黒子のバスケ ー影と光を助けた太陽のキセキー (フリュード)
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プロローグ

見切り発車ですが、宜しくお願いします‼

5月11日 修正しました。確かもう黒子達が二年の時に灰崎辞めているので、間違えていました❗


帝光中学校バスケットボール部。部員も100を超え、全中優勝回数も歴代最多といわれている最強の中学校である。その帝光中には『キセキの世代』と呼ばれる者達がいた。その者達は1年から試合に出続け、後に全中3連覇の偉業を成し遂げる事になるのだが、そんな『キセキの世代』の上の代にある『無冠の五将』と呼ばれる選手達にも『キセキの世代』にも入らなかった選手が帝光中にいた。

 

その者は誰よりもバスケを愛し、『キセキの世代』に負けないように一生懸命努力して、他校から『闘将』と呼ばれから恐れられていた。これは『才能』と戦い続けた男の話である。

 

 

 

 

 

 

 

全国中学校バスケットボール選手権 準決勝

 

帝光中111 ― 47照栄中

 

全中準決勝、第4クォーターもあと1分で終わりもう帝光中の勝利が確実であろうとこの試合誰もが思っていた。

 

帝光中も同じ思いであった者がいた。

 

「もう勝ちじゃん~」

帝光中の(センター)紫原(むらさきばら) (あつし)がそう愚痴っていた。

 

「もうオレも20点以上取ったし、いいだろ。」

帝光中のエースである青峰(あおみね) 大輝(だいき)もそう言い悪態をついた。

 

「何を言っている。試合中だぞ。」

PGで、下級生ながら主将を務めている赤司(あかし) 征十郎(せいじゅうろう)は彼らに注意をするが、一向に治る気配が無い。

 

「・・・ふん。この点差であれ、手を抜かず人事を尽くす事も大事なのだよ。」

SGの緑間(みどりま) 真太郎(しんたろう)も赤司と同じ思いなのか愚痴をこぼした。

 

三者三様の思いを持っているが、この4人が『キセキの世代』と呼ばれている2年生である。

 

しかし、4人とも勝つ事が当たり前のような感じで味方を注意はしているが、相手のことなど気にしてはいなかった。

 

それは帝光中バスケ部のスローガンである『百戦百勝』の精神に基づき、いかなる場合でも勝たなければいけないというプレッシャーと戦いながら帝光中は試合に勝ち続けているのだ。

 

(・・・・・)

しかし、2年の他に一人唯一の3年で帝光中のユニフォームをつけながらこの試合勝っていても嬉しくない者がいた。

 

『9』のユニフォームをつけた青いロングヘアーにスポーツ型のヘアゴムを着け、ちょっとつり目のせいかクールそうな少年でこの試合SFで出場していた水島(みずしま) 悠太(ゆうた)である。

 

「どうかしましたか?水島さん。」

 

「あぁ?別に何でもねーよ征十郎。とりあえず最後まで手を抜かずに攻め続けるぞ。後であいつらにもお灸をすえておかないとな。」

心配したのか、水島の方に近づき話しかけた赤司に対して水島は怒りの形相をしながらそう言った。

 

「ははは・・・まぁほどほどにしてくださいね。」

赤司は水島の様子に苦笑しながらも「次のOFは水島さん中心で行きますからお願いします」と言い、自分の位置へと戻った。

 

「・・・お互い頑張りましょう。」

緑間も言葉少なくそう水島に言い、自分の位置へと戻っていった。

 

「・・・たく。あんな後輩を持つと嫌になるよ。ま、心強いがな。」

そう言い水島は試合に集中すべく相手のほうを見据えた。

 

 

 

 

 

 

「水島さん!!」

オレはPGの赤司からパスを貰い、目の前にいる相手をレッグスルーから右側にドライブを仕掛け、インサイドに切り込む。

 

・・・・しかし相手は仕掛けたオレに対してその場で動く事は無かった。他の相手の選手たちも目から闘争心が消えうせて、やる気が無い状態であった。

 

(・・・確かにこの点差じゃ、やる気が出ないのも分かるが・・・あれだけ『キセキの世代』にコケにされてなんとも思っていないのか・・・)

後2分でこの点差。もうやる気が出ないのかもしれない。その相手の様子に水島はイライラしていた。これが、勝ってても嬉しくない原因である。

 

これまでに『キセキの世代』である2年生は、時折バスケをバカにしているような行動が目立ち始め、目も当てられない状態である。

 

青峰の観客から見ても分かるくらいにだらけている事。紫原も同様の態度を見せていて、実質水島・赤司・緑間だけでプレーをしているような感じだ。

 

「それ以上行かせない!」

しかし、一人だけ諦めてはいない者がいた。照栄中の(センター)で主将を務め、先ほど紫原にやられていたオレと同じ3年の木吉(きよし) 鉄平(てっぺい)だった。

 

「・・・アンタは他のやつらのようにやる気が失ってないのだな。」

オレは木吉にそう言った。対面する二人は額からあふれ出る汗が止まらないでいた。

 

しかし先ほど木吉は紫原に何か言われていた。オレはなんていっているのかは聞こえなかったが、木吉にとってはよくない事と言うのは分かりきった事だ。それでもこの気持ちの持ちようは・・・

 

「そういうお前こそ他のやつらのように手を抜いたりしないんだな。そういうやつがいてこっちは逆に嬉しいよ。」

 

「何言っているんだバカタレ。オレは『キセキの世代』とはちげーよ。」

 

「・・・そうなのか?」バーン

 

「(こいつ、天然?)」

この試合何度もマッチアップした2人は互いに寄せ付けないOFとDFをしながらも会話を交わしていた。この瞬間だけこの2人のためにあるような、そのような感覚に陥る。しかし時間は一刻と過ぎていき、オフェンスタイムも15秒をを切った。

 

「・・・けどお前はオレと似た雰囲気を持っているな。誰よりも練習して、今オレはここにいる。見たいな感じだな。」

 

「!!!・・・そうか。そうだな。」

DFをする木吉の言葉にオレは驚きながらも確かにそうかと納得した。

 

木吉はオレの一つ下の『キセキの世代』の紫原とのセンター対決に負けながらもすぐに切り替え、今オレと対決をしている。

 

「ま、誰も守る事が出来なかったのがな・・・」

しかし、木吉は自虐的にそう本音をこぼした。

 

「・・・・・(本当に凄いわ。あれだけやられても立ち向かう精神は・・・純粋に凄いと思う。)」

紫原との対決に負け、挙句の果てに紫原が対決に負け、地面に這い蹲る木吉に対して放った発言を耳にしても尚、こうして水島と対面しているが、何も感じないわけではない。時折唇を噛み締める仕草を見せるが、それでも一生懸命プレーをしている木吉に水島は尊敬の念を持った。

 

それは水島にも言えることであった。

 

『キセキの世代』である2年生が先発(スターター)を占めている中で唯一の3年生である水島は『キセキの世代』に負けないため、誰よりもバスケを愛し、誰よりも努力をして、1年から先発メンバーとして優勝に貢献してきた。しかしこの大会から水島と同じポジションで頭角を現し始めた黄瀬(きせ) 涼太(りょうた)の存在や、『キセキの世代中心』のチーム方針によりベンチスタートになる事が多くなり始めたので、オレはそれが悔しかった。

 

やはり『才能』には負けるのか。でもそれは嫌だったからここまで腐らずに練習を続け、全中の準決勝で漸く先発メンバーに選ばれた。

 

 

いろいろ苦労しながらもここまで上り詰めた水島にとって木吉の気持ちは痛いほど分かった。

 

 

 

「・・・ま、またいつか一緒にバスケやろうや。水島。」

 

「・・・・そうだな。またやろうぜ木吉。」

木吉の問いにオレはそう答え、フリーで走ってきた青峰に気付き木吉をオレと同じ方向へと寄せた後に背面からパスをし、青峰はそれをダンクシュートで決めた。

 

 

 

・・・結局その後、113-47で帝光中が圧勝し、そのまま決勝でも帝光中が苦戦の末勝利し、優勝したことで全中は幕を下ろし3年は引退となった。

 

が、この後、木吉と水島が同じユニフォームを着てプレーするなど誰も知るものはいない・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝光中学校 図書室

 

「・・・・くっ(汗)」

全中が終わり、3年は引退して次のステップである高校入試に向けて日々勉強の日々を送っていた。俺もそのうちの一人だ。放課後オレは一人で図書室で勉強していた。

 

外から運動部の掛け声が聞こえてくる。

 

だが、オレは一つの問題に陥っていたために少し汗をかいていた。それは高校が決まらないのだ。

 

バスケのことに集中しすぎて、進路のことを考えずにいたためこのような結果になってしまったのだ。勉強もしたい。けど進路を考えないと全てが始まらない。

 

「けど、やっぱり『キセキの世代』との差ってここでも出てくるのかな・・・」

オレはそう言い自嘲気味に笑った。進路の事もそうだが、後もう一つの事がオレの気分をどん底へと落としていた。

 

 

 

 

高校からのお誘いが来なかったのだ。

 

その事には俺は目の前が真っ暗になった。

 

オレは先ほども言ったが頑張って中学3年間、いや小学校のころから一生懸命頑張って努力して来た。今回の全中も自分なりに頑張ってきた。

 

フェイダウェイ・フック・ダブルクラッチやドリブル技術、パスセンス・・・血反吐を吐きながらも、しっかりとものにした。誰にも負けないくらい練習をした。

 

けど全中のことを思い出すと、初戦から決勝まで先発した試合はたったの1試合。準決勝で木吉率いる照栄中と戦ったときだけだ。他は一つ下の黄瀬の方が出ていた回数が多かった。それでもたった一試合だが自分なりに頑張ったつもりだったのに、それでも駄目だった。

 

『すまない水島。君宛への誘いは一校とも来なかった。』

 

「ぐっ・・・うっ・・・くそっ!」

 

・・・ガンッ!!!

監督からそう言われたことを思い出し、悔しさのあまり机に拳を叩きつけた。

 

それに、この前月バス(月刊バスケットボール)を読んだのだが、戦った木吉を含め、実渕(みぶち) 玲央(れお)葉山(はやま) 小太郎(こたろう)花宮(はなみや) (まこと)根武谷(ねぶや) 永吉(えいきち)の5人を『無冠の五将』と呼ばれていた。が、そこにオレの名前は無かった。

 

『キセキの世代』でも一つ学年が違うだけで省かれた。

 

 

 

 

・・・・・ふざけるな。全中で『無冠の五将』を見たが、オレだって根武谷たちにも負けない実力を持っていると自負できる。現に木吉には勝った。なのに・・・なのに!!

 

ゴン!!!!

 

悔しさが抑え切れなくて、再度机を叩いた。強く叩いた所為か机には拳から出た血がにじみ出ていた。

 

 

「ううっ・・・くそっ・・・」

悔しくて悔しくて・・・・オレは泣いた。図書室というのを忘れて。俺だけだったのでそれはそれで運が良かったのかもしれない。

 

 

 

無音の図書室の中は水島の泣き声がむなしく響いていた。

 

 

 

 

 

「・・・・・」

その様子を主将の赤司は外から見ていた。

 

『主将か~おめっとさん。征十郎!』

 

『少しは笑顔見せようぜ!楽しくバスケをしようぜ!』

脳裏に浮かぶのは水島の笑顔。水島とはポジションが同じで、小学校からの知り合いであり、赤司の事情を知っている数少ない友人であり、ライバルだった。

 

ポジションを奪われても水島は笑顔で赤司を褒めてくれた。褒められて赤司は嬉しい気持ちになったのを覚えている。

 

(・・・・・哀れだ。)

心の中ではそう吐き捨てながらも、どこか寂しげな表情をして赤司はその場を去った。これから起こる異変に気付かず・・・

 

 

そうして水島は卒業までの間、バスケ部に顔を出す事は無かった・・・

 

だが、運命的な再会があることなど知るよしもない・・・



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第1章 結成編
第1Q 再会、そしてお誘い


2話目です!どうぞ!

5月26日 編集しました。


「はぁ・・・どうしよう。」

季節も秋に入り始めた頃、水島は一人学校からの帰り道を歩いていた。

 

あれから強豪からの誘いを待ったが、ついに来ることは無くここまで勉強と自主練に時間を費やし、気がつけば進路先を決めていないのはオレだけと言うあほな事になっていた。

 

「くっ!どこに行こうかまだ決まっていない。どの高校も本や自分で見に行ったけどあまりこれと言って良いと思ったところは無いし・・・はぁ。中学就職なんてしたら親がなんて言うか・・・くぅ~寒いよ。」

一人ぶつぶつ独り言を話し、寒さに耐えながら歩くオレというのは他の人から見れば奇妙に見えたのだろう。オレもはっきりと言おう。キチガイにしか見えないだろう。けどそれ程オレは焦っていた。

 

「それに白金監督のお見舞いにもいけなかったし、いよいよバスケ部に顔出せなくなってしまったよ。ま、良いがな。」

オレはそう言った。

 

実は3年生(水島たち)が引退してすぐに、帝光の監督である白金が倒れ、入院したと言うのを聞いたのだが、引退の顔合わせにも参加していなかった水島は気まずいので、行くことが出来なかったのだ。

 

 

「・・・・ん?」

ふとオレは横を見た。オレの住む家の近くにある公園だ。その公園にはバスケのゴールがあるのでよくオレが自主練に利用する場所だった。

 

そしてそのバスケのゴールがある場所からダムダムとバスケットボールを叩く音が聞こえたので、オレはこっそりと近付き、近くにあった草葉に隠れながら音の主を見た。

 

「・・・木吉!?」

するとそこにいたのは制服姿の木吉の姿だった。木吉はドリブルをしながらゴールへと近付く。そして・・・

 

スタッ!ガシャン!!

 

木吉は人の平均よりも大きい手でボールをつかみながら豪快にダンクシュートをかました。

 

「!!!(今ボール握ってなかったか!?いや、確かに木吉の手は大きいのは知っていたけど・・・)」

 

「こんなところで何しているんだ水島。」

 

「・・・あ。」

先ほどのダンクにオレはいろいろ考えていたのだが、考えている間に木吉に見つかってしまった。オレは見つかった際に間抜けな声を出していた。

 

 

 

「ははは!何か音がすると思ったらまさか水島なんてな。驚いたよ。」

 

「うっせー!あ~恥ずかしいよ!!(照)」

 

「『・・・あ。』」

 

「真似せんでええ!」

見つかった後、オレと木吉はバスケのコートの中に入り楽しく話していた。

 

「・・・水島は全中終わったあと、何してた?」

すると、木吉がそんな事を聞いてきた。

 

「・・・ちょっと荒れてたかな?強豪からの誘いも来なかったから。」

 

「えっ!?誘いが来なかったのか!?」ババーン

オレの答えに木吉は食いつき、驚いた顔をしながら聞き返した。

 

「・・・うん。それに全然行きたい高校が決まらないし、どうしようってなってるとこ・・・木吉は?」

オレはそう言い終え、今度はオレから木吉に聞いた。

 

「・・・・・正直帝光中との試合は精神的にキタかな。あの後、オレと一緒にバスケをしていたチームメイトはバスケをやめていったよ・・・それにオレもやめようとしていた。」

 

「!!!!そんなことが・・・」

今度は木吉の発言にオレのほうが驚いた。

 

確かに帝光と試合をした中学校はバスケを辞めるものが多くいたとは聞いていたが・・・

 

オレは純粋にバスケが好きだ。だからそのような事態に対しては凄く罪悪感を持ち、嫌な気分になった。

 

「・・・けど分かったんだ。どんだけバッシュを捨てようと思っても結局俺からバスケを取ったら何も残らない。俺にはバスケしかないって。」

 

「木吉・・・」

木吉の言葉にオレはそう言いそれ以上何も言わなかった。

 

「それにお前は違った。見てたよ。俺たちと戦った試合以外はずっとベンチメンバーだったろ?」

 

「・・・・見ていたのか。」

まさか木吉が見ていたとは知らなかったので、俺は驚いた。

 

前にも言ったが、俺は全中期間、SF(スモールフォワード)で出ていたのだが、俺よりも黄瀬が出ていた。

 

「それでも腐らず誰よりも声を出し続けて、試合に出れば一生懸命皆のためにプレーをしていた事。だからオレと一緒だなって思ったんだ。」

 

「・・・よせよ。オレはそんなんじゃない。」

木吉の発言にオレは恥ずかしそうに頬を掻きながらそう呟く。

 

「逆にオレはお前が羨ましかった。試合に出れるお前がな。」

オレは唇をかみながら木吉にそう言った。

 

「うん。知ってる。」

木吉はそれに対してニコニコしながらそう返した。

 

「けどお前の実力の影には血の滲むような努力があった事も知ってるぜ。さっきオレが羨ましいってお前言ったけど、逆にオレもお前の血の滲むような努力は尊敬するぜ。」

 

「・・・なんでお前が知っているんだよ。」

木吉のすべてお見通しといわんばかりの発言にオレはため息を一つ吐き、頭をぼりぼりかきながらそう言った。

 

オレは『キセキの世代』に負けないように、毎日欠かさずシューティングの練習や、ランニング・ダッシュなど、練習が終わった後も残って練習していた。ならば、木吉も一緒ってことか?

 

 

「言ったろ。オレとお前は似ているって・・・そんなお前だからお前に言いたい・・・一緒にバスケやらないか?」

 

「!?・・・あのときの約束忘れてなかったのかよ。」

木吉の誘いにオレはもう何度目か分からないくらい驚いた。

 

「忘れたとは言わせないぞ!さぁ。YESかハイか!」

 

「どれも意味同じじゃねえか!」

 

「え・・・そうなのか。」

 

「おいおい・・・(・・・でも一緒に、ね。悪くないな)。」

まさかのド天然発言をかます木吉に突っ込みながらもオレはそんな事を考えていた。

 

・・・こいつとなら3年間やれるかもしれない。

その想いが芽生えたときにはオレの答えは決まっていた。

 

「・・・いいぜ。やってやろうじゃん。オレの超絶フェイントに惑わされるなよ?」

暫く考え、オレは挑発も兼ねてそう木吉に言った。

 

「はっはっは!お前には負けないよ!」

 

「いったな~覚えておけよ!なんなら今から1on1しようじゃねぇか!!」

 

「いったなぁ!やってやろうじゃねえかオイ!」

そう言いいつの間にか臨戦モードに入った2人は近所でやるようなものじゃないそうぜつな1on1を展開した。

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・なかなかやるじゃねえか。」

 

「ハッハッ、言う・・・ねぇ。」

2人ともこんなに激しく動いたのは久し振りの所為か仰向けで倒れていた。

 

「・・・・くっくっく・・・・」

疲れた。けど久し振りにこんなに楽しい1on1は久し振りだった。オレがフェイントで抜いても木吉は落ち込むことなくむしろ笑っていた。その逆も然りで、全然悪い気がしなかった。

 

「木吉ぃ。高校でもかましてやろうじゃねえか。」

気分が未だにハイになっているオレは木吉にそう言いはなった。

 

「ハッハッハ。当たり前だ。」

 

「・・・・・クックック。」

 

 

――――ハッハッハッハ!!!!

 

あたりには2人の笑い声が響いていた。

 

 

 

 

 

 

「なぁ、木吉。因みにお前が通うとしている高校ってどこ?誘うってことはもう決めているんだろ?」

身支度をしながらオレは木吉に聞いた。

 

「ああ。言ってなかったな。オレは誠凛に通おうと思っている。」

 

「は?強豪校じゃないのかよ。」

名前も聞いたことが無い高校が出てきたので俺は疑問に思い木吉に聞いた。

 

「ん~オレは祖母夫婦に育てられたから、少しでも近いところに通えたら良いなと思ったんだ。」

 

「ふーん・・・誠凛ね(・・・あれ?誠凛って・・・ま、いいっか)。誠凛だな?俺もそこに行くよ!」

 

「おお!待っているぜ!」

 

「ああ!」

そう木吉とオレは約束し、オレは進路調査票に誠凛高校と書いた。しかし、それを見た教師の反応がちょっとおかしかったのが疑問に思ったが、漸く決まった方が嬉しいのか、教師は喜んでくれて、一生懸命勉強して見事誠凛を合格する事が出来た。

 

待ってろよ!誠凛高校!

