ドラゴンクエストⅥ〜ターニアの冒険記〜 (ディア)
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プロローグ

またやってしまいました…ですが後悔はしていません!


 私の名前はターニア。小さな村に住む村娘なんだけど私には夢がある……その夢とは兵士になろうとしている兄を支えて行きたいとおもう。その理由は──

 

「うわーっ!!」

 

 

 

 ドシンッ! 

 

 

 

 私はその音を聞いて慌ててベッドの様子を見ると案の定私の兄……レックお兄ちゃんがベッドから落ちていた。……このようにお兄ちゃんはドジな部分もあって、一人でやっていけるか心配だから……

 

 

 

「大丈夫お兄ちゃん!?」

 

 そう言って私が駆けつけるとお兄ちゃんの口が開く。

 

「いや……また変な夢を見て医師……じゃない、石にされる夢を見たんだ」

 

「お兄ちゃんが医者? 似合わないね」

 

 お兄ちゃんと話したい為に私はあえてボケる……

 

「だから医師じゃなくて石だよ。ストーン! ロック! OK?」

 

 石に限らずとも名詞には他の呼び方がありそれは地方によって違う。例えば都会などの魔法が発展したところになると石はストーンと呼ぶようになるし、火山の研究家だと石をロックと呼ぶこともあるらしい。

 

「それよりも村長さんが呼んでたよ」

 

 私はお兄ちゃんが村長さんに呼ばれていたことを思い出し、それを伝えるとレックお兄ちゃんは顔を真っ青にした。

 

「やばっ忘れてた!」

 

 そう言ってお兄ちゃんは私の服に着替え……って何やっているの!? 

 

「お兄ちゃん! それ私の服!! お兄ちゃんの服はこっち!」

 

 私は慌ててお兄ちゃんの服を渡し、私の服を取り上げた。取り上げなかったらお兄ちゃんが女装趣味の変態だと思われる。流石にブラコンだと主張している私でも女装趣味は受け入れられない。

 

「ご、ごめん!!」

 

 渡した服に着替え、慌てて飛び出した。

 

「行ってきます!」

 

 お兄ちゃんがそう言って後ろにいる私の方を向いて走った。

 

「お兄ちゃん、前見て!」

 

 

 

 グニャ……

 

 

 

 生々しい音が私の耳の中に響き渡る。

 

「げっ!? 犬の糞踏んじゃったよ……」

 

 お兄ちゃんの眉はハの字になりショボン……となりそれを見て私はお兄ちゃんの靴を洗うことにした。

 

「お兄ちゃん靴洗うからしばらく待ってて」

 

 そう言ってお兄ちゃんの靴を脱がし、靴を洗う準備をする。

 

「ごめんな……ターニア」

 

「なんでもないよ。このくらいは」

 

 別に素手で洗う訳じゃないし、少し時間がかかるだけのことなんだからお兄ちゃんが謝る必要はない。それに元々お兄ちゃんのドジさは知っているから。

 

 

 

 数分後……ようやく靴にくっついていた排生物を取り除き、私はピッカピカの靴を渡した。

 

「はい、今度は前を向いてね」

 

「ああ、行ってくる!」

 

 

 

 この時、私はこの後お兄ちゃんと長い長い旅をすることになるとは思ってもいなかった。




ターニア「はい!という訳で『ドラゴンクエストⅥ〜ターニアの冒険記〜』連載スタートしました!」
レック「原作沿いの再構成ものですが温かい目で応援してください!」
ターニア「あっ…時間だよお兄ちゃん。」
レック「本当だ…これから応援よろしくお願いします!」
ターニア「感想、評価楽しみに待っています!」


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冒険の始まり

 ドアが開く音を聞いて振り向くとお兄ちゃんがそこにいた。

 

「あっ! おかえり! ところで村長さん、お兄ちゃんになんの用事だったの?」

 

「民芸品を売った金で精霊の冠を買いに行ってこい。だって」

 

「へえ……お兄ちゃんが精霊の冠を買いに? すごーい! 大役じゃない」

 

 伝統で精霊の冠は年々買わなきゃいけない。その精霊の冠は山の麓──つまりこの村は山の頂上付近にあるから体力が必要になるし、その上魔物に襲われることもあるから大変なんだよね。

 

 それにしてもこれまで精霊の冠を買ってきたお爺さんは去年の傷が元で出来なくなったって噂は本当だったんだ。

 

「そんな大役じゃないよ。魔物もそんな凶暴じゃないし僕からしてみればお使いみたいなものだよ」

 

 お兄ちゃんは満更でもなく得意げに笑った。

 

「ねえ、お兄ちゃん。私も付いて行っていい?」

 

「ダメに決まっているだろ!?」

 

 お兄ちゃんは私の提案を即却下した。

 

「だってお兄ちゃん、近くの店にお使いに行くだけで何回も財布なくしたりしているよね?」

 

 私はジト目でお兄ちゃんを見る。本当にお兄ちゃんはドジなんだよね。例えば薬草を買ってくるように言えば財布をなくすのは当たり前。その代わりに薬草を自前で取ってきてボロボロになる、なんてこともあった。今回、村長さんには悪いけど人選ミスだと思う。

 

 

 

「うっ!? それはそうだけど……ターニアには精霊の使いって役割があるだろう?」

 

 お兄ちゃんは話を逸らし、私の役割、精霊の使いのことを追求してきたけど大丈夫。

 

「あれならお兄ちゃんが帰ってきた時に準備するらしいから問題ないよ。むしろ私がフォローするから予定よりも早く出来るかもしれないよ?」

 

「ぐっ……だけど……」

 

「お兄ちゃんも男らしくないわね。男なら魔物から襲われても守ってやるよ! くらいの気迫でないと!」

 

「あーもーっ! わかった、わかった! 連れて行くよ連れてく! その代わり、僕から離れないでよ!」

 

「わーい! ありがと、お兄ちゃん♡」

 

 こうして私はお兄ちゃんとともに精霊の冠を買いにいくことになりました! 

 

 

 

「きゃっ!?」

 

 いきなり魔物に後ろから襲われ、私は尻餅を付いてしまいました。

 

「危ない! ターニア!!」

 

 そう言ってお兄ちゃんは魔物を倒して私を助けてくれた。

 

「大丈夫? ターニア」

 

「ありがとう、お兄ちゃん」

 

「ターニア、無理にとは言わないけど魔物が襲いかかってきたらちゃんと反撃するんだよ。このひのきの棒をあげるからそれで攻撃して」

 

 お兄ちゃんは私にそう言ってひのきの棒を渡した。

 

「うん。できるだけ自分の身は自分で守れるようになる」

 

「それじゃ行こう──と言いたいところなんだけれど、早速お出ましのようだね」

 

 お兄ちゃんがそう言うと木のようで根っこのような魔物が現れた。

 

「ターニア! とりあえず魔物に向かってその棒を振って!」

 

「うん!」

 

 私はその魔物に近づき、ブンブンと棒を振った

 

「ギッ!?」

 

 すると棒が当たり、一発で魔物がいなくなった……

 

「会心の一撃を最初の一発でやるなんてターニア、結構素質あるんじゃない?」

 

「えへへ、そう?」

 

「僕だって急所はマグレでしか当たらないんだからそうだよ」

 

 そう言ってお兄ちゃんは私の頭をポンポンと撫でた。良いな……この感触。

 

 

 

「そういえばランドの姿が見えないけどどこいったのかな?」

 

 それから道中、魔物がこなくなったのでお兄ちゃんに話しかけランドのことを聞くと眉を顰めて指を指す。

 

「ランドはあそこだ……」

 

 そこにはランドがいて、ぐーすかと昼寝していた。確かに魔物もあんまり凶暴じゃないし、気持ちいいけど仕事はどうしたの? 

 

「ん? その髪の色、レックか……」

 

 ランドは大きなあくびをして私に話しかけた。寝ぼけているんだね……そう言うところはお兄ちゃんと一緒かな? 

 

「この辺は危ない魔物もいねーし、気持ちいいから昼寝するには絶好のポジションなんだぜ。おっと、親父には内緒にしてくれよ? 仕事しろってウッセーしな」

 

 そろそろカミングアウトしよ。

 

「ランド? 私ターニアだよ?」

 

 ランドは目をバッチリと開け、私をまじまじとみた。

 

「……なんでターニアちゃんがここに!?」

 

「精霊の冠を買いにね」

 

 私がそう言うとランドは腕で×を作り、私に迫った。

 

「ダメだよ! ターニアちゃん。今すぐ村に戻んないと危ないよ!!」

 

 村に戻ってもずっと待っているのはつまらないし、何よりもお兄ちゃんが心配。

 

「さっき危ない魔物もいねーしとか言ったのは誰?」

 

「それは俺だけど流石にターニアちゃんは危ないよ!」

 

 どうしてランドはこうも過保護なんだろう。子供扱いされているみたいで嫌だよ……

 

「じゃあお兄ちゃんの面倒見切れるの? お兄ちゃんって相当ドジだから私がこうやって付いて行っているって訳」

 

「確かにレックのドジさは半端ないけど!」

 

「ターニアもランドも本人の前でこんなこというなんて結構酷いよね」

 

「お兄ちゃん事実は認めようよ。それよりもランドは仕事しないとお父さんに言いつけちゃうよ?」

 

「その時はターニアちゃんも村に戻る!」

 

「私を連れて村に戻ろうとしたら覚悟してね? 有る事無い事言うから」

 

「黒っ!? 俺のターニアちゃんがこんなに黒くなっているよ!?」

 

「誰がランドのターニアだ!!」

 

 あ、ようやくお兄ちゃんが突っ込みを入れた。

 

「とりあえず、ランドは村に戻っててよ。ターニアは僕が守るから」

 

「はぁ……わかったよ。レック、ターニアちゃんのことを頼んだぞ」

 

 ランドは村に戻り、私達は途中襲いかかってくる魔物を倒しながら順調に進んでいった。

 

 

 

「これはこんぼう? 結構良い武器だけどターニアには向かないよね?」

 

 宝箱の中身を取り出すとこんぼうが中に入っていたけれど私には無用の長物だった。

 

「うん、そんな武器だったらこのひのきの棒を振り回してた方が良いと思うよ」

 

 こんぼうは見た目からして叩き潰すような感じで非力な私には合わないと感じ、お兄ちゃんに譲った。

 

「そっか、それじゃかっこ悪いけど僕が使うよ」

 

 お兄ちゃんはそう言って武器が素手からこんぼうになり頼もしく見えた。

 

「カッコ悪いからって好き嫌いする人よりかはカッコいいよ、お兄ちゃん」

 

「ハハハ……照れるなそういうのは……っと来たよ!」

 

 デカいイモムシに、さっき私が倒した魔物、それとぶちスライムが現れ襲いかかってきた。

 

「よっ!」

 

 お兄ちゃんはイモムシを潰し、私はというとぶちスライムを相手にしていた。

 

「このっこのっ!」

 

 二発当たってぶちスライムは消え、もう一頭の魔物を探してみるとお兄ちゃんを不意打ちしようとしていた。

 

「危ない! お兄ちゃん!!」

 

 私はひのきの棒をできる限りの力で振り、その魔物を倒した。

 

「ふぅ……助かったよターニア」

 

「さっき私を助けてくれたお礼だよ! お兄ちゃん」

 

「ありがとうな、ターニア」

 

 またお兄ちゃんの頭ナデナデが炸裂し、私を心地よくさせる。

 

「えへへ……」

 

 

 

 そんなこんなで麓の村に着いて、お兄ちゃんに確認を取った。

 

「そういえば民芸品は大丈夫なの?」

 

 お兄ちゃんは袋を漁ると、顔がどんどん真っ青になっていった。

 

「……ハハハ」

 

 お兄ちゃんは私に対して乾いた笑いしか取れずにいた。

 

「お兄ちゃん?」

 

 私は有無を言わせない声でお兄ちゃんに尋ねた。

 

「民芸品落とした!!」

 

「そんなことだろうと思った……」

 

 私達は落とした民芸品を探す為に元に戻った。

 

 

 

「民芸品〜民芸品〜どこだ〜?」

 

 お兄ちゃんはそんなことを言いながら探す。流石にゴミ箱にはないと思うよ? お兄ちゃん? 

 

「あんた達、ライフコッドの出身かい?」

 

 するとお婆さんが私達に声をかけてくれた。

 

「そうですけど……?」

 

「あんた達の民芸品なら確か魔物が持っていた気がするよ」

 

「ホントですか!?」

 

 それを聞いて私は思わず身を乗り出して尋ねる。

 

「でも結構強そうだったから装備は揃えて置かないと危ないよ」

 

「確かに……」

 

 今の装備ではあのタマネギの魔物や盾を持っているホビットもどき、ドクロを常にかかえている魔物も手こずっていた。

 

「その魔物は西の先の森にいたから気をつけていくんだよ!」

 

 そう言ってお婆さんは立ち去り、私達は西の先の森に行くよりも先にバザー会場へと戻ることにした。




ターニア&レック「ターニアとレックの後書きコーナー!」

ターニア「早速ですがお気に入り登録、評価してくださった方々ありがとうございます!」
レック「作者は前回は文字数が少ないのでそんなに期待していなかったからお気に入り登録あるいは高く評価してくださったことに感動してます!」

ターニア「はい、という訳で私の冒険はお兄ちゃんのドジから始まりました。」
レック「ドジ言わないでよ…結構ナイーブなんだよ?」
ターニア「前回も今回もそうだったけどドジに始まってドジに終わる…それがお兄ちゃんなんだから仕方ないと思うよ?」
レック「確かにこの小説内では僕のドジはすごいけどさ…」
ターニア「言い訳無用!だいたいお兄ちゃんは」
レック「ほらターニア、もう時間だよ!」
ターニア「うっ…仕方ないけどこれからもよろしくお願いします!!」
レック「お気に入り登録、感想や評価もよろしくお願いします!」


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大穴の中じゃ私達は幽霊?!

 バザー会場から西の先の森へと移動するとそこには大きな穴があった。

 

「なんでこんな穴が?」

 

 お兄ちゃんの疑問はともかく、私はあることに気がついた。

 

「ねえお兄ちゃん、あそこに誰がいない?!」

 

 中年の男の人が穴の淵に必死にしがみついていたのを見て、私は駆けつけた。

 

「待てターニア! 魔物がいるぞ!」

 

 お兄ちゃんの警告は私を止まらせ魔物が大穴──つまり私の方へと向かって突進して、私を突き落とした。

 

 

 

「ターニアァァーッ!!」

 

 私は状況を理解出来ずに悲鳴すらもあげずそのまま落ちていった。

 

 

 

 ふと気がつくと私は真っ黒な空間の中にいた。これが天国ってところなのかな? 

 

『ターニア、起きましたか?』

 

 誰?! どこにいるの?! 

 

『そう警戒しないで下さい。私は貴女を助けに来たのです。諸事情によりどこにいるかは教えられません』

 

 もしかしてここって天国なの? 

 

『いいえ、違います。ここは私の創り出した空間と呼ぶべきものでしょう』

 

 夢じゃないの? 

 

『まあ詳しく言えば違いますがそんな感じです。それよりも私は貴女に話したいことがあって呼びました』

 

 話したいこと? 

 

『貴女は近い日にお兄さんと共に旅をするでしょう。その旅は途轍もなく困難になるでしょうが絶対に挫けずにお兄さんを勇気付けて上げて下さい』

 

 もちろん。お兄ちゃんの情けない姿はドジだけで充分だから。

 

『ふふっ……では私はこれにて失礼します』

 

 今度は姿を見せてお話しをしよう? 

 

『考えておきます』

 

 周りの景色が消え始め、私は眠くなり眠りについた。

 

 

 

「──ニア、ターニア!」

 

 目を開けるとお兄ちゃんが半透明な姿で私に話しかけていた。

 

「あれ? お兄ちゃん、幽霊になったの?」

 

「身体はこんなんだけどちゃんと触れるし、僕達が幽霊だってことはないと思うよ」

 

「ふーん、そういえばあのおじさんどうなったの? あの魔物は?」

 

「魔物については僕が倒したよ、どうやらあの魔物が民芸品を持っていたみたいでこの通り、ちゃんと回収しておいた」

 

 その民芸品も半透明でとてもじゃないけど売れるとは思えなかった。

 

「あのおじさんは僕が助けたら入れ替わるように僕が落ちちゃってね。気がついたら半透明になっていたんだ」

 

 入れ替わるようにって、お兄ちゃんってやっぱりドジ? 

