バレンタインのお返し (キラスト)
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バレンタインのお返し

俺、神田空太は今日バレンタインのお返しを買うために車で神戸まで来ていた。あいかわらず三咲先輩の行動力には感服するばかりだ。

『後輩君、君は一体誰にお返しを渡すんだ?』

『そんなのわざわざ聞かなくても分かっていることだろう?なあ、空太。』

今、俺以外の車の中にいるのは三鷹仁と上井草美咲。俺と同じ水明芸術大学附属高等学校の先輩たち。通称スイコーと呼ばれる学校に一般の学生寮ともう一つボロい学生寮のさくら荘がある。さくら荘に住んでいる人たちは学校で問題を起こしたり規則を破った人たちが集められるいわゆる問題児の巣窟と呼ばれている。なぜ、こんな特に変哲もない俺が問題児の巣窟にいるのかというと、入学したときに俺は猫を拾ってしまった。もちろん一般の学生寮ではペットを飼うのはもちろん禁止されている。それでも、俺は捨て猫を見捨てることができずに黙って一般寮でのぞみ(猫の名前)を飼うことにした。ところが一週間としてばれてしまった・・・・ そこで校長室に呼び出されて選択を迫られた。猫を捨てるのか、一般寮を出てさくら荘に移るのかを選べてをいわれて俺は迷うことなく一般寮を出てさくら荘に移ることになった。そこで、俺の人生にとって忘れたくても忘れらない物語がここから始まった。

 

『三崎先輩は容赦なくズカズカ聞いてきますね。あと、仁さん余計なことは喋らないでくださいね。』

『私が遠慮なんかしたことがあるか!!』美咲先輩が運転しながらそんなことを言ってきた。美咲先輩がそんなことしたら雨ならぬ飴が降るだろう・・・

スピードメーターを見ると120キロ出している・・・・ここは高速道路だから問題な・・・あるかもしれないけど美咲先輩なら大丈夫だろう。

『それで、もう買うものは決まっているのか?』

『まだです。なので仁さんにご教授していただきたいと思って。』 仁さんは一時期五股していたほどの女慣れをしている。

『わかった。なら下着を買いに行こう。』

『仁さんに頼んだ俺がバカでした。』

『冗談だよ。まあ、ましろちゃんなら食べ物をあげたら喜ぶだろう。七海ちゃんならダイエットを気にしていたから食べ物は辞めていた方がいいだろう。

小物とか飲み物とかにしておいてた方が無難かな。』

『ひとまず、真面目なアドバイスありがとうございます。それと、あえて聞きますけど俺別に椎名と青山からもらったとか言ってませんけど?』

『なんとなくだよ。なんとなく。』仁さんは冷静にはぐらかされた。

そう。仁さんが思っている通りに俺はバレンタインの時に椎名ましろと青山七海からチョコレートをもらったからだ。二人とも俺と同じさくら荘に住んでいる人たちだ。

椎名ましろは小さいころから絵を描く才能を持っていたので、小さいころから絵を描くことしかしてない。小さいころからそんな生活をしていたせいで生活についてろくに何もできない生活破綻者なのだ。なので、俺がましろの身の回りの世話をするましろ当番というものを押し付けられた・・・

もちろん。着替えもろくにできないやつが料理なんて夢のたま夢なのだが・・・

去年はキノコの山をもらったが。今回はちゃんと綺麗にラッピングされており、どう見ても市販ではない感じだ。っとなると可能性は一つしかないが一応聞いてみる

『お前これ作ったのか?』

『そうよ。』

驚くことに手作りだった。俺は鳩に豆鉄砲くらったまま椎名にさらに聞いた。

『ましろ、料理できるようになったのか?』

『ええ。ラッピングは出来たわ。』

『ラッピング?・・・ それ以外の工程は?』

『ラッピングをしたわ。』

バレンタインには似合わない白黒のモノトーンのラッピングがしてあった。こんなにバレンタインに似合わない包みを選ぶの本当に芸術家なのか疑うレベルだぞ。

『誰が作ったんだ?』

『七海よ』

『お前の手作りではないんだな・・・』

『中を見てみて。』俺は椎名の言ってることが分からないまま箱の中身を見た。そこにはチョコで作った手の形があった。

『手作りでしょ?』

『あー たしかに手作りだな・・・・!!』

『空太、何か不満でもあるの?』

『期待した俺が馬鹿だったよ。』まあ、それでも椎名からもらったことには変わりないから女の子からもらうっていうのはとても嬉しいことだ。

俺は、椎名からもらったチョコレートを持ったまま二階に上がった。その時、部屋の前には青山が俺の部屋の前で立っていた。何か胸のところに抱きしめているものがあるが・・・

