魔法科高校の劣等生に二回転生しちゃいました (葉楼)
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プロローグ

初投稿です
暖かい目で見てやってください


20xx年 某所

西の空が茜色に染まりもうすぐ夜が訪れようとしている中俺は一人道を歩いている。

 

 

「やったー!魔法科高校の劣等生16巻買えたー!

さっさと家買って読もっと。」

 

 

早歩きで歩を進め閑散とした公園を通る。時間も時間なため遊んでいるのは男の子一人だけだ。

 

「(なんであの子あんなところで…)」

 

道路際で遊んでいるのが目に入る。

少し眺めていると遊んでいたボールが跳ねて道路へ出る。そしてその子はボールを追いかけて道路へ飛び出してしまう。そこへ高速で走ってくる車が目に入ってくる。

 

「(危ないっ!)」

 

男の子を助けようと俺の体はとっさに動きだす。

 

 

 

「キキーッ!!!ドンッ‼︎」

 

 

体に衝撃が走り道の端まで飛ばされてしまう。

痛みで閉じた目を開くとさっきの男の子がいる。助けることができたようだ。

 

徐々に視界が紅く染まり体の周りには血で水溜りができていく。

頭が痛い。

どうやら頭から出血しているようで血がどんどんと俺の服やさっき買ったばかりの本を紅く染めていく。

 

広がっていく血の海は俺の身体を浸していく。

服から伝わる血の感触は温かく風呂に入っているような感覚を覚える。

 

血で染まっていく本を拾おうとするが意識が朦朧としており身体を動かせない。

 

なんとなくだが自分は死ぬということを悟り、死ぬ前に買った本を読みたかったなどと後悔が頭をよぎる。

 

本は表紙までもが紅く染まっていく。

しかし、なぜか血は達也と深雪の周りだけを紅く染め上げる。

血で彩られた背景に表紙の二人がとてもよく映えており、綺麗だなという場違いな事を考える。

そして全て染まり切ったところで俺のわずか15年の人生は幕を閉じた。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

目を開けるとそこは白。体を起こし、辺りを見回してみても見渡す限り白、白、白だった。

 

 

「ここは…?

たしか、車に撥ねられたはずだけど、病院って訳でもなさそうだし、天国かな?じゃあ俺死んじゃったってことか。」

 

「惜しーい!半分正解だよー!」

 

 

突然声がして振り返るとそこには羽を生やして宙に浮いている奴がいた。

 

 

「こんにちは!僕は神サマ!

そしてここは天国じゃなくて『転生の間』!

というか天国や地獄といった死後の世界なんて存在しないんだよ〜

そして、君はもう一度人生を送れる権利を得たよ〜!

しかも、どんなところでもOK!もう一度同じ人生を送るもよし、過去・未来へ行くもよし、はたまた君が憧れている二次元の世界へ転生するもよし!

さあ、君はどの世界へ行きたい?」

 

 

グイグイ喋ってくるな。

 

 

 

「・・・」

 

 

「さあ!君はどの世界へ行きたい?」

 

 

「いや、ちょっと待ってくれ。

とりあえず俺は好きな世界へ転生できることは分かったけど、天国とか地獄がないってどういうことだ?」

 

 

「そこ気になる〜?まあいいけど。

人間って死んだら天国か地獄に行くって思ってるでしょ?けどね、人間だけじゃなけど、死んだらその者の魂と精神が分離するんだ。そして、精神は無の中を漂い、魂はまた『なにか』として生まれ変わるんだよ〜」

 

 

そんなシステムだったのか。結構難しい感じだな。

 

 

「それならなんで俺はこんなところにいて転生ができるんだ?」

 

 

「それはね、君の運がよかったからだよ〜」

 

 

「運ってなんだ?運って」

 

 

「死んでしまった人の魂の中からテキトーに転生できる人を選ぶから☆

まあ、君の場合は生前の最後の行いが良かったからかもしれないけど。」

 

案外、っていうか超テキトーなんだな…

 

「そうか…

大体分かったから説明を続けてくれ」

 

 

「む、なんでこっちが指示されてんの。まあいいけどさ。

それで、どこまで話したっけ。

ああ、それで?君が転生したいのはどういった世界?」

 

 

それなら選択するまでもなく一択だろ。

 

 

「そうだな・・・じゃあ、『魔法科高校の劣等生』の世界がいいな。」

 

 

「オーケー!『魔法科高校の劣等生』だね。

ああ、それと転生の権利とついでに君は3つまで願いを叶えられる権利を得たよ〜」

 

 

「願い?」

 

 

「うん。君が転生先で欲しいものを願えば全て叶えてあげるよ。3つまでだけどね」

 

 

なんでもいいのか。かなりお得だな。

といっても別にあまりないんだが・・・

 

「それって、後から願っても大丈夫なのか?」

 

 

「うん。たまーに会いに行くからさ、その時に教えてくれれば大丈夫だよ」

 

 

「分かった。じゃあ1つ目は『人並み以上の魔法力、又は特殊な魔法技能』だ。あと二つは保留で」

 

 

「じゃあ残り二つはまた聞きにいくから〜、あとその願いは結果がランダムになるけどいいかい?」

 

 

「・・・大丈夫だ」

 

 

「オーケー、それじゃあ『魔法科高校の劣等生』の世界に転生させるよ〜!」

 

 

「ちょっと待ってくれ。そういえば質問あるんだけど、俺は転生するわけだろ?その世界の事実を捻じ曲げたりするのはいいのか?」

 

 

「もちろん!

今から君が行くのは原作に沿っただけの独立した世界だからね。なにをどう変えようと君の自由だよ。

質問はそれだけかい?」

 

 

「ああ、」

 

 

「じゃあ、行ってらっしゃーい

新しい人生を楽しんでね〜」

 

 

いきなり足元に大きな穴が空き俺は落ちていく。お約束なので予想はしていたため驚きはしなかったのに途中で突然意識が無くなった。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

神様は落ちていった彼を見送ると、傍に転がっている釣竿を手に取り青白い半透明の火に群れの中へ投げ入れた。

その表情は嬉々としていてこれでもかというぐらい最上の笑みだ

 

「今回の彼は結構良かったなー。久々に楽しめたよ。

さあ次はどんな人が来るんだろうな〜♪」

 

竿がしなり、引き上げると青白い火と共に分厚い本が釣れた。神様はその本を読むと

 

 

「次は引きこもりのオタクか。

えーっと?生前は近所にも家族にも迷惑ばかりかけていた……か。ゴミ屑だね〜

さて、次はどんなキャラで行こうかな♪」

 

 

 




どうでしたか?
まあ、文章とか下手です笑

ちなみに、16巻買いました!
けど、今日は朝から一日中部活でまだ全然読めてませんw
とりあえず表紙だけを確認して急いで仕上げた感じです

16巻発売に合わせて準備をしていたんですが、あまり書き溜めがないため更新は遅くなると思います
明日も投稿する予定ですがそこから先は週一ぐらいで出していこうと思います
なんせ部活が月曜以外休み無しなので…

早く出していけるようしますのでよろしくです

'16 2/5加筆修正しました


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転生一回目
転生一回目1


16巻読み終わったー!
すごく面白かったですね〜
ただ、俺が頭の中の妄想とは違う方向でこの小説ちょっとやばいかも知れないな的な状態ですw
なるべく原作に触れた内容にはしていきたいですね




旧福岡県博多市の某所の廃ビルに潜む影

 

 

やっほー!俺だよ!前回死んで転生した奴だよ!今俺は四葉の人間と追いかけっこしています。捕まったら確実に死ぬという追いかけっこですw

なんでそんなことになっているのかというと……

 

 

 

俺が大漢の人間としてこの世界に転生した上に魔法の実力が認められちゃったからだよおおぉぉぉぉお!!!!

 

 

 

……おっと、色々と説明を省いてしまったな。

どういう事かと言いますと

俺は『魔法科高校の劣等生』の世界に大漢人として生まれ変わった。名前は『清 蓮玉』

大漢の人間として転生したと知った時はかなり絶望したよ。

だってさ、『魔法科高校の劣等生』に転生するって聞いたらさ、達也とか四葉とか一高とか主キャラに近い人間として生まれると思うじゃん?そう思ってたのに生まれてきたら聞こえてきた言葉が日本語じゃなくて理解できなくてさ、半年経ったぐらいにやっとここは大漢だって判明したんだよ。

しかも日本語と全く違うから覚えるのに二年半もかかったよ。

ほんと大変だった……

 

 

そんな大漢人の俺がなぜ日本にいるのかというと、スパイとして日本へ送り込まれたからだ。

 

神様からもらった『人並み以上の魔法力』の内容は、あまりいい方ではなかった。

人並み以上の魔法力ではあるが、中の上といったところである。しかも全てその程度なので得意と呼べる系統魔法が無い。ただし、一つを除いてだが。まあそれは置いておく。

 

あ、そういえば神様だけど、だいたい一年に一度ぐらいのペースで俺の夢に入り込んできて願いはないかと尋ねてくる。しかし俺には願いが無くなにもいらないと言うと神様は毎度毎度笑って早く願いを決めろと催促してくる。

その際、少し涙目になって焦っている雰囲気が出るがそれには気づいていないため指摘はしていない。

しかも意外とかわいい感じである

 

閑話休題

 

では何故そんな特徴のない俺が日本へのスパイになったかというと、俺の持つ精神干渉系の魔法が理由である。

俺は洗脳魔法と精神構造干渉系の魔法(深夜さん【12】よりは細かなコントロールができる)を持っている。

後者の力は隠しているためスパイとは関係無い。しかし、前者の洗脳魔法は国に知られていたため、国はそれを利用しようとしたということだ。

まあ、わざとバラしたんだけどね。

 

この二つの魔法を持っていると神様から聞いた時

「この魔法使えば真夜さん深夜さん救えるんじゃね?」

と思い、それならば使える魔法を最大限利用して日本へ行こうと思った訳だ。

 

 

洗脳魔法を国にわざとバラしそこから色々と根回ししてやっと日本潜入の任務に就いた。

ここまで凄く長かったがやっと真夜さん深夜さんを救える算段がついたぞ!と、意気込んでいたが俺が大漢を出発する際に国の監視魔法師によって身体に呪印を施され、国の命令に背くことができなくなった。もし命令に背こうとすると呪印により心臓を破壊される。

 

 

しかし、それも三年前の話。

二年半前大漢が四葉家に攻撃された時、俺に呪印を施した術者が死んだようで俺の身体から呪印が消え去り、俺は自由に動けるようになった。

 

そして呪印が消えたと知った直後俺は「深夜さん真夜さん助けてやらぁ!!」みたいなノリでなにも考えずに四葉本家に突っ込んだ。

結果は、もちろん返り討ちにされ、さらには四葉の人間に追われる羽目になったということだ。

 

 

そして今に至る。

今俺は「四葉の人間を本家からなるべく引き離してその隙にもう一度四葉に行こう」作戦の実行中だ。

 

やはり一度突っ込んで失敗してしまったため、四葉は本家の警備をかなり強化している。そのためもう一度行くのは難しく、時間をかけて四葉から人員を減らそうというわけだ。

ゆっくりしすぎて2年ほどかかってしまったが計画は順調に進んだ。

 

少しずつ追ってくる人数が増え、今に至っては四葉の約三分の二ほどが追ってきてんじゃね?ってほどの数だ。

流石に数が多くなり見つかるのが早くなってきたため、二週間ほどいたがここも離れ時だろうな。

 

 

そろそろ四葉本家に行くか

 

俺は窓から飛び降り走り出した。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

三日後

 

蓮玉は長野の廃ビルにいた。

 

「疲れたー!三日も自己加速術式使いっぱなしだと結構くるな。とりあえず一日休んで明日四葉行くか」

 

大きく伸びをした後蓮玉は横になった。すぐに規則的な寝息が聞こえる。

 

 

 

 

 

次の日

 

「よし、想子も回復したし四葉本家へと向かいますか!」

 

蓮玉は廃ビルの窓から飛び出す。十階の高さだが魔法を使い怪我なく着地する。

 

そして自己加速術式を使い四葉本家のある山梨県へ向かっていった。




読んでいただきありがとうございました

次の更新は少し空くかもしれません(早すぎとかは言わないで)
明日からテスト期間なので勉強しないとやばいんです
しかも高校入って初めてのテストなんです

なるべく一週間以内に出させていただこうと思います
あと更新はこれからは夜10時か12時にしていこうと思います


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転生一回目2

遅くなってすいません
とりあえず書けました!
てか3000字超えたし…本当は毎話毎話このくらい書きたいですね〜。
しかし戦闘描写難しいな〜文字数やたら食われたし…
まあもともと下手くそなんですがね

では、少し長くなりましたが本編お楽しみください!


ーーー四葉本家ーーー

 

四葉の屋敷に銃声と想子の嵐が吹き荒れていた。

 

 

「敵は北の森にいるらしいぞ!」

「警備の者は北の森に急げ!」

「侵入者を根絶やしにしろ!」

 

 

使用人全員が出動し侵入者を排除するこの体制は本来、四葉の警戒体制の警戒レベルの内最高レベルの一つ下であり、かなりの大人数、しかも対十師族を想定したものなのだが、今回の侵入者はたった一人だった。

 

そして、例の侵入者である『清 蓮玉』はというと、四葉家の南にある裏門へ向かっていた。

もちろん四葉の人間には一度も見つかっていない。

 

では何故四葉の人間が北へ向かっているのかというと彼の持つ『洗脳魔法』の所為である。

蓮玉は北の方を警備していた使用人達を操り、森の中に多人数の敵が潜んでいると思わせているのだ。

しかも敵がいないことを隠すために、想子が切れるまで魔法を撃たせ続けるという制限付きで

 

そのため、なにも知らない他の使用人達は今頃その洗脳された使用人達につられて魔法と銃を撃っている頃だろう。

 

そんなことを考えている内に蓮玉は南の裏門に到着した。

使用人のほとんどを北の方へ集めたはずだがそこはやはり四葉。どの場所にも数人警備を残していたようで、この門にも二人の警備がいた。

 

しかし、警備レベルが高く、一つの場所に人が集まっているからか警備の者は二人とも油断しているようだった。

 

その隙をつき、蓮玉はその背後に降り立ち、彼らの頭に触れる。

するとどうしたことか使用人の二人は何事もなかったかのように警備を続けた。

 

 

これが蓮玉の精神干渉魔法の一つである『洗脳』である。

この魔法によって彼はどんな者も操ることができる。

しかも操る時の命令の限度は無く、自害すらさせることも出来る。

この魔法を発動する時は操る対象に触れなければならないという制限もあるのだが、相手の身体であればどこでもいいためそこまで問題にはならない。

 

 

警備の二人には『何事もなく、警備を続ける』という命令を脳に書き込み、屋敷の見取り図を一瞥し蓮玉は四葉本家へと入っていった。

 

使用人や警備の者は外に出払っているようで屋敷内にはほとんど人の気配を感じなかった。そのため警戒はするも

人一人にすら会うことなく目的の場所へ進んでいく。

 

この角を曲がれば真夜のいるであろう部屋まであと少しというところで敵の気配を感じ進むのをやめる。

角の向こうを確認すると、四十代半ばの執事が立っていた。すると、相手も気づいたようで蓮玉へ魔法を放つ。

間一髪のところで避け、角から出る。

 

 

「ほう、あれを避けるとはなかなかの実力ですね。侵入者が全員この実力だと他の者は少し厳しいでしょう。

しかし侵入者、しかもこれだけの手練れの方が女性だとは思いもしませんでしたね。

さて、お嬢さんお仲間はどこにいるのか早めに教えて頂けないでしょうか?早くあなたを倒して皆の援護に行かなければならないのでね」

 

 

「四葉の人に褒められるのは光栄だけど他のやつの場所なんて言えないな。

つっても俺もそう簡単には負けないよ?」

 

 

ずっと笑みを浮かべたまま話す執事の言葉の端々から挑発の色が全く隠れずに表れてる。

蓮玉は少々ムカつき軽く言い返すが、執事は全く意に介さずさらに挑発を重ねてくる。

 

 

「ご心配なく。最初から教えてもらえるとは思っていませんよ。

さっさと負かして居場所を吐かせますから。

しかし女性に手を出すのは心が痛みますね。」

 

 

全くもってムカつくなこのおっさん、と、ブチ切れそうになるがその寸前である違和感に気付く。

あと俺の地雷も一つ

 

「あのさー、今この四葉本家に攻撃してるの俺なんだけど?」

 

 

「それは嘘ですかな?

まあ、真実であったとしてもあなたはここで殺しますがね。

覚悟はいいですか?お嬢さん」

 

 

蓮玉は動揺を誘うためにそう言ってみるが、執事は最初少し動揺した様子を少しばかり見せたものの全く信じない。

 

 

「やっぱ信じないよねーこんな事。

あとさ、勘違いしてるとこ悪いんだけどさ、俺男」

 

 

信じてもらうことを諦めた、と言っても最初から信じてもらえるとは思っていないので蓮玉は素早く男の勘違いを訂正する。

 

もともと顔つきは中性的でありよく女性と間違えられていたのだが、ここ三年四葉に追われ切る暇がなかった髪は、もともと少し長めだったことも相まって肩ほどの長さまで伸びている。

 

 

「なんと!こんなに綺麗なお方が男だとは!」

 

 

男は薄々勘付いていたようで驚く様子が少し白々しい。

 

 

男とはもう話すべきことがなくなり、さっさと男を倒して真夜の所へ行こうと思った蓮玉はCADを構え戦闘態勢に入る。

すぐさま『ドライ・ブリザード』を放つが手首のCADに素早く手を伸ばした男の魔法に全て弾かれてしまう。

全ての弾丸を弾いた男はCADを携帯端末型のものに切り替え、攻撃を開始する。

 

迫ってくる氷の刃を蓮玉は全て躱す。しかし反撃しようにも男の手数は多く、反撃の隙が無い。

そのためずっと避け続け、男の想子切れを狙おうとした蓮玉だが男の攻撃がさらに増え、避けることすらも難しくなってきており何発かは当たっていたためところどころ血が出てきている。

出し惜しみ出来ない状況に蓮玉は内心毒づき、後ろへ飛んで男と距離をとりもう一つCADを取り出す。

 

 

「ほう、特化型が二つですか」

 

 

男の言葉のように蓮玉が今持っているCADは二つとも特化型である。蓮玉は演算速度が遅いため特化型を使用している。しかも干渉力が弱く領域干渉を使われると6,7割の確率でたった一つの得意魔法を除いて魔法を使えなくなる。使えるその魔法もコントロールが難しく基本は相手を殺してしまうので人殺しはしないと心に決めている蓮玉はよっぽどのことがない限りその魔法を使わない。

そのため、いつも手の内がばれる前に速攻を仕掛けて戦闘を終わらせてしまう。

そして今回も速攻で終わらせようとした。

 

 

「ええ、魔法の発動が遅いもんでね……ねっ!」

 

 

自己加速術式を使い、男に接近する。男に接触する前に加重系の魔法を使い男に圧力をかける、そして膝をついた男に拳を振りかざし全力で振り切る。

しかし男は直前でどうにか避け後退する。そして目標を失った拳は空を切り蓮玉はバランスを崩す。

その隙をついて男は即座に今放つことのできる最大数の弾丸を生成し蓮玉へと放つ。

 

20もの氷の刃が蓮玉を襲う。

 

それを蓮玉は、腰から取り出した二丁のCADで迎え撃つ。

蓮玉が引き金を引くたびに氷の刃が一本、また一本と消えていく。しかしその場から無くなったのではないようで蓮玉の周りには水滴が飛び散っている。

 

これが彼が唯一得意とする魔法『最小分離(アトム・セパレーション)』である。

振動系加速・吸収系分離系統の複合魔法で、対象となる物体を構成する原子を不規則に、無秩序にを振動させ、原子間の結合力が弱くなったところを分離させ原子レベルまで分解するという魔法である。

分解された単体ではいられない原子はすぐに他の原子と結合する。

そのため、男が放った氷の刃は酸素原子と水素原子に分解され、酸素・水・水素となって拡散していった。

 

しかし数が多く17発までしか迎撃できず3発が蓮玉を襲う。どうにか移動系の魔法を使って自分を吹き飛ばし直撃を防ごうとする。

だが、発動が少しだけ遅く、一発を脇腹にモロにくらってしまう。

痛みで蹲ってしまいたくなるがここで隙を見せると攻撃されてしまうため蓮玉は痛みを堪え素早く立ち上がり男と対峙する。

 

 

脇腹から大量に出血している蓮玉を見て男は勝負に出る。

霧を発生させ蓮玉に向けて放ち視界を奪うと即座にありったけの想子を使い氷の刃を作る。その数なんと32本、己の想子をほとんど使い果たした男はその氷の刃を蓮玉へ放つ。

 

 

 

 

男が放ってきた霧を吹き飛ばした蓮玉が見たものは廊下一面を埋め尽くすほどの氷の刃だった。

ざっと見ただけでも先ほどの攻撃の時よりも数が増えている。

この数を一つ一つ照準を付け全て墜とす事は不可能と判断した蓮玉は使う魔法を切り替えた。

一つ一つを『最小分離』で照準を付けて墜とすのではなく、廊下に幕を張り、そこを通過するもの全てに『最小分離』の効果を与えるというものだった。

しかし、この魔法はある座標に固定した魔法を維持しなければないため継続的に想子を流す必要がある。

通常盤ですら想子の消費が激しくそう乱発はできない魔法であり、それを継続的に行うことは難しく、万全の状態でも5分、戦闘により想子を消費した今では十数秒も使えば想子がほとんど枯渇してしまうほどであった。

 

 

その魔法を十秒ほど使い男の放った氷を全て分散させたのを確認し、蓮玉は追撃が来ないか幕の向こう側に意識を向ける。

 

 

「っっ!!?」

 

 

魔法での追撃はやって来なかったが代わりに男がもの凄い速さで蓮玉へ攻撃を仕掛けようとしていた。膜を張っているということをわかっていないようでスピードを緩める気配がない。

咄嗟に蓮玉は膜を解除しCADを男に向け魔法を放つ。

左腕と右脚が『最小分離』によって消滅した男はバランスを崩して床に倒れ込む。

 

男を倒す絶好のチャンスであったが蓮玉もほとんど想子を使い果たしてしまい床に崩れ落ちる。

そして視界が真っ暗になった。

 

 

 

 




男のキャラが不安定な気が…

次も一週間以内を目処にしようと思います!
しかし今、テスト期間の真っ只中なんだよな…
まあ頑張らせてもらいます!

お読みいただきありがとうございました


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転生一回目3

前回一週間以内とか言いながら二日連続投稿です
けっこう頑張ったwテストなのにね




 

目を開けるとそこはいつぞやの白い空間『転生の間』だった。

転生したての頃はここに来る度に違和感を感じていたがもう何度もここに来ているため慣れてしまっていた。

 

ここに来たということはやはり奴がいるということであり声が聞こえてくる。

 

 

「やっほー、久しぶりー!またちょっと髪伸びたね!

女の子らしくて可愛いよ!」

 

 

出た、神様である。

初めて会った18年前と変わらず人懐っこい笑みで話しかけてくる。

 

 

「久しぶり……何の用?

てかここに来るの早くない?前会ったの二、三ヶ月くらい前だったろ」

 

 

いつもならだいたい一年ぐらいの周期で来るこいつがたった三ヶ月ほどで来たのだ驚かずにはいられない。

 

 

「もちろん君の願いを聞きにきたに決まってるじゃないか。

この前も言ったけど僕は転生者に選ばれた者の願いを叶えないといけなくて、しかも三つ全てを叶えないといけないんだ。

そして君も薄々気付いているだろうけど君はもう長く生きられない、なにもしなかったら保ってあと数時間ぐらいだろうね。

で、君が死ぬ前に最後の願いを聞きにきたというわけだよ。」

 

 

なんとなく察しは付いていたがやはりそうだったか。

男との戦闘によって脇腹から出血していたのだが量が多く戦闘中も意識が朦朧としていたのだ。

 

しかし願いと言われてもあと数時間も生きられるならこの世界でやりたかったことも全て終わるためこれといったものはない。

 

そのことを伝えると毎度のことながら神様は慌てる。まあいつもよりかは慌てているが。

 

 

「え、ちょっ!!

君はもう死んでもいいっていうの?

せっかく転生したんだよ?もっとやりたいこととかないの!?

ほら!もっと考えて!

ここじゃ時間の進み方も遅いし。

あ、けどなるべく早くしてね。なんか最近調子悪くてさ、あんまり長いこと君をここに呼んどけないんだ。」

 

 

「あ、あぁ…」

 

 

神様があまりにも必死なため考えてみる。

 

 

とは言っても俺はその時代に転生したから真夜さんを助けたからであって生き残ったとしてもするべきこと、したいことがなく結局は無い。

と考えながら俺は一つの考えが浮かぶ。

 

 

「あのさ、俺がこのまま死んだ後この世界にもう一度転生することは可能なのか?」

 

 

俺の転生した時代は結構不本意な時だったためもう一度転生したいということだ。

 

「ん〜。ま、大丈夫なんじゃない?

