調律師が異世界旅行をさせられるようです (隠された神話の白狼)
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プロローグ

今回は完全にプロローグのみです。話は進みません……


                  「災いはいつも唐突だ。」

 

 

物語の書き手にとってそれは起こるべくして起こった事だが、読者や登場人物たちにとっては、当然舞い降りた事なのだから。      

 

 

                                  by隠されし神話の白狼

 

 

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これはどうも観客者諸君、しがない私めの劇をご覧に頂くために時間をいただき恐悦至極にございます。

 

 

今宵の劇は、一人の能力者が神様の暇つぶしのために異世界や世界線を渡り歩くと言うものでございます。

 

 

ありふれた転生ものに近いものがございますが、主人公の性格上その力を行使する事は少ないと思われます。

 

 

なぜなら、能力者にとって能力を行使すると言う場面は面白くない事だからです。

 

 

なら、能力者にとって面白い事は何でしょうか?

 

 

それは簡単な事です………その物語にいる登場人物たちの成長や進化でございます。

 

 

長々と話させていただきましたが、さてそろそろ開演の時間でございます。

 

 

では、良き読書時間となられることを、私は心から願う次第であります。

 

 

 

                              by物語の神理・ストリーテラー

 

 

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と行きたがった……文字数が足りないので追加でとある神話学の論文を抜粋しておこう…まだ乗せる予定は無かったのだがね………

 

 

 

私は、転生者について疑問がある。

 

主人公である転生者が、あれだけ暴れてよくその世界が歪まないだと。

 

例をあげると以下のようになる。

 

転生者は、優秀な人材をその世界から引き抜く。

 

転生者が、世界に存在するはずの歴史と言う名の物語を破壊しても万事うまくいく。

 

転生者が、その世界の仕組みを変えることが出来る。

 

私は、その世界がそのようになるように、修正したり、転生者を支援したり、している人物がいるのではないか……

 

その者たちは、人間いや宇宙が存在する前からいるのだと考えた。

 

では、その者たちが誰なのか……神様か?

 

いや違うだろう……

 

神様たちであろうと、動きが読めない転生者たちを導くことは出来ても指示を出すことは出来ない。たとえそれが力を与えた神様であろうと……

 

神様が出来るのは転生者を見つけ、力を与え、その世界に放り込むこと……言わば、賽を投げる事しかできない賭博師の様な物。

 

サイコロの投げ方で出る目を操ることは出来るが、渡されたサイコロが、イカサマ用のさいころなのか、そうでないは、持っている人間は、分からない。

 

故に第三者が関わっているのが、妥当だろう。

 

では誰なのか?

 

私は、とある神話を見つけた。

 

その神話には、一人の人間の男が神様たちと、時には笑い合いをしたり、時には殺し合いをしたりしているそんな神話だ。

 

そこに書かれていたある単語が気になった……

 

 その名を“星の見守り手《スターゲイザー》”と呼ばれていた。

 

 

                               著者:神話研究者・レオ

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さて、次からが本編です。


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料亭と交渉

さあ本編の開始です。しかし、世界すら移動しない白狼………まあいい次は、ちゃんとやってくれるはずさ

今回の文字数は軽く5000文字程度となっています


「かなり山奥だな………今回の商談場所である料亭は」

 

 

私は狭い山道を車で登っていた。

 

その山道は、元々存在しないかのように、荒れ果て、木々が生い茂って天然の屋根を作っている始末、そしてそんな山道を通る対向車なんて来るはずもない。

 

 

「この周辺の村は、過疎が進んで廃村に成っているのがほとんどだな……

 

そして極み付けに、山の麓にあった最後の村の老人の話では昔は、山頂に料亭はあったがとうの昔に店じまいしたって話だが……」

 

 

私は、老人の話を聞いて案内状の内容に頭をひねらした。

 

案内状にはこう書いてある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                 ○○○○年九月十六日

 

 

九泉商会 総合商会会長 四鬼白狼様

 

 

                         株式会社 シャイン・トラペゾヘドロン

 

                               代表取締役 フェイスレス

 

 

                  還暦行事のご案内

 

 

 

謹啓 仲秋の候、四鬼白狼様におかれましては、ますますのご清栄のこととお喜び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

 

この度は、総合代表取締役のザーダ氏の六十歳の佳節を迎える事となりました。これもひとえに白狼様の尽力があった事を深く感謝しております。

 

 

 つきましては、還暦行事を行う事となりました。

ご多忙のところ恐縮でございますが、万障お繰り合わせの上ご臨席を賜わりますようお願い申し上げます。

 略式ながら書中にご案内申し上げます                        謹白

 

 

                      記

 

 

          日時 ○○○○年九月十六日   十時~十四時

 

                  会場 料亭 須弥山神楽

 

                                          以上

 

 

 

 

 

 

私は、いつもの裏の仕事のための案内状なんだなと、見たときに思った。

 

理由としては、総合代表取締役のザータ氏の還暦の祝いは何回も行っている。

 

そのため、この案内状は私を呼び出すために書かれた者だと推測できる。

 

今回も、表ざたにできない依頼なんだろうなと苦笑したのを覚えている。

 

「しかし、いつもの場所ではなくこんな山奥にある料亭を指定するなんて……

 

よっぽどの聞かれたくない内容なんだろうな……気がめいりそうだ。護衛無しで来たのは間違いだったかな?」

 

車に乗っている男…四鬼(しき) 白狼(はくろう)は、にやり顔をして車のアクセルを踏んだ。

 

 

 

 

半刻が経とうとしている頃………山の天気は移りやすいとはよく言ったものだ。

 

視界が霧に包まれてしまい一寸先も見えない状況である。

 

 

「ここにきて霧か………ついてない。スピードを落とさないと崖から転落しそうだな……

 

…でももうすぐ山頂だな」

 

白狼が乗っている車が木の根っこなどで車体が浮いたりしているが、

 

それを気にする様子もなく白狼は山道を車で登っていく。

 

 

 

 

 

そこから四半刻の時間が流れた後、白狼の乗っている車が山頂付近に到着した。

 

白狼は、車を止め周囲を散策する。

 

 

「ふむ……古びた看板がありますね」

 

 

白狼は、前方に朽ちかけた看板を見つけた。

 

風化状況から見て、かなり前に作られたと思われる。

 

 

「何々……この先の100m先にトンネル有。それを抜けた先に料亭:須弥山神楽の駐車場。」

 

 

やっと着いたのか…まったくなんて場所に呼び出してくれたな依頼主は……まあ私が楽しめればそれでいいのですが…

 

 

白狼はにやり顔で舌なめずりをした。

 

白狼にとっての良質な食事といいのは娯楽と未知の開拓である。

 

この場合、裏の仕事と言うのは、娯楽と未知が両方ともある状況である。

 

白狼にとって最高級中華店の満漢全席を並べられたようなもの。

 

そりゃ舌なめずりもしますよ…人間は最高級品を目の前にして食べたくなるのは世の常である。

 

 

「この先か……この依頼……美味しければいいのだが」

 

 

白狼は、車に乗り込みエンジンをかけた。

 

何事もなく車が発進した。

 

 

 

 

 

看板の指示通りに進むと、目の前に大きなトンネルが見えてきた。

 

そこには、須弥山トンネルと書かれた看板がトンネルの上部に付けられていた。

 

 

「いかにもってやつだな。しかし山の中にトンネルか……いやな思い出しかないな。」

 

 

白狼は、苦笑いをしながらトンネル内部へ車を進めた。

 

まあ……何か変な事が起こるはずもなくトンネルを抜けた。

 

そして、白狼さんが目にしたのは…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜宮城を地上に持ってきたと言ったら信じてしまうほどの豪華な料亭が目の前に出現したのだ。

 

 

「これはすごい……こんな辺鄙な所にこんな美しく、豪華な料亭があるなんて知らなかったな。

 

新発見だ……私にこんな場所を教えてくれる今回の依頼者は期待できそうだな!!」

 

 

白狼は、店の前で豪快に大笑いをした。

 

その大笑いは、周りの木々に停まる鳥たちを飛び立出せる程であった。

 

 

「はあ、はあ……ゲホゲホ…笑いすぎた。まったく調子に乗るといつもこうだ。

 

自嘲しないといけないのにいつもやりすぎて喘息になる……はあ………」

 

 

白狼はため息を吐いて目の前の料亭の入り口の扉の取っ手に手をかけ、開いた。

 

山の麓の老人が廃業して廃墟に成っているはずの料亭が、綺麗になっているなんて疑問がわかないぐらいに白狼は興奮していた。

 

 

「ごめんください……シャイン・トラペゾヘドロンで予約しているものですが……」

 

 

奥から、黒色の和服を着た少女が歩いてこちらに向かってきた。

 

 

「シャイン・トラペゾヘドロンですね……はい、承っております。

 

失礼ですが……お名前を教えて頂きたいのですが……」

 

「九泉商会の四鬼白狼ですが……」

 

「九泉商会の四鬼白狼様ですね……承っております。

 

奥の座敷へお連れいたします。私の後をついて来てください」

 

 

和服を着た少女は綺麗なターンをして奥へ歩いて行った。

 

それを見て白狼は慌てて靴を靴箱に収めて、和服を着た少女の後を付いて行った。

 

 

 

 

 

古びているがしっかりとした廊下を二人はゆっくりと歩いている。

 

 

「そう言えばあなたの名前を聞いていませんでしたね。」

 

「私の名前ですか……名乗るほどの者ではありません、白狼様」

 

「そんな事はないよ?私の知的好奇心を埋めて欲しいだけだよ……」

 

「そうですか……では、私の事は黒衣(こくい)とお呼びいただきたいと思います。」

 

「黒衣さんですかいい名前ですね。綺麗な方にはいい名前が付くものですね」

 

「あら、その事は褒め言葉として受け取っておきますね」

 

「本心からの言葉ですが……まあ、黒衣さんの場合美しさよりその磨かれた肉体から漏れ出している力が黒衣さんを際立たしているのでしょう」

 

「見えていらっしゃるのですね?うまく隠したつもりなのですけど」

 

「いやいや……いくら隠そうとも黒衣さんが持っている威圧感は消えませんよ。それこそ神格級の威圧感ですよ……黒衣さんはどこかの神格なのでしょうか?」

 

 

黒衣は、それを聞いてクスリと笑い質問を質問で返すような言い方で……

 

 

「主人から聞いていましたが……白狼様は、知的好奇心を埋めないと気が済まない人みたいですね。」

 

「ふむ…そのとおりですね。貴女の主は、私のことをよく知っているようだ。キミの主が今回の開催主かい?」

 

「ええ、今宵の行事をする幹事でございます。そしてこの店のオーナーでもあります。」

 

「へ~だからこんな店を知っているわけだ。これで私の知識も広がります。」

 

「白狼様の未知を埋められて私は喜ばしい事だと感じております」

 

 

黒衣がそう切り返すと白狼はしてやられたと言う頭をしながら頭をかいた。

 

完全に黒衣のペースである。白狼はそれを良しとは思わず、流れを変えるには話題を変えるしかないなと言う結論に至った。

 

「しかし、立派な料亭ですね。しかしかなり古い……創業何年ですか?」

 

「私の主からは、創業は今年で千年を数えるみたいですよ」

 

「創業千年ですか……それはすごい!!千年たっても色あせないていない柱や床の木材の色は芸術品ですね」

 

「それはありがとうございます。私の主の先祖もその点は注意したみたいですよ」

 

 

先祖と来たか………神格級の人物の主が世代交代制と言う事はあまり聞かない。

 

さらに、その祖先が千年以内に世代交代をしているか……職業柄、神格連中と関わることが多いがそんな話聞いた事が無いな……

 

 

「へ~今じゃあ珍しい世代交代制を取り入れているのですね。ここの主人は……」

 

「ええ、ここら辺の土地は昔から争いが絶えず繰り広げられています。

 

そのため、戦死する人も多い…必然的にここの主も戦場へ駆り出されます。

 

そこで、戦死してしまう事が多かったと私の主から聞いております。」

 

「なるほど…この土地の事を私はあまり知らなかったようですね」

 

 

そんなわけあるか!!!ここ最近大きな戦争と言えば、とある神話形態の上位体の二人が部下を使って戦争していると言う話だけ……

 

ここら辺が戦争地域に成った話なんて聞いた事ないぞ…しかし、まったくの嘘をついているようには見え無い……まあそこら辺の事情は会場に付いたら分かるだろう。

 

しかし、長いなこの廊下………いつまで続くんだろうな………

 

 

「そう言えばどれぐらいで奥の座敷に付くのですか?」

 

「あと少しですよ。この料亭……一種の魔境と化していますから中の構造が刻一刻と変化しているので道に迷う人も多いらしくて……」

 

