人外になった者 (rainバレルーk )
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第零章『欧州血界人』
世界よ!!俺は人間をやめるぞぉぉぉ!!!


息抜き作品・・・続くかも?

文章能力がほしい・・・

「」に変えます


 

インサイド

 

 

――インフィニット・ストラトス――通称『IS』。

 

それは2012年に篠ノ之束氏により開発された人類史上最大の発明である。

この発明品により、今までの兵器はガラクタと成り果てた。

一年前に起こった『白騎士事件』などはまだ記憶に新しい。

 

 

しかし・・・その人類史上最大の発明は最大の欠陥を持っていた。

それは・・・〈女性〉にしか使えない事だ。

 

これにより世界は男尊女卑ならぬ女尊男卑になった・・・それから1年後。

 

 

「何寝てんの!起きなさい!」バキッ

 

「げハッ!」

 

「きゃは♪ざまぁ無いわね♪」

 

前置きが長かったね?

・・・今僕はどこかの廃墟にラチられて金属バットで暴行を受けている・・・何故だ?

 

 

「オラッ!オラ!」

 

「ぐぶっ!ゲハッ」

 

「きったなーい!靴が汚れたらどうすんのよ!このビチグソがぁ!」バキッ

 

「カハッ!」

 

・・・そうだ・・・僕は・・・友人を庇って・・・コイツらにラチられたんだ・・・

 

 

「ほらアンタもヤるのよ」

 

「え、でも・・・」

 

「私たちは偉いのよ!このビチグソにそれを教えてあげないと!」

 

「ならアタシが先にやるわよ?オラッ!」バキィッ

 

「ぐぶっ!」

 

 

IS が出てきてからこういう輩が増えた・・・今じゃあ人女性人権優先団体まで出てくる始末だ・・・ヤレヤレ。

 

「ねぇ?もっといい声でなきなさいよ?えぇ?」ギチッ

 

「グググッ・・・」

 

 

いい声でなけだぁ?何言ってんだ?このアマは?こちとら顎の骨が砕けてんだぞ?泣けるかアホ。

 

「何睨んでのよっ!」バキッバキッバキッ

 

[グゲッ!ゲハッ!グハ]

 

「ちょっと!もういいでしょ!これ以上は死んでしまうわよ!」

 

「何?アタシに文句でもあるの?」

 

「空気読みなさいよ?バカねぇ?」

 

「ほらアンタも早くヤるのよ」

 

「い、いy」

 

「嫌なんて言わないでよ?ヤらなかったら今度はアンタよ?」

 

「ひ!それは嫌!」

 

「ならヤるのよ!さぁ早く!」

 

このアマは最悪の部類に入るクソだな。

・・・ツーかそろそろヤバイな・・・意識が朦朧としてきた。

 

「う、うん・・・」スラッ

 

「グググッッッ・・・」

 

「ご、ごめんね・・・」ボカッ!

 

「ガハッ!」

 

「それでいいのよ!それで!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「アハハハ♪ざまぁ♪」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・!

 

「何とかいいなさいよ!このマヌケ!」バキィッ

 

・・・・・・・・・・・・・・・・くい!

 

「それでどうすんのよ?この男?」

 

「バカね、その為にガソリンを持ってきたんでしょ?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・憎い!

 

「そっか~焼くんだね~!あったまいい!」

 

「そ、そんな!この人は私たちのクラスの人よ!そんな事すれば!」

 

「何?いやなの?いやなんて言わないでよ~、私たち[友達]でしょ?それとも何?アンタもこうなりたいの?」

 

「!いや!そんなのいや!」

 

「だったら!いいのよ!ほらガソリンまきなさいよ」

 

・・・・・・・・・・・・憎い!憎い!

 

「どうせママに頼んでもみ消してもらうから」

 

・・・・・・・・・・・・憎い!憎い!憎い!

 

「う、うん・・・」

 

「フン・・・コイツが居なくなれば、学校のバカな男達も私に逆らわなくなるわ!アハハハ♪」

 

ドポドポ

 

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――コイツはヒデェな・・・――

 

 

 

?・・・・・・・・・・・・・・・誰・・・?

 

 

――ん?なんだお前?俺の声が聞こえんのか?――

 

 

「あぁ、あぅ・・・!」

 

「うるさいわよ!」ガスッ

 

「ギェ!」

 

――どうやらお前しか聞こえてないようだな――

 

た、助けてくれ・・・・・・!

 

――無理だな――

 

そ、そんな・・・・・・・・・

 

――しかし・・・ククク♪・・・そうだ、お前に力を与えてやろう――

 

・・・・・・・・・え?

 

――力だ!力!お前がまだ死にたくないなら・・・力をやろう――

 

・・・・・・・・・力・・・?

 

――ここに己を憂う力がある――

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

――欲しいか?――

 

・・・・・・・・・・・・しい

 

――欲しいか!――

 

・・・・・・・・・・欲しい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――なら、くれてやる・・・おめでとう。君は『選ばれ、選んだ』。カカカ♪――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

 

パチパチパチパチゴォォォ・・・・・・

 

 

廃墟が燃える燃える燃える燃える燃える

 

 

「へ~~!よく燃えるわね~」

 

「アンタ、ガソリン使いすぎよ」

 

「きゃは♪ごめんごめん♪」

 

「・・・」ガタガタ

 

その燃える廃墟をみながら談笑する少女達・・・まるで一仕事を終えたかのようだ・・・実際そうなのだが

 

 

「でもこれじゃあ~警察とか煩くなくなくない?」

 

「いいのよ、どうせバカな男達には私たちは捕まえられないわよ」

 

「そうだよね~」

 

「・・・・・・」

 

「早く帰るわよ!警察がくるまえに」

 

「はーい」

 

「う、うん・・・え?な、何あれ・・・」

 

少女達がその場を去ろうとしたとき・・・炎の中から人影がでてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「WWWWWWWWWwWWWWWWWWWwRRRRRR RRRRRRYYYYYYYYYYYYyyyyyyy!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その人影は先程少女達にリンチにあった少年であったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「え!!!!!?な、な、な、ななんでアイツ生きてんのよ!?」

 

「し、知らないわよ!は、早くにげるわよ!」

 

「ひぃ!」

 

 

 

少女達は逃げようとした・・・・・・しかし!

 

 

 

ジャララララララ バチン!

 

 

 

 

「「「キャア!!?」」」

 

 

少年がなげた鎖によって阻まれた・・・

 

 

「ギャー!!?アツイ!アツイわ!」

 

「足!足が!」

 

「痛い!!痛いよぉ!!!」

 

 

 

炎で焼けた鎖は少女達の足の肉を焼き、骨を砕いた。

馬鹿に嫌な音と臭いが立ち込める。

 

 

ザッザッザッザッザッザッ

 

少年は少女達に近づいていく。

 

 

 

「い、いや!!!こ、こないで!」

 

「助けて!助けて!足が足が!」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

 

 

ザッザッザ

 

少年は少女達の目の前までに来て、静かにこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌だね」

 

ザシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

テレビ『昨日のよる8:00頃M県M市の廃工場後にて火事がありました。その付近では2人の10代の女性遺体が発見されました・・・遺体は斜めに切り裂かれており、この現場の近くで保護された少女は錯乱して意味のわからない事を供述しており―――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




以上!終わり!

なんて中途半端なんだ!

コンチキショウ!

続く可能性はあるか?どうだろ?


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ある軍人の暴露をまとめたもの・・・

続けてみる!


 

 

 

我々、アメリカ海軍第2IS補給部隊は7月16日、大西洋沖でイギリス第三艦隊との演習中、正体不明の[何か]に襲撃された。

 

[何か]は我が部隊の半数、37名を重度の[貧血]状態にし、駆逐艦一隻とイージス艦二隻を轟沈・大破させた。

 

 

アメリカ、イギリスのIS 部隊はこれに応戦。

しかし、[何か]はこれを5分ともかからずに撃退。IS 搭乗者に重度の深手を負わせ、その後逃亡。

 

 

その後、[何か]を詳しく調べるためにさまざまなカメラから映像をさがしたが、どのカメラにも[何か]は[映ってはいなかった]のだ。

 

上層部はこの事に混乱。

 

それもそうだ。現在世界最強の兵器、インフィニット・ストラトスが正体不明の[何か]に再起不能にされたのだからな。

 

上層部はこの事を隠蔽しようとしたが、公開演習であったため世間は大いに湧いた。

だがその後、正体不明はIS により撃退されたという形で決着がついた。

 

しかし、数週間と経たない内に正体不明はこの後も数々の軍事基地を襲撃。

 

基地の関係者を[貧血]状態にしていった。

 

ヤツは一体何者なのか?ただ一つわかっていることはヤツが死者を一人も出していないということだけだ。

 

 

 

 

アメリカ海軍第二IS補給部隊所属・エドウィン・マテリアル少尉

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

2013年。8月11日。

 

私たちイギリス空軍所属IS 部隊はスコットランド某所の基地にてコードネーム[アーカード]の襲撃を受け、これに応戦・・・

 

しかし、結果は惨敗・・・基地の1/3を破壊された

 

負傷者57名

死者0名

負傷者のうち14名が重度の貧血によるもの

 

ヤツは吸血鬼だ!

 

私はこの目で見たんだ!ヤツが私の部下から血を吸っているところを!

 

しかしヤツは太陽が出ている時間に私たちを襲撃してきた・・・ヤツは一体なんなのだ?

 

 

イギリス空軍所属IS部隊隊長・セルベリア・エデム大尉。

 

 

 

―――――――

 

 

以下

 

コードネーム[アーカード]はこの他にも他国の軍事基地を襲撃・・・全壊または半壊という風に破壊している

 

目撃者の話ではアーカードは10代後半から20代前半の男で蛍光色の髪に赤銅色の皮膚をもつ

 

常に全長2m弱の槍をもち、顔は赤マフラーで隠している

 

そして被害にあった者の首筋には必ずコルクせんを抜いたような直径1cm の傷がある

 

さらに被害にあった者たちはヤツの叫び声を聞いているという、それは・・・

 

「WWRRRYYY! 」

 

 

 

―――――――

 

 

 

余談だが・・・

被害にあった者はアーカードの話をすると男女とわず恐怖で顔が歪むか恍惚の表情をするという。

 

 

 

 

デイリー新聞社記者・ウィル・ウィトウィッキー。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




「WWRRRYYY! 」


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ドイツと蟲と吸血鬼と人外と・・・上

さてこれで主人公の名前が明らかになる!・・・かも

?「おい・・・」

―――統合しました―――



ノーサイド

 

 

ドイツ某空港にて

 

 

「次の方~」

 

ここはドイツ某所の空港である。

今日も今日とてさまざまな人間がこの国に入ってくる。

 

いや・・・人間だけではないのかもしれない。

 

スタスタスタ

 

「・・・」

 

「この国にはどんなご用で?」ペラ

 

「仕事と観光をかねて」

 

「そうですか・・・ペラペラチラチラ」

 

「・・・」

 

「いいでしょう。ようこそ!ドイツへ」ベッタン

 

「ありがとう・・・」スタスタスタ・・・

 

 

この日、ドイツに黒髪で長身の男が入国してきた。

この時彼の目が赤くなっていたことに誰も気付かない。

 

 

 

―――――――

 

 

 

ところ変わって、ここはドイツの国立博物館。

ここ最近、この博物館に今回の目玉となる2つの展示物が入ってきていた。

 

1つ目の展示物は中南米、コスタリカの遺跡で発見されたもので形状はタマゴのような形状で大きさは1mの白濁水晶である。

 

2つ目の展示物は南米エクアドルのアステカ遺跡で発見されたもので考古学者達からは[石仮面]と呼ばれているものだ。

 

これらが展示されて博物館は盛況となった、とくに石仮面は血を吸う仮面として話題となった。

その日までは・・・・・・・・・

 

 

 

おる日、博物館の近くでドイツ軍軍用車が襲撃された。

軍用車の中身は最新ISが保管されたいた。

 

襲撃者はISに対して不満を持つ者達であった。

襲撃者たちはIS を強奪したのだが、ドイツ軍の応戦にあいテロリスト達は博物館に逃げ込むとテロリスト達は博物館内の人間を人質にとり、立て籠った。

 

 

 

―――――――

 

 

 

博物館内・・・

 

「畜生!計画は上手くいったんじゃないのか!」バコン

 

「クソが!あの野郎どもが!」

 

「どうする?!このままじゃ・・・」

 

「騒ぐんじゃないよ!野郎ども!」

 

「っ!?」

 

「しかし姉御!このままじゃ俺たち・・・」

 

「・・・アレを使うよ・・・」

 

「アレ?」

 

「まさかISを使う気かよ!?姉御?!」

 

「親父の仇であるアレ使うのかよ!」

 

「でもそうしないと!」

 

博物館内で言い争う5人の男女・・・この男女達が今回の首謀者である。

 

 

「姉御・・・俺はもう・・・」

 

「バカいうんじゃない!!お前達だけでも!」

 

「「あ!あ!博物館内にいるテロリストに告げる!私はドイツ陸軍少佐、[ルドフ・フォン・シュトロハイム]だ!人質を解放し速やかに」」

 

「シュトロハイム!」

 

「「な!?お前は[シェルス・ギッシュ]中尉!なぜ貴様という者がなぜ?!」」

 

「黙れ!シュトロハイム!私達があのISがでてから中将殿がどうなったか!お前が知らない訳ではあるまい!」

 

「「しかし!それは!」」

 

「黙れ!貴様とは話はできん!今から1時間だ・・・1時間内に逃走用の車を用意しろ!さもなくば人質を1時間経過するごとに1人ずつ・・・頭をザクロにしてやるぞ!!!」

 

 

この時、シュトロハイムはシェルスの言葉を聞き思った!

 

「(く!ヤツからはヤると言ったらヤると凄みがある!)」

 

「シュトロハイム少佐、上からの命令です・・・[IS を奪還せよ、それが最優先事項である]と」

 

「何!?」

 

この命令がどういったものかをシュトロハイムは即座に理解した!とどのつまり![人質はどうなってもいい!テロリストも全員射殺せよ]という事だ!

 

「ふざけるな!人質はどうなってもいいだと!俺はドイツ軍人である前にドイツ国民だ!同じゲルマン民族を殺すことはできん!」

 

「シュトロハイム少佐!これは上層部からの命令ですよ!無視すれば反逆罪にとわれるかも!」

 

「黙れ!マルク軍曹!」

 

「いいえ!黙りません!少佐がここで反逆罪で捕まればドイツ軍は上層部のあの女性士官達のいいようにされてしまいます!」

 

「だが・・・!」

 

パサッ

「失礼する」スタスタスタ

 

「誰だ!」

 

「私はドイツ陸軍IS部隊部隊所属メルサ・スタッシュ准将だ。シュトロハイム少佐、貴方にはこの作戦から外れて貰う」

 

「なんですと!?これはどういう事ですか!」

 

「貴方はあのテロリストと昔同じ部隊にいたそうだな?貴方ではこの作戦に相応しくないという事なんでな」

 

「そんな!?これは我々の部隊が任せられた」

 

「黙れ!男分際で!我々に楯突く気か!」

 

「ぐっ!?しかし!」

 

「やめろマルク軍曹」

 

「しかし少佐!?」

 

「いいんだマルク軍曹・・・メルサ准将、一つ聞きたい・・・彼女ら・・・ギッシュ中尉らはどうなる?」

 

「最善は尽くす・・・」

 

「そうか・・・なら私はこれで失礼する・・・」 

 

「少佐!?」

 

「そうかでは引き継がせて貰う・・・」

 

「では・・・」スタスタスタ

 

「く!?」

 

「ふん・・・」

 

 

 

―――――――

 

 

ところ変わって!ここはドイツ某所のカフェ!

 

そこでは先日ドイツに入国した黒髪の男が寛いでいた!

 

「・・・・・・」コクゴク

 

「あ、あの?MR.?お代わりは?」

 

「おん? いや、いいよ。ところで、つかぬことを聞くが博物館はどちらかな、お嬢さん?」

 

「は、はい!博物館は隣り街なんですが」

 

「ですが?」

 

「今そこではテロリストが立て籠ってるみたいんです」

 

「そうか・・・・・・ありがとう」ニコッ

 

「///っ!はい!どういたしまして!ではごユックリ!」

タタタタタッ

 

「・・・」

 

男は何かを考えるように空のカップ底を見つめた。

 

 

 

「ちょっと?大丈夫?顔が赤いわよ?」

 

「だ、大丈夫ですよ!」

 

「客になんか言われたの?」

 

「そ、そんなんじゃないわよ!・・・ってアレ?」

 

「どうしたの?」

 

「あのテーブルでコーヒーを飲んでた人は?」

 

「え?あのテーブルは朝から空いてるじゃない」

 

「・・・え?」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

場面は戻る!

 

依然として博物館前は膠着し、日が沈んでいた!

 

 

ドイツ軍天幕。

 

Prrrrrrrrr  ガチャ

 

「「まだ逃走車の用意は出来ないのかシュトロハイム!」」

 

「もしもし、こちらはメルサ・スタッシュ准将だ」

 

「「何?シュトロハイムはどうした!!」」

 

「シュトロハイム少佐は今作戦において不適切なため外れてもらった」

 

「「それで指揮権が貴様に移ったわけか、メルサ!」」

 

「その通りよ、シェルス?どうして貴女のような優秀なIS乗りがなぜ?」

 

「「何故だと?あのガラクタのお陰で一体何れ程の優秀な士官が辞めていったと思う!」」

 

「優秀?あの男どもが?ヤツらは我がドイツ軍には相応しくなかっただから、辞めていったとは違う?」

 

「「黙れ!メルサ!貴様ら女性士官達が罠にハメたんでしょうが!」」

 

「証拠は?証拠はあるの?シェルス?」

 

「「・・・貴様は親父殿・・・エイブラ中将を撃ったな!」」

 

「エイブラ中将?・・・あぁ・・・演習中に流れ玉に当たって殉職になった男ね?残念だったわね」

 

「「残念?・・・フザケルナ!貴様が中将を撃ったな事は証拠としてあがったはずだ!それなのに・・・上層部はこれを揉み消した!今の軍は腐っている!」」

 

「ヤレヤレ・・・これでは話が合わないわね?シェルス?今から投降しない?今ならまだ軍に貴女のポストは空けてあるから」

 

「「断る!」」ガチャ!

