東京喰種『蜘蛛』 (BEBE)
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蜘蛛

試しに書いてみました。

気に入っていただければ幸いです。♪ヽ(´▽`)/


 「ハァッハァッハァッ!」

 

真夜中の路地裏を一人の少女が息を切らしながらも懸命に走っていた。

少女の体力はもう限界に近かったが、それでも足を止めることはしない。

あの化け物から逃げ切れる気はしないが、止まることはできない。

しかし、少女はついに袋小路に入ってしまった。

 

 「追いかけっこは終わりかな?」

 「ッ!!」

 

その声に振り返ると、そこには自分を追ってきた男がいた。

男は不良や犯罪者ではない。

だが、人間でもない。

その男は人間にあるまじき赤い瞳で少女を見る。

 

 「それではそろそろ頂こうか。」

 

この男は人間を喰らう化け物、『喰種』である。

 

 「いや!来ないで!」

 

少女は泣きながら叫ぶが、男はそれを見て笑みを浮かべ、少女に近寄っていく。

 

 「いいねぇ、いい顔だ。久々にいい食事ができそうだ。」

 

少女はもうほとんど諦めていた。

 

 「お願い、誰でもいいから、助けてよ。」

 

こんな場所に人が来るはずもないし、来たところで人間では喰種をどうすることもできないが、少女には願うしかできなかった。

 

 「こんな場所誰にはだれも来ないよ。」

 「いやいや、そうとは限らないよ。」

 「「!?」」

 

 

いきなりの第三者の声に二人とも反応し、声の発生元に目を向ける。

そして、いつの間にか男の後ろに青年が立っていた。

その青年は赤い眼のようなものが複数着いている蜘蛛のようなマスクをしていた。

 

 「・・・・何だね君は?」

 

男は謎の乱入者に尋ねる。

 

「どーも、女性の悲鳴を聞きつけてやって来たヒーローです」

 

「・・・・・」

 

さっきまで恐怖のあまり泣き叫んでいた少女だったが、あまりにも緊張感のない青年の言動に唖然としていた。

 

「それで、ヒーロー君」

 

しばしの沈黙のあと、口を開いたのは男だった。

 

 「そのマスク、君も喰種なんだろ?」

 「もちろん」

 「え・・・・・・?」

 

 

再び少女の顔が絶望に染まる。

 

乱入してきた青年も喰種ということは、この青年も自分を狙っているのだろう。

つまり、この青年は少女を助けに来たのではなく喰いに来た。

 

少女はもう完全に諦めた。

 

もう自分は助からない、せめてあまり苦しまずに殺してほしい、とこんなことさえ思い始めていた。

 

 

 「確かに俺も喰種だ。でも、俺はそこの女性の肉がほしい訳じゃないよ。俺が喰いたいのはオッサン、あんた一人だよ」

 「え!?」

 

少女は青年の言葉に耳を疑った。喰種が人間の肉より喰種の肉を欲するなど聞いたことがなかったからだ。

 

 「アハハハハハハハハ!」

 

青年の言葉に、男は大声で笑い始めた。

 

 「面白いことを言うな。たが、君は私が何と呼ばれているか知っているかい?」

 

そう言い男はコートの懐から自分の代名詞とも言える、薄い緑色のカマキリを模したマスクを取り出した。

 

 

 「やっと会えたな、Sレート喰種『蟷螂』!」

 「!ほう、知っていたか」

 「ああ、あんたを探してた。噂には聞いてたけど女性泣かして喜ぶなんて俺が一番嫌いなタイプだな」

 「奇遇だね」

 

男はカマキリのマスクを着けながら叫ぶ。

 

 「私も、食事の邪魔をされるのが一番嫌いなんだよぉ!」

 

そしてバシャッという音共に、男の背中から二本の触手が生える。

人を狩るために発達した喰種のみがもつ捕食器官『赫子』である。

そして蟷螂の赫子の先には通り名を体現するように鎌のような形状をしていた。

 

「死ぃねぇえええええ!」

 

その叫び声と同時に、その鎌は蜘蛛のマスクの青年へと降ろされる。

しかし、蜘蛛は不適に笑い避ける気配を見せない。

そして、ドガァアアンという轟音が鳴り響き、土煙が舞う。

 

 「キャアアア!」

 

その衝撃は少女が軽く吹き飛ばされるほどだった。

 

避けられたはずがない。確実にその鎌は蜘蛛を捉えた。

 

 「・・・・・馬鹿な・・・・」

 

しかしその手応えは敵を切り裂いた時のものではない。

何かとてつもなく固いものに当たった、そんな感覚。

 

そして次の瞬間、突如土煙の中から飛び出してきた何かに蟷螂は貫かれた。

 

 「ガハッな、何が・・・・」

 「こんなもんか」

 

そう言い土煙の中から出てきたのは蜘蛛の青年だった。

しかし、先ほどとは違い背中から虫の脚のような節がある黒い赫子を八本も生やしていた。

 

その姿は、正に『蜘蛛』だった。

 

その内一本は蟷螂の攻撃を防ぎ、別の一本は蟷螂の腹を貫いている。

 

 「悪いけどSレートじゃ俺には勝てないよ。だって・・・・俺のレートはSSだもん」

 「な!?」

 「ああ、まだSSに成り立てだから知らないのも無理ないよ」

 

そう言い青年は残りの脚を全て蟷螂に向ける。

 

 「!!ま、待て「うるせぇ」

 

蟷螂の言葉を待たず蜘蛛は止めにすべての赫子を突き刺した。

 

 「さてと、ここにいると喰種捜査官が来そうだからもって帰るか」

 

そう言って蜘蛛は蟷螂を担いでその場を去ろうとするが、

 

 「あの!」

 「?」

 

 

先ほどの少女に呼び止められ立ち止まった。

 

「あなたが来てくれなかったら私は死んでました。

だから・・・・ありがとうございました!」

 

 

そう言って少女は頭下げた。

それに対して蜘蛛はマスクの下に笑みを浮かべ、

 

 

 「別にいいよ。オレの目的は蟷螂を仕留めることだだったからさ。・・・・・・・あ、でももうこんな時間に人気のない場所に行かないようにしな」

 「あ、はい」

 「よし、それじゃ」

 

 

そう言い蜘蛛は猛スピードでその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




駄文ですが読んでくださってありがとうございます。

多分更新が遅いと思いますがよろしくお願いいたします。


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工藤智樹

この話の前半に主人公の設定書いておきました。

それでは2話です。


主人公設定

 

名前 工藤智樹

 

通称:『蜘蛛』

 

赫子:甲赫型

虫の脚のような細い形をしている黒い赫子を八本生やす。この姿から『蜘蛛』と呼ばれるようになり、マスクはそれに合わせて作った。この赫子には三つの関節があり、一定の方向にしか曲がらず、さらに殆ど伸ばすことが出来ないため少々扱いづらいが、その細さからは想像できないほどに硬く力強い。

また、甲赫型でありながら非常に素早く、赫子を刺すことにより、壁面も走れる。

 

特徴:快楽的に人間を殺す喰種、もしくは人間の犯罪者のみを狙って補食しており、人間に迷惑をかけないことを信条にしている。

喰種にしては嗅覚が利かず、人間のそれより少しマシといった程度。

霧島董香とはクラスメイトであるが、互いに喰種であることは知らない。

 

 

 

では、本編です。

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「トーカ様、課題を見せて下さい。」

「殺されたいの?」

 

 

工藤智樹は唯一と言っても過言ではない女友達(工藤がそう思っているだけかもしれないが)である霧島董香に瞬殺されていた。

 

 

「頼む!晩飯奢るから!」

 

 

だが、この男はその程度ではへこたれない。

 

 

「大体、アンタ男子の知り合いがいるでしょ。そいつらに頼めば?」

 

「俺の周り真面目に課題してくるやつなんているはずねえだろ。」

 

 

『類は友を呼ぶ』というのはこのことかもしれない。

 

 

「はあ、仕方ないわね、ほら。」

 

 

そう言って荒っぽく一枚のプリントを智樹に渡す。

 

 

「ああ、晩飯の話は別にいらないから。」

 

「マジで!サンキューさすがツンデレ「ぶっ殺すぞ」嘘ですごめんなさい。」

 

 

そう言って智樹は少し離れた自分の席へと逃げ帰った。

 

 

「何だかんだ言っても結局助けてあげるんだね。」

 

 

智樹と入れ替わりで董香に話しかけてきたのは董香の唯一の友達(やはり智樹は入っていなかった)である小坂依子だった。

 

 

「渡したのは前回の課題よ。今回のはこっち。」

 

 

そう言って董香は別のプリントを依子に見せた。

 

 

「うわー、ちょっとひどくないかな?」

 

「課題サボるほうが悪いのよ。」

 

 

こうして授業開始のチャイムが鳴った。

 

 

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「チクショウ、トーカの野郎嵌めやがったな。」

 

 

勿論おもいっきり先生に怒られた。

文句を言おうとしたが、董香はすでに帰っていた。

智樹の完全敗北である。

だが、智樹は人間として過ごせるこの時間が気に入っていた。

 

先程のように、先生に叱られたり、男子で集まり下らない話で盛り上がったり、董香に辛辣な言葉をぶつけられたりする、そんな日常が好きだった。

 

だから、彼は人間を守る。

 

 

「さてと、もう少し暗くなったら殺るかな。」

 

 

ここからは喰種の時間だ。

 

 

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ところ変わって、ここは20区にある喫茶店『あんていく』。

 

 

ここは喰種達の情報の交換場所でもある。

 

人間の客も来ることがあるが、今居る客は二人の喰種だけである。

 

 

「なあ、また『蜘蛛』が出たらしいな。」

 

 

一人の喰種が仲間に言った。

 

 

「らしいな。しかも今度殺られたのはあの『蟷螂』らしいぜ。」

 

「マジかよ!Sレートの喰種だぜ。」

 

「聞いた話じゃ『蜘蛛』の野郎はSSレートにあげられたらしい。」

 

「白鳩だけじゃなくて蜘蛛にも気を付けなきゃならねえのかよ。最悪だな。」

 

 

そう言ってその二人は店を出ていった。

 

 

「・・・・大分暴れてるみたいですね。」

 

 

董香はマスターである芳村に話しかけた。

 

 

「そうだね、だが蜘蛛は本当にただ暴れているだけなのかな?」

 

「どういうことですか?」

 

 

董香の質問に芳村は答える。

 

 

「蜘蛛が殺してきた喰種は皆かなり残虐な者たちだったらしい。おまけに、蜘蛛が食べる人間は犯罪者ばかりだ。」

 

「つまり、正義の味方気取りってことですか?」

 

「『蜘蛛』が何を考えているのかは、私達にはわからないがね。」

 

 

董香達がそんな話していると、別の客がやって来た。

 

 

「いらっしゃいませ。」

 

 

とりあえず、今すべきことは仕事である。

 

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真夜中の路地裏、神代利世は食事をしていた。

 

彼女は喰種である

 

今回も獲物は若い男性だ。

 

(うーん、ちょっと期待ハズレね。やっぱりそろそろあの子を食べようかしら。)

 

 

喰い殺された上に期待ハズレと言われては、この男性も散々なものだ。

 

すると、背後から自分に近づいて来る気配に気づいた。

 

 

「どちら様かしら?私、食事中なんだけど。」

 

 

リゼが振り向くと、そこには蜘蛛のマスクをした少年がいた。

 

 

「『大喰い』だな。あんたを殺しに来た!」

 

 

そう言い、少年は背中から八本の赫子を出す。

 

これより『大喰い』対『蜘蛛』、の大一番が始まる。

 

 

 

 

 

 




次回、『大喰い』戦開始です。

このSS初めてのちゃんとした戦闘シーンなので頑張ります。


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『大喰い』と『蜘蛛』

リゼ対智樹の戦闘開始です。

また、この話から原作もスタートします。

では3話です。


先に動いたのは智樹だった。

八本の脚全てをリゼに向けて突き出す。

リゼも腰の辺りから四本の赫子を出し防御するが、

 

 

「クッ!」

 

 

予想以上の力に吹き飛ばされる。

智樹は追撃を仕掛けるためにリゼに接近するが・・・・・その時、無惨に食い荒らされた死体が目に入った。

 

「クソッ!」

 

もっと自分が早く来ていれば助けられたかもしれない。

 

そんな自責の念にかられるが、それ以上に目の前の喰種に対する怒りの方が勝っていた。

 

 

「やってくれるじゃない!」

 

 

態勢を立て直したリゼが、反撃に四本の赫子を智樹目掛けて振るう。

その威力はアスファルトを抉るほどだったが、そこに智樹の姿はなかった。

 

しかし、リゼは智樹の姿を見失ってはいない。

 

リゼ見つめる先には、前傾姿勢になり、八本の赫子を巧みに使い壁面を走る智樹がいた。

 

 

「へえ、器用なことをするのね。まさに蜘蛛みたい。」

 

 

そう言いながら智樹が上から突き出した赫子をかわす。

そして壁面から降りてきた智樹がもう一撃放つ前に、リゼが着地の瞬間を狙い赫子を振るう。

しかし、智樹はそれを真正面から六本の赫子を使い防御してた。

残りの二本の赫子は踏ん張るために地面に刺している。

 

 

「・・・・・その赫子、甲赫よね。私の鱗赫を防ぐとは思わなかったわ。」

 

「そこら辺の喰種と一緒にすんなよ。」

 

 

するとリゼがニヤリと笑う。

 

「確かに、強く硬く速い、良い赫子ね。ても、どうして攻撃が突きばっかりで振り抜いてこないのかしら?」

 

「チィッ!気づいたか。」

 

 

確かに智樹の赫子は強いが、虫の脚と同じで間接の方向にしか曲がらないので、ムチのようにしならせることができないのだ。

 

 

(まあ、それでも厄介なんだけどね。)

 

 

リゼは蜘蛛の弱点を見抜いたが、それでも面倒だと思い始めた。

 

 

「あなたと遊ぶのもいいけど、そろそろ帰るわ。」

 

「逃がすか!」

 

 

智樹は八本の赫子を全力で突き出すが、

 

 

「ふふ、機会があればまた遊びましょ。」

 

 

智樹の赫子をかわしながらそう言い残して、リゼは去って行った。

 

「クソッ!次は絶対に殺してやる!」

 

彼は知らない。このあと、大喰いについてある噂が流れることを。

 

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リゼとの一戦から数日後の休日、智樹はずっと機嫌が悪かった。

もちろん『大喰い』を逃がしたことが原因である。

しかも、あれからめっきり大喰いの情報が入ってこなくなり、手詰まりであった。

 

 

「クソ、どうもダメだな・・・・・ん?」

 

 

あてもなくぶらぶらと歩いていると、コーヒーのいい香りがしてきた。

 

 

(『あんていく』か、変わった名前だけど雰囲気も良さそうだな。気分転換に入ってみるか。)

 

 

そう思い店に入るとそこには眼帯をした従業員の少年がいた。

 

 

「あ、いらっしゃいませ。」

 

 

少し挨拶がたどたどしいので新人さんだろうと智樹は思った。

 

席に着いた智樹はコーヒーを注文する。

 

そして眼帯の少年が注文を確認したとき、裏から見覚えのある少女が出てきた。

 

 

「あれ、トーカじゃん。」

 

「なっ!工藤?何でここにいんのよ!」

 

「え、あれ?トーカちゃん知り合いなの?」

 

 

店内に軽い混乱が訪れた。

 

 

 

 

 

 






原作もスタートし、ここからが本番なので、皆さんよろしくお願いします。


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アオギリの樹

ヤバイ、原作の記憶がおぼろげになってきました。

家に漫画がないからアニメで確認してるんですが、原作と大分違うんですよね(;´д`)

漫画の方に合わせて書いて生きたいので頑張ってブックオフで探そうと思います。

それでは4話です。


「まさかトーカがバイトしてるとはな~。」

 

「私もアンタが来るとは思わなかった。それ飲んでさっさと帰れ。」

 