「ほんとですか?それは参った……そんな事ならもう少し早くつけるように時間を合わせるべきでした」

 

「いえ、その事をお知らせしなかった私の主の責任です。白狼様が謝ることではありません。」

 

「そう言って貰えると助かります。」

 

「あ……白狼様そろそろ奥の座敷に付きます。」

 

 

黒衣がそう言うと、前方に綺麗な和紙で整えられた障子が見えてきた。

 

 

「ふう……ここまでの道案内ありがとうございました黒衣さん」

 

「いえ、これが私の仕事なので……」

 

「そうですね。では。仕事終わりに一つ質問があるのですが……いいでしょうか?」

 

「はいなんでしょうか?」

 

「黒衣さんは、休暇の日などのお休みの日には何をして過ごしているのですか?答えてくれなくても結構ですよ」

 

「それぐらいならお答えできます。

 

主や知り合いが連れて来た音楽家の演奏を聴きながら寝る事ですね。」

 

「あら、意外な趣味をお持ちで…しかし、貴女に似合う趣味ですね」

 

「あら私を口説こうと言うのかしら?」

 

「いえいえそんな事はありませんよ。さすがに私も命が惜しい」

 

「あら、私の正体が分かったのですか?」

 

「ええ……最後の質問とあなたのその血なまぐさい神気おかげでね。

 

まさか、今回の依頼人があの狐とは思いませんでしたけどね」

 

「あら意外ですか?」

 

「ええ、いつもならあのバカは私の意見を聞かずに送り込むようなことをしますから……」

 

「そうですね。しかし今回の依頼はそうはいきません。

 

ある程度、選択の自由を与えないと他の方から文句が出てしまうので………」

 

「なるほどそれほど重要な案件ですか……それはそれで楽しみですね」

 

「ではいってらしゃいませ」

 

「ああ行ってくるよ」

 

 

白狼はにやり顔で、襖の扉に手をかける。そして………そこには、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人の男がカウンターを挟んで佇んでいた。

 

 

「いらっしゃいませ…四鬼白狼様」

 

「あれ?あのバカは?」

 

「ああ主ですか……ここには来ません。依頼内容は俺から説明させてもらいます。」

 

「そっか……食事は作ってもらえるのかな?」

 

「ええそれはもちろん。何を作りましょうか?」

 

「そうですね…………………………山菜の天ぷらうどんと鶏のから揚げをお願いします。」

 

「分かりました」

 

 

料理人は注文を受け取ってすぐさま作りに掛かる。

 

綺麗な包丁さばきで山菜や鶏を捌いて行く。

 

 

「では、依頼の方を聞きたいのですが……よろしいですか?」

 

「はい。今回主からは、一つの世界を開拓してほしいと言う話です。」

 

「ふむ…それは大仕事ですね」

 

「ええ、故に白狼様のようなある程度知識がある方が適任だと思いまして………依頼のためにお越しいただきました。」

 

「ふむ……それで私以外に依頼した人物は?」

 

「!! はい……あと三名ほど……名前をお教えいたしましょうか?」

 

「いいや、結構だよ。興味はないからね……その三人とは干渉しあわないようにしたいね」

 

「そうですね……」

 

 

一連の質問の間も料理人の腕は止まっていなかった……しかし、流れ作業と言う感じは白狼自身受けなかった。

 

 

「さて、完成です。山菜の天ぷらうどんと鶏のから揚げおまちどおさま」

 

 

出て来たのは透き通るような琥珀色のスープに白色の太麺…山菜がそれをアクセントに置かれていた。

 

鶏のから揚げは、綺麗なきつね色をして今にも肉汁が溢れ出さんとしているかのように見えた。

 

 

「うん、これはおいしそうだ……では、いただきます。」

 

 

白狼は最初に、レンゲでスープをすくい飲んだ。

 

味は控えめでだが、確りとした山の幸の味がした………

 

 

「あれ…これってうどんに使う出汁じゃない?これは…フランス料理のコンソメ?」

 

「正解です。コンソメを作る要領で作成しました……お気に召しませんでしたか?」

 

「いいや……これはこれで美味しいよ出汁を絡ませるのには十分だよ」

 

 

白狼は麺にスープを絡ませて食べ始める。

 

そして数分後

 

 

 

 

 

スープまで飲み切った白狼の姿がそこにあった。

 

 

「ごちそうさまでした」

 

「お粗末さまでした」

 

「さて依頼の方ですが………お受けしますよ」

 

「それはありがとうございます……ではあちらの扉から出て頂きたい」

 

「分かりました……では、また会ったらその時はまた作ってくださいね」

 

「ええ、またの来店をお待ちしております」

 

 

白狼は手を振りながら奥の方にある黒の扉を開けてその中に入った。

 

 




さて、次回から異世界旅行ものみたいに事情説明が始まります。そしてレオが書いたスター

ゲイザーと何なのか(あっち側ではもう書いてますが)が分かるかもしれませんね(冷や汗)



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ルール及ぶ異世界決定

さて、ここからは完全にルートから外れて、異世界ルートに入ります。

今回も約5000文字程度となっています。


「と言う事が、あの円卓に座る前に起った出来事です」

 

「…………………………………」

 

「あれ?白狼さんどうしましたか?」

 

「いえ……私の回想は全く的外れだったのですね」

 

「ああ…そう言えばそうですね」

 

 

黒衣は可愛そうな人を見る目で白狼を見ていた。

 

 

「う…うるさいこの白痴の神様が!!手前の主であるあのバカのせいで私は私は!!

 

とんでもない目に合っているんだよ!!」

 

 

完全な涙目である。貴重な主人公の涙目シーンである………

 

現在、白狼と黒衣がいるのは白色の何もない空間の中央に味がある高級品の円卓に向き合って座っている。

 

黒衣の服装は、最初の黒和服ではなく………巫女服の白い部分を黒く染め、血痕が付着したかのような赤い液体が付着していた。

 

対して白狼の服装は、黒いスーツを着てその上に黒いロングコートを着ている。

 

お互いに髪の毛は黒色……黒衣は長い髪の毛を後ろで結んでポニーテイルに

 

白狼は、肩まで伸びる程度のストレートにしている。

 

しかし、目は決定的に違い……黒衣は金色の目で白狼は吸い込まれるような黒色である。

 

 

「質問ですが……黒衣さんなぜ私だけが別行動中なのでしょう?

 

現在、私を含む四人の魔王が第一回四方魔王会議をしている時間だと思うのですが?」

 

「そうですね…その点は大丈夫ですよ。私の方でルートを分岐させておきましたから……

 

…こちらは俗に言う、異世界ルートみたいなものです」

 

「いきなりメタイですね………まあよくわかる説明です」

 

 

白狼達が言う魔王とは四つの大陸に一人ずつ現れた魔王の事で、その魔王たちが一堂に会

 

するのが四方魔王会議と言うわけだ(詳しくは、ダンジョン作成日誌か単語帳参照)

 

そして、現在白狼はその場に居なければいけないはずの人間である。

 

 

「まあ……毎回のことながら私の主である:神の神理の気まぐれでこのような状況に陥っております」

 

「なるほど………それならしょうがない……」

 

 

白狼は、あきれ顔で黒衣を見る。

 

白狼にとって、神の神理と言う人物は……会社でいう取締役クラスの人物である。(なお白狼は、部長クラス)

 

そのため、神理の気まぐれにいつも付き合わされている……

 

というよりも取締役会に座っている奴らは、基本自由奔放で気まぐれで大変なことをしでかす。

 

その尻拭いを白狼がやっているので何かあったら白狼に頼もうと言うシステムが出来上がっている。

 

 

「今回は、私に何をやらせようと言うのです?」

 

「いや…私の主からの伝言で………

 

“進展もない一週間を送ったから、面白くなかったので白狼を異世界に送り込んじゃおう”

 

と言って私にこの部屋に連れてくるように言ったのです……」

 

「いやそれはおかしい……最低でも私は、村ひとつを滅ぼしているのですが………」

 

「いやいや……主はこの一週間で国ひとつ滅ぼしていると思ったらしいですよ?」

 

「…………………………………………………………はあ?国ひとつ滅ぼすですか?

 

一週間で……何の準備もなく……スキルで制限ありの状況で国を滅ぼしなさいですか……なんて無茶ぶりですか?」

 

「ええ……そこまでいかなかったのでパラレルワールドを作ってそこに白狼と言う縦軸を作って遊ぼうと思ったらしいです」

 

「なるほどなるほど……じゃあ私に何をしろと?」

 

「簡単です。いくつかのルールの中で、異世界で暴れまくってもらいたいのです。」

 

「転生者の真似事をしろと言う事ですか?」

 

「まあ…その通りです……いつも調整する側からされる側になってみるのも一興だと思いますよ?」

 

「それもそうですね…だけど、あの三強がどういうか?」

 

「その点は主が何とかしてくれましたよ。許可もとってあります」

 

「………そうなんだ………よほど十二円卓の連中は娯楽に飢えているんだな………」

 

「そうだと思います。」

 

「まあいいでしょう。ルールを教えてください」

 

 

白狼は呆れながらも、了承するしかない状況に追い込まれたのに今更ながら気が付いて小さくため息を吐いた。

 

その様子を黒衣は苦笑で返して黒巫女服の上着から一枚の紙を取り出す。

 

 

「では、四鬼白狼殿ルールの説明をします。

 

なおこのルールは後で付けくわえられる可能性があります、その点は了承してください。」

 

「分かった。」

 

「了承をいただきました。

 

では、暫定的に決まっているルールを説明します。

 

ルールの数は6つ

 

1、その世界が魔法のみなら能力を魔法のみに限定する。

 

       科学のみなら科学のみに能力に限定します。

 

       科学と魔術が両方ある場合は、両方使えます。

 

……簡単に言えば、その世界にあった能力しか使えません。

 

 

2、 その世界のいる人物を仲間に引き込んではいけません。

 

 

ただし、仲間に引き込みたい人物が死亡した場合または物語上から一時的に退場した場合は、例外的に仲間にすることができます。

 

3、 その世界の物語を壊すことはできますが、何らかの方法でその物語で受けるはずのダメージを与えてください。

 

……簡単に言えばバランスを取ってください。

 

 

4、 ほかの世界の物を持ち込むことはできます。これは2に抵触しない限り無制限とします。

 

 

5、 主の権限でいきなり世界移動させる場合があります。ただし、その時その世界の時間が止まり再度侵入後その世界が動き出します。

 

 

6、 その世界を気に入らないかと言って破壊する事は禁止します。これは3にも適用されます。

 

 

以上の6つです」

 

「なるほど……1,2,3,6のルールは世界のバランスとるためで、4は私を無双させるためのルール……

 

5は神の神理が面白くないと判断したら世界の時を止めて異世界に飛ばすと言う行動か・・…

 

案外、理にかなったルールですね…あいつらしくもない」

 

「ええ、このルールを作ったのは第十二位である物語の神理様ですから……」

 

「へえ……この分だと、空席の十一位と行方不明の第十位以外の全員が関わっているみたいだね?」

 

「ええ、皆さんこぞってこの依頼に力を注いでくれました……」

 

 

私は、暇人ばかりだな……と悪態をつきたいのを表面的に抑えて六つの条件について考ていた。

 

 

第1のルールであるその世界にあった能力しか使えないについてだが……

 

私の能力である技術の神理は、万能であるのは間違いないが特色にあった能力のみと限定されただけで弱くなるほどの能力ではない。

 

そのため無視できる。

 

 

第2のルールの抜け道がるように見えるが……これは第3のルールにより塞がれている。

 

理由としては、もし欲しい人材がいてそれを引き抜こうとして何らかの方法で殺した場合、

 

殺した人物が今後やるはずだった事柄ができなくなりバランスが崩れる。

 

それを綺麗に辻褄合わせなければいけない……これがまた難しいのだ

 

 

「質問です黒衣さん。第4のルールである、ほかの世界の物を持ち込むことはできるには、この世界の物も含まれていますか?」

 

「その答えには、はいですね。持ち込むことは出来ます……ただ建物を持ち込むことはさすがにできません……」

 

「それはそうですね。私もそんなものを持ち歩きたくありませんから……これで十二人形と咲夜さんは連れて来られると言う事ですね」

 

「その通りです!!さらに、原作ルートの白狼さんが仲間をゲットした場合、こちらとリンクされます!!」

 

「ふむ……ある意味好条件ですか……」

 

「ええその通りです!!」

 

 

黒衣が興奮して円卓を叩いているのを白狼は目を細めて見つつこれで大体の条件はそろったな……さて世界決定をしなくていけないな……

 

そんな事を考えている白狼はとっとと進めるように黒衣に提案をする。

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ本題のどこの世界に行くか決めませんか?」

 

「そうですね。さてどこにしましょうか……」

 

