鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください…… (ふーあいあむ)
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プロローグ

無謀にも三つ目の作品投稿。


「またいるし……」

 

学校から出ると、校門に知った顔が見える。

できれば知りたくなかった顔だが。

 

「……うわ、気付かれた」

 

たたた、と駆け寄ってくる。

それに合わせて俺も後退する。

相手は驚いた顔をして速度をあげてきた。

 

「な、何で逃げるんですかっ!?」

「似たような言葉で返してやるぜ、ストラトスちゃん。何でことあるごとに俺のとこ来るんだよ」

 

ついに俺は後ろを向いて全力で走り出した。

 

「待ってください!」

「だが断る!」

 

時速70キロでやつから逃げたい。

だが現実は非常だ。そんなことはできないし、ましてや格闘技をやっているような人間に身体能力で勝てるわけがない。

例え相手が年下だったとしても。

 

「くっそ……! 今日は速攻で家に帰ってネトゲやる予定だったのに……!」

「あと、少し……!」

 

ヤバい。

すぐ後ろからやつの声が聞こえた。

こうなりゃ……!

 

「ストラトスちゃん!」

「な……!」

 

急ブレーキを掛けて止まり、勢いのまま突っ込んでくるストラトスちゃんを受け止める。

そのままぎゅうっと力を込めて抱き締めた。

 

「愛してるぜ」

「ふぇ……!?」

 

ストラトスちゃんは顔を真っ赤にして体を強張らせる。

今だ……!

 

「……なんて、んな訳ねーだろバーカバーカ! ロリは帰れ!」

「……な、しまった!」

 

今さら気付いたって遅いわ、小娘!

校門に向かって走る。

 

「あばよ、ダチ公!」

「ま、待ってください! 話を……!」

 

フハハハ、聞こえぬわ!

 

「ーーーー武装形態」

「え」

 

嫌なのが聞こえちゃった。

その言葉が聞こえた次の瞬間、尻餅をついて俺は空を見ていた。

 

「お、お前! 今、一般人に魔法使ったな!」

「……いえ、単なる足払いです」

 

いつの間にか俺の前にいるストラトスちゃんは先ほどとは違い、大人になっている。

俗に言う変身魔法だ。

 

「くそ……変態しやがって! 汚いぞ!」

「変身と言ってください。さあ、今日という今日は聞いてもらいますよ」

 

一区切りして、ストラトスちゃんは言った。

 

「手当てのお礼を!」

 

「それここまでやった挙げ句、キメ顔で言わなきゃいけないことなの?」

「……少し、後悔してます」

 

ストラトスちゃんは恥ずかしそうに顔を赤らめて俯いた。

ふむ……ついカッとなってやった、というところか。

 

「ったく……最近のロリっ娘は」

「それを言うなら『若いの』では?」

「いやまだ俺も若いし。高校生だよ?」

 

どうせ若いのって言ったら『あなたも若いでしょう?』って言うんでしょ!?

ライトノベルとかみたいに!

 

「とにかく、わたしの傷を手当てしてくれたのは事実ですから! だからお礼を……」

「はぁ……」

 

なんでこんなことになったのかなぁ……。

やっぱりあの時、無視すりゃよかったんだ。

 

ーーーーそれは数日前の出来事だった。

まさか、こんな面倒なことにまで発展するとはなぁ……。

 

俺は溢れ出る後悔と共に、あの日(・・・)のことーーーー眼前で仁王立ちする少女、アインハルト・ストラトスと遭遇した日のことを思い出していた。

 



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一話

これだけ連投します。


「うぉっ!」

 

それ(・・)を見つけたのは学校帰りにゲームセンターにて遊びまくった後、コインロッカーに預けた荷物を取りに行ったときだった。

 

「おぉぅ……倒れているロリを発見……」

 

恐らく中学生だろう。制服に見覚えがある。

よく見ると傷だらけだ。最近噂の通り魔の仕業か?

まあ、何にせよ、

 

「無視するのみ。さぁ帰ってネトゲしよ……」

 

ーーーーガシッ。

 

「……なんだよ」

 

足を捕まれた。

しかもかなり強く。

 

「おい離せ! 俺はお前みたいな面倒ごとには関わりたくないんだ! 今回はご縁がなかったということで……」

「……ぅ………………」

「……なんだよ無意識かよ」

 

ロリっ娘は意識がないにも関わらず俺の足を掴んだようだ。

まったく離す気配がない。

 

「はぁ……わかったよ。手当てしてやるから離せ」

「…………ぅ、ぁ……」

 

ロリっ娘が足を離す。

こいつ起きてんじゃないだろうな。

 

「とりあえず包帯とか買って来っから待ってろよ」

 

ーーーー思えばこの時、そのまま帰ってしまえばよかったのだ。

 

 

 

 

 

 

「うし、大体オッケーだな」

 

一通りの手当てをしてやり一息吐く。

まさか自分に看護系の才能があるとは……!

 

「……ぅ……くる……し…………」

「あーはいはいどうせ自己満足な手当てですよ。注文の多いガキンチョだぜ」

 

包帯を緩めてやると苦しそうな顔をしていたロリっ娘は安らかな表情になる。

その表情を見た俺は一仕事終えたような気分になった。

 

「……ん? これなんぞ」

 

ふと、首の後ろで何かが点滅しているのを見つけた。

ロリっ娘の上半身を支えるように抱き起こしてそれを見る。

これは……

 

「……発信、機?」

 

ーーーーヤバい。凄くヤバい。

明らかに面倒事だ。

思わずロリっ娘を投げ捨てる。

ゴンッ、と凄い音が聞こえたが気にしない。

 

「……うっ……ん?」

ゲッ。

起きた。

 

「あな……た、は……?」

 

左右で色が違う瞳が俺の顔を捉えている。

ばっちりと目が合った。

一瞬のはずなのに、それは永遠にも感じられた。

 

「…………ぅ……」

 

それだけ言うとロリっ娘は再び意識を失った。

綺麗な眼だったなーーーー

 

「ーーーーとか言ってる場合じゃねぇ! 顔見られた!」

 

いや、朦朧としてたし覚えていないかもしれない。

 

「くそぅ、やっぱり関わるべきじゃなかったんだ……」

 

今さら後悔したって遅い。

出来ることがあるとすれば、このガキンチョが俺を覚えてないことを祈るだけだ。

 

「いや、待てよ……。今この場で二、三発殴っとけば……」

 

拳を固めてガキンチョを見るーーーーと、首もとで点滅する物が目にはいる。

 

「忘れてた……発信機!」

 

ガキンチョを見つけてから大分経っている。

もしこいつが追われてるなら……

 

「クッ……! 今日はこの辺で勘弁しやる! 覚えとけよーーーーいや、忘れろよガキンチョ!」

 

倒れているガキンチョを指差し一目散に逃げ出す。

もう二度と会わないことを切に願ってるぞ、ガキンチョ……!

 

 



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二話

残念なことに。

非常に残念なことに、ガキンチョとはあの夜の二日後に再会した。

町の往来のど真ん中で。

 

「あ……」

「……げっ」

 

どうやら顔を覚えていたようだ。

どこかに向かっていたのだろうか、足を止めて俺を見つめる。

 

「……あの」

「……ッ!」

 

ガキンチョが口を開こうとする。

その前に俺は『でんこうせっか』で来た道を逆走した。

 

そう、奴との二度目の遭遇は無事に事なきを得たのだ。

得たのだが……問題は三回目のエンカウントだった。

 

 

 

 

 

「あの……生徒手帳、落としましたよ」

「ん? あ、どう……も…………」

 

振り向くとやつがいた。

その手には俺の生徒手帳。

先ほどの声はこいつのか……!

 

「なん……!?」

篠崎(しのざき)チヒロさん……ですか。変わったお名前ですね」

 

名前を知られてしまった。

いや、まだだ。まだ焦るような時間(タイミング)じゃない。

名前だけ知られたところでーーーー

 

「へぇ……あの高校に通っているんですか。すごいですね」

 

オワタ。

 

「あ、あぁ、拾ってくれてアリガトウ! 拙者用事があるのでこれにて……」

「あ、待ってください!」

 

ガシッと腕を捕まれる。

何この子……力強い。

 

「あっ……その……申し訳ありません!」

 

顔を真っ赤にして腕を離す。

そして姿勢を正すと頭を下げた。

 

「申し遅れました。私、St.ヒルデ魔法学院中等科一年、アインハルト・ストラトスと申します」

 

ガキンチョはストラトスちゃんと言うらしい。

ストラトスちゃんは頭を下げたまま続けた。

 

「先日は手当てをしていただきありがとうございます。ただ……恥ずかしながら意識が朦朧としていたので、手当てをして下さったのがあなただという確証がないのです。その確認も含めてご挨拶に……」

 

ゆっくりと顔をあげ、そして固まる。

 

「……え?」

 

ーーーー俺はとっくに逃げ出していた。

 

 

 

 

 

「そこから俺とストラトスちゃんの追いかけっこが始まったんだ。それはまるで……そう、三世ととっつぁんのような……!」

「そろそろ現代に戻ってきてください」

 

あぁ、現実逃避もここまでか。

このまま過去編とか突入しない?

 

「やりません。今日という今日はきちんと話をしましょう」

「えー……」

 

やだよぅ。

ボクおうち帰りたいよぅ。

 

「今日はちょっと用事が……」

「ないですよね? 今日はこのまま自宅に帰り夕飯までネットゲームをして、その後に生物と数学の宿題をしてから入浴、就寝する予定のはずです」

「待って待ってストラトスちゃんちょっと待って」

 

え?

なに? どういう事?

なんで知ってるの?

 

「調べましたから。チヒロさんはすぐ逃げてしまうので情報は貴重な戦力です。数日、後をつけた甲斐がありました」

「知ってるかい? 世間一般ではそれをストーキングと呼ぶんだぜ?」

 

どうやら話を聞いてやらないとマジでヤバいらしいな。

俺のプライバシーが。

 

「ふぅ……わかった、わかったよ。話を聞いてやるから……その前に汗を拭け」

「……わかりました」

「あ、いや待て。拭いてやるから目ぇ閉じろ」

 

ストラトスちゃんは額に汗をかいていた。

まぁ、あれだけ全力疾走すればそうなるだろうな。

ポケットからハンカチを出す。

 

「あ、その……」

「人の好意は素直に受け取れよ、ガキンチョ」

「……で、では、その、お願いします。……それから子ども扱いしないでください」

 

ストラトスちゃんはそれだけ言って目を閉じる。

 

「よし、拭くぞ?」

「は、はい……」

 

俺はハンカチをストラトスちゃんの顔にーーーーめがけて投げつけた。

ついでに彼女の靴紐をほどいてから走り出す。

 

「わぷっ!?」

「ワハハ、愚かなり!」

 

ストラトスちゃんはハンカチを顔から取り、走り出そうとした。

だが靴紐がほどかれていることに気付き、こちらを恨めしそうに見つめる

 

「じゃーなー、ストラトスちゅわん! もう学校来んなよ!」

「待ってください! 私……私!」

 

もう遅い。

貴様ではとうてい追い付くことはできぬ。

我は帰る。何者も干渉することのできない約束の地へと。

いざ、(エルドラド)へ!

 

「私! ーーーーあなたの家の住所知ってますからね!」

 

くっそぅ。

 



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三話

さて、ストラトスちゃんから逃げ仰せた俺は自宅へと戻ってきていた。

まぁアパートなんだけどね。

 

「ただいま~」

 

独り暮らしなので当然返事はない。

制服を脱ぎ、部屋着へと着替える。

 

『チヒロさん! アインハルトです! 開けてください!』

 

聞こえない聞こえない。

だからドアノブガチャガチャすんな。

 

「さぁ、ネトゲを……ん? メール来てる」

 

PCの電源を点けるとメールの着信を知らせるアイコンが出ていた。

早速開いてみると、それは少し前に知り合ったボイスチャット友達からだった。

 

「おっ、スカさんからじゃん。うわ! 頼んでたバッ〇モービルの設計図だ!」

 

スカさん。

それが彼の名だ。それ以上は知らないし、知ろうとも思わない。

スカさんはスカさん。それだけで十分だ。

よく見ると設計図の最後に文章がある。

 

「ん、何々? 暇なとき連絡ください? ……今日のネトゲは中止だな」

 

今日は久しぶりにスカさんとボイスチャットでもするか。

 

『ネットゲームは中止して友人とボイスチャット……と』

 

メモすんな。

ボイスチャットアプリを開いてスカさんへとコールする。

ワンコール半で出た。

ボイスチャットだから当然声だけ。

 

「ようスカさん。ワンコール半で出るとかあんた暇なのか?」

『やあチヒロくん。僕のいるここは案外暇なのだよ』

 

前に聞いたことがあるのだが、スカさんはどこかに閉じ込められているらしい。

場所までは教えてくれなかったが“監視役が無能だからボイスチャットとかできちゃうんだよ”と言っていた。

スカさんのいる場所が何となく分かりそうだったのだが、面倒くさいので考えるのはやめた。

 

『そう言えばアレ見たかい?』

「バッ〇モービルの設計図? 見た見た。すげぇよマジで作るなんて!」

『あれくらい余裕さ。なんならコ〇ボイの設計でも……』

「それならハ〇クバスターのがいい」

 

下らない冗談を交わし合う。

ただ……ハ〇クバスターに関しては結構ガチだ。

 

「で、どうしたのスカさん? 連絡欲しいとか……珍しいな」

『うむ……実は困った事態が発生してしまってね』

 

スカさんは深刻な声でそう言った。

 

「どうしたし」

『うむ……実は娘の着替え現場に遭遇してしまってな』

「死ねよ」

 

スカさんが前に娘の写真を送ってきたことがある。

確か……ウーノさんとかいう名前だったと思う。

超美人だった。

 

『ちょっ、チヒロくん!? 真剣な悩みなんだ! あれ以来私を無視するようになって……』

「そのまま忘れ去られてしまえ」

 

こっちはビリビリ……じゃなくて格闘家中学生に終われる毎日なのにきっちり覗きイベントこなしやがって。

 

『頼むよ、君だけが頼りなんだ!』

「あー……じゃあアレっすね。裸見たんだからスカさんも裸見せればいいんすよ。それでおあいこ」

『なるほど……確かにそれなら……! ありがとうチヒロくん、感謝するよ!』

 

スカさんとのボイスチャットが切れる。

……破滅しろ。

 

「あ~あ、時間無駄にした。ネトゲやろ」

 

そうして俺はストラトスちゃんの言っていた通りに夕飯までネトゲをしてから宿題を終わらせ、その後入浴して眠りにつくのだった。

 

ちなみにストラトスちゃんは俺が寝る前までドアノブをガチャガチャやっていたので、夜食を作って郵便受けから渡してやった。

 

『はぐはぐ……料理がお上手、と……はぐはぐはぐ』

 




スカさんとのボイスチャットの内容が自分的に納得がいかない部分があります。
もうちょっと面白くできたのでは、と。

ギャグなので「ハァ? あの場所(・・・・)でどうやって着替え現場に遭遇すんだよ」とかは無しでお願いします。
きっと自由に抜け出せるんですよ。外部とボイスチャットできる位なので。


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四話

「あ、先輩!」

 

朝、学校へと向かう道のりを歩いていると背後から声をかけられる。

 

「おれのうしろに誰かがいる! 最近とりつかれたみたいなんだ」

「……朝から何言ってるんですか」

「……最近取り憑かれたのは嘘じゃないぞ。少し誇張表現になるかもしれないが」

 

振り向いた先には呆れ顔の黒い短髪の少女の姿があった。

彼女の名はリオ・グリズリー。

 

「よう、グリズリー」

「ウェズリーです!」

 

間違っていた。

 

「これが俺たちのいつもの挨拶だろ、ウェズリー」

「名前間違えるなんて失礼な挨拶聞いたことありませんよ!」

「じゃあ今聞けたな。感謝しろ」

 

朝から元気なガキンチョだ。

このウェズリーとは学校に行く道が途中まで同じなのだ。

 

「じゃ、また明日」

「あ、はい……じゃなくて! 途中まで一緒でしょ!」

「でも一緒に行くとは言ってないよね?」

「ぇ………………い、一緒に行きましょうよぅ…………」

 

仕方ない。

泣き出しそうだから一緒に行くことにした。

 

「もぅ……先輩のばか」

「あんだと」

「なんでもないですぅ! それより聞いてくださいよ!」

 

ウェズリーは最近あったことを話し始める。

やれ、担任の先生がどうだとか、新しく知り合った子がどうだとか。

俺はというと彼女が口を開くたびに覗かせる可愛らしい八重歯を見ていた。

 

「でですね、その時コロナって子が……ん? どうしたんですか? そんなに私の顔見て」

 

気付かれてしまったようだ。

さすがにこれだけ凝視してれば気付くか。

 

「あ、いや……」

「ん~? ……あ、さては……」

 

ウェズリーはニヤニヤしながなら俺を見る。

そして変な(しな)を作って俺に言った。

 

「私が可愛くてちゅーしたくなったんですかぁ~?」

「お前の八重歯へし折りたい」

 

なに言ってんだコイツ。

 

「先輩こそなに言ってるんですか!?」

「お前の八重歯へし折りたい」

「いやさっき聞きましたから! 言葉じゃなくて理由!」

 

何でそんな怖いこというんですか~、と憤慨するウェズリー。

 

「そんな怖いこと言う先輩なんてもう知りません!」

「ん? あ、そういやここまでか」

 

ちょうど別れる道に来たようだ。

 

「じゃあな。事故には気を付けろよ」

「べ~だ!」

 

ウェズリーが駆け足で俺から離れていく。

その先では同い年くらいの二つお下げの子が手を振っていた。

ウェズリーも手を振り返して彼女へと向かっていくーーーーその背中に俺は声をかけた。

 

「また明日な」

「……………………はい!」

 

いい笑顔だ。

だから俺はーーーー

 

 

 

「お前の八重歯へし折」

「先輩のばかぁぁぁあああッ!」

 

 

 

 




今はストックがあるので連投できますが、切れたら連投できません。
大学もあるので。


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五話

金額は適当です。
あと単位も円になってますのでご了承ください。


「あ、先輩!」

 

夕方、学校から家へと帰る道を歩いていると背後から声をかけられる。

 

「逃げるんだよォ!」

「……夕方から何を言ってーーーーあれっ!? こう言ったら止まってくれるんじゃないんですか!?」

「それはブルーベリー限定の話でストラトスちゃんには適応されない!」

 

いや、ミリタリーだったっけ?

忘れた。まぁいいか。

 

「今は逃げることに専念するのみ」

「待ってください! 今日こそお礼を……!」

「俺は気にしてないから! はいオッケーというわけで追いかけてくんな!」

「それでは私の気が済みません!」

 

くっ……お礼一つでどこまで追いかけて来るんだ、こいつは。

 

「地の果てまでです!」

「辿り着くのは俺の家だよ! つかナチュラルに心を読むな!」

 

なんてことだ。

今日俺には大切な用事があるのに!

 

「ストラトスちゃん! 俺はこれから」

「駅前の本屋に行って今日発売の小説を買うんですよね? 大丈夫です、私がもう買ってありますから。あとで代金だけ頂ければ。後、冷蔵庫の食材が少なくなってきてましたからそれも買ってあーーーーあ! なんで無言で速度をあげるんですか!? 待ってください!」

 

もうやだコイツ。

 

 

 

 

 

 

『チヒロさん! 開けてください! チヒロさんっ!』

 

今日も今日とてストラトスちゃんから逃げ切った俺はドアノブにかけてあったスーパーの袋を取ると中に入って鍵をかけた。

ストラトスちゃんはいつも通りドアノブをガチャガチャやっている。

とりあえず冷蔵庫に食材を入れると玄関へと向かう。

 

「……いくら?」

『あ、5430円です。あとこれが580円でした』

 

郵便受けから本を受け取り、代金を渡す。

 

『えっと……はい、ぴったりです。それではーーーー開けてください、チヒロさんっ!』

 

再びドアノブガチャガチャを始めたストラトスちゃんを無視してパソコンの前に向かう。

 

「もう今日はネトゲしよう……」

『今日“も”ではないんですか!? チヒロさん! 開けてください!』

 

うるせい。

パソコンを起動する。

 

「さぁ今日はどの狩り場行くかな~……お? ライジンさんいるじゃん!」

 

ライジンさんはよく協力プレイをするプレイヤーだ。

早速チャットする。

 

“ちーす。ライジンさん久しぶりっす”

“おーヒロヒロ! おひさー!”

“ご一緒しても?”

“いーよー!”

 

さぁ、今日もライジンさんと胸踊る熱き冒険の(電脳)世界へ……!

 

 

 

 

 

「ん……うぉ、もう11時か!?」

 

あれからずっとネトゲをしていた。

いまだにストラトスちゃんはガチャガチャやっている。

 

「さすがにもうやめるか。風呂も入ってなければメシも食ってないし」

 

明日も学校がある。

準備もあるからな……宿題とか

 

『チヒロさんっ! チーヒーローさーんー!』

 

あれへの対策とか。

 

“すんません、ライジンさん。俺そろそろ落ちるっす”

“えー!? もう!? もっとやろうよ!”

“明日も学校とかあるんで”

 

ライジンさんは駄々っ子のように渋るが、週末に飽きるまで(もしくは月曜が来るまで)付き合うということで納得してくれた。

 

“じゃあ落ちますね。今日は助かりました。ホントに頼りになります、ライジンさん”

“えっへん! ボクは強くてスゴくてかっこいいから当然だよ! じゃあまたね~!”

 

ライジンさんがお決まりの台詞を言ったところでゲームを終了する。

 

「ふぅ……じゃあメシ作るか。あ、あと風呂も焚かないと」

 

ーーーーその後、宿題も終わらせ眠りについた。

何か忘れてるような気もするが……思い出せない。

 

あとストラトスちゃんにも夕飯をやった。

郵便受けから。

 

『んぐんぐ…………けぷっ。……き、聞かれてませんよね?』

 

ばっちり聞いたぞ。

 

 



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六話

 

今日は学校が創立記念日で休み。

ストラトスちゃんは普通に学校があり、俺の前には現れない。

なんて素晴らしい日だ! ……と、思っていたのに。

 

「お願いやぁ! 何でもええから食べさしてぇ!」

「るっせぇ失せろ乞食(こじき)女! うちは飯屋じゃねぇって何回言えば理解すんだてめぇは!」

 

今日はこいつに襲来されて気分は下々。

針なんて落とせない。

 

「お願いや、チヒロ! お腹空いて倒れそうなんや!」

「知らんがな! ビリビリお嬢様んとこ行きゃいいだろ!」

「チヒロがええの!」

「訳分かんねぇこと言うな!」

 

ジークリンデ・エレミア。

それがこの乞食女の名だ。

前に行き倒れていたのを助けてやったらうちの食料品に寄生してくるようになった。

 

「チヒロぉ!」

「泣きついたって無駄だぜ無駄無駄!」

 

今まではなし崩しに冷蔵庫の中を食い尽くされて来たが、今日は違う。

 

「何を言ってもノーだ! 今日という今日は絶対にーーーー」

「おっぱい揉ましてあげるから!」

「ーーーーとりあえず上がれよパスタでいいか?」

 

 

 

 

 

 

「ぷへぁ~……ごちそーさま、や」

 

結局、冷蔵庫の中は食い尽くされてしまった。

パスタが出来上がるのを待てなかったらしい。ちなみにパスタも全部食べていた。

……まぁどうせストラトスちゃんが買ってきてくれるからいいけどさ。

 

「……最近ストラトスちゃんの行動を受け入れ始めてる自分がいるから怖いよな」

「ん? なんか言うた?」

「いや、なんでもない」

 

そんなことよりも。

 

「おい、揉ませろよ」

「ん、ええよ」

 

了承も得られたので早速……

 

「ーーーーヴィクターのやけど」

「………………………………………………………………………………………………はぁ?」

 

……………………はぁ?

 

「今日はそれで来たんよ。一緒にヴィクターのとこ遊びに行こ?」

「待てよおいちょっと待て」

 

何を言ってるんだこいつ。

 

「おっぱいは?」

「ヴィクターの」

「お前のは!?」

「えっ……うーん……ち、ちゅうしてくれたら考えても…………って、ホンマにやろうとしなくてええから! ちょ、ま、すとっぷ! すとっぷやって!」

 

すっかり騙されてしまった。

もう二度とこいつは信用しない。

 

「……こ、こういうのはちゃんと段階を踏んでやな…………」

「……はぁもうお前帰れよ」

「あ……そんな怒らんといてよ」

 

別に怒ってないし。

 

「激おこなだけだし」

「怒ってるやん!? なぁチヒロ、機嫌なおして?」

 

ジークが後ろから抱き付いてくる。

 

「やめろ暑苦しい」

「……嫌?」

「嫌だね」

 

むー、と唸ってジークはさらに抱き付きを強めてくる。

普通に苦しい。

 

「なぁ、ヴィクターのとこ行こ?」

「嫌だ。せっかくの休日なんだ。ゆっくりしたい」

「そんなこと言わずに!」

 

どんなことを言われても俺はーーーー

 

「おっぱい揉ましてあげるから!」

「何してるさっさと行くぞ!」

 




次回に続く。


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七話

「ヴィクター! 遊びに来たでー!」

 

ジークに『無理やり』連れられて、ヴィクターことヴィクトーリア・ダールグリュンの屋敷へと来ていた。

もう一度言うが『無理やり』だ。

別に騙されてなんかないし。

 

「あらジーク、いらっしゃい」

 

ヴィクターは屋敷の庭でティーセットを準備していた。

傍らには執事のエドガーもいる。

 

「……よう。久しぶりだな、へちゃむくれ。元気にしてたか」

「えぇ、それはもう。あなたこそ元気そうでなによりですわ、ドブネズミ」

 

……こいつ。

 

「おー、元気有り余りすぎて困ってるくらいだぜ。この前なんて元気すぎて4時間くらいお尻カスタネットしてたわ」

「私は5時間ですわ」

「あ、悪い間違えた。6時間だったわ」

「すごいですわね。『毎日』5時間の私では到底足元にも及びませんわ」

 

あはははは。

プッツンしたぜ。

 

「てめぇ! やんのかコラ!」

「上等ですわ。どこからでもかかってきなさい」

「ちょ、二人とも喧嘩はやめてや!」

 

ジークが慌てて止めてくるが関係ない。

 

「てめぇはもう少し可愛くできねぇのかよ!」

「あら、十分可愛くしてると思いますけれど」

「内面と外面だけな!」

「……それって全部やないの?」

 

どうしてこいつは可愛くできないのか。

ジークに紹介されて初めて会ったときからこんな感じだった。

 

「あなたこそ、もはやひた向きなまでのその失礼な態度をどうにかしたほうがいいですわよ」

「余計なお世話だ! 『ヴィクターはチーくんのことが大好きだにゃん』って言ったら考えてやるよ」

「ヴィクターはチーくんのことが大好きだにゃんっ♡ ……これでいいかしら?」

「……も、もう一回…………あ、録音させて」

 

録音させてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

「むぅ……二人って仲ええよね」

「はぁ? 何言ってんだ急に」

 

ティーパーチーがスタートしてしばらく経ってから、突然ジークがそんなことを言い出した。

ジークは頬をどんどん膨らませていく。

 

「ズルい……」

「なぁヴィクター、こいつ何言ってんの?」

「さぁ?」

 

ヴィクターは我関せずとでも言うかのように紅茶を楽しんでいる。

仲良いって言われても……

 

「こいつとは妄想だけの関係だぞ?」

「も、妄想!? 妄想ってなんや!?」

「こらチヒロ、言葉に気を付けなさい。それではまるで私が毎日あなたの妄想をしているようではありませんの」

 

俺の言葉を聞いたジークがわめき散らしていると、それまで紅茶を飲んでいたヴィクターが話に入ってきた。

 

「せいぜい週に5回程度ですわ」

「まじか。俺、週4だわ」

 

週6まで回数増やすか。

 

「……やっぱり仲ええやん」

「そうか?」

「そうでしょうか?」

 

そんな意識全くないけどな。

気が合うとは思うけど。

 

「やっぱり……もっと積極的に……」

「おいジーク? 何ぶつぶつ言ってんだよ」

 

真っ赤になって俯くジーク。

ぶつぶつ何かを言っていたかと思ったら何かを決意したかのように顔を上げた。

 

「ーーーーじ、ジークはチーくんのことが大好きだにゃんっ!」

 

「あ、ヴィクター。お前のガブリアス頂戴? さっき捕まえたケムッソやるから」

「ガルーラならいいですわ」

 

「む、無視せんといてっ!」

 

 




※エドガーもいるよ!


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八話

まさかの二回目更新。

前話にてジークに萌える人が多発。




それはダールグリュン邸での秘密のお茶会(意味深)が終わり、本屋に寄ってからの帰り道のことだ。

ジークとは本屋へ行くときに別れ、今は一人で道を歩いている。

お目当ての本は売り切れていたが、ストラトスちゃんから買っておいたというメールが来ていた。

……アドレスも買いたい本のことも教えた覚えはない。

 

「ん? なんだコレ?」

 

道端でぐにゅぐにゅ蠢いている黒い物体を発見した。

最初は犬のアレかと思った。

 

「……動いてるなぁ」

 

めちゃくちゃ動いている。

それはもう気持ち悪いほどに。

 

「持って帰ってみる……か?」

 

黒い物体を指で摘まんで持ち上げる。

 

「おぉ……何だこの不思議な感触!」

 

冷たいスライムのような……けれどもどこか暖かいソレ。

よし、決めた。

 

「育てよう!」

 

 

 

 

 

 

 

「で、持って帰ったんだけど……どう思う? ウィーズリー」

「ありえないです。あとウェズリーです。その間違いはやめてください」

「ナメクジ食らえ!」

「やめてくださいってば!」

 

翌日、いつものようにウェズリーと登校。

昨日の黒い物体のことを話ながら歩く。

 

「それで、それはどうしたんですか?」

「植木鉢に植えた」

「植物ですか……」

 

ウェズリーが呆れている。

このままでは先輩としての威厳が……話題を変えなくては!

 

「ところでロン」

「ウェズリー! もしくはリオ!」

「お前の八重歯へし折りたいんだけど……」

「唐突!」

 

いやいつも言ってるじゃん。

 

「だめ?」

「ダメに決まってるじゃないですか! そ、そんなに悲しそうな顔しないでくださいよ……」

 

断られてしまった。

 

「はぁ……はぁぁぁあ」

「そんなこれ見よがしにため息されても……。こ、これじゃあまるで私が悪いみたいじゃないですか」

 

はぁぁぁぁぁぁあああああ……。

 

「う……も、もう……仕方ないですね!」

「……ん?」

 

ウェズリーが正面に来て口を大きく開いた。

 

「……折っていいの?」

「触るだけ! 触るだけなら……いいです」

 

チョロい。

 

「それでは失礼して」

「……ふぁっ」

 

歯の先端を指先でトントンと触る。

ちくり、と小さな痛みが走った。

結構鋭いんだな。

 

「ひゃぅ…………ひぇっ、ひぇんぱい……!」

 

次は指で摘まむ。

ウェズリーは顔を真っ赤にして目を閉じていた。

心なしか目元が潤んでいる。

 

「ひぇんぱい…………ひぇ、ひぇんぱい? ひょっ、いらい! いらいれす!」

 

このまま……!

 

「ガブゥッ!」

「あいたッ!?」

 

噛まれた。

思わず手を引っ込める。

 

「お、お前今本気で噛んだろ!?」

「はぁ……はぁ……せ、先輩は本気で折ろうとしましたね!?」

「いいって言ったじゃん!」

「触るのだけです!」

 

なんてガキだ。

親に人の指は噛んじゃいけないと教わらなかったのか?

 

「うわ……血ぃ出てんじゃん」

 

指を見るとうっすらと血が出ていた。

指を口に含む。

 

「ふゃっ!? せ、先ぱっ……な、何して……っ!?」

 

ウェズリーが顔を真っ赤にして焦り出す

どうでもいいけど。

それより指が痛い。

 

「あー痛い痛い。誰かさんのせいで指が痛いわぁ」

「あ、あぅぅ……っ!」

 

ウェズリーのやつは真っ赤になったまま俯くだけ。

おい無視か。

 

「ウェズリーちゃぁん? 人の話は聞きましょうねー?」

「ぅぅ…………!」

「聞いてるー? 聞いてないよねー? 無視かコラ」

 

顔を覗き込むがますます顔を赤くするだけ。

 

「あらあらウェズリーちゃん。どーちたの? お熱あるの?」

「あぅあぅ……!」

 

はにゅーん。

やっぱり無視ですか。

 

「だいじょうぶー? 歩けるー? おてて繋いであげまちょうかー?」

「……………………………………つなぐ」

「……え?」

 

こうして、何故か別れ道までウェズリーと手を繋ぐことになった。

 

 

 

 

「どうでもいいけどウェズリー、お前手汗かきすぎ。ヌルヌルして気持ちわ」

「先輩のばかぁぁぁあああッ!」

 

 

 




主人公がクズ過ぎる件。

次回、再びジーク&ヴィクター登場。
そしてついにあのお方が……!

あと、申し訳ありませんが明日と明後日は大学のゼミの都合上更新できません。
ご了承ください。


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九話

管理局見学編スタート。
と言っても数話で終わりますが。

ちなみに通信については原作でヴィヴィオがお風呂に入りながらやっていた複数人とやるやつだと思ってください。


昔、ある著名人が言った。

“人は自ら悪魔を創る”と。

 

ーーーー人がまるで塵のように吹き飛ばされた。

 

著名人が言ったから俺も言ってみた。

これで2人の著名人と1人の一般人が言った言葉になる。

 

ーーーー彼女(・・)へと光が集まって行く。それは星の誕生を彷彿とさせた。

 

俺は……最初から話そう。

 

「ーーーースターライト……」

 

物語の初めから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「は? 管理局へ?」

 

学校から帰宅すると、ちょうど通信が入っていたことに気付く。

出てみるとジークとヴィクターだった。

 

『ええ。ぜひ見学に入らしてくださいと言われまして』

(ウチ)もたまたまその場にいてなー』

「へぇ……いつなんだ?」

『明日ですわ』

 

なんでも管理局のお偉いさんにそう誘われたらしい。

ただ、その人は重要な会議で来られないから違う人が来て案内してくれるそうだ。

 

「よかったな。行ってこいよ」

 

黒いぐにゅぐにゅを植えた植木鉢に水をやりながら答える。

 

『えー……チヒロも行こーや』

「えー……」

 

ジークが駄々っ子のように誘ってくる。

正直面倒くさい。

つか、

 

「明日普通に学校あるんだけど……」

『それは私が何とか公欠にしますわ』

 

何とかって何だよ。

公欠て……完全に私情じゃねえか。

 

『てゆーかチヒロ? さっきから聞こえるこのガチャガチャって音なんなん?』

「あー……あれだ、猫。猫がいたずらしてる音」

 

ーーーーチヒロさん、開けてくださいにゃん!

 

「うっせーぞ、通信中だ静かにしろ。あと普通に聞いてんじゃねえよ。プライバシーの侵害だぞ」

 

ーーーーごめんにゃさい……。

 

許さん。

 

『チヒロ、猫なんて飼っとった?』

「野良猫だ。かなりデカイ」

 

話を戻そうか。

 

「悪いけど学校行くわ。だからパス」

『えー! 行こうや行こうやー!』

「パス」

 

なんて言われてもパスだ。

なにせ……

 

「ほらテスト近いし」

『チヒロなら余裕やろ!』

「今回は全教科満点取りたいんだよ」

 

取れたら委員長(♀、超巨乳)が胸揉ませてくれるって言うし。

絶対取る。

死んででも。

 

『おっぱい揉ましてあげるからー!』

「委員長の胸はお前ごときでは敵わない。しかもどうせまたお前のじゃないんだろ?」

『……委員長? チヒロ、どういうことや?』

「後半ガン無視かよ。しかもなんで不機嫌?」

 

なんかジークが不機嫌になった。

 

『説明して』

「全教科満点取ったら委員長が胸揉ませてくれるって約束」

『それは……男やよね?』

「女に決まってんだろ頭湧いてんのか」

 

なんで俺が男の胸なんぞ揉まなきゃならんのか。

本気でジークの将来が心配なった瞬間だった。

 

『……来てくれたらホンマに(ウチ)のおっぱい揉ましてあげるで!』

「委員長のがいい」

『なんでや!?』

 

委員長可愛いし。

胸おっきいし。

 

「ちなみに満点取れなかったら買い物に付き合わなくちゃいけない」

『それって……デートやん!?』

「そうとも言う」

『勝っても負けても天国ですわね』

 

ジークが唸る。

なんでかはわからないけど。

 

「とにかく! 明日は学校に行くから、悪いけどパーーーー」

『チヒロ、一緒に管理局見学に行きましょう?』

「ーーーーわかった行く」

 

『なんでやぁぁぁあああッ!』

 




誰か冒頭の元ネタわかる人いるかな?

なんかジーク萌え多発したあとだからアインハルトの描写が読者に対してあざとくなってしまった。

ちなみに委員長は原作キャラではなく、登場予定もありません。


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十話

ヴィクターの口調がいまだに掴めない。


翌日。

ヴィクターが車で迎えに来た。

運転してるのはエドガーだけど。

 

「さ、チヒロ。行きますわよ」

「うーい」

 

車に乗るとそこにはすでにジークの姿があった。

超不機嫌そう。

 

「よう、ジーク。なにむくれてんだよ」

「……別に」

 

どかっ、とジーク隣に腰かける。

 

「あー……あれか。あの日か」

「デリカシーがないですわよ、チヒロ」

 

そんな会話にもジークは無反応。

本気でどうしたんだ?

 

「ジーク?」

「……ふん」

「ジークちゃんってば」

 

顔を除き込むがすぐにそっぽを向いてしまう。

 

「……別に(ウチ)のことなんてどうでもええんやろ?」

「はぁ?」

「あぁ……ほら、昨日の通話でのことじゃないかしら?」

 

昨日の通話?

……あぁ、あれか。

 

「野良猫のこと?」

「委員長って人の胸のがええって言うた!」

 

は?

 

(ウチ)が言うても渋ったのに……ヴィクターが誘ったら一発でOKした!」

「え、なになに? どういうこと?」

「はぁ……ジークは嫉妬しているのですわ」

 

嫉妬?

……俺に?

 

「その顔は何も分かっていないようですわね……つまり、自分よりも他人を優先されてジークの乙女心はボロ雑巾のごとくズタズタにされたのですわ」

「う、ん?」

 

分かったような分からないような。

とりあえずジークのご機嫌を取ればいいのか?

 

「そういうことです」

 

なるほど。

やるべきこととヴィクターが心を読めるってのはわかった。

 

「なぁジーク」

「……なんや」

「あー……ほら、お前がそんな態度だと寂しい」

「……嘘や」

 

拗ねてるなぁ。

 

「嘘じゃないって。お前居なかったらつまんないだろうし」

「……ホンマ?」

「ホンマホンマ」

 

ジークが顔をこっちに向ける。

 

「な? 今日は一緒に回ろうぜ?」

「……一緒?」

「あぁ、一緒だ」

「というか一緒以外の選択肢はないのですが……」

 

ヴィクター少し黙ってろ。

せっかくいい感じに機嫌直ってきたのに。

 

「絶対やで? 絶対一緒やで?」

「わかってるって」

「この男……本当にクズですわね。妄想が(はかど)りますわ」

 

ジークが腕を組んでくる。

すっごい上機嫌そうだ。

 

「えへへ……!」

「……ま、可愛いからいいか」

 

じゃれてくる仔犬みたいで。

 

「か、かわ……!? えへへへぇ……!」

「この男は……。しかも狙ってないのがまた……」

 

 

 

 

 

 

 

「さ、着きましたわ」

「おぉ、でかいな!」

 

やっと今日見学する管理局の施設前に到着。

……やっとと言うほどの時間は経ってないが。

 

「えへへぇ……」

「ジーク、そろそろ戻ってきなさい?」

 

ジークは俺の腕を抱いたまま離れない。

何を言っても『えへへ』と笑うだけ。

 

「はぁ……もう案内してくれる方がいらっしゃるというのに……」

「そういや誰なんだ? 案内してくれる人って」

「ーーーーあ、君たちかな? 今日見学に来る子っていうのは」

 

ヴィクターが俺の質問に答えようとした瞬間、女性の声が聞こえた。

 

「初めまして!」

 

声の方へ振り向く。

俺の視線の先では、彼女の頭の横で一つに束ねられた栗色の髪が揺れていた。

お、俺はッ! あの人の事を知っているッ!

 

「私は高町なのは! 今日はわたしがこの施設を案内させて貰います。よろしくね?」

 

高町なのは。

エース・オブ・エース。

 

管理局屈指の英雄がそこに立っていた。

 




最初は航空武装隊の施設にする予定だった。
次に「あれ? なのはって教導隊……」となった。
混乱に混乱を重ね、最終的に「あ、明記せず管理局の施設とだけ書いとけば……」という混乱の極みに到達した。

ごめんなさい。


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十一話

気付いた人もいるかもですが、昨日11時頃に誤爆しました。
1分にも満たない時間ですが。


「でね、ここが……」

 

エース・オブ・エースの案内の元、施設内を巡る。

俺とヴィクターは彼女に気付かれないように話していた。

 

「なぁ、あれって本当に……」

「え、えぇ。高町なのは一等空尉その人ですわ」

 

ヴィクターもこの事を聞かされていなかったらしくかなり驚いていた。

 

「マジか。あれが世にも名高き管理局の……」

「エース・オブ・エース……」

「白い悪魔か」

「は、はい!? 何ですのそれは!?」

 

知らないのか。

 

「ただなぁ……」

「……ん? どうしたんですの?」

 

何だかこの人……。

と、じっと見ている俺に気付いたのか高町一等空尉が振り向いた。

 

「ん? 何かな……えっと、チヒロくんだっけ?」

「あ、いや……」

 

瞬間、背後から視線を感じた。

振り向くがそこには誰もいない。

 

「……今、何か……」

「……ねぇ、君、今の」

「あの、高町一等空尉? こちらの部屋はいったい何をするところなんですの?」

「……あ、うん。ここはねーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、それじゃあ最後は訓練の様子を見学してもらおうかな」

「エース・オブ・エース教導の訓練ですか……」

「楽しみやね!」

 

ジークはいつの間にか復活した。

そしてあの後も例の視線はついてきていた。

今も感じる。

 

「う~ん……」

「どうしたんや、チヒロ? 途中からなんか様子が変やで」

「ジークは途中からまともに戻りましたわね」

 

最初はストラトスちゃんかと思ったのだがいつもの時間(俺の下校時間)が過ぎたあたりで、あの植木鉢に芽が出ていたとメールが来ていた。

写真付きで。植木鉢は俺の部屋のなかにあるはずなのに。

どうやって入ったんだ、あいつ……っ!

 

「よう、なのは。そいつらが例の客か?」

「あ、ヴィータちゃん」

 

なんかロリがやって来た。

高町一等空尉と同じ服を来ているところを見ると局員なんだろう。

 

「紹介するね。こちら私と同じ教導隊のヴィータちゃん」

「よろしくな」

 

ふむ……。

年下なのか……それとも年上なのか。

それによっては方法も変わる。

 

「一応言っておくがあたしは『大人』だからな!」

 

年上か。見えないけど。

ならば……。

 

「なるほど……確かに『大人』なオーラに溢れてますね」

「……ん? お前……なかなか見る目があるな」

 

食いついた。

 

「こう……頼りがいのある『大人のお姉さん』とでもいいますか……」

「……お前、名前は?」

「篠崎チヒロです」

 

ヴィータさんが超笑顔で近寄ってくる。

 

「なぁ、チヒロ。お前腹減ってねぇか? アイス好きか?」

「……まぁ、好きか嫌いかで言えば愛してますね」

「そ、そうか。待ってろよ、買ってきてやるから!」

「あ、お構い無く~……って行っちゃった」

 

ヴィータさんが走っていったのをしっかりと確認する。

 

「ヴィクターヴィクター。あのちまいのチョロいわ」

「みたいですわね。グッジョブ」

「あ、あはは……ゆ、ユニークな子たちだね……」

「すいませんすいません! 本当にすいません!」

 

なんでそんなに謝ってんだジーク。

わけワカメ。

 

「さ、さあ! じゃあ気を取り直して訓練始めよっか! よ~し……気合い入れちゃうよ!」

 

ーーーーかくして、ワンサイドゲームが始まった。

 

 




ついに不法侵入。


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十二話

ーーーー人が塵のように吹き飛んだ。

 

「ほらほら、みんな! 気合いが足らないよ!」

「いやぁ……気合いとか関係あんのかなコレ……」

 

人ってあんなに跳ねるんだな。

はじめて知った。

 

「え、エグいですわね……」

「うわ、魔力収束し始めたで……」

 

ーーーースターライト……ブレイカァァアアアアッ!

 

光の奔流。

もはや圧倒的暴力とも呼ぶべきそれは、訓練生たちを飲み込んだ。

 

「あ、悪魔たん……」

「あれが悪魔? 違います……あれは魔王ですわ」

「ひでぇ言いようだな……まぁ、わかるけどな」

「あ、ヴィータさん」

 

いつの間にか、手に買い物袋を下げたヴィータさんが隣にいた。

 

「ほら、アイスだ。全員分あるぞ」

「俺、バニラ!」

「では抹茶で」

(ウチ)はチョコレート!」

「じゃあ……あたしはストロベリーだな」

 

綺麗に別れたな。

袋を開けて一口食べる。

 

「うまうま」

「チヒロ、一口交換しません? はい、あーん」

 

ヴィクターが抹茶アイスの乗ったスプーンを差し出してきた。

 

「あむ……うまうま。ほれ、あーん」

「はむ」

「……な、なぁ。お前らアレか? 恋人とか……」

「違います」

「違いますわ」

 

なんでそう思ったのか。

あ、ヴィータさんもアイス食べたいのかな。

 

「はい、ヴィータさん。あーん」

「う、うぇっ!? あ、いや、でも……」

「じー……」

 

ヴィータさんは俺の後ろの何かを気にしているようだ。

振り返ってみてもジークしかいない。

 

「溶けちゃいますよ」

「ぅ……!」

「ほら! あーん、です」

「あ、あーん……」

 

観念したのか、やっとヴィータさんは口を開いた。

 

「おいしいですか?」

「お、おいしぃ……けど……」

「じぃぃぃぃぃ…………」

「……何だよジーク」

 

声に出して言うなよ、じぃぃぃぃぃとか。

 

「……(ウチ)もアイス食べたいなー」

「食えば?」

 

お前も貰ったじゃんか。

チョコレートアイス。

 

「バニラアイスが! 食べたいな!」

「……別にいいけど。ほれ」

 

アイスを容器ごと差し出す。

 

「……一口がええなー!」

「だから食えよ」

「一口! が! ええ! な!」

 

何なんだよ一体。

 

「あーん!」

 

あぁ、そういうことね……。

一口分のアイスをすくってジークの口に入れる。

 

「はむ……えへへぇ……! あ、チヒロも食べる?」

「いらん。ヴィータさん一口下さい」

「あ? あ、あぁ……か、構わねえけどさ」

「むぅぅぅぅ……!」

 

ヴィータさんがアイスをすくって差し出してくる。

んむ、ストロベリーアイスも実にうまい。

 

「ンマイなぁぁあぁぁーッ!」

「そ、そんなにか!?」

「ブッチュウウウ」

「ヴ、ヴィクター? 急にどうしたん……?」

 

流石だな、ヴィクター。

 

「あなたこそ」

 

二人でサムズアップを交わす。

ジークとヴィータさんは何のことか分かっていないようだ。

 

「ーーーーあ、みんな! 見ててくれたかな?」

「あっ」

 

訓練が終わったのだろう、高町一等空尉がやって来た。

やばい。

全然見てなかった。

 

「あ、な、なのは? 実はその……」

「みんなが見てたからね。恥ずかしいところは見せられないから……ちょっと頑張っちゃった!」

「ーーーー集合!」

 

ヴィータさんの掛け声に高町一等空尉を除いてその場にいた全員が集まる。

小声で作戦会議開始。

 

「……どうする?」

「いや……誤魔化すしかねえだろ」

「で、でも正直に話した方がええんやない?」

「……ジークはあの収束砲を喰らいたいんですの?」

 

……仕方あるまい。

 

「我に策あり」

「ま、マジかチヒロ! 頼む!」

「大丈夫なん……?」

「大体想像できますわね……ご愁傷さまですわ」

 

ヴィクターはそう言ってヴィータさんの肩に手をおいた。

どうやら分かったようだな。

 

「……ああ、そういうことなんや……」

「え? え? な、なんだよお前ら?」

 

気付かれる前にやるか。

 

「高町一等空尉!」

「ん? 何かな、チヒロくん。あ、高町一等空尉じゃなくてなのはさんでいいーーーー」

「ヴィータさんとアイス食べてたので訓練見れませんでしたごめんなさい!」

「ーーーーよ……?」

「はぁっ!? おま、何言って……!?」

 

甘いぜ、ヴィータさん。

 

「私たちは見たかったのですが……ヴィータさんに無理やり……」

(ウチ)なんてデバイスで脅されて……!」

「……ヴィータちゃん?」

「ま、待てなのは! おいお前ら!」

 

さらにジークとヴィクターの援護射撃。

俺たちは一を犠牲にして九を救う。

 

「ヴィータちゃん。ちょっと……お話、しよっか?」

「てめえら覚えてろよォォォォオオオオッ!」

 





チヒロはいつか刺されると思う。
ジークに。


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十三話

これを読み終わったあとに読者は

「おいこれ完全にアウトだろ」

という!


夕方になり、ついに管理局見学は終了を迎えた。

とりあえず管理局の魔王、その力の一端を見ることができたので非常に有意義な時間となった。

高町一等空尉が生きている限りは平和が続くんだと思う。

 

「どうだったかな、チヒロくん」

 

高町一等空尉が話しかけてきた。

ちなみにヴィクターとジークは俺たちに売られてむくれてしまったヴィータさんをなだめている。

 

「いやぁ……なんて言うか……大変ですね」

 

あなたに追われる犯罪者が。

 

「あはは、そんなにお仕事って大変じゃないよ?」

「あぁ、それではなくて……」

「あれ? 違った? じゃあ何かな?」

「いえ……なんでもなーーーーっ!?」

 

またあの視線だ。これは……すぐ後ろからだ。

勢いよく振り向く。

そこには……

 

 

『ハァ…………ハァ…………なのは…………ハァハァ………………あぁ……なのは…………ハァ…………!』

 

 

「なんっ……!?」

 

何かいる。

ハァハァ言ってる変なのがいる。

それは壁の影に隠れて顔を半分だけ覗かせてこちらをーーーー高町一等空尉をただひたすらに見つめ続けていた。

 

「やっぱり……チヒロくんはアレ(・・)が分かるんだね?」

「な、何ですか……あれ」

 

高町一等空尉の方を向く。

彼女は神妙な顔をして切り出した。

 

「アレはね、なぜか他の人には正しく認識できないの」

「正しく認識できない……?」

「うん。親友にも相談したんだけど……たまたまそこに居合わせただけでしょって言われるだけなんだ。他にも上司とか後輩とかにも相談したけどみんな同じ答え」

 

いやアレはそんな生易しいもんじゃないだろ。

居合わせたとかそんな次元じゃない。

 

「しかも私以外の人間では見つけることすらできなかった……そう、君以外は」

 

やばい。

なんか予想ついた。

 

 

「ーーーーユーノ・スクライア。無限書庫の総合司書長にして、私のストーカー」

 

 

「……高町一等空尉。これ見てください」

 

ストラトスちゃんからのメールを見せる。

 

「これは?」

「今日、見学中に来たメールです」

 

高町一等空尉が端末の画面から顔を上げ、俺の顔を見つめる。

 

「……まず、こいつにアドレスを教えた覚えはありません。しかもこの添付されている植木鉢の写真ですが……これ、俺の部屋の中にあるんです」

 

高町一等空尉が目を大きく見開いた。

俺も彼女を見つめ返す。

 

「それだけじゃありません。俺の行動はすべて筒抜けで、下校する時は追いかけられます。家に帰っても明け方までドアノブをガチャガチャされ……そんな毎日を送っています」

 

俺の現状を告げたあと、数秒の間、無言のまま見つめ合う。

そしてーーーー

 

「チヒロくんッ!」

「高町一等空尉……いや、なのはさんッ!」

 

ひし、と抱き合う。

 

「辛かったよね……怖かったよね……わかる、わかるよ!」

「そちらこそ……あんなのに……!」

 

『ハァハァ……なのは…………NTRプレイかい……? それはそれで…………!』

 

悲惨だ。

俺なんかよりずっと。

まだストラトスちゃんのが可愛いげがある。

 

「チヒロくん……もう一人じゃないよ。これからは……私がいるから……!」

 

なんと心強いことか。

魔王とか言ってごめんなさい。せいぜい悪魔くらいでした。

 

「強く生きていきましょう!」

「うん……そうだね!」

 

ーーーーこの日、俺は親友(同志)を得た。

 

 

「何やってんだ……あいつら」

「さぁ……?」

「むぅぅぅぅ……!」

 

『ハァハァ……なのは可愛いよなのは…………ハァ……ハァ……!』

 

……さすがにストラトスちゃんをこの人と同列に語るのは可哀想かなぁ……?

 

 




フェイトだと思った?
残念、ユーノでした!


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十四話

怒濤の感想ラッシュ。

※タグに「クズ多発注意」を追加しました。


『つまり、繋がりというものは永く続くのです……時代や世代を越えて。特に魂の繋がりというものはそれが顕著で……』

「……ふぅん」

 

朝から電波なTVを見ている。

 

「繋がりか……」

 

植木鉢に水をやる。

芽はすでに10㎝ほどまでに成長していた。

成長早くない?

しかもなんか黒っぽいし。

 

「……繋がりねぇ」

 

しかし、植物のことよりもTVで言っていた『繋がり』という言葉が俺の頭のなかで延々と渦を巻いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

管理局見学から数日後。

今日はなのはさんに誘われ、彼女の家へ遊びに行くことになっている。

簡単に言うと第一回被害者の会だ。

 

「……ここか」

 

教えられた住所につく。

……なかなか良いところに住んでるなぁ。

 

「いや、エース・オブ・エースにしては質素な方なのか?」

 

もっとこう……魔王城的なのを想像してた。

まぁいいか。

インターフォンを押す。

 

『はーい!』

 

しばらくして扉の向こうから声が聞こえた。

なのはさんだ。

 

「あ、どうも。チヒロです」

『チヒロくん、いらっしゃい! 待ってたよ!』

 

扉が開く。

 

「こんにちは」

「こんにちは! さ、入って入って!」

 

お邪魔します、と言ってなかに入る。

綺麗な内装だ。

 

「娘の友達が来てるんだけど……多分部屋に行くと思うから。リビングでお茶しよう?」

「お任せします。ていうか娘さんいたんですね」

「まぁ色々あってね。あ、別に結婚とかはしてないよ?」

 

まじか。

それってなおアレじゃね?

……まぁ、人にはそれぞれ事情があるよな。

 

「……ん? 何か誤解してない?」

「……色々あったんですよね。人には言えない色々が」

「待って、そんなしみじみと言わないで! 完全に誤解してるから!」

「わかるよぉ……!」

「何が!?」

 

その時、複数の賑やかな声が向かう先から聞こえてきた。

おそらくなのはさんの言っていた娘さんのご友人たちだろう。

 

「さ、ここだよ」

「ほほぅ……確かに誰かいますね」

「うん。親友とさっき言った私の娘、あとその友達3人…………と、庭にプラス1名。窓から見えるよ、多分」

「……………………………………………………あぁ」

 

今きっと苦虫噛み潰したような顔してるんだろうなぁ、俺。

……そう言えば今日はまだ一度もストラトスちゃんを見てないな。

 

「……入ろうか?」

「……ですね。早く被害者の会やりましょう。ね?」

「うん……!」

 

なのはさんがドアノブへと手を掛ける。

そしてリビングへの扉が開かれた。

そこにはよく見知った顔が……え?

 

「なっ!? す、ストラトスちゃん!?」

「……チヒロさん?」

「せ、先輩っ!?」

 

「……あれ? 知り合いだった?」

 




おまけ
《もしもチヒロが原作vividを見たとしたら》

「あっちのお前はクールでカッコいいのに……なんでこっちのはこんななんだよ……ストラトスちゃん」
「えっ? 私、格好良い……ですか?」
「あっちのお前な。こっちのお前はカッコよさの欠片もないぞ」



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十五話

「なんでここに……」

「チヒロさんこそ……」

「先輩こそなんで……」

 

高町家にてストラトスちゃんと遭遇した。

つまり絶体絶命のピンチ。

 

「チヒロくん、知り合いなの?」

「リオ、アインハルトさん、知り合いですか?」

 

なのはさんと金髪の少女が同時に発した。

とりあえず相手の出方を伺う。

 

「……動か、ない?」

 

まさか……遠慮しているのか?