俺はそう思ってこれから始まる生活に思いを馳せていた。

 




いよいよ入学式ですが、原作を知っている人は分かるとは思いますが・・・


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第2Q 入学式! けど・・・

1月29日 大幅な編集をしました。


時は過ぎ、春、4月・・・・

 

私立 誠凛高等学校

 

桜が満開である4月。ここ、私立誠凛高等学校では新入生が校門をくぐり、次々に校舎の中へと消えて行った。

 

そんな中で一人青い目までかかったロングヘアーに眼鏡をかけた如何にも地味そうな男が校舎の前に立った。

 

「ここが誠凛高校か。これから楽しみだな!・・・にしても木吉の奴どこ行ったんだよ。」

水島である。バスケの時はスポーツ型のヘアゴムをつけて眼鏡はつけないのだが、普段は髪を下ろし、眼鏡をつけているので中学校時代バスケ部の人でもあまり分からなかったのだ。

 

『おい、地味そうなやつが校舎のど真ん中で突っ立ってるぞ。』

 

『地味そうなんだから自重しろよ。』

そんな声が所々から聞こえてくる。

 

「(ハハハ(怒)明日辺り髪切りにいこ。)・・・まぁとりあえず来たは良いけど、入試の時から気にはなっていたんだよなぁ・・・」

そんな反応に水島はこめかみに青筋を立てながら、水島はそう思うと一つ気になった事があった。

 

入試に来たときもそうだったがやけに校舎が真新しい。それに来る生徒は全員新入生みたいな感じだ。

 

(まさか、先生が言おうとしたのってこれ?)

水島は先生が志望届を出した時に変な顔をしていたのを思い出す。

 

まさかとは思っていた。何故かと言うと、ドが付くほどの天然の木吉。そしてバスケ部出身と知っている教師の俺の進路先を見たときの表情。

 

・・・明らかにそうじゃないかと言えるだけの証拠はある。

 

「・・・・・だ、大丈夫だ。うん、何とかなる。」

だが水島はそれを払拭し自分に言い聞かせ、水島は校舎の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

誠凛高校 校舎内

 

「うお~きれいだな。」

校舎の中へ入った水島は真新しい校舎を見ながら廊下を歩いていた。

 

『すまない3年生・・・これからはキセキの世代(2年生)中心で行く事にする。』

 

「・・・・・・」

ふと思い出し水島はその場に立ち止まった。

 

3年生のとき、当時帝光の監督であった白金監督から言われた悪魔のような宣告。それまで出ていた主力メンバーはがらっと変わり、バスケのコートに立っていたのは2年生の『キセキの世代』・・・

 

ろくに試合も出れずにベンチで必死に声を出していたあの頃(中3)の出来事は今でも頭の中にこびり付くように、残っている。

 

(思い出したくもない忌まわしい思い出だが・・・自分なりに楽しめた。今はこれからの3年間を歩き出せば良い。)

水島は少し目を閉じ、そう決意した後目を開き再び歩き始めた。

 

 

「(しっかしどこにいるんだよ・・・おっ!いたぞ!いたけど・・・隣にいるキンパツの奴は誰だ?)お~い。探したぞ木吉!」

木吉を探していた水島だが、漸くお目当ての人物(木吉)と後木吉に絡まれている金髪が似合っていない眼鏡をかけた青年に近付き、声をかけた。

 

 

 

 

(はぁ~でかい奴に絡まれたと思ったら今度は地味そうな奴が来たよ。しかもこいつも背が高いし。今日は厄日だなくそっ!)

水島にキンパツが似合っていないと思われた青年、日向(ひゅうが) 順平(じゅんぺい)は心の中でそう愚痴った。

 

「ん?もしかして水島か!?」

さっき木吉といった男が地味そうな青髪の男にそう言った。

 

「おっ!正解だよ~良く気付いたな。」

木吉に水島と呼ばれた男は笑顔を作り、親指を立ててそう言った。

 

「(ん?水島?聞いたことが・・・)ってうわ!」

日向は水島に聞き覚えがあったのか、頭の中で考えているといきなり肩を捕まれ、水島の前に出された。

 

「聞いてくれ水島!1人目のバスケ部員だ!」

 

「はぁ!?オレはそんなこと言ってねえよ!!」

木吉は水島に対して日向のことをそう紹介したので日向はまだバスケ部に入った覚えは無いといわんばかりにまくし立てた。

 

「・・・やっぱりその言い方だとバスケ部無かったパターンだったのか。」

 

「すまんな。まさか無いと思って無くて。けどオレは諦めないぞ!だからバスケ部を創るんだ。」

 

「おぉ。それは木吉らしいな。それで最初のバスケ部員が彼ってことだったのか。」

 

「そういうこと。」

 

「・・・おい。なに俺がバスケ部に入った前提で話しているんだ。それにオレはバスケを辞めたんだ!オレはバスケ部にはいらねぇからな!」

 

「あっ!おい!」

なにやら2人で勝手に話が進んでいると理解した日向は一瞬の隙を突いて逃げていった。逃げたとき、木吉の声が聞こえたが、かまわずその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・にげれた。けど思い出した・・・あの青髪、たしか帝光のSFしていた奴じゃねえか。それにあのでかい奴も『鉄心』って呼ばれていた木吉じゃねえか・・・・

何でこの学校に・・・」

暫くして立ち止まった日向は漸く青髪の男と、木吉の事を思い出した。

 

 

「・・・けっ!思い出したところでオレはバスケ部にはいらねぇから知った事じゃねえ。」

しかし日向はそう割り切り、教室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(・・・・)あ~あ。にげられたか。けど諦めねえからな。バスケが好きな奴に悪い奴はいねぇ!」

日向君(さっき木吉が教えてくれた)にバスケ部の勧誘を断られても尚、絶対入れると言わんばかりに目を輝かせ、俺に対してそう言ってきた。

 

「う~ん。あの子がバスケ・・・ねぇ?まずキンパツが似合ってなかったけどな(笑)」

オレは日向君の背格好を見て、特に髪形を思い出し思い出し笑いをしてしまった。

 

「えっ?似合ってなかったか?」バーン

 

「・・・(いや、そもそも木吉のこういう性格(天然)が無ければこのような事態(バスケ部が無い)のも防げたのじゃないか?)」

木吉のこういう性格に頭を悩ますオレであった。まぁ、バスケ部を作ろうとしているからまだ良いとは思うけど・・・

 

「それで何でアイツ(日向君)を入れたいの?」

オレはさっきから気になった事を聞いた。木吉はさっきから日向君を入れることに燃えているからだ。

 

「ん~強いて言えばアイツはオレと同じだと思うんだ・・・とりあえず日向を追って意地でも入ってもらうぞ!」

 

「あ、おい!」

木吉はボソッと俺に聞こえない声でそう言うと、日向を追うと言い日向が逃げていった方向へと歩いていった。俺もそれに続くように木吉の後を追った。

 

 



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第3Q バスケ部仮結成!

お待たせしましたそれではどうぞ!


「・・・なんか最近ずっと不機嫌だな日向。」

日向と同じクラスで、中学校からの友人である伊月(いづき) (しゅん)は明らかに不機嫌な日向に対してそう言った。

 

木吉が日向と出会ってからというもの、木吉は執拗に日向をバスケ部に勧誘するようになった。因みに水島も木吉と同じクラスなので一緒についてきていた。

今日も勧誘しようと、木吉と水島は日向のクラスに入り日向の前の席に座った(因みに水島はこの前先輩に言われた一言が突き刺さったので下校してすぐ床屋に行き、髪をきったのでツーブロック気味のショートヘアになった。くだらない情報だが)。

 

「・・・当たり前だろ!毎日大男2人につきまとわれてみろ!ご機嫌な方がどうかしてるわ!」

伊月君の問いに日向は肘を付き、ジュースを飲みながら顔中に青筋を立てながら言い捨てた。確かに木吉は192cm、水島は185cmなので、176cmの日向からしたら大男に見えるのは仕方ないだろう。

 

「まぁそう言うなよ。バスケやろうぜ。」

 

「そーだぜ!」

 

「だからやんねっつの!」

水島と木吉はそう言うが、日向はいっこうに顔を縦に振ってくれない。

 

「オレは良いけど・・・」

 

「まじで!?やった!これで後1人だな!」

 

「だから俺を入れんな!」

すると、日向の前の席にいた伊月君がそれを聞いてバスケ部に入ると言ってくれた。木吉も嬉しそうにそう言った。ちゃっかり日向を部員にカウントしている。日向もそれに気付いたようで声を荒げてそう言った。

 

「伊月!」

 

「いいだろ。オレはやりたいんだから。」

日向が伊月に何の意図があるのかそう叫ぶが、伊月はそれに気付いたようでそう言い返した。

 

「勝手にしろ!けどオレはやんねーからな。」

・・・ガララ。バタン!

 

しかし、親友の伊月が入部しようとしても日向は意志が固いのかどうかは分からないがそう言い席から立ち上がり、教室を出て行った。伊月はその様子にため息を一つ付いた。

 

(・・・あの様子、逆に無理にバスケから離れようとしているようにしか見えないな・・・これも帝光中の影響なのか?)

日向の様子を見て水島は一人思考を張り巡らす。

 

(帝光と戦った木吉も負けて心をへし折られてバスケから離れようとしていた。しかし、中学校時代バスケ部だったと言っていたこの2人(日向と伊月)は見た事が無い。とはいえ、仮に今の日向君の心境に帝光が関わっているとなると、いたたまれない気持ちになってくるな・・・オレは普通にバスケを楽しみたいのに・・・)

水島は一人そう思っていた。

 

「・・・木吉君と水島君で良い?」

 

「鉄平で良いよ。」

 

「オレも悠太で良いよ。」

日向が出て行った後、伊月は肘をつきながら水島と木吉に対して苗字で呼んだが、それに対して2人は名前で良いよと言った。

 

「懲りないね。何でそんなに頑張るの?そもそもアンタら『鉄心』の木吉に帝光の『闘将』水島だろ?バスケがしたいなら強豪校から引く手あまたのはずだ・・・なんでこんな学校(トコ)にいる?」

 

「・・・いやぁ・・・その呼び方は苦手だな。てか学生につける呼び名じゃねーよ。」

伊月は2人を知っていたらしく、こちらを見ながらそう聞いてきた。木吉はそれに対し、『鉄心』の異名はあまり好きではないらしく苦笑しながらそう言った。

 

「別に理由なんてないさ・・・強いて言えば家が近かったからかな。」

 

「はぁ!?」

木吉の発言に伊月は目を丸くし、驚きながらそう言った。

 

「おれはじいちゃんとばあちゃんに育ててもらった。ただ2人とももうトシだし近い方が何かと都合が良いんだ。バスケは好きだけど部活だからな。楽しけれゃそれで良い。」

木吉は笑顔でそう言った。それに対し伊月は少し表情が曇る。

 

(・・・いや、逆にそう言える木吉が羨ましい。俺らは3年間必死だったからな・・・)

伊月の反応を見て水島は帝光での3年間を思い出した。

 

確かに伊月の言うとおり、水島は『闘将』と呼ばれていた。けどそれは中1までの話。それまでレギュラーだったのが、中2からは『キセキの世代』にポジションすら奪われてその異名すら消えてしまったがな・・・

 

(てかよく知っていたな。中1のときの月バスに載ってたくらいなのに・・・)

流石だなと水島は変なところで感心していた。

 

「勝つためにとことん練習して少しでも上手くなって・・・好きな事に没頭する。それが楽しむって事だろ。ましてや俺たちは学生だ。すべてをかけても足りないかもしれないぜ?なっ!水島!」

 

「えっ!?まぁそうだな。」

水島が一人思いにふけっていても、木吉と伊月の会話は続いていたようで最後オレに対してそう言ったので水島はあたふたしながらもそういうことが出来た。

 

「(・・・前言撤回、マジでいるんだなこーゆー奴。日向の頂点(テッペン)がつくづくアホらしくなるな・・・)それじゃ悠太君は?」

伊月は木吉の考えに感心し、次は水島に理由を聞いた。

 

「ん?オレは木吉みたいに理由はかっこよくないよ。ただオレのところに誘いが来なかっただけ。」

 

「はぁ?あんたが?」

伊月は驚き水島に対してそう聞いた。

 

「うん。誠凛(ここ)に来たのも木吉に誘われたから。ちょっと進路考えられないくらいにあの時やばかったから、助かったって感じ。」

 

 

「けど、悠太君って1年の時帝光のレギュラーだったじゃないか!予選でも新人賞、その年の全中でもベスト5に選ばれてたし・・・」

目を伏せながらの水島の発言に伊月は理解できないのか水島のことを言いながらそう言った。

 

水島は2・3年こそ控えだったが、1年時は1年ながら正PGとして全中優勝に貢献しその年のベスト5を受賞していた。どんなに苦しい時でも誰よりも声を出していたから相手から『闘将』と呼ばれたのだ。

 

「・・・そうだな。それほどまでにオレは人一倍努力した。けど結局最後は『才能』に負けた・・・哀れだよホントに・・・けどこうならなきゃ今こうやって木吉や伊月君と話していないよ!」

 

「あ、ああ・・・(心にトラウマを抱えているのは、帝光以外(俺たち)だけじゃないんだ。少し物の見方が変わったかもしれん。)」

 

「・・・・」

一瞬悲しい顔を見せたが、無理やり場を和ませようとする水島に伊月は悲しくなり、心をへし折られたのは帝光も一緒なのだと改めて思った。木吉は終始無言だった。

 

「あ!ねぇねぇ。バスケ部員集めてる木吉君と水島君ってキミ?」

すると、木吉たちの隣から声が聞こえたので、3人が振り向くと声をかけたらしい水島よりかは幾分か背が低い黒髪のショートヘアで猫目っぽい少年と、その子の後ろに隠れるようにいる猫目の少年よりも背は高い少年の2人組がいた。

 

「俺たちも入れてくんない?」

 

「!」

猫目の少年、小金井(こがねい) 慎二(しんじ)は2人に対してそう言ってきた。それを聞いた木吉と水島、伊月は同時に目を合わせた。その顔は笑顔だった。

 

「ああ!もちろんだ!」

 

「やった!良かったな水戸部!あ、オレ小金井。よろしく!」

木吉が2人の入部を承諾すると、小金井は良かったのか後ろにいた青年水戸部(みとべ) 凛之介(りんのすけ)にそう言っていた。水戸部も小金井の横に立ち、ホッとした表情を浮かべていた。

 

その後、経験者?と伊月は聞くと、小金井はドヤ顔をしながら「コイツがね!」と水戸部を指差しそう言った。小金井は「3歩歩けばサイクリング!」と自信満々にいい間違えていたので、初心者という事が分かった(小金井の発言に伊月は「トラベリングね。」と冷静に突っ込んでいたのは言うまでも無い)。

 

「とりあえずこれで6人になったな!」

 

「やっぱ日向君入れてるんだ・・・」

 

「やっぱ日向入ってんだ・・・」

木吉は漸く試合が出来る人数になったのが嬉しいのか笑顔でそう言った。その際にちゃっかり日向を数に入れていたので水島と伊月が冷静に突っ込んだ。

 

その後伊月がやはり6人だけでは練習や試合はきついと思ったのかもう1~2人は声をかけたほうがいいと提案した。

 

「確かにそう「マッネージャー!!かっわっいいマッネージャー!!」おい・・・伊月の話聞いたか?それは後で話しあおうか。」

水島は確かにそうだな。と言おうと思ったのに途中で小金井がピョンピョンはねながら興奮気味で話すので水島はため息を一つ吐き、説得するようにそう言った。水戸部も止めさせようとしていたのか汗を出しながらハンドサインで「落ち着いて」と言っているように見えた。

 

「・・・・!男じゃないけど一人いるな・・・」

すると、伊月が小金井の発言に何か思い当たる節があるのか、話し始めた。家は日向の近くで、スポーツジムを経営しているらしく、筋トレ・トレーニングがいろいろ詳しい女の子がいるそうだ。

 

「へぇ・・・面白そうな子だな!声掛けて見ようぜ!」

木吉はその女の子に興味を持ったのか声を書けることにした。

 

「いやぁ・・・面白いって言うか・・・ちょっと変わっているかも・・・」

 

「見てみないとこっちは分からないかな?見てみようよ。」

 

「水島の言うとおりだぜ。会って見ないと分からないさ!名前は?」

伊月の発言に水島と木吉はそう言い返した。そして木吉は名前は?と聞いた。

 

「相田リコ。」

伊月はその女の子の名前を言った。

 

「よーし。行ってみようぜ!」

木吉はそう言い、その女の子に会いに行くために相田の教室へと向かった。

 

伊月・水戸部・水島・小金井もそれに続くように木吉の後を追った。

 

 

 

「ここか・・・ねぇそこにいる君。バスケ部なんだけど、相田リコって言う子いるかな?」

相田がいると言う教室に着いた木吉たちは近くにいた女の子に声をかけた。

 

「あっ!いますよ。リコーなんかお客さん。バスケ部だって。」

声を掛けられた女の子はそう言い、机に座っている相田に用件を伝えた。

 

「えー?バスケ部?あったっけ・・・またよりによって一番気に食わないスポーツだわね。」

女の子に呼ばれた茶色がかったショートヘアーにヘアピンをつけた女の子、相田(あいだ) リコはそう一人で悪態をつきながら女のこの方を見た。

 

 

 

これが木吉たちと後に監督になる相田リコとの出会いだった。




いつも後書き書いていませんがすみません ・・・コレからもこの作品を見てくださいね!後一つ誠凛高校の部員は原作開始時よりも2、3㎝身長が低いです。


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第4Q 誘いの結果。そして邂逅

どうぞ!後気付いたら水戸部と水島、水で一緒じゃないか・・・まぁ、気にせずお願いします❗


「・・・やーよ。」

バスケ部の誘いに対してリコはそう一蹴した。

 

「う・・・」

一蹴されたバスケ部はぐうの声も出ない。

 

(う~ん、即答だったね・・・)

水島は苦笑しながらそう思った。

 

小金井もそう思ったのか、先ほどのハイテンションとは違い半泣きで水戸部に対して何か呟いていた。水戸部もそれに同意するように首を縦に振っていた。

 

「そう言わずに頼む!バスケ部に入ってくれ!!」

 

(動じないなーこいつも・・・)

しかし木吉はリコの一蹴に動じず、『鉄心』のごとく固い意志を持って再度リコを誘った。伊月はそれを見て呆れてものが言えなかった。

 

「・・・あのねぇ、話聞いてた?バスケは嫌なの!(それにしてもデカイわね。首が痛い!)」

リコはそう言いながら、木吉の身長が高いためか上を向いている時間が長くなり首が悲鳴をあげていたため、そう悪態をついた。

 

「でもスポーツが嫌いってことじゃないんでしょ?何で嫌なのか理由が聞きたい。」

リコが中々首を縦に振ってくれないため水島は理由を聞いた。

 

「・・・んー理由ね。正確に言えば今の同年代、特に中学バスケ全体の雰囲気が気に入らないのよ!」

 

「・・・・」

水島は無言を貫いた。多分帝光中(母校)が関係あると目星をつけたからだ。リコは続けて話し始めた。

 

