魔法少女リリカルなのは〜君だけの旅路〜 (テノト)
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プロローグ

始めましての方は始めまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。
テノトと言います。
ようやくにじファンからの改修移転です。
感想、誤字、その他指摘がありましたらお気軽に感想で送って下さい。
誹謗中傷の感想に関してはスルーさせて頂きますので、よろしくお願いします。




此処は何処?

 

ああ、天国かな。

 

そうだ。俺は死んだんだ。

 

確か、登校中にトラックが突っ込んできて。

 

彼女、ほしかったなぁ。

 

もっと、友達とバカやっていたかったなぁ。

 

大学にいきたかったかなぁ。

 

此処は何にもないなぁ。「あの、いいですか?」

 

なんか死んだ筈なのに腹減ったなぁ。「ちょっと、聞いてますか?」

 

天国って事は死んだじっちゃんも居るかなぁ。「もしも~し。聞いてくださいよ」

 

じっちゃん、カメムシ臭かったなぁ。「無視ですか、カメムシだけに無視ですか?」

 

あ、だからゴキブリ臭いばっちゃんが好きになxt「聞いてください!!」「何さ」

 

目の前に美人でツルペッタンな女性がいた。

 

「何で無視するんですか!?」

「ん~。現実逃避?」

「何故疑問系……て、言うか誰がぺったんこですって!?」

「ぺったんこなんて言ってないしまずそれに近いことを口に出してないし」

「そりゃ神ですから。心の中を読むことなんて造作でもないですよ」

「で、そのペッタン神様はこんな俺に何用で?」

「ペッタン言うな!!あなたを手違いで殺してしまったのですよ。」

「どんな手違いで?」

 

「あなたの運命を決める本を机の下に置いといて、それを踏んでグシャグシャにしてしまったのですよ。本当にごめんなさい」

 

どうやら神でもミスはするらしい。よし、このことを「神も木から落ちる」と言おう。

 

「そんな言い方やめてくださいよ!とりあえず、手違いで殺してしまったのでこちらのルールに従ってあなたには転生して貰います。さあ、能力をひとつ選んで貰います。何ですか?王の財宝ですか?無限の剣製ですか!?」

 

なんかすごい不機嫌なんですがこのペッタn「ペッタン言うな!」スレンダーな神様。

 

「一応私は最高神のひとつ下の位に位置する神なんですよ。部下がミスしたりしたら私がこれをやるんです。」

 

わぉ。結構すごい神なんだ。

 

「そしたらその殆どが今みたいな能力を選ぶんですよ。しかもひとつじゃ足りんからもうひとつ能力よこせとかいうんです。さらに来る人間の殆どがよく肥えた人間で私の体を撫で回すようにジロジロ見るんですよ。もう気持ち悪くて気持ち悪くて」

 

ピザですね分かります。

 

「で、あなたは何を選ぶのですか?」

「んじゃあうたわれるものの「ウィツァルネミテア」の能力で」

「ちょっ、即決ですか!?しかも地味だけど最強とかチートとか通り越して無敵じゃないですか!!」

「王道よりかはマシかなと思いました。」

「まあいいですよ。その代わり、こちらで色々制限かけさせて貰います」

「おk」

「世界は「リリカルなのは」一択で」

「把握」

「この世界には他の気持ち悪い転生者が4人います。転生できたら脳内に直接念話を入れます。では、リリカルマジカルな世界へ行ってらっしゃいませ」

 

足元に穴が出来ました。

まあ予想通りですたい。

 

「あ、私としたことが!また手違いを!」

 

おい神ぇ。

 

 

 

 

 

と、いうのが今までの回想で転生した経緯?

ちなみに穴を抜けるとそこは、

よく分からん空間でした。

ただただマス目が天と地を果てしなく遠くまで埋め尽くす空間。

ロックマン・エクゼの電子空間的なものが脳裏に蘇る。アニメとかあまり見たこと無いけど。

 

「何ぞこれ」

 

いやいや、リリカルなのはの世界じゃないでしょこれ。

 

「あ、やっぱりそうなりましたか」

 

この声はスレンd……ツルペッタン神!!

 

「言い換える意味は無いでしょう!?」

 

神様がペッタンなのは置いといて「置いとかないでください!!」置いといてだ。何故こんな場所に?明らかにリリカルな世界じゃ無いでしょ。

 

「それが、またしても手違いで人としてではなく、デバイスとして転生させてしまったらしくて……」

 

何処を如何したらそうなるし。

 

「え~と……。「神も木から落ちる」……ですかね?」

 

何発か殴らせてもらっても?

 

「ごめんなさいごめんなさい!!お詫びにひとつ掛けた制限を解除させていただきます」

 

それはいったい?

 

「死者蘇生はずるいからなしだったのですが、ジュエルシードありならOKにさせていただきます」

 

ん?そんな存在を生めるのに何故俺を蘇生しなかったし。

 

「……焦ってしまって神でも蘇生不可な状態まで言ってしまったのです」

 

ま、いいや。

もひとつ。何故ジュエルシード?

 

「それは追々お楽しみと言う事で」

 

分かりやした。

 

「では、確認が終わったので私はこれにて」

 

おう、達者でな。ペッタン。

 

「……もういいです。転生生活、頑張ってくださいね」

 

 

 

……………………もう、いないよな?

さて。

 

 

 

 

デバイスでどう生活しろと?

 

 

 

 



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無印編
1話 無印編プロローグ


ゆっくり投稿していくお!
でも、戦場の絆で送れるかも。
修正しても相変わらず拙い作品です。


あれから分かったことを整理しよう。

まず、どうやらこの空間はデバイスの中らしい。

何故分かったかというと、たまに目の前の空間に穴が開きそこから外の景色が見えるからだ。

外は何かの実験施設らしく、たまに白衣の男などが、「うはwww「ぼくのかんがえたさいきょーのでばいす」作ろうぜwww」「おkwww」とか話しているのを見た。

それから、ここの空間の景色は自分の平均的な心情描写によって変わるらしい。

神が消えてから段々景色が変わっていき、今では森が鬱葱と広がっている。

そして、このデバイスはジュエルシードを管理する為に作られたらしい。

さっき説明した白衣の男たちが自分の願いを叶える為にジュエルシードを作ったらしいが、如何しても願いを歪めて叶えてしまうからその修正パッチとしてつくったが、「今後後世に「願いを叶える祠」的な感じでこの施設残して、このデバイスをボスキャラにしないか?」「ちょっwwwおまいwww天才かwww」とか言って「ぼくのかんがえたさいきょーのでばいす」へ開発された。(まあ、ただユニゾンデバイスっていう人間の体になって活動できるようになっただけだけど)

神が言ってたジュエルシードの理由はこれか。

分かりやすい複線引きやがって。作(ry。

最後に、俺が作られたのはアルハザードという原作から途方も無い過去らしい。

ちなみに俺は原作はあまり知らない。二次創作もので少し知った程度の知識だ。

今はアルハザードが滅び、人類も滅亡して外には人っ子一人いやしない。

ならばする事はひとつ。

 

 

 

今ある次元世界のサルをみんな人類へ進化させよう。

 

 

 

うたわれでもウィツァルネミティアがサルを人類へ進化させたと仄めかす描写があるから出来ないこともないだろう。

ん?でもどうやってこの力を使えばいいんだ?

まあ適当でいいか。

とりあえず両手を広げて・・・。

 

「人間に進化せよ。小さき獣よ」

 

うん。痛い。

デバイスで滅ぶこともないし時間を掛けて様子でも見よう。

時間的にいったらあと云億年もすれば原作だろう。

 

 

 

そんな風に思っていた時期もありました。

少し寝たと思ったらもう何か目の前に短パン小僧がいるではないか。

え?何?もう人間生まれてたの?

マジか。

余計なことだけどもう自分をウィツァルネミティアって名乗っていいよね?

人間も生まれたし。

てかこの小僧ユーノではないか?

あの淫獣として有名になってしまったユーノ?

 

「これがあのジュエルシード・・・」

 

いやいや、君。そんなこといいからその危ないブツを元の場所に戻しなさい。

あ、持っていくな!窃盗犯として警察呼ぶぞ!警察!

てかどうやって人間の体になるんだ!?

落ち着け!こんな時は素数を数えるんだ!元ネタあまり知らないけど。

1・2・3・5・7・11・13・17・19・23・25・・・。

あ、25は素数じゃない。

さて、落ち着いたぞ。

人化も気合で完了。

さあ、何処へ行ったんだ小僧!

 

施設の外まで追いかけたら、

 

 

 

次元航行船で飛んでいったとこでした。

はい、ユーノは大変な宝石を盗んでいきました。

まあ何とでもなるだろう。

そんなことより、

 

「この人間モードの姿はハクオロさんではなくディーではないか」

 

ハクオロさんを期待してた俺のこの気持ちは何処へぶつければいい?

まぁ、ディーもカッコいいからいいか。

池田さんボイス好きだし。

せっかくだから、性格とか喋り口調とかもディーにしよう。

 

「ん、んん!」

 

恐らくジュエルシードは原作通り海鳴の地へ落ちるであろう。

そこで主を探そう。一応デバイスであるから魔力供給がないと一定時間しか動けん。

何?ガラッと性格が変わったとな?

デフォルトだ。

 

 

 

さて、少し次元に穴を開けて地球まで来たのだが、どうやらユーノは疎かジュエルシードすら未だにこの世界には来ていないようだ。

丁度いい。今のうちに主を探しておこう。

取り合えず、なのはは駄目だ。他の転生者に事がばれたら何が起こるかわかったもんじゃない。

原作に一番近くて物事を隠蔽するだけの力を持ち、デバイスを持っていた所で大まかな原作の流れに支障を来す事のない人物……。

 

アリサ・バニングスだ。

 

彼女は確か地球では知らない者など居ないと豪語できる程の大企業の令嬢のはずだ。政府やメディアへの圧力も簡単に掛けることなど造作でもないだろう。

うまいこと取り込まれることが叶えばいいのだが……。

それに彼女が必ずしも魔力を持っているとは限らない。

取りあえず交渉をする価値はあるだろう。

しかしエンカウントのタイミングは如何すれば。

仕方ない。多少強引だが今夜彼女の夢の中へ入って交渉しよう。

……今パッとアリサの魔力量を調べてみたが、軽くAはあるぞ。

……これがご都合主義か……。

 

 

 

 

 

 

~Side・アリサ~

 

 

私はアリサ・バニングス。私立聖祥大付属小学校に通うバニングス家の一人娘。

突然だけど今私は真っ暗な所に居る。

私はもう夜も遅いから布団に入って寝たはずなのに。

何も見えなくて、何も感じられないのに、不思議と嫌じゃない場所。

ふと目の前に人影が現れた。

 

「あなた誰よ」

 

私が少々ぶっきらぼうに言うと、

 

「我はディー。人ならざぬ物だ」

 

と、返してきた。続けて、

 

「我の管理している物が奪われてしまったのだ。本当なら我一人で解決できることなのだが、物である我は動くのに魔力というものが必要なんだ。その為に我の主たる人物を探していた。だから君の夢の中へ入らせてもらった。我の見立てでは、君はかなりの魔力をその体に秘めている。どうか我の主になってはくれないか?」

 

と言ってきた。

 

「ディーだったかしら。あなたは動けないはずなのに何で私の夢の中に入れるの?」

 

魔力?のことは聞かない。聞いたところでどうせこれは夢。

魔法があるとか無いとか、そんなことは夢物語、お伽噺の中だけだなんて、当たり前だもの。

 

「その奪われたものが我の動力で、今は我が中に貯めておいた魔力を使ってここに居る。直に消える。もし協力してくれたなら、何か願い事を叶えようではないか。どんなことでも叶えよう」

 

……意味が分からないし、現実味も身も蓋もない話だけど、このディーって人?の顔は至って真面目で焦った感じがした。

夢だけど夢じゃないってこと?

でも、

 

「ディーっていったっけ。あなたはここへ何しにきたの?」

 

「協力を頼みに来たのだが?」

 

私はにっと笑って、

 

「人にモノを頼むのにそんなに態度が大きいのは正直答える気が無くなっちゃうわ」

 

と言うと呆気に取られた顔をして、すぐにニィとニヒルに笑い、

 

「宜しく頼む。我が主になってくれ」

 

と膝を付けて私の目線よりも体を低くして深々と頭を下げた。

 

 

 

朝、目が覚めてふと横を見るとそこには全く見覚えの無いけど、あっても不自然な感じのしない輪っかがあった。

 

「目覚めたかねアリサ」

 

これがどうやらディーの本当の姿らしい。

こうして私の一日は今日も始まった。

 

 

 

 

 

 

~Side・out~

 

 

 

うまく取り込まれたようだ。

さて、これから如何したものか。

 

 



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2話

新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

去年の大晦日中に投稿したかったのですが、意欲が湧かずに放置という……。
マイペースにやっていくつもりですが、自分の目標を達成出来ない駄作者ですが、生暖かい目で見てやって下さい。
誤字脱字、違和感など、何でもいいので感想や評価をお願いします。
テノトは単純馬鹿なので舞い上がります。

余談ですが、戦場の絆はよくやるので、見つけた際はこちらの感想を使っても構いませんので何か苦言を言って下さいませ。


 

この無印時期での介入は絶対に避けられないだろう。しかし、我はアリサを戦いへ駆り出す気は毛頭ない。

方針としてはアリサには魔力供給のみしてもらうつもりだが、きっとアリサは原作の流れを知ったら自分にも何か出来ないかと介入するだろう。

だが、四人の転生者の内何人かは必ず介入して来るだろう。

そうなると厄介だ。

神の言い分から、奴等は身勝手な行動を起こして世界のバランスを乱すだろう。

しかも何を考えて行動に移るか全く予想できん。碌な理由ではないだろうが。

まあ、あくまでもアリサの意見を可能な限り最優先するがな。

ちなみにアリサは我をエルルゥと同じように髪に飾りとして着用している。

王道チートばかり選ぶ輩は気づかずに自分が物語に介入した事によるifワールドだと判断するだろう。

今は教室にいる。今日は一番乗りらしく、まだ誰も来ていない。

 

<アリサ。魔法の話は親にはするべきだが、友にはするべきではない。悟られるなよ。わかっているな?>

 

<大丈夫よ。うまくやるわ>

 

「あ、アリサちゃんおはよう!今日は早いね」

 

「早起きは三文の得というしいいことだろ」

 

「ていうか、昨日一緒に登校する約束したろ?忘れんなよ」

 

「そうだよアリサちゃん。約束は守らなきゃ駄目なの!」

 

上から、月村すずか、転生者(仮1)、転生者(仮2)、高町なのはである。

 

「そうだったわね。悪かったわ」

 

「まぁいいさ!お、新しい髪飾りか。珍しい形をしてるな。けど似合ってて可愛いよ」

 

ニコッと笑ってアリサの頭を撫でる。アリサの顔が綻び赤みを増す。

これは……。

 

<アリサ、目を覚ませ>

 

アリサはハッとして手を振り払い、転生者(確定)を睨む。

 

「ハハッ!恥ずかしがんなよ」

 

「うるさい!」

 

<こいつは何だアリサ>

 

<鬼灯 神影(ほおずき みかげ)よ。何故かあいつに微笑まれたり撫でられたりすると女子はみんな惚気ちゃうわ>

 

<それは魅了魔法の一種かもしれん。対象の異性を惚れさせるというものだ>

 

<そうかしら?でも、気を付けるわ>

 

仮に魅了の魔法を使っていたのなら、神が気持ち悪いといったのも分かる。

好きでもない人に意識させられるだなんて、この事実を知ったらこいつに拐かされた女子はなんて思うか。平然と精神の自由を犯し、人の心を束縛するという非道な代物だ。

しかしまあ、鬼灯の容姿は典型的な転生者だ。金髪碧眼で純日本人という事はまず無いだろう。神に容姿について要望でもしたのだろうか?

端っこで鬼灯を憤怒と嫌悪、否、嫉妬ともとれる眼差しで射殺すように睨む少年がいる。

だが、こんな眼差しの中に優しさを感じるのは何故だ?

そんな事はいい。気になるのは、この少年から戦人の気配がする事。

面白い。

出来るものならば、少年を手中に取り込んでしまおうか。

丁度少年からは魔力を感じる。

量こそ少ないものの、質は中々のものをだ。

 

<少年よ。汝、力を求むか>

 

<誰だ?これは念話か?>

 

<ほう、念話を知っているか。そうだな。我は願いを叶える者なり>

 

<ああ、俺は転生者らしくてな。その程度の知識は持っている>

 

転生者は気持ち悪いのが四人のはず。気持ち悪いのも含めて4人ということか?

 

<何故汝は転生した>

 

<俺は元少年兵でな、国の革命の為に自ら銃を取ったんだ。人の命を国の為といって何万と殺したら英雄扱いされてな。それに嫌気が出て酒に走ったら酔っているとこを後ろからバーンとね>

 

<自嘲気味に重い過去を語るものだ。それで、力を求むか?>

 

<ああ、力を求めるよ。魔法なんて言う代物があるこの世界に、力無くして生きていく術はないだろ?それに平和を求めたところで、俺には結局戦いに身を置く事しか出来ないんだと気付いたんだ>

 

<ほぉ、自分で戦に身を置く事しか出来ないと言い切るものか。間違いではないぞ。汝からは戦の薫りが薫って来る。ならば戦の為の力が必要だな>

 

確かに人の死を幼少から見てきた、ましてや己のその手に掛けてきた者に、平和な生を過ごすというのは難儀なものだろう。

ならばいっその事自ずから戦火へと飛び込んでしまった方が、随分と楽になれよう。

む、都合よくジュエルシードがこの町に落ちてきたようだ。少年の願いを叶えられるぞ。

 

<承知したぞ。今夜、海鳴臨海公園で会おうぞ。そこで汝に見合う力を授けよう>

 

<おうよ>

 

交渉は成立だな。

 

<ディー。あなた誰と念話してるのよ>

 

<強力な助っ人となり得る者だ>

 

<あなたの助っ人?>

 

<さあ?如何だろうな>

 

<勿体ぶらずに教えてなさいよっ!>

 

 

 

 

時間は経ち、夜8時を回った頃、少年の約束を守るために公園に来てみれば早速ジュエルシードを見つけた。それを体へと溶け込ませる。今は人間モードだ。

このジュエルシードがなければ願い事は叶える事が出来ない。ただし、願い事を叶えられるのは体内のジュエルシードの魔力の限りらしい。十分チートだな。

 

「あんただな。教室で俺に話しかけてきたのは」

 

あの少年がやってきた。

 

「そうだ。まだ名を聞いていなかったな。我はディーと言う。人ならざぬ物だ。汝が名は何と申す?」

 

「俺は蛇 晃毅(くちなわ こうき)だ」

 

「確と覚えた。晃毅、汝は何故力を求む?」

 

「ここの世界の知識はある程度あの神から聞いたんだが、俺達転生者がいる時点で物語の流れは変わってしまうらしいな。だが、元から何も知らない俺には物語の流れなんて関係ない。ただ、物語に巻き込まれていくのが、あんたが俺の目の前に出てきた事でよく分かったんだ。そして何よりも、戦いに身を置く事しか出来ない俺には、やっぱり力は必要なんだ。だから俺に見合った力を求める!」

 

「そうか。代償は我への服従ぞ」

 

「構わない。あんたに付き従おうと誓う」

 

晃毅は己に偽りのない思いを力強く述べた。

 

「……汝が願い、叶えよう……」

 

契約は交わした。

代償は我への服従。

 

晃毅の足元が輝き、輝きは二つに分かれる。

一つは胸の中へ。

もう一つは帯状になり頭に巻かれる。

 

我が与えたのはMGSのスネーク技術と武器そしてリンカーコア。

 

「これが・・・俺の力か・・・」

 

<誰か!誰か助けて!>

 

「どうやら原作が始まったようだな」

 

「はぁ?原作が始まったって……?それよりも今の声は何だ?原作に関係するのか?」

 

「よし。バンダナは魔力を使うための端末、デバイスだ。名前は『ビッグボス』。使い方はそのビッグボスの中にある。はなっから戦闘になるだろうが、お前なら出来ると思っている」

 

「戦闘って、早速か?」

 

「そうだが、何か?」

 

「いや、ないぞ。寧ろ存分にやってやるさ」

 

やる気は十分なようだ。

原作が始まったからといってすぐに介入するのは軽率だ。

表側では晃毅に働いて貰い、我は裏でコソコソと集めるとしよう。

鬼灯といったか、奴が転生者ならば、恐らくすぐに介入するだろう。

出来ればまだ我は姿を晒したくは無い。

ただ、晃毅に最初のジュエルシードは高町に譲るようにさせよう。話の大筋を逸らしては不確定要素が生まれてしまうからな。

最終的に高町やテスタロッサが集めた物を横取りすればいいからな。

それにここで我が全てのジュエルシードを集めてしまうと、高町とテスタロッサの出会いそのものを無かったことにしてしまう。

俗っぽい考えだが、人との素敵な出会いを奪うのはどうかと思う。

とりあえず、地球とメインキャラクターの身の安全は確保しよう。

 

「よし、晃毅。明日ジュエルシードが暴走する筈だ。しかし、この事件はある少女によって解決されるだろう。今回お前はジュエルシードを取らなくていい。その少女に譲れ。その時「魔法とは危険だ」と忠告してお前の任務は完了でいい。ただ、邪魔が入るかもしれんから十分警戒してやれ」

 

「待て。少女とは誰だ?そして何故ジュエルシードを取らなくていいんだ?」

 

「まあ、此処は一つ我の手のひらで踊ってはくれないか?」

 

「……この力をくれたのもあんただしな。わかった。踊ろうじゃないか」

 

「話は終いだ。もう遅い時間だ。親が心配するだろう。呼び出しておいてなんだが、早く帰るといい」

 

「親はいないぞ。両親は旅行に行ったきり、5年は戻ってきてないんだ。音沙汰もなし。だから、四年前に警察へ行ってそこから孤児院に入ったんだ」

 

今世に産み落とされてからも重いものを背負って生きているのだな。

 

「ま、院長も心配するだろうし帰るけどよ、一ついいか?」

 

「ああ。何だ?」

 

「あんたはバニングスの何なんだ?」

 

「アリサは我の主だ。それ以外の何にでもない。我からもいいか?」

 

「何でも聴いてくれ」

 

「今日学校でアリサと鬼灯のやり取りを見ているお前の眼光が凄かったのだが、お前、アリサに惚れてるのか?」

 

「はぁっ!?」

 

おお。図星か?

 

「違う!惚れてるって言うか、良いやつだなと言うか、気になると言うか……。って、これについては何も言わん!」

 

顔を真っ赤にして声を荒げる。素直じゃ無いな、全く。

アリサも素直じゃ無いから、似た者同士なのだろうか。

とりあえずニヤニヤとしながら晃毅を見る。

 

「あ~!もういい!任務は了解した!じゃあな!」

 

「ふっ。また後にな」

 

晃毅は元少年兵と言っていたな。

遅れてきた青春を謳歌してると言えようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side アリサ~

 

 

 

 

何か嫌な感じ、怒りを覚えた気がした。

原因はディー?

 

「ちっ」

 

「どうしたのアリサちゃん?急に舌打ちなんかして。怖いよ?」

 

「あ、あぁ、なんでもないわよ。シャー芯何回も折れてイライラしただけ」

 

「なら良いんだけど……」

 

今私はすずかと一緒に塾にいる。

なのはは今日塾に来る日じゃないから来てないけど、何か嫌な予感がするわ。なのは絡みで。

家に帰ったら、お父さんに相談を取り付けて貰おう。休みの日に合えないか。

魔法のことを、ディーのことを話そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side out~

 

 

 

 

塾から帰ってきたアリサに思い切り殴り倒された。

我が何をしたというのだ?

その話は置いといて、ついに魔法のこと、我のこと、これから自分がしたいことを父に話すらしい。今、電話している。

父との話が付けばアリサは原作に介入するだろう。

これからの近い未来に起こることを話すのはあまり良くないだろうな。

未来が分かると言うことは、それなりのリスクを伴う。

未来に起こることに囚われてしまい、柔軟な判断が出来なくなってしまう。

我自身、それが怖くて原作を崩そうとしないのだろう。

我という存在がいる時点で、既に未来の変化は大きいと言うのに。情け無い話だ。

 

「ディー、次の休みの日にパパと会うわよ」

 

「そうか、話はついたんだな」

 

「今はまだ私はそのジュエルシード探しには行かないわ。けどお父さんとの話が終わったらいくつもりだわ」

 

「やはりな。アリサならそうと言うと思っていた。しかし何故危険と分かっていて行くんだ?」

 

「自分の可能性を増やしたい、魔法少女に憧れて、色々理由はあるけど、自分の力でこの町を守れるのなら守りたいからよ」

 

「ふむ、アリサは周りが思っているよりも強くて大人だな」

 

「そ、そうかしら……」

 

アリサは褒められて頬を赤く染めた。

そんなアリサからとてつもないカリスマを我は感じている。

将来絶対人の上に立つ人間になるだろうな。

 

 

 

 

 

翌朝、原作通りバスで通学。

違うところは、ここに鬼灯ともう一人いることだ。

このもう一人の少年は転生者なのだろう。

落ち着き払った大人の余裕は、子供からは感じ得ないものだ。

 

<アリサ。こっちの少年は誰だ?>

 

<種子島 射人(たねがしま いると)よ>

 

……とんでもなく射撃に特化した名前だな。

 

 

 

 

その後は特に問題なく時間は流れて行き、下校だ。

そして原作通り帰りにユーノを拾い、塾へ行き、ユーノの念話を聴いて家を飛び出したようだ。

此処まで原作通りだ。

今はユーノが結界を張り、周りへの被害を無くして高町と逃げている。

 

「言っていた少女ってのは、高町のことだったのか」

 

「彼女はお前とは比にならないほどの魔力と素質を持っている。恐らくその素質がユーノの念話を聞き取ったのだろう。何の自覚も無く念話を聞き取るとは。だがお前はセンスと勘と経験で勝っているのだ」

 

「ああ。元と言えど少年兵として革命を成功させたんだ。その三つは負けらんねぇな。その三つが負けていたなら俺は此処でコイツを返しているよ」

 

自信有り気に額を親指でクイッと指す。

 

「それは頼もしい。では援護に行ってくれ」

 

「任務了解。さあ、ショータイムだってな」

 



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3話

なんで冬休みに宿題なんてあるんだよ。
おっと本音が出てしまいましたね。
同意見の方は沢山いるはず……。
昨日作品の評価方法を知ったテノトでした。
拙い文ですが、どうぞ。

※2話の方を少し修正しました。
詰めも何もかもが甘い作者なので、不振に思った点がありましたら、お教え下さい。


~Side 晃毅~

 

 

今は家の屋根をぴょんぴょん跳んで高町の所へと向かっている。

しかし、まさかディーの言っていた少女が高町だとは。

にしても、何で任務は援護なんだ?

まるで高町にこの一件を任せて俺はサポートみたいな。

まあ、深くは考えなくてもいいか。

と考えていると高町は電柱の後ろに隠れた。

いや、すぐばれるぞそこは。

なんかの小動物と話しているのかと思えば、その小動物は高町に光る何かを渡した。

デバイスか?

そして俯いて祈るような姿勢をとった途端にジュエルシードに見つかった。

 

「やべっ!」

 

そのままジュエルシードは高町目掛けて飛び掛った。

そこへうまく飛び込みジュエルシードを受け止める。

 

「ぐっ!間に合った!」

 

「え?え?あなたは?」

 

突然の登場に大分動揺してるが、

 

「俺のことは後でいい!早くデバイス起動させるならさせろ!障壁は長く持たねーぞ!」

 

俺の魔力はディー曰く、ランクCと、結構低めらしい。何を基準か分からんけど。

 

「そ、そうだ!早くデバイスを起動させないと!」

 

小動物がそういうと、また頭を伏せてブツブツと何か言い出した。

 

「レイジング・ハート!セットアップ!」

 

ようやく起動させたようだ。

 

「君!早く封印しよう!」

 

「へ?ふぇぇ!?」

 

いやいや小動物、落ち着けよ。見た感じ魔法デビューして数秒の人に封印とか言っても分からんから。

てか障壁が!

 

「高町!いいからその杖らしきものを奴に向けろ!」

 

「へ?何で私の名m「いいから早く!」わ、わかったの!」

 

高町がデバイスを向けると障壁が現れた。それを確認してから俺の障壁を解く。

 

「俺が奴の気を引くからお前は小動物から封印の仕方を教わっておけ」

 

そう言ってジュエルシードの相手をする。

奴は特別な動きをするわけでもなく、ただ体当たりを仕掛けてくるだけだ。たまにフェイントが入ってウザったいが。

 

「るらぁぁ!!」

 

思いっきり殴り倒してみると、衝撃に怯んでよろけているもののそこまでダメージは無いようだ。

 

「ちぃっ!ならこれで!」

 

至近距離からM19を撃つ。大きく揺らいで体制を崩したところへM16A1の連射を駄目押しで撃ち込む。

 

「キィィィィィィィ!!!」

 

 

流石にダメージを受けたらしい。

そこに蹴り飛ばして距離を離す。

 

「封印の仕方は教わったか、高町」

 

「うん!」

 

「それなら奴が突っ込んで来たところに合わせて封印だ。俺が合図する」

 

「出来るか分からないけど、やってみるの!」

 

吹っ飛んだジュエルシードは体勢を立て直して突っ込んで来た。

 

「まだだ。もっと寄せて来てから……今だやれ!」

 

「は、はい!リリカルマジカル!ジュエルシード封印!」

 

「キ!?キィィィィィィィィィィィィィ!!!」

 

「封印完了!で、いいのかなぁ……?」

 

「ふう……。終わったか」

 

「ありがとう、二人とも」

 

さて、この一件解決したと言うことは……。

 

「ところで、あなたは誰なの?」

 

だよな。

けど正直名乗りたくない。

学校で気まずくなりそ、いや待て、知らないのか俺のこと。同じクラスなのに?

