我輩は逃亡者である (バンビーノ)
しおりを挟む

第一章 ただいま逃亡中ぼっち。
01.自由のために今日も逃げる


 我輩は逃亡者である、名前は上代翔(かみしろかける)

 何が原因でこうなったかはしかと見当がついてしまう。

 なんでも男性IS起動テスト会場というところにいたのだ。

 我輩はそこで初めて実物のISを見た。

 

 

 

 ──まではよかった、よかったのだ。他の男も皆やってるし……皆でやれば怖くないのだよ。

 しかしそこで打鉄に触れるとブォンとか光セイバーみたいな音を鳴らして起動してしまったのだ。そこがおかしい!

 そもそも考えてほしい、世界最強初代ブリュンヒルデな姉のいる弟が動かせたのは百歩譲ってまだわかる、何か遺伝子的だか因果的だかなナニかがあったりしたんだろう。

 

 だが自分はそんな世界最強IS使いな知り合いも家族も一人たりともいない。そして世界最強どころか何も後ろ楯のない自分の未来を考えたみてほしい。解剖されて男性IS操縦者解体珍書がつくられるコースに一直線な可能性が高すぎて笑えない。

 IS学園に入ればいい? ヤダーあんなエリート中のエリート、しかも女子オンリーしかいないとこ平凡な男子が入れるわけないじゃんか!

 入れたとしても知らない間に冤罪かけられて結局実験コースに決まってるよ。

 偏見? 今の世の中気に入らないってだけで男性が女性に冤罪吹っ掛けられることもあるような女尊男卑が蔓延(はびこ)ってるのよ? そう考えるとIS学園なんて魔窟じゃないか。一歩歩けば10の冤罪がのし掛かるに決まっている、そうに違いない! お、お……折、織村? 君は頑張ってくれたまえ!

 

 

 ──さあ、逃亡生活を始めよう!

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 混乱を極めていた会場より逃げ続け3日たつ今現在──

 

 

「何だこの貼り紙。この顔にティン!と来たら110番って……?」

 俺にそっくりさんな顔立ちである顔写真が載せられた貼り紙。そこにはその人物の名前や個人情報が載せられていた。まるで指名手配犯である。

 

「ふむふむ、上代翔(15)で黒髪の175cm前後ある男ねぇ」

 

 そっくりさんとかじゃない、まごうことなき俺であった。何これプライバシーのプの字もないぞ!

 そもそも好物とかならともかく冬にはラーメン屋巡りが趣味etcとか何で書いてある……? てかどうやって調べた!? しかも地域内の店は制覇したので逃亡中に隣県あたりのラーメン屋に現れる可能性あり? ナニこれ怖いストーカーでもいたのだろうか?

 逃亡中にラーメン屋になんて気楽に入るとか思われるなんてまったく、まったく……

 

 

チュルチュルッ!ズゾゾゾ、カンッ!

 

 

「大将ご馳走さま!お代はいくら?」

 

 仕方ないよね!冬が明けたとはいえまだ寒い日のある4月、ふとラーメンとか食べたくなるんだよ。

 

「はいよ、味噌ラーメンと炒飯セットで1100円だ。……ところで坊主?」

「ほいさ1100円ちょうど……なんですか?」

「お前そこの貼り紙の逃亡中の男性IS操縦者にそっくり、ってか本人だろ」

「…………ごっつぁん!旨かったです!」

「おい待て坊主!!」

 

チクショウ! どこの誰か知らんけど貼り紙なんてしやがって…気楽に飯も食べれない! 振り返れば大将が何処かに電話をしてる。

 ああ、耳を澄ませばサイレンが、目を凝らせば赤い回転灯が見える。まるで犯罪者を追いたててるかのようではないか…

 

「俺がいったい何をしたってんだぁぁぁァ!!」

 

 切実に教えてもらいたい。ISを動かしたくらいなんだ、世の中の半分の人間が動かせるんだ。その人間全員にバベルの塔(おとこのこのしょうちょう)がついてないだけじゃんか! それがたまたまタマタマついた人間が2人ばかしIS動かしちゃったからってなんだ、三毛猫の雄が珍しいみたいな感覚ではしゃいじゃって! そもそも三毛猫の雄が30000匹に1匹に比べて男性IS操縦者は35億人に1人だぞ!

 ──まあ三毛猫の雄とかより俺らの方(だんせいそうじゅうしゃ)が断然珍しけどね! 桁が違うわ、そりゃ追いかけるだろうさ! でも俺は愛玩動物でもペットでも、ましてや実験動物じゃないんだよ。自由に生きたいんだ! 実験場やIS学園みたいな檻に入ってたまるか!

 

 俺は俺の自由のために今日も逃げる! ああ…視界の端にうつる富士山が綺麗だけど滲んで見える

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 2人目のIS操縦者発見の翌日IS学園にて。

 

「おい、織斑。話がある」

「ん?ちふ、織斑先生なんですか?」

 

 千冬姉に呼び止められたのだが……とてつもなく微妙な顔を浮かべている、いったい何の話なのだろうか?

 

「昨日全国一斉男性IS起動テストが行われただろ?」

「ああ、そういえばそんなのするってニュースで言ってたな……それがどうかしましたか?」

「それでだな……一応見つかったんだ、もう一人男性でIS起動出来る者が。それもお前と同い年のやつが」

「ッ!?」

 

 なんだって……!

 

「ほんとかよ千冬姉!?いやー初日からずっと男一人で女子の視線に晒されて正直辛いものがあったんだけどこれで少しはマシになるよ!」

 

 ホントに辛かった……! 気楽に話しかけられる男は一人もいないし久々に会った幼馴染みの箒は何かムスッとしてて話しにくいことが多いしオルコットとは初日から売り言葉に買い言葉で数日後に決闘することになるし……

 

「それでいつ来るんだよ!もう一人の男子は!」

「あーいや、その男だがな……」

 

 ん? そーいや千冬姉話しかけてきたときから微妙な顔してるし珍しく歯切れが悪いな。さっきから興奮のあまり千冬姉って言ってしまってるけど叩いてこないし。

 

「どうしたんだよ?もしかしてそいつに何かあったのか!?」

「いや……その、なんだ。そのもう一人の男子なんだが……現在逃走中だ」

「なん……だと?」

 




初作品投稿だけど書けた気がするので投稿…!
文法とかもおかしいであろう稚拙な文ですがここまで読んでくださった方の守備範囲の広さに感謝感激雨霰。
見切り発車しつつ何となく今後の流れは考えつつもやっぱり地の文も勿論、台詞も書き始めると思ったより難しいかった…続く!かも、書き貯めとか一切ないのでボチボチ書いてみようかと。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

02.二次元への扉(現実逃避)

 どうも上代翔です。ラーメン屋の大将に通報されてから警察とのリアルケイドロを行うこと半日とちょっと……徹夜で逃亡しようやく振り切りました! 清々しい朝だよ!

 いやーケイドロなんて小学校以来だったよ、まああっちは本物のポリスメンだけどこっちは泥棒ではないけど。普通の高校生さ!

 しかし何だよ、しつこかったね。粘着ストーカーよろしく追っかけられたし人生で一番面白くないケイドロだったと断言できる……こちとら徹夜で逃げてるもんだから意識が朦朧(もうろう)とするわ、足がガクガクいってるし……そういや変な人に追いかけられたら交番に駆け込みましょうって習ったなぁ。助けてお巡りさん! 追いかけられてるの!

 

 --でも追いかけてくる人たちもお巡りさんなの! なんだよ駄目じゃんか! それに途中で投げつけられたカラーボールが……とても、すごく臭い。腐ったチーズみたいな臭いがする!

 おうぇ、気持ち悪い……しかもカラーボールの本来の役割として、当てられた背中もといリュックが真っ赤になってるおかげで街中を移動すると注目されて仕方ないので郊外まで逃げるしかなかった。

 それこそ犯罪者(あかおに)を見る目を向けられるしね……違うよ! ただの高校生(仮)だよ! これはあれだね、村の人にハブられて家に逃げ帰るしかなかった泣いた赤鬼の気持ちがわかるよ。赤鬼も住み処の(いえ)に帰りたくなるよ。ん? そんな話じゃない? 細かいことは気にしない!

 ふ……人とは違うってのはいつの時代も受け入れられないものなのは一緒だしね、何はともあれ家に、山に帰ろう。そう目の前に広がる大きな山へッ!!

 ……何だろうまた止まれだのサイレンの音が聞こえる気がするけど気のせいだよね。そんなことより今は山に帰って眠るんだ、もう疲れたよパ○ラッシュ。

 

「ただいま山よ、俺は帰ってきたぞぉぉぉ!」

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

 ところ変わってIS学園。

 

『3日前に発見されて以来消息不明だった男性IS操縦者、上代翔さんがついに発見されました。がしかし警察が夜を徹して必死の追跡をするも遂に振り切られてしまいました……現在当TV局はヘリにて上代翔さんが逃亡したと予想される郊外を空から捜索中です……』

 

 

「なあ一夏、この上代翔という男はいったい何故逃亡しているのだ?」

「そうですわね。日本の警察は優秀と聞きますが、その彼らを振り切って逃げるとは何か強い理由があるのでしょうか?」

「わからねぇよ。ただ悪いけど捕まれば一緒にIS学園(ここ)に通えるし、俺としては捕まってほしいんだけどなぁ」

 

 ニュースを見ながら箒とセシリアと現在逃亡中の上代翔について話している。千冬姉から男性IS操縦者が見つかったが逃亡したと聞いたときには驚いたが、一晩中警察に追いかけられながらも振り切ったってニュースを見て更に驚いたぞ。

 

「ホントに何がそこまで駆り立てるんだろうな……あっ!?」

「どうした一夏……ん?」

「一夏さんどうかしましたか? ……え?」

 

『あれは…上代翔さんです! あのペイントボールで真っ赤な背中は間違いありません! 警察に連絡をいれながら空から追跡を続けたいと思いま……あ、あれは富士さ、いえ! 樹海です! 上代翔さんは何故か樹海に向かって走っていきます』

 

 じゅ、樹海!? なんでそんなとこに……ってか距離があるせいか画質が悪くて見にくいけどアイツなんか目が血走って見えるんだが……

 

『上代翔さん止まってください、ホント止まってください! ああ!? 樹海へそのまま入ってしまいした……追跡を続けたいのですが樹が邪魔をして空からの追跡は困難です。一度地上へと降り警察の方々と合流したいと思います!』

 

「……」

「……」

「……」

 

 えぇ……本当に入ってしまったぞ。樹海って確か一度入ると出れないって言われてなかったっけ?

 

「一夏、残念だが諦めろ。なに二人目が見つかったのだ、三人目だってきっと見つかるさ」

「そうですわ、彼のことは残念でしたがそうお気を落とさないでください」

「おいおい!? 箒もセシリアも諦めるの早すぎるだろ!? 確かに空からの捜索も難しいだろうし、かといって地上をしらみ潰しに捜索するのも難しいかもしれないけど他に方法が……そうだ! ISを使えば探し出せるだろ!」

 

 方位磁石などは狂うかもしれないがISのハイパーセンサーを使って探せば見つかるに違いない!

 そうと決まればこうしちゃいられない。

 

「善は急げだ、千冬姉に相談してくるぜ!」

 

 待ってろよ、上代翔!

 

 

▼▼▼▼

 

 

おはようございます、目が覚めるとそこは緑に囲まれた森の中でした……あるぇー? どこだここ?

徹夜で警察から逃げ切ったとこまでは何となく覚えてるんだけどなそれ以降のことが……あっ!? 思い出した! 徹夜特有のおかしなテンションになって目の前の山に向かって闇雲に全力疾走したんだった。でひたすら走ったあと遂に体力が果てて眠っちゃったんだ。

 まあ、あの山って間違いなく富士山だったよね。初日に見たやつ。

 --でも山に入る前にすでに森みたいなとこに突っ込んだんだよなぁ。例えるなら樹の海みたいなとこ……樹の……海?

 

 

「樹海じゃんここ!?」

 

 まさか樹海に迷い混むとは……何だよただいま山よ、俺は帰ってきたぞって、むしろ帰れなくなったし。徹夜のテンションって怖いね……

 しかしどうしようかな、樹海って方位磁石使えないとか聞いたことあるけどそもそも方位磁石とか持ってないし。これは生きて帰るのは絶望的なのか……?

 

 --いや、こう考えるんだ上代翔。あのまま逃げてたとしても捕まってしまってたのがオチに決まってる。そしてそのまま解剖とか実験とかされてたに違いない……そう考えると一か八か樹海に逃げ込んだのもありだよね!

 風の噂によると樹海には二次元への扉があると聞いたことがある。それを見つけてISなんてない普通の自由なスクールライフが送れる世界へ行けば……!

 

【▽カミシロカケルはポジティブシンキングを修得した!】

 

 おお! 希望が見えてきた!そうと決まれば扉を探そう、待ってろよ俺のスクールライフ!

 

 

▼▼▼▼

 

 

『上代翔さん止まってください、ホントに止まってください!!』

 

 私、織斑千冬は教師をやり始めてから年月は浅いがある程度いろいろな性格や癖のある生徒を見てきたつもりだった。中には一時期軍で指導をしていた際に落ちこぼれて諦めていた奴を鍛え上げたこともあった……まあアイツには常識的なものを教える暇なく指導が終わってしまったのだが。

 ……とにかく!私は短い教師生活のなかである程度所見でも生徒の癖や性格を掴めるようになっていた。

 --なっていたのだが何だ上代翔(こいつ)は。全く性格が掴めん……何故か目が血走っているし画質は悪いが口の動きからして[ただいま山よ、俺は帰ってきたぞぉぉぉ!!]と言いながら樹海に突っ込んでいったぞ。

 

「……ここまで奇妙な行動をとるのは束の奴以来だな」

 

 願わくば上代翔は束のほどやっかいな性格でないことを『失礼します! 千冬姉!』む?

 

「どうした織斑、あと先生と呼べ」

「それどころじゃないんだよ! 上代翔が樹海に突っ込んでいったんだ!」

「ああ知ってるぞ。今ちょうどニュースでやっていたしな。口の動きを見るに[ただいま山よ、俺は帰ってきたぞ]みたいなことを叫びながら飛び込んでいったな、上代翔(あいつ)は」

「ああ、千冬姉も見て……ええ!?そんなこと叫んでたのか……何で?ニュースでやってたアイツの家って樹海じゃなかったぞ」

私が知るか。

「……いや、そうじゃなくて!樹海に入り込んだなら普通の捜索じゃ見つかりにくいし下手をしたら見つけられないままかもしれないけどISのハイパーセンサーを使って探せばすぐに見つけられると思うんだ。どうにか出来ないかな千冬姉……?」

 

 ふむ……確かにISなら普通に探すより断然容易に見つかるだろう。それに世界で2人の男性操縦者だ、上の許可も降りやすかろう。

 

「頼む千冬姉!せっかく見つかった同じ男でISに乗れるやつに会えずじまいなんてな嫌なんだ!」

「ふん、わかった。上に伝えて捜索の許可くらいもぎ取ってやる……あといい加減織斑先生と呼べ!」

「ぶるすこふぁ!? あ、頭が割れる……!」

 

「山田君! 政府からISで上代翔の救助を行う許可を申請してくれ! ……口答えするようなら私とかわれ、ハイかyesしか言えないようにしてやる」

「はい! わかりまし……えぇ!?」

 

 さてこれから忙しくなるぞ。




ここまで読んでくださった方には感謝、またお気に入り登録してくださった方、感想を書いてくださった方にも感謝!朝起きて感想がついてたことには驚きました。

一発ネタみたいな感じで1話で終わるか悩んでたけど思い付いたんでちゃっと書いてみましたがぐだってますね……その内弄るやも。
……そしてコイツはいつの日かISに乗るのか?はたまた二次元への扉を見つけこの話が終わるのか……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

03.苦いヤバいお迎えが見えるよ?

 くさ……うま……………………ハッ!?ペッ!

 危ない危ない意識があやふやだった。樹海で二次元への扉を探し始めて恐らく数日がたったのだが……一向に見つからん、それよりも空腹が問題になってきました。

 ラーメン以降まともに食べてないし。なにも考えずに……というかおかしなテンションで来ちゃったしなー、食べ物がございません。

 水は川があったのでなんとかなるとして、なにはともあれ食べ物だよ。さっき無意識に少しばかり草食べてたせいで口の中が苦いし。

 

 --いや待てよ?……苦いから食べれない飲めないなんていうなら珈琲を飲む人間なんていない。しかし世の中多くの、主に大人たちは美味しいといって珈琲を飲んでいるじゃないか……実は自分が子供だからこの草を苦く感じるだけで本当は普通に食べられるのではないだろうか?

 そう、言うなれば普段食べてた甘い野菜はジュース。この苦い草は珈琲みたいなものであり苦いだけで食えないなんて決めツケはヨくなくて苦イ草だッて食べれナインテコとはなくコノ草は食べラれるルルルルムシャムシャムシャッ!

 

「……うぷ、おろろろろろろろろ!」

 

 

 

~しばらくお待ちください~

 

 

 

 

「おえぇ……、ハァハァ。吐いたら余計腹が減った……なんか色々無駄に体力つかった気分だよ」

 

 食えるわけないじゃん! 雑草は何処までいっても雑草だよ! 何が珈琲みたいなものだ、頭おかしいんじゃないかな!? 考えたの誰だよ、俺だよ!

 ……ちくしょーこの頃、頭がまともに働いてたことあったかなぁ? あー目眩してきたし何か空飛ぶ人とか見えてきた、翼がはえてるし。お迎えの天使かな?

 --あームリだ、寝よ。おやすみなさい

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

 クッ、思ったよりもISでの捜索を認めさせるまで時間がかかったな……女性権利団体がどうだなぞ放っておけばいいものの……!

 まあいい、許可は降りたのだ。あとは急いで救助に向かうだけではあるのだが

 

「山田君、すまないが上代翔の救助に向かってもらって構わないだろうか。私は立場上むやみに動きにくくてな……」

 こういうときにはこんな世界最強(たちば)なぞ枷になるだけだな……それに男をよく思っていない教師も多くはないがいる。そんな人物に任せてしまうと上代翔が一生見つからんかもしれんしな、その点山田君なら安心して任せられる。

 

「いえ! 任せてください! 必ず見つけて連れてきますよ、それではいってきます!」

「ああ、任せた。こちらの授業は任せてくれ」

「はいっ!」

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

「せんぱ、 織斑先生に任されたからには頑張りますよ!」

 

 それにしても彼、上代翔君はどうして樹海に入っていったのでしょうか……? 私、山田真耶はラファールリヴァイブを展開し富士山付近まできましたがふとそんな疑問が思い浮かびました。

 何か大きな悩みでもあったのでしょうか? もうしそうだとしたら見つけたあとに相談にのってあげなければなりませんね! 私は先生ですし!

 

「何はともあれまずは上代君を見つけなければなりませんね…あっ、あれは!?」

 

 か、上代君が

 

 --危機迫った表情で草を食べてます! 食べてると言うか貪って…ああ!? 吐いて倒れました!?

 

「い、いい、急いで助けないと!」

 

 今助けますね上代君!

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

 

 千冬姉から教えてもらったがISでの上代翔の救助が許可されて今日山田先生が捜索にいってくれてるらしい……ようやく会えるのか楽しみだなぁ。

 

「……か!一夏!ちょっと聞いてんの!?」

 

 おっと……下に目を向けるとつい最近転校してきたばかりの鈴がいた。考え事をしていて話を聞いてなかったな。

 

「いや、すまん。ちょっと考え事をしてた、なんだ?」

「だから約束よ! 小学校の時にした約束を覚えてるのか聞いてるのよ!」

 

 む……小学校のときの約束といえば、あれか……? 酢豚が上達したら毎日食べさせてくれるっていう……

 

「そ、そうそれよ! ちゃんと覚えてるじゃない!」

「いや、覚えてるんだがあれってどういうことなんだ……?」

「え……?」

 

 いくら上達しても毎日酢豚を食べてたら流石に飽きが来そうなんだが……

 

「えっと。それは……その……」

 

 どうした、顔が赤いけど……あっ、そうだ! 鈴は上代翔が見つかって山田先生が探しに行っていることを知ってるだろうか?

 

「そんなことより鈴! 前に見つかってから消息不明になってた男性操縦者の上代翔が遂に見つかったんだ! それで今山田先生が迎えに言ってるんだけど楽しみだなぁ、どんなやつか気にならないか? ……鈴?」

 

 鈴がプルプル震えてるぞ……? どうしたんだ?

 

「わた……しとの、約束が、そんなこと、ですってぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「うわぁ!? お、落ち着け鈴!」

「これが落ち着いてられるか! 忘れっぽいあんたが約束を覚えててくれたから少しは期待したのに…うわぁぁぁぁん、対抗戦覚えてなさいよぉぉぉ!」

 

 ちょ!? 鈴! ……泣きながら脱兎の如く去っていったぞ。

 --正直周りからの目線が凄く痛い。……はぁ、また期をみて謝るか。

 

 それにしても上代翔はどんなやつだろう、早く会いたいものだ……




ここまで読んでくださった方には感謝!また感想(以下略
思い付いたうちに書こうと思ったら視点がコロコロ変わってしまったし短いですね…申し訳ないです。1~3話までまとめてもよさそうな長さです。
遂にお迎えに見つかってしまった上代翔。
これは解体珍書endですね。

次読んでくださる方がおられればもうほぼ書けてますし明後日投稿しますと予告。相変わらず4000文字にすら達しませんが


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

04.知らない天井だ、諦めるにはまだ早い

 そして俺はIS学園に保護されたのちにIS適正SSランク、よくわからないけど第五世代なるものに乗り学生の身にしてモンドグロッソ優勝をしたのであったーフハハハー!

 

 

 

 

 

 

 …………見知らぬ天井が目に入ってきた。何か変に恥ずかしい夢を見た気がするが思い出せない、夢って中々思い出せないんだよな。

 しかし今回はしっかり樹海のなかでお迎えが来たのは覚えている、しかし今思い返せばメカチックな天使だったが--ここは所謂天国だろうか? それにしてはやけに薬品臭いが……

 

 こ、これは……ISに捕まったんじゃん! メカチックな天使とかないわ。ということは薬品臭いここは実験施設か!? よくわからない点滴もされてるし! ああクソ、外したら痛い。やっぱ夢でも天国でもないね!

 

「やっぱりこれは逃げの一手あるのみだよね、幸い今は誰もいないし。--それにしてもさっきから爆発音みたいなのが聞こえるが、寧ろ都合がイイネ! いいぞ、もっとやれ!」

 

 窓を開けばそこはもう自由の世界……!

 

 

 

 

 

 

 --そうして彼が窓から飛び出した保健室には[栄養剤]と書かれた点滴が1つポツンと残されたのであった。

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 我輩は脱走者である、名前はもうある。

 生まれたところは覚えている。ただ薬臭い割りと清潔なところで目が覚めたことは記憶に新しい。

 我輩はそこで始めて恐怖を感じた。点滴をされていたのだ。

 しかしあれがいったい何の点滴だったかはとんと見当もつかぬ。

 

 

 

 

 

 --ああ、シャバの空気が上手い。無事抜け出せてよかった……それにしてもあそこは一体なんの施設だったんだろうか?今思えば研究所にしては派手だったし。それにモノレールを使わないと出れなかったんだけど無人なのに動いてた。滅茶苦茶金がかかってそうだったなぁ。

 まあ今時タクシーだって自動で開いて乗れるし驚かんけどね。

 

「ま、過ぎたことはいいさ。よく寝たお陰か体調がいいなぁ……しかし空腹はなんともし難い」

 

あの施設からはある程度離れたし飯でも食べ……に行く前にペイントボールで汚れたリュックを買い換えますかね。

持ったまま店に入ると目立つし取り敢えずリュックは適当なロッカーに預けて……ショッピングモール『レゾナンス』へと向かった。シャツと下着の変えもほしいし調度良さげだったのだ、だったのだが

 

 

 

 

 

「ちょっとそこの貴方!これを片付けておきなさい!」

めんどくさいのに絡まれたのである、この手の女の人は正直酔ったおっさんよりある意味危ないのだが……

 

「へへっ、了解です! 貴女みたいな風靡方にはもっと相応しいバックがありますもんね!」

「ふんっ、わかってるじゃない」

 

 変に口答えしない限り酔ったおっさんよりはかわしやすい、無茶な命令でもないし適当におだててつつ従っておけばいいのさ! 何より警備員なんて呼ばれたら捕まってしまう!

 プライド? ハハッ、犬にでも食べさせておけばいいんじゃないかな。

 --ささ、また絡まれる前に買い物すましてトンズラこきますかね。

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

結局あれから2人の妖怪厚化粧……ではなく奥様方に絡まれた。あれか? 奴隷臭みたいなものでも漂ってるのだろうか……せめて美人なお姉さんに命令されるなら俺も報われるというものの……! まったく上手くいかない世の中だよ。

 

「さて、空腹もいい加減限界を迎えているのでレゾナンスへ向かう途中見かけた食堂『五反田食堂』へとやってきました!」

「おめぇなに言ってんだ……?」

「いえいえ、親父さん野菜炒め定食1つ!」

「おう」

 

 チラッと店内を視てみたが貼り紙はないようだ、まさかラーメン屋だけに貼ってるとかないよね? まあこれで落ち着いて食べられるしよかったよかった。

 ただ久々のご飯なのでさっきから腹の虫がもううるさくてしかたない……炒めものをつくるジュウジュウなってる音がさらに空腹をさそ「……ところで坊主」

 

「……なんですか?」

 

あれこれデシャヴュ……冷や汗がとまらない、外食するたびに通報されるっていうのか!

 --これは不味い気がするけど腹へって動けないよ、上代翔の冒険の書はここで終わると言うのか……! 既に一回捕まったし一度コンティニューしたようなもんだけどされど復活したんだからやっぱ、

 

「いや、やっぱなんでもねぇよ。ほら野菜炒め定食だ」

「お、おお!いただきます!」

 

 よかった! この親父さん凄くいい人だよ、野菜炒めも美味しいし!

 

 

「ぷっはー、ご馳走さまでした!お代ここおいときます!」

「おう毎度!」

 

 食った食った、これでまた元気に逃げられる。今度からはちょっとした非常食くらい買っておこうか……いやいやそんなにいつも遭難してたまるか。しかし念には念をというし……

 

 

 

 

 

 

 その頃上代翔が出ていった五反田食堂では親父さん……もといこの店の店主である五反田厳は

「あいつどう見ても学生だったがこんな時間から……いや若いうちには色々あるわな」

と言っていたとか言ってなかったとか。

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

その数時間前クラス代表対抗戦が行われていたIS学園では……

 

 

何だアイツは! 一夏と鈴音が対抗戦を行っていた最中に所属不明のISが乱入してきた上にアリーナがハッキングされた。

 

『織斑先生!』

「山田君か!現在クラス代表対抗戦中に所属不明のISが乱入してきた。アリーナの生徒の避難を進めているがアリーナ自体にハッキングをされているせいで避難がまともにできない状況だ!それと上代翔はどうした?」

 

 山田君から通信が入った……上代翔を見つけて連れ帰ったようだが姿が見えない。

 

『上代君は意識がなかったので保健室に寝かせてきました! 栄養失調に近い状態だったので念のため栄養剤の点滴をしてもらってます。アリーナがハッキングされていて避難がままならないなら私は外側からアリーナを開けれないか試してみます!』

「そうか、頼んだぞ」

 

 ……まあ樹海のなかで数日過ごして衰弱していたのなら数時間、いや半日は動けまい。今はこちらの対処、生徒の安全の確保に徹するとしよう。

 

 

 

 

 などと思っていたのだが見込みが甘かった、一夏が所属不明のISを無茶をし倒した後に意識を失い保健室に連れていくと--見事にもぬけの殻であった。窓が全開になっており虚しくカーテンが風に揺られていた。

 こんなにすぐ動けるとはアイツはいったい何で出来ているのだ……?そもそもなぜ逃げ出すのだろうか。

 

「ああ! 上代君がいません!?」

「窓から逃げ出したようだな。まあ樹海を数日間さ迷った人間がすぐに起きて逃げ出すなど誰も予想できん、それにあの時はアリーナにいる生徒の安全確保が重要だったのだ。そう気を落とすな、取り敢えず織斑を寝かせよう」

「うう……あんな状態で逃げ出すなんて、彼見つけたときには草を食べてたんですよ?」

「…………」

 

 ほんとうに何をやってるんだ上代翔は?

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

「う……?ここは、保健室か」

「よーやく起きたのね。全くビームに突っ込んで切りかかるなんて無茶するんだから」

「おお、鈴いたのか……いやつい反射的に身体が動いてな」

「つい、じゃないわよ。皆心配したんだからね?」

「ぐ……すまんと思ってる」

 

 随分心配かけてしまったみたいだ、また千冬姉……皆にも謝らないといけないな

 --っとそういえば前に泣かせてしまったことを謝らないとな。

 

「……なあ、鈴」

「な、何よ?」

「この前はすまなかった!勢いとはいえお前との約束をそんなことって言っちまって……本当にすまん!」

 

鈴は少し面食らったような顔をしていたが小さくため息をつき

 

「いいわよ。まあ、あんたもこんな同性のいない環境で辛いってのもあるだろうし……それにあの言い方じゃ通じないってわかったしね!」

 

 それじゃあ先生呼んでくるわ、と言い鈴は保健室を出ていった……あの反応は許してもらえたのだろうか? それとあの言い方じゃ通じないってどういう意味だろうか?

 と頭を捻らせていたら千冬姉がきた。

 

「起きたか、身体に異常はないか一夏?」

「ああ、問題ないよ千冬姉。あと心配かけてごめん」

「まったくだ、もうあんな無茶はしてくれるなよ」

「気を付けるよ……そういや山田先生が探しにいった上代翔はどこにいるんだ?そろそろ来ててもいいと思うんだけど」

 

 そう問うと少し千冬姉はいい淀んだがすぐに予想外の答えを口にした。

 

「あ、あー実はそのベッドなお前が横になる直前まで上代が使っていたベッドなんだが……」

「おお! もう来てたのかよ! それしても樹海に数日いたってのにもう動けるようになるなんてタフだな」

「まったくのタフさだ、再びそこの窓から逃げ出すなんてな」

「……え?」

「だから再び逃げ出したんだ、そこの窓からな」

 

 

 --そう、本当に予想外の答えを口にしたであった。

 

 いつになったら会えるんだよ上代翔!?




ここまで読んでくださった方には感謝!(以下略
さて、一度捕まりましたが脱走しました。なお現在アイツは自分がいた場所がIS学園と気づいてません、いつの日か気づくと信じて!保健室のくだりは何となく書いてみました、一夏の視点いれてみたくって…つい。また他の人も書いてみたいですね。よし書いてみます。
感想評価お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

壱。我輩は天災である

 彼女、篠ノ之束は天災である。道行く人に問えば皆そう答えるであろう。そんな彼女に不可能なことといえば死者蘇生や時間停止くらいなものであり、まあ時間停止に関してはAICを応用すれば擬似的に似たことは可能ではないかなと思い始めたこの頃だったのだが。

 

 

 

 

「むきー! なんなんだよこいつ何でISを動かせるんだよっ! いっくんが打鉄を動かせたのは束さんがちょろちょろーっと弄ったからだけどこいつには何もやってないのに!」

 

 そんな天災である束は自信のラボである我輩は猫である(なまえはまだない)で荒ぶっていた、全国で男性IS操縦者を探すテストがあるとは知っていたが無駄だとわかっていたのである。ISの製作に取りかかっていたのだが……そのときとある試験会場にあるISから反応があったのだ。そのことに久しぶりに驚いた束は急いで監視カメラをハッキングし確認してみると、

 --会場より全力疾走で逃げ出すISを起動させたであろう男、上代翔の背中が写っていたのである。

 

「しかも何で逃げてるのさ!わけがわからないよ!」

 

 めんどくさかったが取り敢えず片手間に身元を調べて差出人不明で警察署へ情報を流した。こんな一般人さっさと捕まって解剖されればいいんだよ! と思った束であった。

 

 

 

 

のだが、

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 上代翔の情報を流してから3日。ふと、そういえば訳のわからないアイツはどうなったのか気になった束はものの数秒足らずで調べあげたのだが……

 

『3日前に発見されて以来消息不明だった男性IS操縦者、上代翔さんがついに発見されました。がしかし警察が夜を徹して必死の追跡をするも遂に振り切られてしまいました……現在当TV局はヘリにて上代翔さんが逃亡したと予想される郊外を空から捜索中です……』

「なん……だと?」

 奇しくもそれは男性操縦者である上代翔が逃亡したと聞いたときの一夏と同じ反応であった。

 束は今頃上代翔は警察なりどこかの組織なりに捕まっており、バースデーケーキよろしく身体を切り分けられて世界中に体のパーツが散らばっているだろうと思っていたのだが。

 

「いくら束さんにとって他の人間が魑魅魍魎の有象無象とはいえ日本の警察は世界的に見れば優秀な方なのに……これは流石の束さんも予想だにしなかったよ」

 

『あれは……上代翔さんです! あのペイントボールで真っ赤な背中は間違いありません! 警察に連絡をいれながら空から追跡を続けたいと思いま……あ、あれは富士さ、いえ! 樹海です! 上代翔さんは何故か樹海に向かって走っていきます』

 

「…………」

 

『上代翔さん止まってください、ホント止まってください! ああ!? 樹海へそのまま入ってしまいした……追跡を続けたいのですが樹が邪魔をして空からの追跡は困難です。一度地上へと降り警察の方々と合流したいと思います!』

 

「……ホント予想だにしなかったよ、樹海に突っ込んでいくなんて。目は血走って変なこと叫んでるし」

 

 これが束の中で上代翔が有象無象の一般人から予想できない変態へと変わった瞬間であった。

 

「それにしてもあの逃亡中の危機せまる表情とスピードはちーちゃんを彷彿とさせるものがあったね。流石にちーちゃんの方が怖いし速いけど。それにちーちゃんは追う側だしね」

 

 うーん樹海に入られると衛星でも中々見えないなぁ、そんなことを呟きながら新しい人間の行動に少し興味をもった束であった。

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 そしてまた日がたったある日のこと。

 

「いけぇ! ゴーレムl号くん! いっくんと白式の勇姿をその頭部に収められたカメラで記録するのだぁ! いけ今だ、シャッター!」

 

 

 篠ノ之束はIS学園に無人機を送り込み親友の弟を盗さ……撮影していた。なんとこの無人機両腕からビームが出るだけでなく頭部に収められたカメラで撮影が可能なのだ、寧ろ両腕の武装は撮影時間を稼ぐためのオマケである。

 ……そのオマケの威力が洒落にならないのが問題なのだが。更に本人はその事を欠片も気にせずノリノリで遠隔操作してるのだが。全くもって甚だ迷惑なやつである。

 

 --しかし、

 

「うわ、片腕切られたよ!? いっくんやるね !でもまだ頭部のカメラは生きてるもっぁぁぁあ!? 返す刀で頭も切られちゃったよ!」

 

 調子にのって遊びすぎたせいで片腕だけでなく頭部(カメラ内蔵)まで切り落とされてしまった。

 

「むむ、流石いっくん。撮影用無人機とはいえゴーレムl号くんの頭を切るなんて、まあもう撮影できないし自動操縦(オート)でいいや」

 

 そんなことを言いながらポイッとゲーム箱風のコントローラーを投げ捨てる束。

 そして最後にアリーナに見当たらなかった愛しい妹を探そうと校内の監視カメラをハッキングしてみると……

 

 

 --保健室の窓から飛び出す上代翔の背中が見えた。

 

「ちょっ! 何できみがいるのさ!? てかまた逃げてるし…でもIS学園から出ようと思ったらモノレールに乗らないと出られないんだよ? 来たことないはずの場所で一直線にモノレール目指せるのは凄いけどさ……野生の勘的なナニかなのかな?」

 

 ……久々に、本当に久しぶりに束の予想を外し驚かせた人間であった。そしてその彼がこのまま捕まって解剖されるのは惜しい気がした。

 因みに捕まっても解剖されると決まったわけじゃない。

 

「ま、これも何かの縁と思ってこの束さんがモノレールくらい動かしてあげようじゃないか」

 

 まあ君ならモノレールが動かなくても逃亡しそうだけどねー、そう呟きつつも上代翔がモノレールで移動できるよう手助けする束であった……

 

 --無人のモノレールのドアが自動で開いたり勝手に動くのに特に反応もなくモノレール内でくつろぐ彼は確実に感覚がずれていると思いながら。

 




全略

ってことで束さん回にしてみました、01の時点では上代翔の命はマッハでピンチでした…が結構マイルドな束さんへと変化させました。よくわからないけど束さんに興味を持たれるパターンです。やっちゃったぜ!
でも過激な天災だったら恐らく始めの3日の逃亡中に行方不明で終わってしまいますし。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

05.l can fly! え、切符じゃ無理?

 どうも上代翔です。現在空港にいます、飛行機に乗って高飛びでもしようかと思ったんだけど駄目だったね。

 パスポートってのがないと海外には出れないとは。電車みたいに切符かチケットで乗れるものかと思ってたから受付のお姉さんに切符売り場を聞いたときの表情ったら……穴があったら入りたい! 思い出すだけで恥ずかしいし顔が暑いよ!仕方ないじゃん、今の今まで海外に行こうとか思ったこともなかったし!

 つい最近まで中学生だったんだし。14歳だし知らなくたっておかしくないさ、ああきっとおかしくないに決まってる。今時電車に乗れない人だっているんだもの……

とか自分で自分に言い訳していたところ。

 

 

 ふと銀髪眼帯の少女と目が合ったのですがそのまま離せません、いや彼女が美人で目が離せないとかそういう類いのものでなくあれは獲物を見る目だ……目を離した途端に襲いかかられそうな錯覚に陥る、氷のように冷たい目だ。

 --なまじ美少女なもんでちょっとゾクッと来るね! 冷や水を背中にツーっと垂らした感じ!

 しかしいつまでもこの状態でいられないので熊から逃げるかのように目線を外さずゆっくり刺激しないように下がれば襲われずに済むのではないだろうか? いやそもそも襲われる確証もないんだけどね。それでは始めのいーっ「おい」ぽ、

 

「……はいどうしましたか?」

 

 一歩目にて失敗……!い、いや普通に話しかけられただけだ。別に問答無用で襲いかかられる訳でもなさそうだ。

 

「お前上代かけ」

「いやー! お嬢さん日本語がお上手ですね! 見たところ日本の方ではないようですがどこから来られたのですか?」

「ドイツだ、それとこんな身長だが恐らくお前とほぼ同年代だ。お前上代か」

「そうでしたかそれは失礼しました! ドイツの方ですか! ドイツと言えば黒ビールが有名ですが残念!私は未成年なので飲めません、いつか飲みたいですね。いやいやしかし他にもウインナーやポテトが有名ですが何かオススメの料理はありますかね!」

「む……そうだな、ウインナーやポテトを使ったものならポピュラーだがポトフがいいのではないか?あとドイツでは豚肉も好まれて食されているのだがアイスバインといった料理もオススメだな、訪れる機会があれば食べてみるといい。お前上し」

「そうですか!ありがとうございます、ドイツに行きたくなってきましたねぇ! それでは、えー貴女のお名前は……」

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ、ドイツはいい国だ。来たければ来るといい。お前上」

「そうですかボーデヴィッヒさん! 私は金城芳(かねしろかおる)です! それではさようなら!」

「ああ、ではな。……カネシロカオルか、人違いだったか」

 

 い わ せ な い よ ! あと最後にボソッと言ったの聞こえてるよ。それにしてもあんな小柄だったのに恐ろしくプレッシャーというか何というか……話しかけられる前のおれを見る目なんて睨み付けられているようで息子が少しシュンと萎縮しちゃったよ。

 

「しかし目線だけじゃなく雰囲気も冷たい感じだったけどドイツについて聞いたときには雰囲気が柔らかくなったなぁ。やっぱ自国(ドイツ)が好きなのかな?」

 

 アイスバインなんて豚肉を使うってことと名前だけ聞いたら冷凍されたままの豚肉しかイメージ湧かないけど……まあせっかくあんな綺麗な()にオススメされたんだ、機会があれば是非食べてみたいと思う。

 

 --さて、冷たい雰囲気の銀髪少女(ラウラ・ボーデヴィッヒ)との会話も切り抜けられたし海外にいく飛行機にはパスポートがないと乗れないことはわかったしどうするかなぁ。

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

 かなり喋る変な奴だったな。というのがカネシロカオルと言う男に対する感想だった。

 

「ふむ、2人目の男性操縦者に似ている気がしたのだが……やはり日本人の顔は見分けがつきにくいな」

 

 他国の人間、私にとってはアジアの人間や黒人などは同じ顔に見えて仕方がない。まあカネシロはドイツに興味を持っていた、恐らくいい人間だろう。

 しかし上代翔という男は何故逃亡しているのだろうか、国内中に指名手配されている状況で未だに逃げ続けているとは中々気骨のありそうな奴だが

 --ISだって操縦出来るのだ、自分で発見した際には私達の部隊(シュヴァルツェ・ハーゼ)へと勧誘してみたかったのだが……そう思って顔が似ていると思い話しかけた人間は別人であった。彼は何か必死になっているようでもあったが。

 

「上手くいかないものだ……まあいい。今の私の目標は織斑教官をドイツへと連れ戻し教官の威光を傷つけた織斑一夏を完膚無きまで叩きのめすことだ……!」

 

 待っていろよ織斑一夏め……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハックションッ!」

「わっ、一夏どうしたの。風邪でも引いた?」

「いや大丈夫だシャルル。ハハッ、誰かに噂でもされたのかもな」

 

 いきなりくしゃみが出たせいで同室の同じ男の操縦者であるシャルルに心配される……そう男なのだ!

 いやー本当に3人目があったまま見つかるとは思わなかった。これはもしかしたらもっと増えることもあり得るのではないだろうか?