 

「私もお兄ちゃんも大穴に落ちたってこと?」

 

「簡単に言えばね。それよりもわかっているのはここがさっきの場所とは大違いみたいだ」

 

「大違いってことはさっきの村もないの?」

 

 お兄ちゃんの言うことはあまり理解出来なかった。いや理解したくなかったのかもしれない。もしかしたら本当に今から長い旅になるっていうことになったのかもしれないから。

 

「東から海の匂いがするからないだろうね。さっきとは全然地形が違うよ」

 

「とりあえず歩いてみよ! お兄ちゃん!」

 

「ん~……幸いなことに近くに町もあるし、そこへ行こう」

 

 

 

 町へ着き、私は近くの人にここがどこなのか尋ねてみた。

 

「すみません、ここどこですか?」

 

 尋ねるとその人は周りを見渡し首を傾げた。

 

「? へんだな? 誰かに話しかけられた気がするが……気のせいか?」

 

 そう言ってその人はその場から立ち去ってしまい、私達は首を傾げた。

 

「お兄ちゃん……私の声が小さかったってことはないよね?」

 

「間違いなく聞こえたはずだよ。でもあの人には聞こえなかったみたいだ」

 

「他の人にも尋ねてみる?」

 

「そうだね」

 

 しかし結果は変わらず、誰一人私達の声が聞こえなかった。

 

 

 

 しばらくして私は疲れ、お兄ちゃんも疲れが見えていた。お兄ちゃんを休ませる所はないかな? あった! 

 

「ねえ、お兄ちゃん、あそこで休もう!」

 

 私はすぐにその場所へと駆けて行った。

 

「ああ、こらっ……全くターニアは……」

 

 私とお兄ちゃんの追いかけっこの途中、マスクをかぶったおじさんと太ったおじさんが話しているのを見かけたので走るのを止めた。

 

「きゃっ!?」

 

「うわっ!?」

 

 当然お兄ちゃんは私にぶつかり、私を覆うように倒れた。

 

「ごめん! ターニ──」

 

「……しっ! あの人たち変だよ……?」

 

 私はお兄ちゃんが大声を出そうとしたので咄嗟に口を閉ざし、見かけた二人を指差す。

 

「いいか? 俺が思うにあの家はかなりの金持ちとみた……そこで俺はあの娘を……」

 

「ええっ!? それじゃ兄貴、人攫いをっ!?」

 

「バカ! 声がデカいぞ! 人に聞かれたらどうするんだ!」

 

 バッチリ聞こえているよ。でも今の私達って姿も見えないんだよね。

 

「お兄ちゃん。大変なことを聞いちゃったね」

 

 お兄ちゃんってドジだけどなんだかんだ言って頼りになるし、相談するのが一番良い。

 

「とりあえずその家に行ってみようか」

 

「そうだね」

 

 

 

 その家に入ると私の前にわんちゃんが寄ってきた。

 

「くぅーん……」

 

 わんちゃんは私の横で伏せながら見つめていた。

 

「あら? ベスったら……誰かきたと思ったら誰も来ていないじゃないの。変なこね……さあいらっしゃい」

 

 そのわんちゃんことベスを連れて彼女は椅子に座った。

 

「あの二人が言っていた娘さんってこの人の事かな?」

 

 間違いないよね……他に女の人なんていないし……

 

「そうだろうね。でもあの人も僕達の事が見えていなかったから阻止するのは無理だと思うよ。ここは諦めて他の所に行こう」

 

「うん……」

 

 私はその人を助けられない無力さが嫌になってブルーになった。

 

 

 

 男の子と女の子が井戸で遊んでいるのが見え、私達はそれを見つめていた。

 

「あ~あ……この井戸で遊ぶのも飽きてきたな……」

 

 男の子が井戸から出ると女の子に愚痴って不満を漏らした。今の子供って恵まれているのね……

 

「そうでしょ? だから今度北の岬にある夢見る井戸に行ってみない?」

 

 夢見る井戸……? 

 

「それはダメだよ。絶対行くなってママに言われているだろ? あそこに行って帰ってこれなくなった人もいるんだよ?」

 

「そんなの大人のついた嘘よ」

 

 やたらと現実味がある事を言わないで! 怖いよ!? 

 

「夢見る井戸か……どうやらそこに帰る道はありそうだ。ターニア行こう!」

 

「うん!」

 

 こうして私達は夢見る井戸へ向かったは良いけど……

 

 

 

 その道中に現在進行形で魔物に襲われています。

 

「なんだ!? こいつら……僕達の事が見えるのか!?」

 

 それが私達の一番の疑問で人には見られないのに魔物に見られるという事。

 

「しかもこの魔物達あっちよりも凶暴だよっ! お兄ちゃん!!」

 

 私はぶちスライムよりも小さいけど凶暴な青いスライムをひのきの棒で叩いた。

 

「あのバザー会場で銅の剣買っときゃ良かった!」

 

 グチグチと言いながらもなんとか魔物を倒すと頭の中でホイミやスカラと言った僧侶さんが使う呪文を使えそうな感覚を得た。

 

「ホイミ……」

 

 私はすぐにかすり傷をホイミで治した。

 

「ターニア、ホイミが使えるようになったの?」

 

「なんとなくだけどね。お兄ちゃんも使えるでしょ?」

 

 ちなみにお兄ちゃんはここに来る前から使えるようになっていた。ズルいよね素質がある人って。

 

「いや、まあそうだけどさ。ターニアがホイミを使えるってことは回復役が多くなって良かったな~って思ったんだよ」

 

「そっか」

 

 私は笑うとお兄ちゃんは少し顔を引きつらせ、私達は夢見る井戸へ向かった。

 

 

 

 ~夢見る井戸~

 

 北の岬にある倉庫の中へ入ると井戸が見つかった。

 

「これが夢見る井戸……」

 

 その井戸は不思議と光輝いて、私達を魅了させるような神秘な力を感じさせた。

 

「どうやったら元に戻るんだ?」

 

 お兄ちゃんはそう言って井戸の周りをジロジロと見る。……焦れったい! 

 

「えいっ!」

 

 私は井戸の中へと飛び込んだけれど井戸の中は変わっていなかった。

 

「これ詐欺じゃないの?」

 

 私はそう言いながらロープを掴み、登っていく……詐欺って言葉は本来別の意味で使うけど気にしちゃいけない。

 

「えっ!?」

 

 登り終え、井戸の中から出ると先ほど室内だったはずが今では屋外となっていた。

 

「ターニアァ……」

 

 お兄ちゃんも私を追いかけて来たのかそう言って井戸の中を出て、私の頬っぺたを掴んだ。

 

「お兄ひゃん?」

 

 私は嫌な汗をダラダラと流していた。その理由はお兄ちゃんの目が笑っていないのに笑っていて怖いからだ。

 

「ターニア……なんであんな無謀なことをしたんだい?」

 

「お兄ひゃんふぁひれったくって……ふい……」

 

「お仕置き執行!」

 

「いひゃいいひゃい! お兄ひゃん〜ひゃめ〜!!」

 

 その後お兄ちゃんのお仕置きは私が半泣きになるまで止まらなかった。




ターニア&レック「ターニアとレックの後書きコーナー!」
ターニア「はい、というわけで民芸品も取り戻せたことだしこの小説の連載も終わり…」
レック「なわけあるか!たった3話で終わりってどんだけやる気ねえーんだよ!それに作者はⅥを一からやり直しているんだ!こんなところで終わったら永遠に復活出来ないよ!!」
ターニア「え〜…だってね?この小説相当不人気だよ?評価は高かったけれど感想はないし、お気に入り件数も伸びない…これなら作者さんがⅧ原作の『チャゴス?いえチャールズですよこいつは!!』の連載復活に専念すれば良かったってボヤいてたよ?」
レック「作者は下書きすらもやっていないのに連載復活?無茶だよ…それは。」
チャゴス「作者に無茶という文字はない!作者はストレスで倒れたりキレたりすることはあっても過労で死ぬことはない!」

レック「なんでいるの!?」
チャゴス「特別ゲストとして呼ばれた気がしたんだ。」
レック「帰れ!」

数分後…

ターニア「さて、ハプニングもありましたが作者によるとまだ続けるようですのでご安心してください。」
レック「それじゃ、これからも応援よろしくお願いします!」


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精霊様と私とお兄ちゃんと

 井戸の場所から南の方角をみると見たことのある景色が見え、本当に戻ったんだと実感し、バザー会場へと戻っていった。民芸品はお兄ちゃんがドジしなきゃバザー会場でとっくに売り終わっているはずだったんだけれどね……

 

「おいお兄さん達、この盗賊の鍵を買わないかい? 今なら3000Gのところ、2000Gで売るぜ!」

 

 そんなにお金持ってないよ! 

 

「バカ言わないでくれ。もっと安けりゃ買えるんだけどな」

 

 お兄ちゃんがそう言って頭をポリポリとかく。

 

「それじゃ1000Gでどうだ!」

 

「もっともっと!」

 

「300だ! これで買ってくれるよな!?」

 

「あと一押し!」

 

「餓死しろってのか? 流石に無」

 

「おじさん……」

 

 流石に無理といいそうになったから私は少しでも安くする為に上目遣いでおじさんを見た。

 

「ぐっ……負けたぜ! 200Gだ! だが流石にこれ以上は下げられんから覚えとけよ!」

 

「ありがと♡おじさん!」

 

「くぅーっ!! お嬢ちゃんの笑顔が憎らしいぜ!!」

 

 おじさんの笑顔は光輝いていた。

 

 

 

 とまあこんな感じで盗賊の鍵を買って民芸品を売りさばき、私達は精霊の冠を貰った。

 

「おじさん、本当にいいの?」

 

 その作った職人はなんとお兄ちゃんが助けた人であり、お兄ちゃんを落としちゃった罪悪感からタダで譲ってくれた。

 

「いや受け取ってくれ! でないと俺は他に詫びる方法がないんだ!」

 

 おじさんは職人というだけあってなかなか頑固だったので私達はそれを素直に受け取った。

 

「それじゃ頂きます」

 

 お兄ちゃんが受け取り、私達は元の場所へと戻ることになった。

 

 

 

「よいしょっ!」

 

 早速さっき貰った盗賊の鍵を使ってドアを開き、宝箱を見つけた。

 

「これって微妙」

 

 世の中そんなに甘くはなく、宝箱から出てきたのは薬草とか服とか微妙な物ばかり……すでに手に入れている物もあるから微妙と言わざるを得なかった。

 

「ターニア、もう行こう」

 

 お兄ちゃんがそういってうんざりしていた……確かにこれまではスカだったけど、何かあるかもしれないのに……

 

「あと一箱!」

 

 私はそう言ってお兄ちゃんを納得させた。

 

「ふう……わかったよ。これで最後だぞ」

 

「うん」

 

 そうして開いたのは600Gのお金だった。

 

「ほらね! あったでしょ!」

 

「ハイハイ。それじゃ村のみんなも心配しているし、帰るぞ」

 

 お兄ちゃんが喜んでくれない……

 

 

 

 村に帰ると私はすぐに村長さんの家に入れられると村長さんの娘さん……ジュディさんに手を縄で縛られた。

 

「さあ、ターニアちゃん。何か言い訳はある?」

 

 ジュディさんがそう言って手をワキワキさせ、私は汗をダラダラと流していた……

 

「お兄ちゃんのドジのせいで遅くなりました」

 

 私はできる限りの抵抗をするけど……

 

「お仕置きーっ!」

 

「やめてぇぇえっ!!」

 

 

 

 ジュディさんに服を脱がされ、擽りの刑を3分ほどやられ、私の顔はヨダレと涙でベトベトになった。

 

 

 

「うう……こんな顔で人前に出れない……」

 

「大丈夫よターニア」

 

「何が大丈夫なの?」

 

「その顔を直すのに私がいるんだからね」

 

 ジュディさんはそう言って化粧道具を取り出し、湿ったタオルで私の顔を拭いた。

 

「んっ……」

 

 そのタオルが私の顔をスッキリさせてスー……と顔に風が心地よく当たる。

 

「それじゃまずは……」

 

 ジュディさんは信じられない速さで鏡の前の椅子に座らせた。

 

「ん〜っ……やっぱりターニアっていい顔よね……ランドが振り向くのも無理ないわ……」

 

 最後の方は聞こえなかったけど私を褒めていることはわかった。

 

「そうかな?」

 

「そうよ。さ、お化粧の時間よ」

 

 ジュディは化粧道具を使って、私を変身させた……やっぱりランドが好きなだけあってこういうのも得意なんだ……ランド本人はそれに気づかないけど。

 

「それじゃ私はお暇するわ。精霊の使い様は祭りが始まるまで姿を見せちゃいけないしね」

 

 あ……そうだった。精霊の使いの服は……なんか着替えにくそうだけど大丈夫だよね。

 

 

 

 そして夜……いよいよ、精霊の使いとしての仕事がやってきた。

 

「それじゃターニア、行こう」

 

「はい」

 

 村長さんに連れられ、私達はゆっくりと歩き、教会へと向かった。

 

「ターニアちゃん! 綺麗だよ!」

 

「よっ! 村長、男前!」

 

 私と村長さんは皆の歓声を受け、笑った。本当は笑っちゃいけないけどこのくらいならあの精霊様だし大丈夫だよね。

 

 

 

「一年の時を経て、今夜再び精霊の使いがこの村を訪ねてくださいました」

 

 全員が教会に入ると神父さんが決められたセリフを言って、手を差し出した。

 

「大いなる精霊の使いよ! さあその冠を我らにお与えください」

 

 神父さんのセリフで私は冠を取り外し、高く捧げ目を閉じる。

 

「山の精霊よ。貴方の冠を確かにお受け取りします。そしてこの女神像を通してまた一年の間我らをお守りください」

 

 そして神父さんが後ろを振り向くと精霊の冠を放り投げると女神像の頭にぴったり入った。

 

「精霊の使いよ。これで貴方の役目は終わりました。どうぞ山の精霊の元へお帰りください」

 

「わかりました。また来年参りましょう。では……皆様に平和を……」

 

 普通、ここで引き止めて歓迎させるなりなんなりするとは思うけれどそれが村のしきたりだから仕方ないよね……

 

 

 

「えっ!?」

 

 私がその声を出したのかどうかわからないけどお兄ちゃんと私以外が固まると何か暖かいものが入り込んだ感覚がした。

 

「レック、ターニア……私の声が聞こえますね」

 

 お兄ちゃんがそれに頷くと私も頷くと私の口から透き通った声が出る。もしかしてさっきの精霊様……? 

 

『その通りです』

 

 私の頭の中に声が直接聞こえてきた!? 