 

プープープー

 

「・・・」ガチャリ

 

「准将殿、指示を」

 

「残念だけど仕方ないわね・・・ニヤリ・・・IS部隊を突撃させよ!」

 

「イェッサー!」

 

「待て!スタッシュ准将!」

 

「あら?まだいたの?シュトロハイム少佐?」

 

「ギッシュ中尉を殺す気か!」

 

「中尉?ハッ!今はテロリストのシェルス・ギッシュよ?射殺許可は出ているのだから、しかも貴方はこの作戦にはついては無関係なはずよ」

 

「しかし!」

 

「煩いぞ!シュトロハイム!男の分際で女性上官の私に指図をするな!」

 

「貴様ァ――!!!」

 

「シュトロハイム少佐!」ガチッ

 

「離せ!マルク軍曹!俺はコイツをこのアマを殴らなければ気がすまん!」

 

「お~怖い怖い、意見が通らなければすぐに力で訴えるか?所詮貴様も下劣な男という事だ!」 

 

「フザケルナ!俺はドイツ軍人に誇りを持っている!その誇りを汚された事に怒っているのだ!」

 

「もういい、その男の戯れ言は聞き飽きた・・・連れていけ」

 

「ハッ!」

 

「准将貴様――!」ズルズルズルズル

 

 

 

「さて・・・今から10分後にIS部隊を突撃させる・・・さぁ!準備に取り掛かれ!」

 

「「「ハッ!」」」

 

 

 

-------

 

 

 

ノーサイド

 

 

博物館前・・・

 

 

「急げ!急げ!」

 

「野次馬を下がらせよ!作戦の邪魔だ!」

 

 

博物館前が騒がしくなってきた・・・これから博物館にドイツのIS部隊が攻撃を仕掛けるのだ・・・

 

 

「准将!準備出来ました!」

 

「良し・・・これよりISの奪回に移る!心してかかれ!」

 

「「「ハッ!」」」

 

「准将殿」

 

「ん?どうした?[ハルフォーフ]中尉?」

 

「TVクルーはどうするのですか?安全のため避難させた方が・・・」

 

「いや、いいのよ」

 

「?どうしてでしょうか?」

 

「フフ♪この中継を通して我が国のIS部隊を知らしめるのよ!フフフ♪」

 

「は、はぁ・・・」

 

「フフフ♪さぁパーティの時間よ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別・ドイツ軍天幕・・・

 

 

「クソッ!!!このままではギッシュ中尉は殺されてしまう!」

 

「俺達じゃあどうにもなんないのかよ?!」

 

 

この天幕・・・シュトロハイム少佐の部隊の兵士達はどいつもこいつも苦虫を噛み潰したように悔しがっていた。

何故ならシェルス・ギッシュ中尉はISが出てからも男性兵士を差別せず、軍内部の差別撤廃をすすめていた。その為に兵士達からも慕われいたのだ。

 

しかし!軍内の女尊男卑主義の士官達はこれを良しとしなかった!

 

士官達は中尉を軍から孤立させる為に様々な嫌がらせを始めたのだ!

 

だが、その中尉を救ったのはドイツ軍中将、エイブラ・バルト中将だった

 

エイブラ中将はシェルス中尉やドイツ軍男性兵士にとっては親父と慕われていた。あの日までは・・・

 

ある日、エイブラ中将は自らの部隊を率いて演習にでていた。

 

その時、一発の銃弾がエイブラ中将の頭を貫いた!

エイブラ中将はそれが原因で・・・

 

中将を撃ったのはメルサ・スタッシュ!

シェルス中尉はスタッシュが故意に中将を撃った証拠を軍上層部に提出したが、上層部はすでに腐っており、その証拠を無きものにしたのだ。

 

シェルス中尉は軍の上層部に嫌気がさし軍を抜け、今にいたる。

 

 

「クソッ!クソッ!クソッ!これではギッシュの姉御が!」

 

「あの腐れ准将がぁぁぁ!」

 

「静かにしろ!お前達!」

 

「ッ!しかし!少佐!」

 

「落ち着かんか!貴様ら!ドイツ軍人ならもっと堂々としろ!まったく・・・」シュボッ

 

「シュトロハイム少佐・・・」

 

「なんだ!マルク軍曹!」

 

「煙草・・・反対です・・・」

 

「ッン!?・・・・・・・・・クソッ!」ガンッ

 

シュトロハイム部隊の天幕はドンヨリとした空気が辺りを支配した。

 

 

 

・・・だが・・・その時、誰も気づかなかった。

天幕の中にドイツ軍人ではない者、いや・・・人外が居たことを。

 

 

 

―――――――

 

 

シュトロハイムサイド

 

 

 

天幕の中がドンヨリとした空気に支配されている時!

ヤツは前兆もなく入って来た!まるで元からそこにいるかのように!

 

 

「ん?誰だ?お前は?」

 

「・・・・・・」

 

「おい!ここは軍の天幕だぞ!民間人は早くでていけ!」

 

俺の部下が黒髪の東洋人に注意をした。

その時!俺はヤツの目を見た!見てしまったのだ!

 

 

「・・・」ギロリ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

ヤツの目はまるで血のように紅く紅く!暗闇のようにどす黒かった!

 

俺はヤツに恐怖した!!!例えればこれから蛇に喰われる蛙の感触だった!

 

その感触を味わった瞬間!

俺は動物的な本能でホルスターから愛用のワルサーP38を抜き、ヤツの心臓に3発撃ち込んだ!

 

 

 

ズダン!ズダン!ズダン!

 

バタ・・・

 

 

「シュトロハイム少佐!?一体何を?!」

 

「構えろ!皆!ヤツはヤバイぞ!」チャキ

 

 

部下達は驚いているが、構やしない!

俺のドイツ軍人、いや人間としてヤツを抹殺しなければと言う使命が頭の中を支配した!

 

 

「大変だ!シュトロハイム少佐は乱心したぞ!」

 

「み、民間人を手当をしろ!」

 

部下達がヤツに近づいた!

 

 

「馬鹿者!近づくんじゃあない!」

 

「へっ?」

 

ガシィィィ!

 

「かぐぁっ!?」

 

ヤツは部下の首筋を固く掴み!そして――

 

ゴキュン!

 

――ヤツは指の先から部下の血をとりはじめた!!!

 

 

「ぎぇっ!がぁぁぁぁぁぁ・・・」

 

部下はみるみるうちに青くなり、そのまま気を失った!

 

 

「ふぅ・・・・・・中々に美味しかったぞ・・・」スラァ

 

ヤツは満足そうに立ち上がりながら言った!

 

 

「ひぃ!?な、な、なんだコイツは!?」

 

「きゅ、きゅ、きゅ、きゅ、吸血鬼!」

 

「ば、化け物!」

 

部下達は動揺しはじめた!これでは不味い!

 

 

「狼狽えるんじゃあない!早くヤツを撃――」

 

俺がそう言う前にヤツはいつの間にか俺の目の前に[いた]!

 

 

「どうした?何をそんなに脅えている?俺の心臓を撃った時は汗の一つもかいていなかったのになぁ?」

 

ヤツは俺の頬を撫でながらそう言った!

不味い!不味い!不味い!不味い!不味い!不味い!不味い!不味い!不味い!不味い!不味い!不味い!不味い!不味い!不味い!不味い!不味い!非っ~常に不味い!!!

このままでは俺は[喰われる]!!!

 

その時だ!

 

 

「シュトロハイム少佐から手を離せ!化け物!」チャキ

 

「軍曹!」

 

マルク軍曹はヤツの横頭に銃を突きつけた!

 

 

「ほぅ・・・恐怖に押し負けずに、銃を突きつけるか」

 

「くっ・・・」

 

「止めろ!軍曹!」

 

「カカカ♪いい部下を持っているな?少佐殿?」

 

するとヤツは俺の頬から手を離した・・・

 

 

「ククク♪・・・ところで少佐?」

 

「な、なんだ?!」

 

「石仮面の展示している博物館はあそこでいいかな?」

 

 

石仮面???な、なにを言っているんだコイツは?

 

 

「あぁ!そうだ!そんな事はいいから早く投降し――」

 

「ありがとう軍曹・・・ではサヨナラ」シュン

 

 

一同「!???!?!!!!!???!」

 

 

き、き、き、き、き、消えた!?

煙のように消えてしまった!!!

 

な、何だったんだ???ヤツは!?

 

 

 

―――――――

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

 

シュトロハイム達が天幕で[ヤツ]と会合していた頃・・・博物館では・・・

 

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!

ガンガンガン!

バババババババババババババババババ!

 

凄まじい戦場となっていた。

 

 

「下がれ!」ポイッ

 

カラカラ・・・ボン!

 

「くっ!?スモークか!小癪な!」

 

 

ついさっき博物館にIS部隊が突撃し、壮絶な撃ち合いとなった。

 

 

「クソッタレめ!奴ら人質の安全なんて考えてすらいねぇ!!」

 

「アイツらアレでもドイツ軍人かぁ!!」

 

「つべこべ言うんじゃないよっ!!!」

 

「「「っ!?」」」

 

「あ、姉御!肩から血が!」

 

「大丈夫よ」

 

「しかし!」

 

「ウルサイ!いい争ってる暇はない!人質をここから逃がすよ!」

 

「に、逃がすって!?」

 

「無茶だ!ヤツらは俺達や人質関係なく撃ってきますぜ!」

 

「この博物館には地下倉庫がある・・・そこに人質達を逃がす!異論のあるヤツは・・・ここから立ち去りな」

 

「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」

 

「ハッ♪姐さん、俺達はアンタに付いて行くと決めてんだよ・・・その作戦乗った!」

 

「俺もだ!」

 

「俺も!」

 

「俺も!」

 

「アンタ達・・・・・・クスッ♪ドイツもコイツもバカ野郎ばっかりだ!さて・・・ヤるよ!アンタ達!!」

 

「「「「「「イェッサー!!!!!!!」」」」」

 

 

 

ズダダダダダダダァダダダダダダダダダァァァ!

 

「今だ!逃げろ!逃げろ!」

 

カラカラ・・・ドガァァァン!

 

キャッーーー!

ヒィィィッーーー!

タスケテクレッーー!

 

「ッチ!隊長!人質が邪魔でテロリストが撃てません!」

 

「構わん!人質ごと撃ってしまえ!」

 

「!?し、しかし!」

 

「黙れ!これは命令だ!」

 

「トコトン腐ったか!貴様ら!」

 

「い、いつの間にっ!?」

 

ズガガガガガガガ!

 

「「「キャッッーーー!!!」」」

 

 

シェルスはスモークに紛れ、ISを纏っていない補助部隊を叩いた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「危ない!!姐さん!!!」ドンッ

 

「えっ!?」

 

ズダァァァァァァァン!

 

 

 

「ガハァァァっ!!!!!」

 

 

シェルスを庇った部下が撃たれた!

 

 

「っ!?ロックス!!!」

 

[姐さん・・・は、はやく・・・逃げて・・・]ガクッ

 

「ロックス?!待ってよ!死ぬな!ロックス!」

 

嘆くシェルスに後方から、あの電話交渉の声が聞こえた。

 

 

「あらあら?バカな男?でも貴女のためにくたばって、彼も嬉しいでしょうね?」

 

「メェェルゥゥゥサァァァッッッ!!!」

 

IS を纏ったメルサ准将がいたのだ。

 

 

「アハハハ♪どう?自分の為に死んでいく部下を見るのわ?」

 

「貴様ぁぁぁぁぁ!」チャキ

 

「あら?激昂しちゃてる?でもいいでしょ?貴女も部下達の下に送ってあげるから」

 

「ウワァァァァァァァッ!!!」ズガガガガガガ!

 

キンキンキンキンキン

 

「無駄よ?ISには絶対防御があるんだから」ザッザッザッ

 

 

メルサはシェルスに近づいて行き・・・

 

「ウワァァァッ!!」

 

「無駄って言っているでしょっっっ!!」バキィィィッ!

 

右ストレートをシェルスの腹に喰らわせた!

 

 

「ゲハァァァッッ!!!」

 

ガッシャァァァァァン!

 

シェルスは血を吐きながら、ぶっ飛んだ!

 

 

「汚いわね~?貴女も元IS操縦士なんだから、奪ったISで戦えばいいのに?」ザッザッザッ

 

「ゲホッゲホッ!ハァハァハァ・・・」

 

「何とか言いなさいよ!ねぇ?!か」シィッ!

 

「ぐぅっ!?」

 

メルサはシェルスの体に何度も何度も展開された脚で蹴りあげた!

 

 

「あ!そうだったわ!ねぇシェルス?か」シィ

 

「ぎぃえ?!」

 

 

メルサはシェルスの髪を引っ張りあげ、彼女の耳もとで幼い子供に言い聞かせるように、優しく――

 

 

「貴女の部下達だけど・・・さっきのゴミが最後だったみたいよ?」

 

 

残酷な事実を話した・・・

 

 

「ぎ、ギザマァァァ!」

 

「うわっ?!ちょっと汚いわよ!もう!」

 

ドチャッァ!

 

「グハァ!」

 

シェルスはまるでボロ雑巾のように放り投げられた。

 

 

「うぅ、うぅ」

 

「アハハハ♪ざまぁ無いわねぇ?一時はあの[織斑千冬]と同等と言われた貴女が!今じゃ薄汚いボロ切れねぇ?シェルス・ギッシュ?」

 

「ハァ、ハァ、ハァ・・・」ルズルズル

 

「あら?まだ動けるの?頑張るわねぇ?ほらほら、早く逃げろ逃げろ~♪」

 

シェルスは這いつくばりながら、メルサから逃げようと、いや態勢を立て直そうとしていた。

 

 

 

ズルズルズル

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

脚を引き摺り、肺には血が溜まるために録に息もできなくなりながらも意識を保つ彼女はある部屋に導かれるように歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

その部屋に展示されていたものとは―――

南米の遺跡から発見された『赤い石仮面』だった。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




今日はここまで!


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ドイツと蟲と吸血鬼と人外と・・・下

―――編集・統合しました―――



 

 

 

シェルスサイド

 

ズルズル

 

「ハァ・・・ハァ・・・クッ・・・」

 

ズルズル

 

 

私の名前はシェルス・ギッシュ・・・元ドイツ軍中尉。

 

昔の私はストリートチルドレンだった。

 

親もなく、兄弟もなく、たった一人でその日食べものを探している日々・・・あの日までは・・・

 

 

「おい?お前?大丈夫か?」

 

11のある秋の日、そう声をかけてくれたのは40前後の男。

 

 

「まったく、痩せ干そっているじゃあないか?ん?なんか食うか?」

 

最初はこの男がそこら辺にいる変態だと思い、そいつから逃げた。けど・・・

 

 

「まぁ待て?俺も一人だ?一緒に飯ぐらい食わないか?」

 

なかば無理矢理にその男に飯を食わせてもらった。

 

その男の名前はエイブラ・バルト・・・私の、いや私達のオヤジになってくれた人だ。

 

私は紆余曲折あって、オヤジさんの援助を受ける事になり、その恩返しのために軍に入った・・・そこで仲間と出会い、絆を深めていった。

 

 

楽しかった・・・本当に楽しかった・・・

幼い頃の孤独を埋め合わせるような、そんな楽しい日々だった。

 

 

ISと呼ばれる、あの兵器が出てくるまでは・・・

 

 

ISが軍に入ってからは今までの状況が変わった。

 

私はISのドイツ国家代表となり第一回モンドクロッソにも出場し、好成績もだした。

だけど・・・

 

軍の内部は女尊男卑主義のヤツらによって腐っていた。

 

私はそんな軍を変えるためにISを降り、軍内部の環境を変えようと尽力した。

だが、ヤツらは私を排除しようと姑息な手を使ったきた。しかし、そんな私を救ってくれたのはオヤジさんだった。

 

オヤジさんも私と共に軍の環境を変えようとした。

でも・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オヤジさん・・・エイブラ中将は軍の演習中に撃たれ、物言わぬ屍となりはてた。

 

犯人はメルサ・スタッシュ。

ヤツは上層部の利権主義者達にエイブラ中将の再起不能を頼まれていたのだ。

 

 

私は上層部に直訴したが、これを軍は却下。

あとは、知っての通りだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

ガチャ   キィィィ・・・

 

 

ズルズルズル

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ」ドサッ

 

 

もうだめね・・・歩く力も残ってないわ・・・

 

「ゲフッ・・・ゲフッ」

 

骨が肺に刺さってるから、息も出来ない・・・

 

・・・私もう・・・

 

 

――ねぇ?――

 

 

・・・・・誰・・・?

 

 

――良かった、私の声が聞こえるのね――

 

幻聴まで聞こえてきたか・・・・・

 

――もう、幻聴じゃ無いんじゃないんだけどな~――

 

まぁいいか・・・声からして可愛い女の子のようだし・・・最期にはいいかもね・・・

 

――フフ♪嬉しい!そんな事言われたの初めてよ・・・ねぇ?貴女って恋人はいないの?――

 

恋人?・・・生憎・・・私ってモテた事がないのよね・・・

 

――ふ~ん?そうなんだ、美人なのに。・・・ねぇ?貴女はこんな終わりかたでいいの?――

 

・・・いいわけない。でも・・・もう私に戦う力は・・・

 

――・・・あげましょうか?――

 

・・・え・・・?

 

――貴女がよかっているガラスケースに仮面があるでしょ?――

 

チラリ

 

仮面・・・これ・・・?

 

――そう!それ!それを被るのよ!それを被れば貴女に力を与えてあげる――

 

・・・力・・・

 

私は少女の声に導かれるように仮面を手に取る。

 

――さぁ!力を欲するなら被りなさい!そして私を楽しませて!――

 

私は・・・・・・仮面を被った・・・血に濡れた石の仮面を・・・

 

 

サイドアウト

 

 

 

―――――――

 

 

 

インサイド

 

 

 

廃墟で力を与えてくれたあの謎の声に導かれ、俺はドイツの博物館に来た・・・「石仮面」を手に入れるために。

でも・・・

 

 

――あっちゃ~・・・少し遅かったか――

 

俺の目の前には「石仮面」らしきものを被った、血塗れの女性がいた。

 

――ククク♪「アイツ」も選んだのか・・・しかし改造した石仮面を使うとは・・・ククク♪――

 

アイツ?