 

「あはは、そうかもね。一夏は有名人だし」

「あーそうだな、俺も上代翔もテレビとかでかなり出されてたからな……はぁ、俺もシャルルみたいにこっそりとやってほしかったぜ」

「は、はは。そ、そうだね」

 

 ん、シャルルの反応が少し変だがどうしたのだろうか。男性IS操縦者としてテレビにでも出て有名になりたかったのだろうか?いいことなんてないんだけどなぁ。

 あーあ、男だけで中学のとき……弾や数馬たちと遊んでたときみたいに騒ぎたいぜ。シャルルも入学したんだ、上代翔も入学して3人で遊べたらなと思うこの頃だ。

 

 

 

 

 --このとき織斑一夏は知らなかったのだ。明日出会い頭の裏拳ビンタ一閃を食らうなんて……そして未だにIS学園には一人しか男子生徒がいないことに……!




前略、感謝です!話が進まない回、ラウラ&シャルル出すための回。
なんか主人公織斑一夏よりも早く黒兎さんが遭遇することになりました。ラウラに追いかけられて逃走するってのも考えましたが断念、カネシロくんへとなってもらいました…ほら日本人だって白人黒人の顔の見分けってつきにくいじゃないですか。
あと臨海学校ってせっかくのオリ主…でいいのかな?
で書いてますしあんな大きなイベント絡ませないといけませんね!

明日福音戦、明後日一章終わります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

06.犯人はお前だ!

 夏だ! 海だ! 密航船だぁ! ヒャッホー!

 前に飛行機で高飛びしようとしたことがあったけどパスポートがないから出来なかった……しかし世の中にはルールなんて破るためにあるんだと言わんばかりの反骨精神あふれる方々が存在するのだ。

 --まあ港に来たときに真っ昼間から酒盛りしてるおっさんたちに絡まれたと思ったら密航うんぬんについてベラベラ話したのだが……酔いの覚めたときに簀巻きにして沈められかけたりもしたが何とか同行を許可してもらえた。寧ろ同行か簀巻きで溺死の二者択一だった。

 

「しかしそんな酔っぱらってベラベラ喋るなんておっさんたち大丈夫か?」

 

 と問うと

 

「--大丈夫だ、問題ない」

 

 と言われた。この密航は恐らく失敗する、今からそんな気がしてきた。

 

 

 

 --そして近辺の漁師や船を使う企業に海に出ないよう国から警告があったらしい。しかしその警告を聞いたおっさんらは出航の支度をしていた。以上現在までの流れ!

 

「え? おっさんたち今出るのか!?」

「あたりめぇよ! 海が国からの警告で封鎖されたってことは恐らく何かドンパチでもするってことだ。その混乱に乗じて密航するって寸法だ!!」

 

 え、えー……これは本格的に失敗どころか死亡フラグがたってますよ? いやそれより何で国からの警告がこの密航船にも来たのか甚だ気になるのだが……

 チクショウ! こんなことなら海に来なけりゃよかった! 樹海に迷……いたときより冷や汗が止まらない。

 

「いやいや! 考え直しましょう、絶対ヤバイですよ!」

「あぁ? 俺らの考えが間違ってるってのか! 簀巻きにして沈めんぞ!」

「よーし出航しましょう! さあ早く支度を済ませて!」

 

 先の命より今ある命だよね! まあこんなのただの予感がするってだけだけだし、当たるとは限らないよ!

 もしかしたらなーんもなく平和にいけるかもしれないし。

 

 --そもそも今思えばあんなこと考えた時点でフラグが建っていたのかもしれない。

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 そして現在密航の最中、船の上で空を見てたのだが

 

 ん……んんんん!?

 --あ、あれは……ISが! ISが戦ってるよ!? お前ら元宇宙用、現在競技用じゃないのか!? 海の上でドンパチするなよ、競技場でやろうよ!

 あ、そういやIS用のスーツってレオタードみたいって聞いたことがある。近づけば際どいアングルで見えるのか!?

 いやいやそんなこと言ってる場合じゃない!最悪死ぬ!

 

 

「おっさん空見て! ISが戦闘してる、戻ろう! 今すぐ戻ろう。こんなん突破するのは無理だよ!」

「なんだと? そんな訳『ボス! 空でISが戦闘してます!』本当かよ!? 離れるように旋回して引き返すぞ! 全員何かに掴まれ! 全速力でいくぞ!」

 

 まったく、悪い予感ほど当たるっていうけどこれはないでしょ! あれに巻き込まれるとかマッパでハリケーンに巻き込まれるようなもんじゃん! あ、マッパハリケーンって何か語感いいね。

 

『お、親方! 空から、空から流れ弾が!』

「うるせぇ! そんなことよりISからは離れられてるのか!?」

『はい! もう目で確認できる限りでは豆粒サイズですよ!』

 

 ……ふぅ、早めに気付けたのが功を奏したか巻き込まれずにすんだようだが……豆粒サイズで視認できる距離離れてるのに流れ弾が跳んでくるとはIS恐るべし! 双眼鏡で見てみるが動きが早すぎて殆んど見えない。

 バルスって言ったら落ちないもんかね、バルスッ!……あ、ホントに一機爆発しながら落ちていった。あれ生きてるのな?やっぱISって競技用と書いて戦闘用って読むんじゃないかな。

 いやそのISに俺も乗れるらしいけど乗ったことないしよくわからんけど。ただ宇宙用につくられたISとその開発者にはご愁傷さまですと言いたい。

 

 --さてそろそろ岸についたら簀巻きにされるだろうし、その前に逃げる準備をしますかね。

 

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

 

 臨海学校で海へと来ていたのだが二日目の換装装備(パッケージ)確認の演習を始めた直後に箒の姉、束さんが来た。昔から何をしでかすかわからない人ではあったが今回はなんと箒の誕生日プレゼントといいIS、それも第四世代を持ってきたのであった。

 何でもその第四世代である紅椿には展開装甲という機能が全身についているようだ。因みに俺の白式、正確には雪片弐型にもその機能がついているらしい。

 ……そのやりとりの時点で周りの空気が凍りつきかけてたのだが千冬姉にやり過ぎるなといっただろうと言われたときに

 

「えー、これでも押さえたんだよ? 束さんからしたらどうしてそんな第二世代第三世代(アンティーク)をつくって乗っているのか理解できないよ」

 

 と返した一言で完全に空気が凍りついた。世界じゃ第三世代がようやく形になって使用出来はじめたところだからな……

 

 

 そんなやり取りを行ったあと専用機を手にいれた箒を交え演習を行おうとしたところに山田先生が走って千冬姉に慌てて何かを報告していた。

 

 

 --それはアメリカとイスラエル共同開発した第三世代型軍用IS、銀の福音(シルバリオゴスペル)が暴走してここへ向かっているということだった。

 そして銀の福音を止めるのに選ばれたのは一撃必殺が可能な白式と現在最高スペックであろう紅椿……俺と箒だったのだが

 

 

 

 

「シールドエネルギーが残り少ないッ!」

 

 銀の福音への奇襲が失敗しそのまま戦闘へと移行したが銀の福音の速度と弾幕に翻弄され、箒は何とか追いつけているが俺は雪片弐型の届く範囲に入ることすらできていない。

 

「ッ! 私が福音を止める! その隙にお前が斬れ!」

「わかった!」

 

 そして箒は紅椿の武装である雨天、空裂で牽制しつつそのまま銀の福音の動きを止めようとしたのだが

 

 --雨天と空裂が消えた? ……ッ! 具現化維持限界か!

 箒は何が起きたのか咄嗟に把握できずに固まってしまっているが銀の福音が撃ち出した弾幕《銀の鐘(シルバー・ベル)》が箒に向かっている!

 

「届けぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 何とか箒と迫る弾幕に割り込むことは出来たがシールドエネルギーも底をつきながら銀の鐘を受け……俺の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 双眼鏡で見ると岸が見えてきたんだけど何人かの人が見える。より詳しく言えば打鉄とラファールを装着した女性たちが見える、因みに皆結構な美人である。

 

 --このままいけばパクられるよなぁ。よっしゃ取り敢えず上の服を脱いで……違うよ変態じゃないよ!こ、これには訳があるんだ! と、取り敢えず脱いだ服をリュックに入れて更にそのリュックをポリ袋に入れてくるむ。

 そして上半身裸のまま船のこっそり最後尾へといき

 

「あばよーとっつあん!」

 

 母なる海へとダイブ! ハッハッハおれは一足先にトンズラこくぜ! 因みに台詞は言ってみたかっただけ。

 ……陸まで結構あるよなぁこれ。えーと波に平行に進めばよかったっけ? まあ真っ直ぐ戻っても結局捕まるしそうするかな。ってか足が重い、ズボンも脱げばよかった。寧ろ全裸でもいい。

 

 

 

 

 そういえばバルスで落ちてたあの人は助かったのであろうか? 自分のバルスで人が亡くなるのは嫌すぎなので無事を祈っておくとしよう。

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

 

 銀の福音に撃墜されてから寮に運ばれ目が覚めるとなぜか傷が治っていた。その後セカンドシフトした白式で銀の福音を落とすため出ていった皆を追いかけセカンドシフトした白式で救援に入ったが……またシールドエネルギーがつきかけたのだが。

 箒が単一仕様能力(ワンオフアビリティー)、絢爛舞踏を発動させ白式のシールドエネルギーが回復したことにより何とか銀の福音を撃破することができた。

 

「にしてもただでさえ燃費の悪かった白式が更に燃費が悪くなっちまった……」

 

 ピーキーすぎる機体も考えものである。

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 

 --その頃海岸では

 

「おい、束。今回の件お前の仕業か?」

「わお! ちーちゃん直球だね!」

「回りくどいのは嫌いなんだ、でどうなんだ?」

「さーてどうでしょう? ちーちゃんのその筋肉が詰まってそうな頭で考えアイタタタタタ!? アイアンクローはやめて!中身が出ちゃうよ!?」

 

 はぁ……こいつはいつも素直に本当のことを話そうとしないから困る。

 

「まあ、そんなことは置いといてちーちゃん。もう少ししたら2キロほど離れた岸に密航船がつくよ?」

「何? どういうことだ」

「漁師とかには国からの警告があったでしょ? 海に出るなって。で封鎖された海で何かドンパチがあるだろからそれに乗じて行っちゃえーってバカが強行しようとしたんだけどドンパチの内容がISだったから引き返してきたってとこだろうね」

「チッ、底抜けの馬鹿がいたものだな。因みに私としては何故そいつらが海が封鎖されてたか知っていたのか、今の今まで探知されなかったことが気になるんだがな?」

 

 そうだ、国から警告を出すのは正規の企業などに限る。そして密航船の者たちが知っていたとなれば……

 

「私がリークして隠してたんだよ!テヘペロ☆」

「ふんッ!」

「ふべ!? ちーちゃんが殴った!」

「おい何故そんな情報を流した」

「いやー、その密航船にかーくんも乗ってたんだよねー」

 

 だから帰ってくる船に捕まえれば一緒に捕まえられるかもしれないから他のやつでも向かわせたら? と束は言った。

 

 --のだが、かーくん……? もしかして上代翔のことか?何故こいつが上代翔がその船に乗ってることを知って……いやそもそも

 

「わかった、まあ密航船も捕まえねばなるまいし他の教師を向かわせる……しかしどうしてお前が他人の名前を覚えてるんだ……?」

「酷い! ちーちゃん酷いよ……ってのは冗談として私も始めにかーくんがISを動かしたときにはムカついて警察に個人情報流したり色々したんだけどねー。一向に捕まらないんだよ。それにこの束さんの予想外ばかりの行動をとる。ちょっと興味が湧いちゃったのさ」

 

 ……上代翔、こいつに興味を持たれるとは凄いのかおかしいのか。一応ご愁傷さまであるとだけ言っておいてやろう。

 

「そうか、でその上代翔が乗る密航船に情報を流したのは何故だ?」

「面白そうだから!」

「おい」

「まあ実際は巻き込まれる前に回避しちゃったんだけどねー、見事なイベント回避だったよ!」

 

 まったくコイツは……巻き込まれたらただでは済まんだろうが。

 

「ま、そこで巻き込まれるのを回避できるのも今まで逃げ続けられてる理由かもね」

「そうかもしれんな」

「……ねぇ、ちーちゃん。今の世界は楽しい?」

「……そこそこにはな」

 

 そう私が答えると束は

 

「そう……私は--」ザッパァ!

「ん?」

「うぇ!?」

 

 何か答えようとしたが何やら海からおかしな波音が聞こえそちらへ目を向けると、

 

 

 

 

 

 --上半身裸の上代翔がいた。

 




ここまで中略です!
なんとか臨海学校に絡ませようとしたらこうなった、無理矢理密航船に乗せた感半端ないです。いやーしかし無事カツヤクデキテヨカッタ!福音との戦闘中結構夢想できたかな!テヘペロは束さんの妹のお家芸だけどいいよね!

そろそろもうちょっと原作に絡ませようと思うこの頃
そして初4000文字!再び越えるのは何時になるやら…

夕方日刊ランキングを見ると2位に…驚きました、皆さま方ありがとうございます。ふぉぉぉぉ!!
明日で一章と福音完結します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

07.あれ、なんでこうなった?

 密航船から飛び降りようやく岸の近くまで来れたわけだが何やら美人二人が話している。一人はスーツ、もう一人は……メカみたいなウサミミつけて、アレだ不思議の国のアリスみたいな格好してるちょっと痛い美人である。

 少し趣味が悪いが何を話してるのか気になる……何々……

 

 

 よーし大体わかった、何やら途中波で聞こえ難かったりよくわからんことも言っていたがそんなこたぁどーでもいい。要約するとこういうことか、

 

メカウサミミ「面白そうだから密航船に海封鎖の情報リークしちゃったぜテヘペロ☆」

 

 お前の仕業かぁぁぁぁぁ! 久々に頭に来た、一言いってやる! まだなんか喋ってるけどそんなこと知らんよ!

 

 

ザッパァ!!

 

「ん?」

「うぇ!?」

「アンタのせいかメカウサミミぃぃぃぃ!」

 

 あ、上半身裸のままだった。まあ海だしいいや、今はこの目の前のメカウサミミに文句言うことが先決だね。

 

「アンタのせいで、アンタのせいで危うく死にかけたんだぞ!?」

「お、おおう。それでも生きてるじゃん! 結果オーライだよ! それに私にそんな口の聞き方していいのかなぁ?」

 

 いや確かに生きてるけどそういう問題じゃなくて……ってかなんかニヤニヤしながらそんなこと言われてもなぁ。

 

「そんな口の聞き方……? いや、まあ年上だろうけど命の危機を招いた原因に敬意を払うのはちょっと……」

「いやいや、そうじゃなくて私を見て何か気づかないかい? ほらほらよく見るといいよ!」

 

 んんー? よく見てもなぁ、そんな胸張られても気づくことって……おお! とても大きなものをお持ちで、眼福だね! といえばいいのであろうか。でもこれ普通にセクハラだし言えない。冤罪でもなく普通にセクハラで逮捕だろう。

 

「すみません、メカウサミミつけたアリス風の服着たちょっと痛い美人ってことしかわかりません」

「ちょ! 束さんに何てこと言うんだよ!?」

「ふっ、正にその通りではないか束」

「ちーちゃんまで!? い、いやちーちゃんが美人ってとこも肯定してくれたと考えれば……!」

「調子に乗るなよ。メカウサミミが」

「痛たた!? 出ちゃう、中身出ちゃうよ!」

 

 メカウサミミは束さん、スーツさんはちーちゃんさんか。

 それにしてもやっぱ違ったか……それ以外と言えばやっぱ日本人離れしたメロン×2以外見て気づくことはないんだけど。

 取り敢えず二人がアイアンクローっていう新しいコミュニケーションをしてるうちに上の服着よ。さすがに冷えてきた。

 

「君は君でなんで冷静に服来てるのかな!?」

「なんと、上半身裸のままを所望すると言うのか……!」

「違うよ!」

「ですよね」

 

 よかった、いくら美人でもそんなこと言わたら困る。風邪引くし。

 

「そうだよ! で、わからないかな! ほら、名前は篠ノ之束! これでもうわかるでしょ!」

「ああ……そういうことですか。格好見ただけでわかれなんてまったくメカウサミミったら人が悪い……」

 

つまりこういうことか!

 

「珍しい名前ってことですね」

「違ーう! 名前聞いてもわからないとは思わなかったよ!」

「よかったな束、お前が思ってたより存外世界は広いらしいぞ?」

「むきー! 篠ノ之束と言えばIS開発者だよ! それが私!」

「IS開発者……?」

「そうだよ!」

 

 ……このメカウサミミの痛い人が?

 

「ないわー」

「なんでさ!?」

「だって少し痛い格好した人で命の危機に陥れようとする人がそうだと言われてもちょっと……」

「まったくだ」

「さっきからちーちゃんはどっちの味方なの!? とにかく私が篠ノ之束でIS開発者なんだよ! 篠ノ之束がIS開発者ってことは知ってるでしょ!?」

「知りません」

「えー……」

 

 そう肩を落とさないでほしい、歴史は苦手なのだ。織田信長がイチゴパンツかぶって本能寺で変になったくらいしかまともに覚えてない。

 それとさっきから叫び続けてるが疲れないのだろうか?

 

「君のせいだよ……それにこんなに疲れのは久々だよ」

 

 心を読まないでほしい、いや顔に出ててたのかな。口には出てないと思うのだが。

 それにしてもそろそろ逃げたい、文句言う気分でもなくなったし。密航船が捕まったであろう場所からはある程度離れているがまだ見つかる可能性はあるし……でもこのままでは抜けにくいなぁ。もうこの人ちーちゃんさんに任せていいかな?

 

「ちーちゃんさん」

「ぷぷっ、ちーちゃんさんだって「はぁっ!」ふべ!?」

「おい何だその変な呼び方は。私の名前は織斑千冬だ」

「そうでしたか、失礼しました……ん? つい最近どこかでそんな名字を耳にしたような……」

「おーい束さんも話に混ぜてよ!」

「ふっ、そうだろうな私の弟は織斑一夏。IS操縦者だ」

「あーそうでしたか、どうり……で……え?」

「ぶー束さんを無視するなー!」

 

 あれ? この人の弟が織斑一夏で織斑一夏は男性操縦者で男性操縦者の姉は世界最強ブリュンヒルデで織斑一夏の姉であるコノヒトはブリュンヒルデで…!?

 

「ようやく会えたな上代翔、会いたかったぞ」

「ハハ、ハ……初めまして織斑さん……」

 

 ヤバいヤバいヤバいヤバい!笑ってるように見えるけど滅茶苦茶恐い、空港であったボーデヴィッヒさんの睨みが霞んで見えるくらい恐い! ってか世界最強と天災は知り合いだか友達って聞いたことが……まさかこのメカウサミミ本当にIS開発者!?

 いやそんな場合じゃない! この人が織斑千冬であるなら逃げれな……いや、まだだ!

 

 諦めたらそれまでだ――!

 

「いーもん、いーもん! 束さんはもう帰るよ!」

「連れてって束さん!」

 

 僕と契約して共犯者になってよ!

 

「へ?」

「なに!?」

 とにかくここを凌げ、上代翔……!

 

「いやー束さんがIS開発者だったなんて! 能ある鷹は爪を隠すって言いますしね! 流石天才な束さん、私なんかではおいそれとは見抜けなかったなー! それにさっきは長距離泳いだあとで目が狂ってましたが個性的なウサミミにドレス、束さん美人だし着せられることもなく着こなしてますね! そんな束さんなら私一人連れて逃げるなんてわけないだろーなー!」

「うーん……そこまで言うなら仕方無いなー。フッフッフ、ちーちゃんから、世界から! 逃げに逃げ続けた私の逃走力をとくと見よ! これが私の逃走力だぁぁぁぁ!」

 

 契約は成立だ。おれの祈りは、エントロピーを凌駕した……

 

 とか思ってたら地面から人参型のロケットが出てきて束さんと共に中に引っ張りこまれた。

 

「お、おい! 待て束、上代!」

「待てと言われて待つやつはいないよちーちゃん!」

「答えはノーです! 解剖なんてごめんだ! ずっと逃げ続けてやる!」

 

 と織斑さんの制止への返答を言い切るか切らないかのところで人参型のロケットは空へと飛び立ったのであった。

 

 

 --世界最強は振り切れたが天災と逃げたことが良かったのかは上代翔にしかわからないのであり……その後上代翔の行方を知るものはまあまあ居たりするのであった。




前略感謝です!
4/18日現在この話は悩みましたがずっと一人で逃亡ってのも(ネタ的にも)無理があると断念。取り敢えずこんな形となりました、多分そのままのはず。あと何気に上代翔視点オンリーが初な気がする。
そして無理矢理一章終わり完結!続けるか否か…一夏と顔合わせてすらいない。
追記 クロエ出したいし書きます。4/19

ふふふ……お気に入り増える度にこの話を投稿しづらくなった、まあ投稿しますが!明日か明後日に2章始めます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

次章予告
第2章予告


 あの海岸での出来事を境に一人でなくなった逃亡劇。

 

 ――しかしそれは今までの逃亡劇がほんの序章であると思い知らされることとなる出会いであった。

 

 

 

「かーくんこれからよろしくね!」

 

「かーくんさんよろしくお願いいたします」

 

「あー、上代翔にはいつ会えるんだ?」

 

「束め……いったい何を考えている?」

 

「ほら酢豚よ!」

 

「ここがラボ……片付けましょうよ」

 

「嫁が痙攣している! これはセシリアの料理……!」

 

「ハッハッハ! 逃げるよ! くーちゃんかーくん!」

 

「翔さん、磯の香りがきついです。はやくお風呂に入ってください」

 

「これからどうするかなー……ほんとどうするか」

 

「ふぅん上代翔ねぇ……へぇーそういうこと」

 

「一夏どうした? 何やら元気がないが?」

 

「何だかもう上代翔に会えない気がしてならない……」

 

 

 

 

 ――そして新たな章が幕を開ける。

 

 

 

 

「束さんの夢はね……世界に裏切られたんだよ。だから……」

 

「束様どうなされましたか?」

 

「私は人の子ではありません、ある実験から生まれたんです」

 

「千冬姉、上代翔の戸籍が偽物だったってどうゆうことだよ……!」

 

「わたくしの料理が不味いですって!?」

 

「バカか……!? こいつは兵器なんて枠じゃ収まらない代物だぞッ!」

 

「くっ、こんなことが!? 一人でIS部隊を壊滅させる力などデータにはなかったのに!」

 

「今はじめてやったからね!」

 

「悪く思うな上代翔、世界のためだ」

 

「彼はまさか……?」

 

「逃亡者 上代翔ね……」

 

「あいつは本当は“居なかった”んだ」

 

「姉さんは何が目的でこんな……ッ!?」

 

「おれの夢? 自由に……え、具体的に? えー……?」

 

「私達亡国機業は世界のバランスの、平和のため篠ノ之束を消すわ」

 

「まさか上代……お前まともな人間ではないのか?」

 

「なにもかもどうでもいい。ただ私は織斑、織斑千冬に! 姉さんに復讐を!」

 

「おねーさんを舐めてもらっちゃ困るわ、もう逃がさないわよ!」

 

「とっとと死ね! クソガキィィィィィ!!」

 

「織斑マドカだって……? なんで千冬姉の顔を……ッ!?」

 

「嘘でしょ……こんなことって」

 

「あっ、あ…あ? う、腕がぁぁぁぁぁぁぁぁ!? ッッッッッア!?!?」

 

「上代翔ぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「例え世界が敵にまわろうとも束様と翔さんだけは! 世界を騙りなさい! ワールド・パージぃッ!」

 

「それがサード・シフトだと!?」

 

「そんな小細工でどうにかできると思われたとは……舐めるな餓鬼が」

 

「ぐぎっ!? ぎゃぎぐぎぁぁぁAAAAAAAAAAArrrr!!!!」

 

「……誰にも、私達の自由は奪わせ…な」

 

「お前は、お前だけは絶対に許さない!」

 

「おい、待て何をするつもりだ! 何だソレは!?」

 

 

 

 

 

 

「それじゃあバイバイ世界……もう消えろよ」

 

 

 ――そうして世界は終わりを迎える。

 

 

第2章√T(ルートティー)スタート。

 

 

 




現在頭のなかで大筋のできてる流れから台詞のみ抜いた予告編です。
今までのギャグ主体の話から流れが変わっていきます、第2の男性IS操縦者となりながらも世界から逃げた上代翔の結末とは……第2章√T始まります。

























     *      *
  *     +  うそです
     n ∧_∧ n
 + (ヨ(* ´∀`)E)
      Y     Y    *

嘘予告です、こんなノリで考えた台詞の小説書けない!
……この作品もノリで生まれたとかつっこんだら駄目です。
束さんに最後の台詞とか言わせてみたいけどどうやればギャグの流れで言わせれるか……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二章 世界からの逃亡者三人。
08.先輩からのお誘い


「これは……汚い。流石の翔くんもこれには苦笑い」

「ひどっ!?」

 

 どうも、現在束さんの散らかったラボにいます上代翔だよ。海岸で遭遇した内の一人が世界最強ブリュンヒルデ織斑千冬であるときには人生オワタと思ったが束さんがいてよかった、おだてる前に散々なこと言ったから心配だったがしっかりと連れて逃げてくれた。案外チョロ……純粋なのかもしれない。

 --世間で天災と呼ばれているらしい彼女について来たのもどうかと思うがブリュンヒルデの笑みの方が威圧的すぎて恐かったのだから仕方無い。

 

「お帰りなさいませ、束様。そちらの方は?」

「くーちゃんただいまー! 一人で寂しくなかったかい? 束さんは寂しかったよ! そうだハグハグしよう!」

 

 おやラボの奥から銀髪の女の子が……ボーデヴィッヒさんにそっくり……いや髪の色以外は違うか。この子はどっちかっていうとおっとりした感じだね、ボーデヴィッヒさんは寄らば切る去っても切るって感じだった。

 --くーちゃん成分補給中ー、と言って束さんが抱きついているが話を聞いてあげようよ。

 

「始めまして。上代かけ」

「この男の子はかーくんだよ! かーくんって呼んであげてね!」

「そうですか、かーくんさんよろしくお願いします」

「えー、かーくんさんって呼び方決定?」

「はい、束様の指示ですので」

「そっか。まあいいや、よろしくね……えーと」

 

 なんて呼ぶか……初対面でくーちゃんは流石になぁ、名前なんだろうか?

 

「クロエです。クロエ・クロニクル、クロエとお呼びください」

 

 クロエ・クロニクルか、凄い名前だ。外国ではこんなものなのだろうか?まあ日本だって負けてないくらい凄いのがあるけど。

 

「えー! くーちゃんはくーちゃんって呼んでもらおうよ!」

「ではそうお呼びください、かーくんさん」

「……わかったよ、よろしくくーちゃん。束さんアンタ暴君ですか」

「違うよ! あとかーくんは束さんのことは束先輩と呼びなさい!」

「先輩……何でです?」

「ふっふっふー、束さんが先輩だからだよ! 私も君も世界に指名手配されてるからね!」

 

 え…? マジで? 近所で指名手配されてたのは知ってるけど世界的に追われてるんですか? 束さんと同じく?

 世界に追われるなんていつの間にそんな人気になったんだおれ?

 

「束先輩ちょっとタンマ、あと少し聞きたいことが」

「いいよ! あとさっそく先輩呼びとは順応早いね! 先輩に聞きたいことがあったら聞くといいよ! 何が知りたい? 束さんのスリーサイズかい? それともくーちゃんの!? おおっと! かーくん後輩そいつぁトップシークレットだよ!」

「束パイセンうるさい」

「束様お静かに」

「はい」

 

 スリーサイズが聞けるなら是非とも聞きたいがそうじゃない。

 

「俺世界に追われてるんですか?」

「うん、束さんと一緒だね。キャッ、おそろ」

「何でですか?」

「……えーとかーくんは世界で2人しかいない人間だからだね」

「束先輩ボケた? おれは一人しかいないよ」

「束様しっかりしてください、かーくんさんは一人しかいません」

「そうじゃないよ! しかも二人とも何か息合ってるね!? ……はぁ、正確に言うと世界中の男の中で2人しかいない男性IS操縦者だからだね」

 

 えー世界はそんなことでおれを追ってるの……? ほんとたまたまタマタマついてるやつが二人操縦出来ただけなのに。絶対世界で他に一人しか出来ないことやってる珍しい人いるって、そっち追っかけようよ。男性操縦者だなんて2人いればまだまだ見つかるよ、ほら逃げたやつ追うよりもっと頑張って探そう世界! 応援するから!

 --まあ要するに逃亡者として先輩なのか。ISって結構前からある気するから結構な先輩である。

 

「そうですか。束先輩ちなみに他に動かせる男はいないんですかね?」

「んー残念ながら束さんのわかる限りではいないね、何でそんなこと聞くのかな?」

「いや居たら今もバレずに悠々暮らしてるソイツをスケープゴートにしたくて……」

「かーくん中々最低だね!」

 

 ですよね、逃亡続けてると性格がすれてきた気がしてならない。具体的にはあのとき。

 

「ラーメン屋で個人情報だだ漏れの貼り紙見てから性格がすれてきてる自覚はあります」

「ギクッ……」

「ギクッって何ですか? 何か心当たりが?」

「い、いやー始め2人目の男性操縦者が見つかったって聞いたときかーくんのこと気に入らなくて……片手間で警察に情報リークしちゃった!テヘペロ☆」

「束様……それは」

 

ああ、なんかこの人が世界で指名手配されてる理由がわかってきた。少なくとも片手間でやっていいことじゃないよ。

 

「まあいいですよ、どうせそのうちバレることが多い内容でしたし。束先輩が直接手を出してたこと考えれば比にならないですし」

「ひゅー、懐が広いねかーくん!」

「よかったですね束様。……そういえばかーくんさんはこれからどうなさるので?」

 

 ん? そーだねぇ、取り敢えず凌ぎであの場からから逃げたくて束さ……束先輩頼ったわけだけどこれからなんて考えてなかった。というか先を考えて行動したことあったかな?

 樹海に突撃して何かの施設に捕まりパスポートもないのに空港にいって密航船で海を渡ろうとして挙げ句の果てには初代ブリュンヒルデと天災に遭遇したけど……これは酷い。しかし……

 

「今までも今も先のこともは何も考えてないよ! くーちゃん!」

「何でちょっとドヤ顔で言ってるんですか……?」

 

これがおれ、行き当たりばったりの上代クオリティー。

とかいつも通りくだらないこと考えてたら、

 

「なら束さんとくーちゃんと一緒に世界から逃げないかい?」

 

 

 --それはまた今後を大きく変えそうなお誘いであった。

 

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

 

そのときのIS学園

 

「え! ちふ……織斑先生上代翔に会ったのか!?」

「ああ、中々おかしな奴だったぞ。何しろあの束が話していて疲れていたからな」

「姉さんが相手をするのに疲れる人間……それは人間なんですか?」

 

 千冬姉は臨海学校のときに一回上代翔に会っていたのか……ん? なんで千冬姉と遭遇してるのに捕まってないんだ?あと箒それはさすがに酷いぞ……

 

「その後上代は……束について逃げていったな。解剖なんてごめんだとか言いながら」

「解剖……? どういう意味ですか教官?」

「知らん、ただかなり真剣に言っていたようには見えたがな」

「捕まったら解剖されると思っているということでしょうか……?」

「えっ? 何それ、普通そんなこと思う?」

「ハハ、世にも珍しい男性操縦者だし何の後ろ楯もなければそう思うかも……?」

 

「え、じゃあ上代翔は捕まったら解剖されると思って逃げ続けてるのか……?」

 

 よ、予想外すぎる理由だ……! 解剖なんてされないからIS学園に来てくれよ!

 

 --やっぱ男1人は辛いんだ……

 




ここまで読んでくださった方に感謝!
会話文が圧倒的に増えてきました。まあ今までは一人のことが多かったですし会話多かったらある意味怖いんですが。
束さんとクロエ書けて満足…ずっと一人で逃げ続けると思ってた方にはすみません。束さんと会話させたかったんです…!


逃亡力 束さん>>(神様転生のチートでもつけりゃ越えられるかもしれない壁)>>上代翔


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

09.なんだ、ステルスって微妙だね

 私達と一緒に世界から逃げないか? 世界的に指名手配されているらしいこの人と? そんなの答えは決まってる。

 

 

「行きますとも! 束先輩、くーちゃんよろしく!」

 

 おれだって世界的に指名手配されてるらしいしね、寧ろ指名手配歴の長いこの人といた方が楽に逃げられそうだし一人より楽しそうである。

 

「やったね! 因みにかーくんは家事はできるかい?」

「無理」

「おふっ……」

「まあ掃除洗濯くらいならまあ人並みにできますが料理は……出来て2、3品だけしかつくれないで出来ないに等しいです」

 

 ウェイパー使って炒飯とかウェイパー使ってモヤシ炒めとか、ウェイパーは万能だよ。

 

「もう、それでもいいよ! 束さんは壊滅的に家事が出来ないからね!」

「すみません……私も掃除はともかくご飯は練習してるのですが中々上手くできず……」

「いやいや、おれもそんな出来ないか」

「いえ、私が料理をつくれば全て焦げて束様が掃除をすれば逆に散らかってしまうので……」

 

 あ、それよりは流石にできる。むしろ大体の人間ができる。それくらいなら喜んでやろう、流石に実験体になれとかなら、今すぐ逃げ出していたが居候として料理掃除を手伝うくらいなら軽いものだ。

 

「それではお茶でも入れてきます」

「あ、いってらっしゃいくーちゃん。それとかーくんはIS欲しくないかい?束印のつくったげないこともないよー?」

 

 ニヤニヤしながら質問してきたよこの先輩。まあ、

 

「取り敢えずいらないです」

「だよね、そろそろかーくんの返答が読めてきた気がするよ! 因みに何で?」

「え、使わないし……あんなデカいの持ってても邪魔ですし」

「ん? ISって専用機なら待機状態ってのがあって小物とかアクセサリーサイズくらいまで小さくなるよ? ついでにそれと拡張領域(バススロット)ってのを応用してこのラボもちっさくできるんだよ……かーくん知らないこと多いねぇ」

 

 あ、そうなのか……ナニそれ便利! タバえもんじゃんか。拡張領域(バススロット)とかもう名前からして四次元袋みたいな雰囲気出してるし。何処(どこ)でも扉とか欲しい、またつくれないか聞いてみよう。

 --あ、ISといえばいいたいことがあった。

 

「あ、そうだ束先輩ご愁傷さまです」

「え? 束さんはなんでいきなりご愁傷さまって言われてるの!? たまにかーくんは脈絡ないから束さんは驚いてばかりだよ! ……読めてきたとか勘違いだった!」

「脈絡ないとか束先輩には言われたくないよ」

「相変わらず突っ込みがセメントだね! 愛が足りないよ!」

「まあそんなこと置いといてちょっと海で戦闘してたIS見かけたときにそう思って……もともと宇宙用が競技用になって最終的に戦闘してるわけですしISもIS開発者もドンマイ! って感じで」

「アハハ、そうだね。そういう意味なら受け取っておくよ。まあ束さんもISの機能を知らしめるためミサイル切り落とさせるのはやり過ぎたしねー、ムキになりすぎちゃったよ」

「へー、そうなんですか。若気の至りですね」

 

 パフォーマンスのためにミサイルを切り落とさせるなんてムキになったからってやることではないけどね。

 

「逃走のために樹海に入るかーくんには言われたくないね、それに束さんはまだ若いよ!」

「あれ? 口に出てましたか。まあ若気の至りと徹夜のテンションのせいです、後者はノーコメントで」

「出てたよ……ノーコメントってなんだよ、まだピチピチなんだぞー」

「ピチピチ(笑)」

「ピチピチ かっこ開き わらい かっこ閉じ とかわざわざ口に出して言うなー!」

「あれ? 口に出てましたか?」

「思いっきり出てたよ! 寧ろ目を合わせながらこれ以上なくはっきりと話してたよ!」

 

あるぇーオカシイナーこころにもないことがくちからでちゃったなー……あれそもそも何の話してたかな。えーと……んー?

 

「ウェイパーって万能ですよね」

「だから何の話!?」

「いや何の話してたか忘れたんで取り敢えず適当にあたりつけてみました」

「素直になに話してたか聞こうよ……ISの使用方法について話してたよ」

「ああ、そうでしたそうでした。ミサイル切り落とさせるパフォーマンスでしたね、それ間違いなく戦闘用って言ってるようなもんですね」

「だよねー。そんなものお前みたいな小娘につくれるか! って言われてついついやっちゃったぜ」

「やっちゃったぜの規模がおかしい、そのままの意味で天災すぎる」

「それほどでもあるかな!まあ結果的にISの機能は証明できたけどそれは現在存在する兵器を上回る兵器って形になっちゃったんだけどね」

 

まあそうだよね、ミサイル切り落とすとか漫画の世界レベルだもん。それを生で見たら大人たちは兵器として捉えちゃうよね、夢もロマンもない話だけど。合体とか見てみたいものだ。

 

「でも海で戦闘してるIS見たとき心の中でバルス唱えたら1機IS落ちましたけどね」

「へ? ……えっ!? それどうい」

「あ、そういえばこのラボ小さくお手軽サイズに出来るって言ってたけど何でですか?」

「えっ、え?いや、それは……」

 

 なにをテンパっているのだろうかこの人は。

 --そう思ったところで何かブザーのような音が聞こえてきた。

 

 

「束様! ラボに2機のISが向かってきています!」

「こういうことがあるからだよ、IS委員会から各国に企業。更には犯罪組織にも追われてるからね」

「ふむ、納得。でなして見つかったの?」

「んー、かーくんと人参ロケットで帰ってきたとき目視で確認されちゃったかなー。あとバルスの件あとで詳しく」

「あ、そうなんですか。なんか申し訳ないです。ええまたいつでも話しますよ」

「いいよ、いつも買い物とか行ったあと見つかることあるし」

 

 それってえらく高頻度じゃない? ……まあメカウサミミとかが買い物してたら目立つよね、この人変装とかしなさそうだし。ゴーイングマイウェイって感じで。

 

「ささ! 二人とも外に出るよ! あとかーくんコレ持って!」

「なにコレ、モンスター球? ISゲットだぜ?」

「ナニそれ面白そう! でもそれは違うんだなー、束印のステルス玉だよ! その玉のボタンを押せば目視以外基本見つからなくなるから逃げるときにはそれを押してね! くーちゃんも持ったかい?」

「はい、いきましょう!」

 

おー流石逃亡者の先輩、これは便利すぎる。これがあれば今までも…あ、駄目だ。基本目視で見つかってる。やっぱ何処でも扉とかが欲しいな。

 

「タバえもん、何処でも扉だしてよ」

「そんなのないよ!? タバえもんってなに!?」

「束様! 急いで逃げないとISが来てしまいます!」

「わ、わかった! ああもう! いくよ、かーくん!」

「はいはーい、久々に走って逃げる気がするなぁ」

「私は走るのに自信がないのですが……」

「ほらほらくーちゃんは背負うよ! エスケープだよ!すたこらさっさー!」

「ちょ!? はやっ!」

 

 

 --こうして慌ただしくもコソコソした世界的指名手配たちの逃亡が始まった。




ここまで読んでくださった方に感謝です!
さてスーパーボッチ逃亡タイムが終わり色々常識とか何かがすっぽぬけた3人の逃亡が始まりました。

Twitter始めました。@Bambino_or
つぎ何しようかとか呟くかも? あとどれくらいで本編完結とか。見てやろう、コメントくれてやろうってかたは気軽によろしくです。

いつか他のルートも書いてみたい……亡国とか軽くキャラ崩壊させて


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10.厨二がきた

「はぁ! はぁっ! 嘘だ! こんなのってないよ!」

 

 信じられない! こんな、こんなことが! 離されないのがやっとだなんて! おれだって短い間とはいえ警察から走って逃げ続けてたのに、樹海で数日間生き残る体力だってあることが図らずもわかったのに!

 

 

 

「女の子一人背負った引き籠りのメカウサミミつけた不思議の国アリス系科学者に成長期の逃亡系男子が体力でも走力でも負けるなんてあり得ない! 現実を認めたくない!」

「また滅茶苦茶いうね! しかし束さんは細胞単位で天才なのだぁぁぁぁ!!」

「流石束様です! しかしかーくんさんよくついてこれてますね……」

「いっぱいいっぱいだよ! もう……も、もた……ない」

 

 細胞単位で天災だなんて本当に反則級……頭使ってメカつくって逃げてると思ったら肉体面でもブッ飛んでるのか! なんも整備されてない山の中走ってるってのに呼吸が微塵も乱れてないし! なんか普段引きこもってる女の人に負けるってショックだ……あ、ホント無理転けっ!?

 

「おっと! 危ないよ、かーくん!」

「ごふっ……はっはっ! はぁはぁ……転んだ男を難なく脇に拾い上げて抱えて走るだなんて、束先輩には敵わないですよ……あーしんどい」

「ハハハハ! ようやく束さんの凄さがわかったんだね!」

「いや、凄いのはもうわかってましたよ。ただ素直に凄いと思えないだけで」

「そうです! 束様は世界で一番凄いんですよ、ただ素直に認めにくいだけです」

「誉められてるのかな!? それ束さん誉められてるのかな! まったくかーくんはツンデレだなぁ!」

「はいはいツンデレツンデレ。べ、別に束先輩のことなんて駄目なとこあるだなんて思ってないんだからね!」

「お! ノリいいね、かーく……それでツンデレだったら束さんのこと駄目だと思ってるじゃん!?」

 

 いやだってそこいらの男子に家事力で負けるとか二十歳越えた女性としてどーですよ? さっきいたラボなんて床9割埋もれてましたよ? 俺の部屋だって流石に床は見えてたよ。

 

「ぐっ……いっくんがいれば凄い綺麗にしてくれそうなんだけどなー。束さんにはできないことだからかーくんに任せるよ」

「自分でするという選択肢はないのか、この先輩は」

「すみません、かーくんさん。私も手伝いますので」

「そうだね、取り敢えず落ち着けたらラボの床が見えるくらいには頑張ろう。束先輩はルンバみたいなのつくってくださいよ」

「そーゆうことなら任したまえ! いくらでもつくるさ!」

 

 ルンバあれば勝手にある程度綺麗になるでしょ。あ、ダメか……ルンバが動けるほど足場なかった……

 

「で束先輩や、今さらなんだけどラボに来たISはどこのですかね?」

「えーとアメリカの軍所属の機体だね、正確に言うと一般には知られていない地図にない基地 (イレイズド)ってとこの部隊の奴らだね」

「へーそうですか」

「聞いてきたわりに反応がドライで束さんは悲しいよ……」

「ネーミングセンスが厨二すぎてアメリカの未来を(うれ)いたんですよ」

 

 そんな急に右腕が疼いたり邪気眼の封印が解けそうになったり、何かと共鳴したりしそうなところにISを任せるなんてアメリカは終わってそうだよ。

 

「寧ろ終わりが始まってますねアメリカ」

「おっ、くーちゃん上手い。まあ金髪たちの将来なんてどーでもいいけどね。成功しようが野垂れ死のうがさ」

「関係ないですもんね、束先輩にもくーちゃんにも。ついでに俺にも。まあまかり間違ってその部隊と会うことがあればそこはかとなく恥ずかしい部隊名って伝えるくらいはしますかね」

 

 反応が気になる……素で首とか傾げられたらどうしよう?