『青山、俺の部屋の前で何してるんだ?』

『ひゃっあー 神田君急に後ろから話しかけんといて。』

『そんなこと言われてもどう、声かけろっていうんだよ。』

『その手に持っているのはましろからもらったんやね。中身見てびっくりしやろ?』

『ああ、まさかチョコで手を作るとはな。』

『私に手伝ってお願いされて、完成をみたらうちもびっくりしたよ。』

『でも、これ青山がほとんどやったんだろ?』

『まあ、そうやね。型に流して冷蔵庫に入れてくれたりましろも手伝ってくれたよ。』

『お前が手伝いをお願いされたんじゃなかったけ・・・』

今俺と話しているのは青山七海。大阪から声優になるために上京してきたのだ。とっても真面目で優しい俺と同じクラスの同級生である。夢に向かっている姿はとても輝いている。青山の武勇伝としてはノーパンダッシュが有名である(笑) (気になる人はアニメを見ればわかります。)

『ところで、俺に何か用があるから部屋の前にいたんじゃないのか。』

『そうやった。。えっとーー その・・・』青山は手に持っていた物を後ろに隠しながら俯いている。

『こ、これ、あ、あげる!!』

それは、椎名のと違って可愛らしくピンク色の包みに端っこにリボンがしてあった。

『これは??』俺はあえてそういうことを聞いた!!

『神田君、私に言わせたいために知らないフリしてるでしょ。 先にましろからもらってるくせに気付かない方が馬鹿だわ。』

青山にはバレバレだった....(笑)

『わかった。青山には敵わないな。 今日はバレンタインってことでそれはチョコレートか?』

『うん。ただ、先に言っておくけど義理で渡すんだからね。勘違いしないでよ!!』

そう言いながら青山は俺にチョコを渡して、そそくさと1階に戻って行った。俺も自分の部屋に戻って青山からもらった包みを開けてみるとそこにはハード型のしたチョコレートがあった。こういうのをもらうともらう方もとても恥ずかしくなる。(汗)

 

そんなこんなで俺は二人からチョコをもらったから仁さんと三崎先輩にホワイトデーの相談したら神戸に行くことになって2時間半高速を走り続けてやっと着いた。

『いまさらですけどなんで、神戸なんですか?』

『私が行ってみたかったから。』宇宙人の考えることはやっぱり地球人には分からなかった!!

『まあ、いいじゃんか。たまに遠征にいくのも悪くないぞ。』

『もう、開き直りました・・・』

『じゃあ、ここなんかいいんじゃないか?』

仁さんに指をさされたところはましろの好きなバウムクーヘンの専門店みたいなものだった。そこには、プレーンのものやピンク色のしたものなど色とりどりなものがあった。

俺は、その中で何種類のが一度に楽しめるというバラエティーパックというものを買うことにした。

『ありがとうございます。お会計は1500円になります。』

そう言われて俺は2千円を出して、おつりを待っていると横から・・・

『ありがとうございます。お会計は1万円になります。』

俺は耳を疑った・・・バウムクーヘンに1万円・・・・

誰がそんなもの買うやつがいるのか・・・ ふと、横を見ると宇宙人(美咲先輩)が買っていた。それもただのバームクーヘンではなくよく結婚式なんかで見かけるウェデイングケーキ並の大きさでバームクーヘンをピラミッド状に乗せたものだった。

俺はお釣りをもらって宇宙人に聞いた。

『美咲先輩、そのウェデイングバームクーヘンどうするんですか?』

『さくら荘のみんなにお土産だよ♪』俺とは違ってスケールがでかい・・・・ これってどうやって運ぶんだろう?

とにもかくにも椎名のお返しは買えたから、次は青山のだけど・・・

『仁さん、何がいいと思います?』

『そうだな~ あそこなんかどうだ?』

仁さんが指したのは下着売り場だった。もちろん女性用の・・・俺は携帯を片手に持ち110番をしようとしたところで仁さんに携帯を奪い取られて、美咲先輩の方に投げられて、美咲先輩がキャッチをしたと思いきや携帯を胸に吸い込まれるように谷間に挟まったのだ・・・俺はどうしようもなく諦めるのだった。

そんな、ドタバタとした買い物・・・っていうより旅行みたいなものはあっという間に終わった。青山にはいつも声優になるための練習を頑張っているので喉いいと言われる紅茶のティーパックのセットを買った。俺は美咲先輩と仁さんの相手と長旅のせいで車の中でぐっすりと眠ってしまった。こんな人生が大人になっても続いてみんなと一緒にバカやっていきたいと空太は改めて思う旅行であった。

 



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