機動戦士ガンダム ターン・ディケイド (sibaワークス)
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「第一話 ガンダム大戦」

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 ロラン・セアックは月面にいた。

 

 

――ノーマルスーツで。 遠くに輝く地球が見える。

 

 

 と、掌に何かが舞い降りる。

 

 光の粒子。

 

 

 

 

 頭上の遠く、遠く。

 

 アレは――。

 

 

 

 ビシュウウ!

 

 「うわっ!?」

 ロランは思わず身をかがめた。

 

 

  と、ロランは目を疑う。

 頭上を埋め尽くすのは――モビルスーツ。

 

 それも、ディアナカウンターやミリシャのものではない。

 

 ――黒歴史に語られる。

 数多のガンダム達だった。

 

 

 

 

 「――まさか月面でサテライトキャノンを使うハメになるなんて!」

 「――ここにいちゃいけないんだお前は!」

 「――思いだけでも力だけでも!」

 

 巨大なビーム砲を放つガンダム。

 

 光の先には、一体のモビルスーツ!

 そして、そのモビルスーツに立ち向かう、飛行機のような――アレもガンダムなのだろうか。

 それは人の命を吸い取ったような、眩い輝きで、一直線で飛んでいく!

 

 それを守るように、青き翼を持ったガンダムが、いくつもの光線で、それを援護していく。

 

 ――だが。

 

 

 「月光蝶……!」

 そのガンダムの先にある機体は、大きく翅を広げた。

 それは、アゲハの蝶ように――。

 

 

 巨大なビームを、跳ね返し、いくつものを光線を吸収し、そして、光を放って飛んでいく機体を、全てを――飲み込んでいった。

 

 「まだだ――俺たちだってガンダムだ!」

 「暗黒の世界に帰れ! ターン・シリーズ!」

 「人の心の闇に、ガンダムは危険なんですよ!」

 「ガンダムっていうんなら、やめなさいよぉーっ!」

 「ガンダムはたった一つの望み、可能性の獣、希望の象徴!」

 「ガンダムならやれる、やってみせる!」

 

 また、いくつものガンダムが現れる。

 だが――。

 

 

 「なんとーっ!?」

 

 月光蝶が、それらをまた、闇に返していく――。

 

 

 

 

 

 

 

 そして――最後に。

 

 

 「アレは――憎しみの闇だ!! だから、ガンダムで光を見せなきゃならいんだ!」

 「たとえそれが、最強のガンダムだとしても――俺はお前を超えてみせるッ!!」

 

 

 二体のガンダムが現れる。

 

 

 「フィン・ファンネル!!」

 「ばぁああああくねつ!! ゴォオオオッド!! フィンガアアアアアアアア!!」

 

 黄金に輝くガンダムが、もう一体のガンダムの張った虹のバリアに守られながら、生命の持つ全てを輝きを乗せて、突っ込んでいく。

 

 

 

 「ダメだ! あの機体は――!!」

 

 

 

 ターン……ターン・エー……いや、ターン・エーじゃない! アレは……!

 

 

 

 また、蝶が瞬いた。

 

 それは、月光ではなかった。

 

 絶望の闇だった。

 闇は、全てを飲み込んだ。

 

 

 「あああああ!」

 

 虹の光も、黄金の光も、闇が飲み込んでしまった。

 

 「そんな……あっ!?」

 

 

 だが、最後に一つだけ――白い輝きが残っていた。

 

 

 

 「――ガンダム!」

 ロランは見た。

 

 

 

 最後の一体のガンダムは、頭をもがれながらも、ライフルを頭上に掲げる。

 

 

 ドヒュウゥウウウウン!

 

 

 真っ直ぐにビームが飛んでいく――絶望の蝶に。

 

 

 

 その先にあるのは、光か、闇か――。

 

 

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 「また、アノ夢……?」

 ベッドから起き上がったロランは、目を擦った。

 近頃、変な夢ばかり見る。

 

 「――今日は、ソシエと久しぶりに会うのに――」

 

 

 

 

 黄金の秋は終わり、冬が来た。

 

 そして、また春がやってきた。

 ロランは一人で、春を迎えた。 

 

 

 「――あれ?」

 ロランは、外に出て、水を汲んだ、そこで、何か違和感を感じた。

 

 「朝なのに――月が――それも――二つ!?」

 

 

 

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「ディアナ様!」

「うろたえるのではない!」

「ですが――!」

 

 月の民が慌てふためいている。

 「ハリー……!」

 「繭が割れております! あのもう一つの月と――呼応するかのように!」

 

 

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 そして、月の繭が割れる。

 その中からは――見たことも無い、異形の、モビルスーツの軍勢!