「ト、トーカちゃん、お客さんなんだから。」

 

あの後、金木と智樹は軽い自己紹介をして、今に至る。

 

「俺はコーヒー一杯で二時間は粘るぜ!」

 

智樹は自信満々にいい放つ。

 

「マジで帰れ!」

 

そんなやり取りをしていると、店のドアが開き、一組の親子が入ってきた。

 

「リョーコさん、ヒナも、いらっしゃい。」

 

智樹が来たときとはうって変わって董香は嬉しそうだ。

 

「董香ちゃん、芳村さんは?」

 

母親の方が董香に尋ねる。

 

「奥に。」

 

董香がそう言うと、娘を連れて店の奥へ入っていった。

 

「トーカちゃん、あの人達もグ「ふん!」あが!」

 

金木が言い終える前に、董香からエルボーをもらう。

 

「馬鹿!今は工藤もいるだろうが!」

 

董香は金木に小声で注意する。

 

「あ!ご、ごめん。」

 

金木も自分のミスにすぐ気付いた。

 

「さてと、そろそろ行くか。」

 

そう言って智樹は席を立つ。

 

「また来るよ。」

 

「二度と来るな。」

 

安定のやり取りを終えて、智樹は店を出・・・・・

 

「待てコラ、金払え。」

 

「ツケといて。」

 

「そんな制度ねえよ!」

 

 

もちろん金は払った。

 

 

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20区の路地裏、二人の男はすでに生き絶えた男の死体を見下ろしている。

 

「クク、歯ごたえのないクズだったな。」

 

長い白髪の男・・・・CCG捜査官、真戸呉緒は殺した喰種を嘲笑う。

 

「しかし、20区も物騒になってきましたね。」

 

大柄な男・・・・真戸のパートナーである、亜門鋼太郎は真戸に話しかける。

 

「ふむ、20区は比較的喰種被害が少ないが、大物が何匹かいるようだしな。『大喰い』、『美食家』、そして最も不可解な行動をしている『蜘蛛』・・・こいつらが主な喰種だな。」

 

「『蜘蛛』に関しては20区だけでなく他の区でも目撃されていますが、何故20区にいると?」

 

「決まっているじゃないか。」

 

真戸はふ、と笑い、

 

「勘だよ。」

 

一見すると何の根拠も無いようにみえるが、それは亜門が最も信用するものだった。

 

「真戸さんの勘は外れませんからね。」

 

そして亜門は『蜘蛛』について考える。

 

「『蜘蛛』は何が狙いなのでしょうか?奴が喰うのは喰種か犯罪者だけだと聞きます。」

 

「そこまでは私にも分からんがね、クズがクズを喰っているというのなら今は他を優先すべきだな。」

 

そして二人はその場を後にした。

 

 

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智樹は現在11区に来ていた。

 

ここにたちの悪い喰種の集団ができたという噂を聞きつけて、様子を見にきたのである。

 

噂によると、『隻眼の王』と呼ばれる喰種をトップとして、強力な喰種が集まっているらしい。

 

さらに、その中には智樹が長らく探していた『ジェイソン』もいると言われている。

 

智樹はマスクを着けて、わざと喰種の目につくように歩いている。

 

すると、人気のない廃ビルの近くで、何人かの気配を感じた。

 

「やっとお出ましか。出てこいよ。」

 

すると、二人の人間・・・・いや、おそらく喰種が姿を現した。

 

一人は智樹よりも年下であろう少年・・・・どことなく董香に似ている気がする。

 

もう一人は白いスーツを着た大男。

 

二人ともマスクは着けていなかった。

 

「テメーが蜘蛛か?」

 

少年の方が智樹に聞いてきた。

 

「・・・・・だったら何だ?」

 

「うちのボスが君に興味があってね、一緒に来てもらいたいんだ。」

 

智樹の質問に答えたのは大男の方だった。

 

「アンタらは『アオギリの樹』だな。そこにジェイソンってやつはいるのか?」

 

「ほう、知ってたんだ。ジェイソンは俺だよ。それで、答えは?」

 

智樹はにやりと笑い、蜘蛛の代名詞である八本の赫子を展開する。

 

「NO に決まってんだろ!今ここでお前らを殺す!」

 

 

蜘蛛の狩りが今始まる。

 

 

 




さあ、次回はヤモリ、アヤト戦です。

リゼの時よりも戦闘が長くなると思います。

そして何とかして漫画を読みたいと思います。

それでは次回もよろしくお願いします。


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赫者

戦闘シーン難しい(;´д`)

でも書いててわりと楽しいですね。

では5話です。


智樹が赫子を出したのに反応し、ヤモリとアヤトも赫子を展開する。

 

「俺らを殺るだと・・・・・思い上がってんじゃねえぞ!」

 

一番に動いたのはアヤトだった。

 

羽赫を智樹目掛けて連射する。

 

しかし撃ち出した全ての羽赫が八本の赫子で叩き落とされた。

 

「アヤト君、独り占めはよくないな。」

 

ヤモリも智樹目掛けて鱗赫を振るう。

しかし智樹はそれをかわしながらヤモリに肉薄し、

 

 

「死ね!」

 

 

右側の四本の赫子をヤモリに突き出す。

 

 

「チッ!」

 

 

ヤモリも赫子で防御するが、数発かすめたようだ。

 

 

「コイツ!!」

 

 

ヤモリが赫子を降り下ろす。

が、そこに智樹の姿はない。

 

 

「ああ!どこ行きやがった!」

 

アヤトが智樹を探すが、その隙を狙って上から赫子突き出された。

 

 

「な!クッソ!」

 

 

アヤトはそれをかろうじで回避し、攻撃が来た方を見る。

そこには空中で赫子を突き出した智樹の姿があった。

 

「馬鹿が!狙い撃ちだ!」

 

アヤトが羽赫を放つが、またも赫子で防がれる。

 

「チッ!本数が多いと厄介だな。」

 

しかし、今度は一、二発かすっていた。

 

そして着地を狙ってヤモリが赫子を突き出す。

 

「チッ!」

 

智樹はそれを足で着地する前に赫子を地面に刺し、強引に回避する。

 

そしてそのまま一本の赫子をカウンターでヤモリの腹に突き立てる。

 

「ガアッ!!」

 

ヤモリは刺された腹を押さえて苦しむ。

 

「テメエエエ!!絶対に喰い殺す!!」

 

そう叫び、ヤモリの体に赫子が巻き付いていく。

 

その過程で腹の傷は再生している。

 

「あの馬鹿!赫者になるつもりか!命令は捕獲だぞ!」

 

アヤトが悪態をつきながらヤモリから距離を置く。

 

そして、赫子を体に巻き付けた異形の姿になったヤモリは、一瞬で智樹に肉薄し、赫子が巻き付き巨大化した右腕で殴り付ける。

 

智樹は八本の赫子全てでガードするが、

 

拳は八本すべての赫子をへし折り、智樹を捉える。

 

「グガアア!」

 

智樹はそのまま数メートル飛ばされ、廃ビルに激突し、停止する。

 

さらに智樹の四肢にアヤトの羽赫が刺さる。

 

「これで動けねえだろ・・・たく、手間掛けさせやがって。」

 

「まだだ!まだ足りねえ!殺してやる!」

 

ヤモリはまだ興奮状態である。

 

「だから捕獲だって言ってんだろうが!クソ・・・・ニコの野郎も連れてくるんだったな。」

 

アヤトはため息をつきながら智樹に歩み寄る。

 

(クソ、手足が動かねえか。・・・・・流石にこのままだとまずいな。このレベルの相手に二対一はきつかったか。)

 

智樹は自分の現状に少し焦る。

 

(あんまり使いたくないんだけどな。あれは・・・・・そうも言ってられねえか。)

 

智樹は覚悟を決め、自身のRc細胞を活性化していく。

 

「オラ、さっさと連れてくぞ・・・・・・ん?」

 

アヤトが智樹の異変に気づいた。

 

智樹の体から黒い赫子が何本も出ている。

 

そして、その赫子が全て智樹に巻き付いていく。

 

「な!!まさかこいつも・・・・・」

 

アヤトの目の前には、まるで全身に黒い鎧を身に纏ったような姿になった智樹がいた。

 

顔に着けていたマスクは先程のヤモリの一撃で壊れたが、赫子が顔まで覆い、同じような蜘蛛の顔を形作っている。しかし、その顔はより怪物のようになっていた。

 

そして、背中から蜘蛛の代名詞である八本の赫子をもう一度展開する。

 

これが智樹の赫者状態だ。

 

「ハハハ!良いぞ!その方が喰いがいがある!」

 

ヤモリは智樹を壊す楽しみが増え、嬉しさのあまり絶叫し、智樹に赫子の拳を振るう。

 

しかし、その一撃は、赫子を纏った智樹の素手で受け止められる。

 

そして智樹は四本の赫子をヤモリに突き出す。

 

「チイッ!」

 

ヤモリは赫子の拳でガードするが・・・・・・

 

智樹の赫子はまるで何もなかったかのように、軽くヤモリを赫子ごと貫き、強引に引き抜く。

 

「ゴガアアア!」

 

ヤモリはその場に倒れ伏す。

 

辺りは血の海だ。

 

「クソ!フザケやがって!」

 

アヤトは羽赫を放つが、智樹は避ける素振りを見せず、そのまま直撃する。

 

・・・・・しかし、赫子の鎧に阻まれ傷ひとつつけられない。

 

そして智樹はアヤトに一瞬で肉薄し、ボディブローを入れる。

 

「カハッ!」

 

アヤトは一瞬気を失いかけるが、何とかこらえる。

 

しかし、その直後、下からアッパーを入れられ、今度こそ気を失う。

 

(さてと、ジェイソンは殺すとして・・・・・こいつはどうしよう。こいつから情報を聞き出すべきかな。)

 

そんな思考に耽っていると、背後に気配を感じ、とっさに振り返る。

 

すると、そこには鉄製のマスクで顔の下半分を覆った男がヤモリを担いで立っていた。

 

「蜘蛛、まさか赫者だったとはな・・・・少し誤算だったか。」

 

「・・・・お前もアオギリの樹か?」

 

「そうよ。」

 

背後から声がし、振り返ると、そこにはアヤトを担いだオカマがいた。

 

「オカマまでいんのかよこの組織は。・・・・まあ関係ねえ、全員殺す。」

 

智樹は赫子を大きく広げ、戦闘体勢を取るが、

 

「ニコ、撤収するぞ。」

 

「ハーイ。」

 

「ふざけんな!逃がすか!」

 

智樹は八本全ての赫子で総攻撃を仕掛けるが、すでにそこには誰もいなかった。

 

「クッソオオオ!」

 

『大喰い』に続き『ジェイソン』、大物を連続で取り逃がしたのは智樹にとってこの上ない痛手である。

 

腹いせとばかりに廃ビルに赫子を突き立てる。

 

そのとき、廃ビルの割れたガラスに写る自分が見えた。

 

そこに写っていたのは、どこからどう見ても蜘蛛を模した怪物だった。

 

智樹が極力赫者にならない理由は・・・・・

 

自分も所詮化け物であると再認識させられるからである。

 

(ああそうだよ、俺は化け物だ・・・・だけど、)

 

智樹の頭の中に、学校の友達や董香の顔が浮かぶ。

 

(俺はアイツらを守れるなら化け物でもいい・・・・・せめて、人を守る化け物でありたい。)

 

 

 

智樹は赫子をしまい、その場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




智樹さんまたも取り逃がしました。

智樹の赫者は亜門のアラタみたいな感じです。

次回から原作に絡んでいこうと思います。

次回もよろしくお願いします。


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母親

ここからは原作をブレイクしない程度に主人公を絡ませていきます。

それでは6話です。


智樹はアオギリの樹との一戦のあと、自宅に帰っていた。

 

智樹は小さなアパートの一室で独り暮らしをしており、一応風呂、トイレ、キッチンはあるが、ヘッドはなく畳に布団を敷いて寝ている。

 

テレビは前の住人が置いていったらしく、最初からあった。

 

智樹は敷きっぱなしの布団に寝転がり、先程の一件について考える。

 

(ジェイソンはともかくあの羽赫のやつもS レート級だった・・・・・・・・赫者になってなかったらヤバかったな。・・・・・アオギリの樹にあのレベルの喰種がまだ複数いるんだとしたら、とんでもない組織になってるな。

・・・・・・いや、最後に現れた口元マスクは確実にアイツらより格上だった。オカマの方はよく分からんが・・・あれを束ねてるリーダーってのは相当ヤバイやつだろうな。)

 

そして智樹はある考えにたどり着く。

 

(あれだけの猛者達を束ねてるってことは、リーダーはもっと強いはずだ。複数のS レートを従えることができるってことは、それより上位の・・・・今のところ唯一のS S S レート、『梟』の可能性が高いな。)

 

まだ仮説であるが集めるべき情報は決まった。

 

(雑魚を狩りつつ梟の情報を集めるか。)

 

そう決め、智樹は眠りに落ちた。

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

翌日、智樹は梟の情報を集めようと、雨の中ある人間達を探していた。

 

智樹が探しているのはCCG の人間である。

 

本来なら11区に行き、アオギリの樹と当たるのを待ちたいのだが、昨夜の一件で警戒されていると思われる。

 

よって、次に情報を持っているであろうCCG の捜査官を探していた。

 

(流石にそう都合よく見つかんないか。)

 

智樹は最近20区でもよく捜査官らしき人間を見かけるため、直ぐに見つかると思っていた。

 

が・・・・実際にはそんな頻度で出会うはずもない。

 

智樹は数時間20区を歩き回っていた。

 

(クッソ、何でこんな雨の中歩き回ってんだ俺は。・・・・あんていくで一休みしようかな。)

 

と、考えていると、正面からある二人組が歩いてくる。

 

一人は大柄な若者。そしてもう一人は長めの白髪に目がギョロリと見開かれている年配の男性。

 

そして両者の手にはアタッシュケースが握られていた。

 

CCG の捜査官は『クインケ』という赫子を加工した武器を、アタッシュケースに入れて持ち歩いている。

 

智樹はその二人とすれ違う。その際、ギョロ目の男性と少し目が合ったが、そのまま歩いていく。

 

そして智樹は、思わず笑みを浮かべる。

 

(やっと見つけた!間違いねえ!)

 

智樹は雨の中頑張った自分を誉めたくなった。

 

 

 

 

「真戸さん、どうかしましたか?」

 

亜門は突然立ち止まった真戸に話しかける。

 

「ああ、すまない亜門君。なんでもないよ。」

 

そう言い真戸は歩き始めるが、先程目が合ったが少年のことが少し気になった。

 

(まあこの風貌だ、驚かれることはよくある。)

 

とりあえずあの少年のことは後回しにした。

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

現在智樹はマスクを着けて先程の二人組を尾行していた。

 

尾行と言っても、智樹は建物の屋上を飛び移りつつ、上からつけていた。

 

すると、二人組は裏通りに入って行く。

 

そしてそこにいたのは、先日あんていくに来ていた親子だった。

 

さらにもう二人が合流し、親子を挟む形になる。

 

(まさかあの親子、喰種だったのか!?クソ、この距離じゃ会話までは聞こえねえな。)

 

屋上から智樹が観察していると、母親が赫子を展開し、自分と娘を包み込んだ。

 

(・・・・・マジで喰種だったのか。董香や金木さんも危なかったんじゃねえか?)

 

そして、母親の赫子がいきなり開き、そこから子供だけが飛び出し、母親の援護を受けながらギョロ目の捜査官たちとは逆の方から逃げ出した。

 

母親は必死に子供を追わせまいと捜査官たちを足止めしている。

 

そう、あくまで足止めだ。

 

赫子で牽制したり、押し退けたりするだけで、本格的な攻撃を行わない。

 

(あの喰種、戦闘慣れはしてないみたいだけど・・・・・それにしたって攻撃が甘過ぎる。

まさか・・・・あの喰種は殺しをしないのか?)

