。」

飛娘(何を引いても、私にはCNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッドがいる。

このカードの前では、いかなる魔法も、罠も、モンスター効果も…無意味。)

 

CNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド

ランク5 地属性 岩石族

2600/2000

 

レベル5モンスター×3

このカードが「No.」と名のついたモンスターをエクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。●1ターンに1度、魔法・罠・効果モンスターの効果がフィールド上で発動した時に発動する。このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、このカード以外のフィールド上に表側表示で存在する全てのカードの効果をターン終了時まで無効にする。

 

大蔵寺 王城LP6600

手札1枚 

 

真剣勝負の時には、スペルスピードの問題で発動出来なかったが、現在王城に伏せカードは無い。よって、スペルスピード3のカウンター罠の発動は不可能。更に手札は一枚。盤石だ。

王城「モンスターを伏せて、ターン終了だ。」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 ~Fake Origin~15 水辺の決着

ただひたすらに疾走(はし)り、爆走(はし)り、紛争(はし)り……未来(マエ)に進んだ。

俺には安息など必要無い。俺には平和など必要無い、俺には…家族なんかイらない。

求めるは命を縮める闘争。求めるは血飛沫が舞う致命傷(キズ)。それだけしか無い。

だから走り続けた。命ある限り前に。命を削って生命を攻め切る。命を失うまで、止まることの無い鼓動。

その時の俺の瞳は…狂気に塗れていただろうか?あるいは何も写すことの無い虚空だったのか。

そんなイキザマを数年続けたある日…伝説と言う言葉を聞いて…俺はカードを手に取ることになった。

昔の俺は、デュエルをしていても頑なに自身のデッキを持とうとはせず、手近な敵のデッキをディスクごと強奪し戦っていた。どんな武器(デッキ)でも扱い切れる。

だから本来俺にはデッキを持っている必要は無かった。

 

ふと眼を閉じる。目の前には鏡が在って、俺の手の中には何も無い。

だが、鏡の中に居る俺の手にはデッキが握られている。それはまるで生まれたころから一緒だったかのようなデッキ。それを持っている。持って鏡の中に居る。鏡の中に居る。

居る。

イる。

 

???「………オ前ハ、誰ダ…。」

 

 

遊戯王~Fake Origin~ 15

 

 

飛娘と王城のデュエルが終盤に差し掛かった頃。

 

 

 

飛娘 LP2100

手札2枚

CNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド ATK2600

伏せ一枚

 

大蔵寺 王城LP6600

伏せモンスター×1

 

長かったデュエルも終盤に差し掛かった。

王 飛娘の手札は2枚。場にはカード効果の発動時に表側の全てのカード効果を握りつぶす溶岩掌。そして伏せカードが一枚。

一方、相手は伏せモンスターが一枚。

この状況で多少のライフ差はアドバンテージにもならない。それがデュエルモンスターズ。デュエリストの日常。

敵側のギャラリーは全員諦めムードであり、飛娘も勝ったつもりでいる。

だが、この場に1人だけ、未だ飛娘の勝利を確信できないデュエリストがいた。

 

レナ「…………。」

 

味方側で唯一無傷のレナ・ファムグリットだけが難しい顔をして、大蔵司 王城の一挙手一投足を観察していた。

 

レナ(この状況、飛娘ちゃんの勝ちはかなり近い…。ただ、気になるのは飛娘ちゃんの手札。

1ターン前には伏せカードなんて伏せなかったのに『七皇の剣』を使った後に伏せたってことは、既に手札に持っていたということ。飛娘ちゃんのデッキはシンクロデッキ。なら、あの伏せカードがエクシーズのサポート用カードとは考えにくい。前のターンに明らかに劣勢だったのにリバースを伏せなかったのは…何故なのか)

 

飛娘「ワタシのターン、ドロー。」(モンスターが来ない…手札にも無い。仕方ない。壁だけでも削る!)

飛娘「このままバトル!ジャイアント・ハンド・レッドで攻撃」

 

溶岩の如き灼熱の腕が、秘められたモンスターの姿を暴きだし、襲い掛かる。

伏せられていたモンスターは…

 

『マスマティシャン』

 

王城「このカードが戦闘で破壊された時、カードを一枚ドロー出来る。ドロー」

飛娘「たかが一枚のドローくらい…っ。ターンエンド」

王城「ワシのターンだ!!ドロー」

 

王城の手札は二枚。

ここで何も出来ずにいれば飛娘の勝率は跳ねあがる、だと言うのに焦りは見せずにいる。

一方飛娘も自身の三枚の手札を見て口元をほころばせる。

 

王城「……ワシはリバースカードを二枚伏せてターンを終了する」

 

場に伏せられた二枚のカード。それは、ただのリバースカード。解き放たれるその瞬間まで明かされることの無いデュエリストの闇。一定の警戒は当然であり、。それを怠るならばデュエリストでは無い。

しかし、その二枚のカードに尋常ならざる殺気を感じ取った者が1人いた。

 

飛娘「苦し紛れのリバースカード。フフっ。もはや万策尽きたアルね!!アッハッハッハッハー!!」

 

レナ「飛娘!!」

 

飛娘「‐‐ッッ!??」

敵勢の男達「「「‐‐!???」」」

 

‐‐レナ・ファムグリット。

天才と称される剣道の腕を持ち、文武両道・才色兼備の成人に成りきっていない少女。

その姿は可憐にして美しく、年齢相応の幼さと年齢不相応の色香を醸し出す彼女の笑顔に虜になる男は、近所の小学生から軟派な大学生や、手を出せば明らかに法律で罰せられる年齢の者たちまで数知れない。

誰が想像するだろうか?そんな彼女の表情が今‐‐戦場を駆け抜け死線を潜り抜けた『戦士』を連想させるほど厳しくも凛々しいもの変わることを。

あまりにも平常と違いすぎるレナの雰囲気に、敵側である男達は勿論、仲間の飛娘ですら腰が引けている。これでもし彼女の声質が少女よりも女性のものに近しいものであったならば、王 飛娘はその場でへたり込んでいたことだろう。

 

レナ「いつまで思いあがっているつもりなのよ!自分の置かれてる状況が判断出来なくなるほど脳みそ筋肉に持って行かれたんじゃないでしょ!ピンチなのは貴方の方よ!!」

 

敵側の将であるヤブイヌは思う。何故、と。

飛娘の手札は三枚。そして王城は0枚。

もはや何も行動が出来ない王城に対し、次ターンには手札が四枚になる飛娘があの二枚の伏せカードに対処する確率はそう低くは無いハズなのに、と。

 

だがレナ・ファムグリットはもはやこのデュエルを見通していた。

飛娘の三枚の手札は

『魔法・罠 破壊カード』が無い。

在るならば既に『ナンバーズ・ウォール』の破壊に使用してるハズだから。

効果を無効にする類の『カウンター罠』が無い。伏せカードも然り。

そうでなければ『真剣勝負』で破壊されたチャンバライダーが無駄死になどと言う言葉で言い表せないほど愚かなプレイングだ。勝ち目は無い。

『モンスターカード』は無い。在るならば彼女の性格上召喚しているはずだ。

また、上級モンスターの線も薄い。

いわゆる【ジャンド】に該当する彼女のデッキは下級モンスターの効果と魔法カードのコンボで回すものである。魔法カード「調律」のサーチ対象にでき、「シンクロン」の名を持つ「クイック・シンクロン」等を除けば大抵レベル5以上のモンスターを採用する意義はほとんど無いと言っていい。

‐‐‐では、王 飛娘の手札は何だと言うのだ?

この全ての条件を満たさないカードとは……?

 

飛娘「レナ・ファムグリット…お前」

レナ(手に取るように分かる。貴方の手札は、全て腐りきった『死に札』だ……!!)

 

『死に札』

それは、デッキに投入されていながら現状では役目がないカードのことだ。

デッキに入れているのに役目が無いとはどういうことか?

例えば、相手が効果を持たないモンスターのみで構築したデッキで戦うのであれば、モンスター効果を無効にし、なおかつ相手のモンスターしか効果対象に選択出来ない『ブレイクスルースキル』

 

飛娘の手札は。

既にサーチ対象の存在しない『調律』。

現状発動が許されず、発動したところで打開策を加えられない『アームズ・ホール』。

必殺技カード『スクラップ・フィスト』

 

 

これらの情報が開示されたなら、デュエリスト全員に伝わる筈だ。

このデュエルは絶望的だと。

飛娘が次に何を引こうとも、自身のカードによって、効果を無効にしてしまうジャイアント・ハンド・レット。

一方敵には二枚の伏せカード。どちらかを犠牲にどちらかを発動できる。

勿論苦し紛れのブラフかもしれない。

それでも、少なくとも王城は、次のターンは高確率で生き残れる。

 

 

以上が、レナがデュエリストとプレイングを観察して見通した、デュエルの現状だ。

一見飛娘が有利に見えて来たこのデュエルは、全く持って誤解であり、どちらかと言えば王城に若干の分がある。

もし、彼女と同じ見解を、この情報が開示される前に読みとれたものがいたのなら、それは彼女と同じく天才なのかもしれない。

 

???「フ…フフフ…ッ!」

 

その時、その場に居ながら一度たりとも口を開かず、傍観を貫いていた『蛇柄の皮ジャンを着た男』が笑いだした。

その様子に、男以外の全員が目を見開いた。

 

皮ジャンの男「おい、サレンダーなら早くしろ。どの道このデュエルは終わった。」

 

飛娘「なんだと…?」

 

蛇柄の男の侮辱とも言える発言に、飛娘は目を細める。

 

皮ジャンの男「こっちからはそこの木偶の手札が丸見えでなぁ…終わってるぜ。このデュエル、そこの中国人(チャイニーズ)の勝ちは無い。ククク…」

 

飛娘「言わせておけば…!」

皮ジャンの男「なら試してみろよ。どの道このままなら、お前に勝ちは無い」

自覚はしていても、否。自覚しているからこそ、この発言を聞き流すことが出来なかった。

ついでに仲間に自分の不利をあっさり悟られたことも手伝って、自暴自棄に近いものになってしまった

飛娘「上等ネ!!ドロー。そのままバトル!!」

レナ「…………。」

レナ(うわーん。さっき気を付けてって注意したばっかりなのに……飛娘ちゃんのばかー。単純。単細胞ー)

助言を完全にふいにした仲間に苦笑しながら心で泣くレナであった。

 

CNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド ATK2600 大蔵寺 王城LP6600

 

王城「リバースカードオープン、『ディメンション・ウォール』! 」

 

ディメンション・ウォール

通常罠

相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。この戦闘によって自分が受ける戦闘ダメージは、かわりに相手が受ける。

 

王城を狙うジャイアント・ハンド・レッドの前に時空を歪ませる孔が現れる。

 

飛娘「ジャイアント・ハンド・レッドの効果発動!!場のカード効果を全て無力化」

 

その宣言と同時に孔はジャイアント・ハンド・レッドの手によって無理やり閉じられていく。

だが、ここまでは誰もが想像しうる当然の展開。誰もが予見できる当たり前の未来。

問題はその先にあるものだ。無効化されるカードを囮に、どうやってジャイアント・ハンド・レッドを倒すのか。

その場に居る者の多くが、次の一手に注目した。

 

レナ「………。」

皮ジャンの男「……七皇、つまらないデュエリストだったな」

 

既に飛娘の敗北を予知した二人のデュエリストは、もはやデュエルに興味すら失っていて、仲間のレナは苦い顔をして、敵側の男すら、その勝利に何の関心も抱かない。

同じ未来を予見したデュエリストは、それぞれデュエルから視線を背けた。

 

飛娘(フッフッフッフッ…何とでも言えばいいアル。今とっておきのカードを引いたネ。『禁じられた聖衣』。

禁じられたシリーズのカードがあれば、怖いもの無しネ)

 

飛娘「さあ、何でも来るアル!そんな囮カードでジャイアントを破壊出来るならネ。アッハハハハー!!」

 

王城「………おい、貴様。」

 

飛娘「何アル?」

 

王城「デュエリストのデッキに、囮カードなど無いわ、この戯けがァ!!