 

『これから私は貴方のお兄さん達に説明するので貴方の身体を少し借りますよ』

 

 もしかして冒険するって言っていたアレのこと。それならいいけど……

 

『ありがとうございます』

 

「レック、ターニア……貴方達は不思議な運命を背負い生まれてきた者……やがて世界が闇を覆う時貴方の力が必要となるでしょう。その時が来る前に解き明かすのです。貴方達が打ち破ることが出来た筈の魔王のまやかしを……そして貴方達の本当の姿を取り戻すのです……! レックよ、ターニアよ旅立ちなさい。それが貴方達に与えられた使命なのですから……」

 

 一方的に私の口を使って喋り終わると私の中にまだ精霊様が残っていた。

 

『ターニア……貴方に私の加護を与えます』

 

 精霊様はそう言って私の身体からいなくなった。

 

「ターニア! すげーよ! 本物の精霊様みたいだったよ! 今すぐ俺とけっごはっ!?」

 

 ランドが私のことを褒め、次の言葉を告げた瞬間ジュディさんに殴られた。

 

「ランド! 貴様の血の色は何色だーっ!!」

 

 ジュディさんのキャラが変わり、ランドをフルボッコにしていた……それが愛の鉄拳だとわからないんだからランドは鈍いよ……

 

 

 

「ゴホン! 皆さんお静に!」

 

 神父さんの一言で騒然としていた教会が静かになり、ジュディやランドも止めさせた。

 

「とにかくターニア……いや精霊の使いよご苦労様でした」

 

「では失礼します」

 

 私が出て行くと儀式は終わった。その代わり村祭りが始まり、私は着替えて普段着に戻り花火を見ていた。

 

 

 

「やあ……ターニア」

 

 ボロボロになったランドが私に声をかけ、隣で花火を見ようとしたけど私はそれを避けた……

 

「えっ!?」

 

「ねえ、ランド。ジュディさんと結婚した方がいいよ? 私、お兄ちゃんと旅立たなきゃいけないから一緒にはいれないよ」

 

「さっき言っていた魔王がどうたらとかか? あんなものターニアが嘘をついたんだろ! それに年のことなら問題ないだろ? 俺はもう17でターニアは今年16歳だろ? ……だから結婚してくれ!」

 

「ごめんなさい。ランド」

 

 そう言って私は頭を下げる。

 

「ターニア!」

 

「もうよせ。ランド」

 

 お兄ちゃんが私達の目の前に現れ、ランドを止めた。

 

「なっ、レック!?」

 

「……ランド、僕とターニアは村長さんの推薦でレイドック城へ行くことになった」

 

 レイドック城は治安を維持する為に推薦でしか入れないようになっている。つまりお兄ちゃんと私しか今は行けないからランドは連れていけない。

 

「なら俺も通行証を貰っていく!」

 

「村長さんが許すと思うか?」

 

「行ってみなきゃわかんないだろ!」

 

 ランドは村長さんの家に突撃しに行った……

 

 

 

 〜翌日〜

 

「シクシク……」

 

 当然普段働いていないランドが通行証を貰えるはずもなく、影を落として泣いていた。自業自得って言葉はランドの為にあるのかもしれない。

 

「それじゃ行ってくる!」

 

「がんばれよーっ!」

 

「ターニアちゃんも元気でなー!」

 

 お兄ちゃんの掛け声で村の皆(ランドを除く)が応援した。

 

「さあ、行こう! ターニア!」

 

 お兄ちゃんが珍しくドジを踏まなかった……?! 肝心なところでドジを踏むのに……とはいえお兄ちゃんがドジを踏まないのはいいことだから私は笑って返事を返した。

 

「うん」

 

 これから私達の長い長い冒険が始まった。

 

 

 

「あっ!? 通行証忘れた!」

 

 ……前言撤回。お兄ちゃんはやっぱりお兄ちゃんだった。これから先が心配。




ターニア&レック「ターニアとレックのあとがきコーナー!」
ターニア「はい、というわけで私達の長い長い冒険がついに始まりました!」
レック「やった!これで冒険が始まる!」
ターニア「ところでお兄ちゃん…更新が遅れた理由って作者から聞いた?」
レック「もちろん。作者がいうには『他の小説を書いていた上に色々あってⅥをやる暇がなかった』らしいよ。」
ターニア「でも3日坊主ならぬ3話坊主にならなくて良かったね!」
レック「本当だよ…下手したらエタっていたかもしれないから…おっと時間みたいだよ。ターニア。」

ターニア「それじゃ次回も楽しみに待っててね!」
レック「感想・評価の方もよろしく!」


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レイドックの探索!

お兄ちゃんとレイドックに来たのはいいけど門番さんに止められた。

「ここはレイドックの城下町だ。通行証を持っているなら見せて貰おうか?」

私はすぐに通行証を見せると門番さんは満足げに頷いた。

「よし、そこのおなごは通って良いぞ。」

おなごは?私はそのセリフが気になり、お兄ちゃんの方へと振り向くとお兄ちゃんが必死でふくろの中を漁っていた。

「あれ?どこやったけな?」

お兄ちゃんがこっそりとつぶやいていたのが聞こえ私はジト目で見つめた。

「お兄ちゃん、また無くしたの?」

どうしてお兄ちゃんはこうもドジなの?普段は頼り甲斐があるのに…

「あははは…」

「お兄ちゃん、笑って誤魔化してもダメだよ。」

私は絶対零度の視線でお兄ちゃんを見ると冷や汗をダラダラとかいて視線を泳がせると門番さんはため息を吐きながらも私に声をかけた。

「もしかしてそこの青年は連れか?」

「ええ。そうですが。」

「…そうか。では問題ないぞ。通行証を持っているものであれば連れもレイドックに入れるからな。」

「そうなんですか?」

だとしたら村長さんは何故二つも渡したの?

「時々カップルが駆け落ちの為にここに逃げようとして通行証を2人で一人とかいう理由で一つだけ持つパターンがあるからな。それで一々対応するのも面倒だから王様は一つだけでも連れがいれば対応出来るようにしたのだ。」

「カップル…」

お兄ちゃんと私がカップル…いいかもしれない。あっ!?もしかして村長さんはランドを村に置いていく為に私達に通行証を二つ持たせて通行証がないとレイドックに入れないと勘違いさせたの?

「それにしてもライフコッドからはるばる来るとはな。あそこの空気もいいものだがここもいいぞ。なんと言ってもレイドックは都会の町だから賑やかだ。さあ通るが良い。」

そう言って門番さんは私達を通してくれた。案外優しい門番さんだったね。

 

「お兄ちゃん、これからどうするの?」

私達は城下町を探索し、話あっていた。

「王様にあって見たいと思う。魔王のまやかしってのが気になったしね。」

…確かに魔王は存在するけどまやかしってのは一体…?

「でもそう簡単に会えるかな?レイドックの王様はねむらずの王って噂されるくらい忙しいみたいだし…」

これは城下町の町人達の噂だけど何人も証言していることから私は本当だと思っている。でもどうやって起きているんだろう…私でも3日くらいしか起きれないのに。

 

「はっはっはっ、どくアル。」

ドンっ!

「うわっ!?」

私達が話しているとお兄ちゃんが変な人に体当たりされてバランスを崩して転んでしまった。

「お兄ちゃん大丈夫?」

私はお兄ちゃんのそばに駆け寄り、心配するけどぶつかってきた人は詫びれもしなかった。

「そんな邪魔なところでねっころがっているなら帰るよろし。私は貧弱なお前達とは違って兵隊になりに来たアル。」

この人…ウザい。どのくらいかというとお兄ちゃんが寝ぼけて絡んでくるよりもウザい。

「お兄ちゃん、行こう。」

私はそう言ってお兄ちゃんを引っ張り、立ち上がらせるとお兄ちゃんは苦笑いで私の頭を撫でると私を連れてお城に入ろうとした。

「待つアルねそこの娘。私のものになるネ。」

そのセリフを言った瞬間、お兄ちゃんは無言で蹴り飛ばしていた。

「誰が誰のものになるって?」

その姿はまさに悪鬼羅刹。かつてないほどに怒り狂っていたお兄ちゃんを私は止められなかった。

「ま、待て!将来王宮の兵隊になる私を攻撃するのカ!?」

その威圧に押されてしまい、言い逃れをしようとするけど全然関係ないことを言ってお兄ちゃんの怒りをさらに買った。

「関係ない。それに貧弱な僕ごときにやられるような兵隊は必要ないと思うけどね。」

お兄ちゃんはそう言いながら笑っていた。貧弱って言われたことよっぽど気にしていたんだね…

「ギャァァァッ!!」

 

~残酷なシーンによりしばらくお待ちください~

 

「さ、行こうターニア。」

ゲシッ!

「うっ!?」

お兄ちゃんはさっき絞めた人を蹴って行ってしまった。

「うん…」

当然だけど私は今のお兄ちゃんとは違い鬼畜じゃないのでジャンプして避けた。大丈夫かな?

 

「それにしても王宮の兵士か。それなら王様にも会えるよね。」

さっきの人が王宮の兵士になろうなんてことはもうないとは思うけどそれでも王宮の兵士になろうとするのは多い…だから

「そうだね。お兄ちゃん、二人で兵士にならない?」

だから私も応募しておいた方が王様に会える可能性は高くなる。

「なるのは僕だけだよ。ターニアは僕の帰りを待ってて。」

ここでいつもの私なら引き下がったけれど今回は違う。王様に会える可能性を少しでも上げるために協力したかったから必殺の言葉を放った。

「すぐに持ち物をなくすお兄ちゃんを?」

お兄ちゃんはドジなせいですぐに持ち物をなくす。それを使えばお兄ちゃんも何一つ言えなかった。

「うっ!?」

「確かにお兄ちゃんは強いけど、ドジじゃ兵士になれないと思うよ。だからその役目を補う人が必要だと思うの。」

「まあ、それはそうだけど……」

「それに私だってお兄ちゃんの役に立ちたい。」

私はそう言ってお兄ちゃんの目を見るとお兄ちゃんは根負けした。

「わかったよ。どうせ僕が言いくるめようとしても逆に言いくるめられるのがオチだし。二人で兵士になろう。」

「お兄ちゃんありがとう。」

 

そうして私達はレイドック城前に来ていた。

「ここはレイドック城。お前達兵士になりに来たのか?」

「はい。」

「もちろんです。」

「そこの少年はともかくおなごもか?」

「何か問題でも?」

私は不安そうにそう尋ねるも兵隊さんは問題はないと言って次の言葉を放った。

「いや王宮の兵士なんぞむさ苦しい男だらけの集団だぞ?王宮の侍女の方が良いのではないか?」

そっちもあったのね。お兄ちゃんがそっちにしろ!と目で訴えてくるけど私は無視した。

「そちらも考えたのですが私は家事じゃ一般市民のレベルですし戦闘の方がよっぽど役に立ちます。」

精々私に出来ることって最低限の料理とか掃除くらいだし、マナーとかは田舎だから敬語くらいしかわからない。王様に会う前に切り捨てられるのが目に見えている。

「お前がそういうのならまあいい、僅かな戦力も必要だからな。では城の鐘がなったら集合するように。」

渋々だけど兵隊さんは私の兵士志願を認めてくれて、私は心の中で歓喜した。

「それまでは町の中でも見物しておいたほうが良かろう。」

町の中を見物…と言われてもさっきしたばかりだし、お兄ちゃんもすることがないと思う。

「わかりました。」

こうしてお兄ちゃんと私は王宮の兵士の試験の受付を済ませて城下町に向かった。

 

「アダッ!?」

お兄ちゃんは振り向いた瞬間転んでしまい、兵隊さんが不安そうな目で見ていたのは言うまでもない。これがお兄ちゃんなんだから心配しないでも平気だよ。




ターニア&レック「ターニアとレックのあとがきコーナー!」
ターニア「はい、というわけで今回はレイドック兵士の志願までだったね。」
レック「なあ、今回僕のドジっぷりひどくなかった?それにシスコン具合もやばかったし…」
ターニア「…頑張って!」
レック「目をそらさないでよ!」

ターニア「それにしてもまた更新が遅れたのは知っている?」
レック「ああ…確かⅥをやらずに他のゲームに夢中になっていたって聞いたけど…確かマ○オカート8だったけ?レート10000超えするまで忘れてたとか。」
ターニア「一週間前までは「」の二文字しか書いてなくて2日がかりでやっと仕上げ終わったって感じだからお兄ちゃんのドジっぷりもひどくなったって言っているよ。」
レック「通りで…そういえば次回はゴリゴリマッチョの奴が出てくるんだよ…って時間だよターニア!」

ターニア「それじゃ、次回も楽しみに待っててね!」
レック「感想・評価もよろしく!」


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漢気溢れる武道家ハッサン登場!

「指輪は~何処~だ~ぁ? 指輪は何処にあ~る~」

 

 そう歌いながらお兄ちゃんは住民のおばさんの依頼で指輪を探していた。井戸の中で。何でも井戸の中に落としてしまったらしく、井戸の中に入れないおばさんは仕方なく私達に依頼することになった。

 

「宝箱見つけた!」

 

 そして私は宝箱を見つけ、そこに駆けつけ──

 

 

 

 ドンっ!! 

 

 

 

「キャァッ!?」

 

 私は何かに突き飛ばされ、尻餅をついてしまった。

 

「ターニア!」

 

 お兄ちゃんは私に駆けつけ、私を突き飛ばした何かをにらんだ。その何かとはシールドこぞうの色違いみたいな魔物だった。

 

「ゲヒゲヒゲヒ。この宝はオレ、ダークホビット様が拾ったものだ。誰にも渡さねえぞ!」

 

 下品な笑い声を上げるとお兄ちゃんに襲いかかり、斬りつけるもお兄ちゃんはそれを防御した。

 

「ラァァッ!」

 

 だけどお兄ちゃんが押されてしまい、斬りつけられて大ダメージを負った。

 

「お兄ちゃん!!」

 

 私はホイミをかけてお兄ちゃんの治療をするけどそれでも治らなかった。

 

「くっ……強い!?」

 

 このダークホビットはお兄ちゃんが認めるほど強く、剣を振ってお兄ちゃんの血を振り払った。

 

「お前が弱すぎるんだよ。そんな程度でオレに逆らうなんて、馬鹿じゃねえか?」

 

 血を振り払ってお兄ちゃんを斬りつけに剣を振るった。

 

「くそおぉぉぉっ!!」

 

 お兄ちゃんはそれに合わせるように剣を振るった。私はそれを知っていた。防御を犠牲にした諸刃のカウンター。自分も傷つくけど相手も相当なダメージを負わせるというカウンターだけどそんなことをすればお兄ちゃんは──

 

「やめろ。命は投げ捨てるものではない」

 

 だけどお兄ちゃんとダークホビット、そして私以外の声が聞こえ二人を止めさせた。その止めさせた人は大男なのはわかったけど影が邪魔をして顔が見えなかった。

 

「誰だ!!」

 

 お兄ちゃんがそう叫ぶとその人はコツコツと歩き……次第に顔が見えてきた。その顔の堀は深く、お兄ちゃんのようなイケメンじゃないけど強そうだというのは理解できた。

 

「俺の名前はハッサン! 正義の武道家とは俺のことだ!」

 

 正義の武道家ことハッサンさんが親指を立ててヒニルに笑った。

 

 

 

「正義の武道家ぁ~? 面白え、オレの邪魔をするなら容赦はしねえ!」

 

 さっきまで空気になっていたダークホビットがハッサンさんに襲いかかった。

 

「武道家心得その1……相手が襲いかかってきたとしても慌てることならず」

 

 ハッサンさんはゆっくりと構え……口を開いた。

 

「武道家心得その2……清らかな川のように受け流す」

 

 ダークホビットの攻撃を避けるとハッサンさんは拳をグッと握りしめ、動かした。

 

「武道家心得その3……例え相手が殺意を持っていたとしても慈愛の心を持って相手に失礼がないように全力を尽くすべき!」

 

 そしてハッサンさんはダークホビットに攻撃して悲鳴をあげることすら許さず一撃で仕留めた。

 

「凄い……」

 

 私はそれに感心してそうつぶやいていた……いつもゴリ押しでいくお兄ちゃんとは違った美しさがそこにあったからだ。

 

 

 

「二人とも大丈夫か?」

 

 ダークホビットを仕留めたのを確認したハッサンさんは私達に声をかけてきた。

 

「私は大丈夫。お兄ちゃんは?」

 

 私は突き飛ばされたとはいえ、ほとんど無傷。それよりも心配なのはお兄ちゃんの方。お兄ちゃんはドジだけど結構無理をするから……

 

「ターニアのおかげで何とか無事だよ。ありがとうターニア」

 

 私にそう笑顔で言うけどお兄ちゃん……ハッサンさんにお礼を言わないとダメじゃない? 

 

 

 

 私は真剣な顔になり、ハッサンさんに頭を下げた。

 

「ハッサンさん……兄レックを助けてくれてありがとうございます。私、妹のターニアが代わりにお礼を申し上げます。本当にありがとうございました」

 

「堅苦しい礼はいらねえよ。ターニアちゃん。俺は笑顔を見れればいいんだ。それよりも怪我は本当にないのかい?」

 

「大丈夫です」

 

「そうか。いらないとは思うが念のためこれを渡すぜ」

 

 ハッサンさんは手持ちの薬草を私達に一枚ずつ渡した。

 

「いいんですか?」

 

「何、困った奴を助けるのが俺の未来の仕事……レイドックの兵士の仕事だ」

 

 それを聞いて私達はハッとした。

 

「ということは……ハッサンも王宮の兵士になりに来たのかい?」

 

 お兄ちゃんがそう恐る恐る質問するとハッサンさんは腕を組み、答えてくれた。

 

「もちろんだ。俺みたいな田舎もんはこれくらいしか役に立てることがないからな」

 

 そういって自分の身体を指すと苦笑気味に笑っていた。

 

「私達も志願者なんです! だからこれは返します」

 

 私はそう言ってハッサンさんに薬草を返そうとするけどハッサンさんは首を振った。

 

「ターニアちゃんそれは逆に無礼だ。俺はターニアちゃん達にベストを尽くした状態で試験に挑んでもらいたいんだ。ベストを尽くさない状態で挑まれても嬉しくもなんともない。使わなかったとしてもターニアちゃん達が持ってくれ」

 

 ハッサンさんは受け取るのを拒否して私達に押し付けた。

 

「そうですか」

 

「それじゃ失礼するぜ」

 

 ハッサンさんはそう言って井戸から出て行った。

 

「ハッサン。どうやら僕達の一番のライバルになりそうだね」

 

 お兄ちゃんはそう言って宝箱を開けると指輪が見つかった。

 

「うん」

 

 私はそれに頷いて井戸の外に出た。

 

 

 

「ありがとうよ。これはお礼だよ」

 

 おばさんは指輪を受け取ると力の種をお兄ちゃんに渡した。

 

「田舎から出てきたんだろ。早く出世してふるさとに錦を飾りなよ」

 

 おばさんの励ましによってお兄ちゃんと私は少し照れた。

 

「ありがとうおばさん」

 

「礼を言うのはこっちの方さ。じゃ頑張りな!」

 

 バンッ! 