中々ショックが大きいな。そんなに俺って影が薄いのか?

 

「俺のこと知らないのかよ。俺はな「なのはーーー!!大丈夫か!?」っちぃ、来るべくして来るものなのか?」

 

ディーの予想通り鬼灯が来やがった。

 

「神影君!!」

 

「なのは、大丈夫か?怪我とかは無いな?良かった……。ところでお前、誰だ?」

 

面倒くさいことになってきたな。

今睨んできている鬼灯、コイツの力量は未知数だ。

神から聞いた原作のあらすじにはこんなやつは出て来てないし、そもそもこの世界には魔法がないはず。ならば俺達と同じく転生者なのだろうか?

どちらにせよ、目の前のやつは俺に最大のプレッシャーを放ち、今に飛び掛かられても平気な様に構えている。その鬼灯の背中になのはは隠れる様にいた。

……この調子で話が進むと衝突するのは火を見るよりも明らかだな。いらない争いはなるべく避けるように立ち回ろう。

取り合えずもう任務は完了しているからディーに報告だけして切り上げよう。

 

「今後もいずれ会うだろうし、今回は引き上げる。ただ一言言わせてくれ。この魔法のことは、そこの小動物とかとよく相談してよく考えろ。思うほど甘い世界ではない筈だぞ」

 

そう言いながら地面にスモークグレネードを投げつけ、視界を奪って撤退する。

 

「ぐわぁ!くそッ!目潰しかぁっ!?待てよオイッ!!」

 

 

 

 

 

「ご苦労だったな晃毅」

 

「本当にあれでよかったのか?」

 

「ああ、上出来だ」

 

「で、次の任務は?」

 

「そうだな。この事件のきっかけの宝石、ジュエルシードを関係者に隠れながらコソコソと集める事だな」

 

「了解したぜ。にしても、人遣い荒いな」

 

「そういう契約だからな。よろしく頼むぞ」

 

 

 

 

 

 

~Side ディー~

 

あれからは、特にお互いが介入することはなく集めるだけの日々が続いた。

こちらが集めたジュエルシードの数は3つ。高町の方が2つ。原作でどうだかは覚えていないどころか知らないが、フェイト・テスタロッサの方ではどの位集めたのだろうか。確か4つまで集めてそれを母、プレシア・テスタロッサに渡したところ少ないと言って虐待を受けていたはず……。

いや、まだこの世界にきていないのでは?

ふむ……。

不確定要素を気にし過ぎるのも考えものだ。その時その時で乗り切ろう。

確か、今日はアリサに頼まれて魔法の練習を見てやる日だ。

今回はデバイスの中の世界に精神だけ取り込んで、そこで魔法の練習をする。

あまり関わらせたくないのだが、本人はやる気満々だ。少しこちらから離れて準備体操をしている。なんともアクティブな御令嬢だ。

余談だが、此処は精神のみの世界だから準備体操は必要ないのだ。本人に言うと「気持ちの問題よ」と帰ってきそうだな。

 

「で、まず何をするの?」

 

「まずは魔法について話そう。魔力とは、世界に散らばる魔素、それを体内へ取り込み精神力で制御することで扱う力だ。この魔力を色々な力へと変換して行使したものが魔法だ」

 

自分のアルハザードの知識からざっくりと説明してみた。うんうん唸りながら考えるアリサ。

 

「付け加えると、今の時代では、魔素を取り込み魔力を生み出す器官のにリンカーコアが重要視されている。このリンカーコアとは動物の器官で言うと、心臓と肺を合わせたような器官だな。大きければ大きいほど大量の魔素を取り込めて、大量の魔力を生み出せて、大量の魔力を行使できる」

 

「う~ん……。なんとなくは理解できたかも……」

 

「そうか。始めから理解しろとは言わんよ。まずは感じるところからだ。今この空間は魔素で満ち溢れているから簡単に感じられるはずだ。人差し指を立てて、そこの先に温かいものを感じるように念じてみろ」

 

指示通りに人差し指を立てて、またも唸るアリサ。

 

「わっ。なんだか光ったよ」

 

「感じられたようだな。それが魔力だ」

 

アリサの指先はボッボッと音を立てて深く暗く光っていた。

そう、たとえるならその色は闇色。

深い闇。気づけば吸い込まれてしまっていそうな程深く暗かった。

加えて、ボッボッという音を立てたと言うことは、闇と炎の魔力変換素質があるやも知れない。

 

「次に魔法陣を教えよう。魔法陣とは、魔法を使う上でも使用する精神力のサポーターのようなものだ。この魔法陣がうまく刻まれていないと、魔法の質もそれなりに落ちる。精神力だけでも魔法は行使できるが、やはり魔法陣も重要だ」

 

これもまた、アルハザードからの知識だ。

 

「これからアリサに教える魔法陣は魔法戦主体のミッド式でもなく、格闘戦主体のベルカ式でもない。言うならば、アルハザード式でアルハ式だろうか」

 

「私はミッド式とかベルカ式とか自体知らないけどね」

 

「突っ込むのはそこか。まあこのアルハ式以外我は知らないのだがね」

 

そう言いつつ地面に指に溜めた魔力で焼き後を付ける。そうして魔法陣の形を書いていく。自分自身魔法の行使はこれが始めてだ。メタ的な意味ではなくだ。

形は、大きな二重の環の中に六芒星を書き頂点に小さな円を書いたもの。日本の大きな環と環の間と六芒星の内側には術式を羅列してある。

 

「アリサ、さっきと同じように指に魔力を溜めてなぞって見ろ」

 

「え?これをなぞるの?」

 

顔を引きつって笑うアリサ。どうしたのだ?

 

「そうだ。なに安心しろ。一回書いてそれを自分のものとしてリンカーコアに刻み込めば、後は自分の好きなタイミングで自分の足元に描かれる」

 

「それはいいんだけど……。ディー、さらさら書いてた割りにとんでもない代物なんですけど」

 

確かに、大きくて複雑で見た事もない文字が羅列しているのだから、移すのはキツいだろう。アラブ文字で書かれた本をそのまま写せと言われれば、それは誰でもめげる。

 

「そうだな。最初の難関、または洗礼とでも思えばいい」

 

「なん……ですって……!」

 

アリサは戦慄した。

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……。やっと、なぞり終わったわよ……」

 

随分とすごい速さでなぞったようだな。

 

「よし、ならこの紙に書いてある呪文を魔法陣の中央に立ち、体に魔力を込めて唱えてくれ」

 

これもアルハザードのやり方だ。

 

「分かったわ。えっと……

 

『我、魔の力を行使する者也

空を統べる風

瓶の水と踊るは炎

其れ等を包むは大地也

目覚めの光と安らかな闇

森羅をして力と共に唄われるは我等也

但し我等森羅を扱うほど強き存在に非ず

然るに陣を内に刻む也』

 

魔法陣アルハ式、刻印!!」

 

アリサの体が浮き上がり、四方上下に同じ魔法陣が展開する。

 

それらがどんどん小さく縮みながらアリサを包んでいき、胸元で光って消えた。

 

「よし、完了だな。試しに展開してみろ。足元に現れるようイメージするんだ」

 

うん、と頷きアリサは目を瞑り念じ始めた。

すると魔法陣が足元に展開した。

魔法陣はキラキラ輝きながらクルクル回っている。

 

「わぁ!なにこれ面白いわ!もっと練習していきましょう!」

 

自分が魔法を使えていると言う実感が湧いてきたのか、俄然やる気が出てきたようだ。何故かしたり顔でこちらを見てくる。

では次のステップに進もう。

 

「よし、では先ほどやった魔力の集中を使って魔力の玉を作れ。作った玉は自分の周りをクルクル回るようにして維持し、可能な限り魔力の玉を作れ。一つでも制御から外れたら1からやり直しだ」

 

「ふふん。今の私なら何でもそつなくこなせるわ!」

 

鼻で笑いながら調子づくアリサ。

だがアリサが思うほど簡単ではないのだよ。

 

 

 

案の定、5分程度で精神が持たなくなって気絶したため今日の練習は終いにした。

取り合えず、明日から1時間はこの練習をすると述べると、顔を青く染めてガクガクと体を震え始めた。

 



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4話

ここからは三人称になります。
そして、ご都合主義も酷くなります。
苦手な方はバック推奨です。

感想や指摘等随時受け付けてますので、気軽にお願いしますm(_ _)m


とある学校、とあるクラスでの授業中。少女、と言うかアリサは黒板をボーっと眺めていた。

いや、何処も見ていない。

何故かと言うと、意識は此処にない。丸い輪っかの髪飾りの中だ。

傍から見ればただただ上の空の様に見えるが、輪っかの中では恐ろしいことをしていた。

魔力操作の練習なのだが、魔力の球を10個作りそれをマフラーでも編むかのように複雑に動かしている。しかも目で追うのがやっとの速度で。

想像して貰おう。フラッシュ暗算をしながら左手でタイピングをし、右手で習字をする。このぐらいの並列思考を駆使した動作を簡単にやってのけるのと等しいことをしているのだ。左右掴む手を逆にして自転車を乗る事よりも難しい。

もちろんこんな動作、本人の脳への負担も半端じゃない。

輪っかの中、つまりデバイスによる精神世界ともいえる場所でのアリサは顔を歪め、歯を食いしばり、汗を滝のように流して操作している。

 

「あっ!」

 

一瞬のミスで魔力の球はバラバラの方向へ飛んでいってしまい、霧散した。

 

「ハァ…ハァ……。やっぱり難しいわね。15秒持つのがやっとだわ」

 

息を整えて自己評価。

 

「そうだな。1分は持たなくてはな」

 

この鬼畜的発言をするのはディー。

少しは褒めてやって欲しいところだ。

 

「いやいや、あのねディー。7秒くらいからは頭を斧で割られるくらい痛いから」

 

「割られたことあるのか?」

 

「例えよ例え。この練習始めてもう5日もするわ。何か魔法の1つでも教えてくれてもいいじゃない」

 

ぶーたれるアリサ。

基礎トレーニングしかしていないのだから、想像していた魔法とは違うことに少し不満を抱いていた。

ディーは「いつかな」と言い残してもう意識を体へ戻すことを促す。授業はもう終わるようだ。

 

意識を戻して丁度に授業終了のチャイムが鳴り響いた。

うぅ~、と伸びを1つして机にうなだれる。自然と目は細まり口から「キツいわ〜」と言ったボヤきが漏れてしまった。

そこへ駆け寄る幼馴染達。

高町なのは、月村すずか、鬼灯神影である。

三人揃って眉を顰めて、

 

「アリサちゃん、授業中ずっとボーっとしてたけど大丈夫?悩み事なら相談するよ」

 

「そうだぞ。溜め込んでも1つも良い事ないぞ」

 

なのはの気遣い、神影の寂しそうな声色。

 

(私、心配されるほどボーっとしてたの?てか意識無いから当たり前か)

 

「大丈夫よ。ちょっと遅くまで勉強してて寝不足なの」

 

嘘ではない。内容は魔法のことだが。

 

「そうなんだ。でも、あんまり無理しないでね」

 

「てか、元々頭が良くて成績優秀なアリサに夜更かしさせる程勉強って必要か?俺にはいるだろうけどさ」

 

皆が自分を気遣って心配して、アリサは小さな幸せを感じた。

此処でアリサには1つ引っかかることがあった。

この鬼灯神影は本当にディーが警戒するほど危険な存在なのか。

本人の顔色、声色、眼光を見る限り、心の温かい人物に思えていた。

 

<ねえディー。神影は本当に悪い奴なの?私にはそうは思えないわ>

 

アリサは自分の思った事を率直に告げた。

 

<……実際のところよく分からん。流石に心までは分からんからな。ただ、我の中では不確定要素の中でもかなり大きな存在でもある事は確かだ。何にせよ、相手の素性が分からん以上下手に動けん。警戒するにこしたことは無い>

 

ディーも素直に告げた。

が、やはりアリサは釈然としない。

そんなアリサの心境をディーは悟って言った。

 

<なに、アリサが判断すればいい。所詮我の一方的な見解に過ぎない。本当に危険ならばその時に何とかする>

 

それを聞いてなんとなくだがアリサの心はスッと晴れた。

そこでアリサはハッと何かを思い出した。

 

<そうそう、明日の休みだけどなのはのお父さん監督のサッカーチームの応援にいくわ。あなたも人の姿で行くのよ。その足で私のお父さんと会うんだからね>

 

 

 

響くホイッスル。飛び交う掛け声。今、河川敷でサッカーの試合が始まった。

応援を送るなのは、すずか、アリサ、ディー、そして射人である。ディーはどちらかと言うと見てるだけだが。

ディーが推測するに、射人は運動が苦手らしい。動きや立ち姿が素人のものだからだ。軸がぶれまくり、とても運動の出来るものの姿勢ではない。

案の定神影はサッカーの試合に出ている。腕は他の人より若干巧みであるだけで、原作を知らない者にとってはクラスに一人はいる運動神経の良い奴にしか見えないだろう。

ゴールを決める度に笑顔を覗かせる。心から喜んでいるように見えた。

試合は進んでゆく中、ディーは考え事をしていた。

話は試合の前に遡る。

ディーが神影と初めて対面したのだが、彼はディーを疑ることなく「よろしく!」と挨拶を交わした。それはディーにとってあまりにも予想外なことであった。転生者なら目を丸くして自分の姿を見るはずが、そんなことは無かったのだ。

では、この鬼灯神影とは何者なのか。この問いで頭がいっぱいでいた。

何故だ。

可能性を考えれば限は無く、放って置くのは危険である。

危険の証拠に、彼はなのはの初めての戦闘に姿を見せたからだ。魔法を使って、だ。

ディーの思考は知らず知らずの内に泥沼に嵌ってしまった。

ピィィィィッッ!!っと、ホイッスルが響き前半戦は終了した。

なのはが駆け寄り神影にボトルを渡す。

 

「ありがとう」と神影が微笑むと「えへヘ」となのはははにかむ。スポーツの世界では有り触れた光景だ。

時間が経ち、後半戦へと移った。

 

「ねぇ」

 

射人が近付いてきて話しかけた。

 

「あなたは誰?」

 

率直な質問だ。まだ射人とは挨拶をしていない。

 

「我はディーだ。下の名前は無いな。我が国にその習慣が無くてな」

 

「ふぅん」

 

頷く射人。

そして切り出した。

 

「あなたは転生を信じますか?」

 

「唐突だな。輪廻転生のことだろう」

 

動揺することなく対応することができたディー。

 

「ええ。前世の記憶を持って新たな生を受けることともとれますけど」

 

「何故それを我に聞くのだ」

 

「答えたら答えます。どうなんです?」

 

「そうだな・・・・・・。信じよう。世の中不思議なことばかりだ。あっても可笑しく無いだろうか。君はその生き証人とでも言うのだろうか」

 

「ええ。お蔭様で今生からは神の存在を信じていますよ」

 

あっさりとエリックは打ち明けた。

 

「実はすずかの幼馴染でしてね、二歳くらいからの付き合いになりますよ」

 

「ほう」

 

「それからはあまり原作とかは意識しませんね。意識しててんてこ舞いにこの世界を舞台に踊り続けるつもりは無いので。それにこの世界の温もりは只の物語にはどうも感じられなくて・・・・・・」

 

てひひとはにかむ。

 

「私が転生者だと何故言い切れる。原作とか言っても話が通じんかも知れないぞ」

 

「ブラフですよ。別に引っかからないで変態扱いされても構わないと思ってますから」

 

ディーはフッと笑った。

 

「敬語を使わなくていいぞ。そちらの方が気が楽だろう。こちらは射人と呼ばせていただく」

 

「あはは、そうだね。そうするよディー」

 

「ところで射人。お前はあの神に何の力を求めた?」

 

「ん?呂布と那須与一とウィリアム・テルの狙撃の腕を合計したもの」

 

「…………」

 

ディーは思わず口を開けて呆れてしまった。

 

「大丈夫、遠くから打ち続けるチキンプレイするから」

 

「いやいや、そういう問題じゃないだろ。大丈夫か?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「それは死亡フラグととってもいいのか?」

 

「ほんとに大丈夫だって。もう1つ、他次元目標への狙撃が可能な銃型デバイス貰ったから」

 

結構にチートだった。

 

「こちらも唐突だが、何か鬼灯の情報を持ってないか?」

 

話を切り替えると射人は即答した。

 

「ああ、神影は転生者じゃないよ。只の良くあるオリキャラさ。テンプレ通りにニコポとナデポを習得済みで魔力量も馬鹿でかい。デバイスは母親がミッド出身だから作って貰ったんだって。姓は父親譲りの日本名。格好良さも父親譲りだよ。ニコポもナデポも。何でも彼の両親は亡くなってるらしくてね、母親はガン。父親は夜道に後ろから包丁で刺されたらしいよ」

 

母親は置いといて、父親を刺した犯人はきっと「えへへ。君が、いけないんだからね…。私に、振り向かない、君が……」とか言っていたに違いない。

にしても精神が強いようだ。

両親が亡くなったとなれば気はおかしくなる筈だ。

 

「人には人の強さや生き様があるのだろうな。我は彼を誤解していたようだ」

 

「性格とか容姿とか妬まれやすいからね~。たまに僕も妬むし」

 

それから二人はいろいろなことを話した。

話は試合が終わり、コート整理に入っても続けていた。

 

「あの二人なんか仲良くないか?試合中何かあったのか?」

 

「ま、良いんじゃないのかな?」

 

「仲が良いのは良い事だと思うの」

 

「でもな〜んか胡散臭い感じがするわ……」

 

少女3人と男子1人がそんなディーと射人を眺めていると、2人はコート整備に加わった。

原作では、キーパーの少年がジュエルシードを見つけて好きな少女にプレゼントと言う流れだが、そのせいで海鳴市がとんでもない光景になってしまった。

そこにリリカルマジカルなのは参上。事なきを得た、筈。

町に傷跡が残ってしまったが、少年と少女は結ばれた感じがしてなのははジュエルシードへの思いが一層強くなることとなった。つまり、なのは強化イベントだ。

しかしそうは問屋こと、ディーが卸さない。

強化イベントはもう起きない。ディーがこのコート整備の時にジュエルシードを回収したからだ。危険は回避すべし。ディーのモットーだ。

原作に死傷者のことは1つも記されていないが、あれだけの惨事で軽症者すらいないのはおかしい。せめてゼロに出来るのならそれに越したことはない。

ジュエルシード回収後、その場所にはジュエルシードと同じ大きさのルビーとサファイア置いていた。ディーの粋な計らいである。

今は翠屋にて食事中。「翠屋のシュークリームは化け物か・・・ッ!?」とか聞こえてきたが、気にしたら負けだと思う。

 

<なのは、なんだか変な魔力を感じるんだ。なのははどう?>

 

先ほどまで女子軍団に遊ばれていたユーノは何かを感じ取った。

 

<変な魔力って、特に何も感じないよ>

 

<そうか・・・。なんだかこう、縮こまったような魔力を感じるんだ魔力量は分からないけど>

 

ディーはギクリと体を小さく揺らした。

 

<って言われても分からないよぅ>

 

<気のせいかな?なーんか変な予感がするんだ>

 

ユーノ以外は気づけていないようだ。動物の姿をしているから感覚も動物並みに鋭いのだろう。

キキッと翠屋の前に車が止まる。普通の車より長めの車だ。

 

「お嬢様、お迎えに上がりました」

 

鮫島が迎えに来たようだ。

 

「じゃ、私は行くわ。また学校でね」

 

アリサはそういって車に乗り込む。

 

「ではまた機会があれば来る。シュークリームは相当の出来でしたよ」

 

ディーも一言残して車に乗り込んだ。

ディーは内心ホッとした。

 

 

 

「魔法か・・・」

 

「そうよ、魔法よ。お父さんは信じる?」

 

アリサが切り出すとアリサの父、ルドルフ・バニングスは深く息を吐いた。

 

「アリサ、お前が魔法と関わるきっかけを作ったのは横にいるその男でいいんだな?」

 

「はい。我のことはディーと読んでくれて構いません」

 

ルドルフはディーに一言、

 

「何故娘を選んだので?」

 

「素質があったから、では駄目ですか?」

 

「いや、十分だ。異世界から態々アリサを選んだのだ。ならいつか関わることとなったのだろう」

 

そう告げるとルドルフは語りだした。

 

「ならばアリサ、お前にはもう教えなくてはならないな。よく聞いておけ、魔法の存在はこの地球にもあるんだ」

 

「えっ」

 

「正しくはあった、だな。この世界では日本で言う江戸時代あたりまでは普通に使われていたんだ。産業革命から科学が急激に発展してしまってな、物事の殆どが科学で解明出来てしまったのだよ」

 

ルドルフはテーブルの紅茶を一口啜り、未だ手をつけていないアリサとディーに紅茶と皿に盛ったクッキーを勧めた。

 

「しかし、魔法は最後まで未知の存在だったんだ。地球の人類は仕組みが分からない魔法よりも、仕組みの分かる科学を選んだんだ。

けれど、他の世界の存在を知ってしまったんだよ。そこには魔法が普通に使われる世界でな、魔法が科学と合体したと言ってもいいのだ」

 

ルドルフは残りの紅茶を一気に飲み干し、葉巻の端をジョキンと切り、口に咥え、ポケットから出したマッチで火を着けようとした。

が、アリサのキッという鋭い目線に気付き苦笑いしながら慌ててマッチと葉巻をしまった。

 

「すまない。アリサの前では吸わない約束だったな。話を戻そう。それを知ったのがもう魔法の存在を一般世間から無くしてしまった後だから、もしそんな人類に攻められたら終わり、世界中に知れ渡っても同じだということは何処の国の首脳でも分かること」

 

ルドルフは立ち上がり、窓際に寄って外を眺めた。

ここはルドルフの会社の最上階にある社長室。眼下にはセコセコと行き交う人と車と電車の姿があった。

 

「だから魔法の存在を隠したんだ。世界と人類を守るためにな。知っているのは首脳達と私の様な巨大企業のトップぐらいだ。バレそうになればメディアに頼み込んで情報封鎖していた。メディア自体もこの危険性を理解していたからな。そして魔法文化人類最大の都市であるミッドチルダという都市に各国から調査隊を派遣して、向こうの情報を手に入れてるのだ。今そういった働きがあるからこの地球の平和が成り立っていると言ってもおかしくないんだ。今のアリサには難しかったか?」

 

「えっと、要するに地球には魔法文化はあった。けど無くなった。で、今では偉い人達だけが魔法のことを知っている。普通の人にバレたら地球がおかしくなる。って事でいいの?」

 

ルドルフの話を聞いて、取り敢えず大まかに理解出来た事をサラッと口に出した。

しかし、こう説明されると納得してしまう。

確かに原作で大樹の事件が世界を震撼させるニュースにならないのはおかしい。

魔力を持つ遺伝子を持たないのにリンカーコアを持った者が生まれてくるのも説明がつく。

 

「その偉い人達が魔法を使えるわけじゃないがな。しかしよく理解できたな。流石私の娘だ」

 

「えへへ。当たり前でしょ。何て言ったってルドルフ・バニングスの娘なんだから」

 

重い話だったのが一新して微笑ましい親子の光景がそこにはあった。

親子水入らずのこの空間にディーは居ずらそうにしていた。

 

「アリサがここまでの知識を持っているのは異常な気がするが……あの塾はもうこんな内容まで学習させているのか?」

 

「いいえ、我が教えました」

 

ディーは返答すると詳しく説明した。

 

「アリサの魔法の訓練はアリサが髪に付けている飾りの中、俗に言う精神空間で行ってまして、その空間はこちらとは時間の流れが2倍ほど違うのです。学校や塾の授業中を使って魔法の訓練をしていたものだから学習が御座なりになっていたので私が教鞭を精神空間で振るわせていただきました。スポンジの様に教えることを吸収していくので楽しくなって中学受験で満点を狙えるレベルまでに上げました」

 

特に社会科が伸びた、と付け加えて。

アリサは本当に優秀だった。魔法だけでなく、学習面もだ。

精神に直接叩き込んだから、と言うのもあるとは思うがここまで吸収が早いとやはり教える側も楽しく思えるのだろう。

そんな話を聞いて誇らしげに微笑むルドルフが急に顔を引き締めた。

 

「アリサ。お前は魔法に出会って何か思うことはあったか?」

 

「分からないよ。まだ初歩を学んだだけだもの。でも、これから色々な人に出会うような気がするの。それに私、長いものに巻かれるのは嫌いなの。だから私、お父さんが会社を継げって言っても継がないわよ。それとね、他の世界には魔法を使うことを生業とする人たちがいるらしいわ。その仕事に就いてみたいと思うのよ。我が儘だと思うけどもう決めたのよ。それに会社を継ぐなら他にもっと適任の人がいるはずだし」

 

ディーは一言も聞かされていないことだったので驚いた。

そんな風に考えていたのか、と。

 

(いや、我が魔法を教えたのだ。存在を知ればこんなことになることも考えられたはずだ。我の我が儘で人生を変えてしまったのだな)

 

そう自己嫌悪に浸っている中、

 

「そうか。アリサはそう思っているのだな。なら好きにするがいい」

 

「え?いいの?本当に?」

 

「ああ。我が儘で甘えん坊のアリサは1つ何かを決めたら絶対に曲げなかったからな」

 

何のこと?と首を傾げると、

 

「覚えているか?あれはアリサが五歳ぐらいだったか、欲しい人形があって買ってほしいといったときに私は駄目だと言ったんだ。甘やかすのは良くないとな。そしたらお前は人形の置いてある棚の前で愚図ったんだ」

 

ルドルフは懐かしむように語りだした。

アリサはハッと思い出したのか、カァーーっと顔を耳まで真っ赤に染める。

その様子を見たディーは面白そうと詳細を強く希望した。

さっきまでのディーは何処へ行った。

 

「あの後泣きながら買ってといったものだから、どうしても駄目だ!と一喝しようとしたら、今度は泣きながら黙り込んでその場に座り込んでジ~ッと睨み付けてきたんだ。鼻も垂れて顔をクシャクシャにしてしゃっくり交じりに泣きながらだ。いやぁ懐かしい」

 

「や、やめてよ……。もう昔の話でしょ!」

 

顔を真っ赤にしてわたわたと言っても親父心を擽るだけで、

 

「そうそう、母さんがその姿を写真に撮っていてだな、それがこの……」

 

「ワァーー!やめて!見せないで!このバカ親!渡してよ!」

 

奪い取ろうと手を伸ばすが、ルドルフはうまく避けて立ち上がり写真を手に持ちひらひらと揺らす。

そのルドルフの持つ写真に向けてピョンピョン跳ねるアリサ。もちろん届くはずも無い。

魔法使えとかは禁句だ。

 

「ハッハッハ!ディー君、君にも見せてあげよう!」

 

そう言ってディーに渡す。

今度はディーの周りをピョンピョン跳ねる。

 

「これは……!ふむ……いいセンスだ……」

 

「中の人的には合ってるけどさ、じゃなくて!こっちに渡しなさい、ディー!」

 

「分かった。渡そう」

 

ディーはすんなり渡すとホッとしたのか息をつくアリサ。が、ルドルフは、

 

「同じ写真ならまだいっぱいあるぞ?」

 

懐から同じ写真を10枚ほど取り出し見せる。

 

「あーーもうっ!いい加減にしなさいッッ!!」

 

と叫んでルドルフの股間を蹴り上げた。

蹴りの勢いでルドルフが浮き上がった。

そのまま倒れこんでビクンッビクンッと痙攣を起こして撃沈した。

 

「フンッ!話は終わったわ。帰りましょ、ディー。そしてさっきの写真は忘れなさい」

 

「いや、無茶があ「忘れなさい」だか「忘れなさい」……わかったよ……」

 

アリサが部屋を出た後、ディーもそれに続き、そしてルドルフに向かって十字を切った。

 

 

 



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5話

大変遅れました。
理由は簡単、戦場の絆です。
色々と……ね?
あと、やる気が起きなかったのが1番かなと。
長めな上にわけわかめな内容ですが、私は一向に構わんッッ!!という猛者はどうぞ。


どうやらついにディーが原作介入をすることを決めたらしい。海鳴温泉へのお泊り会からだ。

だから、

 

 

「皆さん、お茶をお持ちしました」

 

 

今はこの茶会を楽しむようだ。

因みにすずかがこの茶会へ皆を誘うとき、

 

「射人はイスに座るのが嫌いって前言ってたね。うん。そう言ってたから今日はイスが1個ないんだよ。しょうがないね。座るのが嫌いなんだもんね」

「違うんだ!ただそのときバスで席空いててすずかに聞かれたら丁度お婆ちゃんが乗ってきたから、格好つけただけなんだよ!そんなにいじめないで!アリサからも何か言ってくれよ!」

「ちょっと引っ付かないでよ!暑苦しいわ!あ~も~しょうがないわね~!」

 

というやり取りがあった。

紅茶はなんだか高級感溢れる香りに満ちていた。他の皆は慣れているのか、美味しい美味しいとスコーンと一緒に頬張っている。

前世庶民のディーは優雅に飲んでいるが内心は、

 

(不味いぞ、紅茶やスコーンは美味いが。このカップ、お幾らするのだ?見た感じ、触った感じで10万は下らない。このイスも机も50・・・いや、70万くらいか?)

 

パリーーン。

 

「はわわ!?お嬢様申し訳ありません!またカップを割ってしまいました!」

「ファリンったら。あなたは大丈夫なの?」

「はい~。ですがカップが……」

「高々50万なんて。カップは替えがきいてもファリンはきかないの。だから気にしなくていいのよ」

「すずかお嬢様~」

「やっぱりすずかちゃんは優しいの」

「ファリン、許してもらえたのならそれに報いなさい。さ、片付けなさい」

 

嗚呼微笑ましきかなこの光景。

しかしディーは、

 

(50万……だと……!)

 

値段に戦慄し、その横で猫に揉みくちゃにされるユーノと射人は、

 

(完全無視……だと……!)