友達に。

そんな常識があるなら追いかけまわさないでほしい。

 

「えっと……とりあえず座らない?」

 

今まで黙っていた金髪の女性が苦笑いをしながら言った。

……デカいな、あの人。

 

「ていうか先輩? 私のことスルーしてません? ……聞いてます? ねぇ聞いてますか!?」

 

パツキンチャンネーパイオツカイデー。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうぞ」

「……それはなんの真似だ」

「あ、アインハルトさん!?」

 

目の前で四つん這いになるストラトスちゃん。

 

「座るんですよね?」

「椅子にな」

「はい。ですからどうぞ」

 

アカン。

言葉のキャッチボールが成立していない。

 

「えっ、えっと……こっちに座ってください!」

 

金髪の少女が気を使ってくれた。

頭を撫でやる。

 

「ありがとな」

「えへへ……」

 

なんか、妹……というか娘みたいに見えてきた。

俺にくれ。

 

「あげないよ?」

「……同志のよしみでなんとか」

「ダメ」

 

ちっ。

 

「お茶いれてきたよ」

「ありがとう、フェイトちゃん!」

 

お茶を入れにいっていた金髪の女性が戻ってきて座る。

これで全員が椅子に座ったわけだ。

しれっとストラトスちゃんは俺の隣に座っていた。

反対側は金髪の少女だ。

 

「じゃあ……自己紹介しようか?」

「そうだね! じゃあ私から!」

 

隣に座る金髪の少女が俺の方を向いた。

 

「初めまして、高町ヴィヴィオです!」

「君がなのはさんの娘か……。初めまして、俺は篠崎チヒロ」

「よろしくお願いしまーす!」

 

元気だな。

次に二つお下げの子が自己紹介を始めた。

 

「えっと……コロナ・ティミルです」

「……どっかで見たことあるような」

「あの……リオとよく一緒に登校してますよね?」

「リオ?」

 

誰だそれ。

 

「私ですよ!」

「……あぁ、デジャネイロか」

「ウェズリーです! 先輩のばか!」

 

思い出した。

分かれ道でよくこの八重歯を待ってる子だ。

 

「いやぁ……うちの八重歯がいつもお世話になってるみたいで。大丈夫? 迷惑してない?」

「い、いえ、そんな! あ、そう言えばリオってば篠崎先輩の話ばっかりしてて……」

「ちょっ、コロナ!?」

 

なるほどな。

そんで……このパイオツカイデーなお人は?

 

「フェイト・T・ハラオウンです。よろしくね?」

「名前長いっすね」

「あはは、よく言われる」

 

じっとハラオウンさんが俺を見つめる。

なんだ?

 

「……なんだろう、この子……こう、母性本能をくすぐられるというか……お世話してあげたいというか……」

「はい? なんですか?」

「あ、う、ううん! 何でもないよ!」

 

ボソボソと何か言っていてよく聞こえなかった。

 

「で、アレ(・・)が例の……」

 

なのはさんが指差した方を見る。

そこには……

 

 

『ハァハァ……なのは…………なのはぁっ…………ハァ……ハァハァ………………なのはぁぁぁ……』

 

 

「うわぁ……」

「ん? なのはママ、庭に何かあるの?」

「う、ううん! 何でもないよ」

 

本当に他の人にはわからないのか。

 

「……で、チヒロくんのは? いる?」

「……あー」

 

チラチラと横を見る。

視線の先には当然、ストラトスちゃんの姿がある。

 

「……え?」

 

なのはさんが驚いたように俺とストラトスちゃんを交互に見る。

 

「…………はい」

「えぇぇぇ……」

 

そう言いたいのは俺の方ですよ。

まったく……。

 




次回に続く。

おまけ
《もしもチヒロが原作vividを見たとしたら》

「……リオちゃん可愛い」
「えっ!? わ、わたしですか!?」
「お前じゃねぇよ」


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十六話

「え、えっと……チヒロくんはどこに住んでるの?」

 

俺となのはさんの間に流れる微妙な空気を察したのか、ハラオウンさんが話題を変えてきた。

 

「あ、俺は……」

「ここからそう遠くないアパートに一人暮らしをしています」

 

……おい。

 

「あ、アインハルト……さん?」

「なんでしょうかヴィヴィオさん」

「い、いえ……」

 

高町ちゃんの反応は間違っていないぞ。

 

「……な、名前の感じからもしかして地球出身?」

「いーーーー」

「いえ。お父様が地球出身の方らしく、チヒロさん自身はミッドで生まれています。ただ何度か旅行としては行っているようです」

 

教えた覚えはない。

しかもこれ俺への質問だよな?

 

「あ、ははは……」

 

微妙な空気再び。

そして、空気の読める高町ちゃんが話題変えるべく質問を投げ掛けてきた。

 

「じ、じゃあ私から質問です!」

「お、おう! なんだ?」

「あ、アインハルトさんとの関係は……?」

「わ、私も気になります!」

 

高町ちゃんの質問に八重歯が同調する。

こいつとの関係って……

 

「加害者と被害者だな」

「えっ? サーヴァントとマスターの関係では……」

「お前サーヴァントほど高尚なヤツじゃないだろ。おこがましい」

「あ、あはは……」

 

なのはさん……苦笑いしないでください。

 

「恋人とかじゃなかったんだ……」

「よかったね、リオ!」

「こ、コロナぁ!」

 

あれ? そう言えば……。

ストラトスちゃんに小声で話し掛ける。

 

「……なんで俺が今日ここに来るって知らなかったんだ?」

「……チヒロさんは誤解しています。私はチヒロさんの全てを把握しているわけではないんですよ?」

 

そりゃそうか。

 

「ーーーーまだ」

「おい今『まだ』って言ったか? 言ったよな?」

 

 

『ハァハァ…………僕は……なのはの行動を全部把握しているよ……? ……ハァハァ……』

「ひぃ!?」

 

 

「……お前がああならない限りはまだ受け入れてやるよ」

「はい?」

 

アレよかマシだ。

なのはさんが不憫でならない。

 

「じゃ、じゃあリオとの関係は!?」

「こ、コロナ!?」

「八重歯だけの関係」

「先輩のばかぁぁぁあああッ!」

 

事実だろうに。

 

「あ、じゃあなのはとは? どこで知り合ったの?」

 

今度はハラオウンさんが質問してきた。

 

「この前、チヒロくんとその友達が管理局の施設の見学に来てね。そこで知り合ったんだ」

「そうそう。で、親友になったんですよ」

「親友じゃなくてソウルメイトね」

「なのはさんッ!」

「チヒロくんッ!」

 

ガシッと握手する。

もはや言葉などいらない。

 

「いったい何があったんでしょうか」

 

『ハァ……ハァ…………謎の友情に燃えるなのは…………ぅうっ…………可愛いよぉっ…………ハァハァ…………!』

 

お前らのせいだよ。

 

 

 

 

 

 

「あ、お茶のおかわりいりますか?」

「ん? あぁ、ありがとう高町ちゃん」

「ヴィヴィオでいいですよぉ」

 

空になったカップを持って台所へと向かうヴィヴィオちゃん。

可愛い。

 

「お持ちか……」

「ダメ」

 

なぜだ。

 

「あぁ、ヴィヴィオさん! チヒロさんのは私が……!」

「あ、ヴィヴィオ! チヒロくんのは私が……」

 

ストラトスちゃんは座ってろ。動くな、二度と。

そしてなぜハラオウンさんまで……?

 

「むっ……ヴィヴィオ! 先輩のはわたしがやる!」

「あ、リオ待って!」

 

ついでにナントカちゃんとティミルちゃんもヴィヴィオちゃんの方へ行ってしまった。

 

「結局、被害者の会はできませんでしたね」

「まぁ、仕方ないよ。また今度やろうよ」

「ですね」

 

これはこれで楽しいし。

 

 

ーーーー圧倒的に女子率の高いお茶会は夜まで続いた。

 

 

『ハァ…………ハァ…………なのはぁ…………ハァハァ…………可愛いよなのは…………ハァハァ…………!』

 

「目を合わせちゃダメだよ」

「わかってます」

 




おまけ
《もしもチヒロが原作vividを見たとしたら》

「…………えっと」
「こっちではあんまり登場してませんもんね、私……」
「ティミルちゃんごめん……」


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十七話

ついに?
開花編突入。

次回辺りに記載しますが、旅行は三連休を利用しています。
あと旅行編ではありませんので旅行先のことは基本的に書きません。




「ここが、あの女のハウスね」

 

ある日の早朝、川原にあるジークの家に来ていた。

いや、テントか。

 

「さぁ……やるか」

 

ーーーーそれは昨日の夜、ヴィクターとの通信でのことだった。

 

 

 

 

 

『家族旅行……ですの?』

「あぁ、そうなんだよ」

 

遠方で共働きしている両親から旅行に行くという連絡があった。

 

『そう。お土産よろしくお願いしますわ』

「考えとく。でさ、三日間くらいいなくなるんだけどその間は植木鉢に水をあげられないわけ」

 

で、それを誰に頼むかなんだが……

 

『私がやりましょうか?』

「お前は俺の家来るたびにエロ本盗んでくからヤダ」

『あなただって私から時々盗むでしょう』

「だってお前の持ってるやつ好みのばっかなんだもん」

 

とりあえずヴィクターはない。

ストラトスちゃんも。

 

「ジークに頼もうと思う」

『いいんじゃないかしら』

 

ただ……

 

「普通に頼んだらつまらないよな?」

『当然ですわ』

 

せっかくだから、旅行出発当日の早朝に寝起きドッキリを仕掛けたい。

テッテレー、って言いたい。

 

「どうする? 火ぃ着ける?」

『それもいいと思いますが……私にいい案がありますわ』

 

ほほぅ。

聞こうか。

 

『それは……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔しまーす……」

 

文字通りな。

ジークは……よし、よく寝ている。

今のうちに隠しカメラをセットしておく。

 

「準備おけ。チヒロ、行きまーす」

 

あくまで小声なので若干盛り上がりに欠ける。

まぁ、いい。

ジークの隣に寝転ぶ。

 

「……で、腕枕するんだっけ?」

 

起こさないよう慎重に。

よし……フェーズ1クリア。

後は起きるのを待つだけだ。

 

「…………ぅ、ん…………?」

 

ジークがうっすらと目を開ける。

 

「おはよう、ジーク」

「……ふぇ? ちひろ……?」

 

完全に寝ぼけてるな。

 

「おあよぅ…………」

「はい、おはよう 」

 

大きな欠伸をひとつして、ジークは再び目を閉じる。

そして俺の胸へと頭を擦り付けてきた。

 

「ええにおい……」

「……まぁ、臭いって言われるよりマシか」

「えへへ…………ちひろのにおいやぁ……」

 

それどんな匂い?

 

「ちひろ……えへへぇ……ちひろぉ……………………え? ……チヒ、ロ?」

「お、やっと起きたか?」

 

目がぱっちりと開き……というか大きく見開かれる。

俺の顔を凝視すると真っ赤になって慌て初めた。

……フェーズ2へ移行する!

 

「なっ、なななななんで!? なんでチヒロがおるん!?」

「なんでって……おいおい、恋人相手にそりゃないだろ」

「こ、恋人ぉッ!?」

 

ちなみに今のお前は変人にしか見えないぞ。

 

「昨日だってあんなに愛し合ったじゃないか……」

「あ、ああああああ愛ぃぃいいッ!?」

 

嘘だけどな。

テントなんかで愛し合う趣味なんてちょっとしかない。

 

「まったく……お寝坊さんだな、マイハニー」

「はにぃぃぃぃぃいいいいいっ!?」

 

いやぁ……楽しいなぁ。

さすがヴィクター。

なんでこいつがここまで慌ててるのか分からないが素晴らしい作戦だ。

 

「……やったんや……ついに(ウチ)やったんや……!」

「ジーク?」

 

今度はすごい喜んでる。

忙しいやつだな。

 

「ち、チヒロ? ホントに(ウチ)ら……」

「あ? あ、あぁ」

「えへへへへへへへぇ…………!」

 

ヨダレ垂らすなよ汚いなぁ。

時間の関係もあるし、そろそろネタばらしするか。

 

「じゃ、じゃあ、おはようのちゅーを……」

「テッテレーっ!」

「……え?」

 

“ドッキリ大成功!”と書かれた看板を出す。

 

「寝起きドッキリでしたー!」

「ドッ……キリ…………?」

「そうそう。ドッキリ」

 

ジークは状況が読めずにキョトンとしている。

バッチリカメラに収まっているのも知らずに。

 

「じゃあ……(ウチ)らは……?」

「恋人でもなければ愛し合ってもいないな」

 

いいねー。

いい画撮れてるよ~。

 

「いやぁ、最初は火でも着けようかと思ったんだけどヴィクターに相談したらこんな面白いことを考えてーーーー」

 

 

ーーーージークに本気で首を絞められた。

 

 




ヴィクターの考えたドッキリ大作戦
作戦名『天国から地獄へ(ゴー・トゥ・ヘル)
作戦内容
恋に恋する乙女なジークちゃんを夢が叶ったという天国から、あくまで夢は夢だという地獄へといっきに叩き落とす。
純粋な恋心を利用した、まさに悪魔の所業。


※ジークちゃんはブチギレてるよ! でも忘れないでね、あの子はチョロインなの。

追記
今日、午後にもう一度更新します。
そして明日から二日間(5月12、13日)は私用で更新をお休みさせていただきます。


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十八話

いつもよりさらに短めです。



「そ、ぞれでざ……この三連きゅ、う……を利用……し、て……家族旅行に……行ぐんだ……げど…………待って待っで…………ジーク……ぞろぞろ……本、当に…………()んじゃうぅ……っ!」

「しねぇ……! 乙女の純情弄ぶヤツはしねぇ……!あんたが終わったら次はヴィクターや……!」

 

ジークさん首絞めなう。

やばい……意識が遠のいてきたぜ。

 

「まっ……ジーク…………ホントに……」

「なら選ばせたる。首絞めか、殲撃(ガイスト・ナーゲル)か」

 

どっちにしても死ぬじゃねえか。

 

「どうせ、なら…………ヴィクターの……おっぱ、い……で…………死に、たかった…………」

「ぶっ殺す」

 

待って待って待ってガイストと首絞め組み合わせるのはらめぇぇぇええええ!

 

 

 

 

 

 

「はぁ……死ぬかと思った」

「なんで(ウチ)はこんな奴を……」

 

お花畑が見えた辺りでジークが首絞めをやめた。

 

「首絞めの神髄……」

「次それ言うたらホンマに()るで」

 

今回は本当にもうダメだと思った。

もしもあの時、金髪の幼女が『まだ来ちゃダメだよ』って言ってくれなければ死んでいただろう。

ありがとう、名も知らぬ金髪の幼女よ。

 

閑話休題、本題に戻ろうか。

 

「改めて、今日はジークにお願いがあってきたんだよ」

「あんた……自分が数分前にしたこと忘れとらん?」

 

金髪幼女にセクハラしてたな。

 

「まぁまぁ。俺とジークの仲じゃないか!」

「……ハァ」

 

ジークは呆れ顔だ。

だが俺は気になんてしないんだぜ。

 

「改めて言うが、今日から三連休じゃん? それを使って家族旅行すんだと」

「……へぇ」

「あ、お土産は期待してろよ。でさ、うちに植木鉢があるんだけど俺がいない間、水をやって欲しいんだよ」

 

ポケットからあるものを出してジークに渡す。

訝しみながらもジークはそれを受け取った。

 

「ほれ」

「……なんや、これ?」

「うちの合鍵」

「……………………え?」

 

は?

 

「えっと……え? なんて?」

「だから合鍵」

「合鍵…………あいかぎ………………愛、鍵?」

「そう合鍵」

 

鍵ないと部屋入れないからな。

一般人は。

 

「で……頼めるか?」

「あいかぎ……あいかぎ…………えへへぇ……」

 

ジークはずっと鍵を見つめながらニヤけている。

聞いてる?

 

「あー……ジーク?」

「えへへぇ…………あいかぎやぁ……えへへへ……」

 

……なんかキモい。

さっさと離れよう。

 

「えっと……じゃあもう行くから。よろしくな」

「えへへへへへぇ…………!」

 

全然聞いちゃいない。

……最悪ヴィクターに頼むか。

まぁなんとかなるだろ。

 

「じゃあな、ジーク」

「えへへ……!」

 

 

さて。

面倒なことは忘れて楽しむか、家族旅行。

 

 




エレミアの神髄ってまだジークには制御不能じゃ……?

首絞めの神髄→首を絞めながらエレミアの神髄(イレイザー魔法)→即死……のはず


おまけ
《もしもチヒロが原作vividを見たとしたら》

「あっちでもこっちでもヴィヴィオちゃん可愛い」
「えへへ……そうですかぁ……?」
「あぁ! 可愛いよ。可愛いけど……」

(……もしもこっちをアニメ化したらヴィヴィオちゃんの声優さんは大変だろうな。何せ……)

『ハァ……ハァハァ…………なのはぁっ…………なのは……ハァハァ…………あぁぁぁ、なのはぁあっ…………!』

(アレもやるんでしょ?)


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十九話

待たせたな。

ちなみに
家族旅行一日目→出発(朝)
家族旅行二日目→宿泊
家族旅行最終日→帰宅(夜)




家族旅行一日目(夜)。

ジークから植木鉢の写真つきのメールが来た。

ちゃんと水をやってくれたようだ。

その後しばらくジークとメールをしていたらこれから帰るというメールが来たので『俺のベッド使っていいから泊まってけば?』と送ったら返信が途絶えた。

 

 

 

家族旅行二日目。

胡散臭い占い屋に寄った。

占い師のばばあは俺の左肩辺りを見ると『あんたの前世は金髪の女だよ』とか言ってきた。

金髪幼女がいるのは右肩なのに。

 

夜にジークから写真つきメールが来た。

植木鉢の植物には黒い蕾が1つと……なんだろう、直径3㎝ほどの実のようなものが出来ていた。

成長が早くて何より。

 

そして真夜中。

ふつくしきおっぱいとの出会いを求め、密かに混浴へ。

しばらくすると『ご一緒しても?』と後ろから女性に声をかけられたので『どうぞどうぞ』と言って振り向く。

 

ストラトスちゃん(全裸)だった。

 

ついてきやがったのだ。

当然、俺は逃げ出した。

部屋に入って鍵を閉め、布団を頭まで被ってガタガタ震えてた。

あいつ、頭、おかしい。

 

 

 

 

 

そして、家族旅行最終日の夜。

両親と別れ、俺はすでに1人ミッドに帰ってきていた。

今は自宅へと向かっている。

 

「ジーク喜ぶかな?」

 

手に持つジーク用のおみやげを見る。

まりもっ〇りだ。

金髪幼女には大ウケした。

今も俺の右肩で『もっこり』をオリジナリティ溢れる歌にのせて連呼している。

俺も一緒になって歌っていたらいつの間にかアパートに到着していた。

 

「さて……どうやって驚かすかな」

 

普通に行ってもつまらんし……。

いや、一周回って普通に行ってみるか?

斬新だな。

 

ーーーーざんしんざんしん~♪

 

金髪幼女からもお墨付きを貰ったしこれで行こう。

鍵を開ける。

 

「ジーク、ただいま~。今帰っーーーー」

「チヒロぉぉおおっ!」

「へぇあ!?」

 

いきなりジークが飛び付いてきた。

なにごと?

 

「お、おいジーク? どうしたんだよ?」

「ち、チヒロっ! あの花っ!」

 

花?

……もしかしてあの黒い蕾が咲いたのか?

 

「マジか。よし見てこよ」

「ダメや! あの花危険や!」

 

は?

 

「意味が分かんないんだけど。どういうこと?」

「どうもこうもないで! あの花、なんか蛇とか鎖とか出してきて襲いかかってくるんや!」

 

……え?

もしかしてジークさん……

 

「えっと……なんかキメてる?」

「キメてもないし嘘でもない! 信じて!」

 

どうしよう。

親友がアブない薬に手を出していた件。

 

「だ、大丈夫だ。俺は友達を売ったりしないから。ほら、今すぐ逃げろって」

 

はよ出てけ。

 

「ちょっ、チヒロ!?」

「大丈夫大丈夫! こんなんで俺たちの関係は崩れないからさ! 大丈夫だってジーク……いや、エレミアさん」

「崩れてるやん!?」

 

面倒ごとは嫌いだ。

 

「じゃあな~!」

「あっ、まっ、チヒーーーー」

 

赤の他人のエレミアさんを追い出して扉を閉めた。

外ではまだ騒いでいる声が聞こえる。

 

「マジかぁ……薬物とかまったく関係ない世界に生きていると思ってたけど……。明日は我が身か」

 

気を付けよう。

部屋に入る。

 

「ん? 机の上に何か……」

 

あぁ合鍵か。

回収回収。

そんなことより植木鉢だ。

 

「おぉ! 本当に花が咲いてる!」

 

黒い……なんだろう、百合?

百合によく似た花が立派に咲いていた。

そして、実のような物は5㎝ほどにまで成長している。

 

「これ……食えるのかな?」

 

エレミアさんに食わしてみるかな。

赤の他人だし、構わないだろう。

熟すのっていつぐらいになるんだ?

 

「明日学校サボって調べてみるかな」

 

いったい何の植物なのか。

この実が食えるのか。

今すぐ調べたいが、家族旅行で疲れているため今日はもう寝たい。

明日が待ち遠しい。

 

 

「チヒロぉ……ひっく……チヒロぉぉぉ…………あいかぎぃぃぃいいぃぃいいいいっ!」

 




合 鍵 回 収。
チヒロに信じてもらえない<合鍵

そしてそろそろ植物の正体がわかったんじゃないでしょうか。

※旅行一日目の夜、返信をやめたジークは狂喜乱舞してました。


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二十話

朝起きると、植物の実が茎から落ちていた。

直径は10㎝ほど。

たった一夜でまた成長したのか。

 

「実が落ちたってことは……もう食えんのか?」

 

エレミアさん呼ぶ?

それにしても……こんな実、見たことないな。

 

「いったい何て名前なんだ?」

 

実を手に取る。

割れた。

 

「……え?」

 

手元を確認する。

綺麗に真っ二つに割れていた。

 

「え、えぇっ!?」

 

手に取っただけで割れるってどういうこと。

急いで断面を確認する。

そこに果肉はなく、中は空洞になっている。

そして俺が右手に持っている方の断面には何か(・・)がいた。

 

『……ん、ぅ……』

 

ねんど〇いどだ。

喋るねんど〇いどが入っていた。

 

『……はっ!? こ、ここはいったい!?』

 

何か騒ぎ出した。

 

 

 

 

 

 

ねんど〇いど(仮)はひとしきり騒ぐと落ち着いたようで、今は俺の前で正座している。

さっきまで『な、なぜわたしは……。あのとききえたはずでは……?』とか、黒い花を見て『なっ!? まさか……ナハトヴァールか!? なぜこんなすがたに……』とか『わたしのなかにまだのこっていたのか……?』とか舌っ足らずな声ですっごい厨二染みたことを言っていた。

意味はまったく分からなかったが。

 

「ふむ……実に面白い」

 

気分は教授だ。

俺は厨二の妖精を発見したぞ。

とりあえず……

 

「名前がいるな」

『……あ、あぁ、そういえばなのっていなかったな。わたしのなはリイン……』

「……ぐにゅ子。お前の名はぐにゅ子だ!」

『ぐ、ぐにゅ子!? い、いや、わたしにはしゅくふくのかぜというなが……!』

 

黒いぐにゅぐにゅから生まれたからぐにゅ子。

うむ、いい名だ。

 

「よろしくな、ぐにゅ子」

『いやだからわたしは……っ!』

 

こいつのことを研究して学会で発表する。

俺は一躍有名人だ。

学会とかまったく関わりないけど。

 

「まずは解剖……」

『ま、まて! まってくれ! なにをかんがえているんだ、おまえは!?』

 

……妖精の生態調査?

 

『わ、わたしはようせいではない! いいからきけ、わたしは……』

「ぐにゅ子。妖精。厨二病」

『どれもちがう!』

 

指先でぐにゅ子の頭をグリグリする。

腕でそれを止めようとしているが、当然ながら止められるはずもない。

人間VSねんど〇いどだぞ。

 

『あぁっ!? ぐ、グリグリしないでくれ!』

「ぐにゅ子。お前はぐにゅ子。妖精で厨二病」

『だからちがうといっているだろう!』

 

グリグリを強くする。

 

『わぁっ!? やめてくれ! あたまがもげっ……わかった! ぐにゅ子だ! ぐにゅ子でいい!』

「妖精」

『よ、ようせいだ……!』

「厨二病」

『ちゅうにびょうだっ!』

「俺のペット」

『ぺっ……それはいってな……わかったペットだ!』

 

認めたか。

頭を加減して撫でてやる。

 

「よしよし」

『あっ…………おまえ、あたまをなでるのがうまいんだな……』

 

ぐにゅ子が顔を真っ赤にしてうつ向く。

何これ可愛い。

 

「ぐにゅ子可愛い」

『かっ……かわっ!? か、からかうのはよせ! わたしはかわいくなど……』

 

声に出してしまったようだ。

真っ赤になってさらにうつ向く姿はマジキュート。

 

「からかったつもりはないんだけど……まぁいい。これからよろしくな、ぐにゅ子」

『あ、あぁ! よろしくたのむ……ん? まて! けっきょくなにもかいけつしていないのではないか!? わたしがふっかつしたのは!? ここはどこだ!? そもそもおまえはだれなんだ!?』

 

細かいこと気にしてると禿げるぞ。

 

『こまかくはない! ちゃんとこたえろ!』

 

細かいこと気にしてると剥ぐぞ。

 

『ひぃっ!?』

 

打てば響くようにいちいち俺の言葉に反応するぐにゅ子。

面白いなぁ。

 

「まぁお前の気になっていることはおいおい話していくさ」

『それはいつだ!?』

「そんな先のことはわからないさ」

『おい!』

 

まぁ何にせよ。

今日、ついに俺はペットを手に入れた。

……別にそこまで欲しいとかは思ってなかったけど。

 




幼児退行気味なぐにゅ子さん。
本来のクールビューティーさは何処。

ちなみに復活理由は……まぁ、ぐにゅ子も花も本体ではなく、本体の記憶を持った闇の書の残滓だとでも思ってください。
あとギャグですから、あんまり厳しいツッコミはなしでお願いします(笑)

おまけ
《もしもチヒロとヴィクターが付き合っていたら》

「ジークと付き合って来てくださいな。適当な所で寝取りますので」
「おけ把握」


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二十一話

みんなの期待に応えて。


ぶっ壊します。


あと今回のおまけですが、チヒロが黒い花をナハトヴァールだと認識しています。
ですが、あくまでifなので本編には関係ありません。



「あ、チヒロくん! こっちこっち!」

 

俺は今、とあるファミレスに来ている。

さっき俺を呼んだ声の主はハラオウンさん

なんでも話があるとかで、なのはさんから会ってあげて欲しいと言われた。

ちなみにぐにゅ子は家で留守番だ。

金髪幼女(俺のスタンド)がそれを監視してくれている。

 

「お待たせして申し訳ありません」

「ううん。来てくれてありがとうね」

 

とりあえず何も頼まないのはあれなのでコーヒーを頼んだ。

話って何だろう。

確か執務官だったよな、この人?

……やましいことは何もないけど、なんかドキドキしてきた。

 

「いえいえ。それで話って?」

「うん……何て言うか……その、驚かないでほしいんだけど……」

 

最近驚かされてばかりだからな。

並大抵のことじゃ驚きませんよ。

 

 

「……家族に、なりたいんだ。君と」

 

 

超驚いた。

え? なに?

もしかしてプロポーズ?

 

「……えっと」

「あ……やっぱり驚くよね」

 

そりゃ驚きますよ。

 

「お待たせしました、ご注文のコーヒーです」

「あ、どうも」

 

頼んでいたコーヒーがきた。

一口飲んで気持ちを落ち着かせる。

 

「……どういうことですか?」

「チヒロくん、うちに来たときに一人暮らししてるって言ってたよね」

「あぁ、はい」

 

厳密に言えばストラトスちゃんだけどな。

 

「私もね、昔に母さんを亡くして……」

「……ん?」

 

何だ?

何か話が飛んだぞ。

 

「辛いよね……親を失うなんて」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

まったく会話に追い付けない。

 

「あ、ごっ、ごめんね! そうだよね、ご両親の死なんて思い出したくないよね……」

「いやいやいや、死んでませんから! バリバリ生きてますから!」

「げ、現実を受け入れられなくて妄想を……。やっぱり、彼には心のケアが必要だ……!」

 

妄想じゃないから!

うちの両親超元気だから!

なんならもうじき弟か妹できるんじゃないかってくらいラブラブに生き生きしてるから!

 

「チヒロくん……ううん、チヒロ! あなたのご両親はもういないの……。辛いかもしれないけど、現実を受け入れて」

「あんたが現実を受け入れろ!」

 

何言ってるのこの人。

 

「私のことはフェイトママって呼んで」

「ねぇ聞いてる!?」

「本当のママだと思っていいからね」

「聞けや!」

 

ダメだこの人。

早く何とかしないと。

 

「チヒロ、ダメだよ? お店で騒いじゃいけないってママ教えたでしょ?」

「記憶を改竄している……!?」

 

落ち着け……コーヒーを飲んで落ち着くんだ。

教わった覚えなんてない。

いや、本当の母親には教わったけど。

 

「ハラオウンさん、あのーーーー」

「あ、口元にコーヒー着いてるよ。拭いてあげるね。……ふふっ、もう……ママがいないと何にもできないんだから」

 

やばい。

冷や汗止まらない。

この人なんかヤバイヨ。

 

「あ、アノ……」

「ん? なぁに?」

 

その時、電子音が鳴り響く。

どうやらハラオウンさんの着信音のようだ。

 

「あ、ごめんね。ちょっと待ってね」

 

ハラオウンさんが通信に出る。

 

「はい。……え? 今から、ですか?」

 

こちらをチラッと見てきた。

何だ?

 

「でも……はい。はい。…………わかりました」

 

通信終了。

ハラオウンさんは何故か落ち込んでいた。

ばつの悪そうな顔でこちらに向き直る。

 

「……ごめんね、ちょっとお仕事が入っちゃって」

「……そ、ソウデスカ」

「うん。今から行かなくちゃいけないんだ」

 

よっしゃぁぁああああっ!

ゴングに救われたぜ!

ハラオウンさんが伝票を持って立ち上がる。

 

「お金はママが払っておくから。本当にごめんね!」

「い、いえいえ。お仕事頑張ってクダサイ」

「ありがとう!」

 

本当にごめんね、と何度も言いながらハラオウンさんは店から出ていった。

……助かったぁ。

一時的だけど。

 

「はぁ……あとでなのはさんに相談しよう」

 

確か親友とか言ってたよなぁ……。

このこと聞いたら泣くんじゃないか、あの人。

 




おまけ
《劇場版最新作(嘘)予告》



ーーーーもう糸はないの。私を縛り付けていた。


「ストラトスちゃんから逃げ切るために、黒い花(ナハトヴァール)を使って世界中に自分のダミーを作ろうとしました。けど……それが裏目に出た」
「まさか……闇の書のカケラ!?」


ーーーー私を悩ませていた、私を困らせていた。


「もう終わりですよ、なのはさん……。この先に道はありません」
「どんなことだっていつかは終わるよ……ううん、終わらせなきゃ。私たちが!」


ーーーー昔は縛られていた。けど、今は自由。






「もう僕を……いや、僕たち(・・)を縛る常識()はないんだよ、なのは」



『なのはぁ……もう逃げられないよ……いや、もう逃がさない…………!』
『ハァハァ…………なのはたんペロペロ……ペロペロしたい……!』
『なのはぁ…………はぁぁ……なのはぁっ……!』
『なのはたんhshs……ハァハァっ……!』
『…………なのはマジ天使…………なのは可愛いよなのはぁっ…………ハァハァ……!』
『大丈夫…………僕が守ってあげるからね………………ハァハァ…………え、永遠に…………!』
『なんで逃げるんだい…………僕だよ……君の夫のユーノだよ……ハァハァ……ハァ……ハァ…………!』


「ひぃっ!? ち、チヒロくんのせいだよ!?」
「……てへっ☆」



劇場版最新作
魔法少女リリカルなのはTHE MOVIE
AGE(エイジ) OF(オブ) YUNO(ユーノ)

『愛』とは何かーーーー愛を知る、全人類に問う。



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二十二話

本編短めおまけ長め。


ーーーー火事だーっ!

 

外からそんな叫び声が聞こえてきた。

 

「おっ! 火事だとよ」

『……なんでおまえはうれしそうなんだ』

 

野次馬根性が身に染みてるからな。

 

ーーーーかじだかじだ~♪

 

金髪幼女もはしゃいでいる。

ちなみにぐにゅ子には金髪幼女が見えないらしい。

……まぁ幽霊だし、基本的に見えるやついないけど。

そして、俺と金髪幼女以外のやつらにはぐにゅ子が見えていないということも最近判明した。

 

「ベランダから見えっかなぁ」

『はぁ……あまりほめられたこんじょうではないな』

 

と、言いつつもぐにゅ子は肩に飛び乗ってきた。

お前も見たいんじゃねえか。

 

『べつにそういうわけではない。たんじゅんにおいていかれるのがいやなだけだ』

 

なんだそりゃ。

まぁ、いい。

ベランダに出る。

 

「さぁどこが燃えてるの、か……な…………」

 

 

ーーーー燃えているのは隣の部屋だった。

 

 

 

 

 

「……マジかよ」

 

アパート全焼なう。

その様子を眺めている。

 

『……かんいっぱつだったな』

「……あ、あぁ」

 

燃え盛る隣の部屋を見て茫然としていた俺をぐにゅ子が現実に引き戻してくれた。

その後、ぐにゅ子の指示で財布、通信端末、通帳、印鑑、植木鉢を持って避難した。

 

「……これからどうしよう」

 

とりあえず両親に連絡して……今日はホテルか?

 

「ーーーーチヒロ!」

「……げっ」

 

何か声が聞こえたと思ったらハラオウンさんだった。

残像を残すほどのスピードで迫ってくる。

キモいを通り越して怖い……!

 

「チヒロぉっ!」

「うぶっ!?」

 

抱き締められた。

くっそ……で、でもおっぱいに罪はないから無理にほどいたりはしない。

 

「大丈夫!? 怪我してない!?」

「だ、大丈夫です。ハラオウンさんは……あ、管理局関係でここに?」

 

火事だからか。

いやでも執務官が来るような事件かこれ?

 

「ううん、ニュースで見て……チヒロが心配で……!」

「おい待て。ここに住んでるって教えてないはずだぞ」

 

なのはさんの家に遊びに行ったときに(ストラトスちゃんが)教えたのは『ここからそう遠くないアパート』であって、正確な場所は教えていない。

 

「ママだもん。分かるよ」

 

どうしよう。

この人がキ〇ガイだってことしか分からない……!

 

「とにかく無事でよかった……!」

 

さらに抱擁を強めるハラオウンさん。

何度も言うがおっぱいに罪はないから無理にはほどかない。

 

「……それで、これからどうするの?」

「あー……とりあえずホテルに」

「ばか! 家族でしょ!? 私を頼りなさい!」

 

訳の分からない罵倒されたんだけど。

これキレていいよね?

 

「ほら、行くよ! 煤だらけだしまずはお風呂に入れないと……」

「あらやだ嫌な予感」

 

半ば強制的に連行される。

……ま、なのはさんもいるだろうし何とかなるだろう。

 

 

『……まさか……テスタロッサか……?』

 

ーーーーふぇーとだぁ♪

 




まさかのぐにゅ子他人に不可視。
いずれ来るであろう八神家編、どうなるのか。


おまけ
《暇をもて余したクズどもの遊び~プロローグ~》

どうしてもあの黒い花が気になったジークリンデ・エレミアは、篠崎チヒロの住むアパートの前に来ている。

「……何なん……これ……」

そして、その愛しき者の住むアパートは今、大きな炎に包まれていた。
ごうごうと燃え盛るそれを見てジークは茫然としていた。

「おい! まだ人が残っているみたいだぞ!」
「何だと!? 人数は!?」

消火に来ていた局員の声が聞こえる。
その時、ジークの頭に浮かんだのは意地悪な彼の顔だった。

「ーーーーチヒロっ!」

気が付けば野次馬をかきわけてアパートへと駆け出していた。
当然、局員に止められる。

「お嬢ちゃん、何してる! 危険だぞ!」
「いややぁっ! 離してっ! チヒロがっ!」

騒ぎを聞き付けたのだろう、他の局員たちもやってきてジークを止める。
もはや彼女に出来ることは何もなかった。

「チヒロおぉぉぉぉぉーっ!」




さらにおまけ
《ニュースを見た人たちの反応》

なんちゃらの場合
「えっ……ここって確か……先輩の……」

アインハルトの場合
「……………………」
※たまたま用事があり、チヒロの側にいなかった。ショックのあまりフリーズ中

フェイトの場合
「バルディッシュ」
《Sonic Move》

ヴィクターの場合
「あひゃひゃひゃひゃひゃwwwwもっ、燃えっwwwうぇひひひwwぶわははははははwww」


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二十三話

「ふぅ……お風呂いただきました」

「いえいえ……っ! 湯加減大丈夫、だった……かなっ!」

「大丈夫でした」

 

ハラオウンさんに連れられて(強制)、やって来ました高町家。

さっそくお風呂を頂いてしまった。

 

「ほらフェイトちゃん……! チヒロくんもう出たから……いい加減デバイスしまって……っ!」

「…………………………………………ああああぁぁぁぁぁぁぁ」

 

ちなみに今がどういう状況かというと、俺が入っている風呂にハラオウンさんが特攻しようとしたらしく、なのはさんがそれを文字通り体を張って止めてくれていたというわけだ。

ソファの陰に隠れて震えるヴィヴィオちゃんが可愛い。

 

「ありがとうございました。……色々と」

「ううん、むしろごめんね。……色々と」

 

わけがわからないよ……。

 

「ヴィヴィオちゃんもなんかごめん……」

「い、いえ……。あの……フェイトママどうしちゃったんですか……?」

「……俺が聞きたいよ」

 

住処は燃えるわ変質者が来るわ。

踏んだり蹴ったりだぜ。

 

「それよりも大変だったね」

 

なのはさんが労ってくれた。

ことのあらましは話してある。

 

「いえ……」

「これからどうするの? ご両親はなんて?」

「あ、まだ……」

「なのは! ダメだよそんなこと聞いちゃ!」

「……え?」

 

……あーあ。

 

「チヒロのご両親はもう……。そんな辛いこと思い出させるようなこと言わないで!」

「えっ……と……?」

 

なのはさんがこっちを見つめてきたので無言で首を降る。

 

「あー……ヴィヴィオ? フェイトちゃんとお風呂入ってきたら?」

「えっ?」

 

お願いだよヴィヴィオちゃん。

少しだけこの人を何処かにやっておくれ。

 

「あっ……! フェイトママ、お風呂入ろうよ!」

「えっ? あ、うん。いいよ! じゃあ入ろっか」

 

ヴィヴィオちゃんが振り返り、ウィンクする。

……天使!

 

「素敵っ、抱いて!」

「抱く……って、何をですか?」

「チヒロく~ん?」

「悪ふざけが過ぎました申し訳ありません」

 

悪魔たん……。

 

 

 

 

「親と連絡取れました」

「そう、なんだって?」

「別のアパート借りることになりました」

 

明後日あたりに親が来てくれる。

それまではとりあえずホテル暮らしかなぁ……。

 

「ふ~ん……じゃあうちに泊まっていけばいいよ」

「……え?」

 

なんですと?

 

「だから、アパートと契約するまではうちにいなよ」

「でも……迷惑じゃ」

「子供なんだから気にしないの」

 

……こういう時、大人ってずるいよな。

 

「そうだよ! 子供(・・)なんだから気にしちゃダメだよ?」

「チヒロ先輩、うちに泊まるんですか!?」

 

いつ上がってきた君たち。

そしてハラオウンさん、あんたの言う子供は別の意味だろ。

 

「……ヴィヴィオちゃんはそれでいいの?」

「泊まってってください! 私、先輩とお話ししたいこといっぱいあります!」

 

天使!

 

「じゃあ……お世話になります」

「ふふ、はぁい。自分の家だと思って寛いでね?」

「……え? なのは、何言ってるの? 思うもなにも、ここは私となのは、ヴィヴィオにチヒロ、家族四人の家だよ?」

 

もう気にしない。

なのはさんも学んだのか反応していない。

とりあえずわたわたしているヴィヴィオちゃんが可愛い。

 

「あ……チヒロくんどこに寝てもらおっか?」

「う~ん……私たちのベッドでいいんじゃない?」

 

……私たち?

まさか一緒に寝てるのか、この二人?

……え、えっと……邪魔しちゃ悪いよな。

 

「いや、気を使ってもらわなくて大丈夫ですよ。ヴィヴィオちゃんと一緒でいいです」

「いやいや! それは普通にダメだから!」

「私はいいよぉ」

「ヴィヴィオ!?」

 

さすが天使。

なんと寛大なことか。

 

「じゃあ私と寝よっか?」

「待ってフェイトちゃん、私は!?」

「なのはは廊下で寝て」

 

 

ーーーー結局、ソファで寝ることになった。

 

 




おまけ
《暇をもて余したクズどもの遊び~第一話~》

「ふぅぅ……あー、笑いましたわ。……あら?」

ヴィクトーリア・ダールグリュンは通信が来ていることに気付いた。
通信は友人のジークからのものだった。

「ジーク、どうしましたの?」
『ヴィクタぁぁ……チヒロが……チヒロがぁ……』

恐らく先ほどライブ映像でやっていたニュースのことだろう。
友人以下の篠崎チヒロのアパートが火事になっていたはずだ。

『チヒロが死んでもうたぁ……!』
「……はい?」


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二十四話

まさかのおまけスタート(笑)

《チヒロの知り合いに聞いてみた》

同級生(男子)の場合
「篠崎? あぁ、いい友達だと思うぜ。あれで結構他のヤツらからの人望厚いし…………クズだけど」

同級生(女子)の場合
「篠崎くんか~……。面白い人だよね! 結構カッコいいし…………クズだけど」

先輩の場合
「むっ、篠崎のことか。うちの学校にアイツを知らないヤツなどいない。あぁ、悪い意味ではなくてな、みんなから好かれてるんだ…………クズだけど」

後輩の場合
「頼りになる先輩です! 何回も助けてもらってますし……え? あ、ちがっ、好きとかじゃなくて……いえ、そのぅ……気になってはいますけど……。ああ見えて先輩は結構競争率高いんです…………クズだけど」


※インタビュアー:アインハルト・ストラトス




「……ぱい! 先輩! 起きてください!」

「…………ん……」

 

朝、ヴィヴィオちゃんに起こされる。

すばらしい目覚めだ。

 

「おはよう、ヴィヴィオちゃん」

「おはようございます! ……うなされてましたよ、大丈夫ですか?」

「あー……」

 

火に囲まれる夢見てたからなぁ……。

 

「火事、昨日だったし」

「あぁ……その、ごめんなさい」

「ん? あ、気にしないでくれ」

 

ヴィヴィオちゃんの頭を撫でる。

……ただなぁ……あの膝ついてるおっさん誰だったんだろ?

被害者?

 

「えへへ……」

 

まぁ、ヴィヴィオちゃんが可愛いからいいか。

 

 

 

 

 

「朝から天使と当校……フッ、ついに俺もリア充か」

「て、天使じゃないですよぉ!」

 

現在ヴィヴィオちゃんと並んで当校中。

 

「おてて繋ぐ?」

「繋ぎませんっ!」

「………………………………………………………………………………えぇぇ」

 

残念。

繋ぎたかった。

 

「にしても……フェイトさんいなくてよかった」

「フェイトママは仕事で朝早いですから……」

 

執務官さまだしなぁ……。

 

「ところで気になったんだけどさ、なのはさんとフェイトさんがママってどういうことなの? なのフェイの末に生まれたの?」

「なのふぇい……? それはよくわかりませんが、えっと……二人は本当のママじゃないんです」

 

……まさかフェイトさんが誘拐してきたのか?

 

「色々ありまして……ごめんなさい」

「そ、そっか……言いたくないこともあるさ……!」

 

言えないこともな。

まさかなのはさんも共犯だったとは。

……いや、親友相手で情が湧いて逮捕できないとか?

 

「ヴィヴィオちゃんはヴィヴィオちゃん。それでいいじゃないか」

「……先輩」

 

例え誘拐されてきたのだとしても、天使は天使だ。

それだけでいい。

 

「……ありがとうございます」

「ヴィヴィオちゃんは可愛い! それだけ分かってれば十分だ」

「も、もうっ! 何言ってるんですか! 」

 

ヴィヴィオちゃん顔真っ赤。

実に弄り甲斐がある。

 

「でも…………えへへ……!」

「んんっ!?」

 

ヴィヴィオちゃんが俺の手を握ってきた。

 

「……ヴィヴィオちゃん?」

「何ですか?」

「あ、いや……」

 

フラグ建った?

ねえフラグ建ったの?

 

「行きましょう、先輩!」

 

そう言ってヴィヴィオちゃんは俺の腕を引っ張って走り出した。

 

「ちょっ、いきなり走り出さな……はやっ!? えっ、ちょっ、ヴィヴィオちゃん早すぎだから!」

「鍛えてますから!」

「誇らしげですね。肩抜けちゃいそうなんですよ痛い痛い痛い早いってばあっ!」

 

最近の小学生って高校生より身体能力上なのか。

フラグはフラグでも建ったのは脱臼フラグだったってことか。

 

 

『きちくめ』

 

ーーーーきちくきちく~♪

 

《鬼畜ですね》

 

黙ってろ……ん?

最後の誰だ?

 

 

 




おまけ
《暇をもて余したクズどもの遊び~第二話~》

『……ということですの』
「ふーん……」

アパート全焼からしばらくして、ヴィクターから通信があった。
なんでもジークが俺を死んだと思ってるとか。

「お前はどうなんだよ? 死んだと思わなかったのか?」
『どうせ死んだところで再生するでしょう?』
「とりあえずお前が俺を人間だと思ってないことはわかった」

あとでコイツの家に放火してやる。
エドガー共々焼けろ。

「ジークは?」
『泣き疲れて眠っていますわ。相当なパニックを起こしていましたし、仕方がないでしょう』
「パニックか……。だから俺に通信するなりの安否確認せずに死んだと思ったのか」
『おそらく。起きて冷静になれば安否確認の通信を入れるでしょう』

なるほど。

『ですから端末は破棄してくださいな』
「おっ、遊ぶか?」
『当然。これを使わない手はありませんわ』
「だよな」


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二十五話

「あ、ヴィヴィオ~!」

「コロナ、リオ!」

 

しばらく歩いていると、前方からヴィヴィオちゃんを呼ぶ声があった。

確か以前に高町家へと遊びに行ったときにいた子達だ。

ヴィヴィオちゃんは繋いでいた手を離して二人に駆け寄っていってしまった。

 

「おはよう、ヴィヴィオ」

「おはよう!」

「ヴィヴィオおはよ~……って、先輩!?」

 

八重歯が特徴的な子が駆け寄ってくる。

 

「なんで先輩が!?」

「……えっと」

 

誰だっけ?

 

「……まさか先輩、私のこと忘れたとかじゃ」

「そ、そんなわけないだろ! えっと……で、デイジーちゃん?」

「リオ! ウェズリー! です!」

 

記憶にないよ……。

 

「……『八重歯へし折りたい』」

「あぁ、ウェズリーか! 久しぶり、元気だったか?」

「先輩のばかぁぁぁあああッ!」

 

罵倒されちゃったでござる。

わけがわからないよ……。

 

「って、そんなことより先輩! この前ニュースでやってた火事って……」

「うちのアパート」

「怪我とかはしてないんですか?」

「大丈夫大丈夫」

 

幸い怪我とかはまったくしていない。

 

『わたしのおかげでな』

 

確かにぐにゅ子のおかげなんだが……そういう風に言われると腹立つな。

埋めるか。

 

ーーーーうめちゃえ~♪

 

最近うちの幼女がバイオレンスな件。

 

「……そう言えば何でヴィヴィオと当校を?」

「あっ、それはね、リオ……」

「俺がヴィヴィオちゃんの恋人だから」

「えぇっ!?」

「ちっ、ちがうよ!? 先輩、適当なこと言わないでくださいっ!」

 

幼女で遊ぶの超楽しい。

 

「あっ……さっきヴィヴィオと篠崎先輩、手を繋いでなかった……?」

 

目敏いな、ティミルちゃん。

 

「……ヴィぃぃぃヴィぃぃぃぃオぉぉぉぉぉぉ?」

「ひぃっ!? だれか助けてっ!」

 

俺はやだよ。

しかし、意外なところから助け船は出た。

 

「ーーーー朝から賑やかですね、ヴィヴィオさん」

「アインハルトさん!」

 

最悪だ。

ヴィヴィオちゃんにとっての救いは、俺にとっての絶望でしかなかった。

 

「リオさんにコロナさんも。それ、か……ら…………チヒロ、さん……?」

「よ、よう……」

 

 

 

 

 

 

「なぁストラトスちゃんや……」

「何でしょうか?」

「歩き辛くない?」

「いえ。全然」

 

ストラトスちゃんが俺から離れない。

腕を絡めて寄り添ってくる。

 

「あ、アインハルトさん?」

「何でしょうか、ヴィヴィオさん」

「え、えっと、何してるんですか……?」

「……何か変でしょうか?」

 

まったくブレないな、こいつ。

 

「離れろ」

「いえ、いつ先日のようなことがあるかわかりません。もう一時も離れないほうがいいと思いますも」

「てめぇシエルさんバカにすんなよ!? 俺の嫁だぞッ!」

「もう離れません。死が二人を別つまで」

「聞けやコラ!」

 

こいつもうやだよ。

 

「むぅぅぅ……」

「リオ可愛い」

「こ、コロナぁっ!」

 

ヴィヴィオちゃんと二人で登校したかった。

いや、ティミルちゃんは居てもいいや。

 

「はぁ……」

「あ、あはは……その、お疲れさまです」

「……ヴィヴィオちゃんはやっぱり天使だわ」

「も、もうっ!」

 

 

 

「……ヴィヴィオ、ちゃっかり先輩の隣キープしてるね」

「むぅぅぅぅぅぅ…………!」

 

 




おまけ
《暇をもて余したクズどもの遊び~第三話~》

「やっぱり出ない……」

目が覚めてからジークは、何度もチヒロに通信を試みていた。
しかしそれが通じることはなかった。

「……チヒロ……本当に」
「……ジーク? 少し良いかしら?」
「あ……ヴィクター……」

友人であるヴィクターが沈痛な顔でやって来た。

「どうしたん?」
「その……落ち着いて聞いてくださいな」

ヴィクターが顔を見せた時からスデに嫌な予感はしていた。
そしてそれは、見事に的中する。

「……チヒロの葬式の日取りが決まりましたわ」



※ご指摘があったのでおまけ最後の文章を変更しました。


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二十六話

明日はお休みさせていただきます。
ちょっと用事がありまして……申し訳ありません!





アパート全焼から今日で三日目。

ついさっき両親と一緒に、新しく住むアパートの契約をしてきた。

そろそろ高町家での生活も終わりか……。

 

「あ、チヒロくん、おかえり~」

「ただいま帰りました」

 

なのはさんが出迎えてくれる。

 

「どうだった?」

「滞りなく契約できました」

「そっか!」

 

……この人綺麗だよな、普通に。

 

 

『…………ハァハァ…………なのはは綺麗だよ? …………ハァハァ…………』

 

 

アーアーキコエナイ。

 

「……チヒロくん」

「顔真っ青ですよ」

「……知ってる。お願いだからアレの前で変なこと言ったり考えたりしないで」

 

すみません。

ああ、そうだ。

 

「悪いんですけど、あと数日だけ泊めてもらえませんか?」

「ん? もちろんいいよ! チヒロくんなら大歓迎だよ」

 

家具とかも全焼したからな。

揃えないと。

制服は着ていたから燃えずに残った。それだけが救いだ。

 

「そう言えば制服以外の服ってどうしたの? うちに来た初日、お風呂上がりにはスウェットだったよね?」

「……ハラオウンさんが」

「…………………………………………ごめん」

 

サイズ教えてないのに。

 

 

 

 

 

 

 

そして時は流れ、高町家での生活は終わりを迎えた。

 

「今までありがとうございました」

「うん。困ったらまた来ていいんだからね?」

「そうですよ、先輩!」

 

なのはさんとヴィヴィオちゃんは本当に天使だなぁ……。

 

「……あ、そうだ。これ預かっててもらえませんか?」

「ん? ……合鍵?」

「はい。もしもの時の為に」

 

何があるか分からないからな。

俺が持つ普段使用のカギとは別に合鍵は二本ある。

一本は予備として、もう一本は高町家(ハラオウンさんは除く)に預けようと思った。

信用できるからな。

 

「……ねぇ、これ、ヴィヴィオに預けてもいいかな?」

「えっ!? なのはママ!?」

「もちろん構いませんよ。なのはさんに一任します」

 

なのはさんがヴィヴィオちゃんに合鍵を手渡す。

 

「はい、ヴィヴィオ。……フフッ、よかったね」

「な、なのはママぁっ!」

 

顔を真っ赤にしてあたふたするヴィヴィオちゃん。

そして、なのはさんの台詞は後半が小声でよく聞き取れなかった。

 

「あ、あの……先輩。本当にいいんですか……?」

「もちろん。ヴィヴィオちゃんなら信用できるからね」

「あ……えへへ……!」

 

だが注意事項は存在するぞ。

 

「ただ……絶対に、絶ッッッッッッ対にハラオウンさんには渡さないでくれ。絶対にだ」

「わ、わかりましたっ! 命に代えましてもっ!」

 

いやいや、ジークならいざ知らず天使が死んだら困る。

命に関わるなら合鍵なんて渡していいから。

でも本人はやる気だし……否定するのは可哀想か。

 

「おう。頼んだぞ、ヴィヴィオちゃん」

「はいっ! ……あの、時々遊びに行ってもいいですか?」

「大歓迎さ」

 

満面の笑みのヴィヴィオちゃん可愛い。

いつまでも見ていたいけど……名残惜しいがそろそろ行こう。

 

「じゃあ、そろそろ行きます。本当にありがとうございました」

「先輩、またね!」

「……それじゃあ最後に私も一仕事しようかな。レイジングハート!」

《Set up》

 

……今までスルーしてたけどやっぱそうはいかないよな。

しれっと俺の隣に立ち、ついてくる気満々なこの人を。

 

「あ、チヒロ、お話終わったの? ならそろそろ行こっか」

「……お願いします、なのはさん」

 

あなたしか頼れる人はいない。

 

「任せて! フェイトちゃんは私が抑えておくから!」

「ーーーーなのは!? いったい何を……くっ、バルディッシュッ!」

《Set up》

「……ありがとうございますッ!」

 

もう振り向かない。

あとは走り続けるだけだ。

 




合鍵を手に入れたのは()ロインジークでもストーカーストラトスちゃんでもなく、大天使ヴィヴィオ。

さて、ここでまさかのアンケート。
おまけのエンディングは……

①不憫なジークちゃんに幸せになって欲しい(衝撃の超激甘展開へと繋がるHAPPY? END)。
②クズどもを制裁してくりゃれ!(平凡なGOOD END)
③ダース・ベクター降誕(安定のゲスEND)

締め切りは今日から5日後(26日)とさせて頂きます。
活動報告欄『アンケート』にて「これだ!」という番号をご記入(?)ください。
感想への回答はお止めください。
また、①に関して同情票ならきっちりと同情票と書きましょう(笑)
あなたの選択が、今後の物語の展開とジークの運命を変える!

おまけ
《暇をもて余したクズどもの遊び~第四話~》

「礼服、キツいところはありませんか?」
「……大丈夫」

ヴィクターの言葉に、ジークは反応を示すものの顔を上げることはなかった。

「ご両親の意向で地球の日本というところにある様式でやるそうです。……ジーク、辛いなら」
「……行く。ウチも行くよ」

ジークは顔を上げて答えた。
ずっと泣いていたのか目は赤く腫れ上がっている。

「……助けられなかったこと、謝らんと」
「そう……ですか」

ヴィクターはジークとしばし見つめる。

「ならそろそろ行きましょうか」
「うん……」
「……はぁ。そんな顔じゃ、チヒロを送れないでしょうに」
「……ごめん」
「気持ちはわかりますわ。……顔を洗ってからいらっしゃいな」

先に行ってますわ、と言い残してヴィクターは部屋を出た。
部屋からはジークの啜り泣く声が聞こえ始める。




「……………………もうむりブッフォwwwww」



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二十七話

圧倒的③支持率!
そして①が今、すごい勢いで追い上げてきていますね。

……作者(真のゲス)の罠とも気付かずに(ニヤリ


それはそれとして、アンケートはまだ行っております。
投票の際は感想ではなく活動報告欄にてお願いします。
繰り返しますが、感想への投票はご遠慮ください。

あなたの1票がジークの運命を決める!



当り一面が燃えている。

炎は全てを飲み込むほど大きく、本能的な恐怖を覚える。

 

「チヒロさんっ! チヒロさん、どこですかっ!?」

 

探す。

けれど、探し人は見つからない。

 

「はぁッ……はぁッ…………くっ、いったいどこに……っ!?」

 

ふと、崩れ落ちた瓦礫の中から何かが飛び出ているのを見つける。

それは『人の手』だ。

 

「あ……あぁ…………ああぁぁぁぁ…………!」

 

見間違えるはずもない。

あれは。

 

 

「チヒロさんッ! ーーーーーーあ、れ……………………夢……?」

 

 

勢いよくシーツをはね除ける。

ただの夢だったようだ。

 

「よう、うなされてたけど大丈夫か?」

 

声が聞こえたので振り向けば、探し人の姿がそこにあった。

夢だとわかりつつも体のあちこちを触り、無事を確かめる。

 

「なんだよ、こそばゆい」

「……よかった」

 

探し人は眉にシワを寄せた。

 

「悪い夢でも見たのか?」

「悪い夢……そう、ですね……その通りです。……本当に、本当に……悪い夢…………」

「そか。夢でよかったな」

「………………はい!」

 

 

「じゃあ説明して貰おうか。なんでお前が俺のベッドで寝てるんだ、ストラトスちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

新居にて迎える始めての朝。

目覚めは最悪だ。

 

『開けてくださいチヒロさん!』

 

ストラトスちゃんを部屋から叩き出して朝食タイム。

もはやドアノブガチャガチャは定番だから気にしない。

 

「まったく……あいつのせいでまた変な夢見ちまったよ」

 

高町家にて見た火に囲まれる夢。

膝ついてるおっさんもいた。

 

「心なしかストラトスちゃんに似てたような……」

 

気のせいだな。

きっとストラトスちゃんのせいだ。

 

『あ、チヒロさん。 私、今日は用事あるのを忘れていました』

「そか。二度と来んな」

『いってきます。……夜には帰ってきますので』

「二度と来んな」

 

二度と来んな。

しばらく耳を澄ませる。

 

「……行った、か?」

 

……不安だな。

確認するか。

 

「悪い、あいつ消えたか見てきてくれ」

 

ーーーーはあい♪

 

金髪幼女は偉いなぁ……。

ぐにゅ子もぐーすか寝てないで見習えよ。

ちなみにぐにゅ子は生まれてきたあの実の片方をベッドの代用にして寝ている。

 

「……味噌汁流し込んでやるか」

 

ざばぁ。

 

『わぶっ!? なんだ!? てきしゅうか!?』

 

ザマァ。

そこに金髪幼女が帰ってきた。

 

ーーーーいなかったよぉ!