 

 おばさんに叩かれ、私達は別れを告げた。

 

 

 

「お兄ちゃん……これからどうしよっか?」

 

 やることがなくなり私達は暇になってしまった。だからと言って外に出るのはタブーだ。そんなことをすればお城の鐘が鳴るのが聞こえなくなってしまう。

 

「教会にでも行ってみる? 一応お祈りくらいはしておいた方がいいよ」

 

「そうだね……」

 

 次の瞬間……ゴーンゴーンと鐘の鳴り響く音が聞こえ、時間だと教えてくれた。

 

「タイミングが良いのか悪いのかわからないな……まあ時間だしいこうか! ターニア」

 

 お兄ちゃんはそういって私とともにお城の中へと入っていった。

 

「アダッ!? 今日はついてないな。トホホ……」

 

 お兄ちゃん……今日転び過ぎだよ。




ターニア&レック「ターニアとレックのあとがきコーナー!」
ターニア「という訳でハッサンさんが登場した訳ですが…いかがでしたか?読者の皆さん。」
レック「おいおい、そこは僕に聞くところでしょ!?読者の代わりに僕がいるんだよ!?」
ターニア「たまにはこうして聞かないとお兄ちゃん調子乗っちゃうじゃん。」
レック「…ちくせう。それはともかくやっぱりターニアが旅をする小説なんてレアだからその辺の感想も多いよね。」
ターニア「確かに…DS版でも私は健気に待つだけだったし、さらにリメイク版を出す時は私も旅をしてみたいな…ネタバレになるけどアモスさんポジとかで。」
レック「そうなったら楽しみだよ…ムフフ。」
2人はトリップし始め、あとがきコーナーはゴタゴタになった。

ハッサン「2人がトリップしたので俺が代わりに言うぜ!感想を楽しみに待っているぜ!その代わり次回も楽しみにして待っててくれよな!」


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あっちこっちどっち?王宮の兵士の試験は迷子になる?

タイトル詐欺っぽい何かです。


「お前達は兵隊になりに来たのか?」

 

 さっきとは違う門番さんがそう言って聞くと私達は頷いて答えた。

 

「よろしい。これより兵士長ソルディ様がお前達とお会いになる。城の中へ入るがいい」

 

 お城の中へ入ると今まで見たことのないような景色が見え、私は興奮した。

 

「これがお城なんだね。お兄ちゃん」

 

 私がそう聞くとお兄ちゃんは何か不思議そうな顔をして黙っていた。

 

「お兄ちゃん?」

 

 私はそれを不審に思い、尋ねてハッとして私の方に振り向いた。

 

「何? ターニア」

 

「急がないと遅れちゃうよ。他の志願者はもう上行ったみたいだよ!」

 

「そうだね。行こう」

 

 私とお兄ちゃんは上へ上がるとそこにはさっき私達に絡んできた人とハッサンさん、私と同じ女の人も並んでいた。

 

「これが志願者……うっ……!?」

 

 私はそう呟くとその場にいた全員から睨まれるような視線を感じ、萎縮してしまった。

 

「……」

 

 お兄ちゃんもその数に驚いて私に声をかけることすらせず並んだ。仕方ないよね……それが私達田舎者だもん。むしろお兄ちゃんは頑張った方だよ。

 

 

 

 そして金髪の兵隊さんが満足気に頷くと口を開いた。

 

「よく集まってくれた我が王宮の兵士に志願する心ある者達よ! だがしかし誰もが我が城の栄誉ある兵士になれる訳ではない。そこで私に君達を試させて貰おう」

 

 私はそれを聞いて喉を鳴らし、志願者達も緊張した目で見ていた。

 

「この城より東南へ橋を二つ渡った先に試練の塔と呼ばれる塔がある。その塔よりある物を取ってきて貰いたいのだ」

 

「その物って、なんですか?」

 

 私は緊張の余り、手を挙げてそう尋ねるとソルディさんは私に注目した。

 

「それは各々で考えるように。さあ行けっ! 試練の塔の扉は開かれたぞ! 試験開始だ!」

 

 私とお兄ちゃんを除いた全員が後ろの扉から出て行った。

 

「行こうか。ターニア」

 

「うん」

 

 私とお兄ちゃんも続いてその場所へと向かった。別に志願者同士が協力してはいけないって言われてないし問題ないよね? 

 

 

 

 ~試練の塔~

 

 

 

 試練の塔にたどり着くと多くの志願者がある物を探していた。

 

「お兄ちゃん。ある物ってなんだろうね?」

 

「とにかく探そう。ただでさえ遅れを取っているのにこれ以上遅れをとったら絶対に受からないよ」

 

「お兄ちゃんがまともなこと言っている。新鮮すぎて何も言葉が浮かばないわ」

 

「まああんなものを見せられたらそうなるさ」

 

 あんなものって、もしかしてハッサンさんのこと? 

 

「別れ道が出るまで僕と一緒に行動した方がいい。分かれ道が出た場合は僕が指示する」

 

「OK!」

 

「それじゃ行こう」

 

 そして扉を開けると……早速別れ道があった。

 

「い、いきなり別れ道か。それじゃターニアここでお別れだね。会う時は試験が終わった時だ。頑張ってね」

 

「お兄ちゃんも頑張れ!」

 

 こうしてお兄ちゃんと別れ、私一人で探すことになった。

 

 とはいえお兄ちゃんは試験に合格できるかどうかも怪しい。お兄ちゃんは戦闘に関しては問題ないんだけどドジさが問題。すぐ転ぶ、何かを忘れる、酷い時には私の服を着て女装したことに気づかない。改めて考えるとお兄ちゃんは兵隊さんに向いてないのかもしれない。

 

 

 

 2階に上がりキメラの翼を回収して3階に上がると兵士さんが仁王立ちしていた。

 

「ふっふっふ……やっとここまでたどり着いたか。どうだ? ワシを倒せばだいぶ近道が出来るぞ? おなごよ戦ってみるか?」

 

 近道……つまり、この先にある物があるということ。私は即答だった。

 

「やる!」

 

 この兵士さんはきりかぶこぞうやアロードック、ギズモとは強さは別格だけど私だって強くなったんだから! 

 

「よかろう……いざ……参る!」

 

 兵士さんは槍を持って私に襲いかかってきた。

 

 モンスターとかは戦ったことはあるけど対人戦はこれが初めてだから慎重に行きたいのは山々だけど……そうも言ってられないわ! お兄ちゃんよりも、ハッサンさんよりも早く見つけないと不合格……そうなったらお兄ちゃんを養うのは無理になっちゃう。だから私が合格しないとダメ! 

 

「はぁぁぁっ!!」

 

 私は不合格になりたくない気持ちで一杯になり、無我夢中で突いた。

 

「ぬぉっ!? げほっ……」

 

 兵士さんは腹をくの字に曲げて咳き込む……

 

「えーいっ!!」

 

 ドカッ! 

 

 その隙を見計らって私は思い切り銅の剣で頭を殴って兵士さんを気絶させた。

 

「えっと……通りますよ?」

 

 兵士さんの様子を見る限り、本当に気絶したみたいで私は兵士さんの上を通って近道した。

 

 

 

 上へ上へと上がっていくとハッサンがそこにいた。

 

「ハッサンさん!」

 

 私はハッサンさんに声をかけるとハッサンさんは振り向いてくれた。

 

「ターニアちゃんじゃないか? 本当に兵士になりに来たのか?」

 

「うん! だからハッサンさんには負けないよ!」

 

「そう言われちゃ俺も負けらんねえな……よし! 気合い乗ってきたぜ! じゃあなターニアちゃん! 頑張れよ!」

 

 そういってハッサンさんは向こうの扉に向かってしまった。

 

「あっ!? 待ってよ!!」

 

 私はそれを追いかけるとお兄ちゃんとハッサンさんがそこで立ち止まっていた。

 

「よく来たな。ここから先は3つの扉にそれぞれ1人ずついる。それを聞いてどれを選んでもいい。ただし本当のことを言っているのは3人のうち1人だけだ」

 

 左から兵士さんに声をかけられ、その言葉通りなら3人に聞くしかないよね……

 

 

 

 左から順に……

 

「この先は何もありませんよ。一番右の扉が正解です」

 

「この先にいくと痛い目に合うぞ! 行くでない!」

 

「一番左の人は正しいことを言っています」

 

 ……これ簡単じゃない? 

 

 

 

「よし! 僕は真ん中だ! 痛い目に合うんだから探し物もそっちにあるはず!」

 

 と思ったらお兄ちゃんが真ん中の扉を開けて僅かにみえた階段を登るのを見るとハッサンさんはポンと左手に右手の拳を置いた。

 

「一番右だ! それしかねえ!」

 

 ハッサンさんは右の扉を開いてそっちに向かってしまった……お兄ちゃんもハッサンさんも違うでしょ!? 

 

 

 

「正解は一番左!」

 

 

 

 そう……これは簡単なクイズ。1人しか本当のことは言っていない。

 

 一番左の人が正しいことを言っていると仮定すると一番右の人が本当のことを言っているので兵士さんの言っていることが嘘になるので矛盾する。逆に一番左の人が嘘だとするなら一番右の人も嘘をついているので2人嘘をついていることになり真ん中の人の証言は左の人や右の人に全然関係ないので矛盾しない。

 

 ハッサンさんのミスは矛盾に気がつかなかったこと。お兄ちゃんのミスは矛盾に気がついたけど真ん中の人の証言である「行くな」ということを無視してしまったこと。……なんともお兄ちゃんらしいミスだね。

 

 

 

「よくぞたどり着いた。私、副兵士長ネルソンが最後の試練を与えよう。だがしかしもはや戦う力が残っていないというのならそっちの崖から降りて戻るのもいい。そうすれば塔の入り口まで戻れるぞ。さあどうする? 私の試験を受けて見るか?」

 

 あの2人のことだから自力でここまで来そうな予感がするし、ここまで来たのにわざわざ戻るのも気がひける……

 

「受けます!」

 

 私はネルソンさんにそう答えていた。

 

「よろしい。それでこそ王宮の兵士を志願する者だ! 行くぞっ!」

 

 

 

「はぁぁぁっっ!!」

 

 ネルソンさんは激しく切りつけにかかってきたけど……あのダークボビットに比べれば……なんでもない! 

 

「はっ! やぃぁぁっ!」

 

 私は銅の剣で防御し、反撃する。そもそも銅の剣は切りつける物ではなく叩く物。だから下手な剣術よりもひのきの棒のように扱った方が効率がいい──とはお兄ちゃんの談。ひのきの棒なら何度も使っているし、なによりもさっきもひのきの棒のように使って兵士さんを倒した。

 

「甘いっ!」

 

 ネルソンさんは私の足元をすくい、転ばそうとしたけどそこには私の足はない。何故なら既に私はジャンプして飛びかかっていた。

 

「甘いのはそっちの方よ!」

 

 ガキンッ! 

 

 銅の剣と槍の鍔迫り合いが始まったけど私は力そのものはないのですぐに力を抜いてネルソンさんの身体のバランスを崩した。

 

「なっ!?」

 

「やぁぁーっ!!」

 

 銅の剣で頭を殴ってさっきと同じように気絶させようとしたけど流石は副兵士長。おとなしく気絶させて貰えなかった。

 

「おなごの身でここまでやるとはな。男として生まれていたら間違いなくやられていただろう」

 

 私は男至上主義者ではないからその言葉に流石にカチンと来た。

 

「さっきから聞いていればおなご、おなご、おなごってうるさい! 女が男よりも劣っているの!?」

 

「……すまぬ。失言だったな。名前は?」

 

「ターニア! ライフゴッドのターニア!」

 

「ターニアか。ではターニアよ。続きを始めよ……うっ!?」

 

 いきなりネルソンさんが糸の切れた人形のように倒れた。

 

「……ターニア。私が身体を動かせぬ以上、お前の勝ちだ」

 

「一体どうして……?」

 

 私はなんで気絶しなかったのか。そしてこれは本当にそうなのかという現象を知るために聞いた。

 

「先ほど頭を打った時の作用でこうなったのかもしれぬ。時たま気絶しなくとも頭を打てば身体が動けなくなるという噂があったが本当のようだな。さあ中に行け。その中の宝箱にお前の求める物はある」

 

 なるほど。頭はやっぱり重要なんだね……

 

「ネルソンさん。それじゃ通ります」

 

 そしてその先の宝箱にあったのは……見たこともない装飾品だった。

 

 

 

 〜おまけ〜

 

 

 

 その頃……レックとハッサンはというと。

 

「痛でててて……あそこ痛いだけでなんにもなかった……ハッサンは?」

 

「俺はこんなの貰ったぜ!」

 

 そう言ってハッサンが取り出したのは指輪だった。

 

「……それ明らかに違くないか?」

 

「だよな〜……そう言えばターニアちゃんは?」

 

「ハッサンと一緒に行ったんじゃないの?」

 

「うんにゃ。そんなことはない……てことは……一番左の扉に進んだみたいだな。あっちが正解だったのか……くそっ!」

 

 ハッサンは悔しがるものの笑顔でいた。

 

「どうする? このまま帰る訳にもいかないし……」

 

「なんか功績になるようなことをすればいいんじゃないか?」

 

「それだ!」

 

 こうして2人は意気投合してとある場所へと向かった。

 

「あいっててて……ハッサン薬草ない?」

 

 やはり最後は締まらないレックだった。




ターニア&レック「ターニアとレックのあとがきコーナー!」
ターニア「無事試験が終わったけど…お兄ちゃんどうするの?」
レック「いつまでもターニアの世話にならないよ。僕が足を引っ張る訳にもいかないしね。」
ターニア「結局そう言って足を引っ張るお兄ちゃんなんだよね…おまけでもそうだったし。」
レック「ほっといてドジが悪いんだ…くそう…」

ターニア「お兄ちゃん…そろそろ時間だけど前回は出来なかったしきちんとやろっ!」
レック「おっ?そんな時間か…それじゃやるか!」
ターニア「感想や誤字報告は感想にお願いします!」
レック「次回もお楽しみに!」


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ターニアの人助け!武人ハッサン仲間になる!

 〜レイドック城〜

 

 

 

 私はレイドック城に戻り、ソルディ兵士長に「戻りました!」と報告した。

 

「おお戻ったか! ターニアとか言ったな。お前が一番乗りだぞ」

 

 そういって満足げに肩に軽く手を置いた。

 

「で何を取ってきてくれたのかな?」

 

「これです。ソルディ兵士長」

 

 私は袋から副兵士長さんからもらった宝箱の中身を渡した。

 

「どれどれ……おお、これはまさしくくじけぬ心! どんな苦しみにも耐えられる精神だ! 男ですら苦しみに耐えられぬというのにまさか女子の身でこれを持って帰れるとは思いもしなかったぞ! 約束通りそなたを王宮の兵士として認めよう!」

 

「ありがとうございます!」

 

「ターニアは今より王宮の兵士だ! 励めよ!」

 

「はいっ!」

 

 こうして私は王宮の兵士となったけど……肝心のお兄ちゃんがいない。何かトラブル起こしてなきゃいいけど……

 

「ターニア。命令があるまで城の中などを見ておくといい。もし困った人見かけたら助けてやってくれ。それも兵士の重要な仕事だ」

 

「分かりました」

 

 ……まあ、お城を探索していくうちにドジ踏みまくったお兄ちゃんが帰ってくるとは思うけど……

 

 

 

「はぁ〜……」

 

 中庭でため息を吐き、影を落としていた。

 

「お爺さん、どうかしましたか?」

 

 私はソルディ兵士長の言いつけ通り、困っているお爺さんに話しかけ愚痴でもなんでもいいから相談しようと話しかけた。

 

「ん……ああ、王家に代々伝わるこの馬車を引ける馬がいなくなってしまったのじゃ」

 

 お爺さんのすぐ近くに、何人も乗せられるような大きな馬車があり、それはものすごい立派だった。

 

「馬車が立派すぎて重すぎるとはいえ情けないことよ。どこかに威勢のいい馬はいないかの……」

 

 確かにこれだけデカイと普通の馬じゃ無理だよね。

 

「いますよ。そんな馬が」

 

 私は少しでも慰めになるように嘘をついた。お爺さんを困らせても仕方ないもん。

 

「おお! だったらその馬を連れてきてくださらんか!?」

 

 うっ!? 痛いところ突かれちゃった!! 今からでも冗談だと言っておけば。

 

「死ぬまでにもう一度馬車の勇姿をこの爺に見せて下され!!」

 

 言えない。冗談でしたなんて言ったらぽっくり逝っちゃいそうだから言えない。

 

「分かりました。だけど気性が荒い馬ですから少し待って下さい」

 

「頼んだぞ! お嬢ちゃん!」

 

 お爺さんは困らなくなったけど今度は私が困っちゃった。

 

 ……馬を買おうにも王族や貴族のコネなんかないから野良の馬を連れていくしかないよね。城の中の人に聞いてみよう。

 

 

 

「どチクショーっ!!」

 

 檻の中から声が聞こえ、そちらを見ると頭に巨大な蹄の跡のある人がいた。

 

「あの馬にさえ合わなかったら捕まることなんてなかったんだ……」

 

 もしかして私の探している理想の馬かもしれない。

 

「詳しく聞かせて!」

 

「ん? なんだお前は?」

 

 私が柵を掴み、揺らすとその人は近づき尋ねてきた。

 

「王宮の兵士よ。その馬が必要になるかもしれないの!」

 

「まあ……そういうなら聞いてけや。俺が商人を襲っていると奴が現れ……気がついたらこの中だ。ありゃ普通よりも4、5回り……いやそれ以上か? とにかく馬鹿でかい馬だった。捕まえるんなら命覚悟しておいた方がいいぜ。お嬢ちゃん」

 

 間違いない……その馬なら絶対に馬車を引ける! そうなればあのお爺さんも大満足ね! 