(本当に僕のイスがない……だと……!)

 

同じく戦慄していた。

 

 

 

(む、この感じ!)

 

何とか猫地獄から抜け出しなのはの肩の上で休んでいたユーノがジュエルシードに気が付いた。

 

(あそうだ、ジュエルシードあるんだった。ま、いいか)

 

原作知識有りの射人は今回の件は非介入をすることにした。

 

(もういい。紅茶を素直に楽しもう。なんだか疲れたな。このハーブティーが余計に身に染みてくるようだ)

 

ディーは未だにティーカップに気を取られていて、ジュエルシードの事を忘れていた。

 

<なのは、近くでジュエルシードが発動したようだ。どうする?>

<ええ!?でも、途中で抜ける訳には……>

<う~ん。なら!>

 

何か思い立ったのか、そういって茂みへと駆け出すユーノ。

 

「あ、ユーノ君まって!」

「オイなのは俺も行くよ!」

 

そんなユーノを追いかけるなのはと神影。

 

「アンタはなんで行くのよ!」

「二人の方が捕まえ易いだろ!」

 

アリサに止められそうになるが、一応論破して茂みの中へ2人は駆けていった。

そんな中、

 

「ノエル殿、このハーブティーのお代わりを頂けるかな?」

「はい、畏まりました」

 

やっと紅茶を楽しむ余裕が出てきたディーはノエルにお代わりを要求していた。

コイツはホントに主人公なのか?

 

 

 

「うわ~。これはこれは」

「すごく……大きいの……」

「その言い方は色々不味いと思う」

 

ジュエルシードを拾った猫が大きくなりたいと願ったのか、目の前には鯨の様な大きさの猫がいた。

 

「どうやらジュエルシードの効果が正しく発動したみたいだね」

「ネコさん、大きくなりたいって思ったのかな?」

「それは良いけど、これじゃあ大きすぎだろうよ……」

「そうなの。これじゃあすずかちゃんもご飯代に困ちゃうの」

「いやいや、餌代とかそんな問題じゃないでしょ。間違いなく常識の問題でしょ、これ」

 

ニャンニャーンと鳴き続ける猫は神影にじゃれ付いた。しかしここまで大きいとじゃれ付くと言うのも違って来る。飼育員がシャチにじゃれ付かれて全身複雑骨折をしたと言うのは有名な話。

よって、

 

「痛たたたたたたたたったッッッ!!痛ぇって!バカ爪が目にギャァァアア!!!」

 

こんなことになる。

 

「にしても向こうに敵意がないんじゃ攻撃しずらいよなぁ」

「そうそう、ネコさんかわいそうなの」

「でもホントにどうし「ニャーン」うわぁっ!」

 

ユーノまでも餌食に。

 

「「痛いっててて!!重いって!!身が出るって中身がぁぁあ!!」」

 

ニャーン、ぬこ無双。

一言で言えばそんな感じ。

 

「神影君!ユーノ君!」

 

流石にこのままでは神影とユーノの中身が本当に出てしまうと感じたなのはが動こうとしたそんな時、横から物凄い黄色い閃光が飛んできた。

バリバリッ!と音を立てて猫に当たると、猫は衝撃のあまり気絶した。

咄嗟になのはは光弾が飛んで来た方を見た。

その方の木の枝の上を見ると、黒いマントを羽織った斧のような、鎌のような武器を持った金髪の少女が佇んでいた。

その瞳は物悲しげで、しかし力強い光を放っていた。

 

「バルディッシュ」

 

手に持つ武器、デバイスの事だろう。猫にかざすと雷光を散らしてジュエルシードを取り出して封印した。

封印したジュエルシードを手に握り締めてこの場を飛び去ろうとしたその時、

 

「待って!」

 

なのはは少女に向かって叫んだ。

 

「それは危険なものなの!だから私のお友達が一生懸命探して集めているの!危険がないように!」

「……私には関係のないことだから」

 

少女の背中に必死に訴えるなのはを、少女は関係ないとバッサリ切り捨てた。

 

「助けて貰ったのは感謝するよ。でも君は何処の魔導師だ。このジュエルシードの危険性を知っているのか?」

 

ジュエルシードの力が解けて、猫の体から開放されたユーノが問う。

 

「ロストロギアと言う事は知っている。でも関係ない。ただ必要だから持って行く」

「勝手にロストロギアを持って行く。君のやっているそれは犯罪行為なんだよ。今すぐ止めるべきだ」

 

そう述べるユーノを無視して飛び去ろうとする少女。

 

「待って。私は高町なのは。お話し聞かせて欲しいの。貴女のお名前は?」

 

もう一度少女へ話しかけるなのはは、バリアジャケットを身に纏い空を飛んで彼女の前に回り込んで、瞳をしっかりと見つめた。

暫くの沈黙。

しかし彼女の返答は、鎌を振り下ろすことだった。

なのはは咄嗟にガードするが、そこに高速の鎌による一撃を決められ後方へ吹き飛んだ。

 

「フォトンランサー」

 

吹き飛んだなのはに雷へと魔力変換された魔力の槍を追い討ちにガードも障壁も間に合わず直撃してしまう。

 

「キャアァッ!」

 

そしてそのまま集中力も切れ、気を失った。

 

「不味い!」

 

今空中に浮いてるなのはが地上へ落ちたら大変なことになる。そう咄嗟に判断した神影がなのはをうまく抱きとめて事なきをえた。

しかし少女はその隙に逃げ出した。

 

「……逃げられたね」

「仕方ねえよ。なのはは負けたんだ。それに今の俺らが束になっても勝てるか分かんねぇ位強いぞ、あの子」

 

言ってしまった少女の後を見てユーノと神影がポロっと言葉を溢す。

その後、なのはを負ぶって戻ると少女2人がなのはの姿を見て声を荒げた。神影は、なのはが転んで頭を打ったと説明した。なのはは目が覚めて、にゃははと苦笑いしながら皆に心配掛けてごめんなさいと謝った。

その後は顔を俯いてもの思いにふけていた。もちろん、思い浮かぶのはあの悲しげで力強い瞳。

そのことで頭はいっぱいだった。

そして時間は過ぎ去り……。

 

 

 

 

 

「皆、着いたよ」

 

士郎さんが告げる。

五月晴れ。漂う空気は熱く、暖かく。

香るは硫黄の匂い。

そう、ここが海鳴温泉だ。

旅館のチェックインを済ませて部屋に荷物を置き、早速風呂の支度をする高町家、月村家、バニングス家、神影、射人。

皆生粋の風呂好きらしい。

因みに射人はまたもすずかに(最もふざけの範囲だが)

 

「ねえ射人。前に射人は人に席を譲ると気分がよくなるって言ってたよね?なら今回はディーさんが参加するからディーさんに席譲ったら?」

「そ、そんなことって!」

「フフフ……」

 

と、またもいじられていた。

すずかなりの愛情表現?こんなキャラだったっけ?

実際に車のトランクに乗って来た訳では無いので問題はない。

 

「さ、風呂に入ろう」

 

士郎さんの言葉に皆で浴場へ向かう。

 

「ユーノ君はこっち!自分で体を洗おうとしないからね」

 

案の定ユーノはなのはに拉致された。

 

<た、助けて神影~!>

 

(俺は何も見ていない。そうだ俺は何も見ていない。俺は全く何も見ていない)

 

助けを求めるユーノを自己暗示で塗り潰す神影。そして神影は一気に男湯へと駆け込んだ。彼も彼女ら3人に拉致られた経験があるのだろう。

もげればいいのに。

 

<う、うわぁぁあああ!!!>

 

嫌がるユーノはなのはの手から逃げようと試みるも、体毛を掴まれていて無理に抜けるとそこが禿る。安心なさい。君を淫獣なんて呼んだりりしない。

一方でディー、士郎、恭也、鮫島の大人組みは、

 

「士郎殿はよくここまで身体を鍛えられたものだな」

「そうかな?ディー君だって中々なものじゃないか」

「俺は鮫島さんに驚くよ。その年でその体はちょっと」

「ほっほっほ、この程度で驚いてはなりませんぞ恭也殿。執事たる者変身を2つは残しておくものです」

 

いやはや実にむさっ苦しい。

そして男子組。

射人は一足先に湯船の中に。

そこに神影が近付いてきて、

 

「ユーノが犠牲になった……。俺は見捨てることしか出来なかった……」

「そうなんだ……。いい奴だったよ……」

「俺らには神に祈りを捧げることしか出来ないのか……」

 

女湯のある方向を向いて合掌した。

せめて3人に遊ばれても、男として大切なモノを失うなよ、と。

そしてバンッという音が浴場に響き渡った。

露天風呂に繋がる扉が開いたのだ。

そして、

 

 

「「2人を迎えに来た!」」

 

 

祈りを捧げた神は少年達にそっぽを向いて少女に微笑んだ。

そして神はロリコンだったようだ。

なのはとすずかが仁王立ち。

露天風呂は混浴となっていて、そこから突入して来たのは言うまでもない。

 

「地獄からの?」

「う~ん、取り合えず後ろに転がってるユーノが気になるよ」

 

ユーノの体毛はツヤッツヤに輝いてるが心なしか頬がこけて見える。

 

「いいから行こう!」

 

引きずられる2人。

 

「やめろー!死にたくなーい!」

「ハハハ、神がそっぽむいてらぁ。あれ?なんで見えるの?」

「何馬鹿なことやってんのよ……」

 

その一連の流れを呆れた様な目で見てボソッと呟いたアリサと少年達の目がパチッとあった。

そしてアリサは顔を郵便ポストの様に真っ赤に染めた。

 

「こっち見ないでよ!変態!!」

 

床の石畳を剥がして投擲。

少年達は見事撃沈。

いや、まずどうやって剥がしたんだ。

 

 

 

少年2人はそのまま風呂場から部屋に搬送された。

少女3人は、「温泉と言えば卓球!」という考えの下卓球場へ向かっていた。保護者としてディーが同伴する。

すると前から女性が歩いてきた。

オレンジの髪が特徴的なフェイトの使い魔、アルフだ。

アルフはなのはの前に立ち塞がると因縁をつけたような口調でいった。

 

「あんただね、私のところにちょっかいを掛けてきたのは」

「へ?私?」

「へぇ~。こんなガキンチョがねぇ」

 

背の分もあるが明らかに見下した態度。はたから見れば正気を疑う行為だが、良い意味でも悪い意味でも純粋ななのはは自分が何か大変なことを仕出かしたのではと困惑した。

アリサは酔っ払いだと思ってディーに念話を送った。

 

〈ディー、この酔っ払いを追っ払ってくれる?昼間から酒なんて飲んじゃってさ〉

 

アリサは酔っ払いだと思ったようだ。

まぁ傍から見れば幼い子供に絡む姿は酔っ払いに見えなくもない。

 

〈分かった〉

 

一言そう応答するとディーは殺気を飛ばして威嚇した。ディー自身も、自分の戦闘能力を知りたかった為まずは殺気を飛ばして相手の反応を窺った。使い魔といえ、元は動物だ。なら殺気には敏感だろうと考え、そこから自分の強さを測ろうとした。

しかし、この殺気はディーの能力であるウィツァルネミテアの力も含まれている訳だから、その殺気の濃厚さと言ったら果てし無いものだろう。

アルフは体を大きく震わせ、全身の毛を逆立て、顔を蒼白に染め、腰を低くして前屈みになり、目の前の現実を突っぱねるかの様に頭を大きく左右へ振った。

無理もない。神に等しい存在から殺気を当てられるのだ。手足を縛られ頭に銃口を突き付けられることすら霞んで見える程に死を意識させられる。

 

「我はこの3人の保護者だが、何か粗相が会ったのかね?」

 

ディーは殺気を解いて窺う。

 

「い、いやいや!人違いだったようです、はい!あ、なんだか湯冷めしちゃったみたいだわ!もう一っ風呂入ろうかしら?ホホホ、貴女達御免なさいね。それじゃ!」

 

そう口早に言ってアルフは足早に去っていった。

 

「?なんだったんだろうね」

「酔っ払いなんてこんなもんでしょ」

「でもなんだか怯えてたような……」

 

殺気はアルフだけに的確に当てていたようで、なのは達は気付いていなかった。

 

 

 

浴場にて、アルフは深い溜め息と共に念話で話していた。

 

〈やばいよフェイト~。1人だけとんでもないのがいるよ~。あのババアなんて目じゃない程にやばいよ~〉

 

〈アルフ、そんなに過剰に警戒するほど危険な相手なの?〉

〈違うんだよ。アイツはもう向かい合ってるだけで生きた気がしないんだよ……。ねぇもうこんなこと辞めて遠くへ逃げようよ〉

〈駄目だよ。ちゃんとに頼まれたことをしなきゃ。その人が魔法を使えて私達の邪魔をするとも限らないんだから。それにね、もしその人と敵対しても私は絶対に諦めないよ。ジュエルシードを〉

〈フェイト……〉

 

フェイトの声には並々ならぬ思いを感じ取れた。自分の本能が敵対してはならないとどれだけ警鐘を鳴らそうとも、必要ならば敵対するのだろうと悟った。

 

〈アルフ、私はジュエルシード探しているからお風呂上がったら合流しよう〉

〈……わかったよ。でも約束して。金髪の背の高い男が来たら形振り構わず逃げ出すんだよ〉

〈大丈夫だよ。約束する〉

 

 

 

夜、ジュエルシードの反応をユーノは察知した。

 

〈なのは!ジュエルシードの反応だよ!結構近いみたいだ〉

〈そうなの?なら早く封印しに行かなくちゃ!〉

 

そういってなのはは寝ている神影に念話を送った。

 

〈神影君!ジュエルシードが近くにあるみたいなんだ、行こう!〉

〈ん?あ、ああ!いこうかぁあ!〉

 

眠たげな声で気合を入れ、2人は窓から飛び出してジュエルシードの許へ向かう。

その様子をディーはしっかりと見ていた。

 

〈アリサ、起きているか?〉

〈ええ、起きてるわ〉

〈行くのだな?〉

〈もちろん。この目で魔法の戦いを見てみたいし、なのははもう行っちゃったもの〉

〈先に言ってしまうのは仕方が無い事だ。我等が魔法関係者とは知らないのだからな。では、行くとしよう〉

〈そうね。それじゃあ、セットアップ!〉

 

アリサは光に包まれ、光が消える頃にはバリアジャケットを身に纏っていた。

上半身は、真っ黒なインナーの上に赤黒いラインの入った紺色の装束。下半身は、真っ黒なスパッツに黒いラインの入った白い腰布を赤い帯で巻いて、紺色の膝まであるブーツを履いた姿。

腰の左側に太刀を差している。

輪っかの形をしていたデバイスは鉢巻となってアリサの額に巻かれている。

 

<それじゃ行きましょ、ディー>

 

アリサもなのは達の様に、窓から勢い良く飛び出した。

 

「…………」

 

ディーは最後に窓を閉めた。

 

 

 

なのは達がジュエルシードのところまで辿り着くとフェイトは既に手の内にジュエルシードを握っていた。

そこで一人の少年と対峙していた。

 

「ジュエルシードを渡してもらおう」

「これはお母さんが探しているものなの。渡せないよ」

 

(あれって最初のジュエルシードの時の!)

 

少年とは晃毅の事だった。

 

「元々の持ち主のところへ返すだけだ」

「絶対に渡さないわ」

「こちらも頼まれてここに来ているんだ。信頼関係を崩したくなくてな」

「そんなの知ったことじゃないよ!フェイトが渡さないって言ってんだ!早く諦めてどっかにいきな!」

 

「そうか、仕方無い……」

 

険悪、とまでは行かないものの、互いの話は平行線だった。

晃毅は一言呟いて、一拍置いた。

 

「なら力ずくでいかせて貰う!」

 

そう言い放つと地面を蹴って飛び掛かった。

その勢いを殺さずにそのままフェイトに蹴り掛かる。

咄嗟の攻撃に避け切れないと判断したフェイトは障壁を展開して身の守りを固めた。

 

「駄目!」

 

そう叫んでフェイトと晃毅の間になのはは割って入った。

 

「何ぃっ!?」

 

晃毅の蹴りがなのはの顔を抉るように直撃する寸前、

 

「っぶねぇなぁッ!」

 

神影が割って入り、腕で足をうまく受け止めて事無きを得た。

 

「っつ〜、痺れたぁ……。なのは、無茶するんじゃねぇよ!擦り傷とかじゃ済まねぇ蹴りだったぞ!」

「ご、ごめんなさい……」

「おい、何故割って入った?」

「だって!も、もっとちゃんとお話しすれば分かり合えるかもしれない……の」

「はぁ……。話し合った結果がこれだぞ」

「そんなんじゃ駄目だよ!私がいく!」

 

晃毅となのはで少し言い合いした後になのははフェイトに話しかけた。

フェイトは逃げ出せたのだが、敵だと思っていた人に助けられた事に戸惑いを感じて惚けていた為、逃げるという選択肢を選べずにその場で留まっていた。

 

「えと、こんばんは。私は高町なのは。貴女のお名前はなんて言うの?」

 

「フェイト、こんなガキンチョなんか相手にしないでとっとと逃げよう!ジュエルシードは手に入ったんだから!」

 

アルフがそう言うとフェイトは首を横に振って、

 

「アルフ、この高町なのはは私を一応助けてくれたんだ。だから返答だけはさせて」

 

そう言った。

アルフはしかめっ面をして押し黙った。

 

「私は、フェイト・テスタロッサ」

「うん、じゃあフェイトちゃんだね!」

 

そう言ってなのはは満面の笑みを見せてフェイトとの距離をどんどん縮めていく。

フェイトはなのはの見せた笑みに、自分が何処かで忘れていた「人の暖かさ」を感じていた。そしてそれに酔いしれようとしていた。荒んだ心と確固たる意志を秘め、冷徹を装うフェイトの心をこれ程揺さ振るものはなかった。

ここでこの優しさに浸っていたい。

しかしそれでは自分の目的を達成出来ない。

 

「フェイト!フェイトにはやる事があるんだろう!?ここで留まってちゃダメなんだ!」

 

アルフの叫び声が聞こえてくるが、フェイトの耳には入る事はなかった。

フェイトが一瞬、ほんの一瞬なのはに気を許してしまったのが運の尽き。先述の通り、荒んだ心の持ち主にはなのはの笑顔は麻薬の様な安らぎとある種の快楽を与えてしまうのだった。

アルフも主人が堕落してしまうのを見ていたくはなかったが、少しでもフェイトの荒んだ心を癒してくれるのならば、止めに入るのは気が引けてしまう。そんな葛藤がある。

なのはは既にフェイトと触れられる位置にいる。そしてなのはがフェイトに微笑みかけながら手を取ろうとしたその時。

 

 

 

「そのジュエルシード、返して貰おうか」

 

そんな言葉が場の空気を全てぶち壊した。

いつから居たのか、フェイトの横にはディーが居た。そして晃毅と神影が並んで立っている間にいつの間にかアリサも居た。

 

『なっ!?』

 

そこにいた者全員が驚愕した。

 

「ちょっとディー!今はなのはとそのフェイトの会話中でしょ!空気を読みなさいよ!」

 

「む、それは申し訳なかった。さ、会話の続きを」

 

ディーの空気の読めなさにアリサは批難し、ディーはそれとなく謝罪した。

会話の続きをと言ってもフェイトは既になのはの前、ディーの横から数m離れたアルフの横へ飛び退いていた。

 

「いつから……そこに?」

「自己紹介のときにこの場に着いた」

 

フェイトが尋ねるとディーは淡々と答えた。

 

「なに、元々そのジュエルシードは我が所有物。それをどこぞのフェレットが持ち出していったから、取り戻しにこの世界に来たまでだ」

 

そう、述べた。

 

(何なんだこいつら……。あの金髪の生意気そうなガキンチョの魔力量も半端じゃないけど、それよりもこの男!なんてバカみたいな魔力を持っているんだ!あの時感じた殺気もハッタリなんかじゃない!本気でヤバイ!)

 

アルフはアリサとディーの魔力を感じ取った。今ディーは自分の持つ魔力を曝け出している。並みの魔導師でもすぐに分かる。

この存在には逆立ちしたって、世界がひっくり返っても敵わないと言う事を。

逃げるという選択肢を選ぶまでに時間なんて要らなかった。本能が逃げろと叫んでいるのだから。

 

『汝等、動くな』

 

が、選択肢なんて元々無かったのに等しいのだった。出会ったその場でもう終わり。

ディーがそう言うと尻尾を巻いて一目散に逃げ出そうと背中を向けるフェイトとアルフはピクリとも動けなくなった。

 

「喋れるようにはしてある。さぁ、ジュエルシードを渡せ。なに、1つでいい」

 

酷く威圧的に、逆らいようもない言葉が発せられた。

フェイトは2つ手持ちにあるうちの1つをバルデッシュに言って出してディーに渡した。

 

「1つ帰ってきたのなら今はもう用はない。去れ」

 

ディーの言霊から開放された2人は一目散ににげだした。

その場に残る者は暫くの間、口を開ける事すら侭ならない空気に体を縛られていた。

 

『…………』

 

「何で私のお話しの邪魔したの!?」

「何で逃がしたりしたんだ!?」

「あんたはいったい何者なんだ!?」

 

その張り詰めた空気から解放されると共に一斉にディーへ質問が殺到した。

上からなのは、ユーノ、神影だ。

 

「それらは後で説明する。取り合えず旅館へ戻るぞ」

 

皆は取り合えず気持ちを落ち着かせてディーの意見に賛同した。

 

「取り合えず、高町」

「何?」

「悪かった」

 

ディーは悪びれた様子もなく謝って、全員でホテルへ帰った。

 

 

 

ホテルに帰ってから全員で話しをした。

ディー自身、もう原作の流れだとかその類のものはどうでもいいと思えてきたようだ。

互いに情報交換を始めた。

 

「ユーノ。お前はいったい何処でジュエルシードのことを知ったんだ?」

「ん?ちょっと待って。……えーと確か、管理局の無限書庫でたまたま文献を見つけて、危険だと判断したから取りにいったはず」

 

曖昧な回答だが、ディーは続け様に聞いた。

 

「では、そこにジュエルシードの管理者について何か書かれていなかったか?」

 

「そんなこと聞かれても、文献を読んだのは僕じゃないし……。あ、でもなんだかページが破かれていたとは聞いたよ」

 

ユーノはこめかみに指を当てて、必死に自分の記憶の断片を蘇らせた。ディーは独り言のように「やはりそうか……」と呟くと語りだした。

 

「実はな、アリサと晃毅は知っていて先程それらしい事を口から溢したが、我はジュエルシードの管理用デバイスの管理人格だ』

 

ユーノ、神影、射人による沈黙。なのはは頭に?を浮かべている。

ディーはそっと結界を張った。

そして響き渡る驚きの声。

結界のおかげでこの声は誰にも聞こえなかった。

今、時計は夜中の1時を回ろうとしていた。

 

「そ、そうなんだ……。ディーはそんな存在なんだ……は、ははは、はっははは……」

 

ユーノは落ち着かずにはいられないでいた。

何を隠そう、ディーはアルハザードで作られたジュエルシードの効果を修正するためのユニゾンデバイスなのだ。ユーノのような考古学に携わる人間にとってみれば、もう崇め奉る存在だ。

他の面子(射人を除く)は、ディーの価値が全く分からなかった。

 

「ディーさんってそんなに凄いの?」

 

なのはの質問にユーノが鼻息を荒くして答えた。

 

「凄いなんてものじゃないよ!大発見だよ!そもそもアルハザードはとんでもなく昔に滅んだ文明で、彼等の文明に不可能なんて言葉は無かったんだよ。今となっては文献も無く、ただただ御伽噺として絵本になるくらいのものなんだけど、もしこれを研究会や学会で発表いたr(割愛させていただきます)分かったかい!?」

 

「そ、そんなに一気に話されても……」

 

当然のことながら、なのはの頭の周りを星が回っていた。周りは若干、いやかなり引いている。

 

「ユーノってこんなキャラだっけ?」

「いや、そこよりもフェレットが人間相手に考古学を語るこの光景はかなりシュールだと思うぞ」

「わーぉ。意味不明だね」

 

上から神影、晃毅、射人。

 

「それじゃ、各自の情報を出し合いましょ。あ、なのはについては皆知ってるから」

 

アリサがまとめに入ろうと言った。

なのはの「何で!?私仲間外れ!?」との声は全員がスルーした。

 

「まず私ね。私はディーに選ばれた。それだけよ。ただ、魔法が使えるなら使ってみたいって言う、好奇心からこの意味事件?に介入したの。以上!」

 

あっさりとした説明で終わった。

 

「次、神影ね」

「おう。俺は母さんが魔法文化のある世界の住人で、それでこのデバイス、ヘルシャーを形見に貰ったんだ。戦い方は、このヘルシャーに教えてもらってる。最初はバカみたいにでかい魔力反応を感じたから、こりゃ危ねぇって思ってBJ装着して行ってみたらなのはがいて、んで何か晃毅もそこにいたんだ。晃毅だとはそん時気付かなかったけどな。そんで、なのはがこのユーノに協力してジュエルシード探すって言い出したから、じゃあ1人よりも2人のがいいだろうーって言って今のこの状況ってわけだ」

 

神影も大体を話した。

 

「成る程ね。次、射人」

「はいは~い。んと、僕は神様にこのデバイス貰ったんだ」

 

『……は?』

 

皆の目線が可哀想なものを見る目になった。

 

「ちょっとその目線やめて。別に頭が残念な訳じゃないから。ホントに神様から貰ったんだって!」

 

自分が転生者とは言いにくいから誤魔化そうとする射人。確かに嘘は言っていない。

 

「いや~ね~。何か夢に自称神様が出てきて、「この力は貴方を選んだのです」とか言われて、あれ〜?つかれてるのかな~?っと思って朝起きたらなんと!枕元にこれがあったんだ……。嘘じゃないよ?それでデバイスのことが1年生のときに神影にばれてね、そっから神影と仲良くなったんだ。今回は怖いから隠れてたんだけど、ここまで関わっちゃったら僕も今回の件、参加するよ」

「ちなみに射人に助けを求めなかったのは、余り多くの人を巻き込みたく無かったからだな」

 

最後に自分の意思を述べて話し終えた。最後のは神影の言い分だ。

 

「それじゃ、最後に蛇ね」

「わかった。実は俺、前世の記憶を持っているんだ」

 

またも転生組のぶっちゃけ。

射人もポカーンとしてる。やはり周りの目が可哀想なものを見る目となるが、晃毅はお構い無しに話を始めた。

 

「少し暗い話になるけどいいか?前世で俺はな、少年兵をしてたんだ」

 

3年生の社会の授業で習ったのか、全員が体を震わせる。

 

「授業でやったから分かるだろうけど、俺は人殺しの経験がある。ま、それは置いとこう。で、正直に一言で言うと、もう大切な人たちを失いたくないんだよ。ディーにあってジュエルシードの話を聞いて、思い起こしたんだ。もう戦いたくないとは思っていたけども、自分の経験を生かせるのなら生かしたくてな。それが、今回の件に俺が関わる理由だ」

 

晃毅は自分の中で間違ったことを言ったつもりはなかった。確信とは違えど、本心ではあったからだ。

 

「そんな過去があったのか……」

「なんだ、こんな人殺しも名で呼んでくれるのか?それとも嘘っぱちと馬鹿にするか?」

「戦争じゃ皆殺される覚悟があってそこに出てきてる、ってどっかのゲームで聞いたことあるぜ?それに、嘘吐いてると俺が感じたんなら、今頃床を笑いながら転げ回ってるぜ?そういうことだ。」

「バーカ。ゲームと本物の命を一緒にすんじゃねぇよ。それにみんなは俺が嘘吐いてるとは思わないんだな?」

 

神影はスッと手を晃毅に差し出した。

友達ってのは、名前を読んで握手したらなるもんだろ?

そんな感じのアイコンタクトを晃毅に送った。

 

「はぁ。そんなもんか?」

「おうよ。どっかの誰かさんの受け売りだがな」

「受け売りが好きなんだな」

 

晃毅も応じて手を差し出した。

2人でニィッと笑って手の甲を上にして、手を合わせた。

それを見て皆が立ち、円陣を組んで手をどんどん合わせていった。

その手の上にユーノが乗った。

 

「それじゃこの事件、無事に終了させようぜ!」

『オーッ!!』

 

神影の掛け声とともに、皆で手も声も合わせた。

 

(……はぶかれたのか?忘れられたのか?)