やったことはないけど。」

 

 

すぐに肯定の言葉らしきものが返ってくる。

とりあえずはいけそうだ。

 

「オーケー。じゃあ二つ目の願いはそれで頼む。

んで、三つ目なんだけど、その前に。

もう一度転生したとすると一つ目の願いってどうなるんだ?」

 

 

「あはは…今はちょっとわからないなー。

とりあえず君が死んでここに来るまでには調べておくから。それとも今すぐ知らないと困るかい?」

 

 

けっこう重要なことではあるが今すぐでなくてもまあ困らないため次ここに来た時でいいと返事を返す。

 

 

「じゃあ、君の二つ目の願いはもう一度転生すること、三つ目は次ここに来た時に言うということでいいね?」

 

 

「ああ、それで頼む」

 

 

「オーケー、なら君の意識を元の世界に戻そうか。

じゃあ残り数時間の二回目の人生精一杯がんばって来なよ。」

 

 

最後に激励を飛ばされ思わず微笑む。

俺は頑張るよと返事をし目を閉じて意識が元に戻るのを待つ。

一瞬意識が遠のき高い所から落とされる感覚の後顔に衝撃がきて痛みが走る。

 

目を開けるとそこは先ほどまで男と戦闘をしていた四葉本家の廊下だった。

向こうには男も倒れており、この世界から意識が途絶えていたのは本当に一瞬のことであったと理解する。

 

いつまでも床に倒れてるわけにもいかないのでとりあえず起き上がり、男の所へ向かう。

 

 

「よう、おっさん」

 

 

俺が話しかけると男は驚いて体を少し震わせたがすぐに話し出す。

 

 

「いや、お強いですね。

私の目も少し曇ってきましたか。」

 

 

「いやいや、俺が強さを隠す技術を持ってたってことだろ。」

 

 

「ははは、じゃあそういうことにしときますよ。」

 

 

二人笑いながら慣れ親しんだ友人のように少し言葉を交わす。

そして俺はCADを男へと向ける。

 

 

「さあおっさん、何か言いたいことはないか。」

 

 

「そうですね、では最後に。

あなたが先ほど使っていらした魔法を教えていただけますか?」

 

 

なんと。

こんな時に魔法を聞かれるとは思っていなかった俺は少し驚く。しかし隠すようなことでもないので男に教える。

 

 

「さっきのやつは『最小分離』。

振動系加速・吸収系分離の複合魔法で、対象を原子に分解する魔法だよ。」

 

 

「そうですか。

ではどうぞ、もう思い残すことはありません。殺していただいてけっこうですよ。」

 

 

「あ、あぁ。じゃあケリを付けさせてもらおうかな。

てかさ、抵抗しないの?あんたここの使用人でしょ?」

 

 

俺は四葉に侵入した敵であって男は四葉の使用人だ。

敵の俺を前にして最後まで抵抗しないというのは少々引っかかる。そのため質問したのだが男からは驚きの答えが返ってくる。

 

 

「えぇ、私にはもう抵抗する手段がありませんしね。

左腕はCADと共に削がれ、片手片足では起きることすらままならない。

だから抵抗せずにさっさと死のうというわけです。」

 

 

清々しい顔でそう言う男に素直に感嘆の声が出る。

潔いとは違い現状を正しく認識した上で死を選ぶということだろう。なかなか真似できることではない。

 

そんな男の意思が変わってしまう前に終わらせようとCADの引き金に指をかける。

 

 

「そうか。

……じゃあな、おっさん。」

 

 

目を瞑り俺の魔法を待つ男へ、引き金を引き魔法を発動する。

そして男の体から力が抜けたのを確認して俺は目的である真夜さんの元へと向かっていく。

 

しかし男に与えられたダメージは深く、壁に手を突きながらゆっくりと歩いていく。

 

 

「(思ったより苦戦したな。

想子もほとんど切れてるし。これじゃギリギリかな。)」

 

 

そんなことを考えているうちに真夜さんがいるであろう部屋の前に辿り着く。

扉に手を掛け深呼吸をすると扉を一気に開ける。

 

開かれた扉の向こうには黒を基調とした空間が広がっており、その奥には儚げな美少女が立っていた。

 

 




次話はついに原作キャラが登場です
キャラ崩壊しないようにしないとな


次もなるべく早く出します
お読みいただきありがとうございました


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転生一回目4

遅くなってすみません!
テストの課題を舐めていました…
だが、テストも終わったため多少は時間に余裕ができると思うのでどんどん書いていこうと思います。

では、あとがきにて




ここは旧山梨県のとある山村に建っている四葉本家の屋敷。

大きめの武家屋敷のような外観はいつもなら静かで落ち着いた雰囲気を漂わせているのだが、今は飛び交う怒号や時折聞こえる魔法を撃つ音で騒がしい。

 

今ここには敵が侵入してきており、屋敷にいる者は全員警備にあたっている、はずなのだがたった一人自室でくつろいでいる者がいた。

 

黒を基調としたその部屋の主は十師族が一家、四葉家。その次期当主候補である四葉真夜だった。

今この屋敷には四葉の血筋に連なるものが彼女しかおらず使用人も全員警備に当たっているため部屋には彼女が一人きりだった。

 

四葉本家周辺に敵が侵入してくることは滅多にない上、侵入されたとしてもこの屋敷まで辿り着くことは殆ど百パーセント不可能なためあまり心配することはないのだが、ベッドに横たわっている真夜の顔は少し強張っていた。

しかし、それは緊張や心配をしているわけではなく、ただ考え事をしていただけだった。

 

その真夜の考え事は姉の深夜との仲直りの方法であった。

三年前の大漢に攫われた事件の時に、真夜が記憶を作り変えられたことで深夜に非難の言葉を放って以来、碌に会話をしていない。真夜が体調を崩した時には見舞いに来るのだが交わす言葉は二つ三つで特に問題もないとわかるとすぐに去ってしまい、事件よりも前のように接することがなくなってしまっていた。

 

いくら大人びているとは言ってもまだ15歳の少女。一番近しい存在である姉との仲が良くないというのは真夜にとって心苦しいことであった。

しかも深夜はあの事件以降研究室に篭ってずっと魔法の過剰使用を繰り返している。それこそ何日かに一度は倒れ、このままでは確実に身体を壊してしまうというほどに。

 

そんな深夜が心配で、深夜がそうなってしまったのは自分の放った言葉の所為だと責任を感じた真夜は、深夜を彼女が感じているであろう責任から解放し、深夜に謝って昔のような関係に戻りたいと願い、仲直りする手段をこの約三年間模索していた。

 

しかし、真夜はまだ深夜との仲直りを果たせていない。

 

真夜が深夜と会うことが滅多に無く、会ったとしても二言三言程度しか言葉を交わさずに深夜が去っていってしまう事もそれを助長する一つの原因なのだが、それ以前の問題として真夜はどう謝ったらいいのか分からないのだ。

あの事件以前も喧嘩は時々起こっていてその度にどちらかが謝って仲直りをしていた。記憶の形が変わったと言っても記憶としては残っているわけで今までどう謝っていたのかは分かる。

それと同じ様にしようとはするのだが、いざ謝るとなるといつも喉の奥で言葉が詰まってしまい出てこない。

 

なにが原因かは分からないが、昔の様に謝ろうとするとそれを身体が拒否してしまうのだ。

何がいけなかったのか検討して再び謝ろうとするがまた言葉が詰まる。

それを幾度と無く繰り返し、その度に苛立ちを覚え自分を嫌悪する。

 

こんなことならいっそ深夜との仲を取り戻すことを諦めるということが思考をよぎった瞬間真夜はベッドから跳ね起き激しく首を振った。

 

真夜にとって深夜と仲直りすることは必須であり、それを諦めるということは考えることすら彼女にとってしてはいけないことだった。

 

そんなことを考えてしまうほど真夜は思いつめていた。

そんな考えを一度振り払う為に真夜は窓辺に寄っていった。

 

月を眺めていると外から魔法の気配がする。

今屋敷には敵が侵入してきていることを今更ながらに思い出した真夜はそれを頭の片隅に追いやり、再度深夜との仲直りの手段について考えをめぐらそうとした。

 

 

その途端部屋の扉が大きな音と共に開き真夜はそちらの方を振り向く。

真夜が振り向いた先には女性的な顔立ちをした少年がいた。

屋敷で一度も見たことのない顔のため今夜侵入してきている敵の一人であろうと判断する。

 

 

「あなたは誰?」

 

 

侵入してきた敵であれば排除しなければならず、真夜もそれを分かっているのだが彼の雰囲気に呑まれた真夜はそんな言葉を口にしていた。

顔立ちは整っており、美男子とも美少女ともとれるほどだ。

目の色は漆黒だがどこか吸い込まれるような美しい光沢を放っている。

目と揃いの真っ黒な髪は少し長めで後ろで束ねられている。そしてそれが彼の女性的な雰囲気に拍車を掛けている。

 

 

「私の名は清蓮玉。今日はあなたに会うためにここに来ました。」

 

 

そう言って微笑む彼の顔は不思議な魔力を放っており、その瞳に見つめられると身体が固まってしまう。

そして今の状況を忘れ彼の顔をずっと見たいと思ってしまう。

しかしそれも束の間、彼のとった行動によって真夜は現実へと引き戻される。

 

蓮玉はCADを真夜へと向けて構える。

魔法の兆候を捉えた真夜はCADを取り出し魔法を発動しようとする。

が、しかし真夜の魔法は不発に終わる。

それどころか真夜は全身から力が抜け、床へと倒れていってしまう。

咄嗟に目を瞑り衝撃に備えるが真夜を包んだのは床の硬さではなく、なにか柔らかい感触だった。

 

恐る恐る目を開けるとそこには蓮玉の顔があり、真夜は蓮玉に抱きとめられていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

とりあえず真夜さんを抵抗できないような状態にはした。

これからとうとう真夜さんに精神構造干渉魔法を使うのだが俺はこの魔法を一度も使ったことがない。

 

なぜならこの魔法は発動条件はかなり特殊なのだ。

しかも発動すればほぼ確実に相手に引かれること間違いなしの条件だ。

 

しかしそんなことも言ってられないのでさっさと発動しようと膝の上の真夜さんを見る。

すると警戒心MAXでこちらを睨みつけてきていた。

 

 

 

 

………なにこの子、めちゃくちゃ可愛いんだけど。

 

 

 

と、飛んでいきそうになる理性をなんとか押し留め、自分の顔を真夜さんの顔に近づけていき、

キスをした。

 

 

そう、これが俺の精神構造干渉魔法の発動条件である。

もっと詳しく言うのであれば粘膜と粘膜の接触。

 

なぜこんな条件なのかと言うと全てあの神様の所為である。なぜか俺の二つの精神干渉魔法は発動するのに条件を付けなければならず、しかもその設定が神様の元で行われたわけだ。

転生して初めて神様と会った時、奴は笑いながらそのことを説明してきた。

しかもキスの時に舌と舌を触れ合わせなければならないという特大の爆弾条件で。つまりディープキスだ。

 

 

案の定真夜さんは凄く驚いた顔をし抜け出そうと必死にもがく。

だが、先ほどの魔法が効いており抵抗する力は弱い。

 

俺もこんな状態はちょっとキツイため作業のスピードを上げていく。

すると始めて四十秒ほど経ったあたりから真夜さんの抵抗がどんどん弱くなっていく。

五十秒も経つと真夜さんは抵抗するのを止め、あろうことか腕を俺の首に回しさらには舌を絡めてくる。

真夜さんを見ると最初は驚きと拒絶の入り混じっていた表情が、いつの間にか恍惚とした表情に変わっていた。

 

その状態がそこから三分ほど続いた。

部屋にはぴちゃぴちゃという水音と二人の息遣いだけが響く。

真夜さんの身体からは殆ど力が抜けており顔は赤く染まっているが少し苦しそうだ。かく言う俺も舌がしびれてきている。

 

長かった俺の魔法による治療も終わり顔を離す。

すると真夜さんはぐったりとしてしまったので真夜さんを横抱きにしてベッドまで運ぶ。

 

これで俺の役目も終わったため最後に少し虚ろな真夜さんに一言言って俺は四葉本家を後にした。

 

 

 

 

 




やってしまったな。
蓮玉君を真夜にキスさせたのは半分くらい趣味(笑)です。
達成感が半端ない…

さて、次はもう期限なんか決めずになるべく早く書く!というのを目標にします。
まあ、結局はなるべく一週間以内でいこうと思います。
それ以上遅くなっていたらどんどん催促とかしてきてください!頑張って書きますんで。


ではまた次回!
お読みいただきありがとうございました。


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転生一回目5

今回も少し遅くなってしまいました。

転生一回目編もあと1話の予定です。それが終わればやっと原作突入ですかね。


あと、ちなみに今回は蓮玉君出てきません。



旧四研の施設内にある病室で真夜は目を覚ます。

ああ、また自分は倒れてしまったのかと考えながら先ほどから聞こえるスースーという音の方へと視線を向ける。

するとそこには椅子に座って眠っている深夜がいた。

 

真夜と深夜が会うのは一ヶ月ぶりだ。

ずっと喧嘩をしていたような状態だったがそれでも心配して見舞いに来てくれたのだろう、と考えていると深夜が目を覚ました。

 

「あら、もう起きてたの真夜。身体は大丈夫かしら?」

 

 

「ええ、おかげさまでね」

 

 

深夜は真夜の体調を確認するとすぐに部屋の外へと向かう。

恐らく使用人か英作叔父様に後のことを任せ、また研究室に篭って無茶な実験を繰り返すのであろう。

そうなれば次会えるのは何時になるのかも分からない。

もしかしたら次会うまでに私の心が変わっているかもしれない。

そんなことを考えた真夜はいつもの別れ際のように悲しそうな顔をした深夜を呼び止めようとする。

 

 

 

「ま、待って姉さん!」

 

 

いつもならこの呼び止める言葉すら出てこないのに、何故だか今日はなんの抵抗もなくすんなりと口に出せた。

 

 

「どうかしたの?」

 

 

不思議そうに振り返った深夜は尋ねる。

深夜の言葉を聞くと堰が切れたように真夜の口から次々と言葉が溢れてくる。

 

 

「ご、ごめんなさい!三年前あんなこと言っちゃって。」

 

 

深夜は驚いた顔で真夜を見るが、俯いている為に深夜を見れていない真夜は胸の内にある言葉を口に出していく。

 

 

「三年前姉さんは私の心が壊れてしまう前に、私を助けるために私に魔法を使ったんだって分かってた。分かってたのに私は姉さんにひどいことを言ってしまった。

そ、それをずっと謝りたくて……」

 

 

泣きながら自分の思いを伝えた真夜が顔を上げると深夜も涙を流しており真夜に抱きついて謝っていく。

 

 

「私こそごめんなさい。

いくら心が壊れそうだからと言ってあなたの心を全て書き変えてしまうなんて。あの時のあなたの言うとおり人は記憶の中の経験から形作られていく物、それを全て書き変えるということはその書き変えられた人は死んでしまうも同然よね。

それにあの時私が魔法をもっと細かくコントロール出来ればあんなことには…」

 

 

「ううん、悪いのは私の方。

記憶が書き変わっていたとしても姉さんとの楽しかった記憶はなくなったりしないはずなのに…」

 

 

真夜がそう言うと深夜は驚いたように真夜と顔を見合わせる。

 

 

「…ど、どうしたの姉さん?」

 

 

深夜の急な行動に困惑したように真夜は尋ねるが深夜には聞こえていないらしくブツブツと何かを呟いている。

 

 

「姉さん?」

 

 

「あ、ごめんなさい。どうかしたの?」

 

 

真夜が再度尋ねると深夜は気付いて返事をする。だが、まだどこか上の空だ。

 

 

「どうかしたって、姉さんこそどうかしたの?

さっきからなんか考え事してるようだけど。」

 

 

ついさっき真夜の言った言葉がどこか引っ掛かり深夜はそのことを考えていた。

しかしそのことを言えば真夜は心を壊してしまうかもしれない。しかしこのことを言わなければなにも分からないままであり、深夜は話し出す。

 

 

「真夜、あなたあの侵入者に何かされなかった?

多分あなたの記憶が元に戻ってるのよ。さっき『楽しかった記憶』って言ったでしょ?」

 

 

真夜はそれを聞くと俯き考える素振りを見せる。

少しすると驚いた様に顔を上げる。

 

 

「ほんとだ、記憶が元に戻ってる。

……でもあの事件の記憶は元のままよ?」

 

 

真夜は自分の記憶が元に戻っていることに驚きながらもつい先ほどまで深夜と喧嘩していた原因である三年前の『例の事件』の記憶は元に戻っていないことに気付き、少し疑問に思い深夜に言ってみる。

すると今度は深夜が驚いた顔て話す。

 

 

「それはあの事件の記憶だけ除外して記憶を元に戻したのよ。

そんなこと、今の私でも難しいことなのに。

 

…で真夜、あの侵入者に何をされたの?」

 

 

深夜の推測に納得しながら聞いていた真夜だったが次なる深夜の質問で自分に何があったのか、なぜいまここにいるのかその原因を思い出してしまう。

 

 

「べ、別に変なことはされなかったわよ!?

触れられた時にちょっと頭が痺れる様な感覚はあったけど。」

 

 

真夜は咄嗟に真実だが嘘でもある言葉で誤魔化す。

しかし声は上ずっており顔も頬のあたりが真っ赤になってしまっているため深夜は怪しむ様に真夜を見る。

 

 

「それよりも姉さん、さっきあの侵入者って言ってたけど今回侵入してきたのってあの人だけなの?」

 

 

深夜の視線から逃げる為に話題を変えようとする真夜だが未だに顔が赤くしかもそれに気付いていない。

 

 

「え、ええ。今回侵入してきたのはあなたの部屋までやってきたあの者一人だけだったわ。

しかもすぐに何処かへ逃げてしまったから捕らえることはできなかったわよ。

あとは……そうそう、今回の戦闘での死者はゼロよ。

橘さんが片手片足を失う以外は誰も怪我すらしてないわ。

まあ、想子の消費が激しくてフラフラになっちゃった人もいるけどね。

それよりも真夜、あなた大丈夫?顔が真っ赤よ?」

 

 

聞かれたこと以上のことを話した深夜は多少は薄くなったもののまだ紅潮している真夜をみて尋ねる。

 

 

「あ、ごめんなさい。すこし疲れちやったみたい。

ちょっと休ませてもらってもいい?」

 

 

真夜がそう言うと真夜のことが心配な深夜は部屋を出ていこうとする。

少しだけ心配で悲しそうな顔だが以前までとは明らかに異なる心情だとと分かる。

その顔は何処か晴れやかで何か吹っ切れたようだった。

それに気付いた真夜の顔は自然と綻ぶ。

 

 

「それじゃあ真夜、また明日。」

 

 

「うん、また明日」

 

 

短い挨拶を交わし深夜は真夜の病室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

深夜が去った後の病室で真夜は枕に顔をうずめ羞恥に悶えていた。

その顔は深夜と話していた時よりもさらに赤く染まり、シューと音を立てて顔から煙でも出るのではないかというほどだった。

 

それも仕方ないだろう。

何せ初めて会った男に出会って間も無くしてキスをされたのだから。

しかもキスをされただけなら、まだその恨みと少しの恥ずかしさだけで済む為に深夜に話していただろう。

だが、あの時は途中から自分から舌を絡めにいってしまった為言えなかった。

 

「(たって仕方ないじゃない。

なぜかあの時はいきなり気持ち良くなってきて身体が勝手に動いちゃったんだもの…)」

 

それを深夜に言ってしまえば深夜は一家を上げて彼を探し、見つけ何をしたのか尋問した後、殺してしまうに違いないと思い言えなかった。

 

 

しかしいつもの真夜ならそんなことを気にも留めずに言っていただろう。

だが今回は言えなかった。

そこに潜む薄っすらとだが確かにある感情に気付かないまま。

 

 

そして真夜がその気持ちに気付き自覚していくのはまた別のお話。

 




二人の心情を書くのが難しい…
なるべく原作と矛盾が起きないようにはしたつもりです。

あと、最後に続きがあるみたいな書き方をしていますがその予定はありません。
だって難しいもん。

ついでに次話は蓮玉君出します。

お読み頂きありがとうございました。
批評・誤字脱字などがございましたらお申し付けください。改善していきますので。


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転生一回目6

ほんと遅くなってすみませんでした
文化祭とか色々忙しかったので…


「あはははははっ」

 

 

神様笑い声が響いている『転生の間』はいつもと違った雰囲気だった。

その原因は『転生の間』に建っている大きめの家屋が原因だろう。

一般的な一軒家よりかなり大きいその家にはなぜか家の面積の二倍以上もある庭が備わっていた。

 

そしてその庭にはリモコンのようなものを持った神様を追いかける蓮玉がいた。

その蓮玉の周りにはブラウン管のテレビのようなものが二つ浮いており撮っているアングルこそ違うものの二つとも全く同じ場面の映像を流している。

蓮玉が真夜にキスをしている映像を。

 

 

「待てぇぇぇぇぇえええ!!

さっさとよこせぇぇ!!」

 

 

「あはははは

ほら、こっちだよー!」

 

 

蓮玉は少し息切れを起こしながら、神様は心底楽しそうに追いかけっこ的なのを繰り広げていた。

なぜこんなことになっているのかというと。

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

蓮玉は四葉本家から脱出した後近くの森で死んでしまった。

蓮玉が目を覚ますとそこはすでに『転生の間』だった。

目の前には今までここに来た時には無かった一軒家が建っており、辺りを見回してもいつもウザいぐらいにすぐ絡んでくる神様がいない為その家に入る。

 

家の中を探し回り最後の一部屋を開けるとそこには部屋の壁を埋め尽くす大量のテレビの画面のようなものと部屋の中央にある一際大きいサイズのテレビを見ている神様がいた。

神様に手招きされて神様の下へ来た蓮玉が見たものは四葉本家で真夜に精神構造干渉魔法を使用している時の映像だった。

 

うっ。と小さく呻いた蓮玉に神様はすぐ嬉々として笑いながら話し出す。

 

「あはははは!君途中から責められてんじゃん。自分からキスしておいて。あはは。」といった蓮玉をからかっているものばかりだった。

部屋に響いている音は神様のからかいの声と蓮玉と真夜が映っているテレビから聞こえる喘ぎ声や息遣いだけで、からかわれている蓮玉は突然の事でパニックに陥ってしまっていて俯いたまま黙ってしまっている。

 

そんな蓮玉に神様はここぞとばかりに喋るスピードを速める。

 

一、二分程周りでふわふわ漂いながらずっとからかってくる神様に蓮玉は突然拳を突き出すが空中で軽々と避けられてしまう。

 

 

「……せ、…これ消せぇぇぇ!!」

 

 

まだからかおうとするのを止めない神様に蓮玉はとうとうキレた。

何度も拳を振り回し神様に当てようとするが悉く躱されてしまう。

 

蓮玉の拳を躱す神様は何回か躱すと蓮玉から少し離れる。

そして腕を振り何もないところからリモコンのようなものを取り出すと

 

「ほら、このリモコンを取ったらその画面をけすことができるよ~」

と言って蓮玉に見せびらかし逃げていく。

それを蓮玉が追いかけていったため今に至る。

ちなみに蓮玉の周りに浮いているテレビは途中で神様が出したものだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

追いかけ始めてから三十分ほどが経った。

その間ずっと全力で追いかけていたため疲れたのか蓮玉は転んでしまう。

なんとか立ち上がることはできたが足がガタガタ震えていて進むことができない。

 

そのまま立っていると神様も気づいたようで蓮玉のもとへやってくる。しかし気遣う様子もなく

 

「ほらほらぁ~どうしちゃったの?もう疲れちゃったの?」

と蓮玉の目の前でリモコンをちらつかせからかってくる。

 

体力としてはもう限界に近い蓮玉だったが神様に負けるようなことも癪なため神様が油断している隙にリモコンを奪おうと手を伸ばす。

しかしまたも避けられてしまい、蓮玉はそのまま体制を崩して倒れてしまう。

 

それをもからかってくる神様を蓮玉はキッと睨み付ける。

その途端神様の言葉が止まる。

しかし蓮玉はそのことに気付かずに話す。

 

 

「もういい加減この映像消してくれよ…

そろそろいじめだぞ?すっごい本格的な」

 

 

「あ…そうだねごめん。

…じゃあ消すね」

 

 

いつもなら頼んでもなかなか聞かない神様が珍しくすぐに聞いたことを蓮玉は少し疑問に思ったがそんなことを言えばまた何をされるかわからないためそれを口に出すのを止める。

 

 

「はぁ、やっと終わったか。

んで?次は何をするんだ?」

 

 

そして神様のことだからまだ何かする可能性が高いと考えた蓮玉は尋ねる。

だが神様から返ってきたのは予想とは違う答えだった。

 

 

「いや、もういいかな。

君も疲れたでしょ?とりあえず休もうか」

 

 

珍しいことだったが確かに疲れきっていたため蓮玉はそれに従うことにし、神様と共に家の中に入っていった

 

 

 

 

 

 

ちなみに、神様がからかうのを止めたの理由は

『睨んできたときの蓮玉がすごい涙目になっていて、女の子をいじめてしまっているという感覚になってしまったから』だそうだ。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

とりあえず体感で半日ほど休んだ蓮玉は再び一面テレビの部屋に来ていた。

最初入った時は時間が無かったためこれらは何だろうと画面を一つ一つ見ていくとどこかで見たことのあるような風景がいくつもあった。

その中の一つに自分が先ほどまでいた『魔法科高校の劣等生』の人物が映っているものがある。

しかし画面にはその世界では見たことのない人物までも映っている。

そこで蓮玉はある一つの考えに辿り着く。

 

 

「なあ神様。これって…」

 

 

「あぁ、このテレビに映っているのは君以外の転生者達だよ。

そりゃあ君以外に転生できた人がいてもおかしくないだろ?」

 

 

蓮玉が考えを言い終わる前に神様が答えを言う。

だが蓮玉の疑問は神様の答えとは違うようで

 

 

「まあそりゃそうだろうけどさ、例えば転生する世界が被ったりしたらどうなるんだ?