「候補はあるのですか?」

 

「ええ……

 

緋弾のアリア・聖剣の刀鍛冶・魔法科高校の劣等生・IS(インフィニット・ストラスト)・

 

ハイスクールDD・Cキューブ・カンピオーネ!・バカとテストと召喚獣・

 

とある魔術の禁書目録・デートアライブ・ケンプファー・フェイト/カオス・

 

アクセルワールド・ソードアートオンライン・魔法少女リリカルなのは

 

・機功少女は傷つかない・セブンスドラゴン2020・ソードワールド2.0

 

ぐらいですかね……まあフェイト/カオスとセブンスドラゴン2020はやめてください。

 

らしいですけど……」

 

「18タイトルですか……でフェイト/カオスはかなりヤバイ事に成っていると……」

 

「そうゆう事です。

 

セブンスドラゴン2020は、白狼さんがフィーバーしまくる可能性が多いので延期となりました。」

 

「ふむ……無難に人形師らしい機功少女は傷つかないにしましょうか。」

 

「白狼さんがそれでいいのならそれでよいかと……」

 

 

白狼的には、めだかボックスが候補の中に入っていなかったのは……行方不明中の第十位が関わっているとしか考えられないと言うのが本音だ……

 

故に、とっと話を進めてひっぱり出すのが正解かなと考えたのだ。

 

 

「黒衣さん一つ私に提案があるのですが、よろしいですか?」

 

「ええいいですよ。」

 

「百鬼機関か、スターゲイザー商会のどちらかを行く先々の世界に作ってほしいのですそれも影響力はそのままで……」

 

「それぐらいはいいでしょう、許可します。今回は、どちらにいたしますか?」

 

「舞台が、イギリスなので……スターゲイザー商会の方でお願いします」

 

「分かりました、十二円卓にはそう伝えておきます。」

 

 

白狼は何かを思い出したように、黒衣に話しかけた。

 

 

「忘れていました……あの子百鬼国いろりの処遇はどうなりますか?本編ではまだ登場しないはずですが……」

 

「それも大丈夫ですよ?いろり様は、こちらに合わせて移動するようなので心配する事はないかと……」

 

 

白狼は黒衣がいろりに対して様付けにしたことに目をそらした……黒衣さんをお使いに出したのは失敗したかな……というよりも白痴の神様が様付けって……どんなことしたんだあの人は!!

 

白狼は冷や汗をかきながら言葉を紡ぎ出す。

 

 

「そうですか……怒っていなければいいですけどね……」

 

「その点は大丈夫かと……いろり様は笑顔で手紙を渡してくれましたから……」

 

「笑顔ですか……いや色々と大丈夫かな今回の旅行、心配になってきました。」

 

「大丈夫じゃないですかね……白狼さんは優秀な部下をお持ちですからピンチな時に呼べばいいじゃないですか?」

 

「ああソロモン機関の連中ですか……却下ですね

 

それを呼び出したら第三版のルールに抵触しますよ……それこそ私が手の負えない範囲で……」

 

「それほどの力を持っているんですかそのソロモン機関と言うのは?」

 

「ええ、私が異世界を回って集めた人物たちに私独自の練習メニューをさせていますから

 

一人一人が一騎当千の猛者ばかりです。

 

十世界統一戦も彼らたちが居なければ成し遂げられないぐらいの大戦だったので……」

 

「へえ…そうなんですね」

 

「ええそうなんです。まあそれは最終手段として取っておきましょうか。」

 

「それがよろしいかと……」

 

 

白狼が重い腰を上げて黒衣の方に近づく

 

 

「さて、そろそろ行きましょうか…異世界へ」

 

「もういいのですか?他に提案したいことはない出のですか?」

 

「ええ、他に要望したいことはありませんしとっと言ってあちら側の設備を整えておきたいですし」

 

「分かりました。ではこちらについて来てください」

 

 

黒衣は、円卓の椅子から立ち上がると白狼を背にして奥の方へ歩いて行った。

 

それに付き従うかのように白狼は後ろでゆったりと歩いて行く

 

 

 

 

 

幾分か歩いたのだろう目の前に大きな扉が出現した。

 

 

「こちらになります。では、良き旅を 死鬼神空亡様」

 

「ああいってくるよ。万物の王にしてとある神話の主神よ」

 

白狼は手を振りつつ大きな扉を開けた……そして世界は光に包まれた………

 

                             to be continued

 




次回からついに異世界入りをする白狼……そして彼を待ち受けるのは何か楽しめて貰えたら幸いです。ではではサヨナラです~~


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開幕・そして白狼の実力

今回、途中で日露戦争について記述がございます。

これは、機功少女は傷つかない内で白狼さんが暴れた軌跡を書いたものです。

本来の歴史では、決着までに500日掛かったと言われています。

それを踏まえてお読みください。

今回の文字数は9000文字となっています。


部屋の隅にある机に一人の男が座っていた。

 

男は、机の上で一枚の画用紙に鉛筆を使って綺麗な女性が描かれていた。

 

しかし、その女性だけではなく横には同じようなシルエットをした機械だった。

 

男が描いていたのは、自動人形(オートマトン)の設計図だった。

 

 

「さて……(いかづち)の魔術回路を搭載した“震電(しんでん)改二”の設計図はこれいいかな?」

 

 

男がそんな事をつぶやいていると後ろの方にあるキッチンから男を呼ぶ声が聞こえた。

 

 

「白狼……もう半刻が過ぎていますよ~休憩にしましょう」

 

「もうそんな時間かい?分かったよ、いろり」

 

 

白狼は、キッチンの方に目を向けた。

 

そこには、人形じみたシミひとつない肌を持った若い女性が立っていた。

 

その女性……いろりの方を向きながら白狼は、机の上の画用紙を円筒に丸めてひもで軽く縛った。

 

その後、その円筒を持ちながらいろりの方へ歩みを進めた。

 

 

 

 

「今日の仕事はこれで終わり。この後有給取って、イギリスに行くから……飛行機の準備よろしく」

 

「了解しました、白狼。久しぶりのイギリスですね」

 

「久しぶりと言っても四年ぶりだけどね……」

 

「と言う事は……今回もヴァルプルギスの夕べ見に行くんですか?」

 

「そうゆう事だね。自分の後輩が出来るのを、この眼で見たいからね」

 

 

この男は白狼も魔王(ワイズマン)の一人……今代から数えて二代前の魔王の称号を持っている。

 

その時のヴァルプルギスの夕べは異常との一言に尽きる。

 

理由は簡単だ。その夜会は、一日で終了を向かいえたのだ。

 

それも、一対九十九で……

 

 

「さすがに、私の時みたいに早期終結は起りえないだろうけど……面白い闘争劇には、なりそうだからね。

 

「そうですね。入学時から全校生徒にケンカを売っていましたし、あんなことを言えばああなる事は当然の事柄ですからね。」

 

 

なぜ、一対九十九なんて、とんでもない事に成ったのか理由は単純……

 

当時、学院内の一位だった白狼は、待つのはつまらんと言う理由で、自分の位を100位にまで降格させた。

 

そして、それを幸いと他の手袋持ち達は結託して……夜会執行部に掛け合ったのだ……

 

 

あのバカの鼻を圧し折りたいから、我々全員と戦わせろ…さもないと九十九日目まで我々はボイコットする

 

 

と……これに対して夜会執行部は、ため息を吐いて学院長であるエドワード・ラザフォードに掛け合った。

 

もし、九十九日間戦闘が行わなかったら、来賓の方々に失礼であり……学院の名誉に傷がつく可能性がある。

 

まあ、そんな事を考えるラザフォードではないが……それを建前として夜会執行部に了承するように言い渡した。

 

これが惨劇の引き金になるとは、この時はラザフォードと白狼以外知る由もなかった。

 

そしてその時付けられた通り名は、“虐殺の魔王(ザ・アナイアレイト)

 

 

「今回は、私レベルとはいかないが……稀代の天才がいるからそこそこ楽しめそうだよ?」

 

「それは良い事だと思います。」

 

 

白狼といろりは目の前にあるロイヤルミルクティーを飲みながら談笑を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

「さてと…そろそろ行かないと虎徹中将にこれを届けないとね……」

 

「分かりました……ではこちらは、飛行機の準備をしておきます……行先はイギリス本土にあるスターカード商会の滑走路でよろしいですね?」

 

「ああそうしてくれ」

 

「では、そうさせていただきます。」

 

「よろしく………じゃあ行ってくるよ、いろり」

 

「いってらっしゃい…アナタ」

 

 

白狼は、優しい顔でいろりの頬に軽くキスをする。それを受けたいろりはその白い肌を真っ赤にして顔をパタパタした。

 

それを見た白狼は、いたずらっ子の顔をしつつ工房を後にした。

 

 

 

 

 

 

工房を後にして白狼は日が陰りつつある帝都を、陸軍が所有する軍事施設に向かっていた。

 

その道中、珍しい人物に出会った……西の花花柳斎(かりゅうさい)だった。

 

花柳斎は、自身の真作…雪月花の雪のいろりに傘を持ってもらってこちらに向かってきていた。

 

 

「これは珍しい…西の花をこんな所でお会いできるなんて思いもしませんでした。」

 

「それもそうね。私は、工房に引きこもるばかりの生活をしているもの……

 

貴方が、会いに来ることが無い限り会う事はないわ……東の刕」

 

「そうですね。私もこの用事が無ければ工房から出る事は少ないですからね……

 

まあどっかの誰かさんみたいに、人形を一体作ってその後音沙汰なし人間に比べればまだ外に出ていますよ“私は”」

 

「あらそうかしら?そんな人物は、私は存じ上げておりませんが……他国に渡って大暴れしている人と同じ人ではありませんか?」

 

 

二人とも青筋を立てながら、睨みあう。

 

花柳斎の後ろでは雪のいろりが、右往左往していている。

 

喧嘩腰の二人の周りに野次馬が集まる。

 

白狼は、周囲を見て深呼吸をする。

 

「まあ、こんな大衆の面前で大喧嘩を始めるのはお互い得策ではありませんね……

 

このままだと憲兵どもにしょっぴかれそうですね……」

 

「そうね……毎回、貴方とけんかをすると周囲の建物に被害でないとは限らないからね」

 

 

二人は、漏れ出していた魔力を抑えて世間話を始める事にした。

 

野次馬は、ケンカしないのか…つまらないと言う様子でその場を後にした。

 

 

「さて、西の花……キミの所の坊主がイギリスのヴァルプルギス王立機功学院に行ったらしいな」

 

「ええ、坊やは先月出たばっかりよ…ちょうどヴァルプルギスの夕べが始まる前に着くよ

うに、計算してね」

 

「ふむ…坊主も参戦するつもりか……今回の夜会も楽しめそうだな」

 

「あら、東の刕は見に行くつもりかしら?それなら、私も連れてってもらえないかしら?」

 

「う~~ん……いいけれど軍部には話はつけているのかい?」

 

「いいえ……私は貴方と違って軍に所属しているけどお抱え人形師だもの勝手に休んでも構わないわ」

 

「それもそうか……わかった。ただし、私の飛行機とは違う飛行機に乗って貰うから、そこは了承してくれ」

 

「わかったわ…場所はいつもの発着場ね?」

 

「ええ、妻のいろりがいますので事情をつたえれば用意してくれるはずです。」

 

「ふふふ、ありがとね。白狼」

 

「どういたしまして……花柳斎」

 

 

おろおろしている雪のいろりを無視して二人はその場を後にしようとした。

 

 

「そういえば、東の刕…坊やの順位を予測できるかしら?」

 

「ああそれならできるな……どうせ、最下位かその一個上だろうな……人形師の才能が有っても知識がないのは論外だからね……

 

手袋のダッシュ走るだろうな……坊主は」

 

「そっ」

 

お互いに振り向かずに言葉を交わし離れていった。

 

 

 

 

 

 

白狼は歩いて、陸軍が所有する軍事施設………機功師団本部の前まで来ていた。

 

そして、門を守っている憲兵に話しかけた。

 

 

「そこの君」

 

「私の事でありましょうか?」

 

「ああそうだ。すまないが中に入る許可が欲しいのだ……

 

たぶん、中にいるであろう虎徹中将に伝えてくれ“東の刕が前話した、震電の改良案の設計図を持ってきた”とね……

 

分かったらさっさと行くことだな……」

 

「ひ、東の刕!!すいませんでした。すぐにお伝えいたします!!」

 

「そうだね…急いだ方がいいさもないと私が起こるかもしれないからね?」

 

 

若い憲兵は大急ぎで中に入って行った。

 

もう一人の憲兵は必死に私に目を合わせないようにしていた。

 

 

 

数分後、さほどの中に入った憲兵が一人の将校を連れて来た。

 