「今の中学バスケは帝光中学校が他の追随を許さない圧倒的一強状態。高校で活躍する選手もほとんどそのOB。けどそれ自体に文句は無いわ。」

リコはそこで一区切りいれ、また話し始める。

 

「その周りが皆どこか勝つ事を諦めてる。私はいやなのはそこよ!」

 

「!!!」

リコのその発言は水島にとって核心を突かれた感じで何も言えなかった。

 

水島も『才能』に勝つ事を諦めていた一人。水島は『キセキの世代』が次々と才能が開花する中で埋もれていった先輩の中の一人である。

 

「・・・・」

伊月はその発言が日向のことを言っているようだと感じた。リコが話した事すべてが日向に当てはまるからだ。

 

日向はリコのトレーニングジムで練習後、トレーニングしていたからリコは日向の事を誰よりも理解している。そのことからこの発言をしたのだろう。

 

「・・・・」

木吉はなにも言わなかった。

 

リコの発言はバスケ部に三者三様の反応をもたらした。

 

「いくつかの部に声を掛けられたけど、一番目指すぐらいの本気じゃなきゃ引き受けるつもりは無いわ。」

リコはそう言い終えた。勧誘に失敗したバスケ部は退散するしか方法は無かった。

 

 

 

 

「はー・・・取り付く島も無かったな。」

 

「あとちょっとあの子怖いよー」

勧誘に失敗したバスケ部。伊月と小金井はそう言いため息を一つ吐いた。

 

「何言ってんだよ。オバケの方がずっと怖いぜ。」バーン

 

「いやお前が何言ってるんだよ。本当に怖いやつってのはな・・・」

 

「いや突っ込めよ水島!?」

ここでまさかの木吉の天然発言が飛び出した。水島はそれを突っ込むと思ったら逆に語り合おうとしていたので小金井が代わりに2人に突っ込んだ。

 

「ははは!まぁオレはホッとしたよ、一緒で。要は中途ハンパは嫌いってことだろう。」

 

「・・・・!」

 

「あれ?違った?」

 

「いや、当たりまくりだよ。」

天然の木吉からは思いもしなかった発言に4人は一瞬無言になったが、木吉の確認に水島が答えた。伊月はそれを見てほほえましい表情を見せた。

 

「・・・まぁ、どう本気を見せるかは後で考えようぜ。」

 

「あぁそうだな。後は・・・」

 

「うーん、それだけだとどうかな・・・」

 

「ん?」

水島が今後の活動について木吉にそう言い、木吉は今後を考えようとしたら、伊月は思った事を言い始めた。

 

それは先ほど思っていたリコが言っていた発言一つ一つが日向のことを言っているように聞こえた事だった。

 

「う~ん、仮にそうだとしたらまず先に・・・とりあえず放課後どっか店に寄って話し合わない?」

伊月が説明した後の水島の発言に4人はそうだなと思ったらしく、放課後どこか食べに行くことを約束した。

 

 

 

 

 

日向がリコとゲームセンターで会い、帰っている頃水島達は近くのファーストフード店『マジバーガー』で話をしていた。

 

「えっ?ポジション?」

すると木吉が聞いた質問に伊月が答え始めた。

 

「オレがPG(ポイントガード)、日向はSG(シューティングガード)。」

 

「水戸部は確かPF(ぱわーふぉあーど)?」

伊月が日向のポジションと共に紹介した。小金井は水戸部にポジションを聞いたら水戸部はこくりと頷いた。

 

「じゃあ、オレはSB(サイドバック)やる!」

 

「うんうん。小金井君は今度決めようね。」

 

「いつの間にそんなポジション出来たんだ!?知らなかった・・・」バーン

 

「いや、SBってサッカーのポジションだよ木吉(いくらなんでも天然過ぎ・・・)。」

小金井・木吉の発言に伊月・水島がそれぞれ突っ込んだ。水島は木吉の天然ぶりに頭を悩ましていた。

 

「水島君もPGだっけ?」

伊月が水島に対してポジションを聞いた。水島は「いやぁ・・」と頭をかきながら答えた。

 

「・・・オレは2年の時にSF(スモールフォワード)に転向したよ。元々PGだったけど2年のときにコーチからそういう話があったから変わったって感じかな。」

 

「あぁ、そうか。『キセキの世代』の主将に・・・」

水島がそう話すと木吉が分かったのかそう言った。

 

「あっ・・・言わなかった方が良かった?」

 

「ううん、いいよ。まぁ、さっきああ言ったけど悪く言えば『キセキの世代』にポジション取られたから転向したって事。」

 

「それはすまなかった・・・」

水島がそう話すと、伊月は申し訳なさそうにそう言い謝った。

 

「いや良いよ!いい経験が出来たし俺にとっても経験が出来てよかったと思う・・・けどオレはミニバスから慣れしたんだPGに戻る事をまだ諦めてはいない。機会があればまたよろしく。」

 

「ふっ。望むところ。」バチバチッ!!

水島の挑発に伊月もそう言い返した。もう既に水島と伊月。2人の間に見えない火花が散っていた。木吉はその光景を見てバスケ部を作ってよかったと思っていた。

 

「・・・ん?ミニバス?水島って小学校からやっていたのか?」

 

「うん。小2の頃からやってるよ。伊月もさっきは分からなかったけどミニバスの大会で何度か対戦した事あったよね。」

 

「えっ?あぁ!確か凄い上手い青髪の少年がいたチームと戦った事はあるなぁ。あれ水島だったんだ!」

ここで水島と伊月には意外な接点があった。お互いにミニバスからバスケをプレーしている身であり、以前2人が戦った事があるということが分かった。

 

 

「へぇ、意外な接点だな!・・・そういや伊月。日向は中学時代どんなプレーヤーだったんだ?」

意外な接点を知り感心している木吉は伊月に対して日向のプレーについて聞いた。2人は同じ中学校なので聞いてみたかったことらしい。

 

「・・・正直日向はシューターとして相当だったと思う。それでも勝てなかったのは俺たちチームメイトの力不足が一番大きな原因だよ。」

伊月は日向についてそう説明した。

 

「SGって事はシュートの精度が凄い良かったって事?」

水島の問いに伊月は「あぁ。」と頷いた。

 

「なら誘わなきゃいけないでしょ。今このメンバーで高精度シューターなんていないし。」

 

「そうだな。」

 

「で、でも嫌がってるんだったらそんな強引じゃなくても・・・」

水島と木吉の会話に小金井がジュースを飲みながらそう言った。

 

「いや、あいつには入ってもらわなければいけない。だって・・・」

 

「げっ!?」

木吉がそう言おうとすると、聞きなれた声がしたので皆が振り向くとそこには日向がいた。すると日向はすかさずバスケで鍛えた足を生かし、駆け足でその場を去った。

 

「はやいな!」

水島がそれを見て思わず叫んだ。

 

すると、木吉が「会計はまた今度払う!」と言い、急いで店を出て行き日向に絡みに行った。

 

「ねぇ、アイツそんなに凄いの?」

 

「木吉があんなに絡むんだ。凄いに決まっているよ。」

小金井の質問に水島がそう答えた。

 

「まぁ、そうだな。ところで水島は行かなくて良かったのか?」

伊月もそう言ったあと、水島にそう質問した。

 

「ん~木吉がどうにかするだろ。俺が出る幕じゃないよ。」

水島は伊月の質問にそう答えた。

 

「ならいっか。そういや水島ってめちゃくちゃ強い中学校にいたんだよね。確か相田さんの話にも出てきた『帝光中学校』だっけ?どんな感じだったの?」

小金井が水島の中学校について聞いてきた。

 

「うん。強かったな。伊達に全中2連覇していないし、メンバーも『キセキの世代』や俺たち上級生とタレントが揃っていた。けど『キセキの世代』が来てしまったから上級生が控えに回っちゃったけどな。」

水島は思い出しながらそう言った。

 

「そうか。それは・・・運が悪かったって言うか・・・」

伊月がちょっと悲しそうな表情になった。

 

「なーにいってんだよ。それが監督の方針だったから仕方が無かったさ。けどやっぱり悔しかった。最後の全中を殆どベンチで眺めるしかなかったのは。」

 

「水島・・・・・」

水島の発言に伊月は何もいえなかった。

 

「・・・けどオレはこのままでは終わりたくない。いや、終わらない!ま、バスケバカはバスケバカらしくあがいて見せるってこと。」

 

「・・・・ふふっ。そうだな(なんともポジティブなところが木吉に似ているな)。」

水島の発言に伊月は少し笑いながらそう言った。同時にそう思った。

 

「・・・あっ、小金井。」

 

「何?水島・・・何取り出してるの?」

小金井が水島に呼ばれたので小金井が答えると、水島はかばんの中からノートを取り出した。

 

「バッシュ。何かほしいのあったらいつでも声かけてな!これでも毎日店のラインナップとかネットで見てるから最新の情報が盛りだくさんだからな!他の3人も相談あったらよろしくな!」

水島は目を輝かせながら小金井に熱弁した。少しクールな風貌の水島だが、こう見えて生粋のシューズマニアで中学校時代練習の休みに自主練習の傍ら、店に繰り出してはシューズの情報をノートに書き込むというなんともいえない事をしていた。けどおかげで帝光中のメンバーからはシューズの事で相談されていたりしていた。

 

「お、おお。」

水島に圧倒され小金井はそう答えるしか出来なかった。

 

「・・・・(帝光ってこんなマニアックな連中ばかりなのか?)」

水島の意外な趣味に伊月は水島に対する見方が変わったと後に言った。

この後、水島と同様クールな伊月が実はダジャレ好きという新たな発見をしつつ楽しい時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、公園内のバスケコートでは。

 

「ふざけんな・・・一本なんてすぐに取ってやる!」

 

「・・・・・・」

日向がキレながらそう言うが木吉はなにも言わない。

 

日向VS木吉の1on1が始まろうとしていた・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・文字ってこんな感じでいいかな?」

 

「おう!いいと思うぜ!」

小金井の心配そうな一言に水島は明るくそう答えた。

 

木吉と日向が1on1をしている頃、4人は勧誘のためのチラシを書いていた。

 

4人で暫く喋っていると小金井が勧誘のチラシ書こうと言い、あらかじめ持っていたであろう紙を出したのでチラシを書くことになった。

 

「うん。ここはもっと大きく書いて。」

 

「うん。」

伊月が文字の太さを指摘し、チラシを書いている小金井が返事をして文字を太くしていく。

 

「・・・(ハラハラ)。」

 

「心配すんなって水戸部。大丈夫だ。」

 

「・・・(コクッ)。」

水島が小金井が失敗しないか心配している水戸部にそう言うと水戸部は相変わらず喋らないが、こくりと頷いたので何が言いたいのかは分かった。

 

「・・・・よしっ!出来た!」

そして漸くチラシが完成した。書き終わった後小金井が喜びをあらわにした。

 

「よーし、今日はここまでにしとこか。時間も時間だし。」

 

「そうだな。」

水島の発言に伊月は頷く。時計を見ると8時を過ぎたあたりだった。

 

「もうこんな時間。明日これ木吉に見せようよ!」

 

「そうだな。どんな反応するかな?」

小金井がチラシを見せながらそう言ったのに対し、水島は笑いながらそう言った。

 

 

 

 

 

「じゃーねー!!」

 

「おーう。じゃーなー。」

 

「じゃあね。」

4人はそれぞれ挨拶をして、それぞれの帰路へとついた。

 

 

「さ~て帰ろうかな。」

水島は独り言を言いながら家に向かっていた。

外は春らしく、暖かかった昼間とは変わって風が強くひんやりとしていた。

 

 

「・・・・ん?あれは・・・日向?」

近くの公園を通り抜けようとすると、ガシャンとバスケットボールがゴールにあたる音が聞こえるのでもしや木吉か・・・と水島は思い見てみると、練習していたのは日向だったので少し驚いた。

 

「だーくっそ!!!」

 

「・・・・・」

いつまでたっても入る気配がしないシュートを水島は無言で眺めていた。けど今度は隠れるというマネはせずに。

 

「よぉ、日向。」

堂々と日向に声をかけていた。

 




感想・評価宜しくお願いします!後バスケ描写の際にバスケのルール等に関して何かあれば宜しくお願いします!


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第5Q 宣言、そしてバスケ部結成!

おぉ、歴代最多の文字数・・・この調子で頑張ります‼それではどうぞ!

6月7日 編集しました


「水島・・・!!」

水島に声をかけられた日向は明らかに不機嫌な顔になった。

 

「おいおい。別に取ってかかろうなんて思っちゃいないさ。」

水島は苦笑し日向の元に向かう。

 

「・・・木吉と勝負していたのか?」

日向のところに行くと日向の額からうっすらと汗が流れていたのを見て木吉と一緒に帰っていたのでもしやと思いそう言った。

 

「・・・・あぁ、そうだよ。根っこは一緒とか、オレだって帝光の天才にやられたとか、意味の分からない事ばっかり言いやがって。」

 

「ははは。そんな事言ってたのか。」

日向の眉間にシワを寄せながらの発言に水島は笑っていた。

 

「ホント意味わかんねえよ・・・・けどそれはお前にも言えることだぜ。」

 

「オレにも?」

日向にそんな事言われたのでオレは感づいてはいたが一応聞いた。

 

「お前、帝光でPGとSFやっていた『闘将』水島 悠太だろ。2・3年生の時は名前聞かなかったけど、1年生のときに凄い活躍していたって知っている・・・なんでこんなところにいるんだよ。」

 

「・・・まぁ、木吉に誘われたからだよ。」

 

「誘われたぁ!?ふざけんな!!!お前ほどのプレーヤーなら幾らでも強豪校からの誘いはあっただろ!お前だって木吉と同じで天才だろ!」

 

「(ピクッ。)天才?・・・オレは天才じゃない!」

 

「!!!(ビクッ!)」

日向の天才と言う発言に反応した水島は声を荒げて言い返した。日向はまさかそんなに声を荒げるとは思わなかったのかビクっと体を震わせた。

 

「・・・すまない。けど木吉の言葉を借りるならオレだって根っこは一緒だぜ。元々オレには才能というのは無かった。ただ純粋にバスケが好きだった。だから上手くなれた。」

ビックリさせたことを謝ってから、水島はそう言い日向のシュート時にそのままにしてあったボールを持ち、ゴールまで走る。

 

ダッ!!ガシャン!!!

 

ゴール付近まで行くと水島はジャンプし、そのままダンクを決めた。

 

水島の身長は185㎝で、ギリギリダンクできる範囲ではあるが、全身のバネを使って、豪快なダンクを決めた。

 

「・・・・・・・」

 

「よっと・・・」

水島のダンクに無言になった日向を尻目に水島は再度ボールを持ち、ドリブルチェンジしながらゴールに近付き、レッグスルーからのクロスオーバーをした後、後ろに跳びながら打つフェイダウェイシュートを放った。シュートを放つまでのドリブルのキレが凄く、そして技一つ一つの動作が素早かった。

 

ザシュ!

 

ボールはバックボードに当たることなく綺麗な放物線を描いてゴールのリングを潜った。

 

(すげぇ・・・一つ一つの動作・フェイントのキレといいシュートの精度といい上手いし無駄が無い。)

日向は水島のプレーに思わず感心してしまった。

 

「ふぅ・・・こんなものかな。」

 

「・・・おい。何してんだよ。」

しかしすぐに思考を戻し、近付いてくる水島に対してそう言った。

 

「ははは。ここ三日はやってないから確認も含めて・・・けど、これも小学校(ミニバス)から努力した成果だよ?」

 

「ふざけんな!!!!」

日向は信じきれずにそう叫ぶ。

 

「ホントだよ。小学校からがむしゃらに練習して手に入れた技術だ。他の技術もいろいろ練習して出来るようになった。けどそれでも!レギュラーになれなかった!『キセキの世代』にすべて奪われた!」

 

「!!!!!」

水島の声を荒げながらの告白に日向は驚き、何も言えなくなった。

 

「・・・三年間レギュラーでいつも試合に出ていた木吉が羨ましかった。オレなんて一年の時あんなに活躍して、チームに貢献したのに、二年生から『キセキの世代』にスタメンを奪われてオレの目の前は真っ暗になったよ。チームのためとは言え、悔しかった。

『キセキの世代』に心を折られたのはお前らだけじゃないんだ・・・」

そう言い水島は俯いた。

 

「・・・ならなんで木吉と同じ高校に来たんだよ。」

水島の話を聞いた日向は思ったことを言った。

 

「ホントそうだな・・・けどな。そうは言ってもオレは木吉は尊敬できるぜ。」

 

「はぁ?」

しかし、先程の発言とは真逆の事を言い始めた水島に日向は何で?と言う思いで一杯になり、そう言うしかなかった。

 

「確かに試合に出てたのは羨ましかった。けど『キセキの世代』にこてんぱんにやられても何度でも立ち上がろうとする姿勢ってのは純粋に凄いと思うぜ。」

 

「・・・・・・けっ。それとこれとは話が別だよ。」

水島の話に日向は変わらず悪態をつきながらそう言った。

 

「はっはっは!まぁ、流石に何度も学校で絡まれてたりすると木吉やオレが嫌いになるわな(笑)」

 

「うるせぇ!分かってやっているんだったらやめてくれよ!」

 

「けど、その分日向に期待しているんだ。」

水島の笑いながらの発言に日向がキレると、水島は真面目な表情になりながらそう言った。

 

「それは木吉も同じだぜ。いっぺん木吉を信じてみたらどーよ?」

水島は日向に笑いながらそう言う。

 

「・・・・・・ダァホ。」

 

「はっはっは!まぁ、そうだな・・・それじゃあな。」

水島は日向の発言に笑いながらそう言い帰っていった。

 

「・・・・・・」

水島は帰り際になにも言わなかったし、日向もなにも言わなかった。

 

しかし、水島が帰ってからもバスケットボールを叩く音とゴールにボールが当たる音は止むことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・おいおい。マジでやるんかよ。」

 

「はっはっは。マジも大マジだよ。」

月曜日。いつもは朝礼の時間であるこの時に水島達バスケ部はグランド、ではなく校舎の屋上に集まっていた。

 

「よーし。相田さんにも紙貼ってきたな。」

 

「あたぼうよ!」

木吉が水島に対して確認をとり、水島は返事をした。

 

紙と言うのは勧誘の紙ではなく「バスケ部の本気を見せます!」と書いた紙である。これをリコの机に貼っていったのだ。

 

因みにリコはコレを見て?マークが頭から出ていたとか・・・

 

「よーし、コレで後には引けないぜ。」

 

・・・ごくっ。

木吉がそう言うと皆の唾を飲む音が聞こえた。皆緊張した面持ちであった。

 

しかも今日は月曜日。全校生徒が校庭に集まり朝礼が行われる日である。

何故月曜日に、屋上に集まったのか、そして何故伊月達が緊張してきているのか。

 

それは全校生徒の前で今年の目標を大声で叫ぶことだった。流石に無断と言うこともあり、やるか、やらないかの瀬戸際に伊月達は立っていた。

 

 

 

(もう、後には引かない覚悟はできている。と言うかオレには退く理由がないしな。)

しかし、水島は一人そう思っていた。水島目には焦り・緊張の色は見えなかった。もう、腹は括っていた。

 

 

「よーし。そんじゃ・・・」

そう言い木吉は屋上に設置されている柵に近づいた。

 

「(すぅ~・・・)宣誓~!!」

息を吸い、大きな声を出すための準備をしたあと、木吉は大声で今年の目標を叫び始めた。

 

「おーやりやがった・・・」

 

「あぁ、見てみろよ。教師達が驚いてやがるぜ♪」

それを見て伊月は小声でそう言ったのに対し、水島は下を見ながら少し笑いそう言った。

 

