比企谷八幡が海浜高校で生徒会長をしたら (時雨煉)
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一章
1話
「なん…だと…」
そこには俺の名前があった。
どこにあったかって? それは……
「生徒会長候補……」
当然ながら、ぼっちである俺が生徒会長に立候補するはずなどない。
何故なんだ……。
「くっ……」
クスクスと笑い声があちこちから聞こえる。
その中心人物の中には折本かおりがいた。
「比企谷が生徒会長とかまじウケるんですけどwwww」
ウケねぇよ、笑えねぇよ。
恐らくは誰が俺の名前を語り投票したのだろう。投票するには30人以上の署名がいるはずだが、最近のいじめはレベルが高いな……。
そんなことよりこのままでは俺が生徒会長になってしまう。生徒会長をやる物好きはなかなかいないだろう。
「こんなことならあの時……」
俺は当初総武高に入るつもりだった。
だが、インフルエンザにかかってしまい試験を受けることが出来なかった。
そのせいで第二希望だった海浜高に入ることになってしまった。
ここには数人同じ中学の奴がいるから来たくはなかった。折本もその一人だ。
「あっ! でも、比企谷が生徒会長なったら、会長権限でアニソンばっかり流しそう!」
「何それ」
「中学時さあ、比企谷に告られた子がいてさ」
「可哀想……」
可哀想ってなんなのマジで。告った次の日にクラス中で噂になってんのそれで、「A子マジ可哀想……」って……なんなの俺に告られるのそんなにダメなの? その夜、涙でどれだけ枕を濡らしたことか。
折本の話はまだ続く。
「その子、比企谷にアニソン集みたいなの渡されてんの」
「マジで」
「それをさ、放送部の子が昼休みに流してさ、クラス中、大盛り上がり」
「何それ、超おもしろーい」
なんで、リア充共はこうゆう話が好きかね……。リア充爆発しろ!
「ほんで、その三ヶ月後ぐらいに私告られてさ」
「変わるの早すぎでしょ」
中学の時、俺は折本のことは好きだった。
今でも思う。なぜ、折本を好きになったのか。折本だけではない、他の奴も好きになったのか分からないことが多い。
俺は人のことを本気で好きになったことが一度もないのだろう。
「比企谷はいるかね」
「……」
入って来たのは平塚先生だった。
今年から海浜高にきた若手(ここ重要)の先生だ。
前は俺の行くはずだった、総武高にいたらしい。
このは俺が一番仲の良い先生であることは間違いないだろう。
だが、苦手だ。無視しよう。衝撃のファーストブリットは喰らいたくないからな。
あっ、見つかった。
「私を無視するとはいい度胸じゃないか」
「い、いや、けして、無視した訳ではなくてですね……」
「まあいい……それよりもきたまえ」
「はあ……」
俺は会議室へと強制連行される。
「念の為に聞いておくが、君は生徒会長になりたいのか?」
「そう見えます?」
「君の目を見る限りそうは見えないよ」
話とは生徒会選挙のことだったようだ。
「誰がやったか心当たりはあるかね?」
「まあ、折本とかその当たりでしょうね」
「折本かおりか……」
「けして、悪い生徒ではないのだがな」
リア充共は楽しむためにしているだけだからな……。悪気がないから尚タチが悪い。
「君の生徒会長候補の件はこちらでなんとかしよう」
「そうすか……」
「では、後日また連絡しよう」
生徒会長なんてごめんだからな、平塚先生には是非頑張って欲しい。
「良い話と悪い話、どっちから聞きたい?」
「悪い話を聞かずに帰りたいです……」
「まあ、そう言うな」
俺は平塚先生にまた、呼び出された。
生徒会長候補の話を聞きに来たのだが、どうも良くない方に行きそうだ。
「まず、悪い話からだ」
「無視っすか」
「まず、君は生徒会長になることが確定した」
「はあ……はあ!?」
無理だったのか? 生徒会長なんか出来ないぞ? 生徒会長はイケメンか美人がやるって決まっているんだ。俺には無理だ。
「続いて、良い話だ」
「早っ!」
「入って来たまえ」
「失礼します……」
「折本……!?」
入って来たのは折本だった。
良い話とは犯人を捕まえたと言うことだろうか?
「ちょうど、副会長の席が空いていてね」
「はあ……」
「折本には副会長をやってもらう」
「「はあ!?」」
「ちなみに君達には拒否権はないよ」
職権乱用なんじゃないか? これ。
折本も不服そうだ。
「まあ、安心したまえ。こちらで出来る限りのサポートはする」
「それに、国語の成績を少しあげてやろう」
「良いんですか? それ」
「良くはないよ」
「……」
この人教師としてどうなんだろうか……。ダメだろうな……。
「それでは、よろしく頼むよ」
平塚先生は部屋から出ていき、俺と折本だけが残された。
「比企谷と生徒会とかマジウケないわ……」
「そこはウケろよ」
生徒会長、比企谷八幡と副会長、折本かおりの誕生の瞬間である。
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2話
おかしなところがあれば出来るだけ直したいと思います。
「ふぅ……」
俺は今、生徒会室にいる。
生徒会長になって、良いことがあったと言えば、生徒会室を自分の物のように使えることだ。
特に昼休みはいい。今のように弁当を食べながら、MAXコーヒーをすする。とても、いい。
しかも、教室ではリア充に絡まれる心配があるので読めないラノベもここでならゆっくり読める。
リア充共と言ったら、「何読んでんの?」「えっと……」「見せろよ」
「あっ……」「何これエロ本じゃね」「みんな見てみろよ、比企谷がエロ本持って来てるぞ」「マジでwwww」とかいいやがる。いちいちクラス中に広めなくていいから。それにエロ本じゃねえよ、エロいところだけみて勘違いするなよ。
と、このような心配をすることがない。
「ふぅ……」
俺はまた、MAXコーヒーをすする。
やっぱり、飯にはMAXコーヒーが合うな……。
「あっれぇー、比企谷じゃん、何してんの?」
「……」
俺の至福のひと時を邪魔したのは折本だった。
何でいんだよ、リア充共はまだわいわいやってる時間だろ?
「弁当食ってんだよ……」
「一人で食べてるとか、ウケる」
何? いちいち冷やかしに来たの? リア充様は大変だな。その点、ぼっちは楽である。さすが、ぼっち。
「で、折本は何しに来たんだよ」
「えっ、お弁当食べに来たんだけど」
そう言って、折本は弁当を見せる。
お前も一人で食べに来てるじゃん。
「仲町さんが今日休みでさー、他の人と食べるのもあれだからここで食べようかなーって」
「休みね……」
仲町さんと言えば、折本の友達で確か、同じクラスだったはずだ。
休みだったのか……クラスのことは全然見てないから知らなかった。
「それって比企谷が作ったの?」
「まあ、そうだな」
小町は受験勉強もあるし、母親は作る気もない。だから、俺が作るしかない。
「へぇー、あ、卵焼き貰うね」
「おいこら」
「その卵焼きは俺の自信作なんだ、勝手に食べるんじゃない」
「別にいいじゃん、私のあげるからさ」
折本は自分の弁当を開ける。
弁当の中身は米にタコさんウインナーに卵焼き、プチトマトとと言った実に女の子らしい物だった。
「卵焼きあるなら自分の食えよ」
「えー、いいじゃん、私の卵焼きあげるから」
折本から卵焼きを貰う。
それを口にする。
「おっ」
「どう? 美味しい?」
「……俺のより全然うまい」
「そう? 比企谷のも美味しかったけど」
「お前が作ったのか?」
「けっこう料理得意なんだよねー」
意外だ……リア充は自分で作れないものだとばかり思っていた。
特に折本はそのタイプだとばかり思っていた。
「意外って思ってるでしょ」
「いや、別に……」
「良く言われるんだよねー」
やたら、リア充は自分のことを話したがるよな……。興味ないから、しなくていいよ。
「私って最近料理にハマってるじゃん?」
「いや、知らねえよ」
いちいち把握しないといけないんですかね……。これは生徒会長だからですか?
「で、味見役お願いしたいんだけど駄目かな?」
「は?」
「駄目?」
上目遣いでそうゆうこと言うのやめてくれませんかね……うっかり惚れそうになる。
「友達いるだろ」
「失敗するかも知れないもの食べさせるのちょー失礼じゃない?」
「俺ならいいのかよ……」
差別はいけないと思うんですよね……。その点、ぼっちは差別をしない。世界中がぼっちになればいい。そしたら、世界中から差別が消える。そうか、ぼっちは世界平和の一歩だったのか……。
「それに、比企谷ならちゃんと感想言ってくれそうだし」
「誰でも言うだろ」
「普通の人は気を使うって言うか……ちゃんと言ってくれないんだよね……」
それって、俺が普通じゃないってことになるんですが……。
「まあ、だから、こ、これからお弁当作って来てあげるよ」
「……まあ、いいけど」
作る手間が省けて楽にはなるからプラスではあるんだが……なんかな。
扉が急に開かれた。
「比企谷、生徒会のことで話があるのだが……おや」
「なんですか?」
平塚先生は生徒会の担当ではあるが、あまり来ない。来るときは厄介事を持って来る時が多い。
「折本もいるのか、君達二人とは珍しいな」
「別に好きで二人でいる訳ではないですよ」
誰がこんなビッチと好き好んで食うかよ。これなら、平塚先生の合コンの失敗談を聞きながら食べる方がまだましだ。
いや、やっぱりどっちも嫌だな。
「まあいい、折本もいるならちょうどいい」
「一体何をしろと?」
「話が早くて助かる」
「君達には総武高とのクリスマス会の会議に出てもらおうと思ってね」
「クリスマス会?」
「ああ、お年寄りと子供達向けのクリスマス会を総武高と合同ですることになってね」
「急になんでそんな話に?」
「上からの命令なんだ、社会に出ると上からの命令は絶対だ」
社会に出るの嫌だな……。やっぱり、専業主婦が一番いいな、養ってくれる人いないかな……。
「こうゆう、厄介事はいつも若手に回ってくる。ほら、私、若手だから若手」
大事なことだから3回も言いました。もう、誰か早く貰ってあげろよ、俺が貰っちゃうよ。
「コホン……明日からは会議に出てもらうからそのつもりで」
「いきなりですか」
「生徒会のメンバーには私から伝えておく、心の準備でもしておきたまえ」
平塚先生は生徒会室を後にした。
「私休んだら駄目かな……」
「お前が休めるなら俺も休む」
平塚先生に限ってそれはないだろうな……。撃滅のセカンドブリットを喰らいかねない。
今日は弁当は作らなくていいとても楽だ。
「あれ? お兄ちゃん、今日はお弁当作らないの?」
「ああ」
俺の妹でもあり、天使でもある、小町が起きてきたようだ。
「どして?」
「折本が作ってくるってよ」
「ああ……」
「どうした?」
「小町は夢でも見てるのでしょうか……お兄ちゃんに彼女が」
「やっと、お兄ちゃんに彼女が……嬉しい筈なのに、お兄ちゃんが遠くに行くようで小町悲しい……あ、今の小町的にポイント高い」
最後のがなければ、ただの可愛い妹なのにな……。
「彼女じゃねえよ」
「じゃあ誰?」
「……同じ生徒会のメンバーだよ」
「生徒会?」
「今、生徒会長やってるんだよ」
「お兄ちゃんが生徒会長……やっぱり、小町は夢でも見てるのでしょうか」
まあ、確かに俺が生徒会長なんて柄ではないな。小町もそのことは知ってるだろう。
かくゆう、小町も生徒会長だ。お、生徒会長ブラザーズだなこれ。
「で、そのお義姉ちゃんとはどんな関係で」
「お義姉ちゃんじゃあねえよ……ただのクラスメイトだよ」
「友達じゃあないの?」
「よく考えてみろ、俺に友達ができたことがあるか?」
「そうだね、それなら納得」
納得しちゃったよ……そこで納得されるとお兄ちゃん悲しいんだけど……。
「そろそろ行かなくていいのか? 日直だろ?」
「あ! じゃあ、小町は行ってきます」
「おう、いってらっしゃい」
「お義姉ちゃん候補が増えるのに期待しています、それでは、行ってきます!」
慌ただしく小町は出ていった。
お義姉ちゃん候補って何だよ……。増える訳ないだろ。
「そろそろ、学校に行かないとな……」
遅刻して、平塚先生に殴られたのは別の話である。
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3話
授業が終わり、今から昼休みだ。
「比企谷~、生徒会室行くよ~」
「……一緒にか?」
「そうだけど?」
クラスが少しざわつく。
今まで生徒会室に行く時に一緒に行くことなんかなかったのに、今日は行くということに驚いているようだ。
しかも、折本から誘っている。
どうゆう、気まぐれだ……。頭でも打ったのか……。
「ねぇー、早く行こうよー」
「はぁ……分かった」
俺と折本は生徒会室に向かう。
折本は弁当を二つ持ってきている。
「ちゃんと、作ってきたんだな」
「言ったんだから、作ってくるでしょ」
「そうなのか……?」
俺は弁当を作ってきてないのに弁当を持ってきていない俺を見て、「本気にしたの? ウケるwwww」とか言われる可能性も考慮に入れておいたんだけどな。折本はそこらへんはきちんとする子だったらしい。
「もしかして、自分で作って来ちゃった?」
「いや、今日は作ってきてない」
「良かった~」
ほんと、俺も良かった~だよ。作ってきてなかったら、昼飯どうしようかと思った。
「あ、でも、あんまり期待しないでね?」
「別に食えるもの入れておいてくれれば充分だよ」
「何それ」
さすがに炭とか入れられると困るからな。食べ物を炭にしようとしたらどれくらい焼けばいいんだろうか。
折本は料理も得意なようだし、まともな物が出てくるだろう。
「比企谷ってこんなやつなんだねー」
「何が?」
「中学時はさー、面白なくて、キモくて、変な奴だなーと思ってたんだけどさー」
「何? 俺の心、折りに来てるの?」
キモいとか酷いんだけど。
「そんなじゃないって」
「ダメージ喰らってるんだけど」
「まあいいじゃん、それぐらい」
「酷くない?」
ダメージ喰らい過ぎて、瀕死なんだけど、ポケモンセンター連れてってくれませんかね。
「でも、最近はキモくて、ちょっと面白くて、変な奴だなーって」
「あんまし変わってないじゃないか」
「あ、本当だ」
キモさと変は変わらないのかよ……。
「まあ、なんでもいいけどよ」
俺は生徒会室に入る。
続けて折本も入ってくる。
「もぉー、はい、お弁当」
「……サンキュ」
お弁当の中身は肉メインだった。唐揚げとかそんな感じのが多い。
俺としては肉メインなのは嬉しい。男は肉だな。
「あ!」
折本がニヤニヤしている。
嫌な予感しかしない……。
「ねぇー、比企谷ー」
「なんですかね、折本さん」
「あーん、してあげよっか?」