胸についている黄色と赤の縞々で星は三つ……大佐の地位の人間が付ける階級章だ。

 

 

「これはどうも……四鬼白狼少将閣下この度はご足労いただき大変ありがとうございます。」

 

「いやいや、ついさっき完成したばかりの設計図を虎徹中将に見せに行きたいと思いここに来たのですよ…それで虎徹中将は現在おられますか?」

 

「ええ、奥の執務室で資料とにらめっこしております…案内しますのでついて来てください」

 

「了解しました、赤城大佐どの」

 

「恐縮であります」

 

 

白狼は、赤城の後ろに付いて行きながら周囲の様子を見る……突然の来訪者に驚くもの、どんな人物か興味を示したもの、畏怖の念を持ちながら敬礼する者までいる。

 

それだけで白狼が、この八年間でしてきたことの大きさが分かると言う物である。

 

 

 

さて、白狼が少将まで上り詰めた理由は、先の戦争…日露戦争が主な理由だろう。

 

日露戦争の開戦時に、ロシア太平洋艦隊に対して人形による奇襲戦を行うと今でも考えられない事を東郷中将は、立案してそれを実行した。

 

当時、魔王に成り立ての白狼が軍部に呼び出されたところから始まる。

 

会議場に到着するやいなや、拒否権は貴様に無いと言われ作戦を言い渡された。

 

内容はすごく簡単だ……人形を十二体用意して、旅順口区にいるロシア太平洋艦隊を奇襲しこれを殲滅せよと……今聞いてもとんでもない話である。

 

それだけ、魔王と言うのに期待したのだろう。

 

白狼はため息を吐きながら了承した。

 

理由は、旅順口区には、戦艦7、巡洋艦10、水雷巡洋艦2、水雷艇25、砲艦7の計51艦の大艦隊が、常駐している。

 

それをたった12体の人形で、これを殲滅せよだ…とんでもない話である。

 

当時の話を聞いてみると、これは失敗前提の作戦で……後方にそうそうたる戦艦たちが連合艦隊として置かれていたらしい。

 

それから、作戦実行の日……白狼が用意したのは百鬼国の歴代の人間が本気の時のみ使う十二人形たちだった。

 

白狼はエンジン搭載の小型船を一隻借り、日本海を進んだ。

 

出発したのが二月五日で、一日かけて二月六日に、小青島付近に到着、七日に旅順に到着先制攻撃を開始

 

格殺(かくさつ)冥刀(めいとう)剣竜(けんりゅう)の三体の人形による攻撃と無人艦に成った船を影桜(かげざくら)の影に放り込んで視界確保…さらに白楯(はくじゅん)による小型船の防御を行った。

 

これが半日をかけて、旅順港にいる艦が無くなるまで続けられた。

 

その後、写真付きの報告書をからくり鳩に持たせ飛ばし、すぐさま南東へ針路を向けた。

 

七日の夜に、厳戒態勢の仁川港に突撃を掛ける。

 

同じように人形戦を仕掛け、完勝を収めた。

 

八日の16:40頃にやってきた日本の戦艦に引き上げてもらい、白狼は久しぶりのまともな食事にありつく。

 

ここまで戦闘行為により、ロシア太平洋艦隊は全滅に近い打撃を受けた。

 

そして日本連合艦隊は、無傷で旅順の近くに行くことが出来た。

 

ここまでの戦いを魔王の汽笛戦と呼ばれ、日本にいる魔王の実力が後世まで語り継がれた。

 

 

白狼がここで終わるはずもなく、次は陸軍からの命令で独立遊撃部隊と言う名目で、ロシア陸軍へ攻撃せよと命令が下った。

 

これをしぶしぶ了承した白狼は、大量の食糧を貰って進軍を始める。

 

二月十日、白狼は単独行動を行った。

 

その後、九連城周辺の常駐していたロシア軍の全員が消える事件が発生…この時、死体すら見つからなかった。

 

白狼はその後、大日本帝国海軍に船を借りて激戦区となっている遼東半島に進路を向けた。

 

二月十四日、金州城・南山に進路を向ける前日に、白狼は到着した足で、陸軍司令部に足を運んだ。

 

奥保鞏司令官に、金州城及び南山にいるロシア兵の殲滅を依頼される。

 

これを白狼は了承した。

 

その日は、目袋の中で就寝する。

 

二月十五日、行動開始、五日をかけて金州城及び南山付近に到着。

 

二月二十一日、金州城攻略戦開始と同日に、金州城陥落。ロシア軍、南山陣地へ撤退。

 

二月二十二日、南山陣地から降伏文書が金州城に届く…これを白狼は無視して攻撃を開始する。

 

同日に南山陣地陥落

 

二月二十五日、第二軍が金州城へ到着…陥落していることを確認。

 

二月二十六日、奥保鞏司令官が旅順要塞への攻撃を白狼に指示。

 

これを白狼は了承。

 

二月二十七日、白狼は五日をかけてゆっくりと行軍。

 

三月三日、旅順要塞に到着と同時に攻撃開始

 

三月六日、旅順要塞陥落、写真付きの報告書を付けたからくり鳩を飛ばし、白狼は進路を北の遼陽の方へ歩みを進めた。

 

三月二十日、遼陽のロシア軍を攻撃開始のち、これを殲滅する。

 

三月二十一日、これを見かねたロシア軍の主力を沙河に投入して白狼を攻撃開始しました。

 

三月二十二日、これを逆に殲滅し、その強さをロシア軍に見せつけた。

 

四月三日、血の日曜日がロシアに発生。

 

同日、白狼は奉天に攻撃を開始し、これを殲滅する。

 

四月五日、白狼から、大日本帝国へロシアと講和せよと呼びかけをする。

 

大日本帝国は、これを了承させられた。

 

四月二十一日、講和条約大網決定

 

五月一日、講和斡旋

 

五月九日、講和勧告

 

六月十日、ポーツマス会議開始

七月一日、休戦議定書調印

九月五日、日露戦争終結

 

のちの半年戦争である。(別名魔王戦争)

 

その後の、人形遣いと人形師の育成に世界中が取り組むこととなった戦争

 

と言う事があった。

 

え?何故こんなことを書いたかって?この世界だと、白狼さんが強いぞあまりアピールが出来ないからだ!!

 

 

 

 

 

さて作者の思惑の外にいる白狼は、虎徹中将の部屋の前に来ていた。

 

 

「四鬼白狼少将です、入らせていただいてもよろしいですか?虎徹中将閣下」

 

「ああ、入りたまえ」

 

「失礼します」

 

木製のドアを開けた先に窓を見ていた細身の人物が立っていた。

 

虎徹中将だ。白狼は、そこに居るだけで威圧感を出す虎徹を視界にとらえながら会釈をする。

 

「そこまでかしこまらくていいよ…白狼」

 

「いいえ、日露戦争を生き抜いた、生きた英雄である貴方に対して畏怖の念を感じているだけです」

 

「プッハハハハ、だめだ。いくら威厳のある風にしても君の前ではボクはまだまだ子供だと思えてしまうよ」

 

「そうだな、まったく私の元上司とはいえ虎徹…まだ君の方が位は上なんだからしっかりしてくれよ。」

 

「うるさいな……君が望めば、大将の地位だって手に入れられたはずなのにそれをわざわざ蹴るかね」

 

「私は、世間に出るのははばかれるからな……日露戦争では暴れすぎた。

 

ロシア帝国で私がなんて呼ばれるか知っているかい虎徹?」

 

「ああ知っているとも、全てを破壊する者(オール・デリート)だろ。

 

いい名前じゃないか?」

 

 

呑気である……そうゆう虎徹も樺太作戦で、私の作った震電を使って攻撃を行ったではないかと心の中で笑う白狼だった。

 

 

「私は、その名前は気に入っていないけどね………

 

創造の中に破壊はあるけれど、私は破壊だけを振りまく魔王ではないのだけどね……

 

そこら辺が、ロシアの人々に伝わってないのだと思うと悲しいかな」

 

「ぬかしなさい。彼らから見ると破壊と言う一面しか見せていない君に、いい感情を持つはずはないでしょ?」

 

「それもそうか……まあそれでこの生き方をやめるつもりはさらさらないが」

 

「やっぱり君は、大将になるべきだったんだよ。

 

そうすれば、武力による世界平和につながるとおもんだけどね」

 

「虎徹その意見は拒否させてもらうよ。

 

なぜらな、あんなトンデモ作戦を立案して執行するおかしな連中の頭なんてやりたくもない。

 

悪戯に兵士を死なせるだけだよ」

 

「そうゆう物かな?

 

まあ君がそう言うならこれ以上口を出すのはやめておこう」

 

「ありがたいね。さてそろそろ世間話をやめて、今回の用事を済ませようか。」

 

「震電改二の設計図だったよね。」

 

「ああ、出来立てのね……

 

雷の魔術回路による、高出力電気モーターと魔力炉による混合原動機を搭載は、前回の震電改同様搭載。

 

それに、一日に一定量の魔力を使用者から徴収して、魔力圧縮炉に放り込み液体化させる。

 

これを魔力炉に放り込む事で、いつもの出力2倍以上の出力を発揮させます。

 

ただし、代償として魔力が焦げ付く可能性があるので、切り札として用意しました

 

これぐらいでしょうかね……あとは、機体の軽量化や魔力炉の出力の上昇などですね」

 

「それで十分だろうね……これだけの作業をほんの数日で完成させてしまうとは……魔王って恐ろしいものだね」

 

「いえいえ……私クラスの魔王は、そうそういないと相場が決まっております。

 

もしいましても、私自らそこへ出向き解決する所存です」

 

「その意気込みよし……ではこの設計図を制作班に渡しておく」

 

「ありがとうございます。

 

それでもう一点あるのですが……よろしいですか?」

 

「ああ言って見ろ」

 

「はい。イギリスで開かれるヴァルプルギスの夕べを見るためにイギリスへ行きたのです。

 

そして、ついでにたまりにたまった休みを貰おうかと……召集には応じるつもりですが」

 

「そうだな……白狼少将はここ最近働きすぎだと制作班から、言われていてね……

 

丁度休みを言い渡そうと思ったところだ」

 

「そうですか!!ありがとうございます。」

 

 

白狼はニッコリ笑顔で虎徹の方を向いた。

 

この部屋に入った時から広げていた影がこの部屋を飲み込もうとしていた。

 

 

「さてそろそろ……影の結界の完成かな?」

 

「ほぼ完成と言っていいほど、君の影がボクの執務室を覆っているよ

 

ここらでやめた方がいいのでは?」

 

「そうだね…これだけ影で侵食できれば中で起こった事は外に漏れる心配はないだろうな」

 

「そうと決まれば……」

 

 

虎徹はおもむろに胸元から布を引き抜く……そして軍服の胸元にあるボタンを幾つか外す。

 

そうすると……大きな胸が強調された軍服に成った。

 

「私が、言うべきなのだろう……もう少し恥じらいを持ってほしいな……」

 

「いや…あんたには嫁さんがいるでしょ?こんな生き遅れの相手なんてすべきじゃないかな?」

 

「え……真理(マリ)と私は、同い年のはずなのだがね……」

 

「そうだっだけ?