 

そして徐々に母親の喰種の動きが鈍くなっていき、ついに地面に膝をつく。

 

よく見ると彼女の体は傷だらけであり、出血もひどい。

 

どうやら限界のようだ。

 

母親の喰種はギョロ目の捜査官と何かを話していたように見えたが、突如ギョロ目の捜査官がクインケを振りかぶり、彼女の首目掛けて振り抜かれる。

 

 

しかし、その一撃は突如上から現れた黒い虫の脚に阻まれた。

 

そして八本の黒い赫子を生やした喰種がリョーコの隣に降り立つ。

 

「!・・・・・ほう、こいつは驚いた。とんだ大物のお出ましだ。」

 

「こいつは・・・・まさか『蜘蛛』!」

 

真戸と亜門は思いもよらぬ乱入者の登場に驚く。

 

「貴方は・・・・」

 

リョーコも突然の出来事に唖然とする。

 

「すみませんね、CCG の皆さん。基本貴方達の邪魔はしないんですが・・・・・この人を殺されるのは納得がいきません。この人は連れて行かせていただきます。」

 

「ああ、二人で一緒に行くといい・・・・・地獄にだがな!」

 

そう叫び真戸はクインケを降り下ろすが、智樹はリョーコを抱え、赫子で防御しながら撤退する。

 

「逃がすか!」

 

亜門もクインケで攻撃するが、智樹は難なく弾き、赫子を使い建物の壁面を走って登る。

 

そしてそのまま屋上に上がりもうスピードでその場を離れる。

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

現在智樹は近くにあった廃ビルの中にいた。

 

ここでとりあえずリョーコの応急処置をしようとしたのだが・・・・・・

 

(ダメだ!出血がひどすぎる!このままじゃ・・・)

 

リョーコの傷は想像以上に酷かった。

 

智樹は頭をフル回転させ、どうすべきかを検討する。

 

自分に治療することなどできないが、医者に見せることもできない。

 

人間の肉を食わせるのが現実的だが、そこら辺にいる人を食べさせる訳にもいかない。

 

つまり、

 

智樹にできることは何もなかった。

 

智樹は震える声でリョーコに話しかける。

 

「ごめんなさい・・・・でしゃばって乱入したくせに、結局、俺には・・・・貴方を助けることができません。」

 

智樹は唇を強く噛みしめ、血がにじむほどに拳を強く握る。

 

(何でもっと早く止めなかった!そうすれば助けられたのに!)

 

智樹は、しばらく傍観していた自分を殴りたくなった。

 

すると、リョーコが口を開いた。

 

「ありがとう。」

 

「え?」

 

智樹は礼を言われる筋合いはないと思った。

 

「貴方が来てくれなかったら首を跳ねられてた・・・・・そしたらそこで死んでいたわ。」

 

「でも、」

 

「娘に、伝えて欲しいことがあるの。」

 

もうしゃべることすら限界ののはずの彼女はそれでも最後に娘に残したい言葉があった。

 

「寂しい思いをさせてごめんね、て・・・・・でも、いつまでもお父さんと一緒に見守ってるからね・・・・・て、あの子に伝えてくれないかしら?」

 

智樹は確信した。この人は誰よりも強く優しい母親なんだ、と。

 

「分かりました。その言葉、必ず伝えます。」

 

智樹が約束したとき、廃ビルの外が騒がしくなってきた。

 

恐らくさっきの捜査官達が、血痕を追ってたどり着いたのだろう。

 

智樹がリョーコを再び担ごうとするが、

 

「私は・・・・置いていって。これ以上・・・・・貴方に・・・・迷惑をかけられない・・・・」

 

リョーコはそれを拒否する。

 

「でも、それじゃあ貴方の死体は回収されてしまいます。」

 

恐らく、クインケにされてしまうだろう。

 

智樹はそれだけは避けたかった。

 

こんなにも優しい人が殺しの道具にされるのは、絶対に嫌だった。

 

しかし、

 

「いいから・・・・・早く、行きなさい・・・・。」

 

死にゆく人の最後の気遣いを無下にするわけにもいかず、智樹は彼女に背を向け、廃ビルを立ち去る。

 

 

 

去り際にもう一度だけ、「ありがとう」、と、微かに聞こえた気がした。

 

 

 

 

 




リョーコさん生存ルートも考えたんですが、その後の話的に無理でした。

もしかしたら多少原作をブレイクするかもしれません。

では、次回もよろしくお願いします。


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これから月一くらいの更新になると思います。

それでは7話です。


現在、あんていくの二階には董香以外のメンバー全員、従業員ではない四方まで集まっていた。

 

すると、部屋のドアがノックされ、董香が入って来る。

 

「え・・・・・四方さんまで。あの・・・何かあったんですか?」

 

部屋の空気は重苦しい。

 

「リョーコさんが・・・・喰種捜査官と交戦し、行方不明になった。」

 

「な!?行方不明?何それ・・・・どういうことですか!」

 

「金木くんの話では傷を負ったリョーコさんを、『蜘蛛』が連れ去ったらしい。」

 

そう、金木は蜘蛛が乱入し、リョーコを連れ去ったところまでを見ていた。

 

「はあ!?蜘蛛がリョーコさんを?何のために!」

 

「そこまでは分からない。しかし蜘蛛につれていかれる前に、白鳩にかなりやられていたそうだ。生死は不明だ。」

 

「雛実は?雛実は無事なんですか?」

 

「今は奥で休ませている。」

 

「顔は?顔は見られたんですか?」

 

芳村の無言を、董香は肯定と判断する。

 

「何それ・・・・・最悪じゃないですか・・・・」

 

董香はその場に座りこむ。

 

「リョーコさんが戻らなければ・・・・・雛実ちゃんは時期が来たら24区に移そうと思っている。」

 

「冗談でしょ、あんな糞溜めに・・・・雛実一人で生きてけるわけないじゃん!」

 

24区は正式な区別ではなく、東京の地下に喰種が作った大迷宮の最深部にある。追われている喰種にはうってつけの場所だが、環境が過酷であるため、雛実が一人で生きていける可能性はかなり低い。

 

「白鳩を殺せばいいじゃないですか!一人残らず!それから蜘蛛を探せば・・・・・四方さんだっているんだし、皆で協力すれば・・・・・・」

 

「ダメだ。20区の白鳩が命を落とせば、20区に凶悪な喰種がいると思われ、連中は新たな白鳩を次々と送り込んで来るだろう・・・・・・・俺たちを狩り尽くすまで。それにSSレートの蜘蛛に手を出すのは危険だ。」

 

「でも!」

 

「董香。」

 

董香の反論を四方が遮る。

 

「四方君のいう通り、彼らにてを出してはいけない。それにまだリョーコさんが亡くなったかは分からない。皆の安全のためにはそれが最善なんだよ。」

 

「仲間傷つけられて、その上拐われたってのに・・・・・黙って見てるのが最善!?・・・・・・・ヒナミは今独りぼっちなんですよ?早くリョーコさんを探さないと!それに白鳩にやられてたんでしょ!仇を討ってあげなきゃ可哀想じゃない!」

 

「仇を討てないことが可哀想なんじゃない・・・・本当に可哀想なのは、復讐に囚われて自分の人生を生きられないことだ。」

 

「・・・・・・私のことを言ってんですか?」

 

そう言うと、董香は部屋を飛び出して行った。

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

あの一件から数日、智樹は母親の喰種の娘を探していた。

 

が、全く手掛かりがなかった。

 

鼻のいい喰種なら臭いで探せるのだが、残念ながら智樹の鼻は喰種の中ではあまり良くない方である。

 

(クソ、手配書が張り出されてたからまだ捜査官には見つかってないはずだけど・・・・・一人で逃げてるんなら、俺か捜査官にとっくに見つかってるはずだ。もしかして協力者でもいるのか?)

 

そう考えたとき、ふと、あんていくが頭によぎる。

 

(・・・・・可能性としてはなくはない。でもどうやって探りを入れる。)

 

そう智樹が考えていたとき、微かに人の血の臭いがしてきた。

 

(!?まだ明るいのに・・・・・近いな、こっちか!)

 

智樹は臭いのする方向へ走っていく。

 

すると、戦闘音が聞こえ、智樹はマスクを着け、足を速める。

 

そして、少し走った所に、先日の一件の時にいた眼鏡の喰種捜査官の死体が転がっていた。

 

さらに、兎の面を着けたら喰種が、今まさに捜査官を殺そうとしている。

 

智樹は兎の喰種に向かって赫子を突き出す。

 

「!?チッ!」

 

兎はそれをギリギリで避ける。

 

そして智樹は兎と捜査官の間に立つ。

 

「な!?こいつは!」

 

「蜘蛛!?・・・・・やっと見つけた!」

 

捜査官と兎が突然の乱入者に驚く。

 

(!?この声・・・・)

 

そして、智樹は兎の声に聞き覚えがあった。

 

マスクをしているため、かなり声が隠っているが、その声は智樹がよく知る少女のものに酷く似ていた。

 

(董香?・・・・・・いや、そんなわけない!・・・・・・でも今の声は・・・・・)

 

しかし、兎が董香だったとすると、全ての辻褄が合う気がした。

 

「おい、蜘蛛!そこどきな。その捜査官をぶち殺す!そんでてめえにも聞かなきゃならないことがある!」

 

兎、董香は手配書を見て、リョーコが死んだことを知り、捜査官への復讐と、蜘蛛の真意を計るため、両方を探していた。

 

(・・・・・・やっぱり、どう考えても董香の声だ。どうする、マスク取って確認するか?・・・・・いや、捜査官がいる場でそれはまずい。・・・・・・・・・そうだ!少し気は引けるけど・・・)

 

智樹は兎目掛けて突撃する。

 

「!?チッ!ハアアア!」

 

兎は羽赫を展開し、智樹に放つ。

 

しかし、全て黒い蜘蛛の脚に防がれる。

 

そして、智樹は兎に肉薄し、接近戦を行う。

 

「ッ!クソが!離れろお!」

 

兎は智樹に蹴りを放つが、あっさりと避けらる。

 

さらにカウンターで蜘蛛の脚を一本突きだし、兎の腕を抉り、傷をつける。

 

「ツッ!この野郎!」

 

兎はもう一度羽赫を放ち智樹から距離をとるが、既に体力的に限界のようだ。

 

兎の赫子は消えてしまった。

 

すると突然、智樹の背後から何かが迫る。

 

智樹はそれを赫子で軽く防ぎ、後ろを振り返る。

 

「フム、少し状況を整理したいものだな。」

 

ギョロ目の捜査官、真戸がクインケを携え現れた。

 

「真戸さん・・・・・」

 

「亜門君、強敵を前にしても逃げ出さない心意気は非常に良いがね、クインケを忘れてはいけないな。」

 

真戸は亜門の前に進み出る。

 

「で、亜門君、この状況は一体なんだね?」

 

「兎の面の喰種との交戦中に蜘蛛が乱入してきたのですが・・・・・・・俺にもよく分かりません。」

 

成る程、と真戸はとりあえず納得し、兎と智樹を見る。

 

「まあ何にせよ、両方狩れば問題有るまい!」

 

真戸はクインケを振るう。

 

が、智樹は蜘蛛の脚で完全にガードする。

 

「フム、さすがはSSレート。一筋縄ではいかんな。」

 

見ると、いつの間にか兎がいなくなっていた。

 

「逃げたか・・・・・まあ蜘蛛を仕留めれば問題ない。」

 

間戸はもう一度クインケを振るうが、

 

それよりも速く、蜘蛛はその場から去っていった。

 

(逃げたのか・・・・・しかし、蜘蛛はまるで俺を守るかのように戦っていた。・・・・ヤツは何なんだ。)

 

亜門は蜘蛛の行動が理解できなかった。

 

 

 

 

 

 



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生きる理由

今回は少し長くなった気がします。

読みづらいとは思いますがよろしくお願いします。( ̄▽ ̄;)


兎の一件の翌日、智樹はあんていくに来ていた。

だが、目的はコーヒーではなく、自分の中に芽生えた疑問に決着を着けるためだ。

 

(・・・・・・・・董香が『兎』だったとして、その時俺はどうすればいい・・・・兎は喰種捜査官を殺した。俺が人間の味方を気取るなら・・・・・兎は敵になる。)

 

そう、もしも董香が兎だった場合、智樹は董香と敵対することになる可能性が高い。

 

(・・・・まあ、何はともあれ確認しないことには始まらないな。)

 

「アンタまた来たの・・・」

 

智樹が覚悟を決めたとき、董香が不機嫌そうに注文を聞きに来た。

 

その顔は、微かに青い気がした。

 

「・・・・・客になんつー顔してんだよ!」

 

智樹は無理矢理いつものように明るく振る舞い、そして・・・・

 

董香の右肩を思いっきりバシッと叩く。

 

 

昨日抉った兎の腕と同じ右腕を。

 

 

「ッッッッ!?~~~痛ってえなクソヤロウ!」

 

董香は不自然なほどに痛がり、右腕を押さえながら「死ね!」と言い残し奥に入っていった。

 

そして、智樹は去っていく董香の右腕に滲む血を見逃さなかった。

 

(・・・・・・・・・・ビンゴかよ・・・・・クッソ。)

 

智樹は力なく椅子にもたれ込む。

 

すると、

 

「どうしたの?気分が悪そうだけど。」

 

金木が話しかけてきた。

 

「いえ、ちょっと考え事をしてただけです。」

 

「僕でよければ相談に乗るけど?」

 

「大丈夫ですよ。そんなに大したことじゃないんで。」

 

(・・・・・・・・・・董香は喰種なのか、何て聞いても答えれないだろうし。)

 

智樹が今本当に知りたいことを、金木が教えてくれるはずなどなかった。

 

結局、智樹は何も聞けぬまま、コーヒーを一杯だけ飲み、家に帰った。

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

(・・・・・・・どうすりゃいいんだよ・・・・・・・・・)

 

智樹はその夜、布団の上で仰向けになりながら今日のことを振り替えっていた。

 

(董香が何で捜査官を殺したのかは分かる・・・・・・・・・多分、復讐だ。)

 

智樹は取り合えず自分の考えを纏めていく。

 

(董香とあの親子は知り合いだった。多分董香はあの女の子の代わりに復讐として捜査官を殺したんだ・・・・・・・・それがあの子が望んだことなのかは分からないけど。)

 

しかし、智樹が考えていたのはそんなことではない。

 

(董香は捜査官を殺した。どんな理由であれ、それをしてしまったなら・・・・・董香は人間の敵だ。なら・・・・俺が、『蜘蛛』が人間の味方であるためには・・・・・董香を殺さなきゃならない。

・・・・・・・・だけど・・・・だけどそれが正しい選択だとは思えない。)

 

智樹は暫くその葛藤に苛まれていたが、結論を出すことができないまま、やがて眠りに落ちていった。

 

 

 

しかし、決断の時は来てしまう。

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

数日後のある晩、智樹は路地裏で喰種を補食していた。

 

(・・・・・・・・・・)

 

しかし、智樹の頭の中はまだあの葛藤で一杯であった。

 

(・・・・・・・もう、何も見なかった・・・何も知らなかった事にした方がいいのかもな。)

 

智樹は決断することができず、この事を無かったことにしたくなっていた。

 

 

すると、どこからか妙な音が聞こえてきた。

 

(!?何だこの音は?・・・・・・これは・・・戦闘音か!?)

 

智樹は音のした方へ走り出す。

 

(向こうの・・・・重原小学校の方だ!)

 

そして、智樹は小学校の近くの河にたどり着いた。

 

(も少し河上、橋の下辺りか!)

 

智樹は音の発信源に近づいていく。

 

そして・・・・ギョロ目の捜査官と交戦する董香、そしてそのそばには、あの母親の娘がいた。

 

智樹は思わず柱の影に隠れる。

 

(オイオイ!何なんだよこの状況は!?)