「なっ……」
危ない、危ない。心のATフィールド展開してなかったら、うっかり恋に落ちるところだった。
折本も若干恥ずかしそうにしながらも反応を見てニヤニヤしている。
「めっちゃ、照れてるじゃん、ウケる」
「うるせぇ……」
こんなことされて照れない方が可笑しい。
俺は折本に少し反撃する。
「お前だって、顔赤くなってんぞ? 恥ずかしかったんだろ?」
「まあ、ちょっとだけ……」
言われたことで更に折本の顔が赤くなる。
「私のことはいいから! 比企谷、ニヤニヤしててキモイ!」
「ニヤニヤしてたか俺?」
「うん、もう、通報しないといけないレベルで」
まじかよ、全然気づかなかった……。ってか、俺がニヤけたら通報されんの? マジで? 気を付けないとな……。
「そんなことより、あーん」
「冗談だろ……?」
「恥ずかしいんだから、早くして」
「お、おお」
恥ずかしいならするなよ……。顔、さっきより真っ赤だし。
「早く」
「あ、あーん」
その瞬間、扉が開かれた。
「比企谷、今日のことについてだが……」
「「「あ」」」
3人はそのままの姿勢で硬直する。
俺と折本があーんをしているのを平塚先生はじっと見つめている。
「わ、悪い、邪魔したな」
「あ、ちょっと!」
平塚先生がすごい勢いで出ていった。
「ああ! 結婚したい!」
「平塚先生……」
叫びながら、廊下を走っていった。
「「……」」
二人の間に沈黙が生まれる。
「普通に食べよっか……」
「そうだな……」
そのあと、平塚先生は廊下を走っているところを見られて怒られるのであった。
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4話
今日、二回目の投稿です。
貯めておくのもいいんですけど、なんか投稿したくて。
もしかしたら、今日にもう一回投稿するかも?貯めるかもしれませんが。
「なあ、折本」
「何?」
「お菓子ってそんなにいるものなのか?」
「さあ?」
「さあって……」
クリスマス会の会議に行く途中のコンビニに立ち寄っている。
平塚先生曰く、お菓子などは持っていた方がいいそうだ。
「あ、これも欲しい」
「まだ買うのか……」
「いいじゃん、経費もらってるんだからさ」
「余るだろ」
「余ったら持って帰るし」
いくら経費を貰っているとはいえ、使い切る必要はない。それに、もうすごい量だ。カゴいっぱいいっぱいだ。
「って言うか、余るの期待してるだろ?」
「あー、バレた?」
「さっきから自分の好きなものばかり選んでるみたいだしな」
「別にいいでしょ、比企谷にもあげるし」
「いらん、ってか太るぞ?」
「女子に体重の話振るとかマジなくない」
女子に体重の話したら駄目みたいなのってなんなの? 1キロとか全然変わんねえだろ? 女子は1キロぐらいでうるさい。
まあ、折本が太ろうが俺には関係ない。
「そろそろ行くぞ、早くしないと遅れる」
「もう、そんな時間?」
「だから、さっさと決めろ」
「じゃあ、はい」
カゴを渡される。
重っ、こいつどんだけ入れてるんだよ。
「お会計は4860円です」
「うわ、ギリギリかよ」
俺は平塚先生から渡された五千円札を店員に渡す。
「お釣りは140円になります」
「ありがとうございましたー」
俺と折本はコンビニから出る。
「お金ギリギリだったねー」
「お前が買いすぎるからだ」
「それに重いし……」
無駄に重量のありそうなやつもあるし……。
「私も半分持つよ」
「いや、いい」
「遠慮しないでさー」
「こうゆう、力仕事は男に任せとけ」
「い、意外と頼りになるー」
「意外は余計だ」
というか、大きい袋にまとめて入れられたので、二人で持つとなると、取っ手の部分を一つずつ持たなくてはならない。それは恥ずかしいから嫌だ。
「すぐそこだから早く行くぞ」
「早くなーい」
「総武高校の生徒会長の一色いろはって言います。よろしくおねがいします」
周りから拍手が起こる。
「ねえねえ、比企谷」
「なんだ?」
「あの子、ちょー可愛くない?」
「まあ、可愛んじゃあないの?」
「あれ、お気に召さない感じ?」
「別にそんなんじゃねえよ」
なんて言うか、一色いろはは本物ではない。そんな感じがする。あの可愛さはデフォルトではないオプションだ。あいつは好かれるために可愛い自分を演じている。そんな気がする。
「ふぅん……次比企谷だよ」
「ああ」
生徒会長として、自己紹介をしなければならない。
俺が立った瞬間、総武高の連中、えっって顔してた。何?庶務とかだと思った? 残念、生徒会長だ。
「海浜高の生徒会長の比企谷八幡だ。まあ、なんだ、よろしく頼む」
部屋が静まり返った。
えっ、何これ? パチっの一つも聞こえてこないんだけど……。
一色いろはだけが、かろうじで拍手しようとしたが周りを見てやめた。
一色、いい奴なんだな……。
一色の好感度上がりまくりである。
仕方なく、静かに席につく。
「拍手の一つもされないとかウケる」
「いや、ほんと黙って下さい、マジで」
あれ、可笑しいな、目から汗が……。
「それじゃあ、始めますねー」
一色いろはのもと会議は行われた。
「えっと、あー、生徒会長の先輩!」
「……なんだ?」
何? 名前覚えてないの? 生徒会長の先輩って……。
「今日はありがとうございました」
「いや、全然」
「折本先輩もありがとうございました」
「ううん、全然大丈夫だよ? いろはちゃん」
あれ? 一色さん? 折本の名前は覚えてて僕の名前は覚えてないんですか? 別にいいんですけどね、別に。
「このあと、食事でもどうですか?」
「いいねー、それ」
「どこにします?」
二人が俺に視線を向けてくる。
あれ、俺も行くの?
「サイゼとかな……」
「さ、サイゼ……」
折本は笑いを必死に抑えている。
えっ、駄目なの? サイゼ、サイゼは千葉発祥だよ? みんなでサイゼ。
「ま、まあ、近いですし、私はいいですけど」
「いろはちゃんもサイゼ賛成? なら、サイゼでいいよ」
やっぱり、サイゼだよね。一色が気を使った? 気のせいだろ。
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5話
「うわ、そんなに甘くすんの?」
「甘党なんだよ」
俺はコーヒーに砂糖を大量投入していた。
ほんとならば、練乳が欲しいところだ。それなら、MAXコーヒーに近づく。
「そう言えば、MAXコーヒー飲んでたもんねー」
「悪いかよ」
MAXコーヒーは俺の血と言っても過言ではない。俺の命の源だ。
「私もー、甘党なんですよねー」
「そうなのか?」
「はい、ケーキとかパフェとかも好きですし、MAXコーヒーも美味しいですよ~」
「一色……」
MAXコーヒー好きを俺以外で始めて見たかもしれない……。
中学時代の俺なら告白して振られてるところだった。振られちゃうのかよ俺。
「いろはでいいですよー」
「一色、今度MAXコーヒー奢ってやる」
「わあ、ありがとうございます」
「……」
一色とすっかり意気投合しているなか、折本が不機嫌そうな顔をしてこちらを見ている。
「なんだ?」
「べっつにー」
急に不機嫌になりやがって、俺が何かしたか?
「ちょっと、ジュース入れてくる」
「おう……」
席には俺と一色だけになった。
「あ、先輩、アドレス交換しませんか?」
「なん……だと……」
「どうかしたんですか?」
「アドレスを聞かれる日が来るなんてな……」
「え、聞かれたことなかったんですか?」
「ああ、いつもは──────」
俺は聞かれるとしてもお情けみたいなものだった。みんなが交換しているなか、俺はケータイを持ちながら、キョロキョロしていたら、「……交換する?」って、とても嫌そうな顔をしながら言ってきたんだ。
あれなら聞かれない方がまだましだったかもしれない。今ではそのアドレスも消している。
「ふふっ、先輩って面白い人ですね」
「まあな」
一色は少し驚いたような顔をした。
「肯定するんですね。やっぱり、面白い人です」
一色は仮面を被っている。みんなから愛されてる自分という仮面を。たまに現れる素が仮面の薄っぺらさを現している。
「お前のあざとさは相当なもんだな」
「は?」
急に素に戻らないでくれませんかね。声音の違いでちょっとびっくりするんですけど。
「もぉー、あざとくなんかありませんよー」
うわっ、めっちゃあざとい。あざとさMAXだ。
「なんか、楽しそうだね」
「そうか?」
「……」
不機嫌そうな折本が戻ってきた。
「なるほど……」
「何がなるほどなんだ?」
「いいですから」
一色は折本の耳の近くに近づける。
「▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒……」
一色が何かを囁くと、折本は顔を赤くした。
「べ、別にそんなんじゃ」
「じゃあ、私が貰っちゃってもいいですか?」
「そ、それは駄目!」
何が起きているかは分からないが一色が折本をからかっていると言うことだけは分かる。
「わ、私、もう帰る!」
「おい、折本!?」
折本は急いで帰っていった。
「何したんだ?」
「なーんにもしてませんよ?」
「嘘だろ、それ……」
「えへへ」
可愛ければなんでも許されるって訳じゃないから、許されるのは小町だけだ。
「あいつ、代金のこと忘れてるだろ……」
「いいじゃないですか、先輩の奢りで。あ、私の分もお願いします」
「なんで、お前の分まで」
「お願いしますよー、可愛い後輩のために」
素がバレてるって分かってから、あざとさのレベルが上がったな。
このままだとめんどくさそうなので、払うことにした。
「ありがとうございますね」
「うぜぇ……」
さっきまでの意気投合ぶりは何だったのかというぐらい、うざい。あざとすぎて、逆に可愛くない。
「酷いですよー」
「うるせぇ……」
店の外に出る。
「じゃあ、私はここで」
「いいのか? 送って行かなくて」
「大丈夫ですよ」
「なんかあったら電話しろよ」
「……先輩もそうゆうところあざとくないですか?」
「俺があざといとか誰得だよ」
一色のあざとさは男共大喜びだろうが、俺のあざとさなんか、ひかれるわ。
「じゃあ、さようなら」
「またな」
俺は自分の乗る電車の駅まで急ぐ。
折本に電話しておいた方がいいかな……。
俺はケータイの画面をつける。
「……そういえば、折本の連絡先も消してた……」
今、このケータイに入っているアドレスは家族以外では一色だけだ。
「まあ、大丈夫だろ」
折本の家も、そう遠くないはずだ。俺と同じ中学なのだから家も近いはずだ。
小町にケータイを見られたらまた、お義姉ちゃん候補とか言い出すんだろうな……。
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6話
「お兄ちゃん、今日は折本さんとはどうだったの?」
「いや、特にない」
「ご飯食べてきたんじゃあないの?」
「他にもう一人いたし」
「誰?」
「総武高の生徒会長だよ」
「男? 女?」
「女だよ」
「なるほど……」
その時、ケータイの着信がなった。
「お兄ちゃんに電話が!?」
「やめろ、そんなに驚くと傷付くだろ」
「はい、もしもし」
「あ、先輩ですかー」
「うわぁ……」
電話をかけてきたのは一色だった。
まあ、一色以外かかってくる可能性は少ないけど。
「うわぁって聞こえたんですけど、気のせいですか?」
「ああ、気のせいだ。一言もそんなことは言っていない」
「ならいいですけど……」
「で、何のようだ?」
俺はコミュニケーションと言うことをして、疲れたから早く寝たい。
そしたら明日は仮面ライダーにプリキュアだ。朝のゴールデンタイムだ。
「明日のことなんですけどー」
「明日? 何かあったか?」
「休みじゃないですかー」
「そうだな」
「だから、遊びに行きますよ」
「だが断る」
「即答ですか!?」
当たり前だろ。休日は休むためにあるんだ。それをわざわざ、遊ぶために使うなんて馬鹿のすることだ。
「折本先輩も来ますよー」
「だから?」
「来てくださいよー」
「いや、めんどいし……」
だって、変な空気になるの目に見えてるし、途中から折本とばっかり喋って、俺のこと忘れてるんだろ?
「あ、お兄ちゃん、ケータイかして」
「おい」
小町にケータイをひったくられる。
「あ、どうも、妹の小町と言いまーす」
「え? 折本さんもくるとふむふむ……」
「あ、やっぱり、そうゆうことでしたか」
「お兄ちゃんのことは任せてください! 無理矢理でも連れていきます」
「じゃあ、さようなら~」
「お兄ちゃん、終わったよ」
勝手に切りやがったよ、こいつ……。
一色の声は聞こえなかったが、何かを勝手に決めていることは分かった。
「お兄ちゃん」
「なんだよ……」
嫌な予感しかしないんだが……。
「小町は買って来て欲しいものがあるのです」
「あー、でも、小町は受験勉強で忙しい」
「あー、誰か買ってきてくれないかなー? チラッ」
一色もなかなかだが、小町もあざとい。自分でチラッとか言ってるし……。
「……で、何を買ってきて欲しいんだ?」
「さっすが、お兄ちゃん」
兄は妹の頼みを断れないように出来ている。
ついでに言うと、千葉県の兄妹はシスコン、ブラコンだ。
「シャーペンの芯を買ってきて欲しいな」
「あと、一色さんと折本さんも一緒です」
「なんであいつらと……」
「あとから一色さんから連絡が来るそうなので」
小町は自分の部屋に戻っていった。
「さーて、寝るかな……」
俺は夢の世界へと現実逃避した。
「せーんぱい、待ちましたか?」
「まあ、待ちはしたが、遅れてはいないし、いいんじゃないか?」
「もぉー、そこは、待ってないって言わないと駄目じゃないですか」
「知らん」
そんな、カップルみたいなことする気はない。
「比企谷は、結構早く来てたの?」
「5分前ぐらいにな」
「楽しみで早く来ちゃったとか?」
「5分前行動を心がけるようにって言われなかったか?」
「はあ……」
小学生でもこれぐらいは分かる。
「私達を見て、何か言う事はないんですかー?」
「おはよう」
「おはようございます。じゃあなくてですね!?」
おっ、ナイスノリツッコミ。
一色はこんなことしないやつだと思っていたが、違うらしい。
「服ですよ、服」
「ど、どうかな……?」
俺に感想を求められても困るんだがな……。
一色の服はなんて言うか全体に可愛らしい感じだ。フリルなんかがついている、ミニスカートに、コートと言った感じだ。
可愛い、可愛くないかで言えば、無論可愛い。
正直、今まで出会って来た中でもかなり上だろう。
折本の服は少し大人っぽい。なんか、オシャレな感じだ。落ち着いた感じのコートに短パンとストッキング。ストッキングがなんかエロい。折本って美脚だよな……。それに一色に引けを取らないぐらいに可愛い。
ん?