 

「そっか。偉いぞ。ご褒美は何が欲しい?」

 

ーーーーちゅーして~♪

 

「してやりたいのはヤマヤマなんだけどさ、お前幽霊だから触れないんだよ」

 

ーーーーしゅん……。

 

悪いな。

俺が死んで幽霊になったらいくらでもしてやるから。

 

ーーーーじゃあ、いましんで~♪

 

待て。

お前最初そんなキャラじゃなかったよな?

俺が死にそうだったの助けてくれたよな!?

 

《貴方がそうしたんでしょう》

「それは否めないけども!」

 

……ん?

またあの声だ。

……誰なんだよ、いったい。

 

『おい』

「ん? なんだよぐにゅ子」

『このみそしるはおまえがやったのか?』

 

………………てへ☆

 




最後にひとつ言っておく。
『ストラトスちゃんは加速』する。



《暇をもて余したクズどもの遊び~第五話~》

「ふぐっ……グスっ…………チヒロぉ…………!」

俺の葬式でジークが泣いている。
と言ってもヴィクターが開いた偽の葬式だがな。
笑いを抑えるのに苦労するぜ……!

「ごめん…………ウチが……ウチがあの時助けてればぁ…………!」
「ジーク……気にブフッwww …………失礼、気に病まないで。貴女のせいじゃないのよ」
「でもヴィクタぁぁぁぁ…………!」

ちなみに俺が今いるのは棺の中だ。
目を閉じて死んだ振りをしている。
他の参列客はみんなエキストラだ。俺の両親役までいる。
気付いても良さそうなのに……まったく気付いていない。

「ちなみに一酸化炭素中毒という設…………もとい、死因ですわ」
「…………そ、そうなんや……グスっ……!」

そう。
それこそが、俺(遺体)が綺麗なままでいる理由……というか設定なのだ。
なのだが……あえて言いたい。

出火隣の部屋だぞ。
んなミラクルあるわけねぇだろ。

to be continued……


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二十八話

おまけ《暇をもて余したクズどもの遊び》は前回でいったん終了になります。
あとはアンケート結果を待つだけです。




さて。

俺は今、お隣さんの扉の前にいる。

引っ越しの挨拶だ。

 

「色々あって遅くなっちゃったからな」

 

インターフォンを押す。

 

「どんな人かねぇ……」

 

予想してみよう。

まず巨乳で、胸が豊かで、胸部の脂肪が多めで、おっぱいが大きい。

そんな美女がいいなぁ……。

 

「ただし金髪女は不可。ヴィヴィオちゃんのみ許す」

 

そのとき、ガチャリと扉が開いた。

 

「あいよ……って、誰だお前?」

「あー……隣に越してきた者です」

 

ポニーテールの女の子だ。

年は……同じくらいか?

 

「おぉ、そうか! 何だ、挨拶か?」

「あ、はい。これつまらない物ですが」

「サンキュー!」

 

ガバッと菓子折りを奪われる。

 

「オレはハリー・トライベッカ! お前は?」

「篠崎チヒロっす」

「変わった名前だな。チヒロでいいか?」

「お好きにどうぞ」

 

あれ?

この人どっかで……?

 

「あぁ……確か、砲撃番長(バスターヘッド)……」

「オレのこと知ってんのか!?」

 

ヴィクターから話は聞いたことがある。

つまり……。

 

「新しい玩具ゲッツ」

「は?」

 

 

 

 

 

 

「まぁ、寛いでくれ。お茶いれてくるぜ」

「あ、お構い無く」

 

今時の不良はお茶を入れられるらしい。

今のうちに……。

 

「ぐにゅ子」

『なんだ?』

「部屋を解析」

『……たぶん、かわいいものがすきなんだろう。へやのないそうはどこにでもあるようなものにみえて、いがいとかわいいものがおおい』

 

弄るならそこか。

 

「ほいよ」

「どうもです」

「敬語じゃなくていいって。同い年くらいだろ?」

 

ふむ。

ならお言葉に甘えて。

 

「わかったぜ、可愛いものが大好きなハリーちゃん」

「な、何で知って……!?」

 

うちのぐにゅ子舐めるなよ。

 

「部屋の内装に可愛い系のものが結構あるからな」

「へー……中々鋭いんだな、お前!」

 

あ、あれ……?

隠してるわけじゃないの……?

 

「なぁなぁ、他には何か分かるのか?」

「あ、えっと……」

 

ぐにゅ子ヘルプ!

 

『……はぁ。しかたないな。おそらくきちょうめんだ。へやはきれいだし、きちんとせいりされている』

「き、几帳面なんだな! 部屋綺麗だし整理もされてるし」

「い、いや、そんなことねえよ! ただ掃除が好きなだけで……な、なんか照れるな」

 

くっ!?

ぐにゅ子追撃!

 

『いいよめになるとでもいっておけ』

「い、いい嫁さんになれるよ!」

「はぁっ!? な、何言って……!? ……な、なぁ………………ほ、本当にそう思うか……?」

 

顔真っ赤にして照れてる。

不発じゃねえかぐにゅ子ぉぉおお!

 

『いや、ふはつではない。たぶんたったぞ』

 

何がだ。

 

「お前面白いな……気に入ったぜ! これからよろしくな!」

「ど、ども」

 

アカン。

この子、苦手なタイプや。

全ての弄りをプラスにとる単純に可愛い娘や。

 

『おまえにもにがてなものがあるんだな』

 

お前俺のことなんだと思ってんの?

 

『せかいのやみ』

 

それはヴィクターだ。

 




番長はアパートで一人暮らしにしました。
……二次創作だし、いいよね?

個人的に納得がいっていない。
もっと番長の可愛さを出せるはずだ!
ゲス度も足りん……!


《続・チヒロの知り合いに聞いてみた》

ギャルの場合
「え? チヒロっちぃ~? マジいい奴だし! ウチらはズッ友だョ~…………クズだけど」

不良の場合
「あん? 篠崎ぃ? おうよ、知ってるぜ。なかなか根性あるやつだ…………クズだけど」

高校教師の場合
「篠崎か? 成績優秀だし運動神経もいい。学校の手伝いも嫌々だが引き受けてくれる優等生だな。…………クズだけど」

委員長の場合
「し、篠崎くん? ……え、えっと……うん、かっこいい……よね? 優しいし……ち、ちょっとえっちだけど……いいひとだよ」




まさかの委員長が決め台詞『クズだけど』を破る。

※インタビュアー:アインハルト・ストラトス



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二十九話

まだまだアンケートは続いています!
あと、26日の午後23時に締め切らせてもらいます。
それ以降の投票は無効になりますのでご了承ください。


ハリーとの初対面から数日が経った。

お隣さんと言うこともあって、親交は深まり今では……。

 

「ほら、朝メシできたぞ!」

「……うぃ~」

 

甲斐甲斐しく世話を焼かれるようになっていた。

ハリーは俺の部屋に来ては様々なことをやってくれる。

超便利。

 

「……箸持つのマジたるいぃ…………ハリー食わせて~」

「お前なぁ……」

 

この数日でこいつの性格は把握した。

 

「ったく……仕方ねえな。ほら口開けろ」

「あ~……」

 

ほらな。

何だかんだで面倒見がいいんだ。

 

『わたしのおかげだぞ』

 

……何で?

 

「あ、ハリー。野菜はいらない」

「はぁ? バカ言うな、ちゃんと食え!」

 

いーやー。

 

「あっ、コラ! 口閉じるな!」

『かのじょのいうとおり、ちゃんとたべるべきだ。おまえはほうっておけばすきなものばかりたべて……』

 

なんか母親が増えたみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

さて、今日は意外な人物から頼みごとをされている。

ヴィータさんだ。

何でも勉強を教えてやって欲しい子がいるとか。

 

「じゃあハリー、いってくるわ」

「おう。晩メシ何がいい?」

「肉」

 

洗い物をしているハリーに挨拶をして家を出る。

 

「よし行くか」

 

ヴィータさんを弄りに!

……じゃなくて勉強教えに。

 

「なぁ、ぐにゅ子は本当に行かないのか?」

『……あぁ。まだこころのせいりがついてなくてな』

 

ぐにゅ子はヴィータさんの知り合いらしい。

だが今回は心の整理がついていないだとかで留守番だ。

 

『いずれ、あいにいく。そのときは……おまえもきてくれ』

「……わかった」

『かんしゃする』

 

じゃあそろそろ行くか。

 

『あぁ。じこにはきをつけろよ』

「へいへい」

『……まったく』

 

 

 

 

 

教えられた住所にやって来た。

そこには中々に大きい一軒家があり、目の前には海が広がっている。

 

「いいとこ住んでんなぁ。さすが局員」

 

将来は局員の嫁さん貰おう。

 

「おぉ、チヒロ! 来たか!」

 

ぼーっと海を眺めながら将来のヒモ生活を考えていると、聞き覚えのある声が聞こえる。

 

「おやヴィータさん。こんにちは、今日は大変お日柄もよく……」

「なんでそんな畏まってんだよ。もっと砕けた感じていいって」

 

そうか。

 

「チョリ~っす☆ ロヴィータちゃんげんきぃ~?」

「潰すぞ」

 

なんで!?

砕けた感じでいいっていったじゃんか!?

 

「砕け過ぎだ」

「丁度いいって難しい……!」

「アホか、お前は。……まぁ、いいや。とにかく中入れよ」

「う~い……」

 

ヴィータさんについて行って家の中へ。

 

「にしてもデカイ家っすね」

「まぁな。あ、でも住んでるのはアタシだけじゃないからな」

 

そうなのか。

 

「あぁ。他に6人いるんだけど、今日はみんな管理局の仕事でアタシしかいないんだ」

「へぇ……。大家族なんすね」

 

最近うちも大所帯になってきたからな。

親近感を感じるぜ。

 

《その場合、貴方は手の掛かる末っ子ですね》

 

うるせー。

誰なんだよお前。

 

「さ、着いたぞ。ここがリビングだ」

 




スーパーナチュラルお嫁さん・ハリー。


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三十話

そろそろ更新速度落とすかも。



「は、始めまして! ミウラ・リナルディです! 今日はよろしくお願いしますっ!」

 

リビングに入ると、いきなり大声で挨拶された。

 

「おいミウラ、緊張してるのは分かるが少し落ち着け」

「は、はいぃっ!」

 

……玩具か?

玩具ゲッツか?

 

「チヒロ?」

「何でもないっすよ?」

 

あっぶねぇ……。

挨拶して誤魔化そう。

 

「俺は篠崎チヒロだ。よろしくな」

「は、はいっ! よろしくお願いします、先生!」

 

……なんだと?

 

「今なんて?」

「えっと……先生って…………あの、ダメでしょうか……?」

「もう一回」

「え?」

「もう一回!」

「あ、はいっ! 先生!」

 

先生……。

いい響きだ。

 

「よぉし、ミウラちゃん! 俺に任せておけ!」

「は、はいっ!」

『先生』様が色々教えてやるぜ!

 

「まずは気付かれないように人を隷属させる方法をだな……」

「おいッ!」

 

ヴィータさんに止められた。

 

 

 

 

 

「お~い、アイス買ってきたぞ! そろそろ休憩にしないか?」

 

しばらくミウラちゃんに勉強を教えていると、ヴィータさんがそんなことを言ってきた。

買い物に行ってたのか。

小さいから気付かなかった。

 

「何食う?」

「バニラ。ミウラちゃんはチョコチップな」

「えっ? ボク、ストロベリーが」

「チョコチップな」

「は、はいぃ……!」

「チ、チヒロ……お前な…………」

 

なんですか?

 

「はぁ……いや、いい」

 

ヴィータさんからアイスを受け取って蓋をあける。

バニラうめー。

 

「で、どうだ? ミウラは?」

「あ、はい」

 

正直に言おう。

 

「コイツ馬鹿です」

「それは知ってる」

「はうぅっ!?」

 

まさかここまでとは……。

 

「で、でも凄いんですよ、ヴィータさん! 先生、教えるの上手ですっごく分かりやすいんです!」

「それも知ってる。フェイトから聞いた」

 

……………………………………は、ぁ…………?

 

「いやいやいやいや、落ち着け。忘れるんだ気にしちゃダメだ気にしちゃダメだ気にしちゃダメだ気にしちゃダメだ気にしちゃダメだ気にしちゃダメだ」

「せ、先生? どうしたんですかっ!?」

 

ミウラちゃんを後ろから抱き締める。

……というか、しがみつく。

 

「ふえぇっ!? せ、先生っ!?」

「……ふぅぅぅぅぅぅぅぅ……落ち着け……素数を数えるんだ……2……3……5……7……!」

「お、おい、チヒロ! どうしたんだよ!?」

 

シャットアウトしろ。

別のことを考えるんだ……!

 

「ミウラちゃんいい匂い……!」

「せ、せんせっ、何言って……っ!?」

「本当にどうしたお前!?」

 

ふぅ……落ち着いてきたぜ。

ミウラちゃんにはアロマ効果があったのか……ミウラテラピー効果抜群。

 

「……ふぅ、すみません。取り乱しました」

「お、おう。なら、そろそろミウラを放してやれ」

 

おお、そうだ。

 

「すまんなミウラちゃん、ありがとう」

「い……いえ……! こ、こんなことでよければいつでも……」

「言ったな?」

「……ふぇ?」

「言質は取ったぞ」

 

嫌なことあったらミウラちゃんを呼ぼう。

 

「よっしゃぁ! やる気出てきた! さぁ休憩は終わりだ!」

「そ、そんなぁっ!?」

 

1日みっちりやりゃあ成績も上がるはずさ!

このままノンストップだぜ!

 




ヴィータちゃんってフェイトそんのこと何て呼んでたっけ……?
テスタロッサであってたっけ……?

※テスタロッサからフェイトへ修正しました。



あとアンケートは今日の夜23時にて終了です。
投票よろしくお願いします!


おまけ
《チヒロと委員長について聞いてみた》

証言1:男子生徒
「え? あの二人? 付き合ってるんじゃないの?」

証言2:女子生徒
「幸せになって欲しいよね~! ……あ、委員長ね。篠崎くんは一回刺されちゃえばいいと思うよ」

証言3:教師
「サボり常習犯の篠崎を叱る委員長。……夫婦にしか見えんなぁ。結婚してしまえばいい。篠崎にも守るべきものが出来れば真面目になるだろう……たぶん」

証言4:後輩(♀)
「し、篠崎先輩は渡しませんっ! …………あ、あぅぅ、でも勝てるかなぁ……?」


結論:アインハルト・ストラトス
「『委員長』さんですか……なるほど、いいご友人をお持ちですね、チヒロさん」


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三十一話

はじめに。
アンケートへの投票ありがとうございました!
結構多くて集計大変でした(笑)

さて、結果発表……の前に1つ報告が。
『〇か〇』みたいな番号が特定されていない投票では最初に出ている方をカウントしています(『①か③で迷ったけど……③で』みたいなものでは③としてカウント)。

それでは……(デレデレデレデレ





①……80票
②……6票
③……99票

ということで、シナリオはゲスENDへ!











ふはははっ引っ掛かったなぁ!
ジークヤンデレ化は②だったんだよゥッ!

……いや~、良かったぁ。



この時期になるとみんな……あのヴィクターですらピリピリし出す。

 

『DSAA』。

正式名称:ディメンション・スポーツ・アクティビティ・アソシエイション魔法戦競技会という団体が開催する『インターミドル・チャンピオンシップ』。

その開催が近いのだ。

 

「確か……10歳から19歳までの全管理世界の魔導師が出るんだっけ」

 

ジークとかヴィクター、更にはハリーも出ている。

ハリーも今日はそれに向けてのトレーニングで忙しいようだ。

 

「ヴィヴィオちゃんも出るとか言ってたなぁ……」

 

ま、俺には関係ない……と言いたいんだがそうは問屋が卸さないらしい。

実は今日、そのインターミドル関係で知り合いに呼び出されているのだ。

……嫌な予感しかしない。

 

 

 

 

 

 

「お願いですっ! 私のセコンドをやってください!」

「嫌だね、デコ助。一昨日来やがれ」

「エルスです! て言うか一応私、年上ですからね!?」

 

エルス・タスミン。

それがこのデコ助の名だ。

中学時代の知り合いだ。

年上とか言っても数ヵ月だし。

 

「つかなんでオレなんだよ」

 

格闘技なんて詳しくないし、魔法だって使えない。

 

「強いて分かるとすればお前に『縛る趣味』があるって事ぐらいで……」

「な、なんて事言うんですか!?」

 

ちゃうの?

 

「違いますよ……まったく……!」

 

そんな怒んなよ。

あんま怒ってると後退するぞ。

ただでさえデコ広いのに。

 

「で、なんでオレなんだ?」

「……篠崎くんは」

 

……うん?

「中学時代、運動会のこと覚えてますか?」

「あ、あぁ」

つっても運動会三回あったんだけど。

何年の時のやつ?

 

「二年生の時です。あの時、私は委員長だったにも関わらず……あるクラスメイトの体調不良を見抜けませんでしたよね」

 

……あぁ、委員長(※)のことか。

あったなそんなこと。

 

「でもあなたは……すぐに見抜いた」

確か日射病になってたんだよな。

でも発見したのは偶々だ。

……だって本当はおっぱい見てただけだもん。

 

「その後の処置も完璧だった……すぐに日陰につれて行って体を冷やして……。私はそれを見てるだけでした」

 

委員長の柔らかかったなぁ……。

もう一回日射病になってくれないかなぁ。

 

「他にも色々ありましたよね。学校生活やイベントなどであなたは多くの人を助けてました。……何故か女子ばっかりだった気がしなくもないですが」

 

だって……男の子だもん♪

 

「だから……その観察眼と正しい処置の知識を見込んでのお願いです! 私のセコンドをやってください!」

「えー……」

 

正直めんどい。

ただ、まぁ……

 

「見返りを寄越せ。さすればやってやらなくもない」

「ほ、本当ですか!?」

 

上から目線はスルーですかそうですか。

 

「私、何でもします! ですからお願いします!」

「何でも? 今、何でもって言ったな?」

 

聞き逃してないぞ。

 

「あ、いや……」

「ちなみにお前との会話は最初から録音しているからな」

「なっ……!?」

 

抜かりなし。

 

「クックックッ……!」

「……早まったかも……!」

 

さぁ……どんな無茶ぶりしてやろうかなぁ……!

 




※おまけにてヒロイン力爆発中のあの委員長のことです。
この頃はただの一女子生徒。


まさかのエルスと同中。

二次創作だからね!?
突っ込んじゃダメだよ!?

さて。
申し訳ありませんが、とりあえず更新頻度を三日に一回に下げようと思います。
ご迷惑をお掛けしますが、ご了承ください。

おまけ
《暇をもて余したクズどもの遊び~最終話~》

「ヴィクタァァァアアアアッ!」
「あらチヒロ。……ちっ、生きてましたの」

あの後、偽葬儀が終わってから俺(の遺体)は火葬場へと運ばれた。
そこでダミーと入れ替わり、棺から脱出するというのがシナリオだった。
それをこいつは……!

「テメェ! 棺から出れないように固定しただろ!」

蓋が固定されてて開かなかったのだ。
あやうく本当に燃え尽きるところだった。

「どうやって脱出を?」
「エドガーが助けてくれたんだよ! 今回は本気で死ぬかと思ったぞ!」
「……あのクソ犬」

ぅおい。

「まぁいいですわ」
「……それは俺が言うことだろうが」

こいつマジムカつく。

「……で、この後どうすんだよ?」
「……何がですか?」
「だからジークだよ、ジーク! ネタばらし!」
「あぁ……その事ですが」

なんだ?



「ぶっちゃけ飽きましたわ」



「……は?」
「だから、飽きましたの」

飽きたって……え?

「まさか……ここで止めんの? ネタばらしは?」
「しませんわ。放置プレイです」

それ放置プレイ違う。
ただの丸投げや。

「じゃ」
「いやいやいやいや! 『じゃ』ってお前!」
「……何ですの鬱陶しい。これから帰って傷心のジークで遊ぶんですから、邪魔しないでくださいな」

マジでネタばらししねぇの!?
えっ、本気で放置なの!?
さすがにそれは……!

「ということですから、貴方ももう帰っていいですわ」
「ええぇぇっ!?」
「あぁ、これからが楽しみですわぁ……! どうしましょう……まずは……そうですわ、泣いてるジークにチヒロとの思い出話を……いえ、チヒロの写真とかを見せて……出来るだけ笑顔のやつを…………ふふふふふっ……!」

恍惚とした表情を浮かべて、ヴィクターは歩いていってしまった。
そして一人残された俺……。

「……俺、知ーらねっ☆」

悪いなジーク。
でも悪いのはあのゲス(ヴィクター)だ。

……強く生きろよ。
もし真実に気付いた時は、少しだけお前に優しくしてやるよ。



……ごめんやっぱ嘘。
全力全開でいじめるわ。





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三十二話

昨日、ハリー・ポッターやってましたね(笑)
それも「ナメクジ食らえ」の回。



「なぁ、ハリー……」

「ん? 何だよ?」

 

朝食を終え、ベッドに寝転がって洗い物をしているハリーに話しかける。

 

「お前、インターミドル出るんだろ?」

「お? なんだ、応援してくれるのか?」

 

えー……。

 

「どうしよっかなぁー?」

「ま、まぁ……その、他に応援したいヤツがいるなら……ぐすっ……!」

 

……やっぱコイツ苦手だわ。

 

「あー……ウソウソ。ハリーを応援するって」

「ほ、本当かっ!? へへっ、さんきゅー!」

 

嬉しそうにしちゃってまー。

一応、他選手(デコ助)のセコンドやるんだけどなぁ……。

ま、いっか。

 

「チヒロの応援があるならアイツだって……!」

「ん? アイツって誰だ?」

「あぁ、俺が前回のインターミドルで負けた相手だ」

 

あぁ、ヴィクターか。

ちなみに俺とヴィクターが知り合いだと言うことをハリーは知らない。

面白そうだし黙ったままでいるつもりだけど。

 

「それもグダグタの泥試合でだ。今年こそ白黒ハッキリつけてやる。……きっとアイツもそう思ってるさ」

 

 

ーーーー泥試合でも勝ちは勝ち。気分良いですわぁ……!

 

 

……アレ(・・)も黙っといてやろう。

 

 

 

 

 

 

さて、ハリーがトレーニングに行った為に暇になってしまった。

そこでふと、ジークのことを考えたのだ。

 

「はぁぁ……」

 

あれ(・・)以降、ジークと接触していない。

そのせいで俺は、一抹の寂しさを感じている。

ジークに会いたい。

ジークをいじめたい。

そして俺は……

 

 

「だから慰めてミウラちゃぁぁぁぁん……!」

「ひゃあっ!?」

 

 

通信でミウラちゃんを呼んで慰めてもらうことにした。

ミウラちゃんもインターミドルに出るらしいんだけど、今日はたまたまトレーニングがオフだったらしい。

助かった。

 

「はぁぁ……ミウラちゃんの匂い嗅いでると落ち着くぅ……」

「かっ、嗅がないでくださいぃぃ~っ!」

 

なぜだし。

 

「あ、あの……走ってきたから……汗が……!」

「あー確かに。ちょっと汗の匂いするね」

「ぴゃぁぁぁぁぁあああああああっ!?」

 

これ、暴れるでない。

さらにミウラちゃんを抱き締める力を強める。

 

「逃がさないぞ」

「あうあうぅ……!」

 

そして今日は帰さないぞ。

 

「ひぇっ!?」

「いやそれは冗談」

 

一々可愛い反応するなぁ、ミウラちゃん。

いじめたくなっちゃうよ。

 

「あ、あの……」

「ん? なぁに、ミウラちゃん?」

 

ミウラちゃんが顔を真っ赤にして話し掛けてきた。

どったの?

 

「せ、先生も……いい匂い、です……!」

「うわ何コイツ変態?」

「え、ちがっ、何でっ!?」

 

 

ーーーー気分は少し、落ち着いた。

 

 




おまけ
《委員長と後輩ちゃんの好感度事情》

『委員長の場合』
好感度:知り合い 「おはようございます!」
好感度:友人 「今度みんなで遊びに行きませんか?」
好感度:気になる人 「あ、あの……映画でも見に行きません? ……ふ、二人で」
好感度:好き 「あの、これ! バレンタインのチョコです! ……ほ、ほんめい……ですよ?」
好感度:MAX 「あれ……寝てるんですか……? ………………ん…………えへへ……ちゅう、しちゃいました……♡」


『後輩ちゃんの場合』
好感度:知り合い 「あ、おはようございます、先輩!」
好感度:友人 「せ~んぱいっ♪ 一緒に帰ろ?」
好感度:気になる人 「せっ、先輩は渡さないもんっ!」
好感度:好き 「先輩……その女、ダレ?」
好感度:MAX 「先輩は渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない誰にも渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない。先輩は私の……私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の、私だけの先輩なんだから」









好感度:オーバードライブ 「うふふふふふふふふフフふふふふフふふふふふふふふふふふふふふふフフフふふフフフふフフふふふフフふふふふふふふふふフふふふふふふフふフふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふフフふふふふふふふふふふふふフフフフフフフふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふフふふふふふふふふふふふふふフふふふふふふふふふふふふふふふふフフふフふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふフフフフフふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふフフフふふフフフフフふフふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふフフフフふふふふふふフフふふふふふふふ…………………………♪」




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三十三話

おまけが本編な気がしてしょうがない今日この頃。

今回のおまけは本編には関係ないのであしからず。



「なぁ……ファ〇リーズ」

「ウェズリーです。先輩、“リ”がつけば何でもいいって思ってないですか?」

 

なんだか久し振りな気がするウェズリーとの登校。

引っ越してもこれは変わることがなかった。

 

「俺さ、ふと思ったんだ……」

「何をですか?」

 

まずは確認しよう。

 

「ちょっとほっぺた膨らませてみて」

「……は、はい?」

「ぷくーって。ほら、漫画とかで怒ったキャラがやるみたいに」

 

いいからさっさとやれ。

 

「ほーら! はーやーく!」

「い、いいですけど……?」

 

ウェズリーは困惑した表情を見せながらも、俺の言った通り頬を膨らませる。

……やはり…………これは……!

 

「おおぉぉっ!」

「な、なんですーーーー」

「ーーーーそのままだッ! そのままでいろッ!」

 

突然叫んだ俺にびくっとしたウェズリーは再び頬を膨らませた。

それを両手で包み、あまり力を入れないように注意して揉む。

 

「……ふぉぉぉ!」

「ん!? んーんー!」

 

ぷにぷにしている。

すっげーぷにぷにしている。

 

「はぅぁぁぁ……!」

「んーっ!」

 

ウェズリーが俺から勢いよく離れた。

あぁぁぁ……ぷにぷにが……。

 

「な、何するんですか!?」

「……シー〇リーズ。俺は思ったんだ」

「……話を切って悪いんですが、一応言っておきますね。ウェズリーです!」

 

本当にな。

良いところなんだから流せよ。

 

 

「ウェズリー……君は“膨れっ面”が一番可愛いッ……!」

 

 

「……はぁ?」

 

おい、何だその反応は。

せっかくジョ〇ョ立ちまでしたのに。

 

ーーーーど~んっ……!

 

効果音ありがとう、金髪幼女よ。

愛してるぜ。

 

ーーーーじゃあしんで~♪

 

二言目にはそれかよ、お前。

 

「……あの」

「何さ?」

「……意味が……分からないんですけど」

 

どうやら説明をする必要があるようだな。

……めんどくさ。

 

「この前、俺のアパート火事になったろ?」

「は、はい……」

 

あの時、運が悪ければ死んでいたかもしれない。

そして……いつまたそんな目に遭うかも分からない。

そんなことを考えいたら……

 

「お前の顔が浮かんだんだ」

「えっ!? わ、わたし……ですか!?」

 

名前は出てこなかったけど。

 

「そう……そして思ったんだ。『八重歯へし折りたい』と」

「先輩のばかぁ!」

 

そこでウェズリーの膨れっ面が思い浮かんだんだ。

俺は衝撃を感じたね。

 

「途端にお前に会いたくなった。唐突に愛おしく思えてきたんだ」

「い、いとっ……!?」

 

しばらくはウェズリーの膨れっ面が頭から離れなかった。

……今はジークが頭から離れないけど。

はぁ……ジークいじ……会いたいなぁ。

 

《それ……この娘には言わないであげてくださいね》

 

おや謎の声さん。

そろそろあなたが誰だか教えてくださいな。

 

《フフ……まだ秘密です♪》

 

このクソアマッ!

人が下手に出てれゃあ図に乗りやがってッ!

 

《性格激変し過ぎじゃないですか……?》

 

ったくよー。

大事なとこなんだから邪魔すんな。

 

「あー……気を取り直しまして……」

 

深呼吸。

 

「気付いてしまったんだ……この感情に」

「ど、どんな……感情ですか……?」

 

ウェズリーの顔ーーーーその頬が真っ赤になっている。

……何て可愛いんだ。

 

「きっと、これは恋だ。……大好きなんだ。愛してると言っても過言じゃない」

「ーーーーひぅっ!?」

 

だから……

 

 

 

 

「俺のものになってくれ……ほっぺたちゃん!」

「先輩のばかぁぁぁあああっ!」

 

ウェズリー(本体)はそこまでいらん。

 




久し振りにほのぼのとした日常書けて満足満足。


おまけ
《Q.この人だーれだ?》

よう。
あ? 何でいるのかって?
……別にいいだろ、そんなこと。

それよりさっきの何だよ。
……とぼけるなよ、アイツのことだ。
楽しそうに喋ってたよなぁ……誰だよアイツ。
え? ただの友達?

嘘吐いてんじゃねぇッ!
ただの友達が手を取って仲睦まじげにするか!?
するわけないだろっ!

もう怒った。
来いっ!

あ? どこに行くのかって?

決まってるだろ、うちに連れて帰るんだよ。
これ以上変な虫がついたら困るからな。

大丈夫だって。
ちゃんと面倒は見るからさ。

お前は誰にも渡さない。



渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない誰にも渡さないよーーーー




ーーーー俺のジーク。


A.篠崎チヒロ

ジーク:これ“あり”! 断然“あり”やっ!
チヒロ:ありなわけねえだろ。頭湧いてんのか。

後輩ちゃん:[壁]∧〈・〉)<センパイ……?


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三十四話

ついに、というべきか。

どれだけこの日を待ち望んだか……。

昨日くらいかな、確か。

 

『ーーーーそれでは昨年度都市本選ベスト10選手、エルス・タスミン選手に第1会場に集まった選手に激励の挨拶をお願いしたいと思います』

ついに今日から第27回インターミドルチャンピオンシップが始まるのだ。

それもいきなり我らがデコ助の出番である。

『えー……エルス・タスミンです。年に一度のインターミドル……皆さん、練習の成果を十分に出して全力で試合に臨んでいきましょう』

 

……運動会かよ。

もうちょっとこう……胸の熱くなるようなの出来なかったのか……?

 

『私も頑張ります! みんなも全力で頑張りましょう!ーーーーえいえい!』

 

ーーーーおぉーっ!

 

…………………………えー………………ちょ、えいえいおーって……。

嘘だろ……これからガチバトル繰り広げるのに“えいえいおー”って……。

参加者もさ、それでいいのか!?

そんなんで気合い入るのか!?

 

《ちなみに貴方なら何て言ってました?》

「わんわんお」

《……なかなかに可愛いです。やりますね》

「だろ」

 

最近、こいつに普通に反応するようになったなぁ……俺。

本当、誰なんだ……。

 

 

 

 

 

 

さて。

開会式が終わり次第デコ助と合流する予定なんだけど……お、いたいた。

 

「タウリン!」

「1000㎎配合! ……じゃなくて! タスミンですから、私! 何させるんですか!?」

 

いや、やったのお前じゃん。

ノリノリだったじゃん。

 

「で、どうでした?」

「あ? 何がだよ?」

「激励の挨拶ですよ。さっきやった」

 

あぁ……あれか。

 

「酷評と批判、どっちがいい?」

「それ選択肢として成り立ってなくないですか!?」

 

だってなぁ……。

 

「運動会の開会宣言かと思った」

「え、いやっ、そんなことないはず……!?」

「しかも“えいえいおー”って、お前」

 

無いわー。

超無いわー。

 

「うっ……じゃ、じゃあ篠崎くんならどう言ってましたか?」

 

俺?

そうさなぁ……。

 

「ーーーー戦え(殺れ)。最期まで立っていたヤツが最強だ」

「いやいやいや! 死人出ませんから、この大会! 極めて安全なやつですから!」

「戦うのに!?」

「なんで驚いてるんですか!? 当たり前でしょう!」

 

『まったく……』と言いながら呆れるデコ助。

まったくもって解せぬ。

しかも聞いてきたのお前じゃんか。

 

「ーーーーん? 」

 

ふと。

デコ助が近くの客席を見た。

何か見つけたのか?

 

「……はぁ。あの人たちは……!」

「あ、おい!」

 

ため息を吐き、走っていく。

何だってばよまったく……!

 




シュ ラ バ ノ ヨ カ ン 。


おまけ
《今日から使える後輩ちゃん顔文字》

・笑顔
[壁]∨〈・〉)ニタァ……

・不安
[壁]∧〈・〉)センパイ……?

・怒り
[壁]Ξ〈・〉) ……

・失恋
[壁]<ナカニダレモイマセンヨ……♪


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三十五話

いきなり走り出したデコ助の後を追う。

思ったより足が早くてかなり離れてしまったが、姿までは見失わなかった。

その後、デコ助が何だか騒がしい集団のもとに行って大声が聞こえたと思ったら会場まで沸いた。

 

「まぁそんなことはどうでもいいけど」

 

遠目からだからよくわからないが、ポニーテルのヤツがデコ助に話しかけたようだ。

俺はそこに向かって全力疾走中。

もうすぐ追い付く。

 

「ーーーーそういや、アホのエルス」

「誰が『アホの』エルスですか!?」

 

……てめーはーーーー

 

「アホだろうがァァァァアアアアッ!」

「うあっ!?」

 

デコ助の背中目掛けてドロップキックをかまし、そのまま関節技(サブミッション)へ移行する。

 

「いだだだだだっ!? ちょ、篠崎くん!? 腕ひしぎ十字固めって女の子にやっていい技じゃ……っ!?」

「うっせー! お前、知ってるだろ!? 俺が知らない場所に一人で残されるの嫌いなの!」

「地味に可愛くてムカついた覚えはありーーーーいたたっ、まって本当に外れちゃいますからっ!」

 

本当に外してやる……!

 

「……何やってるんですの、チヒロ」

「よう、ヴィクター」

 

何でチェーンで縛られてんだ?

バインドってやつ?

 

「この子がやったんですわ」

「ぐえっ!?」

 

そう言ってヴィクターはデコ助を踏んだ。

やっぱこいつ(デコ助)には他人を縛る趣味があるらしい。

 

「ち、チヒロ……何でここにいんだよ?」

「おっす、ハリー。お前も縛られてんのか」

「あ? あ、あぁ……」

 

俺の言葉を聞いてチェーンをブチブチと引きちぎる。

 

「お前……ヘンテコお嬢様とアホのエルスと知り合いだったのか……?」

「不本意ながらな。言ってなかったっけ?」

 

言ってないけどな。

 

「ーーーーチヒ、ロ……?」

「……ん?」

 

誰かが俺を呼んだ。

声の方を向く。

 

「……ホンマに、チヒロなん……?」

「おぉ、ジーク! 会いたかったぜ!」

「ばかっ!」

 

ジークに声をかけた俺をヴィクターが大慌てで止める。

何だよ?

 

「忘れたんですか……!? ジークはまだ……!」

 

ジークはまだ何だ…………………………………………あ。

忘れてた。

 

「ーーーーチヒロぉっ!」

 

こいつ……俺のこと死んでるって思ってるんだった。

ジークが飛び付いてくる。

 

「あぁぁ……チヒロや……! ホンマにチヒロやぁ……!」

 

やっばい。

罪悪感とかはないけど……これ、下手しなくても殺されるんじゃね?

 

「……やれやれですわ」

「どうなってんだよ、この状況……?」

「チヒロぉ…………チヒロぉぉ……!」

 

さて。

どうやって回避するか……?

 

 

 

「そろそろ関節技外してくれませんかねぇっ!?」

 

 




おデコちゃんの他選手の呼び方がわからないよぉ……。

修羅場延期。
次回にて……申し訳ない(笑)



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三十六話

本当に……っ!

本ッッッッッ当に申し訳ないっ!












修羅場次回に延期です……。




「そう言えば……」

「あん?」

 

今まで俺にずっと抱き付いて顔を埋めていたジークが不意に顔をあげた。

 

「何で……生きとるん……? (ウチ)……葬式にも行ったんやで? やのに何で……?」

 

ーーーーさてどうするか。

正直に答えれば当然待っているのは“死”だろう。

今度は本当の葬式を開くことになる。

ならおちゃらけた感じで言ってみるか?

 

『実はネタバレなしのドッキリでしたテヘペロー☆』

『ぶっ殺す』

 

ダメだ。

ガイストされる未来しか見えねぇ。

 

「フフッ……!」

 

ニヤニヤしてるヴィクターがくっそムカつく……!

……ん?

あ……いいこと思い付いた。

 

「ーーーー俺の葬式ぃ? どういうことだよソレ。そんなもん開いてねぇぞ?」

「……え?」

 

俺の言葉を聞いてジークもヴィクターも目を丸くして驚く。

 

「なっ!? チヒロ、あなたまさか……っ!?」

「……ヴィクター、どういうことや?」

「じ、ジーク……こ、これはその……!」

 

ヴィクターにジークが詰め寄る。

ざまぁみやがれ。

 

「ヴィクター……ちょっとお話ししよか? 選手控え室で」

「あ、いえ、ですから……………………はい」

 

ちょっと待っとってね、と言い残してジークはヴィクターを引きずりながら歩いていった。

 

「……えっと、結局ジークやヘンテコお嬢様と知り合いだってことでいいのか?」

 

ジーク(とヴィクター)が退場したのを見計らってハリーが話しかけてくる。

黙ったままだったから忘れてたけど……そう言えばいたな、コイツ。

 

「あぁ、そうだ。不本意ながらこのデコ助もな」

「……そ、そうか。いい加減に技かけるのやめてやったらどうだ? 気絶してるぞ、ソイツ……」

 

あ、本当だ。

疲れたし……そろそろ解くか。

 

「ま、コイツのことは置いといてジュースでも買いにいこうぜ!」

「お、おい……本当に放置すんのか……?」

「そういや後ろで固まってる三人組って誰だ?」

「お前ゴーイングマイウェイ過ぎだ!」

 

 

 

 

 

 

「ただいまや~」

 

しばらくハリーと会話しているとジークが帰ってきた。

ヴィクターはいないようだ。

 

「おかえりジーク。あ、コーラ飲む?」

「飲む飲むぅ!」

 

ジークにコーラを渡す。

 

「ヴィクターは? 帰ったのか?」

「ヴィクター? 誰やソレ?」

 

……あ、察し。

どうやら触れるべきじゃないようだな。

 

「んぐ…………ぷはぁっ! おーきに、チヒロ」

「あいよ」

「……なぁ、チヒロ。相手は女だぞ? 飲みかけを渡すのは良くないんじゃねえか?」

 

俺とジークのやり取りを見てハリーがそう言ってきた。

 

「……大丈夫やで、番長。(ウチ)は気にせんから」

「ジークに言ってんじゃねえ、チヒロに言ってんだ」

 

えっ?

なになに、喧嘩?

喧嘩始まるの?

 

「だから大丈夫やって。……というか番長こそ、何でそないなこと言うの? 関係あらへんよね?」

「俺はチヒロの保護者的立場だからな。そういうのは教育上よろしくねえからダメだ」

 

待ってよハリー。

君のポジションはいつから俺の保護者になったんだ。

 

「む……!」

「あぁん……?」

 

何かよくわからんけど、とりあえず今俺ができることと言えば……。

 

「修羅場っぽいぞ。起きろデコ助」

「ぶくぼがごぼっ!?」

 

未だに気絶したままのデコ助の鼻からコーラを流し込んで叩き起こすことだけだった。

 

 




おまけ
《もし明日、世界が滅ぶとしたら?》

篠崎チヒロ:委員長のおっぱい揉みしだく

委員長:チヒロと一緒に過ごす

ジークリンデ・エレミア:チヒロと一緒に過ごす

高町なのは:世界を救う方法を探す

ヴィクトーリア・ダールグリュン:その前に世界を滅ぼす

アインハルト・ストラトス:チヒロを守るために世界を救う

ユーノ・スクライア:一線を越える

後輩ちゃん:一線を越える

金髪幼女:これでいっしょー♪ ちゅーしてー♪



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三十七話

今、明かされるデコ助の衝撃の真実。


あとアベンジャーズ楽しみ。




「そもそも、番長はチヒロとどういう関係なん!?」

「おとなりさんだ! そういうジークはコイツの何なんだよ?」

 

ジークとハリーが言い争う。

 

「修羅場ってるなぁ……」

「修羅場ってますね……。ていうかこれ篠崎くんを要因としてるんですから、何とかしてくださいよ」

「いやいや、こいつら強いから無理だって」

 

俺とデコ助は離れて傍観を決め込んでいた。

あー……こいつらと知り合いだと思われたくねー。

 

「あっ、でもこういうことなら出来るぜ」

「……嫌な予感が」

 

息を吸い込みジークとハリーに聞こえるように声を張る。

 

 

「ーーーーそういやエルス、お前試合いつやんだっけ? 『お前のセコンド』なんだから把握しておかないとな!」

 

 

「ちょっ……!?」

「……いいんちょ、ちょっと来て」

「……アホのエルス、ちょっとツラ貸せ」

 

二人に引きずられてデコ助退場。

恨みがましくこっちを睨んでいるので爽やかに手を降ってやった。

腹パンされろ。

 

「……あれ? デコ助って生徒会長やってんだよな?」

 

何でジークは“いいんちょ”って呼んで……あっ、察した。

あいつ、“委員長”と“生徒会長”の区別がつかないほど頭が悪いのか……。

 

「……うわぁ」

 

馬鹿なのかぁ………………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉし、チヒロ。どういうことか説明してもらおうか」

 

ハリーの取り巻き三人組と自己紹介していると三人が帰ってきた。

思ったより早いな。

「おかえり。どうだったよデコ助?」

「……男の子には到底見せられない女の子の汚い部分ですから、聞かない方がいいですよ…………」

 

キャットファイトか。

 

「そんな生易しいもんじゃないですよ……。まずチャンピオンが……」

「いいんちょ、それ以上余計なこと言うたら…………」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…………!」

 

……ジークってこんな恐かったっけ?

話題変えた方が身のためだな。

 

「で、説明ってなんだよハリー?」

「決まってんだろ、ジークとアホのエルスのことだ!」

「う、(ウチ)も聞きたい!」

 

特に難しいことはないんだけどなぁ……。

 

「ジークは行き倒れてるのを助けて、ハリーは新しいアパートのおとなりさん、デコ助は中学が同じ」

「……ってことは、チヒロって俺より年上だったのか?」

「そうだな。でも今まで通りタメ口でいいぞ」

 

ハリー……年下だったのか。

 

「へへーん! 番長そんなこと(チヒロの年齢)も知らへんのー? ぷぷぷーっ!」

 

ジークがハリーを煽る。

お前は小学生かよ……。

 

「はっ! ならお前はチヒロが風呂で体洗うときにどこから洗うのか知ってんのかよ?」

「待てハリー! 何でそんなの知ってんだよ!?」

「左の二の腕や」

「お前もかよ!?」

 

こいつらなんで知ってんの?

ハリーはまぁ……分からなくもないけどさ、よく部屋に来るし。

 

「というか二人とも篠崎くんが好ーーーー」

「わ、わーわー!」

「いいんちょ、それ以上はアカン!」

 

デコ助が何かを言おうとしたら二人が慌てて止めた。

いったい何を言おうとしたんだーーーーって、ラノベの鈍感主人公なら言うんだろうなぁ……。

まぁスルーしとこう。

 

「て、てゆーかいいんちょはどうなんよ!?」

「お、おう! そうだ、答えろアホのエルス!」

 

顔を真っ赤にして二人は話題を変える。

あー……それは聞かない方が……。

 

「私ですか? ありえませんよ。だってーーーー」

 

俺のいないとこでやって欲しいなぁ……。

 

 

 

 

 

「ーーーー中学の時にフラれてますから」

 

 

 




しっかりとヒロインの恋愛感情を把握しているという主人公にあるまじき行為。

《前回のとあるシーンでのこと》


「おかえりジーク。あ、コーラ飲む?」
「飲む飲むぅ!」

ジークにコーラを渡す。







[壁]Ξ〈・〉)セン、パイ………………?



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三十八話

僕……修羅場書くの下手っぴだった……。

そして……今、明かされるチヒロの衝撃の真実。




「ま、マジで言ってるのか!?」

「いいんちょが……チヒロに?」

「えぇ」

 

そう。

卒業式の後にデコ助に呼び出され、告白された。

 

「もともとOKが出ないのは分かっていましたが……まぁ、ワンチャンあるんじゃないかと」

 

なかったけどな。

 

「……な、何か悪いこと聞いちまったな」

「いえ、もう過ぎたことですから」

 

確か……断ったときは“ご縁がなかったということで”と言ったはずだ。

記憶が正しければ。

 

「その……フラれた時は何て言われたん?」

「“お前だけはない”と言われました」

「……(ウチ)、そんなこと言われたら泣くで……?」

 

……まあ、うん。

記憶って曖昧だからさ。

 

「……二人に一つ情報をあげましょう」

 

デコ助がジークとハリーを見据えて真剣な表情でそう切り出した。

なに言う気だ……?

 

 

「ーーーー二人とも、このままだとフラれますよ」

 

 

「それ本人()の前で言っちゃダメじゃね?」

「……あっ」

 

再びデコ助は強制連行されていった。

 

 

 

 

 

 

 

「篠崎くんが女の子の体で一番好きなところがどこだか知っていますか?」

 

腹を押さえながら帰ってきたデコ助は、何事もなかったかのようなすまし顔をしているジークとハリーにそう言った。

 

「それは……おっぱいやろ?」

 

ジークが答える。

……なんか他人に言われるのは釈然としないけど……確かに事実だ。

 

「はぁ……確かにそこもですが、もっと好きな別の部分があるんですよ。そして……その部分に魅力を感じられている女性(ひと)にしかチャンスはありません」

 

「な、なんや、その別の部分って!?」

「ど、どこだよ!?」

 

……どこだよ、本当に。

 

「お尻です」

「え……ええぇぇぇえっ!?」

 

……いやいやいや。

待てよ……確かに好きだけどさぁ……!

その理屈で行くと俺は……俺は……!

 

「そ……そんな……! ち、チヒロ……(ウチ)のお尻……好き……?」

「ぺっ!」

「唾吐かれた!」

 

ジークの尻なぞストラトスちゃんのに比べればーーーーぁぁぁぁぁぁぁああああああああ違う違う違う違う違う違う違う違うッ!

ストラトスちゃんの尻を“良い”なんて思ってないっ!

思ってなんかないんだからねっ!

温泉で見たのが目に焼き付いていて頭から離れないなんてことないんだからねっ!勘違いしないでよねっ!

 

「な……なぁ、俺のは……?」

「一昨日来やがれッ!」

「なん……ッ!?」

 

考えろ考えろ考えろ考えろ…………そうだ!

確か後輩にいい尻をした娘が……!

そうそう、あいつに比べればストラトスちゃんなんて別に……別に……!

 

「ね? 篠崎くんは胸に関してはチョロいですが、お尻になると途端に厳しくなりますよ」

 

負けず劣らずだよぉぉぉぉおおおおおっ!

ストラトスちゃんもあの後輩もいい尻してるよぉぉぉおおおっ!

お尻に嘘はつけないんだよぉぉぉぉォォォッ!

 

「つまりお尻を評価されてない時点で勝ち目は無いんです! ……まぁ一人だけ例外がいますが」

 

「いやぁぁぁああああああああああッッッ!!!」

 

「ーーーーって何で篠崎くんが逃げ出すんですか!?」

「ちょっ、チヒロ!?」

「おい、どこいくんだよチヒロ!」

 

通信端末を取り出す。

 

「ーーーーミウラァァァァァああああっ! 今すぐ来いぃぃぃいいいいっ!」

『ひっ……せ、せんせい……? あの、ボク、予選が……』

「じゃあ俺が行くッ! 今何処だ!」

『あ、えっと……!』

 

ミウラちゃんに告げられた場所に向かって全力で駆け出した。

 




チヒロは実はおっぱいよりお尻派だった。


おまけ
《絶対に勝てない・敵にしたくないと思う相手》

篠崎チヒロ:なのはさん(色んな意味で)

高町なのは:チヒロくん(色んな意味で)

ジーク:チヒロとヴィクター

ヴィクター:キレたジーク

デコ助:篠崎くんの妹(即答)

委員長:篠崎くんの妹さん(即答)

後輩ちゃん:先輩の妹(即答)


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三十九話

これは三十九話ですが、全体の話数自体はいつの間にか40話。


「すー…………はぁー…………ふぅぅぅぅぅ…………!」

「せ、せんせっ……! ボク、試合終わったばっかりで……汗かいてっ…………!」

 

ミウラちゃんのいる試合会場に着くとすでに試合は終わっていて控え室にいると連絡があった。

ダッシュで向かってミウラちゃんを捕獲し、今にいたる。

 

「しっかしいきなり来たときは驚いたぜ、チヒロ」

 

そうそう、何かヴィータさんもいた。

ミウラちゃんのセコンドらしい。

 

「色々あったんです。……色々」

「そ、そうか」

 

うん……忘れよう。

それより今はもっと気になることがある。

 

「そちらのムキムキガチムチメンはいったい誰ですか?」

「あ? あぁ、コイツか?」

 

ヴィータさんが褐色の肌でいかにもソッチ系ですみたいな男の人を見やる。

 

「……自己紹介がまだだったな。俺はザフィーラだ」

「篠崎チヒロっす。よろしくお願いします。……男の犬耳はウケませんよ?」

「……犬ではなく狼だ」

 

一緒じゃね?

 

「ヴィータさんのペットか何かですか?」

「……違う」

「あぁ、ヴィータさん“が”ペットなんですね」

「お前バカじゃねえの?」

 

じゃあ何だというのか。

 

「……ところで何してるんだ?」

 

わんわんお(ザフィーラさん)がそう聞いてくる。

何ってそりゃあ……ねえ?

 

「ミウラちゃんの匂い嗅いでます」

「……い、いや、それは分かる。なぜ匂いを嗅いでるのだ?」

「え?」

「……む?」

「やめとけザフィーラ。こいつは別の次元に生きてるんだ」

 

ふぅ……落ち着いた。

ミウラちゃんを解放する。

 

「あっ……」

 

ゆっくりとヴィータさんの背後に回る。

そして……

 

「ぎゅー」

「うわっ!? チヒロ!? お前何して……っ!?」

「あ、ヴィータさんも結構いい匂いですね」

「うがぁぁぁぁぁあああああッ!?」

 

ちょっと!

ジタバタしないでくださいよ。

 

「離せっ! はーなーせーっ!」

「落ち着いてくださいヴィータさん! 大人でしょ!?」

「お前頭おかしいんじゃないのか!? おい、ミウラ! 助けろっ!」

 

ヴィータさんに助けを求められて、寂しそうな顔をしていたミウラちゃんが寄ってくる。

そしてヴィータさんに言った。

 

 

「あの……そんなに悪くないですよ……?」

 

 

「ミウラ!?」

「ミウラちゃんもこう言ってることだし……ね?」

「やめろぉぉぉぉぉおおおおおおッ!!」

 

もう遅いッ!

脱出不可能よッ!

 

「いいから離せよッ!」

 

だが断る!

さらに抱きつきを強めてやるッ! 倍プッシュだ!

 

「だぁぁぁぁぁぁぁああああああっ! 離しやがれぇぇええっ!」

「いいなぁ……ヴィータさん」

「ミウラ! お前本気か!?」

「……うむ。うらやましい」

 

ファッ!?

 

「……ザフィーラ…………お前……本気か………………?」

「……冗談だ」

 

鳥肌たったわ。

 




おまけ
《チヒロの妹に関するエピソード》

【委員長】
※インタビューしようとしたが「篠崎チヒロの妹について……」と言ったところで逃げられてしまった。

【デコ助】
※インタビューしようとしたが吐瀉物を吐き散らし、泡を吹いて倒れてしまった。

【後輩ちゃん】
※インタビューしようとしたが錯乱し、鞄から取り出した包丁を振り回し始めたので危険を感じ中断せざるを得なくなった。



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四十話

まさかまさかの迂回ルート突入(笑)
デコ助VS番長の試合が開会式当日だったのか別日だったのか記憶が曖昧だったため別日にすることにしました!
……いいよね?

《40話(本当は41話だけど)記念! チヒロの妹に関するインタビュー》

【篠崎チヒロからのタレコミ】
・中学二年生。両親と暮らしている。
・昔からお兄ちゃん子で、今でも会うと「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と後ろをついてくる。
・最近くまちゃんのプリントぱんつを買ってあげたら顔を真っ赤にしながら「あ……ありがと…………!」って言われた。
・常々将来を心配され、「お嫁さんは私が見つけてあげるから!」と言われている。
・可愛い。とにかく可愛い。兄の贔屓目なしで可愛い。



“亀裂”というものをご存じだろうか?

……まぁ、知らないわけないよな。

 

それ(・・)がある場所によっては名前が変わる。

 

地面なら『地割れ』、グラスなら『ひび割れ』、恋人間なら『破局』。

その他にも色々名称はある。

 

じゃあ、ここで問題。

 

「……何だよコレ?」

 

空中にある“亀裂”とは何でしょうか?

俺には分からない。

 

「……亀裂……だよな?」

 

インターミドル会場からの帰宅中、変なものを見つけた。それがこの宙に浮く“亀裂”だ。

どうしよう……間違いなく面倒事だよな。

何かの大事件に関わってるよぉ……これ。

 

「ここはスルー……というのが今までの俺。しかし俺は常に進化し続けているのだ」

 

というわけでなのはさんに連絡しよーっと♪

端末を出してコールを……。

 

「ん……?」

 

と、背中を何者かに引っ張られる。

振り向くがそこには誰もいない。

 

「何だ……あ」

 

わかった。

吸われてるんだ、あの亀裂に。

 

「あー……経験則でわかる。これ抵抗しても無駄なやつだ」

 

ため息を吐くのとほぼ同時に亀裂の吸引力が強くなった。

あ、もう駄目だ。

 

吸い込まれーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「ハッ!」

 

気が付くと知らない場所にいた。

住宅街みたいだが……どこだここ?

ミッドじゃないぞ。

 

「……ん?」

 

周りを見回しているとあるものが目に入る。

表札だ。

 

「……漢字?」

 

『山田』と書いてある。

ってことは……ここ日本か?

どういうことなの。

 

「ふむ……」

 

整理しようか。

散歩してたら変な亀裂を見つけて、吸い込まれて、知らない場所(たぶん日本のどこか)にいた。

駄目だ、ぜんぜん分からない。

 

「とりあえず……歩くか」

 

今は夜みたいだが……歩けば誰かしかには会えるだろ。

……会えるよね?

 

「…………さっぶ」

 

今って夏のはずだよな?

 

 

 

 

 

 

さて、あれから歩き回ってみたけれど誰にも会えていない。

それどころかいつも側にいるはずの金髪幼女までいなくなっていた。

 

「さすがに不安になってきた……」

 

思わず駆け足になる。

 

「寒いしここがどこだか分かんないし……最悪だ……!」

 

この際誰でも……例えハラオウンさんでもいい。ごめん嘘、それだけはない。

ハラオウンさん以外なら誰でもいいから助けーーーー

 

「わっ……!」

「あっ……!」

 

曲がり角を曲がろうとしたら何者かにぶつかってしまった。

俺はよろめいた程度だったが、相手は尻餅をついたようだ。

 

「ーーーーっと、悪い! 大丈、夫……か…………」

「…………」

 

ぶつかった相手は小学生くらいの女の子だ。

何で夜に小学生が、とは思ったが……それよりも気になったことがあった。

それはーーーー

 

 

 

「……なのは、さん?」

 

 

黒いバリアジャケットのようなものを着たロリロリなのはさんがそこにいた。

 

 




というわけで、GOD編突入。

第四十話本編(おまけ)
《40話(本当は41話だけど)記念! ファースト・コンタクト ※後輩ちゃん視点》

「貴女が……あの(・・)『後輩』さんですか……」

それは私が移動教室のときだった。
次は理科の授業で、上の階に実験室があるために階段へ向かい数段登ったところで声をかけられた。

「……誰ですか、あなたは?」

階段の最上段で腰に手を当てて立っている声の主に聞く。
スカートからはくまのプリントぱんつが覗いていた。ダサい。

「……初めまして、篠崎チヒロの妹です」
「……先輩の……妹?」

言われてみると確かに似ているかも。
顔もそうだけど、特に彼女の纏う雰囲気が。
女の私でもドキリとするような……何て言うんだろう、魔性の魅力というか……。

「ふぅん……」

先輩の妹を名乗る彼女は私を品定めするかのように全身をくまなくじっくりジロジロ穴が開きそうな程見る。
そしてこう言った。


「ーーーー駄目ね。あなたじゃあ、兄様(にいさま)には相応しくない」


「……あぁ……ッ!?」

何を言っているんだ、このオンナは?
私が?
先輩に?
相応しくない?
バカカコイツハ?