 

智樹は状況を把握しようとする。

 

そして、智樹はあることに気づき、目を見開く。

 

(あのクインケは!?まさかあの子のお母さんの・・・・!?)

 

智樹が最も避けたかった状況、母親の赫子が子に向けられる。最悪のシチュエーションだ。

 

(どうする?参戦して董香とあの子を助けるのか?でも、それだとあの捜査官を殺すことになる!)

 

智樹はまだ悩んでいた。

 

そして、董香の脇腹をクインケが貫き、柱に叩きつけ、

腹を貫かれた董香は悲鳴をあげる。

 

(董香!ッ!クソ、まだ迷ってんのかよ俺は!)

 

智樹の中での決意はほぼ固まっていたが、あと一歩が出ない。

 

すると、董香と捜査官が話しているのが聞こえてきた。

 

「フン・・・・・死肉を貪るハイエナ・・・・ゴミめ。一体なぜ貴様らは罪を犯してまで生き永らえようとする?」

 

その捜査官の台詞は何も間違っていない。

喰種が生きていくためには人を喰わねばならない。

人間からすれば考えられないことだろう。

 

智樹もその言葉を聞き、苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 

しかし、董香は脇腹を貫かれながらも口を開いた。

 

「・・・・・・っ・・・・て・・・・生きたい・・・って・・・思って・・・・・何が悪い・・・・・こ・・・んな・・・・・んでも・・・せっかく・・・・産んでくれたんだ・・・・育ててくれたんだ・・・・・ヒトしか喰えないならそうするしかねえだろ!!こんな身体で・・・どうやって正しく生きりゃいいんだよッ!!どうやって・・・・!」

 

「董香・・・・・」

 

智樹は董香の叫びに聞き入っている。

 

「テメエら何でも上からモノ言いやがって・・・・・!!テメエ、自分が喰種だったら同じこと言えんのかよッ!!・・・・・ムカツク・・・死ね・・・!死ね死ね死ね死ねッ!!クソ白鳩野郎みんな死んじまえッッ!!」

 

董香血を吐きながらも言葉を続ける。

 

「クソ・・・・が・・・畜生・・・ちくしょ・・・・・喰種だって・・・・

 

 

私だって・・・・・・アンタらみたいに生きたいよ・・・・!!」

 

 

董香は心の叫びを終えた。

 

 

そして、

 

「・・・・・それはそれは・・・・・聞くに耐えんよ。」

 

ギョロ目の捜査官、真戸はクインケを振りかざし、

 

「もう十分だ、死ねッ!!」

 

董香へと振り下ろす。

 

・・・・・・が、

 

「させませんよ。」

 

蜘蛛のマスクを着けた智樹が間に入り、蜘蛛の脚でクインケを受け止めた。

 

「な!?」

 

董香は目を見開く。

 

そして、智樹は赫子を振るいクインケを弾く。

 

「・・・・・・まったく、ことごとく邪魔をしてくれるなあ!蜘蛛!」

 

「ッ!!」

 

董香に刺さっていたクインケを抜きながら、真戸は智樹から少し距離を取る。

 

「・・・・・捜査官さん、貴方は何も間違ってない。多分正しいんだと思います。・・・・・だけど・・・・・だけどッ!この二人が殺されるなんてことは納得出来ない!確かに俺達は罪を犯しながら生きてる。でもッ!それでも、喰種だって生きてる!産まれてきた以上、生きていく資格があるはずだ!」

 

(この声!?)

 

董香は蜘蛛の声がいつも聞いている少年の声と被ったことに驚いた。

 

「ハッ!生きる資格だと?笑わせるなッ!ヒトを殺して生きていくなど、そのようなエゴが許されるものかッ!!」

 

「・・・・・・確かに貴方の言う通りだ。所詮は俺達喰種のエゴにすぎない。間違ってるのは俺達の方だろう。・・・・・それでも・・・それでも・・・・・俺はこの人たちを護りたい。・・・だから・・・・・誰のためでもない俺のエゴのために・・・・貴方を殺します。」

 

智樹は蜘蛛の脚を大きく広げる。

 

「救い用のないクズだな!!」

 

真戸が再度背骨のようなクインケを振るう。

その軌道は複雑で攻撃が予測しづらい。

 

しかし、智樹も八本の赫子を使い、巧みに捌いていく。

 

「クハハハッ!!いいぞ!さすがSSレートだ!そう来なくてはつまらんからな!」

 

そう叫び、真戸はもう片方の手に持ったクインケを使おうとするが、

 

「させるか!」

 

「ッ!!」

 

一瞬で智樹が肉薄してきたため、回避せざる終えなかった。

 

「調子に乗るなよ、このクズがッ!!」

 

真戸はもう一度クインケを智樹目掛けて振るうが、

 

(!?・・・・・クインケが・・・・無い?)

 

右手に持っていたはずのクインケが消えていた。

 

・・・・・・いや、実際はそうではない。

 

(消えたのは・・・・私の右手!?)

 

真戸は自身の右手が切断されていることに気が付いた。

 

「・・・・・・ヒナ?」

 

董香の目線の先には、二種類の赫子を展開した雛実の姿があった。

 

(まさかあの距離から捜査官の手を?)

 

智樹も予想外の攻撃に目を丸くしている。

 

「グスッ・・・・もうやめてよ・・・・・お母さんとお父さんをそんな風にしないでッ!!」

 

雛実は父親から受け継いだ赫子を振るう。

 

「ハハハハハハハッ!!」

 

真戸は歓喜の笑い声を上げながらその攻撃を回避していく。

 

そしてリョーコの赫子から作ったクインケを雛実に振るうが、

 

今度は母親から受け継いだ赫子で防御する。

 

「素晴らしい・・・・・すごいいッ!!!母親と父親の赫子の優れた部分だけが、見事に引き継がれている!!実に良質な赫子だ!欲しいッ!!」

 

そして真戸は左手にもっていたクインケを捨て、背骨のクインケを拾い、

 

「よこせえええええッ!!」

 

雛実目掛けて振るうが、

 

「させるかァアッ!!」

 

雛実の前に出てきた智樹の赫子に弾かれる。

 

・・・・そして、カウンターで突き出した一本の蜘蛛の脚が、真戸の胸を貫いた。

 

「ガッ!?ゴバァッ!」

 

「・・・・・・・終わりです。」

 

そして、智樹は赫子をしまい、董香の元へ歩み寄ろうとした。

 

しかし、

 

「ま・・・・だ・・・だ・・・・」」

 

「な!?嘘だろ!?」

 

真戸は倒れず、クインケをしっかりと持っていた。

 

そしてそれを智樹目掛けて振るう。

 

 

・・・・・しかし、

 

 

董香が最後の力を振り絞り、真戸の脚に羽赫を撃ち込み体制を崩した。

そのまま真戸は前のめりに倒れる。

 

しかし、それでもまだ真戸は這いずってでも智樹達の方へと向かっていく。

 

「貴・・・・様ら・・・喰種・・・・・を・・・・あの・・・・・『隻眼』を・・・この手で・・・葬る・・・までは・・・・・・」

 

そして、あと一歩で智樹に手が届くというところで、ついに力尽きた。

 

 

 

「・・・・・・・手袋何かしやがって、私らには触れるのも嫌かよッ!!」

 

董香が乱暴に真戸の手袋を取り去る。

 

しかし、その左手の薬指にはめられた指輪を見て思わず固まってしまった。

 

「・・・・・・・この人も誰かのために戦ってたんだろうな。」

 

そう言い、智樹はマスクを外しながら真戸の亡骸のそばに膝を突き、真戸の瞼を閉じさせ、川岸に上げた。

 

「・・・・・・・工藤、聞きたいことが有りすぎるんだけど・・・・」

 

「そうだな。俺も聞きたいことがかなり有るよ。」

 

智樹はいつものように董香に笑って見せる。

 

すると、

 

「おい、大丈夫か?」

 

「!四方さん・・・・・カネキ・・・・」

 

四方と金木が合流した。

 

「董香、そいつは誰だ?」

 

「あれ、智樹君!?何でこんなところに?」

 

四方は智樹の存在を警戒し、金木は智樹がいたことに驚いた。

 

「四方さん、取り合えず敵じゃないはず・・・・・だよな?」

 

董香は智樹に一応確認する。

 

「ああ、取り合えずこっちも色々聞きたいことがある。」

 

「!・・・・・なんにせよ誰かがこちらへ向かってきている。死体を運んでいる時間は無いようだ・・・ やむを得ん、行くぞ。」

 

そして四方は雛実を背負って歩き出し、全員それについて行く形となった。

 

 

 

 

「生きてて・・・・・いいのかな?」

 

「え?」

 

帰り道、雛実が唐突に口を開いた。

 

「わたし・・・・・生きてていいのかな・・・・」

 

金木も董香も直ぐに返事をすることができなかった。

 

そして、それに答えたのは智樹だった。

 

「ヒナミちゃん・・・だよね?・・・実は、君のお母さんから伝言を頼まれてたんだ。」

 

「・・・・・わたしに?」

 

「うん・・・・・『寂しい思いをさせてごめんね、でも、いつまでもお父さんと一緒に見守ってるからね』って。」

 

「・・・・・・・」

 

雛実は少し目を潤ませる。

 

「君のお母さんは・・・・最後の最後まで君のことを想ってた。君の幸せを願ってたんだよ・・・・・・生きていくのに、それ以上の理由なんて要らないんじゃない?」

 

智樹は雛実に優しく笑いかけた。

 

「・・・・・・うん。」

 

雛実は四方の背中で涙を流した。

 

 

 

 

 

 




真戸さんお疲れさまでした!

次回からオリキャラを登場させようと思っております。

ご覧いただきありがとうございました。


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新たな喰種

今回から新キャラが出てきます!(今回はちょっとしか出ませんが)

原作を大きく変えるつもりはありませんが、少しずついじって行こうと思っているのでお楽しみに。

では、9話です。


現在、あんていくの二階には従業員全員と四方に雛実、そして智樹が集まっていた。

 

店長の芳村に、ことの顛末と智樹が介入した経緯を話していたのだ。

 

「成る程・・・・・ともかく、皆無事で何よりだ。」

 

芳村は安心したように微笑んだ。

 

「さて・・・・・工藤君。」

 

「はい。」

 

芳村は本題に入る。

 

「君が危険な喰種でないことは分かった。たが、一応君の目的を聞いておきたいんだが?」

 

智樹は頷き、口を開く。

 

「目的・・・・・と言うよりは目標ですかね。・・・・・俺は、正義の味方に成りたいんです。」

 

『はあ!?』

 

芳村、四方以外の面子から驚きの声が漏れる。

 

「・・・・・・真面目に話してんのかよ?」

 

「と、トーカちゃん落ち着いて。」

 

青筋を立てた董香を金木がなだめる。

 

「董香ちゃん、取り合えず彼の話を聞こう。」

 

「・・・・・・ハイ。」

 

芳村に言われ、董香は取り合えず黙った。

 

「え~と・・・・・話続けますね。正義の味方とは言いましたが、要するに人間の味方でありたいっていうことです。そして、人間が持っている喰種に対するイメージを、少しでも改善したい。人を守る喰種がいると世間が認知すれば、全ての喰種が悪ではないのかも。いい喰種もいるのかもって、そう考えてくれる人も出てくるはずですから。」

 

智樹は真っ直ぐに吉村の目を見る。

 

「・・・・・成る程、その為に喰種と犯罪者のみを捕食しているのか。」

 

だが、と吉村は言葉を続ける。

 

「それは、些か現実味に欠けるんじゃないかね?とても君一人で変えられるようなことではない。」

 

吉村にハッキリと言い切られ、智樹は苦笑いを浮かべる。

 

「そうですね。確かに夢見がちな理想論です。それに、誰かを殺して生きてる時点で、正義何てものを語れるとは思ってません。・・・・・・でも・・・それでも、俺はやります。俺のやり方が間違っているのか、正しいのか何て、やり切ってみないと分かりませんから。」

 

智樹の返答を聞き、吉村は「そうか」と、短く返した。

 

そして、智樹に、ある提案をする。

 

「・・・・・・工藤君、あんていくで働く気はないかね?」

 

『え?』

 

吉村の言葉に、四方以外の全員が驚きの声を上げた。

 

「君の目標は理解した。・・・・・だが、それは酷く険しい・・・修羅の道だ。・・・・ウチで扱っている食糧については?」

 

「あ、董香からここに来るまでに聞きました。自殺した人間の肉を、自分で狩りのできない喰種に分け与えてるって。」

 

「それなら話が早い。・・・・もし、君がウチで働いてくれると言うのであれば、こちらはその食糧を分け与えよう。それならば・・・・・比較的喰種として罪を犯さず済む。・・・・・・今の君の生き方よりもずっと楽なはずだ。」

 

「・・・・・・・」

 

吉村の提案を聞き、智樹は少し考えているようだ。

 

すると、

 

「あ、あの。」

 

雛実が口を開いた。

 

「わたしは・・・・蜘蛛のお兄ちゃんがここにいてくれて、人を殺さなくてよくなるなら・・・・・そっちの方がいいと思う。」

 

雛実の言葉を聞き、智樹は軽く笑ってから、雛実の頭を優しく撫でる。

 

「ありがと、雛実ちゃん。」

 

そして、智樹は吉村の方を向き直す。

 

「吉村さん、お気遣い感謝します。・・・・・でも、お断りさせていただきます。」

 

「え!?」

 

雛実は驚きと悲しみが混ざったような目を智樹に向ける。

 

「確かに芳村さんの言う通りです。誰が考えてもここで働いた方が良いはずだ。俺にとってメリットしか有りませんから。・・・・・・・でも、それは出来ません。俺は自分の目標の為に沢山の命を奪ってきました。ここで止まってしまえば、俺が今まで殺してきた命が無駄になる。・・・・勝手な話ですが、俺は殺してきた命の為にもこの道を貫き通したい。・・・・・それが、俺の答えです。」

 

智樹の瞳には、ブレない決意が宿っていた。

 

「・・・・・そうか。そこまでの覚悟が有るのであれば、これ以上の勧誘は無用だね。」

 

芳村は智樹の意思を確認できたため、身を引いた。

 

「・・・・・工藤、アンタ本気なの?」

 

しかし、董香は納得していないようだ。

 

「ここまで言って冗談だったら殺されるだろ。」

 

智樹は笑ってこたえる。

 

「そりゃそうだけど・・・・・」

 

言葉を濁した董香は雛実の方に目を向ける。

 

「蜘蛛のお兄ちゃん・・・・・」

 

雛実は悲しげな瞳で智樹を見つめている。

 

「・・・・・ゴメン雛実ちゃん。客として来た時にまた顔を出すからさ。」

 

「・・・・・うん。」

 

雛実の返事を聞き、智樹はもう一度雛実の頭を撫で、席を立つ。

 

「それじゃあ、俺はそろそろ行きます。」

 

「出口まで送ろう。」

 

そうして、智樹と芳村は店の外に出る。

 

 

 

「工藤君、」

 

店の外に出たあと、芳村が智樹に話しかけてきた。

 

「君が先程言ったことは本当だろう。・・・・しかし、実はもっと単純な理由があるんじゃないのかね?」

 

芳村の言葉に、智樹はまたも苦笑いを浮かべた。

 

「そうですね。俺は結局・・・・・大切な人達を守りたいだけなのかも知れませんね。」

 

そう答え、智樹はあんていくを去っていった。

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

ところ変わって、ここは16区のとある路地裏、そこには何かから逃げるように走る二人の喰種捜査官がいた。

 

 

「クソッ!まさかここまで統率された集団だったなんて!」

 

「とにかく!本部に報告だ!」

 

二人の男は路地裏を抜けるために走り回っている。

 

しかし、

 

「残念でした~。」

 

「「!?」」

 

突如、進路を塞ぐようにしてフードを被った、声からして若い女が現れる。

 

そして、その顔は蜂のマスクで隠されていた。

 

「ッ!大崎、俺がコイツを引き付ける!その間にお前は本部に報告をしろ!」

 

中年の捜査官、高木は部下の大崎に指示を飛ばすが、

 

「大崎ってのはコイツか?」

 

大崎の生首を手に持った、もう一人の蜂のマスクの女が現れた。

 

見ると、いつの間にか狭い路地裏に十数名程の蜂のマスクの集団が集まっていた。

 

「・・・・・・・クソッ!せめて一匹でもオオオ!」

 

クインケを構え、目の前の蜂のマスクに突っ込む高木だったが、次の瞬間には、鮮血を吹き上げ、首が宙を舞っていた。

 

「さて、アジトに持って帰ってゆっくり食べよう。」

 

おそらくリーダーであろう、少し他の蜂のものよりも装飾のついているマスクを着けた長い金髪の喰種を筆頭に、蜂の集団は路地裏から消えていった。

 

 

これが、喰種と喰種捜査官のみを襲う蜂のマスクの集団、『ホーネット』である。

 

 

ここから、『蜂』と『蜘蛛』の物語が始まる。

 

 

 

 

 




新キャラは次回ちゃんと出てきます。

また、オリキャラはあと数人出てきますが、多分そんなに増えることは有りません。

次回から活躍させて行きますので、お楽しみに。


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女王蜂

今回からオリキャラ増えます!