「あの……先輩?」
「うぅ……」
二人共顔を赤くしていた。特に折本なんかは俯いている。
「どうした?」
「声に出てましたよ……」
「……マジで?」
「マジです……」
うっわぁ……ただのキモい奴じゃん……。可愛いとか美脚とか、やべーな……声に出してたつもりはないんだけどな……。
「今の感想、ほんと?」
「へ?」
「だから、今の感想は本心か聞いてるの!」
「ま、まあ、可愛いとは思ってるぞ……」
「……!?」
「ありがと……」
「……どういたしまして」
微妙な空気が流れる。
これ、どうしようかな……。一色も折本も顔、赤いままだし。
「行きましょうか……」
「そうだな……」
「うん……」
微妙な空気がしばらく続いた。
前回ので一色が何を折本に言ったかとか分からなかったと思うのですが、折本目線も書いた方がいいですかね? コメント、お願いします。
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7話
「次どこ行きますー?」
「そうだね……」
微妙な空気ではもうない。
いろいろ回って、次の場所を決めているところだ。
服屋に行こうと言ったときは俺が止めた。
さっきの空気になる恐れもあるし、店内に男がいたら怪しまれる。
「行きたい所あるんですけど、いいですかー?」
「どこ行くの?」
「スポーツショップに」
「いろはちゃん、何かスポーツやってるの?」
「私はやってないんですけど、マネージャーをしてて」
「へぇー、そうなんだ」
「私はスポーツショップでもいいよ。比企谷は?」
「まあ、いいんじゃあねえの? そろそろ、修学旅行だし」
「あー、もうそんな時期か……」
海浜高校では、冬に二泊三日の修学旅行がある。
基本的にはスキーと自由行動だけだ。
俺はスキーは小さい時に小町が行きたいからと言って家族でよく行っていた。
小町達は未だに行っている。俺? 置いてかれてる訳じゃないよ? めんどくさいだけだからね。
「じゃあ、決まりですね」
向かっている途中でチャラうざい奴が話しかけてきた。
「あんれぇー、いろはすじゃね?」
「ちょ、いろはす〜」
「なんなんですか? 戸部先輩」
一色がとてつもなく、嫌そうな顔をしている。この戸部とか言う奴が可哀想なレベルだ。
「やあ、いろは。君も遊びに来ているのかい?」
「葉山先輩」
えっ、何この反応の違い。
もう一人いたのは、葉山と言うらしい。
何この、爽やかイケメン。常に太陽拳放っているじゃあないかってぐらいに眩しい。
目がぁぁぁ! 目がぁぁぁ!
「はい、他校の人達と遊びに来てて」
「そうか、この前行ってた生徒会の人達かい?」
「はい、比企谷八幡生徒会長と折本かおり副会長さんです」
「君が、生徒会長……」
「悪かったな、生徒会長っぽくなくて」
主に目が腐っているのが原因ですね、分かります。
「いや、そうゆう訳じゃ……」
「いいんですよ、葉山先輩。先輩が生徒会長っぽくないのは今に始まったことじゃあありませんから」
「お前は少しは気を使え」
「えへへ」
葉山とか言う奴が来てから一色のあざとさが少し違う気がする。
葉山は特別な存在と言うことだろうか? イケメンだから、一色が手を出しそうな相手ではある。
「いろはす、あの人達なんなん?」
「はあ? 話聞いてなかったんですか? 生徒会長と副会長ですよ」
「えっ、マジでなん! めっちゃ、生徒会長に向いてなさそうじゃん」
「あー、そうですね」
「ちょ、酷くね!?」
戸部とかの言う奴マジで可哀想になってきた。一応先輩なんだろ? 一応。
「仲がいいんだな……君達は」
「仲良くねぇよ、別に」
「いろはは、色んな人に可愛い自分を見てもらおうとする」
「でも、君とは接し方が違うように感じる」
「可愛く見られたくないってことなんじゃないか?」
「そうは思わないな。俺はむしろ……」
「あ、せんぱーい、そろそろ行きますよー」
「いや、やっぱりいい」
「変なところで止めるなよ」
思わせぶりな所で止めやがった。
なんなんだ? むしろって……。
「せんぱーい、早くしましょうよー」
「呼んでるぞ」
「分かってる」
「君とはまた会いそうな気がする」
「そうか、俺は会いたくないな」
「っ」
葉山は驚いた顔をしていた。
こんな爽やかイケメンともう一度会うなんて御免だ。
早く行かないと一色がうるさそうだ。
「もぉ、先輩遅いですよ」
「悪かったな、早く行こうぜ」
「なんか、すごかったね」
「そうだな……」
葉山とか言う奴は嫌いだ。いけ好かない。
「この、スキーウェア可愛くなーい?」
「あ、可愛いですね」
「でしょ!」
女子達はスキーウェア選びでキャッキャウフフしてる。
俺は親父のを借りるので買う必要はない。
俺は店内をうろうろすることにした。
俺はスポーツはやっていない。運動が苦手という訳ではない。そこそこの成績は取っている。
テニスなんかは割かし得意だ。
ダブルス以外は基本的個人競技だし、俺向きだ。
チームスポーツと言うのは好まない。そいつが嫌いなだけでパスは出さないし、嫌いな奴がミスをすれば、責める。
中学の時のサッカーは辛かったな……。
それで、俺が点を取ったりしても、誰も喜ばないんだよ。何この理不尽。
「ちょっと、比企谷ー、勝手にどっか行かないでよ」
「いや、暇だったし」
「比企谷って団体行動向いてなさそうだよねー」
「よく分かったな」
ぼっちは団体行動に向いていない。ぼっちとは孤高なのだ。何それかっけー。
「これ、どう?」
折本はピンク色のスキーウェアを見せる。
「まあ、いいんじゃあねえの、お前らしくて」
ピンクってなんだかビッチっぽい。
「私っぽいか……」
「どうかしたのか?」
「ううん、買ってくるね」
どうかしたのだろうか? 少し、にやけているように見えたがそんなにあのスキーウェアを気に入ったのだろうか。
「せーんぱい!」
「あ?」
「先輩もなかなかやりますね」
「何がだよ」
「ふふっ」
一色いろははたまによく分からないことを言う。俺には理解できない。理解する気もない。
「買って来たから次いこー」
「はい」
このあと、いろいろ回ってまたサイゼに行くことになるのだった。
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8話
今日はちょっと短めですね。
俺達はまた、サイゼで食事を取っている。
「比企谷、ほんとサイゼ好きだよねー」
「まあな」
なんなら、俺の食事、サイゼ縛りにしてもいいまでである。
サイゼは値段も安いし、種類も多いし、完璧だろ。
「飽きませんか?」
「色んな種類あるだろ」
「まあ、そうですけど……」
「カフェとか行かないの?」
「行かないことはないが、基本的にはサイゼで充分だ」
カフェ行っても、ちょっと高いコーヒーで贅沢するだけだもんな。
「それより早く注文しようぜ」
「もう決めたの? メニュー表見てなくない?」
「サイゼに通いつめている俺にはそんなもの不要だ」
「なんか、怖い……」
「うわぁ……」
頼んでから20分~
「そう言えばさー、今日会った隼人って人、総武高のサッカー部の人じゃない?」
「そうですけど」
「あ、やっぱり?」
「知ってるんですか?」
「イケメンで有名だよ」
「葉山先輩ならありえそうですね……」
そんな有名人だったの? そんな噂知らなかった。まあ、噂が伝わってくるような人いないんですけどね。
「なんだか、あいつは気に食わない」
「えー、そうですか?」
「比企谷のはあれでしょ? リア充爆発しろー的な」
「ああ、そうだな。あいつには是非爆発してもらいたい」
もれなく、あのうざい奴にも爆発してもらいたいところだ。なんだっけ? 戸馬だっけ?
「そう言えば、葉山の時は態度違ったな」
「そうですかー?」
「もしかして、その、葉山のこと、す、好きなのか?」
「はあ?」
「口説いてるですか? ごめんなさい、まだちょっと無理です」
「勝手な解釈するな」
「比企谷、いろはちゃんのこと……」
「違げぇよ」
「ただ、好きなのかどうか気になっただけだ」
明らかに態度が違ったからな。もう一人も別の意味で違ったけど。
「まあ、かっこいいとは思いますけど……」
「気になる相手にはとりあえず手を出……繋ぎたいなとは思います」
「……」
手を出すって言いかけなかったか? こいつ……。
折本も特に驚いている様子はない。
女子の世界ではこれが普通なのか……女子怖い。
「あー、もうこんな時間だし、そろそろ帰る?」
「そうだな、早く帰りたい」
早く帰ってプリキュア見たい。
「せーんぱい」
「言っとくけど、奢らんぞ」
「まだ、何も言ってないのにー」
「でも、用件はそれだろ?」
「はい」
今の俺の財布にはとてもじゃないが3人分は払えない。
2人分ならギリギリ払えるが、片方が文句言っても困るので今日は奢らない。
「仕方ありませんね……」
「お会計、2580円になりまーす」
俺達は一人分を払う。
「ありがとうごさいました」
サイゼを出て、一色は家の方向が違うので別々に帰る。
「さよなら~」
「バイバイ~」
俺は軽く手を振る。
「じゃあ、帰ろっか」
「ああ」
二人で駅へと向かった。
SSを書くのはこの作品が初めてなんですけど、ハーメルンではこれって評価いい方なんですかね? 他のやつの方が人気ありそうですけど……。
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9話
今回も少し短いですが、すみません。
日間ランキングとかルーキーランキングとか載っててびっくりしました。見てくれた方ありがとうございます。
「なんで、こんなに混んでるの……」
「仕方ねぇだろ、帰宅ラッシュ時間と重なってんだから」
俺達は帰宅ラッシュの時間と重なって、ぎゅうぎゅうの電車に乗っている。
俺と折本は端に追いやられている。
「うわっ」
「きゃっ」
電車が少し揺れる。この人数のせいで少し揺れても、人の波に押される。
「ちょっと……近いって……」
「わ、悪い」
さっきの揺れのせいで、今、俺は折本を壁ドンしている状態だ。
折本は顔が赤くなっている。おそらく俺もだ。顔が触れ合いそうなぐらい近いから良く分かる。
もう一度、揺れると唇が当たるんじゃないかって言うぐらいに……。
「「……」」
二人共、気まずくなって、目を逸らす。
心を落ち着けろ、俺。折本なんて、ただ可愛いだけのビッチだ。そうだ、俺には小町と言う可愛い天使がいるじゃないか。
心の中で天使が囁いてくる。
『チャンスだよ! 今なら折本さんを落とせるよ! 頑張ってね、お兄ちゃん♡』
駄目だ。天使のくせに天国に導こうとしやがらねぇ……。
今なにかしたら、地獄に落ちる。
「比企谷? どうしたの?」
「いや、なんでもない」
家に早く帰りたい。今ならカマクラでも優しくしてくれる気がする。
「はあ、はぁ、疲れた……」
「ほんとに……」
いや、ほんと、精神的に……。
やっと、解放されると思ったら、事故かなんかで電車遅れるし……。
今日は散々な目にあった。
「さっさと帰ろうぜ……」
「そうだね……」
二人共も疲れ切っていた。
「お前の家どっちだ?」
「え、なんで?」
「もう、暗いだろ、送って行ってやるよ」
「あ、ありがと……」
いくら俺でもこの時間に女子を、一人で帰らせるのはどうかと思う。
不審者が現れても撃退できる気はしないが。
「さっきはありがとね……」
「何が?」
「電車で私が潰れないようにしてくれてたでしょ?」
「……別に普通だろ」
「そう? そこらへんの奴らなら、あの状況を利用してくっついて来ようとすると思う」
そうゆう奴らは多いだろう。俺だってギリギリだった。
それが、折本ほどとなれば、余計にだ。
「それがないだけ、比企谷はましだよ」
「そうかい……」
それから話は続かなかった。
でも、不思議と退屈はしなかった。むしろこの空気が心地よいと思えるほどに……。
だが、それも終わりだ。
「じゃあ、送ってくれてありがとね」
「こんぐらい、礼を言われるほどじゃない」
「でも、ありがとね」
「……」
なんだか、最近おかしい……。自分じゃあないみたいだ。人との関わりを嫌っている筈なのにこんな時間が続いて欲しいと思っている。
この関係は偽物でしかない。少しのことで壊れてしまうほど、脆く儚い。
でも、俺は……。
「本物が欲しい……」
「えっ?」
俺は折本に聞こえるか聞こえないかぐらいの声で呟いた。
「いや、なんでもない」
「そう?」
「ああ、じゃあな」
「ま、またね……」
この関係は本物ではない。でも、この関係が本物になればいいと思っている。
でも、それは叶わない。
いずれ、壊れてしまう。それが俺は怖い。だから、あと、一歩踏み込めない。
だから、俺はこの関係を保っている。
偽物はいつか壊れる。リア充達でもそうだ。上辺だけの関係。それが続けばいつか壊れる。最後まで仲良くするのはほんの人握りの奴らだけだ。
だから、俺は本物が欲しい。
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9.5話
「……が……しい」
「えっ?」
「いや、なんでもない」
「そう?」
「ああ、じゃあな」
「ま、またね」
比企谷が遠ざかっていく。
比企谷は何を言っていたのだろうか? 声がちいさくてよく聞き取れなかった。
「比企谷か……」
比企谷とは最近仲が良いんだと思う。中学の時の自分に言ったら、信じては貰えないだろう。
比企谷の印象は変わってきている。地味でキモくて、面白くない奴だと思っていたけど最近は面白いと思っている。
それだけじゃなくて、頼りにもなるし、優しい。
比企谷のことは良く思っている。いつもの私みたいに冗談ではなくて。
好きなのかどうかは分からない。でも、良くは思っている。
いろはちゃんはどうなんだろう……。いろはちゃんも比企谷のことは気にいっているはず。いろはちゃんは葉山君のことが好きなのかな? それとも、比企谷なのかな? いろはちゃんは現時点では私を気遣ってくれてるみたいだけど、今後は分からない。
比企谷は好きな人いるのかな……?
