やはり俺の自己犠牲は間違っている (カオミラージュ)
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やはり俺の自己犠牲は間違っている
今回はれんさいではないですが俺ガイルをかきました!
よろしくお願いします!
とある晴れた日のこと。
俺は今日も明日もぼっちだ。
なんやかんやあって「奉仕部」に入部して
確かに誰かと話す機会は増えた。
増えたが別にその話している相手も友達などではない。
だから今日も明日もぼっちだ。
ぼっちの神を極めし俺にとってその程度のことはなんの問題にも苦痛にもなりやしない。
寧ろ幸福なのだ。
そして地球温暖化防止に協力している。
俺が一言も学校で話さない日がある。
それは言い方を変えれば「二酸化炭素の排出量」がリア充共より低いということだ。
そう、俺は地球の為に。
今日も明日もぼっちなのだ。
「ーーーーで。 なんだこれは」
「いや、だから。 地球を題材にした国語の宿題を…」
「馬鹿かお前は? なんで地球の未来の事を書く作文にお前のどうしようもないぼっち度が出て来るんだ?
…比企谷。別にお前に友達を作れとは先生言ってないだろう。
こういうのは嘘でもいいから綺麗な事を書いておけばいいもんなんだよ」
俺の名前は比企谷 八幡。
そしてこの先生は平塚先生。独身のアラサー。
「地球の未来について」
という国語の授業の宿題に上の文を書いて出したら職員室へ呼び出しを食らった。
なんでだ?中々良いと思ったんだがな。
ガララ
「うーっす」
「それでね〜! あっ!ヒッキー!やっはろ〜」
「おう」
「あら、比企谷君。今日も今日とて死んだ目をしてるわね。
そろそろチベットスナギツネにも勝てるレベルの目ね」
「なんで俺は入ってくるなり見慣れたであろうこの目を弄られなきゃならないんだ」
このアホの子が由比ヶ浜結衣。
そっちの毒舌女が雪ノ下雪乃。
そして何故か入れられた俺比企谷八幡を加えた3人が奉仕部だ。
「ねぇねぇヒッキー!
これみてみて!」
「なんだ? …美味しいハニトーの店 ベスト10?
なんだこの誰も買わなそうな雑誌は」
「むー!私が買ってるじゃん!
ってか今はそこじゃなくて、んーとここ!」
由比ヶ浜はそう言うと雑誌を開き2.3ページパラパラとめくり、ページの真ん中あたりを指差す。
「…なに?」
それは、俺たちの通う学校の近くに最近オープンしたハニトーの店の特集だった。
「これがどうした?」
「あっ!酷いなヒッキー、忘れてない?
文化祭の時、ハニトーのお礼!」
…ああ、そういや。
ハニトー奢ってもらった(まあ由比ヶ浜が勝手に買って持ってきたのだが)代わりに、なんか奢ってやると言ったな…。
「んで、これを奢ればいいのか?」
「うん! ベスト4なんだって!」
「どうせならベスト1を食いたいだろ。なんだその微妙な数字」
「ならヒッキーが北海道まで連れてってくれるの?」
「実は4という数字が一番好きでな?…」
「ねぇ。貴方達」
「ゆきのん、どしたの?」
「なんだ?」
「もしかしてデートの約束を私もいるこの部室でしてるのかしら?」
「はぁ?デート?…んなわけねーだろ、前奢られたお礼に奢り返すだけだ」
「そ、そうだ…よ! ででででデートじゃななななないもん!!」
「じゃあ私も行っていいのかしら?」
「あっ!そ、それはね、ゆきのん!
えっと…えっとえっと そう!このお店は二人で行かないと呪われるというジンクスが…」
「そうなの?なら私と二人で行きましょう。
比企谷君は由比ヶ浜さんのハニトー代を渡して、私は自分で払うわ。
それなら解決でしょう?」
「ん?…ああ、まあ確かに休日を快適に過ごせるならそれでも…」
「ちょーーーっとまったぁぁぁ!!」
「なに!?なになになんで話し進んじゃってるの!?
ヒッキーは私にお礼するのにお金渡すだけってドライ!Ohドライ!」
「くすっ。 冗談よ由比ヶ浜さん。
コソ 邪魔はしないわ」
「コソ も、もう!ゆきのん…」
「なに話してるんだ?」
「やかましいわ。 黙っててもらえるかしら」
いつになくひでーなおい…。
それから由比ヶ浜と雪ノ下はなにやらコソコソ話している。
俺の陰口をついに本人の前で始めたか?
