ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く (始まりの0)
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原作前
EP0 いざ世界へ


 ~真っ白な空間~

 

 真っ白な空間に一人の美しい女性がおり鏡を見ていた。鏡には女性の顔ではなく、多くの人や景色が写っていた。女性はそれを見ると表情を曇らせる。

 

 

「やはり……そうなりますか、さて困りましたね。一体どうしましょうか?」

 

 

「何を考えているのだ、姉上」

 

 女性が振り返ると、薄い紫色の髪の女性がおり此方を見ていた。

 

 

「今、ある世界を見ていたのですが……貴女はどう思いますか?」

 

 紫色の髪の女性も鏡を覗き込むと、表情を曇らせる。

 

 

「こりゃまた……凄い事になってるな」

 

 

「仕方ありませんね、あの子に行って貰うとしましょう」

 

 黒髪の女性がそう言うと、手を振った。すると光と共に銀色の髪の少年が現れる。少年の手には茶碗と箸が握られていた。少年はどうやら食事中だったらしい。

 

 

「あら、ご飯中でしたか。ごめんなさいね」

 

 少年は黒髪の女性に気付くと、直ぐに口の中の物を飲み込み茶碗と箸を自分の後ろに隠す。

 

 

「母様!いきなり喚ばないで下さいよ。びっくりするじゃないですか」

 

 

「ごめんなさいね、でも急用だったから」

 

 どうやら、この少年は黒髪の女性の子供の様だ。

 

 

「それで何の用ですか?」

 

 

「実は貴方に逝ってほしい世界があるんですが」

 

 それを聞くと少年は呆れた様な表情をする。

 

 

「またですか……まぁ毎度の事ですから慣れてますけどね。それでその世界に行って何をすればいいんです?」

 

 

「フフフ、私は本当にいい息子を持ちました。その世界では色々な事が起きています、神・堕天使・悪魔・ドラゴン等々の様々な種が居るのですが、ある事をきっかけにその世界の拮抗が崩れるのです。そして世界のバランスが崩れ始めた」

 

 

「そこでお前がその世界に行って、出来る限りそのバランスを整えて欲しいと言う訳だ」

 

 黒髪の女性の後に紫髪の女性がそう言った。

 

 

「分かりましたよ、叔母様」

 

 

「おい!誰が叔母様だ!お姉様、または姉様、お姉ちゃんと呼べと何時も言っているだろう!」

 

 どうやら紫髪の女性は叔母様と呼ばれるのは嫌な様だ。

 

 

「はぁ……それで向こうにいったら、俺の力は何処まで使っていいんですか?」

 

 

「何時も通りで構いませんよ」

 

 少年と黒髪の女性は無視して話を続けている。

 

 

「おい無視か!泣くぞ!お姉ちゃん泣くぞ!泣くからなぁ……ぐすっ」

 

 

「分かってますよ、つく姉」

 

 紫髪の女性が本当に泣きそうになると、少年がそう言った。すると泣きそうだった女性は笑顔になる。

 

 

「では、そろそろ往くとしますか。母様、送って下さい」

 

 

「はい、あっそうだ。偶にはこっちに帰って来て下さいね、食事は毎日三食食べるんですよ?勿論栄養も考えて。あと手洗いとうがいも忘れずに、家とお金は此方で用意しますが無駄使いはいけませんよ。あっ何時もみたいにお腹を出して寝てはいけませんよ」

 

 

 

「母様、俺はそんなに幼い子供ではありません。何時までも子供扱いは止めて下さい」

 

 

「ですが貴方は何時までたっても私の可愛い息子ですよ?」

 

 

「もういいです。それじゃ送って下さい」

 

 黒髪の女性が手を振ると、少年の前に穴が開く。

 

 

「ふぅ……では行ってきます!!!」

 

 

「「いってらっしゃい」」

 

 少年は穴に飛び込むと、直ぐに穴は閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~???~

 

 

「はてさて……母様には困ったものだ。違う世界に来たら突然、パラシュート無しのスカイダイビングだなんて。もう少し考えて送って欲しいな。おっ雲を抜けたか」

 

 少年は青空の中を重力に従い落下しているのだが少年は何事も無い様に落ち着いていた。やがて雲を抜けると、地上が見えてきた。

 

 

「取り敢えずは地上に降りてからか」

 

 少年が何かを呟くと、何処からか白い外套が現れるとそれを纏った。そして顔を隠すと落下速度が徐々にゆっくりになりそのまま地上に足を着けた。だが何やら辺りは黒い煙に立昇っており、地面も何故か揺れている。

 

 

「ふぅ……はてさてこれからどうするかな……それにしても揺れてる…地震か?と言うか何だ、この地面、赤いな」

 

 少年は地面が赤い事に気付くと、顔を上げた。

 

 

「赤いドラゴン?それに何か白いドラゴンもいるし、周りのは天使に、悪魔、堕天使?なんだこりゃ?」

 

 少年が今立っているのは巨大な赤いドラゴンの身体の上、そしてその近くには赤いドラゴンと睨み合っている。しかもこの2体のドラゴンは今にも殺し合いそうな雰囲気だ。しかも周りには白い翼の天使、蝙蝠の様な翼の悪魔、黒い翼の堕天使が無数におり2体のドラゴンを取り囲んでいた。

 

 

「えっと……本当になにこの状況……」

 

 

 《貴様!この俺の身体の上に乗るとは何者だ!!!》

 

 

「えっ…此処の奴等は喋るんだ。それは済まなかったな、赤いの」

 

 どうやら喋っているのは少年の乗っていた赤いドラゴンの様だ。少年は赤いドラゴンの身体から降りると2体のドラゴンの間に浮いている。

 

 

 《折角の我等の決闘を邪魔しやがって!貴様等纏めて燃やし尽くしてやる!!》

 

 《同感だ!我等の邪魔をするものは何者であろうと排除する!!》

 

 赤いドラゴンに加え、白いドラゴンまで喋り出す。そして2体のドラゴンはその巨大な咢から赤い閃光と白い閃光を放つ、2つの閃光は先程の少年を飲み込んだ。

 

 

『おいおい……物騒な、少しは話し合いをするつもりはないのかよ』

 

 2つの閃光に飲み込まれた筈の少年の声が響き、赤と白の閃光を掻き消し黄金の光柱が天空に立ち昇った。

 光柱が消えると、そこには先程の少年が黄金のオーラを纏い浮いていた。

 

 

 《なっ我等の攻撃を受けて無傷だと!?》《そんな馬鹿な!?》

 

 2体のドラゴンは自分達の攻撃を受けて無傷だったのにかなり驚いている様だ。

 

 

「さて……ライディーン………【フェード・イン】」

 

 少年の左腕の紋様から黄金の腕輪が現れ、身体を黄金の鎧が包み込んだ。

 

 

 《《貴様!何者だ!?》》

 

 

「俺は唯の通りすがりの人間です。と言う訳で1回は1回でも倍返しでいいよね?答えは聞いてないけどね!【ゴッドワンド】」

 

 天空より、黄金の錫杖【ゴッドワンド】が飛来すると少年はそれを手に取る。すると空に黄金の光の魔方陣が浮かぶと、一瞬の内に少年は魔法陣の元に移動した。

 少年がゴッドワンドを天に掲げると、魔法陣に巨大な光の槍が2本出現する。その矛先は赤いドラゴンと白いドラゴンに向いている。

 

 

「【光の封印槍】」

 

 錫杖を振り下ろすと、光の槍が2体のドラゴンを貫いた。ドラゴン達は槍で貫かれた事によりのた打ち回っている。

 

 《グギャァァァァァ!!》《ウガァァァァァ!!》

 

 だがやがて光の槍の力によって動かなくなり、倒れた。

 

 

「悪く思うな、1回は1回だ。はてさてこれからどうしたものか」

 

 

【「零」、聞こえますか「零」?】

 

 少年の頭に声が響くと、少年は天を見上げた。

 

 

「母様……これはどう言う事ですか?一応攻撃してきた2体のドラゴンは動けなくしておきましたけどいいですよね?」

 

 

【総て見てましたよ、それよりも貴方を送る場所を間違えました。直ぐに本来の場所に送るのでジッとしておいて下さいね】

 

 少年の姿が徐々に薄くなり始めた。

 

 

「母様も相変わらず天然だな…さて……次はちゃんと着きますように」

 

 少年は自らの母に願いながら、その場から消えた。

 

 

 

 先程の光景を見ていた、天使・悪魔・堕天使達は唖然としていた。

 

 

「なっ…いっ一体何者なのだ…あの赤龍帝と白龍皇を一撃で」

 

 

「ばっ馬鹿な、ありえん。魔王様でさえも手を焼く2体のドラゴンをあぁも簡単に倒すなんて」

 

 

「うっうそだろ……あっ在り得ない」

 

 それぞれ目の前で起きた事が理解できずにいた。しかし実際に目の前に2体の龍が倒れているのを見ると嫌でもそれを信じるしかないが、未だに困惑していた。



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オリキャラ紹介

 ・主人公紹介

 

 名前:天王理 零(てんおうり ぜろ )

 

 性別:男

 

 年齢:不明

 

 種族:原初の神。半分はにんげん

 

 出身地:生まれは地球。育ちは原初の神界。

 

 家族:母親・叔父・叔母

 

 容姿:白銀の短髪、赤と金のオッドアイ

 

 好きな物:動物、平和な時間、仲間、可愛いもの、子供

 

 嫌いな物:邪魔をする敵、弱者を虐げるもの、家族の敵

 

 魔力・神力:無限

 

 攻撃力:本気を出せば3分で世界を壊せる程度

 

 防御力:この世界の神々や魔王、ドラゴン達の攻撃を纏めて受けても無傷

 

 

 

 

 

 とある世界で捨て子であった赤ん坊なのだが、偶然やってきた原初世界の女神に拾われた少年。女神が何故育てる気になったのかは不明だが、かなり母親である女神から溺愛されている。母親の妹や弟である存在にも溺愛されている。因みにその2人も原初世界の神のため、凄まじく強く。零は2人に鍛えられた事でチート級の強さを持っている。

 

 修行の旅に出る事になったが、世界をまたに駆け旅をしていた。ある世界ではスーパーロボット大戦の世界で、勇者達と出会い共に戦った。戦いが終わった後には、その世界の仲間達との絆により仲間達の機体を扱う事ができる。因みに人間サイズで呼び出した場合は零を包み込む鎧になる。

 

 その他にも母親や叔父達ゆずりの神の力を使う事もできる。空間を操作し、普段は使わない物を収納しておりその中には聖剣やら魔剣などの武器が収納されている。

 この度は母親の頼みによりハイスクールD×Dの世界にやってきた。やってきていきなり、赤龍帝ドライグと白龍皇アルビオンに出くわし攻撃された。2体の攻撃を受けて無傷で、一撃でドライグとアルビオンを戦闘不能にした。

 

基本的に温厚な性格だが、気に入った者には激あま。一度敵・害と認識すると一族諸とも滅ぼそうとする。

 

 本当の名前は(ぜろ)だが、日本人でゼロと言うのは合わないため、普段は(レイ)と名乗っている。

 

 

 

 ・現在使える力

 :大いなる者ライディーン、ジェネシックガオガイガーなどチート級の機体の力を所持。

 スーパーロボット機体の殆どの武装、特殊能力を使用可能

 

 :神の奇跡

 原初世界の神々の力。ありとあらゆる奇跡を必然にできる=大概の事は何でもできる。

 

 

 

 

 

 ・大いなる者【REIDEEN】

 

 宇宙の大いなる力を宿した神に近い力を持つ黄金のロボット。時を越えるなど簡単な機体、あらゆる装備を召喚し敵を撃つ。

 オリジナルの機体ではないため、意志は持ってないが零そのものが完全に力を制御している為なんの問題もなく使用できる。人間サイズでは鎧の様に零に装備される。

 

 装備

 ゴッドソード:背部の翼に収納された神の剣

 

 ゴッドワンド:空間を越え召喚される錫杖。あらゆる力を使う事ができる。

 

 ゴッドアロー:ライディーンの右腕部に装備された弓。射抜かれた敵は異空間に吸い込まれ消滅する。

 

 その他武装

 

 

 




ハイスクールD×Dを見ていて書きたくなったので投降しました。

他の作品もあるので更新は遅いです。


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EP1 猫を拾った、猫は可愛い、可愛いは正義

 ~一軒家の前~

 

 ふぅやっと着いた。母様にも困ったものだな、これがこの世界の俺の家か。うん…ちょっと他の家よりは大きい感じがするが普通だな、昔は酷かったからな。俺1人の為に野球場が数十個はできるであろう敷地と城みたいな馬鹿デカい家だ。在り得ないだろう?使用人?居たなホムンクルスだったけど。

 ん?と言うか……周りの物が大きい様な………まさか…昔も何度かこういうのが在ったな。母様の気まぐれで……

 

 零は鏡を取り出すと自分の身体が小さくなっている事に気付いた。

 

 

 

 母様………今回は何でこの姿に?前は俺が小さい頃の事を思い出したからだったか、その前は小さい頃に女の子の服を着せとけば良かったとかだったな。あの人は全く何を考えているのか、長い間あの人の子供だけど未だに分からん。

 

 

 

 零は幼くなった自分の姿を見ながら、溜息を吐くと母が用意した家へと入る。

 

 

 

 

 

 

 

 ~自宅内~

 

「中身は見た所…普通だな」

 

 何の変哲もない普通の家で、TVや冷蔵庫、エアコン、電子レンジなどの家電は揃っている。零はリビングの机の上に1枚の紙と幾つかの金融機関の通帳に気付いた。

 

 

「手紙か……母様からだな。何々」

 

 母からの手紙を読み始めた。

 

 

『無事に着いた様ですね、貴方の私物は全てその家の貴方の部屋に置いてあります。それと貴方が生活する為の資金はその通帳から引き出して下さいね。先程まで貴方がいたのは約1000年前の魔界でした。因みに貴方が倒した2体のドラゴンはその世界で二天龍と呼ばれる存在です、詳しい事は貴方の本棚で調べて下さい。それとこの世界には天使・悪魔・堕天使といった勢力もあるので、気を付けて下さい。貴方には敵わないとは言え、もめると動き辛くなると思います。貴方が縮んでいる理由は久しぶりに貴方の可愛い姿が見たかったからです、それとその方が色々と都合がいいので………それはそうと、貴方が動くのは未だ数年先なので今は静かに暮らして下さい』

 

 

「ふぅん……二天龍って何処かで聞いた様な。まぁいいや、【本棚】か。取り敢えずそれは後でいいか、まずは街の事を把握する必要があるか。霊脈・龍脈と言った物の把握に霊地・神佑地とか1人でやるのは面倒だけど仕方ないか」

 

 零が目を閉じると、意識が身体から離れる。

 

 

 

 

 

 

 

 ~真っ白な空間~

 

 

 白い空間で目を開けた零。目を細めると、何処からともなく無数の本棚が飛来する。

 

 

「これがこの世界の情報………此処からキーワードで絞り込むか【神】【天使】【悪魔】【堕天使】【ドラゴン】」

 

 本の数が一気に減るが、それでも数百冊は在り、零の周りに浮いている。

 

 

「これでも未だこんだけあんのかよ……仕方ないか」

 

 零が両手を開くと、周りに本と同じ数の魔方陣が浮かぶ。本が魔法陣を直ぐにその場から消えた。

 

 

「……一気にこの情報量はキツイ。後は整理だな」

 

 零は頭を押さえながら、ブツブツと何かを呟いている。

 

 

「成程…………この【原初の本棚】は使い易いけど、今の状態だと少し疲れるな」

 

 

 

 

 まずこの世界は「ハイスクールD×D」という物語の世界。そういや、少しだけで読んだ事があるな。俺がいた千年前に起きた神・悪魔・堕天使の三つ巴の戦いで、この世界の「聖書の神」と4大魔王が死んだ。それで俺が会った二天龍、赤龍帝ドライグと白龍皇アルビオンは神も手を焼く暴れ者。大戦中、この2体を先に倒さないと自分達が危ないと思った3大勢力は協力して倒そうとしたって事ね。そこに偶々、俺が現れたって事か。現在、3つの勢力は停戦状態が続いている。

 

 

 

 白い空間から自分の身体に意識を戻した零。

 

 

「はぁ………この世界の事は分かった。次はこの街の事か、よぉ~し出掛けよう」

 

 

 

 

 

 

 ~街中というより森の中~

 

 自分の住む事になった街の事を知る為に出掛けた零なのだが、森の中にいた。理由はただ迷っただけである。

 

 

「ハハハ、完全に迷っちまったな。迷ったものは仕方がないけど……よし取り敢えず帰ろう………にも道が分からないな。まぁ瞬間移動を使えば直ぐに戻れるけど、ん?」

 

 零は何かが聞こえ、その方向に向かって歩を進める。そしてその先には黒と白の猫がいた。2匹の猫はどうやら怪我をしている様だ。

 

 

「猫……しかも怪我をしてる。こんな愛らしい生き物が怪我をしていると言うのに、放っておけるものか!」

 

 零は猫達を抱きかかえると、その場から力を使い自分の家へ戻った。 

 

 

 

 

 

 

 ~自宅~

 

 

「まずは治療をしないと」

 

 零が猫達に手を翳すと、淡い光が灯る。すると猫達の傷が一瞬の内に治癒した。

 

 

「これでよし……傷は治ったし命に別状はない。でも何だかこの猫達に若干の力を感じる、霊力?いや妖力かな?まぁいいや。まずは腹ごしらえか」

 

 零は食事を作る為にキッチンへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 ~猫side~

 

 零によってタオルに包まれた黒猫が目を覚ますと、周りを見回している。

 

 

(むにゃ……此処は何処にゃ?私はどうなったのにゃ?あっ…そうだ、白音は何処!?)

 

 黒猫は自分の横でタオルに包まれている白猫を見つけると安心した様子だ。

 

 

(アレ…傷が消えてるにゃ。何がどうなってるの?)

 

 

「おっ目を覚ましたか。怪我は治したけど、悪い所はないか?」

 

 黒猫が声がした方向を見てみると幼い零の姿を見た。

 

 

(子供?でも唯の子供じゃない、どうやったか分からないけど私の傷を治した。しかも何か途轍もない力を感じる)

 

 黒猫は子供の事を警戒しているのか、威嚇している。

 

 

「そんなに警戒してくれもいいよ、俺に君達を害するつもりない。そうじゃなきゃ君達を助ける訳ないだろう?」

 

 黒猫は黙ったまま、威嚇を解くと真っ直ぐ零を見つめる。

 

 

「君は唯の猫じゃないから言葉は理解できるみたいだな。猫又……猫魈かな」

 

 

「?!……何故分かったにゃ?」

 

 

「俺はそう言うのに敏感でね。まぁ何があったかは置いておいて、ほらっまずは腹ごしらえだ」

 

 零は黒猫の前に食事を置いた。

 

 

「普通に人間が食べる物でも大丈夫か?」

 

 

「(凄くうまそうにゃ)だっ大丈夫にゃ。お前、名は何ていう?」

 

 

「俺は天王理 零(てんおうり ぜろ)だ。(ぜろ)と呼んでくれればいい」

 

 

「日本人とは思えない名前にゃ」

 

 

「うん、よく言われる。君の名前は?」

 

 

「私は黒歌(くろか)にゃ」

 

 

「となりの白い猫は君の知り合いか?」

 

 

「この子は私の妹にゃ」

 

 

「そうか……まぁ先に飯を食おう、飯を」

 

 

 

 

 

 

 

 ~数時間後~

 

 目を覚ました白猫の方、名前は白音と言うらしい。姉の黒歌から、白音が起きる前から事情を聞いていた。何でも両親が死に、妹と2人で猫魈として暮らしていた。だがそこに悪魔が現れて無理矢理眷族悪魔にさせられた、そしてその手が妹にまで及びそうになった為、その悪魔を殺したという。そして悪魔達から逃げる途中で攻撃を受けた、白音だけでも逃がそうとしたが失敗し人間界に逃げてきたと言う。

 それを聞いた零の身体からは、凄まじいオーラが立ち昇っている。

 

 

「なるほど……その悪魔野郎が目の前にいたら生きている事を後悔させてやるのに、まずは次元連結システムを応用して時間固定を行って死んでも生き返る様にしてから、俺の持ってる機体の全技を生き返るたびにぶち込んで、それが終わったら幾つもの拷問を行ってやるのに」

 

 先程の話を聞いて黒歌を無理矢理眷族にした悪魔に怒りを抱いている様で、何やら物騒な事をブツブツと呟いている。

 

 

「よし、話しは分かった。黒歌、白音、お前等は此処にいるといい」

 

 

「いやでも私等ははぐれ悪魔として狙われてるにゃ」「貴方が危険な目に合う」

 

 

「問題ない。俺自身、強いから大丈夫だ、それにこの家には結界が張られている。この世界の最高位の神でも破れない様な強力な奴がな。第一!こんな可愛い猫達が命を狙われているのを俺が放り出す訳ない!可愛いは正義だ!」

 

 

「「………………」」

 

 何やらジト目で零を見る2匹の猫。

 

 

「コホン……失礼、取り敢えず今日はゆっくりと休むといい」

 

 こうして、零に同居人?が増えた。




今回、零の同居人に黒歌と白音が増えました。ヒロインになるかは不明です。


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EP2 我が日常

 ~零がこの世界に来て約十年~

 

「お腹空いたにゃ、ご主人様」

 

 

「お腹が空きました」

 

 

(ぜろ)…我、お腹空いた」

 

 それぞれ、空腹を訴える黒歌と白音に加え黒髪のゴスロリ少女。

 

 

「黒歌、お前は少し手伝う事を覚えろ。白音、何時も手伝ってくれてありがとう。オーフィス、お前はTVでも見てジッとしててくれ(手伝おうとしてくれるのはありがたいけど、力加減ができないからまたキッチンを壊されても困る)」

 

 

「酷いにゃ、ご主人様。まるで私が普段から何もしないみたいじゃないかにゃ?」

 

 

「ほとんど何もしないだろ」

 

 そんなやり取りをしながら、楽しい時間を過している。

 

 

 ん?なんか1人増えているって?あぁ……この黒くて愛らしいのはオーフィス。何でもこの世界の神が怖れると言われる『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』っていう存在らしい。どういう経緯で会ったか?数年前に散歩していたら突然現れた。それで俺の力を見抜くと【真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)】のグレートレッドって奴を倒したいから協力してくれと言われたんだが、俺自身も今は動けないから時が来たら良いよって言ったんだけど、なんか「協力してくれるまで傍に居る」って言われた。そんで今は此処に棲みついている。

 今では暇があれば俺の膝に座っていたりとか、寝てたら何時の間にかベッドに潜り込んできたりとかしてくる。可愛いは正義だから俺としては嬉しい限りだ。可愛くて文句ないんだけど服がね、露出が高過ぎる。女に耐性のない俺は少し困惑していたけど、慣れればそれほど気にしなくなった。でも一緒に散歩してると周りから変な目で見られてた、主に俺が。警察も呼ばれそうになったため、オーフィスには普通のゴスロリを来てもらう事にしたよ。決して俺の理性が崩壊しかけていた訳ではない……筈……俺はロリコンじゃない……でも何故か好かれるのは小さい子、アレ?止めよう、考えるだけ嫌な事を思い出す。

 

 黒歌と白音は連れてきた始めの内はずっとオーフィスをずっと警戒していたけど、今では打ち解けてる。まぁちょっとした喧嘩はするけどね。

 

 

『上手に焼けました~』

 

 

「ほらっできたぞ」

 

 食事ができると机に運び、椅子に座る。今日は肉が中心となっている、勿論野菜も一杯用意しているけど。因みに肉は巨大な豚だけど?何処で捕まえてきた?違う世界で仕留めた奴、異空間に存在自体の時間停止をして保存しておいただけだ。それをついさっき、炎と時間操作で短時間でこんがり焼けた。焼く時は音楽と共に焼くのが重要かな。

 

 黒歌達は席に座る事なく、睨み合っている。これは毎度の事なのだが良くもまぁ飽きないな。

 

「「「最初はグー!ジャンケン、ホイ!」」」

 

 3人は突然、ジャンケンを始めた。どうやら今日勝ったのはオーフィスの様だ。黒歌と白音は膝を付き地面に伏している。その逆にオーフィスは無表情のまま腕を天井に向かい突き上げている。

 

 

「あいむ、うぃなー」

 

 勝ち誇った顔をするオーフィスは、トコトコと歩いてくると当然の様に俺の膝の上に座る。

 

 

「うぅ~悔しいにゃ」「悔しい」

 

 2人は悔しいそうに泣いている。というか態々、飯の時に俺の膝の上に座る必要があるのかな?

 まぁいいや、2人は渋々椅子に座る。

 

 

「「「「いただきます」」」」

 

 手を合わせ、食となった動物や野菜たちに感謝し食事を始めた。

 3人は何やら肉の取り合いを始める。取り合いと言うか、箸と箸で食べ物を掴むのは止めなさいって……これで何度目だよ?

 まぁそんなこんなで慌ただしい毎日であるが、結構楽しんでるから俺は今の生活に満足している。今までは戦いばっかりで忙しかったからな、それにこれから何やら忙しくなるって母様から連絡きたし今の内に満喫するとしよう。

 

 

 

 

 

 

 ~翌日 駒王学園2年教室~

 

 此処は俺の通う駒王学園。何で俺が学校なんか通う必要があるんだろう?因みに手続きをしたのは母様だ、何を思ったのか俺をこんな所に通わせている。まぁいいんだけど……因みに白音も一緒に通っている。黒歌は指名手配されているから無理、オーフィスも無理だ。なんせこの学園には悪魔がいるしな、確か此処の理事長は魔王様だったかな?そんな所に、無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)であるオーフィスが入ってみろ、速攻俺は目を付けられる。それに何かあったら、この学園自体が吹き飛ぶしな。

 

 

『待て!!この覗き魔どもがぁ!!!』

 

 俺は声のした方向を見てみると、大勢の女子生徒に追い掛けられている3人の男子生徒を見つけた。

 

 

「丁度いい所にいた!(レイ)!」「「助けてくれ!(レイ)!」」

 

 その3人は俺を見つけると、直ぐに俺に元にやって来ると後ろに隠れる。

 

 

「「この覗きま……ども…天王理くん?」」

 

 女子生徒達は俺に気付くと突然、顔を真っ赤にする。風邪でもひいているのかな?

 

 

「やぁ剣道部の女子生徒さん達、どうかしたのかな?」

 

 

「「えっいやあのその……これは」」

 

 

「こんな所で竹刀を持ってなにを?」

 

 

「こっこれは……そう!走ってたの!しっ竹刀は友達だから!じっじゃあこれで!」

 

 何やら何処かのサッカー少年の様な事を言うと、直ぐに剣道場に戻っていく。

 

 

「さて……と。お前等、また覗きか?」

 

 

「「「この超絶イケメンが!お前には俺達の気持ちは分からないさ!!俺達にはこういうやり方でしか自分達の欲を満たすしかないんだよ!!」」」

 

 3人は涙を流しながら零に向かいそう叫んだ。

 

 

「なら男らしく、その制裁を受けたらどうだ、一誠、松田、元浜?」

 

 

「「「痛いのは嫌いなんで」」」

 

 この3人はこの駒王学園の変態三人組。茶髪のが一誠、坊主のが松田、眼鏡を掛けたのは元浜。それぞれ良い所は持っているんだが、問題なのは変態と言う事だ。女子の着替えは当然の様に覗く、女子生徒にセクハラはする、女子生徒の前で普通にエロい発言をする等々、あげればキリがない。そんな事で此奴等は女子から目の敵にされ、気持ち悪がられている。この間なんかアイツ等の視界に入るだけで妊娠するとか言われてたっけ。普通にしていたら中々に面白い奴らなのだが。

 

 

「はぁ……もういい。俺は忙しいので帰る」

 

 

「おいおい、今日は俺の部屋で皆のコレクションを見る予定だろ?」

 

 零が帰ろうとすると、一誠がそう言った。

 

 

「そんな事を約束した覚えが全くない。それに俺は忙しい」

 

 

「忙しいって毎度、毎度お前何してるんだ?」

 

 松田が零にそう聞くと、少し考える様に顎に手を当てる。

 

 

「普段は家事にいそが………しいんだけど。今日は別の用事だな」

 

 零はある人物を見つけた。3人は零の視線の先に誰がいるのかが気になり、そちらを向くと小さな白い髪の少女を見つけた。

 

 

「あっ……あれは…1年の塔城白音ちゃん…まさかあのマスコット的な存在を、まさか!」

 

 

「そうか……お前も俺と同じ」

 

 何やら元浜が俺の方を仲間を見る様な眼をしている。凄く腹立つな。

 

 

「お前もロリコンだったのか?」

 

 一誠が最後に俺に向かいそう言う、俺はそう言われた瞬間に我慢していた苛立ちを解放しようと思った。俺は懐から黒いグローブをだし、自分の手に嵌める。そして大きく息を吸い、拳を握り締めた。

 

 

「うりゃあぁぁぁぁぁぁぁ!これで止めだぁ!!」

 

 ラッシュを3人に放ってやった。最後に俺のラッシュによって宙に浮いていた一誠に回し蹴りを喰らわせてやった。そんな事して死なないのか?大丈夫だ、加減はしてるし、このグローブ『非殺傷くん』これを嵌めている限り拳で殴っても唯の打撲で済む。ダメージだけはそのまま伝わるけど、まぁだからこそいいんだけどね。

 

 

「ふぅ……スッキリした」

 

 先程、見つけた白音が此方に歩いてきた。

 

 

「ごしゅ……じゃなかった、(レイ)先輩、帰りましょう」

 

 よし、ちゃんと言い直してくれてありがとう白音。何時もの様に白音に「ご主人様」なんて言われた日には俺もあの変態三人組の仲間入りをする事になるな。

 

 

「あぁ……早く帰らないと腹を空かしたのが2人居るしな(そう言えば、今日は何か在った様な?まぁいいや)」

 

 こうして俺は白音と帰る事にした。普段は白音はこの学園で出来た友達と一緒に帰っているんだけど、今日はあの約束があるからな。その約束とは………

 

 

 

 

 

 

 ~学校近くのケーキ屋~

 

 白音は現在、俺の前に大量の皿を積んでいる。この皿はケーキ、パフェを食べた残骸だ。10人前以上食ってるな……コレ。本当にこの小さな身体の何処に入るんだろ?

 

 目の前で無表情だが美味しそうにケーキを食べている白音を見つつ俺はオレンジジュースを飲む。

 

 

「ん?アレは……」

 

 何気なく、近くを見回してみるとある人物を見つけた。一誠と制服の女子、何やら一誠は鼻の下を伸ばしているな。だがあの娘…………あの馬鹿はどうも面倒な事に巻き込まれている様だな。

 

 

「はぁ…………本当に忙しくなりそうだよ、母様」

 

 俺は誰にも聞こえない小さな声で呟く。

 

 

「ご馳走さまでした」

 

 

「お会計になります」

 

 タイミングを見計らったかの様に店員が俺に伝票を渡してくる。俺はその金額を見て再び溜息を吐いた、



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第1章 旧校舎のディアボロス
EP3 どうしようか?


 ~駒王学園~

 

 さてこれは困った。俺は朝から絡んでくる鼻の下を伸ばした一誠の対処に困っている。「彼女ができた!」って喜んでいるのはいい、決して朝から何度も同じことを聴かされて、彼女は清楚だの、何だの聴かされて、鬱陶しいと思っている訳ではない…………少し鬱陶しいか。だか問題はそれではない。その相手だ、聞いた感じでは昨日見た女の事だろう。あの女は色々と問題だ。さてどうするか?友人が危ない目に合いそうになっているのを放って置くのは、あまり気分のいいものではない。

 

 

「おい!レイ!行ったぞ」

 

 などと考えていると、現在、何をしているのかを思い出す。そう言えば体育の途中だったな、今してるのは野球だ。俺は音で後ろから何かが飛んでくるのを理解した。恐らくさっきの声からボールだろうと予想する。ボール何ぞに構ってる暇はないんだけどな。

 

 

 俺は振り返りもせずにボールをキャッチすると、身を翻し、軽くホームベースにいるキャッチャーに向かい投げた。ボールは凄まじい速さでキャッチャーのミットに収まった。回りのクラスメイト達はかなり驚いている。

 

 

 零はまるで他人事の様に、その場から去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~3年教室~

 

 3年の教室に1人の赤い髪の少女がいた。彼女はリアス・グレモリー、整った美しい顔だちとその性格、貴族のような立ち振舞い、文武両道から「駒王学園のお姉様」と男女共に人気のある生徒だ。

 

 

「なっ!?」

 

 普段は真面目な筈のリアスが、急に立ち上がった。

 

 

「ぐっグレモリーさん、どうかしましたか?」

 

 

「いっいぇ……なにも」

 

 教師がリアスが急に立った事に驚き声をかけるが、直ぐに席についた。

 

 

(さっきのあの男子生徒何者かしら……明らかに見えて居なかった筈のボールを受け止めるなんて。それにあの距離を1回も地面につける事無く、あのスピードで投げるなんて……少し調べる必要がありそうね)

 

 心の中で静かにそう考えると、再び授業へと意識を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~日曜日 夕方~

 

 夕暮れ時の公園に1入りの少年と1人の少女がいた。1人は一誠、そしてもう1人は一誠の彼女だろう。どうやらデートの帰りに立ち寄ったらしい。

 

 

「ねぇ、一誠くん。お願いがあるの」

 

 顔を赤く染めながら少女は一誠にそう言った。

 

 

(こっこの展開は……もっもしかしてきっキス!?)

 

 そんな事を想像している一誠だが、この後の言葉で一変する。

 

 

「死んでくれないかな?」

 

 

「えっ?もう1度言ってくれないかな?何か聞き違いたみたいだから」

 

 現実を受け入れられない一誠に追い打ちをかける様に、少女は言葉を放つ。

 

 

「死んでくれないかな?」

 

 そう言うと、少女は背中から黒い翼が生える。そして彼女の雰囲気が冷たい物に変わる。

 

 

「楽しかったわ、貴方と過ごした日々。初々しい子供のままごとに付き合えた感じだったわよ」

 

 少女はそう言うと、手に光の槍を形成すると一誠に向かい投げる。その槍は一誠の腹部を貫いた。

 

 

「えっ……嘘だろ…ごふっ」

 

 一誠は口から血を吐き、そのまま倒れた。そして一誠は薄れゆく意識の中で聞き覚えのある声を聞いた。

 

 

『それは頂けない、一応友人なんでね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取り敢えず止めを刺すとしましょうか」

 

 

「それは頂けない、一応友人なんでね」

 

 少女は、再び槍を形成する為に手を上げようとしたが、声がすると翼を羽ばたかせその場から飛び上がる。そして先程まで居た場所に赤い閃光が走る。

 

 

「何者だ?!」

 

 

「唯の通りすがりでそこで死にかけている奴の友人だけど?」

 

 そこに現れたのは銀色の髪と赤と金の瞳を持つ少年、一誠の友人でもある零だった。そしてその手には巨大なライフルがあり、カートリッジを排出する。

 

 

「堕天使か………全くこの街にはどれくらいの奴等がいるのやら」

 

 零は光の槍で腹部を貫かれた一誠を見る。

 

 

「瀕死状態か………取り敢えず、あの鴉を何とかしてからか」

 

 零は堕天使にライフルを向ける。

 

 

「【神器(セイグリッド・ギア)!?】」

 

 

「此奴は神器(セイグリッド・ギア)じゃないんでね」

 

 

「ふざけるな!!何者か何てどうでもいい、死ね!」

 

 堕天使は光の槍を零に向かい投げつけるが、何処からか飛来した緑色の光を放つX字型パーツの付いている、白い盾に防がれる。

 

 

「なっ!?」

 

 

「じゃあ、さようなら」

 

 ライフルの引き金を弾くと銃口から赤い閃光が放たれた、閃光は先程の堕天使を包み込む。

 

 

「チッ……転移で逃げたか。まぁいい、あの程度の奴は何時でも潰せる」

 

 零はそう言うと、手に持っていたライフルが消えた。それと同時に飛来してきた盾も消える。

 

 

「さて………って、あぁ……これは面倒な事になるパターンだな」

 

 零は一誠の方を見ると、一誠の傍に赤い髪の少女が立っていた。しかも少女は零の方を見ていた。

 

 

「(一誠の怪我が治っている。いや違うな、人間ではなくなったと言う事か。まぁアイツが人間に戻りたいと言うなら手助けしてやるか)面倒な事になる前に去ろう………」

 

 その場から去ろうとするが

 

 

「待ちなさい、天王理 零」

 

 

「チッ………」

 

 零は声を掛けられた事で舌打ちすると、面倒そうな表情をして振り返る。

 

 

「俺は忙しいので帰らせて貰う」

 

 

「話を聞かせて貰うわよ、さっきの力の事も含めてね」

 

 

「お断りします。俺は暇じゃないんでね、話しなら明日にでもしてくれ。早く帰らないと腹を空かせている奴等がいるんでな」

 

 黄色い光が零を包み込むと、その場から零が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 ~翌日 駒王学園~

 

 

「ふぁ~眠い……しかも全身痛いし」

 

 何やら顔に猫に引っ掻かれた様な傷や何かに噛まれた様な傷がある零。どうやら全身に傷があるらしく、痛みがあるらしい。

 

 

「少しいいかな?」

 

 金髪の男子生徒が話し掛けてきた。

 

 

「誰だ(悪魔の気配がするなこいつ)?それに一誠まで」

 

 

「よぉ……なぁ木場なんで天王理も呼ぶんだ?」

 

 

「部長…リアス・グレモリー先輩に言われてね。付いて来て貰えるかな?」

 

 

「仕方ない……」

 

 

「「きゃ~木場くんが、天王理くんに声を掛けてる」」

 

「でも何で、あの変態の兵藤まで!?」

 

「まさか、天王理×兵藤×木場?!」

 

「兵藤をかけての勝負?!三角関係!?」

 

 などと何やら女子達が騒いでいるが、3人は直ぐに教室を出て行った。

 

 

 

 

 

 ~旧校舎 オカルト研究部 部室~

 

 

「で……此処は何処だ?」

 

 

「オカルト研究部…通称オカ研の部室よ」

 

 零は目の前に座っている赤い髪の少女リアス・グレモリーを見た。

 

 

「それじゃあ説明するわね」

 

 

 此奴は魔王からこの地の管理を任せれており、最近になって堕天使や主のいないはぐれ悪魔が多くなってきた。この間のはその堕天使の1人だそうで、一誠を狙った理由は一誠の身に宿る神器(セイグリッド・ギア)の性だという。神器(セイグリッド・ギア)、それはある特定の人物に宿る人智を越えた力だそうだ。

 確か本棚で見たな、一誠のは【赤龍帝の篭手(ブースデッド・ギア)】という物だが今は未だ完全に目覚めていない様だ。赤龍帝?……はて何所かで聞いた様な?思い出せないなら大した事じゃないだろう。

 

 此処にいる、このオカルト研究部の部長リアス・グレモリー、黒髪の少女・姫島朱乃、金髪の少年・木場祐斗、一誠の背中から蝙蝠の様な翼が生える。

 

 

「それで俺を呼んだ理由は?」

 

 黙っていた俺は、早く要件を済ましたい為に発言する。

 

 

天王理 零(てんおうり れい)……貴方は何者?」

 

 

「唯の一般人」

 

 

「嘘よ、唯の人間が堕天使を圧倒できる訳がない。それに貴方の持っていたあの武器、神器(セイグリッド・ギア)よね?」

 

 

「そうなのか天王理!?」

 

 一誠は零が自分と同じ力を持っているのかと思い詰め寄る。

 

 

「答えはNOだ。俺は神器(セイグリッド・ギア)なんて物を持ってない。用は済んだな?帰っていいか?」

 

 

「未だよ。普通の人間に堕天使を圧倒するなんてありえない、何か未知の力を持つ人間。そうね、貴方も話したくない事もあるだろうから今は言わなくてもいいわ。ねぇ、貴方私の眷族になるつもりはない?」

 

 

「全くない」

 

 即答だった。予想外の答えに驚いているオカ研の部員たち。

 

 

「何言ってんだ!天王理!さっきの聞いてたろ!悪魔になって、力を付ければ下僕を持つ事ができるんだぞ!?そしたら、あんな事やこんな事を命令し放題なんだぞ!?可愛い下僕にはどんな事でも命令できる!!最高じゃないか!」

 

 何やら息を荒くしながら熱弁する一誠。全くこいつの頭の中はエロだけで構成されているんじゃないだろうかと思う。

 

 

「俺は誰かに仕える事なんてしない。それに………まぁそうだな、何なら実際に試してみるといい。俺を悪魔にできるかどうかをな」

 

 

「それは自分が悪魔にはなれないって事かしら?」

 

 

「そう言う事だ。仮に俺を悪魔に出来たら、お前の下僕だろうが、執事だろうがやってやるよ」

 

 

「へぇ……面白い、ならなって貰おうかしら」

 

 リアスは赤いチェスの駒を出す。これは悪魔の駒(イーヴァル・ピース)と呼ばれるアイテムで、人間を悪魔に転生させる物だそうだ。そして駒はチェスに見立ててある。キング:リアス・グレモリー・クイーン:姫島 朱乃・ナイト:木場 祐斗・ポーン:兵藤 一誠となっている。何でもそれぞれに特性があるらしい。

 リアスは駒の中からナイトの駒を出すと零の胸に当てる。だが駒は零に触れた瞬間に「バチッ!」という音と共に弾かれた。

 

 

「「「「えっ!?」」」」

 

 

「残念でした。俺は昔からこういう類の物は効かないんでね」

 

 俺は昔から、こういう悪魔やら天使の契約とか絶対に効かない。何故なら俺の母様がそうしているからだ、その昔、俺が幼い頃の話だ。母様と俺はとある世界に出掛けた、その世界で色々とあって母様と逸れてしまった。その頃は身を守る術も殆ど持っていなかった。ただ純粋な力だけを身に宿していたけど、まぁそれが原因でその世界の邪神に取り込まれそうになった。

 俺はその時は何もできなくて、取り込まれそうになっていたが母様が現れて助けてくれた。それから母様は過保護になって大変だったな。それは置いておいて、取り込まれそうになった事でそんな事が絶対に無い様に色々な力を与えてくれた。だからこういうのは効かないのだ。えっ?その邪神はどうなった?叔父上と伯母上もやってきた3人で邪神を消滅させたそうだ。

 

 

「まさか……そんな事が……」

 

 

「さて……かえr『ドガッ』」

 

 突然、扉から鈍い音がすると皆はその方向をみる。扉にヒビが入り砕けると、そこには白音が立っていた。

 

 

「結界は壊しました」

 

 

「アレは?!塔城白音ちゃん!?何で此処に!?」

 

 

「白音、学園では目立った行動はするなって言った筈なんだけど?」

 

 

「匂いを追って来たら此処について、結界が張ってあったから何か在ったものかと思って」

 

 どうやら白音は零を心配して、匂いを追ってきたらしい。そして白音は辿り着いた所に結界があった、匂いは此処で途切れている。と言う事は零は此処にいると思い安否を確かめる為に結界を壊したそうだ……拳で

 

 

「何もないよ。取り敢えず扉は直そうね」

 

 

「はい」

 

 白音が手を翳すと、魔法陣が浮かび扉が何もなかったかの様に元に戻る。

 

 

「これはまさか……仙術?」

 

 リアスは白音が行った事をみてそう呟いた。

 

 

「へぇ……仙術を知ってるとは……まぁいいや。白音、まずは自己紹介を」

 

 

「塔城白音……」

 

 白音は零の横に来ると、名前だけを名乗り黙った。

 

 

「彼女は何者なの?」

 

 

「俺の家族、それ以上でもそれ以下でもない。話が終わったなら帰らせて貰いたいんだけど?」

 

 

「………では最後に1つ、私の協力者になってくれないかしら?」

 

 

「協力者ね……俺はお前達に干渉しない、お前等も俺に干渉しない。それでいいだろう?」

 

 

「そう言う訳にはいかないわ。唯でさえ堕天使や逸れ悪魔が多い。それに貴方達の力にも興味があるけど他の勢力に渡るのを防ぐのが一番の目的ね」

 

 

「断る。お前等に協力するつもりはない、俺は俺にとって大切な物を守る為に動く。これまでも、これからもね。俺の邪魔をするなら、誰であろうと排除するし邪魔をしないなら関わらない。それだけだ」

 

 零はそう言うと、立ち上がり扉に向かって歩いていく。白音は勿論、その後ろにぴったりと着いていく。

 

 

「まぁ………友人が困っている時は少し手を貸してやってもいい」

 

 そう呟くと先日の様に黄色い光に白音と共に包まれ、その場から消えた。



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EP4 聖女

 ~先の話し合いから数日~

 

 

 零は何故か帰宅の途中で寄り道をしていた。寄り道と言ってもただ遠回りして帰っているだけなのだが。

 

 

「はぁ………疲れた。今日は何処に行こうかな?」

 

 零は暇な時に、こうして散歩している。理由は特にないらしい。

 

 

「一誠の奴は悪魔として頑張っているみたいだけど………アイツが決めたならそれはそれでいいけど」

 

 そんな事を考えていると

 

 

「きゃぁ!」

 

 

「ん?なんだ?」

 

 悲鳴のした方向を見てみると、そこには少女が転んでいた。

 

 

「いたぃですぅ……どうしてこけるんでしょうか?」

 

 涙目になりながら、身を起こす。

 

 

「大丈夫か?」

 

 零は少女に声を掛ける。

 

 

「あっすいません……ありがとうございます、お蔭で助かりました」

 

 少女は零の手を借り立ち上がると、笑顔で礼を言った。

 

 

 

 何だろう、この穢れを知らない純粋な笑顔は。凄く眩しい、こんな娘がいるとは予想外だな。

 

 

「私はアーシア・アルジェントと申します。少し前にこの街の教会に赴任してきたシスターです」

 

 

「俺は天王理 (レイ)。学生だ、よろしく」

 

 

「はい、こちらこそ。はぁ……この前もイッセーさんにぶつかってご迷惑おかけしたばかりなのに」

 

 この少女の口から一誠の名前が出るとは驚いた。話を聞くとこの街に来た時に道に迷って偶々一誠とぶつかったらしい。それで教会の場所が分からなかったため、案内して貰ったそうだ。アイツが純粋に人を助けるとは……良い所あるな。

 

 

「でもイッセーさんは何であんなに顔を真っ赤にしていたんでしょうか?」

 

 前言撤回。あの馬鹿、こんな純粋な子をそんな目を向けるとは少し話し合う必要がありそうだ。

 

 

「それよりも何でこんな所に1人でいるんだ?」

 

 俺はそう聞いてみると、アーシアの表情が暗くなり泣き始めた。ちょwちょっと待って!俺が泣かしたのか?俺の性か?!

 

 突然の事で驚いたが、アーシアが事情を話し始めた。そして彼女は自分の半生を語る。

 

 生まれて直ぐに親に棄てられ、教会の孤児院で育った。幼い頃から信仰深かったために『奇跡』の力を授かったとかで、その力で『聖女』と崇められたそうだ。だがある時に倒れている悪魔を癒した事で『魔女』と呼ばれ教会から追い出された。その時には誰も助けてくれなかった。行き場をなくした彼女はある組織に拾われたそうだ。

 

 よし、話しに出て来た奴等全員潰そう。久々に頭に来た、こんな純粋な子は滅多にいないんだぞ!なのにこんな優しい子がこんな目に合うなんて間違っている。魂ごと消し去ってやろうかな?

 

 

「きっと、主の試練なのでしょう。だから今、頑張ればいつか報われる時が来ると信じています」

 

 アーシアは手を合わせ、祈りを捧げている。

 

 本当に優しい子だね。辛い目にあったのに、原因の奴等を恨まずにそれを試練だと言って頑張ろうなんて。マジでいい子だよ。こんな子を見たのは彼のオルレアンの聖女以来だな。勿論、違う世界の聖女だけど。

 

 

「俺が思うに君は間違ってはいない、君は君自身の意志で傷付いた悪魔を助けた。ただそれが周りには悪い事だと思われた。だがその君の優しさは本当のもの、そして君は間違いなく『聖女』だ。誰が何と言おうな」

 

 零は懐から金色の十字架を取り出した。そしてそれをアーシアに渡した。

 

 

「これは……なんて清らかな力」

 

 アーシアはその十字架が放つ聖なる力を肌で感じる。

 

 

「それはある知り合いに貰った物でね。俺が持っていても仕方のない物だから君にあげるよ」

 

 

「でも……」

 

 

「力のある物は、本来持つべき持ち主の元に辿り着く。これは君にこそ相応しい物だ、あっ…しまった。時間が……悪いな、俺は此処で失礼する」

 

 零は用事を思い出すと、直ぐにその場を離れる。

 

 

「あっ……行ってしまわれました……あの様な方が仰るなんて…主よ、あの方と出会えた事に感謝します」

 

 アーシアは零に会えたことを神に感謝する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~翌日 夜~

 

 

 今日は特に何もない1日だったな。さて寝るとするか。俺は眠くなってきたので、ベッドに入ろうとするが違和感を覚える。何か膨らんでいるな、という事は……やっぱり。

 

 布団を捲ってみると、黒歌・白音・オーフィスが眠っていた。毎度の事だから慣れたけど、横に5~6人が並んで寝ても少し余る位のデカいベッドだからいいんだけど………寝るか。

 

 俺も寝ようとベッドに乗ろうとした時、脳裏にある金髪を三つ編みにした少女の姿が映る。

 

 

 ……なるほど、やはりあの娘……

 

 

「分かったよ……さて行くとするか」

 

 零は黄色い光に包まれその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 ~街外れの教会~

 

 

 教会の前に光が現れると、零が姿を現した。

 

 

「此処か……堕天使の気配がする。それに人間もいるな、始めようか【ソウルコード】」

 

 右手に前にも使用していたライフルが現れる。

 

 そして零は教会の扉を蹴り破り中へ飛び込んだ。



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EP5 零の怒りと龍王降臨

 ~教会内~

 

 俺は教会の扉を蹴り破りる。中は少し荒れている、そう言えば此所に人がいるのは見たことないな。

 

 

「おやおや~、こんな廃れた教会に御用ですか?お祈り?懺悔?どちらにしても子供が出歩いていい時間ではないでしゅよ」

 

 壊れた十字架の前に白い髪の神父がいた。でもこいつ、目が逝っちゃってるな。しかも手に銃を持ってるし、殺気放ってる、しかも血の匂いがする。

 

 

「俺祈るつもりも懺悔するつもりもない。ただ知り合いを助けに来ただけだ」

 

 

「知り合い?もしかしてアーシアたんの事ですか、でも残念でした」

 

 神父は銃を向けてくる。思いっきりやる気だなこりゃ。

 

 

「アーシアたんは可哀想に天に召されることになりました、神器を抜かれて。でも、大好きな神様の所に行けるんだしいいんじゃね」

 

 今、何て言ったこいつ。何であんな、優しくていい子が殺されなきゃならないんだ?久しぶりに頭がプッツンしそうだ。

 

 

「アーシアは何処だ?」

 

 

「アーシアなら、この祭壇の下に繋がってる地下にいるよ~、でも、君はこのフリード・リヒゼンに此処で殺されるから関係ないよね!」

 

 どうやら俺を殺す気でいるらしいな、さっさと行かないとアーシアが危なそうだ。一気に行こうか。

 

 

「アヒャャャ、じゃあバイビー!」

 

 神父が銃で此方を撃とうとした。

 

 

「【メモリーコード:世界(ザ・ワールド)】」

 

 零の金色の目が光った瞬間、世界の時間が停止する。

 この停止世界の中で動けるのは零のみ、零はフリードに接近すると、拳を握り締めた。

 

 

「オラオラオラオラオラオラ!オラァァァァァ!」

 

 凄まじい回数の拳を放つと、最後に回し蹴りを食らわせる。

 

 

「そして時は動き出す」

 

 やがて世界の時間が動き始め、停止世界で放ったラッシュと回し蹴りのダメージと衝撃がフリードに襲い掛かる。

 

 

「うぎゃぁぁ…………(キラーン」

 

 悲鳴をあげる前に教会の天井に穴を開けて飛んで行った。

 

 

「ふぅ……行くか」

 

 先程、フリードが言っていた祭壇を蹴り壊すと地下へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 ~教会の地下~

 

「あぁぁぁぁぁぁ」

 

 俺は地下空間に大勢の黒服の者と先に現れた女の堕天使がいるのを見た。

 アーシアは一番奥の十字架の様なものに張り付けられている。なんか怪しい光放ってるし、アーシアは苦しそうに悲鳴を上げている。そして、アーシアの中から光を放つ指輪が姿を現した。

 

 

 何だ?これは?こんな事が許されるのか?

 唯、一生懸命に生きている彼女を苦しめて、命を取ろうとしている。

 

 俺は怒りで自分の中の何かが切れたのが分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~アーシアside~

 

 私は今、堕天使レイナーレ様に変な機械に張り付けられている。これは神器を私から引き剥がす物らしい。その証拠に、私の神器【聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)】は私から離れてレイナーレ様の手にある。昔聞いた事がある、神器を抜かれた人間は死んでしまうと。なら私に残された時間は少ないだろう。

 

 段々と薄れいく意識の中である人の事を思い出した。私の話を聞いて、怒ってくれた、そして笑いかけれてくれたあの人の事を。

 

 主よ、願わくば最後に一度だけでもあの人に合わせて下さい。

 

 

 

 

『ふざけんなぁぁぁぁ!』

 

 

 幻聴だろうか?あの人の声が聞こえた。私は最後の力を振り絞り、目を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~零side~

 

 俺は我慢できずに飛び出した。

 

 

「ふざけんなぁぁぁぁ!」

 

 零は激昂と共に黒服達と堕天使レイナーレの前に現れた。

 

 

「貴様は!?この間の!!」

 

 レイナーレは、一誠を襲った時に邪魔をしてきた人間だと言う事に気付く。だが前の時は違っている事がある。

 

 

「あの時………貴様を見逃したのは俺の過ちだったようだな。あの時の自分をぶん殴ってやりたいと思うよ」

 

 それは本気で零を怒らせた事だ。その証拠に零から凄まじい殺気が放たれている。一誠の時は感じなかった、その理由は一誠の時は未だ一誠は生きていた。レイナーレを倒し、一誠を治療しても助けられた。

 だが今回は既に神器(セイグリット・ギア)がアーシアから抜かれた。神器(セイグリット・ギア)を抜かれた人間は絶対に死んでしまう。零はそれを知っていた、そしてこのままではアーシアが死ぬ事も十分に理解しているが故にあの時にレイナーレに止めを刺さなかった自分に怒りを覚えていた。あの時にレイナーレに止めを刺して居たらアーシアがこの様な目に合う事はなかったからだ。

 

 

「何故……アーシアをこんな目に合わせた?」

 

 零はゆっくりと歩を進める。

 

 

「簡単な事よ、私はこの神器聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を手に入れたかったのよ。この至高の力を手に入れれば私の堕天使としての地位は盤石に。そして偉大なるアザゼル様やシェムハザ様の力になれる」

 

 レイナーレはアーシアから奪った聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を見てそう言った。

 

 

「それで?」

 

 

「それにその子も幸せでしょう?異質な力を持つ者は他者から否定される。だったら此処で大好きな神様の所に行かせてあげたんだし感謝して欲しいくらいよ」

 

 レイナーレは笑いながらそう言った。

 

 

「そうか………なれば貴様は絶対に許さない。【多重結界・断罪の間(ジャッチメント・フィールド)】【ソウルコード:超機人】」

 

 零の紅い右眼が光り出すと、零の周りに蒼の光が現れると凄まじい光を放ち始めた。その瞬間に、辺りは蒼い光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~一誠side~

 

 

「部長!アーシアを助けに行かせて下さい!!」

 

 一誠は先日知り合ったアーシアが目の前でレイナーレに攫われた事で助けに行こうとしていたが、主であるリアスがそれを許さなかった。

 

 

「駄目よ、これは貴方だけの問題ではないのよ……これh…!?」

 

 リアスは途轍もない力を感じ外を見た。そして眷族達も同じく外を見る。外の景色は変わっていた、街の建物などはそのままだ。しかし空に巨大な魔方陣が浮いていた。

 

 

「これは結界でしょうか?……ですがこの様な結界見た事はありません」

 

 リアスのクイーンである朱乃がこれが結界だと気付くがどう言った物なのかは分からない様だ。

 

 

「部長!アレ!!」

 

 一誠はある物を指差した。皆がその方向を見ると、蒼い光柱が立ち昇っていた。

 

 

「何だアレは?」

 

 祐斗が光柱から何とも言えぬ力の波動を感じた、そして次の瞬間に光柱から何か長い巨大な物が現れた。

 

 

「アレは……龍?」

 

 それは蒼い龍だった。蒼い龍は空中で蜷局を巻く様に飛んでおりその視線は下にある何かを見つめている。

 

 

「あの方向って……アーシアのいた教会があった筈だ!?」

 

 一誠がそう言うと、全員が反応する。

 

 

「取り敢えず、行ってみましょう。あんな物が私の管轄下に現れるなんて」

 

 リアスは直ぐにその方向に向かって翼を広げ飛び立った。



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EP6 龍皇の裁きと幻の中の光

 ~教会~

 

 

「なっなに……何よ!アレ?!」

 

 堕天使レイナーレと黒服達は教会の地下空間の天井に空いた穴から、空に浮かぶ蒼い龍を見ていた。近くに居た筈のアーシアは居らず、目の前にいた零も居ない事に気付く。

 

 

「アーシアがいない………聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)はどこ!?」

 

 先程まで手に在った筈のアーシアの神器・聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)がない事に気付く。

 

 

「まさか!?」

 

 レイナーレは天空に浮かぶ龍を見た。そして龍の頭の上に乗る零をみた。零の腕にはアーシアが抱かれており、聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)もその手の中に在った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鋼鉄の蒼き龍の頭の上に乗っている零は教会が在った所を怒りが篭った目で見降ろしていた。教会は零の乗っている龍が出現した時に吹き飛んだようだ。

 

 

「愚かな堕天使と退魔師(エクソシスト)共よ。アーシアと罪なき人々の命と未来を奪った罪、その身をもって贖え……【応龍皇】!!」

 

 

 《ガアァァァァァァァァァ!》

 

 応龍皇と呼ばれた鋼鉄の龍は全身から蒼い雷を放ち始めた。すると先程まで星が見えていた筈の空が暗雲に覆われる。

 

 

「【龍王雷槍】」

 

 零の言葉と共に応龍皇の眼が紅い光を放つと、空を覆う暗雲から蒼い雷が教会に落ちた。それは一瞬の内に起こった事で在ったが、教会の在った場所には巨大なクレーターが出来ていた。

 応龍皇はゆっくりと地上に近付いて降りていくと、身体を地面に降ろし頭を地面に付けた。零は応龍皇の頭から降りるとアーシアを地面に降ろした。

 

 

「【死を繰り返し苦しみは永劫に(ヘルズ・ターン)】」

 

 零がそう呟くと、光が現れそこからボロボロのレイナーレが姿を現した。

 

 

「ぐっ…かっはぁ」

 

 レイナーレは今にも死んでしまいそうだ。だが教会が消し飛びクレーターが出来る程の雷を受けて生きていられるはずがない。

 

 

「ぐぅ…なんで(確かにあの時に死んだ感覚はあった、なのに何故?)」

 

 レイナーレは自分が生きている事が不思議に思わない訳がない。

 

 

「残念だが、此処は断罪の間(ジャッチメント・フィールド)の中だ。名の通り断罪を行う場所、此処では俺が許すまでは死ねないんでね」

 

 

「なっ!?」

 

 レイナーレは先程死んだ時の事を思い出した。死ぬという恐怖とこれまでに感じた事のない痛み、それが目の前の人間が許すその時まで繰り返されると思うと一気に血の気が引いた。

 

 

「やれ…」

 

 短い言葉と共に応龍皇の目が再び光ると先程とは規模が小さくなっているが、蒼い雷がレイナーレに落ちる。そして再び結界の効力により蘇える。また雷が落ち、蘇える。

 それを数度繰り返すと、レイナーレは恐怖のあまりに涙を流す。

 

 

「ごっごめんなさい、ゆっ許して…おねg」

 

 零はそんなレイナーレに冷たい眼を向けている。

 

 

「フン………」

 

 

「「「待て!」」」

 

 声と共に3人の黒い翼を持つ堕天使が現れた。

 

 

「仲間か………なら序でに消しておくか?」

 

 

「ッ!私達はどうなってもいい!だからレイナーレ姉様は見逃して欲しいっす!」

 

 

「我等ではお前には勝てない、ならば我等の命と引き換えに」

 

 

「レイナーレ様を見逃して貰いたい!」

 

 ゴスロリ服の少女の姿をした堕天使、女性の堕天使、コートを着た男性の堕天使の順にそう言った。

 

 

「ミッテルト、カラワーナ、ドーナシーク」

 

 レイナーレは自分の部下達が自分を庇っているのに気付き、3人の姿を見た。

 

 

「………貴様等にも仲間意識と言うものがあったか(さて……どうするか、此奴等を此処で見逃して他の者に被害が出ても困るな)」

 

 

 

『これはどういうこと!?』『なっ何がどうなってますの!?』『しかもさっきのデカい龍がいるぞ!?』『でっデカい』

 

 声をした方向を見ると、リアス達が居り教会が在った場所に出来ているクレーターを見て驚いていた。

 

 

「遅い……まぁいい。見逃せか……本来で在れば見逃すつもりはないんだが……貴様等に免じてそこのレイナーレとかいう堕天使はこの場は許そう。しかし(パチン」

 

 零はリアス達を無視すると指を鳴らす。レイナーレ、ミッテルト、カラワーナ、ドーナシークの前に紙が現れる。

 

 

「それは【裁神への誓い(ライズ・オブ・ギアス)】。内容は『①これからは絶対に無益な殺生はしない。②天王理 零の邪魔をしない。③天王理 零の家族・友人を傷付けない。④この後は然るべき所で裁きを受け、罪を償う。以上を守るのであれば、天王理 零は危害を加えない』と言う内容だ。その制約に破れば、貴様等に待っているのは死だ」

 

 

「「「「!?(ゾクッ」」」」

 

 4人の堕天使はこれまで感じた事のない恐怖に襲われる。

 

 

「嫌なら断ればいい。その代わりレイナーレ、貴様を見逃す代わりにその3人の誰かが死ぬ事になるがな」

 

 

「っ!分かったわ……だからこの3人は見逃してあげ…下さい」

 

 レイナーレは零に向かい土下座する。プライドの高い彼女は、絶対に頭を下げないと思っていたのか零は少し驚いている。

 

 

「それはできん。何故なら、貴様がそれにサインしても、他の3人を使えばこれまで通りに誰かを傷付ける可能性があるからな。全員にサインして貰うぞ、嫌なら全員消す」

 

 

 《グルルルルル》

 

 応龍皇が唸ると、堕天使達は脅える。

 

 

「わっ分かったわ」

 

 全員が応龍皇に睨まれた事で脅えながらも、自分達の血で誓約書に名前を書いた。名前を書き終えると、誓約書が光り出し4人の胸の所で消えた。4人は胸の所を確認してみると、何かの紋章の様な物が出来ていた。

 

 

「それは誓約の印、決して消える事はない。先程も言った様に、破れば消すからな……おい!リアス・グレモリー!!」

 

 零はリアスを呼んだ、リアス達は驚き過ぎて困惑していたが零の声で我も戻った。

 

 

「貴方は、天王理 零!?これは貴方の仕業なの!?どういうつもり!?」

 

 

「どういうつもりも、こういうつもりもない。お前の管轄地で起きた事だろうが、ちゃんと始末しやがれ」

 

 零は向けていた視線を既に息のないアーシアに見た。

 

 

「アーシア?!」

 

 一誠がアーシアに気付き、近付き安否を確認する。

 

 

「アーシア?……アーシア?!どうしたんだよ!?」

 

 息絶えているアーシアからの返事はない。

 

 

「どう言う事だよ……どう言う事だよ!レイ!ッ!!」

 

 一誠は零を見るが、零から溢れ出る力を身で感じ押し黙る。

 

 

「一誠、少し黙れ。後邪魔だ、退いていろ」

 

 一誠にそう言うと、零はアーシアの近くにしゃがみ込んだ。

 

 

「さぁ……お前はこの結末をどうみる?俺は嫌だな……こんなに心の優しい子が罪もないのに死ぬのは」

 

 零がそう言うと、アーシアの胸に掛かっている金色の十字架が光り始めた。

 

 

「やはり……お前もこれを受け入れぬか…ならば、【ソウルコード:・・・・・・・・】」

 

 零の右眼が光り始めると、それと共鳴する様にアーシアの十字架も光を強くする。

 

 

「もしもの為に渡していたものだが……こうも早く使う事になるとは予想外だったがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~アーシアside~

 

 

 アレ?此処は何処でしょうか?何故、私はこんな真っ暗な所にいるのでしょうか?

 

 アーシアは現在、真っ暗な空間に居た。

 

 

 

『こんにちわ』

 

 私は声がした方向を見てみると、綺麗な金髪の女性が居た。何故か鎧の様な物をつけ剣と旗を持っていたが、とても優しい感じがする。そして何より彼女から放たれる光は暖かかった。

 

 

「こっこんにちわ。あの此処は何処なのでしょうか?」

 

 

『此処は貴方の精神の世界。私は一時的に貴方の精神に干渉しています、アーシア・アルジェント』

 

 

「何故私の名前を?」

 

 

『フフフ、私は貴女を見ていました。他者に否定され泣いていた事も、否定されても変わらぬその心の強さも』

 

 

「どっどうして?」

 

 

『強いて言うなら貴女の目指すものは、私が目指す物と同じだったから』

 

 

「えっ?」

 

 アーシアはどう言う事か、尋ねようとしたがアーシア自身も光に包まれた。

 

 

『さぁお帰りなさい。未だ貴女にはやるべき事が残っています』

 

 

「あっあの!貴女は一体!?」

 

 遠ざかる女性にアーシアはそう尋ねた。

 

 

『アーシア、貴女は生きなさい。生きて貴女の為すべき事をなすのです』

 

 その言葉を最後にアーシアの視界は光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~零side~

 

 

「……戻ったか」

 

 アーシアの指に嵌められた聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)が輝きを取り戻すと、アーシアは息を吹き返した。

 

 

「あれ……私…」

 

 

「目を覚ましたか。気分はどうかな?」

 

 零はアーシアに尋ねた。

 

 

「えっ…あっはい……とってもいい気分です。アレ?さっきの女性は?」

 

 

「そうか……彼女に会ったか。やはりそれはお前が持つべき物だったらしいな」

 

 そう言って、金の十字架に触れる。

 

 

「ふぅ………疲れた……ん?何か大切な事を忘れている様な?」

 

 何かを忘れている様な気がしていたが、一先ずは目の前の事に集中する事にした。

 

 

「零さんが助けて下さったんですか?」

 

 アーシアは身を起こし、零に尋ねる。すると零はアーシアの頭を撫でた。

 

 

「いや俺じゃない、何処かの聖女様が助けてくれたみたいだ。俺はその手伝いをしただけだ」

 

 そう言って立ち上がると、面倒そうな表情をしてリアスの方を見た。

 

 

「堕天使達はそっちで任す。何とかしてくれ、俺は少し疲れた………」

 

 

「ちょっとこれはどう言う事か、教えて貰えないかしら?特にこの龍の事とか」

 

 

 《グルルルルルル》

 

 応龍皇がリアスを睨む様に唸る。そして全身から雷を出している。

 

 

「おいおい、止めろ。此奴等には危害を加えるな」

 

 

 《ウゥゥゥ(コクッ》

 

 応龍皇は零の言葉に頷くと、雷の放出を止めた。

 

 

「わぁ……凄いです、この大きなドラゴンさん。凄く大きいです」

 

 

「まぁ此奴は超が付くほどデカいからな。取り敢えず、コレ直さないと駄目だよなぁ?」

 

 そう言いながら、自分が応龍皇に攻撃させた事で開いたクレーターを見て呟いた。

 

 

「仕方ない。丁度、結界は張ったまんまだし……(パンッ」

 

 零が手を叩くとクレーターが消え、教会が元通りになる。すると大きな溜息を吐いて、疲れた表情をしている。

 

 

「えっ……なっ何が起きて」

 

 

「どうでもいい話は置いておいて(パチン」

 

 零が指を鳴らすと天に浮かぶ魔方陣が消えた。すると辺りは普段通りの景色に戻った。近くに居た応龍皇の姿も既に消えていた。

 

 

「さて………あぁもぅ朝か、帰って朝飯の用意しないと」

 

 零は朝日が昇り始めているのを見ると、朝食の心配をし始めた。

 

 

「ちょっと待ちなさい!この堕天使達の事は私の方で預るけども、まずは貴方の事を説明して貰わないと私達も承諾できないわ」

 

 

「面倒な………あんまり遅いと大変な事になるけど?」

 

 

「大変なこと?どう言う事だよ、零?」

 

 

「家の子達は寝起きが超悪い。それに朝飯を食べさせないと、更に機嫌が悪くなる。結果、この街は火の海になるけど?」

 

 

「「「「はぁ!?」」」」

 

 全員は零の言葉に訳が分からない様だ。寝起きが悪く、腹が減っていると確かに機嫌が悪くなるだろう。しかし何故、それが街が火の海になるのかが分からないからだ。

 

 

「俺自身の力を説明してもお前等の頭じゃ理解できないだろうからな。元来、俺には説明する必要なんざないんだが………まぁいい。説明してもいい、簡単にだけど。だがまずは家に帰って飯を作り始めないとアイツ等が不機嫌になるから、今日の所は帰らせて貰う。アーシアは、取り敢えず此奴等の指示に従えばいい。なに悪い様にはしないだろうから。じゃ!」

 

 零は本当に急いでいるのか、その場から消えた。

 

 

「はぁ……訳が分からない事だらけだけど……取り敢えずはこの堕天使達ね」

 

 リアスは一先ず堕天使達をどうするかを思案し始めた。



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設定・用語①

メモリーコード(我が記憶は我が力)

 

 零が視た力・技・能力などを完全に使う事が出来る力。使用時には零の左の金色の瞳が光り発動する。

 

 オリジナルより力は少し劣っているがそれは零自身の力で補助しているので実際にはオリジナルと同等もしくはそれ以上の力を発揮する。

 

 しかし、発動する力が大きいと一時的に使用できなくなる。その間は視力を失う。

 

 

 

世界(ザ・ワールド)

 

 とある世界の吸血鬼の使う特殊な力。発動すると世界の時間が停止する。発動者自身は問題なく動ける、それ以外の物は全て停止する。しかし同じく時を操る者は停止させる事ができない。

 

 どれ程の秒数を止めていられるかは不明。

 

 

 

 

 

 

ソウルコード(魂の絆が与えし力)

 

 零が絆を深めた者達の力を扱う事ができる力。使用時には零の右の紅い眼が光り発動する。

 

 このソウルコードには主には機体の力が宿っている。現在は必要がないため、サイズが小さくなり鎧の形で出て来る。今回の様に【応龍皇】自身を呼び出す事も可能。

 

 機体自身には意志はそのままある機体が多いが【REIDEEN】の様に意志がない機体もある。

 

 機体に意志がなくとも、零自身が完全にコントロールしているので問題ない。

 

 

 

【応龍皇】

 

 太古の文明が開発した半生体機動兵器の1つ。「超機人」と呼ばれる種類の機体で、応龍王はその中でも最上位の位置するとされる機体の1つ。

 

 巨大な身体に、鋼鉄の蒼い鱗と蒼い雷を待っている。

 

 応龍皇には意志がある様で、リアスが零に問いかけようとした時に、応龍皇がリアスを攻撃しようとした。

 

 何故、応龍皇が零に従っているのかは不明。しかし零に危害を加えようとする者には容赦なく天から雷を落とす。

 

 これがオリジナルの機体なのか、それとも本来の所持者と絆を得て手に入れた者なのかは不明である。

 

 

 

 武装・必殺武器

 

「龍麟乱舞陣」

 

 応龍皇の口から雷が放たれ、広範囲の敵を撃つを事が出来る。

 

 

「龍麟機」

 

 応龍皇の全身にある鱗から放たれる【龍麟機】が敵を囲み、雷で拘束しながらダメージを与える。

 

 

「龍王豪雷槍」

 

 天高く舞い上がった応龍皇の口から放たれる雷。最大出力なら大陸を砕く事も可能。

 

 

「龍王雷槍」

 

 雷を口から発射せず、応龍皇の眼が光ると同時に天空の覆う暗雲から敵に向かい雷が落とされる。

 

 

 

 

 

 

 

 ・アーシアに渡した金色の十字架

 

 聖なる力を宿す金色の十字架。元々は誰かの持っていた物だが、何かの理由で零の受け継がれた。

 

 しかし零がこの十字架の本来の持ち主はアーシアであると直感しアーシアに渡した。

 

 そして神器を抜かれて死を迎えたアーシアの胸元で光り出し、アーシアの精神世界に現れた鎧を纏い、剣と旗を持った女性が現れた。この人物がこの十字架の持ち主なのかは不明。



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EP7 同居人が増えました

 ~事件から数日~

 

 零は今日まで登校せず、やっと登校してきたのだが、何故か全身に包帯を巻いている。そして松葉杖をついており、不機嫌な顔をしていた。

 

 

「………はぁ……」

 

 

「だっ大丈夫かレイ?」

 

 零が横を見てみると何時もの変態3人組がいた。

 

 

「レイ、どうしたんだそれ?」

 

 

「まぁ……色々と在ってな。少しの間、絶対安静だったんだ」

 

 一誠はそれを聞くと、零に少し近付いた。

 

 

「もしかしてこの間の戦いの時の傷か?(ぼそっ」

 

 

「そんな訳ないだろう、あんな雑魚に俺が傷付けられる訳ないじゃん。これは………そう言えば元はと言えばお前等の所為じゃん」

 

 零がそう言うと一誠を睨む。

 

 

「えっ!俺の所為!?」

 

 

「……まぁいい。どうせ、あの部長殿の事だから話を聞かせろとか言ってるんだろ?」

 

 

「えっ…うん、そうなんだけど…その怪我じゃ」

 

 

「あぁ、構わん。問題ない」

 

 

「それじゃあ放課後に」

 

 零は放課後に一誠と共にオカルト研究部の部室に行く事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~オカルト研究部 部室~

 

 

 放課後に零は一誠と共に部室にやってきた。部室に入った時は零の姿に部員全員が驚いていたが、問題ないとの事で現在は包帯は全て外し、ソファーに腰かけている。

 

 

「ぁ~やっと解放された」

 

 そう言いながら肩を回したり、首を回したりしている。

 

 

「それで……色々と聞きたい事があるんだけど…」

 

 

「その前にアーシアはどうした?」

 

 零は先に助けたアーシアがどうなったのか聞いた。笑顔なのだが「アーシアに何かしててみろ、この場を消し去ってやるぞ」と言ってる様にリアス達には思えた。身体からは何やら凄い力が溢れているが、皆はあえて見ないふりをした。

 

 

「レイさん!」

 

 部室の奥からアーシアが出て来ると零に飛び付いた。

 

 

「うぉ?!アーシア、大丈夫だったのか?」

 

 

「はい!」

 

 零がアーシアの安否を聞くと、アーシアは笑顔で返答する。それを聞くと、身体から出ている力は収まった。力が収まったのを確認するとリアス達は安堵する。なんせ、こんな所で応龍皇を出されたら大変な事になるからだ。

 

 

「それで話を聞かせて貰えるかしら?」

 

 

「……面倒だし、話したくない(話したら色々と面倒な目に合いそうだし、オーフィス達の事がバレたら余計面倒だ)」

 

 

「ッ!……そう言うと思ってたけど……でも話して貰わないと困るわ。神器(セイグリッド・ギア)も所持していない人間が堕天使を圧倒し、巨大な力を持っている。これを危険視しない訳がないでしょう?」

 

 それは勿論だろう、零の正体も力の事も全く分からないリアスにとって零の目的がハッキリしない以上は敵になるかも知れない。もしあの雷が自分や愛しい眷族達に向いたらと考えるとリアスは震えてしまう。

 

 

「確かに………【悪魔側】のこの地の管理者のお前にとっては俺みたいなイレギュラーがいたら困るだろうからな。まぁ当然の反応だろうな……けど」

 

 零の紅と金の瞳が鈍い光を放つ。

 

 

「【悪魔】や【堕天使】がこの地にいるなら、それを管理するのもお前の役目だと思うんだが……そこの所はどうなんだ?」

 

 

「ッ!?……それはその…」

 

 

「まぁ済んだ事は置いておいて…………アーシア、済まなかったな」

 

 突然、アーシアに謝る零。

 

 

「えっ?どうしてレイさんが謝るんですか?」

 

 

「もう少し早く、助けに行っていればお前は死なずにすんだ」

 

 

「そっそんな…現に私はこうしてレイさんに助けられた訳ですし」

 

 

「ちょっと待った!!!」

 

 突然、一誠が声を上げる。

 

 

「アーシアが死んだって言ってるけど、現に生きてるじゃんか!」

 

 

「だがあの時に、お前もアーシアが死んでいたのを分かっていた筈だろう一誠?」

 

 そう、先の事件の際に一誠はアーシアの身体が冷たくなっているのと息をしていないのを確認していた。

 

 

「そう言えば真っ暗な所で、綺麗な女性が現れたんですけど……アレは誰だったんでしょう?」

 

 

「あぁ……それはお前の首に掛かっている元々の十字架の持ち主だよ」

 

 

「えっこの十字架の……」

 

 アーシアは零から貰った十字架に触れた。

 

 

「彼女自身も君の事を気に入ったみたいだから、また力を貸してくれるだろう……彼女の名前は次に会った機会に聞けばいい。そう言えば、アーシアはこれからどうするんだ?」

 

 

「えっと……今は此処で寝泊まりさせて頂いてます」

 

 

「そうか……まぁ悪魔にはされてないみたいだし……」

 

 

「それはアーシア本人が拒否したからよ。貴方が悪魔になれないなら、自分もならないそうよ」

 

 

「何で俺が基準になってるのかは分からないけど………それでこれからアーシアはどうする?」

 

 零がそう言うと、アーシアが顔を真っ赤にしている。

 

 

「あっあの……できればその……レイさんの御傍に居させて頂けないでしょうか?」

 

 

「俺の家に来たいと?……別にいいけど……あぁでも……アイツ等の事も紹介しないと……まぁいいかな」

 

『ピリリリリリリリリ』

 

 電子音が鳴り響くと、皆は自分の携帯を見る。

 

 

「あっ俺だ……!?」

 

 零が自分の携帯を出すと、そう言った。そして携帯の画面を見ると固まる。

 

 

「はい!もしもし!……母様、一体なんの御用で?…えっ?はい…はい……では時間が在れば其方に赴きます。分かってます、出来るだけ被害は出ない様に…えっ?関係のない人は絶対に巻き込まない様に……分かってます。はい、それで悪魔やら堕天使の方は?……そうですか………失礼します」

 

 携帯を切るとポケットに仕舞う。何故かその表情は暗い。

 

 

「はぁ……母様の命で在れば仕方ないか。しかしもう少し先になるか……【ソウルコード:ライガー・召喚】」

 

 右眼の紅眼が光ると共に、光が現れ白音が出て来た。

 

 

 

「アレ……あっ天王理先輩」

 

 

「悪いな白音。少し頼まれてくれるか?」

 

 

「何ですか?」

 

 

「えっと……この子…家に連れて行って欲しいんだけど」

 

 白音は零の横にいるアーシアを見た。

 

 

「誰ですか?」

 

 

「えっはい、私はアーシア・アルジェントと申します」

 

 

「全て理解しました………っでどうしてこうなったんですか?」

 

 何か白音からゴゴゴゴゴゴゴッと言う擬音が聞こえてくる。

 

 

「ぁ~……白音、凄く怒ってる?」

 

 

「怒ってません………ただ無性にお人好しフラグ立てた先輩を殴りたいだけです」

 

 

「訳が分からないよ…………取り敢えず彼女を連れてってくれるか、訳は後で話す。それとリアス・グレモリー、俺はお前等が俺の邪魔をしなければ敵対するつもりはないからな。俺自身の事はお前等に話しても、お前等の許容量を超えるから今は話すつもりはない」

 

 

「それは何時かは話してくれるって思っていいのかしら?」

 

 

「考えておく。それと一誠」

 

 

「ん、俺?」

 

 

「お前、自分の神器(セイグリット・ギア)が何か分かったのか?」

 

 

「あっあぁ……」

 

 一誠の左手が赤い光に包まれ籠手が装備される。

 

 

「やっぱり……赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)か……まぁ頑張れ」

 

 

「何でイッセー君の赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)の事を?」

 

 黙っていた朱乃がそう聞いた。

 

 

「何となく……だ。今はそれで納得しろ…じゃあ、白音、2人にもアーシアの事を紹介してやってくれ。夕食の時間までには帰れると思うけど、もし2人が腹減ったって言ったら作ってやってくれ」

 

 零がその場で1回転すると、制服から白い衣を纏った姿になる。

 

 

「じゃあ頼むぞ、白音」

 

 

「…はっ…はい!」

 

 一瞬、零の姿に見惚れていた白音だが声を掛けられて我に帰る。そして零はその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~数時間後 天王理宅~

 

 

「と言う事があった」

 

 

「フフフ、そうなんですか」

 

 

「そうにゃ、ご主人様は超鈍いにゃ」

 

 

「鈍すぎます。色々な面で」

 

 何故か、3人に打ち解けているアーシア。この数時間の間に何が在ったのだろう?そう考えながら扉の隙間から覗き込んでいる俺、これじゃ変な人だな。と言うか自分の家で何でこそこそしてるんだ?

 

 

「ただいま~」

 

 

「「「「お帰りなさい」」」」

 

 4人がジッと零を見つめている。

 

 

(ぜろ)…我、お腹空いた」

 

 ソファーに座っているオーフィス。

 

 

「はいはい……ちょっと待ってろ。でもアーシア、本当にこんな所に住んでいいのか?」

 

 

「はい!オーフィスちゃんや黒歌さんの話も聞きましたけど、彼女達が良い方だって分かりました。それに私はレイさんの御傍にいたいですし」

 

 

「何で俺の傍になんか居たいんのか分からんけど、居たいならこの家にいればいい」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 満面の笑みでアーシアがそう答えた。零は思った「この子は癒しだな」と。

 

 

「フラグたてたにゃ……」

 

 

「またライバル増えた……」

 

 

「本人が気付いていないのが性質が悪いです」

 

 黒歌、オーフィス、白音の順に言い、ジト目で零を見る。

 

 

「どうした3人とも?」

 

 

「「「鈍感」」」

 

 

「はっ?鈍感?なんで?」

 

 言葉の意味が全く分からない零が首を傾げる。

 

 

(ぜろ)…お腹空いた。早くご飯」

 

 

「えっあぁ……」

 

 零はエプロンをつけると、調理を始めた。

 

 

「あっそうだ、アーシア。この際に言っておくけど、俺の本当の名前は(れい)じゃなくて(ぜろ)だから。まぁ好きな方で呼んでくれ、後、オーフィス達の事は秘密にしていてくれ。2人の事がバレたら魔王やら堕天使やらに追われる事になるから」

 

 

「はい、分かりました。でもどうして違うお名前を名乗られてるんですか?」

 

 

「日本の苗字にゼロって合わないからな。日本の漢字は1つの字で幾つもの読み方があるからな、レイって方が未だしっくりと来るんでな」

 

 

「そうなんですか……日本語って難しいですね、そう言えばさっき黒歌さんが仰られていた【よ〇い】【〇ぎり】とかってどう言う意味ですか?」

 

『ビシッ』

 

 零はアーシアの言葉に固まった。

 

 

「く~ろ~か~ちゃ~ん」

 

 零が笑みを浮かべながら、黒歌を見る。

 

 

「にゃ?!ごっご主人様、眼が笑ってないにゃ!」

 

 

「無垢なアーシアに何を教えてるんだ!この変態猫がぁ!!」

 

 

「ひゃ~!此処は逃げるが勝ちにゃ!行こう白音!」

 

 

「私まで巻き込まないで下さい」

 

 

 こうして楽しい時間は過ぎていく。



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第2章 戦闘校舎のフェニックス
EP8 ホスト野郎に喧嘩を売りました


~駒王学園 オカルト研究部 部室~

 

 アーシアの事件が解決し数週間。アーシアもこの学園に通っている。転入当初はアーシアの「レイさんの家でお世話になっています」発言で一時期クラスの男子達から常時睨まれていた零。

 本人は全く気にしていなかったが、満面の笑みで零の話をするアーシアに一誠を含めた男子達が零に襲い掛かったが返り討ちにされたのは言うまでもない。

 

 

「姫島朱乃、この紅茶中々に美味いぞ」

 

 

「本当にとっても美味しいです」

 

 

「美味しいです」

 

 現在、オカ研の部室に居る零、アーシア、白音。何故3人が此処に居るのかと言うと、零が前に朱乃の紅茶を気に入った事で放課後は部員でもないのに部室に来る様になった。しかしそれだけでなく、零が転入して間もないアーシアがオカ研の部員達とも仲が良い事も考えてだ。

 

 

「うふふ、そう言って頂けると嬉しいですわ」

 

 

「だが……紅茶が美味いが菓子がないのはな」

 

 

「ごめんなさいね、今日はケーキも切らしてまして」

 

 

「まぁ……俺が出せばいい話だな(パチッ」

 

 零が指を鳴らすと、ケーキが現れる。

 

 

「わぁ~凄いです、レイさんどうやって出したんですか?」

 

 

「これは前に作っておいたのを、俺が作った空間に入れておいただけだ。俺の作った空間では時間が停止してるから作りたてのまま保存できるって事だ」

 

 アーシアの質問に答えた零なのだが、それを聞いたリアス達が疲れた様な顔をしている。

 

 

「この数週間、貴方がすることに驚き過ぎて疲れたわ。塔城さんは驚かないの?」

 

 

「この程度で驚いていたら、ご主人様とは一緒に居れません。それに私はもっと在り得ない事を目にしてるんで問題ありません」

 

 リアスの言葉に白音はケーキを切り分けながら答える。

 

 

「くぅ~……羨ましい…羨まし過ぎるぞレイ!あの塔城白音ちゃんにご主人様なんて呼ばれるなんて!アレか!?夜も御奉仕とかさせてるのか!?」

 

 一誠が涙を流しながら悔しそうに叫ぶ。

 

 

「そんな事をさせた事はない。俺にそんな趣味はない、白音がそう呼んでいるだけだ」

 

 

「ご主人様はご主人様ですから………私的には夜の……ごにょごにょも(ぼそっ」

 

 白音は顔を真っ赤にしながら、そう呟いた。

 

 

「……少し羨ましいわね。好きな人と居れるのって(ぼそっ」

 

 リアスが哀しい表情で呟く。

 

 

「リアス……」

 

 それに気付いた朱乃は心配した表情でリアスを見つめている。するとリアスの近くに魔方陣が現れ、メイドが現れた。

 

 

「お嬢様、失礼します」

 

 

「グレイフィア、何の用かしら?あの話なら」

 

 

「実は……」

 

メイドが何かを言おうとした瞬間、部室の空気が一変した。そして、突然魔方陣が浮かび上がると炎が噴き出した。一誠以外のオカ研のメンバーは魔法陣を睨み付け、アーシアは驚いて零の後ろに隠れているが、零と白音は大して気にしていない様だ。

 

 

「ふぅ…人間界は久しぶりだな。会いに来たぜ、愛しのリアス」

 

 炎と共に現れたのはホストの様な顔をした男だった。そしてリアスに対し厭らしい顔をそう言った。

 

 

「おい、木場。何だあのホストみたいなのは?」

 

 零は祐斗に聞いた。

 

 

「フェニックス……上級悪魔で、部長の……婚約者だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ライザー、私は貴方とは結婚しない!」

 

 

「俺もなぁリアス、フェニックス家の看板背負ってるんだよ。名前に泥を塗られる訳にはいかないんだ」

 

 リアスの顎に手を当ててそう言うライザー。

 

 

「俺はな、お前の下僕を全て燃やしてでも冥界に連れ帰る。何ならお前の眷族も含めて面倒を見てやろうか?そうすればお前も納得するだろう。野郎共は家の雑用でもやらせればいい、女の方はお前共々可愛がってやるよ」

 

 そう言って、朱乃、白音、アーシアの順に品定めをする様な眼で見る。

 

 

「人の家族を気持ち悪い目で見るな、下種が(バシャ」

 

 白音とアーシアを見られた零は、立ち上がるとライザーの頭に飲んでいた紅茶をかける。

 

 

「貴様ぁ!」

 

 紅茶を掛けられたライザーは零を殺気を含んだ目で睨む。

 

 

「あっこっちの方が良かったか(バシャ」

 

 

「ぎゃああぁぁぁぁぁっぁぁ!!!」

 

 試験管の様な物に入った水を掛けると、ライザーの顔が炎で焼けた様に爛れる。零が掛けたのはアーシアに貰った『聖水』、悪魔は聖なる物を苦手とする。天使や堕天使の光、十字架、聖水、悪魔はそれらに触れただけでその身が焼ける。だが普通の聖水なら上級悪魔に効かないが、零が力を込めたことで聖水の力が倍増されたのだろう。

 

 

「貴様ぁぁぁぁっぁ!!!」

 

 ライザーの傷が炎により癒されていく。フェニックスは炎の中から蘇える不死鳥、傷を負っても炎によって治癒していく。ライザーは炎を纏わせた手で零に殴り掛かる。

 それを見ると白音が動こうとするが、突然光と共に金色の鎧を纏った男が現れ遮られる。

 

 

「我が王に手は出させん」

 

 

「何者だ、貴様!?」

 

 目の前に現れた男を睨み付けるライザー。しかし男は全く動じていない様だ。

 

 

「久しぶりだな、お前がこっちに来るなんてどうかしたのか?」

 

 零は男にそう言うと、男は零の方に向き直る。

 

 

「はい、実は問題がおきまして……これを」

 

 男は零に紙を渡すと、零はそれに目を通した。

 

 

「………ちょっと足りなかったか。これを使ってくれ」

 

 零は鞄の中から黒いカードを取り出すと、男に渡した。

 

 

「はい。それと偶にはこちらにも顔を出して下さい、子供達も寂しがっています。それに他の皆も」

 

 

「そう言えば会ってないな。分かったよ、時間が開いたら行こう。子供達や皆にもそう伝えてくれ」

 

 

「分かりました……それでこの悪魔は消しますか?」

 

 男の全身から金色のオーラが立ち昇る。それを見たリアスやライザー達は驚いている。

 

 

(なにこの男の放つ力は?!)

 

 

「良いよ、相手の力量も分からない【ナゲ男】は放って置いて……それよりも早く戻ってやれよ。カノン」

 

 

「ハッ、では失礼します……アナザーディメンション」

 

 一瞬、カノンと呼ばれた男の周りに宇宙が広がるとカノンの姿は消えた。訳の分からないと言う顔をしている零と白音以外のメンバー。

 

 

「ふっふざけるな!この俺を無視しやがって!!しかも【ナゲ男】ってなんだ?!」

 

 

「ナルシストで下種な男の略だけど?」

 

 

「ブチッ!貴様…本気で俺を怒らせたな」

 

 ライザーの全身から炎が溢れ出す。

 

 

「お待ちください。ライザー様」

 

 つい先ほど現れたメイドが止める。

 

 

「ッ!……最強のクイーンの貴女を怒らせる気はないよ。おい!そこのリアスの下僕!」

 

 零を指差すライザー。

 

 

「ライザー、彼は人間で私の友人よ」

 

 

「なに?!人間が……人間風情がこの俺を……よくもこの俺を」

 

 

「あっそろそろ帰らないと、買い物もしてないし」

 

 

「そうですね」

 

 零と白音はライザーを無視して帰る用意をしている。

 

 

「人間風情が!このライザー・フェニックスをコケにしやがって!消し飛ばしてやる!」

 

 

「家のご主人様に手は出させません」

 

 白音が零の前に出て、両手を広げる。

 

 

「何だ?この娘は…ん?……人間じゃないな、お前猫又か?お前、猫又のくせに人間を主と呼ぶとは……この男に弱みでも握られてるのか?…ふぅ~ん、良く見たら中々の顔をしてるじゃないか」

 

 ライザーが白音に手を伸ばした、瞬間、零がその手を止める。

 

 

「汚い手で家の白音に触らないでくれるかな……」

 

 

「人間が、この上級悪魔である俺に楯突くとは…本気で死にたいみたいだな」

 

 

「お止め下さい」

 

 睨み合う2人。しかしメイドの言葉によって2人は離れる。

 

 

「それでアンタ誰?」

 

 

「申し遅れました、私はグレモリー家に仕えるメイド、グレイフィアと申します」

 

 

「これはどうも、ご丁寧に。俺は天王理 零だ」

 

 お互いに挨拶を交わすと、グレイフィアはライザーとリアスを見た。

 

 

「私は当主様より婚約が決裂した際の案を伺っております」

 

 

 

 

 

 何でも、このメイドによればレーティングゲームというゲームをする事になったらしい。レーティングゲームと言うのは簡単に言えば、キングの上級悪魔が率いる眷族悪魔同士の対戦ゲームの様な物だそうだ。俺も人間ではあるが、参加する事になった。

 

 正直言うと俺には関係ない話なのだが、このライザーとか言う男は気に喰わない。ライザーはリアス・グレモリーとの結婚は女としてのリアス・グレモリーを欲しているだけの様だ。まぁ一族の看板とか言ってたが興味ない。

 

 俺はこういう男は嫌いだ。結婚とは好きな男と女がするものだ、政略結婚だの、政治的な婚姻とか俺にとっては腹立たしい。親や家の勝手で哀しい涙を流す女を見捨てておけるほど、俺は我慢できる大人ではない。実際何兆年も生きてるけどね。悪魔同士の問題だとは言え、本人は嫌がって居る様だ。

 

 一誠はリアス・グレモリーの為に怒り、ライザーに殴り掛かろうとしたが現れたライザーの眷族にやられた。現在はアーシアに治療を受けている。此処は俺も手を貸しつつ、一誠を鍛えてやろう。

 

 男を見せる所だぞ、一誠。この俺が力を貸してやるんだから守り抜いて見せろよ。後、俺もあの野郎をボコろう。家のアーシアや白音を厭らしい目で見ていたナゲ男、不死鳥だとか言ってたな。ククク、ある程度やっちゃっても死なないだろうな。よし生きている事を後悔させてやろう。どんな手を使おうかな?考えるだけでも楽しいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フハハハハハハハハハ!!!!」

 

 高笑いする零。

 

 

「零、その笑い顔キモい」

 

 

「えっ……きっキモい?」

 

 オーフィスにそう言われるとショックを受けている零。

 現在、零は家に帰宅しており、食事を終えた後にオーフィスを膝に乗せTVを見ていた所だった。

 

 

「何時もの零の顔の方が好き」

 

 

「ありがとうな。オーフィスは可愛いなぁ」

 

 そう言ってオーフィスの頭を撫でている零。

 

 

「でっでも良かったんでしょうか、お家同士の事に口を挟んで」

 

 アーシアはそう言う。それはそうだろう、本当は関係のない零が口を出していい訳がない。

 

 

「俺はただあの男が気に喰わないだけだよ。それにアーシア、好きでもない男と結婚させられるのをどう思う?」

 

 

「それは…私がリアスさんの立場なら嫌です」

 

 

「だろう……俺の母様が言ってた『女性にとって結婚とは好きな殿方と共に生きる為の誓いだ』だそうだ。俺は男だから良く分からないけど、好きでもない男と結婚するのが幸せだとは思わないからだ」

 

 

「レイさん」

 

 

「同感にゃ」「同感です」

 

 

「零……ケッコンってなに?」

 

 

「えっ……結婚って言うのは……簡単に言えば好き同士の男と女が家族になって、子供を作ったりする事かな?」

 

 

「なら我も零と結婚する」

 

 

「「「「えっ?」」」」

 

 オーフィスの発言に驚く4人。

 

 

「結婚って番いになる事だと我は思った。我、零が好き。そして我と零の子供できればきっと強い力を持つ。そうすれば、グレートレッド倒す可能性上がる。そしたら我、静寂を手にする事できる」

 

 

「いやあの…オーフィス、結婚ってそんな簡単な事じゃ」

 

 

「零は我の事嫌い?」

 

 そんな上目使いは反則だよオーフィス。黒歌までノリにのって結婚するとか言い出すし。白音はそんな変質者を見る様な目で俺を見るな。アーシアは顔を真っ赤にして下向いてるし。

 

 

「嫌い?」

 

 泣きそうなオーフィス。可愛すぎる……抱きしめたいな!オーフィス!

 アレ?色々と問題がある様な。どうでもいいや、可愛いは正義だし。俺にはそれで十分だ。

 

 

「嫌いな訳ないだろう、俺もオーフィスの事好きだよ」

 

 

「我も好き、だから結婚する」

 

 

「いやあの……それは」

 

 

「ずるいにゃ!私もご主人様の事好きにゃ!結婚するにゃ!」

 

 

「ご主人様はロリコンだったんですね(ジト目」

 

 

「はっはぅ……結婚…(ボン」

 

 あぁ………慌ただしいけど、結構楽しんでる。この場に母様がいたら「あらあら、これは孫の顔が見れそうですねぇ」とか言い出しそうだ。でもこんな時間も悪くはない。

 

 そんな事を考えながら今の時間を楽しむ零であった。




少し修正しました


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EP9 ゲーム開始

 ~レーティングゲーム当日 駒王学園~

 

 

 レーティングゲームに出るって言われたんだが、何で俺はオカ研の部室に居る。此処から転移魔法で行くんだろうな。何でもあのクソ鳥が修業期間として10日の猶予を与えた。

 

 えっ?今まで何してた?始めの5日は一誠達の修行に付き合っていたよ。アーシアも一緒にだけど、そう言えば帰りしなんでアーシアの荷物が減ってたんだ?まぁいいか……残りの5日?アーシアだけズルいと言って、白音、黒歌、オーフィスに1日ずつ付き合う事になった。そんで残りの2日は少し修行していた。久しぶりに身体を動かしておいた。俺VS白音&黒歌&オーフィスって言う形になった。何か、3人の攻撃って本気の殺気が篭ってたんだけど何でだろう?「鈍感!」「朴念仁!」などの言葉が白音と黒歌から浴びせられた。オーフィスは何時もの無表情だが何処か不機嫌な表情をしていたみたいだし。

 

 今日は3人は留守番だ。白音は興味ない、黒歌とオーフィスはこんな悪魔が勢揃いの所に来ると正体バレる=俺が面倒な事になるからだ。アーシアは自分の力も役に立てて欲しいと言って今回は俺と一緒に特別枠で参加する事になった。俺的には反対だけど、此処はアーシアの経験の為と意志を尊重しよう。でも危険な目に合わせない様にしよう。さてどれを使おうかな?

 

 

 

 

 そんな事を考えていると、この駒王学園の生徒会長ソーナ・シトリーと副会長。何でも此奴等も上級悪魔の1人らしい。そして、彼女達が現れた魔方陣に入る。どうやら此処から異空間に作った戦闘フィールドに行くらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~フィールド内~

 

 異空間に作られたフィールドに転移した零達はリアスが広げたフィールドの地図を見ている。このフィールドはリアス・グレモリー達に有利な様に駒王学園を模したフィールドにしている。

 

 

「ふぁ~………眠い。俺は寝るんで敵がせめて来たら教えてくれ」

 

 そう言うとソファーに寝転んだ。

 

 

「って!おい!レイ!何で寝るんだよ!こういう場合は皆で勝ち残ろうって頑張るのがパターンだろう!?」

 

 

「面倒だし、俺はあの鳥野郎をぶちのめすのには力を尽くすが、それ以外はお前等でやれ。一応、お前にも修行をつけてやったんだし、できるだろう?アーシアは俺の傍に居ろ、向こうは悪魔の集まりだからな」

 

 

「はっはい!」

 

 

「さて……お前等の力、俺に見せてみろ」

 

 そう言うと、瞳を閉じる。その言葉を聞いてリアス達は動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~それから約数十分~

 

 

 俺は今、一誠や木場達の戦いを見ている。一誠……洋服崩壊(ドレス・ブレイク)って……うん、俺が見た中でも最低の技だと思う。絶対にアレ、女限定の技だろうな。そう言えばこの間、学園で突然に素っ裸になった女子が2人いたっけ?あの女子達、確か一誠を追掛けてて………完全にアイツの性じゃん。ん?待てよ?服が崩壊する?そう言えばアーシアの荷物は殆ど服だったな。それが少なくなっていた………一誠、後でO★HA★NA★SHIが必要だな。死ぬ1ミリ手前で許してやるか。

 

 

 

 

 

「さて………少し手間取ってる様だし、手を貸してやるか。アーシア、俺は行ってくるからな。リアス・グレモリー、アーシアの事は頼むぞ。もしアーシアに何か在ったら……」

 

 

「私の命に代えても守って見せるわ……それとありがとう、手を貸してくれて」

 

 

「ただ、あの焼き鳥が気に喰わないだけだ。それ以外に他意はない。【ソウルコード:エミヤ】」

 

 右眼が紅い光を放つと、両手に白と黒の剣が握られるとそこから消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 ~フィールド内 グランド~

 

 

「行くぞ木場!」

 

 

「あぁ!行くよイッセー君!」

 

 一誠と祐斗は連携しつつライザーの眷族達と戦っていた。

 

 

「あらあら、2人とも頑張ってますわね」

 

 

「私を相手に余所見とは余裕ですね【雷の巫女】」

 

 

「少し休めば問題ないですわよ【爆弾女王(ボムクイーン)】」

 

 クイーンVSクイーンの戦いが空で繰り広げられようとしている。

 

 

投影・開始(トレース・オン)

 

 

「「「「えっ………こっこんなのあんまりだぁ~」」」」

 

 辺りに響く声と共に、無数の刀剣類が一誠と祐斗と戦っていたライザーの眷族達に降り注ぐ。その剣を受け戦闘不能になったライザーの眷族達はレーティングゲームのルールによりこのフィールドより強制的に出され、しかるべき所で治療を受ける事になる。

 

 

「いっ今のって……」

 

 全員が刀剣類が飛んできた方向を見ると零が立っていた。

 

 

「不意打ちとか嫌いなんだけど、できるだけ女の子に傷つけないで済ますならこの方法が一番だからな」

 

 

「貴方……お兄様に喧嘩を売った人間、まさか神器持ちですの?」

 

 隣を見てみるとドレスの様な服を着た金髪の少女が立っていた。

 

 

「どちら様?」

 

 

「レイヴェル・フェニックス。ライザー・フェニックスの妹ですわ」

 

 

「それはどうも、俺は天王理 零。レイと呼んでくれ。後、俺は神器なんて持ってない」

 

 

「貴方ふざけてます?神器も無しにあんなこと、出来る訳ないでしょう?」

 

 

「それが出来るのが俺なんでね。一誠、木場、後何人残ってるの?」

 

 

「後は、あそこのクイーンとそこのフェニックスのお嬢様、それにキングであるライザーだけだよ。レイくん」

 

 祐斗が零の質問にそう答えた。

 

 

「クイーンはクイーンにまk『ドカーン』…アレって」

 

 ライザー陣営の本拠地である校舎の上にライザーとリアス、アーシアがいた。

 

 

「なんだ、焼き鳥か。それにリアス・グレモリーとアーシアね。キング同士の対決ってアーシアまで!?」

 

 零は取り敢えず無視しようかと思ったがアーシアがその場に居る事に気付き驚く。リアスの破滅の魔力とライザーの炎が激突している。アーシアは少しでもリアスを補助しようと聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を使用している。

 

 

「チッ!一気に決めるか……『I am the bone of my sword.(身体は剣で出来ている。)』」

 

 零は一気に決着をつけるために、詠唱を始めた。そして更に続けようとした時、爆発が起きた。その方向を振り返って見ると、朱乃が落ちていくのが見えた。そして朱乃は戦闘不能により場外に出された。

 

 

「朱乃さん!?」

 

 

「ぐわぁぁぁぁっぁ!」

 

 祐斗の悲鳴が上がると其方を向く。祐斗は黒い瘴気の様な物に包まれ、消えていった。

 

 

「木場あぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「残りはクイーンとあの娘だけの筈……しかしクイーンも魔力を消費していた筈」

 

 零が冷静に状況を分析している。

 

 

「朱乃!?でもどうして!?」

 

 リアスは朱乃がやられた事に驚いている。

 

 

「フフフ、【フェニックスの涙】どんな傷でも瞬時に癒す薬。これはフェニックス家だけが製造できる名薬ですわ。レーティングゲームでも使用は認められていますわ。そちらだって聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を使ってるんですから、御相子でしょう?」

 

 レイヴェル・フェニックスがライザーの元に移動し瓶の様な物を取り出すとそう言った。

 

 

「どうやらあの薬で力と傷を回復したらしいな。一誠、行くぞ!(ガシッ」

 

 

「あぁ!って何で俺を掴んでるんだ?」

 

 

「歩いていくより、早いだろ?せぇ~の!」

 

 一誠の首襟を掴み上げると、零は校舎の屋根に向かい投げた。一誠は何とか屋根の上に着地すると、リアスの元に辿り着いた。

 

 

「さて…一誠とリアス・グレモリーが居ればアーシアは守ってくれるだろう。俺はあの時を倒すとするか【コートチェンジ】」

 

 零の全身が光りに包まれ、天を貫く光柱となった。



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EP9 ゲーム開始 リアス&一誠side

 ~レーティングゲーム 開始~

 

 

「このレーティングゲーム負けられない。私自身の未来の為にも、私に力を貸してくれるあの子達の為にも……」

 

 

「リアスさん…」

 

 リアスの呟きにアーシアが心配そうに見つめている。

 

 

「アーシア、貴方は本当に良かったの?貴方は関係のないのに」

 

 本来で在ればアーシアはこのゲームに関係ない。ライザーに対し怒りを覚え喧嘩を売った零は今回は特別枠と出る事になった。それも馬鹿にされたライザーが許可したからである。またリアスには戦力である下僕悪魔はクイーンの朱乃、ナイトの祐斗、ポーンの一誠と数が少ない。そこでアーシアがある事を言った。

 

 

『あっあの!私も参加させて下さい!』

 

 当初は悪魔同士の戦いで何が起こるのか分からないため、零も反対していた。しかし

 

 

『私はリアスさんの事をお友達だと思っています。リアスさんの為に私の力がお役に立てるのなら』

 

 そう聞いた零は渋々では在ったが了承した。グレモリー家のメイド、グレイスフィアに零がアーシアも参加できるように相談した。そして以外にもあっさりと了承を得ることができた。それを聞いたアーシアは喜んでいた。

 

 

「いいえ、リアスさんが困っている時にジッとなんてしてられません。私の力が誰かの為になるなら、私は喜んでこの力を使います」

 

 

「ありがとう、アーシア」

 

 この子には本当に感謝しないと、関係もないのにただ友人だと言う理由だけで力を貸してくれるなんて。

 

 

「一誠さん達は大丈夫でしょうか?」

 

 アーシアは出て行った一誠達の事を心配していた。

 

 

「大丈夫よ、彼等は強くなったもの………それに一誠は特に強くなったわ。何か必殺技も考えてるみたいだし」

 

 

「えっ……そっそうですね」

 

 何故か顔を真っ赤にしているアーシア。

 

 

「?………そう言えば彼はなんで力を貸してくれたのかしら?アーシア、貴方は何か聞いてる?」

 

 アーシアが顔を真っ赤にしてた事が気にかかったが、零が何故力を貸してくれたのかが気にかかった。

 

 

「えっと…確か『あの焼き鳥は気に入らない。アイツは女をコレクションや道具としか見てない。あの様な奴を俺は何度も見てきた。あんな男に泣かされる女達を見て腹が立つ………それに厭らしい目で白音を見た挙句、汚い手で白音に触れ様なんて万死に値する。なに殺しはしない、不死鳥だし……存在は消さないけど、生きている事を後悔させてやる、ククク』だ、そうです」

 

 

「そっそう……でも…またあんな龍なんて出されたら、朱乃達まで巻き込まれるんじゃ…」

 

 リアスは先に零が召喚した【応龍王】の事を思い出した。圧倒的な巨大な身体、一撃で教会を吹き飛ばした圧倒的な力。アレが本気でなければ一体、どれ程の力を有しているのかリアスには予想もつかなかった。もしその攻撃に一誠達が巻き込まれたらと思ったら……。

 

 

 

 

 そして時間が経ち、実況により殆どのライザーの眷族達がリタイアした事でリアスは動く。

 

 

「アーシア、私はライザーを倒しに行くわ」

 

 

「なら私も!」

 

 

「いいえ……悔しいけどライザーは強いわ。貴方を連れながらじゃ」

 

 

「でもそれじゃあリアスさんが怪我したりしたら誰が治すんですか?!それに相手は不死です、治療やサポートなしじゃ」

 

 

「けど、貴方を危険な目に合わせる訳には行かないわ」

 

 

「それなら大丈夫です。レイさんからお守りを貰ってますし、何より此処はリアスさんの本拠地です。アチラから攻めてくる事だってあるかも知れません。だったら逆にリアスさんと居た方が安全です」

 

 それもそうだろう、零からアーシアが何かを貰ってるとしても此処は本拠地。おまけに誰もいない、もし敵の誰かが来ればアーシアは確実に攻撃されるだろう。なら逆に自分が傍に居た方がアーシアを守れると思ったリアスはアーシアを連れライザーの本拠地に向かう事にした。リアスは途中で零に会えば、零にアーシアを預けるつもりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~一誠side~

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!洋服崩壊(ドレス・ブレイク)(パチッ」

 

 祐斗と一緒に敵のポーンやルーク達と戦っていた。そして一誠は指を鳴らした。

 

 

「「「「「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」

 

 一誠の技、洋服崩壊(ドレス・ブレイク)により触れた敵の服が下着を含めて弾け飛ぶ。

 

 

「しゃあぁぁぁぁぁぁ!!!脳内のメモリーに名前ごとに保存するぜ!!!」

 

 洋服崩壊(ドレス・ブレイク)、それは触れた相手の洋服を破壊する技。相手は全員、女性。勿論服が弾け飛んだ事で羞恥により動けなくなる。その光景を一誠は一瞬の内に脳内に焼き付けた。

 

 

「おっしゃ!ご馳走様でした!と言う訳でこの隙に」

 

 《Boost!Explosion!》

 

 赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)の効果により、一誠の力が倍加された。そして魔力の塊を形成する。

 

 

「【ドラゴンショット】!」

 

 魔力の塊を殴りつけると、巨大な魔力の砲撃と化した。砲撃は一誠に生まれたままの姿にされ動けないライザーの眷族達を飲み込んだ。戦闘不能になりライザーの眷族達はフィールド外に強制退出させられた。

 

 

「なんだあの技は!?最低だ!」

 

 

「…家のイッセー君がエロくて本当にごめんなさい」

 

 ライザーのナイトに対して謝る祐斗。

 

 

「っておい!」

 

 一誠は突っ込みを入れる。しかし次の敵を倒す為に周りを見る。

 

 

「こっこの!」

 

 周りのライザーの眷族達は一誠の攻撃を警戒している。先程の光景を見れば当然だろう。

 

 

 くぅ~俺のエロが生み出した洋服崩壊(ドレス・ブレイク)………我ながら素晴らしい才能だと思う。これもアーシアのお蔭だ。夜に練習していた時に散歩していたアーシアに技が直撃して弾け飛んだ。その時に俺のエロが目覚めたんだ!あの時のアーシアの成長途中の乳は素晴らしかった。それからアーシアを技の為に同じ事をしたいと思ったが、そんな事したら後が怖いので服だけ貸して貰った。そして今日!俺は洋服崩壊(ドレス・ブレイク)を完成させた!!

 

『一誠……後でO★HA★NA★SHIが必要だな。死ぬ1ミリ手前で許してやるか』

 

 アレ?なんか聞こえて来た。お話し?でも唯の話し合いじゃないよね?だって凄く冷たくて殺気が篭ってたぞアレ!!ヤバい……死ぬ1ミリ手前って何だよ!?殆ど死んでるじゃねぇか!!

 

 一誠は聞こえてきた零の声に突っ込みを入れるが、リアスの為に今は敵に意識を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 闘いの途中で赤龍帝の篭手(セイグリット・ギア)の第2の能力、赤龍帝の贈り物(セイグリット・ギア・ギフト)に目覚めた一誠と祐斗の魔剣創造(ソード・バース)の連携により数人のライザーの眷族を倒した。しかし未だライザーの妹であるレイヴェル・フェニックスと数人が残っていた。

 

 

投影・開始(トレース・オン)

 

 声と共に無数の刀剣が飛んでくる。そして、刀剣類はライザー達の眷族に直撃し強制的にこのフィールドから退出させた。

 

 

「こっこんな事、できるのって……」

 

 俺が振り返ると、零が歩いてきた。俺は思った「殺される」と、だって飛んできた剣の内の1本が俺の近くに刺さってるんだから!後30センチくらいで俺に刺さってたぞ!

 

 

 

 

 そして零が動き出そうと思った瞬間、爆発が起き朱乃が落ちていくのが見えた。

 

 

「朱乃さん!!!」

 

 

「ぐわあぁぁぁぁっぁ!」

 

 俺が振り返ると、木場が黒い霧の様な物に包まれ消えていくのが見えた。

 

 

「木場ぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 俺はそれを見て叫ぶ。そして部長がいる、校舎の屋根を見た。ライザーの妹によれば【フェニックスの涙】とかいう薬でクイーンが回復したらしい。

 

 

「どうやらあの薬で回復した様だな。一誠、行くぞ!」

 

 

「あぁ!って何で俺を掴んでるんだ!?」

 

 何故か凄く嫌な予感がする。いや……まさかそんな事しないよな?

 

 

「歩いていくより、早いだろ?せぇ~の!」

 

 レイが俺を放り投げやがった。何とか体勢を立て直し俺は屋根の上に着地したが、少しチビりそうになった。そんな事より部長の所に行かないと!

 

 

 

 

 

 ~side out~

 

 

『我、今此処に目覚めん』

 

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

 リアス、一誠、アーシア、ライザー、レイヴェル、ライザーのクイーンがマヌケな声を上げる。そして声のした方向を見ると光柱が天を貫いていた。

 

 

「なんだ?アレ?」

 

 

「確か……あそこにはレイが」

 

 

『我、この世を冥府と化す者』

 

 光球が現れ、光柱の周りを周っている。

 

 

『我、冥府の王なり。そして天を支配せし者なり』

 

 光球が光柱に吸い込まれると大きな【天】という文字が浮かび上がった。



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EP10 レーティングゲームでの敗北

 ~レーティングゲーム フィールド~

 

 リアス、一誠、アーシア、そしてライザーと眷族悪魔で妹のレイヴェル、クイーンのユーベルーナは唖然としている。その理由は今回のレーティングゲームの為に作られたこの擬似空間を揺らす力を放つ零だ。零が放っていたであろう光柱は消え、胸の部分と両手部に大きな球体を嵌め込んだ鎧を纏っていた。

 

 

「【ソウルコード:天のゼオライマー】」

 

 そう言った瞬間に零の頭部にも鎧が出現し装着されると目に当たる部分の球体と胸部と両手部の球体が光る。

 

 

「なっなんだあの姿は!?」

 

 零が纏っているゼオライマーの力を肌で感じ、全員が驚いている。そして零の姿が皆の視界から消えた。

 

 

「きっ消えた!?」

 

 全員が周りを探す。しかし見当たらない。

 

 

「ぎゃぁぁぁぁあ!」

 

 ライザーの叫び声が響き、全員がライザーの方を見ると、ライザーの頭を掴んでいる零の姿を見つけた。かなり強い力で掴んでいるのか、ライザーは苦悶の声を上げている。

 

 

「不死鳥は死なないんだったな。安心しろ、存在を消すまではしない」

 

 零がそう言うと、ゼオライマーのアイが光り、ライザーと共に姿を消した。

 

「どっ何処へ!?」

 

 全員が再び探すが、いない。そして

 

 

【メ・イ・オウ】

 

 その言葉と共に校舎とは離れた場所で巨大な光が現れた。

 

 

 

 

 ~ライザーside~

 

 なっなんだアイツは!?唯の人間ではないのは分かったが、アイツは異常だ。あの強大な力を持つ人間……いや、化物だ。

 

 ライザーは零の放つ強大な力に身体を震わせる。ライザーは今まで戦ってきた者達とは全く異なる力を放つ零に畏怖する。そして零の姿が消えると辺りを見回すがその姿はない。

 

 

 

「ぎゃぁぁぁぁあ!」

 

 ライザーは自分の頭が凄まじい力で掴まれ、痛みのあまりに叫び声を上げた。ライザーには自分の頭を掴んでいるのが誰なのかが分かっていた。先程まで遠くに居て此方を見つめていた異形の力が、今、直ぐ後ろに感じていたからだ。

 

 

「こっこの……!?」

 

 ライザーは抵抗しようと背中から炎を噴き出そうとした瞬間、視界に空が映る。

 

 

「(なっ何がおきた!?転移したのか?!)ぐわっ?!」

 

 ライザーは突然、場所が移動した事に驚いていた。自分の頭を掴んでいる腕が振り上げられ、自分が宙に舞う感覚を覚えた。そして、零が両手の球体を胸の球体に近付けている光景を目にし、唸るような低い声を聞いた。

 

 

【メ・イ・オウ】

 

 零の声ではなく聞いた事がない低い声が響いた瞬間、ライザーの視界は光で埋め尽くされ、自分の身体が何かに抉られる様な激痛を感じ、目の前が真っ暗になった。

 

 

 ~side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっなんですのアレは!?」

 

 目の前で起きたことが理解できないレイヴェル。

 

 

「あらゆる敵を冥界へと葬る冥界の一撃だ。と言っても1000分の1程度の威力だけど」

 

 その声に振り替えると、身体の4分の3以上が消えているライザーの頭を掴んでいる零がいた。

 

 零はライザーを放り投げる。ライザーの身体からは炎が吹き出し再生を始めた。

 

 

「うがぁ……ぐぅ」

 

 転がっているライザーは苦しそうに悶えている。

 

 

 

「さてと止めといこうか」

 

 ゼオライマーの両手の球体が鈍い光を放つ。

 

 

「まっ待て!待ってくれ!」

 

 未だに再生が終わっていないライザー、不死鳥と言えど、制限なく再生できる訳ではない。ライザー達、フェニックス一族は圧倒的な再生力を有するが精神に至っては直ぐに回復する事ができない。逆に言えば精神力が続く限り再生し続ける。そんなフェニックスだが倒す方法は幾つかある。攻撃をし続け精神を削る。神に等しい力で攻撃する、または存在そのものを消すなどの方法がある。零の放ったメイオウ攻撃は次元を超越し、膨大なエネルギーを相手に叩き込む。それを受けた物質は原子レベルで消滅してしまう。冥王と称されたゼオライマーの力は強大、最悪の場合大陸が消滅してしまう程だ。例え、加減していたとしてもその一撃はライザーの精神と体力を削るには十分過ぎる程だろう。今のライザーは既に立つ事すらままならない。

 

 

「お前の間違いは3つある」

 

 そう言いながら歩を進める。

 

 

「俺の家族を汚らわしい目で見たこと、女を政略結婚で無理矢理手に入れようとしたこと。一番は俺を怒らせたことだ。と言う訳で消えとけ」

 

 零が攻撃しようとした瞬間、突然振り返り駆け出した。リアス、一誠、アーシアはそれを見て驚き、何事かと思うが自分達の足元に浮かぶ魔方陣に気付いた。そして次の瞬間大爆発を起こした。

 

 

【キング、リアス・グレモリー戦闘不能により、この勝負ライザー・フェニックスの勝利です】

 

 

「ふっフハハハハハハ!良くやったぞ、ユーベルーナ。残念だったな!俺の勝ちだ!アハハハハハハハ!」

 

 爆発したところを見ながら、ライザーは笑い声が響く。

 

 

【この下種が】

 

 

「ハハハハ…は…‥ぇ」

 

 爆発したところから煙が立ち昇っている。しかし、ライザーはその煙の中から先程感じた以上の圧倒的な力を感じていた。爆発したであろう場所を中心に風が巻き起こり、煙を吹き飛ばすとそこには光の膜につつまれたゼオライマーを纏った零と気を失っているアーシアと一誠がいた。アーシアと一誠は無傷な様だ。

 ゼオライマーの鎧が消えると、気を失っているアーシアと一誠を抱え零は歩き始めた。

 

 そしてライザー、ユーベルーナ、レイヴェルの横を通り抜けた。だが3人は全く動けずにいた。ゼオライマーの鎧が消えていても、零から発せられる圧倒的なまでの力に当てられ身体を硬直させていた。ライザーに至っては顔面蒼白していた。

 

 零はライザーの横を通る時に圧倒的な力と殺気を放ちながらこう言い残した。

 

 

【次は手加減なしでこの世から消滅させてやる】




リアルが色々と忙しかったので久し振りの更新になります。

後半はいきなりで分かり難いと思いますが、詳細は次話で載せます。


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EP11 婚姻に介入。そして母の登場。

 ~レーティングゲーム直後 天王理家~

 

「…………」

 

 無言のままムスッとした表情で零はゲームのコントローラーを持った白音を膝に乗せながら頭を撫でている。オーフィスは零の横でお菓子を食べながら白音とゲームをしている。黒歌は猫の状態で零の頭の上に乗っていた。

 

 

「零、機嫌悪い?」

 

 ゲームをしていたオーフィスがそう尋ねた。

 

 

「少しな……今回、あの悪魔共誘いに乗ってゲームに出たはいいが、内容が胸糞悪い。それにこのままじゃ色々と問題があるし、気に喰わない」

 

 そう一番の問題はこのままではリアス・グレモリーがあの焼き鳥と結婚するって事だ。俺は別にいいんだけど、このままじゃ何も考えもなしに一誠が突っ込んでいくだろうからな。

 

 因みに気絶していた一誠は家まで送ってやった。初めての実戦で疲れが出たんだろう、というより力を使い過ぎて殆ど体力が残って無かった様だ。アーシアも疲れていたのと爆発の衝撃で気を失ったらしい。今は部屋に寝かせている。勿論、2人とも無傷で助けたけどね。

 

 あの爆発、ゼオライマーの力でアーシアは助けられたものの、一誠が遠く離れていた。それをリアス・グレモリーが自分と入れ替わる形で引き寄せた。その結果、ゼオライマーのバリアの外に出ていたリアス・グレモリーは爆発を真面に受けリタイア。今回は俺のミスだな、遊ばずにさっさと片しておけばよかった。

 

 一誠の為にも何とかしてやるか。確か式は3日後だったか。あの焼き鳥野郎に赤っ恥かかせてやる。フフフ、フハハハハハハ!!!

 

 

 

「ご主人様、耳元で五月蠅いです。」

 

 

「あっごめん……」

 

 どうやら声に出てたらしい。

 

 

「さてと……あっそう言えば…使えるな。」

 

 零は何かを思い出したのか、白音と黒歌を降ろし立ち上がると何処かに電話した。

 

 数分後電話が終わると、白音達に少し出掛けると言うとそのまま出て行った。

 

 

 

 ~???~

 

 うぅ……此処は何処だ?真っ暗だ、俺は何をしてたんだったか?