私と比企谷が初めて会ったのは、中二の頃だった。
中二で同じクラスになり、少ししゃべったことのある程度の奴だった。
初めてしゃべったのは、アドレスを交換する時だった。
比企谷のアドレスを持っていないからと言う理由で声をかけた。
「比企谷ー、アドレス交換しようよ」
「え、あ、はい」
「敬語とかウケる」
あの時の比企谷は同学年の私に敬語を使ってきたので、少し面白かった。
たぶん、比企谷なら、ぼっちはリア充と喋るとき脊髄反射で敬語になるんだよみたいなことを言ってそう。
アドレスを教えてからはそれなりにメールが来た。
最初の方はメールに付き合うんだけど、めんど……眠たくなってくると、あっ、ごめんm(_ _)m、寝てたから気が付かなかったとか言って誤魔化していた。
告白されてからはメールが来ることもなくなったけど。
最近の私は変だ。
比企谷を気にしすぎている。
比企谷が他の女の子と喋っていたらモヤモヤするし、仲良くしていたらもっとだ。
いろはちゃんと比企谷が仲良く二人で喋っていた時なんて、不機嫌が周りに伝わるほどだった。
それを察したいろはちゃんはこう言って来た。
「先輩のこと好きなんですか?」
「べ、別にそんなんじゃ」
「じゃあ、私が貰っちゃってもいいですか?」
「そ、それは駄目!」
いろはちゃんは見透かしたように笑って来た。
周りから見れば、私は比企谷のことが好きなように見えるのだろうか?
気になっちゃっていることは認めている。でも、付き合いたいかと言われると分からない。
比企谷はもう、私のことは好きではないだろう。昔のことだもん。変わっているに決まってる。
好きなのかは分からない。でも、比企谷にはよく思われたい。
いろはちゃんは全てを見透かしてのことか電話でこんな提案をしてきた。
『先輩によく思われたいですか?』
この子はすごいなと思った。
「う、うん、でも、どうやって?」
『とりあえず、遊びに行きましょう』
「遊びに?」
『はい。それで、二人の距離を縮めましょう』
「でも……」
『私から誘っておきますから、折本先輩はとびっきりのオシャレして来てくださいね』
「えっ、ちょっと!?」
『ツーツー』
「切れた……」
いろはちゃんの半場強引に参加させられたお陰で良いことはいろいろあった。
大変なのは服装だった。比企谷の好みも分からなかったけど、チャラチャラしているのは嫌いだろうと言うのは分かった。
だから、私は大人しめの服を来ていった。
気にいってくれるかは不安だったけど褒めてくれて嬉しかった。
あの時は、声をあげて喜びたいほどだった。
比企谷のことが好きなのかは分からない。でも、好きだったらいいなと思っている。
初めてする、本物の恋を……。
「あ、あれ?」
ドアが開かない。なんでだろう……。
「あ!」
今日は、親が帰って来ない日だった。それをすっかり忘れていて、鍵を持ってきていない。
慌てて、比企谷を追いかける。
「比企谷〜!」
「あ?」
「はあ、はあ」
「どうしたんだよ? 走ってきて」
「今日、両親帰って来ないんだけど、鍵持ってきてなくて……」
「大変だな」
これはチャンスかも知れない。自分の気持ちを確かめるための。
「今日、ひ、比企谷の家に泊めてもえないかな?」
「は?」
比企谷は驚いて、声をあげる。
急に泊めてなんて言ったら驚くのも無理はないと思う。女子が、泊まりに来るなら普通だと思う。
「泊めてくれないかな?」
私はできるだけ、可愛らしく、比企谷に好かれるようにそう言った。
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10話
もう一つ作品を書きたいと思うのですが、どれにしようか迷っているのでアンケートを取りたいです。
活動報告のほうでアンケート取るので協力お願いします。
今日中には活動報告書くつもりです。
「泊めてくれないかな?」
「は? 無理に決まってんだろ」
「えっ?」
俺は女子を泊めるなんてこと好きはない。小町で十分だ。
ましてや折本だ。何をされるか分からん。家探しされるに決まっている。
折本には悪いが泊めることはできない。てゆうか、恥ずいし。
「これって、そうゆう流れじゃあなかったの……」
「知らねえよ」
どこらへんをどうしたら、泊める流れになるんだよ。何それ、どこの主人公?
「他あたってくれ」
「他って言ったて……」
「いるだろ、一色とか仲町さんとか」
「今からじゃ迷惑だし」
それって、俺には迷惑かけてもいいってことになるんですけど……。
「だからさ、泊めてよ」
「いや、常識的に無理だろ」
親は仕事で今日は帰って来ないが小町だっているし、そもそも、男の家に泊まるのが駄目だろ。ビッチかよ。
「大丈夫だって」
「男の家に泊まるの大丈夫なのか?」
「他の奴なら駄目だけど比企谷なら……」
「は?」
何それ、なんのフラグ? 勘違いしそうになるから辞めてくれませんかね? 二回も同じ相手に振られるとか、心が、持たない。
「手を出してきたりしないでしょ?」
意気地なしって、言いたいんですかねそれ。まあ、出さないだろうけど。理性が持つ限りは……。
「分からん。俺も男だ」
「え、そ、そうなの?」
やだー、女に見えた? きゃはっ。なんてな。
「でも、比企谷なら……」
「何ぶつぶつ言ってんだ」
「べ、別に……」
これ以上話していても埒があかない。
「……小町がいいならいい」
「えっ?」
「小町がいいならいい」
折本はとても嬉しそうに笑った。
俺はときめきかけた。最近、女子にときめきかけるのが多い気がする。
「あ、ありがと……」
「小町次第だけどな」
「うん……」
でも、小町のことだ。まず、OKするだろう。
あと、何かしら手を回してくるはずだ。
「小町ちゃんってどんな子なの?」
「超可愛い天使」
「うわ……」
小町は天使。異論は認めない。
「比企谷の家ってどこなの?」
「すぐそこだ」
意外と近かったりして驚いている。
「なあ、すぐだっただろ」
「そうだね」
5分もかかっていない。
俺は家に入る。
「ただいま」
「あ、お兄ちゃん、遅か……誰?」
「折本かおりです。よろしくね」
「折本さん!? 家に連れてくるなんてまさか!?」
「いや、そのまさかではない」
「ま、分かってたけどねー」
小町の冗談には疲れさせられる。まさかの後はだいたい予想はつく。ろくでもないが。
それにしても、意外だ。折本はそれなりに挨拶が出来たんだな。リア充式の挨拶かと思ってた。
「で、折本さんは遊びに来たの?」
「いや、それが、泊まりにきたんだ」
「え? またまた、その手には引っかからないよ?」
「いや、ほんとだって」
「ねえー、折本さん?」
「ぅ……」
「ほんとに?」
「ほんとに 」
小町は頭を抱えて、動揺している。
今までに前例のないことだ。普通はこうなる。
「お兄ちゃん、告白したの?」
「してないし、する気もない」
「……」
なんで、折本なんかに告白しないといけないんだ。結果は数年前に聞いてる
折本が若干悲しそうな顔をした気がしたが気のせいだろう。
「まあ、是非是非、上がって下さい。今日は親もいませんから」
「そうなの……?」
「……まあな」
時刻は9時を過ぎたところ。このあとはどうなるのか? 比企谷八幡の今後に期待です。心の中で実況って虚しいな……。
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11話
あと、アニメ見ました? 玉縄のろくろ回しやばいすっね。原作の方だと海浜高校のメンバー10人ぐらいの筈なのに、アニメでは全然いませんでしたね。折本は誰に誘われたんだろ……。
「比企谷、いいなー、こんなに可愛い妹がいて」
「そうだろ?」
俺の妹は可愛いのだ。世界一可愛い。
小町は折本に可愛がられて嬉しそうにしている。
「こんな妹欲しいなー」
「小町も折本さんみたいなお姉さんが良かったです。こんなごみいちゃんじゃあなくて……」
「お兄ちゃん、泣いちゃうよ?」
これがNTRってやつか……。残念ながら小町はやらんけどな。
それにしても、小町と折本は相性がいいな。リア充的なノリが合っているのだろうか。
お兄ちゃん、なんだか寂しいよ。
「折本さんがお姉ちゃんになるには、お兄ちゃんに頑張ってもらわないと」
「何を頑張るだよ……」
養子に行くから妹離れしろってことですかね? それなら、先に親父をなんとかしないと駄目だな。俺以上に小町のこと愛してるから。もう、それは引くぐらい。
「折本さん、かおりさんって呼んでもいいですか?」
「うん、いいよ!」
「やたー! かおりさん大好き!」
「私もだよ!」
二人共ぎゅっと抱き合う。
現実で百合に出くわすとは思わなかったなー。キマシタワー。
「……お前らそろそろ風呂でも入って来たらどうだ?」
「あ! かおりさん、一緒に入りましょうよ」
「いいよ!」
ほんと、仲が良いことで。仲良し姉妹に見えんこともないな。
折本は少しソワソワしてこちらを見る。
「絶対に覗かないでよ」
「分かってる」
「絶対に覗かないでよね!」
「はいはい、覗きませんよ」
そんなに念を押されるとフリかなって思っちゃうでしょ。
覗いたら、小町に嫌われるから覗かない。
「絶対だからね!」
「何回言うんだよ……」
そんなに、心配ですかね? きっと、目のせいだな。目が悪い。
小町はすかさずフォローを入れる。
「大丈夫ですよ。お兄ちゃんにそんな度胸ありませんから」
「それもそうだね」
「はい! 行きましょうか」
二人仲良く、風呂場に行った。
そこで、納得されるとちょっと、あれなんですけど……。
こたつから何かが這い出てきた。
「ニャー……」
「カマクラか……」
カマクラはくたびれた様子だった。
いつもなら小町にべったりなのに……。
あ、なるほど。
「お前も折本が苦手なんだな」
「ニャー……」
ペットは飼い主に似るって言うけど、こんなとこも似るんだな……。
カマクラもリア充空気が苦手なんだろう……。
俺はカマクラを撫でる。
「ニャー……」
「もうちょい、撫でさせてくれよ……」
少し、触っただけで、頭をよけられた。
小町なら文句言わないのに……。
「ニャー、ニャー……」
カマクラにお前も大変だなと言われた気がした。
今日のカマクラちゃんは優しいなー。
カマクラはそう言い残すと、こたつに戻っていった。
「疲れたな……」
ほんとに疲れた。いや、もう、憑かれたと言ってもいいかもしれない。
一色や折本達といると疲れる。まあ、楽しくないこともないが……。
寝ようかなと、思っているとふと聞こえてくる。
「かおりさん、めっちゃ、肌綺麗ですね!」
「そんなことないって! 小町ちゃんこそ綺麗な肌してるよ」
「……」
声のボリューム下げてくれませかね……。
こちらも思春期真っ盛りなんでね、いろいろと、妄想しちゃったりしちゃうわけなんですよ……。
小町のは大丈夫にしても、折本は……。
折本もビッチだが、スタイルもいいし、決して小さいわけでもないと思う。何がとは言わないが。
想像しちゃったら、ちょっと気まずくなる。
俺はイヤホンをセットし、声が聞こえないぐらいまでの音量で聞く。
そのまま、仮眠をとる。
しばらくしたら、出てくるだろう。
俺は目を閉じた。
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12話
現在の時刻は午前7時……。
「はあ?」
仮眠を取るつもりがいつの間にか寝てしまっていたと言うことか……。
と言うか、誰も起こしてくれなかったの? 風呂も入れてないんだけど。
これって、何かのイベントじゃあなかったの? 女子が泊まりに来て何もなかったって……。
やはり俺に主人公の素質はなかったのか……。目が腐った主人公ってそんなにいないと思うよ? どうですか? 俺。
「シャワーでも浴びるか……」
さすがにシャワーも浴びなかったらまずいだろう。
折本が降りてくると面倒だ。
シャワーを浴びしだい、起こして帰ってもらおう。
シャワーを浴び終わったのだが、良く考えたら、女子が寝ている時に行っていいものなのだろうか……。
ギャルゲーとかだと、イベントが発生しそうな気がする。
最悪、小町を起こして、その後に小町に起こしてもらおう……。
小町の部屋の扉を開ける。
「いない……だと……」
まさか!? 連れ去られた!? ってことはないだろうけど、どこに行ったんだ、あいつら。
もう、遊びに行ったとか? 俺を、置いていくって酷くない? せめて、書き置きでも欲しかったな……。
俺は自分の部屋に戻る。
「このパターンは予想していなかった……」
小町と折本は俺のベッドで寝ていた。
なんで、こっちで寝てるんだよ……。小町の部屋の方が広いだろ。
親父達による贔屓のお陰で小町の部屋は一番広い。ちなみに、俺の部屋は3番目に広い。
「おい、小ま……」
小町を起こそうとして、ふと気付く。
机の上の物に……。
「これは、ToLOVEる全巻……」
巧妙に隠していた筈なのに、見つかったのか……。
これを見て、話のネタにした筈だ。
今から隠すと、こいつらに追求されかねない。それならいっそ、見て見ぬふりをして、元の場所に戻してもらうのを待とう。
俺は静かに扉を閉めた。
このあとに何か言われるのもあれだから出かけよう。
俺は街に向かって歩き出した……。
ここはゲームセンター……。縮めてゲーセン。
ここはリア充が多いから、頻繁に来るわけではないが、ゲームはそれなりにやる。
それにこの時間帯ならば、リア充共は少ない。
それにコーナーによって、リア充の出現度が違う。
ここはクレーンゲームと言う、比較的、リア充が集まる場所だ。
女子が男子に欲しい物を取ってもらったりして、キャッキャッウフフしてるのだ。
だが、アニメなどのフィギュアがあるこの場所は出現する確率が0に等しい。
前回来た時に目星は付けてある。
ここには俺の欲しい物が……。
「ない……だと……」
中は空っぽだった。
入れ替えられていないところを見ると、取られてから時間はあまり経っていない。
あと、少しだったのか……。
俺がショックを受けていると1人の男が声をかけてきた。
「探しているのはこれかなあ?」
「そ、それは!?」
俺が狙いを定めていたフィギュアだ。
その男はデフで眼鏡をかけていてオタクだろうということはすぐに分かった。
「欲しいか?」
「ああ」
フハハハハッとムカツク笑い声をあげる。
確実にこいつは中二病だ。それ以外でこんな笑い声をあげる奴はいない。
「我と勝負といこうではないか」
「なんだと?」
「勝てば、これは貴様にやろう」
「後悔するなよ」
「フハハハハッ!」
俺もゲームは多少なりともやっている。
かなりの自信があるようだが、負ける気はない。
次回は若干やらかすつもりです。
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13話
最近見たアニメに影響されました。
あるゲームで対戦するのですが、DSとかのと混じっておかしくなっていると思います。サイトとかは一応見てきましたがよくわかっていません。すいません。
アンケートの方は結果が出ました。一人でいくつか言っている人もいたので、二つ以上入れてる方は二票以上入れているということにしました。作者分の票もいれています。数え間違えがあったらすみません。
1位 ②いろはすと比企谷の 16票
2位 ①陽乃さんと比企谷の 9票
3位 ⑤クロスオーバー 6票
4位 ⑦その他 3票
5位 ③④川なんとかさんと比企谷、ゆきのんと比企谷 2票
7位 ⑥違う作品 0票
次の作品は八色になりました。
おそらく、この作品と同時進行で書いていくと思います。
もし、その次があるなら、陽乃さんのになります。
アンケートに協力して下さった方ありがとうございます。
前回まであらすじはああああ!