 アメリカ人とかって日本のアニメとか好きだもんなぁ。日本でも厨二が普通とか思われてるかもしれん……

 

「それで束様、今度は何処へ向かっているのでしょうか?」

「んー取り敢えず今日はもう夜遅いし適当な街までいってホテルに泊まろうかな」

「え……捕まりませんか? そんな奇抜な格好してたら一発でお縄ですよ」

「大丈夫だよー、何かファンタとタコスって組織から一度会って話がしたいって言われてね。そのとき幾つかの施設を使ってもいいって言われてたんだよ」

 

 ま、ほんとは必要ないんだけど今回は使おうか、と束先輩は言った。ファンタとタコスって組織か……食い意地はってんのかな? 束先輩の科学力でファンタとタコスの大量生産をお願いしたいとか。

 

「はー、そうなんですか。束先輩他人に基本興味無さそうだけど会うんですか?」

「まーねー、ちょっと気になる子がいてね。調度いい機会だからいいかなと思って」

「ファンタとタコスですか……束様に大量生産でもお願いしたいとかでしょうか?」

 

 あ、くーちゃんと考えが被った。

 

「プッ……アハハハハ! そうだったらいいねぇ! 束さんの意表を突いたってことでつくったげるよ! まあ合法的な組織じゃないからあり得ないだろうけどね」

「そうなんですか?」

「そうだよ、逃亡中だったかーくんのことも狙ってたんじゃない? まあテレビ中継されたり警察に追われたりしてたから手を出しにくかったみたいだけど」

 

 おおう、ひょんなところに解剖の危険が潜んでる。ファンタとタコスとか変な名前の癖に危ない奴らなのか。道行く人にタコスを投げつけファンタをかけるテロとかやりかねん……

 

「食べ物を粗末にするなんて許すまじファンタとタコス!」

「え、急にどうされましたか? かーくんさん」

「いやファンタとタコスの行いが許せなくて……世の中には樹海に突撃して迷ってお腹を空かせる人間だっているのに」

「それがなんで食べ物を粗末にすることに繋がるのか束さんには理解できないよ……あと樹海に突撃してで迷うのはかーくんぐらいだよ」

 

 ですよね、他にいたら是非友達になりたいよ。

 

「ま、取り敢えずホテルへレッゴー!久々に綺麗な寝床で寝れるよ!やったねくーちゃん、かーくん!」

「寝床まで散らかってんですか……」

「私の寝床は片付けてますよ?」

 

 --取り敢えず落ち着けたら本当に掃除くらいしようかと思う。

 




ここまで読んでくださった方に感謝!
取り敢えずこの3人で突っ走る、IS学園どうしよう…ちょっと束さんたちのイベント順序とか変えるかもしれません。ほぼ確定事項として変わります、まあそんな影響ないですが…ナイヨー。
もうちょっと軽いノリにしたいけど難しい。これからもっと難しくなりそう…
Twitter @bambino_or


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11.ガッカリですよ

 ふひー、久々のシャワーで気分が落ち着く。海入ったから髪の毛はパサパサするわ身体はベタベタするわで気持ち悪かったんだよね。

 それにしても部屋毎にトイレと別で浴槽付の風呂があるとか間違いなくボンボンが泊まる部屋である。ファンタとタコスって組織は金持ちなのか。

 

 --あれから束先輩の小脇に抱えられたまま山を抜け街につきホテルへと来たのだ、小脇に抱えられたまま。

 メカウサミミつけた美人が銀髪の少女を背負い、少年を小脇に抱えたまま走っているのである、新しい都市伝説となりそう。

 しかし周りの視線を釘付けだったがすぐに馴れた、ホテルの受付では受付嬢にくーちゃんと一緒に手を振る余裕だってあった。何故か頬が引きつってたてた、解せぬ。

 

そんなこんなで現状シャワーをようやく浴びて新しいの 服に着替えた上代翔……なんか気分はもうニュー上代って感じだよ。風呂のありがたみがわかった、普段当たり前だったものがこういうときにふとありがたみがわかるなんて逃亡生活も悪くないね……いや良い訳でもないけど。

 

 

 

「おっ、かーくん上がったのかい!」

「はい、お先でした。久しぶりのシャワーでスッキリしましたね」

「かーくんさんさっぱりされましたね、さっきまではボサボサの髪に磯の香りを漂わせ酷い有り様でしたが見違えました!」

「ぐふぉ! やっぱ見れたもんじゃない身なりだったよね……自覚はあったけどくーちゃんに言われるとなんかダメージが入るよ」

「かーくん、くーちゃんには悪気はないんだよ。ふと心を抉っていくだけで……」

「ですね、なんか純粋に悪気無く言ってるのがわかる分余計くるものがありますが」

「どうかしましたか?」

「いや何でもないよ、くーちゃん」

 

 さて眠いからそろそろ寝たいんだけど束先輩とくーちゃんはどうするのだろうか?

 話すこととかあるなら起きておくのだが……とベッドに入りながら聞いてみる。

 

「んー特にないよ。束さんもお風呂入ったら今日はもう寝るつもりだしね! というかベッドに入りながら聞くとか寝る気満々じゃんか!」

「そうですね、束様も臭いますし入りましょう」

「ちょ!? 仮にも乙女な束さんなんだから臭うって言い方は傷つくよ!」

「プッ、乙女……」

「あ、申し訳ありません束様……ただやはり磯の香りが……」

「かー くん乙女って部分に反応して笑ったな!? いーもん! くーちゃん一緒にお風呂入るよ!」

「……」

「はい、束様」

「ふっふっふ、かーくん羨ましいからって覗かないでね!」

「…………」

「あ、あれ? かーくん?」

 

 ………………zzZ

 

「束様、既に寝ておられます」

「なんなんだよ、もー!」

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 ……ん、久々に気持ちよく寝れた。ベッドがフカフカで気持ちよかったし。昨日は気にしていなかったがこのベッドもフカフカさ加減的にかなりいいものではないだろう、この部屋はファーストクラスってやつではなかろうか。

 やはりボンボンの金持ちが泊まる部屋のようだ。

そしてそんな部屋を用意される束先輩……ファンタとタコス、長いしめんどくさいしファンタコスでいいや。ファンタコスはそんなに大量生産できる機械を束先輩につくってほしいのだろうか?

 

 --そんな下らないことを考えつつゆったり意識を覚醒させ目を開くと顔の間近に油性ペンをもっている束先輩と目が合いました。

 ……横を向けばオロオロしてるくーちゃん、和む。前を向けば何をしようとしてたか丸わかりな油性ペンを持った束先輩。

 

 

「て、テヘペロ☆」

「…………………………はぁ」

「た、ため息!?」

「おはようくーちゃんよく寝れた? 朝ごはんはまだ? よし、まだなら一緒に食べに行こう!」

「え、あのまだですが束様も……」

「こらこらくーちゃん朝ごはんはしっかり食べないと一日持たないぞー、朝ごはん抜いた日に追われたときにそれを実感したね。さー、くーちゃん朝ごはんだよ! きっとこんな綺麗なホテルなんだから豪華な朝ごはんだよ、たのしみだね!」

「いえ、ですから……はい」

「さぁ行こうか! 二人で!」

「すみませんでしたぁ! かーくん許して! 束さんも連れてって! 無視は一番辛いよ!?」

 

 それはかつてないほどとても(いさぎよ)く綺麗な土下座でしたとくーちゃんは後に語る。

 

「いえ、許すもなにも怒ってませんよ。ただ世界的に天災って呼ばれてる人がやることがアレかと思うとガッカリしただけで……やるなら目が覚めたら束先輩が6人になってるくらいやると思ってたのに……!」

「そこなの!? というか自分で言うのもなんだけど束さんが6人もいたら世界が滅びるよ? やっていいならやれないことないけど。いいのかな?いいのかなー?」

「おれが間違ってましたぁ! やっぱやめてください!」

 

 それは見たこともないくらいの手のひら返しをした堂々とした土下座でしたとくーちゃんは後に語る。

 

「ふはははは! わかればいいのさ! さあくーちゃん朝ごはんを食べに行こうか! 二人で!」

「いってらっしゃーい、こっちはルームサービスで朝ごはん食べときますねー」

「そこはノろうよ!」

「いや、このサンドイッチセット美味しそうなんで…」

「あ、私もそれを食べてみたいですね」

「じゃあ束さんもそれにする!」

「悪いな束先輩、このサンドイッチ2人用なんだ!」

「どんなサンドイッチ!?助けてクロえもーん!」

「え! あの……皆で食べましょう?」

 

 

 

 

 --この後結局3人ともルームサービスのサンドイッチを食べましたとさ。

 




ここまで読んでくださった方に謝謝!
ただ駄弁ってる回。減る地の文増える会話……!亡国出さないと……亡国とかまともな出し方できない気がします。できません。

Twitter @bambino_or


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12.IS合体!

「それじゃあ、いってきます!かーくんくーちゃん、お留守番よろしくね!」

「待って、説明! 何処行くかとか説明を! 人のこと言えないくらい束先輩も脈絡無く突飛な行動とるよね!?」

「あれ? 言ってなかった?」

「はい、私も聞いた覚えがありません」

 

 ホテルに来てから数日……そのままホテルで過ごしてました。次何処にラボ置こうかーとか初心に戻って日本にしようかなとか話してたらいつの間にやら結構日数が経ってたね。

 

 いいじゃない快適だもの かける。

 

「で何処にいくんですか?」

「いやー昨日ファンタとタコスから会えないかって言われたのさ、それでちょっと出てくるよ」

「ああ、ファンタコスですか」

「ファンタコス……程よい略しかたですね」

「そうそうファンタコス! で晩御飯は向こうで出すみたいだからくーちゃんたちは適当に食べといてね! はいその場所の地図! この店だってさ!」

「あ、これテレビで紹介してた店ですね。美味しいらしいですよ? 多分」

「はい、晩御飯はかーくんさんと済ませておきます束様」

「それじゃあ改めていってきます!」

「いってらしゃい、お土産期待してます」

「いってらっしゃいませ、束様」

「おー! 期待しといてね! 束さんが6人になってるかも!」

「ヤメテ!?」

 

 そう不吉なことを言い残して束先輩は出ていった……いや、いい始めたのおれだけどね。考え直すと束先輩×6とか恐ろしすぎて冷や汗が止まらない。

 それにしてもくーちゃんと二人留守番かぁ……

 

「こうしてくーちゃんと二人きりになるのって初だね」

「そう言われればそうですね……束様が磯の香りとともに連れて帰ってきてからある程度経ちましたがこうして二人きりになるのは初ですね。何をして待ちましょうか?」

「そうだなー、束先輩がISが認められなくてミサイル撃っちゃったとか言ってたけど結局どこに撃ったんだろ?」

「え? 知らないんですか? 白騎士事件って言われてるんですけど日本に向けて2000発ほどのミサイルが撃たれたんです」

「束先輩によってね」

「そうです。それを切り捨て去ったのが白騎士、一番最初のISですね、束様に聞いたところによると乗っていたのは織斑千冬だと」

「なんだって……!?」

 

 あの二人本当に規格外だよね。そうです束様は素晴らしいです。とかグデーと話してるとふと気になったことが。あの引きこもり天災科学者なイメージのある束先輩だがどうやってくーちゃんは知り合ったのだろう?

 

 

「くーちゃんって束先輩とはどこで知り合ったの?」

「そうですね……それを言うにはまず言っておくことが。私は人の子ではありません、ある実験から生まれたんです」

「ん…? ん!?」

「そのとある研究施設である実験の試験管ベイビーの失敗作として生まれたんですが捨てられてるところを束様に拾ってもらいましたね、実験の名残で目の色が黒と金なんです」

 

 そう言いながら目を開いて見せてくれた。自分で言う黒目が金、白目が黒だった。金色のとこがきれいでしたマル

 

「あれ? ジャブのつもりで放った会話が一撃KOで返ってきた、どうしようおれの語彙じゃ返せない」

「そして死にかけていたので束様の治療でISコアと合体しました」

「さらに追撃…ん? ISと合体!? 何ソレなんてロマン!?」

「あなたと合体したいです!」

「ISアイエス合体! GO! インフィニットストラトス!」

「IS合体失敗! ISコア分離します!」

「失敗したの!?」

「してませんよ」

「だよね……くーちゃんアニメの台詞とか知ってるの?」

「はい、束様が出掛けたりしているときにはネットやアニメを見てましたので。さすがに全部見てる時間はなかなかないので主に台詞だけ覚えてるものが多いですが」

 

 シリアスで重要そうな話題っぽかったけどそんなことなかったみたいだ!

 それにくーちゃんがネットか……3チャンネルとか見て名言とか拾ってそうなイメージが浮かぶ。

 

「それにしてもかーくんさんのリアクションが思ったより薄いですね、もっと驚くなり引くなりするかと思いましたが」

「そりゃあ驚きはしたけどくーちゃんはさらっと言うしムキになって自国に撃たれた2000発ほどミサイル切り落とさせた人側にいるとそのくらいどうってことないと思うんだよね」

「そしてそのミサイル全部切り落とすものをつくった人がいますしね……なんか私が霞みますね」

 

 駄目だよくーちゃんその二人には何があっても勝てないよ、寧ろくーちゃんが癇癪で撃たれたミサイル切り落とすようなことがあると束先輩が一番へこみそうだ。

 

「くーちゃんのその目は何か特殊能力とかないの? ものの死の線が見えるとか命令を順守させるとか」

あれば勝てずとも少しは対抗できるかも

「残念ながら……未来視くらいしか」

「え!? 未来視できるの? いつも目を閉じてたのは目を開いてると常に未来が見えるからとかそういうこと!?」

「冗談ですよ、多少演算能力が向上しますが……束様が側におられるので実感がわきませんしやはり霞みますね」

 

冗談か、だよね! 演算能力の向上か、確かに束先輩が側にいると実感が……

 

「束先輩が側にいたら何でも霞まない?」

「そういえばそうですね……束様しか自分と比べる人がいなかったのですが束様と比べること自体無謀でしたね」

「頭も身体もオーバースペックの天災だしね」

 

 このホテルに来るまでにそれを実感した、体力には自信あったつもりだけど小脇に抱えて悠々と走られたし。

 

「でも案外子供っぽいとこもあるんだよね」

「そうでしょうか……?」

「自分の発明が認められなくて癇癪起こすとことか」

「その結果ミサイルの雨を切り落としたんですけどね」

「あとは家事が壊滅的なとことか」

「……それは確かにそうですね、私が束様よりできることといえばそれですし。因みに織斑千冬も家事が壊滅的みたいです、弟にやってもらってるとか」

 

 世界レベルの天才たちは家事ができない呪いでもかかってるのだろうか?

 

「まあ誰にでも苦手なことはあるんだね、そろそろ晩御飯食べいこうか?」

「そうですね……束様が行かれているところへ行ってみましょうか?」

「おーそうしようか、ちょうど束先輩も地図置いていってるし」

「束様のことです、来てほしかったのかもしれませんよ?」

「そうかもね。店の場所に赤マルして矢印で指して『ココ!』って書いてあるし」

「では、少しはやいですけど行きましょうか」

 

 今日はくーちゃんと色々話せたので少し仲良くなれたと思う。

 

 --晩御飯には少し早いが店までの移動時間も考えてもう出ることにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 所変わってファンタとタコスならぬ亡国機業(ファントムタスク)のオータムさん

 

 

「くそっ、何でわたしがわざわざ子供二人を人質にするために来なけりゃならねーんだ」

 

 そりゃスコールの言う通り人質の有効性もわかるがそれならそれで他のやつ……Mにでも任せればいいのに。

 

 --そんなことを思いながら篠ノ之束の連れがいる部屋の前まできたオータムは……憂さ晴らしもかねてIS《アラクネ》でドアを吹き飛ばして中へと入っていった。

 

「オラッ!ガキども大人しく……あれ?」

 

 --既にもぬけの殻となった部屋へと。

 

「……やべぇ! スコールに怒られる! 何処だ! どこにいる!?」

 

 

 ただでさえ憂さ晴らしでホテルのドアを吹き飛ばしてしまったのだ。

 

 ――スコールには抵抗されたとか言い訳しようとしてたのに子供が二人ともいないのでオータムの焦燥感はマッハでトップ高となったのであった。




ここまで読んでくださった方ありがとうございます!
ついに亡国参戦、ごめんオータム。
一回シリアルなの書いたんですが駄目です肌に合わないっていうかもたない。自分には力不足でした、アイツには役不足でした。この作品にシリアルがくることはあるのか?
なのでくーちゃんの過去はさらっと。ネタ台詞適当につなげて。
束さんと亡国が会う時期が早まりました、たぶん今は原作中の夏休み…?数年読んでないし次IS学園でなになったかな…襲撃あることはわかるんだけど…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

13.ファンタとタコス

 はっ…!? 何か危険なものをスルーできた気がする、よくわからないがそんな気がするのだから仕方ない。

 

「どうかしましたか?怪訝ななんとも言えない顔をしてますよ」

「顔じゃなくて表情と言おうよくーちゃん」

「失礼しました」

「それにしてもくーちゃんのISってどんなの?」

「唐突ですね。私のIS、名前は黒鍵と言うんですが簡単に言うと幻覚系特化です」

「へーそうなのか、逃げるのに便利そうだよね」

「ええ、実際何度か使いま」

 

 した、とくーちゃんが言いきろうとしたそのときだった。茶髪ロングなお姉さんが全力で走りながらこちらへと向かって来た。

 

「そこの子供二人待てぇぇ! 銀髪と黒髪の二人だ!」

 

これは逃亡フラグである、待てと言われて待つやつはいないと習わなかったのであろうか?おれは束先輩に習いました。

 

 追っていいのは逃げられる覚悟があるやつだけだ!

 

「くーちゃん逃げようか!」

「はい、ちょうどよいです。私と黒鍵の力お見せしましょう!」

「いや、逃げようか!」

「大丈夫です、追跡を妨害するだけですので!」

 

 おお逃げたいけどここまで張りきってるくーちゃんは始めてだ! もしや黒鍵で自分達を捕まえた幻覚でも見せるのか!

 と思っていたのだが

 

 --ゴキッ! と嫌な音をたてて茶髪の女の人の足の小指辺りが消火栓に当たった。

 

「ぐぁぁぁぁ!? 足が、足の小指がぁぁぁ!」

「ふっ、ワールド・パージ、完了。これが私と黒鍵の力……ワールド・パージです!」

「うわぁ……」

「本人は普通に追ってるつもりになりますがそれは錯覚! 常に全力で足の小指を物にぶつけにいっているのです!」

 

 ぐっと握りこぶしをつくり力説するくーちゃん。やってることは地味だがかなり痛そうだ、あの人蹲って足を抑えてるよ。ワールド・パージ……名に恥じぬ恐ろしさのようである……! これが束先輩と共に逃げてきたくーちゃんとそのIS《黒鍵》の実力か!

 

「さ、かーくんさん行きましょうか!」

「そうだね、くーちゃん。くーちゃんのお陰でだいぶ楽に逃げれそうだ」

「あ、まっ待て! 待ってくれ!」

 

  --ゴキッ!

 

「いったぁぁぁぁ!?」

「うん、地味だけどえげつないね」

「まあ、ある程度私が離れれば効果はきれるようしてますし早く行きましょうか」

 

 そうしよう、あの人のためにも。そのうち足の小指が折れそうである、もう涙目になってるし見てられない。

まあ、流石に痛そうなのでもうじっとしといてほしいが。

 

 --ゴキッ!

「っっっっっっっっ~!?」

 

 あ、遂に地面に転げた。

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

「束さんはお腹すいたよー、まだできないのかな?」

「もう少々お待ち下さい篠ノ之束博士」

 

 むー、お腹すいたー。くーちゃんもかーくんも全然来ないし……せっかく目立つ印つけて地図渡していったのになー。ああ、くーちゃん成分が枯渇する。

 

「おじゃましーす、席空いてま……あら? ガラガラ」

「失礼します。かーくんさん失礼ですよ、例えこの店が不人気でこの時間帯にガラガラだとしても声に出しては失礼です」

「くーちゃんもちょっと声のトーン下げようね」

 

 キターーーーー!!

 

「くぅぅぅぅぅちゃぁぁぁぁん! かぁぁぁぁくぅぅぅぅん!」

「こぺ!?」

「わふっ!?」

 

 会いたかったよ! 知らない金髪ウェーブとご飯とか既に後悔し始めてたんだよ! 来てくれて嬉しいよ!

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

「こぺ!?」

 

 店内に入ると視界にうつった束先輩(ミサイル)が飛んできた。首、首決まってるから!

 隣のくーちゃんは束先輩のクッションに埋もれているのにえらい差である。

 

「おー! くーちゃんかーくん来てくれたのかい! せっかく地図まで置いていったのに中々来ないから来てくれないかと思ったよー! さあさあ、入って入って!」

 

「離して! 首決まってます! 息が……こひゅーこひゅー」

「束様苦しいので一度離していただけると嬉しいです」

「むー仕方ないなー」

 

 意識が飛びかけた。というかくーちゃんの言う通りホントに来てほしかったみたいだ。始めから連れていってくれたらよかったのに。

 

「あ、あの束様。それはともかく追手です! 茶髪ロングな女の人が急に追いかけてきました!」

「な、なんだってー!? うちの可愛いくーちゃんに何をしようというのだ!」

「あ、あの……その茶髪って」

 

 おや?おいてけぼりをくらっていた金髪の女性が顔をひきつらせつつ話に入ろうとしている。そういえば自己紹介もまだだったね。

 --そう思い自己紹介をしようとしたところ

 

「スコールぅー! 子供二人ともに逃げられたぁぁ! 私も追いかけようとしたのに進もうとするたびに足の小指に物がぶつかって……!」

「ちょ!? オータム今それいったらマズッ!?」

 

 追手の茶髪……オータムというらしい女性が店内に入ってきて

 

「あ、束様あの人です」

「うちのくーちゃんかーくんになにする気だぁ! とうっ!!」

「え……? もるすこふぁ!?」

「オータムぅ!?」

 

 くーちゃんがそう報告したところ再び束先輩がミサイルと化してオータムさんのどてっ腹にへとドロップキックをかました。

 店内に入ってすぐに店外にドロップアウトしたオータムさんであった。

 束先輩からオータムさんまで結構離れていたのに一息に跳んでいったなぁ、スコールさんが外までオータムさんを拾いにいった。おー生きてたみたいだ、よかったよかった。

 

「束様落ち着いてください、出会い頭のドロップキックは挨拶にしては過激すぎます」

「えー」

「オータムさん綺麗に飛んでいきましたよ。ほら束先輩、一緒に行ってあげますし素直に謝りましょう?」

「いやいや! 二人とも追いかけられてたんだよね!?

 

 そんなことを話してる間にスコールさんオータムさんが戻ってきて逆に謝られた。

 なんでもISをつくってもらいたくて交換材料としてとしておれとくーちゃんを捕まえようとしたそうだ。

 まあ被害なかったし、強いていえばオータムさんの足の小指とお腹に被害あっただけだしいいけどね。

 

 

「本当にすみませんでした……それで篠ノ之束博士つくってはいただけないでしょうか?」

「えーファンタとタコス大量生産する機械ならともかくなー」

「え! タコス作ってくれるのか!?」

「え? オータム!? なんであなたタコスに食いついてるの!?」

 

 何故かオータムさんがタコスに食いついたと思ったら

 

「ファンタ大量生産だと!? 是非頼む!」

(エム)ぅ! あなた指示あるまで出たらダメだから!?」

 

 店の奥からファンタに食いついた織斑さんの顔した少女が飛び出してきた。ふむ、とてもカオスと化してきた。

 

 

 --ファンタコスはとても楽しそうな組織でした。

 




ここまで読んでくださった方に感謝です!
いやーちゃんと亡国機業出せてよかったよかった。
スコールの胃がもちそうにないオータムとMとなってしまった……やる気満々でしたが。始めにここのくだりでシリアル()書いてしまって

私は……もう!シリアル()なんて書きたくなかったから……!
だから……ギャグに走りたいんです!

Twitter @Bambino_or


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

14.そんなことより晩御飯

「ファッンタ! ファッンタ!」

「タコッス! タコッス!」

「ちょ! Mもオータムも落ち着いて! ISつくってもらうのが目的だから!?」

「バカかスコール! ファンタとISどっちが重要だと思ってる!?」

「ISよっ!!」

「え? タコスじゃないのかよ?」

「オータムまで!?」

 

 ふむ、会って数分だけどスコールさんの胃にマッハで負担がかかってるのがわかる。

 

「取り敢えずファンタとタコスの大量生産機だけでもつくったげましょうよ」

「そうだね、こんな形でくーちゃんの予想が当たるとは束さんびっくりだよ」

「それにしてもMさんは織斑千冬に似ていますね」

 

 --そうくーちゃんがいった瞬間Mさんの空気が変わった、怒気が叩きつけられたかのように錯覚するほどだった……のだがMさんは怒鳴りそうになったのをグッと止めた。

 くっ、ここで怒るとファンタが……とか聞こえる、あんな怒気放ったのにファンタと天秤にかけてファンタが勝つのか。

 

「すまないがあの人と似ていることには触れないでくれ、あの人とは捨てられ生き別れた姉妹だ。あとMはコードネームの様なものだ、マドカと呼んでくれ」

「あれ? マドカさん今さらっと関係性について言いましたよね? あ、私はクロエとお呼びください」

「だから捨てられた恨みを晴らすため復讐をすると決めたんだ!」

「まどっちボロボロ関係性とちーちゃんに対する思いぶちまけてるよ」

「因みにマドッチはあの世界最強(ブリュンヒルデ)にどう復讐するつもりなの?」

 

 あの人に復讐とか織斑千冬と束先輩を抜いた世界を敵にまわすより難易度が高いのではないだろうか……?

 なにより目が泳いでるぞマドッチ、もしや考えてなかったとかじゃないのだろうか。

 

「え、えっとだな……靴に画鋲を入れたり不幸の手紙送ったりだな」

「微笑ましいレベル! でも画鋲があの人に刺さんのかな? 手紙は多分気にも止めないよ」

「じゃ、じゃあ恥ずかしい写真を撮ってばらまく!」

「盗撮に気づかれてミンチにされそう」

「ならどうしろと言うのだ!?」

「これで案打ち止めとか発想力無さすぎでしょ!?」

「復讐はしたかったが内容なんて考えたことなかったから……」

「マドカさんアホの子……根がいい子すぎるのでしょう、取り敢えずなにか間接的に復讐してはどうでしょうか?」

 

 間接的にか……マドッチなにか思い付く? ファンタ飲めなくするとかか? それマドッチ限定だわ。などと話してると束先輩がふと口をただしてきた。

 

「それじゃあちーちゃんの弟のいっくんにちょっかいを出してみたら? まどっちレベルの考えの復讐ならいっくんも大丈夫だろうし、出会い頭に銃で撃ったりしない限りさ」

「そ、そんなとこするか! 下手したら死んでしまうぞ!?」

「うん、束さんはまどっちはそのままでいてほしいなー。そうだ、まどっちにならISつくったげてもいいよ?」

「そんなことよりファンタだ!」

「ちょっとMシャラップ! 篠ノ之束博士お願いします、是非お願いします」

 

 スコールさんが必死である、マドッチを押し退けて束先輩に押しよっている。

 

「それじゃあ織斑一夏くんに嫌がらせしようか、とばっちりだが最後には謝って許してもらおう」

「そうだな……どうしようか、出会い頭に一撃なにか見舞うのはいいと思うのだが」

「臭いもの叩きつけて逃げるとかどうだろうか?」

「納豆か?」

「いや、くさやとかどうかな?」

 

 そうしてマドッチと臭いものは何がいいか話してるとくーちゃんが

 それならシュールストレミングはどうでしょうかといってきた。

 

「そ、それは……」

「流石くーちゃんおれたちの考えを軽く越えていくね」

「それじゃあラボを日本に移したら決行しようか、金髪ウェーブから聞いたけどまどっちたちも活動を日本に移すんでしょ?」

「あ、ああ。いや、決行って手伝って貰えるのか?」

「勿論! かーくんがね!」

 

 おれですか!? だって叩きつけたあとは逃げるじゃん、ならかーくんじゃん? え、えー。ってやり取りをしたあと無事晩御飯にありついた。

 そう忘れかけていたが晩御飯を食べに来ていたのだ、マドッチたちと一緒に食べたけど美味しかったです。

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 その後マドッチのISをどんなのにするかなど話したあとホテルへと戻った。……ファンタ限定ドリンクバーとかつけてどうするのだろうか?左手にはタコスをってなんだ?

 つぎのラボを日本の何処へ設置するかも決まったので明日にはホテルを出るみたいだ、少し名残惜しくもあるが日本も久しぶりになるので懐かしい。

 

「春休みにはこんなことになるとは思ってなかった……誰だよIS動かし始めた男は」

「いっくんだよ……後悔してるのかな今の生活を?」

「いえ、全然? いきなり何言うんですか束先輩は?」

「えー……なんかしんみりしたこと言ったのはかーくんじゃん」

 

 思ってなかっただけである、実際今の生活は楽しいのでこれはこれでいいと思っている。

 ただ日本が懐かしくなったのだ。味噌汁のみたいな……あ、つくれる人いない……練習すれば作れるかな?

 

「まあ束さんもくーちゃん以外の人と一緒に行動するとは思わなかったよ」

「発明力はあっても発想力が貧相だったんですか?」

「違うよ!? いやー束さんは基本他人に興味ないからね」

「ああそういうことですか、ならまあ束先輩に興味持ってもらえてよかったですよ……そうじゃないと今ごろ織斑千冬さんに捕まってました」

「あーそうだねぇ、流石にちーちゃんからかーくんが一人で逃げ切るのは無理だね」

 

 --でもかーくんが10人くらいいれば逃げ切れるかーくんも何人かいるかも。やめてくださいなんかキモいです。

 そんなどうでもいいことを話ながらホテルを出る準備をした。

 




ここまで読んでくださった方感謝です!
亡国のシリアスなマドカは犠牲になったのだ…ここのマドカなんでこんなにファンタ好きなのだろうか
あと原作に追い付きそうと思って悩んでいたがそうでもなかった、IS学園は今夏休み中です。きっと多分恐らく。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

15.汚部屋は消毒ぅ!

 帰国、戻って参りました日本。でもって何処かわからない。

 例のごとく今回は光学迷彩が装備されているという人参型ロケットに乗って来たのだが着陸したところが山のなかなので何県かすらわからない。ただロケットに乗ってる間はくーちゃんが楽しそうだった、何でも乗るのは始めてだったそうな。

 

 

「で束先輩、マドッチのISつくるのもいいけど先ずは片付けようよ」

「そうです束様、ホテル生活が長かったせいかラボがゴミ置き場に見えます」

「ぐはっ。た、確かに汚いね……でもどうせまた散らかるんだし……」

「そういや前に寝床まで汚いみたいなこと言ってましたよね」

「束様、このラボの名前が我輩は猫である~名前はまだない~ じゃなくて、 此処はゴミ屋敷である~寝床はもうない~になりますよ」

「ふぐっ……わ、わかったよ、やるよ!ただ話ながらでもやろーよ、かーくんくーちゃん」

 

 いいですよ。それで束先輩が掃除をやろうとするなら上々である。

 

 

 

 

「それでかーくん前々から聞きたかったんだけどさ。前にバルスって言ったらISが一機落ちたっていってたけどどういうことなの」

「いや束先輩知ってると思いますけど密航しようとしてたらISの戦闘に巻き込まれかけたんですよ、そのとき心のなかでバルスっていったら一機落ちたってだけですよ」

「それいっくんなんだよ……」

「え……ホントですか?お、おれのせいですかね……?」

「いや銀の福音ってISに落とされたんだけど……一応ちーちゃんには言わないようにしよっか」

「そうします」

 

 こんなこと知れたら叩き切られるかもしれない、束先輩曰く織斑千冬はブラコンみたいだし。

 

「流石かーくんさん、やはりどこか常識から外れてるだけあります」

「え? おれそんなイメージなの?」

「はい、男でISを動かせた時点でうかれて喜ぶくらいで普通と思うんですがかーくんさんは……」

「いきなりその場からエスケープしてるからねぇ」

「逃げちゃ駄目だ……逃げちゃ駄目だ……逃げちゃ駄目だ!」

「いやかーくん逃げてんじゃんか!」

「あなたは捕まえれないわ、おれは逃げるもの」

「それちーちゃんに言ってみなよ、逃げれたら束さんはかーくんを崇めてもいいよ」

「すみません無理です」

「行きなさいかーくんさん! 何のためでもない、笑いをとるために!」

「くーちゃんは笑いのためおれに死ねと申すか……!」

 

 くーちゃんからの予想外の攻撃を受けたのであった。

 ほら束先輩がくーちゃんがネット見るのほったらかしにするときがあるからくーちゃんがネタにまみれてく……

 

「ま、そんなことがあればまた束先輩を頼るから大丈夫大丈夫」

「清々しいほどの他力本願だ……」

「安心してください。最悪束先輩を囮にしてくーちゃんつれて逃げますから」

「それの何処に安心要素があるのさ!? ……まあ生身でちーちゃんと渡り合えるのは束さんだけだし逆もまた然りだけど」

「束様も織斑千冬もまさに次元が違いますね」

 

 次元といえば四次元袋である。タバえもんは何処でも扉とかつくれないのであろうか?

 

「んー、つくってみようとしたんだけど空間を短縮するってのが難しくてねー、生物を生きたまま通すとこが特にね。途中でやめちゃった。同じ秘密ツールの空気ガンはつくれたけど面白くないし使い道ないから捨てちゃった」

「え! 空気ガンとか欲しかった……」

「因みに中国に拾われて第三世代に取り付けられてるよ」

「あ、やっぱりいらないです」

「人が撃つと撃った人間が飛んでいってしまいそうですね」

「飛ぶどころかバラバラに(はじ)けそう……」

「これが束さんの全力全壊!」

「やめてください、束先輩の全力とか地球がヤバいです」

「軽く星を壊しそうですね……」

 

 まったくである。なんかメカっぽい杖でぶっといピンクのビーム撃ってる束先輩が思い付いたのは何故だろうか?

 

「まあそうだよね、だって束さんはIS一機くらい生身でも勝てるし」

「え?」

「本当ですかーくんさん、前に追っ手のISを生身で解体してました」

「ISのバリアー的なのはどうしたですか、頑張れよバリアー」

「ふっふっふ、束さんの攻撃は防御貫通ダイレクトアタックなのだ!」

 そもそも束さんが発明したものに束さんが勝てないわけないじゃんか。束先輩はそういったがそれはおかしいよ! 納得しかけたけどおれが銃開発しても勝てないし……

 

「ISに! 乗っていいのは解体(バラ)される覚悟のあるやつだけなのさ!」

「それはおかしい」

「まあ無差別には解体なんてしないよ! ただくーちゃんに銃を向けたから解体して蹴飛ばしただけだよ」

「束先輩よくやった!!」

 

 それは仕方ない、恐らくオータムさんより飛んでいったであろう操縦者には汚い花火だ……とかお星さまになったんだよとかいいたかった。くーちゃんに銃を向けるとは命知らずな……

 

「それにしても束先輩くらいの天災なら世界から逃げなくても征服してしまえそうですけど何か理由あるんですか?」

「世界征服出来なくはないけどちーちゃんに勝てるか……そこが問題なんだよ。かーくん任せた、その間に地球征服しとくよ」

「それならおれが世界征服しますんで束先輩が相手してください」

「そこまでちーちゃんの相手したくないのか……って冗談はさておきズバリ宇宙に行きたいんだよ!」

「ああ、ISも元々そのためでしたね」

「そーだよ! だからそこが私にとってのISをつくってから変わらない目標なのさ!」

 

 まあ、そのうち実現させたいよね。と束先輩は楽しそうに言う……片付けの手が止まってる、動かしてください。

しかし……

 

 

 

 ――束先輩が宇宙に行くとしたらそのときには連れていってもらえるだろうか?

 

 

 似合わず少ししんみりしてしまったのであった。

 




ここまで読んでくださった方に感謝!
最後ちょっとらしくなくなってしまった…
あとがき…なに書くか、取り敢えず先日書き溜めたうち一話が消えテンションダウン。
IFの前に消えた本編を探せ!…いや記憶をたどって書き直すんですけど


片手間で何となく本編分岐で嘘予告のIF書きましたが…本編からの分岐でIF4話で終わらすつもりで3話まで書きましたが……鼻くそです。どうしよ?
これは……読みたい人いたら取り敢えず4話までかいてみようと思います。再度言います、鼻くそです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

16.その色はない。

 現在とある施設……と思い込んでいたIS学園へと来ています。そして久々に逃亡! 水色がやってくる……!

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

「かーくん今日文化祭にいってきてほしいんだよ。はいこれ撮影用サングラス、変装も兼ねてるよヤッタネ! 箒ちゃんのクラス喫茶店らしいから、1-1だからよろしくね!」

 

 と寝起きに言われるがままに勢いに流されてきてしまったが……ここおれ拉致された施設じゃん!?

 学園が子供を拉致するなんて……世も末だと思う。

 しかしモノレールに乗った時点で気づくべきだったなぁ。と思いながら高校に言ってないので学園祭というものに少しワクワクしている自分がいる……束先輩もそこ考えて、ないか。

 

「でも束先輩特製の偽造招待状で入れたのはさすがだよね」

 

 あの人なら完璧な偽札だってつくれそうだ。

とか思いつつ目的地の1-1へ向かおうとしたのだけど……

 

「あっ! ちょっとそこのサングラスのおにーさん、ストップ!」

「なんですか……水色の髪をした人? いや水色の頭とか不良か。先輩に妹のいる学園に不良がいると電話したげよう」

「貴方いきなり出会い頭に失礼ね……私はこの学園の生徒会長よ」

 

 ババッと扇子を閉じて広げながら水色不良はそう言った……いやだって水色の髪って……

 閉じてから開いた扇子には[驚愕]と書いてあった、その扇子に驚愕だよ。

 

「へー……でおれに何か用ですか?」

「うん……ちょっと付き合ってほしくて。ダメかな?」

「初対面で自分を不良呼ばわりする人間に上目遣いで告白する人間はだいぶん駄目かと、主に常識面が」

「違うわよ!? ちょっと着いてきてほしいってことよ」

「だが断る」

 

 いきなり知らない人間についていくやつはいない…今どき小学生とかにそんなこと言ったら防犯ブザーならされるよ?

 

「いいから来なさい! ……貴方の招待状と同じものを持った人がいるのよ。その人は確認したら娘から貰ったものだったのだけど……いや貴方はどうしたのかしらね? たっちゃんに教えてくれないかしら?」

「ささささ、さあ? 先輩にもらいました! ではさよならたっちゃん!」

 

 走れ! 逃げろ! 風になるんだッ! チクショウやっぱ来なけりゃよかった! 束先輩凡ミスしてんじゃん!

 

「待ちなさい!」

「くらえ! タバえもん製の手榴弾!」

「なっ!? こんなところでッ! ミステリアス・レディ!」

 

 束先輩から貰った対追手ように貰った手榴弾型スモーク弾を投げつけたが本物の手榴弾を投げたと思われたみたいだ……そんなもの投げないけど。

 ――そして展開したISから出た水で手榴弾を包み込んだ。そしてそのなかで不発となる色とりどりのスモーク。水がカラフルになっていく様に目を白黒させるたっちゃん。

 

 今のうちにサヨナラ! ……ISから水か……消防用かな、平和な使い方でとてもいいと思う。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 はあ、人が多くて助かった。IS展開したたっちゃんに注目がいってたお陰で逃げやすかった……ん?

 シンデレラの格好をした女生徒が数人で話し込ん……ボーデヴィッヒさんがいる!? うわぁ懐かしいな。

 あ、箒さんもいるね。束先輩のため適当に数枚撮っとこう……サングラスにカメラがついてるとかミッションインポッシボーとか迷探偵コナミくんに出てきそうな道具だ。

 

 そうして無事ミッションクリアしたあと帰ろうとしたのだが。

 

「おっ、あれは……オータムさん、オータムさんじゃないか! おーい!」

「あっ!?」

「ん……オータム? 巻紙礼子さんじゃ?」

 

 男子生徒と話しているオータムさんを見つけた。この前束先輩に蹴られた腹は大丈夫であろうか?

 

「ああ、何ともないぞ。それよりタコス生産機はどうなった?」

「束先輩今マドッチのISつくってるんだけどその後にでもつくりそうだよ」

「そうか楽しみだな……へへ、タコス」

 

 とんだタコスジャンキーである。それより何をしてるのだろうか?