 

ディー以外。

 

 

 




小3の授業で少年兵の話なんてしねーですよね。
そこはまあ、御都合主義なものなんでスルーして頂くと大変有難いです。


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6話

一つ修正しながら分かったことがあります。
自分の書くギャグは、ギャグにならない上に寒い。
今同時進行しております、ISのプロットを自分で読んで見ましたが、シリアスしか上手く書けないorz
それはそれで良いことなのか……。


あの話し合いの後にディーは家族に魔法のことを話すように促した。

解決するには魔法が必要。しかも自分達にしか解決出来ない。ならば自分達がやるしかない。しかし、やはり家族としては気なる。危険なことを子供にやらせる親や家族は一般世間にはいない。

状況を分かってくれていれば、家族も何かしらのサポートをしてくれるはずだ。

ディーとしても自分の一方的な考えだとは思ったりもするが、家族の立場になるとやはり心配に思えてしまう。

ゴールデンウィークも明けて、また学校生活が始まった。

射人は早速親に魔法のことを伝えたらしい。

 

「ちょっと世界を救ってくる」

 

この軽い感じの中になにやら並々ならぬ意思を感じたのか、父は笑って、

 

「この命、地球の命運、お前に賭けるぞ」

 

と息子に託し、母は、

 

「晩御飯には帰って来るのよ」

 

と、微笑んで了承した。

そのことを魔法少年少女に話せば、

 

「あんたのとこの家族、軽いわね」

 

と笑い話になって、気張った魔導師達の緊張の糸を解した。

アリサはすずかに魔法のことを伝えた。

やはり友達にも家族同様にして欲しいとアリサが思ったらしい。

 

「ひどいよ皆!何で私だけ仲間外れなの!?それと射人の癖に生意気だよ!」

「えぇ!?何それ!?すんごい理不尽!!」

 

すずか、射人へ八つ当たり。

 

「待って!コンパスとかマジメに危ないからね!」

 

全員が家族に打ち明けて、今日も手分けしてジュエルシード探し。それぞれが魔法の自主練をしていて、皆それなりに強くなっていた。

なのはとユーノは町の中央、晃毅は東側、神影は西側、射人は南側、アリサとディーで北側。それぞれ、市街地、住宅地、工業地、沿岸、山地となっている。流石は万能都市海鳴。

 

 

 

「こんなに町が広いんじゃ、探すにも一苦労だね」

 

アルフがフェイトに溜め息を吐きながら言った。

 

「そうだね。強引だけど、ジュエルシードを強制発動させよう。アルフ、出来る?」

「全く……私を誰の使い魔だと思っているんだい?ただ、あのガキンチョ達にも気付かれるから警戒しなきゃだねぇ!」

 

そう言うとアルフは自身の体から多量の魔力の波を発した。するとすぐに町中へ魔力波が流れた。そしてその魔力波に呼応するように、ジュエルシードも魔力波を流しだした。

光の柱が天に向かって伸び、ジュエルシードが強制発動された。

 

<なんてことを!こんな街中で強制発動をさせたのか!?えぇい間に合え、広域結界!>

 

驚きと戸惑いを隠せずに、ユーノは咄嗟に広域結界を発動する。

もちろんだが、他の捜索している面子もジュエルシードに気付いた。

 

<なのは、ジュエルシードの封印を!>

 

なのはは頷くと光の柱の下へと飛んで行き、柱に向けてレイジングハートを構えた。

まぐれなのか、それと同時にフェイトも飛んで来てバルディッシュを構えた。

 

「リリカルマジカル!!」

「ジュエルシード封印!!」

 

二つの魔法が重なり合い、ジュエルシードは無事に封印された。そしてなのははジュエルシードの前で止まった。

そこでなのははふともの思いに更けた。

この前は結局フェイトとの話し合いが出来なかった。しかし、今回また話し合いが出来るチャンスが来た。

 

今度はしっかり話そう。

 

そう思い起こしてジュエルシードに手を伸ばした時、

 

「させないよ!」

 

狼の姿をしたアルフが頭上から急襲を仕掛けてきた。

 

(この距離じゃ避けられない!)

 

そこへユーノが駆けつけてバリアを張って何とか凌いだ。

ハッとしてなのはは顔を上げるとそこにはフェイトがいた。

 

「フェイトちゃん!この前はごめんね、ちゃんとにお話できなくて。でも、今回はちゃんとに話そうよ!」

 

しかし、フェイトの返答はバルディッシュを向けて来るだった。

 

「どうして……ッ!!」

 

なのはは苦虫を噛み潰したような渋い顔をして、心の声を溢した。

その声は誰にも聞こえはしなかった。

戦いは進展も無く、小一時間互いの魔法が飛び交い杖と鎌が何度もぶつかり合った。

 

「どうして戦うの?私には分からないよ!」

「……敵だから」

「私にはそこが分からないよ!なんで敵なの!?敵だとしても、話し合いじゃ解決できないの!?言葉に出来ないの!?」

「言葉だけじゃ……。言葉だけじゃ解決出来ない事も有るんだっ!!」

「そんな事ないよ!まだやってもいないのに否定するなんて!」

 

2人の動きはここで止まった。

 

「私は!自分の意思でこの町を、周りの人たちを!守りたくてジュエルシードを集めているの!フェイトちゃんも教えて!ジュエルシードを集める意味を!」

 

なのはは声高々に自分の聞きたかったことを聞いた。心の声を素直にそのまま伝えた。

その時フェイトの顔からは明らかに動揺する心が手に取るように見えた。

今までポーカーフェイスを貫いて来たフェイトの顔付きの変化から、なのはは何かを感じ取った。

 

「私は……。……私は「答えなくていいッ!!」アルフ?」

 

フェイトが意味を述べるのを寸でのところでアルフが遮った。

 

「フェイトは言わなくていいんだ!」

 

ユーノと対峙しているアルフは続けて叫んだ。

 

「周りに優しい人ばかりの場所でヌクヌク育った甘ちゃんなんかに分かるわけがない!そんな事よりジュエルシードだよ!!」

 

なのはとフェイトの2人はハッとしてジュエルシードのもとへ向かった。

そして2人はそれぞれのデバイスをジュエルシードへ向けた。

 

「駄目だ!!そのまま行くと2人の衝撃でジュエルシードが暴走しちゃう!!」

 

ユーノは2人を見て叫んだが、耳には届かなかったようだ。

 

 

 

そして2人のデバイスは、ぶつかる寸前で止まった。

 

 

 

目を丸くする2人。

そして自分の相棒であるデバイスを見た。

そしてまた目の前を見る。

そこには白みのかかった金髪の純白の翼を持つ黒い装束姿をした少女がいた。

少女の手は細く白魚の様に見て取れたが、自分等の衝撃をブチ殺すその力に少し恐怖を抱いた。

 

「危ないところだったわね」

 

ディーとユニゾンしたアリサがレイジングハートとバルディッシュの先を掴んで止めていた。

 

「全く……。そんな勢いでぶつかったらジュエルシードが暴走するじゃない……ねぇ?」

 

アリサの目はブリザードのような冷たさをもってして、2人のを交互に見つめた。

思いも寄らない形相に怯える2人。

 

「2人共……後先周りを考えて行動しなさいッッ!!」

 

そのまま2人を力任せにぶん投げた。

 

「うぐぅっ!」

「ぐあぁっ!」

 

フェイトとなのはは勢いを殺しきれずに結界の壁にぶち当たって声を漏らした。

 

「ふぅ。じゃ、このジュエルシードはディーに返すわ」

 

アリサはそう言ってジュエルシードを自分の胸の前に持っていった。

するとジュエルシードはアリサの胸の中へ消えていった。

遠目ながらもその光景を見たフェイトは、結界の遠く端からジュエルシードへ届かないと分かっている手を伸ばした。

 

「皆!大丈夫か!?」

 

そこへやっと神影達が集まってきた。

 

「うん。ちょーっと問題あったけど、一応解決ね」

「アリサちゃんヒドイッ!一生懸命になってやったのにッ!」

 

なのはが戻ってきてアリサに怒気をぶつけた。これはある意味アリサを怖がっていた自分を奮い立たせているものだった。証拠に、微かに足が震えている。

 

「何よ。あのままいくとあんたの相棒、壊れてたかも知れないのよ?ジュエルシードも暴走するかもだし」

「そ、そうだったの?」

 

ギクリと体を震わせて、なのはは後ろにいるユーノを振り返り見た。

動きはまるで、錆付いたロボットだ。

 

「そう、だね。ジュエルシードは小規模だけど、暴走したかも。そしたらレイジングハートも酷くは無いけど壊れてたかも」

 

ユーノがそう言うとなのははガーン!と効果音の入りそうな顔をして、レイジングハートに謝った。

 

「ご、ごめんねレイジングハート。私が無茶させようとしちゃって……」

 

『気にしないで下さい、マスター。私は気にしません。次回にそんなことが無ければいいのです』

 

レイジングハートは気にしていないようだ。

 

『皆さん。そうこうしてるうちに、逃げられましたよ?』

『あっ』

「まあ、別に捕まえるのが目的じゃないんだからいいんじゃない?」

 

アリサはあっけらかんと開き直った。

その横でワナワナ身体を震わすなのは。

 

「うわーーん!!結局お話しできなかったーーッ!」

 

悲鳴とも言える叫び声が響いた。

 

 

 

魔法少年少女はその次の日曜日、ジュエルシードの所在についておさらいをしていた。

今、ディーが持っているジュエルシードは9個。フェイトが3個。未発見は9個。

未発見のうち6個は海鳴の海の底にある。これは後で回収するらしく、まずは場所が分かっていないところから集めていくという方向でまとまった。

転生者の中での話しだが。

理由は見つかっていないものを先に確保した方が効率がいいと判断したからだ。

その6個はいつでも取れるかららしい。

 

 

 

一方その頃、フェイトとアルフは時の庭園へと現状報告とジュエルシードを届けるために帰えっていた。

そこではピシャ、ピシャ、という音が響いていた。

 

「たった3つ……。酷い……酷過ぎるわ」

 

庭園の主、プレシア・テスタロッサはそう言うとまた鞭を唸らせて見せた。

 

「ぐぅッ……」

「貴女はいったい誰の娘なの……?一週間でたったのこれだけ?」

「ごめんな……さい。次は、もっと……もっといっぱい集めてきます……」 

 

フェイトは魔力の鎖で吊るされて、その鞭打を受け続けていた。

フェイトが喋る度に音が響いた。

 

「1つ……母さんに聞きたいことがあります……」

「何かしら?言ってみなさい」

「ジュエルシードを集めている……銀髪の人に……襲われました……。その人は……、自分のことをジュエルシードの管理者だと……言いました。心当たりは、ありますか…?」

 

フェイトは息も絶え絶えながら聞いてみた。

 

「…………それは本当?」

 

プレシアは眼光を鋭くして尋ねた。

フェイトは力なく頷いた。

 

「そう。あの文献の話は本当だったの……。ふ、ふふふ。あはっ、あっはっはははははははははっはっはっはっっっ!!!」

 

プレシアは狂ったかの様に高笑いをした。

フェイトはその母の変貌振りにゾクッと身体を震わせた。

プレシアはフェイトの腕の鎖を外してもたれ掛かるフェイトを抱きとめて耳元で囁いた。

 

「今度その人をここに連れてきなさい……。大丈夫。貴女は私の娘なんですもの……。可愛い可愛い私のフェイト」

 

「はい……母さん……」

 

 

 

一方その頃、海鳴の魔導師達は。

 

「一学期中間テストが近いぞ。どうするんだ神影」

「いやそんなこと言ったって、勉強してる暇無いだろ。世界の危機なんだぜ、ある意味。射人はどう思う?」

「ん~?学校の勉強だけで十分平均以上取れるからいいや。晃毅は?」

「一応これでも特待生でな、こんぐらい余裕だぞ、無勉でな」

 

テストが近くて(主にというか神影一人が)ピンチだった。

 

「今度皆で勉強会でも開かないか?主に俺の為に、いや頼みますお願いします」

 

女子にも頼み込んで開いてもらうことにした。ちなみに、成績の順位を高い順からにすると、

アリサ>すずか、>晃毅、射人、>>なのは、>>>>>>神影

である。

どうでもいいが、アリサは平均99点らしい。もちろん小数切捨て。

そんなことを喋りながら歩いていると、ユーノがなのはの肩から飛び出して叫んだ。

 

<ジュエルシードが暴走をした!僕は先に行って結界を張る!>

 

「らしいぜみんな!よし、行こう!」

 

神影が気合を入れようとそう言うと、射人が叫んだ。

 

「あぁっ!デバイス家に忘れた!」

「おいおいっ!早く取って来い!」

「みんなゴメン!僕は転移魔法が得意だからすぐに追いつくよ。だから先に行ってて」

「言われなくてもそうするわ!バカ!」

「フェイトちゃんはまた来てるかな?今度こそちゃんとお話しするの!」

 

全員がその場から飛び出すとすずかは応援した。

 

「みんな、頑張ってね!応援してるよ!……やっぱり私も魔法を使いたいな……」

 

最後の呟きは誰の耳にも入らなかった。

 

 

 

同時刻、アースラにて。

 

「艦長、そろそろ目標地点に到着です。それと、ジュエルシードの反応をキャッチしました。まだ暴走はしていないようです」

「そう。では目標地点軌道上にて本艦は待機します。到着と同時にクロノ執務官をジュエルシード確保の為、転移させます。クロノ、行けるわね?」

「大丈夫ですよ艦長。その為に僕がいるのですから」

「分かったわ。転移ポートの準備に取り掛かって。急いで!」

 

 

 

ジュエルシードは海鳴臨海公園の樹木に取り込まれたらしく、モンスターと化そうとしていた。

 

「封次結界、展開!」

 

何とかユーノの結界が間に合った。

なのは、アリサ、神影、晃毅、ディーも追いついた。

すると上から大量の魔力弾が降ってきた。

 

「あ~らら。暴走してるだけの魔力の塊が一丁前にバリアなんか使っちゃって」

「そうだね。前のジュエルシードの時なんかより段違いに強い。それにあの、なのはって子もいる」

「てことは、あの銀髪もいるのかい?今回は逃げた方がいいんじゃないかい?」

「うん。でもねアルフ、私は母さんから銀髪の人に要があるから連れて来てって頼まれたの。だから今日は逃げられないよ」

「はぁ!?何が良くてあんな化け物を!」

「わかんない。けど母さんがそう言うなら、私はあの人を連れて行く」

「フェイトがそう言うならアタシは何も言わないけどさ……あ、フェイト!」

「はっ!少し出遅れた!」

 

そうこう会話をしているうちにジュエルシードは封印する段階まで行っていた。

 

「ジ、ジュエルシード!」

「封印!」

 

ジュエルシードをフェイトとなのはで封印した。そしてすかさずディーはジュエルシードを取り戻した。

フェイトとなのははそれに気付いていない。

 

「フェイトちゃん、今日こそお話しするの」

「嫌って言ったら?」

「そしたら……。力ずくでもお話しする!」

 

そう言うとなのははフェイトに向かって突進をかました。

 

「くっ!」

 

フェイトも反撃に向けてバルディッシュを振りかぶった。

 

「やぁぁぁぁああああ!!!」

「はぁぁぁぁああああ!!!」

 

そしてレイジングハートとバルディッシュがぶつかり合う刹那、

 

 

「そこまでだっ!!」

 

 

人の手に2つのデバイスは阻まれた。

 

「時空管理局アースラ所属の執務官、クロノ・ハラオウンだ。ここでの戦闘は危険すぎる。ジュエルシードが暴走したらどうするんだ!」

 

クロノはなのはとフェイトに一喝した。

 

「げ、時空管理局!フェイト、逃げるよ!」

 

アルフはそう叫ぶとフェイトを掴んで撹乱させるようにジグザグに走った。

 

「あ、貴方にも来て貰います!」

「は?」

 

フェイトはアルフがディーの近くを通り過ぎた時にバルディッシュをディーに引っ掛けた。

アルフはそのまま多重転移魔法で逃げ出した。もちろんディーも連れて。

 

「あ、ちょっと!人のものを勝手に!」

「完璧に逃げられたな」

「多分、あれは多重転移だ。追いかけるのは到底無理だなぁ」

 

顔を真っ赤にして激昂するアリサ。

淡々と喋る晃毅と神影。

 

「ちっ!こちらクロノ。艦長、恐らく重要な参考人に逃げられました。しかし、一応ここに残っている現地の人に同行してもらいます。帰艦の許可を」

「分かっているわ。それじゃ、お茶の準備でもして待ってるわ」

「それと、今逃げ出した参考人の転移先の追跡も」

「言われなくてもやってるわ。クルー達の会話からすると駄目っぽいけどね」

 

クロノは現状報告をし、リンディはお茶の準備を進めた。

 

「さっき名乗ったと思うけどもう一度名乗るよ。時空管理局のクロノ・ハラオウン執務勘だ。詳しい話はこちらの巡洋艦、アースラでするよ。一応任意同行という形を取らせて頂くよ」

 

クロノがそうみんなに挨拶をした。

しかし、アリサとなのはの耳には全く入っていなかった。

アリサは知っての通り激昂中、なのははワナワナ身体を震わせていた。

 

「ん?君、どうしたんだ?僕は攻撃魔法とかは使ってないけど、怪我でもしてるのかい?それとも、どこか具合が悪いとかか?」

 

クロノが気になって話しかける。すろとなのはは、無言でクロノに殴りかかった。

 

「いだっ!ちょっと君、落ち着いて!」

「何で!?何でみんななのはのお話の邪魔するの!?」

「えぇっ!?」

「ねぇ何で!?何で何で何で!?」

 

ここから数分全員でなのはを宥めた。

 

 



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7話

春休みに入ったので、更新速度がアップします。
取り敢えず、無印編はパパッと終わらせるつもりです。
A’s編からが本番……の、つもりです。
今後何か意見がありましたら、気軽に感想にてお願い致します。

ところで、一番好きなファーストフード店は何処ですか?
自分はサブウェイですね。
野菜が美味い!


「ここっていったい何?」

 

アリサがユーノに尋ねる。

 

「ここは、時空管理局の次元航行船の内部だね」

 

ユーノはすかさず答えた。

 

「俺等の世界の他にも色んな世界があって、その世界と世界を自由に移動する為の船って訳さ」

 

神影が補足した。

 

「うーん、ちょっと難しいの」

「様はあれだろ。SFものとかによく出て来るやつだろ」

「晃毅、様も何もそれじゃあ君の言うあれがわかんないよ」

 

アリサ達は黙って歩いていくクロノの後を付いて行く。

 

「ああ、そうだ。いつまでもそんな格好じゃ窮屈だろう。BJとデバイスは解除していいよ」

 

クロノがアリサ達を見て言った。

 

「そうか?んじゃ、お言葉に甘えて」

 

そう神影が言うと全員BJとデバイスを解除した。

 

「君も元の姿に戻ったらどうだ?」

「ああ、そうですね」

 

クロノがユーノにそう言うとユーノの身体が光りだした。

光が消えると、そこには男の子がいた。

 

「なのは達にこの姿を見せるのは、これが二回目だよね』

 

「……違うよ。初めてだよ」

 

一同呆然。

受け答えたのは射人。

神影は呆然としてる連中を見て腹を抱えて笑い声を出すのを堪えていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ここは茶室、ではなく艦長室。

そこでリンディからお茶の持て成しをしてもらい、事情聴取をしていた。

 

「そう。貴方があのロストロギアを発掘したのね」

「はい、そうなんです。だから散らばったからには僕に責任があると思ったんです。だから管理局に連絡してもらって、来るまでは僕の方で出来る限り集めようと思ったんです」

「うん。立派ね」

「だけど同時に無謀とも言える。いや、連絡を取ってくれたのは有難いけどね」

「はい……」

 

ユーノはリンディに上げられて、クロノに落とされた。

 

「あの、ロストロギアって何ですか?」

「貴女はなのはさんよね?ロストロギアというのは、まとめて言うと、進みすぎた文明の遺産ね。私達の暮らす幾つもの世界。その中で成長しすぎた文明が滅ぶときに残されてしまった強力な力を持つもの、という感じでいいわ」

「そのロストロギアの中でもジュエルシードは極めて危険なものなんだ。あれは言わば魔力の塊。その中に今の文明では到底理解できない、解明できない機構があって、その2つで世界を捻じ曲げてしまうんだ。そして捻じ曲げることで願いを叶えるという代物だ。使い方によっては世界を破壊してしまうんだ。破壊されなかったにしても、次元震を起こしてしまうのさ」

 

アリサ達は黙って聞いていた。

 

「次元震とは、地震の様に空間そのものが揺れる災害のことよ。膨大なエネルギーが空間を揺らしてしまうの。そしてその次元震がひどいと次元断層が起こってしまうの。これは揺れの所為で空間が地割れのように割れてしまう災害」

「それなら僕、聞いたことあります。旧暦462年に起こった次元震による次元断層」

「ああ、あれは実に酷いものだったらしい」

「私達魔法を使う人々にとって、中心となる世界のミッドチルダを中心に起こった次元震。ミッドチルダの崩壊は免れたものの、隣接する次元世界を紙切れのように引き裂いて滅ぼした歴史に残る大事件」

 

リンディは徐に角砂糖を取り出して抹茶の中に入れて、ティースプーンでかき混ぜた。

とてもこの空気の中では言えないが、このお茶は駄目なやつだ、と地球の子供達は悟った。

 

「繰り返しちゃいけない歴史だわ」

 

そしてその抹茶を飲んだ。

 

「これより、ジュエルシードの回収は、時空管理局が全権を持ちます」

『えっ!?』

 

リンディの発した言葉になのは達は声を上げた。

 

「これから君達は、今までの事件の一連を忘れて元の生活に戻るといい」

 

クロノがそう言うとまず神影が噛み付いた。

 

「はぁ!?何でさ?ここまでジュエルシードを集めてきたのは俺達だぜ?」

 

晃毅も噛み付いた。

 

「俺達は自分の町を、仲間を、自分の手で守りたくてこうしていたんだ!どうこう言われたところで、いまさら引き下がれるか!」

 

なのはとユーノと射人もだ。

 

「私はもうジュエルシードとか関係なく、フェイトちゃんとお話しがしたいんです!だからまだこの事件に付き合わせて下さい!」

「僕もジュエルシードを発掘した責任が取りたいんです。協力させて下さい」

「人数とか、この海鳴の土地に詳しい人がいた方がいいんじゃないかな?」

 

アリサも噛み付いた。

 

「私も引き下がれないわ。それに、私はディーの主よ?連れ攫われたままに出来ないわ」

 

全員の目が滾っていてリンディもクロノも若干引いてしまった。

 

「じゃあ親とかはそのこと知っているのかい?魔法とか、危険性とかについて懇切丁寧に伝えたのかい?」

 

キツい口調と剣幕でクロノが尋ねると、

 

「俺の母さんミッド出身だぜ?問題ない!」

「危険性で言ったら非殺傷設定があるこっちの方が、戦争なんかよりも数百倍安全だ!」

「大丈夫です!帰ったらちゃんとお父さんとお母さんに伝えるの!」

「僕の一族も流浪の民ですから。家族感なんてあったもんじゃないので大丈夫です!」

「問題ないよ。ちゃんと『ちょっと世界を救ってくる』って言ったから」

「黙って引き下がるようじゃバニングスの名が泣くわ!」

 

その口調と剣幕をものともしない気迫が管理局の2人を襲った。

 

「……これでは止めたところで無駄ね。わかったわ。なら、手伝って貰いましょ。人が多くても困ることは無いわ。むしろ、万年人手不足の管理局にとっては有難いわ!こんな才能ある逸材!」

「それだけの覚悟があるなら、僕が口出ししたところで揺らぐことはないな。艦長もいいと言ってるしね」

 

なのは達の顔がパァっと晴れる。

 

「けれど、こちらからの指示には絶対に従って貰いますよ。あと全力は尽くしますけど、絶対の安全を確保する事はできません。いいですね?」

『はいっ!!』

 

アリサ達は快い返事をした。

 

「そう言えば、アリサさんが言っていたディーさんとはなんなのですか?」

 

リンディが尋ねた。

 

「ディーはアルハザードで作られたデバイスで、ジュエルシードの管理者だって言っていたわ」

「ア、アルハザード!?」

「そんな馬鹿な!」

 

アリサがお茶菓子に出された羊羹を食べながら答えるとリンディとクロノは声を上げて驚いた。

そしてアリサがディーとの出会いや今までの経緯を2人に伝えた。

 

「アルハザードが実在したなんて……」

「ただの御伽噺じゃなかったのか?」

「あの~。その、“アルハザード”って何ですか?」

 

リンディとクロノが頭を抱えているところになのはが尋ねた。

 

「あのね、アルハザードって言うのは、今からずっと昔、まだアルハザード以外に人類が誕生していないときにあった文明で、不可能なことは何もないとまで言われるほどの技術力を誇ったの。それこそ死んでしまった人を生き返らせるほどの技術を。けれど、そんな世界も今では滅んで次元断層の底、魔力の使えない虚数空間という場所に落っこちてしまったの」

「けれど文献の少なさ、信憑性のなさから御伽噺だとされていた世界なんだ」

「こっちで言うとアトランティス、みたいな感じだな」

 

リンディ、クロノの順に説明して、神影が分かりやすい例を挙げた。

 

「でも、そんな凄い世界出身のディーが何で連れ攫われたのよ……」

「ま、まぁ意思や意識があるってことは、無理なこともやっぱりあるんだろう。取り合えず彼のことは置いといて、一旦この場はお開きにしよう。艦長もいいですね?じゃあ、さっきの場所まで送っていくよ」

 

こうして事情聴取は終了した。

その夜、とある豪邸からは激しい罵声の声が響いていたそうな。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

フェイトの隠れ家の一室、ディーはそこにいた。

ディーの目の前には監視のつもりか、フェイトがジッとディーを見ながらイスにチョコンと座っている。その姿はディーにはとても様になって見えた。

そんな事よりもジッと見られているのがディーには辛かった。

 

「別に逃げたりはしない。だからそんなに見ないでくれ。正直に言うと居づらい」

「でも、監視って事だから見てないと……」

「分かった。ならあまりマジマジと見るようだったら逃げるぞ。そう言ったらどうする?」

「そしたら見ない、かな。あ、でも見てないと逃げられちゃいそうだし。う~ん。どうしたらいいと思う?」

「質問を質問で返すでない」

「あ、う、うん。ゴメンなさい……」

「はぁ……。ええい、しょぼくれるでない。逃げないといっておるだろうに」

「え、でも逃げるってさっき……」

「あまり凝視されたくないから言ったまでだ。存外に頭が固いのだな」

「はい……ゴメンなさい……」

「謝る道理など無かろうに」

 

こんなやり取りが小一時間続いた。

無限ループって怖い。

 

「フェイト、夕食が出来たよ。食べに来て」

 

アルフがフェイトを呼びに顔を出したが、フェイトは一向に動こうとしない。

 

「分かった。でも私はこの人を見てなきゃいけないから大丈夫」

「何が大丈夫だい。口はそう言ったって、お腹は正直じゃないか」

 

アルフの言う通り、部屋には虫の鳴き声が響いた。

フェイトは顔を赤くして俯いた。

 

「でも、見てなきゃいけないから……」

「逃げないといっているだろう?ああもういい。アルフといったか、この娘にはここで飯を食ってもらえ。我もここで食う」

「何であんたに命令されなきゃなんないのさ。まあいいけど。……って、何であんたの飯まである設定なんだよ!」

 

フェイトの態度に業を煮やしたディーはアルフに命令した。ちゃっかり自分の飯も持って来いとも命令している。

そこにアルフは突っ込みを入れた。

ディーは答えて、

 

「飯を持って来ないのなら逃げ出してもいいのだぞ?」

「アルフ、すぐに持ってきて」

 

逃がしはしまいと必死なフェイト。

フェイトには逆らえないアルフは、ぶちぶち文句を言いながらキッチンへ引っ込んで飯を持って来た。

 

「なんだこれは。スーパーの惣菜とレトルトものとは、実に不健康だ」

「うるさいよ!食べられるんだから有難く思いな!」

 

ディーは一口食べてそういった。

 

「そう?でも美味しいよ」

「うむ、アルフは何を勘違いしてるのか。不味いとは言っていない。それに不健康と言っただけで、有難みはは十二分に感じている。よくやった褒めてやろう、フェイトが」

「アルフ偉い偉い」

「別にあんたに褒められたいとも思わないし、むしろフェイトに褒められた嬉しいけど、何か釈然としない!すっごいむかつく!」

 

ディーがアルフを弄り出して、フェイトもディーに便乗した。アルフはキー!と金切り声を挙げて、髪の毛を掻き乱しながら頭をブンブン振った。

心なしか、今までのフェイトが嘘のように、彼女が心からこの空気を楽しんでいる事をディーは感じ取った。

 

「仮面のように笑わないお前が笑うと新鮮味を感じるな。何故今笑えたのだ。他にも笑う機会があっただろうに」

 

ディーは原作を知っている。だから不意に出てしまった言葉。

これが意地悪に聞こえてしまうだろうが、ディーは心からの思いを口にした。

 

「いや。気分を害したり、気を悪くしたのなら今の内に詫びる」

「ううん、気にしないで。昔は笑えてたんだけどね、最近忙しくて……」

「ジュエルシードか」

 

フェイトはディーの問いにコクンと頷いて見せた。

 

「お前の過去を聞かせてはくれぬか?」

 

原作知識があるから聞かなくてもよかった。そしてディーにとって、相手の頭の中を覗いて過去を知ることなんて造作でもなかった。しかし残酷だとは思いながらも、本人の口からどうしても聞きたかったのだ。

フェイトはもう一度頷いてポツポツと語りだした。

 

「昔は、お母さんと、アルフと、私の家庭教師で母さんの使い魔のリニスがいて、みんなでピクニックとか行ってみんな笑ってたんだ。でも、よく分からないけど何かを切欠に母さんが変わっていったの。いつも部屋に篭ってお仕事して、部屋から出てくる度に疲れてる感じがどんどん大きくなって。そしたら母さんは優しく笑ってくれなくなってた。リニスは私に魔法を教えてくれたら何処か行っちゃったし。そしたら私も笑わなくなってた。それで母さんからジュエルシードを取って来てって頼まれて。……取ってきたら母さんが喜ぶと思って……。母さんが笑ってくれると思って……」

「フェイト……」

 

ポツリポツリと話し出したフェイトだったが、話すうちに込み上げてくる思いの所為でどんどん声が上擦っていく。

アルフはそんなフェイトの横に着いて、しっかりと手を握った。

 

「うう……だからジュエルシードを集めていたの……ヒック……。でも、上手く集められないから母さんが……悲しそうな目をして……。それで貴方の事を話したら……母さんは笑ってくれた……ヒグッ……。怖い笑い方だけど、笑ってくれた……。だから貴方を連れて行けば……また笑ってくれるかなって……そう思った……」

「……分かった。辛い話させてしまって悪かった。折角笑顔になれたところに水を差してしまうような真似を許してくれ」

 

フェイトは途中から涙をいっぱい目に溜めてしゃっくり交じりの声で語った。

アルフに支えてもらってからも語った。

 

「……最初は理由を聞いたら逃げ出すつもりだったが、これでは逃げられんな」

 

ディーはそう言うと胸の中からジュエルシードを取り出した。

 

「私はジュエルシードの管理者だ。このジュエルシードは願いを叶える力を持っている。お前の母が何故欲しがるかは直接聞く。だから取り合えず、今はアルフの願い事を聞こう」

 

「笑顔が、フェイトの笑顔がまた見たい!」

 

アルフは間髪入れずに答えた。

 

「それでいいのだな?」

「それ以外にアタシが望むことはない!」

 

「そうか……なら、ジュエルシードは使えないな」

 

ディーはそう言うとジュエルシードを胸の中へとしまった。

 

「はぁ!?なんでさ!?何でも叶えてくれるんだろ!?」

 

折角ジュエルシードを使えたって言うのに、とアルフは叫んだがディーは何処吹く風と一緒に配膳された水を一口飲んだ。

 

「こんな石っころで作られた笑顔なんて、馬の糞の方がよっぽど価値がある。このジュエルシードは、アルフの願いを叶える布石に使わせてもらうぞ」

 

アルフはディーの言葉を聴いてハッとし、何か聞きたそうにディーを見た。

 

「じゃあ、アタシ達の仲間になるってのかい?」

「違うな。フェイトの母と掛け合うだけだ」

 

アルフの質問をディーは否定した。

 

「そうだアルフ、デザートはあるか?我は杏仁豆腐を所望する」

「は?」

「なに、ただフェイトが食べたそうな顔をしていたからだ」

「はぁ!そ、そうなのかい、フェイト?」

 

ディーは話を半ば無理やり切り替えた。

 

「アルフ、私も何か甘いのが食べたいな。なんだか泣いたらそんな気分になっちゃった」

 

フェイトも赤く腫れた目を擦りながらそう言った。

 

「きっと疲れたのだろう。疲れているときは甘いものを採ると体力の回復が早いぞ。アルフ、フェイトが食べたがっているぞ」

「ああもう!ホントに何なんだいこいつは!分かったよ取って来るよ!でもね、アンタの分は「持って来て上げてね、アルフ」うぅぅぅ……分かったよ……」

 

アルフはまたぶちぶち文句を言いながらキッチンの方へ向かった。アルフが出て行った後、フェイトはディーと顔を見合わせて笑ったのだった。

アルフの願いは案外早く叶ってしまったようだ。

この温かい時間が早く来ることを、いつでも笑っていられるような世界を、フェイトは心で願った。

 

 




※ちょっと投稿する本文をミスりました。
修正しましたが、なにかおかしなところがありましたら報告お願いします。


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8話

春休みだから投稿が早くなると言っただろう?
あれは嘘だ。

すみません、本気ですみません。
一言で言うと、ヤル気が起きなかったのです。
結果的に嘘報告になってしまって申し訳ないです……。

今回は繋ぎ兼伏線回となっております。
回収できなきゃ首括るぐらいの気持ちがないといけない様な感じです。

次話もすぐ投稿しますので、何か有りましたら気軽に感想にてお願いします。


 

 

ここは、何処だ?