てか、俺がもう一度転生したらこの画面に映ってる奴と年代がダダ被りじゃんか。

それは嫌だよ?」

 

 

と捲し立てる。

すると神様はなにやら納得したようで蓮玉の疑問に答えていく。

 

 

「それは大丈夫だよ。君はそこの奴と会うことはないよ。

なぜならその画面の彼がいる魔法科の世界は四葉真夜と四葉深夜の仲は悪いままだからね。

というのも君たちを転生させている世界は本来無かったものであり、君たちの要望に沿った世界をコピーしているだけだからね。

何個でも存在するんだよ。

まあ同じ世界に転生するかどうかはランダムだけどね。

で、君は君以外の原作キャラ以外の人がいない世界に行けたってわけさ。

まあ歴史を変えちゃったからもう一度転生しても原作とは少し異なっているかもしれないけどね。」

 

 

「なら俺と同じ世界に転生した奴はいないってことでいいんだな?」

 

 

一度で理解はしたが確認のためにもう一度聞く。

 

 

「うん、そうだよ。

もう一度転生し直しても君が他の転生者に会うことはない。」

 

 

「それはよかった。

それとさ、俺がいなくなった後真夜さんはどうなったんだ?」

 

 

神様から肯定を受け取ると蓮玉は自分が前の世界でしたことの結果を聞く。

しかし神様はその質問に答えずに部屋の中央にある一番大きなテレビに向かっていく。

 

 

「僕は君以外見ていなかったんだ。

これで見るかい?」

 

 

もともとあの時代に転生した時から真夜を助けるという目標を決めていた蓮玉は真夜があの後どうなったか気になっていたためすぐに頷く。

そして神様はさっきのリモコンを取り出してテレビをつける。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

真夜と深夜の仲直りの一部始終を見て神様と話すためにテレビを一時停止させた蓮玉は満足気な顔をしていた。

 

 

「さ、もうこれでここですることは無くなったしさ、そろそろ転生させてくれよ。」

 

 

そう言った蓮玉に神様は少し悲しそうな顔を見せる。

 

 

「そうか、君はもう行くのか。

寂しいね。もっとここにいてくれてもいいんだよ?」

 

 

「どうしたんだよ。らしくない。

わかってただろ、願いを言った時から。」

 

 

蓮玉は茶化したようにそう言うが神様は全く笑ってない。

マジで寂しそうである。

しかしすぐいつもののほほんとした顔に戻る。

 

 

「そうだったね。

じゃあもう転生させるよ。準備はいいかい?確認するよ。

一つ目の願いは『人並み以上の魔法力、又は特殊な魔法技能』

二つ目は『もう一度転生する』だったね。

まだ三つ目が決まってないけど何にするか決まったかい?」

 

「ああ。

俺の三つ目の願いは『司波達也に近い者に転生すること』だ。

一高に入学できるのが必須で、あとはクラスメイトでも親戚でも何でもいいよ。」

 

蓮玉が願ったのは一度目の転生で失敗してしまったこと。

生まれた時代も国も全く原作とは別で生まれてしまいただただつまらない人生を送ってしまわないようにするためのもの。

 

「と言ってもこういうのじゃあ主人公に近い奴として転生するのがお決まりのはずなんだけどな。」

 

蓮玉がそう言うと神様も笑うがその笑顔はどこかぎこちない。

 

「そうだね。まあ面白くていいじゃないか。

三つ目の願いはそれにするよ。

 

これで君の願いは全て使い切った。

だから次に会うのは君が次、三度目の人生を終えた時だ。

その時まで頑張ってくれよ。」

 

蓮玉は神様の表情に気付かず話が進んでいく。

 

 

「ああ。それじゃあな。」

 

「うん、またおいでよ」

 

 

お互いに短い挨拶を済ませると蓮玉は目を閉じた。

 

 




いやー、約二週間ぶりぐらいの更新ですね。
ハイ、遅くなってすいません。
文化祭が土日にありましてその準備に追われていたのとその後の部活がやばかったんですよ(震え声)


そして次の話もまた遅くなるかもしれないです。ちょっと展開をどうしようか迷ってる…
てか各話各話でタイトル付けようかな…
まあ、なるべく早く更新しますのでよろしくです

お読みいただきありがとうございました

※'15 12/19 書き足しを行いました


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転生二回目 九ノ瀬家編
九ノ瀬家編1


ネタはどんどん思いついていくのにそれを文章化できないorz…

UA10000件突破!ありがとうございます!

まだまだ未熟者ですが何卒応援よろしくお願いします。
それではどうぞ


周りを森に囲まれた純和風の屋敷。そこに蓮玉そっくりの少年がいた。

 

 

「それじゃあ零、後片付けはよろしくね。」

 

 

「はーい。いってらっしゃい母さん。」

 

 

零と呼ばれた少年は母親であろう人物が去ると(おもむろ)に目を閉じた。

 

 

(じゃあお願いしていいかな?)

 

 

(…はぁ、またかい?別にいいけどさ。)

 

 

零はここにはいない誰かに言うように頭で念じると返事がこれまた頭の中から返ってくる。

そして彼が目を開けると彼の瞳の色と纏っている雰囲気が変化した。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

お久しぶり、蓮玉だよ!

とりあえず今の俺の状況を説明させてもらおう。

 

 

前回俺は最後神様に転生させてもらったのだが何故だか一度目は失敗してしまったらしく俺が転生することはなかった。

だが転生したという事実と俺の願いはこの世界に反映されてしまったらしくこの身体と一つの人格が生まれてしまっていた。

しかも新しい身体に転生することができなかったらしく神様が俺をもう一度転生させるために調べ物をしている間俺は実に二年間もの間転生の間に閉じ込められてしまった。

それは何故か俺はこの身体と俺の魂がリンクしてしまっていて時間の流れ方が現実と同じだったかららしいのだが。

 

それはともかくとして二年も待った末俺はこの『大葉 零』として生まれ変わった。しかし、すでに人格が入っていたため二つ目の人格としてだが。

 

ちなみに大葉家は原作にはない家系らしく元は四葉元造の兄妹の一人に魔法の才能が無く、追い出す名目で分家として作られたらしいのだ。

 

そして俺が今いるここは九ノ瀬家。

俺の両親はどちらも死んでしまっていて俺は母親の姉が嫁いだこの家に引き取られたのだ。しかも叔父さんと叔母さんは俺を本当の息子のように可愛がってくれており零も彼らのことは父さん母さんと呼んでいる。

 

ちなみに九ノ瀬家は由緒正しき古式魔法の家系らしく古くは平安時代以前より続いているらしく古式魔法の家系の中で神格化されている五つの家系の内の一つだそうだ。

 

とまあ今俺の置かれている状況はこんなものだ。

ついでだが俺は今廊下の掃除をしている。

これは修行の一環らしいのだが元の人格である零がいつもめんどくさがってしないため任せられているのだが俺はこれを完璧にこなす。

それもそのはずで転生の間にいた二年間俺は神様の世話をずっとしていてあそこに建っていた家の家事は全て俺がやっていたのだ。

そこらのHARには絶対に負けない。

 

まあそれはそれとして俺はこの二度目の転生を満喫している。

基本的に身体を動かしているのは零だがそれを眺めているのも面白いのだ。

 

 

おっと、そろそろ掃除に戻らなければ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

蓮玉に任せた掃除が終わり一人自室で暇をしていた零に声が掛かる。

 

 

「零、今日の修行を始めるぞー」

 

「わかった、今行く!」

 

 

『修行』という言葉が出た瞬間零はバッと起き上がり着替え始める。

そして着替え終えるとすぐに部屋を飛び出して道場に向かって走っていく。

道場と言っても屋敷の部屋の一つで修行ができるようにとても広くなっているだけだが。

途中走っていることを叱る声がしたが興奮していた零には聞こえなかったようだ。

 

道場の前に着くと先程までと打って変わって真剣な表情になり襖の前で正座になる。

 

「失礼します」

 

そう言って襖を開けると部屋にはすでに二人の人物がいた。

部屋の奥で襖の方に向かって座っている男性が『九ノ瀬 優』

この家の主で零を引き取った人でもある。

 

手前の方でこちらに背を向け座っている少女が『九ノ瀬 葵』

優とその妻である玲奈の子供で、零の従兄妹にあたる。

零より一歳年上で、一応であるが九ノ瀬家の次期当主候補の一人である。

零は魔法の才能に恵まれている葵を心から尊敬している。

 

 

 

「よし来たね。それじゃあ今日の修行を始めようか。」

 

零が座ったのを確認した優はそう言って懐から今日教える呪符取り出し扱い方を二人に説明していった。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

それから約一年が過ぎた頃。

 

零は一人森の中を彷徨い歩いていた。

最近修行が思うようにいかず、落ち込んでいたため飛び出してきたというわけだ。

 

もうかれこれ三十分ほど歩いており帰り道など覚えていなかった。

しかし精霊に力を借りれば帰り道も簡単に分かるため零はそのまま足を進めていく。

 

さらに三十分ほど歩くと零は小さな川を見つけた。

その場所はとても美しく、零はその景色にしばし見惚ていた。。

そして何かに惹かれたように川の上流へ上っていくと小さな滝のある開けた場所に出た。

その景色は先程と比べ物にならないほど美しく、零は思わずため息をもらした。

さらにここには精霊が充満しており、生気が満たされていくようであった。

 

 

そのまま近くの岩場に腰掛けその景色を眺めていると離れた場所から声が聞こえてきた。

 

「きれい…」

 

声のしたところを見ると零と同い年ぐらいの少女が立っていた。

歳はわからないが身に着けている服などから裕福な家庭の子だとは分かる。

そして彼女の左腕にはブレスレット型のCADが巻かれており、魔法師であることも分かる。

 

少女も零に気付いたようで零の方に向く。

二人は目が合うとすぐに逸らしてしまったが少女は零のことが気になったようですぐに視線を戻して澪へ駆け寄っていく。

 

 

「私の名前は真由美。あなたのお名前は?」

 

 

近寄ってくるなり名乗ってきて自分の名前を聞いてくる彼女に多少驚きはしたものの零はすぐに答えを返す。

 

 

「僕の名前は零だよ。」

 

 

「よろしくね、零君。」

 

 

名乗り返した零に真由美はにっこりと笑って手を差し伸べる。

最初は何をすればいいのか分からなかったが真由美の言葉から察して零も手をだし握手をした。

 

 

「よろしくね、真由美ちゃん。」

 

 

 

それから一・二時間二人はずっとおしゃべりをしていた。

 

どちらも魔法を使えたため好きな魔法や得意・不得意な魔法などの共通の話から零は修行に行き詰まって家を飛び出してしまった事、真由美は家族旅行でこの辺りに来ているが大人達の会話に息苦しさを感じて逃げ出した事などのお互いのプライベートな話まで様々な事を話していた。

 

零はこのままずっと話していたいと思っていたのだがすでに夕陽も沈みかけており、家を飛び出す事は時々あり九ノ瀬家の人々もあまり心配はしていないが日が暮れてから帰るとそれはもうものすごく怒られてしまうため帰る決心をつけた。

 

 

「日も沈みかけてきたし僕はもう帰るよ。

真由美ちゃんは一人で帰れる?」

 

 

「え、ええ。この端末があるから一人で大丈夫よ。」

 

 

そう言って真由美はポケットから情報端末を取り出す。

 

 

「それじゃあバイバイ。

今日は楽しかったよ。」

 

 

真由美を送る必要が無いと判断した零は帰ろうと歩き出す。

しかしそれを真由美が引き止めた。

 

 

「待って、明日もここで会える?

明日もお話ししましょう?」

 

 

「うん大丈夫だよ。じゃあまた明日同じ時間に。

いっぱいお話ししようね。」

 

 

明日の修行は午前中の予定だったため今日と同じ時間に約束する零に真由美はどこかホッとした顔を浮かべる。

 

 

「分かったわ、また明日同じ時間にここでね。」

 

 

そう言うと帰る方向が逆だったようで真由美は零の反対側に歩き出す。

真由美の背中が見えなくなるまで見送ると零は家に向かって全速力で走り出した。

 

 

もちろん魔法を使って凄まじいほどのスピードで。

 

 

 




半分ぐらい事情説明でしたね。
でも説明が足りないところもかなり多い…
それはまた追い追い書いていきます!

そしてまた一人原作キャラが出てきましたね。
さてどうなっていくのやら(笑)

お読みいただきありがとうございました。


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九ノ瀬家編2

お気に入り100人突破ありがとうございます!


今回はけっこう短めです。


最初にあってから三日。

その間零と真由美は毎日一・二時間ほど会って遊んでいた。

川で水遊びをしたり、お互いに魔法を見せ合ったり、魔法について話合ったりしていた。

川の水を凍らせたり、魔法で水を浮かせて物の形を作ったり、滝の流れを変えてウォータースライダーを作りそれに乗って滑り降りたりしていた。

 

 

そして今日も真由美と遊ぼうと零は川のそばで待っていた。

だが今日はなぜか真由美が来るのが遅い。

この三日遅れることがなかったのに今日はかれこれ30分ほど待っている。

 

いったいどうしたのかと考えていると真由美がいつものように向こう側からやってきた。

しかし真由美の息は荒く服はかなり汚れていて所々怪我もしている。

 

 

「どうしたの?服が汚れてるし肘から血が出てるよ!」

 

 

真由美の身を案じた零はそう尋ねるが真由美は何事もないかのようなあっけからんとした口調で返す。

 

 

「大丈夫よ、ただの掠り傷だし。」

 

 

「ダメだよ!ばい菌が入ったらだめだしこれを腕に巻いといてよ。」

 

 

そう言って零はポケットからハンカチを取り出し真由美の肘に巻く。

真由美の顔が少し赤くなるが零は気づかない。

 

 

「これでよし。

それで真由美ちゃん、何があったの?」

 

 

「ちょっとね…」

 

 

そう言って真由美は何があったのかを話しだす。

真由美が言うにはこの数日屋敷を抜け出して会いにいているが毎日監視の人数が増え、家を抜け出すのが難しくなってきており、今日は監視に見つかってしまったため少し戦い――目眩ましの魔法ぐらいしか使っていないが――何とか逃げたがそのせいで服が汚れたということだった。

話している間真由美はずっと不機嫌そうで話していることも最後のほうは愚痴になっていた。

 

 

 

「まったく、お陰で抜け出すのも一苦労なのよ。お父様ったらほんと過保護なんだから。」

 

「まあまあ、それだけ真由美ちゃんのことが本当に心配なんだよ。」

 

「それでもよ、少しぐらい自由にさせてくれてもいいじゃない。」

 

零が宥めると興奮気味の真由美も少し落ち着きを取り戻すのだがまだ少し愚痴っている。

このままだとずっと愚痴が続くと思った零は話を変える。

 

 

「それだったらさ、もうここで遊ぶのやめる?

このままだと真由美ちゃん本当に怪我しちゃいそうだし。」

 

 

「嫌よ!

それにわたし明後日にはおうちに帰らないといけないし会えるのは明日で最後なんだから明日も遊ぶわよ。」

 

 

「そっか、真由美ちゃん旅行でこの辺に来てるんだったね。」

 

 

零がそう言うと真由美は俯き悲しそうな顔をする。

しかしそれは一瞬のことで零は気付いていない。

 

 

「ええだから明日もあって一緒に遊ぼうね。

約束よ?」

 

 

「うん約束するよ。明日も一緒に遊ぶ。」

 

 

そう言って二人は指切りをする。

そしていつものように遊んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし次の日二人が会うことはなかった。

真由美は父親に軟禁され家から出ることができなかったために。

そして零は……

 

 

USNAへと渡っていったために。

 

 

 

 

 




なんか二人ともあまり子供っぽくない口調だなぁ…

時間軸的には夏です。
零は5歳、真由美は7歳なのですが二人ともお互いの年を知りません。
ちなみに名字も。

あと零は魔法うまいです。
古式魔法は門外不出のものがあるため使っていませんが九ノ瀬家では現代魔法も教えているので…ね。
真由美はたぶんこの頃から上手いだろう、と。

ではこのへんで

お読みいただきありがとうございました。


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九ノ瀬家編3

遅くなりました

今回で九ノ瀬家編も終わりです。



真由美と知り合った次の日、零は鼻歌を歌いながら九ノ瀬邸の廊下を歩いていた。

零が今にもスキップしそうなほど上機嫌なのはこれからある場所に行くのが楽しみだからである。

 

さっきまで零はいつもの様に修行をしていたのだがいつもと異なる点が一つあった。それはここ数週間失敗続きであった魔法が今日一度目の行使で成功したのだ。

昨日真由美と遊び、家に帰ってくると珍しく本日二度目の修行があり、その時は初めて確かな手応えを掴んだだけだったのだが今日は何にも詰まる事なくスムーズにできたのだ。

しかも今日初めて習った魔法も数度の挑戦で成功させ、零は自分の調子がいいと感じた。

そしてその理由を昨日真由美と遊んだからと考えた零は今日の真由美と遊ぶ約束が楽しみだったというわけだ。

 

「よし、行こう。」

 

零は時計を見てもうすぐ約束の時間になるのを確認すると九ノ瀬の屋敷を飛び出していった。

 

 

 

 

 

数時間後真由美と遊んで家に帰ってきた零は自室へ向かう廊下を歩いていた。

家を出る前と同じくすごく上機嫌で鼻歌を歌っていた。

しかしそのせいで注意を怠り、曲がり角で人とぶつかってしまった。

 

「ご、ごめんなさい!」

「いや、こちらこそごめん。大丈夫?立てる?」

 

倒れてしまった零が謝ると相手も謝り零に手を伸ばす。

 

「ありがとう……ってあれ?君だれ?」

 

礼を言ってだれにぶつかったのか顔を上げると見慣れない男の子が立っていたため思わず間抜けな声で聞いてしまう。

 

「僕は達也。君見慣れない顔だけどこの家に来るのは初めて?」

 

達也と名乗った少年の言葉を少し変と思いながらも零は答える。

 

「え、いや僕はここに住んでいるんだけど。」

 

「ここに住んでるって!?僕何回もこの家に来たことあるけど君のことは一度も見たことがないけど。」

 

意外な返答に驚いている達也に零は何か言おうとするが頭の中に響いてきた声に遮られる。

 

(ねえ零、もしかしてこの子が優さんの言っていたあの(・・)彼じゃないかな?)

 

(前に父さんが言っていたあの(・・)?)

 

(たぶんね。だからなるべく早く離れ「おーい!だいじょうぶ?」…)

 

零と蓮玉が話している『あの』というのは以前優から四葉という家から時々遊びに来ることになると言われていた子を指しており、彼とはなるべく会わないようにしないといけないとも言われていた。

そのため蓮玉は零を達也から離そうとするがそれを達也に遮られてしまう。

 

「あ、ごめん。ボーっとしてた。どうしたの?」

 

「いや、どうしたもそれ大丈夫?」

 

とっさに応えた零に対して達也が指さしたものは壊れてしまったブレスレットであった。

それを見た零は驚きと悲嘆に満ちた声を出してしまう。

 

「え、それ?…うわぁぁぁ!!」

 

水晶の付いたそれは今日真由美と遊んでいるときに見つけた水晶で作ったもので真由美とのペアルックである。

ブレスレットに向かい膝をつき四つん這いの格好になった零は声も出さず呆然としていた。

そんな零を見かねてか達也は零に声をかける。

 

「ねえちょっとそのブレスレット貸してくれないかな。」

 

無言で零が渡してきたブレスレットを受け取ると達也はそれに左手を向ける。

なにをするのかと零が見ると達也の左手から想子の光が見え、次の瞬間には壊れたブレスレットは元通りの形になっていた。

 

はい。と達也がブレスレットを渡すと呆気にとられていた零が我に返り驚きの声を上げる。

 

「あ、ありがとう。それにしても今のどうやったの?あれは魔法なの?」

 

そうして達也と零は仲良くなり翌日達也が帰るまで魔法について話していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

真由美に遊べるのは明日で最後と言われた零は寂しそうな顔で家に帰ってきた。

家に入るといつもと違い騒々しい雰囲気で満ちていた。

何事かと思い近くにいた葵に声をかけるとすぐに手を掴まれ引っ張られていく。

居間に入りようやく解放された零は葵に文句を言おうとするが葵の言葉に遮られる。

 

「お父さん、零帰ってきたよ。」

 

書斎には慌ただしく動きながら電話している優がいており葵が声をかけるとこちらを向いて早口で話す。

 

「ああ、おかえり零。帰ってきてさっそくで悪いんだが車に乗っていてくれ。

荷物は用意してある。」

 

「え、え?荷物って何?どういうこと?」

 

「すまんが訳は後で話す。」

 

そう言って優は再び電話を始める。

その様子に今はこれ以上聞けないと判断した零は言われた通り車へと向かっていった。

 

 

零が車に乗って待つこと数分優がやってきて家を出発した。

そして車に揺られること十数分後零が口を開く。

 

「ねえ父さん、どこに行くの?」

 

「…アメリカだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

零が車で空港へ運ばれている頃真由美は軟禁されベッドで一人泣いていた。

 

事は昨日に遡る。

昨日も零と遊んだ真由美は帰宅してすぐ父である弘一に「明後日、家に帰るまでここから出さん!」という言葉とともに部屋に押し込まれてしまった。

その言葉通り真由美がいくら別荘を抜け出そうとしても絶対に誰かに見つかってしまいその度に部屋へ戻された。

翌日、抜け出すのは無理と判断した真由美は弘一に今日だけでいいからと必死に頼むがそれも聞いてもらえず、挙げ句の果てには来年からはこの別荘には来ないようにしようかという話も聞いてしまいそれからずっとベッドで零とおそろいのブレスレットを見て涙を流していた。

 

 

 

 

泣き始めて二時間近くが過ぎた頃真由美は自分の左肘に巻かれたハンカチを見つける。

これは零に借りたもので今日返さなければいけないものだ。

しかしそれも別荘から出られないために返す事ができない。

今日会うという約束を守れない事に真由美は零への申し訳なさでいっぱいになりまた涙を流すのだった。

 

 

 

翌日

東京にある家に帰った真由美はもう泣いていなかった。

昨日部屋でずっと泣いていた真由美を心配した彼女の双子の妹たちが慰めたのだ。

そしてその最中に出た言葉が真由美を立ち直らせ真由美にある決心を抱かせた。

それは零も自分と同じぐらいの歳でかなり魔法が使えるという事は彼も魔法関係の仕事を志すだろうと考え、もしそうならばいつかまた必ず彼と会おうというものだった。

 

 

そしてその決心は約九年後に現実のものとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やばいです。
夏休み部活が朝から夜ぐらいまで連日でありなかなか執筆できません。
たぶんずっとこうなんで夏休み中はあと一、二話ぐらいしか投稿できないかもしれません。
本当に申し訳ないです。

あと次回からは零のUSNA編になります。
あー、でもなー葵にも焦点当てたいしな…
葵の方は書きたくなったら書きます!