 

 

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 「なによ!これ! なんなのよ!」

 ソシエは空を埋めつくモビルスーツを見て絶句する。

 

 そして、それらは、ビシニティに向かって降りてくる。

 

 「ボ、ボルジャーノン……!? あんなに違う種類のボルジャーノンなの!?」

 

 

 それは、ソシエの知るボルジャーノンに似ていた。

 だが、それぞれ微妙に形がことなっている。

 そして、それらは、銃を乱射し、地上へと降りてくる。

 

 「い、いやよ――戦争終わったはずじゃ!」 

 「ソシエお嬢様!!」

 「ロラン――ロランが来てくれた!?」

 

 異変を察知したロランが、ソシエの元へとやってきた。

 

 数百のボルジャーノンモドキが、地上へと降りてくる――!

 

 

 

 だが、そこへ――。

 

 

 「こちら刹那・F・セイエイ。 ターンエーの世界へ、介入する」 

 

 宙を舞う――モビル・スーツ。ガンダムが――。

 

 「今度は、ホワイトドールモドキ!?」

 「アレは月光蝶!? 違う――太陽の光みたいだ!」

 

 2本の剣を構えた、その機体は、ボルジャーノンモドキを次々と切り裂いていく。

 

 「AMS-119、ギラドーガ。 ZGMF-1000、ザク・ウォーリア。 RMS-106、ハイ・ザック! それに――MS-06FZ! ザク改! ここまで侵食が進んでいたか!」

 

 ガンダムは、数百の敵に一歩も譲らない戦いを見せていた。

 

 「――あれは、特異点か!? ロックオン、ティエリア、アレルヤ! 後を頼む!」

 と、そのガンダムはロランとソシエの方を向いた。

 ――それを守るかのように、3体のガンダムがあられる。

 

 

 ロランと、ソシエの元に、そのガンダムが、降り立つ。

 コクピットハッチを開けて、少年が現れる。

 

 「ロラン・セアックか? 今日がその日だ」

 「君は――?」

 「俺は、刹那。 ガンダムだ――そして、オマエも、ガンダムだ」

 「――君がガンダム? その日?」

 「ターン・エーはどこだ?」

 「月の繭に――」

 「何? まだ目覚めてないのか? 先に、真の黒歴史が目覚めてしまったのか!?」

 「黒歴史が――目を覚ます!?」

 

 ロランが、刹那を見る。

 刹那は、ガンダムで、遠方の町並みに指を差した。

 「見ろ――!」

 「あれは――!?」

 

 大地を、駆け抜ける。車輪の群れ――巨大なバイクのような戦艦が、人の住む集落を踏み潰していく。

 そして、地面からは悪魔のような――恐ろしい形相をした、蛇のような長い首を持ったガンダムの顔が現れる。

 遠方の街を、二挺のガトリング・ガンを持った四角い目をしたモビルスーツが、占拠していく。

  

 さらに空には――。

 

 異形の怪物――竜のような、あれもモビルスーツなのだろうか?

 ――それと、まるで意思を持った金属のような――植物の花弁のような形をしたものが、地上を覆い尽くすように降りてくる。

 

 最後に――。

 

 「隕石――?」 

 「違う、あれはコロニーだ! あんなものを地上に落とすの――?」 

 「ロラン!?」

 「だめだ! そんなの! 人は、やっと黒歴史から開放されたのに、そんなのいけないんだ!」 

 「ロラン! 何処へ行くの? モビルスーツに生身なんて!」

 

 ロランは、何故か駆けていた。

 

 「僕には分かる! あれは、今度こそ人の手で、もう一度歴史を塗り替えなきゃいけないんだ! だから、ホワイトドール! もう一度僕の元へ!」

 

 

 もどってこぉおおおおおおおい!

 

 

 

 頭上の、月に、激しい光が見えた――!