 

――いや、こちらの話だ気にするな――

 

そうか。

 

俺は仮面を被った女性に近づく。

俺が仮面を剥がそうとすると仮面は独りでに崩れていき、女性の顔が露になった。

 

「・・・美しい・・・」

 

――なんだ?惚れたか?お?お?おぉ?――

 

「・・・そんなんじゃあない・・・只の感想だ」

 

「・・・ん・・・ぅん・・・え?・・・誰・・・?」

 

すると彼女は目が覚めたようだ。

 

「やぁフロイライン?気分はどうだい?人間を止めた気分は?」

 

 

 

-------

 

 

 

ノーサイド

 

 

「やぁフロイライン?気分はどう?人間を止めた気分は?」

 

黒髪の青年はシェルスにそう言って抱き抱える。

 

 

「え?・・・え?!ちょっ、ちょっと!アンタだれよ!?」

 

シェルスはジタバタと青年の腕の中で暴れるが青年は気にせずに抱きかかえる。

 

 

「こんなところで寝ていたら風邪をひいてしまうよ?お嬢さん?」

 

「な、何を言って!(あれ?私ってこんなに手が小さいの?)ってえぇぇ!?」

 

「おぅ?! どうしたよ?セニョリータ?」

 

「ちょっ、ちょっと!私って今どう見える?」

 

「どうって・・・10代前半?」

 

「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

シェルスの今の姿は正に小学校高学年のような姿になっていたのだ!

 

 

「そ、そんな・・・ゆ、夢よね?」

 

「ところがギッチョン、夢じゃあない」

 

「そんな~!ッハ!ということは・・・チラ・・・は、裸じゃないの~!///」

 

「大丈夫だ、俺のコートを羽織って?」

 

「あ、ありがとう・・・って!アンタは誰なのよ!?民間人?!なら早く逃げないと!」

 

「ん?どうしてだい?」

 

「ど、どうしてって!!それは―――」

 

ドバァァァーーーン!

 

 

「っ!? き、来た!」

 

 

扉を木端微塵にふっ飛ばしたのはISを纏ったメルサ・スタッシュであった。

 

 

「あら?シェルス~?どこに行ったのかしら?血の跡からここだと思ったんだけど・・・ん?おい!お前!何者だ!」チャキ

 

 

メルサは青年にライフルを向ける。が、青年は落ち着き払った様子で答える。

 

 

「はい?俺はしがない只の民間人ですよ?」

 

「民間人?貴方がぁ?子連れのようね・・・」

 

「め、メルむぐっ!?」

 

 

シェルスがメルサに向かって何かを言いかけようとした時、青年はシェルスの口をふさいだ。

 

 

「ん? 何? 何か言った?」

 

「いや、なんでもないですよ」

 

「むぐー!むぐー!」

 

「ふん・・・まぁいいわ・・・早く逃げなさい」

 

「はい!それでは」スチャ  スタスタスタ

 

 

青年は向きを変え、部屋から出ようとする。・・・しかし!

 

 

「待ちなさい!」チャキ

 

「・・・はい?何でしょう?」

 

「ここに有った展示物はどこにやったの?」

 

「さぁ?俺は知りませんねぇ・・・」

 

「惚けるな!所詮はバカな男ね?私の目が誤魔化されると思った?このコソドロがぁ!」

 

 

メルサは青年にライフルを向けながらそう言った! そう言ってしまったのだ!

 

 

プツゥーーーン

 

「あぁ?テメェ? 脳ミソ腐ってやがんのか?」

 

 

「何?貴様、よほど殺されたいらしいわね?いいわ!だったらお望み通りに!」クイ

 

 

「むー!むー!(マズイ!早く逃げて!)」

 

 

メルサは引き金を引く。

 

 

 

 

ズダァァァーーーン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パシッ!

 

 

「えっ!?」

 

「むぐっ!?」

 

 

青年はライフルから発射された弾丸を片手の人差し指と中指の第二関節で挟んで「止めた」!

 

 

「なっ!?」

 

「プハっ、何ですってー!?」

 

 

二人は驚いた!

そりゃそうだ!

 

 

「おい、テメェ・・・」

 

「ヒッ!?」

 

 

メルサは今!自分の目の前で起きた事に理解できず、怯んでしまった!

なお青年は続ける!

 

 

「下手にでてりゃあイイ気になりやがって・・・」ダキッ

 

「え?ちょっと!」スタ 

 

 

抱えていたシェルスを地面に下ろし

 

 

「ピイチクパアチク!ご託をならべて!終いには撃ち殺そうとしやがって・・・」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

 

右拳を硬く握りしめ、腕を大きく振りかぶり!

 

 

「え?!ちょっと!まっ――」

 

「ぶっ飛べ!コンチキショウがぁぁぁ!!!」

 

 

思いっきり!ぶん殴った!

 

 

 

ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッンンン!!!!!!!

 

 

「ぐべぴゃあぁぁっっっ!!!?」ドンガラガッシャーーーン

 

 

メルサは顔面を殴られ!壁までぶっ飛び!壁をぶち破った!

 

 

「ガァッ!?は、は、鼻!鼻が!」

 

 

メルサは顔面を押さえながら、陸で悶えくるしむ魚のように跳ねていた。

そして、こうも考えていた。

 

 

「(ど、どうして!?なんで!?ISの絶対防御は完璧じゃないの?!あ、あんな素手のパンチで!どうして?どうして )」

 

「なんで?・・・って顔をしてやがるな?」ザッザッザ

 

「ヒィッ!?た、助けて!貴方のやった事には目をつむから!た、助けて!」

 

「ほぅ・・・それはそれはどうもご丁寧に・・・」ザッザッザ

 

「ね!だから!私を――」

 

「だが断る」ザン!

 

「え!?」

 

「そうだな・・・ねぇ?セニョリータ?コイツどうしたらいいと思う?」

 

「わっ、私!?」

 

「た、助けて!お嬢ちゃん!わっ、私を助け――」

 

 

メルサは小さくなったシェルスに手を伸ばしたが・・・

 

 

「うす汚ねぇ手を彼女にむけるんじゃあない!」バキィィ!

 

「ぎゃぁぁっ!?」

 

 

青年はメルサの腕を容赦なく踏み折った!

 

 

「痛い!痛い!!痛いぃぃぃ!!!」

 

「さて・・・セニョリータ?どうする?」

 

 

再度青年はシェルスに質問をした。

 

 

「・・・(コイツ、メルサは私達の敵!中将の仇!でも・・・)」

 

「その人を離してあげて・・・」

 

「あぁ!」

 

「・・・そっか・・・セニョリータがそう言うならしかたねぇ・・・早く失せな」クル

 

 

青年はメルサから目をそらした

 

 

ズルズル

「ハァ・・・ハァ・・・ありがとう・・・なんて言うと思ったかぁ!このマヌケがぁぁぁ!!」ガシィィ

 

「きゃっ!?」

 

 

メルサはコソコソと逃げると見せかけて、シェルスを人質にとった!

 

 

「ヤレヤレ・・・テメェ、トコトン腐ってやがるな」

 

「喧しい!私はIS部隊の総隊長をやっていて!次期ドイツ軍少将だぞ!その私が何処の馬とも知れないゴミにヤられるわけがない!!」

 

「――っているわね・・・」

 

「なんだぁ?!小娘ぇ!言いたい事があるならハッキリと言い――」

 

「どこまでも腐っていると言ったのよ!メルサ・スタッシュ准将!!!」グサァァァッ!

 

「ぎゃぁぁっ!?!?!?」

 

 

シェルスはメルサの首もとに指を突き刺した!そして!

 

 

ゴキュン!ゴキュン!ゴキュン!

 

 

指先から血を吸い始めたのだ!

 

 

「ああ、ぁぁぁ・・・た・・・助け・・・て」

 

 

メルサはどんどんと体から血を抜かれていく。

 

 

「私はアンタに慈悲も何もかけないわよ?仲間達の・・・中将の仇・・・くたばってしまえ・・・メルサ・スタッシュ!!!」

 

 

ゴキュン!ゴキュン!ゴキュン!!!

 

バタリ

 

メルサ・スタッシュは全身の血を抜かれ干からびてしまった。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・皆・・・中将・・・仇は取りました・・・」

 

「セニョリータ?大丈夫かい?」ザッザッザ

 

「えぇ・・・大丈夫よ・・・ところで貴方は一体?」

 

「おぉっと!これはすまない!――」

 

 

青年はシェルスの目線までしゃがみこむと―――

 

 

「――私の名前は暁・・・暁・アキト・・・気軽にアキトとでも呼んでくれよ?可愛いご同類さん?」

 

―――丁寧に自己紹介をした。

 

 

「暁・・・アキト・・・『ヤパーナ』ね?」

 

「あぁそうだよフロイライン。よくわかったね?」

 

「まぁね・・・ところで貴方は一体何者?」

 

「ご同類さ♪」

 

「だからご同類ってどういう――」

 

 

ドガァァァァァァァァァァァァァァッッッンン!

 

 

「きゃっ!?」クラッ

 

「おっと!大丈夫かい?」ダキッ

 

「あ、ありがとう///(か、顔が近い!)」

 

「さて・・・今日は冷える・・・どこかで温かい物でも食べないか?フロイライン?」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

アキトが博物館内でシェルスを助けていた頃・・・博物館の外では―――

 

 

「KiSyaAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaa!!!!!」バッキャア

 

「う、撃て!撃ちまくれ!!」

 

「な、なんなんだ!あの虫はぁぁぁ!?」

 

ズダダダダダダダダダダダダ

バババババババババッ

 

ドイツ軍が巨大百足と戦っていた。

百足はどこから来たかというと、あの巨大水晶から出てきたのだ!

水晶がテロリストやドイツ兵の血を浴びて、孵化→あとはそこら辺の物を食いまくり、7mまで成長→ドイツ軍を襲う。

・・・と、こんな順序で今に至る。

 

 

「KiSyaAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!」バシャアァァ

 

「きゃぁぁぁぁぁっ!!!?あ、ISがと、溶ける!?」ジュワ

 

この大百足、どうやら強力な溶解液を吐くようだ・・・大百足はISの絶対防御を溶かすほどの溶解液をばら蒔きながら暴れまくる!

 

 

「KiSyaAAAAAAAAAAAAAaaa!!!」バシャアァァ

 

「うぉおぅっ!?まったくもって銃が効かねぇ!」

 

「ロケット砲持ってこい!!!」

 

「んなもん持ってきとらんわぁ!アホぉ!」

 

「KiSyYyyyyyyaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!」

 

ズダダダダダダダダダダダダッ!

 

軍の天幕はてんてこ舞いとなっていた。

 

 

「ハルフォーフ中尉!まったくもって手がつけられません!」

 

「くっ!!スタッシュ准将からの通信は来てないのか?!」

 

「はいっ!まだ通信が繋がりません!」

 

「クソッ!こうなれば・・・私がISで――」

 

「失礼する!」ツカツカツカ

 

「あ、貴方は!?」

 

 

そんな天幕に入ってきたのは!あの男!あの男だった!

 

 

「シュトロハイム少佐っ!?」

 

「やぁ?ご機嫌ようお嬢さん達?何か俺に手伝う事はあるかね?」

 

「むっ!?貴殿方シュトロハイム部隊に手伝ってもらう事など――」

 

「待て!・・・シュトロハイム少佐、貴殿に指揮権を返します」

 

「中尉殿っ!?」

 

「そうか・・・では!これよりあの生物の鎮圧を開始する!マルク軍曹!全体へ通達!IS部隊ならびに歩兵部隊は生物を円陣に囲み、遠距離戦でやるぞ!ヤツに鉛玉を食らわせてやれ!」

 

「JAー!(了解!)」

 

 

指揮権はシュトロハイムに返され、大百足の討伐が始まった。

 

 

 

―――――――

 

 

 

博物館前。

 

TV「皆さん!ご覧下さい!博物館内に立て籠ったテロリストと銃撃戦が展開されていたのですが!それが一転、どこからともなくあらわれた謎の蟲により、軍は大混乱に――」

 

「おい!貴様ら!何をしている?!さっさとTVクルーを下がらせろ!!!」

 

「あ、ちょっと!待って!」

 

ズダダダダダダダダダダダダ!

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!

 

 

「KiSyaAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaa!」

 

「足だ!足を狙え!」

 

「足ってどの足だぁ?!」

 

「取り敢えず!足だ!足をぶっ壊せば前には進めん!」

 

「撃ちまくれぇ!!」

 

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

 

 

「あら?あれは!?」

 

「どうした!?」

 

「マズイわ!ヤツの後ろに民間人が!」

 

「なぁにぃ!?」

 

 

 

―――――――

 

 

 

ドイツ軍天幕。

 

 

「少佐!大変です!民間人2人が博物館から出てきたようです!」

 

「何ぃぃぃ?!!!マズイぞ!このままでは民間人が犠牲に――」

 

「な、な、何だと?!!?!?」

 

「どうした!軍曹?!」

 

「み、民間人とおぼしき人物の一人のと、特徴が!」

 

「どもっとる場合か!!民間人の特徴がどうしたのだ?!」

 

「それが!「黒髪の東洋人」だそうです!」

 

 

その時、シュトロハイムの脳内に自分の部隊で起こった事を思いだした!

 

 

「な、何ィぃぃ!?ま、ま、まさか!あの化物かぁぁ?!!??!」

 

 

サイドアウト

 

 

―――――――

 

 

 

インサイド

 

 

俺はセニョリータを抱えて博物館の外へ出ようとしていた・・・セニョリータの顔が赤く、体も温かくなってきた・・・まずい!このままではセニョリータが風邪をひいてしまう!それだけは避けなくては!!!

 

――違うと思うけどなぁ・・・――

 

それで・・・博物館の玄関の外へでたんだが・・・

 

 

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

 

「KiSyaAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」

 

「撃て!撃て!!」

 

「撃ちまくれぇ!!」

 

 

 

なんだコレ・・・いや?!マジで何コレ!?蟲っ??!しかもなんで百足なのっ!?何?バカなの?空気読めや!蟲ケラがぁ!

 

 

「おい!民間人!こっちに来るんだ!」

 

「・・・っころす・・・」

 

「おい!聞いているのか?!!」

 

「ぶっ殺してヤル!!!」ガシッ

 

「ア、アキト?」

 

「大丈夫だよ、セニョリータ?直ぐに終わらせるから」

 

テメェのせいでかきたくもない汗をかくぞ!・・・蟲ケラがぁ!!!!!!!!!!

 

 

「『武装錬金』っっ!!!」

キィィィン

 

さぁ・・・殲滅タイムの始まりだぁ!

 

 

サイドアウト

 

 

 

―――――――

 

 

 

ノーサイド

 

 

アキトは右胸に手を当てて叫んだ・・・すると・・・

 

アキトの髪は蛍火のような色にかわり、肌は赤銅色へと変わっていき、手には大剣のような槍が握られていた!

 

 

「ア、アキト!?あ、貴殿!まさか!?」

 

「行くよフロイライン!・・・しっかりと捕まってね?」ニコッ

 

「は、はい!///」

 

ギュン!

 

アキトはシェルスを抱えたまま、大百足に突撃していき――

 

ズザシュュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ

 

「KiSyaAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaa!?!?」

 

いとも容易く大百足の体を真っ二つに切り裂いた!

 

 

一同「「「「「「な、なにぃぃぃぃぃぃっっ!!!?」」」」」」」

 

 

 

―――――――

 

 

 

天幕外にて。

 

 

「ハルフォーフ中尉、あ、あれは・・・」

 

「たぶんそうだろう・・・あれが噂に聞く「アーカード」」

 

「少佐・・・し、指示を!」

 

「ぜ、全部隊につぐ・・・逃がすな・・・決してあの化物をここから逃がすなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

―――――――

 

 

 

博物館前。

 

 

「さて・・・セニョリータ?これから俺と温かい食事でもどう?」

 

「え、えぇと・・・///」

 

大百足を仕留めたアキトは抱えたシェルスを食事に誘っていた・・・・・・・・・が、しかし!

 

 

「「「「アーカード」につぐ!武器を捨てて、大人しく投降しろ!!さまなくば!」」」

 

「・・・ッチ!ごちゃごちゃとウルセェなぁ・・・そんなに俺に「喰われたいか」?!テメェらぁぁ!!」ゴゥァァァッ!

 

 

アキトは濃厚な殺気を辺り一面に発した!

 

 

一同「「「「「「「っっ!!!?」」」」」」」

 

「(い、息がっ!?)」

 

「(こ、怖い!恐い!)」

 

「(これが・・・恐怖!!)」

 

 

ドイツ軍人達は、あまりの恐怖に尻餅をつく者。

下を垂らす者。

過呼吸になる者。

そんな人間で溢れるなか・・・ただ一人。この恐怖に耐え、アキトに銃を向ける者がいた!

 

 

「ほぅ?そんなに俺に喰われたいか?シュトロハイムゥゥ!!!」

 

「・・・人間の偉大さは、恐怖に耐えるその姿にある」チャキ

 

「そうかそうか・・なら望み通り喰ってやるぞぉぉぉ!!!」

ガッ!

 

アキトはシュトロハイムに飛びかかろうと踏み込んだ!その時!

 

 

 

「やめて!!アキト!!!」

 

シェルスがアキトを呼び止めた!

 

 

「なっ!?こ、子供!?」

 

「・・・どうしてだい?」

 

「そ、それは!その・・・わ、私、お腹が減っちゃって///は、早く食事に行きたいなぁ・・・なんて・・・」

 

 

シェルスはシュトロハイムを助けようと苦し紛れに言った。

すると・・・

 

 

「・・・そっか、なら食事に行こうか!それもそうだね!」シュゥゥゥ

 

アキトは殺気を納めてしまう。

 

 

「おい!シュトロハイム!」

 

「な、なんだ?!アーカード?!」

 

「俺、帰るからあとはヨロシクな!じゃあな!」シュッン

 

「っ!??!?き、消えた!?」

 

 

アキトはシェルスを抱えたまま、まるで煙のように消えてしまった。

 

 

 

その後、この事件はTV中継されていたことやシェルスがTV局に出していた書類がキッカケでドイツIS部隊の不正が明らかとなり、ドイツ政府は軍の上層部の女尊男卑主義者の排除にとりかかりドイツ軍の環境は改善された。

 

それと謎の男『アーカード』については一層の知名度が上がったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とあるレストラン・・・

 

カチャカチャ モグモグ ハグハグ マグマグ

 

「あっ!」

 

「どうしたの?アキト?」キョトン 

 

「そういえば、君の名前を聞いていなかったね?」

 

「そ、そうね!そうだったわ!・・・コホン・・・私の名前はシェルス・ギッシュよ。ヨロシク♪アキト!」

 

「こちらこそヨロシクね♪シェルス♪それでシェルス?このあと俺のスポンサーのところに行くからね?異論は認めない」ニコッ

 

「・・・え?」

 

「あと、さすがに俺のコート一着じゃあ寒いしさ?」

 

「え?・・・あ!・・・うん・・・///」

 

「(・・・クソ可愛い!)」

 

 

とあるレストランでロリを口説く黒髪の青年が目撃された・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




もう・・・無理矢理感が半端ない・・・

しかし!メゲナイ!クジケナイ!