「ーーーー失せなさい。今すぐ階段を下りて」
「あなたにそんなこと言われる筋合いはないよねぇ……?」

それに移動教室なんだけどなぁ……なんて思いながらペンケースから愛用の包丁を取り出す。
先輩の妹だか何だか知らないけど、先輩と私の間を邪魔する奴は【自主規制】してやる。

「ふん、そんな玩具(包丁)で何をする気?」
「……馬鹿な女を【自主規制】するの」
「……やれやれ、馬鹿はどっちかな」
「お前だッ!」

【自主規制】してやるッ!

「……ハァ。優しい兄様のことだからきっとこの人が居なくなったら気にするんだろうなぁ……。だから……兄様に免じてもう一度だけ言うーーーー」

階段の最上段にいるゴミクズを【自主規制】するために、私は自分がいる段の一つ上の段へ足を掛けて、そしてーーーー


「ーーーー消えろ。三度目は無い」


ーーーー階段を二段降りていた。
……えっ?

「えっ!? なん……ッ!?」

訳がわからない。
嘲笑うかのような表情で私を見る先輩の妹を名乗る女。こいつが何かしたんだ!

「……どうしたの? 何をそんなに……怯えているの?」

頭のなかがぐちゃぐちゃする。目の前にいる相手(先輩の妹)への恐怖に心が支配され、呼吸が乱れる。息苦しい。

「うわぁぁぁあああああッ!!!」

頭がパンクしそうになりーーーー気が付けば私は逃げ出していた。


























「読者……きさまっ! 見ているなッ!」







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四十一話

「……なるほど」

 

尻餅をついた状態のまま、黒ロリなのはさんは呟いた。

何が“なるほど”なの?

 

「曲がり角で異性とぶつかる……それはこの世界における、恋に落ちる男女の典型的な出逢い方という私の中の情報は正しいようですね」

「……はぁ?」

 

何言ってんの、この人?

 

「臀部から伝わる、この涙が出るほどの衝撃…………これが、恋」

「んな訳ねえだろ」

 

単純に尻打っただけの痛みだろ。

 

「“恋”とは気持ち悪いものなのですね」

「ちげーから。それ尻打って気分悪くなってるだけだから」

 

本当に何なの?

 

「で……これは何の冗談ですか、なのはさん」

「む……今、ナノハと言いましたか?」

 

は?

 

「ナノハとはどういう関係ですか?」

「えっ……うーん…………ソウルメイト?」

「なるほど……つまり私の恋敵、と」

「ごめん、意味わかんない」

 

というか……。

 

「なのはさんじゃないの?」

「……これは失念していました。まだ名乗っていませんでしたね」

 

黒ロリなのはさんは立ち上がり、スカートの端を摘まむと優雅にお辞儀をした。

 

「初めまして、私はシュテル・ザ・デストラクター。愛情を込めて“ハニー”とお呼びください、ダーリン」

「お前イカれてるのか?」

 

 

 

 

 

 

「それで、ここはどこなんだ?」

「地球の日本、そこにある海鳴市という場所です」

 

結局、あてのない俺にはハニーに頼る以外の選択がなく共に行動することになった。

 

「亀裂がどうのとか言っていましたが…………ダーリンは何処から来たんですか?」

「愛してるよ、ハニー」

「…………きゃん♡」

 

ハニーは頬に手を当てて無表情のまま照れる。器用だな。

面倒臭くなったらこれを言えばいい、というのをこの数分で学んだ。

 

「はぁ……」

「結婚しますか?」

「頼むから脈絡ある会話をしてくれよ、ハニー……」

「……きゃん♡」

 

もうヤダこいつ。

それにしても……。

 

「……なぁハニー、おかしくないか? あまりにも人の気配がしない」

 

さっきからずっと歩き続けているが人っ子一人いない。

 

「あぁ、それは結界が張られていますからね。当然ですよ」

「は?」

 

結界?

 

「……誰が?」

「管理局……ですかね」

「………………………………何で?」

「私たちを止めるため?」

 

止めるため?

たち(・・)

 

 

「ーーーーそこの人たち、待ってください!」

 

 

新たな乱入者が来たのは、俺が混乱の渦中にいる時だった。

その声は空から聞こえてくる。

 

「……また来ましたか、ナノハ」

「シュテルちゃん! ……と、知らないお兄さん……?」

 

声の方を向く。

そこには……。

 

「あー……もうちょっとで見えるんだけどなぁ……」

「見え……? …………に、にゃぁぁあああああああっ!?」

 

白いバリアジャケットを来た……これまたなのはさんに似た少女が浮いていた。

 

「むっ、浮気は許しませんよダーリン。ナノハも誘惑しないでください」

「し、してないよぅ!」

 

しまらねぇなぁ……。

白ロリなのはさんはゆっくりと地面に下りてくる。

 

 

「ーーーー時空管理局嘱託魔導師、高町なのはですっ! 今度こそ、お話聞かせてもらうよ! シュテルちゃん!」

「お断りします」

「…………えっ? あれ、なのはさん本人?」

 

何でロリになってるんだ?

 




《ファースト・コンタクト ※デコ助視点》

それは私が友人の家に行く日のことです。
篠崎くんに振られ、正直落ち込んでいました。
そんな私を見かねてか友人が「遊ぼう」と言ってきたのです。

「気をつかってくれているんですよね」

……ありがたいです。

「……ん?」

その時でした。
空が突然暗くなったのです。
何かと思って上を見上げたら、そこには………………。
















「ーーーーロードローラーだッ!無駄無駄無駄無駄 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!」





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四十二話

星の輝く綺麗な夜空に、それよりも輝く光が飛び交っている。

あの後、ハニーとロリロリなのはさんが戦闘をおっぱじめた。

 

「あー……空が綺麗ダナー……」

 

そして俺は絶賛現実逃避中。

おうち帰りたい。

 

「流れ弾飛んでこないよな……?」

 

もしかして逃げるべき?

そーっと……。

 

「ーーーーお兄さん、そこで待っててください!」

 

速攻でロリロリなのはさんにバレた。

 

「ダーリン、大丈夫です。すぐにこのクソロリ倒しますから」

「なのはさん、待ってるんでそのクソロリぶちのめしてください!」

「えっ!? えっ!?」

 

なのはさん は こんらん している !

 

「なるほどツンデレですか。さすがダーリン次元一可愛いです」

「殺せッ! 無力化とか甘っちょろいこと言ってないで殺してしまえなのはさんッ!」

「……ね? 私のダーリンは可愛いでしょう? 私がナノハばかりに構っているから嫉妬しているんですよ」

「ーーーー俺が殺る」

 

 

「え、えぇと…………シュテルちゃん、ごめんね……?」

 

 

「……はい?」

 

いつの間にか、なのはさんの前には巨大な光の塊があった。

何だアレ?

 

「魔力収束……!? ダーリンとラブラブしてる最中にするなんて汚いですよ……!」

「ラブラブなんてしてねぇ!」

 

適当なことばっか言うな!

 

「本当にごめんね……! スターライトーーーー」

 

……あ。

アレ知ってるわ。管理局見学行ったときにやってたヤツだ。

さらば、ハニー。ご愁傷さま。

 

そしてーーーー。

 

 

「ーーーーブレイカーッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何で俺がこいつを背負わなきゃいけないわけ?」

「ご、ごめんなさい……!」

 

ロリなのはさんの破壊光線で気絶したハニーをなぜか俺が背負っている。

まぁ……重くないからいいけど。

 

「……で、これからどうするんすか?」

「にゃっ!? え、えーっとねぇ……」

 

“にゃっ”……?

 

「もうすぐアースラが来てくれると思うんですけど……」

「阿修羅?」

「アースラです!」

 

何それ?

 

「管理局の次元航行艦です」

 

へぇ。

管理局のねぇ……ん?

 

「俺も行くんすか?」

「え……はい。そう、ですけど……」

 

えぇぇ……。

 

「……俺、迷っただけなんですけど」

「……それ、どういうことですか?」

「………………え……?」

 

ーーーー俺の身に起きたことの経緯を最初から話すことになった。

 

 

 

 

 

 

「ーーーーって訳なんです」

「なるほど……」

 

何が?

 

「実は……似たような状況下にある人がいるんです」

「えっ……本当ですか!?」

「はい。既に保護されていて……今はアースラにいます」

 

マジか……。

他にもいたなんて。

 

「教えてください、いったいこれって……」

「はい、ちゃんと説明します。でもまずはアースラに行きましょう」

 

落ち着いた環境で全員まとめてってことか。

 

「分かりました」

「ありがとうございます」

 

まぁ……自分のことだしな。

 

 

 

 

 

 

「てめぇ起きてるだろ」

「ダーリンhshs」

 

 

 




おまけ
《セカンド・コンタクト ※デコ助視点》

それは私が「タンクローリーだッ! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!」


※て、手抜きじゃないよ……?




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四十三話

今回は読者様方に言われ続けたことをネタとして書きました。

もう一度言います。今回は色んな意味でネタ回です。
ネが申す回ではなく、ネタ回です。

ネタ回なんです。










意外と早く終わったDIもうとの天下(笑)





《ファースト・コンタクト委員長編……だと思った? 残念! 最終回『遥かなる旅路、さらばデコ助よ』(俺たちの戦いはこれからだ) ※委員長視点》

 

「はぁ……はぁ……勝った……の?」

「ま、まさか……この私が……この私が負けるなんて……!」

 

やっと……やっと篠崎くんの妹さんに勝てました……!

これで……!

 

「私を……認めてくれますよね?」

「えっ……デコ助さんの敵討ちじゃ…………あ、いや何でもないです 」

 

何でしょうか?

 

「……まぁ、いいでしょう。貴女を認めましょう、義姉様(ねえさま)

 

……やった!

これで篠崎くんと……!

 

 

「ーーーーただし、『私は』だがなァ!」

 

 

「ど、どういうことですか……っ!?」

「フッ……フハハハハッ! 兄様を手に入れるための障害が私だけだといつ言ったッ!」

 

なっ……!?

 

「あの人に掛かればあなたなんて……ッ!」

 

 

「ーーーーそこまでよぉ~。ちょっと喋りすぎじゃないかしらぁ~?」

 

 

突然、やけに間延びした声が響く。

 

「なっ……お、お母様……!? なぜっ……!?」

「あなたが不甲斐ないからでしょぉ~?」

 

篠崎くんの妹さんが顔を真っ青にして見ているのは、朗らかな笑みを浮かべた女性だった。

お母様って……。

 

「篠崎くんのお母様……ですか?」

「うふふ~、そうよぉ~」

 

この人が……!

 

「もぉ~……あなたはお小遣い減らしちゃうんだからぁ~」

「なっ、何ですと!? 私、お小遣い月に300円ですよ!? これ以上どう減らすと……」

二月(ふたつき)でぇ~……150円よぉ~」

「そんなご無体なっ!?」

 

えっ……えっと……?

 

「ん~? あらあらぁ~……ごめんなさいねぇ~?」

「い、いえ……」

 

ま、マイペースな人だなぁ……。

 

「あなたが、委員長ちゃんねぇ~? 息子からよく聞いてるわぁ~」

「あ、ど、どうも。初めまして!」

「はい、初めましてぇ~。それでぇ、あなたはうちのチヒロが欲しいのかしらぁ~……?」

 

ち、直球!

ド直球すぎるよぉ!

 

「ほ、欲しいと言うか……むしろ貰って欲しいと言いますか……」

「なるほどぉ~……」

 

あうぅ……恥ずかしい……!

きっと私、顔真っ赤だよぉ……!

 

「ならぁ~……あげちゃう~」

「えっ!?」

「なっ、お母様ッ!?」

 

 

「ーーーーってぇ~、言ってあげたいけどぉ~……」

 

 

そこで篠崎くんのお母様はさらに笑みを深めた。

その笑みには神と見紛うほどの……ううん、神すら軽く凌駕するであろうほどの美しさがあった。

 

「あれでも私の大切なたった一人の家族だからぁ~……」

「お母様、私とパパンは!? 私とパパンを忘れてないですか!?」

「簡単に“あげちゃう”って言うのはぁ~、何か違うと思うのよねぇ~……」

「スルーされたっ!?」

 

つまり……。

 

「どうしろと……?」

「簡単よぉ~……ーーーー私を倒しなさい。そうすれば認めてあげるわ」

 

篠崎くんのお母様を中心に鋭い風が吹き荒れたように感じた。

これはーーーー殺気!?

 

「む、無理です、義姉様! あの人は言うなれば強制負けイベントの敵キャラ……! 攻撃は悲しみ背負うことで習得できる奥義でも回避は不可、逆にとっても!ラッキーな攻撃ですら当たりません……」

 

なん……だと……!?

 

「例え攻撃が当たったとして、それが天地を乖離させるほどの一撃でもノーダメージ……。その上に真実二到達スルコトハ決シテナイ能力だろうと何だろうとあらゆる能力を無効化する……そんなチートの安売りセールのような……いえ、チートの無料配布所のような存在なんです……お母様は!」

 

「ふふふ~……かかってきなさいぃ~」

 

本当は逃げ出したい。

でも、もう後には引けない……ううん、絶対に引かないっ!

 

「行きます……!」

「義姉様!」

「ねぇ……義妹(いもうと)ちゃん。私ね……」

 

篠崎くん……

 

「この戦いが終わったら、結婚するんだ……」

「なぜ自らフラグを!?」

 

今、会いに行きます(愛に生きます)

この人を……お義母様(かあさま)を乗り越えてーーーー!

 

「ハァァァァァァァァァッッ!!!」

「うふふふふ~……!」

 

 

私の戦いは……これからだっ!

 

 

 

THE END………………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デコ助:別に私、死んでませんからね!?

 

THE MOTHER(御母様):うふふふふ~……!

 

デコ助:ハッ!?

 

 

 

 

 





おまけ
《四十三話》

「この中です」

あのあと、ロリなのはさんと共にアースラとやらに回収され、とある部屋の前に来ていた。
ついでにハニーも。

「……そういえば、まだお名前聞いてませんでしたね」
「あぁ、そうでしたっけ? 俺、篠崎チヒロっス」
「私は高町なのは!」

名前は知ってる。

「なのはって呼んでください!」
「なのはさんで」
「むっ……!」

……あんだよ。

「………………なのはって呼んでください」
「なのはさん」
「……なのは!」
「なのはさん」

半ば言い争いのようになる。

「ーーーーマイワイフ」

何か混ざってきた。
具体的には俺の背中から。

「禿げろ」
「マイワイフ」
「禿げろ」
「し、シュテルちゃん!? 起きてたの!?」

気付いてなかったの……?

「はい、少し前から」

だいぶ前の間違いだろ。

「で、何を言い争っているんですか?」
「お前まず降りろよ」
「うん……あのね、篠崎さんがね……」
「二人してスルーかよ」

息ぴったりだな。
ていうかなのはさんに『篠崎さん』とか言われると何か違和感があって気持ち悪い。

「……なるほど。結論を言いましょう。ナノハが悪いです」
「な、何で!?」

ほほぉ……たまにはいいこと言うじゃあねえか。
見直したぜ、マイハニー。

「私の旦那様を誘惑しないでください」
「見損なったわ。何だよそれ、意味わかんないんだけど」
「……おや? ナノハがダーリンを誘惑していたのでは?」
「にゃっ!? し、してないよぉ!」

……また……“にゃっ”……って。
口癖なのか……?

「とにかく! 私のことは“なのは”って呼んでください! 敬語もナシ!」
「じゃあパンツ見せてください」
「……………………えっ?」

ハニー……視界の端でスカート捲り上げるな。
やめろ。……なるほど赤か。

「嫌でしょ? だから嫌です」
「い、意味がわからないですよ!」

はぁ……わかんないのか?

「パンツ見られたいんですか?」
「い、嫌ですよ!」
「……え、何で?」
「何でって……!」

……ん?

「確かにパンツの下は隠すべきですけど……それを隠すパンツは別に見られてもいいんじゃないですか?」
「し、下って……!」
「違いますか? 俺、間違ってます?」
「間違ってますよ!」

ん~……。

「でもほら、“見せパン”なんてものもあるくらいですし……そもそも装甲レベルで言えば水着と変わらなくないですか?」
「あ、れ……? 言われてみると……」
「水着とパンツ、名称と材質以外変わらないのでは?」
「そ、そうかも……!」

なら、見せてくれてもいいんじゃ……?

「おっと、そこまでです。ナノハ……何度も言いますが、ダーリンを誘惑しないでください。ダーリンもパンツが見たいなら私のを見せますから」
「失せろハニー」
「きゃん♡」

いい所だったのに……!

「ハッ!? 私はいったい何を……!?」

ちっ。

「部屋に入ろうとしていたんですよ、ナノハ」
「そ、そうだっけ……?」
「そうですよ」

……次の機会を待つか。





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四十四話


多少……というか、基本は原作沿いだけどオリジナル展開みたいかもです。
もうGODがうろ覚えなので。ごめんなさい。

GOD分かんない人いるかなぁ……。
説明すべきかな……やっぱり。



 

「先輩!?」

「チヒロさん!?」

『あ、本当だ!』

 

部屋に入ると、既に十数人ほどの人たちがいた。

さらに俺を見てそのうち三人ほどが声を上げた。

ヴィヴィオちゃんがいる。何でだ? あとの二人は知らん。

そして……。

 

「あぁ、ご無事でしたか、チヒロさんっ!」

「うっ……」

 

ストラトスちゃんが駆け寄ってきて、抱きついてくる。

デコ助のせいでなんか気まずい……。

 

「チヒロさん……?」

「ーーーーそこまでです、この泥棒キャット」

 

はぁぁぁぁぁ…………。

 

「ダーリンどうしました? そろそろあの子の妹か弟を作りますか?」

「もう死ねよ……」

 

まず第一子すら存在してねぇだろ……。

あの子って誰だよ。

 

「……チヒロさん、この方は……?」

「知らない。知りたくない」

 

関わり合いになりたくない。

 

「ーーーーはいはい、再会を祝うのもいいのだけれど私たちを忘れないでね」

 

緑色の髪をした女性が手を叩いて注目を集める。

あー……きっとこの艦のお偉いさんなんだろうなー。

 

「初めまして、リンディ・ハラオウンです」

 

 

ーーーーそして、現状の説明が始まった。

 

……ん?

『ハラオウン』……?

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどなぁ……」

 

あの後、リンディさん(ハラオウンさん(自称・母親のキチ〇イ)と被るのでそう呼ぶことにした)とフローリアンとかいう双子の姉妹から説明を受けた。

……難しい話はよくわかんなかったけど、要はフローリアン姉妹の使った装置が悪いとか。

で、今は“U-D”だか何だかというラスボス戦前の作戦会議だったらしい。

 

「またはた迷惑なことを……」

 

まぁ、終わったことをぐちくち言ってもしょうがないか。

切り替え切り替え。

 

「それじゃ、今から少し自由時間にします。各々話したいこともあるでしょう」

 

リンディさんがそう言って、みんな一時解散。

当然ヴィヴィオちゃんとストラトスちゃんが近寄ってくる。

 

「……大変なことになりましたね」

「だなぁ」

 

大変というか面倒くさい?

 

「大丈夫です。チヒロさんは私が守ります」

「あ、あぁ……そ、そうだな」

「……あ、れ…………?」

 

……気まずい。超気まずい。

 

「そうですね! 私たちで先輩を守ります!」

「おぉ! 頼むぞ!」

 

ヴィヴィオちゃんの頭を撫でてやる。

 

「えへへ……先輩ってお兄ちゃんみたいですよね」

「え? お兄ちゃんいるの?」

「あ、いえ、いませんけど……いたらこんな感じかなぁ、って」

 

そっか。

…………あー。

 

「その……お前も……頑張れよ、ストラトスちゃん」

「ーーーーえっ!?」

 

ストラトスちゃんの頭を撫でる。

手つきがぎこちないのは……こいつとの今までを考えると仕方ないよな。

 

「……まさか……偽者……?」

 

 

ーーーーアイアンクローかましてやった。

 

 



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四十五話


眠れないのでちょっと早めに投稿。



おまけ 1
《簡単に分かるおまけキャラ(と少しだけ本編キャラ)パワー表~もしもこの世界がゲームだったら~》

委員長:勇者
後輩ちゃん:剣士
デコ助:馬車


何か……歯の人:ひのきのぼう


篠崎チヒロ:小ボス
ヴィクトーリア・ダールグリュン:中ボス

???:四天王
???:四天王
???:四天王
???:四天王

パパン:???

DIもうと:ラスボス
???:DLCボス
???:裏ボス
???:???


THE MOTHER(御母様):このゲームの制作会社の社長





とある双子の姉妹の機械が原因で過去にやって来てしまった俺。

 

迫り来る闇、U-D。

 

それに立ち向かうは管理局屈指の魔導師たち。

 

果たして……世界の命運は!?

 

 

 

「ーーーーて感じに理解してるんだけどそれであってる?」

「私もそんな感じです」

「え……えと、そこまでドラマチックではないですけど……私もです」

 

とりあえずヴィヴィオちゃんたちと現状の再確認。

 

「おぉ、合ってたか。よかったよかった」

「先輩は寝てましたもんね。さっきの説明のとき」

 

記憶にございません。

 

 

「ーーーーチヒロさん!」

 

 

ヴィヴィオちゃんたちと話していると、知らんヤツから声をかけられた。その傍らには髪の長い女もいる。

思わずストラトスちゃんの肩を掴んで盾のように構える。

知らないヤツ嫌い。

 

「……誰だお前ら」

「えっ!? 俺ですよ! トーマです!」

『わたしは? わたしは?』

 

俺に上条さんな知り合いはいない。

そして電波(飛ばしてくる)女もな。

 

「知らんわお前らなんぞ!」

「えぇ!?」

『……ねぇ、トーマ。もしかして先生、わたしたちより過去から来たのかも』

 

あん?

お前らより過去から?

 

「というか“先生”ってなに?」

「……え!? 先輩、念話聞こえるんですか!?」

 

念話?

なにそれ?

 

「簡単に言うと、魔力を使って声を出さずに意思疏通をする魔法です」

「説明ご苦労ストラトスちゃん。でも俺魔力ないよ?」

「……もしかすると、何らかのレアスキルかもしれませんね」

「先輩がレアスキル保持者……?」

 

へぇ。どうでもいいけど。

 

「で、結局お前ら誰なんだ?」

「あ、えっと、俺はトーマ・アヴェニールです!」

『わたしはリリィ・シュトロゼックです』

 

アヴェニールとシュトロゼックね。

 

「俺は……いいよな。知ってるみたいだし」

「はい! リリィが未来でお世話になってます」

 

……未来でお世話になってるってどういうこと?

 

「あー……ちなみにどうお世話になってるんだ?」

『わたしの先生です!』

 

さっきも言ってたな、それ。

 

「先生……って、何の?」

「……あー……何て言うか……リリィは少し特殊な環境で育ったと言いますか……。世の中や一般常識について疎いと言いますか……」

 

つまり?

 

「つまり世情と一般常識の先生です」

 

ふぅん。

よくわからん。

 

「な、何だろ……それ先輩が一番やっちゃいけないやつじゃないかな……?」

「……あー…………やっぱり……ヴィヴィオは分かる?」

 

……今のはムカッと来た。

よし、ならば未来の俺がどれほど優秀なのか試してやろう。

 

「おいシュトロゼック! 問題!」

『ででん!』

 

……効果音とは、やるじゃないか。

 

「朝、人に会ったらまず何をする?」

『顔を見て嘲笑う!』

 

ほぅ……!

 

「人を褒めたら?」

『その後落とす!』

「年下と遊ぼう! どんな遊びでも?」

『情け容赦なく全力で!』

「右の頬を叩かれたら?」

『ないコトないコト言い触らして世間的に抹殺する!』

「友達がカレーを食べてたら?」

『う〇こ!』

 

素晴らしい……!

ディ・モールト、ディ・モールト素晴らしい!

 

「素晴らしいぞシュトロゼック……いや、リリィ!」

『一生ついていきます、先生!』

 

 

「……ね?」

「苦労してるんだね……」

 

 

 




おまけ 2
《トーマとリリィ~お風呂でばったり~ ※下ネタ注意》

・チヒロ教育前
「なっ……り、リリィ……ッ!? ご、ごめ……ッ!?」
『……トーマ? 何であせってるの?』

・チヒロ教育後
「なっ……り、リリィ……ッ!? ご、ごめ……ッ!?」
『……プッww ちっさww』



おまけ 3
《1日遅れたけど七夕特別編! みんなの短冊》

◎篠崎チヒロ
『面倒事とは無縁の平穏な生活を送れますように。あと新しい玩具ください』

◎高町ヴィヴィオ
『みんなが楽しく毎日を過ごせますように』

◎アインハルト・ストラトス
『大切な人達を守れるくらい強くなれますように』

◎コロナ・ティミル
『出番ください』

◎八重歯
『先輩が私を人間として認識してくれますように』

◎ジークリンデ・エレミア
『恋愛が成就しますように』

◎ハリー・トライベッカ
『隣人がまともなヤツに更正しますように』

◎ヴィクトーリア・ダールグリュン
『不慮の事故で織姫と彦星が会えませんように』


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四十六話


おまけ
《アベンジャーズやっと見れたよやったね記念・MARVEL一発ネタ》

チヒロ:俺ならソーのハンマー(ムジョルニア)持ち上げられると思うんだ。
ほら……あの……アレだよアレ。あの人……歯の…………なんか……アレ……女の子:その自信はどこから来るんですか!?



現在、俺を除いた未来組とこの時代のロリ組で対悪の親玉戦の作戦会議中。

非戦闘員の僕は作戦会議には参加せず、食堂でたまたま持っていた携帯ゲームをしている。

 

「いやぁ……インターミドル開会式が始まるまでの暇潰しに持ってきたのが役に立つとはな」

 

あぁ、充電器持ってくればよかった。

まだ大丈夫だけど……いつまで待つのかも分からないしなぁ。

全部の問題が片付くまで充電持つかな……。

 

 

「ーーーーねーねー、なにしてるのー?」

 

 

「あん?」

 

どこぞのキチ〇イと似てる顔をしたのが話かけてきた。

こいつ……確かハニーと一緒にいたガキンチョだよな?

 

「何って……ゲームだけど……」

「げーむ? ってなに?」

 

ゲーム知らんの?

 

「あー……やってるトコ見るか?」

「みる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほわぁー! カッコいいぞ!」

 

ガキンチョを膝にのせてゲームをプレイする。

 

「ずがーん! ばこーん!」

「おい、あんま暴れんなよ」

「あ、ごめん」

 

画面の中のキャラクターに合わせて動くガキンチョ。

何か頭の緩そうなヤツだな。

 

「……そういや名前聞いてなかったな。俺は篠崎チヒロ、お前は?」

「ん? ボクはレヴィ・ザ・スラッシャー! 強くてスゴくてカッコいいんだぞー!」

 

あ、やっぱり残念系なんだなコイツ。

 

「そうか、カッコいいのか。それはスゴいな」

「えっへん!」

 

うーむ……なるほど、これがアホ可愛いというやつか。

バカな子ほど可愛いとはよく聞くが……。

まぁ、何にせよ。

 

「よろしくな、レヴィ」

「よろしくー! ヒロヒロ!」

 

……あれ……?

何だろ、コイツどっかで…………?

 

「ーーーーあっ! ヒロヒロ! 負けちゃうよ!」

「あ? お、おう!」

 

偶然なのか必然なのか、レヴィの発した言葉に反応した俺は感じた違和感を頭のすみに追いやってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーぐぅぅぅぅ。

 

「ん?」

「……お腹すいた」

 

しばらくゲームをしていると唐突にレヴィの腹が鳴った。

 

「……言われてみると腹減ったな」

 

ゲームを中断し、レヴィを抱えて立ち上がる。

調理場を覗くが誰もいないようだった。

 

「ふむ……勝手に作っちゃまずいかねぇ?」

「んー? ヒロヒロは料理できるの?」

「ん? まぁ、一応」

 

凝ったものは作れないけど。

 

「ボクお腹すいたよぉ……」

「……作れと?」

「うん!」

 

……まぁいいけど。

 

「コイツに命令されて作ったということにすれば…………」

 

そうすれば全てコイツの責任だ。

俺はお咎めなしになるはず。

 

「めーれい? ボク、よく王様にめーれいされるよ?」

 

話が飛んだ。

“命令”という言葉から連想したことなんだろう。思ったことそのまま言っちゃう子なんだな、コイツ。

て言うか……。

 

「……王様って誰? 俺のこと?」

 

お前に命令したことないんだけど?

 

「王様は王様だよ?」

「いやいやいや、わかんねーよ」

「えーなんでー!?」

 

はぁ……もう面倒くさいからいいや。

冷蔵庫を漁る。何作ろうかなぁ……。

 

「うし、材料的にカレーにすっか! レヴィ、お前も手伝え」

「はーい!」

「あとリンディさんに何か言われたら全部その“王様”のせいにするぞ」

「わかったー!」

 

さぁ……腕がなるぜ。

 

見せて……否!

魅せてやろう、俺の食戟を!

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういやお前なんでいんの? 作戦会議は?」

「王様がね、『いても邪魔になるだけだからおそとで遊んでなさい』って」

 

要らん娘なのかなぁ……。

 

 




おまけ
《?????????》

どこかも分からない暗い場所。
ボロボロのくまの人形や錆びた自転車、いつのとも知れないような雑誌など様々なものが散乱している。

『ーーーー』

その中に、とても(ふる)い型のパソコンが一台あった。
大量の埃を被ったそれは当然ながら電源はついていなく、画面は真っ暗だ。

『ーーーーーーーーー』

それが今、ひとりでにーーーー

『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』

ーーーー起動した。


to be continued……


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四十七話

明日、私用で投稿できないので1日早めて投稿。
次回の更新は本来の投稿予定日である明日から数えて三日後の17日(金)になります。
申し訳ないです。


おまけ
《DIもうとのひ・み・つ》
とにかく写真写りが悪い。
ポーズは決まって両手でピースなのだが、シャッターの瞬間に必ずと言っていいほど瞬きをしてしまい、目が半開きになってしまう。








僕は言ったんだよ?
あれはあくまで『おまけ』だって。
なのにみんなが本編本編って……!

いいよ、やってやろうじゃないか(錯乱)

本編より本編してやる……ッ!
※タグに『作者ご乱心』を追加しました。




「どうだレヴィ、うまいか?」

「あぐあぐあぐっ……んぐ、おいしー! ヒロヒロ、これおいしーよ!」

 

そうかそうか。

それは良かった。さて、俺も食うかな。

 

「あんま急いで食うなよ。喉につまるぞ」

 

と、自分のカレーを準備しつつフラグを建ててみる。

 

「あぐあぐ、あーい……むぐっ!?」

「はい回収どーも」

 

カレーをテーブルに置き、レヴィを抱え上げて背中を叩く。

確か頭を体より下にするんだったよな。

 

「ぷへぁっ……ひ、ヒロヒロぉ……!」

「はいはい怖かったのな」

 

涙目でしがみついてくるレヴィの頭を撫でてやる。

なんか小さい頃の妹を思い出すなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーいい匂いがする~!」

 

ちょうどレヴィが三杯目のカレーを食べ始めた時だった。

作戦会議に行っていたやつらがわらわらと食堂に入ってきた。

終わったのか?

 

「先輩! これ何の匂いですか?」

「カレー。ちょっと前に作ったんだ」

「え……先輩が作ったんですか?」

「あぁ」

 

っと、そうだ。

 

「リンディさん、勝手に食材使ってごめんなさい」

「あら、いいのよ」

「むっ? ヒロヒロは悪くないよ! 王様がめーれいしたんだよ!」

「えっ!? 我は何も言っていないぞ!?」

 

あれが『王様』か。

 

「大丈夫よ、怒らないから。それより私にも食べさせてもらえるかしら?」

「あぁ、どうぞ。他の人たちもぜひ」

 

ヴィヴィオちゃんを除いた未来組から声があがる。

 

「チヒロさんの料理、美味しいんですよね」

「アインハルトさん食べたことあるんですか!?」

 

『う〇こ! 先生のう〇こだよ、トーマ!』

「お願いリリィもうやめて……ッ!」

 

よそってやるか。

 

「レヴィ、手伝え」

「あいあいさー!」

 

あとリリィ、貴様は覚えておけよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが」

「ボクたちが!」

「丹精込めて作った」

「カレーでーす!」

 

いやまぁ、作ったの俺なんだけどな。

 

「ちゃんと全員分あるのね」

「おかわりもありますよ」

「……け、けっこう作ったのね」

 

いやぁ、でかい鍋とキッチンに興奮して……つい。

食材も限界ギリギリまで使ったし。

てへぺろ。

 

「わぁ! おいしそうだね、フェイトちゃん!」

「そうだね、なのは」

 

……なんか………………今…………嫌な………………。

 

「ヒロヒロどうしたのー? 早く食べよーよ!」

「……お前まだ食うの?」

「うん!」

 

その細い体のどこに入るんだ……?

レヴィが俺の手を引っ張る。

その先はーーーー

 

「オリジナルー! となり座ってもいいー?」

「あっ、レヴィ。いいよ。……あと、私はフェイトだよ」

「わかったぞー、へいとー!」

「あ、あはは……」

 

 

アカン。

 

 

 

 

 

 

「……ダーリンが浮気してる!」

「お前とリリィだけ泥食わすぞ」

『な、なんでですか!?』

 




感想で嘘吐いてもうた。
未来のキチ〇イ組接触は次回でしたすいまそん(´・ω・`)



おまけ
《襲い来る、新たなる試練 ※委員長視点》




『私はあなたを認めない』



学校からの帰り道、そう記されたメールが届いた。
差出人は不明。いったい誰なんだろう?
いや、それよりも……

「『認めない』って……どういうこと?」

間違いメールなのか、それとも……。
そして、そんなふうにメールについての推測をしている時だった。

「ーーーー義姉様(ねえさま)ッ!」

後ろから大声を上げて篠崎くんの妹さんが走ってくる。
すごく焦ってるみたいだけど……どうしたんだろう?

「どうしたの? そんなに焦ーーーー」
「危ないッ!」
「ーーーーえっ?」

突然、横から異常なまでの熱気を感じる。
見てみるととても巨大な火の玉がこちら目掛けて飛来していた。
もう目と鼻の先だ。

「きゃ……ッ!?」

ダメっ!
避けられないーーーー!?





「ーーーー……(……ルド)』ッ!」





ハッ!?

「無事ですか、義姉様(ねえさま)
「あ、うん……大丈夫だよ」

どうやら篠崎くんの妹さんが助けてくれたようだ。

「よかった……!」
「ありがとう、助かったよ」

妹さんの頭を撫でてあげる。
気持ち良さそうに目を細めた。なんか猫みたい。

「それより今のは……?」
「あ、そうでした! 実は……」




「ーーーーあら、敵前でお話なんてずいぶん余裕そうじゃない?」



to be continued……



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四十八話

読者さんが教えてくれたんだけど、どうやら僕はとっくにご乱心していたらしいです(´・ω・`)

さきに言っておきましょう。
今回の話はあまりツッコむところはごさいません。
次に(次回ではありません)繋がるお話なので……ご容赦ください。




気まずい。

とにかく隣の席の人との空気が気まずい。

 

「あぐあぐ……ん~、おいしーぞー!」

 

俺の膝の上で能天気にうん……カレーを貪るコイツ(レヴィ)が羨ましい。

 

「あの……」

 

隣の席の人ーーーーハラオウンさんが話しかけてきた。

思わず身構えてしまう。

 

「……な、何ですか?」

「カレー……食べないんですか?」

 

実はさっき少しだけ喋った。

その時に気付いたのだが、どうもこの時代のこの人はまともらしい。

 

「あ、あぁ……食べます」

 

けれどやっぱりどうにも信用できない。

少しカマをかけてみるか。

 

「レヴィ」

「ん?」

「あーん」

「おー! ほい、あーん!」

 

わざと口の端にカレーが着くように食べる。

かつ、ハラオウンさんが気付くように……。

 

「あっ……」

 

食い付いた!

 

「ん? どうしました?」

「口……カレー、着いてますよ」

「え? 本当ですか?」

 

カレーが着いているのとは逆の場所を触る。

当然そこには何もついていない。

 

「あ、そっちじゃなくて……」

「あー……拭いてくれませんか?」

 

未来のあなたなら言わずともやるぞ。というか許可なく。

俺はあなたの「まともさ」を今1%信じることにした。だが、あと「100%」信じたい。

さぁ……俺を信じさせてみろッ!

 

「えっと……いい、ですけど」

 

困ったように、けれどどこか恥ずかしそうに拭いてくる。

この反応は……!

 

「……いける!」

「えっ……?」

 

 

 

 

 

 

 

「え、えと……その……あ、あーん……!」

「あーん」

 

いやぁ……!

未来で困らされている相手にこうしてもらうのは、相手を屈服した気分でいい気分だぜ……!

 

「あ、ハラオウンさん、ちょっと熱い」

「ご、ごめんなさい! ふー、ふー……」

 

ふははははははっ!

もはやハラオウンさんなど恐れるに足らずッ!

この時代で性格を改変……否、改善してやろうッ!

 

「あーん……これなら熱くないですか?」

「あむ……あ、らいじょぶれす」

 

ふっ……勝った。

やつ(ハラオウンさん)は未来、オレは過去。最初からやつに勝ち目はないのだ。

 

「ふー、ふー……」

 

ハラオウンさんが次の一口分を冷やしているのが視界の端に映る。

ククク……これが満足感か……!

 

「んー? ヒロヒロ、カレーついてるよ? ぺろっ」

「このクソガキッ! 正妻である私を差し置いてダーリンを舐めるなど万死に値するッ!」

「わわっ!? シュテるんどうしたのっ!?」

 

もう勝手にやってろ。

 

 

 

 

 

そうそう、改善と言えばもう1人。

とても気になっている人物がいる。

 

「でね、ユーノくん……」

「……なるほどね、なのは」

 

いったいどういうことだ……?

 

 




おまけ
《襲い来る、新たなる試練 ※委員長視点》

火球の飛んできた方角を見ると、同年代くらいのツインテールの女の子が立っていた。

「あなたは……!?」
「はぁ? 何よ、あんた、()()()()()()送ってきたくせに……アタシのこと知らないとは言わせないわよ!」
「メール……?」

いったい何のこと?

「……やっぱり」
「えっ? 何か知ってるの?」

篠崎くんの妹さんが何か知っているみたい。
小声で何かを伝えてくる……「逃げましょう」?

「ん? あんたーーーー」
「今ですッ!」
「えっ!? あっーーーー」

妹さんの合図で走り出す。
不意のことだったのか、ツインテールの女の子は反応が遅れた。

「まっ、待ちなさいーーーーッ!」
義姉様(ねえさま)、立ち止まらないでついてきてくださいッ!飛んでくる火球は私が叩き落としますッ!」

火球がいくつも飛来する中、私は妹さんの後を無我夢中で追った。

to be continued……

※ツインテはオリキャラです。


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四十九話

「……あの~」

 

思いきってなのはさんとあの人(・・・)に話しかけてみる。

 

「あ、篠崎さん」

「……どうも、なのはさん。カレーどうですか?」

 

まずは当たり障りのない感じで。

きっかけさえ作ればあとはあっちから来るはずだ。

……それにしても、やっぱりなのはさんの「篠崎さん」呼びは慣れないなぁ。

 

「あ、はい! とっても美味しいですよ!」

「そうですか」

「ーーーーなのは、この人って……」

 

来た!

 

「私が保護した人で、篠崎チヒロさんって言うの!」

「どうも、ご紹介に預かりました篠崎チヒロです」

「あ、どうも。ユーノ・スクライアです」

 

やはり……あの禍々しさがない。

……うーむ。

 

「あ、もしかして……なのはさんと付き合っーーーー」

「あーん……」

 

ハラオウンさん……大事なとこなんだから。

食べるけど。

 

「あむ……あ、ハラオウンさん、福神漬けも欲しいな」

「あ……はい、すぐに取ってきますね?」

 

ハラオウンさんがキッチンへの方と消えていく。

よし、これで邪魔するヤツはいなくなったな。

あ、そうだ。ついでに……。

 

「ーーーーおい、アヴェニール! お前、未来から来たってことは年下だよな? ちょっとコーラ買ってこいよ!」

「えぇっ!?」

「あ、隣町のな!」

 

隣町どころか、ここがどこなのかもよく分かってないけど。

 

「で、でも、俺、お金っ……!?」

「何とかしろ」

『あ、トーマ、私スプライトね!』

「リリィ!?」

 

よし。

 

「で、何でしたっけ?」

「に、にゃはは……」

「な、何て言うか……フリーダムな人だね……」

 

あなたには言われなくない。

 

「あ、そうそう。お二人は恋人か何かですか?」

「ブッ!?」

「ふぇ……?」

 

スクライアさんは吹き出し、なのはさんは頭の上に疑問符を浮かべる。

この反応は……違うみたいだな。

 

「い、いやっ……僕たちはそういうのじゃーーーー」

「ユーノくんはお友だちですよ?」

「ーーーーないん…………です…………」

 

あっ。

好きは好きなのね。

 

「あの……」

「ん?」

 

斜め後ろに座っていたヴィヴィオちゃんが話しかけてくる。

いったいどうしたのだろうか。

 

「何、ヴィヴィオちゃん?」

「なのはママとユーノさんの関係……気になるんですか?」

気になると言えば気になるな。

未来があんな感じだし。

 

「気にならないって言ったら嘘になる、かな」

「……そう、ですか」

 

そう言ってヴィヴィオちゃんは何かを考え込むような顔になった。

本当にどうしたんだ?

 

「ーーーーあの、福神漬け、持ってきました」

 

福神漬けの入った皿を手に持ちハラオウンさんが戻ってきた。

ふふ……俺は完全にフェイト・T・ハラオウンという女を克服し、屈服させたようだな。

 

「ありがとうございます。では食べさせて頂きましょうか……!」

「あ、はい」

 

勝利の福神漬けか……実に、実に美味いぞッ!

 

 

 

 

 

 

 

「なんや、面白い人やなぁ」

 

 

 




おまけ
《襲い来る、新たなる試練 ※委員長視点》

「どうやら逃げ切れたようですね……」

何とかツインテールの女の子から逃げ切ることができた。
本当に、いったい何が起こってるの……?

「あの人は……?」
「……兄様の幼馴染みです」

お、幼馴染み?
なんであの人はあんなに怒っていたのだろう……。

「……義姉様(ねえさま)、これを見てください」

妹ちゃんが何か差し出してくる。
通信端末?

「……メール?」
「はい」

内容は……な、なにこれっ!?



『あなたは篠崎チヒロに相応しくない。今すぐ手を引いて』



これ、私の名前が書いてある。
しかもこのメールアドレスは…………私のものだ。

「恐らくあの人にも送られてきたのでしょう」
「わ、私、送ってないよ……!?」
「分かっています、義姉様(ねえさま)じゃないのは。……すみません、義姉様(ねえさま)の通信端末を見せてもらえませんか?」

えっ?

「あ、うん……はい、どうぞ」
「ありがとうございます」

妹さんは私の端末を受けとる。
何をするんだろう?

「……やっぱり」
「えっ? な、何が?」
「……ハッキングされた形跡があります」

は、ハッキング!?

「そ、そんなの分かるの?」
「はい。……あれ、知りませんでした? 兄様と私、こういう電子機器系とか情報システム系強いんですよ?」

そうなの……?

「はい。一応、私は自動車のある時代に生まれてますからね。……懐かしいなぁ、昔は二人で据え置きPCに予備バッテリー製作して、コンセントなしでも少しの間電源入るようにしたっけ」

……それって結構すごいんじゃ?

「兄様なんて小5の夏休みの自由研究で……って、今はそんなこと言ってる場合じゃないですよね。これからハッキング元を調べます」
「あ、うん。お願いね?」
「はい、任せてください」





「こ、ここって……!?」

しばらくすると、妹さんが驚愕の声をあげた。

「どうしたの!?」
「……ハッキング元が分かりました」
「ほ、本当に!? どこだったの……!?」


「私の……実家です」

えっ……?

to be continued……













次回、パパン登場。




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五十話

《【祝】50話(本当は51話だけど)記念! コラボ特別編》
☆注意事項!
※顔面蒼白さんの「魔法少女リリカルなのはLoop」とのコラボ回です。
※久しぶりに金髪幼女、及び謎の声が登場します。
※金髪幼女と謎の声が会話をする描写やコラボキャラのキャラ崩壊があるかもしれません。ですが特別編ですので、世界線や時間軸、細かな設定などをあまり難しく考えずにお楽しみいただけると幸いです。
※次回は時雨。さんの「魔法少女リリカルなのはvivid ~日常を愛す者~」とのコラボになります。





「ーーーーへぇ、死なない能力ねぇ……」

それはとある日の昼頃、昼食を食べ終えてふらふらと散歩をしていた時だった。

「おうよ。まぁ厳密に言うと少し違うんだがな」

俺はある男に出会った。名を剣崎盾点(けんざきじゅんてん)という。何でも屋を営んでいるとかなんとか。
財布を落としたのを拾ってもらい、そのまま話しているうちに意気投合。近くのファミレスに行くことになった。

「……いやぁ、おっさん良い年なんだしさ、そろそろ現実から逃げ出すのはやめようぜ? な?」
「妄想じゃねぇよ。あとおっさん言うな……いや、まぁ実年齢的にはそうなんだろうけどさ」

妄想じゃないって言われてもなぁ……。

《試してみますか?》

なんだか久しぶりに聞いた謎の声が語りかけてくる。
試すって、どうやって?

ーーーーわたしがやるのー♪

金髪幼女が?
……まぁ、いいか。許可する。

ーーーーはーい♪

金髪幼女が未だに何かを喋り続ける剣崎さんに近寄る。
そして……。

「いやでも見た目的に私はまだお兄さんで行けるはずだ。年齢さえ考えなきゃーーーー………………」

金髪幼女が剣崎さんから()()を引き抜いた。
その瞬間、剣崎さんは食べかけのパスタの中に顔面をダイブさせた。ソースが飛び散り至るところにはねる。
さらには大きな音がたち、周りの客たちから注目を集める。

「……え、何したのオマエら?」

《魂を引き抜いてみました》

ーーーーみました~♪

なるほどな。
…………じゃねぇよ!

「え!? 死んだの!? コイツ死んだの!?」

《いいんじゃないですか? ドルガーですし》

誰だよ、ドルガーって……いや、そんなこと言ってる場合じゃない。
焦って脈をはかるが……ない。

《もともとは貴方にコレを使おうとしてたみたいですよ?》

ーーーーこれでいっしょー♪

……俺に使ったら二度と口きかないからな!

ーーーーえー!? やだよぉ!

じゃあ使うなよ。

ーーーーはーい…………しゅん

……ふぅ。
さて。

「これをどう隠蔽するかだな……」

《あ、引き抜いた魂が……》

謎の声が何かを言った。
なんだ、と聞き返そうとしたらーーーー









「ーーーー何だ!? 今、いきなり……敵襲か!?」

剣崎さんが周囲を見回していた。彼が突っ込んだはずのパスタには変化はなく、飛び散ったソースの痕跡などもない。
それどころか、こちらを注目していた周りの客たちも何ごともなかったかように平然としている。
……え? あれ? 死んだんじゃないの?

《試してみますか?》

は?

《だから、ドルガー……もとい、剣崎盾点の能力を》

ーーーーわたしがやるのー♪

いや……もう試しただろ?
さっきこの人、金髪幼女に魂を……。

《え? まだ……ですよね?》

……いったい何が起きたんだ?
謎の声も金髪幼女もこの人が顔面パスタダイブする前と同じことを言っている。繰り返すかのように。
これじゃまるで…………!

「……ん? どうしたんだ?」

俺が混乱しているのに気付いたのだろう、剣崎さんが聞いてきた。
どうしたのかはこっちが聞きたい。

「あー……いや、なんと説明しますか……」

『さっきうちのスタ〇ドが攻撃してあなたは死にました。なのに、いきなり何ごとも起きなかったかのようになりました』?
いやいやいや……無理があるだろ。
そもそも自分自身何言ってるのかもわからないし……。

「あ、あれですよ……ほ、ほら……」
「何だ?」

あー……あー……そうだ……!
剣崎さんを指差し大きく息を吸う。



「あぁぁぁああああッ!! この人ウェイトレスさんのスカート覗いてるぅぅううッ!!」



「バッ……おまっ、いきなり何言ってんだぁぁあああっ!?」

こうなったら俺は(俺自身を)誤魔化すだけだぜ……!
さっき起きたことは考えないよう……いや、忘れよう!

「絶対に死なないんだろ? 試してみようぜ、剣崎さんよぉ……!」
「社会的な死は別に決まってんだろぉぉぉおおおッ!?」



※剣崎さんはループ系主人公です。
※チヒロはなぜかループ(?)を認識できています。




「おにーさん、おにーさん」

「ん?」

 

ラスボス戦前食事会イベントが終了すると、茶髪の少女が話し掛けてきた。

ちなみにみんなは食器洗い中。カレーを作った俺とレヴィはやらなくていいと言われた。

……こいつらラスボス戦行かなくていいのか?

 

「こんにちは、ちょっとお話しません?」

「あ? あぁ、いいぜ」

 

すっごい満面の笑顔の茶髪少女。

ジークとしゃべり方が似てるなぁ。

 

「ほんならまずは自己紹介ですね。私は八神はやて言います」

「篠崎チヒロだ、よろしく」

「篠崎さんですか……ほんならおにーさんって呼ばしてもらいますね」

「いや、ほんならの意味がわかんねぇよ」

 

突っ込みを入れると、ますます笑顔になる八神ちゃん。

……ていうか、あれ? この人、この時代の人だから年上になるのか?

八神ちゃんは不味いかな?

 

「じゃあ、俺は……八神、さん?」

「あぁ、そんな堅くなくてええですよ」

 

じゃあ八神ちゃんでいいか。

 

「それで話って?」

「そやなぁ……あ! あのカレー作ったのおにーさんって本当なんですか?」

「そうだぞ」

 

気合い入れて上に凝りに凝って作ったからな。

自信作だ。

 

「本当においしかったです。おにーさん、料理上手ですねぇ!」

「まぁ、独り暮らしだしな」

「おにーさんも独り暮らししてるんですか?」

 

……も?

 

「八神ちゃんも独り暮らしなの?」

「今は違いますけど……ちょっと前は」

 

ふーん。

 

「あ、そうや! 未来から来たってことはあの子……ヴィヴィオちゃんたちと同じでなのはちゃんの知り合いなんですか?」

「……なのはさんにはお世話になってるよ」

 

かなり。

 

「そうなんですか。なら……私とは?」

「あー……会ったことないなぁ」

「あらら、それは残念やわぁ……」

 

しゅんとした顔をする八神ちゃん。

……話題を変えるか。

 

「あー……八神ちゃんや」

「んぅ? 何ですか?」

 

あ、やばい。

話題を考えてなかった、どうしよう……!

 

「えっ……と……」

「おにーさん?」

 

ええい、ままよ!

 

「お、おっぱいは……好きかい…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱりおにーさんは面白い人やなぁ!」

「まさか八神ちゃんがあそこまでおっぱい談義についてこれるとは……!」

 

いやぁ、白熱した。

これはなのはさんに続くソウルフレンドになれるんじゃあないか……!?

 

「残念だよ、今すぐにでも紹介したいおっぱい(委員長)がいたのに……彼女は未来にいる」

「なら私がこの時代のいいおっぱいを紹介するで!」

 

……なんだと?

 

「本当か?」

「もちろんや! ほな行こか!」

 

八神ちゃんが歩き出そうとして、振り返る。

……何だ?

 

「むふふ~! ていっ!」

 

なんか引っ付かれたでござる。

……まぁ軽いし、いいか。

 

「ほな、れっつごー!」

 

 




はやての関西弁むずかしい。
しかも途中までは敬語だからほぼ標準語になってしまう。


おまけ
《襲い来る、新たなる試練 ※委員長視点》

「ここが……篠崎くんの実家」

私と妹さんは今、どこにでもあるような普通の一軒家の前に立っている。

「……兄様の部屋には入っちゃだめですよ?」
「は、入らないよぉっ……!」

……本当は入りたいけど。





「ーーーーただいま帰りました」

扉を開け、妹さんが帰宅を告げる。
するとおくからぱたぱたと足音をたて、こちらに近づいてきた人物がいた。

「おかえりぃ」

それは、変声期前の子供を思わせるような高い声だった。
その声の主ーーーー小学校の高学年ほどだろうか、エプロンを着た、セミロングほどの長さの髪が印象的な少女は私を見ると目を丸くして驚いて、その後ほんわかとした笑顔を浮かべる。

「あ、お客さん?」
「あ……こ、こんにちは」

いきなりでビックリしたよ。
……可愛い娘だなぁ。

「そう言えば初めてでしたね。紹介します、こちらは()()『委員長』さんです」
「ふぇ? あぁ! あなたが()()

待って、“あの”ってどの?

「で、委員長さん。こちらがうちのーーーー」

妹さんかな?













「ーーーーパパン()です」




……え、えぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?

to be continued……




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五十一話

いつかと同じで眠れないので更新。
気分屋で申し訳ない。

《コラボ特別編! トウヤ危機一髪!》
☆注意事項!
※時雨。さんの「魔法少女リリカルなのはvivid ~日常を愛す者~」とのコラボ回です。
※完全なるIFストーリーです。難しく考えずに(ry
※登場キャラクターはゲスいのを除いた全員(アインハルト、コロナ、ルーテシア、フェイト(変態))がトウヤくん(時雨。さんのキャラクター)を好きだと考えてください。
※基本的に世界観は「魔法少女リリカルなのはvivid ~日常を愛す者~」側のものを考えて書きました
※ツッコミは全部トウヤくんです。頑張れ。
※委員長の物語は今回はお休みです。
※五十一話本編で、あなたは二度(最初と最後)驚く。……たぶん。






「ぅ、ん…………ここは……?」
「気が付いたか、トウヤ・ミゾグチ!」

トウヤ・ミゾグチーーーー俺がそう呼んだ少年は、樽の中から頭だけを出した状態で訳もわからずこちらを見ていた。

「いいかよく聞け、トウヤ・ミゾグチ。なぜ君がーーーー」
「……なぁ、トウヤ・ミ()グチなんだが」
「ーーーー………………なぜ君がこんな状態になっているかと言うと」
「無視して続行すんなよ!?」

いちいちうっさいなぁ。
無視無視。

「えー……第一回! ドキドキ、キスは誰の手に!? トウヤ危機一髪大会~! いぇーい! ぱちぱち!」
「…………はぁ?」

ルール説明行くぜ!

「ヴィクター!」
「任されましたわ」
「うぉっ!?」

ヴィクターはどこからともなくくるくると回転しながら表れて、華麗に着地を決めると優雅に微笑んだ。

「ルール解説をさせていただきます、この薄汚れた世界に現れしただ唯一の神・ヴィクトーリア・ダールグリュンですわ」
「何様だよ!? ていうか誰に解説するんだ!?」

え?
何言ってるんだコイツ?

「視聴者に決まってるだろ?」
「視聴者って誰!?」

はぁ……視聴者は視聴者だろ?
まぁいいや。ヴィクター!

「本大会は……まぁぶっちゃけると、やることはただの黒〇げ危機一髪ですわ」
「雑過ぎるわ!」
「黒〇げの代わりにこちらの憐れな少年が飛び出す、と」

…………くくっ。

「黒こげ危機一髪」
「唐突に脈絡のないこと言うのやめろッ!」

いいじゃんか。

「一番最初にこの憐れな少年を飛び出させた選手に彼からのキスが貰える、というわけですわ」
「は、はぁっ!? な、何だよそれっ!?」
「黒こげ危機一髪」
「あんたは黙ってろ!」

えぇー……。
……っと、そうだ仕事仕事。

「えー……では、選手の入場です。どうぞ」
「どうぞって、いったい誰が…………って、アインハルト!? コロナにルーテシアまで……!? 」

……まともなストラトスちゃんってちょっと気味悪いなぁ。

「それでは皆さま、剣を手に取ってくださいな」

ヴィクターの声に反応して、全員が用意されていた剣をとる。

「ーーーーって、待て! あれ本物の剣じゃないか!?」
「気のせい気のせい。ちょっと切れ味いいだけの模造品だよ」
「切れ味ある時点で模造じゃないだろうがっ!」

さ、行ってみよー!
……あ、そうだ。

「ちなみにこの樽に飛び出る機能なんてないから」
「…………は?」
「これ、本当に何の変哲もない普通の樽だから」
「ち……ちょっと待て!」

ん?

「これ黒〇げを俺に見立てた危機一髪なんだよな?」
「ププっ……! 黒こげ……!」
「聞けや!」

もう、何さ。

「危機一髪なのに……飛び出す機能ないってどういうことだよ!?」
「そこはほら……君のさじ加減で」
「さじ加減って何だよ!?」



『剣を刺すときに威力があったら飛び出る可能性が増えるかもしれませんわねー』
『覇王流、お見せします……ッ!』
『叩いて砕け、ゴライアス……ッ!』
『お願い、白天王……ッ!』



さすがだなヴィクター。
アドバイス一つで選手たちの()る気を底上げしてくるなんて。
俺もアドバイスしてやるか。

「一人選んで二人にボコられるか、誰も選ばずに全員にボコられるか」
「救い道がない!? そ、そうだ! 不具合を理由に……」

……なるほど、そう来たか。
だが甘いッ!

