コードギアスR2 ~去りゆく影~ (三戦立ち)
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第一部 サドナ王国
第1話
第1部は自分の解釈で話を作るので原作に対して大きな矛盾や生じてしまうかもしれません。
そのため原作とは違う設定になってしまいますが読んでくれたら幸いです。
広大の大地を雪が辺り一面に積もり銀世界が広がっていた。
その中を長い列を組んだ列車が雪が積もる鉄道の上を蒸気機関車が煙突から蒸気を出し走っていた。
ここはユーラシア大陸の北部を東西に横断するシベリア鉄道。
機関車の車両には外の風景を堪能できる所では10数人の客がのんびりと旅を楽しんでいた。
だが一番最後の車両の中は明かりもなく薄暗く、ところどころに穴が開いておりこの狭い中を20人くらいの人間が椅子もなく地べたに座っていた。
暖房器具もなく凍えるような寒さの中白い息を吐き皆この寒さを耐えていた。
「くそっ! いくら金がないからってこんなところに…。」
「でも、タダで乗れるのはこの路線しかないんだ。」
「おい、外を見てみろよ。」
外では寒い中満足な耐寒服を着用せず外で重労働をしている人間の姿が見える。
「ありゃ、俺達と同じ日本人だ。 あそこで微量だがサクラダイトが採掘されたらしいぜ。こっちではヴィーシュナって呼ばれるらしいがな。 あんなもん見たらここはまだマシだぜ。 俺達難民をあぁやってこき使うんだ。」
「はぁ…。 日本を出ようが出まいが結局地獄か………。」
-果てなく続く銀世界、凍てつく寒さ。確かにここは地獄だ。 だがブリタニアの追跡から日本を離れて2ヶ月、ここサドナ王国は天国に感じた。-
汚れた白い防寒服のフードで顔を隠し流崎 アキラは口から白い息を吐いた。
サドナ王国の首都、ヤールンの駅で降りたアキラはバスに乗り目的地へと向かった。
バスに揺られて都市部を離れしばらくして降りた先には軍事基地があった。
自分以外にも義兵団に入ろうととしてやってきた者達が大勢きていた。
「31番、名前は。」
「流崎 アキラ。」
「では身体検査があるから服を脱いで。」
アキラは着ていた防寒服を脱いだ。
「おい、あの格好…」
「あの制服、黒の騎士団だろ。」
「生き残りがいたのか……。」
アキラが着ていた黒の騎士団の制服を見て周りにいた人間がヒソヒソと話しているのを尻目にアキラは身体検査、登録済ませた。
義兵団としてこれからの生活、活動等の説明を受けたアキラ達は広場へと集められた。
ステージ上から2人の軍人がきた。
「今回、お前達の面倒を見る事になるトニー大尉だ。これからサドナ義兵団指揮官トラウトマン将軍から話があるよく聞くように。」
顎鬚を伸ばしひょろ長い顔をしたトニー大尉の横には黒いギャリソンキャップをかぶった中年の男性、トラウトマンが前にでた。
「君達が志願し来てくれたことに大変嬉しく思う。 サドナ王国がここまで戦えるのは諸君らの勇気をもって志願し戦ってくれているおかげだ。
国を守る為に君達の力が必要だ!」
トラウトマンは周りの中にアキラを見つけるとわずかだがニヤリとほくそ笑んだ。アキラもトラウトマンから視線を感じ眉をひそめた。
その後各自、指定された自分の宿舎の部屋へと入っていった。
アキラも部屋で休もうと思ったが部屋の中は寒く体が冷えていた。何か暖かいものを飲みたいと思い部屋を出た。
長い通路を歩いていると後ろから声をかけられた。
「おい、あんた。」
まわりには自分1人しかおらずアキラは自分に声をかけてきたと思い振り向いた。
「おぉ、やっぱりアキラお前だったか!」
そこにはサングラスをかけたスーツ姿の中年の日本人男性が立っていた。
「坂口!? とっつあんか!」
「はっははは!! アキラ、こんなところで会えるなんてな。」
サングラスを外し坂口 耕司はアキラの両肩に手を置いた。
「黒の騎士団が負けたって聞いたもんだから心配してたんだが無事でよかったぜ。 ここの義兵団に入ったのはどこかで募集したのを見たからだろ。」
「まぁな。あんたもなんでここにいるんだ?その様子を見ると羽振りが良さそうだな。」
坂口は豪快に笑いアキラの左肩を強く叩いた。
「ここで話すのもなんだ。 時間あるだろ、少し付き合えよ。 しかし、よく捕まらずにここまで来れたもんだ。 けっこう激しいみたいだな軍の残党狩りは。」
「そうだな。」
「だがここサドナ王国はとりあえず日本人を保護する姿勢だからしばらく安心できるぜ。それよりカレンちゃんに会えたか?」
坂口の問いにアキラは黙ったままだった。
「……そうか、まっあの子のことだ。きっと無事だ。」
2人は敷地の少し外れにある宿舎へと入った。部屋は個室のようだがTV、ソファーなど自分達が使う宿舎に比べるとかなり快適な様子であった。
「ここは俺がよく使うところでな。 どうだ再会を祝して一杯どうだ?」
「…コーヒーでいい。」
「はっははは、相変わらずだなお前は、逆に安心するぜ。」
しばらくして坂口は熱いコーヒーと酒、グラスを用意しソファーに腰をかけた。
「ウォッカ? とっつあんは日本酒じゃなかったのか?」
「はははっ! ここじゃあこいつだよ。 こんなところの日本酒なんざ小便な味して不味いんだよ。」
ウォッカをグラスに注ぎ坂口はグッと一口飲んだ。
「かあぁぁ、やっぱ暖まるな。」
「それで……」
「おおっと、そうだったな。」
坂口はグラスをテーブルに置いた。
「ここの国がブリタニアと対立のは知ってるな。奴らが日本を侵攻してユーラシア大陸の北部、東側のEUの一部分を支配しているのは知っていると思うが
このサドナ王国は微量のヴィーシュナが見つかってからブリタニアから目をつけられてしまった。」
「それでブリタニアは従属を迫っている訳か。」
「そういうこった。 それから一進一退って感じで数年戦ってきたが徹底抗戦を唱えていた国王のマクシム=マトロフが突然、ブリタニアに寝返ったせいで劣勢に立たされたんだ。 」
「軍はどうしてるんだ?」
「頼りにならねぇよ。 支持が高いマクシムに従った奴らもいるから今はお前のような難民の日本人やこっちに来たEUやブリタニア人を集めて頼りにしてんだ。 今はここの義兵団が主力みたいなもんさ。 だがな……。」
坂口は小声でしゃべった。
「ここの義兵団、 くわしくはわかんねぇが指揮官のトラウトマン、どうも怪しいんだよ。 経歴も一切不明、噂じゃあ元ブリタニアの軍人じゃねぇかって噂だ。 トラウトマンだけじゃねぇ、他の奴等も訳ありな連中ばかりだ。」
「それであんたはここでどんな悪事を働いてるんだ?」
坂口は大きな笑い声をあげた。
「人聞きの悪いこと言うなよ。 裏ルートで手に入れたKMFを軍に売って商売してんだよ。」
「あんたも相変わらずだな。」
「ははっ、こっちは生きるために必死なんだ。 死の商人って呼ばれようが構わねぇさ。 それと…」
「最近、ブリタニアの中に右肩を赤く染めたKMF部隊が暴れているって噂だ。」
「!?」
右肩を赤く染めたKMF部隊、アキラは目の色を変えた。
「お前も元々陽炎だったからな。 ここ数ヶ月陽炎が現れてから形勢が更に良くなってるらしい。」
「奴らもここに……」
「まっお前の事だからヘマをするようなことはないだろうけどよ。命を無駄にするなよ。」
その時、外からサイレンの音が聞こえた。
『緊急招集、隊員達は全員、第8倉庫へと集合せよ! 繰り返す……』
「おっ、どうやら何かあったらしいな。」
「そうらしい。」
アキラはゆっくりと立ち上がった。
「とっつあん、戻ったらまた話そう。」
「はっははは、今までそんなこと言うことなかったのによ。 生きて帰ってこいよ。」
坂口の宿舎から出たアキラは走り去っていった。
-鳴り響くサイレン、どうやら俺は戦いからは離れられないようだ。 ここサドナ王国、で何かが始まる。 そんな予感がした。-
読んでいただきありがとうございました。
読んでおわかりだとおもいますが第1部はボトムズ クメン編をモデルにしてます。
クメンが東南アジア熱帯地方をモデルにしているので自分はあえて真逆の極寒地獄を舞台にしてみようと思いました。
EUを舞台にしようとも考えましたが原作でも描かれていない?ステージでやってみようと思い描いてみました。
まだR2本編まではしばらく入らないと思いますがよろしくお願いします。
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第2話
呼び出しを受けアキラをはじめ義兵団の兵士達は皆集合した。
皆が集まったのを確認したトニー大尉は大きな声で説明を始めた。
「南西30kmの国境沿いにブリタニア軍の侵攻が確認された。至急敵部隊を叩く、各部隊準備ができ次第出動せよ!」
各自、自分のKMFに乗り込んだ。 ブリタニア軍の前世代主力KMFグラスゴー、EUのKMFパンツァー・フンメルなど各国のKMFが肩を並べており統一されていないように見えるが全機とも機体の装飾が雪原迷彩となっていて脚部には雪上走行用のソリ状の走行補助装置が装備されていた。
アキラもグラスゴーに乗り込もうとしたとき後ろから誰かがアキラの左肩を掴んだ。
「待て、流崎 アキラ。 お前の機体はあれだ。」
肩を掴んだのはトニーであった。トニーの親指が指したのは中華連邦製KMF鋼髏(ガン・ルゥ)であった。
この機体単体ではサザーランド等敵KMFと戦うのは下向きである。
「機体が足りなくてな。すまんがあれで我慢してくれ。」
ニヤっと笑った顔を浮かべアキラに伝えた。
「………了解。」
トニーの顔を見てムッとしたがアキラは素直にグラスゴーから降り鋼髏の傍に近づいた。
鋼髏の機体の様子は所々キズ、汚れが目立ちかなり年季のある機体だとアキラは思った。
機体を大型の雪上車に載せアキラ達は目的地へと向かった。
『目的地は現在警備についている友軍が応戦している。我々は友軍の救援を行う。』
国境沿いに近づき銃声と爆音が聞こえてきて目的地へとたどり着いたのだとわかった。
『よし、全機発進!』
トニーの指示でアキラ達は雪上車から出て戦場へと向かった。外は吹雪が止んでおり視界に問題はなかった。
「敵はサザーランド……グロースター。 陽炎は……いないようだな。」
敵のKMFは雪原迷彩の色をしたカモスーツのようなスーツを着せていた。
坂口から陽炎の部隊がここでもいることを知り、アキラは気にはなったが今敵の中にはいないようだ。
『流崎、お前は先に行って味方の援護に行け。』
「自分、1人でですか?」
『ここにも敵がいる。これ以上の進撃は塞がなければいけない。 そんな数はまわせん。はやく、行け!』
トニーの指示にアキラは黙ったまま現場から少し迂回し先に進んだ。
着いた国境沿いの最前線では敵味方が一進一退の攻防を繰り広げていた。
鋼髏単機で戦闘をおこなうのは難しいのでアキラは敵と距離を置きキャノン砲で狙撃を開始した。
アキラの砲撃に気づいた敵KMFサザーランド1機がこちらへ接近してきた。 鋼髏では接近戦ができないためアキラは後退する。後退するアキラを追ってサザーランドは追撃をはじめた。
サザーランドのライフルの攻撃は左右に動きながら避けてはみたが鋼髏では思うように動けず凹凸のある足場に躓き転倒してしまった。
サザーランドが近づきアキラはマシンガンを地面にむけて発射した。発砲の衝撃で雪煙が発生し視界が遮りアキラの鋼髏の姿が見えなくなった。
サザーランドが辺りを見回っている隙にアキラはサザーランドの背後をとり体当たりの形でサザーランドを転倒させうつ伏せになっているサザーランドのコックピットに向けマシンガンを撃ち、サザーランドは爆発を起こした。
一方、トニー達も敵と交戦しており押し返しつつあった。
『大尉、敵が撤退しつつあります。 今のうちに我々も味方と合流を。』
「うむ……そうだな。」
がその時1機の味方機が敵の砲弾を浴び撃墜された。
「敵!? どこだ?」
『南東300、こ、これはまさか!?』
トニー達の目の前に現れたカモスーツで全身を覆った戦車部隊であった。
だがトニー達を発見したのを合図にカモスーツを脱ぎ、黒のカラーリングの戦車が姿を変え始めた。
前輪のキャラピラを残し上体が上がり下半身が2つに割れ、脚の形となった。
上体に収められていた両腕が現れ左腕にはガトリング砲、右肩が赤く染められていた。
主砲が縦斜めに傾き、主砲の横には頭部があるが3つのレンズらしきものがあるだけでそれといった特徴は見られない。
「か、陽炎………。」
主砲をトニー達に狙いを定めた。
「散れ!! 散開して応戦しろ!敵前逃亡は許さん!」
だが1機、2機と次々と味方が陽炎の砲撃の餌食となってやられていった。
味方部隊と応戦していたアキラにも陽炎が現れたとの連絡を受けた。
『トニー大尉の部隊がこちらへ来る。これじゃあ挟み撃ちされるぞ。』
『も、もうダメだ。撤退だ。』
その中、1機のKMFが突如現れた。
白のカラーリングに赤い右肩をグロースターのように見えるが他のグロースターとは違い機体は細身でライフルを装備していた。
「赤い右肩、陽炎!!」
そのKMFはライフルで味方を次々と撃破していった。アキラは両腕のマシンガンでライフルを撃ち落すことはできたが回避したため機体には直撃できなかった。
狙い撃とうとするが左右へと素早く回避し雪煙が発生してしまった。
辺りを見回しているが背後に気配を感じ振り向いた瞬間、白のKMFは体当たりを仕掛けバランスを崩しながらもアキラはマシンガンを相手に向け撃ったが至近距離にも関わらず敵は素早い動きで回避した。
(早い!)
敵が持っていたソードによってマシンガンが切り落とされた。
ランスロットのMVSと形状は似ているが刀身が赤くひかり、熱を帯びたような色をしておりマシンガンも熱で溶けたような切り口であった。
アキラは後退しようとしたが敵の回し蹴りで転がってしまい、その衝撃で鋼髏のコックピットハッチが開いてしまった。
「くっ…。」
態勢を立て直そうとしたが目の前に敵、白のKMFが立ちはだかった。
アキラはホルスターから水平二連のソードオフショットガンを取り出し構えた。
敵KMFはソードを持った右腕を振り上げたがアキラの姿を見て動きが止まった。
「!?」
右腕を降ろし突然コックピットハッチが開いた。
「女!?」
黒髪のショートヘアにつり目の鋭い目つきをした女性がコックピットから出てきた。
容姿を見る限りでは自分と同じくらいの年齢ではないかとアキラは感じた。
「………流崎 アキラ。」
彼女が自分の名前を呟きアキラは顔をしかめた。
「お前、何故俺の名前を…?」
アキラの名前をつぶやいた彼女もどこか戸惑いの表情を浮かべていた。その時、横からライフルの銃撃で女のKMFがバランスを崩した。
政府軍のKMF部隊がアキラの援護にやってきたようだ。
女は機体に乗り込み回避しながら後退していった。
『大丈夫か?』
トニー大尉からの回線にアキラは応答した。
「助けてくれたこと感謝します。トニー大尉。」
『今からここを撤退することになった。 機体は動かせるか?』
「……なんとか。」
「そうか……ふふっ、生きていたとはな。まぁいい、お前には帰ってゆっくり聞きたいことができたからな。あのKMFと何をしていたのかを。」
その言葉にアキラは苦い表情を浮かべた。
先ほどの戦闘で政府軍はブリタニアからまた1つ重要拠点が奪われることになった。
アキラ達が帰還したことを聞いた坂口はアキラ探していたがトニーに連れられてトラウトマンのところへ行ったと聞いた坂口はトラウトマンがいる部屋に向かった。
「おい、流崎アキラがここにいるって聞いたがどういうことだ?」
部屋の前にいる兵士2人に問うた。
「答えることはできません。」
「……それはトニー大尉の命令か?」
「いえ、トラウトマン将軍の命令です。」
「将軍が…?」
「俺は見た! お前が白のKMFの操縦者と話しているところをな!!」
部屋にはアキラ、トラウトマン、トニーの3人がいてトニーの怒声が鳴り響いた。
「貴様、もしやブリタニアのスパイではないか?」
「……違う。 敵が勝手に降りてきたんだ、それだけだ。」
「ふふふっ、俺達が何も知らないと思っているのか。」
トニーはある書類を取り出しアキラに見せた。
「日本開放戦線第13戦略特殊任務班 陽炎。 お前がレッド・ショルダーにいたことがもう知っているのだ。 これでもまだシラ切るつもりか?」
アキラは黙ったままトニーを睨みつけた。その態度にトニーは腹が立った。
「貴様っ!!」
「トニーもういい。」
「しょ、将軍、しかし……。」
「では話してもらおうか、君が陽炎を抜けて黒の騎士団に入った経緯を。」
トラウトマンの問いにアキラはしばらく黙ったが口を開いた。
「わかった、話す。」
アキラはギアス、C.C.の件を隠しながらもあの作戦であったことを説明した。
「ではお前は味方から裏切られたということか?」
「そうだ。」
「貴様、嘘ついてるんじゃないだろうな!」
「まぁ、待て、トニー。 エリア11のゲットーでの騒ぎを起こしたのが彼なら黒の騎士団にレッド・ショルダーがいた噂は本当だという事だ。 大尉、流崎にあれを見せろ。」
「えっ? は、はぁ。」
トラウトマンの指示でトニーはある写真をアキラに見せた。
写真に写っていたのは先程の戦闘で遭遇した白のKMFであった。
「このKMFは一ヶ月前に陽炎の部隊と共に現れるようになり味方の被害が拡大していったのだ。」
写真を見ながらトニーの説明を聞いたアキラは静かにつぶやいた。
「流崎、このKMFについて何か知っていることはあるか?」
「……知らないな。」
だがアキラはあることを思い出していた。
シンジュクゲットーでの戦闘で治安警察と戦っている時に現れた謎の部隊、そしてカゴシマで岡村達と戦った時に出た謎のKMFらしき機体。
同一あるとは言い切れないが陽炎と何か関係があるのではないかとアキラは思った。
「……では元レッド・ショルダーから見てこのKMFはどう感じた。」
「………おそらく、操縦者はかなり熟練した技術を持っていると思う。それも人間離れした腕だ。」
その答えにトラウトマンは暫く黙ったが落ち着いた口調でつぶやいた。
「わかった、もういい。帰りたまえ。」
「将軍!」
トラウトマンはトニーに右腕をあげこれ以上喋らせなかった。
「疑いは晴れた。この話はこれで終わりだ。 下がれ。」
アキラは敬礼し部屋を後にした。
「将軍、奴は怪しいです。きっと何か隠してます!」
「…トニー、お前の部隊に奴を入れろ。」
「わ、私の部隊にですか?」
「そうだ。それと流崎の作戦時の行動を逐一報告しろ。どんな些細なことでも構わない。」
「わかりました。 しかし、何故……。」
トラウトマンはトニーを鋭い目つきで睨みつけた。
「りょ、了解しました。」
トニーが退室したあとトラウトマンは煙草に火をつけゆっくりと煙を吐いた。
「これであの方が探していた兵隊(ポーン)を手にいれた。あとは………。」
「じゃあ、出てきたんだな陽炎は。」
尋問から戻ってきたアキラは坂口の車に乗せられた。今は雪は降ってはいないが積もった雪の上を車で街に向かっていた。
「俺の前に現れた白いKMFの事を聞かれた。あんたは何か知ってるか?」
「あぁ、陽炎と一緒に出てくる謎のKMF。そいつが現れてから義兵団の死者が増えたもんだから死神とか言われる。」
「おそらく、奴は俺がシンジュクで戦った奴らと何か関係があるかもしれない。」
「そうか、だがお前も上官2人に目つけられたのはまずかったな。 特にトニーは気に入らない奴を最前線に送って殺すような奴だ、気をつけろよ。」
「ところで何処に行こうとしてるんだ?」
「へへっ、兵士の疲れを癒すのは酒と女しかないだろ。」
「興味ないな。」
「はっははは、わかってるよ。 飯がうまいところがあるんだ、今日は俺の奢りだ。」
車で移動する途中アキラは薄い肌着を着た日本人達が身を縮めながら歩いている姿を見かけた。
やせ細った女性、子供達が少しでも寒さを凌ごうとお互いの身を寄せていた。
歓楽街にはこの寒さにも関わらず人が大勢集まっていた。
物を売る者、派手な格好をした女が男を誘ったりと怪しげな雰囲気を漂わせていた。
アキラ達が入った店も既に多くの客で埋まっていた。
「いらっしゃい、今日はお連れもご一緒のようですね。初めて見る方ですが…」
カウンターにはドレスを着た金髪のストレートヘアーの女性が迎えてくれた。
「あぁ、俺が日本にいた時の仲間だ。 こっちに来たばかりでな。」
「じゃあ、いつものとグラス2つね。」
「いやマダム、1つでいい。こいつは酒が嫌いなんだ。何か飯を用意してくれ。」
「まぁ、ふふっ。わかった、ちょっと待ってね。」
そう言うとマダムはカウンターから離れて奥の厨房へと入っていった。
「特別に彼女が作ってくれるんだ。 結構うまいんだぜ。」
「とっつあん、あんたこのエリアのブリタニアの軍のことは知ってるか?」
「アキラ、俺がただKMFを売るだけしてると思ってるのか? ちゃんと向こうのお偉いさんの袖の下にちゃんと渡すもんは渡してるんだ。 そのおかげで義兵団にはグラスゴーたくさん置いてあるんだ。あれは全てチューンアップされたもんだからサザーランドに引けは取らないさ。」
坂口の不敵な笑みにアキラは苦笑いをした。
「陽炎のKMFについて何かわかることがあるなら教えてくれ。」
「おう、任せておけ。 俺に分かることがあれば何でも教えてやる。」
しばらくして、カウンターから戻ってきたマダムはウォッカ、シチューと2切れのパンを用意した。 この寒さにシチューの味はアキラの凍えた体に染み渡った。
アキラが食事をとっているなか店に1人の客が入ってきた。
「おう、マダム! 酒をくれ! 酒飲まねぇと凍える寒さだぜ。」
そう言うとアキラ達がいるカウンターの近くに座ってきた。
大柄の体系に無精ひげをたくわえ体のまわりには傷跡が多く見られ、腰には銃を収めるホルスターがありアキラと同じ義兵団の人間のようだ。
男はアキラの姿を見てハッっと思い出したかのような顔をしてアキラに近づいた。
「お前、確かさっきの戦闘で敵と内通してたイレブン。確か…流崎 アキラって名前だな?」
ズカズカよアキラの隣に座った。
「………なんだ?」
「ここでのんびり飯食ってる様子じゃあ疑いは晴れたようだな。」
アキラは特に構うことなく食事を続けた。男はカウンターのテーブルを強く叩いた。
「いいか、裏でコソコソ変な真似すんじゃねぇぞ! 突然後ろから撃たれるのはゴメンだからな!」
「そうだな。撃つとしたらお前みたいなバカからだな。」
「なんだとてめぇ!!」
男はアキラの胸倉を掴んだ。
「イゴール、やめろ!」
カウンターから少し離れた椅子に座っていた細身の男が声をあげた。肩まで髪を伸ばし整った顔だちをしていた。
「アレク、お前いたのか!」
「店に迷惑かけるな。それともまた営倉入りになりたいのか?」
その言葉にイゴールは苦々しい顔を浮かべアキラの胸倉から手を離した。
「けっ!」
イゴールはカウンターから離れ、1人テーブルで酒に手をのばした。
「あいつはイゴール、テーブルにいたのがアレクセイ、仲間からはアレクって呼ばれている。2人とも義兵団の中じゃあかなりの腕前だ。」
「2人はここの人間か?」
「アレクセイはそうだが、イゴールは西のEUのフィンランド出身だ。 あまり面倒ごとは起こさないほうがいいぜ。 アレクセイは元政府の役人だ。」
「政府の人間が何故義兵団に?」
「さぁな。前に言ったがあの軍隊は訳ありな人間の集まりなんだよ。 お前だってそうだろ。」
「………」
一人で酒を楽しんでいるアレクセイは店の隅にいる1人の男を発見した。
「岸谷、君もここにいたのか!」
坊主頭の日本人が1人で酒を飲んでおり、顔立ちを見ると20代後半に見える。
「……なんだ?」
「1人で飲むよりみんなで一緒に乾杯しよう。」
「1人がいいんだ。気にするな。」
「おい、どうしたんだ? 顔色も悪いように見えるがどこか体の調子でも悪いのか?」
「うるさい!! ほっといてくれ!!」
岸谷の大きな怒声に店は静まりかえり皆、岸谷を見えていた。
「わ、悪い。もう帰る。」
料金をテーブルに置き岸谷は店を出て行った。
「岸谷……。」
「あいつは日本人か?」
怒声を聞き2人の様子を見ていたアキラは坂口に尋ねた。
「あいつは確か岸谷 晋二(きしたに しんじ)だな。 元日本軍の人間で、今じゃあ義兵団の数少ない日本人だ。」
「数少ない?」
「お前は知らないだろうが、義兵団が設立されたばかりの頃は日本人が大量にいたんだ。」
「どうしてだ?」
「高い給料で雇ってくれるのがそこしかなかったんだ。この国は日本人を保護してるがそれは方便で働き手が欲しいんだ。安い賃金でシベリア鉄道の建設労働、ヴィーシュナの採掘でこき使ってんだ。 その中で義兵団に入ればかなりいい金になるんだ。 もっとも生きて帰ってその金を手に入れられるのはごく少数だがな。」
「最前線送りか……。」
「そういうことだ。無謀な作戦に日本人の部隊を大量に送って捨石のように使ってきたんだ。俺が来る前はまともなKMFは支給されなかったんだ。あの岸谷はその部隊の数少ない生き残りだ。」
「……。」
「本当にいいのか?」
「あぁ、構わない。」
店を出た2人は宿舎に戻ろうとしたがアキラは歩いて帰ると言い出した。
「少し、歩きたい。」
「そうか……まぁ好きにしなよ。 風邪引くんじゃねぇぞ。」
坂口が乗る車を見送りアキラは1人街の中を歩いていった。
華やかな歓楽街であるがその外れにはごみを漁っているみすぼらしい姿をした日本人、街行く人にお恵みを求める日本人を見かけた。
-華やかな街の裏では日本人がうじ虫のように這いずり回っている。 俺にはここがあのシンジュクのゲットーとダブった。-
雪の上を歩いていると雪を踏む音とは違う音がしてアキラは足元を見た。そこには1枚のコインが転がっていた。コインを拾ったアキラであったが
「待ちな!!」
その声にアキラは振り向くとそこにはロシア帽を被った日本人女性が立っていた。見た目はアキラと同じ年頃の子に見える。
「返してよ、その金あたしのもんなの!」
「お前のか?」
「お金落としちゃってそこで拾ってたの。それをあんたが盗もうとして!」
女はコインを持っているアキラの右腕をとろうとするがアキラはそのコインを投げた。
「あっ!!」
女は宙に浮いたコインを凝視し落ちるコインをキャッチした。
「……拾っただけだ。」
「へぇ~、普通なら俺の物だって言い張るんだけど、あんたあまり見かけない顔だね。もしかして新参者?」
女はじっとアキラの顔を見るがアキラは鬱陶しく感じ顔を逸らした。
「何その顔? こんなところで同じ日本人に会えたんだよ。少しは嬉しそうにしたっていいじゃない。」
「金は返した、もういいだろ。」
そう言うとアキラは女に背を向け歩いた。
「何あいつ? 無愛想な奴。」
アキラに悪態をつけながら女も別方向へと歩いていった。
翌日、アキラはトニーからの呼び出しを受け格納庫まで来た。
「流崎アキラ、到着しました。」
「よし、流崎今日からお前は俺の部隊に転属になった。 皆にあいさつしろ。」
アキラはトニーと一緒にいる隊員にあいさつした。 1人を除いて皆昨日の酒場で面識のある者達であった。
「……流崎アキラだ。」
「イゴール・グリンカだ。てめぇと一緒の部隊かよ、ついてねぇぜ。」
「アレクセイ・ヤゾフだ。 よろしく頼む。」
「岸谷 晋二……。」
その中で初めて会う人間がいた。この中では一番高い身長にこの寒い土地には似つかわしくない黒い肌、おそらく190はあると思う。
「ジェノムだ。 インディアンに会うのは初めてか?」
「インディアン? そうか、よろしくな。」
インディアン、ブリタニアの首都ペンドラゴンがあるアメリカ大陸の先住民族でブリタニアの侵攻により徴兵、強制労働させられたりしている。
シャルルが皇帝になった時シャルルの命令により大量虐殺が行われたことで世界各国へ大量の亡命者が発生した。
今回はKMF、武器、弾薬を極東のハバロフスクから運ばれ、サドナのアルダンから首都ヤールンまで護送する任務だ。
サドナ政府はハバロフスクからの輸送もブリタニアの監視を目を盗んでサドナまで運ぶしかないのだ。
KMF6機を大型車両に載せ発進しアキラ達は各KMFのコックピットの中で待機している。
『おいアキラ、突然裏切ってみろ。 俺がぶっ殺してやる。』
「そうか、じゃあブリタニアにお前のグラスゴーを先に撃ってくれって伝えておこう。」
『なんだと!』
『ふふっ、お前の負けなイゴール。』
アキラとイゴールの会話をアレクセイは苦笑いをして聞いていた。
『貴様ら、静かにしろ! もうすぐ合流地点だ。』
外を出ると大型車両が5台が列車を待っていた。
「大尉、お待ちしておりました。」
「敵に見つかっていないか?」
「はい、それは問題ありませんが……先程、ここの地域で軍が動き回っているとの情報が。」
「ちっ、見つかったらやっかいだ。 すぐに出発するぞ。」
武器、弾薬を載せた車両をアキラ達を乗せた車両が周りを固めて発進した。
外は吹雪のため視界が悪くスピードも出せずゆっくりとした速度で移動している途中、護送の車両1台が何かに躓き止まってしまった。
「大尉、すみません。 積もった雪のせいで道から外れてしまい乗り上げてしまいました。」
「ええい、こんな時に。 すぐに戻せ。KMF部隊も出して周りを見張れ。」
アキラ達はKMFを車両から出した。アキラ達のKMFは雪原迷彩のカラーリングのグラスゴーであった。
『くそう、吹雪で見えねぇぞ。』
『この悪天候だ。 敵が仕掛けてくるとは思えないが……。』
イゴール、アレクセイが思案している中 1人KMFのコックピットを開け直視で見ていたジェノムが声をあげた。
『何か光った!』
『何!? どこだ?』
『大尉、北東のほうに…。』
アキラ達はジェノムが示した方角を見たが敵らしき姿は見えなかった。
『何も見えないぞ。』
『ジェノム、見間違いじゃねぇのか。』
『だがイゴール、彼はアラスカ出身だ。 吹雪の中でもよく見えるのは知っているだろ。』
『でもよアレク……。』
『来た! 砲弾だ!』
ジェノムの叫び声に皆緊張が走った。 砲弾は車両の近くに着弾した。
『来たか。ジェノム、敵は?』
トニーの指示でジェノムはKMFに乗り込み、持っている大型ライフルに装着しているスコープで敵の姿を確認した。
『陽炎のタンクKMFが3機。 人型数機が近づいてくる。。』
『俺とジェノムで援護する。 あとの4人は敵をここへ近づかせるな。』
「きやがれ!! 俺が全部潰してやる!」
陽炎仕様のサザーランドを迎撃しながらアキラは先日遭遇したあの女が乗っているKMFを探したがその姿は見られなかった。
1機、2機と敵KMFを撃破していくが高台からの敵の砲撃がまだ止まなかった。
「ジェノム、まだかよ!」
イゴールは叫ぶように声をあげたがジョノムは静かな口調で返答した。
『あと少しだ。 我慢しろ。』
「のんびりしやがって、こっちは… うおっ!?」
砲弾がイゴールの近くに着弾しその衝撃でイゴールのグラスゴーが倒れてしまった。
「ちくしょう。」
イゴールは体勢を立て直そうとした時敵KMFがこちらを狙っているのを気づき機体を動かそうとするが右脚部分が動けなかった。
イゴールはやられると思ったが敵KMFは味方KMFの銃撃により撃破された。
味方KMFはイゴールのグラスゴーを引き摺るように腕を引っ張り岩場まで運んだ。
「だ、誰だ?」
『生きているな。』
「流崎、てめぇか!」
『死にたくなかったらそこでじっとしてろ。』
アキラはそう言うとその場から立ち去っていった。
アレクセイと迎撃を行っている中アキラはこちらへ近づくKMFに気がついた。
雪煙ではっきりと姿が見えなかったがあのKMFは見覚えがあった。
「きたか!」
あの女が乗っていた細身のKMFがこちらへ近づいてきている。
「アレクセイ、例のKMFだ。気をつけろ。」
2人はライフルで応戦するが雪の上でありながら素早い動きで回避し雪の中へと潜っていった。
「下に隠れた!?」
すると雪の中からライフルの弾がアキラ達を襲った。 アキラ達が怯んだ隙に敵KMFは下から出てきて襲ってきた。 アキラは寸前で回避しライフルを撃ったが至近距離ながらも敵は回避した。 敵はソードを構えアキラに近づいた。 アキラはライフルを斬られが敵KMFに組み付き脚部の雪上走行用のソリを出し組み付いたまま走り出し積もった雪へと激突した。
アキラのグラスゴーから離れようと押そうとしお互い鬩ぎ合いとなっている時地盤が揺れ2機がバランスを崩した。
ここは斜面だったらしく積もった雪のせいで隠れていたのだ。
2機とも転がるように転落したがすぐに立ち上がった。
お互い出方をうかがっているが敵KMFは突然後退しはじめた。
『流崎、敵は後退していった。 敵の数も少なかったから輸送車も無事だ。そっちはどうだ?』
アレクセイからの通信にアキラは応えた。
「こっちも無事だ。 すぐに戻る。」
-また、あの女が出てきた。 何故、俺のことを知っている。 陽炎とはどんな関係が。 このサドナ王国で何かの渦に巻き込まれる予感を感じていた。-
少し長くなりましたが、今回作品の中でオリジナルのKMFを出しました。簡単ですが説明させていただきます。
名称:グングニル
通常時は戦車の姿をしているがKMF同士の戦闘になった場合は戦車の後部が起き上がり前輪が脚部となり収納されている両腕が現れる。
雪上戦ではランドスピナーがぬかるみで思うように動けないことから陽炎部隊が独自で開発したKMF。 戦車の主砲で長距離射撃を得意としている。 キャラピラであるためランドスピナーほどのスピードはなく又接近戦の武装がないため援護射撃を重点に使用されている。
簡単に言えばKMF版ガ○タンクですね(笑)
あとエリスが搭乗しているKMFはグロースターの改良したもので軽量化するために脱出装置と余計な装飾も外しスピードアップしている。
それと脚部には雪上戦補助装置アイスブロウワーを装備してある。
※アイスブロウワーはボトムズ ペールゼンファイルズでキリコ達が使用した装置です。
ブリタニア軍のKMFはカモスーツを着てますがこれはダグラムでビッグフットというCBがカモスーツを着ていたのを思い出し使用しました。
あとはイゴール、アレクセイ、岸谷は20代、ジェノムは19歳という設定です。
参考に亡国のアキトを視聴したりしましたがどのKMFも派手ですね(笑)
自分の作品はボトムズのクロスオーバー作品なのでどうしても地味なKMFになってしまって…… まぁ陽炎独自で開発されたもので馬のような脚や派手な武器は作ったりしません(笑)
長くなりましたがこれで。
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第3話
「さぁ飲めアキラ!今日は俺のおごりだ! がっははは!」
イゴールの豪快な笑いにアキラは呆れた表情でいた。
あれから首都ヤールンへと帰還したアキラ達はジェノムを除いた4人で酒場にいた。イゴールは助けられたお礼としてアキラを強引に連れて来たのだ。
「どうじたアキラ? お前、全然飲んでねぇじゃなぇか。」
「……いらない。」
「ガキだなてめぇは。いいか、酒ってのはこうやって飲むんだ!!」
そういうとイゴールはグラスに入っているウォッカを一気に飲み干した。あ
「かあぁぁぁ~ うめぇ~ おい、もうないぞ追加だ! はっははは!」
イゴールの様子を見てアキラはため息を吐き、一緒にいるアレクセイは苦笑いをしていた。
「あいつは酒に酔うといつもこうなるんだ。 気を悪くしないでくれ。」
「いや……。」
アキラはこういったバカ騒ぎはあのアッシュフォード学園で生徒会の皆と過ごした時の事を思い出していた。
「改めて、これからよろしく頼む、アキラ。」
アレクセイは右手を差し出した。
「あぁ…よろしく頼む、アレクセイ。」
「アレクでいい。」
「そうか……わかった、アレク。」
2人は握手をした。
「何、2人で青臭せぇことしてんだよ。」
すっかり酒がまわったイゴールがアキラに肩に手をまわした。
「おう、次の店に行くぞ。岸谷お前も行くだろ。」
「もう……帰る。」
そう言って岸谷は店を後にした。
「けっ、付き合いの悪い奴だ。 おう、お前ら行くぞ!」
アレクセイはやれやれと苦笑いをした。
「アキラ、すまないがもうしばらく付き合ってくれないか。 あの様子じゃあ酔いつぶれて店に迷惑をかけそうだ。」
「……わかった。」
次に入ったお店は女性が接待するキャバレーのようなお店であった。
イゴールは左右に綺麗なドレスを着た女性がいて両手に花のような状態であった。
アキラとアレクセイはというとアレクセイは1人の女性と楽しげに話しているがアキラはというと差し出された酒に手をださず女性とも話してなかった。
「おう、アキラ何しけた顔してんだよ。 もっと楽しもうぜ。もしかして緊張して硬くなってんじゃねぇのか、はっははは!」
アキラはすっと立ち上がった。
「どうしたんだアキラ?」
アレクセイが尋ねた。
「少しトイレに行く。」
顔を洗いアキラはふぅと息を吐いた。
妖艶な香りを出す香水、化粧をする女性を見てどうもあぁいう女性、店の雰囲気は苦手だとアキラは思った。
だがイゴールの様子を見ればこの宴ももうすぐ終わるだろうと思いアキラはトイレを出た。
その時後ろから誰かがアキラの肩にぶつかった事に気づいた。
「す、すみません! 服汚れていませんか?」
ここの店の人間だろうか金髪でドレスを着た女性が頭を下げた。
「いや、大丈夫だ。」
「申し訳ありません。 余所見をしてまして……。」
女性が顔を上げアキラと目を合わせた時彼女はアキラの顔を訝しげな表情で見て大きな声をあげた。
「あっ!! あんた、あの時の日本人!」
「??」
何のことなのか、アキラはまだ分からなかった。
「思い出せないの? ほら外であんた、あたしのお金拾ったでしょ?」
「………あの時の女か。」
「へぇ、義兵団の連中が来てるって聞いてたけどあんたがそうだったんだ。 あんたも物好きだねぇ、義兵団なんか棺桶に片足入れるもんだよ。」
「話は終わりか、もういいか。」
去ろうとするアキラの片腕を女性は掴んだ。
「ちょっとあんた、あたしを指名してよ。」
「お前を?」
「今日、指名されなくて。だからお願い!じゃないと支配人から怒られちゃう。」
「………。」
「ねぇ、お願い。」
彼女の懇願にアキラはため息を吐いた。
「……ついて来い。」
彼女の顔はパッと明るくなった。
「レイナです。 ご指名ありがとうございます。 お客様は?」
さっきとは打って変わって丁寧な口調でアキラに接しだした。
「……流崎 アキラ。」
「ふふっ、じゃあ席までいきましょうかアキラ♪」
レイナはニッと歯を出し意地悪そうに微笑んだ。
「おっ!?アキラ、お前いなくなったと思ったら女捕まえていやがったのか。」
席に戻るとイゴールがまたボトルを1つ空にしていた。
「じゃ何飲む?」
「いらない。」
「え~何それ? 飲まないと楽しめないじゃない。」
「………。」
「もしかして、酒飲めないとか?」
「………。」
アキラの沈黙にレイナは大きな声で笑った。
「おかしい~ じゃあずっと酒飲まないままいたの。」
するとイゴールと一緒にいた店の女性がレイナに近づいた。
「ちょっと、もう少し静かにしなさい!うるさいのよ。」
他の客には聞こえないようレイナを叱った。
「す、すみません。」
「ったく、これだからイレブンは……。」
先輩の女性が去りどこか気まずい雰囲気となってしまった。
「ごめんなさいね。 え…っとじゃあ適当に何か頼むね。いい?」
「あぁ、任せる。」
しばらくしてウイスキーとフルーツの盛り合わせが運ばれてきた。
「心配しなくてもびっくりするような高いもんじゃないから。」
2つのグラスにウイスキーを注ぎ1つをアキラに渡した。
「じゃ乾杯~。」
レイナにあわせアキラもグラスを合わせ一口飲んだが渋い顔をしてすぐにグラスをテーブルに置いた。
「もう~、ホントに飲めないの?」
「好きに飲んでろ。」
「それじゃ仕事になんないの。」
頬を膨らませてつつレイナはウイスキーを口に運んだ。
「アキラっていくつ?」
「……18。」
「嘘~! あたしと同じ歳じゃん。 20くらいだと思ってた。」
レイナは先程のように明るい笑顔に戻った。
「ねぇねぇ、アキラが着ている服って黒の騎士団でしょ? どんなことしてたの?」
それからレイナは日本=エリア11が今どうなっているのか聞いてきた。
「はぁ……。帰りたいな。」
「帰りたい? 日本人がどんな扱いされてるか知ってるだろ。」
「でも…こんなところよりマシよ。」
レイナは持っているグラスを見つめていた。
レイナは神妙な面持ちで持っているグラスを見つめていた。
その時、誰かが倒れた音がした。よく見るとイゴールが眠ってしまいソファーに倒れていた。
その姿にアレクセイは苦笑いをした。
「ここで終わりだな。 アキラ、連れて帰ろう。」
2人でイゴールの肩を支えお店を出ようとした時、アキラはレイナから呼び止められた。
「アキラ、楽しかったよ。 また来てね。 それと…」
レイナは名刺を差し出した。
「またね~」
レイナは店の奥へと姿を消した。 アレクセイはフッと笑った。
「気に入ったかあの子を?」
「そんなんじゃない。」
「いいじゃないか、また来て楽しめばいい。」
「酒が飲めないのにか。」
「はっははは。そうだったな。」
アレクセイの笑いに釣られてアキラもフッと笑みをこぼした。
タクシーで宿舎に戻る途中信号で車が停まったところでアレクセイあるところに目が止まった。
そこある巨樹が雪化粧により葉一枚一枚に雪が被っている。
「大きな樹木だな。」
「もう、いつからあそこに植えられたか誰にも分からない。樹齢が100年は越しているらしい。」
アレクセイはその巨樹を見て悲しげな表情を浮かべた。
「どうした?」
「いや、少し昔を思い出してな。」
アレクセイは笑ってごまかした。 アキラも詮索するのは悪いと思いそれ以上聞かなかった。
アキラ達が楽しんでいる時、義兵団基地にあるトラウトマンの私室にトニーは呼ばれ今度行われる作戦についてある指示を受けていた。
「あのアルダン高地を攻略ですか!?」
「あぁ、久しぶりに大部隊での作戦になる。 もちろんお前の部隊も参加する。」
「わかりました……しかし、要塞化されてあるあのアルダン高地を何故今?」
「不満か?」
「いえ、アルダンはビーシュナが豊富に採掘されている産地でもあります。あそこを奪還できればかなりの打撃を与えられると思われます。」
ビーシュナ=サクラダイトは少しの温度の変化により引火したりとかなり扱いが難しい液体である。
気温の変化が激しいサドナ王国ではサクラダイトの交換が頻繁に行わなければKMFが動けなくなる。
ブリタニアの極東にある軍港のウラジオストクからの補給では間に合わずブリタニアはサクラダイトの産地でもあるアルダンを侵攻しサクラダイトの採掘を独占しているのだ。
「それと流崎アキラを第1陣の部隊に入れろ。」
「流崎をですか……?」
「そうだ。奴が生きてるか逐一確認しろ。」
「はぁ~ わかりました……。」
一抹の疑問を浮かべながらもトニーは部屋を去っていった。1人になりトラウトマンはあるところへ連絡を取った。
「………はい、作戦は予定通りに。 例の男も参加させます。……………はい、私も今だ半信半疑ですがもしこれで…………。」
10日後……
トレーラーに収納されたKMFの中でイゴール達は待機していた。
『しかしよぉ、今回やけに大掛かりな作戦だな。』
『敵が要塞化しているアルダイ高地だからな。簡単にはいかないさ。』
『へへへっ、その分ギャラアップしてもらいてぇぜ。』
『だが…妙だ。』
ジェノムの一言は2人が思っていたことだ。
『何故、アキラと晋二が俺達とは別働隊なんだ。』
-アルダイ高地-
広大な大地に雪が降り積もりその地を大量のKMFが踏みしめていた。
雪とともに降り注ぐのは銃弾と砲弾。ここはアルダイ高地では一番高台にあり辺りが見渡せるほどでここに要塞基地がある。
アキラ達約600の第1陣が今要塞を攻略しようと戦闘の真っ最中である。
ブリタニアは主砲による砲撃、機関砲で政府軍の進撃を阻んだ。
アキラは物陰に移動しながら要塞に近づこうとしているが思うように進めなかった。
KMF、歩兵部隊がブリタニアの砲撃にやられ既にKMFの残骸、死体の山ができ雪が血と流体サクラダイトによって染まっていった。
状況確認しようと回線を開くが聞こえるのは怒号と悲鳴であった。
『足が!! 足があぁぁぁ!!』
『た、助けてくれ!』
『くそう、援軍はまだか!!!』
「岸谷、応答しろ!」
アキラは岸谷に連絡をとったが応答がなかった。
「岸谷!」
『うるさい!! 何度も呼ぶな!!』
声を聞くとかなり興奮しているように聞こえる。
「無事だったか。 今何処だ?」
『お、おそらく だいぶ端のほうに離れていると思う。』
「そうか……。」
後方にいるトニーから通信が入ってきた。
『流崎、応答しろ。』
「…こちら流崎。」
『貴様、生きていたのか!』
「はっ…… 岸谷も無事です。」
『もうすぐ援軍も来る。それまで少しでも敵戦力を減らしてみろ!』
「…………了解。」
敵戦力を減らす。 あまりにも簡易な命令にアキラは深いため息を吐いた。
その時、敵要塞から主砲が発射された。発射された砲弾が空中で破裂し中から小型爆弾が大量に散布された。
「クラスター弾!」
アキラはクラスター弾が散布された範囲の外まで出たためグラスゴーの左腕を損傷しただけですんだがクラスター弾の爆発により発生した雪煙が晴れて見たものは巻き込まれた味方機がやられ、歩兵は助かった者がいたが腕、脚が損傷したりかなりの損害がでた。
-アヴァロン 大西洋上空-
中性的な顔立ちをした男がモニターにて何か確認していた。
「どうだい、サドナ王国のほうは?」
「はい、アルダイ高地の戦闘開始してから1時間経過するところです。 敵600は我が軍のトーチカの前で釘付けになっています。」
その話を聞いた男は目頭を指で押さえた。
「EUとの交渉を終えたばかりです。少し休まれたら。」
「そうだね。 では全て終わったら起こしてくれ頼むよカノン。」
「任せてください殿下。」
殿下、シュナイゼルは微笑み、自分の部屋へと入っていった。
アキラはクラスター弾が発射されたトーチカを確認しそこへ近づこうとランドスピナーを降ろし走った。
雪の上を走っているが雪とは違う感触がありそれが雪によって積もり隠れた兵士の死体を踏んでいるのであろうとアキラはKMFの中でありながら理解できた。
アキラのグラスゴーはライフルが届く距離まで近づきトーチカに向けてライフルを放った。
アキラの攻撃によりトーチカが爆発を起こしトーチカを沈黙させることに成功できたがアキラが敵の射程内に近づきすぎたため敵の標的になってしまった。
早くここを離れようとしたアキラであったが敵の銃撃によりライフルは弾かれ手元から離れてしまい、敵KMF、機関砲の集中攻撃にさらされてしまった。
脱出装置を作動させ脱出したが先程の攻撃のためか射出されてパラシュートが開かずそのまま地上に激突してしまった。
アキラは自分の身体の状態を確認した。 先程、敵の集中攻撃で急所は外れてはいるが腕、脚、脇腹に銃撃による出血をしていた。
アキラは外に出ようと痛みに耐えながら体を動かそうとした時味方からの通信が入ってきた。
『アキラ、無事か?』
「はぁ、はぁ… アレクか……。」
『怪我をしたのか!? 今、どこだ?』
「はぁ……コックピットが転がっているだろ。」
『……あれか!?』
アレクセイが乗るグラスゴーがアキラのコックピットに近づいた。
『大丈夫か?』
「すまない、撃たれた。」
『もういい、 すぐに救護班を呼ぶ。あとは俺達にまかせろ。』
「たの…む。」
アレクセイは戦線に戻りアキラは操縦席に座り息を整えようとした。
第2陣の部隊によりアルダイ要塞も押されつつあった。
「チュリマン要塞、占領されました!」
「ネリュングリ要塞も占領!」
アルダイ要塞本部には思わしくない知らせを次々に入ってきた。
「司令官!」
ここの要塞の司令官は腕を組み思案したが厳しい顔つきでいた。
「戦闘が開始してからどれくらいたった?」
「……もうすぐ、3時間ぐらいです。」
「…………もう十分だろう。 あと20分、時間を稼ぐ。その間皆に撤退させるよう伝えてくれ。」
司令官は隣にいた1人の女性兵士と顔を合わせた。
茶髪のショートヘアに凛とした顔で軍服を着たまだ20代の若い女性である。
「君も皆と撤退するんだ。」
「し、しかし……。」
「マクシム閣下から君のことを預かってくれと頼まれたんだ。 その君を今ここで死なせるわけには行かないんだ。」
「………。」
「閣下を支えてやってくれ。」
「………わかりました。」
司令官に敬礼した女性は司令室から出て行った。
「へっ、なんだ思ったほどたいしたことねぇな。」
イゴールの言うとおりトーチカなどの攻撃に手は焼いたもののトーチカを沈黙させてから敵の数は少なく敵も撤退しつつあった。
「だがおかしい、KMFの数が少なすぎる。」
アレクセイの言うとおり要塞の防衛KMFが思ったほど多くはなくまた、どのKMFも自分達と同じ旧世代のグラスゴーであったりと敵にしてはどこかお粗末な感じがした。
『おいアレク、敵の捕虜を見たんだがよ。どいつもサドナ王国の人間だぞ。』
イゴールの言葉にアレクセイはあることが思い浮かんだ。
(もしやここの要塞はもう……。)
『おっ!?敵が逃げていくぞ。』
イゴールの言葉にアレクセイはその敵のほうをみた。
軍用ジープが斜面を駆け下りるのが見えた。
『へっ、捕まえてやるぜ!』
イゴールと共にそのシープを追い威嚇射撃をしようとした時1人の女がジープの窓から顔をだした。
「あれはカティア!?」
その女はバスーカらしきものをこちらへ構えた。
「っ!?」
『おっ!?』
バズーカから発射されたものは眩く発光しアレクセイ達の視界を奪った。
「発光弾か!?」
視界が戻った時には既にジープは遠くへと離れていった。
『っち、惜しかったな。』
アレクセイはそのジープに乗っていた女が気になっていた。
(あれはカティア………マクシムについて行ったがまさかここで……。)
しばらくしてここのアルダイ基地の司令官が降伏したことにより戦いは終わった。
「よぉ、アキラ生きてるか。」
アキラが休んでいるテントにイゴール達が入ってきた。
「命に別状がなくてよかった。」
「……他の奴等は?」
「ほとんど全滅だが岸谷は生きている。今はほっといたほうがいい。かなり参った様だ。」
ジェノムから聞き、アキラはそうかと一言呟いた。
「流崎アキラはいるか?」
トニーが入ってきて4人は敬礼をした。
「こいつと話がしたい。貴様らは出ろ。」
アレクセイ達はアキラのほうを見た。 アキラは黙って頷き4人はテントから出た。
「ふん、生きていたとな。 くたばったと思ったぞ。」
「…………。」
「くっくく、早く復帰しろよ。 将軍は貴様のことを買ってるようだからな。 将軍の為にも死ぬまで戦ってもらうからな。」
そう言うとトニーはテントから出て行った。
アキラはベッドに横になり自分の左右隣を見た。 どれもけが人ではなく遺体収納袋に入った遺体であった。
-ハバロフスク ブリタニア ハバロフスク基地-
「総督、アルダイ基地からの報告です。」
大柄ではないががっちりとした体型で物静かな面持ちの男性。
デニス=ハン総督は部下から受け取った報告書に目を通した。
「撤退した部隊はアムール川下流にある基地まで撤退するように伝えてくれ。」
作戦室をでたデニスであったが不気味に顔を歪ませていた。
「……以上がアルダイ高地での戦闘の報告です。」
『マウスのほうはどうなってるの?』
「はっ、トラウトマンの報告によりますと生存しています。詳しい戦況はこれに。」
『わかったご苦労。』
「はっ、それと殿下はこのマウスを何故……。」
『あなたは余計な事は聞かなくてもいい!』
カノンは強気な口調で叱責した。
「はっ、申し訳ありません。」
『引き続き、監視せよ。』
「イエス・マイ・ロード。」
カノンとの通信を終えたデニスはある書類に目を通した。 どれもアキラに関するものであった。
デニスは不敵な笑みを浮かべた。
-アヴァロン-
「何かあったようだね。」
「殿下、作戦は終了しました。 敵がアルダイ基地を占領しました。」
カノンの報告を聞いたがシュナイゼルは特に気にさわることなく穏やかな表情であった。
「味方の敗北ですが…?」
「予想通りの結果だよ。 だからこそあの基地にはマクシム達の配下をおいたんだ。」
シュナイゼルの言うとおりアルダイ基地にはマクシムの配下達がほとんどでKMFもグラスゴーと旧型しか配備されなかった。
「確かにあそこでサクラダイトの採掘が行われましたが、産出量が少なくなり7ヶ月前には閉山して名ばかりの基地でしたから。」
「それで戦況は?」
「戦闘は約3時間で第1陣から3陣の部隊の攻撃によって陥落しました。」
「彼がいた部隊は?」
「奴がいた第1陣は数が600。ほぼ全滅し、生き残ったのは……4人。 その中に流崎アキラ、奴も含まれています。 確かにこの中で生存できたのはかなりの幸運ですね。」
その報告を聞きシュナイゼルは小さく微笑んだ。
「実験をした価値はあったようだね。」
カノンは紅茶の準備をはじめた。
「殿下、サドナ王国をブリタニアの新たなエリアに編入させる準備が整いつつあります。」
カノンから差し出された紅茶をシュナイゼルは一口飲んだ。
「力押しでエリアに編入させたところでエリア11の二の舞になるよ。 不安定要素は少しでも多く除かないとね。 それに実験場としてあの国は好都合なんだよ。」
「実験ですか……流崎アキラ。 この男ですがバトレーが調べた陽炎の資料にも陽炎の隊員として名はありますがたいした戦歴をお持ちではありません。 そこまでこの男に拘ることはないと思いますが?」
「僕もね、はじめは信じられなかったけど井ノ本寛司、彼が考えが真実ならば流崎アキラは奇跡の人間かもしれないよ。」
シュナイゼルは焦げた跡のCDを手にし微笑んだ。
「珍しい、あなたが誰かに興味をもつなんて。」
「ふふふっ。」
トレーラーで運ばれアキラは窓からアルダイ高地の戦場跡を見た。
-雪の上に染まる人の流血、KMFの残骸から流れるサクラダイト。 この地獄のような高地に雪が隠すように降り積もる。 この地獄から生き延びたとしてもまた次の地獄が続く。 俺にはわかる。俺が地獄で踠く姿を観察者がどこかで見ていると………カレン、お前もどこかで戦っているのか、終わりの見えないこの地獄で………-
シュナイゼルにアキラという猛毒が回りはじめた?
もしかしたらシュナイゼルが一番キャラが変わるかもしれません。
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第4話
熱い、苦しい、ここはどこだ?
そこに広がるのは瓦礫と死体の山、何故自分がここにいるのか……そうだ任務だ。ある男を殺せと今その男を捜しているところだと。
燃え盛る炎の中から1機のKMFが姿を現した。 1機の無頼の左肩が赤く染められていた。 その無頼は次第に人の姿になりその男は銃を自分に向けて撃った。
「うわあぁぁぁぁぁ!!」
「エリス、どうしたの?」
ガラス越しの部屋から様子を見ていたジョディが問いかけた。
エリスは自分に付けられた機器、見慣れた部屋、ここが研究室だとすぐに理解し息を整えた。
「はぁ、はぁ……、なんでもない。」
「………そう、だったら調整を続けるわよ。」
「どうだい、彼女の様子は?」
兄のドリーが部屋に入ってきてコーヒーをジョディに渡した。
「兄さん、またあの子うなされていたわ。」
「う~ん、またか……。身体に異常は?」
「まったくない。 例の時だけ脳波が少し乱れるだけ。」
ドリーは腕を組みジョディの隣に座った。
「この前あった戦闘で流崎アキラの姿を見た時もかなり動揺していたようだね。」
ドリー達はエリスのグロースターに搭載されてあるカメラから確認できた。
「あの男が生きていたなんてね。 私、エリスの件も流崎アキラが関わってると思うけど。」
「ありえない話じゃないね。 カゴシマで初めて接触してからだからね。」
「あと一つ……。」
そう言うとジョディは右手の人差し指1本出した。
「流崎アキラを1人の男として意識している。」
それを聞きドリーは鼻で笑った。
「馬鹿馬鹿しい、何を根拠に。」
「女の勘かな。記憶処理をした彼女が唯一思い出したのが流崎アキラ。だったら彼を意識するのはおかしくないと思うけど。」
「技術者のお前がそんなこと言ってどうする。もしそれが正解なら彼女はPSとして欠陥品だよ。」
「でも戦う為だけに作られたパーフェクト・ソルジャー、そんな彼女が人間らしい感情をもったら面白うじゃない。」
ジョディを見てやれやれと首を振ったドリーはある事を思い出した。
「今度、閣下がこちらへ来ることになったけどゲストを用意しているみたいだよ。」
「へぇ、誰?」
「ふふっ、それは……。」
アルダイ高地での戦闘から2週間過ぎた。 あれからアキラの容態は回復し今では外に出られるまでになった。
復帰後の任務は首都ヤールンからの南東450kmにあるトンモという都市で人口が3万人弱の小さな街だがそこでブリタニア極東軍の政府要人達が集まるという情報を手に入れた。 そこでサドナ王国政府はブリタニアとの交渉材料としてトラウトマン義兵団に要人達を捕らえる命令を出した。
その作戦が数日後に控えている今日、アキラは坂口の付き添いとしてあるところへといた。 そこは首都からだいぶ離れたところにある外れの小さな町の古びたバーがありアキラは坂口の車の中で待機していた。
しばらくして帽子を深く被った坂口と数人の男を付き従った2人の男が店から出てきて別れた坂口はアキラが待っている車に戻ってきた。
「おうアキラ、だしてくれ。」
坂口から言われアキラは車を発進させた。
「悪いな、人が足りなくてな。お前にこんな仕事させちまって。」
「どうだったブリタニアのお偉いさんとの会合は?」
「ふんっ、あいつら自分達に疑いの目がかけれているからって言ってここできて怖じきづきやがって。 それとだな、ちょっと面白い話を聞いてきた。」
「話?」
「ハバロフスクの軍基地にナイト・オブ・ラウンズの1人が来るらしいぜ。」
「ナイト・オブ・ラウンズ!?」
-ナイト・オブ・ラウンズ- 皇帝直属の騎士であり選ばれた騎士達には専用のKMFを持っておりその技術、実力はかなりのものだと言われている。
「ラウンズが何故?」
「なんでも陽炎のボスが来てくれって要請があったみたいでよ。 そのボスもハバロフスクに来るみたいだぜ。」
「……井ノ本!」
「それでだ、俺は今度ハバロフスクに行くことにした。 軍もそうだがどうやら政府の連中らの動きがきな臭せぇんだ。。」
「そうか、何か分かったら教えてくれ。」
「おう、まかしとけ。」
アキラは先日のアルダイ高地での戦闘後のトニーとの会話で義兵団のトラウトマン将軍がブリタニアと繋がっているのではないかと疑いだした。
まだ確信は持てないがここサドナ王国に根付く陰謀は暗く深いものだとアキラは感じた。
街の中にある坂口の自宅まで送り届けて別れた後アキラは街の中を歩いた。 今日も雪が降り積もりアキラ達には凍てつく寒さを感じていた。
早く体を暖めようと基地に戻り多くの兵士達で使用されている広いダイニングルームでコーヒーを飲もうと入った時ちょうどアレクセイと鉢合わせになった。
「アキラ、その格好を見るとどこかに出掛けていたな。」
「まぁな。お前はどうした?」
「あぁ、ちょっと友人から手紙が届いてな。」
アレクセイの手には手紙が握り締められていた。
「しばらく会ってなくてな。」
そう言うとアレクセイは近くの椅子に座り手紙の中身を読んだ。
『我が兄弟アレク、久しぶりに手紙を書く。 サドナ王国の事は中華連邦で聞いている。 ブリタニアに屈せず戦い続ける君に私も深い感銘を受けている。 今、国の事情で君達を助ける事ができず心苦しい思いだ。 だが私は忘れてはいない。お互いの夢、それを果すまでその命無駄にしないでくれ。 遠くながら君の健闘を祈っている。 黎星刻』
(星刻………)
数年前、サドナ王国と中華連邦は同盟関係にありサドナ王国内でも中華連邦の人間が行き来していたのだ。
まだ下級の役人に過ぎなかったアレクセイは軍の訓練場の1室で1人佇んでいた。
「はあぁぁぁぁ。」
アレクセイは大きく手を動かし口いっぱいに息を吸い込み呼吸を行っていた。
呼吸法によって体をリラックスさせアレクは突き、蹴りの動作をはじめた。実際相手がいないにもかかわらずアレクセイの額には汗が流れ落ちていた。
「相変わらず精が出るなアレク。」
「国王!」
振り返るとそこには各国政府要人と対談する時に着る衣装を少し崩した格好をしたマクシムがいた。
「アレク、もう仕事は終わったんだ。 そう呼ぶのはやめてくれ。」
マキシムは苦笑いをした。
「中華連邦との会合はもうお済で?」
「彼らと付き合うのは肩が凝るよ。 それよりお前に会わせたい人がいてな。」
マクシムの後ろに1人の男性が立っていた。長い髪に整った顔立ちからここの国の人間には見えなかった。
「紹介しよう、黎星刻(リー・シンクー)。今回、中華連邦の大宦官の方々の警護で共に来訪してきた。」
「マクシム国王、私のようなたかが下級の役人にここまでしていただくのはいささか……。」
星刻は戸惑いの顔を浮かべていたがマクシムは笑って返した。
「いいんだ。いつかアレクに君の事を紹介したかったんだ。 彼はアレクセイ・ヤゾフ。」
「黎星刻です……。 国王からあなたの事を聞いたことがあります。 古くからの友人だと。」
「そんな……。」
「失礼ながら先程やられた拳法は……。」
そう言われアレクセイは苦笑いをした。
「以前、国王が中華連邦を訪問した際随行した時、偶々街で稽古していた方々を拝見しまして何度か指導を受けその後自己流でこうして訓練で取り入れてみたのですがあなたから見れば素人同然の動きに見えますよね。」
「いえ、そんな事はありません。 動きにキレがありとても素人とは思えませんでした。」
2人の会話を聞いていたマクシムは優しく微笑んだ。
「やはり2人を会わせたのは正解だったな。」
「どういう事ですか?」
「アレク、星刻と初めて会ったとき彼がお前に似ているなっと思ってな。」
「俺にですか?」
2人は顔を合わせ怪訝な顔をした。
(ふふっ それからあいつと何度か話すうちに不思議と馬が合ってあいつから拳法の手解きを受けたな。)
アレクセイは思い出し笑いをし外の風景を眺めた。
「そうか、君はマクシム国王と。」
「あぁ、国王と共にブリタニアと闘いそしてこの国を新しく生まれ変わらせるんだ!」
時は過ぎ、雪が降り積もった景色を眺めながらアレクセイと政務で来ていた星刻は酒を片手に談笑をしていた。
「アレク、私の国もいずれブリタニアに狙われる。だが今、国は大宦官達によって腐りきっている。このままではあっという間にブリタニアに飲み込まれてしまう。 それではてん………ゴホォ、ゴホォ!」
星刻が咳き込み苦しみだした。アレクセイは慌てて星刻の背中を摩った。
「天子様との約束を果たせない…だろ。」
「………あぁ。」
「冷えてきたな。もう休め、お前が死んでしまったら誰が天子様に外の世界を見せるんだ。」
星刻は自分の右手でアレクセイの右手を強く握った。
「アレク、私は今、死ぬわけにはいかない!」
「……それは俺も同じだ!」
アレクセイも強く握り返した。
「天子様のために!」
「国王のために!」
『己の忠義のために!!』
(義兄弟の契りを交わしたのもあの時だったな。)
アレクセイは外の景色を眺めた雪は絶え間なく降り続いている。
(命を無駄にしないでくれ……それはお前もそうだろ、兄弟。)
余命幾ばくもない友を思いアレクセイは不安な顔を浮かべ外を見ていた。
数日後、ブリタニア軍ハバロフスク基地にて1機の軍用の輸送機が降り立った。
基地の兵士が待ち構えている中輸送機から1人の日本人の男が降りてきた。
「井ノ本閣下、お待ちしてました。」
「サドナ王国の状況はどうだ?」
ここ極東での陽炎の指揮を担当している部下に聞いた。
「シュナイゼルのおかげで近い内にエリアに入るのは時間の問題かと…閣下、サドナ王国の政府軍の中に。」
「流崎 アキラの事は聞いている。 今回、彼をヨーロッパから呼んだのも流崎の事も関係してある。」
井ノ本に続いて降りてきた男はラウンズの証であるマントを羽織って降りてきた。
「彼は流崎 アキラの名前を聞き直接確認したいと希望した。」
3日後、アキラ達は輸送機の中揺られながら目的地のトンモへと向かっていた。
『ブリタニアの要人達はこのビルに14:30頃会談を始めるとの予定だ。 我々は先にトンモに潜入させた部隊からの合図でヘリでビルの四隅に展開し、部隊を投下ターゲットを確保したら早急に撤退させる。 作戦時間は約1時間とする。』
「はっ、らくな作戦だな。 こんなんなら基地に帰ってゆっくりしてぇぜ。」
説明を聞いたイゴールは愚痴をこぼした。
「だからと言って気を抜くな。トンモはブリタニアの占領地だ。作戦が長引けばこちらが不利になるんだ。」
アキラ達も投下部隊の中に入っておりアキラはライフルのチャックをしていた。
『こちら、G-2。14:25、ビルの前にターゲットが乗っていると思われる車が来ました。』
先に潜入させた部隊からの報告に作戦司令部も緊張の色を隠せない。
「映像を見せてくれ。」
部隊から配信された映像で車から出てきた人間達の姿を確認した。
「間違いない、ターゲット達だ。」
「投下部隊の準備も完了しております。 吹雪も落ち着いているところです。予定通りに…」
「………2分後、作戦を開始する。各自持ち場につけ!」
アキラ達はライフルを構え時間まで待機した。
・
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『こちらG-2、大きな変化なし。予定通り会合は開かれるようです。』
まもなく作戦開始時刻となり街郊外にて待機していた奇襲用のヘリ4機がプロペラを回し浮上を開始した。
「残り10秒」
・
・
・
・
・
「……作戦開始!」
アキラ達を乗せたヘリは街へと向かって行った。
先程までの吹雪は落ち着きヘリの移動には支障はなかった。
ヘリは妨害を受けることなく目標のビルの真上まで到着した。
アキラ達は降下するためのロープにフックをかけ降りる準備をした。
他の兵士たちが次々に降下しアキラも続けて降下した。
最上階の部屋から制圧していきブリタニアの政府要人達を拘束していった。多少の抵抗はあったものの目的の人物達を全て確保する事ができた。
敵の追撃前に早々に撤退をしなければならずアキラ達はヘリに乗り込んだ。他のヘリの最後尾にてアキラ達を乗せたヘリは撤退していった。
「あっけなかったな。」
イゴールがライフルを肩に乗せのんびりとした感じでいた。
「さっさと帰って一杯したいぜ。」
アキラがふと窓の外を眺めていると何か光ったことに気づいた。それがこちらへ向かっていった。
「っ!?」
次の瞬間ヘリは大きく揺れた。
「お、おい! なんなんだ!?」
トニーは大きく狼狽している。
「て、敵の攻撃です!」
「みんな!何かに掴まるんだ!!」
アレクセイは冷静に皆に伝えてヘリが落ちていく中振り落とされないようアキラ達は手すり等に掴まった。
ヘリはバランスを崩しながらも着陸できる街の広場で不時着した。
「み、みんな無事か?」
「お、おう。」
着陸の衝撃で皆、意識を失ったがすぐに起き上がった。
「こ、こちら第7部隊。応答しろ。」
トニーは他の部隊と連絡を取ろうとしたが外から味方のヘリも敵からの砲撃で墜落するのが見えた。
「敵が隠れていたようだな。」
ジェノムは外を警戒しながらライフルを手に取った。
「外の様子を見てくる」
そういうとジェノムはライフル片手にヘリから出た。外を見るとヘリが落ちてきた事で近くにいた住民達が逃げ惑っていた。
アキラは操縦席に向かったがパイロットの2人が怪我をして身動きがとれずにいた。
アキラはアレクセイと2人のパイロットを動かし操縦席のモニターを操作した。
「こちら第7部隊、応答せよ。」
『こち……ら……第2ぶ………たい。』
ノイズにより正確には聞き取れなかったが味方が無事だったようである。
『敵の…こう………げきにより撃墜。 死んだ人間もいる。』
アレクセイは今自分達がどこにいるのか確認した。 先程作戦のあったビルが見える方向を見た。
「我々は今先程のビルからおそらく南西約6キロ程のところだ。」
「こちらは………噴水のある広場にいる。………おそらく南南東8キロのところだろう。」
アキラはモニターで場所を検索をした。
「……おそらくシンブナ広場だろう。」
「第2部隊と合流するしかないな。」
「お、おい2人共かなりヤバイ事になってるが………。」
イゴールは先程戻ってきたジェノムからの話を聞き苦笑いをした。
「敵の部隊がこちらへ向かってくる。のんびりはできない。」
ジェノムの報告を聞きトニーは顔が真っ青になった。
「救援の連絡を…。」
「隊長、それより今はここから離れる事が先決です!」
アレクセイは必要な機材を運ぶ準備を始めた。
アキラと岸谷は負傷者を運び、イゴールとジェノムは銃器の運搬の準備をした。
「こちらにKMFがない今、敵に見つかればひとたまりもありません!」
「そ、そうだな。」
アレクセイの忠告を聞きトニーもここを離れることにした。
「殿下、これを」
ところ変わりブリタニア本国にて政務に勤しんでいるシュナイゼルにカノンがある報告をしてきた。
「トンモで政府軍が作戦を開始しました。 結果、拘束された我々の要人もいます。」
「それで彼らはトンモを抜け出したかな?」
「全部、奇襲によりトンモに取り残されました。」
「ふふっ、予定通りだ。 じゃあこのまま続けてくれ。」
「イエス・ユア・ハイネス。」
『アキラ、敵は?』
アキラはアレクセイとは別行動で敵の動向を探ろうと別の建物に入りヘリが墜落した現場に集まった敵の部隊の姿を確認していた。
「KMFが6機、陸戦艇2機が少し離れて待機している。」
『そうか……ジェノムのほうは?』
「4機確認した。」
『了解、2人とも戻ってきてくれ。』
アキラ達との通信を終えたアレクセイの横でトニーが大きな声をあげ味方と連絡を取っていた。
「すぐには救援には来れないとはどういうことだ!! ブリタニアの領内で我々は丸腰で一捻りで潰されてしまう! 何………4時間だと!? そんな悠長な…将軍のご命令だと!? いや………ちょっと待て!!」
通信が切られトニーは肩を落とした。
「救援部隊は約4時間後だそうだ。それまで持ちこたえてくれと。」
「4時間だと!? 冗談じゃねぇぜ! KMFもねぇってのにどうやって持ちこたえてくれって言うんだ!」
「いや、手はある。」
アレクセイは地図を取り出した。
「生き延びた部隊からの報告によると撃墜されたヘリは全て街に墜落したと聞く。その中の第3、5部隊にKMFが配備されていたはず。 だったらそこまで行きKMFを確保する。」
「お、おい待てよアレク、その部隊に連絡しようにも繋がらないんだぞ。乗ってる奴らが全員死んでKMFもオシャカになってるかもしれないんだぜ。」
「KMFが1機でもあれば少しでも生き残れる確率はあがる。現に俺達の手元にはライフルしかないんだ。」
アレクセイの言うとおりアキラ達の武器は白兵戦での対KMFの為につくられた大型ライフルと自動小銃のみでこの武装で敵と対抗するのは困難であった。
そんな中、アキラとジェノムが戻ってきた。
「アキラ、外の様子はどうだった?」
「また少しだが数が増えてきた。」
「考える時間はねぇって事か……。」
「……みんな、二手で別れて行動しよう。俺と…」
「アレクセイ、勝手に指示を出すな!隊長はこの俺だ! 俺が命令を出す。 全員ここで待機だ。」
「っ!? 待ってください! 味方の救援隊が来るのは4時間、ここは敵の領内。敵の増援がいつ来てもおかしくはありません。 でしたら自分達で脱出するしかありません!」
「ならん! 動けば敵に見つかってしまう。 ここは大人しくして待っていればいい。」
「し、しかし……。」
トニーは懐から拳銃をとりだしアレクセイにむけた。
「俺の言う事を聞けないなら軍法会議だすぞ!」
場の空気が張り詰めた中アキラが黙って大型ライフルを肩に背負った。
「貴様、命令違反する気か?」
「アレク、指示をだしてくれ。俺は誰と組めばいい?」
「貴様っ!」
トニーはアキラに銃を突きつけたがイゴールがトニーの銃の上に手を置き制した。
「まぁまぁ、隊長。ここはアレクに任せましょうよ。アレクはサドナ王国の人間ですからここから首都までの近道は知っているはずでしょ。」
イゴールの言葉にトニーは言葉が詰まった。
「アレク、俺はお前の指示に従う。」
ジェノムはアレクセイの左肩に手を置いた。
「………皆、行こう。 俺とイゴールは第5部隊、アキラとジェノム、岸谷は第3部隊だ。」
「おっしゃ! やってやる!」
イゴールとジェノムは大型ライフルを背負った。
「お、おい待て!」
「隊長はここに残って負傷者を見ていてください。 車を確保次第連絡してこちらへ戻り負傷者を乗せて脱出します。」
「なっ!?」
他の者が動く中自分1人だけあたふたした格好となってしまったトニーであった。
「よしっ皆、行くぞ!」
「てめぇら、死ぬんじゃねぇぞ。」
アレクセイ、イゴール、岸谷と別れアキラとジェノムはKMFを手に入れる為第3部隊が墜落したと思われる場所へと向かった。
首都ヤールン、義兵団軍事基地。
「……以上でトンモで撃墜された部隊です。」
トラウトマンはブリタニアハバロフスク基地にいるデニスと連絡をしていた。
『これで殿下のシナリオ通りになったな。』
「しかし、シュナイゼル殿下は何故流崎アキラに拘るのでしょうか?」
『それだけ奴の能力に惹かれるものがあったのだろう。』
「例のですか?私には信じられませんが……。」
『だがこれが事実だとすればこちらも利用する手はない。奴を使い殿下に取り入れれば貴族、あばよくば伯爵だ。 引き続き奴の監視を怠るな。』
「はっ、お任せを。 鼠は既に奴の近くにいますので。」
アキラ達は第3部隊と合流しようと身を隠しながら進んでいった。
墜落現場までもう少しのところで爆発音が聞こえた。第3部隊の墜落現場から聞こえアキラ達はもしやと思い走り出した。
アキラ達が見たのは敵と交戦している味方であった。 グラスゴーで応戦しているが多勢無勢5機のサザーランドに2機のグラスゴーはやられてしまった。
ヘリから出てきて逃げる兵士を敵がライフルで撃ち殺していった。
「遅かったみたいだな。」
「おそらく味方は全滅しているだろう。」
アキラとジェノムは冷静に状況を確認しようとしている中岸谷は1人大型ライフルで敵KMFに狙いを定めた。
ジェノムは岸谷の手を止めた。
「やめろ。」
「敵は俺達に気づいてない。今の内に…。」
「すぐにやられる。まだ味方の生き残りがいるかも知れない。他の墜落現場に行こう。」
3人は敵に見つからないようその場から離れていった。
アレクセイとイゴールは第5部隊が墜落したと思われる場所へと向かった。
「おいアレク、あれじゃねぇのか?」
「よかった。まだ敵に発見されていないようだ。」
2人は周囲を注意しながらヘリに近づいた。
「こちら第7部隊。助けに来た。」
アレクセイの言葉を聞きヘリの扉が開いた。
「よく……来てくれた。」
「大丈夫か?」
「俺は平気だが……。」
ヘリの中は数人の隊員達が倒れていた。
「俺とこいつ以外は全員死んでる。こいつは足が動けない、助けてくれ。」
もう1人の隊員は足を怪我しているようでイゴールが肩に隊員の腕をまわし立ち上がらせた。
「KMFは?」
「動けるのは3機だけだ。」
隊員がKMFのコックピットに上がった。
「おい!無理をするな。」
アレクセイは止めようとしたが隊員は笑って制した。
「動かすだけならできる。」
そういうとKMFに乗り込んだ。
「アレク、早くしねぇと敵が来るぞ。」
「わかった。イゴール、使える武器を運んで行こう。」
「あったぞ。」
アキラ達は別の墜落現場へとたどり着き、周囲を警戒しながらヘリの中に入っていった。
ヘリの中は隊員が倒れていた。 アキラ達は確認したが味方は全員死亡していた。
「おい、見ろよ。これ標的だったブリタニアの要人じゃないか?」
岸谷が発見した死体は隊員ではなかった。
「おい、これを見ろ。」
アキラはその死体の胸元を見た。
「撃たれた跡がある。」
胸元には撃たれた銃跡があった。
「おい、それって。」
それを見た岸谷は察した。
「誰かに撃たれたということだな。」
「ま、まさかここはもう……!」
「みんな逃げろ!!」
ジェノムの大きな声でアキラ達は急ぎヘリから出て行った。
その瞬間ヘリは爆発を起こしアキラ達はその衝撃で吹き飛ばされた。
アキラ達はすぐに体勢を起こし物陰に隠れた。 敵はサザーランド1機と装甲車1台それと歩兵数名おり、アキラは大型ライフルで応戦した。
「アキラ!!」
反対側にジェノムがおりアキラはジェノムのほうへ移動した。
「嵌められたな。」
「ジェノム、岸谷は?」
「わからん、はぐれてしまったみたいだ。」
「そうか……探そうにもあのKMFが邪魔だな。」
「アキラ、手伝ってくれ。」
そう言うとジェノムは大型ライフルの銃身の下に金属の杭のような物を装着させた。
「俺が人型を潰す。」
「奴らは何処に行った?」
サザーランドのパイロットは周囲を捜索しているがアキラ達の姿は見えない。
「んっ!?」
その時、前方で走り去っていく後姿が見えた。
「ふふっいたか。」
アキラは追ってくるサザーランドの姿を確認しながら逃げていった。途中ライフルで応戦しながらアキラは狭い路地へと入っていった。
KMFがギリギリ入れる路地でサザーランドもアキラを追って入った。
アキラが行き着いた先は行き止まりになっていた。
「これで3匹目だ。」
トリガーを引こうとしたときコックピットパッチの上に何かが落ちてきた音がした。
「な、なんだ?」
パイロットが顔を上げた瞬間、コックピットの装甲を打ち抜きこちらへ降りてくる杭を見た。
ジェノムは近くの建物の非常階段からサザーランドのコックピットへ飛び移り大型ライフルに装着してある杭を中にいるパイロットに向け杭を打ち抜いた。
打ち抜かれたサザーランドは力なく倒れていった。
ジェノムの杭にはパイロットのものと思われる血がこびりついていた。
「あとは装甲車だな。」
「あぁ、行こう。」
「奴らはどこだ?」
残りの敵もアキラ達の捜索を続けていた。
「だがサザーランドがまだ戻ってこないぞ。」
「まさか、やられた……。」
「馬鹿言え。向こうはたいした武器を持ってないだ。」
雑談をしている中1人が背後から口を塞がれナイフで喉を斬られた。
「っ!?」
それに気づいた残りの1人が声をあげようとしたがアキラが背後をとりナイフで喉を切り裂いた。
「てっ敵!!」
装甲車の中にいた隊員が車を動かそうとしたのでアキラは腰のホルスターからショートショットガンを取り出し窓越しから撃ち敵を沈黙させた。
「アキラ、後ろには誰もいない。」
「急いで合流ポイントに向かおう。」
アキラは死体を外に出しキーをまわした時、大きな叫び声が聞こえた。
「おい! 待ってくれ!!」
「岸谷、生きてたのか。」
「こっちは逃げるのに精一杯だったんだよ!」
「早く乗れ。」
岸谷と装甲車に乗り込もうとした時ジェノムはふと空を見上げた。
「………吹雪になるな。」
「天候が悪化する?」
カノンからの報告でシュナイゼルはチェスの駒を動かそうとした手を止めた。
「まもなく、トンモ及びサドナは発達した低気圧により強風域に入り吹雪になる模様です。」
「この状況で天候の変化……あの部隊は予定通りに出発するのかい?」
「はっ……予定時刻に出撃しました。あと彼がご同行するようです。」
「ふふふっ……皆、流崎アキラに惹かれてトンモに集まってくる。」
シュナイゼルは手に持っていたチェスの駒、ポーンを面白そうに眺めている。
-合流ポイント-
アキラ達は合流ポイントにしてある小さな工場にたどり着いた。
「アキラ、皆無事だったか。」
先にアレクセイ達が着いていた。
「すまない、KMFは確保できなかった。」
「いや、俺達も車を探してたんだが調達できずに困ってたんだ。この装甲車も兵員輸送用だったからよかった。負傷者をKMFの手の上で載せたままにはいかないからな。」
「だが多いな。」
ジェノムの言う通り結構な数のけが人が横になっていた。
「いける所の場所は全て行った。 アキラ、ジェノムちょっと気になることがあるんだが……。」
「もしや敵の捕虜か。」
「やはり他のところもそうか。最後に行ったところに捕らえた敵の要人達が乗っていたが全員死んでいた。それも撃たれた跡があった。」
「同じか。」
「この作戦、何か裏があるんじゃないのか?」
敵は助けるはずの人間達を殺し、アキラ達への罠として扱った。自分達は何者かに嵌められたのではないかと思い始めた。
「できないとはどういうことだ!?」
奥からトニーの怒鳴り声が聞こえアキラ達はトニーのところへ向かった。
「この吹雪で出撃できない? だったら我々は……吹雪が止んだら行く!? その間敵の総攻撃をくらったら我々は………おい? まってくれ!!」
「隊長、救援部隊が来ないのですね。」
「この吹雪が止めば行くとはいうが……。」
トニーは力が抜けたように座り込んでしまった。
「冗談じゃねぇぜ!俺達に死ねって言ってるようなもんじゃねぇか!!」
「この吹雪は当分止まない。 ここには篭城するだけの武器はない。」
アレクセイは地図を見てこれからどうすればいいか思案した。
「トンモを出て首都まで帰還できる最短ルートは……。」
思案しているアレクセイにアキラが声をかけた。
「アレク、この吹雪はいつまで降るんだ。」
「………1日、もしくは2日。」
「だとしたら、敵の動きもこの吹雪で遅いじゃないのか? 今の敵の数ならまだ脱出できないことはない。」
アキラの提案にアレクセイは黙って腕を組んだ。
「…………西からのこのルートを出て幹線道路に沿って行けば一番近くの街、そこの近くに小さいが味方の基地がある。」
「なら決まりだ。」
「だが敵の注意を逸らさなければいけない。誰かがおとりに……。」
「俺がやる。」
アレクセイは驚愕の表情をした。
「グラスゴー1機使う。」
「アキラ!!」
「心配するな。 イゴールお前はアレク達を守ってくれ。」
「へっ、自分だけ見せ場作りやがって帰ったら一緒に飲もうぜ。」
「俺は飲まない。」
「そうだったな。ハッハハ!!」
イゴールの大きな笑い声に周囲も笑みをこぼしたりして和んだ。
「隊長、この作戦で問題ありませんよね隊長。」
ワザとらしくトニーに話を振ったイゴールにトニーはバツが悪そうに答えた。
「あっあぁ、それで行こう。」
その姿を見てイゴールは馬鹿にしたように笑った。
「そうと決まれば怪我人を運ぼうぜ!!」
・
・
・
・
・
「これで全員か?」
アレクセイは装甲車に入れた怪我人の数を確認した。
「本当なら彼らも運びたかったが。」
アレクセイは横たわったままの味方の遺体を見つめた。
「ちゃんと葬ってやりたい。」
アキラはアレクセイの左肩に手をおいた。
「今は仕方ない。急ごう。」
「あぁ!! アキラ、頼むぞ。」
アキラはグラスゴーに乗り込み起動させた。
「くそう!敵はどこにいった!」
ブリタニア兵は焦っていた。
「敵は小規模ですぐに見つかると思ったがこんな時に吹雪が起こって。寒くて仕方がない。」
「そう言うなって。もう少ししたら援軍が来るらしいぞ。」
「こんな吹雪の中でか?」
「数は少ないがその中になんと……。」
その直後近くに立ってあったサザーランドが銃撃にあい倒れてきた。
「て、敵だ!!」
アキラのグラスゴーは装甲車を沈黙させすぐさま移動した。
「アキラが動いた。」
「よぉし、作戦開始だ。敵が流崎に目を向いている隙にさっさとズラかるぞ。」
調子を取り戻したトニーは指揮を行った。
イゴールはKMFで装甲車の警護、ジェノムはアレクセイが運転する装甲車の上に搭載してる銃座にて機関銃を構えており、岸谷はトニーが運転する装甲車の銃座にいる。
アキラは物陰に隠れながらもライフルで応戦し、味方達から離れていった。
「くっ。」
ライフルで狙い撃とうとするが吹雪により敵の姿がはっきり見えないのがアキラをイラつかせていた。
一方、アレクセイの方も順調に街から出ようとしたが途中に敵に見つかり応戦した。
『アレク、俺が相手をする。お前らは行け! すぐに追いつく!』
「頼む!」
「アレク、前方に車両が来る。」
ジェノムの忠告にアレクセイはハッと前を見た。 装甲車2台が前を塞ぎ待ち構えていた。
「ジェノム!!」
「分かってる!」
ジェノムは敵から銃弾の雨が飛ぶ中機関銃で銃座の敵兵を狙い撃ち沈黙させた。
「ぶつけるぞ!! みんな伏せろ!!」
アレクセイはアクセルを踏みスピードを上げた。
衝突により大きな衝撃を受けたが道は開かれアレクはスピードを上げ街から脱出した。
『アキラ、応答してくれ。』
「こちら流崎。」
『アキラ、こちらは街を脱出した。全員無事だ。 あとはお前だけだ。』
「了解、すぐに合流する。」
アレクセイからの連絡でアキラも撤退をしようとした時吹雪の中から1機のKMFが現れこちらへ接近してきた。
「こいつ、あの時の!!」
そのKMFは謎の女が操縦している白のグロースターであった。
「陽炎が来たのか!?」
グロースターは突き蹴りと繰り出しアキラはギリギリ回避したがいつまでも相手にするわけにはいかずアキラは距離を取り背を向け後退した。
このままアレク達と合流しようとした時空中から赤い閃光がアキラを襲った。
「っ!?」
アキラは反射的に回避したがその衝撃で転倒してしまった。
「なんだ……?」
アキラは顔上げ空を見上げた瞬間驚きの表情を浮かべた。
白いカラーリングを基調としたKMFが空に浮いていた。
「ランス……ロット………。」
「………間違いない。」
ランスロットのコックピットにいる枢木スザクはアキラのグラスゴーを見て静かな口調で呟いた。
「流崎アキラ、君だな。」
アキラ達が使っていたライフルはご存知OVA作品メロウリンクで使用されていた大型ライフルです。
どこかで出したいなと思い今回だしました。
あとある戦争映画のストーリーを今話に少し入れてみました。
ラストにスザクを出しましたが時系列で見ると亡国のアキト終了後の設定になってます。よって次回から亡国のアキトの話から大分矛盾する描写もあるかもしれません
まだ亡国が完結しておらず自分の勝手な設定になってしまいますがご了承ください。
ではまた。
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第5話
「ランスロット……枢木スザク!!」
トンモで謎のKMFと共に突如現れたランスロット。ブラックリベリオン以来の再会である。
「こんな時に……いつも邪魔を!」
アキラは弾幕を張りながら2機から離れようとしたが地上からエリスのグロースター、スザクのランスロットの両機が同時に攻めてきてアキラは思うように動けなかった。
空中にいるランスロットに向けライフルを放ったが素早い動きで回避し背中に装備している主砲らしきものをアキラに向け発射した。
「っ!?」
アキラは瞬時に回避したがライフルが巻き込まれ失った。
(機体性能が上がっているだけじゃない。何だあの背中の大砲は?)
アキラは残りの武器のスラッシュハーケンを使ったがスザクはMVSを使って切断し残りを蹴りで弾いた。
勝機がないと見込んだアキラはここから街に出られるルートを探り、そのルートに沿って逃走した。
戦闘に巻き込まれないよう一般市民が逃げ惑う中アキラは辺りを注意しながら進んでいったが横の建物を破壊し現れたのはエリスのグロースターであった。
「くっ。」
グロースターのソードを避けアキラはグロースターと組み合いとなりグロースターを建物に打ち付けた。
グロースターの頭部に右腕をパンチの要領で打ち付けその衝撃で右腕が破損してしまった。
グロースターは起き上がりソードでアキラが乗るグラスゴーの頭部と左腕を切断した。
アキラはこれ以上の戦闘が不可能だと判断し脱出装置を作動させ機体と分離した。
少し離れたところに不時着しアキラは急ぎコックピットから出て街に隠れようとした。
「っ!?」
コックピットのハッチを開いた瞬間目の前には白いグロースターが立っていた。
やられるとアキラは覚悟を決めたがグロースターのコックピットが開きパイロットの女が姿を現した。
「やはり………流崎アキラ。」
「………何故俺の名前を?」
敵パイロット、エリスは動揺し目が泳いでいるように見える。
「私の名はエリス。」
「エリス…………。」
「流崎アキラ、私はお前の事を知っている。」
「…………。」
「答えろ! お前は……私の一体何なのだ? 私の事知っているのか?」
アキラはエリスの問いの意味がわからずにいた。
「アキラ、応答しろ! アキラ!!」
アレクセイ達は王国領内の小さな軍事基地にいた。 アレクセイはアキラに連絡をとろうとしているがアキラから応答がなかった。
「アレク、アキラの奴は?」
イゴールもアキラの安否が心配になり通信を呼びかけているアレクセイに声をかけたがアレクセイは首を横に振った。
「応答はない。あれから既に1時間は越している。」
「敵地の真ん中だ。生きてるはずがない。まぁ特進は俺が将軍に進言しておいてやる。」
初対面からどこか気に食わなかったアキラがいなくなったことでトニーは気分がよかった。
「隊長、アキラの救出に行かせてください!」
「俺も行くぜ!あいつのおかげで生きて帰れることができたんだ。このままじゃあ俺の気が収まらないぜ!」
アレクセイとイゴールはすぐにも出発しようとしたがトニーが止めた。
「たった1人の為に助けにいくような馬鹿なことはよせ。もう奴は死んだんだ、あきらめろ。」
「し、しかし……。」
「これは命令だ! それに他の連中は乗り気じゃなさそうに見えるが。」
トニーの言葉に2人は振り返った。ジェノムは腕を組み首を横に振った。
「吹雪が激しくなった。今行ったらお前達まで戻れなくなる。」
寒帯で過ごしアレクセイ以上に自然の恐ろしさを熟知しているジェノムに2人は肩を落とした。
岸谷は黙ったままその場をあとにし用意された個室へと入っていった。
「はぁはぁはぁ、誰が……誰がいくもんか。」
顔は真っ青になり体が震えまるで何かに怯えるように岸谷は体を丸くしている。
岸谷は徐に懐から小さなケースを取り出した。
そのケースの中身を取り出し岸谷の表情は安堵した。
-3日後、ハバロフスク ブリタニア軍事基地-
演習場にて2機のKMFが模擬戦を行っていた。
1機はスザクのランスロット、もう1機はエリスのグロースター。エリスは俊敏な動きでスザクを追い詰めようとするがスザクも負けじと空へ飛び空中からエリスを攻める。
エリスはジャンプをしてランスロットに攻撃をしようとするが回避され地上に降りた隙を突かれ回し蹴りをもらい倒れてしまった。
「お疲れ様、スザク君。」
「どうだい、新しいフロートユニットは? 前使って物より数段に良くなってるよ。」
模擬戦を終えたスザクを特派のロイド、セシルが出迎えた。
「はい、ハドロンブラスターの重みも問題なく操縦できます。」
「まだできたばかりだからどこかでテストしたいなって思ってたらいい時にお呼ばれされたよね~。」
ロイドは楽しそうにしていた。
「失礼しますよ。」
部屋に入ってきたのはドリーとジョディ兄妹であった。
「ロイド伯爵、それとナイトオブセブン、枢木 スザク、エリスの相手をしていただき感謝します。」
「こちらもデータが入手できましたよ。ふっふふふ。」
「それでナイト・オブ・セブンに聞きたいことがあるのですが。」
ドリーはスザクに話しかけた。
「我々のエリスはどうでした?」
「………彼女の攻撃を回避するのがやっとでした。もしランスロットと同等の機体に乗っていれば結果は変わっていたのかもしれません。」
「っと言うと?」
「どこか機体が止まったりぎこちなくなっているように見えて、グロースターが彼女の反応動作に追いついていないように思って………。」
スザクの指摘にドリーは腕を組み考え込んだがしばらくして笑みをこぼしはじめた。
「ふっふふふ。さすがナイトオブセブン、1度の戦闘でそこまで気づくとは。」
「実は彼女の為に専用機を開発しているところなのです。」
ジョディは普通なら隠すことを惜しげもなく言った。
「専用機ですか………。」
セシルは聞き返すように呟いた。
「えぇ、もうすぐ完成します。」
「でも、いいの? そんなこと僕達に言っちゃって。」
ロイドはいつもの口調であるがその目は兄妹2人に不審な目を向けていた。それに気づいたのかドリーは苦笑いをした。
「エリスは本格的に陽炎の部隊に編入させ活躍させます。遅かれ早かれ機体はお目にかかれるわけですよ。そちらのランスロットには及びませんがいい機体になります。完成すればまたお相手お願いします。」
ドリーは不敵な笑みを浮かべて最後に一言。
「その時はランスロットを破壊しないようエリスには伝えておきますよ。 では。」
2人は部屋を出た。
「破壊しないように……言っちゃってくれるね。」
「でも彼女、エリスさんの動きはとても人間とは思えません。グロースターがあんなに動くのをはじめて見ました。聞いた話では体だけじゃなく脳に手を加えていると……。」
「戦う為につくられた兵士パーフェクトソルジャー。どんなものか僕も興味あるなぁ~。」
「もぉ、ロイドさん。」
いつもの調子に戻ったロイドにセシルはため息を吐いた。スザクは部屋を出ようとした。
「スザク君?」
「少し用事が……すぐに戻ります。」
スザクは基地の外れにある捕虜収容所にやってきた。いくつもある独房の中スザクはある独房のまえに立ち止まった。
「…………お前か。」
そこには拘束衣を着せられ座っているアキラがいた。
-ハバロフスク 市街-
「おい、その話本当か?」
軍、政府の動向を探ろうとハバロフスクにいた坂口は宿泊しているホテルである人物と連絡を取っていた。その話の中で捕まった捕虜について教えてもらっていた。
(最近、捕まった敵の捕虜に元陽炎だった奴……。)
それは間違いなくアキラだと坂口は確信した。
「………あぁ、俺もすぐに街からでる。あんたも捕まるんじゃねぇぞ。」
連絡を終えた坂口は窓から外を眺めていると2台の車から黒いスーツとサングラスをかけた7、8人の男の集団がホテルに入ってくるのを目撃した。
「この部屋だ。」
黒ずくめの男の集団は坂口がいる部屋の扉のまえにいた。
1人がホテルから用意してもらったキーを使い扉を開けた。
全員が雪崩れ込むように部屋に入り辺りを探った。
「いません。」
「ベランダにもいません。」
「感づかれたか、まだ近くにいるはずだ周りを探せ!」
「ふぅ、間一髪だったな。」
ホテルから出た坂口の額から冷汗が流れた。
「アキラに知らせなぇとな。こりゃあ大変な事になるぞ。」
独房越しでアキラとスザクは対峙していた。
「死んだと思っていたけど……生きていたんだね。」
アキラはスザクの格好を見た。
「………お前がラウンズだったのか、偉く出世したな。学園の連中は無事か?」
「今の君には関係ないだろ。」
スザクの冷たい視線をアキラは感じた。
「…………そうだな。」
「ゼロはもういない。何故戦う?」
「生きる為だ。俺はまだ死ねない。」
「彼女、カレンとまた会えると?」
「そのために今戦っている。」
それから2人は黙ったままであったが両者の鋭い視線がぶつかり合っていた。
「話は終わりか?ならもう帰ってくれ。」
「貴様になくとも私にはあるのだが。」
2人とは違う声し2人は声の主がいるところを見た。
「あなたは!?」
「井ノ本………!」
井ノ本はドリー、ジョディ兄妹を連れアキラがいる独房のまえに来た。
「…………確かにあんたとは色々話したいことはあるな。」
「話したいことか……だいたい察しはつくが。」
「あの女、エリスは一体何者だ?」
「ナイトオブセブン、失礼ですが少し………。」
ドリーがスザクのほうに顔を向けた。
スザクは黙って独房部屋から出て行った。
「こうして直接顔を会わせるのは久しぶりだな流崎。」
「俺もあんたと再会できて嬉しいよ。できることならすぐにでも殺したいぐらいな。だがその前に……」
井ノ本は苦笑いをした。
「彼女の名はエリス。PS、パーフェクトソルジャーだ。」
「パーフェクトソルジャー……。」
「パーフェクトソルジャーは遺伝子工学、脳生理学などさまざまな分野のエキスパートを世界各国から集めて創められた計画、無論僕らブリタニア人も参加している。目的は完全なる兵士を生み出すためだ。」
ドリーが代わりに説明を始めた。
「マイクロコンピュータと一体となり精密な判断力、そして常人の限界以上に引き出せる演算速度。人間の人体、筋肉組織を最新の科学技術により遥かに発達させた。それともう一つ脳細胞に手を加えた。我々人間は日々進化する科学技術に全て対応できる訳ではない。しかし脳に秘める限界を引き出せばそれが可能となる。その為一度彼女の記憶を全て消去させることにした。つまり一度赤ん坊の様に無の状態にさせなければいけない。 その上で戦闘プログラムを脳にインプットさせる。それからは私たちと同じ人間として変わらない情報、知識が自然と与えられる。」
「………完全なる兵士、だがそれだけじゃないだろ。」
アキラは井ノ本のほうを睨んだ。
「俺が参加した作戦。それにもパーフェトクソルジャーが関係しているのだろう。」
「やはり知っているのだな。」
「あぁC.C.、あの女が拉致されていた。基地でギアスを研究していたんじゃないのか?」
「…………そうだ。このPS計画にはギアスも組み込まれている。」
「あんたがオカルトじみたもんに興味を持つんだな。」
「だが現実に存在する。ギアス、王の力、他者の思考に干渉する特殊能力。私はこの力を独自で研究しギアスを超越する人間を目指した。」
「…………そんな話俺に聞かせてどうするつもりだ?」
「実はあなたにお願いがあるの。」
ジョディは眼鏡をかけ直し話した。
「彼女と戦ってほしいの。」
「俺と?」
「今までエリスとの戦闘で無事生き延びたのはあなただけ。そんな貴重なあなたをここで死なせるのはもったいないから無理いってエリスの模擬戦の相手をあなたにさせたの。」
「…………なるほど模擬戦という名の処刑か。」
ジョディはふふっと不適な笑みを浮かべた。
「理解がはやくて助かるわ。もちろんあなたには拒否権はない。」
「…………わかった。」
「3日後、ここから60キロ離れた廃工場で行われる。KMFはこちらで用意させるから。」
井ノ本達が独房部屋から離れる前にアキラは井ノ本の名を呼んだ。
「井ノ本、あんたは突然、ブリタニアに寝返った。一体何が目的だ?」
「私は追い求めていたものが何なのか見極めるためにここにいる。」
その言葉にアキラはただ黙っているだけであった。
捕虜収容所をでたスザクは長い通路の窓を見つめた。外はまだ吹雪で荒れていた。
1年ぶりに再会したアキラは未だ自分達に盾を突き反抗を続けている。
自分にむけ彼は攻撃的な鋭い眼光を睨みつけていた。
(流崎アキラ、奴はユフィを……許すわけには。)
その時、遠くから足音しスザクは反射的に音があった方向に顔を向けた。
「あなたは!」
「君は……。」
物腰が穏やかな表情をした男性マクシムが数人の側近をつれていた。
「マクシム国王。」
「ふふっ、よしてくれナイトオブセブン。今はブリタニアに屈し国を捨てた愚な王だ。」
「そんな……長年のブリタニアとの戦いで国は疲弊したと聞きます。あなたはそんな国を救おうと戦争を早期に終結させようとしている。あなたの呼びかけでこちらへ恭順している勢力もありもうすぐサドナ王国も新しいエリアに編入されます。あなたのおかげで無駄な血を流さずに済むのです。」
スザクの言葉にマクシムは苦笑いをした。
「カティア、私のほうはもういい。スザク君、少し時間はあるかい?」
側近達と別れ、2人はマクシムの私室にいた。広いリビングにはマクシム自身の物から親族の者まで様々な写真が並べられていた。
「今日は冷えるな。」
マクシムは暖かいコーヒーをスザクに渡した。
「ありがとうございます。」
スザクはある1枚の写真を見つめていた。大きな樹木の下でマクシムと先程側近の1人でいた女性ともう1人見たことのない男性が写っていた。
「彼は私の親友だ。生まれも育ちも関係なく付き合えた友達だ。もちろん彼女のほうもね。」
「彼は今どこに?」
その問いにマクシムは曇った顔をした。
「失礼しました。」
「いや、いいんだ。」
その時マクシムはあることを思いついた。
「スザク君、聞きたいことがある。」
「なんですか?」
「君は敵国であったブリタニアに属しブリタニアの人間として今ここにいる。」
マクシムの言葉にスザクは強張った表情をした。
「君はこれからどうするつもりなのか?」
「………今、自分がブリタニアでいることで変えることができることがあります!ゼロのような他人を犠牲にするようなやり方ではなく違うやり方で、そのために今ここにいます!」
スザクの真剣な眼差しでマクシムはフッと微笑んだ。
「悪かった。アレク……いやこの写真の男にも同じことを聞いたことがあってつい君にも聞いてみたくなってね。」
マクシムは懐かしむように写真に触れた。
「スザク君、国をつくるのに必要なものはなんなのかわかるかね?」
「必要なもの……?」
「私が幼い頃、勉学を教えてくれた恩師が教えてくれたんだ。」
マクシムは写真をスザクに渡した。
「後ろにある樹木どう見える?」
「………樹齢が長い立派なものだと見えます。」
「首都ヤールンにある木で私の祖父の代からあると聞いている。………だがこの木の根は腐っている。」
「腐っている?」
「白蟻に食い荒らされ今にも倒れ掛かっている。…………この木そのものがサドナ王国だ。」
「………どういう意味ですか?」
「いかに立派な木でも時が過ぎれば腐りだし少しの拍子で倒れる。国も同じだ。いかに立派な国を建立しようが10年20年としだいに綻びはじめ何かのきっかけで崩れだす。」
「国は滅びるものだと……。」
「ブリタニアもそうだ。今の繁栄もそれがいつまでも続くわけではない。それが1年後、または20年後それは誰にもわからない。恩師は言った永遠なものはないと……だが国は倒れたままでは駄目だと、新たな木を植える者がいなければいかんと。国という新たな木を植える人を育てなければいけない。」
神妙な面持ちで聞いているスザクにマクシムはさら次の言葉を投げかけた。
「君がこれからどのような道を歩むか君次第だが憶えてほしい、誰かを犠牲にしなければ開けない道もあると。」
その言葉にスザクはキッっと睨むような鋭い目つきをした。
「あなたはゼロのようなやり方は正しいと!!」
「彼のやり方は人を欺き、利用する卑劣な手法だ。………だが時として誰かを犠牲にしなければいけない選択もある。その時君はどうする?」
「僕は認めません、あいつの………やってきたことを絶対に……!!」
失礼とスザクは立ち上がり部屋を出て行った。
(アレク………お前も彼と同じことを言うのだろうか……。)
-サドナ王国 首都ヤールン-
「あんた達!仲間を見捨ててよく呑気に酒なんか飲んでいられるね!!」
皆が女と酒を楽しんでいる店で女性が大きな声が響いた。
「ちょっとレイナ!お客様になんて事言うの!!」
客であるアレクセイ達に罵声をとばしたレイナに一緒にいた女性が制した。
「仕方ねぇだろ。俺たちだって死んじまうところだったんだ。」
機嫌が悪そうにイゴールは酒を呷っていた。
「あいつがいなかったら俺たちもどうなっていたか………。」
ジェノムも沈んだ顔で呟いた。
アレクセイも同席しているが岸谷だけは誘いを断りここにはいなかった。
「どうしたアレク、何か考え事か?」
先程から酒に手をつけず考え込んでいるアレクセイにイゴールは声をかけた。
「いや、ちょっとな……。」
(あの作戦で目的だった要人全員が殺されていた。俺達が殺したとは思えない。だが普通なら奪還するはずの要人を敵が殺すのか?………まさか殺されるような事をしたのか?いやだとしてもこんな手間をかけるような事を何故するんだ?)
トンモで行われた作戦、すぐに終わると思われた作戦であったが敵からの攻撃で自分達が取り残され標的であった敵の要人も死に作戦は失敗に終わった。
だがその要人は何者かによって殺されていた。
あの作戦は事前にこうなるよう仕組まれていたなのではアレクセイはそう思いはじめていた。
「坂口のおやじも連絡つかねぇしどうしちまったんだろうな。」
イゴールの言うとおり坂口の姿がここ数日見えないことから何か事件に巻き込まれたのか、それもアレク達の気が掛かることでもあった。
3日後、アキラ達は基地から60キロ離れた廃工場にいた。
『いい、戦闘区域はこの廃工場の中だけよ。もし出ようとしたりしたらわかっているわよね。』
ジョディの言うとおり廃工場の周りには数機のKMFが囲んでおりアキラが逃亡できないようになっている。
『よぉし、準備はいい。いつでもはじめてくれ。』
ドリーの合図にアキラは用意されたサザーランドを起動させ廃工場の中へと入っていった。
アキラのサザーランドはライフルだけとシンプルな機体である。
周囲を警戒しながら進んでいく中ライフルの銃弾がアキラを襲ってきた。
アキラは回避し瓦礫を盾に隠れ奥からエリスが乗るグロースターの姿が確認された。
-お前は……私の一体何なのだ? 対峙しているエリス、あの女は自分が何者なのかわからずに戦場に立っている。そんな彼女に俺は銃口を向けている。井ノ本の手の平の上で踊らされるように…………-
マクシムとスザクとの会話はある有名漫画家のある作品から引用したものです。
少し話しのパートが長くなったので戦闘は次回で
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6話
何故、私の前に現れる。
専用のグロースターに乗り込みエリスは今アキラと対峙していた。
アキラとは何度闘ったのだろうか、その度に胸が締め付けられる苦しみがくる。
(まただ………何故あの男がいる時に。)
エリスは戸惑いながらもアキラのサザーランドに銃口を向けた。
G-1ベースのモニター越しから井ノ本達、そしてスザクが戦況を見守っていた。
「兄さん、始まったよ。」
「さて、元レッド・ショルダー、すぐに死なないでくれよ。っでないとデータもとれないからさ。」
ドリーはふとスザクのほうを見た。
「確かナイトオブセブンはあの男と闘った事があると聞いてますが流崎アキラ、あなたから見てあの男はどれくらいの腕前ですか?」
「元特殊部隊出身だけはあり戦闘のプロで一瞬の油断もできない。卓越する能力はないが弱点はない。 」
「ふふん、じゃあエリスのいい相手になるかもね。」
廃工場の中でアキラとエリスの戦闘が開始された。
アキラはライフルで迎撃するがエリスは素早い動きで回避する。エリスはアキラに接近しようとしたがアキラは廃工場の天井を撃ち、瓦礫が降りそそぎエリスは回避できたがアキラは接近を許さなかった。
瓦礫が落下してきたことでエリスはアキラの姿を見失った。
瓦礫によって発生した白煙で周りがよく見えなかった。エリスは周囲を警戒する中背後に気配を感じ振り向いた瞬間ライフルの銃弾がエリスを襲った。
エリスは後退し物陰に隠れた。直撃はもらわなかったが銃撃で自分のライフルが弾かれ失ってしまった。
アキラも深追いはせず隠れエリスの様子を窺った。接近戦用の装備をしていない自分の機体で接近戦を挑むのは無謀であり今はこうして隠れながら闘うことを選んだ。
白煙が晴れるのを待ちアキラはエリスが後退したと思われる場所に銃口を向けたがそこにはエリスのグロースターはいなかった。
アキラは近くにいないか周りを見渡した。その時小さな瓦礫がアキラの近くに落ちてきた。
「まさか!?」
アキラは天井を見上げそこにはスラッシュハーケンで天井にぶら下っているエリスのグロースターがいた。エリスはMVSを構えアキラの所へ落下していった。
MVSの一刀を瞬時にかわし距離をとろうとするがエリスは迂回し背後をとろうとしたがグロースターの反応動作がぎこちなくなり動きが遅れてしまった。
その隙にアキラはライフルで銃撃しグロースターの片腕を損傷させた。
エリスは先程アキラによって落とされたライフルが近くにあるのを気づきライフルを拾いアキラに向け撃った。
アキラは回避したが背後にあった機器に銃弾が命中し爆発を起こした。
「どうしたの?」
モニターから見守っていたジョディが部下に問うた。
「どうやら大型ボイラーが爆発を起こしたようでまだ装置が生きていたようです。」
「くぅ、こんな時に。」
他の箇所に誘爆し辺りが爆発を起こしている中2人はまで戦闘を続けていたが爆発の影響で地盤が崩れアキラとエリスがいた箇所が沈下した。
「っ!?」
2人は地下へと落ちてしまった。
「被害が拡大2機の所在も不明。」
「くぅ~、仕方がないテストは中止、すぐに消火活動に移れ。」
ドリーの指示で基地から応援を呼ぶことになった。
「あれ?なんか大変なことになっちゃったね。」
戦闘を見ていた特派のロイドは隣にいるセシルに語りかけた。スザクはというと廃工場を黙って見つめたままであった。
地下へと落下したエリスはモニターで辺りを確認し今自分は地下にいると理解し機体を動かそうとしたが両腕とも破損し脚も瓦礫で挟まり動けなかった。
コックピットから出たエリスはアキラがどこにいるのか探った。
少し離れたところにアキラのサザーランドがうつ伏せになって倒れていた。エリスは近づきコックピットハッチのボタンを押しコックピットが開いた。
中には気絶しているのかアキラがぐったりした様子で意識もないように見える。
徐にエリスはアキラの肩に触れ様子を探ろうとした時
「動くな。」
エリスの腰にあるホルスターの銃をアキラは奪いエリスに向けた。
「っ!?」
地上では消火活動が急ピッチで行われており、その様子を井ノ本は黙って見つめていたが近くに人の気配し振り向くとスザクがそこにいた。
「奴とは同じ学校にいたと聞く。」
「思い出したくもありません。」
「ふふっ、見てみたかったものだ。闘うこと以外に生きるすべを知らなかった奴がどのように変わったのかを。」
「変わった? あなたが彼を陽炎に入れたと聞きます。」
「私は奴にあらゆる戦闘技術を叩き込ませ究極の兵士にさせた。だがここで再会した時奴の目には生気が漲っていた。今の奴は生を渇望している。」
「生きたい………。」
「あんな流崎ははじめてみた。この1年奴に何を影響を与えたのか……。」
スザクはカレンのことが頭を過った。
「だが今、流崎はエリスと戦闘に入ってます。いくら彼でもPSである彼女と1対1で勝てるとは…。」
「君はそう思うのかね。」
井ノ本の言葉にスザクは怪訝な表情を浮かべた。
「エリスはまだ未完成だ。故に私は不安だ。彼女が奴に殺されているのではないかと。」
「えっ………?」
地下へと落ちてしまったアキラは出口を探していた。その近くには後ろ手を縛られ座っているエリスがいた。
「…………。」
アキラは黙ってエリスに近づいた。
「出口を探したい。お前も手伝え。」
「……私を恐れないのか?」
「その気になればそんなロープ簡単に外せるだろ。」
アキラはエリスを縛っていたロープを解いた。
「…………。」
黙ったままのエリスを置いてアキラは瓦礫を退かした。
アキラの背中を見てエリスも黙って作業を手伝った。そんな彼女にアキラは何も言うことなく黙って作業を続けた。
地上ではジョディがドリーに捜索隊からの報告を伝えた。
「兄さん、捜索隊が2人を発見したみたいだよ。」
「救助したのか?」
「生体反応が2つ見つかって今、そこの位置を掘り起こしているの。」
「へぇ、だが閉塞空間で敵といて彼女がどのような反応を起こすのか調べてみたいね。」
「ふふっ、なんだ兄さんも私と同じこと考えていたんだ。」
ジョディは子供のように笑った。
「っ!……静かにしろ!」
アキラと一緒に瓦礫を退かしていたエリスが声をあげた。
「…………音がする。味方が近くにいる。」
「わかるのか?」
「私の聴力は遠くまで聞こえる。」
「便利なもんだなPSは。」
「ここでじっとしていればいずれ見つけてくれる。」
エリスはそう言うがアキラは手を休まずに作業を続けた。
「俺はこのままとんずらさせてもらう。」
「逃げられると思うのか?」
「ここから風が吹いている。ならどこかへ通じているはずだ。」
そう言うアキラをエリスはただ黙っているだけであった。
「………殺さないのか?」
「…………。」
黙っているエリスにアキラは無視したがエリスが重い口を開いた。
「………私は常人を遥かに超えた究極の兵士、戦うために生まれた。PSである事に私は誇りに思っている。」
その言葉にアキラは振り向いた。
「だが心の中にいつもお前がいた。カゴシマでの戦いでお前と会った時初めてのような気がしなかった。初めてなのに………お前の事が頭から離れなれない。」
アキラは若干戸惑いを見せた。彼女の言うとおりエリスとはこうして面を向かって話すのは初めてである。
そんな彼女の言葉にどのように返せばいいのかアキラは迷った。
「………だから私はお前を殺せない。殺したくない。」
「だったらほっといてくれ。」
「だが戦場でお前に会う。何故お前は戦う?」
「………前の俺だったらその問いに答えられなかったかもな。」
「仲間の為?」
「それもある。だが………。」
アキラはどこか躊躇する顔をしたが口を開いた。
「生きて……会いたい人がいる。」
「会いたい?」
「俺に生きる目的をくれた。あいつがいるから今こうして戦える。」
その時、小さな揺れが発生し頭上から小石が落ちてきた。
「伏せろ!」
アキラはエリスの体を伏せさせた。揺れは収まり地上の捜索部隊が近くまで来ていることがわかった。
それと先程の揺れでアキラが瓦礫を退かしていた箇所に人1人が入れる穴ができた。
アキラはその穴から風が吹き外に通じているのだろうと思った。
「お別れだな。お前は地上の味方が拾ってくれる。」
「待ってくれ!」
「っ?」
「一緒に……一緒にいてくれ。私はお前の事をもっと知りたい。どんな人間か、私の……傍に。」
エリスはアキラの腕を掴んだがアキラは反射的にその手を振り払ってしまった。
「俺はお前の敵……それだけだ。」
「違う!私は……。」
その時、頭上から大量の土砂が落ちてきて2人を隔てる形になった。アキラはそのまま穴の中へ入っていった。
「アキラ!!」
去っていくアキラの背中を見てエリスは大きな声で叫んだ。
『PS発見、身体に異常なし。』
「流崎アキラは?」
『現在、不明です。PSに聞いてますがかなり憔悴しているようで答えません。』
「体が限界にきているんじゃない兄さん?」
「うん……エリスをすぐに回収してこっちへ運んでくれ。残りは流崎アキラの捜索を。」
地上へとあがり一面は吹雪で覆われていた。エリスは先程アキラとの話が1時間、2時間と長く感じていた。
『今、捕虜が通過したと思われる通路を通ってますが土砂が崩れて塞がれてます。捕虜の姿も見えません。』
「っと言うことです。閣下、如何致しましょう?」
「……すぐに捜索部隊を出し見つけて殺せ。」
「それは無理です。」
井ノ本の指示に一緒に同席していたマクシムは異議を唱えた。
「吹雪が激しくなっています。今、部隊を動かせば戻れなくなります。」
「捕虜を見過ごせと?」
「ここから脱出したとしても首都のヤールンまで離れている。あとは自然が彼を殺す。」
「………。」
そのまま、井ノ本はブリッジから出て行った。
「どうしたのです。」
井ノ本は振り向くとそこにはスザクがいた。
「何を急いでるのです。何故、彼にそこまで…?」
「君はこの吹雪をどう思う?」
スザクは井ノ本の問いの意味が分からなかった。この模擬戦開始時より吹雪は激しくなったのだがそれとアキラとどう関係があるのか。
「出来すぎないか?このタイミングで吹雪の発生、この悪天候。これが自然に発生したものと思うかね?」
「仰っている意味が……。」
「私はそうは思わない。そして奴は必ず生きて帰り再び我々の前に現れる。」
「あいつは満足な装備もしていない。生存できるはずがない!」
「そう思える君が羨ましい。それ以上悩むことはないのだから。」
(奴の……流崎アキラに何が…?)
スザクは井ノ本がアキラを恐れているように見えアキラの存在の不気味さを感じるようになった。
「ハァハァハァ。」
地上に出たアキラはどこへ出たのかも分からず己の勘を頼りに吹雪の中を進んでいた。途中拾った穴の開いた古びた防寒服をはおり寒さを凌ごうとした。 幹線道路に沿って行こうとするがどの道も雪で覆われ道が消えてしまっていた。
歩き始めてどれくらい時間が経ったのだろうか。自分がどこにいるのか周りを見渡そうとした時アキラはその光景に驚愕した。
(な、何も見えない!?)