お読みいただきありがとうございました


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USNA編
USNA編1


おそくなりました。
夏休み部活忙しすぎ…

今回は途中から零くん目線になります。
あとどうでもいいけど会話のところは全部英語という設定です。


USNAのとある閑静な住宅街。

お金持ちが住むような豪邸が数軒建ち並ぶそこでも一際存在感を放つ大きな屋敷に慌ただしい足音と共に元気な声が響く。

 

「零ー!おっはよー!」

 

そう言って勢いよくドアを開けたのは金髪碧眼の少女、アンジェリーナ・シールズ。

彼女はこのシールズ家の一人娘である。

手にブラシを携えパジャマ姿で居る彼女はつい先ほど起きたのであろう、頭には所々寝癖がついている。

そんな彼女は部屋に入ると隅の方にあるベットへとダイブしていった。

 

「グホッ!!」

 

そしてそんな声と共にアンジェリーナのダイブしたベッドから出てきたのは中性的な顔立ち、いやいっそ女の子と言われても大半の人が信じるであろう容姿をした大葉零その人だった。

 

「ほら、いつものおねがい」

 

モゾモゾとベッドから出てきた零にアンジェリーナは両手に持った櫛とヘアゴムを差し出す。

それを無言で受け取った零はまだ目の醒めていない眠たそうな顔で部屋を出て行く。

そしてアンジェリーナはそれに嬉しそうな顔をしてついて行く。

足取りの覚束ない零は洗面所へ向かっていった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

洗面所へ入るとまず顔を洗ってまだ半分寝ていてぼーっとする頭を起こす。

そして髪についた寝癖を直すと向こうで椅子に座って待っているアンジーのところへ行き彼女の寝癖を直してやる。

そして一通り直すと髪の毛のセットに取り掛かる。

「いつものでいい?」と聞くと「うん。」と元気な声が返ってきたため髪を梳いてセットしていく。

まず頭の左側の髪の毛を一つに纏め側頭部で結ぶ、そして右側も同じ様に結ぶ。

これでツインテールの完成だ。

 

「アンジー、できたよ。」

 

僕がそう言うとアンジーは椅子から降り体を反転させてこちらを向く。

僕に一言お礼を言うと鏡を見てからもう一度こちらへ向き直る。

 

「どう?かわいい?」

 

そう聞いてきたため「うん、かわいいよ」と言ってあげるとアンジーはにやけた頰に手を当てて「エヘヘへ」と体をくねらせる。

 

その様子は、普段僕より数ヶ月早く生まれたからと言って姉のように振る舞っている姿とは正反対の妹みたいな仕草で、いつも、妹みたいだなぁと思っている。

そんなことを言ったらアンジーは盛大に拗ねてしまうため心の中で思うだけにしているけど。

 

 

 

と、ここまでが僕のここ半年ほどの朝の日課だ。

きっかけは約半年前、それまではアンジーは彼女のお母さんである涼子さんに髪の毛をセットしてもらっていたのだがたまたま涼子さんがいない日があり、その日に日本でお母さんやお姉ちゃんのをセットしたことがある僕がアンジーの髪の毛をセットしてあげると彼女にすごく気に入られ今日まで続いている。

だけどいつも不思議に思うことがアンジーの髪の毛はツインテールにすると髪の毛がすごい巻くということだ。

髪を下ろしているときは綺麗なストレートでツインテー以外の髪型のときはストレートのままなのにツインテールにすると勝手に髪がクルクルって巻くのだ。

以前それをアンジーに聞くと「私にもわからないわ」と返ってきたため僕はこれを『アンジーの七不思議』の一つとして考えている。

残り六つはまだないけれど。

 

そんなこんなで僕がここUSNAのシールズ家に来てもうすぐ一年になる。

最初こそ戸惑っていたけれど僕に英語を教えるために日本語を勉強してくれたりとこの家の人たちはみんないい人ばかりですぐに打ち解けることができた。

他にもたくさんのことをしってもらってて感謝してもし切れないぐらいだ。

 

そんなことを思っているとアンジーから声がかかる。

 

「零、どうしたの?朝ごはん食べに行こうよ。」

 

それにOKと返してアンジーとリビングへ向かっていった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

その日のお昼過ぎ昼食を食べ終えた僕はアンジーと別れ本を読んでいた。

なんでも日本からアンジーの親戚がやってくるらしくそれなら僕は邪魔だろうということで自室にこもっているわけだ。

もちろんアンジーに「おいでよ」と誘われたけど会ったことのない人がそこにいたら絶対に変な感じになるだろうと思って断った。

 

そうして本を読んでいるといつの間にか空が夕焼けに染まっていた。

時計を見るともう六時で晩御飯の時間になっていたため僕は慌てて部屋を飛び出した。

するとリビングに向かう途中曲がり角で誰かとぶつかりそうになってしまう。

間一髪のところで避けたものの体勢を崩して床に倒れてしまう。

慌てて起き上がり「大丈夫かね?」と聞かれたため「すいません、大丈夫です」と答えたところで目の前の人物が見たことのない人だと気づく。

 

髪は全て白髪でスーツを着た老人で見たところ六十代後半に見える。

おそらくこの人が今日訪ねてきたアンジーの親戚だろうと思ったところで声をかけられる。

 

「見たことのない顔だな。

君はだれかね?」

 

「大葉零と言います。一年ほど前からここで住まわせてもらってます。」

 

とりあえず差し障りのないであろう言葉を返すと老人はウンウンと頷く。

 

「そうか。君があの…

わしは九島烈という。よろしくな。」

 

「よろしくお願いします」と言いながら「あの」という言葉に少し「ん?」となるけどこの人がアンジーの親戚だと分かったことーーアンジーの本名はアンジェリーナ・クドウ・シールズであるためーーと晩御飯に行かないといけないということを思い出してリビングへ急ごうとする。

烈さんはこっちをジーっと見てくるだけで何も言わないためリビングへ行こうと足を出す寸前で話しかけられる。

 

「おもしろいモノを持っているな。

君は魔法に興味はあるかね?」

 

「え?あ、ひゃ、はい」

 

気が緩んだところで突然聞かれたため少し噛んでしまう。

しかし烈さんはそんなことを気にせず。

 

「ならば明日アンジーと一緒にわしのとこへ来るとよい。

魔法の稽古をつけてやろう。」

 

そう言って去っていった。

 

 

 

 

 

そしてそのことを話すとアンジーはどういうわけかとても嬉しそうにはしゃいだ後ハッとした顔をして何故か怒ったように「た、ただ一人でお稽古を受けるのが少し心細かっただけなんだからね!」と言ってそっぽを向いてしまった。

 

 

 




零くんの口調上手く書けてるかな?自身無い…
だって6歳の子の口調とかわからないもん…
いや、6歳ってこんなの言わねーだろってところがありましたらそれは蓮玉くんの影響と思っていただけると。

あと今回はリーナたん出てきましたね。
ポンコツっ子かわいいです。
あと個人的にリーナはツインテールもいいけどポニーテールもすごく似合うと思います。
ポニーテールにするとクールな感じの美人さんになりそう。
ちなみに作者はかわいい系の美少女よりかっこいい系の美人の方が好きですね。

そして今月はあと1話書けるか書けないかぐらいだと思います。

感想・意見・誤字脱字・批評などありましたら言って頂けると嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました。


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USNA編2

約3ヶ月ぶりの投稿です。
遅くなってしまいすいません。


今日からアンジーと一緒に烈さんの稽古を受ける。

烈さんはあと五日ほどここに滞在するようでその間毎日稽古をつけてくれるらしい。

そして烈さんは日本でも世界でも有名な人らしく、どんな事を学ぶのか楽しみで昨日は寝るまでずっとアンジーと話していた。

そのため興奮して寝られず少し夜更かししてしまっていつもより眠い。

しかしアンジーはいつもの時間に僕を起こしに部屋へやってきた。

夜更かしなんてしなかったようにいつも通りに。

 

そしていつものようにアンジーの髪をセットしてあげ、ご飯を食べ終わると二人で烈さんのいる部屋へ行った。

その部屋はいつも僕とアンジーが魔法の修行で使っている部屋だった。

壁や棚にはCADや魔法を使うときに用いるような道具がたくさん置かれている。

隣の部屋にはCADを調整する機械もある。

 

しかし少し早く着いたせいかまだ烈さんは部屋にいなかったのでアンジーと待つことにした。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

数分後、時間ピッタリに部屋へやってきた烈と共に二人は魔法の稽古を始めた。

 

一日目は初めに烈は二人の実力から見ていくことにした。

魔法師の国際ライセンスの選定基準である魔法式の構築・実行速度、規模、干渉力から始まり、得意な魔法系統・魔法を調べていった。

そして二人には秀でた才能があり、すでに大人の平均的な魔法師よりも遥かに高い実力を有していることが分かった。

アンジーは特に発散系統の魔法を得意としていたのだが、零は現代魔法の分野に於いて一流の魔法師程の実力を有すも得意と呼べるほど適性を示す系統がなく、しかしながら古式魔法に於いて現代魔法よりも高い適性を示した。

 

そして二人の実力を測り終えると次に烈は二人に別々の課題を言い渡した。

零には主に古式魔法を中心とした課題、アンジーには発散系統の魔法を主とした課題を。

 

だが二人に与えられた課題は大人の魔法師でも一日ではこなせないような量であった。

しかし烈は二人にそのことを伝えず、そのまま魔法の稽古が始まった。

 

途中昼食を挟み夕方まで稽古を続けていた二人だったが案の定烈から与えられた課題を全てこなすことはできなかった。

しかしこなした課題の量は烈の想像を大幅に上回るものであった。

 

しかも零に至ってはこなした量はアンジーより少なかったもののその密度は段違いのもので、大抵の魔法師は零の半分ほどで想子の枯渇を引き起こすであろうといったものだった。

さしもの烈もこれには驚嘆せずにはいられなかった。

 

しかし当の本人である零は事の重大さに気付いた様子もなくアンジーとお互いの課題について話し合っていた。

 

 

 

 

 

二日目、この日丸一日を使ってやっと二人は烈から与えられた課題をすべてこなし終わった。

そして一日目と同じく想子の消費で床にへばっていた二人はまたもや一日目のように烈を驚嘆させていた。

 

烈が二人に与えた課題は進んでいくごとに難易度の上がるもので今日二人がこなした課題は一日目よりも遥かに難しいものばかりで量も必要な想子量も少なくとも一日目の倍以上はあるといったものであった。普通ならば想子の枯渇でしばらくは動けなくなるというぐらいに。

だが二人は床に寝転がっているものの動けないという様子はなくそれどころか言い争って魔法の勝負を繰り広げそうな勢いであった。

一日目の烈の予測ではいくらなんでも二日目で課題を終わらせるのは不可能といったところだったが二人の成長が異常に早くそれを覆してしまったというわけだ。

驚いていた烈もこのままでは二人は想子が切れるまで勝負しそうな勢いだったため二人をなだめて夕食へ行かせた。

 

 

 

 

 

 

三日目は魔法の稽古は無かった。

この日烈は零とアンジーに日本のことを教えていた。

なぜなら零は日本から来たのでありいつか日本に帰った時に知識が必要だということだ。

アンジーはUSNAで魔法師として生きていくなら少なからず日本と関わっていかなければならないだろうということで教えを受けていた。

そして列の授業は日本の情勢から始まり、日本の魔法師の状況、そして十師族の存在など様々なことを教えた。

二人とも知らないことを知るのが楽しいようで次々に烈へ質問を投げかけていった。

 

 

 

 

 

四日目は修行の続きを行った。

この二日間は零とアンジー、一日で烈にみっちり仕込まれていた。

烈はステイツに滞在している間しか二人を見れないため烈がステイツにいない間自分で毎日できる修行法を教えた。

しかしそこはやはり「最高にして最巧」と言われる所以か、二人が烈の修行を習得するのにほとんど丸一日かかった。

 

 

 

 

五日目は本来四日目に行われた修行法を仕込む日であったのだが二人の呑み込みが異常なほど早く時間が余ってしまった為暇だった。

なので烈はそれならば、と二人に魔法を見せることにした。

好奇心旺盛で知識欲の強い二人ならこれからも頑張る為の糧になるだろうという打算込みの二人へのご褒美であった。

そして二人が見せられた魔法は実に様々なものであった。

使われたのは二人にも使える魔法からまだ使えない魔法など様々な魔法であったがその一つ一つ全てに様々な工夫が凝らされており二人はとても、途轍もなく、途方もなく魅せられた。

それこそ烈が魔法一つ見せている間毎回のように呼吸を忘れるぐらいに。

 

そうして烈の滞在する期間が終わり烈は二人に課題を残して日本へ帰っていた。

 

 





〜あとがきと言う名の言い訳〜
投稿本当に遅くなりました。
理由を言わせていただくと夏休み明けからテストの成績不振でケータイ没収されてました。
しかも家にあるパソコンまで壊れるという大惨事に。
ここまでは運がなかったとかて済むんですが、
一応紙にストックとか作っとこうと思ったんですがこれまたすぐに失くし筆が進まないいうダメ人間の所業。

テストでまたケータイ没収ということのないようにしないと…


ということで今回はここまでです。
今回はダイジェスト形式でした。
ちなみにリーナの得意系統は『ムスペルスヘイム』を参考にさせていただきました。
彼女よく分子をプラズマ化させる魔法を使ってましたしね。
もしかしたら発散じゃなくて放出系統かもしれませんが。

ではこの辺で。

誤字・脱字の訂正、ご意見、感想がありましたらどんどん言ってください。
お読みいただきありがとうございました。


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USNA編3

二週間ちょっと…約三週間ぶりの投稿ですね。
もう少しペースあげたいな、と思うけれどなかなかどうして進まない。

それもこれもテストや本の発売が重なるからだ…!
あ、18巻発売されましたね。そこそこ前ですが。


では、本編をどうぞ。


USNAの町外れのシールズ家では日常が始まっていた。

シールズ家の一室、白と淡い青で彩られた部屋で札で組まれた魔法陣の中央であぐら―座禅ではない―をかいて魔法を行使する零。

そして彼の周りには魔法師ならば誰もが可視化できるほどまで精霊が密になって集まっている。

それらの精霊は皆絶え間なく動いて時折、美しい紋様を描いている。

不規則だが明確な意図をもっているかのように動くそれらはすべて零が操っているものだ。

可視化できるほどの数の精霊を一度に操るのは札による補助が付いていても高度な技術であるはずなのだが零はとてもリラックスした状態でそれを行使している。

これは烈が零に与えた鍛錬で毎日一時間はこれを行えというものだった。

 

零の得意分野である古き魔法は基本精霊を媒体に行うもので精霊を扱えなければ話にならない。

 

精霊とは霊子情報体の核を持つ想子孤立情報体のことでその一つ一つが意思を持っている。

そのため操るのは難しく、精霊と古式魔法師としての力は比例していると言われているほどで、精霊との感受性を上げることのできるこの課題を烈は与えたそうだ。

 

そうして修業を始めて一時間が経った頃、零の周りの魔方陣が消え精霊たちが霧散していき、それとほぼ同時に部屋のドアが開いた。

 

 

「レイー、朝ごはんできた……って邪魔しちゃった?」

 

 

そう言って入ってきたのはここシールズ家の一人娘アンジェリーナだった。

 

 

「いや、ちょうど終わったところだから大丈夫。」

 

 

そういって零は立ち上がると「それじゃあいこうか。」と、アンジェリーナと部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

そうして俺達が向かったのは食卓……ではなかった。

なぜならリーナの髪を結んでやらなければいけないからね。

もう十二歳にもなるのだからいい加減自分で結べばいいのでは?と思うんだけど、以前リーナ自身にやらせてみたところものすごい下手だったのだ。

ツインテールの左右の位置も量もバランスもバラバラで、一度これでもかというぐらい先鋭的な髪形になってしまった事がある。

それ以来、めんどくさくなったリーナはたまに練習をするものの、結局俺に任せきりになっている。

 

ちなみに気付いている人もいるだろうけれど俺の彼女の呼び方が「アンジー」から「リーナ」に変わっている。

周りの人たちーーといってもシールズ家の人たちだけだーーが彼女のことを「アンジー」と呼んでいてそれに合わせていたんだけれど、数年前のあることをきっかけに変わったのだ。

それ以来なぜかリーナは周りの人たちにもそう呼ばせてるのだがそれは置いとこう。

 

閑話休題

そんなことを考えている内に髪を梳き終ったので髪型はどうする、とリーナに聞くといつも通り「おまかせで」と返ってくる。

これも以前と変わったところで二・三年ほど前まではずっとツインテールだったのだけれど、一度違う髪型を試してみたときに気に入って興味がわいたのか様々な髪型を試してみて、今では「これがいい」という日は髪型を選び、どれでもいい日には俺に決めさせるようになった。

 

どんな髪型にしようかなと考え、俺個人的に好きなポニーテールにしようと決める。

そうして髪のセットを終えるとリーナからのありがとうという言葉と共に二人で食卓に向かっていった。

そして朝ごはんを食べ終えると今日は平日のためリーナは学校へ向かって行った。

 

その後、少しだらけた俺はとある一室に向かっていった。

 

 

 

 

 

約四時間後

俺は今授業を受けていた。シールズ家で。

だって俺秘密裏にUSNAに来ちゃってるからね。学校になんか行けないよ。

行っちゃったらUSNAの人に即バレしてまた逃げなきゃいけなくなるだろうしね。

だからと言って勉強をしないのはいけないというシールズさんのご厚意でシールズ家の執事さんやメイドさんたちに家庭教師みたいな感じで教わっている。

しかも皆教えてくれるのが上手くて、次々といろいろなことを知れる。

だから学校行ってないからと言って頭が悪いわけじゃないよ。むしろいい方。

 

そうして授業を受け、今日の学習が全部終わったので今は昼ご飯を食べている。

ちなみに毎日の勉強は土日もあるが、その日の午前中に四時間で終わりだ。

だから授業のスピードが速いのだが、俺が分からないことがあったら、俺が理解するまでしっかりと教えてくれるので置いていかれたりすることはない。

 

そして勉強は午前中に全部終わるため午後は趣味に充てている。

その趣味も今までは料理の練習や、いろんな言語の勉強、読書、スポーツで体を動かしたり、様々なゲームで世界ランカーになったりといろいろなことにハマっていた。

今は専らCADの製作にハマっている。

それで俺が好きなのはハード面のほうで今までは杖型のものや、変身ベルトみたいな感じのCADを作ったりした。

けれど、CADを作っても魔法式が入っていないと使えない。

一応CADの調整はできるんだけれどあまり得意ではなく、むしろ苦手なためソフト面はレンに任せている。

え、レン?ほら、俺の頭の中に住み着いてるもう一つの人格みたいな奴だよ。

でもその割には俺よりすごい身長も高いし俺がレンを最初に認識した時から全く成長してないけどね。

しかも俺のもう一つの人格のはずなのに名前は蓮玉っていうらしいし。

 

それはともかく俺がCADの勉強を始めたときに、記憶を共有してるらしくて一緒に勉強をし、二人一緒にハマったわけだよ。

だからCADの製作に関しては基本各々の自由にしてるけど二人共同で作るときにはハード面を俺がソフト面をレンが担当している。

ちなみに俺たちは魔工師としてそこそこ有名で「フロウ・ロータス」として活動している。

まあそれを始めたきっかけはお金だったんだけどね。

だってCADを作るのだってタダじゃないしその部品はシールズさんたちに買ってもらっているから、その分だけでも返せたらなと思いCADを作って売っているのだ。

 

あ、そういえばまた依頼が来てたしそれ片付けないと。

そんでその後CADを作ろうか。さっきいいの思いついちゃったんだよね。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「……………!できた」

よし、CADが完成した。……ってもう六時!?

はぁー、またやっちゃったよ。

よくあるんだよね。夢中になりすぎて時間を忘れること。

前なんか夜ごはん食べるの忘れて挙句に日をまたいでしまってめちゃくちゃ怒られたんだよね。

まあ、まだ夜ご飯まで時間あるしマンガでも読んどこう。

 

そういえばこんな時間なのにリーナどうしたんだろ。

いつもなら友達と遊ぶにしても一回帰ってくるはずなのにな。

そして俺の部屋に少し話にくるはずなのにな。

 

というかさっきから部屋の外が騒がしいな。

今日はなにかあったっけ?特に大事な用事もなかったと思うんだけどな。

まあ誰かに聞けばいいか。

 

てゆう感じで部屋を出るとばったりシールズさんと出くわす。

 

 

「なんか騒がしいけど今日って何か用事でもあったっけ?」

 

 

そう話しかけると慌てていたシールズさんは俺を見て少し険しい顔になる。

そして膝立ちになり俺の顔を見ると、

 

 

「いいか、落ち着いて聞いてくれ。

リーナが………

 

 

誘拐された。」

 




ということで今回は説明回みたいな感じです。
というよりは伏線を張っていく回?かな。
そんな大層なものでもないですけど。

まあ次回に期待してください。
事件は起こしましたので。(((自分でハードルを上げる

こんなことを言いながら、もしかすると次もあまり話が進まないかもしれないしなー。
それは次回のお楽しみということで!

それはそうと文字数ってこんなもんでいいんですかね。今更だけど。
あと執筆できないときは活動報告に載せたほうがいいかな。それぐらいの時間はあるだろうし。

とか、悩む今日この頃。

ではまた次回!
誤字・脱字、感想などお待ちしています。

お読みいただきありがとうございました。



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USNA編4

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

そして最近月1投稿になってきてしまっている…


「リーナが誘拐された…」

 

 

 

…え?なんで?どうしてリーナが…

 

 

「ど、どういうこと?」

 

急なことで頭がついていかない。なんでリーナが誘拐される?

いや、それよりもどうやって。仮にもリーナは魔法師なのに。

なんで、なんでなんでなんで!

さっきからシールズさんが何か言っているが頭どころか耳にすら入ってこない。

辛うじて「帰る途中に」とは聞きとれ、誘拐された時の状況を喋っているのだろうと推測する。

が、そんなことはどうでもいい。

 

「…少し前リーナの友人が来て説明してくれたんだ。」

 

「それよりもなんでリーナが誘拐されるんだ!?」

 

「それについてはよくわからない。身代金の要求もないし…

ただ家の者に確認させたんだが、犯行は反魔法組織の者だったらしいからリーナが狙われたのは魔法師だからということにはなるだろう。」

 

 

冷静さを欠き怒鳴りつけるように質問する俺に悲痛な面持ちのシールズさんは落ち着かせるようにゆっくりと言っていく。

だがそれの言葉にも反応できない。

 

俺の心にあるのは「リーナを助けないと」という意思だけだった。

シールズさんはまだ喋っているが耳に届いていない俺は自分の部屋へCADを取りに行く。

 

 

「待て零君。どうする気だ。」

 

CADを取り出したところでシールズさんから声がかかる。

 

「どうって、リーナを助けに行かないと。」

 

そう言うとシールズさんは慌てた顔になる。

 

 

「君一人が行ってどうにかなる問題じゃない!相手は国でも有数の大規模な組織だぞ!

君の手には負えない!私たち大人に任せるんだ!」

 

「任せたところでリーナを助けられるとは限らないだろ!

その時にはもう手遅れかもしれないんだ!

 

だから、早く行かないと…」

 

 

俺を行かせまいとするシールズさんを無視して俺は部屋の窓から飛び降りる。

そして地面へ着く前に飛ぶ(・・)

するとスピードがかなり出ているためすぐにシールズ家は遠くなっていく。

 

これは九ノ瀬家にいたときに教わった魔法の一つで名前は『飛脚(ひきゃく)』という。

まず火の精霊に想子を与えることで熱を持たせ空気を温め膨張させる。

その時に、気流ができるように操りそれに乗って空を飛ぶという魔法だ。

 

そうして一分ほどでリーナが連れ去られたらしい場所へ到着する。

するとほんの少しではあるが魔法を使った痕跡や争った跡などが見て取れる。

それらはつい最近付いたものであり、リーナが連れ去られたのはここだと確信すると俺はすぐ近くにいた精霊に触れ会話する(・・・・)

 

これは烈さんからの修業を続けていたらいつの間にかできるようになっていたものだ。

しかし精霊と会話するといっても、触れることで精霊の記憶を読み取っているのではないかと考えている。

なぜなら精霊とは孤立情報体の一つで記憶を持っているからだ。

その精霊の記憶の中からリーナが連れ去られた時の記憶を探していく。

 

 

――――見つけた

 

 

探し出したのはリーナ本人ではなく彼女を連れ去った車両。

車体が黒いそれの情報を記憶したところで精霊を放す。

そして周囲の精霊の記憶からリーナを連れ去った車両の記憶逃げて行った道を引き出して割り出し、それを追っていく。

この魔法は想子の燃費が悪いのだがそんなことは言ってられない。

まあもともと想子量が膨大なためそれを出し惜しみせず、それこそ様々な魔法を一気に使って追っていく。

 

 

街中を駆けていると頭に声が響いてきた。

言わずもがなレンだろう。ていうかそれ以外にありえない。

俺は走りながら意識を切り替える。

 

◇◆◇◆◇◆◇

すると零の意識は白い空間へと移る。ただただ白いだけの空間に。

しかし移るといっても少し内側に意識を向けるというだけで体を動かしたりするのはできるので今も零の体はリーナを助けるために走り続けている。

そして零の目の前には彼によく似た顔の男、レン。

 

「何の用だよ。俺急いでるんだけど。」

 

急き立てるように言うとレンは薄く笑ってふざけるように言う。

 

「いやぁ~ね?

なんかリーナちゃんが攫われて切羽詰まっている様だったから俺の力を貸してあげようかなーなんて思ったんだけどね。」

 

「いや、いらない。

リーンは俺の力だけで助けるよ。」

 

そう返すとレンは一瞬驚いた顔をしてニヤニヤしだす。

 

「そうかいそうかい。それえはなんでかな?

リーナちゃんにかっこいいところを見せたいとか?

あれ?もしそうだったら君はリーナちゃんことが好きなのかなー?」

 

「そんなことは…」

 

今度は確実にふざけて言ったであろうレンに零は否定に言葉を返そうとするも途中で止める。

 

「いや、たぶんそうなんだろうね。

まあ、かっこいいところを見せたいってのは違うけれどリーナのことはちゃんと好きだよ。

家族としてだけどね。」

 

「俺が言いたいのはそうじゃなくてねリー「わかってるよ。」…」

 

「わかってて言ってるんだ。リーナは家族として好きなんだよ。

それに俺がレンの力を借りないのは借りる必要もないと思ったからだよ。」

 

零が言った言葉を聞きレンはさらにニヤニヤする。

 

「そう、それじゃあがんばってね。」

 

そういって手を振るレンに零は背を向け意識を現実に戻そうとする。

だがレンに遮られる。

 

「そうそう。俺は今日この後ずっと君の中にいておくから危なくなったりしたらすぐに頼って来なよ。

…それじゃあ行っておいで。」

 

「……」

 

それに返事を返さず零は意識を現実に引き戻した。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

零がいなくなった後の空間でレンは笑う。

 

「ははははは。いやーまさか零にリーナが好きって自覚があるなんてね。

零は結構な朴念仁だと思ってたんだけど。

ね、神様。」

 

そう言ったレンの視線の先さっきまで何も、誰もいなかった場所に神様はいた。

 

「そうだね~。でも僕は零君、大人なとこもあるしまあ多少なりとも自覚はしてそうだなーって思ってたけどさ。

ていうか零君と君ってそういった感覚は同調してなかったけ?