 

……誰かさんがやった起こした衝撃的な学院生活のせいで記憶が飛んでしまっていてね」

 

「私も、101位の|四十九院(しじゅういん)さんの事なんて覚えていませんよ?」

 

「あの頃の私の人形の質が低かったからね……夜会に出られる実力がありますよ!!」

 

「夜会と言う事は、私と正面対決できるね」

 

「あ………そう考えると、人形の質が低くてよかった!!」

 

「……………………………」

 

 

私ってそんなに嫌われているなんて思いもしなかったと……白狼はいじけている事を隠すために、ポーカーフェイスにアレンジを加えた顔を前面に押し出すようにして感情を隠した。

 

 

「人形云々の話は冗談として、イギリスにあるヴァルプギス王立機巧学院であんたが臨時教授として勤まっているかが心配でね。

 

一応、イギリスとは同盟関係にある我々大日本帝国の恥に成っていないか、上の方々は心配でね」

 

「そこら辺は大丈夫ですよ。

 

学院長のエドワード・ラザフォード氏には、特別待遇で招かれています。

 

講義の方も、希望者が多いので上々かと私は考えます」

 

「それならいいのだけど……ただでもさえ、ロシア相手に一方的な虐殺を行った魔王として有名ですから…あんたは」

 

「いやいや……あれは、あの時の上官たちが無理な命令を下して私を殺そうとしたせいですよ……それを私が利用したと言う点は否めませんが」

 

「そりゃね……あの戦争の前でも軍上層部から目の敵にされていたのは、あんたは気付いていたんだろ?」

 

「ええ……禁忌の研究ができる資格である魔王となったのはいいが……軍の勧誘を蹴りまくった私ですから……」

 

 

白狼が言った軍の勧誘を蹴ったのは間違いない。

 

理由は至極簡単、入隊条件が気に入らなかった……ただそれだけである。

 

 

「欲しかった条件である

 

特殊な鉱石レアメタルの定期的に渡す事、

 

大規模な戦争などで出た死体を私に提供する事、

 

高級将校クラスの席を提供する事

 

の三つだそ……無理難題を押し付けたか?」

 

「いや十分酷い譲歩だぞそれ……あの西の花である花柳斎だってそこまで言わないと思うぞ」

 

「あんな失敗作を作ったヤツと比べて欲しくはないな……………………………

 

作り手(おや)に望まれずに産まれてきた人形(こども)がかわいそうになるぜ……

 

 

 

白狼の最後の方の言葉は、ひどく小さくそして悲しい声がしていた。

 

真理は、その言葉が聞き取れなかったようで、首を傾げた。

 

 

「白狼最後の方の言葉が聞こえなかったけれど……今関係ある事かい?」

 

「いいや真理。何の関係もないよ……ただ西の花もかわいそうだなと言っただけさ」

 

「ふ~ん……それならいいけど」

 

 

意味深な言葉をこちらに向ける真理………それをどこ吹く風のごとく無視する白狼と言う図ができていた。

 

 

「そうそう、その花柳斎で思い出したのだが……あいつもイギリスに連れていくから上にそう伝えておいて」

 

「理由は?」

 

「自分が作った人形が神性機巧(マシンドール)になるところを見学したいらしい」

 

「ああ……そう言えばあの赤羽の小僧が連れている人形が、神性機巧になる可能性があるて……あの榊の爺さんが言っていたのを小耳に挟んだな」

 

「さすが…と言っておきましょうか。人形に関する話は、大体耳に入っている様ですね」

 

「まあ………人形師のみで構成された部隊“第13特殊機功師団”の師団長ですもの人形に関する話は全て私の耳に入ってくるもの」

 

「いや……そう言えばそうでしたね……すっかり忘れていました」

 

「は~く~ろ~う……あんたっていう人は、どうでもいいって事から目を背けすぎだ私は思う!!」

 

「はいはい…説教はまた今度……そろそろイギリス行の飛行機に乗り損ねるので私はここらでお暇させてもらいます」

 

「ちっ………まあいいだろう。今回は私も後でイギリスに行くからその時はよろしく頼むぞ」

 

「はっ!!仰せのままに」

 

 

白狼は、虎徹の方に向かって敬礼をして退席する。

 

それを、見守りつつ布を再度巻きつける……虎徹の姿があった。

 

 

 

 

 

その足で工房へ向けて歩いた白狼は、頭の中でとある人形に関する構想を膨らませていた。

 

重装甲にようる高防御力と遠距離の敵に当てられるほどの遠距離用の砲を兼ね備えた人形に使う魔術回路の事だ。

 

「従来の一個の魔術回路だったら無理だからな……しかし、二つ以上の魔術回路を持たせると魔活性不協和の原理が邪魔をするし……

 

あれ?今影にいる影桜達の魔術って二つ同時使用じゃなかったけ?」

 

 

白狼は、頭の中で自身の知恵を引っ張り出しているふりをして、自身の能力を使って完成している技術を使い次の人形を作成すると決めたようだ。

 

 

「設計図自体は、家の書庫を探せば見つかるだろうから……

 

これは、四鬼家の秘密にしておこう……私が作ろうと思う人形の設計図は、飛行機の中で書けばいいから何の心配はないな

 

さて次は、それに付ける名前だな……………………京都にある山の一つ神山(かもやま)と名付けようかな?」

 

 

白狼のポーカーフェイスが崩れ、ポーカーフェイスの裏に隠れていた悪魔の微笑みみたいな顔をのぞかせながら帰路を歩いていた。

 




お読みいただきありがとうございます。

さて……白狼の実力は分かって貰えたと作者は思っております。

次回からは、いよいよ白狼が、イギリスの地を踏みます。

お楽しみください。


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イギリス行の飛行機の中……イギリス到着…そして機功都市へ

長らくお待たせしました……今回、人形一つ作成するのに手間取りましてかなり時間を食いました……

その分量は多めの10000文字程度となっています。

では、白狼の旅行の一部をご覧あれ~~


時間は進み、白狼が乗せた飛行機は、現在イギリスのグレートブリテン島の上空に来ていた。

 

白狼は、機内に設置されている机に向かって人形の設計図の草案を書いていた。

 

 

「人形の装甲が問題だよな……………これは次の世界にもっていこうかな……」

 

 

設計図上には、使用する魔術回路と武器は描かれているが、肝心の人形の本体の絵が描かれていなかった。

 

 

「……ガンダムから、特殊装甲を引っ張って来ようかな?

 

まあそれをするなら……他の世界から引っ張ってきてもいいな」

 

 

白狼は、自分の知識の中にある人形に関する知識を思い出しながら図面を引く。

 

その人形に使われている魔術回路は、五種類。

 

「天災」・「量子」・「火薬」・「迅雷」・「??」

 

その人形に使われている特殊装置・武装・装甲は、合計で24種類。

 

特殊装置

 

・機動戦士ガンダムF91から……フルサイコフレームの運用のためのシステム:ネオ・サイコミュシステム

 

・ガンダムOOから……太陽炉から膨大なエネルギーを取り出す機功:新型GNドライヴ

 

IS(インフィニット・ストラトス)から……物質を量子変換し格納する:量子格納庫

 

・オリジナル……魔力運用による高速移動用のマジックスラスター:ハイパースラスター

 

・オリジナル……マナを自身の中で生成する装置:マナ・ジェネレーター・バージョンΩ

 

・オリジナル……マナを圧縮して液体マナに変換する炉:魔力圧縮炉・マークⅤ

 

・オリジナル……マナ蓄積用の高性能のタンク:ハイパー・マナタンク

 

・オリジナル……マナを消費して移動力をアップさせるブースター:ハイパー・マナブースター

 

・オリジナル……魔活性不協和の原理を解消する装置:魔力分留装置

 

特殊武装

 

・逆襲のシャアとガンダムOOとガンダムSEEDの三作の兵器を融合……

           オールレンジ攻撃を目的とした遠距離砲台:GNシステム・バージョンν

 

・アーマードコアⅤから……不明なユニット:オーバードウェポン一式(量子変換済み)

 

・コードギアス反逆のルルーシュから……マイクロ波誘導加熱ハイブリッドシステム:輻射波動機構

 

・そらのおとしものから……対国武具:弓矢型最終兵器「APOLLON(アポロン)

 

・そらのおとしものから……対人武具:超振動光子剣「Chrysaor(クリュサオル)

 

・ローゼンメイデンから……水銀燈の黒い羽を改良して試作された:フォールダウンウイング

 

・オリジナル……四鬼白狼作の日本刀:魔刀「椿姫(つばきひめ)

 

特殊装甲

 

・∀ガンダムから……ナノマシンによる復元能力:ハイパーナノスキン

 

・∀ガンダムから……滲み出させたナノマシンの硬化により耐物性能を得る:ウージィ・アーマー

 

・ガンダムSEEDから……物理ダメージを軽減する:ヴァリアブルフェイズシフト装甲

 

・Gガンダムから……全環境適用型ナノマシンで作られた細胞:アルティメットガンダム細胞

 

・ガンダムUCから……人形の思考を即座に行動に反映するフレーム:フルサイコフレーム

 

・ガンダムGジェネレーションから……別機体を盾・武器とする装甲:ガーディアン・ドレス

 

・オリジナル……魔法に対するダメージを軽減するコーティング:耐マナコーティング

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白狼が描き終った設計図を見て目をそらす……

 

 

「詰め込みすぎたな……まあこの世界で使うつもりも無いし大丈夫だよな」

 

「そうですね。と言うか……白狼さん?貴方はすでに神性機巧(マシンドール)とはどんなものか知っているじゃないですか?」

 

「いやいや……私が技術を司るスターゲイザーであっても……分かりませんよ。

 

それもこの私が介入した世界じゃあ

 

その世界の技術がどうなるか分かったものじゃないからな……

 

現に、1+1=2と言う答えのはずが全く違う4と言う答えに行きついた世界になった所があるぐらいだからね」

 

「まじですか……スターゲイザーってそんなに世界に影響力があるなんて知りませんでした」

 

「そりゃそうですよ“黒衣さん”それだけの力があるから星の見守り手なんて呼ばれるんだよ」

 

 

白狼は後ろを振り向いた。

 

そこには、いつもの巫女服に煙管を吹かした少女の姿があった。

 

 

「スターゲイザーは、動くこと自体がヤバい事が起こっていると言う事であり動かないことが一番だと言われているんだよね」

 

「そこは知っています。

 

ですが……白狼さんは、世界干渉を好んですると言う噂を聞きますが」

 

「それは、十二円卓の奴らの後始末をするためさ……あの暇人共のはた迷惑の行為で歪んだ世界を修正するのが私の役目ですから」

 

「へ~~」

 

「興味なさげですね」

 

「まあ……私が知った所で何にもできませんし」

 

「それもそうですか……

 

まあ今は安定しているから、私を異世界旅行と言う休暇を送れていますがね」

 

「え……今も少しばかり世界が歪んでいると思いますが?」

 

「あれ?旧境界の神理がいた頃は、これ以上に歪んでいたよ?

 

さらに、これぐらいなら歴史の修正力のおかげで元に戻るから干渉しなくてもいいのさ」

 

「ですが……この世界で起こった日露戦争のロシア軍の大敗と日本側の損害の差が大きいかと」

 

「そこはね……ちょっとした裏技がある。

 

死者数が同じなら世界はそんなに歪まない……

 

ロシア軍が全滅して死亡した人間の数が丁度日露戦争の死亡する人間と同じになるように調整して殺しまわったから問題なし」

 

「そんな裏技があるなんて!!驚きです」

 

「黒衣さんの未知を既知に変えられて私は満足だよ。

 

さらにこの法則に名前を付けるなら魂保存の法則かな?」

 

 

輪廻転生の輪の上に乗る魂には、国や国籍、質は全く関係ない、関係しているのは、量だけである。

 

 

「どれだけ転生者が人間を救おうとも、世界求める必要な分だけ魂は輪廻転生の輪に乗るようになる。

 

これを変えられるのは、我が主である星の神理ぐらいだろうな……」

 

「そうですね。でもその方が動かれることは少ないですから……小物である転生者は目の前に立つことすらできないでしょうね」

 

「言い過ぎとは言えませんからね……この私でも身震いするほどの威圧感ですから……

 

もし転生者が顔を上げて物を言えるなら、そいつは全くのアホか想定外の実力を持った化け物のどっちかに成りますね」

 

 

白狼は、クスクスと笑った。

 

それは、忍び笑いだったのか……それとも笑い声を抑えるために無理やり抑えたのか……

 

それを知るのは当の本人だけである。

 

 

「でも白狼さん、私としてはそんな人物ができて欲しいと思いますよ」

 

「?そうですか……まあそんなことが出来るのは、全く違う転生形態をとった私たちが認識できていない神様が生んだ転生者でしょうね」

 

「そうですね。でもそんな人物いるでしょうか?」

 

「まあいたとしても…私たちの前には、現れる事はないでしょうけど

 

もしそれが現れたらとしたら本来ぶつかるはずのない物と物がぶつかった時だけだよ。」

 

 

白狼は、目を細めてその言葉を紡ぐ。

 

星の神理が、昔に話してくれた事を思い出しながら……

 

それにより会話が途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その沈黙を破るかのように絶対になるはずのない黒電話が鳴り始めたのだ

 

この黒電話は、白狼が身近に持っている

 

この黒電話の電話線はないため後ろに出ている黒い電話線が存在しない。

 

さらに、この電話を知っている人物は限られている……

 

なにせ、この電話と通信できるのは……三つの電話だけだ。

 

一つ目は、陸軍の司令官:陸軍大将(りくぐんたいしょう)

 

二つ目は、特殊機功師団の総合指令部の中にある電話

 

三つ目は………

 

 

「白狼さん……この時代に携帯電話は存在しないはずですよね?」

 

「そこら辺は、百鬼国の魔力通信だから大丈夫」

 

 

白狼は、軽口をたたきながら黒衣に静かにするように指示を出した。

 

それを見た黒衣は喋るのをやめて近くにあった椅子に腰を掛けた。

 

それを確認した白狼はそっと受話器を取った。

 

 

「こちら、第13特殊機功師団・副師団長:四鬼白狼少将の直通の電話ですが?お間違いありませんか?」

 

 

白狼はわざとらしく、出たときの決まりごとを言う。

 

 

「いや間違っていない……元気そうだな白狼君」

 