リバースカードオープン『禁じられた聖杯』!!」

 

飛娘「………え?」

 

王城の解き放たれたリバースカードにより出現した聖杯の中身がジャイアント・ハンド・レッドに浴びせられると同時に、ジャイアント・ハンド・レッドが効果を失い、ディメンション・ウォールの孔が飛娘の背後に繋がると‐‐

 

飛娘「ぎゃふん!??」

 

飛娘 LP 0

 

そのままジャイアントのグーパンが飛娘の後頭部にヒットし、敗北が決定した。

 

 

 

レナ「あ~あ…負けちゃった。って‐‐わわわわわっ!?」

 

一体どういう物理法則なのか?斜め上から後頭部を殴られたはずの飛娘は衝撃によって吹っ飛ばされていた。

向かう先は、川。そりゃ川辺なのだから川が近くに在るのは当然だが、今飛娘が飛んでいる川とジャイアント・ハンド・レッドが飛娘を殴った方向は90度の誤差がある。本来ありえないはずの現象がここにある。

などと言っている内に飛娘が今にも頭から地面に激突しそうになっている。因みにその速度もまた、物理法則を超えてグングンと速くなっている。何故だ。

それに気づいたレナは地面を強く蹴って、一息の内に飛娘の着地地点に移動し、飛娘の頭を庇う形で受け止めた‐‐

 

レナ「キャッチ!!」

飛娘「ぼふっ!?」

 

そして‐‐

 

レナ「おわっぷ!?」

飛娘「ぷぎゃっ!??」

 

バッチャーン!

 

思いっきり川辺に落ちました。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 〜Fake Origin〜16 キョウイノゼツボウ

例えばそれは蟻と巨象。蟻は群れを成したなら、大きなゾウにも討ち勝てる。確実では無いかもしれないが、この世に確実という存在が『一つ』であるがゆえに、議論に価値は無く、無知なるものは、その過ちに気付かない。

 

だが…しかし、どうだろう?

 

蟻と言う個体は群れを成せばこそ勝ちうるのであり、単体で象には勝ち得ない。

蟻はその事実に気付いたとして、歯噛みしたとして、己を律し鍛錬を重ねたとして、それでもやはり討ち勝てない。

だからと言って、蟻は、その敗北感を、否。そもそも敗北と感じるのだろうか?蟻が敗北感を抱くものだろうか?

恐らくそれは無い。何故ならば、軍隊で討ち勝てるものに『個体で挑み打ち勝ちたい』というのは、人間の身が抱く欲であり、人の身が持ちうる負の感情だ。

 

つまり、何が言いたいのかと言うと‐‐

 

 

飛娘「うがああああああああぁぁぁぁぁーーー!!!!何故ダ!??何故ヒトは勝者と敗者に分かれるアルか!!」

バイト先のカードショップで不覚を取り、いざ雪辱戦と挑んだデュエルに敗北した王 飛娘は、悔しさと惨めさに耐えきれず、天に咆えていた。

 

飛娘「こんな世界滅びてしまえば良いアル……っ。こんな…こんな……っっ!!」

心が冷たく冷えていくのと連動して、飛娘の体温も徐々に低くなっていく。緩やかにしかし確実に流れる川の水が、二人の少女の肢体を濡らしているせいだ。

少女の1人は王 飛娘。そしてもう一人は……。

 

飛娘「何故ワタシの方が年上なのにここまであからさまな胸囲の格差が生まれるアルかああああああぁぁぁぁーー!!!!」

レナ「そんなことレナに言われても…。」

 

ついひと月前まで中学生だった少女。B89(E)W59H87というスリーサイズを持つレナ・ファムグリットだった。

現在そのやわらかな乳房を鷲掴みにされながら貧乳(フェイニャン)の怨嗟を一身に受けている真っ最中だ。

レナ「ねえ、飛娘ちゃん。もうちょーっと優しく触ってくれないかな?さすがにちょっと痛いんだけど……」

飛娘「黙れ!!!鷲掴み出来るという事実が如何に幸福か骨身に染みるまで痛みを味わうアル!!」

レナ「って言うかそろそろ水から上がろうよ。もうパンツまで濡れ濡れだよ?ちょっと気持ち悪いかも」

そう言うと、未だ手を放そうとしない飛娘を諭すように言葉を続けた。

レナ「それより飛娘ちゃん。後ろ……鬼がいるよ?」

飛娘「は?」

レナの言葉で初めて背中に気配を感じた。

それは、怒気。混じりけ無しの怒気。純然たる怒りのオーラ。

レン「……………。」

飛娘「………………あ」

後ろに居たのは、炎が沈下してから倒れていたレン・ファムグリットだった。

倒れてからそう時間も経っていない筈なのにすでに回復しているようで、左手には何かがベコベコと音を立てて握りしめられている。

すると、やはりいつ回復したのか。レンの旧友と言うこと以外は謎だらけな少女、ケイト・ヴァルゼルドが、苦笑いを浮かべながら告げる。

ケイト「あー……えっと、飛娘さん…でしたっけ?

レン君、倒れてはいたけど意識はしっかりあったんで、デュエルの始終は全部確認してるッス。

つまり…」

飛娘「………(ガクブル)」

レン「よぉ、中国…」

飛娘「ひっ…!??」

レン・ファムグリットはデュエルの最初に告げていた。

 

『負けたら裸にひん剥いてマネキンにするぞコラァ』

 

ケイト「負けたから裸にひん剥いてマネキンにされる危険があるから今すぐ逃げた方が良いッスよ?」

飛娘「ひゃああああああああああああああああああああーーーーー!!!!」

レン「‐‐逃がすか。風と呼ばれた男直伝の歩法、無空・縮地。逃れられる獲物はいねえ!!」

飛娘「いやあああああああああああああーーー!!!ごめ”ん”な”ざいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃいいいいーーーー!!!!」

 

こうして、王 飛娘の長い長い鬼ごっこが始まるのであった。

 

ヤブイヌ「……………デュエルは!?」

 

 

遊戯王~Fake Origin~ 16

 

 

 

才人「ねえ、体よく逃げられてんじゃん。バカじゃないの?だからあいつらの言うことなんて聞く必要ないって僕が行ったじゃないか!!」

ヤブイヌ「え、ええ。まさかこんなギャグみたいな調子でずっといられるとは思わなかったものですから。」

大宮司「ふん。逃げる者は追うな。問題なのは未だ残るデュエリストだ。」

 

勝者・大宮司王城は、この場に残る少女の内健在な二人を見据える。

 

ケイト「………。」

レナ「………。」

 

大宮司「どうした?ワシに臆したか。それでもかの七皇の1人か?」

 

ケイト「……ボクは七皇じゃないッスけどね。(ってか、七皇って何?)」

 

ケイトが何言ってんだコイツみたいな目で王城を見る。

 

大宮司「ならば良い。『赤髪のレン』は噂程でも無い腰抜けで、『七皇』の1人王 飛娘はあの噂程でも無い小娘であったが、次はどちらがワシの相手をする?」

ヤブイヌ「いえいえ、これは一人一回ずつのデュエルですから、大宮司君の出番はこれでおしまいですよ?」

大宮司「ゑ?」

ヤブイヌ「ですから、戻ってきてください?今すぐに」

大宮司「………。」

がっくりと肩を落とし、トボトボと陣に戻っていく大宮司であった。

 

ケイト「あのデカイ身体を小さくして歩く姿…ウチの特攻隊長を思い出すッスねー。まぁ絶対ウチの隊長(バケモノ)の方が強いだろうけど。」

レナ「バケモノ?にーの昔のお友達のひとりかな?すっごい気になるよ~主に昔のにーが。これが終わったら家に遊びに来ない?最近のアルバムとかあるよ?料理してる写真とか」

ケイト「ほぉ…ボクもすこぶる興味あるッスよ。主に最近のレン君が。ショタ時代のレン君のアルバム、興味あるッスか?ライオンのコスプレしてる写真とかあるッスよ?」

その時、両者の間に確信が生まれる。

レナ「………。」

ケイト「………。」

少し見つめった後…。

 

レナ「みんなは怖いって言うけれど。」

 

ケイト「‐‐素は滅茶苦茶ピュア可愛いッス」

 

レナの言葉に共鳴したかのように、ケイトが続いて言の葉を紡いだ。

 

ガシッ‐‐!!

 

心響き合った盟友のように握手を交わす。この瞬間、レナとケイトは仲間になった。

 

 

 

才人「……なんだこれ?」

ヤブイヌ「………。」

大宮司「………。」

若干引き気味に白い目を向ける敵勢は、それでも戦意を失わずに前に出た。

才人「そろそろ茶番は終わりにして、次のデュエルをしようよ?