あとね、朴念仁って恋心の機微に疎いとかそういう意味じゃないんだけど~。」

 

「え、そうなのか。まあ別にいいだろ。気にするな。

そして俺は零の記憶とかを見たりはできるがあいつの心はわからないんだよ。

てかお前が説明してきたんだろ。」

 

「そうだったけ。忘れてたね。」

 

全く悪びれない神様にレンはため息をつく。

 

「それにあいつはリーナへの好意を家族愛と勘違いしてる節もあるしな。

まあ俺から見た限りだから本当にあいつがリーナを好きとは限らないんだけどな。」

 

「あ、そうなんだ。

じゃあなんで零君がリーナちゃん好きだと思ったの?」

 

「ん、あー、まあ俺はリーナに頑張って欲しいんだよ。」

 

 

少し照れくさそうにレンは頬を掻きながら答える。

 

「だってリーナはわかりやすすぎるほどに零のこと好きそうなんだぜ。

それに、もともとの人生じゃ俺はリーナ推しだったしな。応援したくなるんだよ。」

 

それを聞いた神様は可笑しそうにニヤける。

 

「そうかい。じゃあ頑張りなよ。」

 

「言われなくとも。」

 

そうして神様はまたどこからともなく消えていった。

 

今度こそ一人になったレンは座り込み、何もないはずの場所へもたれかかる。

 

 

 

「さあ、零。君の物語を見せてもらおうか。」

 




長期休暇は嫌いです。
基本的にネタは学校で書いているのでその時間が無くなる上に部活が長くて疲れる。悪循環。
次話は今月中には出します!頑張る。

感想で『零の三つ目の願いが無い』といったご指摘を受けました。
…すいません完全に書き忘れていました。
伏線かもと思っておられた方もいるかもしれないですがすいません。
ただの書き忘れです。
それでかなり前ですが7話『転生一回目6』を訂正させていただきました。


やっぱりこういった時のために活動報告書いたほうが良いかもと強く思い始めてきました。前回も書いたけどやらなかったですし。どうなんでしょう。
ご意見お待ちしています。

誤字・脱字、感想などお待ちしています。

お読みいただきありがとうございました。
2016年が皆様にとって幸福な一年となることを。


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USNA編5

何とか一月中に投稿できた…
今回はとうとうバトルシーンに突入!
上手く書けてないかもしれませんがお楽しみいただけると幸いです。
どうぞ!


レンとの話を終え、意識を現実に戻した零はリーナを連れ去った車を追って未だ街中を走っている。

追い始めてそろそろに十分を過ぎるがまだ追いつく気配がない。

大体一時間ほど短縮できているはずだからそれ以上前に連れ去られたと考えるべきだろう。

しかし三時間四時間、それ以上前だったらもしかしたらすでに手遅れかもしれない。

そう考えた零はさらにスピードを上げていった。

 

 

そうしてさらに十分近く走った零はようやくリーナが連れ去られたであろう場所へ到着する。

そこは海が近くにある施設群の中で一番広い敷地を持つ施設だった。

建物自体は廃れてしまっていて元は何の施設だったかわからないが、とても頑丈であることは硬質な壁から見て取れる。

リーナを連れ去った車がそこに入っていったのは精霊の記憶から確認できているのだが零はその建物から離れた場所に潜んでいる。

まだ建物まで少し距離があるのにもう見張りがいるのだ。

幸い、周囲にほかの施設があるので隠れて身を潜められるのだが、目的の建物は四方八方に見張りがいて見つからずに入っていくのは難しいだろう。

 

零はそう判断し、一つ深呼吸を入れた。

そして()を閉じ、視野を広げる(・・・・・・)

すると零の意識には自分を中心とした半径数メートルの範囲にある物の情報が映り出す。

その視野を零は建物のほうへ広げていく。

 

これは零の特異魔法『次元の眼 (ディメンションサイト)』。

情報次元 (イデア)を見ることができる魔法であり、その範囲は現実世界だけでなく精神世界のものまで見ることができる。

さらに視野に入ったものの情報も見ることができ、気温や湿度、風速といったものまでわかる上に視野の広さはほとんど無制限であり視野の形も調整できる。

常時発動型ではないのでオンオフはつけられるのだがそれに加えてどういった情報を見るか、そういった細かなところまでオンオフを付けられる魔法である。

一見使い勝手の良い魔法だが、しかしこの魔法は気温や湿度だけではなくさらに細かい情報まで見ることができるため通常の状態で見ればすぐに脳の演算がパンクしてしまう。

パンクしてしまった場合には廃人同然と化してしまうため注意が必要だ。

 

その視野に映ったのは施設付近にいる敵と建物一階の構造。

零は最も中に入りやすいルートを判別し飛び出す。

並行して零は雷の精霊を集め想子を与えていく。

そしてその精霊たちを『次元の眼』で視認した道中の敵の下へ飛ばしていく。

 

建物へと急ぐ零が角を曲がる。

その先には見張りの敵がいたはずなのだがその敵は路上で倒れていた。

零はそれを気にする事無く進んでいく。

道中にはさらに敵が何人も倒れており零が施設まで交戦することはなかった。

 

 

建物まで到着した零は再び『次元の眼』を使い今度は建物内部の情報を見てリーナを探していく。

すると驚くべき事実が明らかになる。

「なっ…!」

とても巨大な施設だったために地上にしか部屋がないと思っていたのだが広大な地下階が存在していたのだ。

さらにその奥にリーナの想子を見つける。

 

リーナのいる部屋まではやはり見張りがいるのだがそれも尋常ではない数である。

どうにかして敵に見つからずにリーナの下まで行けないかと思案するも見張りは死角の無いように配備されており、壁や床などはとても頑丈で気付かれずに行くのは不可能だろう。

零はそれをすぐに諦めて進入路を探していく。

しかしそういった所は見当たらず、入り口から入ろうにも当然のことながら敵が多い。

だから零はすぐそばの壁を魔法でぶっ飛ばした。

 

そんなことをすれば当然かなり大きな音が出るわけで、敵に気付かれる可能性も増す。というより絶対に見つかるだろう。

だが零は気にせずに施設内へと入り廊下に出る。

すると案の定さっきの音を聞きつけた敵の足音が「何の音だ!?」「何があった!!」といった声と共に近づいてくる。

 

現れたのは数人の敵。

その全員が銃火器持ちで、零の姿を確認し次第発砲する。

いくつもの銃声が鳴り響き、直後にドサッと何かが倒れる音がする。

音のした方向には倒れている敵とその中で一人無傷で立つ零がいた。

敵は全員が倒れておりなぜそんなところにと言われてもいいほど離れたところに吹っ飛んでいる者やどうやったのか壁にめり込んでいる者もいる。

だが最も気になるのは特に外傷もないのに倒れているものが少数だが存在することだ。

その謎の答えは零が今し方使った魔法にある。

 

その名は『電光石火(でんこうせっか)』。

古式魔法と現代魔法の両方に存在する魔法で、もたらす結果は同一なのだが発動までのプロセスが異なる。

今回零が使ったのは古式魔法のものだ。

この場合は雷の精霊を介して身体に電気を流すことで身体能力を飛躍的に向上させることができる。

吹っ飛んでいる敵がいるのはそのためだ。

この魔法は性質上使用中は体に電気を流し続けなければならず、そのためには精霊を纏う必要があるのだがそれを利用し、任意の場所に流す電気を増幅させることや触れた対象に電気を流すこともできる。

外傷もなしに倒れている敵がいるのはそれの後者の使い方をしたためだ。

このように使い勝手が良く発動時間の短い古式を零は使用したのだがこちらは想子の消費が激しいうえに術の使用難度が高い。

そのうえ、リーナが連れ去られていることで零は平静を失ってしまっており、先の『電光石火』でも加減することなく敵に電気を流したため絶命した者もいた。

 

しかし零はそんなことすらも考える余裕がないほど動揺し、焦っている。

今、零の頭にあるのはリーナを助けることのみ。

敵が現れても即座に気絶させるか殺すかを繰り返していき、二十数人を倒したときにはその行動はすでに作業と化していた。

 

そうして零はリーナの下へ着々と歩みを進めていく。

進んでいくにつれ敵の魔法師の割合が増えていく。

それらは銃を持った者たちと連携し、零を殺そうと狙っていく。

零はそれに対し多種多様な魔法で迎え撃っていく。

熱によって干上がらせたり、気体制御による窒息や酸素中毒といった魔法を使い確実に殺す。

魔法師はいるだけで厄介な相手になりかねないからだ。

とうとう零は現れた敵をすべて殺してリーナを助けるべく進んでいく。

 




どうなんだろう。これはバトルなのか…?

…ただの戦闘だな。


今回は零の特異魔法が出てきましたね。
『次元の眼』は達也の『精霊の眼』のアップグレード版みたいなものです。
二つの違いなどは後々書いていく予定なのでここでは書きません。

次回はいつ出すか決めてませんが二月中に最低二話出そうと思っています。
それではこの辺で

感想批評・誤字脱字等お待ちしています

お読みいただきありがとうございました。


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USNA編6

お待たせしました!



魔法で撃ち出されたいくつもの氷の塊が亜音速で目の前に迫ってくる。

全てを振動魔法で砕くとその後ろからナイフを持った敵が迫ってきているのが見える。

手にしているナイフは『高周波ブレード』によって長剣と化している。

もう一人は後ろで追撃のためか氷の塊が生成しており、突撃してくる敵をやり過ごしたとしてもその後すぐに氷塊が迫ってくるだろう。

それらすべてを避けるのは難しいため、そうなる前に敵を倒そうと先ほど砕いた氷塊を導体として利用し敵二人とその間の空間に電気を流す。

放電の音と目の眩むほどの光が発生し、迫ってきていた敵もその後ろで魔法の準備をしていた敵も感電し床に倒れ伏した。

 

これで何人目だろうか。

何人殺したのか、いやもう何人倒してきたのかすらも数えていない。

頭は冴えわたっておりどれだけ強そうな敵、どれだけ大量の敵が現れてもいとも容易く、それこそ赤子の手を捻るよりも簡単に一瞬で敵を倒していける。

片隅では何かを訴えるような痛みが走ってはいるが次々と敵が現れるためそれを考える暇がなく、その考えを遮断して敵と交戦していく。

 

苦戦どころかほとんど傷を負うことすらなく敵をなぐ倒すようにしながら進んでいく。

 

銃を撃ってきた敵にはベクトル反転術式と加速魔法を使って元の銃弾よりも速いスピードで弾を返し敵を貫く。そこに魔法師が加わり弾への情報強化や俺への直接的な攻撃などで邪魔してくるようであれば障壁魔法で銃弾を防ぎ、ベクトル反転術式によって敵の血液を逆流させたりなどして殺す。

 

接近戦を仕掛けてくる敵であれば道中で敵の一人から奪ったナイフを使って斬り殺していく。

銃以外の武器であれば、日本にいたころ九ノ瀬家で多種多様な武器を習ったため形に差はあれど十全に扱うことができる。

時には『高周波ブレード』でナイフを変形させたりなどして使用していく。

 

挟み撃ちしてくるようであれば俺を中心として相対する敵を覆うように領域を設定し、俺の周囲以外の酸素分子の密度を操る。

片側は酸素分子を排除して酸素以外の気体を集めることで酸欠による窒息を引き起こさせる。

もう片側には酸素分子だけを集めて酸素濃度100%の空気にすることで酸素中毒を引き起こさせる。

そうして一度に多数の敵を殺していく。

 

敵を紙切れのように蹴散らしていくたびに身体に付き纏う倦怠感が増していくが、体はとどまることを知らず次々と敵を葬っていく。

氷漬けにし、灼熱の炎で焼き、感電させ、毒に冒し、斬り、刺し、圧し潰し、撃ち、殺していく。

 

そうして進んでいき、もうすぐリーナのいるところに到着するといった所でもう何十人目かもわからない敵と遭遇する。

たった一人でいるが今までと違いあまり侮れない相手だということがわかる。

両手にはナイフではなく短剣を持っており、防具の類は見た限り着けていない。

体格はがっしりとしているが必要以上に筋肉は着けていないようで、パワーだけでなくスピードもありそうだ。

 

こちらを見るなり自己加速術式を使って襲ってきたため迎撃に、と『ドライブリザード』を発動する。

ーーーだが魔法は不発に終わる。

 

迎撃がなかったために全く減速していない敵の斬撃をなんとか躱すも完璧には避けられなかったようで頬から血が流れる。

敵は接近したまま離れることなく攻撃してくる。

最初の一撃を避けるときに体勢を崩してしまったため一度離れて立て直そうと試みるも振りほどけない。

繰り出される攻撃を何とか躱していくも、すべては躱すことができず浅い傷ができていく。

致命傷ではないものの数が多くなっていくためこのままでは危険だろう。

止まることのない攻撃の嵐の僅かな隙を見つけて移動魔法で無理矢理離れる。

 

重力制御魔法などを使わなかったため急に吹っ飛ばされた衝撃と固い床に叩き付けられた衝撃が走るが痛がる暇もなく起き上がり敵が接近してこないか警戒する。

だが俺を追ってくる様子はなくその場で立ち尽くしているだけだ。

そして深呼吸をしており顔には余裕の表情が浮かんでいる。

 

何を考えているかは知らないが大方、侮りといった所だろうか。

しかしそれよりもまずさっきの魔法が使えなかったことに関してだ。

確認してもCADに異常は見当たらないため今考えられるのは一つ、想子の枯渇だろう。

試しにもう一度ドライブリザードを使ってみる。

起動式は読み込まれている、だが次の展開のプロセスで起動式は砕け散る。

やはり想子の枯渇のようだ。

しかしさっき移動魔法をつかえたことから完全には無くなっていないらしい。

この目の前にいる敵なら難なく殺して進めるだろうが、問題はその先だ。

眼を使い見たがまだ敵は控えており残りすべてを倒すのは不可能だ。

 

 

ーーーーはぁ……

あまり力を借りたくなかったがこの際仕方ない。レンの力を借りようか。

 

呼びかけると返事はすぐに返ってくる。

 

「(やっとお呼びだね。オレ的にはちょっと遅かったとも思うんだけど。

本当ギリギリすぎない?

普通ならとっくに限界を迎えていたのは分かってるよな。)」

 

いつも通りの茶化すような声にいいから力を貸せ、と応えると呆れたような声が返ってくる。

 

「(せっかちだなあ。

……ほら、俺の想子を渡したよ。これでオレのCADに入っている魔法も使えるようになった。

だけど注意が必要だ。CADはお前の想子に合わせてチューニングされてないだろうし、それよりもまずオレの想子では大抵の魔法が碌なものにならないからな。

唯一威力を発揮できるのはオレのCADに入っている魔法の一つだけだ。

どんなものかは前に説明したから知ってるだろ。

……考えて使えよ。)」

 

そう言って聞こえなくなったレンの声に返事をすることなく俺は腰に差していたCADを持って、銃口を敵に向けた。

 




零ピーンチ!と思ったらすぐに終わっちゃいました。
零無双です。まあ、敵もあまり強くないですしね。
魔法師としての能力が高ければこういった組織にはいないはず。
そして今回は零の魔法力の高さが垣間見れたはず!
文才がないのでうまく表現できたかは分かりませんが。

次回は久しぶりに蓮玉の魔法が見れます。
あのたった一話しか登場していない魔法が、です。
お楽しみにー!

感想批評・誤字脱字などお待ちしています。
お読みいただきありがとうございました。


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USNA編7

遅くなりました。申し訳ないです。
そういえば最新刊が発売されましたね。
もちろん読み終わっています。


(何が起こっている!)

 

たった一瞬、一度の瞬きで先ほどまで枯渇により弱々しい想子を纏っていた零の雰囲気が豹変する。

全く別物の想子が一気に溢れ出し、零の体を覆う。

想子を使い果たしたのに、一瞬で、しかも別人のよう様な想子が発生するというあり得ない現象を目の当たりにし驚愕するも足を止めることなく敵の男は突撃する。

それは零に最初に攻撃した時よりもさらに速いスピード。

そして『高周波ブレード』を待機させ不意を突くことで、ナイフの刃を避けられても確実に殺せるようにする。

 

対する零は腰にぶら下がっている、今まで使わなかった特化型CADを手にし、突撃してくる男に照準を合わせ引き金を引く。

放った魔法は『最小分離』。

本来であれば蓮玉しか使うことのできない魔法だが零に限っては、蓮玉の想子を借りたときにのみ使うことができ

る。

照準した物体を原子単位まで分解するこの魔法は零の狙いとは違い、突撃してくる男の右腕を消し去った。

本来であれば男が消え去るはずだったがやはり使い慣れない想子、使い慣れない魔法ということで若干の誤差が出、失敗してしまったのだろう。

 

舌打ち一つを入れて零は魔法の誤差を修正すると再度CADを構え引き金を引き、驚愕のためか立ち止まっている男を消し去った。

それを確認した零はリーナを助けるべくまた足を進めていく。

 

そこから先は何も残らない。

戦闘や虐殺のような言葉の似合わないただ人が消えていくだけの現象が発生していく。

もちろんそれを引き起こしているのは零だ。

意思の見えない、それでいて何かしらの目的を映す瞳は前だけを見ておりそこに映した敵はすぐに消し去っていく。

 

敵は何が起きたのか分からないどころか自分が死んでしまったことにすら気づかない。

周りにいた仲間がいつの間にか消えていることには気づくも仲間を消した未知の魔法を恐れるような暇もなく消えていく。

地獄絵図というには相応しくない静けさが建物に残る。

 

そしてついにリーナのいる部屋の直前までたどり着く。

そこは強固なシャッターで閉ざされているが壊さずとも『最小分離』を使えばすぐに通れるためCADを構える。

そして引き金を引こうとしたところで突然撒き散らされたノイズによって魔法は不発に終わった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

突然響いてきた高音のノイズ、そして身に打ち付けられるような不快感に思わず膝をついてしまう。

何事かと思って周りを見るといつの間にか十人ほどの敵に囲まれていた。

何人かが俺のほうに腕を向けてきている。

どうやらこのノイズは奴等から発されているようだ。

 

さすがにこのままではまずいと思い俺を取り囲む敵を蹴散らそうとCADの引き金を引く。

だが魔法が発動しない。

もう一度引き金を引くがやはり発動しない。

どうやら奴等から発せられるノイズは魔法の発動を妨害するようだ。

ならば魔法を使わずに脱出しようと試みると取り囲んでいない敵が出てきて俺を攻撃してくる。

普段であればすぐにでも倒せるような敵なのだが想子の消費による倦怠感と絶え間なく流れてくるノイズによって苦戦してしまう。

それでも何とか敵の猛攻を躱していくが何度目かの攻撃でついに肩に攻撃を受けてしまう。

その際に体勢を崩してしまいその隙を突いて斬りかかってくる。

 

…ここで終わりなのか―――

もうこの攻撃は避けられない。

俺は目を閉じ、最後の時を待つ。

 

 

――――――替われ!

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

零を取り囲む敵、零に切りかかっていく敵が全員自分たちの勝利を確信し口元に笑みを浮かべる。

そして敵の持った剣が零を斬る。

だが膝をついていた零はCADを持った腕を前に突き出しておりまだ生きている。

そして零に斬りかかっていた敵はいつの間にかその姿を消している。

―――否、零が消し去ったのだ。

 

「なっ……。お前、何をした!」

 

驚愕で固まっていた敵の一人が零に叫ぶ。

その声で固まっていた他の敵も動きだし、止んでいたノイズがまた広がりだす。

しかし零は先程のように膝をつくことなく起き上がったまま敵を見据えている。

 

「な…なんで動ける!

お前ら撃て、撃てっ!」

 

何の異常もないように立つ零を見てヒステリック気味に叫ぶ敵の一人。

それにつられて敵は銃を撃つが弾は零に当たる前に無くなってしまう。

さっき叫んだ敵がそれを見て「なぜ魔法を使える!?」と再び叫ぶ。

零は『最小分離』を使ったのだが敵が言っているのは魔法の種類のことではなく魔法の使用方法だ。

もちろんそんなことを教えるはずもなく叫ぶ男以外を消し去り、叫ぶ男の関節を極め拘束する。

そしてその指にはめられているノイズを発生させている指輪を見る。

 

「やっぱりアンティナイトか。

『最小分離』なら関係なく発動できるんだが、まあ俺の想子を借りてるだけだしな。本来の力を出せなくても仕方ないか。」

 

先ほどまでと口調が一変した零。

しかし今零の身体を動かしているのは零ではない。

蓮玉が零から意識の主導権を奪ったのだ。

普段ならば主導権を奪うなどということは絶対にしないのだが、生を諦めていた零を生きさせるために奪ったのだった。

 

そして先ほど蓮玉が口にしたアンティナイト。それは想子を流すことで、無意味な想子波を散布し魔法の構成を妨害するキャストジャミングを発生させる金属である。

非魔法師でも扱えるものであるが今零の前にいる敵は蓮玉が魔法を使用したことを理解したため魔法師であるのだろう。

その蓮玉がキャストジャミングの中で魔法を使えたのは蓮玉本来の力である。

『最小分離』は蓮玉の特異魔法の一つであり蓮玉の想子、演算能力があればキャストジャミングのノイズの中だけでなくどのような状況でも発動できる干渉力を発揮する。

 

さっき零が魔法をつかえなかった原因が分かった蓮玉は拘束していた男を消し去った。

自分のすべきことを終わらせた蓮玉は主導権を零に返そうとするが彼の意識は浮上してこない。

そのため蓮玉はやむなくリーナを助けることにする。

目の前にあるシャッターを『最小分離』で消し去る。

その内部にはリーナはおらず女性や子供が数人いた。

おそらく人身売買のために誘拐された者たちだろう。

蓮玉はその部屋にいた人全員の拘束を解き、零の通っていない外への道順を教え逃がした。零の通った道を通らせたら数人は確実に気絶してしまうからだ。

 

捕まっていた人たちがいたところの奥にもう一つ扉が見える。

だが蓮玉は零の『次元の眼』を使えないためその先にリーナがいるかはわからない。

使える零は今意識の底に沈んでいてまだ目を覚ます気配がない。

しかしここで時間を取られるのも嫌なので蓮玉は零を無理矢理起こすことにした。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

少し意識を失っていたみたいだ。

先ほど殺されそうになって抵抗をしなかったはずなのに今はなぜか生きている。

それどころか俺を取り囲んでいた敵もすべて消え去っている。

おそらく何者かが助けてくれたのだろう。

意識を失っていた一瞬のうちにここまで処理しきっていることからもとても強い人が来たのだろう。

だが周囲にはその姿が見えず気配も感じられない。

一先ず助けてくれた人に心の中で感謝しつつ本来の目的であるリーナの救出へと動く。

 

『次元の眼』でリーナを探すと、敵と思われる奴に連れ去られているのが見えたためすぐに動き出す。

幸い、それほど離れていなかったのですぐに追いつけた。

 

逃げようとしていたのかリーナを連れ去ったのと同じ車が用意されていて今発進しようとしているところだった。

中には二、三人の敵とリーナが乗っていてその敵たちを『最小分離』で消す。

そして車のほうへ歩いていきドアを開けた。

そこには十数時間ぶりに会うリーナの姿があった。

 

腕を縛られているので、縄を解いてやりリーナの名前を呼ぶ。

 

「…レ、…レイなの?」

 

「うん、助けに来たよリーナ。」

 

なぜか困惑したように尋ねてくるが些細なことのため気にせずに返す。

すると目に涙を浮かべながら抱き着いてきた。

 

「うっ、グスッ…レイィィ」

 

よっぽど怖かったのだろう安心したように泣きついてくるリーナを抱き返し頭を撫でてあげると抱きしめてくる力が一層強くなる。

 

そのままの体勢で十分ほどたったころ泣き疲れたのかリーナは寝息を立てている。

そろそろこの施設を離れ、家に帰ったほうがいいのだがリーナは寝てしまっていて動かない。

仕方なくリーナを抱えて帰ることにする。

背中と膝に腕を回し所謂お姫様抱っこでリーナを抱える。

 

レンに借りた想子で施設の壁を分解して外までの直通の道を作る。

そしてわずかばかり回復した自分の想子で『飛脚』を使いシールズ家への帰路に就く。

少し施設から離れたところで一度振り返りある魔法を放ち俺たちはシールズ家へ帰って行った。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

――――『速報が入りました。

先ほど午後―時――分ごろ―――州の海岸でスーパーセルが発生しました。

これにより辺りの建物が全て倒壊し、その一部を占拠していた組織―――が壊滅したそうです。』

 

 

 

 

 




零は蓮玉の想子を借りている時どの魔法においても、干渉力と魔法の規模などは零として本来の実力を発揮できません。もちろん『最小分離』もです。
『最小分離』以外は蓮玉が魔法を使うのと同じ実力になります。
想子と魔法演算領域が噛み合ってないからです。
蓮玉が零の身体を使ったときに『最小分離』などの魔法がいつも通りに使えるのは演算領域なども蓮玉のものに変わっているからだと思ってください。

もうそろそろUSNA編も終わっていくつもりです。

感想批評、誤字・脱字などお待ちしています
お読みいただきありがとうございました。


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USNA編8

約二か月ぶり…
難産でした。
分かってはいたけどオリ展開って難しいですね。
その結果がこの更新の遅さ。

その間に初投稿から一年が過ぎてしまってるという悲しさ。
何もしてないよ。
零君ごめんなさい。

長らくお待たせしました。どうか楽しんでいってください。



今まで気づかないふりをしていた本当の気持ち

 

それに気づいてしまえば関係が壊れてしまう気がして

 

そうなるのが怖くて仕方なくて

 

知らないふりをしてその気持ちに蓋をして

 

自分すらも偽り隠してきたつもりだった

 

だけどそれは抑えきれなくて

 

日を追うごとに増していく

 

そしてきっかけ一つでその堰は外れ

 

途端にその気持ちを自覚する

 

私は、レイのことが―――

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「レイ、入るよー」

 

扉を開け返事の返ってこない部屋に入る。

いろんな種類の道具や本、機械があるにも関わらず綺麗に整頓された部屋の奥にはベッドで眠るレイの姿があった。

レイは死んだように眠っており、目を覚ます気配はない。

 

私が誘拐された日から丸三日が経った。

あの後眠っていた私を抱えたレイは家に帰ってくるなり倒れてしまったそうだ。

原因は想子の枯渇。しかもどうやってか自分の想子量の限界を超えて魔法を使っていたようで、普通ならば一晩眠れば回復するのもダメージが大きいせいでいつ目覚めるかは分からないらしい。

幸い命に別状はなく、そのうち目を覚ますそうだ。

 