そしてあの人も登場!


では10話です。


ここは真夜中の16区の公園、蜘蛛のマスクを着けた智樹はそこのジャングルジムの上である者を待っていた。

因みに、一時間ほどジャングルジムの上で待機している。

 

「えーと・・・・・・何で態々そんなところに登ってるのかな?」

 

ジャングルジムの下から声がしてきた。

どうやら待ち人が来たようだ。

 

「やっと来てくれたな。待ちくたびれたぜ・・・・・『ホーネット』。」

 

智樹は蜂のマスクを着けた少女の喰種を見下ろす。

そして、空中で一回転しながらジャングルジムから飛び降りた。

 

「・・・・・まさかその降り方したかったからジャングルジムに登ったの、君・・・・?」

 

「おう!第一印象は重要だからな。」

 

智樹は清々しい程にハッキリと肯定する。

この様子だけをみればかなりの馬鹿に見えるだろう。

 

しかし、

 

「アハハハハッ!何だ思ったより面白いじゃん、君。」

 

蜂のマスクの少女は腹を抱えて笑っていた。

 

「ハ~、笑った笑った。・・・・・・で?態々十六区を目立つように歩いてたのは・・・・・私達、『ホーネット』に会いたかったから、でいいのかな?」

 

「ああ、まさかリーダーの『女王蜂』が直々に来てくれるとは思わなかったけどな。」

 

智樹は事があまりにも自分の思い通りに運んだため、思わず笑みをこぼした。

 

「それで、結局何?私たちを殺しに来たわけ?」

 

その言葉と共に、女王蜂は微かに殺気を醸し出す。

しかし、智樹は少しも怯まず、女王蜂を見据える。

 

「いや、その逆だよ。・・・・お前達『ホーネット』と手を組みたい。」

 

「・・・・・・・・理由は?」

 

「目標のため、かな。」

 

女王蜂の問に智樹は短く答える。

 

「目標ね・・・・・それ、ウチらにメリットあるの?」

 

「そうだな・・・・・・・・」

 

智樹は顎に手を当てて考える。

 

「・・・・・あれだな。『ホーネット』が危ないときに助けてやるよ。」

 

その言葉を聞き、女王蜂はまた笑い始めた。

しかし、先ほどのような大笑いではなく、マスクに隠れた口元に怪しげな笑みを浮かべてクスクスと笑っている。

 

「フフフフ・・・・・ねえ、それってさ、君が私たちよりも強くないと成り立たないよね?」

 

「まあ、そりゃな。」

 

「なら、見せて欲しいな・・・・・・『蜘蛛』の力を!」

 

女王蜂の背中から青白い一対の羽赫が発現する。

それはまるで虫の羽のようであった。

 

「その目標っていうのはよくわかんないけどさ、私に勝てたら何にだって付き合ってあげるよ。」

 

その言葉を聞き、智樹はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「その言葉・・・・忘れんなよ!」

 

そして、智樹も八本の赫子を展開する。

 

「じゃ、始めよっか・・・・・・虫の喰い合いを!」

 

女王蜂は羽赫を大きくひろげ、智樹目掛けて一斉に射出する。

その弾速と攻撃範囲、弾数は回避不能に思われるほどだ。

 

しかし、智樹は八本の赫子で高速で飛来する羽赫を全て叩き落としながら接近していく。

 

「スゴいスゴい、これを捌ききるんだ・・・・・なら!」

 

女王蜂は一旦羽赫の射出を止め、今度は羽赫の俊敏性を活かしたフットワークで智樹の周囲を回りながら再び羽赫を断続的に放っていく。

 

「常にこっちの死角に入りながらの射撃か・・・・確かにさっきよりもやりづらいな。」

 

女王蜂の俊敏かつ緩急をつけた動きに、智樹は防戦一方であったが、

 

「だけどな、スピード勝負なら負けねえんだよ!」

 

智樹は一瞬で女王蜂に接近し、赫子を突き出す。

 

「ッ!?・・・・あっぶな!」

 

紙一重で回避し、後退する女王蜂だったが、智樹はものすごいスピードで追撃してくる。

 

「ウッソ!?甲赫でしょ、何でそんな速いのよ!」

 

女王蜂は羽赫で牽制するが、全て蜘蛛の脚で防がれる。

 

しかし、智樹が突きだす蜘蛛の脚も、女王蜂の素早い動きで回避される。

 

(チッ、らちが明かねえな。・・・・・やりたくねえけど仕方ねえ!)

 

智樹は覚悟を決め、牽制の羽赫を無視して特攻を仕掛ける。

勿論羽赫が智樹の体に刺さり、激痛が走る。

それでも智樹は止まらず女王蜂に肉薄する。

 

「マズイ!」

 

突然の特攻に、女王蜂は反応が遅れ、智樹の間合いに入ってしまう。

 

「終わりだあ!!」

 

智樹は赫子を、女王蜂の急所を外して肩を狙い突きだす。

勝負あったと思われた、その時、

 

「ッ!?」

 

智樹めがけて何かが突きだされ、それを赫子でガードした智樹は大きく後退する。

 

「ちょっと、今の私の奥の手だったんだけど・・・・・何あっさり防いでくれちゃってんのさ。」

 

そう言う女王蜂の右腕は・・・・・槍のように赫子を纏っていた。

 

「・・・・・おいおい、マジかよ。アンタ・・・・・『二種持ち』かよ!」

 

二種持ちとは、その名の通り二種類の赫子を持っている喰種のことだ。

 

「私は羽赫だけじゃなくてこの槍みたいな甲赫があったから、この二つを発現した状態の私を見た連中が『蜂』て呼び始めたんだよ。」

 

そう言い女王蜂は右腕の槍を一度大きくビュンッと振るう。

 

「じゃ、第2Rと行こうか。」

 

そしてそれに答えるように、智樹も赫子を大きく開く。

 

「ああ、こっからが本番だ!」

 

二人は気合いを入れ直し、再度激突する。

 

「いや、すまないが終わりだよ。」

 

「「!?」」

 

しかし、突如二人以外の別人の声が聞こえる。

その声は智樹の背後から聞こえてきたが、智樹は振り返る前に、自分の胸から突きだしている刃が目に入った。

 

「ガ・・・ア・・・・な、何が・・・・・?」

 

そのまま、智樹は倒れ、赫子も消失した。

 

そして、智樹の背後にいた人物が露になる。

 

「あ、アンタは・・・・」

 

その姿に、女王蜂は目を見開く。

 

その男は、眼鏡をかけた、捜査官にしては細身の男性。何よりも目を引くのは、雪のように白い髪の毛。その男は喰種であれば知らぬ者はいない死の象徴、『死神』と称される人物。

 

「有馬・・・・貴将!」

 

 

 

CCGの死神が今、虫達に鎌を降り下ろす。

 

 

 




次回、女王蜂 VS CCGの死神です。

あと平子さんも出てくるのでお楽しみに。


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死神と蜘蛛

今回は有馬無双です!

はたして蜘蛛と蜂は生き残れるのか!?

では11話です。


女王蜂は有馬と対峙し下手に動けない状況にあった。何せ相手はあの蜘蛛を瞬殺するほどの男、一瞬でも隙を見せれば直ぐに狩られてしまうだろう。

すると、

 

「姐さん!!」

 

茂みから十数人の蜂のマスクをつけた喰種達が現れる。

どうやら最初から念のために待機させていたようだ。

 

「バカ!何で出てきたの!?」

 

「相手はあの有馬ですよ!姐さんだけではいくらなんでも危険です!」

 

「私たちも戦います!」

 

女王蜂の加勢に出てきたホーネット達は、各々の赫子を展開していく。

 

「有馬さん。」

 

そして、有馬の方にも平子を筆頭に十人程度の捜査官が集まった。

 

「タケ、お前達は逃げるやつらを頼む。」

 

それだけ言い、有馬はホーネットに歩み寄る。

 

「姐さんに近寄らせるな!」

 

「私たちで仕留める!」

 

ホーネットの内の二人が、尾赫と鱗赫を発現したまま、有馬に突っ込んでいく。

 

「ダメッ!!下がりなさい!!」

 

しかし、女王蜂が叫んだ時には、二人は胸から血飛沫を上げていた。

 

「絢香!月穂!」

 

女王蜂は悲痛な声で二人の名を叫んだ。

 

そして、有馬は無表情のままホーネットに近づいていく。

 

「姐さん、下がってください!私たちが時間を「逃げなさい。」・・・・え?」

 

「逃げなさいって言ったの!!聞こえなかったの!?」

 

女王蜂はホーネット達の前に歩み出た。

 

「私が有馬を引き付ける!その内に全力で逃げなさい!!」

 

「しかし、姐さんを置いて行くなんて・・・・!」

 

ホーネット達は全員躊躇っている。

しかし、マスクの中で女王蜂は優しく笑った。

 

「大丈夫、私も後からちゃんと合流するから。」

 

嘘だ。そんなことはホーネット全員が分かっていた。彼女はここで死ぬ気なのだと。

だが、

 

「・・・・・わかりました・・・・絶対に、合流してくださいね。」

 

「撤退よ!」

 

女王蜂は自分達だけでも逃がそうとしている。

・・・・・自分の命を懸けてでも。

そんな気持ちを無下にできるはずがない。

ホーネット達は撤退を開始する。

 

「タケ、追え。」

 

有馬も平子に追撃の命令をだす。

しかし、

 

「させるかああああッ!!」

 

「ッ!!」

 

女王蜂による全力の羽赫の射撃で、平子達は思うように動けない。

 

だが、有馬だけはその羽赫の弾幕を、掠りもせずに走り抜けていく。

 

「クッ!オオオオオ!!」

 

目の前まで接近してきた有馬を、右腕の槍で迎え撃つ。

 

そして、有馬が女王蜂の横を通り過ぎた瞬間、彼女のマスクが砕け、血まみれで倒れ付した。

 

しかし、女王蜂の奮闘の甲斐あり、ホーネット達は全員公園から姿を消していた。

 

(良かった、皆逃げれたんだ。)

 

女王蜂はホーネットのメンバーが全員逃げ切れたことに安堵する。

 

「ホーネット達は逃がしたか・・・・・」

 

そう呟いた有馬は、女王蜂に止めを刺そうと、クインケを振りかざす。

 

(・・・・・ここで終わりかぁ・・・・・・・絢香、月穂・・・・・ゴメンね、守ってあげられなくって・・・・。皆・・・・・・こんな私に着いて来てくれて、ありがとう・・・)

 

俯せになった女王蜂の顔を見た者はいないが、彼女目には涙が滲んでいた。

 

そして、有馬クインケを振り下ろした・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背後から迫っていた智樹目掛けて。

智樹はそれを蜘蛛の脚で防御する。

 

「クッソ!不意討ちも効かねえのかよ!」

 

智樹は女王蜂を抱き抱え、有馬から距離をとる。

 

「な・・・・何で生きてんのよ・・・・・」

 

「勝手に殺すな。再生力には自信があんだよ。」

 

そう言いながら、智樹は自分のマスクを女王蜂にの顔に被せた。

 

「ちょ・・・・・何してんの・・・・?」

 

「マスク壊れたんだろ?使えよ。」

 

「いや・・・・・君はどうすんの・・・・・?」

 

女王蜂の質問に、智樹は優しげに笑いかける。

 

「俺は大丈夫だ・・・・・・本気でやるから。」

 

そう言いながら智樹は女王蜂をそっと地面に下ろした。

 

そして、智樹の背中から無数の赫子が発現し、その体を包み込んでいく。

 

「なッ!?」

 

「!!」

 

女王蜂は目を見開く。

 

異変に気づいた有馬は一瞬で智樹に肉薄し、クインケを振るう。

 

しかし、智樹の体を切り裂くはずのその一撃は、黒い鎧に弾かれた。

 

「これは・・・・・・」

 

有馬は一度智樹から距離をとる。

 

 

智樹の姿は、黒い赫子の鎧を纏い、その顔は先程のマスクよりも凶悪な形になっていた。そして、その背中には蜘蛛の代名詞である八本の脚がより攻撃的な形状に変化している。

 

まるで、蜘蛛を模した化け物のようだ。

 

 

「・・・・・・そうか、赫者だったのか。」

 

有馬は特別驚いたような素振りは見せず、クインケを構える。

 

そして、目にも止まらぬ速さで智樹なに肉薄し、クインケを突き出す。

しかし、智樹はそれを右腕の鎧をで弾き返した。

 

「・・・・・・『IXA』を弾いたか。やるな。」

 

そう言いながらも、今度は装甲の薄い関節部を的確に突きに行く。

だが、智樹も紙一重で関節を避けながら赫子で『IXA』の破壊を狙う。

二人の攻防は、最早介入の余地がないレベルであった。

 

しかし、

 

「有馬さんが蜘蛛を押さえている間に女王蜂に止めを刺すぞ。」

 

介入出来ないのであれば、有馬が手が回らないところを補えば良い。

平子達は有馬達の横を大きく迂回して、女王蜂に接近を試みる。

 

「ッ!!」

 

傷が癒えず、身体が動かない女王蜂に成す術はない。

そして、平子のクインケが女王蜂を切り裂かんとしたその時、

平子の目の前に智樹が現れた。

 

「なッ!?」

 

目を見開いた平子を余所に、智樹は一瞬で捜査官達のクインケを破壊し、全員を軽く赫子で吹き飛ばして無力化した。

 

「君・・・・・まさかあの有馬を・・・・・・」

 

そう女王蜂が言いかけたとき、有馬が智樹の右肘を突き刺した。

 

「ッ!!・・・・・・いってえなこの!!」

 

智樹は赫子で有馬を攻撃するが、クインケでガードされた。

 

「倒せるわけねえだろッ!無理矢理離れたんだよッ!!」

 

そう怒鳴りながら、智樹の肘は既に再生を終えていた。

 

(クッソ、当たる気がしねえ。・・・・・女王蜂もかなり傷が深いみたいだし・・・・・よし!)