それとも尻尾まいて逃げるわけ?あのヘタレた中国人と赤髪みたいにさぁ!」

挑発するように嘲笑うのは、平中工業二番手、異常な背の低さと、梅干しを食べた時の口をリアルに描いたような表情が特徴の男だ。

ケイト「………さて、どうするっスかねえ?正直あんなカード(NO.)見せられた後じゃ、あのちっさいのもなんかヤバ気なカード持ってるって思った方が良いッスよね?」

レナ「そう言うのは慣れてるよ。三幻神とか。だから申し訳ないんだけど、先に行って良いかな?」

レナはおそらく次の対戦相手であろう小さな男を見据える。ケイトは軽くうなずいた。

ケイト「良いッスよ。そんな目で言われてちゃ断れない。」

レナ「…??目って何のこと?」

きょとんとするレナを尻目に、ケイトは邪魔にならないように未だ気絶したままのひよのそばに立ち退こうと後ろを向く。

しかし、足を進めるまえに振り向きレナに語る。

ケイト「いやぁ…意外と純情派なフリして滅茶苦茶ヘビーな女騎士タイプなんじゃないッスかレナさん。

奴らの口から七皇の仲間とレン君の中傷が出た瞬間‐‐心中穏やかじゃないのが目にしっかり写ってるッスよ?

仲間がバカにされるのが逆鱗ッスかねぇ?」

 

蠱惑的に微笑むケイト。その瞳に映っているレナ・ファムグリットは、同性の目から見ても思わず魅力的な美少女だ。しかし……。

 

レナ「……へぇ、すごいねケイトちゃん。間違いなく隠し切れてる自信があったんだけどなぁ?」

 

ほんのわずかな変化。声が少し低くなった。目が少し鋭くなった。それだけで、まるで別人と話している気分にさせられる。

 

ケイト「フフッ…!良い感じ(殺気)ッス。とてもただの女子高生が放っていいレベルじゃ無い。」

レナ「ありがとう。こう見えてけっこう好戦的なの、私」

ケイト「そうッスか。ならこのデュエルはお任せしていいッスか?」

少し溜めて、妖艶な笑みで言う。

レナ「クスッ…任せて♪」

ケイトは手を振りながら、レナは小粋にウィンクしながら、両者戦場と傍観席へと移って行った。

 

才人「やっと決まったかー。でもよかったよ。僕もキミと戦ってみたかったんだ。」

下卑た笑みを浮かべながら、チビの男はレナの身体を舐めまわすように見ている。

才人「その顔といい、カラダと言い、僕の好みだよ……フフゥ」

それは女性ならば、いやもしかすると同性でも生理的嫌悪を禁じ得ない笑い顔だった。

そんな相手に対してレナは、語るに値しない相手として冷たい目を向ける。

レナ「そう。そのルックスでずいぶん贅沢な好みなのね。

あなたの学校って鏡が無いのかしら?それとも…背が低すぎて見えてないとか?」

才人「な、なんだとー!?ぼ、僕をバカにするのか!!

せっかく可愛い子だから僕の彼女にしてあげようと思ってたのに!!そんなこと言うならしてやらないぞ!!」

レナ「その驕りは、一体どこから来ているんだか……。」

ふと、思い出す。ケイトの先程の言葉を。

 

(正直あんなカード(NO.)見せられた後じゃ、あのちっさいのもなんか()()()()()()()持ってるって思った方が良いッスよね?)

 

制服のポケットの中にあるデュエルディスクを取り出し、デッキを装着しようとするレナ。しかし…

 

レナ「…………そう言うこと…かな?」

 

少しだけその動きが止まり、その後デッキケースに手を伸ばし、別のデッキを取り出し装着した。

 

才人「準備はいいかぁい?

僕は平中工業3年 平賀 才人(ひらが さいと)だよ。もう彼女にするのはヤメだ。僕の奴隷にしてあげようね、お穣ちゃん?」

 

レナ「………。」

 

才人「どうしたんだい?名乗らないのかい?それとも名乗れないほど貧相な名前なのかなぁ?七皇って言うのは」

 

その言葉に、それまで抑えていた怒りが頂点に達したレナは突如……笑いだした。

 

レナ「フッ……アハハッ!アッハハハハハハハハハーー!!!」

才人「!?」

レナ「あ~もう、限界だ。いったいどれだけ私の大切な仲間を悪く言えば気が済むのかしら坊や?」

才人「な!?坊やだと!?おまえ、誰にモノ言って‐‐」

レナ「ああ、もう(うるさ)い!!

もういいわ。あの人の真似なんてしたら怒られるかもしれないけど、でもやっちゃいましょう。

『存在否定』を。さあ、さっそく‐‐」

 

プヴヴヴヴヴヴヴゥゥゥゥゥゥーー!!

 

だが、そこにタイミングの悪いサイレンが鳴り響いた。

決闘中の河原に現れたのは、数台のパトカーだった。

 

ヤブイヌ「あ、あれh‐‐」

ケイト「ゲッ!??サツだ!!やっべえー逃げなきゃ…」

ヤブイヌ「……何故そちらの方が不味そうな顔してるんですかね?」

ケイト「あー…実は自分達、このマチだとイケない方向で有名人なんスよね。ポリ限定で。

やべぇー逃げてぇ……」

ヤブイヌ「そ、そうですね…逃げたいのは同感です。」

警官A「お前たちか!?通報にあった河原で放火して遊んでいる高校生は!!」

1人の警官の登場を皮切りに、次々とパトカーから降りてくる。

警官B「ちっ、折角押収した違法改造したスマホで幼女のポルノ動画観てたってのに、邪魔してんじゃねえよ、クズ共がっ」

今何か警察官としても人としても看過できないことを聞いたような気がしないでもない。

ケイト「く、クズが何か言ってるッス……。」

どうやら自分が少しマチから離れている内に、ここも大分腐ったようだ。とケイトは思う

 

警官B「んだとコラァ!!」

 

その瞬間‐‐レナの殺気が解放された。

 

レナ「黙れッッ!!」

 

警官B「‐‐!???ブクブクブク…」

殺気に直に中てられたその場の警官が泡を吹いて倒れ伏す。そして、その近くに居た警官、さらにその奥と、次々と倒れていく。

ヤブイヌ「?!?!?!?」

王城「な、なんだこれは!?おい、どうしたのだ!?」

警官B「…………。」

王城「へ、返事が無い……」

ケイト「ちょ!?なに警官気絶させてるッスかレナさん!?その覇気はむしろレン君がやった方がいいんじゃないッスか?‐‐じゃなくて!!折角丸く収まりそうだったのにー!」

レナ「ムシャクシャしてやった。落とし前は付けるが反省はしていない。」

ケイト「だ、ダメだこの人……レン君がいなくなった瞬間はっちゃけまくってるッス。レン君のストッパーかと思ってたけど、むしろレン君が彼女のストッパーになっていたんじゃ……?」

才人「何だ?急に警官が倒れた…?まあ、いいか。邪魔者も黙ったし。じゃあ、デュエルを始めようよ?」

レナ「そのつもりよ。視界に入れるのも嫌だけど、少しだけ(もてあそ)んであげる。

……ついでに、埃が出るか叩いてみようか?」

 

才人「あらためて、僕は平中工業3年 平賀 才人(ひらが さいと)だ。」

レナ「『七皇』NO.2。『剣姫』 レナ・ファムグリット。『お前の全てを否定する』」

 

レナ・才人「「デュエル!!」」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 〜Fake Origin〜17 3倍プッシュ

夢…夢を視ている。満天の星空のしたで、三人の子どもの影。肌を撫でる風が地面の草が…自分が今この惑星で生きていることを実感させてくれる。

子どもたちの背には、三本の宝剣が見守るように、あるいは己が主に付き従う従者の如く、剣の刻印の『三角星』と『奴隷影』と『裁定光』を意味する紋章が煌めく。

………私は、思った。

「ずっと、みんなと居られたらいいのに……。」

『三角星』の剣の者が笑う。

「いられるよ。ずっと一緒。ぜったい、だいじょうぶだよ。」

『奴隷影』の剣の反逆者が微笑む。

「ああ。きっと、大丈夫だ。大丈夫な世の中にしてみせる」

そんな二人がいる限り、きっとだいじょうぶ。ぜったいに一緒だ。

私は決意を胸に、『光』の裁定者として振り返る。

「私たちの戦いを…『エターニアソード』最期の戦争にしてみせる。」

振り返った先には、炭になった民家と、黒焦げになった遺体、乾いた血。壊れた剣や城壁。それら全てを燃やす炎。

紛れもない、そこは血と炎。地上に浮かび上がった戦場という地獄だった………。

「そんなことも、あるよね…。」

 

 

 

レナ「『光』と『星』と『影』。このソラの光は星から来て、満たされないものは影になる。

でも、そのどれか一つでも欠けるのなら、世界には総てが消滅する。」

空を見上げながら、レナ・ファムグリットはソラを視る。

レナ「その先に自分の望む物が無いと知りながら、想いを馳せることを止められない。」

ケイト「……何の話ッスか?」

意味の分からない詩のような言葉をつぶやいたレナに、ケイト・ヴァルゼルドは首をかしげる。

レナ「『昔』にお友達と話した、私達の世界の真理のお話だよ。【戦士族】から『このデッキ』に替えるの、何年ぶりかなあ、って思ってたら思い出しちゃった。」

そう言いながら微笑むレナの表情は、どこか寂しげなものだった。

レナ「……そんなことも、あるよね。」

 

 

遊戯王~Fake Origin~ 17

 

 

第一回戦、大宮司と飛娘のデュエルは大宮司の勝利で終わり、これで一敗。

特に戦う理由も無いレナと、それ以前に巻き込まれただけでおまけ感覚のケイト。そしてたった数十分で二度気を失ったひよの。

相手の実力は分かったし、特に戦いたいような相手でも無かったレナは、これでお開きかな~と呑気に今晩の夕飯のメニューを考えていた。

巻き込まれただけのケイトとしては、もうこれで終わりにしても良いんじゃないかと思った。

そう。いまから生贄になる平賀才人。彼が余計な煽りを入れなければ……。

止せば良いのに。

 

 

レナ・才人「デュエル!」

 

レナ・ファムグリットLP 8000

平賀才人LP 8000

 

才人「僕のターンだ。スタンバイ、メインフェイズ。カードを二枚場に伏せる。そして‐‐」

才人が更に手札に手を掛けた瞬間、レナは口を開いた。

レナ「あ、そうそう。言い忘れてたことがあったわ。」

才人「なんだい?もしかして手加減してほしいのかな?いいよ。ただし、今晩その大きな胸や可愛い口を使って僕を気持ちよくしてくれるんならね?」

生理的に気持ちが悪い笑顔を浮かべ、あくまで自身の優勢を謡う才人。

しかし、その笑みはレナの一言で凍りついた。

 