 

 兵藤一誠は真っ暗な空間で目を覚ました。

 

 

【やっと起きたか】

 

 

「誰だ?!何処に居る!?」

 

 聞こえてきた謎の声に向かいそう叫ぶと、自分の周りに炎が燃え上がり、その声の主が姿を現した。赤い体に、緑色に光る眼、巨大な翼、それを見て一誠はドラゴンだと直感した。

 

 

「だっ誰だお前は!?」

 

 

【こうして顔を合わせるのは初めてだったか。俺は赤龍帝ドライグ】

 

 

「赤龍帝って事は俺の神器の……」

 

 赤龍帝ドライグ、それはかつて聖書の神が畏れた二天龍の内の1匹の龍だ。

 

 

【兵藤一誠、これから何を求めるなら力をやろう、代償は払ってもらうがな。俺としてはお前に力を付けれ貰わないと俺と白いのとの目的が果たせないからな。貴様がどこまで行けるか、貴様の中から見せて貰うぞ!ガアァァァァァ!!】

 

 ドライグは咆哮を上げると、一誠はその凄まじさに意識を手放した。

 

 

 

 

 

 ~3日後 一誠の部屋~

 

 

「うわぁぁ!?…あれ?此処は俺の部屋?」

 

 一誠が目を覚ましたのは自分の部屋だった。

 

 

「やっと起きたか」

 

 目を覚ますと、零が椅子に座り自分の事を見ていた。

 

 

「れっレイ、一体何が在ったんだ?そうだ…レーティングゲームは?!」

 

 

「落ち着け、説明してやるから」

 

 そして零から説明を受けた。今日はレーティングゲームから3日が経ったこと、ゲームに負けた事、リアス・グレモリーの婚姻のこと。それを聞いた一誠は直ぐに動こうとするが、零に止められた。

 

 

「たわけ、今の状態で行ってどうするつもりだ?それにどうやって冥界まで行くつもりだ?」

 

 

「呑気な事を言ってられるか!このままじゃ部長が!」

 

 

「少し落ち着け……お前が寝ていた3日の間に準備はしておいた。堂々と婚姻式に行けるようにな」

 

 

「えっ?…レイ?」

 

 

「今回の敗因は俺のミスもある。あの焼き鳥野郎をさっさと倒していれば良かったんだが、少しお遊びが過ぎた。だから俺もお前に協力する……少し準備してくるからお前も用意をしておけ」

 

 

「あっあぁ……」

 

 零は一誠の部屋を出ていった。零が出ていくと一誠は左手を見た。

 

 

「おい、聞こえているんだろう?」

 

 

【ほぉ……それで何の用だ?】

 

 左手の甲に緑色の光が灯る。そして声が響いた。

 

 

「このままじゃ俺は奴には勝てない。だから力が欲しい……何でもくれてやる。力を寄越せ」

 

 

【それは構わんが……もう二度と戻れなくなるぞ?】

 

 

「だとしても部長は泣いていた………あんなの見せられて黙ってられるかよ!」

 

 

【いいだろう。その覚悟受けとった。代償としてその左腕貰うぞ】

 

 一誠は自分の中に宿る二天龍の片割れ、赤龍帝と取引した。現在の力ではライザーには届かない、ならば無理にでも力を手に入れる。それが一誠の選択。その代償は己が左腕を龍と化す事で力を手に入れる。

 

 一誠の左腕は代償として龍のものとなった。そして代わりに1つの力を手にした。

 

 

 

 

 

 

 

 ~一誠の部屋の前~

 

 

「やはりそう選択したか……己が腕を代償とし力を手にするか。その覚悟しかと見せて貰った一誠」

 

 零は言の次第を部屋の扉の前で聞いていた。

 

 

「なれば……我もまたお前に力を貸してやる。その力で何を手にし、守るか見届けさせて貰うぞ」

 

 零は懐から紙を取り出した。筆で何か書かれている。

 

 

「後は向こうがどう出るか……まぁ無理なら力ずくで行くけどな」

 

 そう言うと、零の一瞬で前に部室で見せた白い衣に変わると部屋に入る。

 

 

 

 

 

 

「準備できたぞ」

 

 

「俺も準備は出来た何時でもいいぞ!」

 

 一誠も準備が出来ていたのか、零にそう答えた。すると2人の足元に金色の魔方陣が浮かび上がる。

 

 

【この魔方陣は?!まさか貴様は!?】

 

 一誠の中のドライグが叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~冥界 フェニックス家前~

 

 フェニックス家の前に魔方陣が浮かび上がり、零と一誠が現れる。

 

 

「えっ!?此処どこ!?」

 

 

「フェニックス家の前だ。ほれっ行くぞ……おっと正装してるのに装飾品を忘れてた」

 

 零が指を鳴らすと頭に太陽を模した金色の冠、首には幾つもの勾玉の付いた首飾りが現れる。

 

 

「というか前から思ってたけど、その恰好はなんだ?」

 

 

「こういう場合には正装しないといけないんでな。一応、代表だからね」

 

 

「代表?なんの?!」

 

 

「後に分かる。後、俺がいいというまで暴れてくれるなよ。分かった?絶対にだ」

 

 零が力を発しながらそう言うと、一誠は圧されて「はい」としか言えなかった。

 

 

『あらあら、そんなに怒っては駄目ですよ零』

 

 声が響くと、一誠は眩い光を感じ、目の前に白い衣を着た黒髪の女性が現れた。女性の頭には零と同じ太陽を模した金冠、勾玉の首飾りがあった。

 

 

「母様、俺に任せるのではなかったのですか?」

 

 

「今回は我等と悪魔側との交渉の席でもあります。主神である私がいないと始まらないでしょう?」

 

 

「しかし……いぇ…ありがとうございます?」

 

 

「なっなぁ……この人、誰?話を聞く限り、お前の母親?」

 

 

「あぁ…俺の母様」

 

 

「どうみても一児の母には見えないんだけど……と言うか、結構むn『次に母様をその目で見れば存在ごと消すぞ?』ごっごめんなさい」

 

 一誠が零の母の胸を何時も様な女子に向ける目線で見た瞬間、零が剣を一誠の首元に当てた。一誠が謝ると剣は消えた。

 

 

「あらっ貴方が兵藤一誠さんですね。何時も息子がお世話になっています。私は零の母です、宜しくお願いします」

 

 零の母はにっこりと笑みを浮かべ、一誠に挨拶する。

 

 

「あっはい、宜しくお願いします(あれ?さっき主神って言ってた様な?)」

 

 

「では行きましょうか」

 

 

「はい、母様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~婚姻会場~

 

 

「皆様良くぞお集まりくださいました!では今回の主役、我が花嫁リアス・グレモリーを紹介しましょう!」

 

 ライザーが来賓の前でそう言うと、魔法陣と共にリアスが現れる。勿論、会場に居るのは全て悪魔だ。

 

 

「さぁ、リアス。皆さんに挨拶を」

 

 ライザーはリアスに厭らしい目をしながらそう言う。しかしリアスは横を向いたままだった。

 

 

「わたっ……!?」

 

 リアスが何かを言おうとした瞬間、会場にいた全ての悪魔が圧倒的な力を感じた。そして扉が開かれると、眩い光が差しこんできた。

 

 

「なんだ!?」

 

 悪魔の全員がその光を受け感じる。これは悪魔にとっては致命的な聖なる光であると、邪を浄化する光であると。

 光が納まると、そこには零の母と零、一誠がいた。

 

 

「零。悪魔の皆さんはどうしたのでしょうか?」

 

 唖然とする悪魔達の様子をみて、零の母がそう呟いた。

 

 

「恐らく、母様の力と光に驚いているんでしょう」

 

 零はそう呑気に言う母にそう答えた。



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EP12 母の名と勝負

 ~フェニックス家 婚姻会場~

 

 突然に飛び込んできた、零の母と零と一誠の登場に会場にいる悪魔達は騒ぎ始める。零達は真っ直ぐ進み始めた。

 

 

「なっ何だ貴様等は!今すぐにつまみ出せ!」

 

 ライザーの近くに立っていた男がそう言うと、近くに居た悪魔達が零達に襲い掛かった。

 

 

「まっ待て!」

 

 ライザーはそれを止めようとする、理由は至極簡単な事だ。零がいるからだ、先のレーティングゲームで身をもって味わった圧倒的な力を知っているからだ。

 

 

「下がれ下郎共!【ソウルコード:エミヤ】!」

 

 零が母の前に出ると、自らの力を発動させ赤い服に変わると無数の剣を出現させた。剣は零達を中心に円を描く様に床に突き刺さる。悪魔達が近付くと、周りにある剣から光が放たれ悪魔達を吹き飛ばした。

 

 

「ふん……魔王殿は何処だ?出て来ぬので在れば、この辺り一帯を吹き飛ばすぞ」

 

 零は剣を消すと、悪魔達に向かってそう叫ぶ。零がその気になれば本当にこの辺り一帯、というよりこの冥界そのものを消し去る事さえも可能であろう。

 

 

「あらあら、駄目ですよ零。そんな乱暴な事をしてはなりませんよ。私達は話し合いに来たのですから」

 

 零の母がそう言う。この会場にいるリアスとライザーとその眷族であり、その圧倒的な力を目の当たりにしたレイヴェルとユーベルーナは顔を青くする。もしこの会場で先に使ったゼオライマーの力を使われれば間違いなく自分達は消滅する。即ちそれは零の怒りを意味する、この女性が零の母と知らない者達は最悪の事態を考えた。母と知っている一誠でさえも、そんな事を言って大丈夫なのかと内心心配している。

 

 

「はい……母様。申し訳ありません、以後気をつけます」

 

 

「やっぱり貴方は良い子ですね」

 

 

「はっ母様、俺は子供じゃないんですが」

 

 

「あら、私からすれば貴方は何時になっても可愛い息子ですよ」

 

 零はソウルコードを解除すると母に対し謝った。すると零の母は零の頭を撫で始める。零は恥ずかしさで顔を真っ赤にしているが、何やら満更でもない様な雰囲気を出している。

 

 

「はっ母様、早く事を終わらせましょう」

 

 

「あらそうでしたね……えっと魔王サーゼクス・ルシファー殿は何処においでですか?」

 

 零の母は手を離すと、会場の向かってそう言った。するとリアスの隣にいた赤い髪の青年が歩いてきた。

 

 

「私がサーゼクス・ルシファーです」

 

 その男はルシファーの名を名乗る魔王の1人であり、リアス・グレモリーの兄もでもある。

 

 

「見た所名のある方とお見受けしますが…本日は我が妹の婚姻式、それを壊す様な事して」

 

 サーゼクスがそう言うと、零の母はニッコリと笑う。

 

 

「あらあら自己紹介が未だでしたね。私は天照と申します」

 

 その名を聞いて会場がざわめき始めた。天照……天照大御神、太陽の神にして日本神話の主神である女神だ。悪魔達はそんな神が何故、此処にいるのか謎であった。そして恐怖する、彼の神が放つ光は聖なる光。今は故意に力を押さえているのだろう。もし彼の神が本当の力を解放すれば悪魔達は天照の光で消滅してしまうからだ。

 

 

「日本の主神が私に何の用ですか?」

 

 サーゼクスは平然な表情で対応しているが、身体からは目には見えないが魔力が溢れている。

 

 

「貴方にというより悪魔達にですけどね。これまで幾度も其方にコンタクトしたのですが悉く無視されてしまいましたから、今日は此方から出向いた次第です。我等が領土に無断で侵入し、そこで悪魔の契約などを行ったこと……日本の神々が把握してないとでも思いましたか?」

 

 それを聞くと、サーゼクスの眉がピクリと動く。

 

 

「我等にとって人間の信仰はなくてはならないもの。人間は普段は目に見えないからこそ我等を信仰し、畏れる。我等は時に巫女を通し神託を与える。時には人間に力を貸す事も在りました。そして奇跡が起きれば人間は我等に感謝する。現代では信仰する人間が少なくなってきたとはいえ、我等はそうして信仰を広げてきました。なのに………其方は勝手に領土に入ってきて、好き勝手にしているのはどうなのでしょうか…魔王殿?」

 

 笑顔のままの天照であるが、覇気のある声で言い放つ。

 

「えぇ……確かに貴女の言う通りかも知れません。今までの非礼はお詫びしましょう」

 

 そう言うとサーゼクスは天照に頭を下げた。その行動に他の悪魔達は驚いている。相手が神とはいえ、何故魔王が頭を下げているのだろう?と。

 しかし、魔王であるサーゼクスは理解していた。目の前の神は今まで会った神とは別次元の存在であることを。

 

 

「では魔王殿、これからはちゃんと我等との話し合いの場を持つと約束してくれますね?」

 

 

「えぇ……勿論です」

 

 

「ほっ…貴方が賢明な方で安心しました。私達も無駄に争いをしたくはありませんので……しかしこれまでの事を含めてのお詫びとして1つ私の言う事を聞いて頂けないでしょうか?」

 

 

「私にできる事であれば…なんでも」

 

 それを聞くと、零は前に出た。

 

 

「この子は私の息子なのですが、先日其方のゲームに参加した様で……実はそのゲームの結果が不服な様で、勝負のやり直しを要求したいのです」

 

 サーゼクスはそれを聞くと、零を見る。

 

 

「なに、別に俺自身が戦う訳じゃない。戦うのは此奴」

 

 そう言うと零の母が神だと聞いて唖然としている一誠の腕を掴み前に出した。

 

 

「此奴はリアス・グレモリーの眷族で【赤龍帝の篭手(ブースデッド・ギア)】だ、とは言えまだまだ弱い。だから俺はあくまで援護、そこの焼き鳥には『攻撃』はしない。試合形式はどちらかがリタイアするか、死ぬかで勝敗を決めるってのでどうだ?」

 

 

「……ライザーくん、どうかな?」

 

 

「そっそれは………」

 

 ライザーは渋る。既に先のゲームで受けた傷は治癒し精神も回復した。しかし、援護だけとは言え圧倒的な力を見せた零がいるからだ。

 

 

「それとも負けるのが怖いから止めとくか?別にいいぞ……種を撒く事しか能がない鳥野郎だって言いまわるから」

 

 

「きっ貴様ぁ!いいだろう!受けてやろうじゃないか!その代わり、俺のその小僧に勝ったら一生俺の召使いとして生きて貰うぞ!」

 

 

「あぁ……いいだろう。勝てればだけどな……(ニヤッ」

 

 零は不敵な笑みを浮かべていた。



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EP13 男の戦いと金色の再臨

 ~闘技場~

 

 此処はライザーとの勝負の為に用意された闘技場だった。

 

 ライザーは既に立っており、何時でも勝負を始める事ができる様だ。

 

 勝負の前に一誠は制服姿の零に声を掛ける。

 

 

「レイ……本当にいいのか?お前だったら直ぐにあんな奴は」

 

 一誠は零にそう言う。それは先のレーティングゲームの際の圧倒的なゼオライマーの力、そしてアーシアの事件の際の応龍皇の力を知っている。ならばライザーと戦うのは自分ではなく零の方が良いのではないのかと思っていた。

 

 

「たわけ、これは俺の勝負じゃない。それにお前はリアス・グレモリーの為にその腕を捨てた。なら今は、その力を奴に見せつけてやれ。そしてリアス・グレモリーを取り返して来い」

 

 

「レイ、何でその事を」

 

 

「さて………な。取り敢えずお前は実戦不足と実力が足りないのは言うまでもない。だから手は貸してやる。だから男を見せろ、一誠」

 

 

「レイ……おう!そんで部長と部長のおっぱいを取り戻すんだ!」

 

 

「………折角の雰囲気を壊すなよ。まぁいい。それじゃあ、援護は任せとけ」

 

 零はそう言うと少し下がる。そして一誠は覚悟を決めてライザーに向かって歩いて行く。

 

 

「行くぞ、焼き鳥野郎!!!」

 

 赤龍帝の籠手を装備する。

 

 

「調子に乗るな!小僧!!!」

 

 ライザーはその背中から炎を吹き出させて翼を形成した。

 

 そして勝負が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぞ!赤龍帝の篭手(ブースデッド・ギア)!」

 

 赤龍帝の篭手の宝玉が光り、一誠の身体を包み込んだ。光が止むと一誠の身体を赤い龍を模した鎧が全身を包み込んだ。

 

 

「なんだ、その姿は!?」

 

 

「これは禁手(バランス・ブレイカー)赤龍帝の鎧(ブースデッド・ギア・スケイルメイル)俺が左手と引き換えに手に入れたお前を倒す為の力だ!!」

 

【One】

 

 そう言うと、一気に駆け出しライザーの懐に飛び込んだ。ライザーは驚きにあまりに一瞬判断が遅れて一誠の拳を真面に受けた。

 

 

【Two】

 

「ぐっ!このぉぉぉぉ!!」

 

 ライザーは直ぐに正気に戻ると一誠を応戦し始めた。閃光と化した2人は衝突しながら互いに攻撃を続けている。

 

【Three】

 

 赤龍帝の篭手よりカントダウンの音声が聞こえる。これは一誠が現在の状態を保っていられる時間を表していた。一誠は自分の神器の中にいる赤龍帝ドライグと取引した。己が左手を代償に力をくれと。そして現在の状態は禁手と呼ばれる状態だ。この状態では今までにない圧倒的な力を発揮する事ができる。しかし現在の一誠では今の状態は10秒ほどしか維持できない。一誠もそれを知っているため、出来る限り早く勝負も決めなければならない。

 

 

【Fore】

 

 

「フェニックスをなめるなぁぁぁぁ!!」

 

 ライザーは下級悪魔である一誠にダメージを受けている事で怒りを顕わにする。

 

 

「テメェこそ、俺達の部長を泣かしやがって絶対にゆるさねぇ!!うらぁぁぁ!!」

 

【Five】

 

 一誠の拳がライザーの腹に直撃した。

 

 

「がはっ!?……下級の分際でぇぇぇぇ!!!」

 

【Six】

 

 ライザーは直ぐに傷を治癒させて一誠の顔に炎を纏わせた拳を放った。一誠は真面にそれを受けると、頭部の鎧が砕け吹き飛ぶ。

 

 

「ぐっ…くそっ…」

 

【Seven】

 

 地面に激突した一誠は直ぐに立ち上がる。

 

 

「小僧!リアスは俺の物になるのが運命なんだよ!貴様は邪魔だ!此処で死ね!」

 

 ライザーが一誠を本気で殺す気で攻撃は放つ。

 

 

「ふざけんな!!テメェは部長を本気で思ってねぇだろうが!そんな奴に部長を渡せるか!!と言うか部長のおっぱいは俺の物だぁぁぁっぁ!!」

 

【Eight】

 

 再び頭部の鎧を形成しライザーとの戦闘を再開する。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

【Nine】

 

 一誠とライザーが衝突すると辺りが一瞬光りに包まれた。そして一誠とライザーは地面に落下し互いに倒れ込んでいる。

 

 

「ぐっくぅ…」

 

【Ten】

 

 10秒のカウントが終わり、地面に伏している一誠の鎧が強制的に解除される。

 

 

「くっくそ、こんな時に!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~一誠の精神世界~

 

 

 一誠の目の前が炎に包まれ、前にドライグが現れる。どうやらドライグに精神世界に呼び出された様だ。

 

 

【時間切れだな】

 

 

「クソッ!今度はなんだ!何を代償に払えばいい!?」

 

 一誠は新たに代償を支払う事で力を手にしようとしている。

 

 

【無理だ。今のお前ではどれだけ代償を払っても、これ以上はお前自身の身体が持たない。しかし最後に力を篭手の宝玉に取り込めた。それをうまく使え】

 

 

「でもどうやって!?」

 

 

【あの野郎が上手くやるだろう。俺の予想が当たっていれば奴は……】

 

 

 そこで一誠は現実世界に意識が戻る。

 

 

 

 ~零side~

 

 成程…アレが禁手(バランス・ブレイカー)赤龍帝の鎧(ブースデッド・ギア・スケイルメイル)か。左手を代償に手に入れた力、今迄にない力だ。しかし今の一誠じゃ長くは保ちそうにないな。最大で10秒ほどかな。

 さて……そろそろ、俺も用意するか。『攻撃』はしないと言っただけで、その他の事はしないなんて一言も言ってないからな。

 

 零はニヤリと笑みを浮かべていた。

 

 

「準備しとくか……」

 

 左手に金色の腕輪が現れる。それとほぼ同時に一誠とライザーが地面に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~闘技場~

 

 一誠は現実世界に意識を戻すと何とか顔を上げる事ができた。すると一誠は立ち上がっているライザーの姿を見た。

 

 

「くっ…ぅ……くっククク…アハハハハハ、俺の勝ちだ!此処に立っているのは俺だ!そして地に伏しているのはお前だ!」

 

 

「さて…それはどうかな」

 

 高笑いするライザーに対し、そう誰かが言う。ライザーはその声を主が誰なのか直感し一誠の後ろにいる零だ。

 

 

「れっレイ?」

 

 一誠も振り返ると零の姿を捉える。零の腕には金色の光を放つ腕輪があり、全身から眩いばかりの光を放っている。

 

【やはり奴は………】

 

 赤龍帝の篭手の宝玉が点滅しドライグの声が聞こえた。

 

 

「【ソウルコード:ライディーン】フェード・イン」

 

 零が金色の光に包まれると、黄金の鎧を纏った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~婚姻会場外~

 

 勝負の様子を大きな水晶で見ていたリアスとその眷属、レイヴェル、天照、サーゼクス、リアスとライザーの両親と多くの悪魔達。

 

 一誠とライザーが衝突し地面に落ちるとざわめきが起きる。

 

 

「この勝負、一誠君の勝ちですね」

 

 そう天照が言い始めた。

 

 

「何を根拠にそんなことを」

 

 

「理由は簡単です。私の息子が味方をしているからですよ……ほらっ」

 

 レイヴェルの言葉に天照がそう言うと、水晶は一瞬だけ眩い光に包まれる。黄金の鎧を纏った零の姿があった。

 

 

「あっあれは……まさか」

 

 

「そっそんなことが」

 

 

「なっなぜあの者が…いやまさか」

 

 

「あの方は…あの時の」

 

 多くの年配の悪魔達や魔王達が騒ぎ始めた。若手の悪魔達は訳が分からない様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~会場~

 

 

「さぁ……始めるか!【ゴッドワンド】!」

 

 ライディーンの鎧より放たれた光が天に昇ると、黄金の杖が天より零の前に召喚される。零はゴッドワンドを手にすると巧みに振り回すと会場一帯を包み込む黄金の魔方陣が出現する。

 魔方陣ややがて小さくなりライザーの足元だけに浮かぶ。

 

 

「なっコレは?!身体が動かない!?」

 

 ライザーは自らの身体が拘束された事に気が付く。

 

 

「俺は「攻撃」はしないとは言ったけど「拘束」しないとは言ってないよ……と言う訳で」

 

 零は一誠の横に移動すると、一誠を立たせた。

 

 

「れっレイ、その姿は…」

 

 

「細かい事は気にするな。俺が奴の動きを止めてる間に決めろ」

 

 そう言って零は一誠の肩を押す。

 

 

「えっ?身体が?」

 

 

「俺はあくまで援護だからな……取り敢えず早くしろ。俺も早く帰りたいんでな、おまけもつけてやったぞ」

 

 

「あぁ!サンキュー、レイ。ん?おまけ?」

 

 どうやら一誠の身体に触れた時に何かをしたようだ。今の一誠はボロボロの状態ではあるが体力は少し回復したようだ。

 

 

【Dragon Booster Limit Break】

 

 

「なっなんだ!?」

 

 赤龍帝の篭手から凄まじい力が一誠の身体に流れ込み、全身を赤いオーラが覆う。

 

【恐らく奴がお前に力を分け与えたのだろう。今のお前は鎧こそないが、一撃だけなら禁手(バランス・ブレイカー)と同等の力が出せるようだ】

 

 不機嫌な声でドライグがそう一誠に伝える。

 

 

「マジか!?ありがとう、レイ!」

 

 振り返り零にそう言うと、零は手を上げて何かを払う動きをしている。どうやら「分かったから、さっさとやれ」という事の様だ。

 

 

「行くぜ!鳥野郎!!うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 一誠の全身を覆っていたオーラが赤龍帝の篭手(ブースデッド・ギア)に収束しライザーに向かい駆け始める。

 

 

「こっこのぉぉぉぉぉ」

 

 ライザーも拘束から逃れようと必死に足掻くが、ピクリとも身体は動かない。そしてライザーの顔面に一誠が全ての力を込めた一撃を放った。

 それと同時に魔方陣が消え、ライザーは吹き飛び闘技場の壁に激突し気絶している。

 

 

「勝ったのか?勝った!勝ったぜ……ぇぇぇ」

 

 一誠は零に与えられた力と最後の体力を振り絞り放った拳で勝負は決したが、体力が尽き倒れそうになった。

 

 

「おっと……勝ったのに倒れるなよ。ほらっよっと!」

 

 零は倒れそうな一誠を支えると、空に向かい放り投げる。

 

 

「ちょえっ?!レイ!?」

 

 零の行動に驚いている一誠だが、視界に赤い髪が見えた。

 

 

「イッセー!」

 

 それは一誠の主であるリアス・グレモリーだった。

 

 

「部長!わっぷ……」

 

 一誠はリアスに抱き締められ、胸に顔を埋めている様な状態となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その光景を見て零は思った。

 

 

「ぁあ……絶対に鼻の下伸ばしてるなアレは、まぁ俺も力を貸したとはいえ今回は上々か」

 

 一誠とリアスから視線を外すと、倒れているライザーを見る。そして、ライザーに向かって歩き出す。ライザーの前に着くと、ゴッドワンドをライザーに向けた。

 

 

「待って!」

 

 ライザーとの間にライザーの妹のレイヴェルが割り込んできた。

 

 

「お兄様はもう戦えません!これ以上は」

 

 どうやら零の行動をみて、ライザーに止めを刺そうとしていると思った様だ。

 

 

「へぇ……兄とは言え、女を権力やらを使って手に入れようとした奴を庇うのか?」

 

 

「確かにお兄様は、妹の私から見てもどうかと思いますが…それでも私の兄である事に変わりはありません!」

 

 レイヴェルは真っ直ぐに零を見る。それを見ると、ゴッドワンドを下げ、代わりに地面を突いた。するとライザーの足元に魔方陣が浮かび上がり、傷が一瞬の内に治癒した。

 

 

「えっ?」

 

 

「フェニックスと言えど、精神が弱ってる状態じゃ治癒もできないからな……行動はどうかと思うが、根っから悪い様な奴ではなさそうだから今回は見逃してやるよ」

 

 零はそう言うと、唖然としているレイヴェルの頭を撫でる。そしてライディーンの鎧は光り出した。

 

 

「さぁ~て後の事は任せて帰るか……」

 

 

 それから零はその場から消え、天照の横に転移する。周りのサーゼクス達が驚いた表情をしている。

 

 

「黄金の戦士」「ライディーン」という言葉を零を見て呟く魔王達。

 

 

「では帰りましょうか、零」

 

 

「はい、母様………」

 

 零がゴッドワンドで地面を突くと、魔法陣が浮かび上がり零と天照を飲み込むと消えてしまった。

 

 

 それから、冥界はある噂が広まった。

 

 

 

「かつて二天龍を封印した戦士が再来した」と。



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EP13.5 その後

 ~高天原~

 

 高天原、それは日本の神話に出てくる日本の神々をいる世界。そしてこの高天原の統治者にして最高神、天照大御神がいる。現在、その最高神は、大きな鏡の前におりその横には白い衣を纏った零が立っていた。

 

 

「何とか、悪魔側と話を取り付ける事ができましたね。ありがとう、零」

 

 天照は息子である零に礼を言った。

 

 

「いぇ……俺もアイツ等の事もありましたので」

 

 

「あらあら……本当に貴方は優しいですね」

 

 

「俺はただ、あの焼き鳥が気にくわなかっただけです。では母様、俺はこれで」

 

 零はそう言うと、光と共に消えた。息子を見送った天照は、鏡に目線をやる。

 

 

 

「本当にあの子は優しい……流石、私の子供。【ドタッドタッドタッ】あら?」

 

 天照が慌ただしい音に気付くと、音の方を見た。そこには此処に入るための大きな扉がある。そして、扉がひらk【トガッバキッメキィ】ぶち壊され、紫色の髪の女性と黒髪の男性が入ってきた。

 

 

「「姉上!我が可愛い甥っ子は何処に!?」」

 

 何やら血眼になっている2人。それを見て天照は笑みを浮かべながら言った。

 

 

「あの子なら、先ほど帰りましたよ」

 

 

「そっそんな……」

 

 

「折角、仕事を終わらせて来たのに」

 

 2人は零に会いたかった様で、零が居ないと分かると落ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それよりも、月読、素戔嗚」

 

 ニッコリと笑みを浮かべる天照。しかし目が笑っていない、それどころか怒っているみたいだ。

 

 

「その扉…どうするつもりですか?」

 

 

「「あっ………ごっごめんなさい、姉上!直します!!だからお仕置きだけはご勘弁を!」」

 

 天照の妹であり月神・月読。弟であり、八岐大蛇伝説でも有名な素戔嗚だ。この2人は脅えている、なにやら天照のお仕置きとやらが怖いらしい。三貴子の2柱が脅えているほど、怖いらしい。2人は直ぐに自分達が壊した扉を力を使って修復している。

 

 

「全く貴方達はもう少し落ち着きというものを知って欲しいのですが…………まぁいいでしょう。あっそう言えば、あの子が隠し持ってたのはなんでしょうか?」

 

 天照は袖の下から1枚の紙を取り出した。

 

 

「あらあら、こんな大事な事を隠していたのですね。母に隠し事が通用すると思っているのでしょうか?」

 

 

「ん?姉上、それはなんだ?」

 

 素戔嗚が天照の持っている紙を見る。

 

 

「あの子がポケットに隠していたものです。どうやら私達には知られたくなかった様で」

 

 

「って盗ったの姉上?」

 

 

「盗ったとは失礼ですね。これは保護者に提出すべきものですよ、さてどうしましょうか。フフフ」

 

 天照はその紙を見ながら笑みを浮かべていた。月読と素戔嗚もその紙を見ると、天照と同じ様に笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~その頃 天王理宅前~

 

 

 高天原から自宅の前に帰ってくると、服が白い衣から学生服に戻る。

 

 

「ふぅ……取り敢えずは終わったな。ッ!?なんだ?何故か近い内に大変な事になる気がする……まぁいいか」

 

 取り敢えず、家に入る事にした零なのだが、彼は1つ大変な事を忘れていた。

 

 

 

 

 

「ただいま~…あれ?電気が付いてない?」

 

 家の中に入ると電気が付いていなかった。自分の腕時計を見ていると現在時刻22:30。普通なら皆起きている筈なんだがと考えながら電気をつけてリビングに入る。

 

 

「っておわっ!?お前等何してるんだ!?」

 

 オーフィス、白音、黒歌が体操座りをしていた。

 

 

「お腹空いた」「お腹空きました」「お腹空いたにゃ」

 

 

「あっ………」

 

 

「零、ご飯ない(ぐぅ~」

 

 オーフィスは何時もの無表情であるが、腹の虫が鳴いており凄く不機嫌なのが一目瞭然だ。

 

 

「食材もないのにどうやって作れと?」

 

 白音はムスッとした表情で零を睨んでいる。

 

 

 

「酷いにゃ、ご主人様。完全に忘れてたにゃ」

 

 黒歌も零を睨んでいる。

 

 

「いや…あの…本当にごめん。直ぐに作るから!待っててくれ!」

 

 零は自分の失態を謝罪し直ぐに準備に取り掛かろうとする。これ以上3人の機嫌を損ねれば大変な事になる。かつて零は数日、家を空けていたことがあった。その時はしっかりとしている白音に食費を渡していた。しかし白音とオーフィスの食欲が零の予想を遥かに超えていたので食費は保たず、零が帰るまで水だけで過ごしたらしい。その時は零は大変な目にあったらしい。

 

 数分で食事を完成させると、夕食の準備を終わらせた。

 

 

「ふぅ……間に合った。はい、3人ともできたよって早っ」

 

 零が3人を呼ぼうとしたが、既に座っていたので驚いている。

 

 

 

 

 

「じゃあたべ「零(クイックイッ」」

 

 食べようとするが、オーフィスが零の服を引っ張る。

 

 

「アーシアは?」

 

 

「あぁ………もう起きて来ても良さそうなんだが」

 

 

「ご飯……皆…一緒が美味しい」

 

 

「そうだな……少し見て来るよ」

 

 オーフィスの言葉に零はアーシアの様子を見に行く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~アーシアの部屋~

 

 

「ぅん……私はどうなって」

 

 アーシアは目を覚ますと、自分の部屋である事に気付いた。

 

 

「そう言えばリアスさんや一誠さんと一緒に戦って、急に目の前が光りに包まれて」

 

 

『コンコン』

 

 

「はっはい!?どうぞ!」

 

 

「アーシア、入るぞ」

 

 扉が開き、零が入ってくる。

 

 

 

「大丈夫か?」

 

 

「あっはい……あの時、零さんが助けて下さったんですか?」

 

 

 

「あぁ……疲れは取れたか?約3日間くらい眠り続けてたから少し心配だったが……多分聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)の使い過ぎだな。慣れない事をしたから疲れたんだろう。取り敢えず飯は食えそうか?」

 

 

「えっあっh『ぐぅ~』いっ今のは違うんです!」

 

 アーシアは顔を真っ赤にしている。

 

 

「フフフ……皆、待ってるからおいで。それと……リアス・グレモリーの婚姻の件は壊れたから安心しろ」

 

 

「ほっ本当ですか!?」

 

 

「まぁ詳しい話は本人に聞け……ほらっ早くしないとオーフィス達に食べられるぞ」

 

 

「はい!」

 

 アーシアは零と一緒にリビングに向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~???~

 

 零は目を覚ますと、何処かの丘の上にいた。その丘の上には岩があり、1本の剣が突き刺さっていた。

 

 

「なんだ、お前か……【・・・・・】」

 

 振り返ると青い服を着た少女がいた。

 

 

 

「お久しぶりです、零。少しお願いがありまして御呼びしました」

 

 

「お前がお願いってか……なんだ、腹が減ったから飯を寄越せと?」

 

 

「……貴方は私を何だと思っているんですか?」

 

 少女はジト目で零を見る。

 

 

「はr「やはり貴方とは話し合う必要があるようですね?」冗談です」

 

 少女が剣を取り出し、零の首元に刃を当てている。

 

 

「ふぅ………で?」

 

 

「取り敢えず、お腹が空きました。何か食べ物を下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~零の私室~

 

「何でだよ!?(がばっ」

 

 ベッドから跳ね起きてそう叫ぶ零。

 

 

「って……突っ込みで起きてしまった。ってまた人のベッドに潜り込んできたな」

 

 零はオーフィス、白音、黒歌、アーシアが眠っている事に気付く。

 

 

「まぁいいや……寝よう……」



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キャラ紹介

 名前:天照大御神

 

 性別:女性

 

 年齢:???

 

 種族:太陽神であり、原初世界の最高神

 

 出身地:???【言葉では表せない】

 

 家族:零(最愛の息子)、月読(妹)、素戔嗚(弟)

 

 容姿:長い黒髪に美しい容姿を持ち女神と呼ぶに相応しい。頭には太陽を模した金冠を被っており、巫女の様な装束を着ている。

 

 好きな物:零、妹と弟

 

 嫌いな物:零を傷付ける者

 

 神力:無限

 

 攻撃力:零によれば指1本で世界が滅びるくらい

 

 防御力:現在のこの世界最強と思われるグレードレッドやオーフィスの全力攻撃を受けても無傷。

 

 

 

 全ての始りである原初世界の最高神であり、零の母の分霊の1人。他の分霊は他の並行世界におり、情報交換は可能であるが普段はしない。

 

 この世界では天照大御神として存在しており、日々、地上を光で照らしている。大元である零の母の記憶もしっかりと引き継いでいるため、零に対しての愛情は本物である。しかし度が行き過ぎているのが零の悩みである。

 

 太陽神であり、普段は慈愛に満ちた笑みを浮かべながら世界をその光で照らしている。怒る事自体は珍しく、周りの神々も抑えられないほど大変な事になる。

 

 太陽神であり最高神でもあるため、その力は凄まじい。現魔王サーゼクスはその力が次元が違う事を気付いていた。その気になれば、その光だけで悪魔や堕天使を滅ぼす事が可能だ。フェニックス家の会場では力を抑えていたので悪魔達は無事にすんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 名前:月読命

 

 性別:女性

 

 年齢:???

 

 種族:月神であり、原初世界の神の1人

 

 出身地:???【言葉では表せない】

 

 家族:零(最愛の甥っ子)、天照(姉)、素戔嗚(弟)

 

 容姿:長い紫色の髪に月を模した金冠、銀色の瞳を持つ女性。服は黒い着物を着ている。

 

 好きな物:零、姉と弟

 

 嫌いな物:零を傷付ける者

 

 神力:無限

 

 攻撃力:零によれば天照と同等

 

 防御力:零によれば天照と同等

 

 

 

 

 大元は天照と同じく全ての始りである原初世界の神の1人。月読として存在しており、天照同様大元の記憶を持っているので零に対しての愛情は本物である。しかしそれと同様に姉に対して絶対に逆らわない。甥っ子である零を溺愛している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 名前:素戔嗚尊

 

 性別:男性

 

 年齢:???

 

 種族:荒ぶる神であり、原初世界の神の1人

 

 出身地:???【言葉では表せない】

 

 家族:零(最愛の甥っ子)、天照・月読(姉)

 

 容姿:赤い髪で何処かの飛〇御剣流を使う赤毛の剣士の身長を伸ばし、ボディビルダーにしたような感じ。

 

 好きな物:零、姉達

 

 嫌いな物:零を傷付ける者

 

 神力:無限

 

 攻撃力:零によれば天照と同等

 

 防御力:零によれば天照と同等

 

 

 

 

 

 大元は天照と同じく全ての始りである原初世界の神の1人。素戔嗚として存在しており、天照同様大元の記憶を持っているので零に対しての愛情は本物である。しかしそれと同様に姉に対して絶対に逆らわない。甥っ子である零を溺愛している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 名前:オーフィス

 

 性別:現在は女性

 

 年齢:不明

 

 種族:無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)

 

 出身地:次元の狭間

 

 家族:零、白音、黒歌、アーシア

 

 容姿:原作通り。しかし露出の高い服ではない(零の手により普通のゴスロリ服になった)。

 

 好きな物:零、アーシア達

 

 嫌いな物:零やアーシア達を傷付ける者

 

 力:無限

 

 攻撃力・防御力:不明(しかし零や天照を覗けば勝てるのは殆どいない)

 

 

 

 

 

 原作通りの無表情で何を考えられているのか分からないが、この所は零や白音達の影響で表情が出る様になってきた。食欲旺盛で10人前くらいは簡単に平らげる。

 

 現在のお気に入りは零の膝の上と手料理。

 

 禍の団(カオス・ブリゲード)とは零によって関係を断ち切っており、取り戻そうとしてきた輩はオーフィス自信か零によって排除されている(零によって排除された対象は生きているのを後悔される様な目に合うらしい)。

 

 零に対して家族とは違う、別の感情を持っておりそれが何なのかは本人は分かっていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 名前:塔城 白音

 

 性別:女性

 

 年齢:???

 

 種族:猫魈

 

 家族:零(ご主人様)、黒歌(姉)、オーフィス・アーシア(同居人)

 

 容姿:原作通り、首には零から貰ったネックレスがある。

 

 好きな物:零、黒歌達。甘い物、ご飯

 

 嫌いな物:家族を傷付ける者

 

 魔力・仙力:上級悪魔級

 

 攻撃力・防御力:零によれば魔王級といい勝負するのではないかと

 

 

 

 

 

 原作通りの無口な少女。零に拾われ、黒歌との離別がなかった。拾われた当初は零が何者か分からないでおり、直ぐに出て行こうと思っていたが、ある事件をきっかけに零の圧倒的な力とその性格から完全に心を惹かれた。

 

 普段は零を「ご主人様」と呼んでいるが、学校では零の願いにより「先輩」と呼んでいる。「学校でそんな風に呼ばれたら俺は変態3人組の仲間入りじゃないか」との事だ。

 

 現在は黒歌により仙術などを教え込まれている。それに加え、零に懇願し修行をつけて貰った。そのついでに魔力や仙術とは違う別の力を与えられた。

 

 零に対しては異性としての意識しており、アピールしているものの零が鈍感すぎる為苦労している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 名前:黒歌

 

 性別:女性

 

 年齢:不明

 

 種族:猫魈

 

 家族:零(ご主人様)、白音(妹)、アーシア・オーフィス(同居人)

 

 容姿:原作通り、白音と同じ様に零からネックレスを貰っている。

 

 好きな物:零、白音達。

 

 嫌いな物:家族を傷付ける者

 

 魔力・仙力:上級悪魔級

 

 攻撃力・防御力:零によれば魔王級といい勝負だろうとのこと

 

 

 

 

 

 白音と同じ様に零に助けられた。白音同様、当初は直ぐに出て行こうと思っていたが零の圧倒的な力とその性格で心を惹かれた。

 

 しかしはぐれ悪魔として指名手配されているため、普段は家か猫の状態で散歩(と言う名の白音のストーキング)。超が付くほどのシスコン。散歩と称して幾度も学園に赴いている。

 

 本人の力はそれなりに強かったが、零により魔王クラスの強さになった。白音と同じ様に零から力を貰っている。

 

 白音と同様に零を意識しているが、本人が気付かないので苦労している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 名前:アーシア・アルジェント

 

 性別:女性

 

 年齢:17歳

 

 種族:人間

 

 家族:零、白音、黒歌、オーフィス

 

 容姿:原作通り、零より金の十字架を貰っている。

 

 神器:聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)

 

 

 

 

 

 

 原作通りでは悪魔として蘇える運命であったが、零により運命を変えられた。一度死んだ際には旗を持った女性に会っており、零によれば「自分は何もしてない。彼女がアーシアを気に入ったからだ」と訳の分からない事を言っている。

 

 現在は零の家で暮らしており、それを聞いた男子生徒達は零に向けて殺意と嫉妬の目を向け襲い掛かってきた(本人はそれを返り討ちにしている)。

 

 今は普通の暮らしをして幸せだと言っている。



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EP14 我の居場所【オーフィス編】

 ~天王理家宅 リビング~

 

 我はオーフィス。我の望みはグレードレッドを倒し、次元の狭間に帰ること。

 

 でもこの所、おかしい。我、次元の狭間に帰る事がどうでも良くなってきた。その原因は我を撫でている、人間なのか神なのか分からない存在の性。

 

 

 

「零」

 

 

「どうしたオーフィス?」

 

 リビングでソファーに座りながら自分を撫でている零に声を掛けた。

 

 

「何でもない……」

 

 

「そうか…(なでなでっ」

 

 

「ん………」

 

 我、零に撫でられるの心地いい。ずっと撫でられててもいいと思うくらい、気持ちよい。零と一緒にいると胸が温かくなる。

 そう言えば、零と会ったのは何時だったか?そうアレは10年くらい前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~10年前 天王理宅 近く~

 

 

「ふぅ~やっと買い物が終わった。さて帰ってご飯を作らないと2人が待ってるな」

 

 

「お前なに?」

 

 零が振り返ると、そこには黒い服を着た少女が居た。

 

 

(あっ厄介な事に巻き込まれそうな予感……でも可愛い)

 

 零はそんな事を考えながら、少女を見ている。

 

 

「お前、なに?我と同じ無限の力を複数感じる……人間?」

 

 

「えっと……種族的には半分は人間かな。君は誰?」

 

 零はそう答えると、少女が何者か尋ねる。

 

 

「我、オーフィス。無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)

 

 

「ぁ~……無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)か。それで俺に何の用かな?」

 

 

「我、次元の狭間に帰りたい。でもグレードレッドが居て帰れない。だからグレードレッド倒す、けど我だけじゃ倒せないからお前の力を借りたい」

 

 

 ぁ~要約すると、俺の力に気付いた龍神様は俺の力を使ってグレードレッド…真なる赤龍神帝(アポカリプス・ドラゴン)を倒して次元の狭間に帰りたいと言う事か。でも次元の狭間って何も無い【無】そのものだよな。そんな所に帰ってどうするつもりだろう?

 

 

「それで君は次元の狭間に帰ってどうするつもりだ?」

 

 

「我、故郷に帰って静寂を得たい」

 

 

「それから?」

 

 

「それから?………どうもしない」

 

 

「ぁ~なるほど……そう言う事か(この子、自分の感情が何のかは分かってないけど‥…寂しい目をしている)」

 

 その強大なる力故に他の者からは畏怖の対象となる。かつて、俺自身もこの強大な力の性で他者から畏れられ、襲われた事もある。それ故の孤独か……俺には俺を受け入れてくれる母様や仲間達がいたけど、この子には居ない。

 確か本棚では禍の団(カオス・ブリケード)の連中に利用されているんだったか……この子から力を貰っておいて、実際は何もしないなんて………こんな可愛いくて無知な子を利用するなんて……アレ…何だろう。凄く腹が立ってきたんだけど……よし、決めた。

 

 

「えっと……俺は今は動く訳にはいかないけど、時期がくれば力を貸してあげてもいいよ」

 

 

「今は無理……なら力を貸すまで待つ」

 

 

「俺は天王理 零。よろしくなオーフィス」

 

 

「ぜろ……我、覚えた。零の傍にいる。ん?」

 

 オーフィスはそう言うと、零が手に持っている袋に気付いた。

 

 

「ん?これが気になるのか……これは唯の鯛焼きだ」

 

 

「たいやき?」

 

 オーフィスは首を傾げ、袋の中を覗く。中には出来立ての鯛焼きが一杯入っていた。

 

 

「魚?」

 

 

「形はそうだけど……まぁ食べれば分かるか」

 

 零は鯛焼きを1つ取ると、オーフィスの口に入れた。

 

 

「!……もぐっもぐっ。ゴクッ……美味」

 

 オーフィスはそう言うと、鯛焼きの袋を物欲しそうな目で見つめる。

 

 

「……はぁ、仕方ない。でも此処じゃアレだし公園にでも行くか」

 

 零はオーフィスを連れて、近くの公園にやってきた。

 

 

 

「もぐっもぐっ」

 

 零はベンチにちょこんと座りながら、もぐっもぐっと鯛焼きを食べるオーフィスを見ていた。

 

 

「…うん……これは中々……いや中々どころか、凄く可愛い!可愛いは正義だ!なのでこれはこれでよい!!(パシャ!パシャ!」

 

 零は何処から出したのか、カメラでオーフィスの写真を撮り始めた。

 

 

「零、なにしてる?(もきゅもきゅ」

 

 

「オーフィスは気にせずに食べていていいよ」

 

 

「ん、我、食べる(もぐっもぐっ」

 

 オーフィスは鯛焼きを食べ続けている。それを零(見た目6歳くらい)が写真を撮り続けている。

 

 

「ふぅ~」

 

 満足な顔でやりきった表情をして、汗を拭いている零。その表情は直ぐに何かを感じたのか、鋭い表情に変わった。

 

 

「此処にいたか、オーフィス」

 

 零が周りを見回すと、周りに十数体の悪魔達と茶髪の男が立っていた。

 

 

「なんだ此奴等?というか、人が可愛いを満喫していた所なのに……」

 

 零がそう言って、鬱陶しそうな顔をしていると突然光に包まれると消えた。

 

 

「目障りだ、人間の子供……死ね。帰るぞ、オーフィス。我等には目的がある」

 

 

「シャルバ」

 

 どうやら悪魔を引き連れてきた男はシャルバというらしい。

 

 

『全く、いきなり次元の狭間に送るなんて物騒じゃないか』

 

 

「なに!?」

 

 声が響くと、オーフィスの横に穴が開き零が出て来る。その光景を見るとシャルバは驚いている。

 

 

「俺だからよかったものの、普通なら『無』に飲まれて死んでるぞ?」

 

 

「貴様……ただの人間の子供ではないな!?」

 

 

「まぁ……半分は神かな。と言うかオーフィス、此奴等は知り合い?」

 

 

「シャルバ……我に協力するって言った。だから我も蛇を与えた」

 

 うん……分かった。此奴等が諸悪の根源だな。こんな可愛い子を利用しようなんて………消滅させても別にいいよね?答えは聞いてないけど。

 

 

「お前等、オーフィスを利用するだけ利用して後は知らんぷりするつもりだろ?」

 

 

「なに!?」

 

 シャルバは図星を言われた様で驚いている。

 

 

「と言う訳で……悪魔共よ、聞くがいい。銀河の星々が砕ける音を」

 

 零から黄金のオーラが立ち昇り、周りに宇宙空間が現れる。真っ暗な空間に輝く星々、そして浮かぶ惑星があった。

 

 

「【メモリーコード:ギャラクシアンエクスプロージョン】!」

 

 両手を交差させると、零の周りの惑星が全て爆発する。そしてその爆発にシャルバを含めた悪魔達を飲み込んだ。

 

 

「なっなんだこれは!?………にっ人間にこんなことが!?ぐわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 シャルバと悪魔達は惑星の爆発と共にこの世から消滅した。

 

 

「ん?あのシャルバとかいう男、転移で逃げたか……まぁいい、小物は何時でも倒せる………なぁオーフィス」

 

 

「?」

 

 

「お前の居場所はどこにある?帰るべき場所はどこにあるんだ?」

 

 

「……我の居場所?帰るべき場所?……我……ない……何処にいけばいい?零は知ってる?」

 

 

「居場所がないなら、俺がお前の居場所になってやる。お前が帰ってきたら俺が、「おかえり」って言ってやるよ。お前が本当に自分の帰る場所を見つけるまでな!」

 

 そう言って、零はオーフィスに手を伸ばす。そしてオーフィスは零の手を取る。

 そして、その日から零の家に住む事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~現在に戻る~

 

 

 

 零が我の帰る場所になった………とても暖かい。白音、黒歌、アーシア、我の家族になった。

 

 これまで皆、我を避けていた。でも零も白音も黒歌もアーシアも我を受け入れた、胸がポカポカする。そして、見つけた零の上は我の居場所。やっと見つけた、家族。

 

 我、この日常がずっと続けばいいと考えている。何時の間にか次元の狭間に帰ることがどうでもいいと思ってきた。我、この日常は壊す者、絶対に許さない。もし壊す者がいたら………我が倒す。

 

 

 

 

 

 

「オーフィス、どうかしたのか?」

 

 何時の間にか、オーフィスの身体から凄まじい力が溢れていた。自分の膝の上に座っているオーフィスから発せられた力を直に受けていた零。

 

 

「ん………何でもない、撫でて」

 

 オーフィスが上目づかいで言った。

 

 

「もぅ…オーフィスは可愛いなぁ~」

 

 零はそう言いながら、オーフィスを撫でている。

 

 

「我の居場所(ぼそっ」

 

 

「なんか言ったか?」

 

 零の言葉にオーフィスは首を横に振って答えると、撫でられる心地よさに身を任せて目を閉じる。



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第3章 月光校庭のエクスカリバー
EP15 再び崩壊する日常


 ~兵藤家 一誠の部屋~

 

 ライザーの一件から約1週間。学園に復帰し始めたオカ研メンバー達。この日、オカ研の部室のある旧校舎が清掃のために使えなくなっていたので一誠の家に集まる事になった。オカ研のメンバーはいるが、零や白音、アーシアの姿はない。

 

 

「あの部長、少し聞きたい事が」

 

 おもむろに一誠が手を上げ、リアスに質問を投げかける。

 

 

「なにイッセー?」

 

 

「この間、ライザーとの戦いで金色の鎧を纏ったレイの事を【ライディーン】とかって言ってたんですけど、アレってどう言う事なんですか?」

 

 その質問にリアスは少し考える様な仕草をすると口を開く。

 

 

「【黄金の戦士:ライディーン】……悪魔達の中でもとても有名な伝説よ」

 

 そして、リアスは語り始めた。

 

 

 かつて、神・堕天使・悪魔達による三大勢力の戦争が起きた。その戦争はずっと均衡状態が続き、どの勢力も疲弊していった。しかしそんな時に赤と白の2体の龍が現れた。この2体の龍は三大勢力が戦争している所で戦いを始め、三大勢力を巻き込み戦いを繰り広げた。この2体の龍こそ、二天龍。赤龍帝ドライグと白龍皇アルビオン。そして三大勢力は自分達の身の危険を感じ、この2体の倒す為に団結した。

 だが二天龍の力は強く神も魔王達も手を焼いていた。しかしそこに現れたのが、金色の鎧を纏いし戦士が現れ一撃の元に二天龍を光の槍で撃ち貫いた。戦士は直ぐにその場から消えてしまい正体は分からずに終わってしまった。

 だが戦士の言った言葉からこの戦士を【ライディーン】と呼んだ。

 

 

 

「という伝説よ」

 

 

「でもそれって、伝説なんじゃ……」

 

 そうそれは伝説でしかない、なのに何故、サーゼクス達は零を【ライディーン】と呼んだのか分からなかった。

 

 

「でもあの戦争にお兄様達は参加していたわ。そして参加した本人達がそう言ったのよ……ほぼ間違いないわ。彼が【伝説の戦士ライディーン】。そしてこの国の最高神の息子だなんて………訳が分からない事だらけね」

 

 

「伝説の戦士……」

 

 一誠の頭の中では、レーティングゲームの際のゼオライマーの圧倒的な力と殺気、ライディーンを纏った際の圧倒的な力。どれに置いても実戦経験が殆どない一誠にも次元が違っているのが分かった。

 

 

「(コンッコンッ)お茶持ってきたわよ~」

 

 一誠の母がお茶を運んできた。そしてその手には見覚えのあるものがあった。

 

 

「そっそれは!?」

 

 一誠の母が持ってきたのは一誠が小さい頃のアルバムだった。部員全員で一誠の小さい頃の写真を見る事になった。リアスと朱乃、一誠の母が小さい頃の一誠の話で盛り上がっている。

 

 

「はぁ……」

 

 

「フフフ、お母さんだね」

 

 祐斗が突然、そう言った。

 

 

「そう言えば木場、お前っt「イッセー君」なんだ?」

 

 突然、一誠の小さい頃の写真を見ていた祐斗の眼に怒りが現れる。

 

 

「この写真なんだけど」

 

 祐斗がそう言った写真には小さい一誠ともう1人子供がいた。そしてその背後には1本の剣が飾られていた。

 

 

「この子は近くに住んでた子で……あれ?名前はなんだったかな?」

 

 

「イッセー君、この剣に見覚えない?」

 

 

「さぁ?これがどうしたんだ?」

 

 

「これはね……聖剣だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~その頃、天王理家 リビング~

 

 この家の主、現在、この世界最強のチート主人公の零はソファーに座っている黒歌に抱き着いている。何やら零はかなり落ち込んでいる様だ。

 

「あっあの零さん、学校の方は行かなくて宜しいんでしょうか?」

 

 

「ぁ~……学校ね……ハハハ……学校……授…観…もうやだ(ぶつぶつ」

 

 アーシアが言った「学校」と言う言葉を聞くとより一層落ち込んだ。

 

 

「何があったか知らないけど凄い落ち込みようにゃ、よしよし」

 

 黒歌は凄く落ち込んでいる主を撫でる。

 

 

「零、落ち込んでる………(ツンツン」

 

 

「ご主人様、一体何が在ったんですか?」

 

 オーフィスは指で零の頭を突き、白音は横でお菓子を食べていた。

 

 

「色々在ったんだよ…………」

 

 零は顔を上げると遠い目で外を見ている。

 

 

「俺に構わずにアーシア達は学校に行ってくれ………オカ研の方にも行ってくれていい。俺の事を聞かれたら、家に篭ってるっていっといて……よし、気分転換しよう。これもいいな…いや、これは…‥フフフ」

 

 零はそう言うと、立ち上がり空間に歪みが起きる。零はその歪みに手を突っ込むと何かを探している。その表情は笑みに変わる。

 

 

「よし!オーフィス!白音!これを着てくれ!!」

 

 空間の歪みから取り出したのは、ゴスロリ服やスクール水着、メイド服など。零はそれを満面の笑みでオーフィスと白音に渡す。

 

 

「毎度毎度、コレ何処で買ってくるんですか?」

 

 白音が呆れた様な口ぶりで零に言う。

 

 

「自作だ…特に白音の持ってるゴスロリには3日間くらい試行錯誤をした」

 

 

「……………(じっー」

 

 ジト目で零を見る白音。

 

 

「おっと俺は変態な紳士じゃないよ。可愛い子が可愛い服を着て何が悪い!可愛いは正義だ!」

 

 

「はぁ……ってオーフィスはそれを着るの?」

 

 白音はメイド服を持っているオーフィスに対してそう言うと、

 

 

「我、零が喜ぶと嬉しい。だから我、零に喜んで貰う。そしてなでなでして貰う」

 

 

「あっ……私もなでなでして欲しいです」

 

 

「いいよ、いいよ。撫でるくらい幾らでもしてやる」

 

 テンションの高くなった零は、更に服を取り出す。撫でて貰えると聞いたオーフィスと白音は零出した服を抱えると着替えに行った。

 

 

「ん?………何か……変な感じの者がこの街に入ったな」

 

 

「どうかしたかにゃ?」

 

 黒歌が外を見ている零を見て首を傾げる。

 

 

「またこの街が戦場になるか。天使・悪魔・堕天使の3つの勢力……それだけではないだろうけどな。はぁ…俺に休みはないのか……」

 

 

 などと呟いていると着替えたオーフィスと白音が出て来た。

 

 

「うん!2人とも可愛い!」

 

 そう言うと写真を撮り始めた。

 

 

「何故でしょう……あの零さん、何時もより活き活きしてます」

 

 

「そうにゃ、アーシアも覚えておくといいにゃ。アレが始まると、止まらないにゃ」

 

 アーシアは黒歌の言葉の意味が分からなかったが、後に身をもって理解する事になる。

 

 それから撮影会はアーシアと黒歌を巻き込み、朝まで続いた。勿論、撮影されたオーフィス以外の3人は疲れて眠ってしまった。

 撮影者本人である零は上機嫌でオーフィスを背負ったまま現像作業に入り、作業が終わると満足した顔で眠ってしまったそうだ。だがこの時は誰も知らなかった、聖なる剣の名の元に生まれた闇を……



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EP16 教会の使徒

 昔々ある所に1人の少女が居た。少女は何の変哲もない平和な日々を暮していた。だが戦争が起きた、少女はその戦争で苦しむ民を見て1つの決意をした。

 

 丘の上にある1つの岩。その岩には1本の美しい剣が突き刺さっていた。少女はそれまでの全てを捨てて、その剣を引き抜きその国の王となった。

 

 そして様々な戦場を渡り、折れてしまった剣の代わりに【湖の淑女】より1振りの剣と鞘を授かった。

 

 王は騎士達と共に国を守り、民を導いていった。だが何時しか騎士達の中に王のやり方に対して不満を持った者達が現れた。その騎士達は王の元を去った。『王には人の心が分からない』そう言葉を残して。

 

 王は最後に自らの息子の剣により傷付き倒れる。王は傷付きながらも何とか1人の騎士と共に逃げ延びる。そして王は騎士に自らの剣を【湖の淑女】に返還する様に命じた。騎士が剣を返還し、王の元に戻り報告すると共に生きを引き取った。

 

 そして彼の王の持っていた剣は、王の名と共に後世に伝わった。

 

【聖剣・エクスカリバー】と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~撮影会から3日後 駒王学園 朝 教室~

 

 何時もの様に登校してきた生徒は話しをしながら過ごしていた。そんな中で浮いている存在がいた。

 

 

「イッセー!!!こんのぉ!」

 

 

「裏切りものがぁー!!!」

 

 松田と元浜がイッセーに向かい嫉妬と羨望の目を向け叫ぶ。その眼には若干ではあるが殺意が篭っているのは気の性だろう。

 

 

「ちょ…ちょっと待て!?一体何だよ!?」

 

 この騒ぎの原因である一誠は混乱していた。2人に恨まれる様な覚えがないからだ。

 

 

「白々しいぞ!聞いたぞ、この野郎!」

 

 

「あのリアス先輩と一緒に家から出て来たって!」

 

 どうやら一誠がリアスと一緒に出て来た所を誰かに見られたらしい。片や学園の変態、片や美人文武両道の学園のお姉様。その2人が同じ家から朝出てきた。それだけで何か在ったと思われても可笑しくない話だ。それが松田と元浜が怒っている原因。

 

 

「まさかリアスお姉様が……」「きっと何か弱みを握られてるのよ。最低」「何時か始末してやる」

 

 などと女性陣から聞こえてくる。

 

 

「「「「「兵藤!!!!!!」」」」」

 

 聞こえてきた憎しみの声。そして松田と元浜と同じ様に嫉妬と羨望の目をした男子生徒達が飛び込んできた。

 

 

「うげっ!?なんだ!?」

 

 一誠は嫉妬と羨望に加え殺意の籠った目で睨まれる。男子生徒達はカッターを取り出し投げようとしている。

 

 

「待て!そんなん死んじまうだろ!」

 

 

「「「「「大丈夫だ!非殺傷設定だから!」」」」」

 

 

「なんだそりゃあぁ!?」

 

 訳分からない事を言う男子生徒達の言葉に突っ込む一誠。

 

 

「うるさい…」

 

 教室全体の空気が冷たくなり、生徒全員が何かに押しつぶされそうにな重圧を感じる。全員がその冷たい空気の流れる方向を見てみると、白銀の髪の修羅がいた。

 

 

「退け……」

 

 

「「「「「はっはいぃぃぃぃ!!!」」」」」

 

 修羅の言葉に道を開ける男子生徒達。そして一誠と松田達の元に向かい歩いていく。何故か、3人にはそれが死神の足音にしか聞こえない。

 

 

「おはよう…3馬鹿」

 

 

「「「れれれれれれえれれれれr…レイ!?おおおおおおおおっおはよよよよ」」」

 

 3人は零から向けられている殺気に全身が震え出し、上手く喋れなかった。

 

 

「れっレイ、おっお前今まで何で休んで」

 

 元浜が何とか気を逸らそうとそう聞く。

 

 

「あぁ……少しな。それよりもだ………白音から聞いたんだけど、女子更衣室のロッカーに忍び込んで覗きをしたんだってな?」

 

 

「「「えっ…‥ぁ~うん。絶景でした」」」

 

 満面の笑みをそういう3人。その中で一誠だけが気付いた。覗きをした時にあの場には白音がいた。零は白音を大切に思っている。その白音から覗きをされたと聞かされた零。そうなると零が怒っている理由もこれから起こる事も容易に想像できた。

 

 

「白音のも見た?」

 

 殺気が消えると何時もの笑みを浮かべてそう尋ねた零。

 

 

「えっと……ご馳走様でした!」

 

 

「脳内のメモリーに保存してます!」

 

 

「ばっ馬鹿!」

 

 松田と元浜の言葉に顔を青くする一誠。

 

 

「そっか………お前等、少しO☆HA☆NA☆SHIしよっか?」

 

 零は何処からともなく鎖を取り出すと3人を縛り上げると引き摺りながら出て行った。

 

 

 それから十数秒後

 

 

『『『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁ!!!!!』』』

 

 学園内に叫び声が響き渡った。叫び声は直ぐに止んだものの、4人は昼まで戻って来なかった。

 昼が過ぎて戻ってきた一誠達は壊れたスピーカーの様に「ごめんなさい」を呟き続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~放課後 オカ研部室~

 

 

「……………」「……………」

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

 

「これはどういう状況かしら?」

 

 

「何があったのでしょうか?」

 

 ごめんなさいを連続で呟く一誠を見て首を傾げているリアスと朱乃。その前には零と零の膝の上に頭を乗せている白音、そしてアーシアがいた。

 

 

「此奴等には少し仕置きをしただけだ。大丈夫だ、特に身体に問題はない」

 

 

「それは信じていいのかしら………天王理くん…いぇ【伝説の戦士ライディーン】と呼んだ方がいいのかしら?それとも【天照大神の御子息様】の方がいいかしら?」

 

 

「「えっ?」」

 

 アーシアと白音が驚いた様な表情で零を見る。

 

 

「ぜっ零さんが伝説の戦士?」

 

 

「ご主人様が太陽神の息子?」

 

 

「ぁ~……後で説明するから2人とも少し黙ってて。リアス・グレモリー、そう敵意を剥き出しにするな。別に俺はお前等に敵対するつもりはない。まぁ……お前等が母様の領土で勝手をしてるから消してやろうと思った事も無い事もないが…それはそれだ。現にリアス・グレモリーお前の婚姻を潰す為に手を貸してやっただろう?」

 

 紅茶を飲みながらそう言うと、白音を撫でる。

 

 

「それは今後も私達に力を貸してくれると思っていいのかしら?」

 

 

「阿呆かお前は?今回は俺の目的と一誠の思いに応えて力を貸してやっただけだ……お前等と慣れあうつもりなどない。これまでと同じ様に互いに不干渉だ。まぁアーシアや白音達はお前達と仲良くしているからそれは止めんがな。だが………俺の大切な物を傷付けた時は神であろうが、悪魔であろうが、堕天使であろうが……この世界から消すだけだ」

 

 零がそう言うと両目が輝く。それを見るとリアスと朱乃、一誠は圧倒的な力を感じる。

 

 

「まっ……今まで通りであれば何もせんよ。一誠の覗きは別だけどな………ん?魔剣使いはどうした?」

 

 

「祐斗は………」

 

 

「部長……そろそろ彼女達が来ますわ」

 

 朱乃が時計を見ると、リアスにそう言う。

 

 

「来客の様だな」

 

 零が扉を見ると、2人の外套を被った少女がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の名はゼノヴィア・クァルタ」

 

 

「私は紫藤イリナ。御存じの通り、そこのイッセー君の幼馴染よ」

 

 青い髪にメッシュの入った少女と栗毛ツインテールの少女がそれぞれ自己紹介した。

 

 そして、リアス達と零達は彼女達から事情を聞いた。何でも【聖剣エクスカリバー】は先の大戦で折られた。しかし錬金術で7本の聖剣となり天界に保管されていた。だがその内の数本が何者かによって奪われた。

 それを受けた教会は砕けた【エクスカリバー】から再生された7本の内の2本を使用するこの2人を派遣し、【エクスカリバー】の奪還または破壊を命じたそうだ。その任務にあたって悪魔側に邪魔をするなと話をしに来た様だ。

 

 

「こちらとしても私の領土で勝手にされると困るんだけど」

 

 

「く…………ぐふっ…」

 

 零はそれを聞いて口元と腹を抑えて苦しんでいる。

 

 

「?」

 

 

「ねぇそこの貴方……悪魔じゃないみたいだけど何なのかな?」

 

 イリナが零にそう聞いた。

 

 

「ぶっアハハハハハハハハハハ、苦しぃ……はぁはぁ……ハハハハハハ、腹が痛い。ぶっくくく」

 

 突然、笑い始める零に全員が不思議な視線を向ける

 

 

「はぁはぁ……ぁ~苦しかった。こんなに笑ったのは久しいぞ。お前等根本から勘違いしてるぞ」

 

 

「なんだと?」

 

 ゼノヴィアが怒った様子で零を睨む。

 

 

「そのエクスカリバーとやらが聖剣とは……全くおかしい。そんな贋作如きが、真なる聖剣と言われるなど……それに誰の領土だって?此処は貴様等悪魔の領土ではないぞリアス・グレモリー?」

 

 

「ッ!?」

 

 リアスは零に睨まれて身体を硬直させる。それを見るとゼノヴィアに視線を変えた。

 

 

「分からんならそれでいい。しかしだ、お前達だけで勝てるのか?」

 

 

「例え勝てずとも、この身と引換えに破壊してみせる」

 

 どうやら2人は奪還が敵わない時には、命と引き換えに聖剣を破壊するつもりの様だ。

 

 

「無理だな。断言しよう、お前等の力と命ではその贋作如きでさえ壊す事はままならぬよ」

 

 

「なんですって?!」「ふざけるな!何者かは知らんが私達を舐めるなよ!」

 

 ゼノヴィアとイリナは零を睨む。

 

 

「贋作とは言え仮にも聖剣だ。人間の命の1つや2つで破壊出来はしない、例え欠片であってもな………」

 

 

「……………まぁいい。こちらは悪魔達が邪魔をしないと言うなら文句はない」

 

 

「そうね。イッセー君、悪魔を止めたくなったら言ってね?私が浄化してあげるから」

 

 2人はそう言うと、この場から去ろうとする。

 

 

「ん?君はもしかしてアーシア・アルジェントか?」

 

 

「えっはい」

 

 

「アーシア・アルジェント?確か落ちた聖女様だった?」

 

 アーシアはそう言われると顔を伏せた。零と白音の表情も固まった。

 

 

「教会から消えたと聞いていたが、まさかこんな所に居たとは。どうやら悪魔にはなっていないようだが……1つ聞きたい、君はまだ主を信じているのか?」

 

 

「ぇ~でも彼女は異端なんでしょ?」

 

 

「昔、異端となったものが後ろめたさや後悔から主を忘れきれなかった者がいた。彼女からはそう言った匂いがする」

 

 

「ふぅ~ん。ねぇ!アーシアさん、貴方はまだ主を信じているの?」

 

 ゼノヴィアとイリナは、アーシアにそう問いただす。

 

 

「ッ……忘れきれないだけです。ずっと信じてきたものですから」

 

 アーシアは涙を流しながらそう答えた。アーシアは教会で拾われ、ずっと聖書の神を信仰してきた。だが悪魔を助けた事で異端者・魔女などと言われ追放された。

 

 

「貴様等………」

 

 零の右眼が光ると共に右手に風が収束し始める。

 

 

「赦しません。アーシアを……私の家族を侮辱した事……生きている事を後悔させてあげます」

 

 低い声でそう言い放ったのは以外にも白音だった。何時も無表情で感情を滅多に出さない彼女は今この時、怒りを顕にしていた。それを見ると、零の右手に収束していた風が消え、眼の光も消えていた。

 

 

「珍しく怒ってるな……」

 

 

「ご主人様……ライ使っていいですよね?」

 

 白音はそう零に聞くと、零は黙ったまま頷いた。

 

 

「そう言う事なら僕も参加させて貰うよ」

 

 そう言ったのはリアス・グレモリーのナイト木場祐斗だった。何時もの木場とは違い、その眼には暗い闇が灯っていた。それは憎しみ、何かに対する憎しみが木場の中で渦巻いていた。



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EP17 庭のライガー

 ~駒王学園 中庭~

 

 木々に囲まれた広場でゼノヴィアと白音、イリナと祐斗が相対していた。白音はアーシアを侮辱された事で怒りを顕にし、祐斗は何故か何時もと違い冷静さを欠いている様に見える。

 

 

「さてリアス・グレモリー。こんな所で派手に戦って大丈夫か?」

 

 

「安心して、この辺りには結界が張られてるわ」

 

 

「いやそうじゃなくて、白音が戦うと周りに被害が………」

 

 

「一応、人除けや攻撃に対しての結界を張ってるから大丈夫だと思うけど。彼女が妖怪とはいえ、そこまでの力があるとは思わないわ」

 

 

「はぁ……これだから実戦も知らない甘ちゃんは……」

 

 

「なんですって!?聞き捨てならないわね!!」

 

 呆れた様に零がそう言うと、リアスがその言葉に反応する。

 

 

「まぁ……俺の言葉が正しいって直ぐに分かる」

 

 それを聞くと、リアスは視線はゼノヴィア達に戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~白音side~

 

「今の内にアーシア先輩に謝るなら許して上げます」

 

 白音が静かにそう言うが、ゼノヴィアは布に包んでいたエクスカリバー・デストラクション(破壊の聖剣)を構えた。

 

 

「それはそのつもりはないって事ですか……」

 

 

「当然だ、異端者に異端だと言って何が悪い」

 

 

「そう…………なら、少し痛い目に合って貰います」

 

 白音はそう言うと、ポケットから首輪を取り出し自分の首に巻いた。すると、頭に猫耳が、スカートの下からは白い尻尾が現れた。

 

 

「ライ、力を貸して……」

 

 首輪についている、銀色の何かの形を模した獅子か虎の様な飾りが光る。

 

 

 《ガアァァァァァァ!》

 

 

「なんだ!?」

 

 ゼノヴィアは何処からか聞こえてきた獣の咆哮に驚き、周りを見るが何もいない。白音の方に視線を戻すと、首輪の飾りから出た光が白音を包み込んでいた。

 光が消えると、白い鎧に身を包んだ白音の姿が現れる。頭部に獅子と虎を掛け合わせた様な獣の頭部を模した兜が装着された。

 

 

『白音~他の装備は使っちゃ駄目だぞ。此処じゃ被害が出ちまうから』

 

 

「はい、分かってます」

 

 零の声が聞こえてくると、白音はそう返事を返すと、構えを取る。すると、両腕に装備されていた金色の爪が展開された。

 

 

「行きます」

 

 白音はそう言うと、両手を付いた。その恰好はまるで獣の様な姿だ。

 

 

「来るなら来い、かえr…ガッ!?」

 

 喋ってる途中で白音の姿が消えた。そして何時の間にかゼノヴィアの目の前に現れ、その爪を振り下ろした。ゼノヴィアはなんとか、エクスカリバー・デストラクション(破壊の聖剣)でなんと受け止める。白音の力が凄まじかったのか、5mほど吹き飛ばされる。

 

 

「なっ!?なんだ!この馬鹿力は!?ッ……完全に防いだはずなのに手が痺れる」

 

 ゼノヴィアは先程の白音の一撃で痺れている様だ。

 

 

「アーシア先輩を馬鹿にしたこと、許せません」

 

 頭部の鎧のフェイスバーが展開すると、両手の金色の爪が光り輝く。

 

 

「ッ!(アレは拙い!アレを喰らったらやられる!)」

 

 

「すとr「こらっこらっ、それをするとあの娘が八つ裂きになるから止めなさい」分かりました。それよりも時間、いいんですか?」

 

 再び駆け出そうとした白音を止めた零。爪の光も止まり、白音を包む鎧も消えた。

 

 

「あっ……しまったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 零は何かに気付き、天を仰ぎ叫ぶ。その叫びに全員が凝視する。

 

 

「どっどうしたんだ?」

 

 一誠が零に何があったのか、尋ねると死んだ様な瞳で一誠を見た。その目で見られた一誠は「ひぃ」と小さく悲鳴を上げる。

 

 

「白音、直ぐに行くぞ!アーシアも!!」

 

 

「はい」

 

 

「はっはい!」

 

 3人は慌ただしく、その場を離れる。去る間際に零はゼノヴィアに視線を向ける。

 

 

「次にアーシアを侮辱したら塵1つ残さず消すぞ、女」

 

 そう言うと、再び走り始めた。

 

 

「いっ一体なんなんだ?」

 

 ゼノヴィアは唖然としている。

 

 

(アレがあの子の力……どうみても規格外。惜しいわね……どうにか此方に引き込めないかしら?でもそんな事したら…彼の怒りをかいそうね…どうしたらいいかしら?)

 

 リアスはそう考えながら、零達の背を見ていた。

 

 

 祐斗とイリナの勝負は途中より、ゼノヴィアが加わり祐斗の敗北で終わった。そして明かされた祐斗の秘密。

 かつての大戦で折れてしまったエクスカリバー。それを打ち直し7つの聖剣となった。そして教会は聖剣の適性を持つ子供達を集め、実験を行った。それが露見しそうになり、教会側は子供達を処分した。その生き残りが祐斗である。そのため、祐斗は聖剣を憎んでいる。主(聖書の神)の為、誰かの為にと信じていたのに、最後には裏切られ仲間達は殺された。聖剣に復讐する為に悪魔となった。

 

 

 勝負が終わった後ゼノヴィアとイリナはある再び外套を纏った。

 

 

「此方としては邪魔さえしなければそれでいい。それよりもさっきのアイツは何なんだ?急に飛び出して行って……あの白いのも人間ではなかったな」

 

 

「彼は『伝説の戦士』よ。白い子は彼の家族らしいわ……」

 

 

「彼が『伝説の戦士:ライディーン』……えっ?」

 

 

「『ライディーン』ねぇ……えっ?」

 

 

「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」」

 

 2人は零が『ライディーン』と聞くと、叫び声を上げる程驚いている。

 

 

「あわわわわわ………大変だよ、ゼノヴィア!もっもし!本当に彼が『伝説の戦士:ライディーン様』ならわっ私達!あの方の怒りを買っちゃったんじゃ?」

 

 

「おおおおおお落ち着け!イリナ、悪魔の言う事だ。偽りということも………いや……でも……もし本当なら教会側が滅ぼされても」

 

 2人は二天龍を一撃で倒した零の怒りを買う→教会側・天界が敵だと思われる→教会・天界の崩壊。という想像をした様だ。

 

 

「流石にレイだってそんなこと……あっでも身内に関わるとアイツ凄くキレるな」

 

 一誠がそう言うと、2人は頭を抱えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~天王理家~

 

 

「……………………(ゴゴゴゴゴッ」

 

 

「………ガクッガクッ」

 

 天王理家のドアの前で無表情のオーフィスが立っている、心なしか不機嫌な様だ。その横で震えている黒歌。

 その様子を遠くから見ていた零、白音、アーシア。

 

 

「あの、オーフィスちゃんはなんであんなに不機嫌そうなんでしょう?」

 

 

「ご主人様は今日はオーフィスとお出かけの予定だったんです」

 

 

「えっそうなんですか!?すっすいません!私なんかのために…」

 

 申し訳なさそうに俯いてしまう。それを見た零は、アーシアの頭を撫でる。

 

 

「アーシアが気にする必要はない。俺は家族を侮辱されて黙ってるほど温厚な性格でもないからな。それに今回は白音が戦ったわけだし」

 

 

「そうです、アーシアが気にする必要はありません。私だって家族を侮辱されて大人しくしてるなんてできません」

 

 

「零さん、白音ちゃん………ぐすっ……ありがとうございます」

 

 アーシアは涙を流しながら笑う。

 

 

「さて……当面の問題はオーフィスだよな。見つかったらたいh「零、見つけた」!?」

 

 3人が上を見上げると、冷たい眼をしたオーフィスが浮いていた。

 

 

「おっオーフィス……いや…あの……これはその」

 

 零はなんとかオーフィスの機嫌を直そうと思考を働かせる。

 

 

「我、待ってた」

 

 

「あっはい……」

 

 

「我、今日楽しみだった」

 

 

「うん、本当にごめん。今回は俺のミスだ、言い訳はしない」

 

 零は両手を上げていると、

 

 

「ちっ違うんです!オーフィスちゃん、これには事情が」

 

 

「?」

 

 オーフィスは首を傾げてアーシアを見た。学園であった事を聞かされたオーフィス。

 

 

「我、そいつら消しにいく」

 

 

「おっオーフィスちゃん、そんな事しちゃ駄目です!」

 

 アーシアを侮辱したゼノヴィア達を消しに行こうとするオーフィス。オーフィスが言うと、ゼノヴィア達だけでなく街1つくらいは巻き込んで吹き飛ばしそうな気がする。

 

 

「オーフィス、お前がするとこの街を完全に吹き飛ばすだろう……そいつ等については取り敢えず解決しているから止めとけ」

 

 

「それだけじゃない……我と零の時間を邪魔した」

 

 オーフィスの身体から黒いオーラが立ち昇り、地面にヒビが入る。白音や黒歌、アーシアはオーフィスの力が強大な事を肌で感じていた。

 

 

「落ち着け……明日は一日、お前に付きやってやるから」

 

 

「明日……一日、ずっと?」

 

 

「うん、ずっと」

 

 

「分かった。我慢する」

 

 オーフィスは明日、零が1日中一緒に居る事で納得した様だ。オーラが消え、先程まで発していた力も消失した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~天王理家内~

 

 何とかオーフィスを落ち着かせた一同は食事の準備をしていた。

 

 

「零さん、リアスさんが言ってた『伝説の戦士』って」

 

 食事の準備をしていたアーシアは昼間に聞いた事を零に尋ねる。

 

 

「アーシア、それってアレかにゃ?三勢力が戦争していた時に、いきなり天から現れた金色の戦士のことかにゃ?」

 

 黒歌が伝説の戦士のことを知っていた様だ。

 

 

「はい、それがリアスさん……オカ研の部長さんが零さんが『伝説の戦士:ライディーン』だって」

 

 

「それと『天照大御神の息子』とも言ってました」

 

 

「天照大御神って……あの天照かにゃ?」

 

 

「どうなんですか、ご主人様?」

 

 オーフィス以外が零を凝視する。今までずっと傍に居た零が『ライディーン』『太陽神の息子』だといきなり言われれば驚くのも無理はない。

 

 

「まぁ信じて貰えるかは分からないけど……取り敢えず説明するとしようか」

 

 零は自分が原初世界の住人で、原初の神の息子であること、この世界に来た経緯、この世界に来た時に偶々いた、二天龍を倒してしまった経緯も話した。それを聞いたオーフィス以外は唖然としていた。

 

 

「って事はご主人様も神なのかにゃ?」

 

 

「半分は人間、半分は神。と言うか俺もハッキリ分からないんだよね。まぁどうでもいい話なんだが」

 

 

「それってどうでもいい話なんですか?」

 

 

「俺の母様が何者であれ、俺を愛し育んでくれた事に変わりはない。神で在ろうと邪神であろうともね…まぁ溺愛され過ぎるのも困ったものだけど……」

 

 何やら遠い目をして外を見ている零。

 

 

「それにしても驚いたにゃ、ご主人様がそんな存在だったなんて………」

 

 

「我、零がなんでもいい。零は零……我はそれでいい」

 

 オーフィスの言葉に全員が頷いた。

 

 

「他の奴には黙っておいてくれ………一応母様には原初世界の事は他の世界の奴等には言わない様に口止めされているから」

 

 

「よっ良かったんですか?私達にその様な大切な事を教えられても?」

 

 

「別にいいよ。他にさえバレなければそれでいい………それにしても贋作とはいえ聖剣か(そう言えば木場祐斗、アイツは何か抱えてるな。憎しみだけじゃなく、アイツの秘密ね……少しだけ調べてみるか)」

 

 

 《私のお願いしたこともお願いしますよ。後、お腹が空きました。ご飯を下さい》

 

 

「はぁ……何かと忙しくなるな……」

 

 零はそう言うと、オーフィスを撫でながら雨雲に覆われた夜空を見ていた。




・ライガーゼロ

【ゾイド】の世界のメカ生命体。その世界にて零が手に入れた個体。

ライガーゼロは元々はライオン型の機体であったが、零の【ソウルコード】によって鎧として登場している。

白音に譲渡されており、零から貰った首輪に付いている。普段は白音が大切に身に付けている。

ライガーゼロは戦況に合わせて装備を変更する事で対応する。それはこのソウルコードとなっても同様で、戦況により装備を変更する事が可能。

白音は装備する事で力と速度が数倍に跳ね上がり、獣としての本能も目覚め、反応速度と感覚が鋭くなる。


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EP18 木場の過去

 ~深夜 駒王街~

 

 リアス・グレモリーのナイト、木場悠斗が街を歩いていた。その目的は聖剣エクスカリバーの探索と破壊だ。

 

 

「………………」

 

 その目には何時もの優しさはない。仲間を奪った聖剣に対する憎しみと怒りが宿っている。だが何処か困惑している様だ。

 

 その原因は昼間戦ったゼノヴィアの言った言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~昼間 駒王学園 中庭~

 

 零達が去った後、勝負で負けた祐斗。ゼノヴィア達は【伝説の戦士ライディーン】が零だった事を知り、怒りを買ってしまったと思い頭を抱えていたが気を取り直して、街へ赴こうとする。

 

 

「あっそうだ、赤龍帝。お前に1つ忠告しておく、【白き龍】は既に目覚めているぞ」

 

 

「白き龍?」

 

 当の本人である一誠は何の事なのか、全く分かっていない様だ。

 

 

「後、木場祐斗だったか。例の事件の事は我々の中でもタブー扱いとなっている。しかし何故、そこまで聖剣に怨みを抱く?」

 

 

「何故!?そんなのは分かりきってるだろう!僕達はあの実験のせいで未来を奪われた!!あそこには、僕よりも小さい子も居た……みんな……みんな……未来を奪われたんだ!!!」

 

 木場はかつて、仲間を失った。

 

 

「そんな馬鹿な……あの事件では行方こそ分かって居ないが犠牲者はいなかった筈だ」

 

 

「えっ?……そっそんな事がある訳が」

 

 木場は困惑している。かつて木場を含めた聖剣計画の被験者である子供達は毒ガスを巻かれ次々に倒れていった時の事を思い出した。

 

 

「あの場所には被験者の子供達の遺体が一体もなかったんだ。確かに毒ガスは散布された形跡があったが、遺体が確認されなかったんだ。施設は徹底的に破壊されていた、そして唯一の施設の職員の生き残りの話では【金色の鎧を纏った男達を引き連れた少年によって施設は破壊された、子供達は少年が出した光によって治療され連れて行かれた】と言っていた」

 

 

「皆が……生きている?ならっ……僕は……わ……何の為に……」

 

 

「『黄金の鎧』?『少年』?」

 

 リアスは「黄金の鎧」と「少年」という言葉に引っかかった。つい最近、身近で見たような気がしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~深夜 駒王町~

 

 

「…………何の用だい?」

 

 

「おやおや……俺に気付いていたか」

 

 木場が振り返ると、そこには零が立っていた。

 

 

「俺は散歩の途中だ。お前は散歩って感じじゃないな……聖剣探しか?」

 

 

「だったら、どうだと言うんだい……それに僕はもうどうすればいいのか分からない………皆が死んだんじゃないなら復讐の意味なんてない……僕の……今までは……」

 

 そう今の木場には目的がない。今まで聖剣に対する復讐だけが木場を生かしてきた。

 

 

「………生きる意味は自分で見つけろ。お前は未だ生きている、生きる事を放棄するな……お前は今まで自分を捨ててきた、なら今度は自分として生きればいい」

 

 零の後ろに金色の鎧を纏った男が現れる。

 

 

「王よ、御待たせしました」

 

 

「カノン……アレは手に入れれた?」

 

 

「はい。此方に……」

 

 カノンは光る宝石の様な物を取り出すと、零に差し出した。それを受け取ると、空に翳し宝石を見ていた。

 

 

「うん……じゃあ行くとしようか」

 

 

「ハッ……【アナザーディメンション】」

 

 カノンを中心に宇宙が広がる。そして悠斗は何か飛ばされる様な感覚を感じ、視界が真っ白に染まった。



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EP19 遠き日の仲間達

 ~何処かの森の中~

 

 

「っ……一体何が」

 

 祐斗は目を開くと、そこには木々が1面に広がっていた。

 

 

「おいっ……大丈夫か?」

 

 祐斗は顔を上げ、声のした方向を向くと零とカノンが立っていた。

 

 

「此処はどこだ?」

 

 

「此処はイギリスの森の中。ちょいと山奥過ぎて滅多に人は入ってこない場所だ。ついてこい」

 

 零とカノンが歩き出すと、祐斗も立ち上がりその後を着いていく。

 

 

「僕を何処に連れていくつもりだ」

 

 

「これまで偽って来たお前が、これからお前がお前として生きていく為に選択する場所だ」

 

 祐斗には零の言葉に驚いている。

 

 

「何故それを!?」

 

 

「何たって俺は神の子。魔剣の力で偽っていても、それくらいは見抜くのは簡単だ」

 

 

「っ……だったら何故僕に構う!?君には関係のない事だろう!?」

 

 自分がこれまで隠し続けてきた事を見抜かれた事、それを知った上で零が何をするのか理解できなかった。

 

 

「あぁ、関係ない。関係はないが……あの子達が頼むんでな」

 

 零がそう言うと、どうやら森を抜けた様だ。祐斗は森を抜けた先で見たのは大きな屋敷だった。

 

 

「こんな所に屋敷が……」

 

 

「これは俺が創ったもんでな。ある施設になっていr《ドカーン!》…………」

 

 屋敷の一角が吹き飛んだ。それを見て明らかに怒っている零とカノン。

 

 

「アイツ等…………またか。カノン、これで今年で何回目だ?」

 

 

「私の覚えている限りでは今年で5回目ですね」

 

 

「はぁ………どうせ、あの2人だろう。壊れた所は2人に直させてくれ、今はあの子達の所に…『あっレイ様!』」

 

 爆発した屋敷の一角を見て、疲れた様に溜息を吐いていると中から沢山の子供達が出て来る。子供達は零の周りに集まった。

 

 

「レイ様!帰って来たの!?」

 

 

「あぁ……それよりもお前達のお友達を連れてきたよ」

 

 子供達が振り返ると、そこには祐斗がいる。

 

 

「君達は……でもどうして……生きて…あっ!」

 

 祐斗が目にした子供達。祐斗にはその子供達が誰なのかが分かった。成長はしても見間違える筈がない、かつて苦楽を共にした仲間達が目の前にいる。そして祐斗は自分を庇って死んでしまった仲間達が本当に生きているとは思わなかった、だがゼノヴィアの言葉を思い出した。【金色の鎧を纏った男達を引き連れた少年によって施設は破壊された、子供達は少年が出した光によって治療され連れて行かれた】と言う言葉を。

 

 目の前にいる金色の鎧の男=カノン、それを引き連れた少年=零。こうして全てが繋がった。

 

 

「よかった……本当によかった……皆…無事で」

 

 祐斗は泣きながら、その場に膝を付いた。子供達も祐斗が誰なのか分かった様で、祐斗の周りに集まる。

 

 

「君も本当に無事で……」「これまでどうやって」

 

 祐斗と子供達は再会を喜び、互いの温もりに触れあっている。零はそれを見ながら、カノンから渡された水晶を見ていた。

 

 

「感動の再会か……俺こういうのに弱いんだよね。ぐすっ」

 

 零はカノンの鎧のマントで涙を拭いている。

 

 

「はっ………あの何故、私のマントで拭いていらっしゃるんですか?」

 

 

「ハンカチがなくて、そこに綺麗な布が在ったんで……すまんすまん。さてと」

 

 零はそう言うと、マントを離した。そして握っていた水晶を再び見た。

 

 

「あっちの方もそろそろ時間だな。4本の贋作が1本になる頃か……阿呆共が出過ぎなければいいんだが……カノン、スマンが様子を見て来てくれ。何か在れば手を出して構わない」

 

 

「御意……【アナザーディメンション】」

 

 カノンはアナザーディメンションを使い、その場から消えた。

 

 

「さて………時間がないな。フッ」

 

 零はカノンから渡された水晶に息を吹きかけると、水晶が砕け中に入っていた粒子が祐斗と子供達を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~木場side~

 

 

 僕は……私は…………人を捨ててまで復讐の為に生きてきた。なのに皆は生きていた、それはいい。皆が生きていてくれた事はとても嬉しい。でも……これまでの私の人生は何だったんだろう?

 

 悪魔となってリアス部長や朱乃さん、イッセー君と過ごしてきた日々は何だったんだろう?

 

 

「本当に貴方が無事でよかった……」

 

 

「ごめんね、君に全てを背負わせてしまって」

 

 

「でも僕達はレイ様に助けられた」

 

 

「だから、もう貴方は貴方の為に生きていいの」

 

 

「未だ、聖剣が憎い?」

 

 

 あぁ……僕や君達を苦しめたエクスカリバーは許せない。それに僕達をあんな目に合わせた奴等も、だからこそ僕は……私を捨てたんだ。

 

 

「でも今のままじゃ勝てない」

 

 

「私達の1人1人の力じゃ足りなかった。だから」

 

 

「私達の力をあげる」

 

 水晶から出た粒子が祐斗の力を包み込んだ。

 

 

 これは……この力は聖剣の……でもどうして?

 

 

「その力はかつて、その子達から抜かれた聖剣の因子だ。お前達1人1人ではそれが足らなかった、だからその子達は自分達の因子をお前に託した」

 

 零が歩いてくると、小さな子供達を撫でている。

 

 

「ふぅ………この後の事は全てお前が決めればいい。丁度、あっちも始まった様だからな」

 

 零は水晶玉を取り出すと、前に出す。水晶玉が光ると、駒王学園が映りオカ研のメンバーとイリナ達が映る。そしてその前には12枚の黒い翼を堕天使と聖剣を持ったフリードと研究者の様な格好をした人物がいた。

 

 

「ん?なんで、アーシアと白音までいるんだ?……やっぱこの結界は不便だな。強度はいいが外と中との時間がズレてるし」

 

 

 えっ?どういうこと?

 

 

「あぁ……この辺りには特殊な結界が張られててな。神でも最高神クラスしか打ち破れない強度のものなんだが、その反面、中と外に時間差が生じる。時間で言えば中での1日は外の3日程度になっている、まぁ今はどうでも良い事だ。俺は白音とアーシアを助ける為に行くが………どうする?」

 

 

 私は………今更あそこには戻れない……部長や朱乃さん、イッセー君に合わせる顔なんて……

 

 

「フン……リアス・グレモリーや姫島朱乃がどういうかは知らんが、一誠なら受け止めるだろうさ。アレは変態だがお人好しの馬鹿だからな」

 

 零の紅い右眼が光ると、制服から青い服に変わり右手に風が集まる。そして零は何かを掴んだ。

 

 

「【ソウルコード:アルトリア】………力を貸して貰うぞ。さて……行くか」

 

 零の足元に魔方陣が浮かび上がる、どうやら転移の魔法陣の様だ。

 

 

 私は……一体どうすれば……

 

 

「行ってあげて」

 

 

「私達はずっと此処で待っている。貴方は貴方の今、するべき事をして」

 

 

「僕達は離れていても君と共にいるよ」

 

 

 皆、ありがとう……………行ってくるね。

 

 

「また来てね!そしたら皆で聖歌を歌おうね!」

 

 

 あぁ……また歌おう。皆で一緒に……昔みたいに。

 

 

「フッ……では行くとしよう」

 

 零と祐斗は光に包まれてその場から消えた。



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EP20 深夜の学園

 ~白音side~

 

 こんにちわ、白音です。ご主人様がいなくなって3日が経ちました、今はイッセー先輩達やアーシア先輩達と一緒に学園の前に居ます。

 

 その理由はこの街に現れた堕天使の幹部コカビエルを倒す為です。恐らく今の私では勝てないと思いますが、リアス先輩から祐斗先輩の過去を聞いて少しでもお手伝いできればと思っています。アーシア先輩も同じ気持ちらしく、一緒に居ます。

 

 

「ねぇ塔城さん」

 

 

「何ですかリアス先輩?」

 

 

「貴方のご主人様に連絡はつかないのかしら?」

 

 

「それがこの3日間、行方不明でして……でもこの状況は分かってる筈ですから、直ぐ来ると思います」

 

 

「零さん、本当に何処に行ったんでしょうか?」

 

 

「偶にあるので気にしても無駄です……私達の学園を壊させる訳にもいきませんし、ライ、お願い」

 

 《ガアァァァァァァ!!!》

 

 獣の咆哮と共に白音の身体を白い鎧が覆った。

 

 

「アーシアはできるだけ下がっていて下さい。相手は堕天使の幹部です、正直言うとこの場に居る全員が纏めて掛かっても勝てるきがしません」

 

 そうして私達は現魔王レヴィアタンの妹ソーナ会長とその眷族達の張る結界の中に入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私達が見たのは4本の聖剣が1つになり膨大な光が地上の魔法陣に吸い込まれていく所だった。

 

 

「フハハハハハハハハ!これでいい、後は時間を待つのみか」

 

 巨大な玉座の様な物に座っている12枚の黒い翼を持つ堕天使コカビエル。コカビエルはかつての戦闘で神とも戦った事のある堕天使の1人。その強さは強大だ、恐らくこの場にいる全員が勝てないだろう。

 そしてコカビエルは光の槍で体育館を吹き飛ばす、出来たクレーターから炎が噴き出すと黒い3つの頭を持つ犬が出て来た。

 

 

「アレは!?」

 

 

「地獄の番犬ケルベロス!?」

 

 地獄の門を守る番犬ケルベロス、それは本来地獄にいる筈の犬。だがそれが今、此処にいる。

 

 

「行きます……やっ!」

 

 白音は一気に駆けると1匹のケルべロスをライガーゼロのクローで引き裂いた。

 

 

「白音ちゃん…すげぇ……俺も負けてられねぇ!!赤龍帝の篭手(ブースデッド・ギア)!」

 

【Boost】

 

 

「イッセーは力を溜めなさい!そして私達の援護を!朱乃!」

 

 

「はい!部長!」

 

 朱乃は制服から巫女服に変わり、悪魔の翼を出し空を飛んだ。

 

 

(この状況はまずい……例えリアス先輩が魔王の妹でも相手はかつての大戦を生きぬいた堕天使。ライの最終装備を使っても私じゃ勝てない。ならケルベロスだけでも)

 

 

「ライ、モード【イェーガー】」

 

 《ガアァァァァァ!》

 

 

 ~白音side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 獣の咆哮が響き渡る。

 

 

「なんだ?」

 

 コカビエルやリアス達はその咆哮のが聞こえた方向を見た。そこには白音の姿があった。白い鎧が弾け飛び代わりに青い装甲を装備し獣の様に4つ脚で構えた。

 

 

「なんだ、貴様は?」

 

 

「塔城白音……ただの此処の生徒。貴方に此処を壊させる訳にはいかない」

 

 その背には巨大なブースターがある。ブースターが唸りを上げ始めた。

 

 

「【鋼鉄を斬り裂く蒼き爪(ストライク・レーザー・クロー・イェーガー)】」

 

 《キュィィィィィ……カッ!》

 

 白音は一瞬でその場から消えた、そして音と共に場に居た3体のケルベロスが引き裂かれた。

 

 

「ほぅ……中々面白いな、この中で一番楽しめそうだ」

 

 コカビエルは光の槍を作ると、何もいない方向に向かい投げた。そして槍が爆発すると同時に白音も吹き飛ばされた。

 

 

「きゃぁぁぁ!」

 

 白音の纏っていたライガーゼロが解除され、白音は倒れた。

 

 

「ゲホッ!ゲホッ!……くっぅ……イェーガーの反動が」

 

 白音の使ったライガーゼロ、その装備イェーガーパック。超高速で動き、敵を翻弄しその爪で引き裂く戦闘スタイルの装備だ。しかしこの装備には弱点がある、音速に近い速度で動く反動が使用者にそのまま来てしまう。いわば、諸刃の剣でもある。それに耐えるだけの力と身体を持てばいい、しかし白音ではこれを使いこなすのは困難の様だ、白音の全身の骨が悲鳴を上げている。当分の間は動く事はできないだろう。それを理解した上で白音は使用した。自分ではコカビエルは倒せないが故に、他の者達の負担を減らしコカビエルの為に力を温存させる為に。

 

 

「白音ちゃん!!」

 

 アーシアは白音の元まで駆け、直ぐに聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)を使用し白音の治療を始める。

 

 

「何だ………もう終わりか、つまらんな。消えろ」

 

 コカビエルは光の槍を白音とアーシアに向け投げる。リアス達もそれを見て動こうとするが、既に遅い。

 

 

「ご主人様!!」「零さん!!」

 

 2人は向かってくる光の槍に目を瞑り、零の名前を叫ぶ。

 

 

「おらぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 《ガキィン!》

 

 何かが光の槍を弾き飛ばした。そこには青い服の零が立っていた。



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EP21 聖魔剣

 ~駒王学園前~

 

 現在、駒王学園に堕天使の幹部コカビエルが現れた事で被害の拡散を防ぐ為に現魔王レヴィアタンの妹ソーナ・シトリーとその眷族達が駒王学園を囲む結界を張っていた。

 

 

「くっ会長!このままじゃ俺達もちませんよ!」

 

 ソーナのポーンであり生徒会の書記、匙 元士郎(さじ げんしろう)がそう叫ぶ。事実、この現状を維持しているソーナの眷族達は次々に魔力が底を尽き倒れていく。現状で中で戦っているグレモリー眷族の為にもこの結界を維持しなければ駒王町自体が吹き飛んでしまう。

 

 

「くっ……この状況拙いですね。私や椿姫は未だしも他の皆は魔力が尽きかけている……何か……何かこの状況を……」

 

 結界を維持しながらも何か手はないかと思考を巡らせる。しかし幾ら思考を働かせても解決に至る答えが見つからない。そんな時だった、結界を維持する負担がいきなり減った。

 

 

「一体何がどうなって………!?」

 

 ソーナは維持している結界が先程に比べて強化されている事と自分の知らない力が辺りを覆っている事に気付く。

 

 

「悪魔達よ、我等が王の命によりお前達に手を貸そう」

 

 ソーナ達がその声に振り返る黄金の鎧とオーラを纏う男が立っていた。それは零に命じられて駒王学園に来ていたカノンだった。

 

 

「迸れ!我が小宇宙(コスモ)よ!!!」

 

 カノンの体内に秘められた宇宙的エネルギーが爆発し、全身から黄金のオーラが溢れだし結界を包み込んだ。

 

 

「ハアァァァァァァァァァァ!!」

 

 

「なっ何あの力……次元が違う」

 

 ソーナはカノンの放つ力に驚愕している。それと同時に畏怖した自分達を圧倒する力を放つカノンに、もしこの状況で此方に刃が向けば自分達は確実にやられると。

 

 

「これでしばらくは保つか………我が王よ。外は御任せを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~結界内 駒王学園中庭~

 

 

 一誠とゼノヴィアは現在、4本のエクスカリバーを束ねた聖剣を持ったフリードと相対していた。

 

 

「クソッ!コイツ、前と全然違うじゃねぇか!」

 

 

「厄介だな。流石は4本のエクスカリバーを束ねた事はある、今のままでは………」

 

 破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を所持するゼノヴィアと戦闘に関しては素人であるが神滅具(ロンギヌス)である赤龍帝の籠手(ブースデッド・ギア)を所持する一誠が劣勢にたっている。

 イリナが所有していた使い手の意志で形を擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)・教会から強奪された使い手のスピードを底上げする天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)・相手に幻術を見せたり夢を支配する夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)・使い手を透明化する透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)、この4本のエクスカリバーの能力をフルに使えるフリードにより2人は追いつめられている。

 

 

「アーヒャヒャ!流石はエクスなカリバーちゃん!ハイスぺックな僕ちんのステータスをさぁ~らに引き上げてくれるなんて、ホント、聖剣様々でごぜぇますぜ旦那!」

 

 フリードは自分の後ろにいる神父の様な格好をした男に喋りかけた。

 

 

「フッ……当然だ。お前の持つ4本のエクスカリバーを束ねた聖剣とお前に渡した聖剣の因子を使えば造作もないことだろう」

 

 

「そんじゃ~こんまんま、此奴等を軽く潰しておきますかー!」

 

 フリードが再び聖剣を構えて駆けようとするが、地面に異変を感じその場から飛び退いた。そして次の瞬間、フリードの居た場所に無数の剣が出現した。気付くのか後、一瞬遅ければフリードは串刺しになっていただろう。

 

 

「あげっ!今のはなんだぁ!?」

 

 

「今のって……まさか!?」

 

 全員が振り返るとそこには魔剣を持った木場がいた。しかし何時もの木場ではなかった、その髪は長くなっていた。それに加え、身体は一回り小さくなり若干の丸みを帯びていた。

 

 

「きっ木場なのか?」

 

 

「そうだよ、イッセー君。コレが僕の本当の姿………僕は今まで魔剣の力で自分の性別を偽ってきた、あの聖剣に復讐する為に自分を捨てて今まで生きてきた。それが同志達の望んでいた事だと信じて」

 

 

「ほぉ……貴様はあの計画の生き残りか、そう言えば1人脱走したまま見つからずに例の事件が起きたと言っていたな」

 

 男は興味深い目で木場を見ていた。

 

 

「お前がバルパー・ガリレイか………」

 

 

「そうだ」

 

 

「お前のせいで僕や同志達の未来を奪った。でも同志達は生きていた、復讐なんて望んでなかった。そして言ってくれた『僕は僕の為に生きていい』って………」

 

 木場は持っていた魔剣を消し、両手を胸に当てた。すると木場の身体を青い光が包み込んだ。そして歌が響き始めた。

 

 

『僕達は生きている、だから君は君の為に生きればいい』

 

『例え聖剣が相手だって皆、一緒なら』

 

『また皆で聖歌を歌おうね』

 

『神様が見ていなくたって』

 

『例え離れていても僕達の心はずっと一緒だよ』

 

『一緒に戦おう』

 

 周りに現れたのは、先程木場が会っていたかつての木場の同志達。

 

 

「うん………一緒に戦おう。僕達は何時だって一緒だよ」

 

 木場がそう言うと、同志達が光となって木場と1つとなった。仲間と木場の心によって神器(セイグリッド・ギア)は神が、世界が定めた流れに逆らう力を発揮する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……なんだよ、コレ?涙が止まらない……」

 

 一誠は聖歌を聞き、涙を流していた。木場と木場の同志達の言葉と歌がこの場にいる一誠やリアス達の心に響いている。

 

 

【相棒】

 

 

「ドライグ?」

 

 一誠は赤龍帝の籠手(ブースデッド・ギア)の宝石が光り、神器(セイグリッド・ギア)の中のドライグが一誠に語りかけた。

 

 

【あのナイトは至った。神器(セイグリッド・ギア)は所有者の思いを糧に進化と変化をしていく。だがアレは別の領域だ。所有者の思いが、願いがこの世界に漂う流れに逆らうほどの劇的な転じ方をした時、神器(セイグリッド・ギア)は至る…………それこそが禁手(バランス・ブレイカー)だ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕は………私は目の前の邪を倒す。第2、第3の私達を生み出さない為にも私は戦う!!」

 

 木場はその決意を胸に魔剣を創造し、その手に掴んだ。

 

 

「木場ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!フリードの野郎とエクスカリバーをブッ叩けぇぇぇぇ!!!お前が男だろうが!女だろうが!お前はリアス・グレモリーの眷族で『騎士』で俺の仲間だぁ!戦えぇぇっぇぇ!お前の仲間達の思いを無駄にすんじゃねぇ!」

 

 

「祐斗……いぇ、祐子。やりなさい!貴女は私の、リアス・グレモリーの眷族なのだから!私の『騎士』はエクスカリバーごときに負けないわ!」

 

 

「祐子ちゃん、信じてますわよ!」

 

 イッセーくん、部長、朱乃さん。こんな私を受け入れてくれてありがとう。

 

 

「私は剣となる。私に宿る神器よ、今こそ僕や仲間達の思いに応えてくれ!!魔剣創造(ソード・バース)!!」

 

 祐斗改め、祐子が天に魔剣を掲げる。そして同志達の聖なる力と悪魔としての祐子の力が融合する。聖なる力と魔の力、本来なら相反し決して交わる事のない2つの力が祐子の想い応えた神器(セイグリッド・ギア)により1つとなり、それは完成した。

 

 

禁手(バランス・ブレイカー)双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)】。聖と魔を有する剣の力。その身に受けるといい」

 

 祐子は1歩ずつ、聖剣を持ったフリードに近付いていく。そして先程の光景を見ていたゼノヴィアもその横に並んだ。

 

 

「魔剣使い、協力しよう。あの聖剣は破壊する」

 

 ゼノヴィアの言葉に祐子は驚いている。

 

 

「いいのかい?君達の目的はアレの奪還だろう?」

 

 

「あぁ……アレは聖剣であって聖剣でない。異形の剣だ………此処で破壊する」

 

 

「分かった。一緒に戦おう」

 

 ゼノヴィアは左手に持っていた破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を地面に突き刺し、右手を広げた。

 

 

「ペトロ、バシレイオス、デュオニュシウス、そして聖母マリアよ。私の声に耳を傾けてくれ」

 

 ゼノヴィアがそう言葉を紡ぐと、空間が裂け、中から鎖に拘束された剣が現れる。その剣が放つ力はフリードの持つ聖剣を圧倒するほどの聖なる力を放っていた。

 

 

「この刃に宿るセイントの御名において解放する………デュランダル!」

 

 鎖が引き千切られ、聖剣・デュランダルが解放された。

 

 

「デュランダルだと!?」

 

 

「私は元々はデュランダルの使い手だ。エクスカリバーの使い手は兼任していたに過ぎない。そしてこのデュランダルは暴君でね、触れた物はなんでも切り刻んでしまうんでな。それに加えて私の言う事は聞いてくれず、手に余っている。普段は異空間に閉じ込めておかないと危険極まりないのさ」

 

 

「馬鹿な!私の実験ではそれを使う領域までは達して居ない筈だ!」

 

 

「私はイリナ達人工聖剣使いと違って私は数少ない天然ものでね」

 

 バルパーはそれを聞いて絶句していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ!伸びろ!」

 

 フリードは4本の聖剣1つ擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の力を使い刃を伸ばしゼノヴィアを襲わせた。しかしその刃はまるで紙の様にデュランダルによって切断された。

 

 

「此処にきて、まさかのチョー展開!?」

 

 フリードは予想外の展開に驚愕しながらも、刃を元に戻し、ゼノヴィアを睨む。

 

 

「所詮は折れた聖剣、このデュランダルの敵ではない!!」

 

 

「そんな設定いらねぇんだよ!!」

 

 フリードは天閃の聖剣(エクスカリバー・ラビットリィ)の力を使い、高速で斬り掛かって来たゼノヴィアの攻撃を回避する。

 

 

「ハアァァァァァァァ!!!!」

 

 フリードに祐子が聖魔剣で斬り掛かった。エクスカリバーと聖魔剣が衝突し、火花が散る。2人は高速で移動しながら衝突を繰り返した。

 

 

「うぇ!?まっマジかぁ………‥がふっ」

 

 そして徐々に祐子が押し始め、すれ違った瞬間に祐子の放った一閃でエクスカリバーが粉々に砕けた。どうやらその際にフリードも攻撃を喰らった様で、血を吐いて倒れた。

 

 

「やった……やったよ!私達の力は聖剣を越えたよ」




漸く、エクスカリバー編も終盤に迫ってきました。

祐斗でなく、祐子になりました。



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EP22 約束された勝利の剣

 ~駒王学園 中庭~

 

 祐子が禁手(バランス・ブレイカー)に至り、聖魔剣でエクスカリバーを倒していた頃。

 

 白音とアーシアに向かってコカビエルの放った光の槍は青い何かに弾かれた。

 

 

「なに……俺の槍を弾くとは……何者だ?」

 

 コカビエルが自分の槍を弾いた人物を見降ろした。それは

 

 

「ご主人様」「零さん!」

 

 青い服で身を包んだ零だった。零はチラッとコカビエルを見ると、直ぐに白音とアーシアに視線を移す。

 

 

「白音……まさかイェーガーを使ったのか?」

 

 

「はい……ごめんなさい。でも私」

 

 白音はボロボロの身体を起こそうとするが、零がそれを静止した。

 

 

「分かってるから……無理はするな」

 

 そう言うと、零は白音の頭を撫でる。その眼は優しく見えるが、その奥では怒りの炎が激しく燃えていた。

 

 

『おい!』

 

 

「零さん、ごめんなさい。私……」

 

 アーシアも申し訳なさそうに零に謝った。

 

 

『おい!聞こえてるだろう!』

 

 

「分かってるよ。アーシア………アーシアと白音は自分達の意志で動いたんだ。俺がどうこう言うつもりはないよ」

 

 

『無視するんじゃない!!!』

 

 

「白音を頼むよ。俺は後ろで五月蠅い、鴉を駆除してくるから」

 

 零はそう言って、白音をアーシアに任せると立ち上がった。しかも全身から黄金オーラが立ち昇っており、振り返りコカビエルの方を見ると表情が一変する。

 

 

「おい、鴉」

 

 その表情は怒り……と言うより憤怒。まるで般若様な表情だ。それに加え凄まじい殺気が放たれている。

 

 

「っ!フハハハハハハ!!何者かは知らんが、この殺気!その身から溢れるその力!神や魔王クラスの力だ!俺は幸運だ!貴様の様な奴にこんな場所で出会えるとはなぁ!!」

 

 コカビエルは零の放つ力と殺気を受け喜んでいる。どうやら強敵に出会えた事が喜ばしいことらしい。

 

 

「そんな事……知ったこっちゃない。俺の家族に怪我させたんだ…………楽に死ねると思うなよ」

 

 零の紅と金の瞳が輝きを放つ。

 

 

「ほぉ………お前との勝負は楽しみであるが、その前に」

 

 コカビエルは光の槍を形成し投げる。零のいる方向とは全く違う方向に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聖魔剣だと!?そんな馬鹿な!相反する2つの力が………そうか!聖と魔を司るバランスが崩れているなら説明できる!そう言う事か!先の大戦で魔王だけでなく、かm【ドスッ】がはっ!?」

 

 聖魔剣の事を考えていたバルパーが何かを言おうとした瞬間に光の槍で貫かれ、消滅した。

 

 

「バルパー、お前は優秀だった。優秀であるが故にその答えまで至った………だがお前が居なくても俺の計画は進むんだよ。天使・堕天使・悪魔の三つ巴の戦争がな!」

 

 コカビエルの目的はどうやら、悪魔・天使・堕天使の戦争を再び引き起こす事らしい。

 

 

「さて……待たせたな、そこの人間?……人間ではないのか?悪魔でもなく、天使でもない。お前は何者だ?」

 

 コカビエルは零を見て今まで感じた事のない雰囲気を放つ零に問いかける。

 

 

「相手の事を聞く時はまずは自分から名乗りやがれ」

 

 

「おっとそうだったな。俺の名はコカビエル、堕天使の幹部をしている。お前は?」

 

 コカビエルがそう名乗ると、零に聞き返す。

 

 

「俺は天王理 零……立場的にはこの世界の天照大御神の子だ……お前は俺の家族に怪我を負わせた事で俺の逆鱗に触れた。その羽、全部毟り取ってやるから覚悟しろ!【断罪の間(ジャッチメント・フィールド)】!解き放て!風の王!!」

 

 零はそう答え、レイナーレの時に使った断罪の間(ジャッチメント・フィールド)を展開し、見えない何かを掴んでいる右手を天に突き上げた。すると暴風が吹き荒れ、その右手に握られている物が現れた。それは1本の剣、刀身と青と黄金の柄。それは見た者全てを魅了する輝きを放っている。

 

 

「天照?……そうか、そうか!貴様が【ライディーン】かぁ!!!お前に会いたかったぞ!かつての大戦の時にお前を見た時に俺は震えた……いやあの場にいた者全てが震えた!あの二天龍を一撃の元に屠ったお前の力に!俺は本当に幸運だ!!お前の様な強者と巡り合えるとは!!!」

 

 かつて二天龍を一撃で倒した零……【ライディーン】に出会えたことに。強者と戦える事にコカビエルは歓喜する。

 

 

「待ちなさい!コカビエル!!貴方の相手は私達よ!!」

 

 そう叫んだのはリアスだった。だがコカビエルは興味が失せた目でリアス達を見た。

 

 

「はぁ………お前達では俺の相手にならん。サーゼクスの妹、赤龍帝、聖魔剣………それに『バラキエル』の娘」

 

 そう言ったコカビエルの視線の先には朱乃がいた。それを聞いた朱乃は動揺している。

 

 

「私を……私を!あの者と一緒にするな!!」

 

 朱乃は表情を一変させ、飛び上がると雷をコカビエルに向けて放つ。だがその雷はコカビエルの翼で簡単に受け止められた。

 

 

「はぁはぁ……」

 

 朱乃は魔力は使い果たしてしまったのか、肩で息をしている。

 

 

「バラキエル?誰だ?」

 

 

「バラキエル………堕天使の幹部で『雷光』の二つ名を持つ雷の使い手だと聞いたことがあるよ」

 

 

「じゃあ朱乃さんは……堕天使の」

 

 一誠の疑問に祐子がそう答えた。だが新たに一誠は疑問を持った。

 

 

「だが所詮はこの程度か……お前等は邪魔だ。此処で消えろ!」

 

 コカビエルは無数の光の槍を形成すると、リアス達に向けて放った。それを回避しようとするが光の槍の数が多すぎて回避しきれない様だ。

 

 

「【メモリーコード:熾天覆う七つの円環(ローアイアス)】」

 

 零の左眼、記憶の力が宿る瞳が輝くとリアス達の前に七枚の花弁を持つ花を模した光の盾が現れた。光の槍を受けた盾は4枚の花弁が散ったが、光の槍を防ぎ切った。役目を終えた盾は粒子となって消えた。

 

 

「ほぉ………英雄アイアスの盾か。やはりお前は俺を楽しませてくれるようだ」

 

 

「リアス・グレモリー、姫島朱乃、一誠、木場………退いていろ。今の俺は怒っている、お前等を巻き込まずに戦えるほど、冷静じゃないんでな」

 

 零の周りに光の粒子が集まり始め剣の刀身に収束し始めた。そしてその眼は本気だ、今の零は白音が怪我した原因である眼前のコカビエルを倒す事だけを考えている。もし一誠達が邪魔になれば本当にその剣で斬り伏せかねないだろう。

 

 

「行くぞ、鴉!力の貯蔵は十分か!?」

 

 

「こい!伝説の戦士!!」

 

 零は剣を手に、コカビエルは光で形成した剣を手に互いに距離を詰めた。

 金色の光を纏う零と黒い10枚の翼を羽ばたかせるコカビエルの剣と剣のぶつかり合い。互いに殆ど離れる事無く、剣と剣をぶつけ合っている。少しでも距離が開けば、コカビエルは光の槍を作りそれを放つ。零はそれを全て斬り伏せたり回避し、一気にコカビエルに接近しまた剣と剣のぶつかり合いが再開する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっこれは………」

 

 

「力が違い過ぎますわね」

 

 

「まるで次元が違う」

 

 

「こっこれが本当にレイなのか?」

 

 リアスや朱乃、祐子、一誠が思った。本当に目の前で戦っているのは零なのかと………確かに戦いになると圧倒的な力を発揮していた。しかしライザーの時には余裕を見せて戦っていた。だが今は違う、かつてアーシアの時に見せた殺気と膨大な力を剥き出しでコカビエルを倒そうとしている。

 

 

「なっなんだ……あれ……ゴクッ…これ」

 

 一誠は自分の身体が震えている事に気付いた。それは零の放つ今まで感じた事のない圧倒的な殺気と力によるものだろう。

 

 

「無理もないわ………私でさえも怖いもの」

 

 良く見れば、場にいるリアス達も震えていた。圧倒的な力による恐怖、だが一誠はある1つの思いを抱き、拳を握り締めていた。

 

 

【相棒……お前……】

 

 

「ドライグ……強くなりてぇ……強くなりてぇよ。そしてアイツと戦ってみたい」

 

 

【なら強くなるんだな。俺も協力は惜しまん………だから今の奴の戦いを良く見とけ、ありゃ神や魔王クラスの戦いだ。まぁ太陽神の息子って事は神だろうが】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらぁぁぁぁぁ!【ソウルコード:ユニコーン・ビームマグナム】!!」

 

 零は剣を振りかぶり、コカビエルを吹き飛ばすと剣を左手に持ち替え右手にライフルを呼び出した。ビームマグナムを構え、引き金を弾くと銃口から巨大なビームが放たれカートリッジを排出した。

 

 

「ぬぉ?!ぐっ!?掠っただけで、右腕を持って行かれるとは……」

 

 

「チッ………外したか、流石は堕天使の幹部と言う所か……やはりビームマグナムは加減が効かないな。現状では白音達を巻き込む可能性があるな」

 

 コカビエルはビームを完全に回避するものの、ビームの余波で右腕が焼けた。零はこの一撃を完全に捕えていたと思っていた様だ。しかし避けられたビームは校舎に直撃し、校舎を半分以上を吹き飛ばしていた。これ以上は周りに被害が及ぶと考えたのか、ビームマグナムを消した。

 

 

「ククク……フハハハハハハ!やはりお前は面白いぞ!!先の大戦で魔王と神が死んでからというもの、戦いのない下らん日々を我慢してきたかいがあったという物だ!!!」

 

 

「「「「「なっ!?」」」」」

 

 コカビエルの言葉に零以外の全員が驚愕する。先の大戦で魔王だけでなく、神が死んだという事を聞かされたからだ。

 

 

「かっ神が死んだ?」

 

 

「ん?……あぁそうか、お前等は知らなかったのだな。そうだ、先の大戦で神と四大魔王は死んだ。ライディーンが二天龍を倒した後、直ぐに大戦は再開された。その結果、神と四大魔王は死に、各勢力も消耗し、休戦状態となった。トップを失った事で天使も悪魔も戦争継続不可能だと判断した。アザゼルも『これ以上は戦争しない』と宣言しやがった!ふざけるな!!あのまま戦争を継続していれば俺達は勝っていたかもしれないのだ!」

 

 

 

「主がいない?…‥そんな……でっでは………私達に与えられる愛は?」

 

 憤怒しながら真実を語るコカビエルの言葉を聞き、アーシアが震えながらそう呟いた。アーシアだけでなく、今まで主である聖書の神を信じて来たゼノヴィアもまた真実を受け入れられなかったのか、膝を付いた。

 

 

「そうだ、神の加護、愛がなくて当然だ。神は既にいないからな。その点、ミカエルは良くやっている。神の代わりに天使と人間を纏めているからな。神の残したシステムさえ残っていれば、神への祈りも、祝福も悪魔祓いもある程度は機能するからな。だが神がいる頃に比べて格段と信仰は減ったがな………そこの小娘の【聖魔剣】が良い例だ、聖と魔は本来混じり合わない。しかし聖と魔のバランスを司る神と魔王が死んだ事で得意な現象が起きている」

 

 淡々と説明するコカビエルの言葉を聞き、アーシアは気を失ってしまった。それ程、ショックだったのだろう。アーシアは赤子の頃に教会に拾われ、聖書の神を信じて生きてきた、その神が死んだと聞かされればショックを受けない筈がない。

 

 

「無理もない。私でも正気を保っているのが不思議なくらいだ……」

 

 ゼノヴィアも正気を保つのがやっとの状態だ。

 

 

「だから、どうした?俺には関係ない、だが貴様は選択を間違えたぞ、コカビエル」

 

 この場の全てを凍て付かせる程、冷たい零の声が響く。先程より怒りが増している様で、辺りが震えている。

 

 

「興味ない………俺が信じるのは母上と叔父上と伯母上のみだ。【メモリーコード:光の封殺剣】」

 

 左の記憶を司る金色の眼が光ると、天から光の剣が現れてコカビエルを貫いた。

 

 

「グッ!?なんだ、動けん!」

 

 

「此奴は本来なら全く別の力だが、俺が改造した物でね。どんな相手でも3分間は完全に封じる事が出来る」

 

 零はそう説明すると、ゆっくりと地面に足を付け【光の封殺剣】に貫かれているコカビエルを見上げた。

 

 

【此奴は俺達の時の………】

 

 

「それは違うぞ、赤龍帝ドライグ………アレは【光の封印槍】、敵を殺さずに封印する為だけの技だ。ふぅ……」

 

 ドライグの言葉にそう答えると、ゆっくりと目を瞑り剣を構えた。すると、零の周りに光の粒子が集まり始めた。光の粒子は零の周りだけでなく、この結界内全域から溢れだし、零の持つ剣に収束し始める。

 

 

「これは?」

 

 

「光?」

 

 集まり始めた光を見て、全員が何が起きたのか全く理解できなかった。

 

 

「皆さん、この場から離れて下さい」

 

 全員が振り返るとアーシアを抱えている白音がいた。

 

 

「どう言う事、塔城さん?」

 

 祐子が白音が言った言葉に疑問を持ち聞いた。

 

 

「ご主人様の持っている剣は聖剣です。今、その力を解放しようとしています。悪魔の皆さんは余波だけでも致命傷になりかねません」

 

 

「聖剣ですって!?」

 

 白音は全員が集まっている事を確認すると、零に視線を向ける。そして静かに呟き始めた。

 

 

 

 

 

 とある湖に住む妖精が1人の王にその剣を授けました、そして王はその剣を振るい勝利を手にしてきました。王は死の寸前に1人の騎士にその剣を返還する様に命じ、騎士は剣を返還する為に剣を湖に投げ入れ妖精の手に返されました。

 それは地球(ほし)が生み出した【最強の幻想(ラスト・ファンタズム)】であり、聖剣の中では頂点に位置する最強の聖剣。

 

 

 

 

 白音の言葉を聞き、全員が1つの名を思い浮かべた。聖剣の中の聖剣、祐子の事件の原因とも言える聖剣の名を。

 

 

 

 

「【約束された(エクス)】」

 

 全ての光の粒子が聖剣の刀身に収束するのを感じた零は目を開き、コカビエルに視線を向けた。

 

 

「【勝利の剣(カリバー)!!!】」

 

 零は約束された勝利の剣(エクス・カリバー)を振り下ろすと、金色の光の斬撃がコカビエルに向かい放たれた。

 

 

「ぐああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 約束された勝利の剣(エクス・カリバー)から放たれた光の斬撃は学園を包んでいる結界を貫き、コカビエルを消し飛ばした。何故かキラーンと言う効果音が聞こえたのは気の性だろう。

 

 

「はぁ……あっ怒りに我を忘れて消し飛ばしちまった。アザゼルに引き渡さなきゃならなかったのに………一応断罪の間(ジャッチメント・フィールド)を展開させておいてよかった」

 

 零はそう言うと、自分の張った断罪の間(ジャッチメント・フィールド)の力を使い消滅させたコカビエルを甦らせた。

 

 

「ぐぅ………おっ俺は死んだ筈……」

 

 

「取り敢えず寝とけ!」

 

 零は蘇えったコカビエルの頭を踏み付けると意識を刈り取った。その時に『ゴスッ、バキッ』と骨が折れる音がしたのを無視して、手に持っていた約束された勝利の剣(エクス・カリバー)が消え、服も何時もの私服に戻った。

 

 

「ご主人様」

 

 事が終わったのを確認すると、アーシアを抱えた白音が零の元に駆け寄った。

 

 

「あぁ……怪我の方はもういいのか?」

 

 

「アーシアが治してくれました………今回はすいませんでした」

 

 白音はそう言うと、申し訳なさそうに俯いてしまった。どうやら今回、勝手にこの騒動に加わった事を気にしている様だ。

 

 

「別にいいさ、白音とアーシアが自分で決めた事なら俺はそれで構わないよ。まぁ……イェーガーを使った事だけは頂けない。アレは使うにはまだ白音の身体がついていかないからね……さてと」

 

 

「あっ……」

 

 

「無理はしなくていい………ゆっくり休め」

 

 零は白音からアーシアを引き受けると、白音も抱き上げた。どうやら白音の身体はまだイェーガーの反動が残っている様だ。零はそれを見抜いていた様だ。白音は安堵した様で、そのまま眠ってしまった。

 

 

「さてと………」

 

 

 

 

 

「―――流石は伝説の戦士という所だね。コカビエルを倒すとは」

 

 声がした空の方向を全員が見上げる。零もまた空を見上げた。

 

 

 やはりお前が来たか。一誠のライバルにしてかつて俺が封印した2匹の内の1匹。白き龍を宿す者……なんて大層な存在だけど……一誠とは違う方向性のドが付くほどの変態め。

 

 

 

「初めまして、今代の【赤龍帝】君。そして久し振りだね、会いたかったよ……君が伝説の戦士だったとは驚きだよ。零」

 

 そこに居たのは八枚の翼と龍を模した白銀の鎧を纏う者だった。

 

「俺は会いたくなかったよ」という様な露骨に嫌な表情をしている零であった。



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EP23 現れた白龍皇

 ~駒王学園 中庭~

 

 彼の騎士王の持つ約束された勝利の剣(エクス・カリバー)の極光によってコカビエルを倒し、張られていた結界も消失した時、それは突然に現れた。

 

 

「―――流石は伝説の戦士という所だね。コカビエルを倒すとは」

 

 8枚の翼を持つ白き龍を模した鎧を纏った何者かがそこにいた。

 

 

「初めまして、今代の【赤龍帝】君。そして久し振りだね、会いたかったよ……君が伝説の戦士だったとは驚きだよ。零」

 

 それを聞いた零は露骨に嫌な表情をしていた。

 

 

「俺は会いたくなかったよ」

 

 

「おや冷たいね。しかも何でそんな嫌な顔をしてるんだい?」

 

 

「五月蠅いぞ、変態。さっさと帰れ、どうせコレを連れて来いってアザゼルに言われたんだろう?」

 

 零は踏み付けているコカビエルを持ち上げると白い鎧を付けている者に向かって投げる。白い鎧の者はコカビエルを受け取ると、肩に担いだ。

 

 

「序でにそこで寝ているフリードも連れて行っていいかな?」

 

 

「あんな気違いさっさと連れていけ……二天龍の片割れ、白龍皇」

 

 

「そうかい、ありがとう………それよりもさっきの一撃凄かったね。もしアレをこの身に受けるとなると………………興奮する!!!」

 

 何やら危ない言葉を言う一誠の運命のライバル白龍皇。零はさっさと帰れと言う様に手を払う仕草をしている。

 

 

「白龍皇にアザゼルですって!?天王理!貴方、一体何を知ってるの!?」

 

 白龍皇と堕天使の総督であるアザゼルの事を知っている事に驚いているリアス。

 

 

「黙ってろ……それよりも今回の事はアザゼルに問い詰めるからそう伝えとけ。『それと首を洗って待ってろ、じゃないとアーシアの時の事も含めて堕天使を全滅させるぞ』って言っとけ」

 

 零は笑顔で言っているが、その眼は殺意と怒りが篭っていた。

 

 

「アハハハハハハ、それはそれで楽しそうだ。それにその殺気!その力!あぁ……良いね!やっぱり君はいい!あぁ、そうだ、今度俺と本気で勝負してよ。今までは軽く流されていたけど【伝説の戦士:ライディーン】と戦うのは俺の夢でもあったんだ、だから君と戦ってみたい」

 

 

「はぁ……この戦闘狂め……帰れ、俺はさっさと帰る」

 

 

「あぁ、俺も帰るとするよ」

 

 

【無視か……白いの?】

 

 身を翻し白龍皇が帰ろうとするが、一誠の赤龍帝の籠手(ブースデッド・ギア)の宝玉が光りドライグが白龍皇に語りかけた。白龍皇が振り返ると、翼が点滅する。

 

 

【久しぶりだな、ドライグ】

 

 

【おうよ……折角出会ったがこんなんじゃな】

 

 ドライグが残念そうにそう言った。

 

 

【別にいいさ。いずれは戦う運命だ………それにやっと俺達の共通の敵が現れたんだ】

 

 そう言うと白龍皇は零の方を向いた。

 

 

【やっと見つけたぞ、伝説の戦士………今すぐお前を殺してやりたいが、ドライグの方がその状態ではお前に勝てないからな】

 

 

【全くだ。相棒がしっかりしてりゃ、この場で奴を噛み殺してやったのにな】

 

 2人に宿る赤龍帝ドライグと白龍皇アルビオンはどうやら、かつて零に倒された事を根にもっている様だ。そして零を共通の敵と見ているらしい。

 

 

「はぁ………かえr「やっと見つけた」オーフィス、何で此処に?」

 

 場の空気を破る様に突然、オーフィスが現れた。

 

 

「お腹空いた………それに約束」

 

 

 オーフィスは何時の無表情なのだけど、完全にご立腹の様だ。これも皆、コカビエルの性だ。魂ごと消滅させればよかった。これは拙い……非常に拙い。命の危険が……そうだ!あの手があった!