「その声は!!本当にお久しぶりですね東郷(とうごう) 平八郎(へいはちろう)海軍大将(かいぐんたいしょう)閣下。

 

貴方様がこの直通電話を使用するなど驚きました。」

 

 

白狼は、受話器の前で驚きの顔をする。

 

それを見ていた黒衣は笑いを抑えながら白狼の顔七変化を観察す構えを取った。

 

なぜ白狼が驚いたかと言うと……通常この回線に掛かってくるのは、大日本帝国陸軍からの人形作成依頼ぐらいだ。

 

一応海軍にも直通電話は置いてあるが、海戦に不向きな人形を使う白狼に連絡が掛かってくることはない。

 

もし戦争行為なら、自分の上司に当たる虎徹中将から連絡が来るはずだ。

 

 

「いや…折り入って話があるのだが……海戦専用の自動人形を作成してくれないか?」

 

「その話は、依然断ったはずです。日露戦争にて私が行った戦闘は、いわばゴリ押し戦闘……最高級品の自動人形と魔王クラスの人形師がいて初めてできる目があると言った戦法です。

 

私の場合十二人形と言う最高級品の自動人形がおり、対集団戦に特化した百鬼国人形操作術のおかげで、あの快勝が出来上がったのです。

 

当然のことながら、十二人形の量産しようものなら国が傾きますし、百鬼国人形操作術を普通の人形師におぼえさせ様なら、廃人になる可能性を考慮してもらいたい。」

 

「それもそうなのだが……海軍会議にて、決定してしまったのだよ、この案件」

 

 

平八郎は、愚痴を言い始めた。

 

白狼は、またかと顔をしながら手元になる神山の設計図を床にできている自身の影の上に置いた。

 

そうするとどうだろうか……その設計図が影から出て来た白い手によって影の中に沈んでいったではないか……

 

 

「いつ見ても、不思議ですね……影桜の魔法の能力でしたか……この現象は」

 

 

白狼は、無言で首を縦に振った……肯定だ。

 

 

「なのだがら……白狼君聞いているのかね?」

 

「ええ聞いておりますよ。他の将校たちが、閣下の意見を抑え込んで可決させてしまったのですね」

 

「ああそうだ……すまないが、白狼君どうにかできないかね?」

 

「むずかしいですね……高級品の自動人形を作るにも、戦艦一つと同等資金が要ります。

 

それにそれを量産する場合、さらに資金がかさむ……

 

それでは、普通の自動人形を使用すればいいのでは、ないか?言われますがそれでは戦艦に太刀打ちできない。

 

まさに、八方塞がりですよ…海戦用の自動人形は……」

 

 

白狼には、一応代案があるが……艦隊これくしょんの艦娘たち……あれなら量産も効くし、性能としても十分である。

 

ただ……これ以上日本を強化してもいいのかと言う点が残る……

 

そこは、他の海軍にも情報を流せばいいだけの話なのだが……

 

 

「そうか……やはり無理か……かの天才人形師の君さえ無理と言うのなら……花柳斎殿に頼むしかないか……」

 

「それは無理ですよ…彼女は今海外旅行中ですよ」

 

「どうゆう事だ白狼!!」

 

「そうか……この反応は、陸軍の奴ら黙っていたのか……ま、いっか

 

現在、西の花はイギリスにヴァルプルギスの夕べをご覧になるために休暇を取っているはずです……」

 

「本当か……なんと間が悪い事だ……」

 

 

白狼は、平八郎が心の芯が折れた音が聞こえたような気がした。それを感じ取った白狼は、なんか悪い事したな…とちょっと罪悪感に駆られた

 

 

「はあ……まったく貴方は、本当に頭が固いお方だ。少し視点を変えれば、答えが出る者を……」

 

「どうゆう事だ白狼!!貴様先程海戦用の自動人形は出来ないと言ったばかりではないか!!」

 

「ええ“海戦用”の自動人形は作れません……しかし、“戦艦”を自動人形みたいにする事は出来ます」

 

「はあ?それはどうゆう事だ」

 

「簡単です戦艦自体にイブの心臓……簡単に言えば自動人形の核を使った戦艦は作ることは出来ます。

 

これにより戦艦自体が意思を持ち、自動航行が可能になり……魔術による効果も期待できる……まあ使える魔法は一種に限りますが」

 

 

白狼は、ため息を吐きながら代案中の代案を出した……これじゃあ艦これではなく、蒼き鋼のアルペジオだな……と苦笑いをしてアーモンドをかじった。

 

 

「続けますが……現に英国にて、『陸上戦艦』ダイダロスが作成を終了したとの情報があります。

 

これは、中にイカロスと言う自動人形を封入して魔術を行使する機構としている様ですよ」

 

 

イギリスの国家機密をあっさりとばらした白狼の言葉に平八郎は息をのむ。

 

白狼はそれを気にすることなく話を続ける。

 

「さて問題は、イカロスに使われている魔術回路ですが……大方「歪曲」でしょうね…これなら砲弾をそらすこともできる…さらに、空間を歪曲させる事で宙に浮かぶこともできます。

 

まだまだ利点がありますよ……イブの心臓特有の知覚能力利用する事で、遠方の映像投影や無線傍受の機能を持つまで付けられる。こんな具合ですかね?

 

では、閣下再度言います。

 

私は、海戦用の自動人形は作ることは出来ませんので、今回の依頼はお断りさせていただきたい。」

 

 

言うだけ言ったと言う顔をする白狼を見て黒衣は笑いをこらえ始めた。

 

それを見た白狼は目を細めて黒衣を威圧する。

 

その間にも思案する平八郎はため息を吐いて回答を言った。

 

 

「分かった。では、依頼内容を変えよう自動人形を戦艦に変化させることは出来るか?」

 

「ええ、それなら出来ますよ。ただし、戦艦を一から作ると言うのですからそれ相応の資金が必要です……用意できますか?」

 

「ああ、戦艦研究に掛けるだけの資材と資金を渡そう」

 

「分かりました。では、イギリスに着き次第伝書鳩にて素案を提出させていただきます。」

 

「了解した。海軍の上層部には私から伝えておく」

 

 

平八郎はそう言い残すと電話を切った。

 

白狼はそれを確認して大きく息を吐いた。

 

 

「疲れた……まったく日本の奴ら無理難題を押し付けすぎだ……」

 

「そうですか?それは単にあなたが信頼されているだけでは?」

 

「そうかもしれないが……まあ本当にできもしない事を言われるよりはましですが」

 

「そうですね……本当は製作できるが、本来ありえない技術での製作なので世界に影響を及ぼしかねないと言う事でしたか?」

 

「そ、技術の化身としては、人間にはよく学びよく考えて発展して行って貰いたいのだよ」

 

 

えらそうに語る白狼は、近くにあるタイプライターを取り出して文字を打ち始める。

 

それを見た黒衣はこれ以上ここに居ても意味がないなと感じて、空間にひずみを作り虚空へ帰って行った。

 

それを気にすることなく白狼は打ち続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在のアイルランド共和国があるアイルランド島の上空まで来ていた。

 

 

「ふう…こんなものか、しかし戦艦一隻作るのにこんなに計算式が必要なんて思いもいしなかったな……」

 

 

白狼の横には、何枚ものレポート用紙が乱雑に置かれていた。

 

その一枚一枚には、膨大な計算式が描かれており一目見て何をしている計算しているのか分からないレベルだった。

 

機内に置かれているスピーカーから、男の声が聞こえた。

 

 

「御屋形様、そろそろスターカード領上空です。

 

手荷物等の確認をお願いします。」

 

「了解した。ざっと十八時間か……まあそれぐらいだろうな……」

 

 

飛行機に備え付けられているからくり伝書鳩を手元に持ってきた。

 

からくり伝書鳩の口を開けて、中に高密度の魔力を固めた魔石を放り込む。

 

 

「伝書鳩12号…キミに依頼を頼む。これを大日本帝国海軍の東郷平八郎海軍大将閣下へ届けてくれ、頼むぞ。」

 

 

からくり伝書鳩はゆっくりと頷くと白狼が持っていた一枚の紙をきれいに食べてしまった。

 

 

「これでよし……では着陸後と飛び立ってもらいましょうか」

 

 

白狼はにやり顔しながら飛行機が滑走路に着陸している場面を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白狼が滑走路に降り立つと、そこには赤毛の長身の美女が立っていた。

 

 

「やはり予想通りか……|魔術師教会<ネクタル>の教祖様には、私がこの時間帯に来ることは分かっていたみたいだね……キンバリー教授」

 

「ふん。我々の<|灰十字<クルサーガ>>としては、貴様をここで始末した方がいいと意見が大多数だ。

 

貴様は、教祖様の意向で生かされていると思った方がいいのでは?」

 

「はあ……そんなに強がって肩を張っても意味がありませんよ…|鶯<うぐいす>。

 

今攻撃されても迎撃できるだけの準備はすでに整っていますし、

 

ここは百鬼機関の御膝元の一つスターカード領のど真ん中……もし戦闘行為が起これば百鬼機関の連中がぞろぞろとやってきますよ」

 

 

白狼は、あきれた様子を露骨に出して相手をあおることにした。

 

ここで戦闘行為に成っても、どうせ彼女は生き残るだろうし、魔術師教会の番犬どもの死体を手に入れれば、万々歳だ。

 

 

「あいにくだったな虐殺の魔王。ここにいるは私一人だ……貴様は私を殺すことは出来ないのだろ?」

 

「ちっ……考えましたね。分かりましたよ分かりました。

 

こちらの負けです……おとなしく学院まで連行されますよ……

 

それとも、私を魔術師教会へ連れってくれるのでしょうか?」

 

 

白狼はこの状況を面白くするためにとんでもない提案をした。

 

魔術師教会は魔術を扱う人間たちの総本山みたいな場所で、たとえ白狼と言えど、無傷で逃げ出せるほどやさしい場所ではない……と世間一般からは思われている。

 

ついでに言えば、魔術師教会は白狼少将をブラックリストに指定しており、殺して実験材料にせよお達しまである……

 

そのためこの提案は、キンバリーから見れば棚から牡丹餅レベルの話である。

 

 

「ふん、事を言われてもお前の事だ隠し玉がある可能性もある……そうやすやすと教祖の元へ行かせるわけにはいかない」

 

「ちっ…そうですか、なら残念………では、私はこのまま学院行きですか?」

 

「まあそうなるな…というか、最初からそのつもりだ」

 

「あら……そうなのですか?私は余計な心配をしていたと言う事に?」

 

 

白狼は首を傾げて、不思議そうな顔をした。

 

キンバリーはそれを長年の付き合いからフェイクだと見抜き勝手に話を進める。

 

 

「全ての準備はこちらで済ましてある…当然のことながら名誉教授としての来賓枠であり、生徒からの要望でセミナーを開いてもらう。」

 

「いつもの条件ですね……といっても私自身は、今回で二回目ですが」

 

「貴様の一族は、ヴァルプルギスの夕べに大層興味を示しているな……理由は何だ?」

 

「それはですね。私の一族の最初の人物である初代スターカード卿の遺言で

 

世界中のありとあらゆる技術の収集する事でして……それが一族の宿命みたいなものに成ってしまい現在に至ると言うわけです。」

 

 

白狼は照れながら言葉を語る…ときどき、頭を書くしぐさを取り入れながら……

 

 

「そうか……私は、そんな物には興味はないな……」

 

「いやあなたが聞いて来たのでしょ!!」

 

「それもそうだな……だが、今はそんなに時間がない……列車に乗り遅れてしまうかもしれない……」

 

「え……一般の列車に私を乗せるのですか?」

 

「そうだが……何か不満でも?」

 

「いや、いいのですが……」

 

 

白狼は旅先での事故が起こる予感したのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白狼の予感が空振りに終わるかのごとく、午後の機功都市・リヴァプール行きの列車に乗り込んだ、白狼とキンバリーの二人

 

 

「ここまで順調に来ましたね」

 

「ああ、そうだな」

 

「私としては、これ以上警戒しなくてもいいので安心しました。」

 

「?どうゆう事だ……」

 

「いえね……私のジンクスと言いますか、何と言いますか………私が一般客と乗車するとかなりの確率で敵に出合い攻撃を受けます……

 

そしてその乗り物は必ずと言っていいほど事故に見舞われます。」

 

「へ……だが、ここまでに来るために乗った乗り物では、そんなことは起らなかったぞ」

 

「そうですね……だから、最後のこの列車で、何かあるのではないかと心配になったのです……」

 

 

白狼は、すまし顔でそんな言葉を吐く……それに答えるかのように、一等車両の入り口のドアが、行きよい良く開けられる音がした。

 

 

「あ……今の完全にフラグでしたか……これは反省しないと……」

 

「と言う事は……」

 

「ええ敵対勢力の襲撃です。」

 

 

それを言い終わると同時に、白狼達がいる個室のドアが行きよい良く開けられた。

 

 

「ボイド・スターカード…死ねーーーーー」

 

「そうやすやすと、死んで上げる者ですか……影桜」

 

 

扉の前にはブローニングM1917重機関銃を両手持ちで持った大男が、こちらに銃口を向けて引き金を引く。

 

それと同時に、白狼は自身の影を、二回つま先で軽く蹴る。

 

そのあと、重機関銃から毎分600発の銃弾が射出される。

 

客室の中は、重機関銃から発生する白煙が満たされた……

 

 

「やったか!!」

 

「はいフラグありがとうございました。

 

当然のことながら私たちは無傷ですよ」

 

 

窓から流れ込んだ風によって空気が循環して白煙が消えた。

 

客室の中には、無傷の白狼とキンバリーが座っている。

 

撃たれる前の客室と違う所は、床に大量の弾丸が転がっていることぐらいである。

 

 

「浅はかだな君は、このレベルの銃弾じゃあ私を撃ち抜くことは出来ないよ?

