ループなハイスクール。二番煎じですね、はい。 (あるく天然記念物)
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シーン1~19

二番煎じでも構わない。俺はこんな話を書きたかったのだ!!


シーン1

 

 突然だが、天使というのをご存じであろうか。

 一般的に天使と言うのは、羽が生えて頭に輪っかのような物をぶら下げているの存在を指すのであろう。いやまぁ、実際に観た人間がいないだろうから断定はできないが。

 ただ、もしその情報が本当で、実際にいるのであれば、目の前にいる彼女がそうなのかもしれない。認めたくはないが。

 

 学校帰り、俺は見たい番組があるため急ぎ足で家に帰る途中、空から女の子が降ってきた。

 まさに「おやっさん、空から女の子が!」状態だ。

 その女の子は振り向き、俺を見るとこう言ってきた。

 

「あなたには怨みはないけれど、ここで死んでもらうわ。怨むなら神を怨むのね」

 

 一瞬風に包まれたかと思ったら、あろうことか、彼女の姿は変わっていて、ボンテージ姿の上に羽が生えていた。オマケに空まで飛んでやがる。これが世に言う天使なのであろうか? それにしては羽が黒すぎだな。格好といい、むしろ痴女の部類なのではないか? つーか頭に輪っかないし。これが天使だなんて思いたくないね。

 

「なんかムカつくこと考えてる気がするのは気のせいかしら? まあいいわ、それじゃあ───さよなら」

 

 彼女は徐に両手を広げると、そこから光の矢的な物が───ってぇ投げたぁ! え? なに? 本当に天使だったの!? だとしたらなんかごめん。

 俺は突然のことに動くことはできず、普通に矢が腹にぶっ刺さった。

 アイタタタタタタタッ!!!?

 何気にクソ痛い!!! …あぁ……なんか…………目の前がだんだん暗く…………………………

 

享年17歳 死亡原因 天使? による刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン2

 

 気がつくと俺は赤ん坊になっていた。

 おかしい。先ほどまであの天使っぽい痴女に殺されかけ……ってかむしろ殺されたはずである。死ぬ瞬間までの記憶も完全にある。思い出すとなんか少しムカつく。もういいや、あんな奴痴女で十分だ。二度と天使だと思うものか。そしてできればもう二度と会いたくない。お腹に大穴が開くのはもうイヤでござる。あれ見た目以上に痛かったのだから。

 だが、そんな事を俺が気にしていたところでどうにかできるはずもなく、俺は前向きに捉え、前の人生では彼女ができなかったので今回は彼女を作るために、話術やナンパのスキルを上げる事とした。

 子供の頃から女の子に積極的に話しかけ、女性と話す心得? の様な物を身につけていった。その努力もあり、なんと中学生の時に彼女ができました! やったね!

 それからは彼女とイチャイチャしつつ、高校も二人同じところを合格した。

 そんな調子で二年になったある日、俺は彼女と次のデートの場所を決めつつ家に帰宅していたら、目の前に再び痴女のような女性が現れた。てか本人が現れた。

 え? ちょっ、おまっ!?

 そのまま痴女は俺に向けて矢をぶん投げ、俺はあけっけなく死んだ。

 おわた!! そして痛い!!

 

享年17歳 死亡原因 痴女による刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン3

 

 気がついたら再び赤ん坊に戻っていた。

 ほんとにあの痴女は一体何なのだろうか。二回あった人生に置いて初めての彼女ができたというのにあっさり俺を殺しやがって。

 って、そんなことより、もしかして俺は人生をループしているのではないだろうか?

 一度目はなんとなく流して生きていたが、さすがに二回目となってくると無視できないぞ。

 それに、もしそうなのであれば、このままだとどうしようもないくらい長い時を永久に過ごす羽目になってしまう。それは嫌だ。俺の目標は普通に結婚して子供に最後を看取ってもらうことなのだから。断じて痴女から看取ってもらうのではない。そんなもん末代までの恥だ。

 そのためにも、どうやったら死なないですむのかを割と本気で考えることとした。

 その結果、最初と前回とで同じ高校に行ったのがマズいという結論がでてきた。

 そうだよ。なにもあんな痴女みたいな存在と二年生の時に出くわす高校に行かなきゃいいんだよ。

 そう結論づけた俺は前の高校よりかなり遠くに位置する高校に進学するため、猛勉強に励むことした。

 目指す高校が前の高校より偏差値が30も違うため、学力を徹底的に上げなければならなかったのだ。

 なんで前回勉強しなかったんだろう。おかけで昼夜関係無しに勉強三昧だよコンチクシヨー!

 小学生の時から英会話を学び、前世の記憶をいかして中学校も進学率が高い私立に入学、気がつけば学校で上位の成績がとれるようになっていた。

 その調子で目標の高校も無事に受かり、あの痴女と出くわす高校から逃れることに成功した。

 よかった。これであの矢っぽい何かに刺されることはなくなったぜ!

 ルンルン気分で高校生活を謳歌して、二年生になったある日、見たい番組のために急ぎ足で帰宅していると、目の前に見たことがある女の子が空から──────って嘘だろ!? なんで痴女がこんな所に──ってやべぇ!! また投げ───あっ………

 その後なんの変化もなく俺は痴女に殺された。

 やっぱり痛たたたたた!!!

 

享年17歳 死亡原因 痴女による刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン4

 

 再び赤ん坊に戻っている俺。

 もうあれなのであろうか、日本にいるからダメなのだろうか。

 そう思い俺は前世の記憶で学力が高いことを生かし、高校は海外の方に留学する事にした。

 留学して直ぐのある日、学校からホームステイ先の家に帰る途中にある公園でつなぎを着たいい男と遭遇した。どっかで見たことがあるような?

 そのいい男は俺を見るとつなぎのジッパーを下げつつ一言。

 

「やらないか?」

 

 ケツに嫌な刺激が走り、俺全速力で逃げ出した。

 だが、捕まった。

 ちょっ、やめっ、あああああああぁぁぁっ!!!

 

享年16歳 死亡原因 いい男による肛門裂傷。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン5

 

 もうイヤ。人気のない公園はこりごりだ。今度からは逃げ足も鍛えることとしよう。二度とお尻の純潔をなくしてなるものか。服脱がされてケツにヤバいマグナムぶっ込まれたくない。

 だが、ここまでくるとマジでどうしよう。

 普通に進学したら痴女から矢っぽい何かで刺殺。かと言って違う高校に進学しても同じ痴女から殺される。そして日本がダメなら海外となるといい男から掘られる。コレ積んでね?

 とりあえず目下の目標はあの痴女が放つ矢をどうにかする事だろう。

 どうしていい男から逃れることじゃないのかって? あいつはダメだ。痴女以上に俺が会いたくないのだ。味方になってくれたら心強いと思うが、なるためには俺のケツを生け贄に捧げなければならないだろうし、そうしたら俺が死んでしまう。そして俺はノンケだ。断じておホモ達ではない。ゆえに却下だ。異論反論口答え文句等はいっさい認めん。

 というわけで俺はあの矢を避けるためとついでにいい男から逃れるための脚を鍛えることにした。

 そうと決まったら幼稚園の頃から走り込みだ。

 来る日も来る日も俺は走った。

 具体的には小中学校で陸上に所属して走りまくった。

 個人的には長距離走が好みです。まあ目指すはオールランウダーだな。

 陸上では特に走った後の清々しい気持ちになるのが最高です。

 元々素養が無かったのか、あまりタイムが伸びず、中学総合大会では地区予選止まりだったが、思いの他速く走れるようになっていたので良しとしよう。

 高校は最初の時と同じ高校に進学し、ついに迎えた二年生の時。

 俺の目の前には三回目となる痴女がいる。

 そして例に漏れず痴女は俺を殺そうと矢を展開しだした。

 ふふふっ、だがしかし、今回はうまく行くかな?

 見よ! これが10年間走りつづけた男の瞬足だーー!! 

 ぶん投げられた矢を俺の瞬足で避けてみせる!!

 ウォオオオオオーーー!!

 

享年17歳 死亡原因 痴女による刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン6

 

 無理でした!!

 あの矢速すぎ、わろた。

 やべぇよ、マジで速すぎたんですけど。こっちが避けようと思ったら既に腹に穴が開いていたんですけど!?

 たかだか10年走った程度でどうにかなる訳なかった。

 ダメだ、ダメだ。こんな速さじゃ足りない。まだ速さが必要だ。ここはとにかく走りまくるぜ!

 そして再び走り込み、迎えた高校二年生の日

 前回含めると20年の努力だ。

 今度の脚力はどうだぁー!

 ウォオオオオオーーー!! よし! よけれっ………

 

享年17歳 死亡原因 痴女による刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン7

 

 痛い。普通に避けれたと思ったら腕がかすって右半身持っていかれたぞ。どんな威力してんだよ。

 土手っ腹に大穴空けるだけの威力じゃないのかよ。触れただけで吹っ飛ぶなんてあり得ないだろぉ。

 おかげで直ぐには死ねず結構な時間激痛にさいなまれたぞ。

 しかし、前回は前々回と比べて脚の速さが上がった気がする。

 前々回では避ける以前に腹に大穴が開いていたが、前回はかするまでに成長していた。

 結果は死んでしまったが、そこは置いておこう。

 そう言えば、前回は陸上の大会でも地区予選は突破して、全国には届かなかったが、中央大会で好成績を残せていた。

 これはもしかして、肉体はご覧の通り赤ん坊レベルまでリセットされるが、伸びしろ等の成長的要素は上がるのではないか?

 スタートは一緒だったが、高校入学したときのタイムが違った気がする。

 そう意気込み練習に励んだ。すると、中学三年の大会で、まさかの全国大会の地に立つことができた。

 やったぁ!! 苦節色々含めて30年の苦労が報われた。こりゃ、最終目標はオリンピックだな。

 よっしゃ、今日も陸上の練習だぜ! ん? あの女の子どっかで────

 

享年17歳 死亡原因 痴女による刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン8

 

 やっちまったぜ。完全に目標履き違えでいたわ。何が目標はオリンピックだな、だよ。あの痴女の矢をどうにかしないと、俺には明日は無いというのに。しかも前回は浮かれまくってろくに避けることもできなかったぞ。

 よし、目標はあの痴女が投げる矢を避けることにして、今回も走って走って走りまくるぜ! そして、避けるために瞬発力としてスタートダッシュの練習を重点的だ。

 練習の成果もあり、とうとう俺は中学の全国大会で優秀な成績を残すことができた。

 やったぜ! しかもオリンピック育成選手を育てている高校からオファーまで貰っちゃった。

 こりゃ目指すはオリンピック出じょ───あれ? なんか忘れてね? ん? あの女の子どっかで─────あ゙……………

 

享年17歳 死亡原因 痴女による刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン9

 

 だから目標はき違えるなって言っただろうが、バカか俺は。

 もう今回は間違えないぞ。

 今回も走り込み、とうとう陸上で中学ではあったが、全国一位になってしまった。そりゃ今まで含めたら50年、つまり半世紀の間走ってることになるから当たり前だな。

 そして迎える高校二年生の日。進学した高校は目標を忘れてしまうので最初と一緒だ。オリンピックは大学で目指すことにする。

 学校帰り、何かしらの気配を感じる。

 この気配、奴か。

 目の前に痴女が降り立つ。

 そして痴女は俺に向けて矢を打ち出してきた。だが、

 ふっ、見切ったぁ!!

 俺はその矢を軽やかに避ける。

 凄い。自分の体がまるで羽のようだ。最初反応出来なかった時とは大違いだぜ。

 よし、このまま逃走─────────え゙?

 

享年17歳 死亡原因 痴女による刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン10

 

 に、二撃目………まさかの二撃目……だとぉ………。

 マジかよ。一回避けただけじゃダメなの? どないせいっちゅうねん。

 とりあえずここは気合いでどうにかしてみせる!!

 

享年17歳 死亡原因 痴女による刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン11

 

 やっぱ気合いじゃ無理だわ。

 来て避けて、目の前にあったわ。あれ避けるのFFのア○イドでも無理だ。

 そして報告するのであれば、俺は陸上では化け物になりかけている。この前本気で走ったらボルト超えていた。専門種目長距離なのに。そして専門種目に至ってはマラソンで2時間フラットを叩き出してた。もうあれだね、人超えかけてるね。

 こうなったらとことんまで瞬発力を鍛えたら上手くいくんじゃないか?

 というわけで今回は瞬発力をとにかく鍛えた。

 そうして迎える決戦の日。

 ふ、ふふふっ、今ならどんな攻撃でも避けてやんよ!!

 打ち出された矢を華麗に避け、続く二射目を紙一重で避けきる。

 来たコレ!! これなら三射目があろうと避けれる!

 すると不意に痴女からの攻撃が止まった。

 今だ! ここから一気にスタートダッシュを─────ファッ!!!!?

 

享年17歳 死亡原因 痴女による惨殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン12

 

 三射目なら避けれたよ。だけどさぁ、まさか……まさかの乱射は無理だよ!

 もうほんとにどうしたいいんだよ。

 避けて一気に逃げようとしたら目の前が矢の雨だったぞ。

 一般人にする攻撃じゃない気がするぞ。てかしないだろ。あっ、俺人間辞めかけてたわ。

 だとしても、いよいよ後が無くなってきた。

 やはりあれか? 逃げるのを前提にしているからダメなのか? そう言えば、全国大会に行くことになったときコーチから「負けると思うな。無理だと思うな。時には無謀なことに挑戦しないと壁はいつまでたっても超えられないぞ。やるからには全力で勝ちに行け!」って言っていた。

 仕方ない、ここは勝ちに行くぞ。

 って、決めたはいいが、問題が山積みである。

 この俺、格闘技という物をやったことがないのだ。というか、そもそも戦い方なんぞ知らんぞ。最後に喧嘩したのだて、最初の人生の小学校低学年の時だぜ?

 まあとにかく、目下一番の課題としては、戦い方だな。

 まずは自分の持っている武器について考えてみる。

 とりあえず浮かんでくるのが、これまで鍛えるに鍛え上げた健脚だ。

 この健脚こそ俺の大半の人生の集大成と言っても過言ではないだろう。

 その健脚を最大限に活用するには、やはり足技しかないだろうな。

 だが、格闘技で足技を使う人なんてあんまりいなぞ、キックボクシングならとにかく。アニメキャラだって手を使うのが一般的だ。

 俺が知っているのだって、ワンピースのサンジとか北斗の拳のシュウぐらいしか……って、意外と知ってたわ。てかむしろ、この二人強キャラやん。この二人を目標にしたら痴女ごときどうにかできんじゃね?

 と言うわけで、新たな目標を掲げた俺は鍛錬を始めることにした。

 しかし、問題は山積みだ。俺には南斗聖拳の心得も無ければ、ゼフみたいな師匠もいないのだ。

 まあそこのところで悩んだところでしんてんしないし、取り合えずば蹴ることを極めるか。

 修行と言えば山だと思い、山に向かった。

 歩くこと数分、山に到着した俺は早速蹴りの修行を始めた。足場が若干昨日の雨でぬかるんでいるが大丈夫だろ。

 せい! せい! せい! せい───ツルっ──あ……

 

享年12歳 死亡原因 足を滑らせて崖から転落死。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン13

 

 ダサい。果てしないほどにダサい死に方をした。

 もうやだ、鬱だ。何もしたくない。

 それからやる気がでずに家に引きこもった。

 するとどこからともなくドロッとした物が俺の頭上に現れて─────

 

享年17歳 死亡原因 ドロッとした何かに飲み込まれて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン14

 

 果たして一体あのドロッとした物は何だったのだろうか?

 思い出そうとするが、何故か体が震え出す。やっぱり思い出すのは止めておこう。なんか後が怖い。

 さてと、これで現状はこれで最悪な状況になったというわけだ。

 このまま何もしなければ痴女に殺され、それを回避するために海外に逃げたらいい男に掘られる。そして最悪なことに全てを投げ出して家に籠もったらドロッとした何かに殺される。

 もはや俺の人生がハードモードに思えて仕方ない。

 しかしめげるわけにはいかない。前回はあまりの格好悪さに自己嫌悪して弛んだが、俺は望んだ最後のために行動しなくては!

 それから陸上の練習と平行して戦闘訓練を行った。と言っても、近所にあるキックボクシングのジムに通うことにした程度だけど。

 しかし、ここで更なる問題が発生した。

 別にジムに行く前に殺されたわけではない。では何が問題なのか、それは、ジムの人間より俺が強かったことなのだ。

 どれほどかというと、見よう見まねで使ったローキック一発でジムにいる選手みんなをKOしてしまった。

 そのせいで選手みんなの精神を真っ二つにしてしまった俺は見事キックボクシングのジムをたたませることに成功した。

 …………………いやいやいや!!

 なんで!? なんで蹴り一発でみんな倒しちゃってるのよ! つーか俺の脚どうなってんだよ!

 まあともかく、ローキックは使えることが分かったので、それを自信に再び痴女に挑むことにした。

 もはや数えることが面倒になってくるほどに殺された痴女。

 今日こそはこの日を突破してみせる!

 間髪入れずに放たれる一撃目を華麗に避け、続く二撃目を巧みに避ける。そして乱撃に入る為の段階で俺は痴女に接近する。

 ふ、知っているか? 足ってのはなぁ、腕の三倍の力があるんだぜ?

 後少しで痴女のもとにつくといったところで、最大の失態に気づく。

 

 痴女飛んでるやん………。そして俺地上やん…………。

 

 だが、止まる訳にはいかない。

 俺は決死の覚悟で脚に力を込め、ジャンプした。

 届くはずは無いと思っていたそのジャンプは軽く痴女を飛び越して────え?

 

享年17歳 死亡原因 痴女による刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン15

 

  あ、ありのままに今起こった事を話すぜ。俺は届かないと思いつつも、このまま何もしないで痴女殺されるのは嫌だと思って思い切りジャンプしたんだ。そしたらそのジャンプが、あろう事か痴女を軽く飛び越していたんだ。肉体チートとか隠された潜在能力解放とか、そんなちゃちなもんじゃねぇ。もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ。

 

 とまあポルナレフになってみたものの、俺も何が起こったのかいまいち理解できていない。

 あっれー? おかしいな、普通の人間は少なくとも5メートルなんて飛べないよな…………なんで?

 今思うと明らかにおかしすぎる。

 ひょっとしたらこの体は思っていた以上に化け物になりかけてないか?

 とりあえず俺は現状を確かめるため、近所の山に行くことにした。前の経験からカラッカラに晴れた日に。

 よし、周囲に人がいない事を確認した俺は早速確認作業を始める。

 先ずは軽く準備運動をして体を温めた後、本日の目的でもある確認のため、本気の蹴りを素振り感覚で行う。

 ぶぉん! といい音を響かせ、近くにあった木を揺らせた────あれ? 揺らせた?

 ここで普通の人ならどこがおかしいかすぐにわかるだろう。普通の一般人なら、本気の蹴りとは言えやったとしても木を揺らすことなどあり得ないのだ。まあ確かに小さい木ならあり得るかもしれないが、俺が揺らした木は軽く10メートルはある大きな木だ。いや、もはや樹である。そしてさらにおかしいのが、俺が直接蹴ったわけでも無いのに揺れてしまったことだ。

 俺も何かの間違いだと思い、もう一度蹴りを放つ。すると、先ほど同じように樹は振動し、揺れた。

 おいおいおいおいお………こりゃマジだぜ。魔法とか念動力とか、そんなチャチなもんじゃねぇ。正真正銘俺の脚力だけで揺らしてやがる。

 これなら直で蹴ったらどんな事になるんだろうか。

 ……………………………………………………せーのッ!