「いない……だと……」
「これは、ToLOVEる全巻……」
「探しているのはこれかなあ?」
「そ、それは!?」
「欲しいか?」
「ああ」
「我と勝負といこうではないか」
「なんだと?」
「勝てば、これは貴様にやろう」
「後悔するなよ」
「フハハハハッ!」
と言うわけで勝負をすることになった。
「ゲームはどうする?」
「貴様に選ばしてやろう」
いちいち、ムカツク奴だ。
それなら俺はこの……。
「俺はこのマリオカートでの対戦を希望したいが」
「ほう……」
ゲーセンに置いてあるマリオカート。
WiiやDSとは違い、アクセルやブレーキが付いており、本物の車のように操作できる。
最近では、子供でも操作できるように、5秒アクセルを踏まないと勝手に動き出す仕組みになっているようだ。
「我はこのゲーム得意だぞ? いいのか?」
「ああ、問題ない」
「今日は特別にカードを貸してやろう」
カードとはこのマリオカートのデータを保存できる物だ。
コインに応じて、専用カートなどが、使えるようになる。
俺は持ってはいない。
貸してくれるというなら、ありがたく使わせてもらう。
俺は気にせず、キャラを選ぶ。
「ほう、貴様はマリオか」
マリオはバランスがよく安定して走れる。
「我はヨッシー、名前が義輝であるからな」
ヨッシーは加速力が高く、初心者に使いやすい。
『3.2.1』
「ふんっ」
「なっ!?」
1が表示されたタイミングでアクセルを踏むやり方はロケットスタートをするやり方だ。
しまった! 今からでは間に合わない。
『スタート!』
ロケットスタートは出来なかったがまだ勝機はある。
「ブロックされた!?」
奴は俺のカートの前で、走って抜かせないようにしている。
「ここさえ、決めれば我の勝ちだ。この状態で追い越すことは不可能!」
「くっ……」
「そして、残念ながら、この、剣豪将軍にはレース中の操作ミスは絶対になぁい! 甘かったな」
「ふっ」
俺はスピードを弱め、わざとCPに抜かれる。
「何をしている?」
俺は最下位になったところで普通の運転に戻す。
「いったい、何を……」
俺はアイテムボックスを通過する。
よし、欲しいアイテムは手に入った。
ここから、逆転だ。
「ふん、怖気付いたか」
「いや、もう、3位まで来てるぜ」
「なにぃ!?」
そして今、2位になった。
ドリフトを駆使して、ここまで来た。
「そのドリフト……貴様、このゲームやり込んでいるなッ!」
「答える必要はない」
俺はゲームはそれなりにやる。何故かって? ぼっちだからだよ。
「もう、この勝負は決まった」
「なんだと!?」
「アイテム発動!」
「そ、それは!?」
マリオとルイージだけが使えるアイテム、ワンワンだ。
ワンワンはスピードアップと相手を吹っ飛ばす効果がある。
それを2位で使うと言うことは、圧倒的なまでの差をつけることができる。
「ぐわあああ!」
この勝負は俺の勝ちで幕を閉じた。
「いい勝負だった……持っていけ」
「ああ」
熱いバトルだった。
マリオカートであれ程までに白熱したバトルは初めてだ。
「ほら」
「ぬっ?」
俺は、手を差し延べる……。
「貴様、名前は?」
「比企谷八幡だ」
「我の名は剣豪将軍、材木座義輝である」
「とりあえず、その喋り方うざい」
「何を言っておる、八幡よ! 今日からお主は我の相棒だ!」
「いらん、うざいし」
こうして、材木座義輝には相棒が出来たのである。(自称)
少しおかしかったと思いますがすみません。
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14話
いつより、長いはずです。
今日は、12月23日、明日はクリスマスイブだ。
イブの日は総武高とのクリスマス会。
会議は何事もなく進み、明日を待つだけである。
総武高とうちの学校以外だと、近所のお年寄りや子供達が来るようである。あとは知り合いとか。
俺は小町を呼ぶ。受験生だが、たまには息抜きぐらい必要だろう。材木座? 誰それ、知らない。
一色は葉山達を呼ぶと言っていたが、正直来て欲しくない。特に、あの騒がしい奴。葉山が来るのであれば付いてくるだろう。
葉山はまた何か喋りかけて来るのだろう。あいつにはステルスヒッキーは通じないみたいだからな。
今は生徒会の仕事をしている。
仕事と言ってもそんなに大変でもなく、ほとんどプリントの整理とか予算の確認とかそのレベルだ。ほかは教師がやっているのだろう。
忙しくなるのはイベントの時だけのようだ。
体育祭、文化祭、修学旅行などの時には生徒会と風紀委員が忙しくなる。
もうそろそろ、修学旅行の準備に入らないといけない。
働くの嫌だな……。
だけど、今はほとんど暇だ。
逆に少し仕事が欲しいぐらいだ。
「会長、予算の確認の方できました」
「え、あ、うん」
会計の……確か……小泉君? 確かそんな名前の子だ。生徒会で一番働いているのはこの人だろう。
折本は文句言いながらも仕事はするが、ペースは早くない。まあ、間に合っているからいいんだけど。
折本は今日いないけど……。サボリ? 昼休みは普通にいたんだけどな。副会長がサボリとか駄目だろ。会計と変われ。
こうして、折本がいないと俺が他のメンバーといかに話していなかったかが分かる。
生徒会では、ほぼ折本としか話していない。
名前でもうろ覚えだし……。えっと、会計の小泉君と書記の……照橋さん? 庶務の白……神君? だったはずだ。白神ってかっこいいな。神ってつく名前いいよな。
ドアがノックされ、扉が開けられる。
「失礼する」
入って来たのは、風紀委員長の玉縄だ。こいつの名前は覚えている。
なかなかに濃いキャラだったからな……。それに、たまに話しかけてくるし……。
「比企谷君、来週、生徒会と風紀委で会議を開こうと思うんだけどいいかな?」
「急にか? 何かあったのか?」
「風紀が乱れていてね。生徒会ももっとアグレッシブに行くべきだよ。この会議にはプライオリティしてもらってさ」
「分かった。来週だな」
「ああ、これはオポチュニティだと思っている。頑張ってイノベーションを起こしていこう」
「そうだな、またな」
「では、失礼した」
ほんとに失礼してきたよ。意識高すぎるんだよ。
玉縄と話すときには極力早く終わらせるに限る。意識高い系の言葉は良く分からんからな。
いい奴ではあるんだが、めんどくさい。
最近はまだ、少しは分かるようになったが、まだ良く分からん。
折本なら、それある! とかで切り抜けられるんだけどな……。ぼっちに意識高い系の相手は厳しい。
「会長、そろそろ、下校時間ですが」
「もう、そんな時間か……」
「帰っていいぞ、戸締まりはやっておくから」
「ありがとうございます」
会計の子はしっかりしている。会長にはこちらの方が向いている。
会計、書記、庶務の三人が帰っていく。
戸締まりを自分から引き受けるとか俺、優し!
「そう言えば、折本来なかったな……」
ああ、見えてサボるようなやつではないんだけどな……。
メールでも……って知らないんだった。
鍵を渡しに行くついでに平塚先生にでも聞くか。
「折本が来ていない? なんだ、サボリか?」
「いや、知らないから聞きに来たんですけど……」
「折本が……」
平塚先生は少し考えている。
平塚先生も知らないか……。俺の連絡先だけは知っているはずなんだけどな……。まさか、あいつも消したのか? 心に少しくるな……。
「サボるようなやつではないと思っていたんだがね……」
「そうすっね……」
「君は連絡先を知らないのか?」
「知らないですよ」
「交換ぐらいしときたまえ」
「はあ……」
昔にしたんですけどね。お互い、消しちゃってるみたいなんですよ。消しといて良かった。今、あったら送って届かなくて、このアドレスはありませんみたいなメールが届いて、変更のメール送ってないと言う事実に全俺が悲しむ。
「仕方ない、私がかけてみよう」
「持ってるんですか?」
「まあね」
生徒の連絡先を知っているのってどうなんだろう。俺のも知られているが。たまにメールが来て無視すると怖い。
「もしもし、折本か」
「ごほ、ごほ……先生ですか?」
「なんだ、風邪か?」
「はい、急に熱が出ちゃって……ごほ、ごほ」
「大丈夫か?」
「明日は無理そうです……」
「そうか……」
折本は風邪を引いていたのか……。そう言えば、少し咳をしていたな……。
明日が無理となると、副会長なしでの参加になるのか……。 折本の仕事は俺と会計の子でなんとかするしかないか……。
「親御さんはいるのかね?」
「明後日まで帰って来なくて……」
「困ったな……」
親がいないとなれば、看病する人はいないのだろう。風邪ならば、出来ることは限られてくる。飯なんかも作るのは難しそうだ。
「私が行ってもいいのだが、まだ仕事が残っていてね……」
「気にしなくていいですよ……ごほ、ごほ」
「しかしな……」
咳を聞く限り、重症だな。平塚先生が心配するのも分かる。
平塚先生も仕事があるから行けないとなるとどうしようもないな。
一人で病院にも行けるか分からんしな……。帰る時どうしたのか不安だ。
「そうだ! 比企谷、折本の家に行ってきたまえ」
「はあ!?」
「ひ、比企谷が来るんですか!?」
「比企谷ならぴったりだろう。専業主婦を志望しているだけあって、それなりにはできるぞ」
「で、でも……」
「それでは今から向かわせよう」
「ちょ……」
「では、行ってきたまえ」
話も聞かずに切りやがった……。
俺の意思は? 風邪移されたくないんですけど……。
とはいえ、平塚先生に命令されれば断ることは出来ない……。
「風邪移されたくないなーなんて……」
「あ?」
睨まないで下さい。怖いから。美人がやると更に怖い。平塚先生がやるともっと、怖い。
口ごたえしたところでやはり無駄だった。
「心配はしているのだろう?」
「ま、まあ、してなくはないですね……」
「なら、行ってきたまえ」
「……はい」
無理矢理、折本の家に行くことになってしまった。
心配していなくはない。同じ生徒会のメンバーだし……え、えっと、お弁当の恩もあるしな……。
少し、俺は考える。
折本かおりは俺に看病してもらうのを嫌がるのではないのだろうか。大概の女子は嫌がるだろう。
でも、折本かおりは自分に対して少しは好意的に思ってくれているのではないのだろうか。最近はそう思う。思ってしまう。
でも、果たしてどうなのだろうか。折本かおりは中学時代、俺に対しても、誰に対しても、同じように、好意的に接していた。だから、勘違いをした。
今はどうなのだろうか。俺に対する態度と他に対する態度。同じなのだろうか。それとも、また、勘違いしているのだろうか。
最近は距離が近い。だから、分からなくなる。折本かおりにとって、比企谷八幡とは? 比企谷八幡にとって、折本かおりとは? 分からない。自分のことも分からないのに相手のことが分かるはずもない。
俺は最近、モヤモヤした気持ちを感じている。
何なのだろうか。こればっかりは全知全能のグーグル先生に聞いても分からないだろう。
俺は折本かおりの家に向かった。
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15話
以前、送り届けた時に家の場所は把握している。
俺の家からそう遠くない。
だから、帰ろうと思えばすぐ帰れる距離だ。看病はしやすいだろう。
とはいえは、折本の家に入るのは初めてだ。それどころが、他の人の家に入るのが初めてだ。他にいるだろうか、俺以外にこの歳まで他の人に入ったことのない奴は……。いないだろうな。
折本の家の前までは既に来ている。
あとはインターホンを押すだけだ。
そろそろ押さないと不審者と間違われても嫌だからな。
『ピンポーン』
『はい……って比企谷なんだよね……』
「悪いな、俺で」
『とりあえず入って来て……ごほ、ごほ』
言われたとおり、折本の家に入る。
鍵はかかっていなかった。事前に開けておいてくれたのだろう。
家に入った所で折本が待っていた。見た感じかなりしんどそうだ。
「かなりやばそうだな」
「うん、熱もけっこうあってね……」
「薬はあるのか?」
「うん」
薬があるなら、ひとまずはいいだろう。
折本は熱のせいか顔が赤い。というか、全体的に熱を帯びている。いつもより少し、色っぽく見える。
少し、汗もかいていて……嫌でも、意識してしまう……。
少しいつもと違って、素直と言うか……なんというか………。
「とりあえず、寝とけよ」
「うん……」
「飯食えそうか?」
「少しなら……」
「りんごとかとお粥どっちがいいんだ?」
「お粥……」
「分かった。ちゃんと寝とけよ」
「うん……」
折本はふらふらしながらも自分の部屋に戻っていく。
大丈夫か、あいつ。電話越しに聞こえてた声より今のほうがしんどそうに聞こえる。
俺は台所を借り、お粥を作り始める。
専業主婦になると言ってるんだから、料理ぐらいはできる。
小町が風邪を引いた時にはよくお粥を作ってあげていた。
最近はあまり風邪を引くことはないが、俺が引いた時には小町が作ってくれた。
初めて作ってくれた時なんて、焦げてたけど、小町が頑張って作ってくれたと言うことだけで美味しかった。
お兄ちゃん、大丈夫? って本気で心配してくるんだから、天使と見間違えたかと思った。
そんな間にお粥は出来上がった。出来はまあ、上々だ。
俺は折本の部屋にお粥を運んで行く。
折本の部屋は意外と女の子って感じだった。
こいつが熊のぬいぐるみ? まじかよ……。
女の子っぽい所あるなとは思っていたけどここまでだったのか……。
折本はベッドの上で寝ていた。
こうゆうときは起こしていいもなのだろうか。小町の時は起こしているしいいよな? 怒られたりしないよな?
っていうか、寝顔見ちゃっていいものなんだろうか?