視界が白一色となりどの方向に歩いているのか、凹凸などの地形の起伏がどうなっているのかまったく分からなくなった。
ホワイトアウト現象である。
今、自分がどこにいるのかどこに行けばいいのかわからず上下感覚が麻痺したアキラは身動きできずその場に蹲った。
意識を失いかけアキラは慌てて体を起こし歩き続けようとした時歩いていた地盤が崩れだした。
「うおっ!?」
足場が崩れアキラは転落してしまった。長い斜面を落ちたアキラは起き上がろうとするが体中に痛みがはしり倒れてしまった。
その時前方の離れたところから明かりらしきものが見えこちらへ近づいているのがわかった。 アキラは声をあげようとするが思うように声が出なかった。
3人の集団がアキラを囲み様子を伺い皆でアキラを運び、スノーモービルに乗せた。
アキラは緊張の糸が途切れたように意識を失った。
スザクは1人休憩室にいると、エリスがスザクの隣に座った。
「もう、大丈夫なのかい?」
「聞きたいことがある。」
「聞きたいこと?」
「流崎アキラ、彼の事を。」
「流崎アキラ……。」
エリスは真剣な眼差しをスザクにむけた。
「教えて欲しい、彼がどんな人間なのか、何故戦うのか!枢木スザク、お前が知っていることを話してくれ。私は……もっと彼の事を知りたい!」
「君は………。」
スザクはエリスがまるで子供がせがむように見え戸惑いを浮かべていた。
-エリス、俺と同じ戦場でしか生きられない女。彼女は俺を必要としていた。そんな彼女の想いを俺は受け止めることができなかった。
これが俺とエリスを苦しめることになることを俺はまだ知らなかった。-
アキラとエリスの関係はテイタニアやイプシロンとはちょっと違うんです。
ネタばれになるので言えませんが2人はボトムズのある2人のキャラの関係をモデルにしてます。
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第7話
ではどうぞ
2日前の吹雪が収まり太陽の陽がさしておりその中を2機のヘリが飛んでいた。
『目標ポイントは南東20キロ、収容する隊員は民間人と同行している。』
「了解、目標ポイントまで向かう。」
ヘリが目標のポイントには数名の民間人と共に疲れきった表情のアキラが座り込んでいた。
「ほう…では奴は生きているのだな。…………わかった、こちらへ帰還次第すぐに奴の治療をあたらせろ。」
部下の報告を聞いたトラウトマンは若干驚きの顔をしたが口元はニヤっとほくそ笑んでいた。
「ふっふふ、シュナイゼル殿下が夢中になるのも無理はない。奴の力は本物だ。奴を利用すれば俺も……。」
「殿下、流崎アキラが政府軍に保護されたようです。」
同様の報告をシュナイゼルも受けた。
「そうか、………パーフェクトソルジャーだったかな。エリスって子との戦いから抜け出し偶然、吹雪で立ち往生していた民間人に保護される。ますます面白いよ彼は。」
「そうでしょうか? 私から見ればただの運のいい男にしか見えませんが……。」
「そう思うかいカノン。」
シュナイゼルの右手にはCDケースが握られていた。
「そのデータも信憑性があるかどうか………不死の人間なんてありえませんよ。井ノ本の戯言に過ぎないと思いますが……。」
「ふっふふ、そうか……ならカノン、たまには火薬の臭いを嗅いでみるのはどうかな?」
「サドナ王国にですか?出向くのは構いませんが流崎アキラの動向を確認しろと?」
「直接その目で確認するといい。それと最近、鼠がアキラのまわりを嗅ぎまわっているようだね。」
「…………なるほど、お気づきになっていたのですね。わかりました。では何かあれば……。」
「頼むよ、カノン。」
「イエス・ユア・ハイネス。」
「………うっ。」
軍から保護されてから深い眠りに入っていたアキラはゆっくりと目を開いた。数日前吹雪に晒されていた時に比べればここの病室は心地のよい暖かさであった。
「あっ!? 目覚めた!」
ヒョイッと自分の顔をのぞく様に見た女にアキラは見覚えがあった。
「……飲み屋の女か。」
「何飲み屋の女って!レイナって言ったでしょ!名刺渡したでしょ。」
アキラは上半身を起こした。
「………それでお前がなんでここにいるんだ?」
「はぁ~相変わらずね。心配して見て来たけど安心したわ。 ちょっと待っててねみんなを呼んでくるから。」
レイナは病室を出てアキラは1人になりまた体を倒した。 イゴール達が来ればまた騒がしくなるだろう。皆とまた再会できることに喜びを感じている自分がいた。
病室の外から複数の足音が聞こえる。アレクセイ達がもう来たのかと思ったが部屋に入ってきたのは予想外の人物であった。
「ふっ、まさか生きていたとはな。」
トニー率いる数人の部下が銃を片手に入ってきた。
「………どうやらお見舞いに来たようじゃなさそうだな。」
「察しがいいな。貴様を拘束させてもらう。」
「また、スパイだの言うんじゃないだろうな?」
「ふっふふ、違うな。まぁ、貴様が裏で通じていようがもう関係ない。」
「……どういう意味だ?」
「さぁ、こいつを連れて行け!」
-同日、ブリタニア ハバロフスク軍事基地-
ロイド達特派はブリタニア本国へ帰国する準備をしていた。共に帰国するスザクは1人、外の景色を眺めていた。
「ご足労かけたな、ナイトオブセブン。」
声が聞こえた方向へ振り向くとそこには井ノ本1人が立っていた。
「エリア11にいる彼には会わないのか?」
「そのつもりはありません、奴には皇帝の力で………。」
「そうだったな………。」
「あなたに聞きたいことがある。」
スザクは鋭い眼差しを井ノ本に向けた。
「あなたは何を知っている?」
その問いに井ノ本は微笑んだ。
「どういう意味かな?」
スザクがあの男を皇帝に差し出した時井ノ本が同席していた。皇帝シャルルのあの力に驚くことなく平然とした様子でいた。
「あなたは皇帝陛下とどのような関係で?」
「……ただの友人だ。」
「友人?日本人のあなたが!?」
「ふっふふふ、それを知って彼の弱みでも知ろうと?」
「ふざけないでください!!」
「まぁ、そんなことはどうでもいい。君に教えたいことがあって来た。」
「!?」
「流崎が救助されサドナ王国にいることが確認された。」
「救助された!? あの吹雪の中を!」
「偶然、民間人が通りかかったようだ。」
「しかし、サドナ王国はもう……。」
そう言うとスザクは井ノ本の横を通り過ぎた。
「君に忠告しておこう。」
井ノ本の一言でスザクの足が止まった。
「奴は必ずまた君のまえに姿を現す。気をつけることだな。」
「……………。」
スザクは黙ったまま井ノ本から離れていった。
(奴は必ずエリア11に戻ってくる。)
井ノ本の手にはある1枚の写真が握られていた。
「ふっふふ、無事に帰還できてよかったな。」
「帰還した人間に対してこの仕打ちはどうかと思うが……。」
今アキラは両手を手錠で繋がれて義兵団のトラウトマン将軍と相対している。
「残念だが貴様をブリタニアに引き渡す手筈を取っている。」
後ろからトニーが悪態をつくように告げた。
「引き渡す?………そうか、あんたブリタニアと通じていたんだな。」
「我々はサドナ王国の内情を調べるために送り込まれた。そんな時お前が来たのだ。だが、この国はもう終わりだ。」
「……どういうことだ?」
「おい、どこにいるんだアキラは?」
その頃アレクセイ、岸谷を除くイゴール達は病院にいたがアキラの姿が消えていなくなり皆で探している中レイナが走って戻ってきた。
「ここの看護師に聞いたけど軍の人に連れて行かれたみたいよ。」
「軍?義兵団か?だがなんでだ。体の回復を待って事情聴取するはずだよな? ……ってジェノムお前何見てんだ?」
ジェノムは外の様子を見ていた。
「………外が騒がしい。」
イゴールも外を見ていた。軍の小隊らしき集団が動き回っていたがその格好に違和感を覚えた。
「お、おいあいつらは…!」
その時アレクセイが息を切らして病院に入っていった。
「ア、アレク!」
「すぐにここを出て身を隠せ!」
「ちょっと待てよ。どうしたんだ?」
「政府が……ブリタニアに掌握された!」
「サドナ王国は恭順派によって全て掌握されじきにブリタニアの部隊が首都に入り新たなエリアに編入される。この国の歴史も終わりだ。」
トラウトマンは煙草に煙を吐いた。
「流崎、またブリタニアに逆戻りっと言うことだ。お前を引き渡せば俺はブリタニアの軍人として迎え入れてくれることになっている。くっくく。」
トニーはこれを機にブリタニアに入り出世しようと目論んだ。元々サドナ王国に対して忠誠心もなかった彼はトラウトマンからこの話を持ちかけられふたつ返事で乗ったのである。
「さぁ、流崎我々と来てもらおうか。」
部下2名が入ってきてアキラを連行した。
その頃、アレクセイ達は義兵団基地の近くで様子を伺っていた。
「ブリタニア軍が占拠している。もう完全に義兵団は支配化に置かれたな。」
「けどよアレク、どうするつもりだ?いつまでも離れてたら怪しまれるぞ。」
「あたしもよ!なんであたしまであんた達と一緒に………。」
「イレブンは強制収容所に送られているんだ。今見つかったら連行されるぞ。あんな風にな。」
少し離れたところでイレブンらしき女性と子供が軍の人間達に無理矢理トラックに入れられどこかで連れて行かれているのを見かけた。
「それにアキラのことも気になる。彼は今どこに。」
その時、茂みの奥から足音しアレク達は身構えたが現れたのはジェノムであった。
「ジェノム、どうだった街の様子は?」
「ブリタニアの軍がまわりをうろついている。」
「んでどうするアレク?」
「………俺は義兵団を抜ける。」
「逃亡は重罪だぞ!」
「俺はブリタニアを国から追い出すために戦ってきたんだ。今更、奴らの傘下に入るつもりはない。アキラも助ける、あいつをこのままほっとくわけにはいかない。」
「へっへへ、仕方ねぇな。1人より2人でやるほうが成功できるだろ。」
「2人じゃない、3人だ。」
ジェノムはそっとアレクセイの肩に手を置いた。
「お前達……。」
「なぁに食い口はいくらでもあるさ。」
「ちょっと、あたしはどうすりゃいいの!!捕まるのはゴメンだよ!」
「もう帰るところねぇんだろ。だったら一緒についてこい。」
「なんで、あんた達に付き合わないといけないのよ!」
皆で話し合っている中この場にはいないはずの人物の声が聞こえた。
「おうおう、なんか騒がしいと思ったらお馴染みの顔ぶれが揃いもそろって。」
聞き馴染みの声にアレクセイは声が聞こえたほうを振り向いた。
「あ、あなたは!?」
アキラを乗せた護送車、トラウトマン達を乗せた車両をKMF部隊が囲み、周囲を警戒していた。
「将軍、義兵団基地からの連絡で岸谷晋二が将軍に会いたいと…。」
「イレブンが…今はそれどころではない。追い払え。」
トラウトマンは外の雪の様子を見た。これ以上降り積もれば進行の妨げになるからである。
一方、アキラは3人の兵士の監視の下一言も喋らず黙ったままであった。
その時、最前列を走っていた車両の前に1機のサザーランドが現れた。
「なんだあのサザーランドは? おい、どこの部隊の者だ?言え!」
兵士の1人が告げたがその直後サザーランドはライフルをこちらへ向け発砲した。
大きな爆発音が後方にいたトラウトマンにも聞こえた。
「何事だ!?」
「て、敵襲です!」
「何、一体どこの奴らが?」
「わかりません、将軍、今は退避してください!」
「くっ…、流崎はどこだ?」
「な、なんだ!?」
「外が騒がしいぞ!」
アキラが乗っていた車両も立ち往生し周りにの兵士も外の様子を伺っていた。
アキラはその隙に兵士の1人の背後を取り首を絞め、ライフルを奪う。
「こっこいつ!」
アキラの動きに気づいた1人がライフルを構えたが、アキラはライフルで兵士を殴打し倒した。
外へ出ると突然の襲撃により混乱していた。アキラのまえに1機のサザーランドが現れアキラはライフルを構えた。
『アキラ!? 無事か?』
「その声、アレクか?」
『アキラ、腕に乗れ!こちらアレクセイ、アキラを確保!全員退却!!』
アキラを腕に乗せたアレクセイ、そしてイゴール、ジェノムは早々にその場から退却をした。
「だ、誰だ? ブリタニアとは思えんが……。」
「将軍、基地からの連絡でアレクセイ・ヤゾフ、イゴール・グリンカ、ジェノム・ロイ以下3名の所在が不明との連絡が…。」
「まさか……奴らが!」
アキラ達は雪で埋もれた廃墟の中にいた。
「はっはは!アキラ、これでトンモでの借りは返したぜ。」
「あぁ……すまない。だがどうやって居場所を……。」
「俺が見つけたのさ。」
大型トレーラーの運転席から1人の中年の男性が降りてきた。
「とっつあん!!」
「はっはは、アキラ無事で何よりだ。こいつは軍のものだからな。無線を傍受してたらお前を護送しているって聞いたんだ。」
「いつ戻ってきた?」
「まぁいろいろあってな。今戻ってきたところだ。」
「皆、ここもいつ発見されるか分からない。すぐに出立しよう。」
「アレク、行くあてでもあるのかよ?」
「まかせてくれイゴール、心当たりがある。」
皆、大型トレーラーに乗り込み、アキラはもう1人いることに気づいた。
「よかった~、無事だったんだ。」
レイナが座っていた。
「…………どうしてお前がいる?」
アキラのその言葉にレイナはガクッと肩を落とした。
「あんた達に巻き込まれてこんなところまで来たのよ。あんたが連れて行かれるって聞いたから心配したけど心配して損した。」
「アレク、お前達はどうして………。」
「それは俺が代わりに話そう。俺がハバロフスクに着いて商売相手を通じて色々聞いたんだがな、ブリタニアの奴らが王国の政府恭順派と共謀して政府を乗っ取ろうと共謀していたんだ。」
「それでこの騒ぎか。」
「ところが今度は俺の商売相手の役人や軍の御偉い共が次々に逮捕されたんだ。政府や義兵団に金や武器弾薬の横流しがバレてしまってな。危く俺も捕まるところだった。それで連中はトンモに送られたんだ。」
「トンモ!?」
「あぁ、そうだ。俺達は奴らの処理の手伝いをさせられたんだ。」
アレクセイの考えの通りあの作戦は逮捕した要人達をおとりにして自分達を誘い込んだ罠だったのだ。
(だがだとすればどんな目的で俺たちを……?)
「んでこいつは俺が逃げる時、こんなことがあるんじゃねぇかと思って商売相手から譲ってもらったもんだ。サザーランドも揃って武器も最新式のもんだ。」
「全てはとっつあんの思惑通りって訳か。」
「がっははは!!義兵団のトラウトマンもグルだったからな。お前の事だ派手にドンパチやるんじゃねぇかって思ってな。こっそり入国してみたら偶然アレク達に会ってな。お前も捕虜になって逃げて生きて帰れたんだ。お互い悪運が強いな。それとお前達に会う前に知ったことだがな、占領下に入ったサドナ王国に元国王のマクシムが来ているみたいだ。」
「国王が!?」
アレクセイは驚愕の顔を浮かべた。坂口は車に搭載してあるテレビをつけた。画面から映し出されたのはマクシムであった。
『今日よりこのサドナ王国は神聖ブリタニア帝国により統治されることになった。国の名称もエリア15とし既存する法律、文化全てを破棄し神聖ブリタニア帝国の名のもとに新しい国家として生まれ変わることになる。それに反対する者達は帝国に対する反逆と捉え逮捕、鎮圧の対象とする……。』
この会見をみていたアレクセイはワナワナと身を震わせて拳も強く握り締めていた。
「あなたが……あなたが目指していた国とはこの事だったのですか!?強者に服従し自分達の国、誇りを捨てることが………!!」
アレクセイは声を押し殺し涙を流している。この姿に皆誰も声をかけることができなかった。
-サドナ王国、官邸-
「国王、お待ちしておりました。」
会見を終えたマクシムを迎えたのは政府の恭順派の官僚たちであった。
「首都の混乱も収まりつつあります。抗戦派共を押さえてあります。」
「それ以外に何かあったか?」
「はっ、それが義兵団の中から脱走兵が数名おり、連中は連行される途中の流崎アキラを乗せた護送車を襲撃し共に逃亡したようです。 脱走兵の名はイゴール・グリンカ、ジェノム・ロイ、アレクセイ・ヤゾフです。」
その時マクシムの表情が一瞬強張った。
「……そうか、では流崎アキラ、その3人を指名手配にし捜索をさせるんだ。」
「はっ!」
官僚達の姿が消え1人になり窓から町を眺めた。
(アレク……お前はやはり。)
-ブリタニア ハバロフスク基地-
「閣下、準備は整いました。」
「うむ。」
井ノ本は出立の準備をしていた。サドナ王国から更に北、北極の近くにてある場所へと行くためである。
「明日にはエリスの専用機と新たに部隊に配備させる予定の試作機が来る。お前達は流崎達が動きが確認次第行動に移せ。」
ここの陽炎部隊指揮官に今後の指揮を任せることにし井ノ本は基地を経つことにした。
「閣下。」
「エリスか……。」
「お聞きしたいことが……。」
「何だ?」
「何故、アムール川支流の周りに配置するのです?」
「流崎が現れるからだ。」
「何故言い切れるのです!?」
同じ頃首都ヤールンから数百キロ離れた古びた小屋にアキラ達はここでこれからの事について話していたがアキラは坂口から少し話があると外へと呼び出された。
外は雪が降っており、心身ともに冷え込む寒さであった。
「こんな時にお前に伝えようかどうか迷ったんだがな……。」
「何だ?悪い知らせか?」
「いや、逆にいい知らせなんだがな……これを見てくれ。」
坂口から渡された写真に写る人物を見てアキラの鼓動が2度3度と早鐘を打つ動機に襲われた。
エリスは井ノ本から1枚の写真を渡された。
「彼女は!?」
「今、この女が近くにいる。」
映し出された写真には赤い髪を帽子で隠す女性が写っていた。
「紅月カレン!」
カレン達が中華連邦に潜伏したとの設定にしました。そこまでの経緯は次回というわけで。
第1章も終盤に向かっています。なんとか今年中には終わらせたいと思います。
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第8話
深夜、アキラ達が身を潜めている小屋から1人の男がこっそり抜け出しシートで隠している大型トレーラーに入り拳銃を手にしスノーモービルに乗りまだ暗い雪原の中へと駆け出していった。
「なんだ敵か!?」
スノーモービルの音で皆が慌てて起きイゴールがライフル片手に外へと出て行った。
周りを警戒して見回ったが敵らしき姿は見えなかった。
「なんだ気のせいか?」
「イゴール、大変だ!!」
小屋からアレクセイが大きな声でイゴールを呼んだ。
「アキラの奴1人で出て行った。」
「アキラが!? そういえばあいつがいねぇ。」
言われてアキラが寝床にいていた2階にアキラの姿はいなかった。
「おいまさか逃げたんじゃねぇだろうな?」
「あいつは逃げるような奴じゃない。」
「ジェノムの言うとおりだ。アキラがそんな奴じゃないのは俺達が知っている。だがどうして……。」
「その事なんだがな……俺は心当たりがあるんだが。」
坂口がどこか弱弱しい口調で言った。
「おい、おやじ知ってるのか?」
「あっいやその………。」
坂口のしどろもどろな喋りにレイナが声をあげた。
「もうおっさん、はっきりしなよ!!」
「わ、わかったよ。実はな……。」
1人出て行き数時間が経ちアキラは軍の監視を潜り抜けながらアムール川の上流まで来たが軍のいや右肩を赤く染めた陽炎のKMF2機と隊員数名の姿が見えアキラは見つからないよう隠れた。
アキラは懐からカレンの姿が写った写真を取り出した。
坂口の話によると3日前、中華連邦の東北部にあたる黒竜江省(こくりゅうこうしょう)のアムール川を渡る渡し船に乗る姿を偶然映し出されたものを坂口の協力者が見つけたと言っていた。
だとすればサドナ王国と中華連邦の国境をはさんであるこのアムール川の近辺、中華連邦と最も近い都市のチェンスクへ行けばカレンが乗っている船を見つけることができるかも知れない。
必ず会えるとは限らないだがもし会えたら……アキラはスノーモービルのレバーに手をかけた。
-中華連邦 黒河市-
アムール川を渡る水上バスにはたくせんの人でごった返していた。
そんな中1人の日本人が混んでいる中で人ごみを掻き分けながら入っていった。その日本人は乗船している防寒着のフードを深く被っている人物の肩に手をやった。
「おい、紅月。」
名前を呼ばれ紅月カレンは被っていたフードを取り顔を露にした。
「ト部さん、時間は?」
「この寒さでエンジントラブルが起こってるみたいだ。2~3時間ここで足止めだ。」
「……そうですか。」
「のんびりはできない。目の前のサドナ王国は既にブリタニアに吸収されエリアになっている。」
ここから1kmも離れていない川を渡って見えるサドナ王国の船乗り場には軍の装甲車が見える。
「ここは中華連邦だ。向こうが手を出すようなことはないだろうが俺達はお尋ね者だ。」
ト部の言うとおり自分達が中華連邦にいる限りブリタニアも簡単には手を出すことはないが中華連邦が守ってくれるとは限らないのだ。事実、前年中華連邦が介入し起こったキュウシュウ戦役では自分達黒の騎士団によってクーデターは頓挫してしまったのだ。
この亡命も密入国のような形でありカレン達は身を潜めながら今まで過ごしてきたのであった。
サドナ王国に逃げることも考えたがブリタニアとの長い戦争で困窮した状況で政府も近年ブリタニア恭順派の台頭が目立ち逃亡先には適さないと判断しカレン達は中華連邦に潜伏したのであった。
「予定の時刻まで時間がない。ここから支流の松花江(しょうかこう)を渡って旅順まで行けば港でラクシャータが用意してくれた船で日本にいける。紅蓮も用意してあると聞いている。」
「紅蓮……。」
日本に戻り例の作戦を実行する。この作戦を成功させなければ自分達にはもう後がない。
(アキラ………。)
今回、紅蓮にはブラックリベリオンにて破損した輻射波動の代わりに予備パーツの輻射波動の簡易型である甲壱型腕が使われるがこれは以前アキラが搭乗した月下の先行試作機に装備されていたものでアキラは外しそのままにされていたのであった。
「どうした?」
隣には緑の髪をフードで隠しているC.C.がいる。
「ううん、なんでもない。」
「流崎アキラがいてほしいって顔に書いてあるぞ。」
「なっ!?」
「嘘だ。」
「こんな時に……。」
相変わらずの態度にカレンは溜息を吐いた。
「だがお前の背中を時々見てると寂しそうな見える。」
「…………私の背中を預けられる人がいないから。」
「なんだ惚気か?」
「ゼロと同じよ……ゼロがいれば私達は勝てる、そう思える。あいつだけなの、私の背中を預けることができるのは。一緒にいてくれたら私は後ろを気にすることなく前へ進むことができる。………不安なのよ、あいつがいないと。」
「………生きてると思うか?」
「生きてる。私達が日本で動けば必ず来てくれる。」
今、アキラがどこにいるのかわからない。だが今度の作戦で自分達の存在が明らかになればアキラは必ず戻ってくる。カレンはそう信じていた。
-ブリタニア ハバロフスク基地-
エリスはドリー達から処置を受けており手術台に横になっているエリスにジョディは彼女の腕に注射を刺した。
「さぁ終わりよ。あとはゆっくりしてなさい。」
そう言われエリスは黙って治療室から出て行った。
「PSと言っても元は人間、治療を受けないとね。」
「これがPSの欠点だ。知力、体力が大幅に向上する一方その体は長くは持たない。だからこの薬を使わないと。」
PSという常人を超えた力を手に入れた反面各情報が脳へ送られ演算するにも限界があり長時間の戦闘がまだできないでいた。
「でも最近彼女何か考え事しているのよね。」
「流崎アキラとの戦闘を終えてからだな。」
「だんだん女の顔になっているっていうか……。」
「最初はお前の冗談だと受け流してたけどお前の言うことも正解かもって最近思うよ。さてどうしたものか……。」
1人で佇んでいたエリスはここを経った井ノ本との話を思い出していた。
(まだ軍でも知られていない。我々が入手した情報だ。)
(紅月カレンはどこに?)
(中華連邦のアムール川流域にある黒河市で撮影されたものだ。奴らはエリア11へと戻るつもりだ。おそらく流崎は彼女達と合流するためにここを目指すはずだ。)
(何故です!? この情報は奴には届いていないかも知れない。)
(情報というものはいかに網を巡らせようが小さい隙間を潜り拡散する。)
(だとしてもあの男が行くという確証が……。)
(いや、ある。彼女がいる。)
(紅月カレン……。)
(奴はこの女に惹かれている。必ずアムール川の近隣に現れる。)
生きて会いたい人がいる。
地下でアキラと話している時彼はそう呟いた。
(アキラ、会いたい人が彼女なのか………)
エリスの手にはある写真が握られていた。これは以前スザクからもらった写真であった。
(これは………。)
写真にはアキラ、スザクをはじめ数名の学生達の集合写真であった。
(僕と流崎が通っていた学園の文化祭の打ち上げで撮った写真だ。)
写真に写っているアキラの顔は仏頂面であるがどこか楽しんでるようにも見えた。そのアキラの隣に一人の女性が寄り添うように隣に写っていた。
(この女は……)
(紅月カレン、黒の騎士団の一員で彼女が流崎を学園へ入学させた。)
(紅月カレン……。この女とアキラはどんな関係なんだ?)
(あいつが学園に来た時は他人を寄付けず、僕らと違って雰囲気が大人びてるように見えた。けどカレンは僕らと打ち解けさせようと必死になって色々していた。
そのせいもあるけどカレンといる時は………何て言えばいいだろう、彼女といる時が本当の流崎アキラかも知れない。)
(本当の流崎アキラ………?)
(彼はカレンの事を愛しているかもしれない。)
「紅月カレン………。」
写真に写されているカレンの姿を見てエリスは思った。
(アキラはこの女に惹かれていると閣下は言った。だが何故アキラは……。)
エリスの脳裏にはアキラは右肩を赤く染めたKMFで駆って自分を追い込んだ戦士としてのイメージがあった。
だが実際、対峙した時のアキラは何かを求めて彷徨う1人の男であった。
(紅月カレンがいる場所に向かっているなら………!)
エリスはアキラに会いたいという衝動に駆られた。
しばらくしてドリー達は部下から連絡を受けた。
「どうした?」
『大変です。待機中のPSが突然基地から出て行きました。』
「エリスが!?」
『乗って行った雪上車の無線に呼びかけてますが切られておりどこに向かっているのか。』
まさかとドリーは通信で部下と連絡を取った。
「アムール川流域で待機している我々の部隊に連絡するんだ。PSを見つけ次第確保しろと。」
-エリア15サドナ王国 首都ヤールン-
ヤールンにあるオフィスビルにてシュナイゼルの側近のカノン以下数名の部下達が国内外の情報収集を行っていた。
「地方各地で小規模のテロが反乱を起こしているようです。」
「まぁ想定してことだしエリア11に比べたら楽なものね。」
「それとカノン様、陽炎に不審な動きが」
「なんですって?」
「エリア15と中華連邦の国境を挟んであるアムール川流域を中心に部隊が動いている模様です。」
「亡命者を捕らえるため……?だとしても陽炎が中心っていうのは面白くないわね。それとも……。」
まだ発見されない流崎アキラ、彼が何か事を起こすのだろうか……いやそんなはずはない。カノンは首を横に振った。
たった1人で何ができるのかシュナイゼルの話を聞き真に受けてしまったのだろうかとカノンは苦笑いをした。
アムール川の大きな支流の1つであるゼヤ川までたどり着いたアキラは周りを警戒しながら進んでいると後ろから銃声が鳴りアキラは瞬時に銃を抜き取り茂みに隠れたのだが弾は飛んでくる気配はなく代わりに悲鳴が聞こえた。
悲鳴が聞こえたほうを見ると母子2人の家族が川を渡ろうと走っている姿が見えその家族を見てアキラは気づいた。
(あれは日本人……)
その家族を追って2人の陽炎の隊員が狙いを定めライフルを撃った。 親子は悲鳴をあげ川の中へと倒れ隊員はもう1発撃ち止めをさした。
よく見ると隊員うち1人はブリタニア人であった。
(ブリタニア本国からも人を募っていたのは聞いていたがおそらく俺がいた時より倍以上に大きくなっているな。)
敵にばれないように隠れているアキラの前を先程殺された親子2人の死体が川に流されて行った。子供の顔はカッと目を見開いており恐怖に慄いている顔であった。
「ん?誰かいるのか!?」
隊員の1人が茂みから人らしきものが見え警戒をしアキラのほうへと近づいてきた。
アキラは瞬時に茂みから姿を現し銃で1人を撃ち殺した。
「っ!? こちら第7部隊、ゼヤ川流域にてあやしい者を発見!銃を所持」
『エリス、応答しなさい。エリス!!あなたの基地で待機と命令したはずよ!今すぐ戻りなさいエリス!!』
1人単独で基地から出たエリスはジョディからの通信を無視し各部隊の無線を傍受しアキラの居所を探った。
『現在、ゼヤ川にてあやしい男1人発見、現在アムール川流域へ逃走。難民かもしくは政府関係の亡命者のおそれがあり……。』
(アキラ、お前なのか?だとすれば黒竜江省へ?)
エリスは中華連邦との国境近くにあるブラゴヴェシチェンスクへ到着した。
エリスの目の前にはアムール川が流れておりその先には中華連邦が見える。
本当に井ノ本の言うとおりカレンがあの先にいるのか、エリスは近くにいた陽炎の部隊へと近づいていった。
「ここにあるボートを借りる。」
「おっおい待て!?」
その時兵士の1人はエリスの顔を見てハッとした。
「ハバロフスク基地からの命令でPSを発見次第確保しろとの命令だ。おとなしく我々と一緒に」
エリスはライフルを構えた4人の兵士に囲まれたが冷静に周りを見渡し落ち着いた口調で口を開いた。
「………そこをどけ。」
「命令に背くのか!」
その瞬間エリスは目の前にいる兵士の所持しているライフルを奪いストックの部分で1人を殴り後にいた兵士を後ろ蹴りで倒した。
左右にいた兵士もライフルで殴り倒した。
エリスは軍のモーターボートに乗り発進させた。
ここから1kmも離れていない中華連邦小さな港にエリスは近づこうとした。
「止まれ!ここからは中華連邦領内だ。許可無しの立ち入りは許さない。」
中華連邦の兵士数名が港からそしてボートに乗りエリスの前を立ち塞がった。
エリスは一言も言う事もなくただ水上バスのほうを睨んでいた。
外で軍が動き出し船内も騒がしくなりカレン達も何事かと外を様子を見ると中華連邦の軍とブリタニアの女性兵士が境界線で睨み合いをしているのを目撃した。
「ブリタニアがこんなところに!? まさか私達を?」
「まさか……。」
その時カレンはブリタニアの女性兵士と目が合い慌てて顔をフードで隠し船内の奥へと戻っていった。
赤い髪に自分とそんな変わらない歳の女性、自分と目が合った女性にエリスはハッとした。
(紅月カレン!)
カレンの姿を見たエリスはそのまま黙って引き返し中華連邦の兵士達はどうしたのかと顔を見合わせた。
(ここに紅月カレンがいる。アキラ、お前は彼女を探しここまで……。)
その頃アレクセイ達はアキラを追いアムール川の流域近くまで来ていた。
「おい、おやじ本当にアキラの奴はここらにいるのか?」
「信じられねぇなら戻れよイゴール。あいつはきっと来ているはずだ。」
「それにしても女に会いにいくなんざあいつもガキらしいところあるじゃねぇか。」
イゴールは豪快に笑った。
「だが会うのは難しいようだな。」
「おっ、どうしたジェノム?」
「今、軍の通信を傍受したがアムール川でアキラらしい男を見つけたと軍が探しているみたいだ。」
「くっ、見つかってしまったか。みんな、隠れていくのはもうやめだ。このまま一気にチェンスクへ行くぞ。」
運転をしていたアレクセイはスピードを上げ車を発進させた。
アキラは軍の目を掻い潜りながらチェンスクへとたどり着いたがここでも軍が配備されていた。とにかく中華連邦の黒河市が見えるところまで行かなければ行けない。
アキラは樹で身を隠しで行く方向を思案していたが上空から軍のヘリが周りを滞空しておりおそらく自分を捜索しているのであろうと思った。
今、見つかれば中華連邦への密入国は無理だ。アキラはスノーモービルを捨て徒歩で川岸まで目指そうと身を縮めながら歩いていった。
降り積もった雪に足をとられながらも川岸まで着いたアキラは中華連邦の領内を見渡した。
(どこだ?どこにいるカレン!)
その時アムール川から1艇のモーターボートがこちらへ向かってきた。
「お前は!?」
「流崎アキラ!」
エリスは片手に銃を持ちアキラに向けたままボートをアキラがいる岸まで寄せた。
「………やはりここへ来たのだな。」
「……どういう意味だ?」
「あの向う岸にある船があるだろ。」
向う岸、中華連邦領内の港に停まってある船1隻見える。
「あの船に紅月カレンが乗っている。エリア11へ戻るつもりだ。」
「っ!?………カレン達をどうするつもりだ?」
「何もしない。私達は紅月カレン達残党をエサにお前が来るのを待っていた。」
「俺を殺すためか?」
「そうだ。………だが。」
ゆっくりとエリスはボートから降りた。
「大人しく投降しろ。命を助けるよう閣下には伝える。」
「………何故俺にそんな拘る?」
「………わからない。だがお前を殺したくはない。」
心憂い表情を浮かべながらもエリスは銃を向けている。
「私のところへ来てくれ。この苦しみが知りたい!アキラ、お前がいてくれたら……。」
擦り寄るように来るエリスにアキラは後ずさりし銃を抜いた。
「悪いがお前に付き合う時間はない。」
「何故だ!紅月カレンにお前は何を求める!!あの女に何があるのだ!?」
エリスの悲痛のような叫びに一瞬戸惑ったアキラであったがその時向う岸のカレンが乗っている船のエンジンの音が聞こえ2人は音があったほうを向いた。
「カレン!!」
アキラはエリスがいるのを忘れ背を向け走っていった。
「くっ!? アキラ!!」
エリスは動きを止めようとアキラの足下を狙い銃を撃った。
銃弾がアキラの足下近くの雪に当たりアキラは懐から銃を取り出し応戦する。
「ん?チェンスクのほうで何かあったみたいだ。」
ようやく船が発進し外の様子を見ていたト部はチェンスクの港で監視を行っていた陽炎の部隊が急に慌しく動いている姿を目撃した。
「さっき銃声のような音も……?」
カレンも不安げに外の様子を伺っていた。
「ここが巻き込まれることはないだろうが様子を見ておこう。」
エリスから逃げるアキラであったがカレンが乗っている船を確認しながら追っていた。このまま川岸を進めばどこか船と接触できるポイントがあるはずだと思ったが背後からエリスが飛び掛り馬乗りの形でアキラを抑えた。
「アキラ、何故紅月カレンを!?」
「………そこをどけ。」
「お前は愛しているのか彼女を!?」
「…………そこをどけ!!」
無理矢理体を起こしアキラはエリスに目もくれず船を追い走っていった。
銃声の音で陽炎の部隊もアキラを見つけ装甲車部隊はエリスの横を通り過ぎアキラを追っていった。
「アキラ…………。」
走り去る背中をエリスはただ呆然と見つめていた。
(アキラ、お前は私と同じ戦う兵士だ。それなのに私とどこか違う。何だ……何だこの気持ちは。)
エリスは胸が締め付けられる苦しい思いがした。
「ハバロフスク基地からの命令であなたを回収に来ました。」
兵士の1人が近づいた。
「………わかった。」
はぁはぁはぁはぁ。
アキラはカレンが乗る船を追い猛然と走っていった。背後から敵の追跡があるがまったく気にも留めなかった。
船のデッキからはこの騒動で人がごった返していた。その中にアキラはある人物に目が留まった。
髪が少しハネた赤い髪、後姿から僅かに顔を覗かせアキラにはあれが誰なのかおもわず大きな声で叫んだ。
「カレン!!」
その時、背後から敵の銃弾が足下を掠り転倒してしまった。
「えっ!?」
銃声に振り返ったカレンであったが銃撃により発生した雪煙が見えるだけであった。
「どうした?」
一緒にいたC.C.は声をかけた。
「いや、別に………。」
「……心配するな。私達を狙ったわけじゃない。」
「うん………。」
誰かが私を呼んだ。
はっきりと聞こえなかったが自分の名前を呼んだ声をした。気のせいなのか、それとも……だがその声はいつも隣にいたあの人の声だったような気がしたとカレンは雪煙を見つめていた。
「くっ…。」
離れていく船をアキラは唇を噛み、立ち上がり後を追おうとしたが目の前を1機のサザーランドが立ち塞がりライフルを構えた。
どこか逃げられるところはないか周りを探った時雑木林を掻き分けこちらへ近づく1台の大型トレーラーが姿を現した。
トレーラーはサザーランドに体当たりをし川へと落下させた。
「おうアキラ無事か!!」
ライフルを構えイゴールとジェノムが出てきて軍に応戦した。
「お前達に迷惑かけたくない。俺の事は放っておいてくれ。」
「馬鹿野郎!!もうかけてるんだよ!!さっさととんずらするぞ!」
アキラはトレーラーを横切り船の後を追おうとした。坂口が慌てて運転席から出てアキラを引き止めた。
「アキラ、もういいだろ!あの子が生きてるってことがわかったんだ!またチャンスはある!!」
坂口からそう言われアキラは口惜しい表情で遠く離れた船を睨みトレーラーに乗り込み急ぎこの場から離脱した。
-旧サドナ王国現エリア15 首都ヤールン 総督府-
「中華連邦政府が?」
エリア15の総督となったデニスは部下からの報告を聞いていた。
「今から20分前に中華連邦の領内近くで陽炎が不審者を目撃したと戦闘を行い、また中華連邦領内に不法侵入しようとした陽炎の兵士1人いたと抗議の書面をこちらに。」
「ちっ、井ノ本の犬どもが。 亡命者を追跡した時に銃撃戦になったと伝えておけ。それと奴らは誰と戦っていたんだ?」
「はっ、おそらく義兵団から脱走した3人だと思われますが……。」
「まぁいい、これ以上陽炎に暴れまわれても困る。こちらも部隊を投入して脱走兵を捜索させろ。」
軍の追撃を逃れる中アキラは不貞腐れた顔をしていた。そんなアキラを見て坂口が声をかけた。
「まぁアキラそんな顔すんなよ。陽炎があの辺りにいたのを知ってたから助けにきたんだ。お前の気持ちもわかるが仕方なかったんだ。」
「だがお前が女のケツを追いかけるなんてな。人間わかんねぇもんだな。」
イゴールは笑いながら乱暴にアキラの肩を叩いた。
「アキラ、これからの事をついて話したい。……いいか?」
「…………わかったアレク。」
-カレンが生きていた。あいつの姿を見た時胸が躍る衝動に襲われた。再会はできなかったがこれで俺が行くべき道は見えた………-
話は逸れますが日曜17時のガンダムはかなりむせますね(笑)
あの戦車に一目惚れしましたww
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第9話
ではどうぞ。
※すみません、こちらの編集ミスで余計な文章がありました。
訂正したのですみませんでした
チェンスクを離れたアキラ達は潜伏していた小屋へと戻る途中でいた。
突然、道の真ん中で1人の男性が立ちふさがった。古びたコートに毛皮の帽子、マフラーで顔ははっきりと見えない。
「てめぇ、危ねぇじゃねぇか!!そこをどけ!」
イゴールが怒声に男性は黙ってコートをめくった。中にはライフルを隠し持っておりアレクセイ達に構えた。
それを合図に左右から雪の中から7、8人の人間が現れ同じくライフルをこちらへ構えた。
「なっ!? なんだよこいつら?」
「お前達、車から出ろ。」
男の指示にアキラ達は顔を合わせた。
「ど、どうするのさぁ?」
突然のことでレイナは狼狽えていた。
「KMFに乗り込めば………。」
「いや、待てアキラ。敵にしては姿、ライフル、どう見ても軍の奴らじゃない。俺が行く。俺が撃たれたらトレーラーを出せ。」
そう言いアレクセイは1人トレーラーから降りた。
「俺がリーダーだ。」
「アレクセイ・ヤゾフだな。」
「どうして俺の名前を………?」
「ふっふふふ……。」
男はマフラーと帽子を取り顔をだした。アレクセイとそんな年齢は離れていないようみえ顔には傷跡がいくつか見受けられる。
「っ!? ワシリーお前なのか!?」
「久しぶりだな、アレク!」
ワシリーという男は喜びを笑みをこぼしアレクセイの肩を強く叩いた。
「どうしてここへ?」
「チェンスクで派手に暴れた奴らがいたって情報があってな。お前が義兵団から抜けたって聞いたからもしやと思ってな。」
再会を喜んでいる2人を見て彼らは敵ではないとアキラ達は判断した。
「外話もなんだ。俺達のアジトへ案内する。着いてきてくれ。」
ワシリーの指示に従いアレクセイはトレーラーに戻った。
「おいアレク、あいつは一体……。」
皆が思っていた疑問をイゴールが先に口に出した。
「俺の昔の仲間のワシリー・ハスデル。ブリタニアと戦うゲリラ組織のリーダーだ。」
「ゲリラ? こいつら全員。」
「これからワシリー達のアジトに行こうと思う。心配するな。あいつは信用できる。みんないいか?」
アレクの指示にアキラ達は素直に従った。
ワシリー達の車両について十数分、ある雪原へと入ったトレーラーはライトの点滅を繰り返ししばらくすると地上からトレーラー1台通れる大きな扉が現れ扉を開くと中には大勢の兵士達がアキラ達を出迎えた。
基地の中をみると武器と旧式であるがグラスゴーが並んでいたりと地下組織でありながらそれなりの設備は施していた。
「皆、改めて紹介しよう。ここの組織のリーダー、ワシリー・ハスデルだ。」
「ワシリーだ。あんた達もよく来てくれた。ここでゆっくりしてくれ。」
ワシリーの案内でアキラ達は少し殺風景であるが広間で腰を下ろした。
「ふぅ、やって落ち着けるな。これで酒があったら最高だがな。」
「あんたよく酒だなんて言えるね。」
イゴールの態度にレイナは呆れ、それに対してイゴールは豪快に笑ったがすぐに真剣な眼差しをアレクセイに向けた。
「それでどうするんだアレク?ワシリーと手を組んでドンパチ仕掛けるつもりか?」
その問いにアレクセイはしばらく沈黙したがゆっくりと目を開いた。
「俺はヤールンに戻ってマクシムを討つ!」
「アレク!あそこはもうブリタニアが総督府を置いて完全支配されている。ヤールンを攻撃するのは無謀だ!」
「ワシリー、分かってる。だが共に王国の未来のために戦うと信じていたのにあの男は国民を裏切り国を売った!!俺は許せない!」
「お前の気持ちはわかる。だがマクシムを討ったところで何が変わる?俺達の相手はブリタニアだ。大国と戦うには皆が一つにまとまって戦わないといけない。俺達にそう言ったのはアレクお前だろ!」
「………。」
「お前は王国の未来のために俺達の先頭に立っていた。ここだって本来ならお前がリーダーとしているべきだったんだ。アレク、俺達はお前をリーダーとしてこれから……。」
「俺は………。」
アレクセイは部屋を出て行った。
「ワシリーだったな。アレクはマクシムとどんな関係だったんだ?」
アレクセイの様子を見てジェノムはワシリーに聞いた。
「………アレクはマクシムの側近だったんだ。マクシムがどうしてアレクを取り入れたのかは分からないがアレクは実の兄のように慕っているとカティアから聞いた。」
「カティア?」
「アレクと同じマクシムの側近だった女だ。アクレと同じようにマクシムを慕っていた。そして今はマクシムに従っていると聞いている。アレクは俺達に呼びかけてブリタニアと戦う戦士を集めていた。ここの連中のほとんどがそうだ。だがマクシム達がブリタニアに寝返ったことで国は混乱、側近だったことで疎まれるようになってアレクは追われるように政府から出て行った。」
「それで義兵団に身を寄せることになったって訳か。」
イゴールは両手を頭のうしろにまわし話を聞いていた。
「俺達のところへ誘ったがマクシムの側近だったことを引き目に感じて拒否したんだ。」
「あんたらはこれからどうする?」
ジェノムがワシリーの話を聞き口を開いた。
「俺達はアレクをリーダーとしてブリタニアと戦う。そのために俺はあいつをここへ案内した。だが今のままではすぐに潰される。同じ地下組織と連携して戦わないといけない。」
「なるほどな……。」
イゴールは椅子から立ち上がった。
「なら俺達も決断する時ってやつだな。もう義兵団には戻れねぇんだ。もう勝手でできるってわけだ。俺はアレクについていくぜ!たまには損得無しで働くのも悪くはねぇさ。」
イゴールは豪快に笑った。
「アキラ、お前はどうする?」
「…………日本へ行く。」
「エリア11にか!? なんだやっぱりカレンって子か……。」
イゴールはニタニタと笑いながら右手の小指を立てた。
「………あいつを助けたい。」
「ならここでお別れか。」
「その前にヤールンでひと暴れさせてもらう。」
「アレクと一緒に行くつもりか?」
「首都にある軍基地には軍用機がある。それを使って逃げる。」
「なるほど、俺達がドンパチしている間こっそり逃げるってわけか、悪りぃ奴だなテメェも。」
悪態を吐きながらも笑うイゴールにアキラも釣られて笑みを浮かべた。
「ジェノムは?」
「俺も付き合ってやる。」
「へっへへ、地獄の特攻野郎アレクセイ分隊ってやつか。こうなったらヤールンにド派手な花火でも打ち上げてやろうぜ!!はっははは!!」
一方、アレクセイは1人で佇んでいた。
(もう1年もすればマクシム、あなたがこの国の王になります。やっと念願の国づくりができますね。)
(………アレク、私にできると思うか?)
(できますとも、私達がついてます。微力ながら力をお貸しします。)
(アレク………時々思うのだ。この国の未来はお前のような者に託したほうがいいのではないかと。)
(何をおっしゃるのですか!? この国を導くことができるのはあなたしかいない!!俺はそう思います。)
(ふっふふ、すまない。少しそう考えただけだ、忘れてくれ。)
数年前のマクシムとの話を思い出していた時ジェノムから声をかけられた。
「アレク、俺達はお前と共に戦うことに決めた。」
「………タダ働きさせてしまうな。」
「ふっ、いいさ。」
しばらくして2人はアキラ達がいた部屋へと戻っていった。
「さっきは悪かった。 話は聞いた……皆力を貸してくれ。」
「そうこなくちゃな。最後まで付き合ってやるぜアレク。」
イゴールがアレクセイの肩を乱暴に叩いた。
「ワシリー、すぐに俺達はここを発つ。」
「アレク、俺も手伝おう。」
「ありがとう、だがこれは俺個人の戦いなんだ。」
「俺達もブリタニアと戦っている。少しでもお前の助けになりたいんだ。武器、弾薬を用意しよう。 アレク、お前の作戦に参加させてくれ!」
「…………すまない、ありがとう。」
急ぎ出立の準備を進める中アキラは坂口に今後の動向を聞いた。
「とっつあんはこれからどうする気だ?」
「もうここでの商売は潮時だな。うまく逃げてどこかで何かやるさ。」
「相変わらずだな。」
アキラの苦笑いに坂口はつられて笑った。
「もしかしたら日本に戻ることもあるかもな。今度こそカレン、あの子に会えるといいなお前も。」
「あぁ……。」
「そうだ。それと俺からの餞別と思って受け取ってくれ。」
そう言うと坂口は黒いボクトンバックをアキラに渡した。アキラが中を開けるとそこには古びた水平2連のショットガンが入っていた。
「やっぱりお前にはこいつがお似合いだろ。」
ニヤッと笑う坂口にアキラも笑って返した。
「あのレイナって女はどこだ?あいつはどうするつもりだろうな?」
「お前、まだ言ってなかったかあの子はな……。」
レイナは1人で佇んでいた。首にかけてあるペンダントを取り見つめていた。
「そこにいたのか。」
「アキラ……。」
「聞いたぞ。とっつあんについて行くみたいだな。」
「うん、あのおやじと働けば日本に帰れるんだ。」
「俺も何度か世話になっている。安心しろ、お前のことを悪いようにはしない。」
「アキラも一緒に行けばいいのに。なんでわざわざヤールンに戻ったりするのあんたそうとうな戦争ジャンキーね。」
「そう………見えるか。」
アキラの沈んだ顔にレイナは慌てた様子で言った。
「ちょっと、何マジになってるの!? 冗談よ、彼女もいることだし生きて帰りなよ。」
「わかってるレイナ。」
「千鶴。」
「?」
「和上 千鶴(わかみ ちづる)あたしの本名。」
「本名?」
キョトンとした表情をするアキラに千鶴は溜息を吐いた。
「呆れた。源氏名ってのも知らないの。レイナってのはお店の時だけ使う名前。」
「そうだったのか。」
「レイナって名前はあたしの母さんの名前玲奈からとったの。日本からここまで逃げて安心して暮らせると思ったけど収容所みたいなところに押し込められて父さんはサクラダイト発掘の作業中に事故で死んで母さんはあたしを守るために必死で働いた。その結果体を壊しあたしを残してそのまま………。」
千鶴は2つの巾着袋を取り出した。
「2人で一緒に日本に帰る。それがあたしの夢、2人をこんな袋じゃなく壷でお墓にいれてあげたい。やっと………ここまで。」
「………まだここを出れるとは限らない。死ぬなよ。」
「そっちこそ。」
-首都 ヤールン-
「ここにいたのか。」
ドリーとジョディは総督府のバルコニーにいるエリスを見つけた。今は雪は降ってはいないが寒い風が体に染みる。
「まもなく軍は反乱分子の掃討作戦を開始する予定だ。」
「あなたの新しい専用KMFもまもなく本国から送られてくるからそれまでここで待機するのよ。」
「わかっていると思うけどこの前みたいな勝手な行動はやめてくれよ。ただでさえ陽炎は軍からはいい目で見られてないから。」
黙ったままのエリスにジョディはある事を思いついた。
「もしかしたらまた流崎アキラが現れるかもね。」
アキラの名前を聞き僅かであるがエリスの表情が変わりジョディもそれを見逃さなかった。
「その時はあなたに戦ってもらうことになるわね。」
「…………いやだ。」
「ん……?」
「いやだ、戦いたくはない!」
そう言うとエリスはバルコニーから出て行き建物の中へと入っていった。
「やっぱりね。」
「どうした?」
「彼女、流崎アキラを意識してるわね。それもかなりの重症の。」
「PSが恋を!?」
「ねぇ兄さん、少しいいかな。」
ジョディは好奇心に満ちた表情をしていた。
一方、エリスは胸を手で押さえどこか苦しそうでいた。
(一体…何が。)
「大丈夫?」
ジョディがエリスの肩に手を回した。
「教えてくれ……この胸の苦しみは何だ?」
「それはね………あなたは流崎アキラに惹かれてるの。」
ジョディはエリスの頬に優しく手を添えた。
「惹かれてる……?」
「そう、あなたは彼を愛している。」
-愛-
その言葉にどこか戸惑いを感じたがアキラと2度3度と会い彼の姿を見る度に胸の苦しみを強く感じていた。
「愛………だが奴は私の敵。PSとして奴と戦う、けど……。」
「自分のものにすればいい。」
ジョディは両手でエリスの頬に手を添え子供をあやす様に語り掛けた。
「別に殺さなくてもいい。動けなくなるぐらいで捕まえてあとはあなたの好きにすればいい。そうしたら彼はあなたの思うままになる。」
「私の………ものに………?」
「そう、あなたのことしか見えないくらいに。」
口の端をつり上げジョディは手でエリスの顔を撫でた。
「だが奴は紅月カレンを……。」
ジョディはエリスの耳元で囁いた。
「簡単よ、殺せばいい。」
「っ!?」
「邪魔になる彼女を殺す。そしてあなたが彼を慰めるの身も心もね。そうすれば流崎アキラはあなたを見てくれる。」
「私を………。」
流崎アキラを自分のものにする…………今までになかった欲望がエリスの心に侵食されいようにエリスは感じた。
-首都ヤールン軍基地-
「これより、反乱分子の掃討作戦を行う。各部隊は予定時刻にて出撃するように。」
トラウトマンが部下達に作戦の詳細を説明し解散したところを岸谷がトラウトマンを追った。
「将軍お待ちを!!」
「何だ?」
「私はあなたの指示通りに動きました。約束通り私をブリタニア軍人としてエリア11への転属を……。」
「……そうだな。エリア15が落ち着いたら話を通しておこう。」
「ちょっと待ってください。ここがエリアに参入次第直ぐにと……。」
「そ、そんな話が……。」
「はやくエリア11に行きたいならこの作戦を遂行することだな。」
トラウトマンのあとを追おうとしたが警護のSPに遮られ岸谷は呆然と立ち尽くしていた。
-3時間後-
アレク達の出立の準備が終わり、間もなく基地を出るところである。
「アレク、これで積荷は最後だ。」
「ワシリー、何から何まですまない。」
「いいさ。それより……。」
「あぁ、ここから首都は約6時間の距離。俺達が出て3時間後ワシリー達も出立しれくれ。これはマクシムを討つ作戦だ。ワシリー達は首都を混乱させることが目的で長期戦になると不利だ。状況を見てすぐに脱出してくれ。」
「わかってる。お前こそ死ぬなよ。これは終わりじゃないんだ。これは始まりの戦いなんだ。」
「………あぁ!」
ワシリーはアレクの肩を強く叩いた。
アキラは坂口からいただいたショットガンの銃身とストックを短くし対KMF用の徹甲弾を発射できるよう改造を施していた。
そんなアキラを坂口と千鶴が話しかけた。
「いよいよだな。」
「あぁ……。」
「俺らは車を借りてお前達がここを出てすぐに俺も出る。」
「アキラ、日本でまた会おうね。」
「ここを生きて出られたな。」
「また縁起でないことを言う。」
千鶴は頬を膨らませた。
「死ぬんじゃないよ。ここで死んだら目覚め悪いし。」
「お前もな千鶴。」
「ばーか。日本に帰るまで死なないよ。」
「言っておくが千鶴。簡単に帰れると思うなよ。これからお前のその体で働いてもらわねぇとな。」
坂口のその言葉に千鶴は顔色を真っ青にし、おもわず後ずさりした。
「あっあんた!まさかあたしを………。」
「へっへへへ、冗談だよ。日本の仕事はまだゼロだ。少しでも仕事がくるように俺の秘書として頑張れよ。」
「おっさんの秘書かぁ~。こういうのはイケメンの若社長と美人の秘書ってのが絵になるもんでしょ。」
千鶴は腰に手をあてるポージングの姿勢をした。
「美人の秘書がどこにいるんだ~?」
2人のやりとりを見てアキラはふっと微笑んだ。これから戦いに行くがこの雰囲気に笑えるようになったのも自分が変わった表れなのか。ただ目の前の敵を倒すだけであった自分にも戦わなければいけない理由が今はある。 アキラは先にエリア11へ向かったカレンのためこの戦いは生き延びてみせる。そう心に誓うのであった。
準備を終えたアキラ達はトレーラーに乗りこんだ。
「ワシリー、ありがとう。」
アレクセイとワシリーは握手をした。
「作戦の成功を祈る、アレク。」
「アキラ、日本でまた会おうな!」
坂口達と別れを告げアキラ達はまた雪原の真ん中を走った。
「ブリタニアがヤールンを掌握している今正面から行くのは無謀だ。だが俺達にはサザーランドがある。このトレーラーも軍で使われているものだ。軍に紛れて潜入しアキラ達がKMFで暴れている隙に俺がマクシムを見つけて討つ。みんな異論はないな?」
アレクセイの言葉に皆が頷き運転をしながらもジェノムはしっかりと聞いていた。
ワシリー達の基地を出てから30分後幹線道路を通る3台のトレーラーを発見した。
「アレク、あれは軍のトレーラーだ。」
アキラは双眼鏡でトレーラーを確認するとブリタニアの軍の紋章が確認された。
「見つかる前にやっちまうか!!」
「待てイゴール、」
『こちら、第23偵察部隊。お前達ここで何をしている?』
敵もこちらに気づき通信で連絡をしてきた。
「………」
『応答しろ、貴様らどこの所属の部隊だ?』
黙ったままのアレクセイに敵も疑いだした。
「ジェノム。」
ジェノムは黙って頷きアクセルを踏み別方向へと進めた。
「イゴール、アキラ!!」
「おう、まかせとけ!!」
アキラとイゴールはコンテナに入りKMFに乗り込んだ。
敵もKMFを出し追跡を開始した。
『2人とも長引かせたらこちらが不利になる。』
「言われなくてもちゃっちゃっと済ませるぜ。先に行くぜアキラ!!」
2機のサザーランドは白の迷彩に脚部には雪上での移動に利用できるアイスブロウワーを装備している。
そのため両機とも雪上を軽快な動きで移動している。
「敵の数は5機。一気に終わらせるぜ!!」
素早い動きでイゴールは大型キャノンで敵KMFを次々に撃破しアキラもアイスブロウワーで発生した雪煙で敵の視界を奪い背後に回りコックピットに向けライフルをはなった。
イゴールは敵車両3台ともキャノンで撃破させた。
「連絡されたら困るんでな。」
『2人とも、すぐにここの区域から脱出するぞ。また敵が……』
アレクがアキラ達に撤収を伝えようとした時敵の機体の無線が入っているのに気づいた。
『くそっ動けよ!』
「……この声は!」
アキラもこの声を頼りに機体を探し機体から分離した1つのコックピットの近くに機体を停めホルスターからショットガンを取り出し構えながら外部からハッチを開けるボタンを押した。
「ひっ、流崎………アキラ。」
そこにいたのは今まで共に戦ってきた岸谷晋二であった。
第1部は今年中に終わらせようと思ったのですが思ったよりも時間がかかってしまい来年以降になってしまうかもしれません。
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10話
今年もよろしくお願いします
-???-
サドナ王国の北部にあたり北極に近い地点にあり現在吹雪により視界がかなり悪い状態である。
その中1台の車両がある場所の前へと停まっていた。
巨大な深い割れ目をしたクレバスがその広い口を広げていた。
数名の隊員達がロープをつたってクレバスのしたへと降りていった。
一番下まで降りたところには更に横穴が存在しまわりの白銀の氷が不気味に穴を映し出していた。
「ブリタニア本国、中華連邦、そしてここ。これで三ヶ所目の遺跡です閣下。」
ゴーグルを外し井ノ本寛司は時計を確認した。
「お前達はここで待て。」
「閣下1人で!?危険です!ここはまだ調査を終えておりません。」
「命令だ。」
部下の心配を他所に井ノ本は1人穴の奥へと進んで行った。
氷のトンネルを進んでいくと氷河が無くなり、かわりに巨大な遺跡が姿を現した。
そこの広い空間だけは氷河の下とは思えぬほどの暖かさであった。
だがビルにも似た建造物、アスファルトで舗装された道、遺跡とは言えるものではなかった。ついこの間まで人が住んでいたのではないかと思えるものであるがここには人1人いない。今はここには井ノ本だけがいる。
「流崎アキラ、そしてギアス。この2つが世界に存在する意味。世界の裏の末端を今………。」
井ノ本はゆっくりとその遺跡の中へと入っていった。
アキラ達は先程の戦闘から移動ルートを変え現在迂回する形で首都ヤールンを目指していた。
「俺達の動きが敵にばれた今まっすぐヤールンに向かうのは難しい。この東シベリア山脈を越えてヤールンに潜入しようと思う。」
「だがこんなトレーラーで山を超えられるのか?」
これだけの重装備をしたKMFを4機載せたトレーラーで山脈を超えるのは難しいのではないかとアキラは思った。
「心配ない。俺達が行く場所は山の中でも低い土地だ。道の整備もされていてトレーラーが進むことはできる。だがもうすぐ陽が落ちる。夜、登るのは危険だ。どこか隠れる場所で一晩過ごそう。」
「ふん、バカな連中だ。死にいくようなもんじゃないか。」
手錠をかけられた岸谷が鼻で笑った。 その態度にイゴールは胸倉を掴んだ。
「一緒に戦ったよしみで助けてやったんだぞ。別の言い方があるんじゃねぇのか!」
「事実を言っただけだ。敵のど真ん中に突っ込むようなバカな事をしてどう考えても死ぬさ。そんな事よりさっさと逃げよう。今なら中華連邦に行けばなんとか……。」
「今、逃げたところで俺達に戻る居場所はない。だったら居場所を奪い返すまでだ。」
「アレク、こいつはどうする?」
ジェノムは岸谷の処遇について問う。
「ひぃ、まさか殺すんじゃないだろ………?」
アレクセイは黙って岸谷を睨んだ。
「おい、アレクまさか逃がすとか言わねぇよな。こいつを逃がすと俺達の居所ばらす気だぞ!」
イゴールは声を荒げて異議を唱えた。
「ここの土地に疎い岸谷が無事に戻れると思うか?それにイレブンの彼を保護してくれるとは思えない。」
アレクの言葉にイゴールはある疑問が出てきた。
「おい、イレブンのお前がなんでまだ義兵団にいるんだ?義兵団は軍に取り込まれたんじゃないのか? それとも鉄砲玉にでもされたのか?」
「ち、ちがう! 俺は将軍と話しを………っつ!?」
おもわず口が滑ってしまい岸谷は口を抑えた。
「将軍と?てめぇ将軍と何か取り引きしたのか!?」
「違うんだ!!俺はただ………。」
「やっぱりこいつは今ここで!」
イゴールが拳銃を岸谷に向けた。
「や、やめてくれ!俺はただ流崎を……。」
「アキラ………?」
岸谷が自分の名前を口にし先程まで黙って様子を見ていたアキラが岸谷を睨んだ。
「………俺のことを探っていたのか?」
「ひぃっ。」
静かな口調であったがどこか怒りも篭った様子でアキラは聞いた。
「た、ただ……俺はお前が作戦でどう戦って生き残ったか報告しただけでそれ以上の事は何も……。」
アキラは黙って睨みつけた。
「ほ、本当だ!それだけだ!」
-自分の戦いを報告。トラウトマンの背後にはブリタニアがいる。今俺に関係があるとすると井ノ本しかいないがトラウトマンとは関連がないように思える。だとすると誰が?-
「た、頼む。もういいだろ。は、はやく。」
岸谷の体から汗が流れ手も震えはじめた。
「あ、あれを………ほ、欲しい!! だ、誰かぁ。」
「お、おいどうしたんだこいつ?」
岸谷の奇妙な動きにイゴールは戸惑った。
「おそらくこいつだろ。」
ジェノムは袋に詰められたあるもの白い粉をテーブルに置いた。
「な、なんだこりゃ?」
「こいつが乗っていたコックピットを探ったら出てきた。昔流行っていた薬物だ。」
「なっ!?とうの昔に廃絶されたと聞いたが。」
アレクセイは驚きの顔を浮かべた。
「か、返してくれ!」
岸谷は奪おうとしたがジェノムが取り上げその拍子に転げ落ちてしまった。
「相当侵されているな。こいつはもうだめだ。こうなったらリフレインより始末が悪い。」
「なんだよぉ………。お前らよって多寡って俺が何したっていうんだ………。」
地面に這い蹲り岸谷は嗚咽を吐きながら涙を流していた。
「俺はただ日本に帰りたいだけなんだぁ。こんなところで死にたくねぇよ………ここは地獄だ………。」
涙、鼻水を流しながらも岸谷はつぶやいていた。
「俺は日本を守るために命懸けで戦った。だが戦いに負けてここへ逃げたらここの連中が俺達を見て負け犬だと笑うんだ。ここの暮らしを守るために義兵団にも入った。だがあいつらは俺達日本人を捨て駒のように扱うんだ!!
スクラップ同然のKMFで無謀な作戦に参加させられて日本から一緒に逃げてきた仲間達が1人1人日増しに減っていくんだ。」
だいぶ落ち着いたのか岸谷は過去を振りかえながら話を続けた。
「最後まで生き残った奴がいた。そいつは俺と歳も近かった。あいつと参加した作戦で被弾したあいつのKMFの脱出装置が作動しなくなったんだ。KMFが爆発しそうだったから脱出しろと促したがハッチも開かないから閉じ込められたんだ。俺は外から開けようとしたけどダメだった。KMFに火の手がまわってもうどうすることもできなかった。あいつは無線越しで言うんだ。見捨てないでくれ!こんなところで死にたくない。日本に帰りたいって!」
項垂れるように岸谷は座り込んだ。
「無線から聞こえるあいつの声が頭から離れられないんだ。もう全てのことを忘れたいと思って俺は………。」
身を縮めるを岸谷の姿にアレクセイ達は何も言うことができなかった。
だがアキラは岸谷を無理矢理引っ張った。
「なっ何を!?」
「死にたくないならまず頭を冷やせ。」
そう言うとアキラは仮眠できるスペースがある個室へと入れしばらくすると岸谷が奇声をあげる声する中アキラが部屋から出てきた。
中の様子が気になりイゴールが中を覗くとベッドに縛り付けられて暴れている岸谷がいた。
「気休めだがあれで少しはマシになる。」
「だがこの程度で禁断症状は………。」
「アレク、あいつを病院に連れて行くしかない。」
現実に目を背け快楽を求める者、アキラにはリフレインで中毒者になったカレンの母親と岸谷が重なって見えた。
-首都ヤールン-
総督府の近くのビルの一角の部屋にカノン達がサドナ王国の近況を確認していた。
「カノン様、小規模でありますがテロリスト達の反乱が続いておりデニス総督が手を焼いてるようです。」
「でもエリア11に比べれば小粒なものよ。制圧に時間がかかるようじゃあデニスやトラウトマンもその程度の男ってことね。」
「それと潜らせた者からの報告でこれを…。」
部下が操作しディスプレイからある文章が映し出された。
「流崎アキラの! ………これで裏は取れたということか。 デニスとトラウトマンはやりすぎたようね。」
「では……。」
「いえ、まだ早いわ。私達はここには非公式で入国している。無駄に動いては殿下に泥を塗らせることになるわ。」
-流崎アキラの動きが確認できたら僕に報告してくれ。追って指示はするよ。-
シュナイゼル殿下は流崎アキラが行動を開始したら指示をだす。今からはあの男の動き次第で自分達がどう動くべきなのか決まる。
(流崎アキラ、どう動く。信管が壊れた不発弾のままかそれとも全てを飲み込む………。)
岸谷を閉じ込めてある部屋から彼の叫び声がなくなり静かになったところでアレクセイはアキラにあることを聞いた。
「アキラ、さっきの岸谷がお前を監視していたと聞いたがアキラ、何か奴らから何か目をつけられるようなことをしたのか?」
「…………。」
その問いに暫く黙っていたがアキラは重い口を開いた。
「おそらく………。」
アキラは自分の身に起こったことをアレクセイ達に話した。
「なるほど、殺したと思ったお前が生きていてそれで今まで狙っていたということか。」
「だがよ、どうしてお前なんだ?井ノ本から何か恨まれるようなことでもしたのか?」
「さぁな、あの男から勝手に因縁をつけられただけだ。」
もっともそれだけじゃない、ギアスも関係があるはずだとアキラは推測した。
翌日
雲で太陽の陽を見ることはできないが僅かに青空を見ることができ行軍に支障は見られなかった。
「よし、すぐに出発しよう。」
そこには少し顔色の良くなった岸谷の姿がいた。
アレクセイの案内で東シベリア山脈を登ることとなりはじめは広い道であったが登るほど道が細くなりトレーラー1台がギリギリ通れる幅しかなかった。
「こ、こいつは……おい、アレクここは山頂から低い場所なんだよな?」
「あぁそうだ。」
イゴールが窓から覗くと左側は崖となっておりその景色にイゴールの顔は真っ青となった。
「ジェノム、頼むぜ。」
「わかってる。」
運転を任せられているジェノムは緩いスピードでトレーラーを運転している。
「なぁ、流崎。」
隣にいた岸谷がアキラに声をかけてきた。
「お前、日本に帰るつもりなのか?」
「………あぁ。」
「なら、俺も一緒に行く! こんなところで一生終えたくない。ゲットーでもいいから日本に帰りたい。」
「………好きにしろ。」
「お前、戻ってどうするつもりだ?」
「会いたい人がいる。そいつとまたブリタニアと戦う。」
「やっぱりお前はレッド・ショルダーだな。」
そう言われアキラは岸谷を睨んだ。
「知らないと思ったか、ほとんどの連中は日本の切り札とか言ってたが陽炎の噂は俺がいたの組織でも有名だったんだ。日本開放戦線の陽炎は日本を開放するための聖戦と称して人殺しを楽しむ異常者の集まりだってな。」
「………………。」
「俺はいやだ。戦争だからっといってお前達みたいな殺人鬼にはならないってな。俺は人らしい暮らしをただ……」
その時、進んでいたトレーラーが上下に揺れ崖のほうへと車体が傾いてしまった。
「なっなんだ!?」
「見てくる。」
ジェノムが外へ出て様子を見た。
「降り積もった雪が道になっていたんだ。」
「あ、あぶなかったなぁ。」
僅かに道を外れたらと思うとイゴールは冷汗をかいた。
「ウインチでどこかに固定して押すしかないな。」
「俺が行こう。」
アキラはウインチのロープを引っ掛ける場所を探しにサザーランドに乗り込み発進させた。
しばらくしてアキラは先程より広い道へと入りその先にあった巨大な樹木を発見しロープを巻きつけアレクセイ達に合図を送りトレーラーはアクセルを踏み前進を開始した。
アキラは周りを注意している中展開していたファクトスフィアが反応した。
「敵の反応!?」
『こんな時に!』
「いや待て………反応が消えた?」
アキラは反応があった方角を見たが敵らしき姿が見えなかった。
『誤作動でもあったんじゃねぇのか?』
変わった動きもなくイゴールの言うとおりなのかとアキラは不審に思ったが
「なっ!?」
その直後アキラのサザーランドとトレーラーの間に突如KMF1機が現れロープを切断しようとした。
アキラはライフルで応戦し謎のKMFは回避し後退した。
「敵だ!!早く上げろ!」
トレーラーは急発進で乗り上げた場所から脱出しアレク達3人もKMFで出撃した。
『なんだ、いきなり?』
『アキラ、お前どこ見てたんだ!!』
イゴールは怒声をはなったが、当のアキラも突然現れたKMFに困惑していた。
『俺も見たが突然現れた。』
運転していたジェノムも突然目の前に現れたKMFに驚いていた。
『気をつけるんだ。まだいるはずだ。』
4人共背中を合わせ周囲を警戒した。
『いた!!』
ジェノムの声で3人は敵がいる場所を見た。
敵KMFの形状は金色のカラーでサザーランドやグロースターとも違う見たことのない機体であった。
「ランスロット?いや………。」
アキラはランスロットと思ったが細部が違っていた。
『なんだぁあのカラーは?目立って逆に外すのが難しいぜ。』
イゴールはライフルを向けたがその直後敵KMFが姿を消した。
『き、消えたぁ!?』
アキラ達が消えたKMFを探していると突如イゴールの目の前に敵KMFが現れた。
すぐさまイゴールはライフルを撃とうとしたが槍状の剣でイゴールのライフルを切断した。
アキラ達3人はライフルで応戦したが距離をとり素早い動きで回避した。
『まさか、ブリタニアの白き死神!?』
アレクセイは各地の紛争で現れ恐れられているスザクの呼称を口にした。
(確かに動きは素早いが………。)
アキラは落ち着いて敵の足下を狙い撃ち動きを止めた。
「あいつと比べれば遅い。」
追い討ちをかけようとしたアレクセイ達から離れた時敵はまた姿を消しその直後サザーランドの左肩が損傷した。敵はアキラのすぐ左にいた。
『アキラ!!』
アキラの援護へ向かおうとしたアレクセイ達であったが4機のサザーランドが現れ応戦せざるをえなかった。
敵KMFは肘打ちの構えでアキラに近づいたが瞬時に回避し肘からはランスロットのブレイズルミナスを思わせる光を発光させていた。
アキラはすぐさまライフルを撃ち敵は腕を十字に構えライフルの弾を防ぐとまた姿を消した。
「くっ、また。」
前、左右を見ても敵の姿は見えずアキラは後ろを振り返った。背後には槍状の武器を構えた敵KMFがいた。
すぐにライフルを向けようとしたがライフルは槍で弾かれ脚で蹴られ倒れこんでしまった。
敵はもう一つの槍状の武器を取り出し2つを組み合わせそれをアキラのサザーランドの胸部に向けた。
『アキラ!!』
その姿にアレクセイは大声で叫んだ。
止めを刺すのかと思ったのだが敵KMFは急に動きが止まりそのままアキラに刺す様子もなかった。
「っ!?」
アキラは敵の動きに怪訝に思ったがこの隙を逃さずスラッシュハーケンを打ち込んだ。
敵KMFは突如動きが俊敏になり回避したことで致命傷は負わなかったが左腕が損傷してしまった。
「ひっひぃ。」
トレーラーの中で岸谷を身を縮らせて震えていた。
「い、いやだ。死にたくない!」
岸谷はハンドルを震えながらも強く握った。
左腕を失ってから動揺したのか敵KMFは槍状の武器を振り回すように攻撃をしアキラは回避しながら距離をとった。
敵が飛び込もうとした時突如トレーラーが間を挟む形で走ってきた。
「岸谷!?」
突然現れたトレーラーに驚きながらもアキラはトレーラーが通りすぎた直後敵KMFに向かって体当たりを仕掛けた。
敵KMFもトレーラーの介入に隙がでてアキラの行動に対処できず激突し倒れてしまった。
倒れたKMFにライフルを向け撃とうとしたが敵はまた姿を消しアキラと距離をとった。
また攻撃があるのかとアキラは構えたが敵KMFは背をむけ後退をした。
アキラは一息つきながらも
「岸谷っ………。」
岸谷の行方を追った。
「岸谷、どこ行く!? 戻れ!!」
アレクセイは勝手に動いた岸谷に連絡をとった。
『帰る、帰るんだ!!』
「岸谷?」
逃げる岸谷が乗るトレーラーを見て敵のサザーランドはライフルを撃ちコンテナ部分に命中しトレーラーはバランスを崩し崖下へと落下していった。
「やりやがったな!!」
イゴールは押し出すような形で敵サザーランドを大型キャノンで撃破した。
「あいつは?」
崖下の辺りを見るとトレーラーが横転している姿を発見した。どうやら途中で止まったようだ。
「はぁはぁはぁ………。」
あの金色の敵KMFは戦場から離れ身を隠していた。
「はぁはぁ……早過ぎる。なんで……?こんな事は今まで。」
パイロットの呼吸は乱れ胸の辺りを押さえていた。そんな時通信が入ってきた。
『どうだった彼は?』
「はぁ……申し訳……ありません。」
『なるほど、君のその声を聞いただけで結果はわかったよ。それで他の連中は?』
「……おそらく、全滅かと。」
『…………仕方ない。次の機会だね。』
「…………。」
『君はエリア11に戻って彼の監視に戻ってくれ。』
「聞きたいことが、あの男流崎アキラは一体…。」
「余計なことは聞かなくていい。君は言われたことをやっていればいい。」
「っつ………!わかりました。」
通信を切った直後次は懐にしまってあった携帯が鳴った。
「…………もしもし。」
悟られないよう息を整えて話をはじめた。
『あぁ、俺だ。………どうした、どこか体の具合でも悪いのか?なんか息が荒れているようだが?』
「ううん、なんでもないよ。少し疲れただけだよ。」
『そうか、突然お前がホームステイに行きたいからって………それでどうだ向うの家族に迷惑かけてないか?』
「うん……大丈夫だよ。」
『そうか、そっちでゆっくり楽しめばいいさ。』
「うん、ありがとう兄さん。」
『あぁ、ゆっくり休めよ、ロロ。』
ロロと通信を終えたV.V.は険しい表情をした。
「彼のギアスも通じないかぁ………。だめだ、これままだと僕達の計画どころかこの世界も…………。」
V.V.は大きな長方形の浴槽のようなものでその中には1人の人間が入っていた。その機械には、大小様々な大きさの管が接続されており、独特の機械音を発している。
「だがまだだ。この人間はまだ完全じゃない。流崎アキラ……彼を殺すにはまだ足りない。」
V.V.は中に入っている人間をじっと見てつぶやいた。
反転したトレーラーの中で岸谷は意識を取り戻し何が起こったのか慌てているとあるものを見つけた。
「よし、アレクいいぞ。」
アレクセイは崖の窪みに引っ掛かったトレーラーから岸谷を救出しようとイゴールがアレクセイのKMFのスラッシュハーケンを木に巻きつけアレクセイは崖へと降りていった。
「………岸谷。」
トレーラーはいつまた落ちるかわからない。すぐに救出しなければと思い無線で岸谷に声をかけた。
「岸谷、無事か?無事なら応答しろ!!」
いつまでも応答のない岸谷にアレクセイはKMFから降りトレーラーに飛び移ろうとした時トレーラーが下へと動きだした。
「っく、時間がない。岸谷!!」
無線越しから笑い声が聞こえた。
『ふっふふふ………はっははは!!』
「岸谷………!?」
こんな時にどうしたのかとアレクセイは不気味に思ったが無事を確認し岸谷に脱出を促した。
「そのトレーラーはもうもたない。俺のKMFに飛び移れ!」
『ふっふふふ、帰ったんだ。俺は帰ったんだ!!』
「岸谷?」
『日本に、日本に帰ったんだ。はっははは!』
「………あいつ、まさかクスリを。」
ジェノムの言うとおり岸谷の手には白い粉を握って恍惚な表情を浮かべていた。
「もう、もう戦争しなくてもいいんだな。」
『岸谷、はやくそこから出るんだ!!』
アレクセイの呼びかけにも岸谷は耳を貸さず今ある快楽を楽しんでいた。
トレーラーがまた動き今にも落下する恐れがある。アレクセイは危険を承知でトレーラーに乗り移ろうとした。
「アレクもうあきらめろ!!お前まで巻き込まれてしまうぞ。」
『あぁ親父、おふくろ、俺を待っていてくれたんだ。また会えるなんて………。』
イゴールやアキラ達の無線から岸谷の薬物の影響かうわ言ような言葉が聞こえている。
「いや、まだ岸谷!!」
アレクセイはコックピットのハッチを開き外へ出ようとした時トレーラーが窪みから落下した。
「っ!?」
トレーラーは崖の下へと消えるように落ちていった。
『あぁ、もう苦しいことはないんだ。寒いところにいることも人にこき使われることももうない。はっはははは…………。』
4人の無線から岸谷の声がまだ聞こえている。
「……………バカ野郎。」
イゴールはただ一言つぶやいた。
そしてその無線を最後に岸谷の声は聞こえなくなった。
「岸谷………。」
アレクセイは唇を噛み崖下を見つめた。
『………いい夢を見て死んだか。』
ジェノムは呟いた。
-岸谷は最後笑っていた。この結末にあいつは満足なのだろうか、だがわかっているのは俺達はまだ生きていてこの極寒地獄の中にいることだけだ。-
岸谷はある洋画の主人公をモデルにしました。
ホントはもっと掘り下げてみたかったキャラにしたかったのですが思うように描けず描写不足を否めないが自分の判断です。
それとロロも出しました。戦闘はアキラに軍配が下りましたが自分としては劇中、彼はギアスとヴィンセントの性能で暴れることができたと思ったのでアキラはそんな苦戦はしませんでした。
第1部もあと1,2話までのところです。では
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第11話
先の戦闘が終わりアキラ達はすぐに出発の準備を進めている中アキラは撃墜したサザーランドであるものを見つけ機体から降りそのサザーランドを調べた。
アレクセイがどうしたのかと見るとアキラはパイロットの遺体を探っていた。
「どうしたんだアキラ?」
「アレク、こいつらを見ろ。」
アキラが回収したと遺体を見たアレクはあることに気づいた。
「この格好、軍のものじゃない。」
着ていた衣服も軍のものではなく全身を黒装束を纏っていた。
「どこかの特殊部隊?」
「いや、だとすればこれで終わるはずがない。軍ならこいつらから連絡受けたどこかの別働隊がここに来ているはずだ。」
「だが、そうだとしても何故俺達を……。」
アレクセイが思案する傍でアキラは心当たりがあった。
-あの金色のKMF、あの動きは常人じゃありえない。エリス……いや奴はあんな動きはしない。だとすれば………。-
ギアス
この言葉が頭をよぎった。
突然消えたり現れたりする現象がギアスなら納得できる。そうなると奴らの狙いは自分ではないかアキラは思った。
ギアスと関係があるのか定かではないがブラックリベリオンでナナリーを攫った謎の少年、ギアスに関しては未だわからない部分が多く井ノ本との関係、そして自分とどう関わっているのかこれも奴らからの刺客なのか。
「とにかくここには長居は無用だ。すぐに出立しよう。」
アキラはKMFに乗り込み皆と出立した。
「みんな、エナジーフィラーはあとどれくらいだ?」
アレクセイは皆にエナジーフィラーの残量を聞いた。
『また、ドンパチ始めちまったらすっからかんだ。』
『………こっちもだ。』
『アレク、山を降りるまでどれくらいかかる。』
「アキラ、あと1時間ってところだな。みんな残量には気を配れ、ここで止まったら命取りになるからな。」
予備のエナジーフィラーは岸谷が乗ったトレーラーと供に崖の下へと落ちたのだ。
『岸谷の奴も余計なことしてくれたぜ。』
「イゴール、死んだ人間を悪く言うな!」
『俺達が今から向かう場所は……。』
ジェノムは地図である地点を確認した。
『E-7中継基地、この山を降りてすぐにある基地にはいても十数人の小さな基地だ。』
「時間がない、ワシリー達は既にヤールンに到着しているかも知れない早く行きたいが……。」
次に行う作戦に使う爆薬をトレーラーと共に失っているのだ。
『アレク、俺に考えがある。』
アキラはアレクにあることを提案した。
首都ヤールンから数十キロ離れた市境で雪でカモフラージュをして隠れているワシリー達の部隊がいた。
「ワシリー、アレク達との連絡が途絶えてからもう随分と経つ。」
ワシリーはアレクセイから山脈を越える迂回ルートからヤールンに潜入するとの連絡をもらってからアレクセイ達に合わせて行軍を進めていたが彼らからの連絡はここ数時間ないのだ。
「まさか敵に見つかって………。」
「まさか!?アレクに限って!」
「だが、いつまでもここに隠れているわけにはいかないだろ。」
仲間の言うとおりこちらのKMFは10機、数では敵のほうが圧倒的に有利、見つかれば一溜りもない。
「……もう少し待とう。あいつらが動いたとすればヤールンのほうも何か変化があるはずだ。」
アレクセイ達の無事を祈りながらワシリーはヤールンのほうに目を向けていた。
-1時間後-
山頂を降りアキラ達は目的地である中継ポイントを見下ろせる麓まで着いた。
『アレク、あれだな?』
アキラは基地の様子をモニターで確認する。
『………大きな動きは見えないようだ。』
「時間がない、急ごう。アキラ。」
アキラはKMFを降りエネルギーパックをダブルバレルのショートショットガンで撃ち流体サクラダイトが滴り落ちてきた。
ジェノムは準備していた、たいまつを流体サクラダイトに向けて放り投げた。
-E-7中継基地-
「しかし、寒いなぁ。」
「こういう時はこれだろ。」
1人の兵士がウイスキーのボトルを出した。
「おい、まだ…………。」
「構わないさ。こんなところに敵がでてくるはずが………。」
その時、地響きの様な不気味な音が聞こえた。
「ん、何だ?」
外の様子を見ようと兵士は山のほうを見た。
「あっ!?」
「なっ雪崩!?」
雪崩れ込む雪に兵士は真っ青な顔をした。
「に、逃げろ!!」
大量の雪が基地を襲った。
「成功だ。よしみんな行くぞ!!」
アレクセイ達は雪崩でできた基地までの道筋を頼りにKMFを走らせた。
「俺とイゴールは司令塔を叩く、アキラとジェノムは格納庫の制圧を頼む。」
アキラを自分が操縦するサザーランドの腕の上に乗せジェノムは基地にある格納庫へ向かった。
雪崩によって格納庫の入り口が埋まっていた。
「アキラ!!」
ジェノムの声でアキラはサザーランドの腕から身を投げ転がりながら着地した。
ジェノムはケイオス爆雷を投げ格納庫の一部分を破壊しそこへ向かって体当たりし格納庫に穴を開けた。
格納庫の中は雪崩によって倒れたKMF3機置いてあり兵士達が巻き込まれた仲間を助けようとしていたところへジェノムとアキラの襲撃を受けたのだ。
「大人しくしろ。抵抗するなら容赦はしない。」
アキラはショットガンを構えた。
「よぉし、てめぇら動くなよ。」
アレクセイとイゴールも司令塔の制圧に成功した。雪崩の混乱により制圧には時間はかからなかった。
「こちらアレクセイ、司令塔を制圧。アキラ、ジェノム格納庫のほうは?」
『こちらジェノム、格納庫は制圧に成功。』
「了解、エナジーフィラー以外にも武器、弾薬の補給もすぐにはじめてくれ。」
「アキラ。」
「あぁ、聞こえた。。俺は今のうちにこいつを整備する。」
アキラは基地にあるサザーランドに武装の強化をはじめた。
それを見てジェノムは拘束した捕虜数名を近くにある個室へと連れて行きそこへ閉じ込めた。
「お前はそれを仕上げろ。俺はエナジーフィラーの補充をする。」
「頼む。」
アレクセイは地図を広げこれからの行き先を告げた。
「今は俺達がいるのはここだ。ここにある軍のトレーラーを使えばヤールンまでまっすぐに行ける。」
「だったらさっさと行こうぜ。」
アレクセイとイゴールは急ぎ格納庫へと向かった。
「アキラ、イゴール準備はできてるか?」
「エナジーフィラー、武器、弾薬は用意した。あとは……。」
「俺のほうも終わった。」
アキラが整備したサザーランドは右腕には銃身の長い大型ライフルが装着させた。
「のんびりはできない。KMFをあのトレーラーに入れる。」
KMFのエナジーフィラーを交換しトレーラーの中へと搭載させすぐに出発した。
「最後に確認する。街に入った後総督府を襲撃してマクシムを討つ。30分、長くても1時間だ。長引いて軍や義兵団が来たらこちらが不利になる。」
アレクセイの言葉に3人は深く頷いた。
「よしっ!ジェノムは運転任せたぞ。俺達はKMFの整備だ。さっさと仕上げちまおうぜ!!」
-首都ヤールン 総督府-
一方その頃各地で発生しているテロにデニスは手を焼いていた。
「ナホトカで200、ウラリースクにておよそ120の武装テロ集団が我が軍と衝突しております。」
「くぅ、これで何度目だ。援軍を出せ、足りないなら陽炎にも要請をだせ。」
(流崎アキラもまだ行方知らず、シュナイゼル殿下よりも早く捕らえたいところを……。)
デニスは歯軋りをイライラを隠せなかった。
「政府からの要請で援軍でナホトカまで行ってくれってさ。いいのかねぇ首都の防衛を手薄にしちゃって。」
ドリーとジョディは政府からの要請があったと聞いたがまるで他人事のような素振りでいた。
「ここに来てから周りがうるさくて、そろそろ潮時かな?」
検査を終えたばかりのエリスは徐に立ち上がった。そんな彼女をジョディは制した。
「待ちなさいエリス、あなたの専用機がもうすぐ来るのよ。テロリストじゃあ物足りないけどいい実戦テストが行うことができる、楽しみにしてなさい。」
そう言われエリスは椅子に座った。
「ジョディ、お前は彼女に何吹き込んだ?」
ジョディは不敵な笑みを浮かべ眼鏡をかけなおした。
「より女らしくしただけよ。」
アキラ達はもう少しで首都ヤールンに入るところ無線の連絡が入ってきた。
『こちらE-7、敵の襲撃を受けた。敵は現在我が軍の車両を強奪し逃亡中……。』
「アレク、もうすぐヤールンに入る。」
「ワシリー達はやられていなければいいが………。」
前方を見ると検問を敷いてある部隊が待ち構えていた。
ジェノムはそのままアクセルを踏み検問を突破しようとした。
「!? 止まれ!!止まらんと撃つぞ!!」
兵士の呼びかけにも応じずトレーラーは検問を突破した。
「不審やトレーラーを発見!現在ヤールンの市街地に侵入しようとしています!!」
「皆、もうすぐヤールンに入る。準備をしてくれ!!」
アレクセイからの連絡をトレーラーのコンテナの中で聞いたアキラとイゴールは急ぎKMFに乗り込みすぐに動かせるように待機した。
市街地に入り戒厳令を敷かれた街の中は人も少なく燦々とした様子であった。アキラ達は総督府を目指し進んでいった。
「アレク!」
「見えた!ジェノム頼む!!」
アレクセイはコンテナの中へと入りジェノムは広い車道に入った所、武装したジープ数台が機関銃で行く手を阻んだ。運転席の窓が破られジェノムは被弾しなかったがタイヤをやられハンドルをとられ近くのビルに激突し止った。
兵士達がトレーラーに近づこうとした時コンテナの中から4機のサザーランドが現れた。
4機はジープを攻撃するがすぐにサザーランドの部隊がやってきた。
「来たか、みんな応戦するんだ!!」
アキラは右腕に装着させた大型ライフルで応戦した。このライフルは銃身が長くセミオートのため連射ができないが1発で敵を沈黙させるだけの威力がありアキラは狙いを定め1機を確実に仕留めていった。
「ん?あれはグラスゴー!?」
イゴールはグラスゴーの部隊が現れたのを発見した。カラーリングを見ると義兵団のグラスゴーだとわかった。
「援護に来たってことかよ。」
そう言うとイゴールは大型キャノンで応戦した。
「悪りぃが俺達も死にたくないんでな。」
「テロリストが襲撃!?」
アキラ達がここヤールンへ襲撃をデニスは総督府で聞いた。
「敵はKMF4機。おそらく、ここ総督府へ来るおそれが………。」
「たった4機で来たのか。トラウトマンに義兵団を出せと伝えるんだ!あと……。」
「総督、総督府の防衛は私におまかせを。」
「マクシム!?」
「敵は4機だけではない、おそらく味方機がどこかに潜伏しているはず。侵入を許した今、奴らがここへ足を踏み入れることはなってはいけません!」
マクシムの言葉にデニスは頷き部下に命じた。
「ここに防衛ラインを設け奴等を迎え撃つ。どんな犠牲も払ってもかまわん、奴等を討て!!」
その様子を見てマクシムは小さく呟いた。
「これでいい、あとは……。」
マクシムの顔を側近のカティアは不安そうに見つめた。
「カティア心配ない。全てはうまく運んでいる。」
「しかし、まだ……。」
「いいんだ……。」
マクシムは優しく微笑んだ。
『……ク、アレク聞こえるか?』
「その声、ワシリーか!?」
無線からワシリーの声が聞こえアレクセイに安堵の顔を浮かべた。
『無事だったか。』
「遅れてしまってすまなかった。」
『こちらも街へ入った。総督府へはまだか?』
「……まだ着いていない。」
そう言うとアレクセイはKMFから降りた。
『アレク!?』
「アキラ、あとは頼む。俺はここから総督府へ行く!」
『KMFもなしで!?無茶するな!』
「大丈夫だ。ここの街は詳しいんだ。」
笑ってかえしたアレクセイはライフルを持って街の路地裏へと消えていった。
「アレク、待て!」
アレクセイを心配するアキラであったが敵の攻撃が止むことなく応戦するのであった。
「エリス、まだダメだ!!」
総督府ではエリスが出撃しようとしドリーが止めていた。
「流崎アキラだ……彼が来ている。」
「だとしてもまだだ。我慢するんだ。」
「エリス、もう我慢する必要はないわ。」
ジョディの言葉にドリーは振り向いた。
「来たのか?」
「えぇ、すぐにここへ。」
『なんだ!? 援軍か?』
イゴールは空中を2機の輸送機が街へ入るのを目撃した。
『総督府のほうへ向かっているぞ。』
「アレクが心配だ。俺達も行くぞ!」
アキラ達は敵の攻撃を掻い潜り総督府を目指した。
首都ヤールンでのテロ騒動は潜伏していたカノン達にも伝えられシュナイゼルに報告した。
「まだ、流崎アキラなのか確認はできませんが……。」
『うん、今のうちにカノン頼むよ。援軍もハバロフスク基地から派遣されすぐにも来る。テロリストの鎮圧と流崎アキラの拘束も彼らにまかせるといい。』
「イエス・ユア・ハイネス。」
通信を終えたカノンは部下達に命じた。
「これから総督府へ向かう。これは隠密行動、敵だけではなくデニス総督達にも見つからないよう潜入する。」
総督府にあるヘリポートから2機の輸送機が到着し機内から数機のKMFが姿を現した。
全身を黒く染め右肩を赤く染めたKMF5機、その中で1機だけ形状の違うKMFがあった。
「エリス、これがあなたの専用機よ。名前は、ヘルハウンドそしてこの4機はヒート・ヘイズ。この5機全部閣下が調査していた発掘した遺跡から発見したもの、所謂オーパーツを元に作られた特別なKMFよ。」
ヘルハウンドと呼ばれる機体にエリスは近づいて外観を見た。頭部にあたる部分は細長くファクトスフィアらしきものはなく代わりに2つのカメラが装着されてある。コックピットの下、そして脚部の横にはブースターを付けている。
そして右肩には専用のロングライフルを備え付けてあり左の肩には細長い盾のような物をつけその中に剣のような武器を納めている。
左腕の下には鋭利な爪らしきものを納めている。
一方、ヒート・ヘイズはヘルハウンドと比べ全体的にずんぐりとした形となっている。
エリスは黙ったままヘルハウンドのコックピットへと乗り込んだ。
「エリス、初めての実戦なんだ。あまり無理しないでくれよ。」
エリスはヘルハウンドを起動させた。頭部の2つのカメラが上下左右前後へと動く。
脚部に収納されているランドスピナーを降ろしヘルハウンドアキラ達がいる戦場へと駆け抜けて行った。
アキラ達はワシリー達と合流することができた。
『アレクはどうした?』
「1人で総督府へ向かった。」
『あいつ……心配だ。すぐに行こう。』
その時、ジェノムは早い速度でこちらへ向かうKMFをファクトスフィアでキャッチした。
「何かが来る……。」
-首都ヤールンでの戦い、これがサドナ王国で俺の最後の戦いになる。未だに姿を現せないエリスにどこか不気味さを感じていた。-
はい、出ました。エリスの専用機ヘルハウンド、そして陽炎の次世代機ヒート・ヘイズ
ヘルハウンドとはイギリス全土に伝わる黒い犬の姿をした不吉な妖精の名称からとりました。
そしてヒート・ヘイズは陽炎を英訳したものです。
ヘルハウンドはボトムズのベルゼルガ物語に登場するテスタロッサをレッドショルダーカラーにし頭部に少し改良を加えました。
ストライクドックにしようかと迷いましたがここは前者を選びました。
そしてヒート・ヘイズはシャドウフレアをモデルにしました。
両機とも井ノ本達がある遺跡から発掘されたもの、ここではオーパーツと呼びますがそのオーパーツを元に造られたものです。ですので両機はKMFであってKMFではないとの設定をし見た目もテスタロッサ、シャドウフレアだと思ってください。
またヘルハウンドはこれで完成という訳ではありません。話を進めるごとに追加武装等を考えています。
次回さらに詳しく描こうと思います。
次回は第一部の最終話です。お楽しみに
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第12話
第1部 完結編です。
「敵はどれくらいだ?」
「おい、総督府の近くまで来ているぞ!」
「手の空いている奴がいたら出ろ!!」
アレクセイ達の襲撃に総督府も大勢の兵士達が行き来しており混乱しておりそれに乗じてアレクセイは総督府へ侵入した。
周りを警戒しながらアレクセイは1人の兵士を捕まえ建物の物陰まで隠れた。
「お、おい、なんだコイツ?どう見てもKMFのスピードじゃねぇぞ。」
アキラ達はレーダーから1機の謎のKMFがこちらへ近づくのに気づいたがその速さは尋常ではなかった。
姿を現したKMFはサザーランドやグロースターに似ても似つかない形状で今までに見た事のないKMFであった。
ワシリー達の仲間2機が囲もうと左右へ回ったが敵は右に回った相手を右肩に備え付けてあるロングライフルを右手で持ち一発で相手を仕留めて左にいる相手には左腕を突き出し下に装着してある4本の爪、クローが展開され相手のグラスゴーを捕らえ、クローに内臓されてある銃口から弾丸のようなものが発射されグラスゴーの胸部、コックピットを貫通し大きな穴が開き拘束から解かれたグラスゴーは膝から倒れ爆発を起こした。
敵KMFは次にアキラ達を標的に定めた。
「固まってたらやられる。散るんだ!」
アキラは右腕のロングライフルを敵KMFの足下に撃ち雪煙を発生させ敵の視界を奪いその隙に全員ビルの中、遠くへと距離を取るなどして散開した。
「どこだ、流崎アキラ。」
ヘルハウンドを駆るエリスはうなじにあるインプラント機器に端子を差しアキラを探し頭部の2つのカメラを使い居所を探った。
ファクトスフィアの機能を持ち、2つのカメラが上下左右へと展開し、エリスは脳神経と機体のコンピュータを直結させることによって背後の確認もとることが出来る。
1機のグロスゴーを見つけエリスはヘルハウンドは獲物を狩るように迫る。
「はぁはぁ、何だあの動きは?」
アキラはビルの物陰に隠れライフルの弾倉を交換し辺りを警戒した。
あの動きは常人では無理だ。自分が闘った相手の中でいるのは枢木スザクともう1人……。
『うわぁ!!助けてくれ!!』
無線から味方の断末魔の叫びが聞こえた。少人数の兵力で1機でも減らされたら自分達が不利になる。アキラの額から汗がにじみ出た。
その時ランドスピナーの音がビル越しから聞こえアキラはハッとビルから離れた。
エリスのヘルハウンドが現れビルを破壊しアキラを襲った。
別のビルに隠れたアキラをエリスはライフルでビル越しから撃ちライフルの銃弾がアキラを襲った。アキラは身を屈めながらランドスピナーで走りながら回避した。
アキラが出てくるのを伺っているエリスであったがアキラは姿を現さない。
その時アキラのサザーランドがエリスの左側から現れ狙い撃った。
直撃するかと思われたがヘルハウンドの左に装着してある細長い盾の上下左右の端が展開され青いバリアのような盾が現れ銃弾を弾いた。
「何!?」
スザクのランスロットが使うブレイズルミナスに似た盾にアキラは驚愕した。
『……流崎アキラ。』
通信からの声にアキラは聞き覚えがあった。
「………エリスだな。」
『来ると思ってた。』
「新型機か……。」
『お前達に勝機はない。投降して私の元へ来い。』
「………断ったら。」
『このヘルハウンドでお前を力づくでも!!』
ランドスピナーでアキラに接近しアキラはランドスピナーを逆回転させ機体をエリスのほうへ向けたまま後退し、ロングライフルで応戦するがエリスのヘルハウンドは左右へと変則な動きで回避しアキラを翻弄した。
ヘルハウンドの左腕に装着してあるクローがアキラのサザーランドの右腕を狙いロングライフルを捕らえた。
アキラは先程の攻撃を思い出しライフルを機体から離した。
ロングライフルは4本のクローによって握り潰された。
スラッシュハーケン以外の武器を失ったアキラを追い詰めたエリスはライフルの銃口を向けたが何かに気づいたのか背後に旋回し銃口を向けた。
いたのはワシリーの仲間が乗っているグラスゴーであった。気づかれずに背後をとったと思ったがエリスの動きに驚き反応できずにエリスのライフルによって撃破された。
『アキラ、生きてるか?』
次に右側からイゴールとジェノム、ワシリーの仲間の1機が救援にやってきてアキラを援護した。
イゴール達の銃撃にも物ともせずエリスは回避しアキラと距離をとった。
『アキラ、こいつを使いな。』
イゴールはアサルトライフルをアキラに渡した。
『なんだあいつ、目がうしろについてるのかよ!?』
エリスの他ヒートヘイズ4機、グロースター数機がアキラ達を追撃にやってきた。
「他の奴等は?」
『ワシリー達なら無事だ。』
『へっへへ、俺達がおとりだと知らずに追いかけてきたぜ。』
ワシリー達は総督府の警備が手薄になっている箇所を狙い潜入することに成功した。
「よし、第1ゲートを通り抜けることはできた。あとは第2、3を突破し総督府に突入しよう。」
ワシリー達は総督府のゲートの前へと突入した。
『俺達もアレクの援護に行こうぜ。』
『だがその前に後ろの奴等をどうにかしないとな。』
アキラ達はビルに隠れながら対峙しているエリスとヒートヘイズ、ヒートヘイズと銃撃戦を繰り広げていた。
ヒートヘイズはヘルハウンドと比べるとスピードは劣るが通常のKMFを匹敵する性能を持っており大型キャノン、アサルトライフルをそれぞれ所持し左腕には2本のクローをしたスラッシュハーケン、または杭のようなものを装着しており様々な武装をした機体である。
そのうちの2機がアキラ達に襲い掛かった。
左腕を構えアキラに近づき腕に装着してある杭がスライドするように突き出しアキラを襲った。
寸前で回避したアキラはヒートヘイズの左腕を捕らえ脇が空いたところへライフルを撃ち撃破したがもう1機のヒートヘイズがワシリーの仲間の1機を大型キャノンで撃破された。
「野郎!!」
イゴールがライフルで応戦するが回避され次にエリスのヘルハウンドが襲ってきた。イゴールの銃撃をエリスはブースター、ランドスピナーのスピードでイゴールに接近する。
イゴールは応戦しようとするが通常のKMFではないヘルハウンドの動きで対応できず右往左往して気がついたときはエリスは自分の真横にいた。
左腕の盾でタックルしイゴールをビルに激突させた。
左腕のクローをイゴールのサザーランドの胸に狙い腕を振り上げた。
「や、やべぇ!」
イゴールは急ぎ機体を起こしたが右腕が捕らえられそのまま無理矢理右腕が引き剥がされた。
ジェノムがイゴールのサザーランドを支えるように運びアキラは2人を守ろうとエリスに弾幕を張るが決定打にはならなかった。
『アキラ、あのKMF普通じゃない。』
「あぁ……。」
アキラとジェノムは今、あのKMFには勝てないと焦りに色を感じつつあった。
『おい、敵がまた増えたぞ。』
イゴールは敵の軍がこちらへ近づくのが見えた。
それを見てジェノムはスモークのグレネードを放ち敵の視界を奪い3機は敵から姿を消した。
一方、総督府ではテロリストとの交戦での情報が行き来していた。
「テロリスト、第3ゲートにて交戦!押されつつあります。」
「数は?」
「約90。」
「総督、ここは避難されたほうが……。」
「ここを捨てろというのか!?」
デニスは不快な表情をした。
「まもなく、ハバロフスクからの援軍が到着するはずです。その時に……。」
「くっ…トラウトマンに伝えておけ、貴様らの軍でさっさと敵KMF部隊を片付けろと!」
デニスは側近2名を連れ司令室から出て行った。
「将軍も早く……。」
部下に促されマクシムは暫く俯いたが。
「………わかった。カティア、君も。」
マクシムはカティアを連れ部下の案内で出て行った。
アキラ達3人はエリス達から遠くへ離れ隠れていた。3人はコックピットハッチを開けた状態でいた。
アキラはワシリーと連絡をとっていた。
「イゴール、怪我はないか?」
ジェノムはイゴールの様子を聞いた。
「あぁ、大丈夫だ。」
「ワシリーからの連絡で奴らは今、第3ゲートで敵と交戦しているみたいだ。」
「俺達も急ごう。」
「あぁ、だがその前にあのヘンテコなKMFの連中をどうにかしないとな。右肩を赤く染めてる機体、あの連中は陽炎じゃねぇのかアキラ?」
「あぁ、だがあの機体は俺もはじめて見た。」
「仕留める事ができたのは1機。まだ出てくるかも知れない。」
「アレクも心配だがよぉ、これじゃあ総督府にも入れないぜ。」
アキラは腕時計の時刻を確認した。
襲撃からもうすでに30分は経過している。敵の援軍がいつくるのかわからない状況でいつまでもここで釘付けになっていては全滅する。
「………2人は総督府へ行け。俺が奴等を惹きつける。」
「なに1人でかっこつけようとしてんだ。何でそんな事言えるんだ?」
「あの盾付きは俺を狙ってるからだ。」
アキラはコックピットを閉じKMFを起動させた。
「俺もあとで合流する。行け!」
『ったく、勝手言いやがって死ぬんじゃねぇぞ。』
イゴールとジェノムを見送ったあとアキラはエリス達がいるほうへと向かった。
総督府を脱出しようとマクシムは地下へと入ろうとした時、マクシムは急に立ち止まった。
「どうしました?」
前方を警護していた兵士が振り向いた。
「ふむ………君、私に何か言いたい事があるのか?」
「………どういう事ですか?」
「そう、先程から視線を感じるんだ。君から……。」
マクシムの問いに暫く沈黙が流れたが兵士はマクシムにライフルを向けた。
傍にいたカティアが懐から拳銃を出したが兵士がメットを脱ぎその素顔を見て驚いた。
「アレク……!?」
「動くなカティア、例えお前でも容赦はしない。マクシムあなたもだ。」
銃を突きつけられながらもマクシムは慌てる素振りを見せなかった。
「久しぶりだな、アレク。」
「はい、まさかこんな形でお会いするとは思いもしませんでした。カティア、銃を捨てるんだ。」
カティアは懐から銃を取り出し床へと置いた。アレクセイはその銃を足で払い、ライフルの銃口をマクシムの首に突きつけ近くのエレベーターのボタンを押した。
「将軍!!」
「カティア、今はアレクに従うんだ。
マクシムの言葉にカティアは悲痛な表情をしながらも後へとさがっていった。
エレベーターに乗り込んだ2人は地下へと降りようとした。
「どこまで降りればいい?」
「一番下までだ。」
エレベーターの中でアレクセイはある事を聞いた。
「さっきのは何の意味だ?」
「なんの事だ?」
「カティアに言った事、あれはどういう意味なんだ!」
「………ふっふふ。」
エレベーターが止まり2人は進んだ。
「アレク、お前と初めて会ってから何年経った?」
「こんな時に何を!」
「時が経てば何もかも変わる。国も………人も。」
「一番変わったのはあなただ!! あなたは俺や……信じてくれた国民を裏切ったんだ!!」
「……そうかな。」
「どういう……っ!?」
2人はある部屋に入った。
部屋には数台のテレビカメラ、そして天井にも2台設置しており、カメラの先にはサドナ王国の国旗と小さなテーブルが置かれていた。
「会見室…!?どうして?」
気をとられた隙にマクシムはアレクセイの腹部に肘を入れ懐から隠し持っていた拳銃を持ちアレクセイから距離を取った。
「銃を捨てるんだ。」
アレクセイは素直にライフルを床へ放り投げた。
「だましたのか!?」
「お前が辞職したあと政府が地下の避難通路を改築していたんだ。」
マクシムは天井のカメラをチラッと見た。
「確かに私はブリタニアの軍門に降ったがそれは間違いだったと言えるのか?」
「当然だ!その結果国は混乱し人々は困窮している。」
「そうかな?」
マクシムは見下すように口の端をつり上げた。
一方ワシリー達は総督府の入り口前で敵と対峙していた。
「ワシリー、このままじゃあ敵に押し返される。」
「ダメだ!ここまで来て引き下がる訳にはいかない。」
今、一進一退の攻防を繰り広げているが敵の数のほうが多く旗色が悪くなりつつある。
「まずい!敵の援軍が後ろから。」
背後から敵のサザーランド2機がこちらへ近づくのがわかった。
「だめだ、ワシリー逃げよう!」
「くっ……。アレク。」
ここまでかとワシリーは覚悟したがその直後敵KMFが撃たれ倒れていった。
『おう、ワシリー生きてるか!!』
「その声、イゴール!」
『俺達が突破口を開くおめぇら轢かれたくなかったら道を開けろ!』
ワシリー達が盾にしてたジープなどをサザーランドで退かしイゴールとジェノムは総督府の入り口まで突入し待ち構えていた兵士にライフルで攻撃した。
「よし、俺達も続くぞ!!」
ワシリー達も突入していった。
「………イゴール、ここは任せた。」
『ジェノム、どうした?』
「アキラが心配だ。助けに行く。」
『おう、だったら俺も。』
「そのKMFじゃあ足手纏いだ。お前はこのままワシリー達と一緒に行ってアレクと合流しろ。」
そう言うとジェノムはイゴールを残しその場から離れていった。
「言ってくれるぜ。けどその通りだなぁ。」
イゴールはKMFを降りライフルを持ちワシリー達と総督府の中へと入っていった。
-総督府 地下 会見室-
「自分の選択は間違いではなかったと言うのか?」
ライフルを向けながらもアレクセイは強気の姿勢を崩さなかった。
「ブリタニアの傀儡になることがこの国の未来になるとでも……!!」
「この国の未来………元々この国に未来などない。」
マクシムの言葉にアレクセイは目を見開いた。
「この困窮した国にブリタニアと戦えるだけの力は既にない。そんな国に私が命を掛けられると思うか?」
「っ!? それは本音か!?」
「私はこの国と心中したくはない。強きものに従うこれは世の流れというものだ。」
マクシムの言葉一つ一つにアレクセイは打ちのめされるような衝撃を受けた。
「信じていた……俺はあなたを、いや民が! あなた、いやあんたそれを裏切った。ブリタニアがこの国を牛耳ることになれば民は今以上の苦しみを……。それをわかって。」
「民が犠牲になるのは当たり前だ。それはブリタニアであろうがサドナ王国だろうがそれは変わらない。これからはこの国、エリア15で私は将軍としてにいられるのだからな。」
「………黙れ。これ以上あんたの話は聞きたくない。俺があんたを討つ!」
「今のお前に私が殺せるかな?」
その直後、地上から大きな揺れが発生し地下にいた2人にも揺れを感じた。
その隙にアレクセイは床に落ちていたライフルを拾い銃口をマクシムに向け会見室に大きな銃声が鳴り響いた。
「な、なんだ!?」
私室にて避難の準備をしていたデニスは突然の揺れに驚いた。
「テロリスト共が何か?こうしてはいられない早く。
「例の物とはこの事では……。」
自分しかいない筈の部屋に誰かの声がしデニスは部屋のドアに目をやった。
「カ、カノン様……!何故あなたが?」
「大事な物はちゃんと保管しないといけないわねデニス総督。」
カノンはファイルに収められた書類、メモリースティックをデニスに見せた。
「それは……!!」
「流崎アキラの事を監視する命令はしたけど調べろとは言った憶えはないけど。」
カノンの部下数人が部屋に入ってきてデニスにライフルを向けた。
「敵!?」
敵と交戦していたアキラも上空から何か飛来しているのを見た。 軍用輸送機と爆撃機10数機がアキラの下を通った。
爆撃機から無数の爆弾が落とされアキラの周辺が爆発を起こし敵のサザーランド、グロースターが巻き込まれた。
「敵の援軍か……。」
爆発の中数機のKMF部隊が姿を現した。
「陽炎……エリスか。」
両者が対峙しているところへ何者かが陽炎の部隊へ攻撃を仕掛けた。
『アキラこっちだ。』
「その声!?」
ジェノムのサザーランドが姿を見せた。
『早く来い。総督府へはここからが近道だ。』
アキラはジェノムと共に総督府へ向かうことにした。
「イゴールは?」
『ワシリー達と合流している。』
「……何故戻ってきたんだ。」
『仲間を見殺しにできるか?』
「っ!? ………ありがとう。」
アキラの思わぬ言葉にジェノムは意表をつかれた顔をしたがフッと微笑んだ。
「カノン様!?」
「デニス総督はテロリストによって殺された。本国にはそう伝えてく。」
「ま、待って……。」
「あなたは知りすぎたのよ。」
カノンが部屋を出た直後部屋から銃声が鳴り響いた。
「義兵団のような傭兵達も後々面倒だから始末をお願いね。」
「イエス・マイ・ロード。」
「ヤールンにいるテロリストは全て排除しなさい。」
-地下 会見室-
部屋に鳴り響いた銃声が止み静寂な時が流れていた。
マクシムの胸から血が滴り落ち膝から崩れ落ちた。
アレクセイは息を整えながらマクシムに近づき彼の拳銃を取り上げようと銃を持った瞬間アレクセイは違和感を覚え銃の底を見てアレクセイは驚きの表情でマクシムを見た。
「何故マガジンが抜いている!?」
「………必要なかったからだ……。」
「っ!?」
「はぁ……カティア。」
カティアが静かに姿を現した。
「マクシム……。」
カティアは悲しい眼差しでマクシムを見つめた。
「マクシム、あなたはわざと!? どうして?」
「言っただろ。木を刈る時が来たと。新たな種を植えるためには古い樹木は刈らればならない。」
「っあなたは!?」
「アレク……ブリタニアと戦うには今のままでは戦えない。人をまとめることができる新たなリーダーが必要なんだ。」
「それはあなたが!!」
「それは無理だ。古い体制にしがみついている官僚どもが白蟻のように食い散らされた国家ではひとたまりもない。古い体制の象徴である私がいかにしようと腐った木は元には戻らない。新たなサドナ王国のために私が売国奴の悪名を背負って消えなければいけない。アレク……お前がみんなのリーダーとしてブリタニアと戦ってくれ。」
「マクシム!あなたは勝手だ!!」
「ふっ、わかってる。すまない……お前達を残して逝くことを……だが私はうれしい。最後にお前が来てくれた事に。」
マクシムは震える指である扉を指した。
「アレク……ここから先に脱出用のジェット機がある。2人で……脱出するんだ。」
「マクシム!!私もここで!」
カティアは懐から銃を取り出した。
「ダメだ!カティア、君はアレクを支えるんだ。ここで死んではいけない。」
「わ、わたしは……あなたと。」
「わかってる。私に最後まで付き従ってくれてありがとう。」
カティアから一筋の涙がこぼれた。
「アレク、カティア、お前達に会えてよかった……。部下ではなく友として私の傍にいてくれたことに………。」
マクシムは静かに目を閉じ首をガクッと落とし、アレクセイは項垂れるように肩を落とした。
「どうして俺には一言も……。」
「アレク……彼は言ってたわ。自分の後を継ぐ人間はあなただけだと。」
「カティア、君は知ってたのか?知っててここまで……。」
「えぇ、私はこの人に死んで欲しくなかった。でも………。」
カティアはマクシムの両腕を重ね合わせた。
「行きましょうアレク。彼の死を無駄にはできない!」
アレクセイはマクシムの亡骸を見つめた。
「俺はあなたの事は許せない……けど。」
アレクセイはゆっくりと立ち上がり銃を取った。
「カティア、案内してくれ!」
カティアは深く頷いた。
義兵団の部隊もブリタニアの援軍によって混乱していた。
「各部隊壊滅状態!」
「どうなっている?何故我々が攻撃されるんだ?総督はデニス総督とはまだ連絡できんのか!?」
G1ベースにて指揮をとっていたトラウトマンは焦りの色を滲ませていた。
「未だに応答ありません。」
「くぅ、トニー、戦況の報告を!」
『今現在ブリタニアと交戦!我が軍不利…援軍をお願い…う、うわぁぁぁ!!』
トニーとの連絡が途切れトラウトマンは拳を振り下ろし苛立ちを隠せなかった。
「全軍に撤退の命令を……。」
「ブリタニアの爆撃機、我々の上空に!!」
トラウトマンが気がついた時には辺り周辺が爆弾による爆発で味方機がやられG1ベースも巻き込まれ爆発を起こした。
『アキラ、もうすぐ総督府だ。』
第1ゲートを通り過ぎ第2ゲートに差し掛かった時、背後から銃弾が飛び2人は振り返るとエリスのヘルハウンドがこちらへ近づいてきているがヘルハウンド1機だけで他の敵は見当たらなかった。
『エリス、軍の動きがおかしいわ。一度部隊と合流しなさい。』
エリスはジョディの命令に無視し通信を切った。
『……敵は俺達を見逃してくれないみたいだな。』
「……あぁ。」
2人はすぐに臨戦態勢をとった。
「……イゴール、俺が奴の機体を止める。その間お前が背後からコイツで止めを刺せ。」
アキラは近くに転がっていたグロースターのランスをイゴールに渡した。
「このままだったら奴には勝てない。」
『……確かにな。アキラ、うまく脱出してくれよ。』
「わかってる。」
アキラはランドスピナーを倒しエリスにライフルを向け先手を打った。
左にある盾を避けながら攻撃するがエリスは難無く回避してみせた。
エリスの機体はスザクのランスロットと同等、もしくはそれ以上の性能のKMFだとアキラは感じた。
アキラは左右へと変則的にエリスの周りを円を描くように動きながらライフルで攻撃していった。
しかし、銃弾を回避しながらエリスはライフルでアキラが持っているライフルを撃ち武器のないアキラをエリスは左腕のクローでアキラのサザーランドの右腕を捕らえ動きを止めた。
『大人しくしろ。』
エリスの言葉に反しアキラは空いていた左腕でヘルハウンドの右肩を掴みさらに密着させた。
『っ!?』
「ジェノム!!」
『おう!』
ジェノムはランスは構えヘルハウンドの後にあるコックピットを狙った。
その動きにエリスは左腕の盾をイゴールに向けまた青いバリアのようなものが出現した。これによりランスが弾かれてしまった。
エリスはアキラのサザーランドを門に叩きつけ自分を掴んでいたサザーランドの左腕が右肩から外れエリスはアキラのサザーランドを持ち上げ地面へ3度叩きつけその衝撃でサザーランドの右腕が剥がれ、頭部が損壊し胸部がへこみ亀裂からアキラの姿が見える。
「アキラ!!」
ジェノムが助けに入ろうとしたがエリスはヘルハウンドの盾に納めてある剣を抜いた。
緑色の刀身はMVSにも似ていた。
その剣によってジェノムのサザーランドは左腕を切断され蹴りで倒されてしまった。
「脱出装置が壊れたか。」
アキラは亀裂を外が見えるまで広げフラフラとおぼつかない足で立ち上がったがエリスはライフルを構えて立ち塞がった。
『アキラ、私のところへ来い。』
「俺の………邪魔をするな!」
踏み込もうとしたエリスに倒したはずのジェノムのサザーランドがヘルハウンドを羽交い絞めにした。
『アキラ!!』
ジェノムのサザーランドは片腕がなくアキラのサザーランドがヘルハウンドの左肩を掴み2機でヘルハウンドを捕らえた。
「っ!?」
エリスが必死に引き離そうとする中アキラは亀裂から体を出しホルスターのショットガンをエリスに向けた。
『アキラ!?』
アキラから放たれた銃弾はヘルハウンドの装甲を貫通しエリスの身体へと迫ろうとしていた。
エリスは瞬時に身体を捻らせ銃弾がうなじに接続していた端子の有線を切断しそして左肩に命中した。
『くぅ!?』
エリスの動きが止まった隙にアキラとジェノムは機体から出てジェノムは自身が搭乗していたサザーランドのコックピットに手榴弾を放り込み脱出した。
2人はその場から離れ数秒後2機のサザーランドは爆発を起こしヘルハウンドは巻き込まれた。
「やったか?」
ジェノムは確認しようとするが硝煙が晴れた見えたのは青い光のバリアを発生させた。ヘルハウンドであった。
「ダメだったか。」
舌打ちをするジェノムであったがよく見ると右腕が損傷しそれ以外の装甲も爆発の影響を少なからず受けているように見える。
そしてヘルハウンドが動く様子は見えなかった。
「ジェノム行くぞ。どのみちもう俺達には奴と戦える武器はない。」
ヘルハウンドを残し2人は総督府へと向かっていった。
「はぁ……アキラ?」
コックピットの中エリスは自分の残し走り去っていくアキラの後姿を見た。
頼む、行かないでくれ。 そんな感情に駆られ機体を動かそうとするがヘルハウンドは動かなかった。
計器を見るとエナジーフィラーが底をついていた。
機体が動かなくなったとわかった瞬間アキラに撃たれた左肩が痛みだしエリスは肩を押さえた。
その時通信を切ったはずであったがジョディからの通信がきた。
『やっと繋いだ。エリス、今何処なの?あなたを回収に行くから教えて。』
エリスは撃たれた肩から流れる血をだた呆然も見ていた。
(アキラは……紅月カレンに会うため?だから撃ったのか私を?)
『エリス、聞こえてるなら応答しなさい!エリス!』
エリスは自分の血で染まった右手を見て乱暴に叩いた。
「はぁはぁ………はあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
自分の中にあるどす黒い何かがアキラに対する欲望そしてカレンに殺意に近い感情を何かにぶつけたい気持ちにエリスはなっていた。
「ああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
アキラ達はアレクセイ、イゴール達を総督府の中で探している中建物の中は敵が混乱し逃げ惑っている姿が見受けられていた。
「総督がテロリストに暗殺された。」
「マクシム将軍も地下で殺されていた。」
逃げる人々から聞こえる話に2人はそれがアレクセイがやったことなのかまだわからなかった。
「アレクは生きてるのか?」
「わからん、マクシムが死んだとなるともう総督府の外に出てるのか?」
2人が先に進もうとした時兵士の1人が気づき銃を向けた。
「貴様ら、テロリストの仲間だな!」
2人は応戦しようとするが兵士が撃った銃弾がジェノムの右脚に命中しジェノムは倒れた。
「ジェノム!!」
アキラはライフルで応戦しながらジェノムを引き摺り身を隠した。
「す、すまない。アキラ、俺のことはいい。こんな足じゃあ足手纏いになる。」
アキラは黙ってライフルをジェノムに渡した。
「喋る元気があるなら戦え。それにまだ死ぬと決まったわけじゃない。」
アキラの姿を見てジェノムも足を引き摺りながらもライフルを取り応戦した。
すると、別方向からの銃弾が敵の兵士達を倒した。アキラは敵の背後にいた人物を見て身を出した。
「アレク!!」
「アキラ、無事だったか。ジェノムも大丈夫か?足をやられたのか?」
「あぁ、大丈夫だ。アレク、その女は?」
ジェノムは隣にいた女性を見た。
「彼女はカティア。俺の知り合いだ。」
「そうか……っでアレク、決着はつけたのか?」
ジェノムの問いに少し沈んだ顔をしたがアレクセイは口を開いた。
「あぁ、俺の手で……。」
「……そうか。」
「アキラ、脱出用の機体がある。イゴール達ともそこへ合流することにしている。来てくれ。」
アキラとジェノムはアレクセイの案内で建物の外へと出て行った。
「他の奴等は?」
「イゴールとワシリー、仲間数人わかったが他の奴等は……。」
「脱出機の場所は遠いか?」
「地下から来て機体を地上まで出して準備はできている。」
アキラはふと周りを見渡した。
雪の上にKMF、ビルの残骸が散らばり逃げ遅れた一般人が逃げ惑っていた。
「おう、無事だったか!!」
先に到着していたイゴール、ワシリー一行がアキラ達を待っていた。
「こいつがそうか。」
一般の軍のジェット機であった。
「アキラ、これで脱出するんだ。」
「お前達はどうするんだ?」
「ブリタニアと戦うため他のレジスタンスを集結させる。今、俺達が国を出るわけにはいかない。」
「なぁに、俺達は簡単にはくたばらねぇさ。」
アキラはアレクセイとイゴールの顔を見た。2人共微笑んだ。
「それにおめぇはエリア11に行かねぇとカレンちゃんに会えねぇぞ。」
イゴールは茶化すようにアキラの肩を叩いた。
「アレク、俺も……。」
ジェノムも同行しようとするが足の痛みで膝をついた。
「アキラ、ジェノムだけでも一緒に。」
「アレク!?俺は……。」
「ジェノム、気持ちは嬉しいが………。」
「………わかった。」
ジェノムは苦い顔をした。
「アキラ、頼む。」
アキラは黙って頷き、ジェノムの肩を担ぎジェット機へと搭乗した。
「アレク、イゴール、また会おう。」
「おう、アキラも死ぬなよ。今度会うときはカレンちゃんも一緒にな!」
アキラはレバーを握り機体を操縦する。周りは爆発や瓦礫でいっぱいの中離陸しやすい箇所を見つけ離陸の準備を開始する。
「ジェノム、行くぞ。」
「あぁ、頼む。」
スピードを上げ機体は段々と地上から離れ空へと飛び去っていった。
「行ったな……。」
「あぁ……。」
「アレク、俺達に指示を。」
ワシリー達を見てアレクセイは決意した。
(マクシム……俺は………。)
「生き残っている仲間を回収し首都ヤールンを脱出する!いいか、これからが始まりなんだ!皆、力をかしてくれ!!」
アレクセイの言葉に皆、大きく頷いた。
(見ていてくれマクシム、俺は勝ってみせる!新しいサドナ王国のために!!)