 高まる好奇心には逆らえず、俺は樹に向けて本気の蹴りを放つ。

 ドガァァァアァァ──ッ! と音をたてて樹は俺の目の前で倒壊───

 

 いってぇえええええッ!

 

 ────するわけはなく、逆に俺の脚に多大なる激痛を与えた。

 

 

 …………しばらくお待ち下さい………

 

 

 痛みに耐えられず転がり続けて早三十分。

 ようやく痛みが引いたところで自分の蹴りを放った樹がどんな風になっているのか確認しに向かった。

 するとそこには倒壊とまではいかなくとも、いい感じにめり込んだ傷のある樹があった。

 マジで?

 目をこすり、再び見ると、やはりそこには俺がめり込んだような傷をつけた樹がある。

 マジかよ………俺ってそこまで人間辞めかけていたのか。

 そりゃ見よう見まねのローキックで選手全員を倒せたわけだ。普通の人間は樹より固くもないも。

 これなら、この威力ならば、憎きあの痴女に勝てる。今ならそんな樹がして──あっ間違えた、気がしてならない。

 そして高校二年までに陸上と併走しながらも入念に樹を蹴る特訓を重ね、決戦の日までにはへし折ることはできなくとも、かなり脚をめり込ませられるようになっていた。

 そして、恐ろしかったジャンプ力はあまり伸びなかったが、今でも軽く3メートルは跳べるし、本気を出せば6メートルに行くかいかないレベルになった。

 ふふふ、これは完璧だ。もう負けることはないだろう。今日こそは乗り越えてみせるぞ!!

 そして決戦の帰り道。

 現れる痴女。

 ふふふふふ、今までは逃げるだけだったが、今の俺は昔とはひと味もふた味も違う──今回はこっちからだ、先手必勝!! ウオオオオオオオォッ!!!

 俺は痴女が出てくると同時に走り出す。

 

「え!?」

 

 いきなり向かってくる俺に驚いた様子の痴女であったが、すぐに気を取り直し、矢を俺に放ってくる。

 俺は走りつつ華麗に避け、痴女の目の前までジャンプして肉迫する。

 そして、体を捻り、全ての体重を込め、右足を振り抜く。

 喰らえ! これが苦節100年以上鍛え続けた男の蹴りだ!!

 俺の全身全霊の蹴りは痴女に当たる───瞬間、何か見えない壁のような物に阻まれた。

 え? 何これ──ハッ、このパターン……まさか……。

 目の前には矢を展開する痴女が────

 

享年17歳 死亡原因 痴女による刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン16

 

 今度こそ……今度こそ勝てると思ったのに……チクショウ……。

 まあ嘆いても痴女には勝てん。取り合えずば前回の反省からだ。

 前回の俺は確かに痴女の意表をついて蹴りを入れられるはずだった。だが、奇しくもその蹴りは見えない壁のような物に阻まれた。これが世に言うバリアというやつなのであろうか。ふむ。これはどうするべきか。バリアで防がれたってことは、俺の蹴りの威力が足りなかったということなのだろうか。

 と言うことで、今回は蹴りの修行に力を入れて挑戦してみることにした。

 せいやッ! あっ、ダメだこりゃ

 

享年17 死亡原因 痴女による刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン17

 

 今度は回転を加えてみよう。どっかの伯爵は重力が生み出す圧倒的破壊エネルギーで特攻していた。あの蹴りならバリアを突破できるかも。

 ウオオオオオオオォッ! パパウッパウッパウッ!! 喰らえ! 見様見真似、波紋乱渦疾走(トンネーディオーバードライブ)!!!

 

 結果、惨敗。

 

享年17歳 死亡原因 特に後世に生命エネルギーを伝えることなく、痴女による刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン18

 

 ツェ、ツェペリの旦那ぁああッ!! のような結果に終わってしまった。詳しくは上半身と下半身がお別れしてしまった。凄く痛かったで御座る。

 さてと、次はどうするか。重力の生み出す圧倒的破壊エネルギーでもダメだった。いや、これに関しては俺が波紋使いじゃないことが大きく関係するだろう。波紋の呼吸法なんぞ知らねーもん。

 ここまでしても勝てないとなると、ここはいよいよ持って本気で逃げることに挑戦すべきだろうか。

 試しに今回は逃げるのに全力を懸けてみることにした。

 痴女登場と共に全力疾走!!

 走り出しと同時に放たれる矢を軽く避け、続く二撃目を軽やかに避ける。そして乱撃の為に少しの間準備で動きの止まった痴女を後目に、限界を超えて走り出す!

 だが、そんな俺を逃がさないとばかりに痴女は乱撃を放ってきた。

 こうなったら、全て避けてやんよ!!

 これ、を、避け、きっ、たら、かく、実に、俺の、勝ち────やっぱ無理!!

 

享年17歳 死亡原因 痴女による刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン19

 

 何が起きたのかって? そんなもの簡単だ。圧倒的物量には勝てなかったんだよ。知ってるか? 丸腰の兵士よりマシンガン持った少年兵の方が遥かに強いんだぜ?

 とまぁよくわかんない説明は放っておくとして、状況は再び振り出しだ。

 それにしてもあのバリア硬すぎ。ん? まてよ、そう言えば、こういった硬いバリアをどうにか突破する方法があったような気が──あっ、そうだよ、壊せないのは同じ土俵にいないからだ。相手は何かしらの力をもってバリアを張ってきた。だったら、俺も何かしらの力を使って蹴りを入れられればあのバリアを突破できるかもしれん。

 となれば俺も痴女同様の力を持っていることが最低条件となるが、俺にはその力がなんなのか見当がついている。飛んでいることといい、バリア、そして極めつけはあの光った矢。これらのことから察するに、あの痴女は気を操っているに違いない! 

 気であるのならば、一般人にもあるって白米君が言っていたような気もするし、先ずは認識することが大切だってことも言っていた……多分。

 そうと決まれば、早速俺の持っている気を見つけるぜ。

 俺は瞑想し、体の内部に意識を向ける。

 すると、体の中心部分から、何かしらのオーラを感じた。

 恐らくコレが気なのであろう。

 そのオーラを右手に出すように集中する。すると、バスケットボール程の気の固まりが浮かんでいた。

 やった……遂にやったぞ俺は!

 この気を自在に操れる様になれば、あの痴女と同等だ。待ってろよ、今回こそは俺が勝ってみせるぜ!

 気の制御に費やすこと三年。気功だけではなく、脚に展開して蹴りの威力を飛躍的に高めることにも成功した。この前試したら樹を倒壊させれた。普通に驚いた。これで俺もワンピースの登場人物の仲間入りだな、こりゃ。

 そんなこんなで迎える決戦の日。この日を迎えるのは十回を超えた時点で数えてないが、恐らく二十に到達しそうなので、今回こそは突破したい。

 下校中、痴女が目の前に降り立つ。

 そして俺に何かを言いかける時点で俺は痴女に向けて走り出す。

 もう今回は負ける気はしないぜ!!

 俺のいきなりの突進に慌てた痴女は、俺に向けて矢を放った。だが、

 無駄!!

 俺はその矢を蹴りで弾く。これこそが気の修行の成果だ。内包する気をコントロールし、脚に集中させることによって、あの馬鹿げた威力の矢であろうと蹴りを入れられるようになったのだ!

 そして続く二撃目や乱撃を脚を使い弾き、時には痴女が張ったバリアも展開し、痴女の攻撃が一旦終えたところで、ようやく痴女の元に到達した。

 ここで気を込めた蹴りを痴女にお見舞いしてもいいのだが、ここはあえて雪辱を果たすことにする。

 俺は痴女のいる地点より高めにジャンプする。最高地点に到達した俺は体を勢いよく螺旋回転させる。こうして痴女に向けて落下する重力エネルギーと、俺自身による回転のエネルギーが合わさり、そこで生まれるのは、圧倒的破壊エネルギー。前回は惨敗だったあの大業を俺なり改良を加えたのだ!

 喰らえ! 波紋ではなく、気を利き足に集中させた圧倒的破壊エネルギーの蹴りを! 

 

 波紋乱渦疾走パート2(トルネーディオーバードライブ)!!

 

 その圧倒的破壊エネルギーは痴女のバリアを意図もたやすく崩壊させ、勢いが止まることはなく、痴女に直撃する。

 直撃を受けた痴女は地面に激突し、体をピクピクさせている。どうやら起きあがってくる様子は無さそうだ。

 と言うことは──やった………やったぞ!! 遂に俺は、死亡フラグを突破したぜ!! そしてツェペリの旦那ぁ、仇は、とったぜ…‥…。 

 陸上の全国大会で優勝した時と同じ様な達成感を胸に、俺は家へと帰って行った。




現在までの主人公が習得したもの



痴女が飛んでいることも、バリアを張ったのも、矢を打ち出せたのもこれのおかげと思い、主人公が修得したもの。基本的に誰もが持っている物らしい。

波紋乱渦疾走パート2

ツェペリ伯爵の波紋乱渦疾走を波紋ではなく気で補った技。圧倒的破壊エネルギーが相手を襲う。


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シーン19~26

まさかの二話目。果たして彼はどこまで進化するのか


 次の日の朝、目が覚めると同時に目の前が真っ白になった。

 

享年17歳 死亡原因 ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン20

 

 再び赤ん坊に戻っている俺。

 本当に何が起きたんだ?

 前回初めて痴女に勝って死亡フラグを真っ二つにしたというのに、次の朝には死んでいた。と言うか、一体どうやって殺されたのかわかってもいない。

 ここはとにかくどうやって殺されたのかを確認するのが先決だろう。無論、今までと同じ様に陸上と足技の修行も忘れずに行う。脚技はもう少しバリエーションを増やすとしよう。さすがに持ってる技が一つしかないのは少し寂しいし、応用がきかないからな。個人的には俺の蹴りが初期のONE PIECEレベルに達したと思うから、初期のサンジが使っていた技とか取得したい。

 修行しつつ迎える痴女襲来の日。

 この日は初っ端波紋乱渦疾走(トルネーディオーバードライブ)パート2を痴女にぶちかまして突破。

 そして次の日は何が起こるのか確認するため、いつも起きる時間より一時間早く起きて待つ。

 む、この気配。来たか。

 俺は勢いよく窓を開ける。するとそこには昨日倒した痴女の他に、仲間らしき痴女二人とおっさんが一人いた。しかもご丁寧に全員矢を展開してやがる。

 これが俺の死んだ原因か………おわた!

 

享年17歳 死亡原因 痴女と愉快な仲間たちによる惨殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン21

 

 だからこの前も言っただろ、圧倒的物量には勝てねぇって。

 とりあえず痴女と愉快な仲間たちの襲撃の前に逃げてみることにした。

 逃げようと部屋のドアに手をかけた瞬間、頭上からドロッとした何かが……………

 

享年17歳 死亡原因 ドロッとした何かに飲み込まれて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン22

 

 マジであのドロッとしたのは何なのであろうか。知ろうとすれば有り得ないぐらいに体が震え出す。痴女には何度も殺されても恐怖で震え上がったことは一度も無いというのに。とにかく、痴女よりもヤバい物として記憶しておこう。それにあのドロッとした何かは、俺が現実から逃避して逃げ出したら確実にやってくる。恐らくそんな気がする。一度目はヒッキーになった時だったし、二度目は痴女と愉快な仲間たちから立ち向かいもせずに逃げたのだから。最初の痴女襲来の時にやって来なかったのは、人に見られたくなかったのか、もしくは直接手を出さなくとも俺が殺されるからとか、そんな所だろう。

 さて、となれば次の目標は痴女と愉快な仲間たちから生き延びる事になったぞ。

 ここでの大きな問題は数の暴力だな。こっちは一人に対して相手は四人もいやがる。フェアプレイの精神を叩き込んでやりたい気分だぜ。

 まあ痴女たちのことだ。そんな高尚な精神など持ってるはずもないか。

 となると、ここは少し頭を使って攻略すべきだな。

 そんなわけで、急遽作戦を練ることにした。

 

 作戦α 物陰に隠れて奇襲

 

 ふふふ、まさか俺が家の庭に隠れているとは梅雨とも知らないだろう。来たか。

 ウォオオオオッ! 先手必勝!! 波紋乱(トルネー)──────

 

享年17歳 死亡原因 痴女と愉快な仲間たちによる惨殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン23

 

  奇襲作戦の利点をはき違えてた。あれってバレない状況で確実にしとめるからこそ有効な作戦なのに。叫びながら特攻したからすぐにバレてデストロイされてしまった。今度こそは確実に仕留めてみせよう。

 時が来るまでじっと待つ。すると目の前が真っ白に─────

 

享年17歳 死亡原因 痴女と愉快な仲間たちによる惨殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン24

 

 そうだった、四人による広域殺戮があったんだった。つーか、チャンスなんて無かったし。その前に殺戮が始まったし。おかげで家ごとデストロイだよ。まあ不幸中の幸いにも、両親が共に海外で働いていたから家だけの被害ですんだ。だが、痴女たちよ、俺の父さんが汗水垂らしてようやく手に入れた家をデストロイしやがって、この仕打ちは忘れんぞ。

 そんな恨みを持ちつつ反省会。広域殺戮といい、こりゃ作戦が悪かったな。

 その反省を生かし、次の作戦を練る。

 

 作戦β 気のバリアを全力で展開する。

 

 来たっ!

 俺は以前痴女が展開していたバリアを最大出力で展開する。

 ふはははッ、完璧だ。これなら広域殺戮だろうと防ぎきれる。この守りが突破できるものなら───ん? なんか、凄い勢いで鼻血が……あ、れ? ………目の前が…霞んで……………

 

享年17歳 死亡原因 気の酷使によるオーバーヒート。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン25

 

 うぅ………未だに頭が痛い感じがする。

 まさか気の酷使にあんな副作用があるとは。やっぱ陸上と同じでやり過ぎはダメだな。身を持って理解したし。

 さて、今度も後が段々と無くなってきた。こうなったら、あれしかないな。向こうが殺に来たんだ。こっちもそれ相応にデストロイしてやるよ。

 

 作戦γ 強 行 突 破!!

 

 この気配、来たっ! 行くぜオイッ!!

 痴女たちの気配を感じ取った俺は窓を勢いよく開け、外に飛び出す。

 ここで重要なのは、奴らが矢を打ち出す前に仕留めることだ。もし万が一にも先に攻撃されたら数の暴力でこちらがいつも通りにデストロイされてしまう。なのでさっさと決着をつけねば!

 先ずは近くにいた見慣れた痴女に向けてあの技を放つ。

 

 波紋乱渦疾走(トルネーディオーバードライブ)パート2!!

 

 特に対策もしていなかったのか、俺の技は綺麗に決まり、痴女は大地と暑い包容をかます。

 痴女は上半身を地面に埋め、ピクピクさせる。

 ふははは、マジ無様。

 と、ここで隙を見せたら殺される。俺は気持ちを素早く切り替え、上空を見上げると、今にも矢を打ち出そうとする二人の痴女の姿が。

 こ れ は マ ズ い。

 俺は敢えて痴女の背中を踏みつけ、一気に二人に向けてジャンプする。途中で撃ってきたが、そこは身体にバリアを展開して防ぐ。さすがは気のバリア、いつも通りの堅牢さです。

 颯爽と二人の元についた俺は、新たな技を試すことにした。

 自分の身体を地面と垂直に回転させ、両脚を二人の痴女の首に引っ掛け一気に降下する! 地面まで後少しというところで、二人は脱出しようともがくが、そんなものどこ吹く風のごとく無視し、俺は更に脚に力を加え、二人を地面に叩きつける!

 

 受付(レセプション)!!

 

 叩きつけられたら二人は、最初の痴女と同じ様に体をピクピクさせながら上半身が地面へと埋まる。

 さてと、次は──む?

 三人の痴女を無力化に成功したところで、残ったおっさんが仲間を見捨てて一人逃げ出そうとする姿が目に映った。

 仲間を見捨てて逃げるとは、おっさんやるなぁ~。だが、ここで見逃すほど俺は甘くはない。てか、俺が逃げようとしたときには問答無用で殺してきたのにそっちだけ逃げるのは個人的にはかなりムカつく。

 追撃のため、再び俺は痴女を踏み台としておっさんに向けてジャンプする。

 俺の追撃におっさんは逃走を諦めたのか、今まで見たことのない、明らかに威力が高そうな矢を展開させ、俺に向けて撃ちだしてきた。

 ほぉ、ここまでの威力を撃ちだすとは。昔の俺なら無様に土手っ腹に大穴を空けていた事だろう。しかし、相手が悪かったな。作戦に失敗したときも、修行を怠らなかった俺には防ぐことなど容易いわ!

 パウッ!!

 俺は気を脚に集中させ、矢に向けて一気に蹴り上げる。矢と俺の脚を一瞬均衡したが、俺の脚の威力が上回り、矢は儚く霧散した。

 はははッ!! バァカめ、貴様等の使う矢なんぞ、アホみたいに何度も受けて対策など既に出来とるわ!!

 なんかキャラがブレた。

 気を取り直し、おっさんの元についた俺は、家を二度破壊された恨みを晴らすことにした。さすがに痴女とは言え女の子をボコボコにするのは可哀想だったから上半身を埋めるに留まったが、野郎なら話は別だ。慈悲などあるわけがない。

 気を両脚に纏う。さあ、ショータイムだ。

 

 肩ロース(バース・コート)腰肉(ロンジュ)後バラ肉(タンドロン)腹肉(フランシェ)上部もも肉(カジ)尾肉(クー)もも肉(キュイソー)すね肉(ジャレ)

 

 適当な順番におっさんを蹴りつけ、最後に最大出力で回し蹴りを放つ!

 

 仔牛肉(ヴォー)ショット!!