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首領と魔女と人外達と・・・

このキャラいれるから新しいタグ入れようかな?

どうしよう・・・?

―――編集・統合しました―――



シェルスサイド

 

 

バババババババ~

 

 

え~と・・・あれから私はドイツからアキトの運転するバイクの側車に乗っけてもらって移動中・・・

でもまさかアキトがあの「アーカード」だったとわね・・・見た目は普通の人間と変わりないんだけど・・・容姿も中々整ってるし///・・・

 

 

「寒くはないかい?シェルス?」

 

「え!?だ、大丈夫よ!私は平気」

 

「そう?ならいいんだけどね」

 

「ところで、アキト?何処に向かっているの?」

 

「あん?まぁ着いてからのお楽しみってことで♪」

 

 

・・・不安だわ・・・あの博物館の事件からアキトと行動をともにしているけど・・・私、アキトの事全然知らないし、アキトはあのアーカードだし、妙に私に優しいし、アーカードだし、というか「ご同類」ってなに?私が子供体型になった事と何か関係あるのかしら?

 

 

「シェルス?まだ目的地まで大分かかるから寝てたら?」

 

「え!でも――」

 

「今は夜中なんだ、子供は寝ている時間だよ♪」

 

「なっ!?なんて事言うのよ!私は子供じゃあ――」

 

「お休み♪可愛い可愛いご同類さん?」ナデナデ

 

 

私が彼に文句を言い終わるまえに、私の頭を優しく優しく撫でてくれた・・・なんだかとっても・・・

 

 

「く~・・・zzz ・・・」

 

「ハハ♪寝顔も可愛いなぁ♪」

 

 

 

サイドアウト

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

シェルスを乗っけたバイクは東へ南へと進んでいき、ある国に着いた・・・

 

 

バババ~キキィ

 

 

「確か・・・ここら辺なんだっけ?」ペラ

 

「ん・・・んみゅ?アキト・・・?」

 

「おん?おはよう♪シェルス♪よく眠れたかい?」

 

「ん・・・中々の・・・振動だったわ」

 

「それはそれは、どうも♪」

 

「褒めてない・・・それで着いたの?」

 

「あぁ♪着いたさ♪ようこそ!シェルス!水の都ヴェネチアへ!!!」

 

 

 

ババァーーーーーーン

 

 

二人の目の前には朝日に染められた美しい街並みが広がっていた・・・

 

 

「うわぁ~・・・綺麗・・・」

 

「さて、場所もわかったところで・・・行きますか」

 

 

ギュルルン  バババババババ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の乗ったバイクは街並みの中に入っていき、ある邸の門の前に止まった・・・

 

 

キキィ

 

「着いたよ♪」

 

「・・・ホントにここ?」

 

「おん?そりゃあどういう意味だい?」

 

「べ、別に」

 

 

この時シェルスは思った

 

 

「(こんな豪邸を構えるアキト、いえアーカードのスポンサーって一体?)」

 

 

ジリリリィィーーーン

 

 

「呼び鈴ならして、もしも~し?・・・出ないな・・・」

 

「今は朝の7時よ?あまりにも早すぎるんじゃあないの?」

 

「しょうがねぇ・・・」グッ

 

 

アキトは門の前に立つと片手の拳を振り上げ――

 

 

「ちょっ、ちょっと!?アキト!?」

 

「とっとと開けやがれ!コノヤロウがぁぁっ!!」

 

 

ブンッ

 

――降り下ろした!

 

 

 

 

 

 

ドッグワワァァァァァァァァァァァァァァァァァァッン!!!

 

 

朝のヴェネチアに轟音が鳴り響く

 

 

「ア、アキト!?なんて事してんのよっ!?」

 

 

邸の鉄の門は綺麗に木っ端微塵になった

 

 

「よし!これで通れ――」

 

「て、敵襲ーーー!!」

 

 

ガチャチャチャチャチャチャ

 

 

アキトが門をぶっ壊したおかげで黒服の男達にサブマシンガンを向けられている

 

 

「ちょっ、ちょっと!アキト!どうすんのよ!コレ!」

 

 

シェルスはアタフタと慌てたが・・・

 

 

「よぉ!皆さん!good morning !」

 

 

アキトは呑気に挨拶をしていた、すると・・・

 

 

「まったく・・・朝のこの時間になんて事してるんですか!もうっ!」

 

 

黒服の男達を掻き分けて来た人物が言った

 

 

「ハハハ♪スマネェなロレさん、あんまりにも出迎えが遅いもんで」

 

「遅くはないでしょう!まだ呼び鈴を鳴らして一回しかたってないでしょうが!」プンプン

 

「ゴメンゴメンってロレさん」

 

 

アキトはその人物に怒られていた

 

 

「な、な、!」

 

「あら?こちらのお嬢さんは?」

 

「あぁこちらが電話で話した可愛いご同類さんだ♪」

 

「まぁ!こちらが!私の名前はロレンツォ、どうぞよろしく!異国のお嬢さん?」

 

 

シェルスはその人物と握手をしたのだが・・・

 

 

「ん?どうかしましたか?」

 

「ふ、袋ー!?」

 

 

シェルスはその人物の風貌に驚いた

その人物は頭に麻布袋を被り、着物に袴という何とも珍妙な格好だったからだ

 

 

「まぁ、驚くわな」

 

「ふふ♪驚いてもらってって!?この子!裸にコートじゃないですか!?アキトにこんな趣味が!?」

 

「いや、ちげーよ!!ドイツからその・・・シェルスは裸だったんだよ!」

 

「アナタ!異国で年端もいかない子供をひんむいてここまで来たんですか?!」

 

「私は子供じゃあないーーー!!!」

 

 

朝から邸の玄関先でギャアギャア騒いでいる三人の前に――

 

 

ドッギューーーン!

 

 

一発の銃声が響いた!

 

 

「キャッ!?な、何っ!?」

 

「朝からギャアギャア喧しいぞ!」

 

 

邸からメッシュがかった女性がピストルを向けながらやって来た

 

 

 

「おん?おはよう♪ガブさん♪」

 

「なんだお前かアキト、ん?そっちがお前の言ってたお嬢さんか?」

 

「あぁ、その通り――」

 

「そんな事より!この子に何か服を着させてあげないと!」

 

「コーデはロレさんに任せるよ♪ところで「首領(ドン)」と「あの人」は?」

 

「ドンとあの人なら広間で朝飯を召し上がってますよ?」

 

「そっか、なら俺は先に広間に行ってるよ♪シェルス?あとはこのロレさんとガブさんに服を選んでもらってね♪」

 

「おっ?私もか?」

 

「ちょっ、ちょっと!?アキト!?」

 

「それじゃあ楽しみにしてるよ♪じゃあシェルス?また後で♪」

 

コツコツコツコツコツ   ガチャ

 

 

アキトはシェルスを置いて邸の中に入っていった

 

 

「え!アキト~?」

 

「さて、お嬢さん♪早速貴女のコーディネートーをしていきましょうか♪」ガシッ

 

「フッフッフ♪楽しくなってきたな♪あぁ後、私の名前はガブリエラだよろしくな♪」ガシッ

 

 

袋とメッシュに連行されていくシェルスは思った

 

 

「(一体どうなんの!?私!?)」

 

 

 

―――――――

 

 

 

コツコツコツコツコツ

 

シェルスと別れたアキトは広間に向けて前進していた

 

コツコツコツコツコツ

 

 

「おん?ありゃあ・・・?」

 

「あぁ?テメェは・・・」

 

「おはようございます、アキトさん?」

 

 

 

アキトは広間の扉の前に立つ二人の女性に出会った

 

 

「おはよう♪「オクロック」に「ガントレット」」

 

「ったく、朝から騒ぎを起こしてんじゃねぇよアーカードさんよぉ!」

 

「騒ぎぃ?いつそんなもんを起こしたんだぁ?ガントレットさんよぉ?」

 

「さっきだ!さっき!テメェはそんな事も覚えられない鳥頭なのかよ?あぁん?あと、その名前で呼ぶな」

 

「ゴメンねぇ?俺って興味ない事は覚えないの、わかったぁ~?ガントレットちゃん?」

 

「「ハハハハハハハハハ・・・テメェ!表に出やがれ!」」

 

「やめなさい、二人とも・・・ハァ・・・なんでこうも会うたびに喧嘩をするんですか・・・」

 

 

アキトとメンチをきりあっている茶髪の女性はヘレン・ヴィニアー、二人の喧嘩に呆れている黒髪の女性はエーヴェル・サリバンである

 

 

「ハハ♪そんなの仲がいいからに決まってんじゃん!」

ギリギリ

 

「誰がテメェなんかと!」ギリギリ

 

「取っ組みあってるところ失礼ですが、中で御嬢様がお待ちですので」

 

「わかったよ、ありがとうねオクロック」

 

 

アキトはヘレンとの取っ組み合いをやめ、扉へとあしを進め――

 

 

コツコツコツコツコツ      ガチャ

 

 

広間の中へと入っていった・・・するとそこには

 

 

「シャ~シャシャシャ♪おはようであろー!アキト!」

 

「おはよう♪アキト♪」

 

 

金髪のスタイルのいい美女と黒いマントを羽織った白いヤギがいた・・・

 

 

「おはよう♪ドン、ついでにウィッチー卿」

 

「酷いなアキト?ボクはついでかい?」

 

「ククク♪悪い悪い冗談だよウィッチー卿」

 

「もう、アキトは意地悪なんだから」ムス

 

「シャ~シャシャシャ♪いいではないかウィッチー♪」

 

「ドンも元気そうで何よりだよ♪」

 

「お主も元気そうで何よりであろー♪」

 

「Mr. ヴァレンティーノ?ボクのアキトと仲良くするなんて、ちょっと妬けちゃうな~」

 

「誰がお前のもんだ、誰が」

 

「シャ~シャシャシャ♪」

 

 

三人?は意味のない会話を弾ませていた・・・

 

 

「ところでアキト?ドイツでの収穫は?」

 

「あぁ・・・それなんだがな・・・収穫はゼロのようでそうじゃないような」

 

「回りくどいであろー、もっとはっきり言うであろー」

 

「あぁと・・・えぇと・・・その・・・」

 

 

アキトが説明に戸惑っていると――

 

 

ガチャ

 

 

「ド~ン!お待たせしましたぁぁぁ!!」

 

「うるさいぞ」

 

「アハハハ・・・」

 

 

シェルスの服のコーディネートが終わったロレンツォとガブリエラが入ってきた

 

 

トコトコトコ

 

「ほぅ?この娘が電話で聞いた子供であろー?」

 

「えっ!?えぇ!!や、ヤギが喋ってる!?」

 

「中々に可愛い子じゃあないか?アキト?」

 

「えっ、えぇと・・・」

 

「ハハハ♪そんなにジロジロ見てやるなよ二人とも?ツーか・・・」

 

「うぅ///恥ずかしい・・・///」

 

 

説明しよう!今のシェルスは黒いゴスロリを着ているのだ!それをアキトは――

 

 

「ディモールト(とても)・・・ディモールト・ベネ(とてもいい)!!!ロレさんガブさんマジGJ!!」

 

「ば、バカぁ!///」モジモジ

 

「それで?アキト?収穫というのはこの娘の事かい?」

 

「Yes !このシェルスは俺と同類の・・・「選択者」だ」

 

一同「「「な、なんだってーーー!?」」」

 

「え?えぇ?」

 

「へぇ?これは興味深いね?」

 

「ハハハ♪」

 

皆が笑う中、シェルスだけがポカンとしている

 

 

「選択者?何それ?」

 

アキトの言ったことについて一同が驚いている事にシェルスはポカーンとしていた

 

 

「ではこの娘もアキトのように背中に翼を生やせるのであろーか?」

 

「だったらコイツも不死身なのか・・・」

 

「どうしましょう?!ドン!」

 

「ちょっと!ちょっと!私を置いて話を進めないでよ!」

 

 

ドン達は慌てていた

 

 

「ねぇアキト!どういう事なのか説明してよ!」

 

 

シェルスはアキトに詰めよった

 

 

「待て待て!シェルス!説明するから落ち着けよ!そうだなぁ・・・どう説明したらいいもんか・・・そうだ!ガブさん?銃かしてよ?」

 

「あぁ?・・・!そうかそうか大丈夫だぞ?アキトの手はわずらわせん♪」チャキ

 

「え?」

 

 

ガブリエラはアキトに銃を向けると・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズキューン

ズキューーン

ズキューーーン!

 

 

 

アキトの頭に三発の鉛弾をぶちこんだ!

 

 

「アキトっ!!!?なんて事を!?」

 

 

アキトは後ろに仰け反ったが・・・

 

ガッ

 

「イッテェぇぇっ!相変わらずイキナリすんじゃないよ!!ガブさん!!!」

 

 

アキトは平気そうに撃たれた頭を押さえながら、デコピンをくらったリアクションで姿勢を戻した

 

 

 

「ガブリエラはイキナリ過ぎるであろー、ビックリするであろー」

 

「まったくです!この返り血を誰が処理すると思ってるんですか!」プンスコ

 

「しかし、アキト?一応大丈夫?」

 

「ありがとうよウィッチー卿・・・とまぁこういう事、ってあれ?大丈夫?シェルス?」

 

「あ、あ、あ、あ、あぁぁ!?アキト!大丈夫なの!?」

 

「大丈夫大丈夫って、返り血が付いちゃったね、また着替えないと」

 

「そんな事どうでもいい!ど、どうしてそんなに平気そうなの!?アーカードのあの状態ならまだしも!その状態で!な、なんで!?」

 

「まぁ平気だよ?ングッペッ」カランカランカラン

 

 

アキトは弾丸を口から吐きなが答えた・・・

 

 

「シェルスも俺と同じ体の構造になっていると思うけど?」

 

「ぇぇ!?わ、私も!?」

 

 

アキトの衝撃的な告白をして驚きを隠せないシェルス

 

 

「立ち話もなんだし、座って話そうか?」

 

 

 

ガタ  ガタタ

 

 

「さてどこから話したものか・・・」

 

「・・・質問なんだけど」

 

「なんだい?シェルス?」

 

「私も貴方のように・・・その・・・不死身なの?」

 

「そうなんじゃないの?」

 

「そ、そんな適当な!」

 

「ゴメンゴメン、適当な事を言ってるわけじゃなくてね?俺にもわかんないのよ」

 

「わかんないって!それじゃあなんで私が貴方と同類だとわかるのよ?!」

 

 

シェルスはアキトの胸ぐらを掴み、迫った

 

 

「・・・シェルス?君は博物館であの腐ったヤツをどうやって「殺した」?」

 

「っ!!!そ、それは・・・」

 

 

シェルスは博物館であったことを思い出した・・・

シェルスはあの腐れ准将をどうヤったのかを思い出した!

 

 

「・・・私は・・・メルサの血液を指先で・・・全部・・・「吸った」・・・」

 

「そう・・・君は人間をやめたんだよ、そして俺と同じ人外になったのさ」

 

「人外・・・私が・・・」

 

 

シェルスはアキトの告白と自分が人間をやめていた事にショックを受けていた

 

 

「そう、正確に言うと君は俺と同じ吸血鬼のタイプの人外なんだよね」

 

「吸血鬼って・・・!で、でも吸血鬼って太陽の光りが弱点よね?!」

 

「そうだよ?」

 

「だったらなんで私は太陽の光を浴びても平気だったの?!これじゃあ矛盾してるじゃないの!」

 

 

シェルスは当然の疑問を投げ掛けた

 

 

吸血鬼・・・それは闇に住まう高貴なる存在、太陽を恐れ、ニンニクを嫌い、銀に弱いと言う様々な弱点をもつが、その代わりに人間を圧倒的に凌駕する力を持つ怪異の王

 

 

しかし、シェルスはこの邸に来る前に外で朝陽・・・つまりは太陽の光りを一身にあびていたのだ!

 

 

「ククク♪そうだろうね?疑問に思うのは当然さ、でもこれが真実なのさ♪君は太陽の光りを・・・吸血鬼としての弱点を克服した吸血鬼なのさ♪」

 

 

アキトはさもコメディ映画の感想を語るようにシェルスに説明した

 

 

「そ、そんな・・・バカな事って・・・」

 

「シェルス?君はあの博物館であったことを覚えているかい?自分が人外になった瞬間を?」

 

「人外になった瞬間?・・・・・・あぁ!た、確か幼い女の子の声を聞いたわ!「力が欲しいなら仮面を被れって」・・・まさか!」

 

「そのまさかさ、その仮面・・・「石仮面」が君を変えたのさ」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

シェルスは愕然とした!今までの人生の中でこれほど驚愕させられた事がないくらいに!