-上空から見える銀色の世界、俺のサドナ王国での旅が終わった。だがその余韻に浸る暇は俺にはない。エリア11、日本にカレンがいる。その先でまた血を流すかもしれない、だがそれでも俺は………-
少しあとがきです。
まずはこんな素人な作品を読んでいただきありがとうございます。
第1部はR2までの間の話という事であえてコードギアスらしくない作風にしようと思いボトムズのクメン編をモデルにした話にしてみました。でもそのままっていうのは面白みがなくあえて極寒の寒さを舞台にしようと思いました。
しかし、クメン編をモデルにしてるとはいえほぼオリジナルの話で思うように話が浮かび上がらず投稿が遅れたりと結局1年かかりました。
ボトムズのカンユーをモデルにしたトニーをもっと出したかった思いがありましたが尺の関係で最後はあっさりしすぎたかなと思います。
第1部を通して自分の悪いところも発見できたかなっと思います。
第2部からやっとR2本編へと入ります。できるだけ早く投稿できるようにします。
さてエリスのヘルハウンドの解説をちょっとします。
ヘルハウンドの専用ライフルは普段右肩に装着されておりガンダムWのトールギスのドーバーガンのようにしているとおもっていただければいいです。左腕の下に装着させているクローですがストライクドッグの腕をモデルにしたものです。ヘルハウンドはテスタロッサとストライクドッグを組み合わせたものとしたかったのでこの設定にしました。
それとエリスはビッグバトルのニーヴァのように機体とダイレクトリンクできるようになっています。ヘルハウンド自体は戦況に応じて武装等を変えることが出来る設定でそれはヒート・ヘイズも同じです。
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第二部 Return
第13話
第二部 Return 開始です。
-エリア11 トウキョウ租界-
『所属不明のジェット機がエリア11の領海へと侵入したこの事件。侵入したと思われる機体がニイガタにて漂着されていたのを軍が発見し鹵獲されてからまもなく2週間になります。鹵獲された機体にパイロットをおらず今現在も捜索を続けております。軍の発表にると2ヶ月前サドナ王国で起こりましたテロ事件の犯行グループがエリア11へと逃亡したのではないかと思われます。市民の皆様は不審な人物を見かけたら警察、軍へと連絡を。続いては………。』
租界の市街地で電光表示板で流されるニュース映像を古びた黒いライダージャケットとサングラスをかけた男がじっと見つめて映像が切り替わると黙ってその場から離れた。
男は人で活気付いている街を避け裏通りへと入り迷うことなく奥へと入って行った。
狭い路地を抜け男の目の前に広がったのはガレキの山と化したビル郡、そして陥没して大小のクレーターの穴がいくもあり先程の華やかな街の租界とは明らかに異なる光景であった。
ここはシンジュクゲットー、男はゲットーの中へ入りかつて地下鉄として使われた入り口へと入っていった。
男はかけていたサングラスを外した。
男、流崎アキラは誰もいない地下鉄のホームの空いているスペースで腰を落とした。
-ニイガタでジェノムと別れトウキョウ租界へ戻って1ヶ月、カレン達の手掛りを求め数週間、各ゲットーへ聞いてまわったが有力な情報が得られないでいる。-
-ニイガタ-
『ジェノム、もう大丈夫なのか?』
『あぁ、もう杖なしで歩ける。それにいつまでも俺のお守りをしてたらお前が動けないだろ。』
『………これからどうする?』
『アレク達のところへ戻るのは難しいだろうな。故郷へ帰ろうと思う。親父達に心配かけたからな。』
『お前の故郷、アラスカだったな。』
『あぁ、皇帝のシャルルがインディアンを大量虐殺した事件あったろ。俺達の仲間はほとんど亡命したが俺の家族含めてアラスカに隠れて住んでいる。』
『アラスカはブリタニア本国の支配地だ。……帰れるのか?』
ジェノムはフッと微笑んだ。
『心配するな。自然が俺を助けてくれる。お前は自分のことを考えるんだ。租界へ行く伝手はあるんだろ?』
『あぁ、坂口のとっつあんが用意してくれた。』
アキラは1枚のメモ用紙を取り出した。
坂口がアキラと別れる前に渡したもので自分の名前を出せば協力してくれる同業者の名前が書かれた内容であった。
『そうか……じゃあお別れだな、世話になったな。』
ジェノムの差し出した手にアキラは黙って握手をした。
『アキラ………またみんなで会おう。』
ジェノムと別れアキラは一路ナガノへ行き坂口の同業者と合流し租界へと入っていった。
アキラは潜伏してると思われるゲットーへ行き最近来た日本人はいないかと捜し歩いたが有力な手掛りが得られなかった。そこでアキラはシンジュクへと入って行った。自分も巻き込まれた治安警察との戦いでシンジュクは壊滅的なダメージを負い多くのイレブンが他のゲットーへと移住しゲットーの一部が租界の再開発のエリアになりシンジュクゲットーの規模が半分以下となった。今、シンジュクに住んでいるイレブンは家族もおらず身体が不自由な人ばかりでゲットーは1年前以上にゴーストタウンへと変わっていた。
勝手を知っているここならカレン達が潜伏しているのではないかとここを中心に探しているのを数日行っていた。
自分の検討が外れているのかそれとも既に捕まってしまったのか様々な自問自答を繰り返しながらもアキラは少しでも体を休めようと目を閉じた。
-ブリタニア第2独立部隊陽炎 ヨコタ軍事基地-
1機の軍用輸送機が基地へと着陸した。
「う~ん、久しぶりのエリア11ね。」
「ブラックリベリオンの時以来だね。」
ドリーとジョディは陽気な様子で降り立ってきた。
2人の前に数名の部下を連れた1人のブリタニア人が現れた。
「陽炎ヨコハマ基地の責任者 レビン・オーウェン。お二人の長旅ご苦労であった。」
「あぁ、君が本国での
ドリーの言葉にレビンは黙って受け流した。
「それでもう1人、例の彼女は?」
ドリーとジョディのうしろに黙って周りの光景を眺めている女性が1人いる。
「彼女が例のパーフェクトソルジャー……。」
「そう、エリス。今回調整でこちらに寄ってきたけど最近変わったことは?」
「相変わらずテロの活動が続いている。だが1年前と比べると小粒のようなものだ。」
「そうかしら、彼女は何か起こる気配を感じるようだけど。」
エリスを見てジョディは目を細めた。
「エリス、あなたは誰を見てるの流崎アキラ?それとも……紅月カレン? んふふ。」
-翌日 バベルタワー上空-
晴れ間の空の中バベルタワーの上空付近を気球船が優雅に飛んでいた。
『……まもなくトウキョウ租界管轄空域に入ります。』
『了解、飛行目的は広報宣伝で間違いないか?』
『変更なし、滞空時間も申告どおりです。』
『……確認した上空飛行を許可する。』
-気球船内-
気球船の中では数人の日本人がいた。
「かつてゼロと共にブリタニアを恐怖させた黒の騎士団も、もはや我々を残すのみ。しかし、絶望にはまだ早い。この飛燕45作戦さえ成功すれば。」
皆、酒を飲み干した後、皆の顔を見てト部は叫んだ。
「日本、万歳!!」
全員が酒器を割った。
アキラはバイクから降り近くにあったベンチへ行き腰を落とした。今日は少し離れたゲットーまで足を運んだがカレン達の手掛りは掴められなかった。
アキラはバイクを摩った。バイクは坂口の同業者が譲ってくれた型の古いバイクであった。
さて、これからどうすると考えていると近くでチャイムの音が聞こえた。聞き覚えのある音にアキラは自然と音があったところへ向かっていった。
-アッシュフォード学園-
ここはかつてアキラが在籍していた学園、生徒達が楽しく過ごしている中1人の生徒が教師から追いかけられていた。
「待て、ルルーシュ!」
「だから、単位も取ってますからいいじゃないですかヴィレッタ先生。」
「頑張れ副会長。」
「ありがとうございますミレイ会長。」
生徒会長のミレイがルルーシュにバイクのカギを渡した。
「お前それでも生徒会長か!?」
「すみません、思わず。」
何も変わらない喉かな日常がここにはある。
アキラはバイクを押しながらアッシュフォード学園の正門近くまで来たアキラは嘲笑した。
(まさか、ここへ足を運ぶとは思わなかった。ここでの思い出に浸ろうとしているのかそれともまたここで……この時の俺は自分の意外な行動に呆れていた。)
学園へ入る事はできないがまるで懐かしむようにバイクを押しながら学園の周りを眺めていた。塀のほうを見ると監視カメラ1台があることに気づきアキラは先程の道を引き返そうとした時
「きゃあっ!?」
角に曲がった時出会い頭に学園の生徒と衝突してしまった。幸いバイクにぶつからずアキラと当たったため少しよろめいた程度であった。
生徒の姿を見たら長い髪の茶髪の女子生徒、アキラはこの生徒に見覚えがあった。
「シャァ……!!」
彼女の名前を言おうとした時今、自分はヘルメットを外し素顔を晒している事に気づいた。彼女も自分のことを知っているためここで騒がれたら面倒なことになる。
アキラは慌ててその場から立ち去ろうとした時、彼女のほうから先に声をかけてきた。
「すみません、大丈夫ですか?」
彼女の一言でアキラは目を見開いた。
(人違い……?いやだが……。)
アキラの様子を見て女子生徒は怪訝そうな顔を浮かべた。
「あの………。」
彼女の顔を見てアキラはハッとした。
「い、いや、大丈夫だ。俺のほうも悪かった。」
「そうですか、よかった。それじゃあ失礼します。」
何事もなかったかのように女子生徒はアキラの横を通り過ぎた。
彼女の後姿を見てアキラは不審に思った。
「演技……だとしても自然すぎる。」
とにかくここへ長居はできないと判断しバイクのエンジンをかけようとした時先程の女子生徒が正門で待ち合わせしていた友達と合流した。
「シャーリーどうしたの?」
「ううん、何でもない。」
アキラはシャーリーのほうを振り返り人違いではないと確信した。
(やはり、シャーリー!ならさっきのは?)
「なんだか騒がしいけど何かあったの?」
「あぁ、またヴィレッタ先生と追いかけっこしてるの。」
「えぇ、ルルまた~?」
シャーリーの言葉にアキラは驚きの表情をした。
(ルル!? あいつが……ルルーシュがいるのかここに!?)
ありえない、ルルーシュはゼロでここにいるわけがない。そう思いながらもバイクの音とともに聞いたことのある人物の声がした。
「シャーリー、あぶないよ。どいてくれ!」
「もうルルったら、ロロも連れて……。」
アキラは帽子を深く被り隠れて見るとそこにはサイドーカーに乗ったルルーシュの姿があった。
「ルルーシュ!?」
もう1人バイクを運転しているアキラの知らない男子生徒がいた。
事態が飲み込めないままアキラは急ぎバイクに跨りルルーシュが乗るバイクを追った。
「ったく、放課後くらい自由させてくれたっていいじゃないか。この前の試験だってトップだったのに。」
ルルーシュの態度にロロは呆れ返った。
「成績がよくったって日頃の行いが悪かったら意味ないよ。っで今日はどこ?」
「バベルタワーまで。」
「えっ!?そんなところに大丈夫?」
「大丈夫だって、ロロは先に帰っていいさ。」
バイクが信号で停まっている時ルルーシュはふと電光表示板に映し出されたニュースに目がいった。内容は軍とテロリストの衝突が続いているサドナ王国の映像であった。
「サドナ王国まだテロが収まってないな。」
「テロリストのリーダーのアレクセイだったかな。あちこちでテロ活動してるみたいだけど大勢の人がいる街を狙わず軍の基地だけを攻撃してるから英雄だなんて言われているよ。」
「そう言われて酔ってるだけさ。軍が本気になればテロリストなんて一気に潰されて悪者の烙印を押されるんだゼロみたいに……。」
ルルーシュから少し離れて尾行していたアキラはまだ混乱していた。
「ルルーシュ、何故お前がここいる?」
そして隣にいる謎の男子生徒、一緒にいるということは友達かもしれないがアキラは見覚えがない。
「ルルーシュにシャーリー………何がどうなってる?」
ギアスが一瞬頭をよぎったがだとしてもルルーシュがここにいる理由が分からない。
とにかく今は2人を追いルルーシュが1人になった時に捕まえてから問い詰めようとアキラは尾行を続け2人がバベルタワーへと入ったのを見て後に続いた。
-機密情報局-
各モニターにてルルーシュの姿が映し出されている中先程からルルーシュのあとをつけているアキラのバイクが発見された。
「対象の近くに不審なバイクを発見。」
「例の……。」
「いや……まだわからん。」
「モニターに映します。」
モニターのアップされた映像にバイクに乗ったアキラが映し出された。
「この男は!? 予定変更!対象X発見!別プランを平行して行うんだ!」
機密情報局内は騒然となり対応に急いだ。
バベルタワーの駐車場へと入ったアキラはルルーシュが乗っていたバイクを見つけた。
隣にバイクを止め2人が乗っていたバイクをよく見るとやはりこのバイクはリヴァルのバイクだと確信した。つまり生徒会の皆が学園にいるのだと思いアキラはこの違和感に不気味さを感じた。
とにかく今はルルーシュに接触しなければとアキラはヘルメットを取ってサングラスをかけた。タワーへと入っていった。
しかし、ルルーシュから遅れてきたアキラは彼がどこの階へと向かったのか分からず適当にある階へと入った。
その階の中はまだ建設途中なのか機材の音だけが聞こえていた。別の階へ行こうとした時、1人の作業員らしき男が声かけてきた。
「おいアンタ、こんなところで何してんだ?もしかして新人か?」
「道に迷った。人を探しに来たんだ。」
男はアキラの身なりを見た。
「お前さんイレブンだな?」
「……だったらどうする?」
「悪いことは言わねぇ、さっさと出たほうがいい。」
「なんだここのタワーは?」
「俺達イレブンを食い物にしてるんだ。」
数人の作業員が現れた。
「ここのタワーは今の総督カラレスが来てから造られたもので立派なのは見た目だけ。非合法のカジノ、人身売買、マフィア同士の会合の場に使われたりしてんだ。」
「俺達は休みもなしで働かされてんだ。」
作業員の話を聞きアキラはルルーシュがここへ来た目的がなんとなくわかった。
「そのカジノはどこでやってる?」
「はっははは、やめてほうがいい。俺達みたいなもんが行ける場所じゃねぇ。追い出されるぞ。」
「それともお前、軍資金でもあるのか?」
「金はない。だが場所は教えてくれ。」
「変な奴だなお前。」
その内の1人が慌てた様子でやってきた。
「おい、監督が戻ってきたぞ。」
それを聞き皆が慌てて作業へ戻ろうとした。
「47階だ。そこが一番でかいカジノやってる。追い出されるのがオチだがまぁ行ってみな。早く出ねぇと監督に見つかるぞ。」
アキラは47階へ向かおうと急ぎこの階から出て行った。
一方その頃カジノ場にいるルルーシュはあるトラブルが発生していた。
「大人の世界と学生、どちらが食べる側か、とりあえずこれでハッキリさせよう!」
ルルーシュは、持っていたケースを開け、チェスセットを見せた。
「兄さんやめよう。相手はマフィアだよ。」
ロロはルルーシュを諌めようとする。
「はははっ、威勢があっていいな学生、だが大人の世界を知らないものまた学生だな。」
「そうでもないさ、黒のキングさん。」
その名を言われ男は目の色を変えた。
「こっちの世界では名の知れた打ち手なんだろう?」
「ほう、知った上でかね。面白い相手をしてやろう。」
2人はテーブルへと向かった。
この事態を1人のバニーガールの姿をした女性は冷汗をかきながら見守っていた。
(はやく、ルルーシュをここから……。)
カレンは刻々と過ぎる時間に焦りの色を見せはじめた。
エレベーターで47階のカジノ場へと着いたアキラは派手なスーツなど富裕層の人たちで溢れ返っており自分の格好が浮いていることに気づかされた。
だがルルーシュも学園の制服の姿のため逆に見つけやすいと思いアキラは中を散策した。
ルーレットやスロットで遊んでいる人々が行き来しアキラはどこか居心地の悪さを感じた。サドナ王国でもこのような遊技場がありイゴールから誘われて入ったことがあるが自分はこれの何が面白いのかと口にしイゴールからはガキだなと笑われたことがあった。
そう耽っている時にふいにアキラは振り向き周りを伺った。
(誰かに見られている?)
背後から人の気配がし振り向いたが怪しい者が見られなかった。一度ここから出たほうがいいのかそう考えていると何か騒ぎ出したことに気づいた。
「黒のキングにチェスに勝負している奴がいるぞ。」
「相手は学生らしいぞ。」
「見に行ってみようぜ。」
その話を聞きアキラも急ぎチェスをやっている場所へと向かった。
チェスをしているテーブル席は人で見えずらかったが僅かな隙間からルルーシュの姿が見えた。
もっと近くで見ようとした時アキラはテーブル席から少し離れている1人のバニーガールに目が止まった。
(カレン………?)
見間違いではない、あれは間違いなく紅月カレンだ。何故ここにいる?様々な想いが交差するがアキラはゆっくりとカレンの所へ行こうとした時足が止まりうしろを振り返った。
(やはり、見られている!)
うしろを見ると黒いスーツ姿の男2人がいた。ここの店のガードマンのようには見えず自分の様子を伺っているようにも見える。
「………っく。」
名残惜しそうにカレンの横顔を見つめた。今、彼女に会えば巻き込んでしまう、そう思ったアキラはその場から離れていった。
「……えっ?」
カレンはふとギャラリーのほうに顔をむけある後ろ姿の男性を見つめた。
「あの人……。」
まさかと思いカレンはその姿を追おうとした時ギャラリーから声があがった。
「学生が勝ったぞ。」
「嘘だろ。」
カレンは基盤を見るとルルーシュが勝ったことがわかった。
「食べられるのはそちらでしたね」
「ふぅ…困ったな。こんな噂が広まっては私のメンツが立たない」
「言いふらすような趣味は!」
「違うよ学生君、君がしかけたイカサマの話をしているんだ」
「イカサマ!?」
「いけない子供だ」
「あっ!待ってくれ!」
ルルーシュは黒のキングに拘束された。
「さて・・・証拠を作ろうか」
「薄汚い大人が!」
「正しいことに価値は無いんだよ」
その時、轟音と共にバベルタワーが揺れ辺りが騒然となった。
カジノ場から離れ人がいない長い廊下を歩くアキラを男2人がついて歩いていた。
2人の気配を感じながらアキラは淡々と歩き角に曲がり2人もそれに続いて曲がった直後アキラは1人を蹴りで倒し残りの1人が銃を取り出そうとしアキラ隠し持っていたダブルバレルのショートショットガンを取り出し棍棒ののように持って相手のこめかみに向かって振り回した。
2人の銃を奪ったアキラはサングラスを外した。
「お前ら何者だ?俺に何のようだ!」
アキラの問いに2人は黙ったままでアキラは奪った銃で2人を殴打し懐から手帳を奪い中身を見た。
「機密情報局……?」
聞き慣れない組織名にアキラは頭を傾げた。更に問いただそうとした時屋上から轟音とともにタワーが揺れた。
何が起こったのかアキラはルルーシュとカレンの事が気になり2人を置いてその場から立ち去った。
「……対象Xと接触。申し訳ありません……武器を奪われました。」
『何をしているのだ!それでXは?』
「現在カジノ場へと逃走。」
『何としても仕留めるんだ。対象Xの捕縛また抹殺は皇帝陛下直々の命なのだ!』
アキラは急いでカジノ場へと戻ってきたが先程とは打って変わって悲鳴と怒号が飛び交う混乱の場となっていた。もちろんルルーシュ、カレンの姿は見えなかった。
何があったのか周りを見回ったが天井から数機のKMFが現れた。
「月下に無頼!黒の騎士団!?」
軍のサザーランドもタワーへと侵入し両軍戦闘へと突入した。
-陽炎 ヨコタ軍事基地-
「たった今入った情報です。バベルタワーを襲撃したテロリストは、KMFを数機保持している模様、機体の照合から黒の騎士団と思われます。」
この情報にドリー兄妹は顔を見合わせた。
「黒の騎士団の残党?」
「ここ最近目立った動きはなかったみたいだけどどうしたんだろうね。」
「けど面白くなってきたよ兄さん。」
隣で調整を終え眠っていたはずのエリスが目覚め起き上がり部屋を出ようとした。
「エリス、待ちなさい。」
ジョディの声でエリスは立ち止まった。
「ヘルハウンドはまだ調整が終わってないから出せないの。それでもいいなら行きなさい。」
エリスは黙って頷き部屋を出て行きジョディは通信で部下に連絡を入れた。
「エリスが出るわ。彼女1人で行かせなさい。」
「ジョディ、来ると思うか彼が?」
「兄さん忘れたの、彼女が勝手に流崎アキラと接触した時近くに紅月カレンがいたのよ。もしバベルタワーに紅月カレンがいるとすればあの男もいるはずよ。」
ドリーはやれやれと溜息を吐いた。
「同じ女のお前の考えだから通してやったが今のエリスは兵士としては欠点だらけだと思うけどな。」
ジョディはふふっと笑みをこぼした。
「兄さんには分からないでしょうね。嫉妬、憎悪、それらが増せば増すほど人間の感情が作られてそして恐ろしく強くなれるの特に女はね。」
ジョディは椅子から立ち上がりノートパソコンを取り出した。
「兄さん、特別席で観戦しましょう。」
ルルーシュと一緒だったカレンは途中はぐれてしまい一度仲間と合流した。
「ごめん、私がちゃんと捕まえなかったから」
「気にするな。今、卜部さん達が探している」
団員達がコンテナを開け中には紅蓮弐式が収納されカレンは機体に乗り込んだ。
カレンは紅蓮の右腕を見た。今、右腕にはアキラが搭乗した月下先行試作機に装着されるはずだった輻射波動機構の簡易型の甲壱型腕が装着されていた。
先程見た男の後ろ姿を思い出したがカレンは頭を振った。
「今はそんな時じゃない!」
起動キーを差込み、カレン紅蓮弐式を起動させた。
別の階では両軍との戦闘に巻き込まれないようアキラが非常用階段から下へ降りていた。
ここの中は戦闘が行われていないようでアキラは息をついた。
まだこの事態を把握していていない中アキラは工事区へと入った時2人の男性がいた。その1人が
「ルルーシュ!?」
自分の名前を呼ばれルルーシュは戸惑いの表情を浮かべた。
「お前には聞きたいことがたくさんある。この騒動もお前が仕組んだ事か!」
もう1人見知らぬ男子生徒がいたがアキラは気にとめずルルーシュに問いただしたが
「ま、待ってくれ。あんた誰だ?なんで俺の名前を……?」
ルルーシュの返答にアキラは呆気にとられた。
「何言ってるんだお前?こんな時にふざけてる場合か!」
「兄さん、行こう!」
顔を真っ青にしたロロがルルーシュの手を引っ張り逃げていった。アキラもその後を追おうとした時天井が崩れ瓦礫が落ちてきて道が塞がれた。
崩れた天井の穴から銃弾が飛びアキラは物陰に隠れた。
「対象X発見。今、交戦中です。」
『何としても捕らえるんだ。最悪殺しても構わん。』
「イエス・マイ・ロード。」
アキラは銃で応戦するが多勢に無勢でアキラはここから脱出しようとアキラはまた非常用階段へ行き下へと降りていった。
アキラから逃げた2人は別の工事区へと逃げていった。
(なんださっきの男?俺が仕組んだ?一体どういう……)
「……さん、兄さん!」
「えっ!?何だ?」
「どうしたの難しい顔して?」
「いいや、何でもない。安心しろロロ、絶対に逃げられる。逃がしてやるから。」
「そうだね、僕たちは…」
その時、黒の騎士団の1人がロロを狙っていることに気づきルルーシュは撃たれそうになったロロを庇い、銃弾が肩を掠めてバランスを失い 、同時に爆風が吹き抜けルルーシュが落下しそうになりロロが手をつかもうとするが間にあわずルルーシュは暗い闇へと落ちていった。
「兄さぁぁん!!」
アキラは広い工事区へ逃げ、辺りを警戒した。
「さっきの部隊、機密情報局って組織のとこか?」
次から次へと自分の知らないところで事態が動きアキラは苛立ちを隠せなかった。
「カレン、どこだ。どこにいるんだ!!」
近くで複数の足音がしアキラは舌打ちしここから出て行った。
とにかく今は黒の騎士団を探さなければいけないと思いアキラは走った。
落下したルルーシュは下に張ってあったネットで助かっていた。ロロを助けに行こうと階段を昇っていくとブリタニア人、イレヴン関係なく殺され、放置されている死体の数々を目撃しその中にゼロの写真を握った死体もあった。
「まだ、ゼロなんかにすがって…。」
ルルーシュの目の前に1機の黒の騎士団の無頼が現れた。無頼のコックピットが開き中から緑の髪をした少女が現れた。
「迎えに来た、ルルーシュ。私は味方だ、お前の敵はブリタニア。」
「え?」
「私はC.C.、私と契約しただろう?私達は共犯者」
「契約?共犯者?」
C.C.の言葉にルルーシュは困惑の表情を浮かべた。
「私だけが知っている、本当のお前を」
「本当の、俺…?」
その言葉に導かれるように、少しづつC.C.に近づくルルーシュ。
その時、銃声が響きC.C.が背後から撃たれる。
コックピットから崩れ落ちた彼女をルルーシュが抱える。
「お、おい!!………っ」
目の前にKMFと機密情報局局員数人が現れる。
「お役目ご苦労、ルルーシュ・ランペルージ君。」
「っ!?」
バベルタワー周辺が封鎖され車両が通行できないない中1台の装甲車が侵入してきた。
軍、警察が呼び止めるも無視し各車両に激突しながら装甲車はバベルタワーへたどり着いた。
装甲車から降りてきたのはエリス1人で装甲車から回転弾倉式のグレネードランチャー、自分の身長ほどの長さの機関銃を肩に背負いバベルタワーへと入っていった。
このC.C.という少女を誘い出すために自分が今まで監視されていた事。機密情報局達によって明かされ今、ルルーシュは必要なくなったことで銃を向けられた。
(俺は…終わる…?何もわからずに、こんな簡単に…………嫌だ!!力、力さえあれば、ここから抜け出す力!!世界に負けない力が!!)
その時倒れていたC.C.が起き上がりルルーシュにキスをした。
(力が欲しいか?)
(その声、さっきの?)
(力なら、お前はもう持っている。忘却の檻に閉じ込められているだけだ…思い出せ。本当のお前を、王の力を。今こそ封印を解き放つ。)
その瞬間ルルーシュの脳裏に様々な記憶がフラッシュバックのように蘇って来た。
(そうか俺は……俺が……!!)
ブリタニア人、イレブンの死体が転がっているロビーの中をエリスは淡々と歩いていき上階へ銃声が鳴り響きエリスは睨んだ。
アキラは敵に警戒しながら各階を散策する中倒れている男を見つけた。男の服装から黒の騎士団だとわかった。
出血の様子を見て彼は助からないと思ったがわずかに呻き声がしアキラは声をかけた。
「おい、しっかりしろ!」
「おっ……お前は!?」
アキラの姿を見て団員は驚きの表情をした。
「この作戦の指揮してるのは誰だ!ゼロか?」
「ち…がう……。俺達は……ゼロを…奪還するため………。」
「どういう事だ?」
更に問いただそうとするが団員は吐血し顔色が更に悪くなっていた。
「ト部さん…と…合流………してくれ……。たの……む……。」
そう言うと団員は目を閉じた。
アキラは彼が持っていた無線機に耳を傾けた。無線機は故障しこちらから声を届けることができず若干ノイズが入っているが声の主がト部だとわかり内容が理解できた。
銃弾が足元を掠め振り向くと先程の機密情報局の部隊が撃って来てアキラはライフルで応戦しながらある場所へと目指した。
燃え盛る炎の中ルルーシュの周りは機密情報局の局員達の死体が転がっていた。全員銃をを持っており自殺したように見える。
(あの日から、俺の心には納得が無かった。噛み合わない偽者の日常、ずれた時間、別の記憶を植えつけられた家畜の人生…
しかし、真実は俺を求め続けて…そう、間違っていたのは俺じゃない!世界のほうだ!)
天井をぶち破って紅蓮弐式と月下が現れ ルルーシュの前にひざまづく。
「お待ちしておりました、ゼロ様!どうか、我らにご命令を!」
「いいだろう!なぜならば、私はゼロ! 世界を壊し、世界を創造する男だ!」
ルルーシュの左目に紋章が浮かんでいた。この時黒の騎士団のゼロが復活した。
-ルルーシュ、ゼロの目覚め。俺のエリア11での新たな戦いがここからまた始まった。-
はい、やっとR2本編に突入(汗)
原作準拠ながらもオリジナルを入れていきたいと思います。
読んでわかると思いますが今回アキラは振り回されてます(笑)
まぁルルーシュと同じ巻き込まれたようなもんですから当然なんですけど。
アキラ、ルルーシュ、C.C.、カレン、ロロそしてエリスとバベルタワーに役者は揃いました。
さぁ、これからどうなるか楽しみにしててください。
あと余談ですが第一部がサドナ王国と名称なのに何故第二部で英単語になったか自分としてはあまり部の名称に特別こだわりはないというのもありますがR2に捩ってこの名称にしました。
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第14話
-??-
ブリタニアの皇帝シャルルとナイトオブラウンズの枢木スザクの2人はある場所へと向かっていた。
「エリア11の餌に誰かが喰いついたようだな。」
「C.C.…ですか。」
「枢木、ここに入れるのはラウンズでもお前が初めて。シュナイゼル達も知らぬ場所よ。」
「光栄です、陛下。しかし、どうして自分を?」
辺りは霧がかかったかのように視界がぼやけてきた。
「ラウンズの中でお前だけが知っている。ゼロの正体とギアスを。」
次第に視界が明るくなり先程いた場所とはまったく違った所にいた。
「……ここは…神殿?……あなたは!?」
神殿のような場所には井ノ本寛司がいた。
「違うな。これは…そう、神を滅ぼすための武器。」
「武器?」
「そう、アーカーシャの剣……私、そしてシャルル達で名付けた。」
サングラス越しで見えなかったが井ノ本の視線は遥遠くを見つめていた。
-バベルタワー-
全ての記憶を取り戻したルルーシュはゼロとしてト部達に指示を与えた。
「C.C.、皇帝……あの男に…。」
「私ではない。あの男にギアスを与えたのは。」
「…ナナリーはどこにいる?」
「お前の妹を探そうにも、黒の騎士団が壊滅状態ではな。」
「咲世子はどうなった?」
「ディートハルトと共に中華連邦に逃れた。あの女はゼロの正体を知らない。ナナリーの重要性がわからずとも仕方ないだろう。」
「皇帝にギアスを与えた者を探し出し、ナナリーを…………!?」
ルルーシュはある事に気づいた。
(俺に妹はいるが弟はいなかった。……誰なんだ、あいつは?)
あのロロっという男は何者だ?自分の監視役なのか?思考をめぐらせたが今はここを乗り切ることが先だと今は考えるのをやめた。
「C.C.、流崎は今どこの階にいるか知らないか?」
「ん? 何を言ってる?あの男はここにはいないぞ。」
「この作戦には参加していないのか!?」
「あの男は1年前から行方不明だ。私達も居所は知らない。」
「だが……っ!?」
ルルーシュは先程アキラと会った時の事を思い出した。
(…だとするとアキラは巻き込まれてまだここに?)
「……とにかく今はここのタワーの構造を知りたい。管制室へ……。」
1機のサザーランドが現れC.C.は無頼のうしろに隠れた。
(ちょうどいい、このKMFを……。)
「あっ!軍人さん、助かった。この人の手当を……。」
バベルタワー周辺がカラレス総督により封鎖された中1台の軍用車両がやってきた。
「どこの部隊の者か?」
「僕らこういう者で。」
ドリーはカードを見せた。
「レッド……陽炎!?」
G-1ベースではカラレス総督が指揮しているがある知らせが入った。
「何、陽炎が!?」
「今、ゲートを抜けここから反対側のほうへ。」
「それで数は?」
「それが技術班の2人だけで…。」
「技術者どもが……気に入らないな。」
前から陽炎が気に食わなかったカラレスはドリー達が高みの見物をしているかのように見え不愉快になった。
一方、封鎖された道路の真ん中でバーネット兄妹の車が止まっていた。
「ハッキングはこれでよし。」
ドリーはジョディのパソコンでバベルタワーのコンピューターへ侵入し構造内部を把握しタワー内部が映し出された。
「エリスは?」
「ん……。14階だな。黒の騎士団達はまだ上の階にいるみたいだけど。流崎アキラとはまだ接触しないようだね。」
「エリスの心拍数、脳波にもまだ変調はないわ。さぁて面白くなりそうね。」
タワーでは戦闘による爆破が起こり2人が乗っている車両の近くでタワーの破片が落ちてきた。
「っね、特別席でしょ♪」
「何、呑気に言ってるんだ!危ないだろ!」
ドリーはハンドルを回し車両はタワーから少し離れていった。
-バベルタワー 管制室-
ルルーシュの指揮の下戦局はこちらへ傾きつつある。
「よし、このままいけばカラレスが直接出てくるはず後は……。」
ルルーシュはまだ生きているタワーの監視カメラを使いある人物を探している。
「……見つけた。やはりいたか……。」
ルルーシュはニヤっと口の端をつり上げた。
「順調にみたいね。」
カレンが銃を構えたまま管制室にいた。
「カレン、21階に向かえと。」
「あなたの傍にいたかったの。………やっと2人きりになれたわね。」
「神根島でゼロを見捨てた君が何の話だ?」
「ルルーシュ、あなたはずっと私を騙していた。」
「ゼロが本当は君のクラスメイトだったことか?それともギアスの力のことか?」
「両方よ。答えて!あなたは私にもギアスを使ったの?私の心を捻じ曲げて、従わせて……。」
カレンの問いにルルーシュは吹き出したかのように笑った。
「君の心は君自身のものだ。ゼロへの忠誠も憧れも、全て君が決めたんだ、君が選んだんだ、この私を。」
カレンは銃を向けたまま俯いた。
「信じられないか?」
「信じたい。アキラがあんたを信じたように。」
「そうか。」
「でも、私が信じるのはゼロよ。ルルーシュ、あんたなんかじゃない!」
「あぁ、構わない。それといい知らせと悪い知らせがある。」
ルルーシュが監視カメラの操作盤を操りある1つのカメラの映像を映し出した。
「あっ!?」
その映像に写っていた人物にカレンは目を見開いた。
「アキ……ラ…?」
「君達と接触する前に会ったんだ。」
「日本にいたんだ……。」
カレンは映像を呆然と見ていたが映像がアキラは敵と交戦している銃撃戦になった。
「正体不明の部隊と交戦しているようだ。」
「どこの階?」
「……29階の工事区にいる。」
カレンは急ぎ部屋から出ようとした。
「カレン待つんだ!」
「彼は今1人よ!助けに行かないと。」
「わかってる。私に任せろ。」
ルルーシュは無線機を手にした。
-29階-
機密情報局と銃撃戦を繰り広げているアキラにある声が聞こえた。
『……聞こえるか。聞こえるなら応答しろ。』
それは無線機からでこの声にはアキラは聞き覚えがあった。
『流崎アキラ、私だ、ゼロだ!』
(……ゼロ!)
『君の姿は監視カメラで見えてる。聞こえるなら応答するんだ。』
アキラは天井を見渡し近くに監視カメラがある事に気づいた。
『君のうしろから30m先にある防火シャッターを今からこちらで降ろす。君はそこまで走ってくれ。』
だが信じられないのかアキラは監視カメラをじっと睨んだ。
『流崎アキラ、私はこんなところで躓くわけにはいかない。君の力が必要だ。私を信じてくれ!』
アキラは物陰から敵の数を見て一呼吸をしルルーシュの指示通りうしろへ走っていった。
銃弾が飛ぶ中防火シャッターが降りていきアキラはスライディングのように滑りシャッターは閉じられ敵のうしろにある防火シャッターも降り閉じられた。
『敵は閉じ込めた。ここの非常階段から21階へと行くんだ。』
アキラは黙って非常階段を昇っていった。
-管制室-
「応答がない、無線機が壊れてるのか?まぁいい、カレンこれでいいだろ?」
「えぇ、ありがとう。」
「ところでいつまでその格好でいるつもりだ?今の君を見たらあいつも驚くだろうな。」
え?っとカレンは今の自分の格好を思い出し手で隠した。
「っ!! 見ないでよ、変態!」
「おいおい、ゼロに向かってその言い方は。」
「今のはルルーシュに言ったのよ」
ルルーシュは苦笑いをした。その直後C.C.から通信で連絡が来た。
『敵の援軍が来たようだ。』
カレンは管制室のモニターで敵が上からも来ていることがわかった。
「上からも下からもこれじゃあ脱出は……。」
「あぁ、脱出は難しい。」
ルルーシュは落ち着いた様子でいて自分の上着をカレンにかけた。
「カラレス総督が出てきたんだろう。だが……これで私の勝ちだ。」
-18階-
黒の騎士団の団員達が18階の守りを固めて敵に備えていた時離れた所から足音がし全員が振り返った。
「女!?」
確かに姿は女だが女は肩に機関銃背負っており敵だと判断した。
「流崎アキラはどこにいる?」
突然女の口からここにいるはずがないアキラの名前が出て団員達は口を半開きになった。
「構わん敵だ!うっ…!?」
団員の1人が号令を発しようとした時女は走り出し常人ではありえないスピードで団員の目の前に立ち首を絞めた。
近くにいた団員が女にライフルを構えたが女は空いていた手で銃口をずらし反対にいた団員に銃弾が当たった。味方を撃ってしまい慌てる暇もなく次の瞬間自分の喉元から血が吹き出した事がわかり意識が遠のいていった。
ナイフで相手の喉元を斬った女は返り血を浴びながらも首を絞めている団員にもう一度問うた。
「流崎アキラはどこだ!」
「し、知らな……。」
団員は銃を取り出そうとするが女は絞めている手を強め団員の首から骨が折れる音がし団員の首がだらっと垂れるようになった。
無頼に乗っていた1人はこの光景に恐怖し女が次は自分を狙うと思いライフルを乱射しながら後退していった。
足元に銃弾が飛ぶが女、エリスは冷静な様子で歩いていった。
敵に包囲された中ルルーシュは冷静に分析しながらギアスで奪ったサザーランドに乗り込み次の行動に移ろうとしていた。
「C.C.、仕掛けはあとどれくらいかかる?」
『10分以内かな。』
「よし、そのまま続けてくれ。ディートハルトの仕込みも生きていた。全ては作戦に基づいて…あとは流崎アキラと17階の……。」
その時、団員から通信がきた。
『こちらB2、敵KMF1機と交戦……うわぁ!?』
「ん、どうした?」
『そんな……さっきは……あぁ!?』
「B2!何だ?」
すると次は18階にいる団員からの通信も来た。
『こちらK2、敵と交戦。味方が3人やられた。』
「数は?」
『数は…1人。女だ!』
「女!?」
『何だ…こっちはKMFだぞ。なんで生身で……うわぁ!!』
「K2!おい応答しろ!……何だ?」
ルルーシュ達と合流しようと降りていたアキラに無線連絡が来た。
『こちらゼロ、流崎聞いてくれ。敵がこちらへ来ている。敵KMF1機。それと敵だが女が1人。すでに味方がやられている。』
女、アキラには心当たりがあった。
『敵が待ち構えている恐れがある。気をつけてくれ。』
アキラは無線機をポケットにしまい急ぎ階段を降りていった。
「エリス……お前なのか。」
味方機が次々にやられていき予想外の事態が起こった。
卜部の月下とカレンの紅蓮が庇うようにルルーシュのサザーランドの前に立った。
『ゼロ!とりあえず、あんただけでも逃げてくれ。元々我らが陽動、捨て石の作戦だ…ならば。』
「違うな、間違っているぞ卜部、切り捨てるという発想だけではブリタニアには勝てない。」
『ゼロ……。』
『待って……ここのフロアに誰かが。』
カレンは人影らしきものを見つけルルーシュ、ト部も敵ではないかと戦闘体制に入った。
階段から出てきた姿にルルーシュ達は唖然とした。現れたのは返り血を浴びた姿のエリスであった。
「女?まさかあれがさっきの…。」
『どう見ても民間人には見えないよね。』
3機のKMFを見つけエリスは1つのKMFを見つめた。
赤いフォルムに鋭い鉤爪のようす右腕。
「紅蓮弐式………紅月カレン。」
エリスは背負っていた機関銃を手に取りその銃口を紅蓮に向けた。
「来る!?」
生身で戦おうとするエリスにカレンは戸惑い距離をとろうとするがエリスは機関銃を撃ち流れ弾が紅蓮のコックピットへと貫通した。
「貫通した!?」
自分が紅蓮に乗っていたせいもあり油断していたが幸いカレン自身に被弾はしなかった。
「人間を相手って気分悪いけど。」
カレンは紅蓮の左腕にあるグレネードを発射させたがエリスは体を一回転させ回避した。
ルルーシュのサザーランドもライフルで攻撃するが素早い動きで銃弾の雨を掻い潜った。
「こいつ、スザクでもできない芸当を!」
ト部も月下の廻転刃刀を振り下ろすがエリスは月下の股の下を通りコックピットを狙い撃った。気づいたト部は急転回し回避したが銃弾がト部の腕を掠った。
「人を相手では当てづらい。」
だがエリスは機関銃で紅蓮を集中に狙い撃った。カレン左右で動きながら回避するが銃弾が紅蓮の各部へと被弾していった。
「くっ!これならKMFを相手するのほうがまだマシ。」
「ん?だがおかしい。」
ルルーシュはエリスの攻撃に疑問に思った。
動き回るエリスにカレンは翻弄されながらもルルーシュと同じ疑問を持った。
「こいつ、ゼロじゃなくてなんで私を?」
その時、仲間から通信が入ってきた。
『ト部隊長、物質搬入口にて敵KMF発見。』
「物資搬入口、このフロアに来るためにはそこが近道だ。」
『敵はランスロットを元にした、量産試作機かと。』
ルルーシュはこれが先程の聞いた敵KMFなのだと思った。
「そうか、しかし、今は捕縛の時ではない、破壊しろ。」
『了解しました。なっ!?消えた!なっ、何でこっちに!?』
「待て、消えたとはどういう事だ!?」
味方からの通信が切れルルーシュには焦りの色がみえはじめた。
「C.C.!そこのフロアはまだ終わらないのか!?」
『何を慌てている?そちらにはカレンに卜部がいるだろう。』
「イレギュラーが同時に発生した。」
『イレギュラー?』
エリスはグレネードランチャーで紅蓮の左脚のランドスピナーを攻撃された。破壊には至らなかったが紅蓮の脚は躓き前のめに倒れてしまった。
その時、新型のKMFが姿を現した。
「こいつがもう1つイレギュラーか!」
(ふざけるな!スザクじゃあるまいし戦略が戦術に潰されてたまるものか。)
「たった1機ならまだ!」
ト部が廻転刃刀を構えて接近するがすると敵KMFは姿が消えてしまった。
「本当に消えた……!?」
気が付くと敵KMFはト部の横にいた。
「これでは瞬間移動ではないか!?」
だが敵KMFはどこかうろたえている様子で周りを見ていた。
敵KMFが消えた瞬間エリスは頭痛に襲われ耳から出血も見られた。
「こ、これは!?」
エリスの目が赤く光りだしの同時に敵KMFはト部の横に立っていた。
「あの…KMF、ギアスを……。」
エリスの苦しんでいる様子を見てカレンは戸惑ったが左腕のグレネードをエリスに向けて撃った。
エリスは苦しみながらも回避しカレンもエリスを追い数発撃ち硝煙が発生し煙が晴れた時にはエリスの姿が見えなかった。
エリスの姿が見えず左右を見回したがどこにもいなかった。
しかし足音がコックピットの上から聞こえカレンはハッとした。エリスは紅蓮の上に昇りカレンがいるコックピットに機関銃を向けていた。
「しまった!?」
「カレン!!くっ…こうも立て続けに…。」
ルルーシュは苦々しい表情を浮かべた。
「紅月カレン、死んでもらう。」
「そんな!?」
エリスが引き金を引こうとした時背後から銃弾が飛びエリスの右手を掠り機関銃が落としてしまった。
振り向くと2丁の銃を構えたアキラが姿を現した。
「アキラ!!」
「アキ……ラ…!」
カレンとエリスは驚きの表情を浮かべていた。
アキラはエリスに向け銃を撃ちカレンから引き離そうとした。
エリスはジャンプして紅蓮から離れ機関銃を拾おうとした。2丁の銃を撃ち尽くしたアキラは銃を捨てホルスターからダブルバレルショートショットガンをとりエリスに銃口を向けた。
エリスは応戦しようとするが頭痛がまだ治まらず苦い顔をしながら後退していった。
『アキラ……。』
カレンはモニター越しからアキラを見つめた。
やはり生きていた。こうして無事な姿を見てカレンは喜びに満ち溢れていた。アキラも一瞬カレンと目が合ったがすぐに別のところを見ていた。
カレンもすぐに気づきルルーシュ、ト部のところへ紅蓮を走らせた。
「もう一度!」
ト部は廻転刃刀を横へ振ったが敵KMFはまた消え次はルルーシュの目の前に現れた。
目の前に現れた敵KMFにルルーシュはどうすることもできなかった。敵KMFも2本の剣をひとつにしランスのような形になりルルーシュに襲い掛かろうとした。
しかしサザーランドに届くよりも前に卜部の月下が敵のランスを廻転刃刀で受け止めた。
そしてカレンの紅蓮、アキラがルルーシュの前に立ち守ろうとする。
「ゼロ、お前の正体が学生であろうと構わない。切り捨てるだけではといった、その言葉に偽りはないと受け取った!紅月!」
「は、はい!」
「ゼロを頼む。彼だけが残された希望だ。……すまんな、ラクシャータ。ゼロよ、日本を民を拾ってやって欲しい。」
ト部は自分の月下ごと廻転刃刀を突き刺し敵KMFの肩に突き刺さった。
「四聖剣とは虚名にあらず!」
月下は爆発を起こし敵KMFも巻き込まれた。
「ト部…!」
だがしかし、敵KMFはまた別の場所に現れ健在であった。
「このKMF、サドナ王国と同型…。パイロットも同じか。」
アキラはショットガンを構えカレンの紅蓮と立ち塞がった。
敵KMFは更に追撃しようと動いたが何故か急に動きが止まった。
アキラとカレンはどうしたのかと思ったがC.C.から連絡が入ってきた。
『ルルーシュ、準備が整った。』
「C.C.!……卜部、お前が作ったこの刹那、無駄ではなかった。」
ルルーシュが起爆スイッチを押すと同時に、バベルタワー内に設置された爆薬が次々と爆発していく。崩れ落ちていくバベルタワー内で、瓦礫に飲まれ敵のナイトメアの姿は見えなくなった。
「そうか。これで上にいる敵は地面に叩きつけられて。」
『それだけではない。』
バベルタワーそのものが、真っ二つに折れてゆっくりと崩壊していき、大量の瓦礫が崩れ落ちたその先にはカラレス総督達がいた。
「フハハハハッ!さようなら、カラレス総督!」
カラレスの部隊は瓦礫の下敷きになり全滅になった。
別の方向からバーネット兄妹も様子を見ていた。
「あ~あ、カラレス総督死んじゃったなあれじゃあ。」
ジョディはコンピューターでエリスの安否を捜索している。
「総督よりもエリスが心配よ。」
「これぐらいの事で死ぬことはないだろうけど……ちょっと待てよ……基地からだけどカラレスの代わりに騎士のギルフォードが総督代行で指揮を取るみたいだ。」
「ふぅ、これから忙しくなりそう。」
すると車のワンセグの画面からゼロが姿を現した。
『私は…ゼロ。日本人よ、私は帰ってきた!』
「ゼロ?」
『聞け、ブリタニアよ!刮目せよ、力を持つ全ての者達よ!』
「このゼロは本物か?」
「兄さん、今調べたけど発信元は中華連邦総領事館よ。」
「中華連邦?」
ドリーは総領事館の位置を確認しある事に気づき先程折れて倒れたバベルタワーを見た。
「そういう事か。黒の騎士団は倒れたバベルタワーの中を通って総領事館へ……って事は中華連邦はグルって事か?」
ブリタニア本国でシュナイゼルも演説を聴いていた。
「ふっふふ、ゼロ、君の隣に流崎アキラはいるのかな?だとしたら観察はまた再開だ。」
『…世界は何一つ変わっていない。だから私は復活せねばならなかった!』
ゼロの演説を井ノ本は顔色変えずただ静かに聴いていた。
『…私は戦う。間違った力を行使する全ての者達と。故に私はここに合衆国日本の建国を再び宣言する!』
「…これも奴の…流崎アキラが齎せた奇跡だというのか………。」
ゼロの演説が続く中サイドカーに跨りバンドルを握るアキラが道を走っていた。
-黒の騎士団とブリタニアとの戦いがまたはじまる。だがこの時の俺はカレンとの再会で胸が熱くなっていた。-
アキラがカレンを助けるシーンは自分としては某映画監督の演出のようにスローモーションで現れるのを想像して書きました。
だから2丁拳銃です(笑)
久しぶりのその監督の映画を見たので使いたいなと思い書きました。
アキラとカレンの再会シーンはちょっとあっさりしてるなと思われますが次回詳しく描こうと思います。
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第15話
-バベルタワー倒壊現場-
軍の主導によって生存者、そして遺体の捜索で現場は人で溢れ返っていた。その中バーネット兄妹は基地から応援の隊員達と共に2人でエリスの捜索をしていた。
「反応はこの辺りなんだけど……。」
2人はパソコンを駆使し捜索をしている中隊員の1人が近くで瓦礫が動いているのに気づいた。気になり近づいて見ると瓦礫の隙間から腕が出て驚いた。
「ひ、ひぃ!?」
瓦礫を掻き分け這い出るようにエリスは姿を現した。
「ぴっ…PSです!PS発見!」
それを聞き急ぎ向かった2人が見たのは頭から流血し左腕を押さえながら立っているエリスであった。
-中華連邦総領事館-
ニュースで総領事館の外の様子を見ていたカレンの前に演説を終えたゼロが戻ってきた。
「すごい騒ぎね、ルルーシュ。」
「当然だろ?」
「えっ!?」
ゼロの仮面を脱ぎルルーシュではなくC.C.であった。
「自分達の領土の中で突然国ができたんだ。しかも、その国が宣戦布告してきたとあってはな。………何だその顔は?」
「いつの間に入れ替わってたの?」
「演説の前。」
「え?だって……。」
「声は録音。現れた時点で既に別人。マジックショーと同じだな。」
「気に入らないわね。私達には黙ってそれでアキラを使って……。」
「ふっ、なるほどそれで機嫌が悪いのか。残念だったな。文句はルルーシュに言ってくれ。」
「……ふん。」
カレンはC.C.にそっぽを向くようにまたニュース映像に目を向けた。
(アキラ……。)
-数時間前-
まだブリタニア軍が総領事館に来る直前、領事館の裏門から1人黙って出て行くアキラをカレンが追いかけてきた。
「アキラ!どこ行こうっていうの!」
「外で動ける奴が1人いないといけない。だから……。」
「それでまたあなた1人でっ!!いつもそう!1年前の時も私を置いて1人で戦って……!」
「ならどうする?ト部が死んだ今、黒の騎士団の主力はお前1人だ。わかるだろ。」
「でも!」
アキラはカレンの両手を力強く握り
「俺も……。」
目が泳ぎ少しぎこちないが言葉を選びながらアキラはカレンに自分の気持ちを伝えようとした。
「俺も…お前といたい……。」
「アキラ……。」
「お互い生きてるんだ。……落ち着いたらゆっくり話そう。…お前と話したい事がある。」
カレンは手を一度離しお互いの指が絡むように握り返した。
「それは……私も同じよ。」
カレンも笑顔で応えたがアキラはカレンと視線を合わせようとせず目線は別の方向を見ていた。
「どうしたの?」
「……はやく領事館に戻れ。……そんな格好でいつまでいるんだ。」
この時カレンは今自分の格好がルルーシュと接触するために着ていたバニーガールの格好のままだと思い出し慌ててアキラに背中を向けた。
ルルーシュの制服の上着を羽織っているとはいえアキラにこの姿を見られたことにカレンは激しく動揺した。
「もっもうすぐ軍が来るんだから早く行って!!」
止めに来たと思えば今はすぐに行けと言ってる事が真逆だなと思いながらもアキラもカレンに背を向けた。
カレンはチラッとアキラの背中を見て一言呟いた。
「………できるだけ、早く戻ってね。」
「………あぁ。」
カレンからは見えなかったがこの時のアキラの顔は綻んでいた。
ゼロの演説が各地で流されている中アキラはリヴァルのサイドーカーでルルーシュを乗せアッシュフォード学園の近くまで来ていた。
「ここからは俺が運転する。お前と一緒のところを見られたら記憶が戻ったと疑われるからな。」
「お前をあそこに置いているということは……。」
「まだ推測だがおそらく皆、皇帝のギアスをかけられているだろうな。ナナリーではなくあのロロという奴が俺の弟としている。」
「前よりも厄介になったな。」
「すぐにカタをつけるさ。そのためにこれがある。」
アキラはルルーシュの左目を見た。
「まだ暴走したままだったな。」
「C.C.が用意してくれたコンタクトで遮断はしてるがな。」
ルルーシュはアキラは携帯を渡した。
「何かあるときは俺から連絡する。お前のことだからヘマをすることはないだろうが注意してくれ。」
「わかった。…だが大丈夫なのか?中華連邦の総領事をギアスで利用してあんなところを合衆国日本だとかぬかしたががいつまでもあそこで睨み合いをするわけにはいかないだろ。」
「わかってるそのためにお前には外に出てもらったんだ。流崎、改めて聞くがまた俺と戦ってくれるか?」
「………陽炎と決着をつける。そのためにゼロには働いてもらわないとな。お前は俺達を駒として使うんだ。お前だけ楽はさせない。」
「利用する者される者お互い様か……。ふっふふ。」
2人は不敵な笑みをこぼした。
「よろしくな流崎、いやアキラ。」
ルルーシュが差し伸べた右手をアキラは握手で返したが
「ルルーシュ、最後に言っておく。」
アキラは握った手を強く握りルルーシュの手に痛みが激しく伝わった。
「今回は2度目が巡ってきたが3度目はないと思え。」
「!!」
「……じゃあな。」
(そんなのわかってるアキラ!!ナナリーを救って…今度こそ!)
-中華連邦総領事館 正門前-
正門前では中華連邦の武官の黎 星刻とブリタニアの先程までアキラ達とバベルタワーで戦闘を行っていたKMFが対峙していた。
「ブリタニア軍なら既にお帰り頂いた。それともゼロの身内の者か?」
「さぁ、どちらなんでしょう。」
KMFから降りてきたのはロロであった。
「謎かけは好みではない。」
「えぇ、僕もそうですよ。知りたいんです真実を。だから殺しにきました、ゼロを。」
ロロの右目が怪しく光る寸前ロロから電子音がし警備兵が警戒したがどうやら携帯の着信音であった。ロロは懐から携帯を取り出し携帯に耳を傾けた。
『ロロ、大丈夫か?』
「っ!?兄さん?」
『よかった。連絡が取れないから心配したんだぞ。無事なんだな?安全なところにいるのか?』
(どういうことだ?今演説しているゼロは…別人?)
電話の相手がヴィレッタに代わり話を聞いたロロは電話を切りKMFに乗り込んだ。
「電話は終わりか、少年。」
「…終わったみたいです、いろいろと。」
-陽炎 ヨコタ基地-
頭に包帯を巻かれベッドに横になっている眠っているエリスの横でドリーとジョディはエリスの経過報告書に目を通していた。
「キャンセラーを使ったって事はバベルタワーの中でギアスを使う人間がいたってことね。」
「エリスの場合1度使ったら脳に直接負担がかかるから。まぁ脳以外は大きな怪我もないから2、3日安静にしてたら元通りになるさ。けど…誰がギアスを?」
「やっぱり……ゼロ?」
「一番怪しいのはゼロだろうね。もしくは別の誰か。」
「どちらにしろこの子のためにもギアス対策に本腰をいれる時が来たってことね。」
-アッシュフォード学園-
学園に戻ったルルーシュは自分達の生還記念ということで何故かパーティーの準備をさせられていた。
「いや~、けどルルーシュがいて助かったぁ。この手のキャラって生活力ないのが普通なのに。」
「会長、これ俺とロロの生還記念パーティーですよね?」
「仕方ないでしょ、リヴァルは味音痴だし、もう一人は…。」
シャーリーは料理に悪戦苦闘していた。リヴァルはもう1人いないことに気づいた。
「あれ、肝心のロロは?」
その答えはミレイが代わりに答えた。
「声はかけたんだけど…。ほら、兄と違ってナイーブで」
「そんなんだから、友達いないんじゃないの?」
「おとなしいって言ってあげなよリヴァル。」
皆の様子を見てルルーシュは激しい怒りを覚えた。
(みんなナナリーのことを覚えていない。いや、妹のナナリーが偽りの弟にすり替わっている。俺の記憶を変えただけではなく、生徒会のみんなまで玩具に…。なんてことをっ!!)
だが同時にある疑問も生まれた。
「けど料理って言ったらやっぱりカレンの手作り弁当は……。」
「ちょっと、リヴァル!」
リヴァルは慌てて口を閉じた。
「す、すみません…。」
「いいのよリヴァル。1年前のブラックリベリオンの時だってあの子私達を傷つけなかったじゃない。優しい子だって私達わかってるから。」
「そうですね。でもリヴァルの言うとおりカレンがつくってきたお弁当美味しそうだったな。………あれ?誰かカレンのお弁当食べたことある?」
「いや…だって。ん?あれおかしいなぁ?」
シャーリーの一言でリヴァル達は頭を傾げた。
「カレンって誰かに弁当つくってたよな?」
「リヴァルじゃない?じゃあ…ルルーシュ?」
「俺じゃないですよ。」
「あれ?じゃあ誰だったのかな?」
(おかしい、ナナリーと一緒に流崎アキラも。いやあいつの場合、ロロのような替わりがいない。存在そのものが消えている。黒の騎士団絡みならカレンも一緒ならまだわかる。アキラは一兵士に過ぎない。……あの男はアキラのこと知っているとすればあいつは一体何者なんだ?)
その頃ロロは学園の図書室にある隠しエレベーターで降りた先にある地下室へ入ってきた。
ここはルルーシュを監視、C.C.の捕獲を目的としている機密情報局の司令部である。
ヴィレッタを含む局員達が先の事件に関する報告を行っていた。
「バベルタワーの事件以降、ルルーシュ・ランペルージに特段の変化は見られません。」
「……バベルタワーへ潜入したカルタゴ隊の全滅とルルーシュを結びつける情報は今のところ存在しません。」
「監視は完璧。ギアスを使う隙間もない。ヤツがゼロなら学校に戻って来るのも妙だし…。だが奴の流崎アキラ。奴がルルーシュと接触しカルタゴ隊と戦闘を行ったことは事実だ。」
ヴィレッタからでたアキラの名。機密情報局はルルーシュ、C.C.の2件の他アキラの抹殺も含まれていた。
アキラの名を聞きロロは眉をひそめた。
「流崎アキラも事件以降の消息は不明。ルルーシュとの接触もなし。」
「ロロ、お前は流崎アキラと会ったみたいだがその時、ルルーシュに何か変化はあったか?」
ヴィレッタからの問いにロロは不快な顔を浮かべた。
「にい……ルルーシュは特に何も変わってなかったですよ。それより結局C.C.はどこにいるんですか?」
「ルルーシュと接触していないとしたら、総領事館にいる可能性は低い。」
「つまり、事件前と一緒。…どこにいるかわからない。」
「我等、機密情報局はC.C.捕獲と流崎アキラの抹殺の作戦を平行して行う。各員、これまで通り餌の監視を続けよ。」
それから3日経ち大きな動きはなくアキラはシンジュクを拠点に裏ルートで武器の調達。情報収集として繁華街へ出歩いたりしている。今日も繁華街に出て大型ビジョンでニュースを見ていると中華連邦総領事館の映像が出て何か変化が起こったのかとアキラは思った。
『聞こえるか、ゼロよ。私はコーネリア・リ・ブリタニア皇女が騎士、ギゴルバート・G・P・ギルフォードである。明日15時より国家反逆罪を犯した特1級犯罪者、256名の処刑を行う。」
映し出されたのは藤堂、扇をはじめ捕らえられた黒の騎士団達であった。
『ゼロよ!貴様が部下の命を惜しむなら、この私と正々堂々と勝負をせよ!』
このニュースが流れたと同時にアキラの携帯が鳴った。
「俺だ。カレン見たか?」
『えぇ、でもまだルルーシュから何も……。』
「なら、待つんだ。」
『えっ!?ちょっと!』
「それともお前1人で助けにいくか?」
『それは…。』
「焦っても仕方がない。明日の15時までにあいつから何か連絡があるだろう。それまで変な気をおこすなよ。」
そう言うとアキラは携帯を切り場所を移そうとした時また携帯がなり発信者の名前を見てやはりとアキラは口元をつり上げ電話を出た。
数時間後、ルルーシュとシャーリーの2人はヴィレッタの誕生日プレゼントを買いにショッピングセンターまで出掛けた。
2人の後を機密情報局の局員、そしてミレイ、リヴァル、ロロがつけていた。
(まさか会長達までついてくるなんてな。それにロロも。)
シャーリーと携帯ショップへ入店しルルーシュは行動に移した。
店員に書類について聞きたいことがあると言いルルーシュは左目のコンタクトを外した。
「お願いしたいことがあるのですが…。」
「…はい、なんでしょうか?」
ルルーシュは書類にある番号を書いた。
「この番号に電話して欲しいのです。あと……。」
アッシュフォード学園の近くで待機しているアキラの携帯が鳴り相手は聞いたこのない男の声であったがアキラは動じることなく淡々と聞き、会話が終わりアキラはボイスチェンジャーを使いある場所へと電話した。
「ハコダテ租界よりお越しのマクシミリアン様、ハコダテ租界よりお越しのマクシミリアン様、お電話が入っております。」
ショッピングセンターに流されたこのアナウンスを衣料店の試着室から聞いたルルーシュは不敵な笑みを浮かべた。
(手筈通りにアキラの電話であとは……。)
先程の電話から約10分後、学園の正門から黒のワンボックスカーが出て行きどこかへ行った。その直後ルルーシュから連絡が来た。
『尾行者の1人をギアスで支配した。そいつの嘘の情報でヴィレッタ達が出て行ったはずだ。奴等は図書室の……。』
生徒達に見つからないようアキラは身を隠しながら校舎へと入り図書室へと行き本棚に隠してあるボタンを押すと本棚がスライドしエレベーターの扉が現れた。
ルルーシュの居所がわからなくなりロロは急ぎ学園に戻り地下の機密情報局へと向かった。
「兄さんの位置は!?……?」
司令部へ入ったロロであったが
「……誰もいない?………!?」
後に誰かいると振り返った瞬間、腕を取られ壁へ打ち付けられた。
「お、お前は!?」
ロロを組み伏せたのはアキラであった。
「ま、まさか…!」
「C.C.を探しに行ったんだよ。」
銃を構えたルルーシュが姿を現した。
「やっぱり、目覚めていたの?」
「尾行者を俺の奴隷に、絶対支配下におかせてもらった。やはりお前達はC.C.の捕獲が最優先らしい。たとえ間違った情報でも………ふっふふ。」
「ここは指紋認証だったがロックの解除はルルーシュが教えてくれた。」
「この鳥篭みたいな学園も、今から俺の自由の城になる。そして、お前はナナリーを探すための駒になってもらう。」
ルルーシュがコンタクトを取ろうと手を左目にあてた時アキラに抑えられていたロロが突然姿を消した。
「なっ何!?」
「っ!?」
ルルーシュと抑えていたはずのアキラも困惑した。ルルーシュが持っていた銃は消え、ロロが急にいなくなりバランスを崩したアキラはルルーシュの背後を見て叫んだ。
「ルルーシュ!」
「っ!!」
ルルーシュの背後にまわりルルーシュが持っていた銃を構えたロロがいた。
何故か胸を押さえながらロロはアキラに警告した。
「動かないで、動けば撃つ。」
銃を向けられながらもルルーシュで冷静であった。
「お前のギアスは時を止める能力か?」
「答える理由はありません。ボクに与えられた指令は、ルルーシュ・ランペルージに記憶が戻ったなら、ゼロが復活したなら抹殺する。」
「…16、17、18。」
「何ですか、その数字は?」
「お前が現れた時から俺は心の中で時を数えていた。だが、今はその数値がずれている。何故だと思う?」
司令部に置かれている監視カメラで先程の様子の一部始終が映し出されていた。
「ロロ、お前が止めたのは時間ではない。俺の体感時間だけだ。」
「それがわかったところでボクには勝てません。」
「そうか……なら。」
アキラはデジタル式の腕時計のボタンを押し時計のカウントが数えだしロロに見せた。
「そのタイマーは?」
「ここの司令部に時限爆弾を仕掛けた。お前達を抑えるつもりで仕掛けたがこうなったら仕方がない。」
「何だと!?」
「ルルーシュを道連れに!?」
ルルーシュは驚いた様子でロロもアキラの行動に困惑した。
「今の俺達にお前のギアスには勝てない。だったら道連れにして死ぬしかない。これならお前のギアスは効かないからな。」
「ハッタリだ!」
「……なら俺を殺すなり好きにしろ。それとギアスで起爆スイッチを奪おうとしても無駄だ。この時計には仕掛けがあってな簡単にはタイマーが止まらないようにしてある。」
(どうすれば? 場所を漏らすようなことは決して……。だからと言って…)
「アキラ、待ってくれ!」
焦るロロにルルーシュは声を荒げて叫んだ。
「アキラ!俺はロロに聞いてもらいたい事があるんだ!ロロ、お前ならわかるはずだ。今俺が死ねば2つとも手に入らないと。」
「2つ?」
「1つはこの俺を餌に探していたC.C.。俺を見逃してくれたらC.C.を引きずりだしてやろう。」
ルルーシュの言葉にロロは目を丸くした。
「…売るのか、C.C.を?」
「自分の命とは比べられないからな。」
「流崎アキラの抹殺も任務に含まれている。」
「アキラが生きているのはここにいるお前だけが知っている。他の奴らが知る術はない。」
「………もう一つは?」
「お前の命。」
「……命なんて」
「ロロ、未来とは何だ?」
「!?」
「未来とは希望だ。お前の任務の先に希望はあるのか?C.C.を捕まえることでお前にはどんな未来が開ける?今のままだ、何も変わらない」
「これは任務だ。」
「俺を殺したら任務は果たせない。アキラ、タイマーを止めてくれ。俺は死ぬわけにはいかない。頼む!」
ルルーシュの懇願にアキラは黙って時計のボタンを複数回押しタイマーを止めた。
「………俺は何も聞いてないからな。」
「心配するな。これが終わればお前の身の安全も保障する。ロロ、C.C.を捕まえたいんだろう?明日、俺がC.C.を引きずり出してやる。それでお前は新しい未来を掴める。大丈夫、嘘は付かないよ、お前にだけは。」
「……。」
図書室に戻ったルルーシュはアキラに問いただした。
「アキラ、さっきの……。」
「ルルーシュ明日、俺にKMFを用意してくれ。何かあったらまた連絡をくれ。」
「あっ……。」
アキラはルルーシュを置いて早々に校舎から出て行った。
-この時のルルーシュとロロは知らなかった。自分達が俺の演出によってステージに立っている役者だと……-
少し中途半端ですが、一先ずここで〆ます。
※アキラ、ルルーシュ、ロロ3人の対峙のシーンに付け加えました。すみません忘れてました。
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第16話
-アッシュフォード学園 クラブハウス-
あれからルルーシュはロロに関する情報を集めていた。
(奴に俺の記憶が戻ったことを知られた今、向うの方に分がある。あの場はどうにか切り抜けたが時間がない藤堂や扇達の処刑がもうすぐだ。どうにかしてロロを殺して…いや殺せたとしても情報局にバレてナナリーが……。)
ふとルルーシュはパソコンを操作する手を止めた。
(だがアキラの奴……。)
アキラの突然、爆弾を起動させた事にルルーシュはおもわず焦りの表情をだしてしまった。
(俺を道連れにしようとして…はやく言ってくれればまだ策を……ん、策?)
アキラの行動を思い返しルルーシュはある答えを導き出し声を押し殺し口元をつり上げた。
(ふっふふふ、そうか……なるほど。アキラの奴。)
アキラの行動を理解したルルーシュは止めていた手をまた動かした。
-シンジュクゲットー 地下鉄ホーム-
「黎星刻?」
『そう、今その男が総領事のトップなの。』
「ギアスをかけた総領事館を殺して……。カレンお前達は無事なのか?」
『今のところ私達をブリタニアに引き渡すような素振りはないけど……。』
「この騒動を利用して総領事を殺したんだ。」
『私達に利用価値がなくなれば…。』
「………明日、ルルーシュと動く。紅蓮をいつでも動けるようにしておくんだ。」
『応急処置だけど大丈夫。アキラが教えてくれたおかげよ。』
アキラは以前からカレンに簡易であるがKMFの整備を教えていた。先の戦闘の修復もカレン自身で行った。
「俺達の戦力は僅かだ。」
『わかってる。だからこそ…。』
「今度は短期で終わらせる。」
『そうね…!』
-ブリタニアに中華連邦、そして陽炎。奴らから抜け出す隙間をつくるにはルルーシュの策、そして……。-
-翌日-
処刑当日
中華連邦総領事館前付近に設置してあるゲート前には大勢のイレブン、日本人達が集まっていた。
「…来ないか」
現場の指揮をしているギルフォードは半ば失望しつつ呟く。
「ギルフォード卿、お時間が…。」
「…そうか。陽炎に何か動きは?」
「いえ、特に…ゲートの外れに配置しており何も動きは…。何か?」
「暴動が起こった場合として派遣された部隊があのKMF1機だけなのが不気味でな。」
「見た事のない機体です。連中は何を考えているのでしょう。」
「とにかく、今は黒の騎士団だ。」
「エリス、機体はどうだい?」
『……異常なし。』
「わかってると思うけど今回銃火器は控えてくれよ。何かあったら外交問題になるから。」
今回、ヘルハウンドには右肩に付属してある専用のライフルが取り外された状態である。
「兄さん、もう時間だけどゼロは現れないようね。」
「イレブン達がっかりだろうな。」
「私達も無駄足ってことかな……ん?」
ジョディは車両の窓を見つめニヤっと微笑んだ。
「兄さん、無駄足じゃなさそう♪」
「違うな、間違っているぞ、ギルフォード!!」
ギルフォードによる処刑の合図が行われた直後KMFのハッチを開き立っているゼロが姿を現した。
「来たか、ゼロ!」
ゲートが開きゼロとギルフォードが対峙する。
「ゼロが現れた!アキラは?」
ゼロが現れ領事館にいるカレン達にも緊迫の空気が包んだ。
「落ち着け、ゼロ1人のようだ。」
「そんなはずはない。どこかにいるはず。」
「お久しぶりです、ギルフォード卿。出てきて昔話でもいかがですか?」
「せっかくのお誘いだが、遠慮しておこう。過去の因縁にはナイトメアでお答えしたいな。」
「君らしいな。では、ルールを決めよう。」
「ルール?」
「決闘のルールだよ。決着は1対1で付けるべきだ」
「いいだろう。他の者には手を出させない」
ギルフォードはランス、ゼロはなぜか鎮圧用のシールドを持った。
「質問しよう、ギルフォード卿。正義で倒せない悪がいる時、君はどうする?悪に手を染めてでも悪を倒すか?それとも、己が正義を貫き悪に屈するを良しとするか?」
「我が正義は姫様の下に!」
ランスを構えるギルフォードにゼロは高々に叫んだ。
「私なら悪をなして巨悪を討つ!」
その瞬間地面は揺れゼロやギルフォード達がいる場所が斜めに捲れ上がり軍のKMFが次々と総領事館内に落ちていく。
「これはブラックリベリオンの!?最初からこれを…くぅ。」
シールドの上に乗ったゼロの無頼はギルフォードのグロースターをジャンプ台代わりにし、無頼は総領事館内に飛び込んだ。
「黒の騎士団よ!!敵は我が領内に落ちた!ブリタニア軍を潰滅し、同胞を救い出せ!!」
ゼロの合図でカレン達が扇達の救出に駆けていく。
仲間が扇達を救出している間カレンは敵KMFを1機2機と墜していくが1機の敵KMFの出現で状況は変わった。
仲間の無頼が敵の撃破されカレンはその姿を見た。
「こいつ新型?」
カレンはエリスのヘルハウンドと初めて対峙する。
右腕で捕らえようとするがエリスは左右へと動きながら回避し前蹴りを紅蓮に放った。
バランスを崩した紅蓮をカレンは持ち直し輻射波動を使おうとするがヘルハウンドの左腕に装着してあるクローが伸び紅蓮の右腕の付根を掴み紅蓮を上下と激しく打ちつけ紅蓮を宙に浮かした。
「くぅ…、こいつ。」
『こんなものか紅月カレン…。』
「っ!? あんたは?」
『私はエリス、パーフェクトソルジャー。』
「パーフェクトソルジャー……。アキラが言ってた…。」
カレンはバベルタワーから総領事館へ向かう途中アキラから先程対峙したエリスの事について簡易であるが聞いていた。
『アキラが強くお前に拘っている。お前は一体……。』
カレンは右腕をパージさせ自由になった紅蓮は呂号乙型特斬刀を構えてヘルハウンドに斬りつけた。
エリスはうしろへ後退するが伸びていた左腕のクローアームが切断された。
「悪いけど今あんたに構ってる暇ないの。それにここはねぇ、もう日本の領土なんだよ出て行きな!」
その頃ゼロの無頼を1機のKMFが追っていた。ロロが乗るヴィンセントである。
(やっぱり逃げるんですね。C.C.を差し出す約束は…。ルルーシュ、最初から僕に嘘を。)
「まだ、まだ捕まるわけには。」
スラッシュハーケンでゼロの無頼の左腕を破壊し追い詰める。
(僕に未来をくれると言ったくせに。)
「ここで死ぬわけには!」
その時、ロロに向かってどこからか銃弾が放たれた。
(しまった!!物理現象は止められないっ!!直撃コースだ。こんなところで!?)
直撃すると思われたがゼロの無頼がロロを庇い被弾した。
「な、何故?……どうして僕を?」
『お前が弟だからだ』
「っ!!」
『植え付けられた記憶だったとしても、お前と過ごしたあの時間は嘘はなかった』
ゼロ=ルルーシュの言葉にロロは動揺した。
「弟……僕が…。そんな…自分の命が大事だって、そう言ったくせに…。そんなくだらない理由で。」
『やめろデヴィット、総領事館に当たったら中華連邦と戦争になるぞ。それに何故配置から離れた?』
狙撃担当であったはずのグラストンナイツのデヴィットが持ち場から今崩れた場所を見下ろせる場所にいたのだった。
「予想外の事が起こったんだ。それに対応したまでだ。」
『ん?お前デヴィットじゃないな。誰だ!どこの所属の者だ!』
通信を切りルルーシュとロロの事態を見守ったアキラは先程現れたエリスのヘルハウンドに目を向けた。
対峙する紅蓮とヘルハウンドの間に銃弾が飛びカレンとエリスは銃弾が飛んだほうを見た。
狙撃用ライフルを構えたグロースターが降りてきた。
「カレン、離れるんだ!今の紅蓮では勝てない。」
『アキラ!』
アキラは紅蓮の前に立ちエリスのヘルハウンドと対峙した。
「右腕はどうした?」
『ごめん、ちょっとドジって…。』
近くに紅蓮の右腕が転がっているのがアキラから確認できた。
『アキラ……。』
「エリス、こいつに手だすなら容赦しない。」
『それほどまでにお前は……。』
「…………。」
左肩に装着してある盾から柄が現れたが刀身が数珠状に分割されていた。
『アキラ!』
「気をつけろ!」
2機はヘルハウンドから距離をとるがエリスはこの奇妙な剣を鞭のように振り回しアキラが乗るグロースターが持っていたライフルが剣の刃に切断されてしまった。
「そこまでだ、ブリタニアの諸君!これ以上は武力介入とみなす。引き上げたまえ!」
ここまで静観していた中華連邦の星刻の声が響きエリスの動きがとまった。
『エリス聞こえたでしょ。撤退よ。これ以上は外交問題に発展するわ。』
ジョディからの指示でエリスは静かにその場から去っていった。
エリスが去り緊張の糸がきれ2人は安堵の色を見せた。
ブリタニアが撤退し捕まっていた仲間を解放できカレン達は再会に喜んでいた。
「カレン、ありがとう。」
「扇さんも無事でよかった。」
カレン達の姿をアキラは少し離れたところで見ていたが玉城がアキラを見て叫んだ。
「おぉ流崎!」
玉城はアキラの肩に腕をまわした。
「助けてくれるって信じてたぜ。」
「思ってたより元気だな。なら今から紅蓮の修理手伝ってくれ。」
「げぇっ、やっと開放されたと思ったらもう扱き使う気か!? 冗談でもよしてほしいぜ。」
「あぁ冗談だ。」
冗談など絶対言わないと思われたアキラから冗談を口にし玉城意表をつかれた思いがした。
「流崎、君にも礼を言わないと。」
「助けてくれてたことに感謝する。」
扇、藤堂もアキラに感謝の言葉を伝え、アキラはうしろにいる朝比奈を見つけお互い顔を合わせた。
「何だその顔は……借りができたとは思わないからな。」
「そんなのお前から期待してない。」
2人のやり取りにまわりは笑いがおこりその中でアキラはルルーシュと並んで立っているヴィンセントを見つめた。
-処刑時間30分前-
「…キーはこれだ。」
ルルーシュによりギアスをかけられた狙撃担当のデヴィットはアキラにKMFのキーを渡した。
アキラは当て身をしデヴィットを気絶させた。
「わかってるな。」
「あぁ、お前の芝居に付き合ってやる。」
「ふっ、芝居か…。アキラ、お前も演技がうまかったな。」
「……どういう意味だ?」
ルルーシュは不敵な笑みを浮かべた。
「本当はあそこに爆弾を仕掛けていないんだろ。」
ルルーシュの問いにしばらく沈黙するがアキラはフッと苦笑いをした。
「いつわかった?」
「あれから落ち着いて考えたらすぐにわかった。陽炎との結びつきがあるかも知れない奴等をそう簡単に殺そうとするはずがない。俺と同じ奴等を利用とするお前が。」
「お前がうろたえてる姿を見せたら奴も信じるだろうと思った。あとはお前を利用して奴を殺そうと思ったが……。」
「ロロは使える。しばらくあいつの兄弟ごっこに付きあってやる。まぁそのあとは…。」
「……駆け引きはお前のほうが勝るな。」
「ふふっ、まだ死なせるものか。何がロロ・ランペルージだ。俺の家族は……ナナリーだけだ!」
夜、開放された黒の騎士団のみんなが外で騒いでいる時、ルルーシュ、アキラ達4人は1室にいた。
「それでルルーシュ、あなたを助けたあのKMFは私達の味方って事でいいの?」
「そうだカレン。名前は明かせないが、我々の賛同者と考えていい。」
「アキラ、あなたは知ってるの?」
「…あぁ。」
2人の返事にカレンはムッとした。
「それ私にも秘密にしないといけないこと?」
「いいだろう。秘め事くらい持ちたい時もある。」
ルルーシュの返答に不満を持ちカレンはアキラの顔を見た。カレンと目が合ったアキラは溜息を吐いた。
「……こいつは監視されてるんだ。」
「でもっ!」
「こいつはゼロだ、俺達が不利になるようなことはしない。まぁ
「確かに……。」
呆れたような目つきでルルーシュを見つめ視線を感じたルルーシュは顔を横にむけた。
「何かあったときは俺達でこいつを止めればいい。いやカレン1人でも十分か。」
「お前…。」
このやり取りをC.C.は面白そうに眺めていた。
「2人共もうそれくらいにしてやれ。こいつがかわいそうだろ。」
ニヤニヤと笑顔でこちらを見るC.C.にルルーシュはおもわず舌打ちをする。
「ふふっ、わかった。この話はルルーシュに任せよう。カレンそれでいいだろ?」
「……わかったわよ。」
「それでゼロの正体は?知っているのは組織内で私達だけとなったが?」
「それも伏せておく」
「ルルーシュ。私は今まで通り、ゼロの親衛隊隊長でいいのかしら?」
「あぁ、頼む。アキラ、お前はカレンの下で動いてもらうが…。」
「そのつもりだ。」
「よろしくねアキラ。今度は隊長を殴って勝手な行動はしないでね。」
「……あぁ」
「それでアキラ、お前に聞きたいことがある。」
先程の空気から一転ルルーシュの口調が変わりアキラもその態度を見て彼が聞きたいことが理解できた。
「PSか…。」
「あぁパーフェクトソルジャー。詳しい事を聞きたい。」
アキラはサドナ王国での戦いでの遭遇から井ノ本から聞いたエリスについて3人に話した。
井ノ本の名前が出てC.C.の表情が僅かだが反応した。
「ギアスを超える完全なる兵士…。」
ルルーシュは額に手を当てる。
「だがあの男がギアスを研究していたとは…。」
「アキラ、今日現れた新型のKMFがそのエリスって子の専用機?」
「あぁ、おそらくランスロットと同等いやそれ以上だな。」
「……今の黒の騎士団の戦力では。」
「勝てないだろうな。無頼数機、急ごしらえの紅蓮じゃあ相手にならない。」
アキラの話を聞きルルーシュは溜息を吐き額に手をやった。
「ラクシャータから聞いた話では紅蓮に飛行装備と新しい輻射波動がもうすぐできるらしい。」
「それまでに間に合えばいいがな。」
アキラの言葉にC.C.は苦笑いで返した。
ルルーシュ達と別れ1人になりC.C.は外を眺めた。
「井ノ本……お前は何を考えてる。ギアスを超えて何を目指す………。」
-ブリタニア 本国-
執務室にてシュナイゼルは1人で佇んでいる時ドアのノックの音が聞こえた。
「失礼します。」
側近のカノンが入ってきてシュナイゼルにある書類を渡した。
「エリア11からの報告です。」
カノンからの書類に目を通しシュナイゼルは溜息を吐いた。
「彼女がもうすぐ本国から発つ。無事に送り届けたいがそうもいかないようだね…。」
「殿下、言ってる事と顔が一致してませんよ。」
「そうかな?」
「えぇ、とてもいい笑顔です。」
カノンの指摘にシュナイゼルは苦笑いをした。
「流崎アキラそしてゼロ、何も起こらないと考えるほうが難しいよ。」
「殿下、エリア11にてあの部隊の準備は整いつつあります。」
「ふふっ、では観察を再開させようか、流崎アキラの。」
夜も更け、アキラは1人肌寒い屋外で紅蓮の修理を行っていた。
あれからルルーシュはゼロとして皆の前に現れ改めてブリタニアと戦うと宣言し皆もそれに賛同した。途中1年前の事を追求されることもあったが兎にも角にもこれで人員での戦力は確保できた。
月明かりと照明の光を頼りにアキラは工具を片手に作業をしている。未だKMFの戦力が不足している黒の騎士団、アキラはカレンが十分に戦えるようにと今出来る最低限の整備を行うと皆が床についている中手を休まずに続けている。
背後から足音が振り返るとそこにはコーヒーカップを持ったカレンがいた。
「……パイロットは休んでろ。」
「それはあなたもでしょ。」
「俺のことはいい。それとも愛機が勝手にいじられるのが嫌か?」
まるでからかう様に言うアキラにカレンは笑って返した。
「まさか。あなただから任せられるのよ。」
カレンはカップをアキラに差し出した。
カップを受け取りアキラは暖かいコーヒーを口にした。
2人は近くの階段に腰を落とした
「どこまでできた?」
「まだ半分ってところだな。できたとしても枢木、エリスを相手じゃあ勝てない。今できることはお前を死なせないよう仕上げる事だけだ。」
「アキラ……。」
「心配するな。お前は俺が守る。」
アキラの言葉にカレンは頬を染め微笑みお互いの肩が触れそうなところまで体を寄せた。
「ねぇアキラ、あれからあなたが死んだってみんなは思ってたけど私はそうは思えなかった。……根拠はない。けど生きていて私の近くにいるような気がしたの。」
カレンは満月を見上げブラックリベリオンから1年あったことを思い出していた。
「あなたもきっとどこかで戦っているって…だから私も絶対負けたくないって思ったの。」
アキラは何も答えないそれでもカレンは続けた。
「私達がここで動けばきっとあなたも来てくれるって信じてた。それがすぐ近くにいたなんて私…。」
その時、自分の右肩が重くなっているのに気づき横を見るとアキラの体がこちらに倒れ肩があたったのだ。
「アキラ!?」
しかし、アキラは一言も喋ることはなかった。代わりに聞こえるのは小さな寝息であった。
「ふふっ何か新鮮、アキラのこんな顔…。」
アキラが持っていたカップを取り上げこんな無防備な姿を見てカレンの顔は綻んだ。
「ねぇアキラ、月が綺麗だね。」
-カレンが傍に来た時俺は不思議と心地のいい感覚を感じ俺は深い眠りについた。カレンに自分のだらしない姿を見せてしまった。だが羞恥心はなかった、ここが俺の安らぎの場所なんだと感じた。-
ヘルハウンドの新装備として左腕に装着してあるクローを伸縮できるアーム式にし専用の剣の元ネタは高橋監督のガリアンにでてくるガリアンソードです。
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第17話
中華連邦総領事館にある1室でアキラはパソコンを操作していた。
パソコンのディスプレイからはエリスのヘルハウンドの映像が流れている。アキラはヘルハウンドの動き1つ解析しながらこれをメモリースティックへ記録させる。
「相手の手の内を知る。元レッド・ショルダーだけのことはあるな。」
ソファーに座っている黎星刻は黙ってアキラの作業を見ていた。
「1年前、治安警察と軍を相手に1人で戦い壊滅させたのがレッド・ショルダー…いや陽炎にいた人間と噂では聞いていたが……君のような少年だったとは。紅月カレンといい君達は……」
「部屋を提供してくれたことに感謝するがあんたと無駄話をするつもりはない。」
そう言うとアキラはまたディスプレイと向き合い作業を続ける。アキラの態度に星刻は苦笑いをしソファーから立ちあがった。ドアノブに手をかけようとした時カレンが慌てて部屋へと入ってきた。突然入ってきたカレンに星刻は驚いたがカレンは星刻に目もくれずアキラの名を叫んだ。
「アキラ、大変!一緒に来て!」
アキラは深い溜息を吐き
「……どうした?」
「C.C.が……。」
カレンはメモ書きをアキラに見せ置き手紙の内容にアキラは眉を潜めた。
ナイトオブセブン、スザクの歓迎会が行われている中、アキラは帽子を深く被りサングラスもかけ人混みに紛れていた。
その中で緑の物体をした着ぐるみを見つけ近づき耳打ちをする。
「アキラどうだった?」
「いないな。あいつ…たかがピザのために…。」
「とにかく早く見つけないと私もうちょっと奥のほう行ってみる。」
そう言うとカレンはアキラと別れてアキラは校舎近くのほうを歩いていった。
学園の中を歩くのも1年ぶりだとアキラは思い出していた。
ライ・バートラーなど偽名を使って過ごしていたが今まで戦場しか知らなかった自分の中でここが一番穏やかに過ごした日々はなかっただろうとアキラは思い返していたが我に返り今はC.C.を探すのが先決だとアキラは露店等が並ぶ広場へと足を運んだ。
「いや~、結構楽しいものだなぁ、庶民の学校も。」
陽気にはしゃいでいる男と隣には携帯のカメラでまわりを撮ってる少女が楽しくに学園を見てまわっていた。
アキラは露店の周りを探りながら歩き2人とすれ違うように去っていく。
少女は何かに気づきアキラの後姿を見た。
「アーニャ、どうしたんだ?」
「………何でもない、ジノ。」
「ん?そうか、おっ!あっち行ってみよう。」
ジノが先に歩くがアーニャはアキラの姿をじっと見つめていた。
「………イヤなにおい…。」
そう小さく呟きアーニャはアキラの横顔を携帯のカメラに収めた。
この2人がナイトオブラウンズであることはこの時のアキラは知るはずもなかった。
なかなか見つからないC.C.にアキラは巨大ピザをつくる会場近くの校舎裏を散策していると巨大なコンテナを持ったKMFが現れシャリーと着ぐるみを着たカレンが追いかけるように走る姿を見て気になりついていこうとするが直後にスザク、ミレイも続けて来てアキラは身を隠した。
どうしたのかとアキラは息を切らしているルルーシュを見つけ姿を出した。
「ア、アキラか……。お前も…ここに。」
「何があった?」
「あいつ…C.C.がコンテナの中に…。」
先程KMFがコンテナを持って去って行くのを思い出しアキラは舌打ちしアキラはルルーシュを残し走り去っていった。
アキラが会場に着いた時に既にKMFはコンテナの中のトマトをピザの生地に入れるところであった。
その直後スモークがかかり辺りが煙に包まれる直前トマトまみれになっているC.C.を見つけ煙に紛れ込み彼女を抱えて脱出した。
「また、お預けか……。」
「……一生ピザ食べてろ。」
相変わらずの調子にアキラは皮肉を込めて悪態をついた。
迎えの車を星刻が用意してくれるとのことで待つことになったアキラはルルーシュ達がいる学園の屋上へとあがって行った。
「アキラ、ご苦労だったな。」
ルルーシュはアキラに労いの言葉を送ったがアキラは不機嫌な表情を隠さなかった。
「こんなのはもう御免だ。」
アキラの態度にルルーシュは苦笑いをする。
「わかってる。それとアキラもう1つ頼みたいことがある。」
「今度は何だ?この歓迎会の後片付けか?」
「ふふっ、そう怒るな。アキラ、そろそろ鳥篭から出ようと思うんだが。」
その言葉でアキラの表情は変わり眼光も鋭くなった。
「手伝ってくれるか?」
「こっ…これは?」
機密情報局の地下司令部に入ったヴィレッタが見たものは銃を構えたロロと局員を抑え拘束しているアキラであった。
「ロロ…寝返ったのか……!? それに流崎アキラ…!?」
「ヴィレッタ・ヌゥ、ゼロの正体を突き止めた功績として、男爵位を得て中佐に昇進。だが裏では黒の騎士団と通じていた。」
「ルルーシュ、あとは任せる。」
アキラは司令部から立ち去ろうとヴィレッタの横を通り過ぎる際静かにつぶやいた。
「あんたには聞きたいことがある。」
ヴィレッタはアキラの言葉に悪寒のような寒気がした。
領事館へと戻ったアキラは疲れたようにソファーに腰を落とした。
「疲れたの?」
「KMFの整備するほうが楽だ。」
「アキラらしい。」
アキラの姿にカレンは苦笑いをする。
「だが…。」
アキラは学園での事を思い出し口元が緩んだ。
「相変わらずだったな。」
カレンは嬉しそうに微笑んだ。
「また戻りたくなった?」
「さぁ、どうだろうな。」
そう言うが満更でもなさそうな表情であった。
カレンは汗を流そうと部屋を出て1人になりしばらくして自分の携帯が鳴り発信者がルルーシュだと知りアキラは携帯をとった。
「どうした?」
『アキラ、明日作戦会議を開く。C.C.とカレンと一緒にだ。』
「……藤堂や扇には?」
『お前達だけだ。』
その言葉にアキラは怪訝な表情をした。
「………何かあったな。」
『あぁ…やってくれたよスザク。あいつが教えてくれた。今度エリア11の新しい総督は……。』
-数日後-
領事館から抜け出した黒の騎士団は租界地下に作られた地下施設で身を潜めていた。
この場所は黒の騎士団が、非常時逃走用として用意されていた施設の1つで横幅はちょっとした体育館ぐらいの広さがあり、黒の騎士団のKMFである無頼と月下が所狭しと並べられていた。
出撃数時間前となりカレンは紅蓮の最終チェックを行っていた。
-3日前-
「俺は反対だ。」
「アキラ!」
「今の戦力でやる価値はない。」
深夜、学園の機密情報局の地下司令部でアキラとルルーシュの言い争いが続きカレン、C.C.が溜息を吐いていた。
「ナナリーを黒の騎士団に取り込めばこちらにも有利になる!」
「有利になる?お前があの女を手元に置きたいだけだろ。ナナリーを救うのは結構だがゼロならもっとマシな戦術を考えてもらいたいな。」
「何だと!!」
「俺は降りる。」
「降りられると思うのか!」
ルルーシュは左目に手をやった。
「ギアスか…!」
アキラはホルスターからショットガンを取り出した。
「ちょっと!?」
慌ててカレンがショットガンを持ったアキラの右腕をおろそうとする。
「お前にはまだギアスは使ってない。」
「だから効くと?……だが俺がこいつを撃つほうが早いじゃないのか。」
「お前……。」
「さぁ……どうした!」
ルルーシュの額から汗が滲み滴り落ちてくる。
(どうした、あとはコンタクトを外して……恐れているのか俺は?アキラを?………くぅ……!!)
アキラの鋭い眼差しにルルーシュは恐怖にも似た感情を押し殺しコンタクトを外そうとする。だが……
「待って、ルルーシュ!!」
アキラとルルーシュの間にカレンが入りルルーシュの視界を遮る。
「ギアスは使わないで!」
「カレン!」
「アキラ、あなたの気持ちはわかるけど今はルルーシュに従って!」
「カレン……!」
「ただナナリーを奪還して終わる訳じゃないでしょ。ルルーシュはゼロなんだからその先も考えてるわ!」
「カレン、今のこいつはそんなの考えてない!あの女を……。」
「アキラ!!私はあなたがギアスで操られる姿を見たくないの!」
カレンの眼差しに見つめられアキラは舌打ちしショットガンをホルスターにしまい司令部から出て行った。その様子を見ていたC.C.は面白そうに微笑んだ。
「カレン、お前も持ってるんじゃないのかアキラだけに有効なギアスを。」
「バカ言わないの。ルルーシュ、私も色々言いたい事あるけどアキラの言うとおりナナリーを救ってそれで終わりにしないでよね。私…いや私達はまだ死ぬ訳にはいかないんだから!」
カレンはアキラを追って司令部から出た。
「今のあいつはあの女しか眼中にない。」
「それはわかってる。けど私だってナナリーをこのままにはできない。あなただって…。」
「救えるなら救う。だが今やるべきじゃない。今俺達に必要なのはナナリーじゃない。」
「アキラ……。」
「指示には従う……そうあいつに伝えておいてくれ。」
(アキラはあぁは言ったけど私達だって…。 ルルーシュはナナリーの為…私達も似たようなもの……アキラ……あなただってそれがわかってるはず。)
今、この場にいないアキラにカレンは彼の無事の帰還と今回の作戦もうまく成功できることを祈るしかなかった。
-ハワイ基地-
ナナリーを護衛中の部隊は途中補給のためハワイで止まることになり太平洋周辺の状況を確認していた。
「黒の騎士団がいなくなった!?」
「はっ、エリア11からの報告によりますと中華連邦の総領事館にいた黒の騎士団は全員抜け出したとのことで…目下捜索中です。」
「それで急遽エリア11から護衛の増援か……。」
この部隊の責任者アプソンは待機しているエリア11から来たカールレオン級浮遊航空艦3隻を窓から見ている。
「だが今の黒の騎士団に航空戦力はない。襲撃するなると空港到着前後だ。今奴らが…。」
「しかし、これはラウンズからの命令で……。」
「わかった。だが航路は予定通りで向かう。」
「おい、その荷箱は何だ?」
エリア11からの増援の空艦より大きな荷箱を運ぶ1人の兵士がナナリーのいる重アヴァロンへ運び出され待機していた兵士が問いただしにきた。
「はい、ナナリー新総督がお花がお好きだとナイトオブセブンから。」
「ラウンズから?」
兵士は荷箱を開けるがそこには様々な種類の花が収められていた。
「検問には通っているので問題ありません。」
「そうか。行っていい。」
「わかりました。」
兵士は貨物室へと運び航空艦を後にした。兵士の瞳は赤くなっていた。
「補給、完了しました。」
「よし、エリア11へ。」
ナナリーを乗せたログレス級浮遊航空艦は基地から離陸し他の部隊も続けていった。
ログレス級浮遊航空艦へ運び出された荷箱が動きだし箱の蓋がずれ隙間から人の手が蓋を取り出し人が姿を現した。
アキラはブリタニアの兵士が着る軍服の格好をしておりアキラは他の貨物の影に隠れ、周囲を警戒しながら貨物室から出て行った。
十分な戦力を持たない黒の騎士団にルルーシュはスピード勝負ということでナナリーが搭乗しているこの重アヴァロンにアキラが先に潜入し作戦開始直後混乱に紛れアキラがナナリーを運び黒の騎士団と合流する。この作戦にもアキラはいい顔はしなかったがカレンの説得もあり渋々顔を縦に振ったのであった。
軍服を着ながらもアキラは敵と接触することを避けながらアキラはナナリーの居所を探る。
その中である扉の前で2人の衛生兵が立っているのを目撃しこの部屋にナナリーがいるのではないかと推測する。
扉周りの構造を確認したあとアキラは時計の時刻を確認し作戦開始時間までもうすぐであった。道を引き返そうと体を振り向きアキラは他の箇所を探ろうと別の通路へと入っていった。物置の倉庫の入り口前を通り過ぎようとした時横からコンバットナイフを構えた兵士がアキラを襲った。
アキラはナイフを持っている手を取りがら空きとなった腹部に膝蹴りを入れ顔面に拳を叩き込んだ。 倒れた兵士は全身黒ずくめで顔もマスクで隠している。マスクを取ろうとアキラが手を伸ばした時同じ姿をした人間がアキラに向けて銃を構えて撃ちアキラは倒した相手を盾にし敵のほうへと投げ倉庫へ逃げた。銃声がサイレンサーで小さく相手は暗殺を目的としているのだとわかった。
「…俺を狙った?」
撃ってしまい呼びかけをするが既に息が絶えており敵はアキラに標的を定める。
足音が近づきアキラは倉庫の中へと身を隠した。
男は銃を構えながら倉庫へと入っていった。
狭い部屋でアキラがどこに潜んでいるのか注意して探るがアキラは背後から襲い敵から奪ったナイフで銃を持っている右手を斬りつけ相手が銃を落とした。
アキラは腕を首にまわし敵のマスクをとった。
「お前達、何故俺を狙う?」
「くぅ!」
敵はアキラの腹部に肘を入れ怯んだ隙に隠し持っていた銃を取り出しアキラに向けた。アキラも先程敵が落とした銃を拾い備品の裏に身を隠した。敵が2、3発撃ちアキラは裏から身を出し反撃し銃弾が敵に命中した。
「何だ?何か銃声のような…。」
近くに兵士がいたのかこの騒ぎを聞きつけこちらへ来る者がいる。
アキラは倒した兵士2人を倉庫内にあるロッカーへと隠しアキラは急ぎこの場から離れて行った。
空調室へと逃げ込んだアキラは人が入れるダクトを見つける。
「何か見つけたか?」
「いや、特には……。」
「気のせいだったのか……ここにはナナリー様がいる。何か不審なものがあればすぐに伝えるんだ。」
兵士達が騒いでいる姿をアキラは天井のダクト通路の網目から見ている。
先程守衛の兵士2人が立っていた扉の真上に来たアキラはダクトが扉からまだ続いているとわかり先へと進んだ。
-アーカーシャの剣-
神を殺す武器アーカーシャの剣と呼ばれる空間でシャルルと井ノ本と2人で佇んでいた。
「流崎アキラ……奴が現れたと。」
「私の部下からの報告では奴と間違いない。」
「急がねば…。」
「シャルル、焦るとできることもできなくなる。そのためにエリスがいる。」
「パーフェクトソルジャー……流崎アキラに執着してると聞くが果たして…。」
顔には出さないがシャルルの声はどこか弱々しく聞こえる。
「寛司、貴殿もわかるだろ。」
「奴ら
「そして現れたのが流崎アキラ…。兄さんも一度あの男に……。」
井ノ本はシャルルに背を向ける。
「シャルル、ここは奴を殺すためのところでもある。必ず成功する。」
シャルル1人残し井ノ本は姿を消した。
側近と共に廊下を歩く先に2人の男が立っていた。
「いかがしたのかな宰相?」
シュナイゼルは穏やかな表情で返す。
「少しお話でも?」
ダクトの中進むアキラは降りられる場所を見つけ網目の扉を開け顔を少し出して周りを伺う。周りは庭園のように花が植えられておりとても空艦の中とは思えないものであった。
体をダクトから出し庭園に足をつけ近くに敵がいないか確認する。
「誰かいるのですか?」
ハッとアキラは振り返るが誰もいない。しかし、さっきの声は聞き覚えがある。アキラは機械の音がする場所を見た。
車椅子に乗っている少女1人がいる。
「あの……誰か?」
ナナリーの目が不自由なことが幸いとアキラはナナリーに近づこうとした時
「………ライさんですか……?」
「っ!?」
目が見えないはずのナナリーからかつて名乗った偽名を呼ばれアキラは表情が強張った。
少し中途半端ですが今回はここで
ちなみにアキラがダクトを這うシーンは某アクション映画からのアイデアです。
アキラがルルーシュについて批難するようなことを言ってますが今の自分達黒の騎士団の状況で無理にやるべきではないという意味で
自分もあの作戦は空中戦ができないあの時の戦力でやるのは無理があったのではないかと個人的に思ってます(※だからこそ敵も油断してたのですが)。
あの時のルルーシュは完全にナナリーしか見てなかったように見えました。
シャルルがアキラを恐れる理由は追々。
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第18話
「………来たか。」
ルルーシュはアキラからナナリーが乗る航空艦の内部、ナナリーの居所の詳細が送られてきた。
「潜入した流崎アキラからのナナリー新総督が乗る航空艦の内部の詳細が送られた。各機出撃せよ!」
紅蓮、月下、無頼がヘリに吊られ地上から離れていく。
(さすがというところか……。)
ギアスを使えば簡単であったがルルーシュは3日前のアキラとの言い争いで何故ギアスを使おうとした時アキラに恐怖し使用に躊躇したのか疑問に思っていた。
ルルーシュはスザクの歓迎会の時ロロが話してくれたことを思い出した。
『心臓が止まる?発動中に?』
『うん…。範囲の広さや長さによって負担がかかるんだ。』
『そうか……じゃあ使いどころを考えないとな。』
『それと兄さん、流崎アキラの事なんだけど…。』
『アキラ?』
何故ここでアキラがでるのかルルーシュは頭を傾げた。
『あの男は危険だよ。』
『どういうことだ?』
ロロはサドナ王国でアキラと戦って起こった事、そしてバベルタワーでも同様のことがあったとルルーシュに告げた。
(アキラと対峙した時だけにロロのギアスの力が弱まる……ただの偶然?いや、もしあの男が何かアキラの事を知っているとすればアキラを抹殺しようと機情の動きも説明がつく。 アキラ……ギアスを持たないも関わらず…何か別の……嚮団の嚮主V.V.、奴がロロにアキラの抹殺を命じたがロロもアキラについては何も知らされていない……V.V.とシャルルが何か知っているのか………。)
ルルーシュは頭を横に振る。
(今はナナリーだ!アキラの事はこの作戦が終わった後でもいい。)
ルルーシュはゼロの仮面を被り作戦に望む。
「ライさんですか……?」
目が見えないにも関わらず自分がかつて名乗っていた偽名を口に出されアキラは焦った。
「大丈夫ですよ。ここには私1人だけです。」
アキラは黙って押し通すべきか迷ったが下手に騒がれるよりマシだと重い口を開いた。
「……よくわかったな。」
「足音です。」
「足の音?」
「ライさんは音をたてないように静かに歩くのでお兄さまやスザクさんと違って音が小さいです。」
クスッと笑うナナリーにアキラは失念した。
目が見えない代わりに視覚以外の感覚が敏感だったことを忘れていた。
「ムダ話は好きじゃない。俺がここにいる理由はわかるだろ。」
その言葉にナナリーの表情は強張るが唇を噛み恐怖を押し殺そうとしている。
「私を殺しに……ですか?」
「それはお前の態度次第だな。」
「待ってくださいライ…」
「俺の名前は流崎アキラだ。」
「………なら流崎アキラさん、私の話を聞いて欲しいんです。」
「………。」
「あなた達、ゼロがやろうとしていることは間違っていると思うんです。」
突然、そのような事を言われアキラは呆気にとられ口が少し開いてしまった。
「このまま戦いを続けても…。」
「お前達に降伏して捕虜になれとでも。」
「それは違います!私は早くこの争いを止めたいのです!」
「目、足が不自由なお前に何ができる?皆から笑われる見世物になるのか。」
アキラの厳しい言葉にナナリーはスカートの裾をギュッと握った。
「確かにそうかも知れません。ですが私も中途半端な覚悟で戻ったりはしません!」
「戻る?」
「はい……誰かから言われたからではありません。これが私の意志です!」
ナナリーから発せられた強い言葉にアキラは厳しい表情をした。
-太平洋上空-
『目標発見、旗艦1隻、護衛艦5隻!』
「全軍、作戦を開始する!作戦目標は新総督を捕虜とする事にある!いかなることがあろうと、絶対に傷つけるな!いいな、絶対にだ!」
ゼロ達黒の騎士団はナナリー、アキラがいる航空艦に向けヘリが移動を開始する。
「皆さんとと学園で過ごした日々は私にとってかけがえのないものでした。あなたやカレンさん咲世子さん日本人と笑いあうことができた。あなたの優しさにも触れることができました。私達は分かり合えるのです。これを日本、そして世界に広めて…。」
アキラはナナリーの話を黙って聞き深い溜息を吐いた。
「アキラさん私は……。」
「学園でやってたことができると?」
「……はい!私はそう思ってます。」
「お前の夢物語だな。」
「えっ……?」
「そんな戯言、世界の笑いものになるな。」
ナナリーは怒りを露にする。
「私は本気です!」
「無理だな。なら俺を言い包めるだけの力を持っているのか?」
「それは……。」
押し黙るナナリーにアキラは容赦ない言葉をぶつける。
「俺達が手を取り合うのは無理だ。俺達は血を流しすぎた。」
「何故はじめからそんな…。学園でのあなたは偽りの姿、心だったのですか?」
その言葉にアキラは一瞬口を紡いだ。
「……それとこれとは話が違う。それを政でできると思っているお前の考えが間違ってる。世界はそんな優しくはない。」
「いいえ!それはユフィ姉様があと少しのところで実現できました。行政特区日本で!」
死んだユーフェミアの名前が出てアキラの表情が少し揺らいだ。
「私はユフィ姉様がやろうとした行政特区日本をもう一度。」
「復活させると?」
「はい。その時は黒の騎士団の参加して欲しいのです。」
行政特区日本。これにアキラは小さいが乾いた声で笑い出しナナリーはそれが不気味に聞こえた。
「俺達に協力して欲しいと?」
「はい、私はあなたを迎え入れる覚悟を…。」
「ユーフェミアを殺した俺をか?」
ナナリーはアキラから発せられた言葉に耳を疑った。
「あなたがユフィ姉様を……?」
「あぁ、俺が殺した。」
「あっ……そんなぁ……!」
ナナリーの表情が青ざめていくのがアキラからでもわかった。
アキラから見てナナリーは苦手な部類に入る人間であったが嫌いにはなれなかった。体が不自由でありながらも笑顔を絶やさずそして学園に慣れていなかった自分に対して物怖じしない姿にアキラは彼女を強さを見たが今のナナリーの主張はアキラからすれば余りにも幼稚に聞こえアキラは厳しい言葉を何度もぶつけていった。
その時、艦が揺れ外から爆撃音の音が聞こえる。黒の騎士団の奇襲が始まったのだとアキラは目の前にいるナナリーを連れようと手を伸ばすがそれを察してかナナリーは車椅子を後退させる。
「大人しくしてもらう。」
ナナリーは車椅子の数あるボタンの内の1つを押すと車椅子に付属してあるスピーカーから声が聞こえてきた。
『ナナリー様、ちょうどよかった。今、黒の…』
「侵入者が今私の目の前にいます!」
アキラはナナリーの行動に焦りの色を見せる。
『えっ!?いっ今すぐに救援に!!』
「ナナリー!」
「私は!! あなたがどう言おうと私の心は変わりません!!すぐにはできないかもしれません。でもあなたやカレンさんとあの頃のように一緒に笑いたいのです!」
ナナリーの閉じた瞳から涙がこぼれながらも強い言葉をアキラにぶつけた。
扉から数名の兵士がライフルを持って入ってきた。アキラは懐から銃を取り出しナナリーに銃口を突きつけた。
「道を開けろ!」
ナナリーを人質にとりアキラはゆっくりと車椅子を押す。ナナリーが人質にとられ兵士達も下手な行動はできず道を開けアキラは扉に近づき横へ開いた瞬間、外からの爆発による激しい揺れがおきナナリーはその拍子で車椅子から転倒してしまった。
その隙に兵士達はライフルを構えアキラに向け発泡した。
左肩の辺りを掠めアキラは扉を閉め銃で制御盤を撃ち中にいるナナリー達を閉じ込めた。アキラは肩をおさえながらその場から離れていった。
兵士達が急ぎドア開錠させようと躍起になっている中保護されたナナリーは小さく呟いた。
「私は……私は…。」
「ゼロ、聞こえるか?」
『アキラか?ナナリーも一緒か?』
「すまない、失敗した。」
『何!? まぁいい、俺が直接出向く。』
「ゼロ、多少無理でも連れて行け。」
「ん!?」
「あいつは自分から総督になったんだ。俺が連れて行こうとしたら拒否した。」
『ナナリーが……。』
アキラは物陰に隠れ大勢の兵士達が行き来しているのを身を隠しながら見ている。
『ナナリーは自分が利用されていることに気づいていない。俺がそれを教える。』
「ゼロ?」
『俺の話を聞けばきっとナナリーは…。』
「あいつはお前を拒む。ムダだ。」
『俺はナナリーの兄だ!ナナリーの事はお前より理解している!』
「待てルルーシュ!」
ルルーシュから通信を切られアキラはカレンと通信で連絡とった。
「カレン、俺だ。」
『アキラ?今何処?』
「今から座標を送る。俺のKMFも用意してくれ。」
『わかった。』
カレンはアキラがいる付近にグレネードを撃ち艦の天井に穴を開けヘリが風穴に黒と暗灰色と黒の騎士団カラーの装飾に施されたグロースターを落としアキラの近くに着地させた。
アキラは強風に耐えながらグロースターに接触しコックピットに乗り込みグロースターは艦の甲板にてカレン達と合流する。
「ゼロは?」
『今、艦に入ってナナリーと接触する。』
「俺は今からナナリーのところに突入して俺があいつを捕らえる。回収したらすぐに撤退だ。」
アキラはナナリーがいるブロックに近づこうとするが上空からフロートユニットを装着したKMF部隊の攻撃に苦戦し先に進めずアキラは上空にいる敵1機ずつ落とすさなくてはならなかった。
そして上空からは戦闘機らしきものが1機こちらへ近づいてきた。
『アキラ、そいつはさっき朝比奈さんを墜した…。』
アキラはライフルで撃ち落そうとするが戦闘機は回避し形が変化しKMFの形となった。
「KMF!?」
見た事のない形状のKMFにアキラは距離をとって迎撃しようとするが背後から飛行不能となった護衛艦がこちらへ近づいている。その時突如どこから発射されたのか赤黒い閃光が護衛艦を爆発された。
「まだ何かいるのか?」
アキラは閃光が伸びたほうを睨んだ。
「派手にやるなぁアーニャのモルドレッドは。」
アキラと対峙している可変KMFトリスタンに搭乗しているジノは苦笑いをする。
「だがもうそれは使うなよ。総督殺しは不味いだろ。」
『わかってる。』
モルドレッドに搭乗しているアーニャは4連ハドロン砲・シュタルクハドロンを収納する。
「さぁて。」
ジノはアキラのグロースターに狙いを定める。
「そのKMF返してもらおうか。」
「……邪魔をするな。」
アキラは後方の艦の後方へ退いて行きその後をジノは追撃する。
-艦内、ガーデンスペース-
(ナナリー………。やっと会えた、やっと。)
護衛の兵士をギアスで始末しルルーシュはナナリーと対面を果たした。
ナナリーは今ゼロがいるのだと感じ先程アキラとの会話を思い出していた。
-お前の夢物語だな-
-俺達が手を取り合うのは無理だ-
(私は……!)