 

 俺の持っている現時点で最強の技を受けたおっさんは衝撃を身体の隅々まで受け、全身から血を吹き出し、黒い羽を周辺に撒き散らせながら大の字で地面に横たわった。絵図等的完全にR指定間違い無しの後景が目の前にあった。

 どうしよう…………。

 

 ………………………………………………………………………………さぁてと、家に帰ってシャワーでも浴びるとするか。

 

 俺は目の前の後景を無視することにした。それに変な痴女とおっさんだ。警察だって捜査することはないだろう。

 

 

 ………しばらくお待ちください………

 

 

 ふぅ、さっぱりしたぜ。

 シャワーも浴びたたことだし、学校に行くとしますか。

 家をでるとそこには痴女たちは影も形も存在してなかった。まるで今朝の戦いが嘘のように思えるレベルで。

 まあこれで俺があり得ないとは思うが、警察にしょっぴかれることもなくなった。これも日頃の行いが良いからだろうな。

 登校すること10分程度、妙に清々しい気持ちで学校の校門をくぐり抜ける。

 いやー、この日に登校できたのは本当に何年ぶりであろうか。

 かれこれ二百年はこの日を迎えられなかった気がする。

 俺の通っている高校は私立駒王学園という高校だ。なんでも、学問だけではなく部活などに力を入れており、俺は陸上のスポーツ推薦で学費全額免除で進学する事ができた。ちなみに、最初に進学した高校でもある。元は女子高で近年少子化の波を受け、共学になった。最初ここに進学した理由はモテたいというアホな理由だった。そしてこの学園には二大お姉さまという存在がいるが、俺には関係ないな。俺との接点なんて無いだろうし。

 教室に入り、今日の授業に必要な物を準備する。

 すると、窓際奥の席がなにやら騒がしい。

 振り向き確認するとそこには学園で変態三人組と呼ばれるメンバーがなにやら猥談を大きな声で話していた。

 さすがに猥談を堂々とするのはどうかと俺も思うが、昨日や今朝といい痴女と変態が堂々と俺を殺りに来ていたから、ある意味彼らより酷い奴らがいたから彼らになんて言っていいかわからん。それに彼らの様子もかれこれ200年も見てくると、最近の若い子は凄いな~的な、ある種のお父さん的視点で見てしまう。ただ、警察には気をつけてほしいものだ。さすがに同じ学友に犯罪者が出てくるなんて少し恥ずかしい。

 その後の授業はつつがなく終わり、放課後となった。

 俺は所属している陸上部で練習を濃密に行い、家へと帰る。

 この日は特に何もなかった。よかったよかった。

 

 穏やかに迎えた次の日。この日も特に変わったことはなく、昨日と同じように過ごした。しかし、平穏は長続きしてくれなかった。

 放課後の帰り道。

 その途中、嫌な気配を感じた。

 む? 痴女とは違うが、なんか嫌な感じがするぞ。

 俺はその気配が気になり、発生源に向かうことにした。

 気配を辿っていくと、そこには廃工場がある。気配はその中にあるようだ。

 さて、鬼が出るか蛇が出るか。

 慎重に工場のドアを開け、中にへと侵入する。

 入った瞬間に何ともいえない悪臭に思わず顔をしかめてしまった。

 この臭い。血だ。

 そんな臭いが充満するなかにいる奴なんて禄でもない奴だと思うが、それでも意を決して、俺は工場の奥に視線をやる。

 するとそこには───

 

「くけけけけ、なんだか美味しそうな臭いがするぞ、甘いのかな? それとも辛いのかな? はたまた苦いのかなぁ?」

 

 ────上半身は女性で下半身が奇妙な化け物がそこにはいた。

 なんだコイツ、キメェ。

 上半身は丸出しの女性で───って、コイツも痴女かよ。最近この世界にいる女性の大半が痴女だと思ってきたぞ。

 しかし、痴女も大概だが、下半身がとにかく気持ち悪い。いや、上半身の痴女も顔がアヘってる時点でアウトだが。

 するとその化け物は徐に自分の胸部を揉みし抱くと─────へ?

 

享年17歳 死亡原因 化け物のチクビームで爆殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン26

 

 気がつけば学校に通学する場面だった。今までの赤ん坊スタートではないことに軽い感動を覚える。

 俺は急いで携帯を開き、今日の日付と時間を確認すると、痴女と愉快な仲間たちをフルボッコにした後だった。

 しかし、何故今回は赤ん坊スタートじゃ無かったんだ? もしかして、痴女と愉快な仲間たちをフルボッコにして途中セーブでもされたのであろうか。ボス戦終えてのセーブしますか? 的な。

 まあこれも俺が考えたところでどうしようもないから、今はありがたく思っておこう。いつか解明すればいいし。

 それよりも、放課後に戦ったあの化け物だ。何だよあの化け物、チクビームなんて技だしやがって、そんな技が許されるのはロボ父ちゃんだけだぞ。

 逆襲のロボ父ちゃん、泣けるね、うん。

 まああれだ、今回の化け物の気配から察するに痴女よりは弱いのは明白。チクビームとか、予想外な技に気をつければ対処は簡単だろう。それに、あの血の臭いからして、かなりの人間を殺してきただろう。俺がどうにかしないと、もっと多くの一般人にまで被害が出るからな。ループしている俺とは違って、他のみんなは人生は一回限りなのだから。

 そうして迎える放課後、廃工場にて、俺は化け物と対峙している。

 んじゃ、サクッと片づけますか。油断せず、慎ましくな。

 俺は脚に気を集中させ、爆発的な加速で一気に化け物に迫る。

 先ずは挨拶代わりだ。オラ!

 化け物の上半身に右足を当てる。

 そして続けざまに体を捻り、頭上に踵落としをかます。

 化け物は「グァアアアッ!」と叫び、面白いぐらいにぐらりとよろめき地面に倒れる。

 じたばたと身体を動かそうとするが、頭に蹴りを入れたことで軽い脳震盪を起こして立ち上がれないようだ。

 殺るなら今しかねぇ。

 その無防備な姿に俺はトドメをさしに向かう。

 安定の化け物を踏み台に工場の天井スレスレまで飛び上がり、身体を螺旋回転させ、一気に降下する!

 受けよ! これがどこぞのコックと伯爵のコラボした夢の技!

 

 波紋串焼乱渦疾走(トルネーディブロシェットオーバードライブ)!!

 

 圧倒的破壊エネルギーで蹴りを入れた後も身体の回転をつづけ、地面に化け物をめり込ませていく。

 一メートルぐらい埋めたところで化け物が全く動かなくなったのを確認した。

 ふうー、これで今夜から多くの人がぐっすり熟睡できるだろう。

 俺はどこぞの手フェチの一仕事終えたサラリーマンのごとく帰ろうとした。が、ここでまさかの事態が発生した。

 

「あなた、何者? それに後ろのアレ、あなたがやったの?」

 

 工場の出入り口に学園でまさかの二大お姉さまの一人、リアス・グレモリー先輩と出くわしたのだ。

 ………………なんでいるのさ。

 突然のことで頭が全く回らず、とりあえずここは軽く会釈し、日も遅いから、また後日改めて話をするように提案した。

 その提案をリアス先輩はは受け入れ、明日使いを送ると言って、魔法陣のようなものを展開して何処へ行ってしまった。

 リアス先輩がまさかの夜遊びをする非行少女だったとは────って、おかしくね? なんでそもそもこんなところにリアス先輩がいるのさ。それより、後ろの化け物を見て悲鳴をあげるどころか、あなたがやったの? って聞いてきたぞ。さらに極めつけは、よくわかんない魔法陣みたいなものを展開して消えたし。

 どうやら学園の二大お姉さまの一人、リアス先輩にはいろいろと隠された事があるみたいだ。

 どっかの天才文学者は、女性はスパイスと素敵な物でできていると表現したが、この状況だと素敵な物どころか不思議な物でできているぞ。

 リアス先輩、あんたは一体何者なんだよ。

 ともかく、そんな俺の疑問なども明日になればわかるみたいなので、俺は家に帰った後、ぐっすりと熟睡した。

 

 そして迎えた次の日の放課後。俺たちの教室にリアス先輩が言っていた使いの方がやってきた。

 その子を一言で表せば美少女。名前は木場祐緋。隣のクラスの住人で、リアス先輩たち二大お姉さまとまではいかなくても、十分に学園でトップレベルの美少女だ。

 彼女は俺を呼びに来たかと思ったが、彼女はなんと、俺だけではなく変態三人組で有名な兵藤まで呼びに来ていたんだ。

 俺は予想がつくが、兵藤もだと?

 兵藤一誠。変態三組のメンバーの一人で変態だ。

 実を言うのであれば、俺と兵藤の接点はほとんどない。方や変態に人生を捧げる変態。そしてもう方や生き残るために足技と陸上に人生を捧げた俺。どこに接点があると言うのか。

 まさか兵藤もあの化け物に襲われたのか?

 兵藤は俺が一緒のことに少し驚きつつも、学園でトップレベルの美少女に呼ばれたことが嬉しい様子だ。

 その道中、兵藤が俺に話しかけてきた。その会話は殆どが猥談のようなものばかりであったが、必死に場を盛り上げようとしてくれている感が伝わってきたので、聞き流さず適度に相槌を返してあげた。

 しかし兵藤よ。いくら話題がわからなくても初対面に等しい状況で好みのAV女優を聞いてくるなよ。木場だってずっと苦笑いしていたぞ。

 木場についていき、俺たちは旧校舎のある一室の前にきていた。

 オカルト研究部。

 二大お姉さまが所属しているよくわからん部活で、バリバリ運動系の俺には理解できなさそうだな。

 そう思い回れ右をして帰ろうとしたが、木場に止められた。

 帰っちゃ……だめ。そうですか。

 木場はドアに四回ノックした後、入室の意を伝え、中から許可が出た。それを聞いた木場に入ってと言われる。

 正直入りたくないが、ここで渋っても堂々巡りだろう。

 腹をくくり、意を決して中に入ると、そこには二人の女性がいた。

 一人は小柄でソファーの上で羊羹を食べている。

 彼女の名前は確か……塔城小猫だったはず。部の後輩が一年生のマスコットキャラクターとして有名だって言っていた。

 もう一人はバスタオルを片手に佇んでいる。

 何故にバスタオル?

 そんな彼女の名前は姫島朱乃。二大お姉さまの内の一人だ。

 てか、それらのビッグメンバーよりも驚きなのが、俺たちを呼んだ本人が居ないことと、部屋の周りに張っていたり描かれてある魔法陣的な何かだ。

  マジでオカルト研究部ってそんな事してんの? 夜な夜な悪魔召喚の儀式とかしちゃってる感じなの?

 俺がそんな事を考えている内にバスタオルで身体を拭いているリアス先輩がいた。

 いつの間に。てか、客人呼んでおいてシャワー浴びるなよ。これだから金持ちは困るんだ。貴族のマナーばかりで一般常識がないから。

 なんでも兵藤の家に泊まって汗を流す時間がなかったから今浴びたのこと。

 え? それなら兵藤は一線越えて大人になったってことなのか? 通算200年 生きてきた俺は未だにチェリーボーイなのに? なんか理不尽。え? 違う? ああそう。ふぅ、焦ったぜ。

 全員が揃ったところで自己紹介が始まった。

 順番にしていき、オカルト研究部のメンバー全員がし終わり、俺たちの番となった。

 兵藤がつつがなく性癖暴露して終わった後、俺の番となる。

 

 新月心(しんげつこころ)。陸上選手だ。

 

  ガタガタガタガタ!!

 

 俺の紹介で兵藤を除く全員が転ける。

 あっれぇ~? 自己紹介間違えたか? てか、全員転けるとかどこの新喜劇だよ。そして二話目にして初めて俺の名前が出てきたな。遅すぎじゃね?

 メンバー全員が立ち上がり、服装を整える。

 その後、リアス先輩が代表して口を開く。

 なんでも、俺の自己紹介があり得なくて驚いたと。

 なんじゃそりゃ。俺の自己紹介にあり得ないってなんだよ。ん? 何だって? どうやってはぐれ悪魔を倒したか? 堕天使とは出会ってないかだ? おいおい、意味分からん上になんか話がかみ合ってないぞ。それに堕天使とかは知らんが、天使もどきの痴女や化け物ならボコってやったが、それが何か?

 俺の答えにさらに頭を抱え出すリアス先輩。

 なんか説明がまずかったみたいだ。

 少し時間をかけ、ようやく調子を取り戻したリアス先輩から、どうして俺や兵藤が呼ばれたのかも含め、色々と話を聞かせてもう。

 ふむふむなるほど。つまり俺がハッ倒した痴女はやはり天使ではなく堕天使という存在で、昨日懲らしめたのがはぐれ悪魔というなんか犯罪者みたいな存在だったらしい。ぶっ倒しても何も問題は無いみたいで安心した。

 それにしても兵藤が堕天使に殺されて悪魔になっているとか、天使、堕天使、悪魔による三大勢力ねぇ。てか、話を聞くに兵藤を殺した堕天使って最初に俺を殺そうとした痴女じゃね? もしそうだったらごめんな兵藤。次からは完全に再起不能にしとくから許して。

 それにしても、部活メンバーの表情や実際殺されたことから本当だと思うが、話が一気に飛躍しすぎて少し処理に困る。

 そしてこれが一番驚いたのが、なんと俺が気だと思って扱っていたのが、実は気ではなく魔力だったと言うことだ。マジかよ。まあ正直おかしいなって思ったよ。どれだけ修行しても舞空術できなかったもん。憧れてたのになぁー、舞空術。これで振り出しじゃんか。

 それからまた少し話が進み、俺たちが堕天使に狙われたのは、神器と呼ばれる神様が創ったとされる物を持っていたから狙われたそうだ。

 なんとも傍迷惑な話だ。お陰で俺はどれだけ殺されたことやら。

 ここで俺たちはどんな神器を持っているのか確認する事になった。

 先ずは兵藤が気合い一発、ドラグ・ソボールの主人公、空孫悟の必殺技の名前を叫んでなんかゴテゴテした籠手を展開した。

 何アレ、凄くカッコいいんですけど。それと兵藤、ドラグ・ソボールとはなかなかいい趣味しているな。だが俺は俄然北斗の拳やONE PIECE派だな。さてと、次は俺だな。

 俺は目を閉じ、集中する。自分の奥にある何かを感じ、それを解放させる!

 ヒョオォ─────ヒャオッ!!

 一瞬光に包まれたかと思ったら、いつの間にか俺の首元に懐中時計のような物がぶら下がっていた。何これ?

 俺は展開させた神器についてリアス先輩に聞くと、この神器は『刹那の懐中時計(モーニメントアンティーク)』と呼ばれる物で、二三秒後の未来を予測できるという物らしく、珍しくともなんともない凄くありふれた神器だそうだ。

 別に悲しくなんかないやい。

 確認もし終えたところでリアス先輩は、俺に悪魔にならないかと提案をしてきた。悪魔になれば寿命が延び、戦闘力も増大、極めつけは羽が生えて空が飛べるようになるとのこと。そして眷族になればグレモリー家のバックアップももらえるらしい。ちなみに既に悪魔になっていた兵藤はリアス先輩の眷族になることにしたそうだ。

 若干飛べることに魅力を感じる。だがしかし、俺はその提案を断った。なぜなら俺は人としての一生を全うすると決めたんだ。そして将来の夢はのどかなアルプス高原でできれば可愛い奥さんと一緒に暮らし、子供たちに看取られながらこの世を去るって。

 それでも危険だ何だと言って俺を引き留めようとしてくるリアス先輩。俺は自衛ぐらいできるって………何回死ぬかわからないけど。

 結局妥協点として、陸上部と掛け持ちでオカルト研究部に入ることになった。悪魔家業はしなくていいし、もし万が一手が足りないときには手を貸すと言うことで。もちろんそれ相応の報酬は出るそうだ。

 説明が終わり、今夜から兵藤は悪魔家業を頑張るらしく意気込んでいたが、俺は家に帰ることにした。見学していかないかとリアス先輩たちに誘われたが、生憎俺は悪魔家業に興味ない。やんわりと断りを入れ、俺は帰路に就いた。今日の晩御飯何にしよう。




現在までに主人公が修得した技や手に入れたアイテム

気改めて魔力

主人公が気だと思っていたのは実は魔力で、空を飛ぶことができない事に凄く落胆する。舞空術修得への道はまだまだ遠いようだ。

波紋乱渦疾走パート2

前回参照。

受付

脚を相手の首に引っ掛け、地面に叩きつける技。上空で行えば重力による破壊エネルギーでもの凄く痛い。

仔牛肉ショット

言わずと知れたコックの技。肩ロース、腰肉、後バラ肉、腹肉、上部もも肉、尾肉、もも肉、すね肉の順番で相手に連続蹴りを放ち、最後にショットのかけ声と共にトドメをさす技。その衝撃は血中を巡り全身に伝わるため、もの凄いダメージを相手に与える。現時点主人公の持つ最強の技。

気改めて魔力によるバリア

とっても硬くて頑丈なバリア。しかしやりすぎると脳が沸騰するため酷使はしないよう注意が必要。

波紋串焼乱渦疾走

波紋乱渦疾走と串焼きを組み合わせた技。波紋乱渦疾走の圧倒的破壊エネルギーで相手を地面に叩きつけた後、回転しながら更なる追撃をお見舞いする意外とえげつない技。よい子のみんなは真似しないように気をつけよう。

刹那の懐中時計

二三秒後の未来を予測できる懐中時計型の神器。リアス先輩曰わく凄くありふれて珍しくともなんともない神器とのこと。


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シーン26~29

まさかのまさかの三話目。果たして主人公はどこまで行ってしまうのか。
追伸
とうとうPSPがあの世に旅立ちました。キセキ更新できねぇ…………まっ、妥協として違う作品を書いています。何かって? 忠臣蔵だよ。


 俺がオカルト研究部に兼部するようになってはや数日。

 そんなある日の放課後、一本の電話がかかってきた。携帯には兵藤一誠と表示されている。

 なんだ? まさか、とうとう変態的行動のし過ぎで捕まったのか?

 取り敢えず俺は電話に出ることにした。

 話の内容は、知り合いのシスターを堕天使から救いに行くために手を貸して欲しいとの事。なんでも、シスターが持っている神器が目的で攫っていかれたと。

 なるほど、あの痴女集団、人殺しだけではなく人攫いまでするとは。

 そこまで性根が腐っていたとは。よろしい。ならば戦争だ。

 それに兵藤には痴女を再起不能にしなかった責任もある。それなのに、ここで手を貸さなかったら俺は畜生以下だろう。

 俺は兵藤に手を貸す意志を伝え電話を切り、急いで支度を始めた。

 

 兵藤の説明にあった廃協会につくと、そこには兵藤を含め三人が既にいた。

 塔城や木場も兵藤に手を貸してくれるそうだ。

 やったな兵藤。持つべきはやっぱり仲間だよな。

 それから木場の持ってきた地図を参照に作戦を考える。

 なるほど、シスターは教会の地下にいるみたいだな。

 作戦が決まり、塔城が教会のドアぶっ壊したことにより、シスター救出作戦が決行された。

 いくぜいくぜいくぜぇ!!!! って、誰かいるぞ?

 目の前にはイヤな笑みを浮かべている神父服を着た少年。そしてその手には銃を握っている。

 なんじゃい。神父風情が俺の道を───ん?

 なんか、胸が凄く熱い。

 確認するとそこには真っ赤になった自分の胸が……ってぇ、な、なんじゃこりゃあぁー!!!

 

享年17歳 死亡原因 神父からの銃殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン27

 

 おい神父? なんで撃ってきたんだ? つーかここ日本だろ! なんで銃持ってんだよ! てめえそれでも神に使えてんのかぁ? だったら銃なんて使うんじゃねぇよ!! 銃刀法違反で豚箱放り込んだろうかコラ!! それに土手っ腹に穴開いて思わず太陽に吠えちまったじゃねぇか!!!

 ……………ふぅ、粗方スットしたぜ。

 多少叫んだことにより数段落ち着ついた。

 さて、死んだことによるループで再び愉快な仲間たちをぶっ潰した日に戻る。

 しかし、まさか敵が普通に文明の力を使ってくるとは………しかもサイレンサー付き。

 ここは少し様子を見てから行動するべきだったか。いやまぁ、後先考えずに突っ走った俺も悪いけどさぁ。

 と言う分けで今回は少し様子を見てから突入する事にした。

 慎重に慎重に周りの気配を確認して───今だ!

 細心の注意を払って突入する。そして完全に気配を消した神父に殺されましたでこざる。

 な、なんじゃこりゃあぁー!!!