 

「……ありがとう!」

 

 私はその未来……お爺さんの喜ぶ姿を見れるという想像を思い浮かべ、笑顔になった。

 

「あの野郎に吠え面かかせたいだけだ」

 

 不器用な人だけと親切な人に私は頭を下げ、レイドック城から出て行った。

 

 

 

 でも問題はその馬をどうやって連れていくかだよね……お兄ちゃんと協力してもドジ踏んでお兄ちゃんがあの人の二の舞になりかねないし、最悪の場合僧侶様に「おお、レックよ死んでしまうとは情けない!」なんて言われそうな気がする。

 

「おーい、待ってくれよー! ターニアちゃん!」

 

「タ〜ニア〜……」

 

 あ、ハッサンさんとお兄ちゃんだ。三人集まれば文殊の知恵っていうし……相談してみよう。

 

「探したぜターニアちゃん。兵士に採用されたんだろ。まずはおめでとうよ!」

 

 ハッサンさんがそういって笑顔で親指を立てた。

 

「ハッサンさんありがとうございます」

 

 それにしてもお兄ちゃんはなんでそんなにボロボロなの……? 

 

「ところでターニアちゃんは暴れ馬を捕まえに行こうとしちゃいないか?」

 

 どこで仕入れたんだろう……その情報。でもいいタイミングだよね。

 

「そのことで相談があるんだけどいい?」

 

「うん?」

 

「私は非力だし、馬を捕まえるなんて真似はできないと思うの。だけどお兄ちゃん達と協力すれば出来るんじゃないかなって……協力してくれる?」

 

「もちろん協力するよ! なあハッサン!」

 

「当たり前よ! 元々そのために情報を仕入れて来たんだからな!」

 

「ありがとう!」

 

「それじゃ行こう! 皆!」

 

「「おーっ!!」」

 

 私達は気合を入れて野良の馬を探し始めた。

 

 

 

「そう言えば暴れ馬ってどのくらい危険なんだろうな? きっと見た目も凄え怖え顔してそうだぜ」

 

 歩いているとハッサンさんがそんなことを言い出し、お兄ちゃんも話し始めた。

 

「草じゃなくて肉を食べてそうなイメージがあるよね」

 

 馬が他の動物を追いかけてその肉を引きちぎって食べる……怖すぎ! 

 

「その馬に蹴られた盗賊さんの話しだと物凄く凶暴で一撃で気絶させられたみたいだよ」

 

 私はその想像から逃れるためにハッサンさん達の会話に加わった。

 

「そんなにやばいのか!?」

 

「うん。あとその盗賊さんの記憶によると4、5回りくらい大きかったって」

 

「そんなに大きいと普通の馬の倍くらいの体重はありそうだね」

 

 普通の馬の体重って私の10倍以上だから……1トン!? そんな馬本当にいるの!? 

 

「だけどそれくらいの馬だからこそやりがいがあるってもんだぜ。いざとなれば俺が2人を守ってやるから安心しな」

 

 ハッサンさんはそういって拳を握りしめ、前に突き出したけどお兄ちゃんはそれを見て首を横に振った。

 

「ハッサン。それはいらないよ。僕だってドジがなければ結構強いからね」

 

「そのドジを起こすのがお兄ちゃんでしょ?」

 

「ぐっ!?」

 

 私の突っ込みに対応出来ず、お兄ちゃんは膝をついてorzの姿勢になった。

 

「はっはっはっ……でもよ俺は一度決めた事はやり遂げるぜ。ピンチになったら絶対に助ける。それは覚えておいてくれ」

 

 ハッサンさんは再び拳を前に出して私達に拳を当てるように促した。

 

「わかったよ」

 

「ハッサンさんよろしくね」

 

「任せとけって!」

 

 ハッサンさんは笑顔でそう言ってくれてとても頼もしく思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 〜ボツネタ〜

 

「きっと見た目も凄え怖え顔してそうだぜ」

 

「遠い未来の魔王の幹部だったりして!」

 

「それもありだな!」

 

 

 

 流石に自重しました。




ターニア&レック「ターニアとレックのあとがきコーナー!」
ターニア「はい。という訳でようやく暴れ馬編だね」
レック「しかしなんで暴れ馬編を二つに分けたんだ?まあ作者の競馬ネタが光るきらいいけど」
ターニア「そっち?!そっちじゃなくて普通は暴れ馬が物語で凄い活躍するとか語るところでしょ!?」
レック「まあそうなんだけど作者がそうでもしないと他の小説やってらんねーっ!って大暴れしちゃうから支障が出ない程度に出しているんだよ。」
ターニア「馬の体重が云々とか?」
レック「いやそれもあるけど一番のネタは肉をやったら云々だよ。あれなんかは実際の競走馬のエピソードがモデルだし。」
ターニア「なんていらないネタ…そんなことを話してたら時間になっちゃったよ!」
レック「仕方ない。例のアレ行こう。」

ターニア「感想、誤字報告は感想で!その他要望はメッセージボックスで!評価もお待ちしています!!」
レック「では次回もお楽しみに!」


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地方の暴れ馬、その正体は?

宣言より遅れたことをお詫び申し上げます。すみませんでした!
ではどうぞ!!!


 〜北西の森〜

 

 

 

「暴れ馬注意! ──ってことはここに住んでいるみたいだね」

 

 私が看板を読むと2人は唸り首を捻り考え始めた。

 

「いるんだろうな、ここに」

 

「覚悟は決まってる。いこうか」

 

 あれ? なんか物凄くやる気に満ちているけど何かあったの? お兄ちゃん達。

 

「あ! 待ってよ! ハッサンさん、お兄ちゃん!」

 

 私が唖然としているとお兄ちゃん達が先に行ってしまい、はぐれてしまった。もう知らない! 

 

 

 

 どんっ!! 

 

 

 

「キャァッ!?」

 

 私は何かにぶつかり尻餅をついて擦り傷をしてしまった。

 

「痛っ……! 何が起きたの?」

 

 そのぶつかってきた物を見るとそこにいたのは白馬だった。ただし目つきは猛獣のような目つきで柵を蹴っ飛ばしたら致命傷を負って安楽死させられそうな馬じゃなく、むしろ世紀末の荒くれ達を蹴っ飛ばして無双しそうな某黒馬のイメージがわいた。

 

「ブルル……」

 

 えっ!? 私の傷を舐め始めた? 

 

「ありがとう……優しいのね。でも大丈夫だよ。呪文を使えるからね」

 

 私はホイミをかけて擦り傷を治し、鬣を撫でた。

 

「ブルル……!」

 

 とっても嬉しそう……私はその白馬の鬣を撫でてあげた。

 

 

 

「はぁっ……はぁっ……なんだよターニアちゃんが捕まえたのか?」

 

「それじゃ働き損?」

 

「かもな」

 

 ハッサンさんとお兄ちゃんが近寄って馬に触ると……後ろ足で蹴っ飛ばした。

 

「暴れ馬ってのは本当だな……」

 

 ハッサンさんはそれを受け止め、持ちこたえたけど……問題はもう一人お兄ちゃん。

 

「あぐぅぅぅぅ……」

 

 お兄ちゃんは脂汗をかき、股間を抑えて転がっていた……

 

「レック……その様子だとタマに当たったのか?」

 

 ハッサンさんが尋ねるとお兄ちゃんは声を出す代わりにものすごい勢いで首を縦に振り、苦しそうにしている。私は男じゃないからわからないけどそんなに苦しいものなの……? 

 

「ホイミ」

 

 ホイミをかけた後、私はお兄ちゃんを優しく介護した。

 

 

 

 〜この痛みはご婦人の方には理解出来ません〜

 

 

 

「それじゃ名前を付けようぜ。このまま名無しの白馬じゃかわいそうだろ?」

 

 それから数分後、お兄ちゃんが内股ではあるものの立てるまで回復したので名前を決めることにした。

 

「はいはい! それじゃゴールドキッ……痛い痛い!」

 

 お兄ちゃんが自分の急所を蹴られたことを根に持っていたのかそんな名前を提案しようとして、気づいた白馬がお兄ちゃんの頭をガリガリと噛んだ。誰だって金球蹴り(ゴールドキック)なんて名前嫌がるよ……

 

「確かに悪くねえけどなんつーかこいつのイメージに合わないような気がするぜ。急所をわざわざ狙うイメージよりも強そうな感じがするしな」

 

 ハッサンさんはお兄ちゃんの意見を切り捨て、腕を組んだ。

 

「じゃあファルシオンって名前……どうかな?」

 

「強そうな名前で良さそうだな! よし! ファルシオンよろしくな!」

 

 そしてハッサンさんがポンとおくとファルシオンが立ち上がった。

 

「コ──ロ──スー!!」

 

 物騒な事を言い出し、ファルシオンは後ろを向いてお兄ちゃんを土まみれにするとその場から逃げてしまった。

 

「あっ!? 待てよ!!」

 

 ハッサンさんが追いかけるのを見て私は土を取ってお兄ちゃんを慰めた。

 

 

 

「酷い目にあった……」

 

 お兄ちゃんの目が死に、ふらふらと歩きながらゆっくりとハッサンさんとファルシオンが向かった方向へと歩きだす。

 

「お兄ちゃん大丈夫?」

 

 私は肩を出し、お兄ちゃんの手をそこに乗せた。

 

「生きている程度にはね。ハハハ……でもターニアは?」

 

「お兄ちゃんのおかげでなんとか」

 

「そりゃよかった……」

 

 そうして歩いているとファルシオンとハッサンさんが男の人と戦っていた。

 

「ヒンッ!」

 

 そして得意の急所後ろ蹴りが炸裂すると男の人はうずくまり、内股になってハッサンさんに縄で縛られた……卑猥な表現になるのは何で? 

 

「ふぅーっ……いやしかし参ったぜ。ファルシオンがいきなり暴れたから背中に乗っかったら盗賊達が商人を襲ってたから一緒に大暴れしてやったぜ!」

 

「そう言えばこの情報を教えてくれた人も盗賊行為をしたって言ってた気がする」

 

「もしかしたら悪い奴に反応する馬なのかもな」

 

 確かに……お兄ちゃんなんかは悪意ある名前をつけようとして頭かじられてたもんね……でもそうだとするならお兄ちゃんは悪意を持ってファルシオンに触ったってことになるよね? 急所蹴られたんだし……

 

 

 

 〜レイドック城〜

 

「まさかその馬鹿でかい馬を城の中へ連れて行く気ではあるまいな?」

 

「そうですけど……」

 

「なんとその馬を連れて城の中に入るつもりなのか!? ……よし、今回だけは目を瞑ろう。ただし、二階まで連れて上がったりするなよ」

 

 やった! お爺さんのところへ連れて行こう! 

 

「おおおおおおっ、おぅーっ!! これはなんとすごい馬だ! これならいける! いけるぞぉぉーっ!! お願いじゃ、こいつをワシに任せて貰えないか!?」

 

「もちろんですよ」

 

「フハハハーッ!! これでこの馬車の雄姿が再び見られるっ!!」

 

 すごいテンション……ポックリ逝っちゃわないか心配……

 

「このことは王様に報告しておく! さあ行きなされ!」

 

「見事であった!」

 

 お爺さんが話しを終えると後ろから声がかかった。

 

「ソルディ兵士長……!」

 

 

 

「そなた達三人の働きはしかと見届けた! 三人共、王宮の兵士として充分な資質を兼ね備えている」

 

「ってことは……!」

 

「この私の責任でハッサン、レック共に王宮の兵士として働いて貰おう!」

 

「やった!」

 

「しゃあっ!」

 

 お兄ちゃんとハッサンさんがハイタッチをして喜んでいた。

 

「浮かれるでない。すでに聞き及んでいるだろう。魔王ムドーの存在をっ! この忌まわしきムドーを倒すべく我が国王は眠る間も惜しんで事を進めておられる。さあついてこい、お前達をレイドック王に引き合わせよう」

 

 ついにレイドック王とご対面か……ドキドキするな。

 

「あいたっ!!」

 

 お兄ちゃん……そんなところで転ばないでよ……

 

 

 

 〜王室〜

 

 

 

「陛下! この度新しく兵士に選ばれた三名を連れてまいりました! この三人はこう見えてもあの馬車の馬を見つける程優秀です。もし陛下のお役に立てそうであれば何なりとお申し付けください」

 

 ソルディ兵士長が私達を紹介すると王様は私達をじっと見つめた。

 

「……三人とも中々良い目をしている。特にそこの女子は力強い精神力を感じるな」

 

「ありがとうございます!」

 

「礼儀も知っているか。よろしい! 早速だが君たちにも手伝ってもらうことにしよう!」

 

 王様、本当に眠っていないの……? 声が大きくハキハキとしている。寝不足だったらイライラしたりするけど……

 

「どんなことですか?」

 

「この世界のどこかに真実をうつすラーの鏡というものがあるらしい。あと少しでその姿をかき消してしまう魔王ムドーだがそのラーの鏡さえあれば奴の化けの皮をはがせるはず! そこでラーの鏡を見つけ出して持ち帰って欲しいのだ」

 

「わかりました。探して持ち帰ってみましょう」

 

「うむ、君たちの働きに期待しているぞ! では行け! 我が兵士達よ!」

 

 私達以外の兵士達は張り切り、「ヒャッハー」と言いながら出て行くとお兄ちゃんが巻きこまれて、ファルシオンがお兄ちゃんを取り返すとお兄ちゃんと兵士達はボロボロになってしまった。……ごめんなさい。




ターニア&レック「ターニアとレックと後書きコーナー!」
ターニア「ようやくレイドックから抜け出せるような状態になったねお兄ちゃん。」
レック「うん…」
ターニア「お兄ちゃん、どうしたの?作者が去年までに書き終えるつもりが今月まで引き延ばしてしまったことを気にしているの?」
レック「それもあるけど今回の僕酷い扱いだよ…多分これ以上ないくらい扱いが酷い!」
ターニア「確かに今回のドジさはひどかったよね。」
レック「男のドジ属性なんて需要ないのに…もう時間だよ。」
ターニア「感想は感想にて、その他要望はメッセージボックスへ!誤字報告は誤字へ!評価もお待ちしております!」
レック「では次回もお楽しみに!」


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武道家の趣味はダイクサン

Wii UでⅩが無料でできるということで2日で仕上げました。


 私達はレイドック城から北東にある関所を通過して戦っていた。

 

「あらよっ!」

 

 ハッサンさんがバブルスライムを飛び膝蹴りで倒す。

 

「はぁぁぁっ!」

 

 私はそれをみて気合の入った声を出してガンコどりを銅の剣で切りつけて倒す。

 

「行くっ……わったったっ!?」

 

 ドシーンッ! 