 

 

「白音、アーシア、寝てる?」

 

 オーフィスは零に抱えられている2人を見て、首を傾げた。

 

 

「あぁ……ちょいとな。取り敢えず家に帰るぞ」

 

 

「ん……ドライグ、アルビオン、久しい」

 

 オーフィスは、一誠と白龍皇を見るとそう言った。

 

 

【まさかお前がいるとはな……‥無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィス】

 

 

「誰なんだ、ドライグ?」

 

 オーフィスが誰かを知らない一誠はドライグに尋ねた。

 

 

「オーフィス……真なる赤龍神帝(アポカリプス・ドラゴン)グレードレッドを覗けば最強のドラゴンだよ『赤龍帝』君」

 

 ドライグの代わりに白龍皇がそう伝えると、一誠だけでなく全員が驚いている。

 

 

「おっオーフィス……無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)ですって!?あっ頭が痛くなってきたわ……」

 

 リアスは驚き過ぎて頭を抱えている。

 

 

【しかしオーフィス、お前は群れなどとは無縁だったろうに………それがライディーンと一緒にいるとは】

 

 

「零、美味しいものくれる。零の傍、暖かい。零は我の居場所………ドライグ、アルビオン…零を傷付けるなら………消す」

 

 オーフィスはそう言うと、全身から禍々しいオーラを出している。どうやら零の身に何か在ればオーフィスは一誠達ごと消し去ろうとするだろう。

 

 

「ドライグ、アルビオンでは我には敵わない………それでもやる?」

 

 

【俺達は何と言われようがそいつをぶっ倒す!そいつの性で俺達のプライドは!!ボロボロにされんだ!!】

 

 

【だから俺達は復讐を誓った!これまでその為に、互いを競い合ってきたのだ!!】

 

 どうやら今まで零に復讐する為に二天龍達はこれまで努力して来た様だ。姿が見えないので分からないが泣きながら叫んでいる様に見えるのは気の性だろう、多分……おそらく。

 

 

「そう……我、旧知のドライグとアルビオンが消えるのは哀しい……でも零を傷付けるなら……死ね」

 

 オーフィスは手の中に黒い球体を創り出すとそれを一誠達に向ける。

 

 

「こらっ……そんなもの使ったらこの街が吹き飛ぶだろうが、俺にはそこの2人程度では勝てんよ。それよりも帰るよ、オーフィス。カノン、居るか!?」

 

 

「御呼びでしょうか、王よ?」

 

 零がそう叫ぶと、カノンが目の前に現れた。

 

 

「俺は帰るから、お前も向こうに戻ってくれ。それとそろそろ皆も、外に出る頃合いだろうからそう伝えてくれ」

 

 

「御意……では失礼します【アナザーディメンション】」

 

 カノンは一礼するとアナザーディメンションを使用してその場から消えた。零はそれを確認すると、転移の魔法陣を展開する。

 

 

「零……帰ったら話す(ペシッペシッ」

 

 オーフィスは零の後ろに浮くと、零の頭をペシッペシッと叩き始めた。

 

 

「分かった、分かった。全部、アザゼルのせいだからな」

 

 

「アザゼル……許さない。消す」

 

 2人は会話しながら、そのまま転移で消えてしまった。

 

 

「アハハハハハハハ!!零は本当に楽しいね、全部アザゼルに責任を押し付けたな。まぁいいや……じゃあね、赤龍帝くん」

 

 白龍皇はそう言い残すとボロボロなコカビエルとフリードを抱えてその場から飛び立った。残された一同は目の前で起きた現実を受け入れられずに呆然としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~駒王街の近くの埠頭~

 

 この埠頭で1人の男が釣りをしていた。

 

 

「はぁ………よぅ、戻ったか」

 

 男が振り返ると、そこには1人の暗い銀髪少女が立っていた。少女の両腕にはコカビエルとフリードが抱えられている。少女は地面に2人を放り投げた。

 

 

「それでどうだった?」

 

 

「俺が着いた時には既に終わってたからな………アザゼルはこれから大変だろうけど」

 

 

「はぁ?」

 

 

「彼から伝言【首を洗って待ってろ、じゃないとアーシアの時の事も含めて堕天使を全滅させるぞ】だって、それとオーフィスが【アザゼル……許さない。消す】だとさ」

 

 アザゼルと呼ばれた男は咥えていた煙草を落としてしまい、持っていた釣竿を落とすと腹を抱え苦しみ始めた。

 

 

「胃……胃が……」

 

 そんなアザゼルを見ると、愉快そうな表情をして空を見上げ呟いた。

 

 

「あぁ………早く本気で彼と本気で戦ってみたいな」



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EP24 調理とお出かけ、ついでにイタズラ

 ~???~

 

 1振りの剣が刺さった丘の上で目を覚ました零。零はまた此処かと思いながら辺りを見回した。

 

 

「今回はありがとうございました」

 

 零が振り返ると、前に現れた金髪の少女が現れた。

 

 

「あぁ……まぁ今回は俺も動く事があったからな。そのついでだよ……アーサー王いや……アルトリア」

 

 零は少女をアルトリアと呼んだ。

 

 

「地球……星が生み出した奇跡あり、聖剣の頂点に立つ聖剣。この剣は美しい……剣である事を忘れさせるほどの美しさを持つ剣………ただ聖書の神が創った贋作がエクスカリバーが本物だと称されるのが気に喰わなかっただけだ」

 

 何時の間にか零の手には【約束された勝利の剣(エクス・カリバー)】が握られており、空に翳した。この剣は地球が生み出した奇跡であり、最強の幻想(ラスト・ファンタズム)

 そして零の目の前にいる少女こそが彼の騎士王であり、約束された勝利の剣(エクス・カリバー)の本来の使い手。零がこの剣を手にした事は、彼女との絆の力によるものだろう。

 

 

「さて………そろそろ現実では朝だろうからな。朝飯を作らないと家は大喰らいばかりだからな、遅くなると機嫌が悪くなるだろうからな…っておい、涎が出てるぞ?」

 

 

「はっ!?私としたことが………私もご飯が食べたいです、偶には現実世界に出たいです」

 

 

「そんな事したら、お前の騎士達やら子供やら自分達もって無理に出て来るだろうからな。そうしたら俺が疲れるから止めてくれ。唯でさえ母様達の封印で力が弱ってるのに……余計な負担をかけないでくれ」

 

 

「むぅ……残念です。では私はそろそろお暇しましょう」

 

 辺りは光に包まれ、零の視界が真っ白に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~コカビエルの事件の翌日 天王理家~

 

 

「ふぅ………1人で寝た筈なんだけどな?」

 

 零は目を覚ますと、1人で寝ていた筈なのだがオーフィス、白音、黒歌、アーシアが何時の間にか布団の中に潜り込んでおり、それぞれが零の両手足にしがみ付く形で眠っていた。

 

 

「何時ものことなんだが………何時の間に潜り込んだんだか……よっと」

 

 零は上手く身体を動かし、この状況から抜け出すと朝食の用意の為にキッチンに向かおうとするが、背に重みを感じた。首を回して見てみるとオーフィスが背に張り付いていた。

 

 

「おはよう………零、何処行く?」

 

 

「ただ、飯を作りに行くだけだよ。別に何処にも行かないよ」

 

 

「そう………我も行く」

 

 結局はオーフィスは背に張り付いたまま、零は朝食を作る事になった。

 

 

 

 

 

 

 

「零」

 

 朝食を作っている最中にオーフィスは零に喋りかけた。

 

 

「なんだ?(シュパパパパパ」

 

 素早い手つきで零は調理を進めていく。

 

 

「零……色々な料理作れる……どうやって知った?」

 

 

「基本は母様や色んな人に習って、後は自分で考えて、色々と試行錯誤してかな」

 

 

「零……我もしたい」

 

 オーフィスが突然、そう言った。話の内容からして自分も料理をしたいと言うことだろう。零はそれを聞いてオーフィスが来たばかりの頃の事を思い出した。

 

 それはオーフィスが来たばかりの時の話。その日は偶々零が居らず、白音が作る事になったのだが、その様子を見ていたオーフィスが自分も手伝うと言い出した。

 

 しかし無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)であるオーフィスは普段食事する必要はない。料理をしたことがないのだが、そんな事を知らない白音は手伝って貰う事にした。

 

 白音はオーフィスに野菜と肉を切って、鍋に入れて火を付けると言うものなのだが……

 

 

 

 野菜と肉がまな板に置かれ、白音が一瞬だけ目を離した時。

 

 

『これとこれを切る……(メキッ』

 

 オーフィスが手を龍のものに変化させると、それを軽く降り下ろす。その結果、野菜と肉だけでなくまな板とキッチンが真っ二つに。

 オーフィスは真っ二つにした野菜と肉を白音に言われた鍋に入れると、龍の手に変化させた手を元に戻し、掌に黒い炎を作り出した。

 

 

『これに火をつける……(ゴォォォォ』

 

 黒い炎の塊が鍋に向かい放たれた。

 

 

『オーフィスかにゃ?何しt「ドカーン!」』

 

 無限の龍神の作り出した炎により家の半分が吹き飛んだ。

 その惨劇?の後を見た零の顔は苦笑いをしていた。それから零は天照に周囲の人間の記憶や家の修理を頼みに高天原に通う日々が続いた。

 

 

 

 

 

 その時の事を思い出すと零は遠い目をしていた。高天原に通っていた時に何かあったのだろう。

 

 

「零……どうかした?」

 

 オーフィスに声を掛けられて我に帰った零は、どうしようかと考えていたが

 

 

「(まぁ………始めの内は誰でも失敗するよな。俺も始めは失敗ばっかりだったし………何事も挑戦する事が大切だよな。俺がついてればいいか)……何でもないよ。さて何から教えようかな」

 

 

「零が教えてくれる……我、楽しみ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~1時間後~

 

 

「……できた」

 

 

「あっあぁ……何とかな(ボロッ」

 

 何時もの無表情だが何処か満足そうな様子で胸を張っているオーフィス、それとは正反対にボロボロの状態で疲れた顔をしている零。それに加えキッチンも至る所が壊れている。一体この1時間に何があったのか分からないが、キッチンの修理を行わないといけないのはいうまでもない。

 

 

「取り敢えず、ご飯にしよう……(これを直すのは飯を食ってからだな)」

 

 ボロボロになったキッチンを横目に零はオーフィスと共に机に作った料理を運んでいく。それから数十分ほどするとアーシア達が起きてきたので朝食を始めた。

 

 

「ご飯、我が作った」

 

 

「そうなんですか、美味しいですオーフィス」

 

 

「本当に美味しいです、オーフィスちゃん」

 

 

「前から比べたら上達したにゃん………でも……(チラッ」

 

 

「何も言うな黒歌………誰もが通る道だ。うん……多分」

 

 黒歌がチラッとキッチンの方を見るが、零がそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~昼過ぎ~

 

 午前中の内にキッチンの修復を終わらせると零はオーフィスと共に街に出掛けた。出掛けた理由は夕食の買い物をする為と、先日約束を守れなかった為だ。今いるのは街中のとある店の前。

 

 

「………(ジィー」

 

 

「さて晩飯何にしようかな?……ん?オーフィス?」

 

 オーフィスが何かを見つめている事に気付くと、零は何を見ているのかを横から覗いてみた。オーフィスが見ていたのはおもちゃ屋に転じされている白い蛇のぬいぐるみだった。

 

 

「ぬいぐるみか………フム、ちょっと待ってろ」

 

 零はおもちゃ屋に入ると、直ぐに出て来た。その手に先程までオーフィスが見ていたぬいぐるみを手に出て来た。ぬいぐるみをオーフィスに渡した。

 

 

「我……これが欲しいとは言ってない……なのに零はなんで分かった?」

 

 

「そりゃ………そんなに欲しそうな目をしてればな。大切にしろよ」

 

 

「ん………ありがとう」

 

 オーフィスが礼を言うと、零はオーフィスの頭を撫でた。端からみれば兄弟の様に見える。

 

 

「ん?アレは……丁度いい。フフフ」

 

 

「アレ……?……許さない」

 

 零とオーフィスの視線の先に居たのは1人の男だった。男は視線に気付いたのか、此方を振り返り2人の存在に気付くと表情を強張らせている。2人は一緒にゆっくりと歩を進め男に近付いていく。男は2人が近付けば近付く程、顔を青ざめ冷や汗を滝の様に流している。因みに2人の全身からは凄まじい力が溢れ出している。

 

 

「よぉ……久しぶりだな、ア・ザ・ゼ・ル」

 

 

「アザゼル、久しい………覚悟」

 

 

「いやあの………その……ごっご機嫌はいかがですか御二方?」

 

 堕天使の組織神の子を見張る者(グリゴリ)の総督アザゼル。先の事件のコカビエルが所属していた組織のリーダーであり聖書にも出て来る高位の堕天使でもある。

 

 

「物凄くいい気分だ。そっちから現れてくれるとは………嬉しいよ」

 

 

「ちょ……ちょっと待て!待ってくれ!!今回の事は俺が悪かった、俺がちゃんとコカビエルを抑えられなかったのが悪かった!俺の責任だ!罰は受けるからこんな所でそんな力を……あれ?周りに誰もいない?と言うかこれってもしかして結界!?」

 

 

「俺の張った結界【多重結界・断罪の間(ジャッチメント・フィールド)】。この中なら幾ら暴れても修復可能だ……死んでも生き返らせてやるから。大丈夫、俺は肉体には攻撃しない。精神的には攻撃するけど」

 

 

「我がする。アザゼル……覚悟」

 

 

「ちょ……ちょっとまっぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数時間、零とオーフィスからの(肉体的・精神的)攻撃を受けたアザゼルはボロボロで、涙目になりながら2人の前で土下座をしていた。

 

 

「この街にいるとは……と言うか、前から居たならさ、コカビエルを止める事もできたんじゃないのか?と言うか事件は終わったのに何で此処にいるんだ?」

 

 零は笑顔なのだが、眼が全くと言っていいほど笑っていない。

 

 

「あっあのその……近々、堕天使・天使・悪魔のトップの会談があってだな。俺はそれに参加する為に居るんだ…‥です。はい」

 

 アザゼルがそう言うと、零は何かを思いついた様だ。上位の堕天使のアザゼルだが、【真なる赤龍神帝(アポカリプス・ドラゴン)】であるグレードレッドを除けば最強であるオーフィス、二天龍を一撃で倒した伝説の戦士である零の2人を前にアザゼルは万が一にも勝ち目はない。それに加え現在は2人に攻撃されボロボロになっている。

 

 

「場所と日時は?」

 

 

「えっと1週間後で、場所は駒王学園だ……です」

 

 

「ふぅん………成程ね。母様にも言われていたし丁度いい機会か……ア~ザ~ゼ~ル。その会談に俺も参加させて貰う。勿論、母様も一緒だが……と言う訳でそれを伝えておいてくれ。今回はこれくらいで許してやるけど………もし、次に俺の家族に手を出したら……本当に堕天使を全滅させるからな?じゃあ最後に……【悪夢】」

 

 零の金色の瞳に魔方陣が浮かぶ、そしてアザゼルがそれを見ると

 

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」

 

 突然叫びだしビクッビクッとアザゼルは痙攣すると、そのまま倒れてしまった。オーフィスは何処で拾った木の棒でツンツンとアザゼルを突いた。

 

 

「アザゼル、死んだ?(ツンツン」

 

 

「いや、少し幻術をかけた。本人にとって一番起きて欲しくない悪夢を24時間、見せ続けるってものをな」

 

 

「そう……どうでもいい(ズボッ)あっ……鼻に入っちゃった」

 

 

「よし買い物の続きをしようか、オーフィス」

 

 

「うん」

 

 気を失っているアザゼルを放置して、2人はその場から離れようとするが零が何かを思いついたのかアザゼルの元に戻ると懐から1本の【油性マジック】を取り出した。そして醜悪な笑みを浮かべるとマジックの蓋を開けた。

 

 

「零、何をする?」

 

 

「ちょっとしたイタズラだ……フフフ(キュキュ」

 

 オーフィスは零がアザゼルの顔に【油性マジック】で落書きをしているのを見ていると、零の服を引っ張った。

 

 

「我もしたい(うずっうずっ」

 

 

「いいぞ、何でも書いてやれ」

 

 オーフィスは零からペンを受け取ると、アザゼルの顔に落書きを始める。何処となく嬉しそうな雰囲気を出しているオーフィスを見て零も何処か嬉しそうな顔をしている。

 

 

「うんうん。オーフィスも表情には出さないけど喜怒哀楽が出やすくなってるな、これで表情に出てくれれば俺としては嬉しい所ではあるんだが(パシャパシャ」

 

 零は何処からともなく高性能カメラを取り出すとオーフィスの写真を撮り始めた。それに加え、アザゼルの無残な姿も撮ると「後で各勢力に送りつけてやろうか?それとも脅しに使うか?」などと言い残しオーフィスと共にその場から去っていった。目を覚ましたアザゼルは落書きに気付かず周りの人間に変な目で見られ、神の子を見張る者(グリゴリ)の本部に帰還し、副総督のシェムハザや部下達に影で笑われ、気付いたのは翌朝の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~翌々日 神の子を見張る者(グリゴリ)

 

 アザゼル宛に分厚い封筒が送り付けられ、それを確認したアザゼルは顔を蒼白にさせ、胃薬が手放せなくなってしまったそうだ。その封筒の中にはアザゼルの無残な写真と『もし次に何かあったら、これをばら撒くからな。それが嫌なら以下の物を用意する様に。用意できなかった場合は堕天使を全滅させて・・・・にもあること、ないこと吹き込むつもりなので宜しく』とその次に書かれていたのは通常では手に入らないオリハルコンなどが山ほど書かれていた。因みに差出人の名はなかったが、それが誰なのかはアザゼルには分かっていた。

 

 

「くっ……くぅ……胃が、胃がぁぁぁぁ」

 

 

「何をしてるんだ、アザゼル?」

 

 

「しぇ…シェムハザか。いっいや何でもない………急がないと、急いで用意しないとあんなのばら撒かれたら俺の威厳が……それにこれ以上……に嫌われたら」

 

 

「?」

 

 

「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!アイツは嫁にはやらん!やらんぞ!!!!!!」

 

 

「趣味に没頭しすぎで頭が可笑しくなりましたか?それよりも仕事をして下さい、貴方が遊んでいる間に書類が溜まってるんですからって……もういない。あの人は全く何を考えているんですかね……はぁ」

 

 どうやら副総督のシェムハザの苦労は未だ絶えない様だ。



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EP25 聖剣事件後の話し合い

 ~駒王学園 教室~

 

 

「イッセー、実は話があるんだ」

 

 

「なんだ、元浜?」

 

 

「実はな…ごにょごにょ」

 

 突然、元浜と松田がイッセーに話しかけ始めた。どうやらまた良くない事を考えて居る様だ。その光景を見ていた零は立ち上がった。

 

 

「おい、お前等………また覗きか?」

 

 零は直ぐに3人の元に移動すると声を掛けた。

 

 

「そっそんな訳ないだろう!?」

 

 

「へっ変な事いうなよ!レイ!!」

 

 

「しっ紳士の俺達がそんなこと、する訳ないだろうが!」

 

 零は心の中で「今までの事を振り返ってみろ」と呟くが、あえて言わなかった。

 

 

「確か昼休み明けの授業は白音が体育だと言っていたが………まさかとは思うが白音の着替えを覗こうなどと考えてないだろうな?イッセー、元浜、松田………そうか、そうか……また仕置きが必要らしいな」

 

 零は次の時間が白音が体育がある事を知っていた。それを知っているが故に、一誠達が何を考えているのかお見通しだった様だ。3人……三馬鹿に至っては動揺し過ぎている。これでは隠している意味がないだろう、それを聞いたアーシア以外の女性陣からはゴミを見る様な視線が送られている。

 

 

「そう言えば………午前中の体育の時間の前後に居なかったな。まさか」

 

 

「「「ギクッ!?………ばばばばばっ馬鹿!そっそっそっんな訳がないだろう!?」」」

 

 

「覗き?なんですか、零さん?」

 

 

「アーシアは知らなくていいんだよ……さて選ばせてやる。

 1.『引ん剝かれて磔にされて女子生徒からの仕置きを受け、俺に地獄に送られる』

 2.『俺に半殺しにされてから女子生徒の仕置きを受けてから、地獄に行く』

 3.『漢女(おとめ)集団の中に両手足を縛った状態で放り込んで、その後に地獄に墜ちる』

 さぁ選べ」

 

 

『何なんだ!?その選択肢は!?』

 

 

『どれを選んだとしても死んじまうじゃねぇか!!どうするイッセー!?』

 

 

『おっ落ち着け!なんの証拠もないんだ………しっしらばっくれれば、何とかなる!!……筈だ』

 

 三馬鹿は選択肢4.『証拠がないため、しらばっくれる』を選んだ。なんとか口先で生き残ろうとしているが、果たして上手くいくのか?

 

 

「れっレイ……なんを証拠に言ってるんだ?俺達は疲れてたから、サボってただけだぜ」

 

 

「ほぅ………そうきたか」

 

 一誠の言葉に感心した様に零は頷いた。

 

 

「そっそうだ!レイ!言い掛かりだ!!」

 

 

「そうだ!そうだ!!」

 

 一誠に同乗して松田と元浜もそう言い放った。これまでどうであったにしても女性陣も現行犯でないため、口を出す事ができなかった。

 

 

「一誠……アーシアの下着の色は何色だった?」

 

 

「えっアーシアの……確か……ムフフフ……綺麗な薄いピンクだったな……あっ」

 

 

「ふぇ!?いっイッセーさん、何で知ってるんですか!?」

 

 アーシアは顔を真っ赤にしながら顔を隠している。どうやら当たっていた様だ。見事に自爆した一誠達に女性陣が竹刀や箒などを持って迫る。

 

 

「選択肢5.『死刑』に決定だな。でもその前に逃げられても困るからな(ジャラララ」

 

 何処からともなく出した鎖で、以前の様に一誠達を拘束した零。

 

 

「やっぱり女性陣の手を汚すのは気が引けるな………この俺、手ずから裁きを降してやろう。喜べ……三馬鹿(ジャラジャラ」

 

 

「ぜっ全然喜べないから!!」

 

 

「ごっごめんなさい!!許してぇ~!?」

 

 

「おっ御許しを?!レイ様!!」

 

 

「では多数決……クラスの皆さん、この三馬鹿を許しますか?裁きますか?」

 

 

「「「「「「「裁きます!!!」」」」」」」

 

 アーシアを除いたクラスの女子生徒全員の判決を下した。手を上げていない男子達も女子生徒達に睨まれると、渋々手を上げた。と言う訳で

 

 

「お仕置きだ……じゃ逝こうか」

 

 

「「「ぎゃぁ~~~~~~!!!」」」

 

 その悲鳴は放課後まで絶え間なく続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~オカ研 部室~

 

 放課後になってボロボロになった一誠は部室の床に放置されていた。

 

 

「それで……なんで、イッセーはボロボロになっているのかしら?」

 

 

「覗きをしたからな、俺手ずから裁いた。生きているだけでも感謝して欲しいものだな……姫島朱乃、すまんが紅茶をくれ。菓子はこっちで用意している」

 

 

「はい、分かりましたわ」

 

 零は現在、オカ研の部室に居た。何時もの様に何処からともなく菓子を出すと机の上に置いた。朱乃は紅茶を出す為に奥へと消えた。リアスに至ってはボロボロのイッセーを見て呆れている。零の右隣にはアーシアが、左隣には白音が座っている。そして何故か零の膝の上に座っているオーフィス。

 

 

「それで貴方は何故、無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)と一緒に居るのかしら?というか何で学園に連れて来てるのよ?」

 

 

「オーフィスは俺の家族でもあるからな。ここに居るのは」

 

 

「我、久しぶりにドライグと話したい」

 

 

「だ、そうだ。赤龍帝ドライグ」

 

 

 《フン………貴様なんぞと話す事はない》

 

 零はそう言うと倒れている一誠の方に声をかけると、一誠の左手の甲が光りドライグの声がした。

 

 

「話があるのは俺じゃないって……」

 

 

「ドライグ……我が話しある。色々と話したい」

 

 

 《俺にはない。と言うか何でアイツと一緒にいるんだ?》

 

 ドライグが恨めしそうにそう言った。アイツと言うのは零の事だろう、未だに以前にやられた事を根に持っている様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「零……我の居場所。我、静寂が欲しかった……でも次元の狭間にはグレードレッドがいる、我、次元の狭間に帰れなかった。それで零に協力して貰うつもりで近付いた……でも、零が言った『俺がオーフィスの居場所になる』って。我の居場所何処にもなかった、でも零が居場所になってくれた……だから零は我の居場所」

 

 

 《お前も変わったな。昔のお前なら居場所なんてものは気にしなかっただろうに》

 

 

「ドライグも変わった………何処となく昔の様な乱暴さがなくなった様な気がする」

 

 

 《そうか?変わってないと思うが………それにしても奴は何者だ?少なくともあんな奴、見た事ないし聞いた事も無かったぞ……あの強さは異常だ、それこそお前やグレードレッド以上じゃないのか?》

 

 

「うん……前に戦った時、全然傷付けられなかった。零、我より強い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を話しているのかしら?」

 

 

「さぁ?………さて、俺が今日此処に来たのはそこのナイトに用があったからだ」

 

 零がそう言って見たのは、木場祐斗もとい祐子だった。祐子は事件の後にオカ研に戻っていた様だ、零は心の中で「元の鞘に収まったな」と思っていた。

 

 

「僕に?」

 

 

「そう………何だかんだで君は俺の予想を超えていたからね、まだ興味がつきない。あの子達にも頼まれたしね……あっそうだ。これだ」

 

 零がそう言うと、懐から一枚の紙を祐子の前に置いた。

 

 

「?」

 

 

「あの子達がこっちに来たいと言ってね。今はその紙の書いた場所にいる……まぁカノン達も一緒にだけど…好きな時に行くといい。後、これをやろう。【ソウルコード:聖龍剣(フォース・オブ・ドラゴスレイブ)邪竜剣(グレイズ・オブ・ドラゴスレイブ)】」

 

 零が指を鳴らすと、空間が歪み2本の剣が現れた。1本は純白で美しく聖なる力を発している、もう1本は漆黒で禍々しい力を放っていた。リアス達はそれを見て直感する、これは聖剣と魔剣であると……そしてその2本の剣の力を目の当たりにして身を震わせる。

 

 

「此奴等はとある番いの竜達の素材を用いて作った夫婦剣。決して離れず、別ちえない剣だ………俺が作ったんだけど使う事がなかったんでな、お前にくれてやる………お前であれば上手く使うだろう……見ての通り聖剣と魔剣だ、竜の素材なのに竜殺しの力を秘めている。これからは女として生活するなら悪魔で竜を宿してるそこの変態対策には丁度いいと思ってな」

 

 そう言って倒れている一誠を指差す零。祐子はそれを見て微笑んだ。

 

 

「でもいいのかい?この剣は正真正銘の聖剣と魔剣、しかもかなりのものだ。今回の事で、君に迷惑をかけたのに君にこんな物を貰ったら」

 

 

「ふっ………俺は見たいだけだ。聖と魔を司る聖書の神が死んでいたとはいえ、理を己が手で変えたお前が紡ぐ未来を。お前が何を守り、何のために剣を振るうか、その先に何を成すのかをみたい。それだけだ」

 

 

「未来……僕は……僕を受け入れてくれた部長や朱乃さん、一誠くんの為にこの剣を振るう。そして仲間達の為に剣を振るい続けるよ。その為にこの剣は受け取るよ」

 

 祐子はそう言うと、零の出した聖龍剣(フォース・オブ・ドラゴスレイブ)邪竜剣(グレイズ・オブ・ドラゴスレイブ)を手にした。すると2振りの剣は粒子になると、祐子の身体へと吸い込まれていった。

 

 

「これは……」

 

 

「剣がお前を認めた様だな。後はお前の意志で出て来る……使いこなせるかどうかはお前次第だがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでだよ?!レイ!お前は俺を何だと思ってんだよ!?」

 

 目を覚ました一誠が零に向かいそう言った。どうやら先程の祐子に言った言葉の事を言って居る様だ。

 

 

「変態、覗き魔、おっぱい好き、エロの体現者」

 

 

「ぐっ!?……否定できない」

 

 

「はぁ………では紅茶を貰うか」

 

 零は朱乃に出して貰った紅茶に口を付けた。

 

 

「あの天王理くん……1つ聞きたいんだけどいいかな?」

 

 紅茶を飲んでいると、祐子が口を開いた。

 

 

「なんだ?」

 

 

「君自身のことは恐らく話してくれないだろうけど………君の力の事なんだけど」

 

 

「それについては私も興味があるわね………それに塔城さんのあの力についても」

 

 

「私も知りたいですわ」

 

 

「俺も知りたい!」

 

 零の力、記憶の力【メモリーコード】・魂の絆の力【ソウルコード】。祐子はそれについて聞きたいらしい。そしてリアスと朱乃、一誠もそれに便乗してきた。

 

 

「ほう………まぁいいだろう。俺が主に使う力は2つ……1つは視たどんな武器・能力・魔法を再現する【メモリーコード】」

 

 

「どんな能力でも再現する?」

 

 

「例えば【メモリーコード:滅びの魔力】」

 

 

「「「!!?」」」

 

 零の左目が一瞬光ると、右手に赤黒い禍々しい魔力が現れた。【滅びの魔力】それはリアスやサーゼクスが持つ特別な魔力。これは二人の母であるバアル家が培ってきた力で在る為、バアル家の血を継ぐ者以外には使う事ができない筈だ。

 

 

「そっそれは……そんな……ありえない。それは私の」

 

 

「メモリーコードの短所は、贋作であるが故にオリジナルには追いつかない。だが長所として完成されたオリジナルにはない成長や組み合わせをする事ができる」

 

 

「本当にどんな力でも出来るのか?」

 

 

「例外はあるが殆どの場合はできるぞ。【メモリーコード:赤龍帝の籠手(ブースデッド・ギア)】」

 

 零の左腕に赤龍帝の籠手(ブースデッド・ギア)が現れる。しかし宝玉の部分が灰色になっている。

 

 

赤龍帝の籠手(ブースデッド・ギア)!?すげぇ……本当に赤龍帝の籠手(ブースデッド・ギア)だ。でも宝玉が……」

 

 

「これが贋作たる証だ。能力的には一緒だけど………武器の場合は贋作故にどこかしら違ってくる。まぁ完全でないけど、これはこれで進化していくからな。これはお前等の神器と同じだな……使用者の思いや成長で進化していくのは。メモリーコード自体の弱点とすれば強力な力を使えば一時的に使用できなくなるって所か」

 

 零は直ぐにメモリーコードで作った赤龍帝の籠手(ブースデッド・ギア)を消す。

 

 

「そしてもう1つが、仲間との絆の力【ソウルコード】。仲間と紡いだ絆によって、仲間の力を使用できる。これを使用するには仲間との決して切れない絆が必要だが………【ソウルコード:アルトリア・約束された勝利の剣(エクス・カリバー)】」

 

 零の右眼が光るとその手に約束された勝利の剣(エクス・カリバー)が出現した。

 

 

「そう言えばこの間、言ってたエクスカリバーが贋作ってどう言う事なのですか?」

 

 朱乃が前に零が言っていたことを思い出し、そう聞いた。

 

 

「………あれは聖書の神が創った聖剣。本来、エクスカリバーは人々の思いが地球の中で結晶化した最強の幻想(ラスト・ファンタズム)だ。それが容易く折れる事はない………俺が今回動いたのはエクスカリバーの名を汚す輩を俺の手で裁きたかったからだ」

 

 零はそう言うと、剣を消し紅茶に視線を戻した。

 

 

「では貴方がアーサー王と絆を紡いだという事なのかしら?」

 

 

「あぁ……その認識で構わん。あっちではアイツだけでなく、ロリコン騎士やら人妻好き、ファザコンやらとも知り合いだ」

 

 

「「「ロリコン?人妻?ファザコン?」」」

 

 

「細かくは気にするな。俺もあまり思い出したくない………オーフィス、話しは終わったか?」

 

 

「終わった……楽しかった」

 

 零は自分の力の事を話し終えると、オーフィスに声を掛ける。オーフィスは零に買って貰った蛇のぬいぐるみを抱きかかえ零の元に歩いてくると、当然の如く零の膝の上に座る。

 

 

「あっお菓子………もぐっ……うまっうまっ。零、今日の晩御飯なに?」

 

 

「ん……そうだな。何にしよう?」

 

 

「ご主人様、うどんが食べたいです」

 

 突然、白音が零にそう言うと「あぁ、それもいいな」と返答した。

 

 

「うどん?………なんですか?」

 

 アーシアはどうやらうどんを知らない様だ。アーシアはこの間までは海外に住んでいたので仕方ないだろう。

 

 

「えっと……白音、説明してやってくれ。俺は作るのは得意だが、そう言った説明は苦手だ。今日の晩はうどんに決定だな」

 

 

「我、御揚げが入ってるのを所望。あと、御揚げで包んだおにぎりも所望する」

 

 

「私はよくは分からないですけど、零さんにお任せします」

 

 

「私は、月見うどんがいいです」

 

 

「………あぁ、分かった。じゃあ用意する為に買い物行かなきゃな」

 

 零は一瞬、露骨に嫌な表情をする。だが直ぐに表情を戻すとオーフィスを抱えて立ち上がり出口の方に向かった。白音とアーシアも立ち上がると零の後に続く。

 

 

「さて……俺達は帰る。あぁ、そうだ………リアス・グレモリー、参考までに聞くけど……2週間後のアレは誰かくるのか?」

 

 

「ッ!?………嫌な事を思い出させるわね。私とソーナはそれで悩んでるのよ……はぁ」

 

 リアスは疲れた様な表情をすると、頭に手を当てて溜息を吐いた。

 

 

「……そうか。はぁ……」

 

 零はリアスの様子を見ると、そう呟いて溜息を吐くと転移の魔法で消えていった。

 

 

 

 

 

~リアスside~

 

 

 天王理のあの力……流石は伝説の戦士という所ね。それに塔城さんのあの力、アーシアさんの神器……欲しい。どうやってでも手に入れたい人材ね。

 

 どうにかして彼女達を引き込めないかしら……そうすれば必然的に天王理も私に力を貸す筈……天王理は日本神話と関わりを持っているし、この土地の件に関してもなんとかして貰えるかも知れないわね。

 

 リアスは後にこの考えが自分の命を危険に晒す事になるなど思っていなかった。



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EP25.5 プールの荒波

 ~???~

 

 何時からだろう?

 

 俺が平気で力を振るえる様になったのは?

 

 力を振るい何かを傷付けても、大切な物の為なら傷付けられるようになったのは?

 

 あの時、【僕】と【我】が1つになったのは?何時の日のことだったのだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《汚らわしい》

 

 

 《汚れた血の混じった忌み子が》

 

 

 《何故、あの方々はこんな下等な者を?》

 

 

 《理解できぬ、聡明なあの方々が……》

 

 

 《やはりこの者は危険だ。始末しようか》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言って皆が【僕】に冷たい眼を向け、見下す。まるでゴミを見る様な、害虫を見る様な目で【僕】を見る。【僕】は小さく弱かったから、何もできなかった。殴られても蹴られても【僕】は泣く事しかできなかった。

 

 ボロボロな【僕】を見て、母様や姉様達が【僕】を心配する。【僕】は「転んだだけだよ」と母様達に言った。【僕】は汚れてるから母様達に迷惑を掛けてしまう。これ以上、心配をかけたくないから。

 

 そんな【僕】を見て、母様達は泣きながら【僕】を抱きしめてくれた。

 

 暖かい、母様達は何時もこうしてくれる。暖かくて安心する、だから涙が出てしまう。【僕】はどうしてこんなにも弱いんだろう?どうしたら強くなるんだろう?と考えながら【僕】は眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【僕】が【我】となったのはこの身が血に染まったあの時だった。

 

 大切だった飼い猫が殺されたあの時、【僕】は自分の無力さを知った。そして頭が真っ白になり、思考が『怒り』に染まった。それからはあまり覚えてないけど、【僕】は壊した。

 

 飼い猫を抱き、この身を真っ赤な血に染めて、溢れ出る愉悦に身を任せ狂った様に笑い続けた。こうして【僕】は自分の中の【我】に気付いた。【我】は本能のままに暴れ続けた、何もかも本能のままに無へと帰す。

 

 騒ぎを聞いた、母様達が【我】を止め【僕】を抱きしめてくれた。

 

 けど【僕】の中の【我】は時を重ねるごとに強くなっていった。だから【僕】も強くなった、血反吐を吐き、全身の骨を折られても立ち上がった。

 

 強くなった【僕】と【我】は殺し合った。同じ存在であるが故に、【僕】と【我】は互いに憎み合った。憎くて、憎くて堪らなかった。

 

【僕】と【我】の関係は、『光と闇』『聖と魔』『天と地』と言った対なす存在。それ故に互いに憎んだ。

 

 けど【僕】と【我】も同じだった。それに気付き、互いに認め合った時、【僕(我)】は本来の姿に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~深夜 天王理家~

 

 

「ん………ぅう……ちが………ぅ…」

 

 深夜、零に抱き着いて寝ているアーシア、白音、黒歌。そして抱き着かれている零は魘されていた。オーフィスは零の様子を見て、首を傾げていた。

 

 

「零?」

 

 オーフィスは魘され涙を流す零の顔に手を伸ばし触れる。

 

 

「これは涙?涙は悲しい時に出る………何故、寝ている時に出る?」

 

 オーフィスは何故、零が涙を流しているのか分からなかった。そしてオーフィスは妙な違和感を覚える。オーフィス自身が永い時を生きてきた中で感じた事のない違和感を。

 

 

「なに?我、零が泣くと悲しい……悲しい?我、悲しんでる?……これが悲しい?苦しい……何故?」

 

 今まで生きてきた中で初めて悲しいという感情を体感したオーフィスは疑問に感じていた。何故、零が泣いていると自分も悲しいのだろう?と。それが何か分からないまま時間が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~翌朝~

 

 

「……あのオーフィス、何かあった?」

 

 

「何もない(ふるっふるっ」

 

 オーフィスは首を振りながらそう言うが、朝からべったりと零に張り付いて離れようとしない。その様子を見て……

 

 

「オーフィスずるいです、私もします」

 

 

「私もするにゃ!」

 

 

「わっ私もします!」

 

 白音、黒歌、アーシアも対抗し零に引っ付いた。

 

 

(一体なんなんだ?朝からこんなに引っ付いてきて……まぁいいや)

 

『ピリリリリリ』

 

 

「はい、もしもし」

 

 零は携帯が鳴っているのに気付くと、ディスプレイを見て一瞬面倒そうな顔をしたが取り敢えず電話に出て耳に携帯を当てる。

 

 

『あっレイか?一誠だけど……これから学園に来ないか?オカ研でプールの掃除をしないといけないんだが手伝ってくれないか?掃除の後にはプールを先取りして使えるんだけど』

 

 

「残念ながら興味ない……が、何やら白音達が行きたそうな顔をしているから行ってやる」

 

 白音達が行きたそうな表情をしていたので、行く事になったのだが。問題が1つあった。

 

 

「私も行くにゃ!白音の水着姿なんて普段は見れないにゃ!」

 

 シスコン全開、血走った目で訴え続ける黒歌をどうしたものかと考えている零。

 

 

「姉様、眼が怖いです」

 

 白音がシスコンの黒歌に引いていると、黒歌はショックを受け倒れた。

 

 

「気持ちは分かるが今日は留守番してろ」

 

 黒歌は白音とは違ってS級悪魔として指名手配されている黒歌が、悪魔の関係者が多い駒王学園に連れて行く訳にはいかない。オーフィスの件でさえ、リアス達が黙っている(と言うより言えば零に何されるか分からない)からいいが、指名手配されている黒歌の場合はリアスの立場としても報告しない訳にはいかない。実際、そんな事すれば悪魔勢が殲滅させられそうだが。

 

 

「零!酷いにゃ!!私がどんな気持ちk「今度の休みの日には白音に着物でも着て貰おうかな」残念だけど今回は諦めるしかないにゃ!行ってらっしゃい~(白音は着物の着付けができない、そうなれば着替えの時に……ふふふ)」

 

 良からぬことを考えている黒歌を余所に零達は学園に向かい歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~駒王学園 プール~

 

 

「来てやったぞ」

 

 

「あらっ来てくれて嬉しいわ、天王理。なんでオーフィスまで連れて来てるのかしら?」

 

 

「離れてくれないんでな、どうしようもない。何ならお前が引きはがしてみるか?」

 

 リアスは勢いよく首を横に振る。流石に命が惜しい様だ。

 

 

「それと1つ聞きたいんだが……何故、そこに教会の小娘がいる?(ギッ」

 

 何故か、その場にいたゼノヴィアを睨み付ける。以前にアーシアを侮辱したのを未だ覚えている様だ。

 

 

「教会?……アーシアを馬鹿にした奴……」

 

 オーフィスもアーシアが侮辱された事を覚えていたのか、零と一緒にゼノヴィアを睨む。

 

 

「いやあの……その…あの時は失礼しました。まさか【伝説の戦士】様とも知らず大口を叩いてしまい……」

 

 ゼノヴィアが申し訳なさそうにしているが、零とオーフィスからの圧力が一層増す。この2人なら常人だけでなく、上級悪魔でさえも睨みだけで殺せてしまいそうだ。その睨みを受けているゼノヴィアは今にも気を失いそうだ。というより、今にも2人ともゼノヴィアに攻撃を仕掛けそうな勢いだ。

 

 

「あっあの、零さん、オーフィスちゃん、私は気にしてませんから」

 

 アーシアが2人の雰囲気を読んで、何とか止めようとする。

 

 

「アーシアがいいなら、俺はそれでいいが」

 

 

「分かった……」

 

 アーシアからそう言われると、2人は睨むのを止めて視線をプールにむける。

 

 

「それでなんで教会の人間が此処にいる?」

 

 

「それは……私も悪魔になったからです(ばさっ」

 

 零が再び、ゼノヴィアを見ると背に悪魔の翼が生えていた。どうやらリアスの悪魔の駒(イミテーション・ピース)で転生悪魔になったらしい。

 

 

「もう1人いたと思うが………ツインテールのが」

 

 

「イリナなら回収したエクスカリバーと私のエクスカリバーと共に教会に帰りました……私も一度戻りましたが、主の不在という禁忌を知った私を見る彼等の眼は………そして行く宛もなく迷っていたらリアス部長に悪魔にならないかとお誘いがあったので悪魔になったんだ……です」

 

 ゼノヴィアはそう言うが、最後の方で何時もの様な口調で喋っていると、零から睨みが来たので直ぐに敬語に戻した。

 

 

「………そうだ、アーシア・アルジェント…君には謝らなければならない。主がいないのであれば、救いも愛もなかったんだ。すまない、アーシア・アルジェント。君の気が済むなら殴って貰っても構わない」

 

 ゼノヴィアはそう言うと、頭を下げ謝罪する。

 

 

「そんな……私はそのようなことをするつもりはありません。私は今の零さんとの生活がとても充実していますし、何より零さん達と出会えた事を感謝しています……あの様な事がなければ零さん達とはあえませんでしたから」

 

 うんうん、俺は感心したよアーシア。本当に心の広いな、この子には本当に聖女という言葉がしっくりとくる。だから彼女もアレをアーシアに渡す様に言ったんだろうな。この娘(ゼノヴィア)も根は悪い奴ではないか………まぁいいだろう。今回は不問とするか。

 

 

「さて取り敢えずさっさとプールに入るとするか」

 

 零はプールの方に目を向けると、何故か準備体操を始めた。

 

 

「あのねぇ天王理くん、掃除しないと入る物も入れないわよ?」

 

 

「掃除なんて時間の無駄な事はしたくないんでね。よっと」

 

 零は靴と靴下を脱ぐとその場から飛び上がり、汚れたプールの中に飛び込もうとする。このまま行けば汚い水の中に入る事になるのだが、零はそこまで馬鹿ではない。

 

 

『ポチャン』

 

 零の足先が水に触れた瞬間、汚れていたプールの水が透明で済んだ色に変わる。そして零は水の上に立っていた。一同は一体何が起こったのか分からないでいる。

 

 

「いっ一体何をしたの?」

 

 

「何って……ただ水と場を浄化しただけだ。悪魔はこんな簡単な事もできないのか?………さぁ着替えておいで、アーシア、白音、オーフィス(パシャパシャ」

 

 そう言いながら、零は地面を歩く様に水面を歩いている。アーシア達は零に言われると更衣室に向かって歩いていく、リアス達は理解できないと言った表情だが、自分達も更衣室に向かった。

 

 

「って俺も着替えなきゃ。おい、行くぞ一誠」

 

 零は一誠の腕を掴むと更衣室に連れ込んだ。勿論、着替える為と一誠にアーシア達の着替えを覗かせないためだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~男子更衣室~

 

 

「…………」

 

 

「ふぅ………なんだ、一誠?ジロジロみるな……お前、女にモテないからってそっちの趣味でももったのか?(すすっ」

 

 零は服を脱ぎながら一誠が此方を見ているのに気付くと、危険を感じ身を引いた。

 

 

「ちっ違う!俺にそんな趣味はねぇ!!俺はおっぱい命の男だ!!」

 

 一誠が零に言われた事を否定すると、そう叫ぶ。最後のは言う必要があったのか分からないが。

 

 

「そう……なら早く着替えろ」

 

 

「なぁ……レイ、1つ聞きたいんだけど……その傷」

 

 一誠がそう言ったのは、零の身体にある無数の傷の事だ。零の身体には傷が無数ある、それは小さい物から大きい物まで。切傷から火傷など様々な物があった。

 

 

「これがどうした?」

 

 

「レイはあんなにも強いのに傷を負う事もあるのかと思って………」

 

 

「フム………これは戦いの物じゃない。俺が俺の証、母様の息子という証だ………それに俺を傷つけたいならこの世界の全最高神を全員連れて来ないとかすり傷1つできないけど?」

 

 

「えっ?………じょ冗談きついぜ」

 

 

「それも不意打ちでやっとって所かな。俺は……ってお前等、何を出てこようとしてんだ」

 

 零は喋っている途中に右眼を抑え始めた。一誠は何事かと思い近付こうとするが何かに弾き返された。そして零の周りに4つの光が現れて人の形になった。

 1人は黒い甲冑を着た黒髪の男、1人は白い甲冑を着た金髪の男、1人は青い服の少女、1人は全身甲冑の男か女かも分からない人物。

 

 

「なっなにが?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~プール~

 

 

「だから言ってるでしょう!私はロリコンではありません!ただ小さく幼い女性がタイプなだけです!」

 

 

「人妻好きとは失礼な、私はどちらかと言うとギネヴィア様より王の方g……コホン、取り敢えず訂正して頂きたい!」

 

 

「誰がファザコンだ!?オレは父上なんか大嫌い……でもないけど……好きでもないぞ!」

 

 零に迫って抗議している3人の甲冑の者達。そして青い服の少女の方は申し訳なさそうにしている。

 

 

「お前等、取り敢えず俺の中に還れ。ガウェイン、ランスロット、お前等は似た者同士だったんだな。モードレッド、ツンデレもいいがいい加減に素直になれ、素直が一番だ」

 

 

「「なっ!?ガウェイン(ランスロット)と一緒にしないで貰いたい!」」

 

 太陽の騎士ガウェイン、湖の騎士ランスロット。この2人はアーサー王に仕える円卓の騎士の一角、色々とあって仲が悪い。そしてアーサー王の息子と言われている騎士モードレッド。最後にはアーサー王を傷付けた騎士でもある。

 3人が何故此処にいるのかは分からないが、恐らく零の力によるものだろう。

 

 

「アルトリア、後でご飯食べさせてやるから此奴等連れて還って」

 

 

「ごっご飯!………3人ともいい加減にしなさい。さっさと帰りますよ」

 

 アーサー王……アルトリアはご飯と聞くと満面の笑みを浮かべてそう言った。ガウェインとランスロットは更に抗議しようとするがアルトリアから睨まれるとシュンと小さくなってしまい光と共に消えてしまった。

 

 

「零!オレもご飯食べたい!!」

 

 

「零!私は分厚いステーキが食べたいです!」

 

 

「分かった、分かった。喰わせてやるから」

 

 アルトリアとモードレッドは零からそう聞くと、消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっ一体なんだったのかしら?」

 

 

「さっさぁ?」

 

 

「分かりませんわね」

 

 そのやり取りを見ていたリアス達は目の前で起きている事が全く理解できなくて困惑していた。だが「さっさと忘れろ」と零が言ったら直ぐに皆はプールで遊び始める。

 

 

 そしてこの日は、一誠がリアスと朱乃、祐子のオイル塗りやらゼノヴィアが一誠と子作りしようと言いだして一波乱あり、それを零は愉悦顔で見ていたのはまた別の話。




【ソウルコード:実体化】

零の力、絆の力ソウルコードを用いて絆を紡いだ者を応龍皇の様に実体化させる事ができる。


ソウルコード:アルトリア……伝説のアーサー王その人。

「零!お腹が空きました。ご飯下さい」


ソウルコード:モードレッド……アーサー王の息子。父上大好きっ子だが素直になれないオレっ娘。

「父上なんか大嫌い(大好き)だ!因みに零は好きだ、ご飯くれるから」


ソウルコード:ガウェイン……アーサー王の騎士の1人。小さく幼い女性がタイプ。

「ロリコンではありません。零、オーフィスちゃんと白音ちゃんの写真をくd(グシャ」


ソウルコード:ランスロット……アーサー王の騎士の1人。ギネヴィアよりアルトリアがたいp「アァァァァァァァァァサァァァァァァ!!!(バーサーカー化)」

「先程の事は忘れて下さい……それより零、王が御空腹です。早く食事の用意を」


以上が今まで出て来た零と絆を紡いだ人達でした。



















「ん?………ちょっと待て!私は!?私は始めの方に出て来たはずだ!なのに、なんでさっ!?」

赤い弓兵の叫びは誰にも届く事はありませんでした。


「なんでさぁぁぁっぁぁ!?あんまりだぁぁぁぁぁ!!」

ソウルコード:エミヤ………同じみの赤い弓兵。


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第4章 停止教室のヴァンパイア
EP26 来る母


 ~日曜日 早朝 天王理家~

 

 

「ふぁ~眠い」

 

 この家の主、零は寝癖のついた髪のままソファーに座り寛いでいた。本来であればこの時間には食事を作らないといけないのだが、今日はアーシアと白音が用意をしているのでゆっくりとしている。

 因みにオーフィスと黒歌はまだ寝ている。

 

 

(休みだし、朝飯ができるまで二度寝しよう)

 

 零はそう考えて、寝室に向かおうとすると

 

 

『ピンポーン』

 

 現在時刻、午前6時。今日は誰も来るはずないんだけどな。何かの勧誘か?

 

 と考えながら玄関に向かい扉を開ける。

 

 

「新聞や広告、勧誘はいりまs……」

 

 零は扉の前にいた人物を見て、表情を強張らせる。

 

 

「おぉ!会いたかっt「バタン」ってえぇ?」

 

 零は直ぐに扉を閉め、鍵を掛けチェーンをする。そして慌ただしく扉に札やら注連縄をかけていく。

 

 

「なっなんで?………まさか……いやでも1週間前に……でもあの人なら」

 

 

『お~い、開けろ~。お姉ちゃんが来たんだぞ~』

 

 

『お兄ちゃんも来たぞ~』

 

 外から扉を叩く音と共に声が聞こえてくるが、零は耳を塞ぎ無視し続ける。

 

 

「張ってある結界の強化だけじゃ足りない……この家を外界から断絶する、そうすれば簡単には入ってこれない筈……」

 

 零はそう言うと、何やら呪文を唱え始める。

 

 

「零さん、誰か来られたんですか?」

 

 

「誰も来てない!来てないから!!」

 

 慌ただしい音を聞いてやって来たアーシアに零はそう言うと、詠唱を続ける。

 

 

『お~い、可愛い甥っ子や~い。開けてくれ~』

 

 

「でも………」

 

 

『あらあら……こんな朝早くから騒がしいですよ。貴女はもう少しお淑やかになるべきですよ』

 

 

『あっ……はい、姉上。申し訳ありません』

 

 

『はぁ………零、開けなさい』

 

 零はその言葉を聞いた瞬間、諦めた様な表情になると

 

 

「お願いです、母様。10分……いえ5分だけ待って下さい。身支度するんで」

 

 

『分かりました。待ってますからね』

 

 零はそう聞く前に身体が動いていた、直ぐに自分の部屋に入ると着替えを始めた。それに加え寝癖を直したりと慌ただしい。

 

 

「アーシア!白音!取り敢えず、奥の部屋に行ってて!!直ぐに帰らせるから!」

 

 

「えっでもご主人様のお母様ですよね?挨拶した方が……」

 

 

「そうです!」

 

 どうやら2人は零の母に挨拶したいらしい。だが零はそれをして欲しくない様だ。

 

 

「だっ駄目!あっ時間が!ぁ~もう!!何でこんな時に来るんだよ!!(ばたっばたっ」

 

 何時も冷静な零が取り乱している、というよりキャラが崩壊している。零は玄関に移動すると深呼吸して扉に手を掛けた。

 

 

 

「おっ御待たせしました………母様、姉上、叔父上」

 

 玄関の前にいたのは、太陽神・天照、月神・月読、荒ぶる神・素戔嗚。日本神話の最高位に立つ三貴士だった。服装は天照は桜柄の着物、月読は紫色のドレス、素戔嗚は革ジャンとジーパンだ。

 

 

「お久しぶりですね、零」

 

 

「「ぉ~我が愛しの甥っ子よ~」」

 

 月読と素戔嗚が零に飛びついた。

 

 

「月姉!叔父上!離れて下さい!!」

 

 

「おぉ~相変わらずお肌すべすべ、髪もサラサラ。男とは思えないな~」

 

 

「おっ毎日鍛えてるな、結構身体がしっかりしてきたじゃないか」

 

 月読は零の頭や顔を撫でながら頬ずりをしている。素戔嗚は零に抱き着きながら、身体の筋肉のつき具合を確認している。

 

 

「取り敢えず離れて下さい。月姉、肋骨が当たって痛いです。叔父上、男に抱き着かれて喜ぶ趣味はないんで離れて下さい」

 

 零は何もかも諦めた様な表情でそう言ったが、2人の神は離れる気はないらしい。その光景を見て、アーシアと白音は全くついていけていない。それに加え、騒ぎで起きてきたオーフィスと黒歌がそれを見て何が起きたのか分からないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~リビング~

 

 

「それで母様達は一体、何をしに此方にいらしたんですか?」

 

 

「何って………来週の【公開授業】を見にですよ」

 

 天照が零の問いに笑顔で答える。

 

 

「…………はぁ~。分かりました、でも来週ですよね……なんで来週なのに今日来るんですか?!」

 

 公開授業、それは駒王学園が授業を父兄に公開するものだ。神様が態々公開授業にくるのはどうなんだろうと思う零だが今の問題はそこではない。公開授業は来週、だが来週なのに何故今日来たのかという所だ。

 

 

「可愛い息子の世話をするのは母として当然でしょう」

 

 

「姉として可愛い弟(?)の世話をしたいと思うのは当然だろう」

 

 

「叔父として可愛い甥っ子の生活を見るのは当然だろう」

 

 3人ともそれぞれそう主張する。3人ともさも当然の事の様に言っている。言う事は分かるのだが、それは通常の場合だ。

 

 

「仕事の方はいいんですか?」

 

 

「「「仕事と貴方(お前)と天秤にかけるまでもないでしょう(だろう)」」」

 

 

(きっと周りの神々を脅してきたんだろうな………)

 

 零の脳裏には日本の神々を笑顔で圧倒する三貴士の姿が思い浮かぶ。勿論周りの神々はそれに逆らえる筈もなく大人しく従うしかないだろう。

 

 

「それに来週は貴方が準備した会議もありますから…………それにしても何やら可愛い同居人が増えましたね」

 

 

「いやこっこれには海より深く、宇宙より大きな事情がですね………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~説明中~

 

 

「成程……そんな事情が……そう言う事であれば仕方ありませんね」

 

 天照は事情を聞き納得した様に頷いた。月読も素戔嗚も納得している。

 

 

「そう言えば自己紹介が未だでしたね………私の名は天照と申します。零の母で、この世界では日本の太陽神をしています」

 

 

「私は月読だ」「俺は素戔嗚だ」

 

 三人がそれぞれ自己紹介すると

 

 

「じっ自己紹介が遅れてすいません、私はアーシア・アルジェントと申します。零さんには命を救って頂き、今もお世話になってます」

 

 

「わっ私はご主人様に助けられた、猫の黒歌です」

 

 

「いっ妹の白音です……ご主人様にはお世話になってます」

 

 

「我、オーフィス。無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)……零、我の居場所」

 

 それぞれ自己紹介しているが、オーフィス以外は緊張しているのか喋り方がぎこちない。これが普通の反応だろう、なんせ目の前に居るのは圧倒的な絶対の神。普通なら緊張しない筈がない。

 

 

「それで零、彼女達には原初世界の事は話したのですか?」

 

 

「えぇ……まぁ………」

 

 

「そうですか…‥まぁ別に構いませんよ。貴方が話そうと思ってそうしたのなら」

 

 

「それで、もしかしてですけど本気で公開授業に来たんですか?」

 

 

「「「勿論ですよ(だ)」」」

 

 3人の神は迷う事無くそう答えた。しかも満面の笑みで、零はそれを見て疲れた様な表情で溜息を吐いた。

 

 

「公開授業に関しては別にいいですよ……夜には会談もありますし」

 

 

「「「会談?」」」

 

 白音達が会談と聞いて首を傾げた。

 

 

「あぁ……来週にな、天使・堕天使・悪魔の三勢力のトップ達の会談がある。だからそれに母様達も参加する事になっている。と言うよりは無理矢理入れたんだけどな」

 

 

「と言うか、ご主人様はそれをどうやって知ったのかにゃ?」

 

 

「この間、アザゼルを街中で見つけてな。アーシアやコカビエルの時の事を含めてO☆HA☆NA☆SHIをしたんだ。オーフィスと一緒にな」

 

 

「うん……我、楽しかった。またラクガキしたい」

 

 

「でもなんでそんな会談に?」

 

 

「その理由は私が話しましょう」

 

 天照がニッコリと笑みを浮かべながらそう答える。そして話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はこの国……つまり日本神話の神です。月読と素戔嗚もですけどね。

 

 そして今回、会談には私達が参加できるように零に用意して貰ったのです。

 

 私はこの日本の主神として、太古よりずっとこの国を守ってきました。我等は巫女を通じ、人に言葉を伝え、時に力を……奇跡を与えました。そして人々は我等に感謝し、畏れ、信仰する。

 

 我等はそうして、これまで信仰を得てきました。しかし近代になり、科学という力を手にした人は神への感謝や畏れを忘れていきました。信仰は我等にとって必要不可欠なものですから、何とかしなければなりません。

 

 しかし我等は他の神話体系とは異なり常に巫女を通し人を導いてきました。それもより神秘を神秘たらしめる為に必要だったのです。もし神が直ぐ傍に居る様な身近な存在だと思われれば、神秘性がなくなりますから。

 

 ですが……この所、天使や悪魔などの存在が常にこの国に我等の許可なく活動しています。そうなれば我等への信仰もまた減る事でしょう。

 

 それを解決する為にも、各勢力との話し合いの場が必要であると考えたのです。そして我が子が偶々機会を見つけてくれたので、参加する事にしたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、その様な感じですね」

 

 

「まぁ難しい話はこの辺でいいだろう、姉上。それよりもだ……零、久しぶりに飲もうぜ」

 

 痺れを切らしたように、素戔嗚が酒瓶を持ちながら零に近付いた。

 

 

「叔父上……まだ朝なんですけど」

 

 

「そうですよ、素戔嗚………」

 

 天照がそう言うと、素戔嗚は渋々酒瓶を仕舞った。

 

 

「それよりも私は皆さんと話がしたいです」

 

 天照がそう言うと、月読が何処からともなく大量の分厚い本を持ってきた。零はそれを見ると、血の気がさっと引いていく。それの本はどうやらアルバムの様で『零の成長アルバム』と書いてあった。

 

 

「可愛い甥っ子の話も踏まえてな。これは『零のアルバム』だ。これは1~16巻、0歳~15歳までのだ」

 

 その日は、零の恥ずかしい黒歴史を暴露され本人は疲れたのは言うまでもない。




・零の成長アルバム

監督:天照

撮影:月読

編集:素戔嗚

神の力で創られた、零のアルバム。写真の筈なのに、動画の様に動く。

1冊で1年分が収められており、何冊あるのかは零本人にも不明であるが、零にとっては恥ずかしい過去の集大成である為、何とかして封印してしまいたいと思っている。


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EP27 早朝の白龍皇

 ~駒王学園 正門前~

 

 零はアーシアと白音と共に登校していると、途中で一誠に会った。

 

 

「うぃす!レイ!」

 

 

「おはよう………一誠(変態)

 

 

「おい、レイ、今変なこと考えてなかったか?」

 

 

「気の性だ………はぁ、それにしても今日は厄日か?」

 

 零が正門の方を見ると、白音は何かに気付いたのか腰を低くし構えをとる。その視線の先にはくすんだ白い髪の少女が立っていた。

 

 

「やぁ…久し振り」

 

 

「帰れ、頼むから帰ってくれ」

 

 

「ひっど~い、少しはオレの気持ちもくんで欲しいんだけどね……でも、その冷たい態度!ゴミを見る様な眼差し!ぁ~興奮する!(ゾクッゾクッ」

 

 どうやら、一誠の同類(変態)の様だ。

 

 

「なっなんなんだ、この子……っ!?」

 

 一誠が突如、左手を抑え始めた。一誠の左手が紅くなっている。

 

 

「あぁ……自己紹介が未だだったね、オレはヴァーリ。現代の白龍皇だ」

 

 

「白龍皇!?まさかこないだの!!」

 

 

「良かったな一誠、お前と一緒で此奴も変態だ」

 

 

「今度は言葉責め!?もっと罵って!」

 

 

「へっ変態だぁ~!」

 

 ヴァーリが零の言葉に過敏に反応し悶絶していると一誠が動揺のあまりに叫ぶ。

 

 

「お前が言うな。それで何をしに来た?」

 

 零が面倒そうにヴァーリにそう言うと、ヴァーリは表情を戻すと笑みを浮かべる。

 

 

「オレは今すぐにでも殺り合いたいけど………今日はこれを渡しに来たんだよ(どさっ」

 

 ヴァーリは物騒な言葉を漏らすが、横に置いていた巨大な袋を零の前に置いた。

 

 

「アザゼルからだよ」

 

 

「おっそうか………当の本人はどうした?」

 

 

「それが今は、盲腸と胃潰瘍で入院しているよ。何でもストレスが原因らしいけど……あの自由気儘な奴がストレスなんて笑っちゃうよね」

 

 笑いながら言っているヴァーリの言葉に、零も笑いを上げる。そのストレス原因が零なのだが。

 

 

「さて赤龍帝君……油断し過ぎだぞ」

 

 ヴァーリの声で我に帰った一誠は、自分の額にヴァーリの指が当てられていた。

 

 

「はぁ……これがオレのライバルだと思うと困ったものだ、取り敢えずはこの首に当てられている剣を退けて欲しいのだが」

 

 ヴァーリの首には聖魔剣とデュランダルが当てられている。それを構えているのは祐子とゼノヴィアだった。しかし2人の手は震えている。恐らくヴァーリの実力が分かっているが故にだろう。

 

 

「今日は別にそこの赤龍帝君には何もしないさ。ただの顔合わせとアザゼルの用事を済ませにきただけだ、それに今の赤龍帝君では全然物足りないからね」

 

 

「なっなんだと!?」

 

 

「オレが知る限り、君はこの世界で1000~1500の間の強さだな。まぁそれも赤龍帝の籠手(ブースデッド・ギア)の恩恵のおかげ……宿主のスペック的にはもう少し下かな。オレ的には堂々の1位はアイツか、はたまたそこにいる零か、悩みどころだな」

 

 ヴァーリの脳裏にある1つの存在と零が浮かぶ。どちらとも本気で戦った事がないので悩んでいる様だ。

 

 

「まぁいいさ……それよりも兵藤一誠は貴重な存在だから、ちゃんと育ててくれよ。リアス・グレモリー」

 

 ヴァーリがそう言うと、一誠が振り返る。その先にはリアスと朱乃が立っていた。

 

 

「白龍皇……なんのつもり?貴女は堕天使と関わりを持っているなら、悪魔(私達)との必要以上の接触は」

 

 

「おいおい、勘違いして貰っては困る。オレの目的は零に会う事だ、赤龍帝君はそのオマケでしかない。まぁ君達としたらオレが此処にいること自体が困るんだろうけどね」

 

 

「えぇ、可愛いイッセーを傷つけられるのも困るし、私の領土(テリトリー)で暴れられても困るわね……ッ!」

 

 リアスが紅い魔力を纏わせながらそう言った瞬間に、零から睨まれる。どうやら『私の領土(テリトリー)』という言葉に反応した様だ。

 

 

「リアス・グレモリー………本気で消すぞ?それとも悪魔を全滅させてやろうか?(ギンッ」

 

 殺気の籠った目で睨むリアスを睨む零。零が言うと冗談には聞こえないので怖い。

 

 

「ごっごめんなさい………」

 

 

「アハハハハハ、やっぱり君はオレを楽しませてくれるね。まぁいいや、じゃあまたね零」

 

 零とリアスのやり取りを見て笑うと、そのまま去っていった。リアス達は取り敢えずの脅威が去った事でホッと安心する。

 

 

「チッ………まぁいい。今日は見逃してやる、さぁ~て全部あるかな~」

 

 零は舌打ちすると、直ぐに気を取り直しアザゼルに(脅して)用意させた伝説の鉱石やらを確認する。

 

 

「アダマンダイト、オリハルコン、不死鳥の羽、竜の鱗と目玉、大天使の羽、魔法の紐グレイプニール、エリクサー、、黄金10t、ダイヤモンドの原石などなど。まっ揃ってないのもあるがいっか」

 

 そう言うと、零は何時もの様に異空間に仕舞う。

 

 

「ご主人様、なんでそんな物を?」

 

 

「この間、色々と出費が重なったんでな。ちょっと補充をね……その他は俺のコレクションにする(実際、殆どは俺のコレクションだけど)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~駒王学園 2年教室 昼休み~

 

 

「…………はぁ~」

 

 

「どうしたんだ、レイ?」

 

 目の下に隈を作っている零は大きな溜息を吐いていた。そんな零に一誠は声を掛ける。

 

 

「見ての通り疲れてるんだよ……朝はアレだし、家に帰ってからまぁ色々な………はぁ……オーフィスや白音で癒されたい。癒しが欲しい(母様達の前ではどうしても緊張してしまう)」

 

 

「オーフィスってこの間のロリっ娘か、それに白音ちゃんって……お前やっぱりろr『パァン!』ぐびゃぁぁぁぁ!」

 

 零は一誠にデコピンをすると、一誠は開いている窓から外に飛んで行った。モーションは唯のデコピンなのに、零がすると常識では考えられないような音と威力を発揮する。

 

 

「「なにぃ!レイ、やっぱr『『パァン!』』ぎゃぁぁ!」」

 

 松田と元浜も一誠と同じ様にデコピンされると外に飛んで行った。3人は窓から落ちたと言うのに殆ど無傷で、気を失っていた。3人は集まって来た女子達に縛られて何処かに連れて行かれた。

 

 

「零さん、どうかしましたか?」

 

 疲れている零に近付いて、アーシアが声をかける。

 

 

「癒しが欲しいな……と思ってな」

 

 零が疲れている原因、それは勿論、突然やってきた天照達だ。零はどうしても天照達の前では何時もの様な生活ができない。基本的な家事は天照達が行い、学校に行く時は見送られ、家に帰るとアーシア達に黒歴史が語られる。それが繰り返されている。

 

 

「あっ……そう言えば、今日の晩はご馳走なので早く帰って来てほしいとお母様が仰っていました」

 

 

「そうか……飯食おう」

 

 

「そうですね、食べましょう」

 

 何時の間にか白音が来ていた。何故か零の机に他の引っ付けられていて、食事の準備は万端だ。零は鞄の中から重箱を取り出した。

 

 

「わぁ~美味しいです……お母様、お料理お上手ですね」

 

 

「あぁ見えて昔は酷かったんだけどね。とても食えたものじゃなかったよ……でも俺がちゃんとした料理を食べる様になってからは母様も親らしく料理の修行をしたようだ……いやほんと……俺、よく生きてたな。と言っても俺が言ってるのは原初世界の方の母様だけどね」

 

 

「もぐっもぐっ……美味しいです」

 

 3人は食事をしているのだが、クラスの……主に男子生徒や他のクラスの男子生徒からの嫉妬と羨望の籠った視線が零の背中に突き刺さっている。その理由は勿論、零が1年生のマスコット的な白音と2年の癒し的な存在アーシアの2人に囲まれて食事をしているからなのだが、本人は慣れたのか気にしていない様だ。

 

 

 

 

 だがこの時には誰も知らなかった、普段は決して見せない零の心の奥にある深い闇を、それがどれ程深く、禍々しい物を宿しているのかを。




名前:ヴァーリ・ルシファー

性別:女性

容姿:暗い銀色の髪の美少女


 原作とは違い女の子の白龍皇。

 尻好き、ドMと一誠とは違った方向性の変態。エロだけなら一誠といい勝負をしている。

 原作通り、戦い好きではあるが強敵と戦う事が目的である。しかし戦闘中も変態発言をする為、零からは完全に変態のレッテルを張られている。

 現在の目的はグレードレッドと零を倒すことなのだが、グレードレッドは探索中、零は本人に戦う気がないと言う事で不満を抱いている。



神器

白龍皇の翼(ディバイン・ディバイディング)

 10秒ごとに触れた相手の力を半減し自分の物にする。しかし相手の力が大き過ぎると、翼から余分な力を排出しないといけない。


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EP28 公開授業

 ~公開授業当日 2年教室~

 

 この日は、名の通り父兄に授業が公開されている日だ。

 

 教室の後ろには既に保護者達が集まり、ビデオやカメラを構えている。だが普段は落ち着いている零や一誠がいるこの教室はざわついていた。

 

 その原因は煌びやかな着物を着ている天照、月読、素戔嗚だった。そして何故か巫女服を着て零に似たぬいぐるみを抱いているオーフィスだった。

 

 

「はぁ~………もぅやだ」

 

 俯いている零、その表情はともかく暗い。

 

 

「零~着ましたよ~」

 

 

「姉貴!しっかりと記録しろよ!(パシャ!パシャ!」

 

 

「当たり前だ!私を誰だと思っている!零!カメラ目線だ!ほらっ!(REC!REC!」

 

 満面の笑みで手を振る天照、高性能カメラで零を撮り続ける素戔嗚、超高性能ビデオカメラで零の撮影をしている月読。美男美女揃いで、しかも名指しで呼ばれたため、クラスメイトの視線は零に集まる。

 

 

(だから嫌だったんだ!隠してたのに!!何でバレたんだ!!クソッ!さっさとあんなもの(公開授業の案内)処分しておけば良かったぁ!!)

 

 零は後悔していた、あの時に案内の紙を処分していれば此処に天照達がいる事はなかったのだろうと。まぁ常に零の事を見ている三貴子ので、いずれは知られていたのだろう。

 

 

「はっ!………えっとですね。本日は英語の授業ですが、皆さんの手元に在る粘土で自分の想う物を作って下さい。そう言う英会話もあるのです」

 

 英語の先生も3人の神に見惚れていたが、我に帰り授業の内容を生徒達に伝えた。生徒達も授業の方に集中しだした。それぞれ思った物を粘土で作り始めた。

 

 

「はぁ………面倒だが仕方ないな。何にしようかな、ん?」

 

 

「………(じっ~」

 

 横を見ると、巫女服の姿のオーフィスが立っており零の事を見ていた。

 

 

「零、これはなに?」

 

 

「これは粘土と言って………ってなんでお前まで?というか何故にそんな恰好を?」

 

 

「母が我も来いって……この服は母から貰った。後、黒歌も来てる」

 

 

「ぶほぉ?!げほっ!げほっ!……ぜぇぜぇ(あの馬鹿……今、この学園には魔王がいるんだぞ!見つかったらややこしい)」

 

 この学園には、現在リアスの兄であるサーゼクスがいる。もし仮にはぐれ悪魔である黒歌が出会ったら、サーゼクスは魔王として黒歌を討つだろう。そんな事が起きれば

 

 サーゼクスと黒歌が出会う→黒歌が討伐される→零が怒る→悪魔破滅→1人で悪魔を滅ぼした零を危惧した他の勢力が零の討伐の為に協力する→零が全て返り討ちにして世界が滅茶苦茶→世界の滅び

 

 という結末が見える。

 

 

「……白音の所に行ったのか。まぁ……気持ちは分からんでもないが……見つからなければいいんだけど……(まぁ、アレを渡してるから問題はないと思うが)」

 

 

「よいしょっと」

 

 オーフィスは考えている零の膝の上に座った。それを見てアーシアを覗いたクラスメイトは驚いている。

 

 

「フム………取り敢えず何か作ろう」

 

 

『なんと羨ましい!』

 

 

『あの娘は誰なんだろう?』

 

 

『くぅ~羨ましい!!』

 

 

『あの子、可愛い……はぁはぁ』

 

 

 

 クラスメイト達が騒ぎ出す。うるさい、こっちは母様達の事で気が気でないのに。後、最後の奴、こっち来い!まぁいい、取り敢えずこの課題を終わらせる。

 

 零はオーフィスを膝に座らせながら、粘土で何かを作っていく。教師はオーフィスの事を指摘しようとしたが零に睨まれてそのまま立ち尽くしていた。

 

 

「ふぅ……出来た。というか……やりすぎたな」

 

 零が粘土で作り上げたのは、かつて共に戦った鋼鉄の戦士達。大いなる者、冥王、勇気の究極の姿、魔神、歌を歌う戦闘機、黒歴史を抹消したヒゲ、紫色の人造人間等々。

 

 

「零、これ何?」

 

 

「此奴等は俺が昔、一緒に戦った大切な仲間達さ………」

 

 

「なかま………」

 

 オーフィスはジッと零の作った鋼鉄の戦士達を見る。

 

 

「おぉ!かっけぇ!!」

 

 

「細部まで凄い!」

 

 零の作品を見たクラスメイト達が集まってくる。そして騒ぎ始めた、そして何時の間にか零の作品でオークションになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~授業後~

 

 

「はぁ~疲れる………」

 

 疲れた表情で項垂れている零。だがしっかりとオーフィスを肩車している。

 

 

「零、何故疲れた?」

 

 

「肉体的には疲れてないんだが………精神的にな、何時もの何十倍疲れた」

 

 

「我、良く分からない」

 

 

「零、アーシアさん、御疲れ様でした。今日はご馳走にしましょう、勿論零の好物も」

 

 天照がそう言うと、オーフィスの眠たそうな眼が輝いている(様に見える)。

 

 

「母のご馳走……おいしい。楽しみ」

 

 

「分かりました。直ぐ帰りますんで、先に帰って下さい。オーフィスも一緒にな」

 

 

「母……我も手伝う」

 

 オーフィスは零の肩から降りると、とてっとてっと歩いて天照の元に行った。

 

 

「「じゃあ姉上、俺達はこのまま撮影を続けるので」」

 

 月読と素戔嗚は未だ撮影をつもりの様だ。

 

 

「いぇ、御二人も帰って下さい「でっでも」帰って!下さい!いいですね!!」

 

 

「「はっはい……」」

 

 零から放たれる圧力で月読と素戔嗚は渋々であったが了承した。

 

 

「アーシア、お前も母様達と一緒に先に帰ってくれ。この所、悪魔やら堕天使がうろついているからな。母様達と一緒の方が安全だ……俺は黒歌と白音を迎えに行く。魔王やらその関係者がいるからな」

 

 

「分かりました。お母様、私もお手伝いします」

 

 

「えぇ、お願いします、アーシアさん」

 

 零は天照達と別れると、直ぐに1年の教室に向かった。



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EP29 「何とか見つからずに帰宅できた」

 ~駒王学園 廊下~

 

 

 オッス!オラ、零。この学園には強い魔王達がいるんだってな!オラ、ワクワクすっぞ!

 

 じゃなくて俺は天王理 零。地獄の公開授業を終えて、俺は白音と黒歌を迎えに行く為に1年の教室に向かっている。現在、この駒王学園には魔王が2人居る。

 

 授業中に気配を探ってみたら、魔王が2人居た。1人はリアス・グレモリーの兄、サーゼクス・ルシファーだろう。もう1人は恐らく、生徒会長:ソーナ・シトリーの姉、セラフォルー・レヴィアタンだろう。

 

 非情に拙い……何かの手違いでリアス・グレモリーやソーナ・シトリーともそうだが、魔王達と黒歌が出会えば大変な事になる。魔王に遭遇した場合、黒歌だけでなく、白音にまで危害が及ぶだろう。まぁ2人に傷1つでもつけたら、悪魔を滅ぼすけど。

 

 っとこんな事をしている場合じゃねぇ……急いで探さないと。ってなんだ?なんか周りの女子生徒が赤い顔してこっちを見てる。1年では風邪でも流行ってるのか?

 

 

 

「あっ先輩」

 

 

「おっ白音、無事だったか?」

 

 白音が先に俺を見つけてくれた様で、声を掛けてきた。

 

 

「はい?」

 

 

「1つ聞きたいんだけど……黒歌は?」

 

 

「呼んだかにゃ?」

 

 俺が振り返ると、何時もは肌蹴させている着物をちゃんと来た黒歌がいた。どうやら耳も尻尾もちゃんと隠している様だ。魔力も仙力も隠して居る様だし、これなら普通の人間に見えなくもない。

 

 

「全く……お前は…自分の状況を分かってんのか?」

 

 零がそう言ってジト目で黒歌を見ると、黒歌は申し訳なさそうに俯いた。

 

 

「分かってる。私が本来は此処に居ちゃいけないのは……でも白音の晴れ姿をみたくて」

 

 

「姉様、分かってるなら、ビデオを回しながら騒がないで下さい」

 

 どうやら白音も零と同じ様な目にあったらしい。先程の零の様に疲れた様な表情をしている。

 

 

「お前も大変だったんだな……黒歌、俺は別に白音の公開授業に来た事を怒ってるんじゃない。俺も生徒じゃなかったら来たかったくらいだし……けど来るんならせめて俺に一声かけろ。そしたら幾らでも手を貸してやるのに」

 

 

「ほんとかにゃ!?」

 

 

「本当、本当……取り敢えず、早く帰るぞ。魔王達に見つかったらややこしい事になる」

 

 

「「はい」」

 

 零は駒王学園を出る為に、2人を抱えて窓から外に飛び出した。そして地面に着地すると、凄まじい速度で家に向かって駆け出した。

 余談であるが、これほど派手行動をしたにも関わらず、誰の記憶にも残っていなかった。どうやら零が何かしていた様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~旧校舎 ???~

 

『カタッカタッカタッカタッ』

 

 真夜中の旧校舎に響くキーボードを叩く音、それは旧校舎の一番奥の部屋から聞こえてくる。

 

 それが誰なのかは今は分からない。だがその者も抱えていた、誰にも分からぬ苦しみを。

 



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EP30 解かれた封印

 ~旧校舎 ???~

 

 零はリアスに呼び出され、アーシアや白音達と一緒に旧校舎の一番奥の部屋に来ていた。何故かその部屋は封鎖されている。

 

 

「で……なんの用だ?こんな所に呼び出して、詰らん用であったら吹き飛ばすぞ?」

 

 何故か零は目の下に隈を抱えている。疲れているのか、はたまた寝不足なのか分からないが、原因は何となく予想がついていた。

 

 

「あらっ凄い隈ね……何かあったの?」

 

 

「べっ別に……ただ上映会をされただけだ。今回の公開授業と赤ん坊の頃から10歳くらいまでのを上映された……逃げようにもオーフィスと白音が膝に座っていたから逃げれなかったんだ。もぅ……やだ」

 

 昨日、零の家では上映会が開かれた。内容は昼間に撮影した零の授業の様子、それに加え赤ん坊の頃から10歳までの物を上映された。

 

【零の成長日記。0歳~10歳編、日常Ver】

 監督:天照  撮影:月読  編集:素戔嗚 上映時間:5時間

 

 上映したのはテレビではなく、スクリーンとプロジェクターを用いて大々的にだ。

 上映会では天照のご馳走が振る舞われた。そしてアーシア達はそれを見て顔を赤くしながら嬉々としていた。更には天照達からその時の詳細を赤裸々に語られた。

 零は直ぐにでもその場から逃げ出そうとしたが、白音とオーフィスが膝に座っていたので逃げ出す事も出来なかった。

 因みにオーフィスの巫女服と黒歌が撮った白音の授業の様子はちゃんと自分のコレクションにちゃっかりと加えている零であった。

 

 

「そっそう………貴方も大変ね」

 

 リアスが零のその様子を見て、憐れな目で見ている。

 

 

「でっ?今回呼び出したのはなんでだ、俺は早く帰って癒されたいんだが……(なでっなでっ」

 

 零は眠そうな目でリアスを見ながら、アーシアと白音の頭を撫でている。

 

 

「今日は、私のビショップの眷族の封印を解くのよ」

 

 

「あぁ、そうか……それは良かったな。俺には関係ない」

 

 

「実は、その子は少し問題を抱えている子なのよ。そこで貴方にも協力してほしいのよ、勿論ちゃんと報酬も出すわ」

 

 

「まぁそれなら考えなくもない……っておい、勝手に話しを進めるな」

 

 零が言い終わる前にリアスが封鎖されている部屋に向かって手を翳すと、部屋の扉に紅い魔方陣が浮かびあがり砕けて散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~部屋の中~

 

 

『いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 

「なんだ?」

 

 一同が部屋に入ると、部屋の中央にある棺桶の中から悲鳴が聞こえてきた。

 

 

「封印が解かれたのですよ」

 

 朱乃がそう言いながら棺桶の蓋を開けると、そこには金髪の少女がいた。

 

 

「いやぁ~」

 

 

「御機嫌よう、ギャスパー。魔王様の命により今日から貴方の封印を解くわ」

 

 リアスがそう言うと、少女は涙を流していた。

 

 

「お外嫌いですぅ~、怖い~」

 

 どうやら外に出る事が怖い様だ。泣きながら首を横に振っている。

 

 

「うおぉぉぉぉぉ!金髪美少女!」

 

 一誠は少女を見て興奮し叫ぶ。零はそれを見て呆れており、頭を抱えている。

 

 

「一誠……お前という奴は……本当に……はぁ。それで此奴は?」

 

 

「この子はギャスパー・ヴラディ。私の眷族悪魔よ、元は吸血鬼……ハーフヴァンパイアよ」

 

 零はそれを聞いた瞬間に面倒そうな表情から真面目な表情に変わった。

 

 

「へぇ~吸血鬼なんですか……取り敢えず宜しくな!ギャスパーちゃん!」

 

 一誠がギャスパーに手を伸ばした瞬間、辺りの全てが停止した。

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉ…………時間停止能力か。珍しい」

 

 

「なっなんで止まらないんですかぁ~!?」

 

 ギャスパーの目が変化している。これはギャスパーの持つ神器【停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)】。視界に入ったものの時間を停止する事ができる魔眼の1つだ。

 この眼の力の影響を受けないのは、神や魔王クラスの力や特別な力を持つ者。また時間停止の力を持つ者だけだ。

 

 

「まぁ俺にも同じ様な力があるし、こういうのは慣れてるからな……」

 

 

「周りの物が止まってます」

 

 

「わぁ~凄いです」

 

 どうやらこの中で動けるのは、零、白音、アーシアだけの様だ。零は神の力を持っているので分からなくないが、白音とアーシアは何故動けるのだろうか?

 

 

「なんでそこの2人は動けるんですか!?って、その2人の胸の所、なんか光ってますぅ?!しかも聖なる力を感じますぅ、肌がビリッビリッしますぅ!怖いですぅ!」

 

 アーシアと白音の胸の所が何故か光っている。

 

 

「これって零さんに頂いた十字架です」

 

 

「ライが光ってます」

 

 どうやら光の元はアーシアの十字架と白音のライガーゼロの様だ。この2つは元々は零の物であるため、零の神としての力を宿している。

 

 

「どうやらそいつ等がお前達を護っている様だな………さてと、ギャスパーとか言ったな。取り敢えず時間停止(これ)解除しないと」

 

 

「あっはい………あの、貴方達は誰ですか?」

 

 

「私は塔城白音。猫又です」

 

 

「私はアーシア・アルジェントと申します。人間です」

 

 

「俺は天王理 零」

 

 それぞれが自己紹介すると、ギャスパーは驚いた表情をしている。

 

 

「そそそそれってででで【伝説の戦士】様の名前じゃないですか!?」

 

 

「なんか、お前等の間では俺はそう呼ばれているらしいな」

 

 

「ごっご本人様ですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 取り敢えず、ギャスパーを落ち着かせて時間停止を解除させた零はギャスパーの前に腰を下ろした。

 

 

「ふぅ………ギャスパー、まずはお前の話を聞かせてくれ」

 

 

「この子の事はわたしg「黙れ、俺は此奴と話してる。邪魔をするな」ッ!?」

 

 零は何故か何時になく真剣な表情になっている。そしてその紅と金の目が鈍い光を放っている。

 

 

「おっおい、レイ、そんないいかt……!?(ビクッ」

 

 零から放たれているのは無言の圧力、怒っている訳ではない。ただ純粋に力で黙らせようとしている。

 

 

「……少し、2人で話がしたい。お前等は部室に行っていろ」

 

 

「………分かったわ。行きましょう、皆……天王理、その子に変な事をしないでね」

 

 リアスはそう言うと、他の皆を連れ出て行った。アーシア達も零から何かを感じ取り、大人しくこの場を離れた。

 

 

「あっあの……どうして?」

 

 

「少しお前と話をしたかっただけだ。他が……特にリアス・グレモリーがいたら、ゆっくり話もできないだろうからな」

 

 零はそう言うと、眼の輝きが収まった。

 

 

 

 

 

 そしてこれから話すのは、2つの血を持つ者達の話。

 

 1人は巨大な力を宿し望まれ、祝福された存在。

 

 1人はその身に宿す禍々しい力で、望まれながらも不吉を齎す存在。

 

 2人は端から見れば異なった存在に見える。しかしその者達は同じ闇を抱えていた。




今回、ギャスパーが登場しました。

ギャスパーくん?

ギャスパーちゃん?

次回は零の過去についても少し触れます。


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EP31 とある赤子の話

 ~駒王学園 旧校舎 ギャスパーの部屋~

 

 この部屋の主、ギャスパーは、零と二人きりになると、部屋の端にあった段ボール箱に入っていた。そしてビクッビクッと震えながら零を見ている。

 零はそんなギャスパーを見て、段ボール箱の横に腰を降ろした。

 

 

「そう怖がるな、俺はお前をどうこうするつもりはない。ギャスパー、お前は吸血鬼と人間のハーフと聞いたが本当か?」

 

 零は優しい口調でギャスパーにそう尋ねた。何故かその口調も、放つ雰囲気も優し過ぎるのが不思議だ。リアス達と話す時は何処か棘のある話し方が多いが、今はまるで白音達と話す時の様な雰囲気で話している。

 

 

「はっはい……そうです」

 

 ギャスパーは悲しそうに肯定的する。それを見た零も目を細めている。

 

 

「1つ聞きたい。ギャスパー、お前はこれからどうしたい?」

 

 

「これから?」

 

 

「そうだ。これからどうしたいのかを聞きたい」

 

 ギャスパーは「これから」という言葉にかすかに反応した。しかし直ぐに震え始め、入っている段ボールに潜り込み蓋を閉めた。

 

 

「……………フム。そうだ、ギャスパー、1つ昔話をしてやろう」

 

 ギャスパーの様子を見た零は急ぐ必要はないと思ったのか、零は話しを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昔々、ある所に世界一偉く、美しく、強く優しい女神が居ました。その女神は神々の中でも頂点に立つ存在でした。

 

 その女神は世界を見守りながら日々を過ごしておりました。そんな日々の中で女神は暇を持て余したのか、地上に出ました。

 

 女神にとって世界に生きとし生ける者を愛しておりました。しかしそんな中でも自分達に似せて生み出した「人間」という存在が気になっていました。

 

 何の力もなく、儚い存在。なのに毎日を楽しく、嬉しそうに過ごしている人間達。自分()を崇める人間達が何故、そんなに楽しそうなのかを、満足した様子で過ごしているのかが気になっていた。

 

 万能の力を持っている自分()達とは違う。なのに何故幸せそうなのかと……。

 

 そんな時に、1人の捨てられた赤ん坊を見つけました。その時女神は思いました。

 

【何故、こんなにも儚いのにお前はそんなにも笑っているのだ?】

 

 女神は自分に笑いかける赤ん坊を抱き上げると、その時に感じた。

 

【あぁ……この弱く儚い。少しの力で死んでしまうのに………なのにこんなにも重く、暖かい】

 

 そして女神はとてつもない事を考えた。この子供を育ててみようと。

 

 

 

 

 そんなこんなで女神は子育てを始めた。人間の子供を育てるのに神の力を使わずに全て自分の手で育てる事にしました。

 

 というものの初めての事ばかりで子供の命が危機にさらされた事も数知れず。

 

『今考えると良く生きてたな俺(ぼそっ』

 

 コホン………そんなこんなで赤ん坊は成長していきました。その中で女神にも予想外な事が起きた。それは本当に赤ん坊を愛したという事だ。

 

 女神は育て始めた赤子を本気で愛してしまった事は誰にも予想できなかった。

 

 しかし女神に溺愛された赤ん坊は生まれつき弱かったため、弱り始めた。それを見た女神は何とか助けようとするがそれはできなかった。神の掟によって……。

 

 本来、神は地上に生きる個を愛してはならない。世界を、生きとし生ける者達を平等に愛さなければならないからだ。女神はその掟を破ってでも赤ん坊を助けようとする。だが周りの神もまたそれを見過ごす訳にはいかず必死で止めた。

 

【何が掟だ……掟でこの子が救えるのか?答えは否。この子を救えるのは母である私だけ……人間だから救ってはならないのか……ならこの子を神にすれば……私の本当の子にすればいい】

 

 突拍子もない女神の考えにより、赤ん坊を自分の胎に宿しました。そうして赤ん坊は女神の子供として再び生を受けました。

 

 本当の母となった女神は、己が子供であるならば他の神も文句が言えない。それに最高神の子供を蔑ろにする神は自分の力で排除すると決めていた。

 

【この子は私の子だ………これで誰にも文句は言わせない。文句を言う者は私の力で排除する、この子は私が守る。愛しい私の子……これから私が本当の母ですよ】

 

『でも本当の子供になったからこそ溺愛され過ぎて死にそうになった事もあったな(ぼそっ』

 

 

 赤ん坊は女神の子供とは言え、元は人間故に女神の妹・弟以外の神々から忌み嫌われていた。

 

 言葉の分からぬ内はそれでよかった。しかし子供は成長し言葉を理解する。

 

 

【汚らわしい子が】

 

 

【忌み子めが……近付くな】

 

 

【何故あの方はこの様な忌々しい存在を】

 

 

【この様な者、即刻消すべきだ】

 

 

【滅多な事を言うな。あの方々に聞かれたら消されるのは我等ぞ】

 

 

【死ね、神を堕落させた忌み子が!】

 

 

 女神やその弟妹神にとって大切な存在であっても神々にとって子供は忌々しい存在でしかなかったのでした。

 

 しかし子供は母や叔父達に護られ、成長し幾多の世界を旅し仲間達と絆を紡ぐのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「めでたし、めでたし」

 

 

「えっ!?そこで終わるんですか!?」

 

 

「まぁ間の事は……長くなるから省いた」

 

 突然話が終わった事に驚いたギャスパー。しかし零は長くなるからという事で話を終わらせた。

 

 

「あっあの……その子供はそんなに嫌われて何で僕みたいにならなかったんですか?」

 

 

「その子供には護ってくれる母がいた、叔父がいた、叔母がいた。………引き籠らなかった訳じゃないよ。嫌な時は布団から出なかった事もあったし、怒り狂って暴れた事も在ったよ。そんな時は母様や叔父上達が傍にいてくれた、優しく抱き締めてくれた。だから何が在っても諦めなかったんだ」

 

 

「でも僕には誰もいないです……僕は……僕は」

 

 

「いいや……そんな事はないさ。確かにお前は色々な事が重なって今の境遇になったかもしれない。けどお前が居てくれて喜んだ人もいるよ」

 

 

「そんな人……そんな人、僕にはいないです……」

 

 ギャスパーは涙を流し始める。零はそれを見ると、ギャスパーの頭に手を置いた。

 

 

「居るよ……お前の眼には見えないけど、確かにお前の傍にいる人がいるよ」

 

 

「ぅ……ぅう……そんな人い……な……すぅ……」

 

 ギャスパーはそのまま眠ってしまった。零は立ち上がると、ギャスパーを抱え部屋の中央にある棺桶型のベッドに寝かせた。

 

 

「お休み……ギャスパー」



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EP32 異なる者の闇

 ~ギャスパーの部屋の前~

 

 零によって外に出されたオカ研メンバーとアーシア、白音。

 皆が外に出てはや一時間が経とうとしていた。リアスはギャスパーの事を心配し、扉を見つめている。零がギャスパーに何かするとも思えないが、もしギャスパーの身に何かあれば勝てない相手にあろうがリアスは零に襲い掛かるだろう。

 リアス・グレモリーの眷族に対する深い愛。それがグレモリー眷族の一番の長所であり、弱点でもあることにリアス本人も眷族達も気付いていない。

 

 

 《ガチャ……キィー》

 

 扉が音を立てて開くと零が出てくる。

 

 

「話は終わったかしら天王理?」

 

 

「あぁ……ギャスパーなら今は眠っている。起こしてやるなよ、折角幸せな夢を見たいるんだ」

 

 

「夢?……まるでその夢の内容を知ってるみたいな言い方ね」

 

 

「だとしたら?」

 

 それを聞いた瞬間にリアスから魔力が溢れる。どうやら零がギャスパーに何かしたと思った様だ。

 

 

「あの子に何をしたの……答えなさい、返答次第では私は貴方を許さない」

 

 リアスは殺気の籠った目で零を睨み付ける。だが実力は明らかに目に見えている故にリアスの身体は震えていた。だが必死にそれを隠そうとしている。

 

 

「震えているわりには、大した覇気だ。まぁそう睨むな。俺はただ、アイツに必要な事をしているに過ぎない…………」

 

 

「必要な事?まるでギャスパーの事を知っている様な口振りね。主である私を差し置いて何をしようと言うのかしら?」

 

 

「クククッ……アハハハハ」

 

 それを聞いた瞬間、零は何の前触れもなく笑い始める。

 

 

「ククク………あぁ……俺以上にアイツやそこにいる姫島朱乃の事を理解している奴はそう居ないぞ」

 

 零は突然、朱乃の名前まで上げる。それを聞いて朱乃自身も驚いている。だかそんなことを言われてリアスも黙ってはいられない。

 

 

「ふざけないで!貴方に朱乃やギャスパーの何が分かるって言うのよ!?」

 

 

「そうだぜ、レイ。一体どうしちまったんだ?」

 

 

「何か何時もと違うね、天王理くん」

 

 零の言葉と雰囲気に違和感を感じた一誠と裕子もリアスの後に発言した。

 

 

「分かるさ…………俺はお前以上にギャスパー達の苦しみを、痛みを、寂しさを、辛さを理解出来るんだよ。お前と違ってな純血悪魔…………貴様に理解出来るか?」

 

 混血と言うだけで吸血鬼と人間(どちら)の存在からも忌嫌われる苦しみが!

 

 混血故に堕天使と人間(どちら)にも蔑まれる辛さが!哀しみが!

 

 混血と言うだけで【化物】【穢れた存在】【忌子】と呼ばれる心の痛みが!

 

 混血故に己を理解してくれる者が少なく、最悪は誰も居ないと言う孤独が!

 

 異なる2つの血を宿す故に強大で、他と違う力を宿してしまい、1つ間違えば世界すらも危険に晒すかも知れないという力に対する恐怖が!

 

 誰にも蔑まれる事もなく、愛されながら生きてきた貴様にこの苦しみが!哀しみが!孤独が!理解出来るなどと言うな!

 

 純血である貴様には一生理解できない!ギャスパー達の受けし屈辱は!苦しみは!哀しみは!怒りは!孤独は!貴様が考えるほど、軽いものではない!

 

 

「はぁはぁ…………すぅ………ふぅ………帰るぞ、2人とも」

 

 零は自分の中にあった何かを叫ぶ事で吐き出した。そして直ぐに荒れた息を整えると、白音とアーシアに帰ると言ってそのまま、歩いてその場を去ろうとする。

 

 

「絶対にギャスパーを起こすなよ。アイツは世界で一番アイツを愛している人と会ってるんだ。もし無理にアイツを起こす様な真似をすれば…………貴様はギャスパーの傍にいる資格などないと判断し、ギャスパーは俺が連れていく(ギラッ」

 

 零が振り返りそう言うと、力を発現させる時と同じように輝いていた。

 そして再び歩き出し去っていく。アーシアと白音も驚いていたが直ぐに零の後を追った。

 残されたリアス達は、零の言葉に含まれていた言葉にできない何を感じ、叫んでいる時の零の姿を見て何も言えなかった。

 

 怒り、哀しみ、絶望、苦しみ、孤独と言った負を含み今にも泣きそうな瞳、苦しみながら足掻く子供の様な顔が皆の目に焼き付いていた。



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EP33 ギャスパーの闇

 ~真っ暗な闇の中~

 

 ボクは生まれついて呪われている。だから生まれちゃいけなかったんだ。

 

 なんでボクはこんな力(邪眼)を持って生まれたんだろう?

 

 父様も使用人の皆も僕は呪われていると言った。他の吸血鬼達(みんな)もボクを忌み嫌っていた。ボクの母さんが人間だから、ボクが吸血鬼と人間の子供だから。

 

 人間には停止邪眼(この眼)の性で気味悪がられた。吸血鬼からは混血だから忌み嫌われた。ボクの居場所なんて何処にもない。

 

 でもそんな時にリアス部長に出会った。リアス部長はボクに居場所をくれた。でもボクは臆病だから部屋から出る事ができなかった。

 

 ちょっとした事で脅えて力が暴走しちゃう。それで多くの人に迷惑を掛けてしまう。だからボクは生まれちゃいけなかったんだ。

 

 このままずっと眠っていたい。そうすれば嫌な事も、辛い目に合わなくて済む。

 

 

 

 

 

【全くこの宿主は……この俺を宿していながらそんな弱気なんて何を考えてるんだ?】

 

 黒い人の形をした闇がボクに話し掛けてきた。

 

 

【本来なら俺はまだ寝てる筈なんだったけどな。あの次元の違う奴の力の性か?取り敢えず少し俺の好き勝手にやらして貰うぜ】

 

 黒い闇がボクの身体を包んでいく。段々と意識が遠のいていく。

 

 

『テメェの出番のもっと後だ!』

 

 突然、現れた「伝説の戦士:天王理 零」が現れて闇を素手で捕まえる。

 

 

【なんでお前がギャスパーの精神世界(此処)にいるんだよ!?っていうか何者だよ?!】

 

 

「うるさい!黙れ!感動の再会なんだ!お前はお呼びじゃないんだよ!さっさとギャスパーから離れろ、さもないと………殴るぞ(消すぞ)?」

 

 

【えっ?!なに、俺だけ?俺だけなのか!殴るぞじゃなくて消すぞって聞こえたぞ!?】

 

 

『もう1回言うぞ。うるさい、黙れ。次は本当に消すぞ?』

 

 零は闇を掴んでいる手から聖なる光を出し始めた。闇は光によって浄化され始める。

 

 

【えっ……あっ……はい、ごめんなさい。黙ります……黙りますから!その光、止めてぇ!!痛い!その浄化の光!痛い!痛いから!マジで消えそう……本当に消えそうなんですけど?】

 

 

『大人しくする?』

 

 

【しっします。しますからその光、止めてぇ~】

 

 

『大人しく寝ろ、もし次に出てきたら………消すよ?』

 

 

【はっはい!寝ます!直ぐに寝ます!俺、寝るの得意なんです!】

 

 人の形をした闇は零に敬礼すると直ぐに消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

『ふぅ……俺の分霊を入れた際に余計な奴を起こしちまったか』

 

 

「なっなんなんですか?!」

 

 

『あっ……あぁ、此処はお前の精神世界だ。此処は夢って所かな』

 

 零はそう説明するとギャスパーの手を掴み、歩き出した。

 

 

「夢なのになんで貴方がいるんですか!?しかもなんか半透明です!」

 

 

『俺は魂の一部をお前の中に宿したんでこうやって此処に居れる訳だ。って言っても役目が終われば直ぐに本体に戻るけど』

 

 どうやら零によると、自分の魂の一部をギャスパーに入れたらしい。それはとある目的の為だとか。

 

 

『さてこの先だな……』

 

 零は真っ暗な闇の中で一筋の光を見つけた。

 

 

『ギャスパー、あの光に向かって歩いていけ。あそこでお前を待っている人がいる』

 

 零はそう言うとギャスパーの手を離し、光の方向を指差した。

 

 

「ボクを待っている人?」

 

 

『そう……この世界で一番、お前の事を知っている人だ。俺の役目は此処まで……あっそうだ。これを渡しておこう《魔眼ごろ~し~》』

 

 何処からともなく眼鏡を取り出した。それをギャスパーに渡した。

 

 

『それを掛ければお前の力を一時的に封印する事ができる。大丈夫だ、現実世界でも消えないから……ほらっ……早く行け』

 

 零はそう言うと優しくギャスパーの背を押した。ギャスパーはゆっくりと光の方に向かって歩いていった。そしてギャスパーは光の中へ消え、辺りは光に満たれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さて………これで俺の役目も終わりか……ギャスパー。俺の様にはなるな……お前は未だ闇に身を堕とさなくてすむんだ』

 

 零はそう言うと、光となってその場から消えた。



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EP34 偉大なる母の愛

 ~???~

 

 ボクは零さんが言った通りに光の向かって歩いてきたんだけど………此処は何処かな?

 

 大きなお屋敷………アレ?これってボクの実家?

 

 ギャスパーはその屋敷に見覚えがあった。この屋敷はどうやらギャスパーの実家の様だ。

 

 

 

 

「あらっ……やっと来たんですねギャスパー」

 

 

「えっ?」

 

 ギャスパーは声がした方向を見てみると、金髪の女性が座っていた。

 

 

「だっ誰ですか?」

 

 

「私?私はアスティアと申します……紅茶はいかが?」

 

 女性は優しい笑みを浮かべて、ギャスパーにそう聞いた。ギャスパーは何故か見知らぬ女性に声を掛けられ安心していた。夢の中とは言え普通ならいきなり現れた見知らぬ赤の他人に警戒するのが普通だ。なのにギャスパーは彼女を警戒しなかった。

 

 

「はっはい……いただきます(なんでだろう?この女の人、知っている様な気がする)」

 

 

「フフフ、どうぞ(カチャ」

 

 アスティアと名乗った女性はギャスパーに紅茶を差し出した。

 

 

「頂きます……あっ美味しい……夢なのに?」

 

 

「此処はギャスパーの夢であり、彼の神によって創られた世界でもあります」

 

 

「彼の神?……もしかして天王理先輩の事ですか?」

 

 その応えにアスティアは笑みで返事を返す。

 

 

「あの方が与えてくれた一夜きりの奇跡という所でしょう。私はあの方のお蔭で貴方とこうして会う事ができました」

 

 アスティアは嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

 

「貴方は何を悩んでいるのですか?」

 

 アスティアは突然、ギャスパーにそう尋ねた。ギャスパー本人はそれを聞くとビクッと身体を反応させる。

 

 

「ぼっボクは弱いです………ボクは呪われています。僕は産まれてきちゃいけなかったんです、こんな忌々しい力を持つボクはなんかが産まれきたからボクのお母さんも、皆も不幸に」

 

 ギャスパーは涙を流し始める。それを見たアスティアは椅子から立ち上がると、ギャスパーを抱きしめた。

 

 

「ボクが産まれた事で誰も……誰も幸せにならなかった。ボクが産まれた事で皆が不幸になった……父様も……他の吸血鬼(みんな)もボクが嫌いで……嫌いで……うわぁぁぁっぁぁぁぁ!」

 

 ギャスパーは子供の様に泣き出した。アスティアは優しく抱き締め、ギャスパーの頭を撫でた。

 

 

「泣いたっていい……転んだっていい……そしたらまた立ち上がればいいんです」

 

 アスティアは優しくそう言うと、更に続けた。

 

 

「ひっく……うぐっ……ぐすっ…………」

 

 

「ギャスパー、貴方は自分は居て皆が不幸になったと言いました。けどそれは少し違いますよ」

 

 

「えっ?」

 

 ギャスパーはアスティアの言葉に驚いた。自分の知る限り誰かを不幸にした事しかないからだ。

 

 

「少なくとも私は貴方が居て嬉しかった、幸せでしたよ。私の此処に宿ってくれて、毎日成長して、一生懸命に私のお腹を蹴って………」

 

 

「えっなっ……何を言ってるんですか?……貴女は……もしかして」

 

 

「でも貴方に宿ってしまった存在によって私は狂い、貴方を残して逝ってしまった。ごめんなさい………あの人だって貴方ができた事が分かったら喜んでくれましたよ。でもあの人も当主として一族を守る為に貴方の事を護る事ができなかったの……許して上げてね」

 

 

「そっそんなこと……父様は一度だって……」

 

 アスティアは首を横に振って更に続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 いいえ。あの人は貴方ができて、一番喜んだのはあの人ですもの。

 

 私が人間と分かっていて、私を愛してくれた。何があっても護ると言ってくれましたよ。それに貴方がお腹にいる時には毎日、貴方に喋りかけていたんですよ。それはもうデレデレな顔で。

 

 でもあの人は一人の男である前に当主。貴方に宿ったものは一族に不幸を齎すと思ったあの人は、貴方を護る為にも幽閉するしかなかった。周りに害さない為にも、害されない為にも貴方を幽閉するしかなった。あの人にはそれしか思いつかなかったんですね。

 

 それが貴方を苦しめる事になっても、貴方を護る為にはそれしかなかったのは言うまでもありませんけども……。

 

 せめて私が生きていれば少しは変わっていたと思うのですが………私が弱かったために貴方を残してしまった。けど私はずっと貴方の傍にいましたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 ギャスパーの父、自分に宿っていた、ギャスパーを知る女性。そんな人物はこの世で1人しかいない。

 

 

「おか………あ……さん……?」

 

 

「はい………ぁあ……もう時間が来たのですね。楽しい時間とは早いものですね」

 

 ギャスパーの母、アスティアは光に包まれる。そして段々と姿が薄くなっている。

 

 

「ギャスパー……私を母にしてくれてありがとう。私達の元に産まれてきてくれてありがとう。例え弱くたっていい、泣いてもいい、貴方が元気に生きていてくれれば。ギャスパー、これだけは覚えておいて下さい。例え姿が見えなくとも私はずっと貴方を見守っています。愛していますよ、私の愛しい子、ギャスパー」

 

 アスティアはそう言ってギャスパーを抱き締めると光と共に消えた。

 

 

「おかあさん…………ボクは……ボクは」

 

 ギャスパーは知った。

 自分は望まれて産まれた事を、愛されていた事を。

 幾つもの偶然がかさなり死んでしまった母は、自分を怨んでいない事を、ずっと見守っていてくれた事を。

 他の誰でもないこの世界で自分を拒絶せずに「愛している」と言ってくれた母の温もりを、愛を。

 

 ギャスパーは母の光に包まれそこで意識を手放した。

 

 

 ~ギャスパーside out~

 

 

 

 

 

 

 

 ~深夜 天王理家~

 

 零は庭にいた。そして星空を見上げ涙を流していた。

 その涙の理由はつい先程戻ってきたギャスパーに入れていた魂の一部の記憶を見たからだ。ギャスパーとその母アスティアの会話を見ていた。

 

 

「この俺でさえも敵わない……偉大なる母の愛か。昔を思い出すな……」

 

 

「どうかしましたか零?」

 

 零が振り返ると、天照がいた。

 

 

「いぇ……少し昔の事を思い出していました。子供の時の事を………あの時、母様や叔父上達がいなければ俺は完全に闇に堕ちていたでしょう」

 

 

「アレからかなり時が経ちましたね………昔の零は可愛かったですね~『ははしゃま~、らぁ~いすき』『えっとね、僕ね、大きくなったら母様をお嫁さんにするの』「うわぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!」あらあらあまり五月蠅いとご近所の皆様にご迷惑ですよ」

 

 天照が袖の中から取り出したのはボイスレコーダー。中身は零の恥ずかしい過去の音声だった。

 

 

「………零、貴方は幸せでしたか?」

 

 天照は突然に零にそう聞いた。その表情には影がかかる。零はそれを見て、その場に膝を付き天照の両手を掴む。

 

 

「はい、俺は母様の息子で幸せですよ。確かに辛いことも、苦しいことも一杯ありました。けど俺は母様の子供で良かったと思っています。母様が俺を貴方の本当の子供にしてくれたお蔭で、俺は多くの事を知れた、仲間達と出会い絆を紡ぐ事ができた。それで十分ですよ」

 

 

「零………ありがとう。私の愛しい息子(なでっなでっ」

 

 

「あっあの……この年齢になって頭を撫でられるのは恥ずかしいのですが」

 

 

「あらあら、どんなに貴方が生きても貴方は私の可愛い息子ですよ」

 

 零は恥ずかしそうに顔を赤くしている。この世界で最強の力を持つ伝説の戦士もどうやら母親には弱い様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 俺にとって母様は絶対の存在。己が腹を痛めて俺を産んでくれた存在。元は人間とは言え俺は捨てられた存在。小さい頃から周りの神の子供達にその事で馬鹿にされた事も在る。何故捨てられたのかは分からないが、母様はその理由を知っているらしい。小さい頃にそれを聞いたら母様は珍しく怒っていた。

 

 

『貴方の母は私だけです。他の言う者の事など気にしてはいけません』

 

 

 笑みを浮かべて俺にそう言った母様だったが、眼が笑っていなかったな。次の日には顔を青ざめさせた子供の親神達が必死に母様や叔父上達に謝っていたな。因みに母様は目の笑ってないドス黒い笑み、叔父上と伯母上は邪神も裸足で逃げ出す程の憤怒の顔だったな。

 俺は人と神の身体と魂を持つ。故に他の神々に忌み嫌われた、だが母様や叔父上達が守ってくれた。だから俺は決めた。俺の様な子供達の味方になると決めた。例えこの身が血で染まったとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界に居る者達は知る。

 

 例え人智を越える悪魔や天使達であっても、ドラゴンであっても決して怒らせてはならぬ存在がいる事を。

 

 その紅き姿は全てを恐怖させる。その雄叫びは全てを震え上がらせる。

 

 怒り狂うそれを止める事はできない。例え神であっても、邪神であっても、魔王であっても絶対に止める事はできない。彼の者の前では全てが等しく無力であることを。




・キャラ紹介

名前:アスティア

種族:人間

年齢:不明

 亡くなったギャスパーの母親。

 吸血鬼であるギャスパーの父親と愛し合い結ばれたが、ギャスパーを産むと同時にギャスパーに宿る存在により精神が狂い死んでしまった。

 死んでからは魂だけとなってもギャスパーの傍に居続けた。自分が弱いせいでギャスパーを苦しむ事になっていると死んだ事を後悔している。

 しかし今回は零の協力の元、ギャスパーの精神に干渉する事ができた。そしてギャスパーに「貴方は望まれて生まれた」と伝えた。

 零は魂だけの彼女の姿が見えていた様で、彼女がギャスパーの母親である事も見抜いていた様だ。




ギャスパーの父

名前:不明

種族:吸血鬼

年齢:不明


 ギャスパーの父。

 純血を重んじる吸血鬼の一族である筈だが、何故か人間であるアスティアを愛した。アスティアの為なら本気で家を捨てようともしたらしいが、当主であったため、そう言う訳にもいかず周りの者達が止めた。

 ギャスパーが出来て、一番喜んでいたが、産まれた時にギャスパーに宿る危険な存在に気付いた。ギャスパーを幽閉したのもギャスパーの身を他の者達から守る為であったらしい。











今回の話はギャスパーと母親の話でした。

母親と父親の設定はオリジナルの設定です。


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EP35 小さい零の日常

 ~早朝 天王理家 リビング~

 

 

 ギャスパーの一件の翌日、天照達は何時もの様に朝食を作っておりアーシア達も起きて来てその手伝いをしていた。

 何時もと変わらない日常であった。

 

 

「おはよぅ……」

 

 

「おはよう」

 

 

「零さん、オーフィスちゃん、おはようございm……」

 

 

「「ご主人様、オーフィス、おはようg………」」

 

 起きてきた零とオーフィスに朝の挨拶をする為に振り返ったアーシア、黒歌、白音だった。しかし予想外の現象が起きていた事に驚愕していた。

 

 

「おはよう、オーフィスちゃん、零………あらあら」

 

 

「「おはy……ぉお!!」」

 

 天照達も挨拶する為にオーフィスと零の方を見ると、3人の神は少し驚いた様だが笑顔になっている。

 全員の目の前にいたのは何時もと変わらぬ眠たそうな眼をしているオーフィスと、オーフィスに抱えられた銀髪、紅と金の目を持つ小さい子供だった。年齢で言えば2~3歳くらいで、頬っぺたはぷにぷにしている。100人に聞けば100人が可愛いと言うだろう。

 

 

「零、小さくなってた。小さい零、可愛い(なでなで」

 

 

「ぜっ零さん?」

 

 

「おはようアーシア。オーフィス、撫でるのは止めなさい」

 

 

「ごっご主人様……ぷにっぷにっです(ツンツン」

 

 オーフィスは何時もと変わらぬ態度で小さい零を撫でている、無表情だが何処か嬉しそうだ。白音は困惑しているが、零の頬っぺたを突いている。

 

 

「はぁはぁ……可愛い……にゃ(だくっだくっ」

 

 黒歌は小さい零を見て息を荒げており、鼻血を出している。もし街中でやっていたら完全な変態である。

 

 

「なんでそんな可愛い姿になったんですか?」

 

 

「俺も男だから可愛いって言われても全然嬉しくないんだけど………朝起きたらこんな姿になってた。母様でしょう、これをしたの?」

 

 零は天照にそう言った。完全に天照の仕業だと言い切った。

 

 

「あらっなんで私の性だと思ったのですか?証拠もなしに母を疑うなんて、私は哀しいですよ、およよ」

 

 

「母様の加護を無視して俺に干渉できる存在なんていません、少なくとも俺は知りません。よって俺をこんなふうにできるのは母様しかいません」

 

 

「「姉上!グッジョブ!!零、可愛い!!(REC!REC!」」

 

 月読と素戔嗚は天照に向かってサムズアップしながら、零の姿を撮影している。

 

 

「1つ聞きたんですが、これは何の為にしたのですか?」

 

 

「えっとですね、偶には息子に甘えて欲しいなと思いまして。大きくなったから恥ずかしいのであれば小さくしてしまえばいいのではないかと」

 

 神様のする事は理解できない。この女神は子供に甘えて欲しいから子供の身体を小さくしたと言うのだ。

 

 

「あのですねぇ…………もういいです、戻してください」

 

 

「「「「「ダメ(です・にゃ・だ)!」」」」」

 

 アーシア、白音、黒歌、月読、素戔嗚が反対した。

 

 

(折角可愛いのに勿体ないです!)

 

 

(小さいご主人様、まだ愛で足りないです)

 

 

(はぁはぁ……ショタなご主人様、理性が……でも抱っこして○○○○(ピーピー)して最後には○○○(ピーピー)ぶはぁ)

 

 

(零、可愛い!私も理性が……食べちゃいたい。でも姉としての威厳が……ブツブツ)

 

 

(REC!REC!折角の機会だ!昔、着せれなかった服を着せて撮影だ!)

 

 零を愛でたいアーシア、白音。R-18の妄想に走り鼻血を吹き出している黒歌。姉としての威厳など鼻血と妄想により既にない月読、色々な服を着せて撮影しようとするスサノオ。

 黒歌と月読は既に手遅れな様な気がする。

 

 

「多数決で戻さない事に決まりました♪」

 

 天照は楽しそうにそう言った。その手に小さい振り袖を手にして。

 こうして戻さない事に決定した。

 

 

 このままでは零は小さいまま、しかも可愛いため、母である天照達だけでなくアーシア達にも愛でられるだろう。それに黒歌の場合は色々と問題がある。

 

 

「くっ!無理矢理にでも解いてやる………はぁぁぁぁ」

 

 零は力ずくでも元の姿に戻ろうとする。どうやら自力でも戻ろうと思えば戻れるようだ。零は全身に力を入れると、零の身体が光り始める。

 

 

「ダメ……(ぎゅぅぅ」

 

 そう言ったのは予想外にもオーフィスであった。

 

 

「えっ「戻っちゃダメ」うっ………分かった。暫くこのまま居るとしよう」

 

 オーフィスは何時もの無表情なのだが、何処か悲しそうだ。零はそんなオーフィスを見て、渋々ではあったがこの状態のまま居る事にした。

 

 

 理由?そんなの決まってる、オーフィス可愛い。可愛いは正義、可愛い者を泣かす者は何であろうが許さない。オーフィスを泣かす事はしたくない。俺が我慢する事でオーフィスが喜ぶなら……今は母様達の持っている振袖やらゴスロリ服を何とかしないと。あんなもの着せられてたまるか………何としても阻止しないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~翌日 昼~

 

 

 もう嫌だ。こんなの嫌だ!男なのになんで巫女服やらメイド服・振袖なんぞ着なければならんのだ!?しかも全部ぴったりのサイズってどういうことなんだ!?いや母様なら知ってても可笑しくないが………せめて男物が良かったよ!

 アレから母様達だけでなくアーシア、白音、黒歌、オーフィスまで俺を抱き上げたり、膝に座らせたり撫でたりしている。黒歌とつく姉(月読)の目が怖い、はぁはぁと息を荒げて興奮している。

 こういう眼を俺は知っている。昔、ある女達に襲われた時に女達のしていた眼だ。獲物を狙う獣の眼………思い出しただけでも怖い。危うく既成事実を作られる所だったぜ。

 

 零はそんな事を考えながら、天照の横にある子供用の椅子に座りながら食事をしていた。

 

 

「はい、零ちゃん。ご飯でしゅよ、あ~ん」

 

 

「もぐっもぐっ………美味しいです母様。その赤ちゃん言葉止めて下さい。俺、精神まで幼くなってませんよ」

 

 

「フフフ、そうでしたね。でも可愛いので問題ありません、可愛いは絶対的な正義なのです」

 

 どうやら零の可愛いもの好きは母親から受け継がれたものの様だ。

 

 

「姉上、零の事が愛らしいのは分かるけども確か今日じゃなかったのか?」

 

 

「そう言えば、明日は三大勢力の会議だったな……時間は夜だったか。零、可愛い~」

 

 素戔嗚と月読はそう言った。彼等は零を愛しいと思っているが、それでも日本の神々だ。明日開かれる三大勢力のトップの会議の事が気になっていた。

 

 

「それについては俺の方でコンタクトをとっております。ちゃんと母様の席も用意しております」

 

 零はアザゼルに天照の席も用意する様に言っていた。アザゼルは完璧に用意しているだろう、そうじゃないと零に何をされるのか分かったものじゃないからだ。特に零には色々と秘密を知られている為、それをバラされたくないのだろう。

 

 

「ですが母様……どうなさるおつもりですか?」

 

 

「そうですね……今のこの国は深刻な問題ですから……このままでは本当に信仰が失われる可能性もありますね。それにこの所、色々と他国の者達の性で被害も出ていますしね。この間もそれなりの力の持ち主が神社の力を吹き飛ばしたという問題が起きました」

 

 

「しかもそいつは参拝して帰ったって話だぜ。迷惑な話だぜ………」

 

 天照の話に素戔嗚はそう付け足すと溜息を吐いた。確かに迷惑な話である、参拝する為だけに神社の神聖な力を吹き飛ばすなど。

 

 

「まぁそうですね……叔父上、一応話し合いなんですからいきなり剣を抜かないで下さいね」

 

 

「お前は短気だからな。剣を抜くなよ、お前が剣振るうだけで大地が避けて海が荒れるんだから」

 

 

「そうですね、貴方は少し気が短いですから……少しは我慢して下さいね」

 

 

「くっ!?なんで俺に集中砲火なんだよ!?そんなん言ったら姉貴や姉上だって……あっすいません。何でもないです」

 

 言い返そうとした素戔嗚は笑みを浮かべた天照と月読が無言の圧力を掛ける。それによって素戔嗚は縮こまってしまった。

 

 

「荒ぶる神が何だか威厳がないにゃ」

 

 

「フフフ、黒歌さん。姉に勝てる弟などいないのですよ」

 

 

「そうそう、弟が偉大な姉に勝てる訳ないだろう」

 

 黒歌の言葉に天照と月読はそう言い返した。

 

 

「ふぁ~眠い………むにゃむにゃ」

 

 零は満腹になった性か眠そうに欠伸をしながら目を擦っている。

 

 

「今日は夜もある事ですしお昼寝しましょうか……素戔嗚、此処に書いてある物を買ってきてください」

 

 

「ついでにケーキも買って来い」

 

 

「えっ俺も零とお昼寝したい……」

 

 

「黙って行って来い」

 

 

「素戔嗚、行ってきなさい」

 

 月読と天照の一喝で素戔嗚は「クソォォォォォォ!なんで俺だけ零とお昼寝できないんだぁー!!」と叫びながら泣き叫び走り去る。

 

 

「私もご主人様とお昼寝します」

 

 

「わっ私もお昼寝します!」

 

 

「私もにゃ!」

 

 

「我もお昼寝する」

 

 

「ふぁ~……むにゃむにゃ。くぅ~」

 

 こうして小さな零の平和な日常が過ぎていく。

 

 

「むにゃ……はやく……大きくなりたい……すぅ~」



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EP36 三大勢力と日本神話

 ~駒王学園 深夜~

 

 今宵は天使・悪魔・堕天使のトップ達による会談だ。現在、駒王学園の一室に大きな机に5つの椅子が置かれていた。

 

 そしてその椅子に座っているのは

 

 白い鎧を纏う天使の長:ミカエル。その後ろにはフードを着たイリナが立っていた。

 

 スーツを着た堕天使の総督:アザゼル。その後ろにはヴァーリが居り、壁にもたれ掛かっていた。

 

 魔王:サーゼクスともう1人の魔王。その後ろにはリアスとソーナ、そしてその眷族達が立っていた。

 

 残る椅子はもう1つは零が用意したもの。此処に座るのはただ1人。

 

 沈黙が包む中で、突如空気が変わる。張り詰めていた空気が何処か暖かな神聖な空気に変化し、部屋の一角に眩い光と共に現れる。

 

 太陽神:天照大御神、月神:月読尊、荒ぶる神:素戔嗚尊。日本神話のトップの三貴子が此処に降臨する。その姿は零の家でしている様な格好ではなく、様々な装飾で身を飾った姿だった。

 

 その力を目の当たりにして各勢力のトップ達も身構えた。先に天照の力を目の当たりにしていたサーゼクスでされも冷静を装っているが冷や汗を掻いている。

 

 

「御待たせしました。日本神話……高天原を制する天照と申します。以後お見知りおきを、皆様方」

 

 

「夜を支配する月の神:月読だ」

 

 

「俺は今は黄泉の王をしている素戔嗚だ」

 

 3人がそれぞれ自己紹介するが、この場にいる全員はある1点を見て驚いている。皆の視線が集中しているのは天照の腕の中にいる小さい零だった。

 

 

「母様……そろそろ元に戻してください。流石にこのままでは話も進みませんし」

 

 

「あっそうですね」

 

 天照はそう言うと、零を降ろすと光だし元の姿に戻った。零は「やっと解放された」という様な表情をしていた。

 

 

「さてと………アザゼルやサーゼクス・ルシファーは知ってるだろうが俺は天王理 零。お前等が【伝説の戦士】などと呼んでいる存在だ。先に言っておくがそこにいる二天龍達との戦いで俺が介入したのは唯の偶然、お前等を助けるつもりなどなかったんで勘違いしないように」

 

 零はそう言うと、周りを見回した。

 

 

「罠はなし……ん?リアス・グレモリー、ギャスパーはどうした?」

 

 

「えっ……あぁ…あの子なら神器の力をコントロールできないから部室に置いてきたわ」

 

 

「そうか………母様、どうやら罠はないみたいです。どうぞお座り下さい」

 

 零はそう言うと、用意されていた椅子に天照を座らせた。

 

 

「……んん。まぁアレだ、とっと始めようぜ。会談をな」

 

 沈黙していた空気をアザゼルの言葉で切り出した。

 

 そしてサーゼクス達も天照達に自分達の紹介をすると、話し合いを始めた。天照達は始めの内は黙っていた。

 それぞれが主張していく、レイナーレの事件、コカビエルの事件、様々な事を言い合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ………こんな所で俺達がいがみ合っていても仕方ねぇ、さっさと結ぼうぜ、和平を」

 

 アザゼルがそう言うと、天照達以外が驚いた表情をしていた。

 

 

「ほぉ……いいのか?」

 

 

「今更、争ったって意味はねぇ。今の時代に俺達がしていた争いは不要だろ、これからの未来の為にもな」

 

 サーゼクスの言葉にアザゼルがそう返す。

 

 

「私にも異論はありません」

 

 ミカエルもどうやら和平には賛成の様だ。

 

 

「後は………アンタ達の意見なんだが……さっきから黙りっぱなしだが」

 

 アザゼルは始めから黙り続け笑みを浮かべている天照に視線を向ける。

 

 

「えぇ、貴方達が和平する事自体は喜ばしい事です。無駄な争いが無くなるのは良い事ですしね……」

 

 天照は一度言葉を区切ると、その身から光を放つ。神聖な光、闇を照らす太陽の光、悪しきものを焼き払う日輪の光が太陽神より放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この国は太古より我等制して来た国です。

 

 我等は人と共にあり、人の子等を見守りながら今までやってきました。

 

 我等は自らに似せて生み出した人の傍にあり、子等を護りました。それと引き換えに人の子等は我等を信仰する。どちらかだけでも、神も人も存在できない。

 

 ですが、人はその文明を進歩させるごとに信仰は失われていきました。我々にとって信仰は無くてはならぬもの……仮に総ての神が死に絶えた時、それはこの星から神秘が消える。そうなればこの星の命そのものが消滅するでしょう。

 

 

 

 

 

「ちっ地球が消滅!?」

 

 あまりの真実に一誠が叫んでしまう。

 

 

 

 

 

 

 神とはこの星の自然の意志とも言える存在。そしてこの地球そのものの分身とも言える存在です。その神がいなくなればこの星の命そのものが消えると言う事です。どの様な神であっても大なり小なりこの星の分身と言う事です。

 

 まぁ私や月読の様に太陽や月が神格化した存在もいますが、信仰がなくなれば消えるしかないでしょうから。

 

 それは置いておいて、今の問題はその信仰が他国から来た者達の性で余計に減っていると言う事です。本来この国の者達は我等が傍に居なくとも』常に我等を信仰してくれました。ですが悪魔達が「願いを叶える」という商いで人の身近に現れた。それにより我等が保ってきた神秘性が失われてきたのです。

 

 我等の許可もなく勝手に………貿易自体は悪い事ではないのですが、我等の許可なしに好き勝手するのどうなのでしょうか。

 

 それに悪魔達の種の存続の為に生み出した「悪魔の駒」という物で日本の人間や妖怪達を誘拐・拉致したこと、強制的に悪魔に転生させられた者も居たでしょう。

 

 その性に、一体どれだけのこの国の妖怪や様々な種が滅びたことか。

 

 可愛い息子の報告によれば、何処かの悪魔達がこの地を自分の領土などと言っているそうで。

 

 

 

 

 

 

 天照はそう言い終わると、光を収めた。そして最後の言葉にリアスは顔を青ざめさせている。

 

 

「これだけの被害、どうしてくれやがりますか。魔王殿?」

 

 天照は笑みを浮かべているが、明らかに怒っている。

 

 

「そっそれは大変申し訳ない。確かに我等もこの国の地を勝手に占領したこと、種の存続の為とはいえ『悪魔の駒』による悪魔の転生の件。分かっていたつもりでいたのですが………」

 

 サーゼクスは先程の力の波動により少し、動揺していたが直ぐに冷静に落ち着き謝罪する。

 

 

「謝って済むと思ってるのか、コラァ!テメェ等のせいでこっちは迷惑してんだよ!ついこの間も誰だか知んないけど、神社に参拝する為だけに神社の力を吹き飛ばした奴がいんだぞ!!長い間、積み上げてきた人々の思いや願い、信仰を簡単に吹き飛ばしやがったんだ!ふざけんな!!」

 

 

「うっ……(ギクッ」

 

 素戔嗚が声を荒げてそう言うと何故か動揺しているサーゼクス。

 

 

「此方としても戦争などしたくない。要求は2つだ。悪魔共この国より出ていけ、例外はない。そしてこの国の転生させた者達を返して貰おう。強制的に悪魔にさせられたなら此方で保護する」

 

 月読が淡々とそう告げる。これまでのこの国の被害を考えた結果だろう。このまま悪魔達が居れば同じ事がおきるだろう。

 

 

「えっでっでも、そんな事しても悪魔である限り……それにいきなりそう言われても」

 

 セラフォルーが月読の言葉に意見を言う為に発現する。そう悪魔として転生した以上はどうするにもできない。

 

 

「それについては問題ない。俺が転生悪魔から『悪魔の駒』を摘出すればいい」

 

 

「「「「「えっ?!」」」」」

 

 黙っていた零が突如発言した。「転生悪魔から『悪魔の駒』を摘出する」と。

 

 

「そっそんな事が可能な訳がないわ!悪魔として転生した時に、駒はその者に溶け摘出は不可能よ!」

 

 

「貴様等の常識で物事を図るな、リアス・グレモリー。貴様等の非常識など俺にとっては当然の事だ……なら実際にやってみせようではないか。おいで」

 

 零がそう言うと、零の背後の空間が歪み黒歌とアーシアが現れた。

 

 

「なっ!?はぐれ悪魔黒歌!?」

 

 

「貴様等が開発した悪魔の駒の被害者だ。黒歌から昔の事は聞いた、自分を無理矢理悪魔にされた挙句、妹の白音を無理矢理眷族悪魔にされそうになったとな。そのせいで黒歌が指名手配されている事も……正直言って腹立たしい。その悪魔が生きてたら光で拷問した上で消してやるところだったが………まぁ死んでしまったものは仕方ない」

 

 零は忌々しそうにサーゼクスとセラフォルーを見ている。

 

 

「だからこの日の為に俺は色々と研究していたんだが……黒歌、ちょっと痛いかもしれないけどいいか?」

 

 

「大丈夫にゃ、ご主人様を信じてる」

 

 黒歌は零を信じている、今まで自分と妹を護ってくれた主を信じている。

 

 

「あぁ……母様、アレを使います。いいですね?」

 

 

「えぇ……いいですよ」

 

 

「では………【$”GS&#"%RGSZ)%GS=|¥(この身に宿るは原初の神が血)】」

 

 零は突然、訳の分からない事を言い始める。すると零の両目が輝き始め、短い銀髪が突然伸び始めた。

 

 

「【E$"!RVERYU'&%$%$#"TGSF!#"$$%||~^\?>(原初の神が子の名において解放する)】」

 

 零の口から紡がれているのは、この場にいる全員には何を言っているのか全く分からない。だがその身から溢れるのは何かに場にいる全員が身を強張らせる。

 

 

「【F#$$"F!S$%$RF#(創造と破壊が相対し相克し合う)】」

 

 そして零の全身に七色に輝く痣が浮き上がっていく。

 

 

「【”Dd%$#%VSFEVEL?_Frwf¥*@(その先に残るのは無し。)】(パァン」

 

 両手を合わせると、零はその手で黒歌の胸を貫いた。正確には血は出ていない、どういう力かは分からないが零の手は黒歌の中に入っている。

 

 

「我は(0)にして無限()なり」

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 黒歌の背から悪魔の翼が現れると、次の瞬間に消滅した。そして黒歌は全身から力が抜けた様にその場に倒れそうになる。

 零は直ぐに黒歌の胸から手を抜くと、抱き留めた。

 

 

「ふぅ………これでよし、大丈夫か黒歌?」

 

 

「だっ大丈夫にゃ……凄く力が抜けて今は立てそうにないにゃ」

 

 

「そうか……なら。少し休め……」

 

 零はそう言うと、机の上に何かを放り投げた。それは悪魔の駒(イーヴァル・ピース)、他の種族を眷族悪魔にするためのアイテムだ。これは黒歌から抜き取られたものだ。

 

 

「この通りだ、サーゼクス・ルシファー。これではぐれ悪魔の黒歌など居ない、ここに居るのは猫又……日本の妖怪だ。これでも黒歌を狙うと言うなら、俺は許さない」

 

 そう言われればサーゼクスは何も言えない。言える筈がない、零はかつて天使・悪魔・堕天使が協力しても倒し切れなかった二天龍を一撃で倒した。

 その零が「黒歌は既に転生悪魔ではない。故に黒歌に手を出すな。もし手を出せば貴様等悪魔を滅ぼす、例外なくな」と言っている。これは取引などではない、完全に命令だ。

 サーゼクスもセラフォルーも反論できない、種の存続をさせる為とはいえ多くの種を犠牲にした。そして何より零の逆鱗に触れたくないのだろう。

 この場にいる各勢力のトップであるミカエル、アザゼル、サーゼクス、セラフォルーは強い、強いが故に先程の零の力を見て、零の強さを本能的に理解してしまったからだ。

 

 

「わっ分かった。黒歌のことは我々でなんとかしよう。しかし突然、この国から出ていk「ぁあ!テメェ等はこれまで俺等の領土で好き勝手してきたくせにテメェ等の言い分を聞くと思ってんのか!コラァ!」」

 

 サーゼクスは魔王としてこの地にいる悪魔達の為にできるだけの事はしたかった。故に出来る限り交渉しようとしたが素戔嗚の一喝で何も言えなかった。

 これまで好き勝手に日本の神々の地で商売やら転生悪魔などの多くの問題を起こしている。それに加え、日本の神々が悪魔側と交渉する為にコンタクトをし続けたが悉く無視された。そんな相手の存在を素戔嗚達は一秒でも早くこの国から出したい様だ。

 

 

「素戔嗚、少し落ち着きなさい。確かに貴方達、悪魔の横暴……決して許されるものではありません。しかし貴方達にもそれぞれの言い分もあるでしょう。ですからこの件はもう少し話し合いをするべきだと思います、勿論天使や堕天使の皆さんとも……今の時代、我々は協力しなければなりません」

 

 

「姉上がそういうなら……」

 

 素戔嗚は天照の言葉で大人しく引き下がる。

 

 

「ではまずは、話し合いを……」

 

 

「おっとその前に聞きたい事がある、お前にだ。零」

 

 アザゼルは突然、零に声を掛ける。

 

 

「俺に?」

 

 

「あぁ、お前はかつて二天龍を倒した。間違いないな?」

 

 

「あぁ……」

 

 

「だったらだ。それだけの力を持ちながら俺はお前の様な存在を知らない。正確には日本神話にそんな存在がいるなんて聞いた事もなかった。なのにあの戦いに突然、お前は現れた。お前ほどの力が在れば神話にも語られる筈だ。なのにどういうことだ?」

 

 零の力は強大だ。故にアザゼルは気になっていた。これほどの強大な力の持ち主が日本の神話に出て来ない筈がない。なのに語られていない、それがどういう事なのかと言う事が。

 

 

「それは今、関係ない話だ」

 

 

「いいや、十分に関係あるね。お前は日本神話体系の天照を母と呼んでいる。つまりは日本勢力の一員って事だ、そうなりゃ俺達はお前の力を知ってるが故に日本神話に従わなきゃならない」

 

 

「……俺はあくまでも母様の味方ではあるが、基本的には中立だ。どこの勢力にも力を貸す気はない」

 

 

「それは貴方はあくまでも天照さんの個人的な味方であって、どこにも属していないと?」

 

 セラフォルーがそう言うと零はそれに頷いた。

 

 

「お前等から見れば日本の味方って見えるだろうが………俺的にはこの世界がどうなろうが関係ない。俺は俺の守りたいものの為に戦うだけだ」

 

 

「フム……自分や仲間の害にならなければ敵でもなく味方でもないと?」

 

 ミカエルが零にそう聞くと、零は首を横に振る。

 

 

「そうであってそうでない。俺は俺の護るべきものの為に戦うが、気が向けば何所の誰でも味方になる。そこにいるリアス・グレモリーのナイトに力を貸してやったのも俺が力を貸すに値すると思えば力を貸す」

 

 

「「「「「………」」」」」

 

 一同はその言葉に唖然とする。自分は何処にも属さず、自分の護るべきものの為だけに戦う。しかし気が向けばどんな相手でも力を貸すと言ったのだ。通常ではありえない話だ。

 

 

「成程な……だがお前は何者だ?さっきも言った様に俺はお前の様な存在を知らない、お前みたいな奴が突然生まれる筈もない。お前の現れ方はまるでこの世界に突然現れた様だぜ」

 

 

「ククク……成程、頭がよく回る……だがそれ……これは!!?」

 

 零が何かを言おうとした瞬間に辺りは異様な力に包まれた。

 

 周りを良く見ると、天照、月読、素戔嗚、黒歌、アーシア、ミカエル、イリナ、アザゼル、ヴァーリ、サーゼクス、セラフォルー、リアス、一誠、祐子、ゼノヴィア以外が止まっている。

 

 正確には時間そのもののが停止している様だ。

 

 零はこの現象が起きた瞬間にある人物の事を思い浮かべた。周りの者から迫害され、自分と同じ哀しみと苦しみを持つギャスパーのことを。




次回予告

それは怒り。

ありとあらゆる物を破壊する者の怒り。

その者は決して許さない、愚か者達を。

逆鱗に触れた愚か者達は恐怖し、蹂躙される。命乞いなど決してその者には届かない。

光が纏うは白き一角獣、闇が纏うは3つの姿を持つ悪魔。

それを見た者は知る、次元の違いを。哀しみを。


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EP37 時間停止

 ~オカ研部室~

 

 事の発端は数十分前。

 

 オカ研部室には神器のコントロールができないため、残されたギャスパーがいた。段ボールに入りながらゲームをしている。どうやら段ボールの中が落ち着く様だ。零より貰った「魔眼殺し」の眼鏡を掛けて居る様だ。

 

 

「………ボクは……ボクはどうすれば」

 

 ギャスパーは先日、零により亡き母と会った。それは本来、叶う筈のない再会であったが零の起こした奇跡によりそれが叶った。そしてギャスパーは知った。自分は父に、母に望まれて生を受けたのだと。自分は一人ではなくずっと母が傍に居てくれたのだと。何よりも愛されていた事を自分の事をこの世界で一番愛してくれている母から直接言って貰えた。

 それはギャスパーにとってとても嬉しい事であった。だが不安もあった、本当に自分はこの力を制御しきれるのかと。巨大な力故に、それに対する恐怖があった。ギャスパー自身、吸血鬼と人間のハーフという事で忌み嫌われ、人間からはギャスパーの神器【停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)】をコントロールできない事で気味悪がられた。それがトラウマとなっている。

 

 

「ボクは……?!」

 

 ギャスパーは魔力の気配を感じて顔を上げると、魔法陣が浮かび上がりそこから黒いフードを被った者達が現れる。

 

 

「だっ誰ですか?!」

 

 

「貴様がギャスパー・ヴラディだな。貴様のその力、我等が利用させて貰う」

 

 黒いフードを被った女が、手を翳すとギャスパーの身体が魔法陣に拘束された。そして自分に宿る神器【停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)】の力が増幅していくのを感じる。だがそれを何かが留めている。

 

 

「うっ……うぅ……」

 

 

「ん?何かが発動を留めている?これか?」

 

 黒いフードの者達の内の1人がギャスパーの掛けている眼鏡に気が付いた。そしてそれをギャスパーから外すと再び力が増幅し始める。

 

 

「いっいやボクは……ボクは」

 

 ギャスパーは暴走しそうな力を何とか抑えようとするが、本人の意思に関係なく【停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)】が発動した。

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 黒いフードの人物達によって強制的に発動させられた【停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)】の力は駒王学園を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~現在 会談室~

 

 

「これは……」

 

 

「時間停止の力ですね……心当たりがあるのですか零?」

 

 

「ギャスパー……人間と吸血鬼のハーフの子です。力のコントロールができないので此処には連れてこなかった様ですが………アザゼル、状況を説明しろ。神器(セイグリッド・ギア)についてはお前が詳しいだろう?」

 

 天照の問いに零がそう答えると、アザゼルに説明する様に言った。

 

 

「恐らく、魔法か力を譲渡できる神器(セイグリッド・ギア)でハーフヴァンパイアの神器(セイグリッド・ギア)で強制的に禁手(バランス・ブレイカー)状態にしたって所じゃないのか?一時的なもんだと思うが……まぁ問題はこのまま力が増幅し続ければ俺達まで止まっちまうって事か………」

 

 

「アザゼルが止まるなら問題ないな。顔に油性でラクガキしてやる」

 

 

「おい!ふざけんな!前ラクガキされた時、落ちなくて大変だったんだぞ!」

 

 

「あっそう……それでこんな状況になっている原因、お前の事だから心当たりあるんだろう?」

 