「よーし、オレも!」

水島も、後に続くように木吉の隣に行った。

 

「同じく!バスケ部、1ーE 30席 水島 悠太!チームを日本一に導きます!」

水島も大声で目標を叫んだ。

 

「オレらもやるしかねぇ。」

 

「あぁ!」

二人の姿を見た伊月たちも、そう決意し、木吉達の隣に行き同じように叫んだ。水戸部の分は小金井が代わりに言った。下を見てみると流石に不味いと思ったのか、教師が中に入っていったのを確認することが出来た。生徒たちは突然のことにざわめき始めた。

 

「・・・・・・」

リコは突然のことに開いた口が塞がらなかった。

 

 

 

「はぁ~言ってやったぜぇー」

 

「そうだな!何だか良い気持ちだ!」

 

「何か言ってよかったかな?て思う。」

 

「そうだね。言っちゃったね。」

上から水島・木吉・小金井・伊月で、全校生徒の前で叫んだ水島たちは口々にそう言った。水戸部は言わなかったので、逆に大丈夫かなとそわそわしていた。

 

「まぁまぁ水戸部くん・・・それで、日向は説得できたのかい?木吉が帰ったあと、水島も会ったそうだけど。」

伊月は水戸部のそわそわぶりに苦笑しながら二人に日向について聞いてみた。木吉はどうやら最後まで言ったけどダメだったそうで、あまり良い顔をしなかった。

 

「まぁ、コレばっかりはね・・・あいつ次第だからね。」

水島は笑いながらそう言った。

 

「そうか。」

 

「ちょっとまった!」

伊月が悲しい表情をしてそう言った瞬間、声と共に屋上の扉が開いた。

 

「お。」

声の主を見た瞬間、水島は笑顔になりながら一言そう言った。

 

中学校に使っていたのであろうバッシュをもって現れたのは黒髪に戻した日向だった。

 

「・・・・気持ちは通じていたようだな2人とも。」

日向の姿を見た伊月は木吉と水島を見ながら先ほどとは違い、穏やかな表情になりそう言った。

 

「何言っているんだバカヤロー。」

しかし日向は伊月の発言を否定するようにそう言った。

 

「1つも共感なんてしねーよ。木吉には根っこは一緒とかキレイ事ぬかされて、水島には天才じゃないとか木吉を信じろとか意味わかんねー事言いやがって。第一嫌いな奴をどーやって信じればいいんだよ。それに結果残してたんだったらそれでも恵まれてるだろーが。凡才()天才(お前ら)が一緒な訳ねーだろ!」

日向はずっと言おうと思い溜めていたものを吐き出すように言った。

 

『・・・・・』

日向の発言を聞いたバスケ部は無言だったが、伊月はやれやれといった表情である。

 

 

「これだけは言っておくぞ。オレは水島と木吉(お前ら)が大嫌いだ。だからバスケで絶対に負けたくねぇ!」

日向がそう言いきると、水島と木吉は目を見開いたがすぐに笑顔になる。

 

 

「それに、どれだけお前らが俺に言っても俺はお前達を天才としかみえねぇ。あれだけのプレーは俺には出来ん・・・けど、積み重ねてきた努力の量は俺だって負けてねぇ!俺にも自身をもって言える武器がある!それだけは絶対に負けねぇ。そしていつかお前らを越してやるから覚悟しておけ!」

さらに、日向が水島と木吉に対してそう言い放った。日向は水島たちのことを認めている。水島はいわずと知れた帝光で仮にもレギュラーをはっていただけの実力を持っている。木吉も『無冠の五将』と呼ばれただけあって、実力は折り紙付きだ。けど認めているからこそ、負けたくないという思いから出てきた言葉だった。

 

「・・・あぁ。俺だって負けない。」

 

「・・・上等だ。」

木吉は穏やかに、水島は日向の言葉に口角を上げニヤリとしながら言い返した。

 

日向はそれを聞いた後、木吉たちと同じように屋上から宣言をした。

 

その後、先生に捕まりその際日向が勢いあまって「日本一にならなかったら全裸で好きな子に告白してやる」という発言を屋上で、しかも全校生徒に聞こえるように言ってしまったので、今後バスケ部はその呪縛と戦いながら日本一を目指していくことをまだ知らない。

その後、バスケ部は先生から酷いお叱りを受けた。

 

しかし日向がバスケ部に入部し、同時にバスケ部の本気を感じ取ったリコは監督になると言ってくれたので、漸く誠凛高校バスケットボール部が誕生した。

 

 

 

余談だが、屋上での騒動後バスケ部は日向の余計な一言で何日か笑いものになってしまった。流石に皆日向に対して殺意を沸いたと部員は後に語った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日のうちに部活の手続きを済まし、翌日の放課後バスケ部はリコの到着を待っていた。

 

 

「リコちゃん、メニュー作ってくれるって言ってたけどどんなのになるかな?」

リコの到着を待つ間、水島はバッシュの紐を確かめながら皆に聞いていた。

 

「さぁな。けど、それなりのメニューは作ってくるだろう。」

 

「でなきゃ、伊達にジムの娘つとめてねぇよダアホ。」

水島の発言に伊月と日向は水島と同じくバッシュの紐を確かめながらそう言った。

 

「ねーねーどぉ?昨日水島のオススメバッシュ買ったんだけど。」

そんなときに初心者である小金井は昨日買った白を基調としたバッシュについて聞いていた。

 

「・・・・(ニコリ)」

 

「そう!?ありがとう!」

 

「・・・・あれ会話成立しているのか?」

 

「知るかダアホ。」

水戸部が微笑んだだけで小金井は言いたい事が分かったらしく、笑顔になった。それを見て木吉は顔を引きつらせながらも率直な感想を述べた。日向はそう言った。

 

「おまたせ~」

すると、メニューらしき紙を持ったリコが漸く体育館に姿を現した。水島達はリコの元へと向かった。

 

「メニューで来たからここに貼っておくよ。今日は初日だからカルめにね♥」

リコは満面の笑みでそう言いながらメニューをボードに張った。

 

「おおう!」

 

「・・・(ツー)」

 

「・・・・・」

 

「おお・・・(けど、上手く作られてるな。)」

 

「へぇ・・・良い感じだな。」

バスケ部出身の5人はメニューを見た途端(上から伊月・日向・水戸部・木吉・水島)、ある者は口から血を、ある者は開いた口が塞がらなかった。それほど厳しいメニューだったのだ。水島と木吉はメニューを見て感心をしていた。水島に至っては少し笑っているくらいだ。

 

実際水島の母校、帝光中学校は強豪なだけあって厳しい練習を毎日していた。リコが考えたメニューも厳しい方だが、水島にとっては当たり前と考えていた。

 

「えっ?そんなに厳しいの?」

 

「まぁ、厳しいけど大丈夫だと思うよ。」

初心者でメニューの過酷さを知らない小金井の疑問に水島は余裕と言わんばかりに笑顔でそう言った。

 

『いやいやいや!!!???お前だけだそんな事言えるのは!』

 

「オ、オウ・・・」

全員からの集中砲火(突っ込み)に、水島はそう言うしかなかった。

 

「・・・・(さすが、帝光出身の選手。能力は日向君達にに比べてかなり上だわ。木吉くんも同じくらいに・・・)」

昨日、日向から水島の事をきいたリコは水島を親譲りの『読み取る目』で見てそう思った。

 

(ウチにとっては凄い戦力だけど、何でここに来たのかしらね。)

同時になぜ水島が誠凛高校に来たのかは分からずじまいだった。

 

その後、バスケ部を作った木吉は代わりに日向をキャプテンに指名し、まわりもそれに賛成したので、日向が泣く泣く主将を務めることになった。

 

「あーもう!やるぞ。練習!」

日向が顔をひきつらせながらそう言い練習が始まった。

 

誠凛高校 バスケットボール部は記念すべき第一歩を踏み出した。

 

 

 

 




感想・評価宜しくお願いします!


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第2章 IH編
第6Q 誠凛のバスケ


どーも!初のバスケ描写。ハンドボーラーのオレなりに頑張って書いてみたので感想お願いします!もし、うーんと思うのであれば批評も・・・それではどうぞ!

6月15日 編集しました


キュッ!キュッ!

誠凛高校の体育館にバッシュ特有のスキール音が鳴り響く。

 

「へい凛ちゃん!」

左サイドを走っていた水島が手を上げてボールマンである水戸部にパスを要求する。水島はすっかりとメンバーをあだ名で呼ぶようになった。

 

 

バスケ部が結束して3日、インターハイ予選まであと1ヶ月と迫り、出来るだけ誠凛のバスケットスタイルを確立したいためにも試行錯誤していた。それまではただひたすら走る。それだけだった。

 

今はリコの鬼のような基礎練が終わり、ちょうど6人いるので3on3をする事になった。

 

A水島・水戸部・小金井

B伊月・木吉・日向

チーム分けは以下の通りだった。

 

「・・・・!」

水戸部は水島の声に反応した水戸部はバウンドで水島にパスをする。

 

「渡さない!」

伊月がパスをカットしようとしたが、わずかに届かなかった。

 

「くっ!」

 

「よしっ!」

伊月は僅かな差ではじけなかったので悔しがった。水島はパスを貰いドリブルを仕掛ける。

 

しかしこの3on3、部員の人数もギリギリなためリコが2つほどルールを作った。

 

1つは、必ず全速力で走る事。要するにシュートを入れられても速攻を仕掛けろという事だ。5分×2セットを走りきるなど、簡単だろと笑顔でいったリコに部員から反発が起こったが、「3倍にするよ♪」の一言で黙らせた。なのでもはやこの3on3は速攻ゲームとなっている。

 

「おおう。足が重いよ・・・」

水島は汗を肘につけているリストバンドで拭い、ゆっくりとドリブルをしながら呟くよう弱音を吐いた。

連日の鬼練習にこの3on3。流石の帝光出身でも疲労が溜まっていないはずが無い。

 

しかし、それでも走り続けないといけない理由がある。それは・・・

 

「まけねぇぞ!!後1本取られたら練習3倍なんてやりたくねぇんじゃあ!!」

 

「そんなのしらねぇよ!」

前に出てきた日向の腹のそこから出た叫びに水島は苦笑し、そんなの知らんといわんばかりに叫び返す。

 

もう一つのルールというのは1セット5分の間に10点先取されたチームには基礎練3倍という地獄が待っているのだ。5分の間に両チームがどちらも10点先取出来なくても、両チームとも地獄が待っているので、そんなの受けたくないので皆一心になって点を入れようとしていた。しかも2セットとも負ければ6倍の練習というキチガイじみた事をやられるので気持ちは皆強かった。

 

そして日向たちBチームが8-6で後一本取られたら、やばい状況に入っているので尚更点を入れさせないという思いが強いのだ。

 

「行かせん!!」

 

「・・・!!」

日向のハンズアップでの必死のディフェンス。しかし、水島はクロスオーバーでゴール側がある内側に切り込むに見せかけて、水島は自身の背中にボールを通すビハインド・ザ・バックで日向を振り切ろうとする。

 

「うおっ・・・!!」

右→左の揺さぶりもかねられたキレのあるドリブルに日向は水島が最初に切り込んだ方向に重心が傾いていたためか、対応し切れず水島のペネトレイトを許してしまう。

 

「ヘルプ!!」

 

「行かせん!!」

木吉が日向のヘルプに行き、水島の前に立ちふさがるが水島は木吉が来たのを見計らって右手に持っていたボールを左に持ち替え、右側にパスを出した。

 

「なっ・・・しまった!!」

木吉は後悔をし、パスが出された方を見るとそこには小金井がいた。

 

「いけっ!コガ!!」

水島はそう叫ぶ。伊月は水戸部にスクリーンを掛けられていたためドフリーの状態でパスを貰った小金井はジャンプシュートを放った。

 

 

 

・・・ガガッ。

 

しかし、最高の状態で放ったシュートはゴールに嫌われ得点とはならなかった。

 

「よしっ!」

 

「ああっ!!」

シュートが外れたのを見て日向はこぶしを作り、喜んだ。水島は少し落胆の色を見せたがすぐに切り替え、リバウンドに備えた。

 

「っし!」

 

「くそっ!」

しかし、上背とポジションで木吉に劣る水島は勝てるわけも無くリバウンドは木吉が取った。水島は悔しさのあまりそれが声に出た。

 

その後、日向のシュートで8-8と両チームとも後1ゴール差に持ち込んだ。

 

「速攻!」

シュートが入った瞬間、ボールを取りに行った水戸部はすぐさま水戸部から見て左側を走っていた水島にパスを出した。

 

「行かせない!」

しかし、すぐに伊月がマークに付きパスを取らせないようにする。

 

「・・・・!!!」

それを見ると同時にパスの軌道を見た水島は伊月から離れるようにさらに左へ寄る。

 

「えっ!?」

突然の行為に伊月が驚く。そして水戸部からのパスはキレイに水島がいる位置にどんぴしゃの位置で通った。

 

「ふっ!!」

ザシュ!

 

伊月を振り切った水島はレイアップシュートを決めた。

 

『ピィーーー!!!』

リコが笛を鳴らし、10-8でAチームの勝利が決まった。

 

「ごめん水島。あの時に俺が入れていれば・・・」

負けて地に這いつくばっているBチームを尻目に小金井は水島にシュートを外したことを謝っていた。

 

「別に良いよ!誰もが最初からシュートポコポコ決められるわけじゃないし。気にすんな!」

水島は笑顔でそう言った。水戸部も同じ気持ちで笑顔でこくりと頷いた。

 

「・・・うん!」

小金井は優しい2人に笑顔でそう言った。

 

(くそっ・・・クロスオーバー→ビハインド・ザ・バックのキレが半端じゃねぇよ。)

 

(全中でもそうだったが・・・いざやってみると凄いな・・・)

 

(見事に振り切られたな・・・てか来年有望な1年が入ってきたときにPGに戻る事もありなら・・・いろいろとまずいな・・・)

水島のプレーに相手チームである(上から)日向・木吉・伊月の3人は顔をしかめながら汗を拭いそんな事を考えていた。しかしその思いは反対に水島に期待しているという事。

 

(ははは・・・いろいろと凄すぎて言葉が出ないわね・・・本当に推薦が来なかったの?)

リコは汗を流しながら水島のプレーに驚き声が出ていないほどだった。

 

(これなら・・・インターハイ狙えるかも!)

リコは目を輝かせながらそう思っていた。リコはそう思っている間にも1分間のインターバルを挟んでの2セット目が始まろうとしていたのでリコは水島に言いたいことがあったので水島の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっそ~負けたぁ!」

2セット目が終わり、6-10で水島のチームが負けてしまったので顔を上に上げて汗を拭いながら叫んだ。

 

 

『ちょっと悪いけど水島君はシュート禁止ね!』

2セット目が始まる前、リコがそう言ってきたので水島は素直にOKを出し、練習に臨んだが・・・・・

 

 

ガッ!

 

ガガン!!

 

ガコッ!!!

 

何度もシュートがリングに当たっては得点とならない・・・・・水島はシュートが出来ない分頑張ってチャンスメイクをしてをしては味方にパスをしたのだが、その味方が(特に小金井)ことごとくシュートをミスしてしまい、そのままターンオーバーで相手にシュートを入れられてしまい負けてしまったのだ。

 

「ごめん!!!」

3ON3後、小金井がもう一度謝ってきた。2セット目は水島はシュートが打てず、水戸部が密着マークでパスをさせないようにしていたので、小金井はその分シュート数も多くなったのだが、その分ミスも多くシュートミス数がゴール数を上回る結果となってしまったのだ。

 

「だ~か~ら~言いっつってんだろ?人はミスをしてそれを糧にするんだ。ま、今回ばかりは仲良く3倍練習逝っとこうぜ。」

 

「あれ?最後の字が・・・」

 

「んなこたぁいいんだよ!」

水島が小金井にそう諭し、小金井は最後の練習の言い方がおかしいと言うが、水島に引きずられていった。水戸部も慌てながらも後を追った。

 

 

 

「よーし、今日はここまで!」

リコが練習の終了を告げると全員死んだようにその場に倒れこんだ。

 

「はは・・・やべー足ががくがく。こんなに練習させられたのは久し振りだわ。」

水島も倒れたうちの一人で中学校時代でもこんなに練習させられたのを思い出し大量の汗を拭いながらそう呟いた。

 

「さぁ!倒れたい気持ちも分かるけど、集合よ!」

休む時間もとらせてくれずリコがそう言ったので水島達は気合で立ち上がりリコの元へと集合した。

 

「さぁ、今日の練習はここまででこれからの事を話すわ。」

 

「これからの事?」

リコの発言に木吉は汗を拭きながらそう言ったのでリコは「えぇ。」と言った。

 

「5月にはインターハイ予選が始まるけど、はっきり言って時間が足りない!それにうちは今年創部したばかりの若いチームよ。」

 

「そうだな・・・あと1ヶ月ちょいはあるけど実際今からディフェンス練習したりしてセットプレーの練習とかにいる時間を計算するととてもじゃないが1ヶ月じゃ少なすぎる。」

水島がリコの発言に汗を一回拭い、顎に手をつけ考える仕草を見せながらそう言った。

 

「水島君の言う通りよ!それにうちには長年チームが築き上げたスタイルというのが無い。今日は早めに切り上げてスタイルについて話しましょ。」

リコがそう言い近くにあったホワイトボードを持ってきて、ボードに『誠凛のバスケットスタイル』と題名を書いた。

 

「さ、時間は無いから早めに思いついた人は挙手!」

リコはそう言ったので皆考え始めた。若いなら若いなりにどういうスタイルがいいのか・・・

 

「やっぱりラン&ガンだと思うぜ。」

すると、水島が手を上げそう言った。

 

「ラン&ガンって?」

初心者の小金井は聞きなれない言葉に疑問を感じ水島に聞いた。

 

「ラン&ガンって言うのは文字通り走って(ラン)、シュートを打つ(ガン)スタイル。オフェンスに特化する分ディフェンスが格段に落ちるけど、うちは若いチームだし、守り勝つって言っても皆個人のディフェンス力がそんなに高いわけじゃないし。」

 

「そうだな。若いなら若いなりに走りまくって乱打戦に持ち込んで・・・」

 

「守り勝つんじゃ無くて打ち勝つんだ。」

水島の提案に日向・木吉は賛成の意見を述べた。

 

「そうだね。それにラン&ガンのほうが潔いし小金井君も分かりやすいからいいと思うよ。」

伊月もラン&ガンスタイルには賛成のようだった。水戸部も賛成のようでこくりと頷いていた。

 

「あらら・・・一発だったわね。」

 

「まぁ、限られた時間の中で何が出来るかって言ったらそれしかないしね。」

 

「それにうちには全裸がかかっているんだ・・・」ゴゴゴゴ・・・・

 

水島があまりの速さにそう呟いたリコに対してそう言い、伊月が日向に対して心なしか怒りの表情をしながらそう言った。

 

「わ、悪かったよ!」

日向も悪いと思っていたのか皆に対して謝った。

 

「ま、負けられない理由が出来たで良いんじゃないか?」

木吉が日向をかばうような発言をしたので「それなら良いけど・・・」と伊月も納得したようだった。

 

「ははは・・・まぁ、皆納得してるようだからラン&ガンで良いと思うぜ。」

 

「そうね・・・」

苦笑しながら水島はリコに対してそう言った。リコも苦笑しながらそう言った。

 

「それでやっぱり小金井君は今日の3on3を見てシュートの確率を上げてほしいわね。ボ-ルの使い方とかは形になってきているから、後はそれだけね。」

リコは小金井に対して今日の練習を見て思った事を行った。

 

小金井は身体能力がいい所為か、ドリブル・パスが僅か3日で形になってきている。後はシュートの正確性があればいい感じになるのだ。

 

「うん・・・」

小金井もそれは分かっているのか力なく返事をした。

 

「水島君、これから時間あるときでいいから小金井君を見てくれない?」

 

「いいぜ。」

リコは元気が無い小金井を見て、水島にシュートを教えてくれないかとお願いをした。水島はリコのお願いに快く快諾の返事を出した。

 

「それじゃ、今日はここまで!明日からはスタイルに合った練習をしていくからそのつもりで!」

 

『オウ!』

リコがそう言うと、部員が声をそろえてそう言い本日の練習は終わった。

 

 

「よし。居残りすっか。」

練習が終わり、疲れたのか部員がゆっくりと帰り支度をする中水島はボールが入っているかごを持ってきてシューティングを始めた。

 

毎日居残り、練習するのは帝光中時代からずっと行っている事だ。おかげでたくさんの技術を得られたし、いろいろためになった。

 

「俺もやっていい!?」

 

「・・・・・」

すると、小金井もやるのか水島に入っていいか聞いて来た。水戸部もやりたいのか、または小金井と一緒に帰るのか分からないが、小金井と一緒にいた。

 

「いいぜ!リコにも教えてって言われたし今日の練習外しまくってたからな。けどお前体力は大丈夫か?リコの鬼練習で死にかけだったけど。」

 

「うう・・・うん。大丈夫。」

笑いながら言った水島の発言に小金井はそう言うしかなかった。。

 

「よーし、やるか!」

 

「うん!」

水島がそう言うと、小金井もそう言い気合を入れて練習が始まった。

 

 

 

 

シュッ!ガガッ!