 

享年17歳 死亡原因 神父による銃殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン28

 

 気配消すとかなしだろ。おかげでまた太陽に吠える羽目に。

 いや、叫ぶのは俺の自由だけど。

 とまぁそんなことは冥王星の彼方に放っておくとして、再び問題がでできちまった。

 マジであの神父何もんだよ。後先考えずに勝ち混みにいったら銃でパーンしてきて、挙げ句に慎重に行動したら完全に気配をシャットアウトして物陰からパーンしやがる。マジで腹立つ。そして一番ムカつくのが殺されたときに見えるあのキモイ笑みだ。こっちを指差して腹抱えて笑いやがって。ぜってぇ許さねぇ。

 と言うわけで目的変更。本来なら兵藤を手助けするのだが、俺の独断と偏見で変更だ。目的はあの神父をフルボッコにする事だ。

 救出作戦当日。俺は塔城がドアをぶっ壊した時点ですぐに内部に侵入。前々回ではここで撃たれたはず。

 なので俺は身を守るためにバリアを全身に展開する。その瞬間! 俺の胸に衝撃が走った。

 ふっ! どうやら俺の読み通り撃って来やがった。しかし残念だったな。このバリアは光の矢であろうと完全に防ぎきる。銃ごときでどうにかなるものか!

 事実その通り、バリアは完璧に防ぎきった。

 よし。さぁ兵藤たちよ、今の内に行くんだ。ここは俺が引き受けた。

 俺の言葉に三人は少し心配した様子だ。しかし二三言話をして先に行かせる。

 さて、それでは神父よ、これでゆっくりと────えぇッ!?

 気がつけばマシンガン片手に物凄く嫌な笑みを浮かべる神父が───

 

享年17歳 死亡原因 バリアの展開しすぎによる脳沸騰。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シーン29

 

 痛い。頭が割れるように痛ぇ………。

 兵藤たちを行かせたのに合わせて神父からのマシンガンの雨霰。身を守るためにバリアを全開にしたから脳が再び沸騰してしまった。

 マシンガンの掃射が終わったついでに俺の人生もついでに終わってしまったでござる。

 あの神父本当にで聖職者なのか? 拳銃だけに飽きたらずマシンガンまでも使ってくるとは。聖職者のせの字も見つからんぞ。

 さて、前回の反省や振り返りもここまでにしておして、今回の作戦を立てなくては。

 しかし、立てるにしても現状は地味に最悪だ。攻めてもダメ。守ってもダメ。かと言って逃げたら俺の人間性と言うよりドロッとした何かに殺されると思うのでこれもダメ。神器を使ったところで蜂の巣になる自分の姿しか予測できないからこれもダメ。

 ………マジで八方塞がりじゃん。

 そもさん。相手は遠距離の武器使ってくるのに対して俺が接近戦しか出来ないのが根本的にマズい。何かしらの策を考えなくては。

 取り敢えず遠距離技が欲しい。どうにかして作れん物か。

 そう思い色々と記憶を掘り出す。具体的には足技を使うキャラを。どっかには遠距離技を使っていた人がいるはずだ。ちなみに南斗聖拳は論外だ。俺継承してないし誰一人としてそんなドチート暗殺拳を知ってるはずないだろう。

 いたらこの世界はモヒカンだらけの世紀末になってしまう。

 うーん……魔力を込めて魔力弾を………ハッ!

 俺の脳に画期的な技が閃く。

 そうだよ、彼の技であるのならば気力でなくとも魔力で再現可能だ。

 俺が閃いた技。それは、コロッケに出てくるイケメンキャラ、リゾット君が使用した遠距離気力弾。その名も(ソウル)キャノン!

 この技ならわざわざ神父が待ちかまえている教会に入らずとも攻撃ができるはずだ。

 というわけでレッツ特訓!

 それからシスター救出作戦までの数日。俺は寝る時間を惜しんで特訓した。

 しかし、特訓は困難を極めた。

 魔力弾を作ること自体には何ら問題はなかった。だが、それを自由自在に制御するとなると難易度はあり得ないぐらいに跳ね上がった。

 くっ、魔力を自由自在に操作するのがこんなにも難しいとは。

 やはり俺には無理なのであろうか。

 若干あきらめムードになりかけていた俺の頭に、ある人がよぎる。

 え、まっまさか、あなた様は──!?

 その人は俺に向けて、あろうことかエールを送ってきた。

 

 諦めんなよ!

 諦めんなよ、お前!!

 どうしてそこでやめるんだ!

 そこで!!

 もう少し頑張ってみろよ!

 ダメダメダメ! 諦めたら!

 周りのこと思えよ、応援してる人たちのこと思ってみろって!

 あともうちょっとのところなんだから!

 

 言い訳してるんじゃないですか?

 できないこと、

 無理だって、

 諦めてるんじゃないですか?

 駄目だ駄目だ!

 あきらめちゃだめだ!

 できる! できる!

 絶対にできるんだから!

 

 もっと───熱く、なれよ────!! 

 

 しゅ、修造さん………そうですね。わかりました。俺が間違っていました。

 いくぜ! うぉぉお!! ────(ソウル)って、何じゃこりゃぁ!!?

 修造さんのごとく自分の魂を燃やして放った魂キャノンは、思っていたものと違ってえげつない上によく分からないものとなってしまった。

 しかし、修得できたらから気にしないことにしよう。

 結果として本来の技より強くなっちゃったし。

 俺はいきなり心に出現した修造さんに敬礼した。

 

 ありがとうございます。あなたのおかけでよく分からない魂キャノンを修得できました。

 

 そうして迎えるかち込みの日。

 

 ふふふふふ、神父野郎、今に見てろよ。テメェの気色悪い笑みを浮かべた顔面にぶっ放してやるよ。

 そんな事を思っていてら顔に出ていたのか木場や塔城に引かれた。

 か、悲しくなんかないやい!!

 その後なんの変わりもなく塔城が廃教会のドアをぶち壊して作戦が決行。と、それと同時に俺は右足に魔力を集中させる。やがてそれは太陽のごとく真っ赤に光り輝く球型に纏まる。

 できた。さぁ神父よ、喰らうがいい! これが俺の遠距離技第一号!

 

 松岡─────陸上魂(グランドソウル)キャノン!!

 

 俺は技名を叫ぶと同時に魔力弾を教会内部に放った。

 そして何かに着弾した反応と共に再び叫ぶ。

 

 もっと、熱く───なれよ!!!

 

 その瞬間、

 

 チュド───ンッ!!!

 

 教会は消滅した。

 

 ふ、ふはは、フハハハハハハハ!! 見たか! これこそが俺が修得した最強の遠距離攻撃。その名も、松岡陸上魂(グランドソウル)キャノンだ!!

 原理としては脚に魔力を集中させ、後は俺自身の持つ諦めない陸上魂をガンガンぶっ込んで相手にぶっ放するだけの技だ。

 魔力弾のコントロール? あぁ、できる! できる! 絶対できる! って自己暗示しながらやったらできた。やっぱ松岡さん偉大だわ。

 

 さてと、目的の神父どころか教会を消滅させたが、万事オッケーだろ。兵藤の友達のシスターさんは教会の地下にいるみたいだし、無事だろう。

 

 それじゃー早速行こうぜ、みんな! ん? 何でみんなポカーンとしてるの? ん、どうした木場。なになに、いきなり攻撃するなんて何考えているの? 無論サーチアンドデストロイですが、それが何か?

 さてと、呆然とする三人を無視して教会跡地に侵入~。

 すると入り口付近に真っ黒になった神父を発見。  なんだ、教会と共に消滅しなかったのかよ。渋てー野郎だ。

 

 ………………そいやッ!!

 

 俺はそれにバックドロップをかましてとどめを刺す。こいつ自身は俺とは初対面だろうが、こっちは三回も殺されたのだ。コレくらいはしなくては。

 

 神父に対して八つ当たりをしたことにより、幾分かスッキリした俺は兵藤たちと共に祭壇跡地から教会の地下に侵入していく。

 

 てか、教会の地下マジ臭いんだけど。具体的には加齢臭的な何かが臭って仕方ない。ファブリーズしたろうかな。

 

 地下への道を降りること一二分。ようやく開けた場所に出てきた。

 

 ようやく着いたか。さて、シスターちゃんはどこに───何だと……

 

 俺はシスターちゃんを探すために周りを見渡すと、前方の奥に目的のシスターちゃんを発見した。

 大きな十字架に貼り付けにされていた状態で。

 その貼り付けにされているシスターちゃんの隣には、嫌な笑みを浮かべている痴女がいた。

 後からやってきた兵藤もそれを見て怒り心頭の様子だ。

 あぁ、分かるぞ兵藤よ。俺も同じ気持ちだ。

 俺は痴女を指差し、一言物申す!

 

 テメェ、よもや健気な少女に、自分の最悪な趣味を押しつけやがったなぁー!!

 

 …………………………………………………………………………………………

 

 瞬間、場の空気が完全に固まった。

 

 みんなポカーンとした後、クスクスと笑いをこらえた声が聞こえてくる。

 あれ? なんか、俺たち以外の声が聞こえるんですけど。

 注意深く周りを見渡すと、物陰に隠れている神父っぽいおっさんたちが沢山いた。

 なる程、どうりで通路が加齢臭臭かった訳だ。

 ってぇ、そんな事よりも、急いでシスターちゃんを助けなくては。ほら兵藤、何時までも笑いこらえてないで行くぞ!

 俺は未だに笑いをこらえていた兵藤のケツを思い切り蹴飛ばし、シスターちゃんの元に向かう。

 途中痴女が何やら自分は至高の堕天使だの痴女じゃ無いだのほざいていたが、全部無視した。つーか痴女じゃないだけは嘘つくなよ。テメェの姿はどっからどう見ても痴女だろうが。

 俺たちの接近に痴女は悪者らしく神父たちに命令して襲ってきたが、やっとこさ笑い終わった木場と塔城が現れて相手をしてくれた。おかげで、痴への道が開ける。

 さぁ行くぜ、覚悟はいいか? 至高(笑)の堕天使さんよ?

 痴女は光の矢を俺と兵藤に向けて放ってきたが、俺が前にでて、魔力を纏った蹴りで弾く。

 パウッ!

 弾かれた矢はあらぬ方向に飛んでいき、神父っぽいおっさんにぶち当たる。

 ……………やっちまったぜ。

 まぁ反省も後悔もしないけど。むしろ俺良いことしたんじゃね?

 その光景に痴女はあり得ないだの何だの叫んで乱撃を放ってくる。

 乱撃…………一度ならず二度三度も敗北を期した技。

 正直、俺が一番相手したくない技の上位だ。

 だがしかし、今の俺は昔の俺とは違う!

 俺は脚に魔力を更に集中させ、限界以上の速さで蹴り込めるようにする。

 展開率、100パーセント突破ぁッ!! 準備は整った。

 本来はマシンガン対策に作っておいた最新技。マシンガン対策なら乱撃にも対応できるだろう。

 さぁショータイムだ。

 乱撃が俺に着弾しようとするのと同時に、俺も技を放つ!!

 

 ウォォオオオオオッ!! パウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッパウッ!!!!

 

 俺の神速の蹴りはあり得ないほどの衝撃波を放ち、痴女の放った全ての光の矢を消滅させた。

 これぞ俺の対乱撃用の超奥義、名付けて、

 

 108(ワンオーエイト)パウラッシュだ!!

 

 原理はいたってシンプル。敵が圧倒的物量で攻撃してくるのであれば、こちらも圧倒的物量の蹴りを撃ち込めばいいという馬鹿な発想だ。

 ちなみに名前については魂キャノン同様同じキャラからとらせて貰いました。

 他にいい技名思いつかなかったし。

 

 乱撃を対処しきった俺たちは悠々と痴女のもとに向かう。

 さぁて、もう攻撃手段もないし、年貢の納め時だなぁ。だが、ここで手を下すのは俺じゃーない。だろ? 兵藤。

 俺は兵藤の背中を軽く押し、痴女の元に行かせる。

 この因縁はあいつがつけるべきものだ。

 

 さぁ兵藤、思いっきりぶちかましてやれ!

 

 兵藤は俺の声援に答えるかのように軽く拳を上げると、一気に痴女のもとに肉迫していく。

 途中兵藤に向けて光の矢が放たれるも、兵藤は歩みを止めない。途中脚に刺さったりもしたが、シスターちゃんが受けた傷の方が何倍も痛いとか言って耐えきる。

 マジでこの子兵藤なの? あまりの格好良さに忘れがちだけど、この子学校じゃおっぱいおっぱい叫んでいるただの変態だぜ?

 そうして痴女のもとにたどり着いた兵藤は気合い一発、籠手を解放させ──て、何アレ、この前よりゴツゴツしいんですけど。すっげーカッコいいんですけど。しかも兵藤のオーラが一気に増大したんですけど。まぁいいか。前回見たときよりなんかゴツくなった籠手を展開させた兵藤は、謎のパワーアップと共に痴女の顔面に向けて思い切り拳を振り抜いた。

 痴女は勢いよく壁に激突して体をピクピクさせる。おそらくは再起不能だろう。

 これで終わりだな。

 俺はお疲れ様と言って兵藤の肩を軽く叩く。

 本当に格好良かったぜ、お前。

 それから貼り付けになっていたシスターちゃんを助け、無事に作戦は終了した。

 

 追記するなら、その後シスターちゃんは悪魔になったそうだ。

 そして兵藤の持っていた神器は、赤龍帝の籠手という物らしく、神すら殺せるすっげー神器だったみたいだ。

 俺の刹那の懐中時計とは月とその辺の石ころレベルで格が違った。

 ………………………………………か、悲しくなんかないやいッ!!!!!!

 

 ………しばらくお待ちください。時間が飛びます………

 

 さて、シスター救出作戦から早数日。命の危険が無いなんて素晴らしいと人生を謳歌しているさなか、再び一本の電話がかかってきた。

 電話の相手は出てびっくり、なんとグレモリー先輩だった。

 …………なんで電話番号知ってるのさ。え? 兼部でも部員の情報は把握してるわよ? 

 グレモリー先輩はストーカーだったようだ。

 まぁそれは置いておくとして、何の用件だろうか。

 ふむふむ、なるてろ。どうやら兵藤や新しく仲間になったシスターちゃんの二人に使い魔を与えることになったようで、良かったら俺もどうかという誘いみたいだ。

 まあ使い魔云々はともかく、ペットの一匹や二匹は欲しいと思っていた今日この頃だったので、俺は二つ返事でオーケーした。

 

 そうして部室でみんなと合流した俺は、使い魔の森と呼ばれる、なんか中二ちっくな場所に向かった。無論魔法陣で。

 

 魔法陣の発する光がやみ、目をあけるとそこには、なんかファンタジー風な森が広がっていた。

 なんか、スライムの一匹でも突然出てきそうな雰囲気である。

 

 俺たちは早速使い魔を手に入れるため、案内役兼使い魔マスターを目指している痛々しいサトシ似のおっさんと合流し、森の中へと入って行く。

 それからは筋肉がすばらしすぎるウンディーネやらスライムやら触手やらスプライトドラゴンと呼ばれる珍しいドラゴンと出会い。シスターちゃんがスプライトドラゴンを使い魔に決めた。

 兵藤はスライムと触手を使い魔にしようとして失敗した。

 うん。さすがの俺もスライムと触手には弁護できんわ。服を溶かして体液を接種するとかR指定だっつうの。

 さて、無事シスターちゃんが使い魔を見つけたようだが、未だに俺は使い魔のつの字も見つかっていない。

 やはり悪魔でない俺には使い魔との相性が悪いのであろうか────ん?

 若干ナイーブになりかけていた俺の目の前に一匹の犬が現れた。

 その犬は真っ白な姿をしており、愛くるしい目と鼻をしている。

 コレって、アレじゃね? どっかのスーパー五才児のペットのアレじゃね?

 その真意を確かめるため、俺はその犬に対して一言。

 

 綿飴!!

 

 あんッ!

 

 するとどうでしょう。その犬はまるで俺の言っていることを完全に理解したかのように綿飴みたいに身体を丸めたではありませんか。

 

 決めた。この子や。この子しかおらへん。俺は君に決めた!!

 

 早速俺はグレモリー先輩とサトシ似のおっさんに犬──もうシロでいいや、シロを持って行って、使い魔にしていいかどうかを聞いてみた。

 二人曰わく犬の使い魔は珍しくとも何ともないのでオーケーだそうだ。

 まったく、どこが珍しくないだ。このシロが珍しくないなら世界の犬全てがありふれた犬になっちまうぞ。なっ、シロ?

 

 あん。

 

 そうかそうか。やはりシロは分かってくれるか。

 こうして俺を含めたグレモリー眷族による使い魔ツアーは幕を下ろした。




現在までに主人公が修得した技や手に入れたアイテムや使い魔や謎の助言者

魔力

前回参照。未だに空は飛べないよ。

波紋乱渦疾走パート2

前回参照。

受付

前回参照。

仔牛肉ショット

前回参照。

魔力によるバリア

前回参照。使いすぎ、ダメ、絶対!!

波紋串焼乱渦疾走

前回参照。

刹那の懐中時計

前回参照。広域殺戮には役に立たないため主人公的に使えない神器らしい。が、本来の使い方を知ったら………。

松岡陸上魂キャノン

魂キャノンの魔改造版。気力ではなく魔力で補い、それに心の持つ陸上に対する諦めない気持ちを詰め込んだ一撃で、松岡修造のように熱い一撃となる。もっと、熱く────なれよ!! のかけ声と共に爆発する。威力は教会が一撃で消滅したことからかなりヤバい。主人公が持つ唯一の遠距離技。

108パウラッシュ

いわずとしれた108マシンガンの魔改造版。本来より速く、そして重い神速の蹴りを108回一気に繰り出す技。その蹴りは光の矢の乱撃すら防ぎきる。現在防御にも使える便利な技。

修造さん

主人公の心の中にいきなり現れた元プロテニスプレイヤー。とにかく熱い人で、鬱や諦めそうになる主人公を応援してくれる存在。主人公に諦めない心という最強のチートを授けてくれた。決して本人では無いのであしからず。

シロ

スーパー五才児のペット。何故かこの世界では主人公の使い魔というよりペットになる。原作同様賢い奴で、とっても愛くるしい。ちなみに戦闘力は皆無だ。


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シーン29~35

マジで主人公はどこに向かっているのか心配でならない


 さてさて、シロとじゃれ合いながら平和を噛みしめている今日この頃。

 何故か俺はグレモリー先輩に呼ばれて旧校舎にきていた。

 何でも、取り敢えず来て欲しいといわれたのだ。

 理由も詳しく教えてくれなかったことに一抹の不安を覚えるが、危険は無いと思うので行くことに決めた。

 というわけで、オカルト研究部のドアの前にいるのだが────って、固ッ!!!!

 部室前についた俺は入ろうとドアを開けようとしたら、予想外の硬さに驚く。

 何これ、接着剤でもつけたのか? もしくは建て付けか? 見た目同様古かったのであろうか。

 引っ張ってみてもビクともしねぇ。

 どうすっか。

 ぶっちゃけ帰りたい。でも帰ったら帰ったでなんか言われるのもしゃくだし。

 うーん。

 悩む俺だが、その時、ある有名な人の言葉が頭を過ぎる。

 

『ヤハハ、知ってるか? ドアを手も使わずに開ける方法があるだぜ?』

 

 やれと? 俺にそれを? マジ?

 

 ………………………ヒョオォ───ヒャオッ!!