レナ「私のLP1000未満になるまで、私はバトルフェイズ行わないから。安心して動いていいよ、坊や」

才人「な、何だって!?」

ヤブイヌ「バトルフェイズを行わない!?」

王城「バカな、そのようなデュエルがあるものか!」

レナの発言は対戦相手に留まらず、ギャラリーの殆どが驚きを隠せないもので、なんのメリットも無いものだった。

ケイト「……なるほど」

蛇柄の男「ほぉ…」

残りの二人は、何かを納得したような表情で成り行きを見守ることにする。

 

才人「ふん!別にいいさ。僕が勝つのは同じことだ!更にモンスターを裏守備表示でセット。ターン終了だ。」

 

才人LP 8000

手札2枚

場 伏せモンスター

伏せカード×2

 

 

レナ「それじゃあ、醜く足掻いてね?因みに、私のデッキ『神の宣告』も『神の警告』も『神の通告』も入って無いから、頑張ってライフ削ってね?でないと坊やのデッキ負けで終るよ。」

才人「ヘンだ!自分でデッキの内容バラしてちゃ世話ないね。やっぱり七皇は名前だけの凡人だ」

レナ「私のターン。ドローフェイズ。ドロー。スタンバイフェイズ。フェイズ移行、メインフェイズ。」

 

レナは引いたカードを()()()()()()デュエルディスクにセットする。

気のせいかそのカードは、微かにオレンジ色の光を反射していたようだった。

 

レナ「まずは切れ味の確認かな。ずいぶん使ってないから錆ついてるかもしれないし。

手札から『星因士 ベガ』を通常召喚。」

 

 

才人「‐‐テ、テラナイトだって!?」

 

レナのデュエルディスクにセットしたカードから放たれた星達が、こと座の星座を描き、宇宙からまばゆい輝きと共に星の戦士が地上に降臨する。

 

ベガ「セヤァ‐‐!」

星因士 ベガ ATK1200

 

才人「こ、この女…平然とガチデッキ使うかよ!?」

レナ「更に、星因士べガの召喚時、効果発動。『新星の輝き』矢座α星より至れ、神エロスが射るキューピットの矢よ。手札から星因士シャムを特殊召喚。」

 

ベガと同じく自身の星座を描いた星の光に包まれ、眠たげなアーチャーが地上にノロノロと降りて来た。

途中で光が持たなくて落ちた。頭から。

 

シャム「……。」

特に気にすることもなく起き上がると、レナのモンスターゾーンの配列に加わると

 

シャム「よっ。」

 

と、レナに向かって右手を上げた。

 

 

レナ「よっ。さっそくだけどお仕事よろしくね?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

シャム「……(コクリ)」

 

顔は眠たげなまま変化が無い。

空から落ちて土に汚れた自身のモンスターを気に掛けるわけでもなく、レナも気さくに笑顔であいさつを返す。

 

 

レナ「シャムの特殊召喚時、効果発動。

相手に1000ポイントのバーンダメージを与える。『星の降る夜』」

 

シャム「……五体満足じゃ帰さねー。てやー」

 

シャムは天に弓を掲げ、弦が存在の限界を迎えた瞬間に一矢を射る。。

すると‐‐その矢は光のように臨界が曖昧になりやがて分裂し、雨のように敵プレイヤーに降り注がれる。

その雨は、無防備な愚者に慈悲無く降り注ぎ、肉を削ぎ、骨を削った。

 

才人「うっぎゃああああああぁぁぁーー!??い、痛いいいいぃぃー!!何でだよ、ソリットビジョンなのに!?」

 

才人 LP7000

 

大宮司「いきなり1000もライフを削ってくるとは…バトルフェイズを行わないとはこういうことだったのか。」

ケイト「なんかしら勝利方法はあると思ったッスけど、効果ダメージとは。レン君も黒炎弾と言い、義理の兄妹のワリに大分似通った性格してるッスね~この二人。」

 

レナ「【星因士 ベガ】と【星因士 シャム】で、オーバーレイネットワークを構築する。」

 

ヤブイヌ「ほうほう、七皇NO.2 レナ・ファムグリットはエクシーズの使い手でしたか。これは手ごわそうだ。」

 

興味深そうにPCを広げると、カメラを起動するヤブイヌ。

 

ヤブイヌ「先程の中国人のデュエルは拙くて見どころ無かったですが、これは興味深いですね。あ、カメラはデュエリストは写らないようにしてますので、プライバシー保護等はお気になさらず。」

 

特に気にした様子も無く、レナは自身のディスクから一枚のエクシーズモンスターを引き抜く。

 

レナ「人の夢は儚きもの。最期の希望は嘲笑う。さあ我らと共に嘲笑(わら)おうぞ!エクシーズ召喚。狩り取れ、その希望。ガガガガンマン」

 

ガガガガンマン DFF2400

ランク4 地属性 戦士族

1500/2400

エクシーズ/効果

レベル4モンスター×2

①:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このカードの表示形式によって以下の効果を適用する。

●攻撃表示:このターン、このカードが相手モンスターを攻撃するダメージステップの間、このカードの攻撃力は1000アップし、その相手モンスターの攻撃力は500ダウンする。

●守備表示:相手に800ダメージを与える。

 

ケイト「うわーお。」

才人「また効果ダメージモンスターかよ!!」

バトルフェイズを行わないと宣言しながらこのバーンモンスターの連打。狩り取る気満々である。その場に居る誰もがそう思った。

しかし……。

 

レナ「リバースカードを一枚伏せて、エンドフェイズ‐‐ターン終了。」

才人「…え?」

 

結局そのターンは、シャムの効果ダメージを与えただけでレナはターン終了を宣言してしまった。

レナ「どうしたの坊や。ダメージが無くてよかったじゃない。喜んで自分のターンを進めたら?」

才人「ふん、何だ脅かしやがって!幽鬼うさぎでも警戒したかよ。やーい、臆病者ー。」

レナは才人の言葉を無視して目を閉じて、『ふぅ』と少し息を吐く。

レナ「………。」

才人「ふん、可愛く無いヤツ!このデュエルの後で僕がしっかり教育し直してやる。僕好みにね。ドローフェイズ。ドロー」

 

才人はドローしたカードを確認すると、にやりと笑った。

それと同時にレナはすっと目を開ける。

レナ(‐‐何か来る。この感じ、大型モンスターか。)

何をどうしたらそんな予想が出来るのか、レナは敵の取る戦術を予測したうえで、視線は敵に向けたままリバースに意識を向ける。

レナ(発動するかどうか……いや、ここは様子をみよっかな。)

才人「キヒヒヒヒ。行くぞレナ!

手札から『ビークロイド・コネクション・ゾーン』を発動!!」

 

 

ビークロイド・コネクション・ゾーン

通常魔法

手札・自分フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、「ビークロイド」と名のついたその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。この効果によって特殊召喚したモンスターはカードの効果では破壊されず、効果を無効化されない。

 

 

ケイト「【ビークロイド】ッスか。敵さん融合使いが多いんスかね?しかもどれもこれも『パワーボンド』対応の機械族融合……あれ?」

ここで才人の手札枚数を確認する。二枚。場には正体不明のリバースモンスター。

この場合、条件を満たすモンスターは

 

スーパービークロイド‐ジャンボドリル

 

攻撃力3000貫通持ち。ただそれだけなのに同じ貫通効果を持ちながら攻撃力4000のサイバー・エンド・ドラゴン

と同じ素材三体指定。重い、弱い、下位互換。と三拍子そろった残念モンスターだ。

 

ケイト「こりゃこの勝負貰ったッスね!」

これを召喚すれば手札0枚、伏せ二枚の短期決闘。これを崩せば勝ちは目の前。

ひよの「‐‐と、思うじゃん?」

ケイト「おや?起きたっスかロリ巨乳ちゃん。」

これまで気を失っていたひよのが再び覚醒した。日に三度目の覚醒。

ひよの「融合と聞いて目が覚めました。ところであなたはどちら様ですか?なんて言うか、アニメの設定資料で描いたらぶっ○されそうな露出狂ファッションですが。」

ケイト「あ~そういやさっき目が覚めた時はアイサツもして無かったッスね。

ボクはケイト・ヴァルゼルド。レン君の肉○隷。んで、『胸は揉めば大きくなる』って言う言葉が迷信だと証明した生き証人ッス」

ひよの「……因みにスリーサイズは?」

ケイト「え~っと。たしか上からB76(B)W55H78だったかなぁ…?

最近レン君と会ってなかったから測る人も居なかったんスよねえ」

ひよの「おおおぉぉー。次々出てくるレンさんの個人情報!浮き彫りになる爛れた女性関係。メモメモ」

ケイト「んじゃそろそろギャグフェイズは終えて、解説に入るッスよ。ロリ巨乳ちゃん。」

ひよの「文月 ひよのですっ!」

 

才人「チェーン2:罠カード発動。『チェーン・マテリアル』」

 

チェーン・マテリアル

通常罠

このカードの発動ターンに自分が融合召喚をする場合、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分の手札・デッキ・フィールド上・墓地から選んでゲームから除外し、これらを融合素材にできる。このカードを発動するターン、自分は攻撃する事ができず、この効果で融合召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

 

ひよの「それでは、ひよのちゃんの良く分る融合コンボ解説講座です。」

ケイト「ぱちぱちぱち~」

 

 

①このコンボは、どこにあっても融合素材に出来るチェンマテと、エンドフェイズに破壊されるデメリットを無視する事が出来るコネクションを使用して大型ビークロイドを特殊召喚するコンボです。

②このコンボは、手札に二枚カードがあれば成立する強力なコンボですが、デッキに名称固定で四種類のロイドモンスターと、チェンマテ、コネクションを投入するので、実質のデッキ投入必須カードが6枚で、思うほど割りの良いコンボではありません。

③手札に二枚揃えば成立する割に

・罠カードを使用する。

・成立したターンには攻撃できない。

・決まったところで決定打にならない。と言ったビートダウンコンボとしては割と致命的ですが、決まると嬉しい魅せコンボです。

 

 

ひよの「とまあ、お手軽ですが見返りは少ないコンボです。今時効果破壊耐性だけじゃ壁にもなりません。」

ケイト「ウキウキで覚醒して来た割には酷評ッスね…。」

才人「これでこのターン、僕はデッキからでも融合出来るぞ。トラックロイド・エクスプレスロイド・ドリルロイド・ステルスロイドをデッキから除外して『スーパービークロイド-ステルス・ユニオン』」

 

 