 

「う~ん。10球ともボールの軌道がばらばらだよ。全部完璧とは行かなくても全部同じような感じでいかないと。」

フリースローラインから10本打った後に水島が小金井に対してアドバイスを送った。

10本中4本。まだ入って3日とはいえ、半分も行かない結果にちょっと心配になってきた水島。

 

「うん!どうすれば入るかな?」

小金井も危機感というのはあると思うが出来るだけ明るく振舞おうとし、水島にどうすればいいのか聞いた。

 

「うん。出来るだけ同じ打つ位置から打つ事。後は指とかに引っかからなければ大丈夫。」

 

「・・・・・(こくり。)」

水島のアドバイスに水戸部は同じなのかこくりと頷く。

 

「うん。やってみる。」

水島からのアドバイスを聞いた小金井はお礼をいいシュートを打ち始めた。

 

 

 

「・・・うん。10本中6本。今日はここまでにしようか。」

 

「うん。ごめんね、水島も練習したかったのに・・・」

ゴール数が半分を越えたあたりでで練習を終えた。小金井もそれに同意すると共に水島があまり練習できなかった事を謝っていた。

 

「それはいいよ!まぁ、これからだな。練習がきつくなるのは。」

 

「・・・(コクリコクリ!!!)」

 

「えっ?」

水島の発言と水戸部の反応に小金井はどういう意味なのか汗を拭いながらもう一度聞いてきた。

 

「バスケットスタイルがラン&ガンになったからな・・・正直お前が付いてこれるかどうか心配だ。」

 

「・・・・・・頑張ってみる!」

 

「・・・・(にこっ。)」

水島の発言に元気良くそう言った小金井に水戸部はにこりと笑った。

 

「んじゃ、かえろっか。」

 

「うん!」

水島がそう言うと小金井がそう言い、3人で後片付けをした後一緒に帰っていった。

 

インターハイ予選までの地獄が始まるのであった・・・

 




2話連続で5000文字突破・・・オレのHPはもう0よ!んなわけあるかダアホ!頑張って次も書くのでよろしくお願いね!


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第7Q 小金井退部!?

ど~も!お気に入りも100件を超えました!頑張っていきます!

因みにバスケ部所属のクラスは
1-A 相田
1-B 小金井・水戸部
1-C 伊月・日向
1-D (土田)
1-E 木吉・水島
です!

あとこの回は紛らわしい表現が入っていますが、腐ではありませんのであしからず。

何か不審な点がございましたら感想お願いします!それでは!




ラン&ガン。誠凛高校のバスケットスタイルが決まった後の練習というのはすさまじいの一言に尽きた。

 

「ほら!もっと動きなさい!」

 

「ちがう!そこにいたらすぐに抜かれるだろうが!」

体育館から怒号が飛び交う。先ほども行ったように自分たちが目指すスタイルが決まったので今日から本格的に練習が始まった。

 

基礎練習・ディフェンスの練習・セットプレー・3ON3・・・聞くだけでは分からないが、数あるスポーツの中では一段と激しく、厳しいスポーツといわれるバスケの練習ほど厳しい練習は無い。

 

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

汗をかく部員の中、大量の汗をかいていた小金井はその厳しい練習についていけず、練習中しょっちゅう足が止まっていた。

 

 

「コガ!大丈夫か?」

水島は立ち止まっている小金井に気付き、声をかけた。厳しい練習で水島自身も自分の事でいっぱいいっぱいだが、チームメイトへの声掛けは忘れず、練習が始まってから特に小金井に対して声を掛けない事はしなかった。

 

「う、うん・・・大丈夫・・・」

 

「明らかに大丈夫じゃないぞ。ここで倒れてもあれだから休んでもいいぞ。」

 

「そ、そう・・・?それじゃちょっと休むわ・・・」

水島が心配して休んでもいいぞといったのに対し小金井はお言葉に甘えて体育館のすみっこに行き、休みがてらストレッチを始めた。

 

 

「大丈夫かコガ・・・」

 

「まだ初心者だ。休ませても大丈夫だろ。だが、ちときつい気もするがな・・・」

コガが休むのを見ると、水島と日向はコガについて話し始める。近くにいる水戸部も親友の姿に一抹の不安を抱いていたのか、少し心配そうな表情を見せていた。

 

「はっ!?『親、隅でお休み。』キタコレ!」

そんな中、伊月が汗を拭いながらお休みでダジャレをぶっこんで来た。

 

「伊月ダマレ。」

 

「流石にここで言うものじゃないと思うが・・・」

 

「ええっ!?」ガーン

2人の反応に伊月は少なからずショックを受けた。

 

 

「(バスケはあまりの厳しさに辞める人も少なくは無い。何も無ければいいが・・・)」

水島は休む小金井を見ながら、小金井がやめないか不安を抱いていた。

 

「(大丈夫かね・・・)」

リコも水島と同じ事を考え、心配と嫌な予感からか、額から汗が一粒流れていた。

 

さまざまな不安を抱えたまま、今日の練習が終わった・・・

 

 

 

 

 

「ふわぁ・・・・ったく、凄い眠いよ。それにすげー体が痛いわ。」

青を基調としたジャージ型の制服を着た水島は4時間目が終わり、移動教室だったので教室に戻るところだった。水島は欠伸をした後、肩を一回くるりと回しながらそう言った。

 

バスケ部が結成して4日。度重なる疲労とリコの鬼練習に体の節々が悲鳴をあげていた。とはいえこちらも結成したばかり。時間が無いのは皆分かっているのでこんな鬼練習が続いたりしてしまうのだ。

 

「はっはっは。まーいいんじゃねえか?」

そんな中、木吉は疲労など無いといわんばかりに水島に対して笑顔で言った。

 

「ふん、授業中何度も欠伸していたお前が言っても説得力なんてないわ。」

 

「おお~良く見てるなぁ?」

水島は授業中何度も欠伸をしていたのを見ていたため、それを木吉に言うと木吉はばれても笑顔を崩さずそう言い返した。

 

「はぁ~・・・ん?」

態度があまり変わらないのでため息を一つ突いた水島。すると前から少し疲れている表情の小金井を見つけた。

 

「ようコガ!元気か!」

 

「あ、うん・・・元気だよ・・・」

水島は小金井に声をかける。小金井も水島に気付いて挨拶を返した。だがその表情と声色から明らかに元気ではないのは見て取れた。

 

「そ、そうか・・・何かあったらいつでも相談してな!」

 

「うん・・・」

水島は笑顔でそう言ったら、小金井は変わらず疲れた声でそう言いその場を後にした。

 

「・・・・・」

 

「明らかに疲れた顔しているな。」

小金井が教室に戻るのを見届けると、水島は考えているのか無言の状態。木吉は小金井の表情を見てそう言った。

 

「そうだな・・・」

水島は少し寂しそうな表情でそう言った。

 

とはいえ昼休みの時間も時間が限られている。水島たちは自分たちの教室へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

すべての授業が終わり水島たちは練習着に着替えて、練習がいつ始まるのかストレッチなど入念に行いながら待っていた。

 

しかし、すぐにいつもと違う事に気付いた。

 

「あれ?小金井と水戸部は?」

木吉は2人がいないことに気付いて皆に聞いた。

 

「そうだな・・・確かにいないな。」

 

「カントクもいつもよりも遅いし・・・」

日向・伊月もそれに気付き、周りを見渡しながらそう言った。

 

「・・・ちょっと探してくるわ。」

 

「おねがいするわ。」

水島が嫌な予感が的中したんじゃないかと思い、2人を探すと言い靴を履き替えて探しに出かけた。日向は捜しに行く水島にそう言った。

 

 

「う~ん・・・どこに行った・・・ん?あれは・・・カントク?」

日向と分かれた後、2人を探していた水島。

 

体育館を出て、体育館の裏を見ようとした水島は物陰から隠れるように体育館の裏を見ているリコの姿を見つけた。

 

「・・・(トントン。)」

 

「うわっ!?・・・何だ水島君か・・・」

水島は後ろからリコの肩を叩いた。それに驚いたリコは声を出し、後ろをむいて叩いた相手が水島と気付くとホッと一息をついた。

 

「なにしているんだ?」

 

「うん・・・ちょっと・・」

水島が何をしているのか聞くとリコは言葉を濁す。するとリコはジェスチャーで見てみてと言う。水島は物陰から体育館裏を除くと、なにやら話し込んでいる小金井と水戸部がいた。

 

「何話しているんだあいつら・・・」

 

「小金井君辞めようとしているの・・・」

 

「えっ・・・」

水島は何を話しているのか気になっているとリコは俯きながらそう言った。水島はそれを聞いて驚いてリコの方を見た。

 

水島の予感が当たってしまった。

 

「でも多分水戸部君が説得しているんだと思うの・・・」

 

「まぁ、声出さないからな凛ちゃん・・・ならオレは見ているか・・」

水島はそう言い、水戸部と小金井を静かに見届け始めた。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・」

やめようとしている小金井を必死に説得している水戸部。

 

言葉は発さないが、小金井には水戸部が言っている事が良く分かった。

 

「うっ・・・そりゃ水島が居残りの時間に教えてくれたりしてくれるんだけど・・・」

小金井も冷や汗をかき、そう言い返す。

 

小金井は練習をするまでは水島に言われた事を軽く見ていた。

しかし、練習が本格的に始まるとその過酷さが身にしみて分かり、そして辞める事を決めてしまったのだ。

 

しかし、いざ考えると頭に浮かぶのは小金井に一生懸命指導してくれていろいろと助けてくれた水島の姿。

 

決して驕らず、笑顔で優しく指導してくれる水島が頭に浮かぶのだ。

 

「・・・・・」

水戸部も水島が悲しむぞ(小金井訳)と、声には出さないが目で訴えていた。水戸部自体も親友である小金井には辞めてほしくないのだ。その思いもこもっていた。

 

「うっ・・・わ、分かったよ!おれ、やるよ!」

小金井も水戸部の説得に負けて部に残る事を決めると、水戸部が珍しく笑顔になった。

 

「(練習は辛いけど、水島が一生懸命教えてくれている。それにも応えないと。)」

小金井は再度気持ちを引き締め、気持ちを切り替えたのである。

 

 

 

 

 

「良かったね~小金井君が残ってくれなきゃ、水戸部君が何言ってるか分からないもん。」

 

「おいおい・・・まぁオレは部に残ってくれて嬉しいな。」

2人の会話を聞いた水島とリコはそれぞれの思いを口にした。

 

「ばれるとまずいし、私たちは先に行きましょ!」

 

「だな。」

2人はそう言うと、小金井達が来る前に体育館へと戻っていった。

 

 

(頑張れよ。コガ!)

水島は心から小金井にエールを送ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「どこ行ってたんだ2人とも!」

 

「ごめん皆。遅くなっちゃった。」

 

「・・・・(コクリ)」

遅れてやってきた水戸部と小金井は日向に怒られたので2人は素直に謝った。

 

日向も「これからは遅れるなよ。」と、2人を許し練習の準備に入った。

 

 

「(よしっ!やるしかないっ!)」

小金井はバッシュの紐を確かめ、気合を入れて練習に臨んだ・・・

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

しかし、昨日の今日で急激に変わるわけでもなく、昨日と同じように途中でばててしまっていた。

 

「(けど、俺は決めたんだ!)」

しかし、昨日と違うのは諦めないという強い気持ちを持っている事である。

 

究極の根性論ではあるが、小金井は根性で耐え抜き見事最後までやりきる事が出来た。

 

 

 

 

「おえ・・・」

練習が終わると、小金井は死んだように仰向けで倒れてしまった。

 

「ごくろーさん。ナイスガッツだぜコガ!」

水島は最後までやりきった小金井に賞賛を送った。

 

「はは・・・やった。」

小金井は水島に対し、疲れてはいるがどこか満足した表情でそう言ったのであった。

 

 

こうして小さな危機を乗り切った誠凛高校はまたひとつチームとしての士気が上がったのである。



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第8Q 新たなメンバー、木吉の悩み

お久です!ようやく投稿ができる・・・・くぅ~!!!
それではどうぞ!!!!


キュッ、キュッ。

 

「オーエイ!オーエイ!」

インターハイまで半分を切り、練習に精を出す誠凛高校。相変わらずリコの鬼の基礎練習は続いていたが、その練習にも徐々に慣れ始めていた。

 

ピィーーー!!

 

「終了!3分休憩後に3on3!チームはAチーム水島君・日向君・水戸部君!Bチーム木吉君・小金井君・伊月君で行くわよ!」

リコは笛を鳴らし、次の指示を出した。選手たちは歩いて体育館のすみへと行き、水分補給など水分補給をする。

 

「ふい~~漸く慣れた!」

小金井はタオルで汗を拭きながらそう言った。

 

「はは、途中で抜け出す事も少なくなったしな。」

水島はストレッチをしながらそう言い、首にかけたタオルで汗を拭う。

 

小金井も漸く慣れてきたのか、以前のように練習の途中で抜け出す事は無くなり、日に日にバスケの技術が上達してきた。

 

「おい。そんな事言ったら・・・「へぇ~慣れたのね。それじゃ、その倍逝っとく?」・・・いや流石にキツイヨ。」

日向は小金井の発言にいさめようとしたら、後ろからリコが満面の笑みでそう言うので日向は丁重にお断りをした。

 

「・・・・はっ!?『ナレーターに慣れた!』キタコレ!」

伊月はいつもの如く、小金井の発言からダジャレを思いつきそれを繰り出した。

 

「伊月ダマレ。」

 

「伊月は通常運転だな。今日も異常は無し。」

 

「ははは。でもここで言うものじゃないと思うよ。」

 

「ええっ!?」

いつもの如く伊月のダジャレは日向・水島・木吉に一蹴されてしまった。

 

「はぁ・・・(伊月君はダジャレが無ければいい感じの男なのに・・・『残念なイケメン』ね本当に。)」

リコは手を頭に当て、そう思いながらため息を吐いた。

 

 

ガララ・・・

 

「ん?」

水島たちが楽しく会話していると、体育館の扉が開いたので皆は一斉に開いた扉の方を見た。

 

 

「あの~バスケ部に入りたいんですけど・・・」

 

「えっ!?」

扉を開けて入ってきた制服を着た糸目の男の発言に皆は驚き、一瞬の沈黙の後歓声が上がった。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え~今日から入ることになった土田(つちだ) 聡史(さとし)です。初心者ですが、一生懸命頑張りたいと思うのでよろしくお願いします!」

糸目の男、土田はそう言い深々と頭を下げた。土田が自己紹介を終えると部員から拍手が沸き起こった。

 

「新入部員か~いっそう賑やかになるね!」

小金井はうんうんと頷きながらそう言う。水戸部も同意見の様で頷いていた。

 

「どうしてバスケ部に?」

 

「うん、あの屋上からの宣言を見て、自分もバスケをしてみたいと思って・・・」

日向は入部理由を聞くと土田は頬をかきながらそう答えた。

 

「へぇ~んじゃこのアホ(日向)が言った事も分かってて入部するってコトだね?」

 

「誰がアホだ。」

水島は土田に日向を指差しながら真剣な表情でそう言った。日向は水島の発言に突っ込むが、水島はスルーした。

 

「いや、俺もう彼女が・・・」

 

「なに?リア充だと!」

 

「落ち着けコガ。」

土田の発言に小金井は食いついたので、水島はそれを諌めようとしたが・・・

 

「リア充って何だ!?新しいポジションか!?」バーン

 

「いや、流石に分かるだろ木吉!?」

 

「いや、分からん。」

またしても木吉のド天然発言が飛び出したので伊月は突っ込んだ。しかし木吉は本気で知らないようで、木吉が複雑な表情をしていたので、伊月は何も言えず頭を抱えた。

 

「しゃーないだろ伊月。普段ばあちゃんたちと一緒に暮らしているんだから、意味が分からないって言う奴もたまにいるよ。」

 

「そういうこと。ま、気楽にいこーぜ!土田君!」

 

「あ、うん!」

木吉は水島の発言に同意すると、いつもの笑顔で土田にそう言った。土田も木吉の優しい言葉で幾分か緊張が解けたのか、当初よりも表情が柔らかくなっていた。

 

「さぁ!親睦を深めたところで、練習再開よ!土田君は今日、練習見学ね!」

 

「は、はい!」

リコがそう言うと土田は姿勢を正し返事をする。

 

「うん!それじゃチームはさっき言った通りで!」

 

「了解。じゃあ練習すっぞ!」

日向はそう言うと部員は2チームに分かれ、準備を行い始めるのであった。

 

 

キュッ、キュ!

 

「へいパス!!!」

 

「そこ!少し内から!」

 

 

「おお・・・これがバスケ・・・」

バッシュのスキール音、ボールマンを呼ぶ声。周りから飛び交う怒号に土田はただ気が抜けた声しか出なかった。体育の授業でしかバスケをした事が無かった土田は‘本当’のバスケを目にし、抜けた声が出るだけだった。

 

「ふふ、これくらい当然よ!バスケは数あるスポーツの中でも特に激しいスポーツと言われているわ。簡単に言えば28mのコートを40分も走らないといけないからね。」

 

「本当ですか!?ただでさえ学校でやる10分ゲームでもきついのに・・・」

土田はそれを聞き、僕にもできるのかと言う思いが一瞬よぎった。

ぱしっ。

 

そんな中、水島にボールが渡りバスケの基本の姿勢であるトリプルスレットの構えに入る。

 

「なんだ・・・?雰囲気がやばい・・・」

水島が構えた瞬間周りにながれた威圧感が土田にも届き背筋がざわつく。

 

「来い水島!」

 

「・・・・!!!」

水島のマークマンである伊月がそう言うと、ゆっくりと水島は右手でドリブルをして・・・・・

 

・・・・・ダッ!