 

「って無視かよ!……はぁ……まぁ心当たりがないわけでもない」

 

 どうやらアザゼルには今回の犯人に心当たりがあるようだ。

 

 

「ギャスパーは旧校舎でテロリストの武器にされている……一体何処で私の下僕の情報を手に入れたのかしら……しかも大切な会談の時を狙うなんて!……よくも私のギャスパーを!これほどの侮辱、受けたのは初めてよ!」

 

 リアスは全身からオーラを立ち昇らせており怒っている。そんなリアスを見て零はどこか不機嫌だ。

 

 

「フン………俺や母様、魔王達、黒歌は俺の力の一部、一誠やヴァーリはドラゴンの……強い力や得意な力を持つ者はかからない様だな。外には転移の魔法陣、それに敵の大群……しかも此方の転移は無理と。俺達なら問題なくいけそうだが……ん?」

 

 零が落ち着いて状況の分析をしていると突然魔方陣が現れ、1人の女性が現れた。

 

 

「ごきげんよう、現魔王サーゼクス殿、セラフォル―殿」

 

 

「旧魔王レヴィアタンの血を引く者……カテレア・レヴィアタン。これは一体どういうつもりだ」

 

 サーゼクスはこの人物を知っている様だ。

 

 

「貴様が何処の誰であろうが構わん、これは貴様等の仕業か?」

 

 

「ん?お前は……その紅と金の瞳……そうか、お前があの伝説の戦士か。そう、これは我等が仕掛けた。あのハーフヴァンパイアの力を利用してな」

 

 カテレアという人物は淡々とそう言った。

 

 

「何故、ギャスパーを利用した?」

 

 

「何故?人間でもない、吸血鬼でもない、できそこないの存在が悪魔に転生した。そしてその力を我等旧魔王達が利用してやろうと言うのだ。半端な存在の力を利用して感謝はされども文句を言われる筋合いはないだろう」

 

 

「なっ!?ふざけないで!よくも私のギャp「母様……いいですね?」天王理、邪魔をしないで!ギャスパーは私の眷族よ!」

 

 

「黙れ……何が眷族だ?何が下僕だ?そんなに大切であれば何故この場に連れて来なかった!?力が暴走?危険?ふざけるな!貴様がこの場にアイツを連れてきて居ればこんな事にはならなかったんだ!」

 

 

「!?」

 

 

「……まだまだ言いたい事はあるが、まずは目の前の此奴をぶっ殺す事とギャスパーを助けるのが先決だ。母様……俺は少し暴れます」

 

 零はかなり怒りを顕にしている。

 

 

「零」

 

 

「止めますか……母様?」

 

 

「いいえ……止めはしません。察するにそのハーフヴァンパイアは貴方と」

 

 零は何も言わずに頷くと、天照は目を細めた。

 

 

「分かりました。零、教えて差し上げなさい。貴方の力を……そして救いなさい。貴方と同じ苦しみを持つ子を」

 

 

「はい……」

 

 零は目を閉じると、零の身体から闇が溢れ出し、横に収束し人の形に変わった。そして現れたのは黒髪の零だった。

 これを見た天照達以外のメンバーは驚いている。

 

 

「ん……身が1つでは足りぬか……我が分身よ?」

 

 

「あぁ、力を貸せ、我が半身よ」

 

 銀髪の零は黒髪の方を【半身】と呼び、黒髪の零は銀髪の方を【分身】と呼ぶ。【半身】の方は笑みを浮かべていた。

 

 

「まぁいいだろう……我はあの女と外の奴等の始末をすればいいのだな?」

 

 

「あぁ……俺はギャスパーを助けに行く」

 

【分身】の方がギャスパーの救出を、【半身】の方がカテレアと外の連中を倒す事になった。

 

 

「なっ……きっ貴様等何を」

 

 カテレアは目の前で起きて居る事に驚いている。

 

 

「【ソウルコード:ユニコーンガンダム】!」

 

 銀髪の零の身体を光が包み込み、白い鎧が全身を包み込んだ。頭部には白い1本角がある。右手にはコカビエルの戦闘の際に呼び出したビームマグナムを握り、左手には白い盾を装備している。

 

 

「力を貸せ!ユニコーン!」

 

 《キィーーーーン》

 

 零【分身】の纏ったユニコーンの各部から緑色の光が溢れだすと、各部が開き先程より一周り程大きくなっていく。そして最後に頭部の角が割れた。そして左手のシールドも変形しX状のパーツが開き緑色の光を放ち、零の周りを飛んでいる。そして何処からともなく、同じシールドが2枚現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「【ソウルコード:真ゲッター】」

 

 零【半身】の右眼が光り出し、周りに3色の光が現れその形を変え零はそれを身体に纏った。

 

 

「チェンジ!ゲッター1!」

 

 零【半身】は深紅の鎧を纏い、背には悪魔の様な翼が形成される。

 

 

「さて我が分身よ、さっさと終わらせるぞ。【ゲッタートマホーク】行くぜ、おらぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 零【半身】は巨大な斧を取り出すと、翼を羽ばたかせカテレアの頭を鷲掴みにし外へ出て行った。そのせいで会談室の壁には大きな穴が開いている。

 

 

 

 

「ではそっちは任せて俺はギャスパーを助けに行くか」

 

 零【分身】は背のブーストを吹かせて飛び上がる。そして天井を破り旧校舎に向かい飛んで行った。



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EP38 変幻自在の力

 ~駒王学園上空~

 

「うらぁ!」

 

 零【半身】は掴んでいたカテレアを放り投げた。周りには黒いフードを被った者達がいる。

 

 

「此奴等は確か……魔術師とか言ったな。確か悪魔の魔力を体内にどうこうして魔術を使えるようにした存在だったか。どうでもいい……お前等は此処で俺に消されるんだからな。おらぁぁぁ!!」

 

 零【半身】は魔術師達の視界から消えた。

 

 

「なっ何処に行った!?」

 

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 魔術師達は悲鳴の聞こえた方を振り返ると、そこにはゲッタートマホークに引き裂かれた魔術師と零【半身】がいた。

 

 

「早い?!」

 

 

「それにやられれば直ぐのこの場から転送される筈ではなかったのか!?」

 

 

「ヒャハハハハハハ!!残念だけど、貴様等は此処から逃げれない【多重結界・断罪の間(ジャッチメント・フィールド)】だ。【ゲッタービーム】!!」

 

 腹部より赤い閃光が放たれ、魔術師達を攻撃していく。

 

 

「おらっ!まだまだ!【チェンジ!ゲッター2!】」

 

 零【半身】の身体に装着されていた真ゲッターの鎧が光となってその姿を変えた。右手が巨大なドリルになっている白い姿に変わった。

 

 

「ドリィィィィィ!!」

 

 右手のドリルが高速回転を始め、凄まじい速度で移動し敵を貫いていく。魔術師達は成す術なくドリルの餌食となる。

 

 

「アハハハハハハハ!ヒャハハハハハハ!雑魚共はとっと消えろぉぉぉぉぉ!!」

 

 魔術師達はその姿を見て恐怖し逃げ出そうとする者いる。だがそんな事を許されない、零【半身】は決して許さない。だが零【半身】は今までの零とは違い何処か危険な感じがする。まるで戦闘……いや虐殺を楽しんでいる様な感じが。どうやら此方の零は何時もより残忍な性格な様だ。

 

 

「この化物がぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 カテレアが零【半身】に向かい魔力の波動を放つ。零【半身】はそれに気付くとドリルをカテレアの放った波動に向ける。

 

 

「ドリルミサイル!」

 

 ドリルが発射され、カテレアの波動をかき消した。そして波動を掻き消したドリルはカテレアの左腕を吹き飛ばし空の彼方へ消えた。この一瞬の隙をついて魔術師達は零【半身】に向かい、攻撃を放つ。

 

 

「しゃらくさい!【チェンジ!ゲッター3!】」

 

 再び真ゲッターの鎧が光り出し、その姿を変える。今度は足がキャタピラになっている。

 

 

「ターゲット……ロックオン!【ミサイルストーム】!」

 

 真ゲッター3の下半身の後部が展開し大量のミサイルが放たれる。ミサイルは魔術師達に向かい凄まじい速度で向かっている。魔術師達は防御魔法を展開するが、そんな物は紙の様に簡単に破られる。

 

 

「【チェンジ!ゲッター1!】」

 

 再び真ゲッター1になると、空に飛び上がった。そして周りを見渡す、どうやら魔術師達は先程の攻撃で全滅した様だ。

 

 

「残りはお前だけか……えぇ~と名前……まぁいっか。どうせ消える存在だ」

 

 そして残りはカテレアだけとなった。カテレアは吹き飛ばされた左腕を押さえながら浮いている状態だ。

 

 

「この……私が……魔王の正統な血筋であるこの私がこんな……!許さん!許さんぞ!」

 

 カテレアは激昂すると、カテレアの全身に黒い何かが覆う。それは蛇の様にカテレアの全身に巻き付いている。そしてカテレアの力は跳ねあがった。

 

 

「貴様がいくら強くてもこの蛇を使った私には敵わん!死ねぇぇぇぇ!」

 

 

「ぁあ?なんだ……この感じ……あぁ……オーフィスの蛇か。もう1つお前を消す理由ができたな。あぁ……そう言えばお前等は種族を問わずならず者達を集めている集団だったな。まぁそんな事はどうでもいい!問題は!可愛いオーフィスを利用しようとしたことだぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 カテレアは零【半身】に向かい魔力を帯びた杖で攻撃を仕掛けるが、簡単に素手で受け止められる。そしてカテレアが使った力がオーフィスによる物だと分かると激怒した。どうやら零の根本は変わってない様だ。

 

 

「なっ!なんだこの力は!?」

 

 

「【ゲッタービィィィィィィィム】!」

 

 頭部からゲッタービームを放つとカテレアの杖を消滅させた。そして更に零【半身】の力が跳ね上がった。

 

 

「【チェンジ!ゲッター2!】」

 

 一瞬の内に真ゲッター2に変わる。カテレアは杖を破壊され、自分が今までに感じた事のない零の凄まじい力を身近に感じ身体を震わせている。

 

 

「【真ゲッタービジョン!】」

 

 零【半身】は高速移動しながらドリルでカテレアに攻撃していく。その移動速度は速すぎて何人もの零【半身】がカテレアを攻撃して居る様に見える。

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「此奴は!ギャスパーを侮辱した分だ!【プラズマハリケーン】!」

 

 ドリルが高速回転し電磁波を含んだ竜巻が形成されカテレアはそれに巻き込まれ吹き飛び落下していく。本人は既に死んでも可笑しくないレベルのダメージだが、【断罪の間(ジャッチメント・フィールド)】の効果により死んでも直ぐに蘇生させられる。

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉ!!【チェンジ・ゲッター3!】」

 

 カテレアが落下していく先に先回りし真ゲッター3に変わると、その腕を伸ばしカテレアに巻き付け締め上げた。

 

 

「コレは可愛いオーフィスを利用した分!【直伝!大雪山おろしぃぃぃぃぃぃ】!【ミサイルストーム】!」

 

 竜巻を起こしながらカテレアを上に放り投げる。そして追い打ちを掛ける様に、ミサイルの雨がカテレアを襲う。本人はまた蘇生させられる。こうなっては既に戦闘と言うより一方的な蹂躙だ。

 

 

「【チェンジ!ゲッター1!】うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 再度、真ゲッター1に変わり空に舞い上がる。そして眩い光が真ゲッター1を纏う零【半身】を覆い、両手の中に高密度のエネルギーを収束させていく。そして光球を生み出した。

 

 

「ちょ……ちょっとまっt「誰が待つかぁぁぁ!!此奴は俺の怒りの分だぁぁぁぁぁ」」

 

 ギャスパーを侮辱した怒り、オーフィスを利用した怒り、それに加え自身の怒りを両手の中に構成した高密度のエネルギーの光球に込めると光球は更に巨大になっていく。

 

 

「【ストナーサンシャイン】!!!!!」

 

 ストナーサンシャイン。それは本来、ゲッターロボに乗る3人のパイロットの意志の高ぶりと共に動力である未知のエネルギー『ゲッター線』の力を上げる技であるが、零は神の力で1人で再現している。

 

 ストナーサンシャインが放たれる。ストナーサンシャインはカテレアに直撃し、そのまま体育館の方へ落ちていった。そして凄まじい光と共に爆発する。その爆発は駒王学園の敷地の3分の2をクレーターに変えた。

 

 

「おっとと……危ない、危ない。母様達が居なかったら結界内全部を消し飛ばす事になってたぜ。ハハハ」

 

 怖ろしい事は笑いながら言っている零【半身】。やはり性格が少し何時もと違うようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~会談室~

 

 零が【分身】と【半身】に別れ、戦い始めてから魔王:サーゼクス、セラフォルー。天使の長:ミカエル。堕天使の総督:アザゼル。そしてリアス達、停止していない人物達は唖然としている。

 

 天照や月読達は複雑な表情で外で戦っている零【半身】を見ていた。

 

 その理由はあまりにも一方的な戦いを見てだ。

 

 

「あっあれがレイの力……」

 

 

「いいえ……あの子の本来の力はもっと強いですよ。今のあの子は少し怒りに飲まれている様ですが……それにアレでも本来の力の半分以上は封印していますよ」

 

 

「なっ?!」

 

 一誠の言葉に天照はそう答えると、全員が驚いた。目の前で起きている圧倒的な戦いが本気ではなく、本来の半分以上の力も出していない事が信じられない様だ。あの魔王達でさえその真実に驚愕している。

 

 

「じゃあ零が2人になったのはどう言う手品だい?」

 

 今まで黙っていたヴァーリが天照に聞いた。先程起きた零が2人になったという事が気になっていた様だ。

 

 

「………かつてあの子は人間でありながら私の子であるという事で周りの神々に忌み嫌われていました。私達もあの子を必死で守りました」

 

 

「それでもあの子はずっと苦しんでいた。私達は護った気でいたが、それでもあの子は傷付いていた。それに気付かなかった故にあの子は小さい体に苦しみも悲しみも憎しみを全て抱え込んだ」

 

 

「そしてある出来事をきっかけに零の中にもう1つの人格が生まれた。負の感情を、零の闇を司る人格だ……神び力を持つ故に聖と邪となってしまった。だがあの子はそれを受け入れた、今ではあぁやって手が足らない時は自分の闇を使っている」

 

 天照、月読、素戔嗚がそう言った。だがその表情は何処か苦しそうだ。本来なら自分達が守らねばならない存在であったが、護りきれなかった事を悔いているのだろう。

 

 

「だがそんな私達にあの子は言ったのです」

 

 

 

 

 

 アレは俺自身です。どんな禍々しく、残酷な存在でも……アレは俺です。だから俺はアイツを受け入れます、それで残ったのがどちらの俺でも……それが俺だから……そんな俺……いや俺達でも母様達は…………愛してくれますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツは強くなったぜ、姉上。自分の闇を受け入れて、あそこまでやる様になった。本体の俺達でも敵うかどうか………本当に強くなった」

 

 素戔嗚は涙を流しながら零を見上げ、幼き頃の零の記憶を思い出している様だ。

 

 

「えぇ………でも闇の方のあの子は少し暴れん坊の様です」

 

 天照は戦っている零を見ていると、丁度ストナーサンシャインを放つ場面であった。

 

 

「おいおい、あんなの撃ったらこの結界内を吹き飛ばすぞ……姉上、何とかしないと」

 

 

「そうですね…………」

 

 月読がストナーサンシャインを見て、その威力を分析した。そして直ぐに天照に言った。天照は直ぐに鏡を取り出した。

 

 

「月読、素戔嗚、そちらの方は任せます」

 

 天照は一同の前に出ると、鏡を前に突き出した。

 

 

「【八咫鏡】」

 

 天照の持つ八咫鏡。それは三種の神器の1つ、その八咫鏡から放たれた光が校舎を包み込んだ。そして零【半身】の放ったストナーサンシャインによって天照が防いでいる校舎と旧校舎を含む3分の1の敷地を残し、残りの3分の2は消し飛んだ。

 

 




・零【半身】


 幼い頃の出来事をきっかけに別れてしまった人格。

 零の闇を司る人格であるため、普段の零より冷酷な性格である。それに加え好戦的(というより戦闘狂)で雑魚相手でも圧倒的な力で敵を潰す。例え敵が逃げ出しても追掛けて敵を倒すまで戦闘を止めない。

 しかし零の「可愛いは正義」「同じ痛みを知る者の為には怒る」「家族」という根本的なものは変わっていない。

 普段の零でもアーシアや白音達の事になると怒ると少しだけ【半身】の方の性格が出る様で、かつてレイナーレに対する冷酷な態度は【半身】による影響だろう。

 力は普段、零が使う【メモリーコード】【ソウルコード】だが、【半身】固有の能力もあるらしい。







・ソウルコード:真ゲッターロボ


 とある世界で未知のエネルギー「ゲッター線」を動力炉にし動いているスーパーロボット。

 本来であれば3人のパイロットが3機の戦闘機に乗り、合体しゲッターロボとなる。しかし零の場合は真ゲッターを纏っても分離せず意志だけで変形可能である。

 本来の真ゲッターロボと同じ技を全て使え、真ドラゴンを呼び出す事もできるらしいが地球の危機でもない限り出すつもりはないらしい。真ドラゴンを呼び出した際には真ドラゴンは【分身】か【半身】どちらかの意志で動かす事になる。

 因みに最終兵器を使うことなく、ゲッターの皇帝を呼ぶ事も出来るらしい。


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EP39 旧校舎を駆ける一角獣

 ~旧校舎~

 

 

「ふぅ……さて此処か」

 

 ユニコーンガンダムを纏い、零【分身】はギャスパー救出の為に旧校舎にあるオカ研の部室に向かっていた。

 

 

「なんだ貴様は!?」

 

 部室に向かう途中で魔術師共に出会った。俺は邪魔だったのでビームマグナムで一掃した。魔術師達は悲鳴を上げていたがそんな事はどうでもいい。俺は此奴等を許さない、ギャスパーを道具として扱ったこのクズ共だけは生かしてはおかない。

 

 

「ん……半身の奴。【断罪の間(ジャッチメント・フィールド)】を使ったか。丁度良かった、ビームマグナムで廊下がボロボロだし」

 

【半身】の使用した【断罪の間(ジャッチメント・フィールド)】の力を感じ取った零【分身】は先程のビームマグナムの一撃で廊下が焼け焦げている惨状を見てそう呟いた。

 

 

「まだいたか……」

 

 廊下の奥の方からやって来た魔術師達を見てそう呟くと、左手を前に翳す。すると周りに浮いていたシールドが零【分身】の前に出ると、装備されているガトリングが回転を始めた。

 

 

「シールドファンネル。撃て」

 

 シールドファンネルのビームガトリングから無数のビームの弾丸が放たれた。それを受け魔術師達は倒れていく。零は倒れている魔術師達を気にもとめずオカ研の部室に向かって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~オカ研 部室~

 

 

「どうやら作戦は順調にいっている様だな」

 

 魔術師達は拘束しているギャスパーを眺めながら時間停止の結界がうまく働いている事に満足している様だ。

 

 

 《ブゥゥン……スパッ!ガラッガラッ》

 

 

「なんだ?!」

 

 魔術師達は音のした方向、扉の方を見てみると、扉には幾つもの赤い線が入っており、扉はバラバラになって崩れた。扉の向こうには腕部に装備されているビームトンファーを構えている零【分身】が立っていた。

 

 

「ふぅやっと着いた………ビームマグナム、1カートリッジ分使いきっちまったか。よいしょっと(ガチャン」

 

 ビームトンファーのビームを消し収納する。そして右手にあるビームマグナムのカートリッジを使い切った事を思い出すと腰に装備されているカートリッジを手に取るとカートリッジをビームマグナムに装填する。

 

 

「さてと……」

 

 零【分身】はユニコーンを解除すると、自分の脚で地に足を着ける。

 

 

「ようギャスパー、怪我はないか?」

 

 

「てっ天王理先輩……ぐっ……ぅう」

 

 零【分身】は魔術師達を睨みながら、部室を見回した。すると床に落ちている壊れた眼鏡をみつけた。それは零がギャスパーに渡した『魔眼殺し』の眼鏡だった。

 

 

「此奴を掛けてりゃどんな事があってもギャスパーの魔眼は封じられる筈だったんだが……こういう事か」

 

 零【分身】は落ちている『魔眼殺し』を拾い上げると、『魔眼殺し』に手を翳すと光と共に『魔眼殺し』が修復される。それを懐に仕舞うとギャスパーの方を向いた。

 

 

「うぅ………天王理……先輩……ボクを……ボクを殺して下さ…い」

 

 

「はぁ……何言ってんだ?」

 

 

「だってボクが……ボクが居るから……こんな事に」

 

 ギャスパーは今回の事件を自分の責任だと思い、自分を殺せと言いだした。だが零はそんな気など全くない。

 

 

「阿呆……お前は何も悪くない。悪いのは此奴等だ」

 

 

「なに?!ふざけるな!この出来そk《キュィィィィ……ズガガガガッ」

 

 ギャスパーを出来損ないと言おうとした魔術師はシールドファンネルのガトリングによって蜂の巣にされた。それを見て他の魔術師達も零【分身】に攻撃しようとするが先にシールドファンネルのガトリングで一掃された。

 

 

「ギャスパー、お前は本当にこのまま何もせず死んでもいいのか?」

 

 

「でっでもボクのせいで……ボクなんて居ない方が」

 

 

「はぁ……あのなぁ。初めから力を完全に扱えるなど思うな、俺だって血反吐を吐いて、地に伏してやっとこの力を手に入れたんだ。死ぬかと思う事だってあった………だがお前は未だ始まってないだろう」

 

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 お前は未だ始めてすらない。まだその長い道のりの一歩すら踏み出していない。それはお前が恐怖しているからだ。

 

 今まで己が味わってきた苦しみを、また味わうのを避けているのだ。

 

 そうだ、確かに苦しい。受けた苦しみは、哀しみはまた受ける等俺だって考えたくはなく。

 

 そこで止まっていては苦しみも悲しみも受ける事はない。それに死すればそれらを永遠に受ける事はない。

 

 だがそこで止まっていれば何も始まらない!!

 

 お前も怖いだろう、再び苦しみを味わうのは………しかしお前は本当にそれでいいのか?

 

 本当にそれで……此処で終わってのいいのか?

 

 本当にそれでお前は……母に胸を張って会えるのか?

 

 

 

 

 

 

「おか…あさ……ん………」

 

 ギャスパーは夢の中の母アスティアの言葉を思い出した。

 

 

『泣いたっていい……転んだっていい……そしたらまた立ち上がればいいんです』

 

 

『例え弱くたっていい、泣いてもいい、貴方が元気に生きていてくれれば』

 

 

『例え姿は見えなくとも私はずっと貴方を見守っています。愛していますよ、私の愛しい子、ギャスパー』

 

 

「ボクは……ボクは」

 

 

「お前は自分で立ち上がれる。何故ならお前は……」

 

 

「ボクだって……ボクだって!望まれてたんだ!それにお母さんは言ってくれた、ボクの事を愛してるって……だから!だからボクも頑張るんだぁ!!」

 

 ギャスパーは自分の為に、自分を愛したくれている母の為にも立ち上がることを決意する。そしてギャスパーの両目が輝くと同時に辺りの時間停止が解除された。

 ギャスパーを拘束していた魔方陣が砕けると、そのまま倒れそうになるが零がそれを抱き留めた。

 

 

「見事だったぞ、ギャスパー………今は眠れ」

 

 零はそのままギャスパーを抱えると、天照達が待つ会談室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~会談室~

 

 

「あらっ時間停止が解除されたみたいですね…………あちらの方は上手くいった様で安心しました」

 

 天照は時間停止が解除された事で周りを見回す。

 

 

「いっ一体これは何がどうなって」

 

 動き出した一同は現在の会談室の状態を見て唖然としている。壁と天井には大きな穴、部屋は瓦礫だらけ、外には魔術師達の亡骸が在り、敷地の殆どが消滅している。

 

 

「こっ校舎が……グラウンドが………お姉様!一体何をしたんですか?!何が原因で煌めかれたんですか?!」

 

 

「えっ!?ソーナちゃん、酷い!お姉ちゃんじゃないよ!」

 

 

「えっ……あぁそうですか。お姉様がしたものかと……お姉様以外でこんな事をするのはって……なんですかあれ?」

 

 ソーナはどうやら外の有様はソーナがした事だと思った様だ。だがそうでないと分かると直ぐに謝罪した。そして空では残った魔術師達を倒している悪魔の様な翼を生やした深紅の鎧を纏う者の姿だった。

 

 

「アレは伝説の戦士さんよ、ソーナ」

 

 

「へっ?」

 

 ソーナはリアスが零だと言うと、唖然をしている。

 

 

『フハハハハハハハハハ!!!雑魚共がぁ!!』

 

 これまでソーナが見た零の戦いは、空で戦っている者とは戦い方が全く違っていた。それに性格も変わり過ぎている。

 

 

「まぁ気持ちは分かるけど………」

 

 

『戻りました、母様』

 

 皆が振り返ると、そこにいたのはギャスパーを抱えた零だった。

 

 

「ギャスパー!?」

 

 リアスはギャスパーの身を案じて直ぐに近付こうとするが、零に睨まれて動けなくなる。零はそれを確認すると、机の上にギャスパーを寝かせた。

 

 

「気を失っているだけだ………」

 

 零は一度、ギャスパーの頭を撫でると懐から魔眼殺しの眼鏡を取り出すとギャスパーに握らせた。そして直ぐに空を見上げる。

 

 

「さて……そろそろ戻らねば。暴れすぎたっての……気持ちは分かるが……」

 

 零は地を蹴り、空に居る【半身】の前まで上昇した。

 

 

「おぉ我が【分身】よ……終わったか?」

 

 

「あぁ【半身】よ。終わった、ギャスパーも無事だ……それにこの時間停止を解いたのはアイツ自身だぞ」

 

 

「ほぉ……それは上々……我としてはもう少し楽しみたいが……もう今の状態ではこれが限界だな。戻るとするか」

 

【半身】はそう言うと、ソウルコードを解除し、現れた時の様にその身を闇と化す。

 

 

「では戻ろうぞ」

 

 

「あぁ、戻ろう」

 

 闇と化した【半身】は【分身】の身体へと吸い込まれていく。そして再び【分身】と【半身】は1つとなった。

 

 

「ふぅ………ん~。ぁ~身体が怠い……やっぱ魂と身体を2つに別けるのは疲れるぜ。疲れてるんだから止めて欲しいんだがな。ヴァーリ」

 

 零が振り返るとそこにいたのは白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)を広げたヴァーリの姿だった。



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EP40 思い

 ~駒王学園上空~

 

 総ての魔術師達を全滅させた零【半身】は役目を終えると、零【分身】と再び1つとなった。

 

 そして零は気配を感じ振り返ると、そこにはを広げたヴァーリの姿があった。

 

 

「フフフ………あのカテレアを倒すとは流石は伝説の戦士という所だね」

 

 ヴァーリは不敵に笑っている。零はそれを見て、かなり面倒そうな顔をしている。

 

 

「言っておくが俺は戦わんぞ。唯でさえ疲れてるんだから」

 

 

「全然、そうは見えないけど?」

 

 

「精神的に疲れてる。と言う訳で俺は帰る……それにお前と戦う理由はないし」

 

 零はそう言って、下に降りようとするが、背後で凄まじい力を感じた。

 

 

 《Vanishing Dragon Blance Breaker!!!》

 

 ヴァーリは白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)禁手(バランス・ブレイカー)である白龍皇の鎧を纏っていた。

 

 

「君に戦う理由がなくとも、オレには戦う理由があるんでね!」

 

 ヴァーリはそう言うと、凄まじい速度で零に拳を繰り出した。零はそれを簡単に手で受け止める。

 

 

「はぁ………どいつもこいつも力やら、権力やら、なんでそんな物を求めるかねぇ………」

 

 

「そっちが本気を出さないなら、その気にさせてやる!」

 

 《Divide》

 

 白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)の能力。触れた相手の力を10秒ごとに半減させ、自分の物とする。一誠の持つ10秒ごとに力を倍加させる赤龍帝の篭手(ブースデッド・ギア)とは正反対の能力だ。

 

 

「これが君のちかr……がぁぁぁぁぁぁっl!?」

 

 ヴァーリは突然、禁手(バランス・ブレイカー)を解除すると苦しみ始めた。

 

 《たった1回の半減でこれか?!ヴァーリ!急いで余分な力を吐きだせ!!》

 

 白龍皇アルビオンが直ぐにヴァーリに指示を出す。すると、白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)から光の粒子が凄まじい勢いで放出されている。

 

 

「ぐぅぅぅぅ………半減しきれなかった。ククク……フハハハハハハ!全く面白いよ!これくらいじゃないとつまらない!もっと!もっとだ!もっとオレを楽しませてくれよ!零!!」

 

 ヴァーリは笑いながら再び鎧を纏うと、全身から凄まじい力を溢れさせている。

 

 

「はぁ………アザゼル、この場合……俺はどうすればいい?」

 

 

「全く……どう言うつもりだ、ヴァーリ?」

 

 アザゼルは黒い翼を広げると、零の横まで昇る。

 

 

「どうもこうもない。こっちの方が面白そうなんでね……オレは強い奴と戦いたい、こっち居れば強い奴と戦える。それだけだ」

 

 

「カテレアと同じ旧魔王の血筋だからかと思ったじゃねぇか」

 

 

「旧ルシファーの血筋。ヴァーリ・ルシファー………」

 

 

「フフフ、よく知ってたね(バサァ」

 

 ヴァーリの背に12枚の悪魔の翼が生える。かつて天より落とされた天使の長、その血を引くのがヴァーリだった。

 

 

「まぁどうでもいい……アザゼル、どうする?」

 

 

「ぁ~ちょいとばかり躾けてやってくれ。俺は下で騒いでいる奴等に説明してくるわ」

 

 アザゼルはそう言うと、下に降りて行った。ヴァーリがルシファーの血筋だと分かってサーゼクス達が騒いでいるのでアザゼルはその事について説明しに行った。

 

 

「はぁ………人任せかよ。ふぅ……仕方ない」

 

 零の右眼が輝き始めると、両手を広げる。

 

 

「『人を守護せし四方の神を模した戦機よ。我が声に耳を傾けよ』」

 

 零の右目の輝きと共に青・赤・玄・白の光が現れ、ゆっくりと零の周囲を回り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~一誠side~

 

 

 すっスゲェ………アレがレイなのか?

 

 普段は授業中でも外を見たりして何を考えているのか分からないレイの力……これまでもアイツが怒って戦っていた時の事。それは少し怖かったが、それはアーシアや誰かの為だ。

 

 けどさっきまで2人に別れてた時の黒髪の方は純粋に怖かった。未熟な俺でも分かる圧倒的な力、敵をでっかい斧で斬り裂いている時にアイツ………顔こそ鎧に隠れて見えなかったけど……

 

 声と雰囲気で分かった。笑ってた……まるで子供がおもちゃで遊ぶ様に敵を斬り裂くのを楽しんでいた。

 

 それを見た俺は情けない事に竦んで動けなかった。

 

 

「大丈夫、イッセー?」

 

 部長が心配そうに見ながら俺の手を握ってくれた。

 

 

「部長……俺、怖いです。今のレイが凄く怖いです」

 

 

「えぇ……私もよ」

 

 リアスの手もまた震えていた。

 

 そして上空では2人の零が1つのなり、ヴァーリと相対していた。

 

 

「レイ………」

 

 

 《どうした相棒?》

 

 一誠が空の零を見上げていると、ドライグが声を掛けてきた。

 

 

「ドライグ……俺、アイツに勝てるかな?」

 

 《無理だな。今の相棒じゃ弱過ぎる、見てみろ。ヴァーリとかいう現白龍皇がたった一度の半減でアレだ》

 

 ドライグに言われ、空を見上げるとヴァーリが苦しんでいる場面だった。

 

 

 《アレで全力じゃないなら、あの白龍皇の小娘と2人揃っても勝てないだろうさ………だが勝ち目がない訳じゃない》

 

 

「どういうことだ?」

 

 

 《神器(セイグリッド・ギア)は宿主の思いで成長し進化する。相棒が本当に勝ちたいと思うなら俺も力を貸す、奴を倒すのは俺やアルビオンの目的でもあるしな》

 

 ドライグはそう告げると、そのままドライグは黙り込んでしまう。

 

 

「強く……(ぎゅぅぅぅ」

 

 一誠は気が付けば拳を握り締めていた。




~予告~

かつて神・魔王・堕天使が手を焼いた二天龍

元人間であり歴代最弱の赤龍帝:兵藤一誠

魔王ルシファーの血を引く歴代最強の白龍皇:ヴァーリ・ルシファー

その前に立つのは古より世界を守護する4つ存在

それ等を率いる原初の神の子:零

零にとって重要な事は己の護るべき者を護り通し、母の願いを叶えること

赤龍帝と白龍皇

二天龍を宿す者達の前に居るのは無限にある並行世界の力を持つ存在であり神の子

この戦いの果てに天使は、悪魔は、堕天使はどうなるのか?

そして己が力で魔眼を制し眠るギャスパーの運命は?

それら総てを見守る原初の神はどう動くのか?


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EP41 四神

 ~駒王学園上空~

 

 

「『古に創造されし邪を滅せし守護神達よ。我が声に応え此処に降臨せよ』」

 

 零は両手を広げながら、舞う様に空を飛び始めた。何時の間にか手には広げた扇子を持っている。

 

 

「『青き龍よ。天空を翔けその術にて邪を滅ぼせ【ソウルコード:龍王機】』」

 

 零の周囲を周っていた青色の光が空に舞い上がり、雷を放出しながら巨大化していくその姿を翼を持つ龍へと姿を変える。

 

 

 《グオォォォォォォォ!》

 

 龍王機は咆哮すると零の近くに降りて来た。

 

 

「『炎を纏いし孔雀よ。天空を舞いその焔にて邪を焼き尽くせ【ソウルコード:雀王機】』」

 

 零の周囲を周っていた赤い光がその場から離れると、激しく燃え始めた。炎はやがて巨大化するとその姿を炎を纏う赤い鳥に姿を変えた。

 

 

 《キュアァァァァァァ!》

 

 雀王機は啼きながら翼を羽ばたかせ優雅に空を舞い、零の近くに舞い降りる。

 

 

「『堅き鎧を持ちし大亀よ。水を制しその鎧にて小さき者を邪より守護せよ【ソウルコード:武王機】』」

 

 零の周囲を周っていた玄い光は地へ降りていくと、地面の中に吸い込まれていく。そしてそこから水が噴き出すと中から尾の方から蛇が出ている巨大な亀が姿を現した。

 

 

 《ゴオォォォォォォォ!》

 

 武王機は大地を踏みしめ、零に向かい咆哮を上げる。

 

 

「『白き虎よ。その神速にて地を駆け金剛をも斬り裂くその爪にて邪を引き裂け【ソウルコード:虎王機】』」

 

 最後に残った白い光は、凄まじい速度で辺りを飛び回るとその姿を白い虎へと姿を変えた。

 

 

 《ガアァァァァァァァ!》

 

 虎王機は雄叫びを上げると、空を駆けながら零の元に駆け寄る。

 

 

「此奴等はとある文明が産み出した人界を守護せし超機人と呼ばれる存在だ。まぁ色々あって今は俺の所に居る訳だ………さてヴァーリ、この状況でも戦うか?(パチッ」

 

 零は扇子を閉じ武王機の頭の上に降りると、そのまま座り込んだ。

 

 

「ふっ………アハハハハハ……本当に面白いね、そのドラゴン達から溢れる力は計り知れない。けどデカいだけじゃ」

 

 

「デカい=強い訳じゃないからな………じゃあこうしよう。龍王機!雀王機!武王機!虎王機!」

 

 

 《グオォォォォォォ!!》

 

 《キュァァァァァァ!!》

 

 《ゴオォォォォォォ!!》

 

 《ガアァァァァァァ!!》

 

 

「『我、世界を守護せんがため我が魂を刃と化す、そして今、汝等と1つにならん。【四神招魂】!』」

 

 龍王機、雀王機、武王機、虎王機はそれぞれ零の言葉に応える様に雄叫びを上げると、再び光となって空に舞い上がる。そして4つの光は天から零に向かい舞い降りると零を包み込んだ。

 

 

「【ソウルコード:真・龍虎王】!降臨!」

 

 龍王機の頭部を模した兜、虎王機の顔をついた鎧、背には雀王機の翼、左肩には武王機の甲羅が装備されている。

 

 かつてアーシアの事件の際に零が呼び出した【応龍王】と同じ種類の機体だ。

 

 超機人………それは此処とは違う世界の地球の太古に無数の邪な者達が世界を蹂躙していた。それに対抗する為に造られたのが超機人だ。

 

【応龍王】はその中でも『四霊』と呼ばれる最高位のランクの機体だ。そして超機人の動力源は『五行器』と呼ばれる自然界のエネルギーを使用する永久機関を持ち、魂を宿している。

 

 先程、零が呼び出したのは『四神』の超機人。【応龍王】を始めとする『四霊』の僕でもある。

 

 そして零が纏っているは、『四神』の超機人達が合神した【真・龍虎王】だ。

 

 先程の龍王機達の巨大な姿ではないが、零の身から溢れる力は全く小さくなっていない。それどころか更に力は増大している。

 

 

「………フフフ……フハハハハハハハハハ!!素晴らしい!素晴らしいよ!零!その身から溢れる力の波動!今までに見た事がないほど強大だ!じゃあ!行くよ!それが見かけ倒しでない事を見せてくれ!」

 

 ヴァーリは零の放つ力が強大である事に歓喜し、今まで以上に力を全身から溢れさせる。そして巨大な魔力の塊を形成した。

 

 

「成程……ではこれでどうだ?『神州霊山!移山召還!急々如律令!』」

 

 零は龍王機の使う七十二の呪符の1枚を取り出すと、空に向かい放った。すると空に巨大な陣が浮かび上がり、そこから巨大な岩山が出現した。

 

 

「落ちろ!」

 

 

「フハハハハハハ!そうでなければ!面白くない!はあぁぁぁぁぁぁ!」

 

 ヴァーリは自分が形成した魔力の塊を岩山に向け放った。岩山はヴァーリの魔力弾を受け爆散する。零はそれを見ると、【真・龍虎王】の尾にある龍玉を手に取る。龍玉からは凄まじい雷が放たれ、刃を形成する。

 

 

「『龍王破山剣』、さぁヴァーリ。俺の力を半減できないお前がどう戦う?」

 

 

「確かに、力を半減できずオレの力も増えない。なら他の所から奪えばいい」

 

 ヴァーリの背の白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)の翼が大きくなる。

 

 《Half Dimension!》

 

 音声と共に宝玉が光り、ヴァーリが手を握ると残っていた校舎が一瞬の内に半分の大きさになる。

 

 

「ほぅ……他の物体を縮小させているのか。面白い……では行くぞ!」

 

【真・龍王機】に装備された雀王機の翼が大きく広がると、零は龍王破山剣を構えヴァーリに接近する。

 

 

「おらぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 一気にヴァーリの懐に入ると龍王破山剣を振り下ろした。ヴァーリの白龍皇の鎧は殆ど意味もなく斬り伏せられた。ヴァーリはそのまま旧校舎の方に落下した。

 

 

「手応えが……おかしい」

 

 零はヴァーリを斬り伏せた時の手応えに違和感を感じていた。

 

 

「ぐぅ………がはっ!危なかった……」

 

 《何と言う威力だ。斬撃の威力を半減し、全魔力を鎧の防御に回していなければ深手を負っていたぞ!》

 

 零が旧校舎の方を見ると、白龍皇の鎧を解除されたボロボロのヴァーリが立っていた。アルビオンによると、龍王破山剣で斬られる瞬間にその威力を半減させ、後は全力で鎧の防御力を上げていた様だ。

 

 

「流石はヴァーリ、戦闘に関してのセンスはずば抜けているな。よくもあの一瞬で見抜いた」

 

 

「それは零もだよ、あの一撃、本当に死ぬかと思って冷や汗を掻いたよ」

 

 

「威力は加減している。それに此処は俺の結界内、死なない様に怪我をしても直ぐに治る様に調節しておいた」

 

 ヴァーリはそれを聞くと、自分の身体を見た。零の言った通り、傷は既に消えていた。

 

 

「本当に傷が治っている」

 

 

「俺にはお前を殺す理由がない。故に今はこの断罪の間(ジャッチメント・フィールド)をお仕置きモードに変えている。この中ではどんな攻撃でも死人はでない、傷は直ぐ治る。あくまでもお仕置きする為のモードでな」

 

 どうやら、今の零の展開する断罪の間(ジャッチメント・フィールド)はお仕置きモードという状態になっているらしい。この状態ではどの様な強い攻撃であっても死ぬ事はないとのことだ。

 

 

「俺としてもお前を殺すつもりはないからな。まぁお前としては不満があるかも知れんが我慢しろ………」

 

 

「クックククク……アハハハハハハ!本当に素晴らしい!これで手加減しているなんて!でも!オレは君の本気を見てみたいよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~会談室~

 

 零とヴァーリの戦いを見ている一同は唖然としている。先程、零が呼び出した龍王機達の事にしても、龍王機達が合体した真・龍王機の事に関しても、あまりにも自分達の常識を超えている。

 

 

「おいおい、ありゃなんの冗談だよ。ヴァーリは魔王の血を引き、二天龍の片割れを宿した……俺の知る限り歴代最強の白龍皇だぞ。なのに零はそれを手玉に取ってやがる」

 

 

「その歴代最高の白龍皇があぁも簡単に………」

 

 アザゼルの言った言葉に次いでサーゼクスもそう呟いた。現在の状況では圧倒的に零が有利だ、それはミカエルもサーゼクス、経験不足であるリアス達もそれが分かっていた。

 だがそんな中で天照達は何故か表情を曇らせている。

 

 

「零………」

 

 

「あぁ……姉上、今のこの状況………」

 

 

「それにアイツ等の眼………」

 

 天照達は三大勢力の者達を見て、ある感情を読み取った。それの感情の原因は自分達の愛する零自身、それ故に零に向けられたその感情を許せなかった。

 

 三大勢力のトップ達、そしてリアス達が零に向けている眼は圧倒的な力を持つ零に対する畏怖だ。現在はその力が白龍皇に向けられている、だがその力が仮に自分達に向けられたら自分達は確実に全滅させられる事になる。特に零は母のいる天照の日本勢力の味方だ。

 

 仮に天照が直ぐに悪魔達を日本から追放する様に言えば、零はそれを実行に移すだろう。それに黒歌の様に、無理矢理に転生悪魔にされた事でも悪魔に対しいい印象はない。もしこれ以上、零の気に障れば本当に悪魔達は全滅させられかねない。それはアーシアを迫害した天使側、事件を起こした堕天使側についても同じ事が言える。

 

 かつて自分達を助けた「伝説の戦士」が今度は自分達の敵になる。しかも今度は日本神話が零の味方をするだろう。かつての大戦の際には二天龍でさえも手を焼いたのに、その二天龍を一撃で封印した零相手に自分達は何処まで抵抗できるだろう?

 

 現在の光景を見れば、自分達が確実に全滅させられるイメージしか浮かばない。故に零に恐怖している。

 

 だがそれは天照達にとっては許す事のできない行為だ。自分達の愛する零にその様な目を向ける事、自体が許せない。

 

 

「今は見守りましょう…………あの子の戦いを」

 

 天照がそう言うと、月読と素戔嗚は再び零に視線を向けた。




・ソウルコード:ユニコーンガンダム

 とある世界であるニュータイプの少年の乗っていたガンダム。

 全身にサイコフレームを搭載しており、人間サイズになってもその能力は本来と同じ。

 零が使用するとサイコフレームは翠色の光を放ち、シールドもファンネルの様に使用する事が可能である。

 また今回は登場しなかったが、フルアーマー化する事も可能である。

装備

ビームマグナム×1

シールドファンネル(ビームガトリング装備)×3

頭部バルカン×2

ビームサーベル×2

ビームトンファー×2







ソウルコード超機人

龍王機・雀王機・武王機・虎王機


零のソウルコードにより呼び出された【四神】の超機人。

とある世界の太古に、地球を蝕む百邪という存在から地球を、人類を救う為に造られた超機人。【応龍皇】は【四霊】と呼ばれる最高位の存在。

【四霊】の僕である【四神】の超機人達は互いに合体することで、その力を発揮する。

応龍皇の様に個々の意志を持っており、自分達のそれぞれの搭乗者を自ら探す。だが零の場合は圧倒的な力とその魂で4人以上の搭乗者の代わりとなっている。


【真・龍虎王】

四神の超機人達が合神した姿。龍王機の術を基本に戦闘を行う。


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EP42 ぶつかる思い

 ~駒王学園 上空~

 

 かつて神、魔王、堕天使の三大勢力が協力し、最終的には零に封印された二天龍の片割れにして白き龍の皇……白龍皇アルビオンが宿る神器(セイグリッド・ギア)白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)を所有する旧魔王ルシファーの血を引くヴァーリ・ルシファー。

 

 そのヴァーリに相対するのは、地球を人類を守護すべく造られた超機人の鎧を纏う、この世界の太陽神・天照の息子の零。

 

 その戦いは凄まじい、大天使ミカエル、魔王サーゼクス、魔王セラフォルー、堕天使総督アザゼルでさえもその戦いを見て唖然としている。恐らくこの2人の間に入れば神であっても無事では済まないだろう。

 

 アザゼル曰くヴァーリは過去・現在・未来において歴代最高の白龍皇と言われている。だがそのヴァーリでさえも零に手玉に取られている。

 

 

「このぉ!!」

 

 

「フハハハハハハ!ほらっ!こっちだ!こっち!」

 

 ヴァーリは常人では捉える事のできない速度で接近し攻撃を繰り出すが、その攻撃が零に当たる事はない。零はヴァーリの攻撃が当たる瞬間にヴァーリの後ろに移動していた。

 

 

「くっ!速い………」

 

 

「ハハハ、そんなので俺に勝てないよ。じゃあこんなのはどうだ?『九天応元…雷声普化天尊!【破】!』」

 

 1枚の術符を取り出すと、ヴァーリに向かい突きだした。すると術符より雷が放出され、それがヴァーリに直撃する。

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 雷を受け、ヴァーリの纏っていた白龍皇の鎧が砕け散る。ヴァーリは肩で息をしながら浮いているのがやっとの状態の様だ。

 

 

「くっクフフフ………」

 

 ヴァーリは満身創痍の状態ではあるが、直ぐに断罪の間(ジャッチメント・フィールド)の効果により傷は治癒していく。そんな状態なのだが何故か笑っている。

 

 

「おいおい、傷付いて喜ぶなよ。端から見たら俺まで変態の仲間だと思われるだろうが」

 

 

「えっ、零も変態じゃないの?」

 

 ヴァーリは零の発言に驚いている。

 

 

「だって零って……オーフィス、白い猫のロリっ娘を家に置いてるなんてロr「それ以上言うなら本気で潰す………2人は家族だ、そんな目で見たい事は………………ない……うん、ない」今のは気になるけど、まぁそう言う事にしていてあげるよ」

 

 ヴァーリはそう言うと傷が完治したのか直ぐに禁手(バランス・ブレイカー)化する。

 

 

「このフィールド内では傷は治るが、疲労やダメージは蓄積しているんだけどな……はぁ………さっさと疲れて倒れてくれれば終わるんだけど………俺も今日は疲れてるから、一気に終わらせる」

 

 零はそう言うと、龍王破山剣を構えて背にある雀王機の翼を広げると全身から凄まじい力が溢れる。

 

 

「!?……フフフ、まだ力が上がるのか。本当に面白い!……ん?」

 

 ヴァーリが再び攻撃を繰り出そうとした瞬間、2人は会談室の方向を見た。会談室の方から赤いオーラが溢れているのを確認した。

 

 

「この力……一誠か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~会談室 一誠side~

 

 

 凄ぇ…………何でだろう、凄く身体の奥が熱い。

 

 あの2人の戦いを見てたら、無性に零と戦いたいと心から思っている俺がいる。

 

 何でなのかは分からない、でも零のあの力を、あの強さを見たら俺の中の何かが高ぶってる。何時もの女子更衣室を覗いたりする時とは違う高ぶりがある。

 

 コレが何なのか……なんてどうでもいい。今はそんな事よりも………。

 

 

 《ほぅ……相棒、漸く気付いた様だな》

 

 

 ドライグ?

 

 

 《相棒は今まで気付いてなかったんだよ。前に奴とコカビエルと戦った時も今と同じ状況だったろ?》

 

 

 そう言えば………そうだった様な……

 

 

 《それはお前が奴に……天王理 零の強さに憧れている、そして奴を越えたいと思っている。例え敵わないと分かっていても、お前は奴との戦いを望んでいる》

 

 

 俺がレイに憧れている?……確かにアイツの強さを見たらそれを越えたいと思った。

 

 

 《ならば何を迷う事がある?》

 

 

「ぁあ!!クソッ!!!……確かに友達と戦うのは気が引ける!でも俺はそんな事はどうでもいい!俺はアイツと戦いたい!理由なんてどうでもいい!」

 

 

 《そうだ!相棒!それでいい!俺は相棒が望むのであれば助力は惜しまん!Boost!》

 

 一誠は左手に赤龍帝の篭手(ブースデッド・ギア)を装備すると、力を倍加させる。

 

 

「イッセー?!どうしたの!?」

 

 

「部長!すいません!俺、レイと戦いたいです!理由なんてありません!でも理由がなくても戦いたいんです!」

 

 

「何を言ってる!?そんな事、ダメよ!見たしょう、天王理のあの力!あんな化物みたいな奴と戦うなんて危険よ!」

 

 リアスが言うのも無理はない、歴代最高の白龍皇と言われたヴァーリが手玉に取られている。なのに歴代最弱の赤龍帝である一誠が加わったとしても勝ち目など微塵もない。

 

 

「いっs「おい小娘」」

 

 リアスは強引にでも一誠を止めようとするが、圧倒的な神聖な力を纏った刃を喉元に突き付けられ動きを止めた。

 皆がリアスの方を見ると、そこには剣を持った素戔嗚が立っていた。その顔は怒りに満ちている。

 

 

「今、なんて言った?……家の可愛い甥っ子が『化物みたい』だと?」

 

 素戔嗚の持つ剣、それは神剣・天羽々斬。元は素戔嗚の父親である伊弉諾が火の神を斬り、素戔嗚が邪神・八岐大蛇を斬った剣で神殺しの力を宿している。それが今、リアスの喉元に突き付けられていた。その理由はリアスが言った言葉が原因だろう。

 

 大天使や魔王達さえも恐怖するほどの力を持つ零、リアス達からすれば化物の様なものだろう。人であっても、天使であっても、悪魔であっても未知の圧倒的な力を存在を前にすれば、恐怖でそれが自分達と同じ姿をしていても化物の様に見えるだろう。

 

 だがそれをこの世界で誰よりも零を愛する3柱の前でそれを言ったのは間違いだった。零自身に言えば本人は気にしないだろうが、零を自分の命より大切に思っている3柱の神にとってはリアスの発言は決して許せるものではないだろう。

 

 先程まで話しをする時以外は笑みを絶やさなかった天照でさえも怒りを顕にし、太陽神の光を放っている。月読もまた神の力を放っている。

 

 リアスは神々の殺気により全くと言っていいほど動けないでいる。天使や魔王達でさえもその力を前にして動けないでいる。

 

 

「小娘、お前が零の事をどう思っても構わない。心の中で思っていれば未だしも、口に出した………可愛い甥っ子を化物呼ばわりされて黙ってられるかよ」

 

 素戔嗚の天羽々斬の握る力が強くなると、刀身から神の力が溢れ出した。

 

 

「その命で贖え……小娘」

 

 素戔嗚がそう言うと、天羽々斬を振り上げ一気に振り下ろした。サーゼクスは妹を助けるべく動き出すが、既に時は遅い。

 

 《ガキィン!》

 

 鉄と鉄のぶつかる事と共に、素戔嗚は驚いた表情をしている。

 

 

「全く何をしているのですか叔父上?」

 

 天羽々斬を止めていたのは、リアスが化物と呼んだ真・龍虎王を纏った零だった。

 

 

「全く……叔父上達の神気を感じたかと思えば………折角、母上が穏便に話し合いで終わらせようとしているのに……魔王の妹を殺そうなんて………俺的にはどうでもいいですが……叔父上がこの女を殺せばそれこそ、日本神話体系と悪魔の戦争ですよ。それは母上の本意でもありませんしね……って母上、月姉までなんで顔を逸らしてるんです?」

 

 零はそう言いながら天照の方を見てみると、天照と月読が顔を逸らしていた。

 

 

「いっいえ……そうですね。戦争は避けたいですね(可愛い息子を侮辱した様な輩と戦う事はやぶさかではなかったなんて零の前では口が裂けても言えません。そんなの嫌われてしまいます)」

 

 

「あっあぁ……うん、そうだな(危ない、危ない。可愛い零を馬鹿にした奴とその種族を塵も残さず滅してやろうなんて、零に知られたら嫌われてしまう所だった)」

 

 どうやら2人とも零を侮辱したリアスとリアスの属する悪魔勢力を滅ぼすのを本気でやろうとしていた様だ。2人はその様な事を考えていたなどと零に知らたくなかった様で顔を逸らしていた様だ。

 

 

「はぁ………叔父上の事だから、多分俺の事を『化物』やらなんやら言ったから怒りに任せて斬ろうとしたんでしょう?」

 

 

「ぅう……ごめんなさい」

 

 素戔嗚は零からの圧力に負けて、その場に正座した。

 

 

「俺的には黒歌や白音の事も在りましたから……悪魔を一匹残らず、滅してやろうとも思いました……特にこの女は…まぁ…叔父上も俺の事を思って怒ってくれたんでしょうけど………」

 

 零はそう言うと一旦区切る。

 

 

「でも!叔父上は日本神話の頂点の一角なんですからもう少し考えて行動して下さい!」

 

 

「はっはい……」

 

 零の言葉に消沈している素戔嗚。どうやら零に嫌われたと思った様だ、今にも手に持つ天羽々斬で自害しそうな雰囲気だ。

 

 

(零に嫌われた……嫌われた……嫌われた……小さい頃の零との思い出を胸に死のう)

 

 どうやら雰囲気だけでなく、本気の様だ。

 

 

「はぁ………まぁその…………『ありがとうございます……父上』(ぼそっ」

 

 その様子を見て零は素戔嗚の横を通り過ぎる時にそう囁いた。それを聞いた素戔嗚は絶望の表情から幸せそうな笑顔に変わる。

 

 

「まぁ…この女を殺すなら俺がしますよ」

 

 零はリアスの方を見て、そう言った。リアスと周りの者達はその言葉の意味が全く分からなかった。これまで零はオカ研に顔を出している、故にリアスがどう言う性格なのかも理解できている筈だ。

 

 

「フン、全く理解できていない顔だな。だったら教えてやる(シュ」

 

 零はへたりこんでいるリアスを見下ろした。零は真・龍虎王の龍王機の尻尾を伸ばしリアスの首を絞めると身体を持ち上げた。

 

 

「俺は此奴を消す。今日、改めて理解したよ。此奴はにギャスパーは任せられない。だが此奴に何と言った所で簡単には渡さんだろうからな………それに気に喰わない事もあるしな」

 

 その眼は本気でリアスを殺そうとしている。迷いなど一切ない。サーゼクスはそれに気付くと自分の滅びの魔力を全身から放ち、それを零に向けて放った。

 

 

「無駄だ」

 

 真・龍虎王の左肩に装備されていた武王機の甲羅・武鱗甲の盾が分裂しサーゼクスの滅びの魔力を防いだ。

 

 

「なっ!?」

 

 

「はぁ………『止めろ!レイ!!』《ガァン!》ほぉ……一誠か」

 

 武麟甲の1枚が背後から殴り掛かって来た一誠の拳を防いだ。

 

 

「止めろレイ!部長を離せぇぇぇ!」

 

 《Boost!》

 

 

「邪魔だ、退いていろ。俺は此奴が気に入らない……だから消す。俺の都合でな」

 

 

「どう言う事だよレイ!何で部長を殺そうとするんだよ?!」

 

 《Boost!》

 

 一誠は更に力を倍加させるが武麟甲は微動だにしない。

 

 

「理由はギャスパーを苦しみを理解しなかったこと、眷族は家族、愛していると言いながら何もしなかったこと。それはギャスパーだけの事だけじゃない。そこにいる木場祐子の事もそうだ。此奴はな、眷族を家族とか何とか言っているくせに何もしない、外から隔離し護る事で家族を守ったなどと言う悦に浸っているだけの愚かな小娘だ。それに此奴はお前等の苦しみを分かったつもりでいるが、理解しようとなど微塵もしていない。ただの1人善がりだ」

 

 零はそう言いながら徐々に首を絞める力を強くしていく。

 

 

「ふざけんな!ふざけんなよ!そんな事ねぇ!部長は何時も俺達の事を第一に考えてくれてる!」

 

 

「それはどうだろうな?」

 

 

「そうなんだよ!部長は何時だって優しくて!俺達の事を見てくれている!」

 

 

「ならば聞こう、何故この女はギャスパーが力をコントロールできないと言うだけで、この会談に連れて来なかった?」

 

 

「それはギャスパーの力が暴走したr「会談ができなくなる?」そうだ」

 

 

「あぁそうかもな。だがその性で今回、ギャスパーは利用された。例えついこの間まで厳重に護っていたとしても何か在るかも知れないと考えるべきだったんだ。そうすれば対抗策をたてる事はできた、なのに此奴はしなかった。暴走?危険?それこそふざけるな、それをどうにかする為に助力するのが家族の役目だ。なのに此奴はどうだ?ギャスパーが外に出たがらない事を良い事に何もしなかった。それどころか、あのままだったら他人にでも任せてただろうさ」

 

 零は淡々とそう言う。

 

 

「確かにそうかも知れないけど!部長には部長の考えがあるんだろう!?」

 

 

「はぁ………だったら一誠。示してみせろ、お前達の言うグレモリー眷族の愛とやらをな。おい、アザゼル!」

 

 

「えっ?俺?」

 

 アザゼルは突然声を掛けられて驚いている。

 

 

「お前が作った神器の力を抑える腕輪を一誠に渡せ。流石にこのままじゃ相手にもならん………一誠、もしお前が俺にグレモリー眷族の愛とやらを認めなせねば俺は此奴を殺す。誰が何と言おうとな……此奴はな、機会があれば白音やアーシアを自分の眷族にしようと狙ってたんだ、それだけでも俺は腹が煮えくり返す思いだっただよ」

 

 そう言いながらリアスを離す。だが何故零はリアスがアーシア達を自分の眷族にしようと考えていたのか分からない。

 

 

「そっそんな事ないだろう……部長がそんな」

 

 

「いいや……絶対そうだ。アーシアと白音を見る時の眼……特にコカビエルとの戦いの後……‥2人の事を何時か引き入れてやろうという目をしていた。どうせそのまま俺を自分達の元に引き入れようなどと考えていたんだろうな」

 

 そう言われてリアスは顔を伏せている。リアスはそう言われた事に心当たりがあったから。できれば白音達を自分の眷族にし、零を通じ日本神話との交渉しようと考えていたのだ。

 

 

「ぶっ部長……本当なんですか?」

 

 

「そっそれは……えぇ…‥彼女達の力を見て私の眷族になってくれればとも思ったわ」

 

 一誠はリアスの言葉に驚く。まさかリアスがその様な事を考えているなんて思っても居なかった様だ。

 

 

「フン………じゃあ一誠、外に居るぞ。本気でやるなら来い……だが俺の前に立つなら死ぬ覚悟はしておく事だな。俺は加減などせんぞ」

 

 零はそう言うと翼を広げ外に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~零side~

 

 

 これで準備は整った。

 

 後はアイツ次第だけど………俺はリアス・グレモリーが気に喰わん………白音達の事も、ギャスパーの事にしても。

 

 だから思い知らせてやろう。

 

 お前達のその愛とやらが通用するのかをな。

 

 




~次回予告~


リアスの命を護る為に立ちあがった赤龍帝・一誠。

魔王の血を引く力を求める歴代最高の白龍皇・ヴァーリ。

その2人に相対するのは世界守護せし超機人を纏いし、原初の神の子・零。


一誠はリアスの命を守る為に、圧倒的な力を持つ零に立ち向かう。

だが零は突然にもリアスの命を奪おうとしてのは本当に白音達やギャスパーの事が原因なのだろうか?


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EP42 四神VS二天龍

 ~会談室~

 

 

「一誠……止めなさい。例え私の命が掛かっていても彼と戦うなんて危険だわ」

 

 

「いいえ……良いんです。元は俺が戦いたいって言い出してあぁなった訳ですし……」

 

 

「まぁそう言っても仕方ないだろう。ほらっよ、赤龍帝」

 

 アザゼルは紫色の宝石の嵌まった金色の腕輪を渡した。

 

 

「そいつは禁手(バランス・ブレイカー)時の負担をある程度肩代わりしてくれる。後はお前次第だ……言っておくがアイツは本気だったぞ。本気でリアス・グレモリーを殺そうとしていた、お前も初めから本気で掛からないと殺される可能性だってある」

 

 

「そんな……アイツ…‥どうして」

 

 

「それはあの子が知っているからです。何かを愛する事の難しさを、本当の意味で護る事の難しさを………何より家族の大切さを……だから貴方も本気であの子と戦うなら死ぬ気で戦う事です。あの子はかつて自分の大切な者を傷付けようとしたものを滅ぼしました。相手が神であろうと、魔神であろうとも………」

 

 天照は一誠にそう言った。

 

 

「愛する難しさ……護る難しさ……良く分かんないけど……俺も部長が殺されると聞いてら本気で戦わない訳にはいきませんから。行くぞ!ドライグ!」

 

 《やっと覚悟を決めたか……行くぞ相棒!Welsh Dragon Over Booster!》

 

 一誠は赤龍帝の鎧(ブースデッド・ギア・スケイルメイル)を纏うと外に向かい飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~駒王学園 中庭~

 

 現在中庭には真・龍虎王を纏う零が立っていた。その身体から溢れる力、殺気は本当の物だ。

 

 それに相対するのは伝説の二天龍の力を宿した元人間、現転生悪魔の最弱の赤龍帝・兵藤一誠。そして魔王ルシファーの血を受け継ぐ最高の白龍皇・ヴァーリ・ルシファー。

 

 まるでかつて三大勢力が二天龍と対していた時の様な状況だ。

 

 

「さて……覚悟は出来たか、お前等?今は断罪の間(ジャッチメント・フィールド)の効力を切っている。故にお前等は傷付いても、治癒しない………それがどういう状況か分かった上でそこに立っているのだな?」

 

 

「っ!?(ガクッガクッ」

 

 

「ふっ!フハハハハ……そうだよ!それだよ!そうでなくては面白くない!(ゾクッ」

 

 零は本気で2人を倒そうとしている。その力と殺気を受け一誠は震えており、ヴァーリは恐怖を感じながらも強敵と戦える事に歓喜している。

 

 

「言っておくが……もう手加減するつもりは毛頭ない。黒蛇刀!」

 

 先程まで持っていた龍王破山剣を龍玉に戻し、代わりに剣先に蛇の頭部のパーツのついた剣を装備する。そして剣先の蛇が口が開き、炎を噴き出し刀身を覆う。

 

 

「一誠……お前にはお前の護る物がある。ヴァーリ……お前には己が強さを確かめたいという譲れない物がある。

 俺にも俺の護る物がある、譲れぬ物もある。俺はそれを守る為なら………この世界の全ての神であろうと全員破壊する………逃げるならば逃げろ、そうすれば追いはしない。だが立ちはだかるならこの場で滅ぶだけだ!」

 

 《グオォォォォォ!》

 

 《キュアァァァァ!》

 

 《ゴオォォォォォ!》

 

 《ガアァァァァァ!》

 

 零は炎を纏った剣を振るい、翼を広げた。するとその背後に龍王機、雀王機、武王機、虎王機の姿が浮かび上がった。

 

 

「俺だって負けらんねぇんだよぉぉ!!」

 

 《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

 

 一誠のそう叫ぶと力を倍加させていく。そして限界まで力を倍加させると零に向かい翔けていく。

 

 

「フハハハハ!二天龍対伝説の戦士……かつての戦いの続きを始めようじゃないか!」

 

 ヴァーリは歓喜し、白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)を大きく広げ零に向かって行く。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 2人は殆ど同時に零に殴り掛かった。その拳は真っ直ぐ零の身体に吸い込まれる様に放たれる。

 

 

 《《ガァン!》》

 

 

「「!?」」

 

 

「なんだ、その程度で終わりか?」

 

 2人の全身全霊の拳を同時に放った。一誠の倍加された力、魔王の血、その力は聖書の神や魔王にかなり近いだろう。だがその一撃を受けても全く動じていない。

 

 

「黒蛇刀」

 

 手に装備している黒蛇刀の刀身が伸び、鞭の様に振るうと零は2人は吹き飛ばす。

 

 

「ぐあぁぁぁぁ!」

 

 

「ぐぅぅぅぅぅ!」

 

 炎を纏った黒蛇刀は生きているかの様にうねっている。零はそれを大きく振るった。まるで炎の蛇の様になった黒蛇刀が再び2人に襲い掛かる。

 

 

「【黒蛇刀・三千斬】!」

 

 無数の斬撃が一誠とヴァーリに襲い掛かった。2人はそれを避けようとするが、周りを黒蛇刀の刀身に囲まれている為逃げる事ができない。そして、2人は黒蛇刀の閉鎖空間でその身に斬撃を受けた。

 

 

「うぁぁぁぁ!」

 

 

「ぐぅぅぅぅ!」

 

 その斬撃は2人の纏う鎧を切り刻んだ。鎧はそれに耐えきれず粉々になる。零はそれを見ると斬撃を止め、黒蛇刀を自分の元に戻した。

 2人はそのまま重力によって地面に落下していく。

 

 

「ぐぅ……(うっ嘘だろ。たった一回の攻撃でこれかよ)」

 

 

「っ……(流石に今のは効いた。今のままじゃ敵わない。覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を使うか?いや…だが)」

 

 2人は地面に落ちるとダメージで直ぐには立ち上がれない様だ。

 

 

「これで終わりか……ならそこで寝ていろ。俺はあの女を消しに行く」

 

 零はゆっくりと2人の元に降りると、そういって身を翻す。

 

 

「待…てよ」

 

 このままではリアスが零に消される。そう思った瞬間、一誠の中で何か変化が起きた。

 

 

「部長は……やらせねぇ…俺が……俺が守るんだ」

 

 一誠の全身から赤いオーラが溢れる。

 

 

「……何故お前はあの女をそこまでして守ろうとする?下僕だからか?命を救われたからか?だったら勘違いだ」

 

 

「なんだと!?」

 

 

「お前が堕天使に貫かれたあの時、あの女でも直ぐに治療すればお前を助ける事ができた。なのに何故お前を転生悪魔にしたか……簡単な話だ、お前は確かにポーン8個で転生したんだったな?」

 

 

「そっそれがどうしたんだよ?」

 

 

「つまりお前に何らかの大きな力を持っている分かったから自分の物にした。そうして命を助けたと思わせ、自分に忠実になる様に仕向けた。俺からすればそれ以外考えられんのだがな」

 

 

「なっ!?………………」

 

 一誠は一瞬驚いた様な表情をして俯いた。

 

 

「だけど……あの人は俺を必要だって言ってくれた。それに!俺は部長が好きなんだよ!始めてみた時から一目惚れしちまったんだ!もしお前が言う様に俺が利用されているだけだとしても、俺は俺の力であの人を振り向かせて見せる!」

 

 

「………そうか……なら俺を止めてみせろ。そうでないとリアス・グレモリーが死ぬぞ」

 

 

「レイ!本当に部長を殺すって言うなら俺は本気でお前であっても倒す!」

 

 一誠が零に向かいそう言うと、赤龍帝の篭手(ブースデッド・ギア)の宝玉から凄まじい光が放たれる。それは今までにない輝きだ。

 

 

【相棒、お前の覚悟受け取ったぞ。神器もお前の意志により新たな進化をしようとしている】

 

 

「どっドライグ!?新たな進化ってどう言う事だ!?」

 

 

神器(セイグリッド・ギア)は持ち主の思いを糧に進化と変化を繰り返す。赤龍帝の篭手(ブースデッド・ギア)もまた相棒の思いに応えて新たな進化を得た】

 

 

「新たな進化、それってどんな」

 

 

【Welsh Dragon Over Drive!】

 

 音声と共に一誠を鎧が覆う。それは未完全の禁手(バランス・ブレイカー)の時と全く同じなのだが、纏うオーラは先程までとは違っている。より強く、よりドラゴンのオーラに濃くなっていた。

 

 

「なんだ……何時もと変わらないと思うんだが」

 

 

【いいや………ドラゴンのオーラの量も質も今までより強くなっている。今の相棒では時間制限がついているがな……まぁ戦えば分かる】

 

 

「確かに何時もより力に満ちている様な………なぁドライグ、神器(セイグリッド・ギア)は持ち主の思いに応えて成長するんだよな………だったら此奴の力も頂く事もできるだろう」

 

 一誠は近くに落ちていたヴァーリの白龍皇の鎧の宝玉の欠片を手にする。

 

 

 

 

「くっ………ハハハハハ!ライバルくん、それは自殺行為に等しいよ」

 

 

【そうだ!ドライグ!お前の宿主を止めろ!】

 

 倒れていたヴァーリが立ち上がると、ヴァーリの神器(セイグリッド・ギア)白龍皇の光翼(ディバイン・ディバインディング)に宿るアルビオンがそう叫ぶ。

 10秒ごとに力を倍加させるドライグ、10秒ごとに力を半減させるアルビオン。正反対の力、一誠はそれを取り込もうとしている。

 

 

【死ぬつもりか、相棒?】

 

 

「死ぬ気なんてさらさらねぇ!だけど痛いのなら我慢する!ヴァーリ!アルビオン!お前等の力!貰うぞ!(バリッン」

 

 一誠は右手の篭手にヴァーリの鎧の宝玉を叩きつけた。すると青色の光と緑の光が右手の篭手から放たれる。

 

 

「いたい!いたい!いたい!クソ!いてぇ!!!」

 

 

【馬鹿な……我等の力は相反する力だ。その行為は自殺行為だ】

 

 

【アルビオンよ、俺は今まで様々な宿主を見てきた……中でもこの兵藤一誠はバカだ。そして知った。バカも突き通せば不可能を可能にするとな!いいだろう!俺も命を懸けるぞ!相棒……いや兵藤一誠!!!】

 

 まさに自滅行為であるが、一誠はリアスの為に己が命の炎を燃やす。

 

 

【Vanishing Dragon Power is taken!】

 

 一誠の思いに応えた神器(セイグリッド・ギア)がその力を変化させる。一誠の右手の篭手が白くなった。どうやらヴァーリの消失の力を手に入れた様だ。

 

 

【馬鹿な………ありえん。こんなことが】

 

 

「ふっフハハハハハハ!面白い!面白いよ、ライバルくん!だったらオレも限界まで力を引き上げよう!」

 

 ヴァーリがそう言うと、再び禁手(バランス・ブレイカー)化して全身から白いオーラを放出する。

 

 

「ふっ………ククク…アハハハハハハハ!好きとか、惚れたとか……何所の恋愛ドラマだ?聞いていてこっちが恥ずかしくなる。だが面白い……ならばそれを全力で俺にぶつけてみろ【五行器・輪転】!」

 

 零は真・龍虎王に合神している龍王機、雀王機、武王機、虎王機に動力源である周囲の自然エネルギーを取り込み活動する五行器の力を解放すると、零を4つの光が包み込んだ。

 

 

「なっ!?」

 

 

【馬鹿な………これは既に神どころか……オーフィスやグレードレッド並みだぞ。本当にアイツは何者だ?】

 

 此処に来て更に力を上げた零に驚いている一誠とドライグ。

 

 

「まだこんな力を隠してたのか………あのグレードレッドやオーフィスと同等レベルとは本当に君はオレを楽しませてくれる!」

 

 

【クッ!なんというプレッシャーだ。ヴァーリ、気を付けろ……あんなもの真面にくらえば消滅するぞ】

 

 ヴァーリは更に力が上がった事を歓喜している、アルビオンの言葉は届いているのか怪しい所だ。

 

 

「では行くぞ!」

 

 零は翼を広げ、空高く舞い上がる。一誠とヴァーリもそれを追掛けドラゴンのオーラを纏いながら飛び上がる。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

【相棒!奴がこれ以上力を上げる前に決めろ!次の一撃に総てを込めろ!】

 

 

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ!!」

 

 

【ヴァーリ!これ以上長引くと拙い!一撃だ!次の一撃を全力で放て!】

 

 2人は自分達の持てる力の全てを次の一撃に込める。そして赤と白の光と化すと零に向かい凄まじい速度で接近する。

 零は途中で反転し黒蛇刀を消し、再び龍王破山剣を装備すると力を龍王破山剣に流し込む。

 

 

「【龍王破山剣:四神・天魔滅斬(天魔を滅する四神の斬撃)!】」

 

 零も4つを纏い、一誠とヴァーリと衝突した。

 

 四神と二天龍の力が激突した事で辺りは光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅ……がぁ……」

 

 

「っう………ぐぅ」

 

 光が納まり、駒王学園の中庭にはボロボロの状態の一誠とヴァーリが倒れていた。零は全く無傷で2人を見降ろしている。

 

 

「ふぅ………(流石に今の状態じゃ1日に強大なソウルコードを幾つも使うのは疲れる)」

 

 零は着地すると龍王破山剣を持ち、2人の元に歩を進める。そして2人との距離が近くになった時に、一誠の上に紅い何かが覆いかぶさる。

 

 

「止めて!もう止めて!これ以上…一誠を傷つけないで!」

 

 それはリアスだった。リアスは涙を流しながら、そう叫んだ。

 

 

「何故……お前はそうやって……思いを踏み躙る」

 

 零は何故かそう言った。リアスはそれを聞くと何が何なのか分からない顔をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 一誠は命を賭してお前を護ろうとした……なのにそのお前が俺の前に堂々と出て来るとはふざけているのか?……それはなんのつもりだ?

 

 俺に殺さてもいいと言う事か?ふざけるな!貴様は命を賭して護ろうとした一誠の思いを踏み躙るつもりか!?

 

 何故それに気付かん…………外敵から護るだけで、外から隔離するだけで、貴様は護ったつもりでいるつもりか!?そんな事したとしてもそれはただ苦しみから遠ざけているだけに過ぎない。

 

 貴様はそれで救ったと、護ったと思い込んでいるだけだ。姫島朱乃のことも!ギャスパーのこともだ!お前はアイツ等の事を護ったつもりでいる。だからこそ俺はお前が目障りだ。

 

 アイツ等の心の奥底にある本当の苦しみを理解しようとしない。まぁ俺的にはそれだけで腹立たしいがな。

 

 家族だと言うのであれば何故ギャスパーをあの部屋に閉じ込めた!?兄の……魔王の命令だからか?!ふざけるなよ!本当に愛しているなら例え誰が何と言おうとギャスパーを閉じ込めることなどしなかった筈だ。お前がギャスパーをあそこに閉じ込めていた事でギャスパーは外の世界と触れる機会を失い、力を制御する機会すら失った。お前はギャスパーから可能性を奪ったんだ。

 

 木場祐子の事にしても、姫島朱乃のことにしても、一誠のことにしても、お前は言葉を投げかけ、見守るだけだ。自分で動こうとしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで何が王だ!?何が家族だ!?」

 

 

「ッ!?」

 

 リアスは零にそう言われ目を見開いた。リアスのやっていた事は自分の眷族の為にやっていた事だ。だがそれは時として一誠やギャスパー達に悪影響を及ぼす事がある。

 例にあげるなら、先に零が言った様にギャスパーを封印した事だ。幼き頃よりギャスパーはその血と力の性で他人から拒絶され過ごしてきた。リアスはギャスパーを眷族にした、だが兄であり魔王のサーゼクスはその力が危険な為にリアスに封印する様に命じた。

 だがこれがギャスパーが他人と接する機会を無くし、更に封印していた部屋に閉じこもっていた事で力を制御する機会を失った。

 

 

「これから先、お前が傍に居れば他の者は本当の意味で救われる事はない………此処で消えろ」

 

 零は龍王破山剣を振り上げると、刀身が雷を纏う。この刃でリアスを切れば確実にリアスを消滅させる事ができるだろう。

 

 

「では散れ」

 

 龍王破山剣を一気にリアスに振り下ろした。

 

 

「………チッ」

 

 零は龍王破山剣を止めた。その理由は朱乃、祐子、アーシアがリアスを庇う様に飛び出してきたからだ。

 

 

「私はリアスの親友……貴方が何と思おうとそれは変わりませんわ」

 

 

「ボクも部長に差しのべられたから今、ここに居る。ボクはその恩義に報いる為に部長を護る!」

 

 

「零さん!駄目です!リアスさんを殺さないで下さい!」

 

 

「…………はぁ。全く……」

 

 零はそう言うと、龍王破山剣を降ろし真・龍虎王の鎧を解いた。

 

 

「それが………お前達の答えか……ならばいいだろう。そいつは見逃してやる……だがリアス・グレモリー、忘れるなよ。もしアーシアや白音に手を出せば苦しみを与えて産まれてきたことを後悔させてやる。後ギャスパーは俺が連れて行く………チッ、使い過ぎたか」

 

 零はそう言うと右眼を閉じた。すると右眼より血が溢れ出した。

 

 

「零さん!?血が!!」

 

 アーシアは直ぐに聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)で右眼の治療を始めた。だがその力は全く効いていないのか血は止まる事はない。

 

 

「とっ止まらない。どうして!?」

 

 

「これは怪我じゃないからな。一時的な物だ……血は直ぐに止まる」

 

 零はそう言うと、そのまま身を翻し歩を進め始めた。

 

 

「【精神コマンド:絆】」

 

 零がそう呟くと、一誠とヴァーリを暖かな光が包み込んだ。すると2人の傷が瞬く間に消えた。

 

 

「友人を傷付けたままと言うのはどうにも後味が悪い………ただそれだけだ。アーシア、帰るぞ」

 

 零はそのままアーシア達と共に、ギャスパーを連れこの場から消えた。




・赤龍帝の激昂【ブースデッド・ギア・オーバードライブ】

怒りなどの感情の高まりを引き金に発現する一誠の新たな力。

完全な禁手【バランス・ブレイカー】状態でこそ真の力を発現させるが、今回は一誠の実力不足の性で未完全な禁手【バランス・ブレイカー】であったので魔力の質と量がドラゴンの性質に近付きパワーアップしただけ。しかし制限時間付きとは言え、神や魔王に近い力を出す事ができる。

デメリットとして、使用後は肉体と精神にかなり負担が掛かる。

今回の場合は一誠がリアスが殺されそうになったので発現したが、普段の状態では発現するかどうか怪しい所である。

普段の状態でオーバードライブを使用したとしても10秒持つかどうか……。


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EP43 会談後

 ~駒王学園 中庭~

 

 零達が消えた後、三大勢力は駒王学園の修復作業を行っていた。

 

 

「三大勢力が揃って修復とか妙な光景だぜ……それにしても零の奴、結界消す前に修復していけよ」

 

 アザゼルはそう言いながら頭を掻き毟っていた。結局のところ、零の事を聞きそびれてしまったので少し落ち込んでいる様だ。

 

 

「今回は色々とあって話し合いもできる様な状況ではありませんね」

 

 天照がそう切り出すと、ミカエル、アザゼル、サーゼクス、セラフォルーが天照を見る。

 

 

「ですが私共と……天使や堕天使の方々は未だしも悪魔の方々とはあまり好ましい関係ではないですね。それに零の報告で転生悪魔達の扱いについても色々と聞いています」

 

 それは天照達が零から聞いた話だ。悪魔や天使達は過去の大戦において深手を負い、種そのものが滅びようとしている。だが悪魔達は『悪魔の駒(イーヴァル・ピース)』によって他の種を転生悪魔にする事で種の存続を図ろうとしているが、実際の所、転生悪魔は言わば僕。純粋悪魔達から道具の様に扱われるケースも少なくない様だ。

 

 

「全くふざけてやるぜ、自分達の都合で悪魔にした連中を差別し道具の様に扱うとは……」

 

 素戔嗚がそう言うと、サーゼクスとセラフォルーは苦い表情をしている。素戔嗚からは凄まじい神気が溢れており、今にもサーゼクス達を切りそうな勢いだ。

 

 現在の日本神話体系と悪魔側の関係は正直言うと最悪だろう。先の話し合いでもあった様に、転生悪魔の件の性で日本の幾つもの妖怪や種族が全滅させられた。そしてその転生悪魔達が不当な扱いを受けている事を知った。

 

 その件に加え、魔王の妹であるリアスが零を「化物」よばわりした性で戦争しようと思ったくらいだ。3柱の神の悪魔に対する好感度は既にマイナスだ。恐らく、零が止めなければ確実に素戔嗚は神剣でリアスを斬っていただろう。そしてそのまま確実に悪魔と戦争になっていたかも知れない。

 

 理由としては零を侮辱した事が殆どだろう。

 

 

「サーゼクス殿、できれば我々も無益な争いはしたくありません。我々が争えば人の子等も犠牲になるでしょう……ですので我等も出来るだけ事を穏便に運びたいと思っています」

 

 

「えぇ……それは我等も望んでいる事です。勿論、転生悪魔の件、この日本での領土問題についても直ぐにでも対応させて頂きます」

 

 天照の言葉にサーゼクスはそう言って頭を下げる。これが今、サーゼクスに出来る最大限のことだ。

 

 

「ですが………これだけは言っておきます。【もし我が息子を傷付けた時は………貴方達を容赦なく、この世界から消しますよ?】」

 

 一瞬ではあるが天照から凄まじい力と殺気と共に魔を焼き尽くす日輪の光が放たれた。サーゼクスはそれを間近で感じ、動けなくなくった。

 

 

「では私達はこれで失礼します」

 

 天照はそういうと、月読と素戔嗚と共にその場から消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かぁ~……やっぱ神にも色々いるんだな。俺も長い時を生きた中であそこまでおっかねぇ神は見た事がねぇぜ」

 

 アザゼルは何時もの様な軽い口調でそう話しているものの、全身から汗が噴き出していた。

 

 

「全く……本当に彼は面白いよ」

 

 全員が振り返ると、ヴァーリが立っており、その横には棒を持った男が立っていた。

 

 

「美猴まで居やがる」

 

 

「知り合いか、アザゼル?」

 

 アザゼルはヴァーリの横に居る男の事を知っている様で、その事についてサーゼクスが訪ねた。

 

 

「アイツは闘戦勝仏…‥…つまりは西遊記のクソ猿、孫悟空の末裔だ……しかしお前まで居るとは、【禍の団(カオス・ブリケード)】に入るなんて世も末だ」

 

 アザゼルがそう説明すると皆は驚いている。

 

 

「カッカッカッ!オレッチは初代と違って自由気儘に生きるんだぜぇ……それよか、ヴァーリさっきまで此処に張ってあった結界は誰がやったんだぜぃ?」

 

 

「零……伝説の戦士だよ」

 

 

「マジか!?どいつが伝説の戦士なんだぜぃ!?オレッチも手合せしてみたいぜ!」

 

 美猴は「伝説の戦士」がいると聞くと、誰がそうなのかと必死に探す。

 

 

「彼は帰ったよ」

 

 

「うぇ~………それは残念だ、じゃオレッチ達も戻ろうぜぇヴァーリ」

 

 

「あぁ。じゃあアザゼル、オレ達は行くとするよ」

 

 

「おいおい、未だパパのお話が終わってないぞ!」

 

 アザゼルは突然そう言い出した。周りの一同はそれを聞いて唖然としている。

 

 

「きもっ………それと前から言ってる様にアザゼルの下着とオレのを一緒に洗わない様に言ってただろう。それに毎度、毎度、うざったいったらありゃしない。と言う訳でオレは面白そうなあっちに着く訳だ。じゃあな、ア・ザ・ゼ・ル」

 

 ヴァーリはそう言うと、美猴と共に消えた。アザゼルはヴァーリの言葉で衝撃を受けており、その場に倒れ込んだ。

 

 

「きっきもい……きも……ぱっパパがきもい……がはっ!(ガクッ」

 

 アザゼルはそのまま吐血しその場に伏した。一同は過去のアザゼルの姿から全く予想できない現在の姿に唖然となりながらもそれぞれの居場所へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~天王理家宅~

 

 

「ふぅ……今日は少し力を使い過ぎたか……それに何だか、凄く面白い場面を見逃してしまってる様な気がするな」

 

 零は家に戻ってくると、疲れた様子でソファーに座り込んだ。

 

 

「あの零さん、眼の方は大丈夫なんですか?」

 

 

「ん?あぁ………俺は一定以上の力を使うと一時的に視力を失うんだ」

 

 一緒に戻ってきたアーシアが心配そうに零に尋ねると、本人はそう答えた。

 

 

「えぇ!?」

 

 

「明日の夜には治る。心配しなくていい……(あっ……ミカエルにアーシアの事で聞きたい事が山ほどあったのに……まぁいいや、今度でも呼び出してやる。来なかったら天界を滅ぼすぞと脅しをかけたら直ぐに来るだろう)」

 

 零がとんでもない事を考えていると、黒歌が話し掛けてきた。

 

 

「それにしてもご主人様、2人に分身するなんて聞いてないにゃ」

 

 

「えっ!?ご主人様、分身したんですか?!」

 

 

「子供になるし、分身する………零、本当に不思議」

 

 黒歌の言葉に留守番をしていた白音とオーフィスが驚いていた。

 

 

「アレは俺のもう1人の人格でな。まぁ性格に問題があるが、考えて居る事は俺と大差ない……今回は手が足りなかったから偶々手伝って貰ったんだ………今回は特にギャスパーの事でアイツも頭にきてたんでな。だが学園の半分を吹き飛ばすのはどうかと思うが……まっ直すのはアイツ等に押し付けてきたしいいか」

 

 どうやら零のもう1人の人格もギャスパーの件で敵に怒りを持っていた様だ。

 

 

「さてと……これから少し忙しくなる。皆にも付き合って貰わないとな」

 

 

「「「「えっ?」」」」

 

 零の言葉に皆は揃って首を傾げた。

 

 

「そう言えばご主人様、あの吸血鬼はどうしたのにゃ?」

 

 

「ギャスパーのことか、今は眠っている。此処に来る前に部屋に寝かせてきた………ふぅ、今日は少し疲れた。眠るとしよう」

 

 零は疲れた様子で立ち上がると、そのまま自分の部屋に向かった。当然の様に、アーシア、オーフィス、白音、黒歌もついていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~翌朝~

 

 

「いやいや………勢いで寝たけど何で皆と一緒に寝てるんだ…………」

 

 両脇にはアーシアと黒歌、身体の上には白音とオーフィスが眠っている。どうやら昨日は勢いで寝てしまった様で、4人が一緒に寝て居る事に気が付かなかった様だ。

 零は起きたものの、未だその右眼には光が戻っていない。零は右眼を閉じ、慣れた様子でオーフィスと白音を身体の上から降ろした。

 

 

「ふぅ………やっぱ力を失っている間は不便だな。ん?」

 

 零は何かに気が付き、顔を上げると窓の外に大きな鴉がいた。よく見れば足が3本ある。

 

 

「八咫烏か………母様の使いか?」

 

 窓を開けると、八咫烏が咥えている袋を差し出した。零がそれを受け取ると、八咫烏は身を翻し空へと飛んで行った。

 

 

「なんだ?」

 

 零は袋を開けると、中から手紙を取り出した。どうやら天照からの様だ。

 

 

『昨夜の事件は此方の方で三大勢力と話をつけることにしました。三大勢力との話し合いは此方に任せなさい。それと例の件なのですが、私と月読、素戔嗚の意見は一致しました。貴方達の都合のいい時に、高天原に来るといいでしょう。後、来る時は子供の姿でk(ボッ!』

 

 零は最後の方になると、嫌な予感がしたのか手紙を燃やしてしまった。

 

 

「あっ……手紙が燃えてしまった。最後まで読めなかったけど仕方ナイヨネ。ハハハ」

 

 零はそう言うと、他の袋の中身を取り出した。鏡・勾玉・金色の冠・鈴が入っていた。

 

 

「フム………これで招待状はいいとして何時行くかだな。皆が起きてから行ってもいいか。出来れば早い方がいいだろう「ぜろさぁ~ん?」アーシア、起きたか?」

 

 アーシアは眼を擦りながら起きた。

 

 

「はい、零さんはこんなに早く起きてどうしたんですか?」

 

 

「あぁ、ついさっき母様から届いた物があってな」

 

 アーシアは身体を起こすと、零の前にある天照からの贈り物を見た。

 

 

「なんですか、これ?」

 

 

「母様からの招待状だ。アーシア、今日は皆で出かけるぞ」

 

 この出掛けるという事が、アーシアや黒歌達にとっても、この世界にとっても大きな変化を迎えることをまだ誰も知らない。



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クリスマス 正月編
特別編 聖夜の奇跡 前編


クリスマスなので、特別編となります。

今回出るのは……


 ~昼間 駒王街 公園~

 

 12月24日。それは1年に一度のクリスマス・イヴ。イエス・キリストの誕生日の前の日であり前夜祭を行う日だ。そして良い子にはサンタクロースがプレゼントをくれる日でもある

 

 公園にはカップルが溢れかえり、甘い空気が漂っている。

 

 そんな中で3人の男子高校生が妬ましそうにカップルを睨んでいた。

 

 

「妬まし~」

 

 

「爆発しろ~」

 

 

「リア充滅べ~」

 

 

 駒王学園の三馬鹿こと

 

 歴代最弱の赤龍帝にして、悪魔、普通にしてればイケメンのおっぱい好きのエロ大王(駒王学園女子生徒達により命名):兵藤一誠。

 

 女性のスリーサイズを見るだけで計測するスカウターを持つロリコン。エロメガネ:元浜。

 

 セクハラ発言、写真はお任せの一見スポーツ少年に見える変態。エロ坊主:松田。

 

 カップル達に向かい嫉妬と羨望の眼で睨みながら自分勝手な念を込めて言葉を放つ。カップル達からすればいい迷惑である。

 

 

「何をしている馬鹿共」

 

 3人が振り返ると、そこには黒歌を連れた零がいた。

 

 

「「「レイ!?」」」

 

 

「邪魔だ、どけっ」

 

 

「ご主人様、此奴等誰にゃ?……あっ……(この茶髪、赤龍帝じゃない)」

 

 

「うちの学園の変態3人組だ。放っとけ……帰るぞ、黒歌」

 

 

「「「ごっご主人様ぁぁ!?」」」

 

 黒歌が零のことをご主人様と呼んだことに反応した様だ。

 

 

「和服、巨乳のお姉様と!」

 

 

「主従プレイだと!?」

 

 

「「なんと羨ましい~!燃えろ!俺達の嫉妬と恨み(カオス)!」」

 

 元浜と松田がそれらしいセリフを言って零に殴り掛かって来た。零はそれを軽く避け、回し蹴りを喰らわせて近くの噴水に蹴り入れた。

 

 

「うわぁ………さぶそうにゃ」

 

 

「自業自得だ………珍しく一誠は殴り掛かって来なかったな」

 

 

「……なぁ、俺達この間まで戦ってなかったか?それについこの間まで夏だった様な……」

 

 

「あぁ………大丈夫、これ特別編だから。時間軸とか、全く無視で」

 

 

「メタいな!」

 

 

「細かい事を気にしているから、お前は何時まで経ってもガキなんだよ」

 

 一誠の突っ込みにそう返すと、零は空を見上げた。

 

 

「さぶっ………さっさと帰って炬燵に入ろう」

 

 

「そうするにゃ、後みかんも必要だにゃ」

 

 そうして帰ろうとする2人なのだが……

 

 

「って待てよ!マジでデートなのか!?確かそのお姉さんは、猫耳の人だよな?!ご主人様ってどうなってんだ!?」

 

 

「そうだにゃん、よく覚えてたにゃ。赤龍帝の坊や。因みに言うとご主人様っていうのは私と白音が勝手に呼んでるだけよ。あっ…でもご主人様が望むなら何時でも、どこでも初めてを捧げる覚悟はあるにゃ」

 

 黒歌がそう言うと、零に抱き着いた。

 

 

「クソッ!羨ましい!!!」

 

 

「喧しい……俺は忙しいんだ。お前に構っている暇などない。黒歌も変な事を言うんじゃない」

 

 

(私としては本気何だけど……鈍感にも困ったものだにゃ)

 

 零はそう言って黒歌と共に帰ろうとしていると、あることに気付いた。そして振り返るとそこにボロボロの服を着ている1人の老人が立っていた。

 

 

「ホッホッホッ………お若いですなぁ……これはまた人であり、人でない……神に近い様なお方だ」

 

 

「誰だ……この爺さん?」

 

 一誠は見覚えのない老人に首を傾げる。

 

 

「……この感じ……アンタも人じゃないな(ギッ」

 

 

「悪魔でもないみたい……だからと言って妖怪でもない、天使でもない。どちらかと言うと……妖精や精霊に近い感じにゃ」

 

 零と黒歌がこの老人が人間でない事に気付いた。零の至っては何者なのか突き止めようとその眼で老人を見つめた。そして直ぐに驚いた表情をする。

 

 

「……成程。まさか貴方が俺の前に姿を見せるとは……」

 

 どうやら零はこの老人が誰なのか分かった様だ。

 

 

「ホッホッホッ……なに、偶々通りかかっただけですじゃ。それで御挨拶しようと思いましてな」

 

 

「俺は貴方に挨拶されるほど、偉い存在じゃない。ただの半端者さ」

 

 

「いやいや、御謙遜を……」

 

 

「おい、レイ。この爺さん、知り合いなのか?」

 

 

「会ったのは初めてだ。今までも同じ様な人は何度か会った事あるがな………」

 

 

「ホッホッホッ……此処とは違う何処かで会ったことがございましたかな?…‥儂も貴方に会うのが始めてとは思えませんしのぅ」

 

 何やら良く分からない話をしている零と老人。黒歌と一誠は一体何なのか訳が分からない様子だ。

 

 

「それにしても……貴方もだいぶ、存在が薄くなっていますね。今日が本番だと言うのに」

 

 

「えぇ……近年になって儂を信じてくれる子供達が減ってしまいましてな。今ではこうやって存在しているのがやっとという所ですじゃ」

 

 老人がそう言うと、老人の身体が薄くなっていく。

 

 

「おっおい!レイ!何がどうなってるんだ!?」

 

 

「大丈夫じゃよ、悪魔の坊や……これも仕方のない事なんじゃよ」

 

 

「ぇ!?もう訳分かんないだけど!レイ!説明プリーズ!」

 

 

「はぁ……この御方はな、子供なら誰しも知る御方だ」

 

 

「ん……もしかして、ご主人様」

 

 どうやら零の言葉で黒歌は老人の存在に気付いた様だ。「子供なら誰でも知っている」「12月24日が本番」と言えば自ずと答えは出るだろう。

 

 

「この御方は1年に1度、子供達に夢を運ぶ【サンタクロース】だ」

 

 

「なんだ……サンタクロース……サンタさんか……成程………ん?……でぇぇぇぇぇぇ!?マジでぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 一誠の叫びが公園中に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるさい(ドゴッ」

 

 

「ぐぇ!?(バシャーン」

 

一誠は零の蹴りによって、元浜達と同じ様に噴水で水浴びをすることになった。



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特別編 聖夜の奇跡 中編

 ~天王理家~

 

 俺は五月蠅かった一誠を気絶させて、サンタクロースを家に招いた。

 

 一誠?放置したぞ、だって家に連れて来たくないしな。

 

 

「どうぞ、暖かい紅茶です」

 

 そんな事を考えていたら、アーシアが紅茶を運んできた。白音とオーフィスは俺の背に張り付いている。どうやら目の前の老人がサンタクロースと分からないので警戒して居る様だ。

 

 

「ありがとうございます、御嬢さん」

 

 

「いえ、零さん。この方は?」

 

 

「あぁ、サンタクロース」

 

 

「ふぇ?……えっとあの……私の聞き間違いでしょうか?」

 

 

「ご主人様、今、サンタさんって」

 

 アーシアと白音は驚いた表情をしている。

 

 

「ほっ本当にサンタさんっていらっしゃったんですね!?」

 

 

「ハハハ、アーシア。神様や悪魔がいるんだからサンタクロースが居ても不思議じゃないよ」

 

 確かに、神や悪魔がいるのだからサンタクロースが居ても問題ないだろう。

 

 

「俺もサンタクロースに会うなんて滅多になかったからな」

 

 

「零、サンタクロースってなに?」

 

 オーフィスはサンタクロースを知らない様だ。

 

 

「サンタクロースって言うのはな……ぅ~ん、どうせなら御本人に説明して貰おう」

 

 

「起源は色々と言われていますが、儂も何だったのか忘れてしまいました。儂は子供達の幸せを願う親の心と子供達の純粋な願いが儂という存在を産み出しました。それから儂は毎年、クリスマス・イヴに子供達にプレゼントを配るという役目を果たしておりました。ですが儂を信じてくれる子供達の思いも年々減ってきましてな……今では唯の老いぼれですじゃ」

 

 サンタクロースの口から語られたのは事を聞いて、アーシア達は驚いていた。

 

 

「世界の神も同じ様な状態ですからね………」

 

 

「ですが……儂はこのまま消えても構わないと思っています。過去に比べて、それだけ平和になったという事ですからのぅ。子供達の笑顔こそ儂等の存在意義……子供達が笑顔でいるならそれで構いません」

 

 どうやらサンタクロースは消えていくという現実を受け入れようとしている様だ。零はそれを聞いて目を細めた。

 

 

「零さん!サンタさんを何とか助けて差し上げられないんでしょうか!?」

 

 アーシアがそう零に言った。

 

 

「フム………サンタさん。貴方は消えても構わないと言ってますが……貴方の存在を信じている子供達だっていますよ」

 

 そう言うと、奥の部屋に入って行くと直ぐに出て来た。その手には大量の手紙が抱えられていた。

 

 

「よいしょっと……(ドサッ」

 

 零はそれを机の上に置いた。

 

 

「これは……!?」

 

 サンタクロースはそれを見て驚いた表情をしている。此処に在るのは手紙ただそれだけだ、だがサンタクロースが手紙を見て驚いたのではない。

 

 

「この……この手紙に込められた想いは」

 

 サンタクロースが驚いたのは、この手紙に込められた想いだ。

 

 

「今朝方、世界各地に居る俺の仲間達から届いた物だ。因みに仲間達には孤児や捨て子、色々と抱えた子供達の面倒を見て貰っている。貴方はこれを見ても未だ消えてもいいと思いますか?」

 

 零の仲間達、先のカノン達がいい例だろう。カノンは祐子の仲間達の面倒を見ている。

 

 それと同じ様に世界各地には零のソウルコードにより呼び出された者達がいる。親に棄てられた子供、零の様に異なる血を宿し拒絶された子供、両親に愛されながらも両親を失ってしまった子供。零の呼び出した仲間達はそんな子供達の面倒を見ている。

 

 その仲間達が見ている子供達からサンタクロースに向けて出された物を仲間達が零に届けたのだ。

 

 普通は何処に出せばいいのか分からないので零に届けるのは当然の事だろう。

 

 

「願いが、想いが、貴方の根源だと言うのなら………この1つ1つに籠められた想いや願いを糧に在り続けて欲しい」

 

 両手で手紙の山に手を振れると、手紙の山が光り始めた。光はやがてサンタクロースを包み込んだ。

 

 この光は手紙に籠められた何よりも純粋な子供達の願い・想い。

 

 その想いや願い、親が子の幸せを願う想いが形を成したのがサンタクロースだと言うのであれば………この手紙に籠められた想いがサンタクロースに力を与えるのは必然。

 

 

「おぉ……何と暖かい……そうじゃった、儂はこの想いを受けずっと過ごしてきた。だが近頃、想いが薄れ消えゆく自分を受け入れていた。儂は子供達の笑顔を望みながら、何を諦めようとしていたのじゃろう」

 

 ボロボロの老人の姿をしていたサンタクロースの姿が、子供達が思い描くであろう赤い服の姿に変わった。

 

 

「ありがとう……大切な事を思い出させてくれて。儂は大事な事を思い出せました、ただ1人でも儂を想ってくれる子供の為に儂は存在するのだという事を」

 

 そう言って頭を下げると、サンタクロースは何処からともなく大きな白い袋を取り出した。

 

 

「いいえ……子供達の想いが、貴方を本来の姿に戻した。ただそれだけです……それに如何なる世界であっても子供は宝ですよ。さて折角ですし俺達も手伝うとしましょう【ソウルコード:エミヤ、クーフーリン、ルルーシュ、スザク】」

 

 零の右眼が光り、零の前に現れたのは赤い外套の弓兵、犬、絶対遵守の魔王、人間離れした身体能力の騎士だった。

 

 

「おい!ちょっと待て!俺の紹介「犬」だったぞ!犬って言うな!!」

 

 

「別にいいだろう、ワンサー(犬の槍兵)

 

 

「アーチャー!テメェ!心臓穿ってやろうか!!」

 

 

「ふっ……やれるものならやってみ給え。今の私に敵うかな?」

 

 両手に夫婦剣を呼び出すエミヤ(番外編でやっと出番がきた弓兵)と因果を捻じ曲げる槍を構えるクーフーリン(ワンサー)

 

 

「ふっ折角の聖夜に喧嘩とは愚かな」

 

 

「喧嘩は駄目だよ」

 

 愚かな争いをしている2人を見て呆れているルルーシュ(シスコン)と喧嘩を止めようとするスザク(KY)

 

 

「何故かシスコンと言われた様な気がするんだが……まぁいい。久しぶりだな零、俺を呼び出すとは何事だ?」

 

 

「あっ零だ、久しぶり」

 

 

「おう………今日はサンタさんに協力しようと思ってな。エミヤは赤いから、クーはエミヤとセットという事で。ルルーシュは12月生まれで、頭脳派。スザクは肉体労働担当なんで2人で1組と言う事で」

 

 どうやらこの面子を選んだのには理由があった様だ。ただ、エミヤとクーフーリンの理由の所で愉悦顔をしてたのは見なかった事にしよう。

 

 

「零!テメェ絶対に楽しんでるだろ!その愉悦顔、言峰や金ぴかにそっくりだ!」

 

 

「気の性だ………と言う訳でお前達にも協力してほしいんだ」

 

 

「フッ……やっと私の時代がやって来たという事なのだな。ランサーと一緒と言うのは気に喰わないが、子供達の為だ我慢するとしよう」

 

 エミヤはかつて扱いが酷かった【EP25.5参照】。やっと周って来た初めての出番なのでかなり張り切っている様子だ。

 

 

「俺はお断りだね!……っと言いたい所だが、子供達の為となりゃ話は別だ。いいぜ、協力しようじゃない」

 

 そう言ってクーフーリンは笑みを浮かべた。

 

 

「それにしてもサンタクロースが本当に居るとは……いやだが、非現実的だ。空飛ぶトナカイとか、煙突から侵入するとか……大体、あのソリはどういう物理法則なんだ?(ブツブツ」

 

 

「へぇ~サンタクロースって本当にいたんだ。サンタさんのお手伝いか……僕は喜んで協力するよ!」

 

 ルルーシュは何やらサンタさんの事を非現実的といい、空飛ぶトナカイやソリの物理法則を考え始めた。それと対照的にスザクはサンタさんが本当に居たことに驚きながらも協力する気満々の様だ。

 

 

「と言うわけで(パチッ」

 

 零が指を鳴らすと4人の服装がサンタクロースの服に変わる。

 

 

「じゃ始めようか、子供達の笑顔の為に」

 

 と言いながら、心の中では

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(プレゼントを配りつつ!オーフィスや白音達のサンタ姿を記録する!フハハハハハ!)

 

 半分くらいは自分の都合で動く零であった。




・登場人物

サンタクロース


殆どの人が知っているクリスマスに現れる、真っ赤なお鼻のトナカイさんとソリの共にやってくる赤い服のおじいさん。

本人曰く、子供達の願いと親の子供達の幸せを願う想いが形となって現れた存在らしい。

近年になり、サンタクロースを心から信じる子供達が減ってしまったことで存在が稀薄になっていた。力の殆どが失われていたので、ボロボロの老人の姿で現れた。

しかし零により、まだ自分を信じる子供達の手紙に籠められた想いや願いを受け、子供達の想い描く姿へと戻ることになった。








【ソウルコード】

・エミヤ

EP25.5の扱いからやっと出番が回ってきた弓兵。

投影魔術を使い、見た刀剣類を自分の心境世界に記録・保存する。

出番が回ってきたことと子供達の為に働けることで絶好調。ただ1つ気に食わないのがクーフーリンと一緒と言うこと。






・クーフーリン

因果を逆転させるゲイボルグの使い手。

生前の影響で犬と言われる事を嫌うが、零(や作者)、エミヤにはネタにされることが多い。

ルーンの使い手でもあるが、槍を持ってるので滅多に使わない。

近頃はエミヤと一緒にされることが多く、零の愉悦顔が何処ぞの神父や王と被って見えることが悩み。




「それにしてもますます、零が言峰や金ぴかと被って見えるぜ」


「まぁそうだな。私としてはどうでもいいことだか……まぁあの顔を見ていると無償に腹が立つな」


「あっ分かる!普段は澄ました顔してる癖に可愛いものの事となると目の色変えて豹変するよな。やっぱロリコンか?」


「まるでセイバーを追い回す英雄王の様だな。幼女趣味はどうかと思うがね」


「「ハハハハハハハハハハ」」

大いに笑う2人。仲がいいのか悪いのはよくわからない。


「ほぅ……」


「言いたいことはそれだけですか?」

2人の時間が止まった。そして、ぎこちなく振り返る。

そこには目の笑ってない笑顔浮かべた零とアルトリア(聖剣掲げ)がいた。


「【メモリーコード:王の財宝】」


「【エクスカリバー】」

そこでエミヤとクーフーリンの意識は途絶えた。











・ルルーシュ

とある世界で妹の為に大国を敵に回したシスコン。

絶対遵守のギアスを持っており、知能はかなり高い反面、身体能力はからかし。下手すれば子供にも負けそうな気がする。

零とは仲が良いが、ある事が絡むと零に対して強行手段をとろうとするが、最終的には精神的にも肉体的にもボロボロにされる。






・スザク

ルルーシュの親友。空気を読まないKY。

ルルーシュの相反して身体能力が人のそれを軽く越えており、知能はからかし、更に天然。

苦手な物は特にない。唯一、職場の上司の作ってくるこの世の物とは思えない料理だけは人外レベルの体を持ってしても受け付けない。




「それにしても僕達が呼ばれるなんて思わなかったね、ルルーシュ」


「ただ単に作者の思いつきだろう」


「そんな事言っちゃダメだよルルーシュ。世の中には数十話も放置されて出番がきた人もいるんだし」


「……それもそうだな。よし、初の出番だ。全力で子供達を笑顔にするぞ!」


「分かった!」


『子供達の為に頑張るルルーシュ様。その子供達に嫉妬するスザク様……「子供達だけじゃなく、僕も笑顔にしてよ」と迫るスザク様……そしてやがては…あっーーーーーーーーー』

何処からともなく、腐メイドの声がした。


「何だ!?今、変な声が聞こえてきたぞ!?しかも何か聞き覚えのある声だった!」


「そう?…ほらっ早くいかないと夜がおわっちゃうよ」

ルルーシュは気を取り直し、子供達の笑顔の為にスザクと共に聖夜を駆ける。








~お知らせ~

後編の投稿につきましては、今週中には投稿する予定です。


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特別編 聖夜の奇跡 後編

 聖夜の空を駆けるトナカイ。そして、トナカイに引かれたソリに乗るプレゼントの袋を持ったサンタクロース。

 

 その横に並んで飛ぶのは大きな黒いロボットだった。

 

 

「あっあの零さん。こんな大きなロボットで見つからないでしょうか?」

 

 そう聞いたのはロボットの掌に乗るサンタ服を着たアーシアだった。零はサンタの服を着てロボットの頭の所に乗っている。

 

『大丈夫だ、問題ない。この蜃気楼はステルス性能はばっちりだ』

 

 言ったのはこのロボット、蜃気楼に乗るルルーシュだった。

 

 因みに零(プレゼントの袋を背負わずオーフィスを担いでいる)とスザクが頭部、エミヤとクーフーリンは左右の両肩、黒歌と白音とアーシアは蜃気楼の掌の上に乗っている。更に言うと全員サンタの服だ。

 

 

「ホッホッホッ、長年生きてますが巨大ロボットと一緒に空を飛ぶとは思いませんでしたなぁ」

 

 サンタクロースは楽しそうにそう言った。

 

 

「ハハハ、まぁ普通はないでしょうね」

 

 零はそう言いながら笑っている。

 

 

「じゃあ、皆それぞれの場所を。ルルーシュは蜃気楼から指示を頼む。俺は少し準備をしてくるから」

 

 零はそう言うと、オーフィスを降ろし何処かへ飛んで行った。

 

 

「アイツ、何処に行ったんだ?」

 

 

「さぁ?ふらっ~と何処かに行くのは何時も事だにゃ」

 

 クーフーリンが零の飛んで行った方向を見ながらそう言うと、黒歌がそう答えた。

 

 

「それよりもさっさと配るぞ………私の管轄はこの辺りだな」

 

 エミヤはそう言うと、蜃気楼の肩から地上に飛び降りた。普通の人間であれば死ぬ可能性があるがサーヴァントなので問題ないのだろう。

 

 

「じゃあ俺はあっちの方だな。よっと!」

 

 クーフーリンもエミヤと同じ様に地上に向かい飛び降りた。

 

 

「行っちゃいましたね……」

 

 

「行きましたね………」

 

 アーシアと白音が飛び降りた方向を見ながらそう呟いた。

 

 

『よしっ、スザク。目標はこの下だ』

 

 

「分かった!」

 

 蜃気楼はゆっくりと降下すると、ルルーシュがそうスピーカーから言い放つとスザクは50メートル程下の家に向かい飛び降りた。スザクは家のベランダに着地すると鈴の様な物を取り出しそれを鳴らすと窓の鍵が解除された。そしてスザクは家に入っていった。

 

 数十秒もしない内にスザクは出て来ると、屋根に上がりそこからジャンプして蜃気楼に飛び乗った。とても人間技とは思えない。

 

 

「1件目終了。さぁ次に行こうか」

 

 そうしてクリスマスのプレゼント配りが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~エミヤ・クーフーリンside~

 

 

 

 

 

「ふぅ……これで20件目か。それにしてもこの鈴は便利ではあるが、悪用されれば大変な事になるな」

 

 そう言ってエミヤが取り出したのは、スザクが持っていたものと同じ鈴だった。この鈴は家を出る前に零が皆に渡した物。サンタクロースは自分の力で子供達の元に行けるが、エミヤ達はサーヴァント、霊体となって中に入ることが出来ても、プレゼントの入った袋は持って入れない。

 

 なので零が私のがこの鈴、鳴らすだけで目の前の鍵が開くと言う優れものだ。だが悪用されれば大変な事になるだろう。

 

 

「ん?……この気配……折角の聖夜なのに台無しではないか。プレゼントは殆ど配り終わったな………仕方ない。折角眠っている子供達を起こそうなどとは………私が許さん【投影・開始(トレース・オン)】」

 

 エミヤの服装がサンタの服から元の赤い外套に変わる。なにやら辺りに不穏な空気を感じ取った様だ。

 

 

「よう、アーチャー。お前も感じたか?」

 

 エミヤが振り返ると、屋根の上に元の服装に戻ったクーフーリンがいた。

 

 

「あぁ……折角の聖夜が台無しだな。取り敢えず狩っておこう」

 

 

「同感だ、子供達の眠りを妨げられるのも困るしな」

 

 エミヤは夫婦剣を、クーフーリンは魔槍を手にした。

 

 その剣が斬るのは平和な日常を破壊する者達、その槍が貫くのは子供達の笑顔を曇らせる邪、2人が護るのは小さな幸せ。

 

 何かを護る為に彼等は自分を犠牲にしてでも、人々の希望を、夢を守る。故に彼等は人々から英雄と称えられた。

 

 そして今、彼等が護るのは1年に1度の聖夜に眠る子供達の安息と小さな幸せ。その為に彼等は戦う。

 

 

 

 

「【So as I pary, Unlimited Blade Works.(その体は、きっと剣で出来ていた)】!」

 

 

「【刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)】!」

 

 

 ~side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~その頃~

 

 

「ふぅ………これでプレゼント配りは終わりだな」

 

 空中を飛んでいた蜃気楼に乗るルルーシュがプレゼントを配り終わった事を確認した。

 

 

「お疲れ様です、ルルーシュさん、スザクさん。これどうぞ」

 

 アーシアはプレゼント配りを終えた2人を労い暖かい飲み物を渡した。

 

 

「「ありがとう、アーシアさん」」

 

 2人はそれを飲み、冷えた身体を温めている。

 

 

「それにしても零の奴は相変わらずだな」

 

 

「御2人は零さんの昔の事を知ってるんですよね?」

 

 アーシアは2人が昔の零を知っているかを聞いた。

 

 

「うん、零は一緒に戦った仲間だよ」

 

 

「大切な仲間であり、親友であり………愛する妹の心を奪った相手でもあるが、アイツなら任せられる(ぼそっ」

 

 

「「「?」」」

 

 ルルーシュとスザクがそう言うが、ルルーシュの言葉の最後の方が聞こえなかったので首を傾げた。

 

 

「おっプレゼント配り終わったか?」

 

 皆が上を見上げると、零が居た。

 

 

「人を呼び出して手伝わせておいて、お前は何をしている?」

 

 

「ん?俺だって働いてたんだよ………もうそろそろだ」

 

 零がそう言って空を見上げると、空から白い何かが無数に降って来た。

 

 

「これは……冷たい…」

 

 

「雪だにゃ、もしかしてご主人様の仕業かにゃ?」

 

 それが雪だった。黒歌はそれを零がした事だと思った様だ。

 

 

「あぁ、折角のクリスマスだ。世界各地に降らしてきた……俺からのクリスマスプレゼントって所だ」

 

 

『へぇ~お前にしちゃ』『いいプレゼントじゃないか』

 

 声がすると、蜃気楼の肩に光の粒子が集まりエミヤとクーフーリンが現れた。

 

 

「ご苦労様2人とも……『掃除』までしてくれて助かったよ」

 

 

「ふっ……当然の事をしたまでだ」

 

 エミヤがそういうと、「シャンシャンシャン」と鈴の音が聞こえてきた。皆が音のした方向を見るとサンタクロースがやってきた。

 

 

「サンタさん、子供達の所に行って貰ってすいません」

 

 

「いえいえ、貴方には大切な事を教えて頂きました。それに儂の役目は子供達を笑顔にすることですから」

 

 零はどうやら、世界中にある自分の仲間達のいる所に行って貰った様だ。

 

 

「皆さん、ありがとうございました。ではまた来年お会いしましょう」

 

 サンタクロースは頭を下げると、トナカイと共に空に消えていった。

 

 

【ホッホッホッ、メリークリスマス】

 

 そう言い残して。

 

 

「そんじゃ俺らもお役ごめんだな」

 

 

「あぁ、ご苦労様(ぱちっ」

 

 クーフーリンの言葉にそう答え、指を鳴らすとアーシア達の体が浮いた。

 

 

「何時でも呼びたまえ、私としては料理に関する出番があれば是非呼んで欲しいものだ」

 

 

「まぁ何時でも呼べや。出来たら可愛い姉ちゃんを紹介してくれると嬉しいねぇ」

 

 

「フン、また呼べ。あっそうだ、またお前とチェスをしたい」

 

 

「僕も何時でも呼んでくれていいよ」

 

 エミヤ、クーフーリン、ルルーシュ、スザクの順にそう言うとその姿が段々と透明になっていく。

 

 

「ルルーシュさん、スザクさん、色々とお話聞かせて頂いてありがとうございました」

 

 

「空の旅も面白かったです」

 

 

「う~ん、私としては今度は鍛練してみたいにゃ」

 

 アーシア、白音、黒歌がそう言って4人に別れを告げる。オーフィスは何故かクーフーリンの方をジッと見てる。

 

 

「ん?どうした、嬢ちゃん?俺に見惚れたか」

 

 面白そうな顔をしてクーフーリンはそう言ったが…

 

 

「わんわん」

 

 

「「ぶっふ……(プルップルッ」」

 

 オーフィスがクーフーリンに向かいそう言うと、エミヤと零が吹き出し体を震わせている。

 

 

「零!テメェ何を吹き込n…」

 

 クーフーリンは零に文句を言おうとしたが消えてしまった。他のメンバーもまた消えていった。

 

 

「?」

 

 オーフィスは何故、零が笑っているのか分からないので首を傾げる。

 

 

「何でもない…ククク、ぁ~面白かった。皆、帰るぞ」

 

 零はそう言うと皆を連れて家に帰る。

 

 

 後日、一誠がサンタクロースからプレゼントがないかと零に聞いた所

 

 

「サンタさんは純粋な子供にしかプレゼントを渡さんのだ。お前みたいな変態にあるわけないだろう」

 

 と一蹴された。そして、復活した元浜と松田と一誠が黒歌の事で零に襲いかかり、返り討ちにされたのは言うまでもない。

 

 因みにアーシア達には零と1日を過ごすというプレゼントをして貰ったのでご機嫌だったとか。

 

 

 

 

 

 

 



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特別編 正月

明けましておめでとうございます。

今年も宜しくお願いします。


 ~2016年 元旦 天王理家~

 

 

「と言う訳で明けましておめでとう」

 

 

「「「明けましておめでとうございます(にゃ)」」」

 

 

「おめでとう」

 

 零がそう言うと、白音、黒歌、アーシア、オーフィスが新年の挨拶をした。

 

 

「まぁ普段とあんまり変わらないな」

 

 

『いえいえ、そんな事はありませんよ』

 

 零はそう言うと、何処からともなく声がしてきた。零はその声を聞くと身体がビクッと跳ね上がった。そして後ろを振り返ると天照、月読、素戔嗚が現れた。

 

 

「母様、月姉、叔父上………明けましておめでとうございます」

 

 

「はい、明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いしますね」

 

 

「可愛い弟(?)よ~、今年も宜しく~」

 

 

「おう!正月だ、飲むぞ!」

 

 零が挨拶すると、3人の神々も挨拶を返す。それからアーシア達も新年の挨拶をした。因みに月読と素戔嗚は顔が赤い。素戔嗚に至っては酒樽を担いでいる。

 

 

「母様、主神が新年そうそうこんな所に来て良いんですか?」

 

 

「大丈夫です、『皆さん、今年も宜しくお願いしますね。私は息子の所に行くので後はお願いします』と笑顔で言ったら皆は喜んで送り出してくれましたよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【皆さん、今年も宜しくお願いしますね。私は息子の所に行くので後はお願いします。可愛い息子に新年の挨拶をしないといけませんので】

 

 

【私もだ】【俺もだ】

 

 

【いやしかし……】【主神がその様な理由で高天原を離れるなど】

 

 

【何かいいましたか?(ゴオォォォォォォ】

 

 

【私等に意見か?(ゴオォォォォォォ】

 

 

【消えるか?死ぬか?(ゴオォォォォォォ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 零にはそう言う場面が容易に想像できた。

 

 

「(日本の神々も苦労するな)……そうですか…ん?何ですかその荷物は?」

 

 零は天照と月読の持つ大きな袋を見て首を傾げる。

 

 

「フフフ……お土産ですよ。アーシアさん、白音さん、黒歌さん、オーフィスちゃんはこっちに来て下さいな」

 

 そう言って天照と月読はアーシア達を連れて奥の部屋に消えていった。

 

 

「なんだ?……まぁいいか。叔父上、飲むならつまみが要りますよ。それに正月ですし御節も」

 

 

「おっそれもそうだな。御節はクシナダに作って貰ったぜ」

 

 そう言って零と素戔嗚は御節とつまみの用意を始めた。

 

 それから数分後、アーシア達が天照達に連れられ戻ってきた。ただその服だけは違っていた、先程までの服とは違い振袖を着ていた。

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

「へぇ、似合ってるじゃないか」

 

 零は皆の振袖姿を見て雄叫びを上げる。そして、カメラとビデオカメラを構えて皆の姿を撮り始めた。

 

 

「ふぅ………眼福、眼福………それよりも母上、月姉……その小さな振袖を持ってなんでこっちに近付いてくるんですか?」

 

 

「いえいえ……折角手に入れた上物の振袖を貴方に着せようと思いまして(じりっじりっ」

 

 

「その為にお前を小さくしようと思ってな(じりっじりっ」

 

 

「着ません。絶対に着ません………(がしっ)あれ?アーシア?白音?黒歌?オーフィス?何で俺を拘束して…しまった。母様!皆に何を!?」

 

 アーシア達が何故か零の身体に抱き着いて動きを封じた。

 

 

「あらあら……ただ貴方の振袖姿を見たいだけですよ?」

 

 

「いっいやだぁぁぁぁぁぁっぁぁ!!!」

 

 こうして零を子供にし振袖を着させて撮影会を始めた。

 

 その後、皆で食事の席に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……酷い目にあった。まぁいい……それ以上の物を手にした訳だし…フフフ」

 

 零は疲れた表情をしているが、オーフィス達の振袖姿を撮ったカメラとビデオカメラを大事そうに撫でながら異空間に収納する。

 

 

「あっそうです、お年玉を忘れていました。はいっ皆さん、どうぞ」

 

 そう言って天照達がアーシア、白音、黒歌、オーフィスに大きな袋を渡した。

 

 

「これはなんですか?」

 

 

「フフフ、ごにょごにょ……です。零に見せてはいけませんよ?」

 

 天照に耳打ちされると、皆の表情に光が差した。何時も無表情のオーフィスも嬉しそうだ。

 

 

「零にはこれを」

 

 そう言って零に渡したのは剣・勾玉・鏡だった。

 

 

「いやいや……これってオリジナルの三種の神器ですよね!?最高神の権威ですよ!お年玉で渡していい物じゃないですよ!?」

 

 三種の神器とは天孫降臨の際に天照大神が瓊瓊杵尊に授けた剣・玉・鏡であり、それは天照の最高神の権威の一部でもある。お年玉などと言って気軽に渡していいものではない。

 

 

「仕方ないですね……ではこっちを」

 

 そう言って三種の神器を仕舞い、10個の剣・勾玉・鏡を取り出した。

 

 

「いや……だから駄目です!それは十種神宝ですよね!?世界を構成している様な神器を俺に渡さないで下さい!」

 

 

「これでも駄目ですか、なら……これを」

 

 そう言ってまたとんでもない物を出そうとしたので零はそれを止めた。このままでは他の神話体系を滅ぼして世界を零に渡そう等と言いだしそうだ。天照や月読達が言うと本気で行ってしまいそうで怖い。

 

 こうして零達の正月が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小さい零さん、可愛いです」

 

 

「赤ん坊のご主人様………可愛い」

 

 

「ほんとだにゃん、私もご主人様との赤ちゃん欲しいにゃん」

 

 

「零……可愛い」

 

 天照達の渡したお年玉は零の赤ん坊の頃から写真とビデオのセットでだった。



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第4.5章 日本神話
EP44 出かけた先は神の世界


今回は第5章までの間の話になります。


 ~天王理家 朝~

 

 

「「「出掛ける?」」」

 

 

「もきゅもきゅ………ご飯おいしい」

 

 零から出掛ける事を聞いたアーシア達は食事をしながら首を傾げていた。オーフィスは話しの間もずっと食事を続けている。

 

 

「何処へ行くのにゃご主人様?」

 

 

「ちょいとな………」

 

 

「私達、全員がいく必要があるんですか?」

 

 

「あぁ。これからの為にもな……」

 

 

「零が行くなら、我も行く(もきゅもきゅ」

 

 

「まぁご主人様が行くと言うなら私も」

 

 こうして皆で出かける事が決まった。その行先については零は何も言っていない。

 

 

 

 

 

 

 

 零は普段着と右眼には眼帯をしている。オーフィスは天照から貰った巫女服を着ていた、どうやら巫女服が気に入った様だ。白音と黒歌はそれぞれの色の着物を着ている。アーシアは以前に来ていたシスター服を着ていた。

 

 それぞれが正装をしている。零も手に天照達の元に赴く時に着ている白い衣を持っていた。

 

 

「それにしても皆で出かけるなんて何処に行くつもりなのにゃ?」

 

 

「ちょっと高天原までな。よっと」

 

 

「「えっ?!」」

 

 

「………」

 

 

「たか…ま?」

 

 黒歌の問いにそう答えながら、白い衣を纏う。黒歌と白音はその答えに驚き、オーフィスは何時もの様に無反応、アーシアに至っては何処なのか分かってない様だ。

 

 

「じゃ行くとしよう」

 

 零がそう言ってその場でくるっと一回りすると、辺りの景色が白一色に変わる。

 一同は何が起きたのか理解できないのか周りを見回している。

 

 

「さてと……はい、皆、これ持って」

 

 零がそう言って渡したのは、天照より送られてきた物だった。

 

 アーシアには金色の冠、オーフィスには鈴、白音には勾玉、黒歌には鏡。零はそれぞれに渡す。

 

 

「ご主人様、1つ聞きたいんですが、これって神器なんじゃ……」

 

 白音がそう零に聞くと、零は頷いた。

 

 

「まぁな。これがお前達が高天原に入る為に必要な物でな、母様に送って貰った」

 

 

「零さん、高天原って何なんですか?」

 

 零がそう説明すると、アーシアが高天原について質問してきた。零はゆっくりと歩を進めると、皆もそれに続く。

 

 

「高天原ってのは、簡単に言えば日本の神様の住んでる世界だな。そして、この世界の頂点にいるのが母様だ」

 

 アーシアはそれを聞くと驚きの表情を浮かべる。

 

 

「神様のいらっしゃる世界に私の様な者が来てもいいのでしょうか?」

 

 そう言ってアーシアの表情に影が落ちる。神からすれば人間は罪深い存在、そしてアーシアは過去に悪魔を治癒したと言うことで魔女の刻印を押された。

 故にアーシアは神々の世界に自分の様な罪深い存在が入っていいものなのかと考えたのだろう。

 

 

「大丈夫だよ……その神器は母様からの贈り物だ」

 

 

「神器?……神器(セイグリッド・ギア)ではないのですか?」

 

 

神器(セイグリッド・ギア)は聖書の神が創ったものだ。それは母様が昔から使っている物だ……まぁ日本版の神器(セイグリッド・ギア)とでも思ってくれればいい。だがその神器は聖書の神が創った神器(セイグリッド・ギア)とは異なり、その神器には母様の神気が宿っている………簡単に言えば母様の一部の様な物だ。日本の神器ってのはその多くが神の力を宿している」

 

 零がアーシア達に渡した神器の説明しながら歩いていると、大きな建物が見えてきた。それは木で出来た大きな神殿の様な建物だ。零はその神殿の前で足を止めた。

 

 

「ふぅ………さて、皆……此処から先はおっかない神も居るから俺の傍を離れるな」

 

 零の身体からゆっくりと白いオーラが立ち昇る。それは神々しく、清らかなオーラだった。普段の零はソウルコードとメモリーコードを使用するが、此処までの力を出さない。圧倒的な力と技で敵を倒しても、此処まで聖なる力を出す事はない。

 

 そうして神殿へと入っていった。アーシア達もそこへ入って行った。



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EP45 日本神話への加入

 ~神殿内~

 

 神殿の中に入ると目に入ったのは、外観からは予想できぬ広大な空間とそこに居る神々。

 

 そして、奥の玉座に座る天照。その両隣には月読と素戔嗚が立っていた。

 

 三貴士以外の神々は零達の姿を見ると、嫌悪の眼を向ける。

 

 

『何だ、あの者達は?』『アレは猫又か……それに異国の人間まで』『それにアレは名のある龍神ではないか?』

 

『あの銀色の髪、あの眼……アレが大神様のお気に入りと言う』『大神様は一体何を考えているのだ?』

 

 などという声が聞こえてくる。

 

 

「皆さん、よく来ましたね。どうぞ前へ」

 

 天照がそう言うと、玉座の前へと歩を進めた。その後ろにはアーシア達が続く。

 

 

「母様……この度はお時間をとって頂きありがとうございます」

 

 

「構いませんよ……さて、零。例の話ですが、私と月読、素戔嗚の意見は一致しました」

 

 

「そうですか……ありがとうございます。ではさっそく」

 

 

「えぇ……アーシアさん、白音さん、黒歌さん、オーフィスちゃん、此方へ」

 

 アーシア達が困惑しながら零の方を見ると、零は黙って頷いた。アーシア達はぎこちない動きで天照の前に行くと天照は玉座より立ち上がった。

 

 

「では皆さん、私と零が考えた事なのですが……貴女達を我等、日本神話体系の一員として迎え入れたいと思います。これについては月読と素戔嗚も賛同してくれました。どうでしょうか?」

 

 天照がそう言うと、オーフィス以外が困惑している。

 

 

「理由は簡単です、貴女達を護る為に零が私に話しを持ち掛けました。私も零と同じ意見です、貴女達の身を護る為にも私の加護下に入って貰いたいのです」

 

 零はアーシア達を護る為にそれぞれに力を与えているが、それでも悪魔の駒(イーヴァル・ピース)の件がある。オーフィスはグレードレッドや零を覗けば勝てる存在はいないが、アーシアや白音、黒歌は零に力を与えられていても神や魔王クラスの相手には勝てない。

 

 リアスの様にアーシア達を自分の眷族にして零を味方に付けようと考えている者がいないとも限らない。その為、零はアーシア達を日本神話の一員とすることで天照の加護下におく事で誰も手を出すことができない様にしようと考えた。

 

 天照の加護を直接受ける者に手を出すと言う事は、日本の神話体系に戦争をふっ掛ける事と同じだ。仮にリアスが白音や黒歌達を悪魔にすると、零の怒りを買うだけではなく天照の怒りも買う事になり、零&日本神話VS悪魔と言う戦争が起きる。

 

 勿論、そんな事になれば魔王や悪魔達は零に加え、オーフィス、日本神話に一方的に殲滅させられるだろう。

 

 零の怒りに触れる、オーフィスの怒りに触れる、それだけでも危機なのに日本神話まで加われば確実に全滅する事になるだろう。

 

 零としてはそれでも構わないが、そうなれば他の勢力も零を危惧し仕掛けてくる事もあるかも知れない。零なら簡単にあしらう事もできるだろうが、面倒なのでしたくないのだろう。

 

 なので零は天照にアーシア達の身柄をどうにか出来ないかと相談したところ、天照の庇護下に入るという意見に至ったのだ。

 

 

「でっですが私の様な人間がお義母様の加護を受けていいのでしょうか……」

 

 

「はい、問題ありませんよ。貴女の人柄も、性格も、魂も私は気に入っています。それに貴女には巫女の素質もあるみたいなので私としても嬉しい限りです。近年は神の声を聞く巫女も少なくなっていますし……私としては娘になって欲しいくらいです」

 

 

「ふぇ?」

 

 

「「にゃ!?」」

 

 

「もきゅもきゅ」

 

 天照の言葉に顔を赤くするアーシア、驚く白音と黒歌、零から貰ったお菓子を淡々と食べるオーフィス。

 3人は天照の言ったのを「娘になって欲しいくらいです」→「娘になってほしい」→「零と結婚する」→「義理の娘になる」と解釈したらしい。

 

 

「そう言えば母様、オーフィスを態々日本の神話体系に所属させる意味あるんですか?無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)のオーフィスが日本所属となると色々と面倒なのでは?」

 

 オーフィスはグレードレッドを除いて最強と言われる無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)。本来は何処にも所属せず孤高の存在であった。そのオーフィスが日本神話の所属となると均衡を保っている現在の勢力のバランスが崩れる事がなるからだ。

 

 

「可愛いは正義………いえ理と言っても過言でありません。なのでいいのです」

 

 

「なるほど……流石は母様。それは道理ですね」

 