スーパービークロイド-ステルス・ユニオン

星9 地属性 機械族

3600/3000

融合/効果

「トラックロイド」+「エクスプレスロイド」+「ドリルロイド」+「ステルスロイド」

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時にフィールド上に存在する機械族以外のモンスター1体を選択し、装備カード扱いとしてこのカードに装備する事ができる。この効果によってモンスターを装備している場合、相手フィールド上の全てのモンスターに1回ずつ攻撃をする事ができる。このカードが攻撃をする場合、このカードの元々の攻撃力は半分になる。このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

 

ひよの「とまあ、これがやりたいだけのコンボなのですよ。ケイトさん」

ケイト「ん~なるほど。確かにこれで攻撃できなきゃ只の的ッスね。」

などと外野が着々と死亡フラグを建設していると。

才人「フフフフフ…これだからバカな奴は困るよ。僕がこの程度で終わるわけが無いっていうのにさあ!」

ひよの「へ?」

ケイト「おや?これは…まさか。」

才人「更に手札から『ビークロイド・コネクション・ゾーン』を発動する!!」

ひよの「なんですって!?」

才人「そしてぇ~三枚目のビークロイド・コネクション・ゾーンを発動!!」

ケイト・ひよの「‐‐!??」

そう。たしかにひよの言うことは正しい。昨今効果破壊耐性がある程度では、いかに攻撃力3600のモンスターと言えど、真のデュエリストにとっては大きな脅威には成りえない。

それが、一体のモンスターであったならば。だが

 

 

スーパービークロイド-ステルス・ユニオン ATK3600 ×3

攻撃力3600 効果破壊不可

 

これが場に三体並んでいる状態は、如何に効果破壊耐性程度と言えど刺さってくる。

往年の三強ですら、これが並んでしまうと本気でぶっ潰すソリティアをしなければ辛くなってきます。

 

才人「クックック……。次のターンが楽しみだよ、レナちゃん?」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王 〜Fake Origin〜18 大三角

前回のあらすじ。

ビークロイド・コネクション・ゾーン。チェーン・マテリアル。コネクション3倍プッシュ。

 

才人 LP7000

手札0

場 スーパービークロイド-ステルス・ユニオン ATK3600 ×3 効果破壊不可

伏せモンスター×1

 

 

レナ LP8000

手札3

ガガガガンマン DFF2400 ORU×2

伏せ×1

 

 

突如カードショップを襲撃して来た平中工業のデュエリスト達とデュエルをすることになった一行の二回戦目。レナ・ファムグリットVS平賀才人。

終始自身の優勢を疑わない両者だったが、LP1000未満になるまでバトルフェイズへは移行しないと宣言したレナに効果ダメージで先制された平賀は、効果破壊不可のATK3600モンスター三体を召喚して見せた。

これにはさすがにギャラリーも動揺する。

効果破壊されないだけならば、戦闘で倒せば良い。

攻撃力が高いだけなら、破壊すれば良い。

数が多いだけなら全体除去を使用すれば良い。

 

しかし、この三つが同時に満たされてしまった場合は厄介だ。

 

ヤブイヌ「……ことデュエルモンスターズというカードゲームに置いては、攻撃力が3000を超えるのは稀です。装備魔法を使えば簡単という素人もいますが、そもそも攻撃力上昇効果などオマケに近い。狙って投入するのは何かしら理由があるか、好みによるところが多い。デュエリストとしての力が付けば付くほど、その採用率は激減する。」

 

ケイト「全体除去の多くは、『ブラック・ホール』のような破壊が絡むか、発動条件が存在する。そのために、テーマ専用の物でもなければ採用出来る、又はされる可能性は低くなる一方ッス。勝率を上げることを考えていれば尚更使用は控えるべき…。」

 

ヤブイヌ「つまり」

ケイト「このデュエル」

ケイト・ヤブイヌ「「彼女のデッキに『星因子 トライヴェール』が採用されているかどうかが分岐点‐‐!」」

レナ「採用《はい》ってるよ~」

ケイト・ヤブイヌ「「あれ~??」」

 

 

採《は》 用《い》 っ て た 。

 

 

遊戯王~Fake Origin~ 18

 

レン・ファムグリットは歩いていた。

レン「……飛娘(あいつ)足速すぎだろ。やってられっか。」

ものの5分で追うのを止めると、自販機に硬貨を入れてジュースを購入して商店街の様子を見ながら河原へ戻っていく。レンがとっくに諦めてジュース飲んでるなど露知らずに、飛娘は力尽きるまで走るのだろう。

汗をかきながら、必死で、水分も補えず、止まった時にはミイラのようになるのかもしれない。そんな想像をしながらのんびり喉を潤おしてレンは歩く。

走れば5分だが、歩いて戻れば30分はかかるだろう。そんなことを考えながら歩いていると、気になる光景を目にした。

フードを被った子どもが、道行く人に片っ端から声を掛けているのだ。

???「250円で買いませんか?このカード、250円で買いませんか?250円で」

レン「やたら250円を強調してるな…。」

断られるたびに人を替えて同じことを繰り返している。

とりあえず、声を掛けてみよう。そんな気持ちで少年の元へ歩み寄るレン。

レン「……おい、ボウズ。」

すると少年は、同じ言葉を同じイントネーションで口にする。

???「250円で買いませんか?このカード。」

レン「………金に困ってんのか?」

???「いいえ。ただ探しているんです。このカードの主を。」

レン「お前、学校はどうした?」

お前が言うか。

レンが現在学校をさぼって河原辺りでデュエルをしていた高校一年生だと知る者は、そう言うだろう。いないが。

???「250円で買いませんか?このシンクロモンスターを。」

レン「……シンクロモンスターだと?」

久しぶりに現代のデュエルを観たあの時、大会優勝者も使用していた白のカード。レンは思い出す。あの時の映像を。

レン(何故か。俺はシンクロモンスターに気を引かれる。あの後、エクシーズやペンデュラムの存在も知った。

使用こそ未だしていないが、エクシーズモンスターも数枚程度なら持っている。

それでもシンクロモンスターに惹かれるこの思いは、未だ枯れない。)

レンはショップのシンクロモンスターを見て、購入することも出来た。しかし、1枚たりとも所持していない。これでは無い。レンの心が強く叫ぶ。

 

”俺のシンクロモンスターはこれでは無い”

 

だが……。

 

レン「………。」

???「250円で買いませんか?」

レン「見せてみろ。そのシンクロモンスターを。」

???「どうぞ。」

シンクロモンスターを手に取る。

レン「……………。」

???「………。」

レン「………。」

???「………。」

永い沈黙が続いた後……。

レン「フン…。」

レンは、フードを被った子どもに250円を手渡し、踵を返す。

 

???「これはオマケだ。」

 

レン「‐‐!?」

 

レンの背後に向かって投げ放たれた二枚のカードに多少虚を突かれながら受け取ると、少年は姿を消していた。

 

これが、過去の●●●が手にした‐‐未来の過去の現在‐‐か。

 

誰からともなく、そんな言葉を聴いたような気がした。

 

???「ようやく最初の一枚…永い永い遠回りだった。フフフフフ」

 

 

 

レナ「それじゃレナのターン。ドロー。スタンバイフェイズ、メインフェイズへ移行。

ガガガガンマンの効果発動。ORUを使い、守備表示の時相手に800バーン。ORUは星因子 シャムを使用。」

才人「ふん。痛くもかゆくもないね。」

才人 LP7000→6200

 

レナ「………カードを一枚伏せて、エンドフェイズへ移行。ターン終了」

才人「さあ、お待ちかね。僕のターンだァ!ドロー。おやおやぁ?良いカードを引いちゃったあ。これはもうすぐに勝負が決まっちゃうなぁ~どうしよっかなぁ~」

 

 

 

才人 LP6200

手札1

場 スーパービークロイド-ステルス・ユニオン ATK3600 ×3 効果破壊不可

伏せモンスター×1

 

 

レナ LP8000

手札3

ガガガガンマン ORU×1

伏せ×2

 

 

 

才人「ねえ巨乳ちゃん。もし君が今サレンダーするなら、今までの態度は水に流してボクの彼女にしてあげてもいいよ?」

レナ「………。」

才人「ちっ、あくまでダンマリか。でもいいや。キミがなんて言おうと、僕には君を絶対に従わせることが出来るだんから。バトル。さあ、一体目のステルスユニオンでガガガガンマンを攻撃だぁ!!」

 

 

スーパービークロイド-ステルス・ユニオン ATK3600 VS ガガガガンマンDFF2400

 

レナ「攻撃宣言時に発動するカードはあるかな?」

才人「いんや。ないよん」

レナ「じゃあ遠慮なく。罠カード『仁王立ち』をガガガガンマンを対象に発動。DFFを倍加するよ。」

 

ガガガガンマン DFF2400→4800

 

ひよの「やりました!これでユニオンの攻撃は通らず、バックダメージです!!」

ケイト(こう言うとフラグぶち抜いてるように聞こえるッスけど、攻撃宣言時…ねえ?)

レナのプレイングに単純に喜ぶひよのと、若干エロい顔をしながら微笑むケイト。

才人「アッハハハハ!!!無駄無駄無駄だぁ!!ダメージステップ時、手札から速攻魔法リミッター解除を発動!!自分の機械族モンスター全ての攻撃力を倍加する!!」

 

 

スーパービークロイド-ステルス・ユニオン ×3 ATK3600→7200

 

才人「僕に逆らうからこうなるのさ!!」

レナ「効果処理後、リバースカードオープン。『D2シールド』!」

才人「なんだと!?」

レナ「防御力は更に倍」

才人「くそっ、バカにしやがって…!!」

 

 

ガガガガンマン DFF4800→9600

スーパービークロイド-ステルス・ユニオン ATK7200 VS ガガガガンマン DFF9600

 

才人 LP6200→3800

 

才人「だが、僕のステルス・ユニオンは、効果では破壊されない。リミッター解除の効果で倍加した攻撃力が元に戻ってターン終了だ。」

 

スーパービークロイド-ステルス・ユニオン ×3 ATK7200→3600

 

 

レナ「ドローフェイズ。ドロー。スタンバイフェイズ。メインフェイズ。ガガガガンマンの最後のORUを取り除き、相手に800バーン。」

 

才人 LP3800→3000

 

 

才人「くそっ、くそっ、くそっ!!」

癇癪を起したように地団駄を踏む才人をしっかりと見据えながら、レナは手札の一枚を手に取る。

レナ「ねえ、キミさぁ…もしかしてそれで全力なの?」

才人「なんだと!!この状況で僕の方が有利なのは目に見えているじゃないか!