こうやって見ると、折本はかなり可愛い。クラスの中でも1、2を争うぐらい、いや、学年でもトップ5には入るだろう。
昔とはいえ好きになっているのだ、可愛くないはずがない。
見ていると、不意に折本と目が合った。
「わっ!?」
「うおっ!?」
折本が急に声をあげるので、俺も驚いた。
やばいな、見ていたことバレたな……。
「何見てたの……?」
「えっと……」
「……」
「寝顔です……」
「変態」
睨まれたら正直に言うしかないよね。
普通に寝顔見てるとか変態か。これがギャルゲーなら選択肢間違えてるな。
「そ、それより、お粥食べないと冷めるぜ」
「食べさせて」
「はあ?」
「食べさせてって言ってるの!」
今日の折本はおかしい。熱のせいで頭がやられているのだろう。
俺からしてみれば役得でしかないのだが、正常な状態の折本からしてみたら、嫌だろう。
でも、食べてもらわないと困るな。うん、仕方ない。
「ほらよ」
「あーん……」
さすがにやばい。
これは折本じゃない。折本の形をした何かだ。折本がこんなに可愛いわけがない。
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16話
そろそろ一章が終わるかもです。次は二章であるので。
「そろそろ寝ろよ」
食い終わったので、早く寝かせたい。というか、帰りたい。
「ねぇ、比企谷」
「なんだよ、早く寝ろよ」
「私のこと嫌い?」
「はあ?」
「ねぇ」
いつになく真剣な折本の少したじろぐ。
本当にどうしたんだ? 風邪ってこんなんだっけ?
「別になんとも思ってねえよ」
「ぅ……」
折本が泣きそうな顔になる。
風邪の時って少し卑屈になるよね、心身共に安定してないというか、そのせいだよね?
そうじゃないと折本にこんなことを聞かれるはずがない。
正直な所、嫌いかと聞かれれば、違うと答える。
仮にも中学時代好きだったのだから、よっぽどのことがない限り嫌いにはならないだろう。
それに最近は同じ生徒会だからと言うこともあってよく話す。
だから、どちらと言えば、好き……なのだろう。
「やっぱり、嫌いなんだ……」
「別に嫌いとは一言も……」
「だって、比企谷に色々、嫌なことしてきたし……」
「してたか?」
「うん……」
思い付くことと言えば、生徒会長になった件ぐらいだが……。
他にあっただろうか? 笑われたぐらいか?
「生徒会長のこともそうだけど、他にも色々と……」
「なんかされたか? お前に」
「直接はあんまりだけど、一緒になって見てたりとかは……」
「それぐらいいいだろ。ぼっちにとったら日常茶飯事だ」
「でも、比企谷のメール無視ったりとか、色々と」
「え……」
やっぱり無視ってたの? あ、ごめーん、メール見てなかった! とか言ってんの嘘だったのかよ……。何人にもやられてるんだけど……。
「だから、嫌いなんでしょ?」
「別に嫌いじゃない……」
「好きか嫌いで言えば?」
今日はなんだか、ぐいぐい来るな……風邪じゃなくて、いろはす病とかか? 一色並にぐいぐい来る。
「どちらと言えば好きになる」
「そ、そう……」
自分から聞いといて、赤くなって、俯かないで下さい。余計に恥ずかしくなる。
「明日はクリスマスイブか……」
「でも、お前は無理なんだろ?」
「うん……少し楽しみだったんだけどなー」
「まあ、仕方ないだろ」
「うん……」
折本はかなり乗り気だった。
前の日まではちょー楽しみなんですけどーとか言ってたからな。
リア充達ならこうゆうイベントは好きだろうからな……。この調子じゃ、クリスマスも分からんからな。
「なあ、折本……って、寝てるのか……」
やっぱり、こう見ると折本は可愛い。本人の前で言うと茶化されそうだから言わないけど。
クリスマスイブか……なんとかならないもんかね……。
そろそろ俺も帰ろう。看病もしたし、これで平塚先生も文句はないだろう。
帰る前に、少し、今からやらないといけないことがある。
小町に電話しとかないとな……。折本の家に行っているのは連絡してある。
「あ、お兄ちゃん、かおりさんどうだった?」
「まあ、ぼちぼちだな」
「そうなんだ……」
「小町、今から少しよるところあるから、もう少しかかる」
「何するの?」
「まあ……色々とな」
「分かった……アイスよろしくね」
「金、アイス買うほど残ってるか分からないんだけど……」
「じゃ、小町待ってるからねー」
「聞いてねぇし……」
冬場にアイスなんか食わなくてもいいだろうに……。
はぁ、寒いな……。
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17話
八色の内容は一応決まりました。一章が終わったら投稿していこうかなと思います。
今日はクリスマスイブ。リア充共が街に溢れ出す。
リア充共がワイワイやっている時に俺は仕事をしている。
クリスマス会の当日準備だ。俺は一色と席などの準備をしている。
折本の風邪はやはり治らなかった。熱はましになっているらしいが来るのは無理だという。明日、明後日には治るだろう。
あと、一時間もすれば、お年寄りの人達が来る。
子供達は劇をすると小学校で決めたらしい。
今は着替えなんかをやっているところだろう。
「せんぱーい、ぼーっとしてないで働いて下さいよー」
「あ、悪ぃ」
「そろそろなんですからね」
一色もそれなりに張り切っているようだ。
生徒会長初の大きな仕事だからな。気合いも入るってもんだろ。俺? そんなもんは置いてきた。
× × ×
準備も終わり、お年寄り達も入ってきた。
他にも小町達や葉山、材木座も来たようだ。
……なんで、あいついんの? 呼んでないのに。何? ストーカー? こわーい。
それよりも、やっぱり葉山達が来た。正直会いたくない。
葉山はこちらに気付いたらしく、手を振っている。振り返した方がいいのか? ぼっちだから分からない。
「やあ、また会ったね」
「いることぐらい知ってただろ……」
「まあね、いろはとは仲良くやってるかい?」
「いや、こき使われてるだけだ」
仮にも生徒会長である俺を多少は敬ってくれませんかね? あいつも生徒会長だけど。
葉山の後ろには女三人とこの前のうざい奴がいた。
うわ、めんどくせー……。
「隼人ー、あーし、早く座りたいんだけど」
「悪い、行くよ」
「ああ」
一人称にあーしってあるんだな……。あの人のことはあーしさんと呼ぼう。
「あ、葉山先輩、こんにちは!」
「いろは、君も頑張ってるみたいだね」
「はい!」
「いろはすー、お疲れー」
「葉山先輩、他に来る人っていますかー?」
「いや、いないよ」
「了解です」
「おーい、いろはすー」
相変わらず、戸部の扱い酷いな……。
俺の扱いでもまだましだぞ。俺のも酷いけど。
そろそろ始まるな……。
一色が挨拶をすれば、そこからスタートだ。
俺はやらないといけないことがある。
一色の所まで行く。
「おい、一色」
「なんですか?」
「もう、特にすることはないよな?」
「えー、はい、先輩の仕事は終わってからの片付けぐらいです」
「そうか……悪いな、俺、帰るわ」
「へ?」
「じゃあな」
「ちょっと!? まだ始まってすらいませんよ!?」
一色が慌てて、俺を引き止める。
「片付け、悪いけど、やっといてくれ。今度なんか奢るから」
この件に関しては、多少は高い物でも許す。金がある限り……。
「なんですか!?」
「そりゃあ、めんどくさいからな。こんなリア充のイベントには参加したくない」
「で、でも……あ……」
「なんだよ、あって」
一色は色々と鋭い所があるからな。心の中読まれてるんじゃないかってぐらい。
一色は気付いたと言うことなのだろう。俺のこれからすることに。
「ま、そうゆうことにしてあげます」
「ありがとな……」
「いえいえ」
一色には感謝しないと行けないな……。このあと、来るであろう平塚先生の相手を任せないといけないのだから。俺の分まで、きっちり怒られてくれ。
「サンキュー! 愛してるぜ一色!」
「なっ!?」
俺は外へと駆け出した。厳密には、早歩きぐらいで駆け出した。
「ごめんなさい無理です。先輩には…………いますからね」
一色の呟きを聞いたものはいなかった。
「サンキュー! 愛してるぜ一色!」のところは原作の川崎や材木座に言ったのと同様の感じだと思って下さい。
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18話
あと、次回作の八色に小町を出すか出さないか迷ってます。いない方が書きやすいので。恐らくは出しません。まだ決まってはいませんが……。もし出なかったら、小町好きの人はすみません。
俺はある場所のある家のインターホンを鳴らす。
中から出てきたのは、そう、折本だ。
「な、なんで、比企谷が? クリスマス会は?」
「いや、まあ……リア充共のイベントなんかに参加したくなかっただけだ」
「別に気を使わなくなって……」
「何言ってんだ、俺はただ参加したくなかっただけだ。それと、暇だったから看病しに来ただけだ」
けして、参加したくなかった訳ではない。
俺だって、準備はしたのだ。準備だけして参加しないのは割に合わない。
だから、出来ることなら参加したかった。
でも、折本も頑張っていたのだ。それなのに、俺だけ参加するのはフェアじゃない。
「でもさ……」
「とりあえず入れてくれ。寒い」
「うん……」
もうこうなってしまえば、俺を会場に戻すことは不可能だ。
「比企谷、どうゆうつもりなの?」
「何が?」
「なんで、そんなに優しくしてくれるの?」
折本は俺の目を真っ直ぐ捉えて聞いてきた。
なんで……か……。俺はなんでこんなお節介を焼いているのだろうか。考えられる理由はいくつかある。
一つ、折本に特別な感情を抱いているから。
これはある。これが愛情なのか友情なのか何なのかは分からない。でも、特別な感情は抱いている。
二つ、可哀想だったから。同情から。
これもある。あんなに楽しみにしていて、風邪で参加できないなんて可哀想すぎる。どれくらいかと言うと、ドラクエで冒険の書が消えてしまったぐらいだ。なんだよ、あれ。クリア直前だったのに……。あれからドラクエはしていない。
他にもあるだろうが主にはそれだろう。
「さあな……」
俺は答えなかった。
折本は不服だったようだが、追求してくることはなかった。
「私ね、比企谷が来てくれた時嬉しかったよ」
嬉しかった。折本はそう言った。
「私、楽しみにしてたからさ、ちょっと落ち込んでたんだ……。だから、来てくれて嬉しかった」
「そりゃあ、良かった」
喜んでくれたなら、良かった。俺みたいな奴でも喜んでもらえると嬉しい。
「……もう、風邪は大丈夫なのか?」
「だいぶましにはなったよ」
「なら寝とけよ」
「もう夜だしね……」
「飯は食ったのか?」
「うん」
「なら寝とけ」
俺は折本を寝かしてからやることがある。
クリスマスと言えば、これだろう。
× × ×
折本は眠りについた。
これで、計画が始められるというものだ。
小さい頃、サンタさんにプレゼントをもらった経験があるだろうか? 俺は一応ある。すぐに父親にネタばらしされたものだがな。
良く考えたらおかしいのにな。煙突から入ってくるはずのサンタさんが煙突ないのに入ってくるとか、普通に不法侵入じゃあね? とか、世界中の子供達に配っている割に一晩で配り終わるとかどんだけ速いんだよとか、色々思う。
今日の俺はサンタクロースだ。八幡サンタだ。
さすがに、折本の頭の中がいくらお花畑だったとしてもサンタは信じていないだろう。
それに、この歳では普通貰えない。
だが、今日は特別だ。聖なる夜にぐらいこんなことがあってもいいじゃないか。
俺は寝ている折本の隣に熊の大きいぬいぐるみを置く。
折本はこれでいて、意外と少女趣味だ。部屋にもぬいぐるみなどはけっこうある。喜んでくれるといいが……。
寝ている折本に俺はそっと呟く。
「メリークリスマス」
八幡サンタはソリ(自転車)に乗って、静かな夜に消えていった。
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19話
今日はクリスマス。非リア充がリア充の爆発を願う日だ。
かくゆう、俺もそのうちの一人だ。葉山なんかは特に爆発しろ。どうせ、あーしさんとデートだろ? 爆発しろ。
今はもうすっかり朝なのだが、超眠くて仕方がない。
3時間しか寝てないからちょー辛いわー。
と言うのも、サンタさんとして活躍したからである。
折本の家を去った後は、小町にもプレゼントを渡そうとしたのだが、まだ寝ていなかったため寝るまで待ってた。こんなに夜遅くまで勉強だなんて、お兄ちゃん感心しちゃう。
あと、そう言えば、折本の家が若干ハイテクだった。
あの後、鍵の事を思い出し引き返したのだが、鍵はしまっていた。なんだっけ? オートロックとか言うやつだ。科学の進歩は目覚しいな。
「あ?」
携帯の音が鳴った。
誰だ? こんな時間に……メールみたいだが……。
内容はこうだった。
『我はこれから、秋葉原に行って、にゃんにゃんしてもらいに行くのだが』
「……」
相手は材木座だった。
何の報告だよ。いちいち、メイド喫茶に行く報告とかしないでいいから。
俺は返信をすることなく、そのメールを削除した。
「何だよ、またかよ……」
再び、携帯の音が鳴った。
やっべ、一日に貰うメールの量の記録更新じゃね? スパムメールは除く。
相手は再び、材木座かと思ったが、相手は一色だった。
うわー……見たくねぇ……。見たくはないのだが、見ないと一色が怖い。
『先輩、今日暇ですかー? 暇ですよね。遊びに行きませんかー? 折本先輩も風邪みたいだし、二人で』
「暇なこと確定してんのかよ……暇だけど」
ぼっちに予定などあるはずがないだろう。予定があったら、ぼっちやってないわ。
でも、意外だ。誘って来るということは一色に予定がないということになる。実はぼっちだったりして……。あ、でも、葉山達がいるか……。同年代で友達がいない可能性もあるが。女子は完璧すぎると同性から嫌われるって聞くからな……。あいつの場合はあざとくて、同性から嫌われている可能性もある。
あとは、誰かの好きな人に好かれたとかだろうな。一色とはあざとくなければ、気があっていただろうに……。甘党とかな。残念だ。
さすがに、材木座と違い、一色には返信をしなくてはならないだろう。
あとが、めんどくさいというのもあるが、それ以上に女子のメールを無視するのはいけない。だから、女子も男子のメール無視しないで下さい。
俺は別にいいと送る。
すると、すぐに返信が返ってきた。
何この早さ、送って数秒できたんだけど……。しかも、それなりの量がある。既に送る内容が決まってたんじゃないかって言うぐらいに。
『やけに素直ですね……。なんなんですか、デレたんですか? 先輩のデレとかきもいんでやめてもらっていいですか。それと、先輩の家の前にいるんで出てきてもらっていいですか』
「はあ!?」
これってあれ? 今君の家の前にいるよって言うホラー? 一色はお化けだったの? なら、出ない方がいいな。
だが、そうゆう、訳にもいかず、渋々ドアを開けた。
「メリークリスマスです。先輩!」
「メリークリスマス……」
ほんとに居やがったよ、こいつ。
一色はニコニコしてながら、俺を見つめる。
めんどくさいな……。
「何? お前、暇なの?」
「失礼ですね。何人にも誘われわしましたよ。断りましたけど」
「なんで?」
「だって、めんどくさ……一人だけ遊ぶっていうのも不公平じゃないですかー?」
いちいち言い直さなくていいよ……腹黒って言うのはこうゆう奴のことを言うんだろうな。
それに、一人だけ遊ぶのが不公平なら俺でも駄目じゃね? ラッキー。
「不公平が良くないなら、俺も駄目だろう」
「あえて、誘ってない先輩にしといたら、丸く収まるかなーって」
「知らん」
誘ってもないんだから、誘ってる奴と遊べよ……。
俺、小町と家でいる方がいいな。勉強してるから構って貰えないだろうけど。
「先輩……だめ……ですか?」
「だ、駄目じゃないけど……」
「じゃあ、決まりですね!」
しまった! 一色のあざとさに騙されてしまった。
だって、目をうるうるしながら、しかも、上目遣いで甘えた声で言ってくるんだもん。男ならしょうがない。
それにしても、クリスマスに出かけるなんて久しぶりだな。
いつもはゲームをしている。それで、NPCリア充を爆発さしてる。ロケランとかで。
一色のせいで出来なくなるな……。まあ、数少ない女子との遊びだと思えばいいか。
材木座あたりにいったらどうなるんだろうか? 今からにゃんにゃんらしいが。
俺は今から女子と遊ぶと送ってみる。
すると、一色と同じぐらいの早さで返ってきた。
なんなのこいつら……早すぎだろ……。
『悩みがあるのか? 我でよければ相談にのるが……』
心配されちゃったよ……。こいつに心配されるとかもう終わりだな。
当然このメールは返さない。めんどくさいから。
「先輩、どうしたんですか?」
「なんでもない」
「はあ……そろそろ行きましょうか」
「ああ」
一色と遊びに出かけるのだった。
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20話
量的にはいつもの2話分ぐらいの文字数だと思います。
あと、お気に入り1000件いってました。ありがとうございます。
お気に入りとか評価の投票とか感想とかどんどんやってくれると嬉しいです。
近くにショッピングに来ている。一色と……。
「奢ってくれるの忘れてないですよね?」
「大丈夫だ。ぼっちは嘘をつかない」
ぼっちは嘘をつかない。取り引きとかするならぼっちがオススメ。
「で、何買えばいいんだ?」
「そうですね……あとで決めます」
「まあ、常識的な範囲内にしてくれ」
さすがに車とか家とかダイヤとか言われても無理だ。大金持ちの息子レベルじゃないと。
俺が出せても一万が限界だ。そうじゃないとMAXコーヒーを飲めなくなる。
「大丈夫ですよー」
「ほんとかよ……」
一色は遠慮がないからな……。いつもより余計な出費もあったし……。ぬいぐるみって高いな。
正直言って、折本に買ったやつの方が小町に買ったやつより高かったからな……。愛情は金じゃないから大丈夫……。小町、来年はもっと良いの買ってあげるよ……。
でも、このままだと、一番高いのが一色になりそうだな……。今月の出費やべぇ……。
「あ、先輩、これ可愛くないですかー?」
「ああ、そうだな」
俺はとりあえず、適当に返事をする。
「じゃあ、買ってきますねー」
「……いや、早くね!?」
そんなに早く済むもんじゃないだろ。女子の買い物って。小町とか長いぞ?