 

智樹は女王蜂を抱き抱え、有馬に背を向けて全力で逃走を謀る。

 

「・・・・・・」

 

有馬は無言で後退し、置いてあったもう一つのアタッシュケースを手に取り、クインケを展開する。

 

その形は、剣とも槍とも言えない妙な形状だ。

名は『ナルカミ』

 

有馬は『ナルカミ』を智樹に向け、引き金を引く。

そして、クインケから雷のようなものが放たれた。

 

「ウオオオオオ!?なんだあれ!?」

 

規格外の攻撃に焦る智樹だったが、喰種の身体能力をフル活用し、『ナルカミ』の雷を回避しながら、遂に公園から脱出した。

 

「このまま『ホーネット』のメンバーと合流する。集合場所は?」

 

智樹はスピードを弛めないまま、抱き抱えている女王蜂に尋ねる。

 

「・・・・・緊急用のアジトは・・・・あっちの方にある廃ビル・・・・」

 

「よっしゃあ!全速力で行くぜ!」

 

智樹はさらに加速し、廃ビルを目指して去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません、有馬さん。」

 

唯一立ち上がれた平子が、有馬に謝罪をする。

 

「別に謝ることはないだろ。最初の一撃で仕留めたと思ってしまったこっちのミスだ。」

 

それに、と有馬は付け足す。

 

「まさか『ホーネット』の討伐に来たら『蜘蛛』がいて、さらに赫者だったんだ。想定外にも程がある。」

 

「はい、ですがこれは・・・・・・」

 

「犠牲者どころか目立った怪我人もなしか・・・・・」

 

そう、今回の戦闘でのCCG側の被害はクインケの破壊程度だ。怪我人は精々打撲程度しかいない。

 

「戦っているときも急所を狙って来なかった・・・・・・明らかに加減してたな。」

 

「・・・・・・」

 

蜘蛛の意図が分からず、平子は黙っている。

 

「それと、見ろ。」

 

有馬は右手に持っている『IXA 』を平子に見せた。

その刀身には、一ヶ所だけ傷がついていた。

 

「!?」

 

その『IXA 』についた傷を見て、平子は絶句する。

今まで、このクインケに傷をつけた喰種を見たことがなかったからだ。

 

「『蜘蛛』のレートは上がるだろう・・・・・・恐らく、二体目のSSSレートの誕生だろうな。」

 

 

有馬の言葉通り、これから数日後に『蜘蛛』は最強の喰種の一角、SSSレート喰種とされるのであった。

 

 

 

 




というわけで智樹は何の迷いもなく逃げました!
互角に戦っても良かったんですが・・・・流石にチートが過ぎると思ったんで止めました( ̄▽ ̄;)

次回で少し智樹の身の上話が出てきます。

お楽しみに!


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結託

今回ちょっと話の前後が入れ替わったりしてて読みづらいかも知れません( ̄▽ ̄;)


では、12話です。


CCG 本部、その会議室では現在CCGの幹部が集まっている。

 

「さて、では今回の『ホーネット』討伐作戦の報告を有馬から直接してもらう。」

 

和修に名を呼ばれた有馬は、立ち上がり説明を開始する。

 

「まず、今回の『ホーネット』討伐作戦ですが、結果としては失敗に終わりました。」

 

その瞬間、会議室にいた全員が目を見開いた。

 

「オイオイオイオイ・・・・・・冗談よせよ・・・・」

 

丸手は顔が引きつっていた。

 

「有馬が討ち損じたと・・・・・」

 

篠原も驚きを隠せない。

 

「ですが新しい情報がいくつかあります。まず、『ホーネット』のリーダー『女王蜂』は現在まで羽赫のS~レートとされていましたが、新たに甲赫も持っていることが判明、二種持ちということが明らかになりました。また、戦闘力も我々の認識よりも高く、レートの引き上げが必要となると思われます。」

 

有馬の報告に、丸手は溜め息をついた。

 

「二種持ち・・・・『ホーネット』を率いてる上にやつ本体も想像以上に強えって訳だ・・・・・」

 

「SSレートは確定でしょうね。」

 

丸手の言葉に篠原が答えた。

 

「ンン・・・頭の痛い話だねぇ。・・・・・しかし有馬ボーイ、その程度の喰種なら集団を率いていたとしても君が逃がすかね?」

 

癖のある話し方をするインパクト絶大な男、田中丸は有馬に疑問を投げ掛けた。

彼の言う通り、SSレート程度なら有馬であれば容易く仕留められるはずなのだ。

 

「はい、最大の要因は・・・・・蜘蛛がその場に居合わせたことです。」

 

『ハア!?』

 

一同が有馬の報告に思わず声をあげた。

 

「蜘蛛は我々よりも先に女王蜂と交戦していました。」

 

有馬は一同のリアクションを完全にスルーして報告を続ける。

 

「マジで動きが読めねえ野郎だ・・・・・・」

 

丸手は溜め息混じりに呟いた。

 

「そして、今回の作戦を最も狂わせたのは蜘蛛です。ヤツは心臓にクインケを突き刺しても再生するという甲赫では考えられない再生力、そして何よりも、蜘蛛は赫者でした。」

 

有馬あっさりと報告してしまったが、和修以外の面子は絶句している。

 

「・・・・・・・・元々SSレートだった蜘蛛が赫者だったとなると・・・・・・」

 

篠原は冷や汗を流して言葉を濁す。

 

「はい、SSSレートへの引き上げが必要だと思います。」

 

篠原が濁した言葉をハッキリと有馬が口にした。

 

「頭が痛くなってきたぜ・・・・・」

 

「ンン、丸手ボーイ・・・・・私もだよ。」

 

丸手と田中丸だけでなく、他の面々も頭を抱えていた。

 

「報告を続けます。最終的に致命傷を負わせた女王蜂を赫者になった蜘蛛が助け、共に逃走。辺りを捜索しましたが発見には至りませんでした。」

 

「何故、蜘蛛は女王蜂を連れて行ったのでしよう・・・・・」

 

「ただ食うつもりなら態々助ける必要はねえ。決まってんだろ・・・・・やつら組むつもりだ。」

 

篠原の疑問に、丸手はハッキリと言いきった。

 

「ンン、丸手ボーイ、なら何故有馬が来る前に争っていたんだい?」

 

「恐らくは組む相手の実力を把握しようとしてた、そんなとこだろ。」

 

丸手は普段人を馬鹿にするような態度をとることがあるが、頭が回るのは確かなようだ。

 

「フム、その可能性は高そうだな。」

 

和修は立ち上がり、目の前の幹部達に指示を飛ばす。

 

「蜘蛛はこれよりSSSレートにレートを引き上げる。戦闘の際は準特等以上の捜査官三名以上で仕掛けろ。また、蜘蛛と女王蜂、つまり『ホーネット』が行動を共にしている可能性が高い。ホーネット捜索部隊と蜘蛛捜索部隊を統合し、16区を中心に捜索をしてくれ。有馬、お前はホーネット捜索を終了、中断していた『梟』の捜索を再開しろ。では、全員指示通りに動け。」

 

和修の指示を受け、突如全員が慌ただしく動きだし、会議室から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会議室に一人残ったままの和修はケータイを取りだし、ある人物に電話を掛けた。

 

『会議はどうなりました?』

 

声からして電話相手は若い男だ。

 

「蜘蛛はSSSレートに格上げ、さらにホーネットと行動を共にしているとして捜索をすることになった。」

 

『うわ~、ついにSSSまで来ちゃったか~・・・・・』

 

「まあ16区を中心に捜索させることにしたし、有馬もホーネット捜索は打ち切らせた。辿り着くにしても時間はかかるだろう。」

 

『お手数おかけします・・・・・』

 

「なあに、こっちも君のお陰で助かってるんだ。気にすることはないさ、“ 智樹 ” 君。」

 

そう、和修の電話の相手は・・・・あろうことか件の『蜘蛛』、智樹であった。

 

「それで?ホーネットは協力者足り得るのか?」

 

『はい、元々彼女たちは一般人を襲わない喰種集団です。CCGの人間を殺さないように説得するのに時間がかかると思ったんですが・・・・・有馬さんから女王蜂を助けたのが幸いしたみたいで、今では “ 兄さん ”って呼ばれてます。』

 

「有馬の件についてはすまなかった。こちらもまさか君がホーネットに接触しているとは思わなくてね。」

 

『こちらこそ報告なしに勝手に動いてすいません。』

 

「いや、とにかく無事でよかった。今は20区だね?また犯罪者の捜査資料を送る。」

 

『助かります。では、また。』

 

「ああ。」

 

そうして、通話は終えられた。

 

 

 

 

 

「取り合えず20区には捜査はまだ来ないし有馬さんも俺らの捜索打ち切ったって。」

 

ここは智樹の自宅。

通話を終えた智樹は、目の前で布団に寝ている金髪の少女に内容を伝えた。

しかし、彼女は唖然として智樹を見つめて返事をしてこない。

 

「おい、聞いてんのかよ愛妃。」

 

愛妃と呼ばれたこの少女、小坂愛妃《こさか あいひ》こそ、ホーネットのリーダー『女王蜂』である。

 

「イヤイヤイヤイヤ、え、何?君・・・・・・今の通話さらっと流すつもり!?」

 

「ん?ああ、今のは喰種対策局局長の和修吉時さん。俺の恩人で「そこじゃない!!」

 

愛妃は起き上がり大声で智樹に突っ込む。

 

「何で喰種対策局局長と親しげに電話してんの!?何で捜査情報駄々漏れなアアアアアアア痛い痛い痛い痛い!!」

 

「アホかお前は!!傷口開いてんじゃねえか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、話を有馬から逃走した直後まで遡ろう。

 

赫者のまま猛スピードで目的の廃ビルに迫っていき・・・・・既に窓のない二階の窓枠からビルに飛び込んだ。

 

地面を削るようにブレーキをかけ、ようやく勢いがなくなった。

 

「はっや・・・・もう着いた・・・・・」

 

抱き抱えられている愛妃は思わずそう漏らした。

その直後、

 

「何の音!?」

 

「まさか白鳩が!?」

 

ドカドカと階段を上がってくる足音がし、ホーネット達が二階に上がってきた。

 

「な!?蜘蛛・・・・・なのか?」

 

赫者状態の智樹を初めて見たホーネット達は驚きを露にしていた。

しかし、もっと驚いたのは、

 

「ね、姐さん!!」

 

智樹に抱き抱えられている愛妃の姿だ。

彼女は仲間達を目にすると、弱々しく手を振って見せた。

 

その直後、智樹は膝をつい崩れ落ちた。

何とか愛妃が落ちないようにそっと下ろした後、赫者の鎧が消失し、そのまま意識を手放した。

 

「姐さん!!」

 

「良かった・・・・・」

 

「もう・・・・・会えないかと思いました。」

 

どんどんと愛妃の回りにホーネットのメンバーが目に涙を浮かべて集まってきた。

 

「ゴメン皆・・・・・・・心配かけたね・・・・・」

 

愛妃はボロボロの体で仲間達に笑いかけた。

 

「無理に喋らないでください!保存用の食料を持ってきます。」

 

そう言い、数人のメンバーが下の階へと降りていった。

 

「それで・・・・・蜘蛛はどうしますか?」

 

それは、暗に智樹を殺すかどうかということを意味していた。

それに対して・・・・・愛妃は「決まってるじゃん」と呟いた。

 

「私が今息をしてるのは・・・・この人のお陰・・・・・私たちは恩人を見捨てるような・・・・腐った喰種じゃ・・・・・ないでしょ?」

 

深手を負い、息をするのも苦しそうな愛妃だが、彼女はホーネットのメンバーに笑顔で答えた。

 

「・・・・・勿論です。蜘蛛の分の食料を持ってきます。」

 

そう言いまた何人か下に降りていった。

その直後、

 

「ッ・・・・・・・・あ~クソ、俺どのくらい寝てた?」

 

「ふえあ!?」

 

突然聞こえた智樹の声に、愛妃は思わず変な声を出してしまった。

 

「ほんの数分です。直ぐに食料を持ってきますのでしばらく休んでいてください。」

 

ホーネットのうちの一人が智樹にそう言うが、智樹は首を横に振った。

 

「そうもいかない・・・・・・・捜査官のクインケは壊したけど、有馬は無傷だ・・・・・今も逃げた俺らを探してるはず・・・・・あんまり長居はできないよ・・・・・・・・・」

 

意識が朦朧としているのか、かなりしゃべり方がおぼつかない。

 

「でも、逃げるってどこに?」

 

「20区。元々お前らと組めたら拠点を移してもらおうと思ってた・・・・・」

 

智樹の言葉にホーネットのメンバーは複雑な表情をしていた。

別にこの町が故郷であるわけではない。しかし、今まで住んでいた町だ。例えただの狩場であったとしても多少の愛着はある。

 

そして皆が返答に困っていたその時、

 

「皆・・・・聞いて。」

 

愛妃が口を開いた。

 

「私は・・・・・・・・もうこれ以上仲間を失う訳にはいかない・・・・・そんなことしたら・・・・・綾香と月穂に顔向け出来ないからね・・・・・・・・・・・・だから、この町を捨てる。今は・・・・・・彼を信じよう。」

 

愛妃の言葉に、ホーネット全員が大きく頷いた。

 

「とにかく、お二人ともこれを。」

 

先程下に降りていったホーネットの一人が、愛妃と智樹にラップで包まれた肉塊を手渡した。

 

「昨日殺した捜査官の肉です。」

 

それを聞き智樹は一瞬躊躇ったが、背に腹は代えられぬと思い、肉に一礼してからそれを頬張った。

 

「よし!俺がいつも使ってるルートで行く。下水道とか通るから覚悟しとけよ!」

 

そう言い、智樹は愛妃を抱き抱える。

 

「ええ!?ちょ、ちょっと!?」

 

「ん?流石にまだ動けねえだろ?大人しくしてろ。」

 

頬を赤らめる愛妃に気付かず、智樹はホーネット達に向き直る。

 

「よし!んじゃあ着いてこい!」

 

『了解!』

 

そう言い、智樹は窓から飛び出し、ホーネット達もそれに続いて飛び降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・そういえば・・・・」

 

出発してすぐ、愛妃が口を開いた。

 

「私達、まだ名前も知らないよね?」

 

愛妃の言葉に智樹は思わず吹き出した。

 

「ク、ハハハハ!お前、この状態で自己紹介ってか?」

 

「いや!ふと思っただけで!「智樹」・・・・・へ?」

 

「工藤智樹だ。よろしく。」

 

「・・・・・・・・・・智樹君、か。・・・・私は小阪愛妃。よろしくね、智樹君。」

 

 

 

 

 

かくして、『蜘蛛』と『ホーネット』は行動を共にすることとなったのであった。

 

 




何か中途半端なところで終わりました( ̄▽ ̄;)
取りあえずは分かりにくいかも知れないところを補足しておきます。

・智樹は和修吉時と色々あってコネがあります。民間人でありながら犯罪者を発見できているのはここから捜索情報が漏れてるからです。

・ホーネットのアジトには自家発電気と小型の冷蔵庫が隠してあり、ある程度肉を保存出来ますが、あんていくと違って加工がされていないので保存期間は短いです。

・智樹は拠点を特定されないように各地区で喰種や犯罪者を狩っているため、裏道などをよく知っています。


こんな感じです。他に何か分かりにくいことがあればドンドンご質問ください。


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『蜘蛛の糸』

おひさしぶりです!
暫く更新をサボってましたゴメンなさい!!
しかも今回字数の割には内容が薄いです。
まあ久しぶりに書いたんで妥協していただけると助かります( ̄▽ ̄;)


では13話です。



20区の繁華街、今日は休日であり多くの人々が行き交っている。

そんな中に辺りの目を引く男女がいた。

と言っても、男の方は特に特筆することない青年である。人々の目を引いているのはその青年の隣を歩く少女の方だ。少し癖のある長く明るい色の金髪に、端正に整った顔立ちをしている正に美少女。

すれ違う男たちは皆妬みの目で青年の方を睨み付けている。

 

しかし、それは間違いである。

彼らはカップルなどという関係ではない。

 

 

「ねえ、これからどこ行くわけ?」

 

「20区を締めてる人たちに会いに行く。」

 

 

金髪の少女、愛妃は智樹の返答に少し顔を強ばらせる。

 

 

「・・・・・・・20区のボスってどんな人?」

 

「俺もよくは知らねえけど優しい人だよ。ま、会ってみりゃ分かる。」

 

「ふうん・・・・・じゃ、取り合えず今日はデートってことでいいよね♪」

 

「ハア、勘違いされるようなことは止めろ。」

 

 