ベットの側の椅子に座ってレイの様子を見る。

帰ってきた翌日に目が覚めた私はこの二日、特に用事がなければこうしてずっとレイの側にいる。

シミ一つ無い白い肌にツヤのある綺麗な黒髪。

少し長めの髪は中性的な顔立ちと相まってどこかのお姫様のような雰囲気が出ている。

それはいつものレイだが、私を助けてくれた時とは別人のようだ。

特に意識の途切れる直前に見た、本気で怒ったレイの姿は忘れられない。

今までは怒らせてしまったとしてもどこか優しい雰囲気があったのだが、その時はものすごく怒っていて鋭い雰囲気を纏っており、近くの私はその雰囲気だけで殺されそうだと思ったほどだった。

 

しかしその雰囲気もレイが何かの魔法を使った後すぐ収まり、普段のレイに戻った。

いま思い出しても身体が凍るような恐怖を覚える私は本気でレイを怒らせないほうがいいと学んだのだった。

 

レイの顔を一頻り眺めると欠伸が出てくる。

もう夜も遅い。すでに今日やるべきことは全て終わらせているため眠気に逆らうことはせずそのままレイの側で私は寝た。

 

 

 

翌日、学校から帰ってきた私は荷物を置き、着替えてレイの部屋へお見舞いに向かう。

今日の寝るまでの予定を考えながら部屋の前に着く。

「ただいまーレイ。入るよー」

寝ているため返事は返ってこないだろうとドアを開ける。

 

だけど目に入ってきたのはベッドで寝ているレイの姿ではなく窓辺に佇むレイの姿だった。

どこか儚げで悲しそうな悩んでいるような表情をしている。

 

「あ、リーナ。おかえり」

 

突然こっちを向いたかと思えば普段の表情に戻って喋ってきた。

予想していなかった状況に一瞬固まってしまう。

だがすぐに動き出しレイに飛び込んでいく。

レイに抱きついた私は心の中で安堵し強く抱きしめる。

 

「ちょっ、リーナ少しきついんだけど…」

 

きつくしすぎたようでレイから声が聞こえるがそれに少しイラっとしてしまう。

レイを離して深呼吸すると大きな声を出す。

 

「なにのんきなこと言ってんのよ!心配したんだからね!目が覚めたらレイは寝ちゃってるし三日も目覚めないし。助けてくれたのにそんなんだったらお礼も言えないしこっちが困るのよ!どうするのよ私レイがいなかったから髪を下ろして学校行ったんだからね」

 

一息で言い終えた私にレイは呆気に取られて固まっている。

 

「まあ、助けにきてくれてありがとうね」

 

レイが動き出す前に言い忘れていたお礼の言葉を言う。

また固まってしまったレイは笑顔の私を見てつられて笑う。

 

「どういたしまして」

 

その後パパ達にレイが起きたことを報告して、いつもの日常に私たちは戻っていく。

どこか影を落としているレイの表情に私は気づかないまま

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

自分の心にあるこの気持ちには気づいていた

 

けどその気持ちをどう呼べばいいのか分からなかった

 

今までずっと一緒にいた奴の言葉がきっかけでやっと気付けた

 

俺は、リーナのことが好きだ

 

 

だけど俺にリーナの傍にいる資格はない

 

俺は人を殺しすぎた

 

 

この血で汚れた手が何時誰を傷つけるかもわからない

 

次はリーナの番かもしれない

 

それならば―――

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

目を開けるとそこはいつも寝起きしている天井。

外は明るく、寝坊してしまったのだろうか。

時間を確かめようと起き上がり近くの端末に手を伸ばすと腕にわずかな痛みが走る。

見ると腕には包帯が巻かれており他にも体のところどころに包帯が巻かれている。

そこで俺は思い出した。

リーナが誘拐されたこと。一人で助けに行ったこと。そこで死にかけたこと。家に帰るなり倒れてしまったこと。

そしてリーナのことが好きだと分かったこと。

 

とりあえずどれくらいの時間寝てしまったのかを確認するために端末を見る。

さすがにもうお昼ごろにはなってしまっているだろう。

お腹も空いているしご飯を食べに行こうかなと思っていると驚きの余り二度見してしまう。

 

「四……四日!?」

 

思わず声が出てしまったが、そう、最後に見た日付よりも四日進んでしまっているのだ。

ということは単純に俺は丸三日の間寝ていたことになる。

せいぜい丸一日ほどで回復すると思っていたのにその三倍もの期間眠ってしまっていたのだ。

ちょっとしたタイムスリップをした気分だ。

 

それほどかかった負荷が大きいものだと理解できるほどまで落ち着いた俺は日付に注目しすぎて見るのを忘れていた時間を確認する。

すると下手をすれば丸四日も寝てしまっていたことになりそうな時間で、窓際まで行きカーテンを開ける。

外には赤くなっている陽が少しずつ暮れていっている。

そろそろリーナも学校から帰ってくる時間のはずだ。

少し緊張する。複雑な気分だ。

無事なリーナの姿を確認したいがリーナのことが好きと自覚してしまってせいでどう接していいのかわからない。

今まで通りでいいんだろうがその今まで通りが分からない。

思わず溜息が出てしまう。

俺はどうすればいいんだ。

助けを求めるように窓の外の燃えているような真っ赤な夕日を見ると突然頭に裂けるような痛みが走る。

あまりの痛みに思わず頭を抱えて蹲る。

 

痛みと共に聞こえてくる断末魔、瞼に移る死んでいく人々。

ある人は感電死し、ある人は初めからそこにいなかったかのように消えていく。

いろいろな死に方をしていく人たち。彼らは殺されていく。

俺の手によって。

 

そうだ。俺はリーナを助けに行って、そこで人を殺していったんだった。

他に敵を無力化する手段を持ちながらも怒りに身を任せて。

挙句の果てに俺の持ちうる最大の魔法『スーパーセル』までも使って。

その魔法は文字通りスーパーセルを発生させる魔法。しかし威力は自然災害のそれよりも大きい。

雷雨や雹、土などを巻き込んで風塵と化した暴風、それらが対象を巻き込んで破壊し、辺り一帯を更地へと変えてしまうほどの規模の魔法。

おそらく公式に発表すれば戦略級とも認定されるほど強力で、誰一人として生き残っている者はいないだろう。

そんな強力で悍ましい魔法を俺は生み出してしまった。

 

 

俺はこの魔法を今後一切使わないようにすべきだ。

いや、またいつ今回のようになるかわからない。そのとき俺は自分を律することができるだろうか。

それならばいっそ魔法自体を使わないようにすべきかもしれない。

魔法を人殺しの道具にするなら俺はもう魔法に関わる資格すらもないだろう。

 

窓の外の夕焼けは赤く、尚も俺を苛ませるのだった。

 




人の心情を書くのは難しいです。
なかなか言葉にならなかったりします。

悩みに悩んだレイの答えは次話になります。
また心情描写が多そう……
時間もかかりそうです…
な、なるべく早く書き上げます!
それまでお待ちください。

感想・批評などお待ちしています。
お読みいただきありがとうございました。


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USNA編9

また期間が空いてしまいました。
もっと執筆スピード早くなりたい…
原作一冊と同じぐらいのペースな気がする。遅い…


最近レイの様子がおかしい。どこか変だ。

 

まずみんなと一緒にいる時間が短くなってよく一人でいることが多くなった。

誰も連れることなくどこかへふらっと散歩に行ったり、自分の部屋や家の書斎、近くの図書館に籠もって本を読んだり、はたまた家のどこかで一人ボーっとしていることが多くなった。

 

それに食事の時とかも席を立つのが早くなった。

今までは皆と話しながら全員が食べ終わるまで席を立ったりしなかったのに、みんなと話はするのだけれど、食べ終わるとすぐに席を立って自分の部屋に行ってしまうようになった。

 

最近のレイの様子の変化について家の人たちに聞いても皆気づいていないようで「思春期なんだろう。」とかよくわからない答えばかりが返ってくる。

だけどそれは絶対に間違った答えなのだと思う。

なぜならレイは、多分私が攫われたあの日から魔法を使っていない。

それどころか魔法に一切かかわっていないはずだ。

朝起きてレイの部屋に行くと、以前なら烈のおじ様に教えてもらった修行の影響で、霊子が活発化していて空気が澄みきっているような感じがするのに、最近はそういったものがないどころかまだ寝ているときすらある。

そのうえ、レイの部屋にあるCADを調整する機械やCADの設計をするためのパソコン、挙句にはCADにすらも使われた跡がない。

 

せっかくレイに振り向いてもらうためにアタックしていこうと決めたのにそのレイの様子が変なんじゃそれをほっといておけるはずがない。

…それに相手にしてもらえる様子もないし。

事件直後とかは積極的にやってみたのだけれど、全く反応しなかったのよ。

手を繋ごうとしたらどうやってかことごとく躱されるし。おしゃべりしようとしたらどこに行ったのか分からず結局見つからないし、前と違う様子にこっちの調子が狂っちゃうのよ。

 

……いえ、文句を言いたいわけじゃなくて私が言いたいのは、レイにはいつも通りにいてくれないと変な感じがするし調子がおかしくなるってこと。

でも実際のところ、レイはパッと見たところ全然いつもと違うようなところは見つからないし、家の人たちも違和感とかを感じていないのだから、私の思い違いかもしれない。

けどこれが思い違いじゃないってなんとなくだけど確信してる。

だから今レイの悩みを解決してあげれるのは私だけだ。

 

だけど、どうすればいいかわからない。

レイの変化の原因は時期的に見てもあの事件なのだろうけれど私はあの日レイに何があったのか知らない。

あの日私には外の様子が分からなかったしレイは話さない。

 

となると残されているのはレイに直接聞くという方法だけ。

でもそれはちょっと気まずい……いいえ、聞かなければ始まらないわ!いい加減覚悟を決めないと。

というか普段通りにすればいいのよ。何も緊張するようなことではないわね。

 

よし、レイの所へ行きましょう。

 

◇◆◇◆◇◆◇

レイの部屋の前まで来たリーナは緊張から数分ほど立ち往生していた。

やっと覚悟を決めてドアをノックすると中からすぐに返事が返ってくる。

 

「あれ、リーナ。どうしたの?」

 

ドアを開いて姿を現した零は笑顔でリーナを迎える。そこに普段と違った様子は見当たらない。

 

「ちょっといい?」

 

「大丈夫だよ。あ、入る?」

 

そう促されてリーナは零につられて部屋へ入っていく。

リーナが見たものは壁際に置かれているCADなど魔法関連の機械たち。

やはりそれらはリーナが数日前に入った時と全く位置が変わっておらず少し埃を被ってしまっている。

 

リーナをベッドに座らせ、零は自分で持ってきた椅子に腰掛ける。

 

「それでどうしたの?また何か勉強のこと?」

 

やはり普段と変わらない様子は見当たらない。

確かに勉強のことで聞こうと思っていたことはあるが今は違う目的で来ているためまた別の機会だ。

深呼吸を一つ入れて切り出す。

 

「レイ、最近あなた様子が変だけどどうしたの?」

 

ほんの僅かではあるが零は眉を顰めたことに気付く。

しかし零はそれ以上の反応を一切見せることなく答える。

 

 

「いや、別にどうもしてないよ?」

 

「どうもしてないわけないじゃない。

最近様子が少し変だし、それに知ってるのよ。最近レイが魔法を使ていないこと。

それどころかあなた魔法に関わることすらしてないでしょ。

それでも何もないっていうの?」

 

 

頼りにされてないのか信頼されてないのか、ちゃんと話してくれないことに思わず声を荒げてしまう。

だが零はそれを意に介する様子もなくリーナを見つめ、そして観念したように言う。

 

 

「ばれてたんだ。

…でも大丈夫だよ。リーナが心配するようなことは何もないし気にしなくていいよ。」

 

 

やんわりと拒絶する零だが、知ってか知らずかその顔にはほんの少しの影が差す。

リーナはそれに気づき、ここで引いてしまってはダメだ、と自分に言い聞かせ話す。

 

 

「レイ、やっぱりあの日何かあったのね?

お願い、話して。力になるから。」

 

だが零の顔はどんどん暗くなっていき、ついに抑えることなくきっぱりとした拒絶の言葉を放つ。

 

「もうほっといてくれよ。リーナには関係ないだろ。

それに本当に何もないから、このことには関わろうとしないで。」

 

何もないことはない雰囲気を纏うも何もなかったと言い張る零。

ここで引き下がってしまっては今、ここに来ている意味がない。

それに零が以前のように戻ることもなくなるかもしれない。

そんなのは絶対に嫌だ。

 

 

「なによ。そんなに私は信じられないの?

何があったか知らないし何を思ってるか知らないけど、それを話すことはできない!?

それとも話したら私の態度が変わるとでも思ってるの?

私ってそんなに信頼されてない?

信頼してるのは私だけ?

私ってあなたの力にはなれない?

言っとくけどレイ、あなたがどんなに離れようとしても絶対隣にい続けるからね。

だからまず何があったか話してくれるまでずっとこの部屋にいるから!」

 

 

顔を上げて呆気にとられたようにリーナを見つめる零。

そして何か悩むように俯き、視線を左右に泳がせ恐る恐る口を開く。

 

 

「ど、どうしてリーナはそこまで?」

 

「家族だからよ!

家族が悩んだり落ち込んでたりしたら力になってあげることは当然だから、いいえ、それ以上に私はレイのことが好きだからよ。

最近はいつも言ってるじゃない。

でも私が好きになったのは今の暗いレイじゃなくてもとのかっこいいレイよ。

だからいつも通りに戻ってほしい。

わかった!?」

 

 

リーナの言葉を聞いて零はまた考え込むように俯く。

手を血で染めてしまった自分にはリーナと一緒にいる資格がない。

だからリーナには何も話さず、何も知らないままで生きてほしい。

しかしそれはリーナに嫌われることを怖れたのと同じことだった。

リーナのためなどと言っておきながら結局は自分が傷付かないようにしていたんだ。

それにリーナはここまで自分を信じてくれている。

 

話してもいいのだろうか。いや、リーナには聞く権利がある。そのリーナが聞きたいと言っている。

それならば、たとえ話したことであの日の後悔に苛むことになっても自分はリーナを信じて、話すべきなのだろう。

もしそれでリーナが自分を怖れてしまうことがあったとしても。

 

決心した零はポツリポツリと話していく。

 

 

「俺は、あの日………、人を殺したんだ。

それも数人とかじゃない。確かではないけど全員を殺したはずだ。」

 

重々しく発せられた言葉にリーナが息を呑み体を強張らせる。

 

「あのとき俺はリーナが連れ去られた怒りで、何も考えずに殺していった。

動けないようにするとか他にもやりようはあったはずなのに。

あの時冷静でいれば、いや違う。

落ち着いて、考えることはできたんだ。でも、それをしなかった。

ただリーナを助けるにはそっちの方が早いからっていう理由だけで殺していた。

そこに何も感じることはなかった。人を殺すことがただの作業になってしまっていたんだ。

だから俺は怖いんだ。

また同じようなことがあれば、俺は次も人を殺していくだろう。何も感じず、ただの作業として。

だから魔法に関わるのをやめようと思った。そうすれば人を殺す手段がなくなると思って。」

 

 

部屋に静寂が訪れる。

零は拳を握って俯いている。その手は震えていて、リーナの返事を怖がっているのが見てとれる。

リーナは強張った体を落ち着かせるように呼吸を一つ入れて、部屋に訪れた静寂を破る。

 

 

「わかったわ。つまりレイが言いたいのは魔法なんて使えなければよかった、魔法なんてなければよかったってことよね。」

 

「そうだよ。魔法なんてなければあんなふうに人を殺すことはなかったんだ。」

 

「だったらレイは私を助けなければよかったと思ってるのね。

それに魔法を使わないってことはまた同じようなことがあってもレイは助けてくれないってことよね。」

 

「それは違う!」

 

 

後悔を滲ませながら話す零に本当に慰めるつもりがあるのかと疑いたくなるような言葉をリーナは冷ややかな声で投げかけていく。

零はそれに否定するが、冷静にリーナは反論する。

 

 

「何が違うっていうの?

あの時レイが魔法を使っていなかったらレイは死んでいたかもしれなかったし、私は絶対に助かっていなかったわ。」

 

「それとは話が違うだろ!

俺は人を殺したんだ。

たとえそいつがどんな悪人だっとしても許されるようなことじゃない!」

 

「確かに人を殺すのはいけないことよ。けどそれは人を助けるのとどっちが大切?

レイはあの時私以外にも誘拐されてたたくさんの人を助けたじゃない。」

 

「そんなことは知らない!

俺はリーナ以外を助けた覚えはないし、あの場にそんな人たちがいたことも知らない。

だからそんなことは関係ないだろ!」

 

「人を殺してしまったことを忘れろとは言えないわ。ちゃんと考えるべき。

だけどレイは私以外にもたくさんの人を助けた。それはレイが忘れていたとしてもちゃんと存在する事実なの。

だからね、レイ。今あなたがするべきことは徒らに自分を責めることじゃなくて、起こったこと全てを知った上であの時自分にとって何が一番正しかったか考えることだと思うの。」

 

 

リーナは一度言葉を止め、零の元に歩み寄る。

そしてきつく握られている零の片手を取り、両手で柔らかく包み込む。

驚いた零は俯いていた顔を上げる。するとリーナの穏やかな目と視線が合う。咄嗟に逸らそうとするも釘付けられたように離すことができない。

リーナも零の目を見つめたままどこか温もりを持った声で諭すように再び話し出す。

 

 

「あなたは見ず知らずのたくさんの人どころか、私を助けたことすら考えずに自分を責めてた。でもね、レイには人を助けたことに目を向けて自分を許す権利だってあるはずよ。

だから、もう一度しっかり考えて。

それでも自分を許せないなら仕方がないって割り切るわ。

でも一つだけ覚えておいて。レイがどちらを選んでも私は今までと変わらずにレイに接するし助けてあげる。

そしてレイが自分を許せて魔法を使っているとき、もしも暴走しそうになってしまったら、そのときは私が止めてあげる。」

 

 

手を放し零の頭を二度、三度撫でるとリーナは何も言わずに部屋を出て行った。




何回も書き直していたらいつの間にかこんなに時間が経っていました。ポケモンGOやシャドウバースにハマったのも原因ですが。
ポケモンGOはもう全然してませんがシャドウバースはチマチマと続けています。が!全然ランクが上がらない。
おっと、それよりも執筆するほうが先か(笑)

そして気になったのですが自分の文は読みやすいですかね?
気をつけてはいるんですがあまり自覚できません。
もっとこうすればいいというのがありましたら教えていただけると嬉しいです。

感想・批評などお待ちしています。
お読みいただきありがとうございました。


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USNA編10

零の部屋から自分の部屋に戻ってきたリーナは扉を閉めるなり床にへたり込んでしまった。

 

(なんかすごい疲れちゃった。……あれで、よかったのよね…)

 

大きな溜息を吐いて考えるのはつい先ほどまで話していた零のこと。

零の話を聞いていると、言い訳など自分の行いを正当化させるような言葉が一切なく全て自分で背負おうとしているようだった。そこでリーナが零を許すようなことを言ったところ、零は困惑しひどく取り乱した。

最後、黙ってしまった零に次から次へと言葉を捲し立てるだけ捲し立てて零の様子を見ることなく部屋を出ていってしまった。そのせいで今零がどんな気持ちでいるか察することもできない。

 

零の心に重くのしかかっている自責の念を少しでも軽くするために話しに行ったのに、結局どっちを選ぶかは零自身に委ねることにしてしまいそのことが気がかりだった。

だが決断を下すのには時間が必要であるだろうし、もう夜も遅くなってきているため、一度気にすることを止め今日はもう寝ようと就寝の準備を始める。

すでに夕食は済ませていたので入浴しに向かう。

身体の汚れを洗い落として湯に浸かる。浸かること二、三分。考えていたのはやはり零のこと。

塞ぎ込み、周りに助けを求めることもなく一人で背負おうとする零の性格に文句を言ったり怒っていたリーナだったが、突然顔が赤くなる。

 

(そういえば私零に告白しちゃってたじゃない…)

 

零との話し合いの中で勢いでしてしまった告白。零と話していたときはそっちに気を取られていて全然気づかず、部屋に戻ってからも忘れていた。

勢いで言ってしまったとはいえ、恥ずかしいものは恥ずかしい。それと風呂の熱も相俟って体が熱い。

リーナはすぐに風呂から出て寝間着に着替えるや髪を乾かさず走っていく。

 

部屋に戻るや否やリーナはベッドに飛び込みじたばたと悶える。

 

(もうなんであんなタイミングで言っちゃったのよ。いつもは言えないのに…

それに言うなら家族のくだりだけでも良かったじゃない。

もう明日レイにどんな顔をして会えばいいかわからないわ。)

 

一頻り悶えて(暴れて)落ち着こうとしたリーナだがさらに羞恥心を煽る重大なことを思い出す。

 

(わ、私告白よりも先にプロポーズ紛いのこともしたじゃない。

なによ『絶対隣にい続けるからね』って。恥ずかしすぎるわよ。

明日レイにあったら恥ずかしさで死んじゃうわよ…)

 

先ほどよりもさらに盛大に悶えた(暴れた)リーナはいつの間にか眠りに落ちていた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

翌朝目を覚ましたリーナは自分の体調不良に気付く。

(体が熱いし、すごいだるいわね。なんか悪寒もするし…)

「くしゅん!」

(…それに咳、ね。これは風邪を引いたみたいね。

そういえば昨日は髪を乾かすのを忘れていたわね。)

 

風邪を引いた原因に思い当たり、そのきっかけとなった恥ずかしい言動を思い出す。

途端に真っ赤に染まった顔を、隠すように手で覆い、悶える。

 

(平常心、平常心よ…)

 

自分に言い聞かせて必死に気持ちを落ち着かせようとする。

徐々に赤みが引いていき、やっとのことで収めることができた。

しかし熱があるせいで完全には無くならない。

それに一度思い出してしまったら再び忘れることは難しく、朝の支度をしててもことあるごとに頭の中でリピートされる。そのたびに、平常心、と自分を落ち着かせる。

そのせいでいつもより余計に時間がかかり、支度を終えるころにはまた別のことを考えていた。

 

少しふらつきながらも朝食に向かっていると曲がり角でばったり零と出くわす。

再び呼び起される恥ずかしい言動の記憶、それに真っ赤に染まっていく顔。

「おはよう。」と言われしどろもどろになりながらもなんとか挨拶を返す。

レイに聞こえてしまうんじゃないか、と思ってしまうほどリーナの心臓はバクバクと早鐘を打っており、俯いて必死に落ち着かせようとする。

「どうしたの?」と聞いても自分を落ち着かせるのに必死なリーナの耳には届いていない。

様子が変だと感じた零はリーナの顔を覗き込む。

 

急に目の前に現れた零の顔に驚き顔を上げる。

顔は耳まで真っ赤に染まっていて熱でもあるんじゃないか、と心配した零は熱を測ろうと顔を近づける。

確かに熱はあるが顔が赤いのはほとんど羞恥心によるもので「大丈夫だから」とリーナは顔を背けようとするが、両手で顔を押さえられ逃げ場が無くなる。

零の顔はどんどん近づき、ほとんんどゼロ距離になったところで、リーナの羞恥心は限界を迎えてその場で気絶してしまった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

目を覚ましたリーナの視界に映ったのは見慣れた自室の天井だった。

体を起こすとタオルが落ちてきた。タオルは冷たく湿っていて、額が少しひんやりとしているため誰かが看病してくれいたのだろう。と、思い当たったところでドアの開く音がする。

 

「あ、リーナ。起きたんだ。」

 

入ってきたのは皿の乗ったトレイを持つ零。

零の顔を見た瞬間リーナの脳裏に、昨夜からの羞恥の原因や先ほど至近距離まで零の顔が近づいて急に倒れてしまったことがよぎる。

また顔を真っ赤に染め上げるが、零は気付くことなくタオルを替えたりなどテキパキと世話をする。

 

「大丈夫なの?急に倒れるからほんと心配したんだよ。」

 

「もう大丈夫よ。ごめんなさい心配かけちゃって。」

 

零の様子を見て冷静になり、落ち着きを取り戻したリーナは迷惑をかけたことを謝罪する。

 

「体調が悪いならあまり無理しちゃダメだよ。ちゃんと誰かに言っとかないと。」

 

「うん。次からはそうするわ。」

 

一度会話が途切れ少しもどかしい時間を過ごす。

零から渡されたスープを飲むが零のことが気になって集中できず全然進まない。

することが終わったのかリーナの方へ近づいていくためリーナは慌ててスプーンに口をつけていく。

ベッドの側に持ってきた椅子に腰掛ける。

 

「リーナ、昨日はありがとう。」

唐突に感謝の言葉を口にした零にリーナは一瞬何が何だか分からなくなり手を止める。

「え?な、なにが?」

 

「ほら、昨日の夜俺の部屋に話しにきたでしょ。」

 

「昨日の夜」というフレーズでようやく合点がいく。

そういえばそうだったのだ。零の様子が事件の後からおかしかったため昨夜リーナは零のもとへ話をしに行っていたのだった。

普通ならこんなことは忘れようもないのだが、普段通りの自然な会話だったので全く違和感なく話してしまっていた。

こんな風に以前のような雰囲気ならば昨夜結論を出させずに零自身にどうするか委ねた答えはリーナの期待している通りになっているだろう。

だがそう思っていても一抹の不安は拭いきれない。

 

その不安を片隅に追いやり、できるだけ声を抑え零が以前のように戻っていてほしいという期待を隠して話す。

 

「ああ、そうだったわね。

てことはレイはどうしていくのか、決めた、ってことよね。」

 