 天照の言葉に激しく同意している零。訳の分からない話だが本人達は納得している。だが周りはそれを理解できないでいる。

 

 

【【【そんなんでいいのかよ!?】】】

 

 と周りの神々が思うが主神に言える訳もない。こうしてアーシア、黒歌、白音は保護すると言う目的で、オーフィスは良く分からないが日本神話の所属となった。

 

 他の神はそれを良しとする者は少なく、殆どが反対だが自分達の頂点に立つ神々に意見をいう命知らずはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、零達は天照の居城に呼ばれ宴を行った。

 

 

「あぁ、そうだ。もう1つ叔父上に頼みがあったのは忘れていた」

 

 

「俺に頼み?なんだ?何で言えよ!俺にできる事ならなんだってしてやるぞ!」

 

 零は素戔嗚の盃に酒を注ぎながら耳元で何かを呟いた。

 

 

「なに!?確かに出来るけど……しかしそれはだな……むぅ」

 

 どうやら零の頼み事は素戔嗚が戸惑う程の大事らしい。零を溺愛している素戔嗚でさえも渋るほどの事を頼んだ様だ。

 

 

「仕方ないですね……できれば使いたくなかったんですが…ゴクッゴクッ……ぷはぁ」

 

 零はそう言うと、懐から小さな小瓶を取り出し中身を一気に飲み干した。すると徐々に零の身体が小さくなっていく。すると2~3歳くらいの姿になった。

 

 

「と~しゃま………おねがいしましゅ(うるっうるっ」

 

 幼い零は金と赤の眼を潤ませて、素戔嗚を見上げた。俗言う涙目上目使いという奴だろう。

 

 

「(思考停止中)…………………ぶはぁ!」

 

 停止していた思考が動きだし、やっと目の前の状況を理解すると鼻血を吹き出し吹っ飛んだ。

 

 

「「すっ素戔嗚!?」」

 

 アーシア達と話していた天照と月読が何事かと思い吹っ飛んだ素戔嗚を抱き起した。素戔嗚は満足した様な表情で鼻血を流し続けている。

 

 

「わっ我が……生涯に………いっぺん……の悔い……無し(がくっ」

 

 

「「素戔嗚!!!!!一体何が!?」」

 

 死した素戔嗚の原因が何なのかと思い、吹っ飛んできた方向を見てみると幼い零が座っていた。

 

 

「ぜっ零………とうとう母の願いが通じたのですね!(ぽいっ」

 

 

「かっ可愛い!……何と愛らしい!流石我が甥っ子!邪魔だ、素戔嗚!(ぽいっ」

 

 2人は抱き起していた素戔嗚を放り投げた。放り投げられた素戔嗚は頭から落ち、首が変な方向に曲がっているのを無視して天照と月読は幼い零に駆け寄る。

 

 

「ははしゃま……あねしゃま(うるっうるっ」

 

 

「こっこれは……素戔嗚が死ぬのも無理はありません。私でさえも平静を保っているのがやっとです(だくっだくっ」

 

 

「かっ神すらも殺す愛らしさ……流石我が甥っ子……これを見て死ねたんだ素戔嗚も本望だろう(だくっだくっ」

 

 そう言いながらキリッとした表情で鼻血を滝の様に流している天照と月読。しっかりと幼い零を抱きしめている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~天王理家宅~

 

 

「…………(ずぅーん」

 

 高天原から帰宅した零。すっかりと元に戻っていた。だが何やら沈んでいる。そして服には大量の血が付いている(天照・月読・素戔嗚の鼻血)。

 

 

「くっ……目的の為とはいえ……あの様な手を使うとは……何か大切な物を失った気がする」

 

 どうやら素戔嗚への頼みの為に小さくなる薬を使った事で落ち込んでいる様だ。

 

 

「小さい零さん可愛かったです」

 

 

「ご主人様にもっと色々な服を着せたかったです」

 

 

「そう言う訳でもう一回小さくなって欲しいにゃ」

 

 どうやらアーシア達はもう一度小さい零を見たい(愛でたい)様だ。

 

 

「いやです……アレはどうしても達成しないといけない事があったからしたんだ。記憶があるから余計に面倒だ……あの恥ずかしい記憶……消してしまいたい。どうせなら記憶を残らない薬を用意すれば……いやそれじゃあ目的が……しかもまたあの姿で叔父上と過ごさないといけないとは……」

 

 どうやら大変な目に合ったらしい。かなり病んでいる様だ。

 

 

「よし!こういう時は癒しがいる!オーフィス!」

 

 

「なに?」

 

 

「これ着ようか(すっ」

 

 そう言って出したのはオーフィスサイズの駒王学園の制服やらコスプレ用品だった。

 

 

「勿論、白音達の分もあるぞ~……可愛いは正義!さぁ!撮影を始めよう、ハハハハハ」

 

 こうして零の病んだ心を癒す為の撮影会が始まった。勿論、撮影は長時間続きオーフィス以外は疲れて寝てしまい、零は徹夜で現像作業をしていたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~高天原 天照の神殿~

 

 

「ふぅ……やっと終わりましたね」

 

 

「あぁ……終わったな」

 

 

「もう死んでもいいや」

 

 天照、月読、素戔嗚がそう言って満足した顔で赤い液体のついた雑巾をバケツに絞る。素戔嗚が死んでない?神様である事と幼い零を再び愛でると言う意志で復活を果たしたのであった。因みに3人がしているのは自分達の鼻血の後始末である。

 

 天照の側近の神によると「神殿内が血の海で、天照様たちがその中に浮かんでいた」との事だった。

 

 

「それにしても零が一番嫌がっている方法をとるなんて、一体何を頼んだんです?」

 

 

「そういや、零に何か頼まれてたな。ほらっ吐きやがれ素戔嗚」

 

 

「なんでも、ある人間を一時的でもいいから甦らせて欲しいってさ………まぁ……またあの可愛い姿を見れるなら理を覆すくらいはな……はっ!?」

 

 素戔嗚は自分の言った言葉で墓穴を掘った事に気付いた。

 

 

「ほぉ……またあの可愛い零と一日を過ごすと……」

 

 

「詳しく話を聞かせて貰おうか」

 

 この後に素戔嗚は自分の妻であるクシナダに「姉が怖い」と泣きついていたそうだ。



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EP46 驚きの真実

 ~駒王学園 オカ研 2年教室~

 

 三大勢力の会談から1週間が経過した。

 

 一誠や祐子達は普通に過ごしているが、零達は未だに来ていない。表向きは家庭の事情となっているが、実際はアーシア達の日本神話への加入で色々と動いている。そんな事を一誠達が知る訳もない。

 

 そして放課後になり、突然に零達がやってきた。右眼は未だに力が戻らない為か眼帯をしていた。

 

 

「れっレイ!?」

 

 

「皆さん、御機嫌よう!」

 

 

「レイ!この一週間何をしてやがった!?」

 

 

「連絡くらいしやがれ!」

 

 松田と元浜が零に駆け寄る。言葉こそ荒いがどうやら零の事を心配していた様だ。

 

 

「しかもアーシアちゃんや白音ちゃんと登校だと!?」

 

 

「貴様ぁ!もしかして大人の階段を昇っただけでなくハーレムか?!」

 

 そうでも無かった様だ。零はそんな2人をスルーして一誠の元にやってきた。一誠は先の戦いの事があり、零の事が近付く度に心臓の速度が速くなるのを感じていた。

 

 

「そう構えるな。学園(こんな所)で暴れるつもりはない。それともお前は此処で暴れて犠牲者を出したいのか?」

 

 

「いっいやそんな事はない……」

 

 零に敵意がない事が分かると、一誠は安心した様だ。

 

 

「今日はお前等の主に用がある。それと生徒会長のシトリーも呼べ、最高神の子として……日本の代表として悪魔(お前等)に話しがある……会わないと言うならそれで構わないぞ?話し合いに応じないのであれば、日本(この国)から強制的に退去願うだけだからな……」

 

 

「ッ!?……分かった、直ぐに部長に連絡する(ぞくっ」

 

 そう言うと一誠はリアス達のいるオカ研の部室に向かった。一誠には零の言う「強制的に退去願う」という言葉が問答無用で日本に居る悪魔達を滅ぼすぞという風に聞こえた様だ。しかし悪魔に良い印象を持っていない零ならそれを実行しても可笑しくはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~オカ研部室~

 

 現在、オカルト研究部の部室には魔王サーゼクス・ルシファーの妹、リアス・グレモリー。リアスのクイーンであり、人間と堕天使のハーフ姫島朱乃。リアスのナイト、聖魔剣使い木場祐子とデュランダルの担い手ゼノヴィア・クァルタ。ポーンであり歴代最弱の赤龍帝、兵藤一誠。

 魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹、ソーナ・シトリー。ソーナのクイーンである真羅椿姫。ポーンであり、一誠達と同じ学年の龍王ヴリトラを宿した神器をもつ匙元士郎がいた。

 

 勿論のこと、先の会談の事があり零をかなり警戒している。

 

 

「黒歌、オーフィス」

 

 リアス達の前に座る零が2人の名を呼ぶと空間の歪みが出現し、黒歌とオーフィスが現れた。

 

 

「はぐれ悪魔黒歌……ッ!もっ申し訳ありません、もう彼女は悪魔ではありませんでしたね」

 

 ソーナが黒歌を見てそう言ったが、零から一瞬殺気を放たれた事で直ぐに謝罪した。

 

 

「……まぁいい。今回は話し合いだ……母様からも争いは避ける様に言われている。此処で争うつもりはない」

 

 零は殺気を収めて直ぐに入り口の方を見た。

 

 

「アザゼル、居るんだろう?」

 

 

「流石は零、隠れてる俺に気付くとはな」

 

 入り口の方に突然アザゼルが現れた。どうやら隠れていたらしい。その後ろに数人の人物がいた。

 

 

「アザゼル、久しい」

 

 オーフィスがアザゼルにそう言うと、オーフィスは直ぐに零の膝の上に座る。

 

 

「オーフィス、もう少しそっちに寄って下さい。私も座ります」

 

 白音も当然の様にそう言うと、空いた方の膝に座った。

 

 

「「くっぐぅ~~~~(羨ましぃ~)!!」」

 

 そんな零をみて、血の涙を流している一誠と匙。

 

 

「さてとアザゼル、1つ質問があるんだが………なんでそいつ等がここに居る?」

 

 零から凄まじい殺気が放たれ、アザゼルの後ろにいる者達に向けられた。

 

 アザゼルの後ろに居たのは、アーシアを殺した原因ともなった堕天使レイナーレ、ミッテルトだった。

 

 

「おいおい、そんなに殺気を向けるなよ。今は此奴等はリアスの眷族だ……まぁ前に色々とあったが、迷惑を掛けたからな。神器の実験に付き合って貰ってリアス達の眷族にしたって訳だ。おいっ!?ちょっと待て、オーフィス!そんなものこっちに向けるな!」

 

 零の膝に座っていたオーフィスがレイナーレ達に向かって黒く禍々しい球体を形成し放とうとしている。

 

 

「そいつ等、アーシア虐めた………消す」

 

 

「オーフィス、落ち着け。それは後だ……今は話し合いだからな……此処でやると母様にも迷惑がかかる」

 

 

「……母に迷惑掛かるならやめる」

 

 オーフィスは天照に迷惑が掛かると聞くと直ぐに球体を消した。

 

 

「まっ……そいつ等の事は置いといてやるよ。ではまず天照大神からの悪魔側への要求を伝える」

 

 

 1.現在、日本に居る総ての悪魔達は本日から1週間以内に近くの神社・社に赴きそこにいる神々の指示に従う。

 

 2.本日より日本神話側に知らせず勝手に日本に侵入してきた悪魔がいた場合は此方で捕縛し、日本側で裁いた後に魔王達に連絡し、悪魔勢にペナルティを科す。

 

 3.元々日本にいた転生悪魔達は1人残らず日本の神々の元に赴き、その真意を確かめる。その後、強制的に転生悪魔にされた場合はその主を捕縛・日本側の方にて裁く。もしくは魔王側に突き出して罰則を与える。

 

 4.本日より日本にいる人間、妖怪などを転生悪魔にした場合は悪魔側にペナルティを科す。

 

 5.転生悪魔に関して日本神話の許可と転生させられる本人が望み転生悪魔になるならばペナルティはなし。死亡した後、命に関わる救急である場合は本人に確認し、本人が悪魔となる事を望んだ場合はそのままとする。本人が望まぬ場合は天王理零が開発した術式にて元の種族に戻す。

 

 6.悪魔が日本に滞在する場合は各地方を収める神々と誓約を交わす。それを破った場合は本人だけでなく魔王側にもペナルティを科す。

 

 7.上記の要求に従わなかった場合は、日本神話は悪魔側を外敵と見なし日本にいる悪魔は殲滅する。

 

 今此処に、日本の最高神・天照とその妹神・月読、弟神・素戔嗚の名において魔王側にこれ等を要求する。故に迅速に対応願う。

 

 

「以上が主神・天照大神が貴様等悪魔に出す要求だ」

 

 

「そんな無茶な………」

 

 

「横暴です!悪魔であってもこの国で生活を望む者達も多くいるのですよ?!」

 

 

「だからこそ従えと言っている。天照、月読、素戔嗚の三神が日本に滞在する事を許可すれば誓約はつくが日本で暮らしていいと言っているんだ。まぁ多少不便になるかもしれんがな」

 

 つまりは本来であれば殲滅させられても文句は言えないのに今まで日本で好き勝手していた事を許しできるだけの譲歩し、日本での生活や貿易、悪魔の仕事を監視下でなら行っていいと言っている。これでも天照達の慈悲深い心が分かるだろう。

 

 

「誓約書は此処だ……本来なら魔王どもを呼び出して母様達の目の前でサインさせたいが、此方も忙しいのでお前等から魔王達に渡せ」

 

 そう言ってリアスとソーナの前に誓約書を置いた。

 

 

「言っておくが、従わない場合はこの我手ずから貴様等を滅ぼしに冥界に行くと思えよ」

 

 

「「「「「!!?」」」」」

 

 

「俺も面倒くさいので出来る限りそんな事はしたくない。なんで大人しく従って貰いたい……」

 

 

「わっ分かりました。直ぐにでも魔王様達にお渡しします………」

 

 ソーナはそう言って誓約書を手に取り仕舞った。

 

 

「話が早くて助かるよ、ソーナ・シトリー………さてと今日は個人的な話もあるし、外に居る眷族達を退かせたらどうだ?」

 

 零にはソーナが外に待機させている眷属たちがいることに気づいていたようだ。

 

 

「気付いておられたんですね……失礼しました。椿姫」

 

 

「はい、会長」

 

 クイーンである椿姫に外に居る眷族達を下がらせるように命じた。

 

 

「素直に従ってくれてありがとう……日本の代表としての話は終わりだ。此処からは俺個人の話だ………アザゼル、そいつ等がここに居るのはリアス・グレモリーの眷族だからだと言ったな?」

 

 

「あぁ、間違いない。ほらっ証拠に悪魔の翼があるだろう。レイナーレがビショップ、ミッテルトがルーク。残りのドーナシークとカラワーナは俺の助手をしている」

 

 

「そうか……それでそいつ等は俺の目の前に現れて………唯で済むと思っているのか?確かに【栽神への誓い(ライズ・オブ・ギアス)】の効力でその堕天使共に危害を加える事はない。だがそれはあくまでも肉体的にということであって精神的にダメージを与える事もできるんだが……それに先程の俺以外が危害を加えてもその契約には反さない」

 

 零がレイナーレ達に使った栽神への誓い(ライズ・オブ・ギアス)は零が直接的にレイナーレ達に危害を加えないと限りは発動しない。つまり幾らでも彼女達を消す方法はあるという事だ。先程の様にオーフィスがレイナーレ達を消そうとしても何の問題もない。

 

 

「まぁ待て……お前が此奴等を許せないのは分かるが、此奴等は此奴等なりに必死だったんだ………それに此奴等は裁きは受けた。もうお前等に害はなさないさ」

 

 

「……アーシア、どうする?…お前が決めろ。此奴等を裁くか、裁かないか………お前がもし許さないと言うなら俺が何とでもしてやる」

 

 そう言うと、右眼の眼帯を外した。そして右眼を開けると、そこには輝きを放つ紅い瞳が在った。

 

 

「私は………私はレイナーレ様達を…………許します。レイナーレ様のお蔭で私は零さんに会えたんですから」

 

 

「だっそうだ。アーシアに感謝しろよ小鴉………だがもしも家のアーシアや白音達にちょっかい出そうものなら」

 

 辺りの空間が歪み始め、部室が何時の間にか荒野へと姿を変えた。空には暗雲が立ち込めており、雲の隙間から巨大な蛇腹が姿を見している。

 

 

 《グオォォォォォォ》

 

 そして雲から顔を出したのは零がその身に宿す四霊の超機人【応龍皇】が、何時の間にか四神の超機人である【龍王機】【雀王機】【武王機】【虎王機】がリアス達を取り囲んでいる。

 

 

「ただ死すだけでなく、その魂は未来永劫の苦しみを受けると思え……それはリアス・グレモリー貴様もだ」

 

 超機人だけでなく、周りには無数の巨大な影が現れリアス達を見下していた。それだけでなく、零の背後には凄まじい数の武装を人影が立っていた。

 

 

「おいおい、なんじゃこりゃ………流石の俺も空いた口が塞がらねぇよ全く」

 

 アザゼルが驚いていると、辺りの風景がオカ研の部室に戻った。

 

 

「俺は俺の大切な物に手を出す奴には容赦しない。それが何処の誰であろうとも……な」

 

 零の眼が光がゆっくりと収まって行く。それと同時に零の全身から溢れ出していた力も消えていった。

 

 

「………まぁいい。話はそれだけだ……俺達は帰る」

 

 そう言うと、オーフィスと白音を抱えて立ち上がる。そしてそのまま部室を去ろうとする。

 

 

「…っ……待って!」

 

 それを止めたのは、この部屋の主であるリアスだった。だがその声は震えていた。

 

 

「なんだ?言っておくが、さっき言った要求は変わらないぞ。従わないならお前等を消すだけだ」

 

 

「ッ……それは……魔王様達に相談して直ぐにでも行うわ。それよりもギャスパーの事よ!私のギャスパーを返して!」

 

 リアスは連れて行かれたギャスパーの事を言った。零はそれを聞いてリアスを睨み付ける。リアスは睨まれて竦むが更に続けた。

 

 

「あの子は私の眷族よ!私の下僕なのよ!」

 

 

「ぁあ………そうだったな。だがそのギャスパーは未だに眼を覚まさない……恐らく神器を無理矢理に抑え込んだ反動だろう。まぁ今の所、眠っているだけだから問題ないが………ギャスパーがあんな目に合うのに置いていったお前にそう簡単に返すと思うか?」

 

 

「っ!?」

 

 

「俺はお前と違ってあの子の意志を尊重しつつ、必要な限り護る。だからあの子が自分の意志でお前の元に戻るなら俺は止めない。だが1つ言っておく」

 

 零は白音とオーフィスを降ろすと、一瞬でその場から消えた。

 

 

「ぐっ……がぁ!?」

 

 皆が声のした方向を見てみると、零がリアスの首を掴みその身体を持ち上げていた。

 

 

「あの子がお前の元に戻ったとしても、戻らなかったとしても…………俺はあの子を護る。お前ではあの子を救えない……苦しみも悲しみも孤独も理解できないお前にギャスパーは救えない(ぱっ」

 

 

「ごほっごほっ」

 

 

「リアス!」

 

 零が手を離すとリアスは地面に落ち、咳き込んでいる。そして朱乃がリアスに駆け寄った。

 

 

「フン………ぁあ……忘れる所だった。姫島朱乃」

 

 リアスに駆け寄った朱乃を見て何かを思い出した様だ。懐から手紙を取り出すと朱乃の前に差し出した。

 

 

「なっ何ですの?」

 

 

「君にはそう警戒しないで欲しいな。俺は君に害を成そうなんて思ってないし、仲良くしたと思ってる………これは招待状。もし強くなりたいなら………これに書いてある場所に来るといい」

 

 

「強く………どういうつもりですの?私を懐柔するつもりですか?」

 

 

「そんなつもりは毛頭ない。ただ俺は俺のしたい事をするだけ………俺は君に選択肢を与えているだけさ。どうするかは君が決めるといい、俺はそれに口出ししない」

 

 零はそう言うと、朱乃の近くに手紙を置くと身を翻した。

 

 

「おいおい、ちょっと待て。俺の話は終わってないぜ、前に聞いた事を未だ答えて貰ってない。『お前は一体何者だ?』」

 

 

「さて………俺は俺だ。それ以上でも以下でもない………お前が何を考えているかは知らんが死にたくないなら口に出さん事だな」

 

 零の足元に魔方陣が浮かぶと、黒歌達の足元にも同じ魔方陣が描かれた。

 

 

「俺は忙しいのでこれで失礼する…………ぁ…そうだ。この駒王の土地は俺が母様から管理を任されたんで、覚えておくように………まぁ今の生活を続けて貰っても構わない。ただこれまでみたいに自分の土地だとかほざいたら、その場で消すんで宜しく」

 

 零はそう言うと、アーシア達と共に消えてしまった。

 

 

「「「ぇ………ぇえ!?」」」

 

 驚きの真実に皆は驚いた様子で唖然としている。




・オカ研新メンバー(リアスの新しい下僕)

名前:レイナーレ

種族:転生悪魔(元:堕天使)

駒:ビショップ

神器:???(アザゼルに埋め込まれた物)


一誠を殺し悪魔に転生させるきっかけとなった堕天使。一誠の初めての恋人であったが、全ては一誠に宿る神器を消す為であった。

現在はアザゼルに下された罰を受けた後に、リアスの下僕となった。

しかし零からはアーシアを傷付けた存在として睨まれている。

《一誠のハーレムの1人の予定?》






名前:ミッテルト

種族:転生悪魔(元:堕天使)

駒:ルーク

神器:???(アザゼルに埋め込まれた物)


元々はレイナーレにつき従っていた堕天使の1人。他の2人はアザゼルの元で研究(と言う名の趣味)の手伝いをしているらしい。

何故かリアスの下僕となっている。

《一誠のハーレムの1人の予定?》




















~アザゼルの屋敷~

会談後、帰宅したアザゼルは疲れた様子で高級そうな椅子に座っていた。

「ふぅ……疲れたぜ。だが収穫もあったな……零の事……もう少し調べてみるか…ん?あれ?何処行った?………ファーブニルの神器が………あれ?ん、紙?」


【堕天使やらヴァーリに迷惑を掛けられたんで、お前のコレクションの1つ貰ってくぞ。絶対返さないので宜しく。By零】

と書いた紙がポケットに入っていた。


「……………ふざけんなぁ!!!!」


【なお、この手紙は消滅します】

そしてその日、街の一角の屋敷で爆発が起きたとか。


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EP47 零の選択

 ~天王理家~

 

 零がリアス達と話し合いを終わらせ自分の家に帰って来た。

 

 

「ふぅ………取り敢えず話し合いは終わった。皆もご苦労様……」

 

 零はそう言うと、ソファーに腰かけた。

 

 

「あっあの、零さん………本当に悪魔の皆さんはこの国より追い出されてしまうんでしょうか?」

 

 アーシアが零に話し掛けた。どうやら悪魔が本当に追い出されるのかと心配して居る様だ。正確にはリアスや朱乃達、オカ研メンバーの事を心配しているのだろう。

 

 

「アーシアは本当に優しいな……………魔王達がどう動くか次第だ。従わぬなら、この国の者達の為にも排除しなきゃなんない。それでも尚、この国の人間や妖怪達に害を成すなら殲滅する…………俺も種の殲滅なんぞあまりしたくない。必要があればするが、必要がなければしない………まぁ殲滅はせずとも冥界の片隅から出られない様に封印してやることもできる…」

 

 零自身も悪魔全体を滅ぼす事は望んでいない。魔王達が日本神話側に従わない場合は零は、現在の悪魔の地である冥界に悪魔達を出れない様に封印しようと考えていた。

 

 

「フッ……まぁいい。俺は暫らくは待つのみか…………おっとそうだ、ギャスパーの事を忘れていた。悪いがみんな、俺は少し出掛けてくる。ギャスパーが起きたら話でもしていてくれ」

 

 

「ご主人様は何処にいかれるんですか?」

 

 

「少し吸血鬼の城にな………じゃあ行ってくる」

 

 白音の言葉にそう返すと、零はそのまま魔法陣と共に消えてしまった。

 

 

 それから数時間後、ギャスパーは目を覚ました。

 

 ギャスパーはまだベッドの上に居り、皆がギャスパーの寝かされている部屋に来ていた。

 

 

「取り敢えず自己紹介、私は白音……猫又」

 

 

「私は黒歌、白音のお姉ちゃんよ」

 

 

「私はアーシア・アルジェントと申します。宜しくお願いします」

 

 

「我、無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィス」

 

 それぞれがそう挨拶するがギャスパーは布団を被ってしまう。

 

 

「イヤァァァァァァ!聖なる力がビリビリしますぅ!それに無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)って最強の龍じゃないですかぁ!?」

 

 神器(セイグリッド・ギア)は抑え込めたが、どうやら人見知りはそう簡単には克服できそうにない。

 

 

「そんな怖がらなくていいのに…………はい、ニンニク」

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!ニンニク臭いですぅ~!嫌い~」

 

 

「そんな事ばかり言ってちゃ強くなれないよ」

 

 白音がニンニクを持ってギャスパーに近付けると、それを嫌いギャスパーは逃げる。逃げたギャスパーを白音が追い掛ける。

 

 

「白音が珍しくいじめてるにゃ」

 

 

「楽しそう、我もする………」

 

 

「いじめは駄目ですよ!オーフィスちゃん、白音ちゃん!」

 

 

「ぴぃぃぃぃぃ!いじめるぅ~!!」

 

 こうしてアーシアに止められたことで助かったギャスパー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ヴラディ家 居城~

 

 人が踏み入らない霧に覆われた森の奥にあるギャスパーの実家、ヴラディ家の城。そしてその城の下に広がる吸血鬼の街。

 

 そしてこの城の当主、ラムド・ヴラディは自室より城下を見降ろしていた。

 

 

 《キィィィィ》

 

 

「むっ……何者だ?」

 

 ラムドが振り返ると、魔法陣が展開されそこから白銀の髪を靡かせる零が現れた。

 

 

「初めまして、ラムド・ヴラディ………俺は天王理 零という者だ」

 

 

「!………天王理零……確か噂に聞く伝説の戦士か」

 

 

「今日はお前の子であるギャスパーの事で尋ねた」

 

 

「なっ……ギャスパー……あの悪魔になり下がった愚か者の事で余になんの用だ?」

 

 

「フフフ………そう強がる必要はない。ギャスパーの事は母であるアスティア・ヴラディから聞いている」

 

 

「バカな!アスティアは既に死んでいる!」

 

 

「あぁ…………その通りだ。だが世界の理すらも我が意のままだ(ギンッ」

 

 零の両目が光り輝くと、辺りが光りに包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 光が消えた後、ラムドは両膝を地に付き涙を流していた。

 

 

「ギャスパーには父親(お前)の言葉が必要だ………例えこれまでがどうだったとしても、ギャスパーのこれからの為にもお前の言葉が必要だ。(同じ苦しみを持つ者)でもリアス・グレモリー()でも駄目だ……真にあの子を大切に想い、真にあの子を愛す汝の言葉でなければならぬ…………だが心の準備は必要であろう。準備ができたらこの手紙の場所に来るといい(すっ」

 

 

「私には………もうその資格は……」

 

 

「決めるのは汝次第だ………」

 

 零はそう言うと、その場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【さて、来るだろうか?】

 

 

 《さぁ………それは彼等次第……》

 

 

【フッ………確かに、我等は待つのみ】

 

 

 《如何にも……待つのみ……そう言えば鴉の方はどう思う?》

 

 

【分からん………だが準備は整っている】

 

 

 《そうだな………残りの方も何時来てもいい様に準備だけは滞りなく進めよう》

 

 

 

 

 

 

「あぁ………それに俺達の周りをウロチョロとしている輩もどうにかしないとな」

 

 零は家の前に立っておりそう言うと、横目で何かを見つめている。

 

 

「逃げたか…………まぁいい。俺は俺の選択した事をするだけだ………この選択が正しかったのかは分からんが………な」

 

 零はそう呟き、皆が待つ家の中へと入って言った。



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EP48 好きなのは大きい方?小さい方?

 ~天王理家~

 

 

「ふぁ~………眠い」

 

 零は朝起きると、何時もの様に食事の用意を始めた。だが少し疲れているのか眼の下に隈がある。

 

 

「ふぅ………この所、休んでる暇がないからか少し疲れたな」

 

 流石の零も戦い、異世界の移動を繰り返していたので疲労が溜まっている様だ。しかし零とて神の力を持つ者、そう簡単には疲れない筈、恐らく精神的な物だろう。

 

 

「ん~………さて皆を起こすには早いか。散歩でもいこう」

 

 時計を見てみれば午前5時30分だ。朝食と言っても流石に早すぎる。なので零は散歩に行く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~駒王街 公園~

 

 未だ早朝と言う事で人の姿はないものの、早朝ランニングをしている者、体操をしている老人達。平和な時間だ……零はそう思いながら公園を歩いている。

 

 辺りは未だ薄暗いが、徐々に朝日が昇り始めている。

 

 

「母様が顔を出されるか………」

 

 零は昇り始めている太陽を見ながら、そう呟いた。

 

 

「………ん?アレは……」

 

 零はある人物を見つけた。その人物は走っていた、しかも長時間走っていたのかかなり汗を掻いている。

 

 

「朝から鍛錬とは感心な事だな」

 

 

「おわぁ!?……れっレイ!?」

 

 

「そう驚くな。別にお前をどうこうするつもりはない……取り敢えずおはよう、一誠」

 

 それはクラスメイトであり、悪魔となった友人・一誠だった。

 

 

「れっレイ……(ゴクッ」

 

 一誠は警戒しているのか、その場から下がり構えをとっている。

 

 

「はぁ……よいしょっと」

 

 零はそんな一誠を見て溜息を吐くと、近くのベンチに腰かけた。

 

 

「それで、何してるんだ?」

 

 

「えっ……ぁっ……鍛錬だよ」

 

 一誠は零から敵意を感じないのが分かると、構えを解いてそう答えた。

 

 

「へぇ………それであの女はどうしている?」

 

 

「あっあの女?」

 

 

「リアス・グレモリーだ」

 

 

「部長か……部長はギャスパーの事がショックだったみたいだけど、これからの為に魔王様達と色々と動いているみたいだ」

 

 

「ふぅん………まぁいい。あの女がどうしようが構わん。俺の気に触れさえしなければな」

 

 零はそう言うと、興味を無くした様に空を見上げている。

 

 

「なぁ……レイ、なんでお前は部長の事をあんなに嫌ってるんだ?」

 

 

「あっ?………俺があの女を嫌う理由?簡単だ………愛・家族・大切などとほざいているくせに、自分の眷族の事を何も理解していない。うわべだけの言葉だけ並べて何も大切な事を理解していない、それに加え木場祐子のこと、ギャスパーのこと、姫島朱乃のことについてもだ………正直言うと今すぐにでも存在ごと消し去ってやりたいくらいだ………しかしアレは魔王の妹、此方から手を出せば母様に迷惑になるからな………まぁ白音やアーシア達に手を出したら苦しみの末に生きてる事を後悔させてやる、ハハハ」

 

 零は軽く言っているが、一誠はそれを聞いただけで背筋が寒くなった。零にかかれば1日もしない内に悪魔は魔王も含めて滅びるだろう。

 

 

「しかし……アーシアや姫島朱乃も、それにお前もアレを殺すのは反対するだろうからな。本気で奴が白音やアーシアに手を出さないなら放って置く」

 

 零はそう言うと、立ち上がり家の方向に向かい歩を向ける。

 

 

「俺的にはあの口だけ女を除けば、オカ研のメンバーは嫌いではない。むしろ好ましい方だ………おっとそろそろ戻らないと腹を減らした奴等がいるしな」

 

 零はそのまま、家に向かい歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~一誠side~

 

 一誠は零が去っていた後を見ていた。

 

 

「レイ…………」

 

 

 《相棒………どうした?》

 

 

「俺はアイツが怖い………………でもその反面…アイツが凄くカッコイイって思う時がある……そしてアイツに勝ちたいって思う。なぁドライグ、俺は強くなればアイツに勝てるかな?」

 

 

 《さぁな………奴は二天龍と称された俺とアルビオンを一撃で倒した。それに加え太陽神の子供だ、今のままでは万が一………いや億………兆……亰………まぁ天と地がひっくり返っても無理だな》

 

 

「くっ!お前なぁ……もう少し言い方をだな…」

 

 

 《事実だ。今のお前じゃ傷1つ付けられん………だがお前の可能性は未知数でもある。これからの鍛錬と努力次第だな》

 

 

「努力次第か………」

 

 

 

 ~side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~天王理家~

 

 

「もきゅもきゅ(バチッ」

 

 

「もきゅもきゅ(バチッ」

 

 零が家に戻り、食事を始めているのだが今日は何時もと違っていた。

 

 

「あっあの………」

 

 

「あぁ………アーシア、気にするな。満腹になったら消えるから」

 

 

「ひぃぃぃ~、何か見えないけどバチッバチッしてます。怖い~」

 

 何時もと違っていたのは、零の膝の上に座る人物と横に座る人物だった。一方の膝にはオーフィス、横には白音。此処までは何時もと同じだが、もう片方に膝と横に座る人物達だ。オーフィスと白音が反対いる者達と見えない火花を散らしていた。ギャスパーはそれを見て部屋の隅に逃げている。

 

 

「おかわり!」

 

 

「おかわりです!」

 

 米粒を口の周りに付けながら茶碗を差し出す金髪碧眼の少女達。よく見れば2人は良く似ている。

 

 

「この【たくあん】それに【みそ汁】というものとても気に入りました!零!こんな美味しいものを作れるのに何故呼んで下さらなかったんですか?!」

 

 

「【牛丼】【カツ丼】【ラーメン】とかいうの美味いな!零!父上の言う通りだ!こんな美味いもの、オレ達に内緒でこんな美味いのを食べるなんてずるいぞ!」

 

 そう言ったのは、零の横に座る伝説の聖剣の持ち主であり騎士王と称されたアーサー王……アルトリア・ペンドラゴン。そして膝の上に座るアーサー王の子でありアーサー王が死ぬ原因となった円卓の騎士・モードレッド。鎧こそつけていないが2人は零のソウルコードにより実体化した本人達だ。

 

 

「あぁ……まぁ忙しくてな」

 

 2人はプール(EP25.5)の際に零に文句を言う為に実体化した、その時にアルトリアとモードレッドに食事に誘うと言ったが、零は忙しく忘れていた様だ。2人は痺れをきらせて前の様に強制的に実体化したようだ。

 

 

「……この2人何なんですか?勝手に出て来て、私の特等席を占領して」

 

 白音の言う特等席とは勿論、零の膝の事だろう。

 

 

「残念だかお前より前から此処はオレのだ」

 

 そう言ってドヤ顔して胸を張るモードレッド。それを見て白音は今にも襲いかかりそうになるがグッと押さえ込んだ。

 

 

「まぁまぁ落ち着くにゃ白音」

 

 

「姉様は悔しくないんですか?」

 

 黒歌が白音を落ち着かせようとするが、白音はそう言い返した。

 

 

「大丈夫にゃ……白音、何事においても冷静さを欠いては駄目にゃ。それに持つ者は持たざる者に施しを与える方がいいにゃ」

 

 黒歌はそう言ったが、他の皆は首を傾げる。

 

 

「持たざる者?それはどういう事でしょう?」

 

 アルトリアは黒歌にそう聞く。

 

 

「つまり……こういうことだにゃん」

 

 黒歌はそう言うと、零の後ろに周るとそのまま抱き締めた。周りから見れば零が黒歌の胸に埋もれて居る様に見える。

 

 

「ご主人様だって男の子だにゃん。やっぱり(胸は)大きい方がいいにゃ………そんな小さい(胸)と満足できないと思うわ」

 

 

【【【ビシッ】】】

 

 黒歌がそう言うと、白音、アルトリア、モードレッドは自分の胸を見た。そして何かにヒビが入る。

 

 黒歌【豊満・大きい・母性の象徴・巨乳】。白音・モードレッド・アルトリア【貧しい・小さい・貧乳】太刀打ちできる気がしない。

 

 

「べっ別に………オレは女扱いされたくない訳だし……あっあろうがなかろうが」

 

 

「そっそうです………剣を振るうのに邪魔です……くっ!」

 

 

「くぅ………でっでも小さいのには小さいなりの需要が………」

 

 モードレッド、アルトリア、白音の順にそう言うが、どうにも覇気がなく悔しそうだ。

 

 

「白音は未だ成長期……大丈夫にゃ、きっとお姉ちゃんみたいになるわ」

 

 黒歌がそう付け加えると、白音の表情は明るくなる。アルトリアとモードレッドの表情はさらに沈み込んだ。2人は零のソウルコードにより現れた存在である故に時は止まっている。

 

 

「ぜっ零!何とかいえよ!そんな猫の胸に埋まってないで!」

 

 

「そっそうです!零!貴方なら分かるでしょう!?」

 

 2人はそう言うと、零を黒歌の胸から引っ張り出した。

 

 

「えっ?俺?いや……あの………その……まぁそのだな」

 

 流石の零も困惑している。というより自分に振られるとは思ってなかった様だ。

 

 

「……まぁ……やっぱりアレじゃないかな。大切なのは大きさよりも愛じゃないかな……うん」

 

 零はそう言うと、オーフィスとモードレッドを膝から降ろしその場から離れようとする。

 

 

「零は大きいのがいい?………分かった」

 

 オーフィスはそう言うと、身体が大きくなる。子供の姿から、黒歌と同じ位の背丈の女性へと変わる。胸も黒歌といい勝負をしている。

 

 

「あっあのオーフィスさん?むがっ!?むっがっ」

 

 大きくなったオーフィスは黒歌の様に胸に零を抱き寄せた。零は抵抗しようともがくが、オーフィスは無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)。力は凄まじい、零は何んの力も使っていない、それに力ずくに引きはがせばオーフィスが傷付く可能性があるためされるがまま。

 

 伝説の戦士、神の子と言えど零も男の子。顔が赤くなるのは当然の事だ。

 

 

「言いたい事はそれだけですか?(かちゃ」

 

 アルトリアは無言のまま、暴風と共に鎧を纏い黄金に輝く聖剣を零に向ける。

 

 

「見損なったぞ、零………お前はそんな男とは思わなかったぞ(かちゃ」

 

 アルトリアと同じ様に鎧を纏い、自身の持つアーサー王を死に至らしめた魔剣を構える。

 

 

「えっ…ちょっと待て!おr「「問答無用!」」あっ!」

 

 

「束ねるは星の息吹。輝ける命の奔流。受けるがいい!【約束された勝利の剣(エクスカリバー)!】」

 

 

「これこそは…我が父を滅ぼし邪剣。【我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)!】」

 

 

「ぎゃぁーーーーーーーーーー!!」

 

 零は黄金の光の奔流と赤黒い禍々しい雷に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~1時間後~

 

 

 星の聖剣と騎士王を死に至らしめた邪剣の直撃を受けた零自身は無事だとしてもダメージが全くない訳では無い様だが………聖剣と邪剣の力の奔流は零が家に張った結界のお蔭で街に被害を及ぼす事はなかったが家が全壊。つい先ほど零は家の修復を終えた。

 

 

「ぅう……疲れた」

 

 

「もっ申し訳ありません」

 

 

「ごっごめんなさい」

 

 この家が全壊させた2人の騎士は零の前に正座をしている。

 

 

「つい冷静さを欠いていました」

 

 

「オレもその……熱くなり過ぎた」

 

 どうやら2人とも密かに気にしている事を言われたので冷静ではいられなかった様だ。

 

 

「いやまぁ……被害が俺だけで済んで何よりだった。うん……アーシア達は俺や母様達の加護で無事だったし、俺は男だからお前等の気持ちは良く分からんが「「「「「全くその通り(です・だにゃ)」」」」」なにが?」

 

((((((鈍感))))))

 

 皆(オーフィス以外)が揃えてそう言うが、零自身は何が何なのか分かっていない様だ。

 

 

「言っておくが俺は一誠の様に胸だけを見てないぞ。俺は好きになった者だったら大きかろうが小さかろうが構わん。全身全霊で愛し、護る……それだけだ。ってなんかこっちまで恥ずかしくなってきた」

 

 零はそう言いながら珍しく顔を赤くしている。

 

 

『ピリリリリリリ』

 

 

「ん?……はい、あっ母様だ………もしもし……はい…そうですか。あぁ……その事ですか……まだ分かりせん。はい……えっ?ぁあ……そちらの方は既に準備できています。はい……明日は忙しいので誰か使いに……はっ?俺に来い?いやです……嘘泣きしてもダメです。忙しいので……後、後ろに居るであろう叔父上と伯母上にもそうお伝えください。えっ来ないと岩戸に引き籠る?いやいやそんな事で皆既日食を起こそうなんてしないで下さい………」

 

 どうやら天照からの電話の様だ。何やら【岩戸に引き籠る】やら【皆既日食】やら物騒な話になっている。

 

 

「はぁ………まぁ考えておきます。なので引き籠らないで下さいね。では……」

 

 零は疲れた様子で電話を切った。

 

 

「疲れる………まぁ2人とも、また力を借りる事もあるだろうからよろしく頼むよ。アルトリア、モードレッド」

 

 

「勿論です!ではまたご飯お願いします!」

 

 

「オレも!」

 

 アルトリアとモードレッドは嬉しそうに返事を返すと消えていった。

 

 

「今日は疲れた……寝ようの前にギャスパー、少しお話いいかな?」

 

 

「ふぇ?ボクですか?」



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EP49 大切な物

 ~リアスside~

 

 オカ研部室…この部屋の主、リアス・グレモリーは己が未熟さと悔しさで一杯だった。

 

 

 

 

 

 私はどうすればいいのだろう?

 

 彼に天王理 零に言われたこと…………【苦しみを理解していない】【口だけだ】【家族ごっこ】【苦しみも悲しみも孤独も理解できないお前には救えない】その事が頭の中が一杯だった。

 

 私は私の下僕たちの事を理解したつもりでいた………いや理解したと思い込んだ。故に朱乃の事も、祐子の事も、ギャスパーの事も何も分からないでいた。

 

 どうすればいいのだろう……分からない。

 

 

【貴様に理解できるか?

 

 混血と言うだけで吸血鬼と人間(どちら)の存在からも忌嫌われる苦しみが!

 

 混血故に堕天使と人間(どちら)にも蔑まれる辛さが!哀しみが!

 

 混血と言うだけで【化物】【穢れた存在】【忌子】と呼ばれる心の痛みが!

 

 混血故に己を理解してくれる者が少なく、最悪は誰も居ないと言う孤独が!

 

 異なる2つの血を宿す故に強大で、他と違う力を宿してしまい、1つ間違えば世界すらも危険に晒すかも知れないという力に対する恐怖が!

 

 誰にも蔑まれる事もなく、愛されながら生きてきた貴様にこの苦しみが!哀しみが!孤独が!理解出来るなどと言うな!

 

 純血である貴様には一生理解できない!ギャスパー達の受けし屈辱は!苦しみは!哀しみは!怒りは!孤独は!貴様が考えるほど、軽いものではない!】

 

 そう彼に言われた時、私の頭は真っ白になった。分からなかった……朱乃やギャスパーの苦しみや哀しみが……。

 

 零に言われた事を全く言い返せなかった。言い返せる訳がなかった………いくら言葉では言えてもその苦しみは私には分からなかったから。

 

 それに祐子のことにしても、私はあの子が聖剣の事で苦しんでいるのを分かっていたのに動こうとしなかった。

 

 一誠のことにしても、確かに一誠がレイナーレに貫かれたあの時、朱乃を呼び出せば助けられたかも知れない。なのに私は悪魔に転生させ下僕にした。それはあの子がポーン8個分の力を持つと知ったからだと言われても仕方がない。

 

 この間の会談で理由をつけてギャスパーをあの場に連れて来なかったことで、あの様な事件が起きた。

 

 全て私の責任、私の未熟さが、傲慢が招いた結果ね………救えない。私では救えない……ギャスパーも……朱乃も……祐子も……一誠も……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「部長」

 

 

「!?………あらっどうしたの皆?」

 

 リアスが振り返ると、朱乃、裕子、一誠が立っていた。

 

 

「リアス、貴女のことが気になって………彼に……天王理くんに言われたことをかなり気にしてると思いまして」

 

 

「えっ……っ」

 

 

「やっぱりね…………まぁ確かに彼の言った事は間違ってないかもしてませんね」

 

 

「「朱乃さん?!」」

 

 いきなり朱乃がそう言い出した事を一誠と裕子は驚いた。

 

 

「私の苦しみ、寂しさ、怒り、恐怖………それは貴女には理解できないでしょうね。私だってこの苦しみや哀しみを貴女に理解して貰おうと思わないわ。それを彼なら分かってくれるかも知れませんわね」

 

 

「!?」

 

 朱乃の言った「彼」と言うのは勿論、零の事だろう。零もまた同じものをその身に抱える者。いわば理解者だ。

 

 

「でもリアス、貴女は私の親友で…私の主なのですわ。貴女がどれほど自分の眷族達のことを気にしているかは私が良く知っています。それは天王理くんが何と言おうと変わりませんわ」

 

 朱乃はリアスの眷族の中では一番長い付き合いだ。リアスがどれだけ眷族達の事を思っていたかは一番よく知っている。

 

 

「そうです、部長。私も貴女に救われました……私を救ったのは彼ではなく貴女です」

 

 

「部長!レイが言った事は正直言うと俺には良く分かりません………アイツが言った事が正しいのかもしれないですけど………その……」

 

 

「うん、さっぱり言いたい事が分からないにゃ」

 

 

「あぁ………そうだよな。ん?」

 

 

「「「ん?」」」

 

 皆は違和感を覚え、声のした方向を見ている。

 

 

「どわぁ!?なっなんで此処に!?たっ確か………えっと」

 

 

「白音のお姉ちゃん、黒歌だにゃん。赤龍帝の坊や」

 

 そこにいたのは黒歌と白音だった。

 

 

「っ……何で此処に……」

 

 

「ご主人様の命令で……ってあれ?何処にやったかな?」

 

 白音が何かを探して居る様だ。

 

 

「此処にあるわよ、白音」

 

 そう言って豊満な胸の間から手紙の様な物を取り出した。

 

 

「でっデカい!」

 

 一誠はそう言うと、黒歌の胸を注視している。

 

 

「あらっあらっ赤龍帝の坊やは大きなお胸がすきなのかにゃ?触ってみる?」

 

 

「さっ触ってみる………なっなんて素晴らしい日本語なんだ!?」

 

 黒歌の言葉に感動している一誠。そして顔を上げると黒歌に向かい歩いていく。

 

 

「そっそれじゃあ……遠慮なく……(すかっ」

 

 黒歌の胸を触ろうとした一誠だが、その手は空を切った。

 

 

「だ~め。残念だけど、この身体と魂は全部、ご主人様に捧げたてるんだにゃん。坊やには触らせてあげないわ」

 

 

「くっ………ぐぅ~………なんて羨ましぃ~。レイ……羨まし過ぎるぅ~、羨ましい………もしかしてレイの奴、そのおっぱい様を毎日……ぐぅ負けた……」

 

 がくっと膝を付き、涙を流し項垂れている一誠。

 

 

「毎日ご主人様に求められるのも大変だにゃん。でもそれが嬉しいんだけどね」

 

 黒歌が身体をくねらせながら顔を赤くしてそう言うと、一誠は完全に地面に伏した。

 

 

「姉様、いい加減な事を言うのはやめて下さい。ご主人様の体裁に関わります。殴りますよ?」

 

 

「ぁ~ん、白音ひど~い。もう少しお姉ちゃんに優しくてもいいと思うんだにゃん」

 

 

「いぇ、姉様を甘やかすとセクハラが酷くなるので突き放します」

 

 

「セクハラじゃないにゃん!あんなの軽い姉妹のスキンシップよ!」

 

 

「はいはい、私達はこれを渡しに来ただけですんで」

 

 黒歌から手紙をとると、リアスにそれを差し出した。

 

 

「えっ……あっ……ありがとう」

 

 リアスは手紙を受け取る、それを確認すると白音は身を翻した。

 

 

「あっそうだ、言い忘れていました。私は誰に何と言おうと構いませんけど、もしご主人様を侮辱する様な発言をしたら黙っていませんので、どうぞよろしく」

 

 《グルルルルルル》

 

 

「白音は本当にご主人様が大好きなのね、まぁ私もご主人様の事を侮辱する様な事を言われたら怒るけど……貴方達はご主人様の力を目の当たりにしているだろうから馬鹿な事はしないだろうけど………悪魔の御仲間さんに伝えておいてね」

 

 《ガルルルルルル》

 

 2人がそう言うと、その背後に途轍もない巨大な《何か》が見えた気がする一同。その為皆は固まってしまう。

 

 

「これは1人ごとです。リアス・グレモリー……ご主人様が私達は救ってくれました」

 

 

「えっ?」

 

 

「ご主人様は確かに強いにゃ………でもそれだけじゃないわ。私達も必死にご主人様に追い付こうとしてるわ、ご主人様もそれを理解してくれる。でも貴女はどうかしら?ご主人様も言ってたけど本当に遠ざけるだけが護ることになるのかしらね?」

 

 

「っ!?」

 

 黒歌と白音は言い終わると、霞の様に消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リアスは白音より、受け取った手紙を開いてみると3枚の紙が入っていた。

 

 2枚には、色々な条件が書かれており、下の空欄には名前が書く場所がある。どうやら駒王の土地の管理者となった零がこの地に居る悪魔達に科す誓約の様だ。

 

 

 

 

 1.日本に居る限り、人を襲わない。

 

 2.駒王の地にいる限り、許可なく転生悪魔を増やす事を禁止する。

 

 3.悪魔の仕事は許可するが、人間・妖怪を害する内容のものを行った場合、罰則を科す。

 

 4.はぐれ悪魔を見つけた場合、それが転生悪魔であるならば速やかに捕獲し管理者の前に連行する。

 

 5.天王理 零、その家族・友人に害成す事を禁ずる。

 

 6.悪魔が日本の者を無理矢理、転生悪魔にした場合は悪魔側にペナルティを科す。

 

 7.日本妖怪、日本の神々の領土に無断で踏み込む事を禁ずる。仮に領土に入る場合は正式な手続きを行う。

 

 8.土地の管理者に逆らった場合は悪魔側にペナルティを科す。

 

 9.これはあくまでも駒王の地での制約であるが、他の日本領土で問題を起こした場合も例外ではない。

 

 10.罰は土地の管理者の判断により与えられ、悪魔は転生悪魔も含めこれに逆らう事を禁ずる。

 

 以上の誓約を守るのであれば、駒王の地での居住・仕事を許可する。しかしこの制約が守れない場合は、その場で消滅させられても日本神話側に責任はない。

 

 また誓約を破る悪魔が多い場合、日本にいる全悪魔の強制退去と壊滅を行う。最悪の場合、天照大神の子である天王理 零と日本神話により、地上・冥界の総ての悪魔との全面戦争となる可能性もある為、誓約は破らない様に。

 

 と言うか面倒なので種の殲滅なんてしたくないんでしない様に。仮にこの地で事件や問題を起こした場合、管理者直々に罰を与えるので宜しく。罰の内容はその時によって違うが、問題を起こすなら消滅する覚悟をしておくように。

 

 上記の誓約を理解したならば、己の血で名を記す様に。

 

 駒王の管理者:天王理 零

 

 

 

 

 

 

 

 どうやら、零も土地の管理者として仕事をしている様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう1枚の方には、リアス宛の手紙の様だ。

 

『拝啓、相変わらず愛だの、家族だの言っているくせに本当に大切な事をまだ理解していない魔王の妹殿。

 

 俺は貴様がその考えを改めない限り、貴様と慣れあうつもりはない。

 

 ギャスパーの事なら安心しておけ、今は目を覚まして元気にしている。ギャスパー自身、お前への恩を感じているからか転生悪魔を止める事を戸惑っているみたいだ。まぁギャスパーの選択だから俺はどうとも言わんがな。

 

 取り敢えずはギャスパーは俺の元にいる。学園には行かすのでその時にでも会うといい、だが無理矢理連れ戻そうとするようなら覚悟しておくことだな。

 

 ギャスパー自身も未だ完全に力を制御できてないが、その内俺が制御法を教え、完全に制御する事が出来る事だろう。あぁ、後ギャスパーの荷物はちゃんと纏めておけ。俺か、白音達が持ち帰るので。

 

 誓約書の方にはお前と眷族全員とソーナ・シトリーとその眷族全員、この地に居る悪魔全員にサインさせるように。仮に何か異変や他の勢力が街中にいた場合、俺に報告する様に。

 

 貴様が本当に大切な事を気付くかどうか分からんが、出来るだけ早く気付く事だな。お前の眷族達の為にもな。

 

 可愛いは正義!可愛いを傷付ける者は許さない!神の子:天王理 零より』

 

 

 という内容の物だった。

 

 零の言う『大切な物』とは一体何なのか、未だにその応えに辿り着かないリアス。

 

 それを心配そうに見守る眷族達。

 

 だが『大切な物』と言うものが、自分達にとってどれほど重要なものかを後に知る事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~天王理家 和室~

 

 

 零は着物を着ており、胡坐で座り瞑想していた。全身からは神々しい光と禍々しい闇が出ており部屋を覆い尽くしている。

 

 そして目を開き、袖の中から2つの金色のブレスレットを取り出した。1つは蝙蝠を模したもの、1つは蛇を模した物だった。

 

 零は無言のまま、蝙蝠を模したブレスレットを掲げると光と闇が吸収されていく。部屋の中の光と闇が消えると蝙蝠の両目に当たる箇所に白と黒の宝石の様な物が嵌め込まれていた。

 

 

「ふぅ………これでよし、次はこっちか」

 

 袖の中に蝙蝠のブレスレットを仕舞うと、蛇のブレスレットを両手で掴むとブレスレットが2つに分裂した。2つに分裂したブレスレットを衝突させたり、回したりしている。そしてブレスレットを重ねて両手でブレスレットを包み込み、息を吹きかけると黒と白の2匹の蛇が絡み合っているブレスレットに姿を変えた。

 

 

「完成………取り敢えず、これでいい……はぁ……疲れた」

 

 集中が切れたのか、そのままその場に寝転んだ。

 

 

「まずは終わりだな……」

 

 

 ()()()

 

 零は猫の鳴き声の聞こえてきた方を見ると、そこに白と黒の猫がいた。

 

 

「お疲れ様」

 

 零がそう言うと、猫達は嬉しそうに尻尾を振りながら零に飛び乗った。

 

 

「ちょwアハハハハハ!くすぐったい!こらっ、服の中に入るな。アハハハハハ!って黒歌!お前は何処に潜り込もうとしてるんだ、全く……それでお使いはちゃんとしてきたか?」

 

 

 《当然だにゃん》《勿論です……にゃん》

 

 

「そうか、よいしょっと」

 

 零は白と黒の猫達……猫の状態の白音と黒歌を抱き上げると、立ち上がった。そして部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~リビング~

 

 零はリビングに移動すると、テレビを見ているギャスパーとオーフィスを見つけた。

 

 

「おっ2人とも何を観てるんだ?」

 

 零が2人に尋ねた。

 

 

「昼ドラです」

 

 

「そうか、ギャスパー、これを」

 

 零は先程、和室で作っていた蝙蝠のブレスレットをギャスパーに渡した。

 

 

「なっなんですか?」

 

 

「お守りだ………お前自身の身を護る物であり、眼鏡なしでお前の邪眼が暴走した時には封印してくれる」

 

 

「ありがとうございます……」

 

 

「オーフィスにはこっち」

 

 

「ん……ありがとう」

 

 オーフィスに白と黒の蛇のブレスレットを渡した。どうやら2人の為に造った物の様だ。

 

 

「オーフィスのもお守りだよ。さて………そろそろ晩御飯の用意をしようかな」

 

 そう言うと、零は鼻歌を歌いながらキッチンに向かい晩御飯の用意を始めた。



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第5章 冥界合宿、新たな絆の力
EP50 合宿?俺には関係ない……と思ってたのに


「どうしてこうなった?」

 

 

 《ガアァァァァァァァァ!!》

 

 零は今、何処かの谷底でドラゴンに襲われていた。ドラゴンは朱乃、裕子、ゼノヴィア、一誠が戦っている。零の後ろでは白音、黒歌、オーフィスがトランプをしていた。

 

 

「おっ大きなドラゴンさんです!」

 

 

「ヒィィィィィィ!ドラゴン怖いですぅ!!」

 

 アーシアとギャスパーに至っては零の背に隠れている。

 

 

「えぇと………確か」

 

 零は少し記憶を遡ってみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~数時間前~

 

 

 俺がリアス・グレモリー達に誓約を科して一週間が過ぎようとしていた。

 

 

 この頃、色々と変わった事があったな。

 

 

 まずは、何故かアザゼルがオカ研の顧問になっていたが、それについては了承した。何せアイツほど、神器(セイグリッド・ギア)に詳しい奴はいないからな。来たその日に盗った神器(セイグリッド・ギア)を返せとか言ってきたがスルーしてやった。

 

 

 次に黒歌が学園に入学した。元々学生と言うものに興味があったらしい。だがどうみても、アイツは高校生には見えないが……まぁ置いておこう。因みに三年生だ。だが白音がうざがってたな……。

 

 

「なんで姉様を入学させたんですかか!?学園でまで抱き付いてきてうっとおしいです!」

 

 とか言ってたな。まぁシスコンだから仕方ないか、白音が可愛いから仕方ないと言ったら顔を赤くしてたな、何でだろう?

 

 

 

 次はギャスパーか、色々とあって学園に来れなかったが、今は普段は俺が邪眼を封印し、制御法の訓練をしている。ギャスパーは人見知りだが、白音と同じクラスだから問題なく学園に通っている。やはり学園生活は重要だ、様々な面でな。

 

 まぁ……ギャスパーも十分可愛いから余計な蟲が寄らんとも限らないな。可愛い娘を心配する親の気持ちってこんなんかな?

 

 ギャスパーの性別?女の子だが、何か?

 

 因みに放課後は以前の様にオカ研に行っている。リアス・グレモリーもギャスパーとはなす機会があるが、無理矢理連れ戻そうとする気は無い様だが………まぁ警戒はしておかないとな……。

 

 

 白音はギャスパーを妹の様に思っているのか、ギャスパーの世話を焼いているな。オーフィスもギャスパーと仲が良い。仲良き事はいいことだ。

 

 

 

 それは置いておいて……俺達は何故か冥界に行く列車に乗っている。えっと……在った事を整理しよう。

 

 学園は終業式が終わり、夏休みに入った⇒折角の夏休みは何処に行こうと考えていた⇒その日はあの三馬鹿に海に行こう(零を連れて行けば女の子は集まると考えた)と言いだした。まぁ目的は分かってたので断ったがな⇒それから放課後にアーシア達がオカ研に赴いた時に冥界に合宿に行くとリアス・グレモリーに言われた。ついでにと言う事で誘われたらしい。

 

 アーシア・白音・黒歌は行きたいらしい。オーフィスはどっちでも良い様だ。ギャスパーはどちらかと言えば行きたくないらしい。俺は面倒だからと言ったが、アーシア達に涙目をされたので渋々了承したが……流石に悪魔の巣窟にアーシア達だけを行かせる訳にはいかんからな。それに母様から魔王達に宛てた手紙を届ける様に言われたし……面倒だが、母様の頼みであるならば仕方ない。

 

 

「はぁ………」

 

 零は溜息を吐きながらソファーに座り、膝に座っているオーフィスを撫でている。オーフィスは気持ち良さそうに目を細めている、無表情だが満足そうな雰囲気を出している。横には黒歌が座っていた。

 

 アーシア、白音、ギャスパーは朱乃や一誠達と談笑している。だがあの一誠の眼は頂けん、エロガキの眼だ。

 

 

「オーフィス、そろそろ交代にゃ」

 

 

「ん、分かった」

 

 黒歌にそう言われ、オーフィスは零の膝から立ち上がると横に座った。黒歌は空いた零の膝に寝転んだ。

 

 

「さぁご主人様、思う存分撫でるにゃ」

 

 

「じゃあ遠慮なく(なでっなでっ」

 

 

「はにゃ~やっぱりご主人様は撫で上手にゃ~」

 

 黒歌は気持ち良さそうに目を細めて、零の脚に頬ずりしている。表情は蕩けきっており、尻尾までハートの形になっている。

 

 それを見て、苦笑している・朱乃・裕子。涙を流しながら羨ましそうな眼で見ている一誠。リアスは複雑そうな表情で見ていた。

 

 

「おいっ一誠、家のアーシアや白音、ギャスパーに変態的な視線を向けるな。次にその眼で見たら………」

 

 

「みっ見たら?」

 

 

「複数の聖剣・聖槍で四肢を貫いた後に、傷口に聖水をぶっかける」

 

 

「なっなんて恐ろしい事を言いやがるんだ!?悪魔にとっては思いっきり致命傷じゃねぇか!」

 

 

「そっそうです、一誠さんが死んじゃいますぅ~」

 

 零と一誠の会話を聞いていて、内容を想像したのか涙目になりながら零に訴える。

 

 

「チッ……仕方ない。アーシアは優しいからな………そうだな、両手足を縛って漢女の集団の所に放り込んでやる」

 

 

「乙女の集団!?何それご褒美ですか?!」

 

 どうやら一誠は勘違いしている様だ。乙女と漢女……読み方は同じでも意味は全く違うのだ。一誠は後にその事を身をもって知る事になる。

 

 

「阿呆め………まぁいい。今回は見逃してやる」

 

 

「ほっ…」

 

 零は一誠から眼を離すと、懐から手紙を取り出した。その手紙には達筆な字で魔王殿へと書かれていた。今回の零の仕事内容からすれば天照が書いた物だろう。

 

 

「(内容は見てないが………恐らく誓約の話だろうな。素直に魔王達がこれに同意するとは思えんが………その為に俺が行く事になったんだろうが………全て俺に任すと言われたが……どうするか?)……まぁなる様になるか(キィィィィ」

 

 零の右眼がぼんやりと光っている。

 

 

「ご主人様、眼が」

 

 

「えっ……眼……」

 

 白音にそう言われて窓ガラスに映る自分の眼を見てみると確かにぼんやりと光を放っている。

 

 

「ぁあ………大丈夫だ。特にこれと言って問題はない(前兆か………まぁ気にしないでおこう)」

 

 少しの間右眼を閉じると光は収まった。

 

 

 《キィィィィィィ!!》

 

 突然、乗っている電車が停止し浮遊感を覚えた。そして全員の視界が真っ暗になった。

 

 

 

 ~回想終了~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、眼を開けると訳の分からない場所で………目の前には大きなドラゴン……まぁ俺が相手するまでもないか……」

 

 

「ぜっ零さん、一誠さん達を助けなくていいんでしょうか?」

 

 

「いいの、いいの…………まぁドラゴンだから、自分より強いのには攻撃してこないだろう」

 

 零はそう言ってアーシアとギャスパーに被害が来ない様にオーフィスや黒歌達の傍に行かせると、自分もトランプを始めた。

 

 

 《ガアァァァァァァァァァ!!》

 

 一誠達と戦っているドラゴンがブレスを吐き、それが零達の真上の崖に当たった。それにより崖が崩れ大きな岩が零達の真上に落下してきた。

 

 

「ん」

 

 オーフィスが手を鉄砲の形にして向ける。

 

 

「ばきゅん」

 

 そして指先から黒い球体を撃ち出した。黒い球体は落下してくる岩に直撃すると、岩は跡形なく消滅した。

 

 

 《ガァン》←?

 

 

「フッ……(どやぁ」

 

 そして、銃口の煙を吹き消す様な仕草をして零に向かいドヤ顔をした。

 

 

「流石オーフィス、『ばきゅん』って凄く可愛い……(パシャパシャ」

 

 零はそんなオーフィスの写真をカメラで撮影していた。

 

 

「さてと………迷惑だな。【ソウルコード:ライディーン】フェードイン」

 

 零の左腕に金色の腕輪が出現し、そこから溢れた光が全身をつつみ鎧と化した。

 

 

「【神の弓(ゴッド・アロー)】」

 

 右腕に装備されている装飾が弓の形に変化した。そして左手を矢を引く様に構えると、指先に光が収束し始め光の矢が完成した。

 

 

「そこっ!」

 

 矢を放つと、その矢はドラゴンが吐いたブレスを貫通した。神の弓(ゴッド・アロー)に貫かれたブレスは中心部から発生したブラックホールの様な物に吸い込まれ消滅した。

 

 全身が矢の飛んできた方向を見ると、再び神の弓(ゴッド・アロー)を構えている零の姿が目に入った。

 

 

「そこのドラゴン………お前悪魔……転生悪魔だな。例え一誠達を試す為であっても、一応日本神話側の大使である俺やアーシア達に害を成すと言う事は……悪魔は我等との戦争を望んでると思ってもいいって事だよな?」

 

 どうやら先程の岩を落としてきた事を怒って居る様だ。その怒気に圧されて全員が黙ったままだった。

 

 

「沈黙は肯定を意味するぞ………OK、何も答えないって事はそういう事だな。安心しろ、痛みは一瞬にしてやる」

 

 

「タンニーン、久しい………タンニーンは零の敵?敵なら我が倒す」

 

 どうやら零が本気なのを感じると、オーフィスが目の前のドラゴンに向かいそう言った。

 

 

「おっオーフィス、違う!此方に敵意は無い!事故だ!」

 

 タンニーンと呼ばれたドラゴンは顔を青く?しながら両手を上げて敵意のない事を伝えている。彼の名はタンニーン。【魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)】と呼ばれた元龍王の1匹だ。

 

 流石に元龍王の1匹であっても………いや元龍王であるが故に無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)であるオーフィスの力を知っている。そして目の前の黄金の鎧が誰なのか、直ぐに分かった様だ。

 

 

「事故?……敵ではない?」

 

 

「そうだ……伝説の戦士殿にも大変失礼した」

 

 

「………」

 

 零は無言のまま、ライディーンを解除する。すると何時もの零とは違っていた。頭に漫画で見る様な大きなタンコブが出来ていたのだ。何時で来たのだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 良く思い出して貰いたい、オーフィスが煙を吹き消す真似をする数秒前の事だ。

 

 

 《ガァン》←コレ

 

 

『フッ……(どやぁ』

 

 そうこの時にオーフィスが消した岩とは別の小さい岩が零の頭に直撃していたのだ。タンコブが出来る程だから、かなり痛かったと思う。しかし零はオーフィスの写真を撮る事を優先していた。

 

 そしてこの時、零はこう考えていた。

 

 

(痛い……痛いけどオーフィス可愛い!後であのトカゲ、コロコロしてやる!おっと写真、写真)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうやら、全部アザゼルの仕業の様だ。

 

 一誠達の実力を測る為であったが、手違いで零達も送ってしまった様だ。勿論、零は一誠達を試す為だと気付いていたが、もしもあの岩が誰も傍にいない状態のアーシア達に落ちれば無事で済んでいない。

 

 だからこそ怒っている。決して岩が頭に当たって痛かったからではない。きっと………多分。



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EP51 冥界温泉にて

 ~冥界 グレモリー領 温泉施設~

 

 リアスの配慮により、汚れたまま実家に入るのもあれだといい、全員で温泉に行く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~男子side~

 

 更衣室で零、一誠、アザゼルが服を脱いでいた。

 

 

「温泉か……まぁいいだろう」

 

 零は温泉と聞くと何処となく楽しそうだ。鼻歌まで歌っている。

 

 

「零が珍しく鼻歌を歌ってやがる」

 

 

「そうなんですか?機嫌がいいと何時もあぁですけど……」

 

 鼻歌を歌っている零をアザゼルが珍しそうに見てそう呟くと、一誠がそう言った。

 

 

「へぇそうなのか………っておい?!」

 

 

「どうしたんですか、アザゼル先生?ってうおっ!?」

 

 何かに驚いているアザゼルに首を傾げる一誠が零の方を見ると同時に驚きの声を上げた。

 

 

「どうかしたか?」

 

 

「零、アヒルさんと我のシャンプーハット」

 

 零の横にオーフィスが立っており、そう言っていた。そう言われると零の近くに空間の歪みが発生し、そこに腕を突っ込んで言われた物を探し始めた。

 

 

「あぁ……ぇえとアヒルさん……あった、あった。オーフィスのシャンプーハットは……あった」

 

 

「零、我の服」

 

 

「オーフィスの服……何時ものでいいが、何か着たいのあるか?」

 

 

「母に貰ったのがいい」

 

 オーフィスがそういうと、空間の歪みから綺麗な着物を取り出した。

 

 

「はい………ん?」

 

 オーフィスに着物を渡した時点で違和感に気付いた。此処は男湯だ……男しかいない筈なのだが。

 

 

「オーフィスなんでこっちにいるんだ?」

 

 

「ん?……我、零と一緒に入る」

 

 

「駄目です、あっちに行きなさい。こっちには変態悪魔(一誠)変態堕天使(アザゼル)がいるんだから、アーシア達の所に行っておいで。変態共にオーフィスを見せるとオーフィスが汚れる」

 

 

 《コンッコンッ》

 

 

『ご主人様、オーフィスこっちに来てませんか?』

 

 外から白音の声が聞こえた。どうやらオーフィスが居ないので探しに来た様だ。

 

 

「あぁ、白音か。居るよ……ほらっオーフィス。あっちに行きなさい」

 

 

「むぅ………分かった」

 

 オーフィスは渋々了承すると、着物とアヒルさん、シャンプーハットを持って白音と共に女湯の方に向かった。

 

 

「「………」」

 

 

「なんだ?入らないのか?」

 

 

「いや……なんでもない(あまりにも自然すぎるだろう)」

 

 

「うっうん……入るよ(もしかして何時も一緒に入ってるんじゃ)」

 

 零のあまりにも自然な動きにそう考えてしまう、アザゼルと一誠だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カポーン』と音が聞こえてきそうな温泉に浸かっている零、一誠、アザゼル。

 

 

「ふぅ~………極楽、極楽。冥界にこんな温泉があるとは……」

 

 

「はぁ……これで酒でも在れば言う事ないんだがな」

 

 零とアザゼルがそう言いながら温泉を満喫している。

 

 

「酒か……えっと確かあそこに入れてた筈だ…」

 

 零はそう言うと、先程オーフィスの着物などを出した空間の歪みに出現させそこに腕を突っ込むと中を探り始めた。

 

 

「なぁレイ、前から思ってたけどそれなんなんだ?」

 

 

「これか……簡単に言えば異次元に俺だけの空間を作ってそこに物を保存する物だ。おっ母様に貰った御神酒……これでいいや」

 

 零が空間の歪みからお盆と徳利と御猪口を2つ出すと、湯に浮かせたお盆の上に乗せた。

 

 

「これで我慢しろ。文句が在るなら飲むな」

 

 

「ハハハ、文句いやしねぇよ……んぐっ……うおっ!?こりゃうめぇ!」

 

 

「って!レイ!お前未成年だろ!?」

 

 平然と酒を飲んでいる零を見て、一誠がそう叫んだ。

 

 

「言っておくが俺はお前より年上だぞ。心も体も」

 

 

「あっそういやレイって神様の子供……実際の年齢は幾つなんだ?」

 

 

「まぁ億まで数えて面倒になったからから数えてない。人間の年齢で換算すればお前等と変わらないくらいだ……ぷはぁ……」

 

 零はそう言い、御猪口に入った御神酒を飲み干した。

 

 

「そういや、イッセー。お前、リアス・グレモリーの乳を揉んだんだってな」

 

 突然、アザゼルがそう言い始めた。

 

 

「はい!この手でこうもしゃっと!」

 

 

「この阿呆烏。そんな事、ばかり言ってるからヴァーリにキモいって言われるんだ」

 

 

「なぁ!?そっ……そうだったのか………ヴァーリ……帰って来てくれぇ!!!」

 

 零の言葉にショックを受けながら、立ち上がり天を仰いでそう叫ぶアザゼル。勿論、全裸で………端から見ると頭が可笑しいとしか見えない。

 

 

「一誠、このバカの言葉は聞くな……ゴクッ……」

 

 呆れながら御猪口に入った酒を飲み干すと、空間の歪みに徳利と御猪口を仕舞うと空を見上げた。

 

 

 ~side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~女性side~

 

 

 女性陣も男湯の上にある女湯に浸かっていた。

 

 

「気持ちいにゃ~」

 

 

「姉様……なんでそんなに近付いて来るんですか?」

 

 

「白音の成長をこの手で確かめようかと思って」

 

 

「近付かないで下さい」

 

 

「酷いにゃ!」

 

 そんなやりとりをしている白音と黒歌。

 

 

「わぁ~部長さんも朱乃さんも大きいですぅ」

 

 

「あらっあらっそんな事ありませんわよ」

 

 

「くっ……僕も小さい方ではないと思うけど……朱乃さんや部長には負けます」

 

 

「ん?胸の事か……私にはよく分からんが、男は大きい方がいいらしいな」

 

 アーシア、朱乃、裕子、ゼノヴィアの順にそう言う。アーシア達はリアスと朱乃の豊満な胸を凝視している。

 

 

「何を食べたらそんなに大きくなるんでしょう?」

 

 

「特に気にした事はないけど………普通に生活してるだけよ」

 

 

「アーシアさんも白音ちゃんも未だいいですぅ……ボクなんて殆どないんですから」

 

 

「ギャスパーも気にしてる?………我には分からない」

 

 アーシアと白音を見ながら、自分の胸を見て落ち込んでいるギャスパー。

 

 

「そう言えば……リアスさん、レイナーレ様達はどうなさったんですか?」

 

 アーシアがリアスの眷族になった筈のレイナーレとミッテルトがいない事に気付いた。そう言えば列車の段階でいない事を思い出した。

 

 

「あぁ、彼女達はアザゼルに人工神器(セイグリッド・ギア)の最終調整を受けているらしいわ。アザゼルはこっちにいるけど……それが終われば直ぐに此方に合流する筈よ」

 

 アーシアの質問にリアスがそう答えた。何時もの変わらぬ様に見えるが、良く見れば何時より弱々しくも見える。恐らく零に言われた事を気にしてかギャスパーからも距離をとっていた。

 

 

「あっご主人様達にゃ」

 

 黒歌が下の男湯にいる零達を見つけた。

 

 

『そういや一誠、零、お前等の周りには美人ばかりだが本命は誰なんだ?』

 

 

 《ざばっ!》

 

 そう聞こえてくると、全員の眼が光り、隠れる様に男湯を覗き込み耳を澄ませている。

 

 

『えっ……いやあの……俺はその』

 

 アザゼルに聞かれて顔を赤くして慌てている一誠。

 

 

『普段はエロガキのくせに、こういう事になると純情なんだな、お前……』

 

 

『エロガキのくせに……まぁあまり遊び過ぎると、刺されるぞ』

 

 

『えっ!?刺されるの?!』

 

 

『俺の知ってる優柔不断な奴がいてな。【違うんだ!俺は皆を幸せにしたいだけなんだ!】とか言った正義の味方(笑)がいてな。最終的には病んだ女達にヤられた。いやぁ……あの時は全くもって愉悦だったな、ハハハ』

 

 零は笑いながらそう言うと、その顔が何処かの麻婆神父と重なって見える。

 

 

『えぇ!?死んだの?!』

 

 

『いや……一応……生きてるって言えるのかあれ?……まぁいいや。そんな訳だから気をつけとけ』

 

 

『うぅ……良く分かんないけど……気を付けるよ。それでレイは誰なんだ?』

 

 零の言った言葉に脅えながら、一誠は聞き返した。

 

 

『はぁ?……何が?』

 

 

『いやだから本命』

 

 

『ん~……アーシア、気立てもいい、優しい、料理もうまい、マジ聖女。

 

 白音は家事はそこそこ、可愛い、にゃんこ、癒し。

 

 黒歌は白音と同じで家事はそこそこ、仙術のマッサージは凄く上手い、あれはあれで可愛い。

 

 オーフィスは家事は……コホン……可愛い、可愛い、可愛い、可愛いは正義!』

 

 零がそう言ったのを聞くと、女湯で聞いていたアーシア達は喜んでいる。次の言葉を聞くまでは……。

 

 

『けどそういう目で皆を見た事ないしな……何とも言えない』

 

 それを聞いた瞬間、アーシア達はがっくりとしている。

 

 

「?……ギャスパー、何故アーシア達は落ち込んでいる?」

 

 

「えっと……その何故でしょう……」

 

 

『まぁ………アイツ等が望むのならそういう関係になるのも吝かでない』

 

 零がそう言うと、アーシア達は顔を真っ赤して身体をくねらせている。

 

 

『そういや零、お前って童〇か?』

 

 

『…………俺は大人だ、一誠と一緒にするな』

 

 

『この裏切り者ーーーー!!(Boost!)』

 

 一誠は涙を流しながら、赤竜帝の篭手(ブーステッド・ギア)を装備し拳を零に向けた。

 

 

『うざい……大体なんで裏切り者なんだよ。こんな所で暴れるな【メモリーコード:重力操作(グラビティ)】』

 

 零の左目が光ると同時に、一誠は謎の力に押しつぶされて温泉の底に埋もれた。

 

 

『零!言っておくが!ヴァーリはお前にやらんぞ!ヴァーリは昔【お義父さんのお嫁さんになる】って言ってたんだ!!絶対にお前にはやらん!』

 

 

『訳分からん……何故、ヴァーリ?』

 

 

 《ごぼっごぼっ》

 

 

『アイツはな!お前がライディーンだって分かった日からお前の名前を言いながらぼぅとなんてしてないんだからな!寝言でもお前の名前なんて言ってないんだからな!【パパ、大好き】って言ってるくらいなんだからな!』

 

 アザゼルは血涙を流しながらそう叫んでいる。零は訳が分からないという表情で、一誠と同じ様にアザゼルを温泉の底に沈めた。

 

 

 ()()()()()()

 

 

『訳の分からん事を……はぁ極楽、極楽』

 

 

 ~side out~




・キャラ設定

ギャスパーは考えた結果、女の子になりました。



リアスとアーシア達は特に仲が悪い訳ではないですが、零の影響でリアスはアーシア達と一歩退いた形で接しています。



一誠のヒロイン候補(現在)は

リアス、朱乃、裕子、ゼノヴィア。


零のヒロイン候補(現在)は

アーシア、白音、黒歌、オーフィス、ヴァーリ。


ギャスパーや他のキャラがどうなるかまだ決まってません。
















~予告~

 天使・悪魔・堕天使の協定を結ぶ為の会場に現れたのは邪神。

 邪神は総てを破壊する為に動き始めた。

 その邪神を倒す為に、リアス達も動くが相手は曲りなりにも神。邪神を止める為に零も動き出した。

 だがその身に纏うのは鋼鉄の戦士の鎧でも、英霊の力でもなかった。その身に纏うのは黒き鎧。

 それが何なのか……未だ誰にも分からない。




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EP52 グレモリー家の屋敷。そして修行

 ~グレモリー家 屋敷前~

 

 温泉を出て着替え、向かったのはリアスの実家であるグレモリー家の屋敷だ。アザゼルは用事があるらしく、此処にはいない。

 

 

「おお、こりゃまたデカい屋敷だ。部屋の数も、大きさも結構ありそうだ………掃除大変だろうな」

 

 零は大きな屋敷を見てそう呟いた。

 

 そして出迎えには前に現れたグレイフィアが出て来た。案内されて、屋敷の中に入るとズラリとメイドと執事が並んでいた。

 

 

「(こりゃまた凄い数のメイドだな。まぁこんだけ居れば掃除やらは困らんだろうな……家の状況だったら無理だ。家事ができるのは俺、白音、アーシアだけだし……黒歌はまず自分でしようとしないから戦力外、オーフィスは……駄目だな。壊れるイメージしかない)殆どが物置状態だろうな」

 

 などど考えていた。

 

 

「リアス姉様~お帰りなさい!」

 

 

「「「ん?」」」

 

 前を見ると、赤い髪の少年が走って来た。

 

 

「ミリキャス、久しぶりね。見ない内に大きくなったわね」

 

 

「お姉様?」

 

 

「リアスさんの弟ですか?」

 

 一誠とアーシアが首を傾げた。

 

 

「私の甥っ子……お兄様の息子よ。ほらっミリキャス挨拶なさい」

 

 

「はい!ミリキャス・グレモリーです!」

 

 ミリキャスは元気よく挨拶した。

 

 

「ほぉ……元気のよい子だな」

 

 

「あっ……銀色の髪、それにその赤色と金色の眼……もしかして伝説の戦士様ですか!?」

 

 ミリキャスが零の姿を見ると、キラッキラッした目で零を見つめる。と言うより迫っている。突然街中に現れた特撮ヒーローに集まる子供の様な目だ。

 

 

「まぁ……天使や悪魔とかの間ではそう呼ばれてるな。俺的には降り掛かった火の粉を払っただけなんだがな」

 

 と言いミリキャスを見る。どう反応すればいいのか分からないのか無動だ。

 

 

「ミリキャス、失礼よ。この方は大事なお客様なんだから」

 

 

「あっごめんなさい」

 

 リアスに窘められ、ミリキャスは下がり謝った。

 

 

「構わない……まぁアレだ、ミリキャスくんとか言ったか。話は後にしよう……まずはこの屋敷の当主に挨拶しないとな」

 

 零はそう言うと、しゃがみミリキャスの視線と同じ高さまで来ると笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから案内され、リアスの母であるヴェネラナ・グレモリー、リアスの父であるグレモリー卿に挨拶し、食事をする事になった。

 

 

「ハハハ、まさか伝説の戦士殿が家にいらっしゃるとは。色々と家のリアスがご指導いただいているそうで」

 

 

「ハハハ、俺は俺のしたい事をしているだけですから」

 

 などと話しているグレモリー卿と零。

 

 

『おかわり』

 

 

「ところで兵藤一誠くん」

 

 

「あっはい」

 

 

「ご両親はお元気かな?」

 

 

「はい!家を改築して頂いてとても喜んでいます!」

 

 どう言う訳かグレモリー卿は一誠の家を改築した様だ。

 

 

『おかわり』

 

 

「もっと大きな城の様にしようと思ったんだがね」

 

 

「お父様!此方の文化を押し付けては」

 

 街中にある日、突然城ができれば騒ぎになるだろう。まぁ悪魔なので色々と細工はしそうだが。

 

 

「なのでメイドを50人ほどつけようとしたんだが」

 

 

「メイドを50人?!」

 

 メイドを50人と聞いて一誠の頭の中はエロ一色に染まった。既に鼻の下は伸び、涎を垂らしている。

 

 

「だが娘に『そんな若い女性が傍にいたらイッセーの私生活に支障がでます!』と言われてね」

 

 

「流石部長……よく分かってらっしゃる」

 

 一誠は涙を流しながら落ち込んだ。

 

 

『おかわり』

 

 

「それよりも一誠くん……どうだろう、今日から私の事を『お義父さん』と呼んでみないかね?」

 

 

「お父様たらっ!もぅ!」

 

 それを聞いたリアスは顔を真っ赤にすると、席から立ち上がり何処かに行ってしまった。

 

 

「一誠……この際、1つ言っとくぞ。お前はハーレムやらおっぱいやら言ってるが……まぁ男ならハーレムを作ろうとするのは分からんでもない。しかしだ……そこに『愛』があるか?」

 

 

「あっ愛?」

 

 

「好きになった相手の喜びも、哀しみも、苦しみも、家族も、仲間も、力も、醜い所も、何もかもを受け入れる事が『愛』だ。少なくとも俺はそう思っている………ハーレムを作るにしろ、そう言う事をするにしても、そこに『愛』がなければ意味がない、俺も永いこと生きているが何時の時代も、何処の世界も、それは共通していると思う」

 

 

『おかわり』

 

 

「ほぅ……流石は伝説の戦士殿、言う事が違いますな」

 

 

「いやいや只々、長い事生きているだけですよ…………さてと、俺はそろそろ用意して頂いた部屋の方に戻るとします。明日からは修行なので」

 

 零が立ち上がると、白音達も後に続いて出て行った。

 

 

「愛……愛ってなんなんだ?」

 

 零に言われた事が今一分かっていない一誠は愛について思考を巡らせていた。

 

 

「あっあの……ご当主、報告があります」

 

 突然、シェフの格好をした悪魔が入って来た。

 

 

「どうかしたか?」

 

 

「そっその……食材がなくなりました。備蓄していた分も、全て」

 

 

「なくなった?……まさか倉庫にも結構あった筈だが………あっ」

 

 グレモリー卿が机を見ると、ある席の所に凄まじい数の食器が積み上げられていた。因みに此処に座っていたのはオーフィスである。

 

 オーフィスは一夜にしてグレモリー家の食材を食べきってしまったらしい。流石のグレモリー卿も顔を引き攣らせていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~翌日~

 

 食事の後、屋敷の前に集合した面々。その前にはアザゼルが立っている。

 

 

「じゃあ、これから人間界の時間で8日間、それぞれのトレーニングメニューを考えてきた」

 

 どうやら前々からアザゼルもトレーニングのメニューを考えていた様だ。

 

 

「まず一誠。今回の課題は体力の底上げと禁手(バランス・ブレイカー)に至る事だ。修行相手は」

 

 

 《ドォーン!》

 

 大きな音をたてて現れたのは先日現れたタンニーンだった。

 

 

「フム、ドライグを宿すものを育てるのは初めてだ」

 

 タンニーンは一誠を掴み上げた。

 

 

「うわぁ!?」

 

 

「一誠!」

 

 掴み上げられた一斉に向け、リアスが声を掛ける。

 

 

「部長~」

 

 

「気張りなさい!」

 

 

「そうでした、部長も修行に関しては厳しい~のわぁぁぁぁぁ!」

 

 一誠はタンニーンに連れられ彼方に消えた。

 

 

「次は木場、お前は禁手(バランス・ブレイカー)の維持時間を伸ばせ。剣術に関しては零が相手を用意してくれるらしいが……零、何処にいるんだ?」

 

 そう言ってアザゼルが零を見ると、「ぁあそんな事も言ってたな」と思い出した様だ。

 

 

「直ぐに呼ぶ。【ソウルコード:アルトリア・エミヤ:召喚】」

 

 零の右眼が眩い光を放つと、零の隣にアルトリアとエミヤが現れた。

 

 

「アルトリア・ペンドラン、召喚に応え参上しました」

 

 

「特に言う事もないが……エミヤと呼んでくれ」

 

 白音達以外がそれを見て驚いている。

 

 

「アルトリアは伝説のアーサー王だ、剣術を習うといい。木場祐子の神器(セイグリット・ギア)は魔剣を造り出す物……エミヤは剣を造る事を極めている、剣製のいろはを習うといい。ついでに聖龍剣(フォース・オブ・ドラゴスレイブ)邪竜剣(グレイズ・オブ・ドラゴスレイブ)を使いこなせるようにすればいい。アルトリア、エミヤ、その娘を頼む」

 

 

「分かりました、零の頼みとあらば」

 

 

「了解した」

 

 

「おっと、これを持っていきな」

 

 零は懐から1枚のカードを取り出すとエミヤに渡した。

 

 

「あぁ……アレか。分かった……では行こうか」

 

 裕子、アルトリア、エミヤの足元に魔方陣が展開し、何処かに消えた。

 

 

「アーサー王本人って……まぁいい。次にゼノヴィア、お前はデュランダルを手懐けろ。デュランダルは持ち主を選ぶじゃじゃ馬だ。扱えるようになれ」

 

 どうやらゼノヴィアの課題は聖剣デュランダルを使いこなす事の様だ。

 

 

「私は相手はいないのか?」

 

 

「零と話し合った結果、今は使いこなす事が重要だという結論に至ったんでな」

 

 

「その通りだな。だが木場に手を貸してお前に手を貸さないと言うのもアレだ……これを貸してやろう」

 

 アザゼルの次に零がそう言うと、懐から黒い包帯を取り出した。受け取ったゼノヴィアは首を傾げる。

 

 

「コレをお前の腕とデュランダルを結べ……それだけでいい」

 

 

「良く分からんが、分かった……貴方の言う事なら間違いないだろう」

 

 ゼノヴィアは納得すると、黒い包帯を大事にポケットに仕舞った。

 

 

「姫島朱乃、お前は自分の血を受け入れろ。そうすればお前の雷に光が宿り【雷光】となる。相手はこっちで用意している」

 

 アザゼルにそう言われると、朱乃の表情が曇った。

 

 

「リアス、お前は基本トレーニングと【(キング)】としての素質を磨け。これについては零も協力するらしい」

 

 アザゼルがそう言うと、リアスは驚いた顔をしている。どうやら零が協力するとは思わなかったらしい。

 

 

「フン、俺がお前を気に喰わんのは変わらん。だがお前の眷族達の事を考えて、最後のチャンスをお前にやる。前に俺が言った【大切なこと】を修行で気付け。今回で気付かなければ貴様はそれまで……お前に眷族を率いる資格はない。俺からの課題『今までの自分を見直せ』だ……これを貸してやる」

 

 零はそう言うと、リアスに小さな水晶を渡した。

 

 

「これは【みえ~る水晶くん】。日常では常に肌身離さず、寝る前はこれを頭に当てて傍に置いておく……それだけだ」

 

 零は説明を終えると、直ぐに元の場所に戻った。すると、零の身体から黒い闇が溢れ出た。そしてそれが人の形になると零の【半身】が現れた。

 

 

「ギャスパーは我とお出かけだ。では往くぞ!」

 

 

「ひゃあぁぁぁぁぁぁっぁ!!」

 

 零【半身】はギャスパーを抱えると、そのまま何処かに飛び去った。

 

 

「アーシアには特別な指導者をつける」

 

 

「特別な指導者ですか……どなたでしょうか?」

 

 

「それは後だ。まずはこれだ……これの中の奴がアーシアを大層気に入っているから力を貸してくれるらしい」

 

 そう言って前に、アザゼルの所からぬs……迷惑料として頂いた紫色の宝玉がついた金色の短剣を渡した。

 

 

「ぁあ!それ!零、テメェ!」

 

 

「どうする?」

 

 

「OK!これで手を打つぜ!」

 

 アーシアに渡したのはアザゼルが創った人工神器。それを盗られたことを追求しようとしたが、零がアザゼルに対アザゼル用最終兵器(ヴァーリからパパへの手紙とプレゼント)を突きつけられ、受け取るとそれで解決にした様だ。

 

 アザゼルは対アザゼル用最終兵器(ヴァーリからパパへの手紙とプレゼント)を涙を流しながら、天に掲げていた。親バカ、此処に極まる。

 

 

「と言う訳だ。皆、行こう」

 

 零は残った全員をつれて何処かに向かった。




・修行展開

 一誠:原作通りタンニーンとの山での修行。課題は体力の底上げと禁手に至る事。

 裕子:課題は禁手の維持時間を延ばす事。今回、零が用意した相手は剣術:アルトリア、剣製:エミヤとなっている。

 ゼノヴィア:課題はデュランダルを使いこなす事。零から黒い包帯を受けったが、これが重要な鍵となる。

 朱乃:原作と変わらず、自分を受け入れる事を課題としている。相手は勿論……。

 リアス:基本的なトレーニングと零から与えられた課題「自分を見直す」と言う課題を熟す為に【みえ~る水晶くん】なるものを渡された。

 ギャスパー:課題も、内容も不明だが零【半身】により何処かに連れて行かれた。

 アーシア:特別な指導者をつけるらしいが、未だ誰なのか不明。零からアザゼルの造った(零の手が加えられている)人工神器を渡された。

 白音:不明。

 黒歌:不明。

 オーフィス:必要なのかどうかあやしい。















・登場アイテム

 名称:対アザゼル用最終兵器《ヴァーリからパパへの手紙とプレゼント》


 その名の通り、対アザゼル用の最終兵器。

 零がヴァーリに勝った事で、代償として用意させたもの。

 アザゼルのみにしか効かないが、絶大な効果がある。


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EP53 騎士達の修行

今回から少しは修行の話になります。

今回の話は題名通り、裕子とゼノヴィアの修行の話になります。


 ~裕子side~

 

 

「ハアァァァァァ!」

 

 

「甘い!剣を弾かれたなら直ぐに体勢を立て直しなさい!」

 

 《ガギィ!ガァン!》

 

 現在、裕子は零が呼び出したアルトリアが剣と剣をぶつけあっていた。

 

 祐子の持つ剣は魔剣創造(ソード・バース)の禁手、聖と魔の融合した剣【双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)】。

 

 対するアルトリアの剣は星が産み出した最強の幻想(ラスト・ファンタズム)、聖剣の頂点にたつ約束された勝利の剣(エクスカリバー)

 

 例え聖と魔を宿した剣だとして相対するのは最強の聖剣。剣と剣がぶつかると少しずつではあるが、裕子の剣が欠けていく。

 

 

「未だだ!君の限界はその程度か?!ならば越えて見せろ!」

 

 エミヤがそれを見て、裕子に激を飛ばす。

 

 

「ハアァァァァァァ!」

 

 再び、聖魔剣を創造しアルトリアに斬り掛かる。裕子は悪魔のナイトの性質である素早さを用いて全力でアルトリアに剣撃を繰り出す。だが相手は伝説のアーサー王、そう簡単に攻撃が通る事は無い。

 

 剣も、実力も劣る裕子ができることは、全力を出し続け、攻撃を繰り出す事のみ。

 

 

「はぁはぁ………」

 

 

「うむ……いいでしょう。今日は此処までにしましょう、裕子」

 

 

「はっ……はぃ……あり…がとう…ござい…まし…た」

 

 こうして修行が終わった。

 

 

 

「ふぅ……エミヤさん、このお味噌汁おいしいです!」

 

 

「シロウ!ごはんをおかわりです!」

 

 

「ハハハ、2人ともそう慌てずに食べ給え。ごはんは逃げたりはしない」

 

 裕子とアルトリアに手料理を振るうエミヤ、今までの出番の中で一番活き活きしているのは気のせいだろう。

 

 

「零から貰ったこの【カード型物質保存庫】は本当に役に立つな。私も専用の物を作って貰おうか」

 

 そう言って零から貰ったカードを見ている。これは【カード型物質保存庫】、その名の通り物を保存する機能を持つ人智を越えた道具だ。因みにどれだけ保存できるかと言うと、1枚で野球場数百個分の物を保存でき、これに触れて出したい物を想像するだけで出て来ると何とも便利な道具だ。

 

 

「修行を始めて今日で7日。祐子の実力もかなりついてきましたね……シロウ、剣製の方はどうですか?」

 

 

「そうだな、禁手(バランス・ブレイカー)という状態を持続できる時間も伸びてきたな。剣製の方も始めに比べればかなりマシになってはいる。だが、それを持続させるとなるとかなり別問題だからな。こればかりは日々の努力と素質が関わってくる。祐子くんの場合、素質は私と同じ位はあると思うよ」

 

 

「ありがとうございます、アルトリアさん、エミヤさん」

 

 礼を言う裕子に笑みを浮かべるアルトリアとエミヤ。そうして時間が過ぎていった。

 

 

 ~side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ゼノヴィアside~

 

 

「はあぁぁぁぁぁぁ!」

 

 森の中で聖剣・デュランダルを振るうゼノヴィア。デュランダルを振るう度に周りの木々が斬り倒されていく。ゼノヴィアの腕とデュランダルは零から貰った黒い包帯で結んでいる。

 

 

「くっ……ぅ……」

 

 

 《ガタッカタッ》

 

 ゼノヴィアに握られているデュランダルが音を立てて動いている。デュランダルは使い手を選ぶじゃじゃ馬、普段は異空間に封じておかねば、暴走する厄介な代物だ。それを手懐けるのは容易な事ではない。

 

 

「この……暴れるな」

 

 

 《ガタッ!ガタッ!》

 

 暴れ出そうとしているデュランダルを必死に抑え込もうとしている。だがデュランダルもそれに抗おうともがいている。

 

 

 《ドクン……ドクン》

 

 

「なんだ?」

 

 ゼノヴィアは脈動を感じた。この脈動は修行を始めてから時折感じているものだ。それを始めた感じた時に何故かこの脈動を知っている様な気がしていた。ずっと身近な存在の様に思えた。だがデュランダルを抑え込むのに必死となり、それを理解しようとしないでいた。

 

 

「この!」

 

 なんとかデュランダルを抑え込もうとする。だが此処でゼノヴィアは違和感に気付いた、これまでで在れば直ぐにデュランダルを抑え込めた、だが今回は何故か抑えられない、それに脈動をこれまでよりハッキリと感じる。

 

 

 《ドクッ……ドクッ……ドクッ》

 

 

「この脈動……そう言えばこの黒い包帯を巻いてから感じ始めたんだったか……もしかしてこの感じ、お前なのか、デュランダル」

 

 ゼノヴィアはずっと気になってはいたが、今ハッキリと理解した。これはデュランダルの力の流れだと言う事を。

 

 

 《ドクッ!ドクッ!ドクッ!》

 

 ゼノヴィアの言葉に、歓喜するかの様に脈動が強く、早くなる。

 

 

「そうか……お前だったんだな。お前はずっと私に語りかけていたのか………なのに私はそれに気付けなかった、すまない。これではお前の使い手失格だな」

 

 ゼノヴィアがそう言うと、零から貰った黒い包帯が光り出しデュランダルを包み込んだ。光が消えると、包帯が消えデュランダルの刀身とゼノヴィアの手の甲に紋様が描かれていた。

 

 

「これは……」

 

 デュランダルが光の粒子となり、ゼノヴィアの身体に吸い込まれていった。そしてゼノヴィアは自分の身体の中にデュランダルがある事を直感した。そして身体に流れるデュランダルの力を感じていた、それは既に暴走する様な物ではない、ゼノヴィアを護るものとなった。

 

 

 ~side out~




・道具紹介

名称:不明


 零がゼノヴィアに渡した黒い包帯。名前こそ分かっていないが、今回のゼノヴィアの修行で、ゼノヴィアとデュランダルとの意思疎通を可能にした。

 ゼノヴィアの手の甲に紋様を残し、黒い包帯は消えたが完全に使い熟すことができた。デュランダルは異空間に封印する必要はなくなり、デュランダルはゼノヴィアと一体化することになった。


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EP54 黄金?変態の間違いだ

 今回はアーシアの話です。


 ~用意された零の部屋~

 

 アーシア、白音、黒歌、オーフィスは零に連れられてグレモリー家の屋敷に用意された自分達の部屋に戻っていた(それぞれに部屋が用意されているが、自然と皆は零の部屋に集まっていた)。

 

 

「零さん、お部屋に戻ってきてどうするんですか?」

 

 

「あぁ、実質は此処とは違う場所でするんだが………まぁいい。そこでジッとしててくれ」

 

 零はそう言うと、眼を瞑り深呼吸する。

 

 

「『世界を構成する総ての存在よ、世界の理よ、原初の神が子である我に従え【世界は神の意のままに(ワールディング・ザ・ゼロ)】』」

 

 零の身体から光と闇が溢れ出し、辺りを浸食していく。そして周りが白と黒の染められた。零が手を振ると白と黒が混じり合いやがて、何処かの荒野に姿を変えた。

 

 

「すっ凄いですぅ……これどうなってるんですか?」

 

 

「これは【世界は我が意のままに(ワールティング・ザ・ゼロ)】って言ってな。俺の心象風景を現実に再現するもの……俺の心象は【無】。総ての始りであり、終わり。どんな物にも属さず、どんな物でもなる……だから俺の意志しだいでどんな風景でもなるし、どんな事だって出来る。よしアーシア、さっき渡した奴出してみてくれ」

 

 

「はい」

 

 アーシアが紫の宝玉のついた金色の短槍を取り出した。

 

 

「今からその中に宿るドラゴンを呼び出すぞ」

 

 零が手を翳すと、宝玉が光り出し舞い上がると眩い光と共に金色の翼のないドラゴンが現れた。ドラゴンは零達を見降ろしたまま沈黙している。

 

 

「初めまして、五大龍王の一角『黄金龍君(ギガンティス・ドラゴン)ファーヴニル』」

 

 

 《………》

 

 

「アレ?」

 

 

 《金髪……美少女》

 

 ファーヴニルはアーシアをジッと見つめ、そう呟いた。

 

 

「えっ私ですか?……ファーヴニルさん、初めましてアーシア・アルジェントと申します」

 

 

 《アーシア……たん》

 

 

「「「はぁ?」」」

 

 突然、ファーヴニルがアーシアのことをたん付けで呼び出した。あまりに予想外のことに驚く、零、白音、黒歌。

 

 

 《はぁはぁ………生アーシアたん、クンクン、スリスリ、ペロペロしたい》

 

 この龍王は一体何を言い出すのだろうか、アーシアを見て息を荒げ始めて、変態じみたことを言い出した。

 

 

「【ソウルコード:ジークフリート・幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)】!」

 

 零は右手に柄に青い宝玉が嵌め込まれた大剣が現れた。これはかつてファーヴニルを倒した英雄ジークフリートが使用していた剣。龍に対して絶大な効果を発揮する。

 

 

 《まっ待て!俺様、害を成す気はない!》

 

 

「うるさいわ!アーシアに何をするつもりだ!この変態ドラゴンが!」

 

 

 《アーシアたん、可愛い。俺様にとって金髪美少女であるアーシアたんは絶対》

 

 

「ムッ(キュピーン!」

 

 

 《あっ(キュピーン!》

 

 零とファーヴニルが何処かのニュータイプ達の様に共感し合った。

 

 

「お前……中々やるな」

 

 

 《そっちこそ》

 

 零は幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)を消すと、ファーヴニルの前脚を叩く。

 

 

「それでだ。アザゼルと契約していたらしいけど、それは解除した。どうだ、ファーヴニル。契約するのはお前が気に入っているアーシアがいいと思うんだが……まぁ龍王との契約だしそれなりに対価がいるだろう」

 

 ファーヴニルは頷いた。此処までは零が予想していた通りだろう、だからこの【世界は我が意のままに(ワールティング・ザ・ゼロ)】を使用した。世界は我が意のままに(ワールティング・ザ・ゼロ)は、使用中は世界が零のイメージのままに現実になる。例えば、零が海に行きたいと思えば周りが海となる。どんな無茶な事でも現実になる。それはどの様な法則にも縛られない、例え神が定めた理であっても、例外ではない。

 

 だからこそ、零はファーヴニルがどの様な事を要求しても対応できるようにしたのだ。

 

 

 《俺様……アーシアたんに代価を求める………アーシアたんのおパンティほしい》

 

 

「………(駄目、此奴早くなんとかしないと)」

 

 

「しっ下着ですか?……」

 

 アーシアは下着と聞いて顔を真っ赤にしている。

 

 

「ご主人様、へっ変態です……兵藤先輩と同じ匂いがします」

 

 

「ドラゴンってこんなんばっかなのかにゃ?赤龍帝はエロガキ、白龍皇はドM戦闘狂……ドラゴン関係って変態が多いにゃ」

 

 ファーヴニルの変態発言に退いている白音と黒歌。零に至ってはまるで一誠やヴァーリに向ける様な目でファーヴニルを見ている。

 

 

 《女の子のおパンティ……どんな財宝でも得られない神秘的な宝。故に俺様は求める》

 

 ファーヴニルが淡々とそう述べると、ドヤ顔をしている。零は今にもファーヴニルに襲い掛かりそうだが、何とか抑え込んでいる。

 

 

「ファーヴニル、久しい」

 

 

 《むっ……オーフィス、久しぶり》

 

 

「ファーヴニル、パンツほしい?……なら我のパンツ上げる。零が選んでくれたお気に入り」

 

 

 《アーシアたん以外のはお断り》

 

 零は心の中で「ドラゴンとなんでこんなやり取りをしてるんだ?」と思いながら、異空間に仕舞ったアーシアの鞄を取り出しアーシアに渡した。

 

 アーシアは鞄から自分の下着をとりだすと、ファーヴニルはそれを受け取った。

 

 

 《ひゃほっ~い!アーシアたんのおパンティ!》

 

 ファーヴニルはアーシアの下着を受け取ると、はしゃいでいる。その様子を見てオーフィスは首を傾げた。

 

 

「零、ファーヴニルは何故喜んでいる?」

 

 

「さぁ?俺には良く分からん趣味だ……」

 

 こうしてファーヴニルはアーシアと契約は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故だろう、凄く疲れた………はぁ」

 

 零はファーヴニルの性格・趣味が予想外過ぎて対応して疲れていた。オーフィスと白音を抱きしめ、撫でる事でその疲れを癒していた。

 

 

「落ち着く、落ち着く………よし!じゃあ気を取り直して修行の続きをしようか。えっと何処からだった?」

 

 

「確か、アーシアの指導者を呼ぶとか言ってたにゃん」

 

 

「あぁ、そうだったな。【ソウルコード:ジャンヌ・ダルク、マルタ:召喚】」

 

 零の眼が輝きを放つと、零の前に鎧のついた旗を持ち白い服を纏った金髪の女性、杖を持った女性が現れた。

 

 

「ジャンヌ・ダルク、呼び掛けに応じ参上しました」

 

 

「マルタ、呼び掛けに応じ参りました」

 

 ジャンヌ・ダルク。彼女はオルレアンの乙女と呼ばれた英霊。彼女は神の声を聞き、女性でありながら軍を率いて戦った。時代が時代であったため、普通なら考えられない事だった。だが彼女はその聖旗を振り、フランスを勝利へ導いた。しかし最後には権力者達の思惑により処刑させられてしまった。時が経ち、彼女は聖人認定され英霊の座へと上げられた。

 

 マルタ。彼女は悪竜タラスクを説伏した聖女である。神の恩恵を受け、幾度もの試練を越え他の者達からも聖女と称され、龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)でもある。

 

 

「ジャンヌの方はアーシアも見た事あるだろう」

 

 

「…………」

 

 

「アーシア?……お~い、アーシア」

 

 

「はっ!?ぜっ零さん!?こっこれは夢なんでしょうか!?」

 

 我に呆然としていたアーシアは零に声を掛けられ、我に帰るとかなり慌てている。今の状況が夢だと思って居る様だ。

 

 

「だっ…だって!聖女マルタ様やジャンヌ・ダルク様に御目にかかれるなんて!」

 

 

「ぁあ……まぁ普通はそういう反応になるな。でもアーシア、ジャンヌはお淑やかでまさに聖女って感じだけど、マルタは【こぶs『ドゴッ!』】ぶへっ!?」

 

 

「あらっ失礼、手が滑ってしまいましたわ。ホホホ」

 

 何かを言おうとした零に、魔力弾が飛来し強制的に黙らせた。どうやらその魔力弾はマルタの持つ杖から飛んできたようだ。しかもマルタは目が笑っていない笑みを浮かべている。

 

 

「ハハハ、超痛い。絶対ワザとだろう……まぁいいや。ジャンヌにはそれの使い方を教えて貰いな」

 

 零がそう言って指差したのは以前、アーシアに渡した金の十字架だった。

 

 

「マルタには竜を統べる方法を教えて貰え」

 

 

「はっはい!」

 

 

「ジャンヌ、マルタ、アーシアの事を頼んだぞ。白音と黒歌は違う場所で行うぞ、じゃあ時間になったら迎えにくるからな」

 

 零がそう言うと、黒歌達と共にその場から消えてしまった。




【世界は我が意のままに(ワールティング・ザ・ゼロ)】

 零の固有結界に似た神の力。

 零の根源は本人曰く【無】。それは言葉通りの力で【無】そのもの、零曰く「何者でもなく、何者でもある」「総ての存在の始りであり、終わり」だそうだ。零は【無】から力や物を創造し、破壊により【無】に帰す。 

 現実世界に自分の心象(自分の根源)である【無】を放って、世界を自分の思うがままに再現させる空間。発動時は辺りが白と黒の二色に染まる。

 例えば零が目の前に宝石があると思えば、目の前に宝石(実物)が現れる。それは【世界は我が意のままに】を消した後も残る。

 発動時、零の任意により中で存在できる。零が認めなければこの空間内に入る事はできない、仮に入れたとしても【無】によって消滅させられる。












 【ソウルコード:ジャンヌ・ダルク】
 
 かつてフランスを救った英雄。彼女の遺品である金の十字架は零の手により、アーシアに渡された。

 以前にアーシアが死んだ時に彼女は蘇えらせたのもジャンヌによるもの。

 今回はアーシアの修行をつける為に零により召喚された。





 【ソウルコード:マルタ】

 民を苦しめる悪竜タラスクを鎮めた聖女。

 誰にでも優しい聖女としての顔と、親しい者にだけ見せる素の自分の顔を持っている。零がその事を言おうとした時、顔面に魔力弾をぶち込んだのはあくまでも「手が滑った」からである。

 ファーブニルを従えるアーシアの事を考え、同じく竜(タラスク)を従える者としての心得を教える為に零により呼び出された。















 【黄金龍君:ファーブニル】

 翼を持たない黄金のドラゴン。

 オーフィスや他の龍王達とは顔見知りで、普段は無口。

 アーシアを見て興奮し、変態発言をした時は零に斬られそうになったが、何故か零と共感し合い気があった。

 「どの様な財宝でも得られない神秘的な宝」と称したアーシアの下着で契約を果たした。

 零、白音と黒歌からは一誠やヴァーリの様な変態として認識されているが、アーシアを護ろうとする心は本物である。


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EP55 幸せの一刻

 ~何処かの空~

 

 零【半身】がギャスパーを抱え空を飛んでいた。

 

 

「あっあの零先輩、一体どこにいくんですかぁ!?」

 

 

「お前の実家だが?」

 

 

「えっ?!」

 

 零の答えが予想外過ぎて目が点になっているギャスパー。そして次第に落ち着きだすと、昔の事を思い出して身を震わせている。

 

 

「落ち着け、大丈夫だ。なんせ俺が傍にいるんだしな………」

 

 

「でっでも………」

 

 

「いずれは通る道だ………」

 

 そうしてギャスパーの実家であるヴラディ家の居城についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ヴラディ家 居城 当主の部屋~

 

 

「ん?」

 

 この部屋の主、ラムド・ヴラディは何時もの様に執務をこなしていると妙な気配を感じ、窓から外を見てみると。

 

 

『殴り込みじゃぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 

『ぴぃぃぃぃぃぃ!急降下怖いですぅ!!!』

 

 《パリィィィン!ガシャァン!バキッ!ドゴッ!》

 

 そこに飛び込んできたのはギャスパーを抱えた零【半身】だった。凄い勢いで飛び込んできた為、窓ガラスは割れ、床は着地の衝撃でクレーターができ、装飾やら家具はぐちゃぐちゃだ。

 

 

「ふぃ~。アレなんだこの部屋、汚ねぇなぁ……」

 

 

「きゅ~」

 

 零【半身】は周りを見ながら、自分でしでかした事なのにまるで他人事の様に言っている。抱えられているギャスパーは目を回しているのは言うまでもない。

 

 そしてこの部屋の主のラムドはと言うと。大きな大理石の机の下敷きになっていた。

 

 

「ひでぇ!誰がこんなことを!?」←原因

 

 

「ッ……痛いではないか!」

 

 

「全くだ!犯人出て来い!」←犯人

 

 

「お前だ!お前!」

 

 ラムドはなんとか起き上がると、零を指差した。

 

 

「この……ん?まっまさか……その子は」

 

 ラムドはギャスパーを見て直ぐに誰なのかを理解した。

 

 

「ぅう………気持ち悪い……吐きそうですぅ」

 

 

「大丈夫か?と言うかこの部屋ボロボロだな、穴だらけで寒いし……直そう」

 

 零【半身】が手を振ると何事も無かったかの様に部屋が元に戻った。

 

 

「ぎゃ……ギャスパー」

 

 

「えっ……父様?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「……………」」

 

 

「沈黙が長い……まぁ気持ちは分からんでもないが……はぁ仕方ないなぁ。やっぱりアレを使わないといけないか」

 

 あまりの沈黙の長さに我慢できなくなった零【半身】は立ち上がると、そう言うと懐から木を彫って作った様な人形を取り出した。

 

 

「にっ人形?」

 

 

「まぁな………じゃあ始めるぞ、2人はそこから動くなよ。『世界を構成する総ての存在よ、世界の理よ、原初の神の子である我に従え!【世界は神の意のままに(ワールティング・ザ・ゼロ)】!』」

 

 零【半身】の身体から光と闇が溢れ、辺りの空間を侵食していく。零【半身】はもう1人の零の使った【世界は神の意のままに(ワールティング・ザ・ゼロ)】を使用した。使用中はどの様な事でも零の想いのままである。

 

 

「我が呼ぶのは、1つの魂なり」

 

 零がそう言うと、何処からともなく青白い光球が飛来してくる。光球はギャスパーとラムドの周りを回る。それは何処か嬉しげに見えた。

 

 そして光球は零の前に来ると、零は先程出した人形を前に出す。すると光球は人形に取り込まれた。光球を取り込んだ人形は光を放っている。

 

 

「人形を依代に、我が一時的に肉体を与える」

 

 零は人形を放り投げると、周囲の光と闇が人形に吸収されていく。そして人形は段々と大きくなっていく。人形はやがて人の形となっていく。

 

 

「「!!?」」

 

 その姿はラムドにとって唯一愛した者であり、世界で最もギャスパーを愛する者の姿。

 

 

「久しぶりだな。アスティア殿」

 

 

「どうも、御無沙汰しております」

 

 零がそう言うと、アスティアは深々と頭を下げた。

 

 

「ウム。此度貴女を呼んだのは」

 

 

「承知しております」

 

 

「そうか……なれば我からは何も言わん、親子3人で良く話し合うといい。時間は気にせずにな」

 

 零はそう言うと霞の様に消えていった。同時の風景が湖に変わる、3人の後ろには小さな家が建っていた。その前には机と椅子が並んでいた。

 

 

「此処は……」

 

 

「えぇ、そうですわ貴方。私が居た家です……覚えていらっしゃいますか?私達が出会った時のこと」

 

 アスティアはそう言うと、椅子に座った。

 

 

「ぁあ……忘れるものか……ヴラディ家の相続争いで身内に殺されかけ傷付いた私をお前が救ってくれた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラムドとアスティアの出会い、それはヴラディ家の前当主が死に誰が次を継ぐのが相続権を持つ身内たちで争っていた。その争いによって傷付いたラムドは何とか逃げ延びたが湖の近くに在るの家の前で力尽き倒れてたのだ。

 

 その家に住んでいたのはアスティアだった。アスティアは祖母と暮らしていたのだが、祖母が亡くなってからは1人で暮らしていた。

 

 アスティアは倒れていたラムドを見つけると助けた。当初ラムドは人間を下等な生き物だと見下していた、そしてアスティアの事も唯の自分の食料としか見ていなかったが、次第に純粋に自分を救おうとするアスティアに惹かれ、自分の正体を明かしても変わらずに自分を看護してくれるアスティアに自分の想いを告げた。アスティアもそれを受け入れ、互いに愛し合った。

 

 だがその時間も直ぐに終わりを告げた。相続権を持つ者達が一族の中で一番力を持つラムドを消す為に、相続権を持つ者達が力を合わせ襲撃をかけた。ラムドはそれを何とか返り討ちにし、相続争いは何とか終結した。

 

 こうして相続争いは終了し、今代の当主となった。ラムドは当主となり、アスティアを妻として迎えるが問題が起きた。人間であるアスティアを妻にする事に反対する者達が出て来た。ならばとラムドはアスティアに自分が血を吸い、アスティアを吸血鬼にする事を提案したがアスティアは「私は人として生きたい」と告げた。ラムドはそれを聞くとアスティアの意志を尊重する事にした。

 

 しかしそうなれば一族の者達も黙っていない。だがラムドはそれを権力を使い黙らせた。吸血鬼は自分より上位の者には逆らえない、ラムドは吸血鬼の中でも上位の存在故に逆らう者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうして私と貴方は愛し合った……そして貴女が生まれたのです、ギャスパー」

 

 アスティアはそう言うと、ギャスパーの頭を優しく撫でて抱き締めた。

 

 

「おか……あ…さん」

 

 ギャスパーの瞳から涙が溢れる。夢ではない、現実の母の温もり。ギャスパーが最も求めていたもの、それは愛情。同じ痛みを持つ零であっても決して与える事はできない、純粋な母の愛。

 

 

「ぁ……ぁあ……ああぁぁ」

 

 それを見て、ラムドは涙を流す。ラムドにとってこの光景は夢にまで見た光景だった、死んでしまった最愛の妻、護ろうと自分から遠ざけてしまった最愛の娘。本来であればこの2人が此処に揃う筈がない。だが誰かさん()のお節介のお蔭でそれが叶った。

 

 

「貴方」

 

 アスティアはラムドに手を差し伸べる。ラムドはゆっくりとその手を取り、アスティアと共に我が子を抱きしめた。

 

 こうして時間との家族を時間を過す事でギャスパーの何かが変わるだろう。父との、母との時間がギャスパーが何かを手にするだろう。

 

 それが何なのかは未だ分からない、だがその何かはきっとギャスパーにとって……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 零【半身】はその光景を見て、笑みを浮かべていたのは言うまでもない。

 

 

「フム……身を挺して叔父上に頼んだだけの価値はあったな。ギャスパーよ、この一刻の時間がお前に与えるものはお前にとって光となるか、それとも闇となるか……全てお前次第だ。これからお前は自分の脚で地を踏み、歩んでいかなければお前の中にある奴もお前自身の力も制する事はできないからな。だが忘れるな………」

 

 零【半身】はそう言うと、ギャスパー達を見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前は1人じゃない』



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EP56 信じる心

 リアスは自宅で何時も行っているトレーニングの後、就寝前に零に渡された【みえ~る水晶くん】頭に当て近くに置くと眠りについた。

 

 リアスが眠りにつくと、夢を見た。その内容は特に変哲もないものだった。

 

 何時もの日常を第三者の視点から見た様なものだった。そして、近頃起きたレイナーレの事件のこと、ライザーとの婚姻の時のこと、コカビエルの事件のこと、三大勢力の会議の時の光景が流れていく。

 

 

「……私に足りない物……それは一体……何だと言うの……」

 

 リアスは未だ気付いていない。零の言った【大切】な事が何なのかを、それは当然の事であるが、それ故に気付いていないのだ。

 

 

『くだらない……くだらないわ』

 

 

「えっ?」

 

 突然聞こえた声にリアスは振り返ると、そこには禍々しい黒いオーラを纏う人影がいた。リアスはその人物の顔を見て目を見開いた。その人物はリアスと全く同じ姿をしていた。

 

 

「だっ誰?!」

 

 

『私?私はリアス、リアス・グレモリーよ』

 

 

「違う!リアスは私よ!」

 

 

『そうね、貴女もリアス()。でも私もリアス(貴女)なの』

 

 

「もう1人の私?……」

 

 

『コインに表と裏がある様に、悪魔にも、人間にも表と裏の人格があるの。貴女を表とするなら、私は裏ね』

 

 現れたもう1人のリアスは自分を、リアスの裏の人格だと名乗る。

 

 

「………それでもう1人の私が何の用かしら?それにさっきのくだらないとはどういう意味かしら?」

 

 リアスはもう1人の自分の出現で焦っていたが、此処は夢だと思い出し無理矢理にでも気を落ち着かせた。

 

 

『その言葉通りよ。貴女の日頃の行動を見ていたら虫唾が走るわ……大体、眷族悪魔なんて唯の使い捨ての駒でしょう?』

 

 

「なっ!?ふざけないで!!」

 

 リアスはリアス(裏)の言葉に激昂した。全身からは滅びの魔力が立ち昇り、そのままリアス(裏)に向けて滅びの魔力を放つが、全く効いていない様だ。

 

 

「どっどうして!?」

 

 

『不思議に思う必要があるかしら?貴女がリアスであると同時に、私もリアス。リアス(貴女)の力がリアス()に効く訳がないじゃない』

 

 

「ッ?!」

 

 

『本当に貴女ってお馬鹿さんね。これじゃあ本当にあの下僕達が可哀想ね。なんせ、自分達の事を全く信用していないのが自分達の主なんて』

 

 

「えっ?なっなにを……言って」

 

 リアスはもう1人の自分の言葉に頭が真っ白になった。

 

 

『あらっ?気付いてなかったかしら?貴女はね、これっぽっちも下僕達の事を信用してないのよ。親友である朱乃でさえもね……』

 

 

「ちっ違う!そんなことない!私は皆のこt『してないわよ。自分でも全く気付いていないみたいだけど……いいわ、教えて上げる』」

 

 リアス(裏)が手を振ると、暗かった景色が突然変わる。そしてそれは以前の三大勢力の会談の場面だった。

 

 この場には悪魔、天使、堕天使の長達と日本神話の頂点の三貴士、その身内・従者達が勢揃いしていた。

 

 この中でリアスの眷族達は1人を除き揃っていた。そしてその1人とはギャスパーの事だ。この時、ギャスパーは神器(セイグリット・ギア)をコントロールする事が出来ない為、部室に残された。

 

 

『だからこそあの事件が起きた。貴女がギャスパーを信じて連れてきていれば、天王理にあの子を連れていかれなかったかも知れない』

 

 

『ライザーの時もそう……貴女は下僕達の力を信じられなかったから、自分だけでライザーに挑んだ。他の眷族達と一緒にライザーと戦う作戦をたてていれば負けずに済んだかもしれない』

 

 次々と景色が変わって行き、リアス(裏)が言い放つ。そしてその事実がリアスの今まで気付かなかった現実を突き付けていく。

 

 

「私は……私は……」

 

 リアスは膝を付いて倒れ込んでしまう。

 

 

『当たり前であるが故に……気付かぬこと……そして貴女の思い込み・己の力の過信から誰かを心から信じる事が……信じ切ることができない……それが貴女に欠けていたもの』

 

 

「あなたは……」

 

 リアスが顔を上げると、そこにはリアス(裏)は居なくなっており代わりに紫色の髪の巫女服を着た少女が立っていた。

 

 

『貴女は今、自分を見つめ直す事が出来た筈………これまで(過去)は間違っていたかもしれません。ですが、過ちに気付いたのなら正せばいい。これまで(過去)を変える事はできません……ですが、これから(未来)なら変えていくことができます。それが現在()を生きる貴女のできることなのです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~リアスの寝室~

 

 

「はっ!?…………今のは夢?」

 

 リアスは直ぐに起き上がると、ふっと【みえ~る水晶くん】の方を見た。

 

 

「あれ?……あれ?どこに?」

 

 置いた筈の場所に水晶は無かった。だが何故か、リアスはすっきりとした表情をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴女がこれからどうするか……答えを見出した貴女の行動によってこれからがどう変わるか……全ては貴女や仲間達の選択次第なのです。ふぅ……これで僕はお役御免なのです。彼の所に戻るとしましょう』

 

 先程、リアスの夢に現れた少女は空からリアスの部屋を見降ろしており、そのまま消えていってしまった。

 

 

『報酬は特製シュークリームなのですよ。にぱぁ~』




【道具紹介】

名称:みえ~る水晶くん


 零がリアスに渡した紫色の水晶。

 1日中肌身離さず持ち、就寝前に額に当て、近くに置くだけで【自分が気付かない事を夢にして見せる】【どうしても思い出せない事を夢にして見せる】ことができる。

 前者の能力の関しては夢に見ても本人が気付くかどうか分からない為、この水晶に宿る精霊?が手を貸す事もある。


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EP57 修行終了

久し振りの更新になります。

リアルが忙しかったのとインフルで寝込んでました。

久し振りなので表現が可笑しい文が在るかもしれませんが、見つけ次第修正していきます。

ではどうぞ。


 ~グレモリー家前~

 

 数日の修行を終え、全員(零達以外)がグレモリー家の屋敷の前に集まっていた。

 

 

「部長~~!!お久しぶりですぅ~!!」

 

 修行から戻ってきた一誠は涙を流しながらリアスの胸に飛び込んだ。

 

 

「あらっあらっ一誠、こんなにたくましくなって」

 

 

「部長!寂しかったですぅ……(ぁあ……久しぶりのこの感触……此処は天国か!?)」

 

 とリアスの胸の感触を堪能している。鼻の下は伸び切っており、完全に変態の顔だ。すると突然光が現れそこから零達が現れた。

 

 

「ふぅ疲れた、疲れた……ん?一誠か……相変わらず変態みたい……いや変態だったか」

 

 

「って!おい!もう少し他に何かないのかよ?!」

 

 

「変態に変態と言って何が悪い………そこそこマシになった様だが……変態が余計に酷くなってる様な気が……まぁいいか」

 

 それを聞くと、他のリアスの眷族達が笑みを浮かべている。

 

 

「アルトリア、エミヤ、ご苦労様……悪かったな急に呼び出して」

 

 零は祐子の横に居たアルトリア達に労いの声を掛けた。

 

 

「いいえ。私も裕子と手合せできて良かったです」

 

 

「なに、誰かの成長を助けるというのも良いものだよ。ぁあこれを返さないとな」

 

 2人はそういい、エミヤは零に借りた【カード型物質保存庫】を零に返却した。

 

 

「では私達はこれで失礼します。美味しいご飯の時には呼んで下さいね」

 

 

「全く君はそればかり……まぁらしいがね。私も呼んでくれればそれなりに役目は果たそう」

 

 アルトリアとエミヤは光の粒子となって消えていった。

 

 

「ふぅ……木場祐子、あの2人との修行はどうだった?」

 

 

「はい、アルトリアさんからは剣術を、そして剣を振るう上で必要な覚悟を頂きました。エミヤさんからは剣製に基本的な知識を指導して貰いました。修行を終えて、自分でも驚くほど魔剣の鋭さ・強度が上がりました」

 

 

「そうか………ならいい。ゼノヴィアの方は……言わずともそれを見れば分かる」

 

 裕子から修行での事を聞き、直ぐにゼノヴィアに眼を向けると手の甲にある紋様を見た。

 

 

「もっ申し訳ない。貸して貰ったあの道具は……」

 

 

「お前とデュランダルを繋いだ際に消えたんだろう?別に構わん、アレが消えたならお前の修行は成功したと言う事だからな」

 

 ゼノヴィアは先に零に科して貰った黒い包帯が消えた事を気にしていた様だが、零は消える事は分かっていた様だ。

 

 

「あぁ、貴方のお蔭でデュランダルと対話する事が出来た。今まで私はデュランダルを抑える事ばかり考えていた。けど大切な事はそうではなかった、デュランダルを抑えるのではなく、私が波長を合わせる事が必要だったんだと」

 

 

「俺はただ、それに気付かせる手伝いをしただけだ。姫島朱乃の方は……言うまでもないか。見るだけで分かる……(だけど心境は穏やかでは無い様だな。確か修行相手はアザゼルの部下……姫島朱乃の実父だったか。何やら親子間に溝がある様だが………母親の方は亡くなってるんだったな。それに関係するのか……まぁ詳しくは聞いてないが……確認はしておくか)」

 

 零は朱乃を見てそう分析すると、視線をリアスに向ける。

 

 

「フン……間違いに気付いた様だが………お前はどう思う?」

 

 零は相変わらずリアスに対しては敵意を剥き出しだが、横を向くとリアスの夢に出て来た少女が現れた。

 

 

「だっ誰!?」

 

 突然現れた少女に皆は驚いているが、零は無視して少女を見る。

 

 

「あぅあぅ……誰でも間違いはあるのです。それに気付き正す事が大切だと思います………貴方からすればそれでは足りないかも知れませんが……少しは認めてあげてもよいのではないでしょうか?」

 

 

「無理だな。俺が此奴を気に喰わないのは変わらん。あくまでも一誠や姫島朱乃達の為だ……これ以上、あの茶番に付き合わらせられてるのがあまりにも可哀想だったからな………リアス・グレモリー、今回はギリギリ及第点であるが………覚えておけ。俺の家族に手を出したり、そいつ等をこれまでの様に扱えば………今度は誰が何と言おうが貴様を消す」

 

 零はリアスに向かいそう言う。リアスはそれを重く受け止めてる様だ。

 

 

「こんな事につき合わせて悪かったな」

 

 

「あぅあぅ、貴方に受けた恩を思えば全然足りないのですよ、零」

 

 

「フッ……ほれっ特製のシュークリームだ」

 

 紫髪の少女にそう言い、大きな紙袋を渡した。少女はそれを受け取ると眼を輝かせている。

 

 

「ではボクは此処で失礼するのですよ」

 

 

「あぁ……ではまたな【羽入】」

 

 羽入と呼ばれた少女は光と成り、【みえ~る水晶くん】に姿を変え零の手に収まった。

 

 

「はぁ終わった……終わった。そう言えばあっちは未だ帰って来ないが……まぁ大丈夫だろう。【半身】が付いているし……じゃあ俺は部屋に戻るとしよう」

 

 零は【半身】とギャスパーのことを気にしていたが、自分の半身と一緒なので問題ないだろうと考えはやに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~グレモリー家 零達の部屋~

 

 

「はぁ~流石に疲れたか……」

 

 零は部屋に戻ると直ぐにベットに身を投げた。

 

 

「大丈夫ですか零さん?」

 

 

「あぁ……気分的な物だからな……アーシアはどうだった、ジャンヌ逹との修行」

 

 

「はい!御二人ともとても親切にして頂きました!それにファーブニルさんも」

 

 

『呼んだ、アーシアたん?』

 

 アーシアの髪から金色の小さな竜が出て来た。どうやらファーブニルの様だ。

 

 

「お前はなんでアーシアの髪の中から出てくんだよ?ぁあ?!(メキッメキッ」

 

 零は左手で出て来た(ミニ)ファーブニルを掴み上げると、潰さんばかりに握り締める。

 

 

『アーシアたん、いい匂い。香水なんてつけてない、アーシアたんの生匂い。俺様それをたんのぉぉぉぉぉぉ!?潰れる!中身でるっ!!』

 

 

「このド変態竜が!何を考えてやがる!俺はそんな事をさせる為にお前にその身体を与えた訳ではないんだぞ!」

 

 

『分かっている。俺様この肉体を貰う条件……【アーシアたんを護る為】……そして【アーシアたんとお風呂に入る為】!』

 

 零はそれを聞くと、右手から禍々しい黒い雷を放ち始めた。

 

 

『あっちょっと待って……それ駄目。なんかヤバい感じが……と言うか凄い殺気』

 

 

「やっぱり消しとくべきだな………(バチッバチッ」

 

 

「だっ駄目です!零さん、そんなことしたらファーブニルさんが可哀想です!」

 

 

「……チッ。仕方ない、アーシアに免じて見逃してやる」

 

 零はそう言うと、ファーブニルを放り投げた。するとファーブニルは堕天龍の閃光槍(ダウン・フォール・ドラゴン・スピア)に姿を変え、アーシアの手に収まった。

 

 

「全く……一誠といい、そのドラゴンといい……どの世界でも俺の周りに必ず1人は変態がいる様な……と言うか居るな」

 

 などと零が呟くと、黒歌は興味深そうに零を見ている。

 

 

「へぇどの世界にも、あの赤龍帝君やファーブニルみたいなのがいるのかにゃ?」

 

 

「あぁ……ある世界では変態四天王が居たり、ある世界では警官の立場なのにストーカーになったり、ある世界では裸の王と呼ばれる術者がいたり、右手に何でも吸い込む穴を持つ男は坊主のくせに女好き……まぁそんな感じかな」

 

 

「変態です……でもご主人様もあんまり人の事言えないような…」

 

 話しを聞いていた白音がそう呟いた。

 

 

「おいおい、俺は可愛いは正義なだけだぞ(なでっなでっ」

 

 

「そうでした、ご主人様は下心なしですもんね」

 

 零はそう言いながら、白音を撫でている。白音は気持ち良さそうに目を細めている。

 

 

「取り敢えず、修行は一通り済んだな。ふぅ……アーシア」

 

 

「はっはい」

 

 

「ちょっと膝貸してくれ」

 

 

「ふぇ?」

 

 

「少し寝る……流石に長時間は【半身】と別れて力を使うと(気分的に)疲れるんで寝たいんだが……俺、枕が変わると寝つき悪いし……此処の枕は固すぎる。なので膝を貸して欲しい訳だ、嫌ならいいんだが……」

 

 

「いっいぇ。そんな事はないです!どっどうぞ!」

 

 アーシアは顔を真っ赤にするとベッドに座った。

 

 

「それじゃあ失礼して…(ぽすっ」

 

 零はアーシアの膝に頭を乗せた。アーシアは今までそんな事した訳がないので顔は既に茹蛸状態なのは言うまでもない。

 

 

「はぅぅ……こんな事したの初めてなのでその上手くできるか分かりませんが頑張ります!」

 

 膝枕をするのに何をがんばるのか良く分からないが、アーシアはやる気満々の様だ。

 

 

「ご主人様!膝枕なら私がするにゃ!」

 

 

「私もします!」

 

 

「我も」

 

 黒歌、白音、オーフィスも零に膝枕したい様で立候補している。

 

 

「くぅ……すぅ……」

 

 既に零は眠っていた。余程疲れていたのだろう。

 

 

「ってもう寝てるにゃ」

 

 

「零……寝てる」

 

 残念そうにしている黒歌達。黒歌は零の寝顔を見ていると何かを思いついた様に手を叩いた。そして零の髪を弄り始めた。零の髪は元々短かったが、先の三大勢力の会議で黒歌の悪魔の駒(イーヴァル・ピース)を取り出す際に力の一部を開放し髪が伸びたまま放置されていた。長さは腰くらいまではある。

 

 

「姉様何してるんですか?」

 

 

「ご主人様の髪が長くなった。ならする事は1つだにゃん」

 

 

「「?」」

 

 オーフィスとアーシアは何をするのか分かって無い様だ。

 

 それから数時間後、【半身】とギャスパーが戻って来た。【半身】は女装(服以外)しているもう1人の自分を見て顔を引き攣らせていた。そして眼を覚ました零自身も驚いたのは言うまでもない。




【人物紹介】

名前:羽入

性別:女性

年齢:???