笑顔で腕に抱きついてきた愛妃に、智樹はため息をつきながらも満更でもなさそうだ。

 

そしてすれ違う男達の妬みの視線が強くなったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここだ。」

 

 

歩くこと数分、二人は落ち着いた雰囲気の喫茶店にたどり着いた。

ドアには『close』の札が掛かっており、営業前のようである。

 

 

「『あんていく』?どういう意味?」

 

「そう言やそうだな・・・・・何だろ?」

 

 

二人は店名について暫し考えていたが、直ぐに諦めて店内に入ることにした。

 

そして入って直ぐのところで茶色い髪の女の子がテーブルを拭いているのが目に入った。

 

 

「あ、ごめんなさいまだ準備中でして・・・・・・」

 

「俺だよ、ヒナミちゃん。」

 

「え?智樹お兄ちゃん!?」

 

 

ヒナミは来客が智樹であることに気付き、笑顔で駆け寄ってきた。

 

 

「どうしたの智樹お兄ちゃん?お店はまだだよ?」

 

「うん。ちょっと芳村さんに話があるんだけど・・・・・・あれ?もしかしていない?」

 

「うん。コーヒー豆を買ってくるって言ってたよ。お店開くまでには帰って来ると思う。」

 

「じゃあそれまで待つよ。ところでヒナミちゃん、店の手伝いするようになったの?」

 

「うん。私も皆の役に立ちたいから!」

 

「そっか。偉いね。」

 

 

そう言い、智樹はヒナミの頭を撫でた。

 

 

「エヘヘ♪」

 

 

智樹に頭を撫でられ、ヒナミは凄く笑顔を輝かせていた。そんなヒナミを智樹も温かく見つめている。

 

しかし、

 

 

「智樹君の妹さん?」

 

「え?」

 

 

智樹の背後からヒョッコリと顔を出した愛妃を見てヒナミが固まった。

 

 

「ああ、紹介しないとな。コイツは小坂愛妃。俺の「お姉ちゃん大変!!智樹お兄ちゃんが彼女さん連れてきた!!」ちょっとヒナミちゃん!?」

 

 

カウンターの奥へ大声で叫ぶヒナミに、智樹は誤解であることを伝えようとするが、

 

 

『ガンガラガッシャン』『パリーン』『ドサーン』『ガンゴンガン』『チュドーン』『トーカちゃアアアアアん!?』

 

 

ヤバめの破壊音と金木の悲鳴が聞こえてきた。

 

 

「いや・・・・・え?大丈夫?」

 

 

流石の愛妃も店の奥の惨状を想像したのか軽く引いている。

 

そして物凄い足音ともに何かいろんな物の破片を服に刺し顔を真っ赤にしたトーカが店の奥から出てきた。

 

 

「く、工藤!!そそ、その女がか、か・・・・・彼女!?」

 

「落ち着けトーカ。あれはヒナミちゃんの早とちりで・・・・・」

 

 

今にも赫眼開眼しそうなほど興奮しているトーカに智樹はなんとか説明を試みる。

 

しかし、愛妃はいち早く状況を理解し、ニヤリと悪戯気に笑みを浮かべ、

 

 

「始めまして~。小坂愛妃って言います♪“私”の智樹君がお世話になってま~す♪」

 

 

智樹の腕に抱きついた。

 

 

「アイヒさん!?これ以上場を乱さないで!!」

 

「工藤オオオオオッ!!死ぬ覚悟はあるかアアアアアッ!?」

 

「何でお前はそんなバーサークしてんだ!?あ、ちょっとカネキさん助けて!いや、そんな「僕関係ないし」、て顔しないで!!」

 

 

カネキは初めて見た男女の修羅場に見て見ぬふりを決め込み、ヒナミは陰からトーカを応援している。

 

 

 

そして、

 

 

「ただいま。皆留守番ご苦労様・・・・・・・」

 

「何だこれ・・・・・・」

 

 

芳村と眼鏡をかけた青年、西尾錦が買い出しから帰ってきた。

そしてドアを開けた瞬間目に入ってきたのは・・・・・・今にも赫子を使わんとしているトーカとそれを宥める智樹。そして智樹の後ろで腹を抱えて笑っている見知らぬ金髪の少女。

カオスな店内の光景であった。

 

 

「ヤレヤレ、取り合えず説明してくれないかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バーサークトーカを芳村が宥め、一同はあんていくの二階に集まっていた。

 

 

「さて、ではまずその子が何者なのか教えてくれるかな?」

 

「勿論。そのつもりでここに来ましたから。」

 

 

芳村の質問に答えた智樹は、目配せで愛妃に自己紹介を促した。

 

 

「初めまして、私は小坂愛妃。喰種集団『ホーネット』のリーダーやってます。」

 

『ホーネット!?』

 

 

芳村以外のその場の全員が驚きの声をあげた。

 

 

「ホーネットって・・・・・・確かニュースでよく報道されてる捜査官殺しの・・・・」

 

「ああ、おまけに共食いもやってやがるぜ・・・・・・」

 

「リーダーってことは・・・・・SSレートの『女王蜂』かよ!?んな危ねえやつアッサリ引き込んでんじゃねえよ!!」

 

 

カネキとニシキとトーカは愛妃の存在に一層警戒を強める。

 

が、

 

 

「そうか、やはりホーネットと組むことにしたのか。」

 

「分かってたんですか?」

 

 

芳村だけはこの事を予期していたようだ。

 

 

「ホーネットは捜査官殺しで有名になっているが一般人の被害が出たと言う話を聞いたことがない。君の理念に共感してくれる協力者としては妥当だろう。」

 

「何でもお見通しですね。」

 

 

智樹は苦笑を浮かべた。

 

 

「それで?態々それを伝えに来たのかい?」

 

「ええ、まあ目的の一つですね。拠点を20区に置こうと思ってますんで一応把握しておいてもらった方が良いかと。狩場は各区に散らすつもりですから20区で狩るときだけ事前にお伝えします。」

 

 

そこまで話した智樹は「もう一つ」と言葉を紡いだ。

 

 

「むしろこちらが本題なのですが・・・・・・・人の肉の保存方法を教えて頂けませんか?」

 

「フム、別にそれで商売をしているわけではないから構わないが・・・・・・前にも言ったように、ここで働いてくれるのなら食糧の提供はしてあげられるが?」

 

「前にも答えましたが、俺には俺通すべき筋がありますから。それに今俺たちは十数人の組織になってるんですよ?流石にそんな大勢の食糧を提供してもらう訳にはいきません。」

 

「それもそうだね。では食糧庫まで着いてきなさい。保存方法を教えよう。」

 

「有り難うございます!あ、愛妃はここで皆に色々説明しといて。」

 

 

そう言い残し、二人は部屋を出ていった。

 

そして残されたメンバーは・・・・

 

 

『・・・・・・・・・・・』

 

 

何を喋れば良いのか分からず沈黙していた。

 

 

(おい!誰か何か話せよ!クソニシキ!)

 

(ふざけんな!SSレートの喰種だぜ!?下手なこと言や喰われるかもしんねえだろ!)

 

(でもこのまま何も話さないのは気まずいですよ!)

 

 

トーカ、ニシキ、カネキの3人は小声で作戦会議を行っていた。

その時、

 

 

「小坂さんは智樹お兄ちゃんの彼女じゃないんですか?」

 

(((!?)))

 

 

先陣を切ったのはまさかのヒナミであった。

 

 

「アハハハハ!ゴメンゴメン。さっきのは冗談。そこの・・・・・トーカちゃん?の反応が面白かったからついね♪」

 

「テメエ初対面の人間で遊んでたのか!?」

 

「だからゴメンって。」

 

「ふざけんな!!ぶち殺す!!」

 

「落ち着いてトーカちゃん!」

 

 

拳を握り締めたトーカをカネキが宥める。

 

 

「フフフ♪ホントに智樹くんのこと好きなんだね。」

 

「な!?なななななな、何言ってんだテメエは!!」

 

「え~?赤くなってるよ~?」

 

「っのテメエ絶対に殺す!!」

 

「トーカちゃんお願いだから部屋は壊さないで!」

 

 

真っ赤な顔で暴れるトーカを煽る愛妃に止めるカネキ。

 

 

「これってもしかして・・・・・・・『修羅場』っていうやつ?」

 

「ま、大体合ってるわな。」

 

 

ヒナミは『修羅場』という単語の使いどころを覚え、ニシキは関わるまいと遠巻きから見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上ドタバタしてますけど大丈夫ですか?」

 

「皆いい子達だから問題ないよ。」

 

 

智樹と芳村は店の食糧庫に来ていた二人は二階の騒ぎに気づいたが、芳村はあまり気にしていないようだ。

 

 

「そう言えばあの眼鏡の店員さん初めて見ましたね。」

 

「そうだったね。彼は西尾錦君。話せば長くなるんだが・・・・・・」

 

 

そこから、芳村はニシキがあんていくに来た理由、つまりは“美食家”の一件についての話をした。

 

 

「美食家を倒した!?トーカ達が!?」

 

「もしかして君のターゲットの中に入っていたのかい?」

 

「ええまあ、補食の異常性で言えば群を抜いてたんで。探してはいたんですけど見つからなかったんですよ。」

 

「そうか。まあニシキ君に関しては心配しなくてもいい。それよりも・・・・・・・」

 

 

不意に言葉を切った芳村に、智樹はくびを傾げた。

 

 

「ああいや、素朴な疑問なのだが・・・・・・君たちは今後何と名乗って行動するつもりだい?君がリーダーなら『ホーネット』を名乗る訳にもいかないだろう?」

 

「組織名ですか?決めてませんよそんなの。何か恥ずかしいじゃないないですか。」

 

「だが君の目的のためには君達という存在を世に知らしめる必要がある。そのための旗印として組織の名前は重要だと思うがね?」

 

 

芳村のアドバイスに智樹は「成る程」と呟き、顎に手を当てた。

 

 

「確かに一理ありますが・・・・・・組織名か・・・・・何も考えてなかったな・・・・どうしよ。やっぱ分かりやすいのがいいよな。あんまり凝りすぎると痛い名前になりそうだし・・・・・・・・」

 

 

そのまま、智樹は暫く思考に耽った。

すると、

 

 

「智樹お兄ちゃん、愛妃お姉ちゃんが呼んでるよ。」

 

 

上から下りてきたヒナミが声をかけた。

 

 

「ん?ああ、すぐ行くって伝えて。・・・・・・・・・あ、ちょっと待って。」

 

「うん?」

 

「実は俺と愛妃のチーム名を考えてたんだけどいいのが浮かばなくてさ。何か思い付くものとかない?一応リーダーは俺なんだけど・・・・・」

 

 

智樹は子供の豊かな発想力を当てにしてみた。

 

 

「う~んと・・・・・・・智樹お兄ちゃんが蜘蛛で愛妃お姉ちゃんが蜂だけどリーダーはお兄ちゃんだから・・・・・・・・」

 

 

ヒナミは思ったよりも本気で名前を考えているようだ。

そして数分ほど顔を俯かせて考えていたヒナミであったが、パッと笑顔で顔をあげた。

 

 

「『蜘蛛の糸』!」

 

「蜘蛛の糸!?ヒナミちゃんその話知ってるの?」

 

「まだ読んだことはないけど、神様が皆を地獄から蜘蛛の糸で引っ張り上げてくれた話でしょ?前にお兄ちゃんが話してくれたよ。」

 

 

満面の笑みでそう話したヒナミであったが、おそらく彼女はその話の結末までは知らないようだ。

 

 

「ヒナミちゃん。そのお話しでは最後に蜘蛛の糸が切れてしまうんだよ。」

 

 

物語の結末を芳村が説明する。

 

 

「ええ!?ご、ごめんなさいお兄ちゃん!私知らなくて「蜘蛛の糸か・・・・・」・・・・お兄ちゃん?」

 

 

申し訳なさそうな顔を浮かべたヒナミは、顎に手を当ててボゾボソと呟く智樹に首をかしげた。

 

 

「ありがとうヒナミちゃん。それに決めるよ。」

 

「え、でも・・・・・・」

 

「大丈夫。俺の糸は絶対に切れないから。全員まるごと地獄の底から救いだして見せるよ。」

 

 

そう言い、智樹はヒナミの頭を撫で、ヒナミも笑顔に戻った。

 

 

「芳村さん。これより俺達は喰種集団『蜘蛛の糸』を名乗り本格的に活動していきます。」

 

「うん。では私は君達の行く末を見守るとしよう。」

 

 

 

 

これから『蜘蛛の糸』が世界にどのような影響を及ぼすのか、それはまだ誰にも分からないことである。

 

 




という訳で組織名が決まりました。
あといくつか説明できていなかったことをここに書いておきます。

・『ホーネット』は女性のみで構成されています。これは愛妃が男をあまり信用していないだめです。

・智樹が愛妃、有馬と戦ってた時間=月山戦だと考えてください。



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不穏

取り合えず言い訳からさせてください!年末年始は想像以上に忙しくて全く手がつけられなかったんです!バイトに課題にテスト!もうてんやわんやですわ!!
まあ取り合えず春休みに入ったので春休み中にあと2話くらいは投稿できたらなぁ、とは思ってます。

とにかく、暫く更新出来ず申し訳ありませんでしたッ!!

てなわけで14話です。


 「ハアッハアッハアッハアッ!」

 

路裏を走る黒い小柄な人影。

 

 「待て!」

 「このガキが!3人殺りやがった!」

 「多少は傷つけて構わんが殺すなよ!」

 

そしてそれを追いかける複数の人影。

 

追われている者は黒いマスクに全身黒の衣服を身に纏い、追う者たちは全員同じローブのようなものを羽織っている。

この両者は共に喰種である。

 

そして男達がもう少しで黒い喰種に追い付くというその時、黒い喰種の腰の辺りから黒い赫子が展開され、男達の首を一瞬で撥ね飛ばした。

 

 「・・・・・・・・」

 

黒い喰種は血溜まりの中でただの肉塊となった喰種達を見下ろし、そのマスクを外した。

 

 「・・・・・・・もう・・・・・嫌だ・・・・・・」

 

震える声で呟いたその顔は、小学生くらいの少年であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さてと・・・・・ややこしいことになってきたね」

 

CCG20区支部。ここの第二会議室で特等捜査官、篠原幸紀はため息をついていた。

 

 「11区を中心とした捜査官殺しの件ですか?」

 

浮かない顔の篠原に、亜門が質問する。

 

 「それもあるけどねぇ・・・・・・今悩ましいのは“蜘蛛の糸”と“蟻”だよ」

 

“蜘蛛の糸”と“蟻”。そのワードに会議室にいるほぼ全員が顔をしかめ、

 

 「“蜘蛛”・・・・・・」

 

そして“蜘蛛”の名を聞き、亜門は拳を握りしめた。

真戸の死体を検死した結果、真戸の死に関わったのは“ラビット”、“フエグチ”、そして致命傷と思われる胸の傷からは“蜘蛛”の赫子痕が残されていた。

 

 「“蜘蛛の糸”・・・・・・SSSレート喰種“蜘蛛”率いる喰種集団。構成員の殆どは“元ホーネット”のメンバーのようですね。そして何より厄介なのが、狩場を定めず活動拠点が絞れないこと」

 

準特等である法寺項介が“蜘蛛の糸”の情報を補足する。

 

 「それなんだよねぇ。狩場が絞れないから全区域で警戒するよう言われてるんだけどさぁ・・・・・・神出鬼没に現れる連中をどうやって警戒しろって言うのかねぇ。それに“蜘蛛の糸”は個体値が高い。どいつもこいつもAレート近くはあるって言うし・・・・“蜘蛛”、“女王蜂”・・・・・それから最近目立ってきた“天道虫”なんかに出てこられちゃうとさ、そこいらの捜査官じゃ太刀打ち出来んよ」

 

篠原のほやきの通りCCGは現在“蜘蛛の糸”への警戒を促してはいるが、11区を中心とした騒動がまだ鎮静化していない現状では手の打ちようがなかった。

そして、“蜘蛛の糸”の捜査が捗らない理由がもう一つ、

 