緊張が走る。

もしも零が自分を許せなかったらどうしよう、そんな思いを胸にリーナは零の言葉を待つ。

 

「うん。もうリーナを助けに行ったことを後悔するのはやめたよ。

そのことを後悔していたら今頃リーナと会えていないかもしれないし、あそこにリーナ以外に誘拐されてた人がいたのが本当ならその人たちにも失礼だしね。

でも、やっぱり人を殺してしまったことは忘れないし反省する。

忘れてはいけないことだと思うんだ」

 

零は最後まで真剣な表情で話し終え、その様子を見てリーナは一安心して、短い、ホッとしたような返事をする。

 

「そう。

なら、もう魔法を使わないなんてことはしないのよね?」

 

「うん、それはもちろん。

ごめんね、今まで心配かけちゃって。」

 

 

その後、リーナの熱が上がってもいけないのでそこそこに談笑した後零は自分の部屋へと帰っていったのだった。

 

 




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USNA編11

約一年ぶりの投稿です
あまり時間が取れず何度も書き直すうちにこんなに遅くなってしまいました


『お久しぶりです』

 

「お久しぶりです。玲奈さん。それに優さんも」

 

『お久しぶりです、涼子さん』

 

「今日はどうされたんですか?」

 

『はい、零の事で…』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

夜、もうすぐ皆が寝始めていく時間。リーナも家族との団欒を終え、就寝の準備をしていた。

明日の用意も終わり、そろそろ寝ようとしたタイミングで来客を知らせるノックの音が響く。

誰だろうと思いながら返事をしてドアを開けるとそこには零が立っていた。

 

「遅くに悪いけどちょっといいかな?」

 

申し訳なさそうに訊く零。

特に断る理由もないのでリーナは部屋へ招き入れる。

 

「珍しいわね。どうしたの?こんな遅くに。」

 

互いが腰掛けて一息入れたタイミングでリーナが切り出す。

用事ならいつもはもっと早いタイミング。それこそ部屋に戻って就寝の準備を始めるような時間になる前に済ませる。それなのにこんな時間になって訪ねてきた事に疑問を抱く。

ただ、零が突然に思いついたことをするのはあまり珍しいことではないためあまり構えずに待つ。

 

「……話があるんだ。」

 

しかし零の真剣な雰囲気によって緊張の糸が張り詰められる。

 

あの事件から数ヶ月、零は立ち直ったように見えた。

しかしそれあくまでも表面的なことであって根本的な部分ーーー一人で物事を抱え込むことーーーが解消されたかはわからず不安があった。

だが今回零が自分から大切な話と言って話に来たことでやっと安心できると、少しばかりの嬉しい気持ちを覚える。

 

 

「俺、日本に帰ることになった。」

 

急降下するリーナの気持ちを反映するように部屋の空気が重くなる。リーナは言葉を発することを忘れてしまったように唖然としている。

それほどリーナにとっては予想だにしなかったことだった。

だがリーナに構わず零は話を進める。

 

「日本でお世話になっていた従姉妹の家から帰って来いっていうように言われたんだ。

リーナも知ってる通り俺は古式魔法の大家、その血筋の従姉妹の家に養子として引き取られた。

それに魔法を教えて貰ったり従姉妹の家族にはお世話になったから断ることもできないし、多分もうステイツには帰ってこれない。

 

だから、もうすぐリーナともお別れしないといけない。」

 

零が喋り終えたところでようやく理解が追いついてきたリーナは考えるように俯き、掠れた声で言葉を絞り出す。

 

「…ステイツを発つのはいつなの?」

 

絶対にされるとわかっていた質問であり、零にとって最も後ろめたかった質問だったため少し言葉を詰まらせる。

 

「…明後日の昼頃の飛行機で発つよ。」

 

「明後日!?いくら何でもそれは早過ぎじゃない!」

 

予想だにしないほど早すぎる予定にリーナは思わず立ち上がって声を荒げる。

たった二日、いやもう夜も遅く残った時間を考えるとほぼ一日しかない。そんな短い時間の中で荷物の整理や渡航の準備などをしていたらあっという間に過ぎてしまい他にできることが限られる。

明後日出発というのは流石に急すぎて、どんな緊急の理由なのかリーナは疑問を口にしようとするが、それは先に発せられた零の申し訳なさそうな声に遮られる。

 

「この知らせは本当は一週間ぐらい前に伝えられていたんだ。

だからこのことはみんなもう知ってる。

…リーナにだけ隠してた……ごめん。」

 

再び伝えられた衝撃の事実にリーナは固まる。

最初からずっと驚かされっぱなしで、そして信じたくもない話ばかりでもう全てから目を背けたくなる。

零が話しにきた時は頼ってくれることに嬉しさを感じていたのに今では驚きと隠されていたことへの落胆、悲しみしかない。

なんで今日になるまで黙っていたのか。結局零は自分を信頼していなかったのか。今まで零と一緒に過ごしてきた時間はなんだったのだろうか。様々な思いが頭を駆け巡る。

 

「…なんで、今まで言ってくれなかったの」

 

やっとのことで言葉にできたのはこれだけ。

零はなぜ自分にだけ隠していたのか、今最も辛く感じていることを尋ねる。

 

「リーナとはいつものように過ごしたかった。

多分リーナは俺が帰るってことを知ったら何か特別なことをして過ごそうとするだろ」

 

「!そんなの当たり前…」

 

リーナにとってそんなのは当然だ。

もしかするとこれから一生会えないかもしれないのだ。少しでも零の記憶に残る楽しい思い出を作りたいのは当然だろう。

しかしその思いは零が言葉を続けることによって発せられない。

穏やかだがどこか悲しみの孕んだ声にリーナは聞き入ってしまう。

 

「確かに、それも楽しいだろうけどそれよりも俺はいつもと同じように過ごしたかった。特別なことをして記憶に残すより、いつもと同じようにリーナと過ごしてそれを記憶に残したかったんだ。

リーナには笑っていて欲しかった。一週間も時間が空いたらそのうちリーナは泣いちゃうだろ?それは嫌だったんだ。

好きな人を泣かせたくなかった」

 

「…、……え?」

 

穏やかな調子で突然告げられた零の告白にリーナは動揺する。

聞き間違いだろうかと思い、黙っていると零は照れたように頰をかいてもう一度告げる。

 

「俺は、リーナのことが好きだよ。だからリーナと一緒に居たかった。いつものリーナの笑顔を見たかった」

 

リーナはみるみるうちに顔を赤く染め零が言い切った頃には茹でダコようになって、口からは「え、あ…あぅ」などと言葉にならない声が漏れ、ついには俯いて黙り込んでしまう。

しかし零はリーナの様子に見向きもせずに立ち上がる。

 

「いきなりでごめん。それと、このことはもう気にしなくていいから」

 

そう言って足早に部屋の外へ向かう。

零の言葉に顔を上げたリーナは状況についていけず、扉に向かって行く零を眺める。

そして零が扉に手をかけたところでやっと状況を理解し零を呼び止める。

 

「待って!」

 

しかし立ち止まらずドアを開く零に、涙目になりながらリーナは駆け寄って手を掴む。

 

「わ、私もレイのことが好きよ!」

 

少し上擦った声で零の気持ちに応える。

しかし零はリーナの方に向き直ると平坦な声で告げる。

 

「ごめんリーナ。嬉しいけどその気持ちに応えることはできない。自分から言ったことだけど」

 

リーナは困惑する。

零に好きと言ってもらって一瞬驚いてしまったがそれ以上にとても嬉しかった。だから自分もそれに応えようと告白したのだ。

それなのに零は自分の気持ちには答えられないという。

 

「な、なんでよ」

 

「だってさっき言ったじゃないか。俺は明後日には日本に帰るんだ。

きっと会うこともなくなる。

それなのにこれ以上関係を進めてどうなるんだ。

俺はけじめとしてリーナに告白しただけだ。だからこれ以上どうこうする気もない」

 

早口で諭すように捲したてた零はこれ以上話すことはないと言うように扉へと向き直る。

なんでもないように話した零だが扉に向けた顔はさっきと打って変わって苦しげに歪んでいて別れを我慢していることがわかる。

 

「俺はもうこの気持ちを忘れる。だからリーナも忘れたほうがいい」

 

「…によ、それ」

 

リーナの手を振り解こうとする零。

だがそれはリーナが零の腕を強く引っ張ったことで遮られた。

 

「待ちなさいよ!何が忘れた方がいい、よ。自分の気持ちばっかり押し付けてそれで終わり!?ふざけんじゃないわよ。

別にいいじゃない!恋人になったって。

それなのに!なんなのよこれ以上どうこうする気はない、って自分から言い出したんじゃない」

 

己の気持ちを吐き出したリーナは荒い息を吐き出しながら涙目で零を睨む。

滅多にないリーナの怒る姿を目にして一瞬圧倒された零だがすぐに口を開く。

 

「だって仕方ないだろ!元々ステイツに来たのは日本でのトラブルのせいだったんだ。日本に呼び戻されたってことはトラブルが解決したってことでもうステイツに戻ってくることも余程のことがない限りはないんだ。

リーナと今恋人になったってどうしようもないだろ」

 

リーナと同様叫ぶように話した零だが、最後は諦めたような声で言葉を漏らす。

リーナから目を逸らし、奥歯を噛み締めた零は腕を掴んでいるリーナの手を軽く振り払おうとするが思いの外力が強く手が離れない。

 

「行かないでレイ。

まだ話は終わってない」

「もういいだろこれ以上何があるっていうんだ。

どうせもう会えないのに」

 

リーナの腕を振り払うのを諦めた零は溜息をついてリーナが腕を離すまで待つことにする。

しかし腕を離す気配はなく、返ってきたのは先程の怒ったような口調ではなく毅然とした口調だった。

 

「なら!会えるようになればいい。

そしたら今零と付き合っても無駄なんかにならない」

 

「馬鹿なことをいうなよ!

どうやって?国が違うんだよ。魔法師の出入りは厳しいことだって分かってるだろ」

 

到底実現が不可能であろうリーナの言葉に思わずカッとなって言い返す。

しかしリーナから発せられる言葉には確信のようなものが篭っており迷いや躊躇いが感じられない。

 

「今はわからない。でもそれしか方法がないんだからやるしかないじゃない。

私はやるわよ。絶対に零に会ってみせる」

 

全く引く気配のないリーナの口調。

零は逸らしていた視線をリーナに向ける。

鼓動が跳ね上がる。リーナの顔に浮かんでいたのは怒りではなく前向きなことを窺わせる笑みだった。

零にはその表情に今言っていることを実現できるといった確信が含まれている気がした。

 

「…どうしてそこまで」

 

「レイが好きだからに決まってるでしょ。さっきから言ってるじゃない。

みんなに無理だって言われても諦めないわ。

知ってるでしょ、私の諦めの悪さは。絶対にやってみせるわ」

 

即答だった。

両手を腰に当てて自信たっぷりの声でリーナは宣言する。

 

リーナの言葉を反芻する。

リーナが言っているのは単純なこと。たった一つしかやることがないならそれを実現すればいい。

たしかに単純なことだが現実を認識する頭を持っているせいで最初から選択肢になく諦めていた。

自分の頭が固かったことを零は理解する。

そして同時に嬉しさが溢れてくる。

 

「ハハハッ!」

「どうしたの!?いきなり笑いだして」

 

零が急に笑いだした状況についていけずリーナは驚きの声を上げる。

どうしたものかとリーナが頭をひねっていると落ち着いた零が顔を上げ笑顔でリーナを見つめる。

 

そしていきなり抱きついた。

急な展開に驚いたリーナは零の胸を押して離れようとするが微動だにしない。

リーナが少し痛みを感じるほどの力で抱きしめる零はふふっと小さく笑いを漏らしリーナに礼を言う。

 

「ありがとう。そうだよね。諦めるようなことじゃなかったね。

俺も日本に帰ってもリーナに会いにいけるように頑張るよ」

 

驚き、安堵、そして遅れてやってきた嬉しさでリーナは涙を流す。

頬をつたう涙を拭いながらよかったと呟くリーナの両手を取る。

 

「だからリーナ、何度も言ってることを変えて申し訳ないけど日本に帰るまで、俺と付き合ってくれない?」

 

涙の流しながらリーナは無言で何度も頷く。

そんなリーナを見て微笑みゆっくりと抱き寄せる。

今度はリーナも零の背中に手を回し零の肩に顔を埋める。

そのまま泣き続けたリーナが落ち着くまで零はリーナの頭を撫でていた。

 

 

 

 

数分後リーナが落ち着いたためそろそろ寝ようと部屋を出ようとすると制止の声がかかる。

 

「どこに行くの?今日ぐらい一緒に寝ましょう?」

 

「え、いやでも…」

 

「いいじゃない、恋人同士なんだから」

 

「………」

 

「ね?」

 

 

リーナから出ているものすごい剣幕に頷くしかなかった零だった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

自分の就寝の準備を終えて再びリーナの部屋に戻ってリーナと一緒にベッドに横になった零はここ最近起きたことを思い返す。

 

 

事件の時リーナが連れ去られたと聞いて憤りを感じ、それ以上にリーナと離れ離れになると想像した途端言いようのない不安に駆られた。

そして助け出した時に心を満たした安堵に自分の気持ちの正体を見出した。

 

 

だがその気持ちも自分のしたことへの罪の意識に苛まれて己の心の内にしまうことにした。

本音を言えばシールズ家を離れられたらよかったのだが生憎自分は居候の身。迷惑をかけるわけにもいかない。

だから努めてリーナには家族として接するようにしてきた。何をするにしても、これは家族愛故のものだ、と自分に言い聞かせながら。

 

そしてつい先日日本の家族から帰ってくるようにと言い渡された。

 

元々なぜUSNAに引っ越すことになったのか、その理由は知らなかったが何かしらの問題があり、そのせいで避難するような形でUSNAに来ることになったことは理解していた。

日本に呼び戻されると言うことはその問題が解決したということだ。

そして戻ってしまえば滅多なことがない限りUSNAに戻ってくることはない。

今、世界情勢は不安定で魔法師の出入国は厳しく制限されている。

それに自分を引き取ってくれている九ノ瀬の本家のこともある。

だからUSNAに帰ってこれることはないと考え、そうなる前に最後に自分の気持ちだけは伝えておこうと思った。

 

そう、零にとって今回の告白はけじめをつけるものだった。

だから答えを聞くつもりはなかったし自分にはその資格もないと思っていた。

リーナを困惑させてしまうだろうが一晩も経てば切り替えて忘れてくれるだろうと考えてすぐに去ろうとした。

だけどリーナはそんな零の考えを全て覆した。

 

離れ離れになるならまた会えるようにがんばればいい。それがどんなに難しいことでも諦めなければ可能性はある。

 

いつも自分では考えつかなかった視点から物事を見るリーナ。

横を見るとつい先程恋人になった彼女がいる。

 

さしあたってとりあえずUSNAを発つまでの残り一日、リーナを大事にしようと誓った零だった。




今年は受験なのでおそらく3月ぐらいまで更新できないと思います
ちょっとした時間に少しずつ書いてはいきますがなにせ遅筆なもので…

お読みいただきありがとうございました


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USNA編12

お久しぶりです
受験終わって一先ず落ち着いてきたので投稿です
短めです。そしてこれでUSNA編も終わり


帰国当日

 

 

「元気でね、応援してるよ」

「ありがとう、涼子さんこそお元気で」

 

シールズ家の人たちに見守られる中涼子さんとハグをして別れの挨拶を終える。

笑顔の涼子さんに続いてシールズさんと別れの挨拶を交わす。

 

「寂しくなるよ」

「また絶対帰って来ます」

「そうなったら嬉しいね。日本でも元気にやるんだよ」

 

握手を交わしてシールズさんは最後の一人に場所を譲るように少し離れる。

代わりにやって来たのは十人中十人がかわいいと答えるだろう美少女、リーナだ。

 

まあ、別れの挨拶と言ってもここ二、三日でお互い大体のことは話したから今更なにか約束するわけでもない。

やって来たリーナも別れを惜しむような素振りはなく顔には笑みを浮かべている。

 

腕を広げると飛び込んできたため抱きしめる。

なぜか周りからニヤニヤした暖かい目で見られてるけど無視だ。

そしたら少し驚かれたみたいだけどそんな恥ずかしがると思われたのだろうか。

 

「がんばろうね」

「うん」

「好きよ」

「俺も好きだよ」

 

お互いの耳元で確認のように囁き合う。

それが終わって離れるとポケットから取り出した袋をこちらに差し出してくる。

 

「私からのプレゼント。

お守り代わりに持っといて」

 

袋を開けるとブレスレットが入っていた。

黒革のベルトの真ん中に、中央部に一本の青い横線が入った銀色のプレートが付いているそれを早速つけてみる。

 

「うん、やっぱり似合ってる。

寂しくなったりしたらこれ見て思い出してね」

 

「ずっと付けておくよ」

 

「約束、忘れたりしたら絶対許さないんだから」

 

そう言ってリーナがそっぽを向くと突然、ツンデレキタァーーーー!!とレンが騒ぎ出したが俺からも渡したいものがあるから構ってられない。

 

「リーナ、俺からも渡したいものがあるんだ」

 

俺は首にかかっているネックレスを外してリーナに差し出す。

両手でそれを受け取ったリーナは驚きの表情でこちらを見ている。

 

「いいの、これ。

だって、レイのお母さんの形見なんでしょ」

 

「大丈夫だよ、お守り代わりだよ。

また会える時までリーナが持ってて」

 

元々約束の証としてリーナに渡すつもりだったのだ。

リーナに先を越されてしまったが決してお返しで渡した訳ではない。

事情を話すとネックレスを嬉しそうに胸に抱く。

 

時計を見るとそろそろ出発する時間だった。

嬉しそうなリーナを見て満足したが最後にちょっとしたいたずらをしてやろうと思った俺はリーナの名前を呼んだ。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

大きく手を振りながら去っていく零にリーナ以外の二人は手を振り返して見送る。

 

「行ってしまったな」

「そうね」

 

完全に零が見えなくなったところで手を下ろし呟くように話す。

少し間をおいて互いに顔を見合わせると急にニヤニヤした顔つきになってリーナのとこへ向かう。

先程も零に手を振っていなかったリーナは唇に手を当てて呆然としている。

 

「あらまあ、青春っていいわね」

 

涼子がそう言ったところで現実に戻ったリーナは自分のとこにやってきた二人を見る。

そして零に何をされたかを思い出し、その恥ずかしさと二人に見られていたという羞恥心で顔を真っ赤にする。

 

「あら、あなたたちまだキスもしてなかったの?」

 

未だニヤニヤしながら揶揄ってくる母親に羞恥心が限界を超えたリーナは大声で叫んだ。

 

「もう!別にいいじゃない!!」

 

 

 

 

 

涼子の揶揄いも落ち着いたところでリーナの肩に手が置かれる。

 

「まあ、良かったじゃないか最期に忘れられない思い出ができて」

 

そう言った父親を見上げたリーナは搭乗口の方を向いて応える。

 

「いいえ、最期じゃないわ」

 

「でもわかっているだろう。

彼がステイツに来たのは半ば亡命のような形だったんだ。だからもう日本を離れることも恐らく…」

 

「わかってるわ。

でも、レイと約束したの。また会おうって。

だから、最期じゃないわ」

 

誇らしげで、どこか自信に満ちた顔でさ

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

『まもなく離陸いたします。シートベルトを着用―――――』

 

携帯の電源が切れていることを確認してポケットに入れ椅子にもたれかかる。

目を閉じて思い出すのはUSNAで過ごした約七年間。楽しかったことや嬉しかったことがどんどん甦ってくる。

シールズ家の日値はみんな気さくな人でUSNAにきてすぐに俺を家族のように扱ってくれた。

良いことをすると褒めてくれたし悪いことをするとちゃんと叱ってくれた。

それだけじゃなく俺が興味を持ったことは応援してくれ、できる限りのサポートもしてくれた。そのおかげで色々なことに挑戦できた。

特に大きかったのはCADの開発だ。シールズさんは有名なCADメーカーの経営をしていて、そのツテで調整機まで貰えたしCADの調整や開発のノウハウを知ることができた。

自分が設計したCADを売ったお金とかはシールズさんにあげたし、多少の恩返しはできたんじゃないかと思う。

ただ、それでも今までもらってきたものは返せてないと思うし一生返せないだろう。

それぐらい感謝してる。

 

最後の別れ際まで気に掛けてくれたし昨日なんかは俺のためにお別れ会なんか開いてくれてみんなからプレゼントなんかも貰ったりした。

またUSNAに戻ってきてみんなと会いたい。リーナとの約束だけじゃなく、みんなに会いに来ることもまた、俺のがんばる理由だ。

 

 

飛行機が動き出した。

ゆっくりとスピードを上げていく。

 

やっぱりいざ出発となると寂しくなる。

それほど楽しかった日々だった。

でも今日が最期じゃない。最後にしない。レンにも手伝ってもらってできるだけ早く。

あいつもUSNAに戻る気持ちはあるらしいし。

心の中で話しかけても返事は返ってこない。そういえば飛行機は苦手とか言ってたっけ。

 

滑走路も残りわずか。

前輪が浮いて機体が傾く。

続いて後輪が浮き機体が上昇する。

どんどん高度を上げ空港が小さくなっていく。青い海が窓から見える景色の大半を占める。

リーナの瞳のように綺麗な蒼。

遠ざかっていくUSNAと一緒に目に焼き付けた。




前書きにも書きましたが受験終えました
…が!!、夢破れ浪人しましたw現実は甘くなかった
なのでまだ一年残ってます(絶望)
電車の時間が長くなったのでちょこちょこ書いていこうかなと思ったり((勉強しろ

そこそこ遊びながら勉強しようと思ったのに予備校始まって一週間で現役の時よりもしっかり勉強してる気がしますw

今年も受験生の方、頑張りましょう(現役は敵と思ってる)
お読みいただきありがとうございました


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帰国編
帰国編1


飛行機から降りた客が続々とやってくる空港のロビー。家族や友人、親戚を待つ人で混雑している。

知り合いを見つけて手を振る人やそこに寄っていく人、そそくさと一人で帰っていく人。

色んな人が賑わう人混みの一つに零もいた。

 

「お帰りなさい」

「ただいま玲香さん、優さん」

「長旅お疲れ様。もう遅いし今日は家に帰ってゆっくりしようか」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

翌日

荷解きを大方終えると時計の針は既に昼を回っていた。

その後今は静岡にある九ノ瀬家本家にやって来ている。

色々と説明することがあるらしい。

 

九ノ瀬家は九ノ瀬大社という由緒正しい神社を受け継いできた。その本家は神社の広大な境内のすぐそばに建っている。

神社だけでなく家もかなり広く神社の境内とまではいかないが匹敵するほどだ。

そこに連れてこられた俺は優さんに当主の部屋に案内される。

 

そしてその当主から聞かされたのは俺がUSNAに行った理由と日本に帰ってきた理由。

俺がUSNAに行ったのは俺の血筋が関係しているらしい。

俺が小さい時、物心がつく前に亡くなった母親ではなく俺が生まれる前にはもう死んでいた父親の血筋だ。

父親は安倍家という家系の一人らしい。

 

 

五芒は平安時代以前からある組織だ。

表としての役割は普通の神社とあまり変わらない。信仰する神を祀り、祈りを捧げることで対価としてご利益を授かる。

ただ、その恩恵は桁違いとされ普通の神社仏閣とはかけ離れているものではあるが。

 

そして裏の顔として、対外勢力の侵攻に対する日本という土地を防衛するという面がある。国内の権力をかけた争いなどには姿を見せず国外からの侵攻があった時にのみ現れ強大な力でもって退ける。

その姿はまさに神の使徒、時には鬼とまで言われるほどのものらしい。

五芒の外部に知られていることはせいぜいここまで。

五芒には最重要秘匿事項、外部の人間には全く知られていない、知られてはならないもう一つの役割がある。

それは日本国内に潜む国を脅かす敵の排除。

その敵の名こそが俺がUSNAに行く原因となった安倍家。

五芒成立以前からある古い家系で、そして五芒を追放された家系だ。

 

本来、五芒というのは組織の名前ではなく、魔法——当時は妖術、神通力と呼ばれていた——を使う家系の中でも力を持った五つの家を指すものだ。

 

芦屋、安倍、九ノ瀬、椎名、柊

 

天皇貴族が摩訶不思議な力を使うと全国でも名を馳せていた家々を招集しその力を披露させたのが始まり。それから天皇の前で成果を披露するようになったり、年に何回か招集以外の場で会ったりするなど各家の交流が始まったそうだ。

 

各家の伝統を伝えたり技術の教えあいなど様々な形で仲を深めていった。その中には子供同士の婚約などもあったりなどその繋がりを少しずつ強めていた。

 

 

そして時は平安時代。

かの有名な陰陽師、安倍晴明が誕生する。

 

まさに鬼才。千年に一度の天才と言われ幼少期からその才能を発揮し力をつけていった彼は18歳という若さで安倍家を継ぐ。

各家との交流も盛んに行い、この時代における技術の躍進を担った。

才能を持つがそれに驕ることなく謙虚に行動し、人当たりも良く様々な人と分け隔てなく接しまさに絵に描いたような理想の人物だった。

誰からも信頼され、好かれていた彼だったがやはりその才能を妬み嫌う者も存在する。

その一人が五芒の一角、芦屋家の当主道満だった。

道満も才能ある人物だったが生まれた時代が悪かった。小さい頃から親や周りの人たちに晴明と比べられ、努力するも追いつくことのできない才能に次第に嫉妬するようになっていった。

どうにか晴明を出し抜けないかと考えていた道満はある日市民の間で流れる噂を聞く。

 