 

 

「しかし、不思議だね?」

 

「何が不思議であろー?ウィッチー?」

 

「石仮面を被った者は吸血鬼になる事は知っていたが、その吸血鬼達は太陽の光りには弱かった筈なんだけど?」

 

「・・・え?どういう事?」

 

「そこだよ!ウィッチー卿!」ガタ

 

「うわっ!?どうしたんだよアキト?」

 

「彼女、シェルスは選んでこの力を手に入れたのさ!」

 

「私が・・・選んだ・・・?」

 

「Yes !シェルス、君はたぶん覚えてないかもしれないが君は自ら選んでその力を手に入れたんだよ!だからこそ、君には吸血鬼の弱点がないのさ!」

 

「・・・私に力を与えたヤツって一体誰なの?」

 

「それは・・・俺にもわからない・・・俺も謎の声から選択されて、力を手に入れたからね」

 

「そう・・・なんだ・・・」

 

 

広間になんとも言えない空気が支配した・・・

 

 

「のう?アキトの同類?」

 

「何?喋るヤギさん?」

 

「なぜ?お主はその力を選んだのであろー?」

 

 

喋るヤギもとい、ドン・ヴァレンティーノはシェルスに素朴な疑問をした

 

 

「・・・皆、私はね――」

 

 

シェルスはそこから自分の生い立ちから今に至るまでを話した・・・

 

孤独だった頃を

 

始めて家族というものを感じた頃を

 

仲間と過ごした楽しき頃を

 

家族を傷つけられた悲しみと憎しみな頃を

 

そして・・・仇を討つためにテロリストになった時の事を

 

 

「とまぁ、こういう流れって、ちょっとどうしたの!?皆?!」

 

 

シェルスが全部を話した頃には広間にいた全員が泣いていた

 

 

「あぁぁぁぁろぉぉぉー!なんて不憫な事であろー!」

 

「ド~ン!涙を拭いてくださいぃ~!」

 

「師匠もだぁぁぁ~!」

 

「オヤジさんの為に仇を討つか・・・泣かせるじゃないか」

 

「・・・シェルス・・・」コツコツコツ ダキッ

 

「え!?///」

 

 

アキトはシェルスに近づくと有無も言わさずに抱き締めた

 

 

「ちょっ、ちょっと!?アキト!?/////」アタフタ

 

「・・・よく頑張った・・・よく頑張ってここまで来た」

 

「え?」

 

「もう・・・無理する事ない・・・君はよく頑張ったな~」ナデナデ

 

 

アキトは優しく何度も何度もシェルスの頭を撫でた、すると・・・シェルスの目から雫がポタリポタリと流れていった

 

 

 

「あれ?なんで?なんでこんなに涙がでるの?ねぇなんで?」ポロポロ

 

「さぁ?それは君が・・・頑張ってきたからじゃないの?」

 

「そっか・・・そうだよね?私頑張ったよね?頑張ってきたよね?」

 

「あぁ、シェルスはよく頑張った・・・だから・・・「もう一人で抱え込む」んじゃあない」

 

「うぅ・・・グスッ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁっん!!」

 

 

シェルスは泣いた・・・人目を気にする事なく泣いた・・・ボロボロと大粒の涙を流しながら・・・

それをアキトは優しく優しく、撫で続けた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5分後・・・

 

 

シェルスは泣き止み、これからの事を話していた・・・

 

 

「シェルスと言ったかの?改めて自己紹介をするであろー!ワシの名前はドン・ヴァレンティーノ!ヴァレンティーノファミリーのボスをしておるであろー」

 

「ボクの名前はヴァイオレット・ウィッチー、「ゴシップ(醜聞)」の総帥をしているよ」

 

「私はシェルス・ギッシュ・・・元ドイツ軍IS操縦者よ」

 

「シェルス・ギッシュですって!?」

 

「ロレンツォ!知ってるであろー?」

 

「シェルス・ギッシュと言えば!第一回モンド・クロッソであのブリュンヒルデを追い詰めた!あの「クィーンズナイト」の異名を持つ!人ですよ!ドーン!!!」

 

「ほへぇ~、中々有名人だったんだ?シェルス」

 

「もう昔の事よ・・・「クィーンズナイト」のシェルス・ギッシュはもういないわ」

 

「そっか、ならシェルス・・・君を歓迎しよう!ようこそ!こちら側の「世界」へ!!!」

 

「改めてよろしく!暁アキト!」

 

 

この日・・・シェルスは表側の世界とはかけ離れた、裏側の世界へと仲間入りを果たしたのであった・・・

 

 

「さて!歓迎会の食事をするであろー!」

 

「歓迎の食事と言っても朝食になるけどね」

 

「それを言うなよウィッチー卿」

 

「なら今日は朝から晩まで歓迎の日にするであろー!」

 

「さすがです!ドーーーン!!!!!!」

 

「ハハハハハハハハ♪」

 

「どう?シェルス?楽しいかい?」

 

「かなり♪」

 

「そいつは良かった♪」

 

 

 

中々に騒がしい歓迎会が始まりそうだ

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




今日はここまで!


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時は流れて早5年・・・

原作が遠い!

湧水のように出るアイデアが欲しい!


 

 

 

ノーサイド

 

 

 

ドイツ郊外・集合墓地・・・am8:30

 

 

 

シェルス・ギッシュは花束を持ってここを訪れていた

 

 

「・・・」パサ

 

「シェルス・・・」

 

 

シェルスの後ろには人外、アキトがいた

 

 

「あら?来てたの?アキト?」

 

「一応な・・・」

 

「フフ♪・・・でもいくらなんでも線香を供えないでよ?ここはヨーロッパなんだから」

 

「良いじゃんか、気持ちが大事なんだよ気持ちが」

 

「そうね・・・そうよね♪」

 

 

二人はある墓の前に立ち、シェルスは花束をアキトは火をつけた線香を供えた

 

 

「・・・皆・・・私は元気に頑張ってるよ・・・」

 

「・・・」

 

 

時の流れは早いもので、あれから5年の月日が経っていた・・・

 

 

Prrrrrrrrr Prrrrrrrrr Prrrrrrrrr カチャ

 

「もしもし・・・暁だ」

 

「「さっさと電話に出やがれ!くそアカード!」」

 

「うるせぇよ!ギャアギャア騒ぐな!このばかガントレット!」

 

「「何だと!この野郎っ!テメェ!ぶっ飛ばすぞ!」」

 

「あぁぁ!お前とじゃあ話にならん!オクロックと変われ!」

 

「「テメェ!この!って、あ!何しやがるエーヴェル・・・もしもし変わりました、エーヴェルです」」

 

「それでオクロック、要件はなんだ?」

 

「「「仕事」です・・・現場はフランス北東部・・・目標は一体・・・タイプは「蝉」・・・先にフランス軍が応戦しています」」

 

「わかった・・・すぐに行く」

 

「「ご武運を」」

 

「応、ピッ・・・シェルス仕事だ」

 

「わかったわ・・・ん?まさかとは思うけど・・・」

 

「そのまさかでーす♪」バサァッ

 

 

アキトは自分の身の丈程の刀を背負い、自分の背中に赤黒い翼を広げた

 

 

「場所はフランス北東部!さぁ!行こう!」グイ

 

「キャッ!?安全運転で頼むわよ?!アキト!」

 

「だが断る」

 

「断らないでよ!!ってキャァァァァァっ!!!」

 

 

アキトはシェルスを抱えて飛び立った!目的地は隣国フランス!

 

ビュゥーーーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランス・北東部・・・ショッピングモール

 

 

このショッピングモールの地下にあった卵が地下の工事の影響で孵化し、周りの人間の「中身」を吸っていき、現在7mになっていた

 

 

「KiSyUAAAAAaaaaaaaa!!!」ドゴォ

 

「なんなんだ!あの化けもんは!?」

 

「俺、知ってるぞ!蝉の子ってヤツだ!」

 

「食っちゃベッテル場合か!民間人を避難させてヤツを鎮圧するぞ!」

 

「隊長!」

 

「なんだ?!」

 

「もうすぐIS部隊が応援に来るそうです!」

 

「皆!民間人の避難を優先!IS部隊がくるまで持ちこたえろ!」

 

 

豆知識だがフランスの北部には蝉という虫がいない

 

 

「撃ちまくれ!」

 

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ

 

「喰らいやがれ!この蟲野郎!」カチ ズガァン!

 

ドゴォォン!!

 

「どうだ!この野郎!ってえぇぇ!?」

 

「KiSYYYYYYUUU aaaaaaaa !!!!!」ドドドドド!

 

 

大蝉は銃弾やロケット弾をモノともせずフランス軍に突っ込んで行った!

 

 

ドガァァァァァン!

 

「「「ぐわぁぁぁっっっ!!!」」」

 

「ば、化物め!」

 

 

応戦をしていたフランス軍は壊滅的な打撃をうけ、苦戦を強いられていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「塵外刀=サイの型=飛水」ギュゥッン!

 

 

ズシュュゥゥゥゥゥゥ!!!

 

 

「KiSyaAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaa !!!?!?!?」

 

 

空から薙刀のような刀が蝉ドタマに突き刺さった!

 

 

「なっ何!?」

 

 

その場にいた兵士たちは驚いた!あんなにも苦戦を強いられていた蝉を意図も容易く打ちのめしたのだから

 

 

スタッ

 

「ヤレヤレ・・・折角のデートを邪魔しやがって」

 

「で、デートって///そんなんじゃないでしょ!」

 

 

その蝉の前に二人の人影が現れた

 

 

 

「っ!?だ、誰だ!?あの二人は!?」

 

「あ、あれは!!」

 

「知ってるのか?!」

 

「はい隊長!間違いなければあの二人は――」

 

 

 

「ねぇ?アキト?これって私がいる必用ないんじゃないの?」

 

「ん~?そんな事ないぜ?だってこれからデートの続きをするんだから!」

 

「なっ!?///しないわよ!!」

 

「えぇぇ・・・」

 

 

 

 

 

 

「――化物退治の専門家・・・通称「バケガリ」!」

 

「バケガリ・・・あれが噂の・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

「だったらシェルス、これから俺と朝御飯でもどう?旨い所があるからさ」

 

「しょうがないわね・・・おいしくなかったらしょうちしないわよ?アキト?」

 

「Yes !期待しとけ!」

 

 

 

 

この5年間二人は化物退治専門の仕事についていたのであった

 

 

←続く




原作遠い!


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ある朝の出来事・・・

ここからどうやって原作に繋げるか・・・それが問題だ


 

ノーサイド

 

 

ザー

ザー

ザー

 

 

ここはイタリア、ヴェネチア郊外のとある邸・・・外は雨が降りしきる

 

 

ガチャ

 

「あぁ寒ぃ・・・温っかい飲みもんが欲しいぜ」

 

「まったくよ・・・クシュッン!」

 

「お帰りなさい二人とも・・・朝御飯は外でとったので?」

 

「とってねぇよ・・・」

 

「・・・」ブスゥ

 

 

フランスの蝉退治から帰ってきたアキトとシェルスの二人はどこか不機嫌だった

 

 

「おや?お帰りアキトにシェルス」

 

「ただいまウィッチー卿・・・朝飯はまだ残ってるか?」

 

「え?朝御飯はフランスでとったんじゃあ?」

 

「とってないんだなそれが・・・」

 

「あのクソ軍め・・・」

 

「おやおや?どうしたんだい?二人とも?」

 

 

説明しよう!二人は大蝉を退治したあとに後からきたIS部隊に目標に間違えられて攻撃をうけた・・・

アキトはこれにブチ切れて暴れまくり、その一帯を更地に変えた・・・もちろん朝御飯どころではなくなり、急いでこの邸に戻ってきたという訳だ・・・

 

 

「・・・」ブスゥ

 

「ゴメンなシェルス?俺があんな事で切れなかったら」

 

「もういいのよアキト?悪いのはあのIS部隊なんだから」

 

「シェルス・・・ありがとう!」ダキッ

 

「うわっ!?ちょっと!アキト!///」

 

 

アキトはシェルスを抱きしめながらくるくると回った

 

 

「・・・ボクの目の前でイチャつかないでよ」ムスゥ

 

「い、イチャついてなんか!?///」

 

「まぁいいさ・・・朝御飯ならまだ途中だから」

 

「そうか!なら行こうぜ!シェルス!」タタタタタタタ

 

「ちょっ、ちょっと!おろしなさいよぉ~!!///」

 

 

アキトはシェルスを抱えて広間の方へと走っていった

 

 

「・・・ボクもアキトと仲良くしたいなぁ・・・」

 

「お嬢様・・・」

 

「ん、朝の仕事を終えたらボク達も行こうか」

 

 

 

そんな魔女の声がどこか寂しく残った・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広間・・・

 

 

「WRYYYYYYYYYyyyyyyy!!!!!! 」ドゴォォン

 

「ぐべらぁっ!?」グシャァ

 

 

アキトは広間の扉をブチ壊して入ってきた・・・

 

 

「おぉアキト、お帰りであろー」

 

「おぉ!ドン!食事中に失礼!俺達の飯をくれ!」

 

「まったく・・・慌てないで来なさい!アキト!お行儀が悪いですよ!」

 

「ゴメンゴメン、ロレさん」

 

「あとアキト、早くそこから退いてあげなさい・・・潰れてますから」

 

「あ?潰れてるって・・・うぉっ!?」

 

「ぐぁぁ・・・」

 

 

アキトが蹴破った扉の下には、ピンク色の髪をしたスーツ姿の男が下敷きになっていた

 

 

「ボスぅぅぅ!!!!!!」トトトトト

 

 

扉の近くにいた少年がピンク色に駆け寄る

 

 

「カハハハ♪ 悪い悪い「ディアボロ」」

 

「謝る気があるのなら、さっさと退けろ・・・」

 

「ハイ、ハイ、」スタッスタスタ グイ

 

 

アキトはそこから退いてディアボロを起こした

 

 

「まったく・・・お前は何時も何時も・・・俺に何か恨みでもあるのか?」

 

「ハッキリ言って毎度毎度、娘自慢をするのがウザイ」

 

「なんだとっ!?我が宝、娘「トリッシュ」の自慢をして何がウザイのだ?!こんなにも可愛いのに!!!!!!」ペラ

 

 

ディアボロは懐から写真を出しながら答えた

 

 

「・・・ディアボロ、取敢えず血をよこせ」グサァ

 

「理不尽っ!?ぁぁぁぁぁ・・・」ゴキュンゴキュン バタリ

 

 

アキトは話が面倒臭くなったため、ディアボロの首に指を突き刺し血を飲んだ・・・ディアボロは青ざめて倒れた・・・

 

 

「ボスぅぅぅ!!」ユサユサ

 

「案外に旨いんだよなぁ、ディアボロの血は・・・心配するな「ドッピオ」?大丈夫だから」

 

「ほ、本当?」グス

 

「あぁ、本当さ♪飯を食べようぜ?ドッピオ?」

 

「う、うん(ボスが無事なら良いけど)」

 

「・・・」

 

「ん?さっきから黙ってどうしたんだい?シェルス?」

 

「いつまでも私を抱えたままで話をするな!!」ゴスッ

 

「ゲボラァ!?」ビッターン

 

 

アキトに抱えられたままだったシェルスはアキトの頬に右ストレートをぶちかました!

彼は一回転をして、床にキスをする

 

 

スタスタスタスタスタ

 

「皆、扉が外れてるけど・・・ってどうしたのコレ?」

 

 

朝の仕事を終えたウィッチーには何がなんだかわからなかった

 

 

「朝から騒がしいであろー」

 

「何時もの事ですよ、ドン」

 

 

ドンとロレンツォは冷静であった

あれから少しして、今は皆で食事中・・・

 

 

「そういえばさぁ、ディアボロ?」ハグハグ

 

「なんだ?アキト?」

 

「なんでディアボロがここに居るんだ?一応「パッショーネ」のボスなんだろ?」

 

「一応てなんだ、一応て・・・俺はヴァレンティーノに呼ばれてここに来たんだ」

 

「ドンに?」

 

「そうであろー、今日は皆に大事なお知らせを伝えるためにディアボロを呼んだのであろー」シャクシャク

 

 

「お知らせ?まさかここを離れるなんて・・・ってあれ?」

 

「なんでわかったであろー!?ウィッチー?!」

 

 

ドンは自分が言おうとした事を言い当てられて驚いた

 

 

「マジかよドン!?ついに引退するのか?!」ガタタ

 

「落ち着きなさいアキト、ドンが私達に相談もなく引退するわけないでしょう」

 

「それもそうか」ガタタ

 

「でもドン、ここを離れるってどういう事?」

 

「それはだな・・・我がヴァレンティーノファミリーの拠点を「日本」に移そうと思ったからであろー!そのためにパッショーネにイタリアを任せるためにディアボロを呼んだのであろー」

 

「「なんだって(なんですって)ーーー!?」」ガタタ

 

 

アキトとシェルスは驚きのあまりに立ち上がった

 

 

「二人とも食事中に立ち上がるなんてお行儀が悪いですよ」

 

「しかし驚いたねぇ、ドンが拠点を移すなんて・・・因みにボク達ゴシップも日本に拠点を移すから」

 

「「えぇぇぇぇ!?」」

 

「どうして日本に拠点を移すんだよ?!」

 

「決まっておろー、金の匂いがするからであろー」

 

「決まってるよ、「髪の女王」に変化があったみたいだからね」

 

 

ドンとウィッチーは事情を話した

 

 

「あ~・・・なら仕方ないか・・・ところでそれに俺達も付いていっていい?」

 

「もちろんであろー、最初からそのつもりであろー」

 

「良かった~、これで収入源は確保できた訳だ」

 

「そういえばアキト?」

 

「おん?どうしたよディアボロ?」

 

「お前に頼まれていた件なんだが」

 

「何か手がかりが掴めたみたいだな?」

 

「あぁ、お前が探していた「錬金術士」と「ホムンクルス」達は日本で活動を始めたらしい」

 

「結局は生まれ故郷に戻ってきたか・・・よし!なら準備をしますか、バクバク  ゴックン・・・ご馳走さま」

 

ガタタ   スタスタスタスタスタ  ガチャ

 

 

アキトは勢いよく食事を済ませると、自分の部屋に戻っていった

 

 

「私も準備をしないとね、ご馳走さま」ガタタ 

 

スタスタスタスタスタ ガチャ

 

 

シェルスも後を追うように広間から出ていった

 

 

「ではワシらは今後の事について話をしようかのぉ」

 

 

こうしてと朝の出来事は過ぎてゆく・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




この世界には色々なキャラが性格が変わったり、設定が変わったりして出て来ます


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日本にレッツらGo!



そして、時は進む・・・


 

 

 

ノーサイド

 

 

あの朝のゴタゴタから3日後・・・

 

ドンファミリーならびにアキト達は日本行きの飛行機に乗っていた・・・

機内は和やかな雰囲気・・・・・・ではなく

 

 

ズダン!

 

「全員動くな!この機は我々がジャックする!!」

 

 

偶々乗り合わせたテロリストに飛行機をハイジャックされた・・・その時、アキトはと言うと・・・

 

 

「Zzzzzz... Zzzzzz... Zzzzzz...」

 

 

機内食を食べてグ~スカ寝ていた

 

 

「ちょっとアキト」ユサユサ

 

「Zzz ... 腹減った・・・」

 

「貴様ぁ!起きろ!」バチン

 

「ハッ!?腹減った!!!」

 

「イィテェェェッ!!??」

 

 

テロリストの一人がアキトの頭を叩いたのだが、テロリストは自分の手を押さえながら、ヘタリこんでしまった

 

 

「おん?誰だコイツ?」

 

「どうやらテロリストみたいですよ?と言うか貴方の頭は鋼鉄か何かですか?アキト?」

 

「おぉ!ロレさん!日本に着いた?」

 

「まだ着いてないわよ」

 

「何だよ~まだかよ~!腹減ったよ~!」

 

「静かにしなさいアキト、ドンが起きてしまいますから」

 

「スピ~・・・スピ~・・・」

 

 

ロレンツォはオカンの様にアキトをなだめた

 

 

「~っ!テメェ!余裕ぶってんじゃねぇ!!」バキィ

 

 

テロリストは所持していた拳銃でアキトの頬を殴った

 

 

ベチャッ

 

アキトは頬を殴られたために自分の歯で口のなかを切ってしまい、口から出た血がアキトの服についた

 

 

「ヘヘ、どうだザマァみやが――」

 

ドバガキィグシャァ!!!