 

「いやスコールが何だっけ……百式? を盗ってこいって言われて」

「へー……金色のロボ?」

「なっ!? あんた白式を奪いに来たのか!?」

「やべっ、バレた!?」

 

 当たり前である、持ち主が目の前にいるのに盗みに来ましたっていって気付かないやつはいない。

 ――そう他人事の用に思っていたのだが

 

「一夏くんその女から離れて! 亡国機業(ファントムタスク)よ! あっ隣の男の子は捕まえて!」

「どっちですか!?」

 

 ついに水色の髪をした不良生徒会長がやってきた。無茶苦茶いっているなぁ。オータムさんの隣にいるおれをオータムさんから離れて捕まえろとは……

 

「あっこっちもヤバい、オータムさん逃げよう!」

「逃がさないわよ。来なさいミステリアス・レディ!」

「行くぞ! 白し……!」

「ちぃ! 来いアラく……!」

 

 させるかぁ! くらえ、タバえもん秘密ツール……

 

「ISゲットだぜ!」

「え?」

「え?」

「え?」

 

 ――途端にミステリアス・レディが解除されモンスター球へと入っていった。

 ポケットモンスター球(IS用ver)!! 前に束先輩に言ったのを覚えていてつくってみてくれたようだ。剥離剤(リムーバー)といったものを弄ってつくったらしいが剥離剤がなにかわからない。ただ今はそんな素敵なタバえもんに感謝!

 

「なっ……! ミステリアス・レディが!? 一夏くん取り戻して!!」

「は、はいっ! 行くぞ!白し」

「そぉぉぉいっ!」

「ちょっ!?」

「え!?」

 

 だから、させるかぁ! ミステリアス・レディが入ったモンスター球を全力で明後日の方へぶん投げた。

 

「さあオータムさん! 今のうちに逃げましょう!」

「お、おう! IS展開しなくてよかったぜ……」

 

 何処かへ飛んでいったモンスター球を追いかけていく男子生徒とたっちゃん。

 

 そしてISを解除して全力で逃亡するオータムさんとおれ。

 久々に逃げ続ける一日だった……今度があれば見つからないよう行動する! 絶対にだッ!

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

「束先輩はおれに恨みがあるんですね」

「え? どうしたの帰ってきて早々に」

「IS学園に行かせるとは……あそこ一回拐われて連れてかれたとこでしたよ。しかも水色の髪をした宇宙人みたいな生徒会長に追いかけられたり大変でした」

「いや、拐われて連れてかれたわけじゃないんだけど……まあ招待状はごめんよ、そこまで確認しないだろうとタカくくっちゃってた。それにいざというときにはかーくんが逃げれるようにしてたから! まあ次は皆でいこうか!」

「次!? てか皆で行くと余計に追われますよ!」

「大丈夫! 学園でやるイベントじゃないから!」

 

 せめて多少変装してくださいよ。えー……まあバレないようにするよ、そういやかーくんはバレなかった? などと、なし崩し的にまたIS学園に行くことへとなった。

 しかし変装くらいしてくれないと困る、世間では束先輩有名みたいだし。有名じゃなくても目立つ格好してるし。

 因みにいざというときの手段は学園の外の海に無人機を置いてたそうな、ありがたいけど束先輩がISの使い方が荒い。

 

 

「束様、どこかへお出掛けになるんですか?」

「おー、くーちゃん。今度皆でお出掛けしよう! 学園祭はかーくんが一人で行っちゃったし次にあるイベントにでも行こう!」

「ちょっと待て! 行きたくて行ったんじゃなくて束先輩がいかせたんでしょーが! それも妹を盗撮するために!」

「束様……いえ、例えそれが世間から侮蔑の目で見られる行為であったとしてもし束様がそれを行っていたとしても私は束様を信頼してますし信じてます」

「ぐっ!? ……ごめんなさい、これからはなるべくしません!」

「なるべくなんですか……」

「まあ束様ですから仕方ないですよ」

「くーちゃんどういう意味!?」

 

 そのままの意味だと思う。そのうち懲りずにまたやりそうだし。

 

 

 

 ――しかしその後くーちゃんも皆でお出掛けしたがり結局イベントへと行くことになったが今度は無事行って帰りたいものである。




ここまで読んでくださった方に感謝!
半ば強引に学園祭へ。オータムさんに真面目に襲撃させたくなかった。反省してる、後悔はしてない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

17.キャノンの意味って何?

 やって来ちゃった、キャノンボール・ファスト。

学園祭へと送り込まれたつい先日から対して日もたったないのに……まあくーちゃんも行きたがってたし仕方ないか。

 今回はチケット偽造でなく裏口からハッキングしてコソコソ入るそうだ。

 

 そうして会場の前まで来たわけだが……

 

「あれー……見間違いじゃなければマドッチが一人三角座りして会場の前にいるように見える」

「私にもそう見えますね、何してるんでしょうか」

「おーい! まどっち! いったいこんなところで何してるんだい?」

「うん? なんだお前たちか」

「ハロハロー束さんたちだよー」

「こんにちはマドカさん、それでどうしてこんなところで一人寂しく座ってらしたのですか?」

「あ、ああ……それは」

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

「うーん……」

「どうしたスコール、形容しがたい表情をして?」

「ええ、亡国本部からキャノンボール・ファストってイベントを適当に襲撃するよう言われたのだけどどうしたのもかと……そうだM、貴女行ってきてくれない?やり方は貴女に一任するから」

「帰りにファンタ買っていいか?」

「ええ」

「行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 

 それにしても襲撃か。イベント中に乱入……したら邪魔になるし迷惑だな。イベントが終わるまで外で待って終わってから戦闘してもらえないか頼んでみるとしよう。

 帰りにはファンタも買えるし頑張るか! ファンターファンター!

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

「というわけでな。スコールに頼まれて来たんだ」

「……束先輩、 くーちゃん。マドッチがいい子すぎて辛い」

「最早襲撃じゃなくて模擬戦をしようとしてるだけだよね」

「マドカさんはイベントが終わるまでここで待つ気ですか……?」

「ああ!」

「………まどっち! 一緒にこっそり入ってキャノンボール・ファスト見学しよう!」

「ん、んん? いいのか?」

 

 いいともさ! と束先輩が必死に言う。確かこのイベント夕方まであるしずっとここで待ってるとしたら……何だろ泣きたくなってきた、ずっと三角座りしつつ会場を眺めて試合が終わるのを待つマドッチが脳裏に浮かんだ。

 

「かーくんさん、私こういうときどんな顔すればいいのかわからないんです」

「笑えばいいと思……笑えないわ……!」

「いいも何も寧ろついてきて欲しいよ!」

「ずっとここで待ってると思うとこっちが悲しくるよ」

「そうですよ、マドカさんも一緒にファンタでも飲みながら見て楽しみましょう」

 

 束先輩もくーちゃんも似たことを考えたのか涙が出そうなのを耐えつつマドッチを誘う。そしてマドッチも来てくれることになったのだが

 

 

 

「そうか! 実はこういうのを見るのは生まれてからはじめてで見てみたかったんだ!」

 

 

 

 ――この一言で3人の涙腺は決壊したのであった。

 その後今回は追いかけられることもなく無事最後までキャノンボール・ファストを見ることが出来た。

 

 くーちゃんも楽しそうだったしマドッチは更に楽しそうだった。束先輩は更にはしゃいでたらくーちゃんにたしなめられていた。

 その後追ってに追われることもなく無事4人で晩御飯を食べに行ったのであった。

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 そして晩御飯を一緒に食べ終わった後にマドッチが襲撃を忘れていたことを思い出した。慌てるマドッチだったが束先輩が任せなさい! と言ったことにより落ち着いたのだったが……

 

 現在マドッチと共に公園の自動販売機近くの茂みに潜んでいる。

 

「なあ、本当に織斑一夏は来るのか?」

「束先輩曰く今日は一夏くんの誕生日らしい、それで大人数家に押し掛けるだろうから途中飲み物を買いに最寄りのここへくる……って言ってたよ」

「そうか……何故そこまでわかるのか疑問に思うが触れない方がいいよな?」

「くーちゃんですら触れてない」

「よし、ならやめておこう」

 

 それが懸命である、何気なく心にくる言葉をいったりするくーちゃんが触れてないのだ。パンドラの箱を開けるより怖い……こともない。

 たぶんどっか何かで覗いてるんじゃないかな、くーちゃんはわかりきっててもう呆れて聞かないだけだと思う。

 

「それよりも襲撃が前にいってた臭いものを顔に叩きつけるっていう復讐でいいの?」

「問題ない、適当にやれっていってたみたいだからな!」

「適当の意味が違う気がするけど……まあいいか」

「しかしそんなことよりもコレは大丈夫なのか……? パンパンだぞ」

「……缶の上のボタンを押したら3秒後に蓋が弾け飛ぶようにしたって束先輩がいってた」

「そ、そうか……しかし本当にクロエはよくこんなものを思いついたな」

「そうだねぇ……」

 

「「シュールストレミングを投げつけるだなんて」」

 

 シュールストレミングとは世界一臭い食べ物であり缶を開けると同時に噴出するガスに失神する人までいるとか何とか。しかも輸入が自由化されておらず今回はマドッチのISの拡張領域バススロットへと入れて密輸したのである。

 

「あっ、来たぞ!」

「何!? 行ってくる!」

「え!? 投げ込むんじゃないの?出ちゃ不味いんじゃ……!?」

「バカ! あいつの驚いた顔を間近で見たいじゃないか!」

 

 滅茶苦茶ワクワクした顔で言われた。これは止めるわけにはいかない、おれも少しワクワクしてるし……出ないけど。

 そのまま出ていき織斑一夏の前へと立ったんだけど。

 

「とまれ、織斑一夏!」

「え? ……え!? 小さい千冬姉?」

「―ッ! 私は姉さんじゃあなぁぁぁぁい! マドカだ!」

 

 キレるのが早かった。もう少し積もる話とかあるもんかと思ったけどすぐに缶のボタンを押して織斑一夏の真上へ投げた。

 --そして

 

「ぎゃああああああ!? 臭い! おぇぷっ……何だこれ!?」

「ふっ、ざまあみ……うぇぇぇ臭いっ!?」

「嫁よ、大丈夫か!? うっ、何だこの臭いは毒か!?」

 

 織斑一夏はシュールストレミングを頭からもろに被って臭くてえづきマドッチはマドッチで一瞬ドヤ顔したあとにこれまたえづいてる。そして何故かボーデヴィッヒさんが来ている。カオスである。

 

「マドッチ逃げるよ!」

「わ、わかった! うぇ……」

 

 マドッチを茂みに引っ張りこんで逃亡するが……後ろでは臭いに苦しむ織斑一夏とどうすればいいのかわからず戸惑うボーデヴィッヒさんが見えた。

 

「……シュールストレミングはやりすぎた。私もあの距離で臭くて吐きそうだった」

「くさやと納豆くらいでよかったね……いつか謝ろう」

「ああ、そうだな……」

 

 ――少し反省しながら逃亡するおれとマドッチだった。

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

 少し時を遡り無事キャノンボール・ファストが終わった会場。

 

 

『これで全レースが終了しました、キャノンボール・ファストを終了します。お疲れ様でした』

 

 キャノンボール・ファスト終了を告げる放送がなった。

そんな中戸惑う生徒たちの姿が……

 

「え? 終わり……? まだ乱入も襲撃もされてないよ?」

「いえ、学園祭だって結局侵入者がいて生徒会長が出たって言ってたし今回も……え? 特に何もなかった?」

「……嘘よ、ドッキリか何かでしょう!?」

「そんな、こんなのってないよ!」

「夢、そう! 夢ね! 朝起きてキャノンボール・ファストに行ったら襲撃されるんだわ!」

「皆ー落ち着いてー、本当に襲撃も乱入もされてないよー?」

「なん、ですって……?」

「おぉぉぉぉぉ!? 今年始まって以来の快挙よ!」

「今晩はお祝いよ!」

「夢も希望もあったんだね!」

「夢じゃない、夢じゃなかった!」

「皆ぁぁぁ! 今夜は飲み明かすわよぉぉぉ!」

「未成年だからジュースだけどね! 今夜はカロリー計算だって無視よ!」

「食って飲んで弾けるわっ!」

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

そんなある意味異常事態に驚きはしゃぐ生徒たちを見ていた二人の教師がいた。

 

「織斑先生……明日私学園のセキュリティを上げてもらうように政府や上に掛け合ってきます」

「……いや私も行こう山田くん、これは流石に何かくるものがある」

「ですよね……」

 

 --その後ある二人教師の尽力により学園のセキュリティは少し改善されたそうな。

 ……今もどこかにいる天災に通用するかは兎も角。

 




ここまで読んでくださった方に感謝!
この話は一度予約投稿しそこない普通に投稿したあげく急いで消して消えた話です…消えちまったよ真っ白にな。
ところでキャノンの意味って(ry

Twitter @Bambino_or


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

18.たまにはゆっくり

 いつも通り束先輩のラボで朝食を食べ終わったあと束先輩がふと言った。

 

「今日は学園で専用機持ちのタッグトーナメントが行われるんだって、かーくん」

「行きませんよ?」

「だよねぇ、まあ今回はモニターハッキングして観戦しよう」

「また覗き見ですか束様……」

「ち、違うよ? 妹の成長を見るための観戦だよ! 断じて盗撮じゃないよ!」

 

 いや、それを一般的には盗撮って言うんだよ。まあ撮影のためにまた単身で行くのはなるべく避けたいから今回はなにも言うまい。

 

「ささ、今日は皆で観戦だよ!」

「そうですね、まあこれくらいなら覗き見しても問題ないでしょ。束先輩解説よろしくです。」

「解説は任せなさいっ! このIS博士の束さんが出てきたISの機能を余すとこなく全裸にしてお伝えするよ!」

「一応IS学園を覗いてる時点でかなり駄目なんですが……まあ束様ですし大丈夫でしょう」

 

 そうして始まったIS観戦……何試合か進んだあと遂に束先輩の妹が出てきた。タッグの相手は――

 

「ヤンキー生徒会長じゃないか!」

「ヤンキー……ですか?」

「うん、髪が水色ってなんか染めてるのかと思って……対戦相手の織斑一夏の相棒も水色だと……!?」

「あー、あの水色たちは姉妹みたいだね。因みにあの水色は天然だよ、それも日本人」

「え……? ナニソレどんな覚醒遺伝子?」

 

 何が起こったら日本人の髪が天然で水色になるのだろうか……どっかで何か覚醒してそうだ。

 

 

「姉妹と言うことはこの試合は同門と姉妹対決になるのですね」

「そうなんだ? 織斑一夏と妹さんって同門だったんですね」

「そうだよー。篠ノ之流っていう束さんちの流派」

「……束先輩の流派? 全身改造で機械人間にしてロケットパンチとかドリル使えるようにするとか?」

「違うよ? 束さんをどういう風に見てるかそろそろ真剣に話そうか?」

「さーせーん、いや束先輩の流派とかホント想像つかないんで」

「かーくんさん、束様の流派じゃなくて束様の家の流派です。束様のうちは神社でしっかりとした流派ですよ」

「ああ、そういうことね」

 

 ふう、ビックリした。束先輩が開いた流派とかあってもまともな訳がないし。基本皆が改造人間になってそうだ、飛蝗ライダーみたいに。

 

「へーまともな流派なんですね。お、織斑一夏の剣が光セイバーみたいになって全身も輝いた……掠った妹さんも金色に輝いた!? 両方百式?」

「白式と紅椿だよ! 白式は自分の体力を削りつつ一撃必殺を、紅椿は半永久的に回復するんだよ」

「え、ナニソレ白式フルボッコじゃないですか」

「いえ、競技ですから恐らく制限が設けられているかと。それに一撃でシールドエネルギーがなくなった場合も試合では負けになるかと」

 

 そうか、そうでもしないと試合として成立しないよね。エネルギーが尽きても何度でも起き上がってくるとかゾンビみたいだ。

 

「しかし消防用ISなのにあの生徒会長よく戦えますね」

「え? 消防用じゃないよ?」

「はい? いや、水出すだけじゃないんですか?」

「いやいや、よく見てよかーくん。普通の水じゃあんな動きや防御力ないでしょ」

「うわっ、ホントだ気持ち悪!? 水が変な動きしてミサイル防いでる! ……大道芸?」

「どうしてかーくんさんはそうやって正解から離れていくのでしょうか……」

 

 えっ、だって水があんな動きするとか普通じゃないし……ほら何か『クリアパッション!』とか言って水蒸気的ななにかが爆発した。ガソリンでも使ったのだろうか、とんだ消防用ISだ……いや、違うのか。

 

「あれは水の中にナノマシンが入っていてそれで操作してるんだよ、さっきの爆発もそれの応用だね」

「ナノマシン……? 何でもありですね」

「まーねー、どれもこれも束さんには興味ないけど」

「面白くないから」

「その通り」

「あっ、織斑一夏と束様の妹様が共倒れしました」

 

 おおっ、お互いにすれ違い様に切り合い相討ちとは格好いい終わり方である。

 ……水色姉妹の戦いはどうだろう。正直水色眼鏡っ娘に頑張ってほしい、まともな競技用ISは君だけなんだ。

 

「あっ……水色眼鏡っ娘が負けた」

「IS学園生徒会長は学園最強らしいので」

「なにそれ、どんなヤンキー学校?」

「まあ真の学園最強はちーちゃんだけどね」

 

 そりゃそうである、あれ以上の存在がいるとかやめてもらいたい。……まあ束先輩は置いておいて。

 

「よし! 箒ちゃんやいっくんの成長も見れたし束さんはもういいや! かーくんとくーちゃんはまだ見とく?」

「そうですね、もう少し見とこうかと」

「はい、他の専用機も見ておいてみたいので……束様はどうなさるので?」

「んー、ちょっと今作ってるものを仕上げようかと」

「変なものつくらないでくださいよ?」

「もちろん! くーちゃん、かーくん出来上がりを楽しみにしててね!」

「ういっす、面白いのを期待してます」

「はい、束様。期待してます」

 

 まあ束先輩がつくるものは基本面白いので期待、しかしたまにとんでもないものをつくるので不安もあるが好奇心には負けるのだ。そんな魅力がある、人は好奇心では死なないので問題ない。

 

「あ、あの中国の空気ガン束先輩がつくって捨てたってやつだ」

「衝撃砲と言われる武装ですね、撃った砲撃が見えず砲身がないため避けることが難しいとされています」

「あれ? 空気ガンってそんなにえげつなかったっけ?」

「まあ束様からしたら面白くないし失敗作みたいなものと仰ってましたが」

「面白くないのはともかくあれで失敗作とかやっぱ束先輩すげぇ」

 

 

 ――やっぱり束先輩がつくるものは常識を超えてくる。そして束先輩はさらにそれを超えてくると再認識したのであった。

 

 




ここまで読んでくださった方に感謝!
終わりが近い気がします、これが投稿されるのが1週間後くらいなんで何書けばいいかわからんですよ。
連休中に本編完結。

Twitter @Bambino_or


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

19.ハジメテノオツカイ

 さて、また来てしまった。今度はくーちゃんがいるんだけどね、一人だとぶっちゃけ悲しいしよかった。

 

 

「かーくん、くーちゃんお使いに行ってもらえないかな?」

「わかりました束様」

「んーどこにですか?」

「IS学園」

「……さらば!」

「束さんからは逃げられない! とうっ!」

 

▼翔は逃げ出した!!

▼しかし束先輩に回り込まれた!!

 

 この先輩……頭上飛び越えて来やがった!? ロングスカートだし中身が見えない! 良いことなしじゃん!

 

「ちょっ!? 人の頭の上バク転しながら飛び越えて逃げ道塞ぐな! てかIS学園とか行かないから!」

「いやいや、落ち着いてよかーくん。今回は一人じゃなくてくーちゃんも一緒だしそうそう見つからないよ」

「寧ろくーちゃん連れて行かせることに抵抗はないんですか?」

「あるけど前言ってた今作ってるものを使うための仕上げに必要なんだよ」

「ああ……あれですか、わかりましたよ。行こうかくーちゃん! 二人でお出掛けだよ! 二人で! 束先輩をほっとて! デートだね!」

「そうですね、行きましょうかかーくんさん」

「かーくんなんで束さんハブってるみたいに言うのさ!?」

 

 いや、束先輩の目が少し真剣っぽかったのでいつもの空気にしてから行こうかと。

 

「まあ、楽しみにしてますよ」

「うん、かーくんもくーちゃんも心の底から楽しめるはずだよ!」

「心待ちにしております。では行ってきます束様」

「いってらっしゃーい! 気をつけてね!」

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 そうして三度IS学園まで来たのだが……なんでマドッチもいるの?

 

「いや、前に復讐を手伝ってもらったからな。私も暇だから手伝おうかと」

「いい子すぎるぞマドッチ……でくーちゃん束先輩は何を盗って、取ってこいと?」

「IS学園地下にある暮桜のコアを取ってきてもらいたいと仰ってました」

 

 へー暮桜ってISのコアねぇ。え、結構これヤバい?

 ……ん? なにマドッチ、私のISも盗って……借りてきたやつだから気にするな?

 ならいいか、くーちゃん曰く後でまた返すみたいだし。

 

「それでは行きましょうか」

「おー! さっさと終わらそう!」

「いざというときは私のISで逃げるか」

 

 

 

 

 ……くーちゃんのISの力で周りの意識に入らないようにしてIS学園に入り込んだのはいいけど、学園に入る手前で特殊部隊みたいな格好した人たちが捕まっていた。

 

「あれなんだったんだろうね?」

「学園に侵入しようとして捕まったのでしょう、以前よりセキュリティが上がっていたみたいですね。束様特製のステルス玉には反応しませんでしたが」

「あんな白昼堂々軍人コスプレして女子高に侵入しようとか気持ち悪いやつらだな」

「流石におれも引くわー……まああんなの別にどうでもいいし早く取るもの取って帰ろうか」

「そうですね、早くいきましょう」

 

 ――途中料理を食べて泡吹いて倒れてる織斑一夏を見かけてマドッチが笑いそうになった。

 ……がドンドン顔が青くなるのを見て笑えなくなっていた。近くにいた他の娘たちに彼の生死がかかっているのだろう、強く生きてほしい。

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 その後無事誰にも気づかれることなく地下へと侵入、コアをgetしたのであったが

 

「無事ゲットできてよかったよかった」

「そうですね、マドカさんのISで緊急離脱ということがなくてよかったです」

「まあ私からしたら仕事がなかったのだがそれはそれでよかった」

「いやー怖いぐらいすんなりいった、初めてじゃないかなこんなの?」

「ほう、そうか残念だったな。その初めてはお預けだ」

「え?」

「え?」

「え?」

 

 ――後ろを振り返れば背後に修羅を携えた世界最強(ブリュンヒルデ)……織斑千冬がいた。

 

「うぁぁぁぁぁぁあああ!?」

「アホの特殊部隊がセキュリティにかかってようやく侵入者を阻止できたと思ったら貴様らのような鼠が入っていたとはな」

「くっ、ワールド・パージ!」

「こい! サイレントゼフィルス!」

「逃げるぞくーちゃんマドッチィィィィ!!」

 

 くーちゃんのワールド・パージで時間を稼ぎマドッチのISで逃亡しようとしたのだが……

 

「ふっ、大気成分を変質させ幻影を見せる能力か……確かに凄いが、私には効かんぞ!」

「なっ!?」

「マジ理不尽だ!」

 

 ワールド・パージが発動してるとは思えない…というか言葉通り効いてないのかまっすぐこちらへ向かって…せめてくーちゃんの盾に……え?

 

「ちょっ、ガードすり、抜け……っ! マドッチ頼んだぁぁぁ! ごぱっあ!?」

「む、飛ばしすぎたか……」

 

 蹴りがガードしてた腕すり抜けてきた!? そのまま自分が海へとブッ飛ばされたって現実が現実として思考に追い付かない……!

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

「に、逃げるぞクロエ! ステルス玉の準備を!」

「ええ! 海へ行ってくださいマドカさん!」

「逃がすか! フンッ!!」

 

 ――そういって点火直前のスラスターに千冬がまるで砂糖菓子のように蹴り抜いたコンクリートが散弾のように直撃し……左スラスターが爆ぜた。

 

「なんてチート系姉さんだ!?」

「バリアーシールドはどうなってるんですか! 織斑千冬が放つ攻撃には零落白夜が常に発動してるとでも!?」

「チッ、狙いがずれたか。次は外さん」

 

 そのことにマドカとクロエが驚き錯乱しかけてる間に千冬は無情にも再度蹴りによるコンクリート散弾を放とうとしていた。

 

「く、クロエ! このまま海に突っ込むぞぉぉぉ!」

「はい! 直撃したらスラスターどころか死にます! あれは束様しか対応できませんッ!」

「フンッ!!」

「うぉぉぉぉああああ!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 千冬から放たれたコンクリート散弾第二波を片スラスターでバレルロールのような軌道で紙一重……もとい運よくかわして海へと突っ込んだマドカとクロエであった。

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 織斑さんの理不尽キックにより海へブッ飛ばされた沈んだおれだったが息継ぎをしようと海面へ向かう途中マドッチがくーちゃん抱えながら海中を突っ切ってきた。

 

「ごぽぉぉぉ!? ……ん? マドッチに抱えられたら息ができるように、ISの機能か。にしてもマドッチ、背中の翼片方壊れてない?」

「姉さんだ! 地面のコンクリートを蹴りでぶち抜いて散弾のように撃ってきたんだ!」

「しかもガードどころか防御貫通です! あれは人なんですか!?」

「うわぁ……ホント理不尽だ。チート過ぎて正面からの対決とか束先輩呼ばないとヤバい」

「取り敢えずこのまま海中を使って逃げるぞ!」

「はい既にステルス玉はオンにしてます! に、逃げ切れてよかったです……ワールド・パージを完全に無視されるとは予想外でした」

 

 ……一人だったらホントに無理だった、前におれ10人いたら何とかなるかもとか束先輩言ってたけど99人が肉壁として盾となってもトイレットペーパーを濡れた拳で貫くが如く残り一人のおれを捕らえるだろう。もう追われたくない相手No,1である。

 

 

 ――こうして無事暮桜のコアを取り……命からがら逃亡を果たした3人であった。

 




ここまで読んでくださった方に感謝!
皆が上代翔ならちーちゃんから逃げれるとか言うから…ほら逃げれたネー。
上代翔は世界最強を前に3秒持たず退場しました。
公式よりちーちゃんがエグい?ギャグ補整が主人公にしかきかないなんて言ってナイヨー

ヒロインってたまに感想で見かけますがこの作品でですか……?
本編完結後に番外編でワンチャン!番外編で希望なんてあればお聞きしたいと、活動報告に少しそのむねを載せています、よければ見てやってください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

20.御話し

 か、帰ってこれた。半日くらいしかたってないけどこのラボが凄い懐かしい……!

 

 

「お、お帰りー。まどっちも一緒だっ……え? どうしたの、まどっちのISスラスター壊れてるけど」

「私の姉さんはチートだった、理不尽を身にまとったナニかだった……」

「えっ……? もしかしてちーちゃんとエンカウント、した……?」

「はい、なんで織斑千冬は蹴り抜いたコンクリートでスラスター破壊できるんですかぁ……!」

「ガードした腕すり抜けて海まで蹴っ飛ばされた……」

「三人ともよく逃げ切れたよ! ほらゆっくり休んで!」

「取り敢えずくーちゃんとマドッチ先にシャワー浴びておいで」

「ではお先に」

「ああ、すまないが借りるぞ」

 

 まったく今までの中で一番身の危険を感じた。やっぱ海岸で会ったときも束先輩がいなかったら逃げれなかったな……

 

「ほい、束先輩。ご所望の暮桜のコア」

「おー、ありがとうね。暮桜はね、ちーちゃんが乗ってたISなんだけど少し動かなくなっちゃってるんだ」

 

 なんでもISが競技用になってから開かれるようになった世界的なISの試合モンドグロッソの2回目を途中棄権するまでずっと乗っていたそうだ。それがある理由によって動かなくなっているそうな……

 

「ISは自己で進化していくものなんだけど第二回モンドグロッソでちーちゃんの弟、つまるところのいっくんが誘拐されたんだ。そのときのちーちゃんの想いに応えてサードシフトしようとしたんだけど」

 

 元々第一世代だったこともあり進化にIS自体が耐えきれずに事件後に暮桜は動かなくなったらしい。

 

「へー……で何で急にそんなことを?」

「いやー今回は流石に大変すぎることこなしてくれたから理由くらいは話して置かないとなぁって。ごめんね、それとありがとう」

「は、はい……真面目な空気が辛いんですが」

「アハハッ! かーくんらしいねぇ!」

 

 うわー背中がウズウズするわ! 真面目な束先輩も珍しいけどこっちのナニかもガリガリ削られるぅぅぅ!!

 

「さて、私の一世一代の発明が出来て後は仕上げに整えてるだけなんだけど」

「あ、発明自体は出来たんですね…暮桜のコアはその仕上げに必要と」

「まあ暮桜を直したいってのが強いけどね、ちーちゃんも何かあった時に動けないと辛いだろうし」

「身内にはとことん甘いですねー、他人だったら寧ろ分解してるでしょ」

「いや興味すら持たないよ!」

 

 いっそ清々しい。まあ人間は大なり小なり身内と他人で区別して接するけどね……ただ束先輩はその区別が月とスッポンくらい離れてるけど。むしろ区別と言うか分別だ。

 

「さーてかーくんもシャワー浴びといで! その後にその発明見せたげるよ!」

「いや、今くーちゃんたち入ってるから。何お風呂場でのハプニング起こそうとしてるんですか」

「くっ、ガードが固いね! いっくんなら言うまでもなくかーくんと過ごした期間があれば裸覗いたり胸触ったり惚れさせたりさせるのに」

「え? ナニソレ怖い」

「なんかそういう惚れさせる粉とかが撒かれてたりラッキースケベを起こす因果とかあるんじゃないかってレベルで女の子が惚れてくんだよ……極めつけは本人がそれに気づかない」

「爆発? 爆発させちゃう? もっかいIS学園行きましょうか?」

「いやいや、落ち着いて。あれは束さんも理解できない範疇にあるんだけど。しかも、学園にはちーちゃんもいるから!」

 

 織斑一夏……! 男の敵め! ……いや女の敵でもあるか。

 まあ前にマドッチがシュールストレミング喰らわしたしIS学園に乗り込んで爆発させるのは控えてやろうじゃないか……決して織斑千冬を思い出してビビってるわけじゃない。

 

「じゃあ、くーちゃんたち上がったみたいなんで入ってきます」

「おー、上がったら発明したの見せたげるよ!あともうちょっとお話!」

「ビーム、砲撃使わないお話ならどうぞ」

「えっ、なにそれ?」

 

 さーて風呂風呂ー。くーちゃんとマドッチが風呂上がりに牛乳とファンタを腰に手を当てて飲んでる、旨そうだ。どっちがどっち飲んでるとは言わないけど。

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 さて、風呂を上がったんだけどマドッチが難しい顔をしている。どうした?

 

「いや、亡国を辞めてラボに来ないかと言われたのだがアレで中々あそこにも愛着があってな」

「ああ、楽しい人たちだもんね。束先輩ムリ言ったら駄目ですよ」

「うーん、そうだね。今回は諦めるよ、あっそうだ!はい、まどっち。新しいISだよ、なんとファンタも出る。ついでにタコスも。」

「おお! ありがとう! ファンタ! ファンタ!」

「機能はまあ近接中心だよ……ただまどっちがホントに守りたいものがあるときとかに使ってくれると私は嬉しいな」

「……そうだな、私用ではなるべく使わないと誓おう」

 

 ただファンタは多用するがな。とマドッチが言ったら束先輩は楽しそうに笑っていた。ま、やっぱり平和な使い方がいいよね。

 

「ではそろそろ帰るとしよう、束博士ありがとう!」

「おー! 美味しいファンタをたんとお飲みよ!」

「じゃねーマドッチ、今日は助かったよ」

「では、また会いましょうマドカさん」

 

 そうしてホクホク顔でマドッチは帰っていった。

 

「じゃ、くーちゃんかーくん。そろそろ発明見せたげる……前に聞きたいことがあるんだけどいいかな? 」

「……なんでしょうか束様?」

「なんか見間違いじゃなかったら不安そうですけどどうしました? なんならスリーサイズまで言いますよ?」

「いやいや、そこ聞くのに不安にはならないよ……それよりもバレてたかぁ……くーちゃんも気づいてたみたいだね」

「はい……」

 

 なんかいつもより若干重いから、纏ってる空気とか雰囲気。こうアレルギー的に反応してしまう、早く言っていつもの空気に戻したい。ハリーハリー!

 

「じゃ聞くけど……私とどこまでも一緒に来てくれる?」

「はい、束様。地獄の果てまでお供します」

「寧ろ連れてってください、今さら置いてかれたら泣きます」

 

 置いてくとかホントに勘弁してください! 前に一回そんな感じのこと考えて珍しくしんみりしたってのに……それこそ今では束先輩とくーちゃんとなら地獄の果てまで行くのも満更ではない。

 

「ふふっ…アハハハハハ! そうか! ありがとう! じゃあ私の渾身の発明を見に行こうか!」

「ええ、見に行きましょう。楽しみですねかーくんさん」

「そーだね、今までで一番楽しみかもしんない」

 

 それを聞いた束先輩は嬉しそうだった。もしかして心配したのだろうか、どこに行くか知らないけどくーちゃんと自分が一緒に着いて行くかが。

 

 ――束先輩にそんなことを心配してもらえるほど身内と思ってもらえてるなら……それは嬉しいと思った。

 




ここまで読んでくださった方に感謝!
さてそろそろ…ね?
学園入学編も書いてみましたがどうも学園内での逃亡は難しい…別の作品として投稿するやもしれません。
こちらは番外編やらIFを思い付き次第で。

そう!次回最終かぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

インフィニット・ストラトス

 さあ、それじゃあ行こうか!

 

 おはよう! こんにちは! こんばんわ! 世界!

 

 んでもって、またね地球!

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 ああ、こいつはデカイ。でもって最高に面白いや。束先輩が本気でつくったのも理解できる。

 

「いやー、私も今回ばかりはかなり頑張ったんだよ?」

「ええ、これを見てそう思わない人は…まあ少なくともここにはいませんよ」

「はい束様が本気でつくったものだと……夢を追うために作り上げたんだと私達はそう思いますよ?」

「ハハハッ! ありがとうね、うん。コレを作り上げてよかったとようやく思えるよ」

「束先輩は遅いですね」

「速さが足りません」

「え、えーここは素直にそれならよかったですとか言ってよ……」

 

 

 すみません、いつもの癖で。

 

 ――にしてもコレは壮観だ。束先輩が本気で作り上げた【宇宙船】は。

 

 前に言っていた『夢』を叶えるんだろうなぁ……

 

「でも束先輩? なんで仕上げに暮桜のコアが必要だったんですか?」

「うん? いや私が宇宙にいくと私はもう地球で何処かの馬鹿がイラナイことをしても中々手出し出来ないからね。そんなときちーちゃんが自分の周りの人達だけでも助けれるようにしたかったんだ」

「ああ、では束様は暮桜を直されたのですか?」

「いやいや、そのまま直しても機体が耐えれないからね! 第一世代暮桜改め……!」

「待って何か世代いってる時点で怖いんですが?」

「これくらいいつものことですよ、かーくんさん」

 

 うん、まあそうだけど。何となく続く言葉もわかるし。妹に渡したものがアレでしょ? なら親友に渡すものだって……

 

「第四世代暮桜!」

「ですよね」

「もとい4.5世代暮桜!!」

「ちょ!? なんで0.5世代先いっちゃったんですか!?」

「かーくんさん甘いです、私は予想を越えられることまで予想してました」

「ふふん、暮桜のサードシフトに耐えるために世代を上げたんだけどちーちゃんが乗ること考えると不安だったからもうちょっと強化したんだ!」

 

 あ、なんか理由聞いたら納得してしまう自分がいるのが悲しいよ。

 それにしても現在最強の乗り手に天才のつくった最先端のISか……まあ何があっても身の回りの面倒ごとくらいは片手間で助けられるレベルだろう。

 

「ま、ちーちゃんが素直に受けとってくれるかがちょっと心配だけどね……」

「大丈夫ですよ、受け取らなくても無理矢理渡せばいいですし。IS宅配テロやりましょう」

「それに束様がどんな思いでつくったか言えばきっと受け取ってもらえます……いつものように誤魔化さなければ」

「……うん、うん! そうだね! たまには素直になってみるよ!」

「では行きましょ……宇宙船はどうやって出すのでしょうか?」

「束さんのポケットの拡張領域にしまってだよ?」

 

 やっぱり便利すぎるぞ四次元袋……じゃあ行きますか、束先輩の夢の晴れ舞台へ!

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 

 今IS学園では……いや、世界は驚愕に満ちていた。

 ありとあらゆる画面に、急に空に現れたモニターにISの産みの親である束さんや逃亡中であるはず二人目の男性IS操縦者の上代翔、見知らぬ銀髪の娘が映っていたのだ。

 

 

『ハロハロー世界、みんな見えてるかな? 特に箒ちゃんとちーちゃん、いっくんが見えてたら問題ナッシングだけど』

『いやそこは全員が見えるよう努力しましょうよ、諦めたらそこで終わりですよ』

『アッハッハ! それもそうだね! 諦めなかったからここまで来たわけだし……まあきっと映ってるさ! ……で箒ちゃん、ちーちゃん、いっくんは少し学園の外に来てほしいんだけど。お願いします』

 

 ん……? なんかいつも通り無茶苦茶な束さんみたいだけど何処か違う……?

 

「なあ箒、束さんの様子が少し変じゃないか?」

「……ああ、そうだな。いつもの人を食ったような感じがないな」

「おい、織む……一夏、箒。あいつに会いに行くぞ、多分学園の外にいる。すまないが山田先生、ここは任せる」

「はいっ! 任せてください!」

「では行こうか二人とも」

 

 そう言った千冬姉に連れられ俺たちは学園の外へと向かった。

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 ふぅ、世界中に放送されてると思うと流石に緊張するなぁ。

 にしても束先輩心配なのはわかりますけど小声で来てくれるかなぁとか呟かないで。こっちまで心配になる。

 

「あっ、束様。来られました!」

「えっ!? ほんとに!」

「ここで嘘をつけるほどの勇気を私は持ってませんよ」

 

 おお、ホントだ。三人とも来てくれたみたいだ……じゃ、束先輩渡そっかそれを。暮桜を。

 

「うん……ちーちゃん! 渡したいものがあるんだよ!」

「断る」

「うわぁぁぁぁぁん! かーくん!」

「いや、あの……すみません織斑さん、今回は珍しく束先輩も真面目なんで聞いたげてくださいお願いします」

「なに、冗談だ。普段からかわれてばかりだからな。ついここだ! と思って反射的に言ってしまった」

「あ、この人束先輩の親友だわ」

「そうですね、これは間違いなく束様の親友です」

 

 ここで敢えて空気を読まずにいくとか束先輩くらいしかいないと思ったが織斑千冬も同じであった……というか若干束先輩の因果応報だったが。

 

「では仕切り直して束先輩どうぞ」

「……うん、ちーちゃん。はいコレ」

「これは……暮桜か。お前が後ろにいる二人に盗っていかせたときにはナニに使うかと思っていたが……」

「機体を作り直したんだよ。暮桜はね、ちーちゃんがいっくんを助けよう……守りたいって気持ちに答えてサードシフトしようとして機体が耐えれなくなって動けなかっただけだから」

「それでお前が直してくれたのか?」

「うん、それだけじゃないんだ。これから私たちはちょっと遠出するからね。その間に何か起きたらちーちゃんが周りを守れるように……」

「そうか、そういうことなら受け取ろう……ありがとうな束」

「……うん! ふへへ……どーいたしまして!」

 

 ふむ、無事渡せたようだ。よかったそろそろこの真面目な空気に耐えきれず向こうにいる織斑一夏と束先輩の妹を笑かすためナニかするとこだった……くーちゃんと一緒に。

 

 

「で、今度は何をやらかすつもりだ?ことの次第によってはこの暮桜を使ってでもとめるぞ?」

「ふふふ、私ね今度こそ夢を叶えるんだ。世界に認められなかった夢を、今度は世界に見せつけながら!」

「……ああ、そういうことか。ふっ、好きにしろ。どうせ箒などは伝えたいことがあって呼んだのだろう?」

「そーだよ。箒ちゃん!」

「は、はい!」

「えーと……まずは色々ごめんなさい、私のせいで箒ちゃんは苦労したと思うし謝ったところで私のことは許せないと思う。でも……いつか何で私が宇宙を夢見たか、ISをつくったか聞いてほしいな」

「……はい、そうですね。でも……なら早く宇宙から帰ってきてくださいね?それまでに私も心の整理を済まして聞く準備くらいしておきますから」

「うん! ありがとうね箒ちゃん!」

 

 おー、姉妹の和解……にはまだ遠いかもしれないけどその一歩目だ。

しかし真面目な空気が終わらなかった、逝くしかないか? え、抑えろ。私も耐えてる? オーケー、何とか……

 

「いっくん!」

「はい!」

「爆発しろ! ラッキースケベの鈍感朴念仁ヤロウ!」

「えっ!?」

「あ……ついに耐えきれなくなりましたか」

「ちょ、かーくん! あと一人だったんだから耐えようよ!」

 

 すみません、言いたかったこともあってつい。ほら束先輩、織斑くんが呆けてます。早く言いましょうよ?

 

「かーくんのせいだよ……はぁ、いっくん! いっくんは守りたいものがあるんだよね?ならそれに向けて頑張って。ちーちゃんの弟なんだ、それくらい軽い軽い。あと周りの娘をよく見ようか?」

「はいっ! ……え? 周りの子?」

 

うん、絶対伝わってないぞ。俺の周りに子供はいないけどなぁ? とか言ってるし。

 

 

「ま、そんなとこかな! 二人は何かある?」

「腹減りました」

「ワールド・パージの応用で世界に映してるので疲れました、ご飯食べたいですね」

「そういうことじゃないよ!?」

「まあ今生の別れでもないでしょうし特に何もないですよ」

「私もです」

「そっか……じゃあちーちゃん後は任せたよ!」

 

「ああ…なあ束、今の世界は楽しいか!?」

 

「うん! 最ッ高だね!」

 

「じゃあ夢を叶えてこい!」

 

 

 

 

 

 それじゃあ

 

 

「「「バイバイ世界! またね地球!」」」

 

 ああ、俺たちは俺たちの自由のために宇宙(そら)へいく!