一歩目と同時に右→左へクロスオーバーし、目にも止まらぬ速さで伊月を左側から抜きにかかる。

 

「!!!くっ!」

水島の動きに体制を崩されながらも足を踏ん張り、何とかくらいつく伊月。

 

「甘いな!」

だが、くらいつくので精一杯と一瞬の判断で見抜いた水島は再び左→右へクロスオーバーをする。ダブルクロスオーバーと呼ばれる技に、伊月は対応しきれず水島の侵入(ペネトレイト)を許す。

 

インサイドに切り込んだ水島は左45度の方向からゴール前付近で跳び、ダンクの体勢に入った。

 

「うおおおおお!!」

 

「・・・!」

しかしゴール下には木吉が待ち構えており、水島が体勢に入ったと同時にシュートコースを防ぐようにブロックをする。

 

「・・・・・!!!!」

だが水島はそこからボールを持ち替え、跳んだ状態でビハインド・ザ・バックパスを出し、木吉の後ろに隠れていた水戸部にパスをした。

 

「おおっ!?(この前と似たような感じじゃんかよ~~~)」

木吉もそれを見て驚きの声を出し、前と似たような状況に若干涙目になった。

 

そのまま水戸部がレイアップで決め、Aチームに2点が入った。

 

「うおっ!何今の!?」

水島のプレーに土田は感嘆の声を出す。

 

「ふふっ、あのパスを出した青髪の子こそ誠凛高校が誇るスーパーエース、水島 悠太君よ!」

 

「あの人が・・・」

ドヤ顔であるリコの紹介に土田はそう言い、水島を見た。

 

(同い年とは聞いたけど、他の人とは一線を画している・・・・・凄いとしかいえない。)

土田は水島のプレーを見てそう思うしかなかった。

 

「帝光中出身って言うからなんでこの学校に来たのかなって思うところはあるけどね。」

 

「帝光出身?はぁ、やっぱりバスケのエリートは違うなぁ・・・」

帝光の名を聞き土田はため息を吐いた。バスケ素人である土田でも分かるほど王者、帝光の名は知れ渡っていた。

 

「うん、他の子もそうやって言っていたけどね、水島君が言ってたのよ。」

 

『帝光だからとかじゃないぞ。オレはバスケが好きだ。まぁ、親父がバスケやっていたって言うのもあるけど、それを差し引いてもバスケが大好きなんだ。上手くなりたいからNBAの選手や日本のプロバスケット選手のプレーを動画や実際に見に行って自分で真似したりしてたな。』

 

「・・・・って言っていたわよ。」

 

「うはぁ、やっぱり上手くなるにはそれぐらいはしないといけないのかな・・・」

水島の言葉を聞き、土田は若干表情を固くし俯きながらもそう言った。

 

「これからよ土田君!バスケ部にも初心者の子もいるからその子と一緒に上手くなればいいわよ!それにどんな事でも好きになれば自然と上手くなるわよ!」

「好きな事か・・・・そうだね。これからだね。」

リコの発言に土田はそう言いバスケのコートを見た。

 

 

その土田の表情は先ほどの硬い表情ではなく、穏やかな笑顔であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ピィーーー』

笛が鳴ると、選手たちはその場に倒れこんだ。

 

「何度目だよこれで・・・くそっ。」

水島はそう言い握り大粒の汗を拭いながら握りこぶしを作っていた。

 

1戦目は、水島たちAチームが20-16で勝利したのだがやはり2戦目には水島に「シュート禁止」の制限がかかり、他の選手が健闘しものの、Bチームが14-20で勝利し今回のペナルティも両チーム仲良く受ける事となった。

 

 

「ま、いいんじゃねーか?」

木吉がそれを聞いていたようで、いつものにこやかな笑顔でそう言ってきた。

 

「うるせー・・・てか木吉今日何か考えながらプレーしていたよな?」

 

「うん?何のことだ。」

水島の問いに木吉はとぼけるようにそう言う。

 

水島の言うとおり今日の木吉のプレーは所々で何か考える表情をしながらプレーをしていたので

 

「水島の言うとおりだよダアホ。」

しかし日向もそれには気付いていたようで、木吉の肘を小突きながらそう言った。

 

「あらら・・・皆気付いていたようで?」

 

「いいから教えろって。」

木吉の変わらずとぼけた言い方に水島は痺れを切らし、語尾を強くしながら言い放つ。

 

「う~ん・・・おれさ、最近悩んでいるのよ。」

 

「何を悩んでいるの?」

小金井もその輪に加わり、木吉に聞いた。

 

「オレこんなガタイしているけど味方にパスしたりして皆を助ける役割が自分にあっていると思うんだ。」

 

「それってつまりPGって事?」

 

「そーゆーこと。」

伊月の問いに対し木吉はへらりとしながらそう言った。

 

「確かに木吉は中学校からCなのにパスが上手かったな。」

水島は練習中のプレーや中学校時代のプレーを思い出しながらそう言った。

 

確かに木吉はCにしては珍しくパスセンスがある選手だった。Cらしく力勝負に持ち込む事も出来れば、周りを見てパスもするPGの役割も出来る選手、それが木吉なのだ。

 

「だろ?けど、PGには伊月と水島がいるからPGをする事は無い。それに俺以外Cできる奴もいないし、人数も人数だからPGしたいなんて言えないのよね。でも・・・」

 

「まさか、今のスタイルに限界感じているとかじゃないだろうな?」

 

「日向お前・・・超能力者か?」

 

「こんな時に何言っているんだ!?」

日向は脳裏に浮かんだことを言うと、図星だったのか木吉が目を見開き驚いた表情をしながら言った。木吉の発言に水島がすばやく突っ込みを入れた。

 

 

「要するに自分のしたい事がCでは出来ないって言いたいの?」

 

「・・・・・・」

伊月の発言に図星なのか珍しく木吉が口をつぐんだ。

 

なんともいえない雰囲気がメンバーの中で流れて来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え~それならさ・・・両方やればいいんじゃない?」

そんな雰囲気を吹き飛ばすように小金井はへらりとした表情で衝撃の一言を放った。

 

「はっ!?い、いや小金井!?まず無理だ!」

 

「そうだぞ!PGとCは役割的に正反対だぞ!」

小金井の一言に伊月と日向は否定的な発言をした。

 

「ふぅん・・・・」

 

「・・・・・・」

そんな中で水島は少し考えていた。木吉は驚いた表情をしていた。

 

 

「・・・・いや、案外いけるかもしれん。」

水島は考えた後、そう言った。

 

PGのパスセンスを持つC・・・もしそれが仮に出来るのであれば攻撃のパターンが増える。正反対のようで、合わされば案外いけそうな奴だと水島は睨んだからである。

 

「まじで?」

日向は水島の発言に驚きながらそう言う。

 

「・・・・そうだな!なんだかイメージできて来た!コガありがとう!」

 

「え?あ、ああ。どういたしまして。」

木吉はスタイルのイメージが出来あがってきたからか、小金井にお礼を言った。

 

「すまないみんな!イメージが出来ているうちに練習がしたい!駄目か!?」

木吉は居残り練習の提案をだめもとで提案をした。

 

「・・・オレはいいぜ!」

 

「・・・たく。仕方がねえな。」

 

「うん。いいよ。」

水島の返事を皮切りに日向・伊月はOKの返事を出した。

 

「オレもいいよ!」

 

「・・・・(コクコク!!!)」

 

「みんな・・・ありがとう!」

最終的に全員がいいと言った後、木吉は感謝の言葉を述べた。

 

「よっしゃあ!!!!やんぞ練習!!!」

 

『おおおお!!!!!』

水島がハイテンションになりながらそう叫ぶと全員も続くように叫び、居残り練習が始まった。

 

インターハイ予選はすぐそこまで近付いていた。

 




感想・要望等があればどしどし下さい!久しぶりに投稿ができて良かったです。遅くなって申し訳ありませんでした。


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番外編 イベリコ豚パン?

今回は番外編です。直接本編とは関係なのでこういう形にします。

原作でもあったあの出来事を僕なりに書いてみました!


1-E

 

「ふわぁ~~~」

水島は授業中にも関わらず、眠たいのか欠伸をした。

 

4月も半ばを過ぎ、インターハイまで一ヶ月を切り練習も熱を帯びてきた。しかしあまりの練習に部員一同毎日寝足りないのか授業中欠伸をする日が続いていた。

 

「こらっ!欠伸をするな水島!罰としてこの問題を解け!」

水島の欠伸を見た教師は注意をしたあと、黒板を叩きながらそう言った。

 

「えっ!?くそ~こっちも鬼のような練習で眠いってのに・・・」

 

「つべこべ言うな!」

 

「分かりましたよ・・・」

頭をぽりぽりかきながら水島は黒板のほうまで行き、解答を書いた。

 

「ぐっ・・・正解だ。」

 

『おおっ!』

教師が苦虫を噛んだ顔でそう言うと周りから歓声があがった。

 

水島は頭が良く、中学時代は生徒会長を務めたほどの頭の良さを持っているのである(とは言え、頭がいい理由というのはPGは戦術を頭に入れる必要があるし、時に自分で組み立てないといけないからという結局はバスケが理由なのだが・・・)。

 

「(くそ~木吉も欠伸しているのに見てない所でしやがって~~~こっちも鬼練習しているのに・・・)」

水島は先生の見ていないところで欠伸をしている木吉を見ながら米神に青筋を立て、歯を食いしばりながらそう思っていたのである。

 

「ふわぁ~~~」

 

「・・・・・・」

とは言え、リコの鬼練習に部員は眠たい気持ちを抑えながら授業を行っていた。

 

 

 

1-A

 

「(う~ん・・・やっぱり体力は必要かな。練習中も欠伸をしている子がいるし・・・)」

リコはノートを取りながら練習中眠たそうにしている部員を思い出し、シャープペンを顎に当て考えていた。

 

「ん?確か今日って・・・そうだ!」

するとリコは入学式時に今日が何の日なのか言っていたのを思い出し、目を輝かせながらある事をひらめいた。

 

 

 

 

それは男たちの数分の中に詰められた争奪戦の始まりであった・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

「イベリコ豚パン?」

リコから発せられた言葉に水島は首をかしげながらそう言った。

 

 

4時間目が終わり、いざ弁当を食べようとしていた水島と木吉に「全員屋上集合!」とメールが入ったので、屋上へ行くと部員全員が集まっていた。集まったのを確認したリコは「今日は皆にイベリコ豚パンを買ってきてもらうわ!」と言ったのであった。

 

「そうよ!この学校の購買でナンバーワンのパンと言われてるわ。パン生地の中に世界三大珍味のキャビア・フォアグラ・トリュフが入って2500円よ!」

 

「お、おお・・・・高級素材がずらっと・・・」

 

「すげぇ・・・」

 

「そんなに高級素材入れても美味しいのか・・・?」

パンの具を聞いて部員達は美味そうだと思ったのかジュルリと口元を拭った。そんな中で水島は一人苦笑しながら言う。

 

「はぁ・・・で?今から買いに行けと。」

 

「そーいうコト!じゃ、これお金ね!」

日向がため息を吐き、頭をかきながら言うとリコは笑顔でそう言って日向にお金を渡した。

 

「なら行きますか!」

 

『おう!』

日向がそう言うと部員は声をそろえてそう言い屋上を後にした。これから熱い戦いがあるとは知らずに・・・・

 

「ふふふ・・・・買ってくるかな?もし買ってこなかったら・・・ひひっ・・・」

誰もいない屋上でリコはひとり気味悪い独り言をぶつぶつとつぶやいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1階~中庭前~

 

「おいおいおい・・・確かにパンの事を聞いたときからいや~な予感がしていたんだが・・・」

 

「なんじゃあこりゃああああ!!!!!」

購買部がいる中庭についた途端、日向は目の前の光景を目にし顔を引くつかせながら苦笑するしかなかったが、水島は冷静になれず某刑事ドラマで使われた名セリフを叫ぶしかなかった。

 

中庭に着いた日向達に待ち受けていたのは・・・・

 

 

 

ギャーーーーーギャーーーーワーーーーー!!!!

全校生徒がいるんじゃないかと言うほどの溢れんばかりの人、人、人・・・・

 

 

「オバちゃん!イベリぐふぉ!?」

 

「俺にもイベリコパンくれぇ!!!!」

 

「私にも頂戴!!!」

 

「私が先に言ったのよ!!!」

 

「私のほうが先だよ!!!」

 

 

ギャーーーー!!!!ワーーーーー!!!!

 

 

 

 

「は、はは・・・」

 

「こ、これは戦争なんや・・・・」

伊月は苦笑する事しか出来ず、反対に小金井は溢れんばかりの人だかりに口調が可笑しくなってしまった。

 

「・・・・・・(あせあせ。)」

 

「はは・・・ワイは大丈夫なんや・・・」

水戸部が必死に小金井を戻そうと努力するが中々口調が直らない。それほど衝撃的だったのだ。

 

「カントクめ!これを知っていながらパンを買いに行かせやがったな!」

日向はこの光景を見てリコの意図を理解し、憤慨する。

 

「え~この喧騒の中掻い潜ってパン買わないと行けないの?」

 

「おいおい見てみろよ。相撲部や柔道部の筋肉ムキムキのやつらがいるぞ。」

ようやく言葉が治った小金井が売店を囲う群衆を見ながらそう言うと、土田が群衆の中にいた柔道部や相撲部の姿を見つける。

 

この群衆に加え、ガタイに自信がある輩どもがいるとなると勝算は限りなく低い。

 

「けど、やってみるしかないんじゃない?」

 

「そうだな。やるしかないんだし。」

そんな中で木吉と水島は笑顔でそう言い放つ。

 

「くっ・・・だぁ!!!とにもかくにも幻のパンを入手しないと俺たちのメニューもヤバくなる。やるぞ!!!」

そんな2人に日向は「楽観的過ぎじゃ!」と怒鳴ろうとしたが、どんなに喚いても買わないとこの後がとても怖いというのに変わりはない。一旦怒鳴るのは置いておき、日向は皆にそう言った。

 

『おう!』

部員は日向の問いにそう答え、戦いの場へと身を投じたのであった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後・・・・

 

『・・・・・・・』

小金井が制服に靴跡がくっきりと残った状態で倒れていた。他の部員も地面に這いつくばっていた。

 

・・・結果は惨敗であった。やはりこの人ごみに入り込めず外に追いやられたり、途中でこけて不特定多数の生徒に踏みつけられたりと散々な結果に終わった。

 

「・・・・」

水戸部は心配して背中をつんつんと突き、小金井の安否を確認したが「返事が無い、ただの屍のようだ」状態だった。

 

「くっ!!改めて日本の混雑(ラッシュ)を感じたぜ・・・」

日向は目の前の人込みを見て、拳を握り歯を食いしばった。

 

「まずいな・・・」

伊月は背中に冷や汗が流れるのを感じた。脳裏に浮かぶのは地獄の特訓光景・・・・

 

「流石にこれをやった後はきついからな・・・もういっちょ行って来るぜ!」

水島はそう言い、人ごみの中に入る。

 

「んじゃ、おれも行くか。」

木吉も水島に続いて人ごみに向かう。実を言うとこの2人が一番ゴールの近くまで行った2人なのだ。

 

「頼むぞ・・・」

伊月は2人を見て祈るようにそう呟いた。

 

 

 

 

「あいよ~すまんね。」

水島は身体能力を活かして人ごみに戻されないようにすいすいと進んでいった。

 

「おっ、すまんな。ん?君もすまんな。」

木吉も同様に巨体を生かして人ごみの中を進んでいく。

 

そうして順調に進んでいき、遂にカウンター付近まで来た2人だが、ここで壁が立ちふさがる。なんとカウンターが相撲部や柔道部のもので占領されていたのだ。

 

「おいおい、カウンター付近柔道部や相撲部で占領されているじゃねェか。」

 

「これはイカンなぁ・・・」

2人はそれを見て呆れるようにそう言った。

 

「おいばあちゃん、俺に一個くれよ。」

 

「あんたはさっき買ったじゃないか!帰りなさい!」

 

「いいじゃねぇかよ~スペシャルパン欲しいんだよ。頼む!」

 

「だめだめ!スペシャルパンは1人1個って決まっているんだよ。」

先ほどからその押し問答が続いている。明らかにマナー違反である。他の生徒も買いたいのにこれでは迷惑である。

 

「・・・はぁ、ちょっと行って来るわ。」

 

「うん。頼んだ!お前の眼光でどかしてきて。」

溜息を一つ吐き、水島はそう言い木吉の方を見た。木吉は人ごみの中でもいつもと変わらず木吉スマイルを水島に見せた。

 

「お前行く気ないだろダアホ!」

 

「日向の真似しないでよ~・・・」

水島は目を三角にし日向の真似をして怒ると木吉は苦笑した。

 

「ふん・・・」

水島はあきれた表情を一瞬見せると人ごみをかき分けカウンターの方へと足を運ぶ。

 

「おいアンタ。」

 

「あ、なんだ。」

水島は声を掛けると押し問答をしていた相撲部は鋭い眼光を水島に向けた。

 

「何だその目。あんた等の方が明らかにマナー違反を冒しているのに悪びれも無く買おうとしやがって・・・どけ。」

水島はそう言い相撲部に負けじと睨んだ。その眼光は幾多の戦いを乗り越えて来た戦士の目と同様だった。

 

「(ぞくっ!!!)・・・あ、ああ。分かった。退くよ。おいお前ら行くぞ。」

水島の眼光に負けた相撲部は部員を引き連れカウンターを後にした。水島は一気に人ごみがなだれてくる前にスペシャルパンを1個買う事が出来た。

 

 

 

 

「よくやった水島!」

水島がパンを見せながら部員のところへと行くと日向はガッツポーズをする。

 

「いや~お前らがいてホント良かったよ~」

 

「・・・・(こくこく。)」

 

「ありがとう2人とも。」

 

「怪我なく帰って来れて良かったよ。」

 

『いや~それほどでも。』

部員からの祝福の言葉に2人は照れながら頭を掻きそう言った。

 

「・・・っておい!木吉!お前何もしてねェじゃねえかよ!」

 

「ん?いやしたじゃないか。カウンターまで行ったこと。」

 

「結局買ったの俺じゃねェかよ!」

 

「いや俺もカウンターまで行ったから俺も褒められる理由はある!」

 

「はぁ!?ふざけるな!」

そのまま、2人の喧嘩は日向が怒鳴り込むまで続いたという。

 

 

 

「いやぁ~~~疲れたなぁ。」

昼休み、屋上で日向ぼっこをしながらそう言った。

 

「そうだな・・・だけどパン美味かったからいいんじゃないか?」

 

「おれも!アレは美味かったなぁ!!!」

木吉は微笑みながらそう言うと小金井は目を輝かせながら拳を握りそう言った。

 

パンを買った後、部員全員で分けて食べたのだが、珍味詰め込んでいるように見えてソースなど絶妙にマッチングされていてとても美味しかった。

 

(パンとして成立するのかなとは思ったけどとても旨かったな。)

水島も食べた時の事を思い出すだけで涎が出そうになるのを我慢した。

 

「・・・!そうだ!来年入って来る1年にも同じ苦痛味あわせないとな・・・くっくっく。」

 

「日向、顔が黒いよ。」

日向は良い事を思いついたのか、いつになく黒い笑顔をしながらそう呟く。伊月もそれには苦笑するとともにそれもそうだなという黒い一面も出かかっていた。

 

「よしっ!みんな!お疲れ様!これからこの行事は毎年恒例にしていくわよ!」

 

「・・・よしっ!」

 

「おいおい・・・ガッツポーズすんな日向。」

リコはこの争奪戦を恒例にしていくと宣言した途端、日向がガッツポーズしたので水島は呆れながら言う。

 

「よしっ!この調子で放課後も頼むわよ!」

 

『オウ!』

リコがそう言うとみんなが口を揃えて返事をした。

 

この件を境にバスケ部は一層絆が深まった・・・と思うのであった。

 




どうでしたか?感想・要望等お待ちしております!


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第9Q ヤツが届いた!

久々の投稿で変なタイトルですが気にしないで下さい!なかなかインターハイ予選に入れないですが、ようやく試合に欠かせない奴が届いたという話です。少し短いですがどうぞ!