 

 

テロリストが何かを言い終わるまえにテロリストの頭はぶっ飛んだ!

 

 

「うぎゃぁっっ!!!??」

 

「きゃぁぁっ!?」

 

 

テロリストは向かい側の客席まで飛ばされ、ピクピクと痙攣を起こしていた

 

 

「(ヤレヤレ・・・アキトは殴られた事よりも自分の服を汚された事に頭がくるタイプだったわね・・・ご愁傷さまテロリストども)」

 

 

シェルスはこれからボッコボコにされるであろうテロリストを心配した

 

 

「お前!よくも!」チャキ

 

 

テロリストの仲間がアキトに銃をむけた!

 

 

「おおっと!テメェ!俺に銃を向けるなら覚悟しとけよ!テメェの銃が撃鉄を起こした瞬間!テメェの肩をぶち抜く!押しピンみたいになぁ!」

 

「銃を持ってないお前がか?!やれるもんならやってみろっての!!」カキィ

 

 

テロリストが銃の撃鉄を起こした瞬間!

 

 

「「空裂眼刺驚」(スペースリパー・スティンギーアイズ)!!!」

 

ズシャァァァ!

 

「うぎゃぁ!?」バタリ

 

 

アキトの眼から血液のビームが発射され、テロリストの肩をぶち抜いた!

 

 

「ぐぁぁぁ!!な、なんで?!どうして!?」

 

 

テロリストはのたうち回った!そこに!

 

 

「あぁ?!!テメェ!どうしてくれんだよ!この服けっこう気に入ってたんだぞ!コノヤロー!」バキバキィ

 

「ウゲェッ!!」

 

 

アキトは容赦なくテロリストの胸を踏んずけた

 

 

「(あ、あれは肋骨が折れましたね・・・」コソコソ

 

「(ロレンツォさん、どうにか止めてくださいよ」コソコソ

 

「(イヤですよ、それよりもガブリエラを起こさないでくださいよ?その子が起きるともっと面倒になりますから」コソコソ

 

「Zzz・・・」

 

「スピ~・・・スピ~・・・」

 

 

この状況でもドンとガブリエラはグッスリと眠っていた

 

 

「ハァ~・・・ヤレヤレだわ」

 

 

シェルスは考える事を止めた・・・

 

 

「WRYYY! 貧弱貧弱ぅ!そんな武器でこのアキトを止められるわけがないだろうがぁ!!!」ズドゴォ!

 

「ぎぇぇぇっ!!」

 

「こ、こんなヤツがいるなんて聞いてないぞ!」

 

「に、逃げろぉ!」

 

 

テロリスト達はコックピットへと逃げていき

 

 

「そ、それ以上ここへ近づくな!」

 

「人質がどうなってもいいのか?!」

 

「「ヒィ!」」

 

 

機長と副機長を人質にとった

 

 

しかし!アキトは!

 

 

「別にどうなっても構わん!撃ちたきゃ撃てよ!」コツコツコツ

 

 

そんな警告に耳を傾けるヤツではなかった!

 

 

「う、撃つぞ!本当に撃つぞ!」

 

「ヤカマシイ!!両目からの空裂眼刺驚!!!」ビュビュン!

 

「「うぎゃぁぁぁぁぁ!!!」」バタリ

 

 

アキトの出した空裂眼刺驚がテロリスト二人を貫いて再起不能にした

 

 

がしかし!

 

 

「あぁ!計器が!?」

 

「なんて事してくれてんだ!アンタ!!!」

 

 

アキトの空裂眼刺驚の威力が強すぎて、計器までも壊してしまったのだ!

計器が壊れたために飛行機の動力は止まり、落下していく!

 

 

「Oh No !!!なんてこった!このままじゃあ墜落するじゃあないか!」

 

「あぁ・・・最期に妻や子供達に会たかった」

 

「自分は彼女に・・・」

 

 

コックピットには諦めムードが漂った・・・だが!

 

「おい機長?」

 

「なんだ青年?」

 

「日本のまで後何キロだ?」

 

「そんな事を聞いてどうするんだ?」

 

「いいから答えろ!」

 

「・・・後1000キロだ」

 

「Ok ok なら何とかなりそうだな」

 

「は?何を言って――」

 

ガシャァァン   ブワァァァァ

 

 

アキトはコックピットの窓ガラスをぶち割った!それによりコックピットに強風が招かれた!

 

 

「ぐわぁ!い、一体何をする気だぁ?!」

 

「フハハハハハハハ♪それでは快適・・・ではないがフライトを楽しんでくれよ!」

 

アキトはそう言うと壊した窓から外に出た!

 

「な、なんなんだ?あの青年は?」

 

「機長!ここは危険です!早く客席に!」

 

「あ、あぁわかった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビュォォォォォォ

 

ここは飛行機の外、高度約3000m・・・

 

 

「さ、寒い・・・寒すぎる!!!」

 

 

窓から外に出たアキトは飛行機にヤモリの様に張り付いていた・・・

 

 

ベチベチベチベチベチベチ

 

「大体ここら辺が飛行機の真ん中かな?・・・なら!」

バサァァァ

 

 

アキトは飛行機の真ん中辺にくると背中からドラゴンのような大きな大きな翼を拡げた

 

バサァァァバサァァァバサァァァバサァァァバサァァァバサァァァ

 

その翼を羽ばたかせて、日本へと飛んでいった

 

 

「ハァハァハァ・・・さっき調子に乗って空裂眼刺驚を出しすぎたなぁ・・・持つかな?」

 

 

ドバゴォ!

 

「な、何だ!?」

 

 

アキトの前の飛行機の壁がぶち抜かれ、そこから出てきたのは・・・

 

 

「手伝いましょうか?人外さん?」

 

「おぉ!今!俺の前には可愛い天使さんがいる!」

 

「んな事言ってないでやるわよ!」バサァァァ

 

 

シェルスもアキト程ではないが大きな翼を拡げ、羽ばたかせた

 

 

 

それから少しして、飛行機は無事に空港に不時着

テロリストもお縄につき、病院に搬送された

マスコミは飛行機の機長達を英雄と讃えたが機長達は終始苦笑いだったという・・・

 

ドン達はヴァレンティーノファミリーのアジトに無事に着き、旅の疲れを癒した

 

一方アキトはと言うと・・・

 

 

「Zzzzzz・・・」

 

「お疲れさま、人外さん?」ナデナデ

 

 

アジトでシェルスに膝枕をされながら、グッスリと寝ていた

 

 

 

 

 

←続く







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またまた時は加速する


風邪ひいた影響で文章力が滅茶苦茶だ・・・


 

 

 

インサイド

 

 

やぁやぁ!皆さん!アキトだよ~

 

日本に来てから色々な事があったよ~

 

京都で人間と人外を巻き込んだ御家騒動に巻き込んだり、巻き込まれたり

呪髪を持つ女王とその子を守る最悪を継ぐ者と仲良くなったり

毛フェチな人狼と鉄人刑事とかと対決したり

病弱すぎるテロリストと虫歯のテロリストとかと仲良く?なったりしたり

 

 

まぁ色々とあったよこの2年間・・・

 

 

「アキト大丈夫かいな?姐さぁ~ん!アキトの顔色が悪いでぇ~」

 

「大丈夫か?アキト?そろそろ血を飲んだほうがいいんじゃないか?」

 

「大丈夫・・・でも腹減った~」

 

 

俺は今、自分の限界を知るために血を飲む事を止めている・・・最初の1週間は大丈夫だったんだが・・・今週、つまりは3週間目から辛くなってきた・・・

 

 

「ヴぇぇぇ・・・」

 

「アキト?ホンマに大丈夫かぁ?」

 

 

俺を心配してくれてるのはヴァレンティーノファミリーの頭脳と呼ばれる天才少女の「ノア」である

 

 

「あるがとなぁ~ノア~」

 

「呂律が回っとらへんで?ホンマに大丈夫かぁ?」

 

「あぁ・・・もう無理だわ・・・ノアの血を――」

 

「バカ言ってないの」スパァン

 

「鈍い痛みがぁ・・・何すんだよ~シェルス~」

 

「あ、シェルスちゃん!」

 

 

 

最近のシェルスはスッカリ美少女になりやがって・・・

ロリのシェルスはどこに行ったんだよ

 

 

「あら?アキトはロリコンだったの?」

 

「あれ?声に出てた?」

 

「出てたわよ」

 

「恥ずかしぃ~~・・・」

 

「棒読みなんだけど?ホントに大丈夫?血液パック飲む?」

 

「・・・・・・・・・」ジー

 

「何?アキト?」

 

 

もう・・・限界・・・

 

 

サイドアウト

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

ズドゴォ!!!!!!!!!

 

 

「な、なんであろー!?」

 

「居間の方からです!」

 

 

ドタドタドタ  トタトタトタ

 

 

ここはヴァレンティーノファミリーのアジト・・・

突然の爆音に驚いたドンとロレンツォは急いで居間へと向かうと・・・そこには

 

 

「だ、だめ///アキト、ぅん///」

 

「ジュルジュル」

 

「あわわわ///」

 

「ほうほう・・・お熱いねぇ」ニヨニヨ

 

 

アキトがシェルスの首筋にかぶり付き、貪るように血を吸っていた

部屋はシェルスの抵抗で滅茶苦茶になっていた

 

 

「ん///アキト///もう・・・」

 

「ジュルジュル・・・プハァ・・・あぁ・・・旨かったぁ~!ありがとなシェルス♪」

 

「~~~~~!!!///」ブォン

 

「おっと」パシッ

 

「ちょっと!アキト!何をしてるんですか?!ホラっ口の周りを拭きなさい!」フキフキ

 

「ありがとうロレさん」

 

 

シェルスの血で真っ赤になったアキトの口を拭くオカンなロレンツォ・・・その時!

 

 

「~~!///アキトのバカぁ!!!!!!」ズドゴォ!

 

「ゲボラァ!!!!!!」ガッシャァァァン

 

シェルスの左フックが炸裂した

 

 

これがヴァレンティーノファミリーの日常である

 

 

 

←続く




滅茶苦茶だけど許してね♪


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第壱章『纏うは無限の成層圏』
歯車は回りだす・・・


熱のせいで最高にハイってヤツだぁぁぁぁぁ!!!

―――統合しました―――



ノーサイド

 

 

ここはIS学園・・・インフィニット・ストラトス、通称ISを学ぶ為の学校である・・・

 

ISとは篠ノ之束氏により開発されたものである

このISは何故か女性にしか動かす事ができない、そのためにこの学校は女子高であるが・・・その年は普段とは違った・・・

 

 

ISを動かせる『男』が発見されたのだ

男の名前は「織斑一夏」

ISで世界最強となった『織斑千冬』の弟である

 

その織斑一夏とは別の男が発見された

男名前は・・・

 

 

 

 

「初めまして暁アキトと言います。趣味は料理に食べる事・・・どうぞよろしくお願い申し上げます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は1週間前に遡る・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――病院跡地―――

 

 

この病院跡地はヴァレンティーノファミリーの天才科学者であるノアの研究ラボでもある・・・

 

 

ウィィィーーーン

 

「おーいノアやーい!飯を持ってきたぞぉ!」

 

 

ノアは研究に熱心すぎて食べる事を忘れてしまうので、こうしてファミリーの誰かがロレンツォ特製の栄養満点のお弁当を届けているのだ

 

 

「ハザァァド」ヒタヒタヒタ

 

「おん?カイちゃん?ノアいる?」

 

「ハザァァド」

 

 

アキトの前にはチュパカブラのような生物が看護師の格好して出てきた

 

この生物はノアが自分をサポートするために人工的に造った人造生物、その名も「カイゴハザード」

アキトはカイゴハザードを「カイちゃん」という愛称で呼んでいる

 

 

「ハザァァド」クイクイ

 

「こっちね?わかった、ありがとねカイちゃん」コツコツコツ

 

 

そのカイちゃんに案内され、ノアのいる場所へと向かった

 

 

ウィィィーーーン

 

「ノア~?お弁当持ってきたぞ~?」

 

「・・・」カタカタカタカタ

 

「ノア~?」

 

「・・・」カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ

 

「ノア!」パチン

 

「っ!?痛ぁっ!?何やねん!何やねん!?」ワタワタ

 

「弁当持ってきたぞ、ノア?」

 

「何や、アキトかぁ・・・な!?もうこんな時間かいな?!」

 

「お前・・・いつ寝た?」

 

「え~と・・・34時間前かな?」

 

「・・・これ食ったら寝ろ、すぐに寝ろ」

 

 

ノアは研究に熱中し過ぎるために寝る事までも忘れてしまうのだ

 

 

「かまへんかまへん、まだ1徹目やし・・・」

 

「いいから寝ろ、まだノアは花も恥じらう10代だろ?体に悪いっての」

 

「えぇぇ!」

 

「「えぇぇ!」じゃありません!いいか?徹夜はお肌にも悪いしさ」

 

「・・・なんか最近ロレンツォのオカンがうつたっんとちゃう?」

 

「そうかぁ?ツーかこれってISじゃないか?ノアの専門て生物学じゃなかったか?どうしてISなんか」

 

「モグモグ・・・あの鉄人刑事を倒す為のアイデアを得る為にやっとるんや・・・モグモグ」

 

 

二人の目の前にはISが置かれていた

 

 

「ふ~ん・・・どっから手に入れたんだ?ISって貴重なもんなんだろ?」

 

「「亡国企業」(ファントムタスク)って言う所からデータの改変を頼まれたんや」

 

「あぁ・・・「マドカ」がいるところからか・・・はぁ~ん」

 

「・・・興味ないやろ?」ムスッ

 

 

ノアは興味なさそうなアキトにムスッとしてきた

 

 

「あ?あぁ、あるある・・・俺がいくつのISを落としてきたと思うよ?」

 

「そういえばアキトはアーカードだったんやな~」モグモグ

 

「まぁ・・・人並みにはあるな人並みは、アハハハ♪」

 

 

そう言いながらアキトは「機能を落としている」ISを触った・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィィィーーーン

 

 

 

 

 

 

「え・・・アキト?・・・アンタ一体何してんねん!?」

 

「は?何が?」

 

「アキト!アンタ!男やろ?!!男のアンタがなんで「ISを動かせる」んや!?」

 

「は・・・?・・・動いてんの?コレ?」

 

「だ、だ、大ニュースやぁぁぁ!!!!!!ドン達にれ、れ、連絡せんとぉぉぉ!!!」ワタワタ

 

 

ノアは錯乱寸前まで動揺していた

 

 

「お、落ち着けよノア!ホラっお茶」

 

「飲んどる場合かぁぁぁ!!!」ガシャン

 

「熱ぅっ!?」

 

こうしてアキトはIS学園に強制入学させられたのであった・・・チャンチャン♪

 

 

 

―――――――

 

 

インサイド

 

 

入学式も終り

クラスの自己紹介も終り

今は休み時間!

 

なんで俺がIS学園に入らなきゃならんのだ・・・

ドンは「アキトが学校に通う良い機会であろー」なんて言ってたけど・・・正直、俺はファミリーの皆とバカやってる方が楽しいし

ウィッチー卿と話をしてる方が為になるし

シェルスと仕事してる方が面白いし

何より!何よりも!!!

 

 

ガヤガヤ

 

「ちょっと、話かけなさいよ」

 

「え~・・・なんか暗そうだし、私はパス」

 

 

ご飯(人間)がこんなにいるんだ!俺の食欲が爆発しそうだぜ!一人くらい食っても――

 

 

「なぁ?大丈夫か?」

 

「おん?・・・何だよ?」

 

 

コイツは・・・・・・誰だっけ?

 

 

「誰?」

 

「え!自己紹介したろ?織斑一夏だよ、よろしく」

 

「あぁ・・・自己紹介で轟沈した人か・・・」

 

「う!・・・それを言わないでくれ・・・それより暁アキトだろ?二人しかいない男同士仲良くしようぜ?」

 

 

織斑一夏はそう言いながら手を出してきた・・・

 

一応、人間みたく仲良くしとくか・・・

 

 

「よろしくな「非常食」」

 

「は?非常食?」

 

 

あ、マズイ何時ものノリで・・・

 

 

「おい?少しいいか?」

 

「ん?」

 

「おん?」

 

 

織斑が疑問符を浮かべてると、ポニーテールの日本食、じゃなくて、少女が話かけてきた

 

 

「お前、箒か?!久しぶりだな!」

 

「一夏、ここではちょっと・・・」

 

「え?なんでだよ?ここでも別にいいだろ?」

 

「それは・・・その・・・」

 

 

あぁ・・・ウゼェ・・・この非常食はどうやら鈍感らしい・・・

 

 

「俺の事はいいから、話をしてこい・・・俺は寝るから」

 

「え?そうか?」

 

「なら行くぞ一夏」

 

「あ、あぁ・・・また後でな暁」

スタスタスタスタスタスタ

 

 

あの二人は教室から出ていった・・・

 

 

「ハァ~・・・腹減ったなぁ・・・」

 

あの二人、特にポニーの方は筋肉質で旨そうだったな・・・旨そうと言えば、このクラスの教諭も旨そうだったな・・・

 

コツコツコツ

「ちょっと、よろしくて?」

 

 

特に眼鏡をかけた方は健康的で食欲がそそられたしな・・・黒髪の方も中々に体に良さそうな肉付きをしてたし・・・

 

 

「聞いていますの?」

 

 

夜になったら、喰いに行こ――

 

 

「ちょっと!貴方!!聞いてますの?!!」

 

「おん?何だよ?ってコイツはコイツは・・・」

 

 

なんて旨そうな人間だ・・・皮膚や目からしてイギリス人か・・・しかしホントに

 

 

「旨そうだなぁ・・・」

 

「は?」

 

「あぁ悪い・・・俺に何かようですか?Ms.?」

 

「ふん、男にしては――」

 

 

そういえば腹減ったなぁ・・・飯はまだかよ飯は・・・朝から何も食ってないし、無いよりマシだがクソ不味い輸血パックは3日で全部済んだしなぁ・・・

ああ、腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った

 

 

「――私が貴方にってISを、って大丈夫ですの?顔色が悪いですわよ?」

 

「あぁ・・・心配してくれてありがとうよ・・・そろそろチャイムが鳴るから戻ったほうがいいぜ?」

 

チラ

「それもそうですわね・・・では」スタスタスタスタスタスタ

 

 

・・・ツーかあの金髪の飯、ならぬ人は誰だっけ?何か言ってたけど・・・まぁいいか・・・

 

あの後、すぐにチャイムが鳴り、非常食もとい織斑が黒髪に殴られていた・・・あぁ腹減った・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




無理矢理繋げた・・・もう!どうにでも成りやがれ!!!