「そこにいるのはゼロなのですね?私を殺しに……でも、少しだけ待って頂けませんか!」
ナナリーは真剣な面持ちでゼロと向き合った。
ジノのトリスタンとの戦闘はアキラの防戦一方となりトリスタンのハーケンを回避するのがやっとであった。
「この動きただのテロリストじゃないな。だがこれで!」
ハーケンを横から振りかぶったその時アキラは近くにあった破損した甲板の装甲1つを持って構えた。
だが薄い装甲のためハーケンによっていとも簡単に切り裂かれていくがその間トリスタンからこちらの姿が見えないのを利用しアキラは装甲越しからライフルを撃った。
ジノは瞬時に気づきすぐにアキラと距離をとった。幸いライフルの直撃はなく装甲に軽傷が入る程度であった。
「やる、戦場のあらゆる物を利用する。こいつは戦争のプロだ。」
「ハァ、ハァ…カレン、ゼロから連絡は?」
『まだ何も!』
『中佐や千波さんからも連絡が……。』
「……千葉、今どれくらい残ってる。」
『…お前も含めて近くにいるのは5機。』
このままでは全滅だ。アキラは目の前にいる敵から離れてルルーシュ、ナナリーを回収しようとジノに背を向け走り出した。
「おっと逃がしは…ん?」
追撃しようとした時ジノは上空から何か降りて来るのを目撃する。
「スザクか……いや、あれは…。」
こちらへ降りて来る黒い物体、アキラ、カレンも目撃した。
「あれってまさか!?」
「来たか……!」
アキラは黒いKMFの姿に苦渋の表情をする。
「エリス……!」
『エリス見えたわ。かわいい新総督が乗ってる航空艦よ。』
「……確認した。」
『時間は長めにね。初めての空中戦だから戦闘データを取りたいから。』
輸送艦の底辺が顔を開けヘルハウンドの姿が露になった。
『ヘルハウンド、発艦!』
「…発艦!」
輸送機から切り離されたヘルハウンドは戦闘が行われている航空艦へとゆっくりと落ちていく。
「アキラ……紅月カレン!!」
アキラ、カレンを姿を見たエリスは背中に折り畳まれている新たに装備されたフロートユニットを展開させた。黒とダークブルーの装飾を施され展開された両翼にはジェットエンジンを装備されている。
ジェットエンジンが回転を開始しエリスはアキラ達のところへと猛然と近づいていった。
「こいつ、あの時の黒い奴!」
カレンは迎撃の構えを見せるがエリスはカレンの様子を伺うように周りを旋回している。
2機の無頼がライフルで撃ち落そうとするがヘルハウンドは急速で2機がいる甲板へと着地した。
左腕に装着してあるクローで無頼を捕獲する。操縦者は離脱しようと脱出装置を作動させたがクローに内蔵されている銃口から砲弾が発射され機体と離脱したコックピットを貫通させ撃破させた。
次にもう1機の無頼に狙いを定め左肩の盾から柄を取り出し数珠状の刀身が一つとなり青い刀身の剣となった。
見た事のない武器に戸惑い一瞬動きが遅れてしまい剣によって機体が斬られてしまった。
「くっ、カレン!」
今カレンから離れているアキラはスラッシュハーケンを艦のブリッジ近くに突き刺しそこを軸にランドスピナーで壁走りをした。
「おぉ!やるじゃないか。」
ジノもアキラの意外な動きに面白そうに眺めた。
エリスは空からライフルでカレンを狙い撃ち輻射波動で塞がれているが次にフロートユニットに装着されている折り畳み式の長距離砲が展開され紅蓮を狙った。
「っ!?」
細長い白い閃光が紅蓮を襲い輻射波動で防ぐことができたが砲撃の衝撃で紅蓮のバランスが崩れその隙にエリスはヘルハウンドの左腕のクローで捕らえようとした時、壁を伝って走ってきたアキラのグロースターのライフルが襲いシールドを展開させ銃弾を防御した。
『アキラ!』
「残ってるのはお前と千葉だけか。藤堂達からの連絡もない…。」
2機の周りをエリスのヘルハウンド、ジノのトリスタン、アーニャのモルドレッドが固める。
「へぇ、あれが悪名高いレッド・ショルダーのKMF。」
「……最低の騎士。」
先に動いたのはエリスのヘルハウンド、アキラはライフルで迎撃しようとするが数珠状の剣が鞭のように伸びライフルを切断されてしまった。
カレンが援護に向かおうとした時遠くから赤黒い閃光がこちらへ襲ってくるのが見えた。
「っ!? アキラ!!」
カレンはアキラの横に出て輻射波動を展開させ防御するが出力が弱まりアラームが鳴り響いた。
「さっきの砲撃で!? ダメ耐え切れない!」
輻射波動は損傷爆発しその衝撃で紅蓮は海上へと投げ出された。
「っ!! カレン!!」
アキラは手を伸ばすが届かず落ちていく紅蓮をただ見ているしかなかった。アキラは砲撃があった場所を見るとそこには見た事のあるKMFが立っていた。
「…ランスロット!」
「カレン、僕はナナリーを助けなくちゃいけない。今更許しは請わないよ!」
スザクは落ちてゆく紅蓮を見て呟く。そして艦にいるアキラのグロースターもここから確認できる。
「アキラ、生きているなら君も容赦はしない。」
カレンに目が向いている隙にエリスのヘルハウンドに捕らえられてしまった。
近くにいた千葉の月下もモルドレッドに抑えられ機体をやられてしまった。
アキラはランドスピナーを使い艦の中へと激突させ突入した。
「ああ…落ちちゃう!…ごめんね紅蓮。」
投げ出されたカレンが諦めに目を閉じたその時
『ベストポジションじゃない。』
「え!? ラクシャータさん?」
突然、潜水艦にいるラクシャータから通信が入ってきた。
『お待たせ、黒の騎士団特製の飛翔滑走翼、教本の予習はちゃんとやってた?』
「あっはい!大丈夫です!」
『基本誘導はこちらで行うよ。準備はいい?』
「行けます!」
「三番垂直発射管解放、紅蓮弐式本体の接続信号を確認。」
「舞い上がりな!飛翔滑走翼!!」
ラクシャータの指示で潜水艦から紅蓮の新たな装備になる飛翔滑走翼が射出され、紅蓮の損傷したパーツが分離されこれから紅蓮と連結が開始される。
アキラとエリスの2人が艦内で戦闘を続け艦が大きく傾き下へ降下していきラウンズ達そしてギルフォードもその様子を伺っていた。
『おい、あの2機暴れ過ぎじゃないのか?』
「くっ…ジノ、僕は総督の救出に行く。君は…」
その時下から高速でこちらへ上がってくる赤い機体が現れた。飛翔滑走翼を装備をした紅蓮が現れた。右腕には紅蓮の新たな爪、徹甲砲撃右腕部を装備している。
「カレン!?」
「へぇ……さっきの。」
カレンは艦の周りを確認する。
「アキラとエリスって子がいない!どこ?……まさか!」
艦内で爆発が起き2機が中で戦闘を行っているのではないかと推測するが今はそんなのんびりはできない。
潜水艦にいる神楽耶が通信で呼びかける。
『ゼロ様を早く!』
「ゼロとアキラのためにもまずは…!」
カレンはスザク達ラウンズを相手に構えた。
「目の前の敵を!」
飛翔滑走翼の翼を広げカレンは前へと突き進んだ。
-ブリタニア本国-
「私に何か宰相?」
現れたシュナイゼルに井ノ本は表情変えることはなかった。
「いや、少しサドナ王国に出向くことになりましてその前に父上とあなたにごあいさつを。」
「サドナ王国はまだアレクセイ達テロリストの抵抗が激しいと聞くが?」
シュナイゼルは穏やかな表情で受け返した。
「地方ではまだですが都市部ではすでにエリア化が進んでおりエリア11程時間はかかりませんよ。」
「そうか……EUに続いてサドナ王国、あまり無理をしないようにな。」
「お心遣いありがとうございます。それに今楽しみがありまして。」
「ほう、楽しみ?」
意外な言葉に井ノ本の表情が和らいだ。
「動物といっていいでしょうか?その動物は急に消えたり現れたりとこちらの思うようにしてくれません。」
「しかし、その分面白いと?」
「えぇ、観察すればするほどその行動に驚き目が離せないのです。」
「政務で忙しい宰相の楽しみの一つというわけか。」
井ノ本はシュナイゼルの横を通り過ぎようとするが横に並んだ時シュナイゼルの横顔を見る。
「だが
その問いにシュナイゼルはふふっと笑みをこぼした。
「えぇ、気をつけます。」
その答えに井ノ本は微笑み立ち去っていった。
艦内ではアキラがエリスのヘルハウンドを無理矢理押さえつけグロースターの左手が壊れるまで何度もヘルハウンドのコックピットへ拳を叩き込んだ。
エリスはすぐに体勢を入替えアキラを押し倒し左腕のクローを展開させた。
アキラは瞬時に機体を動かし胸部を掴まれなかったが右腕が捕まり引き千切られ更にクローに内蔵されてある銃口から砲弾が撃たれグロースターの左脚が損傷し巻き込まれる形で艦内に穴が開き艦が傾いた。
『アキラ、聞こえる?』
「カレン?無事だったのか?」
『えぇ、それより今艦の中?』
「あぁ、エリスと交戦中だ。」
『この艦はもう落ちるわ。今、スザクが艦に入ったところよ。ルルーシュは私に任せてあなたはすぐに脱出して!』
一方、エリスの方もジョディから通信の連絡が来た。
『エリス!この艦はもうすぐ墜落するわ。すぐに脱出して!』
しかし、エリスはライフルの銃口をアキラに向け引き金を引いた。グロースターの左腕が落され右脚だけになり身動き取れなくなってしまった。
アキラに近づこうとエリスがゆっくりと歩み寄ってきた時亀裂がはしり2人を裂いた。
「……やり直せるはずです、人は!!」
一方、ナナリーと対峙しているルルーシュはナナリーの言葉に戸惑いを隠せなかった。
(自ら望んだ?ユフィの意思を継ぐ? アキラの言うとおりナナリーは…。)
「あなたと会う前に、ある人から言われました。自分の言ってる事は夢物語だと……確かにそうかもしれません。でも………諦めたくはないのです!!」
その体から発せられたとは思えない大きな声にルルーシュはビクッと体を動かしてしまった。
「私の体のように目が見えないから、足が動けないから諦める。そういう風に思いたくはないのです! 世界はもっと平和に、優しく変えていけるように。ゼロ、あなたはそれが無理だと諦めているのなら私から手を伸ばします。何度振り払われようとも。」
手を伸ばすナナリーにルルーシュは後退りする。
(どうすればいい。ゼロの正体を明かすわけには…。しかし、強引に連れて行くのはナナリーの意思を捻じ曲げることに…)
その時天井が崩れランスロットが現れ外から強風が吹き荒れてくる。
「ランスロット!スザク!!」
「ナナリー!!」
「スザクさん!?」
スザクはランスロットの手の上にナナリーを乗せた。
「怖かったかい?ごめん、もう大丈夫だから。」
強風で外に投げ出されるルルーシュはその光景がスローモーションに見えた。
(違う!そいつは皇帝に俺を売り払った…。)
ランスロットに保護されたナナリーが通り過ぎるのを見てルルーシュは叫んだ。
「ナナリー!!」
「……ゼロ!!」
投げ出されたルルーシュを見つけカレンは紅蓮の両手で保護した。
「こちらカレン、ゼロを発見。彼は無事です。」
安堵する中、墜落した航空艦から1機のKMFが現れた。
「あれはPSのKMF!」
エリスのヘルハウンドを見てカレンはある予感をした。
「扇さん、アキラから何か!」
『いや、彼からまだ…。』
「そんなぁ…。」
捜索するカレンは海上に浮かぶ1機のKMFを発見する。
「アキラ!!」
アキラが乗っているグロースターにカレンは紅蓮でルルーシュを抱えながらアキラのもとへ近づいていった。
車に乗り込んだ井ノ本に側近がある報告をした。
「閣下、シュナイゼルが例の遺跡の調査を極秘で行っているようです。」
「だろうな。サドナ王国も政務とは言ってるがそれが本当の目的。」
「よろしいのですか?」
「放っておけばいい。(彼には世界の真実には辿り着けない。いや、例え知ったとして彼には……)」
離れていく井ノ本の車をV.V.は静かに見つめていた。
何かナナリーに対して痛烈なこと言ってますが決してアンチというわけではありません。
ただ戦争を知ってるアキラからすればナナリーの考えは作中でも書きましたが幼稚、何も知らない子供のように見ていると思ってください
それとヘルハウンドの新装備ですがフロートユニットに付属している長距離砲はかくやくたる異端で登場したバークラリードッグに装備されているものと同じような物のビーム兵器版だと思って下さい。威力はヴァリスと同等で連射でき長距離狙撃が出来る性能です。
ラウンズ達のKMFなど段々超兵器が多くなりヘルハウンドにも何かなければと思い装備させました。
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第19話
戦域を離脱し黒の騎士団のタンカーに偽装してある潜水艦にある医務室の前でカレンは沈痛な面持ちでアキラの治療が終わるのを待っていた。
‐ナナリーが乗っていた航空艦が大破しアキラのグロースターが海上で発見され急ぎ回収しようと近づこうとするカレンにエリスのヘルハウンドが長距離砲で襲ってきた。
「こいつ、邪魔するな!!」
長距離砲を回避し紅蓮の新装備である輻射波動を遠距離で照射できる輻射波動砲弾を放ったがヘルハウンドはシールドを展開させた。
「データの輻射波動とは違う?」
エリスは紅蓮の新たな武器に戸惑いながらも輻射波動砲弾を耐え忍ぶがアラームが鳴り響き大きな爆発が起こった。
カレンは落したのかと思ったが煙幕が晴れて見えたのは健在しているヘルハウンドであった。
「耐えたっていうの?」
エリスは攻撃を加えようとするが爆発の衝撃か左腕が思うように動かず先程とは違うアラームが鳴り響いた。
「エナジーフィラーが…。」
エナジーフィラーの残量が少なくなったとの警報であった。
『エリス、これ以上の戦闘は無理よ。帰還しなさい。』
これにはエリスも素直に従い戦闘区域から離脱した。
カレンはすぐさまアキラに呼びかけるが応答はなく急ぎゼロと一緒にグロースターを回収した。‐
治療中のアキラであったがその治療は困難を極めていた。運び出されていた時には心肺停止してあった。
医師達は心臓マッサージを行っているがアキラの意識が回復する様子はなく心電図からも心臓が動いているようには見えない。
次に電気ショックを2回3回と行うがアキラに変化はなく医師達は諦め治療を終えようとした時心電図がなみうち、アキラが咳をした。
2時間後治療を終え意識を取り戻したアキラの見舞いとカレンや玉城達がアキラが休んでいるベッドを囲んだ。
「しっかし、お前も悪運強ぇな。聞いたぜ、一度心臓止まって死んだらしいな。カレンなんか大慌てしてたもんな。」
「もう、玉城!!」
カレン達が騒いでいる中アキラは特に変わる様子もなく呟いた。
「すまないが少し休みたい。」
「おう、そうか。じゃあな。」
皆が出て行く中アキラはカレンに声をかけた。
「休む前にお前と話がしたい。時間はかけない。」
「おうおう、いいんだぜ2時間でも3時間でもお熱い時間をお二人で…。」
玉城達がからかうのをカレンは顔を真っ赤にしてドアを閉めた。
「もう、あいつら。」
「カレン…。」
カレンはアキラの顔を見てふぅっと息を整えた。
「作戦はどうなった?」
カレンは作戦の失敗と紅蓮を除くKMFの全滅、四聖剣の仙波の戦死などを伝えた。
「それでゼロは?」
カレンは頭を横に振った。
「行方不明。携帯に連絡してもでない。」
「あいつ……。」
「今の私達は戦える戦力も司令塔もいない。八方塞ってところね。」
「カレン。」
アキラはここへ来るよう手で合図しカレンもアキラの近くに寄った。
「俺が航空艦に潜入するのはゼロや藤堂達以外は知らないはずだったな。」
「っ? どうしたの?」
「情報が漏れてる。」
アキラは艦の中で襲撃を受けたことを話した。
「もしかして内通者?」
「ありえるな。」
「あなたを狙って?でもなんで?」
「カレン、この事は俺達だけの話にしよう。」
「どうする気?」
「相手の出方を見る。」
数日後、アキラの姿は自分の個室にいた。シャツの下から巻かれた包帯が見え痛々しい姿をしているがアキラは平然とし愛用のショットガンの手入れを行っておりベッドの上にはボストンバッグが置かれていた。
ノックの音の後カレンが部屋に入ってきた。
「アキラ、病室にいないからもしかしてって思ってきたけどもう大丈夫なの?」
「あぁ、もういい。」
ケロッとしているアキラにカレンは驚いたが
「ナナリーの所信表明演説がテレビで放送されるの。」
その言葉にアキラの手が止まった。
『みなさん、始めまして。私はブリタニア皇位継承第87位、ナナリー・ヴィ・ブリタニアです。』
テレビでナナリーの所信表明演説が始まり黒の騎士団の面々がテレビに凝視する中1人アキラはモニターを見ず黙ってコーヒーを飲んでいた。
皆、総督にしては幼いナナリーに拍子抜けした様子であったが次にナナリーが発した声明に皆、目の色が変わった。
『早々ではありますが、みなさんに協力していただきたいことがあります。私は行政特区日本を再建したいと考えています。』
行政特区日本、1年前に起こった事件もあり皆、困惑、怒りの声が混じっていた。
『黒の騎士団の皆さんも、どうかこの特区日本に参加してください。……私達は1年前の戦いで多くの血を流しました。しかし、互いに過ちを認めればきっとやりなおせる。私はそう信じています。』
アキラは最後まで聞かずに席を立ち出て行きそれを見てカレンは後を追った。
「アキラ、知ってたの?」
「……あぁ。」
「それでゼロは…。」
「ガキの夢に付き合うつもりはない。大人しく幽閉されていたほうがマシだ。」
「手厳しい。」
アキラの容赦ない言葉にカレンは苦笑いする。
「妹に論破された兄貴はあれを見て、もうここへは戻らないだろうな。」
それを聞きカレンは意を決したようにアキラの横を通り過ぎた。
「…どこへ行く?」
「その兄貴を探しに行くの。あんな男でもゼロなんだから。」
「当てはあるのか?」
「私がゼロと初めて会った場所よ…!」
歩くカレンをアキラは肩を掴んだ。
「俺も行こう。ナナリーの件は俺の責任もある。」
「そんな事言わないで。あなただけの責任じゃない。」
「準備してくる。先に格納庫に行って待ってくれ。」
そう言うとアキラはカレンを通り過ぎて行った。
カレンは格納庫にあるポートマンの前で待っているとボストンバッグ持ってアキラが現れた。
「その荷物は?」
「もしかしたら使うかもしれない。」
頭を傾げるカレンを置いてアキラは先にポートマンに乗り込んだ。
「よく頑張ったねナナリー、立派だったよ。」
スザクは所信表明演説を終えたナナリーを優しく労った。だがナナリーの表情はどこか暗くスザクは怪訝な顔をする。
「……スザクさん。」
「なんだい?」
「先日、ライさん……いえ流崎アキラさんとお会いしたことを…。」
「あぁ…聞いたよ。」
「スザクさん……アキラさんが本当にユフィ姉様を……。」
スザクは一瞬表情を曇らせたが口を開いた。
「そうだよ。彼がユフィを。」
「……私、それを聞いてあの人のことが怖くなったのです。」
ナナリーの声が少しずつ震えてきた。
「アキラさんに伝えたのです。あなたとまたあの学園に、そして今日の黒の騎士団の皆さんに協力をお願いしたのですが私……本当は自信が……。」
「ナナリー……。」
「やり直せる……自分でそう言った筈なのに本当は少し怖いのです。アキラさんも黒の騎士団も……。受け入れたい自分と恐怖している自分と……私、どうしたらいいのか……。」
「………。」
「なのに……演説であんな偉そうに言ってアキラさんの言うとおり私は…。」
それを見てスザクは震えてるナナリーの手を優しく握る。
「そんなこと言うのは駄目だ。ユフィも君が自分の夢を引き継いでくれる事をとても喜んでいるはずだよ。」
「スザクさん…。」
「大丈夫、きっと彼らにも伝わってるはずだよ。」
-シンジュクゲット-
ルルーシュは再開発が行われているシンジュクゲットーの区画の1つにいた。
その顔は覇気がなくうつむいていた。
(ナナリーが望む世界、ナナリーが選ぶ明日。しかしそれには俺が、ゼロが邪魔なんだ…。)
「もういらないんだ…ゼロも俺の戦いも…俺自身さえも…」
ルルーシュの手には注射器を持ち自らの腕に刺そうとしていた。
「やっと見つけた…!あんた、こんなところで何してんのよ!?」
誰もいないはずの場所に複数の音がし沈んだ顔をあげるとそこにはカレンとアキラ、2人の姿がいた。
「アキラ、カレン…なぜここが…?」
「ここは、ゼロの始まりの場所…でしょ?」
「それでお前は何を……っ?」
アキラはルルーシュが持っている物に視線が向いた。
「リフレイン。カレンも知っているだろう?懐かしい昔に帰れる…。」
カレンは怒りを露にしルルーシュに駆け寄ると、リフレインが入った注射器を取り上げ、地面に叩きつける。
「ふざけないで!!一度失敗したくらいで何よ!また作戦考えて取り返せばいいじゃない!いつもみたいに命令しなさいよ!KMFに乗る?それとも囮捜査?何だって聞いてやるわよ!!」
項垂れているルルーシュを見てアキラは鼻で笑った。
「情けないな、ルルーシュ。」
「何?」
「そんな物に求めるまでに落ちぶれたかルルーシュ。」
「……。」
「妹から言いように言われてこのザマならお前もう終わりだな。」
「なぁ、アキラ……。」
ルルーシュは引きつった笑みを浮かべる。
「お前の持ってるその銃で俺を撃ってくれないか?」
「………。」
「もう、俺はナナリーの邪魔でしかないんだ。だったらこのままいなくなったほうがいい……。」
その言葉にアキラは黙ってホルスターからショットガンを取り出した。カレンはアキラを制しようとしないが不安な顔をにじませていた。
銃口をルルーシュに向けると思われたがアキラはショットガンを回転させ銃身のほうを手に持ち棍棒のように振り上げルルーシュの横顔に殴りつけた。
「ぐぅ…。」
「いなくなったほうがいい?」
アキラはルルーシュの胸倉を掴んだ。
「前にも言ったな。お前が俺達を利用するように俺達もお前を利用すると。」
アキラの鋭い視線にルルーシュは視線を合わせようとはせず視線を逸らす。
「誰が死なせるか。お前はまだ働いてもらうからな。」
アキラは乱暴に放り投げルルーシュは地べたに這いつくばる。
「もう俺には……。」
その時、複数の足音が聞こえアキラは下のほうを見ると7~8人の人影が見えた。
「来たか…。」
「アキラ?」
「2人共来い。」
アキラはルルーシュの服を掴み無理矢理立ち上がらせこの場から離れカレンも続けて行く。
「アキラ、誰か…?」
「敵だ。」
「敵?アキラ、どういう事だ?」
「カレン、携帯借してくれ。」
カレンの携帯を使いアキラは扇に連絡をとった。
「扇、俺だ。」
『流崎?どうしたんだカレンと一緒に…?』
「そんなのはどうでもいい、それよりも俺たちが出たあと潜水艦からでたグループはいるか?」
『えっ…ちょっと待ってくれ………あぁ、お前達が出てから15分後偵察で3人出て行ったが…。』
その話を聞きアキラは携帯を切った。
「アキラ……。」
「カレン、当たりだ。内通者が俺達をつけてきた。」
「内通者!?ならあの時の作戦が筒抜けに?」
「ルルーシュ、それは違うな。だったら俺を襲わない。」
「襲われた?どういう事だ?」
アキラは足を止める。再開発中のビルはここで途切れ目の前には3階建ての廃アパートがありここから5mの間隔とがある。
アキラはアパートの屋上へボストンバッグを放り投げルルーシュの腰辺りを掴んだ。
「おっおい!?ちょっと待て!何を…。」
アキラは黙ってルルーシュを放り投げた。
「ぬあぁぁ!?」
アパートはここより低く入る分は難しくはなかったがルルーシュは体をそのまま打ちつけ蹲っている。
アキラは下を見て敵がここまで追跡しているのが見えた。
「カレン行け。」
カレンは言われた通りにジャンプしアパートへと移動しアキラも続けてジャンプした。
アキラ達は屋上を降りアパートの隅の部屋まで行き割れた窓から敵の動きを確認する。
「8人はいる。地上にいた仲間と合流したのか。」
「アキラ、まさかあなた……。」
「俺が動けば奴らも動くはずだ。」
アキラは部屋にあったテーブルの上にボストンバッグの中身を出した。アキラが用意していたのはハンドガン数丁、型の古いポンプアクション式のショットガン1丁入っていた。
「俺はこいつのように戦略を立てるのは性に合わない。だから奴等が動くのを待っていた。」
アキラはショットガンの弾を装填する。
「ここで奴等を叩く!」
カレンも戦う決意をしハンドガンの弾を装填する。だがルルーシュは…
「何故戦う………俺はもう疲れた。戦ったところでもう…。」
座り込むルルーシュを尻目に2人は銃の装填を行う。カレンの背後の扉から人影のようなものが見えアキラは叫んだ。
「カレン伏せろ!!」
カレンは身を縮ませアキラはショットガンのフォアエンドをスライドさせ大きな銃声が鳴り響き扉に穴が開いた。
扉越しからもう1発撃ち、ショットガンを構えながらアキラは近づき敵が倒れているのを確認した。
「いいぞ、来い。」
カレンはルルーシュの腕を掴みアキラの傍まで来た。
アキラは廊下を確認し割れた窓ガラスなどが散乱し足音が近くまで来ている。
ルルーシュの首根っこを掴み無理矢理立たせた。
「ここを出るには突破するしかない!」
「アキラ……放ってくれ。」
生気のない表情のルルーシュにアキラは髪を乱暴に掴み上げた。
「お前、本当にそれでいいのか!?」
「……。」
「さぁ、こいつを持って戦え!」
アキラはルルーシュに銃を持たせる。ルルーシュは銃をじっと見て捨てるとゆったりと廊下を出てその身を曝した。
「もう…いい……誰か俺を……。」
そんなルルーシュを狙う敵にアキラは身を出して撃とうとするがルルーシュが邪魔になり彼の背中を乱暴に蹴り相手の姿が見えアキラはショットガンの引き金を引き1人倒した。
「カレン、行くぞ!」
2人は周囲を注意しながら進み古びたドア越しから人影らしきものが見えアキラはショットガンを撃ち弾痕でできた隙間から敵の姿が見えアキラは更に2発撃ち敵を沈黙させ地べたに這いつくばったままのルルーシュを無理矢理起こしそのまま進めた。
「よ、よせアキラ…!」
更に敵が別の部屋、そして階段からと現れアキラはルルーシュを階段へ押しルルーシュは敵と一緒に転げ落した。
そしてカレンが部屋にいた敵を倒した。
ルルーシュと一緒に転げ落ちた敵はルルーシュを撃とうとした時ルルーシュは反射的に近くにあった銃を拾い敵に向けて撃った。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
ルルーシュは自分が殺した敵の遺体を見て自分が先程の行動に困惑した。
「な、なんで……俺は………。」
死にたかった……ナナリーから否定され自分の存在が邪魔となった今自分が生きていてもムダだと思っていた自分が殺されそうになった時生きようと銃を持って撃った。その心とは逆の行動にルルーシュは戸惑った。
「どうした?」
上から不敵な笑みを浮かべてアキラがルルーシュを見下ろしていた。
「死にたかったんじゃなかったのか?」
「お、俺は……。」
弾を装填しながらアキラは周囲の警戒を続けカレンにハンドガンをさらに1丁渡した。
「アキラ、これで半分は倒した。」
「8人とは限らない。気をつけろ。」
2階へと降りた3人は1階の様子を見ようとしたが銃弾が飛び降りられなかった。
アキラは何かないか1つの部屋に入り3階で途切れていた非常用階段がここから1階まで続いてるのに気づいた。
アキラはカレンと目を合わせ彼女もアキラも意図に気づき頷いた。
アキラは階段にて敵と銃撃戦を繰り広げる中1階にいた謎の部隊4人が2階へ上がろうとした時古びた扉が開き中からカレンが2丁の拳銃を構えて現れた。
カレンが現れたタイミングに合わせてアキラも一気に階段を降り2人の同時攻撃で敵を沈黙させた。
「カレン、ルルーシュと外の様子を見てくる。中にまだいるかもしれない、注意してくれ。」
アキラはルルーシュとカレンと離れて外へと出ていった。
「これじゃあどっちが隊長か分からないわね。」
隊長であるはずの自分に命令をするアキラに苦笑いするがだが自分でこの局面を抜け出せるかと問われると首を縦に振ることができるだろうか、やはりアキラの経験がなければ戦えなかった痛感するのであった。
「うっぅぅ…。」
かすかなうめき声が聞こえカレンは声の主であった倒した敵の1人に銃を構えながら顔を隠してあるマスクに手をかけた。
「あっあんたは!?」
アキラとルルーシュは周囲を警戒しながら外へと出て行った。近くに敵が乗っていた車が置かれておりアキラはその車に近づこうとした時背後から人の気配がし振り返ると敵と同じ格好をした男1人が立っており撃とうとしたが敵は膝をつき倒れていく敵の背後にはナイフを持ったロロがいた。
「ロロ、なんでお前が?」
「迎えに来たんだよ兄さん。」
「ちょうどいい、2人はここにいろ。俺はカレンを呼ぶ。」
ロロの横を通り過ぎようとした時ロロはアキラに問うた。
「流崎アキラ、お前は兄さんを利用して…。」
ロロと目を合わすがロロの目は不信と殺意に満ちていた。
「……だったらどうする?」
「………。」
ロロは口を開く事はなくアキラもそのまま、アパートへと戻っていった。
「あんたは私達と中華連邦に亡命していた…!?」
カレンはこの男、日本人に見覚えがあった。同じ黒の騎士団でブラックリベリオン後共に中華連邦へと亡命し神楽耶、ディートハルト達を補佐するためにカレン達と別れた1人で今回ラクシャータと共に自分達と合流したばかりであった。
カレンは他の敵の遺体のマスクを外した。ブリタニア人、そして同じように亡命していた日本人がおりこの混合部隊に戸惑いを隠せなかった。
「なんでブリタニアと……。」
「ショルダー野郎を殺すためさ……。」
「ショルダー野郎?………アキラの事!?」
「そうだ。………あの悪魔を殺すために……。」
男の懐から1枚の写真が落ちカレンは拾った。
「これは!?」
まだ無頼ができていない頃だろうか右肩を赤く染めた鹵獲したグラスゴーの下に並んである兵士の面々にアキラの姿がいた。
男から不気味な笑い声が聞こえる。
「なんでアキラを!?」
「俺は……いや俺達は家族を殺されたんだ!このレッド・ショルダー共にな!!」
吐血しながらも男は大きな声で伝える。
「日本の切り札?お前達はこいつ等の正体を知らない。こいつ等はブリタニア以上の事をしていたんだ。」
男は自分の意識が遠のきながらも口は止まらなかった。
「奴等は作戦と評して近くの町を襲撃して女を犯し、無差別に人を殺す悪魔だったんだ!」
「そんな……。」
「流崎アキラ、あの男が元レッド・ショルダーだと知った時家族の仇をとれるチャンスが来たと思った。だがブラック・リベリオンで俺達は負けてあの男の消息もわからなくなった。だが、奴がまた現れた。俺達は今しかないと思って……。」
男の顔色が悪くなっていき出血も止まらなかった。
「紅月カレン、お前もいずれわかる時が来る。奴らに関わるとみんな死んで……。」
目をカッと見開いたまま男は口を閉ざした。
カレンは写真に写っているアキラを凝視し不安の顔を滲ませる。その時、自分の名を呼ぶアキラの声にカレンはビクッと肩を震わせた。
「どうした?まだ敵が!?」
「ううん、なんでもない。大丈夫。」
カレンは写真をポケットにしまい何事もなかったように振舞った。
「もう敵はいないようだ。ここを離れよう。」
「わかった。」
2人はルルーシュと合流した。ロロがいたはずだが今はいない。おそらくどこかで自分達を見ているのだろうとアキラは思った。
「生き残ったなルルーシュ。」
小馬鹿にするような口調にルルーシュは視線を逸らす。
「ルルーシュ、こうやって無様に生き残ったんだ。ならもっと無様になってでも戦わないといけないものがあるんじゃないのか。」
「そんなの…もう俺には戦う意味が…。いやある思うのか?」
「そんなの知るか、自分で見つけろ。俺達はもう帰る。いつまでもお前の相手はしてられない。あとはお前の勝手だ。ゼロの仮面を被る事、全てを捨てるのも。」
そう言うとアキラはルルーシュを置いて歩いていく。
カレンはアキラについていこうとしたがルルーシュのほうを振り向いた。
「ルルーシュ、やっぱりゼロはあんたじゃないと無理よ。私達に夢を見せた責任があるのよ。その責任を取らずに死ぬなんて許さない。最後の最後まで騙してよ!」
厳しい口調ながらもカレンはまたゼロとして立ち上がってほしい想いもあり訴えた。
「アキラはあぁは言ったけどあいつだって同じ気持ちよ。………私達は待ってる!」
カレンはルルーシュを残しアキラの後を追った。
アキラの横に並んだカレンは特に変わった様子もないアキラの横顔をふと見る。
‐人を殺す悪魔だったんだ!‐
さっきの男の言葉が蘇り以前、藤堂や四聖剣の面々が話した陽炎の噂も思い出した。
「どうした?」
アキラから声をかけられカレンはハッとする。
「俺の顔をじっと見て。」
「いや、別に。」
アキラは特に気にする様子もなく黙って歩いていく。
(違う!アキラはそんなこと……絶対に違う!)
アキラの背中を見てカレンは死んだ男が言った事を忘れるように隠していた写真を破り捨てアキラを追いかけていく。
1人残されたルルーシュは2人からの言葉が胸に響いた。
「……俺はこれから……。」
「捨てればいいじゃない。」
隠れていたロロが姿を現した。
「辛くて重いだけだよ。ゼロも黒の騎士団も…ナナリーも。」
「違う!ナナリーは!」
「ナナリーのためにもなる。」
ロロはゆっくりとルルーシュに近づく。
「ゼロが消えればエリア11は平和になるよ。兄さんもただの学生に戻って幸せになれ
ばいい。」
「しかし…。」
「何がいけないの?幸せを望むことが。流崎アキラの言うとおりに戦い続けたら兄さん傷つくだけだよ。今なら全てをなかったことにできる。大丈夫、僕だけはどこにも行かない。ずっと兄さんと一緒だから。」
全てを捨てまたいつものようにルルーシュ・ランペルージとして生きる。まるで体が蟻地獄に引き摺り込まれたようにこのまま穴に落ちれば楽になるだが……
俺に見つけられるのか?ナナリー以外の戦う意味を…ルルーシュはその問いを答えられずにいた。
‐サドナ王国‐
「連絡が途絶えた?」
ここはサドナ王国の北部にあたり北極に近い地点。巨大な深い割れ目をしたクレバスの近くにキャンプを設置し調査の準備をしていたシュナイゼル達へある一報が届いた。
「はい、こちらからコンタクトをとってますがまだ…。」
シュナイゼルは顎に手を当て考え込んだ。
「まだ情報が少ないので何とも言えませんが。流崎アキラに感づかれたと。」
「それで全滅?」
「または流崎アキラを殺そうとして彼らが先走って返り討ちに。」
「ありえるだろうね。彼らはレッド・ショルダー、陽炎に恨みを持った人間の集まりだ。」
カノンは1つのファイルを開くファイルの中身は例の部隊のメンバーの経歴であった。
「『レッド・パージ』通称赤狩り。陽炎に恨みを持つ人間だけが集まった非合法の部隊。陽炎の隊員が作戦中に数名が謎の死を遂げていることが最近起こっています。彼らの犯行と思われます。」
「彼らの次の標的は1年前のシンジュクでの事件を起こした流崎アキラ。」
「はい、黒の騎士団の中に陽炎によって家族を殺された者がいると判明し秘かに逃亡中であった彼らとに接触し自分達の部隊に引き込むことに成功。」
「ブリタニアや黒の騎士団など関係ない。自分達の復讐のためだけに行動する。」
「そして、殿下は彼らの存在を知り観察の材料として利用し彼らがナナリー様の乗る航空艦にいる事を黙認した。」
耐寒着を着てクレバスを降りる準備を整える。
「まぁ、彼らが死んだとしたらこの観察はもう終わり、それだけだよ。」
シュナイゼル達は吹雪の雪原へ出て降下するためのゴンドラに乗り込んだ。
「神根島とは構造がまったく違います。いつ建造されたのか何故こんなところに。」
底下に着いた一行は自然ではなく人工に造られた氷の穴に入っていく。その美しさに魅了されながらもその先にはだがビルにも似た建造物、アスファルトで舗装された道。
「こ、これは……?」
一行は遺跡とは思えない構造物に戸惑いの色を浮かべた。
「さぁ、行こうか。」
シュナイゼルだけは顔色を変えず1人先を進んでいった。
自分達だけで他に人気がなくかなり不気味に感じながら一行は建造物の中へと入っていく。奥へと進んでいくとドーム型の広場へと辿り着いた。
「殿下……。」
カノンは心配になりシュナイゼルに声をかけるが本人は平然としている。
すると天井から小さな光が輝きだした。その輝きは段々と大きくなりシュナイゼル達を包むように広がっていく。
「殿下!!」
「心配ないよ。」
まるで待ちわびたかのようにシュナイゼルは両手を広げた。
「さぁ、見せてくれ。僕に本当の世界の姿を!」
アキラとタンカーに戻ったカレンはゼロの仮面のスペアを持ち、それを見つめていた。
「重いぞ、その仮面は。日本人だけではない。世界を背負う覚悟がなければ…。」
「C.C.…。」
そんなカレンをアキラは彼女が仮面を持っている手を優しく掴み仮面をテーブルに置かせた。
「よせ。」
「でもっ…!」
「あいつの責任をお前が背負う必要はない。奴がどうしようが俺たちがやることは一つだけだ。」
その時、外からでブリタニアから警告の呼びかけが聞こえアキラ達は急ぎ司令室へと向かった。
どうやら敵に見つかり武装解除を通告されたようだ。タイムリミットは10分。
その知らせにアキラは誰にも気づかれないよう司令室から出て行った。
‐アッシュフォード学園‐
人の気配のない静かな学園、ルルーシュはあの後姿を現したロロとそこにいた。
「そうか…皆、修学旅行に…」
「追いかける?」
ロロの言葉にルルーシュは首を振る。
「いや、誰もいない鳥かごが、今の俺には丁度いい…」
(俺の戦う意味…それはナナリーだけだった。俺に見つけられるのか?ナナリー以外の戦う意味を…)
答えが出ないまま学園内に入ろうとしたその時…空に鮮やかな大輪の花が咲いた。
「っ!?花…火…?」
誰もいない筈の学園に花火が打ち上げられ2人は呆然と見つめた。
一体誰が……花火が上がった場所へと行くとそこには修学旅行へいったはずの生徒会の皆が笑顔でルルーシュ達を待っていたかのようにいた。
この作戦の指揮官であるスザクはタイムリミットである10分が過ぎ黒の騎士団から武装解除のアクションは見られず攻撃の指示をだした。
砲弾がタンカーの周りに着弾し巨大な水柱ができる。
「来たか。タンカーを爆破し敵のソナーを撹乱、同時に艦の深度を下げろ!」
藤堂はカモフラーシュで使っていたタンカーを爆破させて潜水艦の深度を下げ相手に見つかりにくいようにするが敵はポートマンや爆撃に黒の騎士団を追い詰めていった。
「藤堂さん!」
「動けば相手に捕捉される。耐えるんだ。」
藤堂の言うとおりであるがこのままではやられてしまうカレンは焦りの顔を浮かべるがその時潜水艦のハッチが開き1機のポートマンが出撃したとの連絡が入った。
「許可をした憶えはない。誰だ!?」
「流崎アキラです。」
「アキラ!?」
カレンは少し前までいたアキラがいなくなりどうしたのかと思っていた矢先まさかたった1機で出撃するとは思いもしなかった。
「あいつ…また勝手に!」
慣れないポートマンを操縦しながらもアキラは1機また1機敵の攻撃をかわしながら反撃をするが次々に出てくるポートマンと海上からの砲撃が止む事はなかった。
『黒の騎士団総員、聴こえるか!』
この声にアキラも操縦桿を握っている手を止めた。
「ゼロ!」
一同は安堵の顔を浮かべる。
『ダウントリム50度、ポイントL14に向けて急速潜行! 流崎アキラは潜水艦の背後に回るんだ。』
アキラはゼロの指示通り潜水艦の背後まで後退する。
『正面に向けて魚雷全弾発射。時限信管にて40秒だ!』
皆、敵がいない方角に魚雷を発射させる指示に戸惑いながらも魚雷が発射する。
魚雷が着弾し辺りが泡で包まれ敵はその衝撃で次々と戦闘不能となった。
「……メタンハイドレードか。」
アキラの乗るポートマンも衝撃で揺れるも体勢を崩さなかった。
敵の部隊が混乱している中ロロのヴィンセントの手の上に乗ってゼロが姿を現した。
「これがお前の答えなのかゼロ!」
ランスロットに乗ったスザクは戦闘に入ろうとした時ゼロは敵味方に呼びかける。
「撃つな!撃てば君命に逆らう事になるぞ!私はナナリー総督の申し出を受け入れよう。そう、特区日本だよ。」
「何っ!?」
ゼロの言葉にスザクは動揺する。
「ゼロが命じる!黒の騎士団は全員特区日本に参加せよ!!」
皆が動揺しているがアキラは特に驚くことなくポートマンを浮上させただ黙ってゼロを見ていた。
‐サドナ王国‐
遺跡を出た一同はあそこに何時間もいた気分であったが実際は1時間もいなかった。
「殿下……。」
カノンは心配そうにシュナイゼルに声をかけるが
「心配ないカノン、僕は少し休むよ。皆も出発前に少し休むといい。」
そう言うとシュナイゼルは私室へと入っていった。
部屋のドアを閉め疲れるようにこめかみを押さえ椅子へ座り込んだがしばらくして
「くっくくく……。」
静かだが乾いた声で笑いだした。
「井ノ本寛司……あなたも
部屋の中でシュナイゼルの笑い声がこだましていた。
アキラ達とレッドパージとの戦闘は某アクション映画からのオマージュとして使用しました。
花火のくだりは原作通りなので省きました。
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第20話
唐突ですが第二部完結です。
パァン!
戻ってきたアキラにカレンが間髪容れずに彼の頬を叩き格納庫で乾いた音が響く。
「何で叩かれたかわかるでしょ……!」
「………。」
静かに黙ったままのアキラにカレンは静かに口を開く。
「………零番隊隊長として命令するわ。流崎アキラ、次の作戦があるまで営倉へ入りなさい!」
「…………。」
アキラは黙ったまま営倉がある潜水艦の奥へといった。
「おいカレン、ちょっとやりすぎじゃないのか。彼は俺達を……。」
「扇さん、私あいつを私の部隊に入れる時言いましたよね。もしアキラに不審な行動が見られた時は隊長である私が処罰すると。」
「だが……。」
「どんな事だろうとまたあいつは勝手な行動しました。私は……。」
「厳しいなぁ、まさに赤鬼か?」
場を和らげようとした玉城であったがキッとカレンに睨まれ逆に油を注ぐ結果となり慌てて玉城は話を変えようとした。
「けっけど今更だがよ。あいつもすげぇよな。この前はグロースター、そんでポートマンだぜ。よくまぁ器用よく何でも乗れるなぁ。さすが陽炎だったことあるなぁ。」
「っ違う!!」
玉城から陽炎の言葉が出てカレンは格納庫に響き渡るような大きな声を叫んだ。
「あいつは……そんなんじゃない……!」
皆が唖然とする中、まるで自分に言い聞かせるようにカレンは格納庫をあとにした。
‐??‐
まるで王宮の間を思い起こさせるようなば場所にV.V.は1人ある1冊の書物を手にしていた。
「流崎アキラ……。」
V.V.は書物のあるページをめくる。そこにはある塔の前に4、5人の人間が立って
いる壁画の写真が載せられていた。
V.V.は自分の首の横を軽く触れる。首には傷跡のようなものはないがV.V.は不快な表情を浮かべている。
「シャルル、僕らに時間はないよ。」
‐断崖絶壁の崖の上に十数人の人間が集まりその中心にV.V.がいる。彼はバスケットを両手に持ってるがバスケットの中には小さな赤ん坊が1人眠っておりと何故か鉛の重りを入れている。
V.V.は神妙は面持ちで崖下近づこうとするが突然突風が噴きと先端が鋭利になった石がV.V.の首筋を切り裂き彼の首から鮮血がほとばしり膝をついた。
うしろで見守っていた人達が駆け寄ろうとするがV.V.は立ち上がり首筋の傷口はゆっくりと塞がっていく。崖下へと辿り着き、両腕をかざしゆっくりと手を離した。落ちていくバスケットの中にいる赤ん坊を見ると赤ん坊は目を見開きV.V.を睨みつづけ、V.V.は全身がぞくぞくとするような悪寒を覚え赤ん坊が見えなくなるまで崖下を見つめていた。‐
「彼の力が目覚める前に計画を実行しないと僕らは殺される。」
‐アッシュフォード学園‐
ルルーシュはミレイ達生徒会の皆と活動を行っていたが途中、シャーリーがカレンを助けることができないかとスザクに相談した。
「ほら司法取引ってあるじゃん。そういうのでさ。」
リヴァルもカレンの事が気がかりであったがスザクは困った表情をしている。
「世界平和ってのもわかるけど、家族や友達だって大事だろ?総督とかに相談できないかな?この前の電話みたいに俺が…。」
「ええ!??ルル、話したことあるの?」
「いや。歓迎会の夜にさ、何か別人に間違われちゃって…。」
その時、放送部の部員2人がやってきた。
「あの~すみません。この機材が壊れちゃって……。」
「あぁ~、これ結構古い物だったからもう新品買わないといけないか。スザク君ならこれ直せない?」
「……型が古いですから直せるかどうか……。」
「スザク君ならできると思ったけどなぁ。」
「そっそうですね。」
スザクはどこか歯切れが悪く答えミレイは溜息を吐いた。
「わかった。じゃあ機材のほうは用意するから心配しないで。」
放送部の2人が帰りミレイは頭を抱えた。
「仕方ないけど予想外の出費ね。」
「機械に強い人がいてくれたらよかったですけど……。」
「俺もバイクなら任せてくれって言えるけど…。」
ミレイ達の会話を聞きルルーシュは前にアキラが機材の修理をしてくれたことを思い出した。
(アキラ……お前は無様になってでも戦わないといけないと俺に言ったな。ならお前は何故戦う? カレンのためか? お前の存在を消されたここへ戻るためか? 戦わなければ勝ち取れないっか…………。)
それはルルーシュが機密情報局を掌握した数日後アキラは深夜、アッシュフォード学園にてヴィレッタと対面していた。
機情の司令部にてルルーシュ、ロロが見守る中アキラはヴィレッタを睨み彼女は目を逸らし冷汗をが額から流れる。
「流崎アキラ、前に僕が言ったろ。僕は命令を受けただけでお前を狙う理由は聞かされてない。それは彼女達もそうだ。学園の皆の記憶にお前の存在を消した事はお前が学園に接触した場合を考えてのことだ。」
「お前に聞いてない。それにお前は言う事は信用できない。」
ロロはそう言われキッとアキラを睨んだがアキラは構うことなくヴィレッタから目を離さない。
「………ルルーシュはお前にギアスを使ったと聞く。だから俺のやり方で聞かせてもらう。」
ヴィレッタは服の裾を強く握った。
「拷問か、ふんっ!お前達らしいやり方だな。レッド・ショルダー。」
強がりなのか不敵な笑みを浮かべるヴィレッタにアキラは僅かに眉をピクッと動いた。
「こうやって尋問と評してどれだけ我々の仲間を殺した!」
「…………。」
「敵だけでなく味方の死肉を喰らう悪魔共が!」
次の瞬間アキラはヴィレッタの腹部に強烈な拳を叩き込んだ。
ヴィレッタは腹部を抑え倒れた。更に追い討ちをかけるように倒れたヴィレッタに蹴りを入れたアキラはホルスターからショットガンを取り出しこん棒のように持ち彼女へ殴ろうとした時背後からルルーシュによって羽交い絞めされた。
「おっおい!よせアキラ!今殺せばスザクから感づかれてしまう。」
抑えているものの力がないルルーシュはいとも簡単に払われたがアキラは一呼吸をしそのまま司令部から出て行った。その時の表情は見えなかったが簡単に声をかけることはできなかった。
(普段のあいつならあんな暴力的なことは行わない。何だ……? 陽炎の話は今にはじまったことじゃない。あいつに何か変化が……?)
僅かであるが触れてはいけないアキラの別の一面を見てしまったとルルーシュは思った。
トウキョウ租界の政庁中心部にある、防音構造の壁に囲まれた一室でスザク、ジノ、アーニャラウンズ3名、ロイド特派、ナナリーの補佐役のローマイヤ達が集まっている。これからゼロとの極秘会談が行われようとしている。
「さぁて、穏便に終わるのかそれとも……。」
スザクの隣でジノは今か今かと待っている。
「そういえばスザク、お前あの黒の騎士団の赤いKMF紅蓮だっけ?あのKMFパイロットと知り合いだったな?」
「……あぁ、そうだよ。」
「操縦者は紅月カレン……何か興味わいてきたなぁ。」
そう言うとスザクの肩に腕を回した。
「それと元レッド・ショルダーの人間も…流崎アキラと言ったな?」
「奴は鹵獲したグロースターに乗っていた。」
「あぁあれが……確かに他の連中とは戦いやら何まで違っていた。 1年前シンジュクの事件で治安警察を1人で壊滅させたレッド・ショルダー、もう一度手合わせしたいものだな。」
「最低の騎士、嫌い………。」
ジノ、ニーナがそれぞれ陽炎に対してどう思っているのか述べてる中
「………まだ始まっていないようですね会談。」
エリス、バーネット兄妹、陽炎ヨコハマ基地の司令官 レビン・オーウェンが入ってきた。
「おおっと、噂をすれば…。」
ジノは陽炎の面々と顔を合わせ苦笑いするがエリスを見て顔色が変わった。
「へぇ、キミみたいのがいたなんてな。」
ジノからの視線を無視しエリスは口を開くことなくそんな彼女の様子を見てジノは拍子抜けしたような顔をした。
「エリス……君も。」
スザクとエリス2人は一瞬目を合わせるだけであった。
「おっ…始まるみたいだ。」
モニターにゼロの姿が映り会談が開始された。
黒の騎士団の潜水艦にある営倉にアキラは硬いベッドの上で横になっていた。扉のカギをあける音がしアキラは静かに瞳を開いた。
扉の前にいたのはカレンであった。
「アキラ、ゼロがあなたを呼んでるわ。」
「……ってことは。」
「えぇアキラ、処罰を解くわ。」
アキラは黙って営倉から出ていく時すれ違いざまカレンが口を開いた。
「アキラ……もう無茶しないで。あなた1人で戦っていないのよ。」
カレンはアキラの片方の手を強く握った。アキラも言葉には出さなかったが代わりに握られた手を強く握り返しその場から離れていく。カレンはその後姿を黙って見つめていた。
部屋に入るとゼロとC.C.が待っていた。
「カレンからお灸を据われたようだな。」
「あぁ、おかげでいい骨休みになった。」
「ふふっ、骨休みか、カレンにとってはムダ骨になったようだな。」
C.C.はカレンのムダ働きになったことに愉快に笑った。
「それで俺を呼んだってことは何か仕掛けるんだろ?」
「あぁ。」
ゼロはマスクを外し素顔を露にした。
「それでどうする?例の如く行政特区日本を潰す策でも思いついたのか?」
「あぁ昨日、ブリタニアと極秘会談を行った。」
会談を行ったという意外な流れにアキラは興味を示した。
「それでどんな話をした?ナナリー、お前の言うとおり黒の騎士団も行政特区日本に入るから俺だけを見逃して欲しいとでも言ったか?」
「……ふふっ、アキラ、お前会談を盗み聞きしてたのか?」
「なっ!?」
冗談で言ったつもりのはずがルルーシュはホントにそういう会談を行ったらしくアキラは困惑の色を隠せなかった。
「本気か!?」
「ふっふふふ…。」
普段見ないアキラの表情にルルーシュは愉快に笑った。笑われたアキラはからかわれたことに表情を歪める。
「前置きはいい。さっさとからくりを教えろ。」
「ふっふふ、わかった。」
ルルーシュは次に行う戦略をアキラに告げる。アキラはルルーシュの戦略に驚きを浮かべるがいつもの調子に戻ったルルーシュに内心安堵する。
部屋を出ようとするアキラにルルーシュは呼び止める。
「アキラ、お前は俺に言ったな。無様になってでも戦わないといけないものがあるんじゃないのかと……お前にもあるのか地獄を突き進んで戦わなければいけないものが。」
その問いにアキラは振り向くことなくルルーシュと顔を合わせず口を開く。
「………その地獄から抜け出そうともがいている奴がいる。俺はあいつを助けたい……。」
「………カレンか。」
「あいつが戦ってまで自分の居場所を取り戻したいなら俺は共に戦う。あいつが紅月カレンとしていられるために……!」
アキラは振り返りルルーシュと視線を合わせる。
「ルルーシュ、結局俺とお前同じだな。」
自虐気味にそう言うと微笑みアキラは出て行った。
「同じか………ふっ。」
ルルーシュは苦笑いを浮かべC.C.は黙ってその様子を見つめていた。
(愛する者のために自らの手を血で染めるか……アキラ、確かにお前はルルーシュと似た者同士だな。)
‐行政特区日本 野外会場‐
式典当日、 進行は、とても静かに執り行われた。集まった百万人の日本人の中にアキラをはじめ黒の騎士団達が紛れ込んでいた。
その中にアキラとカレンが並んで立っていた。
「やっぱりっと言うか私達見事に囲まれたみたいね。」
いざという時のためか軍が会場を囲むように陣を固めている。
「不安か?」
「ゼロの作戦には賛成だけど……。」
「1年前のようなことは起きない。」
「それはわかってる!」
カレンはC.C.から1年前の行政特区日本式典で起こった事件の経緯を聞かされていた。
だがアキラはその軍の中に陽炎のKMFヒートヘイズの姿があることに懸念していた。
(ここに陽炎がいるということはあいつもいるってことか…。)
陽炎も式典の警護に参加しエリスは百万人いる日本人を凝視している。
PSは常人よりも聴力が発達しているためエリスはどこかに黒の騎士団がどこにいるのか探していた。黒の騎士団がいるということはアキラも必ずどこかにいる。エリスはアキラに一目でも会いたい。会ってどうするのかそれは自分でも分からない。だがアキラに会いたい、この衝動を抑えきれない自分もいる。
そんな自分を不気味に感じながらもエリスはアキラの姿を追っている。
だがふとエリスはある場所を凝視した。なんて事ない大きな白い山であるがエリスはあの方角に山があったのかと疑問に思ったが新総督ナナリーの挨拶が始まりエリスは視線をステージへと向けた。
「日本人のみなさん、行政特区日本へようこそ。たくさん集まってくださって、私は今とても嬉しいです。」
ナナリーの挨拶から始まった式典であるが誰も歓声もあげることもない閑散としてナナリーの傍にいるスザクには不気味に見える光景であった。それは1年前起こった事件の影響かまだナナリーのことを信用していないようにも見える。ゼロはこの百万人を引き換えに自分を見逃せと極秘会談で要望した。ゼロの国外追放処分を式典当日発表されることになりこれを聞いた日本人達は暴動を起こす恐れがありスザクはそれが一番恐れていることだ。もしそうなれば1年前の再来となってしまう。
ゼロがこのまま大人しくしているハズがない。必ずどこかで仕掛けるはずだとスザクは警戒を怠らなかった。
やがて、ナナリーに代わり、その傍に立っていた補佐役のローマイヤが前に出た。
「では、特区日本に参加する者たちに対して、われわれからの処置を発表します。」
ローマイヤの実務的な話は続きやがてゼロの処置へと話は移る。
「………しかしながら、カラレス前総督の殺害など、指導者の責任は許しがたい。よってエリア特法12条第8項に従い、ゼロだけは国外追放処分とする。」
ゼロの処置について読み上げたあと会場は静寂に包まれ誰一人抗議の声をあげようとしなかった。
スザクにはかえって不気味に見えたが
「ありがとう。ブリタニアの諸君!」
突如、ゼロの声が聞こえスザク達は呆気にとられた。会場に設置してあったモニターには全てゼロが映し出されていた。
「寛大なるご処置。いたみいる。」
スザクははナナリーを庇うように立ち。モニターに映るゼロに言葉をぶつけた。
「姿を現せゼロ!」
「枢木スザク、君に聞きたいことがある。日本人とは、民族とは何だ?』
ゼロとスザクが討論が繰り広げられている間アキラ達はお互いの目を合わせあるスイッチを準備する。
事態を見守っていたエリスは民衆の中に不審な行動をしているを見つけ民衆の中に入り駆け寄ろうとした時辺りが白い煙で包まれた。
軍は攻撃と見なしライフルを構えようとするがスザクが慌てて止めようとする。
エリスは口元を抑えながら視界が戻るのを待ちしばらくして視界が開けて辺りを見回すと周りにいる人間全員がゼロと同じマスク、服装をしているのだ。
「全員がゼロの格好を!?」
「全てのゼロよ!」
本物であると思われるゼロが、会場のゼロに呼びかけた。
「ナナリー新総督のご命令だ! 速やかに、国外追放処分を受け入れよ! どこであろうと、 心さえあれば、我らは日本人だ! さぁ、新天地を目指せ!」
エリスが先ほど発見した白い山は、一つの島ほどもある巨大な海氷船だった。それは中華連邦の用意したものではあるが、真っすぐに、この行政特区日本の会場に向かっている。民衆はこの海氷船に乗り込もうと向かっていった。
「行くぞ。」
「えぇ。」
ゼロの格好をしてアキラとカレン達は歩みだした。
‐行くぞ‐
わずかの一言アキラの声がエリスの耳に聞こえエリスは近くにアキラがいるのだと感じ辺りを探した。
2人はエリスの姿が目の前に現れ緊張が走る。
(アキラ…。)
(黙って歩け。)
3人が横切る瞬間カレンは手首を強く掴まれた。
「っ!?」
エリスがカレンの手首を離さないよう握り睨んだ。
「………。」
「………。」
周りが歩みを続ける中2人は黙ったまま止まり静寂が包まれる。
「……紅月カレン。」
「……っ!!」
自分の名前を言われカレンはマスクで隠された顔から冷や汗が滴り落ちる。
アキラは2人の間に割って入りカレンの手首を掴んでる手を力づくで離した。
「………アキラ。」
その問いにアキラは黙ったままカレンの肩をやさしく掴み2人はエリスに背を向け歩みだした。
「全軍。ゼロを見逃せ……。」
この百万人を捕らえるか見逃すかこの式典の責任者でもあるスザクは皆を見逃せと指示をだした。
エリスは黙って2人の背中を見つめていた。
誰もいなくなった行政特区日本の会場にはカバンや帽子がいたるところに置き忘れられ、エリスはその会場の真ん中1人ぽつんと立っていた。さっきのアキラとカレン、まるで自分など眼中にないように離れていくように見えエリスはある願望が芽生える。アキラ、私を見て欲しい、カレンではなくこの自分を。
(何だ…?紅月カレン、お前は私の何なんだ。)
カレンに対するドス黒い感情がエリスの心を支配していった。
海氷船の甲板に立ちアキラは1人静かに離れていく日本を見つめていた。背後からアキラに近づく1人の人物に気づきアキラは振り向いた。
「お久しぶりです。ライ・バートラー様。」
「……篠崎咲世子。」
そこには学園でルルーシュ、ナナリーの世話をしていた篠崎咲世子がいた。
「あんたのことは聞いている。黒の騎士団にいたとはな。」
「これからはゼロ、ルルーシュ様のサポートさせていただきます。」
「初めて会った時からただの世話役だとは思わなかったが。」
咲世子はクスッと微笑んだ。
「それは私もあなたに対して同じことを思ってましたよ。流崎アキラ様。」
この意外な再会にお互い笑みを浮かべた。
‐再び日本を離れる。ルルーシュは心さえあれば、我らは日本人だと言った。既に日本人の誇り、心がない俺だがその心を胸に秘め日本人として取り戻したいものがあると願う奴がいる…カレン、お前がその願いを叶えたいというなら俺は………‐
読んでいただきありがとうございました。
唐突に第二部完結といいましたが区切りをうつとしたらこの話がいいかなと思った次第です。
内容は原作通りなのに遅れてしまった申し訳ないです。
第3部からは中華連邦での話がメインとなりますがアキラが相手するのは………
ではまた
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第三部 亡霊
第21話
百万人の日本人を連れて黒の騎士団は日本を脱出し新たな拠点となった中華連邦にある蓬莱島で物資、武器、弾薬の搬入作業が各場所で行われている中アキラは1機のKMFに乗り込んでいた。
そのKMFは無頼ではなく形状が月下に似ておりこれはラクシャータ達が新たに開発したKMF暁である。
無頼に代わる黒の騎士団の新たな主力KMFとなりアキラは試運転とのことで両腕がアタッチメント式となっており腕に装着されたハンドガンで海上に浮かべてある標的を狙い撃つ演習を行っている。
「初めての操縦1時間もしないで百発百中かよ……。」
アキラは外すことなく標的を全て命中させ玉城達は驚いた。
「おう、どうだアキラ暁は?」
「悪くない。無頼に比べたら取り回しが良過ぎるくらいだ。」
「そうか!俺達も早く慣れて大暴れしてやるぜ!」
そう言うと玉城達はまだ搬入途中の物資の手伝いへと戻り、次にアキラの演習を黙って見てたラクシャータが近くに来た。
「ホントは四聖剣の連中に任せようと思ったけど2人死んでしまったからねぇ。このまま寝かせたままってのも勿体無いしねぇ。」
ラクシャータの言うとおりアキラが乗っている暁のカラーリングは青。
この機体は量産型ではなく本来は四聖剣の4人のために用意したものであったがト部、仙波が戦死したため2機が残されたままとなりそこでラクシャータはアキラに1機任せようと渡したのであった。
「何か注文は?」
「廻転刃刀が長すぎる。玉城達が乗る機体と同じ武器で構わない。」
玉城達が搭乗する廻転刃刀は刀の廻転部分が小さい折りたたみ式となっている。それに比べて藤堂、四聖剣が使用しているのは日本刀のように刀身が長いのだ。
「あとはあいつとの実戦での訓練をしてこいつをものにする。」
その頃、ルルーシュとカレンは司令室にて雑務を行っておりカレンはルルーシュにある事を話した。
「陽炎に恨みを持った連中?」
カレンは先日自分達を襲った謎の部隊についてルルーシュに話した。
「日本人にブリタニア人が混合した変な連中だったわ。」
カレンの話を聞きルルーシュは心当たりがあった。以前陽炎について調べブリタニアだけではなく同族の日本人も虐殺している資料を目にしている。
(確かに両方に恨みを持たれるのは不思議じゃない。黒の騎士団の中に仲間をつくっておきながらただアキラを殺すためだけに活動していた。余程恨まれているようだなアキラ達は。)
「そのことをアキラには?」
カレンは頭を横に振った。
「ただ……アキラも感づいてるかも。だからあの事件のことはほとんど話さないの私やみんなに。」
襲撃を受けたことを扇達みんなに報告はしたが内通者がゼロを殺そうとしたと報告したのみでそれ以降アキラはこの事件を口にすることはない。
「私怖いのよ……。」
「怖い?」
「アキラが…また1人になるんじゃないかって……私達に会う前の………。」
「カレン?」
「見られたくない自分の弱い部分を隠してる。私には分かる。何かのキッカケで一気に崩れそうで脆い……。」
「それはあいつも坊やだって証さ。」
2人しかいないと思われた司令室に第三者の声が聞こえ2人が顔を向けるとピザを頬張っているC.C.がいた。
「戦闘マシンだった頃より今のほうがだいぶかわいくなったと思うが。」
「それは……。」
「カレン、全てが終わったらアシュフォード学園に帰らないか?アキラも一緒に。」
「えっ?」
「全てが元通りになるわけじゃない。だがあの頃のように皆でまた……カレン、取り戻すんだアキラの居場所を。今度はライ・バートラーじゃなく流崎アキラとして俺たちが迎え入れるんだ。」
「ルルーシュ……。」
また皆とあの学園で……考えもしなかったことにカレンは戸惑いもあったが同時にルルーシュからこんなことを口にしたことに改めて彼は立ち直ったのだと安堵も浮かべた。
「それよりタバスコだ。ここにはラー油しかない。」
「それは……。」
「どうしようかなぁ…っと。」
カレンは時計を確認し服装と整える。
「おい、どうした?」
「アキラの訓練の相手を頼まれたの。ルルーシュあとは頼むね。」
そう言うとカレンは司令室から出て行った。
「全部俺に押し付けるのか……。」
「おい、タバスコは?」
‐エリア11 陽炎ヨコハマ軍事基地‐
「中華連邦の象徴天子様とブリタニアの第一皇子、オデュッセウス・ウ・ブリタニアのご結婚ですか?」
エリス、バーネット兄妹、レビン・オーウェンがモニター越しにて井ノ本から天子の結婚の報告を受けていた。
『2人の婚姻祝賀会の席にシュナイゼル宰相が出席するのだが彼から私も一緒にと招待を受けた。』
「それで閣下は…?」
「出席することにした。追放された黒の騎士団の動きも気になる。」
「奴等が中華連邦で何か仕掛けると?」
「あの国は一時的だが黒の騎士団を匿った。そして黒の騎士団が今中華連邦領内に潜伏しているのは明らかだ。そしてこの婚姻だ。無視するはずがない。」
「では部隊の用意を……。」
「あぁ…それとバーネット、お前達もエリスを連れて一緒に中華連邦へ行くんだ。」
「分かりました。」
指示を受けるエリスであったが中華連邦にてまたアキラそしてカレンとまた再会するのではないかと思っていた。
一方、黒の騎士団のほうでもこの政略結婚の話について協議していた。それは中華連邦の天子が友人として交流している神楽耶を祝賀会に招待しているのだ。
玉城は自分達には関係のないことだと言ったがこの婚姻が成立となれば中華連邦が自分達と敵対する可能性があると皆から指摘され騒いでいた。
「じゃあ何かよ!黒の騎士団は結婚の結納品代わりか!? 大ピンチじゃねぇか!」
その様子に扇達は呆れて溜息を吐いた。
「だから、それを話してるんだよ、今。」
「この話、裏にもう一人いるな。険悪だった中華連邦との関係を一気に、こんな悪魔みたいな手を打ったヤツが(おそらくあの男、シュナイゼル・エル・ブリタニア…!)。」
この政略結婚の裏で糸をひいている人物の顔がゼロの脳裏に蘇った。
「それでゼロ様…。」
「神楽耶様。私も今回の婚姻の祝賀会にお供しましょう。相手の出方を伺うためにも…カレン、アキラ、君達は私と神楽耶様の護衛として一緒に来てくれ。」
「はい!」
カレンが答えアキラは黙ったままゼロと視線を合わせるだけであった。
祝賀会当日会場となっている朱禁城はオデュッセウスと天子の祝賀ムードで包まれてる中その地下にて中華連邦の武官黎星刻と彼の補佐周香凛をはじめ数名の仲間が集まっていた。
「大宦官とシュナイゼルの間には既に密約が成立しています。婚姻と領土の割譲。それにより、大宦官はブリタニアの爵位を手に入れると。」
「爵位?地位と引き換えに国を売るか!」
星刻は大宦官が国を省みない政略に憤りを隠せなかった。
「民はどうなる?大宦官討つべし!」
「計画を前倒しにしても今こそ婚姻を潰す!」
皆が大宦官を討つと声をあげるが香凛が制する。
「今ここでクーデターを起こせばブリタニアとの戦争になる。そうなればエリア15となったサドナ王国から敵が押し寄せてくる。」
「戦っているアレクセイ達が仲間となって協力してくれるはず。」
「彼らが設立した新生サドナ王国か。だが今はブリタニアと一進一退で余裕がないと聞く。援護してくれる期待できるのか?」
皆が議論を交わす中星刻は腕を組み目を閉じ静かに考え込んでいた。
(平和を取るべきか、それとも……アレク、お前は忠義を誓ったはずのマクシムを討った。ブリタニアと戦うため、サドナ王国を再興させるためにお前は主を犠牲にし今もどこかで戦っている。)
星刻はまだ下級役人だった頃天子と初めて会った時、そして天子に外の世界を見せると契りを交わした日。
『己の忠義のために!!』
アレクセイと交わした義兄弟の契り。
(私は天子様を守るべきか、平和のための同盟か……。)
アレクセイが決断したように自分にも選ぶ決断の時が来たのだと星刻は静かに愛刀を見つめるのであった。
シュナイゼルが中華連邦の大宦官と挨拶を交わす中井ノ本と護衛でエリスと2人で会場へと来た。
「あれが井ノ本寛司。」
「あの悪名高いレッド・ショルダーの総帥。」
「ここへ何のために?」
皆が小言を呟くがシュナイゼルは笑顔で迎えた。
「お待ちしておりました。エリス嬢もご一緒にですか。」
「招待、感謝する。私達には場違いのように見えるが。」
「いえいえ敬愛する兄上の婚約です。1人でも多く来てくれるだけでもうれしいです。」
シュナイゼルの微笑みに井ノ本もサングラス越しであるが笑みで返した。
「へぇ~、レッド・ショルダーも招待受けてたのか。あの井ノ本って男、シュナイゼル殿下と親しい間柄なのか?」
スザク、ジノ、アーニャ達ラウンズ3人もこの祝賀会に出席しており各々楽しんでいた。
ジノがスザクの耳元で囁いた。
「噂じゃあ、井ノ本寛司、皇帝陛下と旧知の間柄でブリタニア本国へ迎え入れたのも皇帝直々らしいって聞くが…。」
ジノの言うとおりシャルルと井ノ本、2人でいる姿をあのアーカーシャの剣にて目撃しており何か関係があるとスザクも思っていたが未だ2人に関してはわからないことがある。
「しっかし、あのエリスって子、こういう場で軍服って。レッド・ショルダーの軍服はただでさえ地味なのにもったいないねぇ。何気にあぁいう子がドレス着るとセクシーなんだろうなぁ。」
顎に手を当てエリスの姿を上から下へと見ているジノに苦笑いをするスザクであった。少し離れた所にはロイドと共に出席しているミレイが手を振っていた。
「皇コンツェルン代表、皇神楽耶様御到着!」
神楽耶の名前が聞こえスザクはおもわず振り返るとそこには
「神楽耶!? あれは…ゼロ!?」
神楽耶と共に現れたゼロ、そしてカレンに周りがざわめきたつ。
大宦官の命により中華連邦の兵士達が彼らの周りを取り囲んだが、それを止めたのはシュナイゼルだった
「止めませんか、諍いは。本日は祝いの席でしょう?」
「しかし…」
「皇さん。明日の婚姻の儀ではゼロの同伴をご遠慮願いますか?」
「それは…致しかたありませんね」
シュナイゼルにより兵士が引き下がるがゼロ達はこの席に井ノ本がいることに少し驚きを浮かべていた。
(何年ぶりだろうな。あなたと別れてから。)
(この男が陽炎の創設者…そしてアキラの……。)
神楽耶とスザクが数年振りの再会とのことで話しをしているがこの舌戦は神楽耶のほうに軍配が上がっているようだがその会話を聞いていたカレンの前にエリスが現れた。
「……。」
「……。」
カレン、エリス、お互い言葉を交わさずただ黙って視線をぶつけあい今にも2人が銃を取るような雰囲気となりカレンも殺気に満ちた視線をエリスに向ける。
一言も発せないがエリスはカレンと対峙し懐に隠してある銃を取り出しカレンに銃口を向こうと衝動に駆られた。
ハッと我に返りエリスは静かに口を開いた。
「紅月カレン……こうして直接会うのは初めてだな。」
「エリス、あんたのことはアキラから聞いてるわ。バベルタワーで生身で私達と戦おうとして正気じゃないって思ったわ。」
「私はパーフェクトソルジャー、白兵戦でもKMFと戦えることはできる。」
「へぇ……、だったら紅蓮を倒せるんだ。言っておくけど今の紅蓮はあの時の紅蓮じゃないわ。」
「大した自信だ。だがPSではないお前では私には勝てない。もちろんヘルハウンドにもな。」
初めて直接エリスと対峙し少し勝気になったがカレンはエリスの瞳を見てふと怪訝に思った。
彼女の瞳が誰かに似ていることに…。
「そこまでだカレン。」
ゼロがカレンを止める声にカレンは我に返った。
「ふっふふ、ゼロ、君の従者が火花を散してるみたいだ。」
「そうですね。ではシュナイゼル殿下我々も火花を散してみるのはいかがかな?」
「んっ?」
ゼロはチェスの基盤を見せつけた。
「1つ、チェスでも?」
「ほう」
ゼロの誘いにシュナイゼルは面白そうな顔をする。
「私が勝ったら、枢木卿を頂きたい。」
「えっ!?」
ゼロによるシュナイゼルへのチェスの申し込み、さらにその賞品として指名された事にスザクは戸惑いを隠せない。
「神楽耶様に差し上げましょう。」
「まぁ、最高のプレゼントですわ!」
「では、私が勝ったらその仮面を…いや、君の部下の流崎アキラを貰うとしよう。」
ゼロとカレン、そしてエリス、スザクも意外な申し出に驚きを隠せなかった。
「ほう、それはまた彼を……。」
「ラウンズの1人を賭けるのだから、そちらもね…それに彼には個人的興味もある。彼はここにはいないようだが…?」
「アキラは別の所で待機している。」
「なら勝ったらお会いするとしよう。どうかなゼロ…?」
ゼロはしばらく沈黙するが静かに口を開いた。
「…いいでしょう。」
「楽しい余興になりそうだね。」
別の場所、アキラがここにいると聞きエリスは会場を出ようとする。カレンはエリスがアキラと会おうとするのだと気づき後を追おうとするが今ゼロをここ1人にできない。
カレンは唇を噛み締めながらアキラの無事を祈った。
祝賀会会場の外にてアキラは複数のブリタニア兵士に監視され共に待機している。
アキラはゼロの命令でここにいる。不測の事態が発生した場合を想定してすぐに動ける人間を1人待機しておきたいとのことでアキラはゼロ達と離れている。
アキラはここから見える夜の街の景観を眺める。明るく見える市街から外れ漆黒に包まれた箇所がある。そこは貧困にあえぐ人民達が多く住んでいるスラム街となった場所である。
「ここにいたか…。」
聞き覚えのある声にアキラは振り向いた。
「エリス…!」
「……何故お前だけここ?」
「うちのボスからの命令でな。……ふっ、お互い場違いな場所にいるな。」
エリスから敵意が感じられずアキラは自虐気味な笑みをエリスに向け彼女は初めてアキラの笑顔を見てふいに視線を逸らした。
「閣下がシュナイゼル宰相から招待を受けて私は護衛としてここにいる。」
井ノ本がここにいることにアキラの目の色が変わった。
「あの男はシュナイゼルとどんな関係なのか?」
「知らない。私は閣下の命令通りに従っているだけだ。」
「………。」
「………。」
2人は黙って街の光景を眺めていた。お互い敵であるはずなのに張詰めた空気はなく穏やかに感じていた。
一方、ゼロとシュナイゼルのチャス対決は一進一退の攻防を繰り広げていた。
(手強い。さすがは我が兄上。俺が唯一勝てなかった男。……ふ、だが、それは8年前の話)
「シュナイゼル殿下、お聞きしたいことがあります。」
「何かな?」
「どこで流崎アキラのことを?」
その問いにシュナイゼルは微笑んだ。
「興味が沸いてね。ここにいる井ノ本寛司将軍に設立されたエリア11にて唯一ブリタニアとKMFで対等に戦えるだけの軍隊を作り上げた彼の最高傑作が流崎アキラ。」
チラッとシュナイゼルは井ノ本のほうを見たが本人は特に気にする素振りもなく平然としていた。
「……確かに彼は私にとっても大事な戦力の1人でもある。」
ゼロが駒を動かす。
「ほぅ…キング。」
「王から動かないと部下はついて来ない。」
「見識だねぇ。では、こちらも。」
シュナイゼルも白のキングを動かしてきた事にゼロが一瞬動揺するが、すぐに持ち直した。
「どうです?これ以上は進めないでしょう。」
「このままではスリーフォールド・レピティションとなる。」
「私も本意ではないが、引き分けかな?」
このゼロの提案にシュナイゼルは意外な事を口にした。
「ゼロ、君は流崎アキラをどう思ってるのかな?」
この問いにゼロ、そしてカレンは怪訝な表情をする。
「彼はここにいる彼女と同じく私の優秀な部下だ。」
この答えにシュナイゼルはふふっと笑い出した。今の自分の顔を見られないように手で顔を隠すように笑う彼の姿に仮面の下でルルーシュは戸惑った。
(何だ?昔から自分の感情を表に出さないこの男が……?)
「いや……すまない。君も知らないんだなっと思ってね。」
「……何の事ですかな?」
「ゼロ、プラナリアという生物を知ってるかな?」
「っ?」
「プラナリア、ウズムシとも呼ばれる。湿気の高い陸上に生息し、この生物は2~3cmと小さいけど驚くのは何をしても死なない事だ。水質や水温などの生息環境が悪化すると、次第に腹部がくびれてきて2つに分裂してしまう。何故だかわかるかい。……自分が生き延びるためだ。ある実験では破片になるまで切り刻んだが彼らは分裂を繰り返して再生したと聞く。細胞分離を繰り返し生き延びようとする。」
「シュナイゼル殿下、あなたはここで生物の講義でも行うつもりか?」
シュナイゼルの脱線しているような話にゼロは不気味に思えた。だがカレンはある疑問が生まれた。
(この男、アキラの何かを知ってる…!)
この会話がゼロの集中力を乱す戯言だとはカレンには思えなかった。ふいに井ノ本と顔が合った。
向うはサングラス越しで表情は読み取れないが井ノ本はカレンの顔を見て口元が綻び笑みを浮かべてるように見えカレンはまるで見透かされたように感じた。
「ゼロ、少しは僕との話しを楽しもうとする気はないのかな。」
シュナイゼルはゆっくりとチェスの駒を動かした。
「っ!?」
ゼロは驚いた。シュナイゼルが動かしたのはキングでその場の誰もがシュナイゼルの打った手に困惑している。
ーチェックメイトー
そうシュナイゼルは自らの一手で自分を追い込んだのだ。
「なんですか、これは?拾えと言われるのか?」
ゼロが黒のキングを下げると、さらに会場が騒がしくなる。
「……皇帝陛下なら迷わず取っただろうね。君がどういう人間が少しわかった気がするよ…だけど終わりだ。」
「っ!?」
ゼロが下げた黒のキングが完全に追い込まれていた。それは次のシュナイゼルの一手でゼロが敗北することを意味している。
「っ、バカな…!」
ゼロが自分の失策に呆然とするなか彼に向かって何者かがナイフを持って走ってきた。
「ゼロ!!ユーフェミア様の仇!!」
「……アキラ、お前に言いたい事がある。」
エリスは真剣な眼差しをアキラに向けた。
「……。」
「私と一緒に来てくれないか。」
「……っ?」
「うまくは言えない……私はっ!」
アキラは戸惑いの色を浮かべる。
「エリス…。」
その時会場から悲鳴が聞こえてきた。周りにいた兵士が騒ぐ中2人は急ぎ会場へと入っていった。
「どうした!」
アキラは近くにいたカレンに聞くが彼女も驚いており目が泳いでおり人混みの中心にはスザクが抑えている人物にアキラも驚きの表情を浮かべる。
「止めるんだ……ニーナ!!」
アッシュフォード学園で共に過ごしていたニーナの手にはナイフが握られており、慌てて近くにいたスザクが止めに入っている。
「どうして邪魔するのよ!!スザクはユーフェミア様の騎士だったんでしょ!?」
、ニーナはスザクを振り払い再びゼロを刺そうとする。
しかし、アキラが間に割って入りニーナの腕を捕らえそのまま床へと押さえつけた。
「ライ!?……流崎アキラ!!」
アキラの顔を見てニーナは怒りの表情を浮かべるがアキラはニーナの体を仰向けにし自分が馬乗りの状態で抑え彼女が持っていたナイフを握りその刃を彼女に向けた。
「っ!! アキラ、やめて!!」
殺すのではないかとカレンは悲鳴にも似た叫び声を出したがアキラはナイフをニーナの顔に振り下ろすと思われたがナイフは彼女の顔の横寸前の所の床に突き刺さった。
「はぁ…はぁ……。」
殺されると思ったニーナも先程までの殺気は消えいていた。
「……二度目はない。」
「ニーナ!!」
慌ててミレイ、カレンがニーナに駆け寄った。
「カレン…。」
「カレン…!」
カレンの顔を見てニーナは再び怒りがこみ上げて来た。
「あなただって半分ブリタニアの血を引いているくせに!」
「違う……私は日本人よ。」
「日本人?イレヴンでしょ?…イレヴンのくせに友達の顔して…この男とユーフェミア様を殺して! 返してよ、ユーフェミア様を。必要だったのに…私の女神様!!」
「………ごめんなさい、今まで。でも…。」
ニーナを落ち着かせようとミレイが庇うよう前に現れた。その眼差しは優しくかつてのクラスメイトとの再会を喜んでいるようにも見える。
(カレン、変わっていないのね、あなたは。ブラックリベリオンの時も私達のことを気にかけて…。)
ミレイはアキラと目を合わせた。ニーナを殺そうとしたアキラに恐怖の目を浮かべそれを見てアキラは一瞬視線を落としゆっくりと後へとさがっていった。
「彼…あなたの仲間?」
カレンは思い出した。ミレイ達はアキラの記憶も奪われたことも。その事を思い出し悲しい思いがし表情が暗くなった。
「はい、私の……大事な人です。」
「すまなかったね、ゼロ。余興はここまでとしよう。それと確認するが、明日の参列はご遠慮願いたい。次はチェスなどでは済まないよ。」
シュナイゼルの言葉で会場は落ち着きを取り戻した。
「……我々も失礼する。カレン、アキラ……。」
ゼロと共にカレン、アキラが会場から退場する際アキラは一瞬シュナイゼルと目が合った。シュナイゼルは穏やかな笑みをアキラに向けるがどういう意図なのか理解できなかった。
「そう簡単にはいかないか………ふっふふ。」
‐ルルーシュとシュナイゼルが祝賀会にて何を行っていたのか後に知ったがこの時、シュナイゼルの怪しい笑顔の意図に気づくのはだいぶ後になってからだった……‐
結婚式当日、政府要人達とカレンを護衛に神楽耶も参列し式は執り行われている。
このまま順調に行けば中華連邦とブリタニアと同盟が結ばれる。式が終盤に差し掛かったとき入り口の扉が大きな音を立てて開かれた。
「我は問う!天の声、地の叫び、人の心!何を持ってこの婚姻を中華連邦の意志とするか!!」
星刻一派が武装をして式場へと現れた。
「来た!神楽耶様、下がりましょう。」
「そうですね。天子様しばしお待ちを…。」
カレンは神楽耶を連れ退がっていく。
「私は心に誓って…天子様に外の世界をっ!!」
「星刻、星刻ぅ!」
天子に向かって敵を薙ぎ払いながら走っていきあと少しのところで手が届きそうなった時それを遮るように漆黒が天子を包み込む。
天子を包む漆黒…突如ゼロが姿を現し銃を天子の頭に突き付けた。
「ゼロ!?」
「感謝する、星刻。君のおかげで私も動きやすくなった。」
「黒の騎士団にはエリア11での貸しがあったはずだが?」
「だからこの婚礼を壊してやろう、君達が望んだ通りに。ただし…花嫁はこの私が貰い受けるがな!」
「星刻…!」
天子の悲痛な叫びに星刻は怒りの表情を浮かべる。
「天子様っ!…っ、この外道がぁっ!!」
「おや、そうかい?くくっ…ははっ…あははっ!!」
会場を破壊し現れたのは2機のKMF。漆黒のカラーのKMF、藤堂の専用機斬月、そしてアキラのKMF暁が星刻達の前に立ちふさがった。
事の成り行きを見守っていた井ノ本はエリスに指示を出す。
「エリス、味方も近くにいるはず……わかるな?」
「……はっ。」
エリスは静かに会場から出て行った。
―????―
二人の男が向かい合っている。一人は皇族の衣装に身を包む少年、一人は左目に飾りを付けた男。
「うん。ゼロの本当の目的がここなら厄介だから。」
「あぁ、それで私のために手配を?」
「そうだよ。」
男の言葉に少年…V.V.は嬉しそうに笑う。
「しかし、この男は……。」
男は自分の後ろに控えている男に目をやる。自分よりひと回り大きく自分と同じように左目に飾りを付けてある。そして右腕は金属でできた義手をしてある。
「心配ないよ。調整は君以上にかかったけど問題ないよ。それにいざって時の準備はできてる。」
「ありがとうございます。調整さえすれば、C.C.もルルーシュも敵ではありません。このジェレミア・ゴットバルト。ご期待には全力で。」
ジェレミアの後に控えている男は小さな声で呟いた。
「………流崎…アキラ…。」
アキラの機体は暁 直参仕様にとりあえずしました。朝比奈達に支給された事は死んだ2人にも用意されていたのではないかと思い、まぁ余り物ってことでw
ラスト、ジェレミアと現れた男は誰でしょうねww
まぁ半分答えを出したようなものですけど正体は後ほどってことで。
次回、アキラにある事が襲い掛かります。それは……では。
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第22話
別働隊がゼロ、天子そして神楽耶、カレンと合流し朱禁城から離れる間アキラは藤堂と迎撃に来たスザクのランスロットを相手に戦っていた。
『まさか君とこうして共に戦うとはな!』
「………俺もだ。」
新型機2機を相手にスザクも苦戦を強いられている。
接近戦を得意とする藤堂に距離が離れればアキラの銃撃が襲い掛かる。この2重攻撃にスザクは追い詰められいった。
「もう1機、この戦い方流崎アキラ、君だな!」
アキラが左腕に装着してあるハンドガンで撃ちスザクがブレイズルミナス防御している隙に藤堂が背後をとり襲い掛かった。
それに気づいたスザクは寸前で回避できたがフロートユニットの片翼が破壊された。
「しまった!?」
更に右腕に持っていたハドロンブラスターがアキラのライフルにより破壊されてしまった。
アキラが暁の右腕に装着させている銃身の長い大型ライフルはKMFの装甲を貫くことのできる徹甲弾を装填して強力だが連射できないのが難点である。
「これで背中の大砲は撃てない。」
『藤堂、アキラ撤退だ。ランスロットの動きを封じ込めただけで十分だ。』
ゼロの指示により2人は朱禁城から離れることにした。幸いスザクが追撃にくる様子もなく2人は難なく朱禁城から出る事に成功した。
「ヘルハウンドの出撃を!」
バーネット兄妹のところへ戻ってきたエリスであったが2人が止められた。
「残念だけどエリス、一足遅かったよ。」
「黒の騎士団は天子を強奪して逃げたわ。中華連邦の軍が動いてるけどこれ以上私達が動くことはできないわ。」
すると通信から井ノ本からの連絡が来た。
『陽炎の部隊に伝えるんだ。全軍、すぐに行動できるよう武器、エナジーフィラーの補給を済ませるんだ。』
「しかし……ここは中華連邦他国での軍事介入は……。」
部隊の責任者が返答する。
『心配ない。その問題はもうすぐ解消される。』
中華連邦軍の追跡部隊を蹴散らしアキラと藤堂は黒の騎士団の黒の騎士団の浮遊航空艦斑鳩(いかるが)へと着艦する。
「アキラ、お疲れ様。」
「カレン、お前達が先に戻ってたのか。」
「えぇ、このままうまく蓬莱島まで戻れたらこの作戦は成功。一服どう?」
カレンから差し出されたドリンクにアキラは微笑を浮かべ受け取った。
「それにしてもみんなでゼロに化けて今度は花嫁を強奪ってホントよく考えつくよ。」
「だから奇策ってやつだろうな。」
「ふふっ、そうかもね。」
カレンはふとアキラの横顔を見た。彼女の視線に気づいたアキラは横を向き視線を合わせた。
「どうした?」
「い、いや…なんでも……。」
だがカレン意を決したように話し出す。
「ねぇ…アキラ、私ルルーシュに言われたの。全てが終わったら一緒にアシュフォード学園に帰らないかって。」
「……。」
特に驚いたように見えないアキラであったがカレンは続けた。
「それは私も同じ。もちろん全部が元通りに戻らないかもしれないけど今度はあなたを流崎アキラとしてみんなで迎え入れたいの。」
特に喜んでもなく怒ってるでもなく無表情でいるアキラにカレンは機嫌を悪くしたのかと心配するがアキラが口を開いた。
「テロリストを迎え入れる?おかしな話だな。だがあの連中ならやりかねないな。」
「ふっ、だろうね。」
これにはカレンはおもわず噴き出した。
「…だが、悪くないな。」
「…アキラ。」
「みんなと……お前とまたあそこで過ごすのも……。」
「……。」
「お前のおかげだ。あそこが俺の居場所になった。」
「だったら約束よ。2人で…あっ!ルルーシュも入れたら3人か。……帰りましょう。」
「……あぁ。」
2人はお互いの視線を合わせ微笑んだ。カレンが自分に与えてくれた安らぎの居場所また彼女と一緒に……そう思う自分の心境の変化は彼女の影響だとアキラは感じる。
だが………
その直後斑鳩の艦内から大きな爆発音が聞こえた。
「敵!?」
「嘘!? 敵が追いついた!?」
だが敵の追撃部隊が来た様子はない。次に行進曲のような音楽が大音量で流れ出した。
「何これ? どっかの故障?」
カレンをはじめ周りの団員も戸惑い、カレンはアキラの顔を見ると彼の顔が青ざめている事に気づいた。
「アキラ?」
「…………何故?」
「えっ?」
アキラは突然走り出し艦内の中へと入って行った。
「アキラ!?」
‐何故だ?何故?‐
アキラの後を必死で追いかけカレンは斑鳩のデッキへと着いた。
そこにはアキラをはじめゼロ、扇、藤堂達が集まりモニターに映っているものを注視している。
そこに映っているのは……。
戦場を駆けるKMFと兵士達の姿が映し出されている。
映されている兵士を見ると全員日本人でKMFはグラスゴーで濃緑の塗装が施されており日本解放戦線の戦闘映像だと判ったが違うのは右肩が赤く染められていることであった。
「陽炎……?」
カレンの言うとおり赤い肩をしたグラスゴー、おそらく敵グラスゴーを鹵獲したり独自で開発したKMFを中心にしたKMF部隊でまだ無頼ができていない頃の映像であろう。
「発信源は?」
「わかりません。強制的に割り込んできて映像を止める事はできません。」
扇達も突然陽炎の記録映像が斑鳩の艦内にて流れ出し戸惑いを隠せなかった。
「そうだ……俺は…陽炎………。」
映し出される映像にアキラはただ呆然を見ているがその顔色は悪かった。
映像は敵ブリタニアの軍事基地を攻撃している映像へと切り替わる。基地を壊滅し降伏した敵に対して陽炎は容赦なく銃弾を浴びせる。
「降伏した相手を!?」
虐殺を行っている姿に藤堂は驚きと共に陽炎に対して怒りの感情が出てきた。
その次ある町を陽炎が襲撃している映像へと切り替わる。
グラスゴーが民間人をライフルで射殺し死体の山を築きあげる。人の悲鳴、叫び声が艦内に響き渡った。
「嘘、なんで!? 同じ日本人を……っ!」
陽炎が同じ日本人を虐殺している映像にカレンは顔が青ざめるがアキラのことが気になり彼の顔を覗くが自分と同じように悲痛な面持ちであるがアキラは罪悪感も滲ませている。
「陽炎……俺が……忘れ去ろうとした……やめろ!止めてくれっ!!」
オペレーターを無理矢理退かし機器を操作するが映像が切断されることはない。
「噂は本当だったわけか……。」
動揺しているアキラの姿を見て朝比奈が呟く。
「基地に隣接する町を巻き込んで一つの町を壊滅させたって……。」
「更に町で強奪、女を襲ったりしたりと…。」
千葉もこの映像を見て嫌悪感を隠せなかった。
「アキラ…あなたまさか…?」
アキラはカレンからの視線を感じ苦い表情をする。
「……あぁ、そうだ!俺は陽炎、レッド・ショルダー!無慈悲な殺人鬼だ!!」
やけくそになったかのようにアキラの声がデッキ内に響き渡る。
止まない陽炎の映像、行進曲にアキラの心情が乱れていった。扇をはじめ皆からの冷たい視線にアキラは逃げるようにデッキから出て行きカレンは慌ててその姿を追う。
(これがアキラの触れられたくない過去……。そして陽炎のもうひとつの姿。)
ルルーシュはアキラが隠していた過去を、彼の深い心の闇を垣間見えた。
「……アキラっ!」
カレンはアキラが入って行った彼の自室の前へと立った。ドアに手をかけようとその手が止まった。
(今の彼に何を言えっていうの?)
今、アキラに会ったとしてどういう言葉をかけろと言うのだ。カレンは自問自答を繰り返す。現に今アキラ、陽炎の真実の姿を見て恐怖している自分がいる。
ドアに触れようとした手をカレンはゆっくりを引く。
先日、シンジュクゲットーで自分達を襲ったグループの1人の死に際の言葉が脳裏に蘇った。
‐悪魔‐
アキラが自分を拒み高い壁が隔ててるようにカレンは感じた。
(一体…誰が……?)
自室に篭ったアキラはベッドの上に座り未だ流れる何時の間にか行進曲が止まり静かになったがアキラの苛立ちが募るばかりであった。
(井ノ本達なのか?俺を狙って…?)
この仕掛けを誰がしたのか考えるが頭をよぎるのは先程自分に向けられた皆の冷たい視線、そして自分に恐怖しているカレンの視線であった。
「……っく!」
その時警報のサイレンが鳴り響いた。
「敵っ!?」
アキラの私室の扉の近くにいたカレンであったが扉が開き中からアキラが姿を現した。
「待って!どこ行くつもり?」
自分の腕を握るカレンの手を無理矢理離しアキラは走り去って行った。
「アキラ!!」
「敵が追いついてきただと!?」
ゼロは中華連邦軍がこちらへ追いつくにはまだ時間がかかると予測したが中華連邦のKMFガンルゥの部隊が並びそして空中に浮いてある1機のKMFが立っていた。
「…聞こえているか、ゼロ!天子様を返してもらいに来た!」
声の主、星刻は青の塗装のKMFを駆って斑鳩立ちふさがる。
「あれは神虎…!?」
星刻のKMF神虎を見てラクシャータの目の色が変わった。
「知ってるのか?」
「作ったのはうちのチームだからねぇ。紅蓮と同時期に開発したんだけど、ハイスペックを追求し過ぎてねぇ。扱えるパイロットのいなかった孤高のKMFそれが神虎よ。」
まだ蓬莱島へと戻っていていない今、ゼロはいかに星刻の追撃を逃れようと策を練ろうとした時斑鳩の格納庫から1機の暁が出撃した。
「あの暁は…。」
扇は機体の確認をしようと格納庫へ連絡がするが何やら騒がしい音が聞こえる。
「何があったんだ?」
『それが流崎が勝手に出撃したんですよ。』
「じゃあ……あれは!」
『いいから紅蓮に乗せて!』
聞こえてきたのはカレンの怒声だった。
「今出たのはアキラだったのか……。」
普段見せないアキラの行動にゼロはいやな予感がした。
格納庫ではカレンが紅蓮に乗ろうとするカレンと止めようとする整備班が争っている。
「まだエナジーフィラーの交換が終わってないんだ!」
「待てないこのまま行く!」
整備班を払いカレンはコックピットに飛び乗った。
「今、アキラを1人にはできない!」
「天子様……ん?」
星刻はこちらへ近づく1機の敵KMFに気づいた。
アキラの乗る暁は空から銃弾の雨をガンルゥの部隊に浴びせ撃破したガンルゥの上に踏むように着地し腰の後から折り畳み式の廻転刃刀を取り出し近くにいたガンルゥのコックピットに突き刺した。接近戦のできないガンルゥは距離を取ろうとアキラから離れる。
敵が接近戦できないとはいえたった1機で敵の中へと飛び込むのはアキラらしい戦い方ではなく今の戦いは荒々しくも見える。
―今度はあなたを流崎アキラとしてみんなで迎え入れたいの-
‐やめろ……俺のような人間がいてはいけない場所だ……‐
‐俺の……‐
ガンルゥを廻転刃刀で突き刺す。
‐居場所は……‐
ガンルゥのコックピットと一緒にエナジーフィラーも突き刺さりエナジーフィラーから液体が噴出しそれが暁にかかる。
‐
液体がまるで血のように見え暁の姿は返り血を浴びた兵士のように不気味に見える。
「まるで獣のようだ……だが!」
神虎は中国刀のような刀器を構えアキラの暁を襲った。アキラは空へと逃げハンドガンで応戦するが神虎の両手首からフーチ型スラッシュハーケンが出され高速回転し銃弾を弾いた。
アキラは廻転刃刀を左手で逆さにして構え星刻の神虎と対峙するが神虎に赤い閃光が襲い掛かり神虎は後へと回避する。紅蓮の輻射波動砲弾である。
紅蓮はアキラの暁の前に立ち動きを止める。
『退がって!!1人で戦わないで!!』
「カレン、邪魔するな!」
『アキラ、落ち着いて!!』
カレンを払いアキラは星虎と再び対峙しする。星刻は中国刀にて応戦するがアキラは回避しながらライフルで狙い撃つ。
「流崎アキラ、噂以上の……だが闇雲に攻撃するだけでは!」
神虎の胸部が展開され紅蓮の輻射波動砲弾に似たビーム兵器が発射された。
アキラは咄嗟に上昇し避けようとしたが左脚が巻き込まれ膨張し爆発を起こした。
左脚がなくなったことでバランスを崩した暁はふらついてしまう。
更にスラッシュハーケンを暁の右脚に巻き付け地上へと叩き付ける。岩場にも叩きつけ砂埃が発生した。
「アキラ!!」
カレンは神虎に輻射波動砲弾を放つが回避されてしまう。
「このようなマネしたくはないが、私には目的がある。貴様には天子様を救うための人質に…。」
星刻はアキラを人質に捕らえようとスラッシュハーケンを巻き戻そうとするが砂埃から出てきたのはハーケンに巻きつけられた右脚だけであった。
「っ!? 奴は何処に?」
砂埃から猛スピードで現れアキラは廻転刃刀で斬り込み星刻は中国刀で応戦する。先程の攻撃でアキラは右脚をパージしたことで暁の両脚はなくなり岩場に叩きつけられたことで飛翔滑走翼の片翼が破損している。
「お前達か!俺にあんなものを見せたのは!!」
『っ!? 何を言って…!』
星刻は蹴りでアキラとの距離を取った。アキラは追撃をしようとするがカレンの紅蓮が立ち塞がった。
『いい加減にして!!そんな状態でどう戦うつもり!!』
「……どけ!」
『一旦退がってゼロの指示に従って!!』
「俺は陽炎だ……1人だろうと戦う!」
『アキラ…!?』
もう陽炎でもないアキラを今もこうして苦しめてる。カレンは今のアキラにこれ以上戦闘を続けるのは危険だとはやく共に撤退しようとするが
「仲間割れ?だが隙ができた!」
星刻は胸部を展開し天愕覇王荷電粒子重砲を発射する。それに気づいたカレンも輻射波動砲弾で応戦しぶつかり合い眩い閃光となりアキラはその隙に星刻の横へとまわり廻転刃刀で突き刺そうとするが神虎は左腕で暁の腕を払い右腕に持っている中国刀で左腕を切断させた。
アキラは右腕のライフルを構えるが更に星刻は右腕も切断させ最後は蹴りでアキラの暁を地上へと落された。
「ぐあぁぁぁ!!」
落下した衝撃で頭部を打ち付けたアキラは頭から血を流す。
「アキラっ!!」
戦闘不能になったアキラを捕らえようとした星刻にカレンは呂号乙型特斬刀で襲う。
「誰でもいい!誰かアキラを回収して!!」
カレンはアキラを巻き込まないようアキラから離れて戦う。
「エナジーフィラーの残量が…。輻射波動ももうそんなに……。」
『紅月カレン……邪魔を…。』
星刻はスラッシュハーケンを紅蓮の脚に巻き込み捕らえた。
「っ今だ!」
ハーケンを手に取りこちらへ引き寄せる。体勢が崩れた隙に最後の一発、輻射波動を直に叩き込もうとしたが
星刻は神虎のハーケンを切断し紅蓮の輻射波動を回避した。
「そっそんなぁ……。」
敵がいないところへ輻射波動が働いたため紅蓮のエナジーフィラーの残量がゼロとなり
紅蓮は動かなくなった。
「紅月カレン、君を使わせてもらう。」
星刻は残りハーケンで紅蓮を拘束しそのまま運んだ。
「だあぁぁ!!アキラの野郎が勝手に出なかったらこんなこと!」
拘束された紅蓮を見て玉城が嘆く。
「ッダメ!!今アキラを1人にしたら…!!」
カレンは計器を押すが紅蓮は動かない。
両腕両足を無くし身動きが取れないアキラの暁を味方機が運びアキラは連れて行かれるカレンの紅蓮の姿を最後に意識を失った。
‐カレンとの約束、その希望を踏みにじるように俺が捨て去ろうとしていた過去が蘇った。俺が殺していった人間が亡霊となって俺を深い闇へと引き摺りこもうとする。
連れ去られるカレンの姿が俺をさけるように一歩二歩と彼女のほうから遠ざかっているように俺には見えた。‐
はい、第3部は読んでいただいておわかりだと思いですがサンサ篇をモデルにしてます。
まぁ早速暁はスクラップ行きですww
この作品を作るにあたって避けては通れないエピソードだったので原作ではキリコにはフィアナが最後まで傍にいてくれましたがアキラには……。
さてどうなるのでしょうか…?
ではまた。
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第23話
「カレン!!無線はまだ生きているか?」
カレンが捕まった事にゼロは急ぎカレンに無線で呼び掛ける。
『っす、すみません!失態を…。』
「そんなことはいい!諦めるな。必ず助けてやる!いいな、下手に動くな。」
『っはい!わかっています。諦めません。……あと、ゼロ。』
「なんだ?」
『アキラの事でお願いが!』
一筋の光が見える……。その光は優しく眩く、あと少し…あと少しで届く……
しかし、背後から1人、2人、いや、無数の手が俺の体を掴み深い闇へと引き摺り込む。必死にもがくが誰かが俺の耳元で囁く。
ーお前のような奴が行ける場所じゃない…ー
アキラはカッと目を開き蛍光灯の光が眩くアキラは自分の頭部、胸部に包帯が巻かれているのに気づき周囲を見渡しここが斑鳩の医務室だとわかった。
「あぁ……! カレン…!」
連れ去れたカレンを思い出しアキラはベッドから起き上がるが体が思うように動かずベッドを囲うカーテンへと倒れカーテンの向うには軍医がおり眠っていたアキラが起きたことで驚き急ぎゼロに連絡した。
紅月カレンが拘束され中華連邦から引き渡されたとの話を聞きエリスは急ぎカレンがいる艦へと向かった。
「エリス!?何故君が?」
そこには拘束されているカレンとスザクの2人がおりエリスは黙ってカレンと対峙する。
「何しに来たの?捕まった私を笑いに?」
自虐っぽく笑うカレンにエリスは表情を変えることなく黙って視線を外そうとしない。
その態度にカレンは鋭い目つきでカレンに問い詰める。
「あんたに聞きたいことがある。私達の艦に電波ジャックしたのあんた達陽炎?」
「っ??」
「ここにいるスザクにも一応聞いたけどやっぱりあんたらのところしか心当たりがあると思ってみたけど……。」
「そんな話聞いていない。……っ! アキラに何かあったのか!?お前が捕まった事に何か関係が?」
顔を横に背けるカレンにエリスはムッとする。
「私もこれから出撃する。ゼロ達は中華連邦と戦闘をおこなって敗北して敗走しているらしい。」
「っ!?」
驚くカレンをよそにエリスは出撃の準備に向かう。
「……アキラも出てくるはずだ。奴も私が捕らえる。」
アキラが出る。大破したKMFにきっとアキラは負傷しているはずだ。カレンが恐れてるのは無理してまた出撃するのではないかと心配しているのだ。
自身のトラウマが蘇り心身ともにボロボロであるアキラの傍にいられない今の自分にカレンは苦渋の表情を浮かべていた。
軍医の話を受けゼロは医務室へと来たがアキラは軍医の制止を振って部屋から出ようとしていた。
「はぁ……そこをどけ……。」
「アキラと話がしたい。さがってくれないか。」
軍医は大人しく部屋から出て行き2人だけとなった。
「アキラ、お前に伝えたいことがある。」
アキラは黙って壁に背をつけ床に座った。
「……カレンはどうした?………今…どうなってる?」
自分が回収された直後ゼロ達は星刻達と戦闘を行ったが星刻の戦略によって追い込まれ撤退を余儀なくされてしまい今歴代の天子が埋葬されている天帝八十八陵に立て篭もっている。
外から爆撃らしき音が聞こえ斑鳩が揺れだした。
「……空爆か。」
「中華連邦がブリタニアに援軍を要請してスザク達ラウンズの姿も見られる。」
「……陽炎は?」
もちろん陽炎の部隊の姿も確認されている。だが今のアキラがその事を聞けばまた出撃するのではないかと思い口を閉じる。
マスクからでゼロ、ルルーシュの表情が読み取れないがアキラは黙って立ち上がる。
「アキラっ!?」
だがまたアキラは倒れてしまい床に這い蹲りゼロはアキラを起きあげる。
「…カレ…ンを助ける……。」
「カレンは俺達に任せろ!お前は休むんだ。」
「俺の…せいだ……。」
思うように動けない自分の体に歯痒く感じる。
部屋を出ようとするが体がふらつき体が前のめりに倒れ頭部を激しく打ち付ける。
慌ててゼロはアキラを起き上げベッドへ横にする。
「…俺は……陽炎だ……戦う……うぅぅっ。」
この体で尚戦うとする姿にゼロ、ルルーシュは恐怖を感じる。
「もういいアキラ、俺はカレンから頼まれた。お前を……。」
ゼロの言葉が最後まで聞こえずアキラはまた意識をなくした。
「アキラ……。」
今のアキラがナナリーから否定され自暴自棄に陥った自分をダブって見えた。
「カレン……今のアキラには君が必要だ…。」
医務室を出たゼロの前にC.C.が待っていた。
「奴は?」
「とりあえず、眠ってる。」
「代わりに私が出よう。もっともあいつの代わりになる程期待はしないでくれ。」
「いや、1人でも多く出てくれるだけでも助かる。」
また空爆により斑鳩が揺れだした。
「あまり時間がない。少しでも時間稼ぎしてくれ。」
「わかった。努力はしよう。」
「大宦官め、天帝八十八稜までその欲で汚すか!全軍攻撃を中止しろ!あそこには天子様もおられる!!」
星刻達は黒の騎士団、ブリタニアと三つ巴となり混乱になりながらも奮闘する。
星刻が怒りに震えているとスラッシュハーケンが襲い掛かってきた。それを避けた星刻が上空を見るとそこにいたのはジノのトリスタンがいる。
スザク達ラウンズに陽炎部隊の姿が見られる。陽炎はヘルハウンド、ヒートヘイズ、フロートユニットが装着された空挺部隊と地上戦用に換装されたヒートヘイズ、地上部隊と別けられ星刻、黒の騎士団に襲い掛かる。
「……アキラがいない………。星刻にやられたのは事実のようだ。」
エリスはヘルハウンドのフロートユニットを展開させる。
「あれは陽炎!?」
空中に赤い右肩をしたKMF部隊がこちらへ襲い掛かる。
エリスはヘルハウンドの左腕のクローを展開させ星刻とジノの間に割り込み星刻をクローで捕らえ地上へ降下する。
「ちょっ!? 彼女いきなり割り込み?」
ジノはエリスが突然現れたことで驚きあと少しでヘルハウンドと激突するところであった。
エリスに捕らえられた星刻は地上へと激突した。
「ぐうぅ…陽炎のパーフェクトソルジャーかっ!?」
エリスはライフルを撃とうとしたが星刻は神虎のランドスピナーを展開させ2機が組み合った状態で走り出した。
エリスは前方を見ると巨石が横たわりエリスは空中へと回避するが星刻はそのまま巨石と地上にできた隙間を通った。
起き上がった神虎は天愕覇王荷電粒子重砲を巨石ごと巻き込み発射しエリスは回避し長距離砲で反撃し星刻はまた空中へと戻り回避する。
「天子様……ごふっ、ごふっ!」
吐血し口元を手で拭うがヘルハウンド、そしてジノのトリスタンも加わりこちらの旗色が悪くなっていく。
更に藤堂達黒の騎士団達も加わり戦場は更に混戦を極めた。
艦内の揺れでアキラは目を醒ました。
アキラは体を起こしベッドから出た。
「おいっ!? 何をしてる寝てるんだ!!」
軍医がアキラを止めようとするが怪我人とは思えない握力で軍医の腕を払う。
「……どけ。」
鋭い眼光に軍医はたじろぎアキラは壁に体を預けながら医務室から出た。
「なっ!?お前は!!」
斑鳩の格納庫にいる整備班は怪我で離脱しているはずのアキラが来たことに驚いた。
「お前、大丈夫なのか?」
「……KMFは?」
アキラは灰銀色のカラーをした暁、量産機1機を見つけ乗り込もうとする。
「おいよせ!!ゼロからお前が来たら止めろと言われたんだ!」
だがアキラはホルスターからショットガンを取り出し整備班に向ける。
「はぁ…邪魔するな……!」
藤堂達もスザク達、陽炎と一進一退の攻防を繰り広げている。
ヒートヘイズと戦うのは初めてであるが新型の暁、藤堂の斬月でも苦戦を強いられている。
地上からの陽炎部隊により押され地上部隊の被害も広がっていく。
「各機、これ以上敵を斑鳩に……誰だあの暁は?」
藤堂は1機別行動している暁を見つける。アキラが乗る暁はフロートユニットを装備していない地上用の暁で両手に廻転刃刀を持っており1つは藤堂が使う刀身が長いタイプを持っている。
「何、アキラが!?」
ゼロは整備班からアキラが出撃したのを聞かされた。
(いつまでもここで篭城するわけにはいかない…。)
「ゼロ、どうした?」
「扇、大宦官と話がしたい。ディートハルト、例の準備は?」
「はい、用意はできてます。」
「ハァ ハァ ハァ……。」
アキラは迷うことなく混沌とした戦場へと入っていった。
ガンルゥ、そして陽炎のヒートヘイズ、この乱戦にアキラはガンルゥを廻転刃刀で突き刺し、ヒートヘイズをハンドガンで撃破する。
たった1機で奮闘する。
「……何?」
近くで戦っていたモルドレッドを駆るアーニャはアキラの暁に気づく。
「黒の騎士団……1機?」
他に黒の騎士団の機体は見られない。アキラの存在がどこか不気味に感じた。
「ハァ ハァ ハァ…。」
アキラはただ目の前の敵を撃つだけと銃口を向けるだけである。
その頃、ゼロは秘密裏に大宦官達と通信を行っていた。 これ以上の戦闘をやめるよう心願するが大宦官達は聞く耳を持たず天子の命もまるで他人事のような態度である。
「国を売り、主を捨て、民を裏切り、その果てに何を掴むつもりか!」
『驚きだな、ゼロがこんな理想主義者とは。』
『民はアリと同じだ。ゼロ、君は道を歩く時、アリを踏まないよう気をつけて歩くのかい?』
その時デッキのモニターに斑鳩の甲板にいる人物を見たゼロは大宦官達との通信を切った。
「蜃気楼を出す!この戦いをすぐにでも終わらせる!」
「やめて!もうやめて、こんな戦い!!」
天子が斑鳩の甲板に現れ、その身を晒した。
「おかしいわ。こんな、こんなの!!」
「あれはっ!!」
天子に気をとられ鞭状になったヘルハウンドの剣を避けきれず胸部を斬り付けられバランスを崩し地上へと落下する。
「今だ、天子を討て!」
大宦官の命の下、竜胆やガンルゥの砲撃が天子に放たれる。
「天子様!!!」
星刻は天子を庇うように神虎を降り立たせると、高速回転させたスラッシュハーケンで砲撃を防いだ。
「お逃げください、天子様!せっかく外に出られたのに、貴女は死んではいけない!ここは私が防ぎます、だから!」
「でも、貴方がいなきゃ、星刻!私は貴方の、貴方との…」
「もったいなきお言葉。されど…」
だが砲撃は激しくなり神虎は次第に追い詰められていく。
「(アレク、私はまだこんなところで……!)誰か、誰でもいい、天子様を…彼女を救ってくれ!!」
『わかった。聞き届けよう、その願い。』
天子、そして星刻を守ったのはゼロが乗る漆黒の装飾の新型KMF蜃気楼であった。
「黒の騎士団の新型…?星刻を守った?」
突如現れた漆黒のKMFにエリスは怪訝な表情をする。
第2の砲撃が蜃気楼を襲うが蜃気楼は周りにエネルギーフィールドが発生させ砲撃を防いでいく。
「無傷?」
エリスはヘルハウンドの長距離砲を展開させ蜃気楼に撃つが蜃気楼は防ぐ。
さらに蜃気楼は胸部からプリズム状に凝固させた特殊な液体金属を射出され高威力のビームを発射する。プリズムに当たったビームは広範囲に乱反射し広範囲のガンルゥを大量に破壊した。
この特殊な砲撃にエリスは危険を察し砲撃の範囲から回避した。
『哀れだな星刻。同国人に裏切られ、たった一人の女も救えないと。だが、これでわかったはずだ。お前が組むべき相手は私しかいないと。』
「だからといって部下になる気はない!」
『当たり前だろ?君は国を率いる器だ。救わねばならない、天子も貴公も、弱者と中華連邦の人民全てを』
「大層な言葉だが、KMF1機でこの戦局を変えられると思っているのか?」
『いいや、戦局を左右するのは戦術でなく戦略だ。』
井ノ本が乗る陽炎の旗艦に緊急入電が届く
「閣下、上海市内で暴動が発生しております!」
「上海だけではありません。北京、ビルマ、ジャカルタ、イスラマバード。確認中ですが、他14箇所で同時多発的に。」
この入電にバーネット兄妹は頭を傾げる。
「このタイミングで?」
「早すぎる。何かできすぎだね。」
井ノ本は表情を変えることなく報告を聞いていた。
「閣下、どうやら大宦官達がゼロとこっそりおしゃべりしてたようで。」
ジョディは面白そうに伝える。
「それを国の各地で流されたというわけか。……っふ、利用されたわけか星刻も大宦官共も……。」
井ノ本は苦笑いを浮かべる。
一方、アキラはアーニャのモルドレッドと対峙している。回避しながら反撃するが実弾が通じないモルドレッドにアキラは苦戦を強いられている。
「……はやい、けど。」
敵のミサイル攻撃を掻い潜りながらアキラは廻転刃刀を逆さに持ちモルドレッドのミサイル発射口へ突き刺した。
「……しつこい!」
アーニャはモルドレッドを上昇させるがアキラはモルドレッドにしがみ付き離れようとはしない。
アーニャは右腕で暁の頭部を握り機体から離しそのまま握りつぶそうとした時
「えっ!?」
その直後赤ん坊を崖から落そうとする少年の後姿のビジョンが頭を過ぎり
「殺さないといけない?この男を?」
頭を駆け巡る謎の言葉にアーニャは戸惑いモルドレッドの動きが一瞬止まり暁が持っていたもう1つ刀身の長い廻転刃刀がモルドレッドの右手首を切断させ暁は地上へと落ちていった。
アキラに気を取られている隙にC.C.と千葉が両サイドから攻撃を仕掛けてくる。
「……あぐっ!」
落ちた衝撃で後頭部を激しく打ち付けたアキラの包帯の巻かれた頭部から血が滲み出してきた。
上空を見上げるとモルドレッドがC.C.と千葉の暁と戦っている姿であった。
だが途中また動きが止まり朝比奈によりフロートユニットの一部を破壊され地上へと落下していった。
だが上空にエリスのヘルハウンドがアキラの暁に気づき近づいてきた。
「……アキラか?……何だ?お前らしくない動きを。」
先程までモルドレッドと戦っていたアキラがどこか考えもせずだた目の前の敵と戦っているようにしか見えず今までのアキラらしくないとエリスは感じた。
その時通信連絡が届いた。
地上からはヒートヘイズの部隊がアキラを狙おうと近づこうとする。アキラは意識が朦朧としながらも迎え撃とうと構えるが
エリス達が退がっていく。スザク達敵が後退していく。アキラは追撃しようとするが目の前が真っ赤に染まり意識が遠のいていった。
‐何故戦う?カレンの為か?だが彼女を救い出したとしても彼女が喜ぶだろうか?……俺が今戦うのはカレンのためじゃない。俺自身を慰めるためだ。こんな俺を彼女が受け入れてくれるはずがない。カレンに開きはじめた心はまた固く閉じようとしていた。‐
中華連邦での戦いは原作どおりの結末ですが次回は新たなオリジナルストーリーを考えてます。また時間がかかると思いますがお待ちください
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第24話
ではどうぞ
天帝八十八陵の戦いでゼロと星刻により大宦官を抹殺されて以降は連邦制が事実上崩壊し今現在、星刻と黒の騎士団が地方各地で兵を上げている軍閥勢力の鎮静に努めている。
ここ黒の騎士団の拠点蓬莱島では各地の報告をゼロと幹部達が確認している。
「状況はわかった。ではこの通りに……んっ?」
会議が終盤に差し掛かった時にゼロが外に目を移した時、ここ本部前で十数人の人だかりができていた。
「今日もか……。」
扇が溜息を吐く。
「なぁゼロ、そろそろ決めるなきゃいけないんじゃないか?」
「どういう意味だ。朝比奈?」
「意味もなにも流崎アキラさ。ゼロ、あんたは彼をどうするつもりなのさ?」
集まっている人だかり、あれは陽炎に家族を殺された日本人の集まりであった。
黒の騎士団に陽炎だった人間がいる。それは噂の類いであって一般の日本人には確かな話ではなかったのが団員の何者かがアキラの事を周囲にバラしそれが蓬莱島の日本人に伝わったのだ。
ゼロ達は黒の騎士団にそんな人間はいないと誤魔化しているが…。
「……ゼロ、実は俺達の中でもアキラと……その、一緒に戦いたくないって言ってる奴らもいるんだ。」
扇の言うとおり黒の騎士団の中でもアキラに対する不審の目が日に日に強くなっている。
「……だが、アキラが我々に何かした訳ではない。あれはあくまで彼の過去の話だ。」
「もうそんなこと言ってられないだろ。いつか、藤堂さんが言ったけど現にあの男のせいで組織の中に不協和音で生まれてるんだ。」
朝比奈の指摘にルルーシュはゼロの仮面の下で苦渋の顔を浮かべていた。
(カレン…もし、君がこの場にがいたらあいつを全力で守るはずだろうな。)
だが今いない人間の事を考えたところで仕方がない。
「扇、アキラの体調は回復したと聞くが?」
「あぁ、軍医が言ってた。あの大怪我で回復が1ヵ月掛かるって聞いてたけど2週間も経たずにもう部屋から出てる。まぁ外の騒動で外出はさせないようにしてるが……。」
さて、どうしたらいいのか。アキラの処遇について思案するが斑鳩のデッキから通信が入ってきた。
「どうした?」
『はい、星刻からです。』
「星刻から?わかった、こちらへ回せ。」
巨大スクリーンを出し星刻の姿が映し出された。
『突然の事で申し訳ない。』
「構わない。またどこかで軍閥達が兵を上げたのか?」
『あぁ、彼らは独立を宣言し我々に敵対の意思を示した。それと厄介な事に旧サドナ王国、エリア15と接近しているらしい。』
「エリア15!? なるほどそれで私達にも協力を。だがそれだけではなさそうだな。」
『敵は満州の黒竜江省(こくりゅうこうしょう)の軍事基地を占拠、篭城をしているが敵はガンルゥの他サザーランドKMFを主力で黒竜江省南東の松嶺へ侵攻し我が軍と対峙している。KMFは…』
「エリア15からか……。いずれ何か仕掛けてくると思われたが…。」
別モニターで松嶺周辺の地図を出し地形を確認する。
『そこで新生サドナ王国とコンタクトを取り、リーダーのアレクセイ・ヤゾフが援軍を出してくれる。』
「……うむ、私も彼と一度会ってみたいと思っていた。 しかし、彼も簡単に兵を送るとは…。」
『彼とは知り合いで信頼できる人物だ。』
「だが…ゼロ、今俺達に雪中戦できる装備がない。」
扇は今の時期の現地の天候のデータを確認するが星刻の言うとおり天候の移り変わりが激しく吹雪も発生している。
『雪中戦いの装備や武器などは蓬莱島へ直接輸送させるよう彼らが既に発注してある。』
決して大きな規模ではない組織が広いルートを持っているとは思えなかった。
『心配するな。その業者は日本人で君達も知ってる人間だ。』
‐数日後‐
皆が集まる食堂にてアキラは1人で佇んでいた。あれからゼロから天帝八十八陵の戦いを乗り越え星刻と同盟を結んだ事を聞かされた。
それからというもの体が全快したがアキラは斑鳩から一歩も外から出ていない。
誰とも話さずただ1人コーヒーを口にしている時誰かがアキラに声をかける。
「ア~キ~ラ~!」
背後から聞いたことのある声にアキラは振り返る。
「はぁ~い!久しぶりアキラ♪」
そこにいるのはストレートの金髪にスーツを着て立っている女性がいた。
「
思いがけない人物との再会にアキラは驚いた。サドナ王国ではお店でドレスを着たりと色気があったが髪を後ろに束ねスーツを着ている彼女は大人っぽくみえ別の色気を匂わせていた。
「なぁに~、そんなに見とれて。アッハハハ!」
アキラとの再会に千鶴も喜びを隠せなかった。
「何故お前が?」
「この格好見てわからない?お仕事♪」
「仕事?……まさか。」
「おい、千鶴!どこいるんだ!!」
大きな声を出し現れたのは身嗜みを整えスーツ姿の坂口耕司とその後にはゼロの姿であった。
「おぉアキラ!元気にしてたか?」
「ゼロ、どういう事だ?」
「今度の作戦に必要な物資を彼が請け負ってくれる事になった。もちろん、君も出撃してもらう。」
「…わかった。」
「ねぇアキラ、カレンって子どこにいるの?一度会ってみたいな思ってたの。」
カレンの名を聞きアキラは黙って食堂から出て行った。
「えっ…ちょっと……。」
何か聞いてはいけないことを口にしたのかと思い千鶴は戸惑ったがそんな彼女の袖を坂口は引っ張る。
「おい、仕事の話はまだ終わってねぇんだぞ。行くぞ。」
「わっわかったって。」
千鶴にそう言ったが坂口も不安そうにアキラの背中を見つめるのであった。
‐エリア11 陽炎ヨコハマ基地‐
「エリア15へですか?」
アレクセイ達新生サドナ王国の抵抗が激しくエリア15の陽炎基地から援軍要請がありエリスも要請を受けているが…。
「閣下……ここへ残ってもよろしいでしょうか?」
「ほう…何か不都合な事でも……。」
だが井ノ本には心当たりあった。
「紅月カレン、彼女がここエリア11へと移送されるそうだったな。」
エリスの肩がビクッと揺れ彼女の反応を井ノ本は見逃さなかった。
「………まぁいいだろう。好きにすればいい。」
「……申し訳ありません。」
カレンがいるとなれば必ずアキラはエリア11へ戻ってくるはずだ。だがアキラがそこまで執着するカレンとは何者なのか?殺意を抱いている相手にエリスは会ってみたいと思うようになった。
出撃を翌日に控えアキラは格納庫にてKMFの整備を1人で行っている。
支給されたのは雪上戦補助装置アイスブロウワーで今、暁の脚部へと装備させているところである。
出撃前、1人で静かに整備を行うアキラに坂口が近づいてきた。
「ゼロから話は聞いた。悪かったな、アイツの事悪く思わないでくれ。」
特に答えることなくアキラは黙ったままであった。
「だがよあんな態度はないんじゃないのか!千鶴はお前に会えること楽しみにしてたんだ!」
だが顔をこちらへ向けず黙々と整備をするアキラに坂口は苛立ちを感じる。
「なんだ!触れられたくない過去を自分の女や仲間に見られてやさぐれて戦いで紛らわそうってつもりか!! 」
「………。」
「今のお前をアレクやイゴールが見ればガッカリするだろうぜ。せっか送り出した仲間が戦うだけの戦闘マシンに成り下がってるんだからな。」
「……やめろ。」
「誰かに命令されてただ戦うだけのお前はマシンだ!」
「やめろっ!!」
アキラは持っていた工具を坂口の足元へ乱暴に投げた。
「カレン、あの娘が一番お前を心配してるはずだぞ。だったらこんな所で腐ってないでやることがあるだろ。」
そう言うと坂口は格納庫から出て行った。何事もなかったかのように装いまた作業を続けようとするアキラであったが繋ぎの部分を間違えておりこんな凡ミスにアキラは唇をかみ殺した。
‐3日後 エリア11 政庁‐
政庁にある1室にガラスに囲まれた個室にカレンは収容されていた。そしてカレンと向き合っているのは。
「ありがとう、ナナリー。」
「いえ、カレンさんが捕まったと聞いて私…。」
捕虜になったカレンをここへ連れたのはナナリーであった。捕虜であることに変わりないがナナリーの元で手厚い保護を受けている。
「今までカレンさん達に私達の事を隠しててごめんなさい。」
「お互い様よ。」
微笑むカレンであったがふとナナリーの顔を見てあることに気づいた。
「ナナリー、少し痩せた?」
カレンの問いにおもわず頬に手を当てる。
「そ、そうですか?」
「やっぱりきつい?総督?」
まるで見透かされたように思えナナリーは苦笑いをする。
「はい……思っていた以上に…。」
痩せたと言ったがカレンの本音はやつれてると感じた。
政治の場は狐と狸の化かし合いだと言うがまだ幼いナナリーにはこの政の世界は自分の価値観が通用しないことを痛感させられた。
言葉では追従の意思を口にする官僚達であるが裏では自分を見下す態度、本音が目に見えないナナリーには敏感に伝わり心休まる時がなかった。
「でも、私は頑張ります。アキラさんから言われた夢物語を現実にしてみせます。」
「キツイ事言われたの?」
「はい、でもアキラさんから言い負かされたままは悔しくて。」
顔に似合わず図太い性格なナナリーにカレンはおもわず笑みをこぼす。
その時ナナリーの後ろから1人の人物が姿を現しカレンの顔色が変わった。
「あんたはっ!」
その人物を追って総督補佐のスザクが止めようとする。
「待つんだ!勝手に入っては…!」
スザクのその人物の肩を掴むが手首を強い力で握られ手首を返され肘関節を屈曲され体勢が崩れ倒されそうになるがスザクは瞬時に体勢を直し距離をとる。
背後の騒ぎにナナリーは振り返る。
「スザクさん!? 一体何が!?」
「……ナナリー総督、紅月カレンと2人で話がしたい。」
「誰ですかそんな話聞いていません!」
「君はどういう用件で…。」
「捕虜の面会に総督の許可が必要なのですか?」
第3者の顔を見てカレンが口を開いた。
「いいの。ナナリー、私の顔見知りだから。」
「でも……。」
「大丈夫だから。心配しないで。スザク彼女と話したいの、ナナリーをお願い。」
ナナリーの横を1人の人物が通り過ぎる。
「……お前にもう1度会っておきたかった。」
「そう、ちょうどよかった。私もあんたとまた会いたかったのよ………エリス。」
カレンとエリス、お互い視線を逸らさずだた真っ直ぐに見つめていた。
‐吉林省(きつりんしょう)‐
黒の騎士団と星刻達政府軍は黒竜江省の南部にあたる吉林省に集結した。 現在、吉林省は吹雪に襲われ朝方なのだが視界は良くなかった。
ゼロは廊下の窓から外の景色を眺めているアキラを見つけた。
「アキラ、もうすぐ星刻達も合流する。わかってると思うが星刻とは……。」
天帝八十八陵の戦いから星刻とアキラが顔を合わせるのは初めてであった。
「あれは俺の先走った結果あぁなった。……あいつを恨んではいない。」
「そうか……ならいい。それとアキラ……。」
少し間を置きゼロは口を開いた。
「この作戦が終わったら零番隊から除隊させる。……ディーハルトの下で咲世子と共に働いてくれ。」
最近の団員達や蓬莱島にいる日本人からアキラを守るために情報・隠密行動を主に行っている場所へと異動させるのがゼロの考えであるが実質、現場から追いやる左遷のような形であった。
ゼロはアキラの顔を伺うが特に表情には出ずいつものようなすました表情でいた。
「………わかった。」
「アキラ……俺はカレンから頼まれたんだ。」
‐アキラを守ってください!‐
「カレンはお前に何も言えなかった事を悔やんでいた。お前が陽炎の事で苦しんでいたのを見ている事しかできなかったと。」
「………。」
「あとカレンはお前に言いたい事が…。」
「ゼロ、もうすぐの敵地に着くぞ……。」
最後までゼロの話を聞かずにアキラはゼロの横を通り過ぎて行った。
周りに壁をつくりただ目の前の敵を撃つ。初めてシンジュクで会った時に戻ってしまったように見えた。
(カレン、すまない……。今のアキラにできることは……。)
廊下を歩いてると反対から来た星刻と顔を合わせた。
「………。」
「………。」
両者口を開く事なく張り詰めた空気が漂い2人は通り過ぎようとしたが星刻が重い口を開いた。
「この戦い、我々との合同作戦だ。……頼りにしている。」
アキラは無言のまま通り過ぎていった。
竜胆のデッキにてゼロ、星刻幹部達が集まり今の戦況を確認する。
「今、前線部隊と交戦中で状況は五分と五分といったところだ。敵はかつて使われた要塞を本陣に置いている。この要塞は断崖絶壁にあり上から見下ろせる。よって攻めるとすると南からもしくは北西のあたりといったところだ。」
「うむ…戦力に問題はないが……。」
ゼロが懸念しているのは黒の騎士団には寒冷地での戦闘経験が少ない者が多数、ゼロは事前に満州について調べているが満州という慣れない地形での戦闘であった。
「ゼロ、この戦い私達に任せてくれないか。」
「アレクセイと策を?」
「そんなところだ。君達はこの吹雪での戦闘は不慣れと見える。アレクセイ達は寒冷地での戦いのスペシャリストだ。」
「……いいだろう。またいつかみたいに地盤に足を取られることがあってはいけないからな。」
星刻は以前ゼロとの戦いで自分が仕掛けたトラップを思い出し苦笑いを浮かべる。
「ではアレクセイとこれからコンタクトを取る。ゼロ来てくれ。」
通信室へと入りモニターからアレクセイの姿が映し出され3人は対面を果した。
『ゼロ、初めまして、アレクセイ・ヤゾフです。』
出撃前、アキラは暁のコックピットの中で待機している。
‐「今のお前はマシンだ!」 マシンならどんなに楽だろうか。命令で目の前の敵を討つ。そこには何の迷いはなかった。それ以上に考える必要もなかった。だが…何故だ。何故俺は苦しんでる。周囲からの軽蔑の目、坂口らの失望の顔。昔の俺なら気にもしなかった。
気がつけば俺はカレンの事を考えていた。あいつがいてくれたら……、いや、何故カレンを求める?もう、あいつは俺を……。俺はカレンを忘れようと操縦席のトリガーに手を置いた。‐
ナナリーが出て行きガラスで囲まれた独房越しでカレンとエリス2人で対峙する。
「……なんか、改めて見てもは普通の人間っぽいね。」
「だが、脳神経、筋力、五感は常人の倍以上に強化された。」
「アキラから聞いてたけどPS…戦うためだけに生み出された兵士。」
「そうだ……私は誇り高いパーフェクトソルジャー…。だが……。」
エリスは独房に軽く手を触れる。
「アキラは私と何度も戦って生き残ってきた。」
ガラスに振れる手に力が入る。
「そしていつも私の前にアキラが現れる……。」
「……エリス?」
「アキラはお前を求めていた。…お前は一体何だ?」
「エリス………。」
カレンは困惑しながらも口を開く。
「逆に聞くけどあんたにとってアキラって何?」
「何?」
「私はあいつの事を大切に想ってるわ。あいつがいるから私は戦っていける。そして私に夢を与えてくれた。」
「夢だと?」
「本音言うと私、怖くて仕方ないの。捕虜になってわかった。アキラがいないと不安でしょうがない。エリス、アキラが私を求めてたって言ったけど私も同じよ。私もアキラが傍にいて欲しい、彼を求めてるって。」
「それだ……!」
互いの視線をぶつけエリスの表情は殺意に満ちている。
「私の心の中にいつもアキラがいた。アキラと戦えば戦う程アキラの事をもっと知りたい、触れたい、自分のモノにしたい。だが……どんなに近づこうとしてもアキラは遠ざかりお前のもとへと行く!」
独房に触れている手に力が入り僅かであるが独房が揺れだした。
「お前が憎い!会ったこともなかったお前を私は憎んでいた!こうして今も!!」
あっ…… カレンはエリスを瞳を見て朱禁城でエリスを対面した時の疑問の答えがわかりエリスを冷静な目で見ていた。
「エリス、あんた…いや、あなたと話してよくわかった。でもね間違ってるよ。」
「っ!?」
「アキラを自分のモノにしたいって言ったけどアキラは支配する者には従わない。例えゼロでもあいつの全てを従わせることはできない。アキラは自分を支配させようとする奴と戦う。」
「支配を拒む…?」
独房に触れていた手に更に力が入りヒビが入る。
「エリス、私はアキラを愛してる。だからもっとあいつの事を知りたい、触れたい。だからあなたの気持ちもわかる。でもね……あなたの考えは自分のモノにしたいって支配よ。アキラは絶対に受け入れない!それは愛じゃない! あなたもアキラの事愛してるなら…!!」
独房にできたヒビが広がりエリスはガラスを突き破りカレンの首筋を強く握った。
部屋にサイレンが鳴り響き、ガラスの破片が腕に突き刺さるがエリスは気にも留めず片腕でカレンの首を絞める力を強める。
カレンの表情が青ざめていくが彼女は抵抗する素振りはない。まるでアキラはお前を決して受け入れないと言っているかのような姿勢にエリスの腕の力が更に強まる。
「エリスっ!?君は!!」
サイレンで部屋へと入ってきたスザクは急ぎ2人のもとへと駆け寄りエリスの手首に手刀を叩き込み2人の間に割って入った。
カレンは膝をつき咳き込む。
「捕虜に手を出すことは…!!。」
カレンの様子を見てスザクが彼女のもとへと寄る。
「カレン、もうこれ以上は……。」
「ハァ……わかった。」
「エリス、出て行くんだ!」
カレンの首を絞めた手を見つめエリスは2人に背を向け出て行こうとする。
「エリス待って!」
カレンを声にエリスは振り返ることなく立ち止まった。
「陽炎のあなたにしか頼めないことがあるの……聞いてくれる?」
‐松嶺‐
雪で埋もれた平原にて両者の戦闘が始まった。
KMFに補助装置のアイスブロウワーを装着してあるが寒冷地での戦闘に慣れていない黒の騎士団達は足を取られてしまい撃破される味方機が増加していった。
寒冷地での戦闘を経験してあるアキラが視界が悪い中で敵機に狙いを定め撃破していった。
敵が本陣を構えている要塞からカノン砲などの遠距離砲撃がアキラ達を襲いアキラはKMFの残骸で身を隠しながら前進する。藤堂達は飛翔滑走翼で上空から攻撃をしたいがこの吹雪で飛行が難しく地を這いながらいくしかなかった。
だが今のアキラにはそんなの関係なかった。
‐忘れたい、陽炎の事も……カレンも……戦いで全て忘れることができるなら………‐
「全軍、このB地点に集結し一気に攻撃をしかけるんだ!」
「ゼロ、アレクセイ達はあと10分すれば……。」
ゼロは時計を確認する。
「見せてもらうぞアレクセイ・ヤゾフ。」
前線がアキラと交戦している中本陣である要塞の付近にて雪原迷彩を兵士達が吹雪に紛れて近づいていた。
「よし!行ってくれイゴール!!」
暗視用の双眼鏡で様子を確認したリーダーアレクセイが腕を振って合図に送る。
断崖絶壁には数機のKMFがランドスピナーでよじ登り待機していた。
アレクセイの指示が伝わりKMFが一斉に起動しランドスピナーのワイヤーを巻き上げ要塞へと近づく。
「もうすぐだ…耐えてくれ!アキラ……星刻!!」
アレクセイはライフルを持って要塞へと走っていく。
戦闘が開始されてから20分近く経過している。
ここ戦地から離れた敵の要塞の辺りから硝煙が上がり味方からの通信が入ってきた。
『たった今、味方が敵要塞の攻略に成功。繰り返す味方、敵要塞の攻略に成功。』
自分たちが交戦している間に味方が要塞の制圧に成功し敵機の動揺が見え後退していくのを見てアキラ達は追撃を行い要塞へと突入を開始した。
敵は撤退又は捕虜となり戦いは自分達の勝利となった。
アキラは他に敵が隠れていないか要塞の外へと出て様子を伺う。足下の近くは崖になっている。敵の影はなく味方と合流しようとした時背後から何か気配を感じ後を振り返ると廻転刃刀を構えた暁1機が襲ってきた。
「流崎アキラ!!死んだ仲間の仇!!!」
アキラは瞬時に回避し右腕を破壊された程度に済み左腕のハンドガンで暁のコックピッチを狙い撃ったが右腕を破壊された反動でバランスが崩れ崖から転落してしまった。
「っ!!?」
為す術べなくアキラが乗った暁は崖の下吹雪の中へと消えていった。
‐どこまでも俺を追いかける過去からの凶刃。俺が死ぬまで追い詰めるのだろうか……‐
坂口、千鶴、そしてアレク達の再登場となりどう動くか
そしてカレンがエリスに頼んだ事とは……お楽しみに
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第25話
「こうしてお会いするのは初めてだ。アレクセイ・ヤゾフ、私がゼロ、今回の作戦ご協力感謝する。」
攻略した要塞前に黒の騎士団を含めた連合軍が集結ここでゼロはアレクセイと直接対面を果す。
ゼロから差し出された手をアレクセイは握り握手を交わす。
「こちらこそ。」
「少数でありながら要塞の攻略の采配、お見事で。」
「いや、我々のようなゲリラ組織こういった戦法でないと戦えないだけ。」
処理を終えた星刻が2人に気づきそばに寄ってきた。
星刻の姿を見てアレクセイの顔が自然と綻んだ。
「星刻!作戦の成功おめでとう!」
「アレク!お前達のおかげだ。」
2人は握手し喜びを分かち合う。
「だが星刻、あくまでも今回は侵攻部隊を撃破したにすぎない。」
「わかってる。奴等はまた侵攻を再開するだろう。」
「それに関してだが…。」
ゼロが2人の会話に入ろうとした時要塞の裏側から爆発の音が聞こえ3人は要塞のようを見た。
「うぅ……。」
激しい痛みでアキラは意識を取り戻した。前傾姿勢で跨るコックピットのため体勢は崩れることはなかったが狭いコックピットは今のアキラには苦痛でしかなかった。
アキラはモニターを映そうと計器を操作するが全モニターが移らず一部分しか見えないがここがあの崖から落下した地点なのだろうと推測した。
全体は見えないがどうやら暁は崖下からこの窪みに落ちたようだ。
狭いコックピットでアキラは体を仰向けにするが体が楽にはならず激しい痛みから呼吸が荒れまた意識が遠のきそうになる。
戦いはどうなったのか?救援は来てくれるのだろうか?そう思案するとアキラは苦し紛れに苦笑いを浮かべる。
今の俺を助けてくれる奴などいるのだろうか?求めるだけ無駄だとそう思うと不思議と体から僅かに痛みが和らぐ。凍える寒さを忘れアキラは意識がなくなっていった。
爆発が起こった現場に集まったゼロ達は現場の調査を行っていた。
「イゴールどうだ?」
残骸となった暁のコックピットから新生サドナ王国のイゴールが顔を出した。
「死んでるよアレク。パイロットはぐちゃぐちゃだ。これだけ銃弾浴びれば当たり前だがな。」
「扇、この暁は…。」
「
だがゼロは狭山が搭乗していた暁の傍に落ちているもう1機暁らしき片腕が気になっていた。
ゼロは先程からアキラの姿が見えないことでもしやと思っていたがこの片腕に記載されてあったナンバーの照合結果の連絡が入った。
「……そうか、…わかった。」
「ゼロ……?」
「流崎アキラの機体のものだと間違いない。」
「何っ!?アキラだと!?」
アキラ、その名を聞きイゴールが慌てた様子で扇に詰め寄ってきた。
「おい!アキラが巻き込まれたって言うのか!?」
「あっあぁ…。」
イゴールはアレクセイと顔を合わせアレクセイは頷く。
「みんな!アキラを探し出せ!!」
イゴール達新生サドナ王国の面々は一斉に行動を開始する。
‐蓬莱島‐
用意された部屋で千鶴は1人で佇み溜息を吐いていた。
「おう、どうしたんだ?」
「何だオヤジさんか……。」
「何だぁ間抜けな声出して……アキラの事だろ?」
坂口の指摘に千鶴の表情が暗くなった。
「気にするなって悪いのはあいつのほうなんだからよ。」
千鶴は首を横に振る。
「そうじゃない。あたしアキラに声かけようとした時あいつ、すごく寂しそうに見えたの。あんなアキラ初めて。」
坂口は頭を掻き言葉を選びながら口を開く。
「それだけ俺達に見てほしくなかったってことだろうぜ。まぁそうだろうな、同族殺しをして平気でいられる奴なんていないだろうさ。あいつは考えるのをやめたんだ。罪悪感で悩んだりくらいなら何も考えずにただ引き金を引いたほうが楽だと思ってな。
だがカレンやお前達と会ってガキらしいところが出てきたんだがそれがかえって自分を苦しめることになったんだな。」
「あいつ…大丈夫かな……。」
「心配すんなって!あいつがこのまま押し潰されるわけないだろ!またいつものように……ん?」
何やら人の出入りが激しくなって複数の足音が何度も聞こえ坂口は部屋の外へと出た。
「何かあったのか?千鶴ちょっと待ってろ。」
1人残された千鶴は何か嫌な予感がしそれが的中することになる。
3機のKMFが崖下へと降下し周辺を調査しその中でイゴールが乗るグラスゴーが岸壁にKMFの装色が付着している箇所を見つけた。
「見つけた、アキラのKMFはここへ落ちてるぜ。アレク、このまま降下してアキラを探して……。」
『イゴール!もう陽が沈む、これ以上の捜索は無理だ。』
「おいふざけるな!アキラがここへ落下してるのは間違いないんだ!今、やらないで……。」
『イゴール!!お前の気持ちはわかる!だが吹雪が止まないこの天候で夜間の捜索でこちらでも遭難者が発生する!明朝の天候を見て再開する。』
自分の乗るKMFが強風に煽られ左右に揺れる。
「…ちきしょう……。」
イゴールはランドスピナーのワイヤーを巻き上げる。
本陣として置いた大竜胆の中でアレクセイ、そしてゼロ達は経過を見守っていた。
「ゼロ、申し訳ないが捜索は…。」
「いや、アキラのためとはいえここまで協力感謝する。」
格納庫へ戻ってくるイゴールからの報告を聞こうとデッキから出た。
「アキラとはこの作戦で久しぶりに会えると思ったが…。」
「アキラがサドナ王国で戦っていた仲間があなたとは。面白いめぐり合わせとはこのこと。」
「せっかく生きてまた会えるのかもしれない。天候が戻り次第すぐにも。」
「……あなたはアキラが生きていると?」
アレクセイの話を聞くとアキラが生きている前提のように聞こえる。ゼロもアキラには生きていてほしいと願ってるがこの厳しい天候で満足な装備をしていない状況で生存率は0に近い。そう思ってるがアレクセイは微笑む。
「あいつだと死んだとは思えない。どんな状況でも生きて帰ってくる。ふっ…不思議な奴だ。」
「ふふっ、確かに。」
雑談しながら格納庫に来たが格納庫ではイゴールの怒声が大きく聞こえていた。
「てめぇらもう一度言ってみろ!!」
イゴールは黒の騎士団の団員らと衝突し今にも殴りかかろうとしていた。
「っ!? イゴール、何しているんだ!?」
「こいつら、アキラの仲間のくせに見捨てるなんてぬかしてるんだ!」
アレクセイは黒の騎士団の団員のほうを見て団員達は目を逸らした。すると団員の1人が口を開いた。
「あいつ1人のためにこれ以上は時間の無駄なんだよ。崖から落下したんだ。生きてるはずがない。」
掴みかかろうとするイゴールをアレクセイは前に出て遮る。
「私は短い間であるがアキラと共に戦ったことがある。私以上に彼と共に戦ってきたあなたたちが何故?」
「あんたらは知らないんだ。あいつ、陽炎の正体をな!」
アレクセイとイゴールは陽炎の言葉が出て何かアキラが彼らとの間に何か起こったのだと不安を感じた。
『 』
『 』
『 』
耳元でかすかに笑い声が聞こえる。まわりも凍てつく様な寒さは感じず逆に温かみを感じる。
どうしたのかと瞳を開くがまだおぼろげにしか見えないが6、7人の集団がある部屋に集まっている。一体誰なのか?次第に視界がはっきりしはじめアキラの目にうつったのは。
『また会長は~。』
『いいじゃない、楽しければ。』
『いつもの事だろシャーリー。』
ルルーシュをはじめアッシュフォード学園の生徒会のメンバーがそこにいた。
‐翌日、中華連邦 満州 大竜胆‐
この1日吹雪による悪天候のためゼロ達は身動きできない状態であった。黒の騎士団の中でも天候が回復次第捜索を打ち切り蓬莱島戻るとの声も出てきている。
しかし、ゼロはアキラを襲撃した敵の正体が掴めないまま戻ることはできないと考えていたが死んだ狭山がゲットーで自分達を襲った謎の部隊の生き残りだとは知る由もなかった。
一方、アレクセイ達は一刻も早くアキラの救出するためにすぐに動けるようKMFの装備の準備を行なっており、アレクセイは星刻と今後について協議をしている最中である。
「そうか、黒の騎士団は長居するつもりはないか。まぁ…当然だろうな。」
「アレク、ここは中華連邦だ。早く仲間の所へ戻ったほうが…。」
「サドナ王国のほうはワシリー達がなんとかしている。心配するな。」
「しかし、この役目はゼロ達黒の騎士団だ。お前が関わることは…。」
「俺はアキラを助けたいんだ!アキラの事は彼らから聞いたが、だからと言って見殺しにはできない。俺も……アキラと似たようなもんだ……。」
星刻はアレクセイが自らの手で兄の様に慕ったマクシムを殺めたことは知っている。
「どんな大儀名分があろうと手についたマクシムの血は洗い落とせない。星刻。アキラは必ず生きていると俺は信じてる!」
「………相変わらずだな。それでこそ兄弟だ。」
「茶化さないでくれ。」
お互い笑みを溢すが突如星刻が口元をおさえ咳き込む。
「星刻!」
口をおさえた手には吐血がこびりついている。
「もう休め、お前まで何かあればこの国はどうなる?」
「うぅ…、すまない。」
やまない吹雪を見てアレクセイはアキラの無事を願うのだった。
一方ゼロ、ルルーシュは個室にてエリア11にいるロロと連絡をとっていた。
ルルーシュにこちらへ戻ってきて欲しいとの連絡内容であった。詳細については来てから伝えるとの事であったがどうやら学園絡みのようである。
『兄さん、吹雪が止んだらすぐに戻ろう。流崎アキラの事は諦めるんだ。』
「お前はアキラが死んでいると?」
『当たり前じゃないか!そんなのここにいる僕でもわかるよ。生きてるわけないよ。』
「……だろうな。」
『どうしたの兄さん?なんかおかしいよ。』
「いや、なんでもない。何かあればまた連絡をする。エリア11には予定通りに戻る。」
ルルーシュとの連絡を終えロロはルルーシュを彼の影武者を務めている咲世子が起こしたトラブルに巻き込んでしまうことに心を痛めるがもう1つ気になるのは自分がアキラの生存が絶望的だと述べたときのルルーシュの表情が曇っておりまるで生きていてほしいように見えた。
(兄さんは何を考えてるんだ。仮に生きていたとしてもまともな装備もしてないあの男が極寒の満州で生きられるはずがない。そこまでこだわる理由が……)
以前V.V.からの命令でサドナ王国でアキラの抹殺を行なったがあの時もアキラについての詳細は教えられなかったがV.V.はアキラのことについて何か知っているように見えた。
そして彼がいる時自分のギアスの力が打ち消される謎、アキラの存在にロロは憎悪にも似た感情が渦巻いていく。
『もう会長また変なイベント考えたのですか?』
『今度はね~♪』
いるはずのない生徒会の面々にアキラは唖然とする。これは夢なのかそれとも自分はもう死んで…。
『スザク、ここ間違えてるぞ。』
『あっ!ホントだ。ありがとうルルーシュ。』
傍ではルルーシュがスザクの勉強の手伝いをしている。
するとリヴァルがルルーシュの肩に手を回し小さな声で呟く。
『ルルーシュ、また例の頼む。』
『あっ!リヴァルまたルルにチャスの代打ちを!』
『ははっ、違うって。』
何だこれは…、アキラは皆に近づくがみんなアキラの存在に気づかない。
隅には黙々とパソコンを操作するニーナ、咲世子に連れられて入ってきたナナリー、そして…。
『遅れてすみません。』
カレン……学園の中では病弱でおしとやかなお嬢様を装っているあの姿で現れた。
彼女の姿を見ておもわず手を伸ばすが彼女は気づかない。
『カレン、待ってたのよ。あのね今度……。』
カレン達が談笑するのを見てアキラは自分が何故こんな幻を見ているのか疑問に思った。
目の前の光景を懐かしみあの輪の中に入りたい自分がいる。だがカレンは陽炎が行なってきた事実を知っている。
‐今更、あそこへ戻れることは……‐
アキラは皆に背を向け見ないようにする。
『じゃあ、これにて解散~。』
皆が教室から出て行く。1人また1人と足音が消えていくのが聞こえ教室には自分1人しかいないことに気づく。
結局、俺は1人だ……そう思った時
アキラ
自分の名を呼ぶ声に振り返るとカレンが優しく微笑み手を伸ばしている。
‐なんで俺にそんな顔を……‐
カレンは口を開くが何を言ってるのか聞こえない。彼女はアキラに近づいてくる。
カレンは手をアキラの頬にあて微笑む。
その微笑みにアキラは思わずカレンを力強く抱きしめた。
華奢な彼女の体をアキラは強く貪るように抱きしめ彼女の背中に手をまわす。
カレンはアキラの耳元でそっと囁き今度ははっきりと聞こえアキラは戸惑いの色を浮かべる。
‐カレン…お前……!?‐
ゆっくりと自分のもとから離れていくカレンにアキラははじめて手を伸ばす。
‐カレン!!俺は……‐
「はっ!?」
目を見開き自分が暁のコックピットにいることを思い出し体中に伝わる激痛で意識が覚醒しアキラは自分がまだ生きているのに気づきアキラは取り憑かれたのように操縦席にある通信機器を取り外しはじめ次に外に出ようと傷ついた体を無理矢理起こしボタンを押しコックピットを開こうとしたが扉は途中で止まってしまった。
アキラは半開きになった扉へ無理矢理体を入れ外に出ようとする。脇腹から激痛が走るがアキラは構うことなく上半身を外へと出した。
暁も雪で埋もれアキラは下半身も出しコックピットから先程外した通信機器を取り出しアキラは窪みの奥へと逃げ込んだ。
アキラは通信機器を操作するが連絡ができない機器にアキラは適当な周波数に合わせる。
その直後アキラはまた痛みに苦渋の表情を見せ吹雪から身を守ろうと窪みにある岩陰に身を隠しそのまま体を横にした。
まるでやり終えたかのようにアキラはまた意識が遠のいていった。
‐1時間後 大竜胆‐
「妨害電波?」
オペレーターの部下からの報告でゼロはデッキへとあがっていた。
「1時間程前からこちらの通信に割り込んできているのですが……。」
「………発信元を特定できるか?」
「はい……今やってますが………。わかりました!この地域からそんな離れてはいない場所で……ここは!?」
「っ!? 星刻とアレクセイ達に伝えるんだ!」
思うように体が動かない。再び意識を取り戻したアキラであったが今の自分の状態を目を動かし見ると右腕に痺れるような痛みを感じ左腕でスーツを捲り上げると右腕が変色し凍傷の症状であった。
だがアキラは動じる事はなくまた瞳を閉じた。やるだけのことはやった。それでもダメなら……。そう身を委ねていると眩い光が差し込みアキラは再び瞳を開いた。
『見つけた!!アキラだ。間違いないぜ!!』
操縦者のイゴールからアキラ発見の連絡を受けアレクセイ、ゼロ達は安堵する。
『かなり衰弱しているみたいだ。すぐに回収する!』
「よしっ!わかった。こちらですぐに治療の準備をする。」
通信を終えたアレクセイは一息吐いた。
「アレクセイ、アキラの救助感謝する。ありがとう。」
「いやゼロ、それはあいつが五体満足で戻れるまで安心できない。」
「……い…アキラ……!」
‐イゴールが俺に大きな声で呼びかける。もう…一言の声を出す気力もない。だが俺はまだ生きている。‐
あなたを待っている……
あの幻の中カレンが俺に告げた一言、自惚れかも知れない、だたの俺の願望かも知れない。だが俺はあいつを力強く抱きしめた。まるで犯すように……あれが俺の本心なのか……。カレンから拒まれたにも関わらず俺はあいつを求めてる。俺の傍にいて欲しいと……お前が欲しいと……。カレンの身体と心を欲している自分の本心に戸惑いながらも俺はカレンのあの言葉で一筋の光が射し込んだように感じた。
カレンを助ける…!それが俺のやるべきこと、さだめなら俺は……!!‐
-11日後 日本時間14:00 エリア11 トウキョウ租界-
長い廊下を車椅子を押して歩くスザクがいる。いつも座っているのはナナリーであるが今回はカレンが座っているが手足が車椅子で拘束された状態でいる。
そんなカレンをスザクは黙ったまま進ませある部屋の扉の前へと辿り着く。そこにはエリスが立っており2人を見て扉を開ける。
扉を開けた先は樹木を植えられ、噴水・花壇が設けられ小さな庭園が広がっていた。
その中で1人の初老の男性が立っていた。
「中華連邦以来2度目。またこうして会えるとは、紅月カレン君。」
「私の願いお聞きいただきありがとうございます。井ノ本寛司。」
優しく微笑む井ノ本に対しカレンは強面の表情を崩さず2人は対峙する。
アキラとカレン、幻での2人の描写は少し官能的にしたのはアキラが本心ではカレン、離れないでくれとアキラの心の願望により見た幻として描きそしてカレンに対し性的願望にも取れる描写も入れました。
モデルとなったキリコはサンサ編で衰弱したフィアナを守ることで立ち直りましたがアキラが1人だったので自分が本当はどうしたいのかと己に問いかけることで立ち直らせようとしました。
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第26話
少し長くなりましたが、では。
‐11日後 エリア11 アッシュフォード学園‐
まさかまたこの制服を着ることになるとは…アキラは学園の制服に袖を通し鏡で制服を着ている自分の姿に溜息を吐く。こうなった経緯は3日前に遡る。
‐3日前 蓬莱島‐
「はっははは!! しっかし、てめぇもなかなかしぶとい野郎だなアキラ!」
アキラがいる病室にてイゴールは豪快に笑い傍にいる坂口、千鶴も釣られて笑みを溢す。
「だから言ったろ。こいつは簡単にくたばらねぇって。」
「あんたが遭難したって聞いてどうなるかと思った。」
「……心配かけてすまなかった。」
「ホントだよ。あっ!あたし花の水を入替えるね。」
千鶴は花の入った花瓶を持って病室から出て行った。
「だがよ、まだ入院してるって事はお前まだ……。」
「それがよイゴール、こいつはもう治ってんだよ。凍傷していた腕も切るほどひどくなかったらしくてな。それ以外は骨折ですんでるんだ。今は検査入院ってところだ。」
「その運を分けてほしいぜ。 それでそれの……アキラ。」
突然、イゴールが神妙な面持ちになった。
「聞いたんだが、お前大丈夫なのか?その……陽炎の事で。」
陽炎、それを耳にしアキラは一瞬視線を落したが。
「……そうだな………死にかけたら考えが変わった。」
「ん?」
「あいつを……カレンを抱く前に死にたくないっと思った。」
アキラから発した意外な言葉に坂口とイゴールは目が点になったが2人は大きな声で笑い出した。
「アキラ!お前もそういう冗談を言えるようになったか。」
「そうか!!アキラ、てめぇもやっぱり男だな。はっはは! だったら尚更カレンを助けないとな。」
「ちょっと何2人大声で笑ってるのよ。」
千鶴が呆れた顔で戻ってきた。
「それよりイゴール、あんた仕事でこっちに来たんでしょ。」
星刻の仲介により黒の騎士団、アレクセイ達新生サドナ王国は同盟を結んだがアレクセイ達は流体サクラダイトの産出量がエリア11に次いで多くアレクセイ達はまだブリタニアに発見されていない箇所を知っておりこれを黒の騎士団に輸出し見返りとして黒の騎士団は最新式のKMFを新生サドナ王国へと輸出するという軍事同盟として結んでいる。
今回イゴールはその流体サクラダイトの輸送部隊の責任者としてここ蓬莱島まで足を運んだのである。
「おっとそうだった。じゃあな、アキラまた会おうな。」
「あぁ、アレクにもよろしくと伝えてくれ。」
イゴールが病室を出た後坂口は神妙な面持ちでアキラに問いただした。
「っで実際のところどうなんだ?ここの連中からもまだ白い目で見られてるんだろ?」
「おかげでディートハルトの下で働くことになって退院後エリア11に行きだ。だが陽炎のことは決着はつけてカレンを助ける。それまでは死ねない。」
「………そうか、それを聞いて安心したぜ。気休めにはならないけどよ俺やあのイゴールだって人様に知られたくないことをやってきたんだ。アキラ……お前だけじゃねぇよ。こんな時代だ、誰だって綺麗なまま生きていけねぇよ。あとはお前次第ってことだ。」
「そういうオヤジさんは今も人様に言えないことやってるけどね。」
「そのオヤジにメシ食わせてもらってるのはどこのどいつだぁ?」
2人のやりとりにアキラは笑みを浮かべ坂口と千鶴もアキラの笑みを見て安堵の表情をする。その時アキラの携帯がなり発信者がゼロであった。ゼロ、ルルーシュは今、エリア11にいるのだが
「どうした?」
『アキラ、頼みたいことがある。』
「………わかった。」
アキラは目の前にいる2人にアイコンタクトをし2人もアキラの意図を察して病室から出て行った。
「それでどうした?」
『アキラ、体調のほうはどうだ?』
「?? もう外には出ることはできる。」
『そっそうか。……ならアキラ、すまないがエリア11へと早急に来てくれないか。』
「……?何かあったのか?」
『あっあぁ、少し予想外の事態が起こった。』
どこかはっきりしないルルーシュにアキラは頭を傾げるが既に体調が回復し断る理由がなく、アキラは二つ返事で了承しエリア11へと向かったのだが。
「はい、ルルーシュどうぞ♪」
女子生徒の1人がルルーシュに手作り弁当をご馳走しようと昼休み2人っきりになってルルーシュに弁当を渡した。
彼女にとって一生懸命つくったものだが当のルルーシュは素っ気無い表情で黙って弁当箱を開き黙って食べ始めた。
「どっどうかな?」
黙々と食べるルルーシュに女子生徒は恐るおそる聞いてみる。
「……うまい。」
「そっそう、よかった。」
彼女は一安心したがある一つの疑問が浮かぶ。
(何かルルーシュいつもと違う?)