曰く都の外れにある小さな小屋に九尾の妖狐が潜んでいるのこと。

九尾の妖狐といえば妖怪の中でも最上位の一角に入ると言われるほどの力を持つ大物。

討伐に成功すれば皆さぞ驚き、晴明にも一泡吹かせられるだろう。そう思い彼はすぐに行動を開始する。

 

芦屋家の主力と天皇の部隊を引き連れた道満は圧倒的な物量差で九尾の討伐に成功する。

亡骸を献上しあとは天皇主催の五芒の会での披露を待つだけだ。それを見たときの周りの驚く顔を思い浮かべ早く会の時期にならないかと心待ちにしていた道満だったが結果としてそのお披露目会は開かれなかった。

 

ある夜晴明を呼び晩酌をしていた天皇がいいものが手に入ったと九尾の亡骸を見せびらかしたところ突如として晴明が暴走。その場にいた天皇を殺すにとどまらず、建物を全壊させるほどの魔法を使用した。

 

もちろんのこと異変を察知した五芒や近くにいた武士がすぐさま駆けつける。

そこで彼らが目にしたのは霊力を放出しながら九尾を抱いて泣き叫ぶ晴明の姿だった。

 

その翌日天皇殺しの罪で晴明は島流しに、安倍家は彼の息子が継いだ。

晴明は天皇を殺したが元からそのような思想があっわけではなく安倍家も同様だったため晴明の抜けた穴を埋めるように霊術の研究を進めた。

 

時が経ち五芒も政治も元のように機能し出した頃再び事件は起こる。

安倍家が秘匿していた妖怪を使役するという研究が芦屋家、そして五芒に漏れた。

当時から妖怪は穢れたものであり直ちに退治するのが普通だった。その妖怪をどうにかして妖怪退治に転用できないものかと進められていたがそれを他家に行ったところで快くは思われないと隠し続けていたのだ。

すぐさま始まった芦屋家による粛清に安倍家の人はその研究内容を五芒に訴え止めてもらうように頼み込む。

椎名、柊、九ノ瀬の三家はその要求に対し一度しっかりと調査をした上で判断しようとするが耳を貸さない道満と芦屋家によって粛清は続けられる。

 

その報せは島流しされていた晴明の耳にも届いた。慌てて都に戻った晴明だったが彼が目にしたのは信じがたい光景だった。

安倍家の屋敷は見るも無惨なまでに破壊されており瓦礫の中にはたくさんの見知った人の死体が。その光景に呆然としながら生存者を探すが、目にするのは一緒に生活してきた安倍家の人々の無残な姿。その中には一族を守って戦ったのか傷だらけの状態の者もいて晴明が島流しになった後当主を継いだ彼の息子もその一人だった。

 

いざという時のために安倍家が作っていた避難所には十数人の生存者が避難していた。彼らから首謀者が道満であることを伝えられた晴明は生き残っていた術者数人と共に芦屋家に攻撃を仕掛ける。

恨みに心を燃やし復讐心で身を焦がす彼らの攻撃は当に苛烈と言えるもので芦屋家の惨状は彼らが安倍家に与えたもの以上だった。

結果芦屋家は滅亡、一人残らず殺された。

しかし安倍家の怒りはそこで収まらず、この状況を引き起こした世界を恨み、運命を呪い、世の中を支配しようと全国に侵略が進められる。

残った三家は晴明の説得を試みるが実を結ばず安倍家の侵攻は苛烈を増していった。

 

 

 

もう誰にも止められないと諦めかけたその時安倍家の侵攻が柊、椎名、九ノ瀬の当主達によって食い止められる。

正確に言えば三家の当主に憑依した三柱の神によって。

伊奘諾によって遣わされた三柱、天照、月読、素戔嗚が各家の当主に取り憑き安倍家への粛清を始める。

天変地異のような圧倒的な力を以って次々に安倍家の人々を殺めていく。

そこには慈悲など存在せず、そして間も無くして安倍家は滅亡した。

 

 

これで平和が戻ってきた、

 

はずだった。

 

全員死んだと思われた安倍家だったが神の目を欺き逃げおおせた数人が安倍家の再興を進めていた。

これは三柱にも予想外のことだった。全てを見渡すと言われる三柱の眼を持ってしても気付けない、驚くべきは安倍家のその技術でありそして生き残った数人は少しずつ力を蓄えていった。

 

そして長い時を経て全盛期以上の戦力が整った安倍家は再び侵攻にでる。

攻撃は激しく不意打ちということもあり始め五芒は押し込まれる。

だが技術の開発を行っていたのは安倍家だけではない。五芒は態勢を立て直し徐々に押し返していった。しかし最後のひと押しというところで安倍家は撤退する。

 

その後何度も何度も数えられないほどの侵攻を退けるがいつも全滅間際というところで撤退するか、全滅させたと思っても別のところに潜ませていた数名が生き長らえることで安倍家は血を絶やすことなく続いてきた。

そんなことが千年以上も繰り返されてきた。

 

 

 

その安倍家が俺を狙ってきたそうだ。

理由は俺が生まれる前に死んでいた父親だ。彼は安倍家の人間だったがそこから逃れた人らしくその後母さんと出会い俺が生まれた。

それをどうにかして突き止めた安倍家が安倍家の血を持ち魔法に適性を持つ俺を手に入れようとしたらしい。

 

五芒はそれを阻止しこの数年俺を匿い守るための計画を進めていたそうだ。

USNAでずっと暮らさせるという案もあったそうだが安倍家の侵攻に対する戦力として、などの諸々の理由から呼び戻すことを決めたそうだ。

安倍家から守るといっても一日中束縛されることはなく、基本自由に動いてもいいらしいが監視は付くと言われた。

 

 

そうやって九ノ瀬本家での話が終わり俺は優さんの家に戻って一晩を過ごした。明日は四葉家に行かなければならないらしい。その数日後にはまた本家に行き五芒に挨拶回りをしないといけない。

割と自由がないなと思っているともう少ししたらもっと余裕ができるから、と優さんに言われた。

 

明日四葉に行かなければならないのは母さんの関係らしい。

母さんは四葉家の血族らしくそれを突き止めた四葉が俺を利用できるかどうか調べるそうだ。

 

なんなんだ俺の血縁は。

国に仇為す最悪の一族の血と、世界でも恐れられる一族の血を受け継いでるとか厄介すぎるだろ。

しかも九ノ瀬の血は入っていないのに九ノ瀬の系譜にもなるって。まあ母さんの双子の姉の玲奈さんのとこに預けられて九ノ瀬の魔法を習っているのだからそれは仕方がないことだが。

 

それよりも四葉家だ。何せUSNAでもアンタッチャブルと恐れていたあの四葉家なのだ。場所は厳重に秘匿されており、近くの駅にやってくる四葉の迎えの車で一人で行かなければならないらしい。

そんなの人体実験されるんじゃないのか。俺は嫌だからなとか愚痴っていると優さんにまあ悪いようにはされないから大丈夫らしいと言われた。

 

明日四葉で俺の体を調べてその結果によって四葉は俺をどうしたいか決めるらしい。四葉の指揮下に入れるかどうか。

 

流石に四葉の指揮下に入るのは御免だ。リーナと会うためには海外に行かないといけないが四葉家の下ではまず身動きが取れなくなる。

もしそうなってしまったら四葉に追いかけられるリスクを負ってでも身をくらませるべきかと考えているうちに夜も深くなっていった。




通学時間が長くなって時間が出来たから時々少しずつ書いて投稿
五芒の成り立ち書いてるときにその辺も描きたくなってきたけど遅筆だしあまり時間も取れないから今の所お蔵入り
自給自足ネタとして妄想かなぁ
…自給自足の使い方合ってたっけ?


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帰国編2

ずいぶんと時間が空いてしまいました。お久しぶりです。
すでに執筆は終わっていたけど投稿するのを忘れていた戦犯。
忙しかったというより書き終えてること自体を忘れてました。


「お待ちしておりました」

 

駅を出ると四葉家の執事らしき人がいかにも高級そうな車とともに待っていた。

黒塗りの車体にスモークのかかった窓ガラス。しかもこれ外からだけじゃなく中からも見れないやつだ。

やばい雰囲気しかないぞ。下手なこと言ったりでもしたら殺されるんじゃないか…?

 

そんなことを考えていたらきりがないからすぐに思考を切り替えて悟られないようにして車に乗り込む。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

かれこれ一時間経っただろうか、やっと四葉家に到着した。

道中何度も結界を通った感覚があった。警備が厳重すぎる。情報を漏らさないようにしすぎじゃないのか。てかその中に俺が入っていっていいのか。二度と出られなくなるとか本当にないんだろうな。不安だ。

 

車から降りると運転をしてきた花菱という執事さんにあの、と声をかけられる。

 

「本日は別の来客があり当主は先にそちらを対応するとのことで誠に失礼ですが大葉様には先に検査を受けて頂きます。なので今から案内するのはそちらの施設になることをご了承ください」

 

丁寧な一礼と共にそんなことを言われる。一瞬何のことか分からなかったがそういえば招かれたのは俺で招いた当主からの挨拶が無いのは確かに失礼か。

特に気にすることでもないから了承の意を伝える。

気にすることでもないというか会わないで済むなら会わずに帰りたいというのが本音なのだがそんなことを言えるはずもない。

 

では、と顔を上げた花菱さんが目の前の武家屋敷風の日本家屋へ先導してくれるのでそれについていく。

豪邸と言うには少しばかり小さいがそこでも十分に広いそこに入ると、沢山のメイドさんと執事さんに出迎えられる、といったこともなく、道中ですれ違った人たちに会釈される程度で案内は進んでいく。

 

お屋敷を抜けて着いたのは先ほどまでの日本家屋と違ってコンクリートなどで建てられたまさに研究所といった雰囲気の建物だった。

そこで研究員さんに案内が引き継がれて検査着に着替えとうとう検査が始まった。

 

 

 

大小合わせて十をゆうに超える機械と対面し検査は進み、自分の服に着替えるまで体にナイフを刺されるようなこともなく検査は無事に終わった。

ひとまずは安心したが、…それにしても長かった。

本当に数が多かった。病院に普通に置いているような大型の身体検査の機械や魔法技能に関する測定装置といったある程度オーソドックスなものからなんでこんなものまでと思うような珍しいものまで使っていった。

その結果全部終えたのは数時間が経った頃だった。

 

再び屋敷に案内され待合室のような部屋で少し待つように言われる。

程なくして初老の執事さんを連れた女性が入ってきた。

察するに、というか順当にこの人が四葉家当主の四葉真夜だろう。

正直イメージと全然違った。世界でも恐れられるあの四葉家の当主だからさぞ恐ろしい人なのだろうと思っていたが実際は妖艶さを持つ綺麗な人だった。

だが何か様子がおかしい。部屋に入ってこちらを見るなり彼女は固まってしまった。困惑して彼女の後ろに控える執事さんを見るとそちらは急に固まってしまった主に怪訝な目を向けている。

どうしたのかといった雰囲気で彼は固まったままの彼女に声をかける。

そこでやっと気を取り戻した彼女はまだ少し戸惑ったようにこちらに声をかける。

 

「はじめまして、大葉零さん。

私は四葉家当主の四葉真夜と言います」

 

立ち上がって挨拶を返す。

向かいの席に座った真夜さんが葉山、と呼ばれた執事さんに紅茶を用意させる。

葉山さんが紅茶を用意する間言葉を発することなくお互い無言ですごい気不味かった。なにせずっと真夜さんがこちらを真顔でじっと見つめていたのだ。

なにか悪いことをしたわけでもなにか責められていた訳でもないが真夜さんが美人なせいか凄まれているような感覚だった。

それは紅茶が出てくるまでのたった一、二分のことだったがすごく長く感じられた。

 

運ばれてきた紅茶に一口つけてようやく真夜さんが口を開く。

 

「先程は挨拶もできず申し訳なかったわ。改めて四葉家へようこそ零さん。

さて、今日は貴方の身体検査、いえ調査といったほうが正しいかしら。そのために来てもらいましたがその理由などは知っているかしら」

 

「はい、俺に四葉の血が流れているから呼ばれた、とは聞いています」

 

「そう、それ以外のことは?例えばなぜ貴方が四葉で暮らしていなかった、とか」

 

首を横に振り答える。確かにそういった母さんの事情とかは考えもしなかった。

まあ特に気にしなかったということもあるけど。

 

「そう。ならその辺から話していきましょう。

まず貴方の苗字でもある『大葉』家は四葉から追放された家系です。第四研時代に遡るのだけれどその頃はまだ大葉家は存在しなかったわ。

その頃は優れた魔法師を生み出すことが最優先の課題だったのだけれどある時魔法師としての素質を持たない子供が生まれてきたわ。それが貴方の曾祖父にあたる人よ。

当時はその子供は必要ない、使えないからと殺処分することが大半の意見だった。けれど当時の当主であった父親は殺すのは忍びない、と生かしました。

当然四葉家内での立場は低く四葉の情報を一切漏らさない、という条件で四葉を去る権利を与えました。

その結果作られたのが大葉家というわけです」

 

話し終え紅茶に一口つけてこちらを見ると真夜さんは面白そうに微笑む。

 

「あら、思ったより反応が薄いわね。

そこまで知りたいことでもなかったのかしら」

 

バレた。正直そこまで自分の家系のルーツとか興味はなかった。けど機嫌を損ねるとなにをされるか分からないし間違っても顔には出さない。

 

「そんなに警戒しなくてもいいのよ。別に取って喰おうというわけではないし。

まあ、とりあえず今日はこのくらい話したら十分かしら。何か聞きたいことはある?」

 

警戒しなくてもいいと言われましても。四葉家という名前自体が警戒を煽るものでもあるのだし仕方ないだろう。

特に聞きたいこともないのでいえ、と首を横に振って応える。

 

「あらそうなの。ならこちらから質問はいいかしら?

お母様のことはこちらもある程度知っているのだけれどお父様は殆ど情報がなくて。

零さんは何かお父様のことを覚えてるのかしら?」

 

何故だろう、少し背中がゾワっとした。

だけど部屋の中で何か変わったようなものはない。

気のせいかと切り替える。

 

「何か覚えているどころか父は俺が生まれる前にいなくなってしまったそうで何も分からないんです」

 

「そうですか。それなら仕方ないですね。

なら今日はこれでお終いです。

他に何か気になったことがあるなら答えますけど…」

 

やっと終わりか。何もないから首を振って応える。

早く帰りたい。そんな気持ちを極力隠して再び案内してくれる花菱さんに連れられ帰路につくのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

四葉家の書斎に今日行った零の検査の結果を示す資料が並んでいる。

身長、体重から骨格や筋肉量、身体に関する異常はないか、さらには想子量や魔法の発動速度などの魔法技能までありとあらゆるデータが揃っている。

身体は健康そのもの。魔法師としての資質も軒並み高い数字を出している。精神干渉魔法に対する耐性も高く精神干渉魔法の使い手である可能性が高い。

大葉零個人における情報を全て含んだ報告書は彼が魔法適性の高い普通の人間であるということを示している。しかしその中に一つだけ極めて異常なものがあった。

 

「まさか二種類の想子パターンが検知されるなんて」

 

微弱ながら零の想子パターンのなかに全く別の想子パターンが検知されたのだ。

これは極めて異常なこと。本来なら一人が発する想子パターンは一つの形のみ。

それによって魔法を使った人間を特定することもできるし、親族との形も似通うためある程度なら家系を知ることもできる。

しかし今回零から検出されたもう一つはそういった関連性が見受けられない全く別の想子パターン。

 

さらにそのことに頭を悩ませる真夜の手元には一つの資料。

そこにはある人物についての情報が記載されている。驚くことにその人相は零とそっくりどころか瓜二つのものだ。

 

それは数十年前に突然四葉家に侵入した青年。

その時の傷が原因で死んだとみられる彼の死体は四葉家の敷地内で確認され回収されている。

零の年齢を考えると彼の子供ということはありえない。なにせ彼が四葉に侵入したのは零が生まれる以前、それこそ真夜が十代の時なのだ。

ならば二人の共通点はどこからやってきたものか。

そして真夜が視線を移した先には一つのCAD。

 

青年が持っていたそのCADは死体とともに発見され四葉はそれを解析しようとした。

しかしどういうことかプログラムにロックがかかっており終ぞ解析することはできなかった。わかったことといえばCADに使われていた材料が、当時主に大漢で使われていたものだということぐらい。

 

彼に関する情報は四葉の情報網を以ってしても少なく、得られたのは死体を解析することによって得られるデータと監視カメラに捉えられている分の使用魔法、そして実際に相対した当時の執事と真夜によるもののみ。

そのうちの一つ。青年の想子パターンについて零の調査と複合した驚くべき結果が出ている。

なんと零の想子パターンの片方と彼の想子パターンが99.9%の一致性を示したのだ。だが二人の間には遺伝子上の一致性は全く存在していない。

ならその一致性はどこから来たのか。

最も手がかりを得られそうなのは零の父親だが零は全く知らないという。戸籍情報を調べても彼の母親に結婚した事実はない。

九ノ瀬、或いは五芒ならば何か知っているかもしれないのだが彼らがそれを教えるかは別問題だ。彼らは金や物では動かない。教えてもいい、教えておくべきことならばこちらに情報が来るがそうでなければ決して口を開かない。

そしてその線引きがなんなのか分からないため彼らに頼る以外の方法を考える必要がある。

 

そうなると今最も有力なのは侵入者が持っていたCADだ。ロックを外すには何かしら鍵が必要なことは分かっている。零に見せれば何かしらの情報が得られる可能性が高い。

十数年前四葉家にやってきた青年と同じ顔をした得体の知れない少年。

調べても全然情報を手に入れられない。なにせ幼少期からつい先日までUSNAにいたのだ。流石にあちらの事については詳しいことまで調べられない上にそれ以前でさえ九ノ瀬家が外に出さないようにしていたため情報の絶対量が少ない。

青年の情報にせよ零の情報にせよ得られるなら僥倖。

 

彼から知り得る情報のどれだけが自分の求めているものか。その事に想いを馳せる真夜の口元には薄っすらと笑みが浮かんでいた。




ちなみに続きは一切書いていないので次回の更新も不明。
もしかしたら去年のうちに思いついた(思いついてしまった)SAOを先に書いてしまうかもしれない。
自分の計画性のなさに呆れてしまう。

お読みいただきありがとうございました。


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帰国編3

文章をしっかり書けないからダイジェスト形式になってしまった
反省


投げられた零が砂の上を転がる。追撃とばかりに脳天に踵落としが迫ってくるのを横に転がることで避け、腕の力で飛び上がり距離をとろうとするも追ってきたせいで体勢が整わず防戦一方になる。躱したり受け流そうとするも体勢が整っていないせいで数発目の打撃が決まり吹っ飛ばされる。

 

「よし、今日はここまで」

 

「ハアッ……ハアッ……ありがとう…ございました……」

 

仰向けで肩で息をしながら礼を言う零の道着はボロボロで土まみれになっていた。

四葉家への訪問から四日。この四日間零は九ノ瀬家でみっちり鍛えられていた。

九ノ瀬の血を一端でも引き継ぐ者として、五芒に庇護を得るものとして最低限身を守るための術を学んでいた。

空手や柔道などの格闘技を含めた総合的な武術、刀や槍などの武器術、暗殺術などの魔法を介さないものから精霊の行使や想子の扱い方などありとあらゆる技術を教わっていた。

 

こと魔法に関してはUSNAにいたときから訓練をしていて自信を持っていた零であったが流石は千年以上も続く五芒といったところか習得の難しい技術などに更なる高みを知ったのだった。

朝から晩まで疲れ果てても尚修行は続き体を酷使させられる。そうして九ノ瀬家から貰った真新しい道着はたった四日間のうちに何年も使い古したような見た目になっていた。

 

九ノ瀬や五芒からすれば零の評価はまだまだ、といったところであり学ぶべきことが多いどころかどれだけ時間を費やしても足りないかもしれないということで中学生の間は学校にも行かず修行することが決まってしまった。高校は零自信が行きたいということで通えることにはなったがそのための教育も必要ということで多少の苦労が増えた部分もあったのは仕方のないことだろう。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆

 

数日後

 

零は九ノ瀬家の当主の下に呼び出されていた。

 

「さて、九ノ瀬零。今後のあなたの扱いについて話していきましょうか。

まずは四葉との話し合いの結果ですが、あなたには九ノ瀬、ひいては五芒の一員として主に動いて貰います。

五芒の役割ですが前にもお話はしているので特に言われなくてもわかっているでしょう。ですが正式な一員として国に仕えるかどうかはあなたの判断に任せます。要するにとりあえずは軍の特別隊員のような形で五芒に所属して貰うと言うことです。

そして四葉についてですがそれは制限などはありません。すべてあなたの判断に任せることにします」

 

要約すると零はかなり自由に動けるということだ。九ノ瀬からの扱いについても九ノ瀬家に身を置く者としての最低限の役目のようなものだ。そこについては零に不満もなかった。

そしてこれからの予定についてもいろいろ伝えられたがとりあえずは中学を卒業する歳になるまでは戦闘等の様々な技能を身につける事が主なこととなった。

 

そして退室間際、当主は零以外の人間を退出させて言った。

 

「零さん、内側に飼っているモノと交代して貰ってもええかしら。

心配せんでも話をするだけだやから」

 

零は驚いた。これまでレンという人格がいることを見破られたことがなかったからだ。同様にレンも驚いた。零の内側から現実のことはある程度把握しており九ノ瀬家当主が千里眼のような能力を持っている事も知っていたがまさか自分のことを認知されるようなモノだとは思っていなかった。

 

二人は混乱しながらも体の主導権を入れ替えてレンの意識を表に出す。

 

「どうも初めまして。知ってるやろうけど九ノ瀬家当主の九ノ瀬天華といいます」

まずはお名前を教えてほしいんやけど」

 

「初めまして。俺はレン、呼ばれています」

 

「そう、レン君ね。単刀直入に聞かせて貰うけど君は何者や?

ただの二重人格って訳でもないやろ?たとえ二重人格でも全く別の想子を宿すことなんかない。

別の人格を外から持ってくるなんて何かしらの禁術を使っていることを疑わなければならない。君はどうなのかな」

 

神妙な面持ちで天華が訊ねる。

他人に自分の人格を宿す、自分に他人の人格を移すという手法など普通の手段では行えずおぞましい方法を使わなければ行えない。そんな事を行うのは何かしら後ろめたいことのある人間だけだ。

言ってしまえばレンは何を企んでいるのか、ということを聞き出したいのだ。

レンもその事情を知っている。

 

「詳しい事は言えませんが禁術を使っている訳ではありません。

この体の持ち主である大葉零とは違う人格ですが俺はすでに死んでいる人間です。言ってしまえば霊が憑依した状態とよく似たモノです」

 

簡単に自分と零の関係を説明してレンは己に悪意がないことを説明する。

転生したとは言えるはずもなくそのせいでレンの言葉には説得力が欠けてしまうがなんとか納得して貰おうと粘る。それが功を奏したのか天華はレンに二言三言注意して部屋から去って行った。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆

零視点

 

当主との面談のあと優さんたちのもとへ帰った俺は衝撃の事実を知らされていた。

なんと姉さんには婚約者がいるらしいのだ。今までそんな話を聞かされてなかったため驚いたがなにしろ九ノ瀬家の一員なのだ。国を守るだけでなく血を繋げていく事も必要なため婚約者がいるのも不思議ではない。

 

問題はその相手なのだが五芒を担う立場である九ノ瀬家との婚約者だから有名な出自の人なのだろう。

姉さん曰く頭脳明晰で文武両道の人らしい。その婚約者には妹がいるらしくそちらも頭がよく、そしてとてもかわいい人だそうだ。ちなみに婚約者はCADの扱いにも長けておりソフト面の開発も行っている人らしく、CADオタクとして会って見たくなった。彼らは時折九ノ瀬家を訪れるそうだが今のところ訪問してくる予定はなく最短で正月に顔を合わせることになるだろうと言われた。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆

 

正月、九ノ瀬家にて零の前には葵の婚約者兄妹がいた。

方や町中を歩いていれば道行く人全員が振り返ってしまうほどの美少女。礼儀正しくその立ち居振る舞いからは育ちの良さが伺え品行方正、深窓の令嬢といった言葉がよく似合っていた。

方や少女には及ばないが整った顔立ちとそれ以上に体つきや姿勢の良さから好青年といった印象の少年。

しかし少年の様子がおかしく零を見るなり驚いた顔をしていた。

 

なにやら零のことを知っているような感じの呟きをこぼすが零には特に心当たりがない。兄の様子に違和感を覚えた少女も黙ってしまい少し微妙な空気が流れ出しそうになる。

 

(零、この子って達也君じゃないか?ほら、昔真由美ちゃんから貰ったブレスレット直してくれた)

 

それは零がUSNAに行く前の出来事であった。忘れてしまっていたがレンの助言により思い出した零は恐る恐る訊ねる。

 

「も、もしかして達也・・・君?」

 

「あ・・・ああ。そっちは零、であってるよな」

 

驚いたように少女が少年の方を振り向く。

 

「お兄様、こちらの方とはお知り合いなのですか?」

 

今日会う人物とは初対面と聞かされていたのに何やら知っているそぶりのため驚くのも仕方がないだろう。

兄と呼ばれた少年は落ち着きを取り戻して話す。

 

「ああ。数年前に一度だけな。

改めて司波達也だ。よろしく」

 

「そうだったのですね。

初めまして、司波深雪です。よろしくお願いします」

 

「は、初めまして大葉零です。よろしくお願いします」

 

そうして姉の婚約者との邂逅は締まらない微妙な空気ではじまった。

 




お読みいただきありがとうございました


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