「既に飛び出るのは君のさじ加減だと彼女たちには伝えてあるんだぜッ!」
「うぉい!?」
「あ、看護師役としてハラオウンさん呼んであるから怪我しても大丈夫だぞ! 処置できるのか知らないけど」
「もっとダメじゃねえかッ! どっ、どうする……考えろ、考えるんだ……!」

さぁ、ゲームの始まりだ……!

「それでは……トウヤ危機一髪、スタート!」

俺の声に反応して選手三人が動いた。



そしてーーーー。






揉む。

 

「なるほど、これは……」

「なかなかのモンやろ? 」

 

とにかく揉みまくる。

 

「……おい」

「ん~? なんや、シグナム?」

「あ、いえ、主はやてではなく……」

 

俺は右を。八神ちゃんは左を。

腕……より正確に言うのなら、指の持つ全ての機能をフル活用してただただ揉みしだく。

 

「……あの」

「ん? 何スか?」

「お前に言ったのではないッ!」

 

いきなり怒鳴るな。ビックリするだろうが……。

 

「あ、シグナム。おにーさんイジメたらアカンで」

「い、いえ、苛めているわけではなく……」

「そーだそーだ、この淫乱ピンク!」

「……我が剣の錆びになりたいのか…………?」

 

おいおい、もちつけよ。

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで篠崎チヒロです。よろしく、淫乱おっぱい」

「よろしくする気はないんだろう、お前……!」

 

なんでそんなにピリピリしてるのさ。

ちょっとおっぱい揉んだだけじゃんか。

 

「ほら、自己紹介せなアカンで、変態おっぱい」

「主はやてっ!?」

 

裏切られたかのような表情で八神ちゃんを見つめるおっぱい。

 

「くっ……主はやての騎士、ヴォルケンリッターが将、シグナムだ」

「つまり…………八神ちゃんのメス奴隷的な?」

「まだ違うで~。まだ」

 

まだ違うのか。

 

「主はやて、先程からあなたの言動はおかしい。いったいどうしてしまったと言うのですか……?」

「え、そんなことあらへんで?」

 

シグナムさんが八神ちゃんを見て、そんなことを言い出す。

そうなの?

 

「いえ、明らかにおかしい。まさかこの男に何か……!?」

「おにーさんはそんなことせえへんよ」

「そーだ! 酷い言いがかりだぞ、このおっぱいバズーカ!」

「………………………………斬るッ!」

 

なんか剣出してきた。

危ないぞ!

 

「シグナム、非戦闘員にデバイス向けるなんてなに考えとるの!?」

「止めないでください、主はやて! 世界のためにもこの男は葬っておくべきです!」

「だからダメやって! 言うこと聞いて!」

 

八神ちゃんの必死の叫びも無視して今にも飛び掛かってきそうなシグナムさん。

そして揺れるパイオツ。

 

「ホルスタイン…………」

「ーーーー殺す!」

「シグナム!」

 

突然、シグナムさんの四肢とおっぱいを光の輪が拘束した。

何だっけ? バインド?

 

「あ、主はやて? なぜ……」

「なぜ? 言うこと聞かんでおにーさんを……民間人を襲おうとしたからや」

 

えっ!?

 

「わ、ワタクシ性的に襲われるところだったの……!?」

「お前は黙っていろ!」

「シグナムっ!」

「……くっ……すみ、ません…………!」

 

俺を睨み付けながら心にもなさそうな謝罪をするシグナムさん。

反省の色が見えませんなぁ……?

 

「八神ちゃん八神ちゃん、コイツお仕置きしようぜ」

「なっ……!?」

「おぉ、それは良い考えや! さすがおにーさん!」

 

そうと決まれば場所を変えよう。

人目がつくと不味いからな。

 

「くぅっ、離せッ! やめろッ! や、やめてくれ……た、たのむ! な? やめてくれるのなら何でもしよう! 絶対だ、我が剣に誓おう! 」

「何する?」

「再起不能になるまでおっぱい揉み続けるなんてどうや?」

「採用」

「やたぁ!」

 

 

「や、やめろぉぉぉぉぉぉおおおおおおおーーーーッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シグナムさんのお仕置きが終わり、俺は一人でみんなのいる食堂へと続く廊下を歩いていた。

 

「ふぃ~……良い仕事したぜ」

 

シグナムさんはお仕置きが20分を越えた時点で体を痙攣させるだけで反応しなくなってしまった。

反応がなくなり、飽きてしまった俺はあとを八神ちゃんに任せ食堂へと向かうことにした。それで今にいたる。

 

「……八神ちゃんはまだ揉み続けているのだろうか」

 

俺よりおっぱいへの執着心は強いみたいだし……。

シグナムさん頑張れ。マジ頑張れ。

 

「……ん?」

 

しばらく歩いていると食堂の扉の前に何かーーーー否、誰かがいるのを見つけた。

それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コソコソ……」

 

コソコソと食堂の中を覗いている、禍々しい炎を連想させる赤と黒の和服みたいな格好をした金髪の少女だった。

 

 




おまけ
《高町ヴィヴィオの決意》

先輩はなのはママとユーノさんの関係が気になるって言ってた。
それってつまり……。

「先輩はなのはママのことが好き……」
「何か言いましたか、ヴィヴィオさん?」
「あ、アインハルトさん。な、何でもないですよぉ」
「そう、ですか……?」

ふぅ……。
先輩がなのはママと恋人になったら…………先輩は私のパパ!?

「にゃぁっ!?」
「ヴィ、ヴィヴィオさん……!?」

なんだかくすぐったい。
先輩はお兄ちゃんみたいな感じはしてたけど……パパかぁ。

「ち、チヒロパパ…………なんて……!」
「ヴィヴィオさん……? 本当に大丈夫ですか……?」

わ、悪くないかも……。
朝は私が起こして、なのはママに見送られながら手を繋いで家を出る。寝るのだって一緒だし、お、お風呂も……!

「ぱ、パパなら……変じゃないよね……?」

……決めた!




ーーーーなのはママと先輩をくっつける! 私が二人の恋のキューピッドになるんだ!

そうすれば先輩もなのはママとラブラブになって、私も先輩ともっと仲良くなれる。みんな幸せ!

「よぉし……!」

高町ヴィヴィオ、頑張ります!






「ヴィヴィオさんが壊れた……!」



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五十二話


今回の話はこれといってアクティブな内容ではないです。
GOD編もそろそろ終わらせないといけないので、今回と次回はそれの前準備(?)の回。物足りないかもしれませんが、ちょっとだけ我慢してください。



「……何してんの?」

「わひゃうっ!?」

 

食堂を覗く見知らぬ金髪娘に話しかける。

 

「……あ、あなたは……?」

「いやそれこっちの台詞だから。自己紹介の時にはいなかったよな?」

 

新しく保護されたヤツかな。

……何でコソコソ食堂を覗いてるんだ?

 

 

「ーーーーあ、篠崎さん!」

 

 

食堂の中からなのはさんが話しかけてくる。

 

「いえ、何か知らない娘が……」

「しー! しー!」

 

なのはさんに金髪娘のことを聞こうとしたら、金髪娘が口に人差し指を当て「しー!」と言ってくる。

すっごい必死そう。

 

「……ふぅ」

 

俺が黙ったのを見て、金髪娘が安堵の息を吐く。

 

 

 

「ーーーー……いえね! 知らない金髪娘が」

「ちょっ!? あぁもう! こっちに来てくださいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金髪娘に手を引かれ、薄暗く人気のない倉庫のような場所に連れ込まれた。

……………………ナニする気なの!?

 

「いや! やめて! ワタシには両親と二人の妹が……」

「そういう茶番はいらないです」

 

……もしかして何か怒ってらっしゃる?

 

「……ぶすぅ」

 

なるほど。

もしかしなくても怒ってらっしゃるようだ。

 

「……いったいあなたは何なんですか?」

「俺? 篠崎チヒロだけど……」

「名前のことじゃありません!」

 

じゃあ何だよ。

 

「人がコソコソしているんですから、何か見つかりたくない理由があるに決まっているでしょう!」

 

あぁ、それでか。

なのはさんに聞こうとしたことを怒ってるのね。

 

「でもコソコソしてるってことはやましいことしてるんだよな?」

「ぅぐ……ッ!」

 

図星か。

 

「何だよ。どんなやましいことしてたんだよ」

「ちがっ、別にやましいことなんて……! ただ覚醒したのに誰も現れないからちょっと様子を見に来ただけで……!」

 

覚醒?

 

「覚醒ってなに? 厨二病?」

「……チュウニビョウ?」

 

よく見れば()()っぽい格好してるし。

……ん?

 

「お前、ほっぺた汚れてるぞ」

「……え? どこですか?」

 

汚れてるのとは逆の頬を拭いた。

はぁ……。

 

「ほれ、じっとしてろ。拭いてやるから」

「わぷっ……!」

 

ポケットから出したハンカチで汚れている頬を拭いてやる。

……よし、落ちたな。

 

「……あ、ありがとうございます」

「あいあい、どーいたしまして」

 

そして無言が訪れた。

ただただ気まずい空気が流れる。

 

「……あの」

「……なぁ」

 

金髪娘も空気を変えようとしたのか、お互いに発した言葉が被ってしまい再び無言になる。

 

「あ」

「な、何ですか……?」

 

俺がいきなり声をあげたのにビクッと体を揺らす金髪娘。

悪いことしたな。

 

「あー……すまん。ちょっと待ってろよ」

 

そう残し、俺は倉庫を後にした。

 

 

 




おまけ
《襲い来る、新たなる試練 ※委員長視点》

「はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます……」

篠崎くんのお父さんがお茶を出してくれた。
……本当にお父さん?

「ゆっくりしていってね!」
「は、はい!」

そう言い残して篠崎くんのお父さんはキッチンへと戻っていった。

「うちは母が働いていて父が家事を行っているんです」
「そうなんだ」

そうなると……女子力も高いんだね、篠崎くんのお父さん。
……本当に、本当に本当にお父さんなの?




「……これです。このパソコンから委員長さんの端末はハッキングされていました」

それはリビングに置いてある据え置き型のパソコンだった。
ここから……?

「先に言っておきますが、うちの家族ではありませんよ。絶対に」
「……ふふっ、わかってるよ」

妹さんは家族が大好きなんだね。

「調べますので、少しだけ待っていてください」
「うん、わかった。……お願いね」
「任せてください」

to be continued……


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五十三話

おまけ
《実は……》

設定段階では篠崎姉妹は四人いた。




あの後、食堂へと戻りカレーを一皿持ってきた。

 

「ほれ」

「……これは?」

「うん……カレーだ」

 

金髪娘は恐る恐る受け取ると、一緒に手渡したスプーンで一口よそる。

それをゆっくりと口の中に含んだ。

 

「どうだ?」

「……おいしいです」

 

当然だ。誰が作ったと思ってる。

そしてどれほどの量を一緒に煮込んだと思ってる。

 

「あなたが作ったんですか?」

「あぁ」

「……すごいですね」

 

ふっふ~ん!

 

「……私には破壊しか産み出せません」

「何だそれ?」

 

意味が分からない。

 

「……あなたが作ったこれは、きっと大勢の人を喜ばせることができるのでしょう。ですが私が作るものは……人の心を傷付ける」

「はぁ……そうなのか」

 

……え? 何なの?

厨二劇場始まったの?

 

「あー……でも『壊す』のって全部が全部悪い訳じゃないんじゃないか?」

「ーーーーえっ」

 

金髪娘は弾かれたように俺を見る。

 

「例えばさ、馬鹿げた古い()()()()とかは壊した方がいいだろ?」

「……え、えっと……そういう『壊す』じゃなくて……。こう、物理的と言いますか……」

 

えっ?

 

「じゃあ新しいビルを建てるなら元々あったビルを壊す必要がある、とか?」

「た、確かにそれは物理的ですが、そうじゃなくて……」

 

これも駄目か。

じゃあ……。

 

「えーっと……」

「……ふふふっ」

 

唸る俺を見て金髪娘が小さく吹き出した。

なんだ?

 

「あっ……ごめんなさい。何だか可笑しくて……」

「……変なヤツ」

 

コイツの笑いのツボはようわからん。

 

「……ありがとうございました。何だかちょっと元気が出ました」

「そもそも何か落ち込んでたのか?」

「そう……ですね。落ち込んでたのかもしれません」

 

自覚なし?

 

「完全に呑まれてしまう前に……私が私でなくなる前に、貴方に出会えて本当に良かった」

「……はぁ?」

 

訳のわからない言葉を言い、金髪娘は立ち上がる。

 

「カレー……ご馳走さまでした。残してしまってごめんなさい」

「あ、あぁ……別にいいけど」

「これ、とっておいてください。用事が済んだらまた戻って来ますので、その時に食べますから」

「わ、わかった」

 

ありがとうございます、と微笑んで金髪娘は歩いて行く。

途中で振り替えると笑顔を浮かべ俺に言った。

 

「それから、食堂にいる皆さんに『本来の役目』を果たすようお伝えください」

「お、おうよ。任せとけ」

 

もう一度笑顔を浮かべると、今度こそ金髪娘は歩いて行った。

 

「……結局、アイツ誰だったんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

「おいオメーら! 何か知らんがやることあったんじゃねえのか!」

「え? 篠崎さん、やることって…………あっ!?」

 

俺の言葉を聞いて、食堂で寛いでいたヤツらがいっせいに慌て出す。

……ちゃんと伝えたぞ、金髪娘。

 

 

 

 

 

「おらっ! さっさと行けっ!」

「痛ッ!? ちょっ、何で我だけ蹴られるのだ!? あ、痛いからやめッ…………!?」

 

 




おまけ
《襲い来る、新たなる試練 ※委員長視点》

「……義姉様」
「あ……どう? 何かわかった?」

しばらく経つと、妹さんが難しい顔をしてやって来た。

「……ハッキングをしたのは間違いなくここからです。けど……ハッカーの正体はわかりませんでした」
「そっか……」
「痕跡すらありません。……ただ」

ただ……何だろう?

「“ある場所”に何度もハッキングを行っていることが分かりました」
「えっ……? その場所って……?」

妹さんは黙ったまま何かを考えるような顔をしている。

「……今からそこへ向かいましょう」
「えっ!? い、今から!?」
「少し遠出になりますが……幸い、明日から週末になりますから大丈夫ですよね?」
「えっ……う、うん……たぶん大丈夫」

お母さんたちには友達の家に泊まるって言えば……。

「なら一旦解散しましょう。次元運行艦のチケットを買ってきます。今から2時間後に乗り場にて。それまでに色々準備もしておいてください」
「うん、わかった」

なら今からすぐに……。

「……………………後、それからもうひとつ」


ーーーー妹さんから告げれたことは、衝撃的な内容だった。


to be continued……


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五十四話

微妙なとこで切れちゃった……ごめんなさい。




「お前は戦わねーのか?」

 

なのはさんたちを(どこにだか知らんが)送り出したあと、猫耳つけた変なショートカット女に絡まれた。

 

「ダメだよ、ロッテ。確かこの人、非戦闘員の……」

 

猫耳のロングヘア女がそれを嗜める。

顔が似てる……姉妹?

 

「まぁ……魔法使えないですし」

「なんだ。ただの役立たずか」

「ロッテ! ……ぷふ」

 

……いいだろう。

てめーはおれを怒らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふにゃぁぁぁ……こ、こしがぁ…………っ!」

「ひにゃぁっ……ぬけちゃったにゃぁ……!」

「せ、先輩……何してるんですか?」

「ん? おぉ、ヴィヴィオちゃん、おかえり」

数時間の間、生意気な猫姉妹を撫でくりまわしているとヴィヴィオちゃんたちが帰ってきた。

 

『 さすが先生……ナデラー界に轟く“腰砕きチー”の二つ名は伊達じゃない……!』

「待ってリリィ、初めて聞いたんだけど何それ」

 

……なるほど、未来でも俺のナデラーっぷりは健在か。

 

「……あ、アリア……ロッテ……?」

 

何か変な黒いガキが固まってるけど…………ま、いいか。

俺のナデテクを食らって蕩けている猫ども捨て、ヴィヴィオちゃんたちのもとへ。

 

「ふにゃっ……も、もっとぉ…………!」

「やめちゃやぁにゃぁぁ…………!」

 

ええい、やかましい。

 

「羨ましい…………! ダーリン、私にも……」

「お前にやったら変なこと言うからヤダ」

「……ちっ」

 

舌打ちすんな。

 

「えっと……」

「ん? あぁ……気にしないでくれ」

 

帰ってきた面々を見回す。

なんかボロボロだなぁ……あちこち汚れてるし。

……ん? 見慣れないヤツが……って、あれ……?

 

「お前は……」

「あ、そうだった! 先輩、この人は……」

 

数時間前に出ていった面々にはいなかった人物。

数時間前に俺と話をしていた人物。

彼女(・・)が俺の前に歩いてくる。

 

「ーーーーユーリ・エーベルヴァインです」

 

金髪娘ーーーーユーリは微笑みを浮かべると、俺に言った。

 

「カレー、ちゃんと取ってありますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あむ……」

 

ユーリは俺の隣に座り、俺に取っておくように言ったカレーを食べている。

 

「……ねぇねぇ、ヒロヒロは何でユーリのこと知ってるの?」

「まぁ、色々あってな」

 

話を聞いたところ、どうもこいつ(ユーリ)が ラスボスだったらしい。

知らぬうちに俺は危機的状況にあったようだ。

 

「……本当にこんなヤツがラスボスかよ?」

 

むにむにとユーリの頬をいじる。

 

「だ、ダーリン! そういうのは私に……!」

「……本当はコイツがラスボスなんじゃねえのか」

 

少なくとも俺にとっては間違いない。

 

「……あむあむ」

 

ユーリはもくもくとカレーを食べている。

うむ、いい食べっぷりだったぜ。

 

「なぁ、うぬ……」

「……ん?」

 

ひたすらカレーを貪るユーリを見ていると、誰かに話しかけけられる。

確か……『王様』だっけ?

 

 

 

「少し話をせぬか?」

「え? 疑問系ってことは拒否権あるんだ? じゃあやだ」

 

 




おまけ
《襲い来る、新たなる試練 ※委員長視点》

私は今、ある公園に来ている。
妹さんの情報が正しければここに……いた!

「ったく……何なのよあの女! こんなメール送ってきて…………あぁイライラするぅぅううう!」

ちょっと前に私を襲ってきたツインテールの人。
うぅ……すっごく怒ってるよぉ……。

「だいたいチヒロもチヒロよ! アタシというものがありながら……って、あ、アタシは別にチヒロのことなんて何とも思ってないんだから! お、幼馴染みとしての義務? 責任感? みたいなものよ!」

……何だか忙しい人だなぁ。
その時、私は足元にあった小枝を踏んでしまった。
ぱきり、と乾いた音が鳴る。

「ハッ!? だ、だれっ!?」

しまった!

「出てきなさい! じゃないと……」

こちらを見て手元に炎を出現させるツインテールさん。
……大人しく出るしかないようだ。

「あ、あんたは……ッ!」
「こ、こんにちは……」

to be continued……


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五十五話

ただ一言。
『巻き』で。




「……わ、我の言い方が悪かったようだな。話をしようではないか」

「それは人にモノを頼む態度なのかなぁ……?」

「ぐっ……は、話をし……てください……!」

 

ふむ。

 

「そこまで言うなら仕方がない。聞いてやろう」

「こ、このっ…………ふー……ふー……落ち着け……落ち着くんだ、我よ……!」

 

くくく……怒ってる怒ってる。

 

「ヒロヒロぉ……あんまり王サマいじめちゃダメだよ?」

「いじめてねぇよ。だろ、ハニー?」

「当然です。ダーリンは人をいじめたりなどしません。寝言は寝て言いなさい、レヴィ」

 

少なくともハニーは俺の味方だ。

ラスボスとかいってごめん。

 

「で、何だよ、話って?」

「……うぬはいったいいつ、どこでユーリと知り合ったのだ?」

 

なるほど。

それが聞きたかったのか。

 

「だが教えない」

「なっ……何故だ!?」

「なんとなく」

「何だそれは!?」

 

なんとなくはなんとなくだよ。

 

「……ずっと前から思っていたのだが、うぬは我を毛嫌いしているようだな。何故だ?」

「えっ? 別に毛嫌いなんてしてないけど」

 

どこにそう思われる要素があったんだ。

まったく身に覚えがないんだが。

 

「は……はぁ!? 嘘を言うなっ!」

「嘘じゃないって」

「じゃ、じゃあなぜ我に謂われなき罪を被せたあげくに足蹴になどした!?」

 

そんなことしたっけ?

…………あー、したかも。

 

「……愛情の裏返し?」

「疑問系ではないか!?」

「……例え王と言えど、ダーリンを奪う気なら容赦しませんよ?」

「貴様は黙っとれぃッ!」

 

はぁ……。

仕方あるまい。

 

「よしよし、ほら落ち着いて」

「きっ、貴様! 王である我の頭を撫でるとはいったい何事かッ! 無礼であーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「篠崎さん、未来に帰る算段がーーーーって、ディアーチェちゃん!?」

「……ぁ…………ぅぁ…………!」

「あぁ、なのはさん」

 

王様を撫で繰りますこと数十分。

なのはさんがやって来た。

 

「ディアーチェちゃん!? しっかりして!」

「…………ひ……ぅ…………ぁぅ……!」

 

かなり本気でやったからな。

復活するのにしばらく掛かるだろう。

 

「ダーリン! わ、私にも! 私にも今のやつを……!」

「嫌だ」

「くぅぅぅぅ……っ!」

 

あ、そうそう。

 

「何でしたっけ、なのはさん?」

「あ、アミタさんたちが未来に帰るための装置を……じゃなくて! 篠崎さん、ディアーチェちゃんに何を……!?」

 

なるほど、やっと未来に帰れるのか。

 

「みなさんはどこに?」

「あ、えっと……」

 

ふむふむ。

 

「なら行きましょうか?」

「そうですね……じゃない! スルーなんですか!? ディアーチェちゃんはスルーなんですか!?」

「ほらユーリ、レヴィ……ついでにハニーも。行くぞ」

「あ、待ってください」

「ん? どこ行くのー?」

「ダーリンせめて手を! 手を繋ぎましょう!」

 

嫌だね、絶対に。

……よし、さっさとみんなのいる場所に行こう。

 

 

 

 

 

「ディ、ディアーチェちゃぁぁぁぁぁぁんっ!」

「……ぁふ……ぅぅ…………ぁっ…………!」

 

 

 





おまけ
《襲い来る、新たなる試練 ※委員長視点》

「……いい度胸ねぇ。まさか、あんたの方からのこのこ現れるとは」
「え、えっと……」

完全に怒ってるよぅ……。

「あ、あのっ!」
「……何よ」
「あのメールは……」
「『自分が送ったものじゃない』とでも言う気かしら?」

うっ……。

「そ、そのとおり……です」
「ハッ! 笑わせんじゃないわよっ!」
「う、嘘じゃないんですっ! 信じてください!」

ツインテールの娘は手に炎を出し、こちらを睨みつける。

「証拠でもあるのかしら?」
「そ、それはーーーーッ!?」

その時気付いた。
私たち……囲まれてる。でもいったい誰に!?

「……な、なによ。いったい」
「しっ! ……誰!?」

ガサガサと茂みから音を出して現れてきたのは……。

「……ロボット?」

数体のロボットだった。
あれ……これどこかで……?

「何よ、これ!? て、ていうかコイツらって……!?」

私が思い出す前に、ツインテールの娘がそれ(・・)の名を呼んだ。



「た、確か……J.S事件の時にあちこちを襲ってた…………『ガジェット』…………?」


to be continued……





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五十六話

おまけ
《実は……》

初期設定段階、チヒロは魔導師だった。
えげつない戦術をとるものの、ゲスではなかった。




いつもよりちょっと多めになってます。



フローリアン姉妹から元の時代に帰る際の話を聞かされた。

二人(+ハニーたち)が元の世界に帰る途中で俺たちを未来へと連れていくらしい。

そして、何らかの影響を及ぼさないように記憶は消去されるんだとか。

 

「えぇー!?」

「せっかく出会えたのにぃ……」

 

後者について何人かは不満を漏らしていたが……まぁ、仕方ないことだ。

それから、二人には何度も何度も謝られた。

一応、俺は『被害者』になるらしいからな。

 

「ーーーーそれでは、転送を開始しまーす!」

 

そろそろ時間のようだ。

 

「何だか寂しくなるね、フェイトちゃん」

「……そうだね」

 

こっち見んな。

 

「私たちは……私は記憶消去しませんよね!? ダーリンのことを忘れるくらいなら私は自害しますーーーー」

 

どうぞどうぞ。

 

「ーーーーダーリンを道連れにして!」

「おい!」

 

こいつ……!

 

「ねぇ……ヒロヒロぉ……」

 

レヴィが話しかけてきた。

 

「なんだよ?」

「もう会えないのかなぁ……? ボク、ヒロヒロともっとゲームしたいよ」

 

んーむ……。

 

「『神々の黄昏オンライン』」

「え?」

「俺が今、元の時代でやってるオンラインゲームだ。これからお前のいく場所からできるのかは知らないけど……」

「やる! 絶対にやるから、また一緒にゲームしよう!」

 

まぁ……タイムマシンもどきが作れるくらいのフローリアン姉妹(あの二人)に頼めばできるのかもな。

キャラ名を教え、レヴィの小さな手と指切りをした。

 

「やくそく!」

「あぁ、約束だ」

 

レヴィは大喜びしてハニーたちの方へと駆けていった。

入れ替わるように、今度はユーリが近寄ってくる。

 

「仲、良いんですね」

 

少し不機嫌そうだった。

 

「まぁ、な。友達だし」

「そうですか」

 

少しの間、お互いに無言になる。

そしてユーリは真剣な表情になり、俺に言った。

 

「多くは言いません。一つだけ」

 

ユーリはそこで1度区切り、そして。

 

「ーーーー必ず。必ず会いに行きます」

 

そう一方的に告げて、ユーリは戻っていった。

王様は……俺を睨み付けてる。睨み返してやった。

 

「ひっ……!」

 

……あぁ、そうだ。

俺も話をしなくてはいけない人がいるんだった。

 

「スクライアさん」

「ん? なんだい、えっと……シノザキさん?」

 

せめて、なのはさん(我が同志)だけでも救ってみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……スクライアさん、なのはさんが好きなんスよね?」

「ち、直球だね…………うん、好きだよ」

 

スクライアさんも案外直球だな。

 

「なら積極的に行かないと。……あんまり未来のことは言えませんけど、後悔しますよ」

 

なのはさんが。

 

「……そう、だよね。積極的に行かないとダメだよね! ありがとうシノザキさん!」

「わかってくれたならそれでいいんスよ」

 

ふっ……いい仕事したぜ。

同志を失うわけだが……仕方ない。ストーカー被害が減るのならそれでいいさ。

 

 

 

「ーーーーよし、まずは双眼鏡と盗聴機を買ってこよう!」

 

 

 

「……はい?」

「サーチャーも仕掛けるけど……やっぱり自分の目で見ないと安心できないもんね」

 

えっ?

えっ? なに? なんなの?

 

「い、一体何を!?」

「えっ? 何って……『積極的に』なのはを観察して好みを調べるんだよ? あとは万が一の時に守ってあげたり……」

 

いやそれストーカー………………あれ?

いやいやいや……待てよ。

 

「あ、記憶消されちゃうんだっけ? 危ない危ない……メモしておこう。……っと、そうだ。本当に君には感謝してるよ! ありがとうね!」

 

まさか……まさかこの人がストーカー化したのって……!?

 

 

『転送始めるよー!』

 

 

フローリアン姉の声が聞こえたと思ったら体が光だした。

 

「えっ!?」

「あぁ、時間なんだね。シノザキさん、未来の僕によろしく。きっと仲良くなれるよ、僕たち」

 

いやちょっと待って!

マジで! 30秒でいいから!

 

『それじゃ、行きまーす!』

「ちょ、まっーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

俺……何してたんだっけ……?

確か……インターミドル開会式の帰りで…………カレー作ったような…………カレー?

そんでなんか……なのはさんに謝らないといけないようなことした……?

何だろう、思い出せない。

 

「あれ?」

 

ふと、時間を見ようとして通信端末を見るとメールが来ていた。

スカさんから?

 

「何々? 『久しぶりだね。君のアドバイスのお陰で娘と仲直りできたよ。それどころか、最近妙に私を気遣ってくれるようになったんだよ』……?」

 

なるほど、()()()()扱いになったか……。

ざまぁ。

 

「ん? 『P.S 君に頼まれていた私の極秘研究所のマップを一緒に送っておいたよ』? ……なんだそれ?」

 

そんなの頼んだ覚えは……。

 

ーーーーにゃぁ。

 

「ん?」

 

いつの間にか足元に猫がいた。

俺の足に顔を擦り付ける。可愛い。

 

「……ま、いっか」

 

頭の中をぐるぐるしていたことは全て忘れよう。

きっと気のせいだ。

 

「よぉし、この猫飼おう!」

 

あのアパート、ペット大丈夫だったよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

ーーーーおかえりなさ…………あ、リニスだぁー♪ でもなんでぇー?

 

猫の名前はリニスに決定した。

 

 




おまけ
《未来組転送時のアースラ》

「艦長! 今、闇の書の欠片の反応が!」
「なっ!? いったいどこから!?」
「そ、それが……反応はここで、未来組転送時に一瞬だけ検知されて……。恐らく未来組とともに転送されてしまったようです」
「そ、そんな……!?」



※おまけ《襲い来る、新たなる試練》は、委員長の委員長が成長したため、下着を買いに行くのでお休みします。


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五十七話

GOD編で起きたことをエルトリア組以外は忘れているものの、みんな無意識下で何となく覚えています。
ユーノくんとか、フェイトそんとか、ヴィヴィオちゃんとか。


おまけ
《実は……》

『篠崎チヒロ初期設定(の一部分)』

魔力量:B
変換資質:炎熱
レアスキル:魔力液状化

主な戦闘方法:火炎瓶




 

ーーーーにゃおん。

 

 

『まったく……おまえはいったいどこからこういうのをひろってくるんだ』

 

リニスを見て、白衣を着て赤い伊達眼鏡をかけた(本人曰く研究者スタイルらしい)ぐにゅ子はそう言った。

 

「ただの猫だろ」

『いや、これは“やみのしょのかけら”だ。てきいはみられないからおそってはこないが……』

 

“ヤミノショノカケラ”?

はて……どこかで聞いたことあるような。

 

「よく分かんないけどリニスはリニス。それでいいだろ」

『まぁ、がいはないだろうし、おまえがいいならいいだろう』

 

あれ?

案外簡単に折れたな?

 

『いちいちおまえにつっこんでいたら、わたしのいがもたない』

 

失敬な。

 

『そうそう、このねこにはナハトヴァール……あのくろいしょくぶつをたべさせておけばしょうめつすることもないはずだ』

「えっ? 消滅ってなに?」

『あぁ、いや……まぁ、ふかくかんがえなくていい。ばかにはわからんだろう』

 

…………コイツ。

 

『あぁっ!? あたまを、あたまをぐりぐりするのはやめてくれぇっ! あやまる! あやまるから!』

 

なら最初から言うな。

ったく……。

 

「つまり、あの黒い植物はエサにもなるってことか?」

『……はぁ……はぁ……そ、そのにんしきでかまわない……』

 

マジか。

すげぇなアレ。

 

『た、ただし、あのねこだけだぞ。ふつうのにんげんやどうぶつはだめだ』

 

あらら、残念。食費浮くと思ったのに。

しかしそうなると気になることがひとつある。

 

「リニスのエサがあの黒い植物だとして……毎日食べさせてたらすぐになくなるんじゃないのか?」

『それについてはもんだいない』

 

ぐにゅ子は眼鏡をくいと上げて答えた。

 

『しらべてみてわかったことだが、あのしょくぶつはとてつもないさいせいりょくをもっている。たとえリニスがあれをたべつくしたとしてもすぐにさいせいする』

 

何それすごい。

 

ーーーーにゃあ。

 

リニスが足にすり寄ってきた。

頭を撫でてやると気持ち良さそうに目を細める。

 

『これをおうようすればきっといがくのやくにたつぞ。すばらしいはってんだ。よもやあの“ナハトヴァール”がせかいをすくうことになるとはな……』

 

何か語りだしたぞ。

 

『だがやはりふあんがのこる。ナハトヴァールにはそんなのうりょくはなかったはずだ。なぜそんなものが…………それをめいかくにしなくてはならない。それがわたしのしめいで……』

 

あぁ、はいはいソウデスカ。

それはご苦労なことで。頑張ってくだサイネー。

 

「おーおー、リニス(お前)は可愛いなー。変なコト言わないし、しないし」

 

おぉ、リニス。我が新たなる癒しよ。

もうミウラちゃんなんぞいらない。お前さえいてくれれば。

 

ーーーーにゃおん♪

 

「あぁ、俺も愛してるよ、リニス!」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーむぅぅぅぅ! わたしのなのにー!

 

……どっちが?

 

 




おまけ
《襲い来る、新たなる試練 ※委員長視点》

「はぁ……はぁ……!」

た、倒せた……!

「ふぅ……ふぅ……何なのよ……!」

ツインテールの娘も共闘してくれたから勝てた……!

「……ち、ちょっとアンタ! 何なのよあれ!」
「わ、私が聞きたいくらいだよ……」

……篠崎くんの妹さんなら知ってるんだよね?

「あれを差し向けた人こそが私を装ってあなたにあんなメールを送った人なの」
「……はぁ? アンタ、そんなこと信じられると思ってんの!?」

まぁ、そうだよね。
普通は信じられないよね。

「でも本当なの! お願い、信じて!」
「だからねぇ……!」

……篠崎くんを見習って、す、少し強引にいってみようかな……?

「ついてきて!」
「は、ちょっ、アンタっ!?」

私はツインテールの娘の手を引いて駆け出した。


to be continued……



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五十八話

今月、来月は大学のゼミ関係で忙しいのでもしかすると更新及び感想への返信が遅れてしまうかもしれません。
そうならないよう努力しますが、もしもの場合は申し訳ありません。



今日は待ちに待ったデコ助の試合の日。

相手はなんとハリーだとか。

 

「不良生徒は成敗です!」

「ほーお!? 面白ェ! やってみろやアホデコメガネ!」

 

まさに一触即発。

 

「おうともやらいでかっ! あと私はアホでもデコでもありません!」

 

いや、お前はアホでデコでバカだろうが。

 

 

《上位選手同士因縁の試合! まもなくゴングですっ!》

 

 

アナウンスが入り、両者ともに立ち位置につく。

試合が始まるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

「アレスティングネット展開ッ! 捕獲開始ィッ!」

 

開始早々にデコ助のバインド魔法の一種か、無数の手錠がハリーを襲う。

手錠って……趣味が悪いぜ、デコ助……。

 

「ハッ! 案外ハデだがこんな鎖ごとき……!」

「甘いですよ、ハリー選手!」

 

何かしようとしたハリーの後ろからさらにバインド手錠が出現、ハリーを拘束した。

 

「ホールドフィニーッシュッ!」

「う……ぎぎぎ!」

 

完全に拘束され、身動きが取れなくなったハリー。

 

「あぁ!? 頑張れハリー!」

「ちょっと!? あなた私のセコンドでしょう!?」

 

えぇ……応援するって約束したし。

それに……

 

 

ーーーーはりーちゃんがんばれ~!

 

《ハリー選手負けないで!》

 

『まけるな、とらいべっか! おまえならかてるぞ!』

 

 

うちのヤツらみんなハリー応援してるしなぁ。

ちなみにリニスはお留守番です。

 

「あぁ、鎖を引きちぎろうとしても無駄ですよ? パニッシャーはむしろ金属環(リング)の方に拘束効果があるんです」

 

くっ……逃れる術はないってか……!

 

「汚いぞ、デコ助ぇっ!」

「だからあなたはこっちの味方でしょう!?」

「くっ……大丈夫だぜ、チヒロ! だったらーーーー!」

 

ハリーが自身の拘束されている右手の周囲に魔力弾を形成する。

そしてーーーー

 

「うぐっ…………こ、こうすりゃいいんだ。簡単だぜ?」

 

腕ごと拘束していたバインドを撃ち、破壊して見せた。

うわぁ……すげー痛そう。

 

《強度の打撲に熱傷……というところでしょうか?》

 

解説ありがとう謎の声。

『痛そう』じゃなくて痛いな、間違いなく。

 

「てめーをブチのめすにゃ片手が使えりゃ十分だッ!」

 

やだ、あの人かっこいい。

イケメンハリーは負傷した右手に魔力を溜め、そして。

 

 

 

「うおらぁぁああっ! ガンフレイムッ!」

 

 

 

気合一閃。

雄叫びと共にハリーは砲撃を放つ。

 

「あーっ!」

 

それをまともに受けたデコ助は、何だか掘られたような声をあげ吹き飛ばされる。

 

「ちっ。まだベストじゃねーな。威力がイマイチだ」

 

マジか。俺、ハリーとは喧嘩しないようにしよう。

怒らせずにうまく扱う。

 

 

 

《エルス選手、リングアウト!》

 

 

 

おっと、忘れてた。

カウントが始まったのを聞いて、四つん這いになっているデコ助に駆け寄る。

 

「ねぇタオル投げる? タオル投げるの?」

「投げませんよ! まだ試合は始まったばかりです!」

 

「残念だったな、デコメガネ。この一年で強くなったのはおめーだけじゃねーんだよ」

 

未だに立ち上がらないデコ助に近寄ってきて、ハリーはそう言った。

 

「とっとと上がってこいよ。まだーーーー」

「あ、ハリー。晩御飯ぶりの照り焼き食べたい」

「ーーーーわかった。なら帰りにぶりだけ買っといてくれ。…………まだ終わりじゃねえんだろ、デコメガネ?」

「何かもう色々と台無しですよ……」

 




おまけ
《襲い来る、新たなる試練 ※委員長視点》

「ーーーー義姉様!」

ツインテールの娘の手を無理矢理引いて、待ち合わせ場所の次元運航艦の乗り場に来るとすでに篠崎くんの妹さんがいた。
傍らには一人誰かーーーーあれ?

「……タスミンさん?」
「お、おや? あなたは……」

何でこんなところに……?

「私が連れてきたんです」

妹さんが……?

「……こんなのでも肉盾くらいにはなります」
「ちょっと!? 何か不穏な単語が聞こえたんですが!?」
「あん……!?」
「ひぃ!? ごめんなさいごめんなさい、ロードローラーだけは勘弁を……!」

……あ、あはは。

「ち、ちょっと。何なのよ、コレ。説明しなさいよ」
「わ、私にも何がなんだか……」

「ーーーーオホン!」

妹さんが咳払いをし、私たちの注目を集めた。

「それではこれからとある無人世界へ行きます」
「無人世界……?」

何でそんなところに?

「そこにある、とある建物にヤツ(・・)がいます」

……黒幕だね。


「行きましょう。ーーーージェイル・スカリエッティの違法研究所へ!」






「あの……本当に何も分からないんですけど……誰か説明を……」
「あん……?」
「ひぃ!? ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」

to be continued……


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五十九話

次回は更新遅れるかも……。
そして本編、おまけともに滲み出る早足感……すいません。

あと、今さらながら夜ノヤッターマンにはまった。






次回から再び(?)過去編。




あの後、デコ助はリングへと戻り激戦を繰り広げた。

射撃や砲撃で押しまくるハリーに対し、守備に回りながらも要所でダメージとクラッシュを狙うデコ助。

 

「この……しぶてーじゃねーか、デコメガネ……」

「まだまだ……余裕です……ッ!」

 

試合はすでに第三ラウンド。

 

《……体に蓄積しているダメージはエルス選手のが多いようですね》

 

謎の声は……もう解説者になればいいんじゃない?

俺にはよくわからないよ……。

 

『とらいべっかのみぎうではすでにふうさつされているが、ひだりうでだけでもなかなかのはかいりょくだからな……。あのめがねのむすめがかつには、ひだりうでをふうじるしかないだろう』

 

お前もか……。

と、その時、デコ助が動いた。

 

「いいかげんに…………落ちやがれェーっ!」

 

だがそれは、ハリーの左腕により放たれた魔法によりカウンターを受けてしまう。

完全に入ったろ、アレ。決まったか……?

 

《いえ、まだです!》

 

「パニッシャーッ!」

 

謎の声の言葉とほぼ同じタイミングでデコ助が再び手錠の魔法を繰り出し、ハリーを拘束した。

 

「おぉ!」

 

《ハリー選手の勝利への確信、その隙を上手くつきましたね。ですが……》

 

これはもしや?

と、思った直後にハリーは自らを拘束する手錠ーーーーそのチェーン部分を引っ張る。

 

「んんぎぃぃーっ!」

「えええっ!? うそぉーッ!?」

 

当然 、ハリーの方へとデコ助は引き寄せられる。

 

「ハデな砲撃でブチのめしてーが残念ながら弾切れだ! つうわけで……」

 

デコ助は無防備なままハリーの前へと飛んでいき、そしてーーーー。

 

 

 

「オレ式一撃必倒パンチーーーー!」

 

 

 

「……あんなセンスの欠片もない技にやられたデコ助には少し同情するわ」

 

こうして、デコ助の敗北が決定した。

 

 

 

 

 

 

 

「試合前にあんだけハリー挑発したくせに負けてやんの。だっせー!」

「うぐっ……!」

「ま、まぁまぁ……いいんちょも頑張ったんやから……」

 

現在、試合会場のエントランスにてたまたま観戦に来ていたジークと遭遇したところだ。

 

「お前なぁ、あんまそうエロゲ主人公みたいな甘いこと言ってるとーーーー」

「……チャンピオン! お願いがあります!」

「ーーーーほら、面倒くさいことになった」

 

バカかコイツ?

あぁ、バカか。

 

「私を……私をセコンドにしてください!」

「え……えぇっ!?」

 

土下座をするデコ助。

そこまでやるか。

 

「ち、チヒロぉ!」

「知らん。自分で巻いた種だろ」

「チャンピオン!」

 

さ、オレはぶりを買いにいかないとな!

 

「じゃーな、ジーク」

「えっ……えええぇぇぇっ!?」

「お願いします! チャンピオン!」

 

ぶりの照り焼き楽しみだぜー♪

 




おまけ
《襲い来る、新たなる試練 ※委員長視点》

次元運航艦に揺られ、数時間。
とある無人世界にたどり着いた。

「ここに……違法研究所が?」

ガサガサと音を立て、近くの茂みから数体のガジェットが出てくる。
……敵の本拠地だから警備も厳重ってことなの!?

「……コイツら……アタシたちを襲ってきた……」
「とにかく今はガジェットを!」
「そうだね……!」
「誰か……誰か説明を!」






ガジェット倒しながら進み続けるとある建物にたどり着いた。

「あれが……」
「見てください!」

研究所の周りにはガジェットが数えきれないほどいた。
すべてがこちらを向いている。

「気づかれてるわね」
「……行きましょう。隠れても無駄なようです」

ガジェットたちが引き、研究所入り口へと続く道を作る。
その道の半ばまで行った頃だろうか、研究所から一人の見知らぬ少女が出てきた。

「あれは……!?」

to be continued……













次回、本編『ジーク邂逅編』。



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六十話

「なぁ」

「ふも?」

 

とある朝のこと。

いつも通りハリーお手製の朝食を食べていたとき、ハリーが話し掛けてきた。

 

「お前さ、ジークといつ知り合ったんだよ?」

 

ジークと?

 

「なんでまた」

「……いや……気になってな」

 

ふむ……。

 

「確かあれは……一年前の夏だったか。うだるような猛暑日のことだ」

 

……ん?

猛暑日?

 

「あれ……夏にしては涼しかった日だっけ? いや、台風の日……ではないか。あれ? くもりの日だっけ?」

「いやオレに聞かれても……。ていうか、それはいいから経緯を話せよ」

 

……あの時は……そうだ。

暇だったからどこに行くわけでもなくふらふらと散歩してたんだっけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぁ……暇だなぁ……」

 

こうして(アパート)から出てきたのはいいものの……することないなぁ。

 

「あっついし……」

 

快晴だよ。

本当になんで外に出てきたんだろう……。

 

 

 

ーーーーぐにゅっ。

 

 

 

「……ん?」

 

何か踏んだ。

 

「……ん~?」

 

全身真っ黒い、人ひとり分ほどの大きさの何か。

俺の右足が踏んでいる部分ーーーー頭から生える二本の触角(・・)のようなもの。

これはーーーー!

 

 

 

 

「いやぁぁぁぁああああでっかいゴキブリ踏んだぁぁぁぁぁぁぁぁああああッッッ!!!」

 

 

 

 

「う……うぅん…………お腹空いた………………ゴハン……」

「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あむっ…………はむっ……!」

 

あの後、ゴキブリは俺の足にしがみついて『ゴハン…………ゴハン、ください……』と離れなかった。

人の目もあり、とりあえず抱えて自宅へと帰ってきた。

 

「あぐあぐ…………おいしぃぃぃ……!」

 

冷蔵庫にあったもので適当に料理し、恐る恐る差し出すとゴキブリは貪るようにそれを食べ始めた。今ここ。

 

「……最近のゴキブリは食器も使えるのか」

 

こういう(人型)ゴキブリって月だか火星だかにいるんじゃあないの?

なに? ミッド侵略に来たの?

 

「んぐっ……ぷへぁ…………生き返ったぁ……!」

 

人型ゴキブリが飯を食べ終えたようだ。

 

「おーきになぁ。ほんまに助かったよ」

「えっ、あっ、いや……うん」

 

やっべぇ……俺……今、異種族と交流してるよ……!

言葉通じるんだ。すげぇ。

 

「えっと……ゴ……あなたのお名前は?」

「あ、そーやった! 自己紹介がまだやったね!」

 

オホン、とわざとらしく咳払いをして人型ゴキブリは姿勢を正した。

 

 

(ウチ)はジークリンデ・エレミア。『ジーク』でええよ?」

 

 

 

 

ーーーーこれが、俺の人生最大にして最高の友人(おもちゃ)との出会いの瞬間だった。

 

……あ、いや、友ゴキか。

 

 




おまけ
《襲い来る、新たなる試練 ※委員長視点》

「あれがアンタたちの言っていた黒幕?」
「……おそらく」

ツインテールの娘の質問に妹さんが答える。
そう、なんだ……あれが。

「でも……兄様の交遊関係であんな娘に見覚えはありません」

……は、把握してるんだね。

「……誰か彼女を知っている方は?」
「アタシは知らないわ」
「わ、私も……」
「わっ、私も知りません……というか誰かこの状況の説明を……!」

すると、件の少女がゆっくり歩み出てくる。
そしてーーーー。


「……キュルキュル」


「へっ……?」

何……?

「そのしゃべり方は……まさかっ……!?」

妹さん……心当たりがあるの!?



早読み(はやよみ)ちゃん……なんですか……!?」


to be continued……



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六十一話

現代に戻りまーす。
久しぶり(かな?)にあのお方が。





さて。

俺は今、ダールグリュン邸……ヴィクターの部屋に来ている。

なぜかと言うと……。

 

「ふえええぇぇぇぇん…………チヒロぉぉ…………っ!」

「あーはいはいキャラ崩れるから泣き止めよ」

 

これである。

 

「だって……だってジークがっ…………私のこと『もう知らん』ってぇ……!」

「いや自業自得だろ」

 

まぁ、つまりはインターミドル開会式でのこと。

俺の葬式(ドッキリ)がバレてジークに絶交されたのだ。

 

「ふぇぇぇぇん…………!」

「やれやれ……」

 

ベッドに座る俺の腰に抱き付きワンワン泣くヴィクター。

 

「でも……確かにかなり怒ってたからなぁ。お前、何て言い訳したんだ?」

「ぐすっ…………言い訳なんてしませんわ………………私は腐っても誇り高き雷帝の血を引く者、全てを正直に話しましたわ。…………まぁ、私は腐ってなどいませんけど」

 

お前最後のそれ本気で言ってる?

……まぁいいや。

 

「じゃあ言い方が悪かったんじゃねぇの? 何て言って説明したんだ?」

「確か……」

 

ヴィクターは目元の涙を指で拭って、

 

 

 

 

 

 

「『ジャンジャジャ~~ン!! 今明かされる衝撃の真実ゥ。

いやぁ本当に苦労しましたわ、チヒロの死を悲しむ友人演じて湧き上がる笑いを堪えることまでしてさあ。しかし貴女は単純ですわねェ、私の口から出たでまかせを、全部信じてしまうんですからねェ! 楽しかったですわァ、貴女へのドッキリはァ~~!!』って言おうとしたら『ジャン』の部分でぶん殴られましたわ……」

 

 

 

 

 

 

「いやむしろその段階で殴られて良かったと思うぞ」

 

それ言い切ってたら絶対にガイストされてたはずだ。

俺なら間違いなくコイツん家に火炎瓶とか投げ込むと思う。

 

「……つかさ、俺を共犯者として売って怒りを分散させりゃ良かったじゃん。なんでやらなかったんだよ?」

「……だって…………チヒロは大切なお友達ですもの…………」

 

…………えっ。

 

「大好きな貴方を…………売ってまで助かりたいとは思いませんわ…………ぐすっ……」

 

……べっ、別に罪悪感とか湧いてねェし。

湧いてないけど……。

 

「ま、まぁ? 仲直りを取り持つぐらいならしてやってもかまわないし?」

「えっ…………ほ、ほんとうですの……っ!?」

 

ヴィクターはパッと顔をあげて、涙で濡れたその瞳を俺に向ける。

それを指で優しく拭ってやる。

 

「おうよ! このチヒロさんに任せておきなさい」

「あっ……あぁぁ……! チヒロっ、大好き! 愛してますわっ!」

 

ふっ、そうと決まれば善は急げ。

 

「じゃあ俺今からジークんとこ行ってくるわ!」

「くれぐれもっ……くれぐれもよろしくお願いしますわ……!」

「任せとけっ!」

 

こうして俺はダールグリュン邸から出ていった。

 

 

後日、俺の仲介でジークとヴィクターはなんとか仲直りできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くくく…………ふはははははははっ!! チョロい! チョロすぎですわっ! あんな嘘泣きに騙されて……笑いが止まりませんわぁ……! まぁこれでジークとの仲直りは確定したようなもの…………次はどうやって遊びましょうか。あぁ、そうですわ。チヒロでも遊びましょう! きっと楽しいですわ! ……ふふふ、絶対に手放したりしませんわよ、私の大切な大切なお友達(オモチャ)たち……♡」

 

 




今日も今日とて邪神様だった。
まぁ……ある意味……ヤンデレ?



おまけ
《ヨメンジャーズ・アッセンブルド! ※委員長視点》

「早読みちゃん……?」

誰なの……?

「……私の家に行く前にした話の内容を覚えていますか?」
「えっ? えっと……篠崎くんと妹さんがPCに強いってやつ?」
「それです」

……それと何の関係が……!?

「あの時言いかけたこと……兄様の小学五年生の夏休みの自由研究、その作品こそが『早読みちゃん』です」

……作、品?

「某音声ソフトを使って遊んでいる時のことでした……兄様がいきなり『早口の女の子ってさぁ……なんかイくね?』と言い出して作った女性型……より正確に言えば少女型の人工知能(AI)です」

……小学五年生で人工知能?

「当初は『早口ちゃん』という名称だったのですが、彼女の対話用ソフトの根幹に使われたものの名前から『早読みちゃん』に変更されました」

……それって『棒よーーーー

「結果は成功。完璧な人工知能を作り上げたものの、あまりにも早口すぎて『キュルキュル』という音にしか聞こえないポンコツが出来上がりました」

ポンコツ……。

「私たちの成長と共にその存在は忘れられていきました。……恐らくウチの物置に今もある昔使っていたPCからどうやってか出てきたのでしょう……そして様々なものにハッキングを仕掛けた」

……そっか。
それでこの違法研究所にたどり着いてあの(ボディ)を手に入れたってことなんだ。

「恐らくここはクローン関係の研究が行われていたんでしょうね。それを使った」

……でも、なんで私たちに襲い掛かってきたんだろう?
それが分からない。

「……義姉様(ねえさま)、お喋りはここまでのようですよ。来ますっ!」

早読みちゃんが手を上げて、勢いよく降り下ろす。
周りにいたガジェット軍団が一斉に襲い掛かってくる。

「仕方ないわねぇ……一時休戦よ!」
「うん! お願いします!」
「我々は四人、あちらは数千の軍団。団結しなくちゃ勝ち目はありませんよ!」
「ひぃぃ……! 誰か、説明してくださいぃぃっ……!」

こんなに心強い仲間がいるんだもん。
負けないよ、早読みちゃん!


to be continued……



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六十二話

時は飛んで邪神VSトンファーちゃんの試合。


……の直後。




ジークとヴィクターの仲直りから数日後。

今日はヴィクターの試合を観戦しに来ていたのだが……そこで面白いヤツを見付けた。

 

「いいねぇ……」

 

それはヴィクターの対戦相手で名前は……名前は……えっと。

 

《シャンテ・アピニオン選手ですよ》

 

そうそう。さんくす、謎の声。

つい先ほどヴィクターの勝利という形で決着がついた。

中々にいい試合だったぜ……!

 

「ヴィクター遊んでたけどな」

《えっ? 苦戦してませんでしたか、あの方》

「いや、完全に小バカにして遊んでた」

 

苦戦しているように見せかけて、後々一撃で叩き潰して愉悦に浸る。

その為だけにあんなくっさい演技してたんだよ。

俺は見逃さなかったぞ、アピニオンちゃんを叩きつけたときのあの笑みを。

 

《そうなんですか…………あの、ところで》

「ん? なんだ?」

《私たちはどこに向かっているんですか?》

 

それは…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、やって来ましたアピニオンちゃんのいるお部屋! ……の前」

《……まさかとは思いましたが》

 

いやいやいや、あんな面白いヤツはお近づきにならなくっちゃ。

 

「友達増えるのはいいことだろ?」

《……まぁ、そうですけど……本当に“トモダチ”ですかね、ソレ》

 

ちゃんと友達(おもちゃ)に決まってんだろ。

よぉし……突ーーーー

 

 

 

「こんにちは」

 

 

 

ーーーー撃しようとしたら、後ろから声をかけられた。

なんだよ……いいところで。

 

「あーはいはい、こんに、ち……?」

 

振り向いた先にいたのはシスターの格好をした金髪の女性。

思わずドキッとしてしまうほど美人だ。胸も大きいし。

だが、俺が目を引かれたのは容姿でもなければ胸でもない。

それは……

 

 

 

「…………あの………………デコに米つぶ着いてますよ……?」

 

 

 

それもカペカペの。

えっ、何? どうやったらそんなとこに着くの?

 

「ふふっ、知ってますよ?」

「……はい?」

「知ってて着けてるんです」

 

………………どうしよう。

なんかおかしい人に捕まったみたい。

 

「はじめまして、ですよね? 私はカリム・グラシアと申します」

 

これは……自己紹介しなくちゃいけないカンジ?

こういう人とはあんまり関わりたくないんだけど……。

 

「あー……っと、俺は……」

「篠崎チヒロさんですよね?」

 

変人がすでに俺を知っている件。

 

「……な、何で」

「妹さんにお世話になっているんです。よくあなたのお話を聞いていますよ。お姿は写真などで何度か」

「うちの妹の知り合いですか?」

「ええ、まぁ。そんなところです」

 

うちの妹が変人の友人だった件。

お兄ちゃん悲しい。

 

「あー、グラシアさんは」

「どうぞ“カリム”とお呼びください」

「……カリムさんは」

「“カリム”と。呼び捨てで」

 

できるか!

 

「カリム……(さん)……はなぜここに?」

「この中にいる選手は私の職場の者なんですよ」

 

……それって。

 

「シャンテ・アピニオンちゃん……?」

「はい、そうです。チヒロ様はなぜここに?」

 

……………………チヒロ、“様”……?

 

「えっと、アピニオンちゃ……選手に会いに。あの、チヒロ“様”って……」

「あら、シャンテのお知り合いなのですか?」

「えっ、あ、いや違います! さっきの試合を見て、“面白いヤツだなぁ、話してみたいなぁ”って思って。……それより、あの」

「まぁ、それは素敵です! ぜひ!」

 

コイツまったく聞いてねぇ……!

 

「シャンテにお友達ができるのね!しかもそれがチヒロ様だなんて……素敵! そうと決まれば早速参りましょう!」

「えっ、ちょっ、待っ……!?」

 

カリムさんは俺の手を強引に引いて、部屋の扉を開けた。

 

 




おまけ
《ファースト・コンタクト ※カリム視点》

それはある会議から帰ってきたときのこと。
私の部屋に誰かがいた。

「やぁ……こんばんは」
「……こんばんは。どちら様でしょうか?」

それは中学生くらいの少女だった。
だが油断はできない。あくまでも最大限に警戒して、けれども穏やかに。

「……そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。」
「自分の部屋に知らない人がいたら普通は警戒します」

私の言葉を聞いても少女は静かに立っているだけだった。
いったい彼女の目的は……。

予言者の著書(プロフェーティン・シュリフテン)……」

なッ……!?

「君は……普通の人間にはない特別な能力(レアスキル)を持っているそうだね?」

何……これは……!?
この子の言葉を聞くたびに……心がやすらいでいる……!?

「ひとつ……それをわたしに見せてくれるとうれしいのだが」

そう言って彼女は近付いてくる。
う、動けない……!

「……(あー、肉の芽切らしてるんだった。)(うーんと…………あ、これでいいや)

彼女はぼそぼそと呟いて服についた何かを取り、それを私の額に着けた。
その瞬間だった。


(あっ…………!)