【みえ~る水晶くん】に宿っていたオヤシロ様。

何故この水晶に宿っているかは不明だが、零には返し切れない恩があるらしい。












【修行結果】

 一誠:体力などの底上げはタンニーンとの修行で成功した。未だ完全な禁手化は出来ていない。

 裕子:剣術をアルトリアに、剣製をエミヤに修行をつけられたお蔭で両方ともかなりの成果が出ていた。

 朱乃:アザゼルの出した課題は、バラキエルとの修行で成し遂げているもののその心情は穏やかではない。

 リアス:自分が今までに気付かなかった過ちに気付き、成長した。しかし零は認めていない様だが、最低点はつけられるとのこと。

 アーシア:ジャンヌとマルタとの修行で大きく成長した。しかし零によればマルタの性で余計なものを身につけたらしい。

 黒歌・白音・オーフィス:?

 ギャスパー:父と母から自分が望まれて生まれた事を聞かされ、一刻とは言え家族3人で過ごしたことで、精神的に大きく成長した。その様子を見ていた半身は涙目になっていたとか。


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EP58 協定とペナルティ

 ~グレモリー家 客室(零の部屋)~

 

 修行を終えたアーシア達は何時もの様に零と共に眠っていた。

 

 零は目を覚ますと、身体を起こそうとするが動かなかった。正確にはアーシア、白音、黒歌、オーフィスに抱き着かれているので動かなかった。

 

 

「全く此奴等は……まぁ……慣れたがな……そう言えば今日は……ぁあ……準備しないとな」

 

 零は『天使・悪魔・堕天使の三大勢力の友好協定』があるのを思い出した。この友好協定には天使の長・ミカエル、堕天使の総督・アザゼル、魔王達が参加する。

 

 それに加え今回は後見人として北欧神話のオーディンを呼ぶとの事だった。

 

 日本神話代表として零もこの協定に参加する為に冥界までやってきたのだ。でなければ絶対来ないだろう。三大勢力の中には零を襲おうなどと馬鹿な考えをする輩はいないだろう。しかし対策はしておくべきだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~数時間後~

 

 白音達も目を覚まし、友好協定の場に参加する事になっていた為に天照が用意したそれぞれのイメージカラーの巫女服を纏っている。白音の横には制服姿のギャスパーがいた。

 

 零もこの時ばかりは私服ではなく、以前に来ていた白い衣と太陽の冠・金の装飾・勾玉を装備していた。

 

 

「すげぇ……アレ、本物の金か?」

 

 零の格好を見た一誠がそう呟いた。因みにリアスは紅いドレス、朱乃は黒い着物、それ以外のメンバーは駒王学園の制服を着ていた。

 

 

「フム………そろそろか」

 

 零がそう言った瞬間に周囲の景色が宇宙空間に変わった。

 

 

「「「なっ!?」」」

 

 全員が驚き何が起きたのかと思い、周りを見回すと直ぐに景色は元に戻った。そして零に視線を向けると、その前に黄金の鎧を着た男達が立っていた。

 

 

双子座(ジェミニ)のカノン」

 

 

双子座(ジェミニ)のサガ」

 

 

天秤座(ライブラ)の童虎」

 

 

牡羊座(アリエス)のシオン」

 

 

「「「「王が呼び掛けに応え、御前に」」」」

 

 黄金の鎧の男達は零の前に膝を着いた。

 

 

「あのさぁ……毎度言ってるけど俺は王なんて柄じゃないからその呼び方は止めてくれ。お前達が仕えるのは女神(アテナ)だろ?」

 

 

「確かに我等が仕えるのは女神(アテナ)……しかしこの世界(此処)に居られるのは貴方だ」

 

 

元の世界(あそこ)で滅びるはずだった命、貴方により救われた」

 

 

「我等は貴方の生き様に、その心に……女神(アテナ)と同じ物を感じた。そして今度は貴方に使えると決めたです原初の神の子()よ」

 

 

「そういう事じゃ」

 

 カノン、サガ、シオン、童虎はそう言うと零は呆れた様に溜息を吐いた。

 

 

「はぁ……もういい。じゃあ今回は護衛の方を頼むよ」

 

 

「「「はっ!」」」

 

 彼等はとある世界に居た地上を守護していた戦士達。

 

 女神(アテナ)の守護星座の鎧を纏い、その身に宿る闘志……小宇宙(コスモ)を燃やし戦う戦士達だ。彼等は女神の守護する十二正座の聖闘士。その名も黄金聖闘士(ゴールド・セイント)

 

 双子座(ジェミニ)聖衣(クロス)を纏うサガ。同じ顔をしているのは以前にも現れたカノン。彼等は双子で、サガが兄、カノンが弟だ。

 

 牡羊座(アリエス)聖衣(クロス)を纏うシオン。

 

 天秤座(ライブラ)聖衣(クロス)を纏う童虎。

 

 彼等もまた零のソウルコードによって実体化した存在だ。

 

 

「あっあの……この方達は?」

 

 

「………此奴等は俺達の護衛だ。例えお前等に俺に敵対する意志はなくとも、もしもの時の事を考え呼んだ。お前等の警備では心許ないからな」

 

 リアスは零にそう尋ねた。一瞬、零は嫌そうな表情をするがそう答えた。

 

 

「では行くとするか………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~パーティ会場 超高層ホテル~

 

 友好協定が行われる会場に到着した一同は魔王達の元に向かった。勿論、黄金の鎧を着た者達(カノン達)がいるので周りの悪魔達が凝視している。

 

 

「ほぉ……ここに居るのが全員悪魔とはのぅ」

 

 周りの悪魔達を見て感心している童虎。

 

 

「取り敢えず俺は魔王に挨拶をしてくる。カノン、サガは一緒に来てくれ……アーシア達はシオンと童虎と居ろ。直ぐに戻ってくるから」

 

 

「「「「分かった(にゃ・ました)」」」」

 

 

「シオン、童虎、アーシア達を頼むよ」

 

 

「「分かりました(おうさ!)」」

 

 零はカノンとサガを連れ魔王達の元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~零side~

 

 零はサガとカノンを連れて、天使の長・ミカエル、堕天使の総督・アザゼル、魔王・サーゼクス、セラフォルーとその他の魔王達がいる段上に昇った。

 

 

「ぉお、これは【伝説の戦士】殿じぁねえか」

 

 

「アザゼル、殴るぞ?」

 

 

「おいおい、冗談じゃねぇかよ。そう怒るな」

 

 茶化したアザゼルに本気の殺気を込めた目で睨む零。

 

 

「これは天王理殿、お久しぶりです」

 

 

「会談ぶりかな大天使ミカエル。個人的には貴方と話があるがこの協定を終えてからにしよう」

 

 零はミカエルに向かいそう言うと、視線を魔王達に向けた。

 

 

「お久しぶりです、天王理殿。妹とその眷族が色々とお世話になった様で」

 

 

「魔王サーゼクス。俺は俺のする事をしただけだ………まぁお前の妹は気に喰わないのは変わらんがな。ハハハハハハ」

 

 零は笑いながらそう言うが、黒歌や白音のこと、転生悪魔のこともあって悪魔達には良い印象を持っていない様だ。母である天照の顔に泥を塗らない為にも今は堪えているが、何かあれば魔王であろうが、魔神であろうが零は殲滅するだろう。

 

 

「さてと、それは置いておいて。大神の用事を終わらせるとしよう。未だ見届け人が来てない様だし、魔王殿達にはコレに目を通して署名して貰おうか」

 

 零はそう言うと、懐から紙を出しこの場にいる4人の魔王達にそれを渡した。

 

 

「「「「!!!?」」」」

 

 魔王達はそれを見ると驚愕した。

 

 

「いやはや、母・天照大神が出した条件を護らずに日本各地にいる悪魔共が暴れ出したらしくてね。色々と俺も動かないといけなくなって大変だったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日本各地に在住している純血悪魔達は日本神話の出した条件に反抗し、暴動を起こしていた。それを抑える為に天照達に呼び出される零の1日を振り返って見よう。

 

 

 ~最近の零の1日の行動~

 

 AM 5:30 起床

 

 AM 5:45 朝食の用意

 

 AM 6:30 アーシア達を起こす

 

 AM 6:45 皆で朝食

 

 AM 7:05 天照からの呼び出し(悪魔関連)

 

 AM 8:05 天照の用事を済ませ登校

 

 AM 9:00~PM 3:30 学校の授業(間で急遽呼び出し、日本各地に飛ぶ)

 

 PM 4:30 帰宅

 

 PM 5:00 再び天照達からの呼び出し、日本各地で起きている暴動を治めにいく

 

 PM 8:00 帰宅したのち入浴(近頃はオーフィス達だけでなくアーシアまで一緒に入ろうとする。何故だろう?)

 

 PM 8:30 夕食

 

 PM 10:30 全ての片付けを終え、自分の時間(基本的には皆と遊ぶ)

 

 PM 11:30 天照からの電話(出たら面倒なので出ない事が多い。緊急で在れば念話で呼び出しが掛かる)

 

 AM 0:30 就寝

 

 夜中に悪魔の暴動が起きれば、直ぐに起きて現地へ向かう。

 

 この様な生活を会談後からしている。だが何故零がその様な事をしているのかと言う話だが、日本妖怪・日本の神々が動けばいいのだが話はそう簡単な事ではない。

 

 日本にも魔王と肩を並べる程、強大な力を持つ神や妖怪はいる。その神々や妖怪が動けば悪魔の暴動を鎮静させるものも可能だろう。

 

 更に日本側の法に則り裁く事は既に魔王達に了承させている。だが零はあえて自分が動く事で悪魔にかつて天使・悪魔・堕天使を救った【伝説の戦士】が誰の味方なのかと言うのをハッキリとさせ、圧倒的な力で悪魔の反抗する意を失わせようとした。

 

 まぁこれには天照達も大反対した。先の会談の時に三大勢力が零に向けていた視線に含まれた感情を読み取ったが故にこれ以上、零に向かいその様な視線を向けられる事自体が天照達からすれば我慢ならない。もし次にその様な場面を目の当たりにしたならば

 

 

『『『我が子(甥っ子)を侮辱する者は生きている事を後悔させましょう(てやる)!他の勢力との戦争が起きる?止むなし』』』

 

 となるだろう。そんな事になれば、三大勢力は全滅するだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~現在に戻る~

 

 

「何処かの魔王(誰かさん)達がしっかり下を抑えないから、俺が動かないといけないんだ。それに加え今回起きた暴動で、土地神が収める土地に被害が出るし、幾つもの妖怪の里にも被害が出ている。母様はかなりお怒りの様だよ。まぁ俺もオーフィス達を愛でる時間が少なくなってストレス溜まってイライラしてるけど」

 

 説明する零の額に青筋がたっており、全身からは黒いオーラが立ち昇っていた。

 

 

「母様がそこに書いてある条件を飲むのであれば、今回の事は穏便に済ますそうだ」

 

 

「しっしかしこの条件は流石に……」

 

 零が魔王達に渡した紙には、先に起きた悪魔達の暴動に対して日本神話側が出した新たな条件を出した。それは悪魔側にとってかなり痛手になる条件だ。その内容とは

 

【今後100年、日本への立ち入りを禁止する。現在日本に居る悪魔は、此方で認めた者達以外は直ぐに冥界への帰還させる。

 

 今回、暴動を起こした純血悪魔達は日本側の法に則り処罰する。また暴動で起きた被害は、総て悪魔側に請求する。

 

 今後、悪魔が暴動を起こした場合はその悪魔の一族を断絶する。それがはぐれ悪魔・眷族悪魔の場合はその主である一族が対象となる。

 

 以上3つの事に従わない場合は、日本にいる全悪魔を強制送還する】

 

 と言うものだった。悪魔からすれば一方的過ぎると思うが、これまで悪魔達がしてきたことを考えればかなり譲歩しているだろう。

 

 

「さぁ………サインして貰いましょうかね」

 

 零にそう言われると顔を顰める魔王達。1つ目、2つ目の条件は魔王達も仕方ないと思うだろうが………

 

 3つ目の条件【今後、悪魔が暴動を起こした場合はその悪魔の一族を断絶する。それがはぐれ悪魔・眷族悪魔の場合はその主である一族が対象となる】。この条件だけはそう易々と飲む訳にはいかない。これを認め、仮に日本で悪魔が問題を起こした場合、その悪魔の血族は断絶される。それは純血が減っている悪魔からすれば絶滅の危機だ。

 

 ならば条件を護ればいい話だが、殆どの悪魔が「何故、高貴な自分達が極東の島国の神などに従わなければならない」という思想だ。それが今回の暴動を引き起こしたのだろう。

 

 しかしこの条件を飲まないなら日本にいる悪魔は全て強制的に送還される。そうなれば今後、日本との交渉は真面にできないだろう。

 

 条件を飲めばもしもの場合は絶滅に近付くことに、飲まなければ全悪魔は日本に居れなくなる。どちらでも日本に利益しかない。

 

 条件を飲まず日本を去るか、条件を飲み自分達の首を更に締めながらも日本で活動するか…………魔王達はどちらを選ぶのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「賢明な判断だ、魔王方……俺的には出て行ってくれた方が面倒事がなくなってありがたいが……まぁいいだろう」

 

 最終的に魔王達は条件を飲む事を決断した。今回はこの程度で済んだが、次は無いだろう。だが条件を飲んででも悪魔達は日本から離れる訳にはいかない。

 

 現在の悪魔達の活動の大半が日本で行われているからだ。その理由は日本の文化を気に入る悪魔達が多いこと、日本で眷族を探すこと、悪魔の契約を利用する人間が多いことだ。

 

 文化を気に入る理由は分からないが、日本で眷族を探す理由は簡単な話だ。日本の妖怪の殆どは悪魔より弱いが黒歌や白音の様に仙術などの特殊技能を持つ妖怪が多いからだ。

 

 零は魔王達がサインした契約した書類を懐に仕舞うと何かの気配を感じ顔を上げた。

 

 

 

 

 

「フム……まさかお主が噂に聞く【伝説の戦士】だったとわのぅ。久しぶりじゃな零よ」

 

 そこにいたのは、銀髪の女性を連れた1人の老人だった。




・ソウルコード紹介

【黄金聖闘士(ゴールドセイント)】

ある世界に居た黄金の聖衣を纏う聖闘士逹。12正座を模した聖衣を纏い、内なる小宇宙で戦う

元々いた世界では死んでしまったが、零によりこの世界で生を受けた。

かつてはとある女神に忠誠を誓い、地上の愛と正義の為に戦っていた。黄金聖闘士たちは何処かは分からないが、その女神と零が似ているらしく零を「王」と呼び従っている。







 【双子座:サガ、カノン】

 双子の兄弟で、どちらもかなり強く、空間を操る事に長けている。現在は裕子の仲間達の屋敷や孤児達の世話をしている。

 零曰く「以前は兄弟揃って表情が少なかったが、子供達に手を焼きながらも自然と笑みが出て来る様になった」とか。

 因みにサガの双子座の聖衣は元々本人が持っていたもので、カノンの聖衣は零が創ったものだとか。

 使用技:ギャラクシアン・エクスプロージョン。アナザーディメンション









 【牡牛座:シオン】

 黄金聖闘士の中でも教皇と呼ばれていた存在で、実力はかなりのもの。

 零により再び得た生を聖闘士ではなく1人の人間として子供達を育てる事に熱意を燃やしている。本人曰く「戦う必要のないこの世界では、子供達に未来を選択させてやりたい」と言っており勉学・道徳などを教えている。

 麻呂眉が特徴的である。童虎とは戦友。

 使用技:クリスタルウォール、スターダストレボリューション










 【天秤座:童虎】

 シオンの戦友で、実力もシオンと同じ位の強者。

 シオンと同じくこの世界では子供達を育てる事に熱意を燃やしている。主に子供達の体力作り・体作り・もしもの時の為に武術などを担当しているがやり過ぎてシオンに怒られている場面も多々あると零は語っている。

 一言で表すなら熱血漢。

 使用技:廬山百龍覇、廬山昇龍覇


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EP59 パーティ開始前

 ~パーティ会場~

 

 日本神話が出した条件を魔王達に(殆ど脅し)認めさせた零。その場にやって来た老人を見て、零は目を細めた。

 

 

「北欧の神・オーディン………エロ爺」

 

 

「エロ爺とはなんじゃい。これでも主神じゃぞ、もう少し言い方を変えんか零」

 

 

「主神だろうがなんだろうがエロ爺に変わりはないだろう。何処の世界でもお馴染のポジションに居やがって。叔父上(素戔嗚)義姉君(クシナダ)をやらしい目で見るから何時か殺ってやると言ってたぞ。エロ爺」

 

 どうやら2人は知り合いの様だ。だが零は露骨に嫌な顔をしている………と言うより『話かけるんじゃねぇ!』と威嚇している。

 

 

「若い女子は目の保養じゃ………それよりも何遍も言うが儂の事は【お爺ちゃん】と呼べと言うとじゃろ」

 

 

「絶対ヤダ!俺はアンタのことをそんな風に呼びたかない!できるものなら過去に戻って爺を尊敬の眼で見ていた自分の眼を覚まさせたいくらいだ!」

 

 何故だか何処かで見た様なやり取りだ。

 

 

「何故じゃ!何故、儂を【お爺ちゃん】と呼ばんのじゃ!昔はあんなに【お爺ちゃま】と呼んでくれたのに!」

 

 

「だから自分の行動を振り返りやがれ!エロ爺!刺し穿つぞ!」

 

 自分を【お爺ちゃん】と呼べと零に詰め寄るオーディン。誰かに似ていないだろうか?主に零の身近な者達に。

 

 

「と言うかあやつらの所には行ってるのに、何故儂の所に来んとは何事じゃ!」

 

 

「あっあのオーディン様?どうしたのですか?もしかして頭を打たれたのですか?!まさか歳の性で……」

 

 付き人の銀髪の女性が、オーディンの豹変ぶりに驚いていた。

 

 

「ロスヴァイゼ、お主なんか勘違いしておらんか?」

 

 もうお分かりだろうか?オーディンの零に対するこの態度、まるで天照達を見て居る様だ。

 

 

「なんで爺までこの世界にいるんだよ………唯でさえ母様達がいるのに(ぼそっ」

 

 

「北欧の爺は零と知り合いだったのか?」

 

 

「おぉアザゼルの小僧ではないか。まぁのぅ、儂にとっては孫の様なもんじゃぞ……」

 

 

「はいはい………そんなんはどうでもいいから」

 

 各勢力の代表達が話している中で、零とオーディンだけが何かの気配を感じているのか周りを見回していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~アーシア・白音・黒歌・オーフィスside~

 

 アーシア達は零がいないので、リアス達についていく事にした。向かう先はパーティ会場の一角で、若手悪魔達が集まる所らしい。途中でソーナとその眷族達と出会った。

 

 

「おぉ!匙じゃねぇか!」

 

 

「久しぶりだな!兵藤!」

 

 一誠はソーナのポーン・匙と久しぶりに会ったので楽しそうに会話を始めた。どんな修行をしたや、強くなったとか。

 

 

「貴方達も来ていたのですね、アーシア・アルジェント、それにはぐれ…ッ?!…………いえ猫又の塔城さんと姉・黒歌さん、そして無限の龍神様」

 

 ソーナは黒歌の事を「はぐれ悪魔」と言おうとした瞬間に、前に零から向けられた殺気と圧倒的な力の事を思い出し直ぐに言い直した。

 

 

「あのそちらは?」

 

 ソーナはアーシア達の後ろに控えていた童虎とシオンに目を向けた。

 

 

「儂等はアーシア嬢達の護衛じゃ。儂の名は童虎、こっちの麿眉は儂の友のシオンじゃ」

 

 

「アーシア殿たちにも言ったが、我等はいないものと思って貰って構わんぞ。問題があれば動くでな」

 

 

「でもやっぱりシオンさん達とも色々とお話ししたいです」

 

 

「そうにゃ……童虎達は私達の知らないご主人様を知ってるじゃない。教えて欲しいにゃ」

 

 どうやら黒歌達は零の事について色々と聞きたいらしい。

 

 

「フム……王のこt『ドガン!』なんじゃ?」

 

 皆が言われた部屋の入口の近くに来た時、爆発と共に部屋の扉が吹き飛んだ。皆が中をのぞいてい視ると、男性悪魔と女性悪魔が睨み合っていた。2人は全身から魔力を迸らせており、今にも戦いを始めそうな勢いだ。

 

 

「どうしても死にたい様ねゼファードル」

 

 

「処女くせぇって本当のこと言っただけだろ」

 

 

「一体なんなんだこれ?」

 

 一誠が何が起きたのか分からないので周りを見回していると

 

 

「若手悪魔が集まると大抵こうなるんだ」

 

 

「サイラオーグ」

 

 リアスは突然現れた男をそう呼んだ。

 

 

「挨拶は後だ………そこまでだ!アガレス家の姫・シークヴァイラ!グラシャラボラス家の問題児・ゼファードル!」

 

 

「誰が問題児だ!ごらぁ!」

 

 サイラオーグはどうやら喧嘩を止めようとしたが、サイラオーグの発言によりゼファードルの方は怒っている様だ。

 

 

「いきなりで悪いが最後通告だ。これ以上問題を起こすなら強制的に黙らせるぞ(ボキッバキッ」

 

 サイラオーグは拳を鳴らしながら何時襲い掛かられても良い様に備えて居る様だ。

 

 

「この……バアル家の無能g『少し落ち着かんか(トン』がっ!?」

 

 

「「「「!!?」」」」

 

 ゼファードルがサイラオーグに襲い掛かろうとしたが、童虎が一瞬で背後に回り込みゼファードルの首を手刀で叩いた。それを受けた本人はそのまま気を失い倒れ込む。

 

 

「全く、もう少し落ち着いて行動する事じゃな若造。お主ではその男には敵わんよ……それにあのままでは吹き飛ばされて儂等の方に飛んで来てしまうではないか」

 

 

「我等には傷を負わせる事は叶わずとも、万が一アーシア殿や白音殿達が傷付けばそのまま日本神話側との戦争になるぞ……って聞こえてはおらんか」

 

 倒れているゼファードルに対して童虎とシオンはそう言った。

 

 もしあのままゼファードルがサイラオーグに殴り掛かっていた場合、確実に返り討ちにあっていただろう。殴り飛ばされ、ゼファードルの身体はそのまま吹き飛びリアス達の方へ。普段から戦っているリアスや一誠、白音達なら問題なく避けるだろうが、非戦闘員であるアーシアは避けれるとは限らない。万が一にでも日本神話の代表としてこの場にいるアーシアが悪魔の性で怪我でもすれば、零や天照達の怒りに触れ直ぐにでも戦争になるだろう。

 

 童虎とシオンはそれを止める為に、何よりアーシア達の為にゼファードルを止めた様だ。周りの若手悪魔達が何が起きたのか分からないので騒ぎ始めた。

 

 そして時間が経ち、協定が始まろうとしていた。




・キャラ紹介

 名前:オーディン

 性別:男

 年齢:???

 種族:北欧の主神。原初世界の神の1人

 出身地:???【言葉では表せない】

 容姿:原作通り

 好きな物:零、女性(特に若い娘)

 嫌いな物:零を傷付ける者

 神力:???

 攻撃力・防御力:天照達と同様



 天照達と同じく原初世界の神の分霊の1人。原初世界では天照達の親の様な位置に居る。なので零からすれば祖父にあたる。

 天照達同様、零を愛しており、甘い。本人は零に「お爺ちゃん」と呼んで欲しいが中々呼んでくれないので落ち込んでいる(原因は女癖が悪いことなのだが、本人は未だにそれに気付かない)。

 素戔嗚からも妻であるクシナダ神をやらしい目で見ているので嫌悪されている。

 幼い頃の零は女好きの祖父でも尊敬して懐いていたらしいが、成長するにつれてゴミを見る様な目で見られたとか………(本人曰く、その時は本当に自決しようと思ったらしい)。


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EP60 邪神乱入

 ~三大勢力協定パーティ 開始~

 

 三大勢力のトップであるミカエル、サーゼクス、アザゼルが協定のシンボルである石碑の前に立ち宣誓していた。零はその様子を見ていたが、何かの感じているのかやけに周りを気にしている。

 

 

(気の所為………であればいいんだが)

 

 零はそう考えながら、視線を石碑に戻した。段上ではサーゼクス達が宣誓を終え、後見人としてオーディンが石碑に署名する所だった。

 

 

【異議あり!】

 

 

「むぅ………やはり来たか」

 

 オーディンが手を止め、振り返ると上空に魔方陣が表れそこから長髪の男が姿を現した。

 

 

「我こそは北欧神ロキ」

 

 

「ロキ殿、幾ら北欧の神とてこの場を荒らす権利は貴方にはない」

 

 サーゼクスがそう言うと、ロキは笑みを浮かべる。

 

 

「我等が主神が我等以外の神話体系と接触するのは耐えがたい苦痛でね」

 

 この人物の名は邪神ロキ。オーディンと同じく北欧の神だ、どうやらオーディンが他の勢力と手を組む事に意を唱えに来たらしい。

 

 

「ロキよ、今すぐヴァルハラに帰るなら許してやらんこともないが」

 

 

「許す?ふざけるなよ、老いぼれ」

 

 

「主神になんてことを!?」

 

 オーディンの言った言葉にそう返すロキ、その言葉を聞いて前に出たロスヴァイセ。

 

 

「はぁ………全く面倒ごとを持ってくるなよ、爺」

 

 

「むぅ………確かに今回の事は儂のミスじゃのう」

 

 零がオーディンに向かい話しかける。

 

 

『他の神話体系と接触するなど、我等の来たるべきラグナログが』

 

 

「来るって分かってたんなら、来る前に説得しとけよ。もしくはバレない様にしろよ」

 

 

「あ奴は言って聞く男ではないからのぅ。それに儂も主神と言う立場じゃから黙って動く訳にもいかんでな」

 

 

『っておい!聞いているのか!』

 

 

「と言うかアイツなに?」

 

 

「奴はロキ……神々の黄昏(ラグナロク)を果たそうとする奴でな」

 

 

『人の話を聞け!』

 

 

神々の黄昏(ラグナロク)って世界の終焉の事か………はぁ、何処の世界にもいるんだな。後先考えず世界の終焉を望む奴は………本当に迷惑な話だ」

 

 

「ウム、その通りじゃな」

 

 

『聞けと言うのが分からんのか!おい!無視するな!』

 

 悉く無視され続けているロキ、無視され続けた事が辛かったのか弱冠涙目になっていた。

 

 

「ぁ~はいはい、いい歳した大人が泣くなよ………はいどうぞ、聞いてるんで」

 

 

「くっ………コホン……我等が迎えしラグナロクの為に貴様等には此処で死んでもらう!出でよ!愛しき我が息子よ!」

 

 零にそう言われ、涙を拭き嬉々とした表情に変わったロキは両手を広げると会場の床に巨大な魔法陣が浮かび上がりそこから巨大な狼が現れた。

 

 

「へぇ~……デカイ狼か(堅そうに見えてモフモフしてそうな毛……ぅ~ん、でも家の子の方がモフモフしてるな)」

 

 零はそんな事を考えていたが、ロキが召喚した狼…フェンリルに驚いていた。魔王達やアザゼル達もフェンリルに対してかなり警戒している。

 

 フェンリルはロキが産み出した魔狼。その牙は神をも殺すと言われており、天使の長ミカエルや魔王達でさえ一撃でやられるだろう。

 

 

「全てを喰らえ、我が子よ!」

 

 ロキの掛け声と共に、フェンリルが各勢力の長達に襲い掛かろうとした瞬間、フェンリルは何かを感じとり後ろに飛び退いた。

 

 

「どうした、我が息子よ?」

 

 ロキはフェンリルの行動に何が起こったのか分からない様子で、フェンリルを見る。フェンリルは何かに警戒する様に唸り、各勢力の長達を睨んでいた。

 

 

「へぇ、獣だけあって本能が働いたか」

 

 そう言って前に出たのは零だった。

 

 

「貴様は……その容姿、その力…噂に聞く伝説の戦士か」

 

 

「別に俺はコイツらを助けた覚えはないんだが……まぁいい。それよりもだ、邪神ロキよ。さっさと帰ってくれると有難いんだが……お前のいう神々の黄昏(ラグナロク)はこの冥界だけでなく、人間の世界まで巻き込むんだろう?悪魔共が全滅するだけなら見過ごしていたが…母様の領土まで破壊されるのは困る。大人しく去るなら追いはしないが?」

 

 どうやら零はこの協定自体や冥界が壊れるよりも、天照が支配する日本に危害が及ぶことは許せないらしい。その他はどうなってもいいようだ。

 

 

「ふざけるな!天界も、人界も、冥界も神々の黄昏(ラグナロク)により終焉を迎えるのだ!たかが極東の神が支配する領土がどうなろうが知ったことではない!」

 

 ロキがそういい放つと、オーディンは「やってしもうたの~」と声を漏らし肩を竦めた。

 

 

「ふっ……フフフ…たかが?…母様をたかがだと!?口を慎め!この世界の神風情が!」

 

 零は天照の事を侮辱されたことで、キレた様だ。全身からは凄まじい力が溢れている。

 

 

「っ!?(なんだ、この力は!?)」

 

 

「いいだろう……破壊する。貴様を存在ごと無に返してやる!」

 

 零がそう言うと両目が輝き初めた。何かを始める気だろう。

 

 ロキは圧倒的な力に驚愕し動くことができなかった。そして零が何かを言おうとした瞬間、ロキとフェンリルは光に包まれた。

 

 

「なっこれは!?貴様か、おのれ!ベルゼブブ!」

 

 

「……ここで暴れられても困るのでな」

 

 魔王の一人、アジュカ・ベルゼブブがそう言うとロキとフェンリルはその場から消えてしまった。



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EP61 緊急会談

 ~会議室~

 

 魔王アジュカ・ベルゼブブにより乱入してきた北欧神ロキは会場から冥界の荒野に転送・封印された。しかしそれもほんの数日しか保たないそうだ。天使の長・ミカエル、堕天使総督・アザゼル、サーゼクスやセラフォルーを含む四大魔王、北欧の主神・オーディン、日本神話の代表・零が会談を行っていた。それぞれの後ろには護衛役も居る。

 

 ミカエルやサーゼクス達は話し合いを進める中、零だけがかなり不機嫌になっている。そしてアジュカの方を睨みつけている。

 

 

「てっ天王理殿……私になにか?」

 

 

「お前が邪魔しなければあのまま奴をブッ飛ばせたのにと思ってな………まぁいい。爺」

 

 零はアジュカにそう言うと、零はオーディンに目を向けた。

 

 

「なんじゃ?」

 

 

「俺としては母様を侮辱したあの野郎を存在ごと消してやりたいんだが………一応、奴もこの世界の神の1人だ」

 

 

「フム………儂としては奴を消されると困る。今すぐに儂が北欧に戻り【ミョルニル】を此方に送ろう、それで奴を封じてくれんかのぅ?」

 

 

「戦神の大槌か………まぁいいだろう。大槌が転送されるまではお前等で何とかするんだな」

 

 零はそう言って魔王達を見た。

 

 

(ロキ)が世界を破滅に導くと言うならば俺は止める。しかし悪魔がどうなろうが知った事ではない、この冥界は貴様等の領土だろう。自分の領土なら自分で護るんだな」

 

 零はそう言うと、護衛のサガとカノンと共にその場を去った。

 

 

「フム………相変わらずじゃのう、アイツは……ロスヴァイセ」

 

 

「はっはい!」

 

 

「お主は此処に残り、零と共に行動せよ」

 

 

「はっはい……ですが何故、あの方と共になのですか?先程の話し様ではあの方はギリギリまで動かないのでは?」

 

 

「はぁ……全くお主は相変わらず頭が堅くて見る眼がないのう、まぁあの子と共に居れば直ぐに分かる」

 

 オーディンはそう言うと、北欧に帰る準備をする為にその場から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~零の部屋~

 

「で………アンタがなんで此処にいるんだ?」

 

 

「私だって分かりません。オーディン様の命なので………」

 

 

「そう……爺か。それでアンタの名前は?」

 

 

戦乙女(ヴァルキリー)のロスヴァイセです」

 

 

「天王理零だ。んでこっちの、白くて可愛いのが白音、黒くて可愛いのがオーフィス、黒歌とアーシアだ……いたたたっ……なんだ2人とも?」

 

 自分達の紹介に可愛いと言うのが抜けていたので、頬を膨らませているアーシアと白音。2人は零の頬をつねった。

 

 

「むぅ~(ぎゅ~」

 

 

「ご主人様には女心が分かってないのにゃ(ぎゅ~」

 

 

「なんの話だ?いたたたっ」

 

 ロスヴァイセはそんな零を見て、本当に彼が伝説の戦士なんだろうかと考えてしまった、しかしその考えは直ぐに訂正されることになる。

 

 

「まぁいいや………童虎、シオン、サガ、カノン」

 

 部屋の隅にいた童虎達に目を向けた。

 

 

「「「「はっ!」」」」

 

 

「あの邪神どう見る?」

 

 

「流石は神と言うべき力であった」

 

 

「しかし一番厄介なのはあの魔狼かと」

 

 零がロキについて尋ねると、童虎とシオンがそう答えた。

 

 

「神をも砕く牙………その性質故に」

 

 

「あの牙にかかれば我等とて無事では済みますまい」

 

 サガとカノンが、フェンリルの牙の危険性についてそう話した。伝承では神々の黄昏(ラグナロク)が起きた

 際にフェンリルはオーディンを噛み殺すと言われている。故に神殺しと言われている。神をも殺す力を持つので神以外に対しても殺傷能力は十分にある。幾ら零に呼び出された黄金聖闘士(ゴールド・セイント)と言えどフェンリルの牙に傷付けられれば無事ではすまない。

 

 

「だろうな。世界は違うと言えど神殺しか……対策がない訳ではないが……俺以外が相手するとなると少し面倒になるな」

 

 

「零、我ならあいつら倒せる」

 

 そう言ったのはオーフィスだった。確かに無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)であるオーフィスであればフェンリルを倒すことは可能だろう。しかしこれはロキが三大勢力に対して掛けた戦争、それに日本神話の代表となったオーフィスや零達がそう簡単には介入できない。

 

 世界の危機であれば問題ないが、現在の状態では世界の危機とまではいかないので手を出すことができない。

 

 仮にこの戦争に零やオーフィス達が参加したとしたら、他の神話体系に日本神話が三大勢力と手を組んだと思われる。零としてはそれは避けたい。特に悪魔と関係があると他の神話体系に思われた場合は面倒なことになるからだ。

 

 現在の悪魔の開発した悪魔の駒(イーヴァル・ピース)は世界的に問題となっているからだ。そんな中で悪魔と日本神話は関係しているとなれば、他の神話体系に目を付けられる。そうなれば天照に面倒を掛けるだけでなく、日本神話の関係者として零も巻き込まれるだろう(本人にとってはこっちが主)。

 

 

 世界の危機であれば、世界を救うために零が参加しても問題ないだろう。仮に何か言われても幾らでも言い様はある。

 

 

「でも……まぁ…何とかなるだろう」

 

 こうして、その時は刻一刻と迫るのであった。そしてこの時、零の瞳にぼんやりと何かの紋章が浮かんでいるのに誰も気づかなかった。

 



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EP62 出陣

 ~グレモリー邸前~

 

「今回はかなり危険が伴っている。それに人数の関係上、回復役は一人しかつれて行けない」

 

 

「まぁそういうことだ。今回の回復役はこいつだ。リアスや一誠とは色々とあったと思うが、宜しく頼むわ。何せこいつ埋め込んだ人工神器(セイグリッド・ギア)は多数の回復に向いている」

 

 サーゼクスの後に、アザゼルがそう説明するとその後ろからレイナーレが現れた。

 

 レイナーレは一誠やアーシアの事件の後、リアスのけんぞくになったが、今までは人工神器(セイグリッド・ギア)の調整の為にアザゼルの元にいたのだ。

 

 

「えっと……その宜しくお願いします!それと一誠くん!」

 

 

「はっはい!?」

 

 今は同じ眷族とはいえ、一誠は1度殺された相手なので少し警戒しているようだ。

 

 

「あの時は本当にごめんなさい!謝って済む事ではないと分かってるけど………本当にごめんなさい!」

 

 

「それについては俺からも改めて謝る。もっと俺が此奴等の事を見てたら良かったんだがな」

 

 

「あっ……いぇその事は済んだ事ですし……夕麻ちゃんも色々と必死だったんでしょうから……それに俺はあの一件のお蔭で部長達とも会えましたから」

 

 どうやら一誠は直ぐにとはいかないが、レイナーレの事は許す様だ。これはこれで一誠のいい所なのだろう。

 

 

「それでアザゼル先生、零は参加してくれないんですか?」

 

 

「あっ……ぁあ、無理だろうな。まぁアイツだけでロキの野郎を倒せそうなんだが……今のアイツは日本神話の代表だ。今の状況では日本神話が介入するだけの理由がねぇからな。このままじゃロキの言う神々の黄昏(ラグナロク)が起きたとしても、零1人で抑えられるだろうな……恐らくアイツはそんだけの力を持っている。それにアイツの護衛達もいる……被害が出るのはこの冥界だけだろうな」

 

 一誠の問いに、自分が分析した事を話したアザゼル。

 

 

「そんな………」

 

 一誠は零の方に視線を向ける。当の本人はただ空を見上げているだけで全く動こうとしない。そして鎧を着た銀髪の女性が零と揉めているみたいだ。そして女性は此方の方にやってきた。

 

 

「あっちにいなくていいのかい?」

 

 アザゼルがそう銀髪の女性に言った。

 

 

「いえ……あの方が好きにしろと仰るので……あっ自己紹介が遅れました、戦乙女(ヴァルキリー)のロスヴァイセです。今回、私も参加させて頂きます」

 

 

「すげな………匙」

 

 

「あぁ、兵藤………」

 

 一誠と匙はロスヴァイセの胸や腰などをジッと見ている。

 

 

「前見た時はスーツだから分からなかったが」

 

 

「素晴らしいボディだ」

 

 そう言って2人して鼻の下を伸ばしている。勿論、そんな事をしていれば。

 

 

「匙!こんな時に何をやってるんですか!」

 

 

「一誠!本当に貴方って子は!」

 

 

「いだだだっ会長!すいませ~ん!」

 

 

「すいません!いででで…ぶちょ~、痛いです!」

 

 自分達の主に頬を抓られ、耳を引っ張られる事になる。

 

 

「ではそろそろ時間だ。あと、これはもしもの時の為に使ってくれ。急な事でこれだけしか集められなかったが」

 

 そう言ってサーゼクスがリアスに渡したのは、小さな装飾された箱だった。その中身は【フェニックスの涙】だ、これは瀕死の状態でも直ぐに回復できるアイテムだ。それ故に希少価値が高く、悪魔世界の中でもかなり高価な物だ。

 

 

「では送るぞ、くれぐれも気をつけてくれ」

 

 アジュカによりリアス達はロキの居る荒野に転送された。

 

 

「主よ、どうか彼等に御加護を」

 

 

「無事でいろよ………」

 

 

「どうか無事に帰って来てくれ」

 

 三大勢力のトップ達が今できるのは祈る事だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~零side~

 

「行ってしまいますよ!?私たちは行かなくていいんですか?!」

 

 そう言ったのは鎧を着たロスヴァイセだった。どうやらロスヴァイセは自分も行くつもりだった様だ。

 

 

「俺は行かん。貴女は好きにするといい、爺の命とはいえ俺の所にいる必要はないからな」

 

 

「……分かりました。そうさせてもらいます!」

 

 ロスヴァイセはそう言うとリアス達の元に向かった。

 

 そしてアジュカにより選ばれたメンバーが転送された。零はその様子を見て考えていた。

 

 修行したとはいえ、祐子も朱乃もゼノヴィアもまだまだ未熟。リアスは潜在能力は高いが滅びの魔力便り、一誠に至っては未だに完全な禁手(バランス・ブレイカー)が出来ていない。

 

 その他のメンバーも神が相手では敵わないだろうと。

 

 零にとって一誠や祐子、特に同じ苦しみを知る朱乃は気に掛かっている。しかし好き勝手にする訳にもいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと……どうしたものかね」

 

 

「あっあの零さん。私達も行かなくて良いのでしょうか?」

 

 そう言ったのはアーシアだった。

 

 

「そうよね。あの面子じゃどうやっても勝てそうにないにゃ」

 

 

「同感です」

 

 黒歌と白音も続けてそういった。零より弱いとは言え彼女達は魔王に匹敵するくらいの強さ持っている。それ故にロキの力やフェンリルの力が分かっていたのだ。

 

 

「だろうな……死人が出てもおかしくないしな」

 

 零はそう言うと、空を見上げた。そして袖を引っ張られる感触があった為、視線を下げるとオーフィスが零の袖を引っ張っていた。

 

 

「どうかしたか?」

 

 

「零、いいの?」

 

 

「……はぁ~。そうだな、あの女(リアス)とかはどうでもよくても……一誠や姫島朱乃達をみすみす死なす訳にはいかんか。それにアーシアの友達のゼノヴィアも…あの女(リアス)が死のうが構わんが、助けて魔王に貸しを作るのも悪くない」

 

 

「我(私)も行く(にゃ・ます)」

 

 零がそういうと、オーフィス達も行くことに決めた様だ。すると零の右眼に何かの紋章が浮かび上がった。



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EP63 聖戦開幕

 ~冥界 荒野~

 

 荒野に転送された一誠達は直ぐに場の異常に気が付いた。

 

 辺り一帯に漂う禍々しく、巨大な力。

 

 一誠達の視線はすぐに、離れている場所にある光の塊に向けられた。

 

 それはアジュカにより封印されたロキがいる魔法陣だ。だが次の瞬間、空一面を覆う暗雲から落ちた雷により魔法陣が破壊された。そして邪神がその姿を現した。

 

 

「フン、やっと解けたか。忌々しいベルゼブブめ」

 

 

「ロキ様!この様なことお止め下さい!今ならオーディン様も御許しいただけます!」

 

 ロキに向かい、ロスヴァイセがそう叫ぶ。

 

 

「フッあの爺の許しなどいらん。それに神々の黄昏(ラグナロク)は我が悲願、止める訳にはいかん。出でよ!我が息子達よ!」

 

 ロキがそう言うと、雷が発生しロキの周囲に落ちた。すると地面からフェンリルとフェンリルに似た2頭の狼、巨大な龍が現れた。

 

 

「フェンリルとその子、ハティとスコル!?」

 

 

「それに龍王ミドガルズオルムまで………恐らく模造品でしょうけど」

 

 ロスヴァイセとソーナがそう言った。

 

 

「皆、油断しちゃ駄目よ」

 

 

「特にフェンリルには気をつけて下さい。あの牙にやられれば終わりですよ」

 

 

「「「「はい!!」」」」

 

 それぞれの主にそう言われ、各自が臨戦態勢に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぜぇぇぇぇぇ!」

 

 

 《Welsh Dragon Over Booster!》

 

 一誠は不完全ではあるが、禁手を使い鎧を纏う。

 

 

「おりゃあぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 《Boost!》

 

 一誠は力を倍加させ、フェンリルに殴り掛かった。フェンリルはそれにより少し後ずさるが直ぐに体勢を立て直しその爪で一誠に襲い掛かる。一誠はそれを背にあるブースターを吹かせ移動することで回避する。

 

 

「ハアァァァァァ!」

 

 

「でやぁぁぁぁぁ!」

 

 フェンリルが止まった一瞬の隙を突き、裕子とゼノヴィアが双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)とデュランダルで斬り掛かる。

 

 

「あれでも傷1つ付かないとは」

 

 

「流石は伝説の魔狼だね」

 

 ゼノヴィアと裕子はそう言うと、一旦その場から下がる。

 

 

「雷よ!」

 

 巫女服の朱乃が雷を発生させ、フェンリルに向かい放つ。フェンリルは直撃したものの、全くと言っていいほど効いていない。

 

 

「……自分の血を受け入れる………彼の前なら……彼なら」

 

 朱乃は上空から一誠の方を見ると、決意した様に目を見開いた。

 

 

「私は姫島朱乃……姫島朱璃とバラキエルの娘!そしてリアス・グレモリーのクイーン!……雷光よ!」

 

 朱乃の背に悪魔と堕天使の翼が生え、右手から雷を放ち、左手から光を放つ。そして雷と光が合わさり雷光となる。雷光はフェンリルに直撃した。

 

 

「流石、朱乃先輩!」

 

 

「ウフフフ、一誠君に褒められると照れてしまいますわ」

 

 朱乃はそう言うと顔を赤く染めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故かな……今の一誠君と朱乃さんのやり取りを見てると胸がモヤモヤする……でやぁぁぁ!」

 

 裕子は一誠を見ながらそう呟き、襲い掛かって来たハティの攻撃を避け迎撃する。だが双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)をもってしてもフェンリルの子であるハティに傷をつける事はできない。

 

 

「やっぱり力不足か………未だ長時間は使えないけど」

 

 裕子は目を瞑り、聖魔剣を消すと両手の甲に白と黒の竜を模った紋章が浮かび上がった。

 

 

「『聖を司りし白銀の龍よ。汝が聖なる光は邪神を浄化し、焔は魔を焼き尽くす。その光と焔を我が手に。顕現せよ、天空の支配者にして龍の皇帝よ!【聖龍剣(フォース・オブ・ドラゴスレイブ)!】』」

 

 右手の甲の紋章が眩い光を放つ、そして光が巨大な龍の姿となった。

 

 

「『邪を司りし漆黒の竜よ。汝の邪は神にすら死を与えし毒、氷は時をも止めし絶対の冷気。その邪と氷を我が手に。顕現せよ、地獄の支配者にして竜の皇妃よ!【邪竜剣(グレイズ・オブ・ドラゴスレイブ)!】』」

 

 左手の甲の紋章から禍々しい闇が溢れ、その形を巨大な竜に姿を変える。

 

 

【ククク……我等が仮の宿主よ。我等を使うか】

 

 

【貴女が護るものため、貴女の願いのために】

 

 

【我等を思う存分に使うといい】

 

 

【その想いが……愛がある限り、我等は力を貸しましょう】

 

 2体の龍達がそう言うと、それぞれが光と闇に変わり裕子の両手に収まった。そして裕子の手には零から受け取った聖龍剣と邪竜剣に姿を変えた。

 

 

「ボクは護る!部長を!一誠君を!皆を!この剣に誓って!」

 

 裕子がそう叫び、聖龍剣と邪竜剣を掲げると夫婦剣の刀身が光と闇を纏った。そして裕子は自身の悪魔の駒(イーヴァル・ピース)の特性である速さを使い、ハティの攻撃の避けた。それはこれまでの速さとは段違いだ。

 

 前と比べ数倍以上の速さを見せている。これはアルトリア達との修行の成果と、聖龍剣(フォース・オブ・ドラゴスレイブ)邪竜剣(グレイズ・オブ・ドラゴスレイブ)によるバックアップによるものだ。

 

 聖龍剣……聖なる龍の身体と魂を使い、零が創り上げた龍殺しの聖剣。その効果は邪神すらも焼き尽くす焔と持ち主の筋力の倍加。

 

 邪竜剣……邪悪な竜の身体と魂を使い、零が創り上げた竜殺しの邪剣。その効果は時すらも凍てるかせる絶対零度の氷と持ち主の速度の倍加。

 

 そしてこの2本は対なす夫婦剣。この夫婦剣に認められた裕子の力と速度は前の数倍になっている。

 

 

「ハアァァァァァァァ!」

 

 以前の数倍の速度で、一気にハティの真下に潜り込むと自分の魔力を聖龍剣と邪竜剣に流し込んだ。それにより刀身を覆う光と闇が強くなり、裕子はそのままがら空きのハティの腹を目掛けて剣を振るった。刀身はハティの腹に傷をつくり、裕子はその後すぐにその場を離れた。

 

 

「ッ……やっぱりこの剣は魔力の消費が激しい。この状態じゃ5分もしない内に魔力が空になりそうだ。もっと使い所を考えないとね」

 

 裕子がそう言うと、聖龍剣と邪竜剣が消えた。どうやら使用するとかなり魔力を消費する様だ、先程まで汗1つ掻いていなかったが、全力疾走した後の様に汗だくになっていた。

 

 

 《ガアァァァァァァ!》

 

 傷付けられたハティは頭に来たのか、裕子に襲い掛かった。

 

 

「しまlt「でやぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

 ゼノヴィアがデュランダルでハティを攻撃し退けた。

 

 

「ゼノヴィア……ありがとう助かったよ」

 

 

「祐子、もうバテたのか?さっさと立ち上がらないと全部私が斬ることになるぞ?」

 

 

「ハハハ……よいしょっと……言ってくれるね」

 

 裕子はゼノヴィアの手を借りて、立ち上がると聖魔剣を創造し構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍王の模造品とは……」

 

 

「敵も本気と言う事ね」

 

 崖の上から模造品のミドガルズオルムを見降ろしていたリアスとソーナ。2人は他の眷族の様子を確認しながら、目の前の敵に集中していた。

 

 

「さてそろそろ、始めようかしら」

 

 

「そうですね、こんな所で時間を喰ってる暇はありませんしね……」

 

 そう言う、2人の身体から魔力が立ち昇り始める。ミドガルムオルム(模造品)はそれに気付くと、2人に向かい炎を放つ。しかしソーナのクイーンである椿姫が2人の前に出た。

 

 

「その炎、返させて貰います!【追憶の鏡(ミラー・アリス)!】」

 

 椿姫の前に鏡が現れ、それがミドガルズオルムの炎を受け止め割れた。その瞬間に炎はミドガルズオルムに跳ね返された。

 

 

「行くわよ!ソーナ!ハアアァァァァァァ!」

 

 

「えぇ!リアス!ハアァァァァァ!」

 

 ソーナの魔力から巨大な氷の蛇が形成され、ミドガルズオルムに纏わりつくと凄まじい冷気と共に氷漬けにした。その直後にリアスが滅びの魔力で攻撃を加えた。

 

 

 《があぁぁぁぁ!》

 

 ミドガルズオルムはそのまま倒れ込んだ。

 

 

 

 スコルの方もロスヴァイセとイリナにより抑えられている。

 

 だがこの場にいる全員は知らなかった。

 

【神】の本当の力を…………。




~登場武器・神器紹介~



【聖龍剣(フォース・オブ・ドラゴスレイブ)】

 とある世界の聖と焔を司る白銀の龍から創り出された聖剣。龍から作られているのに龍殺しの力も秘めている。

 装備中は魔を浄化する光と邪神をも焼く焔を操る事ができ、持ち主の筋力を倍加させる。

 武器の中に魂も宿っている為、武器の状態でも元の雄龍との会話ができる。しかし使用中は凄まじい魔力を使うため、裕子は5分ほどしか使用できない。

 もう1振りの邪竜剣とは対の夫婦剣であり、同時に装備する事で共鳴し合い、その力を更に倍加させる。




【邪竜剣(グレイズ・オブ・ドラゴスレイブ)】

 とある世界の邪と氷を司る漆黒の竜から創り出された邪剣。聖龍剣と同じく竜殺しの力を宿している。

 装備中は神をも殺す闇と時をも止める氷を操る事ができ、持ち主の速度を倍加させる。

 武器の中に魂も宿っている為、武器の状態でも元の雌竜との会話ができる。しかし使用中は凄まじい魔力を使うため、裕子は5分ほどしか使用できない。

 もう1振りの聖龍剣とは対の夫婦剣であり、同時に装備する事で共鳴し合い、その力を更に倍加させる。

 
 この二振りの剣の特殊能力である【邪神殺しの光】【神殺しの毒闇】などは裕子の実力では使用不可である。

 しかしその切れ味は凄まじく聖魔剣で斬ることができなかったフェンリルの固い身体を斬る事ができる。


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EP64 神の権能

 ~冥界 荒野~

 

 戦闘が開始し、自分の放った魔物達が倒されていくのを沈黙し様子を見ているだけで全く動こうとしないロキ。それが不気味過ぎる。しかし皆は気付いていない。

 

 皆が協力しロキの魔物達を気絶させる事に成功した。

 

 

「はぁ……つまらん。所詮この程度か、何の面白味もない」

 

 ロキのその言葉で皆が、ロキを見上げる。

 

 

「ロキ様!もうお止め下さい!!」

 

 

「貴方の魔獣達は既に倒したわ!これ以上続けるので在れば覚悟しなさい!」

 

 ロスヴァイセとリアスがそういい、皆がロキに向かい構える。

 

 この時、ロスヴァイセ以外の心の中ではこう思っていた【例え神であろうとも、今の自分達なら何とか勝てる】と。

 零やアザゼルの課題により、ロキの魔獣達を倒し内心ではかなり舞い上がっている。

 

 

「貴様等………何か勘違いしてないか?」

 

 

「なんだとコラァ!俺達は零やアザゼル先生の地獄の特訓で強くなってんだよ!」

 

 

「現にアンタはもう1人じゃねぇか!」

 

 禁手化状態の一誠と、アザゼルによって4つのヴリトラ系の神器を埋め込まれ使用が可能になった匙がロキに叫ぶ。

 

 

「魔王でもない悪魔……それに悪魔もどき、天使もどき……戦乙女(ヴァルキリー)が神に勝てると思っているのか?」

 

 魔王でもない悪魔と言うのはリアスとソーナの事だろう。悪魔もどきとは……恐らく転生悪魔である眷族達のこと、そして天使もどきとは白い翼を生やしたイリナの事だろう。これは転生悪魔の技術を利用し、他種族を転生天使に変えるものによって誕生した転生天使・イリナだ。

 

 

「まぁ神々の黄昏(ラグナロク)の余興としては十分だな」

 

 ロキがそう言い、右手を天に向けると魔法陣が展開しそこから無数の魔力弾が放たれ地上に降り注いだ。全員は予想もしなかった攻撃に回避する事のできなかった。リアス・朱乃・ソーナ・椿姫・レイナーレ・ロスヴァイセ・イリナは防御が間に合ったのか無事の様だ。

 

 

「そっそんな……今すぐに治療します!【聖母の慈愛(マリア・ザ・ヒーラー)!】」

 

 レイナーレがそう言い、両腕に金の腕輪が現れると暖かな光を放ち始めた。その光を受けた一誠達の傷は治癒されていく。

 

 

「これが貴女の神器なのね……レイナーレ」

 

 

「はい、部長。聖母の慈愛(マリア・ザ・ヒーラー)私の半径5メートル以内の味方を治癒する神器です。アザゼル様に頂きました」

 

 

「そう、貴女は皆の治癒をお願い」

 

 どうやらアザゼルによって埋め込またのは、広範囲治癒系の神器らしい。ロキはそれをジッと見つけていた。

 

 

「攻撃を仕掛けてこない……どういうつもりです?」

 

 ソーナがロキに向かいそう言った。

 

 

「フン……幾らやろうとも同じ結果だと言う事だ。所詮悪魔や天使など神の前では雑魚にしかすぎん」

 

 その言葉に怒りを覚えたのか、治療の終わった全員が立ち上がりロキを睨み付けた。

 

 

「幾ら虫が集まろうと私に勝てる筈がないだろう」

 

 ロキがそう言うと、ロキから放たれていた圧倒的な力が消えた。

 

 

「なっなんだ……」

 

 

「ロキの力が消えた?」

 

 

「いぇ……こっこれはまさか……ロキ様!それはいけません!それを使っては世界が!」

 

 ロキの様子に不思議がっている一誠や祐子達。だが唯一ロスヴァイセが何が起きているのかを理解した様で、顔を青ざめさせている。

 

 

神々の黄昏(ラグナロク)が早まるだけだ。それに愚か者どもに教えてやらねばならん……弱小な存在である自分達が誰に刃向っているのかをな」

 

 ロキがそう言い終わると、ロキから光の波動が放たれ始めた。一同は何事かと想い周辺を見渡すが、何も起きていない。

 

 

「テメェ!何をしやがった!」

 

 匙が一歩出てそう叫ぶと、何故か匙の身体が炎に包まれた。

 

 

「あちちちちちちち!!」

 

 

「匙!」

 

 ソーナが魔法で水を出し、匙を消火した。

 

 

「いっ一体何が起きたと言うの……見る限りロキは何もしていない」

 

 

「えぇ……魔法にしても、何にしても力の波動がある筈。しかしそれがロキから感じられない、いぇそれどころか一切力を感じませんわ」

 

 リアスと朱乃がそう言った。

 

 悪魔や天使などが魔法などを使用する時、何かしらの力を発する。それは日本の妖怪であっても、魔物であっても変わらない。しかし唯一例外がある。

 

 

「皆さん!不用意に動かないで下さい!今のロキ様は【権能】を使用しています!」

 

 

「「「権能?」」」

 

 ロスヴァイセの言葉に皆がなんなのかと思っている。

 

 

『【権能】とは神だけが持つ力。ただそうするだけの権利の事だ』

 

 辺りに声が響き、眩い光と共に零とアーシア達が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「れっレイ!?どっどうして此処に!?」

 

 

「どうしても、こうしてもない。神が【権能】を使うと言う事はそれこそ世界が動くと言う事だ……そんな事態になれば俺が動かない訳にはいかん」

 

 

「そうだにゃん、今の貴方達じゃロキには敵わないわよん」

 

 何時もの様に着物を肌蹴させている黒歌が零に抱き着いている。

 

 

「「あぁーーーー!なんて羨ましい!」」

 

 

「五月蠅い」

 

 

「「すっすまん」」

 

 零に睨まれ、縮こまってしまう一誠と匙。

 

 

「天王理君、【権能】って一体なんなの?」

 

 落ち着いた様子で裕子がそう聞いた。

 

 

「【権能】……神が神たりえる証。総ての法則を無視して事象を引き起こすことができる神の力とでも考えろ」

 

 

「まさかそんな事、ありえる訳が……」

 

 

「「???」」

 

 皆が驚いている中で一誠と匙だけが首を傾げていた。

 

 

「はぁ……阿呆のお前等にも分かり易く言ってやる。例えば【物を移動させる】という権能があるとしよう」

 

 

「ほぅほぅ」

 

 

「人間や悪魔達がそれを行う時、手で動かす、魔法で動かすという行動をしなければ【物を移動させる】ことはできない。しかし権能は違う、【物を移動させる】という結果だけを行える」

 

 

「ん?……ん~分かった様な分からない様な」

 

 

「………もっと簡単に言ってやろう。【答えを出す】と言う権能をもつ者がテストを受ける。その者は問題も読まずにその答えが分かるということだ」

 

 

「「なに?!そんなチート的な力だったのか!?」」

 

 零が一誠達にも身近である学校のテストに例えて言うと、直ぐに理解した様だ。

 

【権能】とはただ「・・・」をする権利を持っていると言う事だ。そこには物理法則も計算も必要ない、そうするだけの【権利】があるだけ。

 

 

「そして邪神ロキよ。お前の権能は【火】と【神々の黄昏(ラグナロク)を引き起こす】というものだろう?」

 

 

「そうか、貴様は伝説の戦士だったな。そして極東の太陽神の息子でもある……成程、貴様も【権能】を持っているのだな。【権能】を持ちし神の中には、他の神の【権能】を見抜く者もいると聞いた事があるが……会うのは初めてだ」

 

 

「まぁそんな所だ……さて、邪神ロキよ。俺は寛大だ、泣いて謝るなら許してやるぞ?」

 

 零は完全にロキを挑発している。勿論、ロキがそれに応じる訳もない。ロキが零を睨むと、青い炎が発生し零達に襲い掛かった。先程の匙を焼いた炎とは比べ物にならない。

 

 

「アーシア、アレを試してみたらどうだ?」

 

 

「えっ……あっはい!」

 

 アーシアが前に以前に貰った十字架……かつて英雄ジャンヌ・ダルクが使っていた十字架を取り出すとアーシアが光りに包まれ、白い服と鎧を身に纏った。その手には旗を握っていた。

 

 

「『我が旗よ!我が同胞を護り給え!』」

 

 アーシアが旗を掲げるが、ロキの炎は皆を飲み込んだ。




【権能(けんのう)】

 神だけが持つ力。あらゆる法則に関係なくあらゆることを行うことが出来る。

 神々の神秘が満ちていた太古の時代には当たり前の様に、使用されていた。しかし神秘が薄れ、人が物事に法則をつけ始めたことで現在、権能を使う事が出来るのは、最高神や高位の神のみ。

 使用時は全く力を感じれないが、実際には力の次元が違い過ぎて神でなければ感知できないだけである。

 通常の魔術・魔法などとは、比べ物にならない力を発揮する。また通常では考えられない超常現象を起こす事ができる。

 ロキであれば【火】【ラグナロクを引き起こす】と言う、神話・伝承に因んだ【権能】を持っている。

 零は勿論、天照達も使用する事ができる。 


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EP65 新たなる絆が紡がれる

我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)!』

 

 

「なに?」

 

 炎が消えると、そこに居たのは全く無傷の零や一誠達だった。ロキはそれが何故なのか理解できなかった。零をあの程度では傷付ける事はできないと思っていたが、周りの者達なら普通に焼き殺せるくらいの火力は在ったのにと……。

 

 そしてロキは旗を掲げるアーシアの姿を見た。

 

 

「成程、その女の持つ旗の力か……」

 

 

「そう、宝具【我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)】。物理・魔法を問わずありとあらゆる攻撃から身からを護る結界。かつて国の為に先陣を切って戦った1人の少女の聖旗……それに俺の力も加わっている、神と言えどこれはそう易々と突破できんぞ」

 

 

「フン………ならばこれでどうだ!」

 

 ロキがその手に黒炎を出現させると、零達に向けて放つ。黒炎はアーシアの我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)により零達には届かないが、アーシアの持つ聖旗が段々と焦げていく。

 

 我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)は天使の祝福により味方を守護する結界宝具。その力は魔力・物理を問わずあらゆる攻撃から味方を守護する。しかし使用中は攻撃できず、攻撃を防ぐかわりに旗そのものが損傷していく。使い過ぎれば旗そのものが壊れ最終的には使えなくなる。

 

 

「ぜっ零さん!もちません!」

 

 

「流石に上位の神の攻撃となると、アーシアだけじゃきついか」

 

 

「此処は私が………クリスタルウォール!」

 

 零の後ろにいたシオンが前に出て、両手を広げると透明な光の障壁が出現し黒炎を遮った。

 

 

「神の黒炎………神を焼く炎か。ふっ」

 

 零が黒炎を見てそう呟き、息を吐くと黒炎は何もなかったかの様に消えた。

 

 

「ムッ……我が炎を消しただと………水の権能?いや違う……相反したと言うより……何もなかったかの様に消滅した?………まぁいい。我が子達よ!」

 

 ロキがそう言うと、気を失っていた魔獣達が目を覚まし起き上がる。

 

 

「フン………サガ・カノンはミドガルムオルズを、童虎・シオンはハティ、黒歌・白音はスコルを」

 

 

「ならフェンリルは我が倒す?」

 

 

「いや……オーフィスは俺と……ロキを。狼の相手には俺の眷族が相手をする」

 

 零はそう言うと、右手を空に向けた。

 

 

「……なんのつもりだ?」

 

 

「『我は原初が神が子。我が眷族にして、白銀の竜王よ。主が声に応え、その翼にて銀河を越え、我が元に降り立ちたまえ!』」

 

 空に巨大な魔法陣が展開する。それはリアス達が使う様な物ではなく、複数の陣が複雑に重なり合い1つの陣を形成していた。

 

 そして魔法陣の中央から白い光の塊が現れ地上に向かい落下を始めた。塊から翼が現れた。

 

 

 《グオォォォォォォ!!》

 

 咆哮と共に、光が消えそれは姿を現した。白銀の身体と零と同じ紅と金の眼を持つ竜。その姿は誰しもが見惚れる様な美しい姿だった。

 

 

「我が第1眷族にして、破壊竜の長……覇者の神獣!【バハムート神式!】」

 

 

 《ガアァァァァァァァァ!!》

 

 バハムート神式と呼ばれた竜は凄まじい雄叫びを上げ、フェンリル達を睨みつけた。フェンリル達もバハムート神式を威嚇し唸っている。

 

 

「バジン!あの狼の相手をしてやれ!」

 

 バハムート神式は零を見て、頷くと直ぐにフェンリル達に視線を戻す。

 

 

「わぁ~。綺麗なドラゴンさんですぅ……」

 

 

《アーシアたん、あんな恰好だけの白トカゲより俺様の方が強い》

 

 バハムート神式の姿に見惚れているアーシアの髪の中から出て来たファーブニルがそう言った。

 

 

「アーシアは攻撃が来たら防いでくれればいい。おい金トカゲ、もしもの場合は本来の姿に戻ってアーシアを護れ」

 

 

《言われずともそうする》

 

 ファーブニルはそう答えると、アーシアの頭の上に移動した。そしてロキを睨みつけている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてオーフィス行くとしようか」

 

 

「ん………」

 

 オーフィスは後ろから零に抱き着いた。すると零の右眼が輝き始めた。2人が眩い光に包まれると、黒い光の繭に変わる。2人を包んだ黒い光の繭はゆっくりと空に上がる。そして繭は胎動を始めた。

 

 

 《ドクッ……ドクン……ドクン》

 

 

「何が起きている……伝説の戦士とウロボロスが……」

 

 ロキも何が起きているのか分からず、驚いている。

 

 

『我、原初が神が子。無限の龍神と紡ぎし絆の力を今此処に解放せん………龍神が力を鎧と化し我が身に纏おう』

 

 繭にヒビが入り、割れると中から漆黒の鎧を纏った零が現れた。頭部には何もないものの、その身に纏っている鎧からは凄まじいオーラが立ち昇っている。

 

 

無限龍神の鎧(ウロボロス・ドラグメイル)って所か……成程……これがオーフィスの力か」

 

 零は手を握ったり開いたり、肩を回したりして身体の調子を確かめ、身に纏うオーフィスの鎧の力を感じていた。

 

 

「………強大な力だ。それ故の孤独……だがオーフィス、お前はもう1人じゃない」

 

 

 《うん、我1人じゃない。アーシアいる、白音いる、黒歌いる、ギャスパーいる……それに零が居る。我の居場所……だから……護る!》

 

 零の身を纏う鎧に付いている宝玉が点滅しオーフィスの声が聞こえた。そして零の頭部に龍を模した漆黒の兜が装着された。

 

 

「北欧神よ!今此処に、神と神の戦いを始めよう!!」




・オリ神器紹介

 名称:聖母の慈愛(マリア・ザ・ヒーラー)

 系統:回復

 発明者:アザゼル





 アザゼルが開発した人工神器の1つ。

 レイナーレがリアスの眷族になった事を知り、リアスの眷族に回復系の力を持つ者が居ない事に気付き、レイナーレに埋め込んだ物。

 その能力は、一定範囲の味方の治療、体力回復をする事ができる。しかし回復するにあたって、使用者が回復対象を味方と認識しなければならないので他人は回復できない。

 複数の味方を回復できること、使用者の精神力・体力の続く限りは回復し続ける事ができることがメリット。

 使用者は回復時に一切動く事ができないこと、使用者本人は自分を治せないことがデメリットである。

 レイナーレは現在、半径2~3mの範囲でしか回復できないが、特訓次第ではその範囲を広げる事ができる。





・ソウルコード紹介


 ソウルコード:ジャンヌ・ダルク

 宝具:我が神はここにありて

 使用者:アーシア・アルジェント




 零から渡された金の十字架に宿っていた英霊ジャンヌ・ダルクの力を解放し、一時的にアーシアが使用する事ができる。

 今までは十字架の状態でアーシアを護っていたジャンヌだが、聖女マルタと共に零により呼び出され、その際にアーシアに修行をつけたことで使用可能となった。

 ジャンヌが纏っていた鎧や宝具・スキルを使用することができ、アーシアの身体能力を格段に上がる。聖旗の先に付いている槍で攻撃する事もできるが、現在のアーシアは戦わないので使用しない。

 使用時は白い衣、鎧を装着している(F/GOのジャンヌの最終再臨がイメージ)。アーシア自身は初めて使った時は恥ずかしがっていたらしい(自分とジャンヌの胸を見比べて落ち込んのは内緒である)。

 因みにマルタと修行したので零が予想しなかったことも獲得したとか、なんとか。















・オリジナル竜


 真名:バハムート神式(じんしき)

 種族:竜神種


 

 とある世界で零が見つけた竜。何が切っ掛けかは不明だが、零の眷族となった。

 零の眷族になった事で、その身を竜から竜神へと進化させた。

 主である零には絶対の忠誠を示しているが、それ以外の者は敵であるらしい。ただし零が家族としている者には零と同じ様に接しているらしい。

 バハムート零式を巨大化させ、白銀にした様な姿をしている。

 強さはオーフィスより少し弱いくらいだが、この世界の神々よりは強い。


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EP66 ラグナロク(聖闘士逹の戦い)

 ~サガ・カノンside~

 

 

「では行くぞ、カノン!」

 

 

「あぁ、兄さん!」

 

 サガとカノンは互いに顔を見合わせると、その場から駆け出し、ミドガルムオルズに迫る。

 

 ミドガルムオルズはそれに気付くと、サガ達に向かいその炎を放つが、黄金聖闘士がそうも簡単に攻撃を受ける訳がない。

 

 サガとカノンは容易く炎を避けると、2人は一気に接近しその拳を叩きこんだ。2人の拳はミドガルムオルズの固い鱗を砕いた。

 

 

 《グガアァァァァァ!!》

 

 ミドガルムオルズは悲痛な叫びを上げ、サガ達を引き離す為にその巨大な躰を動かした。たった2人の人間に傷付けられた……それがミドガルムオルズには許せなかった。

 

 例え【終末の大龍(スリーピング・ドラゴン)】の模造品であるとしても、北欧神ロキの子である大龍が、世界の終焉の龍が、たかが人間2人に傷付けられた事は、ドラゴンのプライドが許さなかった。

 

 

 《グオォォォォォォ!!》

 

 ミドガルムオルズはサガに向かい突進し、その牙で噛み砕こうとする。

 

 

「フン!ヌオォォォォォォ!」

 

 サガは下の牙を足場し、何とか噛み砕かれないと踏みとどまっている。ミドガルムオルズの牙は神殺しのフェンリルの牙ほどの力はないが、それでも普通の天使や悪魔からすれば十分に脅威だ。

 

 常人を越える|黄金聖闘士とは言え、サガは人間………真面にこの牙を受ければ|黄金聖衣を装着していても無事では済まないだろう。

 

 

「ハアァァァァァァ!」

 

 カノンが横からミドガルムオルズの顔を殴り飛ばした。その衝撃で、ミドガルムオルズは口を開いたため、サガは解放された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事か、兄さん?」

 

 カノンは着地すると、直ぐに膝をついているサガの元に駆け寄る。

 

 

「あぁ……何とかな」

 

 

「なら早く、アイツを倒そう。一刻も早く終わらせ、アーシア殿逹の元に戻らねば」

 

 

「そうだな。王と邪神との戦いが始まる」

 

 カノンが手を差し伸べると、サガはそれを取り立ち上がった。その時、変化が起きた。サガとカノン、2人の身体から黄金のオーラ……小宇宙(コスモ)が溢れ出した。サガの小宇宙(コスモ)とカノンの小宇宙(コスモ)が互いに共鳴し合い、強大に膨れ上がる。

 

 双子座(ジェミニ)の黄金聖闘士は対となる双子であり、2人は代々いがみ合う運命であった。サガとカノンも同じ様に兄弟で在りながら、善と悪、光と闇と言った合わせ鏡の様な存在であった。だが女神(アテナ)の偉大な愛が、()の心が、彼等をその運命から解放した。

 

 そして今、2人は零の為に、世界を護る為に共に戦う。2人の小宇宙(コスモ)は燃え上がり続けている。

 

 

「「迸れ!我が小宇宙(コスモ)よ!うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」」

 

 2人の小宇宙(コスモ)が極限まで燃え上がり、黄金の小宇宙(コスモ)が2人を包み込んだ。

 

 光が止むと、そこには形状の変わった聖衣を纏ったサガとカノンがいた。これは神聖衣(ゴッド・クロス)……黄金聖衣が神の血を受け、限界まで小宇宙を燃やした時、一時的ではあるが神に近づける究極形態。

 

 

「終末の龍よ!聞くがいい!」

 

 

「星々が砕ける音を!」

 

 2人の周りに宇宙と星が広がり始めた。

 

 

「「【ギャラクシアン・エクスプロージョン!】」」

 

 2人の必殺技である、ギャラクシアン・エクスプロージョンが発動し星々の爆発のエネルギーがそのままミドガルムオルズに襲い掛かった。模造品の龍王とは言え、星々が砕ける程の大爆発を受けては跡形もなく吹き飛んだ。

 

 

「終わったか……童虎逹の方も戦いは直面を迎えている様だな」

 

 

「兄さん、戻った方が良さそうだぞ。もうすぐ王の戦いが始まる」

 

 

「そうするとしようか、カノン」

 

 2人は聖衣は既に黄金聖衣に戻っており、そう話し終わると互いに頷きアーシア達の方に向かい戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~シオン・童虎side~

 

 

「ハハハ!ほれほれワン公!こっちだ!こっち!」

 

 童虎はハティの牙を避けながら、そう挑発している。

 

 

 《グルルル!》

 

 

「童虎!あまり調子に乗ると痛い目をみるぞ!」

 

 

「ハハハ!大丈夫じゃ!流石に儂m《ドガッ!》ぐはっ?!」

 

 シオンがそう言うと、童虎がシオンの方を見た隙にハティが爪が襲った。

 

 

「っ~今のは効いたぞワン公」

 

 

「だから言ったのだ!お前は何時も何時も……」

 

 

「こんな時に説教は勘弁しろ……しかしあの牙、本当に厄介じゃのぅ」

 

 

「そしてあの爪もな……流石に神喰らいの狼、牙ほどではないが爪の殺傷能力も高いと見た。黄金聖衣と言えども神殺しにかかればそうなる訳か」

 

 童虎はシオンの手を借りながら立ち上がり、ハティの爪によりできた天秤座(ライブラ)の聖衣の傷を見た。黄金聖衣は聖衣の中でも最高位のものだ、それを傷付けるのは簡単ではない。それだけフェンリルの子であるハティに力があると言う事だろう。

 

 

 《ガアァァァァァァ!》

 

 

「【クリスタル・ウォール】!」

 

 シオンが透明な障壁を張り、襲ってきたハティの行く手を阻んだ。ハティはその牙と爪でクリスタル・ウォールを破壊しようとするが、そう簡単には壊れない様だ。

 

 

「ハアァァァァ!!」

 

 シオンが攻撃を防いでる間に、童虎はその身の小宇宙を爆発させて拳に収束させる。

 

 

「【廬山昇龍覇】!」

 

 拳を振り上げる、童虎の龍の形を模した小宇宙をハティの腹部に叩き込んだ。それによりハティは上空に吹き飛ばされた。

 

 

 《グルルルルル……》

 

 ハティは吹き飛ばされたが、何とか態勢を立て直し着地した。ハティは先程のことで童虎とシオンをかなり警戒しているのか、直ぐには攻撃を仕掛ける事は止めた様で、2人を睨みながら唸っている。

 

 

「むぅ……それなりに本気で放ったつもりじゃったが……」

 

 

「防御面でもそれなりと言う事だろう。本気で掛からねばまた痛手を負うぞ」

 

 

「そうじゃな。それにしてもこうしてお前と肩を並べて戦っておると昔を思い出すのぅ」

 

 

「フッ……確かにな。しかし今は昔を懐かしむより目の前の敵に専念しろ」

 

 2人は互いに横目で姿を確認すると、頷き、2人の身体から黄金の小宇宙が溢れだしている。どうやら小宇宙を高め始めている様だ。

 

 

「舞い上がれ!」

 

 

「唸れ!」

 

 

「「我が小宇宙(コスモ)よ!ハアァァァァァァァァ!」」

 

 黄金の小宇宙(コスモ)が眩い光となり、辺り一面を覆う。そして光が止むと、そこには神聖衣(ゴッド・クロス)を纏ったシオンと童虎が立っていた。

 

 

「フェンリルの子よ、我等が王の為に」

 

 

「地上の平和と愛の為に、此処で倒させて貰うぞ!」

 

 小宇宙は極限まで高めた2人は、自身の技を放つ為に構えをとった。

 

 

「【スターダスト・レボリューション】!」

 

 

「【廬山百龍覇】!」

 

 シオンの小宇宙が無数の光弾として、童虎の小宇宙が無数の龍として放たれた。ハティはそれを避けようと、動こうとするが、既に遅かった。攻撃が広範囲である為、避ける間もなくハティは光弾と龍に飲み込まれた。

 

 攻撃が止まり、光弾と龍が消えた時、そこにハティの姿は無かった。どうやら2人の攻撃により消し飛んだ様だ。

 

 

「取り敢えず終わったな」

 

 

「あぁ、サガ達の方も終わった様じゃな」

 

 

「もう直ぐ、王の戦いも始まる頃だ」

 

 

「ならば儂等はアーシア殿逹の元に戻るとするかの」

 

 2人の聖衣も黄金聖衣に戻っており、サガ達と同じ様にアーシア達の元に向かうのであった。

 




 神聖衣(ゴッド・クロス)

 聖衣の装着者の小宇宙が極限まで引き上げられること、神の血の2つが条件が揃った時になれる聖衣の究極状態。

 カノンの聖衣は零の作り出したレプリカであるが、同じ様に神聖衣化する事ができる。

 女神(アテナ)の血により、神聖衣となるのだが、此処に零の血も加えられているらしく、元々の神聖衣より格段に強化さてれいる。













 今回はサガや童虎達の話になりました。

 次回の話は黒歌・白音、零の召喚獣の話になると思います。


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EP67 ラグナロク【姉妹の戦い】

 色々と忙しく、久しぶりの更新になります。

 梅雨も明けてないのに、かなり気温も高くなってきました。

 暑いですが、できるだけ早く更新できるようにしていきたいと思いますので、これからも宜しくお願いします。

 ではどうぞ。 


 ~白音・黒歌side~

 

 白音と黒歌はフェンリルの子であるスコルと相対していた。白音と黒歌は猫耳と尻尾を出し、相対しているハティをジッと見ていた。

 

 

「白音、気を付けなさい。アレは神殺しよ、噛まれたらお陀仏よ」

 

 

「分かってます、姉様こそ気を付けて下さい」

 

 

「にゃ!?お姉ちゃんのこと心配してくれるの?!」

 

 

「まぁそれなりには………って抱き着かないで下さい!」

 

 心配してくれた事が嬉しかったのか、黒歌は白音に抱き着いている。白音はそれを引きはがそうとしているが、中々離れてくれない様だ。

 

 端から見ればじゃれ合っている姉妹にしか見えないが、それでもスコルは動こうとしない。いや正確には黒歌と白音に隙がないため、攻撃を仕掛けることが出来なかった。

 

 黒歌と白音は日本の猫又の中でも最強と言われる猫魈。特に黒歌は自然のエネルギーを扱う仙術に長けている。仙術をマスターした者は周囲の気の流れだけで敵の動きを読む事が可能となる。白音は未だに仙術は未熟であるが、その分、零から貰っている【ライガーゼロ】のサポートがある。

 

 

「御ふざけは此処までにして……そろそろ行こうかしら。なんかご主人様達の居る方からヤバい力を感じるし」

 

 

「危険です。アレに巻き込まれたら確実に死にますね」

 

 

「そうよね……まぁ取り敢えずはこの狼を倒してから考えましょう」

 

 

「はい……ライ、お願い」

 

 白音はそういい、自分の首輪に付いている紋章を握る。そして紋章から光が溢れだし、白音を包み込んだ。

 

 

「ライ、モード【パンツァー】」

 

 

 《ガアァァァァァァ!!!》

 

 光が止むと、濃い緑色の鎧、背には巨大なビーム砲、両肩・両脚部・尻尾の先にはミサイル・ポットと言った重火器が多数装備されている。

 

 

「姉様、私が援護します。これ重いんで早く終わらせて下さい」

 

 

「お姉ちゃんに任せるにゃ!」

 

 黒歌は嬉しそうにそう言うと、白音とは色違いの首輪を出した。その首輪にも【ライガーゼロ】の物と同じ様に、何かの紋章が付いている。しかし黒歌の首輪には黒い獅子の紋章、赤い虎の様な2つの紋章が付いている。

 

 

「久々の出番よ、【バンシィ】」

 

 黒歌は首輪を嵌めると、獅子の紋章が光り始め、黒歌を包み込んだ。光が止むと、黄金の1本角の兜、黒い鎧、右手にはビームマグナム、背には巨大な盾が装備されている。それはかつて零が纏ったユニコーンに酷似していた。

 

 零が纏っていたユニコーンは全身を覆う全身装甲(フル・スキン)だったが、黒歌の纏うバンシィは全身装甲(フル・スキン)ではなく頭や腹部・大腿部などの露出が多い、そして2本の尻尾はそのままで先には灰色の鈴が付いている。

 

 

「普段は仙術や魔法以外は使わないんだけど、でも相手が神殺しだと油断はできないのよね。だから頼んだわよ【バンシィ】」

 

 黒歌の纏ったバンシィの各部から黄金の光が溢れだし、ユニコーンの時のように変形……いや変身していく。

 

 バンシィ……零が以前に纏ったユニコーンガンダムとは兄弟機とも言える存在だ。各部が開き、最後に頭部の1本角が開き、真の姿を現した。

 

 

「ご主人様と違ってこの状態を長時間維持できないのよね………だから早く終わらせて貰うにゃ!」

 

 背に装備されたアームド・アーマーXCにマウントされたシールド型のアームド・アーマーDEのブースターが火を噴き、一気に加速した黒歌はスコルの真上に上昇した。

 

 

「喰らいなさい!」

 

 ビーム・マグナムをスコルに向け連射する。巨大なビームが襲い掛かる、しかしスコルはその俊敏さでビームを回避しながら近くの岩場に昇り、黒歌に襲い掛かった。

 

 

「させません。てぇー」

 

 

 《ガアァァァァァァ!!》

 

 白音が背に装備されているハイブリットキャノンを両手に装備し、両腰部にあるグレネード・ランチャーが展開、ライガーゼロの咆哮と共にそれらが一斉に放たれた。砲撃は黒歌に襲い掛かっていたスコルに直撃し吹き飛ばした。

 

 

「白音!お姉ちゃんのこと助けてくれたの!?ありg「(ガチャ)近付かないで下さい」OKにゃ、だからそんな物騒なもの向けないで欲しいわ」

 

 先程とは比べ物にならない速さで自分に抱き着こうとした黒歌にハイブリットキャノンを向ける白音。その威力を知っているため、黒歌は両手を上げて引き下がった。

 

 

「白音はもう少しお姉ちゃんと百合百合でもいいと思うにゃ。ツンも大切だけどデレも必要だと思うの、ツンデレはツンとデレの割合がたいs「それ以上言うなら頭吹き飛ばしますよ?」ぅう……なんで白音はお姉ちゃんにこんなに辛口なんだろう……昔はあんなに甘えてくれたのに」

 

 

 《ガオォォォォォ!》

 

 

「もう!折角姉妹の親交を深めていたのに邪魔しないでよ!」

 

 黒歌は襲ってきたスコルの牙を背に装備していたアームド・アーマーDEで防ぐ。フェンリルの子であるスコルの牙もまた神殺しの力を秘めている故に、破壊力は絶大だ。スコルの牙がアームド・アーマーDEにメキッメキッと音を立てて喰いこんでいく。

 

 

「クッ……流石にまずいわねっと!」

 

 黒歌はアームド・アーマーDEを手離し、右手に持つビーム・マグナムをスコルに向かって放った。

 

 

 《ガアァァァァ!!?》

 

 ビーム・マグナムの一撃により、スコルの堅牢な毛を焼きダメージを負った。スコルは地面に倒れもがいている。

 

 

「ふぅ流石に危なかったにゃん」

 

 

「油断し過ぎです……さっさと終わせないとご主人様の戦いに巻き込まれますよ?」

 

 

「そうねぇ……じゃさっさと終わらせましょう…にゃん!」

 

 黒歌が地面に手を付けると、地面に魔方陣が描かれそこから鎖の様な物が現れスコルを拘束した。そしてスコルは消えてしまった。

 

 

「捕まえたんですか?」

 

 

「折角の神殺しだしね……折角ご主人様に原初の魔狼封じ(グレイプニル)貰ったんだし、使いたいじゃない」

 

 

「そうですか……じy《アオォォォォン!》《グオオォォォ!》」

 

 黒歌と白音は2つの咆哮が聞こえてきた方向を見た。そこには白銀の竜と魔狼が互いに睨み合っていた。

 

 




・バンシィ

 以前零が使用したユニコーンの兄弟機であり、現在は黒歌が使用している。

 装備はビームマグナム、アームドアーマーXCと言ったバンシィ・ノルンがメイン。NT-D発動時はサイコフレームは金色に発光する。黒歌によるとNT-Dの使用は5分が限界の様だ。

 ユニコーンを使用した零は全身装甲であったが、黒歌の場合は露出部が多い。この理由は全身装甲にすると100%の力を使用することになるらしく、あえて装甲を減らす事で力を制限している。現在の黒歌が仕えるのは60%程度。それでも魔王クラスの敵で在れば対等に戦う事ができる。

 待機状態は黒歌の首輪に付く獅子の紋章。もう1つの虎の様な紋章は凶悪過ぎて簡単には使用できない。


・ライガーゼロ【パンツァー】

 ライガーゼロの形態の1つ。スピードと引換えに、絶大な装甲と火力を有する形態。装甲が超重量過ぎて、この形態だと歩く事しかできず、使用すると白音本人は翌日筋肉痛で動けなくなる。


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EP68 ラグナロク【獣達の戦い】

 ~冥界 荒野~

 

 この場にはラグナロクを起こそうとする邪神ロキ、それに相対する無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)であるオーフィスの力を宿した鎧を纏った零がいた。

 

 2人は未だ動いていない。だが、2人の神から放たれる神の力は周囲に広がり続けていた。2人から離れた場所では、白銀の竜と神殺しの魔狼が互いに睨み合っていた。

 

 更にそこから少し離れた場所では、サガやカノン、黒歌達が一誠やロスヴァイセ達と共に居た。サガやカノン達、黄金聖闘士はアーシア達の前に出ている。そしてその小宇宙(コスモ)を燃やし、周りの者達に護っていた。

 

 

 《グルルル………ガアォォォォォ!!!》

 

 

 《ガルルル………ワオォォォォォ!!!》

 

 零の眷族であるバハムート神式、ロキの子であるフェンリルが咆哮を上げ地を蹴り互いに接近する。フェンリルは地が抉れる程の力で飛び上がり、バハムート神式の首に噛みついた。

 

 

『バキッバキッ……メキィ……ブシュー』

 

 

 《グオォォォォォォォン!!!》

 

 フェンリルの牙が堅い白銀の鱗を割り砕きながら、肉に喰いこんだ。バハムート神式はその痛みで叫びを上げた。しかしバハムート神式もやられてばかりではなく、カッと目を開きその尾でフェンリルに叩きつけた。

 

 

 《ギャイン!》

 

 尾を叩きつけられた事で、フェンリルの噛み付く力が抜ける。バハムートはそれを逃さす、フェンリルを引き剥がし放り投げた。そのまま巨体を回し、尾を振り上げ叩き付ける。フェンリルは岩山を幾つも壊しながら吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その様子を見ていた一誠と匙はこう考えていた。「「何コレ、何処の怪獣大決戦?」」と。

 

 

「すっすげぇ……」

 

 

「まるで映画のシーンみたいだな」

 

 

「そうなのかにゃ?アレ位、普通じゃない?」

 

 と黒歌が一誠と匙の言葉に続いていった。

 

 

「というか……塔城さんのお姉さん、その恰好は?」

 

 バンシィを纏っている黒歌の姿を見て、一誠はそう聞いた。

 

 

「これかにゃ?これはバンシィ……ご主人様から頂いたのよ」

 

 そう言うと、黒歌はバンシィを解除した。

 

 

「白音とお揃いにゃん」

 

 そう言って抱き着こうとしたが、避けられた。

 

 

「ぁあん!酷いにゃん!白音!何で昔みたいに甘えてくれないの?!」

 

 

「姉様の日頃の行いを考えて下さい、学校にまで来て監視してたり『白音が虐められてないか心配で』お風呂を覗いて来たり『白音の成長を見守ってたにゃん』乱入してきて変な所触ってきたり『白音の成長具合を確かめてただけにゃん』ベッドに侵入して来たり『姉妹で寝るのは可笑しい事ではないと思うわ』理由もなく抱き着いて来たり、キスしてきたり『姉妹のスキンシップにゃん』………」

 

 

「「しっ姉妹で入浴……ベット、おさわり……おっと鼻血が」」

 

 白音を言った事で、妄想したのか鼻血を出している一誠と匙。

 

 

「一誠!」「匙!」

 

 当然の如く2人は頭には主であるリアスとソーナの鉄拳が振り下ろされた。

 

 

「全く!貴方って子は!」

 

 

「すいません部長!」

 

 

「匙……帰ったらお仕置きです」

 

 

「かっ会長…御許しを!」

 

 そんな事は聞き入れられないだろう。だが何故かリアスとソーナは同情の眼を白音に向けている。

 

 

「彼女も苦労してるのね……」

 

 

「えぇ……その苦労、良く分かります」

 

 リアスとソーナは何処を見てるのかは分からないが、遠い目をしている。彼女達が何故そう思うのかと言うと、魔王は……リアスの兄サーゼクス、ソーナの姉セラフォルーはバカが付くほどシスコンである。同じシスコンの姉を持つ白音の話を聞いて我が身に起きたことの様に思ったんだろう。

 

 

 《グオォォォォォォォ!》

 

 その咆哮を聞いて、皆は我に帰りバハムート達の方向を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ガアァァァァァァァ!!》

 

 吹き飛ばされたフェンリルはダメージが大きかったのか立ち上がろうとするが直ぐに崩れ落ちた。バハムート神式はフェンリルに追い打ちをかける為に、その翼を広げ大空に舞い上がった。

 

 

 《グオォォォォォォォ!》

 

 バハムート神式はその咢を大きく開き、凄まじい純度のエネルギーを収束させていく。

 

 伝説・神話に出る竜には共通して同じ力を持っている。幻想種の頂点に立つ竜が放つ力の奔流、赤い竜であれば炎、蒼い龍であれば氷などそれぞれの属性に合わせ放たれる。その一撃で街1つ、山1つが簡単に吹き飛ばす。

 

 その力の名は竜の息吹(ドラゴン・ブレス)。それは周囲に漂うマナと竜に宿る膨大な力を収束させ放つ最強の一撃とも言える。

 

 バハムートの本来の属性は闇・炎であるが、しかし原初の神獣へと昇華したバハムート神式の属性は光(聖)となっている。魔に属する獣であるフェンリルとは相対する属性。

 

 その膨大な竜の力とマナを収束させたバハムート神式は今、放とうとしている。

 

 

 《ガアァァァァァァァァ!!!神殺シヨ!主ハ違えド、主に仕エし獣としテ、最後マデ戦ッた汝に敬意ヲ示そウ!》

 

 バハムート神式は主は違えど己と同じく、主の為に命を賭して戦うフェンリルに敬意を示し己が最大の一撃を放つ。力を収束させたバハムート神式の身体は眩い光を放っていた。

 

 

 《【原初竜の息吹(ゼロ・フレア)】》

 

 眩い閃光が放たれた。それは一瞬の内にフェンリルを包み込んだ。そして着弾したと同時に辺りが白一色に染まった。

 

 一誠達は閃光で視界を奪われるが、回復しフェンリルのいた方を見る。そこにはフェンリルのいた場所を中心に巨大なクレーターを形成していた。

 

 

「【グオォォォォォォ!!】」

 

 バハムート神式は命を賭して戦ったフェンリルを弔う為に力の限り咆哮した。



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EP69 神対神

 ~冥界 荒野~

 

 この世界に終焉(ラグナロク)を齎す邪神ロキ。それに対するのは無限を纏う原初の神の子。

 

 周囲に満ちるのは神の力。その力は同じ神でなければ感じ取る事さえできない、故に先程リアス達がロキの力が消えたと勘違いしたのだ。

 

 

 

 

 その様子を遠く離れた場所から見ていた黒歌達。

 

 

「ッ……何と言う力」

 

 

「これだけ離れていても」

 

 

「今にも押し潰されそうだ」

 

 サガ達黄金聖闘士は零の力により実体化し、零の血を受けた黄金聖衣を纏っている為、神の圧倒的な力を身に感じ膝を地に着いた。

 

 黒歌と白音、アーシアも零の力を受けているため神の力を感じる事ができる。それ故かガクッガクッと膝を震わせている。バハムート神式はそれを見て、皆を自らの尾で囲む。

 

 

「あっありがとうございます、ドラゴンさん」

 

 

 《汝等……主ノ力もつ。主……認メし者……家族ニしか力ヲ渡サな位……なれバ我刃汝等を護ル。其処の蝙蝠共はついでダ》

 

 バハムート神式はそう言うと、主の方を真っ直ぐ見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて始めるとしようか」

 

無限(INFINITY)

 

 零は両方の篭手を衝突させると、手の甲の部分に嵌められている紫色の宝玉が輝きを放った。

 

 

「ムッ……ウロボロスの力か」

 

 

「コレが無限龍神の鎧(ウロボロス・ドラグメイル)、第1の能力……使用者の各ステータスを無限にする。時間制限は使用者によって変化する、因みに俺は強いので時間制限なんてないがな……後、鎧の音声はオーフィスだ」

 

 

「貴様……誰に向かって言っている?」

 

 

「音声はオーフィスだ!何故2回言ったか?重要だからに決まってるだろう」

 

 

「だから誰に向かって言っている!?」

 

 

「五月蠅いぞ。さて、行くぞ」

 

 ロキの言葉を無視してそう言うと、その場から消えた。

 

 

「!?」

 

 

「遅いよ」

 

 

「まさかこの私が後ろを取られるとは……ウロボロスの力を持つ以上は油断は禁物と言う事か」

 

 消えた零は後ろに居り、手を銃の形にしてロキの頭に向けていた。ロキは驚いていたが、直ぐに冷静さを取り戻し振り返る。

 

 

「何故撃たなかった?その力で在れば私を消し飛ばす事など簡単だったろうに」

 

 現在の零の力は無限。油断していたロキの頭なんて簡単に吹き飛ばせただろう。だが零はそれをしなかった。

 

 

「邪神ロキ、お前は本気を出していないだろう?」

 

 

「フッ……権能を使う神だけは在ると言う事か。ならば見せよう……私の本気を」

 

 ロキはゆっくりと零から離れる。すると先程までとは全く異なる力を放つ。先程までロキが放っていたのは純粋な神の力。しかし今放っているのは混沌とし、禍々しい力だ。

 

 ロキの身を黒い光が包み込み、光が止むとそこには漆黒の刺々しい鎧を纏い、その右手には金と黒の装飾の槍が握られていた。

 

 

「成程……それが邪神としての本来の姿か。そしてその手に在るのはオーディン()が持つ物と同じ魔槍」

 

 

「その通りだ、伝説の戦士よ。これこそはグングニル、オーディンの持つグングニルとは同じ存在であり相反する存在だがな」

 

 

「同じ…相反……成程……オーディン()は戦争と死、嵐を司る神。グングニルもまたオーディン()の同じ力を宿す、だがそれは危険過ぎて負の部分を切り離したか」

 

 

「ほぉ……先程の私の言葉からそこまで推理するとは……その答えは正解だ。オーディンは己が力と同調し、力を増した魔槍を畏れ、負の部分を切り離し、その半分を私が譲り受けた」

 

 オーディンは力を増したグングニルを何とかする為に、正と負に切り離した。ロキはグングニルの負の部分を手にしていた。

 

 またロキの現在の姿は本来の姿である。神には正と負……2つの顔を持っている。

 

 正の顔……人々に恩恵を与え、導き、正すと言う側面。負の顔……荒ぶり、人々に厄災を齎す側面。神はこの極端な二面性を持つが故に、畏れ、敬わなければならない。

 

 現在のロキはその負の部分を全面に出した状態とも言える、そこに破壊・厄災を齎す負のグングニルが加われば………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいねぇ……此処に来て蝙蝠共と戦う事はあっても、本気で神と戦う事はなかったからな。俺も少し本気を出せる!さぁ、神話の再現の始りだぁ!【ソウルコード・・・・・】」

 

 零はソウルコードを発動させる、名称は聞こえなかったが両手に紅い槍が現れた。

 

 

「面白い!神々の黄昏(ラグナロク)の前戯としては十分すぎる!」

 

 零とロキは光に包まれると、そのまま衝突した。2人が衝突した瞬間、波紋の様な物が広がった。

 

 

「ウラァァァァァァァ!」

 

 

「ハアァァァァァァァ!」

 

 零、そしてロキの槍が衝突する度に波紋の様な物が広がり続けている。

 

 

「ハハハハハハハハ!そらっ!そらっ!そらっそらぁぁぁぁぁ!」

 

 

「フン!セヤァ!ウオォォォォォォォ!」

 

 零は笑いながら2本の槍を突きだし、ロキは右手のグングニルと左手の盾で槍を捌いていた。しかし零の槍を繰り出す速さが徐々にではあるがロキを圧してきている。紅い槍の切っ先がロキの身体を掠り始めた。

 

 零が大きく槍を突きだした時に、ロキはそれを避け零の背を踏み台にしてその場から距離を取った。

 

 

「グッ……背中、思いっきり蹴りやg……ッ!危ねぇ!」

 

 零が振り返ると、ロキが自分に見てグングニルの矛先を向けており、グングニルから放たれている黒い雷を見て直ぐにその場から離れた。次の瞬間にグングニルから黒い閃光が放たれた。零は回避したので何ともないが、黒い閃光は彼方に消え、数秒後には大爆発を起こした。

 

 

「流石は神槍……しかも権能があるから、質が悪い。ぁ~あ、あの爆発した場所今後数百年、草1本も生えねえぞ」

 

 

「問題はない。貴様を倒し神々の黄昏(ラグナロク)を起こせばその様な事、小さな事に過ぎない」

 

 

「世界崩壊となりゃ小さな事だな………まぁさせるつもりはないがな」

 

 ロキはそれを聞くと、グングニルの矛先を下げた。零はその行動に首を傾げた。

 

 

「何のつもりだ?」

 

 

「少し聞きたい事がある。何故そこまで世界を守ろうとする?」

 

 

「はぁ?」

 

 

「人間は神への信仰を忘れ、自然を汚し、他の種族を狩り尽くし、自分達の事しか考えていない。神々も神々で人間に地上を与え、それを見て、弄ぶ。それに加え悪魔共は自分達が生き残る事しか考えていない。愚か者だかりだ……この様な醜い世界、総て一からやり直そうとは考えた事はないか、伝説の戦士よ?」

 

 人間は自分達の利益の為に、自然を破壊し、動物を狩り幾つもの種を滅ぼした。そして自分達を救わない神を捨て、自分達が生み出した科学を発達させた。

 

 一部の神を除いて、殆どの神は人間を見下し、玩具の様にしか思っていない。悪魔は自分達が生き残る為に他種族を無理矢理にでも眷族悪魔にするという暴挙を行っている。

 

 ロキが今の世界を滅ぼそうとするのも分からなくはない。

 

 

「フム……お前の言う事も分からなくはない………だが母様の庭を荒らさせる訳にはいかん。俺的には人間がどうなろうが、神・悪魔がどうなろうが知った事ではないが、どんな世界であろうと可愛いものはある!可愛いは正義!可愛いは理!可愛いものがある限り、俺は世界を護る!」

 

 

「「「「「…………………………」」」」」

 

 これには一同、沈黙してしまった。零としては、可愛いものがあるかどうかが重要という事らしい。もし可愛いものがなければ世界はどうなっているのやら。

 

 

「世界には未だ可愛いものが溢れている!可愛いを護る為にも此処で倒させて貰うぞ!」

 

 零は両手に持つ槍を回し、構えを取った。

 

 

『全くアホらしい理由よのぅ……お主の戦う理由は』

 

 

「ハハハ!重要なことだ!行くぜぇ………『刺し穿ち、突き穿つ!』」

 

 零はその場から一気にロキの元に翔けると、2本の紅い槍をロキの突き刺し凄まじい速度で空へと舞い上がった。

 

 

「ヌオォォォォォォォォォォ!こっこれは!!?」

 

 穿たれたロキは何かに拘束された様に動けなくなった。それを確認した零は地上に降りると再び槍を出現させ、槍に力を注ぐと巨大な光の槍となった。

 

 

「【貫き穿つ死翔の槍(ゲイボルグ・オルタナティブ)!】」

 

 ゲイボルグ……ケルトの英雄クーフーリンの持つ魔槍。その力は心臓を穿つと言う結果を決定付けてから槍を放つ因果逆転の力。発動し放てば余程の事がない限り回避が不可能である。

 

 零が放った貫き穿つ死翔の槍(ゲイボルグ・オルタナティブ)はクーフーリンの師匠……影の国の女王・スカサハが使用する槍。そしてスカサハは戦いの果てに神さえも殺す力を手に入れた。

 

 その深紅に輝く神殺しの槍が邪神の身体を貫いた。




・無限龍神の鎧【ウロボロス・ドラグメイル】

 零とオーフィスの絆の力。漆黒の装甲、両肩・両手・胸に紫色の宝玉が嵌め込められている。胸の宝玉には∞の印が浮かんでいる。両腕にはハーケンが装備されている。

 第1能力【無限の解放】:両手の甲の宝玉を近づける事で『INFINITY』の音声と共に使用者の体力・魔力など各ステータスを無限にする。時間制限は使用者によって異なるが、零の場合は制限時間は存在しない。

 第2能力【無限の暴食】:両腕に装備されている蛇に模したハーケンが対象に喰い付き『EAT』の音声と共に発動する。対象の体力・能力・魔力を奪う。一度強奪された力は使用者が返還する気がない限り、戻る事はない。

 第3能力【無限の寵愛】:両腕の蛇を模したハーケンが対象に触れ『TRANSFER』の音声と共に発動し、一時的に自分の力を分け与える無限の暴食とは正反対の能力。また赤龍帝の贈り物と同じ能力であるが、無限の寵愛は対象の力を無限にする事も可能である。

 以上3つの能力が存在するが、現在は【無限の解放】しか出て来ていない。音声はオーフィスである(零にとっては最も重要)。使用中もオーフィスの意志は存在し、会話も可能。

 更に未だ奥の手があるらしいが現在は不明。








・ソウルコード【スカサハ】

 クーフーリンの師匠である『影の国の女王・門番』・スカサハとの絆による力。今回はスカサハの槍のみを限定解放した。

 限定解放した状態でもスカサハの各種能力を使用可能、また複数の槍を召喚する事もできる。











・神の正と負

 神々には正と負の2つの顔があり、人間が語り継ぐのは殆ど慈愛などに満ちた正の側面。その反面、時に罰を与え、厄災を齎す負の側面も持つ。

 今回、ロキが負の側面を解放し完全な邪神となった。



・邪神ロキ

 【火】【ラグナロク(終焉)を呼ぶ】という権能を持つ北欧の神。

 ロキが完全な邪神と化し、力を解放した時に見せたのは神の鎧とグングニル(負)。イメージは黄金魂のロキが纏っていた漆黒の鎧とグングニル。

 グングニルはオーディンの持つ物と同じ物であり、グングニルの負の側面を切り離した物。【死】【滅び】という権能を宿している。発動時は黒い雷を放つ。

 ロキの鎧の防御力は魔王が全力攻撃をしないと傷付けられない程のレベル。


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EP70 和解、そして現れるのは……

 ~ロキside~

 

 零の深紅の槍に貫かれたロキは、地に落ちた。槍によりロキの身体は地面に縫い付けられている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 身体が動かない。私は地に落ち、指一本動かすことが出来ない。恐らく先程の槍…神殺しの力があるのだろう。

 

 二天龍を倒したと言う伝説があるにしても、所詮は東方の島国の神かと思っていたが……ウロボロスを手懐けただけはあるということか……凄まじい力であった………それに神で在りながら何処か人間の様な奴だ。

 

 私はこのまま死ぬのだろうか?死か……死は怖いな。フッ………邪神と畏れられ、世界を破滅に導く私が死を恐怖するとは可笑しなものだ。

 

 神々の黄昏(ラグナロク)を行う前戯に天使や悪魔共と遊ぶつもりであったが、まさかあの様な者と戦う事になるとは……神々の黄昏(ラグナロク)を行うに当たり、相応しい戦いであった。あの様に心躍る戦いをしたのは……神話の時代以来か。

 

 神話の時代より、世界を滅ぼそうとする魔や邪神は英雄に撃たれて滅ぶるのが運命か……。

 

 

 

 

 

 

 ロキの意識が段々と遠のき、襲い来る【死】を受け入れようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、起きろ。死なれては困る、オーディン()が五月蠅いからな」

 

 声と共にロキは顔面に冷たい何かが襲う。

 

 

「ぐほっ?!ゲホッゲホッ!」

 

 冷たい何かの性で、身体を起こしロキは咽る。

 

 

「なっなんだ!?何事だ!?……身体の痛みがない?傷も…」

 

 ロキは痛みがない事に疑問に思い、槍に貫かれた場所を自分の手で触れてみた。だがそこに槍で開けられたはずの穴が消えていた。ロキが顔を上げると、中身のない瓶を持った零が居た。

 

 

「ふぅ……死ぬ前でよかった。神を死んでから甦らせるのは面倒だからな」

 

 

「何をした?」

 

 

「死にかけてたのに何で生きてるかって?この【エリクサー】をぶっかけてやったんだ、泣いて感謝しろ」

 

 零がそう言って【エリクサー】の入っていた瓶を投げると、瓶は何処かに消えてしまった。エリクサーとは錬金術で不老不死を与えると言う伝説の霊薬だ。だが零の使った物は体力・魔力を完全に回復する希少アイテムである。

 

 

「何故助けた?あのまま放って置けば、私は確実に死んでいた!私が居なくなれば神々の黄昏(ラグナロク)は起きなくなる、なのに何故!?」

 

 

「封印するのと、消滅させるの全く違うからな。例え邪神とは言え、この世界の神……居なくなればそれだけで世界にどの様な影響が出るか分かったものではないからな」

 

 神とは言わば、世界そのものとも言える存在。故に信仰が失われ神が消えると言う事は、神秘が失われると言う事であり、星そのものが死すると言う事だ。零にとって現在の神話体系のバランスが崩れるのは困った事になる。とても重要な理由が……。

 

 

「これ以上、神話体系のバランスが崩れると地球の方にも影響でるし……人間にも影響が出るだろう。神話同士の戦争なんて起きてみろ、罪のない人々が巻き込まれる可能性もあるだろう」

 

 零は慈愛に満ちた表情でそう言った。流石は神という所だろう。

 

 

「まぁこれ以上問題増えたら、オーフィスや白音達を愛でる時間が削られるから勘弁してほしいものだぜ」

 

 先程とは一変し、溜息を吐きながら言い放った。どうやらこっちの方が本音の様だ。零の纏う無限龍神の鎧(ウロボロス・ドラグメイル)が光り出すと消えた。その代わりに零の背にオーフィスが引っ付いていた。

 

 

「さて……邪神ロキ、敗者は勝者に従うものだよな?」

 

 

「……フッ、そうだな。敗者は勝者に従うものだ」

 

 

「ならラグナロクは中止して貰う」

 

 

「……いいだろう。我が悲願ではあるが……神聖な決闘でついた結果だ、私は大人しく従おう」

 

 ロキはどうやら、これ以上戦いを続けるつもりはない様だ。

 

 

「それともう1つ……アレ、お前の仕業か?」

 

 零が指さした方向には、先程の戦いでロキが使用していたグングニルが地面に突き刺さっており途轍もなく異様な気配を放ち、矛先から泥の様な黒い液体が留めなく溢れていた。

 

 

「いっいや……こんな事、初めてだ。こんな事は今までなかったぞ、それになんだこの異様な力は……」

 

 ロキもグングニルに何が起きているのか分からなかった。

 

 

「………ぁ~……何か覚えのある様な気配。俺の予想が外れていれば嬉しんだけどなぁ~」

 

 零がグングニルの放つ気配に覚えが在ったのか露骨に嫌な顔をしている。

 

 

「ロキ……1つ聞きたいんだが、赤い髪、青と緑の瞳のクソあ……コホン、女に見覚えってないか?」

 

 

「赤髪、青と赤のオッドアイ?……そう言えばそんな女が数年前に現れたな。突然に……それで戦いを挑んできたが、グングニルの一刺しで滅ぼしたがな」

 

 どうやら零の言う女は、数年前にロキの前に現れていた様だ。

 

 

「あの女……勝手にこの世界に……チッ……オーフィス、アーシア達の元に行ってくれ」

 

 オーフィスは零が真剣な表情をしていたので、頷くとアーシア達の元に向かった。

 

 

「おい、伝説の『零だ、零』…零、アレはなんだ?」

 

 

「あぁ……心当たりが在り過ぎて困る……ふぅ」

 

 零は溜息を吐くと、怠そうに立ち上がり深呼吸するとグングニルを睨む。するとグングニルから溢れている泥が人の形に変わり、その色を段々と変えていき、赤髪、青・緑の瞳の女性へと姿を変えた。それは零が先程言っていた女性の風貌と同じであった。女性は虚ろな目であったが、零の姿を捉えるとニコリと笑みを浮かべた。

 

 

「フフフ……御久しぶりですわ。偉大なる御方」

 

 

「喋りかけるな、疾くとこの世界から去れ。母様には黙っておいてやる」

 

 

「嫌ですわ、私は貴方様に会う為に禁を破って来たのに」

 

 

「俺は貴様なんぞに会いたくないんだがな、このクソアマ」

 

 零は純粋な殺気を女性に向け放っている。その殺気を受けると、女性はその身を震わせる。

 

 

「ッ~~~~ぁ~偉大なる御身からの純粋な殺気……素晴らしいですわ、ァア殺気だけで下着が拙い事になってますわ」

 

 ゾクッゾクッと身を震わせながら恍惚のポーズをしている。零は一誠やヴァーリを見る様な変態を見る眼で女性を見ている。

 

 

「全くもって……不愉快だ。貴様の存在が、そこに在ると言うだけで腸が煮えくり返る。俺の前から消えろ……いや存在そのものをあらゆる世界から消すぞ、塵芥」

 

 零が今までにない程、怒りを顕にしている。それに加え、睨んでいる眼には女性に向けてのハッキリとした憎しみが宿っていた。女性はそれを受けて歓喜していた。どうやら零から自分に向けられる物は何であれ彼女にとって喜びの様だ。

 

 

「ぁあ貴方様から言葉……それがどの様な内容であれ、私に向けられた言葉。そんなにも私を愛して下さっているのですね」

 

 

「ふざけるな。俺は貴様の事なんぞ、唯の1度も思った事などない」

 

 

「………私を愛していないと仰ったのですか?私の聞き間違いでしょうか?」

 

 歓喜していた女性はピタリと動きを止め、無表情となり首を傾げた。

 

 

「何度でも言ってやる。過去・現在・未来、どの様な世界でもこの我が貴様を思う事など絶対にない。いいか、絶対にだ!」

 

 

「ふっ………フフフ、ありえません。ぁあそうですか……そうなんですね。あそこに居るゴミ共に毒されているのですね」

 

 女性はオーフィスやアーシア達の居る方を見てそう呟いた。

 

 

「アイツ等は関係ない……唯一貴様に向ける感情と言えば……『我が友を殺した貴様を【憎んでいる】』と言った所か」

 

 

「友?………ぁあ…貴方に纏わりつき、媚びる事しかしなかった人間にも劣る汚らわしい獣の事ですか?」

 

『ブチッ』と何かが切れる音と共に、辺りの総てが凍て付かせる様な恐怖……いや神の怒りが放たれた。過去にレイナーレやリアスに向けた殺気・怒りなどとは比べ物にならない物だ。そして零の身体から闇が放たれ、【半身】が出現した

 

 

「【殺す】」

 

 零と【半身】の声が重なり、神言を言い放つ。




・登場アイテム

:エリクサー

 
 様々な世界で伝説などに出現する希少アイテム。錬金術では不老不死を得られる霊薬と言われているが、零の所有する物は飲んだ者の【体力・魔力(神力)等を完全に回復させる】と言うもの。

 零が使用した物は、自分で作った物で神にも効果がある。


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EP71 神々の戦い

 -我、無より出でし万物を創造せし者―

 

【我、無より出でし万物を破壊せし者】

 

 

 ―創造により、無より万物を産み、命をある者達に恵みを与えよう―

 

【破壊により、万物を壊し、命ある者総てを無へと帰そう】

 

 

 ―総ては無より出で―

 

【無に還る】

 

 

 ―2つに別れし、我等が心―

 

【たった1つの目的の為に】

 

 

 ―【我が友を殺した、愚神を滅ぼす為に……我等は今、1つに戻らん】―

 

 2人の零の神言が終わった後、自分達の身体を光と闇に変換し、それらが混ざってゆく。光と闇は人の形となり、元の零に戻り目を閉じたまま立っている。髪が伸びているがそれ以外何も変化していない様に思える…しかし身にから出る力の質が変化していた。

 

 女性はそれを見ると、全身を震わせている。それは恐怖からではない。

 

 

「フフフ……アハハハハハハハ!私の為にその御姿に戻られるなんて、嬉しいですわ!アハハハハ!良いでしょう、貴方様から毒を消し去る為に心苦しいですが少し痛い目をみて貰いましょう」

 

 女性から黒い泥が溢れると、身体を包み込み鎧と化した。その手にはロキのグングニルが握られている。

 

 

「さぁ、殺し合い(愛し合い)ましょう!愛しき、零様!」

 

 

「黙れ……戦と愛を司る女神【ルシュカス】」

 

 零がそう呟いた瞬間、ルシュカスは身体を硬直させた。そして零が瞳を開くと、右の白目が黒く染まっており、全身に紅と蒼の2色で紋様が浮かび上がる。

 

 

「貴様の甲高い笑い声は耳につく……貴様の声を聞く度に、姿を見る度に我は気が狂いそうになる。何時か消してやろうと思っていたが……今此処で消してやろう。安心しろ、【戦】と【愛】の権能は他の誰かに譲渡してやる。貴様以上に相応しい誰かにな」

 

 

「私以上に美しく、戦いと愛を知る女神がいるとお思いですか?」

 

 

「探せばいるだろうさ……まぁこれから滅ぶ貴様には関係ない話だが……貴様との話はこれまでだ。後は殺し合いだ……『大いなる母神よ、姉神よ、我が身を戒める鎖を解き放ち給え』」

 

 そう呟いた瞬間、空を覆う暗雲を裂き暖かな太陽の光と月の光が零を照らす。照らされた零の手足には、白い鎖と黒い鎖が巻かれている。その鎖は光に照らされた場所にだけ見える様だ、光が当たらない場所には見えてない。空から差す光が一層強くなると、鎖が音を立てて砕ける。

 

 

「【陽神の戒め】【月神の戒め】……原初世界の神の間でも禁忌とされる封印術。どちらかだけでも神を封じる事のできると言われる戒めを2つも受けるなんて正気とは思えませんわ」

 

 ルシュカスの言葉を無視しながら、零は自分の身体を確認する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~アーシア達side~

 

 

 謎の女性ルシュカスの出現で混乱しているアーシアやリアス達。その中で、オーフィス、黒歌、白音、サガ達黄金聖闘士(ゴールドセイント)、バハムート神式はルシュカスを警戒していた。

 

 

「「フッーーー!!!」」

 

 黒歌と白音に至っては全身の毛と尾を逆立たせて威嚇している。

 

 

「アレは異質な者………母に近い性質の力を持つ。でも異質過ぎる……それに零、何時もの零じゃない」

 

 

【グルルルルルルルル……アの女狐……法を破りコノ世界に来た華】

 

 オーフィスとバハムート神式がルシュカスを見ながらそう呟いた。

 

 

「あっあのドラゴンさん、あの人は一体……」

 

 アーシアがバハムート神式に尋ねる。

 

 

【アノ女狐……原初世界ノ戦と愛を司ル女神。主の友ヲ奪っタらしイ。詳シくは知らヌが……あの女ハ力を持つ……危険……あの女ハ幾つ物世界を滅ぼシた。原初世界でモ禁を破り投獄さレた筈……そレよりも……逃げルゾ】

 

 

「「「えっ?」」」

 

 バハムート神式の発言に驚いている全員。普通であれば助けにいこうと言う場面であるが、逃げようと言いだした。

 

 

【恐らク、これカら主は神殺シの力を使ウ。そうなれバ、我等は邪魔とナる】

 

 

「神殺し?それって神様を殺すってことか?」

 

 一誠がそう言うと、バハムート神式は頷く。

 

 

【神殺しハ凄まじイ。発動ノ余波だケで世界をコワスこともできる】

 

 

「何ですって?!」

 

 

「そっそんな!?ではこの冥界はどうなるのですか!?」

 

 バハムート神式の言葉にリアスやソーナは驚いている。バハムート神式の鋭い視線が2人を貫く。

 

 

【知らン。以前ハ主ガあノ女狐を殺そウとした時ハ宇宙ガ10程消えた】

 

 

「うっ宇宙が消えた?」

 

 

「カカカ!懐かしいのぅ……」

 

 バハムート神式の言葉に唖然としている皆は後ろから聞こえてきた笑い声で振り返る。

 

 

「おっオーディン様?!」

 

 やって来たのは北欧の最高神オーディンだった。肩には巨大なハンマーを担いでいた。

 

 

「ご苦労じゃったのぅ、ロスヴァイセ。それにバハムート神式も久しいのぅ」

 

 

【ド変態エロ爺】

 

 

「おい!いきなり何を言うんじゃ!」

 

 

【どウでもいイ。それよりも遅かっタな…主はもうアレを使うゾ】

 

 

「むぅ……確かに少し遅かった様じゃ」

 

 オーディンの言葉に皆が零の方を向いた。

 

 

 

 

 ~side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「問題ないか……さて、神殺しをするには相応しい武器を出すとしよう」

 

 零が右手を横に伸ばすと、空間が歪み白い大剣が姿を現した。零はそれを握ると、軽く振るう。

 

 

「さてと……」

 

 

「えっ?」

 

 ルシュカスの視界に映る零の姿にノイズが入る。それは一瞬で在ったが、先程までとは違っていた。零の手には白い腕が握られていたのだ。ルシュカスは自分の左腕を見ると、そこには在る筈の腕が肘より下がなかった。つまり零の握っている腕はルシュカスの物だ。

 

 

「ッッーーー!!!まさか私の腕を一瞬で!?」

 

 

「貴様の様に普段から怠けていないんでな。汚い」

 

 ルシュカスは痛みにより、右手で左腕を押さえ膝を着いた。零は持っていたルシュカスの腕を放り投げた。

 

 

「痛みなんて気にしている場合か?」

 

 

「どういう……!?」

 

 ルシュカスは零が放り投げた自分の腕が黒く変色している事に気付いた。そして自分の斬られた腕の方に目をやると、切り口から黒い何かが自分を浸食し始めていることに気付く。そして本能的にルシュカスは自分の残りの腕をグングニルの刃で斬り落とした。

 

 

「その武器……いや神器はまさか………まさか…ありえません!それは我等が最高神であるあの方々でさえ触れる事すらできなかった、神殺しの神器!」

 

 

「だろうな。母様や姉上、武神である叔父上でさえも此奴に触れる事さえできなかった。此奴自身が拒否していたからな。忌み嫌われた者同士、気が合ったんだろうさ」

 

 

「……忌み嫌われた?貴方様が?その様なことはありません、少なくとも私はそのようなことした事ありません」

 

 

「フン、自分の都合の良い様に記憶の改竄してやがる……貴様がどう改竄しようが、貴様が我が友を殺した事実は変わらん。」

 

 

「またあの様な汚らわしい獣ことを言われるなんて……私の愛で貴方を満たして、あの獣の事など忘れさせて差し上げますわ!」

 

 膝を着いた状態から、グングニルを掴み一気に零の元に駆け、槍を突きだした。だが零はそれを避け、大剣で振り払う。

 

 

「ちょこまかと!」

 

 

「アハハハハハハハ!楽しい!楽しいですわ!」

 

 零の大剣とルシュカスの持つグングニルが衝突し火花を散らせる。どちらも一歩も退かず、剣と槍を繰り出し続ける。常人の目でみれば、何が起きているのか分からないだろう。

 

 

「もっと!もっと!もっと!殺し合い(愛し合い)ましょう!零様!アハハハハハハハハハ」

 

 ルシュカスは狂気に満ちた笑みを浮かべながらグングニルを突きだし続ける。零は無言のまま大剣で槍を捌き続けるが、既に次にどう動くかは決めていた。ルシュカスは片手とは思えない槍捌きでグングニルを振るい、続けている。

 

 

「貰いましたわ!」

 

 凄まじい攻防の中でルシュカスは一瞬の隙を見出し、グングニルを突き出した。そしてグングニルの矛先は零の左肩を貫いた。

 

 

「フフフ……痛いですか?痛いですか?痛いですよねぇ?貴方様の苦痛の声、聞かせて下さいよぅ……貴方様の苦痛も、喜びも、怒りも、憎しみも、妬みも、愛も、ぜーんぶ私の物なんですから」

 

 ルシュカスは零の肩を貫いたグングニルを捻じる。零は下を俯いている。

 

 

「フン、戦神が情により戦いを忘れたか」

 

 

「何を?……はっ!この状況は!?あの時の!」

 

 ルシュカスは笑みを浮かべている零を見て、直ぐにグングニルを抜こうとするが零は左手でそれを掴む。逃げるのであればグングニルを離せばいいのだが、ルシュカスはそれしなかった。

 

 

「ククク……どりゃぁぁぁぁぁ!」

 

 零は右手に持つ大剣でルシュカスの左脚を斬る。

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ!(このままでは、神殺しの力が……しかし槍を……言ってる場合ではないか)」

 

 黒く染まり始めた自分の左脚を見ると、直ぐにグングニルを手離し零から離れた。そして左腕の時と同じ様に自ら切り落とそうとするが、既にグングニルはない為、無事である右手に力を込め左脚を手刀で斬り落とした。斬り落とした脚は黒く染まり塵へと変わった。

 

 

「一瞬で良くも判断したものだ。腐っても戦神か」

 

 零は掴んでいたグングニルを無理矢理引き抜くと、放り投げた。

 

 

「原初世界の神殺し……本当に厄介ですわね」

 

 左の手足を失い、立つ事がままならない為に宙に浮いているルシュカス。そして忌々しそうに零の持つ大剣を睨む。

 

 

「惨めな姿だな下郎。どうだ?悔しいか?痛いか?我が友の受けた屈辱は、苦しみ・痛みから比べれば塵の様なものだがな」

 

 

「フフフ……嬉しいですわ、貴方が本気で私を殺しに来てくれているのです。今、この瞬間貴方様は私の事だけを考えている。貴方様が私で満たされていると考えると……ぁぁぁぁぁああああ…濡れてしまいます。はぁぁぁ……でも今は戦いの最中ですし自粛しましょう」

 

 ルシュカスはそう言うと、斬った手足の断面から黒い泥が溢れ手足を再生した。そしてルシュカスは何処からともなく巨大な鎌を取り出し構えを取る。

 

 

「もっと!もっと!楽しみましょう!」

 

 

(やはりあの身体………だろうと思ったが、まぁいい。あっちの方は爺に任せるとしよう。我はその間、目の前の下郎を傷めつけるとしよう、生きている事が嫌になるくらいにな)

 

 零は純粋な怒りと殺意で、ルシュカスは歪んだ愛をもって再び殺し合いを開始する。

 

 




 ~人物紹介~

 名前:ルシュカス

 性別:女性

 年齢:???

 種族:原初世界の【戦】と【愛】を司る神

 出身地:???

 家族:母

 容姿:赤い髪、青と緑のオッドアイの美女

 好きな物:戦い、スイーツ、零

 嫌いな物:零に近付く存在

 神力:?

 攻撃力:?

 防御力:?

 突然、ロキのグングニルより溢れた泥から出現した女性。零の事を盲目的に愛しているので、零に近付く存在は一部を除いて気に喰わない。つまりヤンデレある。

 しかし過去に零の友の死の原因であるため、憎しみを向けられている。それすら彼女にとっては喜びに感じるらしい。零を溺愛する天照や月読達からも毛嫌いされており、力を使って存在ごと消そうとしていたが、立場上私情で神を消す訳にもいかなかった為に極力、零と接触させる機会を断たせていた(零自身に殺させない為でもある)。

 戦闘時には禍々しい鎧と巨大な鎌を使って敵の首を刈り取る。その姿は戦と愛を司る女神と言うより死神にしか見えない。

 戦闘力は零と同等と言っていいほどのもので、バハムート神式によれば零が以前彼女と戦った時には10の宇宙が消滅したらしい。





 ~武器紹介~

名称:???

種類:対神

ランク:計測不能


 原初世界の最高神である天照達でさえ触れる事さえ出来ず、禁忌として厳重に封印されていた【神殺し】。巨大な大剣の形状をしており、刃はチェーンソーになっている。

 零曰く「忌み嫌われた者同士、気が合ったんだろう」との事で現在は零が所有しており、主の意思で世界を越えて飛来する。主以外が触れると、剣に支配され眼に映る物を全て破壊する事になる。

 斬られた対象は生物であろうが、惑星であろうが、宇宙であろうが、世界であろうが黒く侵食され存在ごと消滅する。ルシュカスもそれを知っていたので、斬られた腕と足を切り落とした。


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EP72 赤龍帝、覚醒。一誠はやっぱり一誠だった。

 ~オーディンside~

 

 

「拙いのぅ」

 

 再び開始した零とルシュカスの戦いを見て、大神オーディンはそう呟いた。

 

 

「どういう事ですか、オーディン様?」

 

 朱乃はオーディンにそう尋ねた。彼等には一体何が起きているのか、理解できないまま放置されていた。

 

 

「このままでは本当にこの冥界が崩壊するぞぃ……零も怒りで我を忘れておるし、もしかしたら冥界だけでなく世界の崩壊も在り得るかも知れん(しかし、まだ理性は完全には飛んでおらんのぅ。前に比べれば冷静かの)」

 

 

「そっそんな……そんな事させる訳には」

 

 リアスやソーナ、一誠達が考えたのは、家族の事だった。そして学園での日々のこと、大切な日常のこと。そしてリアス達は無意識の内に身体が動いていた、何とかして零達を止めようする為に。

 

 

「止めい!」

 

 オーディンの声がリアス達を正気に戻し、リアス達は動きを止める。

 

 

「お主達が行っても邪魔になるだけじゃ……神でないお主等では結界から出たらそれだけで死ぬぞ」

 

 リアス達はオーディンが結界を張っている事に初めて気付いた。

 

 

「ッ……ですがこのままでは冥界が」

 

 

「まぁそれについては、零も考えておるんじゃろう。赤龍帝の小僧」

 

 

「えっ……俺?」

 

 

「儂はこの場に結界を張ってるから動けんからのぅ、このミョルニルでそこに突き刺さって居るロキのグングニルを封印せい。そうすれば奴は消えるじゃろう」

 

 そう言いオーディンは担いでいたミョルニルを地面に起き、零が放り投げたルシュカルが使用していたグングニルを指差す。しかし何故、一誠なのだろうか?

 

 

「なんで俺?」

 

 

「儂を除いて、この中でミョルニルを使えるのはお主くらいじゃろうからな。確か……禁手(バランス・ブレイカー)とやらならミョルニルを使える筈じゃ」

 

 

「でもそれなら、そっちの鎧の人達の方がいいんじゃ」

 

 

「こやつ等にはもしもの時の為に此処に残って貰わねばならん」

 

 一誠が言ったのはカノンやサガ達、黄金聖闘士ことだ。しかしルシュカスが万が一此方に来た場合はオーディンが対処する必要がある。そうなればアーシア達を護るのが難しくなるのでサガ達は此処で待機させておきたいのだろう。

 

 

「でも俺……完全な禁手(バランス・ブレイカ―)できないんだけど」

 

 

「なんと?」

 

 

「至る寸前で、何かが足りなくてできないってドライグに言われてるんだけど……何が足りないのか俺にも分からなくて」

 

 

「むぅ……困ったのう。完全な禁手に至っておらんと、此奴は使えん」

 

 ミョルニル、それは北欧神話の戦神トールの持つ大槌。伸縮自在のあらゆる物を打ち砕く槌。それを使うのは生半可な力では不可能、神または神に近い者でないと持ち上げる事さえできない。

 

 オーディンの見立てなら、完全な禁手の一誠ならばミョルニルを完全に使う事は出来なくても振るう事は可能なのだろう。だが一誠は完全な禁手に至っていない、もう少しで至れそうなのだが何かが足りない。

 

 禁手は神器が所有者と共に成長し想い・願いを糧に、世界の流れに逆らう進化を遂げる。一誠の場合は肉体的・精神的にも修行で成長しており、至る事は可能だろう。しかし想いが、願いが足りない。それだけが今の一誠には欠如していた。

 

 

「さて……どうしたものかのう……ムッ!皆、踏ん張れ!デカイのが来るぞぃ!」

 

 オーディンがそう言った瞬間、戦っている零とルシュカスの剣と大鎌が衝突した時、凄まじい衝撃波が放たれた。その衝撃波は辺りに広がり、周辺の物を吹き飛ばす。そして空間そのものを揺らし始めた。

 

 オーディンの張った結界は衝撃波を防いだが、空間そのものの揺れを完全に防げなかった。その揺れにより、結界内に居た、皆は膝を着いたり、武器を地面に刺す事で耐えたが……

 

 

「ぐへっ!?」

 

 匙は転んだ。地面とキスする形で。

 

 

「おっととととと……とととおわっ!『ぃゃん』『はぅん』えっ?」

 

 一誠は体勢を崩し、片足でバランスを保とうと飛んでいると、リアスと朱乃を押し倒す形で倒れてしまった。そして一誠の手は何故か2人の胸のスイッチを押すとなっていた。2人は顔を赤く染めているのは言うまでもない。

 

 

「いやあの……ぶっ部長、朱乃さん……これはその」

 

 

「もうイッセーたら」

 

 

「あらっあらっ、イッセー君ったらこんな時にいけませんわぁ」

 

 

「ごっごめ《いたったぁぁぁぁぁぁぁ!!!》」

 

 一誠が2人に謝罪しようとした瞬間、左手の赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)の宝玉が輝き始きドライグの声が響いた。

 

 

 《嘘だろ!こんな事で至るなんて………俺マジで泣いていいか!?》

 

 

「いや俺もこんな事で至るなんて思ってなかった……」

 

 ドライグは今にも泣きそうな声でそう叫んだ。一誠も予想外だったので唖然としている。

 

 

「若さよなぁ……まぁよい、何はともあれ完全な禁手に至れたんじゃ…ほれっ小僧、早くグングニルを封印するんじゃ!後5分もしないうちに冥界が壊れるぞ!」

 

 

「おっ応!行くぞ!ドライグ!」

 

 《くぅ……泣き言を言ってる場合じゃないか》

 

 

禁手(バランス・ブレイク)!」

 

 《Welsh Dragon Balance Breaker!!!》

 

 一誠の身体を赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)が装着される、背には竜の翼が生える。これは完全な禁手に至った証だ。

 

 

「よっしゃぁぁぁ!行くぞ!デカいハンマー!」

 

 《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

 

 一誠は限界まで力を倍加させ、オーディンからミョルニルを受け取り持ち上げた。

 

 

「クソ重い……でもこんな所で止まれるか!」

 

 《Transfer!》

 

 一誠は倍加した力をミョルニルに譲渡する。するとミョルニルはその大きさが一周り大きくなり、雷を放出し始めた。

 

 

「行くぞぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 一誠はオーディンの結界を越え、グングニルの元へと向かった。




 完全な禁手に至った一誠だが、神器の中のドライグはと言うと……。

 
 「何だよアレは!?乳を突いて禁手に至るなんてぇ!アルビオンの所の小娘といい、家の相棒といい、どうして今代の奴等はこうも欲望に忠実なんだよぉ!?