「はい!今日の練習はここまで!」

インターハイがとうとう今週に迫った月曜日。リコは笛を吹き、鬼練習の終わりを告げる。笛が鳴った瞬間部員は汗だくになりながらその場に倒れた。

 

「バカヤロー。この後リコちゃんからの話があるって練習前言ってただろーが。日向、集合かけろ。」

 

「だ、ダアホッ・・・こっちは体が動かないのに・・・」

倒れる部員がいる中、水島は止まる事の無い汗をリストバンドで拭きながらもしっかりとした足取りでリコのところへと向かいながら日向に対し集合を掛けろと言ったので、日向は未だ立てないので文句を言う。

 

「(な、なんで・・・?初日はその場に座っていたのに・・・凄いわ・・・)」

しっかりとした足取りで立っている水島に流石のリコも顔を引きつらせる。他の部員はまだ立てないという事で少し休憩を入れてから話を聞く事になった。

 

「水島~今日やっていたターンアラウンド?ってどうやるの~」

 

「ああ、あれはね・・・」

練習が終わってしばらく経ち、小金井が今日練習で使ったフェイント技のやり方を聞いてきたので水島は身振り羽振り付けて丁寧に教える。帝光出身の水島だが決しておごらず誰にも優しく接し、また自分の経験をもったいぶらず教えるので多くの後輩からは尊敬されていた。

 

「へぇ~練習すればできるよね!?」

 

「当たり前だ。『努力は報われる』ってな。」

水島は小金井に教えた後、小金井は目を輝かせてそう言ったので水島はサムズアップサインを出し笑顔で言った。

 

「あっ!それじゃ僕も教えてほしいんだけど!」

 

「うん。良いぜ!」

土田もそれを見て水島に教えを請うと水島は嫌な顔せず笑顔で快諾する。

 

「・・・(うんっ!いい感じね!)」

リコはその光景を見て笑顔になる。

 

「・・・(ま、アレが水島の良いところだな。俺も見習わないと。)」

伊月も微笑みながら思う。

 

「・・・チッ(アレがあるから恨むに恨めねぇんだよ)。」

日向は舌打ちをし悪態をつく。

 

3人はそれぞれ思う所は違うがともに水島を褒めているのは変わらない。

 

 

 

 

 

 

「さて!皆が動けるようになったところでアレ(・・)を配ろうと思います!」

 

『あれ?』

皆動けるようになったのでリコの下に全員集まるとリコは気になる発言をする。

 

「うん!2つあるんだけど・・・・っと。」

 

「ん・・・?あっ。」

リコはそう言い、大きいダンボールを持って来る。それを見た水島は何なのかを察した。

 

「ま、まさか!?」

小金井も気付いて、目を輝かせる。

 

「じゃーん!ユニフォームとジャージが出来たのよ!」

 

『おおお!』

胸部分に大きく書かれた『SEIRIN』の文字に、サイドに白黒があしらわれ赤の縁取りが付いたユニフォームを2つ(白ベースと黒ベースの2枚)と白ベースで袖部分とズボンのライン部分を黒くしたクラブジャージを取り出してみんなに見せると部員から歓喜の声が上がる。

 

「『じゃあ、次回はジャージかい?』キタコレ!」

 

「・・・・・(ひゅおおおおお・・・・)」

 

「じゃあ、皆落ち着いた所で『オレ落ち着かせる役じゃないよ!?』これから呼ばれた者からジャージと共にユニフォームを取りに来て!この番号が今回のインターハイの登録番号だからね!まず日向君から!」

伊月のダジャレにさっきまで盛り上がっていた部員が一斉にツンドラ地帯になったのを確認してリコがそう言い(伊月は若干涙目になっていたがリコはスルーした)、呼ばれた順にジャージとユニフォームを取りに行かせた。

 

 

 

 

「・・・・(ニコニコ)。」

 

「どうした水島?何かやけに生き生きしているが?」

 

「何でか?これだからかな?」

水島が取りに行き、元の場所に戻ると木吉が取りに行く前と比べてかなり嬉しそうだったので聞いてみると、水島は笑顔になりながら木吉にユニフォームを見せる。皆に配られたのと変わらないが、一つだけ違うとすれば・・・

 

「番号か?」

 

「そうなんだ!」

木吉がそれに気付き水島に聞いたら正解だった。。水島に渡されたユニフォームの番号は「9」だった。普通なら順当にレギュラーの順から渡せば9番は控えの番号になるが・・・

 

「いやぁ、前日にリコちゃんにこの番号が良いって言ったんだ。小学校(ミニバス)からずっと『9』を付けていたからね。」

 

「え、マジで!?」

 

「おお・・・俺はころころ変わったから番号に執着は無かったんだが・・・」

水島の言葉に小金井が食いつく。木吉も驚きを隠せず目を丸くする。

 

「うん。ミニバスの大会でMVP貰った時も、1年の全中とジュニアオールスターでMVP貰った時もこの番号だったんだ。だから俺にとってはこの番号は験担ぎでもあるんだ。」

 

「あ~お前とってたな~」

 

「その番号でその結果を残しているなら相当思い入れがあるよね。」

 

「コガ、しみじみと言っているけどMVP取れること自体すごい事だからな。」

水島は目を薄めながらしみじみと呟く。木吉は覚えているのか微笑み、小金井はそれを見てもう驚かなくなったのか分からないが、うんうんと頷きながら言った。そんなコガを伊月は冷静に突っ込む。

 

ちなみに「ジュニアオールスター」とは「都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会」の事であり、水島は1年と2年の時に、木吉は2年の時に東京選抜に選ばれており、1年の時にMVPを取っているのだ。

 

「じゃあ、全員にいきわたったわね!間違ってないか一応確認しておいてね!」

リコがみんなに配り終えるとユニフォームに間違いが無いか確認をとらせた。

 

ちなみにユニフォームの番号はこうなっている。

 

4(C) 日向

5 伊月

6 小金井

7 木吉

8 水戸部

9 水島

10 土田

 

「間違い無さそうね。いよいよ今週いよいよインターハイ予選が始まるわ!ラン&ガンも形になり始めているわ!日数が少なかったから失敗もあるかもしれないけど、失敗を恐れずにどんどん攻めていってちょうだいね!」

 

『ウース。』

リコがそう言うと、部員は声を揃えて返事を返した。

 

「うん!それじゃ、明日からは徹底的に動作の確認よ!」

 

『おう!』

リコがそう言った後部員が挨拶したのを機に今日の部活は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・」

練習後誰もいなくなった部室に水島は椅子に座りながらユニフォームを広げじっと眺めていた。

 

黒の文字色に赤のラインでプリントされた『SEIRIN』と書かれ肩の部分にも同じような配色の白ベースのユニフォーム。しかし水島が見ていたのは「9」の文字。

 

「・・・かれこれ8年間共に「9」と一緒だな。本当に・・・色々あったなぁ。」

「9」を見ながら水島は絞り出すような声で呟く。水島の中ではいろんなことが走馬灯のように蘇る。

 

初めて試合で得点した時、初めて優勝した時、初めてMVPをもらった時・・・・嬉しかったこと・悲しかったことを共に歩んできた番号。色んな思いが詰まったこの番号は水島にとっては「相棒」だった。

 

「・・・・頼むぜ。少しでも長くあいつらと一緒に戦いたいから・・・・」

願うように・・・・そう思ったのかユニフォームを持つ手を強く握りしめる。

 

「当たり前だろ?」

 

「(ギグゥウウ!!!!)、き、きよ~し~~~????なんで?帰ったんじゃ!???」

 

「いやぁ・・・忘れ物をしたら声がしたもので・・・見たら水島が何かに語りかけているから。」

ユニフォームに語りかけていた水島に不意に扉の方から声がしたので全身をびくつかせ、ぎぎぎ・・・とおもちゃのようにゆっくりと扉の方を振り向くと扉に凭れ掛かるようにして木吉が立っていたのだ。水島は顔を真っ赤にしながら質問をすると木吉は苦笑しながら髪の毛をぼりぼりと掻いて答える。

 

「・・・・・・大丈夫さ。俺たちは勝つために練習してきたんだ。今バスケ部は良い雰囲気で来てるよ。」

 

「伊月のダジャレで良い雰囲気が凍ったりしてるけどな。」

 

「ははは!!!まぁな・・・けど。」

水島の辛辣な発言に木吉が大いに笑うが、スパッと表情を切り替え水島の下に歩み寄る。

 

「少しでも長くプレーしたいのは俺も同じ思いだ。だからがんばろーぜ。」

 

「・・・・あぁ。頑張ろうぜ。」

改めて2人は決意を新たにし、今週に迫った県総体予選に向けて気持ちを高めていくのだった。

 

「・・・・ダァホ。その思いは誰だって同じだっつーの。」

2人の会話を聞き誰かがそう呟く。口調から分かる通り日向だった。

 

「(水島にディスられたのはショックだったけど・・・)そうだね。あいつらだけに責任を背負わせたくないしな。頑張ろうぜ。」

伊月もその場にいたのだった。

 

「・・・・まぁな。」

水島と木吉の会話を聞いて2人もまた水島たちに負けないように決意を新たにし、そっと帰っていった。

 

 

どんなにチグハグなチームでも思いは同じ。その思いがチームを、個人を強くするのだ。

 

 

 

そして・・・・ついにインターハイ(県総体)予選を迎える・・・・・



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第10Q インターハイ予選開幕!

ついにインターハイ予選が開幕です!とはいえ原作でも描かれているので試合描写は軽めです!!!

わ、私のつたない試合描写は大丈夫かな・・・?

どうぞ!


「皆~いるわね~?」

朝7時。誠凛高校の正門前にてリコが主将である日向に皆の出欠を確認した。

 

5月も終わりに近づいた今日はいよいよインターハイ予選の初日。誠凛高校が所在する東京都では都内に実在するバスケ部の数が多すぎるため、4ブロックの予選に分けられ各ブロックを勝ち上がった4チームで決勝リーグを行い上位3チームがインターハイに出場する事が出来るのだ。

 

「いや、水島が来ていないな。」

話を戻すがリコの問いに対し日向は頭を掻きながら水島が来ていない事を話す。

 

「んも~何やってるのよ・・・」

 

「悪い悪い!遅くなっちまった!」

腰に両手をあて、溜め息を一つ吐いたリコ。すると遅れて水島が息を切らしてリコたちの元へと向かってきた。

 

「おせぇわダアホ!」

 

「すまんなぁ・・・うっかり寝過ごして。今度からないようにするから。」

日向が遅れた水島に叱ると水島は両手を合わせ謝った。

 

「(・・・・)ま、気持ちは分かるからな。許してやれよ。」

 

「・・・分かった。」

若干だが水島の目が充血しているのが分かり、木吉は水島を庇った後日向に許してやるよう言うと日向は怒りを鎮め水島を許したのだった。

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ!会場に行く前にさ!写真撮らない?」

改めて全員集まったのを確認し、いざ行こうとした時小金井が不意にそう提案してきたのだった。

 

「はぁ?これから行くって時に写真だぁ?」

 

「何でこのタイミング?」

小金井の突然の提案に日向は当然ありえないと言った反応を見せる。伊月は少し困惑しながらも何故なのか聞いてみた。

 

「ご、ごめん!タイミングもだけど練習漬けの日々でなかなか切り出せなくて・・・・でも・・・」

小金井は一区切りを置いた。

 

「なんか・・・バスケ部が出来たって言うのを形に残しておきたいんだ!」

小金井はありったけの思いをみんなにぶつける。

 

「・・・・・いいんじゃない?俺はそう言うの好きだけどな?」

 

「木吉に同じく。何かしら形に残すというのは良い事だしね。」

小金井の思いを聞いた後、木吉はニコリと笑顔になり小金井の意見に同意した。水島も同意の意見を言った。

 

「まぁ、良いじゃないか?こういうの楽しいし。」

 

「そうだね。」

 

「まだ時間もあるし、いいと思うよキャプテン?」

 

「・・・分かったよ。」

全員から同意の意見が出たので日向も了解せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

「よ~し。オッケーだよ!」

全員位置に着いたのを確認してから小金井はカメラのタイマーをセットし、自らもみんなの輪の中に入る。

 

「おい木吉!肩組むんじゃねェよ!」

 

「ん?良いじゃないか。仲良くしよーぜ!」

 

「うぜーよボゲェ!!」

 

「日向、キャラ壊れてるよ。」

部員がポジションについてポーズを決める中、木吉はやたら日向の肩に組もうとしているので日向はその腕を振りほどくのだが、何度も組んでくるので若干キャラが壊れそうになったので伊月が諌める。結局肩を組んだままになってしまい日向はそっぽを向いてしまう。

 

「(肩組むくらいいいのに・・・)」

水島はその様子に苦笑しながらも小金井と一緒にピースを決める。

 

・・・・ピピピピ、カシャ!!!

 

カメラは音の間隔が短くなった後、写真を撮る音が聞こえた。こうして、いっそう絆(約一名は違うが)誠凛高校バスケ部は気持ちを新たにインターハイに挑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はここか。学校の体育館じゃない?」

 

「そうだろ?」

インターハイ東京都予選会場に着いた誠凛高校は会場を見て小金井はそう呟く。水島は小金井の呟きに溜息を吐きそう返す。

 

東京都は先述したとおり、学校が多いのでブロック別に分けられるため一斉に大きな体育館で試合が出来ないので学校の体育館を借りて試合をするのだ。

 

「水島君の言う通りよ。まずはブロック予選を勝ち抜けないと大きな体育館には行けないわよ!」

 

「そーゆー事。ま、楽しんで行こうや!」

木吉は笑顔で答える。

 

「気楽すぎるわ木吉!」

 

「喧嘩していないでさっさと準備するわよ!たしか私達って・・・」

気楽な木吉を諌めようとした日向をなだめたり子がこの後の予定を水島に聞いた。

 

「10時からだな。相手は・・・教律だな。」

水島は置いてあったインターハイ予選の看板を見て答えた。

 

「いまは・・・9時か。」

土田が時計を見て9時という事を確認する。

 

「そんじゃあ、さっさと控室に行って着替えてアップだね。」

 

「そうだな。この場に留まるのもアレだしな。」

小金井が時計を確認した後、アップを取ろうと催促する。伊月もそれに同意した。

 

「ちっ!・・・そうだな。んじゃ行くか!」

日向がそう言うと案内された控室へと向かった。他の部員もそれに続いていった。

 

 

 

 

 

 

「・・・いい?相手は大した相手じゃないわ!これまで練習してたことをやってね?いい?」

各自入念にアップを取った後、ユニフォームに着替えた水島たちはリコから指示を聞いていた。

 

「おう!」

 

「さて、約1年ぶりだ・・・」

全員がそう言った後、水島は利き腕である右腕をぐるりと回して一言つぶやく。

 

「そうだな。これまでの結果を出してやろうぜ!」

日向は皆にそう言いスターター陣はセンターサークルに向かっていった。

 

「あっ!水島君・・・」

 

「なに?」

するとリコは水島を呼び寄せ、耳元で何かを囁いたのだった。

 

「これより、インターハイ東京都予選一回戦の誠凛高校対教律高校の試合を始めます!」

両チームが揃った所で審判がそう言い、両チームのスターターが礼をする。

 

誠凛高校

 

PG 5番 伊月 俊    172cm

 

SG 4番 日向 順平(C) 176cm

 

C  7番 木吉 鉄平   192cm

 

SF 9番 水島 悠太   185cm

 

PF 8番 水戸部 凛之助 184cm

 

試合最初のジャンプボールは木吉が入った。

 

試合開始(ティップオフ)!!」

審判がボールを上に放り、ボールの高さが頂点になった時に両選手のジャンパーが飛ぶ。最初のボールを拾ったのは。

 

「よっしゃぁ!」

誠凛だった。ジャンプボールを拾った水島は誠凛コートから見て左45にいた位置からすぐさま仕掛ける。

 

自陣に戻り切れていない教律コートに水島はドライブを仕掛ける。

 

「水島!!??」

これには誠凛も驚きの表情を見せた。

 

『試合開始直後に水島君だけで攻めてくれない?』

 

「言われたらやるだけだ!おおお!!」

水島は試合前リコに言われたことを思い出し、高まる気持ちを抑えきれず教律に襲い掛かる。

 

「この!」

 

「ふっ!!!」

いきなりの奇襲に教律の選手も対応する。が、自陣に戻る途中であったため体勢が不安定である。

 

教律のマークマンの体制を確認した水島はレッグスルーで左側に行く。教律のマークマンも対応するがすぐさま繰り出されたクロスオーバーには対応しきれず、水島のペネトレイトを許す。

 

マークを振り切った水島はすぐにゴール下に迫りシュート体勢に入る。

 

「ふざけるな1年が!!!」

 

「・・・・1年でもなめたらいかんだろ先輩。」

すぐさま教律は対応し、水島の前に跳びシュートコースを消すが水島は右手にボールを持ちかえながら、体を右に傾けボールをゴールに向けて放った・・・ダブルクラッチだ。

 

「なっ!?」

高身長ながらキレのいいダブルクラッチに教律のマークマンは驚くが、対応はできない。ボールはゴールに吸い込まれ水島の奇襲は成功した。

 

【誠凛】2-0【教律】

 

「っしゃあ!!」

得点し水島は吠えた後、自陣に戻ったが待っていたのは非難の嵐だった。

 

「いきなり何するんじゃダアホ!」

日向は水島にチョップを食らわした。

 

「イデッ!!だってリコちゃんに!」

 

「はっ?」

日向にチョップを食らった頭をさすりながら水島が反論すると日向はとぼけた顔をするので水島は説明する。

 

「はぁ、あいつもとんでもないことしやがる。」

 

「ま、それで点が取れたからいいんじゃないか?」

 

「そうだな。」

日向が頭を抱えると木吉と伊月は水島を諌める事はせず、日向をなだめた。

 

「・・・・」

 

「たのしんでこーぜだって!!」

水戸部が日向の肩をポンとおきながら微笑む。小金井は水戸部の心情を代弁した。

 

「なっ!?まさか水戸部にパクられるとは・・・」

木吉はまさか水戸部に自分の台詞がパクられるとは思っていなかったのかがっくり項垂れる。

 

「・・・はぁ。わぁったよ。楽しむか。」

 

「おっ、遂に日向も!?」

 

「喧しいわダアホ!とりあえず、奇襲は成功したんだ!ディフェンス一本!」

日向が呟いた一言に木吉が目を光らせるが日向は一蹴して部員に声をだし気を引き締める。

 

奇襲を受けた教律は自分たちのペースを作ろうとゆったりとボールを運ぶ。誠凛は教律に対してマンツーマンディフェンスを展開していた。PGには伊月、SFには水島と基本は自分と同じポジションのマークについていた。

 

ダム、ダム・・・

 

教律のPGはボールを数回ドリブルした後SFにパスをする。パスをもらったSFはボールをもらいトリプルスレットの位置に入ったが・・・

 

「!!!!!!」

教律のSFは動く事が出来なかった。水島は全体を見るように見ており、背を低くして対面するように構えていた。しかもローポストにいるCにパスを出さないようにパスコースを消すディナイも抜かりなく行っているこれ以上ないDFを行っていた。

 

「(どこかで見たような・・・でもこのままじゃCにもパスできない。なら・・・)よし!」

SFは水島を見て一瞬どこかで見たような覚えがあったが、SFはこれではパスできないと悟り、勝負に出た。まずはクロスオーバーで水島を抜こうとした。が。

 

「・・・甘いっすね先輩。」

水島は教律SFのクロスオーバーに着いて行った挙句クロスオーバーで左から右にボールが届く寸前にスティールを炸裂させる。

 

「はぁ!?」

まさか付いて行った挙句、スティールさせるなど思いもせずSFはただ驚いた。しかも審判から見ても手をはじいている素振りは無いと分かり、ファールは流された。

 

「帝光にあなた以上のドリブラーはいましたから。抜けるとでも?」

 

「!!!!!!あっ・・・」

ボールを奪った水島は去り際にSFにボソッと呟く。SFは抜かれた瞬間抜いて行ったものが誰かなのか気付いた。

 

「ターンオーバーだ!」

試合を見ていた観客が叫んだ。ボールを奪った水島はワンマン速攻を展開し、レイアップシュートで追加点を取る。

 

【誠凛】4-0【教律】

 

「おおお!というか・・・あの9番って・・・」

水島のレイアップを見た後、僅か創部1年のチームがリードしている事に観客の興奮も覚める事はない。ふいに誰かが水島を見て思い出した。

 

「・・・間違いない。帝光であのキセキの世代並みの実力を誇るって言われた『闘将』水島だ・・・というか何でこんな無名に!?」

教律のSFは鋭い目つき、やや明るい青色の髪。そして水島のトレードマークとも言われる両腕のひじ部分に着けている水色のリストバンドを見て瞬時に水島だと分かり驚愕する。

 

しかし、誠凛高校は水島だけではないのは知っている事。

 

ガシャン!!!