アキト[投げやりになんなよ・・・]


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流れと食事と電話

無理と無茶します!

―――統合しました―――


 

 

ノーサイド

 

 

あの後、織斑と金髪、『セシリア・オルコット』の対立があったりした

まぁナンヤカンヤあり

今はクラス代表を決める時間となりました

 

 

「これより1組のクラス代表を決める。推薦、自薦と問わない!」

 

「はい織斑先生!織斑くんがいいと思います!」

 

「私も私も!」

 

「えぇぇ!?お、俺ぇっ!?」

 

 

クラスの大半が織斑一夏を推薦したのだが・・・

 

「では織斑一夏で良いか?他にはいないか?」

 

 

「ちょっと待て!俺はやらねぇぞ!千冬ね――」

 

「織斑先生だ、バカ者!」スパァン

 

「いでぇっ!?」

 

 

・・・とまぁこんな感じで授業は進んでいるのだが、アキトはと言うと

 

 

「Zzzzzz...」

 

 

・・・寝ていた、それも堂々と隠れもせず!イビキをかきながら

 

 

「お前は何時まで寝ている?!!」スパァン

 

「Zzzzzz ... おん?・・・誰だっけ?」

 

「貴様は余程の度胸があるようだな」ゴゴゴゴゴ

 

 

クラスの担任である「織斑千冬」はアキトに対して殺気を当てた・・・のだが

 

 

「Zzzzzz ... 」

 

「寝るなぁ!!!」スパァン!

 

 

アキトは気にせずに眠りこけていた

 

 

「はい!千、じゃなくて織斑先生!俺は暁を推薦します!」

 

「Zzzzzz ... ふァ~・・・ん?何?」

 

 

織斑はアキトを推薦した

 

 

「え~・・・暁くん~」

 

「彼暗いからな~・・・」

 

 

クラスはあまり乗り気ではないが・・・その時

 

 

バァン!

「そのような選出は納得いきませんわ!」ガタタ

 

 

セシリア・オルコットが反発をしめした

 

 

「クラスの代表を男がやるなんて恥知らずも良いとこですわ!だいたい――」

 

 

オルコットはそれが気に入らないのか、日本に対しての罵詈雑言を言いはじめた・・・

 

 

「イギリスだって飯マズランキング連覇者だろ!」

 

言わんでもいいのに、織斑一夏は言い返した

 

 

「なんですって?!貴方!私の祖国をバカにしましたわね!!!」

 

「お前も日本の事をバカにしただろうが!!」

 

 

二人は言い争いになり、結果・・・

 

 

「決闘ですわ!」

 

「臨むところだ!」

 

 

決闘をする事と相成った・・・

 

 

「ところでハンデは?」

 

「あら?早速ハンデのお願い?」

 

「いや、俺がハンデを付けるんだが・・・」

 

 

その織斑の一言で教室は笑いにつつまれた

 

 

「「「「「「アハハハハハハハハハハハハハ♪」」」」」」

 

「織斑くん、それマジで言ってる?」

 

「ISを使えば、男なんて3日で制圧できるんだよ?」

 

 

そんななか、この男・・・アキトは・・・

 

 

「ククク・・・ヒハハハハハハハハハハ!フハヒハハハハハハハハ!ニョホホホヘヘハヒフハハハハハハハハ!ギャハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 

イカれたように笑っていた

 

 

「「「「「「「っ!?」」」」」」

 

「だ、大丈夫ですか!?暁くん?!」

 

 

教室は騒然とした

 

 

「ククク・・・悪い悪い悪い悪い悪い・・・可笑しくて可笑しくて可笑しくて堪らなかったんだよ?先生さんよぉ」

 

「ど、どういう事ですの?」

 

「だってそうじゃんか?いいかい?戦争っていうのはね?力技でどうにかできるもんじゃあ無いんだよ?山田先生?ISは大体いくつあるんでしたっけ?」

 

「え!?はい!467機あります!」

 

「ありがとう先生、まぁ先生の言うようにISはそんなに無いんだよ・・・俺ならそうだなぁ・・・ISにのってないヤツをヤるね・・・そのほうが楽だからな」

 

「「「「「「「「・・・」」」」」」」」」

 

「それか・・・あれだ操縦者の家族を――」

 

「そこまでだ暁!もういい!1週間後に織斑、暁、オルコットの代表決定試合を行う!以上だ」

 

 

織斑先生はアキトを止めた・・・

 

 

「えぇぇ~俺もするのかよ~・・・まぁいいや」ガタタ

 

「どこに行く暁?!まだ授業は――」

 

 

立ち去ろうとしている暁を千冬は止めようとした瞬間

 

 

ゾワリ

「っ!?」

 

 

千冬は背筋が凍りつく感覚に襲われた

アキトはそんな千冬の耳元で

 

 

「そろそろ、空腹がヤバいのよ・・・それとも何か?「アンタが俺を満たしてくれるのかい?」」

 

「っ!?///き、貴様!」

 

「アハハハ♪じゃあな皆さん」ガラララ  スタスタスタスタスタスタ

 

 

後にあるクラスメイトが語る

彼は悪魔のように楽しそうに笑っていたそうな・・・

 

 

 

―――――――

 

 

其れから幾時・・・

ここは学園の食堂・・・その隅の方で飯をたらふく食ってる人物がいた、アキトである

 

ガツガツ ズルズルズルズルズルズル ガツ ゴクゴク

 

 

「よぉ暁!隣いいか?」

 

 

そんなアキトに声をかける一夏だが、アキトはそんな事を無視して食っていた・・・

 

 

「返事ぐらい、したらどうなんだ?」

 

「まぁいいじゃないか、箒? 教室ではあまり話ができなかったけど―――って、聞いてるか?」

 

「おん? 誰だテメェ?」

 

「一夏だよ!織斑一夏!いやぁさっきは凄かったよな――」

 

 

アキトの隣で一夏は喋りかけているが、アキトは構わずに食っている

 

 

「おい!お前!一夏が喋りかけているのに、無視をするんじゃ――」

 

「ヤカマシイっ!!!黙って食えねぇのか!テメェらは!!」

 

「「っ!?」」

 

 

痺れを切らしたアキトは怒鳴りあげた

 

 

「す、すまん・・・」

 

「そ、それよりアキトは――ぐぇっ!?」ガシィ

 

 

一夏がアキトを下の名前で呼ぶと、一夏の首をアキトは掴んだ

 

 

「あ?テメェ何馴れ馴れしく下の名前で呼んでんだよ?」

 

「わ、悪かった」

 

「ならいいんだよ」パッ

 

「ゲホッ!ゲホッ!」

 

「い、一夏!貴様!」

 

「ごちそうさん・・・じゃあな」スクッ  スタスタスタスタスタスタ

 

 

アキトは気にせずに食堂から出ていった

 

 

「な、なんなんだ!あの男は?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで一日は終り、アキトは割り振られた部屋へと向かっていた・・・

 

 

サイドアウト

 

 

 

インサイド

 

スタスタスタスタスタスタ

 

「あぁぁぁぁ疲れはてたぁぁぁぁあ・・・」

 

 

慣れない事をするもんじゃあないな・・・一日でここまで疲れたんだ・・・こんなのが続くのかよ・・・脱走しようかなぁ?ぁぁぁぁあ!シェルスに会いてぇ!血が飲みてぇ!!!

 

 

Prrrrrrrrr♪

 

ん?電話か・・・

 

カチャ

 

「もしもし暁だが」

 

「「疲れた声ね?アキト?」」

 

 

おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?

 

「シェルスぅぅぅ!!!!!!」

 

「「きゃっ!?もう!いきなり大きな声を出さないでよ!ビックリするじゃない!」」

 

「ごめん・・・」ショボン

 

「「落ち込まないでよ・・・そう言えばアキトのISが出来たみたいよ?」」

 

「えぇぇ~要らねぇよ、そんなもん」

 

「「アンタは今、専用機を欲しがっている操縦者を全員を敵にまわしたわよ?まぁアンタはなくても戦えるでしょうけどね」」

 

「あ・・・戦うで思い出した」

 

「「なに?」」

 

「クラスメイトのヤツと決闘をする事になった」

 

「「・・・はぁ!!!!!!!!!!!?」」

 

「っ!?うるせぇよ!シェルス!鼓膜が破れるでしょうが!」

 

「「ま、まさかISで戦うとかじゃあ・・・」」

 

「それ以外で何をすんだよ」

 

「「・・・ハァ~・・・」」

 

「おい、なんで溜め息をつくんだよ?」

 

「棄権しなさいアキト」

 

「断る」

 

「断らないでよ!アンタが戦うとなると相手が可哀想よ!しかも軍人でもない学生と戦うなんて・・・」

 

「大丈夫だって代表候補生ってヤツらしいから」

 

「「それでも!」」

 

「あぁ!」

 

「「何?!どうしたの?!」」

 

「携帯の電池がないわ・・・じゃあな」

 

「ちょっとアキ――」ピッ

 

 

ヤレヤレ・・・何が「アンタと戦う相手が可哀想」だよ・・・俺のことも少しは心配してよ・・・

 

 

スタスタスタスタスタスタ スタッ

 

「ここか・・・」カチャ  ガチャ ギィィ

 

 

誰もいないか・・・ッチ!いたら体中の血液を吸ってやったのに・・・まぁいいか・・・寝よう

 

 

 

アキトが部屋についた頃、一夏はラキスケに遭遇し、箒に木刀でしばかれていた

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




アキト[ヒデェ・・・]

後悔はない!今は!


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人外が特訓し、試合する・・・

肺炎になりかけたぞ!JoJo !


ノーサイド

 

 

あれから数日後・・・

 

武道場にて・・・

 

 

「たぁぁぁっ!!!」スパァン

 

「まだまだぁ!」スパッァン

 

 

ここでは一夏と箒が剣道をしていた

するとそこに・・・

 

 

ガラララ

 

「ちわーす」

 

「ん?暁じゃないか!」

 

「む・・・」

 

「なんだ・・・人がいたのかよ」

 

 

アキトが袋にくるまれた長い物をもって入ってきた

アキトは出て行こうとしたが

 

 

「待てよ暁!お前も特訓しに来たんだろ?一緒にやろうぜ!」

 

「い、一夏っ!?」

 

 

一夏が引き止めた

 

 

「・・・なら、お言葉に甘えて」スタスタスタスタ

 

 

アキトが入って来ると布でくるまれた物を畳の上に置き、布からあるものを出した

 

 

「暁?なんだその古びた「剣」は?」

 

「古びたか・・・」

 

 

赤黒く染まった「西洋剣」を取り出した

 

 

「中々に格好いいなそれ!刀身が錆びてるのか?」

 

「いや錆びてはないよ、ついこの間まで「使って」いたヤツだ」

 

「「使っていた」?ならこれは・・・まさか!?」

 

「あらお気づき?そうだよ「血」だよ?」

 

「「っ!?」」

 

 

剣には乾いた血がベットリと付いていた

 

 

「暁、お前・・・一体・・・?」

 

「俺が前に何やってたか、お前ら知ってるっけ?」

 

「い、いや知らない・・・だがコレは・・・」

 

「さて・・・やりますか・・・」ブォン

 

 

アキトは剣を降り始めようとした・・・が

 

 

「待て!暁!」

 

「あんだよ?え~と・・・」

 

「篠ノ之箒だ」

 

 

箒がアキトを呼び止めた

 

 

「じゃあ篠ノ之ちゃん、俺に何かよう?」

 

「篠ノ之ちゃん!?・・・まぁいい、私と勝負しろ」

 

「嫌だね」

 

「そうか、なら準備を・・・って嫌!?」

 

「嫌だよ・・・だって俺はそんなもんをするために来た訳じゃないからなっ!」ブォン

 

 

アキトはそう言いながら長物の剣を降った・・・というか剣舞を舞った

 

 

 

 

 

15分後・・・

 

 

 

「ふぅ・・・こんなもんか・・・」ガチャン

 

「なぁ・・・暁?」

 

「なんだよ?え~と・・・誰だっけ?」

 

「織斑だよ!織斑一夏!」

 

「じゃあ織斑・・・ホラっ」ヒョイッ

 

 

アキトは一夏に持っていた剣を投げ渡した

 

「おっと!?っ!?重っ!?」ズシィ

 

「大体30キロはあるな・・・銀と特殊な金属で鍛え上げた業物だ・・・大体400年前のローマの骨董品だがな」

 

「よくこんな物を軽々と・・・」

 

「さて・・・気が変わった」

 

「は?」

 

 

アキトは竹刀を拾いながら・・・

 

 

「戦うんだろ?早くやろうぜ?篠ノ之ちゃん?」

 

 

箒に試合を申し込んだ・・・

 

 

「その格好でか?」

 

 

アキトの今の格好はインナーシャツにジーパンという大変ラフな格好だ

 

 

「防具なんぞ、邪魔くさいだけだろ?それとも何か?防具がないと不安かい?お嬢ちゃん?」ニタァ

 

「む!貴様のそのフザケタ口を正してやるぞ!」

 

これより人外と只の人間が戦う・・・竹刀で

 

 

 

ガヤガヤ ガヤ ガヤガヤ

 

アキトと箒が試合をする内容を何処からか聞いてきた者たちが集まり、武道場は1年生のギャラリーで溢れていた

 

 

「なんでこんなにギャラリーが来とるんだ?」

 

「私が知るか・・・それより本当にその格好――」

 

「クドイぜ、防具は邪魔くさいだけだ」

 

「ふん、なら吠え面をかくなよ」

 

 

両者は竹刀を構えた

 

 

「暁くんて強いのかしら?」

 

「そんな事ないでしょ?千冬様にも無礼なんだし、私は気に入らないな」

 

「篠ノ之さぁ~ん!頑張って~!」

 

「それでは両者・・・構えて――始め!」

 

 

審判の一夏の号令で試合は開始された!

 

 

「テェェイっ!!」ブン

 

「おっと・・・」ヒョイッ

 

「っ!?ならこれならぁ!」ブン

 

「・・・」ヒョイッ

 

 

アキトは箒の攻撃を紙一重で避けていた

 

 

「何よあれ?口ほどにもないじゃない」

 

「篠ノ之さんは中学の時に剣道で日本一になったのよ?素人が敵うわけないじゃない」

 

「避けているのが精一杯みたいね」

 

 

ギャラリー達は箒の勝利を疑わなかった・・・しかし、その中にアキトの行動を疑問に思う人物がいた

 

 

「(「避けているのが精一杯」?違う、必要最低限の動きで避けてる・・・まるで相手の動きを覚えてるみたい・・・)」

 

 

 

「たぁぁぁっ!!!」ブン

 

「・・・」ヒョイッ

 

「ハァ、ハァ、ハァ」

 

「・・・」

 

 

箒はアキトに攻撃を当てる事ができずにバテてきだした

 

 

「ハァ、中々、ハァハァ、やるようだな?」

 

「・・・」

 

「何とか言ったらどうなんだ!!」

 

「なぁ・・・篠ノ之ちゃん?」

 

「なんだ?ハァハァ」

 

「今日の晩飯・・・唐揚げか生姜焼きのどっちが良いと思う?」

 

「「「「「「「「・・・・・・はい?」」」」」」」

 

 

武道場は唖然となった

 

 

「き、貴様まさか、私の攻撃を避けながら、そんな事を考えていたのか?」ピクピク

 

「ほ、箒?」

 

 

箒の顔は微かに痙攣し、おでこには血管が浮き出ていた

 

 

「そうだけど?それが何か?」

 

 

プッツーーーン

 

「貴様ぁぁぁ!!」ダッ

 

 

箒はアキトの発言にキレ、竹刀を振りかぶり突撃した!

 

 

「・・・そうだ」

 

 

アキトは何かを思い浮かんだのか、竹刀を鞘に戻すように腰に回し・・・

 

 

「デェェェイっ!!!」ブォン

 

 

箒の振った竹刀目掛けて・・・

 

 

「「花鳥風流・居合い――天×――」」フィシュン

 

 

竹刀を振った

 

 

バキィィィッッ!