普段のルルーシュと違い何か近寄りがたい雰囲気を出している。
「……時間だ。」
気づくとルルーシュは食べ終え弁当箱を返した。
「………ありがとう。」
「えっ!?あっ……。」
用が終わったかのようにルルーシュはさっとその場から離れていった。
『ダメですよ。ルルーシュ様はそんな態度はとりません。』
耳に装着してあった通信機から咲世子からの声が聞こえルルーシュは溜息を吐く。
「他の連中もいる。これ以上時間をかけられない。」
『それでも今はあなたがルルーシュ様なのですよお願いします……流崎様。』
「……気をつける。」
ボイスチェンジャーを外しルルーシュの声から元の自分の声へと戻っていく。
何故アキラがルルーシュの影武者をしているのかというと本来ルルーシュの影武者を務めている咲世子が多数の人数、それも女性と約束をつくってしまいルルーシュ本人も相手をしていたがゼロとして上海にて通商条約の締結など黒の騎士団としての仕事もあり全てに対応できずそこでアキラには前倒しでエリア11へ来てもらいルルーシュの影武者をしているのであった。
『次に放課後、デートがありますのでお忘れなく。その後ルルーシュ様がお戻りになるので交代してください。くれぐれもルルーシュ様のイメージダウンだけは避けるように。』
「…………。」
エリア11に来て早々このハードスケジュールにアキラは呆れて何も言えなかった。
そして後に事の事態を知った会長ミレイの思いつきのイベントで事態は更に混沌としていくのであった。
‐蓬莱島‐
一方、蓬莱島の黒の騎士団の面々はある事で話題になっていた。
扇達が食堂にて集まっている姿を見てC.C.は物陰から聞く耳を立てる。
「何かの間違いじゃないのか?」
「医学に関しては専門外だけどこんなの誰が見てもわかるわ。」
皆、ラクシャータが出したある1人のレントゲン写真を見ていた。
「あちこち骨折してるのに2週間も経たずに完治、あの凍傷にしろ腕一本切ってもおかしくなかったのにここへ戻ると血行が元に戻ったって言うじゃない。医者の話だとアイツの経過を見てあの男の回復力は常人の倍以上らしいよ。」
「何だそれ。あいつ、陽炎にいた時体いじくったってことか?」
「だが、医者の話だとそんなところは見当たらなかったって言うぞ。」
「どうなってんだ?」
隠れて聞いていたC.C.はアキラの動向を振り返る。
「……まさかな。」
立ち去ろうとした時C.C.の足が止まり誰かと会話しているが近くに誰もいない。
「あの男がっ!?そんなはずは……奴らは……ならアキラは新しく……。」
C.C.の表情が青ざめていく。既に過去のものだと思っていたあるのものを彼女は思い出したのだ。
そしてイベント当日、制服に着替えたアキラは地下の司令室で事の事態を見守っていた。
『アキラ、伝えたとおりにするんだ。あとくれぐれも…。』
「わかってる。女には傷一つもつけるなだろ。」
ミレイが立案した自身の卒業イベント、キューピットの日は相手の帽子を奪って被るだけで2人は強制的に恋人同士になるゲームのようだが説明をしているミレイから更に追加のルールが発表された。
『3年B組ルルーシュ・ランペルージの帽子を私のところに持ってきた部は部費を10倍にします!!』
『何っ!?』
「あの女……。」
面倒事が更に面倒となりアキラは思わず舌打ちをする。
「それではスタート!!」
‐同日 同時刻 エリア11 総督府‐
扉を開けた先は樹木を植えられ、噴水・花壇が設けられ小さな庭園が広がりその中の1つのテーブルを挟んで井ノ本、カレンが対峙し傍にエリス、スザクが立っている。
井ノ本はカレンと視線を合わせると次にエリスに顔を合わせる。
「うむエリス、お前はさがってよい。」
エリスは黙ってさがる際一瞬カレンを目を合い何事もなく出て行く。
「エリスから話は聞いている。黒の騎士団のエースからのご指名とは。」
サングラスで表情ははっきりしないが穏やかな口調である。
「話を聞いてくださりありがとうございます。」
「そんなしゃりべ方でなくてもいい。私たちが敵であることに変わりはない。」
ふと井ノ本はスザクのほうを見る。
「ナナリー総督の命令で私が彼女の護衛を。」
「ふふっ、総督は私を警戒しているようだ。彼女を放してやりなさい。」
スザクは拘束を解いていいのかと警戒する厳しい表情をする。
「紅月君は私を殺して逃げるつもりかね?」
「まさか。あなたを殺したところでスザクとエリスの2人に嬲り殺されるのが関の山。」
拘束が解かれカレンは自分の手首を摩った。
「私はあなたと会いたかったの。」
「……そうか、なら。」
側近の1人がティーカップなどお茶の準備をはじめる。
「お茶を楽しみながらでも。」
微笑む井ノ本にカレンは表情を崩さなかった。
『こちらラグビー部、ルルーシュ発見!』
「よーし!アッシュフォード学園全部活メンバーに通達。男子寮と中庭中心に包囲網を敷きなさい!」
ミレイの指示で他の部活生達が集まるが
『ルルーシュが野球部の包囲網を突破!何か格闘技のような技で倒された!』
「ルルーシュが格闘技?」
運動が苦手なルルーシュのはずなのだがとミレイは頭を傾げる。
「アキラやりすぎだ!」
『少し転がしただけだ。怪我は大した事ない。』
「そうじゃない!もう少し俺らしく対処してくれ。」
『別のグループが来た。』
「おい!!今度は穏便に対処してくれよ。」
『………努力はする。』
ルルーシュはこめかみに手をやり溜息を吐いた。
「兄さん、流崎は校舎を迂回して第二体育館へ移動していく。もうすぐ咲世子と合流して交代するよ。………この2人なら僕の援護は必要ないと思うけど……。」
「これじゃあ俺がスポーツマンにでもなったかのようだな。」
このイベントが終わったら運動部から勧誘されるのではないかとルルーシュは頭を抱えるのであった。
‐トウキョウ租界 総督府‐
「それで紅月君、私に何の用があるのかね?」
カレンは用意された紅茶に手をつけずに井ノ本とテーブルにて対峙している。
「私は………アキラの事をあなたから聞きたいの。」
「ほぅ…。」
アキラの名が出るが井ノ本は特に驚く様子を見せない。
「アキラの身に何か起こったのかな?」
「それに関しては黙秘させてもらうわ。でも改めて私はアキラの事を何も知らないって思い知らされた。」
「それで私を?」
「えぇ、陽炎の創設者のあなたならわかると思って会いたかったの。………あなたはアキラの何かを知っている!」
井ノ本はティーカップを口へ運ぶ。
「知ってどうする?」
「……彼の過去を知ったところで何もできないかも知れない。けどまた会うときにきちんと彼と向き合いたいの。」
「ここから生きて出られると?」
「私はそのつもり。」
カレンの真剣な眼差しに井ノ本は笑みを溢す。
「おもしろい子だ。なるほど奴が君に心を開いただけ信頼され強い信念を持った人間のようだ。」
井ノ本はゆっくりと自分のサングラスを外す。
「私が流崎アキラを陽炎に配属させて戦闘のプロへと育て上げた。私の半生は理想の戦闘集団づくりに捧げてきた。 だが優れた技術、管理も優秀な人的素材に敵わないと知り私は兵士として理想の人材を探してきた。」
「人的素材…?」
「そして私は探し当てた。流崎アキラを。」
「アキラ……。」
「生命体には他に比べ群を抜いて生存率の高い固体が存在する。私はそれを
「……異能……生存…体?」
聞いた事のない言葉にカレンとスザクが目が点になる。
カレンは中華連邦にてゼロとシュナイゼルがチャスで対局を思い出し、対局中にシュナイゼルがゼロの集中力を削ごうとしたのか何やら戯言を言い出したのだがカレンにはそれがただの戯言には思えなかった。
「はじめは日本のある研究所にて菌類からの発見されたものだった。あらゆる致命的損害でも死なない生命の法則に反する菌類。後にそれが人間にも存在することがわかった。」
「それがアキラってこと……?異能生存体、不死の人間?」
「そんな人間が存在するはずが…………いや!?」
カレン、スザクはギアスの存在を知っており、もしやアキラもギアス能力者なのかと疑った。
「………奴が存在を知ったのは奴がまだ赤ん坊の時だった。」
アキラの出生、その事実にカレン、そしてスザクも驚愕の表情をする。
「もっとも私が見たのはほんの一瞬だけで私の前から姿を消した。
だが8年後、奴が日本で生存していることを知った。日本とブリタニアが開戦する2年前の事だ。」
「日本!?」
「そう、小笠原、いやもっと南下してある小さな島の住民百数人の小さな集落に奴はいた。その時の私は奴が生きている事に信じられず私は軍をその島に派遣させた。
そして対ブリタニアのための最前線基地建造の名のもと島の住民を殺害した。アキラが本当に異能生存体なのか確認するために。」
「なっ!?」
「そんな……アキラ1人のために島の住民全員を!?」
この話にスザク、カレンは顔面蒼白となった。
「もちろん、アキラらしき子供を見つけ殺害、住民の遺体と共に焼却した。だがそれから4年後、ブリタニアとの戦争中に私は奴と再会した。火傷のあとも残さずに。」
「そんなバカなことが!?あなたの見間違いで死んだのは別の人間でアキラはその島にはいなかった!!」
怒鳴るように声を荒げるスザクを見てフッと井ノ本はほくそ笑んだ。
「君が否定する気持ちはわかるが私は目撃してるのだよ。異能生存体の奇跡を。」
アキラは物陰からルルーシュに扮した咲世子の行動を見守っている。跳んだりとどう見てもルルーシュとは程遠い姿であるが追跡から逃れており捕まることはない。みんなにはルルーシュのお得意の口術で言い包めさればいいとアキラは次の行動に移ろうとした時上空に巨大な影が通り過ぎアキラは上を見上げた。
『おい、ルルーシュ。』
「どうした?」
『スザク以外のナイトオブラウンズが2人この学園にいるんだな?』
「あぁ…それが?」
「にっ兄さん!」
ロロの呼びかけでルルーシュはモニターに写ったものに目が入る。そこにはアーニャのモルドレッドが学園に侵入している。
「迂闊だったな。アーニャまで一般常識に欠けていたとは。」
『どうする?KMFも相手するつもりか?』
「作戦を最終局面に以降。咲世子は図書室に。」
校舎に入るところでモルドレッドが図書室に近づくのを見てアキラは咲世子に連絡を取る。
「咲世子、KMFがお前のところに……咲世子?どうした?」
応答のない咲世子にアキラは図書室へと向かい入ったところ意外な人物と会ってしまった。
「ルル!!」
何故ここにシャーリーが。アキラは周りを見ると近くで身を隠している咲世子を見つけた。
シャーリーがこちらへ近づこうとした時外からモルドレッドがこちらへ近づくのに気づいた。
「シャーリー、伏せろ!!」
モルドレッドがガラスを破りシャーリーが巻き込まれそうになりアキラはシャーリーを抱き寄せ階段から転げ落ちた。
「なっ!?モルドレッド!!」
地下から図書室へと入ったルルーシュはモルドレッドが現れ慌ててまた扉を閉めた。
「咲世子、無事か?」
『はい、私は無事ですが流崎様がシャーリーさんと。』
「何!?シャーリーが!?」
‐トウキョウ租界 総督府‐
「私が奴を保護し軍に入れ私の理想の兵士へと育てあげた。」
井ノ本はあるファイルをテーブルに置いた。カレンはそのファイルを開くと中身はアキラの陽炎での戦歴が事細かく記録されていた。
「12歳、歩兵部隊に配属。アイチの軍事基地、攻略作戦に参加。作戦は失敗……えっ?」
カレンの目に入ったのはレントゲン写真であった。
「骨盤骨折に肋骨骨折で骨が肺を損傷全治3ヶ月……。これってアキラ……。」
「そう、奴がその作戦で負った怪我だ。だが奴は2週間後復帰を果した。奴が所属していた部隊は奴以外は死亡。奴の生存は奇跡と言っていい。」
「そんな……!」
カレンは他の戦歴に目を通し傍で見ていたスザクはある事に気づいた。
「アキラの部隊の配置、そして部隊の損害………そんな!?」
「そう、私はあえて生存率の低い状況に奴を置いた。そして奴は生き残った。この生存確率の際だった高さを見てばわかるだろう。」
カレンは今までアキラと共に戦ってきて彼が生死を彷徨う事が何度も目撃してきた。
先の太平洋の戦いでは一度死んだのだ。
(じゃあ、アキラが生きてこられたのはこの異能生存体の力って事!?)
「まるで作戦そのものがアキラに対する実験そのものだ……。」
そしてカレン、スザクは思った。これはギアスの力なのか?だがアキラ自身は負傷など生死を彷徨う危険な状況など記載されアキラがギアスを持っているのならそうなる前に危機的状況から脱することができるはずだ。
‐流崎アキラ、彼も気をつけたほうがいい。ギアスに匹敵する力を持っている‐
スザクは1年前ブラックリベリオンの時V.V.に初めて会った時彼からの忠告を思い出した。
「流崎アキラの……異能生存体はギアスとは別の力なのですか?」
(スザク!?)
スザクの問いにカレンは悟られないよう表情を硬くする。
「異能生存体とギアス。この2つの力は似て非なるものの存在。異能生存体は王殺しの力でもある。」
「ギアスを殺す力?」
「異能生存体はどんな奇跡でも引き起こすことができる。自身の生死に関わると周囲の環境を変え生存を果す。故に異能だ。」
「周囲の環境?」
「君たちも目撃している筈だ。1年前、行政特区日本を発布したユーフェミア・リ・ブリタニアの最期を。」
「ユフィの………?」
ユーフェミアの最期を目撃している2人は憶えている。彼女が乗ったKMFがアキラを狙ってライフルを撃ったが逸れてその銃弾が……。
するとスザクの顔が段々と青ざめていく。
「いや…そんなバカな!?ありえない!!」
カレンもユーフェミアの最期を思い出し井ノ本の言ってることの意味を知る。
「待って!じゃあ、あれはアキラが起こして事って言いたいの?」
「あれは銃弾が逸れ偶然彼女に銃弾が当たった。そんな低い確率の現象を引き起こした事が奴が異能生存体である証。」
スザクはアキラに対し恐怖にも似た感情を抱きつつある。生き残るためなら周囲の人間を巻き込む異能生存体。もし井ノ本の仮説通りならアキラは危険すぎる。
その時、スザクの携帯が鳴り少し離れて携帯を取った。
「アッシュフォード学園に?アーニャが!?わかった。すぐに!
すみません、緊急事態が起こりました。申し訳ありませんが彼女を頼みます。」
急ぎ部屋から出てスザクは一瞬扉の横に立っていたエリスと目を合わせ走り去っていった。扉越しからPSで強化された聴力で聞いていたエリスは握っている拳を強く握っているのであった。
2人だけとなったがカレンは話を続けた。
「でも、あなたの話だとアキラはその力のおかげで生き残れたってことになるじゃない。」
「……1年前、奴が熾したシンジュクの事件で君がアキラを助けに現れた。軍が街を封鎖している中を掻い潜り君がアキラのもとへと来る環境をつくらせたのがアキラの異能の力でもある。」
「………アキラは自分が異能生存体だって知ってるの?」
「私が直接告げた。だが奴は拒否した。」
「拒否?」
「発作だ。奴は幼い頃の記憶がない、思い出そうとすると発作を起こす。………私は異能生存体である奴に対し興奮と恐怖を感じた。私がエリア11を去る直前私は再度アキラの抹殺を図ろうとある作戦に乗じて奴を殺そうとしたが奴は生き延びた。」
アキラが捕らえられていたC.C.を発見し味方に裏切られた作戦だとカレンは思った。
「如何にしてアキラを抹殺することができるのか私は人工的に異能生存体を生み出すことにした。」
「パーフェクトソルジャーっ!?」
「そう、エリスはアキラに対抗できる唯一の存在。だが……もう一つ、異能生存体の根底を知ることができた。」
「異能生存体の根底?どういう意味?」
「ふふっ、君がアキラと共にいるのであればいずれ辿り着く。異能生存体、いやこの世界の姿を。」
まだ真意を隠している井ノ本に対し不審の目を向けるカレンであったが今、アキラに対し自分のやるべきことを決意を胸に秘めるのであった。
「……怪我ないか?」
薄暗い階段の下でアキラはシャーリーと2人でいる。
「うん、大丈夫。…………ねぇルル、聞きたいことあるの。どうして私にキスしたの?」
咲世子がルルーシュの影武者している時に起こった事はアキラは把握している。
「…………。」
「ねぇ、どうして黙ってるの?その……遊びだったの?あのキスは?」
「………………。」
「やっぱりおかしい、ルルらしくない。」
当事者ではないアキラに今のシャーリーになんて言葉をかけてやればいいのかわからないでいる。
「いや……俺は…。」
「ルル?」
返答に困るアキラであったが傍で別の人間の気配がし一瞬視線をそちらに向けその人間の正体を察したアキラは僅かであるが口元が緩んだ。
「好きだからしたくなった。それだけだ。」
「嘘。冗談でしょ。」
「冗談じゃない。俺はクソ真面目な男だ。」
シャーリーは吹き出すように笑う。
「クソ真面目ならキスする前に何か言う事あるんじゃない?」
その問いに困りアキラは目が泳ぎ、その姿にシャーリーはハッとした表情をする。
「どうしてだろう?今のルル見てたら思い出せないけど誰かに似てる。」
「えっ!?」
「そう、好きな女の子にどう接したらいいのかわからない不器用な人って感じの……ごめんやっぱり思い出せない。」
苦笑いするシャーリーを見てアキラは自分がここにいた頃を思い出しまだここに馴染めてない自分がカレンに冷たく接しているのを見て声をあげて怒ったのはシャーリーであった。
それからもシャーリーはアキラに対して別け隔てなく接してくれていた。
アキラはゆっくりと立ち上がった。
「シャーリー、俺がいいって言うまで目を瞑ってくれないか。」
「えっ!?う、うんわかった。」
目を瞑るシャーリーからアキラはゆっくりと離れていき階段を上っていき近くで隠れている人間と目が合った。
「あとは任せた。ルルーシュ。」
「任せたってお前!?」
「シャーリーが待ってるぞ。」
「くっ…。」
いつまでも待たせるわけにはいかずルルーシュは階段を降りていくのであった。
「もう…開けてもいい。」
ゆっくりと目を開くシャーリーの前にはルルーシュが立っている。
「…………ッ。」
黙ったままのルルーシュにシャーリーは残念そうな顔をする。
「キスしてくれると思った。」
「えっ!?」
「いいよ。嘘のキスでも、私…」
「ダメだ!そんなの。」
声を荒げるルルーシュにシャーリーは微笑む。
「ルルに戻った。」
「えっ…?」
「最近のルル、らしくなかったから。……………ルル、今度はルルが目瞑って。」
シャーリーの要望にルルーシュは戸惑いながらも目を瞑ったが頬に痛みが伝わり目を開くとシャーリーがつねっていた。
「キスされると思ったんでしょ。」
「その……可能性の問題として。」
「ルルのエッチ。」
「いや、だから……。」
焦るルルーシュにシャーリーは優しく微笑んだ。
「でも、いつか本当に好きにさせてみせるから。言ったでしょ、恋はパワーだって、ね?」
その後、スザクのランスロットが現れたりと騒動が続いたがこのミレイの卒業イベントは無事終わったのであった。
井ノ本との話が終わりカレンはスザクの代わりにエリスによって車椅子で部屋を後にするが
「最期に聞きたいことがあるの。」
「ん?」
「あなたはアキラのことどう思ってるの?」
その問いに井ノ本は少し思案するが
「私の理想に最も近い男、そして最も危険な男だ。」
「……1つだけ言っておく。私はアキラを助けたいからシンジュクへ戻った。どれだけ敵がいようが関係なかった。今までもそう、私は自分の心に従って動いてきた。」
カレンの一言一言井ノ本は黙って聞いている。
「……異能生存体だとか関係ない。あなたの話だとアキラが人間じゃないように聞こえるけど私には血の通った1人の人でそんなアキラを人として私は……。」
「私がサドナ王国で奴と再会した時奴の瞳には生気を感じた。初めてだったあの流崎アキラが……。君が大きな影響を与えたのだろう。」
「それは私も同じ。アキラがいたから戦える。だから生きてアキラとまた会う。いつまでもここでいるつもりはない!」
部屋を出るカレン、エリスの後姿を井ノ本は無表情で見つめるのであった。
カレンを独房室へと入れエリスは出ようとするがエリスは立ち止まった。
「紅月カレン、アキラが異能生存体だろうが関係ない。お前を殺し奴を…。」
「そう……正直言って私はあなたと戦いたくない。」
「何っ?」
「似ているのよ。あなたがアキラと。」
「私が!?」
「初めて会った頃の誰も信じず1人孤独で生きていた彼に似ている。」
「何を……言って…?」
自分がアキラに?戸惑いの色を浮かべるエリスにカレンはエリスの手を優しく握る。
「私はあなたに教えたいの自分のモノにするとか支配するとかじゃない、本当の愛を。」
「本当の………愛?」
「あなたとは別の形で会いたかった。……さよなら。」
‐本当の愛‐
その言葉が理解できずカレンに握られた手を見つめエリスは独房の扉を後にするのであった。
イベント終了後、地下の司令部へと戻ってきたルルーシュを不敵な笑みを浮かべているアキラが出迎えた。
「カップル成立おめでとうってところか。」
「何だ、その感情のこもってない言い方は。」
「せっかく、キスするタイミングを作ったんだ。あの時すればあいつが喜んだろうに。」
「お前……。」
「俺は帰る。」
「待て、またゲットーか。」
「ゲットーの塒に十分だ。ここは俺には居心地が良過ぎる。」
そう言うとアキラは司令部を出て行くのであった。
‐共にここへ戻ろうとカレンから言われた。だが今、俺がここへ戻ることはできない。過去の……陽炎との決着をつけるまで俺は……‐
数日後、キャスターとしてミレイが市街地の電光掲示板に映されている。
その近くのあるビルの1室にある男が市街地を見上げている。
『ジェレミア、これで8箇所目?』
「はい、別の箇所には例の男を。しかしV.V.、本当にギアスをかけられた人間はSPとして配置されているのでしょうか?」
『わからないからキレイにしているんだよ。君と彼には全てのギアスを破壊するギアスキャンセラーを手に入れたのだから。』
「了解しました。誰がギアスにかかっているのかはわかりませんが……。」
部屋にもう1人の男が入ってきた。
「そちらのほうは?」
「………完了した。」
「そうか……なら。」
ジェレミアは隠された左目が露になりすると何かを発動させた。
「これであとはアッシュフォード学園さえ落とせば、ルルーシュを……。」
隣にいた男から金属が擦れる音が聞こえジェレミアは横を見る。
「そうか…お前は流崎アキラであったな。」
「来る………奴はきっと!」
ジェレミアと同じく左目が隠された男、
「…………思い出した。私のお父さんを殺したゼロは………ルルーシュ。」
ジェレミアと高山が近くでいる市街地にいたシャーリーは突然、脳に情報が流れ込んできて抜けた記憶が蘇り呆然と立ち尽くした。
まさかの高山復活w
そして原作通りシャーリーはその後……
来年から急展開を迎えます。
両作品をいい意味で混ぜ壊していきたいと思います。
では皆さんよいお年を。
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第27話
今年一発目から急展開です。では
‐??‐
謎の施設にいるバトレー、そして行方不明であったコーネリアが地下の神殿のような場所を歩いていた。
皇帝シャルルの命令でここへ来たバトレー達であったが突如現れたコーネリアに助けを請うた。
「彼らは神を殺す。一体どういう事だバトレー。」
何の戯言かとコーネリアは頭を傾げる。
「何かの比喩表現かとも思いましたが、少なくとも彼らはそう信じています。」
「バカな。神など存在するわけがない。」
「そうだね。」
振り向くとV.V.が立っていた。
「この世界に神なんているわけない。いたとしても……っ!。」
その瞬間コーネリアが投げたナイフがV.V.の額を貫いた。
「……コーネリア様。」
「どんなギアスを使うかわからぬ。相手が子供といえど、油断はできない」
「うぅ…そうだね。さすが音に聞こえたコーネリア皇女殿下。」
殺したはずのV.V.がナイフが刺さったままゆったりと立ち上がる。
「ボクも叔父として誇りに思うよ。」
「……バカな。」
「ボクらは誓ったんだ。神を名乗る者なんて殺してしまおうって。」
‐エリア11 アッシュフォード学園‐
「兄さんと流崎アキラはイケブクロか……。」
今、アキラとルルーシュの2人はゲフィオンディスターバーを取り込んだ列車の仕込みでイケブクロの駅ビルにいるのだ。
列車の整備にアキラが選ばれたのだがロロはどこか不満の色を浮かべている。
(僕のギアスだけじゃなくもしかして兄さんのギアスにも何か影響を及ぼすんじゃないのか?だったらあんな奴を傍に置くよりも…)
その時監視カメラに学園の者ではない2人組が潜入していることに気づいた。
「さて、ルルーシュは…。」
潜入したジェレミア達であったが高山のほうはまるで興味を示さず別の誰かを捜し求めている。
「ふふっ……ルルーシュは眼中に無いか。」
目の前に咲世子が現れ立ちふさがる。
「何者です!」
「どきたまえ。なるべくなら女性は殺したくない。」
「私もなるべくなら無駄な殺生は避けたかったのですが。」
クナイを構えて咲世子は接近しジェレミアに攻撃するが体に刺さるはずのクナイが弾かれてしまい更に高山が右腕を握り締め咲世子に襲いかかる。
咲世子はジャンプして避けるが振り上げられた高山の拳が地面を破壊した。
「機械!?」
「ゼロのおかげでな。」
高山は左手に着けている手袋を外すと右腕だけであった義手が左腕にも装着され手首が折れ左腕が銃口となり咲世子に向ける。
「咲世子!!」
反対側からロロが駆けつけ自身のギアスを発動させる。
「咲世子、僕がこいつを止めている間に。」
「わかりました」
動きの止まった2人に近づこうとした時ジェレミアの左目が作動し高山の左腕が動いた。止まったとばかり思っていた咲世子は銃口が自分の目の前に向けられ慌てて体を横へと傾け銃弾に襲われることはなかったがその隙にジェレミアが彼女の背後をとりナイフで咲世子の背中を斬りつける。
「そんな僕のギアスが?絶対停止の結界を…。」
倒れている咲世子を見て自分のギアスが解除された。こんなのはアキラの時以来だとロロは狼狽える。
「お前達に用はない。流崎はどこだ!!」
「えっ!?」
「流崎…流崎アキラはどこにいる!!」
ロロなど眼中にないように高山は叫ぶのであった。
‐イケブクロ‐
アキラとルルーシュはゲフィオントレインの仕込みのチェックが終わろうとしていた。
「よし、このまま予定通りに。」
「なら、帰らせてもらう。とっつあんが仕事でここへ戻って来る。俺は手伝いで港に行くことになった。」
「そうか、俺は学園に戻る。」
「なんだ、シャーリーの相手か?」
茶化すような口調にルルーシュはムッとするが
「今はそんな時じゃない。だが全て終われば……。」
「全て……か…。」
アキラはビルから見える街の風景を見て一言呟く。
「あいつには今の方が幸せかもしれないな……。」
「アキラ?」
アキラから発せられた言葉にルルーシュは聞き返そうとするが
「ただの独り言だ忘れてくれ。」
「待て、アキラ。」
去ろうとするアキラをルルーシュは呼び止める。
「お前、いつか言ったな。ゼロの正体を知ったシャーリーにギアスをかけるより殺したほうが最善だったと。」
「……。」
「もし、シャーリーの記憶が戻ったらお前は彼女を殺すのか?」
その問いにアキラは暫く沈黙するがゆっくりと振り返る。
「俺達の障害になるのなら。」
「っ!!?」
この冷酷な一言ににルルーシュに緊張が走る。
「お前……」
「話はそれだけか。じゃあな。」
あれからいつものアキラに戻ったように見えたルルーシュであったが先程の言葉でアキラは悪名高い陽炎の人間であったと再認識させられた。
もし本当にアキラがシャーリーに銃を向けるのなら自分はアキラにギアスをかけ彼女を守る。それがカレンを悲しませることになろうと。
バイクを走らせながらアキラは先程自身が口にした言葉を思い出していた。
(そんな事すれば
すると道を歩くシャーリーとすれ違った。
こんな時に何故彼女と苦い顔をするがシャーリーが行く方向はルルーシュがいる駅のほうであった。何か用事でもあるのかと思ったがアキラは気に留めることはなく港へと行くのであった。
-陽炎 ヨコハマ基地-
(気づけば奴とは既に十数年から……。いや、それ以上に。)
井ノ本はカレンとの会話でアキラと、いや異能生存体に出会って既に長い年月が経っていたことに気づかされた。
(今でも忘れられない。奴の目を。)
昔、崖から投げられ落ちていく赤子の姿を若い井ノ本が崖下から隠れて見ていた。
落ちていく赤子と一瞬目が合った。
命の危機に瀕しているのにも関らず赤子の目は強く井ノ本を睨んでいた。
井ノ本はあの赤子がこのまま死ぬとは思えなかった。落ちていった赤子を井ノ本は見えなくなるまで崖下を見つめていた。
-
シャルル、V.V.から聞いた
井ノ本の口角が無意識につり上がっていた。
-イケブクロ 駅ビル-
シャーリーは1人イケブクロで不安な表情でいた。
(ルルはゼロだった。ヴィレッタ先生は軍人。カレンは黒の騎士団。じゃあニーナは?会長は?リヴァルは?おかしいのは学校だけ?どうしてナナちゃんは総督なの? ライくんっ!?そうだライくんも黒の騎士団で本当の名前は流崎アキラ…。何が嘘で何が本当なの?)
突如、蘇った記憶にシャーリーは混乱に喫していた。背後から声をかけられビクッと体が震えた。
「僕だよ。どうしたの?急に呼び出して。」
そう、シャーリーはスザクを呼び出し真実を聞こうとしたのだった。
「スザクくん、あのね……「シャーリー!?」 えっ!?」
声があったほうを見ると驚いた表情のルルーシュがいた。
思いがけない出会いに3人は困惑の色を隠せなかった。
-オダイバ-
「帰ってきたー!! ニッポン、私の故郷!! 」
港に着いてから同行してきた千鶴はかなり興奮しており喜びを抑えきれずにいた。
「ったく、ガキじゃあるまい。はしゃぎやがって。」
「これで全部か?」
「おうアキラ、すまねぇな。」
坂口は武器、弾薬をエリア11へ密輸する以来を黒の騎士団から受けゼロが掌握してあるチバの港へと入ってきたのだった。
「まぁ、無理もねぇか。踏めねぇって思ってた故郷の土を踏めたんだ。あいつのあの顔を見れて悪い気分じゃねぇな。」
「なんだ、まるで親父の面ようだな。」
アキラからそう言われ坂口は恥ずかしさを誤魔化すように頬に手を当てる仕草をする。
「その……なんだ。千鶴の事なんだがよ……。」
「??」
「仕事が落ち着いたらあいつを養子にしようと思うんだ。」
「あいつを?」
「あいつ、仕事を覚えるのも早くて取引相手からも評判よくてな。俺も一緒に暮らしてよあいつに色々世話になってよ。酒は飲みすぎるなっとか洗濯はしたのかスーツにしわがついてるとか。」
そう文句を言うが坂口の頬が緩み嬉しそうに見える。
「その、一緒にいて……情がわいたっと言うか。死んだあいつの親の代わりになんてカッコは俺には向いてないけどよ。」
「その事あいつに言ったのか?」
「いやぁ、何度も言おうって思うんだがあいつと面を向かうんだがようまく言えなんだよな。」
「あいつは何だかんだ言ってお前のことを慕ってる。」
「そっそうかぁ。かあぁ~、他の女ならともかくあいつだとどうも調子狂うなぁ。」
頭を搔く坂口にアキラは笑みを溢す。その時アキラの携帯が鳴りアキラは携帯をとった。
『流崎アキラ!』
「ロロか…どうした?」
『さっき兄さんから聞いたけどお前、今、港にいるのか?』
「……そうだ。」
『直ぐにイケブクロに戻るんだ!!兄さんが危ない!!』
「どういうことだ?」
『ジェレミアが生きていた!奴は嚮団の刺客なんだ。僕のギアスが効かずに咲世子がやられて重傷を負った。それともう1人お前を狙っている男も一緒にいる。』
「俺を?一体誰だ?」
『わからない。とにかく直ぐに戻って兄さんを助けて。僕もこれから向かう!』
嚮団からの刺客?ルルーシュだけではなく自分も?事態が理解できずにいるがルルーシュを見殺しにはできない。
「とっつあん、悪いが急用ができた。俺は抜ける。」
「おっおい、アキラ!?」
急ぎアキラは自分のバイクに跨りイケブクロまで戻るのであった。
-イケブクロ-
「ジェレミアが!?刺客とはどういうことだ?」
『わからない。流崎アキラにも連絡を入れた。とにかく僕らが行くまで無茶はしないで。』
ルルーシュはロロからの連絡を切りシャーリーとスザクを見た。
この場でまさか2人と会う事になりシャーリーが取り乱し屋上から落ちようとたところをスザクと協力して彼女を助けた。
(まずい、今ここにスザクがいれば…。それにシャーリーが……)
「友達からの電話ってわけじゃなさそうだけど……」
「ダメだよ、スザク君。私の用事が先でしょ?」
シャーリーがスザクの腕を無理矢理引っ張る。
「そういえば、2人で待ち合わせしていたんだよな。」
「やきもち焼いてくれた?」
そう言われルルーシュは苦笑いをする。
「さ、行きましょ、スザク君。」
「ああ、ちょ、ちょっと。」
(ここは戦場になる。シャーリーの安全を考えればスザクと一緒にいるのが一番良いはず…)
離れていく2人を見てルルーシュは安堵の色を浮かべる。
「ジェレミアと一緒にいるもう1人は気になる。アキラは急いでも20分近くはかかるだろう。だが…!」
一方、アキラは時間を短縮するためにゲットーの中を通りイケブクロへと入っていった。
ルルーシュと共にいた駅ビルから煙幕が敲き込むのが見え既に事が起こっていると見越してアキラはアクセルに力を入れる。
ビルの中へと入ったジェレミアと高山の前にルルーシュのギアスにかけられた警備員達が立ち塞がったがジェレミアのギアスキャンセラーによりギアスを解かれ1人を当身で気絶させたが高山は右腕でもう1人の首を握り持ち上げ力をこめ窒息死させた。
その様子をルルーシュは上階から見ていた。
(やはりジェレミア、ギアスを解除させる能力、もう1人もおそらく同じ。日本人のようだが……)
ジェレミア達と目が合いルルーシュは準備にかかろうとした時アキラからの連絡がきた。
『俺だ。今ビルの前だ。』
「間に合ったな、敵は2人。アキラ、敵を殺したくない。例のところへおびき寄せる、手伝ってくれ。」
『わかった。』
アキラは懐にハンドガンを1丁の他今用意できる武器、そしてショットガンを構え周囲を注意しながらアキラはビルの中へと入り上階へと駆け上がるのであった。
スザクから避難を促され駅の外にいたシャーリーであったが少し離れた所にアキラがいるのを見つけた。
「ライくん!?」
駅の中へ入るのを見てルルーシュに会いに行くのではと思った。
(ルルと一緒に戦うために?)
「シャーリーさんですね。ナイトオブセブンからの要請であなたの護衛を…。」
シャーリーは兵士の制止を振り切り駅の中へと戻るのであった。
ルルーシュを追うジェレミアと高山。2人は走るルルーシュが途中もう1人誰かと合流しているのを改造を施された体の機能の1つ眼球で確認できた。
「もう1人?まさか!」
「流崎アキラ!!」
高山は懐から2つに割れたライフルを組み合わせ銃身の長い大型ライフルへと変え持って走りだした。
「っ!?」
ルルーシュと共に走るアキラは悪寒を感じた。
「伏せろ!!」
ルルーシュの背中を押し2人で伏せると壁が破壊され複数の銃弾が撃ち込まれ瓦礫の破片が2人に落ちる。
「オレンジかっ!?」
アキラは立ち上がり開いた穴から覗くのだがいくつの壁を突き抜けここへたどり着いているのを見て敵は特殊な対物ライフルであろうと推測した。
穴から見える人影からまた自分たちを狙っているのを見てアキラは走り出した。
「また撃たれる。走れ!!」
アキラに続きルルーシュも走りだし2人がいた場所は銃弾による風穴が開いた。
「2人は生きてる。このまま駅のホームに向かうつもりだ。」
「では行くとするか。」
かなりの重量であるはずの大型ライフルを肩に背負い高山はアキラを狙い歩みジェレミアもそれに続く。
「ルルーシュ、このままだと奴等を罠に嵌める前にやられる。俺が1人を相手にする。お前はジェレミアを頼む。」
「何?」
ルルーシュの意見を聞かずアキラはホルスターから愛用のショットガンを取り出し先程行った道を戻っていくのであった。
「あいつ…。」
だが体力に自信がない自分がいずれ追いつかれてしまうのは目に見えている。ルルーシュはそのままホームに向かって走っていく。
人影もいない駅ビルの中銃声だけが鳴り響きシャーリーはビクッと体を震わせる。
「今、ルルは戦ってるんだ。ライくんも……。」
2人に会って話がしたいその想いを胸に秘めシャーリーは恐怖と戦いながら上階へと上がっていく。
ルルーシュを追うジェレミア達に銃弾が襲い掛かってきた。
ジェレミア、高山の肩に命中したが致命傷になった様子はない。
「ルルーシュか?」
「いや…違うな。」
高山は改造された眼球で銃弾が飛んできた場所を見て1人銃を構えている人間がいる。
「流崎だ……。」
更に1発高山の胸に被弾するが臆する様子はない。
高山はライフルを構えゆっくりと進んでいく。
「待て、高山。」
ジェレミアは呼び止めようとしたが走るルルーシュを見つけた。
「ちっ、仕方が無い。」
高山にアキラを任せジェレミアは1人ルルーシュを追うのであった。
「直撃はしたはず、何故!?」
アキラは影でハッキリと相手の顔は見えなかったが銃弾が届く範囲で撃ったはずが敵は何事の無いようにこちらへ近づいてくる。身を隠し周囲を警戒しルルーシュから更に離れようと身を出した時シャーリーが階段からこちらの階へ上がる姿が見て困惑の色を浮かべる。
何故彼女が?っとアキラはシャーリーを巻き込まないよう別方向へと行こうと走り近くに敵がいないか壁を背に向け様子を伺ったとき自分の顔の真横の壁が破壊されアキラは驚き壁から離れようとした時風穴から金属の腕が現れた。壁を破壊し姿が露にする。
アキラはショットガンを構え警戒するが姿を現した敵にアキラは呆然とした。
「たか……やま…?」
全身を小汚いマントで身を隠し左目を鳥の羽をモチーフにした装飾で隠してある。
「1年ぶりだな。流崎。」
「お前は死んだ……。」
「そうだ。」
高山はマントを脱ぎ捨ててその体を露にしアキラは息を飲んだ。
高山の体が殆ど金属で覆われ右腕だけであった義手も左腕にも装着されある。
「私はお前に殺された。こんな体になってまで生きるのを選んだのは流崎、お前を殺すためだ!」
「お前を改造したのは誰だ?嚮団の連中、V.V.か!?」
「お前には関係ない。」
アキラはショットガンを撃ちその威力に高山の体が仰け反るが銃弾は貫通せず弾は途中で止まり体にめり込んだ。
「っ!?」
「さすがにこの距離からだと危ういな。だがっ!!」
高山は肩に背負った大型ライフルを構えアキラに銃口を向ける。
アキラは急ぎ距離をとり階段のある通路へと行く。銃弾が襲いながらもアキラは足早に階段を降りてゆく。
アキラを追い高山も階段を降りていく。
ルルーシュを追ってジェレミアは駅のホームで対峙した。
「逃がしはしない。」
「機械の身体。ギアスキャンセラー。…執念は一流だな、オレンジ君。」
「執念ではない。これは忠義。」
ジェレミアは体に装着してある剣を翳しルルーシュへ近づこうとする。
「気に入らないな。あの皇帝のどこに忠節を尽くす価値がある。」
ルルーシュは持っていたスイッチを押し隣接してある電車が展開され電磁波のようなものが発生しジェレミアの動きが止まった。
「な、に…?ゲフィオンディスターバー!?」
「よく勉強しているじゃないか。ならばわかるだろう?サクラダイトに干渉するこのシステムが完成すれば、環状線の都市機能全て麻痺させられる。つまり、トウキョウが静止する。ありがとう。君は良いテストケースとなった。」
「さぁ、話してもらおう。嚮団の位置を。V.V.の居場所を。」
「話すのはそちらのほうだ」
「何?」ルルーシュ
「私には理由がある。忠義を貫く覚悟が、確かめなければならぬ真実が!」
「バカな!!動けるはずがない。」
目からも出血しながらもジェレミアはゆっくりとルルーシュに近づこうとする。
「ルルーシュよ。お前は何故ゼロを演じ、祖国ブリタニアを、実の父親を敵にまわす?」
「……俺がルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだからだ!!俺の父、ブリタニア皇帝は母さんを見殺しにした。そのためにナナリーは目と足を奪われ、俺達の未来まで…」
その言葉を聞きジェレミアは穏やかな表情になった。
「ルルーシュ様。貴方がゼロとなったのはやはりマリアンヌ様のためであったのですね」
「っ!?」
「初任務でした。敬愛するマリアンヌ后妃の護衛」
「あそこにいたのか……」
「しかし、私は守れなかった。忠義を果たせなかったのです」
「…お前は俺を殺しに来たのではなく」
「私の主君はV.V.ではなくマリアンヌ様……。あなたのその言葉を聞けただけで私は満足です。」
「待てジェレミア卿」
ルルーシュは装置を止めジェレミアに駆け寄った。
「ジェレミア・ゴットバルトよ。貴公の忠節はまだ終わっていないはず。そうだな?」
「イエス、ユアマジェスティ」
「そうか…ならもう俺たちが争うこと無い。」
「そうです……今から…っ!? 高山!!そうだ、奴がまだ!!」
安堵の表情を浮かべていたジェレミアは険しい表情へと変わり傷ついた体を起こす。
「お前と一緒にいた男か?」
「高山昌克、陽炎にいた人間で1年前、流崎アキラとの戦いで重症を負っていたところをV.V.が回収し私のように体を。」
「だとすると高山の狙いは俺ではなく。」
「流崎アキラです!」
一方、シャーリーはルルーシュとアキラを捜し求めビルの中を彷徨っていた。
「どこなの?ルル……ライくん」
彼女前に物陰から遅れて来たロロと鉢合わせた。
「シャーリーさん!?」
いるはずのない彼女にロロは驚きを隠せない。
「答えてロロ、あなたはルルが好き?…私はルルが好き。あなたは?」
「……好きだよ。たった一人の兄さんだもの」
「あなたは味方なのね、ルルの」
「え?」
「お願い!私も仲間に入れて。私もルルを守りたいの。ライくんもカレンのために戦ってる。」
「……っ!?」
この時ロロは気づいた。シャーリーにかけたギアスが解けたことに。
「取り戻してあげたいの、ルルの幸せを。妹のナナちゃんだって一緒にっ」
ナナリーの名前が出てロロに殺意が芽生え左目に紋章が浮かび上がった。
騒ぎで無人となった地下鉄のホームでは銃声が大きく鳴り響いている。
アキラは高山の追撃から逃れながら改札口に身を隠し高山の出方を伺う。
何故高山があんな姿に?思いがけない形で高山との再会にアキラは困惑の色を隠せなかった。
今ある武器はショットガンの他ハンドガン、スタングレネード1つだけで心許無い。
カッカッカっと高山の足音が近づくのを聞こえアキラは姿が見えるのを待ち構えたが高山が先にライフルでアキラを狙い撃ってきた。
アキラは自分の位置が高山に知らされていると感じ体を転がし改札口から離れた。
「隠れても無駄だ。」
身を晒した高山にアキラはショットガンを撃つ。ライフルを持っていた左腕を狙い命中し左手の一部が破壊されライフルが弾き飛ばされた。
「……っち。」
高山は左手首を外し手首から鉤爪のような金属が現れた。高山はアキラに接近しようと走り出した。
アキラは背後へ身を投げ回避するが両者を隔ててあった鉄柵が高山の鉤爪によって引き裂かれるように破壊された。
ホームへと逃げたアキラは何か手立てがないか周りを模索するが背後から殺気を感じ振り返ると高山の鉤爪が襲い掛かり背中が斬られてしまった。
「っく。」
幸い背中は僅かに斬られただけで致命傷にはならなかった。アキラは騒ぎで無人となった電車に乗り込み高山も後に続きゆっくりとアキラに近づく。
「私はこの時を待っていた。私だけではない、閣下を狂わせたお前をこの手でっ!!」
高山は左腕の鉤爪を振り下ろす。アキラは右往左往と避けるが電車の運転席前まで追い詰められた。これまでかと思ったがアキラは運転席を見てあることを思いついた。
「死ねっ!!」
高山が襲いかかろうとした時アキラは懐から閃光弾を投げ辺りが眩い光に覆われた。
「うおぉ!?」
高山は一瞬、視界と聴力を奪われしまい視界が戻った時はアキラの姿は見えなかった。
「奴は……っ!?」
突如、電車の中の灯かりがつき動かないはずの電車の扉が閉め出された。
そしてゆっくりと前へと進みだした。
高山は運転席を見るが誰もいない。それどころか操縦系統が破壊され制御できなくなっている。もしやっと高山はホームのほうを見るとこちらを睨むアキラがいた。
高山の視界を奪った隙にアキラは電車を作動させたのだった。
今の状態で戦い続けるのは得策ではないと感じアキラは高山との決着はまたの機会とし今はルルーシュを助けに戻らなければと高山に背を向けた瞬間右肩に激痛が走った。
鉤爪を扉の割れ目から無理矢理突き扉越しからアキラの右肩へと突き刺したのだった。
「くうっ!!」
電車はスピードが上がりだし残り十数mでホームは途切れ刺さったままのアキラが壁に激突してしまう。
アキラは引き抜こうとするが体に食い込み外れない。電車に引き吊られての状態では思うように体に力が入らない。
残り数m、アキラは持っていたショットガンを鉤爪に撃ち鉤爪は破壊されその衝撃で転倒する。
アキラは起き上がり電車の行った先を見た。
制御不能となった電車は線路から脱線しどこかへ激突するはず。とにかくここで長居するのは危険だ。
アキラは肩に突き刺さった鉤爪の破片を外し抑えながら地上へと向かうのであった。
地上へと戻りルルーシュと合流しようとホームへと向かう途中アキラはロロの後姿を見かけた。
「ルルーシュと会ったか?」
ロロはビクッと体を揺らし体をこちらへ向ける。ロロを見ると彼の右手にはナイフを持っている。
そしてロロの傍に横たわっていたのは…………。
ルルーシュはアキラと合流しようと別れた場所へと向かっていた。通信も通じず探し回るが偶然ロロを発見する。
「あっ兄さん無事だったんだ。」
「ロロ、何があったんだ?それに……」
ロロの傍には大量の血痕があり誰かのものだと思われる。
「うんそれが……シャーリーがここに来て。」
「何だって!?」
「それが彼女、記憶が戻ってたんだ。」
「シャーリーが……!?」
遡れば今日のシャーリーの様子は少し違っていた。ロロの言うとおりもし記憶が戻っていたとすれば…。
「待て!!じゃあこの血痕は……。」
「うん、兄さんを守るために。」
それを聞きルルーシュは絶望感に襲われた。
(死んだ……?シャーリーが……?)
ルルーシュはロロに悟られないよう平静を装った。
「よくやってくれた。お前がいなかったら俺の秘密がみんなにバレるところだった。それでシャーリーの遺体は?」
「うん、それが彼女に止めを刺したのは僕じゃないんだ。」
「えっ!?」
「シャーリーを殺したのは……………」
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流崎アキラだよ
まさかのシャーリーを殺したのはアキラ?
この展開がどうなるか?今年からはかなりオリジナル展開をしていくつもりです。
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第28話
-十数分前-
高山との戦いを終えルルーシュと合流する途中でアキラはロロと会いそこで血を流して倒れているシャーリーがいた。
「………どういうことだ?」
何故シャーリーが?っと一瞬戸惑ったがアキラは血のついたナイフを持ったロロに問うた。
「彼女のギアスが解けていたんだ。」
「ギアスが?」
「たぶん、ジェレミアの仕業だと思うんだ。あの男、ギアスを解除できる力を持っている。」
「ギアスを解除……。」
アキラは倒れているシャーリーと目が合った。どうやらまだ意識があるようでアキラの姿を見てシャーリーは何か伝えようと必死に口を開くが痛みで声が出ない。
「しまった!まだ息が…!」
まだ生きているシャーリーにロロは止めを刺そうとナイフを構えるがアキラが横から手を出し制した。
「流崎アキラ、何を?」
アキラは黙って懐からハンドガンを取り出しその銃口をシャーリーに向ける。
「えっ!?」
予想外の行動にロロは目が点になる。そしてアキラは躊躇することなく引き金を引いた。
撃たれた衝撃で荒くなっていたシャーリーの呼吸が静かになり彼女の瞳が閉じていった。
シャーリーの口元に手を当て呼吸が止まったことを確認するとアキラは怪我をした肩にシャーリーを乗せる。
「ルルーシュにはありのままを伝えておけ。」
「彼女をどうするつもりだ?」
「ゲットーで後始末する。いいか、こいつはこの騒ぎに巻き込まれたんだ。ルルーシュは何も関ってないことにしろ。今、あいつが疑われることはあってはいけない。」
「でもっ!」
「ここの地下を使えばすぐにゲットーに行ける。ゲットーに関しては俺がよく知ってる。」
アキラはロロを残し先程とは違う階段から地下へと降り姿を消した。
「……っという事はアキラがシャーリーの遺体を持ってゲットーに。」
-そんな所が甘いな。シャーリーの件も殺すのが一番得策だったはずだろ-
以前、シャーリーにギアスをかけた件にアキラが苦言を呈したときのこと思い出しアキラなら遣りかねないと確信する。
今溢れんばかりの感情を必死に抑えルルーシュは冷静を装いロロの話を聞いた。
「兄さん、あいつの言うとおりすぐにでもここを離れて。」
「あぁ、わかった。………いや、待て!」
ルルーシュはある事を思い出し足を止めた。
「見失った!?」
「申し訳ありません。おそらく建物の中に。」
連絡を受けスザクはシャーリーが建物の中へと入ったことを知った。
(直ぐに連れ戻さないと!!)
「スザク!!」
野次馬の中にルルーシュの姿が見えた。
「ルルーシュ、君は……。」
「避難指示があってこっちへ来たんだが……どうしたんだ?」
スザクはルルーシュがこの騒動に関っているのではないかと思ったが。
「ルルーシュ、ここは危ない。学園に戻るんだ。」
「……わかった。お前も気をつけろよ。」
ルルーシュは野次馬の中へと消えスザクは急ぎ部下に指令を送った。
「これから、建物に突入する。逃げ遅れている者がいれば保護を!!」
今はシャーリーを助けるのが優先でルルーシュに対する疑惑はそのあとだと。スザクは急ぎ駅へと入るのであった。
群衆から離れ1人歩くルルーシュに携帯が鳴った。
「……あぁロロ、こっちはうまく行った。………そうか、お前も無事か。…………いや、1人で帰れる。心配するな。」
携帯を切りゆっくりと歩くルルーシュの背中が震えだした。
「シャーリー………!!」
瞳から涙が溢れ出し拳に力が入る。
(守れなかったっ!! 君を……取り戻すと誓った。皆と約束したはずが!!なのに!!!)
彼女の家族を不幸にしギアスで苦しめそしてついには……。
ルルーシュは涙を流しながらその表情は怒りに満ちていた。
(ロロ…!!もうお前を生かしてはおけない!!)
そして怒りの矛先はもう1人
(アキラ!! お前もスザクのように俺を……!!)
後日、この駅での事件はニュース等で扱われシャーリーの血痕が発見され彼女がこの事件に巻き込まれ現在消息不明と扱われ。アッシュフォード学園でもこの事件で持ちきりであった。そして生徒会では…。
生徒会室にてリヴァルは携帯でミレイと連絡をとっていた。
「そうですか……。じゃあまだ何も。」
『えぇ……こっちのほうでも有力な情報はまだ…。身代金とか何かあれば生きてるってわかるけど。何分この事件、わからないことが多くて。ただの愉快犯とか、黒の騎士団の仕業とか……軍や警察の話だとシャーリーの血痕があるってことはもうシャーリーは………。』
「そんな事言わないでくださいよ!!まだ死んだって決まったわけじゃないですよ!!」
『っ!!ごめんなさい。リヴァル、ルルーシュは?』
「えっ!?あっあぁ、ルルーシュは隣にいますよ。いつもどおりで。」
『そう、ならよかった。塞ぎこんでるじゃないかって心配して。……また何か知ったら教えるわ。』
連絡を終えたリヴァルはため息を吐いた。
「こんな時にどこ行ったんだよルルーシュ。」
リヴァルの隣には誰もおらず生徒会室はリヴァルだけで誰もいなかった。
-ギアス嚮団-
「あああぁぁぁぁぁぁ!!!」
手術台の上で拘束された高山が苦痛による絶叫がこだましていた。横からV.V.が顔を出す。
「君を回収するのにもえらく苦労したんだ。それなのに収穫が何も無くジェレミアが戻ってこない。聞くよ、彼はルルーシュにやられたの?」
「あぁぁぁ!!知らん!!」
「嚮主V.V.おそらくジェレミアは敵の手に。」
「この男がアキラを追いかけていたんだ。アキラが関わっていたらやられてもおかしくない。」
V.V.は研究員の1人と目を合わせると研究員はダイヤルを回し高山の脳神経に直接送られる痛みに高山の苦痛の叫びが更に木霊する。
「ほとんど死んでいた君を元の人間にするのに時間と労力を費やしたんだ。目的はアキラの抹殺。命の恩人に対して恩返しする気はあるのかな?」
「があぁぁぁ、殺す。あの男だけは必ず……!こんな体になろうがあいつを殺すまで……!!ああぁぁぁ!!!」
V.V.はため息を吐く。
「この男も流崎アキラに狂わされた哀れな男だね。」
-チバ-
アキラが坂口の仕事の手伝いでいるチバの港にいた。
「とっつあん、蓬莱島からの荷物はこれで全部か?」
「おう、だがラクシャータ達だな。このKMFは。」
KMFが数機ある。見た目は無頼だが背後には見たことの無いロケットエンジンが2つ装備されてある。
アキラは少し気になりこのKMFを見回した。
「このエンジンは無頼が装備できるものじゃない。」
「アキラ。こいつはラクシャータ達がフロートユニットの試作ものだ。」
坂口は資料に目を通しアキラに渡した。
「固体燃料ロケットか……フロートユニットの試作にしては時代と逆行してるな。」
「だが機動性と推力がフロートユニットと比べて桁違いだ。……急激な姿勢制御を可能とする広帯域推進技術か……。だが……。」
アキラはもう1枚めくり爆発の写真が載せていた。
「テスト中に事故発生。大推力、高加速を併用した急激な方向転換で機体構造に大きな負荷がかかったことで空中分解。続けて暁に搭載したが………。」
もう1機ある暁にも同じエンジンが搭載されている。
「なるほど、この2機は余り物でテスト中止で邪魔になったってことか。けど俺らに渡して使い道が無いんじゃなぁ。」
頭をガシガシと搔く坂口を尻目にアキラは物陰からチラッとこちらを見る人物を見つけこっそりと近づく。
「どうした?お前から顔を出すなんて珍しいことがあるな。ロロ。」
あまりアキラと会話をしないロロである為アキラも珍しがるがロロが口を開く。
「確認したいことがある。」
「………。」
「お前が本当にシャーリーを殺したのか。」
「お前も見たろ。」
「けどわざわざゲットーで処理する必要がないと思う。」
「聞いた話あの場にスザクもいたと聞く。シャーリーの遺体があればスザクはルルーシュを真っ先に疑う。」
「だがっ!」
ロロは確かにアキラがシャーリーを撃ったのは目撃している。元々彼を信用していないのも理由にあるがロロはどうしてもアキラの言うことが信じられなかった。
尚も疑うロロにアキラは近くにある自分の鞄からあるものを出した。それは紐で束ねている人の髪だ。
「シャーリーの遺髪だ。それをルルーシュに渡すなり好きにしろ。」
「シャーリーの………。」
「じゃあな。」
遺髪を渡したアキラはロロを置いて坂口のところへ戻った。
「とっつあん、例のところへ行く。また、あの男に頼めるか?」
「何だ急用か?あぁいいぜ。すぐに連絡するぜ。」
「頼む。」
そう言うとアキラは自分のバイクに乗り込みある場所へと向かっていった。
シャーリーの事件は捕らえられているカレンにもスザクによって伝えられた。
「そんな……シャーリーが!?まだ見つかってないの?」
「……死んでると思う。」
「えっ…?」
「現場から大量の血痕が見つかった。彼女の血だ。おそらくもうシャーリーは……。」
「まだ死んだってわけじゃないでしょ!!それより誰がシャーリーをやったの!?」
「そうだ。彼女を殺した犯人がいるとすれば……」
スザクはゆっくりとカレンににじり寄りそれにカレンは何か嫌な空気を感じ後退りする。
「そう、ルルーシュだ。全ての証拠が証言がルルーシュを白だと言っている。僕も彼と話した。」
「だったら……。」
スザクは懐から1枚の写真を取り出しカレンに見せる。
「騒動が起こった直後屋外の監視カメラが映し出しものだ。」
「アキ……ラ……!」
「それから彼は駅の中へと入って行きそれからの動向はわからない。だが……。」
「アキラがシャーリーを殺したって言うの!?」
「ルルーシュがいたんだ。だからこの事件は黒の騎士団が裏で糸を引いてると。ルルーシュが犯人だ…、ゼロであると。」
「ゼロの正体は知らない。捕まった時に言ったでしょ?」
「ならアキラはどうだ?陽炎だったあいつなら殺したとしてもおかしくない。異能生体は自身の生存のために環境を変える。誰かを犠牲にしてでも。」
「あんた、あの話を信じて…!?」
「もう、手段にこだわってはいられない。シャーリーを見つけるために、だからこれで。」
スザクは懐からリフレインを取り出しそれを見てカレンは真っ青になった。
「あんたっ!!」
近づこうとするスザクの手を振り払おうとするが手を取られ組み伏せられた。
「怖がらなくていい。君はすぐに自分の意思を失い、僕の質問に答える。」
リフレインの恐怖を知っているカレンは恐怖で目を瞑ったがアキラの顔が思い浮かびリフレインを打とうとするスザクをキッと睨み付けた。
「やってみな!!でもアキラと同じで私は誰の支配を受けない!!例え薬漬けされてもね!地を這ってでもあんたを殺してやる!!」
自分を睨むカレンの瞳がアキラとダブり注射器を持っているスザクの手が止まる。
(何だ!?僕は恐れてるのか?彼女を?アキラと重ねて見てるのか僕は?)
「ふっふふふ。」
首筋に注射器を突きつけられてるのにも関らずカレンは不気味な笑い声を出す。
「何がおかしい!?」
「シャーリーのため?あんたいつか言ったよね?間違ったやり方で得た結果に意味はないって。じゃあこれは正しいことなんだ。相手を意思を殺して支配することが。」
「支配……っ!?」
支配。その言葉にスザクは我に返った。そう今自分がやろうとしているのは……。
「お、俺は……アイツのようにはっ!!」
スザクはリフレインを投げ捨て逃げるように独房から出て行く。その姿を見てカレンは力が抜けたように床へ座り込んだ。
「はぁはぁはぁ。」
額から汗が滴り、床に落ちているリフレインを見て今、自分が置かれていた状況を思い返す。
緊張の糸が切れスザクの行為がいつもの彼ではなかったとそれに対し自分の姿勢は虚勢ではなく本音であったが半分、捨て台詞のようなものであった。
「アキラ……。あなた、本当にシャーリーを……。」
カレンはハッと我に返り頭を振った。自分はアキラを信じると誓った。しかし一瞬彼を疑った自分を恥じた。
血を流しているとはいえまだ彼女の遺体はまだ見つかっていない。なら生きている希望もある。
「アキラ、私はあなたを信じてる。」
今のアキラは昔のアキラじゃない。シャーリーを手にかけることは決してない。皆がそう思っても自分だけはアキラの味方でいる。そう心に誓うのであった。
暗い地下鉄の奥から僅かに光が漏れている。ここはあるゲットーにある使われていない地下鉄にある控室にアキラが坂口と医療器具を持った1人の男と話している。
「今日の分だ。助かったぜ。」
坂口は男に封筒を渡す。
「いいってことよ。もぐりの医者の俺が働けるのもあんたのおかげだ。そのあんたの頼みなら断れないさ。」
アキラは薄汚れた部屋にある簡易のベッドに1人の女性が眠っている。
「最初はあんたの話聞いた時は訳がわかんなかったぜ。殺そうとした人間を助けてくれっておかしな話だ。まっあとは俺には関係ないことだからな。じゃあな。」
医者が出たあと坂口は煙草に火をつける。
「っで、その子をどうするつもりだ?」
「しばらく匿う。頼みがある。ゼロや他の黒の騎士団の連中にこの女のことは漏らさないでくれ。ばれたらこの女がまた狙われる。」
「お前が人助けするなんてな。それほど大事な女か?もしかして新しい女か?」
「やめてくれ。そんなんじゃない。」
坂口はがっはははっと豪快に笑う。
「わかってるさ。お前がそんな男じゃないってことぐらい。そうだな千鶴に面倒見てもらったほうがいいな。」
「あぁそれでいい。」
アキラはベッドに眠っている女性、シャーリーは小さな吐息を吐き穏やかに眠っておりアキラは黙って見つめているのであった。
「人助け………っか。」
翌日
-蓬莱島-
ゼロの私室にてルルーシュとC.C.が2人きりでいた。
「C.C.、ジェレミアとロロの協力で嚮団の位置は特定できた。ゼロ番隊を導入し、嚮団を一気に殲滅する。」
「殲滅?利用するんじゃなかったのか?あれは武装組織ではなくギアスを研究するだけの…」
「殲滅だ!!」
エリア11から戻ってきてから様子が変わったルルーシュにC.C.は彼に何かあったのだと悟った。
「………何があった?」
「……シャーリーは最後までギアスに翻弄されて、信じていたアキラに殺された!」
「アキラがっ!?ほんとに奴が殺したのか?」
ルルーシュはロロから渡されたシャーリーの遺髪を見せた。
「ロロと共謀してあいつは……。」
「だから嚮団を消すのか?同じ悲劇を繰り返さないために、贖罪として?」C.C.
「これが王の力だというのなら、力ある者は1人で十分だ。ロロはもちろんギアスという力を、アキラもそうだ!俺の障害になるのなら俺の手で消してやる!!シャーリーに対してそれがせめてものっ」ルルーシュ
「ロロはともかくアキラもか?」
「同罪だ!!シャーリーの全てを奪った。死で償わせる。だがすぐには殺さない。奴も俺のチェスの駒として働いてもらう。そして役割が終われば……。」
「……果たして殺せるかな?」
ポツリと呟いたC.C.の言葉にルルーシュは反応する。
「どういう意味だ?」
「なんでもない。」
-アッシュフォード学園 機情 地下司令部-
ここ数日、シャーリーのためにルルーシュだけではなく黒の騎士団との連絡を断っていたアキラは地下司令部へと来たがそこはルルーシュだけではなくロロやヴィレッタがおらず、更にギアスをかけられた局員が殺害され死体が転がっていた。
また嚮団からの刺客かとアキラは警戒するが
「動くな。」
数人のライフルを構えた兵士達がアキラを狙う。
そしてその中に
「ご覧の通りだ。この機密情報局は我々陽炎が制圧した。」
「井ノ本……!」
「ふふっ、そう邪険するな。今日はお前と戦うつもりは無い。」
「……ブリタニアはルルーシュの記憶が蘇ったことをもう知ってるのか?」
「いや、これは陽炎が単独で行ったことだ。彼ら皇帝達は知らない。」
「なら何故?」
「お前に用があるのだ。一緒に来てもらおう、もちろん拒否はできない。」
銃口を向けられアキラは大人しく持っていた銃を渡すのであった。
車に乗せられアキラは市街地を抜けてく。
「あんた、何を企んでる?」
「ふっ、役者が揃うステージにお前をあげるだけだ。」
「ステージ?」
1時間、一般道から外れた旧道を通りある山の入り口前へと辿り着いた。
「ここは……?」
山のある1箇所に大きな洞穴のような場所がありその周辺に陽炎の隊員たちが警備している。
「ここへ入るんだ。」
井ノ本達に従いアキラはついていく。穴は大人が入っても少し余裕のある大きな穴で皆暗い穴の中を電灯の明かりを頼りに進んでいく。
「お前は神根島を覚えているか?お前や私達が突如別の場所へと移動した謎の現象。」
「ここがあの島と何か関係が?」
すると穴の先に光が見えてきた。穴を抜けた先を見てアキラは驚愕した。
アキラの目の前には金属で作られた祭壇にその前に大きな金属状の扉があった。
「これは!?」
あの神根島にあった遺跡に似ているが構造物が最近作られたように見える。
「26年前に発見され当時の日本政府が極秘で調査していた遺跡だ。」
「遺跡!?これが!?」
アキラにはこれが遺跡には見えなかった。
「ここで俺に何をさせようって言うんだ?」
「その扉に触れるんだ。」
「扉を?」
「
「彼ら?」
アキラは井ノ本が言った彼らとは何か引っかかったが、アキラはこの大きな扉に触れると何かわかるのではないかと感じアキラはゆっくりと手を扉に触れてみた。
「っ!!?」
その時扉がゆっくりと開き眩い光が差しアキラの視界を奪った。
そして井ノ本の前からアキラの姿が消えた。
「うぅ……っ!? ここは!?」
視界が開き目を開くとアキラの目の前には大きな扉があるが先ほどのような扉ではなく、地下のある施設にいる事に気づく。一体何が起こったのか外から銃声の音が聞こえアキラは急ぎ駆け出していく。
-俺の前に現れた謎の遺跡。これが俺に深く関ることにこの時の俺はまだわからなかった-
ご覧のとおりシャーリーを生存させました。
原作では悲劇の最期を迎えたので自分の作品だけでもと思い描きましたがその代わりアキラにはペナルティーを課すことにしました。
敵からも味方からも狙われる中アキラはどう戦って行くのかお楽しみに。
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第29話
逃げ惑う人々を掻き分けアキラはここはどこで何が起こっているのか把握しようとした。
建物が立ち並んでいるが日が見えないことを見るとここは地下だと思われる。
アキラは逃げる1人を捕まえた。
「何が起こった。」
「わからない!突然KMFが!」
アキラの真上を1機の暁が通り過ぎる。
「暁!?黒の騎士団か!?」
暁は逃げ惑う人々に機銃を撃ちアキラは巻き込まれないよう建物の陰に隠れた。
黒の騎士団がいるということはここは敵の施設なのかとアキラは近くにいる暁に接触を試みる。
ルルーシュ達、黒の騎士団による奇襲でギアス嚮団の施設は混乱に喫している。
「嚮主V.V.、皆の脱出が完了するまでこの男にジークフリートを。」
V.V.は処置によって気絶している高山を見るが
「いいよ。僕が乗る。」
「嚮主自ら!?」
「この男は使い物にならないよ。再強化したほうがいいよ。いずれ高山にはあの機体に乗せようかなって思う。」
V.V.が乗り込むジークフリートの横にもう1機球状のジークフリートに似た機体が立っている。
「シャルル、流崎アキラが覚醒する前に高山でも何でも利用しないと僕らの計画が潰される……。」
「何だ?ここは。ほんとに軍の施設なのか?」
作戦に参加した団員はゼロから言われた軍の施設にしては反撃してくる様子もなく女、子供の姿も見える。
「一体ここは……ん?」
団員は明りが点滅している箇所を見つけ接近し誰かがライトで自分の存在を教えている。そしてその人物は。
「流崎アキラ?」
アキラの姿を見てコックピットを開く。
「どうしてお前が?お前もこの作戦に参加してたのか?」
「この作戦の立案者は誰だ?」
「何言ってる?ゼロが中華連邦で秘かにつくられたブリタニアの研究施設を叩くと極秘作戦だって言っただろ。」
「ゼロが……?」
だが敵らしき姿がいないこの場所が軍の施設なのか?アキラはゼロに会わせろと言おうとした時足音が聞こえ2人は顔を向けると1人の子供が立っていた。
「子供が何で?」
1人の子供が団員に目を合わせると団員が突然懐から拳銃を取り出しアキラに銃口を向け引き金を引く。
「なっなんだ!?体が勝手に!?」
アキラは瞬時に体を回転し回避してホルスターからショットガンを取り出し団員に向け撃った。
アキラは突如味方から撃たれたことに戸惑い子供達が何かしたのかと疑問の目を向けた瞬間子供の目と合った瞬間アキラの体が突然硬直しショットガンを持っていた右腕が動き自分の顔に銃口を向けた。
「っ!?」
指が引き金を引こうとするがアキラは必死に抵抗する。
「や……め……ろ!」
子供もアキラの予想外の抵抗に驚きの顔を浮かべる。
「俺………を………!!」
次の瞬間子供の口、瞳、耳から血が流れ出てそのまま倒れてしまった。
「なんだ……さっきのは………?」
突然体の自由が利かなくなり操られような感覚でアキラは死んだ子供の死体を見て軍の施設とは別の何かではないかと感じた。すると1機の暁がこちらに気づき降り立ちコックピットを開いた。
「何故お前がここに!?」
「C.C.か。」
C.C.は参加していないアキラがここにいることに驚きの顔を浮かべる。
「教えろここはどこだ?」
「……中華連邦にあるギアス嚮団の施設だ。V.V.を捕獲するためにな。」
「中華連邦だと……!?」
自分はエリア11にいたはずが遠い中華連邦にいる。井ノ本に連れてこられたあの遺跡は何だ。アキラにあらゆる疑問が浮かんでくる。
「お前はどうやってここまで来たんだ?お前は日本に……っ!?」
瓦礫が崩れる大きな音がし2人は音があった方角を見るとジークフリートが現れゼロが乗る蜃気楼と対峙している。
「あの機体は!?」
ジークフリートはアキラが以前カゴシマにある陽炎の基地を襲撃したときに現れ戦ったことがある機体と同じであった。
「ジークフリート…!一体誰が………っアキラ!?」
アキラは操縦者がいなくなった暁に乗り込み発進した。C.C.は慌ててアキラに続いた。
一方、ゼロ達もジークフリートの出現に驚いた。
「ジークフリート!?ジェレミア、確かこの機体は。」
「はい。神経電位接続ですから私以外に動かせる者は。」
「ルルーシュ、ここまでだ。」
「V.V.!観察者が当事者になるとは。」
V.V.が操るジークフリートが次々と暁を撃破していく。
「いい加減、大人しくしてもらおうか。僕もいつまでも君に付き合っていられないから。」
「残念だがしばらく俺に付き合ってもらう。あの男を引きずり出すまでな。」
V.V.は鼻で笑う。
「まだそんな小さいことを言って。あの男が傍にいながら君は何も気づかないのか。」
「何を言って…!」
「まぁいいか。何も知らずに死んだほうが幸せか。」
両者は一面砂漠の外へと戦いを移した。
アキラも続けて行きジークフリートと対峙するが敵の動きでうまく捉えきれないでいた。
「邪魔だよ。」
ジークフリートからスラッシュハーケンが発射されアキラの暁の左腕とコックピットが巻き込まれ墜落してしまった。
「……っく。」
幸い中にいるアキラにケガはなかったがコックピットの一部が破壊されたことで外から露になる形になり暁も思うように動けなくなった。
ゆっくりと立ち上がらせるアキラであったが大破された他の暁に誰かがいるのに気づいた。
「機体は動けないか……っく。」
V.V.によって囚われていたコーネリアは隙を見て脱出し動かせるKMFを探っていた。
「このままでは……っは!?」
コーネリアのもとに1機の半壊した暁が近づいてきた。
暁はコーネリアの近くに降り立ちコックピットを開く姿を現したのはショットガンを構えたアキラであった。
「コーネリア……!」
「黒の騎士団……!!」
「どうしてお前が?」
「貴様らに答えることなどない!」
強気のコーネリアの足元にアキラが撃った銃弾が飛んだ。
「ここでお前は何をしていた?」
「………私を惰弱と侮ったここの当主に一矢報いようとしただけだ。」
「………V.V.か。」
「知っているのか?」
「……あんたはあの機体の構造がわかるのか?」
「だったらどうする?」
コーネリアはバトレーからジークフリートに関しては少しばかり聞いていた。
アキラは黙ってショットガンをホルスターに収める。
「手伝ってくれ。」
「信用するのか?」
「捕虜にする前にあんたを利用させてもらう。おかしな真似をすれば撃つ。」
「……っふ、わかった。あの武器をとってくれ。」
「その機体より俺のほうがマシだ。こいつを使う。」
敵同士の2人は暁に応急処置を施すのであった。
一方地下では嚮団の研究員達が寝かしている高山と共に脱出の準備が整いつつあった。
「嚮主V.V.。脱出準備が整いました。ひとまずE.U.方面でよろしいでしょうか?」
『うん。こっちを片付けたら合流するよ。』
「よし、あの実験体と例の機体の運送ももう間もなく完了する。そちらの進行状況は?」
通信にて確認の連絡を取るが応答が無い。再度連絡を取るが。
「どうした応答しろ!」
その直後脱出艇の入り口の扉が破壊される音が聞こえ研究員達はビクッと振り返る。
足音がこちらへと近づき研究員達は息を飲む。
扉が開くとそこには両手を血で染めた高山が立っていた。
「もう、私は自由だ。」
そして脱出艇の中は悲鳴と怒号で響き渡った。
ルルーシュとV.V.の戦いは依然としてV.V.が押しておりルルーシュは劣勢に立たされていた。
「ロロ。何とかジークフリートに取り付けないか?」
『でも、V.V.相手じゃギアスは効かないし』
「取り付くだけでいいんだ。あとの策はある。」
『わかった。』
ロロのヴィンセントはジークフリートにより下半身が破壊されながらも取り付くことに成功したがジークフリートに装備された電撃を浴びせる電磁ユニットによりヴィンセントがダメージを負う。
「よくやってくれた、ロロ。あとはお前の機体に仕掛けた爆弾を。」
ルルーシュは秘かにヴィンセントに仕掛けた爆弾のスイッチを押そうとした時何者かがジークフリートの剥き出しとなった電磁ユニットを狙って砲撃し機体が傾いたことでロロのヴィンセントが落下した。
「ちっ、誰だ?」
「誰だい?ジークフリートの弱点を知っている攻撃…」
2人は砲撃のあった方向を見ると半壊した暁が寄せ集めの武器で攻撃し暁の上に乗ってあるコーネリアの姿が見えた。
「コーネリア!?何故こんなところに………アキラっ!?お前まで!!」
「流崎アキラ!?お前がっ!?」
剥き出しとなったコックピットにいるアキラにルルーシュ、V.V.は驚愕の表情をする。
「機体はまだ生きている。」
アキラは更に攻撃を続けジークフリートの装甲が破損する。
「っ!?敵の装甲が破損した!後は直接!!」
アキラに気をとられたがダメージを負ったジークフリートを見てルルーシュは追撃を開始する。
「しまった!!ジークフリートはもう……ルルーシュ、この呪われた皇子め。」
V.V.はモニターに写るアキラの姿を苦々しく見る。
「流崎アキラ………この異端者がっ!!お前がいなければ!!」
ジークフリートはアキラが乗る暁に目掛け墜落する。
暁の上にいるコーネリアは瞬時に飛び降りたがアキラの暁が巻き込まれしまう。
アキラはジークフリートに取り付きライフルで破損した箇所をさらに撃ち爆発を起こしその衝撃でジークフリートから離れた。
「V.V.はまだ……アキラには色々聞きたいことがあるが今は!」
ルルーシュはV.V.の居場所を探るのであった。
這いずりながらV.V.はアーカーシャの剣へと向かおうとする。
「っ……ルルーシュ、アキラ……よくも…………。」
這いずるV.V.は何者かの足元が見え見上げるとそこには井ノ本1人立っていた。
「やぁ……君か。」
「アキラやルルーシュにやられたようだな。」
「おかげでこの通りさ。ルルーシュも記憶を取り戻していた。……流崎アキラがここにいたのは誤算だったよ。奴の……あの力が目覚める前に……。」
手を伸ばすV.V.に井ノ本は表情を変えることなく黙って見ている。
「君はアキラに敗れた。その意味はわかるだろ。」
「………何が言いたい?」
「KMFを駆使しルルーシュを圧倒しながら最後は敗れた。私がアキラをここへ連れてきた。それだけでだ。」
「っ!?」
「お前の……いやシャルル、マリアンヌ達の計画は初めから破綻していたのだ。」
「どういう事だ!!」
V.V.は目の色を変え井ノ本の足元を強く掴む。
その姿を見て井ノ本はかつて初めてV.V.と対面した時が蘇った。
-君が弟の友達か。シャルルが紹介したい人がいるって聞いてどんな人かと思ったけど……-
「-嘘の無い世界-
それは君達のためじゃない。流崎アキラが覚醒させるために必要な手段の一つに過ぎない。」
「っ!! 君は……お前は何を知ってる!!何故アキラをここへ………お前は…まさかっ!?」
「神の使者というところか。いや……お前たちが言う異端者達か。彼らはお前達の行動を全て見ていた。私は彼らの声に従ったに過ぎない。お前にも聞かせよう。」
その直後V.V.の脳裏から謎の声が自分の頭から聞こえてくる。
「っ!!? ……あっ……あぁぁぁぁぁぁ!!!!」
絶叫で表情が歪むV.V.を横目に井ノ本は静かにその場から後にする。
黒の騎士団によって嚮団の施設が破壊されるのを井ノ本は静観して見る。
「ギアス嚮団………数百年の歴史が終わる……。哀れだな。彼らに操られるのも知らずに滅び去るのは……。」
アキラは大破した暁から脱出し同じく大破したジークフリートへ近づきV.V.を見つけようとショットガンを構えるがジークフリートのハッチが開いていた。
その時、何者かの絶叫する叫び声が聞こえ声のあった方向を見ると血痕があり既にV.V.が脱出しているのがわかりアキラは血痕を辿っていくのであった。
アーカーシャの剣に続く扉付近までV.V.は体を壁にあずけながら歩いていく。
「シャルル……あれを起動させては……いけない。あれは……」
歩みを続けようとした時銃弾が頬を掠めV.V.は倒れこんだ。
誰が撃ったのか振り返るとそこにはショットガンを構えたアキラがいた。
「おまえっ……!!」
「お前が死なないのはわかってる。だが動けなくするのは可能だ。」
「お前がいなければ………僕らの計画が……!!」
懐から拳銃をとりだし撃とうとするがアキラが先に撃ち銃を持っていたV.V.の右手が吹き飛び、血肉が地面へと飛び散った。
再生しようとする体にアキラは素早く弾を装填し1発2発V.V.の体に命中させた。
「があぁぁ…!!」
V.V.を捕らえようとした時前方にある遺跡のような扉が僅かに開きある人物の姿が見える。
「お前は…シャルル・ジ・ブリタニア!?」
「流崎アキラ、貴公がまさかここにいるとはな。」
倒れているV.V.にシャルルは近づく。
V.V.は喉元を撃たれまだ再生が追いつかず声が出せずにいるがその表情は安堵していた。
「兄さん、無様ですね。貴方ですらこの男を止めることができなかった。」
「っ!?」
シャルルはV.V.の顔の前に右手を広げた。
「兄さんはルルーシュに刺客を送り込んだことを隠した。あなたはまた嘘を付いた。」
「シャ……ル……ル…!」
「あとは全て私が引き受けます。」
2人から眩い光が差しアキラは腕で視界を隠し光が収まり視線を戻すと死んだようにV.V.が倒れていた。
「流崎アキラ、まずは貴公からだ。」
その直後扉から先程とは違う光がアキラを覆う。
「これは…まさかっ!?」
「ここで生態反応。元のポイントに戻っていたか、V.V.」
V.V.の反応がし蜃気楼にて散策するルルーシュは倒れているV.V.を発見する。
「見つけた。すぐに……っ!?」
その直後突如目の前が眩い光に覆われルルーシュはこの現象に憶えがあった。
「しまった、これは神根島の!!」
視界が開け目を開けるとルルーシュは蜃気楼から降りており、自分の周囲を見ると先程とは打って変わって神殿の前に立っている。
「ここは?ホログラムとかじゃない?」
「その通り。」
祭壇らしき場所に1人の男が立っていた。
「貴様っ!!」
「我が息子、ルルーシュよ。時は来た。贖いの時が」
目の前にいるのは憎むべき敵そしてルルーシュの父親シャルルがアーカーシャの剣にて出迎えた。そしてアキラは………。
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30話
「………っん?」
瞳を開き見えるのは豆電球が明かりを灯す薄汚れた部屋の天井であった。
ベッドからゆっくりと上半身を起こす。
「ここは……っ!?」
自分の体に手を当てると腹部を中心に包帯が巻かれ自分の身に何が起こったことが一瞬にして蘇った。
ドアノブが回る音がし誰が現れるのか警戒する。
「あっ!!あなた起きたのね!」
日本人らしき女性が入ってきて顔立ちからして自分とそんな歳が変わらないように見える。
「え……っと、シャーリーだっけ?ちょっと待ってて。おやじさぁん!!」
急ぎ部屋を出る千鶴の姿をシャーリーは唖然と見ている。
-中華連邦 ギアス嚮団 本拠地-
「V.V.………。」
項垂れて腰を落としたV.V.を見つけC.C.はゆっくりと近づく。
「会うのは何年ぶりだったかな、V.V.。私は結局、私の定めから逃げられなかったよ。」
「………ふっふふ。」
途切れそうなV.V.の嗄れた笑い声、彼の体から血が滴り落ちV.V.は怪訝に思い彼の体に触れる。
「お前!コードを……。」
「ふっふふ……。」
「V.V.………?」
吐血しながらもV.V.は笑いを止めない。
「……C.C.、無意味……だっ………僕らは生贄だった………。」
「V.V.!?」
彼の顔を伺うがV.V.はこの言葉を最期に一言も発することは無かった。
「生贄?どういう意味なんだ。シャルル、お前は兄に……」
眩い光が消えアキラは瞳を開いているつもりだが自分の視界は漆黒の闇に包まれていた。
あの扉からシャルルが現れ扉から発せられた光によってどこかへ連れて行かれたのか。
だが今、自分がまるで宙に浮いているように感じ今立っているのか横になってるのかわからずアキラは焦りをみせる。
だが突如漆黒の闇から青空のもと広い高原がアキラの前に広がる。
今自分が地に足がついていることに気づき足がふらついてしまった。
ここどこだ。目の前の光景が実物ように見えない。
高原の離れたところから爆発の硝煙見えアキラは敵が現れたのか。ショットガンを構えるがそこに現れたものにアキラは驚愕の表情をする。
3機の濃緑のグラスゴー、そしてグラスゴーの右肩が赤く染められている。
「……陽炎?」
ランドスピナーでこちらへ向かっていきライフルを撃ってきてアキラは身を縮ませながら走り身を隠せる場所へとまわる。
今、自分の身に何が起こっているのかわからないがこの目の前の敵をどうにかしなければこちらがやられる。アキラはショットガンの銃口をKMFに向けるのであった。
その頃、ルルーシュは父であるブリタニア皇帝のシャルルと対峙していたが
「生きている!?……そんな、確かに心臓を…」
ルルーシュはギアスでシャルルを死なせ長年の目的を達成したと思われたが死んだはずのシャルルは平然とした様子で立ち上がった。
「わからんのか、ルルーシュ。もはや、わしには剣でも銃でも何をもってしても、無駄だ。」
シャルルが自身の掌についている紋章をルルーシュに見せ付ける。
「あと少し、全てが揃えばこの世界を…そして流崎アキラ、異端者を排除できる。」
「アキラを?異端者?一体どういう……っ!?」
「こうして会うのは久しぶりだなシャルル。」
次に現れたのはC.C.であった。
「C.C.!?」
「シャルル、アキラをどこへ連れて行った。」
「もう二度と戻れないこの世界の更に闇へ。C.C.、さぁワシのもとへお前が揃えばやつらを滅ぼすことができる。そしてお前の願いはわしが叶えてやろう」
「C.C.の願いを知っているのか?」
「ルルーシュ、今こそ契約条件を、我が願いを明かそう。……我が願いは死ぬこと。私の存在が永遠に終わることだ。」
ギアス嚮団の制圧が完了したがゼロが行方不明となり黒の騎士団は混乱していたがジャレミアは嚮団のある場所へといた。
「おかしい、ジークフリートと共にあったあの機体がない。」
格納庫にいるジェレミアは以前見かけたある機体がどこにもないことに怪訝に思った。
先の戦闘で見ていない。
「ジェレミア!」
ロロが走って駆け寄ってきた。
「兄さんは見つけた?」
「いや……。」
「ここに何が…。」
「嚮団は私や高山、実験体の専用機に神経電位接続用のジークフリートの改良機を1機製造していた。回収しようと思ったがどこにも……っは!ロロ、高山昌克は発見したか!!嚮団はあの男を回収しているはず。」
「いや……あの男はどこにも。」
「もしや……。」
ジェレミアは急ぎここの施設の避難ルートへと向い、脱出艇を見つけ中を見ると嚮団の人間達の死体がいくつも転がっていた。頭蓋骨が潰された者、両目の眼球が潰された者。常人ではやれない所業である。
これをできるのは1人・・・・
「高山……。」
一方、アキラは襲い掛かるKMF部隊をショットガンのみで応戦していた。
実体のないものだと思われたが銃撃による衝撃を受けこれが現実のものであった。
シャルルは一体何をしたのかアキラは思案しながらも目の前にある廃墟へと入っていく。
このままではやられる。アキラはある建物の中へと身を隠す。
アキラは階段に駆け上がり見下ろせる場所へ行き敵KMFの姿を確認する。ショットガンの弾を確認しアキラはコックピットに向け引き金を弾き2機を沈黙させた。1機はこちらに気づきライフルをこちらに向けアキラは急ぎその場から離れる。銃撃により足場が崩れアキラは落下するが残った階段の手摺に捕まり体勢を立て直す。
アキラを探す敵に背後へと回りアキラはコックピットを撃ち。敵KMFは沈黙した。
誰が乗っているのかアキラはコックピットを開こうとしたが突如自分の足場から空間が開きアキラはその穴へと落ちてしまった。
C.C.から彼女の願いを聞いたルルーシュは更に問いただそうとしたがシャルルにより離されルルーシュの目の前に道端に倒れている幼い頃のC.C.がいた。
これはC.C.の過去の記憶。助けてくれたシスターによってギアスを与えられそれから彼女のギアスによる永い因縁が生まれた。
「私の存在は彼女にとって自分自身にピリオドを打つための道具。ただ、それだけだった。あなたはまだここにいない。私にとってあなたは過去ではなく、現実の人なのね。」
ルルーシュの隣にいるのは容姿はC.C.と同じだがC.C.ではない。
「あなたをここに送ってきたということは、一時でも何かからあなたを守ろうとしたのだと思うけど?」
「さぁ、どうだろうな?」
「どうするつもり?」
「ここから出る。俺の共犯者とな。」
「そう………。」
光景が歪みルルーシュの視界がまた変わってゆく。
次に別の場所へとついたアキラ。陽の当たらない暗い地下で嚮団の本拠地に戻ったのかと思われたがいくつもあるランプが地下を照らし別の場所だと判断した。
人の声が聞こえ誰がいるのか伺おうとした時赤子の鳴き声が響く。
様子を見ると数名の女性が1人の女性を囲んでいる。
囲まれている女性の傍で赤子が鳴いている。
「おぉ、神の血を継ぐ子。ギアスではない天地により生まれた。神の子。」
男共がぞろぞろ入ってくる。
男女揃って古びた服装でいる。
「おい!嚮会の連中がすぐそこへ来た!」
洞窟から出ると漆黒の外に松明の灯いくつも見られる。
「異端者を殺せ! 我々の障害となる者を滅せよ!」
剣、槍を持った者達の服にはギアスの紋章があり、鎧を装着している者がおりこの出来事が数百年前のものと見られる。
異端者
異端者、聞き慣れない言葉。この者達が異端者なのか?異端者とは何者なんだ?
混乱するアキラを他所に両者は武器を用いて戦いお互い死者を出しながら激戦を繰り広げる。怒声と悲鳴が響く中アキラはふと赤子のほうを見る。
赤子は平然とした様子で眠っているようであったがゆっくりと瞼を開き誰もアキラの存在がわかるはずがないのだが赤子はアキラと視線を合わせる。
視線を外さない赤子の瞳にアキラは金縛りにもあったかのように動けなくなった。
この子は俺がここにいることに気づいている。
その直後、何かが自分の頭の中に赤子が語りかけてくる。
モウスグ、アエル………
「っ!? どういう意味だ!?」
アキラが赤子に手を伸ばそうとした時突如赤子と自分が引き離され遠ざかりアキラはまたもどこかへ連れて行かれていく。
-エリア11 ゲットー地下-
医者の診察が終え今シャーリーは坂口から自分の周辺の近況について聞いていた。
「……っと、まぁこんなところだな。何か困ったことがあれば言ってくれ」
「はい……」
「しかし、最初聞いたときは何がなんだが。殺そうとした人間を助けてくれだなんて……っま、はじめからあいつにはそんなつもりはなかったんだろうけどな」
坂口は懐から1つの銃弾を取り出した。
「このゴム弾ってのは撃たれても死にはしないが距離や場所によっては相手を殺してしまう。あいつはあんたが刺された傷口の辺りに撃ったせいで半分死にかけたんだ」
アキラはジェレミア捕獲のため用意した1丁のハンドガンで捕獲用のゴム弾が装填されていた。
「できるだけ早く帰りたいのですが……母やクラスメイトに心配かけたので」
「そうしてやりてぇが。あんたは世間じゃあほぼ死んだと思われてるからな。帰れば大騒ぎだろうな」
坂口は新聞を広げるとはじめは大きく載せられていたシャーリーの記事も日を追うごとに小さくなり最近では生存している可能性は0だとも言われている。
「でも………」
「アキラから頼まれたんだ。あんたの身の安全が保障できるまで外に出すなってな」
「ライ君が……」
「あいつ、他人に無頓着なところがあるんだがな」
坂口は煙草に火をつけふぅっと煙を吐く。
「そんなあいつが誰かのために動くなんて、カレンの影響かもな」
「カレン……」
カレンの名前を聞きシャーリーの顔が綻ぶ。
「ちょっと!!怪我人のまえで何煙草吸ってるの!」
坂口の肩を乱暴に叩き千鶴は坂口が持っていた煙草を取り上げる。
「いってぇな!」
「さっ、男は出てった!」
千鶴の手にはハサミと散髪用のマントが握られていた。
「っけ、わかったよ……」
バツが悪そうにし坂口は部屋から退散する。
「じゃあシャーリー、その髪をどうにかしないとね」
「あっ……!」
シャーリーは自身の髪に触れる。今彼女の髪は腰まで伸ばしていた長い髪が切られており左右の長さがおかしくなっていた。
「ひどいよねアキラの奴!あなた為だとか言って寝ている間切ったんだよ!あいつってそういうところあるよね!」
「ははは………」
「さてシャーリー、どういう髪にしようか?心配しないで仕事柄こういうのは得意だから」
「えっ……と、おまかせします……千鶴さん」
「千鶴でいいって。あたしとそんな歳離れてないし」
千鶴はシャーリーの髪を整えながら口を開く。
「せっかくだから聞かせてよ。アキラがあなたの学校じゃあどういう感じだったの?」
「えっ?」
「ほら、あいつが学校通っていたって聞いてあのアキラが学校って、想像しただけで笑えて」
「っふふ」
「だから教えてよ」
「わかった。じゃあ……」
談笑をしながら千鶴とシャーリーの散髪が始まる。ドア越しで聞いていた坂口は自分の出る幕はないと思い静かに離れるのであった。
-アーカーシャの剣-
「私を憎む人も優しくしてくれた人も、全て時の流れの中に消えていった。果てることのない時の流れの中に」
「だが、その苦しみの日々も」
シャルルがC.C.のコードをとろうと彼女の腕を掴む。しかしその時
「ここは蜃気楼の中!? そうか、この空間そのものが思考に干渉するシステムか。」
「ルルーシュ!?」
アーカーシャの剣へ戻ったルルーシュはシャルルを止めようとするがブロックのような物体により蜃気楼の動きが封じ込められた。
「思考エレベーターを開いたのか。まあいいルルーシュよ、そこで見ておれ」
ルルーシュが戻ってきた事に戸惑うC.C.を捕まえたシャルルは彼女を手をかけんと首に手を伸ばす。
「やめろ!!答えろ、C.C.!!何故俺を代替わりして死のうとしなかった?俺に永遠の命という地獄を押し付けることだってできたはずだ。俺を哀れんだのか?」
ルルーシュの問い掛けにC.C.は苦悶の表情を浮かべる。
「そんな顔で死ぬな!最後くらい笑って死ね!!必ず俺が笑わせてやる。だからっ!!」
その直後、シャルルとC.C.の前方の空間が歪み中からアキラが姿を現した。
「何っ貴様!?」
「アキラ!?お前もここへ?」
シャルルとルルーシュは驚きの声をあげる。
「ここはっ!?」
2人、そして蜃気楼とアキラも戸惑いの色を浮かべる。
「閉じ込めたはずが!?異端者が!!」
「っ!!シャルル、今の奴は!!!」
「アキラ!!C.C.を連れて逃げろ!!」
蜃気楼にいるルルーシュからの指示に一瞬戸惑うがアキラはシャルルを払いのけC.C.の腕を掴むが
「待てっアキラ!!」
彼女の腕を掴んだ瞬間体に電流が走るような感覚に襲われ視界がぼやけた。
アキラの脳裏にC.C.の過去の記憶、ギアスを手に入れた経緯が注ぎ込まれた。
「これはっ!?」
C.C.のほうも脳裏にアキラの過去の経緯が走馬灯のように流される。
-これがこの女の!?-
-アキラの!?ー
互いの過去の記憶を見てアキラはめまいを起こすが次第に視界がハッキリとしたがC.C.はぐったりと倒れてしまった。
「貴様よくも!!」
シャルルは再びCの世界へ閉じ込めようとするが
「一体何が!? っだが今は!」
ルルーシュは蜃気楼でアーカーシャの剣を破壊を行う。
アキラは倒れたC.C.を抱えてこの場から離れようとしたが足場が崩れ落下してしまった。
「C.C.!!!」
-エリア11-
井ノ本は待たせてあった車に乗り込み遺跡をあとにした。
(さぁ……これであなた方の思惑通りに進んでいる。あとはアキラの動向次第……。)
外の風景を眺めながら井ノ本は誰かに語る心の声を呟くのであった。
「………っう。」
意識を取り戻したアキラは周囲が謎の空間に連れられる前の謎の扉の前だと気づいた。
近くにはルルーシュとC.C.がおり自分達が無事あの空間から脱出したのだとわかった。
「ルルーシュ」
「アキラ!?」
「さっき件、この作戦お前に聞きたいことがある。それとC.C.……」
アキラはC.C.と目を合わせるがC.C.はアキラを見て怯える表情をしルルーシュの後ろに隠れる。
「いやあぁぁ!!」
普段の彼女からは見られない姿にアキラが怪訝な顔をする。
「アキラ……何をした?」
「っ??」
「C.C.に何をした!?」
Cの世界の描写が難しく荒い部分があり申し訳ありません
アキラとC.C.がお互いの過去を見る描写はボトムズ「幻影篇」にてキリコとシャッコのシーンがモデルです
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31話
-蓬莱島-
饗団の殲滅作戦からアキラはルルーシュと共に蓬莱島へと戻った。
ルルーシュはアキラからの話で機密情報局は壊滅されたと聞き自分の記憶が突き止められると懸念するが皇帝のシャルルをCの世界へ閉じ込めたことでナナリーの身は安全である。
それ以外にアキラが井ノ本によって連れて行かれた謎の遺跡も気になるが今は合衆国日本と合衆国中華を中心に複数の国家から構成される連合国家超合集国の樹立が先決であった。
そんな中今日はゼロの私室にアキラが訪ねてきた。
「エリア11に行く?」
「あぁ、坂口がゲフィオンディスターバーのことで俺に手伝ってくれと頼まれた」
「何か不具合が?」
「人手が足りないようだ」
そうは言ったがアキラの真意は坂口からシャーリーの意識が回復したとの連絡を受けたからである。
「超合集国の式典に俺がいる必要は無い」
「そうか……。じゃあすまないがエリア11に戻っても構わない。シャーリーの件に続けて申し訳ないが……」
「ルルーシュ、シャーリーの事だが……」
アキラが近くにいるC.C.を見る。目が合ったC.C.は怯え物影に隠れてしまった。あれからギアスに関る前の奴隷だった頃の彼女に戻ってしまっている。
「シャーリーの事には感謝している。俺の正体がばれるところだったからな」
「それであいつは……」
その時、部屋のドア越しからロロの声が聞こえてきた。ルルーシュの許可をもらいロロは部屋へと入ってきた。
「兄さん、皆が今度の式典について話したいことがあるって」
ロロはアキラを睨むように見つめる。ロロは遺髪などアキラがシャーリーを殺した証拠を受け取ったがまだアキラを信用できずにいた。
そしてアキラもロロがいたことで自分が口に出そうとしたことを飲み込んだ。
今回の殲滅作戦は自分の行動が遠因になっていることで早くルルーシュに伝えようとした自分を責めた。
「準備でき次第すぐに出発する」
そう言うとアキラは早々と部屋から出た。
「あの男と何話してたの?」
「アキラがエリア11に行くことになった」
「そう……なんだ……」
ロロはアキラが1人でエリア11に戻ることに懸念に感じた。
「兄さん僕も……」
「ロロは捕らえたコーネリアの監視にあたってくれ」
「えっ……?」
「ん?どうした?」
「ううん、何でもない」
笑ってごまかしロロは部屋を出る。
ロロが出た後ルルーシュはアキラの事で考えていた。
(アキラとC.C.が互いに過去を見たと聞く。C.C.は……)
ルルーシュは笑顔でこちらを見るC.C.と目が合う。
(それと……コーネリア)
あの作戦終了直後ジェレミアによってコーネリアを捕らえたルルーシュは対面を果たすのであった。
「ルルーシュ様。ご命令は殲滅とのことでしたが、ブリタニア皇族を手にかけることは…」
「いやジェレミア、むしろよくやってくれた。さて……姉上、あなたには色々と聞きたいことがある」
「私がしゃべると思うか?お前は私にギアスをかけた。もう私にはきかない。それともあの流崎アキラをつかうか?」
「アキラ……?」
「ふっ、何も知らないのか。なら思い出すがいいユフィがどのように死んでいったのを」
ユーフェミアの死。それはルルーシュにとって忘れなれない忌まわしい記憶として残っている。そう、ユーフェミアはアキラと対峙しそして………
(ユフィが撃った銃弾が逸れてそれが彼女に………)
「ルルーシュ様……」
ジェレミアはコーネリアに聞こえないよう距離をとりルルーシュに耳打ちする。
「V.V.達饗団は流崎アキラを調べていました」
「何っ?」
「私は詳しく存じておりませんがV.V.達はあの男を異端者と言ってました」
「異端者……?」
(あの時、アキラは何も手を出していなかった。あれは偶然銃弾が………っ!?)
ルルーシュにある考えが過ぎる。
「ありえない!!」
机を叩くルルーシュに傍にいたC.C.はビクッと体を震わせる。
(あの偶然をアキラが引き起こしただと…ありえない!……だがV.V.達はアキラを警戒していた。V.V.は……あの男は何を知っているんだ)
ルルーシュはC.C.のほうを見る。C.C.は物陰からそっとこちらを見る。
(C.C.は記憶を無くした。対してアキラには何も異常が無い。……あの男は何故あの世界にアキラを閉じ込めようとしたんだ。………まさか、アキラは母さんの事と何か関係が!?)