 

 

 「お髭の――ガンダム!?」

 

 ソシエが、叫んだ。

 

 ターン・エーが、光より早く、月の繭を割って、ロランの下へやってきた。

 

 

 「――なんとなく分かる、あの軍勢は、ターンエーで戦わなきゃいけないんだ!」

 

 ロランは、ターン・エーのコクピットにむかう。

 

 「ターンエーに秘められた、黒歴史コードで!!」

 

 「そうだ! ――これを使え! ロラン・セアック!」

 刹那が、ターン・エーのコクピットに向かうロランに、何かを投げた。

 カードだった。

 

 「それを、コクピットで使え!」

 「――ええい!」

 

 ロランは、コクピットに駆けた。

 ターン・エーのコクピットには、見たことのないパーツが追加されていた。

 ままよ、とカードをスキャンする。

 

 

 『Gundam shooting!! ミミミミミノフスキークラフト!』

 「あっ!?」

 

 ターン・エーの背中に、ナノマシンの輝きが現れ、光の翼が生じた。

 

 「うわああああ!!」

 ロランはそのままターンエーを飛行させる。

 

 そして、直感の命じるまま、いくつものカードをスキャンした。

 『Gundam shooting!! ハハハハハイメガ・キャノン!』

 『Gundam shooting!! ヴェヴェヴェヴェヴェスバー!』

 

 (なんでだ――僕はこの武器の使い方を知っている――)

 

 腰と、頭につけられた強力なビーム砲をターン・エーが放つ。

 

 ズドドドドオオオオオン!

 

 ターンエーを遮る様に陣取っていたモビルスーツたちが光に飲まれ、次々と爆発していく、やがて、コロニーに至る道が開いた。

 

  『Gundam shooting!! サササササテライトキャノン!』

  『Gundam shooting!! ツツツツインバスターライフル!!』

  『Gundam shooting!! ジジジジGバード!』

 

 「ガンダム――人がつくったものなら、人を――いっけぇえええええ!」

 

 背中と、両手に持った砲を、ターン・エーが放つ。

 

 

 ズバッバアアアアアアアアアアアアアアアア!! 

 

 

 コロニーを、光が貫き、爆散する、

 

 

 

 コロニーは、いくつもの、細かい塵になって砕けていった。

 

 

 しかし――。

 

 

 「また、別のコロニーが!?」

 

 

 ――コロニーを砕いたと思った矢先、更に別のコロニーが、3つ、落ちてくる。

 

 そして――。

 

 

 「なんだアレ――小惑星!?」

 「アクシズだ……」

 刹那から通信が入る。

 「あんなものまで――なら、もう一度――ア!?」

 

 しかし、ロランは驚きの声を上げた。

 手に持ったカードたちから、絵柄が消えていくのだ。

 

 「カードダスに込められた、黒歴史の力が消えていく――まだ完全じゃないんだ」

 「そんな、どうしたら――」

 「大丈夫だ。 ターン・エーにはその名前の通り、黒歴史をやり直す力が備わっている」

 「黒歴史をやり直す……?」

 「烙印を打ち消す力――この世界には、数多のガンダム達が存在していた。 何度も打ち消される歴史の中、それでも、その時代に生きる少年達の心の支えとして――ガンダムは存在していた」

 「ガンダムが――」

 「願えば、月光蝶が、違う世界、違う時代のガンダムの下へ連れて行ってくれるだろう。 オマエはその力を使って、全てのガンダムの世界を旅しなければならない」

 「旅を――でも、この世界は!?」   

 「大丈夫だ――。 今しばらくは、時間がある。 あんな石ころの一つや二つ、ガンダムで支えてみせる。 俺と、俺の仲間のガンダムたちが――」

 

 

 刹那は、小惑星――アクシズへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 「いくつもの世界を――」

 「ロラン!」

 ソシエが、ロランのターン・エーに向かって叫んだ。

 

 「ソシエお嬢さん! 乗って!」

 「良くわからないけど、このお髭の――ガンダムに任せていけばいいんでしょ!」

 「ついてくるんですか?」

 「もう振り切ったの! だから、あなただけに任せて置けないわ! ディアナもいないんでしょ!」

 「――わかりました、いきましょう!」

 

 ロランは、月光蝶の翅を広げた。

 

 オーロラのような輝きが、ターン・エーを包む。

 

 ――行きましょう、全てのガンダムの世界へ――歴史をゼロからやり直すために。

 

 

 

 

 

 

 




 予 告 




 
 「連邦軍伍長、ロラン・セアック? これが今の僕の役割?」
 「ええい! このスイッチだ!」
 「なにかが、はじまろうとしているようだ」
 「くそっ! しょうがねぇな」
 「あれっ……ここが、ファースト・ガンダムの世界?」
 「そんなにガンダムが好きかぁーっ!? ターンエーがこの世界に居ていいわきゃねーだろぉおおおおお!!」


 次回、「ファーストの世界?」


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