破壊耐性を持ったATK3600のモンスターが三体。この状況で減らず口を!!」

その発言が決定打になった。目の前の相手は、相手にならない。

レナ(……目的があったから。でも、ちょっと可哀そうかなと思ったから、手心を加える程度のプレイングで()()()()つもりだったけど)目の前の()()が、余りにも退屈過ぎて、拙過ぎて、相手をするのが嫌になって来た。

レナ「こんなに弱いなら、いつものように戦士族デッキで良かった。いや、アレでも持て余すかな。……もういーや。飽きちゃったよ」

心底つまらなそうにデュエルディスクに一枚のカードをセットする。

 

レナ「【星因子 アルタイル】を召喚。効果発動。わし座より舞い降りる再生の羽根、幾千の時を越えた終幕を今一度【カーテンコール】。【星因子 ベガ】を特殊召喚。さらに、もう一度【新星の輝き】。手札から【星因子 デネブ】を特殊召喚。効果発動。【新星の揺り籠】デッキから二枚目のアルタイルをサーチ。」

 

星因子の展開を行なうレナの上空に、『わし座』『こと座』『はくちょう座』が次々と出現し、それぞれの象徴たる一等星、『アルタイル』『ベガ』『デネブ』が輝く。その輝きは真昼の陽光さえものとせず巨大な光の三角形を形成する。

 

アルタイル ATK1700

デネブ ATK1500

ベガ ATK1200

 

才人「な…な、んで。手札消費一枚で、モンスターを場に三体揃えるなんて…」

そんなバカな。そう言いたげな顔をする才人に、レナは冷めた顔で吐き捨てる。

レナ「普通だよ、コレ。別におかしなことも無い。だって星因子だもん。」

才人「ふつ…う?」

才人が驚愕したようにレナを見る。その姿がまた、レナを失望させる。

 

レナ(星因子が当たり前に出来る展開をしただけでこの表情。やっぱり、この世界のデュエルのレベルは、あまりにも低すぎる。この退屈は、どんな猛毒よりも激痛だ。)

遠い記憶の強敵達の姿がレナの脳裏に鮮明に映る。自身に死を予感させる死神のような。それでいて、乾いた心を水で満たし、その勢いで溺れ死んでしまいそうな幸福感を与えてくれる恋人のような二人の姿が。

 

レナ「会いたい…早く会いたいよ。クーちゃん。ライアス君。私を思い切り負かしてほしい。癒してほしい。会いたくて、会いたくて、戦《あ》いたくて…気が狂いそうだよ。」

 

自身のカラダを腕で抱きながら、天を仰ぐ。

 

レナ「……三体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築。」

才人「ぐぅ…ッッ!!」

 

これから何が召喚されるのか?そんなことこの状況で迷う筈が無い。才人の手札は0。リバースカードも無い。妨害札が存在し得ない。素材は三体の星因子。

星因子によって形成された巨大な光の大三角は真昼の空にあってなおも輝きを増し、「夏の正三角」から「冬の逆三角」へカタチを変えてゆく。

レナ「白き王が仰ぐ天上の火よ、ハジマリの火を煌めかせたまへ。

エクシーズ召喚。ランク4。盟友の盾【星輝士トライヴェール】」

 

星輝士 トライヴェール ATK2100

 

レナの呼びかけに応え、細身の騎士が紫電の盾と剣を構え、地上に舞い降りる。

そしてレナの前に歩み寄り、口を開く。その声は少し恨めし気にも感じられた。

 

トライヴェール「……お久しぶりですね。現マスター。」

レナ「久しぶり。有給休暇はどうだった?」

トライヴェール「5年の休暇とか拷問に近いんですね。戦争してるよりはマシなんでしょうが、これからはもう少し頻繁に喚んでください。寂しくて死んでしまいます。」

レナ「無理。あなた達をデュエルに使うと私が退屈なんだもん。」

トライヴェール「部下が働きたいって言ってるのに拒否する主人など聞いたことが有りませんよ!?」

レナ「ごめんねー。でもやっぱり退屈だから明日からまた有給で。」

トライヴェール「ちくしょおおおおおーーー!!!」

 

ケイト「も、モンスターが、しゃべってる…!??」

 

ソリットヴィジョンで現れているハズのモンスターが口を聞き、あまつさえ主人にもっと使ってくれと文句まで言っているこの状況に、その場に居る者が皆一様に目を奪われていた。

 

レナ「はいはい。そろそろ行くよ、トライ。準備は出来てる?」

トライヴェール「だから!五年間ずっと準備してたんですよ私はぁ!!毎晩毎晩デッキは持って行っているのに使ってるのは違うデッキばっかりで我々がどれだけ寂しい思いをしていたと」

レナ「‐‐トライヴェールの特殊召喚時に効果発動!」

トライ「無視!?無視ですかマスター!!」

なおも苦言を呈するトライヴェールを横目に効果発動を宣言するレナ。

レナ「我に仇成す傀儡よ、汝の有るべき姿に戻れ‐‐」

 

 

星輝士 トライヴェール

ランク4 光属性 戦士族

ATK/2100 DFF/2500

レベル4「テラナイト」モンスター×3

このカードをX召喚するターン、自分は「テラナイト」モンスターしか特殊召喚できない。①:このカードがX召喚に成功した場合に発動する。このカード以外のフィールドのカードを全て持ち主の手札に戻す。②:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。相手の手札をランダムに1枚選んで墓地へ送る。③:X素材を持ったこのカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の「テラナイト」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

レナ「【連煌星の帰還《アステリック・リバース》】」

 

トライヴェールの効果により、煌星の光に包まれたフィールドの全てのカードが、元の主の元へ舞い戻る。

だが、本来手札に有り得ない存在であるEXデッキのモンスター達は、持ち主の手札に加わることを世界の修正力が許容しない。ゲームの法則により手札に加われないEXのモンスター達は、EXデッキへと還元される。

これにより……。

 

才人LP3000

手札一枚

 

レナLP8000

手札三枚

場 星因子 トライヴェール ATK2100

 

レナ「更に効果発動。ORUのデネブを取り除き、相手の手札を一枚捨てさせる。」

 

トライヴェールの構えた剣から発せられた紫電光が才人の最後の一枚となった手札を貫く。

雷光によって焦げたカードは開いた黒い風穴から灰と化し瞬く間に崩れ消えてゆく。

 

才人LP3000

手札 0枚

 

才人「あ……ああ………!???」

 

 

 

事実上、レナの勝利は確定した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王~Fake Origin~19 その夜明け昨日の明日へ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(^_^;))))))コソコソ…











つスッ・・・・・・





例えばこの夜が明けたら、()()()は光に焼かれるだろうか・・・・・・

 

例えば日が沈んだら、()()太陽が、闇に飲まれて消えるだろうか・・・・・・

 

 

もし、本当にこの星が廻る光が飲まれるなら・・・・・・もし、この星を廻る光が焼かれるなら

 

 

「俺は今日、君に告白して命を終えたい。」

 

俺の隣に腰を下ろす、小柄で年上の少女が・・・俺を見る。

 

「何を言っているの?私は・・・・・・貴方の彼女なの」

 

「ああ。でもこの星が消えるとしたら、俺は1秒後に消えるこのカラダで、お前への愛を口にして逝きたい。

 

お前と寄り添い、お前と語り、お前と共に・・・俺は消えたい。」

 

ああ、愛おしい。

その蒼穹の髪に相対するほど紅潮しているお前が愛おしい。

 

消え去りそうなほどか細い声、崩れてしまいそうなほど儚い手。俺を見つめる青の瞳。

 

それは絶対に消えない想い。愛という・・・想い。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「そんなの、私はイヤなの。消えて欲しく無いよ・・・」

 

私のせいで偏食してしまった赤の瞳、そして元の緑の瞳をみつめてーー見とれてしまって、私は私の気持ちを口にしたの。

 

「ここが消えてしまうなら、どこか別のところに行きたいの・・・・・・」

 

もう殆ど見えていない彼の目の代わりになって、もうカードすら掴めない手の代わりになって、私は貴方と共に生きていたい。

 

「この星が消えてしまうなら、別の星に行きたい。貴方が生きていてくれる星へ。

貴方の手を握っていられる星。貴方をずっと、感じられる星へ・・・行きたいの。」

 

 

 

だから

 

 

 

「夜が明けても、日が暮れても。ーー2秒(あと)にも、私を感じて。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

瞼を開ける。過去にあった光景は、常にこの瞳に刻んで来た。

 

その代償に俺は、自分の記録が所々欠けるが・・・ああ。もちろん安い買い物だと、今でもハッキリと言える。

 

 

レン「・・・・・・・・・・・・2秒経っても、お前を感じているよ。クエリィ。」

 

 

日の光を反射する白い病室の中で、今でもお前の青髪は、宇宙(そら)の星々より、美しく煌めく。

 

 

ザザザザザザザ・・・・・・!!!!!

 

 

頭の中で、砂嵐が聴こえる。

 

 

レン「また、何か記録が消えたらしい。」

 

 

ああ、取るに足らない。何が消えたのかも興味が無い。

 

 

だからもっと、お前を見ていよう。俺の愛しい・・・お前を・・・・・・・・・。

 

 

 

遊戯王~Fake Origin~19 その夜明け、昨日の明日へ

 

 

デュエルから一日経過。

 

 

 

ケイト「いや~空が青いっスね、レン君。」

 

レン「ああ、そうだな。マチの至る所が黒焦げだし、煙上げてるけどな」

 

 

ケツに昔なじみの仲間を乗せて、単車のアクセルを全開に走っている。

 

ところどころで消防やらが火消しに躍起になっている。ご苦労さまです。と。

 

 

ケイト「やっぱり昨日のデュエルの被害がマチにも出てるんスねー」

 

あちらこちらを遠目で見ながら、その光景に普段眠そうな目を開いている。

 

レン「昨日、俺がいない間に随分派手に遊んだんだな」

 

ケイト「いやいや、昨日ボクたちが水場でパチャパチャしてたのは、このマチの惨状とは関係無いッスよ?

 

レン君がバッくれた後は、レナさんがキモいチビちゃんを死ぬほど煽って煽って、待って待ってようやく召喚させたNo.(ナンバーズ)のモンスターの中に拉致されてた女子高生の集団を救助したんスよ」

 

レン「何だそりゃ??カードに人間を監禁してたってのか?」

 

ケイト「そうそう。どーにもナンバーズってヤツはヤバいッスよ。

燃やすわ、監禁するわで・・・・・・。」

 

レン「そりゃまた【召喚師】みたいな連中だな・・・・・・」

 

ケイト「アレはそんなチャチじゃ無い。【精霊】の域ッスよ」

 

レン「冗談じゃねえ。俺はもうそんなもんに関わる気はねえぞ・・・・・・」

 

ケイト「そうっスね~」

 

 

言いながら、ケイトは俺の肩に手を置きながら反り返って後ろを見る。

 

 

ヴヴヴヴヴヴヴヴーーー!!!!!