 




今まで読んでくださった方に感謝感激雨霰!
これにて完結!

初投稿のうえに思い付きにより見切り発車で始まったこの作品、読んでくださる方が予想より遥かにおられて急遽大まかな流れを考え書き溜めを書いていました。
このような作品に最後まで付き合ってくださった方、お気に入りや評価、感想を下さった方々には感謝を。
本当に楽しく書かせて頂きました!

今度はしっかりIS学園に入学させたいです。数えきれないほど有る、ありふれたパターンでどれだけやれるかは甚だわかりませんが読んでくださる方は次回もよろしくお願いいたします!

長々と後書きを書いてしまいましたが再度読んで下さり完結までの約3週間お付き合いしてくださった方に感謝を!これにて完結です!

バイバイ!またね!明日にゃIF!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

IF √T
IF19


※IFです。本編18からの分岐です。嘘予告の√Tのようなナニかです。
※展開がかなり急です、えっ?ってなる。4話で終わりますが突っ込みはなし!

いや、ホントごめんなさい。以上のことを留意してご一読ください。


 いやー……うん、いつかこうなるんじゃないかとは思ってたんだけど。

 

「まさかスコールさんたちがクビになるとは」

「まったくよ……まあ仕事全然こなせてなかったもの、そりゃそうよね」

「スコールごめん……」

「クビになったものはもう仕方ないわ、気にしないでオータム」

 

 しかし正体不明とされている組織がそんな一般企業のようなことするよね、そこに驚きだよ。

 

「まどっちはよく亡国が手放したね?」

「ああ、私か。いや手放そうとしなかったぞ?」

「え? なら何でここにいるの?」

「それはだな……」

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

「スコール、オータム。あなたたちはあまりにも使えません。本日を持ってISを置いて出ていきなさい、今すぐに」

「……はい、わかりました」

「……わかったよ」

「おい待て、私はどうなるんだ? 私もクビになるだろ? いやしろ」

「あなたという戦力を今の亡国は手放すわけにはいきません、他の部隊で働きなさい」

 

 ……ふむ、めんどくさいな。ここは翔にならうとするか。

 

「そうか。スコール、オータム待機状態のISを渡せ」

「はい、M」

「ちっ、おらよ」

「よろしい、M。私のところへ持ってきなさい」

「フッ馬鹿め! そら! そら! そぉぉぉぉい!」

「なぁ!? ISを投げ……っ!」

 

 飛んでいけ! ゴールデン・ドーン、アラクネ! サイレント・ゼフィルス!

 ……ふぅ、それぞれ三方向に投げたが窓を突き破りいい距離飛んだと自負できる。

 

「さぁ、今のうちに行くぞ! スコール、オータム!」

「え? ええぇ!?」

「ちょっ、お前上代とやり方変わらねぇぞ!?」

 

 知らん知らん! 今は逃げるぞ!

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

 

「ってことがあってな」

「おお、サイレント・ゼフィルスだけじゃなくて3つをそれぞれ別々のとこに投げるとはやるね」

「ふふん、そうだろう!」

「かーくん、そこじゃない。注目するのはそこじゃないよ!?」

「でスコール様、オータム様はこれからどうなさるので?」

「え、ええ。IS学園の講師に応募しようかと思ってね、履歴くらいならパパっといじれるし」

「でなんで束さんとこに来たのさ、てかどうやって」

「M……マドカに連れてきてもらったのよ。で用件もマドカのことよ」

 

 この子の履歴をつくってもらえない?

 そうスコールさんは言った……ん、つくる? 弄るじゃなくて?

 

「あーそういうこと……まどっちの経歴全部消されてるんだね。うん、わかった。他ならぬまどっちのために束さんは頑張るよ!」

「でマドカさんはどうするんですか?」

「そうだな……姉さんたちと和解したい、織斑一夏に謝りたい」

「復讐はいいの?」

「シュールストレミングでスッキリするどころかやりすぎた気がしてきがもう引ける……」

 

 そうか……そうだよね、もとからファンタで怒りを納めれるんだしあれで満足できたならよかった。

 

「じゃあまどっちの経歴は一からつくっとくよ、しっかり普通のをね」

「感謝します、篠ノ之博士」

「まどっちのためだし君に感謝される謂れはないよ」

「束先輩感謝くらい普通に受け取ろうよ、じゃあマドッチをお願いします」

「ええ、任されたわ」

 

 そういってスコールさんたちは帰っていったが……強く生きてほしい、いや何だかんだで普通に教師になりそうだが。正直そっちの方が似合ってそうだし楽そうだ、スコールさんの胃的に。

 

 

「あ、IS学園で思い出したんだけど二人にお使い頼んでいい?」

「んー何ですか? てかIS学園で思い出すこととかその時点で嫌なんですが……」

「いやいや、話を聞いてよ」

 

 え? 一週間後に暮桜のコアを盗ってきてほしい? 無茶いうな!?

 え、くーちゃんと一緒なら大丈夫とか言われても……はぁわかりました行きますよー。くーちゃん二人でお出かけだよ!

 

 そんなこんなでIS学園へ向かうことへとなった。もうあそこは行きたくなかったんだけどなぁ。

 

 

 ――因みにその3日後スコールさんたちは普通に就職出来たそうな、今までにつくったコネとか色々使って。マドッチも結構すんなり受け入れられて今は織斑千冬と距離を測っている最中みたいだ。織斑一夏は普通に受け入れたとか……うん、器デカイよね彼。

 

 

▽▽▽▽

 

ふふふ、何だかんだで手助けしてくれるよねかーくんはさ。そのわりには束さんにお願いすることと言えば部屋を片付けろとかそんなことばっか……これでも世界一の天才なのにねぇ。かーくんとくーちゃんだけは私をそのままで見てくれる…まあある意味同じステージにいるちーちゃんを覗いて。それでもそのままで見てくれるのは二人だけだ。出来たらこのまま三人でいれたらいいなぁ……

 

 

▼▼▼▼

 

 

「わたくしの料理が不味いですって!?」

「いや、不味いとかそういうのじゃなくて普通に食ったらヤバいレベルだぞ。私もファンタを飲んでなければ死んでた」

「バカか……!? こいつは兵器なんて枠じゃ収まらない代物だぞッ!」

「いやファンタ飲んだからって大丈夫なわけないでしょ……」

「ラウラさんはいくらなんでも酷すぎですわ!?」

「なら食ってみろ鈴、ラウラ。いや他の誰でもいいが」

 

 私がそういうと皆が私とセシリア……正確にはセシリアの料理のようなナニかから円を描くかのように離れた。

 

「皆さん!?」

「ふむ……セシリア、味見したことはあるか?」

「いえ? ありま……ふご!? げふぅ!」

 

 味見したことはないとかほざこうとしたのでセシリアの兵器……料理を口に突っ込んでやったらセシリアも倒れた。よかったな舌は正常なようだぞ。

 

「ううっ。ここ、これは駄目ですわ……わたくしこれからは味見をして料理をつくります」

「そうしろ」

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 セシリアが料理に対して改心したところ周りから歓声が聞こえた……織斑一夏なんて両腕を頭の上で振り回しながら跳ね回って喜んでるぞ。ええい、抱きついてくるな! 暑苦しい! なに? これでセシリアの飯を食う度病院に行かずに済む?

 いや、箒やシャルロットも鈴もラウラも目に涙を浮かべつつ抱き合ってるが……今までの被害状況がわかるなこれ。

 

 

 

 

――こうしてIS学園の脅威は一つマドカの手によって葬られたのであった。

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 ちっ、Mには逃げられましたか……しかし頼るとしたらMに興味を示したという篠ノ之博士でしょう、だとしたら深追いをするのは得策ではない……のですが。

 彼女と最近共に行動してるという男性IS操縦者 上代翔の家族がいつまでたっても見つからない。

 ふと思い立ち本気で経歴をデータを調べつくしたところ……

 

「くふっ、フフフフフフハハハハハ! 何ですかこれは、アレの全てが偽りだったなんて! ああ、あんなモノ! 男性操縦者どころか人間であるかすら怪しいじゃないですか!」

 

ああ、試験管ベイビーはドイツくらいしかやっていないと思いましたが……コレはもっとたちが悪い。

 

 アレらに近いモノを作り上げようだなんて!

 上代翔が篠ノ之博士と織斑千冬に近づけてつくられた人間だなんて……ああ、これを使ってみるのも悪くないですね、フフフフフ!

 

「私達亡国機業は世界のバランスの、平和のため篠ノ之束を消すわ」

 

 貴女が居れば世界はどんどん歪んでいく、それを止めるためにもコレは使える。正面から立ち会っても勝ち目は0。なら貴女の周りから貴女を否定()していってあげるわ……!

 

 

 じゃあ準備に取りかかりましょうか。悪く思わないでね上代翔、世界のためよ。




ここまで読んでくださった方に感謝を!

warusaさんや感想欄でポツリポツリと希望された√Tです。
うわぁぁぁぁぁぁ公開を後悔して消したくなるかも。
よし、無理矢理嘘予告の台詞半分は回収するよ!

二作目投稿始めました、よければよろしくです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

IF20

 ……んーこれは厳しいかな?くーちゃん自身のISは撹乱には向いてるけど戦闘には向いてないみたいだし。

…ここはおれが囮になって……え? いや、それは駄目だくーちゃん、それはないって!

 

 

 

▼▼▼▼

 

 今さっき急に専用機持ちが集められた、IS委員会からの要請らしい。その内容が……

 

「千冬姉、上代翔の戸籍が偽物だったってどういうことだよ……!」

「そのままの意味だ、あいつは本当は“居なかった”んだ」

 

 だからその意味がわからねぇんだよ! ちゃんとテレビにも写ってたし、千冬姉も山田先生も実際に見たんだろ!?

 

「正確に言うなら……あいつは純粋な人間ではない。つくられたクローン人間だ。今までアイツの家族が取り上げてこられなかったのもそのせいだ」

「なっ……!?」

 

 保護プログラムのおかげじゃなかったのか……?

 

「どこいらの馬鹿どもが私と束をモデルにしてつくったらしい……恐らく失敗したんだろう、今こうなってるということは」

「では何故今まで普通の生活をしていたのでしょうか?」

「言い方は悪いが……日本では人一人殺すとどうやっても証拠が残る、偽の戸籍をつくって一般人とした方が楽だったんだろうな」

「でも何で今になってこんなことが……!」

「落ち着けマドカ……恐らく何者かが報道機関などにリークしたのだろうな」

「で姉さんは上代を捕らえてどうする気ですか?」

「全力を尽くして悪いようにはならないようにする。お前の友達なんだろ? だったら尚更だ」

「……はい」

 

 ……では行くぞ、あいつはIS学園近くに既に居るらしい。

 千冬姉がそう言い、俺たちは上代翔を捕らえに出ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

 さてスコールさんたちが来てから一週間がたった。

 束先輩にお願いされてたお使いのために、IS学園近くまで来たわけだが……なんだこのニュース?

 

『……ということにより男性IS操縦者上代翔は人工的につくられたクローン人間であることが判明しました。政府は一部の人間が独断でつくったものとし関係者の処分内容を検討してるとのことです。また上代翔は篠ノ之束博士、初代ブリュンヒルデである織斑千冬さんに近づけてつくられたクローンであり危険であると思われIS部隊による捕獲が決まりました。』

 

「なっ!? どういうことですか!?」

「急展開すぎワロタ!」

「いってる場合ですか! 今すぐラボに戻らないと……!」

 

 いやーキツいんじゃないかな……ほらIS学園らしき面子が来たよ。どっかから監視されてたかな? タイミングよすぎだし、いつもいいタイミングで現れるヒーローみたいだね。こっちからしたらヒーローじゃなくて、嫌なタイミングで出てくる悪の手先に見えるんだけど。

 

「上代翔……と銀髪の小娘、大人しくしてくれ」

「しかも織斑千冬さんまで登場とか詰んだ」

「さっきからえらく他人事ですねかーくんさん、何か策でも?」

「いや現実に認識が追い付かないんだよ、ニュース見てから5分たたない内にこれだよ、タイミングはかってたんじゃねーのこれ?」

「……ですよね。私の黒鍵で撹乱します、その隙に逃げましょう」

「教師っぽい人と学生が合わせて10人以上だよ?」

「何とかします……!」

 

 ……さすがに厳しそうだが、うーん天災と世界最強のクローンな自分には何か隠された力とかないかな?

 

はぁぁぁぁぁぁ!! よし、ないな。おれが力んでも出てくるものなんて屁くらいしかない!

 

 

「うーん……で投降したとしたらどうなるんですか?」

「悪いようには全力を尽く」

「―ッ! 嘘です! なら何故かーくんさん一人捕らえるのにこんなにも教師と専用機持ちを連れてきたのですか!? 何故かーくんさんが束様と織斑千冬、あなたをモデルにしたクローンであると世間に知らしたのですか!? 明らかにかーくんさんを危険視してるからではないですかッ!」

「ッ! 世間に公開したのは私たちでは……それに私たちは…!」

「黙れ! あなたたちが何ですか、あなたたちがどう頑張ったところで世界に敵うわけがない! それにあなたたちにはその覚悟すらない! そんな人間を信用なんて……私が世界で信用できるのは束様とかーくんさんだけです!」

「……そうか、それでも悪いが一旦捕らえさせてもらう」

 

 くーちゃんが本気でここまで思ってくれてて、あの織斑千冬やこれだけのISをまとった人間を前に引かずに自分という人間……クローン? を渡すまいとしてくれる。とそこでマドッチの声が聞こえた。

 

「うん…なら逃げろクロエ! そこに私の名前がなかったのは些か悲しいが私にとってはお前たちは友達だ!」

「なっ!? マドカ!?」

「くっ! なにをする!」

 

 専用機持ちの学生の中にいたマドッチが近くにいた織斑一夏と束先輩の妹を抑えてくれていた。

 

「おいマドカ何をしている!」

「悪いが姉さん、あの二人は友人だ! どうなるかもわからんのにみすみす捕らえさせることはできない!」

「チッ、嫁! 箒! AICで一緒に止めさせてもらうぞ!」

「ちょ!? AICとか反則だ! ズルいぞ!」

「反則とかあるか!」

「ラウラはそのまま止めておけ! 残りは上代翔を捕らえろ!」

 

くっ、マドッチが3機分を引き付けて……引き付けて? くれてはいるが如何せんまだまだ多い! ぶっちゃけ1機ですら無理だけどさ!

 

 

「かーくんさん逃げてください! 残りは私の黒鍵で引き付けます!」

「いや! くーちゃんだけを残しては行けないって! 一緒にいくよ!」

「行ってください! 逃げ足ならかーくんさんの方が速いです、それに私は捕まったところですぐにどうこうされることはありません! また束様と合流するなりして助けてください!」

「……ッ! 絶対! 絶対絶対に! 絶ぇぇぇぇぇ対に来るからな! 一人でも!」

「はいっ! ……一人でも?」

「ああ! 絶対に一人でも!」

 

 ……逃げろ逃げろ逃げろ! 他は考えるな! 最悪なのはくーちゃんに時間を稼いでもらったのに、二人ともそろって捕まることだ!

 

 ――この日おれは初めて望まぬ逃亡をした。

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

「上代翔だけ逃がしたか、悪いがお前だけにこれだけのISは使わん。二手に分けて追わさせてもらうぞ」

「させません。例え、世界がかーくんさんを追ったとしても私が絶対にさせません」

「……ほう、どうするつもりだ? 比喩なく現在世界が上代翔を追っているぞ?」

 

 ……確かに無理をすることになります。それでもこんな不気味な目をしている、純粋な人間でない私にとって私に卑下も侮蔑も同情もなく普通に接してくださるのはあの二人だけなんです。

 

 ――だから!

 

「例え世界が敵にまわろうと束様と翔さんだけは! 世界を騙りなさい! ワールド・パージッ!」

 

 私は二人守る!

 目の前の織斑千冬も、まわりにいるその他の人間も。逃げるのを手伝ってくださったマドカさんも全てワールド・パージで! ここにいるIS持ち全てを同士討ちさせ落とす!

 

 

 

 

 

 

 

 そうしてワールド・パージで見せてる幻影で同士討ちをさせていたのだが……何故か違和感が拭えない。一人動かずに、いえこちらを見てい……!?

 織斑千冬がこちらへ真っ直ぐ向かってくる! ワールド・パージは織斑千冬にも確かに作用してるはずなのに!

 

「止まれぇぇぇぇ!!」

「確かに凄いな、大気中の成分に干渉、変質させ幻影を見せる能力か……しかし」

 

 なんでワールド・パージが、束様に貰った力が効かないのですか……! ここまで規格外ですか織斑千冬ッ!!

 

 

「そんな小細工でどうにかできると思われたとは……舐めるな小娘が」

「グッ、カハッ……誰にも、私達の自由は奪わせ……な」

 

 気づけば私の視界から織斑千冬は消え首筋に強烈な打撃を受けた。

 すみません、束様……かーくんさ……

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

「……誰にも、私達の自由は奪わせ……な」

「……すまないな」

 

 幻影を見えていた……マドカ曰くクロエか。クロエを気絶させたところ全員正気に戻ったようだ。

 

「ハッ!? 千冬姉! 上代は!?」

「逃げたよ、こいつがお前たちに幻影を見せている間にな」

「そうか……上代は逃げられたか」

「おい、マドカ」

「ん? なんだ姉さん、私は間違ったことはしてないと思っているぞ。実際姉さんは捕らえたあとに全力で悪くはならないようにしようとしてくれていたとは思う」

「ならどうしてだよ!」

「けどな一夏、それでもどうなってたかはわからない。殺される可能性だって低くないんだ。だったら私は友達のために動くし、次があっても同じようにするよ」

 

 ……ハァ、この妹は誰に似てこうも頑固な友達思いになったのか。

 マドカの言うことも確かにわかるが……

 

「取り敢えずクロエとお前はISで拘留するぞ」

「わかったよ姉さん……ファンタは?」

「抜きだ」

「………わかった」

 

 残りは上代翔を捕らえなければならないが……ふむ、クロエをIS学園に連れていかねばなるまい。今回は諦めるしかないな。

 




ここまで読んでくださった方に感謝を!
さてそろそろ書いた自分が辛いです、伏線もないまま見切り発車でシリアス()に突っ走るとこうなります。
キツい人はもう読んだらダメです。やめなさい、人に戻れなくなるわ!って感じです。

8/17 改行や感嘆符、疑問符のあとのスペース入れ。あと少し弄りました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

IF21

 何でッ! 何で何でッ! かーくんとくーちゃんが!

 ――亡国機業……お前たちのせいか。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 くーちゃんがIS学園に捕らえられた、そのことはわかっている。IS学園ならちーちゃんがいるし、そもそもくーちゃんは私と普段行動を共にしているということ以外では追われていないので一先ずは安心だ。

 ……だけどかーくんはくーちゃんが捕まってからまだ見つかっていない。束さんも急いで衛星や監視カメラで探したが見つからなかった。

 だから束さんはかーくんを一番捕らえてる可能性が高い……そして今回の騒動の原因である亡国へと乗り込んだ。

 

 

 

 

 

「かーくんはどこだぁぁぁぁぁぁ!!」

「―-ッ! 篠ノ之束! 単身で、それも生身で亡国へ向かってくるとは!」

「黙れ! どうしてかーくんのことを世界に知らした! どうしてかーくんを追う!」

「前者はともかく後者に関しては男性IS操縦者という点だけで追うには十分……と言いたいですが理由は貴女ですよ」

 

 ――は? ……私?

 

「貴女がISを発明してから世界は大きく変わった、そしてまだ世界は貴女に怯え貴女によって動かすことができる状態だ」

 

 知らない、そんなことは知らない。ISをつくったのは夢を叶えたかったから、ミサイルを切り落としたのISの兵器の面に気づいた大馬鹿に撃たれたから。箒ちゃんたちを確実に守りたかったからISを使っただけ。世界なんて知らない。

 

「そんな貴女がいると世界は歪む、おかしな方向へと進んでしまう。なので貴女を打倒しようとしたのですが……何分正面からでは私たちは勝てません。なので搦め手として貴女が普段行動を共にしている人間を世界に否定させたのですが……効果はてきめんですね、まさか武装ひとつせずに来るとは」

 

 うるさい、黙れ。そんなことで……そんなことでかーくんを世界に否定させたのか……!

 

「あ、そうです。忘れるところでしたがもう一人貴女が共に行動をしてる彼女、IS学園に捕らえられましたが……あそこにも我々の仲間は入り込んでるんですよ? きっと今頃……」

 

 黙れ――ね。

 

「黙れぇぇぇぇぇ!!」

「とッ! やりなさい! 篠ノ之束をここで終わらせなさい!」

 

 目の前の(ナニカ)の声と共に、9機のISが私に襲いかかってきた。

 

 

 

 ――けどさぁ……かーくんにもいったけど私はさ、細胞単位で天災なんだよ? 天災(・・)なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから……数分かな? それとも数十秒? それくらいたった、その頃には床には破壊し尽くしたISとその操縦者が転がっていた。

 

 

「嘘でしょ……こんなことって」

「ぐぎっ!? ぎゃぎぐぎぁぁぁAAAAAAAAAAArrrr!!!!」

「あっ、あ……あ? う、腕がぁぁぁぁぁぁぁぁ!? ッッッッッア!?!?」

 

 五月蝿いなぁ、だいぶん力加減なくやったけど誰も殺してない。死なせてないよ? かなり痛いだろうけど知ったことじゃない。

 

「くっ、こんなことが!? 一人でIS部隊を壊滅させる力などデータにはなかったのに!」

「バカじゃないの? データで人間がわかるわけないじゃん……わかってれば私はこんなにならなかったよ」

 

 もういいや、くーちゃんがいなくてかーくんも見つからない……たぶんそういうことなんだろう。

 取り敢えずIS学園に向かおう、ちーちゃんがいるIS学園だ。ちーちゃんが居てくれるなら、くーちゃんは生きてるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

「そう思ってきたのにさぁ……なんでかなぁ」

 

 私がIS学園の手前の街まで来たら、ちーちゃんがいるし他の専用機持ち、勿論いっくんや箒ちゃんまで勢揃いだ。

……はぁ何だかもう疲れたなぁ。

 

「なんでここにいるのかな? 学園は?」

「お前を捕らえるためだ、学園はIS1機と外から警備隊がイオスを着けて警戒している」

 

 そっか……ならもう……駄目だ、認めたくない、でも理解してしまう認めたくない認めたくない――嫌だッ!

 

「束、上代翔がどこにいるか知らないか? お前ならアイツがクローンと世界に知られたこの状態でも」

「うるさいなぁ……そんなこと束さんが知りたいよ! 何でも知ってると思うな! 何でもできると思うな!」

「ッ!? だが!」

 

 うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!! もういいもうダメだ! こんな世界もう嫌だ!

 ――そう思ったとき 私 のなにかが決壊した。

 今まで被っていた歪な笑み()が剥がれ落ちて、ボロボロと本音がこぼれだした。

 

「『私』だって人間なんだ、確かに認識できる人なんて両手に収まる人数しかいないよ? それでもその人たちが少しでも幸せになれるようにしたかった。

なのにそうしようとすればするほど皆離れていくんだ、自分に必要だと思ったときだけしか私には近づかない。私だって嫌われたり邪険に避けられたりしたら傷つくし悲しくなるよ。

そんな中で、そんな私が独りぼっちななかで、私に対して普通に接してくれる二人に会えたんだ。出会えたんだ。私のことを尊敬して慕ってくれつつも案外キツいこと言ったりするくーちゃ……クロエ・クロニクル。私に会うまで名前すら知らず、私がどんな人間か解ってからも何も気にせずにいてくれた上代翔。

どう言い繕ってもいい状況にいたとは言えない二人だけど、だからこそあの二人には幸せになって欲しかった、してあげたかった」

 

 そうだ、あの二人と過ごしているときが一番自然にいられてそれが、それが嬉しかったんだ。

 私がやりたいことをすれば世界は私を恐れて遠ざかっていった。

 でも私が無茶苦茶しても、毎度笑いながら一緒についてきてくれた優しい(バカな)ふたりが私は大好きだったんだ!

 

 

「なのに! なのになのになのに! 皆がまた私の邪魔をする! 何がIS開発者だ! 何が天災だ! それがどうした!?

世界からそんな風に言われてても結局たった二人を幸せにしてあげることすら出来なかった! 世界は……そんなことすら私に許してくれない!

世界で大きな事件があれば私が関わっているという! こんな世界になったのは私のせいだと皆後ろ指をさす!

違う! 確かに私はISを開発した、けどそれを間違った使い方をして世界を変えたのは私じゃない! 世界自身だ! 私はただ、宇宙(ソラ)に行きたかっただけなのに!

皆が私を悪いと言う、皆が悪いことは私のせいだと言う……!

ただ私は私の夢を叶えたかっただけなのに……そしてまた世界は私の夢を、願いを踏み潰していく……! もううんざりだよ」

 

 ならもうそんな世界はいらない。今度は私が踏み潰す。

私はポケットから箱を手のひらの上に出し……そしてそこから無数の無人機IS――ゴーレムIII型が湧き出す。

 空が無人機に覆われていく……アハハ、前にくーちゃんたちと見た蝗害(こうがい)みたい。じゃあ(世界)喰らい尽くそう(壊そう)か。

 そして私は世界と決別しようと

 

「――バイバイ世界。もう消えろよ」

「待て束!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「え?」

「なっ!?」

 

 ――したところに何かが突っ込んでくるのが見えた。




ここまで読んでくださった方に感謝を!

よっしゃあ!今回も無理矢理嘘予告の台詞回収!
もうね、うん。あとはあの長ったらしい台詞だけ書きたかった。
……よしっ!次で終わり!

8/17ちと弄りました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

IF22

 さて、こんちっわー上代翔だよ。くーちゃんに時間稼いでもらって逃げ出した野郎だよー、ふふふふふふ……現在、下水道にいます。下水道が似合う泥水滴るダメ人間、上代翔だよ!

 ……ふぅ、携帯なくして束先輩とも連絡とれないし。もういいや、くーちゃん助けにいこう。ステルス玉あったら侵入できるだろうし……どうにかなるさ! ならなくても成す! らしくなくてもやってやらぁぁぁぁぁぁぁ!

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 ……うん、実際に入れると引くよね。何か大量のISが街の方に向かってたから警備がザルだったんだけど……アレだ、前にテレビでやってたイオスっての着けた人たちはちらほら居たけどさ。

 

 どうやってくーちゃん見つけるかなぁ……っと!

 

「あー何で私だけ学園の警備に残らないといけないのかしら? 確かにISが全機外にいくのも不味いけどさぁ」

 

 ふむISも1機だけ警備に残ってたみたいだ……乗ってる人はトイレに行ったりするよね? するよね……そのまま垂れ流さないよね?

 アレもらおう、一応おれもIS乗れるらしいし。

 

 ――それから10分ほどしたらトイレに向かったのかISを外し走っていった……多分トイレだろう、そうに違いない! …ゴクリ

 

「よいしょっと! おお、何だかんだではじめて乗ったけど……どうやって動くんだこれ? 歩ける気とか微塵もしない。あれ、詰んだ?」

 

 くーちゃんの居場所は……お、それは載ってる。ふむふむ、寮の一室にいるのか。予想より好待遇でよかったが……

 

「あっちの方向だよな……移動するには……スラスターを点火すればいいのか? ――ッノォォォォォォ!?」

「ちょ!? あなた何をしてい――きゃあ!?」

 

 

 

 

なぜかスラスターが全開となりくーちゃんの部屋まで一直線に突っ込むこととなった……途中立ち塞がる全ての壁を貫いて。

 ゴフォ!?壁に突き刺さった……絶対防御って凄い、だってこんなになっても無傷なんだもの。さすが束先輩、いいもの作る。

 

「きゃっ!? 誰ですかッ! ……かーくんさん?」

「や、やあ迎えに来たよ?」

「迎えに来る方法がISで壁をぶち破るとか、あの世へのお迎えになりかけてましたよ」

「ごめんよ、なにぶん初めてで。でそこにいる人は?」

「わかりません、何か音もたてず侵入してきた変態なので黒鍵で昏倒させました」

「そっか変態ならいいや……なら行こうか束先輩のとこへ」

「ええ、行きましょう」

 

 くーちゃんを抱えてスラスターを再度点火し束先輩のもとへ向かう。

 

「で、かーくんさん……ちゃんと操縦できるんですか?」

「あっ……っぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!?」

「きゃぁぁぁぁぁ!」

 

 回転が! 回転が止まらない! 弾丸のように飛んでいってる……!

 

「高度が上がりすぎです下げてください! 右スラスターの噴射を抑えて!」

「ッッッッ、こう!? ぬぁぁぁ!?」

「何で直角に下がるんですかぁぁぁぁ!?」

「ぬぎぎぎぎぎぎ!! ふんすっ!」

 

 ふぅ……はぁはぁ、何とか地面にクレーターをつくる前に真っ直ぐ飛べた。

 

「これを真っ直ぐ飛べたと言っていいんでしょうか?」

「うん……やっぱ駄目?」

「回転しないように地面を両足で削りながら飛んでますし」

「いやー道路と燃費には悪いね、はじめて乗るもんだから全然わからなくて」

 

 こうして何とか真っ直ぐ進めるようになったのはよかったけど、道路と足の装甲が激しく削れて火花を散らしながら走っている……なんか前方に見える空が黒くなってるぞ? バッタが大量発生する災害みたい。

 

「不味いです! 恐らくあれは束様のつくられた無人機です!」

「え!? 何であんなに出してるの!?」

「……私たちに会えなくて寂しいからでしょうか?」

「んなアホな! ……いや! ありそうで困る、あの人もおれと違うとこで頭のネジ外れてるし!」

「かーくんさんは自覚あったんですね」

「まぁねー……急ぐよ! ッと加減ミスったぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「はいっ! ――きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 そしてスラスター全開のまま、盛大に地面のISの足の装甲を削りつつ束先輩のとこへ向かうこととなった。脚部は熱で真っ赤だ!

 実は途中でISの機能か束先輩の叫びが、訴えが聞こえていた……やっぱりあの人も人間なんだ。ただ勝手に居なくなったことにしないでほしい、らしくなくテンパりすぎだよ先輩。

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 束さんが話終えると同時に束さんの持った箱から無数の無人機が出てきた。

 

「何体いるんだよ……!」

 

 そしてその数に絶望仕掛けたところへ、

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ! ちょ! エネルギー切れる!? へい! 束先輩くーちゃんパス!」

「え? えっ!? っとぉ!」

「へぷっ、お久しぶりです束様!」

「ナイスキャッチたばぉぉぉ!? ……うぇ? エネルギー切れた!?」

 

 打鉄を纏った上代翔が突っ込んできて……エネルギー切れとなり、上代翔単体で俺に突っ込んできた。

 

「何で俺!? ぐほっ!?」

「ぶるふぁ!?」

 

 そうして白式を纏ってるはずの俺は飛んできた上代翔と後ろへぶっ飛んだ……何でだ!?

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

「お久しぶりです束様! とと、それはともかく!かーくんさん! 生きてますか!」

 

 そう呼ぶ、くーちゃんの声が聞こえた。

 

「痛ったぁぁぁぁぁ!!死ぬかと思ったわ!」

 

 生きてる! 生きてるよおれ! 織斑一夏くんナイスキャッチ! ただ今度からもうちょっとソフトにキャッチしてね!

 

 ……それより目を白黒させてる束先輩だ、なんだこの虫みたいにウジャウジャしたISは。多すぎてキモい。B級のSFにでも出てきそう、いや使われてる技術は束先輩のものでS級だけど!

 

「束先輩! IS乗ってここまで来たんで、途中から束先輩の声聞こえてたんですけど……敢えて聞かなかったことにします。そんなことより宇宙いきましょうよ! 世界を壊すより、世界から逃げて逃げて宇宙まで逃げましょう!

だってそっちの方が断然面白いですよ!」

「いやそんなことよりって二人とも……え? え……かーくん……? くーちゃん……? ほんもの……?」

「やばいくーちゃん束先輩があの歳にしてボケた。天災の反動かもしれん、頭の寿命を縮めたか……」

「大丈夫です、かーくんさん。例え束様がボケたとしても私たちがお世話しますから」

「ああ! 間違いなくほんものだね!」

 

 そうだ、まごうことなき本物である。で何世界壊すとかエキセントリックなことしようとしてるんですか。

 

「いや……二人とも居なくなったと思って……その」

「テンパった」

「……その一言で纏められるのも何かなぁ」

「キョドった」

「離れたよ! そうだよ! テンパったんだよ!」

 

 それくらい私は二人を大好きなんだよ! と束先輩は続けた……ここはボケれないよなぁ。

 

「はい、おれも二人とも大好きですよ?」

「はいっ! 勿論私もです!」

 

「「ただそれでテンパってここまでするのはない」」

「うぐっ……」

「ま、ここまで思ってくれてたのは嬉しかったですが……束先輩、同じ形の無人機がウジャウジャしててなんかキモいです」

「そうですね私も嬉しかったですが……束様取り敢えず無人機しまいましょう」

「はーい」

 

そういうと束先輩の近くの箱にゾロゾロと無人機が入っていった……四次元ボックス的なものかあれは。うへぇ、戻っていく様もなんかキモい。

 

「では皆さん、改めてお騒がせしました。いやいや織斑くんは突っ込んですまんね」

「ああ、それはいいんだが……上代はどうするんだ? その、これから……」

「え? これからって?」

「いや……戸籍も全て偽物ってわかって世界から追われることになったんだろ?」

「あっ、そうだった。世界から追われてるのは元々だしなぁ、忘れてたわ」

「……でどうするんだよ?」

「そうだね、束先輩パス!」

 

 めんどくせ! ぶっちゃけ普通じゃないことは何となくわかってたし。親のこととか全く思い出せないのはそのせいだったのかー、ぐらいの認識だよ。だから束先輩あとは任せた。

 

「え? ここで束さんに丸投げかい!?」

「ほう……でどうするのだ束?」

「ん、んんんん。未遂だし見逃して? ぶっちゃけ束さん今回は最後に無人機出した以外特に何もしてないよね?」

「……我が姉ながら清々しい開き直りだ、言ってることは正しいがなんとも言えない気持ちになるぞ」

「それに亡国本部に突撃して潰してきたし寧ろプラスだよ!」

「えっ? 亡国を潰した!?」

「うん、それでプラマイ0で許して? 駄目かなちーちゃん?」

 

 たしかに今回は束先輩はそこまでやらかしてないのかな、寧ろISパクって乗ってきた自分の方がヤバそうだ。

 後ろに脱ぎ捨てたISがほったらかしだ。

 ……冷静になると冷や汗が止まらん。え? かなりヤバくないかな?

 

「そう……だな、お前の言う通りだ。今回は束が何かした訳じゃないし、更にそこ犯人をお前が捕らえたなら言うことなしだ。それに……今回のことで考えさせられることもあった。色々すまなかった束」

「いーよいーよ、全く束さんが悪くないわけでもないし」

「ただ今回のことを抜きにしても、お前たちが世界から追われてることは変わらんがな?」

「え?」

「え?」

「え?」

「束さんと上代と銀髪の子反応揃ったぞ! 仲いいな箒!」

「いや一夏、ここで注目するのがそこなのか……?」

 

 え、えー……このまま綺麗に終われない? あ、はい無理ですか。なら……

 

「逃げるよ! かーくん、くーちゃん!」

「あいさー! くそ、見逃せよ!」

「はい! 束様、おぶってください!」

「全員追え! あいつらを捕まえろ!」

「よしきた! 上代翔! 一緒に学園に通うぞ! 男一人はキツいんだ!」

「待て姉さん! 今までのこと色々じっくり聞かせてもらうぞ!」

「ふっ、友を逃がすのを手伝ぉぉぉ!? セシリア、鈴何をする!?」

「今度は邪魔させませんわよマドカさん!」

「寧ろあいつらと一緒に捕らえてやるわ!」

「待てぇ! 特にラウラ似の髪のクロエって()!」

「そうだ! 出身が私と同じではないのか!?」

「おねーさんを舐めてもらっちゃ困るわ、もう逃がさないわよ!」

「山嵐! 捕縛ネットバージョン!」

 

 なにオールスターみたいに追ってきてるの!? IS使うな! しぬ、死ぬから!?

 

 ああ、もう……

 

 ――俺たちは俺たちの自由のために今日も逃げる!

 




ここまで読んでくださった方に感謝を!
IF終わり!急展開、ご都合主義、矛盾とか色々入ったIFでしたが一から書く気力がなくこうなっちゃった。すみません。かなーり無理矢理でしたし読むんだ方は首をかしげっぱなしだったかと。

気を取り直して番外編書きます、明日投稿します。それでとりあえず書けてるものは尽きますね…二作目(テンプレ)の方書きつつ片手間番外編を書こうかと。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編
番外編 宇宙キタ!


「くーちゃん、地球は丸……丸っぽい楕円だった」

「いえそこはもう地球は丸かったでよくないですか……?」

「だよね、ぶっちゃけほとんど丸にしか見えないし」

「そういえば束様が見当たりませんがかーくんさん知りませんか?」

「宇宙つくなりテンションMAX、宇宙キタァーー!! とかいって外いったよ」

 

 いつもの格好のままスラスターみたいなのだけ出して。

 なんか束さんほどの力があればISの手足なぞ飾りでしかないのだ! とか言いつつ飛び出していった。そのうち帰ってくるだろう。

 

「相変わらずですね束様は……拾ってくださったときから変わりません」

「あー変わらないねぇ、あれでこそ束先輩だけど」

「あ、それは私もそう思います。楽しそうに笑ってバカやっててくださるのが一番落ち着きますね」

「バカやっててくれるのがいいね」

「ええ、バカが一番です」

 

 バカじゃないよ!? とか聞こえてきた気がするけど気のせいだろう。束先輩はバカだもん、気持ちのいいバカ。

 おれは頭の足りない馬鹿だけど、くーちゃんはそうでもない。強いて言うならそれは言っちゃいけねぇよバカ! って時があるだけ。因みにマドッチ、オータムさんはアホの子だと思う。

 

「変わらないと言えば私たちも変わりませんね」

「そーだね、初めて会ったときからこんな感じだったもんね」

「何か波長というかなんというか」

「息のようなものが合う気がしたんだよね」

「ツーといえばカーと言うような……ぬるぽといえば」

「ガッ」

「と返してくださるような感じですね」

 

 ねえ? 確実に3ちゃんねる知ってるでしょ? 見てるよねくーちゃん。

 

「前までは束様以外と過ごすなんて考えもしませんでしたがこれはこれでいいものですね」

「そもそもくーちゃんは他人と会う機会自体なかっただろうしね、コミュニケーション能力は低くないんだし機会さえあれば普通に友達出来そうだよ?」

「そうですかね? かーくんさんは逃亡し始めるまではどうだったんですか?」

「そうだよマドッチも友達になれたじゃん……え、おれの逃亡まで?」

「はい」

 

 えっ、え? どうしてたっけ……た、田中いや田辺? くんとかと話してたかな?

 ……逃亡をし初めてわかる衝撃の事実。おれ名前覚えられるほど付き合いある友達いなかった。

 

「あの……どうされました? 急に外を眺めつつ遠い目をされて……」

「うん、なんでもないよ。ただくーちゃんほど仲良くなれた人は初めてだなぁって」

「そうですか友好関係の広さは知りませんが浅い人間関係だったんですね」

「うっ……た、確かにね」

「……ですがかーくんさんにとって一番仲の良い人であることはなんだか嬉しいですね」

 

 おお……そう思ってもらえることはこちらとしてもかなり嬉しいよ。くーちゃん可愛いし、今までこんな娘と知り合うこと……いやそれ以外でも親しくなる人なんていなかったし。あれ? 気づいてないだけでぼっちだった?

 

「おれもだよ……うん、くーちゃんに会えてよかった」

「はい。それで、あの……」

 

 なにか言いづらそう。というより照れて見える、めっさ可愛い。カメラどこかな? 店員さんお持ち帰りで!

 

「うん?」

「ずっとこのままいれるといいですね」

「うん、そうだね。今は楽しいしこれからはもっと楽しくなると思うから。そう思うとISを動かせて逃亡を始めてよかったと思うよ」

「ええ、ISを動かせるのに逃亡を始めてくださってありがとうございます」

「こちらこそありがとう、このままずっと一緒にいれるといいよね……」

「はい……」

 

 

 

 

 

「束先輩とくーちゃんの三人で」

「束様とかーくんさんの三人で」

「なんでだよ!?」

 

 うおっ!? 束先輩帰ってきてたんだ。え、覗いてた?なら声をかけてくれればいいのに。

 

「何だか二人が良さげな雰囲気だったから気を使ったんだよ!」

「……?」

「……?」

「ああもう! 二人とも同じ反応しやがって! 会えてよかったとかずっと一緒にいれるといいとか言ってたじゃんか! くーちゃんなんてはじめ照れ臭そうにさ!」

「そう思ってますし言いますとも」

「改めて言うには少し恥ずかしかったので……」

「はぁ……覗いてる分には告白シーンみたいだったよ?」

 

 告白シーンだなんて……宇宙船で外の星を見つつ会えてよかった、これからも一緒にいたいって言ってただけなんだけど。あ、なんかかなりロマンチックな感じになってる。そんなシーンで告白されたらおれ惚れそうだよ。

 

「告白シー……ッ!」

「あ、くーちゃん!」

「あら? くーちゃん?」

 

 束先輩が告白シーンとか言うからくーちゃんが顔を真っ赤にして走り去っていってしまった。えーと

 

「ちょっと見てきます。束先輩いつもされてるからってからかい過ぎは駄目ですよ」

「え、あ、うん。行ってきて……別にからかった訳じゃないんだけどなぁ? むしろかーくんは何でそんなに普通でいられるのか私は疑問だよ……」

 

 くーちゃんどこだー、仕返しに束先輩一緒に弄ろー!

 

「なんてこと言いながら探すのさ!?」

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

「あ、くーちゃん見っけ」

「ヒッ!」

「その反応は正直今までで一番傷つくよ……」

 

 悲鳴をあげられそうになるとは。もしかして恥ずかしかったので逃げたとかじゃなくてあんなこと言われたのが嫌すぎて逃げた……!?