 俺には未来予知の力なんてないが、近い未来に二天龍の俺達が変な名前で呼ばれそうな気がする。それこそ、俺達の心を抉るような、喋れなくなるくらいのトラウマを植え付けられる様な名前を……気の性か!?気のせいであってくれぇぇぇ!

 相棒!この間まで、奴に倒れても立ち向かい、リアス・グレモリーを護るとか、凄く恰好良かったのに、最終的にはこれかよぉ!おぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

 神器の中で1人寂しく泣いていたドライグであった。


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EP73 神槍封印

 ~零side~

 

 

「ウオオオオォォォォォ!!」

 

 零は大剣とは思えない程の速さで剣を振るい続けている。

 

 

「アハハハハハハハ!!!」

 

 ルシュカスも零と同じか、それ以上の速さで大鎌を振るい続けている。2人の剣と鎌がぶつかり合い、火花を散らし続けている。零の頬には大鎌で斬られたのか血が出ていた。

 

 

「(そろそろか。まだやり足りないが……前の様に世界を壊す訳には)【ソウルコード:スカサハ・ゲイ・ボルグ】」

 

 

「神殺しを捨て、槍を蹴りあげて一体何を?」

 

 零はそう呟くと、大剣を放り投げ紅い槍を取り出した。一旦距離を取ると、槍を軽く投げ、ゲイ・ボルグを足で蹴り上げる。零もそれを追い、飛び上がった。

 

 

【お主が自分の都合で本気の殺意を放つとは……滅多にないことじゃな】

 

 

「俺だって感情はある、喜び、悲しみ、怒るんだよ………だから此処で穿つ!」

 

 

【良かろう……その様なお主も悪くない、儂も力を貸そう!加減はせぬぞ!】

 

 零はその身に宿るスカサハと会話を終えると、槍に追い付いた。零の右眼が、一瞬輝くと1本だったゲイ・ボルグが10本になっていた。

 

 

「【メモリーコード:ザ・ワールド!】」

 

 零はザ・ワールドを使用し時間を停止させる。ギャスパーの魔眼は聖剣や魔剣、神に近い存在の時間は停止する事はできないが(正確にはそれ相応の力を持てば可能になる)、ザ・ワールドはメモリーコード(コピー)だとしても零が使う力……相手が同じ世界の神と言えど止められぬ訳がない。

 

 

「【蹴り穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ・オルタナティブ)!】オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

 

 オーバーヘッドキックで槍をルシュカスの方に向かい蹴り出した。凄まじい勢いで蹴り出された槍は幾本にも分裂しザ・ワールドの効果で停止する。ほぼ一瞬で10本を蹴り終えると、ゆっくりと地面に降りた。

 

 

「そして時は動き出す……穿たれろ、塵芥」

 

 

「まさか時を止めて……(流石にこの数を捌き切るのは……唯の槍なら未だしも零様の力が篭った魔槍、簡単に消す事はできない)」

 

 零がそう言うと、ザ・ワールドの効果が解け時が動き出した。百…千…万…億を越えるゲイ・ボルグがルシュカスに降り注ぐ。ルシュカスは一瞬で状況を理解し、次にどう動くかを判断した。

 

 

「フフフ……ウフフフ、そこまで本気で私を殺そうと……今の貴方の中は私を殺す事で一杯……私で満たされている。フフフ…アハハハハハ!良いですわ!捌き切ってみせま『ガシャン』えっ?」

 

 ルシュカスが大鎌を振るおうとした時、鉄の音がして身体の動きが止まる。ルシュカスが視線を落とすと空間の歪みから鎖が出ており、ルシュカスの身体を拘束していた。

 

 

「【メモリーコード:天の鎖(エルキドゥ)】神を縛る鎖だ。純粋な神であるお前には良く効くだろう?」

 

 天の鎖(エルキドゥ)…彼の英雄王の盟友の名を冠する神を縛る鎖。神性の高い神ほど拘束力を増す。この一瞬の隙が、ルシュカスにとっては致命傷となった。

 

 ルシュカスが視線を上げた瞬間、その視界は深紅に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……ククク…アハハハハハハハハハハ!!ハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 零が笑いながら右手を上げると、離れた場所に突き刺さっていた神殺しの大剣が脈動を打ち、主の元に飛んだ。跳んできた大剣を受けると、軽く振るう。そしてゲイ・ボルグによって蜂の巣状態のルシュカスの方へ歩を進める。

 

 

「どうだ、串刺しにされる気分は?」

 

 

「ぅ……ぐぅ……っあ」

 

 

「喋れぬほど痛いか?クハハハハハハハハ!いい様だな」

 

 零の全身の紋様と両目の瞳が光っている。そして狂気の笑いを続けている。それに呼応する様に神殺しの刃がゆっくりと廻り始めた。

 

 

「っう………(これは違う、零様ではない)きさ……ま…なにも…のだ?」

 

 

「ぁあ?我は我以外の何者でもない」

 

 

「ち…がう……違う!お前は零様ではない、一体なにも……ぐぅ」

 

 壊れた様に笑う零に向かい、何者かと問うルシュカス。ルシュカスの眼には……いや原初の神の1人のルシュカスだからこそ、今の零がこれまでの零とは違う事に気付いた。

 

 

「フン……貴様が知らぬだけだ。この我の、さっきまでの俺も……何も変わらぬよ。今すぐにでも貴様の存在を消してやりたいが……母様達の許可のない以上、消す訳にはいかない。だが最高神の許可なく可能性の世界に介入した罰は受けて貰う」

 

 零はそう言い、神殺しを地面に突き刺した。突き刺した神殺しから黒い鎖が放たれルシュカスの身体を拘束する。

 

 

「ぁああああああああ!」

 

 鎖はルシュカスの身体に溶ける様に消え、身体には黒い紋様を残した。紋様が火の様に赤くなると、ルシュカスに激痛が襲いかかる。

 

 

「苦しむがいいさ………」

 

 

「ぐぁ……っ……何故……何故!?今まで神殺しを……」

 

 

「使わなかったか?……俺は貴様の様に私怨で世界を壊すつもりはない。今回は条件が揃っていたんでな、遠慮なく使わせて貰っただけだ。そろそろ貴様の顔を見るのも胸糞が悪い、さっさと原初世界に還れ、クソアマ。さてそろそろか」

 

 零はそう言うと、グングニルの方向を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~一誠side~

 

 一誠は巨大化したミョルニルを持ちながら、零が放り投げたロキのグングニルに向かい歩いていた。

 

 

「ぐおぉぉぉぉぉ……このハンマー重たい、それだけじゃねぇ……なんか見えない何かに押しつぶされそうぉぉ……ぜぇぜぇ」

 

 一誠は途中で支えきれなくなったのか、ミョルニルを地面に落とす。完全な禁手化した一誠ではあるが、辺りに漂うのは零とルシュカスの神の力……神気ともいえる。常人では神気に当てられただけで全身を硬直させ、呼吸すらできなくなり死に至るだろう。例え神の使いの天使や戦乙女と言えど、気を失うだろう。悪魔にとっては毒にも等しいが、一誠には二天龍と謳われたドライグが宿っている影響か死にはしないだろう。

 

 しかし鍛えたとは言え、濃い神気と殺気の充満したこの場では殆ど動く事ができない。ミョルニルを引き摺りながらも歩けているのは気合いだろう。

 

 

「あともう少し……少しなのに……もぅ……気がとお…く……」

 

 一誠はグングニルの元まで十数メートルの所まできたが、限界が来たのか倒れそうになる。

 

 

「おい!赤龍帝の小僧!気をしっかりもて!」

 

 その声で一誠は沈みかけた意識を持ち直した。そして身体が少しだが軽くなった事に気付き横を見た。

 

 

「アンタ……なんで」

 

 

「奴に負けた以上、世界に終焉を齎すのはまだ先だ。それまでに世界が破壊させるなどさせん……私とて神だ、誓った以上は守るさ。それよりも赤龍帝の小僧!貴様こんな所で倒れるつもりか?」

 

 

「クッ……こんな所で倒れてたまるか……でも身体が」

 

 

「これだから身の程も弁えぬ輩は……ん?オーディン?」

 

 ロキの耳元に魔法陣が現れ、そこからオーディンの声が聞こえてきた。

 

 

「何の用だ!老いぼれ!」

 

 

『誰が老いぼれじゃ!お主といい、零といい皆、儂を年寄り扱いしおって!』

 

 

「それよりも何の用だ!?唯でさえ、神気と殺気に満ちてるこの場は一瞬も気を抜けんと言うのに!!」

 

 

『用があるのは儂ではない!リアス姫じゃ……』

 

 オーディンがそう言うと、続いて声が聞こえてきた。

 

 

『『『イッセー(君)!』』』

 

 聞こえてきたのは、リアス・朱乃・裕子の声が聞こえてきた。どうやらリアス達がどうにかして一誠に連絡する手段はないかと考えオーディンに頼んだのだろう。そこに偶々一誠を助けたロキが現れたので、ロキに連絡を入れたのだろう。

 

 

『イッセー君!それをやり遂げたら私がどんなプレイでもしれ差し上げますわ!』

 

 

「ほっ本当ですか!?朱乃さん!」

 

 

『ぼっボクもちょっと恥ずかしいけど……頑張るよ!イッセー君!』

 

 

「きっ木場……」

 

 

『イッセー!頑張りなさい!がっがんばったら……私を……好きにしていいわよ』

 

 

「部長……すっ好きにしていい……なんて素晴らしい言葉なんだ。おぉぉぉぉぉぉぉ!しゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 《Welsh Dragon Over Drive!》

 

 赤龍帝の鎧の各部の宝玉が眩い光を放ち、背の翼が1対増えた。そして全身からは深紅のオーラが立ち昇っている。

 

 

 《相棒!この状態なら、この場で動ける。しかし保って10秒だ!さっさと終わらせろ!!!》

 

 

「おう!でも凄く身体が重いんだが…これは何とかなんないの!?」

 

 

「例え赤龍帝の力と言えどこの力は何ともなるまい。私の力も分けてやる、さっさとしろ」

 

 ロキがそう言うと、一誠の背に触れた。ロキの手から凄まじい力が一誠に流れ込んだ。

 

 

「ッ!!!なっなんだ……すげぇ力だ」

 

 

「当たり前だ、貴様等は神を甘く見過ぎだ。今、貴様に渡した物など本来の1000分の1だ」

 

 

「こっこれで1000分の1!?嘘だろ!?」

 

 一誠は流れ込んできた凄まじい力が、1000分の1と聞き驚いている。

 

 

「フン……そんな事より、さっさとしろ!本当に世界が壊れるぞ!」

 

 

「あっ……よっしゃあ行くぞ!うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 《Transfer》

 

 一誠はロキにそう言われると、背の4枚の翼を羽ばたかせ飛び上がった。そして、ミョルニルを振り上げ自分の力とロキから貰った力を譲渡した。

 

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 巨大化し放電している戦神の大槌は一誠により、グングニルに振り下ろされた。グングニルとミョルニルが衝突し凄まじい光が辺りを覆い尽くした。



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EP75 分裂

 ~零side~

 

 一誠がミョルニルにより使用した事で、辺り一面が光りに包まれた。光が納まると、零は目を開き一誠の姿を確認した。

 

 

「上手くいったか……」

 

 そう言うと、視線をルシュカスの方に向けた。

 

 

「ぐっ……あぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

 突然ルシュカスの身体が徐々に透明になっていく。

 

 

「ぐぅ……何故……何故デす?!何故私を拒むのですか!?何故私よりもあの獣を選ぶのですか!?」

 

 

「我が盟友を貴様の様な女を比べるなどありえん。我が盟友に無礼であろうが……さっさと失せろ。これ以上は世界に負担が掛かる」

 

 

「っ……ぐぁ……良いでしょう、此度はこれにて失礼するとしましょう。ですが何時か、必ず貴方様をあの獣の呪縛から解放します。絶対に」

 

 狂気の宿った目で零に向かいそう言うルシュカス。そして零に向かい手を伸ばす、だがその手は眩い光により遮られた。

 

 

「誰の子に触れようと言うのです、戦神?」

 

 

「なっ?!……おお…か…み。何故此処に」

 

 その光の正体は天照であった。突然天照は零とルシュカスの間に現れた。

 

 

「嫌な力を感じて来てみれば……戦神ルシュカス、何故この世界にいるのですか?まぁそんな事はどうでもいいのですが………その手で誰に触れようとしたのか……教えて頂きたいのですが」

 

 天照は何時もの慈愛に満ちた表情から想像もできない程、怒りと憎しみに満ちている。例えるなら鬼神・般若が可愛く見え、裸足で逃げ出す様な………その表情で天照はルシュカスを見降ろしている。

 

 

「母様……何故此処に?」

 

 天照はくるっと周り、零の方を向いた。しかし怒りと憎しみに満ちていた表情が一変し満面の笑みを浮かべた。その時間は一秒にも満たない。

 

 

「ぁあ!零!またその様に傷付いて、ぁあ大変早く消毒しないと……しかもまた神殺しを使って」

 

 

「この程度、唾を付けとけば治ります。神殺しは条件が揃っていたので使ったまで……って母様、何故そんなに息を荒くして近付いているんですか?」

 

 

「だったら母が舐めてあげます。はぁはぁ」

 

 

「目が怖いんですが………って」

 

 《ガタッガタッ……ドクッ!ドクッ!ドクッ!》

 

 先程まで沈黙していた神殺しが脈動を打ち、先程ルシュカスを縛り痣を付けた黒い鎖を天照に向け放たれた。

 

 

「止めろ!母様だ」

 

 零が神殺しを掴むと、鎖は動きを止め直ぐに神殺しに収納された。

 

 

「全く……此奴は…けど俺に害を成そうとするものしか襲わない筈なんだが……(もしかしたら、端から見たら襲われてる風に見えたのか………)」

 

 神殺しは主である零を護る為に、主に襲い掛かる者には容赦なく牙を剥ける。顔を赤くし息を荒げて近付く天照を神殺しは敵と見做したのだろう。まぁ2人が親子と知らなければ、零が襲われてると勘違いしても可笑しくないだろう。

 

 零は神殺しを地面から引き抜くと、神殺しは消えた。

 

 

「それよりも母様……何故此処に?」

 

 

「ぁあ、そうでした。何故此処に来たのか……可愛い息子にアバz……コホン、クソア………蟲が近付く予感がしたので光を越えて来ました。母の予感は的中していた様ですね」

 

 そう言うと、倒れているルシュカスに向き直ると一変して冷たい眼を向ける。

 

 

「さてさて……貴女は何故この世界に来たのですか?」

 

 

「ぁ……その……えっ……と…私はその……」

 

 

「まさか大した理由もなくこの世界に来たのですか?それがどれ程の罪か分かっておいでですか?」

 

 

「ッ!?」

 

 

「貴女の御母君の命令であろうと、私の許可なく世界を渡るなど………まぁそれ自体はどうでもいいのです。問題は私の息子にその汚い手で触れようとしたこと…怪我をさせたことです」

 

 天照より発せられた高熱を帯びた光が消えていくルシュカスに当たる。

 

 

「っ~~~!」

 

 

「まぁその辺りは原初世界(あちら)でゆっくりと話して貰うとしましょうか」

 

 それを聞くとルシュカスは身体をビクッとさせ、怯えた様子で消えた。

 

 

「やっと帰りましたか…………零、大丈夫ですか?」

 

 

「えぇ、この程度問題ありません………あの時の……盟友を失った時の痛みに比べれば……」

 

 今にも泣きそうな顔をしている零、先程まで狂った様に笑いながら戦っていた人物と同じとは思えない。

 

 

「零、泣くなら……母の胸で泣きなさい!」

 

 そう言って両手を広げて、零を受け入れる体勢を取っている天照。

 

 

「別に泣くつもりはないんですが………」

 

 

「そっ……それは母はもう要らないという事ですか………およよよよよ」

 

 零に否定されたと思い込み泣き崩れる天照。

 

 

「いやそう言う訳ではなくですね」

 

 

「では母は必要なのですね!では」

 

 バッと両手を開き受け入れる体勢満々なのだが、零は行く気はない様だ。

 

 

「と言うか母様、一応日本の大神なのに勝手に冥界(こんな所)に来ていいんですか?」

 

 

「はい、問題ありません。権能を感じてから此方に来たので……それに可愛い息子に近付く蟲がいたのに気付きましたので、五月蠅い者達は月読と素戔嗚に任せて来ました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~数刻前の高天原~

 

 

「離しなさい!息子に近付く毒虫がこの世界に来まています!殺します!殺してやります!」

 

 冥界に行こうとしている弓やら剣、鎧の完全装備の天照を必死に止めている日本の神々。

 

 

「落ち着いて下さい、大神!」

 

 

「大神が冥界に行けば、悪魔共との戦争になりまする!」

 

 

「どうか、冷静に!」

 

 そう言って、天照を抑えている男神と女神達。

 

 

「その様な事、知ったことではありません!」

 

 天照は悪魔達との戦闘なんて知った事ではないのだ。

 

 

「五月蠅い……こっちは寝てるのに」

 

 

「おいおい、何の騒ぎだよ?」

 

 騒ぎを聞いてやって来たのは、天照の妹神、弟神……月読と素戔嗚だった。

 

 

「月読様!素戔嗚様!どうか大神を御止め下さい!」

 

 

「「???」」

 

 何がなにやら分からない月読と素戔嗚の頭の上には?が浮かんでいる。

 

 

「月読!素戔嗚!邪魔するつもりですか!?」

 

 ギラッと鋭い天照の視線に只ならぬ状況だと気付いた2人。

 

 

「邪魔するつもりないけど……一体どういう状況で?」

 

 取り敢えず何が起きたのかを確認する事にした。

 

 

「零に……可愛い息子に蟲が近付こうとしているのです!行かなければ!」

 

 

「蟲……まさかあのクソ女ァァァァァ!」

 

 

「そりゃ一大事だ!ハッ!!!」

 

 天照の説明により、何が在ったのか理解した月読は神を振り乱し叫び、素戔嗚は直ぐに天照を抑えている神々を引き剥がした。

 

 

「すっ素戔嗚様?!何を!?」

 

 

「良いから黙っとけ……姉上、此処は俺達に任せて行ってくれ」

 

 

「その通りだ!姉上!邪魔するなら消してやる!」

 

 圧倒的な力を持つ最高神逹の意志が1つになっている以上、それは高天原の意志である。故に他の神々が逆らえる訳がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~現在 冥界~

 

 そんな事が起きていたのだろうと想像していた零。

 

 

「(ちょっと同情するな……)はぁ…っ!」

 

 零は突然、顔を抑え膝を着いた。何故かその表情は苦痛に歪んでいる。

 

 

「があぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 胸を押さえ、地面を転げまわっている。何時もの零からは想像できないほどの叫びを上げる。

 

 

「ぜっ零!しっかりするのです!」

 

 天照も息子の悲痛な姿を見て慌てている。

 

 

「「「零さん(零・ご主人様)!!」」」

 

 その姿を見て、離れた場所に居たアーシア達が駆け寄って来た。

 

 

「けっ怪我をなさったんですか!?直ぐに私が治し……お義母様?」

 

 聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)で治そうとするが、天照の手で制された。

 

 

「これは怪我ではありません……反動です」

 

 天照はそう言うが、皆は何が何なのか分かっていない。

 

 

「ぐぅぅぅぅぅ……あぁぁぁぁぁっぁ!」

 

 零の身体が光り出し、闇が溢れ出てもう1人の【半身】が現れた。普段の零……【分身】の方も何時もの姿に戻っている。2人?は同じ様に胸を押さえ苦痛で表情を歪めている。

 

 

「零は幼い頃の事件で……その身体と心を2つに別けてしまったのです。本来別れてしまった身体と心を元に戻すのは、簡単な事ではないのです。零は、あの蟲を倒す為に無理矢理に元に戻した。………ですがあくまでそれは一時的にです。時間が経てばそれはまた2つに別れてしまう………その際には無理矢理元に戻した反動により、身体を引き裂かれる苦痛を味わう事になるのです」

 

 身体を2つに裂かれる痛みなど想像もつかない。

 

 

「「はぁはぁ……がぁ……ぐぅ」」

 

【分身】と【半身】の身体が光り出すと、徐々のその身体が小さくなっていく。光が納まると【分身】は5歳位の子供に、【半身】は赤ん坊になってしまった。

 

 

「「「「「…………えっ?」」」」」

 

 白音・黒歌・アーシアや後から走って来た一誠やリアス達も、驚いている。2人になったのは前に見ていたが、いきなり子供になったのには流石に驚いている。

 

 

「ぅ~………きゅ~」

 

 

「おぎゃあ!おぎゃあ!」

 

 

「ホホホ、これは可愛らしい姿になったのぅ……」

 

 オーディンはそう言うと、【半身】の方を抱き上げようとするが………。

 

 

「触るな、私の息子が汚れる」

 

 バシッと天照が袖から取り出した扇子でオーディンの手を叩いた。

 

 

「……お主、儂を何じゃとおもっとるんじゃ?」

 

 

「エロ爺、ド変態、歩く猥褻物、汚物……零が汚れるので、半径1キロに入らないで下さい」

 

 

「父に向かってその言い様はあんまりじゃないかのぅ?」

 

 

「それは原初世界(あちら)での話……まぁ原初世界(あちら)でも父と思った事はありませんけど……よちっよちっ、母でしゅよ~」

 

 ゴミを見る様な目をオーディンに向け、零達に視線を戻すと慈愛に満ちた目となり【分身】と【半身】を抱き上げる。

 

 

「苦しかったですね……取り敢えず、家に帰りましょう。黒歌さん、白音ちゃん、アーシアさん、オーフィスちゃん、ギャスパーちゃん、私と共に来て下さい。零の……えっとシオンさんでしたか、直ぐに素戔嗚を寄越しますので後の事を御任せしても宜しいですか?」

 

 

「はい、大いなる女神よ。お任せください……1つ御伺いしても宜しいでしょうか?」

 

 シオンが天照の言葉にそう答え、膝を着いた。それに続きサガやカノン達も膝を着いた。

 

 

「えぇ、構いませんよ」

 

 

「王の……御身体は」

 

 どうやらシオン達は零の事を心配して居る様だ。

 

 

「今は眠っています。ただ……身体を裂かれる痛みは当分の間、続くでしょう。それが先程の力の代償です。あの蟲の相手をすると同時に世界を護るには、あれを使うしかなかった。前に使用した時はかなり長い間、苦しみました。一先ずは私の神殿へ行きます、この子も神気の満ちる所の方が治りも早いでしょう」

 

 

「そうですか……ありがとうございます。此方の事は御任せ下さい」

 

 

「では頼みましたよ、行きましょうか、皆さん」

 

 

「「「「「はい(うん)!」」」」」」

 

 天照とアーシア達は光と共にその場から消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぅ……行ってしまったのぅ」

 

 

「オーディン、奴は一体何者だ……私の権能をいとも容易く打ち消す程の権能の持ち主などそうは居らん、それこそ貴様の様な主神レベルだぞ?」

 

 

「それは………まぁのぅ、儂にとっては可愛い孫じゃ……それにあの子の持つ権能は儂等の間でも特殊じゃからな。本来無い筈の権能……」

 

 それを聞いて、ロキは目を見開き驚いている。

 

 

「まさか……在り得ぬ……いやしかしそれなら説明が付く」

 

 

「それよりも、お主はどうするつもりじゃ?まだラグナロク(神々の黄昏)を続けるつもりか?」

 

 納得した様な顔をしているロキに、オーディンはそう尋ねた。オーディンの手にはミョルニルが握られている。もしロキが続ける気ならば………。

 

 

「フン……止めておこう。私は奴に負けた……敗者は勝者に従うものだ。奴に負けた以上、私はもう行動を起こすつもりはない」

 

 

「そうか、それはなによりじゃ………ムッ?」

 

 

 

 

 

 こうしてラグナロク(神々の黄昏)を未遂に終わった。

 

 ある者達には謎を残し、ある者達には恐怖を残し、事は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロスヴァイセ?どうかしたのか?」

 

 顔を赤くして呆然としているロスヴァイセ。

 

 

「………はっ!?べっ別になんでもありません!そうですなんでもありません!」

 

 

「………(こやつ、零に惚れたのぅ。流石儂の孫じゃのぅ……しかし本人は無自覚、これまでどれ程の女子が泣かされてきたか……ん?そう言えば…零に惚れる女子は幼いのが多い様な………まぁよいか、はぁ早く曾孫の顔が見たいのぉ)」



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EP76 神って何だろう?

 ~高天原 天照の神殿~

 

 先のロキの起こした事件から数日が経った。そして日本の神々の世界高天原は事件の影響も殆どなく、何時も通りだった。高天原の中心にある太陽神の神殿。そこには最高神である天照大御神、その人が住んでいる。

 

 

「ぜろ~、オムツを変えましょうねぇ~」

 

 その天照はと言うと、赤ん坊(1歳くらい)の零【半身】のオムツを換えている。

 

 零は先の事件の際に現れた原初世界の女神ルシュカスとの戦いの影響で、2人に別れ子供になってしまったのだ。天照はそれを連れ帰り面倒を見ている。

 

 始めの数日は苦しむ【分身】と【半身】を見て慌てていたのだが、苦しみは無くなった様で2人?は元気に遊んでいる。

 

 

「はい、綺麗にしましょうね~」

 

 

「あ~う~まぁ~」

 

 

「はいはい、母でしゅよ~」

 

 赤ちゃん言葉で話しながら、手際よく零【半身】のオムツを換えていく。流石は零を育てた母と言うべきだろう。今までで一番活き活きとしているのは気の性だろう。

 

 

「ははしゃ……おにゃかしゅいた」

 

 そう言ったのは5歳ほどの子供になっている【分身】の方だ。【分身】の方は綺麗な着物を着せられ、子供用の小さな椅子に座らされている。

 

 

「直ぐに作ります、待って居て下さいね」

 

 

「はぁ~い」

 

 素直に返事をする【分身】。天照は【半身】の方のオムツを換え終えると、【分身】のご飯を作る為にその場を離れた。

 

 

「零さん、可愛いですぅ」

 

 

「あーしあねぇちゃん……だっこぉ~」

 

 

「っ~……もぅ死んでもいいです」

 

 子供に抱っこをせがまれて顔を真っ赤にして倒れるなど、駒王学園では清純金髪美少女、天使と言われ彼女にしたいランキング上位に居るアーシアに有るまじき絵だ。多分、鼻から出ている赤い液体は幻覚か何かだろう。

 

 

「ご主人様、私が抱っこするにゃ~、はぁはぁ」

 

 いうまでもなく黒歌だ、こっちは完全に発情してる。眼はグルグルと周っており、顔は茹蛸の様に赤い。とても冷静な判断が出来る様な状態ではないだろう。

 

 

「姉様、今のその状態で近付かないで下さい」

 

 

「ぐほっ!……しっ白音……酷い」

 

 

「例え姉様でもご主人様に危害を加えるなら許しません……」

 

 興奮し息を荒げながら怪しい手つきで近付く黒歌(変態)の鳩尾に渾身の一撃を放ち床に沈めた。

 

 

「………零、可愛い」

 

 

「はわぁ……天王理先輩可愛いですぅ」

 

 気が付けば【半身】を抱っこしていたオーフィス、そして赤ん坊の【半身】を眺めているギャスパー。

 

 

 《ドドドドドドドドドドドドド》

 

 

「「「「「???」」」」」

 

 此処にいる全員が謎の騒音に首を傾げている。その音は入り口から聞こえてきた、皆は揃って入り口の方に視線をやる。

 

 

 《ガッ!ガッ!ガッ!》

 

 誰かが扉を開けようとしているが、天照が小さい零が外に出てしまわない様にと閉めて行ったのだ。

 

 

『クソあかねぇ!姉上のやろう、結界張ってやがる!』

 

 

『姉上め、小さい零を……2人になった零を1人じめなんてずるい!ぐぬぬぬぬぬっ』

 

 

『姉上、退け!扉は結界ごと叩き斬る!!!どせぇぇぇぇぇっぇぇい!』

 

 ピシッ!という音と共に扉がバラバラになってしまった。

 

 

「零~お姉ちゃんがきたぞ!」

 

 

「零!父だぞ!!」

 

 そこにいたのは勿論、親バカその2、その3……もとい月読と素戔嗚だった。

 

 

「?」

 

 

「ぁ~ぅ~」

 

 2人の零の至っては何が起きたのか分かっていない様だ。

 

 

「てっ………天使だ」

 

 

「おぉ……楽園は此処にあったのか」

 

 2人の零を見た、月読と素戔嗚は長年の旅の末に楽園を見つけた旅人の様な顔をしていた。だが、2人は此処が何処なのかを忘れて居る様だ。

 

 

「ぁ~きゃぅ~」

 

 

「つ~ねぇ~、す~お~」

 

【分身】と【半身】は月読と素戔嗚の姿を確認すると、手を伸ばしている。本人達は神の威厳はどうしたと言うぐらい、デレデレな顔をして歩を進めようとした。

 

 

「ははしゃ」

 

 

「まんまぁ~」

 

 

「「……………………」」

 

 その言葉を聞いて、月読と素戔嗚の顔から血の気がさぁー引いた。2人の周りだけ、氷河期が来た様に温度が下がる。そしてギギギギッと錆びついたブリキ人形の様な動きで振り返ると、そこには2人が最も恐れる存在が居た。

 

 

「月読……素戔嗚……貴方達何をしているんですか?」

 

 

「いやあの……その……あっ姉上様」

 

 

「そのあの………これはなんといいますか」

 

 

「仕事はどうしてのです?それよりも結界が張ってあったと思うのですが………何故、扉がバラバラになっているんです?」

 

 ニッコリと笑っている天照。その手には零の食事の乗ったお盆がある。天照は妹・弟の間を抜けると、部屋の真中にある大きな机の上に置いた。

 

 

「はぁ~い、零……ご飯でしゅよ」

 

 

「ははしゃ……まんま、まんま」

 

 母の登場に喜んでいる【分身】、健気に手を伸ばしている。天照は【分身】に近付くと抱き上げて食事のある机まで向かった。

 

 

「「…………(こっ此処は一時的に……戦略的撤退だ!くっ!零、許せ!)」」

 

 と考えながらその場から逃げ出そうとしていた。流石の彼等も命は惜しい様だ。

 

 

「月読、素戔嗚」

 

 

「「はっはい、姉上」」

 

 優しい声で声を掛けられたが逆にそれが途轍もなく怖い。

 

 

「扉、直して下さいね」

 

 と言っている天照は椅子に座り、【分身】を膝に座らせている。この時、危機的状況にも関わらず2人はこう考えていた。

 

 

((何故だ!何故、自分はあそこにいないんだぁ!?))

 

 天照の位置に何故自分がいないのかと考えていた、此処まで来ると親バカも極まっている。

 

 

「何を考えているかは知りませんが……直してさっさと仕事に戻りなさい」

 

 完全に怒っており、表情も誰が見ても怒っているのが分かる様なものだったが、それを見せまいと【分身】の目を自分の手で覆っている。【半身】の方は背の方にいるので見えないのだ。

 

 

「だっ…だって!姉上だけズルい!小っちゃい2人の零を1人締めなんて!」

 

 

「そっ…そうだ!そうだ!俺達だって小っちゃい零を愛でたい!」

 

 そう抗議する月読と素戔嗚、本当に神なのかと言いたくなる。こんな所、他の者達には見せられない。

 

 

「ホホホ、相変わらず騒がしいのぅ」

 

 

「「「ゲッ……」」」

 

 

「ゲッとは何じゃ!ゲッとは……」

 

 その声の主はオーディンだった。この主神もまた零を見に来た様だが、三貴士達は露骨に嫌そうな顔をしている。

 

 

「じぃーじ、じぃーじ」

 

 

「ホホホ、零、久し振りじゃのぉ……ほれっ土産じゃ」

 

 

「月読!素戔嗚!その変態を排除なさい!そうすれば此処に居ていいです!」

 

 

「よしっ!」

 

 

「爺!覚悟!」

 

 小さい零に変態を近づけさせまいとする三貴士VSただ孫を可愛がりに来た北欧神話主神の戦いが今、始まろうとしている。

 

 

「ただ孫に会いに来ただけなのになんじゃこの扱いは!?」

 

 日頃の自分の行いが悪いのがいけないのだが、本人は気付いていない。

 

 

「「「己の日頃の行いを考えろ!」」」

 

 天照は【分身】を目覚めたアーシアに渡し三種の神器を、月読は刀を、素戔嗚は天羽々斬を、オーディンはグングニルを装備し今にも戦闘を始めそうな勢いだが、予想外な事が起きた。

 

 《とてっとてっ》と可愛らしい足音で両者の間に現れたのは、【分身】だった。その後ろには【半身】が這い這いしてやって来た。

 

 

「「「「零?(可愛いなぁ~)」」」」

 

 

「ケンカ、メッ!」「たぃたぃ」

 

 喧嘩を駄目だと言いに来たらしい。ケンカの原因が止めに来るとは予想外である。

 

 

「きりゃい!」「りゃい!」

 

【分身】と【半身】がそう言って頬を膨らませ、プイッとそっぽを向く。端から見れば小さい子供の事なので可愛いなぁと終わるのだが……。

 

 

 天照[level:100(Max)、種族:神、HP:9999]

 

 月読[level:100(Max)、種族:神、HP:9999]

 

 素戔嗚[level:100(Max)、種族:神、HP:9999]

 

 オーディン[level:100(Max)、種族:神、HP:9999]

 

 零【分身】&【半身】[level:1、種族:神・人、HP:10]

 

 

 

 

「「「「がはっ!!!」」」」

 

 零Loveの親バカ・爺バカの当事者達にはかなりのダメージの様で、吐血までしている。

 

【分身】&【半身】の「嫌い(言葉)攻撃」。

 

 天照、月読、素戔嗚、オーディンに9999のダメージ。天照達は何とか踏ん張った。

 

 

 天照達[HP:1/9999]

 

 

「ぜっ……零?」

 

 

「きっ嫌いなんて……嘘だよな?」

 

 天照と月読は震える手を零達に伸ばした。

 

 《ペシッ》

 

【分身】は天照と月読の手を叩いた。天照・月読に99999のダメージ、OVER KILL。

 

 

「ぜっぜろ……がくっ」

 

 

「きらわれ……た……がくっ」

 

 天照と月読は戦闘不能となった。

 

 

「ぜっぜろ……うそだよ…な?」

 

 

「じぃじぃが嫌いなんて……嘘…じゃよな?」

 

 

「りゃい(嫌い)」

 

【半身】の追い打ち、素戔嗚とオーディンに99999のダメージ、OVER KILL。

 

 

「がふっ……」

 

 

「ぐぅ……」

 

 素戔嗚とオーディンは戦闘不能となった。

 

 

 -GAME OVER―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~その頃、人間界では~

 

 

「大変だぁ!突然、皆既日食が!」

 

 

「温度が氷点下に!?」

 

 

「あんなに綺麗だった満月が消えた!?」

 

 

「海の魚たちが!」

 

 

「もの凄い竜巻が来るぞ!」

 

 太陽神・天照と月の神・月読が倒れた影響で、地球を照らす太陽の光は閉ざされ、夜を照らす月の光まで無くなってしまった。その性で、地球の温度が低下し、植物は枯れ、動物達も騒ぎ出している。海を統べる素戔嗚が倒れた事で海はその力を失い、生命が生きる事ができなくなり、オーディンが倒れた事で世界が異常気象に見舞われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~高天原 天照の神殿~

 

 高天原もその光を失っていた。

 

 

「ぜっ零さん、そんな事言ったらダメですよ。お義母様達が哀しみます」

 

 と言うより死んでいるのだが……。

 

 

「あーしあねぇちゃん、でもケンカする人…きりゃい」

 

 

「ケンカをしなければいいですよね?」

 

 

「ケンカしにゃい?………ケンカしにゃいははしゃ、つ~ね~、す~お、じぃじはしゅき!!」

 

 

「ちゅき!ちゅき!」

 

 その時、奇跡は起こった。【分身】と【半身】の言葉で天照達は復活した。

 

 

「零!そうですよね!ケンカは駄目ですよね!母が悪かったです、許して下さいね!」

 

 

「お姉ちゃんが悪かった!ケンカなんてしないからな!」

 

 そう言って、【分身】に縋り付いている太陽神と月神………人々が見れば信仰を失いそうだ。

 

 

「ケンカしにゃいならいい、ははしゃ、抱っこ!つ~ね~、ごはん!」

 

 

「「ぶはっ!……胸が……胸がキュンキュンします(する)。我が子(弟?)にこの様な感情を抱いては……ぶつぶつ」」

 

 完全に母性本能をやられ、越えてはいけない一線を越えそうな太陽神と月神……本当に神としてのプライドは何処に行ったのだろう?

 

 

「ははしゃ!つ~ね~だっこ、だっこ……ごはん!ごはん!」

 

 

「そうですね!ご飯にしましょうね!母が抱っこして上げます!(だくっだくっ」

 

 

「お姉ちゃんが食べさせてやるからな!(だくっだくっ」

 

 鼻血を流しながら【分身】を抱え、机に向かう太陽神と月神。【分身】にかからないのは神の力だろう……そう言う事にしておこう。

 

 

 

「零!父ちゃんが悪かった!だから許してくれ!」

 

 

「じぃじが悪かったのじゃ!許しておくれ!」

 

 揃いも揃って赤ん坊に頭を下げている神々。

 

 

「きゃぅ~」

 

 頭を下げている素戔嗚とオーディンの頭を撫でている【半身】。2人は顔を上げると満面の笑みを浮かべている【半身】。

 

 

「父を許してくれるのか!お前はなんて優しい子なんだ!」

 

 

「儂の孫はなんて優しいんじゃ!儂の孫は世界一じゃー!」

 

 と【半身】を抱き上げ、叫んでいる素戔嗚とオーディン。もし零が何時も通りなら恥ずかしさのあまり、2人を問答無用で沈めているだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~人間界~

 

 太陽と月が復活し、海は平穏を取り戻していた。以前よりも、穀物の実りや瀕死状態の人々や動物達が元気になったのは不思議な現象として少しの間、話題になったが原因は不明である。



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EP77 トップ達の悩み

 ~兵藤家~

 

 駒王の一軒家が立ち並ぶ住宅街の一角、他と比べたら異質な屋敷が建っていた。

 

 この家は兵藤家……一誠の家なのだが……本来、この家は一軒家であった。何故この様な屋敷になっているのかと言うと、グレモリー伯爵……つまりリアスの父の配慮だ。

 

 グレモリー眷族の信頼関係を深める為に、魔王であるサーゼクスの命令で同居する事になったのだが……リアス、朱乃、裕子、ゼノヴィア、レイナーレ、ミッテルトと6人も増えると住む場所に困るだろうと、グレモリー伯爵がモデルルームと言う名目を使ってリフォームしたのだ。

 

 因みに一誠は、リアスや朱乃達と同じベッドで寝ることになっているので寝不足になるのはいうまでもない。

 

 その兵藤家の一室を借りて、大天使ミカエル、魔王サーゼクス、セラフォルー、堕天使総督アザゼルが会談を行っていた。

 

 

「それで……だ。お前達はアイツについてどう考えているんだ?」

 

 

「それは……」

 

 アザゼルの言葉に詰まる魔王と天使の長。アザゼルの言うアイツと言うのは零の事だろう。

 

 

「アイツの正体は丸っきり分からねぇ。日本神話の歴史を見直しても、アイツみたいな奴は全くいない。だが主神クラス……二天龍を簡単に倒す様な力を持ってる天王理 零と言う存在は確かに存在する」

 

 

「えぇ……私達の知る限り、その様な存在いる筈がない。しかし現に我等の前で二天龍を倒した伝説の戦士が彼だと言うのは明確の事実です」

 

 アザゼルの言葉にそう返すミカエル。

 

 

「しかし、今回リアス達が彼等の会話から聞きなれない単語を聞いたと報告があった」

 

 

「【原初世界】ね」

 

 リアス達からの報告で、バハムート神式やオーディンの言葉から【原初世界】という言葉を聞いていた。

 

 

「あぁ………なぁ、俺の仮説聞いてくれるか?」

 

 アザゼルが突如、そう言い出した。しかしそれを止める者は此処にはいない。

 

 

「前の三勢力会談の事件の時、アイツの言った言葉が妙に引っかかったんだよ。あの四神を模した巨大な奴等……【超機人】とか言ったか……零はあの時、こう言った『此奴等はとある文明が産み出した人類を守護せし超機人という存在だ』ってな」

 

 

「そう言えばそんな事を言っていましたね」

 

 

「その前にも、アイツの正体に迫った時『まるで突然、この世界に現れた』って言葉に零は反応してやがった。そこで俺がたてた仮説は天王理 零は【この世界の者じゃない、違う世界の存在だ】って事だ」

 

 

「「「………」」」

 

 流石にこの言葉には全員押し黙ってしまった。それはそうだろう、突然違う世界なんて言われても信じられる訳がない。

 

 

「突拍子もないのは分かってる、俺も自分が正気かどうか疑いたくなる」

 

 

「まぁ仮にその説が合っていたとしてだ、何故日本の神々やオーディン殿は彼の事を身内だと言っている?あの方々が入れ替わったとは思えん」

 

 

「そうよねぇ~、オーディン様は昔と全然変わってなかったし」

 

 セラフォルーの言葉に同意しているサーゼクスとミカエル。

 

 

「はぁ……それなんだよな……残る問題は………ぁあ!分かんねぇ!どうしてもそれだけが問題なんだよ……」

 

 そう言って煙草を吹かせているアザゼル。理解できないので頭に手を当てている。

 

 

「我等、悪魔側は自業自得だとしても……これ以上、制限を掛けられれば日本での活動が立ちいかなくなる」

 

 

「日本の文化を気に入っている平和を愛する悪魔達も沢山いるし………出来れば日本側とは和解したいんだけど」

 

 それは無理な話だろう、悪魔の性で日本の妖怪や人々が多く犠牲になっており、無理矢理悪魔にされた挙句、転生悪魔だからと差別されていると聞けば簡単には許す訳にはいかない。

 

 日本の妖怪や神々の結束固い、故に仲間が犠牲になれば怒りもするし、仇を憎むのも当然だろう。

 

 それに加え、三大勢力会談の時にリアスの言葉だけでも悪魔を殲滅しようとした三貴士。「零の為なら、戦争もやむなし」との考えを持つ三貴士だ、それに加えつい先日悪魔達の起こした暴動でも日本側に追放されなかっただけマシだろう。

 

 日本の神々、伝説の戦士の零、加えて無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)のオーフィスまでいる。更に北欧神話のオーディンまで零を孫と呼んでいる。正直、現在の全神話体系が手を組んでも敵いそうにない……と言うより絶対勝てないだろう。

 

 天照達やオーフィスを抜きにしても、零1人で勝てそうだからである。

 

 

「まぁお前等悪魔の事は自業自得だとしてもだ……零が日本側にいる以上、俺達は大人しく従がわなきゃ全滅しちまう。零本人は自分や周りの連中に手を出さなきゃアイツ自身はこっちに敵対するつもりはないらしいが……」

 

 

「そうですね……私の方にも近々来る様にとこの間、直接言われましたし」

 

 遠い目をしているミカエル。天使の長は三勢力の和平の時、時間が開いたので零と話した時の事を思い出した。【アーシアの事で話しあるから来い……否定するなら超機人で攻め込んじゃうぞ?なるべく早くね】と言われた日には生きた心地がしなかったそうだ。

 

 

「問題山積みだな、零本人が話してくれればいいんだが………」

 

 

「無理でしょうね」

 

 

「「「「はぁ~」」」」

 

 そう言って溜息を吐く三大勢力のトップ達だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~その頃 駒王街のホテル街~

 

 

「あっ朱乃さん、此処はその」

 

 ここは大人が利用するホテルの集う様な場所なのだが、一誠と朱乃がいた。何故此処に居るかと言うと……朱乃が突然、デートして欲しいと言うので2人で出かけたのだが……リアス達も恋する乙女なので気になる訳で、後を追い掛けた。それに気付いた朱乃は一誠の手を引き走り出した。そして現在に至る訳だ。

 

 

「いいよ……一誠が望むなら」

 

 と顔を真っ赤にして一誠の手を掴む朱乃。何時もはドSお姉さん系だが、今の朱乃はかなりしおらしい。しおらしい朱乃が可愛く見え自分の衝動を何とか抑えている一誠。このまま流されてはいけないとなんとか理性で抑え込んでいる。

 

 

「ホホホ、こんな所で何をしておる若いの」

 

 吹きかえると、そこにはオーディンがいた。

 

 

「オーディン様!?何故此処に?!」

 

 

「零を愛で……コホン、日本神話との会談の帰りにおっぱぶに寄っての……」

 

 

「オーディン様、此方に居られまs……朱乃?」

 

 そこに現れたのは、オーディンの警護をしていたアザゼルの部下であり、朱乃の実の父バラキエルだった。



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EP78 復活

 ~高天原 天照の神殿~

 

 高天原の頂点、太陽神・天照、月の神・月読、荒ぶる神・素戔嗚は珍しく真剣な顔をして顔を合わせていた。この様な真剣な表情をしているのは先の三大勢力の会合以来ではないだろうか。

 

 

「………では会議を始めましょう」

 

 キリッとした表情で天照がそう言うと素戔嗚が立ち上がった。

 

 

「今回の議題は………【零の写真撮影で使うのはどの衣装にするかについて】だ」

 

 高天原の他の神々が見れば「えっ?なにそれ?」と言うだろう。まるで高天原今後の方針を決める為の重要な会議をしている様な光景なのだが、内容は写真撮影をする為に零にどの衣装を着せるかという何とも私的なものだ。

 

 

「私は子供の方にはメイド服を、赤子の方にはこの掛け着がいいと思う」

 

 そう言って月読は、どこからともなく紫をメインにしたメイド服と桜柄の掛け着を取り出した。完全に女物で、零のサイズである。

 

 

「姉貴、確かに女子の格好をさせるのも可愛いが………零も男だ!男らしくこの鎧とこの掛け着だ!」

 

 素戔嗚が取り出したのは蒼をメインにした小さな鎧兜一式と龍の絵柄の青い掛け着だ。これもまた零のサイズである。

 

 

「ふっ……フフフ、彼方達もまだまだですね」

 

 天照はそう言い、立ち上がると何時の間にか横に置いてあった箱の中から出したのはサイズは違うが天照が着ている服と同じ物だ、後赤子用のフリフリのついたベビードレスだ。

 

 

「なぁ!?お揃いだと!!」

 

 

「そっそんなの反則だぁ!!」

 

 どうやらお揃いという事が本人達には重要の様だ。基準が全くと言っていいほど分からないが……。

 

 《パチっ》

 

 指を鳴らす音が聞こえると、黒い焔が服を燃やした。

 

 

「ぁあ!夜なべして創った服が!?」

 

 

「「着ませんよ」」

 

 三貴士達が振り返ると、何時も通りの銀髪の零『分身』と黒髪の零『半身』がいた。2人とも子供と赤ん坊の姿ではなく元の高校生の姿に戻っていた。服装は駒王学園の制服だ。

 

 

「「「零?どうして元に!?」」」

 

 零がこんなにも早く元に戻るとは思わなかった様だ。

 

 

「俺だって学習しているんです。前の時は1ヶ月掛かりましたんでね、記憶がないで分かりませんが……母様達の事です、俺に色々としてるでしょう?」

 

【分身】が視線を向けると、三貴士達の眼が泳いでいる。

 

 

「我が分裂するのは、2つに別れた身体と心を無理矢理1つに戻す時に殆どの力を使ってしまうからです。こんな時の為にアーシアに渡した十字架に宿るジャンヌや白音達の首輪のライガーたちに力を分割しておいたんです」

 

 零が行ったのは、アーシアや白音、黒歌達に渡しているジャンヌやライガーゼロの依り代に力の一部を預けておき、それを取り戻す事で零は元に戻ることが出来たと【半身】は説明した。

 

 

「はぁ……流石にあのクソアマを倒す為とは言え、【神殺し】まで持ち出したのはやり過ぎたか?」

 

 

「いやぁ完全に頭に血が昇ってたなぁ……ちょいと反省だ」

 

 2人の零はそう言いながら、笑っている。

 

 

「「あっ母様」」

 

 

「なんですか零………はてっ何でしょうその手は?あっおやつですか?」

 

 天照に声を掛けると、2人の零は手を出した。

 

 

「「出して下さい」」

 

 

「なっ何をですか?」

 

 

「「写真」」

 

 その言葉に天照は視線を逸らした。気が付かなかったが、天照の胸の辺りを見ると妙に膨らんでいる。

 

 

「「大人しく渡して下さい」」

 

 

「はっ母から楽しみを奪うというのですか!?折角、撮ったのに!!」

 

 天照は胸を庇う様にしている。どうやらあの膨らみは写真の様でかなりの量がある様だ。

 

 

「「勿論、姉上と叔父上もですよ」」

 

 

「「ヴぇ?!」」

 

 月読と素戔嗚はその場から去ろうとしていたが、零に声を掛けられた事で変な声を上げてしまう。

 

 

「これはその」

 

 

「俺達の宝物であって……だな」

 

 2人も渡す気はないらしい。だが零も下がる気は全くない様で、強気でいる。彼にとっては残したくないものなのだろう。

 

 

「母様、大人しく」

 

 

「渡して下さい」

 

 ジリジリと迫る2人の息子に後退る天照。妹と弟の2人は隙を見て逃げ出そうとしたが…。

 

 

「「メモリーコード:天の鎖」」

 

 記憶の力で神を縛る天の鎖を呼び出し、月読達を縛り上げた。

 

 

「逃げようとしても無駄です」

 

 

「さぁ、母様。渡して下さい」

 

 

「ッ……これは可愛いい息子の記録なのです!親として子の成長を記録するのがいけないというのですか!?」

 

 天照が言うことも分かる、親として子供の事を記録として残して置きたいのは親心と言うものだろう。

 

 

 

「母様が言うことも理解しています。それだけ俺の事を愛してくれているのでしょう」

 

 

「しかし、母様達の趣味で女装やらコスプレをさせられる此方の身にもなって頂きたい」

 

 

「「あまつさえ、仕事と称した写真整理で、本来の仕事をしないと原初世界の神々に怒られるのは俺なんですよ」」

 

 

「零を怒るですって!?」

 

 

「私の弟に対して…許せん!」

 

 

「誰だ!?俺が直々に斬ってやる!」

 

 

「「自分達が原因でしょう!反省して下さい!」」

 

 息子(弟)にそう言われ申し訳無さそうに頭を下げる三貴士達。

 

 

「さぁ母様、渡して下さい」

 

 零は手を出し、天照に近寄る。

 

 

「うぅ……」

 

 今にも泣きそうな母を見て流石にやり過ぎたかと思った2人の零は互いに顔を見合わせる。

 

 

「母様、大人しく写真とメモリーを渡してくれれば」

 

 

「子供の姿で今度、御出掛けしましょう」

 

 それを聞くと天照は顔を上げる。

 

 

「……それは1人ですか?」

 

 

「母様がお望みなら」

 

 

「分身と半身に別れます」

 

 

「写真とカメラのメモリーです!」

 

 先程まで追い詰められていた者と本当に同一人物……同一神なのかと想うくらい早い切り替えだ。

 

 

「「次いでに姉上達のも取り上げて下さい」」

 

 天照の視線が妹と弟に向けられ、一瞬の内に縛られている2人の服から写真とカメラを抜き取り零に渡した。

 

 そして天照が指を鳴らすと天の鎖が消えた。

 

 

「姉さんの裏切り者!」

 

 

「姉上の裏切り者!」

 

 

「血を別けた妹弟よりも血肉を別けた息子の方が可愛いいのです」

 

 自分だけ零と御出掛けなんてズルい!と2人の目線が言っている。

 

 その様子を見ながら分身と半身は写真とメモリーを自分の管理する異空間に収納した。何故直ぐに破棄しないのだろう?

 

 ーコレは、コレで使い道があるーとの事です。

 

 

「「ん?……成程」」

 

 分身と半身はそう言うと、互いの手を合わせた。すると半身が闇に代わり分身と1つとなった。

 

 

「ふぅ……母様、姉上、叔父上、俺は用がありますので行きます。後、アーシア達が何故か気を失って彼方の部屋に寝かせてますので宜しくお願いしますね」

 

 零はそう言うと何処かに行ってしまう。

 

 

「「「?」」」

 

 天照達は何のことかと思い、隣の部屋を見てみると顔を真っ赤にし、気絶しているアーシア、白音、黒歌、ギャスパー、何事も無いかのように絵本を読んでいるオーフィスを発見した。



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EP79 親子

 ~兵藤家 和室~

 

 一誠と朱乃はデート中、リアス達を撒く為に走った結果……大人のホテル街に辿り着き必然か、それとも偶然か……そこで出会ったのは北欧神オーディン、そしてオーディンの護衛の堕天使……朱乃の実父バラキエルだった。

 

 流石に話し合いの出来る場所でないので、改装した一誠の家の和室にやって来たのだが……。

 

 

「「「………」」」

 

 無言の沈黙が痛い。

 

 

「朱乃……何故そこの赤龍帝と逢引きしていたのだ?」

 

 

「着やすく名前を呼ばないで下さい……私が誰と何処に居ようと貴方に関係ありませんわ!」

 

 

「関係なくなどない、私は父として…「私は貴方を父と思った事などありません!」」

 

 朱乃はそう言うと、その場から立ち上がり出て行こうとする。襖を開いて部屋から出ようとしたが、目の前には此処にはいない筈の者が居た。

 

 

「れっ零?!」

 

 

「えっ…あっ……貴方が何故此処に?」

 

 

「ん……何処から入って来たか?玄関からだ……木場が出て来た時は驚いたが、ぁあ…爺が木場にセクハラしようとしてたのでボコっておいたぞ」

 

 そう言って零が後ろを指差すと、タンコブを作り床に倒れているオーディンがいた。

 

 

「でっでもなんで家に?」

 

 

「ぁあ?お前じゃなくて、姫島朱乃に話しが在って来たんだ」

 

 

「私に?」

 

 一体何の話なのだろうと一同は思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 机を挟み、バラキエル、朱乃、一誠、零が座っている。

 

 

「まぁ……姫島朱乃よ、お前の気持ちも分からんでもない。そこに居る堕天使は一応お前の父親だろう?」

 

 

「母さまを見殺しにした男など父と思った事はありません!!!」

 

 

「ッ!!!」

 

 バラキエルがその言葉を聞くと、苦悶の表情に変わる。朱乃は直ぐに出て行こうとするが、襖は開かない。

 

 

「これは……結界……どういうおつもりですか天王理君!?」

 

 この場には零の結界が張られたので、出る事ができない様だ。

 

 

「落ち着かんか……話し合いが終わるまで、お前を此処からはださん。無理にでも出るなら構わんぞ、まぁ出来ればの話だが」

 

 にやっと笑みを浮かべ出されたお茶を啜る零。朱乃は思案するが、此処は大人しく零に従うようにした様で渋々一誠の隣に座る。

 

 

「別に俺は嫌がらせの為に此処に来たんじゃないんだ……俺はそれほど暇じゃないしね」

 

 

「……それで……日本の太陽神の御子が、御自分がお嫌いな悪魔の家になんの御用なんです?」

 

 

「ぉう……そう睨まんで欲しい、出来れば君とは仲良くしたいんだ……」

 

 

「ムッ!まさか朱乃をねr「一先ず黙ってろ、馬鹿父」ぐほっ!?」

 

 零が朱乃を狙っていると勘違いしたバラキエルを蹴り飛ばし黙らせた。

 

 

「全く……元はと言えば貴様が悪いのであろうバラキエル。貴様が今まで娘と真摯に向き合わなかったからこのような事態になっているのだぞ」

 

 

「うぐっ!?」

 

 

「姫島朱乃とお前の間に何が在ったかは聞いている。話を聞けば一番悪いのはお前だ馬鹿烏!」

 

 そう言って零はバラキエルを指差した。

 

 

「お前と姫島朱璃が愛し合い、姫島朱乃が産まれた。だがお前は考えておくべきだった、五大宗家の神社の娘が堕天使の子供を産んだとしれば一族の者がどう動くかと言う事を」

 

 

「ちょっ……ちょっと待て!零!何が何なのか訳が分からないんだけど………」

 

 黙っていた一誠が訳が分からないので声を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五大宗家……古くより日本を妖怪や魑魅魍魎から守護してきた5つの一族。朱乃の母、姫島朱璃は五大宗家、「朱雀」を操る【姫島】の人間だ。

 

 朱璃は一族の中でも優れた術者であったが、傷付き倒れている堕天使の幹部バラキエルを助け、手厚く看病した末、2人は恋に落ち結ばれた。そして朱乃が産まれたのだ。此処まではいい話だ……しかし本人達以外…つまり姫島家の人間はそうは思わなかった。一族の人間が堕天使が子を孕まされたなどと聞けば快く思わない人間がいる。

 

 そして十数年前に事件は起きた、姫島家の人間が家に押し入り朱乃を始末しようとしたのだが……朱璃は拒否した。

 

 

『この子は渡しません!この子は私の大切な娘!そしてあの人の大切で、大事な娘!絶対に!絶対に渡しません』

 

 

『憐れな……黒き天使に心まで汚されてしまったか……致し方あるまい』

 

 朱璃は朱乃を庇い斬られた。そして一足遅くバラキエルが到着し術者達を殺害したのだが……そこで見たのは、変わり果てた最愛の妻と母の血に塗れる朱乃の姿だった。

 

 

『朱乃……朱璃……』

 

 

『触らないで!』

 

 朱璃に触れようとしたが、朱乃の声でバラキエルは止まった。

 

 

『どうして!?どうして母さまのところにいてくれなかったの!?ずっと待ってたのに……今日だって早く帰るって……本当はお休みだって言ってたのに!お父さまが居てくれれば、母さまは死ななかったのに!』

 

 そう言われてバラキエルは何も言えなかった。自分が今日此処にいればこの様な事にならずに済んだ、少なくとも朱璃が死ぬようなことはなかったのだと。

 

 

『あの人達が言ってた!父さまが黒い天使だから悪いんだって!黒い天使は悪い人なんだって!……嫌い!嫌い!こんな黒い翼大嫌い!皆嫌い!』

 

 バラキエルが悪い訳ではないが………小さい朱乃には目の前で母を失った事で心に余裕がある訳がなかった。それから朱乃は一族の追ってから逃げる日々だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とまぁ……こういう訳だ」

 

 

「朱乃さん……」

 

 

「ッ……」

 

 一誠は話しを聞いて朱乃の方を視線を向ける。

 

 

「ん?……ちょっと待てよ、レイがなんでそんな事知ってんだ?」

 

 

「聞いたから」

 

 

「誰に?」

 

 

「誰だと思う?」

 

 

「分からないから聞いてるんだけど……」

 

 零は立ち上がると、深呼吸する。そしてその身に宿る力を活性化させていく。

 

 

「今から起きるのはただの一刻の奇跡………この果てに、お前がどういう選択するか見せて貰うぞ姫島朱乃。『世界を構成する総ての存在よ、世界の理よ、原初の神の子である我に従え!【世界は神の意のままに(ワールティング・ザ・ゼロ)】』」

 

 零の身体より放たれた光と闇が世界を侵食し、白と黒で一面が染められた。

 

 

「なっなんだこれは!?」

 

 

「どうなっている!?」

 

 驚いている一誠達を余所に零は以前にギャスパーの時に使った人形を取り出した。

 

 

「我が冥界より呼ぶのは1つの魂、人形を依代として我は身体を与えよう」

 

 零の言葉と共に何処からか光球が飛来する。飛来した光球は人形に取り込まれると、周りの光と闇が人形に取り込まれていく。

 

 ギャスパーの時にも使用した死者を蘇生させる術……どの様な世界でも最も禁忌とされる術。本来なら成功するはずのない、神でも一部の者にしか許されない禁術………世界は神の意のままに(ワールティング・ザ・ゼロ)により世界の理を従えた零だからこそ成功する事である。だがこの禁術を行うには幾つか条件がある。

 

 1つ目は、蘇生に必要不可欠な死者の魂を冥界より呼び出すこと………だが魂を呼び出すには冥界の神の許可を取る必要があり……本来ある冥界に居るべき魂を現世に呼び出すには代償がいる。それは冥界の王である素戔嗚に頼めばいい、その為に子供の姿になってまで【お願い】したのだ。それに加え【お出かけ】だ、素戔嗚にとってはこれ以上にない代償だ。本来は1つの命だけでは賄えない程の代償が必要なのだが……。

 

 2つ目は、一時的にしろ蘇生させるのであれば依代がいる。今回は人形を用意したが、この人形には()の血、金、聖水など人間の間では貴重な物が使用されている。これについては()の血以外は用意しようと思えばできる。

 

 3つ目は、失った命を蘇生させる為に世界の理を変える為の代償。これは簡単ではない、世界の理を一時的にでも変える事など神でも簡単ではない。

 

 4つ目は、依代に魂を定着させ肉体を復元させるという術式。

 

 3つ目、4つ目は世界は神の意のままに(ワールティング・ザ・ゼロ)の力によりクリアしている。世界は神の意のままに(ワールティング・ザ・ゼロ)の効果は、世界の理も、何もかも思うがままとなる。

 

 

「さぁ…汝が生きている内に言えなかった言葉を伝えると言い。その男と娘にはお前の言葉が必要だ」

 

 現れたのは朱乃とそっくりな女性、この女性こそ姫島朱璃。バラキエルの妻であり、朱乃の母だ。

 

 

「大いなる太陽神の御子様、この度は夫と娘と話し合う機会を与えて頂き感謝いたします」

 

 朱璃は目を開け、零の姿を見ると礼を言い頭を下げる。

 

 

「ただ我は必要だと思う事をしているだけのこと。我がそうで在った様に……姫島朱乃にも母たる貴女の言葉が必要なのです、我はただその手助けをしただけですよ」

 

 零はアスティアの時もそうで在ったが、朱璃に対しても尊敬の念をもって接する。零は知っているからだ……母の偉大さ、強さを……特に異なる血を宿す者の母は強いのだ、身体的や力的な事ではないその心が…魂が強い。故に零は例え相手が自分の何万分の一しか生きていない人間であっても、敬意をもって接する。

 

 

「我への言葉よりもそこで固まっているばk……コホン、お髭のダンディーなおじさんと貴女に似た美人の娘が待ってますよ」

 

 

「ありがとうございます」

 

 朱璃は再び零に一礼すると、バラキエルと朱乃の方を向いた。

 

 

「貴方……朱乃」

 

 

「えっ……あぁ……しゅ……朱璃?」

 

 

「おっ……母さま?」

 

 2人は目の前で起きた事が理解できずに完全に固まっている。というより本当に現実なのかと思って居る様だ。

 

 

「言っておくが、これは夢でもなければ幻術でもない。目の前に居るのは正真正銘の姫島朱璃だ、我がこの身を呈した代償(幼児になって素戔嗚と買い物と言う意味)を支払って冥界より呼び出したんだ。ゆっくり話し合うといい……と言っても此処では話しあいのできる雰囲気じゃないか」

 

 零が指を鳴らすと、辺りの風景が何処かの家に変わる。朱乃は此処に見覚えが在った。

 

 

「此処は……私の家?」

 

 

「お前の記憶を読み取って再現したんだ、後は家族団欒としてくれ。時間は1週間、此処での時間と外との時間は違うから気にせずに過ごしてくれ。おい一誠、俺達は邪魔になるから行くぞ」

 

 

「えっ何処へ!?」

 

 零は一誠の腕を掴むと、引き摺って何処かに消えてしまった。



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EP80 母

 零の世界は神の意のままに(ワールティング・ザ・ゼロ)により呼び出された朱乃の母親、姫島朱璃。

 

 零は一誠と親子水入らずで話をさせる為にその場から離れていた。

 

 

「なぁレイ」

 

 

「なんだ?」

 

 

「なんで死んだ筈の朱乃さんのお母さんが?」

 

 

「俺が冥界から呼んだから……姫島朱乃にはどうしても父親であるバラキエルと母親である姫島朱璃の言葉が必要だからだ」

 

 

「どういうことだ?」

 

 零の言葉が良く分からない一誠。

 

 

「お前には分からんだろうが………俺や姫島朱乃にとって父親や母親って言うのは本当の意味で味方なんだ」

 

 

「父さんや母さんは普通、子供の味方だろう?」

 

 

「はぁ……そうだな……だが俺達の様な存在からすれば……まぁ言っても分からんだろう。取り敢えずは見守ろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~零により作り出された朱乃逹の実家~

 

 朱璃は戸惑っている朱乃とバラキエルの手を引いて家の中へと入って行く。朱璃は玄関に入ると、2人の手を離し振り返った。

 

 

「しゅ……り」

 

 

「かあ……さ…ま」

 

 

「朱乃……あなた…おかえりなさい」

 

 それは昔と変わらない笑顔、朱乃とバラキエルが失ってしまった決して戻らぬ筈のもの。だが零の想いにより起きた奇跡により、この時だけ蘇えった。

 

 

「あぁぁぁぁぁ…朱璃!」

 

 

「母さま!」

 

 2人は()の胸に飛び込んだ。そして感じる、失われた筈の温もりを。

 

 

「た…だい…ま。済まなかった……朱璃、私が……私がもっと早く……いやあの日、あの時、家に居さえすればぁ!!」

 

 バラキエルの最大の後悔、朱乃と朱璃が襲われた日の事だ。本来なら、堕天使の仕事は休みの筈だったが急用であった為にアザゼル直々に呼び出しが掛かった。

 

 あの時、自分がそれを是が非でも断っていれば朱璃を救える可能性があった。そして朱乃の心に深い傷を負わせる事もなかった………それだけ長い時を生きた中で彼の最大の後悔だ。

 

 

「あなた……私はあなたの事を恨んでなんていません。あなたがあの時、居なかったのは偶然です。あなたにはあなたの務めを果たした………それに私は後悔はありません」

 

 朱璃にとっては、あの事件は起こるべくして起こったことだと考えていた。朱璃自身も朱乃を産んだ時から、何時かあの事件が起こると思っていたのだろう。朱璃の立場とバラキエルの立場を考えれば当然の事だろう。

 

 

「朱乃……ごめんなさい、貴女を残して逝ってしまって」

 

 

「違う!母さまは何も悪くない!悪いのは……悪いのは私……私がいたから…私が産まれたから」

 

 今にも消えそうな声でそう言う朱乃。

 

 朱乃は自分さえ、居なければ母が死ぬ事はなかったのではないかと考えていた様だ。

 

 

「いいえ、朱乃。そんな事はないわ……私は貴女を産まれて後悔なんてした事ない、だって貴女は私と私が愛したこの人との可愛いくて……愛しい娘なのよ。だからそんな事を言わないで」

 

 朱璃はゆっくりと朱乃の頭を撫でる。

 

 

「貴女が私のお腹に宿った日…それを知ったこの人が泣いて喜んだこと…私のお腹を始めて蹴った日のこと……貴女が産まれた日のこと、初めて貴女が笑った日のこと、立った日のこと、私やこの人の事を父と母と呼んだ日のこと……貴女と過ごした日々は私にとっても、この人にとっても宝物よ。それに……私は貴女の母親……母親として貴女を守れたんですもの……後悔なんてないわ」

 

 朱璃は母親として朱乃の成長を見届けたかっただろう………しかし彼女はその身を呈して愛する娘を守った。母親として娘の命と未来を守ったのだ、それに後悔があろう筈がない。

 

 

「朱璃…」

 

 

「母さま…」

 

 

「さぁ……入りましょう……私達の家に」



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EP81 朱璃との別れ

 ~零と一誠のいる空間~

 

 零は何処から出したのか分からないが、大きなソファーに腰掛けている。

 

 

(一先ずは元の鞘に収まったかな………)

 

 意識の半分を朱乃達に向けて様子を見ている。その様子を見て、笑みを浮かべている。

 

 

「なぁ、レイ」

 

 隣の椅子に座っている一誠が零に話し掛けた。

 

 

「なんだ?」

 

 

「さっき、人を甦らせるのは世界の理を変える為に凄い代償が必要だって言ってたよな?」

 

 

「あぁ、神々ですらもそう簡単には行えない程のな」

 

 

「ならレイは何で、朱乃さんの為にそんな事をしたんだ?」

 

 

「不思議か?」

 

 

「あっ……あぁ、お前が朱乃さんやギャスパーに妙に肩入れしてるけど」

 

 

「あぁ……俺も半分は人間だ。人間の捨て子だった俺を拾い育ててくれたのが母様。それで死にかけた事があってな、色々と制約があって俺を助けられなかった」

 

 

「はぁ!?」

 

 一誠は驚きの声を上げる。なら何故、零は此処にいるのだろうと考えたのだ。

 

 

「母様は俺を助ける為に、俺を魂と肉体に分離させて自分の中で再び1つにして俺を腹に宿し、本当の子にした。だから他の神からすれば穢れた存在だ………【忌み子】【神を堕落させた者】【穢れた子供】【化物】その他にも色々と言われたよ。時には石を投げられ、剣を向けられ、暗殺されかけた事もあったな」

 

 零は指を何もない空間に向けると、そこに零の話す光景が映し出される。

 

 

「でもなんで……そんな、子供を」

 

 一誠にはそれが理解できなかった。例えどんな生まれとは言え、子供を蔑むだけでなく殺そうとするなど通常は考えられない事だったからだ。

 

 

「……姫島家にとって、直系である姫島朱璃が堕ちた天使であるバラキエルの子供を産むと言う事は、家そのものが穢れるという考えだ。だからこそ姫島朱乃を始末しようとした。その様な輩だ………俺の場合も同じだ、俺自身が穢れであり、俺が消えれば母様が浄化され、元に戻ると考えたんだろうさ…………一誠、そんな俺達はどうなると思う?」

 

 

「どうなるって………」

 

 一誠はそう言われ、考えてみるが思いつかない。

 

 

「道は2つ、誰かに支えられ自分の道を往く。もしくは壊れて総てを壊そうとする。前にも言ったが、混血の力は特異で凄まじい物だ。物によってはそれこそ世界をぶち殺す事だってできるだろうさ、実際俺だって母様や叔父上、姉上がいなかったら………目の前にあるもの全部壊してただろうな、例えばそうなった俺が此処に居たら…………お前は今頃ミンチになってるかもな」

 

 一誠はそれを聞くと、顔を引き攣らせ若干その身を退いた。零はしない、しないと手を振る。

 

 

「俺には母様達がいた………でも姫島朱乃やギャスパーには本当の意味で支え、愛してくれる存在が居なかった。まぁ正確にはいたが、近くにいれなかっただがな。だから俺が会わせただけ………俺は一度堕ちた、彼女達にはそうなって欲しくないだけだ」

 

 

「えっ……それってどういう」

 

 

「おっ…………来たか」

 

 零がそう言い、立ち上がると目の前の空間が割れ、そこから朱乃達が出て来た。

 

 

「そっちの時間で1週間、家族でゆっくり過ごせましたか?」

 

 

「はい、お蔭様で」

 

 朱璃に話しかけ、彼女は笑みを浮かべそう答えた。零はそれを受けると「良かった」と呟き、目を細める。

 

 

「1週間?でも俺等が此処にいたのは数時間じゃないか」

 

 

「此処と向こうと時間の流れが違う………こっちでの数時間は、姫島朱乃のいた空間では1週間だ。まぁ色々と在るんだよ………さて、そろそろ時間ですね」

 

 一誠の言葉に零がそう答えると、朱璃の身体が薄くなっていく。もう朱璃が此処に居れる時間がないと言う事だろう。

 

 

「えぇ……貴方様のお蔭で、娘と夫に想いを伝える事が出来ました。本当になんと感謝すればいいか」

 

 

「いやいや気が向いただけですよ………では道を開きます」

 

 零がそう言い、扇子を取り出し何も無い空間に向けると無数の髑髏で形成された門が現れた。

 

 

「なっなんだ、この門は?!すっげぇ怖い……」

 

 

「何かこう……本能的な恐怖を感じますわね」

 

 一誠と朱乃がそう呟いた。

 

 

「そりゃそうだ、これは冥府へ続く門だ。つまりは【死】の象徴とも言えるもんだ。生きている奴にとって本能的に恐怖するのは当然だ……俺や既に死んでいる朱璃殿にとってはなんら問題ないがな」

 

 

「でもレイだって、生きてるだろ?」

 

 

「俺だから問題ない」

 

 

「えっ何それ?」

 

 

「さて、それはさて置いて……そろそろ刻限です」

 

 零は一誠を置いて、朱璃の方に目を向けた。

 

 

「レイ、朱乃さんの御母さんって生き返ったんじゃないのかよ?!」

 

 

「一時的にな……本当に蘇らせる方法はあるが、【今の】俺には使えない。姫島朱乃とバラキエルには朱璃殿の言葉が必要だったから、一時的に蘇らせただけだ」

 

 

「えっそうなのか……でもレイなら生き返らせるんなら何とかなんないのか?!折角会えたのにこんな別れなんて…」

 

 一誠は自分の事の様に悔しそうな顔をしている。

 

 

「いいえ、いいんです。私は死者……在るべき場所に還るのは必然な事ですわ。貴方が一誠くんですね?」

 

 朱璃はそう言うと、一誠へと近付き、ジッとその顔を見つめている。

 

 

「えっ……えっと」

 

 

「フムフム……流石、私の娘。男を見る眼はあるようね」

 

 

「そうでしょう、お母さま」

 

 朱乃と朱璃の言葉が全く分からない一誠。

 

 

「一誠くん」

 

 

「はっはい!」

 

 

「貴方の事は娘から色々と話は聞いてます。朱乃の事をお願いね。あの子、あぁ見えて弱い所もあるから……親の欲目から見てもかなり美人だし、料理も上手い、他の家事もできる………貴方の大好きな胸も結構大きいわ」

 

 

「はっはい!朱乃さんのおっぱいは最高です!とても柔かかったです!」

 

 

『ゴゴゴゴゴゴゴッ』←?

 

 

「だっ大丈夫です!御母さん!朱乃さんは俺が守ってみせます!」

 

 

「フフフ、貴方の様に、誰かの為に喜べて、悲しめる人なら娘を安心して任せられます。これからも娘を頼みますね」

 

 

「はい!!!」

 

 

『ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!』←?

 

 

「じゃあ、アナタ、朱乃……私は本来居るべき場所に戻ります、でも何時でも私は2人を見守っていますから」

 

 

「はい」

 

 

「あぁ」

 

 朱乃とバラキエルは涙を流す事なく、朱璃を笑顔で見送る。既に話は終わっている、伝えるべき事も伝えれた、2人とも触れ合えた、成長した娘と愛した夫も仲直りできた、故に朱璃も別れに涙を流す事なく笑顔で逝ける。

 

 朱璃はゆっくりと冥府へ続く門へと歩を進める。それに呼応する様に、門は開く。その先には坂がある……この坂こそ「黄泉平坂」と呼ばれる黄泉への道だ。

 

 朱璃が門を潜ると、ギギギッと音をたてて門は閉まっていく。そして完全に門は閉じ、門自体もその場から消滅した。

 

 

「ふぅ………逝かれたか」

 

 

「天王理くん」

 

 零は朱乃に声を掛けられた。

 

 

「何かな?」

 

 

「母と再び言葉を交わせたのも、父さまと仲直りできたのも貴方のお蔭です。本当になんと感謝すればいいか」

 

 

「私からも礼を言わせて欲しい」

 

 朱乃とバラキエルは零に礼を言った。感謝してもしきれないだろう。

 

 

「俺は俺のしたい事をしただけだ……姫島朱乃、絶望にだけは墜ちないでくれよ。堕ちればそこから這い上がるのは容易な事ではないからね………さてと」

 

『パチッ』

 

 零は朱乃にそう言うと、指を鳴らした。すると周りが元の兵藤家の和室へと戻った。

 

 

「俺はオーフィス達を愛でるのに忙しいので帰る。後、結界での時間とこっちでの時間の流れは違ってる、こっちでは数分しか経ってないから安心しな。爺は俺が連れて帰るから、ごゆっくり」

 

 零はそう言うと、襖を開けて出ていく。一誠達も続いて出ていき、時計を見てみると本当に数分しか経ってないのに驚いていた。

 

 

「おらっ帰るぞ、爺。じゃあな、一誠。生きてたらまた会おう」

 

 零はそう言言いながら大きなタンコブが出来ているオーディンを肩に担ぐと、その場から消えた。そしてこの時、零が麻婆神父の様な顔をしていた事は誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?生きてたらって……変な事言うな、アイツ」

 

 

「さて赤龍帝」

 

 一誠はバラキエルに声を掛けられ振り返ろうとした時、殺気を感じその場から飛び退いた。その後、直ぐに一誠の立っていた場所に光の槍が突き刺さっていた。

 

 

「いっ一体、何をするんですか、お父さん!?」

 

 

「誰がお義父さんだぁ!?貴様にお義父さんなんて呼ばれる筋合いはない!私は認めんぞ!!!しかも嫁入り前の娘の胸を揉んだだと!?」

 

 完全にキレているバラキエル。先程から『ゴゴゴゴゴゴゴッ』と言う音はバラキエルの殺気と魔力の様だ。彼が怒っている理由は凄く簡単だ。

 

 先の戦いでロキと一誠達は三大勢力の中でも有名な存在となった。「乳を揉んでパワーアップ」「突いて更なる覚醒」等々の活躍を見せた一誠、バラキエルの耳にもその話は入ってきていた。その様な男に惚れている朱乃……そんな男を娘に近付けたくないのは父親としては当然の反応だろう。それに加え、朱乃の胸を触った事を自白した一誠に対して怒りを向けたのは必然なのだろう。

 

 零はそれを察していたため、「生きていたらまた会おう」と言った。

 

 

「朱乃が欲しいなら私を倒してからにしろ!!!」

 

 

「ちょっと待って……朱乃さん!助けて!?」

 

 

「一誠くん……信じてますわ、お父さまに勝ってくれるって」

 

 

「でぇぇぇぇ!?」

 

 

「朱乃の乳を揉んでパワーアップ?!突いて禁手化だと!?嫁入り前の娘をよくも汚してくれたな!!!此処で殺「一誠くんに何か在ったら、絶縁します」………半殺しくらいにしておく」

 

 朱乃に言われて、少し考えそう言い直したバラキエル。

 

 はてさて……一誠は生き残れるのだろうか?それはまさに神のみ……悪魔なので魔王のみぞ知ると言う所だろう。



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第6章 体育館裏のホーリー
EP82 現れた悪魔の貴公子


 ~駒王学園~

 

 ロキの事件………朱乃と朱璃の再会から少し経った頃、夏休みも終わり二学期が始まった。一誠もどうやら生き残った様で登校していた。

 

 零や日本神話と悪魔側との関係は悪い方向に進んでいるが、零自身は転生悪魔である一誠や朱乃逹とは事を構える気はないらしい。零本人は純粋な悪魔……リアス達を嫌っているが、それは個人に対してだけか、悪魔と言う種族に対してなのかは未だ不明である。

 

 そんな中で転生天使となった紫藤イリナがこの駒王学園へと転入してきた。美少女が転校してきたので、一時的に騒ぎになった。特に一誠は幼馴染と言う事で、クラス中の男子達に嫉妬と羨望の眼で1日中睨み続けられた。

 

 放課後になると、一誠の家に集まっていた。

 

 零は行くつもりはなかったものの、アーシアがイリナとどうしても話をしたいと言う事で着いてきたのだ。

 

 

「えっとそう言う事で、転生天使の紫藤イリナです。悪魔の皆さんとは色々とあったけど、これからも仲良くして下さいね」

 

 と挨拶するイリナ。天使側も悪魔と堕天使と協定を結んだので争う事はない様だ。だがそんな事は零にとって関係ない。

 

 

「さて……紫藤イリナとか言ったか、コカビエルの事件の時は色々とアーシアの事を侮辱してくれたっけ」

 

 零は以前にイリナとゼノヴィアがアーシアの事を異端や魔女などと言った事を覚えていた。イリナとゼノヴィアは笑顔の零の方に視線を向けた、完全に目が笑ってない。

 

 

「えっと……アーシアさん!あの時は本当にごめんなさい!!!」

 

 イリナはアーシアに言った事を思い返し、直ぐにアーシアに謝罪した。

 

 

「どうする、アーシア?お前が許せないなら、俺が八つ裂きにするけど」

 

 

 《アーシアたんを侮辱したって!?アーシアたん、俺様がそんな天使倒す!》

 

 アーシアの髪の中から小さくなったファーブニルが出て来た。彼のドラゴンもイリナがアーシアを侮辱したと聞いて出て来た様だ。

 

 

「ぜっ零さん!ファーちゃん!私は気にしてませんから!イリナさんも顔を上げて下さい」

 

 ファーちゃんと言うのはファーブニルの事の様だ。

 

 

「アーシアがそう言うなら……おい、トカゲ!何処から出て来てんだ!」

 

 零はファーブニルを掴み上げると、アーシアから引っぺがした。

 

 

 《ぁ~!楽園から離さないで、死ぬ!?アーシアたんの匂い嗅いでないと死んでしまう!》

 

 零の手の中でそう叫びながら、もがいているファーブニル。

 

 

 《その声……その力、まさかお前ファーブニルか!?》

 

 一誠の左手の甲が光り、ドライグの声が聞こえてきた。この小さなドラゴンが五大龍王のファーブニルだと聞いて、零達以外はかなり驚いている。

 

 

 《あっドライグ、久しぶり》

 

 

 《なんで、お前そんな姿に》

 

 

 《アーシアたんと契約した》

 

 

 《はぁ?!あの財宝以外にあんまり興味のなかったお前がなんで!?》

 

 ドライグもかつてのファーブニルからは考えられない行動だったらしく驚いた。

 

 

 《始めは人工神器を作るからって言うアザゼルと宝と引換えに契約していたけど………酒・煙草臭いおっさんより、金髪超絶美少女の方がいいじゃない、だからアーシアたんと契約した。因みに対価はアーシアたんのパンツ……その場で脱いだ脱ぎたてが良かったけど、この銀髪がうるさいから譲歩したけど》

 

 

 《パンツだと!?おっお前、そんなキャラだったか?!》

 

 

 《ドライグ、俺様は真実に辿り着いた事で変わった。金髪美少女のパンツこそ世界で最も尊い至宝だと………ドライグだって、変わった》

 

 

 《心外な!俺は変わってない!》

 

 

 《でも聞いた……確か【おっぱいドラゴン】だっけ……後【乳龍帝】》

 

 

 《うわぁぁぁぁぁっぁん!その名で呼ぶなァァァァァァァ!!》

 

【乳龍帝】とは、乳を揉んだり、突いたりしてパワーアップしている一誠についた名である。また悪魔世界では一誠をモデルにした【おっぱいドラゴン】と言う名のキャラが作られた、歌まで在り、その制作にアザゼルやサーゼクスまで関わっている。正直言うと、子供には悪影響を及ぼしそうだ。

 

 かつて【赤龍帝】【赤き龍の帝王】と畏れられたドライグにとって、不本意過ぎる名前である。その名の性で、精神的に追い詰められているドライグ。更に旧友の変貌ぶりを見て更に苦しむ事になった様だ。

 

 

「まぁいい。アーシア、そろそろ帰るぞ。今日は買い出しに行かないといけないからな」

 

 

「あっそうでした、今日は私と零さんが当番でしたね……じゃあ皆さん、失礼します」

 

 零とアーシアは買い物の為に家から出ていった。

 

 

「ご主人様も居なくなったし、私達も帰るにゃん。白音、ギャスパー」

 

 

「そうですね、此処にいる意味ありませんしね……帰ろう、ギャーちゃん」

 

 

「えっあっ……うん」

 

 この場には黒歌、白音、ギャスパーもいた。ギャスパーは未だリアスの眷族悪魔である、ギャスパー自身もこのままではいけないと思っている。転生悪魔でいるか、転生悪魔を止め吸血鬼に戻るか……しかし未だその答えはでない。零からすれば転生悪魔であろうと、なかろうとどちらでもいいと考えているが……できれば吸血鬼に戻って欲しいと本心では思っていたが、ギャスパーの意志を尊重しこのままでいる。

 

 ギャスパーは家から出る前に一瞬、リアスの方に視線を向けた。ギャスパーにとって、リアスも苦しんでいた時に助けてくれた恩人で在る為に、二つ返事で眷族悪魔を止めるとは言えないのだ。

 

 

「ギャスパー……私は」

 

 リアスはギャスパーに手を伸ばそうとするが、零の言葉を思い出し手を止めた。かつて自分が彼女にしていた事は、彼女の為と思ってしていた事だがそれが彼女を苦しめていた。リアスの行動がギャスパーを護る為とはいえ、彼女の成長を止め、禍の団(カオス・ブリゲード)に利用される事になったのは事実なのだから。

 

 

「部長……ごめんなさい、ボクは未だ決められません。でも何時か必ず答えを出しますから」

 

 

「ギャスパー……貴女」

 

 そう言ったギャスパーの眼には今までの彼女にはなかった強さがあった。それを見て、ギャスパーがこんなにも力強い目した事に対する驚きと、その強さを与えたのは自分でない事に無力感を感じた。

 

 

「えぇ……分かったわ。貴女がどんな答えを出したとしても……私はそれを受け入れるわ」

 

 リアスの言葉を聞き、ギャスパーは一礼するとその場から去った。リアスは哀しい感情が沸いてきて、それが顔をに出ていたのか、朱乃や裕子、一誠、ゼノヴィア達が心配そうに見ていた事に気付いた、リアスは直ぐに表情を戻し笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~駒王街 商店街~

 

 

「零さん、今日は何にするんですか?」

 

 

「何にしようか………昨日はカレー、一昨日は生姜焼き、その前は………」

 

 

「確か、オーフィスちゃんの要望で肉じゃがでした」

 

 

「そうだったな……カレーはオーフィスと白音が食い尽くしてないし……そうだな、《ご主人様、メールです》」

 

 零の持つスマホからそう音声がなる。因みに音声は白音に吹き込んで貰った物である。白音の声である。

 

 

「重要だから二回言いましたが、何か?」

 

 

「どうしました?」

 

 

「いや何でもない………何々……『今日は新月で暇なので遊びに行きます、愛しの姉より』月姉……母様と叔父上は神無月の用意で忙しいから来れないのに、アンタだけ来たら後で大変な事になるだろうに」

 

 零はそう考えて、返信の分を打ち込んだ。

 

 

「『後で母様達にバレたら面倒なので来ないで下さい。と言うか、新月とは言え仕事あるでしょう?仕事を放ってくるなら、今度の(子供姿での)お出かけは無しで』送信っと」

 

 送信して数秒も経たない内に、メールが返って来た。

 

 

『我慢して、仕事します!なので子供の零とお出かけしたいです!』

 

 メールの文にも関わらず必死なのが伝わってくるのは、神だからだろうか?

 

 取り敢えず、月読が来る事が無くなったので安堵した零はスマホを仕舞う。

 

 

「月読お姉様も大変みたいですね……」

 

 事の次第を横で見守っていたアーシアはそう呟いた。因みに、アーシア、黒歌、白音、オーフィスは天照を母、月読を姉、素戔嗚を兄と呼んでいる。

 

 

「いや、神様がそう簡単に地上に来るのが問題だよ」

 

 

「そうなん……あっ」

 

 アーシアが段差に引っ掛かり転げそうになった。零は直ぐに動き、アーシアを受け止めれる位置に移動した。アーシアを受け止めようとするが、何者かがアーシアを後ろから抱き留めた。

 

 

「大丈夫かい?」

 

 

「あっ……はい、ありがとうございます」

 

 アーシアを助けたのは緑色の髪の優しげな雰囲気の青年だった。

 

 

「お前は………」

 

 零はアーシアを助けた青年を睨み付ける。

 

 

「待ってくれ、僕は別に戦いに来た訳じゃないんです。伝説の戦士よ……僕は彼女に会いに来たんです」

 

 アーシアを助けた男、人間ではなく純血悪魔だった。

 

 その名もディオドラ・アスタロト。ソロモン72柱のアスタロト家の次期当主だった。そして、かつてアーシアがその力で助けた悪魔で在った。アーシアが教会から追放され、魔女・異端者などと呼ばれる様になった原因でもある。

 

 しかしアーシアはそれについては後悔していない様だ。今回は先の協定の場でアーシアを見かけ、かつて助けられた事に対する礼を言いに来た様だ。

 

 だが零はディオドラに対して何とも言えない、不安を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~???~

 

 

 何処か真っ暗な空間に零は居た。その向かいには小さな人影がある。

 

 

「あの男……どうにもキナ臭いな」

 

 

『そうですね……どうにもあの笑顔の裏に何かありますね。昔、見た事があります』

 

 

「それはお前の経験か?」

 

 

『えぇ、私はこれでも星のトップ。取り入ろうとしてくる輩もいましたよ……』

 

 小さな影は笑いながらそう言った。

 

 

「もしもの場合に備えてアレを取りに来たんだ。まぁこの力まで使う必要があるかどうかは分からんが……俺の身内にッ手を出す事がどう言うことか世界に示さないといけないからな」

 

 零が小さな影の後ろを見ると、1人の男性が立っていた。

 

 

『私は君の行動を信じよう』

 

 男は零に近付いてきて、自分の首に掛かっていたペンダントを零に渡した。

 

 

「ありがとう……【    】も、もしもの時は頼むよ」

 

 

『えぇ、任せなさい』

 

 零はその言葉を聞くと、その場から消えた。この空間には小さな影と男が残った。

 

 

『それにしても、まさか貴方と再びこうして顔を合わせる事になるとは……』

 

 

『それは此方もだ、まぁ過ぎた事を言っても仕方ないだろう』

 

 

『ですね……では呼ばれるまで私達も準備をしておくとしましょう。彼がアレを使う時は、怒った時ですからね』

 

 

『あぁ……そうしよう』

 

 2つの影は会話を終えると、そのまま消えてしまった。



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EP83 二人三脚の練習。そして折れる骨。

 ~駒王学園 2年教室~

 

 

 零はこの日、考え事をしていた。と言うより作業だが……。

 

 

(このオーフィスの巫女服……アーシアのセーラー服……白音のゴスロリメイド服……黒歌の水着……ギャスパーのドレス……どれもいい感じに撮れている。ん?この写真は母様達から没収した……十二単衣、女児用の水着、シルクのドレス……ロクでもない写真ばかり。処分しよ)

 

 零が行っているのは、これまで撮った写真の整理である。授業中に何をやっているのだと言いたいが、現在は体育祭の出場種目を決める為のHRだ。HRに参加しないのもどうなのかと思うが、零にとって写真整理の方が重要なのだろう。流石、天照の息子だけはある。

 

 

(燃やしても再生されたら困るから……纏めて、虚数空間に送るっと)

 

 零は作業を机の下で行っている。自分の机の中を虚数空間に繋げるとそこに放り込んだ。虚数空間……オーフィスが元々居た、次元の狭間と言う場所ではオーフィスや特殊な存在・力を持たない限り、そこに存在し続ける事ができない。人間でも、物でも次元の狭間に放り込まれれば、消滅する。零はその性質を利用して写真を処分する事にした。勿論、天照達でさえ触れれぬ様に封印処理を施してだが……。

 

 

「ちょっと、天王理!」

 

 

「ん?桐生か……何か用か?」

 

 彼女の名前は桐生藍華。このクラスのクラスメイトで、三つ編みの眼鏡少女だ。何故か、眼鏡を通して「男についてるアレ」を数値化する能力を持つ存在。一誠を始めとする変態三馬鹿やアーシア達とも交流のある人物だ。

 

 

「何か用か?……じゃないわよ!アンタ、何に出るつもりよ!?」

 

 

「………きょh「絶対参加よ」チッ……」

 

 

「はぁ……なら二人三脚ね」

 

 

「まぁいいか……それでいいよ」

 

 桐生はそれを聞いてニヤッと笑みを浮かべる。

 

 

「良かったわね、アーシア。天王理がペアよ」

 

 

「えっ……」

 

 零は後ろを向いてみると、恥ずかしそうに手を上げるアーシアがいた。

 

 

「えっと……宜しくお願いします、零さん」

 

 

「おう……それよりも、なんでクラスの男子達は親の仇を見る様な目で俺を睨んでるの?」

 

 変態三馬鹿を含めた、男子全員から今にも襲い掛かりそうな眼で睨まれている。勿論、原因は二人三脚の事である。始めアーシアが手を上げたのをきっかけに、話しを聞いていなかった零以外の男子がこぞって手を上げ、アーシアとペアになろうとしていた。

 

 クラスの男子生徒にとって、ペアを組む事でアーシアと触れ合え………転んだ拍子に抱き着けるなどと考えていたからだ。そんな下心丸出しの男達を見て桐生は呆れ果てて、話しを聞かずに他の事をしている零を見つけ、声を掛けたのだった。勿論、それだけでなくアーシアが明らかに零に好意を持っている事を知っているので、彼女なりに友人として応援したいと考えたのだろう。

 

 

「じゃあ、練習はちゃんとしておきなさいよ」

 

 

「やるからには勝つに決まってるだろう」

 

 桐生の言葉にそう答える零なのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~放課後 運動場~

 

 

「きゃあぁぁぁ!」

 

 

「うおっと、危ない、危ない。大丈夫か、アーシア」

 

 現在、二人三脚の練習をしている零とアーシアなのだが、アーシアの運動神経はお世辞にも高いとは言えないので転んでしまうのは当然で、転ぶ際アーシアが怪我しない様に零が自分の身体を滑り込ませ、下敷きとなっている。

 

 

「うぅ、ごめんなさい。零さん」

 

 

「いや、始めはこんなもんだろう……起きれるか?」

 

 

「はっはい」

 

 アーシアが何とか起き上がると、零も立ち上がったが、アーシアが再びバランスを崩し後ろに倒れそうになる。しかし人間、反射的に立ち直ろうとする。その影響で、零の胴体に抱き着いてしまった。

 

 

 《ボキッ!バキッ!》

 

 

「ぐほっ………」

 

 骨が折れる音がした。それも盛大に……。

 

 

「ぜっ零さん、ごめんなさい!急な事で、魔力操作しちゃいました!?」

 

 

「あっうん……大丈夫。コレくらい、数秒で治る……クソッ……あの猫かぶり聖女めぇ。アーシアに余計な事を教えやがって」

 

 零の脳裏に、睨みだけで竜を黙らせる事のできる聖女が笑っている姿が思い浮かぶ。

 

 事の発端は零がアーシアの修行の為に呼んだ、聖女マルタである。ジャンヌ・ダルクと共にアーシアに修行をつけることになったマルタは、アーシアに身体を鍛える事と竜の扱い方を指導した。

 

 その中でアーシアは魔力操作に長けている事に気付き、足りない身体能力を魔力操作により補う事を思いついた。それによりアーシアは通常時の数倍の力を発揮できる様になった。今回は急な事で魔力操作を誤り、瞬間的とは言え全魔力を筋力に回してしまった。それにより零の肋骨が折れたのだ。

 

 急な事とは言え、アーシアは魔力操作に長けているのでそうそう魔力操作を誤る事はないが……零に抱き着いた事で急に恥ずかしくなった乙女の事情だろう。

 

 

「治った……よし続きだ」

 

 数秒で骨折が完治し再び、練習を始める事にした。

 

 

 《ボキッ!》

 

 

 《バキッ!》

 

 

 《ゴキッ!》

 

 

 《ベキッ!》

 

 練習を続ける度に零の身体の骨が折れていく。その度に零に謝るアーシアの声が運動場に響くのであった。

 

 

『あらっあらっ、大変ですね。でも貴方程の力の持ち主なら直ぐに治るから問題ないでしょう……と言うか、男ならそれ位我慢しなさいよ!………ゴホン……大丈夫、きっと貴方なら耐えれます』

 

 と声を掛けてくるマルタの声をきっと気の性である。




パワーバランスが分からないと言う感想があったので、少し考えてみました。

組織関係なく表すと。

純粋な力だけで表すと





・1位(この世界最強)

 原初世界の神々(権能なし):零=天照(太陽)<グレートレッド=オーフィス=素戔嗚(地球)=オーディン<月読(月)

【基本的に神の力はその象徴の大きさに比例します(あくまで個人的な考え)。

零と天照達は戦う事がないですが、天照の子供なので天照と同じ位の強さです。

グレートレッド=オーフィスとなっていますが、実際にはグレードレッドの方が強い】



・2位

この世界の神々(権能を使った場合)

【権能は地上では使う事を禁忌とされているので、権能を使わなければ魔王達と同等の強さと考えて下さい】

この下に五大龍王や九尾の妖狐など。しかし条件によっては倒される可能性がある。


・3位

大天使(四大天使)=魔王=堕天使(総督クラス)=ヴァーリ(覇龍・ルシファーの力全開)<英雄派<怒った時の一誠(禁手)<上級・天使や悪魔など


・4位

(物にもよるが)人間の神器使い=中級・天使や悪魔など<下級・天使や悪魔など<それ以下


現段階ではこの様な感じです。


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EP84 攫われたアーシア

 ~駒王学園 2年教室~

 

 机に伏して真っ白になっている零。

 

 

「レイ、大丈夫か?」

 

 今までにない零の姿を見て、流石に心配になった一誠達も声を掛ける。

 

 

「この程度大した事ない」

 

 

「なんか、レイとアーシアが二人三脚の練習で(色々と)大変みたいだけど」

 

 

「何が?」

 

 

「いや凄い(骨の折れる)音とか……」

 

 

「あぁ……アレ位は問題ない。骨折なんて数秒で完治する、俺が疲れてるのは………癒しが無いからだ」

 

 

「「「はぁ?」」」

 

 一誠、元浜、松田が零の言葉に首を傾げる。

 

 

「朝から学校、夕方からはあっちに呼ばれ、こっちに呼ばれ……夜中まで呼び出しだ。この数日真面に寝れてない。寝れてないのは問題ないが、オーフィスや白音を愛でれないのが辛い!!!寝顔すら拝めない日々が続いてるんだ!!!」

 

 

「「白音ちゃん……ってあの塔城白音ちゃんか!?と言うか、寝顔を見れないだと!?まさか一緒に住んでんのか!?」」

 

 

「あぁ、そうだけど……」

 

 

「「ななななななな……なんだと?!」」

 

 一誠は知っていたが、元浜と松田は知らなかった為驚いている。と言うよりクラスの男子全員がその話を聞き付け、殺気だった眼で零を見ていた。当の本人は「ぁあ……しまった。まぁいいか」と呟いている。

 

 

「なぁ、レイ、その呼び出しってもしかして」

 

 

「あぁ、お前等(悪魔)の性だ。全く、傍迷惑な話だ………毎夜、毎夜、騒ぎを起こしてくれちゃって。本当に……苛立ちのあまりに魔王共に戦争仕掛けに行こうかと思った所だぜ」

 

 

「おいおい……」

 

 零と一誠は小声で喋っているが、話しの内容が物騒すぎる。

 

 

「そういや、今日はお前等がゲームだったな」

 

 

「あぁ……ってなんで知ってるの?」

 

 

「情報なんて得ようと思えば得られるのさ。さてと……アーシア、今日は俺の用事があるから練習はなしだ。スマンが先に帰ってくれ……何もないと思うが気を付けて帰ってくれよ」

 

 零は後ろの席のアーシアにそう言うと、鞄を持って席から立ち上がる。

 

 

「今日は何処か行かれるんですか?」

 

 

「母様達に呼び出しだよ」

 

 零はそのまま教室を出て行こうとする。周りのクラスメイト達は今にも襲い掛かりそうな勢いだが、毎回一誠達がやられているのを見ているのと、基本的に女子の味方である零に襲い掛かると必然的にクラスの女子達にも嫌われる事になるので堪えている男子達。もしそんな事をしようものなら女子達だけでなく、アーシアからも嫌われるのが一番の理由だ。

 

 

「あれ……零さん、そんなペンダントしてましたか?」

 

 アーシアが零が首から掛けているペンダントに気付いた。

 

 

「あぁ、これか……久しぶりに出してきたからな、付けてみようかと思って。じゃあアーシア、気を付けて帰れよ」

 

 零はそう言い教室を出て行った。

 

 

「あっ………今……気の性でしょうか?」

 

 アーシアは一瞬、零のペンダントに嵌められている緑色の宝石に何か文字の様な物が浮かんだ様な気がした……しかし気の性だと思い深く考えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~高天原 天照の神殿~

 

 

「それで各地の悪魔の動きですが……零、報告を」

 

 

「はい……京都の方は日本妖怪達のお蔭でそれ程被害はありません。関東の方もぬらりひょんのお蔭でそこまで大きな被害は出てません。しかし……大妖怪の支配していない地、特に小さな妖怪の里には被害が出ています。悪魔に出した条約以来、全滅した妖怪里が10以上、半壊の里が50以上、攫われた妖怪が10以上……どうやら主に特殊能力を持つ妖怪達……特にその子供が狙われた様です。全滅した里以外は日本神話の神の庇護下へ移しました。攫われた妖怪達については8人は俺の方で助け出しました、今は親許に戻してます。残り2人の内、1人は残念な結果に……残り1人は捜索中です」

 

 天照に言われ、そう説明した零。それを聞き、月読、素戔嗚を含めた神々にざわめきが起こる。

 

 日本神話が出した条約に対して、日本各地で反乱を起こした日本にいる悪魔達。

 

 その被害は全滅した妖怪の里が10、半壊した里が50、負傷者が多数、攫われた特殊能力を持つ妖怪達10人の内、1人は現在捜索中、もう1人は……。

 

 零が動いていなければ、恐らくもっと被害が出ていただろう。これまでにも同じ様な事は幾度も在ったが、条約を出してからは特に悪魔が活発に動いている。

 

 

「犯行に及んだ悪魔は捕獲しましたが、殆どが転生悪魔で主の命令で強制的にやらされたそうです。中には主である悪魔に命令されて同族を手にかけた者もいた様です」

 

 

「クソ、このままじゃ被害が増える一方だ」

 

 

「しかも性質が悪い事に、転生悪魔達には失敗した際には自害する様に命を出している様です。それを止める為にも、少し強引に悪魔の駒を摘出しました。それにより、3~7日昏睡する事になってますが目覚めた後は良好です」

 

 

「零、ご苦労様です」

 

 

「はい……ですが母様、このままでは被害が増える一方です。やはり少しばかり強引な手を使ってでも」

 

 

「零、貴方の気持ちは分かります。ですが、力で押さえつけても反感を買います。そうすれば悪魔側もこれまで以上の反抗を見せるでしょう」

 

 

「………分かりました。母様がそう仰るなら……!?」

 

 零は突然、右眼を抑える。右眼は赤い光を放っている。

 

 

「「「零!?」」」

 

 天照、月読、素戔嗚が零に駆け寄った。

 

 

「ジャンヌ?………アーシアの身に何か在ったのか?」

 

 零は直ぐに立ち上がると、スマホを取り出し自分の家に電話を掛ける。

 

 

『もしもし、天王理です』

 

 

「オーフィスか?俺だ……アーシアは帰っているか?」

 

 

『零……アーシア、黒歌達と帰って来た。でも出掛けた』

 

 

「何処に!?」

 

 

『えっと……白音、アーシア何処行った?………分かった、ランニングに行ったって言ってる』

 

 

「ランニングに……もしかして、ファーブニルは部屋に居たりするか!?」

 

 

『うん、アーシアのベッドで寝てた。そう言えば十字架も置いてた』

 

 

「それでか……」

 

 

『零、何かあった?』

 

 

「アーシアが攫われた、多分攫ったのはあの野郎か………」

 

 

『?!……零、我もアーシア助けに行く』

 

 

「あぁ、直ぐにそっちに戻るよ」

 

 零は通話を切ると、天照へと顔を向ける。天照も事を察したのか直ぐに頷く、それと同時に零は駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~数十分前~

 

「はぁはぁ……」

 

 アーシアは帰宅すると、体操服に着替えてランニングに出掛けた。

 

 

「はぁはぁ……こんなんじゃ、また零さんの足を引っ張っちゃいます。頑張らないと」

 

 アーシアは二人三脚で零の足を引っ張らない為に、自らランニングをしていた。

 

 

「アーシア」

 

 

「えっ……貴方は…確かディオドラさん」

 

 

「そうだよ、アーシア。今日は君を迎えに来たんだ」

 

 

「どういうことですか?」

 

 

「アーシア……君には私の妻になって欲しい」

 

 突然、アーシアに求婚してきたディオドラ・アスタロト。ディオドラはアーシアの手を取り、手の甲にキスをした。

 

 

「えっあっ……その私……」

 

 アーシアは何故か、ディオドラから悪意を感じた。それが何故悪意だと思ったのか、アーシアにも分からなかったがそう直感した。

 

 

「ッ……ごっごめんなさい、私」

 

 アーシアは手を振り払い、直ぐにその場から逃げ出そうとする。しかしディオドラに腕を掴まれ、突然気が遠くなっていく。

 

 

「全く………この僕から逃げようなんて……大丈夫だよ、アーシア。伝説の戦士とは言え、たかが極東の神の1人。この僕が葬って、忘れさせてあげるよ。ククク……アハハハハハハハハハ!」

 

 醜悪な笑いを響かせて、アーシアを抱え何処かへ消えてしまった。




~次回予告~

攫われたアーシア。

禍の団と協力している事が発覚したディオドラ。彼の自信の裏には何かがある事だろう。

しかし、零は止まる事はない。

零はアーシアを助けるべく、冥界へと降り立った。例えどんな罠があろうとも、その歩みを止める事はない。

アーシアを助けるべく、ディオドラの前に立った零。緑の宝石を携え、その怒りを、命を燃やす。























次回……EP85 降臨、破壊神


「緑の宝石……これが勝利の鍵だぁぁぁぁぁ!!!」


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EP85 逆鱗

 ~冥界~

 

 この場には、リアスを始めとするグレモリー眷族がいた。この場にいる理由は、レーティングゲームを行う為だ。

 

 その相手こそ、ディオドラ・アスタロトだ。だがこの場に来て、本来流れる筈のアナウンスが流れて来ない事に異常を感じていた。

 

 

「部長、魔法陣です!」

 

 

「あの紋章……アスタロト家の物ではない、記憶が確かなら」

 

 上空に現れた無数の魔法陣から現れた悪魔達。

 

 

「そう、旧魔王達の悪魔達だよ」

 

 その声の方を向くと、そこにはディオドラがいた。

 

 

「ククク、ゲームなんて馬鹿じゃないか。君等は此処で禍の団(カオス・ブリゲード)にやられるといい。ボクはその間にアーシアと契らせて貰うよ」

 

 

「アーシアですって?!まさか貴方、彼女に手を出したの!?」

 

 リアスはディオドラの言葉に驚いている。現在、アーシアは日本神話に属する一員……しかも天照の加護を受ける者、そんな者に手を出せばどうなるか考えるまでもない。

 

 

「貴方は、悪魔を滅ぼすつもり!?そんな事したら……」

 

 

「天王理君まで動くことに」

 

 

「呆れたね、我等悪魔がなんで極東の島国の神に従わないといけないんだ?伝説の戦士とか言われてるけど、所詮は極東の神の1人、畏れる必要なんてないだろう。これだから雑魚は」

 

 ディオドラは零の力を直接、見た訳ではない為にその力を知らない。例え、伝説の戦士と言えど日本の神の1人なら恐れるに足りないと考えている。

 

 

「貴様、アーシアに何をしたんだ!?」

 

 アーシアの友人であるゼノヴィアが吠えた。

 

 

「未だ何もしてないよ、これからするんだけどね。じゃあ後は宜しく」

 

 ディオドラはそう言うと、転移魔法を使い消えてしまった。行先はどうやら、この場から見える神殿の様な場所だろう。

 

 

「拙いですね、部長」

 

 

「えぇ……このままじゃ、私達どころか悪魔が全滅する」

 

 もしアーシアの身に何かあれば、確実に零は悪魔と言う存在そのものを消滅させにかかるだろう。事は深刻過ぎる、今リアス達に全悪魔の未来が掛かっているのだから。

 

 

「ひゃ!?」

 

 朱乃が突然、声を上げる。皆が朱乃を見ると、そこには朱乃のスカートを捲っているオーディンの姿があった。

 

 

「ほぅほぅ……黒か、中々大人っぽいのを履いておるのぉ」

 

 

「貴様は何をしとるかぁ!!!」

 

 スカートを捲るオーディンは誰かに蹴飛ばされた。

 

 

「貴方は……邪神ロキ!?どうして此処に?!」

 

 オーディンを蹴り飛ばしたのはロキだった。

 

 

「アーシア・アルジェントが巻き込まれたと爺から聞いてな。アイツに借りを返す為に来た」

 

 

「おい!ロキ何をするんじゃ!?」

 

 

「我等が主神が女子高生のスカート捲っているなど、恥でしかないわ!」

 

 どうやら、オーディンからアーシアが巻き込まれた事を聞いたロキも参戦した様だ。しかしオーディンは何処からその情報を手に入れたんだろう。

 

 リアス達も、上空に居る悪魔達も、この場にいる全員が凄まじい圧力を感じた。そして空から一筋の光が凄まじい速度で落下してきた。光は凄まじいリアス達の後方に落下すると、土煙を上げる。

 

 

「来たか」

 

 土煙は何かに吹き払われた。全員がそこを見てみると、そこに立っていたのは凄まじい力を放つ零、オーフィス。その後ろには白音、黒歌、ギャスパーがいる。

 

 

「爺か……それにリアス・グレモリーと眷族か……おい、爺さっさと詳細を説明しろ。俺は怒りを抑えるのが大変なんだ……」

 

 零の両眼は赤と金の光を放っている。それに加え全身から放たれる力が可視化され、まるでオーラ様になっている。リアスや一誠達の姿を確認するが、直ぐにオーディンに話し掛けた。

 

 

「フム……さっきも説明したが此度の事は、禍の団(カオス・ブリゲード)を誘い出す為の作戦じゃ」

 

 オーディンによると、今回のリアス対ディオドラのレーティングゲームそのものが囮だった様だ。

 

 天使・悪魔・堕天使、そして北欧神話の合同作戦であり、事前の調査でディオドラが禍の団(カオス・ブリゲード)と通じている事が分かっていたので、リアスとディオドラのゲームを利用し、禍の団(カオス・ブリゲード)を誘い出し一網打尽にしようと言う作戦だった。

 

 ディオドラがアーシアを攫うなど誰も予想していなかった様だ。仮に零にこの作戦が伝わっていれば、しっかりと対応していただろうが………恐らく零に伝えれば禍の団(カオス・ブリゲード)を誘い出す前に、ディオドラを亡き者にするだろうからあえて伝えていなかった。しかし今回はそれが裏目に出た、アーシアがディオドラ(悪魔)に攫われた事で、零の怒りは完全に悪魔に向いている。

 

 

「それで今回、作戦を立てたのは誰だ?」

 

 

『そりゃ俺だ』

 

 オーディンの近くに魔法陣が展開し、そこにアザゼルが映し出された。映し出されたアザゼルに、零の鋭い視線が突き刺さる。

 

 

『おいおい、そう睨まんでくれよ。俺等にも俺等の事情が在ってだな、大体お前に伝えてたら誘い出す前にディオドラをどうにかしてるだろう?』

 

 

「当然だ。だが、今はそんな事を言っている場合ではない。最優先でアーシアを救う。アザゼル、後で覚えておけ、後貴様等もだ、リアス・グレモリー」

 

 アザゼルからリアスへと視線を移す。

 

 

「アーシアを攫ったのは紛れもなく悪魔だ、それがどう言う事か分かるよな?」

 

 

「ッ……それは」

 

 

「まぁいい、まずはアーシアだ。邪魔はするな」

 

 零はそう言うと、歩を進め始めた。オーフィスや黒歌達も続く、オーフィスは何時もの無表情だが全身から黒いオーラが溢れており、黒歌と白音の顔には静かに怒りが現れている。

 

 

「貴様が伝説の戦士とやらか、此処で死ぬがいい!!!」

 

 上空にいた悪魔達が零達に向かい、魔法の矢を放つ。

 

 

「邪魔だ!『ぶちかませ!!』」

 

 零がそう叫ぶと、空に巨大な穴が開き、無数の光線が降り注ぎ悪魔達を消し飛ばした。悪魔達はほんの一瞬で跡形もなく消滅し、空の穴は何事もなかったかの様に閉じてしまった。

 

 

「ご主人様、今のは何?」

 

 

「ん?……物質を原子レベルで崩壊させる砲撃だよ」

 

 

「ご主人様は相変わらず無茶苦茶です、と言うか後どれだけ力を隠してるんですか?」

 

 

「隠してはないんだけどなぁ……ただ単に使う機会がないだけで」

 

 黒歌の言葉にそう答えると、白音は呆れた様な表情をしている。ギャスパーに至っては先程の光線にビビッて白音の後ろに隠れている。

 

 

「じゃあ行くとしよう」

 

 気を取り直して神殿へ向かって、歩みを進め出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 零達の背を見ているリアス達とオーディン、ロキの神々。

 

 

「ぁ~あ、ありゃ完全にキレておるのぉ」

 

 オーディンがやってしまったと言う顔をしている。ロキは零の背を見て、何かを考え込んでる。

 

 

「オーディン、1つ聞きたい。奴の権能……まさかとは思うが」

 

 

「フム、恐らくお主の考えている通りじゃ」

 

 

「成程、ならば納得がいく………まぁ私のする事は変わらんがな。借りは返さねばならん、我等は露払いをしよう」

 

 オーディンとロキは話を終えると、再び集まって来た中級・上級悪魔達を見た。

 

 

「そうじゃな、嬢ちゃん達!お主等は零に付いて往け、此処に居れば儂やロキの巻き添えをくらってしまうでな。【グングニル】!」

 

 凄まじい魔力と共にオーディンの手に槍が出現する。神話にも出て来る神槍グングニル、その強大な力故にかつてオーディンが2つに別けた内の1本だ。

 

 

「同感だ、足で纏いだからな。居ない方がいい【グングニル】!」

 

 以前の事件の際に出したグングニル、オーディンの持つグングニルとは元々1つの物だが、ロキの持つ物は死や破壊と言った負の側面のグングニルだ。原初の女神ルシュカスにより何か仕掛けをされていたが、零によりそれは解除され再びロキの元に戻った様だ。

 

 

「ッ……分かりました、皆、行くわよ!」

 

 リアスは目の前で起きようとしている戦いを、神々の力を前に自分達が足で纏いでしかないと考えてこの場を離れる事にした。

 

 

「さて……お主とこうして戦うのは何時以来かのぅ?」

 

 

「そう言えばこの数百年はなかったな……偶には悪くないか」

 

 

「ウム!年甲斐もなく、儂も頑張るかのぅ!」

 

 オーディンとロキは心なしか嬉しそうな表情をしている。そして主神と邪神は目の前の悪魔達と戦闘を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ディオドラの神殿 ~

 

 ディオドラの神殿へ入ると広い空間に出た。

 

 そして正面には10名ほどのフードを被った者達が待ち構えていた。

 

 

『やぁ来たね、伝説の戦士……これからゲームをして貰おう』

 

 どうやら、ディオドラの声の様だ。

 

 

「ゲーム?……下らんな」

 

 

『ククク、断るなら今すぐにアーシアをどうにかしちゃうけどいいのかな?』

 

 

「チッ……いいだろう、内容は?」

 

 

『内容は簡単だよ………目の前にいるのは僕の眷族達だ。その眷族達と君達の内、誰かが戦って貰う』

 

 

「なら俺がd「我が出る」いいのか?」

 

 零が出ようとしたが、オーフィスが自分が出ると進言した。

 

 

「アーシア、我の家族。家族傷付けの奴、敵……我が倒す」

 

 零はやる気のオーフィスを見ると、了承し自分は下がった。

 

 

『そんな子供が相手かい……まぁいい』

 

 どうやらディオドラはオーフィスの事を知らない様だ。

 

 

「うるさい……面倒、全員纏めて来い」

 

 

「なんですって!?このガキ!!」

 

 オーフィスの言葉にディオドラの眷族達が起こり、フードを脱ぎ捨てた。

 

 

「お前達……邪魔」

 

 オーフィスはそう言うと、ディオドラの眷族達に手を向ける。するとオーフィスの手から禍々しい光が放たれた。

 

 

「えっ…ちょw」

 

 無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)の一撃を受けて、無事で済む筈もない。光が消えると真っ黒に焦げた眷族達が転がっていた。どうやら息はして居る様だ。

 

 

『しゅ……瞬殺?!一体何がどうなっている!?……くっ……まぁいい、こうなる事は想定内だ』

 

 

「お前……消えろ」

 

 オーフィスが殺気を込めてそう言うと、何かが砕けた様な音がした。どうやら此方に音声を送っていた道具がオーフィスの力で壊された様だ。

 

 

「零、一応加減はした。これでいい?」

 

 

「あぁ、彼女等は一応転生悪魔だ。純粋悪魔なら消しても良かったが……転生悪魔だと話が違ってくる」

 

『パチッ!』

 

 零が指を鳴らすと、魔法陣が展開しディオドラの眷族達を何処かに転移させた様だ。ディオドラに対しての怒りはあるが、眷族悪魔は別の様だ。何が理由で眷族悪魔になったのか聞かなければ、消すかどうかの判断はできない。無理矢理にされたのであれば、元に戻す事ができるからだ。ディオドラに対しての怒りはあるが、転生悪魔となった者達への配慮は出来るくらいは未だ冷静な様だ。

 

 

「そういや、あの小娘共なんでオーフィスに突っ込んできたのかにゃ?正体を知っていれば普通は逃げ出す筈なのに」

 

 黒歌がそう言った。確かにオーフィスの正体を知りながら、襲い掛かって来たのか不思議だった。

 

 

「そう言えば、オーフィスの事は各勢力のトップだけの秘密らしいぞ。トップ達だけが知ってればそれだけで抑止力になるからな……下の者に伝えると混乱が生じる故の対応らしい。さて……取り敢えず次に行くとするか」

 

 零はそう言うと、再び奥へと進んでいく。黒歌達も零に続き奥へと進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 零達がディオドラの待つ、玉座の間の前の広間に入った。

 

 

「うっ……」

 

 

「臭いにゃん……」

 

 

「ぅう……咽かえる様な血の匂いですぅ」

 

 白音、黒歌、ギャスパーがこの間に漂う異臭を嗅ぎ取り鼻を押さえる。

 

 

「やぁやぁ!おひさだね~」

 

 そこに現れたのは白髪の神父だった。

 

 

「……誰だ?知ってるか?」

 

 零は首を傾げ、後ろにいるオーフィス達に尋ねた。

 

 

「知らない」

 

 

「知りません」

 

 

「知らないです」

 

 

「知らないわ」

 

 オーフィス達は揃って目の前の男を知らないと言った。

 

 

「なぁ!?この俺様の事を知んないだと?!後ろの小娘共なら未だしも、そこの銀髪!人の事をボコっておいて、覚えてないとは何事だ!?」

 

 

「ボコる?……はて…………」

 

 零は顎に手を当てて少し記憶を探っている。

 

 

「………あぁ!思い出した!アーシアを助ける時に、教会に居た神父か。面倒だから直ぐに吹っ飛ばしたの覚えてるわ、そんでその神父が何の用だ?」

 

 

「何の用だじゃねぇよ!一応、俺様はお前等の邪魔する為に此処に居るんだよ!」

 

 

「あっ……それもそうか。死にたくないなら退け……って言うか、お前あのクソ野郎の眷族になったのか?」

 

 

「そんな訳ねぇだろ!アイツの騎士共なら………俺様が食ったよ」

 

 そう言った神父……フリード。

 

 

「ご主人様、その人、人間辞めてます」

 

 

「鼻がもげそうだにゃ……」

 

 白音と黒歌が鼻を摘みながら、そう言うとフリードは笑い始めた。するとフリードの身体が異音を立てて、変貌を始めた。

 

 

「あひゃひゃひゃ!!グレモリーのナイトに切り刻まれた後にヴァーリの野郎に回収されて、アザゼルの奴にリストラされてよぉぉ。禍の団(カオス・ブリゲード)の連中が力をくれるって言うから着いてったらよぉ……合成獣(キメラ)だってよぉ、お蔭でこの様だぁ!!あぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!」

 

 身体が肥大化して、翼やら、腕やらが生え、既に人間の原型を留めていない。どうやら禍の団(カオス・ブリゲード)に身体を弄られ、合成獣となってしまった様だ。

 

 

「はぁ……邪魔だ」

 

 零が動こうとした時、後ろから青い炎が飛来し変貌したフリードに直撃した。

 

 

「あぢぢぢぢっ……誰だぁ!?人様に火をぶつけやがったのは!?」

 

 

「私達にゃん」

 

 

「です」

 

 零の後ろに居た、黒歌と白音が放った様だ。

 

 

「2人とも……」

 

 

「ご主人様、此処は私達に任せるにゃ」

 

 

「ご主人様はこの奥の下種野郎の為に力を残しておいてください」

 

 

「………分かった」

 

 零はやる気の2人を見て、大人しく下がる。

 

 

「ぎゃ!ぎゃ!ぎゃ!この俺様の相手がたかが妖怪かよ!笑わせるぜぇ……あぁ、そうだ。ついでに面白い事を教えてやるよ」

 

 フリードは頼みもしないのに、突然笑いながら話し始めた。とあるディオドラの話を。

 

 

 ―あの坊ちゃんの女の趣味、俺様が言うのもあれだが良い趣味してるぜ。あの野郎、教会に通じる女が大好物なのだ。シスターとかな。特に信心深い信者や、教会の本部の縁の女とかな。此処に来る前にいた奴の眷族達がいただろ、奴等も元は有名なシスターや聖女様達なんだよ。そんな奴等を自分で誘惑して、手籠めにするんだぜ。まさに悪魔の囁きって奴さ―

 

 零はその話を聞いて、表情が変わる。

 

 

 ―そうだ、あのアーシアちゃんもそうだ。アーシアちゃんのシナリオはこうだ。チョー好みの美少女聖女様を見つけた坊ちゃんは、その聖女を連れ出そうとするが護りは固く、簡単に連れ出す事はできませんでした。そこであの坊ちゃんは考えた。連れ出せないのなら………教会から追放されればいいと。そんで自分でわざと怪我して、その聖女様に治して貰ったのさ。ちゃんと教会関係者に見つかる様にしてな―

 

 アーシアが教会から追放された原因、それは総てディオドラの策略により引き起こされた物であり、ディオドラがアーシアを手に入れる為に行った事だ。

 

 

「アヒャヒャヒャ!本当に最高の趣味だぜ、これを知ったアーシアちゃんはどうお………何だか……視界がって……身体も?」

 

 フリードの視界が突如、ズレた。そして身体の至る所に光の線が走る。

 

 

「あれ……白い猫又は何処に」

 

 

「自分が止められてるのにも気付かなかった様ですね。やりました、ギャーちゃん」

 

 フリードの後ろには何時の間にか、朱いライガーゼロを纏った白音がいた。左右の手、肘、脚、腰に鈍い光を放つブレードが装備されいた。

 

 

「ライの装備……接近戦に特化したシュナイダーです。ギャーちゃんの力で貴方の時間を止めた後、24分割させて頂きました。貴方の言葉は耳障りなんで黙って下さい」

 

 どうやらギャスパーの魔眼でフリードを停止させた後、白音はライガーゼロの接近戦特化形態【シュナイダー】を用いてフリードの身体を24つに斬り裂いた様だ。斬り裂かれたフリードはバラバラになり、地面に転がる事になった。

 

 

「うそだろ……そんなのズルいぜ」

 

 

「コレは殺し合いみたいなものじゃない、殺し合いにズルもなにもないわよ」

 

 ―パチッ―

 

 黒歌がフリードを見降ろしながらそう言い指を鳴らすと、バラバラになったフリードの身体を白い炎が包み込んだ。

 

 

「これはご主人様から教えて貰った術と私の術を掛け合わせて作った術よ、名前は未だ考えないけど特に痛みはないでしょう?」

 

 

「ん……そういやそうだな。なんだか……とても……いい気持ちだぁ」

 

 フリードは炎に包まれていると言うのに、苦しみはない様だ。

 

 

「これは本来、迷える魂を導く炎なんだけど……私はそれを実体にも作用する様に改良したのよ。アンタの言葉も話の内容も耳障りだったんだけど、色々と教えてくれたからせめて苦しみなく送ってあげるわ」

 

 

「ハハハ……壊れちまった俺様にしては意外な最後だったな」

 

 フリードはそう言うと、身体が燃え尽き消滅した。白い炎もフリードが消滅すると同時に消えてしまった。

 

 

「………ご苦労様、3人とも」

 

 

「いぇ、アレ位は」

 

 

「女として聞いてて腹が立ったからにゃ」

 

 

「ぼっボクもアーシア先輩を助けたいです!」

 

 零はそれは聞くと、3人の頭を撫でて奥の巨大な門を見た。

 

 奥に待つアーシアを悲しませたディオドラ・アスタロト(元凶)がいる。零は怒りを静かにその内に秘めて奥へと進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ディオドラの神殿 最奥 玉座の間~

 

 零は扉を蹴り破り、玉座の間に入った。

 

 

「やぁ来たね、伝説の戦士」

 

 この間の奥の玉座に座る下種な笑みを浮かべるディオドラ。その後ろには魔法陣や宝石、文字が刻まれた装置の様な物に拘束されているアーシア。その眼には涙が浮かび光を失っている。それを見て、白音達は声を掛けるがアーシアの目に光は戻らない。

 

 

「話を聞いたアーシアの絶望した顔、君にも見せたかったよ。でも未だ絶望しきってない、それは君が居るからだ。だから此処で君を殺す……いや動けなくして目の前でアーシアを抱くのもいいかなぁ?そう言えば、アーシアはまだ処女だよね?たかが極東の神のお古なんて嫌だな……」

 

 ディオドラは気付いていない。零の怒りのメーターは振り切れており、怒りの臨界を越え零の頭は冷え切っていた。既に死んでいても可笑しくない状況だとディオドラ本人は分かっていない。

 

 

「それとも君から寝取るのもいいなぁ。泣き叫び君の名を呼ぶアーシアを無理矢理抱くのm【黙れ】」

 

 場の全てが凍るような声が響く。それを放ったのは零だ、そしてその首に掛かる緑の宝石に光を放つ。それと同時に零の額に【G】の文字が浮かんだ。

 

 

「貴様の下賤な言葉は聞くに堪えん……もうその口を開くな。アーシア……安心しろ、直ぐに助ける。だからそんな顔をするな、アーシアは泣き顔より、笑顔の方が似合ってるんだ…………【ギャレオン】!」

 

 零の声と共に、凄まじい衝撃が起きた。それと同時に神殿の天井部が消滅した。

 

 

【ガオォォォォォォ!!!】

 

 

「なっなんだ!?」

 

 ディオドラは何が起きたのか理解できず、無くなった天井……もとい空を見上げた。そこには巨大なメカライオンがいた。

 

 

「貴様の様な、自分の欲の為だけに女を泣かせる輩は此処で………破壊する。俺の逆鱗に触れたんだ、楽に死ねると思うな」

 

 その言葉と同時にメカライオン……ギャレオンの周囲の空間が歪み、5体の機械の獣達が現れた。ディオドラは目の前で何が起きているのか全く理解できずにいる。

 

 緑色の輝きを放つ宝石から放たれる力、ディオドラはその力を肌で感じ何故か嫌悪した。本能的にその力を拒絶した。




・ライガーゼロ【シュナイダー】

 ライガーゼロの形態の1つ。イェーガー程高速で動く事はできないが、複数のブレードが装備され、接近戦に特化した形態である。

 ライガーゼロの形態の中では白音が一番使い易いものらしく、負担は少ない。今回はギャスパーとの連携でフリードを倒した。


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EP86 究極の破壊神

 今回はとうとう、破壊神が降臨します。

 EP85から短い時間で多くの感想ありがとうございました。誤字報告もあったので、修正しました。

 では御待たせしました、どうぞ。


 ~ディオドラ神殿 最奥 玉座の間~

 

 神殿が崩壊し、突如現れた6体の機械の獣達。

 

 そして、零から……零の首に掛かる宝石から溢れる力。正体は分からないがそれは悪魔であるディオドラが本能的に嫌悪する力だった。

 

 その様子を見て、目を丸くしている白音達。

 

 

「相変わらず無茶苦茶な力ですね」

 

 

「同意見にゃ……」

 

 と話し合っている白音達だが、近付いてくる足音に気付き振り返るとリアスと眷族達が走って来た。

 

 

「こっこれは何事?!」

 

 

「ぁ~何しに来たにゃ?」

 

 

「えっ……と。その……それよりもこれは一体」

 

 リアスや朱乃達は零の上空に居るメカライオン達を凝視している。

 

 

「なっなんじゃありゃ~!?」

 

 一誠に至っては叫んでいる。

 

 

「うるさいにゃ……アレは私達も始めてみる力よ。取り敢えず死にたくないなら下がりなさいな、今のご主人様は貴方達なんか気にしてられる程、冷静じゃないわ」

 

 

「ッ……でも「その猫さんの言う通りですね」」

 

 

「「えっ?」」

 

 リアスが何かを言おうとした瞬間、言葉を遮る様に声が聞こえてきた。それは黒歌でもなく、白音達でもない。グレモリー眷族でもない声だ。皆が声をした方向を見てみると、小さな少女が立っていた。

 

 

「「「「誰?」」」」

 

 

「初めまして、私はアベルと申します」

 

 少女はそう名乗ると、自分の傍に浮かぶ緑色の板の様な水晶に触れた。

 

 

「まぁ……私が何者かはさて置き、そろそろこっちに来た方がいいですよ。死にたいならそこに居ればいいですけど」

 

 アベルはそう言うと、零の背を見る。白音達は彼女の正体が分からないが、

 

 

「此方は何時でも構いませんよ」

 

 

「あぁ……頼む」

 

 

「では……」

 

 零がそう言うと、アベルの身体が光り出し天使の様な光の羽が背中に生えた。そして右手を振り上げた。

 

 

「ジェネシック・ドライブ!」

 

 アベルは振り上げた拳を緑色の水晶の中心に叩き付けた、中心部がヒビ割れるとそこから光が放たれると水晶はそのまま消えてしまった。

 

 

「ファイナル・フュージョーン!」

 

 零が飛び上がると、ギャレオンと5体の機械の獣達が零の元に集まった。そして緑色の繭の様に包まれた。

 

 

 

「アレは……なに?」

 