 

「うわぁ!??」

 

「おお!?ダンク!?」

 

「てか1回戦からみれるプレーじゃねぇ!?」

伊月からのパスをハイポストで貰った木吉は教律のマークマンをものともせず、ダンクを決めるとともに教律のマークマンを吹っ飛ばす。木吉のダンクにギャラリーは驚愕するとともに木吉の姿を見て驚いた。

 

「おい・・・『闘将』だけでなく『鉄心』もいるのかよ!?どうなってやがるんだこのチーム!?」

 

「おい、カメラ撮っておけ。」

 

「これは・・・まずいな。」

あまりの豪華なメンバーにギャラリーは驚きを隠せない中、他校の偵察部隊らしき生徒も動き始める。

 

ギャラリーが驚く中、試合は誠凛ペースに引き込まれていく。

 

【誠凛】97-65【教律】

 

第4Qも残りわずかで、誠凛が圧倒的なリードを保っている。

 

『はぁ・・・はぁ・・・』

教律も全員息切れをしており、スタミナが無いのは一目瞭然である。

 

何故ならここまで40分間走り続けているのだからだ。誠凛のラン&ガンに翻弄されている教律は守備を崩され誠凛に大量リードを許してしまったのだ。

 

「今度は水島か!木吉か!?」

PGの伊月がゲームを組み立て始めると、ギャラリーから合わせて50点以上は取っているこの試合の立役者でもある水島と木吉のどちらにボールを回すか、期待が高まる。

 

「・・・・(はは。確かにこの主役は水島と木吉だけど・・・あいつを忘れたらいけないよね!)日向!」

伊月はコート全体を見渡す自身の能力、「鷲の目(イーグル・アイ)」を使い、終盤から得点を決めている木吉にパスを出させない為にインサイド寄りにいたDFを見逃さず伊月はSGである主将、日向にパスを出す!

 

「さっきから、『鉄心』や『闘将』ってうるせぇよ!ダアホ!!」

 

「あ・・・」

日向にボールが渡ると教律のマークマンはインサイドに寄っていたのを後悔するが、日向は気にも留めずしっかりと溜めてスリーポイントエリアの外からシュートを放つ。

 

綺麗なスピンがかかったシュートは美しい弧を描き、ゴールリングに潜った。スリーポイントシュートが決まった。

 

【誠凛】100-64【教律】

誠凛が100点台に乗せてきた。

 

「シャア!!」

日向はシュートが決まると雄たけびを上げた。

 

この試合、水島と木吉に隠れているが、日向のスリーが決まっていた。

 

「あの4番もシュートが落ちていないぞ!」

 

「まさに百発百中!スナイパーみてーだな!」

日向の活躍を見ていたギャラリーもこれには歓喜する。

 

「どうすりゃいんだよ・・・インサイドを固めても外からのスリー・・・」

 

「はぁ・・はぁ・・」

教律は誠凛の怒涛の攻撃に手が出ず万事休すだった。

 

そして・・・

 

 

『ビ―――――』

 

【誠凛】100-64【教律】

誠凛の初陣は大勝で発進した。

 

「しゃああああ!!」

 

「よし!」

勝利し部員は大いに喜んだ。リコはこの結果に喜ぶように両手を上げていた。。

 

「・・・・・うしっ!!!」

水島は湧き上がる喜びを抑えきれずにガッツポーズをする。

 

「今度はまけねぇぞ!しょうりん高校!」

 

「おい。」

挨拶を済ませた後、教律から次は勝たないと宣言した後に高校名を間違われたので日向はため息を一つ吐き、教律の方へと目を向く。

 

「しょうりんじゃねぇ、誠凛(せいりん)高校 バスケ部だ!」

日向はしっかりと言い切った。

 

このメンバーならインターハイもいける!誰もが思っていたが・・・・

 

 

 

・・・・ピリッ!

 

「・・・・・?」

木吉は左膝から違和感を感じ左ひざを見るとわずかながらに震えている。

 

「・・・・(大丈夫・・・だよな。)」

木吉は左膝を見ながらそう自分の中で自己完結させ、ベンチへと引き上げて行った。

 

「・・・・・・」

しかし、その様子を水島は見逃さなかった。

 

しかし水島は何も言わずに彼もまたベンチへと引き上げる。

 

そして誠凛は一抹の不安を抱えてインターハイ予選が幕を開けた。




試合描写について何かあれば感想下さい!


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第11Q 再会

申し訳ございませんでした。約1年ぶりの投稿です!!!


初戦の教律戦を100点ゲームで大勝した誠凛高校はその後も危なげなく勝ち続けた。

 

そして・・・

 

予選トーナメント 準決勝

 

【誠凛】98-80【島村】

 

水島・木吉・日向の3本柱の活躍によりそこらの高校では今の誠凛を止める手立てはない。

 

木吉にダブルチームをするものなら水島と日向がインサイドとアウトサイド(3Pシュート)から攻めまくり、逆に水島や日向でも同じである。

 

「くそっ・・・くそっ!!!」

 

残り時間10秒の中、島村の選手は悔しさのあまり悔しさが声となって出てくる。が、太刀打ちすることもままならない。

 

「・・・・水島!」

 

伊月はドリブルをしながら周りを自らの能力である鷲の目(イーグル・アイ)で確認し、45度の位置にいた水島にパスを出す。

 

「・・・・よっと。」

 

「は?」

 

パスをもらった水島はすぐさまゴールに向けてシュートを放つ。

 

「3Pシュート?・・・」

 

「いや違う!パスだ!ゴール下固めろ!」

 

突然のシュートに島村の選手は困惑の表情を浮かべる中顧問から怒鳴り声が飛ぶ。

 

「くそっ!」

 

「はは。水島も人使いが荒いなっと!!!」

 

木吉は水島への愚痴をこぼした後ダブルチームをものともせずにゴール付近に来た水島のシュートをジャンプしながらキャッチし、豪快にゴールにぶち込むことでアリウープを完成させた。

 

「うわぁ!!!」

 

ブーーー!!!

 

木吉がアリウープを決めるのと同時に試合終了を告げるブザーが鳴り響く。

 

「おおおおお!!!」

 

「誠凛高校、予選トーナメント決勝進出だ!!」

 

「よっしゃぁああ!!」

 

試合終了が終わった瞬間、誠凛高校の部員は歓喜の声をあげる。

 

「・・・ふぅ。何とかこれまで来たか。よかったよかった。」

 

水島は歓喜をあげる部員の中、ふうと一息ついた。

 

「・・・!」

 

周りを見れば一瞬ハイタッチをしようとするも寸前でやめる日向を見て苦笑する木吉や伊月と水戸部にはしゃぎまわる小金井がいた。

 

「ははは・・・・・・木吉・・・」

 

水島はその光景を見て微笑むとともに木吉のほうを見る。木吉を見つめる表情は笑みを浮かべていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くあぁ・・・・はぁ~あ。」

 

「ふふっ。欠伸すんなよ水島。」

 

水島は夜の道を歩く道中、欠伸をする。欠伸をする水島を見て伊月は苦笑した。外は夏に近づいているせいか暖かく感じた。

 

試合後、軽いミーティングをした後帰ることとなったが木吉は日向と、小金井は水戸部と帰ったため水島は伊月と一緒に帰ることにした。

 

 

「しかし1年から予選リーグの決勝に進出できるなんて嬉しいな!」

 

「そうだな。お前ら3人がいるだけでも心強いよ。いよいよ俺も負けていられないな。」

 

笑顔で伊月に話す水島に対し、微笑みながら決意を口にする伊月。

 

「まだ俺たちは2年ある。これからじっくり強くなればいいと思うぜ。」

 

そんな伊月にポケットに手を突っ込みながら空を見上げて穏やかな表情で水島は言う。

 

「・・・・・・俺、誠凛に入ってよかった。」

 

一通り話し終えた後水島がふとそんなことを言い始めた。

 

「え?どうしたのいきなり。」

 

 

「・・・中学校と違って楽しくプレーできるのが嬉しくてしょうがないんだ。」

 

「でも、帝光のほうが勝てるだろ?勝ったほうが長くプレーできるし・・・」

 

「分かってないなぁ伊月は。」

 

伊月の問いに水島は苦笑してから伊月のほうを向く。

 

「勝つことだけが大事じゃないんだよ。負けて気づくこともあるし、勝っても負けてもその試合で出た課題を次に生かすことがどのスポーツの醍醐味なんだよ。でもな、帝光の()()は勝つことが当たり前になっちゃっている。あれじゃただの作業だよ。」

 

「おいおいおい。言いすぎだろ。」

 

水島は額に青筋を立てながらぼろくそ言い放つ。水島の母校批判が止まらない。

 

「俺よくクソメガネのコーチと揉みあいになってたよ。けど監督が降格させなかったから何とか首の皮一枚つながってたけど。」

 

「く、クソメガネ・・・・ははははは!!!ぼろくそ言うな水島!」

 

「それよく言われる!でもな・・・」

 

水島の悪口に伊月が耐え切れず大爆笑してしまい、水島がそれに続くように笑った後再び空を見上げる。

 

「好きなことはいつになっても楽しくやりたいんだわ。」

 

「水島・・・・それって・・・」

 

頭に腕を組みながら言う水島に伊月はそう呟く。その発言はどこかで聞いたようなものだった。

 

「木吉もあの時言ってたやつ。帝光のやり方ってプロになるための英才教育だと考えればあながち間違っちゃいないんだ。でも俺はどんな強豪校でも、いくつになっても楽しくやりたい。」

 

「・・・そうだよな。それはバスケとは言わず色んなスポーツをしている人って誰もがそう思うことだと思う。」

 

水島の考えには伊月も同意した。やはり1人のスポーツマンにとっては「勝ちに行くこと」と同時に「楽しくやりたい」と思うことも確かなのだ。

 

「そうそう。でもただ楽しくやるだけじゃ上手くならないというのも事実だな。」

 

「え?それじゃどうやったら上手くなるんだよ。」

 

伊月は水島が言ったことがわからず聞き返す。

 

「『勝負事で、本当に楽しむためには強さが要る。』・・・」

 

「ん?それは木吉も似たようなこと言ってたな。教えてよ。」

 

木吉も似たこと言っていたが、その時は分かるようで分からない言葉だった伊月はそう言う。

 

「・・・楽しく勝つには考え抜くことが大事なんだよ。PG同士分かるだろ?」

 

「!!!!・・・・そうだね。」

 

「『楽しく勝つ』ことと『遊ぶこと』は違う。何も考えずやるのでは馬鹿がやることだ。自分でイメージして、そのイメージ通りの展開になったときに始めて『楽しい』と感じるんだ・・・ってね。」

 

「・・・奥が深いな。」

 

水島の言葉に伊月はそんなことを考えていたのかと感銘を受けた。

 

「だろう?だから頭がパンクしない程度に最初イメージするんだ。味方の動き、自分の動き、敵の動きを・・・自分が仕掛けたら相手がこう動くと思うから自分はパスをするんだ・・・ってね。」

 

「・・・・すごいとしか言えないな。はっ!『三枚目の、さんまイメージ。』きたこれ!」

 

「今日は伊月を三枚おろしして刺身にするか・・・・」

 

「さりげなく怖いこと言わないでよ!」

 

「冗談だよ!・・・けどそこまでの事をするには全員でイメージを共有することから始まるんだ。一人でやってもワンマンプレーにしかならないからな。」

 

「そうだね。バスケは1人でするものではない・・・」

 

「そゆこと。どのスポーツも人間ピラミッドみたいに出来ている。誰かが欠ければきれいなピラミッドはできないってね・・・・最初は簡単にはできないことだけども・・・」

 

「もしできるようになったら誠凛はレベルアップするな!」

 

「全国にも恥じない最強のチームになるな。そうできるように2年半頑張ろうぜ伊月。」

 

水島は笑顔で伊月に言う。絶対に勝つため・・・その意思がこもった笑顔だった。

 

「・・・そうだな!・・・んじゃ、俺こっちだから。」

 

伊月はその意思を受け取った後目の前のY字を水島とは反対の道へと歩き出す。

 

「おう!じゃあな伊月!!」

 

そう言い水島は伊月と別れて帰路までを一人で帰る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・今日は風が気持ちいいな。」

 

水島は夜風を前身にあたりながら住宅街を歩く。当たる風が気持ちよかった。

 

 

 

 

 

「・・・帝光では楽しむことが出来なくて日々ががむしゃらにあがく日々だった。そんな日々がつまらなかった。だから・・・誘ってくれた木吉のためにも、俺が貫いてきた考えが間違っていないことを証明する・・・!」

 

風が当たる中、水島は一人決心をし帰路に就いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおーーー!!!すげーでかい!」

 

迎えた決勝トーナメントの日。夏が近づいているおかげか半袖が目立つバスケ関係の人達と目の前に立つ大きな体育館に小金井が目を輝かせる。

 

「コガーそっち第2体育館だよ。」

 

「そうだぞ。俺らが今から行くのはあっちの第1体育館。」

 

水島が目を輝かせている小金井に教えると伊月も同じようなことを言い、第1体育館のほうを指さした。

 

「あ、あっちか・・・ってあっちもでかい!」

 

小金井が水島たちに教えられ第1体育館のほうを向くと第2体育館よりもひときわ大きい体育館に再度驚く。

 

「いやぁ、数年前までバレーの春高の会場だったくらいだからなー大きいぞ。」

 

「うへぇ、やっぱすげーや!てか何で第2体育館のほうも人が多いの?」

 

水島の説明を聞いた小金井は感嘆の声をあげた後何故第2体育館にも人が大勢いるのか気になった。

 

「あぁ、今中学校の大会やっているな~えーと、組み合わせは・・・・っっっ!!!」

 

日向が体育館付近に立ててある看板を見ると中学生の全中予選の組み合わせが書いてあったので見てみるとその中に()()学校名が書いてあり目を見開いた。

 

 

『帝光』

 

「日向?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日向が何も言わないのを気になった水島が日向に声をかけようとすると体育館の扉からバスケジャージを着た集団が出てきたのを確認できた。

 

水島も着た覚えがある伝統の白色と水色のジャージ・・・帝光中学校だった。

 

「・・・おっ・・・」

 

帝光中の姿を確認した水島はそう呟くがその姿勢と態度を見て表情をなくす。

 

「ったく信じらんねー今日たったの42得点だぜオレ。」

 

「ふざけるな。むしろボールを持ちすぎだ。」

 

濃い青髪の細目が特徴的な少年がだるそうに言うと緑髪の眼鏡をかけた高身長の少年はぴしゃりと言い返す。

 

「てかもっとオレにもボールを回してよー」

 

「どーでもいーよ・・・たるいなー」

 

黄髪のチャラけた少年がポケットに手を突っ込みながら言うのに対し紫髪の少年は菓子を食いながらこちらもけだるそうに言い返した。

 

「ムダ口をたたくな。帰ってすぐミーティングだ。」

 

 

 

・・・行くぞ!

 

 

 

そんな4人を制するように赤髪のオッドアイが特徴的な少年がそう言うと、帝光中バスケ部は集団で列を作って日向たち誠凛高校の前を横切る。

 

「・・・・」

 

それを見た誠凛のメンバーが見つめる中、水島は無表情を貫く。その表情は怒りに満ち溢れているかのようだった。

 

「ね、ねぇ・・・水島って先輩なんでしょ?」

 

「・・・・・・・」

 

「・・・?水島?・・・ひっ!」

 

小金井がそう言うが、水島は答えずただ帝光メンバーを睨みつける。答えない水島に小金井が不審が思い水島の顔を見た瞬間、その表情に小金井は後ずさった。

 

「ちぇ~・・・・ん?」

 

すると、黄髪の少年が水島の睨んでいることに気づき、足を止めた。

 

「なんすかアンタ。そんなに睨まないでくれるっすか?」

 

「・・・・・・あぁ、悪いな。あまりにも強豪ぶるからつい。な。」

 

「お、おいおい!何してるんだよ・・・」

 

黄髪の少年が水島に絡むと水島は睨みの表情を止めず言い返し、不穏な気配がし始めたので日向が小声で水島に言い始める。黄髪の少年が絡んだことで帝光も足を止める。

 

 

 

 

「あれぇ~凡人の僻みですかぁ。ウザいんで後にしてくれます?」

 

「・・・・は?」

 

「・・・!!!・・・あの馬鹿・・・・!」

 

黄髪の少年が煽りを入れる。緑髪の少年はこの時初めて水島を見たのだが、すぐに気づく。

 

「・・・・どうする峰ちん?」

 

「・・・・・・し~らない。あの人にかかわるとろくな事無いし。」

 

紫髪と青髪の少年もすぐに気づくが、われ関せずを貫く。

 

「・・・・はぁ・・・」

 

赤髪の少年も気付いてため息を一つはいた。

 

「・・・・・はぁ。」

 

「きーちゃん・・・」

 

水色の髪の少年と桃色の髪の少女もすぐに気付き、溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・日向。先に行ってて。こいつしめてからすぐ向かうから。」

 

 

 

水島は日向のほうを向いていった。言った時の水島の表情は・・・形容しがたいほどの無表情だった。

 

 

 

「こわっ。」

 

水島の表情を見た木吉は若干顔を引きつらせながら言う。あの温厚で有名な木吉でもさすがに驚く。

 

「お、おう・・・じゃ、待っているぞ水島。」

 

「・・・・・え?」

 

日向も同じくひきつった表情をしながら水島の名前を言い水島以外はその場を後にした。日向が水島の名前を言った瞬間、時が止まったかのように静かになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・さーて、()()の俺が直々に指導してやるか。リョータァ・・・」

 

「ま、待って水島っち!?そんな知らなかったんすよ!?」

 

「は?この期に及んで言い訳か。どうなんだシン?」

 

水島はこめかみに青筋を立てて、それはそれは黒ーい笑顔で緑間に質問を投げかけた。

 

「・・・報いは受けるべきなのだよ黄瀬。」

 

「そ、そんな!?皆!?」

 

「・・・・」

 

緑間に裏切られた黄瀬は涙目になり、他の皆に助けを求めるが顔を背ける。助ける味方はどこにもいなかった。

 

「最近編み出した技があるんだ。今日はそれを・・・」

 

「ちょ、やめぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

 

あたりに黄瀬の悲鳴がとどろいたのだった・・・・・

 




今後も亀更新かもしれませんがよろしくお願いします。さて、アイツの件どうしようかな・・・?オリ展開は難しいな・・・


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