 

 何者かの期待を裏切られず、健康一滴、思い切りドアを蹴り破る。

 

 ドゴォォッ! ギャァアアアアッ!!

 

 ん? なんかドアが壊れた音と違う生々しい叫びが聞こえたぞ?

 とりあえず部室に侵入。するとそこにはポカーンとした兵藤を始めとするグレモリー眷族の皆様方と、メイド? となんかたくさんのおんにゃのこ達がおった。

 

 …………失礼しました~。

 

 俺はここにいるのが場違いだったと思い帰ろうと──

 

「「「「「「帰るな(いで)!!」」」」」」

 

 ──冗談だよ。流石の俺でもそこまで無責任ちゃうわい。

 とりあえず状況が把握したい。

 比較的「あぁまたか」的な目で落ち着いていた木場に話を聞く。

 ねぇねぇ、これってどういう状況? ふむふむ、なるテロ。つまりグレモリー先輩には婚約者がいてその婚約者がこの部室に来ていたのか。

 あれ? それだとおかしくね? 部長って女性だよな。なら婚約者は男になる。ここにいるのはグレモリー眷族を除いたらみんな可愛いおんにゃのこ達だぜ?

 ………………ハッ!? まっ、まさか部長は男───そげぶっ!!?

 ………痛い。いくら俺がアホみたいな言抜かしたとしてもさ、魔力の塊ぶつけてこなくてもいいじゃないか。

 グレモリー先輩のお仕置きに若干萎えつつ、もうちょっと婚約者について詳しく話を聞く。

 え? 俺がぶっ飛ばしたドアに巻き込まれて吹っ飛んで行った?

 ………………これって………やっちまったパティーン? やっべーマジどないしよ。

 

「き、貴様ぁぁああぁあっ!!!!」

 

 へ?

 俺がどうしようと考えていると、突然窓からホスト被れ的なお兄さんが俺につっこんできた。

 もれなく炎を全身から吹き出しながら。

 おいおい、ここは木造建築だぜ? そんな炎吹き出してくるなよ。てか暑苦しいわ。こちとら心の中にもつと暑苦しい人飼ってるんだからもう少し考えてくれよ。熱中症になるわ。

 

『暑いのは俺のせいじゃないぞ!』

 

 なんか聞こえたが無視した。

少なくとも俺が常時暑いのはお前のせいだよ。おかげで最近水分補給怠ったら直ぐに脱水症状になってるわ。

 取り敢えず暑苦しいのは本気でいやだったので全身に魔力を纏わせ、全力で蹴り返した。

 

 ところがぎっちょんてな、ちょいさぁー!!

 

 バキィイイイイイッ!!

 

「ギィイイイイヤァァアアアアッ!!!?」

 

 再び星となるお兄さん。ふぅ、地味に疲れた。もう帰っていい? ダメ? さいですか。

 その後お兄さんが戻ってくるのに五分ほど時間を要した。

 

 無事お兄さんが戻ってきたところで話し合いが再開する。

 俺はとりまホスト被れ改めて、フェニックス家のご子息ことライザーさんに詫びを少しばかりして場を収める。

 全く、なんで俺がこんな事をせにゃならんのだ。

 え? お前がやったんだから責任とれ? さーせん。

 なんでもグレモリーが勝手に両親が決めた婚約に反対らしく、それを良しとしないライザーさんがやってきたという事らしい。なるほど、つまりは犬も食わない痴話喧嘩ということになるのか。

 取り敢えずお互いに納得するまで話し合ってみればと俺が提案してみたが、グレモリー先輩はどうしてもいや、ライザーさんは結婚したいの一点張りで話になんねぇ。

 お前ら、分かり合う気はないのか? ない? あぁそう………もういいや。

 んで結局なんかレーティングゲーム? たらなんたらで決着をつけることに。

 んまぁそんなんで決着ついて互いに納得したんならいいんじゃね? なんて思ってたら、何を思ったかライザーさんは俺に参加しろとのこと。

 なんで他人の色恋沙汰に足つっこまにゃなんねぇのよ! ってツッコミ入れたらドアをぶち当てたのと、思い切り蹴りを入れたことの落とし前をつけてやると言われてしまった。

 謝ったやん。それで許してくれねぇの? なんて器の小さい野郎だぜ。

 などと思っていたらどうやら口にしていたようで、ライザーさんは顔を真っ赤にして俺にぶち殺すなんて殺害予告をしてきた。

 …………あれ? これってよくよく考えたらマズくね? 相手フェニックスの悪魔。俺パンピーどすえ。

 もはや後の祭りであった。

 

 そういうことで、レーティングゲームに向けて、グレモリー眷族と強制連行された俺は急遽強化合宿を行うこととなった。

 ちなみに行き先はグレモリー先輩が所有している山だ。

 マジなブルジョアですね、わかります。

 てか、修行特訓=山って形から入るのに失笑を禁じ得ない。つーかのどかな山で修行して強くなれるのはアニメの世界だけってゆうに。事実俺も陸上やりまくってたから戦えたわけだし、寧ろ人生の汚点を唯一作り出した山にいいイメージが沸かん。それ以前に強制連行ってどうよ。出るとこ出たら勝てるぜ? 主に七三のぼったくり弁護士に頼るけどさ。

 まあそんな事思ってる俺のことなど無視され、合宿は始まった。

 

 一日目。

 木場との剣術試合。

 

「はぁあっ!」

 

 ところがぎっちょっん!!

 

 ガキィイインッ!

 

「きぁっ!?」

 

 木場が俺に向けて振り下ろしてきた魔剣を魔力を纏った脚で受け止め、逆にカウンターを打ち込む。

 木場は予想以上だった威力のカウンターを受け流せきれず、その場に尻餅をついた。

 気持ちとしては某戦争マニアのひろしだ。

 やっていて結構すがすがしい。

 木場と剣術の試合なのだが、俺に剣の心得などあるわけがなく、俺は脚で、木場は魔剣を使用してでの試合をやり合っている。

 基本的には直情的でまだまだ甘さのある木場を俺があしらっているのが現状だが。

 ふぅー、ここまでにしとくか。

 木場を立たせ、次に戦う兵藤と交代してその場を後にする。

 去る瞬間、何やら兵藤がいやらしい笑みを浮かべていたのを見てしまったが大丈夫だろうか?

 心配になって振り向くとそこにはコテンパンにされた兵藤の姿が。

 ………………南無三!

 

 二日目。

 塔城との組み手。

 とりあえず相手してやるからかかってこいよ。

 俺の微妙に挑発されると思われる言葉と共に塔城が飛びかかってくるが、甘い!! まるでメープルシロップだぜ!!

 俺は赤子の手をひねるが如くよ的なノリであしらう。

 その時滅茶苦茶先輩って人間ですかって感じの目を塔城向けられる。

 おいおい、俺パンピーだっつうの。

 さーて、次は兵藤だな。その煩悩滅却してやるから本気で来いよ! じゃないと────怪我するぜ?

 

「え゙………」

 

 結果、汚い花火を作っちゃった。

 

 三日目。

 姫島先輩のパーフェクト魔術教室。

 本日は座学のようだ。

 姫島先輩の話を聞いて魔力のなるたるかを学ぶ。

 ふむふむ。纏わせて身体能力を上げたり集中させて魔力弾にしたりすると。

 うむ。まるっきり俺の我流での解釈と何ら問題ねぇな。

 とりあえずこの日は俺一人武空術に費やした。

 だってやる気でねぇもん。

 何かと言ってきた姫島先輩は俺の松岡陸上魂キャノンを見て何も言わなくなってしまった。

 さーて、んじゃ飛行訓練がんばりますか!

 

 結局この日は武空術は習得できなかったでござる。

 

 四日目

 基礎的な筋トレ

 今度こそ一緒にトレーニングしたいと言ってきたので、俺はそんなに懇願するならとみんなに俺のいつもの陸上のメニューを見せたら顔を真っ青にして自主トレしてくれと頭下げられた。

 なんか心にチクってする痛みが走ったのは気のせいだと思いたい。

 かっ、悲しくなんかないやい!

 しかし、そんな俺を気にしてか木場が一緒にトレーニングしたいと言ってくれた。

 恐らく俺に初日であしらっわれた事が悔しかったのだろう。

 それに俺の瞬足に同じ速さを求める彼女も何かしら思うところがあったのかもしれない。そこまで速さを求めるか、良かろう。ならば、共にピリオドの向こうに行こうぜ!

 その結果、木場の地味に足が少し速くなった。

 

 さて、そんなこんなでグレモリー眷属の楽しい合宿も無事終了。

 その成果を確認すると、参加する前までは俺と同じ位にパンピーの気配丸出しの兵藤が土地狂ったのか山を一つ消し飛ばしていた。

 ……ははっ、笑えねぇよ。兵藤、お前もう人間じゃねえよ。あ、悪魔だった。

 

 そんでなんやかんやで日にちも軽く過ぎていき、遂にライザーさんとのレーティングなんチャラの日を迎えた。

 その日の夜、というか深夜に部室に集合するグレモリー眷属プラスパンピー代表格の俺。

 集合と同時に魔法陣が展開され、気がついたら同じ部室に立っていた。

 はて? ここって部室だよな? 何故? 失敗か?

 取り敢えず近くにいた木場に話を聞く事にする。

 えっと? 今回のゲームのフィールドが駒王学園で、ここは作られた世界だと。なるほどね~。

 それはそうと、時間帯に殺意を覚えてしかたがない。

 なんで深夜なん? こちとら人間だぜ? パンピーなんだぜ? 普通ならこの時間帯は夢の中じゃボケェ!! 眠いんだよ! さっきから目蓋が下がってきて耐えるのに必死なんだよ! 落とし前つけるんならこっちの都合も考えろや!

 俺は怒り心頭に殺意を漏らしていたら、木場に頭を撫でられ宥められる。

 …………き、気持ちよくなんか………ご、ゴロニャン~───ハッ!? な、無しっ! 今のなし!! ………無理?

 撫でられてとろけきったという真実の抹消を図るも木場は苦笑いを浮かべて首を横に振った。

 おふっ……こりゃ黒歴史確定ではないか。

 もう穴があったら入りたい気でいっぱいな俺であるが、レーティングなんチャラはそんな俺を待ってはくれなかった。

 

『これより、リアス・グレモリー様とライザー・フェニックス様によるレーティングゲームを開始いたします』

 

 おいおい、開始しちゃったよ。

 何はともあれ始まったもんは仕方ない。

 なんか作戦でもあるのかグレモリー先輩に話を聞く。

 なんでもグレモリー先輩の作戦だと、旧校舎と新校舎の中間地点である体育館を囮とした作戦を用意していた。

 ふむ。作戦としては及第点だと思うが、なんかめんどい。てかこんな時間に巻き込まれた俺の気持ちがちっとも晴れない。

 と、言うわけで、皆! 俺ちょっくら遊撃に出かけるわ!!

 そう言うや否や俺は部室の窓に手をかけると、一気に外に飛び出す!

 なにやら部室から色んな人の声が聞こえるが気にしない。俺は今、鳥になっているんだ! そうだ、俺よ、鷹になるんだ!!

 まあ鳥になれる訳なく、普通に二本足で着地。

 地味に足に凄い振動が伝わる。恐らくこれがパズーが味わった刺激なのだろう。ちょっと痛いでござる。

 さて、遊撃に出るとしたはいいが何も考えてなかった。というより敵はどこにおるのだろうか。

 ま、歩いとけばいずれエンカウントすんだろ。

 そうと決まれば行くとしますか。

 地面に片膝と両手をつけ、腰を上げる。

 オンユアマーク? セット……………ゴー!!!

 当時画期的だったポケットなモンスターの捕獲旅のルビーやらサファイアの主人公顔負けなレベルで走り出す!

 これだ……コレだよ!! 全身に風を受け、自身がまるで風になったかのような錯覚と共に走り抜ける。陸上はこうでなきゃ!

 うぉおおおおおっ! 駆けろ俺! 風の向こうまで!!

 旧校舎の森を走り抜け、ようやく開けたグラウンドが見えてきた。

 よし、後少し、ラストスパー───トッ! …………………えぇ…。

 

 グラウンドに飛び出した俺。その俺の目の前にはなんと、この前部室で見た沢山のおんにゃのこたちがいた。

 

 いきなり現れた俺に全員の視線が釘付けになる。

 

 ……………………………………………………………………………………………………………えっと………は、ハッピーうれぴーよろぴくねー?

 

 その視線に答えるかのように、俺は持てる最大の挨拶をぶつけてみた。

 

 瞬間、目の前が真っ白になった。無念!

 

享年17歳 死亡原因 集団的リンチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン30

 

 いやー、死んだ。ひっさびさに死んだわ。もうね、この死ぬかもしれないなんていう緊張感も忘れかけてたわ。

 さて、取り敢えず恒例の反省会。

 うむ。あれだな、やっぱ広域殺戮にはどうしようもねぇな。

 いやさ、ハッピー、うれぴー、よろぴくねー? なんてバカなネタをかましたけどさ、いきなり全員で襲ってくることもないだろ。

 てか、コレってゲームなんだよね? グレモリー先輩の話だと死にそうになったり戦闘不能になったら強制転移させられるって話だったよね? 何が起きたん!? 俺強制転移と言っても人生から強制転移させられたわ! 何でやねん!! 責任者出てこいや!!

 ……ふぅー、まあ落ち着こう。ここで怒ってもどうしょうもないし。

 さーて、反省会もこのぐらいにして現状を把握しねぇとな。

 カレンダーを確認してみると合宿の前日である事がわかった。

 うーむ。となればあの広域殺戮という名の集団的リンチを合宿でどうにかしろって事だな。良かった良かった。

 いきなり対処しろってわけではないことにひとまず安心する。

 なに、二週間もあるんだ。なんとかなるさかい。

 

 なーんて軽い気持ちで合宿を終え、迎えたレーティングゲームで俺は汚い花火と化した。

 

 たーまやー!!?

 

享年17歳 死亡原因 集団的リンチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン31

 

 言い訳? あるよ、遊び過ぎたんだよ。時間はたっぷりあるから本気出すのは明日でいいやーなんて思ってたら普通にレーティングゲーム前日にまでだらけきってたよ。

 おかけで汚い花火になっちまった。

 さてと、再び時は合宿の前日。

 よし、遊びはこのくらいにしてそろそろ真面目に修行すっか。

 合宿で一人行動を開始する。もうね、グレモリー眷族のゆるゆるな修行は俺の糧になんない。だって、俺が朝の軽く流すメニューで顔が真っ青になってたんだもん。

 そんなわけで一人行動でた俺。

 先ずは前回と前々回での課題を見つける。

 とにかくね、あの広域殺戮はダメだ。人としてあれには勝てない。てか、やく一名空中で爆撃かましてきたぜ。あれをどうしろと? つーか物理的に無理難題だし。向こうは10人以上でこちとらパンピー代表格の俺一人。どないせっちゅうねん。まあ嘆いても現状は一ミリも動かん。それに考えればなんか道があるはず。

 とにかく目下最大の課題は圧倒的不利な人数とどう戦うかだ。

 うーむ………………見敵必殺しかないか。

 

 と言うわけで、

 

 サーチアンドデストロイじゃ! 喰らえ! 波紋乱旋疾────ギャァアアッ!!!?

 

 結果、逆にデストロイ。

 

享年17歳 死亡原因 集団的リンチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン32

 

 さーて、そろそろ真面目に考えるか。

 考えなしに突っ走っていい結果をもたらした事なんて一度も無かったな。

 さてと、マジであの圧倒的人事不足をいかに解消するか。

 他の人たちに頼る?

 無理。だって皆俺の言うことよりグレモリー先輩の言うこと優先じゃん。却下。

 とは言うものの、手数が足りないのは致命的だよな~。

 せめてどこぞの赤い人もしくはマフィアのボスみたいに相手の行動を二手三手先読みできれば────────あ、できるじゃん、俺。

 そうだよ、俺持ってんじゃん。予測可能な神器──《刹那の懐中時計》を!

 となれば話は簡単だ。神父をコロコロした時は予測できる時間が短いからどうしょうもなかったから放置していたが、マフィアのボスレベルで数十秒先の未来を予測したら完璧ではないか!

 そう結論付けだ俺は合宿の時間を全て神器の強化に費やした。

 その結果、なんと数十秒とまではいかなくとも十数秒先の未来を観ることに成功した。

 ふふふ、完璧ではないか。もう、何も怖くない!

 迎えるゲーム当日。

 場所、グラウンド。

 おんにゃのこたちの視線は俺に釘付け。

 

 さーて、刹那の懐中時計よ、俺に未来を見せよ!

 

 神器を発動させ、未来を予測。するとそこには、ぐちゃぐちゃな死体となり果てた俺の姿が─────

 

享年17歳 死亡原因 集団的リンチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン33

 

 あっさり死んでたな。もう少し早めに予測しとこ。なんでグラウンドに出てから予測したのだろうか。

 そんなわけで今回は少し早めに予測してみた。

 

 刹那の懐中時計!

 

 発動により未来の映像が俺の脳内に流れ込んでくる。

 そこには地面にヤムチャしている俺の姿……だとっ!?

 早めに予測しているにも関わらず結果が変わってない!!

 どうやら未来は俺が思っていたよりも果てしないほどにヤバいようだ。

 というか光が見えない。むしろ闇しか広がってねぇよ。

 おっかしいな? 元来未来を予測できる能力保持者は全員チートレベルで強かったのになぁ~……なんで俺はこんなにも無力なのだろうか。

 と、とりあえず行動しなくては未来は永劫変わることはない!

 そう意気込み、グラウンドに躍り出た俺。

 狙うは何一つ武器らしい武器を持ってない上空のおんにゃのこだ!!

 

 うぉおおおおおっ! とうっ!!

 

 地面を力一杯踏みしめ、上空に舞い上がる。

 

 うひゃひゃひゃ、行くぜ! 受ふ─────ちょっ!? ば、バリ───

 

享年17歳 死亡原因 爆殺

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン34

 

 あのさぁ、跳んでる間は攻撃しないでよ! 無防備なんだからさ! そりゃさ、攻撃する事に夢中になりすぎてバリア張るのが遅れたけどよ、だからってさらに追い討ちで更に爆破してこなくてもいいじゃんか。おかげで恐ろしいほど痛かったぞ。

 ちくしょう、この仕打ち忘れんぞ。もう油断しない。本気で行かせてもらう!

 

 つーことで、

 

 うぉおおおおおっ! とうっ!! 

 上空に舞い上がる俺、上空のおんにゃのこは既に俺に狙いをつけている。だが、今回は対策済みよ!

 

 バリア!!

 

 魔力のバリアを全身に展開! それによって俺は爆発を完全に防ぎきる。

 

 ふふ、完璧だ。さーて、そんじゃあお返しと行きますか──って、あれ? なんか、下がってきてない? 具体的には高度的な何かが。

 

 そう、俺は失念していた。

 爆発するということは、洩れなく爆風もついてくるということを。

 

 …………………やべっ!