 

ああ君に行ってももう意味がないか………」

 

 

そう言い終わるか終らないかのうちに、銃弾をうった大男は銃弾の海に倒れ伏した。

 

 

「襲撃を受けたと言う事は……まあさっき言った通り……」

 

「この列車は事故に合うのか?」

 

「うん……多分こいつの仲間が今頃列車のブレーキを壊している頃だろし……」

 

「はあ……」

 

 

キンバリーは溜息を吐いて事態を重く受け止めた。

 

白狼はその逆で、いつもの事でどうにでもなるなと確信して魔石を影に落とした。

 

 

「ありがとね、影桜。いつものことながら君の反射神経にはいつも助らえていえるよ」

 

「言えどういたしまして、お父様。私の役目はお父様の護衛役ですから」

 

 

いつのまにか、白狼の横には、黒い和服に身を包んだ黒髪の絶世の美少女が立っていた。

 

その少女の和服の丈は長く踝が隠れるほどに長かった。少女の顔は、目は綺麗な黒色で人間離れした整った顔立ちをしている。

 

肌は透き通るほどの白色であるが、とても病人には見えない程度の白さだった。

 

身長は、180㎝の白狼とは20㎝低い160㎝ぐらいだろうそんな少女はニコニコしながら、大男を踏みつけながら白狼に紅茶を振舞っていた。

 

キンバリーは今気づいたのか、びっくりした顔をして白狼をにらんだ。

 

 

「そいつが、かの有名な十二人形の一体……影桜か」

 

「はい、その通りです。

 

私影桜は、初代四鬼家当主・死鬼神空亡(しきがみ・くうぼう)様が作り出した最高傑作…十二人形が一体、影の人形とは私の事です。」

 

 

影桜は、無い胸を張るように胸を突き出し、その胸をポンと打った。

 

白狼は、少し苦笑している風にも、照れている風にも見える顔で影桜を見ていた。

そして、やっぱり和服には貧乳が合うな…としみじみ考えていた。

 

キンバリーは、なるほど先程の銃弾は影と言う不確定で不明確な、物で防いだのか……

と考察を頭で考えていた。

 

その三者三様な考えをしている間に駅を通り過ぎていったのを車窓から確認できた。

 

 

「む……どうやら白狼ビンゴの様だ……今通り過ぎたのは、リヴァプール駅だ。」

 

「ですよね……前の方の二等列車から、ブレーキが止まらないのだ、なぜ最終駅のリヴァプールを通り過ぎても止まらないだのが聞こえてきますからね………ははは」

 

「笑っている場合か……この列車がそのまま突っ込んだら大変な事態になるぞ!!」

 

「そこら辺は大丈夫ですよ……どうせあの小僧と最高級品の自動人形達が何とかやってくれるさ」

 

 

白狼はそうなることが容易に想像できると言う顔をして押し黙る。

 

影桜は、既に影の中にも繰り込んだのか姿が見えず……そして、大男と銃弾とブローニングM1917重機関銃は姿を消していた。

 

キンバリーは、その小僧に自分の運命を掛けるのかとため息が出そうになった。

 

そして、隣の客室からは次のような声が漏れていた。

 

 

「主!!今通り過ぎたのって私たちが下り駅ですよね!!」

 

「どうしたのいろり姉さま?そんなに慌てる事?」

 

「どうしたのじゃありません!!

 

小紫……私たちは、先ほどの駅で降りるはずでしたのに、そこでこの蒸気機関車は、停まりませんでした……

 

さらにこのたいむて~ぶる?によれば、先ほどの駅は終点でこの後はこの蒸気機関車をしまう車庫だけです……

 

このままいくとわが主は、我々が守るとしても他の乗客がぺしゃんこになってしまいます」

 

 

完全に隣の客室に誰が乗っているのかまるわかりの会話を繰り広げている二人の声がこちらまで聞こえて来ていた。

 

 

「ふ~んあの花もこの列車に乗っていたんだ……これは第二目的として花の死亡も含まれていたのかもしれないな……」

 

 

小さな声でしゃべる声は、列車が震える音でかき消されキンバリーには届いていなかった。

 

 

「さて、キンバリー教授もそろそろ座席に捕まっていた方がよろしいかと……そろそろ急ブレーキがかかる頃ですから……」

 

「そうか……で止める方法は?」

 

「人形を使って無理やり停止させます」

 

「………………………………………………………はあ?」

 

 

キンバリーが白狼を問いただそうと座席から手を離した時、暴走列車と何かがぶつかる音がした。

 

次の瞬間には車両と車両が玉突きを起こし、浮き上がった。そのまま50mは進んだのだろうようやく止まった。

 

 

「ふう……なんとか無事に済みましたね……………またか………」

 

 

白狼は呆れ声を出して今の状況を見た……ぶつかる直前で手を離したのだろうキンバリーは白狼の顔の横に顔がある状態におり……見方によったら二人が抱き合っているように見えるそんな様子に成っていた。

 

 

「おい、キンバリー教授そろそろどいてくれないか?私も状況の把握に行きたいのだが?」

 

「ああ……すまないな」

 

 

白狼は、何のこともない様子でその場を立ち去り、対照的に顔を真っ赤にしたキンバリーはその後を付いて行った。

 

 

白狼が、リヴァ―プル入りした際に起った小さな出来事である。




さて、今回でやっと機功少女は傷つかないの本編にやってきました……いや長かったな……

さて、次回はなにしようかな……まだキンバリー先生をいじりたいから魔術喰いで弄りるのもいいな……考えております。


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白狼の屋敷

大変遅くなりました。
まあ、理由としては向うの執筆に追われたり、この話の次の世界の執筆を行ったり、まったく関係ない物を書いていたりと、執筆活動だけはしてましたはい…………
今回のようにこちら側は、でき次第投稿すると言う形を取っていますので、完全に不定期です……半年以上開くかもしれませんが、お待ちいただけると幸いです。

今回は、7000文字程度です。


機功都市リヴァ―プル端の一角にある古びた豪邸があった。屋敷の壁には蔦が自由に伸び、ガラスには蜘蛛の巣が張っていた。それらが、この館が古びた館なのだと教えてくれた。

 

白狼は、蔦が巻き付いた鉄格子の門を開け、門の上についている紋章を見た。

 

紋章を入り口から見ると、イギリスの騎士が持っている盾の紋章が見える。

その盾の紋章は、下地は青、模様は黒色で塗りつぶされた六芒星と六芒星の頂点に黄色で塗りつぶされた五芒星が描かれている。

 

しかし、この紋章には続きがあり、

逆に出口から見ると、下地は黒、模様は外周部に十二芒星が黄色の線で書かれており、中央にはこれまた黄色の船で六芒星が描かれている。

その紋章の形が、盾型ではなく円型をしていた。

 

そんな外装をしている館を白狼は、見つめながら門をくぐる。

 

「しっかし……たった四年ほどほっといただけで、こんなことになるのかね。

まあ、人がいないと言うわけではないのだが…………先にイギリス入りをしているメイドが掃除をしているはずだが……」

 

白狼が屋敷の庭を歩きながら、埋め込まれている術式を確認して行く。

 

「正常に動いているようだな…………」

 

白狼が屋敷の玄関まで来ると、中からどたばたと、せわしなく動き回る人間の足音が聞こえてくる。

その足音の数は、一人、二人ではなくかなりの人数がいる事が分かる。

 

「はあ……一週間前に出たはずの彼女がまだ掃除しているのか…………そんなにこの屋敷は広かったかな?」

 

白狼はその事を気にも留めず屋敷の玄関を開けた。

白狼の目に飛び込んできたのは、使用人の女性たちがせわしなく屋敷を掃除している所だった。

 

「はあ……本当に片付いていないだね……そこのナンバー88、いろりと咲夜は何処にいる?」

 

ナンバー88と呼ばれた少女は、作業の手を止めて白狼の方を向いた。

 

「おはようございます、ご主人様。(あるじ)とメイド長なら、現在書斎にて、書類の整理を行っております」

 

「そうかい……ありがとうね、ナンバー88……ちょっとまってね」

 

白狼は、ナンバー88の頭を、手でやさしく撫でながら、書斎の場所を思い出していた。

思い出した後、白狼はナンバー88の頭から手を離した。

ナンバー88は、それを名残惜しいな顔をした。

 

「さて、ありがとうナンバー88。じゃあ、お仕事がんばってね」

 

白狼は、そう言い終わると掃除している使用人の間を縫うように中央階段を登って二階に上がる。

 

 

 

 

 

白狼は、その後も使用人にねぎらいの言葉を掛けながら廊下奥の書斎の前まで足を運ぶ。

 

「さて、最初はただいまからだな……あとは流れに乗って……とよし」

 

白狼は、慎重に書斎のドアを開けた。

 

 

 

 

 

「おっ帰り~~アナタ~~」

 

白狼は、瞬時にドアを閉めた。すぐ後に、ドアに何かがぶつかる音とずり落ちる音がドアの向こうから聞こえた。

それを確認した後、白狼がそのドアを開けると綺麗な白銀色の髪を腰まで伸ばした綺麗な女性が顔面から倒れていた。

その女性は、白狼の妻のいろりさんである。

どうやら、さきほどドアにぶつかったのは、いろりさんだったようだ。

 

白狼は、それを気にすることなくいろりの髪と体を踏まないように避けながら書斎に入る。

 

書斎の室内と言っても、本がぎっしりある本棚ばかりではなく、自動人形の図面が描かれた設計図の束がそこらじゅうに置かれていた。

これは、白狼の一族が蒐集してきた世界各地の自動人形達の図面である。

これを解析できれば、世界中の自動人形を知ると同じ事になる。

当然、禁忌人形(バンドール)の設計図まである……これには、白狼も先祖のコレクターぶりに頭が下がる。

とはいえ、白狼自身もこの書斎の強化にいそしむ毎日である。

 

さて肝心の書斎の室内にいる人間は、いろりのほかにも給仕をしている女性がいた。

髪は、銀色の髪のボブカットに、もみあげ辺りから三つ編みを止めるのに緑色のリボンを付けている。

瞳の色は、 青色。

とまあ…………ここまで書いて、先ほどの白狼との会話で思い当たる人も多いだろう。

東方プロジェクトの十六夜咲夜さんその人である。

 

まあ……ここの咲夜は、とある世界から連れて来た少女の一人である。

 

「咲夜、すまないが紅茶を貰いえるか?」

 

「はい、かしこまりましたマスター」

 

咲夜は、何事もなくワゴンの上からテーブルの上にティーカップを置いた。

ティーカップの中に白狼が好きなロイヤルミルクティーを入れた。

 

その間に、白狼はすでに湯気が立ってない紅茶が入ったティーカップが置いてある席の向かい側に座った。

 

「うん……ちょうどいい時間だよ咲夜。やっぱりゴールデンタイム直後のロイヤルミルクティーは美味しいからね」

 

「はい、もったいないお言葉です」

 

「そんなにかしこまらなくても、もっとリラックスしていいんだよ……あといろりちゃん?いつまで寝ている気かな?そろそろそのはしたない恰好はやめてくれないかな?」

 

「あ……は~い」

 

いろりは、ゆっくりと立ち上がり体や服に付着した埃を落として、髪に手を通して撫でた。

 

「はい、完了っと」

 

いろりは、自分の姿を整えて白狼の向かいの席、湯気が立ってない方のティーカップの席に座った。

いろりが座ったの感知してか、いろりの前の紅茶は湯気を立ち昇らせた。

 

「まったく、使い勝手いいわね、その能力」

 

「いえいえ、まだまだ未熟者です。世界をゆっくりにできる時間はまだ30秒も行っておりません」

 