俺は、誰だ?

何で、此処に居るんだ?

 

「目覚めたかね」

 

お前は、誰だ?

 

「産みの親、とでも言おうか」

 

いまいち、実感が湧いてこない。

 

「そうか……。ならば友というのはどうだ」

 

意味が、分からん。

 

「そうか。その内分かって来るのではないか?」

 

信じて、いいのか?

 

「ああ、信じてくれ。私、いや、私達は君を裏切ったりしないよ。断言する」

 

……?

 

「確かに此処の連中は私も含めて変人奇人ばかりさ。でも、裏切ったりしない。何故なら……」

 

何故なら?

 

 

 

「君は私達の願いだからさ」

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

なのは、アリサ、神影、晃毅、射人の海鳴魔導師少年少女は、管理局の民間協力者としてアースラの乗組員になった。もちろんユーノもだ。

六人はアースラの本任務でのミーティングにて挨拶を済ませた。

そのときなのははクロノと目がパチッとあったので、えへへと照れ臭そうにはにかむと、クロノはブスッと顔を顰めてミーティングにて配られた資料へと目を落とした。ユーノと神影はチッ!と露骨に舌打ちしてみせた。

なのはは暫く学校を休んでアースラに残るが、アリサ達は学校には行って放課後にジュエルシード捜索をする形をとることに決まった。

それから10日間、管理局との協力によって、なのは達はジュエルシードを2つ集めた。フェイトは1つ。

その間、ディーはフェイトから離れられる状況でないので帰って来ていない。もちろんアリサはご立腹。

今はアースラの食堂で、みんなで持ち寄ったお菓子を食べている。これが最近の六人の楽しみとなっている。

 

「あと6つ。何処にあるんだろうね」

「何処だろう。フェイトちゃんにも会えないし……」

「何でディーは帰ってこないのよ。ディーがいないから魔法の特訓できないじゃない」

「そんな事より、僕の焼いたクッキーを食べてくれ。こいつをどう思う?」

「凄く……美味しい……」

 

何となく沈んだ空気。恐らく原因はなのはの醸し出す雰囲気にあると思われている。

しかし、誰もその雰囲気を咎めようとはしない。ある種の優しさでもある。

 

「……あのね、フェイトちゃんは一人で寂しいんだと思うの」

 

なのはは唐突に語りだした。

 

「私も一人な時が多かったからね、あんな瞳をしてたら何となく分かっちゃうの」

「あー。俺も親が死んでからなのはに会うまでは一人だったし、その気持ちなんとなくを分かる」

「本質的に違うけど、私もほんの少しだけど分かる。両親忙しいから、いつもは鮫島か家の犬っころが話し相手だったわ」

「だから私、フェイトちゃんと寂しさを分かち合いたい。喜びも分かち合いたい。一人のときに自分がして欲しかったことを、フェイトちゃんにいっぱい、いーっぱいしてあげたい!」

 

机を叩いて立ち上がるなのは。

全員なのはの気持ちを黙って聞いていた。

 

「戦いながらでも、少しでもお話ししたい!本気で向き合いたい!」

 

どんどんなのはは自分の胸の内を語っていき、ハッとして言った。

 

「そうだ、私はフェイトちゃんと友達になりたいんだ!」

 

そう高々と。

 

「なのは……」

 

アリサは一言ここでなのはに、

 

「それがなのはの気持ちね。なら、早くあの子に会って言わなきゃね」

 

と笑って言った。

なのはは「うん!」と気持ちの良い返事を晴れ渡るような笑顔でして見せた。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

「また空振りだねフェイト」

「そうだねアルフ」

「やっぱり管理局の連中と鉢合わせない様にとなると難しいよ」

「そうだよね、何か考えなきゃ」

「取り合えず、今は家に帰ろう。そうだ!アタシねフェイト、料理を覚えたんだよ!早速家に帰ったら美味しいのを作って上げる!」

「ディーに教えてもらったの?」

「うっ。癪だけど、そうなんだよね……」

 

フェイトとアルフもアリサ達同様かなり捜索が難航している。管理局の網を掻い潜って探し出さなくてはならないとからだ。

管理局の網を掻い潜っての捜索は不可能に近い。そこを難航とはいえども可能としているところから、フェイトとアルフの優秀さが窺える。

余談だが、アルフはディーに料理のことをメタクソに言われて悔しかったらしく、料理の練習をこっそりしてディーもフェイトも驚かしてやろうと企んだ。しかし全く身につかず、寧ろ練習しているところをずっとディーとフェイトに見られていた。終いには、いくらやっても上達しない料理の腕をディーに不憫に思われて特訓してもらっていたのだった。

フェイトとアルフが家に戻ってくると、ディーは昼寝をしていた。一応監禁扱いなので家からは一歩も出ようとしない。

そんなディーにアルフは呆れていた。

 

「しかしコイツはよく寝るね~。こんなのに怯えてたのが恥ずかしく感じるよ」

「そうかな?脳ある鷹は爪隠すって言うよ」

 

何よりも、簡単に抜け出せる状況なのに抜け出さないのは、自分達との約束もあるが、余裕の現れなんだとフェイトは思う。

フェイトはそういってディーの顔を覗き込んだ。するとディーの寝顔が段々険しくなっていった。

 

ゴッッ!

 

そして、ディーは身体をバッと起こした為にフェイトの頭とぶつかった。

ディーは寝惚けていてあまり痛みを感じないが、フェイトはあまりの痛みに声も上げられないでいる。

 

「……夢か」

 

ディーが一言そう言うのを皮切りに、アルフの怒声が響き渡った。

 

 



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9話

戦闘描写は難しい。
そして、サブウェイ食べたい。

相変わらず拙い文ですが、楽しんで頂ければ幸いです。


「フェイト・テスタロッサについて、今調べられるもの全てを調べてみました。と言っても、本当に僅かなものです」

 

エイミィが報告の為会議室になのは達を招集した。

 

「フェイト・テスタロッサは出生、年齢、親族関係、それら全てが謎です。今までこちらと遭遇しなかった原因は、恐らくあの使い魔のサポートがあるからです。それらのこととこれまでの戦闘データを踏まえて、魔導師ランクはA+相当だと思われます」

「ランクA+ねぇ。クロノはあの子と戦闘になった時、取り押さえられる?」

「そうですね。苦戦はしますが、何とかなるとは思います」

 

参加者の殆どが渋い顔をしていて会議室の空気は重くなっていて、そこからこの事件の手詰まりを感じ取れた。実際ジュエルシードの捜索も行き詰っていて、ここ10日間1つも見つかっていない。

 

「ただ一つ気になることがあるんですよ」

「何かしら?」

「フェイトちゃんと同じ苗字の魔導師が過去ミッドチルダにいたことです」

「……プレシア・テスタロッサ」

 

リンディはエイミィの口から出た言葉に呟いた。

 

「20年程前にアレクトロ社で、次元航行動力炉の開発に違法材料を使ったことで追放された大魔導師。確かあの事件はアレクトロ社が上層部の圧力で実験を強行させたのと、違法材料は検察側のでっち上げだったと言う内部告発で冤罪が確定していたはず」

「そうね……。彼女の追放後と出来る限りの情報を調べて頂戴。なにか手掛かりがありそうだわ。分かり次第また会議を開きますので、今回はこれにて解散。各自持ち場に戻って」

 

こうして重苦しい会議は終了した。

 

暫くして、事件は起こった。

非常を知らせる為に、アラートがけたたましい音で艦内中を響き渡った。

 

「何が起こってるの!?現状報告を!」

「海底にあると推測されていたジュエルシードが起動しました!」

「反応1、2、3、……6です!」

「上空に魔法陣があります!恐らく魔力を海に流して強制発動させたものかと」

「モニターに映して!」

 

モニターに映すとそこにはフェイトとアルフ、ディーがいた。原作通りのやり方を実行したらしい。

 

「なんて無茶を……!」

 

リンディがボソッと言葉を溢す。

アラートを聞いてなのは達がブリッジに賭け付けた

 

「何でディーがそこにいるのよ!」

 

アリサの怒声が艦内に響き渡る。

チッっと舌打ちをしてアリサはゲートへ駆け出した。なのはもフェイトの姿を見て駆け出す。

 

「艦長、僕も一緒に行きます。このままジュエルシードを取られるのを指を咥えて見る訳にも行かないでしょう」

 

クロノはそう言うとなのはとアリサを追うようにゲートへ向かった。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

「ディー、アンタはよかったのかい?」

 

アルフはディーに尋ねた。

ディーのやっていることは主であるアリサの敵側の味方となること、つまり裏切りだ。

それだけではない。

アリサは魔法関係の仕事に就きたいと言っている以上、管理局が関係してこない訳がない。

それなのに次元犯罪者に手を貸すようなこの行動は後のアリサの行動を制限することにもなってしまう。

しかしディーは今更だ、と言った。ディーにはディーの考えがあった。

 

「我は一時的に次元犯罪者と協力しているに過ぎない。協力理由がロストロギアの封印なのだから、問題はない。そして我は管理局の定めた法を知らない無知な管理外世界の住人だ。重い罪を背負うことはまずないだろう。何より、願いを叶えるものが人の願いを切って捨てるなど有り得ん。見縊るでないぞアルフ」

「でも、無理があるんじゃ……」

「くどい。ジュエルシードは我の所有物だ。悪事に使わなければ如何様に使おうと、何か咎められる筋合いなど有りはしない」

 

無表情のディーを見て、アルフは最初に出会った時のことを思い出した。

溢れんばかりの力。射殺さんばかりの眼光。押し潰されるであろうと、死ぬ覚悟までした圧倒的存在感。

隠れ家にいた時の姿からは想像も出来ないほどかけ離れているディーの姿に、アルフは再び恐怖を覚えた。

同時に、頼もしくも感じた。

こんな存在が自分の味方だなんて、もう失敗は有り得ない、と。

今、フェイトが電撃を付加させた大出力魔法を海に放つ準備をしていた。

海を介して海底に沈んでいるジュエルシードに魔法を当てて強制発動させてから、暴走したジュエルシードをディーがコントロールするという考えだ。

魔力を込めて込めて込めて、それを薄く広く海へと延ばす。準備は整った。

フェイトの怒声を皮切りに、雷鳴と共に海へと落ちる雷。

ジュエルシードは暴走した。

ディーは荒れ狂う海へ手の平を上にして、腕を伸ばした。すると海は段々静けさを取り戻し、海底からジュエルシードが浮き上がってきた。

封印はされていないものの、ジュエルシードは何も反応せずに只光っていた。

フェイトは魔法も撃ち終えて、既にバルティッシュを構え直して封印の体制をとっている。

 

「さあフェイト、封印するんだ」

「ジュエルシード、封印!」

 

光がジュエルシードへと伸びて行き、包み込んだ。

 

「これで全てのジュエルシードが見つかったんだね」

 

フェイトは大出力魔法で残りギリギリの魔力となってやつれていたが、母に褒められると思ったのか嬉しそうに微笑んでいた。

ジュエルシードは全てディーの中へと溶け込んでいった。

 

 

 

「フェイトちゃん!」

 

 

 

そんな中、嵐が止み澄んだ空に声が響いた。

 

フェイトが声の主を見る。

声の方には少女が一人。

なのはだ。

 

「私はフェイトちゃんのことは分からない。けど目を見れば分かる!きっと寂しいんだって!一人で苦しんでいたんだって!だから私は自分が寂しくて一人で苦しんでいた時にして貰ったことをして上げたい!」

 

心からの叫び、優しいからこそ出で来る言葉。そして高らかに叫んだ。

 

「私は、私はフェイトちゃんの友達になりたいんだ!」

 

トクン

 

そうフェイトは自分の心の音を聞き取った。

最初は訳の分からない子だと思っていた。

触れたばかりの魔法で、自分と関わりのないことに首を突っ込んでくる。

自分の中の気持ちは只1つ。

 

『母さんを笑顔にしたい』

 

それ以外は要らないと無関心でいた。

しかし、冷たく突き放しても、尚寄って来る。何時しか武を交えるようになっていた。

ディーを拉致してから、少しずつ笑うようにもなった。笑うのが楽しかった。その時間が楽しかった。その世界が楽しかった。

フェイトは羨ましく思う。

あの子は普通の女の子だった。ならば自分が体感した、あの時間あの世界をたくさん知っているのだろう。

いつもは跳ね除けていたなのはの声は、今のフェイトにはとても甘美に聞こえた。

しかし、フェイトは跳ね除ける。

 

「今の私に、答える資格もそんな資格も……ない」

 

明るみから暗がりへ逃げてしまった。

 

「……分かったの。なら、私に勝ったら今あるジュエルシードを全てあげる」

 

遅れてきたクロノがなのはを止めようと叫ぶ。しかしなのはには聞こえていない。否、聞こえるはずがない。

 

「だから賭けて!私に負けたら、フェイトちゃんは私の友達になるの!いっぱいいっぱい、私とお話するの!」

 

なのははレイジングハートをフェイトに向けて言った。

 

「ここで私の意志と気持ちを魔法に乗せて、フェイトちゃんにぶつけるから、フェイトちゃんも全力でぶつけて来て!自分の気持ちを!!」

 

ここに火蓋は切って落とされた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ディー、あんたは何してたの?」

 

アリサは冷静になったのか、あまり怒鳴らずにディーに尋ねた。

 

「家庭の事情だな。願いを叶えるものとして、彼女等の願いをかなえない訳にはいかなくなったのだ」

「そう……」

 

アリサはディーの言葉に一言返すと次の言葉へと紡いだ。

 

「あのね、私はあのフェイトの事情とかは知らないし、どうすればいいかも分かんないよ……。あんたにしか出来ないことだったら、私は何も言えない。何も出来ない。でも、でもね……何も出来なくてもね……。私のパートナーなんだからーーーーー」

 

不意にアリサは抱きついて、ディーの胸に顔を埋めた。

 

「心配は……しちゃうんだよ……」

 

アリサはそのまま離れようとしない。

ディーは胸が熱く感じた。

 

「……主よ、心配かけてすまないと思っている。それに、こんな出来損ないな欠陥デバイスに心配をかけてくれてありがとう」

 

ディーは答えるように、我が子を労わる父のように、優しく抱きしめた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

飛び交う光、火花を散らす杖と鎌、これは戦いではなく対話だそうだ。

それをアースラの面々はジッと見ていた。

 

「今のところ、力は均衡してるみたいだね」

「いや、若干だがテスタロッサが押している様だぞ」

「やっぱ魔法を始めたばかりのなのはにゃ荷が重いか、あのフェイトってのは」

 

射人、晃毅、神影の三人は手に汗を握りながら戦いを見届けている。

この三人は素人ではなく経験者だ。特に晃毅は歴戦の英雄として名を馳せたのだから、戦況の判断はかなり高い。

故に、如何にハイレベルな戦いかを容易に汲み取れる。

 

「貴方達は行かなくてよかったの?」

 

リンディはアリサとなのはが駆けて行ったので、と聞いてみたら三人は揃って首を横に振った。

神影は戦いの流れを見て呟いた。

 

「緊急時ですけど、正直ジュエルシードが制御されてなかったら、フェイトちゃんの消耗を待つまで出動は禁止するつもりだったでしょ」

「必要以上に多く行っても意味がないと判断したのもあるな」

「成る程ね。取り合えず今は、なのはちゃんを見守りましょう」

 

戦いはまだ決着までは遠いようだ。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

「フェイトちゃんは何で戦うの!?」

 

なのはは魔力弾を飛ばしつつ尋ねる。

 

「母さんの、為だぁっ!!」

 

フェイトは魔力弾の掻い潜り、斬りかかる。

なのははそれを受け止めて弾いてから後ろへ飛び退き、ディバインバスターを放つ。

クッ!と息を漏らしてフェイトは避ける。

 

(今の砲撃、直撃は不味かった。この子、前に戦った時とは別人みたいだ!それにこの魔力弾、一発一発がこんなに重いなんて……!)

 

正直なのところ、フェイトはなのはを見縊っていた。魔法を始めたばかりの全くの素人だと。長年積んできた自分の鍛錬には叶わないと高をくくっていた。

そんな過去の自分を小一時間問い正したい程の成長っぷりだ。

 

(間違いない。この子は、本物の天才だ!)

 

今はまだ自分が優位に立っているものの、気を抜いた一瞬で逆転されてしまう。そう思えてしまうほどの急成長。

フォトンランサーを牽制に少し放ちつつ、相手にベッタリくっついての近距離戦。

得意な間合いで戦うのは基本中の基本だが、なのはもまたそのために相手から離れようとする。

埒が明かないと焦れば焦るほど、なのはとの距離は開いていく感覚に陥っていった。

そしてフェイトは自分の戦い方を忘れて我武者羅なものとなってしまっていた。

 

「じゃあ、君は何で戦うんだ!」

「分からないよ、そんなの!この町のみんなやアースラのクルーのみんな、フェイトちゃんのことを考えると体が勝手に動いちゃうの!動かしたいの!」

 

アクセルシューターを全力で放つが全ていなされてしまった。接近をしてきたらレイジングハートで弾く。単調だが、相手を消耗させる中距離型の基本的な戦い方だ。

 

「バスターッ!」

「うぁああ!」

 

前言撤回。砲撃型の基本的かつ、必殺戦法だ。

砲撃の直撃からフェイトが押され始めた。

既に消耗をしている自分ではこの天才魔法少女の相手など、はなっから負け試合だったのではないかという思いがフェイトの頭の中を巡る。最初から全力をもってかかれば此処まで追い込まれなかったのではないか、ということがフェイトの頭の中をグルグルと回り続けていた。

 

(そんなことはない!今からでも遅くはないはず!!)

 

今自分が置かれている状況を一蹴して最後の手段を決行した。

なのはに弾幕を回避しながら急接近を仕掛ける。

レイジングハートで受け止めようとするなのはに、格闘と見せかけて電撃変換させたプラズマランサーを浴びせて麻痺させてから離脱。

 

「撃ち抜け、雷迅!」

『ジェットザンバー』

 

なのはの頭上に雷が落ちる。

それを受けてなのはは昏倒してしまった。

 

「行くよ、バルディッシュ!!」

 

バルディッシュの雷刃へとどんどん蓄えられていく魔力。

遂には10数mは在ろうかという大剣へと姿を変えた。

 

「私は、母さんに笑って欲しいんだ!!あの頃みたいにリニスが、アルフ、が私が、何よりも母さんが幸せでいられる時間を取り戻すんだ!!」

 

昏倒して動けないなのはに向かって思い切り大剣を振り下ろす渾身の一撃。

 

「訳も分からずに戦う君に、負けてなんかやるものかぁぁぁあああああっっっ!!!」

 

ドグォォォォォォォンッッッッ!!!

 

ぶつかった衝撃で海から数十mに及ぶ水柱が立った。

手応えは確かだ。

 

「や……ったの……?」

 

肩で息をしながら倒れる水柱から新たに立つ水飛沫を見続ける。

過剰に魔力を込めすぎた所為か、ジェットザンバーは未だにバルティッシュに健在している。

不意に笑いがこみ上げて来た。

 

「私は……勝てたのかな……。は、ははっ……勝ったんだ……」

 

ふとアルフがいる方へ振り向く。

アルフの隣にはアリサがいた。

ここでフェイトはあることに気付く。

アルフは顔を青くして、アリサは目を丸くしてこちらの背後を凝視している。

2人は自分を見ていなかった。ある一点を見ていた。

徐々にそちらへと目を向ける。

水飛沫がどんどんと晴れて行く。

 

「……フェイトちゃんの思い、なのはに伝わったの……」

 

なのはが姿を現した。

 

「……嘘……。何で……?手応えはあった!確かに倒したはずじゃあ!?」

「少し掠っちゃったけど、ギリギリのところで障壁が間に合ったの。何重にも重ねた、私に出来る全力の障壁」

 

左手を前に突き出し、レイジングハートを持つ右手はダランと垂れている。

 

「辛かったんだね。寂しかったんだね。一人で、心に閉じこもって泣いてたんだね。けど、もう大丈夫。フェイトちゃんの願いは叶う!もう悲しむことも、泣くこともないの!だからまずは私の思いを、伝えて上げるの!」

 

垂れた右手を持ち上げて、レイジングハートをフェイトに突きつけて高らかに宣言した。

 

「う……、うぁあああああああっっっ!!!」

 

あと一回なら余剰魔力でもう一度ジェットザンバーを放てる。

しかし、放ったところで軽く避けられてしまった。気が動転してしまっていて、いつもの様な正確な捌きが出来ない。

フェイトはすぐに、大剣を振った反動を使ってなのはにクロスレンジで攻め込んだ。

 

「負けられない!負けたくないんだぁああ!!負けたら私は、私はぁっ!!」

 

なのはに向かって切りかかる、

が、そこになのははいない。

 

「な!?トラップ型のバインド!!」

 

変わりに自分がバインドで縛られていた。

 

「今から私の思いを伝えてあげる!!」

 

フェイトは顔を真っ青にしてバインドから逃れようと必死に身体を捩った。

しかし、どんなに捩っても一向に逃れられない。

 

「受けてみて!!これがディバインバスターのバリエーション!!!」

 

レイジングハートをステッキのように回して、フェイトに突きつけて魔力の収束を始めた。

どんどん溜まっていく、収束していく魔力。

逃れようも、やはり逃れられないフェイト。

そして収縮する魔力は限界点に達し、余波で周りの空間が僅かに揺れ、キラキラと魔力光で桃色に輝いている。

 

「これが私の意志と気持ち!これが私の全力全開!!」

 

 

 

「スターライト…………ブレイカーーーーーッッッ!!!!」

 

 

 

光に包まれるフェイト。

その中にフェイトは、確かにとても強い思いを感じた。

それは自分にぶつかって来る力としての恐怖とは裏腹に、優しさと安らぎを覚えた。

 

(ああ……。こんなにも私を思ってくれる人がいるなんて……。少し前は赤の他人だった人なのに……)

 

フェイトは光と優しさと安らぎに包まれて、眠ってしまった。



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10話

これを含めてあと3話で無印編は終了です。
他の作者様の作品よりもあっさり終わるように感じる方が殆どだと思います。


「どうやらなのはが勝ったみたいだな、リンディさん」

 

神影は胸を張って誇らしげに言った。

勝って欲しいとは思っていたものの、新参者のなのはが勝てるなどアースラのクルーは誰一人として思っていなかった為、空いた口が塞がらないでいる。

なのはの規格外な才能が顕著に見えた。

 

「まさか勝ってしまうとは思わなかったけれど……いいわ。クロノ執務官、そこにいる参考人重要参考人を引き連れて帰還して頂戴」

「みんな、船に帰るまでが任務だよ」

 

リンディはクロノに指示を出し、射人は(自称)渾身のギャグをかましたところ、全員にスルーされて凹んだ。

そんな時、今通信をしているクロノ達の背後に一人のクルーが気付いた。

 

「艦長、現場上空の次元に小さな歪みを観測。一体なんでしょう?取り合えず、モニターに写します」

「特に変わったところは見当たらないけど……、ちょっとここの当たりを拡大して頂戴」

 

クルーが写した歪みの映像の丁度真ん中を指差して言った。

拡大するとそこには……。

 

「ッ!すぐにクロノを呼び戻して!」

 

魔法陣が浮かんでいた。

 

 

 

「フェイトちゃん!」

 

なのはが落下していくフェイトを追いかけて海へ飛び込む。

フェイトの意識はなく、眠っていた。その顔はとても心地のいい顔だった。

 

「フェイトは……負けたのかい……?」

 

アルフがディーに尋ねるとディーは頷いた。

 

「互いにプライドと自分等の気持ちをぶつけ合ったのだ。負けても勝ってもどちらとも後悔すまい。しかし問題はこれからだ」

 

そう言って空を仰ぐ。

なのはの腕の中でフェイトは目を覚ました。

心配そうに駆け寄るアルフとアリサ。しかし、フェイトの視線はそこにはなかった。

ディーと同じところにあった。

 

「母……さん?」

 

ディーとフェイトの目線には魔法陣があった。空は歪み、魔法陣はズンズン大きくなっていく。

 

「逃げてッ!!」

 

フェイトは咄嗟になのは達を突き飛ばした。

そしてフェイトに向かって魔法陣から放たれる、極太の紫電。

しかし、フェイトに当たることはなかった。

ディーが魔法を逸らした。

 

「フェイト……私の可愛いフェイト……」

 

結界内にプレシアの声が響き渡る。

 

「さあ、そこにいるお方を連れて来なさい。私の大事な大事な客人なのよ……さあ……」

「いや、我だけが行こう」

 

プレシアの言葉に震える身体で魔力を編もうとするフェイトを制してディーは言った。

 

「構わないわ……。さあ、来て頂戴」

 

ディーの前に転移用の魔法陣を出すプレシア。

 

「アリサ、艦長にディーはハッピーエンドの為の交渉の席へ出たと伝えておいてくれ」

 

そう言い残してディーはその場を去って行った。

ギリリッと歯を軋ませて唇を噛みながら悔しそうに返事をすると、帰りましょ、と言った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

クロノが帰るとアースラではアラートが鳴り響いていた。

 

「何だ!?何が起きているんだ!?」

 

クロノは叫んでブリッジへと走る。なのはやアリサ達も一緒になって走る。フェイトは魔力の使いすぎで立つことすら儘ならないため、アルフに抱えられている。

 

「母さん!」

 

クロノがブリッジへ駆け込んだその時に、衝撃がアースラに来た。

とんでもない轟音とともに激しく揺れるアースラ。断続的に続くそれは正に嵐。この例えが優しく感じるくらいに、人や書類や機器が宙を舞った。

 

「一体何なんですこれは!?」

「多分アースラに広域殲滅魔法がぶつけられたわ。しかもかなり手加減されたもの。私達の命ではなく、アースラの機能停止を狙った攻撃ね」

 

書類と人の山からひょっこり顔を出して淡々と状況を把握するリンディ。しかし、

 

「おまけに最後の最後までこっちが狙いというのを見せない為に広域殲滅魔法に隠蔽術がかけられていたわ。しかも自分を囮にして隠蔽術自体にも気付かせない為の派手な演出。見事にやられたわ……」

 

目元と眉毛がピクピク動き、額には青筋が浮かんでいる。

 

「クロノ久しぶりに模擬戦やる?母さんと」

「母さん、絶対八つ当たりだよね?」

「大丈夫よ。ハンデとしてデバイス使わないわ」

「いや待ってデバイスなしだと非殺傷設定使えなくない?実の息子殺すつもりだよこの母親!」

「ま、冗談は置いといて」

 

咳払いを一つして内線でクルー全員へ呼びかける。

 

「アースラは先ほどの攻撃により巡洋艦としての機能を停止しました。しかし、拠点にはなるでしょうし、この事件を解決するまでは本局への帰還なんて出来ません。よって、この任務は続行します。しかし、恐らくこの事件もあと少しで解決になると思います。それまで頑張りましょう」

 

リンディの指令にクルー全員は敬礼した。

 