 

 そんな中お兄ちゃんはレイドックで買ったブーメランを投げたけど石に躓いてコケた。

 

 

 

 そのコケた勢いでブーメランの威力が増し、アロードッグ二匹がブーメランにあたり倒した。

 

「やった! どうだ! これが僕のあだーっ!!」

 

 倒したのはいいんだけど……はしゃぎ過ぎてブーメランを掴むことを忘れて顔面に勢いの増したブーメランが直撃した。

 

「〜っ!!」

 

 お兄ちゃんはゴロゴロと土の上を転げまわる。そりゃ痛いよね。コケた分だけ威力が上がっているもん。

 

「お兄ちゃん、だ、大丈夫?」

 

 流石にこの姿を見てそのままという訳にもいかないし、お兄ちゃんに声をかけた。

 

「気合でなんとかしてみるよ」

 

 お兄ちゃんの顔はブーメランを受け損なった跡がついて真っ赤になっていてとても痛々しい。しかも涙目になって痛みを我慢しているのがよくわかり説得力はキメラの翼で飛ばされていた。

 

「その顔でなんとかしてみるって言われても説得力ないから顔見せて」

 

 お兄ちゃんの顔に手を当てて私は呪文を唱える。

 

「ホイミ」

 

 お兄ちゃんの顔からスーッと赤みが消え、元の肌に戻って血色も良くなった。

 

「ありがとうターニア。助かったよ」

 

 そう言ってお兄ちゃんは私の頭をポンポンと置いて撫でてくれた。

 

 それからしばらく経ってハッサンさんが待ち惚けしていることに気がついた私達はすぐに謝った。

 

 

 

 それからラーの鏡について情報を集める為に外れの民家に寄った。

 

「すみません。ちょっとお願いしたいんですが……」

 

 そう言って私達は民家に入ると少し堅気の人間とは言えない見た目の男の人がそこにいた。

 

「なんだお前らは? ここは俺の家でお前らの家じゃないよな?」

 

 その怖い顔とドスの効いた声が余計に怖い。だけどこれもラーの鏡の為。少し我慢して尋ねた。

 

「はい。少し聞きたいことが……」

 

「人の家に入ってきて厚かましいことをいう奴だな。何か用なのか?」

 

 四の五の言わず問答無用。まさしくその諺通り、おじさんは不機嫌そうに尋ねた。

 

「ラーの鏡について聞きたいんですが……」

 

「ラーの鏡がなんだって? ちょっと待った! お前さんの話を聞く前にだ。ワシの頼みの方を聞いてもらおう。それでもいいな?」

 

「はい」

 

「よし! 話はついた! 実は小屋を建てたいんだ。切った木をしまっておく小屋をな」

 

 このおじさんがいうと解体とか物騒な方向で使いそうな感じがする。ハッサンさんの表情も硬くいかにも引き受けたくなさそう。

 

「どうじゃ引き受けてくれるな?」

 

「やるよ」

 

 お兄ちゃん……空気読んでよ。

 

「ジョーダンじゃねえよ。俺達がなんで大工仕事なんてやらなくちゃいけないんだ? それにターニアちゃんにこんな仕事をさせる訳にも行かねえ。俺達は王宮の兵士だ。行こうぜ、レック! こんなオヤジに用はねえっ!」

 

 ずかずかとハッサンさんが外へ出て行ってしまい私達はそれを見るしかなかった。

 

「ふーむ。お前さん達の仲間は行ってしまったようだな。しかしワシらでやればなんとかなるだろう。ついて来てくれ!」

 

 おじさんが外へ出て行き、私達はそれについて行った。

 

 

 

「という訳でここら辺に小屋を建てたい訳だ」

 

 ハッサンさんが不機嫌そうにおじさんを睨むがおじさんはメタルスライムに呪文を唱えるかのように無視した。

 

「小屋を建てるにはまず木を切ってそれを削って組んで……ありゃ? 土台が先だったか? ……そうそうまず土台だ。で土台を作るには砂利を敷いて……いや穴を掘る方が先か?」

 

「ああ、じれったい!!」

 

 説明している途中でハッサンさんがそう言って私達に近づいた。

 

「わかった。俺がやるから少し退いてくれないか?」

 

 私達はそれを聞いて少し離れた場所にいくとハッサンさんがかなり気合を入れていた。

 

「よし! いっちょやるか!!」

 

 あっという間にハッサンさんは小屋を建ててしまった。

 

 

 

「こいつはすごい!」

 

 おじさんがその中に入るとはしゃぎ、ハッサンさんは照れくさそうにこっちに来た。

 

「意外だったろ? 俺にもどうしてできたのかわからないけどよ。大工仕事をやりだすと身体が勝手に動いちまうんだ」

 

 唖然としているお兄ちゃんと私にそう語るハッサンさん。

 

「でもどうして最初おじさんの言うことを断ったの?」

 

 ハッサンさんのいうこともわからないでもないけどわざわざ隠すほどじゃないと思う。むしろ誇っても良いくらい。

 

「旅の武道家の俺がこんなことが得意なんてあまり知られなくないからだよ。ターニアちゃんにはわからないけど男のプライドみたいな奴だよ」

 

 確かに私は女の子で男の人の気持ちはわからない。けどお兄ちゃんみたいな人は男の人もわからないと思うよ。

 

「武道家と大工。どっちも力仕事だから知られてもいいと思うな」

 

「それよりも今度は俺達が聞いて貰う番だ。行こうぜ!」

 

 話逸らされた。でもハッサンさんが話すまで待とう。

 

 

 

「それじゃ約束通り、ワシがお前達の話を聞いてやろう。確かラーの鏡についてだったな」

 

 おじさんが機嫌良さそうにそう聞いてきた。

 

「はい。出来れば場所もわかればお願いします」

 

「ラーの鏡……ラーの鏡……」

 

 ブツブツとおじさんが呟き、唸り声を上げた。そしてついに口を開いた。

 

「本当にすまなんだ! ラーの鏡なんて名前の鏡は見たことも聞いたこともない!」

 

 顔を青くしておじさんは平謝り。散々ハッサンさんをこき使っておいてそれはないと思う。

 

「おいおっさん! それはないだろうっ!? なんなら今すぐこの小屋を解体するぞ!」

 

 案の定そう言ってハッサンさんはすぐにでも外に出てこの小屋を解体にし向かおうとしていた。

 

「ま、待ってくれ! その代わりダーマの神殿の事を教えよう!」

 

 流石におじさんは焦ってハッサンさんを引き止めた。

 

「ラーとダーマ。なんとなく似てると思わんか?」

 

 ダジャレにもならないことを言って寒い思いすらも出来ず私達は口を揃えた。

 

「「「全然」」」

 

 かつてないほど私達の意見は一致した。

 

 

 

「そう言わずに聞け! 聞いておいて損はないぞ。ワシのご先祖様の話で直接見た訳じゃないが。ここから東の大きな川を越えてさらに東の山奥に大きな神殿があったそうだ。あれが噂に聞くダーマの神殿じゃないかとご先祖様は言っていた」

 

 田舎っぽいけど仮にも神殿なら人が集まりそうね。そこでラーの鏡について聞いてみよう。

 

「それともう一つ! その川を渡る方法だが、ここから東の川岸の木に囲まれた場所に川の底を渡る抜け道があるとも言っていた。調べればすぐに見つかるはずだ。どうだ? 為になっただろう?」

 

 なるほど。確かに今の私達に船なんてないしそれはいいかも。

 

「ったく。仕方ねえか。レック、ターニアちゃん、とりあえず行ってみようぜ!」

 

 ハッサンさんは少しでもモチベーションを上げる為に声を出した。

 

「うん。ダーマの神殿なら人が集まりそうだしそこに行ってみよう」

 

 どんな神殿なんだろう。一般的に神殿って聞くと厳粛なイメージがあるけど中にはそんな神殿のイメージは違うと明言する人もいるし、どんなイメージかわからない。でもランドの言ったことだしやっぱり厳粛な雰囲気の神殿だと思う。

 

「それじゃ出発……あだっ!」

 

 お兄ちゃんが小屋の中にある木に躓いてしまいまた顔が赤くなってしまった。その体質どうにかならないのかな?




ターニア&レック「ターニアとレックの後書きコーナー!」
ターニア「はい。という訳で今回はハッサンさんの意外な特技の回だったね。」
レック「僕の体質も相当酷くなっている…」
ターニア「作者がドラクエⅩが無料でできるってことではしゃいで大急ぎで作ったらしいからその分ドジも酷くなったとか。」
レック「そんな理由で!?期間限定なのに!?」
ターニア「そんな理由でも作者が気まぐれだからどうしようもないと思うよ。」
レック「作者がH×Hの世界に転生したら絶対変化系だ…」
ターニア「どうしても作者(下手くそ)とやりたいなら問題がないか確かめてからお願いします。」
レック「そうだね…規約違反とかなったら怖いもんな。おっと時間だ。」
ターニア「感想・評価よろしくお願いします!要望があればメッセージボックスまで!」
レック「誤字報告は誤字にてお願いします!次回もお楽しみに!」


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地上の町へ

無料期間中、ドラクエⅩやってきました!イヤ〜バージョン1.0のラスボスまで倒すどころか天魔まで倒すの無理でした。

文字数が足りなくて仕上げるのも遅くなるし…でもようやくゴールデンウィークです!その時にもう一話くらいまでいけそうですので期待してください!


 あのおじさんの言うとおりに洞窟を見つけ私達は魔物を倒しながらも東の大きな川を越えた。その最中で青銅の盾やお金を拾ったりといいことだらけだった。

 

 

 

「それにしてもあの洞窟は魔物がウヨウヨいたな。ターニアちゃんはサポートだから守るのは当たり前だとしてもレック、お前は前衛もこなせるんだから自分の身は自分で守れよ?」

 

「その心配はないよ。さっきの見たでしょ? 僕の無双」

 

 お兄ちゃんは洞窟に入ってから絶好調でブーメランを投げればその場にいたバブルスライムが真っ二つになって、剣を振るえばギズモを一振りで倒してしまう。そのくらい絶好調だった。

 

「確かにな。ドジさえなければ俺と互角かもな」

 

 ハッサンさんはお兄ちゃんをジト目で見る……

 

 もちろんお兄ちゃんのドジがなくなったわけじゃない。ブーメランを投げた時はバブルスライムの毒がお兄ちゃんの手についてしまい、毒にかかって毒消し草を使うことになって……ギズモを倒した時は剣がすっぽ抜けて、寝ているテールイータもろとも巻き添えにし、岩に刺さって抜けなくなったりとドジばかりだった。

 

 

 

「ま、まあそれはともかく東へ行ってみよう! そこにゾーマ神殿があるみたいだし!」

 

「お兄ちゃん、ゾーマじゃなくてダーマだよ……」

 

 ゾーマ神殿だと邪悪な神殿のように聞こえる……実際にファルシオンも機嫌悪いし、後で蹴り飛ばされても知らないからね。

 

「言い間違えただけだよ! ダーマもゾーマもそんなに変わらないはず!」

 

 お兄ちゃん……ラーとダーマと似ているって言ったおじさんと同じレベルよ……それ。

 

 

 

 そんなこんなでダーマ神殿らしき場所に向かってみたけれど……そこには私達が旅をするきっかけになった大穴があった。

 

「おいおい! どういうことだ!? どうして穴の下に地面があるんだ?!」

 

 ハッサンさんはその穴よりも穴の下にある地面を気にしていた。大工の仕事をしていたからかな……? 

 

 

 

「……それと似たような穴に落ちたことがあるよ」

 

「本当か!?」

 

 お兄ちゃんの言葉にハッサンさんが驚きの声を上げた。

 

「うん……ターニアと一緒に落ちたけど命を落とすどころかむしろ無傷で済んだ。その穴の下の地面じゃ僕達は幽霊のように半透明になって誰からも認識出来ないようになっているんだ」

 

「その穴に落ちても無傷か……ありえねえな」

 

 信じられないよね……普通だったら窒息して死んじゃうか潰れたトマトのようにグチャグチャになって死んじゃうかのどっちかしかないもん……

 

「だがレックはともかくターニアちゃんが嘘をつくとは思えないし、ここにいるのが何よりの証拠だ。それにしてもどうやって元に戻ったんだ?」

 

「井戸を使ったら何故か元に戻れたよ」

 

「……井戸?」

 

「僕にもさっぱりわからないよ。何がどうなっているのか……でも井戸を使ったら僕たちの世界の井戸に繋がっていた」

 

 お兄ちゃんは眉をハの字に寄せて困った顔になった。

 

「井戸か……何にしてもここから動かなきゃ手がかりはなさそうだぜ」

 

「……お兄ちゃん行こう。どうせここから落ちても死なないのはわかっているんだし」

 

「じゃあ、行こう! いっせーの……」

 

「「「せっ!」」」

 

 私達はそこから飛び降り、再び半透明になる地面へと降り立った。

 

 

 

「ここは?」

 

 私が周りを見ると瓦礫の山と人工物で出来た床が目に映った。

 

「随分とボロっちい建物だね」

 

「その割には石造物の面積が広いな……まさかとは思うがここがダーマ神殿なのか?」

 

「あり得りそう。魔王ムドーがダーマ神殿を滅ぼしたと考えると辻褄が合う」

 

 お兄ちゃんがハッサンさんの意見に頷くと階段を降りて行くと井戸がそこにあり、そこの縁にお兄ちゃんが座った。

 

「それにしたって何の目的で?」

 

「わからないけど、おそらくダーマ神殿が邪魔だったとか?」

 

「そう考えると不思議でも何でもないな」

 

「とにかくここから出て他の場所に行こぉぉっ!?」

 

 お兄ちゃんが手を滑らし、井戸の中に入ると途中で声が聞こえなくなった。

 

 

 

「もしかしてここが例の井戸なのか?」

 

「そうみたい」

 

「なるほどな……じゃあとりあえず階段から上がってレックを待とうぜ。きっとあいつもやってくる」

 

「そうだね」

 

 そして階段を上り、地上に上がるとお兄ちゃんの声が聞こえた。

 

「ハッサンー! ターニアー!」

 

「ここだここ!」

 

 ハッサンさんが手を振って私達の場所を知らせる。

 

「いたいた! それじゃ報告するよ」

 

「報告? 何の報告だ?」

 

「僕が井戸に落ちた後の事だよ。前回僕たちが落ちた井戸は他の場所の井戸に繋がっていたんだけど今回は違った」

 

 ……そういえば井戸から井戸へ繋がるとは限らないことを頭に入れていなかった。

 

「へえ……でもすぐに帰って来れたってことは落ちた穴の近くだったのか?」

 

 もし、お兄ちゃんが落ちた穴の近くじゃなく遠い場所だったらずっと会えなくなっていたかもしれない……そうなったら私達はラーの鏡の前にお兄ちゃんを探さなきゃいけなくなる。本当によかった。

 

「そんなところ。まあ詳しい話は歩いてでも出来るし、近くの町を探そうか」

 

「確かにな」

 

「賛成!」

 

「それじゃ近くの町へレッツゴー!」

 

 旅をしてようやくわかったけどこういう時のお兄ちゃんはだいたいドジを踏む。何故だかわからないけれどもお兄ちゃんのドジはお兄ちゃんがテンションが上がった時……悪く言えば入れ込んだ時に効果を発揮し、魔物を倒す時なんかもお兄ちゃんが入れ込んだ時だった。その結果都合良く魔物を倒せるんだからただのドジじゃない。ドジの神様に愛された存在だと思う……お兄ちゃんからしてみれば迷惑極まりないけど。

 

 

 

「町だーっ!!」

 

 そんなことを考えている間に珍しくお兄ちゃんがドジを発揮せず町について叫んだ。

 

「こんな時にハッサンさえいてくれたら……」

 

「バッキャロー! そんな奴の名前を出すんじゃねえ! バカ息子は勝手に出て行ったんだ。あんなガキ俺の知ったこっちゃねえ!」

 

 そんな怒鳴り声が家から聞こえ、ハッサンさんは戸惑った。

 

「へえ、あそこの家にいた息子もハッサンって名前なんだな。妙な偶然もあるもんだ」

 

「そうだね。そのハッサンさんって人はどんな人なのか見てみたい気もする……」

 

「あんな親父が父親じゃなくてよかった……」

 

 ハッサンさん苦手そうだよね。ああいうの。

 

 

 

 パリーン! ガラガラドシャン! 

 

 

 

 ……何やっているのお兄ちゃん? 窓は壊すものじゃないよ。

 

「なんだなんだ!?」

 

「ドロボー!!」

 

 お兄ちゃんのせいで話が聞けなくなったのでお兄ちゃん一人にして解決させてやりたいという気持ちからこの場から立ち去った。

 

 

 

「ちょっ!? 待って! 二人とも置いてかないで!!」

 

 お兄ちゃんが何か叫んでいるみたいだけど私とハッサンさんは聞かなかったことにした。お兄ちゃんならほっといても大丈夫。ドジでも問題ないくらいには活動出来るし……

 

「わぷっ!?」

 

「痛っ!?」

 

 いきなり先頭を走っていたハッサンさんが止まり、私達は玉突き事故のように転んだ。

 

「いきなり止まってどうしたの?」

 

 そう言ってハッサンさんに尋ねるとハッサンさんが指をさした。

 

「静かにしろ。いい雰囲気なのにぶち壊すのは野暮ってもんだぜ」

 

 いい雰囲気……あっ!? 