 

「ちょっと生身で宇宙にダイブしてくる」

「違っ、驚いただけなんです! かーくんさんが探しに来るとは思わなかったので!」

「いや気にしなくていいよ、うん。大丈夫おれは極めていつも通りだよ。いつも通り宇宙にダイブしてくる」

「いえ、奇行はある意味いつも通りですが生身で宇宙に飛び込むのはどう考えてもおかしいですよ」

「だよね……落ち着いた?」

「あ……はい」

 

 ならよかったよかった、まあ初めは結構本気でいったんだけどね!

 

「それで……!あの、あれは告白とかそういうのではなくて! その……」

「うん」

「そういうことは考えず本当にこのまま居れたらいいなと思ったので。あ、ああいう風にいったので……」

「わかってるよ。そんなこと言ったら告白したようになってるのはおれもだよ、まあくーちゃんのことは好きだけど」

「……ッ!?私も、好き……です。かーくんさんはよく真っ正面から真顔で躊躇いなく言えますね」

「恥の感情が家出したまま帰ってこないんだ」

「私はこの頃その感情がやってきて戸惑ってますよ……」

「ならおれに別けておくれ」

「いーえ。これは私の感情、気持ちです。いくらかーくんさんや束様でも別けれません」

 

 そう言ってくーちゃんは微笑んだ。そっか、うん。それはいいことだと思う。くーちゃんは普段感情を見せにくくしてる感じだったけどこの頃は表情がコロコロ変わってるから見てる方もしても和むし。

 

「じゃあ束先輩のとこに戻ろうか」

「そうですね……束様にもこの気持ちぶつけます」

「よし好きだ好きだって言ってやろう。あの人自分から言うのは慣れてそうだけど言われるのは慣れてなさそうだしね」

「はい、先ほどの仕返しです。倍返しです」

 

 

 

 ――その後

 

 

「束様大好きです! このまま暮らしたいです!」

「束先輩好きだよ! ずっと一緒にいよう!」

「えっ、えっ? 二人とも急にどうしたの!?」

「好きです」

「好きです」

「え…あの二人とも落ち着いて。まっすぐ目を見て真顔で言われるとさすがに束さんも恥ずかし……」

「いつも明るいところが。面白い発明をしてくださるところが。私たちといてくださる束様が大好きです」

「いつも笑ってるところがいつもふざけてるようでおれたちのことも考えてくれる束先輩が大好きです」

「あ…あう、その……私も二人とも好きだよ! 大好きだよ!」

「やりました! かーくんさん! 今の音声録音できました!」

「よっしゃ! 編集して[100分耐久束先輩の二人とも好きだよ! 大好きだよ!]をつくるぞ!」

「ぎゃにゃぁぁぁぁぁ!? なんてことをしてくれてるのさ!? か、かーくんの音声だってあるよ!」

「はぁ……? 好きなだけ編集してください、面白いの期待してます」

「ああ! かーくんは恥ずかしがらないんだった!? ならくーちゃんに……もういない!?」

 

 その後宇宙船内では束先輩の好きだよ! 大好きだよ! という音声が無限ループで流れた。束先輩は顔を真っ赤にしつつ音声を止めにいったのであった。

 

 ――本当に束先輩、くーちゃんの二人と過ごせることは楽しいし幸せであると思う。

 




ここまで読んでくださった方に感謝を!
ご要望あったくーちゃんとイチャラブや上代×誰か…のつもりですが書けない、書けないよ。ごめんなさい!これが限界さ!もうちょっと二人が意識しないかなぁ、てかさせないと無理か…翔が悪い。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 クッキング

 ある日くーちゃんがふと言った。

 

「料理を練習しましょう」

「え? くーちゃんどうしたの急に」

「いえ、何だかんだで今日まで食いつないできましたが私含めてここにいる人でまともに料理できる人がいません!」

「あーそうだね、おれもウェイパー使ったものくらいしか作れないし」

 

 はてさて、でも料理をつくるったってなにを作ろう?簡単なところからとってカレーとか?

 

「そうだねぇ、束さんもくーちゃんも女の子だし練習してみようか! カレーよりもうちょっと和食作ろうよ!」

「何故です束様?」

「そんな気分だから!」

「なんか失敗しそうだ…!」

 

 結局、ご飯とお味噌汁に焼き魚と卵焼きをつくることとなった。そうして必要そうな材料を買いに行ったのち調理が始まった。

 

「取り敢えずご飯炊きますか」

「炊飯器ですしこれは出来ますね、束様米をといでください」

「米をとぐ…? はっはっは、お米に切れ味はないから研いでも意味ないよくーちゃん!」

 

 束先輩そこからか…!? この時点で、おれ=くーちゃん>束先輩という式が成り立った。

 

「米を洗うってことですよ、水でそそいである程度水が白くなくなるまで洗ってください」

「そういうことね! 任せろかーくん!」

「水は米から指の第一関節あたり…? かーくんさん指の第一関節はどこでしょうか?」

「……どこだろう? 手の平側から数えるのかな?」

「まあ、そういうことにしましょう。どちらでも大差なさそうですし!」

「そうだね! 束先輩洗えたー?」

「おうともさ!」

 

 じゃあくーちゃんが水を入れて……炊飯器にセット! よし次は魚焼こうか。

 

「焼き魚って何で焼きますっけ?」

「フライパンでいいのではないでしょうか?」

「かーくん、くーちゃん。アジの開きだけどいいー?」

「じゃあちょっと洗ってから焼きますか」

「火をつけておきますね」

「じゃあ束さんが洗うよ!」

 

 そして束さんが洗ったアジをそのままフライパンに乗せると……バチバチいい始めた。

 

「かーくんさん、束様なにか音が……きゃっ!?」

「アジが燃えたー!? 水、水を!?」

「うわー!? ちょ! かーくん高温の油に水はまずッ……くーちゃん避難だ!」

 

え……? 束先輩の忠告も遅くコップの水をかけたおれは――

 

「うわぁぁぁ!? あつ! 熱い!? 油が跳んでくるッ!」

「……かーくんさんと油が跳ね踊ってますね」

「あー、ようやく収まったよ。かーくん大丈夫?」

「な、なんとか……」

「油に火が引火しなくてよかったよ……」

 

 なんで燃えたのか調べたところ洗った後の魚の水をよくきってなかったのが良くなかったらしい。

 

「よ、よしまだアジの開きは2匹分あるからそれを成功させて3人で食べよう!」

 

 そうしてアジの開きはところどころ焦げながらも美味しそうに焼くことに成功したのであった。

 

「次は……お味噌汁をつくろっか!」

「あれってお湯に味噌とかして具を入れればよかったですよね?」

「味噌汁という名前からしてそうかと思いますが……」

 

 そのまま味噌汁に関しては水を沸騰させ味噌を溶き豆腐を入れ乾燥ワカメを……

 

「くーちゃん!それを丸々いれたらダメだ!」

「はい?」

 

 制止むなしく一袋丸々お味噌汁に投下された乾燥ワカメ。……みるみる内に味噌汁がワカメ一色となった。

 

「乾燥ワカメって見た目のわりに水にさらして戻すと結構な量になるんだよ」

「……すみません」

「よし! ワカメを引き上げよう!」

「え?でも引き上げて捨てるのは勿体ないよかーくん」

「いや、捨てずに洗ってから海草サラダにしましょう、レタスぐらいあったはずですし」

「おーいいね!そうしよう!」

 

 ほら、くーちゃんも落ち込まないで。米を研ぐを知らなかった束先輩や油と踊ったおれよりありがちな失敗だって。

 

「はい……そうですね! 私はレタス取ってきます!」

「じゃあワカメ洗おうか束先輩」

「よし! はい、ボール!」

「できればザルください」

 

 そんな感じで一品増やしつつお味噌汁も完成。

 

「最後は卵焼きです」

「卵焼き……何度か挑戦して失敗したままです」

「束さんは」

「挑戦してすらいませんもんね」

「ぐふぅっ!」

「じゃあ卵ときましょうか」

「かーくんさん卵片手で割れるんですね!」

 

 炒飯つくるのに割ってたら出来るようになってたんだ。

 さてフライパンを熱して油を少し垂らして……

 

「ここからが、問題」

「取り敢えず薄く伸ばしつつ垂らしてクルクルーって丸めたら出来たはずだよ?」

「私がやってみます!」

「くーちゃんまず火力を落とそう、そこから始めよう」

 

 そうして出来た……スクランブルエッグ。まあでも美味しそうだ。

 

「は、始めて焦がさずに出来ました!」

「やったね! くーちゃん! 束さんも嬉しいよ!」

「まーある意味一番まともにこれが出来たね」

「さて、ご飯もそろそろできてるだろーし盛り付けて食べよっか!」

 

 炊飯器を開けてみると……

 

「ちょっと水多かったかな?第一関節の場所が違ったか……」

「少し柔らかくなってしまいました……」

「まー食べれるよ、問題ないない!」

 

 そうして全てを盛り付けてちゃぶ台へと運んでそれでは!

 

「「「いただきます!」」」

「うん! くーちゃんのつくったスクランブルエッグ美味しいよ!」

「はい!ありがとうございます! アジもちゃんと火も通っていて美味しいです」

「うーん、味噌汁が何か違う……?」

「あ、ホントだね……あっ! 出汁だよ、出汁をとってなかったんだ!」

「出汁ですか……?」

「あーそういや味噌汁って出汁必要でしたね……くーちゃん、味噌汁は味噌とかとく前に出汁ってのをとるんだよ。次回はちゃんとそこもやってみよう」

 

 何かそうしないと味噌の味しかしない名前通りの味噌の汁になってる。うん、他は美味しく出来てるや。

 

「やーアジの一匹目の時にはどうなるかと思いましたがどうにかなってよかった。くーちゃんスクランブルエッグはもう火力だけ注意してたらできるね」

「はい! ようやく焦げてないものをつくれるようになってよかったです。」

「今度はハンバーグとかつくってみるのもいいねー」

「束先輩が焼いてる途中でハンバーグ爆散させるとこまで読めた」

「ちょ!?」

 

 

 ――たぶんこの食事が美味しいのは皆で作って皆で食べてるからだろうと思いながら食べる3人だった。

 




ここまで読んでくださった方に感謝を!
恐らく始めてまともに希望に応えれたのではないかと思う料理編。これが一夏、箒、鈴なら絶品に、セッシーなら(世界の理から)逸(脱した)品が出来てたでしょうがこの3人はこうなりました。この三人がほのぼの食卓を囲ってるとことか見てみたい

連続投稿今日で途切れます、まあ番外はゆったり気ままに。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 織斑家

「もすもすひねもすー!ちーちゃんおっはー!」

『なんだ、お前から電話とは珍しいな。どうかしたのか?』

「いやー宇宙を満喫してるんだけどふと考えたことがあってね」

『ああ、それはよかった。思い付いたこと…ろくでもないことじゃないだろうな?』

「違う違う、それは私が保証する」

 

うん、たぶんこれはちーちゃんも悩んでることだよ。

でも、なかなか解決できない…色々としづらい問題のこと。

 

『そうか、でどんな用件だ?』

「ちーちゃん…マドカって妹いたでしょ?」

『ッ!…ああ』

「しかも最近見かけた、くーちゃんとかーくんと一緒に」

『そうだな…それがどうかしたのか?』

 

どうかしたのかも何も…私が夢を叶えて満喫するなかでちーちゃんは家族のことで悩み続けてるのもなーって。

 

「ちーちゃん、まどっちと会って話をしない?ううん、家族に戻りたくない?そのことでこの頃ずっと悩んでない?」

『………はぁ。ああ、話したいとも思ってるし…家族についてはアイツがどう思ってるかもわからんからハッキリとは言えないが、私は戻れたら嬉しいよ』

「ちーちゃんとまどっちに何があったか知らないし調べもしないけど。うん、わかった。なら束さんがその機会をつくるよ。今度の土曜日は大丈夫?」

『なに…?出来るのか!?ああ、大丈夫でなくてもあける!』

「いえーす!くーちゃんとかーくんがまどっちと友達でね、メールやり取りしてます」

『そ、そうなのか…』

「では《まどっちをちーちゃんに会わせよう作戦》開始!」

『ちょ!たば』

 

通話終了!かーくん!くーちゃん!作戦会議だよー!

まどっちとちーちゃんの姉妹復縁のために話し合いの機会をもうけるのだ!!

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

へーそんなこと千冬さんと話してたんですね。

 

 

「でマドッチとどこで話させるんですか?」

「織斑家だよ」

「…マドカさんを織斑家に誘導するんですか?」

「うん!かーくんとくーちゃんよろしく!」

「結構難易度高い気するなぁ…あ、いやアレだ」

「アレです、ファンタを上手く使えば。いえファンタの名を出せば…」

 

いけるっ!かもしれない。ぶっつけ本番しかないかな?

まあやれるだけやってみよう。

その後マドッチにメールで土曜日遊ばないか聞いたところオーケーが貰えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして迎えた土曜日、昼間は普通に遊んでいいので夕方頃に連れてきてほしいとのこと。

 

「やっほーマドッチ、おはよう」

「もう昼前だがな、どちらかというとこんにちわ…?」

「こんにちわマドカさん」

 

マドッチがいきなり何時までおはようで何時からこんにちわなんだ…?とか頭を捻らせている。相変わらずのようで安心した。

 

「で今日は何処に行くんだ?」

「すぐ後ろの遊園地に行こうかと、どうでしょうか?」

「いいな!ジェットコースターや観覧車に乗ってみたいぞ!」

「おれも初めてだし色々乗ってみたいな」

「あ、かーくんさん私もです」

「ん、二人もなのか?私もだぞ?」

「全員初めてと…まあ適当に回ろうか」

 

さて行こっか、くーちゃんの言う通り真後ろが遊園地だ。集合場所を目的地にする手抜き感!いいじゃん時間の短縮になるしさ。

 

 

 

 

 

 

 

「ウハハハハハ!!ジェットコースターは気持ちいいな!」

「きゃぁぁぁぁ!?」

「次はコーヒーカップ?」

「回しますよ!」

「うぇ……コーヒーカップ酔う」

「ああ…回しすぎた」

「そうでしたか?」

「お化け屋敷かぁ、入るか」

「うお!?…なんだ落武者か」

「そんな格好でご苦労様です」

「くーちゃんその反応はお化け屋敷には合ってないよ」

「そうですか?」

「おおー、観覧車はいいな。景色がいいぞ」

「そうだねぇ…そしてゆっくりできる、今日思ったけどこの3人はお化け屋敷には向いてないね」

「そうですね、それ以外はおおかた楽しかったですが」

 

 

こうしてまとめて振り返るとお化け屋敷は間違いだった、お化けの人がなんか可哀想になってきたし…他は楽しかったけど。

 

 

「そろそろ時間ですね…マドカさん帰りに寄りたいところがあるのですがよろしいでしょうか?」

「ん?なんだ」

「ファンタが用意してあります」

「さあ、行くぞ!ぐずぐずするな!」

 

…うーん、マドッチ相変わらずなんだけどなぁ。相変わらずだからこそなー…いや束先輩、くーちゃんすまんね。

 

「マドッチー、ちとごめん。先に話があるんだけど」

「かーくんさん!?」

「なんだ?今じゃないとダメなのか?」

「うん、今から行くとこに関しての話。めんどくさいこと全部はしょるけどさ」

「ああ構わんが…」

「今からマドッチ連れていこうとしてたの織斑さんの家」

「なっ!?…どういうことだ」

 

いやーここでまだ怒らずに話聞いてくれるあたりマドッチはやっぱり優しい娘だよね。束先輩にゃ怒られるかもしれないけど話してよかった。

 

「束先輩と千冬さんが話してね…要約すると和解しないかってなったみたい。少なくとも千冬さんはしたがってるみたい」

「………それでお前たちが」

「うん、連れていこうとした…んだけどマドッチに任せるよ」

「…はぁ、そうですね。すみませんでしたマドカさん、今かーくんさんが仰った通りです。マドカさんの判断で行くかどうか決めてください」

「…………………」

 

マドッチもさすがに即答せずに考えている。

 

「ま、行くか。わざわざお前たちが話してくれたんだ、悪いようにはならないんだろう?私は友達は信じるぞ」

「くーちゃん、心が痛い。こんないい子騙して連れていこうとしてた自分が偉く汚れて見えるよ」

「かーくんさんは自分から明かしたからいいじゃないですか。私はどうなるんですか今までで一番自分が嫌になりました…」

 

マドッチは笑いながら来てくれると言った、そしておれとくーちゃんは何かえらく自分がダメな奴に思えてブルーである…自業自得なんだけどね。

 

「そ、そんなに気にするな!私自身もいつかはけりをつけないと思っていたしな…ほら行こう」

「そ、そうですか。では行きましょう、外でタクシーが待ってるはずです」

「そうか…ふー、緊張するな」

「大丈夫、おれたちもいるから。汚れたおれたちだけどいるから、泥よけくらいにはなれるよ…」

「どれだけ引きずってるんだお前!?」

 

いえいえ、空気を戻そうかと。それじゃー行きましょっか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっほー束先輩、マドッチ来てくれましたよ」

「おー、ありがとうね。まどっち中に入ろっか、ちーちゃんといっくんが待ってるよ」

「ああ、わかった…」

 

そうしていざ対面、織斑一家。なんだか織斑一夏がマドッチだけじゃなくこちらも気にしてる気がするけどマドッチに集中してほしい。

 

「…マドカ、久しぶりだな」

「久しぶり姉さん…まあつい最近学園で会ったけど」

「そうだな…」

「えーと取り敢えず飲み物でも取ってくるよ、何がいい?」

「ファンタ」

「お、おう。わかった」

 

まあ雰囲気は固いけど何とかなりそうな空気ではある。

 

「束先輩そろそろ引き上げましょうか」

「そうだね、じゃあちーちゃん後はゆっくり話し合ってね」

「ああ、ありがとうな束」

「マドカさんもこの際思ってることを言い切って、それで出来たら和解してください。家族はいるといいものです」

「うん、ありがとうなクロエ」

 

そうして織斑家から退散したおれたちだった。その後マドッチと千冬さんたちは和解、今は亡国についてどうするか話してるらしい。

 




ここまで読んでくださった方に感謝を!
マドッチを織斑さんちと和解させたかっただけのお話。
すこーし真面目、特にネタなし。ホントただ織斑家と和解させたかっただけ…
このあとファンタばかり飲んでると身体に悪いという一夏とファンタは命の水だというマドッチで一騒動あるのは別の話。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 タコス尾行劇

「ん、ふぁぁぁ」

「あら、おはようオータム」

「おはようスコール、朝飯にタコス食べてくる」

「待ちなさいオータム、寝癖が酷いし貴女下着のままよ!?待ちなさいって!」

 

スコールは相変わらず細かいことを気にするな、タコスに比べればどうでもいいってのに。まあそんなスコールも好きだけどな。

 

「ちょっとこっち来なさい、寝癖整えてあげるから…櫛はどこにやったかしら…あ、あったあった」

「うあー、スコールに髪を鋤かしてもらうのはやっぱいいな…今日はなにか仕事入ってるのか?」

「ええ、ある人物の尾行なんだけど…」

「めんどそうだなぁ」

「……場所がメキシコなの」

「行ってくる!」

「ストップ、オータム!まだ寝癖もなおってないし話も途中よ!」

 

メキシコか!メキシコと言えばタコス、タコスと言えばメキシコ。スコールがなにか言ってるけど聞こえない、いやー楽しい一日になりそうだぜ!

 

「オータム聞いてる?」

「ああ!」

「じゃ、服を着てからお願いね」

「おう!フフッフーン、ヘイ!タコッスー」

「……失敗を視野に入れといた方がいいかしら」

「じゃあスコール、行ってくる!」

「はいはい、行ってらっしゃいオータム。警官には気をつけなさいよー」

 

おー!

 

 

 

 

 

 

私は空港にてふとあることに気づいた。ん?スコールから通信が来たな。おお、ちょうどよかった。さすがスコールだぜ。

 

『オータム聞こえるかしら?』

「ああ、聞こえるぞスコール。そういや誰追いかければよかったっけ?」

『そうよ、貴女ターゲットの概要も写真も見ずに行ったじゃない…今メールで送るわ』

「まあ、スコールもそのまま見送ったんだけどな…おお、来た来た」

 

なになに…脂ぎった女だな気持ち悪い、権利団体の人間で亡国の末端と繋がりがあるがこの頃動きが不穏ねぇ。

 

「これ資金を横領してブクブク太ったんじゃないのか?」

『尾行目的もそれを疑ってよ』

「へー、ボコればいいのか?」

『違うわよ!?尾行して怪しければ報告してちょうだい、お願いだから』

「わかったよスコール、そろそろ飛行機に乗るから切るぜ」

『いえ、これは飛行機でも使用可能なーー』

 

電源OFFっと、飛行機内ではたしか通信機器の電源を切らないといけなかったよな。スコールが最後になにか言ってた気がするけどメキシコに着いたらまた聞くとしよう。あー眠い、どーせあの豚も飛行機内ではなにもしないだろ…寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして目覚めるとタコスの地、メキシコへ着いていた。

 

「お、おおおお!私はメキシコへ来たぞ!あっ、スコールに通信しないと」

『ーータム、オータム聞こえてるかしら?』

「聞こえるぞスコール」

『ああ、よかった。貴女がさっき切ったときにはもう繋がらないかもと覚悟したわ』

 

いくらなんでも言い過ぎだスコールは、タコスも好きだがスコールも好きなんだ。ま、他の人間なら忘れてるけどな。

 

「じゃターゲット脂ぎった女、略して(あぶら)の追跡を始めるぜ」

『あ、脂…まあ頼んだわオータム』

「それにしても脂め、上から下までブランドもので宝石のはまったネックレスや指輪をしてやがるが勿体ねぇ。同じものでもスコールが身につけた方がウン兆倍綺麗で映えて見えるぜ?」

 

豚に真珠というよりタールにダイヤ、廃棄油にルビーだ。ホントにギトギトしてそうだなアイツ…

 

『そ、そう。ありがとうオータム、貴女は不意に誉めるから敵わないわ…』

「あ?」

 

なにを言ってるんだスコールは。私はいつも心の中でタコスとスコールが大好きだと絶え間なく思っているというのに…

 

『…でターゲットに動きはあったかしら?』

「脂は今空港から出て町に着いたところ…まずいなスコール」

『どうしたのオータム?尾行に気づかれた?』

「いや、違う。そんなどーでもいいことじゃねぇ」

『いえ、どうでもよくないわよ?むしろ最重要よ?それで何があったのかしら』

「スコールここは天国か!?至るところにタコスを売ってる店があるぞ!」

『ちょ、オータム落ち着いて。ターゲットは、脂はちゃんと追ってる!?』

タコス(ターゲット)はちゃんと追ってる!5つで300円もしないぜ!」

『今タコスって書いてターゲットって呼んだわよね!?』

 

さすがスコール以心伝心だな、うおーウマウマ…やっぱり本場が一番だよな、日本のもアレはアレでまたうまいけどな。

 

「あーうまい。…あん?スコールゥ、なんか脂が黒スーツの男と話して小切手受け渡ししてるぞ」

『あ…一応ちゃんと見てたのね、黒スーツの方の男の写真を撮って送ってくれるかしら?』

「おー、スマホスマホっと」

 

スコールに写真を撮るように言われたのでスマホのカメラで撮る、パシャッ、パシャッとシャッターを切る音がなり男の写真を撮ったがカメラの音ってなんかいいよな。私は結構好きだ。

 

『ねぇ?オータム、今シャッターをきる音が聞こえたのだけど貴女消音カメラを使わなかったの…?』

「あ、やべ…い、いや大丈夫だスコール!周りもガヤガヤしてうるさいから向こうまで聞こえてなかったって!」

『そう、次から気を付けてね…これで17回目よ、因みに気づかれて結局のさないといけなくなったのが13回』

「ふぐっ…わ、悪い」

『まあ写真は届いたわ…ああ、この男が亡国の末端ね。本部に伝えておくわ。小切手の受け渡しの写真があれば完璧だったけど、まあこれで十分でしょ』

「モグモグ…ふあ?ほのはひんはははふほ?」

『ごめんなさいオータム、何言ってるかわからないから口の中のもの処理してから話してもらえるかしら?』

 

おー悪い悪い。つい我慢できなくて…っと食えた食えた、ごちそーさん。

 

「いや、だから受け渡しの時のならあるぞ?」

『え?』

「二枚撮ったんだけど一枚目で脂も写っちまって…」

『貴女のそういうとこ素敵よ、愛してるわオータム』

「お、おう。私もだぜ!…でいるのか?」

『ええ、送ってちょうだい。あともう脂の追跡はいいわ』

「お、そうか…よし、タコス食い放題だぜ!」

『じゃあ楽しんでねオータム』

「ああ!全タコス制覇してやる!」

『お腹壊さないようにね?』

 

――ハハッ、スコール何言ってるんだよ。タコスで腹壊すわけないだろ?

 




ここまで読んでくださった方に感謝を!
タコスの一日って昨日の感想で要望的なものがあったので勢いで書いてみました。
なに気に上代初めてまったく出なかった回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 豆まき

いつも通り唐突に束先輩が脈絡ないことを言い始めた。

 

「かーくん、くーちゃん。豆まきやろうよ」

「急になんですか?じゃあ束先輩が鬼でやりましょうか」

「まく豆がないので納豆で代用しましょう。ささ束様、鬼のお面です」

「なに二人とも自然に納豆持ってるのさ!?代用にしてもそれは酷いよ!」

「束先輩が納豆でヌルヌルに……」

「束様が納豆でベトベトに……」

「「すごく…臭そうです」」

「二人とも絶好調過ぎないかな!?……取り敢えずその手にもって全力でかき回してる納豆をどうにかしようか」

 

ふむ、ネタと勢いで開けてしまったけど食べるしかないか。うーん、美味しいけど口のまわりがベトベトになるし拭かないと。そういや昔ティッシュで拭いたらそのまま唇にティッシュが張りついたな。

 

「ごちそうさまでした」

「うん、でなんの話してたか覚えてるかな?」

「納豆と豆腐って名前逆じゃないかって話ですよね?」

「大豆と小豆は同じ種類の豆なのにどうしてあんなに違うのかって話ではありませんでしたか?」

「両方違うよ!豆まきだよ、豆まき!」

 

あ、そうだった。納豆食べてたもんで納豆に関係した話だと思い違いを……別にしてないけどなぜ豆まき?

 

「やりたくなったからさ!じゃあそれぞれ交代で鬼やろうか!」

「じゃ、束先輩よろ……豆ないし豆腐でいいや、これも大豆だよね」

「束様からどうぞ……豆ないので豆乳でいいですよね、これも元は大豆です」

「豆ならあるから!持ってくるから仕舞って!てかどこから出してるのさ!?」

 

なんだ、あるなら始めから出してくださいよ。せっかく気をきかして大豆関係のもの用意してたのに、ソォイJOY!とか。

 

「もはや加工済み!?……はぁ、豆はこれだよ。じゃあ束さんが始めに鬼やるから豆を蒔いてね。それ蒔いたら交代で」

「わかりました束様、私は初めてなのですがやり方はどうやればいいのでしょうか?」

「あ、それじゃあくーちゃんは豆を蒔きながらおれに続いて言ってくれたらいいよ。自分も初めてだけどやり方はわかるし」

「それじゃあ始めよっか、鬼のお面被ってと……」

 

そう言いながら束先輩はいかにも安そうな鬼のお面を被りこちらへ向かってきた。じゃあ豆蒔いて鬼を追い払いますか。

 

「がおー!束さん鬼だぞー!」

「出ていけ鬼ぃぃ!出てけ出てけ!お前みたいなやつの居場所はない!帰っれ!帰っれ!」

「出ていきなさい鬼!かーえーれ!かーえーれ!」

「う、うわぁぁぁぁん!違うよ!合ってるけどなんか違うよ!」

「え?鬼を払う行事じゃなかったですっけ?」

 

たしか、そんな感じのイベントだった。外に出てけとか言いながら豆蒔けばオッケーだったと思うのだけど。

 

「鬼は外福は内って言うんだよ!さっきのじゃまんまイジメじゃん!」

「まさに泣いた赤鬼ですね……あの話って良い話のようでなかなかバッドエンドですよね」

「知らないよ!?てか鬼が泣く前に束さんが泣きそうだったよ!」

「束様がかーくんさんに説明を任せるから……」

「あれ?くーちゃん束先輩が悪いかのように言いつつおれの責任にしてる?」

 

まあ、気を取り直してやりますか。ほらほら束先輩お面着けて、下がって下がって。

 

「あそこまでやられてまだ束さんが鬼のまま!?かーくん交代!」

「仕方ないですね、鬼の執念見せてやりましょう……青鬼、見てるかい?おれは頑張ってるよ」

「執念いらないから、なにいきなり泣いた赤鬼のアフターみたいな台詞言ってるのさ」

「ただのノリですよ、さあバッチこい!」

「鬼はー外ー!福はー内ー!」

「お、鬼はー外ー、福はー内ー」

 

束先輩が豆を蒔いてきて、それに続きくーちゃんも豆を蒔いて来る。――が、しかし

 

「アッハッハ!その程度では当たらんよ!」

「か、かわした!?そういうものじゃないから!鬼が豆を避ける遊びとかじゃないからね!?」

「か、かーくんさんに当たりません!」

 

ときに跳びはね、ときにしゃがみつつ豆を避けていく。なんか素直に当たるのが悔しい気がしたんだ。

 

「鬼をそう簡単に退治できると思うなよ束先輩、くーちゃん!」

「むー……仕方ない、くーちゃんちょっと下がってね。束さんが少し本気で鬼を退治するから」

「えっ?た、束様?」

「ん?……え?」

「化物を倒すのはいつも人間なんだよ!せいっ!!」

「ごっぱぁ!?」

 

嫌な予感がして止めようとしたが時すでに遅し、意地になってきた束先輩が力を込め豆を投げる。

細胞レベルで天才の束先輩が、肉体面でもブリュンヒルデに匹敵する束先輩が力を込め豆を投げる。

 

――そしてそこからは、とても、とてもゆっくりと見えた。

束先輩の投げた豆は手から離れると同時に砕けて粉末状となり、しかしそのまま巻き散るとこなく寧ろ体積を増やしたまま緊急回避をしようとしてたおれへと向かい直撃した。まるで衝撃波に叩かれたかのような感覚であった、その後身体が浮き吹き飛んだところまではわかった。しかしそこで、おれは意識を失ったのだった。

 

俺の人生、完!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ってなこともなく普通に目が覚めた。うん、時計を見るかぎり小一時間気を失ってたみたいだ……数日たってるとかのオチがないかぎりね。まわりを確認すれば束先輩がくーちゃんに怒られてるのでそんなオチは無かったようだ。

 

「あっ!かーくん、目が覚めた!?ごめんよ束さんついムキなっちゃって!」

「……あなたはだれですか?」

「ぎゃあああああ!?かーくんの記憶が無くなってる!?」

 

束先輩は取り乱してあたりを駆け回っている、くーちゃんと目があったので手を振っておく。

 

「束先輩ー、嘘です。ばっちり覚えてます……ってか記憶喪失心配する勢いで投げたんですか」

「嘘なの!?ホントよかったよ!……テヘペロ!かーくんじゃなきゃヤバかったぜ!」

「投げた豆がきな粉になっておれに襲いかかってきましたしね」

「束様は気をつけてください!かーくんさんだから何とかなりましたが他のかただったら大変でしたよ!」

「うう、ごめんよ」

 

二人ともおれだったからって言うけど二人のなかでおれってどういう位置にいるのだろうか?

 

「人以上、人外以下?」

「ナニソレコワイ。いやもうおれのことはいいや、最後にくーちゃん鬼やる?」

「はい、せっかくですので」

 

くーちゃんはそう言いながら鬼のお面をつけたけど……ふむ、これは何と言うかあれですな。

 

「投げにくいね束先輩」

「うん、愛娘であるくーちゃんに外へ行けと言いながら豆を投げると思うとね」

「お二人とも考えすぎですよ、普通にやりましょう」

 

それもそうか。結局くーちゃんが鬼のときだけようやく普通に鬼は外福は内ーとか言いながら豆まきができたのであった。

 

 

 

「さて、蒔いた豆掃除しましょうか」

「ルンバが勝手に掃除してくれるしほっとけばいいよ!それより歳の分の豆食べよう!」

「そういやそんなこともするんでしたっけ」

「そーそー、かーくんは16歳だよね。ほい」

「どうもです。そういやくーちゃんは何歳?」

「実年齢か設定の年齢かどっちでしょう?前にも言いましたが私は試験管ベイビーなので実は生まれてからで考えるとかなり若いんですよ」

「ああ、そっか。設定の方でいいんじゃない?少なすぎても何か悲しいし」

「そうですね、束様。では設定の方で」

「何か軽い!?は、はい」

「ありがとうございます、生まれのことはここで気にしても仕方ないので」

 

くーちゃん自身が言う通りここにいる面子には、って言っても束先輩とおれだけなので特に生まれについて気にしてない……どころかたまにネタにしてくるくらいだ、IS合体とか。

 

「さあさあ、束先輩も年齢の分の豆ですよ。はい」

「おっ、ありが……ちょっ!なんで袋ごと渡すのさ!?」

「足りませんでしたかね?」

「寧ろ多すぎるよ!」

「では束様は心の年齢、若々しさ的に15個あたりですか?」

「褒められてるような気がするけど貶されてる気もする!」

「まあまあ、袋の中から自分で出してください。正直年齢しらないから袋ごと渡しただけなんで」

「あ、そっか。教えてなかったもんね、よしそれじゃあ食べようか」

 

――その後3人揃ってちゃぶ台を囲い、豆をポリポリ食べた。

 




ここまで読んでくださった方に感謝を!
か季節ネタとして豆まきをしましたが書き終えてから気づいたこととしては5月の季節ネタをしろよと。
あとはIS学園巻き込んでやりたかったですが風呂敷が畳めないので断念。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 織斑一夏の奮闘

とある休日IS学園にて。

 

「なあマドカ、俺と上代って同じ世界で二人しかいない男性IS操縦者なのにまともに話したことがないんだ」

「いきなりなんだ……いや私にそれを言ってどうするんだ?」

 

いや、マドカと上代って友達で今まで何度も会ったりしたって言ってたじゃないか。俺も会いたいんだよな、束さんが宇宙に行く前やマドカと和解するときに顔を合わせたことはあれども話したことはないから一度世界で二人しかいない男性IS操縦者同士会って話してみたい。

 

「まあ友達だしクロエも一緒にだが色々遊びにいったりもしたな、遊園地とか」

「どうして俺も誘ってくれなかったんだマドカ……俺も一緒に行きたかった!」

「無茶言うな。姉さんや一夏と和解する前に行ったんだ……いや、それにお前は男と遊園地とか行きたいのか?」

「え?普通に一緒に遊びに行きたいぞ、男同士なら気兼ねなく遊べるだろうしな」

「……そうか」

 

他に一緒に行くべきやつがいるだろうに……ってマドカが呟いてるが聞こえてるぞ?他に一緒に行くやつって弾とか数馬か?アイツらとも遊びたいと言えば遊びたいがそうじゃないのだ、お互い男性IS操縦者だからそこら辺で思ってることとかも話し合って共有してみたいんだ!伝われこの思い!

 

「一夏、お前は何故そうなのだ……!」

「遊園地などいくらでもお付き合いいたしますのに……!」

「へぇ、私と遊ぶより見知らぬ男と遊びたいんだ?」

「……一夏ったら僕より男とデートしたいだなんて」

「全く、嫁はどうしていつもいつも……!」

「そっか一夏は男が好きなんだ……」

 

何やら後ろの方で箒たちがブツブツ言っているようだが聞き取れない、まあ今はそんなことは置いといて上代翔のことだ。

 

「それで私にどうしろと?」

「メールでやり取りとかしてるんだろ?メアドを教えてもらったりは……」

「断る、無断で他人のメアドを教えるほど馬鹿ではない」

「……ファンタを出しても?」

「…………………………断る、ファンタは金を払えば買えるが友達は何に変えても手に入らんしな。そもそも物で売る関係なんて友達とは言わない」

 

くっ、かなり葛藤があったみたいだが普通に正論で返された。ならばこちらも正攻法で行くしかないか!

 

「じゃあ上代に一回俺にメアドを教えていいか聞いてみてくれないか?」

「ファンタ5本だ」

「2本!」

「5本だ」

「よ、4本!」

「さて、そろそろ部屋に戻るか」

「わ、わかった!5本だ、だから頼む……!」

「今さらだが必死だな……仕方ない、今から聞いてみよう。【一夏がお前のメアドを教えてほしいそうだが教えてもいいだろうか?】っと送信」

 

くそぅ、ここぞとタカられた。あと必死にもなるさ、入学して数日で2人目の操縦者が見つかったと聞いて会えると思ってたら……もう半年以上たってるのに未だにまともに会話すらしてないんだぞ!?もうそのうち一年がたちそうだ。

 

「お、返信が来たぞ」

「あお!何だって?」

 

 

 

差出人:上代翔

タイトル:夏が俺を知りたがってる?

本文:マドッチ、一夏(ひとなつ)が俺のメアドを知りたがってるってポエム的なにか?

 

 

 

「うん、そもそも一夏の名前を忘れているな。」

「ノゥ!?嘘だろ!?」

「いや、ひとなつと読まれてるぞ?」

 

最悪でも束さんが宇宙行くときに俺の名前聞いてたはずなのに忘れられてた!?

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

現在、日本へこっそり宇宙から帰ってきている束先輩、くーちゃんとおれだったのだけれど先ほどマドッチからメールが来た。

 

「夏にメアドを教えていいかって……どういうことだろ」

 

マドッチのメアドは教えてもらわなくても知ってるし夏って季節にメアドは教えれないし、いやポエム的な何かにしてもかなり変だよなぁ。

 

「かーくん変な顔してどうしたのさ?」

「いえ、マドッチからひとな……お、マドッチからまたメールだ」

 

 

差出人:マドッチ

タイトル:無し

本文:すまん、一夏とは季節じゃなくて織斑一夏の方だ。

 

 

 

「あー、そっちか。そういやそんな名前だった」

「かーくーん、どうしたんだってばよー」

「口調が微妙に渦巻くラーメンの具みたいになってますよ?いえ、マドッチから織斑くんにメアドを教えていいか聞かれて……」

「いっくんに?いいんじゃないの?」

「いや、他人にメアドを教えるってのも、なんかなーって思いまして。あくまでも織斑くんって束先輩の親友の弟ってポジションで要するに他人なんで……って建前は置いといて織斑くんの名前をヒトナツって読んでて意味がわかってませんでした」

「哀れいっくん名前を忘れられているとは。まあでもいっくんが悪い子じゃないのは束さんが保証するよ?教えるかどうかはかーくんしだいさ」

 

さてはて、どうしようか。メアドくらい別にいいんだけどマドッチは律儀だなぁ……一応なんで知りたがってるのか聞いてみようかな。

 

「まあ教えていいですけど理由聞いてみます、届けおれの思い!」

「メールなんだから、そりゃ届くよ」

「ですよね。そういや、くーちゃんが見当たりませんけど」

「くーちゃんは買い物に行ったよー、適当にふらふらするついでに食材がもうないから買ってきてくれるって」

「おー、くーちゃんに感謝。あ、返信来た」

 

 

差出人:マドッチ

タイトル:無し

本文:お前と会ってみて遊びたいそうだ、遊園地とかで。

 

 

「……男二人で遊園地とか嫌だ!最低でもくーちゃんとかマドッチ誘うわ!」

「あー、いっくん変わってないなー……」

「もういいです、ちょっと直接電話します」

「まあそれが一番手っ取り早いよね」

 

男同士遊園地に行きたいとかどれだけ男に餓えてるのか織斑くんよ。いや女しかいないとこに入れられたらそうなってもおかしくない……のか?

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

……翔に遊園地とか行きたいと言ってたことをメールしてから返信がないな。あ、電話きた。

 

「もしもし、マドカだ」

『やっほーマドッチ、上代翔だよ。で織斑くんはなんなのさ、男と遊園地行きたいとかそっちの気ない?大丈夫だよね?』

「ない……はずなんだがスマン、この頃自信がなくなってきたところだ」

『おふ、まあたぶん大丈夫でしょ。今度遊びにいこうか……マドッチたちも一緒に』

「おい言いながら不安になっただろ。まあいいが、恐らく一夏も喜ぶ」

『じゃあいつ行こうか?基本的にいつでもいいけど』

「なら明日でも行くか?急だが私たちも明日なら特に何もないからな」

『オッケー、じゃあ今晩くらいまでには集合場所とか決めよっか』

「ああそれじゃあまた明日」

 

明日遊びに行く約束をつけ手短に挨拶を済まして電話を切る。

ふぅ、まあ何だかんだでいいと言ってくれるとは思っていたが遊びに行く約束までしてくれるとはな。

 

「な、なあマドカどうだった?」

「明日遊びに行くかと言っていたぞ、私も一緒だが」

「本当か!?ありがとうなマドカ!」

「ファンタを忘れるなよ、詳細はまた夜に伝えるから早くに寝てしまうなよ?」

「勿論だ!よっしゃ!ようやく上代翔にまともに会える、楽しみだなぁ。何話そうか……マドカは上代が好きそうな話題とか知らないか?」

「うん?そうだな、そんなこと考えずに話してたから改めて言われるとわからんな」

「そうか、仲がいいんだなマドカは」

「まあな、アイツとクロエは私のはじめての親友だからな」

 

それにしてもいつになくやる気というか関心を向けているな。そろそろ後ろにいる箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、簪の6人の不満が天元突破しそうだぞ?