頭が。
脳が。
何かに支配されていくのを感じた。

「カリム・グラシア。聞こえる?」
「……………………はぃ」

脳が蕩けてしまいそうだ。なのに妙に清々しい。
あぁ……私は……。

「これからは……その能力と地位を私の兄様を守るために使いなさい」
「…………は、はひぃ……!」
「よく働けば……ご褒美をあげましょう」

ご、ご褒美……!?

「今以上の安らぎと快楽をあなたに」
「い、今以上…………!?」

あぁ……!
あああぁぁぁ…………!

「貴女様とそのお兄様に私の一生を…………一生を捧げますぅぅぅ……!」



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六十三話

忙しくて感想返信が遅くなったりします。申し訳ないです!





「騎士カリムっ!?」

「なんでっ??」

 

部屋に入って聞いた第一声。……声は二つだけど。

部屋の中にいたのはアピニオンちゃんと水色の髪のシスターの二人だった。

 

「ていうか……騎士?」

「はい。あなたとあなたの家族を命を懸けて守る騎士です」

 

うわー……やっぱヤバイ人だよ、この人。

金髪にまともなヤツはいないのか……ただしヴィヴィオちゃんは除く。

 

《わ、私はまともですよっ!?》

 

存在自体がまともじゃねぇよ、お前(謎の声)は。

ていうか金髪なのかよ。

 

「ん? 騎士カリム、その子は?」

 

アピニオンちゃんに付き添っていた水色の髪のシスターが言った。

 

「この方は篠崎チヒロ様。我ら聖王教会がその全てを睹して守るべきお方です」

「は、はいぃっ……!?」

「………………篠崎、チヒロ……? ……あれ……?」

 

何言ってんのこの人。

カリムさんの言葉に固まる水色シスター。アピニオンちゃんは……何か俺の方見て固まってる。

 

「あぁ、あと彼のご家族もです」

「待ってください、騎士カリム! 意味がよく……!」

 

大丈夫だ、水色シスター。

俺にもまったくわからん。

 

(アイツ……間違いない、あの時の…………!)

「ん? 何か言ったかー、シャンテ?」

 

……やっぱりアピニオンちゃんは俺のことを見ている。

なんだよ?

 

「いいですか、セイン。我々は彼の一族を崇め奉るべきです。勿論、聖王様のこともありますが……」

「アンタ“聖王”教会だろうが。ウチじゃなくて聖王サマ敬えよ」

 

《う~ん……ある意味、あなたを敬うことは()()と同義になるかもしれませんね》

 

意味わからんわ。

どういうことだよ。

 

「あ、あー……チヒロって言ったっけ?」

「えっ、あ、はい。そうっス」

 

ワケわかんないことをのたまうカリムさん。

俺を見続ける……というかもはや睨むような領域にまでいってるアピニオンちゃん。

そんなカオスな状況を打破すべくか、水色シスターが話かけてきた。

 

「私はセイン。だいたい想像つくと思うけど、聖王教会のシスターだよ」

「あ、どうも。……変な髪の色ですね」

「……そ、そういうの、本人の前で言っちゃうかなぁ……普通」

 

最近やったゲームで水色の髪のキャラに『不自然な髪の色』って言ってるキャラがいたから、なんか影響されて俺もそんな風に感じるようになっちゃって……………………園原コラァ。

 

「で、チヒロはいったいなんでここに?」

「あー……さっきアピニオンちゃ……彼女の試合を見まして。ちょっと喋ってみたいなぁと思って来ました」

 

そう言いながらアピニオンちゃんを指差す。

……嘘は言ってないぞ。

 

「あ、あたし……っ!?」

 

何で赤くなってんの?

 

「実は対戦相手のヤツと知り合いで」

「え? あのお嬢様?」

 

アピニオンちゃんに近付く。

 

「お前、面白いヤツだなぁ! 負けたけど、中々いい試合だったぜ!」

「おぉ! よかったな、シャンテ!」

「あ…………ぅう…………っ!」

 

さらに赤くなるアピニオンちゃん。

 

「……なぁ、チヒロ」

 

セインさんが小声で話かけてきた。

 

「ん? 何すか、セインさん」

「実はこいつさ、さっきまで拗ねてたんだよ。このまま一緒に褒めちぎって機嫌直してくれない?」

 

……まぁ、お友達になる(オモチャを手に入れる)には必要なことか。

 

「オッケーです。任せてくださいよ」

「恩に着るよっ!」

 

ーーーーこのあと、恥ずかしさで逃げ出すまでセインさんと二人でアピニオンちゃんを褒めちぎってやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ、初めてあの方に出会ったときですか? 私の部屋の窓際に静かに立っていたんですよ。心の中心にしのびこんでくるような氷つく眼ざし、黄金色の頭髪、すきとおるような白いハダ、子供とは思えないような妖しい色気……」

「まだやってたのかよ、アンタ」

 

 

 




おまけ
《ヨメンジャーズ・アッセンブルド! ※委員長視点》

全てのガジェットを破壊した。
あとは……

「あなただけですよ、早読みちゃん!」

全員で構える。

「……キュルキュルキュル」

……な、何言ってるかわかんない!
わかんないけどとりあえず戦うながれなのはわかった!

「来ますっ!」





戦っているうちにだんだんとわかってきた気がする。
BL〇ACH読んでてよかった。

「……キュルキュル」

この娘は……寂しいんだ。
篠崎くんに作られて……けれど、その存在を忘れられてしまって。

「…………キュルキュルキュル」

早読みちゃんの攻撃を受けた篠崎くんの妹さんは気を失っている。ツインテールの娘も、タスミンさんも。
彼女を救えるのは私だけなんだ……!

「ねぇ…………私の話を聞いて!」



to be continued……
※早読みちゃんの説得は成功しました。




おまけ、今後の予定(現在決定しているもの)。

六十四話→ヨメンジャーズ・アッセンブルド! エピローグ
六十五話→アフターサイドストーリー1・『???』
六十六話→アフターサイドストーリー2・『篠崎チヒロ&ぐにゅ子』
六十七話→アフターサイドストーリー3・『後輩ちゃん&???』
六十八話→???

※あくまで予定です。変更があるかもしれません。


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六十四話

今回もいつかと同じ『静』なる回。
ハイエロファント・グリーンです。半径20メートルです。


つまり……こんなこと言っちゃアレだけど、笑える部分が少ないかも。




アピニオンちゃんで遊んだあと、とあるアナウンスが流れた。

なんでもヴィヴィオちゃんが試合のアクシデントで医務室に運ばれたとか。

 

「ここか?」

 

先ほどスタッフに聞いた部屋の前に到着。

……とりあえずノックしてみよう。

 

『はーい!』

 

ノックしてすぐに返事があった。

 

「失礼しま~す……」

「あぁ、チヒロくん」

 

中にいたのはなのはさんだった。

ベッドではヴィヴィオちゃんが眠っている。

 

「ヴィヴィオちゃん、大丈夫なんですか?」

「うん。軽い脳震盪(のうしんとう)と体力と魔力の消耗による一時的な昏睡だって」

 

……それは本当に大丈夫なのか?

 

「うん、知り合いの医者に診てもらったから」

 

ヤブ医者じゃねえのか、そいつ。

 

「ま、まぁなんにせよ、無事なら良かったです」

「うん。ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくするとヴィヴィオちゃんが目を覚ました。

 

「ヴィヴィオ……起きた?」

「ヴィヴィオちゃんおはよー」

「ママ……クリス……? それに先輩まで……」

 

ヴィヴィオちゃんはゆっくり周りを見回す。

 

「そっか……わたし負けたんだ」

 

ヴィヴィオちゃんはかなり落ち込んでいるようだ。

負けちゃったのか……頭を撫でておこう。

 

「あ……えへへ」

 

微笑んでくれるも、その顔にはやはり落ち込みの色が見られる。

誰だ、俺の可愛いヴィヴィオちゃん(天使)を負かしたヤツぁ。

 

「わたし……いい試合できてた?」

「うん。会場も盛り上がってたよ。格好よかった」

「そっか……」

 

……俺、見逃しちゃったんだよなぁ。

 

「そういえばヴィヴィオちゃんの対戦相手って……」

「あぁ、それは……」

 

 

ーーーーコンコン。

 

 

ヴィヴィオちゃんが対戦相手について話そうとした瞬間、扉がノックされた。

入ってきたのは……

 

「ぐすっ…………すいません、なのはさん…………ボクのせいでヴィヴィオさんがーーーー」

「ヴィヴィオちゃんいじめたのは貴様かァァァァアアアアッ!!!」

「えっ、えぇぇぇっ!? せ、先生っ!?」

 

 

 

 

 

 

ミウラちゃんに襲い掛かろうとしたした直後、なのはさんとヴィータさんに止められた。

ヴィータさんはミウラちゃんのセコンドらしく、ヴィヴィオちゃんの安否確認の付き添いに来ていたらしい。

 

「な、なんでヴィータちゃんはチヒロくんの膝の上に座ってるの?」

「コイツはあたしかミウラを抱えてりゃ大人しくなるからな」

「……ごめん、全然わかんない」

 

今はリニスがいるからミウラちゃんはいらないし。

ヴィータさんは……賛否が別れますな。

 

「で、ヴィヴィオの様子は? ……って、聞くまでもないか」

 

いまだにぐずるミウラちゃんをヴィヴィオちゃんがあやしている。

……ミウラちゃんのが年上だよな?

 

「あっ、そうだ……ミウラさん! わたし、リオの試合を見に行かなきゃなんです!」

「あ……えと……?」

「一緒に見に行ってもらえませんか?」

 

そして気遣いもできる!

 

「あ……先輩もご一緒にどうですか?」

 

俺の存在も忘れてない!

 

「行く!」

「おう。行ってこい」

「しばらく見ないうちにヴィータちゃんはいったいどこのポジションに着いたの……?」

 

 

 

 

 

 

「ところで『リオ』って誰?」

 

ヴィヴィオちゃんとついでにミウラちゃんを支えながら試合会場へと向かう廊下を歩いている。

 

「えっ!? り、リオですよぅ! リオ・ウェズリー」

「……んん? ミウラちゃん知ってる?」

「ぼ、ボクは知ってますよ……?」

 

まぁいいや。

 

「で? 対戦相手は?」

「あ、えっと……『砲撃番長(バスターヘッド)』のハリー選手です!」

「えっ? ハリーなの?」

「せ、先生の知り合いなんですか?」

「あー……まぁな」

 

マジかぁ。

 

「じゃあ……ヴィヴィオちゃんには悪いけど、ハリーが勝つな」

「……それはまだ分からないですよ! リオだって強いんですから!」

 

うーん……ヴィヴィオちゃんのチームメイトを想う気持ちはわかるけど……。

 

 

 

 

ーーーーしかし、現実はやはり非情。ハリーの勝利で幕を閉じた。

 

 




ヴィヴィオちゃんのチームメイト:私の出番ッ!?


おまけ
《ヨメンジャーズ・アッセンブルド! エピローグ ※委員長視点》

戦いを終え、早読みちゃんの説得に成功した私たちはミッドチルダに戻ってきていた。

「ったく、ワケわかんないわよ。気がついたら戦いは終了してるわ委員長(アンタ)早読みちゃん(コイツ)が抱き合ってるわ」
「あ、あはは……」

苦笑いしか出てこないよ……。
件の早読みちゃんは私と手を繋ぎ、キョロキョロと辺りを見回している。

「さて、皆さん」

妹さんが私たちを呼ぶ。

「今回は本当にお疲れさまでした」
「お、『お疲れさまでした』じゃないですよ! お願いですから私にも説明を……!」
「黙ってろ」
「は、はひぃぃ……!」

……タスミンさんは妹さんに何かしたのかな。

「さてーーーー」
「ちょっと待ちなさい」

妹さんが何かを言おうとしたのをツインテールさんが止めた。

「何を話すつもりなのかは知らないけど、アタシはここで抜けさせてもらうわ。アタシは別にアンタたちの仲間になったわけじゃないんだから」

ツインテールさんは私の方を見た。

「アンタとはいずれ決着をつける。チヒロは渡さない……ってべべべ別にチヒロのことなんてどうも思ってないんだから!」

それだけ言ってツインテールさんは行ってしまった。

「……はぁ、なんだかよく分かりませんでしたが……私たちも帰りましょうか」
「な、何か言おうとしていたんじゃないんですか?」
「色々と疲れました。また後日にします」

じゃあ……解散かな。

「あ……そうだ」

タスミンさんが私を見た。

「妹さんはお元気ですか?」
「あ……う、うん。元気だよ」
「……義姉様(ねえさま)、妹いるんですか?」
「うん。双子なんだ」

よろしく言っておいてください、とタスミンさんが言う。

「じゃあ義姉様、私はこの方を送り届けなくちゃあならないので」
「ひっ! ひ、一人で帰れます!」
「あぁん……!?」
「……一緒に帰りますぅ」

妹さんとタスミンさんも行ってしまった。

「じゃあ……私たちも帰ろうか」
「キュルキュル!」


ーーーーこうして、私たちの初共闘はあっけなく終わった。




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六十五話

シリアス……ではない?

一応オリジナル展開になるのかな?



疲れがピークを越えて変なテンションで書いてます。
多少おかしな所があっても見逃してくださいオナシャス!




「よっ、ハリー。お疲れ!」

「ん? おぉ、チヒロ」

 

ハリーVSリオちゃん(?)の試合が終わったあとヴィヴィオちゃんたちと別れた俺はハリー(とその取り巻き)に合流。

 

「試合見に来てくれたのか?」

「あぁ、ちゃんと見てたぜ! お前が小学生ボコってたとこ」

「……ま、間違っちゃいねーけどさ……その言い方はやめてくれよ」

 

ん? 何が?

 

「はぁ……いや、いいよ。今日は疲れたからツッコむ気力もねー……」

「何々? お疲れ?」

「あぁ……あのちびすけかなり手強かったからなぁ……」

 

そうなのか……。

 

「あー……帰ってさっさと寝よう……」

 

いつもの元気がない。

相当疲れてるんだなぁ、ハリー。

 

「そっか……じゃあファミレス行こうゼ!」

「お前、俺の話ちゃんと聞いてた?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……暇だ」

 

ハリーとファミレスへ行き(取り巻きーズは帰った)飯を食った後、ハリーは眠いと行ってアパートに帰ってしまった。

 

「多分、ヴィヴィオちゃんたちも疲れて寝てるだろうし……」

 

というか夜だし。

普通に小学生とは遊べる時間じゃないし。

 

「ん?」

 

あら、通信だ。

誰からだ? …………ジーク?

 

「よう。どした?」

『あっ……チヒロ? 今なにしとるん?』

「暇してるとこ」

『そうなんや。あんな、良かったら…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、チヒロ! いらっしゃい~」

「ん、邪魔するぜ。むしろしまくるぜ」

「あはは、チヒロならえぇよ!」

 

通信でジークにテント(住み家)に来ないかと言われ、のこのこやって来ました、ワタクシ。

 

「あ、お茶のむ?」

「お構え」

「……飲むってことやね?」

 

しっかし相変わらず狭いな、ここ。

まぁテントだから仕方ないけどさ。

 

「はい、どうぞ」

「………………おいコレ何て茶葉だ?」

 

出されたお茶は色が薄く、香りも青臭い。

 

「知らへん。その辺に生えてる葉っぱやし」

「オーケー、とりあえず歓迎されてないってのはわかった…………戦争だコラ」

 

こいつ……調子に乗っているんじゃあないか?

ここらでそろそろ人間様とゴキブリどっちが上かハッキリさせようぜ。

 

「……チヒロ、ちょっと(ウチ)の話聞いてもらっていい?」

「……何? 真剣な話?」

「…………うん」

 

そっか……この振り上げて『ガオー』なポーズしてる両手どうしよう。

元〇玉でも生成するか?

 

「オラに元気を…………って、ジークよ。台詞の途中で抱きついてくるなよ」

「ん……」

 

何なのコイツ?

なんかいつになく汐らしいというか……やり辛いことこのうえない。

 

「明日、(ウチ)試合なんよ」

「そうなのか」

 

知らんかった。

 

「……ほんでな、対戦相手がちょっと」

「対戦相手? 嫌いなやつとか?」

 

むしろチャンスじゃね?

公衆の面前で叩きのめせるんだから。

 

「ちゃうよ。なんて言うか、昔…………本当に大昔に色々あったんよ」

「……んーと、あれか。ご先祖様がどうのってやつ?」

「まぁ、そんなとこや」

 

コイツにはご先祖様の記憶があるんだとか。

それ関係のこととなると……わからん。てか興味がない。

 

「対戦相手の娘と(ウチ)は似とる。記憶に縛られて、迷ってる。だからあの娘は試合に勝っても笑わない」

「……で? 結局何なんだよ? それを再認識させられるのが嫌なのか?」

「いや、ちょっとちがくて……」

 

じゃあ何だよ。

ぐだぐだと面倒臭いなぁ。

 

「きっとあの娘は、少なくとも今のままじゃ(ウチ)には勝てへん。それであの娘の()()()を壊してしまうのが恐いんや」

 

……はあ?

 

「例えば自信。例えば誇り。もちろん、他の選手にだってそれはあるはずや。だけど……先祖の記憶が、数百年の歴史があるそれとは重みが違う」

 

ジークは俺の胸に顔を埋める。

 

「できれば救ってあげたい。同じ記憶に縛られる者として、その苦しみはよう分かる。でも、(ウチ)にできるのは『壊す』ことだけや」

 

ユーリと同じような台詞だな。

……………………ん? ユーリって誰だ?

 

 

 

 

(ウチ)は……どうすればいいんやろか。どうしてあげればいいんやろか」

 

 




途中で切れてないよ! 今回はここでおしまい。
次回はついにストーカーVSゴッキー戦。

結局、ジークは答えを出せずに試合に挑むことに……。
(※チヒロはそのままお泊まりしました。)


おまけ
ASS(アフターサイドストーリー)・真の黒幕 ※パパン視点》

「もう、早読みちゃんてば……」

自宅のパソコンからチーくん(チヒロ)が作ってくれた『距離? 何それ美味しいの? どこまでも追尾するドローン子ちゃん』を通して早読みちゃんの行動を全て見てたけど……。

「やっぱりポンコツはポンコツかぁ……」

せっかく倉庫から見つけて自由を与えてあげたのに……面白くないの。

「しかもボク、『チーくんをイジめて』って言ったのに」

なんで標的間違えるかなぁ……本当にポンコツなんだから。
あーあ、また何か違うこと考えないとなぁ。

「……ふふっ」

デスク上のチーくん画像を見て、思わず笑みが溢れる。

「チーくん、大好きだよ。もっともっとイジめてあげるから……待っててね?」








パパン:かつてBIG GESS(ビッグ・ゲス)と呼ばれた伝説の英雄(?)。



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六十六話

キレるチヒロとキレるジーク。

Q:ぶつかり合った先に手にいれたものは?




「おい、準備できたか?」

「はわっ!? ち、ちょっと待って!」

 

ジークの悩みを聞いた翌朝。

ぐーすか寝続けるジークを叩き起こし、今はインターミドル会場へ向かう準備をしている。

 

「っと、そうだ。ジーク、風邪とか引いてないよな?」

「えっ、うん。体調は万全やけど……」

 

そうか、よかった。

 

「いやぁ、昨日お前が寝た後なんだけどさ。付き合ってもいない男と(いちおう)女が一緒に寝るのはちょっとマズいと思ってな」

「……だから(ウチ)外で寝てたんや」

 

そうそう。

 

「お前だけテントの外に出しといたんだ。俺なりの気遣いってヤツさ!」

「あぁそれはドーモおーきになー…………ッ!」

 

なんか投げやりじゃね?

もっと感謝してくれていいんだよ?

 

「何考えとんの!? (ウチ)だって女の子やで!?」

「うっせー! テメーらみてーにインターミドルだとかストライクなんちゃらだとか汗臭い青春送ってるバイオレンスの塊なんか“女の子”じゃあ断じてねーッ!」

「な、何やてッ!?」

 

お前こそ何なんだよ!

もっと甘酸っぱい青春はねーのかよ! サブタイは“次世代型脳筋少女育成中”かよ!?

 

「ならインターミドル終わったら二人でどこかに出かけようや! (ウチ)やってしっかり“女の子”だってこと教えたるわッ!」

「上等だゴキブリッ! テメーその約束忘れんなよッ!?」

「ゴキッ……!? チヒロこそ忘れないでやッ!」

 

忘れてたまるか!

お前らバイオレンスどもを“女の子”とは認めない絶対に! ただしヴィヴィオちゃんは除くッ!

 

「……ん? あれ?」

「何だよ、怖じ気づいたか?」

(こ、これって……まさか、)(デート!? デートなんか!?)

 

何か真っ赤になった。

しかも小声で何か喚いてる。

 

(ひっ……ひゃぁぁぁあああッ!?) (勢いでデートの約束してもうたぁ……!)

「……何? あんだって?」

「にゃっ……なんでもにゃい……!」

 

猫になってるぞ、ゴキちゃんや。

 

「……まぁ、いい。この件は出かけるときに白黒させようぜ。それより行くぞ、遅刻する」

「う、うん……あ……ち、チヒロ!」

 

あんだよ?

 

「そのぅ…………か、会場まで……手、繋いでええ……?」

 

……昨日の不安がまだ残ってんのか?

仕方なねえな。ま、でも……友ゴキだしな。

 

「……ん、ほれ」

「あ……! えへへ…………お、おーきにっ!」

 

 

 

「さて、イチャイチャするはその辺りでやめて貰っていいかしら?」

 

 

 

「ひっ!?」

「ん? おぉ、ヴィクター!」

 

いつの間に。

 

「ジークを迎えに来たのですが…………なるほど、察しましたわ」

 

何をだよ。

 

「いつまでも振り向いてくれないチヒロにジークの欲望が爆発、つい拉致ってしまった……と。ファイナルアンサーですわ」

「正解デスワ」

「正解やないよ!?」

 

ジーク……ノリが悪いデスワ。

 

「で、迎えに来たんだよな? ならお言葉に甘えて……」

「あら? あなたは走ってきなさい」

「……俺、泣いちゃうよ?」

「エドガー。写真と動画の準備を。あらゆる角度からの撮影を頼みますわ。あぁ、あと白米をどんぶりで。おかわりの準備もしておきなさい」

「貴様は殺すッ! 絶対にッ!」

 

何て言うか……この感じ久しぶりだな。

 

「ぷっ……あははっ! なんや、久しぶりな感じや。(ウチ)とチヒロとヴィクター、三人でこんなバカするの」

 

お前もそう思うか、ジークよ。

だがな?

 

「バカはお前だ。お前だけだ」

「馬鹿はジークですわ。ジークだけ」

「な…………ッ!?」

 

このあと再びキレたジークに襲われ、ヴィクターと二人で迎撃に入った。

 

 

 

ーーーージークは終始笑顔を浮かべ、昨日の暗い表情はまるで嘘のようだった。……よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの……皆さま、遅れますよ?」

「黙りなさい、駄犬(エドガー)

「黙れ、駄犬(エドガー)

「ちょぉ静かにしとって、駄犬(エドガー)

 

 

「……くすん」

 

 




A:おデートの約束。


おまけ
ASS(アフター・サイド・ストーリー)・その頃、諸悪の根元は…… ※チヒロ視点》


「完成したぞッ!」

興奮を抑えきれず、そう叫ぶ。

『……いきなりなんだ?』
「おぉ、ぐにゅ子! コイツを見てくれ!」

指をパチンと鳴らす。
それに反応して俺の後ろからゆっくりと『あるモノ』が歩み出る。

『だれだ、そのようじょは?』
「フフン、俺が作りました!」
『…………は?』

驚いているな。よしよし。

『……だ、だれとだ? とらいべっかか?』
「いや俺一人で」
たんいせいしょく(単為生殖)だと……!?』

……何だか話が食い違ってるようだ。

「こいつは俺が作った高性能アンドロイドなんだよ」
『…………あぁ……………………なんていうか、おまえにはいつもおどろかされる』

だろう!

『……で? どのへんが“こうせいのう”なんだ?』
「よくぞ聞いてくれた! お前、“生命(セフィロト)の樹”って知ってるか?」
『まぁ、しってはいるが……』
「こいつにはそれぞれ異なった思考パターンを持つ十個の人工知能(AI)を入れてあるんだ。それらを二十二個の小径《パス》で直接繋いである。視覚モニターから入った情報を瞬時に判断、十個の人工知能(AI)がそれに対する“最善”を導き出す。言うなればこいつは会議室みたいなもので、何かががあるとそれに対してコンマ数秒の会議が行われるんだ」

人工知能(AI)小径(パス)、配列が“生命の樹”に似ていることから俺はこれをセフィロト・システムと名付けた!

『すごいな。そのしすてむじたいがほんとうにひつようでかついみがあるのかはさておき、すなおにかんしんした』
「だろうだろう! 誉め称えなさい!」
『だが……ふたつだけぎもんがある』

なんだい?
なんでもきいて?

『かのじょはなんでつくられたんだ?』
「え? ウチの家政婦に」

むしろそれ以外に何が?

『そうか……ならもうひとつ。……そのからだ(ボディ)はどうした?』
「………………………………あー、ほら。お前が研究してた黒い植物の細胞で、ちょろっと」(※五十七話参照)
『ぬすんだのか?』
「えっ」
『わたしのけんきゅうをぬすんだうえにあくようしたのか?』

別に盗んでないし!

「そもそもまだ未完成だったじゃん、お前の研究!」
『おまえ……らすぼすまえでせーぶしていたげーむをだれかにかってにくりあされたらおこるだろう!?』
「手の届くとこに置いとくのが悪い!」
『もういい! じっかにかえらせてもらう!』

あーもう!

「こいつはあの黒い植物から生まれたんだ! 言うなればお前の妹だぞ!」
『……いも、うと………………だと……!? それをはやくいえ! って、おい! かのじょ、はだかじゃないか!』
「えっ!? いやまだ出来たばっかで……」
『ばかもの! かんせいするまえにかっておけ! いますぐかいにいくぞ、わがいもうと・せふぃのふくを!』
「“セフィ”? 生命の樹(セフィロト)だから? 安直じゃね?」

俺とぐにゅ子は仮称セフィの名前を議論試合ながら、セフィの服を買いにいくことになった。








『……セフィロト・システム起動。マスター認証……完了(コンプリート)任務(ミッション)内容確認……マスター・チヒロ(ご主人様)の日常生活の補佐。検索…………任務遂行上の障害を発見。任務略奪の危険ありーーーー“委員長(障害)”を排除します』




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六十七話

21時ちょっと過ぎちゃった。ごめんなさい。




③現実は非情である。




ーーーーどうも様子がおかしい。

 

ジークの試合を見ていて、俺はそう思った。

様子がおかしいのはジークじゃなく、その対戦相手だ。

 

「まさかストラトスちゃんだったとはな……」

 

俺の視線の先ではストラトスちゃんが怒りに任せるようにジークに攻撃している。いいぞ、もっとやれ。

……じゃなくて、ジークが腕に防護武装を装着したあたりからストラトスちゃんの様子はおかしくなっていった。

 

「何やらかしたんだよ、ジーク」

 

《いえ、()()()何もしていませんよ》

 

謎の声が話しかけてくる。

何か知ってんのか?

 

《えぇ。……まさか二人の子孫が戦うことになるとは。運命とは皮肉ですね》

 

……こいつ、前々から思ってたけど何者なんだよ?

 

「チヒロ? どうかしましたの?」

「あ? あ、ヴィクターか……何でもねえ」

 

危ない危ない。

少し小声で話そうか。

 

「……で、何知ってんだ?」

 

《彼女たちのご先祖さま……ですかね》

 

「ご先祖さま?」

 

あぁ、そういやジークは……ストラトスちゃんもなのか。

どんな奴なんだ……?

 

《簡単に言うと……ド変態ストーカー野郎とガチレズ男女ですね》

 

「まさかお前からそんな罵倒浴びさせられる奴がいるとは思わなかった」

 

ビックリだわ。

 

《まさか子孫にまでその業を背負わせるなんて……》

 

それは違うと思うけど……。

 

「けど、背負わせるってことはストラトスちゃんの先祖が“ストーカー野郎”か。でもジークは? あいつ別に百合じゃ……」

 

《ヴィヴィオちゃん……でしたっけ? 彼女に会わせればわかりますよ》

 

……なんか会わせたくないんだけど、そう言われると。

ヴィヴィオちゃんには普通の環境で育ってほしい。

 

《誰目線なんですか、それ》

 

…………パパ?

 

《……あながち間違いではない……んですかね?》

 

どゆこと?

まぁ、いいや。

 

「それより……そのストーカー野郎と百合女からどんな被害を受けたんだよ」

 

《百合ではなくガチレズです。間違えないでください》

 

あぁ、そうかい。

早く話せよ。

 

《そうですね……ではまずはストーカー被害の方から。日常を常に監視(ストーキング)されているのは当たり前、食事・入浴・トイレにいたるまで完璧に把握され……一度ぶちギレてボコボコにしなら今度はそっち(・・・)に目覚めてしまい催促してくるようになって……》

 

うわぁ……。

 

《ガチレズの方は毎晩全裸でベッドに潜り込んできたり、水浴びを共にすることを強要してきたり、下着も何枚盗まれたことか…………》

 

「苦労したんだなぁ……お前も」

 

俺より辛い目に合ってる奴二人目だよ……。

お前も仲間だ。

 

「よし! 二人……いや、なのはさんも含めて三人でキチ〇イどもに復讐しよう! ヒガイシャーズ、アッセンブーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

『チャンピオン、勝ーーーッ利!』

 

 

 

 

 

 

 

……は?

 

『終わってみれば磐石の勝利! しかしアインハルト選手もルーキーとは思えない…………』

 

…………え? え!?

 

「はぁ!? えっ、試合終わっ……!?」

「チヒロ?」

「ゲフンゲフン…………いやぁ、いい戦いだったな。さすがゴキブリンデ・エレミア、さすがチャンピオン!」

「は、はぁ……?」

 

見てたし。ちゃんと試合見てたし。

見てたから満面の笑み浮かべてこっち見んなよジークっ!

 

《いつからあの二人はおかしくなってしまったのか……。出会った頃はまだまともだったのに》

 

お前もいつまで続けてんだ!

……うん、とりあえず……………………。

 

 

「ごめん、ジーク。まじごめん」

 

 





今回のおまけで後輩ちゃん、更なる高み(恐怖)へ。

おまけ
ASS(アフター☆サイド☆ストーリー)・もう1つの戦い ※後輩ちゃん視点》


奪われてしまった……何もかも。
公園でおしるこ缶を片手に落ち込んでいる私……すごくみじめだ。

それはついさっきのことだ。

先輩の後輩を名乗る女(※四天王の一人)が現れ、先輩の後輩ポジションを返してもらうとワケわからないことをのたまって襲いかかってきた。
返り討ちにしてやろうとしたら……惨敗した。ボロボロボロリンだった。

「あらぁ? 何してるのぉ?」

そんな時、先輩によく似たふいんき(なぜか変換できない)のマダムに声をかけられた。

「……ちょっと、負けられない戦いに負けてしまって」
「あらあらぁ、そうなのぉ」

自分でもなぜこんな話をしたのか解らない。
……やっぱり先輩に似てる。なんでもかんでも話してしまいそうだ。

「それでぇ、貴女はどうしたいのぉ?」
「えっ……ど、どうしたいって……」
「このまま、負けたままでいいのかしらぁ……?」

……嫌だ。そんなの嫌だ!

「強く……もっと強くなりたいです!」
「あらぁ、そうなのぉ~……ならぁ、これをあげるわぁ」

そういってマダムは一冊のノートを渡してくる。
これは?

「うちの娘が小学生の時に書いたものよぉ。……それがあればもっと強くなれるわぁ」
「し、小学生が書いたもので……ですか?」
「ふふ、うちの娘が幼稚園児の時でもあなたじゃ勝てないわよぉ?」

それ本当に人間ですか?
ま、まぁいいや……。

「とにかく……ありがとうございます」

例え嘘だったとしても……ダメ元だ、やってみよう。
マダムの気遣いを無駄にはできない。手元のノートを見る。
ノートの表紙には子供の書くミミズのような、それでいて女の子特有の丸っこい文字でこう書かれていた。












『てんごく へ いく ほうほう』と。





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六十八話

遅くなって申し訳ないです。
活動報告にて言っていましたが、昨日と今日の四時くらいまで法事がありました。


※急いで書いたものなので、最初の方が少し急展開な感じです。そのうち手直しをするかもしれません。ご了承ください。
※おまけについて、2つ目の方は結構前にあらかじめ書いていたものをコピペしただけなので決してそっちに時間を取られて本編が~というわけではないのであしからず。



「はぁー……終わった終わった。帰ろうぜ」

 

《エレミアの継承者を待たなくていいんですか?》

 

あ?

いいんだよ、どうせ取材会見とかだろ。待ってやる義理なんざないね。

 

 

 

「ーーーー見つけましたわッ!」

 

 

 

その時、よく聞き慣れた声が聞こえた。

振り向いた先にいたのは……ヴィクターにデコ助、ハリー?

 

「どうしたんだよ、そんなーーーー」

「アレスティングネットッ!」

「はァッ!?」

 

デコ助のバインド魔法!?

なんで!? 貴様謀反か!?

 

「今だッ! 捕まえろぉぉおッ!」

「はっ……はぁぁぁぁあああああッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てな感じで拉致られてきたんだよ……」

「あ、あはは……その……お疲れさまやね……」

 

お疲れさまじゃねぇよ。

 

「まったく……」

 

ヴィクターとハリー、裏切り者(デコ助)に拉致られてたどり着いた場所にはジークやヴィヴィオちゃん、ミウラちゃんやストラトスちゃんたちを始めとする見知った顔が揃っていた。

……数人知らないヤツもいるけど。

室内には様々な料理があり、そこでみんなは談笑しているようだ。

 

「……で、ここどこなんだ?」

「あ、えっと……(ウチ)ら管理局の八神司令って人からお話があるって言われて連れてこられたんや。だから詳しくは知らへんけど……なんや凄く高級そうなとこやね」

 

確かに。

どこぞの高層ビルの最上階なのだろう、窓から見える夜景は凄く綺麗だ。

「それで……今は何の時間なんだ?」

 

全員に大事な話があるんだろ?

みんな食い物片手に自由にくっちゃべってるけど……。

 

「…………団欒の時間?」

「まんまか」

 

まぁいいか。

じゃあ俺もなんか食おう。

 

「よし、そうと決まれば……ジーク、なんか取ってこい」

「ん、わかった」

 

コイツはうちに入り浸っていたこともあり、俺の好みを熟知している。

かつ、ハリーとは違い栄養がどうとか言って嫌いな食べ物を食わせようとはしない。

……あれ? ハリーじゃなくてこいつにメシ作ってもらえばいんじゃね?

 

「ふむ……。なぁ、ジーク……うちで家政婦やらない?」

「えっ!?」

 

あ、ダメだ。こいつ家事できねえんだ。

そもそも衛生的にダメだった。

 

「いや、やっぱり何でもない」

「なっ、なんで!? (ウチ)が家事できないから!?」

 

ジークがしつこく食い下がってくる。

 

「あ? あー……ま、そんなとこ。それより早くメシ」

「ぐっ……い、いや! まだチャンスはあるはずや……!」

 

なんかぶつぶつ言いながらジークは食料調達に行った。

 

「……よく考えたらジークを家政婦になんてありえないよな」

 

それにハリーのメシうまいからなぁ……うん、やっぱりジークはいらないや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーよう、チヒロ。一人か?」

 

ジークにメシを取りに行かせるという名目で厄介払いをし、さっき自分で調達してきたメシに舌鼓を売っているとハリーが話しかけてきた。

 

「よう、誘拐犯」

「あー……や、やっぱり怒ってんのか……? 悪かったよ……」

「……いや、もういいよ。お前の有用性を理解したから」

「……ん? ま、まぁ……許してくれるんならいいか」

 

その代わり利用価値のなくなるまで寄生してやるけどな。

 

「んで、どうしたんだよ?」

「何がだ?」

「用件だよ。何で俺のとこ来たんだ?」

 

取り巻きや他のヤツらを放置してまで……いったいどんなことだ?

 

「な、なんだよ……用もなく来ちゃダメなのか……?」

「いや別にダメってこたぁねーけど」

「……気になっただけだ。ずっとジークばっかと話しやがって……」

 

あっそ。

それよりメシだメシ! もっとメシ!

 

 

「ーーーーさて、みんな~! 食べながらでええからちょう聞いてな」

 

 

さらにメシを食おうとしたところで女の人……確か、八神司令? とかなんとかがここにいる全員に呼び掛けた。

……ここに集められた本題に入るってことか。

 

 

 

 

 

 

 

「ところであの人(八神司令)どっかで…………?」

 

 

「何やろ、ヴィクトーリアが後から連れてきたあの男の子……どこかで…………?」

 

 




おまけ
《そしてvivid lifeへ……》

『ふむ……。なぁ、ジーク……うちで家政婦やらない? ……あ、やっぱりいいや』


「ヴィクター(ウチ)のことメイドとして雇って! (ウチ)……メイドになりたいんや!」
「任せなさい! 立派なメイド(玩具)にしてあげますわ!」




さらにおまけ
《次回予告(嘘)》

早読みちゃんを倒し、平穏な日々を取り戻した委員長。

「あ、篠崎くん! お、おはよう……えへへっ!」

これで全てが元通りとなった。
……はずだった。

委員長(障害)を発見。この世界(・・・・)から排除しますーーーー』
「あ、あなたは……きっ、きゃぁぁああああっ!?」

目覚めるとそこは見知らぬ場所。

「なに……ここ? 街? ……まるで廃墟みたい」

そこで出会った謎の少女“デコ美”。

「あなたは……タスミンさん!?」
「はい……? えっと……どちら様ですか……?」

そこで知る、この世界の真実。

「ここは恐らくあなたがいた世界とは別の世界」
「もしかして……平行世界(パラレルワールド)……?」


「この世界は真っ暗闇なんです……アイツの、“篠崎チヒロ”のせいで!」
「篠崎、くん……!? 篠崎くんがこの世界をこんな風にしたって言うの!?」



委員長の前に立ち塞がる、四人の“妹”たち。



「兄上のおかげで私も悲しみを背負うことができたわ……」
「あまり(アタシ)を怒らせるなよ……雑種!」
「あなた……『保護色』? ランプは好き?」
「7分だよ。7分だけ相手をしてあげる……」


謎が謎を呼ぶ新展開、果たして委員長は全ての試練を乗り越えることができるのか!?
そして、最後に待ち受ける衝撃の真実とは!?


『夜ノイインチョウ』

次回よりスタートッ!


※スタートしません。



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六十九話

今回は短め。キリがいい場所だったから……。


かつ昔話はカット。ギャグだもの、この二次。




みんなの注目を浴び、はやてさんは語りだした。

 

「みんなも知ってのとおり、今日の試合を戦った二人には少し複雑な因縁がある」

 

何それ知らない……あ、いや、謎の声が言ってたヤツか。

 

「『黒のエレミア』の継承者ジークリンデと『覇王イングヴァルド』の末裔アインハルト」

 

仰々しいな。

 

「二人を繋ぐのは聖王女オリヴィエ」

 

……何でみんなヴィヴィオちゃん見てるの?

可愛いから? なるほど理解した。

 

《まぁ、本人いますけどね》

 

謎の声よ、俺にもわかるように言ってくれ。

 

「かつて戦乱の時代を一緒に生きたベルカの末裔が今この時代にまた集まってる。それにこの場には雷帝ダールグリュンの血統ヴィクトーリアがいるし、ここにはおれへんけどもうひとり旧ベルカ王家直径の子がいる」

 

ほへー。

すげーなー。

 

《棒読みですよ》

 

「興味ねえしどうでもいいからな」

 

本当にどうでもいい。

それよりメシうまうま。

 

「これが偶然なのか何かの縁や導きの結果なのかはわかれへん。そやけどこれはあくまで老婆心というか……大人側の心配としてなんやけど、これだけ濃密な旧ベルカの血統継承者たちが一堂に会するゆーんはちょっぴり気にかかるところなんや」

 

……へー、そーなんだー。ふーん。

 

「インターミドル中の大事な時期や……みんなが事件に巻き込まれたりせえへんように私たちも守っていきたい。そのためにも二人が過去のことを話し合う会に私も参加させてもらいたいんよ」

 

八神司令はジークとアインハルトちゃんを見て言った。

 

「同じ真正古代ベルカ継承者同士……行きたい場所や探したい資料があるなら私も全力で協力するよ」

「はい!」

 

あ、パスタ食いてえ!

 

《少しは関心持ちましょうよ……》

 

 

ーーーーそして俺がメシを貪り続けるなか、ストラトスちゃんによる昔話が始まった。

 

 

 

 

「ーーーーハッ!? きさま、見ているなッ!?」

 

 

「い、いきなりどーしたん、チヒロ……!?」

「いやなんか……誰かに見られてたよーな気が……」

 

 

 

 

「……気づかれた? でも、どうやって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《あの変態ストーカー野郎、自分の都合のいいように記憶改竄しやがって……!》

 

「まぁまぁ落ち着けよ。キャラ崩れてるぞ」

 

どうもストラトスちゃんから聞かされた昔話はそのストーカーにより脚色されていたようだ。

重要な部分は間違ってなかったらしいが、プライベートなエピソードが。

 

「いいじゃねーか、別に。それよかさっさと帰って寝るぞ。今日は疲れた」

 

他のヤツらは八神司令の家に一泊するらしい。

あれだけの女子率だし、俺は帰ることにした。

 

「しかも朝イチで無限書庫行くんだろ? 俺はごめんだね」

 

あそこには魔物がいたはずだ。我が同士なのはタソを苦しめる邪悪な魔物が。

 

「となると、明日暇になるな。何しよう?」

 

《あ、じゃあデートにでも洒落込みますか? 二人っきりで》

 

「お前とか? まぁかまわねえけど……ん?」

 

その時だった。

道の真ん中に転がる物体を発見したのは。

 

 

 

 

ーーーーおぉぅ……倒れているロリ(ストラトスちゃん)を発見……。

 

 

 

 




次回をマテ!


おまけ
《【ネタバレ】夜ノイインチョウ徹底解説! ※質問形式》

Q.今回の黒幕は結局“篠崎チヒロ”なの?
A.黒幕は平行世界のヴィクター。ただし“邪神”レベルではない(邪神本人曰く『()()()()世界征服とかしてる時点でお子ちゃまレベル』らしい
)。そもそもこの世界に“篠崎チヒロ”は存在しない。ヴィクターはチヒロを名乗っていただけ。

Q.なぜヴィクターは“篠崎チヒロ”を知っているの?
A.ヴィクターは幼少時に偶然手に入れた別の世界を覗き見ることのできるロストロギアで本編世界を見た。それで映ったのがチヒロ(幼少時)だった。

Q.なぜチヒロを名乗ったの?
A.ヴィクターは最初、チヒロに憧れていた。幼少より遺憾なくそのクズっぷり発揮していたチヒロに興味を抱き、それが憧れ・好意に変わり、最終的に“篠崎チヒロ”になろうとした(同一化)。世界を支配したのは『敬愛するチヒロならやる』と思ったから。

Q.“デコ美”の正体は?
A.平行世界のデコ助。

Q.妹たちについては?
A.ヴィクターによる洗脳。これもロストロギアによるもの。ただ、間違いなく平行世界の“篠崎”の血統。

Q.ロストロギア便利ですね?
A.お黙り。

Q.委員長側、ヴィクター側については?
A.委員長はデコ美と、ヴィクターは妹たちと数千万のチヒロイド兵(思考パターンがチヒロの劣化版のアンドロイド兵)。

Q.結局どうなったの?
A.委員長に破れ世界を解放、改心する。妹たちも初めはヴィクターに対して怒りを感じたものの委員長の説得により和解。その後はヴィクターを姉として慕う。現在は世界各地で困っている人を救っている。また、デコ美とヴィクターはなんだかんだあって現在は親友。

Q.真実を知った時、こっちの篠崎父母はなんて言ってたの?
A.『知ってたよ? 面白いから放置してただけ』。

Q.どの辺が『夜ノ』イインチョウ?
A.全話通して委員長がノーブラ。

Q.いつスタートしますか?
A.スタートしません。



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七十話

お待たせしました。
今日はどうしてもこの時間に投稿したくて遅れました。

賛否が分かれる衝撃の展開。
でも、個人的にはここでこれが来なくてはいけない。そんな風に思っています。

サブタイをつけるなら『もう一度ここから』。






「……よお」

「あ、チヒロさん……先程ぶりです」

 

さすがに見過ごすことができなく、うつ伏せに倒れるストラトスちゃんに話しかける。

 

「……何してんの?」

「転びました。どうもチャンピオンとの試合のダメージがまだ残っていたらしく、足がもつれて……」

 

なるほど。まぁ今日だしな、試合。

つか……

 

「何でここに? 八神司令ん家に泊まってんじゃねえの?」

「あ、いえ……着替えを取りに」

 

あぁ、そっか。

 

「送ってもらえばよかったのに」

「いえ、さすがにそこまで迷惑は掛けられませんから……」

 

俺には掛けまくってたけどな。

いや、まぁ、それよりさ。

 

「……起きれば?」

 

いつまでうつ伏せで話してるんだコイツは。

 

「……そうですね」

 

俺の言葉を聞いてやっとストラトスちゃんはゆっくりと起き上がる。

……ん、膝を擦りむいてるな。

 

「はぁ……」

 

仕方ねぇな……。

財布を漁り、絆創膏を取り出す。

 

「ほれ、使え」

「……ありがとうございます。女子力高いですね」

「引き千切るぞクソガキ」

 

ナメてんのか、コイツ。

 

「ハリーのやつが持ち歩けってうるせーからだよ」

「“ハリー”って……砲撃番長(バスターヘッド)ですか?」

「そうそう。アパートの隣の部屋に住んでるからな」

 

もはや同居レベルだけど。

 

「知りませんでした……くっ……!」

「悔しがる意味が分からないから。いいから絆創膏貼れよ」

 

馬鹿かお前は。

 

「…………私たちは」

 

ん?

 

「もしかすると私たちは、出会いかたが間違っていたんでしょうね」

「出会ったこと自体が間違いだろ」

 

何いきなり語りだしてんの?

 

「いえ、間違いなんかじゃないです」

「何で分かんだ、そんなこと」

「何て言うか……本能的にでしょうか?」

 

獣かお前は。

 

《間違いなく遺伝ですよ……獣の血族です、彼女は……!》

 

だよな。

俺もそう思った、謎の声よ。

 

「……よし」

 

ストラトスちゃんが絆創膏を貼り終え、立ち上がる。

 

「助けていただいてありがとうございました、チヒロさん」

「おう。どういたしまして、ストラトスちゃん」

 

……ふと、ストラトスちゃんの口から零れた“もしも(if) ”の話を考えた。

もしも……出会い方が違えばコイツもオモチャになったのだろうか。

 

「……まさかな」

「どうかしました?」

「いや、なんでもねぇ」

 

そういやコイツ……最近まとわりついて来てないな。

 

「あー……最近うち来ないよな、お前」

「あ、はい。……ある時ふと冷静になったんです。『あれ? これはいわゆるストーカーではないか?』と」

 

いわゆらなくてもストーカーだよ。

 

「だからその……ご迷惑をお掛けした……といいますか……」

 

恐怖も与えてくれたな。

 

「……あの……申し訳ありませんでした!」

 

……う~む。

今までが今までたから素直に信じていいものなのか。

 

「あと……」

「あん?」

「ずいぶんと遅くなってしまいましたが……あの時は助けていただいてありがとうございました」

「……おう」

 

……ま、今後見極めていけばいいか。

信用(オモチャに)できるかどうか。

 

 

 

 

 

 

 

その後、ストラトスちゃんと別れたあとにヴィヴィオちゃんから連絡があった。

 

『今日、うちに泊まっていってくれませんか? 私もフェイトママもいないので、なのはママが寂しいかもしれないので』

「あー……了承取れればいーーーー」

『あ、もう取ってあります!』

「あ、そうなの? 早いね」

 

 

(……よし。これで少しは進展するかな……?)

 

 




ストラトスちゃん、ストーカー脱却。
きっとこれには賛否が分れるでしょうが、これ自体は“鮮烈なのは~”が始まったときから決まっていました。


ストラトスちゃん(のストーカー化)から始まり、ストラトスちゃん(の脱ストーカー)で終わる。


アインハルト・ストーカーが好きだった読者様、申し訳ありません。
ですがまだまだ壊れキャラは出てくる予定ですので、どうか最後まで生暖かい目でもってお付き合いいただけると嬉しいです。

でもストーカー枠はまだいますから。司書長とかあの娘とかあの娘とかあの娘とか。


まぁ、というわけで。
これにて、






第一部完ッ!





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七十一話

第一部完とは言ったものの、章設定や話数変更はしません。
今回もちょっと短め。





翌日。

 

「おはようございます、なのはさん」

「あ、おはよう、チヒロくん」

 

朝起きるとすでになのはさんは朝食を準備してくれていた。

さすが天使(ヴィヴィオちゃん)の親……朝からなかなか凝ったメニューになっている。しかも健康的で胃にも優しそうだ。

 

「よく眠れた?」

「それはもう! ヴィヴィオちゃんの香りに包まれて爆睡できました!」

「あ、あはは……そっか」

 

ちなみに俺はヴィヴィオちゃんのベッドで寝た。

 

「ヴィヴィオちゃんください」

「ふふふ、だ~め」

 

なぜだし。

妹……いや、娘としてほしい。何か方法はないものか。

 

「ーーーーハッ!? そうだ、なのはさんと結婚すれば合法的に娘にできる……!?」

 

天才か……俺は!?

 

「というわけで結婚しましょう、なのはさん」

「う~ん、チヒロくんだったらいいかな? ……なんてねっ!」

 

ペロッと舌を出す二十三歳。

可愛いじゃないの……!

 

「さ、早く食べちゃって! 私、これから出勤だから」

「はーい」

 

 

 

 

 

 

 

なのはさんに別れを告げ、自宅に帰っている。

『ゆっくりしていってもいいよ』と言われたが、さすがに遠慮した。

 

「……にしてもあの人一晩中いたなぁ…………」

 

あの人とは当然あの人のことだ。名前を言ってはいけない司書長。

しかもなのはさんが出勤するとき後ろからついて行ったのも確認してしまった。

 

「……また泊まりに行ってあげよう」

 

あんなのがいる中、一人でいなくちゃならないときがあるなんて……そんなの嫌すぎる。

 

「……ん?」

 

その時、前から黒塗りの車がすごい勢いでやってきた。あれは……ヴィクターんとこの……?

車は俺の横まで来て止まる。すると窓が開き、案の定ヴィクターが顔を出した。

 

「よう、ヴィクター。お前、今日、無限書庫だかに行くんじゃあなかったのーーーー」

「百式☆神雷」

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーハッ!?」

「……あら、目が覚めまして?」

 

……ヴィクター?

ここはどこだ……? 何でお前に膝枕されてるんだ……?

 

「そうだ……あの時……いきなり攻撃されて……」

 

気を失ったのか。

いったい誰があんなことを……!

 

「確か……ヴィクターんとこの車がーーーー」

「ジークがチヒロを気絶させて連れてきましたの」

 

……なに?

 

「だから、ジークがチヒロを殴って気絶させて連れてましたの。私は止めたのですが……」

「オーケー、あのゴキブリ殺してやる……!」

 

俺に歯向かったことを後悔しやがれ……!

……っと、その前に。

 

「……ジークへの報復は後々やるとして、ここはどこなんだ?」

 

現状を把握しなくては。

どこかの施設のロビー……みたいだけど。

 

「ここは……無限書庫のロビーですわ」

「マジで許さねえ、あの女」

 

よくもこんな魔境に連れてきやがったな、ジーク……覚悟しとけよ。

……あれ? でも魔物はなのはさんについていったから……今は魔境ではない……のか?

 

 




さすが邪神様やでぇ……!


おまけ
《THE ROAD TO “INFINITY WAR” ※チヒロ視点》

『君に頼みたいことがあるんだ』

久しぶりにスカさんとボイスチャットをしている時のことだった。
スカさんが唐突にそう切り出してきた。

「頼みたいこと? なに? 艦〇れグッズ買ってきてとか?」
『あ、そうそう……じゃなくて。真剣に困っていることなんだ』

いつになく真剣な声色だった。

「……なに? ヤバイ感じのこと?」
『あぁ。下手したら世界が滅ぶかもしれない』

……なにそれ。
超ヤベぇじゃねえか。

「……わかった。話を聞こうじゃないか」
『……助けてくれるのかい?』
「できる範囲のことならな」

さすがに世界滅亡とか洒落にならん。
せっかくヴィータさん調教し始めたのに。最近いい感じになってきたばっかなのに。

『ありがとう……! それじゃあさっそく本題に入らせてもらうよ。頼みたいことというのはーーーー…………』


to be continued……



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七十二話

いつもよりちょっと多め。
糖分も……いや、糖分はかなり多め。





「あ、チヒロ! 起きたん? よかったぁ……意識ないまま運び込まれてきたから心配してーーーー」

「死ねぇぇぇぇぇえええええッ! マジカル八極拳の恐ろしさを教えてやらぁぁぁあああッ!」

「ーーーーって、ちょっ!? 何!? 何なん!?」

 

ヴィクターとともにみんながいるところに行くと、普通にジークが話しかけてきた。

 

「わかってんだぞ、テメェ! 俺のこと殴ってここ連れてきたのテメェらしいじゃねえか!」

「えぇっ!? う、(ウチ)やないよっ!?」

 

こいつ……しらばっくれる気かッ!?

 

(ち、ちょう、ヴィクター!)(これどういうことなん!?)

(……恐らく気絶させた時の影響で)(混乱しているのでしょう)

(えぇ……!? )

 

何をこそこそ喋ってるッ!?

まさか……やはりヴィクターも共はーーー

 

「ーーーーおいおい、チヒロよぉ、なに怒ってんだよ?」

「……ハリーか。邪魔するならお前もまとめてーーーー」

 

ぼふっ、とハリーに抱き抱えられた。

 

「ふあっ!? ば、番長!? なにしとん」

「ジーク、少し黙ってろ。……よ~しよし、落ち着けチヒロ」

 

ハリーが頭を撫でながら語りかけてくる。

 

「チビッコどももいるんだ、何に怒ってんのか知らねーけど落ち着けって」

「ふー……ふー……!」

「ば、番長そこ代わって! (ウチ)が……!」

「ガルルルルルッ!」

「な、なんでやぁ!?」

「だから邪魔すんなって! よーしよしよし…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「見苦しいところをお見せしました」

 

ハリーに宥められること約10分、なんとか落ち着くことができた。

 

「い、いえ……先輩らしいと言えば先輩らしいですし……」

 

それはどういう意味かな、ヴィヴィオちゃん。

可愛いから許す。

 

「ヴィヴィオちゃ~ん」

「きゃー♪」

 

ヴィヴィオちゃんに後ろから抱き付く。

……娘に欲しい。

 

「あっ…………ぅぅ…………!」

「……なに? どうかしたの、ミウラちゃん?」

 

沈んだ表情だけど。

財布でも落としたとか?

 

「……じぃぃぃぃ」

「ジークこっち見んな」

「なっ、なんでやぁ!?」

 

うっとおしいから。

 

「ーーーーはーい、みなさん! 行きますよー!」

 

俺の腕の中からヴィヴィオちゃんが声をあげてみんなを先導する。

俺はヴィヴィオちゃんに引っ付いたままなので、数人がぎょっとして見てくるけど関係ない。ヴィヴィオちゃん好き。

 

「ここが……無限書庫?」

「いえ、ここは一般解放区です!」

「目的地はこの先ですよ~!」

 

再び先導されて、受付のようなところにやって来る。

……あ、ヴィヴィオちゃんが俺の腕の中からするりと出ていってしまった。振り向き、片目を瞑りながら舌を出す。

………………この小悪魔天使ちゃんめ……ッ!

 

「いらっしゃい、ヴィヴィオ」

「こんにちは~♪」

 

受付嬢らしき人たちと挨拶を交わすヴィヴィオちゃん。

 

「未整理区画の調査だよね? 一般人のお友逹がいるってことだったけど……」

「えーと、一般人っていうか……」

 

ちらっと後ろを振り返り、ヴィヴィオちゃんは受付嬢たちに言い放った。

 

「インターミドル上位選手(トップファイター)のみなさんです!」

「ど~も~!」

 

…………なぁ。

 

「何でお前キメ顔なわけ? デコ助」

「……私だって上位選手なんですよ!?」

「だから?」

「もういい……もういいです……ごめんなさいでした…………!」

 

な、泣くなよ……。

 

「わ! テレビで観た子がいるッ!」

「さ……サインもらっていいかな?」

「だ、そうだよ、ジーク?」

(ウチ)ですかっ?」

 

いらねー。

 

「あと八神司令もいらっしゃいます」

「こんにちは~」

「お……お疲れ様ですっ!」

 

慌ててあいさつする受付嬢たち。……あ、八神司令は上司になるからか。

その時、受付嬢の片割れと目があった。

 

「あれ……? チヒロくん……!?」

「ん? ……あぁ、あんた確か……」

「先輩、お知り合いですか?」

 

みんなの視線が俺に集まる。

 

「あ、いや……なんだ、親父の知り合い? っていうか部下?」

 

諜報班だとか何とかって……。

 

「えっ、チヒロくんのお父さんって局員なんか?」

 

八神司令が聞いてくる。

 

「え? あ、いや、違いまーーーー」

「まぁ、そんなとこですわ」

 

ヴィクターが前に出てきて俺の言葉を遮った。

そしてみんなに聞こえないような小声で一言。

 

「いいですか? あなたのお父様のことをむやみやたらに喋ってはいけません。わかりましたか?」

「……わ、わかった」

 

変な迫力が……なんか質問とかもできる雰囲気じゃねえし。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーでは、こちらのゲートから入ります! 書庫の中は無重力ですので慣れていないと気分が悪くなる方もいらっしゃいます。そういう時はお伝えくださいね!」

 

みんなで声を揃えて返事をする。

 

「それでは古代ベルカ区画に…………ゲート・オープン!」

 

 

 

 





もちつけ……もちつくんだ……。
もう少ししたらクズくな(



おまけ
《THE ROAD TO “INFINITY WAR” ※委員長視点》


「私ね……チヒロくんが好きなの」

双子の妹から告げられたことに、私はびくりと体を大きく震わせた。

「お姉ちゃんがチヒロくんを好きなことは知ってる。けどね、少女漫画や小説のヒロインみたいにお姉ちゃんのために身を引くことなんてできないよ」

唇が乾いてうまく話せない。
……ううん。話そうとしても、言葉が突っ掛かる。

「お姉ちゃんのことは大好き。お姉ちゃんが不幸になるようなことはしたくない。だから一時期は身を引くことも考えたけど……やっぱりできない」

顔をまっすぐ見ることができない。

「……ごめんね。でもそういうことだから……」

嫌だ。
嫌だよ。


「どっちが勝って(実って)負けて(フラれて)も恨みっこなしだからね!」


篠崎くんを取らないで……!