 

 

 

「メラニィ、どうして僕の気持ちをわかってくれないんだい? こんなに君を愛しているのに……」

 

「私だってジョセフ様のことを愛しています! ……でもご主人様のことを思うと……」

 

「パパだっていつかは僕達の結婚を許してくれるさ。もし許さないようだったら僕は家を出るよ」

 

「それはいけないわ。ジョセフ様はいずれはお父様の後を継いで町長になる人。私よりも優れた人、素敵な人が現れますわ」

 

 身分違いの恋人が互いに想いあっているのに身分が違うだけで叶わない恋になってしまう……まるで物語の中のお話みたい。私は唾を飲み込み、その様子を見る。

 

「メラニィ……僕は!」

 

 ジョセフさん、そこで一押ししちゃえば勝ちだよ! 

 

 

 

 プゥ〜……

 

 

 

 こんな時にオナラの音が聞こえ、せっかくの告白の雰囲気が台無しになった。

 

「お兄ちゃん! 空気壊さないでよ!」

 

「ごめん!」

 

 もう! おかげであの二人も戸惑っているじゃない! あれ? 私達が声をかけても反応しないくせにオナラの音で反応するってことは私達はオナラ以下ってこと? 世の中は理不尽っ! 

 

「あっ! そろそろご主人様の元へ戻らないといけませんので失礼します!」

 

 メラニィさんがお兄ちゃんのオナラの音で台無しになった空気を誤魔化そうとその場を立ち去ってしまった。

 

「待ってくれ、メラニィ。僕は君のことが──」

 

 ジョセフさんは言葉を切るとため息を吐き、私達は居た堪れなくなりその場から逃げた。

 

 

 

「あれでメラニィさんとジョセフさんが結ばれなかったらお兄ちゃんのせいだからね。人を不幸にした責任は重いわよ」

 

「う、反省してます」

 

 私はお兄ちゃんを説教して、注意させる……

 

「でもお兄ちゃんが全部悪いってわけじゃないのはわかってるわ」

 

 けれどもよくよく考えてみれば生理現象……どうしようもないことだと気づいて私は切り上げた。

 

「ターニア!」

 

 お兄ちゃんが希望に満ちた顔を見せ、笑顔になる。

 

「昨日だって寝ている間にお兄ちゃんのパンツが白濁した液体にやられちゃったもんね」

 

「〜っ!!」

 

 お兄ちゃんは顔を真っ赤にして縮こまってしまった。

 

 

 

「ターニアちゃん、そのくらいにしておけ。レックが可哀想……ん?」

 

 ハッサンさんが私を咎めようとした瞬間、近くのドアを開いてそこに入り私達もそれに続くと女の人が鍋で何かを作っている姿が見えた。

 

「えーっと後はこの草を入れれば出来上がりっと。うふふ……メラニィの困った顔が目に浮かぶようだわ。見てらっしゃい。私のジョセフに手を出したりして許さないんだから……」

 

 その女の人はそそくさとその部屋を出て行ってしまい、私達はそれを唖然と見過ごした。

 

「……っ! ハッサン、ターニア! 行こう!」

 

「ああ……!」

 

 そして先回りしようとした瞬間、お兄ちゃんが転んでしまい、私達も巻き添えにした。

 

 

 

「これをペロの餌に混ぜて……これで良いわ。運が悪かったと思って諦めるのね。メラニィ。ジョセフは渡さないわ」

 

 結局、私達はその女の人を止めることは出来なかった。その毒の餌を処分しようにもメラニィさんが予想以上に早くペロに餌を食べさせてしまったせいで何も出来ず、私達はメラニィさんの濡れ衣を着せられる瞬間を見つめるしかなかった。




ターニア&レック「ターニアとレックの後書きコーナー!」
ターニア「はい、という訳で今回はお兄ちゃんのドジが切れる回だったね。」
レック「酷いよ…。前回よりもドジが酷いって遊び人じゃないんだから…」
ターニア「そんなお兄ちゃんの内心はどうでもいいよ。それよりも次回、物凄い美人さんがお兄ちゃんの心を癒してくれるかもよ。」
レック「えっ!!?嘘…」
ターニア「ただしキャラ崩壊注意。」
レック「えっ…何それ…って時間がない!」
ターニア「感想・評価よろしくお願いします!要望はメッセージボックスまで!」
レック「誤字報告は誤字にてお願いします!次回もお楽しみに!」


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10人中10人が見惚れる麗人、登場!

何とかゴールデンウイーク中に仕上げ終わりました。


 メラニィさんが納屋に閉じ込められてから夜が明けた。

 

「畜生が!」

 

 特にハッサンさんは大荒れで樽を蹴っ飛ばして破壊する。誰にもそれが気づかれず、静まり返った状態でお兄ちゃんが口を挟んだ。

 

「落ち着いて、ハッサン。そりゃ僕だって悔しいのはわかるよ。でもさ……」

 

「だからって泣き寝入りするっていうのか!? あのクソ女相手にか!?」

 

 相当気に食わなかったみたい。それもこれもメラニィさんを信じてあげなかった村長さんにも責任がある。もしメラニィさんを信じてあげればこうなることもなかったと思う。

 

「こんな時は魔物を倒してスカッとしたいがそんなことでストレスを発散しても仕方ねえ」

 

「ハッサンだけに?」

 

「ホワタァッ!」

 

 お兄ちゃんのくだらないギャグを聞いてハッサンさんの容赦ない裏拳がお兄ちゃんに炸裂し、顔にめり込む。

 

「〜っ!!」

 

 顔がめり込み、呪文が唱えられなくなっただけでなく薬草も使えない状況でお兄ちゃんはジタバタしていた……お兄ちゃん。失言はほどほどにね。

 

 

 

 数分後、お兄ちゃんが回復し、ハッサンさんも冷静になると私の話を聞くことにした。

 

「お兄ちゃん、ハッサンさん……真犯人のアマンダって人はボロを出さないでしょうし、私達が見たと言っても聞こえないんじゃどうしようもないよ」

 

「だからってこのまま泣き寝入りするのかよ?」

 

「そんなことはしないよ。でも私達が今出来ることにそれは含まれていないということよ」

 

「ん〜? ますますわかんねえな」

 

「まず最初にやるべきことは私達が透けている状態から脱出しなきゃいけない。そうすれば真犯人に関する情報を村長さんに告げたり、ラーの鏡を探すのに必要な情報を集めたりすることが出来るでしょ?」

 

「なるほど。そういう考えもあるか。このままでも案外情報を集めるのに不便じゃないと思っていたからな」

 

「とりあえずここにいる人達はほぼ全員集められる情報は集められたし……他の町へ行ってみる?」

 

「そうだね。探せるものは探したし、他の場所を散策してみようか」

 

 そしてお兄ちゃんを先頭に町を出ようと歩くと、男の人の声が聞こえた。

 

「……それにしてもさっき町に入ってきた女の人物とんでもなく綺麗だったな。誰かを探して港の方へ行ったようだけど俺もあんな風に探されてみたいよ」

 

「……ターニア、ハッサン」

 

 お兄ちゃんがそう呟いて、ピタリと足を止めると振り向いて後ろにいる私達を見た。

 

「お前まさか……?」

 

「一度その美人さんに会ってみない? どうせ声をかけても迷惑にはならないしさ」

 

「ダメだ……っていいてえところだが時間はまだあるし少し見る程度ならいいか」

 

「ターニアは?」

 

「お兄ちゃんが変な行動をしなければそれでいいよ。ドジとか」

 

「……善処するよ」

 

 お兄ちゃんは苦笑いでそれを返すと港の方へと歩いていった。

 

 

 

 〜港〜

 

 

 

「噂通り凄い綺麗な人……」

 

 私はそのお姉さんを見て思わずため息を吐いてしまう。普通の美人さんなら嫉妬してしまうけれどこのお姉さんはもう美し過ぎて、敵わない。あのお姉さんはそんな気持ちにさせられる。

 

「同感だ。ターニアちゃんは可愛い系だから比べることは出来ねえけど、あれで美人でなきゃ誰が美人じゃないんだ?」

 

 ……可愛いってそんなに可愛いかな……? 私は顔を紅潮させてそんなことを考える。ハッサンさんの言うことってお兄ちゃんとは違ってしっかりしているから妙に説得力がある。だからこんなに赤く顔を染めたのかもしれない。

 

 

 

「あらこんにちは。随分仲が良いわね」

 

 金髪のお姉さんが私達に声をかけて微笑んできたので私は笑顔でそれに答えた。

 

「お姉さんこんにちは──ってあれ?」

 

 私が声を出す……けれど今の私達の声は聞こえないのを思い出して頭に? が一杯付く。

 

「別にこれは独り言で言っている訳じゃないわよ。ちゃんと貴方達が見えるし、ここで貴方達を待っていたわ。私の名前はミレーユ。貴方達は?」

 

「それよりも何で僕達が見えるんだい?」

 

 私の代わりにそう声を出したのはお兄ちゃんだった。お兄ちゃんはやるときはやる。それこそこの中で最もリーダーにふさわしいくらいに。……ドジだけど。

 

「うふふっ。私に貴方達が見えるみたいで驚いているみたいね。どうして私だけが見えるのか、その理由が知りたければ私に着いていらして。街の外で待っているわ」

 

 お姉さん。もといミレーユさんがそう言ってお兄ちゃんの耳元で何かを呟いて街の外に行くとお兄ちゃんは顔を真っ赤にして、ハッサンさんは眉を顰めた。

 

「何だか怪しいな……でも今の俺達に他に出来ることなんてねえし、行ってみるしかなさそうだな。……ってどうしたレック?」

 

 ハッサンさんが結論を出すとお兄ちゃんの様子が変なことに気がついて、声をかけた。

 

「な、何でもない! さあ、それよりも行こう!」

 

 私はお兄ちゃんの様子を見て悟ってしまった。

 

 

 

 やっぱり兄妹なんだな……って。

 

 

 

 お兄ちゃんの様子から考えると、ミレーユさんに……エッチい感じのセリフを聞かされたんだと思う。田舎育ちは結婚した大人達やエッチいことしか考えていない村人達はそう言ったことに耐性はあるけど私達は違う。まだまだ恋人も経験していない。初心になるのは当たり前の事だった。

 

 

 

「いや、教会でお祈りして行った方が良いかもしれないぜ」

 

 ごもっともだけど今の私達はやましいことばかり考えているのでお祈りも猪もあったものじゃない。

 

 

 

「ふふふ……やっぱり来ちゃったね」

 

 結局、数分後町の外で待っているミレーユさんを待たせる訳にもいかないのでお祈りをせず町の外へと出てミレーユさんと合流し、着いていくと一軒家サイズの館みたいな場所についた。

 

「さあどうぞ。こっちよ」

 

 ミレーユさんが入り口から見て右方向に案内するとお婆さんが私達を見て機嫌良さそうに口元に笑みを浮かべた。

 

「ひゃーひゃっひゃっ、おかえりミレーユ。どうやら見つけてきたようじゃね」

 

「ただいまお婆ちゃん。その通り、見つけてきたの」

 

 ……何をどう見つけたの? 私達を置いてけぼりにして謎のお婆さんとミレーユさんが話を続ける。

 

「お婆ちゃんの言う通りだったわ」

 

 言う通り……ってことは見た目からして占い師かな? そう考えているとミレーユさんが私達が困惑していることに気がついて私達に向けて口を開いた。

 

 

 

「こちらは夢占い師のグランマーズ。貴方達を待っていたのよ」

 

「ま、そういうことじゃ。確かお前さんはレックとハッサン、そしてターニアだったね?」

 

「えっ? どうして私達の名前を? それにどうして私達の姿が見えるの?」

 

「ふぉっほっほっ。まあそう焦りなさんな。まず最初にわしやミレーユにどうしてお前さん達の姿が見えるのか。そもそも何故お前さん達がこの世界で姿が見えないのか、あれこれわからなくて困惑しているんじゃろ?」

 

「あ……はい!」

 

 私が代表して答えるとグランマーズお婆さん、マーズお婆ちゃんでいいかな? マーズお婆ちゃんが満足げにうなづいた。

 

「……ふむそうかい。しかしお前さん達にはしっかりと目的があるそうじゃ」

 

「その通り! それは……」

 

「言わんで良い」

 

 お兄ちゃんがドヤ顔をして答えようとするとマーズお婆ちゃんに遮られた。

 

「レイドック王の兵士としてラーの鏡を探せと……そう言われているはずだからのう。だがその為にはお前さん達の姿をどうにかせにゃいかん。この世界で姿が見えなければレイドックへの乗船券も買えないのじゃから」

 

 マーズお婆ちゃんの言う通り。私達のこの姿でやれることはごく限られているそのやれることも魔物退治とか空き巣とか……そんなことしかできない。もっとも空き巣なんてのはやらないけど。

 

「確かに乗船券は買えないけど船に乗って移動することはできるんじゃないかな?」

 

「レックお前、タダ乗りする気か? そんな犯罪じみたこと俺達にもやれってか?」

 

「というか犯罪ね」

 

 お兄ちゃんの案にハッサンさんとミレーユさんがダメだしをしてお兄ちゃんがショボンとなるとマーズお婆ちゃんが咳払いをした。

 

「ただ、お前さん達を助けるには少しばかり準備が必要じゃ。ともかく今日のところは一休みおし。話の続きはまた明日にしよう。さ、そこのベッドでお休みなさいな」

 

「グランマーズさん。その前にいいですか?」

 

「何だね?」

 

「マーズお婆ちゃんって呼んでもいいですか? 私達は両親が早くから死んで祖父母もいなかったから……グランマーズさんを見ているとそう呼びたくなるの」

 

「勝手におし」

 

「やったー! ありがとうマーズお婆ちゃん!」

 

「それじゃわしも寝るかね」

 

 マーズお婆ちゃんはベッドで眠りにつくと、私達も眠りについた。

 

 

 

 〜深夜〜

 

 

 

「……っくり……」

 

 ……夜中に目が覚め、目だけを開くとその視線の先にはお兄ちゃんの髪を弄っているミレーユさんが見えた。

 

「うん……後はこうしてと」

 

 そして髪を弄る為にお兄ちゃんの顔を横にすると、そこには私の顔があった。正確にいうとお兄ちゃんが化粧させられていて私の顔になっていた。

 

「ターニアちゃんの髪の毛は……」

 

 ビクリとして私は慌てて目を閉じる。その選択肢は正解だったようでミレーユさんが私に近づくと髪の毛を撫でた。

 

「ターニアちゃんの髪の毛の柔らかさはこんなものね」

 

 そしてミレーユさんはお兄ちゃんの髪の毛を再び弄ると鏡の中の私がそこにいた。

 

「今度は起きている時にやって楽しみましょう……お休みなさい」

 

 ミレーユさんがベッドで眠りに着くと私の顔になったお兄ちゃんを見て私も寝た。

 

 

 

 翌朝、お兄ちゃんの顔を見たハッサンさんが大笑いしたのは言うまでもない。




ターニア&レック「ターニアとレックの後書きコーナー!」
ターニア「はい。というわけで今回はミレーユさんの登場回でしたね。」
レック「東城会?あのヤクザの人が活躍するあのゲームの組織?」
ターニア「お兄ちゃん、そんなこと言っているとお兄ちゃんの女装シーンが増えるだけだよ?」
レック「…ごめん。だけど前回の宣言だとミレーユが癒し要素になったって聞いていたんだけど…」
ターニア「作者がゴールデンウイーク中に仕上げるのに『そこまでは無理だ』って思って諦めたんだって。」
レック「だったら僕の女装シーンを省いてよ!」
ターニア「お兄ちゃんのドジをなくすにはそれが一番だと思うけどな…」
レック「ああもう!時間になっちゃったよ!」
ターニア「感想・評価よろしくお願いします!」
レック「誤字報告は誤字にて、要望は作者のメッセージボックスにてお願いします!」


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お婆ちゃんからの依頼

更新遅れました!これからは他の小説にも力を注ぎたいと思います。


「あらおはようレック。昨日は随分スヤスヤ眠ったみたいね」

 

 ミレーユさんがすっとぼけたように挨拶するとお兄ちゃんは顔に影を作って落ち込んだ。

 

「おかげで君に女装させられて、ハッサンは大笑いしているけどね」

 

「化粧を落とすのはともかく影も落とすのはよくないわよ」

 

「誰の所為だと──」

 

「お前さん達は朝っぱらから騒々しいのう」

 

 お兄ちゃんが反論しようとするけどマーズお婆ちゃんがそれを遮ってしまった。

 

「すみません。うちの兄が」

 

「まあ騒々しくなった原因を作ったこはこのミレーユだ。そんなに気にやむ必要はない。それよりも昨日の続き……つまりお前さん達のことについてだが、こっちの世界でも自分達の姿が見えるようにして欲しいじゃろ?」

 

「「「もちろん!」」」

 

「ま、そういうと思ったわい。この世界でお前さん達三人の姿を見えるようにするには夢見の雫が必要じゃ。夢見の雫は普段私の仕事でも使うんじゃが生憎今は切らしていてね。南にある洞窟の奥、夢見の祭壇でしか手に入らないんじゃよ」

 

「つまり、お使い?」

 

「そういうことだね、しかし厄介なことにその洞窟には魔物が住み着いてしまってのう……取りに行きたくともワシは当然、ミレーユすらも行けないという訳じゃよ」

 

「それだけ強力な魔物がいるってことか」

 

 そういえばハッサンさんいたんだ。大笑いしていたのに随分回復早い。

 

「そこでここは一つお前さん達に行ってもらおうと思ってな」

 

「おいおい、マジかよ。勝手に決めないでくれよ」

 

「ふぉっほっほっ。勝手に決めた訳じゃないぞよ。これも夢のお告げじゃよ。ともかくわしもお前さん達も夢見の雫が必要という訳だし、言ってみればこれは助け合いというやつじゃ」

 

「よく言うぜ。どっからどう見ても脅しにしか聞こえねえよ」

 

「そう思うのは勝手だけど他に手段はあるのかい?」

 

「ハッサン、諦めよう。ここは従うしかないよ」

 

「……わーったよ」

 

「ふぉっほっほっ。やっと決心してくれたようじゃな。それじゃ南の洞窟から夢見の雫を取ってきて貰おうかね。お駄賃変わりに袋に薬草10個入れておくよ」

 

 マーズお婆ちゃんが袋に薬草を入れるとミレーユさんに向けて口を開いた。

 

「……ミレーユ、お前もついて行っておやり。気をつけてな」

 

「ええわかったわ。お婆ちゃん。それじゃ行きましょう。私も少しだけ貴方達のお手伝いをさせて貰うわ」

 

 ミレーユさんが仲間になった! 