流石に傷つくぞ。
「話は纏まったわ。
とりあえず今週の土曜日、貴方は由比ヶ浜さんと「二人で」ハニトーを食べに行くわ。」
行くわ。て。
確定してんのか…
「その後の日曜日私の買い物の荷物持ちをしたあと、家に帰れるわ。」
えっ?
なんか増えてねーか??
「部の備品を買うのよ。
椅子がもう二脚欲しいわ。」
「要るか?ってかパイプ椅子なら腐るほどあるぞ」
「馬鹿ね。さすがぼっちの比企谷君。
何もわかってないわ。
依頼人の訪れる平均的な人数は2人で来るわ。
だから二脚豪華な椅子を買うのよ。
そしたら奉仕部の宣伝にもなるわ。
接客が良い!となればね。」
8割おかしいぞ。
まず平均的に1人で来てるだろう。
材木座とか、戸塚とか…。
んでから豪華な椅子を買って宣伝、と言っても来るのは誰にも言えないような悩みを抱えた奴らだ。
それを「解決して貰った場所の椅子がすごく豪華で!」ってな話になると思うのか?
椅子がパイプ椅子でも良ければ奉仕部のことを直接話してくれるだろう。
あと接客て。
「それでか弱い私に二脚も買って持てるとでも思う?
思うなら当日見に来ればいいわよ?
必ず体力切れで倒れるから」
見に行ってる時点で休みじゃねぇな、くそ。
「まあいい。よくわからんが荷物持ちくらいなら…」
「き、決まりね!」パァァ
「由比ヶ浜。何時にどこに行けばいい」
「あっ、あっ!その! 9時に学校の前!」パァァ
「分かった。雪ノ下は?」
「10時にデパートのある駅で集合よ!」
「分かった。じゃあ今日はもう帰るぞ。
小町が先に家に着いちまう」
「え、ええ。小町さんに宜しくね」
「ヒッキーばいばい〜!」
「ああ、またな。」
ガララ
…くそ、あんな笑顔で喜ばれたら断れんし勘違いしちまうだろ。
…なんてな。
〜土曜日 朝8時30分 学校前〜
「まあこんなもんだろ。
割と早く着いちまったな。」
「…待てよ?そういや話まとまる前なんか二人でコソコソしてたよな?
話をまとめてたんだと思ってたが、良く考えたら…
こんな早く着いた俺を、9時に現れた由比ヶ浜と三浦(あーし)が出てきて俺を笑うつもりか!?
「なーに期待しちゃってんのヒキオwwww
結衣がアンタなんかと出かけるわけねーしwww」
「ごめんねヒッキーwwwwやっはろwwwやっはろwww」
」
「あっ!ヒッキーやっはろ〜!」
「うお!!」
「わっ!なにっ!?」
「ん、あ、ああ、すまん。
何もない。気にしなくていい。本当だ」
「???そ、それならいいんだけどね!
ごめんね、遅くなっちゃった…」
「まだ8時35分だ。むしろ速い」
「ヒッキーがこんな早くきてると思わなかったよ〜。来てくれるか心配だったし…」
「流石に約束をほったらかすほど最低ではないつもりだ」
「…えへへ。…じゃ、早いけどいこっか!」
「ああ、そうだな」
「ところでヒッキー、何か言うこととか…ない?」
「ん… あー。あーそうだな。
俺はな、嘘はとにかく嫌いだ。
だからそのポニーテールが似合わないなんて言わないし服も似合わないとはいわない」
「? ? …(考え中)
!(理解) もう!素直に似合ってるでいいのに!」
「生憎だがそんなリア充発言を堂々とはできん」
「もうっ!」(似合ってるってヒッキーが、似合ってるって…えへへ///)
〜ハニトーの店〜
「ヤバい! ヒッキーこれみて!」
「ああ、見ている。そして不思議なことに驚いている」
俺たちの前に出てきたハニトーは、想像を絶する凄まじさだった。
文化祭とはそりゃレベルが違うだろう。
市販のパンに市販のアイスを乗っけたものとプロのものを比べてはいけないな。
だが、そうと分かっていても凄いものだった。
押せば跳ね返る弾力のあるトーストに
俺たちが驚き見つめてる間も溶けなかったアイスクリーム。そして生という言葉がとても似合う生クリーム。
正直うまかった。
〜店の前〜
「美味しかったね!ヒッキー!」
「ああ。予想外に楽しめた。」
「えへ//」
「うむ」
「帰るか」
「まてーーい!!!」
「なんだ?」
「えっ!?今の流れから帰れるの!?