だがルルーシュは頭を横に振る。それは飛躍しすぎか、だがシャルルがアキラに敵意を向けていたのは事実であった。それなら次にアキラと会うときに彼にギアスをかけ全て話させればいい、そしてその後……
搭乗する潜水艇に乗り込もうと格納庫へ向かうと先日の作戦に参加していた木下が朝比奈と話しているのを見た。
アキラに気づいた朝比奈はアキラに近づき話しかけた。
「流崎、お前はゼロの作戦に最初いなかったらしいね。それが作戦中突然現れた。木下からそう聞いたけどどういうことだ?」
「………極秘作戦で俺の事は伏せていた。木下達が知らないのは当然だ」
「その極秘作戦ってのはなんだ?新参者のロロは極秘だから言えないっていうが……」
「……言えないから極秘だ。それにもう終わったことだ。今更穿り返したところで意味は無い」
そう言うとアキラは潜水艇にて荷物を入れるのであった。
相変わらずだと朝比奈は舌打ちするが2人のやり取りを見ていた木下はアキラに不審の目で見ていた。あの作戦にてアキラが味方を撃ち殺していたのを目撃していた。アキラはあの作戦の本当の目的を知りゼロと共謀しているのではないかと……。
蓬莱島に残っている咲世子はモニターにて監禁してあるヴィレッタの様子を伺っていた。
アキラと別行動で咲世子はディートハルトの指示でヴィレッタを捕らえたのであった。そして副指令の扇が彼女と接触を図ったことを咲世子はアキラに秘かに伝えたのだ。
それを聞いたアキラは…
「最悪、ルルーシュの事を漏らせばあの女を殺す」
その意見には咲世子も同意見であった。早めに手を打っておかなければならないがディートハルトは彼女を人質のようにしている。ゼロの正体を知っているヴィレッタをこのままにしてはいけない。
その後、エリア11へ戻ったアキラは坂口のコンテナ船が停泊してあるチバの港へと向かった。
シャーリーの意識が回復したことで彼女を自身のコンテナ船へと招いたのだ。
「おうアキラどうしたんだ?いくら連絡しても何も返事してこないでいつの間にか蓬莱島にいて何があったんだ?」
「すまん、色々あってな。シャーリーはどうしてる?」
「千鶴が相手してるよ。年も近いからいい話相手になってる」
シャーリーがいる部屋の前に来てアキラは軽くノックをする。
「俺だ。入るぞ」
部屋に入りそこにいたのはベッドの上で上半身を起こし千鶴と雑談をしているシャーリーであった。顔色は良く見え体調が回復しているようだがもう一つ、腰の辺りまで伸ばしていた長い髪は肩の辺りまで短く切られたミディアムヘアーとなり普段とは印象が変わっていた。
「ラッライくん……!」
「おかえり~!ライくん♪」
「…………」
「あれライくん、シャーリーに見惚れてるの~?」
「もう……やめてよ千鶴」
目が醒めてから日が浅いが何時の間にか仲良くなっている2人にアキラは口が半開きになった状態であったが
「……体調はどうだ?」
「うん、大丈夫……」
「……シャーリー、ほとぼりが冷めるまで坂口のところにいろ。全員日本人だが心配するな」
「ライくん!?」
「言ったからな」
そう言うとアキラはそのまま部屋から出て行った。
「なんか一方的で好きじゃないなぁ~」
「そう?逆にいつものって感じだったな。そんなライくんカレン相手だったら結構素直だったし」
「へぇ~、あのアキラの手綱を引いてたのか……ますます会いたくなったな。そのカレンに」
「すまなかった」
そのカレンの独房にてスザクがカレンに頭を下げていた。先日の無礼を謝罪しに来たのだがカレンはムスッとした表情で椅子に座ったままスザクを見る。
「………それで今日は何?言っとくけど何も知らないから」
「いや……その件はもう………」
「自分から話振っておいて勝手にお仕舞い?頭下げればそれで済むって思ってるの?ホント嫌い!あんたなんか」
「………」
黙ったままのスザクにカレンは呆れた表情をする
「出てって」
「………」
「出てって!!もうあんたの顔見たくない!!」
「………っ」
黙って去るスザクの後姿を見送り1人になったところでカレンは深いため息を吐いた。
またここへ来たときこの手で殴ろうと思っていた。自分にあんなことしておきながら平然と姿を見せて……しかし、自分に謝罪している姿を見てカレンは殴る気が失せた。
この男を殴ったところで何が変わるのか。
それより身動きできずにいる自分の身に歯痒さを感じていた。
アキラにしろ、シャーリーの件と事態が動いている中自分だけが取り残されている。そのように感じ今のカレンには怒りの感情よりも焦りで心中穏やかではなかった。
陽炎のヨコハマ基地にてエリスはバーネット兄妹との調整を終えたばかりでまだ眠っていたが兄妹が入ってきたと同時に瞳を開いた。
「お目覚めのようねエリス。少し運動でもしましょうか」
「合同の軍事演習が行われる。中にはナイトオブラウンズがいるみたいだ」
エリスは無言のままベッドから起き上がり部屋から出て行く。
その様子を2人はニヤニヤと見ている。
「兄さん見たさっきのエリスの顔」
「あの食って掛かるような眼。あの紅月カレンと会ってからずっとあんな感じだ」
「あの子すぐにでも紅月カレンを殺したくて仕方がないみたいね。ふふっ、PSに嫉妬、憎悪を与えるとここまで変えるなんて」
「演習相手が死なないことを願うばかりだ」
-私はあなたに教えたいの自分のモノにするとか支配するとかじゃない、本当の愛をー
カレンからの言葉はアキラとカレン2人が互いを信頼し愛しているもので自分が入れない、自分だけが置き去りにされることにエリスは憤りを感じていた。
カレンの言ってることが愛だというなら彼女を殺しアキラを自分のモノにすることで自分の愛を証明できる。アキラの傍にいるのは紅月カレンではないこの自分なのだと。
それから数日後、予定通り合集国の憲章批准式典が行われた。合集国憲章を批准した国家は固有の軍事力を永久に放棄するがその代わり各合衆国の安全保障については人員・資金提供を条件にどの国家にも属さない黒の騎士団と契約し、黒の騎士団が安全保障を担うことになる。
これにより合集国連合軍という体裁も手に入れこれで名実共にブリタニア軍と真っ向からぶつかり合えることになったが式典終盤に会場に置かれていたモニターにCの世界に閉じ込めたはずのシャルルが映っていたことにアキラも驚いていた。
これまでの黒の騎士団の動きはシャルルがいなかった上でルルーシュも動いていたがここにきて彼自身にブレーキが掛かったのではないかとアキラは懸念するがここにきてブリタニアとの決戦は避けられないのは明らかで自分の成すことは一つだけだとアキラも動き出した。
「おいアキラ!KMF1機ぐらい用意できる。こいつだけはやめろ!」
アキラは今ある2機のKMFの前に立っていた。それはラクシャータ達が試作機として使用されるはずだったものであったがテスト中に事故を起こし廃棄処分になり備機廃棄依頼としてこちらへ運び込まれた予備機の無頼と暁の2機であった。
「死人を出したモンスターマシンだぞ。いくらお前でも……」
「スザクのランスロットやエリスのマシンもモンスターだ。モンスターにはモンスターがちょうどいい」
「でもよぉ……」
「俺は死ぬつもりはない。そのためにとっつあん、あんたに手伝ってほしい」
「俺に…?」
「頼む、カレンを……助けたい」
アキラと視線をぶつけ坂口は苦笑いを浮かべる。
「女のためか……っへ、いいぜ!その話乗ってやる!けどな中途半端なモンはつくらねぇからな」
「そのつもりだ」
アキラは微笑み早速2人は取り組んだ。
その頃、ブリタニア、エリア11での軍事基地では合同演習が今日も行われエリスが操るヘルハウンドも参加しており演習は終盤を迎えていたがいくつもあるKMFの残骸の上にヘルハウンドだけが立っていた。
「え……っと、これで終わりっでいいのですか♪ご心配なくエリスには操縦者の命は奪わないよう言っておりますので」
モニターで見守っていたドリーが聞くが幹部達の顔がしかめっ面になっており結果はエリスの圧勝なった。
「これじゃあ合同演習じゃなくてエリスのための実戦訓練ね」
「こらジョディ、皆様に失礼だろ。では僕らはこれにて……ん?」
その直後1機のKMFがエリスにヘルハウンドに向け実弾のミサイルが発射された。
それはエリスも気づき瞬時に回避した。
まだ残っていたのかと敵KMFを見ると先程戦ったKMFとは形状が違いパープルカラーを基調としたKMFで右腕にはドリルのようなランスが装着してあった。
「これを全部あの機体がやったのか……面白そうじゃないかパーフェクトソルジャー」
KMFパーシヴァルを駆りナイトオブテン、ルキアーノ・ブラッドリーは下卑た笑いを浮かべてヘルハウンドを見下ろす。
「ナイトオブテン、ブラッドリー卿!今回の演習には参加すると言っておきながら今まで姿を見せなかっったけど今頃!?」
「ジョディ、面白そうだ。せっかくブラッドリー卿がKMFに乗ってくれたんだ。そのご好意に甘えようじゃないか」
「っふふ、そうね」
『エリス、このまま戦闘を続行しなさい。くれぐれもナイトオブテンの命だけは……っね! あとで問題が発生したからでは遅いから』
ジョディからの連絡でエリスは迎撃の構えを見せる。
『パーフェクトソルジャー、貴様に聞きたいことがある。貴様の大切なものとは何だ?』
その問いにエリスは黙ったままである。
『それは命だ。そしてその命が最も輝く場所が戦場だ』
「………命など惜しくない」
『っ………?』
「私は誇りあるパーフェクトソルジャー。戦士として戦っている。」
『戦場に生きる糧があるか……くっくく、いい!嫌いじゃない。だが……何故相手の命を奪わない?演習とはいえ死ぬのはその者が弱いからだ。慈悲か?』
「そう命令を受けた……」
ルキアーノは白けた表情でがっかりしたようにも見える。
『それではただの人形だ。人形と命のやり取りをする気はない』
「人形……?」
『人形が誇りある戦士だと?おかしな話だ。まっ人形にはわからないだろうな。』
人形……その屈辱的な言葉にエリスはカレンが自分に向けて言った本当の愛を述べた時理解できない自分にカレンは悲しげな顔を思い出した。
まるでエリスを哀れむような………
その瞬間、エリスの心が殺意に満ちヘルハウンドは上空のパーシヴァルに接近する。
「ほう……」
パーシヴァルは横へと回避する。
「いいだろう。人形の相手では楽しめないが自分が人形であると教えてやる」
パーシヴァルの右腕に装備された巨大な4本のクローが高速回転させブレイズルミナスで形成されたドリル状となりパーシヴァルはヘルハウンドを迎え撃つ構えをする。
-チバ-
コンテナ船にある格納庫の一角にてアキラと坂口のKMFの整備が行われていた。
「さて問題はこのロケットエンジンだが……」
廃棄処分の原因となった問題の固体燃料ロケットエンジン
「2つとも使う」
「おい、正気か?」
「あぁ」
2人が作業を進める姿をトレーを持ったシャーリーと千鶴がゆっくりと近づき声をかけるが……
「2人共、食事ここに置いてくから食べなさいよ」
「バーニアスラスタを増やすか?」
「脚以外に肩の後ろに装着させる」
千鶴の呼びかけに2人は聞こえず作業に夢中になっていた。
「もういいや、シャーリー行こう」
「ふふっ」
2人の姿を見てシャーリーは笑みを溢す。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない。ちょっと思い出し笑い」
2人は静かに格納庫を後にし甲板へと出た。
「坂口さんって貿易商だけど意外とメカに強いんだ」
「そうなの。前、サドナ王国にいた時もアキラ達と一緒にKMFいじってたし、アキラもそうだけど男って一度やりだすと止まらないよね」
「ふふっ、そうだね」
「おやじさんだってそう。一度仕事やりだすと家事とかまったくやらないからあたしが全部面倒みないといけないのよ。この前だって同じ靴下を3日も使ってたのよ!ありえないでしょ?」
「ふっふふ、前から思ってたけどまるで親子みたいだね」
シャーリーから言われ千鶴の顔が真っ赤になった。
「何言ってんの!!やめてよ。あんなおっさん、あたしのお父さんはもっと…」
千鶴の表情が一瞬暗くなりシャーリーがハッとする。シャーリーは千鶴の家族について話は聞いていた。
「ごっごめん。私、そんなつもりで……」
「いいの、それはお互い様でしょあたし達。でもさぁ」
千鶴は手摺を掴み外の景色を眺めながらつぶやく。
「時々思うの。死んだお父さんが今生きてたらあんな風に加齢臭とか匂わせたりとかしてオヤジっぽくなってるのかなって」
「千鶴……」
「だからかな?ついおやじさんの事をお父さんって言いそうになるの」
「別にいいと思うよ。お父さんって言ってみたら?」
「よしてよ。それに何か恥ずかしいよ。シャーリーお願いがあるけど…」
「わかってる。これは2人だけの話」
シャーリーは人差し指を唇に当てる。
「うん……じゃあ、あたしたちも食事しようか」
軍事演習を終えたエリス、ドリー兄妹は陽炎の基地へと戻っていた。
「エリス、さすがの君もラウンズが相手なもんだから加減ができなかったみだいだね」
「2人がやりすぎて基地が巻き込まれて建物の被害が出ちゃって」
「けど、最後ヘルハウンドのエナジーフィラーが切れなかったら間違いなくエリスが勝ってただろうけど」
終盤から参戦したパーシヴァルに比べ連戦続きであったヘルハウンドのエナジーフィラーの残量が少なくなっており尽きてヘルハウンドが動けなくなったことが切欠で戦闘は終了となった。
「その問題も解消できるさ。エナジーフィラーをもう一つ補充できるようにして今までの稼働時間の倍は動けるようになる。その代わり脱出装置が外されるけど」
「もうすぐね」
「あぁ黒の騎士団がまた戦争を仕掛けてくる。面白くなりそうだ」
2人は愉快に笑い、新たな戦場という実験を行われるのを楽しみにしている。
深夜
コンテナ船で1人KMFの整備を行っているアキラの背後から足音が聞こえてきた。
アキラにホルスターに収めているショットガンを取り出し振り返る。
「ごっごめん!私!」
そこにはポットを持ったシャーリーが立っていた。
「……お前か」
「坂口さんからまだやってるって聞いたから……一息どうかなって?」
シャーリーはカップに暖かいコーヒーを注いだ。
アキラは黙って手を止めシャーリーのところへ歩み寄るとカップを受け取り一口飲んだ。
「ふふっ、前にもこんなことあっとよね」
「っ?」
「ほら学園祭で使うKMFをライくんが夜遅くまで直しているところを会長やリヴァル達と見に行った」
「……そんなことあったな」
「せっかく直したけど本番、ピザ失敗したけど楽しかったな。それと……」
しゃべり続けるシャーリーにアキラは黙ってカップを渡して自分はまたKMFの整備を続けようとする。
「ラっライくん!」
呼び止められアキラはゆっくりと振り返りシャーリーと視線を合わせる。
「どうして…私を助けたの?」
その問いにアキラは視線を逸らし黙ったままKMFを見つめる。
「………どうしてだろうな。俺にもわからない」
「わからない…?」
「いや、理由は無いかもな」
シャーリーが血を流し倒れている姿を見てアキラは損得関係なしに彼女を助けたい衝動に駆られた。後から考えても自分の行動に理解できなかった。
「その……ありがとう」
「自分を半殺しにした奴にいうセリフか」
「それでもうれしいの。またあなたに会えて」
「俺に?」
「突然記憶が戻ってあなたやナナちゃんの事みんな忘れてていや、嘘付いてるように見えて怖かったの。世界中が私を見張っているような気がして。ルルはこんな世界で一人で戦ってたんだって」
「………」
「あなたもライ…っ!え……っと、流崎アキラだったよね……カレンを守ろうと戦っていた」
「……」
「アキラ……くん。私、学園でみんなと待ってるから。ルルーシュとカレンと一緒に戻ってくるのを」
「お前の親を殺した俺を?」
「それは……この前スザクくんにも言ったの。きっとそれは許したくないだけなんだって」
「許したくない……?」
「私、ルルが好きなの。お父さんを死なせたり私の記憶をいじったりしても嫌いになれなかった……やっぱりおかしいかな?」
シャーリーを苦笑いを浮かべるがアキラはそれが強がりのようには見えなかった。ごく自然の笑顔のようだった。
「それに……怨んでいた人を許すにはその人の髪が白くなるまでだって聞いたことあるけど私そんな長い時間、人を怨めないよ。 それに疲れちゃうよ私自身が」
-今まで俺が殺してきた人間、そしてその家族のことは気にも留めなかった。いや、そのような感情ははじめからなかった……。シャーリーが目覚めたと聞き俺は彼女とどう向き合えばいいのか正直わからなかった。だが……-
「だから帰ってきてよ。今度は流崎アキラと紅月カレンとして2人を迎え入れたいの」
「だったら、しばらく身を隠すんだ。生きてルルーシュに会いたければな。生きていることがばれるとまたロロがお前を殺しにくる。そうなる前に俺が始末する」
「そんなこと言わないで!!ロロはただ…」
始末、その言葉が殺す意味だと感じたシャーリーは声を荒げた。
「アキラくんはロロの事あまり知らないと思うけどルルの事本当のお兄さんとして見てるの。たぶん、私があんなこと言ったせいでロロ、自分の居場所が取られるんじゃないかって不安に思ってそれで……」
「あいつまで許すのか……おかしな女だ」
「そうかも……でも、もうあんな思いは嫌なの。私、ルルを撃とうとしたことあるの。お父さんの仇取ろうとしたけど……できなくてものすごく胸が苦しくて…それでかな?」
「そうか………明朝この船はエリア11を出る。お前は一緒に乗ってしばらく身を隠せ。あとの事は坂口に任せている。あの男は信用できる。いいな、勝手はゆるさん」
「ふふっふ、わかった。やっぱりアキラくんって優しいんだね」
シャーリーからそう言われアキラは苦虫を噛み潰すような顔をする。
「もう用が無いなら早く出ろ!」
顔を見られないようアキラは背を向けシャーリーはそんなアキラを見て微笑みながら部屋を出て行くのであった。
翌朝
最後の調整を坂口と行いアキラのKMFが完成した。そのKMFを見ようと千鶴とシャーリーもいた。
「なんかこうして見ると無頼でも暁でもないヘンテコなKMFだよね」
千鶴の言うとおり、基本カラーは濃緑でKMFは暁をベースにしてるが随所に無頼のパーツを継ぎ接ぎに合わせており暁の形状を留めていない。コックピットの下には固体燃料ロケットエンジンが取り付けられており姿勢制御のためのバーニアスラスタが脚部に装着し、肩部分を無頼の肩を使いそのうしろにもスラスタを取り付けた。
そして暁の頭部部分通常のカメラではなく光角レンズ、狙撃用のオプティカルサイトを搭載したターレット式を使用している。
「ちょっと、脱出装置ないじゃん」
「しかたねぇんだ。このロケットエンジン使うには機体が重くなって邪魔になるんだ。」
「アキラ、よくこんなKMFつくったね。死んじゃうよ」
「俺は死なない」
千鶴の心配をよそにアキラは平然としている。
「結局、試運転なしで一発本番になっちまったな」
「構わん、あとは俺で何とかする。とっつあんのところの倉庫借りるぞ」
「おう、好きに使いな。武器も運んでる、派手にやってくれ」
坂口が用意したのは通常のライフルからガトリング砲までさまざまな武器が揃えられていた。
その時、アキラの携帯が鳴りアキラは携帯をとり話を聞いた。
しばらくして電話を切るとアキラはじっとKMFを見つめると黙って工具類を漁ると1つのスプレー缶を取り出した。
「アキラ、何の用事だったんだ?」
「星刻達の部隊が蓬莱島から出撃した。」
「だとすれば、もうすぐここも……」
「あぁ、ゼロ達がくる」
坂口はアキラが持ち出したスプレー缶を見て驚きの表情をする
「おいアキラ!それは!!」
アキラは黙ってKMFの右肩辺りによじ登りそこへスプレーをかけた。そして真紅の色が右肩を染めていくのであった。
「アキラ……」
千鶴はアキラの顔を見てたじろいだ。そう右肩を見るアキラ鋭い眼光に圧倒されたのだ。
「あんなアキラの顔久しぶりだぜ」
(あれがアキラくんの……私の知らないアキラくんの顔……)
染め終えた右肩は真紅に染め上げられ血にも見え怪しく光るのであった。
-過去との決着をつけるために俺はまた右肩を赤く染める……カレン……お前を取り戻すために俺はまた陽炎の名を背負う。-
アキラのカスタマイズした暁はよりスコープドッグに近い存在になりました。
いよいよトウキョウでの決戦が次回始まります
尚、この回は原作16話、17話までの話でルルーシュとスザクが枢木神社で会ったのは原作どおりです。
原作なら次はトウキョウ決戦が起こりフレイヤによって……っとなりますが果たして……?
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32話
黒の騎士団がカゴシマに現れたことによりここトウキョウ租界もKMFが配置され黒の騎士団の奇襲に備えていた。そして厳重な警備が敷かれている政庁の前を古びたマントを着た大柄な男がじっと見ていた。
-チバ-
海上の警戒が敷かれる前に出発しようと坂口のコンテナ船の中は船員たちが慌しく動いていた。
「とっつあん、これからどうする?」
「戦いが落ち着くまでハワイにでも行ってバカンスでも……って冗談だ。中東の辺りでも行くつもりだ。シャーリー、あの子は任せろ。俺が責任を持って面倒見る」
「頼む」
アキラは甲板のほうを見る。千鶴とシャーリーの2人がこちらへ手を振っている。
「じゃあなアキラ、死ぬなよ」
「あぁ」
タラップが港から離れていきアキラは船に背を向け歩き出そうとした時シャーリーの大きな声が聞こえた。
「アキラくん!!学園でまた会おうね!!」
アキラはそれに応えることなく黙って歩いていった。
「一言でも言えばいいのに。まっあいつらしいか」
「それでいいんだよ。アキラくんは」
シャーリーはアキラの後姿を微笑んで見ている。不器用なアキラらしく言葉でなく態度で応える。いつものアキラにシャーリーは制服姿でルルーシュ、カレンと並んで戻ってくるアキラが目に浮かんでくる。
-エリア11 租界 政庁-
「黒の騎士団が!?」
カレンは黒の騎士団の侵攻をラウンズのエリスから聞かされた。
「うれしいか?」
その問いにカレンはハッとする。
「アキラは必ず来る。お前がここにいるのだから」
「エリス……」
「私が勝ち奴を敗者としてここへ連れてくる。そんな姿を見られたアキラはもうお前の前に姿を現せることができなくなる」
「それであなたが慰めるとでも言いたいのエリス」
「何?」
「エリス、あなたと戦いたくないけどアキラを倒そうと言うなら私は彼を守る!そしてあなたを止める!」
「ここを出ると?」
「私は最後まで諦めない。チャンスが訪れるその時まで!」
カレンの強い視線にエリスは更に殺意が芽生えた。この女にアキラは何故惹かれるのか。今すぐにでも殺したくなるがカレンとはKMFでの戦いで白黒つけたいとの欲望があり踏みとどまった。
だがそれは自分がカレンがここから出てほしいと本心では願っているのか。このぐちゃぐちゃな感情にエリスは早く出たいと足早にここから立ち去っていくのであった。
待機してあるランスロットを前にスザクは複雑な表情でいた。ランスロットにはニーナが開発した最新兵器フレイヤが搭載されている。
(乗るしかないのか?フレイヤが積まれたランスロットに。フレイヤを……ルルーシュを)
突如、ルルーシュから連絡が入り幼少時代の思い出の地、枢木神社2人だけで会いそこでルルーシュは自分がゼロでユーフェミアにギアスをかけたなど今までの所業を告白しその上でナナリーを助けてほしいと懇願された。
今更何をとスザクは憤りを感じた。
「シャーリーを殺したのも君か!?」
「………あぁ、そうだ。俺がアキラに頼んだ」
だがその時のルルーシュの目を見てスザクは悟った。今、ルルーシュは嘘をついている。秘密をしまいこんで罰を受けている目だと。ユーフェミアの件も今までの所業も言葉と裏腹に真実を隠し自分が罪を背負おうとしている。
スザクはもう一度ルルーシュに歩み寄ろうとしたが直後シュナイゼル達が現れルルーシュを捕らえた。
自分が尾行されていてようでその後同行していたギルフォードが突如ルルーシュを開放し共に逃亡した。これによりルルーシュとの戦いは避けられなくなった。
「全てシュナイゼル殿下のご命令よ。殿下は気づいておられたのよ。あなたとゼロはただならぬ関係だとね」
カノンから告げられルルーシュがゼロだと知られた。
「だとすればギルフォード卿の乱心も納得できるわ」
「…………」
「でも殿下にとってこれはただの余興の一つかもしれないけど」
「余興?」
「そう、殿下はこれから起こる戦いがどうなるのか見たいのよ」
スザクにはカノンの言ってる意味がわからなかった。カノンもスザクの困惑の顔を見て苦笑いをする。
「わからないでしょうね。殿下は今黒の騎士団の流崎アキラに深く関心をよせてるから」
「流崎アキラ?」
何故アキラの事を?っとスザクは疑問に思ったが脳裏に横切ったのはあの言葉
異能生存体
(アキラ……これも君が起こした現象とでもいうのか?)
今自分はランスロットに乗り込み戦場に向かうしかない。必ず戦場にはルルーシュ、そしてアキラがいる。その結果何が起こるのか?
自分たちはアキラの手の上で踊らされているのか?それとも別の何者かが?スザクは見えない恐怖に押しつぶされそうになっていた。
-エリア15 元サドナ王国-
『アレク、黒の騎士団達はもうすぐトウキョウへ侵入するぜ』
軍用車の中でイゴールからの連絡を受けアレクセイは時刻を確認する。
「トウキョウへ侵攻予定時刻か………」
星刻達がカゴシマでブリタニアと戦闘を開始してから大分経つ。自分たちは黒の騎士団の支援としてエリア15で活動を開始させエリア15の軍の部隊の足止めを行っている。
現在アレクセイ達新生サドナ王国は部隊を分散させエリア15にあるブリタニアの各軍事基地を急襲している最中である。
『星刻、後方は俺たちに任せてお前はエリア11に向かえ』
『すまない。頼む』
『朗報を待っている』
出撃直前の星刻からの連絡を最後にまだ戦局はどちらに傾いているのかまだわからない。
『こちらワシリー!!敵の増援、被害増大!!』
ワシリーから連絡で我に返ったアレクセイは急ぎ指示を出す。
「わかった。ワシリー、我々の目的は敵の足止めだ!!目的を達成次第直ぐに撤退しろ!! イゴール、長いは無用だ。すぐにここから撤退する!!」
サドナ王国の開放のため今この戦局を乗り切らなければいけない。アレクセイは次の作戦に移行するために移動を開始するのであった。
同時刻 エリア11
黒の騎士団、斑鳩艦隊がトウキョウへと侵入しブリタニアと衝突しようとしている。ゲフィオンディスターバーよってトウキョウ租界のライフライン、通信網が停止したことでアキラは政庁の傍まで来ていた。
アキラはKMFを搭載したトレーラーから事態を見守っているとき携帯が鳴りだした。
『アキラ、今どこだ?』
「政庁の近くに隠れてる」
『咲世子達のチームが先に政庁へと突入する。お前も合流しナナリーとカレンの救出に向かえ』
「わかった。咲世子と連絡して合流する」
ライフルの準備をしトレーラーから出たアキラは咲世子と連絡をとる。
「咲世子、俺だ……」
アキラとの会話を終えたルルーシュは敵軍の中にスザクのランスロットの姿を確認した。
(アキラ、せめてカレンとは再会させてやる。カレン、君との約束は守った。だがここまでだ!ここから先アキラにはシャーリーへの贖罪をさせる。その命で……!)
「藤堂。朝比奈と千葉に政庁の制空権を抑えさせろ。ロロ!そちらの突入状況はどうなっている?」
『もうすぐ咲世子達と合流するから』
「よし。必ずナナリーを確保しろ。……さて、スザク!」
『聞こえるか、ゼロ。戦闘を停止しろ。こちらは重戦術級の弾頭を搭載している。使用されれば4000万以上の被害をもたらす。その前に』
「お前の言うことなど信じられるか!」
枢木神社での裏切りで既にスザクを見限ったルルーシュに彼の言葉は届かないのであった。
ランスロットの前にジェレミアのジークフリートが立ちふさがる。
「ジェレミア卿ですか?何故!?」
『枢木スザク、君には借りがある。情もある。引け目もある。しかし、この場は忠義が勝る』
「………っく」
「黒の騎士団、斑鳩艦隊に告げる。シュナイゼル率いる主力部隊が到着するまでが勝負となる。防衛線を敷きつつ、ブリタニア政庁を孤立させろ。ナナリー総督を抑えれば、我が軍の勝利だ」
1年前のブラックリベリオンに続きまたトウキョウが戦場となる。
ゲフィオンディスターバーによって通信ラインが停止したことで政庁の中は混乱に喫した。
「早く回復させるんだ!提督の避難はまだなんだ」
「はっ……急ぎ。……っん?」
制御室の局員が慌しく動く何者かが制御室へと入り込んできた。
「だっ誰だ!うっわあっ!!」
簡単に持ち上げられ壁に頭を打ち付けられた局員はそのまま動かなくなった。
「さて……」
進入してきた男は周囲を見下ろす。制御室が暗いため何が起こったのかわからない局員は懐中電灯で声の主に光を当てる。そこにはここの局員の者ではない1人の男が立っていた。
「今からここは私のものになる」
高山は着ていた古びたマントを脱ぎその機体となった体を露にした。
機能が停止し暗い政庁へと進入したアキラは咲世子と合流しようとするが兵士数名と遭遇し銃撃戦を繰り広げていた。
2、3人撃ったアキラは更に奥へと進もうとするが背後から人の気配がし振り返るとこちらへ銃を向けた兵士が立っており応戦しようとするが兵士は前のめりに倒れた。そして兵士の背後に立っていたのは……
「咲世子……」
「先に行きすぎですねアキラ様。しかし、いつも先頭を行くのはあなたらしいですね」
「ロロも合流すると聞いたが」
「ロロ様はナナリー様を迎えに私たちとは別れました」
「………そうか。行くぞ」
咲世子達と行こうとした時、ゲフィオンディスターバーによって停電していた政庁に明かりが灯された。
「っ!?」
「どうして?」
アキラと咲世子は戸惑いを隠せないでいるがここで立ち止まるわけにはいかずそのまま先へと進もうとするが停止していた警備システムが作動し天井に設置してある機銃がアキラ達を狙い撃ち隊員2名が撃たれた。
アキラは身を隠し持っていた手榴弾で投げ警備システムを爆破させた。
「他のシステムも作動しているかもしれません」
「気をつけていくぞ」
アキラと咲世子は警戒しながら先へと進んでいく。
「すっすごい…!」
制御室の局員達は高山の命令により各制御ラインをつなぐ配線を高山の体に直接つなぎこのダイレクトリンクすることで政庁のライフラインが回復し灯りが灯された。
「よしっ、急ぎ総督の避難を…」
「そんなのはどうでもいい」
高山は生き残した3人の内1人を裏拳で突き飛ばし局員は机に激突し動かなくなった。
「もう、お前達に用は無い」
「ひっひぃ!!」
2人の局員は逃げようとするが高山に首根っこを掴まれその強化された握力により絞め殺された。
2人を殺した高山はモニターである人物を探す。
「いた」
高山が見ていたのは幽閉されているカレンが映っていた。
そして別のモニターには咲世子と共に進入しているアキラの姿が映っており高山は口の端を吊り上げるのであった。
政庁のライフラインが回復されたのは敵と交戦を繰り広げている黒の騎士団、ゼロからも確認できた。
「灯りが!?どういう事だ?」
すると斑鳩から通信が入ってきた。
『上空にて敵の増援らしき航空艦数機確認!』
「何っシュナイゼル!?しかし、早すぎる!!」
蜃気楼から確認すると航空艦からKMF部隊が降下するのが確認された。
「あれは!?」
赤い右肩を施したKMF、陽炎のKMFヒートヘイズの部隊が降下し政庁へと向かおうとしている。
「陽炎…やはり来たか」
政庁上空で戦っていた藤堂達は陽炎が来たことで更に激戦となった。
「陽炎!! 井ノ本かっ!!」
ヒートヘイズにもヘルハウンドと同じフロートユニットが搭載され空中戦でコンビネーションを用いた戦術で黒の騎士団のKMFを次々と撃墜されていくのであった。
「藤堂さん!!」
「皆、1人で戦おうとするな!!」
藤堂は千葉、朝比奈と陣形を組み襲い掛かるヒートヘイズの攻撃に1つ1つ対処しながら1機ずつ撃破していくのであった。
そして赤い右肩の集団の中で1機濃藍のカラーリングのKMFヘルハウンドが混じっていた。
その頃、カレンは外から聞こえる戦闘の音でみんなが戦っていることでいつまでもここへ閉じ込められていることに焦りが見え出した。
「みんな、みんな戦ってるのに……」
早く皆と合流しねければと焦るがすると部屋の扉が開き何者かが入ってきた。
「っ!?」
ここの警備の者かと思われたがその男は体が金属の体に覆われておりカレンはここの人間ではないと感じた。
「だっ誰?」
警戒するカレンを見て高山はゆっくりとカレンの幽閉している部屋の扉の前へと近づき手に触れ力を入れると透明の扉にひびが入り扉が割れ高山がそこから入ってきた。
「なっ何?あんた!?」
「紅月カレンだな。来てもらおう」
警戒するカレンは拳を振り下ろすが高山は易々とその拳を捕らえカレンの腕をまわし組み伏した。
「あぐっ!!」
「大人しくしろ」
捕らえたカレンを高山は連れて行くのであった。
「……どこだアキラ」
ヘルハウンドを駆りながらエリスはアキラを探していた。
「カレンはここにいる。さぁ来い!」
ヘルハウンドの前に3機の暁が立ち塞がりエリスは左の盾の中から数珠状に分割した剣、蛇腹剣を取り出し一振りで3機撃墜させた。
更に藤堂の斬月が制動刀を構えて現れた。
「隊長機?」
「この機体確かゼロが言ってたパーフェクトソルジャーという奴か!」
エリスは蛇腹剣を剣の形にし斬月と剣を交える。剣では互角に渡る藤堂であったが距離をとったエリスがヘルハウンドの動きでかく乱しながらライフルを用いた攻撃で翻弄されいく。
「藤堂さん!!」
千葉の暁が割って入り廻転刃刀を振り下ろすが回避されヘルハウンドの左腕に装着されたあるクローが暁のコックピットを捕らえそのまま押し潰そうし藤堂がその救出に向かおうとするがエリスは暁を斬月に向けて投げつけて衝突した2機は地上へと落下するが寸前で持ち直し地上からヘルハウンドを見上げる。
「千葉、陣形を立て直す」
「はい!」
2機は再度ヘルハウンドに立ち向かおうと上空へと上がる。
「邪魔をするな。どこだアキラ!!」
カレンの救出に向かうアキラと咲世子は途中別働隊から紅蓮を見つけたとの連絡を受け政庁にあるKMF格納庫にいた。
「エナジーフィラーは積んでいたので直ぐに動かせるのですが……」
アキラは目の前にある紅蓮を見て疑問に思った。
「細部が違う。どういうことだ?」
「どうやら、ブリタニアが手を加えたようで……」
アキラの目に引いたのは紅蓮の背部に装着してある折りたたまれる翼らしきものだ。
「アキラ様、これを」
咲世子はアキラに1冊のファイルを渡した。
「……聖天…八極式? この紅蓮の名称………エナジーウイング?背中のやつか。………こいつは出力が前の紅蓮と桁違いだ」
「カレン様には必要な機体ですので…」
その時、銃声の音が聞こえ2人は振り返ると1機のサザーランドがこちらへライフルを向け近づいていく。
「敵か!?」
2人は紅蓮の背後に隠れ他の隊員も身を隠した。
敵の銃撃が紅蓮を襲うが銃弾を弾き盾代わりになった。
「俺がこいつに乗って奴を潰す」
「これが起動キーです」
咲世子からキーをもらいアキラはコックピットの扉を開き中に乗り込み紅蓮を起動させる。
アキラは例のエナジーウイングを展開され紅い羽を展開した紅蓮は急加速でサザーランドを押し出す。
「うおっ!?」
アキラは紅蓮の予想以上のスピードに腕がとられそうになった。
政庁の壁をいくつもぶち抜き政庁の裏の外へと出たアキラは徹甲砲撃右腕部の鉤爪でサザーランドのライフルを払い、タックルで倒した。
「前以上にじゃじゃ馬になったな」
アキラは輻射波動機構を展開され止めを刺そうとした時敵サザーランドのコックピットの外壁が剥がれ落ち露になっているのを気づきコックピットの中を見た。
「っ!?」
中にいた人物にアキラは驚愕した。中には自分がこれから救出するはずのカレンが乗っていた。
「カレン……?」
何故KMFに?と疑問に思ったがカレンがこちらへ何か伝えようと叫んでいる。
「逃げて!!」
カレンのサザーランドが立ち上がりスラッシュハーケンをこちらへ発射した。
アキラは急ぎ回避し近づこうとするがサザーランドは攻撃の手を緩まない。
「カレン、どうした!!」
『いやぁ!!アキラ、逃げて!!」
「っ!! カレン、機体を止めるんだ!」
『ダメ、できない!!』
カレンの腕は手錠によって操縦レバーと繋がり離れられなくなっている。
トリガーを引いていないが銃弾は撃たれカレンではどうすることもできなかった。
「やはり来たか流崎、来ると思った。この女がいれば必ず現れるとな。」
高山はダイレクトリンクでカレンの乗るサザーランドを操作している。今、政庁は高山の掌握された言ってもおかしくなく。電力が回復したが外部への連絡を取れず、ナナリーが乗る脱出艇も動けない状態でいた。
サザーランドは落としたライフルを拾いアキラが乗る紅蓮に向け撃つ。
「脱出できないか!?」
「無理!アキラ、私のことは構わないで!!でないとあなたが死んでしまう」
自分が人質になった原因でアキラが苦しめる事はどカレンには耐えられないものであった。
アキラも今の紅蓮であれば簡単に損傷することはなくサザーランドを撃破することは簡単であるがそれだとカレンを巻き込んでしまう。アキラはそれだけは避けたい。しかし、いつまでもカレンをあの状態のままでいるわけにはいかない。
2機は政庁内へと戻りライフルの銃撃をアキラは紅蓮のエナジーウイングで防いだ状態で退がりつつあった。
『アキラ様!』
「咲世子か!手伝ってくれ」
アキラは紅蓮の傍に咲世子が控えている姿を発見し次に何かないかと周囲を見渡すとサザーランドの頭上に崩壊した階段の一部がぶら下がっているのを見つけた。
「俺がKMFを止める。お前は今のうちに」
「……っ!?わかりました!!」
アキラは紅蓮を急発進させサザーランドの腕を押さえる。この聖天八極式の出力ではサザーランドを簡単に組み伏せられるがカレンを傷つけることになる。
サザーランドはスラッシュハーケンを射出する構えを取りそうになり紅蓮はサザーランドのうしろにまわり羽交い絞めにした。
「咲世子っ!!」
咲世子は崩壊した階段からサザーランドへと飛び移った。
「咲世子さん!」
カレンを拘束している手錠を銃で破壊し咲世子はカレンを連れてサザーランドから飛び降りた。
「アキラ様!!」
2人の無事を確認したアキラは依然と動くサザーランドを突き飛ばした。
「ぬうぅ!!流崎!」
人質を奪還された高山はサザーランドを紅蓮に突入させた。
アキラは徹甲砲撃右腕部の鉤爪でサザーランドを押し出し壁へ押し付けた。
そして輻射波動機構を起動させ膨大な熱量によってサザーランドは膨張し爆発を起こした。
「っく、まぁいい。やはり私の手で直接決着をつける!!」
高山は制御室から出て彼は地下へと向かう。
「アキラ!」
紅蓮から降りてきたアキラへカレンは駆け寄りアキラは彼女を優しく抱きとめる。
「ごめんなさい」
「ケガはないか?」
「私は大丈夫」
「そうか……」
久しぶりに再会した2人は互いの無事に安心するのであった。
「アキラ様私たちはこれからナナリー様の救出に向かいます。カレン様、これは新しいパイロットスーツとこの紅蓮の説明書です。目を通してください」
「わかりました。アキラ、あなたを狙っている奴がいるわ」
「そいつがお前を?」
「えぇ、何かロボットみたいな奴でアキラ心当たりある?」
ロボット、アキラは高山ではないかと感じた。
「わかった。カレン、俺はKMFで先に出撃する。」
「アキラ……」
カレンの暖かい眼差しがアキラを見つめる。また別れることに名残惜しそうな視線にアキラもそれに気づき少し緊張の糸が解ける。
「生きてまた会えたんだ。お互い、生き残ろう。お前には話したいことがある」
「……それは私も!」
カレンは優しく微笑みアキラも笑みで返し両者は戦場へと向かうのであった。
アキラが政庁から出た頃には既に租界周辺が明かりが灯されゲフィオンディスターバーが破壊されたという事だ。
ナナリーの奪取の知らせもなく予定時間が過ぎてしまったようだ。
そして上空には赤い肩をしたKMF、陽炎の部隊の姿が見え目の色を変える。
アキラはトレーラーに乗り込み後ろのコンテナへと移り天井を展開させる。
KMFに乗り込んだアキラはKMFを起動させその機体を起き上がらせる。
コックピットの横には折りためられた長い砲身のカノン砲、右腕に持っているのは銃身の長いライフル。更に銃身の下にはグレネードランチャー。左腕にはロケット砲を持たせている。
赤い右肩を背負いアキラの乗る機体
ここにシンジュクゲットーで軍、治安警察を震撼させた陽炎が再び現れた。
アキラのKMF晋電ですが名前の由来は旧日本軍にて製作中止となった幻の戦闘機震電からとりました。
次回から暴れさせます
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第33話
ゲフィオンディスターバーを搭載した列車が破壊され敵KMFが戦列復帰し黒の騎士団が押されつつあった。
「殿下、これで5世代目以前のKMFも戦線復帰できます」
「戦力的には逆転したね。ナナリーのほうは?」
「政庁の防衛システムは掌握されたままでナナリー総督の消息は依然不明です」
「敵の仕業にしてはよくわからないね。何故、政庁だけが……」
「………っ。殿下、もう一つお知らせが」
「何かな?」
「どうやら、現れたようです」
モニターに映し出された映像にシュナイゼルの目の色が変わった。
「そうか……」
赤く染めた右肩をしたKMFが自軍のKMFを次々と撃破していくのだがシュナイゼルは笑みをこぼす。
「待ってたよ。流崎アキラ、秩序をもたらすか。それとも混沌をもたらすカオスとなるか」
ゼロはナイトオブラウンズのルキアーノと対峙している最中である。彼の配下ヴァルキリエ隊により蜃気楼は拘束されてしまいルキアーノのKMFパーシヴァルのルミナスコーンをエネルギーシールド絶対守護領域で防いでいるが先のアーニャのモルドレッドとの戦いでエナジーフィラーを消耗してしまい突破されようとしていた。
「っく、これ以上…」
「さぁゼロ、お前の大事なものを飛び散らせろ!」
その時、蜃気楼を拘束していたヴァルキリエ隊が次々と撃破され蜃気楼が開放された。
「誰だ!?」
銃撃が今度は自分を狙っていることに気づきルキアーノはすぐに回避行動をとる。
すると1機のKMFが蜃気楼の前に立つ。
「赤い右肩っ!?敵か!?」
『ゼロ、生きてるか?』
「アキラ!? お前が乗っているのか?」
アキラのKMF晋電は左腕に持っていたロケット砲を捨てる。
『赤い右肩!そうか、お前が黒の騎士団のレッド・ショルダーかっ!!』
「この機体、ラウンズか!」
『お前に会って見たかったレッド・ショルダー、流崎アキラ! シンジュクを地獄に変えた悪魔』
「………」
『レッド・ショルダーに聞いておきたいことがある。同族の殺しをやったお前たちにとって戦場はなんだ?任務のためか?それとも戦場に快楽を求めてるのか?』
「………」
「戦場という極限状態の場で互いの大事な命のやりとり。これほど心が震えることはない」
「………」
ルキアーノの問いにアキラは黙って彼に背を向けゼロ退がらせる。
「お前はさがってろ」
『貴様、私を無視するのか?それに黙ってゼロを見逃すとでも』
2機の周囲を残存のヴァルキリエ隊が囲む。
「騎士様の無駄話に付き合いすぎたな」
『何……』
「だがあいつがあれを慣れるまでにはちょうどよかったな」
『貴様、何を言って…』
その時、アキラ達を囲んでいたヴァルキリエ隊次々と撃破され周りには赤い閃光のような物が高速で走り去っていく。
「あれはっ!?」
そこにはエナジーウイングを広げた紅蓮が立っていた。
「紅蓮!?カレンかっ!!」
「ゼロ、親衛隊隊長紅月カレン!ただ今をもって戦線に復帰しました」
「カレン、紅蓮の調子はどうだ?」
「とんでもないマシンになったわ。慣れるまで時間かかったけど……」
「問題ない。ゼロ、ここは俺たちに任せろ」
「あぁ、頼む」
ゼロの蜃気楼が後退していく。ルキアーノが後を追おうとするが2機が立ち塞がる。
「あのラウンズか……」
「知ってるのか?」
「ちょっとね」
「カレン、俺は奴らの相手をする」
アキラはルキアーノに背を向けるとそこには陽炎の部隊が藤堂達と交戦していた。
「陽炎……」
「お前はラウンズに専念しろ。ここから1機も通さない」
「でもアキラ……」
カレンはアキラが陽炎の事をまだ引きずっているのではないか心配した。
「今、俺はお前を救うために
「っ!! わかった。すぐに済ませる。無理しないでね。」
「お前もな。生きて会わせるとシャーリーに約束したからな」
「シャーリーっ!?」
彼女の名前が出てカレンはハッとする。
「いくぞ!」
やっぱりアキラはシャーリーを助けてどこかで彼女を匿っている。
アキラの一言でカレンは喜びで頬が綻んでいる。
「えぇ!!」
両機は互いの相手に向かい飛び立った。
「貴様、あのレッド・ショルダーの本当の姿を知ってるのか?」
「……」
「イレヴンよ、戦場の真実を知っているか?日常で人を殺せば罪になるが戦場ならば殺した数だけ英雄となる」
「ふーん、ブリタニアの吸血鬼さんは英雄になりたいわけ?」
「いいや。公に人の大事なものを、命を奪えるとは最高じゃないかって話さ。レッド・ショルダー共は貴様ら同族の命を奪い、女共を攫い犯してきた。果たしてどちらが吸血鬼かな?」
パーシヴァルのシールドから発射されたミサイルを紅蓮は回避していく。
「ホント、無駄話が好きな騎士様だね」
「何!?」
カレンは改良された徹甲砲撃右腕部その右前腕部のみを単独で有線射出され輻射波動砲弾によりミサイルを迎撃しバーシヴァルを狙う
「時間が無い。すぐに済ませる」
「紅月くんが復帰した。今の内に」
藤堂達も戦力を整え陽炎を相手に挑み、アキラの参入により形勢を五分に戻した。
アキラのKMF晋電の左肩にあるミサイルランチャーにより陽炎のヒートヘイズを撃破し更に残りの敵に接近し腰の横に装着してあるナイフのハンドル部分を取りそこから折りたためられた制動刀を出し敵の背後にまわりコックピットに向け直接突き刺した。
「あれは流崎アキラか。癪だがやはり陽炎には陽炎か」
「そうだね…それにしてもまだ総督を見つけてないのか?木下、突入班から連絡は?」
陽炎の戦い方を熟知しているアキラの戦いを見て彼の力を認めざる得ないと感じる千葉と木下からの連絡ない。朝比奈は木下の位置を確認しそこへと向かった。
頭部のターレットレンズを狙撃用に回しカノン砲で遠方のヒートヘイズを撃破していく。アキラは1機高速でこちらへ向かってくる敵に気づき標準を定める。そしてその機体は……
「ヘルハウンド………エリス」
カノン砲の迎撃をかわしこちらへ来るエリスにアキラは狙撃をやめエリスと距離をとる。
「アキラ……」
アキラはライフルを構える。
「来ると思った。カレンがいるからな」
「………お前もここにいると思った。俺たちの邪魔をするなら討たせてもらう」
「できると思うか。私はカレンを殺してお前から全てを奪う」
その瞬間、晋電からライフルが発射されエリスはヘルハウンドの左肩の盾で防ぐ。
「やらさせない……お前がそのつもりなら俺はお前を殺す」
エリスの表情がカレンへの嫉妬で歪み臨戦態勢をとる。
アキラは晋電の左肩にあるミサイルランチャーをパージさせ機体を軽くする。
2機は互いの銃撃を回避しながら高速で移動する。
アキラの晋電よりスピードに勝っていると思われたが晋電はヘルハウンドを追いライフルの銃撃でヘルハウンドに命中した。
盾で防いだがエリスは驚きを隠せなかった。
一方、ヘルハウンドのスピードに追いつこうとするアキラであったがスピードかかる重力により狙撃で思う様に定められず直撃できずにいた。
エリスは接近戦に移行しようと蛇腹剣を構えてアキラに接近する。アキラは制動刀を逆さに構えてエリスを迎え撃つ。
エリスは左腕のクローで晋電を捕らえようとするがアキラは距離をとりライフルを持っている右腕からスラッシュハーケンを射出した。
エリスはすぐに回避するが空を切ったハーケンは回避したヘルハウンドを追うように回って来た。
ハーケンの先端を見ると武器のクナイのように鋭利なものであった。
ヘルハウンドのバックパックに装備してある長距離砲がハーケンにより切断されてしまった。
「ただのハーケンじゃない!?」
ハーケンに気をとられているエリスにアキラはカノン砲を撃ってくる。
ハーケンを回避しながらそしてカノン砲に対しても回避行動をとるが全てを回避できず1発右脚がカノン砲を掠め体勢が崩れた。
エリスは反撃を試みようとライフルでアキラを狙い撃つがその時、カレンの紅蓮が両機の間に割り込み輻射波動で銃撃を防いだ。
「カレン!!」
「アキラ、間に合ったね!あのラウンズは倒した」
「さすが隊長だ。」
紅蓮はエナジーウイングを広げヘルハウンドに迎え撃つ構えをとる。
「紅蓮、カレンか……!」
カレンの出現にエリスは歯軋りをする。
「エリス………」
「カレン、2人で行くぞ」
「待ってアキラ!」
「っ!?」
紅蓮は晋電から離れていきヘルハウンドもその後を追った。
「カレン、やはり出たか」
「エリス、これが最後。お願いだから退いて!」
「何?」
「これ以上やるというなら私はあなたを倒さないといけない」
「望むところだ。お前を殺して私は…」
「違う!!そうじゃない……あなたは!!」
撃ってきたヘルハンドにカレンはエナジーウイングで防ぐ。
「……くそぅ!」
「カレン!!」
アキラはカレンの援護に向かおうとした時崩れていた瓦礫の山から巨大な物体が現れた。
「っ!?」
物体から赤い閃光がアキラを襲いかかりアキラは急ぎ回避する。
砂塵が晴れ物体の姿が露になりオレンジのカラーリングの物体を見てアキラはある機体を思い出す。
「ジークフリート!?」
細部に違いはあるがこの球体の形は間違いなくジークフリートであった。
以前のジークフリートには巨大なスラッシュハーケンがあったがこの機体には見られずよりボール状になっていた。
『その陽炎……流崎アキラだな』
「……その声、高山だな」
コックピットからアキラの晋電を見て高山は苦々しく見る。
「カレンを使って俺を殺そうとしたのはあんただな」
『あの女とお前の関係はシンジュクの件からわかっていた。だがやはり直接私がこの手で』
「もういい。あんたとはもううんざりだ。これで最後にしてもらう」
「何!?」
「…俺たちの邪魔をするな」
「貴様ぁぁぁぁ!!!」
ジークフリートは機体から主砲らしきものを出しアキラを狙う。赤い閃光がアキラを襲い近くにいた味方機が巻き込まれ撃破された。
「ハドロン砲か!!」
アキラは晋電のロケットエンジンを吹かせ動きで翻弄させようとする。神経電位接続システムで上下左右の確認が常人以上となった高山であるが晋電の予想以上のスピードにハドロン砲の狙いが定められずにいた。
アキラは晋電には暁が頭部両側に装備してあるはずの内蔵型機銃を外し代わりにスモーク弾を撃てるようにしおりジークフリートに3発発射した。
アキラを見失った高山は辺りを探るがジークフリートが攻撃を受けコックピットが衝撃で揺れる。
アキラは制動刀をジークフリートに突き刺し密着した状態でいた。
このまま機体を墜落させようと更に制動刀を刺そうとした時ジークフリートの間接部が露になりジークフリートが変形を開始した。
アキラは機体から離れる。変形をしたジークフリートは機体が真っ二つに分離するが中から別の機体が現れた。
「っ!?」
割れた球体から現れたのは陽炎のヒートヘイズ。アキラはヒートヘイズに向け撃つが電磁ユニットをバリアにして防いだ。
別方向から大型のスラッシュハーケンが高山を狙いに跳んできて高山のジークフリートはまた球体となりハーケンを弾いた。
「そのジークフリート、高山昌克だな」
大破したジークフリートをサザーランドを用いて改良したサザーランド・ジークでジェレミアはアキラの横へ並び高山と対峙する。
「ジェレミアか。あの機体知ってるのか?」
「ナイトギガフォートレスとしての機能を残しつつKMFの部分を取り入れた機体。私と高山を乗せることを想定としてつくられている。神経電位接続が残っておりどの方位からの攻撃も読み取れる」
「奴を倒す方法は?」
「中のKMFに高山が乗っている」
「なら、機体を露出させた時が」
「バリアが働かない。流崎アキラ共に戦ってくれないか」
2機は二手に別れ高山を挟んだ。高山のジークフリートは回転しながらハドロン砲を撃ち2機を狙う。
ハドロン砲の弾幕を掻い潜りライフルを撃つがバリアで塞がれる。ジークフリートはアキラを追いそのまま機体をぶつける。
そのままアキラの晋電を政庁の壁へ押し付ける。
アキラの救援に向かおうとジェレミアが近づこうとするがハドロン砲がかすめ機体がバランスを崩し落下しいった。
「さぁ、死ね!死ね!死ね!!流崎!!!」
狂気の叫び声をあげ高山は機体を開きヒートヘイズが姿を現す。アキラは右腕のハーケンを射出するがヒートヘイズの頭上を掠める。
「悪あがきを」
ヒートヘイズの右腕が晋電の頭部を押さえる。
しかし、その時晋電がヒートヘイズの肩を掴んだ。
「んっ!?」
晋電の腕は肩を掴んだまま離さない。最後の足掻きかと思い空いた左腕に持っているライフルを晋電に向け止めを刺そうとした時背後に何か来るのに気づいた。
そう、アキラが放ったクナイ型のハーケンがこちらへ戻ってくるのだ。そしてジェレミアが乗るサザーランドがハーケンを使ってビルにぶら下っていた。
「彼が闇雲に投げたとでも?」
高山が撃ち落したサザーランド・ジークには既にサザーランドが分離しておりジェレミアが空を切ってビルへと刺さったアキラのハーケンを取って高山がいるコックピットに向け投げたのだ。
高山は急ぎヒートヘイズを守ろうと球体へ戻ろうとした時アキラが持っているライフルをヒートヘイズへと向けられる。
「ここからならバリアは張れないな!」
「ぬあぁ!!!」
挟み撃ちにされた格好となったヒートヘイズはライフルをアキラに向けるがアキラは引金を引きヒートヘイズの頭部を破壊し更に返ってくるハーケンがコックピットを貫通しヒートヘイズの動きが沈黙した。
高山のジークフリートの沈黙を見てハーケンを戻そうとアキラは背後にまわりハーケンのワイヤーを巻き引き抜かれた高山のジークフリートはゆっくりと地上へと落下するのを見て死亡したとアキラとジェレミアは思われたが突如、ジークフリートが動き出した。
「ああああああぁぁぁぁ!!!」
ライフルを片手に高山は神経電位接続の配線が背中に繋がれたまま潰されたコックピットから姿を現した。左肩から腕がなく鬼気迫る表情でアキラを睨みながらライフルを撃つ。
「殺してやる殺してやる殺してやる」
「………」
既にアキラの知っている高山の姿はどこにも見えない。
ジークフリートでアキラに近づこうとするが中破されたジークフリートにそのようなスピードは無くアキラは蹴りでジークフリートを地上へと落下させた。
落下したジークフリートを追いアキラはジークフリートの傍へと晋電を着地させた。
コックピットに銃弾が当たりよく見ると機体に挟まれた高山が自分に向けライフルを撃っているのである。
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!!!!」
下半身がジークフリートに潰され体が動かない状態にも関らず高山はアキラに対する殺意を剥き出しにしている。いや、それが彼の今生きている原動力とでも言うのか。
アキラはライフルの銃身装備してあるグレネードランチャーに弾を装填し高山に向け引金を引いた。
燃えさかるジークフリートを背にアキラの晋電は飛立つ。
「流崎アキラ……」
「ジェレミア、まだやれるか?」
「私のジークフリートはまだ健在だ。」
「……あとは任せる」
そう言うとアキラはカレンとエリスのいる戦場へと飛んで行った。
「っく、なんて機体だ。木下どこにいる?」
先程の高山のジークフリートの弾幕に巻き込まれた朝比奈であったが直撃をもらうことはなかった。引き続き木下に会おうと連絡を取るが彼からはうめき声がし何かあったのではないかと急ぎ木下の場所へと向かうと彼の暁は弾幕に巻き込まれ機体は破損しコックピットが剥き出しになりそこから血を流した木下が見える。
「木下っ!?」
「じっ……自分はもうだめです……」
「………」
「き………聞いてもらいたいことがあります……」
「っ??」
一方、カレンとエリスの戦闘は激しく繰り広げていた。
輻射波動砲弾を円盤状に収束させてヘルハウンドに投げるが回避され次に右前腕部を有線射出させ輻射波動砲弾を撃つがエリスは次々と回避し逆にカレンに近づこうとした。
右前腕部を有線射出させている間は無防備となってしまう。カレンはMVSへと改良され破壊力が大幅に上昇した呂号乙型特斬刀を構えるが蛇腹剣により払い落とされる。
蛇腹剣を収めた右腕が変形を開始し腕がハドロン砲のようになり紅蓮に向けられる。
「やばい!!」
右腕の主砲の蒼白い閃光が紅蓮を襲う。煤煙で前方が隠れエリスは手応えを感じたが直後左肩の盾が輻射波動砲弾の直撃をもらい破壊されてしまう。
「っ!?」
煤煙が晴れるとそこにはエナジーウイングで全身を覆い健在している紅蓮であったがエナジーウイングのエネルギー翼がいくつか機能停止していた。
「このエナジーウイングがなかったら………」
右前腕部を戻した紅蓮はヘルハウンドの追撃に備える。
「この紅蓮ならいけると思ったけど……」
まだ聖天八極式に自分が十分慣れてないのかそれとも彼女、エリスに対して自分が無意識に躊躇しているのか。
そうしている内にスザクのランスロットがカレンを挟み撃ちのように対峙する。
「スザク、あんたはいつも間が悪いときに……」
しかし、態勢を整えた。ゼロの蜃気楼がハドロンショットを2機に撃つ。
「カレン、咲世子からの連絡でナナリーを発見した。これで勝利条件は揃った。カレン、一気にスザクを撃て!」
「そうは言うけど……」
この2機を一緒に相手できるはずがなく、ゼロにスザクの相手はきつく、不利な事に変わりない。
その時、紅蓮とランスロットの間からカノン砲が飛び2機は距離をとる。
アキラの晋電は紅蓮の前に立つ。
「アキラ!!」
「この機体アキラ、君のか!?」
「スザク……」
アキラは機体を軽くしようとカノン砲をパージする。
「アキラ、スザクを撃てば邪魔ものはいなくなる」
「…………」
晋電の背部ロケットエンジンを急加速でランスロットと激突しそのまま上空へと連れて行った。
「アキラ!」
エリスがアキラの後を追おうとするがカレンの紅蓮が立ち塞がる。
「カレン!!」
「アキラのところへは行かせない!」
一方、藤堂達はシュナイゼルの部隊と交戦中であったが突如、朝比奈からの連絡が入ってきた。
「藤堂さん。木下副隊長の証言データを送ります」
「何だ、こんな時に」
「聞いてもらえればわかります。やはりゼロは信用できません」
「どういう事だ?」
「虐殺です。女子供も含めて全員殺すようゼロが指示をしたと」
「っ!?」
「僕はこれから流崎を捕縛します。奴も虐殺に加担しています。それどころか味方を殺したのです。奴はやっぱり陽炎なんです!」
「っ!? 待て朝比奈!」
朝比奈からの通信が切れこれ以上の追求ができず藤堂は止むを得ず目の前の敵に集中するのであった。
アキラから押し出されたスザクは晋電を蹴って距離をとる
「アキラさがってくれ。今、僕は重戦術級の弾頭を搭載している」
「なら、尚更お前をここで叩く」
「っく、アキラ、君は!!」
アキラは晋電のブースターを作動させ猛スピードでランスロットの横を通り過ぎる。
「はやいっ!?」
スザクは直ぐに後を追いアキラは追ってくるランスロットを見て更にスピードを上げる。
ランスロットはついて行こうとするが
「フロートユニットじゃない………けど」
晋電に追いつくどころか逆に離されていく。
この様子をモニターから見ていたロイド、セシルも晋電のスピードに驚愕していた。
「あの陽炎のKMF……今、ランスロットは……」
「最大加速で敵機を追ってます」
「フロートユニットじゃなく時代遅れのロケットエンジン。あのラクシャータがつくったとは思えないけど……現時点でスピードに関してはKMFではトップクラス……」
「しかし、この加速以上のスピードですとあの機体に乗っているパイロットは……」
2人の言うとおり今の晋電のスピードでアキラには予測以上のGがアキラを襲い操縦レバーを握っているのがやっとの状態でいた。
ディスプレイからはこれ以上の加速は危険だとアラームが鳴り出しアキラは後ろのランスロットを確認しこのスピードのまま方向転換を行った。
「っ!!」
ランスロットはヴァリスで撃とうとするが晋電はスピードを落とさぬままこちらへと帰ってくる。
「間に合わない!!」
両機はそのまま激突しその衝撃がスザクを襲った。更に晋電は制動刀でランスロットの胸部へ突き刺した。
「しまった!?」
僅かであるが激突の衝撃で数秒間気絶していたスザクは我に返りヴァリス撃とうとするが晋電のグレネードにより破壊されてしまった。
晋電はランスロットの背後にまわりもう一つ用意してあった制動刀でスザクのいるコックピットを狙い投げる。それに気づいたスザクは上昇して回避したがエナジーフィラーの部分に刺さった。
「コアルミナス損傷!このままではランスロットは5分も持ちません!」
「逃げるんだ、枢木卿」
「今のランスロットじゃ……」
追い討ちをかけようとアキラは晋電の左腕にナックルガードを装着させると輻射波動を利用したシールド、輻射障壁をナックルに発生させ胸部に叩き込ませた。
普段なら回避できるのだが機動力が低下したランスロットは直撃を受けてしまった。
「マシンポテンシャルならこちらが……」
(いや、違う。性能の優越じゃない。アキラの動きに迷いが無い。他者を犠牲にしてでもやり遂げようとする覚悟が……僕はっ!)
ランスロットのコックピットの両側にあるMVSを奪い止めを刺そうとするがランスロットの腕が晋電の腕を押さえ両機は取っ組み合う形となった。
「よし…いいぞアキラ。お前はそのままスザクを止めていればいい。あとは俺が」
少し離れたところで様子を伺っていたゼロは拡散構造相転移砲の準備をはじめる。
ゼロ、ルルーシュはアキラを巻き込んでスザクを葬り去ろうと考えていた。
「アキラ、シャーリーへの罪を償ってもらうぞ」
「スザク撃ってよ!フレイヤなら!!」
スザクの様子を見てニーニャが絶叫するようにスザクを煽る。
「ダメだ。これはあくまで脅し。使ってしまったら」
晋電の腕を押さえるが出力の落ちたランスロットでは力が弱まりMVSがこちらへ迫ってくる。
「撃ってスザク!!」
(でも、それだけは…、例えここで死ぬとしても…………。そうだ、これが償いなんだ。受け入れるしかない、ここで。俺は…)
まるであきらめるかのようにランスロットの力が緩む。
「死ねスザク、アキラ」
MVSの刃が迫る時スザクの突如動きが変わった。以前ゼロにかけられたギアスがここで発動されたのだ。
スザクは前蹴りでアキラと離れた。追撃しようとアキラはMVSを振り下ろすが左腕の
ブレイズルミナスを発動させ防ぐが出力が低下しているため爆発を起こし左腕を損傷してしまうが構うことなく右腕と腰部のスラッシュハーケンを出した。
爆発で隙ができたアキラはランスロットのハーケンに対応できず持っていたライフルを払い落とされ右脚を損傷し更に回し蹴りをくらいビルに激突しそのまま地上へと落下した。
「っく。運がいい奴」
撃ち損ねてしまったルルーシュであるがランスロットがあるものを撃つ準備をはじめるのを目撃する。
地上へと落下したアキラはランスロットがどこにいるか見てアキラは再び浮上しようとするが体に違和感を感じ咳き込んだ。
口をおさえた手を見ると血がこびりついていた。晋電のスピードに自分の体がついていけていなかったのである。
「………っく」
それでも晋電を動かそうとするが背部のロケットエンジンから黒煙が発生し出力が低下し飛行できなくなった。それ以外の機関も故障が発生した。
そんなアキラのもとに1機の暁が近づいてきた。
「流崎アキラ……」
「朝比奈か」
「お前を拘束する!」
突然の通告にアキラは怪訝な表情をする
「お前、何言ってる……」
「木下が死んだよ……あいつが最後に残したものがある。お前、ゼロの極秘作戦に参加していただろ」
「…………」
「木下から作戦で何が起こったか聞いた。作戦は名ばかりで女、子供を無差別に虐殺していたと」
「…………」
「その沈黙は認めたと見ていいんだな」
「その話はあとにしろ。今は戦いに集中…」
暁の廻転刃刀が突き出される。
「お前が味方を殺したのを目撃していたと木下が言っていた!やっぱりお前は陽炎だな。もうお前を野放しにはできない」
「………」
「………」
「…………邪魔をするな」
晋電の左腕にナックルガードが装着される。
「抵抗するなら力づくでもっ!!」
2機が戦闘に勃発しようとした時上空から眩い光が発せられ2機の動きが止まる。
「っ!?」
「何だっ!?」
スザクは腰に装備していたフレイヤを装填している専用のランチャーを取り出し引き金を引きフレイヤを撃ちだされた。
ブリタニア軍が撤退していくのを見てゼロはスザクの行ったことが事実だと感じた。
「まさか、あれがスザクの言っていた?……はっ、ナナリー!!!」
エリスと戦闘中のカレンもフレイヤの発射を見てただ事ではないと感じすぐに撤退しようとするが尚も戦闘をやめないエリスの蛇腹剣が紅蓮を襲う。
「っく、エリス!」
背部にあるミサイルを発射させエリスは蛇腹剣で打ち落とし爆煙が発生視界が悪くなった隙にカレンは右前腕部を有線射出させ破壊されているヘルハウンドの左肩に取り付いた。
「しまったっ!?」
有線が巻かれ紅蓮に取り付かれたエリスは輻射波動をやられると思われたがカレンはヘルハウンドを抱きかかえて戦線から脱しようとした。
「っ!? どういうことだ!! 離せっ!!」
カレンはアキラと連絡をとろうとするが
「アキラ、応答してアキラ!! こちらカレン、斑鳩、アキラは今どこに?」
『流崎アキラは現在、朝比奈さんと共に……政庁の付近に』
「そんなっ!? アキラ!!!」
カレンは戻ろうとするがその直後フレイヤが大きな爆発音と共に目を覆うような光を発し紅蓮はヘルハウンドと共にフレイヤの衝撃で飛ばされてしまった。
陽炎のチバ基地にいた井ノ本からもフレイヤの爆発が確認された。
「たった今エリア11にてフレイヤの使用が確認されました。おそらく敵味方含めてかなりの犠牲が我ら陽炎の部隊からも連絡が途絶えおそらく……」
「エリスの消息は?」
「不明です」
「シャルルは神根島から動いていないか………」
(遂に始めるのだなシャルル、新しい世界を開くつもりだろうが……)
「艦の準備をしろ。場所は……神根島だ」
政庁の周辺がフレイヤによって消滅し巨大なクレーターが発生し先程まで戦闘が行われたとは思えないくらい辺りが静寂に包まれていた。
蜃気楼の中でルルーシュは項垂れていた。
「ロロ」
『兄さん……』
「ナナリーと話をさせてくれないか?」
『………』
「咲世子に繋がらなくってさ。ナナリーの声が聞きたいだけなんだよ」
『……兄さん、間に合わなかったんだ。ナナリーはあの光の中に……死んだんだよ』
「違うっ!!!捜すんだ!!!!」
一方、カレンもフレイヤに巻き込まれずに済んだが
「アキラ……アキラっ!! 応答してアキラ!!!」
横で倒れていたヘルハウンドは起ち上がりエリスはこの事態の状況に戸惑いを浮かべていた。
「これは一体……カレン?」
紅蓮は空からアキラを探そうと上空へと飛行する。
「そんな、アキラ…………っは!?」
シュナイゼルの艦では事態の把握で皆が動いているがシュナイゼルだけは冷静に振舞っていた。
「殿下、敵だけではなく我々のほうもかなりの損害が……」
「カノン、生存している者達がいればすぐに確認を」
「すぐに発見次第回収に……」
「カノン、僕が言ってるのは味方のほうじゃないよ」
「はっ……? まさか……流崎アキラは爆心地の中にいるのを確認されました。そしてご覧の通りです。奴が生存しているとは……」
ロロはふと爆心地の少し外れのところに目をやるとある光景に戦慄する。
『にっ兄さん……』
「ナナリーかっ!!」
ルルーシュはナナリーが見つかったのかと一瞬、歓喜の顔を浮かべたが
『兄さん……』
ロロから送られた座標を確認しその地点を見るがそれはルルーシュの期待を裏切るもので歓喜から絶望へと表情が一変した。
フレイヤを撃ったスザクも自分が引き起こした事態にただ呆然としている。
「これは……僕がやった……」
クレーターの上空を飛ぶランスロットであるがあるものを発見し驚愕する。
「そっ……そんなっ!?」
そこには1人歩くアキラの姿であった。
「アキラっ!!!」
アキラの姿を見てカレンは直ぐにアキラのもとへと向かう。
「うそ……フレイヤに巻き込まれて生きてるなんて………」
フレイヤの被害を見て罪悪感にとらわれていたニーナはアキラが健在の姿を見て驚愕した。
「まさか、ほとんど無傷で生存……これが……殿下?」
カノンはシュナイゼルがいた席を見るがそこには彼の姿はいなかった。
シュナイゼルはアキラの姿を見てデッキから出て私室へと途中、口を押さえ必死に感情を押し殺そうとしている。
「……ふっふふ…………ふっふふふふ。流崎アキラ、素晴らしい。まさに奇跡だ。僕は今奇跡を目撃した」
「アキラ……」
カレンに保護されるアキラをスザクはただ見ているだけであった。
「そうだ……僕はアキラ殺されそうになってそれで………。じゃあ僕がフレイヤを撃つきっかけをつくったのはアキラ……!?」
「………ダメだ……みんな死んでしまう。異能生存体に…アキラにっ!!」
「何故…………お前が!!!アキラァァァーー!!!!」
ルルーシュは憎しみで歪んだ表情で絶叫した。
晋電のナックルガードはレイズナーのナックル・ショットをモチーフにしました。
高山のジークフリートは某四天王の内1機をモチーフにしましたw
それとカレンとルキアーノの戦闘は尺の関係で省略させてもらいました。
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第34話
「流崎の傍に朝比奈がいた。なのに……あの男だけが」
アキラの姿を見て千葉は戸惑いを隠せずにいた。
「千葉無事か?」
「藤堂さん!流崎が生きていたとすれば朝比奈も…」
「千葉、味方が総崩れだ。後退して立て直すんだ」
「しっしかし!まだ……」
「千葉!今は味方を立て直すのが先決だ………」
「……藤堂。私だ」
「ゼロか! ここは一旦……」
「全軍トウキョウ租界に降下しろ。ナナリーを探すんだ」
この状況で何を言っているんだと藤堂は耳を疑った。
「な、待て!他にも多くの犠牲が出て総崩れだ。今は…」
「知ったことか、そんなもの!! アキラが生きていた。ならナナリーが生きているはずだ!!」
「っ!!」
「ナナリーを探せ。最優先だ。全軍でナナリーを探し出すんだっ!!」
「アキラ………」
カレンもゼロからの指示に戸惑い紅蓮の腕に乗っているアキラを見る。
この混乱した戦場に長居すべきではない。一度撤退したほうがいいのではと思うがアキラと視線を合わせるとアキラは頭を横に振るう。
アキラも自分と同じ考えだとわかり……
「ルルーシュ……ごめん」
飛び立とうとする紅蓮の横にいるヘルハウンドが立ち上がる。
「何故だカレン……何故私を……」
「……助けたいと思ったからよ」
「私はPSだ!!敵に情けをかけられるなど……私にとって屈辱だっ!!」
「そう………でも助かったんだから命、大切にしなよ。そこにPSだろうが関係ない」
飛び立つ紅蓮と共に離れるアキラをエリスは苦々しく見つめ
「あああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
殺したいはずのカレンに助けられエリスは屈辱を感じ、己の情けなさに絶叫した。
そんなエリスのもとに数機のKMFと小型機1機が現れ小型機からバーネット兄妹が降りてきた。
「よかった無事なのねエリス。さぁ帰りましょう」
-エリア15-
各基地の襲撃を行い移動中だったアレクセイ達にもエリア11での近況が耳に入った。
「一時停戦!?どういう事だ星刻?」
『こちらでも今確認中だ。どうやらトウキョウで何か起こったらしい』
「トウキョウ?」
言われてみれば敵の追撃が緩まっているようにもアレクセイ達も感じていた。
『何かわかればすぐに報告する。それまでは無理しないでくれ』
「何があったんだアキラ……」
そして、斑鳩のブリッジでは会談を申し込んできたシュナイゼルに対する対応をゼロ、扇がいない中藤堂達が協議していた。そして斑鳩から逃亡を図ろうとしたコーネリアも同席し会談は始った。
「ゼロとは先日の勝負がついていませんでしたからね」
「ゼロは参りません。お話の内容を確認した上で」
「でしょうね。出てこられるはずがない。彼は人に相談するタイプではありません。一人で抱え込み、人を遠ざけるはず」
まるでゼロの事を理解しているかのようなシュナイゼルの言葉にどういうことかと顔をそれぞれ見合わせる。
「ゼロのこと、よく知っておられるような口振りですね」
「ゼロは私やこのコーネリアの弟です」
「なんだと!?」
「神聖ブリタニア帝国、元第11皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。私が最も愛し、恐れた男です」
斑鳩へと帰還しすぐに治療をうけるよう促すカレンであったが当のアキラは心配するなと返すが今現在アキラを無理矢理医務室へと連れて行ったのだ。
「少しの打撲と出血であとは大きい怪我はない。少し安静にすれば問題ない」
軍医はアキラの治療を終え部屋を後にしカレンは一息吐いた。
「でもホントよかった。」
「………」
フレイヤ爆発の直前アキラはあれがスザクの言っていた兵器の事かと察し戦線から離脱しようとした。
「待てっ!!」
朝比奈はアキラを捕らえようと追跡する。
スラッシュハーケンで晋電の左腕を損傷させ動きを止める。
「っく」
アキラはダメもとでロケットエンジンに火を入れる飛び立つが故障したエンジンでは思うように飛べず更に暁のハンドガンを被弾し晋電のバランスが崩れエンジンが暴走した状態で落下しそして………
結果として偶然、あのフレイヤの射程範囲から外れたアキラが助かり朝比奈は命を落とした。
「………運が良かっただけだ」
それを聞きアキラの服の片付けをしていたカレンの手が止まった。
-異能生存体は自身の生存の為に周りの環境を変える-
以前会った井ノ本の言葉を思い出すがカレンは頭を横に振るう。
「アキラ、シャーリーの事だけど…」
「あいつは今、ここにはいない。坂口の輸送船で脱出した。とっつあんのところなら安心だ」
「そう、よかった……アキラ、あなたに謝りたいことが……」
「………カレン」
互いに真剣な眼差しで視線を合わせる。
「カレン、俺は戦いでしか生きられない。過去を否定しない。………それでもお前の……」
「アキラ、みなまで言わないで」
カレンはアキラの手を強く握る。
「陽炎のことごめんなさい。私は陽炎の本当の姿を知ってあなたのこと怖くなった。それは本音よ。……でもあれがあなたの全てだとは思えない!
学園でのあなた、今ここにいる流崎アキラ、それもあなたの本当の姿だと思う。過去を否定しない。それを受け入れて前を進むならアキラ、私はあなたの支えになる」
カレンの微笑みにアキラは彼女を優しく抱き寄せた。抱く力が強くなっていくがカレンは苦痛に感じることなくむしろそれに応えるように受け入れる。
「………お前だけだな。弱いところ見せても構わないと感じる」
「っふふ、いいよ。」
「失望したか?」
「まさか、弱いとこ1つや2つあるよ」
「………そうか」
暖かなカレンの身体に安らぎを感じこのまま時が過ぎるのを忘れさせるくらいでその身体を押倒したい衝動に駆られたがそんなことをしてカレンを傷つけたくはない。
その感情を押し殺した。……カレンだけに芽生えるおかしな感情。
「アキラ?」
アキラに様子にカレンは体を離す。
「いや……なんでもない」
その時カレンの携帯が鳴った。
「はい……ゼロ!!………わかりましたすぐに。アキラごめんなさい。ゼロからの呼び出しで」
「こっちは心配するな。少し休む」
「用が済んだら戻るから」
カレンが退室しベッドに横になったアキラであったが外が騒がしく聞こえ何かあったのではないかと感じた。
体を起こし外の様子を伺おうとした時ドアを横切った団員達の話し声が聞こえてきた。
「おい、ブリタニアが会談の申し込みに?」
「それも第2皇子のシュナイゼルが外交特使で直接来たらしいぜ」
団員達の話を聞いたアキラはドアを閉じた。
休戦の申し込み?だとしても何故シュナイゼルが?ゼロが何かしたのかとアキラは連絡をとりたかったが病室の電話ではゼロの私室に繋がらずアキラはゼロに直接会おうと病室から出た。
「ゼロが…ブリタニアの皇子…!?」
シュナイゼルの放った一言によって混乱している黒の騎士団。シュナイゼルはギアスの存在を黒の騎士団に公表した。
未だ信じられない面々だったがヴィレッタを伴って現れた扇も彼女から伝えられた真実を皆に伝えた。
「彼が言った通り、ゼロの正体はブリタニアの元皇子ルルーシュ。ギアスという力で人を操るペテン師だ!!」
「こちらがギアスをかけられた疑いのある、事件・人物です」
カノンはギアスに関係する人物の写真を見せ更にゼロとスザクが密談した時に録音したテープを皆に聞かせた。
「私とて、彼のギアスに操られていないという保証はない。そう考えると、とても恐ろしい。更に私達は事前にフレイヤ弾頭のことをゼロには通告しました。しかし、彼はそれを無視しました」
「俺は彼を信じたかった。信じていたかった。でも、俺達は彼にとってただの……」
「駒だって言うのか?……ちくしょーっ!ゼロのやろー!!」
憤りを隠せない黒の騎士団にシュナイゼルはほくそ笑む。
「しかし、今回のトウキョウでの惨事を引き起こしたのはもう1人いるのです」
「もう1人?」
これには扇も頭を傾げる。もう1人ギアスを使う者がいるのかと
「そう……流崎アキラ」
「流崎っ!?」
「なっ何だ?アキラもギアスを使えるって言うのかよ?」
意外な人物の名に一同驚く中、玉城が口を開いた。
「いいえ、彼はギアスは使えません。しかし、ギアスに匹敵する能力をお持ちです」
「ギアスよりも………?」
「そう…彼については井ノ本寛司卿、彼が一番流崎アキラを調べていた」
「井ノ本が……」
藤堂はかつて日本開放戦線時代、陽炎にて変な噂を聞いた事がある。
「そう彼は流崎アキラをこう呼んだ。異能生存体と…」
「異能……生存体……?」
「まさか………!」
「藤堂さん?」
様子の違う藤堂に千葉は心当たりがあるように見えた。
「以前、聞いた事がある。井ノ本はある人間を探していると……不死の人間を」
「そう、生命体には他に比べ群を抜いて生存率の高い固体が存在する。この説を基づいて彼は流崎アキラを異能生存体と呼んでいる」
「要するに不死身ってことかバカか!あいつがそんなわけあるよ!」
ギアス同様とても信じられないように玉城は鼻で笑うが扇は顔が真っ青になる。
「いやあいつは何度も死にかけていた!太平洋の戦いでは奴は一度死んで生き返った。医者の話だとケガの経過を見ても奴の回復力は常人の倍以上だと…!」
カノンはある資料を黒の騎士団に渡した。
「これは彼が皆さんと合流する前サドナ王国、現エリア15で我々と戦闘を行った時のデータです」
黒の騎士団の面々は目を通すがどれも突発とした内容には見えないが
「ご存知だと思われますがパーフェクトソルジャーのエリス、彼はエリスとエリア15にて闘い生き延びた。それどころか生身でエリア15の吹雪の中を歩き生存できた」
サドナ王国は寒冷地で有名な地域、そんな場所を十分な装備も無く歩くなど無謀
「だがこれを見るとその後彼は偶然通りかかった民間人に保護されて助かったと書いてある。偶然、運よく助かっただけじゃないのか!?」
扇もこれ見るだけではアキラが異能生存体だとは思えない。だがシュナイゼルは微笑みを浮かべる。
「そう……運がよかった、偶然が起こった。そうそれが異能生存体なのです」
シュナイゼルの言ってる意味が分からず黒の騎士団の面々は困惑の色を浮かべる。
「流崎アキラは今までの戦いで幾度も生還してきた。それが偶然に起こった現象ではないとすれば……?」
「……何が言いたい?」
藤堂はシュナイゼルの言葉の意味にある答えが頭に浮かんできた。
「井ノ本卿によると異能生存体はどんな奇跡でも引き起こすことができる。自身の生死に関わると周囲の環境を変え生存を果す。故に異能だと………。そう、彼は自身の生存のために……」
「何をデタラメを!!仮に奴が不死身だとしても生きるために自分の都合のいいように事がが運べるはずがない!!」
千葉はテーブルを叩き怒りを露にする。シュナイゼルの話がギアスのように突発過ぎるように見えたのである。
「……では先のトウキョウでの戦い、我々そして黒の騎士団のほうで大勢の犠牲を出しました。なのに彼が生存しているのは何故?調べたところ彼は爆心地から近い場所にいたとか」
「それは……」
千葉の言葉が詰まってしまう。ならアキラの傍にいた朝比奈は何故?未だに見つかったとの連絡はない。
「私は思うのです。1年前シンジュクゲットーで起こった事件。彼は軍と治安警察の包囲網を掻い潜り生還しました。しかし、結果ゲットーは壊滅、治安警察も再編成を余儀なくされるほどの被害を被りました。これは指揮権を持っていた高山昌克が地下を壊滅させる程の爆破作戦により被害が大きいとされますが高山をそうまでさせた原因はなんだったのか?」
黒の騎士団の面々の表情が段々と恐怖で硬直していく。
「先のトウキョウ戦、枢木卿が重戦術級の弾頭フレイヤを撃つきっかけをつくったのは誰か。フレイヤを撃たなければならないところまで追い詰めたのは誰か」
「それでは朝比奈は流崎が助かるために死んだというのか…!?」
「じゃあ……異能生存体がいればそれに巻き込まれて……」
アキラの戦いで起こった現象は全て異能生存体のアキラによって起こされたものなのか。藤堂、扇は恐怖で顔が引き攣る。
「アキラが助かるかわりに俺たちが死ぬってことかっ!?」
恐怖に慄く黒の騎士団にシュナイゼルは口を開く。
「みなさん。私の弟ゼロ、そして流崎アキラを引き渡していただけますね?」
アキラがゼロのところへ行く途中、ロロと遭遇した。彼の様子を見ると目が虚ろで体がふらついていた。
「流崎アキラ……」
アキラの顔を見てロロは乾いた笑い声をだす。
「今、兄さんのところに行っても無駄だよ。お前なら尚更だ。ふっふふ……兄さん、僕の顔見たくないんだってさ………」
ロロはそう言うがカレンはゼロからの呼び出しで出て行った。どうやら入れ違いになったように見える。
「…………咲世子はどうした?」
「さぁ……ナナリーを見つけたって行ってたからたぶん一緒に死んだんじゃないかな」
「シュナイゼルとの会談はゼロの指示で応じたのか?」
「会談?何の事?言っただろ、兄さんはそれどころじゃないんだ」
「……」
それでもルルーシュに会おうと先へと進もうとした時複数の足音がし振り返るとライフルを構えた3人の団員たちがいた。
「流崎アキラ、扇副指令の命令でお前を拘束する。ロロ、お前もだ」
「……っ!?」
「えっ!?」
突然の事で2人は困惑した表情をする。
「武器を捨てろ」
「……ロロ、殺すな。ライフルだけでいい」
アキラの言葉の意味を察しロロはギアスを発動させ止っている間3人からライフルを奪った。
「なっ!?」
3人は手元にあったはずのライフルがなくなり戸惑っている隙にアキラは1人をショットガンで撲り、もう1人を壁へと打ちつけ最後の1人の腕をとり組み伏せた。
「詳しく説明してもらおうか」
「お、扇副指令はゼロとお前をブリタニアに引き渡すと!」
「何故だ!?」
「ゼッゼロはブリタニアの皇子で今までずっと俺たちを騙してきたとお前はシュナイゼルからの要望だと」
「にっ兄さん!?」
相手を気絶させアキラはライフルを手にする。
「急げ!!ルルーシュはこのままだと…っ!?」
近くにいたロロの姿がない。おそらくギアスで先回りしたのだろうか。アキラも急ぎゼロの私室へと走った。
「兄さんっ!!」
ギアスを使い急ぎ私室へと入っていったロロであったがそこにいたのは急に現れたロロに怯えるC.C.だけであった。
「そんな…兄さんはどこに?………っぐ!?」
ロロは胸の痛みで膝をついた。ドアが開きルルーシュかと顔を上げるがそこにいたのはアキラであった。
「遅かったか。おいルルーシュはどこに行った?」
「ごっご主人様なら女の人と一緒にえ……っと、かくのうこ?ですか?2人で」
「カレン!?っく、急ぐぞ!」
だがしかし未だにロロは胸を押さえ蹲っていた。
「どうした?」
「ふふっ、僕がV.V.から失敗作だって言われてた。どうしてかわかる?僕はギアスを発動している間心臓が止まっているんだ。はぁはぁ」
ゆっくりと壁に寄りながら立ち上がる。
「兄さんを助けにいく」
「お前を嫌いだと言っていた奴をか?」
「確かに僕は兄さんに使われていただけなのかもしれない。でも…それでも僕の意思で兄さんと一緒にいたんだ!誰かに言われたからじゃない」
重い足取りながら歩き出すロロ
「僕は兄さんを助けたい!だからこの命を兄さんのために!!」
足が躓き転倒しそうになるがアキラが支えて体を起こさせロロの手を自分の肩に回し歩き出す。
「どういうつもりだ!?」
「行くぞ。のんびりしている暇はない」
「……っふ、まさかお前にこんなことしてもらうなんて」
「俺が援護する。その間お前はルルーシュと一緒に斑鳩に出るんだ」
「お前は?」
「俺はやることがある。それに…カレンを1人にはできない」
「彼女のため?」
「………あぁそうだ」
「そうか…なら、そうさせてもらうよ」
格納庫へ向かう途中ゼロとカレンはエレベーターの中で2人だけとなっていた。
「カレン、よく無事でいてくれたな。救助が遅くなってすまなかった」
「……ルルーシュ、私ね、ナナリーと話したわ。私のこと助けてくれたの」
「………そうか」
いつもの口調でいるが仮面の下はどうなっているのか。戻ってみるとC.C.の様子が変わり、助けるはずだったナナリーが死に本当なら私室に閉じこもっていてもおかしくないはずだ。だが事態がそれを許してくれない。
カレンは少しでも気分が晴れる話題がないかと思案する。
「ルルーシュ、こんな時に言うのもなんだけど元気だして、いつまでもそんなんじゃシャーリーに会わせる顔にはなれないわ」
「シャーリー……、そうだな。生きていたら彼女なら今の俺を見たらどう言うかな?」
「えっ!?知らないの!シャーリーは生きてるよ!」
「何っ!?シャーリーはアキラに…」
「違う!!アキラは彼女を助けたの!!今、シャーリーは…」
その時、エレベーターが止まり格納庫へと着き話が途切れた。2人は少し歩くと…強い光が二人を照らした。
「観念しろ、ゼロ」
「よくも我々をペテンにかけてくれたな」
「君のギアスのことはわかっているんだ」
藤堂や扇、黒の騎士団達がライフルの銃口をゼロに構える。
「っ!?」
「何っ!?」
「伝説の英雄ゼロは志半ばにして戦死。しかし、その勇敢なる生き様は永遠に語り継がれることでしょう。本当ならあなたがブリタニアに勝利するところまで撮りたかったのですが、残念ながら番組は打ち切りです」
カメラを構えるディートハルト、そして扇達と一緒に並んでいるシュナイゼルを発見し事の顛末が大凡理解できた。
(シュナイゼル……!?そうか、これは貴方のチェックか。ならば万が一にも隙はないのでしょう)
「待って!一方的すぎるわ、こんなの!ゼロのお陰で私達ここまで来られたんじゃない。ゼロの言い分も」
「退くんだカレン、今まで死んでいった仲間はゼロや流崎のために死んだんだ!!」
「扇さん!?何を言って…」
突然アキラの名が出てカレンは戸惑う。
「アキラは異能生存体。自分が助かるために誰かを殺す死神なんだ!!ゼロと同じでここでブリタニアに引き渡す!!」
「異能生存体!?なんでみんながそれを……!?」
異能生存体、この中でそれを知っているの自分だけのはず。そう思ったのだがシュナイゼルを見て彼が皆にアキラの事を喋ったのだと確信した。
「彼も拘束されているはずだ。これ以上犠牲が出ることはない………」
「そんな……だっだめ!!アキラ逃げて!!」
すると突如ゼロと黒の騎士団との間から蜃気楼が割って入るように現れた。
「蜃気楼!?」
蜃気楼はハドロンショットで周りにいるサザーランドを撃破、扇達の周辺にも撃ち辺りを騒然とさせる。
更に格納庫におかれている暁KMFをハドロンショットで出撃不能にさせるとゼロとカレンを手の中に入れその場から離れていった。
「まっまずい!!皆ゼロを追うんだ!!」
周囲が火に包まれる中扇達は必死でゼロ達を追いかけようとする。
艦の壁を撃ち風穴を開けると蜃気楼は止まった。
「一体、誰が…?」
手の中でゼロは立ち上がると先にコックピットが開きそこにはアキラとロロが座っていた。
「アキラ!!」
「お前たち……ロロ!?どうしたんだ顔色が…お前まさか!?」
「時間がない。ルルーシュ、ロロと一緒に逃げろ」
「アキラ…もういいんだ。俺は…」
「こいつはお前を助けたいから無理をしている。その気持ちを汲んだ後勝手にしろ」
「アキラ……」
アキラはルルーシュを無理矢理蜃気楼に乗せると自分は降りていった。
「アキラ、あなたも逃げて!!皆あなたも狙ってる。だから!!」
「カレン、俺はここでやることがある。それまでは逃げない」
「でも…!!」
「この騒ぎを起こした張本人に用事がある」
アキラの強い瞳にカレンは引き下がる得なかった。彼は自分と敵対、支配しようとする者達から逃げずに戦う人だと。
「ルルーシュ、教えて。あなたにとって、私は何?」
「カレン……」
「答えて……」
「………君は扱いづらい駒だったよ。アキラと同じだ。俺の指示通りに動くと思えば突然動き出す。自分の意思を持って己のために戦う。」
「ルルーシュ……」
ルルーシュはゼロの仮面を捨て苦笑いを浮かべる。
「誰からの支配を拒み生きる。それでいい。カレン、君は生きるんだ」
複数の足音が聞こえロロはコックピットを閉じアキラとカレンを降ろすとギアスで消えていった。
「動くな!!」
扇達から銃を向けられアキラは手を上げる。
「戦闘可能な部隊は蜃気楼を破壊に出撃させるんだ」
「無理です!!先程の蜃気楼の攻撃でここにいるKMFは全部……」
「何っ!?」
「悪かったな藤堂、俺も無我夢中でな。まわりをよく見てなかった」
不適な笑みを浮かべアキラは扇の前に出る。
「流崎、君を拘束する」
扇達の後ろに控えて立っているヴィレッタに気づいた。
「なるほど、そういうことか……ボスを追放してまで連中とどんな商談をしたんだ?」
ニヤリと笑うアキラに扇は眉を八の字にする。
「連れて行け!!」
連れて行かれるアキラにカレンは駆け寄る。
「アキラ!!」
「心配するな」
「でも……」
連れて行かれるアキラの後姿をカレンはただ見つめる事しかできなかった。
一方、斑鳩から出たルルーシュとロロは黒の騎士団からの追撃部隊はないがブリタニアからの部隊が追撃に来ていた。
「もういいロロ、俺を置いてお前だけでも…!!」
ギアスを何度も発動させながら追撃部隊から離れる蜃気楼だが発動させる度にロロの顔色が悪くなっていった。
「こんな広範囲でギアスを…。ロロ、これ以上はお前の心臓が持たない」
それでもロロは聞かず発動し続けた。
「絶対守護領域の計算がこんなに大変だなんて。やっぱり凄いや、僕の兄さんは」
―――俺はやることがある。それにカレンを1人にはできない―――
「誰かのため…!!」
「やめ…」
「流崎アキラ!お前の気持ち少しわかったよ!!」
「…るんだ!!俺はお前を利用…」
「僕は嚮団の道具で兄さんに利用されていただけかもしれない。でもそれでも兄さんを助けたい!!」
「……していたんだ!!そんな俺を…」
視界がぼやけてくるがそれでもロロは止めない。
「誰からの支配を受けずに生きていく……僕もそんな風に生きてみたかった……アキラ」
「久しぶりだね、流崎アキラ。中華連邦以来だね」
捕らえられたアキラはシュナイゼルと対面を果たす。
「あんたがこの騒ぎを起こした奴か」
「例えゼロだったとしても僕の大事な弟、無事連れて帰りたかったけど無理なようだ」
「その大事な弟となんで俺が一緒なんだ?」
「ふっふふ、君は僕の個人的な要望だ」
「っ??」
「君の事はエリア15、いや君が黒の騎士団に入った時から見させてもらってるよ。君は大変興味深い」
「……どうやら、シュナイゼル皇子は男のケツを追いかける趣味がおありのようだな」
「あなたはっ!!」
アキラの皮肉にカノンが珍しく声を荒げるがシュナイゼルが制する。
「異能生存体。君も聞き覚えがあると思うが…」
その言葉でアキラに一瞬、緊張が走る。
「……あの男の口車に載せられたってところか」
「いや、違うね。彼は君を恐れているが僕は違う。僕は君を神として見ている」
「っ??」
「そして、その神を手に入れれば。不可能を可能にできる」
「……何を言いたい?」
「君に皇帝を殺してほしい」
追撃を逃れたルルーシュとロロであったがロロの体力が既に限界で今にも事切れそうであった。
「……ロロ、どうして俺を助けた?俺はお前を」
「兄さん…嘘だよね?僕を殺そうとしたなんて……僕が嫌い、なんて…」
ルルーシュは一瞬戸惑うが、ロロに優しく微笑む。
「そうか、すっかり見抜かれているんだな。さすがは俺の弟だ」
「そう、だよ…。僕は兄さんのことなら、何でもわかる……」
「ロロ……」
「兄さん……まだダメだ。まだ何も終わってない……」
「ロロ?」
「このまま終わるのはダメだ。抗うんだ、アキラのように……兄さんにはまだ抗う力がある」
「………」
――― 神根島 ―――
「まさか、ここのシステムを使うことになろうとはな。ラグナレクの接続。これで古い世界は破壊され、新しい世界が創造される」
石碑を前にいるシャルルから少し離れて井ノ本はその姿をじっと見ているのであった。
(ナナリー、ロロ、黒の騎士団。俺は全てを失った。これが残された結果。いや、報いか。でも、だからこそ……。ありがとう、ロロ。お前がつないだこの命、俺にはまだ成さねばならないことがあったんだよな。そう、俺には)
つくったロロの墓を後にしルルーシュは蜃気楼に乗り込む。
「我が父、シャルル・ジ・ブリタニアよ。俺の地獄への道行きにはお前も一緒に来てもらう!!」
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第35話
ではどうぞ。
―数十年前―
-皆、嘘をついている。この交渉も皆が本音を押し殺し上辺だけの話をしている。破竹の勢いブリタニアと極東の日本ではどこまでこの瀬戸際外交が続くのか。もう何年も不毛な政が行われている。日本を守るだと官僚や皇族だと述べるが本音は自身の保身しか考えていない。
この国を憂えている者がここにいるのだろうか……いや、私もその1人だろう-
会談に使われた施設のベランダにて井ノ本は澄んだ青い空をぼんやりと眺める。
「よき天気ですね」
そこにいたのは自分とそんな年齢が変わりない。彼は……
「シャルル・ジ・ブリタニア……」
ブリタニアの人間だとわかると井ノ本はその場から離れようとしたがシャルルは微笑む。
「少し、風に当たりたいと思い来ただけ。このような場所に政を持ち込むつもりはない」
「………貴殿は以前の交渉にも同席していたはず」
「そうでしたね……しかし、私は早く本国へ帰りたい…」
「っ??」
「実は今日、母の命日でして……」
この男は自分に対し何を話してるのか井ノ本は内心困惑していた。
「この交渉のように嘘に嘘が重なりどちらが真の家族が誰なのかわからなくなり母は巻き込まれ死んでしまい残されたのは兄1人……」
「…………」
「嘘がなくすべてが裏表のない世界……あると思いか?」
「…………?」
井ノ本は困惑をしていたがシャルルの話に惹きこまれていた自分がいた。
「なければつくればいい嘘のない世界を」
―神根島―
「陛下、トウキョウ租界のシュナイゼル殿下より通信が」
「任せると言ったはず、さてはシュナイゼル、気づきおったか
「それと陛下、シュナイゼル殿下は流崎アキラを確保したとの情報が」
それを聞きシャルルの表情が強張る。
「だが、もう遅い。戦争という名のゲームはお仕舞いよ。たとえ異端者であろうと止めることはできない」
まもなく長年の計画が実施され慌しく動く中井ノ本の側近が彼に耳打ちをする。
(シャルル………。サイコロを振るうのは神ではない……異端者だ)
ルルーシュはブリタニアの動向を確認していた。
(エリア11に来ていながらも皇帝はトウキョウ租界に現れなかった。つまり、アイツの目的は別にある。方角的には式根島。いや、神根島の遺跡か。なら俺の行くべき場所は…)
だがルルーシュの脳裏にカレンから伝えられたシャーリーが生きているとの情報が頭を過ったがルルーシュは苦笑いをする。
(例えシャーリーが生きてたとしてももう俺は会えない。いや生きていただけでも喜ぶべきだ)
―エリア15―
シュナイゼルが黒の騎士団と停戦条約を結んだとの情報はアレクセイ達にも知られ皆困惑の色を隠せずにいた。
今現在アレクセイ達は追撃の手を逃れアジトにて身を隠していた。
「星刻、ゼロが死んだのは本当なのか?」
『アレク、私は今からトウキョウの扇副指令と合流して事実を確認する。詳しいことはその後伝える。それとだが流崎アキラも死んだようだ』
「アキラがっ!?そんなバカな!?」
あのアキラが……。アレクはそれが信じられなかった。
『アレク、ゼロの件も含め何かおかしい。この条約にサドナ王国との停戦は含まれていない。慎重に動いてくれ。』
星刻との連絡を終えアレクセイは腕を組んで考え込む。その様子を傍で見ていたイゴールは声を荒げる。
「アキラが死んだなんて信じられねぇよ!!黒の騎士団は突然停戦する、一体どうなってるんだ??」
「………各地の仲間にブリタニアの各基地の動向を探らせよう。黒の騎士団もきな臭い。アキラは何かに巻き込まれたのかもしれない」
「内紛でも起こったのか?」
「……わからん」
――斑鳩――
捕らえられたアキラは斑鳩の独房にいた。あれから一旦黒の騎士団に身を預かれ翌日引き渡されることになった。
黙って佇んでいたが扉が開く音が聞こえ誰かが来たのかと硬いベッドから体を起こすと独房の前にカレンが立っていた。
「5分間だけだ」
カレンを連れてきた団員は出て行き2人だけとなった。
「アキラ!」
カレンは鉄格子越しから手をだしアキラの手を握る。
「アキラ、やっぱり逃げて。もうここには誰も味方はいない」
「………」
「C.C.がいなくなってしまったし……」
「あいつが?」
「えぇ、でもそれよりも今は外にいる団員を倒して直ぐに…」
だがアキラは視線を逸らし目を合わせようとしない。
「アキラ!!」
応じないアキラにカレンは声を荒げるが外には団員が控えているのに気づき口を押さえる。
「…………」
「このままあなたがブリタニアに引き渡されたらいいように利用されて殺される」
「…………俺を逃がせばお前が唯ではすまない」
「私のことは気にしないで」
「シュナイゼルは俺に皇帝の暗殺をしてくれっと言った。おそらく、井ノ本がいるとすればまたエリスと戦うはずだ」
「エリス…」
カレンの表情が暗くなる。
「アキラ、あなたは彼女が現れたら戦うつもりでしょ」
「………」
「できれば私はこの戦いを止めたい。私はあなたとエリスが戦うのは見たくない!」
「あいつが俺達の前に現れるなら遠慮する余裕はない。あいつがお前を殺そうとするなら俺はあいつを……」
「やめてっ!!そんなこと言わないで!!」
カレンはアキラの服を強く握る。
「アキラ、エリスを……彼女をちゃんと見てあげて!!」
「……カレン?」
「エリスはあなたのこと好きなのよ!」
「………!」
「彼女はあなたのことを好きになって苦しんでるの!エリスはそれを別の感情で歪んでしまってる」
「……エリスはお前を憎んで殺そうとしている」
「えぇ、そうよ。彼女は私を憎んでる!でもそれでもいい!エリスに教えたいの!!愛するってことは何かを!!」
「お前……」
自分のことよりもエリスを心配する。アキラはカレンの言葉に自分はエリスに対しどう応えればいいのか戸惑っていた。
「………俺はエリスよりお前のほうが大切だ」
「アキラ………」
「あの時ルルーシュと一緒に逃げたところで変わりない。このまま逃げるよりも俺は闘う」
「………」
「すまないカレン……これが俺のやり方だ」
アキラとエリス、互いに戦場でしか生きられない者同士。中途半端に終わらない。両者の内1人の命が散るまで戦うだろう。
似た者同士……だからこそ2人を守りたい。カレンは悲痛な思いでアキラを見つめるのであった。
―敢えて地獄へと進む俺を止めようとするカレン。再会を果たしたはずの俺達はすれ違うのであった―
―陽炎 ヨコハマ基地―
エリスとヘルハウンドを回収し急ピッチで修復を急ぐバーネット兄妹は帰還後井ノ本が突如失踪したと聞かされた。
「閣下のことだ。おそらくあの遺跡がある神根島だと思うけど…」
「兄さん、ヘルハウンドはあと数時間ぐらいかかるみたい」
「エリスの調整が終わった今あとは機体待ちか…」
傍で調整を終え眠っているエリスを見てドリーはつぶやく。
「ねぇ、兄さん。シュナイゼル殿下が黒の騎士団と停戦条約を結んだみたいだけど」
「あぁ、その事か。どうやらその話裏があって、黒の騎士団がゼロを売り渡したみたいだ」
「自分達のリーダーを?」
「あぁ、それとシュナイゼル殿下は流崎アキラの引渡しを奴らに要求したらしい」
その言葉を聞きエリス目を見開いた。
「あの男を?どうして?」
「さぁ、もしかしたら流崎の事で何か知ってそんな事を……ん?」
何か物音がすると振り返るとエリスが起き上がっていた。
「エリス何を!?」
「……出撃する」
「待て、ヘルハウンドはまだ戦える状態では…!」
次の瞬間、エリスはドリーの首を握り絞める。
「がっ……!? エ…リス……??」
壁へと叩きつけ絞める力を強める。
「兄さん!?エリス!!あなたは何をしてるのかわかってるの!!」
「ヘルハウンドを出せるようにしろ」
「なっ!?」
「早くしろ、ヘタな真似するとこの男を殺す」
翌日、アキラの引渡しが決まり独房から出たアキラは扇達と対面する。
「もう会うことはないだろうな」
「あぁ、もうこれ以上大事な仲間を失いたくはない」
扇のその言葉にアキラは鼻で笑う。
「仲間を守るために2人の仲間をスケープゴートにするか」
「その仲間を使い捨てたのはゼロのほうだ。彼は皆を騙していたんだ。ギアスなんて卑劣な力で」
「そうしないと勝てなかった。だから今の黒の騎士団がある」
「お前は肯定するつもりか!?」
「ギアスだろうが何だろうが勝てばいい。よく言うだろ勝てば正義負ければ悪。勝って不正義だろうと俺は構わない」
「人は、皆はゲームの駒じゃないんだ。生きているんだ」
「そうだな……お前の言うことは間違ってない。お前はゼロに勝って黒の騎士団を自分のものにしたんだ。」
そう言いながらもアキラの目に殺気が帯びており扇の額から一筋の汗が滴り落ちる。
「もういい。お前に言うことはない。異能生存体をこれ以上野放しにできない」
アキラの話をこれ以上聞きたくないと扇は視線を逸らしアキラは後ろに控えていたカレンと目が合いブリタニアの兵士に連れて行かれる。
視線の先には微笑みアキラを待ち構えるシュナイゼルがいる。
ヘルハウンドをとともに輸送機で基地から脱走したエリスはバーネット兄妹から聞き出した情報でアキラがシュナイゼルによって拘束されておりシャルルが神根島にいる。
エリスはシュナイゼルの動向を探りながら行動を開始しようとした。
(カレン、お前も必ずアキラの傍にいる。必ずお前を……!)
シュナイゼルのアヴァロンに乗り込んだアキラを待ち構えていたのはスザク、特派達であった。
「アキラ……殿下、流崎アキラはどのような目的で?昨日殿下が申した事と関係が?」
「そんなところかな。異能生存体であれば皇帝の暗殺は確実に実現できる」
「待ってください。自分に皇帝陛下暗殺をご命じ下さい!」
「変わったな……。少し前ならそんなこと言わなかったのだが」
「アキラ、今までの僕が甘かった。自分が大事にしていたのは理想や美学だったのではないかと。あぁその通りだ。人を殺めるというのが自分の業ならば認めよう。必要なものは結果だ」
「スザク君、きみは言ったねナイトオブワンになりたいと。流崎アキラ、彼がいればそれは確実になれる。僕はそう確信できるけど」
「………では」
「あぁ、私が皇帝になるよ。それなら問題はないだろう?」
一同がざわつく中1人冷静にアキラは受け止めていた。
「それで俺は何をすればいい?」
「君にはスザク君と共に神根島に行ってもらおう。皇帝はそこにいるはずだ。おそらく井ノ本寛司も一緒にだ」
「井ノ本……」
その時、カノンがシュナイゼルに耳打ちし何かを伝えるとシュナイゼルは微笑み、アキラのほうを見る。
「軍の脱走者が現れたみたいだ。陽炎の基地からパーフェクトソルジャーがKMFと輸送機を奪い脱走して現在消息不明のようだ」
「……っ!」
「出すつもりはなかったけど予定変更だね。君にKMFを用意しよう。来てくれ。」
シュナイゼル達を追いアキラはついて行く。
格納庫へ着くと先日のフレイヤにより半壊したKMFが転がっておりまともなKMFはないようにも見えるが隅にあるシーツに隠れたKMF1機あった。
シーツをおろしその姿を露にし全員が目を丸くした。
KMFのようなスマートな体型ではなくずんぐりとした姿で手足と大きく露にしているコックピット、そして禍々しいまでに漆黒のカラーリングがこの機体の不気味さを出していた。
「これ……KMFなの?ガニメデに見えなくないけど……」
特派のロイドも見たことのないKMFに好奇心より得体の知られないものに対する気味悪さを感じていた。
「うん……KMFかもしれないがそうじゃないかもしれない」
「……どういうことだ?」
「これは遺跡から発掘されたもの。要するにこれは遺物だ。」
「遺物!?これが!?」
スザクは信じられずにいるがシュナイゼルは更に続ける。
「このKMFは発掘された地質を調べると年代にすると約300年前だとされる。遺跡を調査した結果このKMFはレグジオネータと言われていたみたいだ」
「300年前!?そんな昔からKMF!?バカな!!」
「だがねスザク君、このKMFは動かせるんだよ」
「へぇ~、この遺物がねぇ~。どういった動力で?」
この機体は動くと聞きロイドは興味を示すが
「それがわからないだ」
「………はい?」
シュナイゼルの返答にロイドは呆気にとられる。
「エナジーフィラーで稼動する以外は何もわからない」
「そんなわけないでしょ。殿下、この機体のテストをしているでしょ?」
そう言うロイドにカノンはあるファイルを渡す。
「今までのレグジオネータのテストの詳細が記されている」
「模擬戦の事故によりテストパイロット2人死亡……!? それにより機体の解析できず…!?そんなっ」
このテストの結果にセシルは言葉を失う。アキラは黙ってレグジオネータをジッと見つめる。
「………俺は3人目のテストパイロットってところか」
「皇帝の傍にはナイトオブワン、ビスマルクがいる。彼が皇帝を守っているはず」
アキラはレグジオネータのコックピットを開き周りを見るがコックピットの内部は従来のKMFを大差はなかった。
「しばらくコイツをあたらせてもらう。コイツに武器は?」
「ここにあるもの好きなだけ使うといい、僕が許可をする。もっとも監視付だがね」
スザクはまた何かが起こるのではないかと恐怖した。
(エリスは必ずアキラを追い神根島へと来るはずだ。以前あそこで謎の現象に遭遇した。またあそこで何かが起こるのか?今、現在も異能生存体によって引き起こされた事だと言うのか!?)
輸送機を隠し軍、黒の騎士団の無線を傍受しながらエリスは近況を調べていた。
「皇帝陛下が神根島へ?シュナイゼル殿下も同じ場所へ……アキラは殿下と共にいる……」
エリスはすぐに発進しようと準備するがふと何故軍を抜けてまでこんなことをしているのか自分でも理解できずにいた。
アキラがいるからか……アキラの存在が私を乱す。だがそんな彼に自分が惹かれている。
軍を抜けた今、もう後戻りはできない。エリスはレバーを引き輸送機を発進させる。
神根島付近まで到着しアキラとスザクは小型機にて神根島へと上陸をしようとした。
その中で2人は無言のままでいた。トウキョウにて死闘を繰り広げていた相手が隣にいる。この奇妙な空間に操縦してあるスザクの傍には長身の剣、腕を組んで隣に座るアキラの腰のホルスターにはショットガンには弾が既に装填してある。
互いに何か不審な事を起こせば……この一触即発の中海岸へと小型機を着地させた後スザクが口を開く。
「アキラ、君は手を出すな。皇帝は僕が直接討つ」
「……出世のためか」
「何とでも言ってくれても構わない」
「……なに望もうがお前の自由だ。だから俺のほうも好き勝手やらせてもらう」
「その時は君を殺す。例え異能生存体であろうが」
「………お前もあの男の妄想に取り憑かれたか」
「妄想!?だが結果ナナリーは死んだ!!」
スザクは傍にあった剣を抜きアキラの首筋に刀身を突きつける。しかし、同時にアキラはスザクの胸元にショットガンを突きつける。
「俺のせいだと?」
「君が起こした現象に僕は抗うことができなかった……」
だがアキラは平然とした態度でショットガンを降ろし座席から立ち上がる。
「俺は生きる。そのために戦う………それだけだ。だから今ここにいる」
アキラは小型機から出るのを見て苦々しい表情をしてスザクは剣を鞘に収める。
シャルルと井ノ本は遺跡の前に並んで立っている。
「寛司よ……もうすぐ貴殿と会ってどれくらい経つか……」
「長いように感じるがついこの間のようにも思える」
「だがもうすぐ終わる。今日から始まる。新しい世界が…」
「………嘘のない、そして異端者のいない世界へと…。我々の計画のために大勢の人間を生贄のように捨ててきた。そしてお前はたった1人の兄を…」
「兄さんは私に嘘をついた。兄さんも彼らと同じだった」
「……そうだな」
その時背後から銃声が聞こえ振り返ると剣を構えたスザクと新たに弾を装填するアキラの2人が立っていた。
「枢木スザク、流崎アキラ……そうか、シュナイゼルの差し金か?」
「自分の意志です。陛下、自分を取り立てて頂いたことには感謝しています。しかし、貴方には2つの罪がある」
「ほう?」
「一つは王たる責務を放棄したこと。そして、もうひとつはギアスに手を染めたこと」
「それが罪だと?」
「ギアスは人の悪なるものを引き出します。そう、全てを知る貴方ならユフィのことだって救えたはず。なのに見捨てた」
「それがどうした?」
「なっ!?」
アキラは井ノ本に銃口を向ける。
「あんたがシャルルとつるんでるなら死んでもらう」
「やはり…お前とは最後までこうなる運命か……」
「スザクのようにグダグダ喋るつもりはない。2人共死んでもらう」
「できるか?」
茂みの中から2機のヒートヘイズが現れた。
「くっ! ルルーシュとナナリーの絶望も込めさせて頂きます。覚悟!!」
構えた剣を振り下ろしたがスザクの剣を受け止めたのは…
「!?ヴァルトシュタイン卿、どうしてここに?」
「ナイトオブワンかっ!?」
ナイトオブワン、ビスマルク・ヴァルトシュタインがスザクの剣を受け止め立ち塞がる。
「ギアスのことを知っているのは自分だけだと思っていたか?残念だったな。お前のような裏切り続けの男を誰が信じるというのか」
「ビスマルク、俗事は任せる」
シャルルと井ノ本は2人に背を向け立ち去ろうとする。
「っく、待て!!」
アキラとスザクが追おうとするがビスマルク、ヒートヘイズ2機が囲み、2人はジリジリと後退していく。
(いけない。僕にかかっている生きろというギアスがここは逃げろと叫んでいる。それほどまでに危険な相手か、ナイトオブワン)
「だが弱さは捨てた!!」
そしてアキラがビスマルクにショットガンを構える。
「そこをどけ」
「異能生存体…この世界を狂わす存在。私の手で!!」
だがその時爆発音がし3人の動きが止まった。見るとブリタニア同士のいざこざが発生しているようだ。
「何だ!?」
遠方から見える人影を見てアキラとスザクは気づいた。
「ルルーシュ!!」
やはり来たかとアキラは予想はしていたがスザクは……
(ルルーシュ、それは僕の十字架だ)
その時、流れ弾がアキラ達を巻き込みアキラは伏せて逃れたがスザクがいた場所が爆発で陥没していた。スザクの姿を探すが見当たらない。
敵KMFは自分を狙いシャルルの暗殺が容易ではなくなったと感じたアキラは小型艇へと戻るのであった。
「我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。マリアンヌ后妃が長子にして、帝国により捨てられし皇子」
自らのギアスで敵を同士討ちさせルルーシュはシャルルがいる遺跡へと向かっていく。
小型機へと戻ったアキラはレグジオネータを起動させる。アキラが今まで乗ったKMFとは違う不気味な音を鳴らせレグジオネータは立ち上がる。
両手にライフルと大型キャノンを手にしアキラはさっきいた遺跡の前までに移動を開始した。
シュナイゼルのアヴァロンが神根島まで来た時は既に戦闘が始まっていた。
「始まったか……さぁアキラ、君はこの戦局をどう転がすかな?」
斑鳩もそれに続きカレンは心配そうに神根島を見ていた。
「アキラ………」
「しかし、殿下も人が悪い」
「ん?どういうことかなカノン」
「あのKMFレグジオネータ。はじめから流崎アキラに渡すおつもりだったのでしょ?」
「ふっふふふ」
カノンは1冊のファイルを開く。
「殿下は井ノ本寛二が調査している遺跡がまだどこかにあるのではないかとEUや世界各地を調査しある遺跡から発掘されたのがあのKMF。それもブリタニア本国で。これをエリア11のことわざで確か…灯台下暗しっと言うのですか?」
「これは父皇帝陛下や井ノ本がまだ発見していない。僕が最初に見つけたものだ」
「そしてレグジオネータは異能生存体の手に…」
「レグジオネータ、あれは持ち主の場所へと帰ってきたといっても過言ではない。あれは…………王を殺す兵器。そう言われている」
混乱している神根島に1機のKMFが現れる。
アーニャのモルドレッドが単機で神根島へと侵入した。
「この混乱もしかしてルルーシュ?」
だが操縦しているアーニャの様子が違う。今は死んだはずのルルーシュの母マリアンヌが意識を支配していた。
(ルルーシュ……お前)
そして傍にはC.C.がいた。記憶を失くしたはずの彼女であったがマリアンヌと接触したことで記憶が戻ったのだった。
「今のうちにシャルルのところへ……ん?」
急ぎシャルルのもとへ向おうと味方同士の同士討ちが発生しておりそれに紛れて行こうとするが双方を次々と撃破していく1機の機体を発見する。
「あれは…?」
KMFとは似ても似つかないレグジオネータが地上にいるサザーランド、上空のブリタニア軍の新世代量産型KMFヴィンセント・ウォードを撃ち落としていく。
そしてその銃口はモルドレッドへと向けられた。
「全機、敵を遺跡に近づかせるな!例の現象で我々がどこかへ転移されてしまう!!」
自身の機体ギャラハットに乗り込みビスマルクは指揮をとるが上空からモルドレッドが姿を現したがその機体の状態は背後に黒煙を出し出力は衰えどうにかフロートシステムで浮いてるように見える。
「モルドレッド!?」
「ビスマルク!!陣を固めて遺跡を守るのだ!!」
普段の彼女と様子が違いビスマルクは怪訝に思った。
「何が起こった?」
近くにいた味方機が撃ち落され前方を見るとレグジオネータが姿を現しゆっくりとこちらへと近づいてくる。
爆炎を背に写るその得体の知らない不気味な姿に見えた………。
ここに来てベルゼルガ物語の主人公と死闘を繰り広げたレグジオネータをだしました。
このレグジオネータが同じ性能なのかどうか次回お楽しみに
それと皆さん扇のこと色々言ってますがまぁ自分の個人的意見ですが遅かれ早かれこういう展開になるだろうなっと思ってたので。実際見たときやっぱりなっと感じました。
では一言いうなら扇はタイミングが悪すぎるww それですねw
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第36話
C.C.の過去を少し変えてみました。ではどうぞ
「シャルル・ジ・ブリタニア。決着をつけるべきは神ではない。この俺だ!」
シャルルを追って遺跡の扉を開いたルルーシュはシャルルと対峙していた。
「どのようにして?銃でも剣でもギアスでも、わしを殺すことはできぬというのに」
「感謝する。貴様がこの場所に入ってくれたおかげで勝利の目算がたった」
すると大きな振動でこの空間が揺れた。
「ん?…………出口を封じた!?」
「そうだ。入口を爆破した。ギアスも貴様も俺と共にこの空間に閉じ込める。現実世界に干渉できなくなれば、貴様が何を企んでいようと意味を成さない。死んだも同然だ」
「ルルーシュ!!」
「貴様が作ったこのシステムが、今貴様自身を閉じ込める魂の牢獄となった。さぁ、俺と共に永遠の懺悔に苦しむがいい」
そして神根島ではビスマルク達がアキラの乗るレグジオネータと対峙していた。
モルドレッドに乗っていたC.C.はレグジオネータを見て青ざめる。
「あれはレグジオネータ!?」
「知ってるの?」
「異端者だ……アキラなのか!?」
「アキラ!?」
「あれは私達を抹殺するために異端者達が作り上げたKMF」
「あれがっ!?」
モルドレッドの4連ハドロン砲・シュタルクハドロンを回避しアキラはレグジオネータの機動力に驚きを隠せなかった。
「分かる、奴らの動きが…」
以前なら苦戦していたであろうラウンズのKMFであったがレグジオネータでは動きについて来れる。すると………
―メッセヨ―
「…っ!?」
何か自分に語りかえる声が聞こえアキラは周りを見るが誰もいない。
ただの空耳かとモルドレッドに照準を定めるが…
「 」
「ギアス!?あの機体にはC.C.がっ!?奴を殺せ!?」
また何者かの声が聞こえあの機体にはC.C.がおり彼女を殺せと語りかけてくる。
殺せ、殺せと自分の頭の中に何度も語りかけアキラは自然とその言葉に従いモルドレッドに向け引金を引くのであった。
「来る!!」
マリアンヌ(アーニャ)は銃撃を回避しながらシュタルクハドロンを放ちレグジオネータがいる地点は爆煙で見えなくなり撃破したと思われたが爆煙が晴れるとそこには無傷のレグジオネータが立っていた。
青白い色のブレイズルミナスらしきものが肩から展開されレグジオネータを守ったのだ。
「マリアンヌ、逃げろ!!奴には勝てない!!」
「C.C.!?」
4連ハドロン砲・シュタルクハドロンを展開させ反撃を試みようとシュタルクハドロンを撃とうとするが…
「っ?? 何、撃てない!?」
いつでも撃てるシュタルクハドロンのエネルギーが充填完了のはずがエネルギーの制御が利かずその直後エネルギーが暴発を起こしシュタルクハドロンが爆発を起こした。
「っ、どうして!?」
レグジオネータから離れようとするがモルドレッドのモニターからアラームの表示がされる。
「動かない!?」
マリアンヌはレバーを動かすがモルドレッドは動かず空中で棒立ちになってしまう。
レグジオネータは持っていた大型キャノンをモルドレッドに向け撃ちモルドレッドの右腕、左腕へと直撃し両腕の無くなったモルドレッドはそのまま地面へと叩きつけられた。
動かないモルドレッドに追い討ちをかけるようにゆっくりと近づくレグジオネータであったが背後に気配を感じ振り返るとビスマルク専用KMFギャラハッドが大剣を振り下ろそうとした。
寸前で回避するとレグジオネータがいた場所はギャラハッドの剣エクスカリバーによって大きく割れた。
「異端者!!陛下の邪魔を!!」
レグジオネータは右腕のライフルを撃つ。
「貴様は既に滅び去った遺物!永遠に眠れ!!」
銃弾をエスクカリバーで弾き距離を縮めようとする。レグジオネータのライフルの弾が切れライフルを投げ捨てると
「ヴァルトシュタイン卿!」
ビスマルクの配下の部隊が戻ってきて彼の援護にまわろうとしたがレグジオネータは部隊を見るとそこへ飛び込んできた。
慌てて応戦しようとするがレグジオネータは背後にまわり1機に狙いを定めコックピットに向け拳を作り叩きつけた。
パイロットが死にサザーランドが膝から崩れ落ちレグジオネータはライフルを奪い残りのKMFを全滅させた。
モルドレッドから脱出したC.C.とマリアンヌは遺跡へと歩みながら2人は倒れて気を失っているスザクを発見する。そしてレグジオネータの戦いを見ていた。
「ビスマルクが……」
「もう無理だ。奴は……死ぬ」
「さぁC.C.、行くわよ。シャルルが待ってるわ。」
「レグジオネータ……全て我々が回収したと思われたが…見落としがあったか!」
エクスカリバーで追い詰めるがまだレグジオネータを仕留めきれずにいた。
「黒の騎士団か…それともシュナイゼル殿下か…… 陛下はまだはじめられていない。ここで奴を止めなければ…………。陛下、マリアンヌ様、我が命を落としてでも!」
ビスマルクは左目を閉じているピアスを引きちぎり目を見開くと瞳からギアスの紋章が現れる。
「我がギアスで異端者を!!」
エクスカリバーを構えて接近するギャラハッドから避けようと動くが回避した地点にギャラハッドが先に動きエクスカリバーを振り下ろす。
避けきれずにレグジオネータは持っていたライフルが切断された。
―ギアスヲメッセヨ―
その言葉が何度も聞こえアキラは無意識に従いレグジオネータを操る。いや、操られていると言うべきか。
今目の前にいるKMFにいる人間はギアスを操る者、そして敵を殺せと。まるでレグジオネータが生き物のようにアキラに呼びかけアキラもそれに従う。
レグジオネータはギャラハッドの前にいながら突如動きを止め持っていたライフルを捨てそのまま棒立ちになった。
「っ!?」
無防備になったレグジオネータにビスマルクは困惑した。
「レグジオネータの動きが……!?」
ギアスで動きを探ろうとするがビスマルクは何も見えなかった。
「見えない。奴の動きが読み取れない!?これが異端者の力??」
何も見えない漆黒の光景がビスマルクに見えギャラハッドの動きを止める。
レグジオネータの動きを探ることができない以上不用意な動きができない。エクスカリバーを構えたままビスマルクはギャラハッドを空中に浮かせままレグジオネータと対峙するのであった。
そしてルルーシュとシャルルはラグナレクの接続という空間にてルルーシュは母マリアンヌの死の真相を問いただそうとするが
「おかしなものよ。人には真実を求めるか、ここまで嘘ばかりついてきたお前が」
「そうだな。俺はずっと嘘をついていた。名前や経歴だけじゃない。本心すら全て隠して。しかし、当たり前のことだろう?」
「違うな。未来永劫に渡って嘘が無駄だと悟った時、ペルソナはなくなる。理解さえし合えれば争いはなくなる」
「形而上学的な机上の空論だな」
「すぐ現実になる。それが我がラグナレクの接続。世界は欺瞞という仮面を脱ぎ捨て、真実をさらけ出す。そして異端者を滅ぼすことができる」
「異端者……アキラのことか。V.V.も言ってたがあいつの事を知っているのか?」
シャルルはふっふふと笑みを浮かべる。
「手元に置きにいながらも気づかないとは。貴様も奴に狂わさせた1人であろう者が」
「何っ?」
「異能生存体はどんな奇跡でも引き起こすことができる。自身の生死に関わると周囲の環境を変え生存を果す。故に異能だと寛二はそう述べた。」
「異能生存体……?それがギアス…いや、俺とどう関係が?」
「それは私も教えてあげる」
2人しかいないと思われたが女性の声が聞こえ振り返るとそこには…
「そっ…そんな!?」
その人物を見てルルーシュは驚きを隠せなかった。
「大きくなったわね、ルルーシュ」マリアンヌ
「か、母さん!?」
「来たか、マリアンヌよ」
死んだはずのマリアンヌにルルーシュは困惑を隠せなかった。
「これも幻想か?こんなことをして」
「うーん、本物なんだけどね。ま、このシステムでしか元の姿形は取れないけど」
「ルルーシュよ、先程の問いに答えよう8年前のマリアンヌの死の真相を」
一方、レグジオネータと対峙しているビスマルクは睨み合いを続けていたが僅か数分の時間にも関わらず長く感じ、ビスマルクはギアスでレグジオネータの動きが読み取れない今金縛りにあったように動けずにいた。
「はぁはぁ…はぁはぁ……」
平常を保とうとするが額からの汗が止まらず焦りが増すばかりであった。
(私が異端者を恐れて、それで……?)