 

 無残に地面に叩きつけられる俺。

 

 その後もなんとか殺されまいとバリアを展開するも結局脳の限界ががががががが………

 

享年17 死亡原因 集団的リンチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン35

 

 というかさ、もう死んだの何回目? え、35回? どえらく死にすぎたな。

 さーてそろそろ本格的に道が無くなってきたな。

 現状どうしようもないくらいにお先真っ暗である。もはや何をしたら殺されないのかを考えるより、何をしたら楽に死ねるかを模索する方が簡単だと思えてくる始末だ。

 しかし、爆風がこれほど厄介だったとは。あの勢い、痴女どもの光の矢より威力がでかかったぞ。

 ほんとどないしよ。ぶっちゃけ全てを見捨てて逃げたい。むしろアルプス山脈でのうのうと暮らしたい。でもそれは叶わないんだよなぁ~。逃げたら絶対ドロッとした何かに圧殺されるのが目に見えてるし。

 ていうかなんで未来予測できる敵キャラって皆チートなんだ? 一体俺と何が違うのだろうか。そこが分かれば何かが変わるかもしれない。うーむ。

 しばらく瞑想すること三分。画期的な答えに俺はたどり着いた。

 あ、そうだよ、基本予測できるキャラは結果だけじゃなくて過程も予測できたり、その未来に対して人外的な行動がとれたがらチートだったんだ!

 だがその真理に気がついたとしてもハードルが高すぎる。いかに俺が人外に片足突っ込んでると言っても、タキオン粒子の世界に突入できるわけでも、時間を吹き飛ばすこともできやしない。

 さーてと、どうすんの?

 取り合えずば過程も含めて予測できるように鍛えてみるか。

 

 そうして鍛えてみたらあっさりと習得に成功した。

 どうやら俺にはボス的な素質があったみたいだ。

 まあ過程さえ分かれば回避なんて赤子の手を捻るが如しよ。

 

 そして、ゲーム当日!

 

 グランドに降り立つ俺。

 全員の視線が突き刺さる。

 さぁ行くぜ!

 

 刹那の懐中時計! 俺は貴様の未来を予測する。

 

 俺は地面を踏みしめ、一気に上空のおんにゃのこに接近!

 途中でおんにゃのこは俺を爆殺をしてくるが、もはや予測済みよ! 爆発のタイミングを完璧に掴み取り、自分の足元で爆発するように行動していた俺にはなんの問題は無いわ!

 すぐさま足元で爆発が発生するが、脚を踏みしめ、その爆風を利用し、逆に更なる接近を可能とした!

 ……………え? 踏みしめた? マジで!?

 よく考えてみると、俺は空気を踏みしめて接近していたことに気がついた。

 おふ……おぉ俺よ、とうとうそこまで人外の領域に踏み込んでしまったのか。

 しかし、今は好都合だ! 行くぜ行くぜ行くぜ!!

 おんにゃのこの目の前に接近した俺、さあ殺りますかねぇ!

 やる技は前回大敗を期した上空なら大ダメージ必至のこの技!

 足首をおんにゃのこの首に引っ掛け、一気に降下! 圧倒的重力落下速度による破壊エネルギーは大概の連中の意識を刈り取る!

 

 受付!!

 

 俺は破壊エネルギーもろとも地面におんにゃのこを叩きつけた。

 そして叩きつけられたおんにゃのこは犬神家様々など上半身埋まった姿を晒し、その光景に残りのおんにゃのこ全員がポカンとしている。

 ふぅースッとしたぜ。かれこれ三回ぐらい殺されたからな。これぐらいしても罰は当たらんだろ。向こうは知る由もないけどってあれ?

 気がつくと上半身埋まったおんにゃのこは光に包まれるとどこかに消えてしまった。

 そして消えると同時にアナウンスが聞こえてきた。

 

『ライザー・フェニックス様の女王、リタイア!?』

 

 なんかアナウンスの人がすごく驚いていらっしゃる。

 てか、ちゃんとリタイアできるのかよ! なら俺の時もできるようにしとけや! このバカ共が!! マジで出るとこ出たろうか!!

 俺の怒りが有頂天となる中、ポカンとしていたおんにゃのこの一人が気を取り直したのか剣を片手に向かってきた。

 なにやら仇だの何だの言いながら。

 いや、仇って。別に死んだわけでもないじゃん。こっちは命がけと言うに。

 まあ向かって来るというのなら相手をするだけだ。

 

 刹那の懐中時計! 貴様の未来を予測する!

 

 俺は振り下ろされる剣を数歩先に歩いてただけでいとも簡単に回避し、逆にカウンターを仕掛けた!

 

 簡易版松岡陸上魂キャノン!

 

 脚に込めた魔力と共におんにゃのこを蹴り込み、遙か遠くに飛ばす。

 簡易版松岡陸上魂キャノンとは、いろいろ込める物を簡略した松岡陸上魂キャノンで、威力が幾分か下がる分、繰り出す速さが比べものにならないくらいに速くなっている。そのおかけで殺戮ではく対象の無力化に特化した技となっているのだ。

 魂キャノンの直撃を受けたおんにゃのこは遙か彼方へ───

 

『ライザー・フェニックス様の騎士、り、リタイア』

 

 どうやら未だにアナウンスの人は困惑しているようだな。

 だがしかし、今目の前で起こっていることこそ現実よ!

 さーて、次は───おふぅ……

 仲間が二人消えたことにより、もうなりふり構ってられなくなったのか、残っていたおんにゃのこ全員が襲いかかってきた。

 その数、総勢十三人!

 

 ふん。無駄なことを。刹那の懐中時計! 貴様等全員の未来を予測する!

 

 未来を確認した俺は先に向かってくると分かっていたチェーンソーを持った二人のおんにゃのこに向かう。

 俺の接近に伴い二人はチェーンソーで攻撃してきたが、未来を観ている俺には既に予測済み。

 軽く体を逸らしただけで華麗に避けてきる。無駄にジョジョ立ちを込めて。

 そんでもって回避したことで隙が生まれた二人に俺はカウンターのプレゼントを与えた。

 

 よく頑張ったな。褒美だ

。受付!!

 

 二人を地面へと叩きつけ、それと同時に光に包まれ何処かへと二人は転送される。

 ほんで予測だと後一人──っと来た来た。

 転送されて数秒後、続いて俺に向かってきたのは何やらチャイナ服という少しエロチックな服装を身にまとった女の子だった。

 なにやらカンフー的な技を仕掛けてくると予測で判ったので取りあえず普通に撃退しにかかる! 女子供には優しくした方がいい? んな慈悲など痴女に襲われてからとうにどぶに捨ててくれたわ!

 やってくると予測した場所のお腹あるであろう位置に予め膝を滑り込ませる!

 ところがぎっちょんてな! オラァッ!

 襲いかかってくるのと同時に膝を一気に突き出す!

 突き出された膝はクロスカウンター気味に寸分違わずカンフーおんにゃのこの鳩尾にめり込み、そのままおんにゃのこは光に包まれてリタイアとなった。

 ちなみにこの間、つまりは俺が三名ほどリタイアさせたのは、俺が予測できた約十数秒間の出来事である。

 

『ライザー・フェニックス様の兵士三名、リタイアです』

 

 ようやくアナウンスの人もなれてきたのか、声に平穏が戻ってきている。

 

 ようやく事実を認めたか。さーて、残りは─って、おいおいマジかよ。

 ある意味ごく短時間の内に三名ほど脱落させたのが予想外だったのか、襲ってきたおんにゃのこたちはアナウンスが流れると同時に次々に撤退をし始めていた。

 ふ、何処へいくんだぁ? 見逃すと思っていた──ん? なんか微かな声が聞こえる。なんだこれ? 通信機? それにこの声……はっ!? ぐ、グレモリー先輩ぃ………

 さすがにこのままみすみす見逃すのもイヤだと思ったんだが、あいにくこっちもグレモリー先輩から連絡が入ってきてしまった。

 というかいつの間に通信機が俺のポケットの中に入っていたのだろう。木場か?

 なんか出ないと後々面倒になると思い、通信に出て話してみると、すぐに戻ってこいとのこと。

 まあ深夜に呼び出された苛立ちも殺された逆恨みもある程度はスッキリしたので戻ることにした。

 

 で、戻ってきた俺に待っていたのはグレモリーによる説教だった。

 何で勝手な行動したのかって? んなもん俺が深夜に呼び出された苛立ちをぶつけるために決まってるじゃねぇか。もう二度とこんな行動をしないで? それは約束できないな。てか俺グレモリー眷族じゃねぇし。なんで命令聞かにゃならんのよ。

 俺の言いぐさにグレモリー先輩たちは頭を抱え、何を土地狂ったか兵藤は殴りかかってきた。まあ兵藤はリタイアしない程度にグーパンしてやったけど。

 というか、単身で行った俺も少なからずとはいえ悪かもだけどさぁ、それでも五人もリタイアさせたんだぜ? その点に関しては何にもないわけ?

 俺がそう聞くとグレモリー先輩は更に取り乱してきた。なんでも一般人が女王を倒せるなんてあり得ないことらしい。マジ? 俺って女王どころか騎士と兵士三人ほどやったんだけど?

 それからは俺は部室の拠点で待機となり、時間を潰すことになった。

 んじゃおまえ等程々に頑張ってこい。それとアーシアちゃんや、何かあったら起こしてくれない? それまで寝るから。

 そう近くにいたアーシアちゃんに伝え、俺は意識を闇に移した。

 

 

 

 ん? なんか揺らされてる気が…………。

 取りあえず意識を戻し手目を開けると、アーシアちゃんが必死に俺を起こしていた。

 アーシア、いったいどーしたというんだ。

 アーシアちゃんに詳しく事情を聞くと、なんでも向こうのライザーさんがグレモリー先輩と一騎打ちを望んでいて、それをグレモリー先輩が飲んでしまったと。

 バッカじゃね? なんでわざわざ王同士で一騎打ちするんだよ。このゲームってみんなでリンチにするのが定石だろ?

 まあそんなこんなでグレモリー先輩とアーシアちゃん、そして不本意ながら俺はライザーさんの本拠地である新校舎に赴くことに。

 

 グレモリー先輩の準備が済み次第足元に魔法陣が展開され、気づいたときには学校の屋上に来ていた。

 おぉ、屋上ってこんなに高かったのか~。お、兵藤見っけ。

 俺が兵藤を発見すると、兵藤も此方に気づき、向かってきた。なぜか階段で。 おい、お前悪魔だろ? 羽使えや!!

 それから三分ほど経ってようやく兵藤が到着した。あれ? なぁ兵藤、お前他のメンバーはどうしたん?

 兵藤以外のメンバーがいないことに疑問を持った俺は兵藤に話を聞くと、なんでも自分を向かわすために囮になって今も戦っているとのこと。

 えぇ~だったら兵藤以外を向かわせようぜ~。絶対木場とか姫島先輩持ってきた方が明らかに戦力になるだろうに。

 そんな失礼な事を思いつつ、俺は兵藤の神器の変化に気がついた。

 ところで兵藤よ、なんかお前の神器姿形変化してね? どしたん?

 兵藤の持つ神器が元々からゴテゴテしかった籠手が更ゴテゴテしくなっているのだ。

 え? 倍加の力を他の皆に与えられるようになった? すっげー。

 どうやら俺の神器との格差は更に広がっているみたいだな。いや、未来予測も大概にチートになってきたけどさ。

 さて、ようやく兵藤が到着したことにより、ライザーさんが俺たちと戦うことに。

 いやー面倒だがテメェにも多大なる恨みがあるからな。ライザーさんよぉ、覚悟はいいか?

 なーんて思っている内に兵藤のバカがバカ丸出しでライザーさんに向かって突撃しだしただと!?

 だからさぁ、バカじゃないの! まずは相手の戦闘力を把握───って嘘だろ!?

 俺が止めるまもなく、兵藤はライザーさんにコテンパンにされてしまった。

 えぇ…もう少し頑張ってこいよ。なんでそんな特攻かまして無様に敗北すんのよ。

 兵藤をぶちのめしたライザーさんは声高らかに兵藤に向けて弱点を口にし出す。

 えっと、兵藤の神器は化け物レベルだけど、使う者がしょぼかったら倍加に制限がかかるし、使うための負荷も酷いから直ぐに使い物にならないって。

 ふむ。どうやら兵藤はまだまだ凡夫のレベルから脱却できなかったのか。山一つ吹き飛ばしたのにな。

 さーて、兵藤がダウンしたことによりライザーさんの標的は俺に必然と変わる。

 やれやれ、結局は俺がやるんかい。てか主人公差し置いて俺がボス的な何かに挑んでいいの?

 ぶっちゃけ恨み晴らしたら兵藤に全てを投げ出すつもりだったため、俺のテンションは今一つ上がりきれていない。

 しかも最悪なことにグレモリー先輩が兵藤がやられた事に意気消沈して諦めムードを全開にしている。

 しゃーない。気は乗らんがやるだけやるか。

 どうせこのままほっといたらなんかグレモリー先輩がさっさとリタイアして負けそうなので、俺はライザーさんの前に立つ。

 だって負けるのは俺のブライトが許さねぇし。これでも俺、勝利にはこだわってるからな。自分がやられて負けるなら納得するが、他人のせいで負けるのは納得なんてできるかよ。

 んじゃ、さっさと殺りますか!

 ライザーさんがな俺に対してなんか一般人がどうとかこうとか言っていたが、ガン無視し、俺は突撃を開始する!

 最初からクライマックスだぜ! うぉおおおおおおっ!

 目の前まで接近したところでライザーさんはようやく俺の事に気がついた。なにやら卑怯だのほざいて慌てている。

 卑怯? 悪魔に卑怯なんて言葉言われとうないわ!! それに小手調べなどしるか! 最初から本気で殺──倒しにかかるぜ! 喰らえッ!! 羽の生えた変態的なオッサンを倒した俺の最強技を! オラオラオラオラオラオラッ!!

 俺は流れるような連続蹴りをライザーにお見舞いし、最後の一撃の為に力と魔力を込めた後、一気に放つ!!

 

 仔牛肉ショット!!

 

 衝撃が血中を通して全身に回り、ライザーさんは全身から血をまき散らせた。

 うーむ。やはりこの技は強いは強いんだがやった後R指定の光景になるのはちょっと──おりょ?

 見せられないよ全開な光景にナイーブになりつつあった俺だが、その気持ちが霧散する。

 というのも、これでリタイアだなと思っていたライザーさんが光でなく炎に包まれたかと思うと、五体満足な状態で復活したのだ。

 なにその高速再生ぇ。

 そう言えば、木場がライザーさんの特性について教えてくれてたっけ。名字であるフェニックスと同じ能力があるから気をつけてって。どうやら俺の知っているフェニックスと同じように再生能力があるみたいだな。

 まあ特性教えてくれたときに弱点として塵も残さず消滅させるか精神をやればいいって言ってたからなんとかなるだろ。

 ということで俺はライザーさんを精神的に追いつめることにした。だって塵も残さずに消滅させるなんてできるわきゃ無いもん。常識で考えろよ。

 そうと決まれば早速行動開始だな。なにやらライザーさんも炎をまき散らせた始めてきたし。

 いつの間にやら俺と距離をとったライザーさん。どうやら俺にボコられたのが気にくわなかったのかライザーさんは沢山の炎を纏わせている。おそらくは俺に向けて放出する気だな。痴女だって乱撃かましてきたし。

 ならば俺のとる行動は二つある! しかし今回は防ぐのではなく回避に力を入れてみようか。新技は練習ないとな。

 てなわけで、

 

 刹那の懐中時計! 貴様の未来を予測する!

 

 予測したと同時にライザーさんは俺に向けて沢山の炎を放ってきた。

 しかし俺は既に未来を観ている。向かってくる炎を歩きだけで全て避けていき、逆にライザーさんの元に歩みを進めていく。

 避けられたことに余計に腹がたったのか、ライザーさんは更に弾幕を厚くしてきた。

 やれやれ、厚くしたとしてむらがあったら避けられというに。

 未来の予測は完璧なため、俺は安全な弾幕の間を進んでいく。 

 そしてようやくライザーさんの本に再びたどり着いた。

 さーて、楽しい楽しい逆恨みタイムだぜ。覚悟はいいか?

 俺は両脚に魔力を必要以上に込めていき、技の下準備を始める。

 今回試す技は俺が合宿中にてきとーに思いついた技だ。だが、てきとーにとはいえ侮る無かれ。思いついた時のに計算した論上と原作的には仔牛肉ショットを遥かに上回る威力を持っておるのだ!

 しかし、この技はある程度コンボを決めなければ発動できず、基本的に途中で邪魔が入ったりして失敗するが、今回は一騎打ち。試すなら今しかない。

 受けてみよ! 囚人系社長の使う鮮やかな脚閃の舞を!

 俺はサマーソルトキックの要領で月を描くようにライザーさんの顎に蹴りを入れ、上空に打ち上げる!

 

 天月旋!!

 

 続いて俺も上空に飛び上がり、ライザーさんに二つ目のつなぎ技を打ちつけ、地面に叩き落とす!

 

 鷹爪蹴撃!!

 

 そして地面へと叩きつけられたライザーさんの頭を鷲掴みして前に放り出した後、更なる蹴りの乱舞を叩き込む!

 

 爪竜連牙弾!!

 

 叩き込んでぶっ飛んでいくライザーさん。しかしここで終わるわけにはいかない。脚に魔力を込めて一瞬で俺はライザーさんとの間合いを積めると、全身に魔力と気合いを溜めていく。そして、臨界点に達したところで、それを全面に解放する!

 

 発!!

 

 魔力と気合いの衝撃波を放つと、俺の中である変化が起きた。それはどう入った原理なのか、放った衝撃波のエネルギーが俺の中に満たされ始めたのだ。

 臨界点をさらに超えていき、圧倒的エネルギーを全身に巡らせた俺は最後の大技をライザーさんにぶちかます!

 おぉおおおおおっ!

 下段中段頭部、その他諸々に怒涛の勢いでエネルギーの籠もった蹴りをこれでもかと浴びせていく!

 まだまだぁああっ!!

 さらに先ほど当てた天月旋と同じ様で明らかに威力の高まった蹴りを放ち、空中で更なる追撃をしていく!

 さぁ、フィナーレだ!

 追撃を終えた俺は止めのためにライザーさんを地面へと叩きつける蹴りを放つと同時にその蹴りの勢いを使い、更に上空に舞い上がる!

 最高地点まで到達したところで、俺は自身に身にまとう魔力と気合いを最初の時よりも莫大な量を纏い、技名を叫びつつ、一気に急降下する!

 

 牙連絶─『リザインします』─襲……え?

 

 ………なにやらとんでもないのが聞こえた気がして急遽技の発動を止めた。まあ止めたと言うよりライザーさんの顔面の横すれすれにぶつけただけなのだが。ライザーさんは俺の攻撃で少し頭がいったのか先ほどからヘラヘラしている。はっきり言ってキモイ。

 って、んなことはどでもいいんや。ちょっ、リザイン? えっ?

 放心する俺。そしてそんな俺に追い討ちするかのようにアナウンスが流れてきた。

 

『リアス・グレモリーさまのリザインを確認しました。このゲーム、ライザー・フェニックスさまの勝利です』

 

 ………………………………………………………………………………………な、なんじゃそりゃあぁあッ!!!!!

 なぜか俺の敗北ではなく、グレモリー先輩のリタイア宣言でレーティングなんチャラで俺たちの負けが決まってしまった。

 ちょっと! 俺のライザーさんに対する恨みはまだ晴れてないのにぃ! そして、秘奥義の前でセリフカプセルとか、あんたは鬼か! あぁ悪魔だった。

 とういことで、俺、初の他人のせいで負けました。

 土畜生がぁああああっ!