ヒッキーむしろすごいよ!」
「そうか?だってハニトーは奢ったし、もう用事ないだろ」
「うっ…それを言われると…」
「じゃ、俺こっちだから」
「ちょちょ!本当に待って!
えーと!そう暇なの私!
だから今日1日は付き合ってよ!」
ピクン
いや待て、今の「付き合って」は「遊べ」だ。
あの付き合ってではない。勿論突き合ってでもない。
分かってはいるが反応するあたり俺もまだまだだな。
「なんだよ、じゃあ何すんだよ?」
「わ、私の家、来る?」
「え?」
〜由比ヶ浜 宅 12時〜
「どうぞ、散らかってますが…」
「お邪魔します…」
由比ヶ浜の両親は土曜昼間も仕事らしい。
夕方まで帰らないそうだが…
「なんだそのラブコメ展開…
俺には効かんぞ。ぼっちを極めしこの…」
「ヒッキー!クッキー焼くから見てて!」
「なんでクッキーを?」
「あれから上手くなったのみせてあげる!」
…まさかまたあの爆弾を…?
そして由比ヶ浜は1時間かけてクッキーを作り俺の胃袋を処刑した。
そして由比ヶ浜の淹れたコーヒーを飲みながら部屋で少し話した。
割と今日は楽しかった。
それは認める。
…この後のコレが無ければ、な。
「ねぇヒッキー?」
「なんだ?」
「…ヒッキーってさ。
自分のこと嫌いなの?」
「なんだ藪から棒に。
自分の事なら生憎好きだぞ。
顔もいい、頭もいい。嫌いなのは目だけだ」
「そ、そう。
なら、ならさ。
なんでヒッキーは、その… 自分を犠牲にして…人を助けるの?」
ガタン
「わり、俺帰るわ」
「ひ、ヒッキー!?」
「あとな由比ヶ浜」
あれ。
「俺は自分を犠牲にした事なんて一度もねぇ。
まて。
「悪いが…」
やめろ…!
「俺は俺より優れてる奴のために自分を犠牲にするなんて事するわけない。
俺は俺のために俺がやりたいようにしてるだけだ。これは本心だ。
自己犠牲? はっ。なんで俺があんな奴らの為に自分を削らなきゃなんねーんだ。
俺は下手だからなやり方が。
結果としてそうなってるだけだ」
「ひ…ヒッキー…」
「クソ共は皆こうだ。
自分にとって都合のいい時にだけ今まで名前も知らなかった奴を頼って
抱えた問題が解決したら跡形もなくその芽生えそうな何かは粉々だ…
そうやって俺は捨てられ捨てて生きてきたんだよ
今まで奉仕部で解決した問題で
由比ヶ浜、お前から見て俺が自分を犠牲にして解決したように見えてるんだろーか知らねーが
そんな事実は一切ない。
本当はただの嫌がらせだよ。
俺みたいなぼっちに助けられることに気づくリア充を見て楽しんでるだけだ」
…心にもないことを由比ヶ浜に言う。
アホは俺だ。クソは俺だ。
何も悪くない由比ヶ浜に
自分のこの葛藤を叩きつけている。
由比ヶ浜だって嫌味で言ったわけじゃない。
ただ聞きたかっただけなんだろう。
俺の間違ったやり方に、疑念を抱いて。
ただそれだけなんだ。
パシンッ
それから俺は頬に残った衝撃に名前をつけた。
「後悔」
〜夜 家〜
「ごみぃちゃん。雪乃さんからごみぃちゃん宛にメール。読むね。
「由比ヶ浜さんに何をしたのかしら。
泣いて電話を掛けてきたわ。
明日の件、いいわ。来なくても。
そんな気分じゃないでしょう?
…では、また学校で。」
ごみぃちゃん何したの?」
「…なにも」
「小町に言ってみたらどう?
小町はお兄ちゃんのことが心配すぎて夜も眠れなくなっちゃう!
あ!今の小町的にポイント高いよ〜!」
「…わり。話したくなったら話す。
そんとき…相談に乗って欲しい」ナデナデ
「えへ。仕方ないなぁ」
(はぁ…。明日来なくていい、か。
どうしたもんか…)
日曜日、一応俺は駅まで向かった。
2時間待ったが来る気配はない。
小町が頼んできたデザートを買って帰った。
〜月曜日〜
ガララ
教室に入る。
HRまで時間はある。
俺は席に着き本を広げる。
そしてチラッとリア充メンバーを見た。
由比ヶ浜も勿論いた。
いつも通りだ。なんだ。案外大丈夫そうだな?