 

 

《そこのノーヘル二人乗り暴走バイク!今すぐ止まって端に寄せないさい!!》

 

 

ケイト「ポリ公が五月蝿いッスね~」

 

大して興味なさそうな、投げやりな感じでそう言った。

 

レン「何台いる?」

 

ケイト「三台。驚くべきことにピストルが見えるッスよ?撃つつもりなんスかね?このSNSで曝される時代に、この日本で」

 

レン「撃ってきたらこっちもモンスター召喚して煽るか」

 

ケイト「DQNのやることじゃねースかそれ」

 

レン「構うか。こんなボロボロのマチで、単車追いかけ回してる暇なポリ公なら、オモチャにするくらいしか役に立たねえ無能だろ。」

 

ケイト「こんなボロボロになったマチで、単車乗り回してるクズに言われちゃ、ポリ公も可哀想・・・・・・」

 

レン「で、実際何でこんなことになったんだ?昨日何が起こった?」

 

ケイト「ほいほい、レナさんがデュエルした後に、気絶してたポルノポリが起きて、こりゃマズいってなった不良さん達が」

 

レン「達が?」

 

ケイト「ナンバーズ召喚しまくってマチに放逐してこのザマっス。」

 

レン「へえー」

 

 

 

やっぱり大して面白いことも無かったんだな。

 

バッくれて正解だ。

 

 

そんなわけで、4年ぶりくらいに語られた昨日の話は、オレ達の知る今日になって

 

 

そして、明日が始まるのだろう。

 

ケイト「それで?これからどこ行くんすか?」

 

レナ「カードショップ。昨日手に入れたシンクロモンスター使いてえから、チューナーモンスター買いに行く。付き合え、バカ女」

 

ケイト「シンクロモンスターっすか。了解っす。

真紅眼に合うようなチューナーを探すとしましょうかね。」

 

レン「ヨシ。じゃあ飛ばすぞ。先ずは後ろのポリ公をバックミラーから吹き飛ばす!!」

 

ケイト「安全運転でオナシャスー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誰も気付かない誰も気付かない・・・・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王~Fake Origin~20 どう考えてもこの主人公はDQNから下の良識の持ち主である

その日、国民の血税で賄われていたパトカーが8台ほどお釈迦になった……

レン「この国の警察は下手だねえ…車の運転。」
ケイト「なお、物理的干渉は一切せず、ドラテクだけの逃げ切りッス。」


平時なら、もっとザワザワしているんだろう。このショップも。

だが今は平日の正午過ぎ。ここにいるのは、たまたま仕事が休みになった社畜か、社会的に抹殺しとくべきニート。あるいは・・・・・・職や学業を放棄した、唾棄すべき愚か者。

つまり、俺みたいなものだろう。

 

ケイト「つまり、このチューナーの効果を使って、このモンスターを特殊召喚すれば

☆6☆8☆9のシンクロモンスターをシンクロ召喚出来るってことなんスよ」

 

レン「なるほどな。じゃあ、そいつを買おう」

 

ケイト「レン君、レン君。一枚しかないんじゃ引く可能性低いっすよ。三枚買おう、三枚」

 

レン「みっつ欲しいのかいやしんぼめ。一枚で充分だろ」

 

ケイト「ええ・・・マジで一枚だけ入れるつもりなんすか?1/40じゃ、確率的に・・・・・・」

 

レン「当たらない確率に生活と命を張るギャンブラーに何言ってんだお前」

 

ケイト「まだギャンブルやってたんすか!?命大事に!!

じゃあせめて『ワン・フォー・ワン』だけでも!」

 

レン「一枚あるからいい」

 

ケイト「二枚よこせ・・・何なんすかレン君ハイランダーデッキでも組んでるんすか?

ちょっとデッキの中見せてよ」

 

レン「ほら」

 

ケイトにデッキを放ると、俺はさっさとレジに向かった。丁度まえに居た客が終わった所で、そのままカードをレジに出した。

 

レン「・・・・・・・・・(すっ)」

「店長、これ給料前借りで会計して欲しいアル!!!」

 

 

突っ走って来たしまむら服の女と被った。

 

 

「って、うわぁ!??れれれれレンさんアル!??」

 

レン「誰だお前」

 

「え・・・・・・・・・」

 

何か捨てられた子どもみたいな顔になった。

別に良いか。興味ないし。

 

レン「・・・・・・・・・会計まだですか?」

店長「えっと・・・レン君?」

レン「何か?」

店長「その・・・彼女、物凄く悲しい顔をしているみたいなんだけど」

 

店長がしまむらを指さし、哀れむ顔をしている。指差されたしまむらは、何故か俺を涙目で見ている。親に借金の変わりに捨てられた子どもだって、あんな悲壮感あふれる顔はしない。

だって俺がそんな顔してなかったし。

 

レン「見覚えない顔ですが、俺と何か関連が?」

 

 

店長「・・・・・・・・・・・・彼女、飛娘(フェイニャン)ちゃんなんだけど・・・・・・」

 

レン「ふぇいにゃん?聞いたこと無いですが?」

 

 

飛娘「ーーーうっそだろオマエ!!!!

昨日の今日で何をワタシのこと綺麗さっぱり忘れてるアルか!??

 

昨日負けたことそんなに怒ってるカ!?そんなきっぱり存在抹消しなくても良いじゃないか!!

ワタシだって悪かった思ってるネ!!だからこうして明日の生活費をリリースしてまでデッキの強化をしようとしてるアル!!ワタシがどんな思いでこの店のチンカスみたいな給料と自分の寿命を削ろうとしてると思うネ!?まだ記憶の片隅に想い出取っとく余地は残してても罰は当たらないヨ!?」

 

 

顔面を顔汁でぐしゃぐしゃにしながら縋るように叫ぶしまむら。

この惨めさと無様さ・・・こいつ。こいつは

 

 

レン「別にどうでも良いんで、店長いいから会計してください。」

 

 

飛娘「オニかアナタ!??うわああああ!!!」

 

レン「あのすみません、服に顔汁が付着するんで離れて下さい。密です。」

 

飛娘「蜜塗れにしてやるアルうううううううううーーー!!!!」

 

レン「汚水が汚えんだよ!!」

 

いい加減鬱陶しいので蹴り飛ばした。

 

飛娘「ふぎゃあ!?」

 

その汚水は放物線を描いて、丁度ケイトがいる辺りに着地点を見いだした。

 

 

ケイト「ふぇ?」

 

 

幸運にも何かが振ってくることに気付いたケイトは、広げていたデッキを仕舞って速攻その場所から離脱。なお、蹴り飛ばした瞬間にケイトが

 

「うわぁ・・・これじゃあ、ただの紙束じゃない・・・・・・」

 

とかほざいてたような気がしないでも無いが。

まあきっと気のせいだろう。だからあの汚水がケイトに向かっていったのは不幸な事故だ。決して狙って蹴り飛ばしてはいないことを断言しておく。

 

飛娘「プギャ!!?」

 

ケイト「おっと!」

 

レン「ちっ・・・」

 

短く纏まった賛辞を送る。かつて共に旅をした仲間なら、それだけでオレ達は意思疎通出来るものさ。僕らはいつも以心伝心。

 

ケイト「舌打ちした!?わざとでしょ!?今の絶対わざとだよね!??ゆうーー・・・レン君!!」

 

ほらね。

 

レン「ソンナコトナイヨー」

 

店長「昨日直したばっかりの机が(通報した方が良いのかな)・・・・・・」

 

レン「通報(つり)はいらねえから取っときな。」

 

店長「お客様は神様です。」

 

店長にはそっと諭吉を握らせておく。するとどうでしょう。さっきまで固定電話に指を掛けていた店長が、悟りを開いたかのような穏やかな顔に。

やはり金。金はひとの心を豊かにする。

 

豊かついでにボタンの『1』と『0』の部分には瞬間接着材をこっそり付着させておく。

出来る男は慢心せず、ベストを尽くすべし。

 

ケイト「なら戦略の中核になるカードくらい限界まで投入するッス。」

 

レン「勝手に人の心読んでんじゃねーよ」

 

ケイト「ボクらはいつも以心伝心なんでしょ?」

 

レン「俺はオマエの考えてること全く分かんねえから、実質盗聴な。」

 

ケイト「分かってよ!!もっとワタシのこと分かってよ!!」

 

レン「面倒くせえ勘違女(セフレ)みてぇなこと言い出しやがったぞこのバカ女」

 

ケイト「せめて彼女とか言いません?」

 

レン「いやです。」

 

ケイト「ですます調で言うの止めて下さい泣きますよ?」

 

レン「クソ面倒くせえ。」

 

自分のデッキを取り戻して、さっさと購入したカードを入れる。

 

レン「おら、さっき言ってたの試すから相手しろ。ケイト」

 

ケイト「ボクはどうせ面倒臭い女ですよーだ」

 

レン「・・・・・・・・・へそ曲げやがったか」

 

まあ、別に良いが。

 

レン「それならこっちでやるだけだ。」

 

顔面から床に突っ込んだしまむら・・・もとい中国を蹴り起こす。

 

飛娘「ぶおっ!??」

 

レン「起きろ。戦え。」

 

飛娘「ーーウッソだろオマエ!?ついさっき蹴り飛ばした女の子を、更にもう一度蹴り飛ばして戦えって何ダ!?デュエルか!?」

 

レン「今ならサービスでもう一発付けてやろう。orデュエル」

 

飛娘「信じらんねえアルよ、コイツ。頼み事クソエイムか」

 

ケイト「漏れなく『誰か』に被弾するから、ある意味100発100中なんスよね・・・・・・」

 

 

ハア・・・と大きくため息をつく二人。

 

何だこいつら息合うな。Aカップ同士気が合うのか?ノリも一緒だし。

 

 

ケイト「あーっと、飛娘さんって言いましたっけ?せっかくなんでここは一つ、強いと噂の『七皇』?とやらの力で、懲らしめてやって下さいっす」

 

飛娘「フッフッフ。そうまで言われちゃ仕方ないアル。七皇No. 6『剛拳』の力を思い知らせて上げるネ・・・!」

 

ケイト「よっ、チャイナ美人!ちょっと良いとこ見てみたい!」

 

何か知らんが、やる気になったなら何でも良いか。

 

レン「店長、デュエルスペース借ります。」

 

店長「あ、はい。エレベーターを使って地下に降りてね。デュエルディスク用のスペースがあるから。」

 