すると沈黙していたレグジオネータが突如動き出した。
「動いた!?だがギアスでは??」
自分のギアスではレグジオネータの動きを予知できなかった。
ゆっくりと歩くレグジオネータに不気味に感じビスマルクはこちらへ攻撃を加えるのか?未だにギアスの力が発揮できない中ビスマルクはエクスカリバーを構え攻撃に備える他手段がなかった。
空にいる自分に対し敵は武器もなくフロートユニットもない状態。明らかに自分のほうが有利にあるにも関わらずギャラハッドを動かすことができない。
レグジオネータが傍に接近し攻撃されると思われたがレグジオネータがギャラハッドの真下を通り過ぎシャルルがいる場所へと向おうとしていた。
「奴は陛下のもとへ!?」
止めねばと背後を向いたレグジオネータは無防備である。だがレグジオネータからは禍々しいどす黒い雰囲気を出していた。
「…………っく!陛下の命が危ういというのに私はっ!!」
ギアスを使わなくとも倒せるはずだと動かぬ自分の体に喝を入れるように操縦レバーを押しそして
「うおおぉぉぉ!!」
レグジオネータに急接近しエクスカリバーを振り下ろした。
届くと思われたが寸前でレグジオネータは横へスライドをエクスカリバーは空を切り地面を割った。
レグジオネータはエクスカリバーを持っているギャラハッドの両腕を掴んだ。
ビスマルクは振り解こうとするがレグジオネータは離さず力を増していった。
「っく………っ!?」
離れようとギャラハッドを動かそうとするが出力が増してるはずが逆に出力が低下していくのだった。
「何!?」
そして機体の操作ができなくなりギャラハッドのメインカメラが消灯し外の状況が分からなくなった。
レグジオネータは力を込めギャラハッドの両腕からは火花が発生しレグジオネータは無理矢理引っ張りギャラハッドの両腕を引き剥がした。
エクスカリバーを奪い両腕の無くしたギャラハッドの腹部にエクスカリバーを突き刺し機体は仰向けになり倒れた。
機体が停止したことで脱出装置が作動できずビスマルクは頭部を打ちつけられる。
倒れたギャラハッドにレグジオネータはエクスカリバーで滅多刺しにする。
ビスマルクがいるコックピットも巻き込まれ破片が彼の左目に突き刺さった。
「うおぉぉぉ!!!」
更に脚部を破壊し頭部を潰されたギャラハッドはもう鉄の塊となってしまった。
「うぅぅ」
傷ついたコックピットから見える隙間から左目を押さえビスマルクはレグジオネータがエクスカリバーをこちらへ刺そうとしているのが見えた。
「陛下……あなたの仰った通りでした。異端者を早く………」
レグジオネータはエクスカリバーをコックピットに突き刺しレグジオネータは完全に沈黙した。
「……っは?」
アキラは目の前にエクスカリバーが突き刺さったギャラハッドの残骸が広がっていた。
これは自分がやったこと…だがそれが自分の意思とは違う何かがこうさせたように感じた。
「何だ……こいつは?」
このレグジオネータが自分に呼びかけたように聞こえアキラは不気味に感じが突然レグジオネータは勝手に動き出しシャルル達がいた遺跡へと向って行った。
「っ??」
アキラは操縦レバーを動かすがレグジオネータは止まらない。遺跡の前に立ち止まると
再び沈黙した。
一体どういう事なのか?アキラは機体から降りようとした時遺跡から眩い光が差しアキラは突然のことでどうすることもできずその光に照らされるとアキラの姿がレグジオネータから消えた。
「っ!?」
突如、漆黒の闇に放り込まれたアキラは今自分がどこにいるのかわからずにいた。
だが自分の頭に誰かが呼びかける。
「待ってた!?俺を!?」
・
・
・
・
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・
「ラグナレクの接続?何だそれは!?」
・
・
・
・
・
「奴らが発動させる?見れば分かる??」
そしてアキラの目の前にある光景が映った。
ルルーシュはシャルル、マリアンヌから8年前に起こった事件の顛末を知らされていた。
そしてマリアンヌが死の直前自身のギアスにより行儀見習いで来ていたアーニャに自分の意識を転送したことも。
ルルーシュとナナリーをV.V.の手が及ばないよう日本へ送り込んだという事実も
「日本には井ノ本がいた。奴ならお前達を手厚く保護できる。それを見込んで送った」
「井ノ本…、あの男はお前とどう関係が!?」
「………あの時のわしは孤独だった。母を亡くし傍には兄さんしかいなかった。そんな時だった。日本との交渉で奴と初めて会ったのは。世界を諦観し嘘に囲まれただ無常に生きているだけの影を奴から見えた。」
「彼を受け入れたことに私も驚いたわ。」
・
・
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・
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・
―「シャルル、マリアンヌが死んだのは……」
「あぁ、兄さんだ」
「V.V.が彼女を……」
「兄さんは私に嘘をついた……」
「………」―
「だとすると井ノ本もお前達の仲間。陽炎がC.C.を捕らえていたのは……」
「元々の計画では不老不死のコードは一つでよかったの。でも彼らとの研究が進むにつれ、もう一つのコード、つまりC.C.がいないと100%の保証はないとわかったわ。そこで彼はC.C.を私達のところへ送ろうとした。けど誤算が生じた」
「1つはルルーシュお前、そして流崎アキラ。井ノ本は奴の抹殺に失敗した。そしてどんな因果かお前と奴は同じステージに立ち今に至る」
「奴は……アキラは一体何者だ!!」
「異端者、又は異能生存体」
シャルル、マリアンヌ以外の声に振り返るとそこにはC.C.と共にスザクが立っていた。
「C.C.お前……記憶が?それにスザク、何故お前が?」
「彼女に頼んだんだ。決着をつけるために」
「流崎アキラ、異端者と初めて接触をしたのは……」
するとルルーシュ達まわりのビジョンが変わり古びた服を着たC.C.と彼女を取り巻く複数の人間達が映る。
「はじめは私1人だけで世界を放浪していた。だがその過程で私を神と祭り上げる者、ギアスを研究しようとする者、世界から排除された者。小さな村のようなものだった」
服に刺繍されたシンボルマークを見てルルーシュはあることに気づく。
「嚮団……」
「そうだ……これが嚮団のはじまりでもあった。私達は自らの身を守るため安住の地を求めて放浪を続けた。だがその中で不老不死のコードを持った1人の男と会った」
「お前にギアスを与えたシスター以外にもまだ!?」
「私達は彼を迎え入れた。彼女はコードに絶望した。だがあの男は全てを受け入れ世界を変えようとした。お前のように。 彼は様々な人間にギアスを与え嚮団は巨大組織となり嚮団の中で彼と私と派閥が自然と発生し奴は私を排除し嚮団を乗っ取ろうとした。
嚮団は分裂し衝突してしまった。私は奴に嚮団を任せても構わなかったがもはや簡単に投げだすことができないくらい嚮団が大きくなりすぎた。奴等を異端者と称し戦い私は何度か殺されたが奴らを追放した」
元の鞘に戻り嚮団は各地を巡り遠い年月が流れたがある時1つの情報を聞き出した。新大陸で建国された神聖ブリタニア帝国。その国が東西に別れ内紛が発生していたのだった。
「そして大陸の西部を支配したその反乱分子の指導者にある噂があった。普通の人間にはない謎の力があると」
「ギアス…」
「私達もはじめはそう考え調べた。だが違った。指導者はギアスの力ではなく並外れた体力、他者からの支配を拒む強靭の精神力、そして驚異的な生存率。反乱分子達はは自らを神の子と名乗った」
「……君達が戦った異端者の子?」
今までのC.C.の話を聞くとアキラのような人間が数百年前から存在していた。スザクはギアスと並ぶ驚異的な存在に戦慄を感じる。
「奴らはブリタニアに潜り込み内部から国を取り込もうとした。奴らの目的はブリタニアを自分達のものにし私達に復讐することだった。私達はブリタニアに接近し奴らと戦うことにした」
そして次にヴィジョンに現れたのはKMFのようなずんぐりと漆黒のKMFの集団が街を蹂躙している姿であった。
「これはレグジオネータ、反乱軍がつくった新兵器。このレグジオネータに私達は追い詰められながらも反乱軍を制圧した」
「ブリタニアの内乱は収束し私達はブリタニアと繋がるパイプがつくられた。再び神の子が現れる恐れを感じブリタニアはレグジオネータの研究を極秘裏に始めた。それがKMFのはじまりだ」
「KMFっ!?」
「だがレグジオネータの構造について全て把握はできず機体の最低限のスペックを再現するのに100年以上かかった。ブリタニアは神の子が支配下にしていた西部を調査した。そこで奴らは地下に大規模な施設を建造していた。」
ヴィジョンに地下の施設が映し出されそれは今現在の技術にもない。未知の構造であった。
「これを奴らが!?」
「これを見ればレグジオネータなど造作でもない。ブリタニアは施設を破壊し神の子の痕跡を全て消した。だが神の子の出生、ギアスでもない謎の力は最後までわからなかった」
今までの話を聞きルルーシュはアキラと異端者に関係があることがわかったがある疑問がでた。
「だが、だとするとアキラはその神の子達の?」
「その通りだ。わしと兄さんは異端者達の存在をC.C.から聞き神の子らが支配下に置いた西部を10年以上にかけ調査し大陸の原住民達に異端者の赤子が匿われていることを聞き出し我々は原住民達の集落を壊滅し奴を確保した。」
シャルルが言っているのはかつてブリタニアが原住民のインディアン達を虐殺したことをルルーシュはわかっていた。
「それが……アキラ」
「奴の生みの親を聞き出そうとしたがインディアンは最後まで口を割らなかった。そしてわし達はインディアンが異端者を祭り上げ国に牙を向けるのを恐れ西部にある全ての住処を壊滅させた」
「そして私達は彼を観察し異端者をどのようにして殺せるか調べたわ。でも知ることができたのは驚異的な生存率。嚮団の人間は実験の度に2人、3人と殺され、V.V.やC.C.は何度も死んだわ」
「C.C.から聞かされた異端者の力。それを目撃しわし達は恐怖を感じた。
そして嚮団が最終的にだした答えはまだ覚醒する前に赤子の奴を殺す。奴を谷底へと落とした。
だが奴は生き延びそれから井ノ本に保護され今に至る。わし達はアキラの存在で神の子達が再び現れるのではないかと恐れこのラグナレクの接続をつくりあげた」
「そう、神の子達殺せない今、ラグナレクの接続でしか彼らを止められない。」
「C.C.……お前はアキラ事は知っていたのか?」
ルルーシュの問いにC.C.は苦笑いをする。
「確証はなかった……だが奴の驚異的な生存、そして周りを環境をも変える力。ルルーシュ、お前も遭遇しているはずだ」
「俺が…!?」
「1年前、ユーフェミアの死をお前も見ていたはず」
ユーフェミアの死を思い出し表情が青ざめるルルーシュを見てスザクはふいに顔を逸らす。
「いや…そんなバカな!!あれがアキラが引き起こした現象だというのか!?自身の生存のために!?」
「異端者は己が生きるために周りの環境を変化させる。それは例えギアスであろうがその変化に抗うことが無理だ。更にギアスに抗う力を持ち無力化させる。それは私やV.V.、嚮団が導き出した答えだ」
「ギアスが効かない!?そんなことが…」
「ルルーシュ、お前アキラにギアスをかけようとしたことがあるだろ?」
「あっあぁ……」
「何故かけなかった?」
「それはそのほうが都合がよくて………っ!?何が言いたい………」
C.C.の問いにルルーシュはある1つの答えが頭に浮かぶ。
「そう。ギアスをかけるのを躊躇う環境、そして貴様をそうさせる心境の変化。それも異端者の力だ」
「そんな………俺もアキラに………」
知らない間に自分はアキラの都合のいいように動かされてたことに頭が真っ白になりルルーシュにマリアンヌは優しく語り掛ける。
「でもね、そんなことはもうなくなるの。このアーカーシャの剣は異端者に唯一対抗できる。彼らをこのアーカーシャの剣で封じ込める。」
「さぁ、C.C.」
シャルルは掌にある刻印をC.C.に翳すとC.C.の額にある刻印が共に反応し眩い光が差した。
この瞬間地球各地で地殻変動の現象が発生し世界が混乱した。
神根島へと上陸しルルーシュのギアスにかけられた兵士達を殲滅させたエリスはアキラの居所を探ろうとしたが突然の地響きに動きを止めた。
「何だ?……」
エリスはこの騒ぎにアキラが関わってるのではないかと彼を探ろうとするが敵機の反応がしその方向を見ると……
「カレン……」
真紅の翼を広げる紅蓮聖天八極式がエリスの前に現れた。紅蓮以外の藤堂や黒の騎士団の主力の機体は見られない。アキラが蜃気楼で格納庫を破壊した原因で出撃できる機体が少ないのだ。
「エリス……やっぱり」
「アキラはどこにいる?」
「私が教えると思う?例え知っていたとしても今のあなたに教えるわけにはいかない」
「何!?」
「ねぇエリス、あなたをそこまで駆り立てるのって何?私への憎しみ?アキラへの愛?」
カレンからの問いにエリスは苛立ちを感じた。ここへ来て彼女は何を言っているのだと。
「全てだ!私の心を乱す全てに対してだ!!」
「そう……あなたをそうさせたのは私のせいかもね」
紅蓮は地上へと降りヘルハウンドと対峙する。
「だからこそ私はあなたを止めてみせる!!手遅れになる前に!!」
紅蓮は臨戦態勢をとる。
「そうやってカレン、お前は!!」
ヘルハウンドは蛇腹剣を構え走り出す。エリスを救いたいカレン、カレンを殺そうとするエリス。すれ違う思惑にもう戦うことでしか終わらせることができないのか。カレンの表情は苦渋に満ちていた。
シュナイゼル達アヴァロン艦隊は神根島へと到着しルルーシュのギアスにかけられた兵士達と戦闘に入った。
「さぁ父上、余興はもう終わりです。あなたは異端者への生贄となってもらいます」
シュナイゼルは微笑み小さく呟く。
「これで
「はぁ~、始まる。アーカーシャの剣が異端者を殺すの」
ラグナレクの接続が開始されシャルル、マリアンヌは興奮を隠しきれずにいる。
そしてその様子をルルーシュ、スザクは冷静に見ていた。
「ルルーシュ、君は何のために世界を手に入れようとした?」
「くだらない質問をするな。俺はナナリーの……」
「ナナリーを言い訳に使うのか?」
「っ……。ふっ、そうだな。俺は俺が守りたいと思う全てのために戦ってきた」
「以前、アキラが言ったことがある。自分は生きるために戦っていると……。
動機が違っても僕らがやってきたことに大差は無い。結果を求めるのなら何かを成さなければならない」
「そのための手段は何かを否定することにも繋がる。スザク、俺はお前の考えを認めない。人は何故嘘をつくのか。それは何かと争うためだけじゃない。何かを求めるからだ。ありのままで良い世界とは、変化がない。生きるとは言わない。思い出の世界に等しい、完結した閉じた世界。俺は嫌だな、アキラのように戦ったほうがよっぽど人らしい」
「ルルーシュ、それは私も否定するということ?」
「母さんの願いは皇帝と同じなのですか?」
「バラバラだった皆がまた一つになるのは良いことだわ。死んだ人とも一つになれるのよ。ユーフェミアだって」
ユーフェミア……彼女の名が出てルルーシュの表情が変わった。
「っ……やはりそうか。お前達はそれを良いことだと思っている。しかし、それは押し付けた善意だ。悪意となんら変わりがない。お前達は俺とナナリーに善意を施したつもりなのかもしれない。しかし、お前達は俺とナナリーを捨てたんだよ!!」
「でも、それは守ろうとして」
「日本とブリタニアの戦争を止めなかったのは何故だ?」
ルルーシュの追求にマリアンヌは黙る。
「計画を優先したお前達は、もう俺達が生きていようと死んでいようと関係がなかったんだ。だから捨てた。自己満足の言い訳だけ残して」
「それは違うわ。異端者からあなた達を守ろうと!!」
「今言っただろ!!死んだ人とも一つになれると。未来なんか見ていないんだ。異端者だと言ってるがお前達はそれを言い訳に俺達をスケープゴートにしたんだ!!」
「未来はラグナレクの接続、その先にある。ナナリーの言った優しい世界をするには異端者は危険だ!」
「違う!!お前達が言っているのは自分に優しい世界だ。異端者を恐れ助かりたいために!でも、ナナリーが望んだのは、きっと…他人に優しくなれる世界なんだ」
その言葉にスザクはあることに気づく。
(そうだ……ユフィは最後までルルーシュがゼロだとは言わなかった。シャーリーだって。だから僕は)
「だとしても、それが何だ?既にラグナレクの接続は始まっている」
シャルルの言うとおりラグナレクの接続が開始されルルーシュには手段がなくなりつつあるが…。
「どうかな?…………俺はゼロ。奇跡を起こす男だ」
ルルーシュはギアスを発動させようとした時自分達がいるこの空間が突如揺らぎだし眩い光が差し込みこの場にいる全員が目を覆った。
「何っ!?」
「一体…??」
シャルル、マリアンヌも何が起こったのかわからずにいた。
光が収まり目を見開くとそこにはアキラがルルーシュ、シャルル達の間に割ってはいるように現れた。
「アキラっ!?」
アキラは仏頂面な顔でルルーシュ、シャルル両者の顔を見る。
そう、自分やルルーシュ、シャルル達はこの場に集められた者達であった。 自分を何処かで観ている観察者に………
まずは大変遅くなり申し訳ありません。
言い訳するのは見苦しいですがプライベートで色々あったってのもありましたが
今話のルルーシュ、シャルル達の描写が非常に難しく何度か書き直したのが遅筆の原因となりだいぶ台詞が多くなってしまいました。
来年からは少しでも早く皆様にお届けできたらなと思ってます
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第37話
先日、間違って執筆中のを投稿してしまいました。完成したのでどうぞ
紅蓮とヘルハウンドは神根島の中を縦横無尽に動きながら激闘を繰り広げていた。
「カレンーーー!!」
「エリスーーー!!」
スペックとしては紅蓮のほうが若干上回っているがヘルハウンドはエリスのPSの能力でカバーし紅蓮と渡り合っていた。
有線射出される紅蓮の右腕から発射される輻射波動砲弾に避けながらエリスは紅蓮を狙おうとするがそれを阻止しようとカレンも型飛燕爪牙で懐に入れなさせないようとする。
「っく、アキラはどこ!?」
周りを見るがアキラの姿は見えない。その一瞬目を離した隙をエリスは逃さず蛇腹剣で紅蓮を狙う。それに気づきカレンは急ぎ回避行動をとるが左腕に持っていた呂号乙型特斬刀が巻きつけられ切断されてしまった。
カレンはエナジーウイングを機体に包みスピードでかく乱させようとする。エリスはヘルハウンドの動きを止めじっと紅蓮の動向をさぐる。
カレンは機体ごとヘルハウンドを激突をさせようと背後から突撃するがエリスが気づき回避行動をとるが避けきれず肩を掠め機体の体勢が崩れたのを見て右腕の鉤爪を振り下ろすがヘルハウンドが紅蓮の腕を受け止める。
「死ねっ!」
エリスは右腕に持っていた蛇腹剣を紅蓮に刺そうとするが今度はカレンが左腕でヘルハウンドの右腕を抑え両機は取っ組合う状態となった。
「エリスっ、もうやめて!!」
「そうやってお前は…!」
両機は組み合ったまま空中へと移動する。ヘルハウンドの左腕に装着してあるクローアームが紅蓮のエナジーウイングの片翼を掴み潰そうとする。
「しまった!!」
エナジーウイングの紅い羽は点滅し片翼が機能しなくなりバランスが崩れた紅蓮をヘルハウンドは地上へと叩き落した。
追撃が来ると予測したカレンは輻射波動を展開させると蛇腹剣を振り下ろすヘルハウンドの攻撃を回避し右腕の鉤爪でヘルハウンドを捕らえようとする。
「っく!」
隙をつくってしまいやられると思われたが……
(エリス……っ!)
一瞬、エリスの顔がカレンの脳裏に浮かびそれが彼女の手元を狂わせ鉤爪がヘルハウンドの頭部を掠め空を切ってしまったのだ。
「……っ!?」
「っ!?……何してんだ私は!!」
自らの行動にカレンは苦虫を噛み潰すように表情を崩す。
「………カレン!お前はどこまで私をっ!!」
カレンのこの行動にエリスは怒りを感じアームクローで鉤爪を捕らえると強引に締付け紅蓮の右腕が火花を散らせ折れ曲がり無理矢理引き抜き蛇腹剣を構える。
蛇腹剣を構えるヘルハウンドにカレンは避けようとするが間に合わず左腕が突き刺さりエリスは力任せに紅蓮に刺さった蛇腹剣を振り紅蓮の左腕が切断された。
「……カレン」
「ハァハァ……エリス!」
両腕をなくし武器の無い紅蓮に勝機を見たエリスは剣を構え手負いの紅蓮へと突き進んだ。
「流崎アキラ!!何故貴様が!?」
この空間にアキラが単独で入ることはできない。驚きを隠せないシャルルとマリアンヌであったがそれはルルーシュ達も同じであった。ギアス饗団を襲撃した時も同様にCの世界にアキラが入り込んできたことがあるがそれと同様のことが起こった。
「異端者は単独で侵入できない。誰かが…」
アキラはルルーシュ、シャルル両者の顔を見る。アキラ自身もこの場に転移させられたのだと感づき、この神根島にてまたもや謎の現象に巻き込まれたのだと苛立ちを隠せなかった。
そんな中C.C.1人がこの状況に冷静にいた。
「アキラ、誰がお前をここへ?」
「……さぁな。だがこの状況をどこかで見て楽しんでるだろうな」
「………異端者か」
C.C.は空を見上げ一言呟いた。
「生贄か……。V.V.、お前の言うとおりだな」
C.C.は沈痛な面持ちでシャルル、マリアンヌを見る。
「シャルル、マリアンヌどうやら私達は奴等の掌で踊らされていたようだ」
「C.C.、あなたは!?」
「マリアンヌ、私達はアキラの為に利用されていただけだ」
「どういう事だ?」
「シャルル、アキラをここへ連れてきたのはアーカーシャの剣、Cの世界だ」
「何っ!?」
C.C.の言葉に2人は戸惑いを隠せずにいた。だがルルーシュ、スザクは1つの答えを導き出す。
「………まさか、ここはもう」
「そうだ。ここの世界はもう既に異端者に掌握されている」
その指摘にシャルルはそんなバカなっと額から汗が落ち辺りを見渡す。
「何を世迷い言を!!アーカーシャの剣は兄さんと数十年前からわし達が支配していた」
「そうよ!!それはあなたもわかってるはず!」
「あぁ…私も今までそう思っていた。だが違っていた。私達、いやこの世界そのものが既に奴らに支配されていた。奴らは待っていたんだ。私達がアキラを連れて計画を決行するのを」
その瞬間、一筋の光がアキラとルルーシュ、スザクに当たり光に包まれた3人は抵抗できずに宙に浮き眩い光が辺りを包む。
突如、体の自由を奪われた3人は頭から送られてくる情報は異端者として生まれた者達の歴史、そして互いの過去が走馬灯のように送られいくのに驚きを隠せなかった。
光が収まり地に足をついた3人は互いの顔を合わせる。
「………今、お前の過去を見た」
「………俺もだ」
「ワイズマン…!!」
スザクは自分達に互いの過去を見せた張本人の名を出した。
「ワイズマン!?」
シャルル達には初めて聞く名であった。
「この世界の統率者。この世界を裏から操っていた者」
アキラは淡々とした表情でシャルルとマリアンヌそしてC.C.を見つめる。
「あんた達は初めから踊らさせられていたんだ。奴らはずっとあんた達を観察していたんだ」
「っ!?」
「そうだ。この世界はもうお前達のものじゃない」
「バカな!?既にラグナレクの接続は始まっている」
だがすると辺り一面の風景が突如消え、漆黒の闇に包まれた。
「何っ!?」
「このCの世界がお前達の手元から離れたのだ」
アキラ達の声ではない何者かがここへ潜り込んだことに気づきシャルルは声の主のほうを見る。
「寛二……貴様!」
ここにいなかった井ノ本がアキラ達の前に現れた。
「………残念だな。シャルル、お前達の計画は初めから破綻していたのだ」
「あなたは知ってたの!?」
「お前達とこの計画に賛同したが同時に私は異能生存体……を調べてわかったのだ。この世界の真の支配者、ワイズマンをな。そして私は……」
「っ…!?あなた、まさか!?」
不適に笑う井ノ本にマリアンヌは何かを察する。
「寛二、貴様!!」
「お前達は気づかない間に異端者に操られていたのだ。シュナイゼルがアキラを取り込もうとしているのを気づきながらお前達はそれを静観した。お前達をそうさせたのは何だ?」
その指摘に2人の額から汗が滴り落ちる。
「シャルル、マリアンヌ、お前達はアキラ達を恐れるあまり彼らの本質を探ろうとしなかった。自分達に優しい世界を作り満足を得ようとした。その作った世界も彼らに用意されたものだと知らずに」
シャルルとマリアンヌの体が足元から消えていくのが見える。
「バカな。わしは不老不死のはずなのに。飲み込まれる?Cの世界に?」
「言ったはずだ。この世界は既にお前達のものじゃない。邪魔者は排除される」
消え去ろうとする2人をルルーシュは黙って見ているのであった。
「ルルーシュ、これが異端者よ!!このままだとあなたも!!」
「そうだな…、お前達は異端者を恐れ俺とナナリーを捨てたんだよ!!」
「でも、それは守ろうとして!!」
「計画を優先したお前達は、もう俺達が生きていようと死んでいようと関係がなかったんだ。異端者を言い訳にして。何が嘘のない世界だ。実際、お前達の計画は自分達のためのものだ。ナナリーが望んだのは、きっと…他人に優しくなれる世界なんだ」」
「ではお前は異端者達に支配されるこの世界を認めるというのか!!」
「だとしても、お前の世界は俺が否定する。そして……」
ルルーシュはアキラを睨む。敵意を感じたアキラもルルーシュの意思が感じ取れた。
「ワイズマンと戦う。お前達と違うやり方で!!………消え失せろ!」
「ぬあぁぁぁぁ!!!」
ルルーシュを掴もうとシャルルは手を伸ばすがその手は届くことなくマリアンヌと共に消えていった。
「シャルル…マリアンヌ………この数十年お前達は嘘のない世界という夢を彼らに見せられたのだな」
「そういうあんたはワイズマンとどういう関係だ」
アキラはショットガンを井ノ本に向ける。
「……使者とでも言えるか。彼らが支配するこの世界の先を……嘘も真実も越えた世界、私はそれを見届ける役割を与えられたに過ぎない」
「俺は認めない。裏で人を操るような奴等の世界を」
「だが彼らは全てを可能にできる。それこそ死者、そうだなユーフェミア・リ・ブリタニア。彼女と再び話すこともできる」
「それを押し付けというんだ!」
スザクは剣を抜き井ノ本に向ける。
「できるか?」
「…………俺はゼロ。奇跡を起こす男だ」
ルルーシュの両目にギアスの紋章が浮かびあがり思考エレベーターが崩れ落ちていった。
「貴様ギアスを……」
「これで貴様らの計画は潰れた」
スザクは井ノ本に剣を構えた。
「あなたは己の計画のためにブリタニアと日本を戦争させた。それはゆるされない!」
「計画?………っふ、私にとってはもうシャルルの計画など既に形骸していた。ワイズマンのまえに嘘のない世界など」
すると井ノ本の足元から粒子のように消えていくのが見える。
「ルルーシュ、枢木、これで終わりじゃない。ここにはアキラがいる。異端者、ワイズマンの力を受け継ぐ男がここにいるということを……」
消えゆく自分の体に動揺することなく不適な笑みを浮かべながら井ノ本は消えていった。
「さて、この男をどうするつもりだ?」
C.C.の指摘どおり異端者はここにもう1人いる。そうアキラと対峙するルルーシュ、スザク。3人には殺気が漂う空間で満ちていた。
「………アキラ、単刀直入に聞く。お前は俺の敵か?」
「それはお前達の態度次第だ。俺の邪魔をするなら…」
アキラは銃口をルルーシュに向ける。
「俺の敵だ」
「君もワイズマンによって狂わされた1人だと理解している。だがだからといってそのまま野放しにはできない!」
剣の矛先をアキラに向けるスザク。3人をまわりに殺気立つ空間が漂う。
「ワイズマンの操り人形になるつもりはない。それはお前に操られるのと同じだ」
「やはり俺達はこうなる運命か」
「そうだな……」
アキラはショットガンを空へと向ける。
「っ??」
「先に抜かしてもらう」
引金を引き銃声が空間に響き渡ると空間が崩れだした。この現象にルルーシュ、C.C.は気づいた。
「防衛システムを作動させたか」
アキラの足場が崩れ落ちてゆくアキラがスッと消えてゆくのを見てC.C.はルルーシュ、スザクを見つめる。
「お前達、これからどうするんだ?シャルル達の計画を否定し、現実を、時の歩みを進めることを選んだ。だがこの世界はワイズマン、異端者達のものだ」
「俺は戦う。シャルル達が目指した世界もワイズマンの世界も同じだ。人は何故嘘をつくのか。それは何かと争うためだけじゃない。何かを求めるからだ。完結した閉じた虚無の世界。俺は嫌だな。それなら俺もアキラのように抗う」
「ならアキラと同じだな」
「いや、違うな。奴がワイズマンと同等の存在なら……」
「だが、そう簡単にいかない」
崩れていくCの世界の中でスザクは己の道を定めようとする。
Cの世界を出たアキラは自分がレグジオネータのコックピットにいることに気づく。
今、自分が今遺跡の外におり周囲に爆音の振動が伝わり戦闘が行われていることがわかりアキラはレグジオネータを起動させ戦闘が行われている場所へと向った。
追い詰めたカレンは残りの武器のスラッシュハーケンで反撃を試みるが回避され1つは切断されしまいヘルハウンドの蹴りで転倒してしまう。
「最期だ……カレン」
止めを刺そうとヘルハウンドにカレンはこれまでかと覚悟するが突撃するヘルハウンドにアキラのレグジオネータがヘルハウンドに体当たりをし転倒した。
「っ…!?アキラ!!」
「エリス…!」
対峙する3人をルルーシュ、スザク、C.C.は離れた場所で見守っていた。
「どう見る?」
「………」
黙ったままの2人にC.C.はほくそ笑む。
「奴が死ぬイメージが沸かないのだな。よく見とけ異能生存体、異端者がなんなのか」
―エリスとの最後の闘い。対峙するエリスを見て俺はこれまでにない殺意が芽生えた……―
早速、紅蓮聖天八極式がスクラップになってしまいましたがこれは相手がエリスでカレンが躊躇している部分もあり弱くなってしまった描写になりましたがこの紅蓮がどうなるかは後ほどということで
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第38話
「カレン!!」
アキラは半壊した紅蓮に呼びかけカレンの小さな呻き声が聞こえる。
「待ってたぞアキラ!」
蛇腹剣を振り下ろすヘルハウンドから避け距離をとる。
「紅蓮はもうダメだ。あとは中にいるカレンを…」
「………お前とはここで決着をつける」
アキラは落ちているライフル2丁を拾い銃口を構える。
-斑鳩-
「紅蓮のシグナルロスト!」
「カレンから連絡もない!?どうなってるんだ?」
ブリタニアの内紛に黒の騎士団はシュナイゼル達と共に加入したが謎の超常現象から各部隊の安否が分からないままでいた。
「どうやら、ブリタニアのほうも同様のようで。誰が敵か味方か混乱しているようです」
ディートハルトはブリタニアの動向を見ながら戦場を状況を確認していた。
「ですがこの状況は誰によるなのか?副指令……」
「…………ん!?」
「流崎アキラ、異能生存体。シュナイゼル殿下の仰ったことはギアス同様半信半疑ですがもしこの戦場を作り出したのがあの男によるものとすれば……」
「…何が言いたい?」
「あの男を交渉の材料として引渡しましたが副指令、この混乱を利用して彼を再度捕らえてみるのは」
「アキラを!?」
「この後もし何かがここで起これば彼、異能生存体の存在は本物」
「たっ確かにそれは……」
「彼の力が本物なら確かに危険です。しかし扱いを考え、逆に利用すればブリタニアとの交渉は我等に有利にいや、逆に日本を取り戻すだけではなくそれ以上のものが……例えば中華連邦アジアを全て掌握しブリタニアと2強の大国することも……」
「何を言って……!?」
ディートハルトの申し出に扇は戸惑いを隠せなかった。
「ゼロ以上のことをあなたができるかもしれませんよ。流崎アキラを使い……」
「…………」
ゼロ以上……そんなことが自分にできるのか?今日本を取り戻すだけしか考えていなかった。
「………っ!!今はこの戦局をどうにかすることが先決だ!」
先程の話を忘れるが如く扇は今の戦場に向き合おうとする。そんな姿をディートハルトは口元をゆがめて笑う。
「ゼロによって引き起こされたカオス。そのカオスを体現させる男流崎アキラ、おもしろい。あのシュナイゼル殿下何故執着するのか気になる。ふっふふ…」
2機の戦闘をルルーシュ、スザク、C.C.の3人は遺跡から少し離れた高台で見ていた。
「C.C.、アキラが乗っている機体は?」
「レグジオネータ、異端者がつくったKMFの基となったKMFらしきもの」
「どういうことだ?」
「ブリタニアはあれを長い年月をかけて調べたが解析できなかった。乗っていた人間が全て本国西部にいた先住民達だった」
「先住民、インディアン達か!?」
「機械をロクにあたったことのない連中がどうしてレグジオネータを扱えたか?捕らえた機体にいたインディアンは死亡、または言語障害、精神障害五体満足の人間は誰も無かった。それだけあの機体は謎だらけということだ」
「………」
レグジオネータは2丁のライフルを撃ちつづけその銃撃を回避するヘルハウンド。アキラは半壊した紅蓮を巻き込まないよう離れながら戦いを繰り広げていく。弾切れをおこしたアキラは茂みに隠れ近くにライフルが落ちてないか探っていた。
だがその最中にも……
―………………―
「……っ! 黙れ!!」
レグジオネータから敵機を撃破するようアキラの脳裏に呼びかけるがアキラは不快を露にする。
「お前はPSの私と互角で戦ってきた。戦士として賞賛に値する。」
レグジオネータからの銃撃を掻い潜りながらヘルハウンドは蛇腹剣を向ける。ライフルのうち1丁が巻き込まれ切断された。
「だがお前と戦ううちに敵以上の何かが……お前が常に私の心にいた。カレンもだ!お前達はいつも私をおかしくさせる!!」
レグジオネータはライフルを捨てヘルハウンドと取っ組み合いとなった。
「言いたいことはそれだけか」
「っ!?」
「お前の僻みにはうんざりだ」
「何だと!?」
「俺から見ればお前もただの女だ」
「違う!!私はPS、選ばれた戦士だ!!」
ヘルハウンドの左腕の力が強まりレグジオネータの腕が軋む音が聞こえてくる。
「なら、お前と私の違いは何だ!!」
「っ!?」
「お前も戦士。お前は戦士としてカレンを守るために戦ってきた」
「………」
「お前がカレンを愛していたように私もお前を……」
「…………」
「何にお前は…!!」
ヘルハウンドはレグジオネータの左腕を破壊した。アキラはエリスの追求に一瞬戸惑い動きが止まった。
エリスはその隙を逃さず蛇腹剣を振り下ろす。
間に合わないとアキラが感じた瞬間何者かに操られたかのように自分の腕が勝手に動きレグジオネータの残った右腕が蛇腹剣を掴んでいるヘルハウンドの右腕を受け止める。
「っ!?」
レグジオネータから漂う異様な違和感にエリスは不気味に感じ離れようとするがレグジオネータは掴んだ腕を離さず逆に腕の力が強まりヘルハウンドの腕を握り潰すと持ち手を失った蛇腹剣を逆手で持つとそのままヘルハウンドの胸部に突き刺した。
「ぐうぅ!?」
レグジオネータはそのままヘルハウンドを押し出し岩壁へと激突させ刺さった蛇腹剣を更に機体の奥へと刺しその刃がエリスのいるコックピットへと迫ろうとしていた。
「ぬあぁぁぁ!!」
エリスは強引に押し返しレグジオネータから離れるとこのままではやられると距離をとろうとするがレグジオネータはその後を追いかけるがその姿はドス黒い不気味なオーラを身に纏っているようにエリスには見えた。
「うぅ……」
周りの爆音により気を失っていたカレンがゆっくりと目を醒ます。
「私は確か……っつ、エリス…!」
カレンは計器を操作し紅蓮がまだ動くか確認するがしばらくしてディスプレイに光が点り外の景観が見れるようになった。近くにエリスがいないことを確認するとカレンは紅蓮を立ち上がらせるが損壊しているため動作が遅くなってしまっている。
「どこ……エリス」
おぼつかない足取りで紅蓮を歩かせているとここから少し離れたところで戦闘を行っているヘルハウンドを見つけた。
後退するヘルハウンドを捕まえたレグジオネータは頭部を掴むと無理矢理引き剥がすと拳をつくり振り下ろしその衝撃でヘルハウンドは転倒した。
「ぐぅぅ…」
倒れたヘルハウンドに止めを刺そうと近づこうとするがその直後紅蓮がレグジオネータに体当たりをして両機の間に入った。
「エリス!!」
カレンはエリスを守ろうとレグジオネータの前に立ち塞がる。
「何こいつ?」
見たことのないKMFにカレンは焦りの色を滲ませる。
「カレン……私とアキラの邪魔をするな!!」
「アキラっ!?あれに乗ってるのはアキラ!?」
紅蓮は両腕がない状態で近づくレグジオネータに止めようと体当たりをする。
「アキラ!!そこにいるの!?」
カレンは必死に呼びかけるが返事がない。KMFとは言えないその不気味な姿。紅蓮の胸部を掴むと凄まじい握力で紅蓮の胸部が歪みだす。
「っ!? アキラなの…?ホントに!?」
レグジオネータから放たれる異様なオーラ。アキラが乗っているが別の何かがいるように感じカレンは金縛りにあったように動けなくなった。
そしてレグジオネータの腕から電流が走りその瞬間紅蓮の動きが止まりモニターが消え起動しなくなった紅蓮を乱暴に叩きつけた。
沈黙した紅蓮を無視しレグジオネータはヘルハウンドへと近づく。再び立ち上がるヘルハウンドは残った左腕のアームクローを構えてレグジオネータを迎える。
「ダメ、アキラ!!エリスを殺さないで!!!」
叩きつけられた衝撃でコックピットが破損し外の様子を見たカレンが飛び出し必死に呼び掛ける。
右腕を手刀へ構えレグジオネータは右腕を突き出す。そしてヘルハウンドがアームクローを突き出し両機の腕が交差する。
「アキラっーー!!!」
カレンの呼びかけにアキラは意識が覚醒し目の前の光景がスローモーションのように映った。
ヘルハウンドのクローアーム、レグジオネータの腕が交差し両機のコックピットを貫通した。
「あ……あぁ………」
両機の姿にカレンは腰から崩れ落ちた。
「相討ち!?」
両機の戦闘を見たスザクは2人は死んだと思われたが…。レグジオネータのコックピットのハッチが崩れ落ちコックピットの中が表れた。
カレンはハッと体を起こし下からコックピットを覗くと…。
「アキラっ!!」
中にいるアキラは健在で貫通したアームクローはアキラの真横を貫通しアキラに被害は及ばなかった。
アキラは腰のホルスターからショットガンを抜きレグジオネータから降り沈黙したヘルハウンドへ近づく。
「アキラ!!」
カレンは銃をアキラに向ける。
「もう、やめて!!これ以上やるなら私は…!!」
アキラはカレンを見て戸惑いを見せるがアキラは…。
「…………」
その足取りを止めずアキラはヘルハウンドへと近づく。
「アキラ!!」
アキラはコックピットの稼動部をショットガンで撃ちハッチをこじ開ける。
中にいるエリスを見てカレンは絶句する。
レグジオネータの腕がエリスの体を貫き彼女の下半身が潰されていた。
「あぁぁ、エリス……っ!!」
カレンはエリスに近づき膝をつく。カレンを見てエリスは喀血しながらも笑みを浮かべる。
「何だその顔は。お前からアキラを奪おうとした私が死ぬんだ」
カレンは頭を横に振るう。
「違う…私はこんな………」
エリスは悲痛な面持ちでアキラを見つめる。
「アキラ……私はどうして自分がお前達に執着していたのか……。お前を愛していた………。だがそれだけじゃない。私は………お前達が羨ましかった」
「………」
「戦場でしか己の存在を見出せない同類だと思った。だが……お前には愛している人がいた。。そしてお前を愛してくれる人がいた。欲しかった……私にもそんな人が………」
「エリス……」
エリスの呼吸が乱れ苦しみだした。
「アキラ……頼みがある」
「………」
エリスの顔を見てアキラは黙ったままショットガンの銃口をエリスに向ける。
「ふふっ……。さすがアキラだ。頼む、最後はお前の手で……」
「………」
「戦えアキラ……兵士としてではなく人間として………」
その瞬間、銃声の乾いた音が鳴り響いた。
「エリス……」
カレンはエリスの亡骸を優しく撫でる。
「アキラ…私ね、彼女とあなたが似てるって感じたの。だから助けたかった……」
「………」
「勝った……アキラが……」
戦闘が終えるのをルルーシュ達も確認した。
「このままアキラ、ワイズマンがいればこの世界は終わることのない戦いの混沌となる」
「だがそれは君も同じだ」
ルルーシュとスザクは視線を合わせ対峙する。
「君はユフィの仇だ」
「……あぁそうだ」
次の瞬間、島全体から地響きを立て揺れだした。
「何だ地震!?」
「いや、何かおかしい」
ルルーシュは急ぎ遺跡へと戻ろうと2人と駆けていく。
「何っ!?」
アキラ達も只の地震ではないと感じた。
「カレン!!」
アキラはカレンの手を引っ張り走り出した。
駆け出したことで肩で息をしながらも蜃気楼へ戻ったルルーシュはこの現象の原因を探った。
「これはっ!?」
そしてシュナイゼル達もこの謎の現象の原因が何なのか分かった。
「エネルギーコアの暴走ですって!?」
「はっ、おそらくここの遺跡、いえこの島地下深くから発生していると……」
「殿下、このままですと……っ?殿下?」
カノンが振り向くとシュナイゼルが声を押し殺していた。
「ふっふふふ……。アキラ、やはり君はただで終わらせないんだね」
―斑鳩―
「全部隊に撤退するよう伝えるんだ!!」
「それが突然、島全体から電波妨害が発生して連絡が…」
「なんだって!?」
何故こんな時に。扇は戸惑いを隠せずにいた。
「このままではこの島は沈む。C.C.、スザク!!ここから脱出する!!」
「っ!? 待ってくれ!!」
スザクは急ぎ遺跡の中へ駆け出し、遺跡の扉の前に倒れているアーニャを抱えた。
アキラとカレンはアキラが乗っていた小型機へ戻ってきた。
「これに乗るんだ」
アキラはタラップを降ろし先にカレンを乗せた。
「アキラ!」
手を伸ばすカレンの手を掴もうとしたアキラだったが大きな揺れで周辺の地盤が崩れその拍子でアキラの足場が歪み転倒してしまった。
「ああぁ!?」
小型機が斜めへと歪みカレンは機内で転倒し頭を打ってしまいそのまま意識を失ってしまった。
「カレン!!」
アキラはカレンを助けようとするが上空から眩い光が差し込み見上げた瞬間その光に視界が奪われた。
崩れる神根島に敵、味方関係なく巻き込まれブリタニア、黒の騎士団両軍は混乱に陥った。
島の様子を上空から蜃気楼でルルーシュは見つめる。機体の両腕にC.C.、スザク、アーニャの3人が乗っていた。
「神根島が消えていく……」
アーニャを抱えたままスザクは呆然と神根島を見つめていた。
「どうして……」
「あの遺跡の自動防衛システムが……」
「それだけだと思うか?」
C.C.の問いスザク、ルルーシュの2人はある答えに辿り着く。
「まさか……」
「ルルーシュ、ワイズマンは存在している」
「何っ!?だが……」
「Cの世界はお前のギアスで消滅させられた。普通ならワイズマンもシャルルと同じようになるはずだ。だが自動防衛システムは対象の人物、物体を転移させるものだ。こんな自爆するようなものじゃない。だとすればこれが誰かが仕組んだんだ」
「ワイズマンが生きている……?」
「おそらく、アキラも生きているはずだ。ワイズマンはあの男に何かさせるつもりだ。そしてアーカーシャの剣も修復させるだろう」
「ワイズマンは一体どこに?」
「さぁな。ワイズマンがどこに潜んでいるのか……。長い間奴らに踊らされた私達にわかるはずがない」
C.C.は自嘲気味で笑みを浮かべる。
「気をつけるんだな。奴は私達を見てるぞ」
C.C.の言葉に2人はワイズマンの存在が自分達のすぐ背後に感じる恐怖で額から一筋の汗が滴り落ちた。
―俺とエリスが似ている。
カレンの言葉、そしてエリスの最後の言葉。何故、俺がエリスに殺意を抱いていたのか。それは奴が俺そのものだったからだった。戦いでしか己の存在を見出せず愛を欲していた。だが奴の愛を受け入れることができなかった俺は奴を突き放してしまった。
俺がエリスを追い込んだ………。だがエリスを救う手立てはあったのだろうか……。
今の俺にはわからなかった…………。浴びせられた謎の光で俺の後悔の念を抱く時間をも奪っていった―
はい。長い長い第3部はこれ終わりです。
中々思うように投稿できず心苦しい限りです。
エリスはここで退場となりましたがアキラとエリスの関係っていうのは原作のフィアナとイプシロンがモデルとなっているのです。
イプシロンはフィアナから人を愛することはどういうことか。彼女と接することで愛を知りそれ故に苦しむ描写がありましたが
エリスの場合は愛っというものが何なのか分からないままで。知らない故に苦しみそしてカレンの存在でアキラに対し歪んだ愛情へとなっていったのですが。
ここでもしアキラがフィアナのように導く、もしくは接せる姿勢を見せていれば違った方向へといけたのではないか。
それをカレンが終盤になって伝えようとするのですが時既に遅しっという状況へとなってしまったっということです。
なのでカレンとエリスの関係もフィアナ、イプシロンと似ているのです。
さて、次回から第4部突入となります。遅筆となりますがよろしくお願いします
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第四部 去りゆく影
第39話
―1ヵ月後 蓬莱島―
「頼まれた物資はこれで全部だ」
黒の騎士団の蓬莱島で物資の運搬を終え貿易商の坂口耕司は2人の連れと共に玉城に確認してもらう。
「あぁ、これで全部だな」
「ではこれにサインを」
スーツ姿のシャーリーがニコッと笑い玉城に書類を渡す。彼女を顔を見て怪訝な表情をする。
「ん?あんた日本人じゃねぇな?」
「はい、ブリタニア人です」
「なっ!?おい、おやじさん!!」
ブリタニア人だと聞き声を荒げる玉城に坂口はため息を吐く。
「おいおい、何捲くし立ててんだよ」
「だってこの女!!」
「俺は黒の騎士団じゃねぇんだ。別にどんな人間を秘書にしたって俺の勝手だぜ」
「けどよ……」
すると少し小柄ながら黒い髪に黒いスーツの格好でサングラスをした人間が玉城の前に立塞がり、これ以上の追求を許さなかった。
「これもあんたの秘書かよ…?」
「こいつはSPみたいなもんだ。最近雇ったんだ」
SPからの鋭い眼光がサングラス越しからも伝わり玉城は…。
「わかった。もう言わねぇから」
そう言われSPは黙ったままさがって行った。
「お前ももうやれブリタニアとか言ってられねぇだろ?例の新しい皇帝のルルーシュ・ヴィ・ブリタニアか。その皇帝がゼロだったんだろ?貴族制度をなくして、ナンバーズの解放してるそうじゃねぇか。財閥を解体ってのは俺にとっては痛い話だけどな。あぁいう連中にも商売相手いたからな……。
それで噂じゃあ超合衆国でもルルーシュ皇帝を支持するという声があるって話じゃねぇか」
「いやな。俺も実はあいつは俺達の味方じゃねぇかって思ってたんだ」
その言葉に坂口の後ろにいたSPが噴出し玉城はSPを睨んだ。
「なんださっきは俺の秘書に難癖つけてたくせに調子がいい奴だな。それで実際のところどうなんだ?」
坂口からの問いに玉城の表情が暗くなる。
「それが扇の奴がよ………アキラのどこにいるか血眼になって探すようになってな…」
アキラの名が出てSPの肩がピクッと反応する。SPの様子をシャーリーも横目で気づいた。
「1ヶ月前の神根島であいつの死体が見つからなかったから必ず生きてるって言ってよ…。藤堂や星刻達はそれどころじゃねぇってあいつら会議する度に喧嘩みたいになって俺最近あいつらと顔合わせるのが嫌でよぉ……」
「あの扇がな…いつ頃だ?」
「神根島からアキラのことを詳しく調べていたころだったか。異能生存体やらギアスやら何か何やら……」
段々玉城の愚痴のようになっていきSPとシャーリーは静かにその場を後にする。
SPはシャーリーの肩に触れると笑顔で頭を横に振るう。
「大丈夫。私は気にしてないから」
その顔を見てSPもサングラス越しであるが安堵の笑みを浮かべる。
少し歩いた先にラクシャータがこちらへ来るのに気づき2人は視線を外しながらすれ違う。
何かに気づいたのかラクシャータはすれ違った2人の後姿を見て怪訝な顔をするが特に気にすることなく坂口と玉城のところへと行く。
「物資はこれで全部?」
「おう、インドの連中からの武器、弾薬全部あるぞ」
「そう……。まぁこれだけ揃ってもあの子の代わりになるか……」
「くそぅ…。俺はまだ信じられねぇよ。カレンが死んじまったなんて」
「島から遺体が見つかってないから死んだとは言えないけど……もう1ヶ月だからねぇ……。紅蓮も大破しちゃって…修理するよりインドにある
ラクシャータの言葉に坂口は顔色が悪くなった。
「ん?あんたどうしたの?」
「あっ??いっいやなんでもねぇよ。あっははは……」
シャーリーとSPが貿易船へと戻り格納庫と入るとシャーリーと同じ坂口の秘書をしている和上千鶴がいた。
「あっ!ご苦労様。ありがとうねシャーリー。あたしの代わりに出てくれて。別の仕事で抜け出せなかったから」
「ううん。千鶴もお疲れ様」
「それから……カレン、その格好はもういいでしょ」
SPは頭を手で掴むと髪と思われたがそれはカツラで脱ぐとに紅く彩られた可憐な髪が現れサングラスを取る。
スーツを脱ぐとワイシャツの上2つのボタンを取り息を吐いた。
「ふぅ~。ちょっと千鶴、胸のさらしきついんだけど」
「何それ嫌味?あんたが黒の騎士団の様子みたいからってシャーリーと一緒に隠してあげたんだから。その胸でアキラを誘惑したんでしょ?」
「そっそんなわけないじゃん!」
2人のやり取りを見てシャーリーは苦笑いをする。
「んで、どうするの?」
さっきまでの口調が変わり真剣を帯びた口調で千鶴はカレンに問いかける。
「みんな心配してんでしょ」
「うん…そうだけど………」
カレンはこの1ヶ月に起こったことを思い返す。
―1ヶ月前―
「うっ……うぅん…………?」
あれからどれくらい意識を失ったのだろうか。カレンは意識を目覚めさせると周囲を見渡すが自分と1人の女性の後姿が見えカレンはベッドから上半身を起こすと女性がベッドからの物音で振り返る。
「えっ……!?」
振り返えった女性の顔を見てカレンは驚きを隠せなかった。
「シャーリー………?」
髪型が変わっていたがシャーリーで間違いなかった。
「カレン!!」
シャーリーはカレンに駆け寄り強く抱き締める。
「よかった!あれから3日も目が醒めなかったから私……!」
「3日?」
カレンはふと自分の頭に触れると包帯が巻かれていることに気づいた。
「待ってて。すぐに坂口さんを呼んでくるから」
カレンを残しシャーリーは急いで部屋を出た。1人になったカレンは神根島で起こったことを思い返しアキラのことを思い出す。
「アキラ……!アキラはどこ!?」
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「神根島で火山爆発のようなことが起こって島がなくなったって言うから。おやじさん、アキラが関わってるんじゃないかって心配して近海をうろついてたらあんたが乗っていた小型機を見つけたのよ」
「ホント、感謝してるよ。ここでシャーリーとまた会えるなんて思わなかった」
「私もまたカレンと会えて嬉しかったよ」
「それで黒の騎士団に帰そうと思ったけど……」
「黒の騎士団に戻ると自由が利かないから。それだとアキラの行方を探れないからここでお世話になったけど……」
「手掛かりなし。お手上げ状態」
ため息を吐き天井を見上げる千鶴。シャーリーは先程、玉城との会話を思い出した。
「あの玉城って人が言ってたけど黒の騎士団は……」
「命を取るまではないだろうけど。探し出して捕まえようとしてると思う。おそらくブリタニア、ルルーシュも何かしているはず」
「ルル………」
皇帝となったルルーシュ。彼の動向に不安に感じるシャーリーであったが。
「シャーリー、あいつがスザクとつるんで何を考えてるのか今はわからない」
「うん……だから怖いの。今のルルが私の知ってるルルなのかそれとも……。でも私は信じてる、信じたいの!」
「シャーリー……」
「おう、今帰ったぞ……って?何しんみりしてんだ」
用事を終えた坂口が戻ってきた。
「それでどうするんだカレン。戻るんなら今のうちだぞ」
「…………」
「……カレン」
黙り込むカレンにシャーリーが優しく寄り添う。
「前の私なら迷うことなく戻ってたはずでも……」
「いいのか?もうここへは戻れないぞ」
「ごめん。でも黒の騎士団とか日本とかそんな問題じゃなくなってる気がする。異能生存体やアキラの背後にいる異端者。私にはもうブリタニアを倒してそれで終わりとは思えない」
「……そうか。お前がそう思ってるなら好きにすればいいさ」
「でも勘違いしないで。矛盾してると思うけどみんなと戦うつもりはないから。……シャーリー、我侭かな私?」
「みんなそうじゃない。私やルル、アキラくんだって。誰かのためって言うけどそれは自分のためでもあると思うよ」
笑顔で答えるシャーリーに胸を撫で下ろすカレン。
「じゃあ。決まりだね!おやじさん!」
千鶴の一声で坂口は大きく頷く。
「よしそうと決まればすぐに出発だ!」
「出発ってどこへ?」
「カレン心配するな。うってつけの場所がある。俺達の行き先はエリア15、サドナ王国だ」
―ブリタニア本国―
皇帝となったルルーシュはギアスで各皇族達を従わせ旧制度の廃止など行う中それに反対するもありこの日もジェレミアが旧貴族の討滅から帰還してきた。
「ジェレミア・ゴットバルト、ただ今、ローゼンクロイツ元伯爵の討滅より帰還致しました」
「ご苦労だった。しかし、我ながら人望がないな。こうも各地で貴族共が反乱を起こすとは。スザクも各地の反乱で転々としている」
「自分達の権利、利益が奪われるとなれば抵抗もするさ」
ジェレミアに続いて戻ってきたのはC.C.とアーニャ。
「C.C.。アーニャもご苦労だったな」
「記憶を戻してくれたから……」
「俺は何もしていない。礼を言うならジェレミアに言うんだな」
ルルーシュ達に保護されたアーニャはシャルルのギアスで改竄された記憶をジェレミアのギアスキャンセラーによって取り戻し今はルルーシュのもとでスザク達と行動を共にしている。
「C.C.、ワイズマンのことで何か手掛りは掴んだのか?」
「手掛かりになりそうなものは全て確認したが確実なものは見つからなかった」
アーニャはルルーシュにカメラを渡しこの数日記録された写真が写されている。
「本国の西部、原住民が住んでいた廃村を中心に調査したがな……あいにく原住民もシャルルが大量虐殺したおかげでどこにいるのか……」
「ワイズマンの痕跡を調査したシャルル達に何か見過ごしがないか改めて調べているが……。C.C.、ワイズマンと彼らはどんな関係だったんだ?」
「神と信者とでも言えるか。神は奇蹟を見せ、人はそれに驚愕し神に信仰し神は彼らを従わせた。私たちのギアスとかそんなもんじゃない。」
「お前達はワイズマン、異端者とどう戦ったんだ?」
「奴らを葬り去る手段としてあったのがアーカーシャーの剣だった。シャルルやマリアンヌのように消滅させた。だがそのアーカーシャーの剣も今はワイズマンの手中にあるのは皮肉だな」
「肝心のワイズマンの行方は知れずに100年以上経ち今再び表舞台に現したということか……。C.C.、奴等と戦ったお前なら今対抗する術はあるか?」
「ないな。ワイズマンはブリタニアだけじゃない。既にこの世界各地に根を張っている。お前達のゼロレクイエムも既に奴らに……」
「言うなっ!!」
C.C.が言おうとしたことにルルーシュは怒声でかき消した。
「例えワイズマンだろうとこのゼロレクイエムの邪魔をさせない。いや、奴らを潰さなければゼロレクイエムは完遂しない!C.C.、アキラの行方も調査しただろうな?」
「人使いの荒い奴だ。あいつも簡単に見つかるわけがない。ワイズマンと同じくらいに難しいぞ」
「神根島からは遺体は見つからなかった。だとすると島のシステムでどこかに転送されたのは間違いない。アイツがワイズマンに関係があるならアイツの近辺で何か起こる。おそらくシュナイゼルもそれをわかって俺と同じことをしているはずだ」
―数日後 エリア15 旧サドナ王国。ウラジオストク港―
冷たい風が吹き渡るウラジオストクへと降りた坂口一行は新生サドナ王国のリーダー、アレクセイと対面を果たす。
「お久しぶりです」
「久しぶりだなアレク。無事で何よりだ」
握手を交わすアレクセイと坂口。坂口の後ろには千鶴、シャーリー、カレンの3人が並んでいる。
「千鶴も元気そうじゃないか」
「逆にアレク。あんた痩せたんじゃないの?」
千鶴からの指摘にアレクセイは苦笑いをする。
「リーダーをやってると苦労するんだ。それでそっちの2人は?」
「シャーリー・フェネットです」
「紅月カレンです。あなたのことはアキラから聞いてます」
「紅月カレン!?では君が黒の騎士団の……」
「まぁ……今は色々あってここに居候って感じで……」
苦笑いをするカレンをアレクセイは驚きの顔を浮かべる。
「話には聞いていたが君のような若い子が黒の騎士団のエースだったのか……」
「アレク、早速だが……」
「あぁいいだろう。カレン、一緒に来てくれ」
アレクセイに連れられカレン達は港にある1つのドックへと入って行く。
中には白い迷彩で彩られたサザーランド、グロースター。新型のヴィンセント、ガレスも少数ながら並べられていた。
その中で男達の集団の中で1人の女性が混ざっていた。
「カレン、彼女はカティア。何か聞きたいことがあれば彼女に聞いてくれ」
「初めまして。よろしくカレン」
差し出されたカティアの手を握りカレンは握手する。
「君達がトウキョウで戦っていたときに奪取したのがこの基地だ。今は休戦中だから襲われる心配もない。ゆっくりしていってくれ」
「ありがとうございます」
「そんな堅苦しくしなくてもいい。これもアキラとの縁で会えたんだ。よろしく」
差し出された手を見てそのカレンは微笑んで握手を交わす。
「じゃあ、よろしくアレク」
「おうアレク!坂口のおやじから来たらしいな」
大きな声をあげてやってきたのはイゴールであった。
「久しぶりだな。なんだおやじ、少し会わないうちに妾を2人も増やしやがったのか?」
ニタニタと笑いながら坂口の首に手を回すイゴールに坂口はその手を払いのける。
「何人聞きの悪いこと言ってんだ!てめぇも相変わらずだな」
「はっははは!!」
「イゴール、彼女は紅月カレン。黒の騎士団、紅蓮のパイロットだ」
「紅月カレン!?じゃあお前がアキラの女か!?」
「……っ!? ひっ…否定はしないけどなんかそう言われると……」
イゴールからの直球的な指摘に顔を赤くするカレンをイゴールは下から上へと舐め回すように見る。
それを見て千鶴はイゴールの顔を抓る。
「イテテ…。何すんだ!?」
「あんたがカレンをやらしい目で見てるからでしょ!」
「黒の騎士団のエースって言うからどんな奴か気になっただけだ!悪かった!」
「ったく。ごめんねカレン。こいつ、酒と女には目がなくて。もし手を出そうとしたら骨一本くらい折っていいから」
「何言ってるんだ。俺は他人の女に手を出す趣味はねぇよ」
「あははっ……」
2人のやりとりを見て苦笑いをするカレン。そしてもうここまでだと坂口が割って入る。
「お前らもうここで終いだ。それでカレン早速だがお前に見てほしいもんがある」
「私に?」
坂口に連れられドックにあったコンテナの前につく。それは坂口の貨物船から運ばれたコンテナの1つで坂口はコンテナを開けるとそこにあったものにカレン驚愕した。
「紅蓮!?」
そこにあったのは自分の愛機である紅蓮。神根島で大破されたはずの紅蓮が膝をついていた。
「確かに紅蓮だがこいつは紅蓮壱式。お前が乗ってた紅蓮弐式のベースとなった機体だ」
「紅蓮壱式……」
「インドで作られたうちの1機でな。俺の部下に運ばせて蓬莱島で合流した時に受け取ってな。こいつの整備ができる場所がないか探してたらアレクから誘われてな」
「ちょっと何でずっと隠してたの!?」
「いやぁちょっと驚かせようと思ってな」
したり顔の坂口に千鶴は呆れていた。
カレンは紅蓮壱式に触れ細部を確認する。最大の武器であった輻射波動は右腕には装備されていなかった。
「武器もちゃんとある」
坂口はシートで覆われたものを見せる。そこには鋭利な爪を光らせる輻射波動機構が横たわっている。だがこの輻射波動機構、特徴の1つの5本の爪が3本になっている。
「…っと言ってもこいつは予備のパーツで作られた代用品だ。サザーランドやグロースター相手ならともかく……」
ここにある輻射波動機構はカレンが紅蓮弐式で使用していた応急品と同型で出力、性能は可翔式、聖天八極式と比べて大きく劣っている。
「それでその代わりってなんだが……」
もう一つシーツに覆われているものを取り出すとそれはアーミーナイフのように収納された武器であった。
「お前達が中華連邦に隠れていた時期にな紅蓮を修理するためにインドに送ったらしいんだ。その時に紅蓮をインドまで届けてくれたのがピースマーク。お前も名前くらいは聞いたことあるだろ傭兵の派遣会社みたいなとこだ。俺の商売相手でもあるんだがな。
そのピースマークにいる1人がこの紅蓮壱式をベースにした機体に乗ってんだがその機体に装備してるのがこいつだ。」
カレンはその武器に触れ細部に様々な武器が収納され複雑な構造になってるのがわかる。
「それでこいつはその試作品でな。ピースマークが持ってたのをいただいたってわけだ」
「………それでこいつを私に?」
「俺はそのつもりで用意した。だが使う使わないのはお前の自由だ」
アキラを助けたい。だがその術を持たない現状の自分ではこの紅蓮は現状打破するきっかけになるのかもしれない。
「やっぱり戦わないと道は開けない………っか」
ルルーシュのような戦略家でもない自分には幾多の戦場で身に付けたKMFの操縦スキルで今を戦い抜く。それがアキラに最も近づける手段であるとカレンは信じ…。
「アレク、ここにあるKMF、武器全部確認したい。それと……」
次々とアレクセイに要求するカレンを見てイゴールは感心する。
「顔に似合わず勇ましい女だ。あのギャップにアキラが惚れたかぁ」
「イゴール、手伝ってほしいんだけど。いいかな?」
「ほぉカレン、手伝ったら何してくれるんだ?」
ニタっと笑うイゴールにカレンは笑ってかえす。
「酒のお酌してあげるよ」
「……がっははは!!気に入ったぜカレン。楽しみにしてるぜ!」
差し出されたカレンの手を強く握り紅蓮壱式の作業へ取り掛かった。
その様子を坂口とアレクセイは見て微笑む。
「悪いなアレク、無理言って」
「気にしないでくれ。俺達もアキラのことが気掛かりだったんだ。そっちのほうも黒の騎士団の目を盗んであれをここまで運ぶのに苦労しただろう」
「インドの連中にはうまく誤魔化したがほぼ盗んだようなもんだからな。トウキョウでアキラが使ったKMFとは訳がちがう』
苦笑いする坂口に釣られ笑うアレクセイだが最近の世界情勢を思い表情が険しくなった。
「ゼロがいなくなったことで扇や星刻が代わって黒の騎士団を運営しているが……」
「ここへ行く前に蓬莱島に寄ったがどうも一枚岩じゃないらしいな」
「星刻からも同じ事言われた。自分たちを纏めていたゼロ、ルルーシュ皇帝を相手に戦えるのかと……」
「なら、ブリタニアと一戦……」
だがアレクセイは頭を横に振るう。
「どうだろうな。それも今向こうでは話の最中だろうな。歩み寄るか徹底抗戦か……。星刻からは超合集国に加盟し共に戦ってほしいと再三言われてるが断ってる」
「どうしてだ?黒の騎士団の力を借りればブリタニアからの独立も難しくはないぞ」
「それでは真の独立じゃない。超合衆国に加盟すれば安全保障担うことになる。依存した状態では独立を我々単独では難しくなる。結局、ブリタニアから超合衆国へ替わるだけだ」
「………お前、もしかしたらマクシム以上に面倒なことをやろうとしてるんじゃないのか?」
マクシムの名が出てアレクセイの顔が曇る。
「自分の手で彼を討ったんだ。それ相応の贖罪をしなければいけない。でなければ全ての戦いが無駄になる」
「一度潰れたもんを元に戻すには手間も時間もかかるわけかぁ……」
項垂れる坂口を見てアレクセイは苦笑いをする。
「こういう時は体を動かしたほうがいいか」
そう言うとアレクセイはカレン達の所へ向う。皆とKMFをいじる姿を見て坂口は微笑む。
「いいねぇ、若いって。さてあいつらから元気をもらうとするか」
坂口も皆と混じって作業に取り掛かる。
深夜となり静まり返る作業場にカレンが1人紅蓮の改修作業を続けていた。
コツコツと足音が聞こえ振り返るとそこにシャーリーがポットを持って佇んでいた。
「もうみんな休んでるよ」
「シャーリー…」
「ほら、少し休憩したら」
コーヒーが注がれたカップを差し出す。
「うん。ありがとう」
カップを受け取りコーヒーを一口飲む。肌寒い体に暖かく染み込んでくる。
「ここ寒いね」
「カティアさんから聞いたけど雪が降るともっと寒いみたい」
「………」
それからしばらく2人の間に沈黙が流れるとカレンはカップを置いた。
「ごちそうさま。シャーリーはもう寝なよ。私はもう少しやるから」
工具を手にしまた作業に戻るカレンの姿にシャーリーは噴出す。
「えっ。なぁに、突然?」
シャーリーの笑い声に何か自分がおかしいことしたのか苦笑いをし振り返る。
「ごめん。アキラくんの事思い出して」
「アキラ?」
「アキラくんもこんな感じで夜中1人でやってたなって」
「ふふっ、そうか。あいつも……」
手に持ってた工具を見て微笑む。
「こういうのあいつに教えてもらったせいかな。KMFいじるの好きになっちゃって」
「アッシュフォード学園にいる時と全然違うね」
「もうやめてよぉ…」
2人揃って声をあげて笑う。こんな風に笑うのは久しぶりだとカレンは感じた。
「……カレン。絶対生きて帰ってね」
「シャーリー………」
「世界がどんなに変わっても私達は変わらないから。学園で待ってるよ。あっ!でも私もカレンのこと言えないか。私も死んだことになってるから」
その言葉を聞きカレンはシャーリーに言いたかったこと口に出そうとしたこことを吐き出そうとする。それはこの1ヶ月何度も言おうとしてその都度飲み込んだもの。
「シャーリー、私ね……あなたの「カレン、私ね」っ!?」
カレンが言おうとしたことを遮りシャーリーは続ける。
「私、今坂口さんや千鶴と一緒にいるの好きなの」
「えっ??」
「皆と一緒に世界中巡っていいところや悪いところを見た。ルルやカレン達はこんな世界を相手に戦ってたんだなって……」
「シャーリー……」
「だから必死に抗っているんだよね。自分だけじゃないみんなが幸せになるように」
「やめて……。私はシャーリーが思ってるような人間じゃないよ」
「…………」
「………ごめんね。今日はもうここまでにしようか」
気まずい雰囲気になりカレンはこの場から離れようとする。
「カレン、まえみたいに戻れないの?」
逃げるように歩もうとしたカレンの足が止まる。
「私はルルにひどいことされた。でも嫌いになれなかった。だからルルやカレンが帰ってくる時ちゃんと迎えたいってそう思ったの。許すとか許さないとかじゃない。カレン、帰ってきてね……お願い」
シャーリーに背を向けているカレンの背中は小刻みに揺れる。
「………おやすみ」
声が震えながらカレンはドッグを後にする。
「カレン……」
「ずるい……ずるいよ、シャーリー…」
肌寒い外を涙を流しながら歩くカレン。あんな言葉をかけられる資格は自分にはないのにシャーリーは待ってると言ってくれた。
「…ダメ!泣いちゃだめ」
シャーリーの気持ちに対して嬉しいのかそれとも彼女に対する罪悪感からなのか複雑に入り混じった感情が溢れ出そうな今、カレンは必死に涙を拭おうとしている。
―数日後 ブリタニア カナダ領―
カナダで行われた反乱分子の討伐を終えたスザクと別れロイド達特派はある洞窟の調査をしていた。
先の皇帝シャルルにより先住民は排除されワイズマンに関するものは全て破壊されたとしているがルルーシュは改めてスザク達に調査を命じたが………。
「ここもハズレみたいだね~」
「先の皇帝は余程ワイズマンを恐れていたのでしょうね」
「それもあっただろうけど恐れていたのはそのワイズマンと共にいた先住民達じゃないかなって思うよ」
「えっ?」
ロイドは洞窟に残された痕跡の一つを手に取り呟いた。
「ワイズマンだといっても1人だよ。そのたった1人を神のように崇めてさ、先代の皇帝の時代はまだ先住民が各地に点在していたんだ。そんな連中がワイズマンの名のもとで集まってごらんよ。そうなるとどうなるか君でもわかるだろ」
「まるでギアスみたいですね……」
「ホント、一体何者なんだろうねワイズマンって。興味を持ったシュナイゼル殿下の気持ちがわかるよ」
すると部下の1人がロイド達にある報告をしにやってきた。その話を聞きロイドの目の色が変わった。
「どうやら当たりが見つかったようだね♪」
ロイドが辿り着いたのは先程いた洞窟から数キロと離れていないところで洞窟前はサザーランド数機、兵士達で固められていた。その洞窟の入り口は大きな岩が半分覆い人目に晒さないように隠されていた。
洞窟に入ると既にスザク達が眩い照明で照らされた洞窟を調査していた。
「ロイドさんのところは?」
「はずれ。ここは当たりらしいけど?」
「まだわかりません。でもこれまでとは違うようです。先の皇帝はここに住んでいた先住民を粛清しワイズマンの痕跡を全て破壊したようですがここだけ遁れたみたいです」
スザクの言うようにここの遺跡に破壊されたような痕跡は見られなかった。今まで調査した遺跡と違い階段を降りると巨大な建造物が立ち並び当時のまま残されているようである。
「なら収穫はありそうだね♪」
ロイドは嬉しそうに辺りを捜索を開始した。だがスザクは表情を暗く落としていた。
(ここ1ヶ月、本国を中心に世界各地にあるワイズマンの遺跡を調査したが有力な情報がないままだ………。ルルーシュ、時間がない。ゼロレクイエムは………)
「早くここから出るんだ!!」
何者かの大きな声が洞窟に響きスザク達は入り口のほうを見ると杖を持った老人と中年の男性2人がいた。
その3人を兵士達が取り押さえていた。
「申し訳ありません!急に現れて…」
「入ってはいかん!!ここに入るのは禁じられている!!」
「じいさん、もう帰ろう。こん人達は軍人さんだ」
連れの男性2人が老人を帰そうとする。スザクは兵士に3人を放すよう命じる。
「ご老人、ここの遺跡について何か知っているのですか?」
「ここは我々一族に伝わる負の遺産。一族が滅されるきっかけとなった神の遺物が眠っている」
「神の……遺物?」
老人の言葉に引っかかり詳しく聞こうとした時自分の名を呼ぶ兵士の声にスザクは洞窟の奥へと降りていった。
「こっ…これを見てください!!」
洞窟の下部に降りスザクは驚愕の表情をする。
「これはっ!!!」
そこにあったのは神根島でアキラが搭乗したレグジオネータが3機立ち並んでいた。
「レグジオネータ!!」
スザクは3機の前に立ち確認する。3機とも損傷は見られない。
「これが神の遺物?」
セシルは先程の老人の話から出た言葉を思い出す。
「あはっ♪こんな完璧な状態で保存されていなんて。すぐに回収して……」
レグジオネータを見て嬉しそうにロイドはレグジオネータに近づき触れようとした時
機体のコックピットから不気味なラインが浮かび上がるのをスザクは気づいた。
「ロイドさん!!」
レグジオネータの脚が上がりロイドを踏み潰そうと脚を振り下ろす。
「へっ!?」
突如動きだしたレグジオネータにロイドは唖然としそれを見たスザクが飛び込みロイドを抱え横へと回避した。標的が避けレグジオネータは一歩一歩と前進し他の2機も起動し動き出した。
「っ!? みんな、ここを出るんだ!!」
スザクの大きな叫び声に洞窟にいた者達は一斉に階段を駆け上った。
「あなた達も早く!!」
スザクに促され3人も急ぎ遺跡から出た。
「セシルさん!ランスロットを!!」
セシルはトレーラーに乗り込みランスロットの起動準備を開始する。
洞窟を出るとレグジオネータが岩場から現れたのを見てスザクはランスロットに乗り込む。
「あぁ……目覚めてしまった。神の遺物………世界が滅びる……」
レグジオネータの姿を見て老人は声を震わせた。
「エナジーフィラー稼動良好。発進可能」
(レグジオネータ……果たしてこのランスロットでどこまで戦えるか)
まだ詳細が明らかにされてないレグジオネータを相手にスザクは新型ランスロットアルビオンを駆り対峙する。
今回も読んでいただきありがとうございます。今回はアキラを登場させずにやってみようと思い執筆しました。そして双貌のオズをクロスさせました。
原作ではカレン達と共闘しましたがこの作品の都合上少し内容を変えました。
原作、白炎が装備している七式統合兵装右腕部を登場させましたが試作品としてなので武装の数も少なく3つだけとしました。
ですので武装も原作とは変わるので詳細は次回ということで。
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40話
背部の緑色のエナジーウイングを展開させ空中へと飛翔しレグジオネータの動きを注視する。
「数は3機……。他にいないようだが…」
2丁のスーパーヴァリスで地上にいるレグジオネータを撃ち命中するが3機は平然としている。
「っく…」
3機は拡散しランスロットを囲うようにする。
「レグジオネータから謎の電波障害。ランスロットのユグドラシルドライブにも影響。このままですとエナジーフィラーが………」
「やっぱりそうきたか……。あのレグジオネータのブラックボックスは解明できずにいたからね……」
ロイド達特派は神根島からレグジオネータの残骸を回収し機体の解明を行っていたが動力源が従来のKMFと同じユグドラシルドライブだとしかわからず、他機に対して動力停止させる謎の現象も明確に解析できずにいた。
「このままだとランスロットは機能停止……でも!」
スザクは起動キーを引き抜きランスロットを停止させる。空中で停止したランスロットはそのまま糸の切れた人形のように地上へと落下していく。落ちていくランスロットを追いレグジオネータ3機は落下するであろう地点へと集まる。
機能が停止しモニターが死んだ状態であったが敵がこちらを狙うのはわかっていた。
「まだだ……まだ早い…!」
このままでは自分は死ぬ。ルルーシュにかけられたギアスにより自分の意思と身体が生き延びようと思考へ訴えかけるがスザクは必死に抑えつける。
ランスロットが地上へとギリギリ落下する寸前にスザクは起動キーを回す。
「今だ!!」
エナジーウイングを広げ、ランスロットを起動させると4つのスラッシュハーケンを射出し3機は各部の腕を損傷。そのうち1機はコックピットへ直撃し前のめりに倒れた。
(エナジーフェラーの残量から考えてあと30秒もすれば…それまでに!!)
握り拳をつくり襲い掛かるレグジオネータにランスロットは回避行動をとるが避けた先にもう1機のレグジオネータが襲い掛かり強烈なパンチがランスロットの左腕を直撃した。
「くっ!」
通常のKMFでの格闘技戦なら手は衝撃で破損するがレグジオネータの手は損傷も見受けられない。
腕で受けたため左腕の稼動ができなったランスロットは2機に挟まれてしまう。
するとスザクは損傷したランスロットの左腕を機体から外すとそれをレグジオネータの1機に目掛けて投げるとヴァリスで腕を撃ちその衝撃でレグジオネータがよろめいた隙にランスロットはMVSでコックピットを突き刺し片腕片足を切断させる。そして残りのレグジオネータにヴァリスを撃つがレグジオネータは回避しながらこちらへ接近してくる。
それを見てスザクはランスロットのエナジーウイングを広げ上昇し緑色の6羽のエネルギー翼からその粒子を刃状にして放出された。回避するレグジオネータだが広範囲で砲撃され全てを回避できず両腕両足そしてコックピットに刺さりレグジオネータは爆発を起こした。
「はぁはぁはぁ…」
敵機が沈黙したのを確認してスザクはランスロットを地上へ降下させる。
「こちらランスロット……敵機は沈黙」
最新鋭のランスロットアルビオンでどこまで対応できるか不安に感じていたが3機相手にうまく立ち回ることができ安堵の色を浮かべたが………。
直後背後から何かがぶつかった衝撃でランスロットが揺れた。
「っ!?」
その正体は最初に撃破したはずのレグジオネータが再び動きランスロットの背後をとり羽交い絞めしたのであった。
「生きてたか!」
レグジオネータの絞めにランスロットの各機関から悲鳴を上げランスロットはエナジーウイングを広げレグジオネータの両腕を切断させエネルギー粒子を一斉に砲撃するとレグジオネータは沈黙した。
それと同時にランスロットは機能を停止し前のめりに倒れた。
スザクはランスロットから降り銃を構えて撃破したレグジオネータに近づき破壊されたコックピットを開き中に入るとそこには………。
「なっ!?」
「スザクくん……はっ!?」
ロイド、セシルが駆け寄り共にコックピットを見るとセシルは声を失いロイドは険しい顔をする。
「………これを動かしてたのってもしかしてこれって言うんじゃないだろうね」
コックピットにいたもの……それはミイラのように干乾びた人間が座っていた。
「はいみんなこれを回収してよ。詳しく調べないとこのからくりが解けないからね……」
レグジオネータを操縦していたのはこの死んだ人間なのか?この機体の謎が深まるばかりであった。
「ロイドさん、あの現地の人間を捕らえて話を聞きましょう」
スザクはあの老人が何か知っているのではないかと感じた。
そしてこの騒動はルルーシュのもとへすぐに伝わりロイド達によりレグジオネータの解析が行われていた。
「ご苦労だったなスザク。それで彼らから何か聞き出せたか?」
「あぁ、彼らはかつて異端者に従いブリタニアと戦った一族の末裔だった。でも………」
「ん?」
・
・
・
・
・
・
・
・
『触れてはいけない?』
『そうです。あれは神と名乗った者の遺物。我々一族は神に従い滅びの道を辿った』
『あなたはあの洞窟にあったものをご存知で?』
『いいえ。私の祖父から聞きました。あの中に入ってはいけないと。神と名乗る者が再び目覚め世界を混沌とし一族は再び滅んでしまうと。我々はあの洞窟を監視するのが一族の掟。そう教えられてきました』
・
・
・
・
・
・
・
「触れてはいけない………」
「聞くと。百数年前の戦いでブリタニアに敗れた彼らは一族離散となってしまった。彼らは自らの行いを悪とし異端者によってもたらされた文明を全て捨て去ることで一族の血を絶やさぬようにしてきた。 実際、彼らの集落を見たが原始的な暮らしをしていた」
「……かつて人は火を使ったことで文明を手にしたと言われている。そして今度は異端者と呼ばれる者がKMFという機械の文明を作り上げたことで神が崇められるようになった……。スザク、俺は異端者、ワイズマンが神だろうと関係ない。奴等がゼロレクイエムの前に立ち塞がるのなら俺はどんな犠牲を払おうと排除する。でなければナナリーや他の人間の犠牲も無意味になる」
「わかってる」
「皇帝陛下~。例のミイラ、解剖分析した結果がわかりましたよ~」
ロイド達特派が入りルルーシュ達に書類を渡す。
「早かったな」
「あのミイラくんのおかげでレグジオネータのことがだいぶわかったよ」
「それでからくりの正体はなんだ?」
「機体は半分ミイラくんが動かしてた。いやあれはミイラという名の機体のパーツっと言ったほうが正しいかな」
「パーツ?」
書類に掲載された写真にはミイラの背部に突き刺さった注射器のようなものが写されていた。
「人間っていうのは対人、もしくはKMF戦の時かなりの緊張、興奮によってアドレナリンってのが出るのはみんなわかってると思うけどそんなのが長時間続くと人間っては長くは持たない」
「っということはこれは……」
戦場で使われる鎮痛剤……。スザクはそう予想した。
「お察しのとおり。でもそれだけじゃないみたいなんだよ……」
「遺体を解剖した結果ですが見てください」
セシルはあるファイルを見せる。
「このパイロットはもちろん亡くなってますがでは何故レグジオネータが起動したのか。それは……タンパク質です」
「タンパク質!?」
「レグジオネータはパイロットが負傷などで操縦できない状態になると鎮痛剤をパイロットの体内に送り込むと同時に、中枢神経を刺激させる効果のある薬品を送り込むことで数時間戦闘が行うことができます」
「しかし、それだと……」
「はい。これはいわゆる麻薬と変わりはありません。更に調べたところレグジオネータはパイロットが死亡した時を想定し人間の血液、タンパク質を注射器から摂取するように組み込まれていました。血液とタンパク質を摂取させれば人間が操縦していると認識せるようにし一度に少量ずつ投与させ長い期間動けるように……」
「それじゃパイロットがレグジオネータのパーツそのものじゃないですか!?」
スザクは困惑の色を隠せなかった。
「パイロットは負傷したにも関らず痛みを感じず機体から降りることもできず戦い続けます。自分が死んでることもわからず。もはや拷問機と同じです」
特派のロイド、セシルも今回レグジオネータの件については表情が曇っていた。KMFでありながらこのレグジオネータはKMFとは大きくかけ離れていた。
2人にはとても不気味に感じていた。
そしてルルーシュ、スザクも100年前以上の機体でありながら現在以上のテクノロジーを持つワイズマンの脅威をヒシヒシを感じた。
-数日後 エリア15 サドナ王国-
紅連の整備も終盤を迎えたカレン達はアレクセイに呼ばれ司令室へと足を運んだ。
「実はここ数日北極海で謎の潜水艇が航行しているのを発見した。それはどうやらエリア11、日本のホッカイドウから出航させたものらしい」
「まさか黒の騎士団⁉︎」
「カレン、心当たりがあるのか?」
「イゴール、ホッカイドウには、黒の騎士団が使ってた拠点がいくつかある。そこからブリタニアの本国へ侵攻する計画もあったの。まぁブラックリベリオンで頓挫したけど」
「カレン、すると黒の騎士団は本国へと侵入したと?」
「そうかもしれない。目的は……アキラ!」
「そうかぁ?アキラ一人のために敵本国に潜入するか?」
イゴールの言う通りもし見つかりもすればブリタニアに戦争の口実を与えてしまう。
「確証はない。でも扇さん達が敵の本国に潜入するリスクを負う何かがあるとすれば確認しないと」
「まさかカレン、お前本国に潜入するつもりか!?」
坂口はカレンと目を合わせると彼女は首を縦に振るう。
「本国にアキラがいるって確証はないんだぞ!!それにお前は黒の騎士団だ。そんな奴が本国にいてみろ!すぐ捕まるぜ」
「いつまでもここいてもラチがあかない。少しでも手掛かりがあれば!」
「アテはあるのか?」
「……みんなに迷惑はかけない!」
「泳いでいけるわけないだろ」
「わかってる!でもどこかに…」
「カレン落ち着いて!」
冷静さを失ってるのを感じシャーリーはカレンを止めようとする。
「まったく、何のために俺がいると思ってんだ」
「えっ……?」
「俺は世界を又にかける死の商人だぜ。世界にパイプはたくさんあるんだ。もちろんブリタニアの密入国も難しくはない」
「坂口さん……」
「ったく、何自分で死の商人名乗ってんだか」
自虐のつもりで言ったのか千鶴は坂口を呆れて見た。
「うるせい。かわいい子には旅をさせろって言うからな。カレン、お前の思うようにしてみろ」
カレンは皆の顔を見渡す。アレクセイ達は笑顔で顔を縦に振るい、はじめは不安げだったシャーリー、千鶴であったが
「ったく、仕方ないなぁ。行ってきなよ、カレン。こうなったら背中を押すしかないよねシャーリー」
「うん、そうだね」
微笑むシャーリーを見てホッと胸を撫で下ろすカレン。
坂口はモニターにエリア15、ブリタニア本国アラスカ周辺の地図を映しだす。
「カレン、行くとなると北極海を往航してアラスカへ入る。少し時間がかかるがこれが今俺が確保できる確実安全なルートだ。太平洋のど真ん中はすぐに見つかってしまうからな」
話を聞き頷くとカレンはアレクセイ達に頭を下げる。
「ごめん!私の我が儘に付き合わせて。でも私だけだじゃあ何もできない。みんな、力をかして‼︎」
そんなカレンにアレクセイは優しく肩を叩く。
「いいんだ。アキラを助けたいのは俺達も同じだ。微力ながら協力する」
「ありがとう、アレク!」
「よぉし!なら早速身支度しようぜ‼︎」
イゴール達は司令部から格納庫へと向かう。
「カレン、アラスカは寒冷地だ。紅蓮もそれに合わせねぇと動けなくなる」
「わかってる。すぐに取り掛かる」
格納庫へと入ったカレンは紅蓮の前に立つ。ブリタニアのフロートユニットを装備。右腕に5本の鋭い鉤爪を揃えた輻射波動機構。
左腕には新しく装備された三式統合兵装左腕部と呼ばれる複合武器。
“紅蓮参式" カレン達によってカスタマイズされた新たな紅蓮がここサドナ王国から旅立とうとする。
- アラスカ -
白銀の雪原を1人の男が歩いてる。吹雪で視界が悪い中彼は視界の先に微かに見える一つの集落。男はゴーグルを外し道筋を確認する。男、流崎アキラは鋭い眼孔で視界の先を捉える。
ここで紅蓮参式を紹介します。
インドにあった紅蓮壱式をカレン達によって改良された機体。背部にブリタニアのフロートユニットを装備。
右腕には輻射波動機構を装備し欠点であった火力は紅蓮可翔式時の輻射波動機構の火力まで上げることに成功した。しかし、その結果、可翔式や聖天八極式にあった遠距離砲撃ができなくなり、輻射波動は1度の戦闘で撃てるのも5発までとなった。一度発射させると次の砲撃までの冷却時間も掛かるようになった。
輻射波動の欠点を補うために右腕の鉤爪をブリタニアで使われているMVSを改良し爪の部分に差替えさせ接近戦できるようにした。
そして左腕には三式統合兵装左腕部を装備。
右腕を接近戦に特化させたことで左腕は遠距離、防御に重点に置いた装備にさせた。
まず1つはガトリング砲を装備。遠距離近距離でも対応できる機銃。
2つは壱式衝撃砲を装備。これは双貌のオズの白炎のに装備されてある六式衝撃砲と同型。
3つは三式超電磁砲。白炎に装備されてある七式超電磁砲と同型であるがカレン達が改良したもの。その機能については作中でいずれ紹介しようと思います。
そして三式統合兵装左腕部が折り畳まれた状態でブレイズルミナスが展開され防御できる。
黒の騎士団のKMFでありながらブリタニアの技術を取り入れているのはカレンの日本やブリタニアなどのこだわりを捨てた表れとしてでもあります。
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41話
あの神根島での騒乱からアキラはアラスカに転移させられていた。
目が醒めると神根島の遺跡に似た場所にいた。あちこち破壊された痕が見られはじめはまだ自分が神根島にいるのかと思ったが突如、男達数人がアキラを見つけた途端アキラを殴打、袋叩きにあったアキラはそのまま意識を失い次に目を醒ますと彼らの住居らしき場所へと連れて行かれ柱に括りつけられていた。
アキラは腰にかけてあるショットガンがないことに気づき辺りを見渡すと彼らの傍に銃が置かれていた。
彼らは一体何者なのか?現地の言語を喋っておりアキラには理解できなかった。
1人がアキラにナイフの刃を向け何か叫んでいる。だがもう1人が彼を止め何か言っている。
この集団のリーダー格なのか皆に何かを伝えると全員この住居から出て行った。
残されたアキラは縄を解く何かないか目で探っているとどこか視線を感じその方向を見ると小さな穴からこちらを見ている瞳と目が合った。
それに驚いたか子供の声が悲鳴をあげていった。
「すぐに殺すんだ。奴は異端者の再来だ」
「そうだ!」
「まだそうと決まったわけじゃない。ここは俺が直接話して……」
「異端者であろうがどんな人間であれ外の人間との接触は禁句だ!それはこの村の掟だ!!」
「それはわかってる!だが…」
その時小屋から物音が聞こえ皆が小屋に入ろうとするがリーダー格の男が止める。
「俺が様子を見てくる。皆はここで見ていてくれ」
静かに扉を開けるとそこにはぐったりとしたアキラがいた。男はアキラの髪を掴み顔を見るとアキラの口元から血が滴り落ちてきた。
「この男、舌を噛み切ったのか?」
男はアキラを縛っていた縄を解きアキラを容態を確認しようとした時アキラの目が開き男の腕を取るとそのまま押さえ込んだ。
「うぐぅ!?」
「騒ぐな」
「抵抗するな。俺に何かすればあんたは殺される」
「俺の言葉わかるのか?」
「まぁな。今はその手を放してくれ。外の連中はあんたを殺すつもりだ。あんたを異端者の再来だとな」
「異端者………」
異端者……その言葉にアキラの表情が曇る。 アキラは男の腕を取ったまま自分のショットガンを置いたあるテーブルまで行き弾の確認をすると銃口を男に向ける。
外では今にも小屋へと入る気でいる村人の男達がいた。扉が開き先程入った仲間かと思われたが現れたのは捕らえたアキラに銃口を向けられている仲間であった。
「みんな、武器を捨てるんだ」
人質にとられた仲間を見て他の者達が何か叫んでいる。だが現地の言語を知らないアキラには理解できなかった。
「みんな、言うとおりにしてくれ。この男は偶然あの遺跡にいただけだ。俺達に敵意はない」
「だっだが……」
「彼はすぐにここでると言ってる。はやく!!」
そう言われ仲間はゆっくりとモリ、猟銃を降ろした。
「ここを出る。何か足になるものが欲しい」
「スノーモービルがある。案内する」
アキラは捨てられた猟銃を拾い村人に警戒しながら男の後を追う。
スノーモービルを見つけアキラは男を乗せ自分は後ろに座った。
「信じていいんだな?」
「あぁ、俺をもう一度あの遺跡まで案内してくれたら何も危害は加えない」
そう言われ男は村人が心配そうに見つめる中スノーモービルを発進させた。
アキラは離れていく村全体を見ると雪をブロックに固めて築きあげた住居イグルーが大小ある小さな村であった。
「ここはアラスカか?」
「ホントに知らないようだな?あんたは何の目的でここに来たんだ?」
「知らん。気づいたあの遺跡にいた。それだけだ。あんた達は原住民か?」
「そうだ。まぁ俺はつい最近まではEUで傭兵として出稼ぎから帰ってきたばかりだがな」
「だから言葉が通じたのか」
「アジア人、イレブンの人間はEUでも見かけていたがまさか故郷で会うとは思わなかった。あんたのその格好は黒の騎士団だろ?噂で聞いていたが本物と会うなんてな」
「あんたが喋っていいのは俺の質問に答える時だけだ。その隠し持ってるナイフ、気づいていないと思ったか」
アキラの指摘どおり男はスノーモービルに置いてあった狩猟用のナイフを懐に入れたのだが気づかれてしまった。
「バレていたか。さすが黒の騎士団ってところか」
しばらくして洞窟の穴の入り口に着くとアルムは松明をおこしその火を頼りに道を進んでいく。そしてしばらくして道が開かれた。そこには神根島にあった遺跡があったが破壊された痕跡がある。
「俺達の祖父の代がここを二度と使われないよう破壊したようだ。ここは異端者がつくった遺跡らしい。異端者はブリタニアと戦うためにつくった物のようだが」
「異端者……」
「あんたはその異端者のなんだ?異端者は俺達部族に災いを振りまいた存在だと言われている」
「…………俺自身よくわからない」
「自分のことがわからない?変な奴だな」
アキラは遺跡に手を触れたりしたが何も変化はない。
「他に似たような場所はあるのか?」
「どうだろうな?俺達の先祖はここへ逃げこの遺跡監視する役目を負って今に至っている」
「………ここから大きな町は近くにあるか?」
「ここからだと70kmほど離れた場所に市街地がある。
スノーモービルを使えば1日休まず走らせれば着くだろう。まっ、それまで燃料が持てばの話だが」
「あんたはどうする?」
「ふっ、俺が部外者にタダで渡すようなお人よしだと思うか」
2人が遺跡から出ると外には男の仲間達が猟銃を持って取り囲んでいた。
「スノーモービルはくれてやる。だから早く出て行くんだな。村に厄介事をいつまでも持ち込ませたくはないからな」
銃口を向けられながらアキラはスノーモービルに乗り込む。
「ここから南東の方向70km。今は夜中だ。軍の目を掻い潜れるかもしれない。あとは自分で何とかしろ」
村人達からは殺意の視線を浴びながらアキラは漆黒の雪原を1人で走り去っていくのであった。
それからアキラは一睡もせずにスノーモービルで雪原を走り途中燃料が切れモービルを乗り捨て吹雪に耐えながらアキラは街の灯りが見えるところまできた。
―ブリタニア本国 カナダ カルガリ――
歩いて半日近く経っており凍えきった体を早く暖めたいアキラは街へと向かう。イレブンである自分がブリタニア本国にいるとなるとすぐに逮捕される恐れがあるためアキラはフードを深く被りマフラーで口元を隠し街へと入る。
人目を気にしながらアキラは人の出入りが激しい店を見つけ中に入るとそこは酒場のようだ。
カウンターの席へと座ると店の亭主が声をかける。
「注文は?」
「いらない。人を探してる」
「人?」
「ここの町に原住民達がいると聞いている。その連中と会いたい」
「…………!?」
その瞬間、店の雰囲気がガラリと変わり周囲の視線が刺さるのをアキラは感じ振り返る。
皆アキラに対し怪訝な表情で見つめその冷たい視線をアキラに浴びせる。
「さぁ……知らないねぇ」
「…………」
この不気味な雰囲気にアキラはここに長居をするのはよくないと感じアキラは店の外へ出て他を探ろうとしたが突如服を捕まれ路地裏へと連れて込まれた。
顔を隠していたマフラー、帽子を脱がされる。アキラを捕らえたのは4人組の男性であった。
「こいつ、アジアの人間か!?」
「アジアの奴がなんでこんなところに?」
「なんでもいい。俺らを探ろうとする奴らは敵だ」
彼らの言葉を理解できないアキラであったが彼は自分に対し敵意を向けているのは感じ取れた。
アキラは自分の髪を掴んでいる男の腕を取り膝を相手の腹部に叩き込むとその隙にアキラは走り出した。
彼らは自分の素性を探ろうとアキラに対しあのような行動をとった。アキラはここに先住民達が出入りしているのだとわかった。
彼らの内1人でも捕え何か聞きたいと考えたが路地を走り回るうちに行き止まりに行き着いた。
すぐに脱出しようとした時、壁越しから何者かの声が聞こえてきた。
「早速、騒ぎを起こしてるようだな」
壁の上から顔を出す男が現れたがそれは自分が人質にとった男であった。
「何故あんたが?」
「あんたを引き渡せって依頼があってな。大人しくしてもらおうか」
男は銃をアキラに向ける。アキラは防寒着に隠してあった猟銃を向けるが背後から追いかけてきた集団が追いついてきた。
「あんたの仲間だったのか」
「そんなところだ。撃つのはかまわないが撃った瞬間、お前はこの街から生きて出れると思うな」
挟み撃ちにされアキラは猟銃を捨て降伏の意思を伝え、男の仲間から手を取られ黒の頭巾を被せられ視界を奪われる。
「よし、あそこへ連れて行くぞ」
・
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手を後ろに縛られたままアキラは連れられあるところへ座らされるとエンジンをかける音が聞こえ自分が今車両に乗り込んでいると気づいた。
すると被されていた頭巾が取れ視界が戻った。
「っ!?」
席の隣にいた人物を見てアキラは驚愕する。
「ジェノム!?」
そこにいたのはサドナ王国で共に戦ったジェノムがいた。
「騒ぎあるところ流崎アキラありっと言ったところか。久しぶりだな」
「お前の故郷はアラスカ。どうしてここへ?」
「ここにいるディック、奴が知らせてくれた」
車を運転していた人物が顔をのぞかせる。そこにいたのは先程自分を捕えた男であった。
「ディックから話を聞いてもしやと思ってな。俺の故郷からカルガリーはそう遠くない」
「まさかジェノムの知り合いだったなんてな」
「……そうだったのか。悪かったな」
「ふっ、慰謝料はジェノムからたっぷりいただいた」
「っ??」
「かなりふんだくられた。こいつ、古い付き合いだからといって遠慮なしだ。はっははは」
「はっははは」
2人の笑う姿にアキラは呆気にとられるのであった。
「ここの街は俺達原住民が集う場所でな。外で出稼ぎに行く奴らが来るんだ。だが軍や政府の目があるから表雑多に動かない。だからあの街で俺達部族の名を言うのは禁句だ」
「……なるほどな。ジェノム、帝都まで行くにはどうすればいい?」
「帝都?ペンドラゴンに行くつもりか!?」
「……あぁ」
「おいおい正気か?」
ディックは呆れて乾いた笑い声をあげる。
「お前さんイレブンだろ。そんな奴が帝都にいてみろ。すぐに捕まるぞ」
「どんな場所か知ってるのか?」
「わかるわけないだろ。帝都は先住民も立ち入れない場所だ。まぁ新しい皇帝が貴族制度の廃止や財閥解体したり、ナンバーズ解放して今までの皇帝とは反対の政策をしてるが俺達に対してはどうだか」
「新しい皇帝?」
「なんだそんな事も知らないのか?子供だと思ってたが甘くみないほうがいいな」
ディックは傍にあった新聞をアキラに渡す。新聞の記事には皇帝となったルルーシュの写真が載せられている。
「ルルーシュ………」
「噂ではこのルルーシュが黒の騎士団のリーダー、ゼロだったらしいな」
新聞の日付を確認するとアキラはあれから数ヶ月の月日が流れていたことに気づいた。
自分が意識を取り戻しディック達に捕縛されてから2日経っておりその間自分はワイズマンに何かされたのか。アキラはワイズマンの行方、そしてこの世界の状況を知り自分が成すことを見分けなければならないと感じた。
・
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街を出たアキラはディックと別れることになった。
「迷惑かけたな」
「何するか知らないが。気をつけることだな」
アキラはトレーラーに乗り込み出立するのだった。
「ジェノム、無理して俺に付き合うことは……」
「ふっ、帝都に行くとか行ってるナンバーズを放っていけるか」
「………すまない」
2人は乗り込むとトレーラーを発進させるのであった。
「ここからペンドラゴンまでどれくらいかかる?」
「その前にお前を連れて行きたい場所がある」
「どこだ?」
「お前が言ってた異端者、奴らのことを知っている人間に会わせる」
「っ!?」
―ブリタニア本国、ここで俺とワイズマン、そしてギアスを決着つける術を見つけることができるのか………―
―ブリタニア本国 帝都ペンドラゴン―
「えぇ、ルルーシュは数日後、本国を発ってエリア11で超合衆国と交渉を…。はい、では予定通り……。わかりました」
携帯を切る人物。サングラスをしたディートハルトが帝都を見渡せる場所から冷笑するように見つめる。
「さぁこれから始まる。破壊と創造の世界を私が撮らせていただく」
前書きでも書きましたが数ヶ月執筆遅らせてすみませんでした。
色々言い訳がありますがあまり言いません。必ず完結させたいので遅筆ですがよろしくお願いします。
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42話
それではどうぞ
―ブリタニア本国 首都ペンドラゴン―
ルルーシュは居間でC.C.と2人でいた。
「ルルーシュ、本当に大丈夫なのか?私と数人のSPだけで」
「こちらはお願いしに行く立場だからな。民主主義に参加させて欲しいって」
先日、ルルーシュはメディアを通してブリタニア帝国は超合衆国への参加を表明した。そしてその交渉の会談を翌日に控えていた。
「だが中立地帯とはいえ交渉の場を日本。会場も奴らに任せるのは危険じゃないのか」
「奴等は俺のことを信用していない。これぐらいのことをしなければ会談の承諾もしないだろ」
居間の電話が鳴りルルーシュが受け取る。
「私だ、ジェレミアか……。そうか、行方を眩ましたか………。いや、気にするな。会談は予定通り行う。お前は引き続きアーニャと捜索を続行するんだ」
「シュナイゼルか……」
「あぁ、カンボジアのトロモ機関がブリタニアから離反したと聞いたときシュナイゼルが手を引いていた。その後の行動を予測してジェレミアに手を打たせたが……。そう、うまくいかないか………」
「だが奴だけじゃない……」
「あぁ。
―アラスカ ―
一面が銀世界に覆われているアラスカ、この日は天候が良好で時刻は夜中であるが太陽が沈んでいなかった。千鶴はホテルの窓から顔を出し空を見上げる。
「そうか白夜だっけ……」
テレビのニュースを見て天候を確認しているとドアのノックの音が聞こえ千鶴はドアののぞき穴から覘くとカレン達の姿を見ると鍵を開ける。
「みんなおかえり。寒かったでしょ。はい、どうぞ」
千鶴は用意しておいたスープをカレン達に渡した。
「ありがとう千鶴」
カレンは早速、口へと運ぶと先程まで凍えていた身体に染みる。
「それでおやっさん、どうだった?」
「あぁ、色々調べてわかったこともあった。シャーリーがいてくれたおかげだ」
ブリタニア本国に日本人である坂口とカレンがいるとなるといくら本国から離れた辺境のアラスカであろうと軍が動く恐れがある。
「シャーリーを旅行者に見立てて俺らを使用人にしてうまく誤魔化せたな」
「それでおやっさん、アキラのこと何かわかった?」
坂口は飲んでいたスープを飲み干しふぅっと息を吐く。
「あぁ、2、3日前日本人らしき奴が別の町にいたらしいんだ。何の目的で来たのかわからなかったが本国で日本人がまずいないからな。アキラの可能性が高い」
「それ以外は?」
カレンは地図を広げてチェックの付いてある地点を見せる。ここから20km離れた場所でよく見ると山間部にあたる場所で車両、人の出入りがないような場所であった。
「ルルーシュは原住民が隠れ住んでいる場所を突き止めて一斉に摘発している。表向きはインディアンの摘発らしいけど軍は村から何か押収してたみたいなの」
「えっ?インディアンを何で今更?」
「わからない。でもルルーシュが目的なしでやるとは思えない。千鶴、私は明日軍がまだ軍が巡回していないこの村へ行こうと思うの」
「あまり時間がねぇ。いつ軍がそこに目をつけるかわかんねぇ。それにここも旅行者だとか誤魔化してるが余所者が2、3日ウロウロしてたら怪しく思われてもおかしくないさ。」
「坂口さん、なら隠してあるトレーラーも……」
シャーリーが言うトレーラーとはここの街から数キロ離れた場所へ隠してある紅蓮を収納しているトレーラーのことである。
「あぁ、トレーラーでここへ行く。そこの村はな……」
坂口が話す中シャーリーは部屋のテレビのニュースを不安げな表情で見つめていた。彼女の様子に気づいたカレンもテレビを見るとでルルーシュが近く超合衆国と会談をするとの報道をしていた。
「場所は日本…!? あいつ、何考えてるつもり」
「ルル……」
カレン達がアラスカにてアキラの痕跡を探っていた頃アキラはブリタニア領のカナダ、バングーバーの付近へといた。
「ジェノム、お前達の一族はアラスカにいるのじゃなかったのか?」
「ほとんどそうだ。だが少人数だが政府の目を盗んで隠れ住んでいる連中もいる。そこにいる長老が100歳を超えてるがお前の言った異端者、そして謎の遺跡。その長老なら何か知っているはずだ」
「そうか……だがいつまでここを登るんだ?」
今、アキラ達はある山へ登山しているが岩場の上を歩き続けて数時間経っていた。
「もうすぐだ。我慢しろ。政府から見つからないために彼らはここへ移り住み数十年外部からの繋がりを断っている」
アキラは一息をつき自分達が登った道を振り返る。確かに登山中誰ともすれ違っていなかった。
カレン達が辿り着いた村は住民や軍の人間の人影もなく不気味な静けさを漂わせていた。10数年前、一族全員で本国から脱出しため現在廃村となっていた。カレンと坂口は物陰に隠れて様子を伺っていた。
「ここの村には人一人住んでねぇはずだ」
「軍の連中もまだ手つけてないみたい」
「こんな山の中だ。見つからないはずだ。だがのんびりはできねぇぞ」
カレン達は遺跡の入り口前へと入っていく。
遺跡の中は暗く前方が見えず坂口が懐からライトを取り出し光を灯し奥へと進んでいく。
カレンは銃を構え警戒しながら進んでいくと広い空間へと辿り着いた。
ここに何かあると思われたが。
「何これ………?」
カレンの眼前に現れたのは神根島で交戦したレグジオネータの残骸が瓦礫の山となっていた。
「こりゃあ…KMFか?」
坂口がレグジオネータの残骸の上を歩き見渡す。
「あのKMFがこんなに……」
遺跡から数キロ離れた場所に隠れてシャーリーと千鶴がトレーラーの中で待機していた。
「そういえば新しい皇帝ってシャーリーのクラスメートだった人でしょ?」
「えっ!?あぁ…ルルね」
千鶴はシャーリーを見てニタッと笑う。
「へぇ~、ルルって呼んでたんだ。もしかして付き合ってたの?」
シャーリーは苦笑いを浮かべる。
「そこまでは……でも、好きだったよ。ううん、今でも好き」
「へぇ~、会いたい?」
その問いにシャーリーの表情が曇る。
「会いたい……。今何をしようとしてるのか。でも無理だよね……多分ルルは会おうとしないよ」
「どうして?」
シャーリーはニコッと頬を緩ませる。
「そういう人だからルルは」
「え~、会わないとわかんないよ。それってシャーリーの臆病なだけじゃないの?」
「ふふっ、そうかも」
「そうだって。じゃないと……」
次の瞬間、眩い光が2人を覆い突然のことで目を細め何が起こったのか戸惑った。
「なっ何!? おやっさん!?」
「違う!!上から!?」
上空から数機のヘリが車両を囲んでいた。
そして遺跡の中でカレンはあるものを見つける。レグジオネータとは形状のKMFらしき残骸が転がっており1つずつ確認するとそれはエリスが乗っていたヘルハウンドに似ていた。
「ヘルハウンド…?こんなものも……」
「おいカレン!」
坂口はカレンを呼ぶと彼は遺跡の天井ばかりを見ていた。
「俺ら、てっきり遺跡とばかりと思ってたが見ろよ……」
坂口はライトを天井に照らすとそこは遺跡とは程遠いコンクリートと金属の造りの天井となっておりそれ以外にここの遺跡そのものが現代の建物とそう違いがない作りとなっていた。聞いていた100年近く前の遺跡とはまったくそぐわないものであった。
「これが遺跡……?」
「今更だがよ、アキラとんでもない事に巻き込まれてないか……」
「……一旦シャーリー達と合流しよう」
2人は急ぎ遺跡から出ようと足を進める。 坂口は一度携帯で千鶴を連絡を取ろうとするが…。
「ちっ、圏外かよ。この田舎が」
「シャーリー、心配してるかも……っ!?」
出口に差し掛かった時、突如ライトが2人に照らされその場に立ち止まる。
数機のヘリ、そしてサザーランド、KMFがこちらへ向け銃を構えて大型トレーラーから兵士がライフルを構えて降りてきた。
「ブリタニアっ!?」
「カレン、逃げろ!!まだ間に合う!!」
撃たれる前にこの場から離れようとしたが……。
「待って!!」
逃げようとする坂口をカレンを止める。
「あれってまさか……」
兵士達が2人の民間人を連れてカレン達に見せつける。
「シャーリー!!千鶴!?」
そう。捕えられたシャーリーと千鶴が銃口を向けられカレンの前に現れた。
「ごめん、カレン」
「おやじさぁ~ん!!」
2人を見て坂口は舌打ちをする。
「あの2人捕まっちまったか……。おそらく紅蓮も……」
「………」
カレンは黙って懐から銃を取り出し放り投げ両手を上げる。
「…仕方ねぇか」
坂口も両手を上げ降伏の意思を出す。降伏の意思を示した2人をサザーランドが囲んだが更に奥からKMFが現れたが……。
「何あのKMF?」
カレンの前に現れたKMFは彼女が初めて見るKMFであった。10数機はあるそのKMFは余計な装飾はなくシルバーを基調としたカラーリング、右腕にはロングライフル。頭部はドーム状で2つのメインカメラが赤く怪しく光っていた。
アキラとジョノムは峠を越えると小さな集落が現れた。
「あそこだ。あそこにシジがいる」
「村の最長老か……」
2人が歩いていると村の入り口付近で3人の男が現れ2人を囲んだ。
「ヘタに動くな」
そう言うとジェノムは3人に話しかける。古い言語のためアキラには理解できなかった。
ジェノムの話を聞いた3人はそのまま村へと入っていく。
「話を通した。着いて来いと言ってる」
3人のあとについて村に入るアキラ。村の住民が物珍しそうにアキラを眺める者。怯えるように眺める者。
村の奥にある住居にたどり着き2人は家の中へと入っていく。
「ここの村の長の家だ」
しばらくすると40代後半であろう男性が4人の連れを引き連れてやってきた。
ジェノムがその男に話しかける。男は険しい表情でアキラを睨む。連れの者達も同様でやはり連中から歓迎していないようだとアキラは感じた。
「シジには会わせると言った」
家を出ると村の者の案内である一軒家へと辿り着く。
「シジは100を超えてる人間だ。あまり長話はできないらしい」
中へ入ると2人の女性に介護を受けている老人がベッドに横たわっている。
息も絶え絶えに老人シジは瞳を開き2人を見つめる。ジェノムはシジの耳元へ話しかけシジは女性2人に何か伝えると女性達は家から出て行った。
3人だけになるとシジは重い口をゆっくりと開く。
「………外の人間と話すのは……………何十年ぶりか…………」
「シジはお前の言葉はわかる」
「なら話がはやい。異端者、ワイズマンのことを何か知っているか?」
「会ったことはない……だが、私の父、祖父達から聞いたことがある。彼は神と名乗りブリタニアと戦ったと……」
「それは知っている。俺が聞きたいのは奴の手掛りがペンドラゴンにあるのか?先の皇帝があんた達一族を駆逐した時何か手に入れたのか?」
「それは……異端者が創造した人型の機械を……」
「KMF……!?」
シジはむせたのか咳を2回し息を整える。
「彼らは恐れていた。国を滅ぼされるところまで追い詰められた過去を繰り返させないよう……。そして異端者達はブリタニアを滅ぼすのではなく自分達の駒にするためnブリタニアに根を張った……」
「根を張った……?何のことだ??」
「わからない……それは、祖父も……」
イジは苦しそうに咳を繰り返しジェノムが背中を摩る。
「アキラ、これ以上は無理だ」
―根を張った。それはどういう意味なのか…俺がワイズマンを追うのをあざ笑うように奴は遠のくように感じた―
「まさか、こんな山奥に隠れ里があったとは……。まだ政府の目が届いていないはず……」
モニターに写された集落を見て男、ディートハルトは呟く。
「あいつ生きてたのかよ…」
共にモニターを見ていた玉城は集落へと入っていったアキラを見て驚愕する。
「ここ近辺に隠れ住んでいる部族がいるのは知っていたので辺りを探ってましたが流崎アキラ、彼にこんな早く見つかるとは…」
「んで、あいつを捕まえるのが扇からの命令だろ。今から行くか?」
「いや、やめておきましょう。あの集落の規模がどのくらいかわかりません。先住民達だからといって甘く見ない方がいいですよ。部隊を送り夜まで少し様子見してからでいいでしょう」
「あぁそうですかそうですか」
玉城はだるそうに椅子に座り込んだ。
「なんで、俺がブリタニアの本国に……」
―「はぁっ!?ブリタニアに行けってどういうことだよ!!」
「ディートハルトによると流崎らしき日本人が本国でいるとの情報があったらしい。お前はディートハルトと共に本国に密入国して彼を捕えるんだ」
「あいつ1人に構ってる暇あるのかよ?」
「彼を秘中に収めていればルルーシュと互角に渡りあえる材料になるんだ。玉城、うまくいけば日本をブリタニア以上の国になることも!!」
「お…扇、お前何言って…」―
その夜、アキラは村にある空き家にて体を横にしていた。陽が沈みかけていることもありこのまま下山するのは危険とのことでジェノムが部屋を提供したのだ。
明日、首都へと侵入する手段を考えなければと一眠りしていたのだが……。
扉を音が聞こえアキラは銃をベッドに隠し警戒するが入ってきたのはジェノムであった。
「アキラ、起きてるか?ここを出る」
「どうした?」
「何者かが
家を出た2人は静寂に包まれた村を駆け出し入り口に村人数人が立っていた。
アキラに警戒心を露にしジェノムに話しかける。
「お前が村に来たせいでおかしな連中まできたと言ってる。はやく出て行けと…」
「………」
村人達の視線を感じアキラは黙って村から出て行きジェノムもアキラに続いて行く。
岩場を歩いていくとジェノムがアキラを岩陰へと連れて行きアキラにゴーグルを渡す。
ジェノムが指差す方向を見ると黒装束の3人組のグループがこちらへ近づいているのがわかる。
「ジェノム、すぐに下山できるルートはあるか?」
「あるが崖を渡らないといけない最悪のコースだ」
「構わん」
「ターゲットが移動を開始。追跡を開始する」
ディートハルトは選伐隊からの報告を受ける。
「さぁ行きましょうか。彼を手中に収める。それで世界の行方を左右する」
―ワイズマンを追う俺。そして俺を追うルルーシュ、黒の騎士団。行くも地獄退くも地獄。これが俺のさだめなら俺は………―
読んでいただきありがとうございます。
最終章となり伏線を回収しようと過去の作品を読み直しながら執筆してたら半年も経ってしまいました。
必ず終わらせますので長い目で見ていただいたら幸いです。
さてカレン達の前に現れた謎のKMF。
これはボトムズのベルゼルガ物語で登場した無人ATウォリアー1を登場させました。
この作品での出目については次回紹介します。
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第43話
自分達を追う者達の気配を感じながらアキラとジェノムは岩の上、岩と岩の間を通り追っ手を振り切ろうとした。
「気をつけろ。足場が悪い、足を滑らせると落ちるぞ」
ジェノムの言うとおり少し足を踏み外すと谷へと落ちてしまう。夜中で視界が悪い中で慎重に進んでいく。
『捕獲が目的なので殺してはいけません。ただし動けないようにしてください』
ディートハルトからの指示に部隊はアキラに向け発砲した。
銃弾が掠めながらもアキラ達は銃で応戦しながら先へと進んでいく。ジェノムもレバーアクション式の古びたライフルを取り出し応戦する。
進んでいくと断崖絶壁へと辿り着きアキラの足が止まる。
「ジェノム!!」
「ここを通るしかない!先に行け!!」
ジェノムは断崖に片手を置きもう片方の手のほうは銃をレバーのほうを軸に回転させ新しく銃弾を装填させると片手でライフルを撃ちながらアキラに続いて行く。
足場を気をつけながら進んでいくとプロヘラの音が遠くから聞こえてくる。
「アキラ、あれは…!」
遠くから武装ヘリがこちらへ近づいてくる。
「流崎アキラ、すぐに武装解除して我々に従ってください」
声の主はディートハルトだと気づきこの連中の正体が黒の騎士団だとアキラはわかった。
「アキラ……」
ジェノムはアキラの肩に軽く触れると視線を下のほうへ向ける。アキラもジェノムの視線を追うあるものに気づくと互いに視線を合わせる。
「あなたに逃げ場はありません。すぐにでも……」
上空から地上からと追い詰める黒の騎士団にアキラとジェノムは断崖から飛び降りた。
2人は断崖の下にあった。木の茂みへと落ちていった。
「くっ、追うんだ!」
顔を腕で隠しながらアキラは落下していき2人は川岸へと落ちていった。茂みで落下の速度が緩やかになりながらも身体に傷があちこちにできた。
「アキラ、こい!」
ジェノムに従いアキラは川の下流へと降りていく。武装ヘリがサーチライトでアキラの居所を探る。
2人はライトを掻い潜りながら下流へと降りて行く。
ヘリは機銃掃射で辺りを撃ちだしアキラをあぶりだそうとする。
「異能生存体なら、この程度で死にはしないはず」
岩陰に隠れて2人は銃撃を防ぐ。
「ジェノム、動くな。連中は俺達の居場所はわかってない」
今、機銃は闇雲に撃ってるだけで下手に動けば当たってしまう恐れがある。
アキラとジェノムはヘリの背後をとるとそのまま隠れて茂みの中へと消えていった。
「アキラ、ルートから外れるがこのままいけば下山できる」
しかし、茂みの中を駆け下り道が開かれる手前になりアキラはジェノムを止めた。
「サザーランドか!?」
敵も気づきライフルの銃口をアキラに向ける前に先アキラがショットガンでサザーランドの胸部を撃った。
「ん? 何事だ?」
軍ではない謎の集団がこの地にいるとの情報を掴みジェレミアはアーニャと共に調査に行っていたが銃声らしきものが聞こえた。
「アーニャ!」
「聞こえた」
「モルドレッドで先に向かってくれ。私達も続けていく」
アキラを追い下流へと降り探っていたディートハルト達は待機させていたサザーランドを発見した。このKMFは本国へ密入国した際裏ルートで仕入れてきたサザーランド1機であった。
「流崎アキラがこちらへ向かったか?」
だがその直後サザーランドがこちらへ向けてライフルを発砲した。
「うおっ!?なんだぁ!!」
玉城は戸惑いの声をあげるがディートハルトは辺りを見てあることに気づいた。腕を押さえて倒れている黒の騎士団の団員が蹲っていたのだ。
「あそこに乗ってるのは……」
サザーランドを奪い搭乗したアキラはジェノムを腕の上に乗せると走り去ろうとした。しかし、直後もう1機のサザーランドが現れアキラが乗るサザーランドを羽交い絞めにした。ジェノムもその衝撃で弾き飛ばされた。
「あのKMFに乗っているのはおそらく流崎アキラです」
機銃でアキラのサザーランドの足元を撃つが直撃はせず羽交い絞めしている味方機に命中していた。アキラの動きを止めるはずが逆に味方のサザーランドが行動不能になり脱出装置が作動し羽交い絞めが解かれた。
「なんでだよ!?」
玉城は命中しないことに困惑していたがディートハルトはもしやとニヤッと不適な笑みを浮かべると。
「そこをどけ!!」
ディートハルトは機銃席に座っている団員をどかしトリガーを握りアキラのサザーランドへ発射する。
操縦系統に異常が発生したのかアキラの動きが止まったまま機銃の銃弾の雨に晒され左腕が破損し機体は銃弾により穴だらけになったが脱出装置は作動せずアキラの機体は沈黙したままとなった。
ディートハルトはアキラの生死を確認しようと発砲を止めたがしばらくしてアキラのサザーランドはゆっくりと歩きだし足元に転がっていたライフルを拾い上げた。
「こっ…これが異能生存体…!奇跡だ!!私は今奇跡をっ!」
アキラの生存を確信しディートハルトは狂気の笑みを浮かべる。ゆっくりと銃口をこちらへ向けるアキラに彼はロケット弾のトリガーを押そうとし玉城は慌てる。
「おっおい!? アキラを捕まえるんだろ!」
「あなたも見たでしょ!彼は異能生存体、絶対死なない。なら…」
ディートハルトはアキラにゼロのギアスに匹敵する魅力に取り付かれていた。
「おいよせ!」
2人が揉めている瞬間、ヘリが大きな衝撃に襲われる。
アキラを助けようと身を乗り出したジェノムであったがどこからかミサイルの攻撃に巻き込まれしまった。
「アーニャ」
「ヘリ1機撃墜した。」
モルドレッドから発射されたミサイルでヘリは操縦不能となりこの場から離れていきどこかへと落下したのか爆煙を立ちこませる。
ジェレミアも現場へと到着した。
「ヘリは別働隊に任せる」
ミサイル攻撃で完全に沈黙したサザーランドをジェレミア達は囲み警戒しながらハッチを開くと意識を失ったアキラがいた。そしてアキラの身体を見てジェレミアは目を疑った。
「銃弾が身体に被弾していない……!?これが異能生存体……」
謎の部隊に捕えられて数日、カレン達は独房へと閉じ込められていた。
「千鶴、大丈夫?」
疲労の色を滲ませる千鶴にシャーリーは心配そうに寄り千鶴は背伸びをして大きな口を開き欠伸をする。
「もうヒマだよ~。もう何日?」
「ったく、お前は緊張感ってのねぇのかよ」
千鶴の態度に坂口は呆れてしまう。そんな中カレンはベッドの上で静かに佇んでいる。坂口はカレンに近寄り話しかける。
「連中は軍か?それとも…?どちらにしろ俺らをこのままにする理由が……」
「もし理由があるとすれば………アキラ!」
「俺らを餌にするってわけか?」
「連中のことが分かればどう動けばいいかわかるけどね」
独房の扉が開き数人の兵士が入ってきてカレン達を見渡す。
「そこの女とお前でろ」
カレン、そしてシャーリーに銃口を向けられた。
「待って!私はいいけど、シャーリーはどうして?」
「そういう命令だ」
「命令?」
黒の騎士団でもないシャーリーを何故?