…まあいい
「八幡!」
「お、戸塚。」
「おはよっ!」
やべぇ天使ってこれのことか…
「八幡?はちまーん!聞いてるの?もう!」
「あ、ああ、すまん。おはよう。
どうした?」
「えっ?朝の挨拶だよ!」
あ、ああ、そうか。
そうだよな、普通の高校生は学校で朝1に顔を見たら基本的に挨拶だよな。
そんなことここ数年されてないから話しかけられる時は用があるもんだと思ってたよ。
「…」
〜放課後 奉仕部前〜
「ふぅ。よし。」
ガララ
「うす」
「あらデストロイ谷君。」
「誰だそれは」
「貴方の事よ。部活クラッシャー。
貴方のせいで由比ヶ浜さんが退部届け出してきたわ。
何やったの?答えなさい」
「なんだと? 退部届け?
お前はそれを受け取ったのか?」
「破り捨てたわ。
でも私がどう受け取ろうと来てくれないんじゃ意味がないわ。」
『……そ……』
「?そか。」
俺は本を読む。
これで良いんだよな。
これで雪ノ下の怒りは俺に向く。
部活にこない由比ヶ浜の話題は後回しになるだろう。
「貴方ね…。
残念ね」
「なにがだ?」
「その考えはバレバレよ。
大方、わざとそんな態度を取って私に
「由比ヶ浜さんのことはどうでもいいの!?」とでも言わせるつもりだったのかしら?」
「…なんでわかったんだよ」
「甘いのよ。別に奉仕部じゃなくても由比ヶ浜さんとは仲が良いままのつもりよ。
だからそこまで取り乱したりはしてないわ。
少し冷静に考えれば貴方の考えることなんて簡単に分かるわ。
…自己犠牲は貴方の得意分野だものね」
「お前まで言うか。ってか知ってんだろ」
「ええ、電話してきたと小町さん宛に送ったメールに綴ったつもりだったのだけれど」
「それと、こちらもなんだけれど明日はいいと伝えたはずよ。
どうして2時間近くも駅で待ってたの?
小町さんからメールは届いたたわ。
貴方が駅に行くと出た時間と帰ってきた時間からして待ってたのよね」
「それまでバレてんのか。小町をスパイにするのはやめろ」
「小町さんが自発的にメールを送ってきてくれたのよ。」
「くそ、内部の裏切りだったか。
まあいい。別にその行為には特に意味はない。
明日はいい、そんな気分じゃないでしょう
と書いてたからな。
もしかしたら、「来なくてもいい」と言われたのかと思ってな。
「明日のお出かけはなし」って意味の「いい」か、別に来なくても責めないわ。の「いい」なのか分からなくてな」
「そう。書き方が悪かったわね。謝るわ。」
「いや別に…」
「それでね、自己犠牲デストロイ谷君」
「もう人じゃねーなそれ」
「由比ヶ浜さんが何故怒ったか。
何故ここに来なくなったのか理由は分かるかしら?」
「…さあな。粗方俺のクソみたいな考えに愛想が尽きたとか、叩いたから気まずいとかだろ。」
「そうね。大体合ってて大体間違えてるわ」
「どっちなんだよ」
雪ノ下はずっと本を読みながら会話をする俺に注意を喚起する。
「これ以上私の目を見て話さないなら睾丸をえぐるわよ」
パタン
「なんでしょうか雪ノ下さん」
なんてやつだ。
「それでいいわ。
…話が逸れたわね。
それで、大体間違えてるわ。」
「省いたなこのやろう。
それだとただ間違えてるだけの奴じゃねーか」
「ええそうよ。比企谷君。貴方はただ間違えてるのよ。
やり方も感じ方も、…理由も」
「やり方や感じ方が間違えてるのは大体分かる。
それはいい。
理由は分からん。本当にだ」
「まず。私は今貴方に何度か「自己犠牲」と言ったわ。
なのに何故怒らないの?