 

 

 

 マーズお婆ちゃんの館から出るとお兄ちゃんが井戸をじっと見つめて一言呟いた。

 

「ところであの井戸。少しだけ確かめるよ」

 

 お兄ちゃんがそういって井戸を覗く。井戸を確認するのはわかるけど

 

「ギャァァァッ!」

 

 いどまじんが現れ、お兄ちゃんを襲った。

 

「レックーっ!」

 

 ハッサンさんが飛び蹴りをするけど間に合わない……するとミレーユさんが呪文を唱えていた。見たところホイミのような回復呪文じゃない。となれば攻撃呪文……? いや違う……? 

 

「スカラ!」

 

 お兄ちゃんの身体が光り、防御するといどまじんの攻撃を防いだ。

 

「喰らえっ!」

 

 しかもお兄ちゃんが防御出来るとは思っていなかったのかいどまじんは硬直してしまい防御はガラ空き。ハッサンさんの飛び膝蹴りが会心の一撃となって倒れた。

 

「ふぅ……いや〜助かったよ。ありがとう皆」

 

「お兄ちゃん、お礼するのはいいけどその前に注意力が足りないからこれでもか! って言うほど注意しないとダメだよ」

 

「ごめん」

 

「それじゃあ行きましょう」

 

「あ〜後ちょっとだけ待って。井戸に入れば向こうの世界にいけるかもしれないから!」

 

 そう言ってお兄ちゃんは井戸に突っ込んだ。次の瞬間、ドシン! という音が聞こえ、覗いてみるとお兄ちゃんが頭を打って気絶していた。

 

「お兄ちゃん……」

 

 私は頭を抱えた。

 

 

 

 お兄ちゃんのことを放っておくわけにもいかずお兄ちゃんを井戸から回収し、外でホイミをかけて治療し終わるとお兄ちゃんを正座させた。

 

「お兄ちゃん、さっき言ったのにどうして注意しないの?」

 

「あはは……ゴメン」

 

「今度から勝手な行動はダメ! もし勝手に行動したらファルシオンに頼んで蹴っ飛ばしてもらうよ!」

 

 ファルシオンは筋肉モリモリマッチョな身体でそのパワーは思い切りキックすればそこらへんのモンスターを蹴散らせるほどの力がある。そんなパワーで蹴られたらお兄ちゃんどころかハッサンさんですらも大怪我を負うこと間違いなし。

 

「それだけは勘弁して!」

 

「それじゃお兄ちゃん。手を出して」

 

「あっ、はい!」

 

 お兄ちゃんが手を出すと私はそれをつかんで引っ張るとお兄ちゃんが立ち上がった。

 

「それじゃ行こっ! お兄ちゃん」

 

「え? ああ……うん」

 

 お兄ちゃんは少し戸惑いながらそう言って先頭に立ってみんなを仕切った……うん。お膳立てしているとはいえ、このくらいはお兄ちゃんは出来るよね。

 

 

 

「にしてもなぁ〜……あの婆さんが薬草10個渡すなんて気前が良いのか、よっぽど危険なのかって話だよな」

 

 少し歩くとハッサンさんがそんなことを言い出して腕を組んだ。

 

「あら、ハッサン。そんなに不安?」

 

「いやまあ……俺達の力を過小評価しているんじゃねえかって時々思うんだよ。そりゃ今の時点じゃ魔王ムドーには勝てねえよ。でも魔王以外なら蹴散らせる位には自信があるぜ」

 

 ハッサンさんは腕を曲げて力こぶをつけるとピクピクとスライムのように筋肉が動いていた。

 

「ハッサンは自分を過大評価しすぎよ。どんな相手でも油断したら死ぬことになるわよ。例えば魔物の攻撃で麻痺になったら魔物の格好の餌食でしょうし、毒にかかったら戦闘にも支障が出るわ。そんな状況でいくら力があっても勝てる見込みはあるのかしら?」

 

「ないとは言い切れねえがあるとも言い切れねえよ。だがガンガンいって素早く倒せばそんな状況に陥るわけねえけどな」

 

 確かにハッサンさんならそういうことは出来そう。お兄ちゃんや私なんかだと毒にかかったら即逃げて教会か毒消し草を使って毒を消すしかない。キアリーはまだ覚えていないしね。

 

「確かに弱い魔物はそれでいいかもしれないけれど相手が魔王ムドーだったらそうもいかないわ。魔王ムドーともなればごり押し出来るほど弱くないわよ? それどころかジリ貧に陥って負けるなんてことも十分にあり得るわ」

 

 魔王ムドー……お兄ちゃんは夢の中でムドーと一度戦ったことがあるみたいだけど惨敗したらしく、それ以来夢の中で魔物と戦う夢は見なくなったみたい。

 

「……まあな。そういうこともあるだろう」

 

「補助呪文の凄さはそこで発揮するのよ。補助呪文は敵を惑わせたり、弱体化させたりすることも出来れば自分達をパワーアップさせることが出来るの。ジリ貧の原因は火力不足が原因だから補助呪文でそれをフォローするってわけ」

 

「なるほど。じゃあこの薬草は回復呪文の代わりってことか」

 

「代わりじゃないわ。薬草は確かに苦くて美味しくないけれど回復呪文よりも的確かつ素早く出来る上に、回復呪文とは違ってMP(マジックパワー)を使わないわ。その分を補助呪文に回せば戦闘も有利になるから回復呪文よりも薬草を回復メインにした方が良いってわけなのよ。そうすれば楽でしょう?」

 

 回復呪文も無制限に出来る訳じゃないから、ミレーユさんの言葉に理解出来るわ。むしろ私もできるだけ薬草で手当てした方が良いのかもしれない……だけどお兄ちゃんの手当てはドジで失敗しそうだから怖いんだよね。幸いにも今まで失敗したことはないからその分の反動が怖い……

 

「うーん……たしかに」

 

「さあ、ここが洞窟よ」

 

 ハッサンさんが納得すると洞窟に着いて、私達はその中への入っていった。




ターニア&レック「ターニアとレックの後書きコーナー!」
ターニア「はい、というわけで今回はマーズお婆ちゃんからお使いを頼まれた回だったね。」
レック「でも矢鱈今回は遅かったね?作者に何があったの…?」
ターニア「作者によるとマリ☆カート8で絶好調(連勝街道一直線)すぎてやり込んでいたら文章力が低下したのが原因らしいよ?」
レック「通りで僕のドジにキレがないわけだ…」
ターニア「他の小説の筆を進ませたり、リアルとかの事情も絡んでいるらしいから今度更新するのは半年後になるかもしれないよ?」
レック「まさか…そんなことないよね?」
ターニア「作者のことだからそれ以内に仕上げるとは思うけど…DSに触れてすらいないでPS3でモンハンやっているから不安なんだよね。」
レック「ってもう時間だよ!」

ターニア「感想・評価よろしくお願いします!」
レック「誤字報告は誤字にて、作者にこの作品以外のことで質問があればメッセージボックスにてお待ちしています!」


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探し物見ーつけた!

皆さんお待たせいたしました。一年以上もほったらかしにした挙げ句、短めですがお許し下せえ! 書こうにもドラクエⅥがなくしてしまい、気合いで思い出して少しずつ書いていったというのが真相です。


「スカラ!」

 

 ミレーユさんの補助呪文が私達の防御力を上げ、お兄ちゃんとハッサンさんが魔物達に突っ込む。

 

「ハッサンはそっちのビッグフェイスを、僕はこっちのどろにんぎょうを叩く! ターニアは僕の後ろ……ってなんでハッサンの方に行くの?」

 

「お兄ちゃんのドジに巻き込まれたくないから」

 

 お兄ちゃんの周りにいるだけでも本当に危ないんだよ? さっきミレーユさんがドジに巻き込まれてドス黒い笑みを浮かべていたの忘れたの? お兄ちゃん……

 

「お前らのせいで妹が反抗期なんだけどぉーっ!」

 

 だからと言って魔物達に八つ当たりしないでよ。助かるけど。

 

 

 

「ふう、ようやく倒せた。それじゃ行こうか」

 

「お兄ちゃん危ない!」

 

「しまっ……!」

 

 後ろから倒したはずのどろにんぎょうがお兄ちゃんを襲い、ブーメランを投げようとしたけどもう遅く、間に合わない。その瞬間白い影がどろにんぎょう達を蹴散らした。

 

「ブヒヒーン!」

 

 その白い影はファルシオン。白く輝く馬体がものすごくカッコよく見えた。

 

「やっぱ凄えな、ファルシオン。本当に連れてきて正解だぜ」

 

「今からでもゴールドキックって名前を付けても遅ぐっ!?」

 

 ファルシオンがお兄ちゃんの股間を蹴るとお兄ちゃんは何か悪いものを食べたかのように顔を青ざめて、内股にしながら股間を抑え座り込んだ。

 

「お兄ちゃん……」

 

 余計なことを言わなきゃいいのに。と思っても言わないのは私なりの親切心。もし言ったらお兄ちゃんの心折れちゃうもん。

 

「あらあら、これでレックが去勢したらターニアちゃんにお姉ちゃんが出来るわね」

 

「ミレーユさん、それはシャレにならないから言わないであげて」

 

「ふふふっ」

 

 うちのパーティのパツキン美人が怖過ぎる件。

 

 

 

 〜数分後〜

 

 

 

「死ぬかと思ったよ」

 

「あれはわかる……」

 

 ハッサンさんも男の人だからか股間の痛みに共感し、頷いていた。そりゃ人間だから誰でも痛みはあるとは思うけどそこまで大げさにする必要があるの? 

 

「あらあら男として死んだら女の子にしてあげるから安心して女の子になりなさい」

 

「ミレーユ、怖いこと真顔で言わないでよ!」

 

「本当にお兄ちゃんがお姉ちゃんになったら、私やだよ!」

 

 ただしイケメンに限るとかよく言うけどそれだけは嫌っ! お兄ちゃんはお兄ちゃんでないと嫌だよ……

 

「まあ俺もレックが女であるよりも男であった方が良い。……というか何でレックをそんなに弄るんだ?」

 

 ハッサンさんの疑問はもっともで、私やお兄ちゃんも気になってミレーユさんを見つめる。

 

「それは乙女の秘密よ」

 

 ミレーユさんがウインクし、そう答える。美人な人は何をやっても美人なんだなぁ。

 

「良いじゃん、教えてよ!」

 

「今はその時じゃないわ」

 

 一瞬だけ見せたミレーユさんの悲しげな瞳が印象に残り、私は目を丸くする。あのミレーユさんにも悲しい過去があったんだと理解し、納得する。だとしたらお兄ちゃんを弄るあの行動はミレーユさんには妹が居たけど病気で死んでしまったとかかな? 

 

「良いじゃん、良いじゃん!」

 

 お兄ちゃん、ミレーユさんがこう言う時は諦めなきゃダメだよ。もしここで藪を掻き分けるようなことをすれば蛇、いやそれ以上の何かが出るのは目に見えているから控えて! 

 

「それじゃレック。貴方はこれからレミィという女の子になって冒険する? そうしたら話すわ」

 

 ミレーユさんがお兄ちゃんの股間を掴み、握る。いくらミレーユさんが男の人の股間の痛みを共感していないからって反応から察せるでしょ? ……私だってお兄ちゃんが股間を抑えて「ああ、男の人はあそこをやられると痛いんだな……」ということくらいは理解出来るもん。

 

「ごめん、ごめんなさい! 本当に許して!」

 

 予想通りお兄ちゃんは首を全力で横に振り、拒絶した。

 

「そう、残念ね……レックがレミィになれなくて」

 

 ミレーユさんの残念そうな声が私達の耳に響き、あれは本気だったという意思が感じ取れた。

 

「俺、ミレーユだけは怒らせないようにしよう」

 

「横に同じく」

 

 うちのパーティのパツキン美人が怖すぎる件Part2

 

 

 

 とりあえず、そんなこんなで進んでいくと洞窟に入り、お兄ちゃん指示のもと奥に進んでいくと壺があった。

 

 

 

「ミレーユさん、あれがそうなんですか?」

 

「間違いないわ。けれど、注意した方がいいわ」

 

「注意?」

 

「ええ。お婆ちゃんも言っていたけどこの辺りに魔物が近寄るようになったからお婆ちゃんはお使いを頼んだのよ」

 

「じゃあ今がチャンスってことじゃないか! 取ってくるね!」

 

 お兄ちゃんがさっさと壺の前まで来て、瓶の蓋を開けて夢見の雫を瓶の中に入れた。

 

「取ったどーっ!」

 

「お兄ちゃん、しーっ!」

 

 ちょっと、お兄ちゃん後ろ後ろ! 後ろにデカイ魔物がいるから! 

 

「どうしたんだい? ターニア?」

 

 お兄ちゃんがまだそれに気付かず、首を傾げて私に尋ねる。だけどその瞬間、魔物が腕を降りお兄ちゃんを引っ張く。

 

「うげっ!」

 

「お兄ちゃん!」

 

 お兄ちゃんがぶっ飛び、ゴロゴロと地面を転げ回る。その魔物の姿は人面の竜に体はガリガリの悪魔と言った風貌でどこからどう見ても弱そうな感じだった。

 

「てめえらぁ、俺の飯を盗ろうとはいい度胸じゃねえかぁ」

 

「それは貴方のご飯じゃない! むしろ泥棒は貴方の方よ!」

 

「俺が見つけたんだから俺のもんだ! 絶対ぇ、てめえらに渡すもんか!!」

 

 その魔物が私達を襲いかかり、戦闘が始まった。




ターニア&レック「ターニアとレックの後書きコーナー!」

ターニア「はい、という訳で今回のお話は……まあミレーユさんがおっかないのとボス登場だったね。」
レック「うん。だけど僕のドジも戻ってきたような気がする。」
ターニア「この小説を書くのは久しぶりだけど他の小説を書いていたから文章力が低下……? という程度には収まっているからね。流石にドジの切れが落ちることはなかったみたい。」
レック「……前回の後書きで、半年後になるかも知れないって言ったけど一年以上かかるってどう言うことなの? 終わることには既に画面の外の人がお年寄りになっていたりしたら怖いな。」
ターニア「そんなこと……あるかもしれない」
レック「えええーっ! しかも時間だからコメントが出来ない!」

ターニア「感想・評価よろしくお願いします!」
レック「誤字報告は誤字にて、作者にこの作品以外のことで質問があればメッセージボックスにてお待ちしています!


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