「良いって言ってくれたじゃないですか?」
「いや、言ったけどさ……試着とかするもんじゃねえの?」
「そうですね……してきますね」
一色は試着室に入っていった。
勢いで言ったがやばいことが二つある。
一つ、一色の服の感想を言わないといけないこと。
二つ、一色が試着室に入ったことにより、俺は、今、一人だ。つまり……店内にいる女性客から白い目で見られると言うことだ。
早く出てきてくれ一色! 俺の心はもう持たない!
まだか? まだなのか? 店員が俺の方を見てひそひそ話始めてきたじゃないか……。通報される寸前だ……。もうだめだ……おしまいだぁ……。
「お待たせしました。どうですか?」
「……お、おお……」
「なんなんですか? その顔」
さながら、一色は救世主の様に見えた。まあ、一色のせいでもあるけど……。
「いや、なんでもない」
「それよりも、どうですか?」
まあ、可愛いと思う。自分で可愛いと言うだけのことはある。
今、試着しているスカートと上着も一色らしい。頭悪そうな、キャピキャピしたやつ。
それでも、似合っている。というか……。
「服ってのは、可愛い奴が着れば、よっぽど変な物着ない限り、様になるからな」
「回りくどいですよー……結局どうゆうことですか?」
「……いいんじゃあねえの?」
「……は、初めからそう言えばいいんですよ。捻デレですか?」
「捻デレってなんだよ。そもそも、デレてねぇ」
「ふふっ、買ってきますね」
俺が捻くれてるのはデフォルトだ。むしろ、捻くれてないと俺じゃない。
だって、そのまま言うのは恥ずいじゃん? なら、捻くれるしか選択肢ないな。
そう言えば、あの服は買わなくて良かったんだろうか? 忘れていてくれるのなら嬉しいが違うだろうな……。もっと、高い物をねだられるんだろうか……。あの服もそれなりにはするだろうが……。
それにしても、嬉しそうに服を買いに行ったな……。そんなに気に入ったんだろうか? それとも、俺が褒めたから? いやいや、それはないな。中学の頃の俺じゃない。経験を積んでいるのだ。ついでに人生も……。だから、勘違いはしない。
一色は基本的、笑顔だから、きっとそれだろう。断じて褒められたからではない。そう、俺の心に言い聞かせた。
「次、行きましょうよ、次」
「あ、ああ」
一色の笑顔に騙されながらも、ショッピングを続ける。一色といれば、他の女に勘違いする可能性は下がりそうだな……。ぼっちは常に進化し続けるのだ。
「結局、何奢ればいいんだよ……」
「あはは……どうしましょうか?」
「いや、知らねえよ」
あの後も、買っても自分で買うだけで俺はまだ買っていない。早く帰りたいんだけど、俺。
「もう帰ってもいい?」
「だ、駄目ですよ! まだ買ってないじゃないですかー?」
「だって、お前、全然決めねぇじゃん」
「え、でもぉ……」
でもぉ……じゃないんだよ。可愛いじゃないか。でも、あざとい。
「うーん……雑貨屋さんとか行きましょうか」
雑貨屋か……まあ、そこなら高くもないだろうし、いろいろあるしな。まあ、いいだろう。
って言うか、そろそろ昼だな……。そこまで腹も減ってないが、一色はどうだろうか。聞いておいたほうがいいだろう。
「まあ、後でな。昼はどうする?」
「そうですね、軽く食べましょうか」
俺達は近くのカフェに入る。
俺の視線は一点に集中する。
「……この店やめないか?」
「なでですかー?」
ほら、あそこに変なのがいるでしょ? きっと、名前は材なんちゃら。
なんで、いるんだよ……にゃんにゃんどうした? かなりの高確率でめんどくさいことになる。
「ふむ……」
あれー? 目合ってる? 合ってないよね? 合ってても喋りかけてこないよね? そんなのはポケモントレーナーだけで充分だ。
材木座がこちらに向かって歩いてくる。うわー……めんどくせー。
「待っておったぞ、八幡よ」
「なんですかこの人……」
一色がひいてるぞ。心が傷つくことになるんだからあっちいけ。しっしっ。
って言うか、待ってたって……何? ストーカー通報した方がいいですね。
「八幡が女子と遊ぶなどと妄言を吐くから心配して来てみれば……まさか、本当だとは……」
「……」
一色がこちらを見てくる。
なんなんですか、このキモオタ。キモイんでどっかにやって下さいと目で訴えかけているのが分かる。
「本当だと分かったろ……だから、どっかいけ」
「釣れないことを言うのではない……我も一緒に……ひっ!」
一色が材木座のこと超睨んでる。いろはす怖い。超怖い。
さすがの一色も我慢出来なかったか……。いいぞ、もっとやれ。
「わ、我は急用を思い出したのでな。では、また会おう」
「もう来ないで下さいねー」
「普通に酷いな」
「えー? 何がですかー?」
一色が笑顔で威圧をかけてくる。
あ、なかったことにしろってことですかね? ハチマンワスレル。
「早く席についたらどうですか?」
「はい……」
言われるがままに席につく。
女の子って怖い。
「それにしても、先輩、今日のこと自慢してたんですかー?」
「は?」
「だってあの、キモオ……先輩のお友達の人知ってたじゃないですか?」
「友達じゃないし、自慢もしてねぇよ。ちょっと教えただけだ」
「そんなに、楽しみだったんですかー?」
「全然聞いてねぇし……」
ニヤニヤしながら、一色がちょんちょんとつついてくる。
痛くないけど、俺のHPが急激に減っていってるから。
「仕方ないのでまたデートしてあげてもいいですよ?」
「は?」
何を言っているんだ、こいつは……。そもそもデートだったのか?
もしかするとこれは、録音とかして後でからかって遊ぶつもりなのかもしれない。
比企谷八幡にはいかなる精神攻撃も効かない。残念だったな、一色。
「……嫌ならいいんですけどね」
一色が少し悲しそうな顔をした。
え……? え……? え……? 嘘じゃないの?
「い、嫌じゃないけど…… 」
「ほんとですか! し、仕方ないですね、またデートしてあげますよ」
「お、おう……」
これはこれでめんどくさいことになったな……。まあ、いいんだけどさ……。
「デートって彼氏彼女でやるもんじゃないの?」
「な、なんなんですか。一回のデートでもう彼氏面ですか。ごめんなさい、一回じゃ無理です」
「何回振られればいいんだよ、俺は」
そろそろ振られた回数、年齢超えるぞ。一回ぐらい成功しろよ、俺。
「なんか早く頼めよ……」
「じゃあ────」
「美味しかったですね」
「そうだな」
サイゼには及ばないまでもそこそこ美味しかった。ほんと、サイゼには及ばないまでも。
「じゃあ、行きましょうか」
「帰ったらだめですかね?」
「はい、駄目です」
「ですよねー」
この店の飯代奢ったじゃん、だから、いいだろ。
一色がOKするはずもないが……。
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21話
キャラを忘れているかも知れませんがすみません。
もしかしたら、こっちより先に新作を更新するかもしれません。
俺達は雑貨屋に着いたのだが……まあ、居心地は良くない。
雑貨屋と言っても、客が女子ばっかりだ。
「せんぱーい、これとか良くないですかー?」
「いいんじゃねぇの?」
「でもー、やっぱりこっちの方がいいと思うですよねー」
「じゃあ、そっちで」
「でもー、やっぱり……」
早く決めろよ。どっちなの? 本当はどっちがいいの? 決めてから喋ろう? これは聞いといて自分の中では決まってるやつなんでしょ? 自分が欲しいの決めてくれたらいいから。
周りの視線が痛い。お腹痛い。
「あ……」
「どうした?」
「いや、これなんかいいかなーなんて……」
一色が見ていたのは二つセットのマグカップだった。
二つ重ねるとハートになるとかって言う、カップル用のやつだ。
「これ一人で使うのか? 悲しくなるぞ?」
「違いますよ!」
「じゃあ、誰かにやるのか?」
「そ、それは……」
一色はバツの悪そうな顔をしている。
あの葉山とか言うやつにやるのか? そこまで執着しているようには見えなかったが……。
「誰もあげる人いませんけど……このカップは可愛いかなーって……」
「一人で使うのか……」
「いや、それは悲しいんで」
「だよな」
一色がペアのマグカップを一人で使っているとかまじウケるー。
と言うか、本気で悲しいぞ?
「だから、先輩が使ってくれませんか?」
「は? 俺?」
「そうです。一人で使うのも悲しいですし、捨てるのも勿体無いですし……」
「いや、でもな……これ、カップルとかが使うやつだぞ?」
「大丈夫です! 我慢出来ます!」
「我慢しなくちゃいけないのかよ……」
俺とペアってそんなに嫌なの? 八幡泣いちゃうよ?
でも、自分の買ったやつを捨てられるのはな……まあ、最悪、小町に使わせればいいか。
「分かったよ……一個貰えばいいんだな?」
「はい! 初めからそうしていればいいんですよ」
「じゃあ、金渡すから買って来てくれ」
「……はい?」
「いや、金渡すから……」
「一緒に買いに行くんじゃないんですか?」
「は? だって恥ずいし、勘違いされたら一色も嫌だろ?」
「別に大丈夫なんで買いに行きましょうよ」
「二人で行く必要……」
「行きましょうよ?」
「はい」
笑顔で睨まれた。笑顔で睨むって何だよ……。
いろはす怖い。超怖い。
もう嫌だ。あの雑貨屋には行けない。行く気ないけど。
二人で買いに行ったら、店員さん超ニコニコしてたよ。仲良いカップルですね、みたいな目で見てたもん。
二人で買いに行かなければ良かった……。
どのみち強制的に行かされてただろうけど。
「はい、先輩の分ですよー」
「……おう」
一色は買ってもらってから機嫌がいい。現金な奴だな。
「この後どうしましょうか?」
「この後って帰るんじゃねぇの?」
「まだですよー。なんで真っ先に帰ろうと思うんですか」
「そろそろ日も暮れるぞ?」
「まだいいじゃあないですかー」
「そろそろ小町も心配するだろうし、俺は帰るぞ?」
「でも……」
今日の一色はなんかおかしいな。変な物でも食ったのか?
今は六時……外はもう暗い。一色も危ないだろう。
「先輩……」
「うっ……」
一色が少し涙ぐんでいる。
そんな目で見てくるな! 心折れちゃう!
その時、心は折れた。
「今日はクリスマスだしな……ツリーでも見に行くか?」
「はい!」
俺達は外にあるクリスマスツリーの所に向かった。
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22話
高校生活が思ったより忙しくて……。
これからは、気分転換とかに書くことになるかも。
あと、もしかしたら、次の更新は、違う作品かも知れません。
覚えていないかも知れませんが、前にとったアンケートのいろはすメインのやつです。
どっちを更新しているかは、分かりませんが、出来れば見てください。
「綺麗ですね……」
「そうだな」
クリスマスツリーは思ったよりでかくて凄かった。
リア充ならここで、お前の方が綺麗だよとか言うんだろうけど、俺は思っても言わない。
「折本も風邪じゃなければな……」
「む……」
「何だよ?」
一色は、頬膨らませて、こちらを睨む。
俺、何かした? 俺のせいで、クリスマスツリーの魅力が失われてるとか?