 

「何故いつも私のことは興味なさげに流すと言うのに一夏め……!」

「一夏さんは男同士の方が楽しそうに見えますわ……最悪お相手の方を去勢しないといけないかもしれませんわ」

「フフフそうね、私との約束はセシリアに代わりに来させたりしたくせに一夏ってばあんなに楽しみして……」

「アハハハ、二人とも物騒だよ…………やるならバレないようにしようか」

「嫁ぇ、どうしてお前というやつはそう男友達と遊ぶときが一番嬉しそうなのだ?」

「一夏は……そっち系なのかなぁ」

 

…………翔、どうやら明日はただでは終わりそうにないぞ。私も全力で抑え回避できるようにするけど一夏のことになったアイツらは中々手に終えんしな。

まあ最悪また前のようにクロエを含めた3人で逃亡しよう。

 

 

――姉さんに比べれば恐れるものなど何もないのだから!!

 




ここまで読んでくださった方に感謝を!
相変わらずノリだけで書いた話。そろそろ一夏も会いたがるかなと……季節的には本編のあとだから……冬かな?
特にふんわりとしか考えてないので続くかは不明です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 織斑マドカの苦労

グッモーニン、現在朝9時。結局昨晩にマドッチとメールでやり取りした結果遊園地に来ることになった。

今日はワンピースを着てるくーちゃんと一緒に遊園地入り口まで来たのだが。

 

「はじめまして!俺は織斑一夏、一夏って呼んでくれ!いやーようやく会えたな!」

「おおう、何度か顔は合わせてんだけどね。まあ改めまして上代翔だよ。上代でも翔でもなんでもいいよ」

「そうか、なら翔!今日は楽しもうな!」

「織斑一夏……テンションが高いですね、かーくんさんに会っただけでここまでとは本当にソッチ系ではないのですよね?」

「ああ……多分」

 

織斑くん、もとい一夏のテンションが高すぎるしぐいぐい来るな。朝からトップギアだ、くーちゃんにも自己紹介しなよ。今日は四人で遊ぶんだし……いや、

 

「おっ!すまん、同じ男性操縦者に会えて舞い上がってた。織斑一夏だ、よろしくな!えーと……」

「クロエ・クロニクルです、取り敢えずクロニクルとお呼びください」

「そうか、よろしくなクロニクル!」

 

くーちゃんをクロニクル呼びする人が始めてで新鮮だ。それにしてもくーちゃんは一夏から距離とろうとしてない?やっぱ後ろの嫉妬と殺気が混ざったナニかをふりまいてる人たちが原因?

 

「……はい、間違いなくIS学園の生徒でしょう。それも織斑一夏に惚れている一年生の専用機持ちたちですね」

「国際色と髪の色が豊かなストーカーだね」

「ああいう人とは目を合わせてはいけませんよ、さあ行きましょう」

「はいはいっと、マドッチと一夏行こーか」

「おう!」

「……ホント色々とすまない」

 

マドッチも気づいてるようだ。うん、気づかぬは本人だけって言うけど一夏は全く微塵も気づいてない。束先輩なら気づいた上で無視するだろうけど一夏はそもそも気づきすらせずスルーとはある意味大物かもしれない。

 

「ようこそ、チルド遊園地へ。何名様でしょうか?」

「学生二名、無職二名で」

「……はい?」

「学生二名と無職二名です。後ろにいる二人が学生二名私たちが無職です」

「えっと……あの、えー……」

 

何故かおれとくーちゃんが人数を言うと受付の人の顔が引きつっている。

 

「どうかなされましたか?」

「い、いえ!学生二名と大人二名ですね!」

「違います、学生二名と子供の無職二名ですよ?ほら、私たち大人には見いないですよね?」

 

何やら受付のお姉さんが困った顔をしていて中々チケットが買えない。前回はどう入ったんだっけ?……あ、あらかじめネットで束先輩が買ってくれてたんだ。

しかたないので料金表を自分で見ることにするがおかしいな。

 

「一夏……遊園地って無職は入れないんだね、料金表に無職の欄がないや」

「いやいや無職って欄があったら、むしろ無職の人たちが本当に遊園地に来れなくなるぞ?」

「おいクロエ、翔。学生証のないやつは大人扱いになるんだ、そろそろ後ろがつっかえてきて迷惑がかかる。早く買おう」

「そうなんだ、マドッチありがと。どうもすみませんでした」

「では大人二名、学生二名で」

「はい、学生二名が一人1600円で大人二名が一人2300円になります」

 

そうか、無職は大人扱いだったのか……胸を張れ世界中の無職諸君!君たちもおれも遊園地では立派な大人だよ!え、なにマドッチ、違う?そうかやっぱり違うか。

 

「さて、何から乗ろう。まあお化け屋敷は無しの方向でくーちゃんにマドッチはオーケー?」

「はい、あれはいらないですね」

「ああいらんな」

「ハハッ、なんだ?3人ともお化け屋敷は苦手なのか?」

「いやマドッチはなにが出てきたか冷静に見てくーちゃんはバイトでやってるであろうお化けを(ねぎら)う、おれはお化け以上に怖いものを知ってるから怖くないし」

「それはお化け屋敷の方が不憫になりそうだな、お化け以上に怖いものってなんだ?」

「一夏の姉だよ」

 

因みに束先輩も本気出せばお化けより怖いと思う。あの二人に比べれば世界中どこを探しても恐ろしいものなどない、数十メートル蹴り飛ばされて海に落ちたことをおれは忘れない。

 

「あー、千冬姉の前からはお化けも妖怪も裸足で逃げ出すだろうな。お化けに足はないけどな!」

「いや姉さんからは逃げれないだろ」

「確実に仕留めますね、たとえ実体がなくても」

「……否定できないな。まあそんなことは置いといて行こうぜ!まずはあのジェットコースターでいいか?」

「ちょ、一夏、そう言いながら手ぇ握って引っ張らないで。くーちゃんヘルプ!」

「かーくんさんもそう言いながら私の手を引っ張ってますよ、いいんですけど。マドカさんヘルプです」

「ぐお!?クロエ服の襟首を引っ張るな!い、息が!?」

 

ワッハッハ……先頭で一夏が爽やかな笑みを浮かべつつおれを引っ張り、おれはやや必死な顔をしてくーちゃんを引っ張り、くーちゃんはいつも通りの冷静な顔でマドッチの襟首を引っ張り、マドッチはなすがまま引っ張られ事切れていた――え?

 

……ま、マドッチぃぃぃぃぃぃ!?

 

 

 

 

 

「まったく危うく窒息しかけたぞクロエ、せめて手を引っ張ってくれ。あとはしゃぎすぎだ一夏」

「すみませんでした、マドカさん」

「うっ、すまんマドカ」

「まあいいさ、次から気をつけてくれ。一夏は次やったら許さん」

「まあまあ、ほら順番まわってきたしジェットコースター乗ろうよマドッチ」

「よしきた!」

「マドカもはしゃいでるじゃないか!?」

「場所を選べば問題ないさ!」

「ぐっ、正論!?」

 

一夏は馬鹿だなぁ、マドッチは多分おれたちの知り合いの中でも一番のいい子で常識人だよ?むしろ唯一といっていいかもしれない。

 

「では乗りましょうか」

「じゃあ翔、隣に座ろうぜ!」

「いいけど何でそんなに嬉しそうなのさ」

「いや……学園には女の子しかいないから、な。気軽に接することの出来るやつがほぼいないんだ……せめて翔が入学してくれれば嬉しいんだけど」

「うん、おれが悪かったから今日は楽しもうか」

「苦労してますね」

「まあ一夏が原因であることが多いが中々にハードな追われ方をしてるからな」

 

うん、ソッチ系とかじゃなくて日頃気遣わずに居れるとこがなくてストレスが溜まってだけか。なら日頃から好き勝手して楽しんでるおれが今日くらいストレス解消に付き合おうじゃないか!いやーホント好き勝手生きてるよね!

おっと順番がまわってきた、さあさ一夏先に乗りなよ。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

その頃とある五人、一人は遠慮して来なかった……というか口にはしないが生徒会長な姉に似た変な行動をするのが嫌で来なかった。

 

「……おい、一夏のやつもう一人の男の手を取って歩き出したぞ」

「なんで男だとリードするのよ!?」

 

一夏をストーキン……追っかけて遊園地まで来ていた。既にマドカ、クロエ、翔の三人に気づかれているのだが本人達は知るよしもない。

 

「む、あの男どこかで会ったような……」

「TVではないでしょうかラウラさん?」

「そうだよ、よくTVに映ってたしね」

「……いや会ったような気がするのだが上代翔という名は聞いた覚えがなくてな」

 

ラウラが上代翔に会ったことがないか考えているがセシリアとシャルロットはTVで見たのだろうと流す。しかし実際にラウラは会ったことがあるのだ、とある空港で外国に逃亡しようとしていた上代翔に。ただそのとき上代翔が偽名を使ったせいでうまく思い出せないだけであった。

 

「それにしてもまた新しい女が現れたな」

「またライバルが増えるのでしょうか」

「一夏の友達の妹さんも惚れてたしね」

「弾の妹の蘭ね……」

「む、そうなのか。学校の外にまで嫁に惚れているやつがいるとは」

「それはもうわんさかといるわよ……?」

 

クロエ本人が聞けば鼻で笑いそうなことを話している箒たちだったが本人たちはいたって真面目であった。

なにしろ小学校、中学校の同級生に近所のお姉さんからお店の店員さんにそりゃもういっぱいいたのであった。因みに織斑千冬もモテていた、男女関係なく。ただ声をかける勇気のあるものが一人もいなかったのだがモテたりある種のカリスマ性があるのは織斑家の特性なのかもしれない。

 

「おい、一夏達がジェットコースターに行くぞ!」

「追うわよ!」

「うん!」

 

こうして五人の追走劇もといストーキングは続く。

 




ここまで読んでくださった方に感謝を!
何か長くなったので半分にして投稿しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 クロエ・クロニクルの憤慨

うーん、背中に突き刺さる視線。束先輩、妹さんが思い人にストーキングしてますよ!……あ、あの人も妹を影から見守るとか言って衛星ハックして学園の実習覗いたり大概だった。血は争えないのか。

 

「あー、腹へったな。飯食べないか?弁当作ってきたんだけどよかったら一緒に」

「味は私が保証する、一夏の飯はそこらの店よりうまいぞ?」

「そう?なら遠慮なく」

「では私も、遊園地のものは高いですし。マドカさん飲み物を買いに行きましょうか」

「ああ、一夏と翔は席を取っといてくれ。飲み物はなにがいい?」

「ありがと、ならお任せで」

「俺はお茶で頼む」

 

お昼時前ということもあり席はすぐに確保できたんだけど、座ってくーちゃんとマドッチを待ってると一夏が話しかけてきた。

 

「なあ、翔はどうしてISを動かせたとき会場から逃げたんだ?」

「えーと何でだっけ……ああ、そうだ思い出した。気を悪くしたらごめんだけど止めとく?」

「いや聞かせてくれ」

「一夏には世界最強っていう姉っていう後ろ盾になり得る人がいて安全がある程度確保されてるのに対しておれはなーんにもなかったから」

「ああ……」

「あとダルかった、面倒事は嫌だったからね!」

「ハハッ、そうか。でも今ならIS学園に入れないか?束さんも翔の後ろ盾にならなってくれるだろうし」

 

あー、確かになってはくれるだろうし実は高校に行かなくていいのかと聞かれたこともある。

 

「でも今が楽しいからなぁ、今の生活がいつまでも続く保証なんて無いけどね」

「いや、すまん。無理にとは言わないけど考えてくれたらなと思ってな」

「いや謝らなくていいよ?おれ普通は就職か進学してる年齢だから一夏が正しいよ?」

「あれ、あっ!?い、いや何か翔見てると自然体過ぎてそれが普通と思っちまった」

「ワハハハ」

 

おっと、二人が帰ってきた。その後四人で一夏が作っねくれた弁当を食べたんだけど本当に美味しかった、料理人にでもなれそうだ。

 

――因みにマドッチがお任せで買ってきてくれたのはファンタだった、まあ予想はしてたよ?

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

マドカさんと飲み物を買いに来ましたがそろそろ鬱陶しくなってきましたね。かーくんさんはわかった上で無視してるみたいですが私はそんなに気が長い方ではないのです。

 

「マドカさん、今から日本と中国、イギリスにフランス、ドイツを世界から切り離します」

「ん……?待て待てクロエ、ここでISは使うな。騒ぎになるぞ?」

「大丈夫ですマドカさん、私のISは展開しなくても使えますので。ええ、大丈夫ですよ大気成分に作用させて幻影を見せるだけですので!」

「とりあえず落ち着けクロエ!」

 

落ち着けません、ストーキングだけならまだしも妬みや殺気みたいなものを向けられればイライラもします!思い人にまた惚れる人間が出来ないか不安なのは理解できますが私やかーくんさんは惚れません!

 

「それに織斑一夏に惚れる人間が今更一人や二人増えても変わらないでしょう!」

「身も蓋も無くなってきたな!?」

「恋する盲目少女たちを騙せ、ワールドパージ!」

「あっ!?」

 

ふぅ、この程度ちょちょいのちょいでお茶の子さいさいです。織斑千冬に破られてから精度に速度をあげる練習をしてたんですから。

 

「おい、箒を除く四人がイチャイチャし始めたぞ……」

「四人はそれぞれお互いが織斑一夏に見えてますね。束様の妹は下手に幻覚を見せると束様に悪いので適当なものを見せてます」

「……アイツら大丈夫なのか?」

「はい、あのまま帰って部屋に戻れば効果は切れますよ」

「そうか、まあならいいか。ストーキング自体良くないことだしな、半分は自業自得ということで納得してもらおう」

 

ええ、ただ部屋に戻ったときにイチャイチャとデートしてたつもりの思い人がライバルの女になるというショッキングなことになりますがこれは黙っておきましょう。

 

「さて飲み物を買うか、翔はお任せ(ファンタ)だったな」

「おかしいです、マドカさんからファンタとお任せという言葉がダブって聞こえました……」

「クロエは何にする?」

「水にしま」

「そうかファンタか」

「マドカさん!?」

「気にするな私の奢りだ!」

「えー……いや、ありがとうございます」

 

お金を出してもらってしまってはなにも言えないです、まあ嫌いではないのでいいのですが。ご飯ならジュースは止めて水にしようかと思ったのですけど、マドカさんの善意……ファンタへの思いを無下にする必要もないので大人しくファンタを飲むとしましょう。

 

「一夏は……チッ、お茶だったな」

「織斑一夏はお茶なんですね」

「アイツは健康にうるさいんだ。やれ運動後に冷えすぎの飲み物は良くないだの、やれ夜の食べ過ぎは良くないだの、ファンタの飲みすぎはよくないだの……いつか決着をつけてやる!」

「じじ臭いですね、まあそろそろ戻りましょう」

「ん?そうだな、結構時間をくってしまった」

 

じじ臭いと言いましたが織斑一夏は母みたいですよ、料理ができて健康を気遣えて。まあ私に親はいないのではっきりとはわかりませんけどね!

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

一夏の弁当をご馳走になったあとにはお化け屋敷以外のアトラクションをまわったんだけどお昼食べる前くらいからいつの間にか視線を感じなくなった、帰ったのかな?

 

「あー、楽しかった。そろそろいい時間だけど最後に四人で観覧車に乗らない?」

「お、いいな。二人も乗ろうぜ」

「そうだな、なら締めに行くか」

 

前には三人で乗った観覧車だけど今度は一夏が増えて四人で乗ることとなった。

 

「おー、観覧車っていいな。景色がいいし」

「前マドッチが同じこと言ってたよ」

「ぐっ……一夏と同じ感想とは」

「その反応は傷つくぞマドカ……そういやさ」

「ん?」

「さっきも言ったんだけどIS学園に入らないか考えてくれないか?」

 

あー、その話ね。

 

「まあ束先輩やくーちゃんと行けるなら楽しそうなんだけどね、マドッチもいることだし」

「かーくんさん申し訳ないですが私は無理ですね。仲のよい人と他人には態度にかなりの差が出てしまうので集団には向いてないんです……」

「一夏には悪いけど現状は無理かな。ごめんよ本来なら学生のはずなのにさ」

「いやいや、二度も悪かった」

「まあ男友達と遊びに行きたくなっらまた誘って、基本的に暇だし……日本にいたらいくよ」

「外国に行ったりするのか?」

「はい、それに宇宙ですね」

「相変わらずフリーダムだな」

 

一夏には悪いけど今はこの生活が一番楽しいから止めらんないね!束先輩やくーちゃんと過ごせなくなるのも寂しいしさ。

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

観覧車から降りたあと解散して、くーちゃんとラボに帰ったのだが……

 

「束先輩ただいまー」

「ただいま戻りました」

「うわぁぁぁぁぁん、酷いや酷いや!かーくんにくーちゃんが束さんをほって遊びに行ってた!」

「えー……昨日のうちにあらかじめ言ってたじゃないですか、束先輩うとうとしてたけど」

「私も言いましたよ?束様寝てましたが」

「かーくんはともかくくーちゃん寝てるときに言っても意味ないよ!?」

 

束先輩がごねてた、散らかるんで床に寝転んでじたばたしないでください。そう思ってると束先輩は飛び起きこちらへビシッと指を突きつけた。

 

「よし、今から三人で出掛けるよ!せめて晩御飯でもいいから束さんも一緒に出掛けるんだ!」

「どんだけ行きたいんですか……まあいいですけど、ほら支度してください」

「どこに行きましょう?」

 

行き先は歩きながら考えることにして束先輩とくーちゃんの三人で再び外出することとなった。お肉食べようお肉!とか束先輩は言ってるし焼き肉でいいかな?くーちゃんも何だかんだで楽しそうだしおれもやっぱり楽しい。

 

 

――やっぱ一夏には悪いけどさ、この生活は手離しがたいなぁ。

 




ここまで読んでくださった方に感謝を!
長くなったのでぶったぎった後半部分を連投。

くーちゃん噴火の巻。くーちゃんは身内以外には結構理不尽だったりします、友達になると変わるはずです。
五人も合流させようとしたけど滅茶苦茶長くなるので今回は諦めました!誰にかはわからないけどごめんなさい!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

もしもの学園編

上代が逃げれてなかったら?そんなお話。


どうも、上代翔です。現在ごくごく一般の高校へ入学してたはずにもかかわらずIS学園へと入学をしてしまいました。

原因は目の前に座っている織斑一夏、彼が試験会場をダイナミックに間違えISを動かしてしまったことにより、全国で一人の男性がISを動かせたなら他にもいるのじゃないのか?という考えのもとに行われた~ドキッ☆男だけの全国統一IS適正テスト~で見事に動かしてしまった人間がいた。

 

おれである、実験体にされそうだと逃げようとしたんだけど目の前のISなら楽に逃げれるんじゃないかな?って考えたのがミスだった。壁にぶつかって抜けなくなった、なんでかなISなら抜けそうなのに抜けなくなったんだよ。お前ISに乗ったからには逃がさないぞと言わんばかりに抜けなかった。

それでこのざまである、怠けずに走って逃げればよかったと後悔しても後の祭り、実験体にはされてないものの女の園IS学園に来てしまった……教室内がシャンプーか香水かわからないけど女子っぽい香りで充満しててグッド!

しかし周りからのジロジロ見てくる目線は辛い、性癖が特殊な人ならこれにも興奮できるんだろうけど……待て、おれもそうなれば!はぁはぁ、美人な同級生からジロジロ見られてる!こ、こうふ……やっぱり無理だ、性癖とかそんなにすぐ変えられないや。ついでに現実逃避もそろそろ辛い。

 

――ならば逃げよ!撤退、撤退だ!駄目です包囲されています!ええい、死力を振り絞り活路を開、あ、予令。廊下まで埋め尽くされていた生徒が帰っていったぞ、戦わずして勝ったぞ!いまだ!今なら逃亡が可能だ!

いや、逃げようとしてた理由の視線がなくなったし逃げる理由もなくなったのか。

 

そんな下らない恥ずかしいことを考えていると眼鏡、低めの身長、胸は大きい先生が入ってきた。山田先生っていう副担任らしい、そして担任である先生は目の前の織斑一夏の自己紹介中に来た。

 

「お、織斑くん。自己紹介をしてもらえないかな?」

「あ、は、はい!織斑一夏です、これからよろしくお願いします!――以上です!」

 

こう織斑一夏が自己紹介したときにはクラスのほとんどがずっこけていた、素晴らしいノリだと思う。そしていつの間にか目の前の織斑一夏の斜め後ろに威圧感放つスーツ姿の女性がいた……え、本当にいつの間に?目の前なのに気づけなかった。その女性は織斑一夏の頭を出席簿で叩き

 

「馬鹿者が、自己紹介もまともにできんのか」

「いって!え、千冬姉!?」

「織斑先生だ」

「いだ!?」

 

彼女は姉か、織斑一夏の姉か。その後、担任であることが判明、「逆らってもいいが私のいうことは聞け」とか堂々と言うなんてカッコよすぎである。何かカリスマ的なものも感じるしクラスの女子も沸き立っている。

ちょっと頭が沸いたようよな「お姉さまのためなら死ねます!」とか「躾をしてー!」って台詞も聞こえたけど皆テンション高いしこの空気と織斑先生のカリスマに流されたせいだと思う、そうであってほしい。

 

「まあいい、自己紹介を進めろ。おい、騒ぎに乗じて出ていこうとしてる上代戻って自己紹介をしろ」

「おふ……上代翔です、よろしくお願いします。好きなことは楽しければ大体です」

 

バレた、みんなが盛り上がって織斑先生に注目してる中なら抜けれると思ったのに。ひとまず席に戻って普通に自己紹介を済ませておく、織斑先生は視野が広いや……

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

一時間目の授業、ISの基礎理論授業。面白いくらいにわからない!事前に読めと言われていた辞書みたいな参考書は一応読んだけどわからない。

猿に辞書渡しても読めないのと同じで、ISの勉強してなかったおれが一般生徒が入学前に読む参考書読んで解るとでも思う?そう、わからないさ!

頭から煙をあげたまま授業が終わってしまった、やってきました休み時間!トイレにでも逃げようと思ったときには囲まれていた!

 

「……不覚」

「なあ」

「うん?」

 

前から男子に話しかけられた、織斑一夏だ。

 

「俺は織斑一夏、一夏って呼んでくれ」

「上代翔、上代でも翔でもどぞー」

「そっか翔よろしくな……正直女ばっかりで辛いから本当によろしく頼む!」

「こちらこそ一夏、どうにも居心地が良くないよね。視線が多くて逃げずら……逃げ出したい」

「だよなぁ……」

 

ホントにね、でも視線が多いせいで逃げにくいんだよなぁ。窓から出て逃げてもすぐ終われるだろうしやっぱり今日の帰宅のときにトンズラこくのが一番いいのか。

そう考えつつ、一夏と話しているとポニーテールの子がこちらへやって来た。

 

「ちょっといいか?」

「……箒?」

 

どうも一夏の知り合いらしい、ここでは話しにくいらしくそのまま一夏を連れて廊下へと出ていった。

 

さあ!そのことによって女子の中に男子一人という状況になったよ!スーパーボッチタイムだ!

自分の席からある一定の距離をとって囲まれている状態なんだけどいっそのこと誰か話しかけて来てくれないかな?兎は寂しくても死なないけど人間会話がないとボケるんだよ?

そんなことを思えど誰も話しかけてきてくれずに授業のチャイムがなった、そしてギリギリに帰ってきた一夏は織斑先生に叩かれていた。南無三。

 

 

 

 

 

 

 

二時間目、相変わらずわからない。

あまりにも理解してないと顔に出ていたのか山田先生にわからないところがないか聞かれた、一夏と一緒に。

 

「わからないところは聞いてください、なにせ先生ですから!」

「先生!ほとんど全部わかりません!」

「後ろに同じくほぼわかりません」

「え……ぜ、全部?」

「「はい」」

「……おい、織斑、上代。入学前の参考書は読んできたか?」

「古い電話帳と間違えて捨てました」

「読みましたが解説の優しさが足りずに9割は理解出来ませんでした」

 

そう答えた瞬間にパンッ!という音が空気を震わせた。目の前に座っていたはずの一夏が机に伏している、目線を上げれば織斑先生が持っている出席簿が今しがた一夏を叩いたと言わんばかりに煙をあげている。

――どんな威力で叩いたのだろうか。そして一夏は何を思って電話帳と間違えて捨ててそれを素直に言ったのだろうか……濁して紛失したと言った方が幾分マシだったように思えてならない。

 

「どこの馬鹿が電話帳と間違えて捨てるんだ。ああ、ここにいる馬鹿者か……再発行してやる、一週間で覚えろ」

「い、いやあれを一週間ではさすがに」

「やれ」

「ハイ」

 

織斑先生の圧力に耐えきれずに一夏が折れた、なんとも有無を言わせぬ迫力のある睨みである。

 

「上代はどこが理解できんかったのだ」

「だいたいです、単語は覚えても数式とかそこら辺入ったらわかりません!数式を理解してることが前提で書いてあったんで数式があるとこから全部わかりません、あと単語自体が専門用語すぎてちんぷんかんぷんです」

 

あと基本的に数学は苦手だ、XとかYとかもう英国に帰れと思いながら受験勉強したのにそれを遥かに凌ぐレベルの数式が解説なしで参考書にはいるのだ。あきらめた。

 

「はぁ……わかった、放課後に織斑共々教えてやる。山田先生もご協力願えますか?」

「は、はい!織斑くんも上代くんもわからないところは放課後に教えてあげますからがんばって、ね?ねっ?」

「はい、それじゃあお願いします」

「お願いします」

 

放課後も勉強かぁ……まあ逃げ、いや真面目に受けよう。なんか逃げようと考えた瞬間織斑先生と目が合った、へへっ、こいつぁ逃げられねぇや……。

 

「上代は単語はある程度覚えているんだろう?なら数式さえ理解すればなんとかなるはずだ、放課後にしっかりと頑張るといい」

「はい」

 

取り敢えず放課後の補習を受けてから逃げよう、そうしよう。

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

2時間目終了後に一夏とおれのもとに金髪ロールの子が来た。

 

「ちょっと、よろしくて?」

「また一夏の知り合いなの?」

「へ?いや、違うけど」

「聞いてますの?お返事は?」

「よろしくてよ」

「あ、ああ聞いてるけど」

「まあ!なんですのそのお返事は!わたしくに話しかけれているだけで光栄なのですからそれ相応の態度というものがあるのではないかしら?」

「土下座?」

「いや、なんで土下座なんだよ……悪いな、君が誰か知らないし」

 

誠意を込めた単純かつ至高の態度。早く説教から逃げたいときに中学で試したらすぐに終わって帰れたのはいい思い出である。

にしても一夏は顔に苦手だって出てるし自己紹介してたのに覚えてないのか、ププッ!

おれも覚えてない、誰だろうか、この金髪ロールは。

その発言を聞いた彼女は激昂、荒ぶる金髪ロール!どうでもよさそうな顔してる一夏に視線は釘付けだ!

 

「このイギリスの代表候補生にして入試首席のセシリア・オルコットを知らないですって!?」

「あ、質問いいか?」

「下々の要求に応えるのも貴族の務めですわ、よろしくてよ」

「代表候補生ってなんだ?」

「は、は……はぁ!?本気でいってますの!?」

 

後ろから金髪ロールさんの更に荒ぶる声が聞こえる。因みに一夏、代表候補生は字面のままで各国にいるISの国家代表の候補生だよ。はいはい、失礼ちょっと道を開けてー。

 

「な、なあ翔は知って……あ、あれ?翔がいないぞ……?」

「な、何ですって!?どうして男というのもはこうですの!?」

 

金髪ロールさんの意識が一夏にロックオンしてる間に廊下に逃げて見つからないように予令までしゃがんでおく。あと世の中の男性よ、ごめんよ、イギリスの代表候補生からの男への心象が下がったようだ!

 

「ねーねー、かけるんは何で廊下でしゃがんでるの?」

「それはね、あの金髪ロールの子が荒ぶってるからだよ」

「へー、おりむーが大変そうだよー」

「一夏は犠牲になったのだよー」

 

何かのんびりした子が話しかけてきたけど話し方ものんびりしてる、それを見た他の子達も話しかけてきた。

廊下の壁際に座るおれ。それを同じくしゃがんで囲んで話しかける皆、シュールである。教室内からはまだ金髪ロールさんと一夏が話してる声が聞こえる。

 

「上代くんは家族で誰かIS動かせたりISに関係してる人っているの?」

「いないよ、誰もいないよ」

「じゃあじゃあ!知り合いとかには!?」

「いないなぁ……」

「何で動かせたの……?」

「なんでかな……?」

「織斑くんとは何話してたの!?」

「軽い自己紹介とかだよ」

「今年は薄い本が厚くなると思わない!?」

「ちょっとごめん、理解できない、したくない!」

 

怒涛の質問攻めである、割りと皆フレンドリーだけど数人怪しい、何が怪しいって攻めとか受けとかカプとか聞こえる!金髪ロールさんから逃げた先は新たな危険ちたいだった。腐海だ……これなら樹海の方がいくぶんマシだよ!

その後予令が鳴るまで質問攻めにあった、腐ってそうな質問は初めは緩やかーにかわしたけど最後には叩っ切ってた。腐女子は帰れ!「フッ、また来るわ」じゃないからヤメテ!もうやだこんなとこ!

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

3時間目、わかりませんでした。おわり。

なんかクラス代表を決めるとかで一夏とおれが他薦されて、それに金髪ロールは激昂。

極東でサルでサーカスやってられるかー!ってなこと言ったら一夏もメシマズがほざきよるわ、と売り言葉に買い言葉。

 

ついには決闘でクラス代表を選ぶことになったのだけど何故かおれも強制参加することに、織斑先生に何故か聞いたら

 

「ぶっちゃけアイツらの猿だのメシマズだの下らん餓鬼の喧嘩はどうでもいい。これはクラス代表を決めるために行う。なので上代も参加だ、わかったか?」

 

本音が駄々漏れであるこの教師。そんなこんなで参加が決まったのだけど、うん今日もう逃げるから関係ないんだけどね!

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

その後滞りなくわからないまま授業は終わり放課後となった。なんでも今日は補習はなく明日からやってくれるみたいだ。

ならば帰宅あるのみ!既に有り金はすべて持ってきてるしこのまま家にも帰らず逃亡あるのみ!

モノレール乗り場へ向かうぞハリーハリーハリー!

 

「おい、上代」

 

……織斑先生が何故か後ろから声をかけてきた、冷静に返事をするんだ、逃亡を察知されるな!

 

「あ、織斑先生こんにちは」

「ああ、それでどこへ行くんだ?」

「帰宅ですが?補習は明日からのようですので今日はもう帰宅しようかと」

「そうか、そのことだがな。今日から寮生活だ」

 

……ん?

 

「What?」

「だから今日から寮生活だ、荷物は宅配業者がお前の部屋に届けている。部屋は1025号室だ」

「う、嘘だ!?」

「嘘をついてどうする、お前は今日から寮生活で部屋は1025号室だ。そらちょうど私も暇だ、部屋まで案内してやる」

 

ぎゃー!織斑先生、襟首掴んで引っ張らないで!首絞まりますから!帰らせて、帰らさせて……家に忘れてきたものがあるんです……!自由を忘れてきたんです!

 

 

――ああ、学園から逃げられない……。

 




ここまで読んでくださった方に感謝を!
前に少し要望があったので書いてみましたが学園に入れるとやっぱり自由度が下がってはっちゃけれませんね……ただのテンプレじゃん!何より織斑先生がいることで制限がかかるのなんの。
続くかは不明、なにも考えてないので。

あともしも続いてもシリアスは来ない、絶対にだ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 バイク

もうそういや16歳である、16歳になってできるようになることといえば……バイクに乗れる?

 

「束先輩、バイクに乗ってみたい。そろそろ乗れる年齢な気がするんだけど」

「いやいや、かーくん免許ないじゃん」

「かーくんさんは今まで逃亡してたわけですし教習所にもいってませんしね」

 

免許……?あ、そっかバイクには免許がいるんだった。16歳でバイクに乗れるんじゃなくて16歳で免許が取れるようになるんだった。

 

「ISには免許いらないのに?」

「そういえばそうですね、かーくんさん」

「あれ……いやいや、でも色々制約とかあるんだよ?特に専用機持ちなんていっぱいだよ。いっくんも箒ちゃんもそうだし」

「はー、そうなんですか。でも免許はいらないんですよね?」

「うん、でもバイクはいるね」

「えーなら束先輩が運転して横に乗せてください」

「無理だね!だって束さんも免許持ってないし!」

 

なんと、束先輩ならそれくらい持ってると思ったけど……いや逆に持ってないか、だって束先輩だし。興味ないしバイク乗るなら自分で作ったのに乗るよ!とかいってそう。

まあでも、ISはISで乗る人間は学園なりそれ相応のところで訓練は受けるらしい。そうかIS学園は学校とISを乗りこなす教習所の面があったのか、でも専用機持ちは表向きは更に技術向上のため、裏では色々事情有りで学園に来てるらしいけどそこら辺は面倒くさそうなので置いとく。男性IS操縦者のデータとか遺伝子とか色々。

 

「あ、でもISコアを使ったバイク作ればIS扱いになるから免許いらないね!」

「それに絶対防御も付きますし安全性も抜群ですね」

「しかもエネルギーが切れても自然に回復、エコに最適だね!」

「ぜひ貴方のお家にも!」

「一家に一台!」

「ISバイク!」

「まあ、束さんはISコアを467個しか作ってないし無理だけどねー」

「まあ一国に一台はいきますし十分ですよ」

「大統領専用とかにすればテロにも対応可能だしオススメだよね」

 

これアイデア商品として使えないかな?特許取ってお金貰えないだろうか、現状束先輩に養ってもらってる状態だしなんとか多少は稼ぎたい。

 

「いやいや、かーくん気にしなくていいんだよ?あとそれで特許は取れないかな。ISコアの数が少なすぎること、あと根本的にISコアを女しか動かせないって欠点があるしね」

「あ……忘れてた、そういやそうだった」

「かーくんさん使えますし、まあ忘れても仕方ないですよ。そもそもISに触れてませんし」

「触れる機会ないしねー、だいたい競技のためとか国の防衛とか楽しくなさそうだし」

「そうだよ、楽しくないよ!月までレースとかやるならもっと束さんもISコアを作ってたのにみんな国の防衛だの戦力がなんだの……アホかぁぁぁぁ!」

 

束先輩の鬱憤が爆発した!

 

「あーもう!むしゃくしゃする!」

「どうどう、束様落ち着いてください」

「よーしよしよしよし!」

「むつごろう!?くーちゃんも束さんは馬じゃないよ!?」

「まあ落ち着いてくださいよ束先輩、世界なんてあれですよ。道端の小石かホモかバイ、俺みたいな平凡な男一人追いかけ回しますし束先輩も追いかけてますし」

「平凡なの……?」

「平凡ですか……?」

 

なんだ、二人揃ってその信じられないものを見る目は。別に国に指名手配されて逃げ回って樹海に飛び込んだりIS学園に拉致られたり密航しようとしたりしただけじゃないか。

 

「だんだんかーくんさんも毒されてますね」

「なんだいくーちゃん、どうして束さんを見ながらいうのかな?」

「いえ、世界を道端の小石扱いなのは束さんに似ているなと」

「なん……だって?束先輩に似てきたとか大変だ!?でも正直他人の顔とかあんまり見分けつかない!」

「あ、一緒だよ」

「かーくんさんが名前を覚えてる方は私たちを除いて何人いますか?」

 

えっと……一夏、千冬さんマドッチに束さんの妹さん、ボーデヴィッヒさんとスコールさんとオータムさん。あれ、7人?

 

「……7人?」

「束さんはいっくんとちーちゃん、箒ちゃんとまどっちだよ!」

「どんぐりの背比べですね、私も10人もいませんが」

「ふふふー、皆お揃いだね!ぶいぶい!」

「駄目なお揃いですよ、これ」

 

束先輩ピースしてますけど誇れることじゃないですから!むしろ人としてなにかが決定的に駄目な気がします、おれもですけど!

 

「で、そもそも何の話してましたっけ?」

「バイクに乗りたいってかーくんが言い始めたんだよ?」

「それでかーくんさんは免許がないので無理と」

「うーん、諦めるしかないかな。免許とるほど乗りたいわけでもないし」

 

そう言うと束先輩はフッフッフーと怪しく笑う。あ、これ絶対良からぬこと考えてる。

 

「かーくん、さっきも言ったけどISのコアを使ってバイクをつくればいいんだよ!そうすれば免許もいらないしね!」

「え、えー……ネタじゃなかったんですか」

「イエス!思いついたことは何でも試さないとね!音速を越えるバイクがつくれるよ!」

「免許すら持ってないかーくんさんが乗れば事故確定ですね」

「神風特攻……しかも絶対防御で乗ってる本人は無傷とか質が悪すぎる!束先輩やめましょう!」

「えー!面白そうだしつくろうよー!」

 

たしかに面白そうですけど!間違いなく木っ端微塵になる死人が出ます!しかし束先輩はもう作る気満々のようである……よし。

 

「なら千冬さんに一度それを作るって伝えてみてください。試乗してもらえないかってことで」

「……そうですね、いきなりかーくんさんには荷が重そうですので束様の親友にお願いしてみましょう」

「んー、そうだね!ちーちゃんなら乗りこなせるよ!」

 

……そういって束先輩は千冬さんに連絡を取りにいった。ふぅ、くーちゃんが意図に気づいてのってくれてよかった。

 

「くーちゃんありがとう」

「いえ、あのままですと本当に作られそうでしたので……」

「まあ千冬さんに電話すれば」

「間違いなく止められますからね、これでひとまず安心です」

 

 

そうして二人でお茶を飲んで束先輩を待ってると、恐らく滅茶苦茶怒られたであろう束先輩がネガティブしょって帰ってきたのでくーちゃんと慰めるのであった。

 




ここまで読んでくださった方に感謝を!
久々に書いてみましたが何か上手く動かせませんでした……もうちょっとフリーダムだった気がする。
次は季節ネタをいつか書きたいですがそのときにはもう少し本編みたいに動かしたいです。


@Bambino_or Twitterでどうしよもないこと呟いてます、ええホントどうしよもないこと。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 暇潰し

 ある冬の日のこと、束先輩とくーちゃんと珍しくゆったりお茶を飲んで過ごしていた。

 

「あー、お茶が美味しいね!」

「いつになくゆったりしてますよね……こたつなんてラボにあったとは」

「ううん、作ったんだよ?」

「えー、ならこの布団はどうしたんですか?」

「押し入れの中から取ってきました」

「掛け布団じゃないの、これ? こたつ用じゃないよね」

 

 そのわりにはやけにピッタリだけど……いや、束先輩が布団に合わせてこたつを作ったのか。

 

「基本的に束先輩の技術力は、無駄遣いされてる気がしてならない」

「下らないものもたびたび作られますしね、ビームサーベルでパンを切れば切ったときに既に焼けるよ! と言われて作られたものもありましたが……」

「消し炭になって終わったね、パンとついでに机が」

「こ、コアは役立ってるよ! ISコアは! 世界中に束さんが追いかけられるくらい大人気さ!」

 

 でも束先輩からしたらめんどくさいだけじゃ……束先輩が楽しくて周りに迷惑かからない発明って宇宙船以外に見たことがない気がする。

 

「さながら天災のごとく世界を掻き乱しましたよね。いえ、それは世界が勝手に兵器として扱ったからなんですけど」

「仕方ないですね、世界なんてそんなものです……」

「すごいくーちゃんが悟ってるよ!?」

「背伸びしたい年頃なんです」

「そんな台詞を自分で言えてる時点で、くーちゃんは既に背伸びする時期通りすぎてそうだよ」

 

 おれも背伸びする年頃な気はするんだけど……そんなことしてる暇なかったよね! 背伸びとかして見栄張ってたら今ごろ捕まってただろうし!

 

「ただ料理に関しては皆、背伸びせずコツコツやろうね」

「チマチマやるの束さん苦手なんだけどなぁー」

「使えない消費期限切れた食材を平然と使おうとする時点でコツコツとか関係ないですよね?」

「手探りでつかみ出した食材で闇鍋もどきも駄目です、あれは死人が出ます」

「特におれとくーちゃんは束先輩ほど頑丈じゃないんですからホント死にますよ?」

 

 そう言うと束さんはいじけて三角座りをして、床をゴロゴロしてるがさすがに食中毒とかなると命に関わるので、そのまま反省しておいてほしい。

数日したら忘れてそうな気もするけど。

 

 束先輩以外……おれとくーちゃんは台所の惨状を改めて思い返すと、いつか惨劇を生み出しそうなことに今更ながら気づき台所の掃除へと向かった。

 この頃、皆掃除サボってたからなぁ。正月って駄目だね、色々やる気でなくて。

 

 そうして台所へたどり着いたんだけど、だけど……これは酷い。

 

「な、なんだコレ。正月だからサボってたけどここまで汚れるかな……? ここは台所じゃない、腐海だよ」

「臭いもします、腐海というか不快です。あ、束様逃げないでください、束様も手伝ってください」

「抜け駆けは許すまじ! 束先輩も手伝って、ていうかこの惨状に心当たりありませんかね?」

「ね、ね……ね、年末年始だからってはしゃいでたら冷蔵庫開けたまま忘れてたなんてことないよ!」

「……軒並み束先輩のせいなのが確定」

 

 珍しく束先輩も飲んでたからなぁ、そして正月だから食事はおせちで数日過ごしてて冷蔵庫とか見てなかったし。

 まあ取り敢えずそのことは置いといてちゃっちゃと片しましょうか。

 

「はいはい、取り敢えず消費期限切れてる食材捨てましょうよ!」

「干からびた野菜などもあるのですが……腐ってるものもあります」

「ふやけたカップ麺もあるよ!」

「平然とそんなもの出さないでください! いつのですか、というかふやけたカップ麺って冷蔵庫開けっぱなしなの関係ないですよね!?」

「本当にここは台所なんでしょうか……?」

 

 いや、ごみ処理場とかごみ屋敷の一室って言われた方がしっくりくるよね……。もう食材全般ダメになっていたので処分することとなった。

 今年の目標は食べ物を無駄にしない、にしようかな。

 

「まあ、逃亡するときに食品とか基本的に捨て置いてるから無理そうなんだけど。追手の人たちが美味しくいただきました、とかやってくれてたらいいのに」

「微塵もその可能性がないことを束さんは知ってるのさ……基本逃亡したあとのラボって爆発させてるし」

「むしろ爆発させてるなら追手の人が心配ですよ。まあ束先輩のことだから、そこらへんは上手くやってるんでしょうけど」

「めんどくさいから最大火力でやっちゃってるよ! フハハハ! まあ皆IS装着してきてるし無傷だよ……きっとたぶん」

「もう束様が、きっと、多分などというと心配でならないのですが……」

 

 ジト目でくーちゃんと束先輩の方を見てると下手な口笛を鳴らしつつ顔を逸らした、ホントに大丈夫ですよね?