 俺の魂からの叫びは虚しくゲーム会場に響き渡った。

 

 

……………時間経過中で──キングクリムゾン! ─…!? だれだ! 俺の役目を……………

 

 うーっす。あの後なんだが、グレモリー先輩をとっちめたところ、もう眷族のみんなが傷つくのはイヤなの! なんてほざいていました。

 うん。腹立つな。こちとら何回死んだんだと問いつめてやりたかったが、ループしているのは俺だけなのでそこはぐっとこらえた。やれやれ、二百歳近く生きていんわけだが、俺もまだまだ青いな。

 まあグレモリー先輩が負け認めちまったからライザーさんと結婚する事になっちまった。そんでもって今日はその婚約パーティーが魔界で行われるそうだ。なんで知ってるかって? いつもいつもお世話になっている木場が教えてくれたんだよ。さて、ここで気がつくと思うが、そのパーティー、見事に俺は誘われていません! もうね、腹立ち過ぎて一周してどうでもよくなったよ。

 もう知らね。勝手に巻き込んで勝手に結婚する先輩なんて知らない!

 ぶっちゃけパーティーで美味しいもんが食べられないことにふてくされて寝ている俺だったが、突然電話がかかってきた。

 ん? あ、兵藤からだ。ようやく意識が戻ったのか。

 ちなみに兵藤はずっと気を失ってました。運んだのはなぜか俺! 誰得だよ。

 グレモリー先輩には腹が立っているが、それは兵藤には関係ない。まあ無様に特攻した事に一言言ってやりたい気もするが、とりあえずおいておいて電話に出る。

 ホイホイ、どうしたよ兵藤。ふむふむ──なに? グレモリー先輩を取り返すから力を貸してくれ? そうか……だが兵藤、俺は既に力は貸した。つまり、ここからはお前が一人で頑張るんだよ。なぁに、お前があのフェニックス如きに負けるわけがないだろ? それにな、お前は俺よりもポテンシャルは高いんだぜ? なら、何も恐れる必要はない。思い切り暴れてこい! 最後に、諦めなければどんな事でも達成できる。例えて絶望の淵に立っても何かしらの糸口は見つかるさ。じゃあな、健闘を祈る。

 携帯を閉じ、布団にこもる。そうそう、なんかカッコイいことを兵藤に言ったみたいだけどさぁ、あれ殆ど適当です。いやさ、もう面倒くさいんだよ。とりあえずこんだけ励ましておけば兵藤もなんか起こせるだろ。

 俺は未来にそう期待して今日は寝た。シロはフカフカでたまりません。

 

 後日、どんなミラクルを引き起こしたのか、兵藤は無事にグレモリー先輩を取り返し、一緒に住むことになったそうだ。

 まあハッピーエンドじゃね?

 チャンチャン。




現在までに主人公が修得した技や手に入れたアイテムや使い魔や謎の助言者

魔力

前回参照。

波紋乱渦疾走パート2

前回参照。

受付

前回参照。

仔牛肉ショット

前回参照。

魔力によるバリア

前回参照。満身、ダメ、絶対!!

波紋串焼乱渦疾走

前回参照。

刹那の懐中時計

主人公の特訓によりチート臭が半端なくなってしまった。その能力は、対象の十数秒先を過程を込めて予測できる。どこのエピタフだと言ってやりたい。

松岡陸上魂キャノン

前回参照。

108パウラッシュ

前回参照。

修造さん

前回参照。

シロ

前回参照。もっふもふ。

天月旋

相手の顎を月を描くように蹴り上げる。対空技。空中技に繋げることができる。

鷹爪脚撃

気合いと魔力を込めて急降下。空中技。地上技に繋げることができる。

爪龍連牙弾

怒涛の気合いと魔力のこもった連続蹴り。



気合いと魔力でボーン!

牙連絶襲撃

なぜか取得できた秘奥義。地上技、対空技、空中技、発、と繋げてようやく使える技。相手に尋常ならざるダメージを与える。現時点で主人公がもつ最強の技。


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シーン35~36

久々だぜ! 前編後編でお送りいたします。


 とある日。

 目の前に痴女が倒れていた。

 …………………いやいやいや、何のこっちゃわかんねぇよ!

 自分のモノローグに突っ込みを入れても、この状況を表す言葉を俺はこれしか知らない。

 というかマジな話、シロの散歩をしていたら目の前に痴女が倒れていたのを発見したんだ。

 青い髪で、格好はなんかどこかの猫な怪盗番組で見るような全身タイツのようなものを着ている。そんな格好のせいか身体の線が浮き出ていること浮き出ていること。めちゃくちゃセクスィーです。ありがとうございます!

 ってそんなことは放っておいて、そんな痴女丸出しの女の子が目の前に倒れているのだ。

 さて………………帰るか。

 このままぼーっと突っ立っていては俺が知り合いか何かだと勘違いされて変態の烙印を押されてしまう。

 しかし、このまま見捨てていくのも俺の微妙に残っている善良の心に嫌な痼りのような物が残ってしまう。決して昨日夢の中で神様っぽい人から「お前、最近キチガイの変態と認識されてるZE☆」なんて言われたからでわない。

 決して違う。

 ………俺ってそんなに周りからの評判が悪かったのだろうか。

 一応その神様っぽい人には夢ではあったがムカついたのでサマーソルトをお見舞いしてやったが、そんなこんなで最近俺の心は少しナイーブになっているのだ。

 さらに付け加えるとさっきからシロの瞳が痛い。「えっ、見捨てちゃうの? 本当に?」みたいな感じでウルウルさせて俺を見つめている。

 その純白な瞳が俺の心にガンガンぶっ刺さってきています。

 だがしかし! そんなことで生き様を変える俺ではない! 一度無関係を貫くと決めたら貫くのだ!

 

 (ウルウル……)

 

 つ、貫くのだ!

 

 (ウルウルウルウル……)

 

 つ、つらぬ……

 

 (ウルウルウルウルウルウル……)

 

 ………………………つ───。

 

 (ウルウルウルウルウルウルウルウルウルウル…………)

 

 ……………………だー! 分かったよ! 助けるよ! 助けますよ! それでいいんだろ!!

 

『あんッ!』

 

 シロの純白なウルウル顔に撃沈した俺は倒れている痴女を救うことに。

 まったく、シロの散歩中じゃなかったら喜んで警察に突き出すのにな。

 とにかく助けるにしても現状把握が大切だ。事と次第によっては警察か救急車のどちらかを呼ばなくてはならない。

 俺としては警察に連絡する可能性が高い気がしてならないがな。

 だって痴女だし。今までの人生において痴女と変態に良かった記憶なんて持ち合わせてない。むしろマイナスをぶっちぎっている。

 ということでさっさ痴女の元に向かい、意識の有無を確認。 

 ノックしてもしもーし? どうしたというのだ? む? こいつ、う、動くぞ!

 俺の確認に痴女はもぞもぞとうねってきた。

 とりま意識はあるみたいだ。ならどうして倒れているのかを聞き出さなくては。

 なしてこぎゃんとこに寝そべっとっとね? なんだって? 旅の途中に変な絵を買ってしまって、そのせいで有り金を失ってしまい、ここ数日ろくに食事をとってなくて動けないだって?

 どうやら本格的なバカなようだ。

 つか絵を買って路頭に迷うって。今時の小学生だってもう少しましなお使いをするぜ?

 まあなんだ。腹が減っているなら食わせれば大丈夫なのだろう。

 助けると決めた俺は痴女に飯を奢ることにした。

 運のいいことに、レーティングなんたらの功績のおかけでグレモリー先輩から百万ほど手当てを貰っていたため、金には現在困ってない。

 あれだけ死んで百万って安いのか高いのか今一分からんが、一介の高校生が持つ金にしては十分過ぎる金額だろう。

 さーて、今から飯屋に行くが、ついてくるか?

 

(ッ!? ガバッ!!)

 

 俺がそう訪ねると、痴女は勢いよく立ち上がり、ついてくる意を伝えてきた。

 お前立てるのかよ。まあいいが。

 

 ………移動中………

 

 その後、腹ペコ痴女に食事を奢るため、俺とシロ、痴女の二人と一匹でレストランに来たのだが、

 

「ガツガツガツッ!!!」

 

 まあこの痴女がレストランにつくなり食べること食べること。

 まるで何処ぞの野菜人の主人公を彷彿とさせる勢いで料理を平らげていく。

 スゲーなおい。他人の奢りでここまで遠慮なく平らげていく様を見たら、呆れ通り越していっそ清々しいぞ。

 おっ、もう少しで食べ終わるな。

 痴女は最後のデザートであるプリンを一口で頬張ると食器を全ておいた。

 

「ふぅ、これも主の思し召し。感謝いたします」

 

 なんか俺が奢るというのに神様に感謝さている。

 神様に感謝ということは教会関係者ということなのか?

 まあ痴女が何であろうがどうでもいいし、そもそも初めから普通に奢るつもりはないから構わないが。

 そんな神様にお祈りを捧げている痴女に向けて一言。

 罠にかかったな。ここで食事代を払って欲しくば、俺の言うことを聞け───いや冗談だ。そんな捨てられた子犬のような目で俺を見つめるな、奢ってやるから。

 俺の言葉を聞くなりシロ程ではないにしろ痴女は目をウルウルさせて見つめてきたため遊びを止める。

 まさかこの俺が怯むレベルでウルウルさせるとは。よし、今日からこの痴女はイヌころと呼ぶことにしよう。なんか犬っぽいし。

 などと思っていたらイヌころが不満そうな顔でこちらを見つめていた。どうやら声に出ていたようだ。

 だがしかしあだ名を変更する気はない。

 というわけでお前は今日からイヌころだ。

 

「誰がイヌころだ! 私にはちゃんとゼノヴィアという名前がある!」

 

 わかったイヌころ。

 

「だから! ゼ・ノ・ヴィ・ア!」

 

 それからしばらくイヌころと戯れつつ、一日を過ごした。

 さーて、明日は何すっかな~

 

 ………時間が少し進みま─『キングクリムゾン! この世界には結果だけが残る!』─!? 誰だ! 一体誰が俺の仕事を奪っているんだ! …………

 

 翌朝!

 今日も今日とて平和を噛みしめながら、最近グレモリー先輩と一緒に生活できてることで更に変態行動に磨きがかかってきている兵藤を女子に頼まれ絞めつつ過ごしていると、放課後に木場ちゃんが教室にやってきた。

 なんでも教会の関係者がこの町に来ているらしく、悪魔に関係を持っている俺にもきてほしいと。

 え~。行かなきゃ──ダメ? ですよね~。

 そんなわけで俺は木場ちゃんに連行されてオカルト研究部にレッツゴー──あっ、引っ張らないで! 伸びる! 制服が伸びるから! 逃げないから! というかなんか木場ちゃん機嫌悪くない!?

 

 ………移動中………

 

 木場ちゃんに引っ張られながら部室にぶっ込まれた俺なわけですが、部室に押し込まれるなり変な二人組がいたのに目がついた。

 グレモリー先輩曰わく教会のエクソシストとのこと。

 えー、マジ? こいつらもフリードとか言った変態と同じなの? イヤだな。というか、あれ? 青髪? 一人は見たことが───あっ!

 イヌころ! イヌころじゃないか!

 

「ゼノヴィアだ!」

 

 いやー、思わぬところで再会したなぁ~。んどしたん、お前ら?

 何? 教会関係者と知り合いだったのかって?

 あぁ、路頭に迷ってたイヌころに餌を与えてやったぜ!

 俺の回答を聞くなりグレモリー先輩たちは頭を抱えだし、イヌころは連れの痴女に笑われていた。

 うーむ。見事な混沌な光景だな。

 で、イヌころよ。お前何しにここに来たんだよ。

 俺が訪ねると、もう諦めたのか、イヌころと相方の痴女がここに来た理由を話し始める。

 ほうほう、聖書に載るくらいの化け物堕天使のコカビエルや神父に教会が保管していたエクスカリバーが盗まれたのか。

 しかもそのエクスカリバーが三大勢力大戦でポッキリ折れて打ち直して七本なっていると。

 そんでもって痴女の方は兵藤と幼なじみなのか。

 はっきり言って兵藤と幼なじみということ以外話が突拍子も無さ過ぎて把握しきれない。

 というかエクスカリバーって本当にあったのか。ということはアーサー王もいたの? 『エクスカリバー!!』とか言ってビームだしてたの? 何それ怖い。

 そしてイヌころは最後にこの件は教会のみの問題だから俺たちに手を出してくるなや俺たちが堕天使と手を組んでないのかと言ってきた。一般人である俺も悪魔と繋がっていたため怪しいと。

 その言いように俺を含めた痴女とイヌころ以外の心が怒りで一つとなった。

 かっちーん。さすがにお人好しでもその言い方は怒るぞ。

 つーか何だ? 俺たちもしくは俺があの痴女や変態的な種族と繋がっていただと? ふざけんなっ! こちとらあの変態どもにどれだけの恨み持ってると思ってんや! 喧嘩売ってるなら買うぞコラ! 二束三文で殺り合うぞ!

 しかもイヌころと痴女は見せびらかせるように七本になったエクスカリバーの内二本を取り出したり、シスターちゃんが昔悪魔を助けたことで魔女の烙印が押されたのなんだのでエクスカリバーを突き立ててきた。

 その様子に普段は女性にだらしない兵藤と、なぜか木場ちゃんが怒りを露わにする。無論俺もだが。

 よろしい。そこまで人を馬鹿にするなら抹殺だ。

 ということで俺たち三人は教会メンバーと試合する事となった。

 

 ………再び移動中~………

 

 さーて、試合のために旧校舎の広場的な場所に来たわけなのだが、どうやって試合するだろう。

 こっちは兵藤、木場ちゃん、そして俺の三人。

 対して向こうの痴女と愉快なイヌころは合わせて二人。

 数合ってなくね?

 準備をしているイヌころにそこのところを訪ねると、三人で向かってこようと悪魔やその間者に負けるわけが無いだろうと自慢げに鼻で笑われた。

 かかかか、かっちーん!

 もうだめだね。人をそこまで馬鹿にするなんて、俺の怒りはMAXハートになっちまったよ。いくらシロと同レベルのウルウルを持っていようとこりゃダメだわ。人としてなんかダメだ。……いいぜ、そこまで言うんだったら後で数に負けたとかほざくなよイヌころ!

 売り言葉に買い言葉。激しく啖呵切った俺はズカズカと効果音が出せそうな勢いで兵藤たちの元に戻る。

 そんでもって思いを一言。

 よっしゃー! 兵藤、木場ちゃん! この試合負けるわけにゃーはいかん! 俺は男として! お前等は悪魔のプライド的に!

 俺の思いに答えてくれたのか兵藤も若干よくぼう溢れた変態顔で同意してくれた。しかし木場ちゃんは聞こえて無いのか上の空でなにやらぶつぶつつぶやいている。なんか怖い。

 ………ツンツン

 そんな木場ちゃんの肩をツンツンし、ようやく俺に気がついて振り向く木場ちゃんに対して、てりゃ!

 ────ふにぃ

 振り向きざまに人差し指指を頬にむけてトラップを設置して見事に引っかかることに成功! やったね!

 

「ふにゃ!? ──なにするんだい新月君」

 

 いやさ、なにやら思いつめてたみたいだから、つい。

 

「ついって。まったく君は」

 

 でもよ、緊張はほぐれただろ?

 

「………何のことかな」

 

 ありゃ、どうやら俺のほぐし方は間違っていたのだろうか、木場ちゃんはスッと俺から少し離れて行った、

 おっかしーな。妹にしてやったら結構喜んでくれたんだけどなぁ?

 まあなぜか妹は振り向くと同時に俺の指を咥えるという離れ業を披露してくるが。一体何を思ってるのか未だに理解できん。指からポテトの味でもしてるんだろうか。

 そんなこんなしている内についに試合時間となった。

 おっしゃー! お前等! 気合い入れて行こうか!

 俺のかけ声と共に兵藤が幼なじみの痴女に、木場ちゃんはイヌころに向かって行った。

 速ぇ!? なんと、そこまで勢いよく行くとは! 勝機があるんだな! こりゃ期待できるぜぇ!

 なんて思ってた時期が俺にもありました。

 勢いよく欲望丸出しで飛び出した兵藤は痴女の絡め手であっさり負け、木場ちゃんは本来スピードで翻弄するはずが何を思ったのかパワー勝負に挑んでこれまたあっさりと負けた。

 やっぱりねー。そんな気がしたもん。俺も勢いで挑んで勝った試しなんてない。むしろ殺されわ。

 さーてと、こりゃ俺が仇討ちに行きますかね。

 兵藤と、なにやら絶望仕切った顔をしている木場ちゃんの二人を下げさせ、俺が二人と相対する。

 あっそうそう、兵藤お前後で説教な。欲望丸出しで試合とかふざけてんのか? スポーツマンシップの欠片もない姿をさらしやがって。その腐った性根を叩き直してやるから覚悟しとけよ。

 

「なん………だと……」

 

 なにやらバカの悲痛な声が聞こえた気がしたが、気のせいだと思って無視する。

 んじゃまぁ、やるとしますかねぇ。

 俺が構えをとると、イヌころはかかってこいとばりに指をクいっと動かしてきた。

 ぷちーん。

 切れた。明らかに何か決定的なものが切れた音が聞こえた。

 もはや俺の頭にはある単語しか存在しない。

 見敵必殺! 見敵必殺じゃボケー!! 俺の怒りは有頂天に達したぞー!!

 さっきまでの勢いで向かって行って成功した試しがないことなどそっちのけに俺は勢いよく二人に向かって飛び出した。

 別に反省が無いわけじゃーない。激しい怒りによって心理にたどり着いたのだ。

 要はあれだろ? 向こうがこっちをしとめる前にこっちが殺ればいいんだろ?

 もはや考え方がチンピラ同然の気がするが知らん! 全て勝てば良かろうなのだぁ!

 足に魔力を限界までチャージしていく。

 まだまだぁ! 俺の怒りはこんなもんじゃあねぇ! 更に限界を超えてチャージ!

 徐々に足からスパークが迸っていき、肌で感じるほどヤバいレベルで魔力がたまっていく。

 暴発寸前でチャージを終わらせ投擲準備に入る!

 チャージ完了! 受け取りやがれぇ! 俺の怒りとスポーツ魂の叫びをっ! 松岡! 陸上魂オーバーキャノォオオオオオオ──ンッ!!

 某翼少年もしくは超次元サッカーのシュートのように俺は脚を思い切り振り切って魔力弾を発射!

 イヌころは手に持つでっかいエクカリバーデストロイヤーだとかなんとかで迎え撃とうとしている。

 パワー勝負か。受けて立とう!

 俺の魔力弾とイヌころの聖剣がぶつかり合った。

 激しく閃光を放ちながら、両者一歩も譲らずに拮抗しあう。

 負けるな! 俺の怒りや陸上への思いはこの手度じゃ無いだろう! もっと爆発させるんだぁ! ファイヤー!!

 俺の思いに応えるように魔力弾のエネルギーが更に高まる!

 勝てる! これなら勝てる! いっ───けぇぇええええッ!

 剣と魔力弾。

 迎えた結果は───

 パギィィィイイイイイイィッ!!

 ───共に消し飛ぶという結果に終わった。

 …………………………………………は?

 

『……………………………』

『……………………………』

 

 予想外の結果にこの場にいた全員が沈黙する。

 ちっ、沈黙が重い!