でも、そういう訳では、ないようだ。
「他の女の人の名前出すのは、ダメですよ?」
「別いいだろ? 彼氏彼女の関係じゃあるまいし……」
「……まあ、先輩ですもんね……」
「……ほっとけ」
俺は、彼女が出来たことがない身だ。
そんなことを期待されても困る。
クリスマスツリーは、キラキラと輝いていて、とても綺麗だ。
柄にもなく、儚いとかそんな言葉が浮かんでくる。
「もう満足したか?」
「はい……」
満足してもらえたなら良かった。
もう日も沈んでいる。早く帰らないと。
「やあ、いろはに比企谷君」
「あ? 葉山か……」
「こんばんは、葉山先輩」
「こんばんは」
後ろから声をかけてきたのは葉山だった。
クリスマスに一人とは……イケメンらしからぬ行動だな。
お前は彼女とデートでもしていろ。そして、爆発しろ。
「君はいろはを選んだのかな?」
「選ぶ? 一体何をだ? 意味が分からん」
「あまり中途半端なことはしない方がいい」
「は?」
葉山は俺の肩に手を置くと目線を違う方へ向けた。
その視線の方には人混みの中で一人突っ立っている女を見つけた。
それは折本だった。
「折……本……?」
「君は一体どちらを選ぶんだい?」
「……」
「それとも、誰も選ばないのか……」
「……」
流石に俺でも分かった。
選ぶとはどちらと付き合うかと言うことだ。
でも、それは違う。初めから選択肢は一つだ。
選ぶ、選ばない以前に俺にはその権利がない。
一色や折本が俺を好きな訳がないし、仮に好きだったとしても、付き合うべきではない。
俺と付き合うことにはデメリットにしかならない。
二人共、そこまで考えが回っていないそれだけだ。
他の人に嫌われたりするリスクを犯してまで俺と付き合うメリットはないだから、選択肢は一つしかない。
「じゃあな、葉山」
「比企谷、君は……」
「お前にとやかく言われる筋合いはねぇよ。じゃあな」
「……先輩? 帰るんですか?」
「ああ、お前ももう帰るなら送って行く」
「……大丈夫です」
「そうか、じゃあな」
「はい」
今日はクリスマスだって言うのに……最悪だ。
俺のところにはサンタさんじゃなくてサタンさんが来たのかもな。
――――最悪のクリスマスだ。
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23話
なろうとかでも書きたいと思ってるので交互になるかもです。
新人賞にちょっと書いてたりする。
これは、趣味って感じで書いてます。
クリスマスの次の日だって言うのに、学校に行かなくてはならない。
冬休みがまだと言うわけでもなく、ただ単に生徒会のお仕事と言うわけだ。
とにかく、休みたい。
冬休みは、休むためにあって、仕事をするためではない。
俺には、休むと言う重要な仕事があるのだ。
休むためには、休むと言う仕事をしなくては、ならなくて、休みには、仕事はしてはいけなくて……。
端的にいうと、学校に行きたくない、だ。
ただでさえ、仕事がめんどうなのに、折本と会うのが、なんだが、気まずい。
昨日、葉山に言われたことが少し引っかかる。
『君はどちらを選ぶんだい? それとも、どっちも選ばないのか……』
選ぶとか選ばないとか、わけがわからない。
選ぶとは、一体何を? 選ばないとは、一体何を?
……分かってる。
本当は、分かっている。でも、分かりたくない。
俺は、誰からも好まれず、嫌われているのが当たり前なんだ。
一色だって、生徒会長としての務めを果たしているだけで、折本だって、同じ生徒会だからだ。
特別な感情なんて、一つもない。
仮に抱いたとしても、それは間違いだ。
見せかけで、虚像で、偽物だ。
全ての感情は、偽物だ。
本物なんて、ありはしない。
何故、そんな感情を抱くのか? それは、簡単な話だ。
だって、人間だもの。
みつを君が言っている通り、人間は間違いを起こす。
俺だって、人間だし、折本達だって、人間だ。
だから、こうして、間違いを起こす。
それが分かっている俺だからこそ、踏みとどまらなくてはいけない。
人の幸せは、平等にあるべきだ。
それを俺が奪ってはいけない。
「お兄ちゃん! 何ぼうっとしてるの? 遅れるよ?」
「あ、ああ」
小町の怒号でふと現実に戻された。
小町は、俺の顔を除きこんだ。
「大丈夫?」
「ああ……行ってくるよ」
小町は、大丈夫と心配してきたが、大丈夫と言って、そのまま、学校に向かった。
小町を心配させるわけにもいかないし、行くという選択肢しかなかった。
選択肢、一つとかどんなクソゲーと思ったが、今までだって選択肢は一つだった気がする。
神様は、きっと、俺の設定をミスったんだ。
選択肢の二つや三つぐらい用意して欲しいものだ。
非常に行きたくなかった学校も、行ってみると、案外、早く着く。
自転車を駐輪場に置き、自動販売機へと向かう。
もちろん、買うのは、MAXコーヒだ。
糖分は、疲れた頭を回復させてくれること間違いなし。
なんなら、ベホイミ以上の回復力だ。
ベホマには、勝てないけどな。
「ん……?」
「あ、比企谷おはよー」
「げっ……」
やはり、神様は、俺の設定をミスっている。
俺のラックどうにかなりませんかね? 俺を二体合成すると上がるとか……。
……むしろ、下がりそうだな。
そんな、俺の心中を知らない折本は、笑顔で駆け寄ってくる。
「比企谷、早いねー」
「そ、そうか? 時間通りだと思ったんだが……」
「三十分ぐらい早いよ?」
「時計ずれてやがる……」
腕時計を確認すると、集合時間になっていたが、本当は、三十分ぐらい早いらしい。
くそ、神様の馬鹿!
ラック上げるシステム、早く実装してくれよ。
そんなものがあったら、いくらでも買うね。
でも、そんなものはないため、こうして、折本と出会ってしまった。
「これ、買っといたよ」
投げるように渡されたのは、MAXコーヒだった。
「お、おう……ありがとな」
「……どうしたの?」
「いや、何でもねぇよ」
「そう?」
「ああ、だから、行くぞ」
何でもない。本当に何でもない。
何かがあるはずがない。
そう、心の中で呟きながら、生徒会室に向かった。
****
生徒会には、生徒会のメンバーはすでに揃っていた。
何が早いだ。他の奴らの方がはやいじゃねぇか。
あとは、風紀委員のメンバーだけか……。
今日は、風紀委員と会議をすることになっている。
来週ということだったが、少し早めることになった。
平塚先生の都合らしい。
わ、横暴……。
「お、集まってるな、感心感心」
平塚先生が生徒会室に入って来た。
「風紀委員のメンバーを呼んでこよう。君達は、待っていたまえ」
急に来て、急に出ていったなあの人……。
まあ、また来るわけだが……。
えっと、会議内容は、風紀が乱れてるとかなんとかだったな。
スカートが短すぎるとか、不順異性交遊とかだろう。
まあ、適当に玉縄の話に合わしておけばいいだろう。
変な方向に行った場合は、止めるが……。
「比企谷君、おはよう」
「ああ、玉縄か」
「今日は、フレキシブルにセンセーションをあおりたてるような有意義な会議をしよう」
「おう、任せとけ」
玉縄は、嬉しそうに笑った。
半分以上何言ってるのか分からなかったけど、大丈夫だ。
会議中では、あれが見られることを祈ろう。
ちょっとだけ、面白いからな。
玉縄の後ろには、意識高い系の奴らが何人もいた。
折本の空気を読まない感じを大事にすれば、うまく会議は回る。
「では、会議を始めようか」
平塚先生がそう言うと、皆席に着いた。
話は、玉縄から切り出した。
「前にも言った話だけど、校内の風紀が乱れてる」
「それある!」
玉縄は、うんうんと頷いた。
やっぱ、駄目だわ。折本使い物にならない。
「問題は色々とあるけど、まずは衣服の乱れから直していこう」
まあ、予想通りだな。
俺達で出来ることと言っても限られているし、何かキャンペーン活動をすることぐらいだろう。
制服見直し週間とか必要あんの? みたいなやつをやればいいだけだ。
でも、この会議は普通には進まない。
「まず、皆の意見を聞こうか」
風紀委員の一人が手を挙げた。
あ、やべ、出遅れた。
「いっそのこと、私服にするって言うのはどうかな?」
『……』
場が静まった。
さすがに、皆分かってくれたか……。
でも、イレギュラーである、玉縄と折本が声を上げた。
「それある!」
「いいね、それ。アグレッシブっていうか、斬新な発想だよ」
「確かに……」
「いいかもしれない」
風紀委員のメンバーと折本がこの意見を肯定し始めた。
ダメかー……。
平塚先生は、立ちながら寝ているし……ダメ教師と言わざるを得なかった。
仕方ない……ここは、俺が、
「でも、校則を変えるには時間が必要だ。先にそれ以外で考えた方がいいんじゃないか?」
「それある!」
「仕方ない……その方が現実的ではあるね」
「それと、並行して、進めていくのはどうだろう?」
「それある!」
折本に助けられ、一応、まともな方向に進んだ。
そのまま、特に問題なく、会議は終わった。
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24話
エタっていてすみません。次はいつになるかも怪しいですがすみません。でも、次は比較的早くできるとは思ってます。
今年の生徒会の仕事も終わり、後は学校にも行かずだらだらとゲームなりアニメなりを見る毎日。といっても三日程度なのだが。
最近のイチオシはFPSだ。クリアリングとか言うのがまだいまいち出来ていない俺はカモられっぱなしだ。
睡眠時間を削りながらゲーム勤しんでいると小町に「引きこもりみたいだよ……」と言われてしまった。お兄ちゃん将来きっとこんなのだから養ってね。という言葉を察したのか、誰かいい人とくっつけとそんな目をしていた。
今日は流石に引きこもっていると小町になんて言われるか分からない。酷いこと言われたら本格的に引きこもっちゃう。
適当に本屋でもぶらつくか。最近はラノベの買う量が増えてきた。申し訳ないと思いながらも金がないので立ち読みでもして時間を潰そう。
新刊は何があったっけ? 〇さえいればいいが出てたな。
そのまま家を出ようとしたのだが……運悪く電話が鳴った。着信相手は……
「折本……」
いや、ほんと運悪くね? ラブコメならきっとこのまま女の子とデートする流れかも知れないが俺はラブコメの主人公なんかじゃないよ。全然。
そうだ。無視をしよう。今度あった時に文句言われたら「ごっめーん、寝ちゃってた」って言ってやろう。
無事、着信音が止まった。よし、出かけよう。財布に数千円入れ、俺はそのままドアを開けた。
「あ、比企谷」
「っ……」
「電話したはずなんだけどなー……」
まるで狙ってやったかのように目の前に折本がいた。いや、本当ドアを開けたら目の前に。
えっと、どうしたらいいんだっけ?
「ごっめーん、寝ちゃってた」
「キモッ……」
うわ、この子ストレートすぎない? 俺の美声(裏声)がそんなに気持ち悪かった? きっと目のせいですね。
折本はパーカーの上にコートを羽織り、短パンという身軽な服装だった。
女子って冬によく短パンとかミニスカとか履くよね。足凍らない? 冷え性の方多いでしょ?
ってかなんで折本がここに? 何の用なんだ?
「比企谷さ、一月一日って空いてる?」
「いや、空いてない」
「で、先生が車で送っていってくれるらしいんだけど」
「話聞いてる?」
「これ、先生から渡されたやつね」
「は?」
読んで見ると、それはそれは事細かに俺のことが書いてあった。
比企谷は休日には電話には必ず出ないため直接伝えること。
用事があるということは暇ということなので無視をして進めること。
それでも、渋るようなら妹さんを呼べば解決する。
うわぁ……俺のことよく見てるなー(棒)。愛されてるー(棒)。
とはいえ、八方塞がりだ。平塚先生に何を言っても鉄拳制裁で解決してしまう。教師に力を与えた結果がこれだよ!
折本は少しもじもじとしながらこちらを見ている。
「なんだ?」
「来る……んだよね?」
「まあ……平塚先生と小町に組まれたら逃げ場ないしな」
もうほんと、一人だけでも太刀打ちできないのに。正に鬼に金棒。いや、鬼に鬼のレベルだ。悪魔と小悪魔とかでもいいかもな。
「比企谷って……着物ってどう思う?」
「着物? 和風でいいとは思うが」
「何色?」
「着物で色って言われてもな……その人に合ってればいいんじゃないか?」
「あたしのイメージカラーってある?」
「は?」
折本のイメージカラーと言われてもな。俺のイメージカラーなら黒とか灰色とか即答だろうが。
茶色……いや、なんかそれは女の子からしたら嫌だろう。赤とか青は違うよな。かといって、暗い色でもないし。
俺は悩んだ末、
「金色だな」
「金色!? あたしってそんなに光ってるの!?」
「あー……、ああ、輝いてる。眩しくて見えないぐらいだ」
「なんかそういうの言われると恥ずかしいっていうか……比企谷ってそういうとこ気が利かないよねー」
「ほっとけ」
彼女はおろか、女友達もいない俺には女心なんて分かりやしない。選択肢が出てきたらかなりの高確率で正解する自信はあるがな。
「でも、金色の着物ってあるの?」
「……知らねぇ」
ものすごく目がチカチカしそうですね、はい。
「金色とかウケる?」
「ウケても嘲笑う方だぞ。多分……」
それ似合ってるじゃんっていう受け方じゃなくて変な人がいるっていうウケるだ。折本のよく使う方のウケるだな。
にしても、こいつ着物着てくるつもりなのか? ってことはやっぱり初詣なのか。今年は小町と適当に行こうかと思ってたんだけどな。この様子じゃ小町も付いてきそうだが。
「まあ……比企谷に聞いたのが間違いだよね……」
「本人目の前に言うなよ……」
並の人間が次の日顔を合わせにくいレベル。俺はどんな人間とでも年がら年中顔を合わせにくいので関係ない。自分でも悲しくなってくる。
「でさ、比企谷暇してる?」
「いや忙しい」
主にゲームとかゲームとか。でも、折本は平塚先生からの比企谷攻略法があるので、
「じゃ、適当に遊びに行こうよ」
「は?」
「私暇なんだよねー」
「仲町さん? とかと遊べばいいだろ」
「昨日遊んだし、仲町さん塾にも行ってるしねー」
「で、俺?」
「そうそう」
実はこいつ仲町さんぐらいしか友達いないじゃないかと思ってしまうぐらい仲町さんしか話に出てこないな。上辺だけ仲のいい奴が多いんだろうな。俺は上辺だけもいないが。
このまま帰すと小町がうるさい。遊んだら遊んだで
「じゃ、行こっか」
「……おう」
折本と二人で出かけるのは案外これが初めてだったりするのか? 一色がいたり、家に行っただけだったり、来られただけだったりしたからな。
そこそこの付き合いかとも思ったがまだ一年も経ってないんだな。
最近、急に葉山のあの言葉が浮かぶ。
折本と一色。この二人と俺の関係性は恋人でもなければ友達でもない。生徒会の付き合いそれだけだ。それ以上にもそれ以下にもならない。
葉山のいうことは間違っている。傍から見た関係と実際の関係は違う。
実際に葉山の言う通りでも関係ない。このままの関係が続きそしていつか終わるだけだ。
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