「ふーん……チーくんを巡っての女の戦いかぁ……。面白そうだねぇ……! まぁ、ボクの大切な大切な息子の取り合いみたいだし、少し引っ掻き回しちゃおうかな♪ あ、ヴィクターちゃんも呼んであげないと! こんな面白そうなこと、独り占めじゃあ勿体ないからね……!」




……Continue to “THE INFINITY WAR” .



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七十三話

「おおーっ!」

 

誰かが感嘆の声をあげた。

まぁ、無理もないよな。ゲート……っていうよりポータル? が起動したと思ったらいきなり無重力空間。

みんなぷかぷか浮いている。

 

「わわわっ!」

「あっと……! 大丈夫ですか?」

「す、すみません」

 

ミウラちゃんがバランスを崩し、それをヴィヴィオちゃんが支えた。

 

「わはは、どーした抜剣娘! 体幹バランスがなってねーぞ!」

 

お前もわりかしダメな感じだけどな、ハリー。

 

「普段飛びなれてない子は無重力はちょうキツいかなー」

「ですわね」

 

八神司令の言葉にヴィクターが同意する。

……ってか、まてよ。無重力空間でふらふらしてるスカート女子………………あれ、これイケんじゃね?

 

「えーと……他に慣れてない方は……」

「オレぁ大丈夫だ。すぐに慣れんだろ」

(ウチ)も……あれれ……っ!?」

 

ジークが体勢を崩した。

危なーーーーチッ、スカートじゃねえのかよ。ゴミめ。

 

(…………チッ、なんでスカート)(じゃありませんの)(ゴミですわね)

(チッ……スカートやないんかい。)(……ゴミやんか)

 

……どうやら同志がいるようだな。

いつの間にか体制を崩したジークはストラトスちゃんに支えられていた。

 

「あ、チヒロ先輩は飛行魔法……というか魔法使えませんでしたよね? でしたら……………………」

 

ヴィヴィオちゃんと目が合う。

 

「……………………普通に慣れてますね」

「まぁ、別に魔法なんてなくたって空くらい飛べるしな」

「えっ」

「えっ」

 

えっ……飛べる、よね?

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーあれです!」

 

ヴィヴィオちゃんたちに先導されて辿り着いたのは巨大な扉の前。

 

「ここが今回の目的の場所!」

「B009254G未整理区画……どこかの王家が所蔵してた書物庫らしいですよ」

 

詳しいな、このガキンチョ。あと八重歯すげーな。

 

「ふふん」

「…………なに?」

「褒めてくれたっていいんですよ!」

「ていうか誰? いつからいたの?」

「先輩のバカぁぁぁあああッ!」

 

初対面の娘に罵倒されたんだけど。

 

「ーーーーそれじゃあ扉を開きますねー!」

 

いつの間にやら話が終わり、突入の時間になっていたらしい。

ヴィヴィオちゃんが手をかざすと巨大な扉は大きな音を立てゆっくりと開いた。

 

「ご覧のとおり迷宮型ですッ!」

 

…………白、ストライプ、ピンク、白、天使(ヴィヴィオちゃん)のは謎の光さんで見えない、黒、いちご柄、白ーーーー

 

「…………先輩?」

「なんだいヴィヴィオちゃん?」

「……い、いえ。気のせいでした」

 

あぶねー。

 

「ヴィヴィちゃんたち楽しそうやね」

「おっと、いきなり話し掛けてくんなよ、ジーク。びっくりするだろ、このKY短パン」

「……ん? 今、なんか……ん?」

「気のせいだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コロナちゃんの話では目的のものがありそうな場所を10ヶ所くらいまで絞り込んでいるらしい。よく分かんないけど。

 

「手分けして探しませんか?」

「おし、そうすっか!」

 

さっき俺を罵倒してきた娘の提案にみんな賛同し、手分けして探すことになった。

 

「じゃあ、みなさんのデバイスに入り口の位置と通信コードを記録しましょう!」

「迷ったりしないようにですね!」

 

迷うほどなのか、ここ。

 

「ま、もしもの時は私たちが助けに行くからなー」

「何かあったらすぐに呼ぶようにな」

 

八神司令と赤髪のねーちゃんがそう言った。

 

「さー! それでは調査に入りましょうっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上手く見つかるといいんだけどね」

「あたしたちで見つけましょう~! ーーーーって痛い痛い! 先輩もみあげ引っ張らないでください!」

 

と、言うわけで。

俺は罵倒してきたガキンチョたちと行動することにした。

 

「先輩もみあげ離してください! 痛いってばぁッ!」

「あ、あはは……」

 

罵倒してきた罰だ。

このままバナナボードの要領で引っ張っていってもらおう。

 

 

 

 

 

「……ていうか今さらだけど今日って無限書庫(ここ)に何探しに来たの?」

「…………先輩のバカ」

「あんだとクソガキッ!」

「ま、まぁまぁ……落ち着きなよ、君……」

 

 




次回、ついに魔女猫ちゃん登場。




おまけ
《Prologue Of THE INFINITY WAR》

動き出す。

「おや、クアットロ。また脱獄(お出かけ)かい?」
「えぇ、ドクター。召集がかかったので。…………BIG GESS(ボス)がお待ちです」

それぞれが。

「あらあらぁ~、ついに始まるのねぇ~」
「…………43、47……もう誰にも負けません……先輩は私のものです! ……53……!」

それぞれの思惑で。

「はぁ……チヒロは私のだって…………って、べべべ別にアイツのことが好きとかじゃないんだからねっ! 勘違いしないでよねっ!」


無限に続く女の戦い(インフィニティー・ウォー)が始まるーーーー!



Continued to “THE INFINITY WAR” .



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七十四話

遅くなりました。
申し訳ありません。




「そう言えば君とはジークたちと一緒に何度か会ってはいるがこうして話すのは初めてだね。私はミカヤ・シェベルだ」

「おー、篠崎チヒロっす。よろしくな、シャベル」

 

なんか穴とか掘れそうな名前だな。

 

「いや……シェベルなんだが……」

「無駄ですよ、ミカヤさん。この人、基本的に興味ない人は名前ちゃんと覚えない人ですから」

 

……あれ? 俺、有名人?

俺の個人情報だだ漏れじゃんか。

 

「ところで俺に詳しい君はいったい誰なんだい?」

「先輩のバカぁぁぁあああッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「♪~♪♪」

 

怒るプレスリーちゃん(と言うらしい。……あれ?)の頭を撫でること数分、本来の目的である探し物をすることとなった。

ヒストリーちゃんの周りには沢山の本が浮いている。

 

「すごいね、リオちゃん。見事な検索だよ」

「あはは~♪ うち実家にもすごい量の本とか資料がありまして……それを調べたいってうちにいつの間にか覚えちゃって」

「そうなんだ? たとえば……?」

「俺も気になるな。年上モノ? それとも年下モノとか?」

 

すごく大切なことだぞ。

 

「と、年上……? よく分からないですけどたぶん違います。うち、実家が何代か前から春光拳の道場をやってるんですけど……倉庫の中に技術書とか秘伝書とかそういうものがいっぱい死蔵されちゃってるんですよ~」

 

春光拳……何かの拳法か?

それとエロ本に何の関係があるんだろうか……?

 

「リオちゃんにはいつか春光拳の話を……」

「あ! もしよかったら……」

 

よくわかんないけど盛り上がっていた。

 

「ところでシャベル」

「……シェベルなんだが」

「アイツのふとももばっか見てんじゃねえよ。さっきからチラチラとよぉ」

「なっ!? みっ、見てないッ! い、言いがかりはよしてくれッ!」

 

嘘つけ。

ずっと見てたんだからな。

 

「ムッツリか、お前」

「違う……!」

 

パティスリーちゃんも鈍感というかまだそういうとこまで気にならない年頃なのかまったく気付いてねえし。

 

「……ん?」

 

シャベルがぎゃーぎゃー喚くなか、俺はあることに気付いた。

いつのまにか、俺たちのすぐ側に知らないガキンチョがいた。

 

「ウォーリーちゃん」

「……ウェズリーです。何ですか?」

「あれ……」

 

魔女のコスプレした幼女が本棚に垂直に立っている。

その周りには、なんかちまい変なのが三匹ほど浮かんでいた。魔女だから……使い魔とか?

 

「あれ? えーと……あなたはたしか……」

「……エレミアの手記は見つかった?」

 

魔女コスちゃんの言葉を聞き、シャベルとプリークリーちゃんがデバイスを構えた。

……え、何々? 何が始まるの?

 

「先輩……私たちの後ろに下がってください」

「クランベリーちゃん……?」

「そろそろ怒りますよ」

 

ベーカリーちゃんがこっちを向いた瞬間、魔女コスちゃんの使い魔(?)がビシッと指をさす。

すると、シャベルとほにゃららリーちゃんのデバイスが花束になった。

 

「おお~……!」

 

思わず拍手する。

 

「……どうもどうも」

 

スカートの端をつまんで俺にお辞儀をする魔女コスちゃん。

俺は感想を述べながらゆっくりと近付いていく。

 

「いや、素晴らしかったよ。いくら欲しい?」

「……おひねりは受け取らない。魔女の誇り」

 

……なるほど。

よくわかんないが変なプライドがあるのか。宴会芸好きな女神様みたい。

 

(彼は何を……!? 危険じゃ……)

(しっ! きっと先輩には)(何か考えが……)

 

手を差し出す。

 

「俺は篠崎チヒロ。君は?」

「……ファビア・クロゼルグ。よろしく、チヒロ」

「クロゼルグちゃんか。よろしく」

「……クロでいい。()()()()()()()()からそう呼んで欲しい」

「よくわかんないけど、わかった」

 

差し出した俺の手にクロが手を伸ばす。

……よし(ベネ)()()()()()()()

 

 

 

 

 

「ーーーーよぉし、行くぞクロ! 二人でアイツらブチのめすぜッ!」

「……プチデビルズもいるから、五人」

「せっ……先輩のバカぁぁぁぁぁぁあああああああッ!!!」

 

 

 

 

 

“強きを助け、弱きを憎む”。

俺が大好きなヒーローのキャッチフレーズだ。

 

 




《【THE INFINITY WAR】簡単に分かるおまけキャラ(と少しだけ本編キャラ)パワー表~もしもこの世界がゲームだったら~【更新】》

委員長:勇者
後輩ちゃん:天国の時は来た
デコ助:馬車


ひのきのぼう:何か……あれ


篠崎チヒロ:せかいのやみ
ヴィクトーリア・ダールグリュン:邪神様


ツンデレ幼馴染み(ヨメンジャーズ・アッセンブルド):テンプレ四天王
真・後輩(ASSにて後輩ちゃんを倒した娘):テンプレ四天王
先輩(未登場):テンプレ四天王
もう一人の妹(未登場):テンプレ四天王


パパン:かつてBIG GESSと呼ばれた伝説の英雄
クアットロ:DG(ダイアモンド・ゲッスズ)参謀


DIもうと:ラスボス


夜ノヴィクター:DLCボス
夜ノ篠崎四姉妹:DLC四天王


早読みちゃん:裏ボス
セフィロト・システム:家政婦ボス


???:???《THE INFINITY WAR登場》
???:???《THE INFINITY WAR登場》
???:???《THE INFINITY WAR登場》
※ある意味この三人は原作キャラ(?)


THE MOTHER御母様:このゲームの制作会社の存在する世界の神



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七十五話

ちょい短めです。


あの後、クロの魔法でシャベルと何かを裸にひん剥き小さくして小瓶に閉じ込めた。二人は抱き合うようにしているためナニも見えない。

そして現在、俺とクロは魔法の箒(?)に二人乗りで無限書庫内を移動していた。

 

「すごい…………サラマンダーより、ずっとはやい!」

「……サラマンダー?」

 

《腹立ちますよね、あの淫売》

 

それはわかるけど。

最近なんか黒いな、お前(謎の声)

 

「…………ん」

 

クロが俺の胸に体を擦り寄せてくる。

さっきから何回もやられてるんだけど……懐きすぎじゃね?

 

《……ああ、彼女の先祖も私の知り合いですから、それ繋がりかと》

 

まじで?

また変な感じのやつ? ヴィヴィオちゃんに会わせちゃいけないとかか?

 

《いえ、彼女は恐らく聖王家というよりはオリ……もとい、私に反応しているんでしょう。なのでヴィヴィオちゃんには影響はないかと》

 

そうなのか。ふぅ……安心した。

…………っていうか、お前コイツの先祖に何したんだよ?

 

 

 

 

《ーーーー調教しました》

 

 

 

 

「何やらかしてんの、お前。グッジョブ」

「……チヒロ?」

「ん? あ、いや、何でもない」

 

クロの頭を撫でてやると気持ち良さそうに目を細めた。

……ていうか調教て。

 

《いえ、彼女の先祖はかなりいたずらっ子で。一度私の下着を使ってストーカー野郎とガチレズで遊んでいたんですよ》

 

逞しいな、コイツの先祖。

 

《それでぶちギレてしまいまして》

 

で、調教したと。

お前のイメージ180度くらい変わったわ。

 

《私のイメージ……? あぁ、儚く可憐な清楚系お嬢様から太陽のような天真爛漫活発系美少女にですか? もぅ、なんなら攻略してもいいんですよ?》

 

「……自分が『悪』と気づいていない、もっともドス黒い悪とかかなぁ」

 

《なっ……なんですとっ!?》

 

「……チヒロ、次、見つけた」

 

クロに言われ、ぎゃーぎゃー騒ぐ謎の声を放っておいてその『次』とやらを見る。

……ジークとストラトスちゃんか。

 

「よしやれ」

 

《よしやれ》

 

「……やる。ジークリンデ・エレミア、アインハルト・ストラトス」

 

クロが二人を呼ぶ。

それに反応した二人がこちらを向くがーーーー

 

『真名認識・水晶体認証終了ーーーー吸収(イタダキマス)

 

クロの蝙蝠のような使い魔が巨大化、二人を飲み込んだ。

その直後、シャベルと同じ状態になった二人が出てきた。……あれ? シャベルの他にもう一人いたっけ?

 

「……ジークリンデ・エレミア。あなたには後で聞きたいことがあるから……他の子たちとは別の瓶。今はエレミアの手記をーーーー」

 

あっ、ジークの神髄発動した。

 

「おい、クローーーー」

「……分かってる。チヒロ、こっち」

 

クロは即座にジークの入った小瓶を投げ捨て、箒に乗り俺の手を掴んだ。

 

「……少し飛ばす」

「あ、ああ……。……って、今、お前の使い魔が一匹……」

 

ジークのもとに残ってたよな?

 

「……あの子なら大丈夫。これでエレミアはしばらく動けないはず。イングヴァルドの末裔は瓶の中。あとは『エレミアの手記』と他の……」

 

……よく分からんが大変なことになってきたなぁ。

だから来たくなかったのに。

とりあえず今は……

 

 

 

 

「シェイクシェイクブギーなーーーー…………♪」

 

 

 

 

ストラトスちゃんとシャベルと……ゴホッゲホッ……ちゃんたちの入った瓶で遊んでよーっと!

 

 

 

 

『ちょっ、振るのはやめっーーーーうぉぇぇぇぇえええええッ!!』

 

…………誰が吐いたかは彼女の名誉のために黙っておくことにしよう。

 

 




おまけ
《【THE INFINITY WAR】委員長の妹略して委もうとのスゴさをまとめてみた》

・テストなどでは常に学年一位。運動面でもかなり優秀な成績を残す。また、交遊関係も広く老若男女に愛されている。学校(チヒロたちとは別クラス)では生徒会長を勤める。超可愛い。
・完全なる努力型完璧超人。彼女の残した優秀な成績のすべては彼女の血の滲むような努力の結晶。才能は人並みにしかない。
・チヒロに『おっぱいは大きさじゃない、バランスだ』と言わせた(委もうとは小さくはないが大きくもない)。
・チヒロを尻フェチに目覚めさせた張本人。
・チヒロが悪行を行うのにためらう数少ない人物。
・委員長は生まれてから何一つ(成績や運動)として彼女に勝てていない。おっぱいの大きさは別。



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七十六話

ジークの足止め(詳しい内容は知らない)とストラトスちゃんの捕獲を終えた俺とクロの次なるターゲットは……。

 

「ヴィヴィオちゃんかぁ……」

 

あとミウラちゃん。

正直そっちはどうでもいいけど、ヴィヴィオちゃんを剥いて瓶詰めはなぁ……。

 

「なぁ、クロ」

「……なに?」

「あの瓶詰め魔法ってさ、発動条件とかあんの?」

 

阻止できるなら阻止したい。

 

「……名前を正確にフルネームで呼ぶ必要がある」

「あ、だから今まで瓶詰め直前に名前呼んでたのか」

 

なるほど名前か……。

 

「ちなみにあの娘の名前ちゃんと知ってる?」

 

ヴィヴィオちゃんを指差す。

 

「……確か、ヴィヴィオ・タカマチだったはず」

「おいおい、間違ってるぞ。あの娘はヴィヴィオ・()()()()だぜ」

「……そう。失敗するところだった。ありがとう」

 

感謝を述べながらクロは猫が甘えるように俺に体を擦り付ける。

これでよし…………あー、リニス撫でたくなってきた。

 

「いやいや、いいってことよ。俺とクロの仲だしな!」

「…………て、照れる」

 

《照れるとか……この雌猫。それがご主人様に褒められて抱く感情ですか! 跪いて足に口付けくらいしなさい!》

 

落ち着け。

 

「……それならもう一人の名前も間違えているかもしれない。あの娘の名前は?」

「ん? あぁ、あれ? ミウラ・リナルディ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ミウラ・リナルディ、ヴィヴィオ・()()()()

 

クロの魔法が作動しヴィヴィオちゃんたちを襲うが、ヴィヴィオちゃんは瞬時に反応し砲撃を放ってきた。

使い魔の口の中に砲撃が直撃、使い魔はそのまま撃沈した。

 

「なっ、何をするだァーッ!? ヴィヴィオちゃんだから許すッ!」

「……ファビア・クロゼルグ選手ですよね? インターミドルで勝ち残ってる」

「あっ、俺はスルーなのねそういう方向なのね」

 

ヴィヴィオちゃんスルースキルまで取得してるのか。

スペックたけぇー。

 

「説明してくれませんか? どういうことか。 ……あと先輩にはあとでお話があります」

「怒っちゃやーよ」

「……………………先輩」

「あっ、すいません静かにしてます」

 

こえぇぇー……!

ヴィヴィオちゃんこえぇぇ……さすが魔王の娘やでぇ……!

 

「……私は魔女だから。欲しいものがあるから魔法を使って手に入れる」

 

クロの言葉を聞いてヴィヴィオちゃんとミウラちゃんが構える。

やーねー、最近の若者は血気盛んで。

 

失せよ光明(ブラックカーテン)

 

クロが手をかざし、そう唱えると一瞬周りが暗くなった。

 

「魔女の呪いから逃れる術はない」

 

そして先程までダウンしていた使い魔がヴィヴィオちゃんとミウラちゃんを飲み込んだ。

そして出てくる瓶詰めミウラちゃんーーーーん?

 

「あれ……ミウラちゃん、だけ?」

 

ヴィヴィオちゃんは?

 

「オリヴィエの末裔は……?」

 

クロも分かっていないようだ。

 

「お、おい、ヴィヴィオちゃんは……?」

「……もしかするとチヒロが教えてくれた名前が違っていたのかも」

 

…………え、違うと捕まらないだけじゃないの?

 

「……まぁ、いい。瓶詰めできなくてもどうせ逃げられなーーーー」

「よ、よくないわボケッ! ヴィヴィオちゃんはどうした!?」

「……え、え……っ!? 」

「ヴィヴィオちゃんは無事なのか!?」

 

ヴィヴィオちゃんに何かあったら……俺は……俺は……!

世界を滅ぼしてやるッ! 三日もありゃ十分だッ!

 

「……だ、大丈夫。オリヴィエの末裔は無事……全部終わったらちゃんと戻す」

「本当だな!? 絶対に本当だな!?」

「……や、約束する」

 

…………ふぅ。ならいい。

済まないな、ヴィヴィオちゃん……しばらく我慢してくれ。

 

「……ぶぅ。なんでそんなにオリヴィエの末裔()()()を気にするの?」

「……何?」

 

《今、この雌猫さりげなく私のことディスりました?》

 

『なんか』?

ヴィヴィオちゃんを……俺のヴィヴィオちゃんを、『なんか』?

 

「……どうしたの?」

 

……ふっふっふっ、まさか俺の前でヴィヴィオちゃんのことを『なんか』呼ばわりするとは。

いい度胸してるじゃあねーか。

 

《調教タイム♪ 調教タイム♪》

 

いいだろう。

少しだけきつーいお仕置きをしてやる……!

 

 

「おしおきだべぇぇぇェェェェェエエエッ!!!」

「……ひっ……!?」

 

 

 




おまけ
《THE INFINITY WAR ※委員長視点》

「ーーーー義姉様ッ!」

後ろから私を呼ぶ声がした。

「あ、妹ちゃん……」
「大変です、義姉様!」

どうしたんだろう。
すごく焦ってるけど……。

「なんかよく分からないんですけど、兄様の女性関係に関することでうちの家族が暗躍し始めてるんですよ! 御母様もパパンも……果ては私の妹までですよ!?」
「……妹さんいたの?」
「あ、はい。とある理由で全寮制の学校に通っているので実家にはいませんが……って、どうしたんですか? 何だか暗いですよ?」

……そんなに暗いかな?
なるだけ笑顔にしてるつもりなんだけど。

「……何かあったんですか?」
「……うん……うん、ぐすっ……あのね」

涙を溢れさせながら、篠崎くんについて双子の妹と話したことを妹さんに話した。

to be continued……



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七十七話

クロの調教が完了し、手分けしてブツを探すことになった。

…………あれ、何だっけ?

 

《レズミアの妄想日記ですよ》

 

あー、そうそう。それだ。

どこにあんのか…………ん?

 

ーーーーにゃあ。

 

鳴き声のほうを見ると掌サイズの猫のぬいぐるみがいた。

誰かの使い魔か何か?

 

ーーーーにゃおん。

 

猫のぬいぐるみは俺のほうへよってくると、足元にじゃれついてきた。

 

「ん? どした?」

 

しゃがんで喉元を撫でてやるとぐるぐると喉をならす。

可愛いやつだなぁ。

 

「……おっ?」

 

猫のぬいぐるみが俺の膝に飛び乗り右のポケットのほうに前足を伸ばす。

そこにはストラトスちゃんを封じた小瓶が入っている。

 

「これ?」

 

小瓶を出してそう訪ねると猫のぬいぐるみは再び“にゃあ”とないた。

どうやらこれが欲しいようだ。

 

「う~ん、クロには誰にも渡さないでって言われてんだけど……って、そんな悲しそうな表情すんな。わかった、やるよ」

 

大切にしろよ。この俺が譲るんだから。

 

ーーーーにゃあ!

 

猫のぬいぐるみは一鳴きすると俺の手に顔を擦り寄せてからどこかに走り去っていった。

 

「……よし、日記……だっけ? 探すか」

 

よーし、じゃ、この棚からーーーー………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ」

「……ん?」

 

レズミアの妄想日記を探していると、後ろから声を掛けられた。

 

「……ジーク?」

 

振り向いた先にはいつもとは違い、髪を後ろで一つ結びにしたジークがいた。

 

「いや、人違いだよ」

 

どうやらジークではなく、そっくりさんだったようだ。

 

「じゃあ誰だよ、お前」

「僕が誰かなんて些細な問題だよ。それより……さっき君たちが戦っていた金髪の娘……名前を何て言ったかな?」

 

……ヴィヴィオちゃんのことか?

 

「そう、それだ! ヴィヴィオちゃんだ」

「……おい、お前、本当に何者だよ?」

 

クロとヴィヴィオちゃんたちの戦いを知っていたり、俺の心の声を読んだり。

明らかにこいつ不審だぞ……謎の声ッ! 君の意見を聞こうッ!

……ん? おい! おいってば!

 

「……謎の声の霊圧が……消えた……!?」

「何を言っているんだい?」

「あ、いや……何でもねえよ」

「そう? ならいいんだけど」

 

……どうしたんだ、謎の声。

 

「それより本題だ。ねえ、僕とーーーー」

「何だよ? 『僕と契約して魔法少女になってよ』か?」

 

もう古いぜ?

 

 

 

「ーーーー僕と一緒にヴィヴィオちゃんにえっちなことしようよ」

 

 

 

「ッざけんなテメーぶち殺すぞオラァッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

《ーーーー(……ヒロ)……ヒロ! チヒロ!》

 

「ーーーーハッ!?」

 

《あ、やっと起きましたか?》

 

な、何だ……!?

いったい何が……!?

 

《何がって……あの猫のぬいぐるみが走り去っていったしばらくあとにいきなり倒れたんですよ?》

 

た、倒れた?

俺が?

 

《えぇ。もう、本当に驚いたんですから》

 

……俺は現在進行形で驚いてんだけど。

あれ? 確かジークが…………ジークだったっけ?

 

《ジーク……エレミアの末裔ですか? 来てませんよ? そもそも貴方は先程まで倒れていたんですから、来たところで貴方にはわからないでしょう?》

 

……じゃあ、夢?

何だろう……はっきり思い出せない。とりあえずジークは後でシメる。

 

《まぁ、無事ならそれでいいです。後で病院に行きましょう》

 

……その方がいいかも。

 

《それよりバカアホレズミアの自己中妄想日記のことですが、どうやらこの辺りにはないようです》

 

そんなに長かったっけ?

探してるやつ。

 

「マジか。……なぁ、それどうやって調べたんだ?」

 

《え? ……ひ・み・つ♡》

 

「うわぁ腹立つ」

 

……まぁ、こいつは嘘は吐かないからな。

どうやったかは知らねえけど本当に調べたんだろう。

 

《とりあえず雌猫に合流したほうがいいですね》

 

だな。

じゃ、クロのもとに向かうか。

 

 





おまけ
《THE INFINITY WAR ※委員長視点》

「なるほど……」

妹ちゃんは静かに私の話を聞いてくれた。

(それで御母様もパパンも)(妹もあんなに……。)
「……ごめんなさい、よく聞こえなかった」
「ああ、いえ、こちらの話です」

……ダメだなぁ私。
あの娘(私の妹)が関わるだけでここまで落ち込むなんて。

「……義姉様はこのままでいいんですか?」
「……よくないよ。でも、どうすることもできないよ」

昔からあの娘には何をしても勝てなかった。
……きっとこれからだって…………。

「……あぁもう! うじうじしてても仕方がないじゃないですか!」
「そ、それはそうだけど……」

私じゃ……。

「……行きますよ」
「えっ?」
「今から兄様をデートに誘いに行きましょう」
「えぇっ!?」

そ、そんなの……。

「無理じゃありません! 私がいるんですから!」
「で、でも……」
「でももへったくれもありません! さ、行きますよ!」

妹ちゃんが私の手を引いて強引に歩き出した。

to be continued……






《インフィニティ・ウォー 勢力図》

委員長サイド:委員長、DIもうと、早読みちゃん

委もうとサイド:委もうと、BIG GESS(パパン)、クアットロ(DG参謀)、邪神ヴィクター(DG副司令官)、ダイアモンド(D)ゲッスズ(G)

後輩ちゃんサイド:後輩ちゃん(天国の時は来た)、THE MOTHER(御母様)

テンプレ四天王サイド:ツンデレ幼馴染み(ツインテ)、真・後輩ちゃん、先輩、もう一人の篠崎妹



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七十八話

今回の話は『Quiet’s Theme』を聞きながら優しい気持ちで書きました。
この曲は心を柔らかく暖かにしてくれる……。




クロがブツを探しているであろうエリアに向かう途中、これまたジークに似たヤツに出会った。

ヤツっていうか…………ロリっ娘。

 

「あっ、チヒロやぁ!」

「おやおや? 何で俺の名前を知っているんだい、お嬢ちゃん?」

 

……俺、もしかしてかなり有名人?

 

「えぇっ!? ……って、あぁ、この姿だからかぁ……。(ウチ)やよ、(ウチ)!」

 

う~ん……一人称が“ウチ”のロリっ娘の知り合いはいないなぁ……。

 

「よく分かんないけど……迷子なのかな?」

 

……こんな場所で?

 

「ちゃうってば! (ウチ)(ウチ)! ジークやって!」

「そうか、ジークちゃんって言うのか」

 

似てるだけじゃなくて名前までジークと一緒とか……可哀想だ……。

思わず抱き締める。

 

「ふぁっ!?」

「よしよし……ジークちゃん、辛かったねぇ……!」

「な、なに!? なにが!?」

 

うわぁ……同情しすぎて涙が溢れてきた……!

 

()()ジークと似てるうえに名前まで同じなんて……いじめられたり、生きることに疑問を抱いたりしたでしょ……?」

「どっ、どういう意味やッ! あ、あぁ、でもこの状況(チヒロの腕の中)は夢にまで見てきたものやし……!」

 

あぁ、この娘はこんなに小さいのに……神様は意地悪だ……!

 

《あぁっ……! 何の罪もない幼子に神はなんという試練を……あのレズミアに似せて創造なさるなんて…………ッ!》

 

謎の声も嘆いている。

 

「あっ……ぅぅぅ……むかつく……! むかつくんやけど喜んでる自分もいる……(ウチ)は……(ウチ)はどうすればいいんや……っ!?」

 

ジークちゃんはぶつぶつと何かを言っている。

そうか、彼女は今まで色々とジークに似ていることから俺のように接してくれる人がいなかったんだ。

初めての対応に戸惑っているんだな……!

 

「いいんだよ、ジークちゃん。素直になっていいんだよ……?」

「あぅぅ……ぅぅ……! (ウチ)は……(ウチ)はぁ…………っ!」

 

何だい……?

 

 

「ーーーーおにいちゃん、ぎゅってして…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジークちゃんを抱き抱えながらクロのもとへ移動していると何だか爆発音のようなものが聞こえてきた。

 

「何だ?」

「……(ウチ)、こわいよぅ……おにいちゃぁん……!」

「よーしよし、大丈夫だよジークちゃん。俺が側にいるからね」

「…………うんっ! えへへっ」

 

ジークちゃんを安心させ、爆音の発生源へと向かう。

そこには……。

 

 

「ーーーーあれ……もしかしてクロか?」

 

 

ヴィヴィオちゃんやストラトスちゃんの大人モードのようにないすばでーになったクロがいた。

しかもヴィヴィオちゃんやストラトスちゃんと対峙中のようだ。

 

「……おにいちゃんのおともだち? 」

「ん? あぁ、そう。友達…………かなぁー?」

 

友達?

 

《ペットですよ》

 

何の躊躇いもなくそう答える謎の声。

そうかペットなのか。

 

「むー……」

 

俺が黙り込んだままだったのがジークちゃんの何かに触れたのか、彼女は頬を膨らませていた。

 

「おにいちゃんは(ウチ)のっ! (ウチ)のなんやっ!」

 

子供ならではの独占欲だろうか?

かーわいー。

 

「……って、ありゃ?」

 

ジークちゃんと話しているうちに、ヴィヴィオちゃんの拘束魔法よってクロが捕らえられていた。

これは……。

 

 

もしかして、俺とクロ(こっち側)圧倒的に不利な状況?

 

 




おまけ
《THE INFINITY WAR ※???視点》

「……見つかった?」
「いえ、全く……。そちらは、って聞くまでもありませんか」
「……面目ない」
「いえ、クーちゃんさんのせいではありません」

まさか私たちの探索能力を持ってしても見つからないとは。

「もうっ……いったいどこに行ってしまったんでしょうか?」
「……分からない」

探しても探しても手がかりすら掴むことができません。

「まさかあの(・・)“彼女”がここまでお転婆だとは……」
「……本当に驚かされた」

私やクーちゃんさんのデータベースや記録映像からでは想像もつきませんでした。
やはり()に接触するほかありませんね……。

「“篠崎チヒロ”さん……でしたか」

“彼女”の目的も彼のはずです。
彼を探し接触するのが一番手っ取り早く“彼女”を見つける方法でしょう。

「そうと決まれば善は急げです。クーちゃんさん、行きましょう」
「……アーちゃんは時々聞いたこともない言葉を使う」
「……あぁ、“善は急げ”ですか? そう言えばあなたは地球に行ったことがありませんでしたね」

地球のことについては追々教えてあげましょう。
今は“彼女”を探すことが最優先です。

「行きましょう、クーちゃんさん」
「……わかった、アーちゃん」

to be continued……




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七十九話

今回のおまけは今やっている無限書庫編が終わったあとか、その次くらいにやる本編の予告です。




とりあえず、俺はジークちゃんをつれて本棚の影に隠れることにした。

 

「ぎゅ~……♡」

 

弱冠うっとおしくなってきたぞ、この娘。

これがジークだったら一本背負いなのに。本棚目掛けて叩き付けるのに。

 

「……ま、今はそれどころじゃないしな」

「ん? おにいちゃん、どーしたん?」

「何でもないよ」

 

さて、少し整理しようか。

現在、クロはヴィヴィオちゃんの拘束魔法を破りガチ戦闘中だ。

しかし、やはりというか天使はつおい。かなり圧されてる。

 

「……あれ? でも、確かヴィヴィオちゃんは封じたはずじゃ?」

 

ストラトスちゃんもいるし。

瓶詰め魔法を何とか解除したってことか?

 

「……となると、かなり不利だな」

 

クロは一人、あちらにはヴィヴィオちゃんにストラトスちゃん、そして見知らぬガキ(たぶんヴィヴィオちゃん側だろう)がいる。

はっきり言って勝ち目はない。無力化されるのも時間の問題だろう。

 

「……と、なればやることは一つ」

 

あとはタイミングを……お?

ヴィヴィオちゃんがクロの手を取って何かを話している。

まさかもう終了……と思いきや。

 

 

 

「ーーーーブチ抜けェーッ!」

 

 

 

突然ハリーの声が聞こえ、ヴィヴィオちゃんとクロの方に光が放たれた。

 

「ーーーーって、ヴィヴィオちゃん!?」

 

無事か!?

……どうやら寸前で避けていたようだ。良かった。

そして光の放たれたもとを見るとハリーやその取り巻き、デコ助にシャベル……あと何か知らない娘がバリアジャケットを装着し、クロと対峙していた。

 

「あ、やばいこれクライマックスだ」

 

俺も動かなくては!

この期を逃したら後はないッ!

 

「あっ、おにいちゃん!? どこいくん!? まってや~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーー待ってくださいってば! 今、私がファビアさんと話してるんですから!」

「い……いや、そりゃそうなのかもしれねーが……」

 

かかったなアホが!

 

稲妻十字(サンダークロス)……じゃなくて、確保ぉーッ!」

「なっ……ち、チヒロっ!?」

「チヒロ先輩っ!?」

 

後ろからクロを羽交い締めにする。

 

「俺はッ! 最初からこの機会を伺っていたッ! 油断したところを拘束できるようになッ!」

 

大声で強調する。

 

「ーーーーハッ!? ルーテシアさん、今です!」

「えっ? あ、あぁ、そっか!」

 

突然の俺の出現に一同ぽかんとするなか、いち早く再起動(リブート)したストラトスちゃんが叫ぶ。

それに反応して、先ほどの見知らぬガキが近寄ってきてクロに手錠をかけた。

 

「魔力錠オン!」

「あ……!」

 

クロの変身魔法が解けた。

よし。計画通り……!

 

(……リオちゃん、あれ本当かい?) (あの油断したところをっていうの)

(そんなわけないじゃないですか!) (だって先輩ですよ!?)

 

聞こえてんぞ。

君らあとで殺す。

 

「ジーク! ヴィヴィ! 無事ですか!?」

 

何てやっている間にヴィクターとそのペアであるコロナちゃんまで到着。これはもうチェックメイトだな。

ていうか。

 

「おい、ヴィクター。ヴィヴィオちゃんについてはいいとして、お前はジークの心配しかしねえのかよ」

「あら、他はともかくあなたはそう簡単にやられたりしないでしょう? 守るべき存在である初等科組は()()()()()()()()()()()()()()()()()なのですから。心配すべきはジークが無事かどうか(自分のおもちゃが壊されていないか)だけです」

「中等科組とか他の連中は?」

「自己責任ですわ」

 

なるほど。一理あるな。

……っていうかジークいなくね? ジークちゃんならいるけど。

ま、どうでもいいか。

 

「さぁて、と」

 

クロについては見知らぬガキ……確か、ルーテシアとか呼ばれてたか? そいつに任せておいて……。

 

「ヴィヴィオちゃん、大丈夫? 酷いことされなかった?」

「……先輩のばかっ!」

 

な、なぜにっ!?

 

「ヴィ、ヴィヴィオちゃん……? いったい何で怒ってーーーー」

「かくほぉーーっ!!!」

「ーーーーって、うおっ!? ジークちゃん!?」

 

いきなりジークちゃんが俺へ飛び付いてきた。

 

「しかし甘ァいッ! 勢い生かして一本背負いっ!」

「なんでやぁぁぁぁぁあああああっ!?」

 

ヴィクター目掛けて投げ飛ばす。

正式な背負い投げは地面に叩きつけるんだけど……こっちに投げるべきだろう。

 

「……ま、まさかジークですの!? まぁまぁまぁまぁ、何て弄り……もとい可愛らしい姿に……! 安心してくださいな、ちゃんと受け止めてさしあげーーーーあら? 靴ひもがほどけてますわ。結ばないと」

 

ーーーージークちゃんは靴ひもを結ぶために屈んだヴィクターの後ろの本棚……ではなく、そこにいたチャイナ服の少女に激突した。あのチャイナ服誰?

 

 

 

 

 

 

「あ、バリアジャケットだから靴ひも関係ありませんでしたわ。てへっ☆ ……って、ウ〇コ踏んじゃいましたわ」

「ぷぎゃッ!?」

 

ジーク……憐れな子。

 

 




おまけ
《【予告】“V” has come to》


この作品が始まってから約6ヵ月。





僕たちは教えてもらった。





友を弄ぶ快感を。





見つかった時のスリルを。





反省しない心がゲスの必需品であることを。





僕たちは教えてもらった。





数多くの生き様を。





だが僕たちはまだ教えてもらっていない。
















誇り高き雷帝が、なぜゲスに堕ちたのかを。
















この作品最大の謎に、決着がつく。


「6ヵ月間、待たせましたわね」


ヴィクトーリア・サーガ、近日公開。




“V” has come to(“V” が 目 覚 め る) .




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八十話

少しだけ原作改変。
はやてが来るより先にジークの変身が解除。


そしてまたもや駆け足なうえに“静”なる回。
今回のおまけも、次々回のオリジナル展開な本編に繋がる大切な伏線になります。
一応、そこまで読んでいただける嬉しいです。




俺は今、たいへん怒っていらっしゃる。

怒りすぎて口調が変になっている。

 

「だ、だからごめんって言うてるやん……!」

「まじ許さねぇ」

 

ジークちゃんはジークだった。

クロの魔法で子供の姿になっていただけだった。

 

「ぶっ殺す」

「な、なんでや!?」

 

人の同情心に漬け込みやがって……!

どうしてくれようか、コイツ。

 

《焼きましょう。いつの時代でも汚物とは消毒されるものなのですよ 》

 

悪くないな。

 

「……うー、何でそんなに怒るん? (ウチ)のこと、そんなに嫌い……?」

「いや、別に嫌いではない。分類的にはむしろ好きだぞ」

「へぇあっ!?」

「驚きすぎて声おかしいぞ、べジーク」

 

こんなに面白い玩具は他にない。

 

「まぁ、でもハリーのが好きだけどな」

「……それは、ポッターのことやよね?」

「ハリー・トライベッカに決まってんだろ馬鹿か」

 

馬鹿か。

 

「な、なんで!? なんで番長なんや!?」

「当然だろ。飯はうまいし、家事全般やってくれるし……あんな()()()探したって他にいないぞ」

 

冬場のこたつのごとく愛してる。

 

「……な、なんや、そういう意味やったんか……良かった」

「……よくわかんねーけど、良かったな」

 

そんじゃ、ま。

 

「覚悟はできてるよな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

さて。

ジークへの制裁は完了した。

次にすべきことは……。

 

「ヴィ~ヴィオちゃんっ!」

「……ぷいっ」

 

……くっ、めげないぞ。

これくらいでめげたりしないぞ……!

 

「な、何で怒ってるのかな?」

「……私がファビアさんと話してたのに」

 

……なるほど、つまりクロが存在しなければこうなることはなかったと。

 

「クロてめぇ覚悟しろ」

「……えっ……!?」

「な、何でそうなるんですか!? ちょっ、チヒロ先輩、ストップ!」

 

クロにも制裁しようとするが、ヴィヴィオちゃんに止められる。

 

「あーもー! わかりました! 許しますから、ファビアさんに何もしないでください!」

「えっ? 本当に? 本当に許してくれるの?」

「本当です!」

 

よっしゃぁぁぁああああッ!

 

 

「ーーーーあーのー……出遅れてるうちに状況が解決してもーた……ってことでええんかな?」

 

 

おっ、ベストなタイミングで八神司令が来たな。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、八神司令が来てくれたおかげで事態は完全に収束した。

ヴィヴィオちゃんたちは……えっと……ウ、ウェー? ちゃんとやらが見つけたエレミアの手記を残って読むことにしたらしい。

俺はーーーー

 

 

 

《さ、目的は達成しましたし、さっさと帰りましょうか。あのレズ女の日記読むなんて絶対にごめんです》

 

 

 

というように謎の声が騒ぐので、無重力空間に酔ったという嘘をついて帰ることにした。

現在はクロをしょっぴくために同じく無限書庫から出ようとする八神司令たちと行動を共にしている。

 

「ねぇ」

「あん?」

 

確かこいつ……ルーテシア、だっけ?

 

「まだあなたとはちゃんと喋ったことなかったよね? 私はルーテシア・アルピーノ。あなたは?」

「篠崎チヒロ。趣味は盆栽」

「ぼ、盆栽って……な、なかなか渋い趣味ね」

 

嘘だけどな。

 

「無重力空間に酔ったっていってたけど……大丈夫?」

「あー……大丈夫大丈夫。まだ酔い始めって感じだから」

 

本当は酔ってすらいないけど。

って、そうだ。

 

「クロ」

「……チヒロ」

 

クロに話しかける。

 

「獄中生活がんばれよ。出所したらまともに生きるんだぞ」

「いや別に刑務所入るわけじゃないよ!?」

 

ルーテシアがそう叫ぶ。

えっ、捕まる訳じゃないの?

 

「んだよ、甘いなぁ、管理局」

「ですです」

 

……誰だこのガキんちょ。

 

「あ、ご挨拶が遅れました! リインフォース・ツヴァイです! よろしくお願いします!」

「あ? あ、あぁ……よろしく」

 

何だろう……誰かに似てるような……?

 

「……チヒロは」

 

リインフォースが誰に似てるのか思い出そうとしていたら、クロが話しかけてきた。

……ま、これはいつか思い出すだろ。

 

「なんだ?」

「……チヒロは、私に刑務所に入ってほしいの?」

「え? 別に」

 

どっちでもいい。

 

「……そう」

「……え? 終わり?」

 

終わりみたいだ。

 

「……ま、よくわかんねーけど。こってり絞られてこい。(……説教なんざ聞き流してりゃ)(いいんだからな)

(……わかった)

 

ぽんぽん、と頭を撫でてやる。

 

「また今度遊ぼーぜ、クロ」

「…………うんっ!」

 

 

 

 

「あの魔女っ娘……あんなに喜んでるけど、目の前の相手に騙し討ちされたっての覚えてないの……?」

 

 




“INFINITY WAR”はまたもやお休み。

おまけ
《無限書庫からの帰り道 ※篠崎チヒロ視点》

「あれなに?」

道端で何かが光っていた。
近寄って拾ってみる。

「……玉?」

不思議な色をした、ビー玉くらいの大きさの玉だ。
しかも光を放っている。

「……持って帰ってぐにゅ子に見せてみるか」

あいつならなんか分かるかも。

「よし、そうと決まればさっさと帰るか!」

光る玉をポケットに入れ、帰路についた。


ーーーー結局、俺はこの玉の存在を忘れてしまいぐにゅ子に渡すことができなかった。それがまさか、()()()()()になるなんて……。


to be continued……





次回、ついに。

(ジークの)平和(ピース)が終わる。“V”が目覚める。



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八十一話

というわけで、邪神過去編(ヴィクトーリア・サーガ)突入。
現実時間は本編には関係ない“とある日のこと”とでも思ってください。

あと、今回だけヴィクター視点でやります。

あんまり本編で主人公以外の視点をやるのって苦手で……今後はやらないと思います。
あくまで書き手として自分の作品に対する意見なので、別の作品のことを言っているわけではありませんのでご理解ください。




「だからさぁ、やっぱジークにさらしだけ着用させて管理局員の前を歩かせてみようぜ。ぜってー面白いって」

「いえ、それなら変〇仮面の格好であなたの家に突撃させるほうが……」

「う~ん……け〇こう仮面にしないか?」

「それ採用ですわ」

 

 

「ーーーーあんたら(ウチ)に恨みでもあるんかぁっ!?」

 

 

「え? 別にないけど?」

「え? 別にありませんわよ?」

「余計に(タチ)が悪いわっ!」

 

今日も今日とてチヒロと私とジーク、三人集まってお茶会をしている。

 

「おい、ヴィクター。駄犬(エドガー)もいるぞ」

「あら、犬を数えるときは“匹”を使いますのよ?」

「あ、そっか」

 

駄犬(エドガー)はさめざめと泣いている。

って、あら? 紅茶がもうありませんわね。

 

「紅茶のおかわりを持ってきてくださいな、駄犬(エドガー)

 

駄犬(エドガー)は泣きながら屋敷へと歩いていった。

 

「あいつ絶対ドMだよな」

「あれ見てそう言うんやったらチヒロの目は曇った硝子玉やで」

 

チヒロが歩いていくエドガーを見てそう言った。

ふむ……。

 

「彼も昔からああだった訳ではないんですのよ?」

「そうなのか?」

「……あんな扱いになったのは、主にヴィクターが変わったせいやけどね」

 

私が変わった、ね。

確かに。

 

「へぇ……そういや、さ。お前、昔はどんなヤツだったんだ?」

「ん? 何や、昔の(ウチ)が知りたいんか~?」

「いや“お前”って言ってるじゃん。単数形じゃん。ヴィクターだけだよ」

「なっ、何でや!? (ウチ)のことは!?」

「ぶっちゃけどうでもいい」

「なっ、なんやとぉーっ!?」

 

チヒロに飛び掛かるジーク。

……ふふっ、あなたも()()()に比べてだいぶ変わったわね。

 

 

ーーーーそれは、私たちが自らの意思とは無関係に背負わされた業に苦しんでいた()()()のこと。

幼く純粋だった私に新たな世界を教えてくれた、()と出会った運命の日の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーふっ! やあっ!」

 

その日は屋敷から少し離れた場所で、“雷帝”の技の訓練をしていた。

いや、その日『も』か……。

 

「えいっ! せいやぁっ!」

 

毎日同じことの繰返しだ。

朝起きて、顔を洗って、ご飯を食べて、訓練をして……。

なぜ自分はこんなことをしなくてはならないのだろう。()()()()雷帝の子孫として生まれただけなのに。

 

「てやぁっ! はぁっ!」

 

それでも私は訓練を続けるしかない。例え偶然でも、私は雷帝の子孫なのだから。

私はそれしか知らないのだから。

 

「…………ジーク」

 

槍を振る手を止め屋敷の方を見る。

最近出会った少女ーーーージークリンデ・エレミア。彼女もまた過去(先祖)に捕らわれた人間だ。

 

「……大丈夫かしら」

 

触れるもの全てを消し去る彼女の……いえ、エレミアの魔法。それが彼女を苦しめている。

救ってあげたい。けど私には救えない。その術がない。

 

「でも……守ってあげることはできる」

 

“雷帝”の技さえ身に付ければ。

私にだってできることはあるはずだ。それを見つけてみせる。

 

「ーーーーふっ! はぁっ!」

 

だから今日も槍を振る。

こうして、今日という日もいつもと変わりなく過ぎて行くーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、お前、何してんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーはずだった。

 

 

 




おまけ
《THE INFINITY WAR ※パパン視点》

「厄介なことになってきたねぇ……」

まさかTHE MATHER(あの子)まで参戦してくるとは。
我が嫁ながら中々の強敵だよ。

「クアットロちゃん、状況は?」
「は~い! ……既に彼女(委もうと)はご子息様と数回に渡りデートを重ねていますよ~」

ふむ……。

「……他の娘たちとは?」
「委員長さんはまだゼロ、後輩さんとは二回、他は各一回ずつのようです。うちの子が一番多いみたいですね~」
「……妨害工作が効いてるみたいだね。よかった」

チーくん本人はどうなんだろう?

「ヴィクターちゃん」
「……チヒロ本人は何か怪しいと感じ始めている、というところでしょうか? さすがにこうも女の子たちと、それもそれぞれ違う娘たちと二人きりで頻繁に出掛けるなんて怪しすぎますからね。最近ではほとんどの誘いを断っているようですわ」
「なるほど……」

つまり委もうとちゃんが独占状態でデートできるようにしないとダメってことか。

「ヴィクターちゃん、頼める?」
「お任せください。ついでにエルス・タスミンも排除してご覧にいれますわ」
「うん、期待してるよ」
「了解いたしましたわ」

それじゃあ僕も行こうかな。

「あら? ボスもお出掛けですか?」
「うん。ちょっと……チーくんとこのセフィちゃんをスカウトしにね」

……この遊び(勝負)、勝つのは僕らだ。


to be continued……




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八十二話

ヴィクター視点です。




「なぁ、お前、何してんだ?」

「えっ……!?」

 

背後から声をかけられる。

初めはエドガーかと思ったが、彼は今、用事があって屋敷の方へ戻っているはずた。

それに声が違う。

 

「なぁ、おい」

「あ、あなたは誰ですの……っ!?」

 

振り向いた先にいたのは、同年代か少し年下くらいの男の子だった。

 

「人にものを訪ねるときは、まずは自分が名乗るべきだぜ」

 

男の子の答えに釈然としない何かを感じつつも、彼の言う通りだとも思った。

ここはまず私から名乗ろう。

 

「……ヴィクトーリア・ダールグリュンですわ」

「ダールグリュン? 変な名前……くくっ!」

 

今こそ雷帝の技が習得しきれていないことを後悔したことはなかった。

 

「……そ、それで、あなたは?」

「ん? “もくひけん”を行使しまーす」

「なっ!? 何ですのそれ!?」

「えっ? “もくひけん”知らねーの? バカだなぁ、お前」

「そういう意味じゃありませんわっ!」

 

それに黙秘権くらい知っている。

 

「いやぁ、ほら。今は“こじんじょーほー”とか“プライベート”が保護される時代だから」

 

……怒りを通り越して呆れを覚えた。

この男の子は屁理屈の塊のようだった。

 

「屁理屈も理屈だよ~ん」

 

こいつマジ腹立ちますわ……ッ!

 

 

 

 

 

 

 

「で、あなたはなぜここにいるのですか?」

「何がー?」

 

はぁ……。

 

「ここは私の家の土地、勝手に入ってきたら“不法侵入”ですわよ」

「……ふむ。ここはお前の土地だったのか」

 

だから、私っていうよりはダールグリュン家ですが……。

 

「でもここ生み出したのはお前やご先祖様じゃないよな?」

「は、はい?」

「だから、元々あった土地を金やら何やらで買ったのがお前のご先祖なんだよな」

「ま、まぁ……そうですわね」

 

きっと金だけではなく、戦やらそこであげた戦果の功績やらで得たというのもあるのだろう。

だが、それが何だと言うのか……?

 

「じゃあ大丈夫だ。森も川も海もこの土地も“世界”が生み出したものだから、ここは“世界”のものだ」

「は、はぁっ!?」

 

な、何を言ってるんですの!?

 

「何かねー、この前、一人で留守番してたら家に変な人が来てそう言ってた」

 

そ、それって……宗教勧誘?

 

「ちゃんと“世界”に許可とって『ここは自分の土地』っていってるの?」

「へっ!? あ、いや……」

 

むしろ“世界”に許可をとる方法ってどうやるんでしょうか?

 

「じゃあいいよな! 俺がここにいても」

「え、ええぇぇ……」

 

 

ーーーーこうして、いつもと変わらない日常のなかに僅かな“変化”が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからも、彼は週に一回、多いときには週に二、三回ほど現れるようになった。

 

「でさぁ、幼馴染みがうっせえのよ。いや、まだガキだから仕方ねーっちゃ仕方ねーのかもしんないけど……あ、この幼馴染みは前に話したのとは違うヤツでさ……」

「ーーーーふんっ! はっ!」

 

はじめの頃は彼が一方的に喋っていて、私はそれを無視して訓練に励むというものだった。

しかし時が経つにつれ、それも変わっていった。

 

 

 

「ーーーーって言うんだよ! 酷くね!?」

「…………それはあなたが悪いですわ」

 

 

 

「ーーーーそういや、ヴィクトーリア。お前って……」

「…………ヴィクターでいいですわ」

 

 

 

「ーーーーほら、レモンのハチミツ漬け作ってみたぞ」

「…………わ、私のために?」

「他に誰がいんだよ。……母さんに聞いて初めて作ったから味は保証できないけど」

「い、いただきますわ…………」

 

 

 

 

 

 

そして、とある日のこと。

 

「ーーーーよう、ヴィクター。今日も相変わらず無駄に頑張ってんのか?」

「む、無駄とか言わないでくださいなっ!」

 

数日前から私はあることを考えていた。

それを今日、実行に移そうと思う。

 

「あの……」

「……ん? どした?」

 

 

 

 

 

「あなたに会ってもらいたい娘がいるんですの」

 

 

 

 




おまけ
《まだだよね? 謎の少年&ヴィクター ※sound only》

「と、ところで……そろそろ名前を教えてくださいませんか……?」
「いやぁ……プライベートは守らないといけないから」



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八十三話

エドガーの存在の有無は問うてはいけない。




「ここですわ」

 

“彼”を連れて彼女……ジークのいる部屋の前へとやってきた。

……この人なら彼女を救えるかもしれない。自分でもなぜそんなことを考えたのかはわからなかった。

 

「ふ~ん……」

「あの……さっきも話した通り彼女はデリケートですので、どうか手荒な真似はしないでくださいね?」

「分かってる分かってる。俺に任せなさい」

 

ジークの事情は説明済みだ。

 

「……お願いいたしますわ」

「おうよ」

 

ーーーーきっと、彼なら。

 

「……おじゃましまーす!」

 

彼は扉を開け、中へと入った。

私もそれに続く。

 

「アイツか……」

 

部屋の中心、膝を抱えてジークは座っていた。

部屋の半分は彼女を境にして破壊の限りを尽くされている。

 

「ぐっちゃぐちゃだなぁ……」

「あれがさっき話した彼女の背負うもの……それが残した“痕”ですわ」

 

 

『……(ウチ)が触るとみんな壊れてしまうから』

 

 

いつだったかジークが言っていたこと。

今でも鮮明に覚えている。

 

「……よし」

 

彼が動き出した。

ゆっくりとジークに近付いていく。

 

「……お願い……あの娘を……救ってください……ッ!」

 

そしてーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー彼はジークの頭を踏みつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何してますの!? あなた何してますのっ!?」

 

あの後すぐに彼を部屋から連れ出し、問い詰めている。

 

「いやぁ……あんな風にずーっとウジウジしてる奴嫌いなんだよ」

 

だからって踏みつけますか普通!?

それも傷心の女の子の頭を!

 

「だってムカつくじゃん?」

「馬鹿なんですの? あなた馬鹿なんですのね!?」

「ばーかばーかお前がばーか!」

 

コイツ……ッ!

 

「まじでブッ殺してやりますわ!」

「まぁ待て。俺だって考えもなく踏みつけたわけじゃねぇって」

「ムカつくからでしょうっ!? あなたさっきそう言ったではありませんかっ!」

「本当にそれだけだと思ってんのか?」

 

えっ……? や、やはりなにか理由があって?

 

「……あぁ、それだけの理由さ!」

「最も惨い殺し方してやる」

「お、おい! 落ち着けって! じ、冗談だよ冗談!」

 

本当に冗談なのか?

信用できない……。

 

「はぁ……あなたに頼んだ私が馬鹿でしたわ」

「いやいやいや、まだ早いって! 言ったじゃん、俺に任せなさいって」

「今ので任せるのは間違いだと確信しましたわ」

「信じろよ。絶対に大丈夫だから!」

 

何をもってそんなことが言えるのか……。

 

「よぉし、第二陣、突撃ィー!」

 

彼は再び部屋の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーそして再びジークの頭を踏みつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何やねん、アンタ……っ! 人の頭をいきなり踏みつけるとか……それも二回やで……!? 何考えてんねん……っ!」

「うっせーブス……てめぇみてーにウジウジしてる奴は嫌いなんだよ……っ!」

 

ああぁぁ……何でこんなことに……!