 いや、なんだかんだで束先輩は大丈夫になるように考えてるんだろうけど……たまに抜けてるからなぁ。

 

 そうして駄弁りながら台所の掃除を終えたけど、劇的ビフォーアフターみたいな感じで綺麗になった。まあ、あるもの全部捨てて拭いただけなんだけど。

 

「やっぱり掃除はサボると駄目ですね、特に束先輩と過ごしてると」

「唯一散らかすのは束様ですしね、そして一番散らかすのも束様。かーくんさんと私は普通に片付けてますし」

「汚れるとこに束先輩あり、か」

 

 なんとなく黄昏た風にそういうと、また束先輩がいじけ始めた。でもホントに散らかってる中心によく居るんだから仕方ないじゃん。

 

「ラボの持ち主は束さんなんだし散らかしてもいいと思います! ……いや、ごめんなさい束さんが悪かったからそんな目で見ないで!?」

 

 束先輩が開き直ったけど、おれとくーちゃんは残念な子を見る目で見てるとすぐに折れた。今日は束先輩が情緒不安定だなぁ。

 

「理不尽で我が道を行くのが束先輩なのはわかってますが……」

「ルール無視ゴーイングマイウェイなのが束様なのはわかってますが……」

 

 そう言ったあとくーちゃんと言葉が被る。

 

「冷蔵庫開けっぱなしで食べ物腐らしたり、散らかしたものを片付けないのはいい歳してどうかと思います」

「録な大人じゃないんだ、ごめんよ!」

「わかってますから開き直らずに直そうとしてくださいよ」

「をう……わかってるって言われた!?」

「んー、束様が悪いです」

 

 ガーン! と口に出しつつ束先輩はショックを受けた振りをしてる。

 

 ――いつの日か束先輩に掃除を癖付けられる日は来るんだろうか……?

 




ここまで読んでくださった方に感謝を!
大体気づかれてると思いますが、『あいうえお作文』で書いてました。無理やりなところなど結構あったので次いつかやるときには直したいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 身体測定

ふと、珍しくくーちゃんが脈絡なく……あれ?珍しくもないかな、基本何かしら脈絡とか常識とない人間しかいないしね、ここ。

何はともあれ、くーちゃんがふと疑問に思ったらしいことを口にした。

 

「束様の身体能力がチートを越えたナニカなのは知っているのですが……」

「チートを使う人間、チーターだね」

「チーターは狙った獲物を俊敏な動きで追いかけ捕らえますね」

「そのチーターじゃない、cheetah(猫科動物)じゃなくてcheater(イカサマ野郎)の方だよ」

「ふふ、わかってますよ……えーとそれで、束様がイカサマ野郎なことはわかっているのですが」

「束さんはイカサマ野郎じゃないよ!?純粋なもともとの身体能力だよ!」

 

おれが逸らした、いやくーちゃんも逸らしていったんだけど。ともかく、くーちゃんが本題に戻そうと、そこまで言ったところで束先輩がツッコミを入れてきた。

 

「なんですか束先輩。くーちゃんがせっかく話を本題に戻そうとしたのに話の腰を折って……」

「そうですか、束様は私の話なんて聞きたくないんですね……」

「あ、あれぇ、これ束さんが悪いの……!?く、くーちゃんの話聞きたいなぁ!」

「はい、では改めて。束様のスーパーマンも真っ青な身体能力は知ってますが、かーくんさんの身体能力はどれ程のものなのでしょうか?」

「スーパーマンの服はもとから青いけどね……え、おれの身体能力?」

 

そんなの普通でしょ?運動神経よかったら体育とかで活躍してただろうけどそんなこと一切なかったし……

 

「そう言われてみれば気になるね、かーくん身体測定をするよ」

「え?断言ですか、決定ですか?めんどくさいです!」

「かーくんさん、さっさとやりましょう。ほら早く束様に着いていってください」

「ちょっとくーちゃん引っ張らないで、どこにそんな力があるの!?」

「ISと合体してるんですよ、私。実は何気に力持ちです」

 

衝撃の真実である、くーちゃん隠れマッチョ。厳密に言えばISコアからエネルギーを供給したり、なんやりしたら力持ちになるらしいけど難しいので省く。

 

「そう考えればくーちゃんも結構身体能力高くならない?」

「いえ、私の場合はISコアを使うのでそれこそチーターになります」

「チーター風の猫耳つけたくーちゃんですとな、見てみたい」

「どうして猫耳に……?いえ、可愛そうなので機会さえあれば着けてみてもいいですが」

 

なんと、何となく言ったけどくーちゃん本人が着けてくれると言ってくれた。見れるなら見たい、是非もなく!

 

「機会さえあれば、機会さえあれば束さんが猫耳を今すぐ作ったのに……!そういや束さんのケモミミには興味ないかい?」

「束先輩は、いつもメカウサミミ着けてるくせに何を今さら」

「眼鏡着けてる人が眼鏡探してるかのようですね」

「そうだった!?」

 

束先輩天才じゃないの?なんでボケたおばあちゃんみたいなことしてるのさ。

 

「そ、そんなことよりかーくんの身体測定だよ!」

「ふぅ、誤魔化しにかかってるのはわかってるけど、大人なおれはそこには触れずに素直に身体測定を受けることにします」

「全部口に出てるからね!?」

 

 

 

 

 

そうして連れていかれた地下には大きなスペースが……いつつくったのだろうか、これ?

聞いても、さっきだよ?とか言われるのが目に見えてるし聞かないけど。

 

まずは100M走かららしい。束先輩とくーちゃんがゴールであると思われるところにいる。

 

「じゃあ無難に100M走ってみよー!はい位置についてー!よーい!ドン!」

 

束先輩からのスタートの合図を聞くと同時に全力で走った……そのタイムは。

 

「11.36秒……全力で走った?」

「はぁ!はぁ!……全力ですよ?11秒って十分速くないですかね?」

「うーん、速いんだけど束さんは余裕で10秒切るよ?」

「まあ、次を測ってみましょう」

 

続いて握力測定、どんなとんでもない測定器が出るかと身構えていたんだけど普通のものだった。

 

「なんだ、握力が一定超えると変身出来るとかギミックないんですか?」

「しまった、やればよかった!?」

「よいしょっと……右67kg、左62kgかぁ」

「普通に高めだね?片手で自重支えれるくらいの力はあるね」

「ですが普通にってレベルですか……こう中身の入った缶を握り潰せるくらいはあるかと」

「それ100kg超えてるから」

 

なんでくーちゃん、おれか普通の範囲に収まると首をかしげるのかな?

 

「まあ、一人で逃亡してるときに片手でぶら下がらないといけないときもあったし、それくらいあれば上々だよ」

「そんなことあったんだ……」

「警察に追いかけられてるときに、歩道橋からトラックに乗ろうと飛び降りたらちょっと」

「かーくんさん、アクション映画みたいなことしてますね」

「死ぬかと思ったよ、タイミング間違って片手でトラックの荷台に必死にしがみついたし」

 

後ろの車の人の驚いた顔は今でも忘れられない。

 

「それ握力60kg台じゃ無理だよね?」

「火事場の馬鹿力でしょうかね?」

「まあ残りも測ってみましょう」

 

くーちゃんにそう言われ他にハンドボール投げや持久走に立ち幅跳びと色々測定した。

たまに束先輩が、束さんもやるー!とかいってハンドボールを投げればパンッ!という音とともにボールは消え、立ち幅跳びをすれば砂場を大きく越えて壁に人型の穴つくったり……相変わらずのとんでもっぷりである。

 

取り敢えず、握力測定のかわりにリンゴ握りつぶしたやつどうにかしてください。

 

「束先輩、食べ物で遊ばない。何が、リンゴジュース飲むかい?ですか」

「いやー、ついやってみたくなって」

「束様、自分で食べてくださいね……それにしても、かーくんさんの身体能力は、全体的に普通より高いのですがまだ常識の範囲内に収まってますね……」

 

なんでくーちゃんは小首を傾げながら言うのだろうか、そんなにおれを普通の枠から外したいのかな?

 

「いえ、そういうわけでないのですが」

 

 

――くーちゃんがそこまで言ったその時ラボに警報が鳴り響いた。

 

それを聞いて急いで地下から上がって束先輩はレーダーを見る。

 

「IS1機がこっちに向かってるね!……コアを新しく開発してたんだけど、コアを起動させたままで放置してて探知されちゃった」

「取り敢えず逃げましょう!必要な荷物は!?」

「私は特にはありません」

「束さんも新しく作ればいいものしか基本ないね!あとは束さんのポケットの拡張領域に入れてるし!」

 

そういうやいなや束さんはくーちゃんを背負い外へ走り出し、おれも着いていく。懐かしのステレス球を使いながら。

 

「相変わらず足が速すぎませんかね……!?くーちゃん抱えて走れる速さじゃないですよ!」

「くーちゃん羽のように軽いから!」

「……いま束様に並走できる速さでかーくんさん走れているのですが、やはりさっきは手を抜いておられたので?」

「今も、さっきも!全力、だよ!」

 

てか喋らさせないで!束先輩に並走するのってキツいんだから……!

 

「束さんが思うにかーくんのただの全力疾走と、逃げるときの全力疾走は別物なんじゃないかな……自覚がないだけで」

「では後ろから、かーくんさんをライオンが追いかければ世界記録を出せそうですね」

「それ全力疾走ならぬ死力疾走になる……!?」

「むしろ疾走ならぬ失踪になるかもね。かーくんなら逃げ切りそうだけど」

「何にせよ、かーくんさんにとっては逃げるという行為が付随するかによって身体能力に上下があるのですね……新発見です」

 

くーちゃんは束先輩に背負われつつそう言っていたそうだ。その時には束先輩に並走するのために、既に話す余裕もなく走っていたので後々に聞いた。

 

――因みに言うまでもなく無事逃げ切れた、ついでに言うまでもなく途中で力尽き束先輩に小脇に抱えられつつの逃亡になった……。

 




ここまで読んでくださった方に感謝を!
翔は逃げ足は速いけどオリンピック選手にはなれないような人間です。あとさっき二代目戦乙女更新しました。
憂さ晴らしにIS学園にクマ吉いれた話とか書いてみました。

『ISの世界に来た名無しがペロちゃんと命名されてから頑張る話』他を書かれている五ノ瀬キノンさんと合作のような形でIS二次『EOSゴレンジャイ』というものを書きました。キノンさんの方で投稿されてますのでよろしければご一読ください。今までにないものになっているかと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 友達コレクション

 かーくんさんが束様に連れられてきてから、もうずいぶんとたつ気がする。

 しかし思い返せば私は彼についてほとんど知らない。楽しいことが好きだといった漠然としたことは知っている、けど嫌いなものや趣味や生まれもなにも知らないのだ。

 もしかしたらバッタ系みたいな改造人間でも、私みたいな生まれかもしれない。まぁ、それでも驚きませんが。なんと言ってもかーくんさんですから。

 

 

「といったことを考えたのですが束様はかーくんさんが好きなものや苦手なことは知りませんか?」

「そうだねー、ラーメン屋をまわってたりしてたみたいだけどその割には食べるとこ見たことないよね……」

「今思えばかーくんさんって謎だらけです」

 

 私にとっては束様より不思議まみれなかーくんさん。もはや珍獣ならぬ珍人の域です。

 

「よし! なら調べてみよう! さー、くーちゃん行くよ!」

「え、あのかーくんさんに聞いたり、束様が得意なパソコンで調べたりはしないんですか?」

「かーくんのことがネット上で集まるデータだけでわかる気がしないんだよ……取り敢えずかーくんの知り合いあたりに聞いて回ろー!」

 

 それもそうですね、かーくんさんというより人間、データでわかる情報なんて些細なことが多いものです。では、かーくんさんの謎を暴きにいざ行きます!

 ――かーくんさんには少し出掛けると書き置きを残しておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 と言うことでやってきました、IS学園。この頃はマドカさんも入学したらしいですし織斑一夏もかーくんさんとやりとりしていると聞きます。

 マドカさんは亡国にも顔を出してるみたいですが織斑千冬には黙認されてれているとのこと、まあ正直あの方たちなにもしてませんしね。

 そんなこんなでマドカさんの部屋へ到着。

 

「待て、お前たちなんで普通に入ってきてるんだ」

「束さんにそんな疑問を持つなんて……まどっちはどうしたんだい?」

「なんだ、私が悪いのか……?」

「いえ、むしろ束様がおかしいだけです」

「ガーン!?」

 

 束様がどんよりした空気をまとわせていじける……また失礼なことを言ってしまったのでしょうか? こればかりはどうにも直せそうにありませんね。

 

「まあ、それはともかく今日は聞きたいことがありまして……」

「うん、なんだ?」

「かーくんさんについて少し考えたのですが改めて考えると知っていることが少ないなと……それでマドカさんはなにか知らないかと聞きに来ました」

 

 何でもいいんです、好きなものとか嫌いなものとか。

 

「そうだな……自由が好きで追われるのが嫌いだとは言っていたがそれは知っているだろう?」

「はい、そうですね」

「正直、私がお前たちの知らないことを知ってるとは思えんぞ?」

「ですがそうなると、かーくんさんのことを詳しく知っている人がいなくなりますね……」

「改めて考えるとかーくんは束さん以上に、ISのコア並みに謎だらけだよ……!」

「いや、そこまでではないだろ」

 

 出自もわからず家族構成も聞いたことがありません、好き嫌いもわからず、趣味も何もわからない。わかっていることと言えば性別と身長くらい……あと恥の感情が家出してましたか。

 

「やはり本人に聞くのが一番いいのではないか?まあアイツのことだからそんなことはないだろうが、自分のことをコソコソ他人に聞いて回られるのは気持ちよくないと思うぞ」

「そうですね……」

「う……まどっちが正論を言っている」

「失礼だな、私はいつも常識的な方だと思っているぞ?」

 

 その通りですね、少なくとも束様とかーくんさん、私と比べると月とスッポンです……学園の専用機持ちもTheメシマズや典型的にズレた日本知識を持った軍人娘、あり得ないくらいにモテるのに一切気付かない兄。中々濃い面子に囲まれてますねマドカさん。

 

「じゃあ、やっぱりかーくんに直接聞くよ!お邪魔したねまどっち!」

「おい、なにナチュラルにクロエを小脇に抱えて窓から出ていこうとしてるんだ」

「お気にさらず、束様ですので。それではまた、失礼しましたマドカさん」

 

 私がそう言い残すと同時に束様は窓から飛び出し、何処からともなくやって来た人参型ロケットに飛び乗りました……相変わらず織斑千冬に負けず劣らずの身体能力です。

 

 ……それにしても人づてに、かーくんさんのことを知ろうとして聞ける人間が一人とは。なかなかどうして、かーくんさんの友好関係の狭さが伺えますね。中学の頃の友人の名前をしっかり覚えていないと聞いたときには涙を禁じ得ませんでしたし。

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

「それでおれの詳しいことを聞こうと? もとから聞いてくれたら答えたのに」

「それじゃ面白くないと思ってね!」

 

 あとはなんとなく聞きにくかったのです。かーくんさんは自分からあまりそういうことをお話にならないので。

 

「うーん、そう言われればそうかな? いや、おれの話とか面白いことないし……」

「で、実際のところはどーなのさ? 束さんもしっかりとは調べてないから、かーくんのこと知らないこと多いんだよね」

「束先輩が調べたことといえば、おれの指名手配書をつくるのに必要な情報ですねわかります」

「テヘペロ☆」

「……まぁ、いいんですけど」

「えっ、じゃあその間と冷めた目はなにさ……?」

 

 束様がウザ可愛く片目をつむり舌を出して、テヘペロとしてますがかーくんさんでなければ怒ってそうなものです。主に束様の妹や織斑千冬なら刀を片手に三枚におろしに来そうです。

 

「じゃあ、一つ目の質問! デデン! ズバリ家族構成はどうなの?」

「あー……細かいこと省きますけど施設で」

「軽いノリで聞いてごめんなさい!」

「気にしてないんでいいですよ? それこそ『他の世界線ならこの施設ってのは研究施設のことで、実はかーくんはその施設で作り出されたクローン人間だったのかー!?』とか言っていいんですよ?」

「言わないよ!? 私だってさすがにこれくらいの空気読めるようになってるよ!?」

「束様は身内限定ですけどね、いえ私もですが」

 

 それにかーくんさんの言うような発言をしてたら、さすがに束様相手でも怒ってますよ?

 

「本人が気にしてけりゃいいんですよ。ってことで施設暮らしだったこと弄ってもいいよ、バッチ来い!」

「そんな宣言されたの初めてだ!?」

「束先輩の友達があまりにも少なくて、一歩間違えればボッチなことをおれが弄るようなもんです。ぶっちゃけ友達って千冬さんだけで、箒さんは妹、一夏は親友の弟ポジションですよね?」

「くーちゃんやかーくんがいるし……」

「おれ後輩、くーちゃんは娘では?」

「ぐふぅっ……! 人間関係が狭いことはなんとも思ってないけど、思ってたよりも友人のカテゴリに入る人が少なくて何故かショック……!」

 

 私に関しては束様が娘と呼んでくださってるだけで……あ、かーくんさんに関しても束様から先輩と呼ぶようにおっしゃってましたね。

 

「かーくん、くーちゃん! 先輩後輩、親娘なんて些細なことだよ。友達になろう……!」

「どうしましょうか、このままでは束様が友達をつくるための部活でも立ち上げそうな勢いです」

「ごめん、正直弄りすぎた……束先輩、俺たち友達だよ! 束先輩がそう言ってくれるなら先輩かつ友達!」

「いえーい!」

「いえーい! 友達増やして友達コレクションしましょう!」

 

 ああ、またおふたりがいつものテンションに……楽しいのですが私は少し着いていけない勢いです。

 

「よっし! そうと決まれば次は……まどっちだ! カモン人参ロケット!」

「えっ、マジで行くの!? コフッ!?」

 

 束様がそう言い、指をならせばまた何処から来たのかわからない人参型のロケットがやって来て、私とかーくんさんを小脇に抱えた束様が飛び乗りました。

 ……マドカさんのところへは先程行ったばかりなのですが気にしないとしましょう。マドカさんなら何だかんだで許してくれます。

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 マドカさんなら許してくれます、そう思っていたときもありました。ええ、実際のところマドカさんは許してくださいました。

 

 ですが、束様が飛び込んだマドカさんの部屋に、織斑千冬がいると誰が予想したでしょう。ハイテンションなまま飛び込んだ束様がフリーズし、無言で口の端から吐血するくらいには予想外でした。

 

「それでなんだ? 束、お前は友達コレクションしに来たと?」

「……はい」

「阿呆か……お前そもそもコレクション出来るほど、友人と呼べる間柄の人を区別してないだろ」

「ちーちゃん、かーくん、くーちゃん、まどっち」

「四人か、偉く簡単にコンプリート出来そうでよかったな? おい、上代。お前もこいつを変な方向にノせるな面倒だ」

「申し訳ないです」

 

 全面降伏と背後に見えそうなほどの土下座をするかーくんさんでした。ちなみに束様も私も正座中です。

 

「次にこんな下らんことで学園に侵入してみろ。そのコレクションからひとり居なくなると思え」

「ごめんなさい!」

 

 全面降伏と背後に見えそうなほどの土下座をする束様でした。ちなみに私は正座中です、かーくんさんは土下座続行中です。

 

「はぁ……今回はこれくらいにしてやる。上代、お前晩飯がまだなら一夏に付き合ってやってくれ。たまには男同士で気兼ねなく過ごさんとアイツもしんどいだろうからな」

「了解です。何だかんだ弟思いのいい姉ですよね、と思いつつも口に出すと視線だけで殺されそうなほど睨まれるので心に留めます」

「かーくんさん、全部口に出てます」

「チッ、一夏の奴は部屋にいるだろう……学園内をお前だけで歩くのは不味かろう、すまんがマドカ」

「わかった、クロエも行くか?」

 

 ええ、同行させていただきます……が束様はどうなされるのでしょうか?

 

「束さんも行ーー」

「束、お前はこっちだ。どうせ暇だろう? 上代たちが帰るまで学園の防衛システムの強化でもしていけ」

「ぎゃー! 束さんもくーちゃんたちと行きたいー!」

 

 そうですか……では、三人でいきますか。

 そして三人で部屋から出るときに見えた、織斑千冬と束様の顔は少し意地悪そうな笑みと嫌そうにしかめっ面をする対比的な表情でしたが――何処かお互いに楽しそうな表情でした。

 きっと、あれが親友というものなのでしょう。いつか私もかーくんさんやマドカさんと形は違えど、あのような関係になりたいものです。

 

 

 

 …………あれ、結局かーくんさんの家族についてしか聞けてません。もしかして、うまく流されました?




ここまで読んでくださった方に感謝を。
逃亡者ではお久し振りです。一作品落ち着いたので久々にとクロエ視点で書かせていただきました。
今さらですが番外編はあんまり時系列を気にされないでいただけるとありがたく。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 ハロウィン

 束先輩が藍色のバニーガール姿で突撃してきた。胸がたぷたぷ揺れててグッド、魔女っぽいミニスカート姿で連れられて来たくーちゃんも少し照れ気味で可愛いよね。

 

「トリックオアトリート! お菓子くれないとイタズラしちゃうよ!」

 

 あぁ、そういや今日ハロウィンでしたね……机の上に置いてあるお煎餅を束先輩に渡す。

 

「では、お疲れさまでしたー」

「あれ!? 終わっちゃった!?」

「束様の急に仕掛ければかーくんさんは何も準備できてずにイタズラされるしかない計画が頓挫しましたね」

「くーちゃんそれ言ったら駄目だよ!」

 

 また、なんとも束先輩らしい計画を……くーちゃんにもお煎餅とお茶をあげる。

 しかし、くーちゃんの魔女っ子はともかく束先輩はなんでバニーガールなんですかね? もうちょっとあったでしょうに。

 

「このウサ耳をつけたまま出来そうな仮装がこれしか思いつかなかったのさ!」

「天災と呼ばれてるのにそれしか思いつかなかったんですか……痴女のコスプレですかね?」

「バニーガールってさっきかーくん自身言ってたじゃん!?」

「というよりも束先輩は普段からコスプレしてるようなものですよね」

「そう言われるとそうですね」

 

 メカチックなウサ耳に不思議の国のアリスを思わせるドレス。子供心忘れない格好で、賢さという点を除けば頭のなかも子供心忘れない感じな束先輩だし。そんなところが、とても“らしくて”いつも楽しいと思う。

 

「うぎぎ、貶されてる気もするけどそう言われるとなんとも言いにくい」

「言葉を選ばなければ社会的に不適合ですもんね、私たちは」

「むしろこれが普通だとすれば大変な世の中に……」

「くーちゃんはともかく束さんやかーくんがいっぱいと考えるとこれは酷い」

 

 微塵も譲らず我を通そうとする性格と、面倒事からは即行で逃げる性格しかいない世界。なんて世紀末?

 そんなことを話してると警報ではなくチャイムが鳴る。

 人が来たときに常に警報だと侵入者とややこしいので、知り合いが来るとチャイムが鳴るよう改造したらしい。

 というのも、

 

「トリックオア――ファンタ!」

 

 マドッチが何故か当然のようにラボを見つけて訪ねてくるからだ。たまにくーちゃんや俺も教えたりするけど、明らかに教える前に来たりする。

 

「むしろファンタオアファンタだ! ファンタくれなきゃ泣くぞ」

「イタズラじゃなくて泣くの?」

「目の前で女子高生に泣かれてみろ、気まずいぞ?」

「くーちゃん、倉庫からファンタ取ってくるわ」

「マドカさんが何気にキツいイタズラを考えてたことに驚きです」

 

 全くだよ、ことファンタになると本気度が変わるよね。

 そんなマドッチの仮装はポップなドレスに、カボチャの髪飾り。ハロウィン風なお洒落って感じだ、どこかの外に出られない格好してる先輩も見習ってほしい。

 マドッチにファンタを一箱渡し、ついでに茶菓子も出して駄弁り始める。

 

「因みに一夏にも仕掛けてきた、ファンタが出てこなかったので泣いてやったら……うん、いつもの専用機持ちたちにあらぬ疑いをかけられ鬼ごっこが始まっていたな」

「いっくんもまた不憫な……」

「菓子は出てきたのだがファンタを出さない一夏が悪い」

「お菓子出てきたのにマドッチ泣いたの!? 余計にいっくんが可哀想だ……!」

 

 これに関しては束先輩の言う通りだ……マドッチはファンタじゃないと駄目なんだ! ってプリプリ怒ってるけど一夏には黙祷を捧げとく。強く生きてね、今度また遊ぼう。

 

「でもどうしてハロウィンはカボチャがよく飾られるのでしょうか?」

「んー、それはね」

 

 バニー姿な束先輩のハロウィン講義が始まった。こんな姿な人が先生だとPTAから抗議が来そう。

 

 さて、なんでもハロウィンの発祥は、古代ケルト人らしい。もともとは秋の収穫や悪魔祓いの儀式として行われていて、当初はカボチャではなくカブだったらしい。

 けど、ハロウィンがアメリカに伝わったときに当時のアメリカはカブに余り馴染みがなかった。

 じゃあ、代わりにたくさん獲れていたカボチャを使っちまおうってことでカボチャを使うようになったそうな。

 

「うーん、無駄な雑学」

「聞いといてそれ!?」

「だが、馴染みがないので剰ってるものを使ってしまえというのはなんともアメリカ人らしいな」

「日本人ならもう少し似た代用品を使うか、それ自体を作り始めそうですね」

「束さんなら元を越えるものをつくるね!」

 

 大きなカブとかつくって農家のおじいさんを困らせそうですもんね。まだまだカブは抜けませんってアレみたいな。

 

「それで収まればまだまだ可愛いよ、我ながら!」

「自分で言うことじゃない……!」

「言われる前に言ってしまえの精神だよ!」

 

 この頃束先輩が開き直ってきて大変。俺やくーちゃんが大変なんじゃなくて、世界が大変になる。

 と、マドッチの携帯がヴィーヴィーと震える。無視しようとしたマドッチだが携帯が震え続ける。メールかな?

 めんどくさそうにマドッチは携帯を見る、すぐに床に置いた。

 

「どうしたの?」

「なんでもない、ただの一夏からのヘルプメールだ!」

「そんな迷惑メールだみたいに言わずに、助けてあげようよ」

「このファンタを飲みきったらな」

「一箱あるんですが……帰った頃に織斑一夏はミイラ男の仮装になってそうです」

「仮装ですむかなぁ?」

 

 束先輩が心配そう、俺も少し心配だけどマドッチ曰くたまによくあるらしい。たまになのか、よくあるのかどっちかわからない。

 

「フルメンバーに追われることがたまにで、個人に終われることはよくあるな。一夏は気は利くくせして鈍感なのが駄目だ」

「さらにいっくんはモテるからねぇ」

「ギャルゲーなら操作する人がいて、そろそろルートに入って誰かと結ばれる頃合いなのだが……」

 

 マドッチのたとえが逸脱だけど、現実はそうもいかない。

 よくメールが送られてくるけど女の子に興味がないわけでもなさそうなのだ。胸が当たって照れるとか言ってたし許さん。

 

「かーくん本音漏れてる」

「男の子ですもん、仕方ないです」

 

 まぁ、頻繁にそんなこと言われればなんか、羨ましさ通りとして呪いかなにかかと思うけどね?

 

「一夏はギャルゲーというかRPGのキャラの特性にモテモテがあるかわりに、デメリットで解除不可の鈍感がある感じじゃないかな?」

「厄介すぎるぞ」

 

 と、ハロウィンからだいぶん話が逸れたけど何でだっけ?

 

「おお、メールで『へろぶ、はぁんたやるからたふけてうれ!』と来たぞ」

「マジもんのピンチの予感……!」

「全部ひらがなだよ……」

「そしてこの誤字のしかた入っては画面を見てる余裕すら無くなってきてますね」

「女の涙は武器とはホントだったのだな」

「こう意味じゃないと思うよマドッチ」

 

 たしかにかなりの武器になってるけどさ。一夏の周りの専用機持ちの子は7人だっけ? マドッチ一人の涙で国ひとつ滅ぼせる戦力が動いてる。こう考えると凄いや。

 

「さて、ファンタも貰えるようなので一夏を助けにいくとするか」

「ういじゃあね、一夏によろしく」

「ああ! ファンタありがとう!」

 

 そう言ってマドッチは帰っていった。

 

「まどっち、確実にいっくんからファンタ引き出すためだけに泣いたよね」

「半端じゃない執念です……」

 

 逆にファンタのためだけに助けにいくのもマドッチらしいけどね。

 

「よし、じゃあちょっとハロウィンらしくお菓子でもつくってみますか。俺たちでもシフォンケーキとかならつくれる……はず」

「ネットでレシピ調べてくるよ!」

「じゃ、調理器の準備を」

「お手伝いします」

 

 このあとシフォンケーキを炊飯器で作ろうとしたのだけれど、束先輩が最後の最後にナニか入れた。

 

 結果、元の体積の数十倍になったケーキが炊飯器から溢れ返ったり、束先輩の方を見るとテヘペロしたりしてたけど楽しいハロウィンを過ごすこととなった。

 

「片付けが大変ですよね、これ」

「というより食べきれません」

「ちーちゃんたちに配りにいこうか!」

 

 

 

 ――IS学園がケーキで溢れかえるまであと少し。

 




ここまで読んでくださった方に感謝を。
夕方にハロウィンなことを思い出しせっかくなので書いてみました……久々の上代、ちょっと違和感ありますが楽しんでいただければ幸いです。
ハロウィン半分に一夏の受難半分みたいな話になってしまって申し訳ない。

新しく、一夏がナニか振り切ってる作品二話目投稿したのでよかったらご一読。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 メリークリスマス

 目が覚めると高度2000メートル、ジングルベルな歌をメカメカしい兎耳をつけたさんたが陽気に歌いながらやけにメカメカしいトナカイが引くソリに乗り飛んでいた。

 

「良い子はいねぇがー! プレゼントを配っちゃうぞ! 知り合い限定だけどね!」

 

 なんかナマハゲ混ざってますし、知り合い限定とか束先輩だと片手で足りるじゃんとかいうツッコミを置いておいて――寒い寒い寒い!

 

「寝てらしたかーくんさんが尋常じゃなく震えてらっしゃるのですが……」

「ガクブルだね! ほらこのサンタコス……もといジャンバーを着るんだ!」

「ダッフルコートとかないですか? 束先輩とペアルックとか恥ずかしいじゃないですか。ほら、世間体的に」

「にべもない……! というか今さら世間とか気にしない気にしない」

「今さらですね。いえ、そんなことよりかーくんさん唇が青くなってきてるのでふざけてる余裕は無さそうなのですが」

 

 癖って怖いよね。しかしジャージで雪の降る空を飛んでるとか風邪引きそう。腕時計を見れば時計の針は深夜0時を指す手前、完全に眠ったあとに勝手に連れてこられたようだ。せめて起こしてほしかった。まぁ垂れてきた鼻水がつららになりそうだし仕方なくサンタコスなジャンバーを着る。サンタのコスプレになることは気にしない、本当に世間とか今さらだった。

 

「我慢の限界だし仕方ない。これどこ向かってるんですか?」

「かーくんいい質問、箒ちゃんとちーちゃんにいっくんとまどっちのところだね」

「狙いはIS学園か……なんかこのサンタジャンバー、見た目に反して温かいですけど」

「どうだ、それこそ束さん印の技術力! 着てる人にとって最適な温度になるようになってるのだ!」

 

 またいらないところで無駄な技術力を。いえ、南半球でサーフィンしてるサンタも大助かりな服だよって言われても知らないですから。

 まあ、飛び抜けた技術力をよくわからないとこに使うのも今に始まったことじゃないですしいいんですけど。

 

「だけどこのトナカイが飛んでる理由って……」

「天才束さんがISコアをちょちょいとしてね、クリスマス仕様無人機verトナカイだよ」

「世の中のお偉いさんたちが聞いたら卒倒しそうです」

「すごく怒られそうな予感、特に織斑千冬さんが聞けば頭痛そうに眉間を押さえそうですね。そして束先輩に拳骨あたりが」

「が、ガクブル再来だね! むしろちーちゃんの場合は怒るより拳骨が先だけどさ!」

 

 ノリ良さげに軽々言っている束先輩だけど……膝が震えてるんですけど? そんな怖いならやらなきゃいいと思うのだがやりたくなったことはやるのが束先輩。

 後ろの荷台で気持ち悪いくらいに蠢いてるプレゼント袋は無視する方向でいきたい。

 

「さっきから動いてる後ろのプレゼントなんだけど……」

「どれのことでしょう、触れない方向でいくことに決めたんで放置しません? しましょう」

「ううん、断る! ソレいっくんを模した人形作ったんだけど箒ちゃん喜ぶかな? すごい動くんだけど」

「どうやっても嫌いのゲージが溜まる気しかしない」

「いやー、そうだよねぇ。箒ちゃんって何欲しがるのか全然わかんなくてさぁ、うーん……人に物あげるって難しいなー」

 

 ポチッとな、束先輩が謎のボタンを押すと後ろの一夏(仮)の動きが止まった。南無三、たぶん慈悲なく束先輩が解体するからそれまで大人しくしといておくれ。

 けどプレゼントか、たしかに人に物を送るのはセンスとかいるかもしれないけど普通にそんなことは考えなくていいと思う。

 

「何をそんなに悩むのか、簡単に考えましょうよ。束先輩は頭良すぎて頭悪くなりますよね。欲しがりそうなものじゃなくてあげたいものあげたらいいじゃないですか」

「簡単に考える……さらっと罵倒されてる気がするのは置いといてあげたいものかぁ、うん、うん。そうだね! そうするよ!」

 

 そういうとソリの上でガチャンガチャンなにかを作り始める束先輩。高度2000メートルで何をやってるのか火花が散る。たまに俺やくーちゃんに火花が飛んできてるんだけど微塵も熱くないのはこのサンタコスってばIS技術を応用してるな。もうポケットに拡張領域ついてても驚くことはない。

 

 

▽▽▽▽

 

 

 IS学園に到着。ソリは外で待機させておき、くーちゃんの生体同期ISのワールド・パージを展開させつつ学園内への侵入に成功した。

 

「よっぽどのことがない限り見つからないから便利だよね、くーちゃんのワールド・パージは」

「はい。というよりも普通は誰にも見つからないはずなのですが……織斑千冬だけはどうしてか」

「勘かもしれないねぇ。身体能力なら束さんとトントンなのにちーちゃんってば第六感とかニュータイプ越えてるナニかだし」

 

 束先輩と身体能力が並んでる時点でおかしいのに勘が異常に鋭いってなんなんだろう。束先輩が頭が賢い分、千冬さんは第六感に割り振られてる……? いやいやいや、そうだとしたら勘の鋭さとかもう未来視に近いものな気がする。

 でも、そう考えるとしっくり来るんだよね……ナニソレ怖い。

 ――っと、箒さんの部屋の前に着いたらしい。

 

「しー、静かにね」

「寝ている妹の部屋に忍び込む姉。うーん、犯罪的だ」

「大丈夫ですよかーくんさん、学園内への侵入で既にアウトですし」

「静かにって……!」

 

 鍵はどうしたのか、問うまでもなくピッキングしたんだろうなぁ。コソコソっと扉を開け部屋の中へ入っていく。どうでもいいんだけど束先輩がコソコソしてるって珍しい図だと思う。

 そしての枕元へ立った束先輩はプレゼントを置こうとし――箒さんと目が合った、目が合った。目と目が合う瞬間にってやつだろうか。

 箒さんは目を擦り何度か現実を受け入れるためにインターバルをつくるがやはり束先輩が視界から消えないようだ。だってそこにいるからね。

 束先輩もこっちはこっちでフリーズしてるし。たぶん頭のなかでは試行錯誤ならぬ思考錯誤してるんだろうけど身体が追いついてないや。

 

「天井の代わりに姉さんの顔が見える…………うん、気のせいではないな。おかしくなったのか、私の目」

「……め、メリークリスマス箒ちゃん。た、束サンタがプレゼントを持ってきたよー……?」

「よくわからないのだがここは学園の私の部屋だよな? なら姉さんはどうしてここに……あ、いや侵入したのか。帰ってください、織斑先生を呼びます」

「すごい冷たいよ箒ちゃん……しかもちーちゃん呼ぶことは確定!? ストップストップ! 今日は変なことしに来た訳じゃないからさ!」

「サンタの格好をした実の姉が学園内へ無断で入ってきている時点で私にとっては十分変なことなんですが……」

 

 ゲンナリした顔をしてる箒さんの言うことはもっともだった。しかもISコアを使ったトナカイが引くソリに乗って来たと伝えたらもっと呆れられそうだ。

 

「学園内への侵入は目をつむって欲しいかなー、なんて……」

「抵抗せず織斑先生に差し出されるならいいですけど」

「どう考えても見逃してくれてないよね!? 箒ちゃんお願い、ちーちゃんには何卒……!」

「存分に怒られてください、と言いたいですけど冗談です、今のところは。それでプレゼントと言ってましたけど用件はなんでしょう……?」

 

 不安げというより疑わしげというか心配そうな箒さんの声が聞こえる。

 ちなみに俺とくーちゃんは部屋の隅で、正式名称不明な互いの指の数を増やしていって五になると負けのゲームをしていた。楽しいかと問われると正直なんとも言いがたい。

 余談ながら、さすがに同年代の女の子の部屋への不法侵入という不名誉な前科は世間体とか関係なくいらないので、現在箒さんからはくーちゃんのワールド・パージのおかげで見えない状態だ。早く話し終わらないかな。

 

「うん、言葉のままプレゼントだよ。誕生日には紅椿みたいな女の子らしくないものしかあげれなかったから……これ、はい!」

 

 そう言って束先輩が渡したのはロケット型のペンダント、中に写真を入れれるタイプのやつだ。これも女の子のらしいかと言われると微妙なんだけどそこは触れないことにしといた。だってアレはたぶん束先輩が夢を暗喩してるんだろうしね。

 それにしてもソリの上で何か作り始めたときは『箒ちゃんの身辺を守るんダ一号』とかいった無人機作るんじゃないかと、くーちゃんとヒヤヒヤしてたことは秘密である。

 

「いっくんとの写真とか中に入れれるようにしてあるペンダントだから! つ、使いたくなったら使ってもらえると嬉しいかな! またじゃあね!」

「ね、姉さん!? ……行ってしまったか」

 

 ……身ぶり手振りわたわたしながら言いたいことを言いきった束先輩は、韋駄天も真っ青な速さで廊下を駆け抜けて去っていった。たぶん妹との真面目な空気で恥ずかしさとかに耐えれなかったんだろうけど、もう少し頑張るべきじゃないかと。

 

「帰ろうか俺たちも。たぶん束先輩も他の面々にプレゼント渡すだけの気力とかなさそうだし」

「暫くぶりにあれだけテンパってる束様を見ましたね。あ、ファンタを一本だけですがマドカさんに持ってきたのでそれだけ部屋の前にでも置いていってよろしいでしょうか?」

「歓喜するまどっちが目に浮かぶ……うん、それ置いたら帰ろっか」

 

 複雑そうな、けど嫌そうな表情でもない箒さんを横目に部屋をあとにする。そして前に聞いたマドッチの部屋番号を見つけ扉の前にファンタを置く。

 お供えものみたいとか全然思ってないし、翌日部屋の前にあるファンタの気配を察知したマドッチが如何にしてファンタを倒さずドアを開けるか試行錯誤したなんて事実もない、ないったらない。

 

「帰りましょうか……あれ、外に束様が」

 

 走ってる、それはもう積もった雪を巻き上げて何かから逃げるかのように失踪してる。そして後ろから追うものが、というか束先輩が全力で逃亡する相手は一人しかいない。織斑千冬さんだ。

 

『ガッデム! ちーちゃんが見回りをしてるだなんて! クリスマスなんだからサンタを待って寝といてよ!』

『よく言う……! 貴様みたいな不審者がいるからおちおち眠れんのだ! 大人しくお縄につけ束!』

 

 外で繰り広げられる人の枠を越えてる逃亡と追走劇。なんで生身で三次元的な動きをしてるんだろうか。

 

「眠くなってきたし見当たらない束先輩は置いて帰ろう」

「後ろの窓から束様が見えますよ?」

「世の中知らない振りをした方がいいこともあるんだよ……特にアレは俺たちが巻き込まれたところで何もできないから」

 

 束先輩は犠牲になったのだ。いやさ、むしろ束先輩って千冬さんといるときは、なんだかんだで楽しそうだしきっと今も楽しんでる。だから見捨てるんじゃなくて親友同士二人でいる時間に邪魔するのも忍びないから、知らない振りをするだけだって。

 

「来年のクリスマスはもうちょっとゆっくり過ごしたいね」

「寝つつサンタを待ってみるのもいいかもしれません」

 

 ――メリークリスマス。




ここまで読んでくださった方に感謝を。
メリークリスマス、プレゼンツ・フォーユー。
今回の会話が全て『シリトリ』になってると気付かれた方はどれだけおられたでしょうか?以前に『あいうえお作文』の会話もしましたが、こういうのはやっぱ楽しいです。

ではメリクリメリクリ、残り少ないですがよいお年を。

あと関係のないこととなりますが短編にて
『クロエの出会い』
というものを投稿させていただいてます。かなーり珍しくギャグゼロの作品で、束とクロエの出会いを書いてみたものとなってますのでよかったらご一読のほどを。
この作品の二人とはきっと恐らくたぶん関係ないです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。