 「奴らの存在が喰種達への抑止力になってるっていう事実もあるしね」

 

それは“蜘蛛の糸”が過度な捕食、もしくは快楽目的の殺人を犯す喰種を狙って狩っているということ。派手に人喰いをして目立てば“蜘蛛の糸”に殺される。その恐怖心からか、“蜘蛛の糸”が現れてから全区域で喰種による捕食件数が減少していた。ここで仮に“蜘蛛の糸”を殲滅したとすると、押さえつけられていた喰種たちが一気に活動を激化させる恐れがあり、中々手が出しづらいのだ。

その上蜘“蜘蛛の糸”はほとんど人間を補食対象せず、補食したとしても犯罪者や自殺者の死体であるため、民間人への危険性が低いのも捜査が捗らない一因となっている。

 

 

 「腕に自信のない雑魚い喰種なんかは極端に捕食数を減らしてるみたいだ。本来なら11区の騒動に紛れて捕食件数が跳ね上がるはずだったんだけど・・・・・・・皮肉な話だね、喰種のお陰で喰種から護られてるんだから」

 

そんで、と篠原は付け加えた。

 

 「そんな状況での“蟻”と11区の連中の喧嘩だ。もうてんやわんやだよ」

 「“蟻”も単体ながら上等クラスを返り討ちにするレベルの強さで暫定レートAの厄介な相手です。さいわい捜査官からは負傷者だけでまだ死者は出ていませんが、いつ犠牲者が出てもおかしくありませんね。しかしそちらに関しては直ぐに片付くのでは?」

 

その法寺の問いかけに、篠原は苦い顔を浮かべた。

 

 「確かにそっちはイワが担当するからね、捜査官殺しと鉢合わせても普通に行けば問題ないよ。“普通に”行けばね・・・・」

 

そうして、篠原は遠い目を窓の外へ向けた。

 

 (気になるのはこの“蟻”の食性。喰種と捜査官のみを補食、しかも捜査官は身体の一部をかじられただけで死者はなし・・・・・・・・・・若干差はあるが、“ホーネット”と被る。気をつけろよイワ、最悪“奴等”も来るかも知れない・・・・・・)

 

篠原の懸念が事実となるまであと1日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20区にある“蜘蛛の糸”の本拠地。そこの一室に黒い髪を肩で切り揃えた女性が入ってきた。

 

 「お帰り、明音さん。」

 

“蜘蛛の糸”の構成員、秋本明音を出迎えたのは、リーダーである“蜘蛛”、工藤智樹であった。

 

 「どうだった?」

 「はい、白鳩との遭遇もなくスムーズに終わりました」

 

智樹の問いに、明音はキチッと答えた。

 

 「それと兄さん、出来ればさん付けはやめて頂きたいのですが・・・・・・」

 「いや、だって明音さん歳上でしょ?流石に呼び捨ては・・・・ただでさえ“兄さん”呼びも抵抗あるのに・・・・・・」

 「兄さん・・・・・・私たちは兄さんをリーダーと認めたから着いてきてるんです。リーダーが下の者にさん付けなんて締まらないでしょう?」

 

明音にそう言われ智樹は観念した、と言うように両手を上げた。

 

 「分かった分かった。呼び捨てにするからそれでいだろ、明音」

 「はい。やはりそちらの方がいいですね♪」

 

ようやく智樹が呼び捨てになったことで、明音も満足したようだ。

 

 「それでどんな感じだった?」

 「兄さんの狙い通り喰種の活動が鈍っていますね。それと対象だった“蝿”は討伐完了しました」

 「・・・・・・誰がつけたんだろなその呼び名・・・・・」

 「悪質な喰種でしたがその点に関しては同情出来ます」

 

それと、明音が言葉を付け足す。

 

 「兄さんが調べていた“蟻”についてですが少し不味い噂を耳にしました。」

 「不味い噂?」

 「ええ、話をしていた喰種によると、“蟻”が捜査官殺しの連中、恐らく兄さんが言っていた“アオギリの樹”の構成員と戦闘しているのを見たそうです」

 「やっぱりか・・・」

 

明音の報告に、智樹は頭を抱えた。

 

 「やばい、面倒なことになっちゃったな・・・・・下手すりゃ三つ巴だ・・・」

 「三つ巴?」

 「さっき吉時さんから捜査資料流れて来たんだけど、CCGでも“蟻”討伐に特等の率いる班が動いてるらしい」

 「ッ!?“蟻”はまだAレートですよ!?特等が出張る相手ではないのでは!?」

 「その“アオギリの樹”のせいだ。“蟻”単体なら上等数人でもどうにかなるだろうけど、アオギリと鉢合わせた場合危ない。両者とも相手取るとなると特等クラスが必用だろ」

 「そんな・・・・では“蟻”に関しては諦めるのですか?」

 

その明音の問に、智樹は首を横に振った。

 

 「いや、皆には悪いけど危ない橋を渡る。アオギリを叩き潰して“蟻”を貰うのは俺達だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『昨夜未明、15区の路地裏にて喰種同士の戦闘痕が発見された。痕跡から争ったのは2体、15区で多くの犠牲者を出している“蝿”と呼ばれる喰種と、喰種組織“蜘蛛の糸”の喰種であるとの情報が喰種対策局から発表され、既に現場には捜査官が立ち入っており、近隣の住民には外出禁止令が出されている。なお・・・・・・』

 

 「えらく目立ってんなお前ら」

 

あんていくカウンター席で頬杖をつきながら新聞を読んでいるニシキは、今現在店内たった一人の客である愛妃に話しかけた。

 

 「まあ当面は名前を売るのが目的ですからね~。いい感じで話題になってきました♪」

 

そう言い、愛妃はコーヒーに口をつけた。

 

 「ん~、やっぱりここのコーヒーが一番美味しい♪」

 「そうだろ?ありがたく飲みやがれ」

 「淹れたの私だろがクソニシキ」

 「ウゴァッ!!」

 

偉そうにふんぞり返るニシキの脛に、コーヒーを淹れた本人のトーカが蹴りをかました。

 

 「てめぇ・・・・・馬の糞見てぇな蹴りかましやがって・・・・・」

 「ニシキさん、客がいる前で糞とか言わないで下さい。」

 

すねを押さえて悶えるニシキに、愛妃は冷たい視線を投げつける。

かの弁慶ですら泣きわめくと言われた脛への攻撃は喰種にも有効であるようだ。

 

 「んで?工藤は何を企んでるわけ?」

 

文句を言ってくるニシキを無視し、トーカはアイヒに目を向けた。

 

 「フフフ♪ホントにトモキ君のこと好きだね。そんなに気になるんだ?」

 「眉間に風穴開けんぞ・・・・・・」

 

このアイヒのトーカいじりは最近恒例になりつつある。

 

 「まあまあ落ち着きたまえよ。」

 

そして口調はふざけたままだが、愛妃の顔つきが真剣なものへと代わった。

 

 「トモキ君が今してるのは先ず“蜘蛛の糸”を世に知らしめること、それと人員補充かな」

 「人員補充?」

 「私達はこれからCCGと捜査官殺しの喰種集団の両方を相手にするわけだからね、組織を相手にするならこっちもある程度の頭数は必要になる。だからうちの方針に賛同しそうな喰種を探してるんだよ」

 「お前らの方針ってあれだろ?なるべく人間に迷惑かけずに暮らしましょ~、て感じの。んなのに賛同するやつ簡単にゃ見つかんねぇぜ」

 「ところがどっこい、いい感じの喰種がいたんですよ」

 

そう言い、アイヒは一枚の新聞の切り抜きをテーブルの上に置いた。

 

『昨夜未明、13区にて捜査官四名と喰種が交戦。喰種は捜査官四名に軽傷を負わせ依然逃走中であり、近隣には夜間の外出禁止令が発令されている。13区は以前より喰種による被害件数が高く、より一層厳重な警戒体制がしかれると見られる。また、この喰種は黒パーカーと黒いズボンと黒いマスクを着用していたらしく、喰種対策局本部は周辺の住民だけでなく隣接する各区域にも警戒を促している』

 

 「・・・・・・・これが何?」

 「この喰種、CCGによると人間を一人も殺してないらしいの」

 「「!?」」

 

トーカとニシキはアイヒのその言葉に目を見開く。

 

 「二人とも仕事してくれないと・・・・・何してるんですか?」

 

それとほぼ同じタイミングで、店の奥から掃除道具を持ったカネキが出てきた。

 

 「カネキさんこんにちはー」

 「いらっしゃい。それで皆集まって何してたの?」

 

問いかけて来たカネキに、アイヒは新聞の切りぬきを見せ付けた。

 

 「この記事の喰種をうちに勧誘しようと思ってるんです」

 「へぇ~、この喰種は人間の味方なの?」

 「そこまでは会ってみないと分かんないですけど、説得次第で見込みはありますよ」

 「説得ねぇ・・・・・つーかそもそもアイヒ、お前“ホーネット”なんて組織率いてたくせによくクドウの野郎に着いてったな。何て説得されたわけ?」

 

ニシキが興味を持つのも当然だろう。アイヒが率いていた“ホーネット”は民間人には手を出さないが、喰種捜査官に関しては容赦なくその命を奪っていた。

それがトモキと組んで以来捜査官を一人たりとも殺していないのだから。

 

 「確かにそれは私も気になる」

 「だろ?ほれ話してみろ」

 

珍しくトーカの同意が得られたニシキはニヤニヤと笑いながらアイヒに催促する。

 

 

 「いや~、別にそんな大層な話じゃないんだけどな~・・・・・」

 「それはこっちで判断してやんよ」

 「勿体振らずに喋りな」

 (珍しく息が合ってる・・・・・・)

 

 

下世話な興味心を抱くニシキと、珍しくアイヒに対して攻勢に回ることになったトーカは利害の一致により珍しく結託し、それを眺めていたカネキは苦笑いを浮かべた。

 

 

 「ん~・・・・まあ別に隠すようなことじゃないけど、そんなに深い理由はないですよ?」

 

少し冷めた残りのコーヒーを飲み干し、アイヒは自身の口で今に至る理由を語り始める。

 

 「まあ手短に話すとね、トモキ君に着いて行ったのは“憧れた”から・・・・・かな?」

 「憧れた・・・・・?」

 

首をかしげた金木に、アイヒはクスリと笑みを浮かべた。

 

 「ほら、喰種として生きるってかなりキツイこともあるじゃないですか。嫌でもヒトを食べなきゃ生きてけないし、白鳩に怯えて暮らさなきゃならない。だから自分のことで手一杯で自分以外に構ってられないって喰種が殆どなんですよ。私が“ホーネット”を作ったのも元は自分を護るためだし」

 「でも、トモキ君は違った。トモキ君はあれだけの力を持ってるのにそれを“自分以外の何か”を護るために使ってる・・・・・・まあトモキ君に言わせれば、『それも自分のためだ』とか言うんだと思いますけど」

 

そして、アイヒは笑みを輝かせた。

 

 「そんな優しい蜘蛛に、私は憧れたんです」

 

彼女は心惹かれたのだ。“人間”と“喰種”、相反するその二つを、その両方を護ろうとする無謀な少年に。

 

 「私も・・・・私達も、せめて“何かを護る化け物”でありたい。だからトモキ君に着いて行ったんです」

 

アイヒは短い話を終えた。

そして丁度彼女が語り終えたタイミングで店のドアが開かられる。

 

 「コンチハー。アイヒいますかー?」

 「失礼します」

 

店に入ってきたのは、アカネを引き連れたトモキであった。

 

 「いらっしゃい。アイヒちゃんならそこにいるよ」

 

カネキはトーカ達と集まっているアイヒを指差した。

 

 「どしたのトモキ君?それにアカネも」

 「ちょっと面倒なことになった。今夜中に13区に行くぜ」

 「うええ!?急だなぁ・・・・・・・・」

 

ガッツリ寛いでいたアイヒは嫌々ながら席を立つ。

 

 「店に来たならコーヒーの一杯くらい飲んで行きなさいよ」

 「悪いなトーカ。今はマジで急がなきゃなんねぇんだ。今度また来るから勘弁してくれ」

 

そう言い直ぐに店を出ていったトモキは、拗ねたような顔をしたトーカに気づくことはなかった。

 

 「まあまあトーカちゃん、そんなに拗ねないでよ♪」

 「は、ハア!?べべ、別に拗ねてねぇし!クドウがどうしようが関係ねぇし!!」

 「おんやぁ?私は一言もトモキ君の名前は出してないんだけどな~」

 

したり顔を浮かべたアイヒを見て、トーカの中の何かが切れた。

 

 「・・・・・・・・・コロス」

 「待ってトーカちゃん!赫子は出しちゃだめ!!」

 「姐さんも、一々人を煽らないで下さい」

 

顔を真っ赤にしてアイヒに飛びかからんとするトーカをカネキが抑え、ニヤニヤしながらトーカを煽るアイヒをアカネが諌めた。

そして、

 

 ((この人も苦労してるんだろうな・・・・・))

 

ふと目が合ったカネキとアカネは、互いに心の中で相手を同情し合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして同時刻、とある廃ビルの通路を小柄な人影が歩いていた。

 

 「ふ~んふふふ~ん♪」

 

フードについた耳のような突起を揺らしながら、楽しげに鼻唄を歌うその人物はある部屋の前で立ち止まる。

 

 「マ~オちゃん」

 「ッ!?」

 

そのフードの人物はノックもせずにドアを開け、中にいた少女が肩をビクリと震わせた。

 

 「もぉ~“エト”さん!ノックくらいしてくださいよ!」

 「このくらいで驚いちゃって~、可愛いねぇマオちゃんは♪」

 

エトと呼ばれたケープに全身に包帯を巻いて顔を隠した少女は、マオと呼ばれた長い茶髪の少女の背中にに抱きついた。

 

 「離れて下さいよ!」

 「え~冷たいなぁ、お姉さん泣いちゃうよ?」

 「こんなんで泣くタマじゃないでしょ・・・・・・・それで何なんですか?まさかからかいに来ただけですか?」

 「ん~ん、お仕事が入ったよ」

 

仕事というワードを耳にし、いまだに抱きついたままのエトをそのままに、マオの顔つきが真剣なものへと変わる。

 

 「分かりました。内容とメンバーは?」

 「目標は“蟻”の捕獲。メンバーは私とマオちゃんのチームね」

 「了解」

 

必要事項を告げると、ようやくエトはマオから離れ、解放されたマオは素早く準備を始める。

 

 「ただ“蟻”狙いで白鳩も動いてるし・・・・・・もしかしたら“お邪魔虫”も出てくるかも知んないから気を付けてね」

 「好都合です。邪魔者を一気に減らせますから」

 

淡々と答えながら、マオはゴーグル型のマスクを装着し、チームを集結するために部屋から出ていった。

 

そして一人部屋に取り残されたエトは包帯に隠されたその顔に不気味な笑みを浮かべる。

 

 「フフフ、“蟻”に“蜻蛉”に“蜂”に“天道虫”、そして蜘蛛”。まるで蟲毒だねぇ♪」

 

怪しげな鼻唄が部屋の中に響いていた。

 

 

 

 

 




一気にオリキャラ増えすぎた上にまたオリ展開で原作進まないという状況です。ご免なさい。
ホントは直ぐにアオギリ編に入る予定立ったんですが、パワーバランス的にまだ蜘蛛勢がかなり弱いので新キャラ加入させました。
因みにアオギリのオリキャラは元々入れるつもりだったんです。アオギリ側の話とか書きたかったし。

取り合えず最後にエトが言い残した呼び名だけ対応させておきます。



蟻:最初に追われてたやつ

蜻蛉:マオ

天道虫:アカネ


こんな感じです。
では、次回こそ早めに上げられるよう頑張ります!
あまり期待せずにお待ちください( ̄▽ ̄;)


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