 リアスはそう呟いた。それを聞くと、アベルが口を開いた。

 

 

 ―アレは……暴走する創造を止める破壊の化身。勇気を力に変える命の宝石【Gストーン】を……その結晶【Gクリスタル】より出でし破壊神―

 

 

「破壊神……」

 

 

 ―ジェネシック・ギャレオンを始めとし、5体のジェネシック・マシン……プロウグンガオー、プロテクトガオー、ストレイトガオー、スパイラルガオー、ガジェットガオーとフュージョンし誕生する究極の勇者、その名は―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガオ!ガイ!ガー!」

 

 緑の繭を内側から破り、降臨したのは人サイズではあるが紛れもなく黒鋼の巨神。

 

 胸を覆うギャレオンの顔、右肩部のプロウグンガオー、左肩部のプロテクトガオー、右脚部のスパイラルガオー、左脚部のストレイトガオー、背部のガジェットガオー、額部に光輝く命の宝石【Gストーン】。

 

 それは最強の破壊神……それは勇気の究極なる姿……辿り着いた大いなる遺産……その名は勇者王…ジェネシック・ガオガイガー。

 

 正確にはガオガイガーを纏った零だ。零が地面に着地すると、それだけで地面にヒビが入った。

 

 

「なっ……なんなんだ貴様は?!」

 

 

「【ソウルコード:ジェネシック・ガオガイガー】……ただの破壊神だ、さぁ立て!貴様を破壊する!」

 

 

「……ふっ……だからどうした!僕には貰った【蛇】がある!無限の力に敵うものか!」

 

 ディオドラは冷静になると、零に向かい手を向ける。その掌には「∞」を模った蛇の紋章が浮かび上がった。

 

 

「あっ……我の蛇」

 

 オーフィスがそう呟いた。それを聞くと、零の足元のヒビが広がり、クレーターができる。

 

 

「アーシアだけでなく……オーフィスの蛇まで……存在ごと破壊してやる」

 

 

「ふざけるな!お前如き、極東の島国の神なんて、無限の力を得た僕が瞬殺してやる!」

 

 ディオドラが手に魔力弾を形成し、零に向かい放った。それに加え、周りに魔力弾を無数に形成して零に放つ。

 

 零はそれを回避する事無く、直撃を受けた。無数の魔力弾が直撃し、土煙が立ち昇る。土煙は凄まじい力の波動と共に吹き飛ばされ、中心には無傷の零が立っていた。

 

 

「なっ……なんで」

 

 

「瞬殺?……貴様の瞬殺ってのはこれほど長いのか、次はこっちからだ」

 

 拳を握り右腕を溜める様に引くと、右の手首より先が朱く染まる。

 

 

「【プロウグン・マグナム】!」

 

 零が右腕を突き出すと、右手首から先か発射された。発射された拳は自分の攻撃が全く無傷の零の姿に唖然としていたディオドラの顔面に直撃し、何故かディオドラは真上吹き飛んだ。すると零が放ったプロウグンマグナムはディオドラを追尾し、上空で幾度も攻撃している。十数回程、攻撃が終えた所でプロウグンマグナムは零の元へ戻った。

 

 ディオドラは醜い声を出し、地面に落下した。

 

 

「ばっ馬鹿な……この僕が上級悪魔の僕が!現魔王ベルゼブブの血筋の僕がこんなぁ!?」

 

 

「貫通させない様に加減してやったんだ、感謝しろ」

 

 零はそう言い、ゆっくりとディオドラに近付く。

 

 

「この僕が……極東の島国の神如きにぃ!」

 

 ディオドラが手を翳し障壁を張った。零は金色の手で障壁に触れると、障壁は光となって砕かれ消えてしまった。

 

 

「オーフィスの蛇を使ってもこの程度か……程度が知れる。所詮は血筋の力に頼った小物か」

 

 障壁の弱さに呆れながら、左腕でディオドラの胸倉を掴み持ち上げた。

 

 

「アーシアを苦しめた報い受けて貰うぞ」

 

 拳を握り構えた。拳は再び朱い光に包まれている。

 

 

「この僕が……下賤な極東の神如きにぃー!!」

 

 ディオドラは再び、障壁を展開した。障壁を展開した時に、零の手は離れてしまった様だ。障壁を破壊しようと触れるがバチッバチッと音を立てて、零の行く手を防いでいる。

 

 

「はっ……ハハハ!見ろ!たかが古臭い神如きに負ける筈がないんだ!無限の力を得たこの僕が!」

 

 どうやら死ぬ気で発動した故にそれなりの強度らしい。しかしそれはオーフィスの蛇の恩恵でしかない。借り物の力で零が止められる訳がない。

 

 

「オーフィスの蛇……無限の一端か。だが使い手が貴様の様な小物では……」

 

 零は右手で軽く障壁を叩くと、ディオドラの障壁は光となって消滅した。

 

 

「なっ……馬鹿な……僕はアスタロト家のディオドラだ……アガレスにも勝った!バアルにも勝つ予定なのに?!極東の神なんかに負ける筈がないんだ!?」

 

 

「あぁ……そう、貴様が誰であろうが関係ない。アーシアを悲しませ、苦しめた……それだけ分かっていればいい、俺が敵と見做すには十分すぎる理由だ」

 

 

「ちくしょおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 ディオドラは零の周囲に無数の魔力弾を展開する。この状況で魔力弾を放てば自分も巻き込まれる可能性もあるが、冷静な判断をできないディオドラに分かる訳もない。そして魔力弾は放たれた。

 

 

「フン……降らない。【プロテクト・シェード】」

 

 零が左手を前に突き出すと、左の前腕部のパネルが立ち上がり朱い波動が放たれる。その波動により周囲の魔力弾は消滅し、ディオドラも吹き飛ばされた。

 

 

「あ……ぁぁぁぁぁ」

 

 吹き飛ばされたディオドラは恐怖する。零の……ジェネシック・ガオガイガーの放つ巨大な力に。その悪魔にはない異質な力に対して恐怖する。

 

 ジェネシック・ガオガイガーの動力源……命の宝石【Gストーン】は命のある者の【生きようとする意志】特に【勇気】に呼応しGパワーを無限に引き出す結晶体だ。本来は異世界のストレスに呼応し力を発する物質に対抗する為に、無限の再生を行う偽りの宝石に対抗する為に生み出された物だ。

 

 言わば、Gストーンから放たれるのは【生命の力】そのものとも言える力だ。それは言いかえれば命の放つ輝き……光の力だ。光を弱点とし命ある者の負の感情を糧とする悪魔には、脅威だろう。

 

 

「フン」

 

 震えているディオドラを一視すると、アーシアへと方向を変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーシア、無事か?」

 

 零は顔を覆うフェイスマスクを消し、拘束されたアーシアの前に立った。

 

 

「零さん……ごめんなさい、私」

 

 

「何を謝る?アーシアは何も悪くないだろう」

 

 零は拘束している装置に触れようとする。だが直ぐに手を止めた。

 

 

「これは……下手に外す事もできないか。無理に外そうものなら、結界がアーシア自身を飲み込む様になってやがる………しかもご丁寧に力を流そうもんなら反転して此処一帯が封印される」

 

 零は自分の眼で拘束している装置を間近で確認し、装置の力を理解した。

 

 

「零さん……私ごと、この装置を破壊して下さい」

 

 

「なにを……」

 

 

「もう十分です……死ぬ筈だった私を助けて下さって、家族にしてくれた。家族にしてくれた皆さんを巻き込むくらいなら」

 

 

「バカを言うな……俺の後ろを見ろ、此処に居るにはアーシアを犠牲に助かろうとする家族はいないぞ」

 

 アーシアはそう言われ、零の後ろを見るとオーフィス達がいた。彼女達もアーシアを見捨てるなんて言う選択肢は絶対に選ばない。

 

 

「今の俺は破壊神だ……それに女の子を見捨てる勇者王が居て堪るか。そうだろ!ギャレオン!」

 

 

【ガオォォォォォォ!!!】

 

 ガオガイガーの中心のギャレオンが咆哮を上げる。

 

 

「破壊するのはアーシアを拘束する装置のみ」

 

 額部に輝くGストーンが輝き始めた。

 

 零の、アーシアを助けたい……共に「生きる」と願う白音、黒歌、オーフィス、ギャスパーの想いを応えGストーンはその力を高めていく。

 

 

「【ジェネシックオーラ!】」

 

 茜い波動が零の全身から放たれる。ジェネシックオーラ……本来は【ラウドGストーン】【遊星主】と呼ばれる存在に対して破壊を齎すオーラだが、零自身の力も加わっている為に物質・存在に対してその破壊の力を使う事ができる。何の意志もなく放てば、周辺の物質を破壊するだろう。

 

 しかし今、破壊するのはアーシアを拘束する装置のみ。ジェネシックオーラを放つGストーンがその意志に応え、破壊されるのは装置のみだ。

 

 ジェネシックオーラを受け、アーシアを拘束した装置はその力を発揮することなく破壊された。零はジェネシック・ガオガイガーを解除し拘束より解放されたアーシアを受けとめた。

 

 

「ふぅ……怪我はないな?」

 

 

「はい、零さん……本当に……本当にありがとうございます」

 

 

「無事で何よr…うぐっ」

 

 アーシアは話している零の唇と自分の唇を重ねた。

 

 

「「「「あっーーーーー!!!」」」」




ふぅ……やっと勇者王登場させる事が出来ました。

色々と無理矢理な設定だと思いますが、あくまでこの小説内での設定なのでご勘弁を……。










・ソウルコード:ジェネシック・ガオガイガー


 とある世界の勇者が辿り着いた勇気の究極の姿……最強の勇者王。

 ギャレオン、プロウグンガオー、プロテクトガオー、ストレイトガオー、スパイラルガオー、ガジェットガオーとファイナル・フュージョンする事で誕生する勇者。

 動力源は勇気に呼応して力を発揮する【無限情報サーキット:Gストーン】。Gストーンから放たれるジェネシックオーラは【ラウドGストーン】【ソール11遊星主】に対し絶大な力を発揮するが、零自身の力も加える事で物質・存在に対して破壊効果を付与された。

 また今回ディオドラに放ったプロウグンマグナムも本来で在れば、1撃で魔王や神を消し飛ばす事ができる。しかし零の任意により威力の調整が可能である。


 ・基本装備

 プロウグンマグナム:右手に攻撃の力を収束させて、拳自体を放つ。この世界の主神クラス以外の神なら一撃で消し飛ばせる。

 プロテクトシェード:左手のパネルの展開し波動を放ち防御する。この波動もジェネシックオーラの為、攻撃にも転用できる。また原作通り、光学兵器の反射・物理衝撃をジェネシックオーラに変換する機能もある。

 スパイラルドリル:右脚部のドリル、広範囲の破壊に適している。

 ストレイトドリル:左脚部のドリル、狭い範囲だが貫通性に優れている。「ドリルは男の子のロマンである」

 ガジェットフェザー:ガジェットガオーに装備されたスラスター。展開すると翼の背面に巨大な眼を思わせる姿が現れる。今回は未登場。

 各種ガジェットツール:ウィルナイフ、ボルティングドライバー、ヘルアンドヘブンで使用される。(あくまで)今回は未登場。





 ・Gストーン

 勇気に呼応して無限の力を放つ無限情報サーキット。

 「命ある者の生きたいと言う思いを力に変える」→生きたいと言う思い(正)=命の放つ光=Gパワー・ジェネシックオーラ

  悪魔=光が弱点、命ある者の負を糧とする←Gパワー・ジェネシックオーラが弱点。

 と若干、無理矢理な設定になりました。



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EP87 破壊神VS魔王

「えっと……アーシアさん?」

 

 

「あぅぅ……」

 

 助けられたアーシアは零にキスをしたまではいいが………耳まで茹で上がった蛸より赤くなっている。

 

 

「なんでキスされたんだろう?」

 

 当の本人は何故キスされたのか分かっていない様だ。

 

 

「相変わらず鈍感ですね、貴方は」

 

 

「どういうこと?」

 

 零に話し掛けたのはアベルだ。白音達は完全にフリーズしている。

 

 

「この鈍感、いい加減にしなさい。乙女が好きでもない相手にキスなんてする訳ないでしょう」

 

 

「あぁ……そうか、俺も好きだぞ(家族として)」

 

 

「貴方の好きと乙女の好きは意味が全然違うんですよ」

 

 

「どう違うんだ?」

 

 アベルは「駄目だこりゃ」と言う様な顔をしている。

 

 

「貴方と言う人は……その鈍さで私を含めた何人の女性を泣かせてきたんですか?」

 

 

「俺は女を泣かす様な事をした覚えはないんだが……」

 

 

「いぇ、御主人様は女泣かせだと思います……」

 

 

「同感にゃ……」

 

 

「えっと……ボクもそう思います」

 

 

「零は……女泣かせ?」

 

 アベルの言葉に同意する白音、黒歌、ギャスパー。オーフィスは良く分かっていない様だ。

 

 

「はぁ……訳が分からん。まぁ取り敢えずそれは置いといて……だ」

 

 零はその場から這って逃げようとしているディオドラに目を向けた。

 

 

「ひぃ?!」

 

 ディオドラは零に見られた事で情けない声を上げ、急いで逃げようとする。

 

 

 ―ドスッ―

 

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁっぁ!」

 

 逃げ出そうとするディオドラの両腕、両足に剣や槍が突き刺さった。

 

 

「アーシアが無事なら俺が生かして帰すと思った?」

 

 

「ひっ!?いっ命だけは……どうか命だけは」

 

 命乞いするディオドラ。しかし零は絶対零度の眼でディオドラを見降ろしている。

 

 

「アハハハハハ………殺す。【天叢雲剣】」

 

 

「ひぃ!?」

 

 零は右手に剣を呼び出した、神剣:天叢雲剣。三種の神器の1つであり、素戔嗚が八岐大蛇の尾から取り出した剣だ。この剣を此処に来る前に天照に渡された物だ。ガタッガタッと震えるディオドラ、戦いが始まるまでの威勢は何処に行ったのやら。

 

 

「まっ待って!」

 

 リアスが零を止めた。この状況で何故、零を止めたのだろう?止めれば確実に自分にも危害が及ぶ可能性があるのに。

 

 

「彼は現魔王の血筋の者よ!テロリストと関係があったとはいえ、勝手に裁く事は許されないわ!」

 

 そうディオドラは現魔王、アジュカ・ベルゼブブを出したアスタロト家の悪魔だ。テロリストと関係が在ったとしても、本来は情報を聞き出したり、悪魔の法律により裁かなければならない。リアスの言う事は正論だ。

 

 

「バカか?その下種がアーシアを攫った時点で、これは日本神話と悪魔の問題になっている。この意味、理解できるよな?アーシアは我が母、天照大神の加護を受けた巫女。それを純血悪魔……それも現魔王の身内が誘拐した。これはれっきとした日本神話への宣戦布告も同じ」

 

 零は言う事は当然の事だ、現にアーシアは天照の加護を受け正式に日本神話体系の一員……加えて天照に直々に加護を受けており、息子である零が家族と認めている以上、天照にとっても身内も同然。そんな者を誘拐すると言う事は、悪魔が日本神話側に対して戦争を吹っかける様な物だ。

 

 

「だが今回はテロリストが関係している……故にそれの命とペナルティのみで勘弁してやろう」

 

 ディオドラの命と内容は分からぬがペナルティのみで、事を済ませると零が言った。現在の零の言葉は天照の言葉でもある、その零が断言したのならまず間違いないだろう。

 

 

「?!」

 

 

「本来であれば、日本神話とは関係なしに………この俺が悪魔を全滅させている所だ。今の俺はあくまで母様の子として此処に居る。貴様ならこの意味は分かるだろう?」

 

 悪魔としてのルールを重んじてディオドラを護り日本神話との関係を悪くし最悪戦争に発展するか、ディオドラを見捨てペナルティを受けてでも日本神話との関係を維持するか。

 

 

「それとも……今此処でそれと一緒に死ぬかだ。早く決めろ」

 

 天叢雲剣から凄まじい神気が溢れる。既に零の心は決まっている、今の彼を止めれる者など居ない。その表情も殺意に満ちている。

 

 

「ぜっ零さん!」

 

 アーシアが天叢雲を持つ零の腕に抱き着く。

 

 

「アーシア……大丈夫だ、直ぐに終わらせる。見たくないならはなr「今の零さんの顔は怖いです!そんな零さんの顔、見たくないです。だからやめて下さい!」……」

 

 零は天叢雲剣の刀身に映る自分の顔を見た。殺意に満ちており、誰が見ても恐怖を感じるだろう。

 

 

「だが此奴はお前を不幸にした張本人だ、今回の事にしても……昔の事にしても」

 

 

「確かに辛い事も、悲しい事もありました。でもお蔭で白音ちゃんに、黒歌さんに、オーフィスさんに、多くの人に出会えました。何より零さんに会えました……私は今、それでとても幸せなんです」

 

 零はそれを聞き、少し殺気が収まった様に見えた。

 

 

「零、貴方の負けです。貴方はその子が哀しむのは分かっていて、それを殺す事はできないでしょう」

 

 アベルは零にそう言う。零はそれを聞くと溜息を吐き、天叢雲剣を消した。

 

 

「はぁ……アーシアの勝ちだ。分かった、分かった。殺すのは止めるよ……アベル、周りの戦況はどうなっている?」

 

 

「そうですね……成程。旧魔王と現魔王・堕天使総督が交戦中、他の場でも戦いは続いてます。このまま行けば数十分で此方の勝利になるでしょうね」

 

 アベルは一瞬目を瞑ると現在の状況を説明した。

 

 

「魔王……全く、どいつも此奴も。母様は言ってたが、悪魔共に誰を怒らせたら一番怖いか教えてやる。アベル、頼んでいいか?」

 

 

「えぇ、構いませんよ。この身は貴方に救われた身です………来なさい!J-002!」

 

 アベルが空に向かい、そう叫ぶ。空に穴が開き、巨大な白い戦艦が現れた。

 

 

「一応、テロリスト以外は攻撃するなよ。後々面倒だ」

 

 

「クスッ……了解です。ではまた後で」

 

 アベルはそう言うと、光だし白い戦艦の方へ飛んで行った。白い戦艦はそのまま、戦場の方に向かい凄まじい速度で飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……出てきたらどうだ、魔王さんよ?」

 

 零が玉座の方を見てそう言うと、玉座の上に男がいた。軽鎧とマントを羽織い、冷たい空気を放つ男は此方を見降ろしている。

 

 

「アレ?どっかで見た様な……」

 

 

「シャルバ・ベルゼブブ……零と我が初めて会った時に居た」

 

 そんなのも居たなと言う様な表情をしている零。

 

 

「オーフィス……我等の元に戻れ、お前の目的はグレートレッドを倒す事だろう?我等と共にいれば、奴を倒す事も不可能ではない」

 

 現れた魔王ベルゼブブの言葉に驚いているリアス達。

 

 

「シャルバ、我はもうグレードレッドに用はない。我が帰るべき場所はもう見つけた」

 

 

「なに?」

 

 

「我の帰る家……零や白音達のいる所、此処には【次元の狭間】に無かったものがある」

 

 

「降らん……お前の様な力を持つ者のいる場所などこの世界にはない」

 

 シャルバはそう言う。それを聞いてアーシア達は心配そうにオーフィスを見るが、当の本人は首を横に振る。

 

 

「我の帰るべき場所は……我自身が決める。だから我はお前達と共にいない」

 

 

「……おのれ、伝説の戦士」

 

 シャルバは零の方に視線を向ける。

 

 

「よくもオーフィスに余計な知恵を与えおって……以前の時にしても邪魔ばかり。貴様は確実に我等が障害となる……此処で消し去ってくれる!」

 

 シャルバは零に向かい手を翳すと、ディオドラの掌にも浮かんだオーフィスの紋章が浮かび上がった。

 

 

「オーフィスの蛇……アーシア、直ぐに終わらせる。だから下がってろ」

 

 

「はい」

 

 アーシアは零から離れ、オーフィス達の元に戻った。

 

 

「本日2回目の【ソウルコード:ジェネシック・ガオガイガー】」

 

 再びジェネシック・ガオガイガーを展開した。アーシア達(ついでにリアス達も)はオーフィスが張った結界内にいるので、心配はないだろう。

 

 

「行くぞ!【ガジェットフェザー】!」

 

 ジェネシックの背中の翼が展開し、シャルバと同じ高さまで上昇する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「始めようか」

 

 

「フン、たかが極東の神如きg「シャルバ!助けてくれ!僕等が力を合わせれば……旧魔王と新魔王が」五月蠅い」

 

 今にも戦いを始めようとしていたのだが、ディオドラに会話を中断された。シャルバはディオドラに手を向けると、光が放たれディオドラの胸に巨大な風穴が開いた。

 

 

「えっ……」

 

 

「限りあるオーフィスの蛇を別けてやったのに、この体たらく。所詮貴様はその程度だ……失せろ」

 

 シャルバが手を払うと、ディオドラに光が降り注ぎそのままディオドラの身体を消滅させた。

 

 

「うん、それに関しては同意だな。オーフィスの蛇を使ったのにも関わらずあの程度とか……アーシアが止めなかったら俺が産まれてきた事を後悔する程の苦しみを与えて殺してやるところだったのに」

 

 

「フン……あの様な小物、我等にとってはどうでもいい存在……では受けるがいい!我が裁きの光を!」

 

 シャルバが光を放つ、その直撃を受けるが全くの無傷のジェネシック。

 

 

「やはりこの程度では全く効かぬか……ならば」

 

 無傷だったのは予想内の事だったらしく、シャルバは懐から瓶を取り出した。

 

 

「薬?」

 

 

「これは限りあるオーフィスの蛇を有効に使う為に禍の団(カオス・ブリゲード)が開発した、【無限活性剤(ウロボロス・ドーピング)】というものだ。これを使えば一時的に体内の蛇を活性化させ、肉体・魔力を爆発的に上げる薬だ……デメリットとして命を削るがな」

 

 シャルバは何故か丁寧に薬の効果を説明した。

 

 

「何故、その様な事を俺に説明する?」

 

 

「貴様が何者であれ、この力の前では無力だからだ」

 

 シャルバは薬を飲み干すと、瓶を放り投げた。

 

 

「ヌオォォォォォォォォ!!感じるぞ……このオーフィスの無限の力の一端を!!!!」

 

 突如シャルバの身体が倍の大きさに膨れ上がり、また魔力も先程の数倍になっている。大きさ的にはジェネシック・ガオガイガーを纏った零と同じくらいだ。

 

 

「この力で貴様を消し去ってやる!」

 

 肥大化したシャルバは零に向かい、先程の光よりも巨大な光を放つ。

 

 

「へぇ……ならっ【ガジェットツール・ウィルナイフ】!おらぁぁっぁ!!」

 

 ガジェットガオーの頭部のパーツが外れ、右手に装着されると緑色の刀身が展開される。刀身は零の意志に呼応し、茜く染まる。零は向かってきた、光をウィルナイフで空間ごと切断した。

 

 

「なぁ……馬鹿な!?ドーピングした我の一撃をこうも簡単に防いだだと!?」

 

 

「あの下種よりはマシだが……所詮はこの程度か」

 

 

「あっ……ありえぬ!このような事があって堪るか!我はベルゼブブだぞ!ルシファーよりも偉大なベルゼブブが、ウロボロスの力まで得、意地を捨てドーピングまでした我の一撃が何故効かぬ?!」

 

 どうやら、零を倒す為に自分のプライドを捨てドーピングらしい。その一撃が効かない為にシャルバは動揺している様だ。

 

 

「なんで効かないか……簡単な話だ。貴様は自分ではない力を使いながら1人で戦っている、我が力も紛い物ではあるが1人で戦っている訳ではない。我が力は戦友との絆………戦う時も俺は戦友達と共に戦っているんだ」

 

 零の身体に、無数の人影が被って見えた。そしてGストーンが輝き始め、零の身体が……ジェネシック・ガオガイガーが緑色に染まる。

 

 

「1人で戦っているお前が!共に戦っている俺達に勝てる筈がない!うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 Gパワーが溢れだし、辺りを吹き飛ばしながら天を貫く光の柱になる。

 

 

「なっ……なんだ、この力は」

 

 

「どりゃあぁぁぁぁっぁ!!」

 

 ガジェットフェザーを使い、茫然としているシャルバに接近し右ストレートを放つ。

 

 

「ぐわぁ!?」

 

 

「貴様等が同族で何をしようが構わん!だがそれに俺の身内を巻き込むな!」

 

 殴られ吹き飛ばされたシャルバを胸倉を掴み、引き寄せ頭突きをくらわせた。

 

 

「それに!貴様等、悪魔が滅びようとして生き残る為に他の種族を巻き込むんじゃねぇ!」

 

 シャルバを地面に向かい、投げ飛ばした。シャルバは直ぐに体勢を立て直そうと、翼を出し飛ぼうとするが零に踏まれ起き上がれないでいる。

 

 

「貴様等、悪魔の性で!黒歌の、白音のいた妖怪の里は滅ぼされた!」

 

 

「ちょっと待て!それは私の性でh……ぎゃあぁぁっぁぁぁ!!」

 

 シャルバは自分の性ではないと言おうとするが、翼を引き千切られ叫ぶ。

 

 

「悪魔の駒はベルゼブブが作ったって聞いたぞ!……ん?翼が再生している。これもオーフィスの蛇の恩恵か……ますます許せん!」

 

 再生したシャルバの翼を見ながら、オーフィスの蛇の事を思い出した事で零の怒りは更に増した様だ。

 

 

「ぐおぉぉぉ……この…化物がぁぁぁ!!!」

 

 魔力の暴風を吹かせ、零を吹き飛ばすと立ち上がり、辺り構わず光を降り注がせる。

 

 

「チッ!【ガジェットツール・ボルティングドライバー】!」

 

 ガジェットガオーのパーツが左手に装備された。

 

 

「【ジェネシック・ボルト】!」

 

 

【ガオォォォォォ!】

 

 ギャレオンの口からボルトが放たれ、ボルティングドライバーの先に装着されると、ドライバーが高速回転を始め、ドライバーの先から高密度のジェネシックオーラが放たれた。そのジェネシックオーラにより、シャルバの光が全て破壊された。

 

 

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁ!この様な事が在って堪るかぁぁぁ!このシャルバ・ベルゼブブがこの様な遅れをとるなど!在って堪るかぁぁぁ!こうなれば、我が命を賭してでも貴様を抹殺してくれる!」

 

 完全に自分の力が全く通用せず、自棄になったシャルバは無限活性剤(ウロボロス・ドーピング)を10本取り出し、瓶ごと飲み込んだ。

 

 

「ふっ……フハハハハハハハハハ!流石の貴様もこれで終わりだ!私も意識をなくし、怪物なるが貴様を倒れるなら何でも構わん!ぐげっ?!ごはっ!?」

 

 ―ボコッボコッ―と音を立てながら、シャルバの身体が膨れ上がっていく。零は膨れ上がっていくシャルバから一旦距離を取り、オーフィス達の元に向かう。

 

 

「オーフィスあれは?」

 

 

「あの薬で我の蛇を暴走させたみたい……多分、魔力の暴走と細胞の無限増殖が起きる」

 

 

「一気に終わらせろって事か……皆を連れて少し離れてろ」

 

 オーフィスはそう言われると頷き、皆と共にその場を離れた。零はそれを確認すると、シャルバの前にゆっくりと降りた。

 

 

「【ガジェットツール】!」

 

 両手を広げると、ガジェットツールが分解され両手を覆う保護グローブへと変形した。

 

 

「【ヘルアンドヘヴン】!」

 

 右手が茜く、左手が黄色く発光する。そして両手を合わせる様に手を近付けるが、右手と左手のエネルギーが反発しているのかバチッバチッと音を立てている。

 

 

「ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……フン!」

 

 呪文を言い終えると、反発し合っていた力が1つとなり両手が合わさった。それと同時に、零を中心に緑色の風……ENトルネードが肥大化をしているシャルバを拘束した。

 

 

「ウィータァァァァァ!!!」

 

 ヘルアンドヘヴン・アンリミテッド……ジェネシックオーラにより無限の破壊力を得た必殺技だ。

 

 肥大化するシャルバに直撃し、眩い光が辺りを包み込んだ。




・無限活性剤(ウロボロス・ドーピング)

 オーフィスが禍の団を抜け、蛇を得られず数が限られた為に開発したドーピング剤。体内に宿したオーフィスの蛇を活性化させる効果があるが、デメリットとして命を削る事になる。

 蛇が活性化させると、肉体と魔力が数倍以上に膨れ上がる。後半でシャルバはこれを多用し暴走状態となり、無限細胞増殖と魔力の暴走が起った。


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EP88 金色の破壊神

 ~ディオドラ 神殿跡~

 

 突然現れた、シャルバ・ベルゼブブは零と戦った。その結果、自分の力が全く効かなかった為にドーピング剤を多用し自分の命と引き換えに魔力の暴走・細胞無限増殖の力を得た怪物になった。

 

 零はそれに対抗し、ジェネシック・ガオガイガーの攻撃と防御の力を合わせた必殺技【ヘルアンドヘヴン・アンリミテッド】を使い、肥大するシャルバを攻撃した。

 

 

「ふぅ……完全に吹っ飛んだかな?」

 

 零は周りを確認してみると、シャルバの姿はない。

 

 

「ふっとん《ごぽっ!ぐちゅ!》でないかぁ」

 

 零はシャルバの小さな肉片から再生し始めたのを見た。

 

 

「……しかもあっちこっちに散ったか。まとめて潰すしかないか、分子も残さずに消そう。承認を要請するよ、《長官》」

 

 零はそう呟くと、ガジェットフェザーを使いその場から上昇を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~少し離れた崖の上~

 

 

「おっ終わったんでしょうか?」

 

 眩い閃光があった後、戦いが終わったかと思いアーシアはオーフィスに尋ねた。

 

 

「……未だ。シャルバは肉片から再生を始めた」

 

 

「うげっ!?肉片からって気持ち悪!」

 

 オーフィスがそう言うと、それを想像したのか叫ぶ一誠。

 

 

「それってどうなるんでしょう?」

 

 

「多分、シャルバの細胞増殖を無限に繰り返しこの世界を覆い尽くす」

 

 ギャスパーが呟くと、オーフィスがそう説明した。

 

 

「なっ!?それじゃあ、この冥界は」

 

 

 

「数時間もしない内にアレに包まれる。アレにはもう意志はない、他の細胞を取り込み増殖を続けるだけの存在」

 

 リアスの呟きを聞き、オーフィスはそう答えた。神殿跡から肥大化したシャルバで在った怪物が出現する。その大きさはこの数分で神殿を覆う程になっていた。

 

 

「あんなんに取り込まれるなんてゴメンにゃ」

 

 

「同感です。でもアレを倒すの骨が折れそうです、叩いても叩いても再生するなんて」

 

 

「一撃の元に細胞1つ残さず消さないと駄目みたい。私や白音でも無理ね……オーフィスなら問題ないんじゃない?」

 

 

「それはいいけど……零が護りに集中しろって」

 

 黒歌と白音は見えている怪物を見ながら、倒し方を考えているとオーフィスがそう言った。オーフィスは自分の力を周りに張る結界へと注ぐ。

 

 

「でもレイ一人じゃ、無限に増殖する敵を倒すの厳しいんじゃないか?」

 

 

「確かに……幾ら天王理君が強いと言っても無限増殖の敵を1人では」

 

 

「そうだね、せめてボク等も手伝いたい」

 

 一誠、朱乃、裕子がそう進言した。強いとは言え、巨大な神殿を覆い尽くしてなお肥大化し続ける敵を倒し切れないかも知れないと思いそう言ったのだろう。

 

 

「う~ん、逆に邪魔だと思うわ」

 

 

「でも、俺が限界まで倍加した力を譲渡した部長の滅びの魔力なら」

 

 一誠の赤龍帝の篭手(ブースデット・ギア)の能力、赤龍帝の贈り物(ブースデット・ギア・ギフト)で限界まで倍加した力をリアスに譲渡し、リアスの滅びの魔力で殲滅する。方法的にはそれでいいかも知れないが……

 

 

「アレは壊しても壊しても増殖する。脆弱なお前達の力では無理」

 

 オーフィスはキッパリと言い切った。お前達は弱いから無理だと……しかしそれが現実だ。その言葉はリアスや一誠達の心に突き刺さる。

 

 

「でもご主人様、アレをどうやって倒すんでしょう?」

 

 

「フム……無限増殖する敵が相手か、彼が私達を頼ったのも頷けるな」

 

 

「YES!」

 

 

「「「えっ?」」」

 

 白音の言葉の後に続いた2人の声……しかし皆はそれに聞き覚えがなかった。少なくともこの場に居た者達の声ではなかった。皆が声をした方向を見てみると、2人の男女が立っていた。

 

 

「初めましてお嬢さん方、私はGGG長官、大河幸太郎という者だ。我等が仲間、零君の救援を聞き駆けつけた」

 

 

「私はスワン・ホワイトと言いマス」

 

 

「ご主人様とお知り合いですか?」

 

 

「YES!零はフレンドです!」

 

 どうやら彼等はアベルと同じ様に零と知り合いの様だ。彼等の前には何やら金属製の筒の様な機械が在る。

 

 

「ではそろそろ始めようか、スワン君!キーを!」

 

 

「了解!」

 

 2人はそう言うと、首に掛かっているペンダントを突き出すとペンダントが鍵に変形した。

 

 

「「人類の英知と、勇気ある誓いの元に!ゴルディオン・クラッシャー!発動!承認!」」

 

 その台詞と同時に、2人は前にある機械に鍵を突き刺した。すると、機械の上部が回転し始めた「勝」と「利」の文字がそれぞれの機械に表示された。

 

 

「これが勝利の鍵だぁ!」

 

 大河がそう叫んだ瞬間、空に眩い光と共に巨大な機械が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たぁー!!!」

 

 零はそう叫ぶと、ガジェットフェザーを使いその機械の元へと急ぐ。急ぐ零の傍に半透明の2人の人物が現れた。

 

 

『零君、コネクタはガオファイガ-用なんじゃが。君なら問題あるまい』

 

 

『零!ガッツと勇気で補いやがれ!』

 

 その2人はそう言うと、直ぐに消えてしまった。

 

 

「よっしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 機械の下部にある緑色のパネルの元に来る。すると零は右腕でパネルを砕き、無理矢理に腕を捻じり込んだ。そして、額のGストーンが光ると、緑色の光が零から機械全体に広がった。

 

 

「ゴルディオン・クラッシャー!」

 

 ゴルディオン・クラッシャー……正式名称【グラヴィティ・ショックウェーブ・ジェネレイティング・ディビジョン・ツール】。本来は木星に張り付く惑星サイズの敵に対して使用するツールである。重力を使い……と説明は長いため簡潔言う。対象を光の粒子に変えてしまう、とんでもない兵器である。しかも今は人間サイズまで小さくなっているが、実物は巨大で恒星サイズの敵を光に変えてしまう最強ツールだ。

 

 ゴルディオン・クラッシャーの上部が展開し金色の光のフィールドが形成された。ゴルディオン・クラッシャーと零自身も金色に輝いていた。

 

 

「ゴルディ!出力調節頼んだぞ!一応、俺も立場があるからこの世界を全部光にする訳にはいかないからな!」

 

 

『おう!任せとけ!アレを消し飛ばすくらいに調節しておく!』

 

 ゴルディオン・クラッシャーの前部の装甲がスライドすると顔が現れ、零に応えた。彼はゴルディーマーグ、ゴルディオン・クラッシャーの中枢を司っている。

 

 

「………心配だ。結界はっとこ」

 

 零はそう呟き、広域結界を張り此処一帯以外に被害が行かない様にした。

 

 

『調節完了!零!ぶちかませぇ!』

 

 

「おっしゃ!でぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!」

 

 零はゴルディオン・クラッシャーを携え、上昇する。怪物は既に神殿から溢れだし、数キロ程に広がっている。一瞬で倒すのは世界にも数人しかいないだろう。

 

 零はゴルディオン・クラッシャーを振るえる高度まで上昇していくが、怪物から無数の光が放たれた。

 

 

「なんだ?意志は無い筈なのに……いや執念か」

 

 シャルバが意志も魔王としてのプライドも捨ててドーピング剤を多用したのは零を倒すと言う執念があったから。故に怪物となってからも零を倒す言う執念だけは忘れておらず、零に対して攻撃した様だ。

 

 

『勇気とともに!』

 

 

『勇気を忘れないで!』

 

 

『勇気ある限り!』

 

 

『勇気を信じて!』

 

 

『勇気は不滅だっぜ!』

 

 何処からともなく、零の耳に届く声。それはかつて共に戦った戦友達の声だ。仲間の声援を受け、金色の破壊神はその大槌を振り上げた。

 

 

「光に、なあれぇー!!」

 

 金色の破壊神()は無限に増殖するシャルバで在った怪物にゴルディオン・クラッシャーを振り下ろした。その衝撃と光は冥界で戦う他の者達も見る事になった。

 

 ゴルディオン・クラッシャーによりシャルバにで在った怪物は細胞の全てを光の粒子に変えられ、この世界から消滅した。だがシャルバだけでなく、ディオドラの神殿を含めた数キロが完全に消滅した。勿論、オーフィスの結界に護られた白音達は無事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっきりした」

 

 ゴルディオン・クラッシャーは光になって消え、ジェネシック・ガオガイガーを纏った零だけが残った。

 

 

「お疲れ様」

 

 

【ガオオォォォォォ!】

 

 胸部のギャレオンが咆哮を上げると、ジェネシック・ガオガイガーは光となって消えてしまった。

 

 

「ふぅ……久しぶりに、はしゃぎ過ぎたぜ」

 

(加減した)はしゃぎ過ぎで、直径:数キロ、深さ:そこが見えない、大きさのクレーターを作られたら困る。

 

 

「アベルの方は………まさかギガ・フュージョンさせてないだろうな?アザゼルあたりに見られると、しつこく聞いて来そうでやだな。まぁJアークみただけでも十分聞いて来そうだけど……いっか。さて戻るか」

 

 零はアーシア達の元へと戻るのであった。



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EP89 戦闘……いいえ、一方的な蹂躙だと思います

久しぶりに此方を更新しました。

今回は少し長めになっています。


 ~冥界~

 

 ジェネシック・ガオガイガー(破壊神)の力でディオドラの神殿をクレーターに変えた零はアーシア達の元へ戻った。

 

 

「零さん!」

 

 

「「ご主人様!」」

 

 

「おわっと……いきなり飛び付くな、転んだらどうする?」

 

 戻った零に飛び付いたアーシア達。零は彼女達を受け止めると、大河たちの方を見た。

 

 

「やぁ、久しぶりだね。零くん」

 

 

「久しぶり、長官とスワン。協力感謝する」

 

 Jアークの飛んで行った方向を見る。

 

 

「取り敢えず、話は後だ。アベルを追い掛けよう……後、アザゼルには仕置きが必要だな。どうしてくれよう、ククク」

 

 どうやらアーシアを巻き込んだ作戦を立てたアザゼルに大変ご立腹な様だ。

 

 

「でも今日はちょっと力を使い過ぎたな……黒歌」

 

 

「はいにゃ」

 

 零は黒歌に声を掛け、彼女の首輪についているバンシィに触れる。

 

 

「【ソウルコード・バンシィ】実体化」

 

 すると、黒歌のバンシィが光り出した。光で一同の視界が奪われた……そして光が止み皆が目を開くと巨大な黒い巨人が現れた。かつて零の纏ったユニコーンの兄弟機にして、獅子のガンダム。

 

 

「「「ななななななっ!?」」」

 

 リアスとその眷族達は巨人の登場に驚き唖然としている。そんな彼女達を無視して零はバンシィを見上げた。すると、各部から緑色の光が溢れ出し始め、バンシィ・ノルン…デストロイモードへと変身した。

 

 

「これがバンシィの本当の姿にゃ」

 

 

「そう……ユニコーンもそうだが、この状態を使うのにはそれ相応の思念波がいる。まぁそれもその内教えてやる」

 

 

「でも何で、バンシィを使うのかにゃ?ご主人様は他の力も使えるでしょう?」

 

 

「今日はジェネシックを使って少し疲れたからな」

 

 零はそう言い、手を上げるとバンシィがアーシア達の前に手を降ろす。

 

 

「皆、行くぞ。乗れ」

 

 アーシア達は零の言葉に従って、バンシィの手に乗った。零も続いてバンシィの顔の横に飛び乗った。

 

 

「バンシィ、頼むぞ」

 

 そう言うと、バンシィはそれに答えるかの様に両目のメインカメラが光り立ち上がった。そしてブースターが火を吹き、飛び始めた。

 

 

「……はっ!?みっ皆!後を追うわよ!」

 

 

「えっ……えぇ、そうですわね」

 

 

「いっ今のアイツじゃ何をしでかすか分からないし」

 

 我に帰ったリアス達は直ぐに零達の後を追う。

 

 今の零はディオドラの件で悪魔を完全に敵視している。今はテロリストである旧魔王派を倒す事を最優先にしているが、それが終われば悪魔に対して攻撃を仕掛けてもおかしくない状況だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 零達がバンシィに乗って、Jアークの元に着いた。Jアークは地面に着陸しており、旧魔王派の悪魔達はアベルとその隣にいる男性に拘束されていた。因みにバンシィは到着と同時に黒歌の首輪に戻っている。

 

 

「………」

 

 

「あっ零、やっと来ましたか」

 

 

「あぁ……1つ聞きたいんだけど」

 

 

「はい、なんですか?」

 

 

「旧魔王派を拘束してくれた事は感謝するんだけど……何で、爺やそのお付きまで拘束しているんだ?アザゼルに関しては良くやってくれた」

 

 旧魔王派の連中と一緒にアザゼル、オーディンも拘束されていた。

 

 

「いえ、そこの老人が「小さい」「(胸が)ない」などと言ってきたので腹が立ちまして」

 

 

 

 

 

 

 

 ~零がジェネシックを纏いシャルバと戦いっていた同時刻~

 

 

「おいおい、何か向こうの方から凄い力を感じてるんだが」

 

 

「同感だ……しかもこの力、悪魔(我等)にとっては毒の様な物だ」

 

 禍の団(カオス・ブリゲード)と戦っていたアザゼルとサーゼクス・ルシファー。2人ともディオドラの神殿の方から感じる膨大な力を肌で感じていた。

 

 

「サーゼクス、アザゼル」

 

 オーディン、ロキ、ロスヴァイセ、イリナも2人と合流した。

 

 

「ぁ~零の奴、怒っとるのぅ」

 

 オーディンはディオドラの神殿の方を見て、そう呟いた。

 

 

「これはあの方の力なのですか?以前とは全く、異なる力です」

 

 ロスヴァイセはこの力を出しているのが零だと聞き、疑問を感じた。以前に零が発していた力とは、質が異なっていた。

 

 

「前は零自身も権能を出しておったからな……これはあの子の力であり、そうでない力。今、あの子の使っているのは言わば【絆】の力じゃ」

 

 

「絆……」

 

 

「フム……何かが近付いてきておるのぉ」

 

 オーディンの言葉に耳を傾けているロスヴァイセ達。するとオーディンが城の方から何かが近付いてくるのに気付く。

 

 その言葉で一同が城の方向を見て、目を凝らす。

 

 

「なんだありゃ?」

 

 

「白い……なんだ?」

 

 

「舟かしら?」

 

 

「でも……なんかすごく大きい様な」

 

 段々と近づいてくる白い何かが舟の様な物だと気付いた。近付くにつれてその舟の巨大さがはっきりと分かった。

 

 

「「「「なぁ!?」」」」

 

 

「ホホホ……中々な大きさじゃのぅ」

 

 自分達の真上を通り過ぎる舟……とある世界、とある宇宙の最終決戦時に建造された超弩級戦艦の大きさに唖然としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~Jアーク内~

 

 超弩級戦艦Jアーク、その艦内にある玉座、そこに座るのは零の元に現れたアベルと呼ばれた少女。そしてその後方に在る赤い宝石を嵌め込まれた鳥の紋章の前には1人の男が立っていた。

 

 

「Jー002、敵は旧魔王派の者達……それ以外への攻撃は禁じます。旧魔王派以外への攻撃は零に迷惑をかける事になりますから……後、殺すと面倒ですので以前に設定を付け加えた【非殺傷モード】で使いなさい」

 

 

「承知した……トモロ、設定を【非殺傷モード】に!照準合わせ!敵、旧魔王派!」

 

 

【リョウカイ】

 

 J-002……またの名をソルダートJ。此処とは別の世界にあった三重連太陽系、赤の星の戦士だ。

 

 彼はJアークのメインコンピューターを司っている【トモロ】に指示を出した。

 

【非殺傷モード】とは文字通り、相手を殺傷しないようにする為のモードであるが……このJアークの武装はどれをとっても悪魔なんてオーバーキルな武装ばかりなのだが……

 

 A.()の力でどうとにでもなります。

 

 

【半中間子砲、各メーザー砲、三連装無限ミサイルランチャー、非殺傷モード……照準:旧魔王派の悪魔】

 

 

「では……殲滅……いぇ制圧の時間です!Jー002、トモロ0117、赤の星の力を示しなさい!」

 

 

「全砲門、一斉射撃……撃てぇぇぇぇ!」

 

 

【全砲門、一斉射撃】

 

 Jアークの全砲門が解放された、レーザーが、ミサイルが、旧魔王派の悪魔に襲い掛かる。

 

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」

 

 

「なんでミサイルなんてものが!?」

 

 

「うぎぃぃぃぃ!」

 

 旧魔王派の悪魔達が次々と墜とされていく。非殺傷モードとやらのお蔭で悪魔達は消し飛んではいなかった。

 

 本来なら、原種と呼ばれる存在を滅ぼす為に製造されたJアーク。その気になれば、この冥界を破壊し尽くす事も可能だろう……故に一方的に蹂躙になっていた。

 

 

「あっ……アハハハハハ、もう訳分からんねぇ!」

 

 

「すっ凄い……」

 

 悪魔達を殲滅するのに5分も掛からずに戦闘……蹂躙は終了した。アザゼル、ロスヴァイセ、サーゼクス達は驚愕していた。ロキの方は、自分の戦い勝った相手の味方であるならこれ位は当然だろうと思っている様だ。

 

 

「もう終わりましたか………悪魔と言うのは案外、呆気ないですね」

 

 

「アベルよ……私は堕ちた悪魔達を拘束してくる」

 

 

「では此方を……零から貰った悪魔を拘束する鎖です」

 

 アベルはそう言うと、ソルダートJに零から貰った鎖を渡す。鎖には無数の手錠と札が付けられていた。Jはそれを受け取り、Jアークから降りた。

 

 

「トモロ……Jアークを降ろしなさい」

 

 

【リョウカイ】

 

 ソルダートJが悪魔達を全員拘束し、そこにアベルが降り立った。

 

 

 

「初めまして皆様方……赤の……いぇ零の同盟者・アベルと申します。そちらは北欧神・オーディン……零のお爺様ですね?」

 

 

「ウム」

 

 

「そちらは堕天使・アザゼル……そして魔王サーゼクスですね」

 

 

「あぁ……それでお嬢ちゃん、その後ろのドデカい舟はなんだ?」

 

 

「企業秘密です……J-002、堕天使・アザゼルの拘束も頼みます」

 

 

「承知した」

 

 凄まじい速度でアザゼルは拘束された。

 

 

「おっお嬢ちゃん、なんの冗談だ……ってこの鎖かてぇ!千切れねぇ!」

 

 

「零が貴方に用がある様なので」

 

 

「やっやべぇ……アーシアの事だな……」

 

 顔を真っ青にしているアザゼル……その顔は本当に絶望の表情をしていた。

 

 

「ふむ………それにしてもお嬢ちゃん」

 

 

「はい、なんでしょう?」

 

 

「零とはどう言う関係じゃ?」

 

 

「えっ……と……戦友と申しますか……」

 

 アベルはオーディンにそう聞かれて、顔を真っ赤にした。

 

 

「それにしても……あやつはこう言った「小さい」女子が好きなのかのぅ?……「(胸も)なさそう」なのに……やはり大きい方が良いと思うのじゃが」

 

 

「J-002!この老人も拘束なさい!」

 

 

 ~回想終了~

 

 

 ~現在~

 

「いいと思うよ……このままESウィンドウ開いて放り込んじゃえ」

 

 

「成程……永遠に時空の狭間を彷徨う事になりますね」

 

 

「待て!待て!儂を殺す気か?!」

 

 

「死にゃしないよ、永遠に彷徨うだけだから………さてと冗談はさておき……アザゼル」

 

 オーディンからアザゼルに視線を向ける。その眼は完全に殺気立っており、今にも襲い掛かりそうだ。

 

 

「旧魔王派を討つ為とは言え、アーシアを巻き込んだんだ………それが何を意味するか、言わずとも分かるよな?言っておくが、言い訳は聞かんぞ………『【我】は怒っている』」

 

 髪をかきあげた零の紅と金の瞳が鈍く輝いており、それに呼応するかの様に天は暗雲に覆われ始める。

 

 

「ッ……言い訳するつもりはねぇ。事前にお前に知らせなかったのも、アーシアが巻き込まれたのも俺の責任だ。ディオドラの事はサーゼクスやリアスから聞いて居た………お前に知らせておけば少なくともアーシアがあんな目に合う事はなかっただろう」

 

 

「いい度胸だ……安心しろ。お前の御仲間も後から全員送ってやるから」

 

 それを聞いて何かを言おうとするが、場を覆い尽くす圧倒的で異質な力により強制的に黙らされた。零は完全にキレていた、故にアザゼルだけでなくその陣営総てを滅ぼそうと考えていた。

 

 

「我は大概の事は許す………だが身内を傷付けられて黙っていられる程、聖人君子じゃない」

 

 言葉を言い放つだけで、空気の重さは倍になっていく。

 

 

「あらあら……どうやら怒らせてはいけない相手を怒らせてしまった様ですね」

 

 そう言うアベルは肩を竦めている。どうやらこの状況下でも特に変わりはない様だ。

 

 

「それは幾度もお前に言ってきただろう………だがお前はそれを知った上で、此度の事を起こした。テロリストを倒すと言う名目が在ったとしても【我】やアーシアに関係ないの話だ。そして……魔王よ、それは貴様もだ………此度の事、主犯は悪魔だ」

 

 アーシアを攫った主犯・ディオドラは悪魔だ………その悪魔が日本の最高神の加護を受ける巫女を攫ったという事は、日本に対する宣戦布告と受け取られても可笑しくはない。

 

 

「まぁまぁ、零。少し落ち着かんか……お主の【権能】は強力過ぎる。世界そのものが消えるぞぃ……流石に可愛いでも、理由なく世界を消滅させるのは見過ごせんわぃ」

 

 オーディンは零に向かいそう言う、その身からは零と同じ異質な力を放っていた。

 

 

「邪魔をすると言うのか、祖父よ」

 

 

「邪魔はせん……しかし少し落ち着いて話し合いをするべきじゃと言っておるのだ」

 

 

「………話し合いが必要か?悪魔が誘拐したのは日本の太陽神・天照の巫女……太陽神の巫女を攫った悪魔は光にした。しかし問題はそう単純ではないのは言うまでもないだろう。

 

 我が母は三大勢力にそれを正式に発表していた。それを知った上で、あの悪魔はアーシアを攫った。つまりこれは悪魔側の宣戦布告を意味する」

 

 

「お主の言いたい事は良く分かる。されどいきなり戦争を起こすのはいかん………ここで魔王や堕天使の総督を討てばそれこそ戦争だ。お主の力なら2つの勢力を滅ぼすなど簡単の事であろうが………」

 

 諭す様に優しく声を掛けるオーディン。すると零の身体から放たれる力が弱くなり、その瞳の輝きも消えた。

 

 

「………この件、母様に任せよう。俺の一存で三大勢力の2つを消し去れば、母様に迷惑をかける故にだ。だが覚えておけ………次に俺の家族を傷付ける様な事をすれば」

 

 未だ空を覆う暗雲は消えておらず、その暗雲の隙間から巨大な影が蠢いていた。それも1つではない、数えればキリがない程の数だ。加えて白音のライガーゼロや黒歌のバンシィ、アーシアのジャンヌの十字架も呼応する様に点滅を始める。

 

 

「俺の総てをもって貴様等を消し去ってやる」

 

 再び紅と金の瞳が輝き、アザゼルとサーゼクス、旧魔王派の悪魔達を睨みつけた。言い終えると眼を閉じ、再び眼を開けた。その眼にはもう輝きもなく、空の暗雲も消えていた。

 

 

「アベル、J、今日は助かった」

 

 

「いぇ……どうせ、暇ですし…貴方が頼ってくれたことは嬉しいことです。では私達はこれで失礼します」

 

 

「私はアベルに従ったまでのこと」

 

 2人はそう言うと、Jアークと共に光となって消えた。それを確認すると、アーシア達の元へと歩を進める。

 

 

「帰るぞ……今日は少し疲れた」

 

 そう言うと、彼の身体が光り出し縮んでいく。

 

 

「暫くこの姿で力の回復するt……『きゃあぁぁぁぁ、可愛い!!』」

 

 小さくなった零に飛び付く、黒歌達。

 

 

「こらっ、ちょっと……苦しい」

 

 

「小さいご主人様……ぷにっぷにっ」

 

 

「零……可愛い」

 

 

「はぅ……可愛いですぅ」

 

 

「ぇ~い……苦しいと言っている、早く帰るぞ!」

 

 零がそう言うと、彼等は光に包まれてその場から去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ……助かったぜ、オーディン」

 

 

「本当に助かりました……あの場で貴方がとりなして下さらなければどうなっていたか」

 

 

「構わんよ……あの子は家族思いの優しい子だけじゃからな。できれば無駄な殺しなどさせたくなどないんじゃ。それにしても、どうしたものか………ロスヴァイセや」

 

 

「……」

 

 

「ロスヴァイセ!」

 

 

「ひゃひゃい!」

 

 ぼっーとしていたロスヴァイセはオーディンに声を掛けられ我に帰るが、声が裏返る。

 

 

「お主は零の元に行くといい……あの小さい身体では何かと不便じゃろうからな。儂に言われて来たと言えばあの子も無下にはせんだろう」

 

 

「はっはい……分かりました!」

 

 ロスヴァイセも魔法を使い、その場から消えた。

 

 こうしてアーシアを巻き込んだ事件は終了した。



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EP90 戦いの後に

 ~高天原 天照の神殿~

 

「と言うのが、今回の事件の成り行きです」

 

 

「分かりました」

 

 ディオドラを倒し、変貌したシャルバを光にした零はアーシア達を連れて高天原にある天照の神殿を訪れていた。

 

「そうですか……アーシアさん、本当に御無事で何よりです」

 

 

「ご心配おかけしました、お義母さま」

 

 

「本当に無事でよかったです」

 

 天照は立ち上がると、アーシアに近付き、彼女を抱き締め、頭を撫で始めた。

 

「本当に……本当に良かった」

 

 

「あぅ……」

 

 天照に抱き締められて、顔を真っ赤にする。

 

「母様、悪魔との交渉の方はどうなさるのですか?」

 

 

「月読と素戔嗚とはこれから話し合います。零はどうするべきだと考えますか?」

 

 

「奴等は自分達の力を過信している。悪魔は堕天使や天使……そして神よりも優れていると思っている。ならば、見せるべきです………我等の力を」

 

 小さくなった零、彼の両眼が鈍い光を放っている。

 

「そして、その身体に恐怖と絶望を刻み込む。そうすれば簡単にふぁ、ふぉちらきゃわにてふぉ………ふぁに、しゅるんでふか(なに、するんですか)?」

 

 零が話している途中で、天照が零に近付き、彼の頬をぷにっぷにっと触り始めた。

 

「あらっ……ごめんなさい、愛らしくて、つい」

 

 

「つい……ではありません、真剣な話を」

 

 

 ―ドドドドドドドドドドッ!―

 

 

「ぁ~嫌な予感」

 

 入口の方から聞こえる轟音、零はそれを聞いて嫌な予感がした。

 

「母様、今度の日曜、この姿で一緒にお出かけしましょう」

 

 

「!?」

 

 天照は信じられなかった。零からそんな提案をしてくるなど、予想をしていなかったからだ。

 

「なので………この音の原因の2人を何とかして下さい」

 

 

「………膝の上に座らせたり、撫でたり、あ~んしたり、おっお風呂に入ったり」

 

 

「これから起こる事を回避できるなら何でもしますよ……まぁ程度はありますけど」

 

 それを聞いた瞬間、天照は神殿の外に出た。

 

 

 ―姉上!退いて下さい!―

 

 

 ―零が……小さくて愛らしい零が居るのでしょう!?―

 

 

 ―今すぐ帰りなさい……主神命令です―

 

 

 ―そんな横暴な!―

 

 

 ―零とお出かけ、お昼寝、あ~ん、お風呂の為です。さっさと帰りなさい―

 

 

 ―なっ―

 

 

 ―おっお昼寝……それに幻のお風呂だと?!―

 

 

 ―と言う訳で………帰りなさい!(カッ!)―

 

 

 ―ぎゃ~!!―

 

 数秒後、天照は満面の笑みで出てきた。

 

「ご苦労様です」

 

 

「ふふふ……デート、デート」

 

 

「変な事したら、即中止ですからね」

 

 

「親が子にそんな事をする訳がないでしょう?」

 

 

「………まぁいいです。じゃあ、俺達は帰りますので後はお願いします」

 

 

「えっ、ちょっと待って……」

 

 天照が止めようとするものの、零は力を使いアーシア達を連れ自分の家へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 ~零の家~

 

「ぁ~疲れた……風呂、入ろう」

 

 

「はぁはぁ」

 

 零が風呂に入る為に浴室へ向かおうとする。振り返ってみると、鼻血を出しながら息を荒くしている黒猫が居た。

 

「来るなよ……お前も女なんだからもう少し慎みを持て」

 

 零はそう言い、発情している猫の額を軽く叩くと、リビングを出て風呂の方へと向かった。

 

「姉様、駄目ですよ」

 

 

「いたたたた!白音ぇ~、関節決まってるんだけど!」

 

 白音が黒歌の腕に関節技を決めていた。

 

「そのつもりでやってます」

 

 

「……お風呂」

 

 オーフィスはそう呟くと、そのまま浴室へと向かって行った。

 

「じゃ……じゃあ、ボクは部屋に戻りますね」

 

 ギャスパーは自室へと戻って行った。アーシアは何かを考えているのか、顔を真っ赤にするとそのままリビングを出て行ってしまった。

 

 

 

 

 ~浴室~

 

 零の家の浴室は広い、具体的にどのくらい広いかと言うと………檜風呂(湯は何処からか引いてきた温泉)、ジェットバス、水風呂、サウナなどが多数あり、その辺のスーパー銭湯より凄い物だ。なんで家の中にそんな物があるのかと言うと、零が空間を弄っているからだ。

 

「はぁ~……極楽、極楽。あっそうだ……母様対策しとかなきゃ。あの人、何もしてないと盗撮するからな」

 

 零が天井に向かい、手を翳すと魔方陣が浮かぶ。

 

「これでよし……対策完了。襲われた時の為に対神拘束も展開したし、これで大丈夫だろう」

 

 全ての作業を終えたのか、魔法陣が消え、再び湯船に身を沈めた。

 

「はぁ~」

 

 

「気持ちいい」

 

 

「気持ちいいですね」

 

 

「?」

 

 零は横を見てみると、そこにはオーフィスとアーシアがいた。

 

「何でいるの?」

 

 

「零とお風呂」

 

 

「はぅ………」

 

 オーフィスは表情に特に変化はないが、正反対にアーシアは顔が真っ赤である。

 

「オーフィスはまだしも、アーシアまで………」

 

 

「あっあの……その」

 

 

「何だ?」

 

 

「助けて頂いて本当にありがとうございます!」

 

 

「あぁ、気にするな。それと今度からはランニングするにしてもジャンヌの十字架か、あの扉の向こうで騒いでる変態龍は連れていけ。

 

 あんな変態でも力は魔王と同じくらいはある」

 

 

 ーアーシアたんと入浴!銀髪許すまじ!俺様も入りたい!ー

 

 扉の向こうでは小さいファーヴニルが叫びながら扉を爪でガリガリしていた。多分、この姿を同じ龍であるドライグやアルビオンが見ればストレスで吐血しそうだ。

 

(さて………こうなれば、悪魔共がどう動くか………それだけじゃない、他の種族も動き出す可能性がある。この俺を引き入れようとする組織・種族………このままじゃ…………守りの手が足らん。俺の領域から数人呼び出しておくか)

 

 これからの事を考えていると、心配な顔をしているアーシア。

 

「大丈夫だ。お前が心配する必要はない………それよりも、タオル肌蹴てるぞ」

 

 

「えっ」

 

 アーシアは自分の視線を下に向けてみると巻いていたタオルが肌蹴ており、完全に産まれた時の姿のままだった。

 

「あぅ……」

 

 アーシアは顔だけでなく全身真っ赤になり気を失ってしまった。

 

「おっと………色々在ったから、アーシアも疲れてるんだな」

 

 彼女が沈まぬ様に抱き留める。しかし今の小さい体では彼女を運べなかったので、一時的に元の姿に戻った零。しかもアーシアが気を失った理由も勘違いしたままである。

 

「取り敢えずアーシアを寝かせてやらないとな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~暗い空間~

 

 この空間に居る零、そしてその前に跪く13の影。

 

「いきなり呼び出して済まない。この度、呼びだしたのはお前達に頼みがあるからだ………先の冥界での事件で俺が改めて、力を見せた。故に様々な組織が我の力を手にしようと、身の回りの者達を狙ってくるだろう。

 

 この家の者達だけでない、学園を含めた、この街の人間を狙ってくる可能性が高い。俺1人ではどうやっても手が足りない時も出てくるだろう。なのでお前達には街に滞在し、守護をして貰いたい。勿論、この国の長である母からの許可は取っているので問題ない。

 

 都合が悪いなら他の者達に任せる事にするが………」

 

 

「問題ありません。我等一同、王である貴方に従うだけ………他の者も構わないな?」

 

 影の1人がそう言うと、他の者達も頷いた。

 

「感謝する…………住居などについては此方で用意しておく。必要な金も用意するが………まぁ、暇な様なら働いてくれていいぞ」

 

 

「分かりました………ならば私は教師を」

 

 

「じゃあ、儂は道場でも開くかのぅ」

 

 

「まぁ希望は聞くが………あまり問題起こない様に……じゃあ2日後には呼ぶから宜しく」

 

 零がそう言うと、13人の影はその場から消えてしまった。

 



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第7章 荒れる修学旅行
EP91 修学旅行の準備


~冥界 悪魔の都市 ルシファード~

 

ルシファードにあるサーゼクスの館の1室で、会議が行われていた。

 

「拙い事になった………」

 

 

「済まない………皆、身内が飛んでもない事をした所為で」

 

この部屋にいる四大魔王、ミカエルとガブリエル、アザゼル。そして四大魔王の1人、アジュカ・ベルゼブブが他の者達に向かって土下座していた。

 

「頭を上げてくれ、アジュカ………過ぎてしまった事は仕方がない、これからの事を考えよう」

 

 

「そうよ、そうよ」

 

他の魔王達がそう言ってアジュカに頭を上げさせた。アジュカ・ベルゼブブは零の怒りを買う原因となったディオドラの身内である。故にこうなった責任を感じていたアジュカ。

 

「少なくとも俺だって(アイツ)の怒りを買ってるんだ。サーゼクス達の言う通り、これからの事を考えようぜ」

 

 

「そうです。正直言いますと、私共(天界)もアーシア・アルジェントの件でかなり怒りを買ってます………皆でこれからの事を考えましょう」

 

アザゼルとミカエルがそう言った。彼等もまた零の怒りを買っている為、何時攻め込まれても可笑しくない状況だ。

 

「日本神話側からも今一度、話し合いを求められている………このチャンスでどうにかしなければならない」

 

 

「あぁ………だがその前にハッキリさせておかないといけない事がある」

 

サーゼクスの言葉に続けるアザゼル。

 

「天王理 零の正体か…………」

 

 

「俺の方でも一度、調べ直したが………あんな力を使う存在はいなかった。日本神話だけでなく、北欧神話にも、ギリシャにもだ」

 

 

「ならば一体、彼は何者なんだ?」

 

 

「この間、アイツと話していて、妙に反応した言葉が在った。そんで、俺の中ではその可能性が一番近いんじゃないかと思う物がある」

 

 

「それは一体?」

 

 

「普通はありねぇ話だが……俺の予想では『天王理 零はこの世界の存在ではなく、別の世界の存在の可能性』だ。不可解な事は幾つかあるが、一番俺の中では納得がいく答えだ………俺は今度の会談でそれを聞こうと思っている」

 

 

「だが仮にその話が在っていたとしても、日本神話の長が自分の子だと認めている以上はなんの関係も……」

 

 

「あぁ、だがよ。もし、俺の予想が在ってるなら、別世界の奴が、俺等の世界の問題に介入している事自体が可笑しい話だ………俺はこの中でアイツとの付き合いが長い。筋が通っていりゃ話は聞く奴だ………話を聞いてくれるなら説得できる可能性もある」

 

アザゼルの話を聞いて、この場にいる者達の心が1つとなる。

 

次の話し合いで自分達の運命が決まる。故に何とかして生き残る道を手繰り寄せようとしていた。

 

「あの街にいるリアスやソーナ君にはくれぐれも失礼の無い様にして貰わないと………特にリアスは彼との関係はかなり悪い。私の方からも言っておくが………アザゼル、彼女達のサポートを任せても大丈夫かな?」

 

 

「あぁ………何とかするさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

~少し時が経ち 天王理家~

 

「怠い………」

 

零は現在、自分の家に居た。白音、黒歌、アーシア、ギャスパーと共に彼はぐったりとしていた。

 

彼等は体育祭を終えた翌日の為、疲れていた。アーシア達は肉体的な疲労だろう、だが零は精神的な疲労である。その原因は………

 

「零………さぁ、お買い物に行きましょう!」

 

 

「姉上!零は私と行くんです!」

 

 

「いや!俺が!」

 

毎度同じく、三貴士である。

 

「あのですね………早くお帰り下さい。お仕事があるでしょう?」

 

 

「「「押し付けて来たから大丈夫です(だ)」」」

 

 

「あのねぇ………仕事しないなら、次の休みの話はなしで」

 

 

「「「帰って仕事します!」」」

 

 

「ならお帰り下さい………俺はアーシア達と今度の修学旅行の準備があるので」

 

 

「行先は何処ですか?」

 

 

「京都ですけど」

 

 

「「「京都……」」」

 

天照、月読、素戔嗚は京都と聞いて、ニヤッと笑みを浮かべる。

 

「零………何処か行く?」

 

オーフィスが零にそう尋ねた。

 

「京都だよ」

 

 

「何をしに行く?」

 

 

「修学旅行」

 

 

「零が行くなら我も行きたい」

 

 

「しかし……なぁ。だがしかし、俺の第六感が呟いている何故か連れて行かないと後悔すると……そして白音も連れて行かないと駄目な気が………」

 

―ジッー―

 

天照、月読、素戔嗚が頼って欲しそうな眼で此方を見ている。しかもその手には子供服が握られていた。

 

「クッ………背に腹は代えられないか」

 

零は自分の身体を幼児化させた。

 

「お好きにして頂いていいので、お願いできますか」

 

 

「「「勿論!」」」

 

こうして御着替えタイムが始まった。

 

「そう言えば、京都で三大勢力と会談する事になりました。それとこれを持っていきなさい」

 

 

「三種の神器の残り2つですか」

 

 

「これを見せれば京都の妖怪達に貴方が私達の身内である事が分かるでしょう」

 

 

「ではありがたく」

 

こうして着々と準備を始めるのであった。



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EP92 狐少女、登場

 

「日本人の心の故郷………それは此処!京都だ!」

 

 そう言いながら、辺りを見廻している零。

 

「此処が京都ですか………見た事ない建物が一杯です」

 

 零と手を繋いでいる歩くアーシア。手を繋いでいる理由は彼女が迷子にならない様にだ。当のアーシアは恥ずかしいらしく少しばかり顔が赤い。

 

 何故京都に居るのかと言うと、答えは簡単、本日より彼等は修学旅行だからである。

 

「おい!あの2人!距離が近いんじゃないか?!」

 

 

「俺のアーシアちゃんと手を繋ぎてぇ!!」

 

 

「羨ましい!」

 

 松田、元浜を始め、修学旅行に参加している2年の男子生徒の殆どがアーシアと手を繋いでいる零に対して嫉妬と羨望の目を向けている。

 

「アレは………確実に進んでるわね」

 

 と同じクラスの桐生藍華がそう言った。

 

「「「進んでる!?」」」

 

 過剰に反応する男子生徒達。

 

「A………いや、B………C……でも最後まで言った感じはないわね。けどあの様子じゃ時間の問題かも」

 

 

「「「なぁに?!」」」

 

 

「あっアイツが大人の階段を」

 

 

「登るだと……?」

 

 松田や元浜は驚いた顔をしている。

 

(このタイミングでもう既に大人だっていうと面倒なことになるだろうな)

 

 等と考えている一誠。

 

「なぁ、イッセー………アレはなんだ?」

 

 

「イッセー君、あっち行ってみよう」

 

 

「あっちの方が面白そうよ」

 

 と一誠の近くに居るのは、ゼノヴィアと裕子、イリナである。

 

「もっと許せないのはお前だ、一誠!!!!」

 

 

「何時の間に、3人とそこまで仲良くなったぁぁぁぁあ!!!」

 

 

「えっ………いや、まぁ……色々と」

 

 

 

 

「全く騒がしい奴等め………アーシア、あっち行こう」

 

 

「はっはい」

 

 

「あっ、待ってくれ。俺達も」

 

 零とアーシアが何処かに行こうとすると、一誠達も付いて行こうとする。

 

「なんだ、リアス・グレモリーに監視する様にでも言われたか?」

 

 

「そっそれは………」

 

 

「その態度で分かった。別に構わんぞ」

 

 どうやら一誠、ゼノヴィア、裕子はリアスから零を監視する様に言われていたらしい。

 

「来るなら好きにしろ。後………何で怪我しかのかは知らんが、キチンと治しておけ」

 

 そう言い一誠に赤い液体の入った瓶を投げ渡すと、零はアーシアを連れて歩き出した。

 

 

 

 

 

 ~伏見稲荷神社~

 

「えらく古ぼけた社だよな」

 

 

「それは見て分かるけど………一誠、そんな事を言うと罰当たるぞ?」

 

 零達は伏見稲荷神社の参道を駆け上がってきたが、古ぼけた社へと辿り着いた。ゼノヴィアとイリナは此処にいない。

 

「しかも此処は()()が入れない場所だ。適当に駆け上がったから迷い込んだらしいな」

 

 零はアーシアを抱えており、到着すると直ぐに降ろした。

 

「でしたら、私達は此処に居ていいんでしょうか?」

 

 

「俺やアーシアは問題ないさ………なんせ………っと……妖怪か」

 

 

『京の者ではないな?』

 

 謎の声が聞こえてきた。零達はその方向を見ると、巫女服を着た狐耳の少女………幼女がいた。

 

「「狐耳の」」

 

 

「「……女の子?」」

 

 一誠と裕子がそう呟いた。

 

「おっ………おっ………」

 

 

「「「レイ(天王理君)?」」」

 

 何やら、零は狐耳幼女を見て「おっ……おっ」と呟いている。

 

「?」

 

 

「よっしゃぁぁぁぁ―――――!!!!」

 

 

「なっなんじゃ、いきなり?」

 

 

「狐耳・巫女服・幼女………可愛い!可愛いは正義!母よ!この可愛いとの出会いに感謝を!!」

 

 

「「「…………」」」

 

 彼女を見て、そう叫びながら太陽に向かい祈りを奉げている零。何故か「可愛いは理です」と言う笑みを浮かべている太陽神の姿を垣間見た一誠達。

 

「…………こっコホン。余所者め……よくもっ!」

 

 我に帰った少女がそう言うと、周囲に狐の面を被った者や天狗が在られた。

 

「おい、レイ!これって」

 

 

「何やら、盛大に勘違いされているな………一誠の所為か」

 

 

「えっ俺?!」

 

 

「一誠が変態の目であの娘を見るからだ」

 

 

「見てねぇ!」

 

 等と言うやり取りをしている零と一誠。

 

「母上を返して貰うぞ!」

 

 

「母?」

 

 

「どうした、イッセー」

 

 

「こっこの人達って妖怪さんよね?!」

 

 と階段を駆け上って来たゼノヴィアとイリナ。その手には木刀やら、お菓子やらが一杯だった。どうやらこれを買う為に遅れてきた様だ。

 

 彼女達が来た事で、巫女少女の怒りは一層強くなった。

 

「そうか………お前達が母上を…………もはやゆる事はできん!不浄なる魔の存在め!神聖な場所を穢しおって!絶対に許さん!」

 

 

「だ………そうだ」

 

 

「お主もだろう!」

 

 

「えっ?俺とアーシアは違うぞ………ほれっ」

 

 零はそう言うと、懐から金の装飾を施された勾玉の付いた首飾りを取り出した。

 

「ん?…………それは?!太陽神・天照大神の紋章!?」

 

 

「そう、そう……アーシアも金冠を」

 

 

「はっはい」

 

 アーシアも以前に零を通して貰っていた金冠を取り出した。

 

「神の意を宿した太陽の金冠……大神の巫女だけが持つ事を許されると言う神具」

 

 

「でっ……では貴方達は話に聞いた」

 

 

「俺は天照大神の息子……アーシアは母の巫女だ」

 

 それを聞いて、少女と妖怪達は2人の前に跪いた。それを見た、一誠達は唖然とする。

 

「日本の神話体系に属する者達にとって、これは黄門さんの印籠と同じ様な物だ」

 

 アーシア、ゼノヴィア、裕子は頭の上に?を浮かべている。一誠とイリナは「成程」と納得している。

 

「大神の御身内の御方と知らず、真に申し訳ありません!」

 

 

「まぁ………別にいいよ。勘違いはだれにでもあるし………それで君達は?」

 

 

「はっはい」

 

 

 

 

 ―この娘………九重(くのう)はこの京都を仕切る九尾の狐・八坂の娘という事だ。

 

 狐耳、巫女服が良く似合う可愛い少女だ。是非ともオーフィス、白音と並べて写真を撮りたい!着せ替えをして愛でたい!

 

 コホン………それは置いといて。

 

 何でも、彼女の母親である九尾の狐が行方不明になったらしい。そこへ、悪魔である一誠達がやって来た。そりゃ、疑うな。俺でも同じ状況なら疑う。

 

 それに親を想う、この娘の事を考えると………俺も心が揺さぶられた―

 

 泣きながら、自分達の状況を説明した九重。他の妖怪達はそれを心配そうに見ていた。

 

「話は分かった…………」

 

 

「零さん」

 

 

「あぁ………俺も協力しよう」

 

 それを聞いて、顔を上げた九重。

 

「母上も三大勢力との会談の為に直ぐに京都に赴くだろう………それまでに解決しておきたいし………それに、幼児が泣いているのを放っておきたくはないしな」

 

 そう言うと零は九重の傍へと歩み寄り、その涙を拭った。すると、彼の右眼が鈍い光を放つ。

 

「一先ず、君達は自分達の屋敷へ帰れ。何か分かったら、直ぐに伝えよう………それまではくれぐれも動かない様に」

 

 

「はっはい……」

 

 

「安心するといい………きっと君の母親は俺が連れ戻そう………あっそうだ、終わったら1つ頼みがあるんだが」

 

 

「えっ?」

 

 

「後で写真を撮らせて!」

 

 

「「「「はっ?」」」」

 

 零の発言に間の抜けた声を出す九重や妖怪達であった。



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EP93 動き出す者達

 ~???~

 

「それで状況は?」

 

 

「九尾の洗脳は完了したよ」

 

 

「なぁ……未だ、暴れちゃ駄目なのかよ?」

 

 状況を説明する男に文句を言う大男。

 

「駄目だ、少しは大人しくしていろ()()()()()

 

 槍を持つ男がそう言うと大男は舌打ちして大人しくなった。

 

「後は時が満ちるのを待つのみだ」

 

 

「それで、()()()()。他に情報は?」

 

 

「あぁ、何でも三大勢力と日本神話がこの京都で会談するらしい」

 

 ゲオルグと呼ばれた男はそう説明する。

 

「日本神話……という事は」

 

 

「その通りだよ()()。恐らく、伝説の戦士も来ている」

 

 

「それは楽しみだ!あの二天龍を倒した英雄と対峙できるとは!!」

 

 

「なぁ、曹操!俺にもやらせてくれよ!」

 

 と次々に自分も戦わせろと言いだすと、曹操と呼ばれた男は手に持っていた槍で地面を叩いた。

 

「まずは自分達の役割を果たせ………そして世界に示せ!我等()()()の力を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~お馴染み零の精神世界~

 

「■■■■―――!!!」

 

 

「いきなり、呼び出して済まない」

 

 

「あっ……あぁ。取り敢えず、お前は少し落ち着け」

 

 零の精神世界に現れた岩の巨人と男。

 

「■■■■!!」

 

 

「分かった、分かった。お前のいう事は分かったから」

 

 咆哮する巨人に落ち着く様に言う零。その隣で申し訳なさそうにしている鎧を着た男。

 

「まずは情報を集めないとな…………俺は暫らく動くから、大人しくしていろよ」

 

 零はそう言うとこの場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~現実世界 ホテル一室~

 

「ん………はぁ~……良く寝た」

 

 宿泊しているベッドの上で目を覚ました零は身体を起こした。

 

「すぅ……すぅ………」

 

 横を見てみると、アーシアは眠っていた。

 

「フム………普通は男女別の部屋の筈なんだが…………何故アーシアが同室なのか?まぁ、母様達の仕業だろうがな」

 

 零は何故アーシアと同室なのかと考えてみるが、最終的には天照達の所為だろうと考えた。すると何故か頭の中で「孫!孫を!」と連呼している彼の神達の姿が思い浮かんだ。

 

 だが直ぐにそれを振り払うと、ベッドの上から降りた。

 

「さて…………何処の誰だか知らんが、邪魔をする輩は排除しよう。これも全ては写真撮影の為………ククク。クフフフフフフフ」

 

 

 《銀髪が1人で笑ってる………不気味だ。やはりアイツは危険だ、俺がアーシアたんを守らないと。アーシアたんの匂いは》

 

 そう言ったのは、毎度お馴染み変態ドラゴン、五大龍王(笑)のファーヴニルである。ファーヴニルは改めてアーシアを護る事を決意すると、アーシアの服の中に潜り込もうとする。

 

「おい、変態ドラゴン。アーシアの寝間着の中に潜り込もうとするな、潰すぞ?」

 

 

 《チッ!銀髪…………この間、アーシアたんと何が在った?》

 

 

「この間?」

 

 

 《アーシアたんが攫われた日の晩だ、一緒にお風呂に入ってたろ!?》

 

 

「あぁ………特に何もないけど」

 

 

 《………まぁいい。今度こそ、アーシアたんは俺が護る。この間みたいな事にはならない》

 

 

「ならいいが…………俺は少し出てくるからアーシアを頼んだぞ。後、彼女に変な事をしたら………」

 

 

 《しない………多分………でも理性が保つか》

 

 

「何かしたら切り落とす」

 

 

 《…………なにを?》

 

 

「なんだと思う?」

 

 零はそう言って笑みを浮かべると、部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 

「さてと………変態ドラゴンに釘を刺したし、大丈夫だろう」

 

 零は旅館の外に出て散歩していた。

 

「取り敢えず、可愛い写真の為にも母親を探さねば」

 

 零はポケットの中から鳥や蝶の形をした折り紙を取り出した。それに息を吹きかけると、空に向かって放り投げた。すると折り紙が本物の鳥や蝶へと変わり飛んで行った。

 

「これで良し………母様が来るまで数日ある、その間に決着を付けないとな」

 

 そう言い、旅館の方へ向かい帰って行った。

 

 

 

 

 

 ~午前中~

 

 零、アーシア、一誠、裕子、ゼノヴィア、イリナ、桐生、松田、元浜は京都を観光していた。何故、違うクラスの筈の裕子が此処に居るかと言うと、簡単に言えばリアス達が認識操作の魔法で裕子のクラスを変えたらしい。

 

「此処は産寧坂……此処で転ぶと死ぬらしいわよ」

 

 

「えっ!そうなんですか?!ぜっ絶対転びません!」

 

 桐生にそう言われてアーシアは真剣に怖がり、零の腕に抱き付いた。

 

「にっ日本には恐ろしい術式を坂に仕掛けているんだな」

 

 

「だっ大丈夫だろう」

 

 

「ほっ本当に大丈夫なの?!」

 

 同じ様に坂を怖がっているゼノヴィアとイリナは転ばない様に一誠の腕に抱き付いた。

 

「ぐぅぅぅぅ!!!」

 

 

「落ち着け!松田ぁぁぁぁ!旅館に帰って一誠を殴ればいい!」

 

 三馬鹿の2人は零と一誠に対して嫉妬している。だが零に対しては叶わないのが分かっているので、その怒りが全て一誠に向いた。

 

 それから清水寺、銀閣寺、金閣寺などの観光名所を巡り、零は一誠達と共に休憩をお茶を飲んでいた。

 

「中々に疲れたな」

 

 

「ふぅん………狐か」

 

 

「へっ?」

 

 零がそう言うと、一誠が間の抜けた声を出すと、狐の妖怪達が現れた。

 

「御迎えに上がりました………太陽神の御子よ」

 

 

「あぁ………別にいいぞ」

 

 

「天王理君!アーシアさん!」

 

 そこに走って来たロスヴァイセ。何故、彼女が此処に居るのかと言うと、彼女は現在、零の元に居り、駒王学園の臨時講師として働いている。そして今回の修学旅行に付いて来ていた。

 

「成程……アザゼル辺りからか」

 

 零は何となく状況が理解できている様だ。



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EP94 現れし英雄

~裏京都~

 

時代劇で見る様な江戸時代の町のセットの様な、古い家屋が並び立っており、その家屋から異形達が顔を出していた。

 

「すっすげぇ……これが全部、妖怪なのか?」

 

 

「あぁ。実際は妖怪……精霊の類は何処にでもいるがな」

 

 

「そうなのか……と言うか、その恰好」

 

一誠は零の姿を見た。高天原に赴く時に来ている衣だ。

 

「近くにいるだけでジリジリするんだけど?」

 

少し距離が近付いてみると、一誠の肌が焼けた。

 

「そりゃ……太陽神の衣だ。悪魔が近付けばそうなるわな」

 

 

「あちちちちっ!なら早く言えよ!」

 

 

「そりゃ失礼……」

 

零達が向かうのはこの裏京都の町で一番大きな屋敷だ。

 

 

 

 

「ようこそ、いらっしゃいました………偉大なる太陽神の御子様」

 

八坂の娘・九重、天狗、多くの狐妖怪が零の前に頭を垂れた。

 

「アザゼルは引率として………何で、魔王レヴィアタンが此処にいるのやら」

 

横目でアザゼルとセラフォルーを見た。

 

「えっと……その」

 

 

「まぁいい………迷惑をかけないなら別に構わんが、これで協力しても会談でお前等の肩を持つ気はない」

 

 

「っ……」

 

 

「大体の話は九重姫より聞いた…………此度は我が母と叔父上達、そして三大勢力が京都で会談をする事になった。

 

会談の為にも、九重姫の為にも、俺も協力しよう」

 

 

「あっありがとうございます!」

 

零がそう宣言すると、九重を含めた妖怪達が頭を下げた。

 

「取り敢えず………アザゼル、お前の方の調べはどうなってる?」

 

 

「あっ……あぁ、今の所は恐らく禍の団の英雄派による物だと考えている」

 

 

「禍の団………またか。英雄派………英雄か………まぁいい。

 

九尾の狐……京都……禍の団………何となく読めて来たが………(オーフィスがこっちにいるのに、何故に奴を狙う必要がある?)」

 

色々と分かって来たが、それを行う理由が全く見えてこなかった。考えても仕方がないので、思考を止め、九重の方を見た。

 

母の事を想い、その瞳に涙を浮かべている。

 

「なんにせよ…………一刻も早く、事を解決せねばならないな」

 

 

 

 

 

 

~翌日 京都 渡月橋~

 

本日は九重の案内で京都を観光していた零達。メンバーは零、アーシア、一誠、裕子、ゼノヴィア、イリナ、松田、元浜、桐生である。

 

途中でアザゼルとロスヴァイセと会ったのだが、諸事情にて別行動中だ。

 

「この渡月橋は」

 

桐生がアーシア達に橋の説明をしている様だ。何やらアーシア達は「振り返らない」と言っている、零はその様子を微笑ましく見ている。

 

だが直ぐに何かの気配を感じ、前を睨む。次の瞬間、霧が出現し辺りの景色が変色する。

 

「なんだ?!」

 

 

『お~い、お前等!』

 

一誠達が、周囲を警戒しているとアザゼルが飛んできた。

 

「おい、アザゼル。これはまた、お前の策か?」

 

 

「ちげぇよ!」

 

どうやらディオドラの一件以来、零はアザゼルの事を疑っている様だ。

 

「そう………ならいいんだけど。どうやら違う次元に飛ばされたらしいな……アーシア、九重、俺の後ろへ」

 

零はアーシアと九重を自分の後ろに下がらせる。

 

「そう言えば、亡くなった母上の護衛が死ぬ間際に言っておった。気付いた時には霧に飲まれていたと」

 

九重がそう言うと、零は目を細め前方を睨みつけた。すると霧の中から数人の人影が此方に近付いてくる。その中の1人、学生服の上に漢服を纏った青年が前に出る。

 

「初めまして、アザゼル総督、赤龍帝……そして伝説の戦士」

 

青年はそう挨拶してきた。

 

「お前が英雄派を纏めている男か?」

 

アザゼルがそう男に尋ねた。男は手に持つ槍でトントンと肩を叩きながら答えた。

 

「あぁ、曹操を名乗っている。三国志で有名な曹操の子孫………一応な」

 

 

「えぇ?!曹操!?」

 

 

「あの槍には気を付けろ!最強の神滅具(ロンギヌス)、【黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)】だ。神をも貫く絶対の神器、俺も見るのは初めてだが………ありゃ、ヤバい」

 

 

「アレがセラフの方々が怖れている聖槍……っ」

 

アザゼルの説明に息を飲む一同。

 

「信仰心のある奴はあの槍を強く見るな!アレは聖釘、聖骸布等と並ぶ聖遺物の1つだ。心を持って行かれるぞ!」

 

 

「おい、変態ドラゴン。アーシアを護れ!」

 

 

【問題ない】

 

零がそう言うと、アーシアの髪の中からファーブニルが出てくる。

 

「貴様!1つ聞くぞ!」

 

九重が憤怒の表情で曹操に言い放つ。

 

「何でしょう、小さな姫君。私ごときでお答えできることなら、なんなりとお答えしましょう」

 

 

「母上を攫ったのは貴様等か!?」

 

 

「左様で」

 

曹操はあっさりとそう答えた。

 

「母上をどうするつもりじゃ!?」

 

 

「御母君には少し、我等の実験に御付き合い頂くだけですよ」

 

 

「実験?」

 

 

「本来はスポンサーの為……と言いたい所だけど、オーフィスは伝説の戦士の所にいるからね。自分達の目的の為さ………此処に来たのは隠れる必要もなくなったから、君達と手合せしたくてね」

 

アザゼルが何かを言おうとしたが、零が前に出た。

 

「おい、曹操と言ったか」

 

 

「おぉ、これはこれは………二天龍を倒した伝説の戦士殿。なんでしょう?」

 

 

「お前は英雄を名乗っているそうだな?」

 

 

「えぇ………英雄の子孫、魂を受け継ぐ者達を纏めております」

 

 

「今すぐに九尾の大将を返せ…………そうすれば俺は何も言わないし、するつもりもない。だが返さないと言うなら、俺も本気でやらせて貰うぞ」

 

 

「おぉ………これは願ってもない事だ。貴方とは是非、全力で死合ってみたかったんだ」

 

 

「それは返す気はないと?」

 

 

「えぇ………実験がありますので」

 

 

「何をするつもりだ………オーフィスが此方にいる以上、真なる赤龍神帝(アポカリプス・ドラゴン)を呼び出す必要はない。

 

なら、目的は他の存在だ。次元の狭間に存在する物は限られる………それ等をこの京都と九尾の力で誘い出すって所か?」

 

零がそう言うと、曹操は驚いた様な顔をして手を叩いた。

 

「流石は伝説の戦士殿………その通りですよ。ある存在を呼び出す、それが私達の目的です。まぁ、グレード・レッドが出てきても問題はないんですけどねぇ」

 

そう言う、曹操の眼には黒い何かが宿っているのを見た零。

 

「成程………理解した。いいだろう、ならば全霊を持って相手をしよう」

 

零はそう言うと、上着とYシャツを脱いだ。

 

「「「!?」」」

 

 

「アーシア、持っててくれ……」

 

零は上着とYシャツをアーシアに預けると、曹操の方に身体を向ける。

 

「ほらっ、出番だぞ………思い切り暴れるぞ!【ソウルコード】」

 

零の右眼が光り出し、彼が凄まじい赤い熱気に包まれた。そして熱気が消えると、肌が黒く染まり石斧を担いだ零が現れる。

 

「おぉ!それが貴方の使う力ですか………ならば私も全力で御相手をしなければ」

 

 

「行くぞ………■■■■!」

 

零は咆哮を上げ、曹操に接近する。曹操もそれを迎え撃つ為に駆け出した。

 

零の石斧と曹操の槍が激突した瞬間、凄まじい衝撃波が起き、彼等を中心に半径30メートルが消し飛んだ。

 

「■■■■!!!!」

 

 

「おおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

神を貫いた黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)と衝突を繰り返す零の石斧。

 

曹操は石斧を聖槍で弾く、そのまま身体を回転させ聖槍を零の身体に叩き込む。しかし零は素手で槍を掴み、地面に向かって曹操を投げ飛ばした。

 

「ぐぅぅぅ!!」

 

曹操は直ぐに受け身を取り、直ぐに体勢を立て直した。

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

零は天を仰ぎ咆哮する。

 

「フハハハハハハ!流石だ!流石は二天龍を倒した英雄だ!!!!もっとだ!もっと!見せてくれ!」

 

曹操は直に感じた零の強さに高揚し、喜びが沸き上がってくる。再び槍を構え直した、その槍先に光が灯る。

 

「更に上げて行くぞ!■■■■――!!!」

 

零がそう言い咆哮すると、全身が赤く染まり熱気を放った。

 

そして再び、両者は駆け出すと凄まじい戦いを始めた。それは正に物語に出てくる様な、戦いだ。

 

零は曹操の神をも貫く槍を避ける事無く、その身体で受ける。神を貫く筈の槍は、彼の身体を傷付ける事はなかった。曹操はそれに驚いた様子だが、直ぐに次の行動へと移る。1度で駄目なら、2度、3度と繰り返していく。その動きは、攻撃を繰り返す為に早くなっていく。

 

零はその身に槍を受けながら、自分よりも巨大な石斧を振るう。零の攻撃を避けながら、曹操は何度も槍を繰り出す。

 

両者共、人間の領域を越えている事は素人が見ても分かった。

 

「■■■■■!!!」

 

曹操は確かに英雄だろう。普通の人間などが遠く及ばない強さを持っている。だが現在、彼が相手しているのは神の子であり、英雄の中の英雄だ。

 

「ぐぉぉぉぉぉ!」

 

石斧の一撃が曹操を吹き飛ばした。

 

「はぁはぁ………槍で護らねば死んでいる所だった。ふっ…………フハハハハハハッ!」

 

曹操の身体に斜めに大きな傷が出来ている。自分が傷付いたと言うのに、彼は笑い始めた。

 

「流石だ!流石、二天龍を倒した戦士!神を貫く槍をもってしても、これか!」

 

 

「……………」

 

 

「フフフ………ヴァーリとの戦いよりも、心躍る!だが残念な事に、そろそろ時間だ」

 

曹操がそう言うと、霧が段々と濃くなり始めた。既に曹操達の姿が見え難くなっている。

 

「今夜、私達はこの京都と言う特異な力場と九尾の御大将を使い、二条城で大きな実験を行います。是非とも貴方には参加して頂きたい!」

 

 

「……つまりは、その実験とやらまでは九尾の大将は無事という事か」

 

 

「その通り!少し精神操作はしていますが、傷付けはしてないのでご安心を」

 

 

「……いいだろう。貴様の望みどおりに参加してやろう。だが、九尾の大将が傷付いていた時は………」

 

 

「我が祖霊の名に懸けて傷付ける様な事はしませんよ。では、私共はこれで」

 

曹操はそう言い、一礼するとそのまま、仲間達と共に消えてしまった。

 

「お前等!元の空間に戻るぞ!武装を解除しておけ!」

 

アザゼルがそう言うと、皆は直ぐに武装を解除し、元の空間に戻るのに備えた。

 

 

 

 

 

 

 

~元の空間~

 

「おい、イッセー………って!零!なんで服を脱いでるんだよ!」

 

渡月橋を渡った場所に戻った様だ。元浜と松田が、此方を向いており零が服を脱いでいる事に驚いていた。

 

「………暑かったのでな」

 

―パシャ、パシャ―

 

「桐生……何故に写真を撮っている?」

 

何故か、桐生は零の上半身裸の写真を撮っている。

 

「そりゃ、売………通報の為よ」

 

 

「おい、今、売るって言おうとしなかったか?」

 

 

「気の所為よ………レア物だし、1枚1000円はかたいわね(ボソッ」

 

 

「あっ……あの、桐生さん、私にも」

 

何やら桐生は零の写真で一稼ぎするらしい、何やらアーシアも買おうとしている。

 

「あっ………零さん、服です」

 

 

「あっ……あぁ、勝手に人の写真を売るんじゃない」

 

と言っているが、零の言葉を聞く事なく桐生は既に計算を始めていた。



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EP95 京都英雄戦

~旅館~

 

旅館に戻った一同。一般人である松田達を除き、一誠達は零の部屋を訪れていた。

 

「なぁ、レイ。なんで、あの時、アイツ等を追わなかったんだ?」

 

と一誠が窓から外を見ている零に訪ねる。

 

「敵の戦力が分からん以上、何の準備もしてない状況で突っ込む訳にはいかんからだ」

 

 

「けど、お前の力なら、直ぐにでも」

 

 

「九重の母親を助けれたか?」

 

 

「あっ……あぁ。お前なら出来たんじゃないのか?」

 

 

「確かに出来たかもな………曹操の奴は実験までは九尾の御大将を傷付けないと言った。態々その実験とやらに招待された訳だしな。

 

逆に言うなら、あのまま追撃してたら九尾の御大将に傷を負わせる可能性もあった。曹操の持つあの槍は妖怪を殺すくらいは簡単に出来るだろうからな。それに奴等は実験を行うと言った以上は、この京都で準備を進めている。万が一に、京都を崩壊させる様な術式があれば大変だ。妖怪だけでなく、人間に被害のでる可能性もある」

 

 

「でっでもよ!英雄を名乗ってるんだぞ!そんなこと……」

 

一誠の中の英雄……それは正義の味方だ。その英雄が人間を巻き込む事などする訳がないと考えていた。

 

「ないとは言い切れないだろうが…………可能性が0でない以上は最悪の場合を考えておかないとないけないんだよ。

 

夜までは少し時間があるな…………付いて来るなら邪魔はするな。後、そこのコスプレ魔王」

 

 

「えっ私?」

 

零が指さしたのは、セラフォルー・レヴィアタンだった。

 

「また各地で旧魔王派と他の()()が暴れてるみたいなんだけど………本気で戦争するつもりか?」

 

 

「いっいぇ!私達にはそんなつもりは」

 

セラフォルーにそう言った。毎度の如く、悪魔が暴れる所為で出動する羽目になっている零。いい加減に我慢の限界の様だ。

 

「まぁ……四大魔王を名乗っているくせに、殆どの者達を抑えられていないお飾りの様な物だものな」

 

 

「っ!」

 

 

「おい!レイ!言い過ぎだろ!旧魔王派が暴れているのは、セラフォルーさん達の所為じゃないだろ!」

 

流石に言い過ぎだと思ったのか、一誠が声を上げる。

 

「では聞くが………自分の駒を揃えると言う理由で、親を殺され、兄弟を殺され、子を攫われた者達に同じ事が言えるのか?

 

【旧魔王派が勝手にした事です。私達は新魔王派の所為ではありません】と。

 

襲われた日本妖怪、能力者達からすれば、旧だろうと、新だろうと関係ない。現在の魔王共がしっかりしてないからこうなったんだと思われても仕方ないだろう。

 

それに俺は【旧魔王派】と【他の悪魔】と言ったんだ。未だに上級悪魔共からの反発が収まってないんだ、魔王共が何かの対策を行っていて、これならお飾りと言われても仕方ないと思うがな」

 

 

「そっそれは………」

 

言える訳がない。一誠はそう言った事を見た事はないが、家族を殺されたり、攫われたりして、その様に言い返されても許せる訳がない。逆に怒りが湧いてくるだろう。

 

「管理できていない点に関してはアザゼルも同罪だがな」

 

 

「うぐっ!」

 

 

「まぁ、天使、悪魔、堕天使に関する事は母様達の判断待ちだが………事ある毎に動かないといけないこっちの身にもなって欲しい物だ。

 

お蔭で癒しの時間がないんだよ!こんちくしょー!」

 

そう言いながら机をダンッ!ダンッ!と叩いている零。

 

「はぁ~………さて、それは置いといて」

 

少し落ち着いたのか、溜息を吐きながら立ち上がると、机の上に古惚けた京都の地図を広げた。

 

そして地図に息を吹きかけると、地図上に光の線が走り、京都の街の至る所に黒い魔法陣が浮かび上がった。

 

「京の龍脈が交わる場所、二条城。それが活性化している…………だけど京の至る所に魔法陣か」

 

何かを操作する様に手を動かすと、黒い魔法陣が拡大される。

 

「術式は………北欧、西洋、東洋、色んな陣か。どれもこれも、龍脈の活性と操作に関する物………崩壊術式はない様だけど、迎撃の為の術式は幾つかあるな。

 

優先すべきは現実世界へと影響の遮断……………ん?」

 

―ダダダダダダッ―

 

何やら外から凄まじい速度で何かが掛けてくる音が聞こえた。

 

「この神気………アーシア、ちょっと下がってろ」

 

 

「はっはい」

 

 

―我が愛しき弟よーーー―

 

 

「あの人、相手ならちょっと本気でしないと…………神禁」

 

ドアに向かって手を翳すと、複数の鎖が張られる。少ししてドアが壊れるかの様な凄まじい勢いで開かれた。

 

入ってきたのは、三貴士の一柱・月読だった。凄い勢いで走ってきたからか、着物がかなり乱れている。そして零に抱き付こうと、飛び付こうとする。

 

だが展開されていた複数の鎖に絡め捕られる。その姿はかなりエロい。

 

「おぉ!いい、おっぱい!」

 

 

「着物を直して下さい。変態が興奮しますので」

 

 

「でも、これを解いてくれないと出来ないんだけど!」

 

 

「おっと失礼………」

 

鎖を解除すると、月読は言われた通りに着物の乱れを直した。そしてアーシアが出したお茶を出して彼女は少し落ち着いた様だ。

 

「会談は未だ少し先ですよね?まさか、仕事を放って」

 

 

「ちっ違う!仕事はちゃんとしたぞ!ちょっと早く終わったから、先に来たんだ!折角堂々とお前と過ごせる時間なんだし」

 

 

「いや、俺は修学旅行中で………ついでに言うなら………あっ」

 

 

「?」

 

 

「丁度いい所に来てくれました。月姉………実は色々と問題がありまして協力を」

 

 

「問題というと、九尾の件かな?」

 

 

「そうそう。それで協力を」

 

 

「ぇ~……折角の休みなのn「残念だなぁ………月姉の格好いい所を見たかったのに」やる!」

 

会談までは休みモードなので何もするつもりがなかったが、零の一言でやる気を出した月の神。

 

((((偉い神様ってこんな人ばかりなのか(かしら)?))))

 

一誠、裕子、ゼノヴィア、イリナは月読を見てそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

~夜 二条城前~

 

「さてと…………何故に九重まで此処に?」

 

 

「わっ妾も母上を助けたいのじゃ!だから」

 

 

「そうか………でも危ないから、俺とアーシアの傍を離れるなよ」

 

 

「はい!」

 

二条城の門前に立っている、零、アーシア、九重、一誠、裕子、ゼノヴィア、イリナ、匙。

 

月読、アザゼル、ロスヴァイセは京都の外に居る英雄派の相手をしている。

 

一同が門を見上げると、門が開く。

 

「ようこそ……伝説の戦士殿!妖怪の姫君!赤龍帝!」

 

二条城の屋根の上に立っていた曹操。その左右には、女、男が4人並んでいた。

 

「御招きどうも………英雄の名を持つ者達。それで、九尾はどこだ?」

 

零がそう言うと、曹操が指を差す。その方向を向くと、男達が生気のない目をしている女性を連れていた。

 

「母上!」

 

 

「………」

 

 

「母上!どうしたのですか?!九重です!」

 

どうやら彼女が九尾の御大将の様だ。だが、今の九尾の御大将には意志が感じられない。娘である九重の事も目に入っていない様である。

 

「きさm」

 

九重が曹操に向かい何かを言おうとするが、それを制する零。

 

「大丈夫だ……御母君は助ける。だから下がってな」

 

そう笑みを浮かべて言うと、九重は頷き下がる。

 

「贄と術式の配置は完了。では始めようか」

 

曹操がそう言い、聖槍で屋根を叩くと金属音が鳴り響く。すると九尾の大将が頭を抱えて苦しみだし、その身を巨大な九尾の妖狐へと変化させる。

 

「ゲオルグ、始めよう」

 

 

「あぁ」

 

眼鏡を掛けた男が曹操に同意して複数の魔方陣を展開し、九尾の妖狐に放った。

 

―オォォォォォォォォォォン!!!―

 

「これで何が来るのか楽しみだ」

 

 

「なぁ!曹操!幾つか質問していいか!」

 

 

「勿論!」

 

まるで友達に話しかける様に、曹操に話しかける零。

 

「まずは、その左右に居るお友達を紹介して貰おうか」

 

 

「ほぉ……いいだろう」

 

 

「俺の名はジークフリート!英雄シグルドの末裔にして、龍の手(トゥワイス・クリティカル)の亜種を持つ者だ。禁手もまた亜種、阿修羅と魔龍の宴(カオスエッジ・アスラ・レヴィッジ)

 

所有するのはそれだけじゃない、魔帝剣グラム!バルムンク!ノートゥング!ディルヴィング!ダインスレイブ!」

 

白髪の男の背から複数の白い手が生え、それぞれの手に剣を持っている。どの剣も伝説に名高い魔剣だ。

 

「私はゲオルグ。伝説の悪魔と契約せしゲオルク・ファウストの子孫だ。

 

神滅具(ロンギヌス)の1つ絶霧(ディメンション・ロスト)の所有者。まぁ戦闘要員ではないけどね」

 

眼鏡を掛けた男がそう言うと、紫色の霧を操作してそういった。

 

「私はジャンヌ。彼の聖女ジャンヌ・ダルクの魂を受け継ぐ者。神器は聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)、そして禁手は亜種断罪の聖龍(ステイク・ビクティム・ドラグーン)よ」

 

そう言うと、女性の後ろに聖剣で出来た龍が現れた。

 

「俺はヘラクレス!大英雄ヘラクレスの魂を受け継ぐ者!

 

神器は巨人の悪戯(バリアント・デトネイション)!禁手は超人による悪意の波動(デトネイション・マイティ・コメット)!」

 

大男の全身に刺々しい鎧が装着される。

 

「改めまして、我が名は曹操。英雄・曹操の子孫にして英雄派を率いる者、神器は黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)だ」

 

それぞれの自己紹介が終わり、禁手を行った。

 

その光景を見て、一誠達は身構えるが、零は落ち着いてる。

 

「では2つ目だ。お前達の目的は?」

 

 

「何時の時代も悪魔や怪物を倒したのは人間だった。だから俺達もどこまでやれるかを試したいのさ!」

 

 

「では3つ目、何故、誰かを泣かせる様な真似をした?それに現実世界の人間達に影響も出る可能性もある」

 

 

「それは……まぁ目的の為ならば多少の犠牲はいた仕方ないだろう?」

 

 

「そうそう、何処の誰かも知らない人間がどうなろうと知らないわ」

 

ジークフリートとジャンヌがそう言った。その瞬間、零は顔を伏せる。

 

「そうか……ならば!お前達に英雄を名乗る資格はない!」

 

 

「「「「「!」」」」」

 

 

「英雄は目に見える総てを背負い、力なき弱きを護る者。確かに時として犠牲を出す事もあるだろうが、自分が傷付こうと、手が血で汚れる事になっても、手を伸ばし誰かを助ける存在。人々はそれを見て、英雄と謳い称えるんだ。

 

お前達の様に、自分達の目的の為に犠牲が出るのを見過ごす様な輩は英雄と呼べん」

 

そう言う零の両目が鈍い光を放ち始める。曹操達は、その言葉を黙って聞いていた。

 

「お前達も神器持ちである以上、辛い過去があるかも知れん。俺にはお前達の気持ちは分からん。

 

だがな!どんな事があろうと、誰かを不幸にしていい理由にはならん!」

 

零が言葉を言う度に彼の右眼の光が強くなっていく。

 

「なにも……何も知らないくせに!」

 

ジャンヌがそう呟くと、神器で生み出した聖剣で出来た龍で零を襲わせる。

 

「【ソウルコード】」

 

彼は動かず呟いた。

 

―グオオォォォォォォ!―

 

断罪の聖龍(ステイク・ビクティム・ドラグーン)の突進を受ければ、物理的にもかなり痛いだろう。

 

―ガキィン!―

 

 

―!?―

 

断罪の聖龍(ステイク・ビクティム・ドラグーン)は何かに止められた。

 

「■■■■■――!!!」

 

 

「フン!」

 

そして凄まじい力で弾き飛ばされる。断罪の聖龍(ステイク・ビクティム・ドラグーン)は空中で直ぐに体勢を直すと、ジャンヌの後ろに着地した。

 

「英雄の名を名乗る者達よ、括目せよ。汝等が対するは、真の英雄達だ」

 

零がそう言い、土煙が消える。そこには岩の巨人と剣士が立っていた。

 

「■■■■■―――!」

 

 

「すまない。お前達の計画は止めさせて貰う」

 

岩の巨人は咆哮し、剣士はそう言った。彼等の姿を見て、曹操達は唾を飲む。

 

巨人と剣士から放たれる力は尋常ではない、そして何より彼等から放たれる気配は紛れもなく英雄の物だった。

 

「ヘラクレスはヘラクレス(大男)と眼鏡ゲオルグ(眼鏡)、ジークフリートはジークフリート(腕が一杯の奴)ジャンヌ(コスプレしてる女)だ。

 

俺は曹操…………それと九尾の大将を止めるとしようか」

 

 

「■■■■■■―――!!!」

 

 

「了解した」

 

英雄と英雄の決闘が、この京都で始まる。



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EP96 巨人は少女が為に咆哮す

 ~VSヘラクレス、ゲオルグ~

 

「■■■■――!!」

 

 岩の巨人は咆哮する、そして英雄を語る者達の危険な思考を止める為に戦い始める。

 

 岩で出来た巨大な斧を振りかぶり、ヘラクレスとゲオルグに襲い掛かる。

 

「ゲオルグ!下がってろ!」

 

 ヘラクレスは禁手である超人による悪意の波動(デトネイション・マイティ・コメット)の腕部で受け止める。だが岩の鎧は岩の斧により罅が入る。

 

「ぐっ…………おおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 ヘラクレスは全身に力を入れ、踏ん張る。その衝撃で、ヘラクレスの足元の地面が陥没する。

 

「このぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 膝を付きそうになるが、何とか岩の巨人を押し返した。巨人は空中で体勢を立て直すと、着地した。

 

「なんだ、あの馬鹿力は!?」

 

 

「ヘラクレス!あの化物はどうやら、君以上の馬鹿力だ。普通に倒すのは難しいだろう、なら!」

 

 ゲオルグはそう言うと、巨人に向けて手を翳す。絶霧(ディメンション・ロスト)を発動し、霧で巨人を飲み込もうとする。

 

 絶霧(ディメンション・ロスト)の能力は、霧により結界を発生させたり、霧に触れた対象を任意の場所に転移させる事ができる。

 

「直接、次元の狭間に送ってしまえば!」

 

 

「■■■■■―――!!!!!」

 

 岩の巨人は霧を咆哮する事で薙ぎ払った。

 

「馬鹿な!!?」

 

 

「―――!」

 

 岩の巨人は凄まじい覇気を放つと、その全身を赤く染める。

 

「俺様を舐めるなぁぁぁぁぁ!!!」

 

 ヘラクレスは巨人による悪意による波動(デトネィション・マイティ・コメット)の力を発動させた、全身の岩がミサイルの様に射出される。それら総ては、岩の巨人に向かう。

 

 巨人はそれを避ける事無く、総てその身で受けた。次の瞬間、凄まじい爆発が起きた。

 

「これで………やったか?」

 

 肩で息をしながらヘラクレスは、爆発した場所を睨みつける。煙が消え、そこには無傷の巨人がいた。

 

「嘘だろ!?これで無傷だと?!」

 

 

「本当の化物か!!!」

 

 

「そんなんじゃバーサーカーは倒せないよ」

 

 ヘラクレスとゲオルグは声のした方向を見てみると、そこには小さい少女が立っていた。

 

「子供……?」

 

 

「どう言う事だ、ガキ?」

 

 

「だってバーサーカーは強い………絶対に負けない。彼は英雄の中の英雄だもの。

 

 でも貴方達は違う。どんな事が在っても女の子を泣かせて言い訳ないじゃない」

 

 少女はそう言うと、巨人の方へと歩いて行く。そして巨人の後ろへと下がる。

 

「お母様、切継、士郎、そして私を救ってくれたあの人の為だもの…………やっちゃえ!バーサーカー!」

 

 

「■■■■――!!」

 

 岩の巨人は咆哮すると、駆け出し、ヘラクレスに斬り掛かる。彼も防御の構えを取る、だが直ぐに吹き飛ばされた。

 

「がっ!?」

 

 

「馬鹿な!さっきよりも!?」

 

 岩の巨人は裏拳をゲオルグの顔面に叩き込んだ。

 

「ぶほぉ?!」

 

 ゲオルグは吹き飛ばされ、先程の少女の近くに転がる。

 

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 ヘラクレスは頭に血が昇っているのか、考えなしに巨人に殴りかかる。巨人はそれを片手で受け止めると、投げ飛ばした。

 

「うおおぉぉぉぉ!」

 

 ヘラクレスは受け身も取らず、地面に転がりながら体勢を立て直すとまた殴りかかった。それを見た巨人は、斧を地面に突き刺すと、拳を握り構えを取る。

 

「おおぉぉぉぉ!!」

 

 

「■■■■■!」

 

 ヘラクレスと巨人は殴り合いを始めた。

 

「いっ………一体何なんだ、あの化物は……ヘラクレス以上の怪力に、絶霧の無効化何がどうなっている?!」

 

 ゲオルグは何とか起き上がると、巨人を睨みつける。

 

「化物とは失礼じゃない」

 

 

「君は一体何だ?」

 

 

「私?私はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン………バーサーカーのマスターよ」

 

 少女はそう言い、スカートの裾を摘むと一礼した。

 

「そして、バーサーカーは大英雄・ヘラクレス」

 

 

「ばっ馬鹿な………ヘラクレスは」

 

 ゲオルグは彼女の言葉の意味が理解できなかった。大英雄ヘラクレス………そしてその魂を継いだのが、自分達の仲間であるヘラクレスの筈。

 

 だが、巨人がヘラクレス本人だと言うなら、一体自分達の知るヘラクレスはなんなのかと。

 

「うん、そうだね………この世界ではどうかは知らないけど、バーサーカーがヘラクレスである事は変わらないもん」

 

 

「この世界?………だが、あの巨人が本当のヘラクレスと言うなら」

 

 勝ち目などある筈がない。

 

 大英雄・ヘラクレス。12の試練を越え神の末席に迎えられた半神半人の英雄。英雄と言えば、まず彼の名が上がるだろう。そして、彼は射手座のなった師ケイローンより格闘技・パンクラチオンを習っており、現在殴り合っているのもパンクラチオンによる物だ。

 

 英雄派は英雄を名乗り、神器を持っているとは言え、本当の英雄相手に通用する訳がない。

 

「■■■■!!!」

 

 英雄ヘラクレスはヘラクレスの拳を避けると、カウンターを入れる。それによりヘラクレスはゲオルグの近くに飛ばされた。

 

「ぐぅぅぅ………この」

 

 

「ヘラクレス………撤退だ。曹操も連れて撤退だ」

 

 

「馬鹿言うんじゃねぇ!此処までやられて、黙ってられるか!………!」

 

 ヘラクレスは近くにいたイリヤに目を付ける。どうやら彼女を人質に取ろうとしているのだろう。

 

「おい!ガキ!」

 

 ヘラクレスはイリヤに向かい手を伸ばす。この時、彼は知らなかった。

 

 英雄ヘラクレスにとって、イリヤは護るべき存在。そんな彼女に手を出すという事は、逆鱗に触れると同じ事だ。

 

「■■■■■■――――」

 

 英雄ヘラクレスは駆け出すと、全力でヘラクレスを殴り飛ばした。

 

「全くレディを人質に取ろうなんて、酷いじゃない……向こうの人はアレで気を失ったわね。バーサーカー、そっちの眼鏡も捕まえて、さっさと戻りましょう」

 

 イリヤはワイヤーの様な物を取り出すと、ゲオルグとヘラクレスを拘束した。英雄ヘラクレスは石斧に2人をぶら下げると、イリヤの近くに膝を付き、彼女を抱き上げた。

 

「ありがとう、バーサーカー」

 

 英雄ヘラクレスは何も言葉を口にしない。

 

 今の彼は狂戦士(バーサーカー)と言う枠に当て嵌められて、この世界に顕現している。理性と引換えにその戦闘力を底上げしている。

 

 そんな、彼にとってイリヤは護るべき主であると同時に、かつて女神により失ってしまった我が子と重ね合わせているのだろう。そして零の中より見ていた九重の事もだ。

 

 幼児の涙を止めると言う理由で力を使う零に共感し、共に戦った、そんな零だからこそ絆を紡いだ。



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EP97 すまない

 ~VSジークフリート、ジャンヌ・ダルク~

 

「このぉぉ!!!」

 

 

「うおぉぉぉぉ!」

 

 ジークフリートはグラム、バルムンク、ノートゥング、ディルヴィング、ダインスレイブとエクソシストの使う光の剣、計6本の剣でで、ジャンヌは断罪の聖龍(ステイク・ビクティム・ドラグーン)を操り、零の呼び出した長身の男へと攻撃する。

 

 男はその剣を全て、その身体で受け止めた。

 

「「なっ!?」」

 

 

「アレだけの攻撃を受けて無傷だと!?」

 

 

「ありえないわ!」

 

 2人は無傷の男を見て驚愕している。

 

「すまない。お前達の攻撃は俺には効かない」

 

 

「馬鹿な!?俺の剣は伝説にも出てくる魔剣、ジャンヌの剣は神器から創られた聖剣だ。悪魔だろうと、天使だろうと斬り裂ける筈だ!!なのになんで、無傷でいる!?」

 

 グラム、バルムンク、ダインスレイブと言った魔剣は伝説にも出てくる武器だ。断罪の聖龍(ステイク・ビクティム・ドラグーン)も聖剣の塊であり、人間は勿論、上級悪魔、天使などを傷付ける事も可能だ。

 

 その一斉攻撃を生身で受けて無傷などありえない。そんな事が出来るのは、高位の神くらいの物だろう。

 

「お前は一体……何者だ?」

 

 

「セイバー………いや、敢えて真名を名乗ろう。俺はジークフリート」

 

 

「「?!」」

 

 ジークフリートとジャンヌは一体、この男は何を言っているのだと思った。

 

「馬鹿な!ジークフリートは俺だ!」

 

 

「そうなのかも知れないな。だが俺もまたジークフリートである事は間違いない………困惑させて本当にすまない」

 

 英雄ジークフリートは申し訳なさそうな顔をしている。

 

「ふっ…………ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!」

 

 ジークフリートは自身の名を騙る目の前の男に対し激昂する。彼にとってジークフリートの名に誇りを持っているらしく、それを騙られ頭に血が昇った様だ。

 

「怒らせるつもりはなかったのだが………本当にすまない」

 

 英雄ジークフリートは謝ってばかりである。

 

「お前が誰だって関係ねぇ!この場で斬り殺す!ジャンヌ!」

 

 

「えぇ!何も知らないくせに、偉そうに語って………何様のつもりよ!」

 

 ジークフリートとジャンヌはそう叫びながら、英雄ジークフリートに斬り掛かる。

 

 英雄ジークフリート、2人の攻撃を回避しながら、隙を見つけ、自分の剣で斬り付ける。

 

「ぐっ!」

 

 

「このぉ!」

 

 ジャンヌは聖剣で英雄ジークフリートの剣を弾き、彼の胸元ががら空きになる。

 

「今よ!」

 

 

「おおぉぉぉぉぉぉ!」

 

 ジークフリートはその隙をついて、6本の剣で斬撃を繰り出す。常人の前にはそれが何をしているのか分からないだろうが、凄まじい連撃である。

 

 そして、最後に渾身の力を籠め、6本の剣先を1点に集中させて突きを繰り出した。

 

 ―ガキィン!―

 

「良い一撃、良い連携だ…………だが、それでは邪竜の血を浴びたこの身は貫けない」

 

 英雄ジークフリートはそう告げた。6本の剣の突きは彼の胸元で止まっている。

 

 伝説では英雄ジークフリートは邪竜ファヴニールを打ち倒し、その血を全身に浴びた。その後、身体は一箇所を除き、どんな武器も通す事はなかったと言う。

 

 悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)………背中の葉の形をした後の残っている所を除き、一定以下の物理・魔術による攻撃を無効化する。弱点である背中を隠す事ができないと言うデメリットもある。

 

 だが英雄ジークフリートは剣技をもって、その弱点をカバーしている。

 

「すまないが、終わらせさせて貰う」

 

 英雄ジークフリートはそう言うと、己の剣の柄に埋められている青い宝石を露出させた。その瞬間、剣より凄まじい力が放出される。

 

 その力を目の当たりにして、ジークフリートとジャンヌは漸く力の差を理解した。そして直ぐに逃亡しようとする。だが時は既に遅い。

 

「『黄金の夢から覚め、揺籃から解き放たれよ。邪竜、滅ぶべし』」

 

 彼の英雄の剣は聖剣と魔剣の両方の属性を持ち、竜殺しを成した呪われた黄昏の剣。柄に嵌め込まれた青い宝石には神代の魔力(真エーテル)が貯蔵されており、普段は隠されたこの宝石を外界に晒す事で邪竜を斬り裂いた剣は真の力を発揮する。

 

 その剣の名は

 

「【幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)】!」

 

 剣より放たれた光の衝撃波、ジークフリートとジャンヌはその光の中に飲み込まれた。

 

 2人は光に飲まれながら、真の英雄の姿を目に焼き付けた。

 

 

 

 

 

 

 

「加減はしたつもりだが」

 

 幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)の真名解放により撃破したジークフリートとジャンヌに歩み寄る英雄ジークフリート。

 

 彼は2人が生きている事を確認すると安堵し、零より渡された拘束術式の込められた水晶を砕いた。すると、2人を光の鎖が拘束した。

 

 そして、2人を抱えるとある場所へと向かった。



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EP98 九尾を止める為、彼の者は撃ち放った

 ~VS九尾の御大将・八坂姫~

 

「さてと…………曹操、ちょっと待ってろ。先に九尾の姫君を止めるから」

 

 

「いや、止められると困るんだが………次元の狭間への穴が開かなくなるし」

 

 

「【メモリーコード:光の護封剣】」

 

 零の左眼が光り、空から光の剣が落ちてくる。光の剣は曹操を貫くと地面に縫い付ける。

 

「………痛みはないが、身体が全く動かん」

 

 

「3分間は動けないから無駄な力は使わない事だ。俺はその間に」

 

 

 ―オォォォォォォォォォ!!!―

 

 零は咆哮している九尾の狐を見た。

 

「さて………取り敢えず、気絶させて曹操をどうにかした後に目を覚まさせるとするか。出来るだけ、痛くない様にと………すぅ~」

 

 零は大きく息を吸うと、手を銃の形にして、九尾の狐に向けた。彼の指先に凄まじい力が収束していく。

 

「【メモリーコード:指鉄砲】」

 

 指先から収束させた純粋な力が、閃光となって放たれた。閃光は九尾の狐を包み込む。

 

 ―オオォォォォォォォォン!―

 

 九尾の御大将は零の指鉄砲の光に包まれながらも抵抗しようと、光を掻き分け零へと突き進む。

 

「お前の娘が待っている。九重の涙は我では拭いきれぬ…………母であるお前を待っているんだ。だから暫し眠れ」

 

 零がそう言うと、指先から放っている指鉄砲がより一層強くなり、力の奔流に飲み込まれた九尾の御大将。

 

 そして、指鉄砲が止まると、倒れている九尾の姿が在った。少し傷はあるが、命に別状はないようだ。

 

「母上!?」

 

 九重は母の身を案じ、母の元に駆け寄った。

 

「大丈夫………気を失っているだけだ。九重、アーシアは九尾の大将の近くで隠れてろ」

 

 

「はっはい!」

 

 

「わっ分かったのじゃ!」

 

 2人は零の言葉に従い九尾の大将の身体の陰に隠れた。それを確認した彼は曹操の方を向いた。

 

「さてと…………待たせたな」

 

 

「簡単に止められてしまったな………まぁ貴方が出て来た以上、こうなることは想定していたがこうも簡単にやられるとは」

 

 

「全然、残念そうじゃなさそうだな」

 

 

「少し残念ではあるけれど…………伝説の戦士(貴方)と戦える悦びの方が大きくてね。くくく」

 

 

「うわぁ…………此奴、ヴァーリと同類かよ。この戦闘狂(バトルジャンキー)め」

 

 曹操はどうやらヴァーリと同じ戦うことに喜びを感じるタイプの人間らしい。まぁ、人間の限界を知るために赤龍神帝であるグレートレッドを呼び出し、戦いを挑もうとし、その為なら誰かを犠牲にしても構わないと思っている事が零にとっては腹立たしい事だった。

 

「少し灸をすえてやる。

 

【ソウルコード:………】」

 

 零がそう呟くと、彼の背後に赤い物体が出現した。

 

「?」

 

 曹操はそれが何なのか分からず疑問に思い首を傾げる。

 

「お前に合わせて、近接戦闘メインでやってやる。

 

 多少痛い目に合わせるつもりだから、覚悟しろよ」

 

 零は笑みを浮かべそう言った。

 

 彼と曹操の第2ラウンドが今、始まる。

 




メモリーコード

・光の護封剣

遊戯王で出てくる魔法カードを再現した物。原点では3ターンだが、零の場合は3分間、相手の動きを止める事ができる。

・指鉄砲

ゲゲゲで出てくる技。指先に高密度の力を溜めて、それを敵に放つ。

出した理由?妖怪相手だし、(イケメン)親父さんも使ってたからです。


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EP99 零VS曹操

 曹操と戦う為に零は絆の力である【ソウルコード】を発動した。

 

 そんな彼の背後には赤い物体が出現していた。

 

「ガンダァァァァム!」

 

 零がそう叫び、指をパチッと鳴らす。すると赤い物体が花が開く様に開く。

 

 中から光が飛び上がり、零へと落ちた。光が消えるとそこには、白い鎧を纏った零の姿が在った。

 

「【ソウルコード:ゴッドガンダム】!」

 

 それはかつて共に戦ったファイターの乗っていたガンダムの力を再現した物だった。

 

「貴様の腐ったその性根!この拳で叩き直してやる!」

 

 何時になく、テンションの高い零。凄い熱気が放たれてるのは多分気のせいだろう。

 

「………貴方はそんなキャラだったか?」

 

 

色々都合があるんだよ(搭乗者の影響)!それよりもさっさと始めるぞ!」

 

 曹操に聞かれ、そう返答する零。

 

「良くは分からないが………やる気を出してくれたなら、それはそれでありがたいけども………まぁ、いいか」

 

 

「そうそう、ごちゃごちゃ言わずにかかってこいやぁ!」

 

 

「では遠慮なく…………行かせて貰う!」

 

 曹操は言い終わる前に常人では見えない速度で駆け出し、零に突きを放った。その攻撃を受け、凄まじい衝撃と共に土煙が上がった。

 

「「零さん(御子殿)?!」」

 

 それを見て、アーシアと九重が九尾の御大将の陰から声を上げた。

 

「ふぅ………流石は神殺しの槍。それを使うお前も日々鍛錬を欠かす事なく行っていた証か」

 

 

「ハハハ………前の時で分かっていたが、少しショックだな。これでもそれなりに自信は在ったんだがな」

 

 神殺しの槍を平然な顔をして受け止めている零。少し驚いた様子の曹操だが、直ぐに槍を引き離れた。

 

「これまで俺も色々な修羅場を越えて来たからな。この程度はな………それより未だ本気を出してないだろう?」

 

 

「おや、御気づきだったか。しかしアレは未だ未完成の代物だからな…………しかしそうは言ってられんか。では行くぞ【禁手化(バランス・ブレイク)】」

 

 曹操の槍が眩いばかりの光を放つ。少しすると、光が納まった。

 

 神器の奥の手とも言える禁手化(バランス・ブレイク)………今までの神器は禁手化(バランス・ブレイク)すると変化が在った。

 

 だが、曹操のそれは少し違った。槍自体には何も変化はない、その代わり曹操の背後に神々しく輝く輪後光が現れ、彼の周囲にはボウリング球くらいの7つの光球が浮かんでいた。

 

「ほぅ………」

 

 

「これが俺の禁手化(バランス・ブレイク)・|極夜なる天輪聖王の輝廻槍《ポーラーナイト・ロンギヌス・チャクラヴァルテイン》だ。まぁ………未完成だけどね」

 

 

「成程………見た目から察するにその光球1つ1つに能力がありそうだな」

 

 

「ほぉ、流石は伝説の戦士殿。それは戦いの中で見せよう」

 

 そう言うと、曹操は槍を構える。零もそれを見て、腰を落とし構えを取る。

 

「「いざ尋常に…………勝負!」」

 

 2人は同時に駆け出し、激突した。

 

 

 

 

 

 

「オオオォォォォォォォォォ!!!」

 

 

「セイッ!セヤァァァァァァァァ!!!」

 

 拳と神殺しの槍がぶつかり合い、火花を散らせる。

 

 零が曹操の突きを避け、腕を掴むとそのまま背負い投げの要領で投げ飛ばした。凄まじい勢いで飛ばされた曹操は自身の禁手化の能力【七宝】の1つ象宝(ハッティラタナ)の飛行能力を使い停止する。間髪入れずに同じく七宝の1つ輪宝(チャッカラタナ)を槍状に変え、それ零に向かい投げた。

 

「ヌン!オラァァァァァァ!!!」

 

 零は輪宝(チャッカラタナ)を避けず、飛んできた輪宝(チャッカラタナ)を左手で受け止めた。勢いを受け切れなかったのか、零は大きく後退する事になったが、彼はその勢いを利用し、自らを軸に身体を回転させ曹操へと投げ返した。

 

 槍となった輪宝(チャッカラタナ)は曹操に向かうが、直ぐに勢いを落とし光球になると、変化前と同じ様に彼の周囲に浮き始めた。

 

「ならばこれでどうだ!居士宝(ガハパティラタナ)!」

 

 七宝の1つ居士宝(ガハパティラタナ)から9人の曹操が現れた。

 

「分身能力か」

 

 

「攻めきれないなら数で押させて貰う!」

 

 合計10人の曹操が零に襲い掛かる。

 

「そう言うのならこっちにもあるんだよ!分身殺法!ゴッドシャドー!」

 

 零が両手を広げると、ゴッドガンダムの背面ジェネレーターが展開する。すると零から9人の零が現れた。

 

「そっちが10人で来るなら、こっちも10人だ!」

 

 10人の零と10人の曹操がそれぞれ戦闘を始めた。

 

「「「「「「「「「「オラッオラッオラッ!」」」」」」」」」」

 

 

「「「「「「「「「「でやぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」」」」」」」

 

 それぞれ、凄まじい戦いを繰り広げている。

 

 これまでの事は凄まじい速さで行われている為、アーシアや九重、戦闘に慣れてる者達から見てもあらゆる場所で火花が発生している様にしか見えない。

 

「分身は面倒だ!一気に決める!」

 

 

「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」

 

 本体の零がそう言うと、分身達が応え、曹操達に蹴りを入れ下がった。分身の曹操達は一ヶ所に集められ、分身の零達はそれを囲う様な位置にいた。

 

「なにを」

 

 曹操は警戒する。

 

 分身の零達は両手を上げ、片足で上げた格好……簡単に言えば荒ぶる鷹のポーズである。すると、分身の零達の身体がH緑色の渦巻き状のエネルギーに包まれる。

 

「「「「「「「「「超級覇王電影弾!打てぇぇぇぇ!オリジナル!!!」」」」」」」」」

 

 

「しゃあ!はいー!!!」

 

 本体の零は凄まじい速度で移動しながら、分身達を後ろから殴り、打ち放った。

 

 曹操の分身達は凄まじい勢いで打ち出された分身の零達に反応できず直撃を受け消えた。零の分身達もそれと同時に消えてしまった。

 

「はぁ……すぅ」

 

 零は着地すると息を深く吐いた。

 

「伝説とは違うが凄まじい力だ」

 

 

「別に俺が凄い訳じゃない。これはあくまで借り物だ。共に戦った仲間の力を借りただけの事だ、本当に凄いのはこれを扱っていた仲間だよ」

 

 

「仲間……」

 

 

「この身は1人で戦っている訳じゃない。今は此処にいないが、俺は常に仲間達と共に戦っている」

 

 零の言葉を聞いて、曹操の脳裏に英雄派のメンバーの顔が浮かぶ。だが何故か直ぐにそれは消えてしまった。

 

「…………」

 

 

「(フム………やっぱりか)少しギアを上げるぞ!」

 

 零は曹操に違和感を感じ、それが何なのかを気付いた様だ。そして更に力を解放する。胸部の装甲が展開し、ハートの紋章が浮かび上がった。

 

「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 凄まじい速度で曹操に向かい駆け、一気に攻めに転じる。

 

 再び拳と槍が火花を散らせる。

 

「くっ……仕方ない」

 

 曹操は先程より増した零の攻撃は七宝の能力では対応しきれないと考えたのか、七宝を消した。すると曹操の攻撃も激しさをます。

 

「ほぉ!よっ……敢えて能力を……せりゃ!封じる事で戦闘能力を……どらぁ!増したか!」

 

 

「その……はぁ!通り!………ほっ………オーラを収束させ能力を………せやっ!増幅させたんだ!」

 

 凄まじい攻防をしながら、会話をしている2人。常人には絶対できない事である。

 

 拳と槍が攻防を繰り返す中、曹操は零の拳を避けると、身体を倒し、腕で身体を支えるとその勢いで零の腹に蹴りを入れて蹴り飛ばした。

 

 零は直ぐに体勢を立て直すと、右手の拳を握りしめた。

 

「ハアァァァァァ!俺のこの手が真っ赤に燃える!お前を倒せと轟き叫ぶ!」

 

 背面ジェネレーターにより、エネルギーが増幅され、右腕のプロテクターが手の甲を覆う。

 

「!」

 

 

「行くぞ!曹操!爆熱!ゴッド………」

 

 真っ赤に燃える様な手が構え、深く腰を落とし駆け出そうとする零。対し曹操は聖槍の矛先に自身の力を収束させ、渾身の突きを放とうとする。

 

「フィンガァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 ゴッドフィンガーと聖槍が激突し辺りが閃光に包まれた。



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