「リンディ艦長、一ついいですか?」

「何かしらアリサさん」

「私のデバイスの管理人格のディーがプレシア・テスタロッサと交渉すると言って、プレシアのところに行きましたがそれについて何かありますか?」

「彼は何と?」

「ハッピーエンドの為、と言ってました」

「勝手に動かれると困るのだけどもねぇ……。会ったことも無いですし、こちらの事なんて知らない筈だわ。不問にするしかなさそうだわね……」

 

全員でブリッジの片付けに取り掛かったところ、リンディの深い溜め息が響いた。

そうこうしてる間に、フェイトは医務室に運び込まれた。

医務室はブリッジ程散らからなかったものの、少しは散乱してしまったため、フェイトの精密な検査は出来ない。しかし簡易的なものの診断によると、単なる疲労と魔力切れによる気絶らしいのできれいにしたベッドの上で、今は静かに眠っている。

 

「フェイトちゃんのお母さんは、何で雷なんて落としたの?」

 

なのははアルフに尋ねる。

プレシアの取った行動がなのはにはとても信じられないものだった。

 

「アイツはそういう奴さ。いつもフェイトを虐めて、鞭打ってさ……。今ここにフェイトを連れてきて正解だよ。ここならあの鬼ババァからフェイトが何かされることもないし」

 

ここで本当によかった、と気持ち良さそうに眠るフェイトの頭を撫でて微笑みながらアルフは答えた。

 

「取りあえず、あの人はフェイトのことを自分の子供とは思えていないみたいね」

 

リンディにディーのことを報告し終えたアリサが入ってきた。

 

「そうだな。院長に悪さしてるチビがよく雷落とされてたが、本物は落とさないな普通は」

「晃毅、意味合いが若干ずれてる」

「にしても、フェイトって滅茶苦茶腕細いな」

 

晃毅と射人でバカをやってると、神影がフェイトの腕をマジマジと触った。

瞬間、アルフの拳が神影の頬を捉えた。

ブンッ!と派手な風切り音を立てて壁まで吹き飛ばされた。

 

「って~な!。俺なんかした!?」

 

なのはに尋ねたところ、返答は肉体言語だった。壁となのはの拳の間に挟まれて痛みは倍増。なんかもう顔の至るところから血が出て腫れている。

バッとアリサを見ると一言言われた。

 

「変態」

 

自分がしたことを思い出して、そのアレさ加減からか、只の紙切れのようにその場に横たえた。

 

「みんなここにいるみたいだな」

 

クロノが部屋に入ってきた。

神影が横たわっているのを見て見ぬ振りをしてアリサやなのは達の横まで来る。

 

「アリサのデバイス、でいいのか?ディーがプレシア・テスタロッサとの交渉の席に赴いた時に、プレシアが出した転移魔法から位置特定が出来た。プレシアの住む時の庭園に武装部隊を陽動にし、少数部隊で確保に向かうという作戦だ」

 

作戦内容を読み上げながらフェイトの寝るベッドの横にある空いている椅子に腰を掛ける。

 

「僕は勿論小数部隊で確保に回るが、なのは達、今回の作戦に参加しないか?」

「今更だよクロノ君。みんな参加するよ」

「ありがとう。ここまでやらせといて今更だとは思うが、一応の確認だよ。恐らく、今までで一番辛くなるだろうからさ」

 

その場にいる海鳴組が全員力強く頷いた。

 

「ところで君たち2人はどうするんだい?起きているのだろう」

 

そうクロノが言うとフェイトは恥ずかしげに身体を起こした。フェイトの手にはなのはの手がしっかりと握られていた。

 

「……私は行きたい。多分、母さんは捕まると思う。けど私はそれだけの別れ方は嫌。ちゃんと話してお互いをはっきりさせたい。行っても構いませんか?」

 

フェイトは瞳に力を宿してクロノに頼んだ。

アルフもフェイトがあるとこあたしありと言うように頼み込んだ。

クロノは薄っすらと笑みを浮かべて言った。

 

「それじゃ万全になるまでは寝ていてくれ。

君達も小数部隊として行くことになるな。艦長には話しを通しておくよ」

 

フェイトとアルフは深く頭を下げてお辞儀をした。

クロノは、いいんだ戦力が欲しかっただけたからね、と言い残すと部屋を後にした。

この事件の集結は近い。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

雷鳴轟く世界、時の庭園にディーは降り立った。外装は禍々しく、魔王の城を訪ねられたらまず思い付くであろう造形だ。

内装は西洋の貴族が暮らしていそうな作りや飾りが施されており、その姿にディーは思わず感嘆の声を漏らした。しかし纏う空気はキリリと冷えていて、まるで時間を止められている様な感覚に陥った。その止められた空気と時間が表す悲しげなものは、永久凍土という言葉がピンときた。

 

「ようこそ。願いを叶えるものディー」

「歓迎を感謝する。大魔導師プレシア・テスタロッサ」

 

大広間までの扉は全て開け放たれており、そこまての道程のみ壁に掛けられているランプは光り輝いていた。

 

「貴方は私の願いを叶えてくれるのかしら?それとも断るのかしら?」

「どうだかな。ただ、願いを叶えるのに相応しいかどうかは見極めさせて貰うぞ?」

「フフフ……お手柔らかに……ね……。それと邪魔が入らないように私のおもちゃを庭園の周りに出しとくわ。フフフ……」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

アースラ艦内は緊張の空気に包まれていた。

 

「これより時の庭園制圧、プレシア・テスタロッサ確保任務を開始します。第一波武装部隊、準備はいいかしら?転送!」

 

リンディの指令を皮切りに第一波が出撃、第二波が転送ポートに乗った。

クロノ達は第三波で出撃だ。

 

「魔力反応多数、とんでもない数の傀儡兵です、ら魔力ランクは多数のCとAが極小数の統制の取れた状態で来ます。このままでは第一波部隊は持ちません。第二波の出撃許可を!」

 

エイミィが叫ぶ。

傀儡兵の数が半端では無いのだ。比率で言えば、1:15以上の差がある。

この戦力差にリンディは爪を噛んだ。

 

「クッ!第二波も早めですが出撃して下さい!第一波部隊は交代。私が広域殲滅魔法を打ちますので、敵多数消滅後第一、二波部隊は残った者で交戦を再開して、負傷者は此方に撤退して下さい。私がブリッジに戻るまではエイミィ執務官補佐が支持を出して下さい。すぐに戻ります。クロノ執務官、出撃準備を。それと民間協力者のみんなをここに呼んどいて」

 

クロノは敬礼すると待機室へ内線を使って呼び出した。

あの一瞬で目まぐるしく変わる戦況。戦場は阿鼻叫喚の混戦状態だ。

支持通りに第一波部隊は一時撤退し、リンディが広域殲滅魔法を使って傀儡兵達を半分壊滅させた。そこに第一、二波の混合部隊が仕掛ける。少し此方が押して来ている様だ。

ブリッジにリンディが戻るとなのは達は揃っていた。

 

「貴方達に伝えて置きたい事が有ります。命の危険を感じたら直ぐに任務から撤退しなさい。艦長命令よこれは」

 

至極当然の事だ。

 

「貴方達は正式な局の隊員じゃないの。だから必ず生きて帰って」

 

そう言うとリンディはなのは達をぎゅっと抱きしめた。そこでボソッと小さくごめんなさいね、と呟いたがそれは誰の耳にも入らなかった。

戦場に異変が起こった。

なんと傀儡兵が湧いて出てくるのだ。戦域いっぱいに広がる魔法陣、それ等全てが転移魔法だと言うのだ。

あっという間にリンディが殲滅した傀儡兵の数を超える傀儡兵が転送させられてしまったのだ。

顔を青く染めるブリッジの乗組員。

リンディがもう一度広域殲滅魔法を打つと言い始める前に神影が言った。

 

「俺達男子組が殿をするから、その隙に武装部隊の人達をアースラに戻して治療をして下さい」

 

リンディは神影の言葉に唖然とした。

 

「クロノとユーノにフェイトになのは、アリサとアルフは時の庭園に突入。俺等も突入したら過剰戦力ですよ」

「俺等がやらなきゃ誰がやれるんですか?」

「大丈夫ですよ。ちゃんとに艦長の命令は守りますから。危なくなったら」

『すぐ逃げる!』

 

神影と晃毅、射人は口を揃えて言った。

なのはが三人を心配そうな目で見ている。

 

「心配すんなよ。俺の悪運は強烈なんだぜ?大丈夫大丈夫!」

 

神影はニッと笑って言った。

 

「それは死亡フラグじゃないかい?」

 

そんなフラグへし折ってやんよ!と神影は意気込んで三人で転送ポートに乗る。

 

「くれぐれも無茶はしないで下さいね……」

 

リンディがそう言うと三人は揃ってサムズアップした。それに暫くの沈黙の後、クルー全員がサムズアップで返した。

 

「僕等も行こう。早速三人が道を開けてくれたんだ。一気に通り抜けるよ」

 

クロノの言葉に突入組は力強く頷いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「外が騒がしいな」

 

ディーが呟いた。

プレシアはそんなディーに腹を立てていた。

 

「そんな事どうだっていいじゃない……私の願いを叶えてはくれるの?くれないの?はっきり答えて頂戴……」

 

「ここの紅茶も中々のものだ。銘柄は何だ?付け合わせのブラウニーはお手製のものなのか?こちらは少し甘味が強いが「貴様ぁ!」フッ。焦るでない」

 

交渉の席には紅茶とブラウニーが出ていた。

かなりの美味なのだが、何か心に引っかかる味がする。

 

「この庭園、この空気、この部屋の飾り、そして汝。ここにあるもの全てから悲しみを感じる。時が止まって感じるぞ。何てしみったれた場所だ」

「貴方にはしみったれて感じるかもしれないけれども、私には輝かしい思い出を蘇らせてくれる素晴らしい世界だわ……」

 

先程叫んだ時とは変わり、落ち着き払って席に着き、ディーの挑発とも取れる言動にも物怖じせずに応えるプレシア。

ディーは一言、母は強しか、と言うと切り出した。

 

「では、汝の願いを聞こう」

「私の願い。それは、私の大切なアリシアを生き返らせる事」

 

ディーはやはりそうかと呟くとプレシアに問いかけた。

 

「フェイトは娘では無いのか?」

「あれはアリシアを元に作った偽物よ。アリシアには成れないわ。哀れなお人形。だからあれには愛情は向けられない。向ける筈がないわ。絶対に……」

 

ディーとプレシアの間の空間がユラユラ揺らいで見える。険悪な空気が辺りを漂い支配し始める。

 

「汝の時は止まっているな。アリシアが亡き者と化した時に。時の庭園。この場所は正に汝の心の中を表している。時の進まぬ庭園だ」

 

「はぐらかさないで……私の願いはどうなるの?答えて!」

 

テーブルをダンッと叩きつける。プレシアのカップに入った紅茶は零れ?テーブルを濡らした。

 

「汝への問答は我は済ませた。後は……」

 

「母さん!」

 

開け放たれる大広間の扉、フェイトとなのは、アリサとアルフが飛び込んできた。

 

「さぁ、これで最後だ。フェイトによる問答を経て願いを叶えるか決しようではないか」

 

 



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11話

ここからは、にじファンにて投稿していたものと違いが出て来ます。
割と大幅な変更なので、にじファンから読んで下さってる方がいらっしゃいましたら、少しは楽しめる筈です。

戦闘描写は本当にわからんちんです。


『セットアップ!!』

 

男子三人組は自分のデバイスを装着して混戦真っ只中へと転送される。同時に傀儡兵の相手をしている武装部隊が強制転送でアースラに戻される。

 

「相手は随分と大所帯だぜ?最初の時より多くなってないか?」

「ざっと600か。面白い」

「一人当たり200かぁ。いや、2人が300のつもりでやってね」

「何だ?怖気ついたか?」

「馬鹿言わないでくれよ。狙撃手を前線に立たせるつもりかい?適材適所だよ。後ろから援護する」

「んじゃ、いっちょ派手に行きますかぁ!」

 

神影の言葉を皮切りに、三人と傀儡兵達は動き出した。

神影は大剣に手をかけて傀儡兵達へ突貫。大剣の一振りでとんでもない数が吹き飛ぶ。

晃毅はバトルドレスに身を包み、頭には無限バンダナを装備して、手に持つM202A1を的確に放っている。

射人は後ろへ飛び退き、そこから屈んで銃身の長い狙撃銃を照射モードにして傀儡兵を薙ぎ払う様に撃つ。

晃毅が射人へ話かけた。

 

「おい!そんなに銃身馬鹿長い意味はあんのか!?」

「砲撃魔法も本当の銃と同じで、打ち出す媒体が長い方が反動がないのさ!なのはちゃんみたく一点に魔力を収束させるんじゃなくて、銃身そのものに収束させるとそうなるのさ!」

「初めて知ったぜ、おっと!そんな知識!」

「随分余裕だな晃毅に射人ぉ!」

 

喋りながら戦う晃毅と射人に神影。

襲い来る傀儡兵を千切っては投げ、爆撃し、薙ぎ払う。

半分まで数を減らしたところで、また転送されて来る傀儡兵達。

 

「へっ、ストックの多い玩具共だな!」

 

まだまだ傀儡兵達との戦いは長引きそうで、段々3人からも余裕の色が消えていった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

変わって突入組。

内部にも大量の傀儡兵が待機していた。そして交戦も始まっている。

 

「こちらの傀儡兵は魔力ランクが外のよりたかめだな」

「あの量を相手にするよりマシじゃないかい?」

 

ランクが高く大量といっても、外に比べたらこちらの方が幾分余裕を持てる。

クロノとアルフが切り込んで道を作り、なのはが他を殲滅する。ユーノはバックアップに回る。フェイトは未だに本調子ではないため、戦闘には参加しない。そのせいか、申し訳なさそうに見える。

正面門から入って廊下を抜けた先、開けたところに出た。

ここにはまだ傀儡兵は来てない様だ。しかし、傀儡兵がこちらへ来る音が先の廊下から聞こえてくる。

 

「よし、ここからは二手に別れて行動しよう。僕とユーノは時の庭園の動力を封じる。そうすれば傀儡兵の転送もなくなると思う。そしてなのは達はプレシアのところに行ってくれ。道は僕が開く」

 

クロノが提案した。

時の庭園の構図はフェイトとアルフから突入前に知らされている。

なのは達は力強く頷いてみせた。

クロノが傀儡兵がひしめくなのは達が進む廊下へS2Uを向けて叫んだ。

 

「さぁ、行くんだみんな!ブレイズキャノン!!」

 

クロノが砲撃で傀儡兵を一蹴するとなのは達は廊下の先、プレシアの下へ駆け出した。

 

「こちらも急ごう」

「そうだね。確か機関は……こっちだ!」

 

クロノとユーノはその後ろ姿を見送ると自分達の役目を完うするために飛びたした。

廊下を埋め尽くす傀儡兵を滅しながら進むクロノとユーノ。

ユーノがバインドで縛り、クロノがスティンガーで傀儡兵の核を的確に狙い打ちながら突き進む。チームワークは最高の出来栄えだ。

 

「君のバインドのお陰でかなり楽させて貰っているよ!」

「ありがとね!君の魔法の精度も素晴らしいよ!!」

 

互いを褒めながら進むと時の庭園の機関室が見えた。

機関室へ飛び込むとそこには大きな動力炉とその中に浮かぶ小さな赤い宝石があった。

 

「あれが動力になってるロストロギアだね」

「早速封印してなのは達の援護へ向かおう」

 

そしてすぐさまユーノは封印に取りかかった。

ユーノの魔法陣から無数の鎖がロストロギアを取り囲み、ガキンッ!という大きな音を立てて封印した。

 

「さぁ、この事件を終わりにしよう!」

 

クロノとユーノは休む間もなく駆け出した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

時の庭園の外側、クロノとユーノのお陰で傀儡兵の転送が止んだ。

 

「なんか知らねえけど、転送されなくなったな!一気に終わらせようぜ!」

「同感だ、俺はもういい加減魔力が持たねぇからな!」

「晃毅はもう音を上げるのかい?」

「お前ら馬鹿魔力共と一緒にするな。それにこんな作業してても疲れるだけだ」

「なら、こいつ等一気に殲滅しても問題ないね?よし!カートリッジ、ロード!」

 

ガコンッガコンッと5回カートリッジの薬莢を排出させる射人。ディメンションスナイプの元々長い銃身が更に伸びて、周囲の魔力を収束し始めた。

 

「二人とも、ちょ~と本気で打つから後退して。巻き込まれても知らないよ」

 

間の抜けた喋り方をしているが、収束されていく魔力の強さと質は尋常ではなかった。カートリッジシステムのお陰で、なのはのフェイトを撃破したSLBなんかよりも威力は高いことなど目に見えていた。

神影と晃毅はその様を見ると一目散に後退をした。

 

「いくよ!これが今の限界点!カートリッジバースト!!!」

 

掛け声とともに噴射される収束砲。とんでもない轟音とともに銃身から飛び出した極太のそれは、右端から左端へと傀儡兵を薙ぎ払った。

間も無くして、傀儡兵は全滅。

転送もないことを確認して三人は安堵の息を漏らした。

 

「全く、何て威力の砲撃だよ……」

「ふぅ。幾ら負担が少ないからって、あれだけの規模の魔法はコントロールが難しいからキツイんだ。今のが本当に僕の限界だよ。今のところだけとね」

「取り敢えず、こっちの仕事は終わったな。なのは達の助けはいらないか?」

「今更行俺らが行ったところで足手纏いになるだけだ。なに、あいつらなら全く問題ないなんてことはお前らも分かりきっているだろう?というか、俺はもう魔力が限界だ。帰艦するぞ」

 

晃毅の言葉に射人と神影は頷いて、三人でアースラへと戻っていった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

こちらはなのは達、クロノの砲撃で倒れなかった強力な傀儡兵が蔓延る長い廊下を進んで行く。

フェイトも魔力を回復し、飛んで進む。

 

「何で、こんなに、障壁が、硬いのよ!」

 

アリサがぼやく。

無理はない。先程の表の大量の傀儡兵に混じっていたAランクの傀儡兵が庭園内では跋扈しているのだ。それに他の傀儡兵と違い連携までとる始末。アリサの魔法弾を凌いだのも二体揃って連携しながら障壁を展開しているからだ。

しかしそこはアリサ。強引に魔力弾を捻じ込んでいく。

炎熱変換された魔法は障壁に少しの亀裂を作り、そこから内部へと一気に燃え広がっていった。まるで大火事。

フェイトとなのはは合体技とも言える息のあった攻撃で次々と傀儡兵を倒していく。

アルフも三人をサポートしながら傀儡兵に攻撃を仕掛けていく。

四人の魔力と体力が限界に近づき息も絶え絶えとなったとき、遂にプレシアとディーの待つ時の庭園の奥地とも言える広間へと辿り着いた。

 

「母さん!!!」

 

扉を開け放つフェイト。

その開け放った先にフェイトが見た光景は、

 

 

 

自分そっくりな少女を抱えるディーと、泣いて膝を付く母の姿だった。

 

 

 

「何、これ……」

「フェイトちゃんが二人……?」

 

アリサとなのはが声を漏らす。

全く同じ姿ではなく、ディーの抱えるフェイトそっくりな少女の方が幼く見える。

フェイトは目を大きく見開き、丸くし、大口を開けてワナワナ震えていた。そして、自分の体を抱いて膝を着いた。

そんなフェイトを抱いて支えるアルフがプレシアをキッ!と睨むが、プレシアはただディーの方へと腕を伸ばして何かを呟くのみだった。

 

「ァ、ァ……。……アリ……ァ……」

 

 

 

時間は少し遡り、ディーとプレシアが対談する大広間。

ここでプレシアは憤慨していた。

 

「なんで貴方がここにいるの?何故帰って来たの?フェイト……」

 

声には出さず目と纏う雰囲気がその怒りの大きさを物語っている。

 

「母さんは、私が子供じゃないって言っていたけれど、それは違う!私は母さんの子供なんだ!」

「違うわ」

 

フェイトの言うことを間髪いれずに否定するプレシア。

 

「貴方は私が作った人形なのよ。娘なんかじゃないわ。あってたまるもんですか。貴女なんて人形はもう用済みなのよ。消えて頂戴」

 

冷たく言い放つプレシア。

 

「人形?母さん、それはどういう……!」

 

母の言葉が解せない子供、母曰くは人形。

プレシアはわからず屋ね、と愚痴って話し出した。

 

「貴女は私の産んだ娘……そして死んでしまった可愛い娘……アリシアの代わりとして作った只のお人形なの。でも、所詮人形は人形、アリシアの代わりになんてなれなかった。いえ、なれるはずがなかったのね。けど私は貴女を愛してたわ。だって、溢れ出るアリシアへの愛を他に向ける場所がないのだもの。でも、それも無駄なこと、無用なこと、これでお終いなこと。アリシアは生き返るのよ。だったら貴女みたいな代わりのお人形なんて要らないでしょ?だからとっとと消えてなさい!」

 

人形に激昂するプレシア。フェイトの目からは光が消えていた。

そんな中、ディーは肩を上下にクツクツ揺らし始めた。

 

「ふ、ふふふふふ。はっはははは!!!」

 

そのまま大声を出して笑い始めた。

バッとディーに顔を合わせて、その笑い顔に向かって叫ぶ。

 

「何が可笑しいの!?何だって言うの!?」

 

ディーは笑いを抑え込んだ。

無理に押さえ込んだため、引きつるような笑い声が響く。

その声がプレシアを余計に苛つかせた。

 

「何十年も精魂込めて作った人形を娘と思い、違うと分かるとすぐ捨てる。まるで駄々を捏ねて買って貰ったオモチャにすぐ飽きて、壊してしまう幼児と変わらんではないか!これを滑稽と言わずして、何を滑稽と言おう!

愛だのなんだの、汝に語る資格などない!」

 

大声で口角を上げて嘲笑うディー。

あまりの仕打ちにプレシアは机をダンッと叩き、顔を伏せてアリシア、アリシア、と自己暗示のように名前を呼び始めた。

顔を上げてディーを殺さんばかりに睨みつけると、ディーは不意に椅子から立ち上がり、フェイト達の方へ歩いて行った。

 

「プレシアよ。汝がフェイトに暴言を吐く時、アルフはいつも黙って見ているだけだったか?」

 

そう言いながらフェイトの肩に手を置く。

 

「まさか、それは!」

「その通り。幻だ」

 

手を離してディーがプレシアに振り返って見ると同時にフェイト達は煙が風に煽られたかのように霧散した。

 

「貴方、謀ったわね!?」

「そうさ、汝の真意を計ったのだよ」

 

喚くプレシアを横目にディーは自分の横に魔法陣を展開した。

何が来るのかと杖を出し身構えたプレシアは、今まさに光を纏っている魔法陣をしっかりと見据えていた。そして光が止むと同時に目を丸くした。

 

「どうしたプレシアよ。鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして。何かおかしいことでもあるのか?」

 

光が完全に止み、魔法陣の上に姿を現したのは。

 

アリシアであった。

 

いや、アリシアではなく、アリシアの亡骸が入った生体ポットと言うのが適当。

ディーはガラスに手を当てた。拳を作り、コンコンと叩く。

この仕草だけでさえプレシアは過剰に反応した。

 

「や、やめて!ガラスが割れたらどうするつもり!?その子をどうするつもり!?」

 

動揺するプレシア。

 

「母は強しとは言うものの、子有りきの話だったとはな。ここまで弱くなるとは」

 

バンッ!とディーはガラスへ強く手を打ちつけた。

パキンッと小さな亀裂が入り、養液が一滴ずつ垂れ始める。

 

「あ、ああああぁっっ!お願い、何でもするわ!だからその子はやめて!お願い!やめて!その、そのガラスが割れたらその子は、その子はぁぁああ!!」

 

ガラスに触れないでと懇願するプレシア。

 

が。

 

 

 

「我には関係の無いことだ」

 

 

 

そう斬り捨てると握り拳を作り、その手をポッドへと振り下ろした。

ガラスはバリバリと音を立てて、遂には砕け散ってしまった。溢れ出る養液。恐らく亡骸が腐るのを防ぐための特殊な液体だ。

プレシアの目からも涙が溢れ出る。

そのまま立っていることは叶わなくなり、膝を着いてアリシアへと手を伸ばす。

そんな母の姿を余所に、自分の体に巻いてある布でアリシアを包んで抱き上げる。

 

「汝が望み、叶えはしない。向こうへ渡った者は、戻らせない」

「アリシア……アリシアァァアアッッ!!」

 

そしてその後、フェイト達が来るまでの間、プレシアはアリシアの名前を呼び続けた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

フェイト達が来るまでのことをフェイト達に包み隠さず伝えるディー。

フェイトは途中で泣き出してしまった。

そして今、未だに突っ伏しているプレシアに、アルフの抑止を聞き流して歩み寄る。

 

「母さん……」

「……話しかけないで……」

 

優しく話しかけるフェイトを拒絶する。

そんな母の姿を見たフェイトはその場に膝を付き、地面に着けた母の手に自分の手を重ねる。

 

「触らないで!」

 

フェイトの手を叩いて退ける。

 

「貴女はアリシアじゃない!私が作り出した只のお人形!愛しても何にもならない!私は貴女なんてーーーー」

 

そして突き放すように叫ぶ。

 

「ーーーーー大嫌いよ!!!」

 

フーッ、フーッ、と息を荒げていきり立つプレシアの目を見て俯くフェイト。

 

「……てる……。そんなこと……」

 

先程の優しさのあるフェイトの声色ではなく、もっと何か子供らしい声色だった。

 

「知ってるよ!そんなこと!」

 

フルフルと震える体と声。心の叫び。

母に近づいた時に止みかけた涙は、また溢れ返っていた。

 

「母さんが私のことが大嫌い!?分かってるよ!知ってるよ!何となく感じてた。自分が自分で無いような感じ。思い出と、母さんと、世界と、何かが違う違和感。きっと私は違うから、何かが違うから母さんが冷たくなって私を嫌ってるんだって、分かってたよ!でも、どんなに嫌われても、私の思い出の母さんを見ると……。嫌いに、なれないんだ!どんどん好きになっていくんだ!だから私は、母さんが大好きなんだ!」

 

目を赤く充血させ、プレシアの手を握って瞳を見つめ、大声で心が叫ぶ。

 

「もう、自分が何言ってるか分からないよ……」

 

言葉にならない叫び、いや、言葉に出来ない叫びは、常に自分のことを後へ後へと回していたフェイトにとって、甘え方を知らないフェイトにとっての最初にして最高の甘えだろう。

アリシアならいざ知らず、甘え方を知らない、甘えたことのないフェイトなのだから、今までの反動は計り知れない。

今、その反動なのだろう。

その甘えが、プレシアの止まっていた心の海、波など全く無い海に一石を投じることになっていた。

 

「こんな、筈じゃ……。こんな筈じゃ無いわ……こんなにも心が揺れて訳が分からないだなんて……。アリシアのこともそうよ……。こんな筈じゃないわ!だからーーーッッ!」

「プレシア・テスタロッサ!」

 

広間の入り口から叫び声。

 

「世界は、いつだって……こんな筈じゃないことばっかりだよ!ずっと昔から、いつだって、誰だってそうなんだ!こんな筈じゃない現実から逃げるか、それとも立ち向かうかは個人の自由だ!だけど、自分の勝手な悲しみに無関係な人間を巻き込んでいい権利は、 どこの誰にもありはしない!!」

 

クロノとユーノだ。

クロノはデバイスをプレシアに向けて叫ぶ。

 

「そうやって貴女は塞ぎ込んで、認めないでいて、前を見ない。それが一体何になると言うんだ!」

「じゃあ、どうすれば良かったの?私は今の今まで、アリシアが冷たくなって、話さなくなってから、アリシアを生き返らせることだけを考えて、それを生き甲斐にして生きていたのよ?なのに、それを否定されたら、これからはどうやって生きていけばいいの?それとも私に死ねって言うの?答えてよ……お願い、答えて……」

 

プレシアの叫び声は力を無くし、消え入りそうなか細い声へと姿を変える。姿を変えて嘆願する。

 

「償え」

 

ディーが口を挟む。

プレシアは顔を上げてディーを見る。

 

「罪を償え、贖罪しろ。果たされたならば、また幸せを見ることが叶うだろう」

「私の罪は、許されるの?」

 

プレシアの問い掛けにディーはフッと笑って見せた。

 

「動き出した時の中で、ならばな」

 

 

 



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12話 無印編エピローグ

本日三話連続投稿です。
無印編はこれにて終了。閑話と設定資料を挟んでA’s編へと突入します。
また、新学期が始まったのでこれから忙しくなり、余計に時間が掛かるやもしれませんが、ご承知下さい。


◇年○月○日

 

今日、私に大切な宝物が産まれた。

 

アリシア

 

元気な声でよく泣いて、私がそっと抱き締めると、フッと寝てしまった。

あの人は逝ってしまってもういない。

けれど私は今、幸せをしっかりと噛み締めている。

この子は絶対に守ってみせる。

幸せにしてみせる!

自分と、まだ話せないアリシアとの約束。

これからは、彼方へ逝ってしまった貴方へ送るように、アリシアが一人立ちするまでの間は間隔が空いてもこの日記に記そうと思う。

これは離れても繋がっている私達家族の約束よ。

 

 

 

□年○月○日

 

仕事がドンドン増えていく。

アリシアと居られる時間が少ない。

ああ、今日はアリシアの誕生日だというのに、会議が長引いて帰るのが遅れてしまった。

それなのに、アリシアは家に着くと泣きながら、おかえり!といってくれた。

悲しくて泣いているのに、私を労ってくれるだなんて。

アリシア、遅れてゴメンね。

そして、5歳の誕生日、おめでとう。

 

 

 

▽年△月□日

 

上層部は無理難題ばかり押し付ける。

研究の進みが悪いからといって、給料をカットし始めた。

こんな、たった5年で新しい魔力炉を生み出せだなんて、技術者を馬鹿にしてるとしか思えないわ。

10年あっても普通は足りない。

アリシアの誕生日のために有給をとった私を完全に逆恨みしてる。

同僚の研究者も辞めていく。

上層部は来週には魔力炉を稼働させねばクビだとも吠え始めた。

背に腹は代えられない。

やるしかないの?