「ふ~ん。さすがに、まだそのぐらいか……練習内容を増やそうか?」

 

「いえ、マスター。この能力はじっくりとのばしていきたいと思います。それよりも、お腹がすきました……マスター少しいただいてもよろしいですか?」

 

「そうか……そろそろ昼食の時間か、わかった。いろり、君の部下の六六六死節団に休憩と人形専用の昼食を作らせろ。私は、君達ようの食事を作ることにしよう」

 

「分かりましたわ、アナタ……」

 

いろりは、近くにある伝声管の一つを開けて、声を吹き込む。

 

「  六六六死節団に告ぐ、現在の時刻は12:55分だ。13:00から休憩時間とする……ただし、今日の食事当番であるα・β・γ部隊は、調理室に向かい料理を開始せよ。ただし、調理場には四鬼白狼も入るくれぐれも、粗相がないように、

  繰り返す、13:00から休憩時間とする……ただし、今日の食事当番であるα・β・γ部隊は、調理室に向かい料理を開始せよ。ただし、調理場には四鬼白狼も入るくれぐれも、粗相がないように、

 分かったか!!」

 

廊下の方から、「分かりました、マイマスター」と掛け声が聞こえる。その後忙しく、掃除道具を仕舞に走る音が館に響いた。

 

「さて、あと五分ほど待って私も作りに行きますか」

 

白狼は、一つの紙束をそこら辺の机の上に置いた。これも、白狼が蒐集した自動人形の図面である……厳密には、白狼が描いた震電改二である。

 

「高速機動用震電の最新モデル、震電改二ですか。またとんでもない自動人形を作りましたね」

 

「まあね……ただ、航空機型としてはまだ完成品じゃないだよね…………そこまで、遠隔操作ができないからな……」

 

白狼は、自動人形を大まかに分けたシリーズ、それをさらに用途ごとに分別して、その分別したのを型と呼んでいる。

今回、出て来た航空機型は、艦隊シリーズと呼ばれる現代までに存在した艦名や航空機などの兵器の特徴を人形に持たせたものと言われています。

航空機型の特徴は、人形遣いを空母と見立て、そこから飛び出して、遠距離の敵を撃滅させると言うのが航空機型の一番の特徴なのだと言われています。

戦闘機型の魔力を受け取れる範囲(戦闘行動半径)は、震電改二の場合70Kmだと言われています。

 

航空機型のほかにも、

 

艦隊シリーズの中でも高出力の戦艦型、

 

戦闘機型の指揮官にして魔力を蓄えられる空母型、

 

出力は戦艦型に劣るが高機動の巡洋艦型、

 

地面に潜る魚雷等の特殊兵装を積んだ駆逐艦型、

 

地面に潜ることが出来る潜地艦型

 

なんてものも存在している。

 

「70㎞で十分だと思いますが……マスター?」

 

「70㎞では小規模の戦場では行けるが、大規模の……世界大戦なんて事になると足りないからね」

 

白狼は、咲夜の言い分を聞いて苦笑いをして席を立つ。そのまま、書斎の出入口の扉の方に歩いて行った。

 

「今日の昼の献立は、冷製ポタージュに仔牛のステーキ、赤ワインで主食にパンにしようかな……それでいいかいいろり、咲夜」

 

「それでよろしいかと……ただ、マスターは学園から呼び出しが来ているのであまりお飲みになりませんようお願いします」

 

「そうですね、アナタ。なにやら学園で事件が起こっているみたいですよ」

 

「ふ~~ん。まあいいでしょう……それなら、酒の量を減らさなければいけませんね」

 

白狼は、いろりと咲夜の双方から酒の量を減らせと言われたので、地下二階にあるワインセラーから秘蔵の赤ワインを出すのをあきらめて自家製の赤ワインのみにしようと落胆しながら書斎の出入口の扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

いろり視点

 

「さてと、彼が料理を作るまで時間があてしまいましたね咲夜」

 

「はい奥様。では、先ほど中断されてしまった学園で起こっている出来事についての話を再開するのがよろしいかと」

 

「そうね……小悪魔とパチュリーは地下一階の大図書館で本の整理しているからお邪魔するのも気が引けるし、かと言って地下三階の闘技場で練習している十二人形の顔を見るのもなんか微妙だしね……そうするしかないか」

 

私は、ゆっくりと息を吐いて先ほどの話の記憶を呼び起こした。

 

 

 

 

 

 

 

今朝、屋敷に一人の女性……学院長秘書官アヴリルが訪ねて来た事が事の発端である。

いろりと咲夜が、二階のいろりの私室で紅茶を飲んでいる時に、ドアをノックする音が聞こえた。

 

「咲夜、すまないがでくれないか?」

 

「はい奥様。何の用ですか?」

 

咲夜が、部屋のドアを開けるとそこには、可愛らしいメイド服に身を包んだ、赤髪のメイドが立っていた。

 

「ナンバー10……あなたの仕事は、玄関周りの掃き掃除のはずでは?」

 

「はいメイド長。私めが玄関を掃除してますと、学園からの使いだと言う方が来られまして白狼様のご来日前に話して起きたい事があるそうです。

現在、客間にて紅茶を出している所です」

 

「分かりました。いろり様にお客様の様です……

 一階の客間に御通ししているので、お会いになますか?」

 

「そうね……いいでしょう、学園との小競り合いするつもりはありませんし、これを利用して借りを作るのも面白いですからね」

 

いろりは、すまし顔でそう答えた。咲夜はその言葉を聞いて入り口から離れて一礼をした。それと同じく、ナンバー10も部屋の外で一礼をする。

いろりはそれを気にする様子もなく、この部屋の出入口の一つのドアから外へ出た。

 

 

応接室の前まで来たいろりは、扉を開け中に入る。

応接室の内部は、ヴィクトリア朝の室内で、家具は全て最高級品と言った贅沢な室内である。

その椅子には、黒眼鏡に金髪、腰にはサーベルを付けた女性が紅茶を飲んでいた。……学院長秘書官アヴリルである。

 

「ようこそ、スターカード商会の別荘の一つ人形の館へ歓迎しますわアヴリル秘書官殿」

 

「ああ、時間が惜しいのでいきなりだが本題に入らせてもらう」

 

「ええかまいませんよ」

 

「それでは、この資料を見てくれるか?」

 

「拝見させてもらいます」

 

いろりは、紙の束をめくり中の資料を見る。内容は、去年の10月から起きている自動人形が破壊されている。

 

「これは?」

 

魔術喰い(カニバルキャンディ)の事件資料…………要件は大方予想できるだろう」

 

「魔術喰いの逮捕又は、殺害ですか…………」

 

「ああ、貴様たち……スターカード商会が持つ自動人形の資料から

 これに合致する自動人形を見つけそれを持っている人形遣いを逮捕又は殺害してほしいと商会長伝えて欲しい」

 

「それぐらいなら、請け負いますよ。ただし、最終決定するのはうちの主人ですからそこは悪しからず」

 

「ああ、それぐらいはわきまえている」

 

「それでは、主人が到着し次第この事を伝え、判断を仰ぎます」

 

「お願いする」

 

アヴリス秘書官は、立ち上がり鞄をもってドア向かって歩き出す。

いろりは、自分の前に出された咲夜に入れてもらったロイヤルミルクティーを優雅に口にする。

そして何か思い出したように、手を叩く。

 

「そういえば、言っておかなければいけない事を忘れていましたわ」

 

「ほう……それは今言わなければなら事か?」

 

「ええ、それはもう…………言っておかなかければ、八年前の再現が起こりかねませんもの」

 

「…………」

 

八年前と言うと、白狼が魔王となった茶会が開かれた年である。

 

「学院長にお伝えください。夫からの伝言です…………

 ”愚者が地下に埋まっているはずだから、それを近々拝見しにまいりたいので邪魔をしないでもらいたい。”

 だそうです」

 

「愚者ですか……私には何の事だか分かりませんが…………学院長には伝えておきます」

 

「ありがとう。さて、お客様がお帰りよ。お見送りをお願いね」

 

「分かりましたいろり奥様」

 

ドアの前に待機していたメイドがアヴリル秘書官に一礼をしてドアを開ける。

ドアを開けた先には、ランプを持ったメイドが立っており、入り口までの道案内を行った。

 

「アヴリル様、早朝から起っている霧がまだ残っておりますので門までお連れします」

 

「ああお願いする」

 

「はいかしこまりました」

 

メイドが一礼してアヴリル秘書官の前に出る。そのままメイドが歩き出して、アヴリル秘書官その後ろを付いて行く形になった。

 

 

 

 

 

 

玄関を出ると、メイドか言っていた通り、早朝から発生していた濃い霧が人形の館の庭一面に漂っていた。

メイドは、その状況に慌てず手元のランプに火を入れた。

 

「お離れにならないようについて来れられますようお願いいたします」

 

「ああ、分かった」

 

ランプの燃料はガスなのだろうか……ガス灯と同じくらい発光しているが、色が白ではなく青色をしていた。

その青が、霧に溶け込んで幻想的な青色を作り出していた。

そんな様子を眺めていると、アヴリル秘書官は門の近くまでついていた。

 

「到着しました……では、またのお越しを心からお待ちしております」

 

メイドは、青色に発光するランプを持って一礼をした。アヴリル秘書官はそれを気にすることなく外で待たせていた馬車の業者に、学園まで戻るように指示してこの場を離れた。

 

メイドは、馬車が見えなくなったのを確認してガス灯の火を消して玄関の掃き掃除に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

咲夜視点

 

私は、いろり奥様の話を聞いて頭に疑問が横ぎった。

 

「質問よろしいでしょうか?」

 

「ええ、いいですよ」

 

「では僭越ながら………………なぜ、いろり奥様とマスターがイギリス入りした時間がずれているのでしょうか?

たしか、いろり奥様の飛行機に搭乗していたはずの花柳斎様が、マスターが乗っていた列車に乗り合わせていたはずでは?」

 

「ああそれですか……離陸したのは、同じ飛行場ですが……乗っていた機体が違うのよ。

白狼の事だから、機内で設計図でも引いていたんでしょ」

 

「それでは、一週間のずれに説明が付きません」

 

「なるほど……咲夜は、なぜ一週間も花柳斎が、この地に来なかったを知りたいのね」

 

「ええ、その通りです」

 

「ふ~ん……そこに疑問を持っちゃうか。

まあいいけどね。花柳斎が一日の間、スターカード商会の領地にとどまったか……私の想像だけど聞く?」

 

「はい」

 

私は、縦に頷く。

いろり奥様は、目を細めてこちらを見る……その表情からは、面白いと言う感情が見て取れた。

 

「まず、前提条件として……

 

・スターカード商会は、世界有数の人形生産を行っている大企業である。

・当然のことながら、スターカード商会の商館の地下には、人形を整備する工房が存在する。

・イギリスは、スターカード商会の生誕の地であり、あの飛行場がある領地はワンハンドレットデーモン卿である初代が王国から賜った土地である。

 

この三つ……ここまではいいかな?」

 

「ええ、大丈夫です」

 

「当然のことながら、その土地にも大規模な商館がある……俗に言うスターカード商会の総合本店……まあ総合本店の前に旧がつきますがね。

ですが、商館としての機能は生きていて……そこで働いている人もいます。

総合本店の機能は、本島の商館に移していますがね」

 

「へえ……そうなんですか」

 

「そうなのよ……本題の一日の間、何故花柳斎はその地に居続けたのか……答えは簡単……スターカード商会の最大の人形工房を見つけるためでしょうね。

旧総合本店とはいえ、他の商館と比べられないほどの大規模な人形工房があの商館の地下に眠っているのは人形師の中では有名な話。

それを見つけて、秘術を紐解けば……神性機巧のヒントにぐらいは、なるはずって言われているの」

 

「ですが…………マスターの周囲には、神性機功なんて存在しませんが……」

 

「そっ、その噂話は真っ赤なウソ……あの地下に眠っているのは、白狼が作り上げた出来損ない達が眠っているの人形の墓地みたいなもの。

ゆえに、探しても意味が無い……そんな事は花柳斎なら知っているはず……だから私の予想の範囲から出ないのよ」

 

「なるほど……あの商館そんな物が有ったのですね…………では、その出来損ないは、日の目を見る事は無いと……」

 

「まあそうなるよね……だだし、あれを人形と呼んでいいのならね」

 

「え?」

 

「あそこにあるのは、人形のパーツの中でも壊れて使え無くなった物だけを保管している共同墓地。

その点だけ見れば宝の山よね……」

 

いろり奥様はさみしそうな声色で話を締めくくった。

 




後半は完全にぐだってしまっていました。
いろりと咲夜の掛け合いは、完全に蛇足ですね……伏線でも何でもありません。

さて、次回からは、本格的に機功少女は傷つかないの世界に干渉して行きます。


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