由比ヶ浜さんの話では一度その単語を出しただけで貴方は怒りだしたそうだけれど」
「怒ったというか…。
いや。別にな。雪ノ下に言われてもなんともだ。
お前には全て見透かされてる気がするからな」
「あらそう。
ならなぜ由比ヶ浜さんにはそんな執拗に自己犠牲について語ったの?」
「…なんつーか。由比ヶ浜には悟って欲しくなかったんだ。
俺のこのやり方が、…自己犠牲を用いたやり方だと。
傷付くのは俺だけでいい。
もし俺が自己犠牲を由比ヶ浜の前で認めたらあいつは絶対これから問題にぶち当たるたびに自己犠牲を使おうとするだろうからな」
「そうね。問題の直接解決率は由比ヶ浜さんがトップで低いわ。
自分が役に立ててないと卑下していた時もあったの。
となれば一番解決してる貴方の方法を取るでしょうね。
貴方と同じ痛みを受けて同じ立場になって一緒に苦しもうとするでしょうね」
「ああ。由比ヶ浜はそんなやつだ。
だから俺は由比ヶ浜に「自己犠牲」と言われた時、思いっきり否定する必要があったんだ。
そしたら、あいつは最低な俺に愛想を尽かす。
そして自己犠牲じゃなく「嫌がらせ」という事にすれば…
今後由比ヶ浜自身が問題にぶち当たっても自己犠牲なんかすることないとおもった。」
「あいつは明るく友達もいる。
馬鹿みたいな奴らばっかだけどな。
でも、でもな。
由比ヶ浜は俺たちとは違う。
いや、厳密に言えばお前も俺とは違う。
お前の場合一人でいる事を選んでいるだけだ。
拒む事をやめれば仲間なんてすぐ集まるだろ
でも一人だという事に関しては俺と同じだ。
だからお前は自己犠牲がどれだけ馬鹿でどれだけ、間違えたやり方なのかをちゃんと理解してる。
だからこんな方法は使わない。
問題の解決法としては何よりも楽なんだがお前はそれをしない。」
「…一人がどれだけ辛いか。
知ってるから由比ヶ浜にはさせられないんだ」
これが、本心だ。
おととい由比ヶ浜に精一杯の演技で嫌味を言って。
最低な自分を演じきった。
自分を使って問題を解決するのは一番楽だ。
俺は今更誰にどう思われてもどうという事はない。
それくらいぼっちのレベルが上がっている。
だから俺は効率や楽さを考慮していつもこの方法で問題を解決する。
雪ノ下や由比ヶ浜や葉山たちはこの方法が嫌いなんだそうだ。
やめろとも言われた。ビンタもされた。
俺自身も間違えていると思っている。
見ず知らずの他人のために俺はわざわざ嫌われに行ってるのだから正気の沙汰では無いな。
自分の深層心理は分からない。
何故こんな事をするのかも、ここまで必死にやり遂げるのか、も。
雪ノ下は正攻法で。
由比ヶ浜は勢いで。
危なっかしいし確実制は乏しいがそれが正しい問題の解決法なのは俺もわかっている。
だが由比ヶ浜のやり方や雪ノ下のやり方が最後まで通用しない問題が来た時。
雪ノ下か由比ヶ浜のどちらかが必ず俺と同じやり方をしてしまう。
闇に落ちてしまう。
…嫌なんだよ。それは。
だから俺は最初からどんな正しいやり方を知っていても一番最低なこのやり方でやっている。
自己犠牲=見てて辛い
自己犠牲=間違い
この認識を由比ヶ浜たちに抱かせた。
これで今後の人生で彼彼女らが自己犠牲を使う事は無いと思う。
俺は長く閉じていた目を開け雪ノ下に伝える。
「雪ノ下。今まで世話になったな。」
「何をするつもり!?」
「俺はこの部を抜ける。
そして由比ヶ浜を代わりに入れる。
「自己犠牲」がどれだけ間違っている最低行為か。
由比ヶ浜も良く分かったと思う。
だがこれから、もし、もしだ。
どうしても二人で解決できない問題にぶち当たっちまったとき。
あいつが自己犠牲をしようとしたら止めてくれ。
頼んだぞ」
「待ちなさい比企谷君!!」
ガララ…
「比企谷君!!! …比企谷…君…」
〜教室〜
「でさ?あーしも、思うわけよ」
「うんうん、そうだよね!」
「う〜ん!葉山くん、それマジ??」
「ああ、本当だよ戸部」
ガラッ
全員「!?」
「…由比ヶ浜 結衣。 ちょっと時間くれ」
「ヒッキー…。 …分かった。みんなごめん、ちょっといってくるね」
「お、おい結衣、大丈夫か?」
「隼人くん、大丈夫だよ。少し待っててね。
…いこっかヒッキー」
「…ああ。」
〜校舎裏〜
「…どしたの?」
「由比ヶ浜。奉仕部にもどってくれ。
このままじゃ雪ノ下が一人になるぞ」
「ヒッキーがいるじゃん。
…もう私には奉仕部は…」
「俺はつい今しがた奉仕部を抜けた。
だから今雪ノ下は一人だ。
お前、友達なんだろ?