 

 

 

▽年△月□日

 

遂に魔力炉を稼働させることになってしまった。

万が一のために、緊急用の防壁の準備は常時展開してあるから大丈夫なはず。

もしこの実験が終わったら、結果は如何であれミッドを離れよう。

この会社に務めていても、私の、それよりもあの子の負担にしかならない。

自給自足ののどかなな暮らし、悪くないわ。

 

 

 

○年◎月●日

 

逝ってしまった

何故

何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故

 

 

 

◇年○月○日

 

アリシア、貴女をもう一度生き返らせる方法を探してみたわ。

一つはジュエルシードというロストロギア。

もう一つは、パソコンに何故か入っていた、プロジェクトF.A.T.E。

前者は考古学者でもない私には無理。

後者しか道はない。

待っててね、アリシア。

 

 

 

年 月 日

 

違う。

あの子はアリシアじゃない。

完璧なはず。

何が違う?

解らない。

記憶も性格も利き手も癖も、全てアリシアなのに違う。

愛したい。

でも違う。

ああ、アリシア。

 

 

 

 

年 月 日

 

『明日ジュエルシードを運ぶ船を襲撃し、ジュエルシードを第98管理外世界の地球に落とす』

そんな内容の手紙が届いた。

これはチャンスだ。

アリシアとは違うあの子、お人形を使ってジュエルシードの回収をしよう。

罠かもしれないけど、もう後戻りは出来ないところまで来ているのだから関係ない。

待っててね、アリシア。

 

 

 

「以上、容疑者プレシア・テスタロッサの拠点の時の庭園を捜索した時に見つけた日記です。この事から、容疑者は娘の死と追放などによって精神的に病んでいたため犯行に及んだと推測します。精神異常は検査にて医師が認めています。ジュエルシードを取り巻く事件にはまだ輸送船を襲った他の人物が絡んでるようにも伺え、この人物が容疑者に当てた手紙が犯行の後押しをしたようにも見えます。ちなみに、その輸送船襲撃反抗予告の手紙が此方です。故に、検察側の終身刑では重過ぎます。私達弁護側は懲役三ヶ月とリンカーコア封印、管理外世界への追放の処置を求刑します」

 

プレシアの裁判は進み、弁護側の求めた刑が下された。検察側はプレシアを冤罪にした過去を持っているため、裁判ではあまり強く発言はできなかった。

懲役三ヶ月といっても管理局への技術提供をするだけ、それにプレシア自身罪意識を持っていて再犯はあり得ないという事はわかりきっていることのため、扱われ方はある意味ではVIPと変わらない。

リンカーコア封印も、元々プレシアは研究と病によって身体が蝕まれていたためにもう魔法の行使は不可能だった。

あの時、PS事件では薬で痛覚を麻痺させていたために使えたのだ。

フェイトの裁判では、一ヶ月の観察処分が下された。

元々プレシアの精神異常による虐待を避けるためにとった危機回避の行動に過ぎない、というのが裁判長の判断だ。

裁判は終了し、フェイトとプレシアには一時的な釈放が認められた。

そしてここ、海鳴公園にてフェイトはなのはと再開を果たした。

手と手を取り合うなのはとフェイト。

友情とは、如何に美しいかと知らされる。

 

「アリサよ。混ざらなくて良かったのか?」

「性に合わないわ。あの空気は」

「そうか」

「っていうか、何であんたは口をモゴモゴしてるのよ」

「無償に飴を食べたくなったんだ。アリサもいるか?チョコならあるぞ」

「要らないわよ」

「じゃあ、これをなのはとフェイトに渡して来てくれ」

 

ディーはポケットからチョコを三つ取り出してアリサの手に乗せると、スッと後ろへ振り返って歩き出した。

アリサは顔を赤くして、う〜っ、と唸るとなのはとフェイトのところへ駆けて行き、輪の中に加わり手を取った。

男どもはそんな手を取り合う姿を見て、何故か頬を赤く染めている。

きっと男どもの目には二人の周りに白百合の花が写っているのだろう。

何とも言えない、この空気。

いつまでもこの場に居たくしてしまうこの安らかな空気。

フェイトは、なのはに手を振って、クロノの下へかけて行った。

お別れだ。

 

「なのは、アリサ、みんな、ありがとう!ディー、ありがとう!」

 

そう告げて、フェイトは去って行った。

なのはも別れを惜しんだが、さよならとは口が裂けても言わなかった。

何故なら、また会えることを楽しみにしているからだ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「アリシア……」

「アリシアだよママ」

 

公園の端、フェイト達から離れたところでプレシアはアリシアと再開を果たしていた。

プレシアの脇にはリンディがとても居づらそうにしている。本当なら自分はこの場から退散しなくてはならないが、プレシア監視の任があるので退散出来ない。

 

「アリシア、ごめんなさいね……。ママ、貴女を守れなかったの……」

 

プレシアはアリシアの前でしゃがんで目線を合わせて手を取った。

プレシアがギュッと手を強く握ると、アリシアは苦笑いしながら、ちょっと痛い、と言う。プレシアはごめんなさい、と謝りつつもその手の力を緩める事はしなかった。

 

「ママは謝らなくて良いんだよ。だってさ、ママ悪くないもん。私が死んじゃったの、全然ママ悪くないもん!」

「でも……」

 

割り切れないプレシアはドンドン顔を曇らせていく。

アリシアは、はぁ、と溜め息を吐いて顔をムッと膨らませた。

 

「あのねママ、私ね、一つだけ怒ってる事があるの」

「えっ……」

「私、死んじゃってから今までずっと見てたんだよ。ママ、フェイトの事をず〜っと虐めてた!私と違うからって、ずっと虐めてたでしょ」

「え、うん、そうね……、ずっと虐めてたわ」

 

プレシアは懐かしい思いで溢れてて、曇った顔でもそこから一喜一憂を見て取れる程心は安らいでいた。

 

「私が公園で始めて遊んだ時の事、ママは覚えてる?」

「ええ、昨日の事のように覚えてるわ……」

「あの時ね、一緒に始めて遊んだ子が、その子のママからチョコを貰ってて、それが羨ましくて奪って食べちゃったの」

「そうね、そんな事もあったわね」

「その時ママはさ、私の事を始めて怒ったんだよね。何て言ったか覚えてる?」

「確かあの時は……!」

「「そんな事して虐めをしたら、独りぼっちになっちゃうわ!」ってね。それで私が泣いちゃったら、ママこう言ったの。「悪い事をしたら、まずはごめんなさい。それで、一緒に遊ぶの。独りぼっちなんかにはならないし、楽しい事が沢山あるわ」ってね。それでね、私にキャンディーを持たせて「ごめんなさい、出来るよね?」って言ったの」

 

ぽつりぽつりとアリシアは語る。その目は段々腫れぼったく潤んでいる。

 

「だからね、ママもフェイトを虐めたんだから、ごめんなさいしなきゃ駄目!今までずっと独りぼっちで、楽しい事なんてなかったけど、ごめんなさいすればきっと楽しい事が沢山あるよ!ね、ママ、約束だよ?」

 

そう言うと、アリシアは一度プレシアの握る手を払ってポケットから飴を取り出してプレシアの手のひらに乗せた。

 

「えへへ……」

「アリシア……」

 

アリシアは左手の小指を立ててプレシアへ向ける。プレシアもそれに応え、小指と小指を絡めて二、三回軽く手を振った。

そしてプレシアは小指を離すとアリシアを強く、強く抱き締めた。

壊れてしまうんじゃないかと自分でも思うが、この衝動をとても抑える事なんで出来なかった。

 

「ママ、苦しいよ……」

「アリシア……アリシア……」

「ママ……」

 

不意に、プレシアからアリシアの体温が下がるのを感じた。別れが遂に来てしまった。

 

「ママも分かってると思うけど、私はもうパパのところに行くみたいだよ」

「…………」

「元々死んじゃってるんだもん。それを無理言ってディーさんにこうして貰ったの」

 

アリシアは生き返らない。ディーはそう決めたが、アリシアが別れの言葉を言いたいと嘆願した為、一時的にアリシアは生き返っている。

だから、時間に限りがあった。

アリシアは遂に自分で立つ事が出来なくなって、自分を抱いているプレシアへと持たれかかる。どんどん体は冷たくなっていく。

 

「あのね、パパって私が産まれた時にはもういなかったでしょ?だから、どんな人だか会うのが楽しみなんだ」

 

二人の目から涙が溢れる。

人はこんなにも泣けるのだろうか。きっと普通の人生を送る人の一生分の涙を今流しているのだろう。

20年ぶりの再開を経て、アリシアは彼方へ旅立とうとしている。

 

「アリシアは死んでしまったが、魂はまだ此方にあったのだ。20年間ずっとプレシアを見ていたが、話しかける事は出来なかったんだ」

 

ディーが歩いてリンディの横に立つ。

 

「ディーさん、ありがとね。最後にママと話せて、私もう思い残す事はない」

「ありがとう……本当にありがとう……」

 

泣きじゃくる二人にディーの姿はきっと見えていないだろう。

 

「じゃあママ、私逝くね。パパもきっと待ってるからさ。フェイト、私の妹と仲良く暮らしてね……約束だよ……」

「分かってるわ……。あの子は私の娘だもの。アリシアの妹だもの。幸せにしてみせるわ。だってアリシアと、フェイトのママだもの……」

「あのね、ママ」

「なあに、アリシア」

「ここまで育ててくれて、楽しい事をいっぱいしてくれて、ありがと……」

 

アリシアは静かに、安らかに息を引き取った。

 

 

 

 

 

 

ミッドチルダへ向かい航行する次元艇アースラ。

そこの一室に肩を並べて持たれ会いながら眠る母と娘。

娘からは飴の、母からはチョコの甘い匂いが漂っていた。

 

 

 



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閑話

遅れてすみません。
忙しいくなって参りました。
見苦しい言い訳ながら、入試用の小論文とか書く練習してて、文を書きたいという意欲が薄くなっていたのが原因だと思います。

今回は圧倒的繋ぎ回です。故に短めです。
ちょっと訳の分からない文字の羅列だと思いますが、構わないという方はどうぞ。
そして、評価と感想が非常に欲しいです、はい。あれは自分の活力になるものなので、どしどし気軽にやって下さい。というか、お願いします。




争いは嫌いじゃない。

何か次のレベルへ登る時必ず争いが起きるのだから、嫌っていても絶対に起きてしまうのだ。

勉強、スポーツ、市場、文化、進化。

全て争いの中で次のレベルへと達している。

そこに、一番醜い争いである戦争は含まれるのか。

含まれると思う。

例えば、戦争が無ければ飛行機は実用化されず、人が月へ到達する事もあり得なかった筈だ。

戦争は醜い。

しかし知っている限りでは必ず未来で意味を成してきている。が、今起こっている戦争は未来ではきっとその結果が役に立っている、とは考えられるだろうか?

どうだろう?分からない。

未来を知る者など誰もいない。

今目の前に広がるのは惨たらしく焼け爛れた大地。地には無数の死体が転がり、生きているものも殆どが何かを失っている。

森、草原、湖、川、山、動物、目、鼻、耳、指、手、腕、脚、人、心、魂。

ここまで失ってまで得るものとはどれだけ大それたものなのだろうか?

そこまでして次のレベルへと達して意味があるのだろうか。

要らない。

そんなものは何一つとして必要ない。

 

「王、何かお考えのようで?」

 

ああそうだ。

こんなの最早戦争なんかではない。こんなものは未来に何も齎さない。只の生き地獄だ。

見るに堪えない。自分のせいでこうなった事が余計にそうさせる。腹立たしい事この上ない。

 

「どうするおつもりで?」

 

終わらせる。

この地獄を終わらせる。

後世には遺さなくていい。記さなくていい。伝えなくていい。こんな地獄を知る必要など微塵もない。

 

「左様で、御座いますか」

 

ああ。

そして、私もまた消える。

そうすれば、他のより一層偉大な指導者によって平和が訪れるに違いない。

 

「貴方様をお亡くしになるのは、家臣としては心苦しい限りであります。しかし、貴方様はもう決心なされていらっしゃいます故、小生が止めるのは憚られます……。しかし、申し訳ありませんが、この事柄は記させて戴きます」

 

何故だ。

記すなと言ったのが聞こえなかったのか?

 

「地獄を知っている民は二度と地獄を作ろうとはせず、皆天国を目指そうとするように、この地獄があった事をを後世に遺す事で、多くのものがこの生き地獄を作らずに天国を夢想するのです。負の遺産、あえて言うならば『黒き歴史』として後世に語り継ぐべぎ、唄われるべきなのです……」

 

歴史は廻るというがな……。

好きにするがいい。

兎に角。明日、否今宵にはこの地獄に終止符を打とうぞ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

プレシア・テスタロッサ事件、通称PT事件から数日、とある取り決め事が管理局上層部の会議にて議論された。

ディーの存在に付いてだ。

発掘された古代の遺産、願いを叶える願望器であるジュエルシードのその管理人格。それがディーの肩書き。

無理にでもジュエルシードを管理しようとしてディーの怒りを買う様な結果になった場合、どんな惨事が起こるかなんて想像も出来ないが、ジュエルシード一つで街や国、下手をすればその星さえも消し飛んで消える、なんて事は洒落にならない。

アースラ艦長を始め、ディーと縁を持った魔法関係者に対する事情聴取の結果からすると、前述の事が起こされる可能性は極めて低いが、如何せん力が力だけに野放しにするのはそれはそれで非常に危険だ。

そう、会議で結論付いた。

何をするかは明白で、会議終了からまた数日後、ジュエルシードの多重封印が決行された。

ディーの力技と管理人格としての封印魔法の解読を用いれば封印解除なんて造作でもないが、それは管理局上層部が行ったジュエルシード多重封印に関しての説明(土下座での願い込み)に免じてやめておいた。

ディーのその後の扱いは第一種警戒ロストロギアとなり、封印状態にあり、かつ主としてディーに認証されているアリサから引き離すのは不祥事を起こしかねないという判断のもと、現在アリサのディー所有権が認められている。

 

そして現在八月中旬夏休み真っ只中、アリサ達海鳴魔法少年少女はバニングス家の所有するプライベートビーチへと遊びに来ていた。

澄み渡った蒼い海、唸る白波、熱を帯びた白浜、そよぐ潮風、視界を遮る物がなに一つ無いただ真っ直ぐな水平線。そこにある光景一つ一つが美しく洗礼されており、その中でも全く気取っていない素朴な姿に、こういった風情なんて知る由も無い小学生まで魅了された。

 

「うひょ~、何だこの海岸は。こんなの見せ付けられたら、俺が今まで遊んでた海岸は何だったのか考えさせられるな」

「それは今まで遊んでた海岸、ていうか海鳴海岸に失礼なの……」

「中々いいビーチでしょ?ま、お父さんが所有するビーチの中じゃ中の下位なんだけどね!」

「そんなドヤ顔で無い胸張られてもゴメンナサイナンデモナイデス」

「お前は小学生に何を求めているんだよ……」

「…………はぁ……」

 

みんな既に着替えは終わっており、もう遊ぶ準備を済ませているところだ。

子供たちが海を見てお喋りしたり漫才している横で、その保護者たちは砂浜にシートを敷いたりパラソルを立ってたり、浜の脇に並ぶヤシの木にハンモックを取り付けたりしている。

なのはの父である士郎が「準備体操してから海に入りなさい」と子供たちに言って聞かせると、みんな「はい!」と元気良く返事をして準備体操をして海に飛び込んだ。

 

「なのは、お前って確か泳げなかったよな?大丈夫なのか?」

「うん、大丈夫だよ。足が着くとこまでしか行くつもりはないの。私を心配してくれるの?」

「そんな事当たり前だろ」

「ありがとね!……と、ところでさ、私のこの水着だけど、どう?」

「うーん。明るい色で可愛いと思うぞ」

「ふぇ!?あ、ああありがと……」

「そりゃどういたしまして」

 

まだ海面が膝までしかないところでなのはと神影によって桃色空間が出来上がった(片方無自覚)。

射人がその光景を見てニタニタしていると、すずかの手によって横から顔面目掛けてビーチボールをぶち当てられた。そしてすずかは射人に対して色々とケチ付けた。「ニヤニヤするな。配慮が足りない。自分は何か言う事が無いのか」最後のほうは支離滅裂になっていて意味を解せないが、言いたい内容はこんな感じだった。

余談だが、ヤシの木陰のハンモック付近でなのはの兄の恭也とすずかの姉の忍が、良い雰囲気を醸し出していたりする。

子供たちとなのはの姉の美由紀はその後ビーチバレーを始め、なのはの母の桃子はパラソルの下で読書などしている。

 

必然と余った男二人で会話を始めた。

 

「子供がああしていると微笑ましいですね」

「そうだな。お前は自分の子供を盗られた、なんて気持ちになったりはしないのか?」

「はは、そりゃなりますよ。でも良いんです。今よりずっと幼くて親が親として必要な時に何もしてやれなかったんですから」

「ほう、続けてくれ」

 

士郎から始めた話をディーは聞くことにした。

 

「僕は仕事柄怪我が多くてね、桃子と結婚したのを機にゆったりと喫茶店でもやりながら暮らそうと考えていたんです。でも結局辞めたのはなのはが生まれてから数年してから。しかも店の準備も大詰めで忙しい時に大怪我という形でね……」

「…………ふむ……」

「僕は意識がないし桃子は店の事で忙しい。恭也はやさぐれて美由紀も同じく。遊びたい盛りのなのはに誰も構ってやれなかったんです。ずっと『良い子にしててね』『我慢しててね』そんな言葉ばかりかけて、甘え方を知らない子になっちゃって。一人で公園で俯く幼女って、ご近所さんの間で有名になっちゃったんですよ。親兄弟はなにやってんだ!ってね」

「…………」

「そんな時になのはの相手をしてくれたのがあの神影君だったんだ。いつも公園で俯いてるなのはと遊んでくれたんだ。彼には本当に感謝しきれないし頭も上がらない。ディー君、君はなのはが盗られるとかどうとか言っていたけれども、それは違うんだ。僕がなのはを自分の膝元に置くという事は、なのはの居場所を無くしてしまうのと同じなんだ。だから盗られたなんて思えないんだ。親として悔しいとは思うさ。でも、もう出来上がってしまったなのはの居場所を壊すことなんて出来ないんだ。あれ、なんだか言葉にし辛いなぁ。何て言えばいいんだろう……」

「…………zzz」

「ええっと。て、寝てるのかい……」

 

ディーは士郎の独白を最後まで聞くことなく眠っていた。

 

 

 

この後全員でバーベキューをしたり、海岸近くで運良く掘り起こされた温泉へ入りに行ったり、浜辺近くの別荘で寝たり。楽しくて平穏な一時をゆったりと過ごした。

静かだった。

平穏だった。

まるで、嵐の前の様に……。

 










ギブミー評価&感想なり!


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設定資料

ここまでのオリジナルの設定をまとめてみました。
そして、この回をもって無印編終了とします
読者の皆様のおかげでここまで来れました。

詳しい事を書くと今後のネタバレになりかねないので、今までの範囲で書ける設定を書きました。
感想でどしどし設定に関するツッコミを募集しますので、答えられる範囲でどんどん答えていきます。


〈ディー〉

本作の主人公その①。

ウィツアルネミテアの能力を貰い転生。

生い立ちは、アルハザードにてジュエルシードをコントロールする為のデバイスの管理人格として転生するが、何らかの理由で爆睡してしまい、目覚めたら原作一歩手前。

主人公としての側面が非常に薄い。

本物のディーとは違い野心家ではないが、何かを画策するのが得意。

無駄にハイ(廃)スペックな上にクソチート。

ジュエルシードを封印されているため、魔力源であったジュエルシードの代わりとなるアリサからの魔力供給が無ければ魔法こそ行使出来ないものの、管理人格という言わば人工知能的存在のため計算やデータ処理等のデスクワークはスパコン6台分の働きは出来る。やはりクソチート。

 

 

〈鬼灯 神影〉

オリキャラ。主人公その②

金髪碧眼のオッドアイで、ミッド人と日本人のハーフ。容姿は母親似で、父親がナデポ、ニコポの体現者なうえに天然ジゴロ。それを遺伝で継いでしまった不遇な少年。なお、父親はこれのせいで女性の嫉妬によって刺殺された。

容姿から踏み台転生者だと思われるがちだが、実際は両親を亡くし身寄りのない可哀想なただのオリキャラ少年。オリキャラなのでprprやhshsなんて言ったり考えたりしない。しないんじゃない?まあちょっとは覚悟しといた方がいい。

母親が病気にかかった時に魔法の存在を知り、母親の大剣型ストレージデバイスの『ヘルシャー』を形見に一人修行に励む事4年間。魔力光はディープブルー。

冷水の魔力変換資質を持っている。

魔力ランクはS。

 

〈ヘルシャー〉

鬼灯神影の専用デバイス。

武器としての形は2mにも及ぶ片刃を持つ大剣。

近代ベルカ式用のインテリジェンスデバイスで、ベルカ時代の遺産で発見されたカートリッジシステムのプロトタイプ。プロトタイプのためカートリッジをリロードして魔法を行使すると、オーバーヒートや処理落ちを起こして壊れてしまう。

AIの設定性別は男で、非常に大雑把な性格。

待機状態は腕輪になる。

 

 

〈蛇 晃毅〉

転生者で、主人公その③。

ざっくばらんに切られた髪の毛と蛇のような目付きから、怖くてクラスメイトから敬遠されていた、元少年兵の転生者。

少年兵ながらゲリラ戦で武勲を立てまくって民主化運動の英雄となるが、崇められることに嫌気が差して自棄酒飲んでる所を襲撃為れて射殺され、転生した。

転生したはいいものの、平和を体感した時に違和感を感じ、戦場が恋しくなってしまっている。戦えるうちは誰かの為に戦いたいという、ある種の戦争狂。

ストレージデバイスの『ビッグボス』はMGSPWのスネークが使える装備と同じ重火器の形をとり、重火器ごとの特性を魔力弾で再現する(例えばマシンガン系なら魔力弾の連射、グレネード系ならば爆発、ライフル系なら遠距離攻撃と貫通力など)。

なにかアリサに想いがあるように伺える。

魔力光は鈍色。

魔力ランクはC。

 

〈ビッグボス〉

晃毅の専用デバイス。

ストレージデバイスのため話したりしない。

晃毅がディーに「力が欲しい」と願ったところ、渡されたデバイス。

MGSPWにて使える装備の形へと任意で変更できるうえ、魔力弾の特性を武器によって自動で変えてくれる超高スペックデバイス。

(例:・アサルトライフル系→魔力弾を連写出来る・バズーカ系→着弾及び近接信管によって爆発。・スニーキングスーツ→身軽で潜伏時にはステルス効果が発動する・バトルドレス→魔力の効率と威力を高めてくれる代わりに、ステルス効果は皆無になり鈍足になる)

待機状態、BJ装備状態も常にバンダナとなっている。

 

 

 

〈種子島 射人〉

転生者③。

焦げ茶色の髪で弱冠もやしっ子。性格は至って温厚。しかし、トリガーハッピーなため銃を持ちスイッチが入るとキチ◯イに変身。

前世にて、ガンアクションにどっぷり嵌ってクレー射撃やフリーライフルなどをやり始めるが、自分が嵌ったガンアクションとの違いに全く満足出来ずにいた。

神への願いは、呂布、那須与一、ウィリアム・テルを合計した狙撃能力。この願い、本人は後に努力して狙撃の腕を上げれば良かったと後悔している。余談だが、何故かシモ・ヘイへの名前は出さなかった。

魔力光は白。

魔力ランクはA。

 

〈ディメンションスナイパー〉

射人が神への願いで頼んだ専用デバイス。

ストレージデバイスなので、喋らない。

1.8mという非常に長めな銃身を持つスナイパーライフルの形をする。強力な砲撃を撃つ際は2mと更に長くなる。

チャージ式、マシンガン式、照射式と用途に合わせて魔力弾を撃ち出し方を変えられる。

カートリッジシステムを搭載しており、チャージ式と照射式は一発一発薬莢を排出するが、マシンガン式の場合はフルオートとなる。

カートリッジシステム使用時は、魔力弾一発の威力がカートリッジに込められた魔力と比例する。

本デバイスの最大の特徴は、「打ち出す魔力弾を次元移動させて狙撃出来る」という技。射線関係なく他世界への狙撃も可能だが、消費魔力が多過ぎて現在の射人では扱えないので、完全に宝の持ち腐れとなっている。

遠距離からならば現行のデバイス最高の性能と言えるが、接近されてしまうと近接武器が無いため、手も足も出なくなってしまう。

 

 

 

〈アリサ・バニングス〉

魔法の素質が非常に高く、ディーのマスターである原作キャラ。

性格はディーと出会った事と、原作通りなのはと関係を持つようになったために非常に大人びている。ツンデレ(?)。

魔力光は真っ黒。

炎熱と深淵の魔力変換資質を持っている。

魔力ランクはA+。

 

〈ジュエリング〉

アリサのエルルゥ風髪飾りとなっているデバイス。特殊だが、インテリジェンスデバイスの括りに入る。

ジュエルシードの管理用に作られたデバイスで、言わばディーの本体。現在は本デバイスのAIであるディーが現実世界へと出ているため、ストレージデバイスとしての働きをしている。

BJ展開時に展開者の腰に据えられる一振りの刀は、その刀身に受けた魔力の特性を斬撃に纏わせる事が出来る。(例:・電撃→速くて痺れる斬撃 ・炎熱→強力な衝撃と熱波に切れ味)

 




※追記:ディーについての説明文にて説明不足な点がありましたので、修正させて頂きました。御指摘ありがとうございますm(_ _)m

※追々記:これかは自分でこの小説を読んで変なところや、違和感を感じるところは修正していきますので、そこのところよろしくです。


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A’s編
1話 プロローグ


長らく更新が遅れてしまいました。

更新が遅れた理由ですが、ひとえに本作品への創作意欲衰弱です。
書こうにも、書きたくてもなんだかこう、いまいちピンと来ないというか、キーボードを叩く指が動かなかったのです。息抜きにIS二次とオリジナルを2.3話ずつ書き溜めたのですが、そっちも結局納得行かずに停滞。もう会員解除しようかな?とも考えたり……。
そこからはずっと読み専です。
他の作者さんの作品を読んでて、「面白いなぁ、こんな風に書けたらいいなぁ」と思っているうちに、書きたくなって今に至るわけです。

鬱陶しい言い訳と能書きはこの辺にして、いよいよA’sに入って行きます。
愛想尽かしてしまった人も多いと思いますが、これからも読んで楽しんで下さると幸いです。


 ある雨が降り続いた六月水曜日の昼下がり。今は雨が止み、どんよりと重めの雲が広がる空の下ではなく図書館の中で、少女が一人本を読んでいる。

 おそらく小学三年生と推測される容貌を持つ彼女は学校へ行くべきなのだが、行かずにこの図書館に居るのには理由がある。

 彼女は車椅子での生活を強いられていた為に、学校へは通えないのだ。

 少女は元々、公立の小学校へと通っていたのだが、いつからか下半身の自由が効かなくなり車椅子の生活へ。ただの公立小学校に車椅子用のリフトやエレベーターが有るわけがないが、義務教育という制度の為在籍する必要はあった。私学では金銭の問題から通えそうにはないので、図書館に来て自主的に学習している。

 親の姿は見当たらない。

 共働きでこの場にいないのではなく、もうこの世にいないのだ。

 今は叔父を名乗る人物から支援を貰って生活して居るので、孤児院には入っていないものの、その叔父の姿を見たことがない。

 足長おじさんで有名な物語なら、少女は自由に動き回れたが、こちらの少女は自由に動き回れない。

 常に独りだった。

 家族がいないというのは、高々9.10歳の少女には過酷過ぎる試練だ。

 自炊は当たり前で、選択も自分。抱え込み易い性格なのか、ホームヘルパーも呼ばないので風呂なんて一苦労どころではない。ちょっとバランスを崩し、車椅子ごと転倒してしまったら、効かない下半身と年相応の力しかない細身の腕で、這い上がらなくてはならない。少し前までは、そんな辛い思いをする度に、目を頬を濡らしていたが、最近はもう濡れたりしない。

 来る日も来る日も家では独り。

 もう濡らすことは無いだろうと思っていた目と頬は、気付いたら濡れていることがたまにある。その都度、どうしようもない虚無感に襲われる。図書館からの帰り道、楽しそうに走り回りながら下校するランドセルを背負った子どもを見ると、嫌悪感と嫉妬心がふつふつと湧き上がる。しかし、こんな風に湧き上がる醜い感情はまだまだ序の口だった。色々と達観しているのか、だんだんそういったものは湧き上がって来なくなる。

 一番酷いのは、親子で仲睦まじくしている光景を目の当たりにした時だ。

 この時、少女の心では処理できない感情の波が精神を埋め尽くしてしまうのであった。

 

「何で私だけこんなんなん?」

 

 ふと、声が漏れてしまった。

 今彼女が読んでいる本に、家族の素晴らしさを語る文章が出てきたのだ。

 本の主人公の少女が、楽しそうに家族と遊び回っては笑顔を振り撒く姿がぽかりと頭に浮かぶ。

 彼女は、本の少女の姿と、自分の今の境遇を照らしてしまった。気が付くと、頬を濡らしてギリッっと奥歯を食い縛っていた。

 

 図書館も閉館の時間となり、今日あらすじを読んでみて興味を持った本を見繕って借り、車椅子に取り付けられた籠へと入れ、帰路に着いた。膝の上にはチェーンで十字に縛ってある本が置いてある。今まで読んだことがないどころか、開けもしないこの本が何故かお気に入りだ。図書館から家までは歩いて通える距離なのだが、それは体に自由の利く人だけで、車椅子使用者にはとてもじゃないが通えたりは出来ない。バスを使って通っている。

 バスの運転手の手伝いを経てバスに乗り、ケータイがブーブーと震えるのを感じて開く。自分の病のことで厄介になっている、主治医の石田からのメールだった。

 内容は、明日病院にて検診があること。明日が少女の誕生日で、そのお祝いの食事へのお誘い。大まかに言えばそう書かれていた。

 

「別にそんなもん要らんわ」

 

 石田の好意は分かってるけれど、これは理屈じゃない。反故にするつもりはないが、思わずにはいられない。本当に欲しいのは誕生会の誘いやプレゼントではなく、自分を愛してくれる大事な家族だ。

 石田が自分のことを肉親の様に愛してくれているのは重々分かっているのだが、主治医と患者の関係以上にはならない。医者とはそういうものだから仕方が無いのだ。

 家に帰るためにバス停からは、信号を渡って住宅街へと抜けて行かなくてはならない。そのために信号待ちをしていたのだが、やけに青に変わるまでの時間が長く感じた。

 漸く青に変わったのを確認して車椅子のグリップに手を掛けて前へと進む。

 何かがおかしくなった。

 もう既に陽は落ちて暗がりとなっているはずなのに、昼間以上に明るい。それに光は横殴りだ。ハッと光の眩しい方へと顔を向けると、なんと眼前にトラックが迫っていた。轢き殺さんばかりに

 グングン加速してくるトラックだが、何故だかゆっくりと感じる。ああ、これが走馬灯なんかな?という誰にも聞こえない小言で呟くと、少女はフッと意識を手放した。

 

 




次の更新はいつになるかは自分でも分からないので、当てにせずまったりとお待ち下さいませ。


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2話 衝突は混沌への合図

お久しぶりです
感想より、このような拙作を待たれている方から応援を頂いたため、難産ながらも書き上げることが出来ました!この場では名前は出しませんが、本当にありがとうございます!
そして、エタりそうになってしまい、申し訳ありませんでしたm(_ _:)m
一応、今週中に書き上げるというものを目標にやらせて頂きました。ギリギリセーフですかね……?週の初めを日曜日としてる方的にはアウト……ですかね?