レン「何だこの店。地下あんのかよ。」

 

金の掛け方に音楽性のような違いを感じる。

別に良いけども。

 

レン「じゃあ行くか」

 

ケイト・飛娘「おー!」

 

やる気あるんだか無いんだか……

 

飛娘「あ、店長。このカード買っていくネ」




ケイト(昨日のレナさんはともかく、こっちのチャイナの人は終始相手に踊らされててロクにデータ取れなかったッスからね~。しっかり戦って貰わないと。七皇の平均値データ、取らせてもらいしょうか

まあ、あんまり期待はしてないけど。ブランク込みとは言え、切り札使ってあの体たらくだったし……)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遊戯王~Fake Origin~ 21 この世界のカードの値段

今回からしれっと
マスタールール(2020年4月改訂)となります。

やっぱり、新マスタールールは欠陥やったんや。


オレ達がエレベーターに乗って待つ事五分。

 

レン「いや長えよ何だコレ。地下何階まで降りればエレベーターで五分経つんだよ」

 

飛娘「この店の地下は、核シェルターも兼ねているアルよ」

 

ケイト「たかがカードゲームを扱うだけの店に核シェルター!?」

 

大袈裟に驚くケイトだが、まあ、俺は地下シェルター自体は腑に落ちない程では無い。

オレ達が扱うこのカード。実はアホほど高価だ。

例えば・・・『融合』のカード。

 

融合モンスターを融合召喚する上で使用される、基本的な魔法カードだが・・・・・・

 

なんと御値段。伍千円也。5000円である。

 

ケイトは・・・いや俺もだが、常識から逸脱した人生を送り、血に濡れた金を稼いできたタイプなので、金は持っている。つまり、割と金銭感覚がぶっ壊れている。

ので、この『紙切れに5000円を払う』という事実に、あまり違和感を感じていないから、カードショップに地下シェルターを買うのが驚きだったのだろう。

 

だが融合一枚が5000円だ。適当に40枚分のカードでも持って行かれようモノなら、その損害は計り知れない。

 

が!!だ。

 

レン「別に地下シェルターは良い。」

 

ケイト「良いんだ!?」

 

レン「問題は、何でこんなバカほど時間掛けて下に潜ってんのかってことだよ。

デュエルスペースって言うくらいだから、ホカの客にも開放されてるんだろ?」

 

飛娘「え・・・えっと・・・・・・・・・・・・。」

 

レン「・・・オイ、何で黙ってんだ?」

 

飛娘「ひっ!?ききき企業秘密アル!!」

 

ケイト「飛娘サン。それ何か有るって言ってるようなモンっすよ?

分かりやすいッスねえ。工作員は無理そうッスねえ。」

 

飛娘「うぐっ!?わわ、ワタシは前線で戦う役ネ!」

 

ケイト「負けちゃったのにッスか?」

 

飛娘「それはブランクがあったからネ!昨日、新しいカードを調べて、相性の良いカードを手に入れたから、今日からまた修行するアル。『剛拳』の名前に塗ったドロを払拭してやるヨ!!」

 

ケイト「となると、このデュエルは負けられないッスねえ?レン君だってブランクはあるッスからねえ」

 

飛娘「もちろんアル!!七皇の一人として、ワタシ負けないアル!!」

 

レン「なら、お前負けたら企業秘密とか全部吐け。」

 

飛娘「うぇっ!?」

 

ここでエレベーターの浮遊感が消え、扉が開く。

 

そこそこ広かった箱から出ると、上下左右に広く、機械的な景観ながら開放感がある場所に出る。

 

 

レン「・・・・・・・・・悪くねえな。」

 

 

地下シェルターとか言う割に良い場所だ。数日くらいなら住めそうだ。

リストバンド型のディスクを装着しながらある程度の間合いを取って立つ。

 

レン「さあ、始めようか?中国」

 

飛娘「う・・・えっと・・・・・・」

 

ケイト「やらないんすか?前線で戦う者としての覚悟は口だけッスか?」

 

さっきからケイトがやけに煽るな・・・楽しんでる?いや、何か狙う感じの目してるな。

 

アレ?

俺、もしかしてアイツの思い通りに動かされた?

 

飛娘「うぐぐぐ・・・わ、分かったアル!!レンさんに負けたら煮るなり焼くなり好きにするネ!!」

 

 

ケイト(・・・・・・・・・・・・どうしてワザワザ負けたときのデメリットを悪化させてるんスかね。

すごい無駄に自分を追い詰めてるけど、この人本当にレナさんの仲間なんすかネ?本当はパシリだったんじゃ無いっすか?

 

 

ま、こっちには都合良いだけだからヨシ!)

 

 

飛娘「さあ、勝負アル!!ワタシが勝ったら、今度こそワタシをちゃんと名前で呼ぶネ!」

レン「良いだろう。俺が勝ったときはお前の名前は・・・・・・・・・面倒くせえ。始めるぞ」

飛娘「扱いがあんまりすぎて、ワタシ、泣きそうヨ・・・」

 

ピンーー・・・!

涙目の中国をほっといて、コインを指で弾く。

 

レン「どっちだ?」

 

飛娘「・・・・・・表」

 

若干ふて腐れたような声で宣言する。コインは床に落とし、グルグルと回り、やがて裏で止まった。

 

レン「俺が先だな。」

飛娘「別に良いもん。ワタシ後攻向けだもん・・・・・・」

レン「キャラ壊れてんぞ」

 

お互いディスクを構え、手札を揃える。

 

 

レン「行くぞ。」

飛娘「ああもうやったるネ!!!」

 

 

 

レン・飛娘「「デュエル!!!!」」

レンLP8000

飛娘LP8000

 

 

レン「メインフェイズ。

ん?さっそく来たか。チューナーモンスター」

 

ケイト「おお!イケイケー!レン君ー!」

 

レン(・・・・・・・・・不吉すぎる。

不運上等、手札事故平常なこの俺が、まともに召喚できる手札とは・・・・・・)

 

レン「まあ良い。召喚。チューナーモンスター『レッド・リゾネーター』だ。」

 

 

レッド・リゾネーター ATK 600

 

 

飛娘「これはチューナーモンスター!?

アナタ真紅眼の融合デッキじゃ無かったアルカ!!」

 

レン「ああ。上手いこと真紅眼とシナジーがあったからな。」

 

ケイト「ボクが見つけました。」

 

レン「効果発動。手札から星4以下のモンスターを特殊召喚する」

 

手札から目的のモンスターを手に取る。

 

飛娘「甘いアル!!手札から『エフェクト・ヴェーラー』の効果発動!!」

 

ケイト「止められた!?まさかあんなガチカードを使ってくるなんて!」

 

 

レン「そのカード、たしか10万くらーー」

 

 

飛娘「止めて下さい。心が折れそうデス止めて下さい。」

 

レン「・・・・・・・・・。」

 

 

飛娘「これが、これがワタシの覚悟アル!!!!」

 

 

目元にガッツリと未来を憂う涙が零れている。

貧乏だとは聞いているから、恐らくコイツは今後しばらく人間らしい食事は出来ないだろう。

バイト代位じゃ雀の涙も同然だろう。

 

 

飛娘「・・・・・・ワタシ負けないアル。生き別れの家族にもう一度会える日まで道草食ってでも生き残るアル!!」

 

レン「道草を食うを物理的に実行しようとするんじゃねえよ」

 

飛娘「さあデュエルを続けるアルッッ!!!!!」

 

 

レン「もう、後には引けないんだな・・・まあ良い。」

 

俺は特殊召喚しようとしたモンスターをそのまま墓地へ送った。

 

レン「手札の『伝説の黒石』をコストにして『ワン・フォー・ワン』を発動。

デッキから二枚目の『伝説の黒石』を特殊召喚。」

 

結果としては、あまり状況が変わらなかったな。

だが、ピン差しのカードが初手にある幸運に寒気が止まらない。

 

飛娘「ワタシの覚悟が無駄死にしたあああああああああああーーー!!!!」

 

あっちは涙が止まらないようだ。

 

レン「『伝説の黒石』の効果発動『真紅眼の黒竜』を特殊召喚だ。」

 

 

真紅眼の黒竜 ATK2400

 

 

レン「そして魔法カード『黒炎弾』を発動。2400のダメージを喰らう権利をくれてやろう。」

 

 

飛娘「熱ッ!??」

 

飛娘 LP5600

 

レン「さて、レベル9のシンクロが初のシンクロ召喚になるわけだが・・・こいつか。

 

真紅眼の黒竜にレッド・リゾネーターをチューニング。

 

『優しき愛の守神よ、その蒼き瞳で見つめた未来(せかい)を、銀色の翼翻し、現在(いま)此処へ導くがいい!』シンクロ召喚。レベル9『蒼眼の銀竜』]

 

 

蒼眼の銀竜 DFF3000

 

 

レン「特殊召喚時効果。

自軍の場のドラゴン族全てに『効果破壊不可』と『効果対象への選択を禁じる』耐性を二回目のターン終了まで付与する。

銀竜もドラゴン族だ。特殊召喚するたびにこの効果が使える。」

 

 

飛娘「守備力3000でその耐性付与はやっかいアル。レッド・リゾネーターの効果止めた意味も無かったし、銀竜にヴェーラー使うべきだったカモしれないヨ。」

 

レン「カードを一枚伏せて、ターン終了。」

 

 

 

レン LP8000

手札0

場 蒼眼の銀竜 DFF3000(効果破壊・効果対象不可)

伏せカード1枚

 

 

 

飛娘「ちょっと思ったのとは違ったケド、ワタシも命がけでこのデッキを組み直したアル。

負けられないアル・・・犠牲になった()()()分の食費のタメにも!!!」

 

レン「・・・・・・・・・・・・。」

ケイト「・・・・・・・・・レン君。あの・・・」

 

 

レン「皆まで言うな。」

 

この女。ダメ過ぎる・・・・・・。

 

 

 

飛娘「さあ!進化したワタシの『剛拳デッキ』を見るせてやるネ!!」




レッド・リゾネーターの値段は1400円。
ワン・フォー・ワンの値段は13000円。
エフェクト・ヴェーラーの値段は10万円

大体現実の売値から性能や禁止・制限の歴史などを見ながら0一つか二つ増やした値段です。
これで命かけたデュエルもするってんだからやってられないwww

『ケイト・ヴァルゼルド』
昔描いてpixivに張ってたヤツなんですが
ハーメルンで読んでる人は、ケイトのビジュアルって知らなかったかなと思ったので、ちょっと張ってみます。




【挿絵表示】



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。