「カレン!」
シャーリーは深く頷く。素直に従おうと目で伝える。
「……坂口さん、すぐに戻る」
カレンとシャーリーは兵士に連れられ独房を出た。
2人が連れてこられた場所は花が植えられている艦とは思えない場所であった。
しばらくすると車椅子に乗った1人の少女が現れた。それはカレン、シャーリーがよく知っている子であった。
「っ!?」
「ナナちゃん!?」
先のトウキョウ戦で死んだと思われたナナリーであった。
「お久しぶりです」
「……生きていたんだね」
「はい……。シュナイゼルお兄様のおかげで」
「シュナイゼル………!」
カレンは周囲を見渡し監視カメラがあることに気づく。
「ナナちゃん、この艦は今「シャーリー待って!」」
ナナリーに聞こうとするシャーリーを少し強引だがカレンは遮る。
「ごめん。ナナリー、私達あなたに聞きたいことがあるの」
落ち着いた口調で話しかけるがカレンはナナリーがいつもと違うように思えて警戒している。
シャーリーもカレン、そしてナナリーの雰囲気が違うと感じ口を慎しんでしまう。
「それは私もです。そのためにここへ2人を呼んだのです。………カレンさん、あなた達は何故ブリタニア本国にいるのです?」
「それはナナリー個人の質問?それともあなたの背後にいる連中の指示?」
「両方です。……私はお兄様とアキラさんを止めるためにここにいるのです」
「お兄様…?ナナちゃん、ルルのこと……」
「はい。お兄様がゼロであったとそしてアキラさんのこと、異端者も! カレンさんあなた達はアキラさんが本国にいるのを知って密入国を?」
「…………知ったらどうだっていうの?」
「私はワイズマンがこの世界を裏で操っているのを教えられました。アキラさんもワイズマンの同じ存在の人だと」
「それはもう一人の兄さんのほうの口から聞いた話でしょ」
「全てを鵜呑みにはしません。しかし、私はアキラさんの心奥底から見える得体の知れない恐怖を何度も感じ取ったことがあります。時々あの人が恐ろしく感じるときがあります」
「そう、怖いんだねナナリー、ルルーシュと同じように」
「ギアスも同じです。お兄様はゼロを名乗って人の心を踏みにじってきた」
その言葉にシャーリーの表情が曇る。
「私はそんなお兄様が許せません!」
「でもそれはナナちゃんの事を…!!」
「だからです!!だから許せません!お兄様も私自身も……」
「それで、ルルーシュとアキラをどうするの?殺す?」
「………。それで全てに決着がつくのであれば私は罪を背負います!それで世界が生まれ変わるのであれば!!」
ナナリーのその言葉にシャーリーは強張り、カレンは深く溜息を吐いた。
「変わったねナナリー。もう立派な政治家の顔だよ」
皮肉にも聞こえるカレンの言葉。カレンから見てあのアッシュフォード学園にいたナナリーではなかった。
「アキラさんはどこにいるのですか?」
「知らない。知っていたとしても喋らない。あなたの話を聞いたら尚更ね」
ナナリーは悲しげな表情で俯く。
「それでどうする?私達を殺す?」
「カレンッ!!」
敵意を見せるカレンにシャーリーは止めようとする。
「シャーリー帰りましょう。もう話は済んだ」
「カレン……」
カレンは部屋から出ようとした時と数名の兵士達が現れ2人に銃口を向ける。
「っ!?」
すると更にコーネリア、ナイトオブラウンズを従えシュナイゼルが姿を現す。
「2人はもう少し付き合ってもらおうか」
「シュナイゼル………!」
「この要塞ダモクレスは今ペンドラゴンに向かっている」
中華連邦以来の再会となったカレンとシュナイゼル。急なことで不安げなシャーリーの前に立ちシュナイゼルから守ろうと彼を睨むカレン。そして1時間後、事態の急変していくことにまだ彼女は知るはずもなかった。
―……誰だ?俺を呼ぶのは……? 待ってる俺を?……………ペンドラゴン………?すぐにはじまる…………―
「うっ………」
アキラが意識を取り戻し辺りを見渡すと医療器具に囲まれていた。自分は病室にいるのだとわかった。
すると突然自分の顔を覗くアーニャと目が合った。
「っ!?」
「起きた…」
アーニャは携帯を取り出す。
「ジェレミア、流崎アキラ起きた」
身体を起こそうとした時アーニャは銃を取り出す。
「動かないで。あなたは捕虜」
傍には自分の衣服と銃が置かれていた。
「ここはどこだ?」
「太平洋……もうすぐエリア11」
「エリア11…?」
「ルルーシュがあなたに用がある」
するとジェレミアが医務室へと入ってきた。
「あれから約12時間……あれだけ撃たれて致命傷も負わずにか……流石がと言うべきか流崎アキラ。君を連行することになった。大人しくしてもらおう」
「残念だがそれは無理だ。おそらくルルーシュはそれどころじゃなくなる」
「どういうことだ?」
アキラは医務室の時計を見る。
「もう時間だ。ジェレミア、ここで皇室専用チャンネルが映るはずだ。見せろ」
「何故、今それを…?」
ジャレミア達にはアキラの言っていることが意味不明に思えたがしばらくするとジェレミアの無線が鳴り応答すると
『大変です!ペンドラゴンが……!!』
エリア11にあるルルーシュの母校、アッシュフォード学園で行われていたブリタニアと超合衆国の会談はルルーシュの策略により神楽耶をはじめ各首脳陣達を拿捕しうまくいったが…………。
「ペンドラゴンが消滅!?しまった、先手を打たれたか!」
「おそらくフレイヤだ」
するとセシルからの無線が入ってきた。
『陛下、消失半径は約100km。推測どおりだとフレイヤによるものと思われます。それと、上空に巨大な要塞でしょうか?全長3kmはあります』
「ルルーシュ、やはり君の推測通り」
「あぁ。一次製造分のフレイヤ弾頭。間違いなくトロモ機関が開発していた天空要塞ダモクレスに搭載されているはず」
「ん?………、今ジェレミアとアーニャからアキラを捕えて今こちらへ向かっているとの連絡が来た」
「アキラがっ!?奴は本国にいたのか……!」
「面白くないな。そのタイミングでアキラか……」
アキラが潜伏していた本国の帝都ペンドラゴンの消失。C.C.には出来すぎる偶然でこれも異能生存体故なのかと毒づいた。
すると艦内の皇室専用チャンネルのモニターが乱れるとある人物が映された。
『他人を従えるのは気持ちがいいかい?ルルーシュ』
「シュナイゼル!」
『フレイヤ弾頭は全て私が回収させてもらった』
「ブリタニア皇帝に弓を引くと?」
『残念だが私は君を皇帝と認めていない』
「なるほど。皇帝に相応しいのは自分だと?」
『違うな。間違っているよ、ルルーシュ』
『お兄様、スザクさん。私は……お二人の敵です』
映されたナナリーの姿にアキラは特に驚く様子もなく。彼はナナリーの後方に立たされている2人の女性カレン、シャーリーに凝視していた。
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第44話
「ナナリー……生きていたのか?」
モニターから死んだと思われたナナリーが映し出されルルーシュは驚きを隠せなかった。だがそれと同時に……。
『はい。シュナイゼル兄様が助けてくれました』
「それにカレンと………シャーリー!?何故2人が??」
消息不明だったカレンとシャーリーが後方で立っている姿も見えスザクも動揺していた。2人は手を縛られ口に猿轡をされて動けない状態に見えた。
「ナナリー、君はシュナイゼルが何をしたのかわかっているのかい?」
『はい。帝都ペンドラゴンにフレイヤ弾頭を撃ち込んだ』
「それがわかっていて、何故!?」
『では、ギアスのほうが正しいというのですか?』
「っ!!」
『お兄様もスザクさんもずっと私に嘘をついていたのですね。本当のことをずっと黙って。でも私は知りました。お兄様がゼロだったのですねどうして…っ。それは、私のためですか?もしそうなら…』
「ふははっ……!、お前のため?我が妹ながら図々しいことだ」
『!?』
ルルーシュは震える手を抑えて冷静に見せナナリーに対し威圧的な態度をとる。
「人からお恵みを頂くことが当たり前だと考えているのか?自らは手を汚さず、他人の行動けを責める。お前は俺が否定した古い貴族そのものだな」
『お兄様…!』
「お前の後ろにいる2人はなんだ。2人を利用してその程度で俺を跪かせることができると思ったか。そのような手段は先の皇帝と同じだ。やはりお前はあの男の血を受け継いでる」
『っ……!私はお兄様を……流崎アキラさんを止めます。この世界はお兄様のものでもワイズマンのものでもありません!』
ワイズマン。このことからナナリーは既にアキラ、異能生存体、ワイズマンのことも知っているのだろうとルルーシュ、スザクは理解した。
「後ろの2人はもはや俺には何の関係もない好きにすればいい。誰のためでもない。俺自身のために世界を手に入れる。お前がシュナイゼルと手を組み、我が覇道の前に立ちはだかるというのならもう兄妹でもなんでもない。ワイズマンやアキラ、例えお前でも容赦はしない。叩き潰すだけだ。
それと……俺からお前達に教えることがある。流崎アキラはこちらが確保している」
(アキラ…!?)
カレンはアキラの名を聞きビクッと反応した。
「それを信じるかはお前達の自由だ。だがこちらにもポーンがまだ残っているのを忘れないことだ」
ルルーシュとの会話を終えシュナイゼルはナナリーに優しく寄り添う。
「辛い思いをさせてしまったねナナリー。フレイヤの威力と彼女達を見せれば降伏してくれると思ったんだけど」
「シュナイゼル兄様、ペンドラゴンの人達は本当に大丈夫なのですか?」
「心配いらないよ。予め避難誘導を済ませたからね。もちろん被害が皆無とはいかないけれど、最小限に止めたつもりだよ」
「でも、次は人に、お兄様達に使うのでしょう?」
「彼らが世界平和の前に立ちはだかるのならば」
それを聞き近くにいたカレンは猿轡を外された途端シュナイゼルに駆け寄った。
「あんた!自分の国に何したかわかってるの!!」
兵士達に抑えられながらもカレンはシュナイゼルに迫る。
「ナナリー!あんたもだよ!!こうなるのをわかってたんだね!!」
ナナリーは黙って俯いてドレスの裾を強く握りゆっくりと口を開いた。
「…………はい」
「そう……。ナナリー、あんたの気持ちはわかった。さすがルルーシュの妹だよ!!」
ナナリーの沈んだ表情を見てシュナイゼルは側近に命じ彼女を部屋から出すように命じた。
「あんたは私達みたいになってほしくなかった。………残念だよナナリー!」
俯いたままナナリーは部屋を後にした。
「あんた、ナナリーに言ったこと嘘じゃないの?ペンドラゴンには……」
「その通りだよ。住民や皇族たちは消えてもらったよ。そのほうが幸せじゃないのかな?ルルーシュに忠誠を誓う人生よりは。彼女がルルーシュに立ち向かうと決意してもらうためには、余計な情報は入れないほうがいいだろう」
それにはそばにいたコーネリアやジノは言葉を失う。
「くっ…!」
「さてルルーシュは本当に彼を……君はどう思う?僕らを牽制するための嘘かもしれない」
「はっ!知らないよ。あんたの大好きなワイズマンにでも聞けば?」
「ふふふっ…。全てはワイズマンのご意思の下。僕は彼らのポーン、駒に過ぎない」
「そんな得体の知らないモノのために……?」
「では君に聞きたい。人々の願いは何だい?飢餓や貧困、差別、腐敗、戦争とテロリズム。世界に溢れる問題をなくしたいと願いつつ、人は絶望的なまでにわかりあえない」
「それは……」
「君だってそうだ。虐げられる人生ではなくもっと豊かな人生を送りたい、だから銃を握った。そういった欲望、渇望、人それぞれの欲望は否定できないと。だったら、心や主義主張はいらない。そういったものがない秩序、システムと力で平和を実現できるのはもう人間では不可能だ。だが神ならそれは可能だ」
シュナイゼルが言ってることは自分達の理解を超え恐怖を感じだしたカレン、そしてそれはコーネリア達も同様であった。
「そしてペンドラゴンを全て無に戻したとき神が再び目覚めるんだ」
「どういうこと!?」
「その時が来れば見せてあげるよ」
シュナイゼルに連れられ2人は司令室へ行かされた。
大きなモニターからは更地となったペンドラゴンが映されている。
「さぁ神が再び表舞台に立つ時が来るんだ」
一方、ナナリーとの会話を終えたルルーシュの心情は穏やかではなかった。
「C.C.!!何故ナナリーのことがわからなかった!」
「私は神ではない。ギアスによる繋がりがない人間のことまでは無理だ」
「シュナイゼル! この事実を今まで隠しておいたのか。カードとして効果的に使うためにっ!!!貴様のカードの切り方は絶妙だったぞ。それもカレン……シャーリー…………」
ナナリーやカレンももちろん、消息不明だったシャーリーの姿を見たときルルーシュは身を乗り出す想いに駆られてしまった。
「ルルーシュ、戦略目的は変わらない」
そんなルルーシュにスザクに冷静に告げる。
「っ!?」
「ナナリー、シャーリーが生きていたからといって立ち止まることはできない。何のためのゼロレクイエムだ。約束を思い出せ」
「スザク………」
C.C.が持っていた携帯が鳴りだした。
「…………わかった。準備が出来次第会おう。アーニャからだ。アキラをこれから連行するみたいだ」
「よし……わかった」
ジェレミアから連行されたアキラを出迎えたのはロイド達であった。
「流崎アキラを連れてきた。皇帝陛下のところへ」
「ご苦労様〜、ジェレミア卿。彼と例のあの
「手筈通り。ロールアウト済みだ」
「それはよかった。忙しくなって構ってやれなかったから」
アキラを護送した艦からKMFを積んだコンテナが移送されていくのであった。
「それと…」
ジェレミアがアキラに聞こえないようロイドに耳打ちをする。
「……ふ〜ん」
聞いた内容にロイドは特に興味も驚きもせず平然としていた。
更地となったペンドラゴンから大きな空洞の穴が出現した。中が深い為か上空からも中の様子を窺い知ることができない。
「なっ何、これ…!?」
上空のダモクレスからカレンはペンドラゴンの変化に驚きを隠せなかった。
「今、ここペンドラゴンがワイズマン再臨の地となるんだ。そして……」
ー黒の騎士団 斑鳩ー
一方、神楽耶や天子達が人質にとられ混乱する中シュナイゼルからこちらへ協力するとの連絡を受け皆と協議していた。
「こちらと戦えるルルーシュ軍は日本を再占領した部隊のみ。しかし、このパワーバランスはいつ崩れてもおかしくない。被害を最小限に止めるには、決戦のタイミングは今しかない」
扇はこれを期に決戦を挑もうとする。これにはほぼ全員賛成している。
「それとシュナイゼルからだとルルーシュはアキラを拿捕したと情報があった。俺たちはシュナイゼルと協力し彼の確保も行う」
それを聞き藤堂や星刻はまたかと呆れた表情を浮かべる。
「扇、今は流崎アキラの事よりルルーシュとの……」
藤堂は扇がアキラに執着していくことに危機感を感じていた。
「アキラの事だけじゃない。シュナイゼルと組めばルルーシュを挟み撃ちが出来る。そうすれば…」
「しかし…」
「確かにシュナイゼルが我々に合流するとなるとこちらが有利となる。フレイヤを使ったダモクレスを認める気はないが、この場は致し方ない」
星刻は決戦前に足並みが乱れるのを恐れ扇に同調するが…。
(早く天子様を…! 扇、欲を出すな…)
「何だあれは!?」
ペンドラゴンの変化にルルーシュ達が驚きを隠せなかった。
「C.C.!!」
「知らん!!あんなの私も初めて見るものだ!」
「皇帝陛下、流崎アキラをお連れしました」
この事態の中ジェレミアとアーニャがアキラを連れて現れた。
「アキラ、早速だが聞きたいことがある」
アキラはモニターに映るペンドラゴンを見て口を開く。
「お前達が探しているワイズマンがあそこにいる」
ペンドラゴンの変化をアキラは冷静な口調でルルーシュ達に伝える。
「なん……だと?あれがワイズマンが潜んでいた………」
「そうだ。あそこにワイズマンが長い間潜んでいた場所だ。俺はあそこへ招待されている」
「私達の傍にあんな……」
「陛下、超合衆国がこちらへ交戦の構えをとっている模様です。おそらく、シュナイゼルと共同戦線を張るかと……」
ついさっき部下からの報告を受けたジェレミアがルルーシュへと伝える。
「アキラ、お前の目的は……」
「ペンドラゴンへ行く。俺はワイズマンから招待された。あそこで奴が待っている」
それを聞きルルーシュが部屋の外にいる部下に入れと指示を出し兵士がある人物2人と共に入ってきた。
「ジェノム!?」
その2人はアキラと共にいたジェノムと………。
「アっアキラ~!それにルルーシュ~!俺達友達だよな~!!」
墜落したヘリの中にいた玉城が大きな声で叫んでいた。
「ジェノム……」
「すまん…」
「玉城以外は全員死んでいた。ディートハルトもな」
「そっそんなぁ……」
ルルーシュから味方の安否を聞き玉城はその場でへたり込んだ。
「どういうつもりだ?」
「人質だ。お前に対して2人でも足りないくらいだ」
「…………」
アキラはジェノムと視線を合わせる。
「………アキラ、お前は何になるつもりだ?」
「…………」
「お前はワイズマンのようにこの世界を自分のモノにでもするのか?」
「………ルルーシュ、ハワイまでこの艦隊を進めろ。お前たちに見せるものがある」
「ハワイに?」
「そこでお前らの真意を聞く。その内容次第で俺の答えを伝える」
「…………」
「…………」
2人の間に沈黙が流れるがニヤリとルルーシュに不敵な笑みを浮かべる。
「いいだろう。アキラ、それまでゆっくりしてもらおう」
アキラ達はジェレミアらに連れられ部屋を後にした。
「ワイズマン、そしてダモクレスにフレイヤ……。こちらのほうが不利か……」
「ルルーシュ、のんびりハワイにいるわけにもいかない。このままだと私達は前にシュナイゼル、後方に超合衆国だ」
「あぁ、だが今はアキラの話に乗らせてもらう」
そして、独房へと戻ったカレンとシャーリーは坂口に事の事態を伝えた。
「窓から見てたがそんなことになってたか……」
「………カレン、これからどうする?」
「……ここを出る。ずっといたら殺されるよ。ナナリーはそんなつもりはないだろうけどあのシュナイゼルならやるよ」
「だがルルーシュやシュナイゼル、それとナナリーって娘もわかんねぇな。世界を自分だけのものしようとか……」
「違うっ!!ナナちゃんはそんなこと考えてない!!ルルだって……きっと何か考えが…」
「どうだか。現に世界の覇権を巡ってこうやって俺らを巻き込んでるじゃねぇか。どちらかが勝ったところであちこちから不満が出てきてしばらくして第2第3のゼロが現れて同じことの繰り返しだろうよ」
坂口は呆れながら悪態をついていたがそれを聞いていたカレンがハッと何か頭を過ぎった。
「今、何て言った!?」
「はっ?」
「さっきよ!坂口さん、今何て言った!?」
「えっ……?俺らが巻き添えくらうか??」
「違う!!そのあと!!」
「え……っと。第2第3のゼロが出てくるか……」
「そう……。ゼロ……ゼロ……」
カレンはゼロの言葉を繰り返しながら右往左往と独房の辺りを歩く。その姿を見てシャーリーもハッとする。
「私、ずっと気になってた。ルルは皇帝になって世界を手に入れてどうするつもりなのか………。世界中のみんなを………」
「そう……。ギアスで人々を支配して……。それもスザクも……」
「おっおい……?」
2人が頭を抱えて悩みだし坂口は困惑な表情をする。
「スザクだってルルーシュを憎んでたのよ。それが何で………」
―全てに決着がつくのであれば私は罪を背負います!―
2人の脳裏にナナリーの言葉が過り互いの顔を見合わせる。
「兄上、これは一体…!」
コーネリアはこの事態についての説明を求めたがシュナイゼルは平然をとしている。
「このダモクレスや全艦隊に伝える。いいね」
シュナイゼルは落ち着いた口調で口を開く。
「全艦隊に告げる。今、発生したペンドラゴンで出現した空洞。これはこの世界を司るワイズマンがあの奥で我々を見守っている場所だ」
その言葉に兵士達がざわつきはじめた。
「ワイズマンの事は諸君らも既に知っていると思う。彼は私に共に世界の行末を憂い私に協力を促し今日に至った。そして彼の後継者である流崎アキラが間もなくここへ来る。我々は彼出迎えなければないが今彼は皇帝を騙るルルーシュによって捕らえられている。
ルルーシュは世界の全てに悪意を振りまく存在だ。ワイズマンを討つというのなら私はこの地で討ち後継者の流崎アキラを守らねばならない。黒の騎士団も、私と手を携えて共に戦うと宣言してくれた。世界中の人々が待っている。私達の凱歌を。そして願わくば、これが人類にとって最後の戦争であることを祈りたい」
話を終え退がろうとするシュナイゼルをコーネリアは強引に止めた。
「兄上、今のお言葉は!」
「今のはナナリーの部屋には聞こえないようにしてあるよ」
「そういうことを聞きたいのではありません!」
「聞いた通りだよ。まもなくルルーシュと戦いになる。僕らは彼から流崎アキラを取り戻しここへ連れて行く。そのためにここを死守しないといけない」
「私達はワイズマン、いや流崎アキラのために戦えというのですか!?」
「そうだよ。ワイズマンの後継者は彼だ。皆、彼の為に死んでもらう」
「なっ……!?」
立ち去って行くシュナイゼルを見てコーネリアは傍にいたジノを呼ぶ。
「ジノ……例の計画を実行する。あの捕虜を頼む」
「……イエス・ユア・ハイネス」
立ち去るジノの横を1人の男性が通り過ぎコーネリアの傍に膝をつく。
「ギルフォードか……」
それはトウキョウ戦で行方不明となっていたギルフォードであった。
「姫様……」
「まだそう呼んでくれるか……。私には既に何の肩書もないただの女だがな」
「姫様に救っていただいたこの命、最期まで姫様のために」
「そうか……。ギルフォードよ、ブリタニア帝国の最期を共に見届けてくれるか?」
「姫様がそうお望みとあれば……」
ーハワイ上空ー
ハワイへ到着したルルーシュ達それと玉城、ジェノム捕虜を連れてある小さな孤島へと到着した。
「ここは…一度調査させた…」
「ワイズマン達異能者が造った遺跡だ」
遺跡の中へと進む一行は広いフロアへと辿り着く。遺跡とは思えない高度な造りとなっているが。
「だがここまででこれ以上大したものは」
「ルルーシュ、お前達の場合はな」
するとルルーシュ、スザク、C.C.は何者かが自分達の脳裏に呼び掛けているように聞こえる。
「これは!?」
その瞬間フロアから眩い光が発した。ジェレミアらは一瞬視界が遮られ再び視界が戻った時は…。
「皇帝陛下!?」
先程までいたアキラ、ルルーシュ達の姿が消えていた。
「スザク、C.C.も消えた…」
アーニャは辺りを見渡すが彼らの姿は見えない。
視界が開いた瞬間ルルーシュ達は先程までいた場所ではないと気づいた。
今、ルルーシュ達は地面に脚をついておらず宙に浮いてるように感じ辺りは世界各国の情勢をモニターによって映し出されていた。
「アキラここは?」
「遺跡の最深部だ。ペンドラゴンに現れた場所がワイズマンがいる遺跡の総本山といったところだ。そしてここで世界を監視しコントロールしてきた。ブリタニアの日本侵攻もな」
「何っ!?」
「C.C.、お前らのやろうとした嘘のない世界、ワイズマンは知っていた。あの計画は初めから破綻していたんだ。ペンドラゴンの地下深くからお前らを嘲笑いながら見てたんだ」
「アキラ!お前は…!?」
辺りのモニターが突然消えて眩い光に覆われた。
「ルルーシュ!?」
スザクは何者から語りかけられる声が聞こえる。
「これは…ワイズマン!?」
「スザク!お前にも!?」
「お前達にも聞こえたのだな。ワイズマンの声が」
「 」
「「っ!?」」
ルルーシュ達はワイズマンからの声に顔色を変える。
「ペンドラゴンでアキラを待つ……自分の後継者に!? アキラが辿り着いた時世界が……!?」
「………ゼロレクイエム」
アキラから発した言葉に3人は背筋が凍る。
「アキラ、お前…!」
「それが…お前達の計画か……」
「君は僕らの計画をワイズマンから……」
「レクイエムか……。お前達それで全ての決着を……」
「単刀直入に言う。アキラ、お前は俺達の敵か?」
「……………」
暫くの沈黙が続きアキラはニヤリと笑う。
「俺がそんな茶番に付き合うと思うか」
「君はワイズマンの後継者になって何を…?」
「お前達にワイズマンを渡すくらいなら俺が手に入れる」
「っ!!」
その言葉に4人のアキラ、ルルーシュ達が距離をとりジリジリと退がって行く。
「ギアスと異端者…。やはり相容れないか……」
C.C.はかつての自分らを見ているように感じた。結局繰り返されるものなのかと…。
「俺の邪魔はさせない。お前達、シュナイゼルも敵だ」
「アキラ!!」
ルルーシュを守るため前に立ちアキラと対峙するスザク。先に飛び込んだアキラにスザクは蹴りで応戦し両者は徒手格闘で応戦しスザクはアキラの腕を取り柔道の背負投げで投げ地上に叩きつけるとアキラを押さえ込もうとした時アキラは組まれた瞬間スザクの腰にぶら下げている銃を取ろうとする。
それに気づいたスザクは取られまいアキラを押さえ込もうとするが両者は転がっていくがその瞬間1発の銃声が辺りに響き渡った。
「スザク!?」
「っが…!?」
スザクの左脇腹から血が滴り落ちアキラから離れていく。
「アキラ貴様!!」
アキラはこの場から消えこの空間には3人だけとなった。
「スザク!!」
ルルーシュは撃たれたスザクに駆け寄る。
「大丈夫だ……。急所は外れている。それよりもアキラを止めないと……。彼は恐らく…」
「わかってる。奴は……」
「ルルーシュ、勝てると思うか奴に……」
「C.C.、勝つんだ。でなければゼロレクイエムは完遂しない」
ルルーシュ達の帰りを待つジェレミア達は屋外から小型艇の音が聞こえ急ぎ遺跡から出ると自分達が乗っていた小型艇が飛び立っていた。
「一体誰が…?」
「………アキラ」
離れていく小型艇をジェノムは茫然と見ていた。
ルルーシュのアヴァロンはルルーシュ達の小型艇がこちらへ向かってくるのを見つけ帰還させるためしゃ下を降し迎え入れようとしたが小型艇はスピードを緩めることなくアヴァロンのKMF格納庫まで突っ込んだ。
小型艇の衝突により現場は混乱している間アキラは混乱に乗じある場所へと向かっていった。
「違う!!我々はまだ島にいる。敵に乗っ取られたのだ!すぐに捕らえるんだ!」
アヴァロンの混乱はジェレミアにも伝えられていた。
「ジェレミア!!」
スザクを支えながらルルーシュが戻ってきた。
「皇帝陛下、流崎アキラが…!」
「ジェレミア、捕らえるんじゃない。討てアキラを!」
「っ!?」
「奴を殺す気でないと死ぬぞ!」
「アヴァロンで内乱が!?」
「捕虜の脱走か!?」
アヴァロンの混乱で軍に乱れが生じその中をアキラが駆るKMFが飛び立っていく。
アキラが紺碧の青色のKMFティルヴィングはライフルでグロースター数機撃破していきこの場から突破していくのであった。
「おい、外が騒がしくなってきてるぞ」
坂口はシュナイゼル艦隊が動き出していくことを外から覗き込んでいた。
「このままだとルルーシュ達と…!」
カレンは焦りの色を滲ませるが突如営倉の扉が開いた。カレンは身を構えるが……。
「あんたは……ジノ!?」
ー現れたワイズマン。彼を崇拝する者、滅ぼそうとする者。両者から狙われる俺。俺の邪魔をするのなら誰だろうと容赦しない。そしてワイズマンの力を手にした時俺は………ー
半年近く休んでしまいもうわけありませんでした。
言い訳になっちゃいますが話も終盤にかかり結末をどうしようかと迷いやヤル気などダラダラと半年も経ってしまいました。
次回も送れてしまうかもしれませんがあと数話よろしくお願いします。
機体説明
-ティルヴィング-
ブリタニア帝国により開発されたKMF。名前の由来は北欧神話に出て来る武器からです。神根島で軍によって回収されたヘルハウンドをロイド達特派が量産を目的に改修。それと以前拿捕し改修した紅蓮聖天八極式のデータも元につくられた機体。
機体の外見はヘルハウンドと変わりはないが背部に透明のエナジーウイングを装備。ランスロットアルビオンのように戦闘に使用できないがそれを機動力で補い空中でのスピードはランスロットを上回る。
武装はランスロットで使用されているスーパーヴァリスと腰の裏に据え付けてある接近戦用のショットガン。左腕に蛇腹剣が組み付けられており飛び出すように剣が出される。
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第45話
ーアッシュフォード学園ー
学園の生徒会室にはミレイとリヴァルが佇んでいた。
「ねぇ、リヴァル」
「何すか、会長」
「もう会長じゃないよ。……凄いよねぇ、うちの生徒会メンバーが世界を相手に戦っているなんて」
「それ嫌味ですか?俺がニーナを守れなかったからって」
「考えすぎよ。あなた頑張ったじゃない。人間1人できることに限界があるよ。だから誰かといたいんじゃない?」
「そういうもんですか?」
するとミレイの携帯が鳴りだした。
「はい……。ウチの局が……そうですか………。えっ!?私が??」
ミレイの戸惑いの声にリヴァルは怪訝そうに眺める。
「リヴァル…仕事入った」
「そう……ですか。……それで?」
「それがね………」
アキラが乗るティルヴィングはペンドラゴンへ向かって行った。そのアキラを追いルルーシュ率いるブリタニア帝国の先行隊がアキラを発見した。
背後からの銃撃を掻い潜りヴァリスで応戦し撃破していき去って行く。
「マウナロア山の準備はどうなってる?」
「手筈通りに進みまもなく完了するようです」
「よし…。アキラがペンドラゴンへ到着する時間は?」
「約40分後…」
「奴がハワイから出て約1時間。KMFのエナジーフィラーはそれまでに尽きるはず…。それまでにアキラを確保すれば…」
そう予測するルルーシュであったがロイドが口挟む。
「いや〜それがね皇帝陛下あのKMF、予備のエナジーフィラーをもう一つ内蔵されてて稼働時間は2時間以上は持つと思うんだけど」
これにはルルーシュは額に手をやる。ここにきてロイド達特派の技術が裏目に出るとは…。
そしてルルーシュの傍らにはジェノムと玉城が立っていた。
「ジェノムといったな。アキラはお前達を見捨てて行ったが…」
「なら……俺を殺すか?」
それには玉城は怯えてルルーシュに助けを求める。
「待ってくれよルルーシュ!俺たち仲間だよな!!」
「………ジェノム、お前はアキラの味方か?」
そんな玉城を無視しジェノムに問いかける。
「…………。俺は…自分の一族を守るために戦い、皆の生活を楽にさせるためにサドナ王国にも行った。あんたやアキラが俺たちに危害を及ぼすならそれは俺達の敵だ。………だが」
「…………」
「この戦い、あんたに得があるのか?そんな気がする」
「……どういう意味だ?」
「……。アキラの行動もただワイズマンの後継者になるために向かったとは思えない」
「何故そう言い切れる?」
「アキラはそういう男だ。相手の掌で躍らされる奴じゃない。俺は……お前達を見届ける。そして俺の為すべきことを見極める」
「好きにしろ」
両者の話をオドオドと聞く玉城を無視しルルーシュはスザクの容態を確認しようと医務室へと入る。部屋へ入るとそこにはベッドから起き上がり部屋を出ようとするスザクがいた。
「スザク、無理をするな!急所外しているがその体でランスロットの操縦は……」
「そんな悠長してる時じゃない!ここで決着をつけなければ後はない!!ルルーシュ…そうだろ」
「スザク……」
「シュナイゼルはフレイヤを使うはず、ニーナが作ってくれているあれが必要になるはずだ」
そう言うとスザクは医務室を後にし部屋はルルーシュ、C.C.の2人が残された。
「行くんだな……」
「いくつルートを探っても答えは同じだったからな。あの時の結論に間違いはないと」
「よく仮面を被り続けたなナナリー、あの2人の前で。だがなルルーシュ……」
C.C.はルルーシュの背中に優しく手を添える。
「ルルーシュ、もう十分じゃないのか?お前はよくやった」
「俺が悪を成さねばならない理由はわかっているだろう?それにアキラ、異端者と俺達一族の血塗られた因縁に終止符を俺が打たなければ」
「しかし、ダモクレスにはナナリー、カレン達もいる。お前は今まで……」
「もう、特別扱いはできない。消えていった数多の命のためにも、俺達は止まるわけにはいかないんだ。アキラも恐らく……」
「…………あぁ、そうだなルルーシュ、ワイズマンは私の責任もある。お前だけに罪は背負わせないさ」
「ふっ…。だが……」
「??」
ルルーシュの体が小刻みに震える。
「シャーリーと会うとことができた……。こんな嬉しいことはない」
「勝てば直接会うこともできるぞ」
「俺にそれは許されない。この目で生きてることが確認できただけで十分だ……」
「そうか……」
C.C.はルルーシュの頭を優しく撫でる。終わらせなければいけない。これがルルーシュ達を巻き込んだ自分の役目だと……。
ーダモクレスー
独房の扉が突如開きそこにはジノが立っておりカレンは警戒する。
「ジノ…あんた……?」
「紅月カレン、ここ出たいと思わないか?」
この意外な申し出にカレンが目を丸くする。
「どう言う意味?」
「我々はこのダモクレスを奪取する。お前達を脱出させその騒ぎの隙に行動を起こす」
「クーデターを起こすっていうの?」
「そうだ」
物陰からコーネリア、ギルフォードが現れる。
「我々はワイズマン、シュナイゼルには賛同できない。ダモクレスを制圧しルルーシュを叩く」
「それはアキラも含まれてるの?」
「……そうだ」
「そう………なら断る!私はアキラを助けに行くの!彼を倒そうというなら私の敵だ!」
「……。一つ教えてやろう。ルルーシュ達の艦隊から1機のKMFが出撃されこちらへ向かっている。どうやらルルーシュから追撃を受けてるらしい」
「まさかアキラ!?」
「恐らくそうだろう。私は流崎アキラがワイズマンの後継者になるのなら止めなければいけない」
「アキラはそんなこと望んでない!」
「何故そんなこと言える?」
「彼を信じてるから!」
揺るぎない眼差しをコーネリアに向ける。
「……そうか。なら勝手にしろ」
「っ!?」
「どちらにしろお前達が動いてもらわなければ困る」
そう言うともう1人ある人物を呼び寄せる。
「咲世子さん!?」
現れたのはトウキョウ戦から行方不明だった咲世子であった。
「この女に格納庫まで案内させる。それからはお前達で何とかするんだな。もし戦場で会えば私とお前は敵だ」
カレンはシャーリー、坂口を連れ独房から出る。
「……礼は言わないよ」
「ふっ、そんなの期待していない」
「早く、皆様!」
咲世子に促されカレン達はその場を後にする。
「よろしいのですか?」
「いいさ、ジノ。もしもの時は貴公にあの女の相手をしてもらうさ」
「また難しい要求を」
ジノは苦笑いしそれにつられコーネリアも笑う。
「愛する者のために戦うか…。私も一個人として誰かのために生きてみたかったな」
「姫様……」
「すまん、ギルフォード。今のは忘れてくれ」
「姫様、まもなく流崎アキラがこちらに…。おそらくルルーシュ達もまもなく」
「あぁ………。兄上には執着すべき欲がなかった。皇帝の座も己の生死すら…。ワイズマンが現れたことで生まれて初めて信じるものを見つけそのために生きようとする…。もしかすると兄上は今幸せかもしれないな」
そして自分はブリタニアを己の手で滅せようと動いてる。結局、ユーフェミアを除けば本当に愛していた家族は誰もいなかったのではないか。そんな空虚な気持ちになった。
「……では行こうか!」
「「イエス・ユア・ハイネス」」
カレン達は咲世子の誘導で身を隠しながら格納庫へ向かっていった。
「咲世子さん、どうしてここに?」
「私はあれからシュナイゼルによって捕らえられ逃げるチャンスを伺っていました。それがコーネリアからあの計画の話を聞かされ共に行動することにしました」
格納庫入口にたどり着くと兵士が慌ただしく動いていた。近くにカレンの紅蓮が並べられているのが見えた。咲世子は近くにいた兵士の背後に近づき沈黙させると一つの小さな小型艇へと行き扉を開き皆、乗り込んだ。
「もうすぐ戦闘になります。巻き込まれないようすぐに区域から脱出してください」
「おい、あんたは一緒に逃げるんじゃないのか?」
「私は残ってナナリー様を救います」
「あんた日本人だろ……どうして?」
「……日本人やブリタニア人とか関係なくあの方を救いたい。それだけです」
「あんたも誰かのためにかっ………」
「ふふっ。そうですね」
坂口と咲世子は互いの顔を見て微笑する。この女といいカレンといい自分の周りにいる女は顔に似合わず勇ましい女傑ばかりだと坂口は感じた。
「さぁ、のんびりしてられねぇな。カレン、紅蓮でひと暴れしてくれ。俺らはその間に脱出する」
「うん!」
小型艇を出ようとするカレンであったがそれを見てシャーリーは徐に彼女の手をとった。
「シャーリー!?」
「カレン、死なないでね。生きてルル達と一緒にアッシュフォード学園に帰ろう」
「シャーリー……」
カレンは先程あった独房であった彼女との会話を思い出した。
「シャーリー……、あの時の話…あれはあくまで憶測なんだよ。ルルーシュが本気でアキラを殺して世界を手に入れるのなら私はあいつを討たないといけない」
「やめて…」
「この戦場は生半可な気持ちで戦えない。私も死ぬ気で戦わないと……」
「やめて………!」
小さな声であるがシャーリーの握る手が強まりカレンの腕に痛みを感じる。
「そんな事言わないで、カレン……!」
涙を瞳に溜めシャーリーはカレンに想いをぶつける。
「もう…これ以上私の大事な人達が傷つくのを見たくないの。皆生きて帰る。そう願うことがいけないことなの……!?」
「シャーリー……」
「約束してカレン、必ず生きて帰るって。じゃないと私……許さないよ」
カレンは泣顔のシャーリーを安心させようと微笑み、握られた彼女の手を優しく握る。
「わかった約束する。だからそんな顔しないで」
「カレン…」
「じゃあ…行ってくる!」
「待ちなカレン、紅蓮のコックピットに俺が用意してたもんがある。なんかあった時使え」
カレンは頷くと咲世子と共に小型艇を出て紅蓮のもとへと向かい、コックピットのハッチを開き紅蓮に乗り込んだ。
操縦席の隅にあるものを見つけるとそれを手に取る。
「これはアキラの……!」
そこにあったのはアキラが愛用していたショットガンの同型であった。
アキラと再会した時のことを考えて用意していたのだろう。カレンはショットガンを置き直すと先程のシャーリーとの会話を思い出していた。
「……約束破ったら許さないかっ………。まるでギアスみたいじゃない。生きて帰れって」
カレンは失笑するが涙を溜めて訴えたシャーリーであったがカレンからは怒りにも訴えでもあった。
カレンにはその言葉が重くのしかかった。
アキラの追撃をはじめてから遂にシュナイゼルのダモクレスが目視でも確認できる距離まで近付いた。
「シュナイゼル…! ニーナの方は?」
「完成したようですが、うまく稼働できるか」
「この短期間で完成しただけでも十分だ………」
ーハワイ上空ー
少し遅れて黒の騎士団の艦隊がマウナロア山を通り過ぎようとした時不気味な振動の音が聞こえ艦内は騒然とする。
その時マウナロア山が突如噴火し火山弾や火砕流が旗艦の斑鳩を襲った。
そしてその知らせはルルーシュにも知られた。
(あの山にはエリア11のフジ程ではないがサクラダイトが眠っている。これで後方の憂いはなくなった)
そしてシュナイゼルはアキラが駆るティルヴィングがこちらへ近づくのがわかる。
「ルルーシュ達を迎撃しつつ前方のKMFを保護回収する」
「殿下、少し…」
カノンが耳打ちをする。
「コーネリアが……」
「それとイレブンの捕虜達が脱走しました」
「おそらく彼女の仕業だね。それよりも今は…」
「各機発進させルルーシュ達を止めるんだ。流崎アキラがワイズマンに接触するまでどんな犠牲を払っても戦うんだ」
「殿下……」
「カノン、僕は冷静だよ」
支離滅裂な命令にカノンは表情には出さなかったがシュナイゼルの変貌に戸惑いを感じていた。しかし……。
(殿下……これがあなたが命を捨ててまで成し遂げたいことなのですね…)
カノンから見るとシュナイゼルは今生々として充実しているように見えた。
『アキラがもうすぐシュナイゼルと接触する。行くぞスザク!』
「あぁ…、あとは進むだけだ!!」
スザクは撃たれた腹部の痛みに耐えながらランスロットアルビオンを発進させる。
そのランスロットと併走するようにモルドレッドが横にくっつく。
「アーニャ?」
『いつか言ったけど、あなたもそうだけどルルーシュもマゾ……』
「??」
『人身御供のつもりだろうけどこんな役目誰もやりたい人なんていない。全てを捨てて逃げてもよかったのに』
その問いにスザクはフッと笑みを溢す。
「なら君はどうして僕らに付き合うんだ?」
アーニャーは暫く沈黙するが…。
『私もマゾだから…』
意外な回答にスザクは呆気に取られたが堪えきれずに声に出して笑った。
「はっははは!そうか……」
『………』
「ありがとう、アーニャ」
ほんの一瞬であったが腹部の痛みが忘れることができた。
『……行こう』
「あぁ……」
ルルーシュの追撃隊からの攻撃を掻い潜りながら進んでいくアキラのティルヴィングを発見。スザクはヴァリスを撃つがスザク達の存在に気づいたアキラは回避しヴァリスで応戦する。
「アキラ、君を止める!」
エナジーウイングを展開させエネルギー弾を連射する。アキラもエナジーウイングを展開させ高速で回避する。スザクも追跡し両機とも超音速の動きでの戦闘を開始した。
近くにいた傍機は巻き込まれ撃破されていった。
これにはジェレミア達も近づけずにいた。
「っく…!」
だがまだ傷が完治していないスザクはスピードが増す戦いに顔色が悪くなっていく。
回し蹴りを見舞うがそれが空を切りその隙にティルヴィングは体当たりする。その衝撃にスザクの身体が揺れスーツの脇腹から血が滲み出てきた。
危険と見たアーニャがモルドレッドの主砲をティルヴィングに向け撃つ。
アキラも応戦するが背後から砲撃でジェレミア達が被弾していく。どこからかと見ると巨大要塞ダモクレスを中心としたシュナイゼルの艦隊であった。
「っく…。シュナイゼル!」
「ふっふふ…。ルルーシュ、君に彼は討たせないよ」
「奴にはフレイヤがある。体勢を維持しシュナイゼル達との戦闘を開始せよ!作戦は変更はないこのまま続行する!!」
「騒がしくなった!今なら」
格納庫のKMFが出撃するのを見てカレンは紅蓮を起動させる。
「何だ!?誰が??」
気づいた兵士達を尻目に紅蓮は格納庫にあるKMFに向けて左腕の三式統合兵装左腕部を展開させガトリング砲を撃ち数機を沈黙させる。
機体の爆発により格納庫は混乱しその隙に紅蓮はカタパルトデッキから脱出する。それに続けて坂口、シャーリーが乗る小型艇も脱出する。
『カレン、もう帝国軍とシュナイゼルの連中がドンパチやりだしたぞ。気を付けろ!』
坂口からここからペンドラゴンまでの方角距離が送られた。
「坂口さんは逃げて、私はアキラを探す!」
カレン達を追いシュナイゼル艦隊から出撃された無人KMFウォリアー1
集団で襲いかかる敵に対しカレンは距離を取るとガトリング砲を展開させ迎撃をする。近づく敵に対しMVSのブレードを使う右腕の鍵爪を開くと爪が赤く染まり引っ掻くようにウォリアー1へと振り下ろされた。機体に大きな爪の痕がコックピットまで達し中を見るとそこにいるはずの人間がいなかったのだ。
「このKMF無人!?」
その間にもウォリアー1は押し寄せてくる。
「キリがない!」
するとカレンは紅蓮の右腕の鉤爪を折り曲げ輻射波動と左腕の三式統合兵装と連結させると三式統合兵装左腕部から砲口が出現する。
「これで!!」
砲口から輻射波動機構が射出され10機近くのウォリアー1を撃墜させることが出来た。両腕を連結させることで聖天八極式と同じ威力の輻射波動砲弾を発射できるようになった。しかしまた多くのウォリアー1が押し寄せてくる。
カレンはこれ以上の戦闘の消費は危険だと判断した。この輻射波動砲弾は連射ができないことが欠点であった。ここから離脱しようとした時コーネリア派の部隊がウォリアー1の部隊に攻撃を開始した。
「不味い、巻き込まれるまえに」
シュナイゼルと一進一退の攻防を繰り広げるルルーシュ達はダモクレス周辺の騒ぎに気づきだした。
「内乱が起こったのか?」
『確認します……。交戦しているのはシュナイゼル艦隊の無人KMFとサザーランドを中心とした部隊です』
せシルからの報告を受けルルーシュは思案する。
(これは罠なのかそれとも……)
「それと…紅蓮弐式らしき機体が1機シュナイゼルの艦隊と交戦しています」
「紅蓮!?」
モニターに映し出された機体は細部に違いはあるが紅蓮に間違いはなかった。
『カレン!?ダモクレスから脱出したのか?』
「殿下!」
「コーネリアだね。急ぎ見つけて捕えるんだ。無理なら射殺しても構わない。それで騒ぎは沈静する。外の敵は彼女に任せよう」
彼女、そうダモクレスにいるナナリーがあるスイッチを握りしめていた。
『ナナリー準備はできたよ』
「………はい」
シュナイゼルに促されナナリーはスイッチを押した。
ダモクレスからフレイヤが発射され眩い光がルルーシュの艦隊を包み消え去っていく。それはコーネリア派の艦隊を巻き込んでいく。
「作戦は続行!このアヴァロンはこのまま後退。ダモクレスとの距離を保て。各部隊は波状攻撃を持ってダモクレスにフレイヤを撃たせ続けよ」
(だがアキラがワイズマンと接触する前にここを突破しなければ…)
「こんなに、あっさりと……私が」
戦況を聞きスイッチを握っているナナリーが震える。
『ナナリー、さぁ次を』
「は、はい」
自らの手で投下されるフレイヤ。これにより多くの命が奪われている。
(あんたは私達みたいになってほしくなかった)
(お前の考えが間違ってる。世界はそんな優しくはない)
カレン、アキラから自分に投げかけられた言葉が脳裏を過り気がつくと瞳から涙が落ちていた。
「泣かないと決めたのに……」
ただの傍観者でいるのを辞め自分で責任を負うと決めたはず…。
「これが…お兄様、お父様が背負ってきた罪……」
その時銃声の音が扉越しから聞こえハッとナナリーは音があったほうへ顔を向いた。
ダモクレス内ではコーネリア達はシュナイゼル派と銃撃戦を繰り広げている。
「姫様!ダモクレスの制圧20%まで成功してます」
「雑魚を相手にするな!シュナイゼルの首だけを狙うんだ!!ジノ、KMF部隊の状況は?」
「初動の攻撃で我々のほうが優勢でしたが敵の無人KMFの数に圧されて今は…」
「っく…。例の人形か……、時間がない直ぐにダモクレスの制圧に……」
その時、突如辺りが揺れだし何が起こるか警戒してると無人機KMFウォリアー1が外壁を破壊し現れた。
「なっ!?」
ウォリアー1がコーネリア達に銃口を向ける。
「姫様!!」
ギルフォードがコーネリアを庇い彼女の前に立つと辺りに銃声の音が響き渡った。
「しまった!アキラを見失った」
先程からのフレイヤの投下によりアキラから離れたスザクであったがアキラの姿が無く何処かへ消えていった。
『スザク、無事か??』
「あぁ、だがアキラを見失った」
「今はいい。先にダモクレスを叩く。行けるか?」
「そう言いたいところだがダモクレスの周辺が混乱している。無人機と戦闘しているKMFも僕らに攻撃してくる。簡単には行かせてくれない」
「やはり敵か……。っ!?」
突如、アヴァロンが被弾し艦に衝撃が襲う。
「背後からの攻撃です!敵は……黒の騎士団!」
「何っ!?」
ルルーシュの作戦により斑鳩及び各艦隊も被弾している箇所が見受けらえるが健在のようであった。
(くっ……。全滅とまではいかなかったか。まずいこのままでは)
「彼等が来たか。面白いことになった。ふっふふ」
この戦場が混沌していく様を見てシュナイゼルはほくそ笑む。
カレンもフレイヤの衝撃で今自分がどこにいるのかわからなくなった。
「さっきのはトウキョウの時の……。っは!!、坂口さん!シャーリー!!無事なの!?返事して!!」
戦闘しながらも坂口達が乗る小型機を確認していたがフレイヤによって見失ってしまった。 急ぎ探そうとするカレンであったが視界に入ったのはかつて苦楽をともにした仲間がいる斑鳩であった。
「黒の…騎士団」
この事態もアキラ、異能生存体故に起こった状況なのか。これもワイズマンによって仕組まれたことなのか。そんな訳のわからないものに振り回されてたまるか!そう怒りの表情を浮かべるカレンであった。
中々執筆が進まない今日この頃ですがうまく風呂敷を畳めるか不安になりながらも最後までいきたいと思ってます
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46話
小説でボトムズ の新作が連載されたり、BR BOXが発売されたりとボトムズ 関連が慌しくなりました。
自分もBRBOX欲しいですけど高いなぁ〜
誰かお金を空からばら撒いて欲しいですね(笑)
黒の騎士団の参入により事態はより混沌とし戦闘は激化していった。
「こりゃあ、すごいぞ。おい全部撮っとけよ」
テレビ局の報道ヘリが政府の従軍記者とてこの様子を全世界に伝えようとカメラを回している。 そしてそのヘリの中にミレイが乗っていた。彼女は不安げな様子で外を眺めていた。
「どうした怖いか?」
「いっいえ、そうじゃないですが…」
「強がんなよ。戦争報道は初めてだろ。安心しな、こっちは非戦闘機じゃない旗を掲げてるんだ。敵も俺たちに撃ったりしないさ」
そうは言われたもののミレイはここで同じ生徒会の皆がいることが心配でならなかった。
(ルルーシュ、スザク君こんな大きな戦争起こしてどうするつもりなの?………カレンあなたも何処かにいるの……、ライ………)
フレイヤの攻撃で混乱に陥った戦場であったがアキラはスザク達がいないのを確認するとワイズマンのもとへと再びエナジーウイングを広げるのであった。
そのアキラのティルヴィングを黒の騎士団も確認できた。扇はシュナイゼルから詳細を聞き全軍に指示を出す。
「ルルーシュに流崎アキラを討たせるな!彼をペンドラゴンまで守るんだ!」
同時にシュナイゼルより先にアキラを確保できればこの先の交渉で有利になる材料になると扇は思案する。
「扇……」
星刻は扇もアキラを目的に動いている事に気づいている。
「戦力が半減している状態でこの戦局は……。だが天子様達をこのままには…」
ルルーシュに囚われている天子をどうにか救い出したい。星刻は藤堂へプライベートチェンネルで回線を開いた。
「藤堂、今ルルーシュを挟撃をして我らが有利に見えるが…」
『シュナイゼルはフレイヤで我らを巻き込んででもルルーシュを討つ気だ』
「そうなると天子様達の命が危うい。だが扇は退く気はないだろう。藤堂、カを借してくれ」
「殿下、黒の騎士団がルルーシュ達と交戦に入りました」
「フレイヤを発射する。ルルーシュ達は進軍することも後退することもできず壊滅するはずだ」
「しかし、このままですと黒の騎士団もフレイヤに巻き込まれて…」
「構わない。僕らの目的は流崎アキラを本国まで誘導し守ること事だ。そのためなら彼らは人身御供になってもらう」
アキラはルルーシュ、コーネリア派そして黒の騎士団の軍を相手にしながらブリタニア本国領域に入りペンドラゴンまであと少しまでと迫った。
シュナイゼル派が協力の形をとってるがアキラを実際援護しているのは皆無で実質1機で全軍と戦っている。
「見つけた」
アーニャのモルドレッドがアキラのティルヴィングを見つけハドロン砲を展開させ照準を合わせアキラに向けて撃った。
アキラは瞬時に回避するとモルドレッドの存在に気づきライフルで迎撃する。 フレイズルミナスを展開さえ防御するモルドレッドにアキラが相手が遠距離攻撃型だったと思い出し接近戦に持ち込もうと左腕から蛇腹剣を出す。
ミサイルの弾幕を避けながらこちらへ近づくティルヴィングにアーニャはフレイズルミナスで防御するがアキラは胸部からあるモノを発射させると辺りが眩い光に覆われた。
「閃光弾!?」
アーニャは視界を奪われてしまいティルヴィングの蛇腹剣がモルドレッドのハドロン砲を突き刺り破壊すると次に胸部に狙いを定める。
視界を取り戻したアーニャは瞬時に機体を動かし回避するが間に合わず蛇腹剣は突き刺さったもののコックピットまでには被害は及ばなかった。
モルドレッドは両腕でティルヴィングを動かさないよう肩を掴んだ。
「ジェレミア!!」
「アーニャ!!脱出を!」
ジェレミアはサザーランド・ジークのスラッシュハーケンを2機に目掛けて発射させる。それに合わせてアーニャは脱出装置を作動させモルドレッドから離脱する。 それに気づいたアキラはモルドレッドの両腕を力づくで引き剥がすと寸前でハーケンから回避しモルドレッドはハーケンの串刺しとなってしまった。
「くっ、アーニャ!」
ジャレミアはアーニャが乗っているコックピットを保護するがその隙にアキラはその場から離脱するのであった。
「アキラ、逃がさない!」
アキラの後を追おうとするスゼクであったが藤堂の斬月が立ち塞がった。
「枢木!国を捨て、位にのみに固執する醜い存在に成り果てたな。お前の願いはどこにある?」
「自分はただ、明日を望んでいるだけだ」
斬り込む藤堂であったが斬撃を回避したスザクはMVSで斬月の両腕両足を切断し藤堂は機体から脱出するが……。
「時間は稼げた。星刻!!」
「何っ!?」
神虎の荷電粒子重砲でルルーシュのアヴァロンに直撃させる。砲撃でできた穴から神虎他数機が押し寄せてくる。
「間に合わなかった。中に入られたら」
「白兵戦に持ち込めば勝機はある。動力制御と通信を押させ、人質の救出に向かう」
星刻達はアヴァロンへと侵入し天子達の救出へと向かった。
「星刻やるな。本当ならアキラを本国に入る前に落としたかったが仕方がない。これよりミッション、アパテ・アレティアを開始。ここまでよく仕えてくれた。君達の覚悟に感謝する」」
ルルーシュはジェノムのほうへ顔を向ける。
「ジェノム、私の頼みを聞いてほしいのだが」
「っ??」
「君にもミッション、アパテ・アレティアに参加してもらう」
「どういう意味だ?」
「間もなくこのアヴァロンは沈む。その前にやってもらう事がある」
「内容によるな。断るとどうする。ギアスをかけるか?」
「ふっ…」
「くそう!どこもドンパチやりやがって。シャーリー、しっかり掴まってろよ!!」
「うん……」
急ぎ戦場から離れようとする坂口とシャーリー、シャーリーは心配そうに窓から戦いの様子を伺っていると3機のKMFの機影を見つけた。
出撃したルルーシュの蜃気楼はスザク、c.c.のランスロットと合流しダモクレスに接触しようと前へと進める。
そしてその傍のところを1機の小型機が戦場から離脱しようとしていた。。
小さな窓からこちらを見つめる人物とルルーシュはモニター越しであったが目と目が合った。
「シャーリー………!」
(………!?)
蜃気楼にルルーシュが搭乗しているのを知っているはずがないシャーリーであったが何故かあのKMFから目が離せなかった。
「ルル……?」
「脱出…できたようだな……」
ルルーシュの瞳から一筋の涙が溢れ落ちる。死んだと思っていた彼女の無事の姿を直で見ることができた。だが………。
(さよならだ……。シャーリー………)
ルルーシュは振り向きもせずにダモクレスへと向かって行く。
「敵ナイトメア編隊接近中。戦闘は蜃気楼です」
「黒の騎士団のがアヴァロンをまもなく制圧しようとしている。ルルーシュ、最後は捨て身か。見苦しいな。ナナリーにフレイヤの準備をさせるんだ。これで終わりにする」
「来るぞ、ルルーシュ」
フレイヤは刻々とその組成を変化させる。その組成に対応する反応をぶつければフレイヤの臨界反応は停止できる。爆発までの約19秒で現場環境データをプログラムに入力しなければいけない。
フレイヤの弾頭がこちらへ発射されたのを確認されルルーシュは急ぎ操作盤でプログラム入力を開始した。
(プログラムを完成させても、実行時間は0.04秒。失敗は許されない!)
「スザク!今だ!!」
「イエス、ユアマジェスティ!…………うおおおぉ!!」
スザクはニーナが完成させたフレイヤキャンセラーを爆発を起こすフレイヤに投げると大きな爆発を起こすはずのフレイヤはその爆発を収縮させると消え去っていった。
「出来た…!」
「まだだ!ダモクレスに接触する。スザク行くぞ!!」
成功したルルーシュは蜃気楼の絶対守護領域でダモクレスのブレイズルミナスを相殺させその隙にスザク、C.C.を突入させると
ブレイズルミナスの出力元を調べ相転移砲で2箇所を攻撃しダモクレスの中間辺りがブレイズルミナスを殺す場所となった。
ダモクレスに接触することに成功したルルーシュ達は攻撃を回避しながら着陸できる場所へと降りルルーシュは蜃気楼から降りた。スザクもそれに続こうとしたが…。
「スザク!お前はこのままアキラを追うんだ!」
「ルルーシュ…!」
「C.C.、お前もスザクと一緒に行くんだ」
「……できるのか?ナナリーをその手で撃つ事になるかもしれないのに?」C
「ゼロレクイエムの障害になるのなら仕方ない。」
「……ルルーシュ、恨んでいないのか?私のことを。ギアスを与えたことで、お前の運命は大きく変わってしまった」
「らしくないな、魔女のくせに。……C.C.、勘違いするな。これは俺自身で決めたことだ。お前がくれたギアスを受け取るのも、戦うことも全て俺自身が判断し行動した。その結果が今に至る。それだけだ……」
「ルルーシュ……」
「お前がいてくれたから俺は歩き出すことができたんだ。感謝してるさ」
思いがけない言葉にC.C.失笑する。
「初めてだよ、そんなこと言われたのは。後悔しないようにな……先に行って待ってるぞ」
「ルルーシュ……」
少し遅れてジェレミアのサザーランド・ジークが現れた。
「陛下は私達が守る。君は先に行くんだ!」
「……必ずアキラを……ワイズマンを討つ!
ランスロット2機はダモクレスを後にしアキラの追撃を開始した。
ダモクレスの内部ではシュナイゼル派とコーネリア派の闘いが繰り広げられている中コーネリア達は先程のKMFの銃撃で負傷したことで物陰に隠れて辺りを警戒していた。
「まさか、貴様に助けられるとはな……」
コーネリアは負傷した左肩を咲世子によって介抱されていた。
「ナナリー様のところへ向かおうとしたら皆様が…。痛みますか?」
「私のことはいい。それよりも…」
コーネリアの隣では呼吸を荒くして苦しい表情のギルフォードが横になっていた。コーネリアを庇った際腹部を負傷してしまった。
「すまん、ギルフォード。私を庇ったせいで」
「いえ…。姫様が無事で何よりです」
そうは言うが顔色は悪く、彼の腹部は咲世子が応急処置を施したが包帯越しから血が滲み出ており出血が止まらない。
「私はここまでです…。姫様、私が敵の足止めをします」
「ギルフォード!?」
「私はもう助かりません。ならせめてこの命あなたのために……」
「………」
「敵が手薄なルートがあります。ここからならシュナイゼルがいるところまで遠くはありません」
咲世子が示すルートであればシュナイゼルがいる司令室までは早く到達できる。先にダモクレスを制圧すればナナリーの確保も難しくはないと彼女はそう思案した。
「行ってください……」
「お前まで私を置いて先に………」
「………申し訳ありません。ジノ、姫様を頼む」
「…イエス・マイ・ロード」
悲痛な表情でジノは返し、ギルフォードはライフルを杖代わりにして体を起こす。
「姫様、あなたのもとで共に戦えたことを騎士として誇りに思います」
ギルフォードは優しく微笑むと駆け出し敵の前へと現れここから離れていった。
「ギルフォード………。貴公だけを死なせはしない……。私も後から…!」
「ルルーシュ達の接触を許してしまいました。それとコーネリア達が……」
「うん、時間だカノン、これでダモクレスはルルーシュ達を捕らえた檻となった。カノン
「時間がくれば……。殿下、今からでも遅くは……」
「カノン、言ったはずだ。この戦いは私のためにではない。ワイズマンのための戦い」
「………わかりました。私もお供します」
「ありがとう、カノン。それから彼女をここへ連れてくるんだ」
シュナイゼルのところまであと少しのところまで来たコーネリアであったが敵の猛攻にあい1人また1人と自軍の兵達が撃たれていった。
「くっ、これでは」
銃弾がコーネリアの肩に被弾しライフルを落とすと咲世子はクナイで応戦しつつ彼女を介抱する。コーネリアを守るようにジノは前に立つが
ジリジリとこちらへ迫るコーネリアに苦渋の表情を浮かべる。
「ここまでか……。すまん、ギルフォード」
死を覚悟するコーネリアであったが何者かが敵の背後から敵を斬る人の姿が見えた。 瞬く間に4、5人を斬り倒すとこちらへと近づく。
「そこにいるのは……⁉︎ 貴方は‼︎」
ジェレミアがコーネリア、咲世子だと気づくと急ぎ駆けつける。
「ジェレミアか……」
「アーニャ、君も!?」
「ジノ、あなたも」
「コーネリア様…この内乱はあなた様が引き起こしたのですね。咲世子、まさか君が一緒にいるとは…」
「この方は怪我をしております」
「アーニャ、コーネリア様を頼む」
駆けつけたアーニャは黙って頷き彼女の介抱をする。
「お前達はルルーシュ側の人間、敵に介抱されるつもりはない!」
「その通り、しかし貴方にはここで死なれては困るのです」
「どういう意味だ!?」
「ジェレミア様!」
咲世子はジェレミアがルルーシュと一緒ではないと気づき焦りの色を滲ませる。
「急ぎルルーシュ様のところへ!」
「咲世子??」
「ルルーシュ様が ナナリー様のところへ接触する前に…。今のナナリー様は……!!」
管制指令のフロアへと入ったルルーシュを迎えたのはシュナイゼル、カノンそしてナナリーであった。
「シュナイゼル……」
「たいしたものだね、ルルーシュ。もう少し時間をかけたかったけどこうも早くダモクレスを攻略されるとは思わなかった」
「攻略? 攻略したのは貴方の本質だ」
「本質?」
「貴方には勝つ気がない。朱禁城での対局、黒の騎士団のクーデター、貴方は常に負けないところでゲームをしている。そしてこの戦いは貴方にとって流崎アキラを守るための戦い。捨て石のつもりでこのダモクレスと心中するつもりだった」
「………」
「その心中の道連れに俺をダモクレスに引き込もうとした。ナナリーがいれば必ず来ると予想したのだから」
カノンは周辺にルルーシュの味方がいないか警戒するがそのような人物は見られなかった。
「その通りだ。だが勝負に勝っても君はここで死ぬ。」
シュナイゼルはナナリーが持っていたフレイヤの制御スイッチを奪う。
「このスイッチで残りのフレイヤを今すぐにでも自爆させることもできる。僕はワイズマンの為にならこの命を投げ出すことも躊躇しない」
「それは困る。あなたには俺のために働いてもらう」
「何??」
「このダモクレスもフレイヤを全て手に入れる」
「いいえ、これは誰にも渡しません!」
何者かの第3者の声にシュナイゼルは声のあった後ろを振り向いた瞬間
1発の銃声が鳴り響いた。 シュナイゼルの脇腹から血が滴り落ちるのを見てルルーシュはジェレミアがここへ来て撃ったのではないかと思ったがそうではなかった。
「まさっ……か…?」
シュナイゼルが倒れた瞬間ルルーシュの目に映ったのは瞳を開いたナナリーが銃を構えていた。
「ナナリー様!?」
カノンも思いがけない人がシュナイゼルを撃ったことに狼狽えた。ナナリーは次にカノンに銃口を向けると躊躇なく引き金を引いた。
「がっ!?」
カノンはその場に倒れて胸から血を流した。
「ハァハァハァ………」
「ナ…ナナリー…?」
「お……お兄……様」
ガタガタと手を震えながらナナリーはルルーシュと目を合わせる。
「お前…!?」
「誰にも討たせません……。お兄様を討つのは……」
ナナリーは銃口をルルーシュに向ける。
「私です!!」
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第47話
「8年振りにお兄様の顔を見ました。それが人殺しの顔なのですね。おそらく私も同じ顔をしているのでしょうね。……人を撃った時の感触がまだ……」
ナナリーの銃を握る手もガタガタと震えている。
「お前ギアスの……。では、やはり今までのフレイヤはお前が?」
「はい。 シュナイゼルお兄様の本当の目的も……。流崎アキラさんを止めるために!お兄様が死ぬことになったとしても。ですからお兄様にダモクレスを、このフレイヤの鍵をお渡しすることはできません!」
ナナリーはルルーシュに銃を構えたままあるボタンを押した。
「コーネリアお姉様、ナナリーです。今司令室を抑えました。すぐに来てください」
ダモクレス艦内で呼びかけるとナナリーは別のボタンを押すとダモクレスの速度が上がりだした。
「ナナリー!?お前……!」
先程の呼びかけがコーネリア達にも聞こえた。
「トウキョウ戦後、捕らえられた私はナナリー様のご配慮で命を助けていただきました。しばらく身の回りの世話してたのですが……私は見ました。ナナリー様が一瞬、瞳を開いている姿を……」
長い間ナナリーと共にいた咲世子は彼女の変化に見逃さなかった。
「ナナリーは……私達が決起するのを知っていたのか…」
「シュナイゼルお兄様達の目を盗んでこのダモクレスについて調べてました。今、アキラさんを追ってワイズマンのところへ向かっています」
「どうするつもりだ?」
「フレイヤをワイズマンに撃ちます!お兄様、アキラさんもこの世界を手にする資格はありません。ゼロを名乗って人の心を踏みにじってきたきたお兄様には」
「では、あのまま隠れ続ける生活を送れば良かったのか?暗殺に怯え続ける未来が望みだったのか?お前の未来のためにも」
「いつ私がそんなことを頼みましたか?それがお兄様の願いだとしても私は否定します!人の不幸の上に成り立つ幸福は…いらないです!」
ダモクレスが急加速で移動していることにスザク、カレンは気づいた。
「ダモクレスがっ!? ルルーシュやったのか?」
「何!? どうして?」
制圧に成功したのかと思われたがダモクレスは速度を緩めずこちらへ近づこうとしている。
事態が収束する前に急ぎ彼に追い付かなければならない。カレンは前方を走るアキラ、ティルヴィングを目撃し呼びかける。
「アキラ!! それに乗ってるのアキラでしょ!!」
「………」
「アキラ帰りましょう!あなたの居場所はそこじゃない!」
「……俺の…邪魔をするな!」
アキラはカレンの呼びかけに冷淡にかえす。
「ワイズマンの後継者になりたいの? そんなもんになったら世界中からあなた狙われる!もう…安息できる場所がなくなる」
「お前には関係ない。ここから出ていけ!」
「この…分からず屋!!」
ティルヴィングに向け撃とうとした時背後からランスロットの砲撃が襲いかかりカレンは回避する。
「スザク……!」
「カレン、どうしても邪魔をする気か?」
「スザク!あんた達何の目的でこんな事をしてるの?」
「何⁉︎」
「やり方は違うけれど、あんたはあんたなりに日本のことを考えていると思っていたの。でもこれは何‼︎ まるで世界中の憎悪を一身に集めて……」
「………」
ランスロットからのエナジーウイングの攻撃を掻い潜りながら紅蓮は左腕からガトリング砲を展開させ迎撃する。
「自分は、俺とルルーシュにはやらねばならないことがある」
「そう、そんなに力が欲しいの?……だったら」
2人が対峙している隙にアキラはワイズマンのもとへ行こうとするがc.c.が立ち塞がる。
「悪いがお前を通すわけにはいかない」
「………」
アキラ……、彼もギアス、ワイズマンに運命を狂わされた男。そしてアキラはワイズマンの後継者となるべくルルーシュと敵対する。
「………お前が俺を止められるか」
「……そうだな。だが少しでも足止めしてみせる。でないとアイツとの約束があるからな」
C.C.のランスロットの銃撃を回避するとティルヴィングの蛇腹剣が鞭のようにしなやかにランスロットの左腕、左脚を切断させ動きを止めようとするがC.C.はそのままアキラに突撃し地面に激突した。
「くっ!」
アキラは離そうとするがC.C.は組みついたまま離そうとしない。
斑鳩に突入した星刻達は天子達の救出に向かう途中ガタイのいい大男が立ち塞がった。
「道を開けてもらう!!」
星刻は持っていた刀を振りかざす。男は寸前に避けると星刻の両腕を掴み動きを止める。
「お前、黒の騎士団か!?」
「っ!? だとすれば??」
「俺はジェノム、お前らに用がある」
大男、ジェノムからの申し出に星刻は距離をとり刀を構える。
両者の間に緊張の張りが詰める中その空気を壊す間の抜けた声が響いた。
「ジェノム〜! 連れてきたぜ!」
「玉城!? 生きていたのか??」
消息不明だった玉城の姿を見て星刻は戸惑いの色をのぞかせる。だがそれと同時に…。
「星刻!!」
そこには囚われていた天子がこちらへ駆けていく姿が見えた。
「天子様!? ご無事ですか!?」
「あの方達が助けてくれたのです」
そこにはロイド、セシルが神楽耶ら人質達を連れてきた。
「星刻様、私達はあなた方の味方です」
「ルルーシュを裏切ると?」
「私達は脅されていたのです。しかし、ルルーシュがいなくなった以上は」
「少なくとも、独裁者を是としないという意味では信じてよいかと」
「神楽耶様……」
「はやくしろ。この艦はもうすぐ沈む」
星刻はジェノムを睨む彼の容姿を見てブリタニア本国の先住民インディアンだと思われるが何故この場にいるのか疑問であった。
「我々と行動を共にすると?」
「俺はここから早く出たいだけだ。連中達の茶番にいつまでも付き合ってられない」
「どういうことだ?」
「………」
「いいだろう。まずはここから出る。 藤堂、天子様各首脳の人質の救出に成功」
「わかった。では次の行動に移る」
斑鳩に戻っていた藤堂は扇の元へといく。
「扇、星刻らが人質を救出した」
「そっそうか!これで障害がとり…」
「黒の騎士団は急ぎ区域から離脱するんだ」
「何っ!?」
「今の戦力で戦闘続けるのは無理だ。撤退し戦力を整えるのが先決だ。これ以上シュナイゼルに利用されることはない」
「違う!!利用しているのは俺たちだ!! この状況を利用しシュナイゼルとルルーシュが共倒れしてくれれば俺達がワイズマンの力を手にすることができる! それが日本を…俺達が大事なものを守ることができる!!」
「扇……」
藤堂は扇に対し怒りではなく。哀れみにも似た感情で彼をみた。
「しかし、現実は様々なものによって支配されている。抗うことは必要だ。だからこそアキラをワイズマンの後継者として認めるわけにはいかない」
「お兄様もアキラさんも……私から見れば同類です。人の心を捻じ曲げ、尊厳を踏みにじるギアスを使ってどれだけの人々を殺めてきたのですか!!」
「ふっ、ならナナリー、お前は自分の手でシュナイゼルを撃った。お前も俺達と同類じゃないか」
その指摘にナナリーは苦悶の表情を浮かべる。
「……そうです。私も人を殺めました。だから……憎しみはここに集めるんです。皆が明日を迎えるために」
「何!?」
「ダモクレスもワイズマンも全ての憎しみと共に滅び去るのです!今日ここで!!」
「ナナリー……!」
「お兄様、私と共に死んでください!!血塗られた一族の歴史を終わらせます!」
(そうか……ナナリー)
引き金を引くナナリーを見てルルーシュは不敵な笑みを浮かべる。銃口を向けられているのにもかかわらずそんな態度にナナリーは不気味に感じた。
「ナナリー様!!」
背後から咲世子が飛び出し瞬く間に手刀でナナリーが握っていた銃を落とした。
「よくやった咲世子」
咲世子によって抑えられたナナリーを尻目にルルーシュは転がったフレイヤの起動スイッチを拾った。
「ナナリー、お前程度にギアスを使う必要はない」
「お兄ぃ…様」
ナナリーはキッと咲世子を睨む。
「咲世子さん!なんで…私はこれ以上お兄様に罪を重ねてほしくなくて……」
「ナナリー様……」
「お兄様……、お兄様は卑劣です!!」
『皇帝陛下、ジェレミアです』
「ジェレミアか、ダモクレスを掌握した。コーネリアは?」
『アーニャに任せてます。それよりたいへんなことが』
「何!?」
『ダモクレスに自爆装置が作動しています。あと15分経てば……』
「っ!? 解除できるか?」
『無理です。解除できる時間を過ぎました。おそらく我々が突入した直後作動させたのではないかと』
ルルーシュは倒れているシュナイゼルの遺体を見る。まさかと思い…。
「シュナイゼル…!やってくれる!!」
ダモクレスが制圧されることも予測した上での行動だったのか。自分を道連れにしてでもワイズマンのために尽くそうとしている。
ワイズマンに心酔しているのはわかっていたが……。
このままダモクレスが爆発されると内臓されてあるフレイヤが誘爆されるとこの区域にいる敵味方関係なく消滅する。
「急ぎこの区域から離脱する。咲世子はナナリーを連れて行くんだ」
「お兄様っ!!」
ナナリーは床に落ちてあった拳銃を拾おうとするが車椅子から転げ落ち
る。咲世子が抱き抱えるがナナリーは暴れて抵抗する。
「離して!!お兄様は私が!! お兄様!!」
「ナナリー、お前に見せてやる。俺が世界を手に入れる」
「ジノ、死にたくなかったら手をかして」
「アーニャ……」
今、味方がコーネリアのみとなった状態で抵抗は無駄死に思えた。ジノはコーネリアと視線を合わせる。
「今はここから脱出するのが先決です」
「また、生き恥を晒すか……。ふっ、いいだろう。 ルルーシュのつくる世界を見届けてからこの命散らせてやろう」
「トリスタンが格納庫にあります。アーニャ、それでいいだろう?」
「……わかった。ジェレミアがいるのを忘れないで」
脱出を試みるコーネリア、だがその心中は……。
(さらばだ我が騎士ギルフォード…。私もすぐに……)
離れた廊下には血まみれで横たわるギルフォードがいた。身体中を撃たれ事切れる寸前であった。
「ひめ……様…」
蜃気楼へと戻ったルルーシュはジェレミアと連絡をとった。
「ジェレミア、ナナリーと咲世子は?」
「はっ、無事保護しました」
「よし!お前はこのままダモクレスから脱出するんだ。そして兵達をダモクレス周辺に集結させる。黒の騎士団を引き付けていく。」
「陛下は?」
「俺はアキラを追う。ワイズマンと決着をつける。予定を早まるがゼロレクイエムを開始する!」
「……っ!? イエス・ユア・マジェスティ…」
ルルーシュ達がいなくなり静寂に包まれた中シュナイゼルが小さく声を枯らしながらつぶやいた。
「ワイズマン……間もなく流崎アキラはあなたのもとへ……」
するとゆっくりとこちらへ近づく足音に気付きシュナイゼルは上体を起こす。
「っ!? あなたは………!」
そこにはアカーシャの剣と共に消えた井ノ本寛二の姿があった。サングラス越し表情は伺えないが偽物には見えなかった。
「その命ワイズマンに捧げるか……。見事な忠誠心だ」
「何故…あなたが……?」
「私はワイズマンの目でもあり耳でもある。この闘いを見届ける役割をあの方に与えられた。そして今あの男がワイズマンの後継者となる。 だからこそ私は再び姿を現した」
そう、あの直後井ノ本はシャルルらと共に消滅されたと見られたが実際はワイズマンの手により転移させられ今まで事の成り行き
を監視していたのであった。
「そう…か……」
「君はここまでだ……」
「最後に聞きたい………。僕は…あの方、ワイズマンのお役に立てたのか……?」
「…………そうだ。君はワイズマン為に働きそして死ぬのだ」
そう伝えると井ノ本はシュナイゼルに背を向けこの場から去っていく。
「そうか……。僕は…初めて人の為に……生きていけたんだ……。はっ…はは………」
シュナイゼルの乾いた笑い声。そこには死への絶望はなく。誰かの為に生きた満足感で溢れていた。
「ダモクレスを中心にして敵が集結し前方を固めています」
黒の騎士団のほうでもダモクレスの変化が伝えられそれを見て扇が焦りを見せる。
「まずい、ルルーシュ達がダモクレスを制圧したんだ。すぐにでも攻撃を」
「扇、お前はまだ…!」
藤堂は千葉らに扇を退げるように命じた。
「離して…離してくれ! これは俺たちの責任で決着を…だから!!」
C.C.のランスロットを引き離し先へ進もうとするが背後からカレンが
猛スピードでアキラのティルヴィングへと激突し動きを止めた。
「カレン!!」
「アキラ!!」
対峙する2機にスザクのランスロットのヴァリスが襲いかかる。彼も追いついたのだ。
「カレン、アキラここで終わりだ」
3機は銃口を互いの相手に向け距離をとる。
「……」
「……」
「……」
3人は呼吸を整いながら相手の動きを伺う。どちらかが先にトリガーを引けば最後の闘いが始まる。そう思われたが突如眩い光が3機を覆った。
「「「っ!?」」」
その瞬間3人の視界は真っ白となった。
ダモクレスの消滅。これが最後の戦いの幕開けの狼煙となった。
いよいよ次回最終話です。長かったこの小説も遂に終わりです。
アキラを含め皆は何を得て何を失うのか次回確かめてください
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第48話
シュナイゼルによってさら地となっていたペンドラゴンは更に大きなクレーターが形成されもはや首都だった面影はなくなっていた。
あれからどれくらい経ったのか、気がついたカレンは紅蓮の損傷がないか確認するとペンドラゴンにあるワイズマンの拠点であったドーム状の建造物が健在だとわかった。わずかに破損していた箇所は見受けられたが破壊には至ってないようである。
あの中にアキラが入って行ったのだと感じたカレンは急ぎ追跡を開始した。
「あっぶなかったぜ〜。 あと少し遅かったら御陀仏だったところだったぜ」
「死なずにすんだけど、どうするんのさこれから?」
坂口達を乗せた小型艇はフレイヤに巻き込まれなかったがその衝撃で小型艇が不時着し動けなくなった。
「シャーリー大丈夫?」
「うん、でも……」
先程まで敵味方が入り乱れた戦場が突如全て関係なく消え去ったこの場がシャーリーには不気味に見えた。
「あれ?おやっさんあれって……?」
千鶴は遠くからこちらへ向かってくる1機のヘリに気づいた。
「おっ……?ありゃ報道ヘリじゃねぇか!おぉーーい!!」
坂口は見つけられるよう腕を大手に振り大声で叫んだ。千鶴もつづけて腕を大きく振った。
こちらへ気づいたのかゆっくりとこちらへ近づき側へと降り立った。
急ぎ坂口達はヘリへと駆け寄った。
「艇が動けなくなったんだ。助かったぜ」
「あんたらどこのもんだ?女連れて……」
記者達も坂口達の身なりを見て軍の者とは思えなかった。
「シャーリー……??」
誰かから自分の名を呼ばれシャーリーはヘリの奥から降りてきた人物に気づいた。
「シャーリー……!」
「えっ……、会長??」
驚愕の表情でシャーリーを見つめるミレイは震える手で彼女の肩を掴んだ。
「本物よね…………!シャーリー…!!」
ミレイはシャーリーを強く抱きしめた。
「い、痛いです会長」
「バカ!もう会長じゃないわよ!今までどこに……」
「え……っと、それは……」
突如、近くで大きな爆撃音が聞こえ辺りは騒然とする。シュナイゼルの軍と黒の騎士団、ルルーシュ3軍の生き残りがまたも戦いを再開させていった。
「おっおい!こっちは軍から逃げてきたんだよ!乗せてくれよ!」
ドーム内ではアキラとスゼクで一騎打ちを繰り広げていた。エナジーウイングの刃がティルヴィングのライフルを切断させるとMVSで斬りかかるが寸前で回避される。追撃しようとするがスザクの脇腹に激痛が走る。
「ぐっ!?」
フレイヤの衝撃によりアキラによって撃たれた傷口が再び開きスーツが血で滲み出してくる。
動きが止まったランスロットにアキラはティルヴィングの蛇腹剣を展開させるとランスロットの右腕と後方のエナジーウイングの片翼を切断させた。
「スザク…!」
アキラ止めを刺そうと蛇腹剣を振り下ろすが横から銃撃が襲いかかりアキラは距離をとる。
「カレン…!」
「アキラ、スザク!! これ以上行かせない!!」
「カレン! 僕の邪魔をするな!!」
カレンは紅蓮の体勢を整えると壱式衝撃砲を展開し2機に攻撃すると両機は散開するとアキラの蛇腹剣が紅蓮の左腕に巻きつこうとするがランスロットが片翼のエナジーウイングで攻撃する。衝撃砲の銃身を撃たれ使えなくなり銃身を折り畳む。全方位を注視ししながら戦闘を行う。それも3人共エース級。 少しでも隙を見せると一瞬でやられてしまう。
「ハァハァ…アキラ、スザク。 2人相手だとこの紅蓮だとキツイな」
攻撃へと持ちこもうとティルヴィングを動かそうとするアキラであったが屋内が突如揺れだした.
ただの地震ではない。まるでここの要塞そのものが動いてるようにも見える。
「ワイズマン!?」
「おい、何だアレ!?」
坂口はヘリからある物体を発見する。それは地中深く潜りフレイヤにてその姿を露にしたワイズマンの要塞が動きだし地表をから抜き出しその球体が宙へと浮いたのだ。
「カレン!! 今何処にいるの!? カレン!」
シャーリーは無線から呼びかけるが応答がない。
「今、あの中に…?」
ヘリが大きく揺れて機体が大きく傾いた。 近くでKMFが堕とされたようだ。
「もうこれ以上は危険だ!早くここから…」
すると撃墜されたKMFがこちらへ向かってくるのがわかった。
「うわぁ!!」
皆が巻き込まれると思ったがその機体は真っ二つに切り裂かれ爆発を起こしヘリは難を逃れた。
「そこのヘリ、記者達のものだな。ここは危険だ私が誘導するからついてくるんだ!」
トリスタンのジノがそう呼びかける。
「今は従ったほうがいいな」
記者達は素直に従うとトリスタンについていく。 誘導された場所にはヘリが1機ありその傍には誰が佇んでいるのが見えた。
「あれは…!?」
ミレイはそこで茫然と膝をついて戦場を見ているナナリーを見つける。
「あぁ……。こんな………。」
戦場が混乱する中今だに戦闘をやめない両軍。ルルーシュ、アキラは消息不明。シュナイゼルもナナリー自身が手にかけた今倒すべき敵が此処にいない中何故彼等は戦うのか? ただ目の前に敵がいるから? 最早此処は只の殺し合いの場と化してしまっている。
「ナナリー様……」
咲世子は彼女にどう言葉をかければいいか思案しているとヘリから降り立つミレイ、シャーリーの姿に気づいた。
「ナナリー…?」
「その声? ミレイさんですか?」
「ナナちゃん、あなた目が!?」
ミレイ、シャーリーはナナリーを顔を見て彼女の目が開いているのに気づいた。
そしてナナリーは自身に注がれる2人の視線に思わず目を背ける。
「私が……私のせいでこんなことに……」
「…………」
肩を落とすナナリーに2人はどう言葉をかければいいか迷う。
「ジェレミア卿!、アーニャ!」
「ジノか…。ご覧の通りだ。我々の旗艦も沈んだ。もう勝ち負けもない、互いの指導者を失い混沌としている」
「これが……貴方達が望んだ結末か!?」
「まさか。皇帝陛下はダモクレスを手中に収めるつもりだった。しかし陛下の思惑から外れこのような結果となった。それが流崎アキラの手によるものなのかわからないが何かの弾みで環境が変わった。それは事実だ」
「そうやって他人に責任を押し付けるのかあなたは!!」
詰め寄るジノにコーネリアが肩を掴んで止める。
「もういいジノ」
「しかし…!」
「ルルーシュや流崎アキラ異端者。結果はどうあれ今繰り広げられている惨劇これが現実だ。私たちはまた悲劇を繰り返した…」
既に勝ちも負けもない戦場でただひたすら行われている殺し合いに千鶴は涙を浮かべながら声を荒げた。
「もういい加減にして!!何がブリタニアだ!日本だ!何が異端者だっ!! あんたらが色々御託を並べて戦ってカッコ付けてるけどさ!結局一番貧乏くじ引くのはいつもあたしら下っ端の人間だ! あんたらこんなこといつまで繰り返すの!!えぇ!!言ってみなよ!!」
「千鶴……」
この中でルルーシュやアキラらの事情をよく知らない千鶴であったがそれ故に戦争に巻き込まれる当事者としての気持ちが赤裸々に伝わりシャーリーには胸に響いた。
千鶴の言葉を聞き俯いたナナリーは近くにあった鋭利な破片を見つけると自分の手首に押し当てようとする。それに気づいたシャーリーが慌てて駆け寄る。
「離してください!!」
「ダメだよ!!ナナちゃん!やめて!!」
「お願いします!!私の…私のせいで!!」
自ら死を選ぼうとするナナリーにミレイが近寄りナナリーを頬を平手打ちで強く叩いた。
「ミレイ…さん……」
「そうよ!!これも全てあなたやルルーシュ、ライ…アキラくんのせいでこんな事になったのよ!!」
ミレイからの糾弾にナナリーの瞳から涙が溢れてきた。
「でも今貴方がしないといけないことは死ぬ事なの!?違うでしょ!!」
ミレイはナナリーの肩を強く掴み顔を上げさせる。
「答えなさい!!今あなたがやるべき事は何かっ!!」
「ミレイさん……」
ミレイの強い眼差しにナナリーは視線を落とすことができなかった。これを見てコーネリアが口を開いた。
「ナナリー、彼女の言う通りだ。今することは死を選ぶことではない」
「………」
「お前や私にはこの戦争を起こした責任がある。それを途中で投げ出すことは許されない」
「責任………。今すべきこと……」
瞳を閉じたナナリーはゆっくりと深呼吸をした。今落ちついて何を優先にするのか自分に言い聞かせた。そして開いた瞳には強い意志が感じられた。
「この戦場を鎮静しなければいけません。……コーネリアお姉様、力を貸して下さい」
「……わかった。だが私だけでは難しい。ジェレミア、手を貸してくれるか?」
「いいでしょう。我が軍もほぼ全滅しました。これ以上貴方がたとも戦うのは無理です。今は事態の収束が最優先です」
上空からは黒の騎士団の旗艦斑鳩が現れた。損傷箇所が見受けられるが航行に支障はないようであった。
「前線にいた部隊はほぼ全滅……生き残った者は事態を飲み込めずただ目の前の敵と闘う……。これではただの殺し合いだ……」
混沌とした戦場を目にし藤堂は肩を落とす。
「藤堂さん、星刻が神楽耶様ら各首脳を連れて戻ってきました」
千葉の報告を受け玉城の肩をかりて星刻が現れた。
「星刻…」
「藤堂、戦局は……」
「見ての通りだ。もう勝ち負けもない……。負け戦より始末が悪い。だがもう終わりだ」
「いや、まだアキラがいる」
後ろからジェロムの巨体が現れる。
「彼は?」
「敵鑑の中で出会った。敵じゃない」
「……アキラが…奴がワイズマンと決着をつける……。それで世界が変わる……」
「流崎アキラ……」
すると監禁されていた扇が現れ今の惨状に項垂れていた。
「あぁ…こんな……」
藤堂が扇に歩み寄る。
「ここでの戦いは終わった。今行われているのは戦いではない。殺し合いだ!」
「………」
「今我々がすべきことは何か…!」
「今…すべきこと……?」
「最早、ワイズマンなどに拘ってる時ではない!!お前でもわかるはずだ!!」
「俺は……」
扇は戦場を横目で見る。藤堂の問い掛けに段々と頭が冷静を取り戻していく。
「この混乱を……止める」
その言葉に藤堂は深く頷く。
「藤堂、私に任せてください。あなたはKMFで事態の収束を」
「神楽耶様……承知しました」
黒の騎士団が事態の収束の手引きをしているのを見て坂口らは安堵の色を浮かべる。
ジークフリードに乗り込もうとするジェレミアにシャーリーが彼に歩み寄る。
「あの……! ルル…いや、ルルーシュの事で聞きたいことがあって…」
「君は…アッシュフォード学園の……」
「はい……。ルルが本当の気持ちが知りたくて」
「本当の気持ち…?」
「はい。これが本当に望んでいたことなのかって思って…」
「何故そう思うのか?」
「世界中を敵にしてまで……本当は別の目的があるんじゃないですか!? こんなの……一番ルルが嫌ってたことなんです!!」
黙って聞いていたジェレミアの端末から連絡が入り一通り話終えると口を開いた。
「君のその質問の答えがもうすぐわかる」
「えっ!?」
カレンは紅蓮の右腕の鉤爪を折り曲げ輻射波動と左腕の三式統合兵装と連結させると三式超電磁砲を撃つ構えをとる。
この紅蓮の動作を初めて見る2人は警戒する中カレンは2機に向けて撃つのではなく足元へと撃った。爆発を起こし地表はえぐられ地上への風穴ができた。
アキラは直撃することなく難を逃れるが爆煙から迫り来る紅蓮に対し反応が遅れた。
「アキラッ!!」
右腕の鉤爪がティルヴィングの右腕を掴むと力強く引き抜いた。スザクのランスロットも続けとばかりにMVSを振り下ろすが紅蓮の左腕のブレイズルミナスがそれを防いだ。
だが三式超電磁砲を撃った直後でパワーダウンした左腕からは警戒音のアラームが鳴り響くと紅蓮の左腕は爆発を起こしランスロットの右手を損壊させた。
「さすが カレンだ。2人を同時に……。っく!」
脇腹の痛みを抑えながら戦うスザクにルルーシュから連絡がくる。
「ルルーシュか、今どこに?」
「後で説明する。スザク、アキラは?」
「今戦ってる」
「わかった。スザク……よく聞いてほしい」
「??」
ランスロットのMVSを拾ったティルヴィングと残りのMVSで対峙するランスロットそして紅蓮。互いに損傷している。
ランドスピナーで急加速で接近するランスロットにティルヴィングはMVSで応戦しようとするがランスロットは宙へと浮きティルヴィングの背後をとった。アキラはすぐに振り向きMVSを突き出しランスロットは大きく振り翳した。
・
・
・
・
・
・
ランスロットの振り翳したMVSは空を切りティルヴィングのMVSはランスロットの胸部へ深く突き刺さり膝から崩れ落ちた。
沈黙したランスロットを見届けるとティルヴィングは紅蓮と対峙する。
「カレン……邪魔をするな!」
「アキラ…!」
カレンは紅蓮の右腕の輻射波動が残り1発と確認すると右腕を展開させティルヴィングへと振りかざす。片腕で止めるティルヴィングであるが紅蓮に押され壁へと激突する。
「私は皆んなと……あなたと一緒に……、ただそれだけなのに。ホントにこれがあなたの望んだことなのアキラ!!」
「………」
輻射波動が展開され熱を帯びるのを見てアキラは腕を横へとずらし輻射波動が壁に誤射し横穴ができティルヴィングの腰の裏に備え付けていたショットガンを持ち紅蓮の腰部へ撃ち左脚が損壊させる。
「しまった!!」
片脚を失った紅蓮は動けなくなりこれ以上の追撃はないと判断したアキラ紅蓮を放置しそのまま先へと進もうとする。
「くっ…アキラ!」
動かそうと操縦桿を動かすカレンであったがティルヴィングの背後を沈黙したはずのランスロットがMVSを構えていた。
「アキラ!!」
背後の気配に気づきアキラは振り向くとMVSを振りかざすランスロットに応戦しようとするがその2機の間にカレンの紅蓮が割って入りMVSが紅蓮のコックピットを貫通した。
「カレン!?」
「カレン、キミは!?」
沈黙したと思われた紅蓮であったが右腕がランスロットを掴んだ。
「はっはは……、体が勝手に動いちゃった……」
紅蓮は先程できた風穴へランスロットを巻き込んで落下していった。
「……………」
落ちていく紅蓮を見届けるとティルヴィングはゆっくりと歩みを進んでいく。
「どこだ、どこにいるワイズマン……」
『アキラ……私はそばにいる』
「ワイズマン!? どこだ!?」
『もうお前を止める者は誰もいない…。さぁこのまま進めるのだ。お前はもう既に世界を手にする手前にいる』
それを聞きアキラは奥へと進んでいく。数百年前の遺跡とは思えない構造の要塞。これが世界を裏から支配していた異端者、ワイズマンの力をヒシヒシと感じながらアキラは要塞の中枢へと辿りついた。
ドーム状の広い空洞の中心へと来たアキラはティルヴィングから降りるとワイズマンに問いかけた。
「来たぞ、ワイズマン。さぁあんたの姿を見せてくれ」
『アキラ…よくぞここまできた……我が後継者』
アキラの周りが動き出し見渡すと溶液のカプセルに入った脳髄が現れその数は百近くある。
「これがあんた達の正体なのか?」
『我らの肉体は既に滅んでいる。 だが我らが世界のシステムそのものと溶け込むことで支配してきたことで長く生きながらえた』
「世界のシステムそのものに?」
『そう…人間は互いを争うことで人類の進化、発達してきた。シャルル達によって引き起こされた戦争もだ』
「それもあんた達が裏で糸を引いていたのか?」
「そうだ……。私達はこの生命維持装置で数百年、この世界を支配してきた。この力がお前のモノとなる」
何本もあるケーブルに繋がれた装置がアキラの前へ現れる。
「これで今まで生き永らえてきた……」
『さぁ…アキラ我らのもとへ。世界はお前のモノだ』
「あぁ…………っ!!」
アキラは懐から小さなスイッチを取り押すとティルヴィングのスラッシュハーケンが射出されワイズマンの生命維持装置へ直撃した。
『アキラ何を!?』
装置が破壊されたことでカプセルに入っている脳髄の1つが機能停止した。
『どうしたというのだアキラ!?』
「俺はそう命令された。……ゼロから」
『何っ!?』
よく見るとアキラの瞳は赤くなっておりそれに気づいたワイズマンは驚愕する。
『ばっ馬鹿な!? アキラ、貴様ギアスに!? そんなハズは!?』
壁が破壊され姿を現したのはルルーシュの蜃気楼であった。コックピットから姿を晒したルルーシュ勝ち誇ったかのように高笑う。
「ふっはははは!! ワイズマン、俺の勝ちだな」
「ルルーシュ、貴様死んだはずでは!?」
「シュナイゼルのお陰でお前の目を一瞬潰すことができた。俺はダモクレスの自爆の直後、この一帯にジャミング発生装置を稼働させたのだ。その隙にこの要塞に侵入することができた」
「まさか、その間!?」
「そうだ。俺はギアスでアキラを支配下に置いた」
「そんな…そんなはずは…?」
「そうだ。ギアスが効かないはずのアキラが俺に操られている。それをどういう意味か、ワイズマンわかるだろ?」
「バッバカな!?」
狼狽えるワイズマンにルルーシュは
「そうだ。アキラはお前の後継者、異端者でもなかったのだ! 今のアキラが証明している」
アキラは黙ったまま遠隔操作でティルヴィングのスラッシュハーケンを射出しワイズマン達、脳髄を破壊していった。
「ヤ…ヤメロ、アキラ…!オマエは……私の後継者…ルルーシュなどに…。」
「ワイズマン、この世界の支配者はお前ではない。この俺だ!」
蜃気楼から相転移砲が発射され脳髄が破壊されていった。
「ヤ……メロ。アキラ……止めるのだ…。オマエは私の……。」
最後に残った脳髄を見つけルルーシュはアキラに拳銃を渡すとその銃口を脳髄に向ける。
「アキ…ラ……」
アキラは躊躇なく引金を引き脳髄が辺り一面に飛び散っていった。
「ヤ……メ…ロ…………。 アキ…………」
ワイズマンの声が止み静寂に包まれた中ルルーシュが口を開いた。
「終わったな……」
「あぁ……」
銃を降ろしたアキラと視線を合わせるが次第に顔色が悪くなりルルーシュの目から血が滴り落ち口からも吐血しその場で膝をついた。 それを見て蜃気楼に搭乗していたC.C.が駆け寄ってよくる。
「ギアスが通じない異端者に使ったんだ。」
「ハァ、ハァ、ハァ…。 ふふっ……、ワイズマンは失望しただろう。後継者のアキラが俺の手駒になったと……」
アキラの足元には飛び散った脳髄の破片が転がっている。
「こんなもの神でも何でもない……。ただのマシンだ!」
アキラは破片を踏み潰した。
ー数十分前ー
ダモクレス消滅直後、アキラは要塞の中を進む途中ルルーシュの蜃気楼が前方を立ち塞がった。撃破しようとライフルを向けるがルルーシュがその身を晒しているのを見て引き金を引く手を止める。
「………どういうつもりだ?」
「取り引きをしないかアキラ」
「……………」
「今、この一帯にジャミングをかけてある。時間がない。お前に有益なものでもある」
「………」
アキラはティルヴィングの動きを止めコックピットのハッチを開いた。
「妙な動きをすれば撃つ」
「構わない。俺はワイズマンを討つ。それはお前も同じ……そうだろ」
「………。何故そう言い切れる?」
「お前はそういう人間だからだ。誰からの支配を拒み、それを押し付けようとする者に対して抵抗し、お前は他者を支配するのを拒む。そんなお前がワイズマンの後継者になるとでも?だがワイズマンのもとへ行けるのは自分だけだ。だから奴の指示に従ってここまで来たそうだろ?」
「俺がワイズマンの力に魅入られていないと言い切れない」
「いや、お前は力など必要ないと感じている。お前が欲しているのは………。」
「………」
アキラはレバーから手を離す。
「……俺にどうしろと?」
「もうすぐ、待ってる人間が来る」
そう言うと背後からヨロヨロとC.C.のランスロットが近づいてきた。
「派手にやられたな」
「誰かに殺されかけたからな」
C.C.は苦笑しアキラを見つめる。
「生きてるだけで幸運さ」
「ふっ、アキラ単刀直入に言う。俺のギアスにかかれ」
「っ!?」
この申し出にアキラは怪訝な表情をしC.C.は神妙な面持ちで視線を落とす。
「………どういう意味だ?」
「俺がお前にワイズマンのもとへ行き、ワイズマンを討つ。そう命令する」
「…………」
「理由はワイズマンはお前を後継者として選んだ。ここへはそれ以外の人間は排除される。その中で唯一ワイズマンと接触が許されるのはお前だ。それに……」
「それに?」
「見てみたいんだ。後継者であるはずのお前がギアスにかかっている姿を見て狼狽えるワイズマンを」
ほくそ笑むルルーシュを見てアキラは嫌悪感を感じた。
「相変わらず嫌な奴だお前は…」
「だがルルーシュ、奴にはギアスは効かない。効いたとしてお前の体がどうなるかわからない。ロロはこの男のせいで寿命が縮んだのだから」
「覚悟はしてるさ。既にゼロレクイエムは発動している。それが今になっただけだ」
「ゼロレクイエム……ふっ」
「笑うか…」
「あぁ…茶番だな。だが……付き合ってやる」
「………ありがとう。 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる……!」
「ぐっ…があぁぁぁ!!」
胸が締めつけるような苦痛にルルーシュは体を丸めて胸を抑える。
「C.C.、俺は……」
「本来、ギアスが通じないアキラにかけたんだ。お前の場合体に直接影響が及ぼしている。もう長くは……」
アキラは確かにギアスにかかったのだがその直後体が硬直したのみで意識が支配されることはなかった。その命令が常にアキラに命じていたのだがそれを跳ね除け自分の意思で此処までたどり着いたのであった。その反発の影響がルルーシュの体にダイレクトに伝わったのだ。
「ルルーシュ……」
声の主は出血している脇腹を抑えながらスザクが現れた。
「少し…遅れた……」
「いや…まだ大丈夫だ。ふっ…お互い不細工な姿だ」
「誰かのおかげでね、ルルーシュ、さっきの無茶振りには困ったよ。アキラに上手く負けてくれって。勝つより難しいよ」
戦闘の最中に入ったルルーシュからの通信のやりとりはアキラに撃墜されるようにとの連絡であった。
「スザク、最後のはワザとか?」
「まさか、君相手にそんな余裕なんてなかった。この体でなかったらもっと上手く誤魔化せた」
「だろうな。万全なお前であったら俺は勝てなかったかもしれない」
腹部に銃撃を受け重傷でありながらアキラ、カレンの2人を同時に相手にして戦ったスザクはやはりすごいと心の中で呟くルルーシュであった。
「スザク、カレンは?」
あの直後アキラはすぐにカレンを救出に向かいたがったがギアスの影響はなかったのだがワイズマンと接触するのが優先であり、またスザクがいることで助かっているはずだと
「彼女は無事だ。だが……」
すると奥から足を引きずりながらこちらへ近づく人影が見えた何者かと警戒するアキラだったが…。
「カレン!?」
彼女の姿を見て一目散に駆け寄るアキラであったが彼女の姿を見て愕然とした。
「カレン! お前!?」
カレンの左脚は膝から下が無くなっており戦闘服から血がポタポタと滴り落ちていた。
「墜落する紅蓮から助けることはできたけど……すまないアキラ、僕のせいだ」
アキラの姿を見てカレンは彼の体へと崩れ落ちるようになりアキラもそんな彼女を優しく受け止める。
「カレン、応急処置は済んだけど無茶をしたら…」
「スザク!! 助けてくれたことに感謝してるけどあんたの指図は受けない!」
「カレン……」
「馬鹿だよアキラも……ルルーシュも…」
「すまない…ワイズマンを騙すために……。だがお前がこんなになるまで……」
「私は構わない。こうやってまたあなたに会えたから……」
「…………」
今のカレンの体を見てアキラはやり切れない想いでいっぱいであった。
「何故だっ!?」
この光景に絶叫をあげる1人の男。井ノ本は脳髄が撒き散られたワイズマン達を見て血相を変える。
「流崎アキラ!!、何故…何故神になれる権利を捨てて……。恐怖したのか??支配することのあまりの大きな重さにお前は押し潰されたのかルルーシュと共謀して……」
「井ノ本……」
「世界が…いや、人類史が大きく変わるこの瞬間を……。シャルルやギアスでも不可能だった世界の変革をお前は潰したのだ!!」
井ノ本は懐から拳銃を取り出しアキラに向けて発砲した。銃弾はアキラの頬を掠め僅かに頬から血が滴り落ちる。
「アキラ!!」
カレンはアキラにショットガンを渡す。受け取ったアキラは井ノ本に向け発泡し井ノ本は銃弾によって倒れた。
「…っぐ、アキラ」
アキラは銃口を向けたまま井ノ本へと近づく。
「お前の……本当の目的は……?」
井ノ本はその言葉を最後に事切れた。
「この男もシュナイゼルと同じだった……。アキラ、これで……」
「陽炎と決着をつけた…………」
カレンとアキラ井ノ本の遺体を見つめ彼との因縁に終止符をうつことができたことを実感した。
「さぁゼロレクイエムのフィナーレだ。」
「ルルーシュ……」
「予定通り、ハァハァ…世界の憎しみは今この俺に集まっている。後は俺が異端者の象徴と共に消えることで、この憎しみの連鎖を断ち切るだけだ。黒の騎士団には……ゼロという伝説が残っている。これで世界は軍事力ではなく話し合いという一つのテーブルに着くことができる。……っぐ、明日を迎えることができる」
「……馬鹿」
アキラの腕に抱えられたカレンはそう呟いた。
「あんたの命一つで世界が変えられたらとっくの昔に誰かが変えていた。馬鹿よ…シャーリーが……残される人達のことを考えなよ……!」
「カレン……」
「でも……それでもあんた達はここまでやってきた。私もお母さんを…学園の皆を悲しませるようなことをしてきた……でも私は銃を降ろすことができなかった。ううん、これが今私がやらなければいけない一番の事…。そう信じてここまできた……。そうだよね……あんた達も」
「………」
「………ルルーシュ」
スザクはルルーシュに目を合し合図を送ると足早にこの場を後にする。
スザクを見送ったカレンであったが今まで我慢してきた足の激痛がはしりカレンの表情が歪む。
「カレン!!」
アキラ優しく抱きしめると彼女の足に腕を回すとそのまま起き上がった。
「お前の最期を見届ける気はない。後は勝手にしろ」
ルルーシュに背を向けこの場を後にするアキラにルルーシュは息が乱れるのを耐えながら最後に一言送ろうとする。
「アキラ……今まで共に戦ってくれたことに感謝する…………シャーリーを助けてくれたこと……本当にありがとう」
「…………」
これに振り返ることなくアキラはこのまま立ち去っていった。
「アキラ……」
抱えられたカレンの表情は暗いままであった。痛みによるものではない。世界の……アキラ自身の行く末に対してカレンは不安を憶えていた。
「今は何も考えるな。今は休め……今だけは」
「世界よ!今、私は裏から世界を牛耳っていたワイズマンの本拠地にいる。そしてこの要塞もワイズマンの死によって私のものとなった!」
全世界へ中継されているルルーシュの演説を他所にアキラはカレンを抱き抱えながら廊下を歩いていく。その2人の前にマスクにマントの格好をした人物、ゼロが姿を現した。
「…………」
「…………」
近づいていくアキラとゼロ、すれ違いざまにゼロが一言呟いた。
「もう…二度と会うことはない……。さよならだ、流崎アキラ……」
「………」
最期に一言ゼロではなく枢木スザクとして言葉を交わしたゼロは懐から長身の剣を取り出しルルーシュのもとへと向かう。
「ワイズマンの後継者であった流崎アキラも我らの手によって葬られた。黒の騎士団も私に抵抗する力は残っていない。我が覇道を阻む者はもはや存在しない。そう、今日この日、この瞬間を持って世界は我が手に落ちた。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。世界は、我に従え‼︎」
次の瞬間、要塞から大きな爆発が起こり要塞が大きく揺れた。C.C.によって仕掛けられた時限爆弾が作動したのであった。崩れゆく要塞を2人で歩いていく。
ーもう戦争も異端者もギアスも関係ない……誰にも縛られず静かな場所へと……ー
最後にエピローグがあります。近日投稿します
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エピローグ
ー半年後 アッシュフォード学園ー
「シャーリー・フェネット、復学おめでとう〜!」
生徒会室にてリヴァルとミレイが囁かであるがシャーリーの復学をお祝いを催していた。
「ありがとう。でもリヴァルはもう少しで卒業、先越されたな〜」
「まぁまぁ、1年学生生活が延びたと思って楽しなって」
「そうそう。生徒会も頼むわね。なんなら会長になれば?」
「私には似合わないですよ。それより大丈夫ですか?仕事のほうは?」
「あぁ、少し落ち着いたかな。あの事件からもう半年も経ったのよね」
あの事件、ブリタニア本国を壊滅までに発展した戦乱はワイズマンを滅ぼしたルルーシュが最期突如現れたゼロによって殺害された。その直後ワイズマンの要塞が爆破されたことでルルーシュは要塞と共に散り戦争が終わったかのように思えたが戦場の混乱が更に続き終わりのない殺し合いが続いた。この混乱を治めたのはナナリーをはじめ黒の騎士団、コーネリアらテログループの残党達であった。
「日本に帰ってから大変でしたよ。お母さんなんか私を見て泣き崩れちゃって」
「死んだと思った娘が生きてたのよ当然よ。それでどうだった一度死んでみた気分は?」
「なんですかその言い方〜。……でも私まだ世界の事何もわからなかったんだなって。だからもっと世界のいい事も悪い事もをもっと知りたくなりました。じゃないと……世界を変えたルルのやってきた意味がなくなりますから……」
「ホント……バカだぜ。ルルーシュの奴」
生徒会室にあるテレビをつけると現在ブリタニアの皇帝として政務についたナナリーがサドナ王国への表敬訪問のニュースが映し出されていた。
「何か別の方法がなかったのかしら………」
ミレイは悲しげな表情で見つめていた。
その直後シャーリーの携帯が鳴り受け取る。
『シャーリー、今校門前に来たんだけど』
「千鶴!わかった直ぐ行くよ」
「シャーリー?」
「みんなごめん。私これからちょっと用事があってこれで」
慌ててシャーリーが生徒会室を抜け出すと駆け足気味で校門にたどり着くと千鶴の車が止まっていた。
「ごめん、みんなと話し込んじゃって」
「いいって、行き先はあの人のところでいいよね?」
「うん、お願い。千鶴、どう仕事のほうは?」
「まぁ、やることは変わんないから別にこれといって……。でも両親のお墓もできてやっと落ち着いたかな。暫くここでのんびり過ごしたいかな」
「そっか……。それでどう義理だけど坂口さんと親子になった気分は?」
それを聞き千鶴は悶えるように声をあげる。
「うわあぁぁぁやめて!!! 私、どうかしてたんだよあんなオッサンが父親になるなんて!」
「ふふっ坂口さん、もう裏稼業から足を洗って日本を中心に商売を始めるって言った直後だったよね。顔を真っ赤にして俺の娘になってくれって」
「あんな顔で言われたら断れないって」
「じゃあ後悔してるの?」
「うぅぅ……。あぁもういいでしょ‼︎」
自身は学園に戻り各々が新しい生活を送っている。あの半年前からは想像できなかったことだ。これから新しい踏み出す一歩が始まるのだとシャーリーは感じていた。
ーサドナ王国ー
「今回の会談の成功、お礼を申し上げますナナリー皇帝陛下、」
「こちらこそ、この会談をきっかけに国交回復の足掛かりになればうれしく思います。アレクセイ国王」
ナナリーの傍にはマントを羽織ったゼロ=スザクが立っていた。アレクセイは一瞬ゼロのほうへ目を移すがすぐにナナリーのほうへと向き直した。
「ブリタニアの国内の混乱を半年程で治めた手案、見事です。それと先の皇帝……」
「初めは兄の気持ちに気づいてやれず自分を責めましたが弱った本国を見ていつまでも引きずる時間はありませんでした。周りの方々の助けがあってなんとか。ですが……本国の弱体化は避けられず各エリアから独立をする国々が乱立して軍を派遣して鎮圧しています……」
「………」
「ここから私の独り言ですが聞いていただけますか?」
「……どうぞ」
「ありがとうございます。…………ここ最近、私はお兄様、いえ先の皇帝や気持ちが少しわかってきたような気がします。」
「…………」
窓からうつる雪景色を見つめながらナナリーは続ける。
「先の皇帝は大事な人を守るために力を欲しました。その手段は許されるものではないですがその気持ちは私にもあります。おそらく父や先代の皇帝も本当はただそれだけだったじゃないかと……」
「ナナリー皇帝、あなたはもしや……」
「はい、欲しいです力が。世界を導くだけの強い力が………!でも私は先の皇帝とは違うやり方で世界を変えてみせます。例え何年かかろうとも………」
「力……ですか。軟弱では守れないが過ぎた力は逆に自らの身を滅ぼす……難しいものです」
「えっ…?」
「今回のブリタニアとの国交回復、これに反対し妨害しようとテログループが動いていたのはご存知で?」
「はい…。確か首謀者の名はワシリーと……」
「はい、彼は私と共に戦ってきた仲間でありましたが意見の食い違いが増え最終的に……。ナナリー皇帝、私はおそらくベッドの上では死ねないでしょう。」
「それは……」
「それがこの国の運命なのでしょう。破壊と創造……このサドナ王国は永遠に繰り返す、そのような気がします。だからこそ1日後悔ないよう生きていき自分のやるべき事をしなければならない。先の皇帝、あなたの兄のように例え悪名高い国王と罵られようと」
「それは私も同じです。私の命を奪おうとする人達が大勢います。しかし…負けたくはありません! まだ何も成し遂げていないので」
「はい……」
ー日本ー
都内にあるアパートの1室。その玄関の前にシャーリーが立っておりインターフォンを鳴らすとある1人の女性が姿を現した。
「シャーリーさん、お忙しい中いつもすみません」
「いえ、私は全然構いません。紅月さんも退院したばかりですから」
その女性はカレンの母親で先日病院から退院したのであった。この半年日本に帰国したシャーリーはカレンに代わり母親の世話していた。
案内されたシャーリーは部屋を見渡すとカレンをはじめ家族の写真が並べられている。
「あの…カレンからは?」
その問いに母親は首を横に振るう。
「シャーリーさん、もういいんです。 娘は…カレンは生きてますよ。あの子は私よりも強い子です。」
「…………」
あの戦争からアキラとカレンの行方はわからずにいた。遺体も見つからずあの坂口の伝手を頼って居所を探ったが2人らしき人間は見つけることはできなかった。
「私のために今まで辛い思いをしてきました。……もう、あの子の好きに生きてほしいんです」
「……帰って来ます。2人は…」
「えっ……?」
「約束しました。また学園に戻ってきてって。その約束をすっぽかしたりしたら私、許さないですから。その時は私が探して無理にでも連れて帰ります
ニコッと微笑むシャーリーにカレンの母親は釣られて吹き出すように笑う。
「そうですか」
(カレン、アキラ君、待っているから!でもいつまでも待てないからね!)
ー???ー
古びたKMFの残骸が転がっている平原にポツンと一軒古びた家が建っていた。家周辺には人影らしきものは見えず人がいない住居と思われたが扉からある人物が現れた。流崎アキラは周辺を警戒しながらも荷物をまとめていた。
家の中にある古びたベッドの上でカレンが上半身は起こして横になっていた。表情は穏やかであり下半身を見ると先の戦いで失った左脚には義足が着けられていた。
「アキラ手伝うよ」
作業を手伝おうとベッドから抜け出そうとするがアキラが制する。
「お前は寝てろ」
「大丈夫だってほら」
カレンは軽々と立ち上がった。
「こうやって少しでも動かさないと。ずっとベッドに寝てたらいつまで経っても寝たきりだよ」
「……足は大丈夫なのか?」
「大丈夫。それに……この痛みは戒めとして残しておきたいの」
「……そうか」
「さっ、やろうよ。小さい荷物くらいなら……って、あっ⁉︎」
義足のほうが床に躓き前へ倒れそうになったがアキラがすぐに抱き留めた。
「ごめん!」
「……無理をするな」
そう言うとアキラはカレンを抱き抱える。
「へっ⁉︎」
狼狽えるカレンを尻目にアキラはカレンをベッドまで戻す。
「外へ出る。お前はゆっくりしてろ」
アキラは微笑んで外へと戻った。
「……ふふっ」
カレンは苦笑しながらもここ数ヶ月、アキラと過ごした日々でのやりとりを思い出した。片足を失った自分にアキラは献身的に世話をしてきた。おそらく今、一番自分にとって穏やかな時を過ごしていると感じている。
数キロ離れた場所に廃墟となった町がある。アキラは度々ここで生活に必要なものを用意していた。荷造りの作業をしているアキラの背後に何か気配を感じアキラは懐から拳銃を取り銃口を向けるとそこにいたのはC.C.であった。
「久しぶりだな」
「………何の用だ?」
アキラは拳銃を懐にしまった。
「相変わらずだな。お前達2人がここ近辺に隠れ住んでいるのは知っていたが……」
「………」
銃を閉まったアキラは黙って作業を続行した。
「私達の戦争で本国が弱まった影響であちこちで独立運動が始まって隣国同士の領土問題による紛争。エリア化での植民地支配していた頃を懐かしむ連中がいる」
「……後悔はしていない。俺達は今を生きてる。……それだけだ。ナナリーや他の連中がどう動こうが関係ない」
「ふっ、自分勝手なエゴ丸出しのセリフだな」
「………俺は一度も世界のために戦ったことはない。全て……自分のために戦ってきた」
荷造りを終えたアキラは籠を背負う。
「お前、ここを出ていくのか?」
「………そうだ」
「そうやって放浪の旅を続けているのか……」
「………」
「次はどこへ行く気か?」
「………」
C.C.からの問いに無視して次に使える火薬類がないか他の場所へと移動する。そんな彼にC.C.は苦笑する。
「もう…会うことはないのだな」
「……そうだな」
「…………さよならだな。流崎アキラ」
その一言にアキラはふいにC.C.のほうを見るがと彼女の姿が消えていた。
住処へ戻ってきたアキラはカレンが外から出て自分を待っているのを気づいた。
「おかえり」
「道具は揃えた。予定通り明日出立する」
「……もうすぐ夜になるから食事の準備するね」
「あぁ……頼む」
食事を終え夜を迎え明日に備えて床につこうとするカレンであったがアキラは先述の町で手に入れた火薬を使い空の薬莢に詰め銃弾の作製をしていた。 カレンの気配に気づいたアキラは作業の手を止め振り返る。
「明日は早い。お前はもう寝てろ」
「……っ」
「…………⁇」
何も返事をしないカレンにアキラは怪訝な顔をするがカレンは不安気な表情でこちらを見ていることに気づいた。
「アキラ、本当にいいの?」
「…………」
「本当ならあなたは誰もいない静かな場所でずっと……。なのに日本に帰りたいって私の我儘に巻き込んでしまって……」
日本に残したままの母が心配していたカレンはもう十分戦ったアキラをこのままそっとさせておきたいとカレンは黙って出て行こうとしたがそれに気づいたアキラが今回の旅を計画した。
「お前1人で行かせない」
「アキラ……」
アキラはカレンの肩にそっと手を添える。
「それに……」
「………」
「もう1人は………」
目が泳ぐアキラを見て彼が孤独を恐れていることに気づいた。自分がアキラを求めているように彼も自分を求めてくれていることにカレンはおもわず彼の胸へと飛び込んだ。
「………っ!?」
「………っ!」
自分に体に感じるカレンの温もりにアキラはもう離したくないと強く抱きしめた。
「ありがとうアキラ……」
「…………」
翌朝、広がる荒野を眺めていたアキラとカレンは穏やかな表情をしていた。
「行こう……」
「うん……!」
「ねぇアキラ…、帰れるよね?私達……」
「俺が帰す。どんなことしても」
「無茶はしないで。私はあなたと帰らないと意味がないの」
「………あぁ、そうだな」
「うん………」
広い荒野の2人で歩き数時間歩きカレンは義足の部分に痛みはしり膝をついた。
「痛むか?」
「ごめん。ちょっと休んだら大丈夫」
カレンの様子を見てアキラは背負っていた籠を降ろし、所持していた短い鉄パイプをロープで縛ると荷物を背負える籠ができた。
「これに乗れ」
「えっ⁉︎私が⁉︎」
「他に誰がいる」
「だっ大丈夫だって。ほらもう外でも私…って⁉︎」
強がるカレンを強引に抱き抱えるとカレンを籠に乗せた。
「俺に頼れ」
ただ一面乾いた大地。人一人いない荒野をアキラはカレンを背負って歩いていく。
「アキラ…重くない?」
「心配するな。俺は苦じゃない」
背中越しから感じるアキラの温もりにカレンは安心な気持ちとなりこのまま身を任せてもいいとも感じた。
「ねぇアキラ、私幸せだよ。こうしてあなたと一緒にいられるから」
「…………俺もだ」
「ふふっ……。そっか………」
カレンからは見えないがアキラは穏やかで優しい表情を浮かべていた。
その2人を遠く離れたところからC.C.は見つめる。
(流崎アキラ……お前は生きているかぎり戦うさだめからは逃れられないかもしれない。だがそれでも抗うお前のさだめはなんだ……?
ルルーシュ、私はまだお前のところへは行けないらしい。まだ見定めなければならない人間がいる)
先の見通せない未来。世界が俺達をそっとしてくれるかわからない。俺のさだめが戦うことなら俺はカレンのために……!
カレン………お前が心から安らげるようになれば俺は銃を捨てることができるだろう。 背中から感じるカレンの温もりにかけがいのない大事の人がそばにいてくれていることに喜びを隠せずにいた。カレン……お前に会えてよかった………
長い長いこの話もやっと終わりました。本当なら4〜5年程度で終了する予定でしたが自身の環境の変化やモチベーションの低下で10年もかかってしまい申し訳ありまん。
もっと掘り下げる話もあったのですがこれ以上ダレるのはよくないと思い色々カットしてしまった話もあり自分の力不足を痛感してしまう所が多々ありました。
ルルーシュはここで死んだことで復活篇とは繋がらない結末となりました
本当なら野望のルーツを元ネタとした外伝も執筆しようと思ってたのですがもう執筆する時間もなくここで終わろうと思います。
改めて皆様の応援のおかげで最後まで執筆できました。本当にありがとうございました。
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