 

「あ、アンタには関係ないやろぉぉ……っ!」

「知らねーよ、んなことはよぉぉ……っ!」

 

ジークと彼は取っ組み合いの喧嘩をはじめた。

それはそうだ。見ず知らずの人物に頭を二回も踏まれたら誰だって怒るはずだ。

 

「だ、だいたいアンタ誰や!? 何でここにいるんや……!?」

「俺がどこで何をしてようとお前には関係ないだろ! ばーか!」

「きぃぃぃぃぃいいいいいーーッ!」

 

と、とりあえず止めなくては。

 

「あ、あの……二人とも、少し落ち着いてくださいな!」

「やんのかゴラァ!?」

「受けてたったるわド阿呆ゥ!」

 

だ、だめだ……全然聞いてくれない。

 

「こんのぉぉぉぉおおおお……!」

「ぐぎぎぎぎぎぃぃいいい……!」

「ち、ちょっと! 二人とも!」

 

今度は割って入って止める。

 

「何やねんヴィクター!? このアホぶちのめすのに忙しいから黙っとって!」

「何だヴィクター!? このバカぶち殺すのに忙しいからちょっと待ってろ!」

 

「何やと!? 誰がバカや!」

「んだと!? 誰がアホだ!」

「きゃっ……!?」

二人に突き飛ばされ、腰を打ってしまった。

……なんか、イラついてきましたわ。

 

「こ、んのぉぉぉぉ……ッ!」

「て、んめぇぇぇぇ……ッ!」

 

今だ組み合う二人に私はーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「百式神雷ッ!」

 

 

 

ーーーー私の中で、何かが芽吹いた。

 

 




ご指摘を受けたので追記しておきます。

60話のジーク邂逅編にてチヒロとジークの初対面を描きましたが、あれもまた間違いではありません。
“チヒロにとって”あれがジークとの初対面なのです。果たしてどういうことなのか、それは続きをお楽しみに。

あ、ま、まだあいつがチヒロと決まったわけじゃあ…………無理あるよね……。



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八十四話


今回もヴィクター視点。
そして過去編はこれでおしまい。まさかの結末(?)です。

Age Of Ultronの円盤買っちゃったゼ┐('~`;)┌




「ごめんなさいでした」

「反省してます」

 

土下座。二人は今、その体勢だ。

私はその前で訓練用の槍を手に仁王立ち。

 

「本当に分かってるんですの?」

「人ん家で喧嘩しちゃいけないでした」

「いきなり人の頭踏みつけちゃいけないでした」

「ちゃんとした言葉を使いなさい」

 

はぁ……本当に分かっているのだろうか。

 

(テメーのせいだかんな)

(なんでや!?) (アンタのせいやろっ!)

 

聞こえてますわよ。

 

「ぷぎゃっ!?」

「あいたぁっ!?」

 

ジークの頭を踏み抜き、“彼”の背に槍の柄を刺す。

 

「ーーーーんっ…………!」

 

……やっぱり。

何だろうか、この、人に……特にジークに酷いことをしたときに流れる甘美な電流のようなものは。

魔力異常……? 一度、検査をする必要がありますわね。

 

「……って、それは後でですわ。二人とも聞いていますの!?」

 

今はこの二人を叱ることに集中しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからというもの、“彼”が来るたびに二人は喧嘩をしていた。

 

ある時はジークのおやつを“彼”が食べたと言って。

また、ある時は“彼”の肩にジークの肩がぶつかったと言って。

 

やれ“彼”がどうの、ジークがどうの。

 

朝昼夜と時間を問わず、二人は会えば喧嘩ばかりしていた。

そのたびに私が制裁をする。……日増しにあの甘美な電流も強くなる。なんなのこれ。

 

 

ーーーーそしてある時を境に、“彼”は私たちのもとに現れなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、名前も聞かないまま彼はいなくなってしまったのですわ」

「本当にひどい奴やったよね……あの馬鹿」

 

……そんなこと言って、一番寂しがっていたのはあなたでしょうに。

 

「ま、まぁ……あの頃はあの馬鹿をどうぶちのめしたろうか考えてた()()()……じゃなくて! その()()で、ご先祖様とかのことを一時的に忘れることができたのは事実やな。……(た、楽しかったし)

 

そして心の余裕ができて、ジークは壁をひとつ乗り越えることができた。

 

「へぇ……ん? なぁ、もしかしてジーク、ソイツのこと……」

「えぇ、紛れもなくあれはジークの初恋ですわね」

「な、ななな何言っとんの!? あ、あんなヤツ好きやない!っ」

「へぇ~……ほんとかなー? にやにや」

「にやにやすんな口で言うなぁぁぁあああ!」

 

そして二人は追いかけっこを始める。

 

 

ーーーー実を言うと、私は“彼”のその後を知っている。

ダールグリュン家の総力を持って調べたのだ。

 

私たちの前に“彼”が現れなくなった時期、“彼”は交通事故に巻き込まれて入院していただそうだ。

その際に彼は、記憶の一部分をきれいさっぱり無くしてしまったらしい。

だから私たちのところには現れなかったのだ。記憶の一部分……つまり、私たちを忘れてしまったから。

 

それから数年後、“彼”に再会した。

何の因果か、今度はジークから紹介されて。

 

ジークには“彼”だということは分かっていなかったようだ。男子三日会わざればなんとやら、確かにだいぶ印象が変わっていた。 もちろん“彼”のほうも私たちを分からなかった。

でも私にはすぐに分かった。

いまだに追いかけっこを続ける二人を眺める。

 

「……あなたの初恋はまだ続いているんですのよ、ジーク」

 

でも、それを言うつもりはない。

きっとそれでいいのだと思う。大切なのは“今”だから。

 

 

 

 

 

 

 

「ところでチヒロ……あなたの初恋っていつですの?」

 

「ん? あぁ……俺さ、小さい頃に交通事故に巻き込まれたことがあるんだよ。で、入院してる時にさ、ずっと側にいてくれた娘がいたんだ。年下か、同い年か……金髪の女の子でさ。でも今思えばおかしな話だよな? だってずっと……2()4()()()()()()一緒にいてくれたんだぜ? まぁ寝てる間はわかんないけど、たぶんずっとだ。同い年くらいの女の子が、一人でだぜ? ありえないだろ。……あ、そういやなんかヴィヴィオちゃんに似てたかも」

 

 

《……ふふっ♪》

 

 




記憶喪失のことについてはご都合主義ってことで突っ込み等はお許しください。

次回、まさかの〇〇編。


おまけ
《DEVELOPMENT ※ヴィクター視点》

「そういや親父に頼まれてこんなものを作ったんだ」

そう言って、チヒロはある物を出した。

「何ですの、これ?」
「フ〇トン回収装置」

……何をするのかしら。

「いいか、よく見てろよ」

チヒロはジークにそのフ〇トン回収装置をつける。

「な、何で(ウチ)なん!?」
「ジーク、可愛いよ」
「えっ!? えへへぇ……!」

相変わらずチョロい女。
しばらくすると、フ〇トン回収装置から小型の気球が出てきた。

「えっ!? えっ!? な、何なん!?」
「あらあら」

そして……。



「ああああああぁぁぁぁぁぁ(ああああああ)(ぁぁぁぁぁぁ)……………………(………………………………)



空高く飛んでいった。

「これを……なんだっけ? 諜報班? が回収する。敵地で気に入ったヤツを味方に率いれるってわけだ」
「なるほど……で、ジークはどこに飛ばされたんですの?」
「え? 知らん」
「え?」
「今頃大気圏超えてんじゃねーの?」

……………………あら。

「……今から遊園地行きませんか? 二人で」
「おっ、いーねー」



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八十五話

今回は短め。
視点はチヒロに戻ります。



ーーーーカポーン……なんて。

 

 

アニメやドラマだったら、そんな音が鳴り響くかもな。

 

「ふぃ~……!」

 

熱い()の中で手足を伸ばす。

じんわりと体の芯から温められていく。

 

「やっぱいいねぇ~……デケー風呂は」

「ーーーーあぁ、そうだなぁ……」

 

俺の独り言に答える声があった。すぐ隣からーーーー若い男だ。

 

「いやぁ~……朝から風呂って最高っすよね」

「あぁ、最高だな……こんな贅沢はない」

 

そういや……何で俺、朝から風呂に入ってんだろう?

ていうか。

 

「あの……ちょっと聞いていいすかね?」

「ん? 何だい?」

 

 

 

 

「ーーーーここどこ? あんた誰? 何で俺、()()()になんかいるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやらここは銭湯だったようだ。

 

「はい、どうぞ」

「あ、ども……」

 

若い男が牛乳を差し出してきたので受け取る。

ぐいっ、と一気飲み。

 

「服、どうだい? キツかったりしないかい?」

「あ、大丈夫っす」

 

大浴場から出て更衣室に来てみたが俺の服はなかった。

朝ということもあり、人数はそんなにいない。あれば見つけることは難しくないはずだが……俺に合うサイズの服は見当たらない。

そこでこの若い男が自宅に戻り、息子さんの服を持ってきてくれたのだ。……子供いるんだ、この人。

え? じゃあ……そんなに若くないのか……?

 

「ありがとうございます」

「いや、何。困ったときはお互い様さ」

 

マジイケメソ。

 

「えっと……記憶喪失……ってやつなのかな?」

「はぁ……たぶん」

「そ、そうか……」

 

先ほどこの若い男から質問されて気づいたのだが、今まで何をしてたのか、どこに住んでいたのか……自分に関する情報をまったく思い出せないのだ。

にしても、なんか自分でもビックリするほどすごい落ち着いてるなぁ。

「自分の名前は……思い出せないかい?」

「……篠崎チヒロっす」

「あぁ、よかった。名前は覚えてるみたいだね……」

 

唯一の手掛かりだよな、俺の名前(これ)

うーん……。

 

「困ったなぁ……」

「困りましたねぇ……」

これからどうしよう……。

 

「とりあえず、僕の家に行かないかい?」

「えっ?」

「僕は家族と喫茶店を経営しているんだ。自分で言うのも何だが、結構繁盛していてね。お客さんがたくさん来るから、そのうちの誰か聞けば何かわかるかもしれない」

「あぁ、なるほど。でも迷惑じゃ……」

「さっきも言っただろう? 困ったときはお互い様さ」

 

……ここは素直に甘えておくか。

 

「じゃあ……お願いします」

「あぁ、わかった。それじゃあ行こうか」

 

そう言って若い男は歩き出す。

……って、まだ名前聞いてねえや。

 

「なぁ」

「ん? どうしたんだい?」

「アンタ名前は?」

「……そう言えばまだ名乗ってなかったか」

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーー僕は高町士郎。よろしくね、チヒロくん」

 

 

 

 




というわけで、まさかの海鳴編スタート。
士郎さんの一人称と口調がわからないよぉ……。


おまけ
《THE INFINITY WAR ※委員長視点》

「ちょっと!」
「……え?」

学校からの帰り道。
いきなり声をかけられた。声の主を見れば、見覚えのあるツインテールが。

「話があるんだけど……こっち来なさい!」
「えっ!? あの……!」




たどり着いたのはどこかの喫茶店。
とりあえずコーヒーを頼む。

「……話って何でしょうか?」
「決まってるでしょ! アンタ、チヒロの争奪戦に参加してないらしいじゃない」

そ、争奪戦て……。

「えっと……まぁ、はい」
「……なんでよ!?」
「な、なんでって……」

……委もうと(あの娘)がいるから。
どう足掻いたって……私じゃ勝てない。

「どういうことよ」
「……それ、は」
「……話してみなさい」

ツインテールさんに言われ、私はぽつぽつと語りだした。
あの娘のことを。

to be continued……




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八十六話


活動報告にも書きましたが更新が法事があって遅れました。
申し訳ありません!


またまた今回も『静』の回。
次回か、次々回に燃えるくぎゅうううううと車の人な彼女が来ます。




「さ、着いたよ。ここだ」

「……ほほぅ」

 

士郎さんに連れられて銭湯から歩くこと十数分、なかなかオサレな店に到着した。

ここが士郎さんの店か……。

 

「喫茶翠屋って言うんだ」

「へぇ……いい店ですね」

「だろう?」

 

まだ開店前なのだろう、扉には“closed”と書かれた看板がかかっている。

……だいたいこういう店って10時くらいから開くんだよな? 飲食店だからなんとも言えないけど。

ってことは……あの銭湯は結構早い時間から開いてるんだなぁ。……本当に、なんでそんな時間に俺は入浴しに来ていたんだろうか。

 

「さぁ、入ろうか」

「あっ、はい」

 

扉を開くと可愛らしいベルの音が鳴り響く。

 

「桃子~、帰ったぞ~」

 

桃子というのは僕の妻のことなんだ、と士郎さんは説明してくる。

 

「士郎さん、お帰りなさい……って、あら?」

 

店の奥からこれまた若い女性が現れる。この人が“桃子”さん? うそ、子持ち? 本当に?

若々しいとかそんなレベルじゃあないぞ。

 

「あらあら! 可愛いコね~! 士郎さん、どこで拾ってきたの?」

「いや、拾ってきたって……動物じゃないんだから」

 

……冗談が好きな人、なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わかったわ。このコ、うちで飼いましょう」

 

桃子さんは、俺の事情聞いて開口一番にそう言い放った。

 

「いや“飼う”ってなんだい!?」

「私もお世話手伝うわ」

「聞いてる!?」

 

桃子さんの言葉に士郎さんは焦っていた。

……なんていうか。

 

「士郎さんの奥さんって……ていうか士郎さんって……」

「ちょっ、待ってくれ! それで僕の評価が下がるのはとても不本意なんだが!?」

「ところでワンちゃん、あなた名前は?」

「“ワンちゃん”? ……あ、篠崎チヒロっす」

「あら、お名前言えるのね~、えらいえらい♪ 私は高町桃子よ。よろしくね、ワンちゃん」

「名乗った意味なくね? ていうか“ワンちゃん”って……」

「二人して僕を無視するのはやめてっ!?」

 

喚く士郎さんを無視して桃子さんは俺の頭を撫でる。

完全に犬扱いですね分かります。

 

「そうそう! さっきシュークリーム作ったんだけど食べるかしら? 商品なんだけど二、三個くらいなら……」

 

そう言って桃子さんは店の奥に消えていった。

 

「……えっと、失礼ですが……こう、おバカっていうか、おかしいっていうか……そういう方がお好きなんですね」

「違うからっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うふふふ♪」

 

桃子さんが持ってきてくれたシュークリームを、桃子さんに頭を撫でられながら頂いている。

すっげぇ邪魔なのに……何だろうか、無下にし辛い。なんでだろうか?

 

「……えっと」

「あら、どうしたの? ……あっ! お散歩に行く? リードあったかしら……」

 

やはり無下にすべきだろうか。

 

「……で、士郎さん。この店って何時に開店するんですか?」

「えっ? あ、あぁ。時間はーーーー」

 

なるほど。

 

「とりあえずお客さんが来たら君のことを片っ端から聞いてみるよ」

「ありがとうございます。……あー、よければ手伝いましょうか? 何もしないって言うのは気が引けますし」

「……そうだね。そのほうが君も気分がいいだろうしね」

 

話のわかる人でよかった。

……趣味は悪いけど、色々と。

 

 

 

 



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八十七話


ダメだ……忙しすぎる……。
申し訳ありませんが少し更新速度が落ちます。なるだけ三日に一回を目安にやりますが、今日のように間に合わないことがあるかもしれません。




おまけ
《一方その頃……》

ヴィヴィオ:先輩……遅いなぁ……。





「ーーーーお待たせしました、ケーキセットになります」

 

現在、俺は翠屋の手伝いをしている。

士郎さんの言うとおり、かなり繁盛しているようだ。開店しからそう経たないにも関わらずぞくぞくと客が入ってくる。

 

「すいませーん! オーダーお願いしまーす」

「あ、はーい」

 

ちなみに“手伝い”とはホールスタッフだ。

さすがに飲食店で調理スタッフはできないからな。資格とかないし……たぶん。

 

「すいませーん!」

 

……もしも、このままこの店でバイトすることになったとしたら歩合制がいいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、チヒロくん。お疲れさま」

「超疲れましたよ……」

 

昼を過ぎ、客足が少しだけ途絶えてきたのを見計らって休憩に入った。

……すぐにまたたくさん来るのだろう、奴ら(客ども)は。

 

「お客様は神様なんかじゃあねぇ…………アレは悪魔だ……地獄からの使者だ……!」

「は、ははは……」

 

笑いごとじゃねえよ……マジで。

 

「……で、どうでしたか?」

「うん……聞いてみたけど、誰も君のことを知らないようだ」

「……そうですか」

 

確かに来た客は多かった。だが、その中で“俺を知っている”なんて条件が付けば……確率はかなり低いだろう。

ピンポイントで、なんてのはかなりキツい。

 

「う~む……どうしますかねぇ……」

「……そうだねぇ」

 

とりあえずこの後も手伝いながら聞き込みを続けてみて……見付からなかったらどうしよう?

 

「記憶が戻れば手っ取り早いんだけどなぁ……」

「……あ、そっか。チヒロくん、君、記憶喪失なんだったね。忘れてたよ」

「むしろどうやったらそんな重大なこと忘れるんすか……?」

「いやほら……すごく落ち着いてるし?」

 

……あんたの評価はもはや酷いとこまで落ちたぞ。

「ーーーーは~い、ワンちゃん! ちょっと遅くなっちゃったけど、お昼ごはんよ~♪」

 

桃子さんが嬉しそうにやって来る。犬扱いについては無視することにした。

よし、メシ食って午後も頑張るか! ……って、なんかもう普通にバイトしてるみたいだ。

 

「はい、いっぱい食べてーーーーあっ」

 

何だ?

 

「うふふ……お手!」

 

……はい、無視無視。

 

 

 

 

 

 

やはりというか、客足が戻ってきて現在混雑なう。

おやつの時間だからか今度は子連れ客が多いようだ。

 

「おにーちゃーん! ばいばぁーい!」

「じゃーなー! 気を付けて帰れよー!」

 

二歳くらいだろうか、小さな女の子がお母さんに抱っこされて手を振って帰っていった。

よくわからんがさっきからガキどもに懐かれまくってる。

 

ーーーーカランカラン。

 

「あ、いらっしゃいませ」

 

ドアベルが鳴り、入り口を見ると女性客が二人。

金髪の女と黒髪の女……あ、黒髪の方は光の角度によって紫っぽくも見えるな。

 

「ん? 何よ、アンタ? 見ない顔ね」

 

パツキン女ムカつく。

初対面にする言い方じゃねーぞ、それ。

 

「喧嘩売ってんのか?」

「あん? 何よ、やるの?」

「えっ!? えっ!?」

 

俺とパツキン女のガンのくれ合いに黒髪女はあたふたしている。

 

「ーーーーおぉ! アリサちゃん、すずかちゃん、今日も来てくれたんだね」

 

そこに士郎さんがやってくる。

アリサ? すずか? 誰?

 

「士郎さん、こんにちは」

「よ、よかったよぉ……ありがとう、士郎さん」

 

……士郎さんの、知り合い?

 

「し、士郎さん……この人たちは?」

「ん、あぁ、そうだった。二人とも、紹介するよ。この子は篠崎チヒロくん……訳あってうち(翠屋)の手伝いをしてくれてるんだ」

 

厳密に言えば、俺を助けてくれてるからせめてもの恩返しにって感じだけどな。

んで、この人たちは?

 

「で、チヒロくん。彼女たちはーーーー僕の末の娘の幼馴染みなんだ」

 

 

 




アリサたちの士郎さんを呼ぶときの呼称がわからない……!



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八十八話

お、お久しぶりです……(白目)
長らくお待たせして申し訳ありません……!

気づけばもう約三ヶ月……。
言い訳になってしまいますが、今までとにかくテストやら企業説明会やら就職説明会やらそれに対する大学の対策講座やらインフルエンザやらと、いろいろなことが重なってしまって……。
さらに言うと、これからがもっと忙しくなるわけで……。

なんとか暇を見つけて投稿していこうと思います。
楽しみに待っていてくださった方、本当にありがとうございます!

これからの更新はしばらく不定期になってしまいますが、必ず投稿していきますので、これからも『鮮烈なのは構わないけど、俺を巻き込まないでください……』をよろしくお願いいたします!



PS.しばらくはリハビリ回になるかもです……。





「大変、大変、大変なの~!」

 

ん? なんだ?

 

「どうした? なの松姉さん?」

「あ、チー松くん」

「待ってせめてチヒ松とかにして」

 

血祭りっぽく聞こえるから。

 

「なんとね! 『鮮烈なのは以下略』の連載が終了して、新しく『なの松さん』の連載がスタートするんだよ!」

「えー!? 本当なの、なの松姉さん!」

「本当だよ! だから早くみんなにも知らせてあげなくちゃ!」

 

そうだな。

こんな重要なこと、早く教えてやらなくちゃ!

 

「おーい、みんな!」

 

「どうしたの? チヒ松」

「……は、早いっすね。ふぁて松姉さん」

「もう。わたしのことはママ松って呼びなさいって言ってるでしょ!」

「頭湧いてんのか」

 

なんだよママ松って。

 

「んー? なんや、呼んだ? チヒ松にぃ」

「おう、ゴキ松」

「ジーク松やけど!?」

 

相変わらずうるせえなぁ。

さっさと自立しろクソニート。

 

「呼びましたか? チヒ松兄さん」

「あ、アインハルト松……天井裏から出てくるな」

「本編ではお蔵入りしてしまったので。……あと語呂悪くないですか、アインハルト松って」

 

心底どうでもいい。

 

「どうしたのー? チヒ松お兄ちゃん」

「おお、我が最愛の妹にしてキューティーモンスター、末っ子・ヴィヴィ松! あぁぁ可愛いぃぃぃいいいっ!」

「え、あ……う、うん。あ、ありがと……」

 

引いてる姿も可愛いぃぃぃぃいいいいっ!

 

 

「えっ!?」

(ウチ)ら六つ子が!?」

「新しい連載で主役!?」

「それ本当!?」

 

「本当なの! 間違いないの!」

「おいおいおいおい! ついにデビューの時だぜ!」

 

わくわくしてきた!

それじゃ! せーのっ!

 

『なの松さん、はーじまーるよー!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーハッ!? なんか電波を受信してた気がする……思い出せないけど」

「ぷぷっ、厨二乙」

「シバくぞクソ金髪」

「あ? 上等よ、表出なさい」

「ち、ちょっと二人とも! 喧嘩はダメだよ!」

 

 

 

 

 

ーーーーあのあと、士郎さんから二人の紹介をしてもらった。

黒髪のほうが月村すずかさん。ちょっと話した感じでは、おしとやかでどこかのご令嬢のような優雅さがある。そして車の人。

金髪はバーニング。あと、くぎゅう。以上。

二人は士郎さんの末の娘さんの幼馴染みということらしいが……じゃあこの夫婦って普通にジジイとババアじゃね?

 

「で? あんた、記憶喪失って本当なの?(……クソガキ)

「あぁ。気付いたらなぜか銭湯で風呂に入ってたんだよ。(……クソ年増)

 

思い出せるのは名前だけ。

 

「それで、ここ(翠屋)で手伝いしながら自分のことを聞いてみたんスけど……」

「手がかりは見つからなかったんだね。……アリサちゃん、チヒロくん、胸ぐら掴み合うのやめなよ……」

 

お互いに一睨みしてから振り払うように手を離す。

ったく、この金髪は……!

 

「士郎さん、届け出とかは……」

「あ……まだ出してなかったよ」

「時々あの娘みたいに抜けてますよね……士郎さんって」

 

金髪が士郎さんにそう言う。確かにこの人抜けてるとこあるとは思う。記憶がないって言ってもあんまり動じなかったし。

金髪が言った『あの娘』ってのは……士郎さんの末の娘さんかな?

 

「災難だったね、チヒロくん」

「いえ、そんな……思い出せない分、逆に辛くないっスから。でもありがとうございます、月村さん」

「……あんた、すずかには敬語なのになんであたしにはタメ口なのよゴミ」

「尊敬できねーからだよカス」

再び無言で胸ぐらを掴み合う。

どうやらこいつとは一度ケリをつけなくちゃならないようだ。

 

「だからダメだってば! なんですぐ喧嘩するの!?」

 

月村さんがあわてて止めに入ってくる。

金髪め、命拾いしたようだな……。

 




チヒロの記憶喪失はエピソード記憶のみ消えています。
これ重要。



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八十九話

ま、またおひさしぶりです……。

内定がないって(白目)
いや、まだ焦るような時間じゃない……明後日 採用試験あるけど投稿しちゃうもんね!

ルール
①チヒロは記憶喪失(一部覚えているものもあり)
②とりあえず高町家にお泊まり(じゃないとそもそも作品として……)
③ミッドに戻ってジークちゃんとのイチャゲスが書きたいから駆け足で



 

夜になり、店を閉めたあとにベストタイミングで士郎さんの娘さんが帰ってきた。

高町美由希さんというらしい。特筆するような特徴はない。強いて言うなら近親〇姦でもやらかしそう、というとこだろうか。

 

さて、現在俺は高町家の風呂につかり自分の身になにが起きたか考えている。

 

「うーん……」

 

まず、俺はなぜか銭湯にいた。

持ち物はなにひとつーーーーそれこそ服すらない。

覚えてることは名前と年齢など自分に関するものだけ。

 

「……銭湯にいた、が何かのヒントになるか?」

 

……ダメだ、いまいちぴんと来ない。

裸のまま銭湯に行ったってことか? いやいや……。

 

「……とりあえず、そろそろ上がるか」

 

考えても考えても答えは浮かばない。

こういうときはさっさと寝るに限る。それに、あとには士郎さんが控えてるし……早くあがらないと迷惑になるしな。

 

 

 

 

「ーーーーワンちゃん、わたしが体洗ってあげるわー♪」

「いやぁぁぁぁぁああああっ!? 変態ぃぃぃいいいいっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に、本当にごめんよ、チヒロくん……」

「本当に、本当に勘弁してほしいんですけど、士郎さん……」

 

リビングにて士郎さんと面談中。

風呂場に全裸凸かましてきた張本人は呑気にコーヒーを入れている。

 

「勘弁してほしいのは僕だよ……」

 

そりゃそうか。

そして気まずい沈黙が訪れる。話題かえよう。

 

「そういや、このパジャマも息子さんので?」

「あ……あぁ、そうだよ。ちょっと大きいかな?」

「いや、これくらいなら大丈夫です」

 

……そういや、このパジャマの持ち主である息子さんと特筆することのない娘さんのほかに、もうひとり娘さんがいるんだよな?

息子さんと末の娘さんをまだ見ていない。

 

「えっと、息子さんと末の娘さんは……? 帰ってこないんですか?」

「あぁ、その二人は家を出ているんだ。息子はいま海外に、末の娘は……まぁ、そこそこ遠いところに。二人とも頑張っているみたいだよ。」

 

へぇ……。

 

「息子ーーーー恭也はすずかちゃんのお姉さんと結婚したんだ」

「月村さんの? ほほぉ……」

 

さぞかし常識人なんだろうな。

 

「末の娘はーーーー」

「ーーーーはーい、コーヒーよ♪」

 

ちょうど士郎さんが末の娘さんについて話そうとしたときに、桃子さんがコーヒーを持ってきた。

 

「そういえば士郎さん、ワンちゃんは今日どこで寝るの?」

 

あ、そういやそうだな。

うーん……。

 

「別に、そこのソファでいいですよ。」

「いや、それは流石に……」

 

そこで桃子さんが“いいこと思いついた”とでも言いたげな表情を浮かべた。

 

「なら、わたしと寝ましょう!」

 

……ナニヲイッテイルノコノヒトハ。

 

「ちょ、桃子!? 僕はどうすればいいんだい?」

「いや、そこじゃないだろ」

 

士郎さんも士郎さんでどこかおかしいぞ。

……天然なのか? あのクソ金髪も言ってたしな。

 

「士郎さんは廊下で寝て」

「桃子っ!?」

 

……あれ? 今のやり取りどこかで……。

そこでふと、写真立てがおいてあるのに気がついた。

幸せそうに笑い、寄り添う士郎さんと桃子さん。その傍らに立つ士郎さん似の男性。息子さん(確かキョウヤさん……だっけ?)だろう。

キョウヤさんの隣には近親〇姦さんと恐らく末の娘さん…………桃子さんによく似た………………あ。

 

 

思い出した。

 

 

 

 



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九十話

もはや何も言えない……。
おまたせしました。本当におまたせしました!

楽しみに待っていてくれた方々、本当にごめんなさい! ありがとうございます!
就活もとりあえず一段落、これからはなるだけ期間をあけないように投稿します! ……(ことを心掛けます)

さて、本編に入る前に……。
しばらく執筆を明けていたため自分でもビックリするくらい難産でした。
よって、感覚を取り戻すまではリハビリ的なものになります。見苦しい文章や表現、低いゲス度が多くなるかもしれません。


あと、八十話おまけ(あとがき)、八十七話(まえがき)を見ることをおすすめします。まぁ見なくても大丈夫ですけど(笑


ちょっと……てか、かなり駆け足気味ですが許してください(土下座



それはある日の朝のことだった。

珍しく、ヴィヴィオちゃんが通信をしてきた。

 

『先輩、おはようございます!』

「おー、おあよう……」

『……寝起きですか?』

「そう……ふぁぁ」

 

昨日の夜、スカさんと作ったハ〇クバスターでジークのテントに襲撃かけてたからなぁ……。

若干寝不足気味かもしれない。

 

「で、どったのヴィヴィオちゃん? 何か用かい?」

『あ、はい! 今日、アインハルトさんと試合をするので是非先輩にも見てほしいなぁ、と』

 

……ストラトスちゃんかぁ。何か会いづらいなぁ。

あんなこともあったし……何かこっ恥ずかしい。

 

「でもまぁ、ヴィヴィオちゃんのお願いだからなぁ……」

 

よし、行くか。

 

「わかった、見に行くよ。何時にどこ行けばいい?」

「ありがとうございます! えっとですね……」

 

時間と場所を聞き、通信を終了する。

よし、準備するか。ヴィヴィオちゃんに会うんだから……まずは身を清めなければ。風呂入ろ。

 

 

 

 

脱衣場で服を脱ぎ、洗濯カゴに放り込む。

その時、洗濯カゴのなかでチカリと何かが光った。

 

「……なんだ?」

 

端末でも入れっぱなしだったか?

そう思って探してみると、光の出所は昨日履いていたズボンのポケットにあった。

これって……。

 

「確か……無限書庫に行った帰り道に拾った玉?」

 

ぐにゅ子に見せようとして、そのまま忘れてたのか。

結局何なんだ、コレ?

 

「ビー玉……ではないよな。光ってるし」

 

玉を指で摘まみ、いろんな角度から見てみる。

そのまま風呂場に入ると急に光が強くなってきた。

 

「うおっ!? ま、まぶしい!?」

 

太陽拳か!?

なんてボケてみるが、光はシャレにならないくらい強くなってきた。

あれ? これヤバイんじゃね? と考え始めたところでーーーー

 

 

 

 

 

 

『ーーーーで、気づいたら海鳴にいたってこと?』

「そんな感じです」

通信ウィンドウに写るなのはさんが真剣な顔で聞いてくる。

……まさか士郎さんがなのはさんの父親だったとは。

 

『……もしかしたら、その光る玉はロストロギアだったのかもしれないね』

 

マジか。

 

『とりあえず明日迎えに行くから、今日はわたしの実家に泊まってね』

「あ、了解です。お世話になります」

『あはは、それはお父さんとお母さんに言ってね! けど本当に無事でよかったよ』

「しかも保護されたのがなのはさんの実家だったって……ラッキーなのかアンラッキーなのか」

『“不幸中の幸い”ってやつだね』

 

本当にな。

 

 

 

 

 

なのはさんとの通信を終えた俺は、士郎さんたちにかいつまんでコトの顛末と、なのはさんが迎えに来る明日まではお世話になりたいと伝えた。

士郎さんは快く了承を出してくれた。マジイケメンだわ。

問題は……

 

「いやぁぁぁぁあああっ! いやよぉぉおおっ、ワンちゃんはうちで飼うのよぉぉぉっ!」

 

桃子さんェ……。

 

 




次回で海鳴編終了。
今後の方針としては、

・ジークとお出掛け(デート)
・新たなるストーカー編
・ユーノ・スクライア編

というものを考案中。


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九十一話

今回もちょっと駆け足気味。

すずか(はギリ大丈夫かも)、特にアリサファンは閲覧注意でお願いします……!
無理そうであればあとがきに飛んじゃってください。
簡単に纏めてありますので……。





全てを思いだした翌日。

昨夜は桃子さんがどこぞの元ストーカーよろしく俺が眠る部屋に侵入しようとドアノブガチャガチャを一晩中し続けてきため、かなり寝不足気味だ。

あくびが止まらん……。

 

「ふあぁぁ……」

 

今日は士郎さんの好意で翠屋の手伝いは休み。

士郎さんによるとなのはさんは昼過ぎに迎えに来てくれるらしいので、それまでこの街を見て回って来てごらんと言われた。

好意に甘え、朝から散歩中なのだが……。

 

「見て回るっつっても……ここ知らないところだからなぁ」

 

それに、時間的に店とかはまだ開いてないだろう。

あと2、30分もすれば開くと思うが……。そうしたらヴィヴィオちゃんとヴィクターへの土産でも選ぼう。あとハリーと……ついでにデコ助にも買ってってやるか。

 

「となると、あとは店選びだな……」

 

ヴィクターの好みは誰よりも熟知してるし、デコ助はどんなの買ってっても文句は言わせない。受け取り拒否も許さない。

問題はヴィヴィオちゃんとハリーだ。

 

「あの二人が喜びそうなものってどこに売ってるんだ……?」

 

というか……あの二人が喜びそうなものってなに?

 

「これは……困ったぞ」

 

どうしよう。

適当に現地人捕まえて聞くっていうのは無理だな。俺、人見知りだし。知らない人キライ。

となると知り合いに聞くのがベストだが……。

 

「月村さん一択だな」

 

よし、そうと決まればいったん翠屋に帰って士郎さんに連絡を取ってもらおう。

と、その時、俺の近くに黒塗りの車が一台止まった。

なんだ? と思っていると、後部座席の窓が開く。

 

「あんた、何してるのよ?」

 

クソ金髪だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、約二時間後。

 

「アリサさん! はい、あーん」

「あーん……ふふ、これおいしいわね、チヒロ」

「待って二人とも、いつの間にそんなに仲良くなったの……!?」

 

アリサさんの案内で買い物を終えて、翠屋に戻ってくると、月村さんがいた。

どうやら士郎さんからなのはさんが来ることを聞いたらしく、翠屋で待つことになったそうだ。

 

「なに言ってるのよ、すずか。あたしたちは最初から仲良しだったじゃない。ねぇ、チヒロ?」

「そうっすよ。生まれた時からベストフレンドでしたよ? ね、アリサさん?」

「ぇぇぇぇぇぇぇ……………………」

 

まぁ、生まれた時からは嘘だけど。

土産選びを手伝ってもらい、まさかの意気投合。お互いでもビックリするくらい仲良くなった。

なぜかプリクラまで撮った。ゥチらは、ズッ友だョ。

 

「まさかヴィクターより気の合うやつがいるとは思わなかったぜ……」

「あたしもビックリよ。まさかあんたがここまで話の分かる人間だったなんて……」

「わたしが一番ビックリだよ……」

 

たぶん、ファーストコンタクトが悪かったんだと思う。

 

「……ねぇ、本当に二人に何があったの?」

「だから、誤解が解けただけよ。何回言わせるのよ、すずか……あんたバカなの? ……あ、ごめんバカだったわね」

「ばーかばーか!」

「喧嘩売ってるのかな、二人とも……?」

 

士郎さんに感謝だな。

あの時、海鳴を見て回って来てごらんと言ってくれなかったら……俺はセリヌンティウスに会うこともなく死んでいたかもしれない。

 

「あぁ、アリサさん……!」

「ん? どうしたのよ、チヒロ? 急に抱き付いてきたりして……まぁいいけど。ぎゅー」

「あれ……これ仲良しってレベルじゃなくないかな……?」

 

これで海鳴に思い残すことはない……!

あとはなのはさんを待つだけか。

 

 

 

 

「ねぇ、チヒロ。すずかの恥ずかしい話聞きたくない? 何歳までお漏らししてたとか」

「え、聞く聞く! ついでにネットで拡散したいっす!」

「え!? ちょ、二人とも!?」

 

「えっと……これ、どういう状況なのかな……?」

 

なのはさんがついに到着したようだ。

 




アリサ が あらわれた !
チヒロ は どうする ?

1.あゆみよる 。
2.ばとう の かぎり を つくす 。

チヒロ は 1 を えらんだ !
アリサ と なかよく ( ? ) なった !
いっしょ に プリクラ を さつえい した !









ヴィクター は しっと している 。
(ヴィクター嫉妬ルートへ)


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九十二話

ぐっだぐだです(笑
桃子さんのキャラ崩壊要注意。




「来たわね、悪魔……! ワンちゃんは連れていかせたりしないわ! 去りなさい、命が惜しいのなら! ……そう、引く気はないのね。なら、仕方ないわね……殲滅してあげるわ!」

「えっ!? ちょっ、お母さん!?」

 

なのはさんが俺を迎えに来ました、包丁を二本を逆手に持った桃子さんが現れました、桃子さんがなのはさんに襲いかかりました(今ここ)。

どうしてこうなった。

 

「わかるわけないでしょ。……なのはが桃子さんに殺されるにシュークリームひとつ」

「じゃあ俺は……なんだかんだでなのはさんが桃子さんを無力化するにコーヒー一杯」

 

よっし、賭けは成立した。

 

「ちょっと!? 二人とも、賭けとかしてる場合じゃないでしょ!? なのはちゃんを助けないとっ!」

「じゃあ月村さんは……『自分があの二人に挑んで勝利する』ね」

「賭けるのはあんたの家の全財産よ」

「……え、あぅ……じゃあ……わ、わたしもなのはちゃんが負けるで……」

 

「すずかちゃんっ!?」

 

神は死んだようだ。

 

 

 

 

 

 

結局、士郎さんが来て桃子さんを無力化した。

 

「賭けはお流れかー」

「つまんないわね」

「よかった……! 本当に流れてよかった……!」

「三人とも酷いよっ!?」

 

いや、本当に酷いのは月村さんだと思う。

小声で「お願いなのはちゃん……死……いや、負けて……!」ってずっと言ってたし。

 

「ガルルルル……!」

「……お、お母さん。威嚇しないでよ……」

 

ちなみに桃子さんは、士郎さんに取り押さえられた後になのはさんが簀巻きにしたため身動きが取れない。

 

「なのはさーんぎゅー」

「えっと……チヒロくん? 何でわたしに抱きついてるの?」

 

桃子さんの視線がさらに険しさを増した。

 

「どんな気持ちですか桃子さん? ねぇどんな気持ち? 最愛の『ワンちゃん』を娘に寝取られたのは。教えてくださいよぉ、ねぇねぇねぇねぇねぇッ!」

「うっ、うおおおおおおああああアアアアアアアッ! なのはァァァアああッ!」

「アリサちゃん、お母さん煽るのやめてよ!? ていうかお母さんもそんな叫び声あげないで! あとのたうち回らないでっ!」

 

すっごい。打ち上げられた魚のごとくビッタンビッタン荒ぶっておられる。

ていうか、桃子さんを縛る縄がブチブチいい始めた。

 

「も、桃子!? 何をやって……お、落ち着くんだ!」

 

すかさず士郎さんがやって来て桃子さんを抑えつける。

 

「うぉぉぉおおおおッ! この程度の拘束でわたしを止めることは……できぬぅ!」

「ぐっ、ぐおお……なんだこの力は……!? くっ……なのは! チヒロくんを連れて行くんだ! 突破されるのは時間の問題だ!」

「で、でも……お父さん!」

 

何この茶番。

 

「何よ、この茶番」

「チヒロくん……アリサちゃんも、やめなよ……」

 

えー、だって。

つか士郎さんと桃子さん(あんたら)仕事しろよ。客がみんな見てるぞ。

 

「行くんだ……行けぇぇえええっ!」

「……ごめんなさい、お父さんっ! 行くよ、チヒロくんっ!」

「……えっ、あ、はい」

 

なのはさんが俺の手を捕み、走り出す。

アーヤメテーウデガトレチャウヨー。

 

「チヒロー、ちゃんと毎日メール寄越しなさいよー」

「了解ですアリサさーん」

「あ、えっと……ばいばい、チヒロくん」

「あ、月村さん今ちょっと喜びましたね? アリサさん、やっといてくださーい」

「任せときなさい」

「ええええええっ!?」

 

 

ーーーーこうして、締まらない感じのまま俺は海鳴(魔境)から離れる(救出される)こととなった。

 

 

 

 

 

 

そして、数日後。久しぶりに家に帰ってきた。

管理局での書類記入だとか、検査入院だとかで今までは家に帰ってこられなかった(着替えとかはなのはさんが取ってきてくれた)。

つまり……。

 

「ただいまー」

『なっ、チヒロ!? おまえ、いままでどこにいってたんだ!?』

 

ーーーーチヒロチヒロチヒロぉー! うええぇぇぇぇん……!

 

こうなる。

 

「だぁぁ、ひっつくな! 色々あったんだよ!」

『いろいろってなんだ、いろいろって!? ちゃんとせつめいしろ!』

 

はいはい。あとで説明するから。

あ、そうだ。メールとか来てないか確認しないと。

 

「お」

 

ヴィヴィオちゃんからだ。これは……海鳴に飛ばされた日の夜だな。

なになに……?

 

 

 

 

 

『先輩のばか。きらい』

 

 

………………………………えっ。

 




さて皆様、ひとつご報告を。
vivid strike、始まりましたねぇ。いやぁリンネたん可愛すぎる。

えー現在、vivid strikeを軸としたこの作品のリメイク……というかもはや新作を考案中です。この作品の続編と言うわけではありません。
あ、『考案中』ですからね。まだ確実にやると決まったわけではありませんからね。そこだけご注意を。

さて、リメイクではなく新作? と思ったかたもいるでしょう。
どういうことかと申しますと、一部設定は受け継いでいるものの、ほとんどがリセットされていたり違った設定が出てきます。

例えば、
・主人公が篠崎チヒロ (この作品と同じ設定)
・フーカ、リンネと幼馴染み (この作品と違う設定)
・リオ・ウェズリーちゃんの登場(新設定、現在思案中)

などと言った具合です。
あのキャラたちの、この作品とは違ったキャラ崩壊が見られるかもしれませんね。


もちろん、こちらの作品も続けながら書きます。
エタったりはしませんからご安心ください。

まだ書くと確定したわけではありませんが、連載する際にはまたご報告させていただきます。
その時にはよろしくお願いいたします!


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九十三話

ちょっとぐだぐだ感ありです。
申し訳ありません。





翌日、俺は旅行に出掛けようとしていた。

ベランダから。

 

『お、おちつけ! なにかりゆうがあるはずだ!』

「離せ、ぐにゅ子。俺はこれから天国に遊びに行くんだ」

『いっしょうかえってこれないぞ、そこにいったら! ……あと、おまえはいくなら、てんごくじゃなくてじごくだとおもう』

 

そんなのどっちでもいい。

ていうかお前案外力強いな……!

 

ーーチヒロ! だめだよぉ! あぶないよぉ!

 

「……ここから落ちたら、ずっと金髪幼女(おまえ)といられるぞ」

 

ーーほんとー? チヒロ、はやくとんで! はやくはやく!

 

すっごいぐいぐい押して来た。

はっはっはっ、バカめぐにゅ子、これで止められまい。

さぁ、そろそろ出発するか……!

 

「いってきまー……」

「おい、朝からうるせーぞ! ……って、チヒロ!? お前いつ帰って……ってか、お前なにやってんだ!? 今そっちいくから早まるなよ!」

 

お母さん(ハリー)に見つかった。

 

 

 

 

 

「ぐすっ……あのね、天使(ヴィヴィオちゃん)がね……ひっく……俺のことね、嫌いってね……っ!」

「おー、そうか。よしよし、何言ってんのかさっぱりわからねーけど、落ち着け」

 

ハリーの腰にしがみついて頭を撫でてもらう。

少し気分が落ち着いてきた。

 

「ハリー……」

「ん? どした?」

「ちょっと太った……?」

「ぶん殴るぞ」

 

理不尽だ。

 

 

 

 

 

それから数分後、完全に落ち着きを取り戻した俺は、だいたいの経緯をハリーに話した。

 

「そんなことがあったのか……おい、体とかは大丈夫なのかよ?」

「大丈夫。心はもうだめ。ズタボロボンボン」

 

意味不明な仮面をつけてうーうー言いたい。

 

「あー、きっとあっちにも何かあったんだろうよ。思い返してみろよ、何かやったんじゃないのか?」

「なっ、バカ言うな! ジークならまだしも、ヴィヴィオちゃんに嫌われるようなことなんかするかよ!」

「ジークにはすんのかよ……」

 

あいつはいいんだよ。

若干喜んでるようにも見えるし……たぶん、Mなんだろ。

 

「なぁ、ハリーどうしよう……! ヴィヴィオちゃんに嫌われたままなんていやだぞ……!」

「うーん……そうだなぁ……。理由がわからないなら、直接本人に聞くしかないんじゃねぇか?」

「……なるほど! さすがハリー! つまりヴィヴィオちゃんを拉致して監禁しちゃえばいいのか!」

「話聞いてたか?」

 

そうと決まればさっそくなのはさん宅へ向かうしかない……!

まずはなのはさんを無力化しないと……いればだけど。

 

「とりあえず行きながら考える! じゃあなハリー!」

「は? ちょっ、おいっ! お前本当に拉致してくるきじゃ…………あー、なんか、ヤバイことになった?」

 

 

 

 

 

 

なんて飛び出してみたけど、普通に犯罪だよな。却下却下。

……普通に謝りに行こう。

 

 




次回、高町家突入。


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九十四話

遅くなりました、申し訳ありません!
体調崩したり、スマホ壊れたり、単純に忙しかったりで……。

スマホを買い換えたため、書式等に変化があると思いますがご了承ください。

現在、ロシアよ永遠にさんの「ミッドチルダの英雄(ヒーロー)」にてコラボ中です。ありがとうございます!
なんか僕よりチヒロ書くの上手いんですけど……(笑
自分のキャラを別の人が書くって、なんかくすぐったいですね。でも見てて新鮮だし、キャラの新しい一面とかを発掘できそうで楽しい!

さて、今回で天使からの死刑宣告編(?)終了です。
次回は一回インターバル挟んでから「新たなるストーカー編」かなぁ……?



そんなこんなで、やってきました高町家。

……さて、ここからどうするか。

 

「目下の問題は天使たるヴィヴィオたんの『きらい』発言……ではなく、高町家に住む高町じゃない奴がいないかどうかだ」

 

自称母親がいたら謝ることもできん。それどころじゃあなくなっちまうからな。

ま、そればっかりは運次第か。いないことを願おう。

 

「じゃあ……ヴィヴィオちゃんへの謝罪をどうするか、か」

 

とりあえずケーキを買ってきてみた。月並みだが、プレゼント作戦。これで心証は悪くないはず。

次に、いきなりヴィヴィオちゃんと喋るのは気まずい。直接『きらい』なんて言われたら……ショックで何しでかすか自分でもわからない。そこで、なのはさんを通して(ワンクッション置いて)の話し合いだ。

話し合いにおいて第三者がいるのといないのでは大きく違う。なのはさんにフォローしてもらえば間違いなくいける。

ましてやなのはさん(母親)の言葉ならヴィヴィオちゃんも言うことを聞きやすいはずだ。

完璧な作戦だ。いける。これならいける……! 

 

天国のベルを鳴らす(インターホンを押す)。さあ、いざ行かん、天使(ヴィヴィオちゃん)のもとへ────!

 

 

 

 

 

 

 

「……どうぞ。普通のジュースで申し訳ないですが」

「い、いや……ありがとね」

 

天国には天使しかいなかった。

 

「あのさ……な、なのはさんは?」

「……仕事です。なのはママに何かご用事が?」

「い、いや……」

 

なぜ来るとき確認しなかったんだ……!

ちなみに自称母親も仕事らしい。それが唯一の救いか。

 

「…………えっと」

 

どうしよう。ヴィヴィオちゃん無言でうつ向いちゃってるよ。

と、とりあえずケーキ渡そう。

 

「あ、そうだ。ケーキ買ってきたんだ。なのはさんたちと食べて」

「……ありがとうございます」

「あ……うん」

 

はい、会話終了……どうすりゃいいんだよぉぉぉ。

くっ、仕方ない。ここはストレートに切り出すか……!

 

「あの、さ……ヴィヴィオちゃん」

「……なんですか?」

「今日来たのはさ、その……このメッセージのことなんだけど……」

 

ヴィヴィオちゃんに件のメッセージを見せる。

 

「……ぁ」

「これって一体……ん? ヴィヴィオちゃん?」

 

なんかヴィヴィオちゃんの様子が……うつ向いたまま肩を震わせて……。

 

「うっ…………うえぇぇん……っ!」

「えっ!?」

 

なんか天使が泣き出した!

 

 

 

 

その後、泣き続けるヴィヴィオちゃんを抱っこしてナデナデするというご褒美タイムを得た。やったぜッ!

……じゃなくて、なんであんなメッセージを送ったのか訳を聞いた。

 

それは、俺が海鳴に飛ばされた日の朝のこと。色々あったからか忘れていたが、ヴィヴィオちゃんから直々にお誘いがあった。確かストラトスちゃんと試合をするから見に来てほしいとかなんとか。

試合が始まる直前まで待ったものの、俺は来ず。

 

『何かがあって遅れてるのだろう、きっと試合中に来てくれるはずだ。だって大事な……とても大事な一戦なのだから』

 

しかし、試合が終わっても俺の姿はない。

 

『そういえば、連絡いれた時、先輩眠そうにしてたなぁ。……もしかして、二度寝?』

 

勘違いしたヴィヴィオちゃんは激おこぷんぷん丸。感情のままに『きらい』とメッセージを送ったらしい。

そして後日(俺が海鳴から帰還した日の翌日)、なのはさんから事情──海鳴に次元漂流していたため行けなかったということを聞き呆然。どうしようどうしようとパニくってる間(数日)に俺氏来訪。

その結果、ヴィヴィオちゃん感情爆発。いまここ。

 

「ふぇぇ……せんぱい、きらいとかゆってごめんなざいぃ……!」

「あぁぁぁぁ、泣かないで! 大丈夫大丈夫気にしないで大丈夫だから! というか、むしろごめん! そんな大事な試合すっぽかしちゃって!」

「ぐすっ……せ、せんぱいはわるくないです……。勝手に勘違いしたわたしがわるいんです……」

 

どうしよう。むしろ罪悪感が湧くんだけど。

 

「だ、大丈夫だから! 本当にごめんねヴィヴィオちゃん!」

「ん……じゃあ、わたしもせんぱいもわるいです。だから、ごめんなさい。……これでおあいこ、です。」

 

ヴィヴィオちゃんが指で涙を拭いながら微笑む。

なにこれかわいい。

 

 

 

「えへへっ……せんぱい、だいすきっ!」

 

 

 

──ヴィヴィオちゃんがぐずり始めた辺りから録音していた俺は神だと思う。

 

 




おまけ
《新作?リメイク?における決定した設定・篠崎家の家族構成編》

・母:職業不明。
・父:職業不明。
・長女:次女と双子。社会人。
・次女:長女と双子。社会人。
・三女:大学生。
 
・チヒロ(長男):高校生。


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九十五話

インターバルは挟まずに新たなるストーカー編に突入!




天使と和解してから数日後、俺はあることに気付いた。

どこからか視線を感じる。まるで監視されているみたいだ。

 

「俺はこの感じを知っているッ! いや! この絶え間ない視線(まなざし)の感覚を知っている!」

 

……ボケてみたけど、それどころじゃない。

これはあれだ。いつしかのストラトスちゃんのあれと同じやつだ。……まさかあのヤロー、やめるとかほざいといて実は続けてたんじゃあないだろうな!?

 

「確認、してみるか……」

 

端末を取りだし、ストラトスちゃんをコールすると数秒もしないで出た。

 

『チヒロさん……?』

「よう、ストラトスちゃん。いきなりで悪いけど、今どこにいる?」

『え? 今ですか? 今はリオさんと飲食店でお食事を……』

 

ストラトスちゃんの後ろの方から『アインハルトさん! お食事じゃなくて、スイーツですよ!』と聞こえてくる。メシだろうがスイーツだろうがどうでもいいけどな。

とりあえず、アリバイはあるのか。

 

「ちょっと確認したいことがあってな。ちょっとだけでいいから会って話す時間よこせ」

『それは構いませんが……』

「じゃあ、今からお前がいるとこいくから。どこにいるんだ?」

『えっと……』

 

ストラトスちゃんから場所を聞き、通話を終了する。

よし、すぐに向かおう…………ところで、『リオ』って誰?

 

 

 

 

ストラトスちゃんから聞いた飲食店(一般的なファミレスだった)に到着し、中に入る。

 

「──チヒロさん、こちらです!」

 

いた。入り口からすぐのボックス席に座っている。ストラトスちゃんの向かい側には……誰だ、あのガキンチョ?

ていうか、呑気に手なんか振りやがってぇ……!

 

「お前、死刑な」

「え!? い、いきなり何を……?」

 

死刑宣告をしながら、ストラトスちゃんの向かい側──知らないガキンチョの隣に座る。

緊急事態だ。許せ、ガキンチョ。

 

「あ、先ぱ──」

「ストラトスちゃん……お前には今、ある疑いがかけられている。よく言うだろ、『疑わしきは処す』って」

「『疑わしきは罰せず』では……? それでは独裁者ですよ」

 

生ぬるい。そんなこと言ってるから犯罪はなくならないんだ!

 

「なのはさんも言ってたぞ! 『調子乗ったら即砲撃』って!」

「趣旨かわってませんか……?」

 

まぁ、いい。説明しとこうか。

とりあえず、たまたま通ったウェイトレスにコーヒーを注文する。

 

「本題に入ろう。最近、視線を感じるんだ」

「視線……ですか?」

「あぁ、どこに行ってもそれがついてくる」

 

常にある、ってわけではない。

家とか、学校とかまではさすがにないけど……。

 

「先輩、それってス──」

「それは……ストーカー、ということですか?」

「あぁ。……お前だろ」

「えっ!? ち、違います!」

 

前科があるんだ……信用できねぇ。

それに他に誰がいるんだよ。俺をストーカーしそうなヤツなんて……あぁ、ゴキ〇リがいたわ。

 

「うーん、本当にお前じゃないのか?」

「違いますよ!」

「……わかった。とりあえず、信じる」

「信じるもなにも、疑わないでほしいのですが……」

「前科あるやつが何をほざく」

「──あの頃も、今も、嘘だけはつきませんよ。私は」

 

……無駄にカッコいいな、おい。

まぁ、確かにコイツは嘘をついたことだけはなかったな。

 

「よし、なら手伝ってくれ」

「手伝う、とは?」

「ストーカーを捕まえる。お前は腕っぷしも強いし、元ストーカーだ。適任だろ?」

 

ストーカーのことはストーカーに聞け、だ。

 

「……わかりました。チヒロさんには借りがたくさんありますから……微力ながらお手伝いさせて頂きます」

 

借りってか、迷惑料になるな。

 

「微力ってか、主力だけどな。頑張れよ、肉盾!」

「いくらなんでも、それはあんまりですよ……!」

 

頬を膨らませるストラトスちゃん。

これがかつて四六時中俺を追い回していたとは思えないな。……だが、今はこれほど頼もしい盾……じゃなくて、仲間はいない。

 

「よし、いくぞストラトスちゃん! ストーカーを捕まえるぞ!」

「はいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩たち、最後までわたしの存在ガン無視だったなぁ。……先輩のばか。アインハルトさんのあほ。……あれ、ちょっと待って、アインハルトさんのケーキと先輩のコーヒーの支払いは? えっ、うそ!? せ、先輩たちのばかぁぁぁあああっ!」

 




さて、では新作?リメイク?(今後はVivid Strike版と仮称します)についての決定情報を。
最新の活動報告にて書いたものと同じ内容です。

Vivid Strikeは『魔法少女リリカルなのはvivid』から約1年後の物語(だったはず)ですが、僕は『魔法少女リリカルなのはVivid LIFE』から一年後の物語(の二次創作)として書こうかと思います。

だってリンネたんの過去がブラック過ぎるんだもの……!

Vivid LIFEを読んだことがない方のために簡単に説明しますと、Vividの日常を描いたほのぼの四コマ漫画です。
そっちの世界観で描いていこうかと予定しています。

ポンコツ感あふれる、ほのぼのとしたゆる~い日常(ゲス顔)をお楽しみいただければ幸いです。

また、いくつかのキャラクターが『鮮烈なのは~』の設定を引き継いで登場することが決定しました。

①ヴィクター、ジークとの関係性
リンネとの関係もあるため、チヒロとは旧知の間柄であるほうが楽なためキャラクター設定を引き継ぎ決定。コンセプト的には、『鮮烈なのは~』での邪神過去編にてそのままチヒロと交遊を続けた二人(『鮮烈なのは~』の邪神過去編では、チヒロは事故にて二人の記憶を忘れて疎遠になった。その後、初対面として再会)。完全な引き継ぎではないため、二人は少しだけ当作品とは違いがあります。

②GOD編について
GODには参加しなかった世界観となります。本編にてこの事を描写できるかわからないため、今言っておきます。

③リオ・ウェズリーについて
出ます。ついに。満を持して。



こんな感じとなりますので、連載し始めたら応援して頂けるとありがたいです。
その際にはよろしくお願いいたします!


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