ほっとくのか?」
「ほっとくわけないじゃん!
でも…でも!!」
「…そこまででいい。 もう演技なんていらん。
すまなかったな由比ヶ浜」
「…え、演技?」
「ああ。俺が気付かないとでも思ったか。
ぼっちなめんなよ、人の顔色を伊達に見てきてねぇぞ。」
部室でのこと。
さっき雪ノ下と話してた時のことだ。
机の上には雪ノ下のスマートフォンが置いてあった。
「通話中」の画面でな。
雪ノ下もぼっちだ。
電話もしたことはあるんだろうが基本メールだろう。
あんな堂々と置いてバレないとでも思ったのか?
「さっきの雪ノ下との会話をお前はずっと聞いてたってわけだ。
イヤフォンでもつけて、おそらくトイレとか廊下の隅とか中庭とか。一人になれるところでな。
俺が部屋を出た後雪ノ下が俺が出たことでもつ耐えたんだろ?
それ聞いてすぐ三浦たちのところに戻った、と。」
「あ…あちゃー…」
「一つ気になる。
雪ノ下がお前が来なくなったと言ったあたりで
『……そ…』と聞こえたがつい口から言葉が漏れたんだろ?
なんて言ったんだ?」
「そ、そんなこと私言ってたの!?
「はぁ。俺嘘は嫌いだと土曜日言ったよな。
演技してまで騙されるとは。」
「ご、ごめんなさい…!」
「…ふ。いい。別に怒ってない。
会話を全て聞かれたのは恥ずかしいがな」
「ヒッキーこそ、なんで会話聞かれてるの知ってて語ったの?」
「会話聞かれてるの気付いたのは部屋を出る直後だ。
そん時に携帯が目に入ってな。
途中聞こえた声、光、少し見えた文字書体を教室に行く道で考えて繋がった、というわけだ」
「あはは…。ほんと、、なにやってるのかな私」
「ああ、同感だ」
「ヒッキー、辞めるなんて言わないよね?」
「それこそおうむ返しだ」
「ヒッキー。…好きだよ…!」
「…これも…おうむ返しにしておく」
そうだ。
俺は由比ヶ浜に惹かれていた。
由比ヶ浜に降られたら、二度と。もう二度と女の子に期待するのはやめようと誓って本物のぼっちになる予定だったが消えたな。
今日の俺はよく喋る。
緊張、してたのかもな…。
由比ヶ浜が好きだったからこそ自己犠牲なんて真似して欲しくなかった。
俺は不器用だ。
これを後々小町に話したらきっと笑われるだろう。
「ヒッキー! 私自己犠牲なんかしないよ!」
「おう、それは良かった」
「ヒッキーもしないで!
解決できない問題も…三人で頑張ろうよ!」
「これからは…彼女として支えるから…!」
「由比…結衣…。」
「俺はお前のことを最後に信じる事にする。
だが完全ぼっちの根暗ネガティブ野郎に完成してるからな。
お前のしてくれる行動ひとつひとつをきっと疑うしこれからも自己犠牲に頼るかもしれん。
だが少しずつでも変わっていくつもりだ。
だから、だから。よ。」
チュ
「!!?? ゆ、由比ヶ浜…っ!?」
「…えへっ/// 叩いちゃったところ。
ごめんね叩いて。」
由比ヶ浜は俺の頬にキスをした。
俺はこの時の感情に名前をつけた。
「ミステイク」
どうやら俺の青春ラブコメはどこかで間違えたようだ。
助けた犬の飼い主と付き合うとか、好き合うとか、どこのラブコメだって話だ。
…ま、悪くないかもな…
「いこっ!ヒッキー!ゆきのんが待ってるよ!」
「ひっぱんなって…。はは…」
ps
地球温暖化に加担しました
「…比企谷〜っ!!!!」
完
おまけ
〜中庭〜
『なんだと? 退部届け?
お前はそれを受け取ったのか?』
『破り捨てたわ。
でも私がどう受け取ろうと来てくれないんじゃ意味がないわ。』
「…うそ…ついてごめんね、ヒッキー…」
『……そ………………………』
完結
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