 暑さも寒さも彼岸までとはよく言ったもので、ここ海鳴市でも彼岸を過ぎた辺りからはめっきりジメジメとした暑さを感じなくなった。夜は肌掛けでは寒く感じ、朝の風は冷たい。12時を回る頃には日差しは優しく照りつけて、秋風が一層涼しく感じて気持ちが良い。

 そんな心が落ち着く陽気の中、少女高町なのはは登校してきてから放課後まで、心はここにあらずにそわそわとしていた。

 

「なぁ、アリサはあれを見てどう思う?」

「正直ウザイわね。話しかけても、「うん、そうだね」と「あはは、そうなの?」だけで全部返されるし」

「え、アリサ拒否られてるの?」

「そんなわけあるかぁ!」

「げはぉ!?」

 

 アリサ・バニングスの綺麗な胴回し蹴りは、種子島射人の脇腹へと吸い込まれた。のはどうでもいいことで、問題は友人を適当にあしらうなのはの態度だ。

 今まで彼女はウジウジしながらも人の話はしっかり聞いていた。しかし、今回はちょっと様子がおかしい。気持ち悪い。

 普段うわの空な時、だいたい体などを軽く揺すってやったり45度の角度でチョップを入れるとこちらにしっかり顔を合わせるが、今回は見向きもしない。それに、なのはのこういった場合は俯いて眉を顰めて溜め息を吐くのが定番だったが、今回は緩み切った頬とデレっと垂れた口元で常にニヤニヤしている。

 

「アリサ、心当たりあるだろ」

「あるけどみんなには言わない。つまんなくなる」

「でもさぁ、あれがああなるのはなんて言うか、凄い気になるんだよ」

「優等生で通ってるなのはちゃんが、先生を完全に無視って……。先生の目がこうクワーッ!てなってたよ」

 

 アリサと晃毅、神影は冷めた目で、すずかは苦笑いしながら今のなのはを眺めている。

 突然、なのはがこちらに顔を向けて寄って来た。

 

「みんな、今日は凄いニュースがあるの!聞きたい?聞きたい!?」

「あ、これウゼぇ」

「ウザくないもん!」

「いでっ!分かった!分かったからペチペチ叩くな。地味に痛いぞこれ」

 

 非常に面倒臭いなのはの絡みに耐え切れず、神影はつい本人の目の前で本音を漏らしてしまった。

 

「で、凄いニュースって何だ?あれだけウザい醜態晒してんだから、ショボかったら定規でシッペするからな」

「ショボくないし、それ普通に痛いよ!」

「早くしろよ」

「そっ、そうだった……。えー、明日転校生が一人来ます。誰でしょう?」

 

 こほん、と一度咳払いしてから出題した。何故かなのはは偉そうに胸を張って、フンッと鼻で息を漏らした。

 この時、アリサ達はなのはが今まで浮ついていた理由が分かった。きっとこの転校生がその原因なんだろうと?

 暫くしてなのはが声を出した。

 

「みんな、誰だと思う?さぁだーれだ!」

 

「フェイト」

「フェイトじゃね?」

「テスタロッサだろ」

「みんなが言うフェイト……さん?」

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 なのはは夕食を食べて風呂から上がり、そのままベッドへダイブした。

 

「何でみんな分かったのかな〜?」

『マスターの表情とかが非常に分かりやすくて、目星を付け易かったのでは?』

「結構ポーカーフェイスは得意なんだよ?辛い事あっても顔に出さない様に出来るよ?」

『それは自慢にならない事なのでは……』

 

 そんなやり取りをしていると、キィンと小さな耳鳴りと共に違和感がなのはの周りを包んだ。だが、この感覚は幾度も感じたことのある感覚だ。

 

「レイジングハート⁉︎」

『はい、何者かが結界を張った様です。恐らくこの海鳴市全体を覆うくらいのものを』

 

 それを聞くなりなのははバリアジャケットを展開して外へ飛び出した。

 飛び出した街は結界の中でコンクリートのジャングルと化していた。結界の側面は鈍く滲んだ虹色をしていて、今まで使っていた結界と少々異なるものの、その場の全てが醸し出す雰囲気がP.S事件の出来事を思い起こさせた。

 きっと良くないことが起こってるんだ。あの時みたいに。

 なのはは直感でそう感じ取って、こちらへ接近してくる結界を張ったであろうものの前まで飛んで来た。

 そこに居たのは、なのはより拳一つ分ほど背丈の低い、赤いドレスを彷彿させる服と特徴的なウサギが付いた帽子を纏った少女であった。

 

「貴女は誰?ここで何をしているの?」

 

 なのはが手を振りながら話しかける。それと同時に、念のため魔力弾を生み出してビルの合間に隠しておく。

 

「…………グラーフアイゼン!」

 

 少女はなのはの言葉に反応は示さずキッと睨み付けると、魔力弾を生み出して手に持つ鉄槌、デバイスであろうグラーフアイゼンと呼ばれたそれで思い切り殴りつけ、なのはへ向けて撃ち出した。

 なのははプロテクションで防御するも、とんでもなく重い魔力弾で、なのはのプロテクションをガリガリと削ってもなおぶち当たろうとして止まらない。

 なのははそれを横へそらす事で回避した。

 

「口で何も言わなかったら、分かるものも分からないよ!」

 

 なのはは、隠して待機させておいた魔力弾を向かわせた。

 少女はなのはの桃色の魔力弾を最小の動きで避けてるが、避けた魔力弾はそのまま通り過ぎる事なくUターンしては追尾するのを繰り返した。

 その様子を見て少女は舌打ちをし、自分の魔力弾でなのはのそれを撃ち落とし、残り少なくなったものをグラーフアイゼンで振り払う。

 その少女の立ち回りは一瞬の出来事であったが、なのはが砲撃魔法を準備するには十分な時間だった。

 

「ディバインバスターッ!」

 

 桃色の光が少女に向かう。少女はそれに気付き身を捩って紙一重で躱した。しかし、ディバインバスターが少女の頭上をかする通過したせいで、少女のバリアジャケットの一部である帽子が霧散してしまった。

 あっ、と嗚咽を漏らして手を伸ばしても消えてしまった帽子が完全に消えると、物々しい形相でなのはをキッと睨み付けた。

 

「テメェ……!」

「あ、あれ?なんで私怒られてるの?」

『ここまで目の敵にされるとは。マスター、何か恨みを買っていたのでは?』

「私そんな悪い事してないよ!?」

「グラーフアイゼンッ!」

 

 少女は怒りに任せてデバイスを下へ振りかざした。すると、デバイスである鉄槌の付け根の部分がスライドして薬莢を吐き出した。

 途端に、少女から感じる魔力の大きさが一瞬のうちに膨れ上がった。

 

『ラケーテンハンマー』

「ぶち抜いてやるッ!」

 

 膨れ上がった魔力を圧縮して放出、なのはへ向かって一直線。

 なのはが砲撃し易い様に無意識にとったそれなりの距離を反応出来ない速度で詰め、そのスピードのままグラーフアイゼンをなのはへ殴りつける。

 回避こそ出来なかったものの、プロテクションが間に合って少しばかりホッとしたなのはだが、少しばかり様子がおかしい。受け流すようにしてプロテクションを斜めにしても、少女の鉄槌は全然横へ流れようとはしたいのだ。

 グラーフアイゼンのプロテクションに当たっている先端をよく見やってみれば、恐らく魔力で駆動しているであろうスパイクが掘削機の様にガリガリとプロテクションにひびを入れながら食い込んでいるのが見て取れる。

 マズいと思って強引に回避しようとするも時すでに遅く、なのはのプロテクションは粉々に砕かれてしまい、残った鉄槌の余った勢いで思い切り殴り飛ばされていまう。余った勢いといっても、生半可なものではない。

 あまつさえプロテクションでガードしていたというのに、それをぶち抜いた勢いだけで軽々と吹き飛ばされて後方のビルへ突き刺さり、バリアジャケットは紙切れ同然のように散り散りに、レイジングハートも再起不能寸前まで損傷を受けている。

 防御の硬さには自信のあったなのはだが、フェイトとの戦いでさえここまで傷付いていないのだから、初めてのことであった。

 意識が朦朧とする中、なのはの目には鉄球の魔力弾を打ち出す構えをとる少女の姿。

 人は何かしらで死ぬ一瞬の時間、例えば歩道を歩いている時目の前から突っ込んで来るトラックや、崖から落ちて迫り来る地面を見て、それらのほんの一瞬コンマ1秒の時間がまるでハイスピードカメラで捉えた映像のようにスローに見える。今正になのはには、少女の鉄球が恐ろしいスローに見えている。

 

 殺しはしねぇよ……。

 

 鉄球と共に少女の口元の動きをなのはは目にした。そして疑問がふと頭の中をよぎった。

 

(殺さないの……?じゃあ、なんで……こんなことをするの……?…………知ら……なきゃ…………。お話し……しなきゃ……!)

 

 そう復唱しているうちに、手を前に伸ばしてプロテクションを展開した。

 鉄球は展開したプロテクションにぶつかり、なのはがプロテクションを横へそらすことで弾かれ、なのはのいるビルの床へ突き刺さり下の階へと突き抜けていった。

 

「!?テメェッ!ここで落ちてりゃ、これ以上痛くならかったものなんだよぉ!」

 

 仕留め損ねたことに気が付いた少女はまたもグラーフアイゼンから薬莢を排出して、槌の後ろについてあるブースターを勢い良く吹かして肉薄した。

 だかしかし、そんな状況だというのに、なのはの視界がスローになることは無かった。

 理由は簡単だ。

 なのはは自分の視界の端、其処に黄色く輝く光を目にしたからだ。

 なのはに少女が喰い掛かるすんでのとこれでゴウゥッ!と黄色い稲妻が、否魔力弾が何本も走った。

 少女は魔力弾に咄嗟に気付いては、回避では間に合わないと判断してプロテクションを前面に展開、来る稲妻毎を毎回プロテクションを絶妙な角度で傾けて逸らす。

 その一瞬間の内に、少女の後ろに忽然と鎌を振り上げる人影が現れた。

 少女は流れる様な動きで振り向き、振り下ろされた鎌を鉄槌の柄でもって受け止めた。

 そして、なのはは突如として緑色の半円の球体に囲まれた。防御結界だ。

 

「なのは!遅れてごめん。今治療するよ!」

 

 なのはの脇には翡翠色の目をした少年が駆け寄り、治療魔法をかける。

 なのはは、この2人の少女と少年を知っている。数ヶ月前のある事件をきっかけに知り合った、新しい親友だ。

 

「来て……くれたんだね。フェイトちゃん、ユーノ君……!」

 

 これが、今から始まろうとしている事件の最初の衝突である。

 しかし、この衝突は所詮事の始まりに過ぎない。より混沌へと沈むことは、この場にいる誰もが知らないことだろう。

 

 




ここから一気に原作から離れるて行くと思います。
基本的な流れは変わらないとは思いますけれども、それだと二次創作の意味がなくなってしまうかもしれない、というのが持論なのではあります。
何が言いたいのか自分でもチンプンカンプンですわ……。
それと、一発思いつきのネタをテノトの活動報告の方でUPしようと思いますので、そちらの方も良ければどうぞ。


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3話 私は……

どうも、お久しぶりです。
はい、言いたいことはよく分かります。
また、なんです。
言い訳をさせて頂くと、予備校に通い始めて本当に生活が変わってしまいました……。
エタったわけでも、飽きてしまったわけでもないですが、本当に時間がないんです……。
もうなんか、なのはのストーリーの細かいところは曖昧なんです……。
まあ、どうせここら辺から原作乖離が始まりますけどね!

すっごいグダグダのくどい文となっています。
更新を楽しみにして下さっている方々には本当に申し訳ないです。こんなクソ作者駄文ですが、楽しめて頂ければさいわいです。
ご指摘、感想、評価して頂ければ、より幸いです!





 

 

 

「何だテメェ。そいつの仲間か?」

「そうだよ。私はなのはの友達、仲間だから。だから、私はなのはを守る為に命を張れる」

「それが本当に正しくない事でもか?」

「私はなのはを信じてるから、例えなのはが悪い事をしても。何か理由があるんだって」

「……チッ、そうかい!!」

 

 少女はギリリッと歯を喰い絞めると、思い切り踏み込んでアイゼンの柄の先で突きを繰り出す。フェイトはその動きを予測してくるりと横へ身を翻し、自分の脇をすり抜けて行く少女に、すれ違い様にバルディッシュで切りつける。

 少女もその動きを予測していたのか、強引に身体を捻じって紙一重で交わし、鉄球を繰り出し、身体を捻じった反動を使って思い切りそれを打ち出した。

 フェイトは咄嗟に、バルディッシュを振った反動に任せて身体を回転させ、自分に肉迫する鉄球を一回して両断した。

 

(この金髪、良いセンスしてやがる……!身のこなしに咄嗟の判断力、とても年相応ではねぇな)

(険しい顔をしてるけど、この子は今の攻防で何一つ慌てることも焦ることもしてない。多分、少し余裕を感じてはいるのかな……。でも仕掛けるチャンスはある!)

 

 互いの動きから力量を測り合う二人。

 少女は徐に鉄球を生み出し、自分の身体の周りにクルクルと回す。時々八の字を描いたり、ジャグリングをするような動きも見せる。

 フェイトはそれを挑発と受け取り、下手に仕掛けるのを躊躇した。少女は、そんな動かないで警戒しているフェイトを見て、不敵に笑みを浮かべた。

 バッと少女は、アイゼンを掲げて空を見上げ、何かを指す。その指した何かへ向けて鉄球を飛ばす。警戒していたフェイトはそれを見て、鉄球が飛んで行く方向を見上げた。見上げてしまった。

 少女はこれ幸いと、思い切りアイゼンを振りかぶりながらフェイトとの距離を一気に詰め、渾身の一撃を叩き込んだ。

 フェイトは余りに唐突な出来事に呆気にとられ、気付いた時には衝撃を抑えるので手一杯となっていた。

 フェイトは派手に吹っ飛んだものの、その実、インパクトの瞬間に後ろへ大きく飛び退いて勢いを殺したのだ。障壁も合まって、ほぼ無傷だ。しかし、勢いを殺しきるために飛んだ勢いで、ビルにぶつかってしまう。そんなフェイトが飛んで行くとき、口の端をニィっと吊り上げる。

 

「イケェッ!」

 

 少女はフェイトの飛んでいった方向に、先程上空へ飛ばした鉄球を一斉に飛ばした。

 フェイトも後ろへ飛んでビルへぶつかる間に、鉄球を追撃に使って来ることは予想していた。そのため無作為に前方向へ魔力弾を拡散して飛ばし、鉄球の勢いを殺しながら煙幕を作り、その中を飛んで来る鉄球を避けながら少女に肉薄する。

 肉薄する勢いと自分の魔力をグッと込め、少女に煙幕を使って奇襲をかける。胴を横に一文字に斬りつけ、そのままの勢いで回し蹴りをかました。

 少女は油断していた。煙幕の中のフェイトが今ので仕留められるとも思ってなど一寸も思っていなかったのに、フェイトの奇襲は成功した。フェイトのスピードを侮っていたのだ。

 少女は思い切り後ろへ吹き飛ばされ、かなりのダメージを負った。バリアジャケットは腹部が大きく破れ、蹴りで一時的に呼吸困難に陥る程には。

 吹き飛ぶ最中、飛びかけていた意識が回復し、ふつふつと怒りが込み上げてくる。しかし、その大きなダメージのせいで動きが鈍り、上手く身体を向き直して構えることが出来ない。

 

「……チキショぉ……っ」

 

 少女はそのまま重力に従って落ちようとしている。

 が、後ろから何者かが現れて少女を抱きとめた。

 

「ヴィータ、随分と痛々しい格好じゃないか」

「シグナム……悪りぃ、油断してた」

 

 少女、ヴィータが落ちるのを見て助けに向かおうとしていたフェイトも、もう一人の人物の出現に動きを止める。

 長身で赤みのかかった桃色の髪を束ね、吊り上がった鋭い眼とスリットの入った動き易い服装、腰に携えられた西洋剣と凡人のそれとは違う重心の置き方。女騎士と呼ぶに相応しい見た目は凛々しく麗しい容貌だが、そこからは想像もつかない威圧感やオーラと言えるものを感じる。

 フェイトの視覚と第六感は危険信号を発するのにこれといった時間を要することはなかった。

 

「良い目をするな。確かに、見た目からは油断するのも仕方のないことだがな」

「言い訳はしないけどよ、想像以上だぞ、アイツ等」

「分かっている。実に良い素質を感じる。眼と、腰の入れ方と、ブレの無い切っ先。きっと私も油断すればお前の様にやられてしまうな」

「……悪い癖が出てるな」

「そうか?まあいい、お前は一時撤退して先に例の集合場所にいてくれ。私とザフィーラ、シャマルも支援でいるから殿には事欠かないだろう。くれぐれも、転移の足を辿られるなよ」

「……ありがとな」

「逃がさない!フォトンランサー!」

 

 そういって飛び去ろうとするヴィータに向けてフェイトは魔力弾を飛ばす。しかし、騎士、シグナムが立ちはだかって魔力弾を全て剣で掻き消した。

 

「お前の相手は私だ」

「貴方達のやってる行為は犯罪行為だと分かっているのですか?」

「さあな。私達はお前等言う犯罪行為も法も分からない。ただ、自分等の信念を貫いてこの場で行動をしている」

「なら、貴方達は罪を犯しているとここで告げます。今投降すれば、無自覚だから罰は軽くなるはずです」

 

 シグナムはそこまで話を聞くと、腰の剣を振り出して切っ先をフェイトに向けた。

 

「言った筈だ。自分等の信念を貫いてここにいると」

「そうですか……」

 

 フェイトも切っ先をシグナムへと向ける。

 

「名乗らせてもらう。私はこれでも騎士だから、こう言うことには細かいのでな」

「私も名乗りましょう」

「守護騎士ヴォルケンリッターが烈火の将、シグナム」

「時空管理局嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサ」

 

「参る!」

「行きます!」

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

「そこのデカイの、そこを退きな」

「断る」

 

 アルフは浅黒い肌と動物の耳が特徴的な大柄の男と対面していた。

 

「私はフェイトを助けに行かなきゃいけないんだ。アンタは邪魔なんだよ」

「あそこも一騎討ちしているのだ。それを邪魔させるわけにはいかない」

 

 アルフはこの男が最後まで話しきる前に先制攻撃を仕掛けていたが、その攻撃は話しながらでも軽くあしらわれてしまった。

 

「あの騎士みたいなのがアンタのご主人かい?有能な使い魔なら悪事を働くご主人を咎めるのも仕事なんじゃないのか?」

「悪事を働いてると分かっていて、自分もまた同じことをしているのは重々承知の上だ」

「似ているね」

「ほざけ。しかし、貴様には訂正してもらわなければならないことがある」

 

 男は拳を前に出して腰を沈めた。前に出された拳はアルフの眉間を向いている。

 

「このザフィーラは使い魔などではなく守護獣だということ。そして、主はあそこにいるシグナムではないということだ!」

「アタシにゃ使い魔も守護獣も違いが分からないね!それにアンタの主ってのはこの場に出ないほどの臆病者なのかい?」

「安い挑発を犬がキャンキャン喚き立てるか。面白い!」

 

 売り言葉に買い言葉とはこの事、二人は互いの拳を振るい出した。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 なのはは怯えていた。

 何も分からない相手が言われのない力を自分に振るう。その威圧感と暴虐さに。そうしてユーノが張った強力な魔法障壁の中でじっとしているしか出来ない様にも思えてしまって、また体の震えが増し出した。

 自分は呆気なく撃墜されて、助けられて。フェイトは一人墜としたものの、間髪入れずに次の戦いに行ってしまった。

 

 自分は一人では何も出来ないのではないか?

 

 そんな疑問が浮かんで来る。

 前の事件もそうだった。

 誰かのためになりたくて始めた魔法少女、その実自分は神影達に助けられて助けられて。

 一人で成し遂げたことの少なさに虚しさすら感じていた。

 

「なのは、大丈夫かい?なんだか怪我以外にも辛い思いをしてるみたいだけど」

 

 今の自分にはこのユーノの優しさが辛い。

 天狗になっていたのだ。

 自分は魔法が使えて、才能があると。勉強しか取り柄のない自分にはその一芸がとても嬉しかった。しかし、自分はそれを知らず知らずのうちに鼻にかけてはいなかっただろうか。

 

「ユーノ君、私ってダメな子だよね。一人じゃ何も出来ないで、みんなに助けてもらって、迷惑をかけて」

「なのは……」

 

 その時、なのはとユーノに念話が入る。

 

 〈なのは、ユーノ、無事か!?〉

 〈神影くん!?〉

 〈みんなも助けに来てくれたのかい?〉

 

 念話の相手は神影だった。

ユーノとなのはの顔に少々安堵の笑みが零れる。しかし、神影は対照的だった。

 

〈俺と射人と晃毅で応援に行こうとしてるんだが、途中でちょっとヤバめの奴らに絡まれちまった……〉

 

ユーノが眉を潜めて神影に問いかけた。

 

〈ヤバめの奴ら、ってどういうこと?今、僕達がこの結界内で対峙してるのはヴォルケンリッターと名乗っていた。それと同じの存在だっていうのかい?〉

〈それは分からん。四人組の黒いコートを羽織った連中だが、何が可笑しいって、晃毅が奴らを見た瞬間に発砲しながら突っ込んだことだよ!射人も険しい顔をしたと思ったら転移して狙撃ポイントを探り出した。俺もなんか五月蝿い奴に絡まれるし、なんと言ってもこいつら、レベルというかオーラ見たいのが桁外れなんだ!〉

〈……そうか、じゃあ神影達はそっちに集中してくれないか?こっちは何とか持ちこたえるから〉

〈頼む、助けには行けそうにない。アリサもディーとこっちに向かってるらしいから、それまでの辛抱だ〉

 

そういうと、神影からの念話は途切れた。

なのはとユーノは遠くで繰り広げられる二組の戦いに目を向ける。

フェイトにしてもアルフにしても、目に見えてジリ貧なのが伺える。その証拠に、フェイトとアルフは肩で息をしているが、対峙するシグナムとザフィーラからは余裕を感じられる。

 

「ユーノ君……」

「……まだ何処かに敵が隠れているかもしれない。なのは、この結界の中はよっぽどのことがない限り壊れない様に出来ている。だから、ここから動いちゃだめだ。僕は二人の援護をしに行く」

「じゃあ、私も何か……!」

「ダメなんだよ。今のなのはが戦えても、レイジングハートが耐えられないんだ。仮に砲撃魔法の一つでも撃ったら、レイジングハートはバラバラに壊れてしまう」

「…………」

「アリサがここに向かってるからそれまでの辛抱なんだ。今ここでレイジングハートを壊してしまうわけにはいかない」

「……やっぱり、私ってダメで役立たずなんだね……」

 

なのはは自分の無力さに嘆いて首を垂れる。涙を隠すかの様なその様子に、ユーノはハァと溜め息を吐くとなのはの手を握った。

 

「役立たずとか、ダメとか、そんなことはどうだっていいんだ。今ある状況を覆すのに、そんなマイナスな考え方じゃ考えも浮かばない。それにさ、僕とフェイトとアルフは、なのはを助けられるっていうのが嬉しいんだ。前回の事件では助けられてた僕等が、今度はなのはを助けてる。きっと、一人では助ける事も助けられる事もないんだ。でも、一人じゃないなら、助けて助けられて、それでいいんじゃないかな」

 

そう言うと、手を離して二人の戦う渦中へ飛び込んで行った。

なのはは今の言葉を胸に受け止めて、温かさを噛み締めた。

そして、傷付いた。

 

「ううん、嬉しいけど、温かいけど、どうでもよくなんてないよ……」

 

ボロボロと頬から水が伝い、コンクリートの地面を濡らす。

 

「誰かを助けたくて魔法を始めたのに、誰も助けられないで逆に助けられるなんて、そんなの嫌だよ……」

 

それはなのはの悲痛な叫びだった。

生まれてこのかた助けられてばかりで、助けたことなんて数える程度。せめて迷惑だけはかけまいと『良い子』として生きてきたこの9年間。誰かに助けられるのに嫌悪感を示すまでになってしまっていた。

助けられる事に嫌悪感を示しているわけではない。助けらている自分に嫌悪感を示しているのだ。

自分の我儘だなんて分かっているが、それが自分なんだと割り切ってしまっている。

 

『All right mymaster』

「えっ……」

 

レイジングハートとの声が静かに響いた。

 

『撃って下さい。貴女の最大の魔力で最高のスターライトブレイカーを』

「でも、撃ったらレイジングハートが壊れちゃう!」

『問題ないです。この程度の損傷で再起不能になる様な、柔なデバイスとして造られたつもりはありません』

「でも……」

『失礼ですがマスター、本当に助けたいと思っているのですか?』

「助けたいに決まってるよ!」

『なら、撃てばいいのです。迷う必要はありません。しかし、マスターは迷っている。撃つなと言われて反論し、撃てと言っても反論する。貴女が今、何をしたいのかを示して下さい』

「レイジングハート……」

『私は準備も心構えも全て整っています。後は、マスターが意志を示すだけです』

 

しばらくの沈黙。下を向いてわなわなと震えるなのは。

 

「私は…………」

 

 




次はいつになるかわかりませんが、期待せずにお待ちください。


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お知らせ

 

 

 

 

 

どうも

テノトです

 

 

このお知らせが投稿されたところで、何のお知らせだかを察する方は多いと思います

誠に申し訳ありませんが、この作品を凍結させて頂きます

 

 

受験勉強の合間をぬって執筆したりしていたのですが、その際に読み直しをしたところ、余りにも不快感を感じてしまいました。

作品の方向性が全くの方向音痴で、「自分が何を書きたいのか」と聞かれた際に応えることが出来そうになくなってしまいました。

そう思ってしまってから、なんだか、ここにこうしてこの作品を置いておくのが忍びなく感じてしまいました。

軌道修正を計ろうともしましだが、自分の腕ではゼロから作り直さないと駄目だとかんじてしまいました。

これらが、作品を凍結するに至った経緯と理由です。

こんな作品でも、楽しみにして下さった、応援して下さった方々には、本当に申し訳ないと悔しい気持ちでいっぱいです。

 

 

思えば、この作品を書き始めたのは中学2年の頃だと思います。

中二病真っ盛りで思いつきで考えたネタ。当時にじファンが出来る前の、なろうさんにて投稿させてもらい、当時流行っていた作風を真似て書いたものです

今となってしまったから、当時の作風を汲んでるこの作品が嫌なのかもしれません。

当時はわけの分からない理由でアンチに走ってみたりしてましたね。

有名なので言えば、ユーノを淫獣扱いしたり、クロノをKY呼ばわりしたり、ニコポナデポが当たり前、何やっても許させる転生オリ主、男の娘になって「俺はおとこだぁ!」とかですかね?

今はやはりそれらの作品は嫌われる傾向にありますが、今思えばなぜ流行ったのか、なぜあそこまでプロトタイプが増殖したのか不思議でならないです。

 

 

今、新しい作品のプロットを考えています。

前に話していたISのものと、ゼロから書き直すなのはの二次です。

恐らく投稿は2月下旬から3月頭になるとこ思います。

もしよろしければ、この二つどちらかが投稿された時にご覧になって下さい。

 

 

もうひとつ、Twitterを始めました。

ユーザーネーム「てのと」でツイートしてますので、こちらもよろしければフォローして下さい。

特にこれといったことは呟きませんがw

 

 

最後にもう一度

今までこの作品を読んで下さいまして、本当にありがとうございました。

特に、にじファン時代からの方、本当にありがとうごさいました。

あの時、お気に入りや評価が増えて行くことに、快感を教えて下さったおかげで自分はここにいます。そのことにひとえに感謝して、閉めさせて頂きます。

 

※1週間後にこの作品を連載(未完)の表示にします

 

 

 



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