 ……………に、逃げるなら今しかない!

 そう思った俺は即座に戦線を離脱した。

 背後から『エクカリバーがぁぁぁぁぁあっ』って叫びが聞こえたのは気のせいだと思いたい。

 

 再び翌朝!

 昨日のこともあって若干学校というよりオカルト研究部に生きたくないなぁ~などと思いつつ日課であるシロの散歩をしていれば、とある人物に遭遇した。

 

「ありゃりゃ? ひょっとしてひょっとしてこの僕ちんに有り得ない攻撃をしてきたお兄ーさんではあーりま───へぶぅっ!?」

 

 とりあえずムカつくので一気に接近してニーを顔面にお見舞いする。

 そう、以前シスターちゃんを助け出すときに何度も何度も俺を殺してきた変態神父に遭遇したのだ。

 朝っぱらからその面見せてくんなよ。腹立つから。

 とりあえず顔面ニーでしばらくは起きてこないと思いその場を立ち去ろうと背を向けると、嫌な空気を感じ取った!

 これは───殺気! ヒャオッ!

 振り向きざまに回し蹴りをするも空振りに終わる。

 何だと? 誰もいない? なら一体あの殺気は───あれ? なんか、お腹がもの凄く熱いんですけど───ってぇ、なんじゃこりゃぁぁぁあ!

 下を見てみるとあらビックリ! 金ピカの剣が俺のお腹を貫いているではありませんか。

 そして恐る恐る振り向くとそこにはしてやったりと嫌な笑みを浮かべている神父が─────がく……

 

享年17歳 死亡原因 刺殺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン36

 

 刹那の懐中時計! 貴様の未来を予測する! ふっ飛んでいけやぁ! そんでもってお釣りの松岡陸上魂キャノン!

 チュドォォ───ンッ!

 ふぅ、これでよしと。悪は滅び去った。

 殺される当日の目が覚めるところに戻っていた俺。

 今回は普通に不意打ちで殺されただけなので刹那の懐中時計を使用して出会いと同時に怒涛の蹴りの連打の後上空に打ち上げ、止めに松岡陸上魂キャノンをお見舞いして余裕で突破。

 明らかにオーバーキルではあるが変態相手なので罪悪感など皆無だ。むしろ社会貢献したという満足感しかない。

 さーて散歩の続きと───って、あれ? これは……

 散歩に戻ろうとするも足元に何かあるのに気づいた。

 立ち止まって拾ってみるとそれは前回俺を突き刺してきた金ピカの剣であった。

 握ってみると体がすこぶる軽くなった気がする。というかもの凄く調子がいい。今なら陸上の自己ベストを軽く上回れる自信が溢れてくる。

 どうやら俺が前回あの変態から殺されたのはこの剣の恩恵があったからだな。こんだけ身体能力が向上すれば背後をとるなんて余裕だもん。

 しっかし体が軽くなる能力とは。ふむ、便利だしもらっとくか。どうせあの変態神父の持ち物だし大丈夫だろ。それに剣か──溶かして靴底にでも仕込んでみるか? その方が脚技を主とする俺にとっても使いやすいしな。よしっ! 今日の学校帰りにでも靴屋のおっちゃんに相談してみるか!

 とりあえず剣を溶かしやすいように粉々にする。

 パウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウパウッ! そんでもって発っ!!

 テッテレッテレー♪

 金ピカの剣は見事粉末となんかよくわかんないクリスタルに進化した!

 しかしクリスタル的な何かは何なのであろうか。どうあがいても壊れそうになかったし……しゃーない、一応保管しとくか。今後なんかに使えるだろ。

 

 そんでオカルト研究部に何にも言われることなく迎えた放課後。

 俺は兵藤に用事があると伝え、急いで靴屋に向かった。

 その靴屋は俺がガキの頃から陸上のスパイクを買っている老舗の名店なのだ。

 靴屋についた俺は早速オヤジに粉末を渡し、靴に仕込ませられるよう頼んだ。

 オヤジも中二心に惹かれたのか二つ返事で了承。しかも明日までには造ってくれるとのこと。いやー、やっぱり持つべきはプロの知り合いだね。

 

 

 シロの散歩や新しい靴に慣れたり、のんびりとした日々を満喫していると、とある事件が起きて、俺はオカルト研究部の部室に呼ばれていた。

 なんと木場ちゃんがグレモリー眷族から出ていったんだと。

 何でもそれは木場ちゃんの出生に関わることらしい。

 詳しくは教えては貰えなかったが、どうやら聖剣計画とかなんとかの計画で同郷の友人を全て失ったそうだ。

 それで聖剣に強い恨みを持ち、その原因となったオッサンがこの町にいるのを知って一人で行動する事になった、と。

 そんでもって俺にも木場ちゃんを探して止めて欲しいと頼まれた。

 まあ余裕で断わるけど。好きにさせればいいじゃん。

 俺の態度に兵藤は少し切れ気味に理由を訪ねてきたり、グレモリー先輩も不機嫌そうな顔を向けてきた。

 やれやれ。兵藤よ、お前なら分かるだろ。お前は俺が何と言ったところでおっぱいを追いかけるのをやめないじゃねーか。それにグレモリー先輩、あんたもあんたで親の決めた婚約が嫌だから俺たちを巻き込んでレーティングなんチャラをしたのを忘れてはいないか? 木場ちゃんだって同じ事。本人が決めて本人が蹴りつけに行ったんだ。止めるなんて野暮だぜ。というかそんな事できるぐらい俺らは偉くないだろ。

 俺の言葉に思い当たる節が多大にあるために二人はばつの悪そうな顔をして黙り込んでしまう。

 心配する気持ち故に俺に頼んだことは俺もわかっている。だから木場ちゃんが危ない目に遭わないように見守るくらいはするさ。それでいいだろ?

 そういい残し、俺は部室を後にした。

 部室を出て程なくすると、なんと兵藤がこっちに向かってやってきた。

 おー兵藤、どうしたよ。

 すると兵藤ばかり何を思ったのかいきなり頭を下げてきた。

 いきなりどうした? まさかとうとう頭がおかしくなったのか?

 訳を聞くと、なんでも俺の事を勘違いしていたから謝りたがったみたいで、身勝手で融通の効かない野郎だと思っていたようだ。

 そうか。若干思うところはあるが、別に俺は普通に思ったことを口にしているだけだ。気にすんな。さっ、木場ちゃん探しに行くんだろ?

 兵藤は「あぁ」と頷いた後「どうやって木場ちゃんを探すんだ?」と聞いてきた。

 ふふふ、俺が何も考えなしにあんなことを言ったと思っているのか? いた? あぁそう。まぁいいや。安心しな。こっちは人捜しのプロフェッショナルがいるからな! 

 人払いの魔法をやった後、結構前に教えて貰った使い魔召喚の魔法陣を足元に展開する。召喚するのは無論白いあいつだ!

 頼むぜ、シロ!

 バーンといった効果音が似合いそうな光の演出と共に愛くるしい瞳を持つ白い子犬が現れた。

 さぁシロ! 木場ちゃんを捜すんだ!

 

『あんっ』

 

 俺の命令にシロは一言吠え、これまた愛くるしい鼻を使って匂いをたどりだす。

 

『あんっ!』

 

 やがて見つけだしたのか、もう一度吠えると駆け出した。

 さて、俺たちも行くとしますか。

 

 シロについて行くこと数十分。

 意外と直ぐに木場ちゃんは見つかった。

 うん、見つかったは見つかったよ。

 なぜか包帯だらけの変態神父と戦っている状況であったけど。

 見た感じ若干木場ちゃんが劣勢だ。

 割と真面目に何があったよ。

 とりあえず兵藤と共に木場ちゃんを助けに向かう。

 以前やられた仕返しの意味も込めて新兵器である靴を履き、準備完了。

 おーい変態! サッカーしようぜ! お前ボールな!

 

「っ!? そ、その声は───フキャラッハッ!?」

 

 一気に近づくと同時に変態の顔面をボールに見立てて一気に蹴り抜く!

 新作の靴によって本来の三倍に近い近いスピードに神父は反応できるはずもなく、思い切り俺に蹴られ、錐揉み回転しながら近くのコンクリート塀に埋まった。あは、マジウケる。

 さーてと次は何して遊ぼう──あっ! 逃げた! チッ! 次会ったら覚えて───ん? どうした木場ちゃんに兵藤よ、そんな人外を見るような目をして。なに? いつからそんな化け物になったのかって? おいおい兵藤よ、俺は今も昔も人間だ。え? その光る靴はなんなのかだって? あぁ、さっき蹴飛ばした神父から盗んだ剣から造ったが、それが何か? いろいろ含めてお前が人間か信じられないだって? よろしい、ならば戦争だ。慈悲など無いぞ。徹底的にやってやるが? やるか?

 とまあそんな冗談などは放っておいて、木場ちゃんの元に向かう。

 だから兵藤よ、冗談なんだからそんなに恐怖に顔を歪めるな。俺が悪かったから。

 木場ちゃんは俺たちを見るなり放っておいてくれなど言ってきた。

 全く、人の気持ちも考えずによくそんな事が言えるな。………お前がそんなこと言うな? 知らん! それはそれ、これはこれだ。

 一人開き直って話をかけるも、木場ちゃんの機嫌はさらに悪くなる。悲しいことに、木場ちゃんの話を聞くにつれてだんだん事の原因の一端が俺にもあることが発覚してしまった。

 えっ? 聖剣を壊した人にそんな慰め言を言われたくない?

 あれ? そう言えば木場ちゃんは聖剣計画っていうよくわかんない聖剣の担い手を造る計画の生き残りであり失敗作であるため聖剣を憎んでおる。

 俺、その憎んでる聖剣を木場ちゃんは負けたけど壊したわ!

 はっきりした。今の現状況俺単なる嫌な奴だと。

 と、とりあえずあれだ! 聖剣をぶっ壊して仇討ちをするにしても無計画はダメだ! だからさ、もうちょっと計画性立てて行動しようぜ、な? 別に木場ちゃんが仇討ちしに行くのに反対しているわけじゃない。ただ、なんでもかんでも一人で背負い込むなよ。俺たちは、友達だろ? それにお前にもしもの事があったらみんなが悲しむ。俺も兵藤も、グレモリー眷族みんなが。それ以上に、お前の仇を討つ理由の友人たちが悲しむんだ。それを理解しろよ。思ってくれる人がいる。悲しむ人がいる。だから、お前はもう、一人じゃないんだ。

 俺の類い希なる話術の甲斐もあり、なぜか顔を真っ赤にさせてはいるが、木場ちゃんの説得に成功した! ふっ、さすが俺だぜ。以前妹が落ち込んでたときに励ました経験が役に立ったな。結果としてなぜか妹も木場ちゃんと同じように顔を真っ赤にしたが。おそらく今までの自分を振り返って恥ずかしかったのだろうな、多分。

 さて、木場ちゃんの説得したことにより実質的に俺たちによる聖剣破壊計画と仇討ち計画が同時に始動したのだが、問題が少し残っていた。

 勝手に聖剣破壊に行動してしまえば教会に楯突くことになり、最悪戦争に突入してしまう。

 さすがにたかだか剣一本如きで戦争など冗談ではない。

 なので俺たちは勝手に行動しなければいいということで、イヌころたちに話を通す事にした。そうすれば身勝手に行動したことにはならないだろ? むしろ大義名分が生まれる。

 さてと、もう一回頼むぜシロ! 探すのはイヌころだ!

 

『あんっ!』

 

 シロについて行くこと数分。イヌころたちはすぐに見つかった。

 

「御慈悲を~。迷える使徒に御慈悲を~」

「ひっく………えっぐぅ……えくすかりばーが~………」

 

 痴女は手に器を持ち何やら物乞いを、そして連れのイヌころに至っては刀身が無くなり柄だけのエクスカリバーを握りしめ泣いている。

 その光景に俺たちは一様に手を顔に当て天を見上げた。

 ………………………見てて凄く痛々しい。主に胸が。

 って、いつまでも惚けてる訳にはいかん。話しかけなければ。

 話しかけるとあっさり会話に応じてくれるイヌころたち。物乞いするぐらいなら以前と同じく腹ペコだろう。というわけで俺たちは近くのファミレスに場所を移した。

 

 さて、ファミレスについた俺たちは何品かイヌころに食事を奢り、早速本題に入る。

 イヌころよ、今回の聖剣の問題についてだが、こちらも全くの無関係というわけでは無いことがわかった。だから俺たちも協力させてもらえないか? 勿論手柄はお前達にくれてやるし其方に敵対すれば何時でも襲ってきてくれても構わねぇ。どうだ?

 

「ひっく………えくすかりば~………」

 

 ダメだ聞いちゃいねー。

 そりゃさぁ、俺もエクスカリバーをぶっ壊したのは悪いと思ってるよ? でもさぁ、そっちから挑発してきたよね? 悪魔やその間者に負ける筈か無いって、かかって来いよ? って感じに指動かしてきたよね? それだから一概に俺だけが悪いってわけじゃ──

 

「えくすかりばぁ~!」

 

 ─────あぁもう! わかったよ! 俺が悪かったです! ごめんなさいでしたー! 

 泣き落としに耐えきれずとりあえず謝罪をしたはいいのだが、未だにイヌころは泣き止む様子がない。

 はぁ、どないせいっちゅうねん。なあ兵藤の幼なじみよ、エクスカリバーはもう元に戻ることは無いのか?

 お腹いっぱい食事したことで以前部室で合ったときより比較的話しかけやすい痴女に話をふる。

 

「うーん。時間をかければなんとかならない事もないよ。刀身が無くなってもコアのクリスタルさえ無事だったら何度でも再生可能だからね~。まあそれでも結構時間かかっちゃうけど」

 

 なんだよ、直るのかよ! それなのにイヌころはあんなに泣いてんのかよ! 

 ってぇ、ちょっと待て。今何やら聞き逃せない単語が聞こえたぞ。クリスタル? まさか………ねぇねぇ幼なじみさん? そのクリスタルってまさかこんなの?

 俺はポケットから神父から盗んだ剣を粉にしたときに出てきたクリスタルをテーブルに置く。

 するとどうでしょう。幼なじみさんとイヌころは目を見開き、

 

「「エ、エクスカリバーッ!?」」

 

 思い切り叫びだし、どこで手に入れたなど問い詰められた。

 あぁ、やっぱりね~。

 とりあえず二人に落ち着かせるよう言い聞かせ、事の顛末を話し出す。

 ついこの前だったか。先ほど俺が蹴り飛ばした男と早朝に出会してフルボッコにしたときに足元に金ピカの落ちていて拾っのが始まりだ。俺は剣だと使いにくいと思って…………スパイクに改造してしまいした。まさかエクスカリバーだとは思ってなくて………ほんとごめんなさい。

 俺の言い訳に二人はポカーンと口を開けっ放しで放心し、木場ちゃんに至ってはハイライトの無い目で「スパイクに改造させられるような剣なんかに僕たちは弄ばれたの……ハハ……」などとぶつぶつ呟いている。

 なんか………割とガチでごめんなさい。

 

 一応会合は俺のエクスカリバー壊しちゃってごめんなさい事件を最後に終了した。

 盗まれたエクスカリバーがクリスタルになったとは言え取り戻したのだからイヌころたちは帰ってもいいんじゃね? と思っていたが、どうやら元凶を倒すまで帰れないそうだ。

 エクスカリバーぶっ壊した俺が言うのも何だが、教会も鬼畜だな。

 そしてその元凶には木場ちゃんも恨みが多大にあるらしく、エクスカリバーのクリスタルあげるかわりに元凶をぶっ倒すのに協力させてもらう事にした。

 向こうも悪魔と協力するのはマズいが、ドラゴンや人間と協力するなとは言われてないと屁理屈をこね了解してくれた。素直にお願いとは言えんのかお前は。

 

 そんでもって次の日の今日。

 兵藤がどっから拾ってきたのかは知らない生徒会の匙や塔城と一緒に元凶探しに出かけていた。

 兵藤が捜索につれてきたって事は匙とやらも悪魔なのか。

 しかし塔城はわかるが匙よ、お前なんで来たん?

 ちょいと興味がわいたので少しお話ししてみる。

 ふむふむ。木場の出生やら何やらで共感した、と。それに支取先輩の眷属で兵士なのか。

 というか素で生徒会長の支取先輩が悪魔って事がビックリだよ。

 どうやら学園はいろんな意味で悪魔に支配されていたのか。

 それはさておき、ふーむ。理由を聞くにどうやら匙とやらは兵藤より人格ができている悪魔みたいだな。関心だな。

 

「俺だって木場さんが心配だよ!」

 

 うっさい。どうせ心のどっかには下心があるんだろうが。

 さて、これで聖剣探しの手数は二人増えたが、やることは地味だぜ?

 木場ちゃんも含めて五人となった俺たちは早速捜索を開始した。

 まあ探すといっても釣りみたいなものだ。

 元凶側はエクスカリバーを盗むぐらいだから、エクスカリバーを持っているとされるエクソシストに扮していれば襲ってくるのでは? といった感じで俺たちは絶賛エクソシストの格好して彷徨いている。辛かったのは小さな男の子が「ママ~あの人たち変な格好している~」といわれ、その後母親と思われる人物から「しっ! 見ちゃいけません!」などと冷たい視線を受けたことだ。

 しかし恥ずかしい思いをしながら探しているというのに、思いのほか見つからん。というかそもそもダンジョンのボスキャラクターって道端にホイホイ出てくるわけが───

 

「あひゃひゃひゃ! 教会のエクソシストはっけーん!」

 

 ──あったよ。というかまたお前か!

 いや待てよ。こいつが狙ってきたと言うことは、こいつも関係者ということだよな。なら、折檻すれば元凶の居る場所吐くんじゃね?

 おーい! 変態~ちっょくらお兄さんとお話しない? 大丈夫大丈夫。三十分ぐらいで終わるからさ~。

 

「ハッ!? こここ、この声は───戦術的撤退!」

 

 しかし回り込まれてしまった。残念。魔王からは逃げられない。

 さーてエクソシストさんよぉ~ちょっと聞きたいことがあるんだけど~教えてくれない? 教えてくれないと凄いことになるよ? ………主にお前の脊髄が。

 いい笑顔をしつつ話しかけると変態は顔を涙で歪ませ、何でも話すと言ってきた。

 ふっ、素直な奴は嫌いじゃないぜ。ならお前の雇い主の居場所と目的教えてくれない? 俺たちちょっと困ってるんだよ、ね? ふむふむ。今は駒王町にいてこの町を吹っ飛ばす算段をコカビエルって堕天使と画策していると───やべぇじゃん!

 どうやら事情は思っていた以上にヤバかった。というかこの町の壊滅的な危機じゃ──あっ?!

 

「うひゃひゃひゃ! 今度こそ戦略的撤退だぜ! アデュー!」

 

 ちょっとこの先に待ち構える危機的な状況を悲観していたら、隙をつかれて変態神父に逃げられてしまった。

 畜生! 計画がわかっても元凶の居場所わかんなきゃ止められないだろうが! 神父ぅぅーカムバッーークッ!

 俺の叫び声は虚しく男空のかなたへとかき消されていった………。




主人公が新しく手にしたアイテム

天翔のスパイク
天翔の聖剣を利用して作られたスパイク。聖なる一撃は絶大だ!

松岡陸上魂オーバーキャノン
限界以上な魔力を込めた一撃。街一つ滅ぼせる。


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