 

「きゃぁぁぁっ!!!?」トスン

 

「「「「「「「っ!?」」」」」」」

 

 

振られた竹刀同士は木端微塵に砕けた

 

 

「今日は・・・唐揚げにしよっと」

 

「両者!そこまで!箒!大丈夫か?!」タタタタタ

 

 

一夏は衝撃で倒れた箒に駆け寄った

 

 

「さて・・・終わったし帰るか・・・織斑、あと片付けよろしくな」スタスタスタスタスタスタ

 

「おっ、おい!待て!暁!」

 

 

一夏に抱えられた箒はアキトを呼び止めた

 

 

「おん?なんだい?篠ノ之ちゃん?」

 

「何故・・・手加減をした?!」

 

「手加減?!暁!本当なのか?」

 

 

アキトは箒に手加減をしていたのだ!箒はそれをアキトに問いただした

 

 

「は?んなもん、お前が「弱いから」に決まってるからだよ」

 

「き、貴様・・・!」

 

「17回だ」

 

「何?」

 

「俺がアンタを再起不能に出来た回数」

 

「そ、それはどういう――」

 

「じゃあ、俺腹減ったから帰るわ」スタスタスタ ガラララ スタスタ

 

 

アキトはまるで何事もなかったように帰っていった

 

 

「・・・なんだったんだ?一体・・・って箒?!どうした!?」

 

 

箒は涙を流しながら

 

 

「オノレ・・・オノレ暁アキト!私をここまで愚弄するとは・・・許さん!」

 

 

再戦を誓った

 

 

「(暁アキト・・・彼が二人目の・・・)」

 

「凄かったねぇ~?かんちゃん?」

 

「え?う、うん・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂にて・・・

 

 

「え!?唐揚げないの?!」

 

「さっきなくなってしまったんだよ、ごめんね~」

 

「あ、あ、あんまぁりぃぃだぁぁぁぁぁ!!!!!!HEEEYYYYYYYY !!! 」

 

 

アキトは唐揚げが食べれず泣いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




チャンチャン♪


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忙しいがBarに行こう・・・



戦闘描写は難しい!なので・・・ホノボノを書く


 

 

 

ノーサイド

 

 

 

――金曜日――p.m. 11:17

 

 

ここは都内某所のとあるBar『Velvet』

 

 

カランカラン♪

 

「ノックしてもしも~し?」

 

「あら?この声は・・・」

 

「お久しぶりです、Ms. ピアニッシモ」

 

「久しぶりね、アーカードくん」

 

 

アキトがある人物と会っていた

 

 

「あ?アーカードか?さりげなく「瞳」の手に触ってんじゃねぇよ」

 

「おやおやおやぁ?嫉妬かい?嫉妬かい?「小泉」のダンナ?」

 

「うぜぇ・・・」

 

「ウフフ♪」

 

 

この二人は「軽子瞳」と「小泉芳一」・・・「裏側」の人間である

 

 

「それより「ヤツら」は来てるかい?」

 

「あの人達ならとっくによ、今回はアーカードくんが遅刻ね」

 

「マジかよ・・・まぁ、後で曲を聞きにいきますわピアニッシモ♪」スタスタスタスタスタスタ

 

 

アキトはそう言いながらBarの奥にある個室へと足を向けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタスタスタスタ ギィィ

 

 

「10分の遅刻だぞ?「腐った世界の異端者」よ」

 

「まったくだよ?今日はアキトくんの奢りね?」

 

「うるせぇよ、「新聞記者」に「ロリコン教授」」

 

 

個室の中には頭と顔を包帯で巻いた人物とロン毛でメガネの人物がいた・・・

 

 

包帯の人物は「シュバルツ・バルト」通称「シュバルツ」

メガネの人物は「皇鼎」通称「教授(プロフェッサ)」

どちらも「裏側」の人間であり、教授にいたってはゴシップの関係者である

 

 

「しかしアレだね?君は男の夢のような場所にいられて、どう?楽しんでる?」

 

「まぁまぁだな、ウゼェヤツもいるけどな」

 

「そんなヤツはどうしてんの?」

 

「あ?んなもん「喰ってる」よ?しかし10代の血にはそろそろ飽きてきたよ、それより教授?」

 

「ん?」

 

「あの「二人」はどうだい?」

 

「・・・ッケ!あの子達なら毎日ブラックコーヒーが欠かせないほどの仲だよ」

 

「アハハハ♪ソイツは良いねぇ」

 

「それよりも、アーカード?こんな世間話をするために私達を呼んだのか?」

 

 

シュバルツが当然の質問をした

 

 

「ハイハイなら本題に入ろう・・・シュバルツ?ホムンクルス達の様子は?」

 

 

「ホムンクルス」・・・錬金術の副産物により完成された技術の1つ、人間にホムンクルスの媒体を埋め込む事で人間をホムンクルスにするのだが、このホムンクルスに成功例がない・・・ホムンクルス化に失敗した者たちは人間を食べ始めるのだ

 

 

「駆逐されていっているよ順調にな・・・しかし問題がある」

 

「核鉄を持った連中か」

 

 

「核鉄」・・・これも錬金術の副産物により完成された技術、掌サイズの六角形の核鉄を己の覚悟で武器にするという物だ

因みにアキトはロストナンバーと呼ばれる核鉄を体内に埋め込んでいる

 

 

「あぁ、特に注意すべきなのは「ムーンフェイス」だろうな」

 

「彼はホムンクルスを増やしてるしね」

 

「しかしヤツはISを無力化している、実に実に楽しいじゃないか」

 

 

シュバルツはケラケラと笑った

 

 

「うるせぇよシュバルツ、問題はその無力化したISをヤツは何処かに横流ししてるのが問題なんだよ」

 

「君んとこの知り合いの「亡国企業」が持っているんじゃないの?」

 

「残念、亡国のヤツらも被害者だよ」

 

「しかも問題はまだある・・・蟲達だ」

 

「ここ最近多いよな?これも温暖化の影響か?」

 

「温暖化の影響で蟲が2m3mにもでかくなるのか?古代蟲のヤツもいたが、ほとんどが現代の蟲だ」

 

「遺伝子操作か」

 

「それしかないだろ・・・蟲の残骸はノアが解析してくれてるよ」

 

「え♪ノアちゃん?可愛いよね♪彼女の連絡先教えてよ?アキトくん」

 

「誰が教えるか!このロリコン!」

 

「それよりアーカード?お前は帰らなくていいのか?明日はIS乗りの小娘と戦うんじゃあないのか?」

 

「そうそう」

 

「え?まさかアンタら俺の事を心配してくれちゃったり?」

 

「「全然」」

 

「ヒデェなアンタら・・・」

 

「君がアーカードだと知ってたら、僕なら戦わないね」

 

「ISが世界最強だと勘違いしてるからな、この腐った世界は」

 

「だからこの世界は面白い」

 

 

 

 

~♪~♪~♪

 

 

 

三人が話していると個室の外からピアノの音色が聞こえてきた・・・

 

 

「おん♪この音色は♪」

 

「相変わらず美しい音色だ・・・とても「殺害遺品」とは思えない」

 

「じゃあそろそろ僕は帰るよ」スクッ

 

「あぁじゃあな教授、シュバルツはどうすんだよ?」

 

「私も帰る、支払いは頼むぞアーカード?」

 

「え~・・・結局俺が払うのかよ」

 

「ハハハ♪じゃあなアキトくん」

 

「フッ、去らばだアーカード」

 

ギィィ スタスタスタスタスタスタ スタスタスタスタスタスタ

 

 

シュバルツと教授は個室から出ていき、帰っていった

取り残されたアキトはというと

 

 

「ッチ・・・アイツらいい酒を飲んでやがる・・・あとで金を卸しとくか・・・さてMs. ピアニッシモの音色を聞いてから帰るか・・・」

 

ギィィ スタスタスタスタスタスタ

 

 

アキトはピアニッシモ達のいるカウンターへと向かった

 

 

 

 

←続く






今日は早く寝よう


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アナタ・・・覚悟してる人?・・・上

試合前です!




ノーサイド

 

 

 

「暁はどこだ?!!!」キィン

 

 

アリーナ控え室に千冬の怒号が轟いた

 

 

今日は1週間前に約束された決闘の日・・・

アリーナの客席には今か今かと試合を待った生徒どもがわんさかいるのだが・・・肝心の選手が朝からいないのだ

 

 

「織斑先生、落ち着いてください!暁くんなら今懸命に探していますから!」

 

 

怒る千冬を山田はなだめていた

 

 

「しっかし、どうしたんだ?暁のヤツ?あの時はあんなにヤル気があったのに?」

 

「ふん!どうやら怖じけづいて逃げましたわね!」

 

 

 

一夏はアキトに対して疑問を抱き、セシリアはアリーナに来ないアキトを蔑んでいた

 

すると・・・

 

 

ウィィィーン

 

 

控え室の自動扉が開き、ある人物が入ってきた

 

 

「ん?なんや?アキトはおらへんのか?」

 

 

その人物とはノアであった

 

 

「ん?なんだ?君は?ここは関係者以外立ち入り禁止のはずだが?」

 

「その関係者や私は!それよりアキトはどこやアキトは?せっかく私が専用機を持ってきたちゅうのに」

 

「なに?専用機だと?それはどういう事だ?」ピクリ

 

 

ノアの言葉に千冬は疑問を持った

 

 

「あ?なんやねん?アンタ誰?」

 

「私は暁の担任をしている織斑千冬という者だ」

 

「ふ~んアンタが「ブリュンヒルデ」かぁ・・・」

 

「そういう君は誰だ?見たところうちの生徒ではないみたいだが?」

 

「私はヤギ印のヴァレンティーノ商会のもんや、よしなに頼むで」

 

 

両者は簡単に自己紹介をすまし

 

 

「それよりアキトはどこや?」

 

「暁なら・・・その・・・」

 

「彼なら逃げましたわよ!」

 

 

アキトを探すノアにセシリアはそう言った

 

 

「なんやて?ツーかアンタ誰や?」

 

「なっ!?このイギリスの代表候補生のセシリア・オルコットを知らない!?」

 

「セシリア・・・オルコット・・・?あぁ!アンタが――」

 

「そうエリートである私――」

 

「アキトに喧嘩を売った命知らずのアホなんやな!」

 

「あっアホ!?」

 

「「「っぷ!」」」

 

 

ノアがそう言うとその場にいた一夏や箒は吹き出した

 

 

「アホって!貴女ねぇ!」

 

「まぁ頑張ってくれやセシリアちゃん、あのアキトに勝てるよう応援しとくさかいに」

 

「~!バカらしいですわ!!先に出ていますわ!」スタスタスタスタ

 

ウィィィーン

 

 

セシリアは怒って出て行った

 

 

「な、なぁ?ノア?さん?」

 

「ん?なんや?」

 

「暁はそんなに強いのか?」

 

「あぁ?何当たり前の事聞いとんねん?アキトはあのアーカ――」

 

「お前は何をバラそうとしてんだ?バカ」ゴチン

 

 

ノアが一夏にはイラン事を言う前に何処からともなくアキトが現れ、ノアをこずいた

 

 

「痛っ!?何すんねん!アキト!」

 

「暁!貴様は今までどこにいた?!!」

 

「ドウドウ、落ち着けよ先生?俺は朝飯を食いに行ってただけなんだから」

 

「私は馬か!!」スパァン

 

 

アキトは事情を説明し、出席簿で叩かれていた

 

 

「それよりノア?俺の専用機がきてんだろ?何処にあるんだ?」キョロキョロ

 

 

アキトはノアの周りを見たが専用機らしきモノはなかった

 

 

「あぁ・・・これや・・・ホレ」

 

 

ノアは白衣のポケットの中から掌より少し小さい六角形のペンダントをアキトに渡した

 

 

「おい、ノア?これって核鉄じゃあいか?」

 

「違うわ、待機状態を核鉄にモデルしたIS・・・その名も――」

 

「ふ~ん・・・これがねぇ・・・」

 

「・・・興味ないんやなアキト?」ブスッ

 

「あ、ヤベ」

 

 

興味なさそうに聞いていたアキトにノアは拗ねだした

 

 

「悪い悪いノア、俺が悪かったから」

 

「もう知らへんもん!アキトはいつもいつもそうや!勝手にせい!フンだ!」プイッ スタスタスタスタスタスタ

 

 

ノアは怒って控え室から立ち去った

 

 

「あ~ぁ・・・怒らしてしまったな・・・しょうがない・・・あとで謝りにいくか」

 

「なぁ?あの子は暁の――」

 

「おい?織斑?」

 

「な、なんだよ?暁?お前が先に戦うのか?」

 

「いや、俺の専用機はまだ来てないから、お前が先に「打鉄」でオルコットと戦うはずだったんだが・・・」

 

「そうか・・・なぁオリジナル先生?」

 

「オリジナル先生?まさか私の事か?」

 

「あぁ、間違えた織斑先生」

 

「どんな間違えかただ」

 

「試合会場の入り口ってこっち?」

 

「あぁそうだが?」

 

「ふ~ん・・・なら行ってくるわ・・・」

 

スタスタスタスタスタスタ

 

 

「おい!?暁!生身のまま行くのか?!おい!」

 

「暁くん?!それでは危険ですから!」

 

「大丈夫、大丈夫なんとかなるから、んじゃね~」スタスタスタ

 

ウィィィーン

 

 

一夏や山田の言葉に耳を貸さずにアキトはアリーナへと向かって行った

 

 

「なんだ?暁のヤツ?」

 

「なぁ・・・一夏?」

 

「なんだよ?箒?」

 

 

?を抱く一夏に箒は質問をした

 

 

「ヤツ・・・暁の顔がなんだか笑ってなかったか?」

 

「そうか?そんな事なかったぜ?」

 

 

 

一夏はまだ知らなかった・・・暁アキトとという人物がどれ程異常なのかを・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

ワァー

ワァーワァー

ワァーワァーワァー

 

 

アリーナの客席にいた生徒達は熱気だっていた

そんなアリーナにアキトは丸腰の状態で入ってきた

 

 

スタ スタ スタ スタ スタ スタ

 

ザッ!

 

 

客席からは異様、侮蔑、興味・・・様々な目がアキトに向けられた

 

 

「あら?逃げずに来たんですわね?」ヒュゥゥゥ

 

 

セシリア・オルコットは自らの専用機である「ブルー・ティアーズ」を纏い、アキトを見下ろしながら飛んでいた

 

 

「・・・随分とまぁ、見下ろされてるねぇ?」

 

「あらぁ?暁アキトさん?貴方ISを纏っていませんわねぇ?それは降伏の意志でしょうか?まぁその場で土下座をすれば許してあげない事もありませんわよ?」

 

 

セシリアは見るからに侮辱する発言をし、アキトに土下座するように求めた

 

普通はそんな言われ方をされれば、普通は頭にカチンとくる・・・しかし、この暁アキトと言う男はそんなセシリアに対してある事を問いかけた

 

 

「なぁセシリア・オルコット?1ついいか?」

 

「なんでしょう?私はエリートで慈悲深い為、貴方の質問に答えてあげましょう」

 

「なら・・・アナタ・・・「覚悟してる人」・・・ですよね?」

 

「は?覚悟・・・ですって?」

 

「Yes・・・アナタは俺を倒そうとしている・・・という事は・・・アナタは俺に倒される可能性もある・・・と言う訳だ・・・その覚悟を・・・アナタはしている・・・という事でいいんですよね?セシリア・オルコット?」

 

そんなアキトの問いかけにアリーナは静かになった・・・

 

 

 

―――

 

 

 

アリーナ管制塔にて・・・

 

 

 

「んん?何を言ってるんだ暁は?」

 

 

一夏はアキトの問いかけに頭の上に「?」を浮かべていた

 

 

「敵を始末するのなら、逆に始末される可能性もある・・・ちゅう訳やで織斑一夏?」

 

 

一夏の疑問に対して答えたのはノアだった

 

 

「始末?これはスポーツだぜ?そんな物騒な」

 

「いや、案外その子の言う通りかもしれないぞ」

 

「ちふ、織斑先生?」

 

「ISはアラスカ条約で兵器としての仕様を認められてはいないが、オルコットの言うように最強の兵器でもある」

 

「その通りや、その兵器で戦うんや・・・スポーツや言うてもこれは殺し合いに近いもんなんや」

 

「殺し合い・・・」

 

「見てみぃ、アキトの目を・・・ギラついとるで」

 

「・・・ノアと言ったか?」

 

「なんや?ポニーテールちゃん?」

 

「篠ノ之箒だ・・・暁アキトとは一体何者なのだ?」

 

「う~ん・・・しいて言えば・・・「バケモンを喰らうバケモン」や」ニコッ

 

 

そうアキトの事を笑顔で説明した、ノアのあどけない笑顔からは、アキトの事を誇らしく思う・・・そんな感情が表れていた・・・

 

 

 

―――

 

 

ノーサイド

 

 

「倒される覚悟?・・・フフフ♪ アハハハハハ♪」

 

 

セシリアはアキトの問いかけに笑っていた

 

 

「倒される覚悟?何それ?イミフ~♪」

 

「そうだよね~♪ハハハハハ♪」

 

「最近の男の子面白いね~♪キャハハハ♪」

 

客席からもアキトをバカにした笑い声が響いた

 

 

「ウフフフ♪・・・バカにするのも大概しなさい!」キッ

 

「おん?」

 

「倒される覚悟?この私!セシリア・オルコットが高々素人風情の男にやられる訳ありませんわ!」

 

 

セシリアはそう言いながら、アキトに銃口を向け――

 

 

ズキュゥゥゥーーーン

 

 

「さぁ!ケガをしたくなかったら、さっさと土下座をしなさい!」

 

 

アキトの足下にビームを発射した

 

 

「撃ったな・・・」

 

「はぁ?」

 

「撃ちやがったな・・・それはアンタに覚悟があるということでいいよなぁ?!」スチャ

 

 

アキトは胸元から、ノアから貰った核鉄・・・自らの専用機を取りだし・・・覚悟をのせた言葉を叫んだ

 

 

「武装錬金!!!」

 

ガチャン バァァァァァァァァァァァァッ

 

 

アキトの体は光に包まれた

 

 

 

―――――――

 

 

 

管制塔にて・・・

 

 

「うわぁ!?眩しい!」

 

「なんて眩しい!」

 

「さぁ!アキト!あのイギリス人に目にもの見せてまえ!」

 

 

 

―――――――

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

光が段々とおさまってくると・・・そこには!雪の様な白と炎のような紅いコントラストの鎧を身に纏った

 

 

「WRYYYYYYYYYYY !!! 実に!実に馴染むぞ!」

 

 

髪の毛が逆立ち、前髪で隠されていた眼をギラつかせるアキトがいた!

 

 

「「搭乗者ヲ暁アキトト認識」」

 

「おん?喋んのか?コイツ?・・・まぁいい!テメェの名を教えな!」

 

「「Yes・・・「朧」デゴザイマス・・・ワガ王ヨ」」

 

「「朧」か・・・ベネ・・・気に入ったぞ!」

 

 

アキトは自分の専用機との自己紹介?していると・・・

 

 

ズキュゥーン!

 

バァン!

 

 

「おいおいおいおいおいおい?!随分とまぁ失礼なご挨拶じゃあいか!」

 

 

セシリアのビーム攻撃をうけた

 

 

「ふん!余所見をしている貴方が悪いんですわ!」

 

「・・・前から言いたかったんだがよぉ・・・」

 

「なんですか?生憎、手加減は――」

 

「頭に乗るんじゃあない!!!」ビュッン

 

「なっ!?消え――」

 

「オラァッ!!!!!!」バギィッ

 

 

アキトはセシリアに瞬時に近づくと、鉈の様に鋭く重い一撃を叩きつけた!

 

 

「きゃあっ!!!?」ズドゴォ!

 

 

攻撃をうけたセシリアは地面に激突した!

 

 

 

 

 

 

 

 

管制塔にて・・・

 

 

「ま、まさか!あれは「瞬時加速」(イグニッション・ブースト)ですか!?」

 

「そんなバカな・・・ヤツは本当に素人か?」

 

「す、スゲェ!スゴすぎる!」

 

 

試合を見ていた一夏や箒、山田は眼を丸くして見ていた

 

 

「・・・・・・」

 

「ん?どうしたんですか?織斑先生?」

 

「え?いや・・・何でもない・・・」

 

「それにしてもスゴいですね!暁くん!とても素人とは思えません」

 

「あぁ・・・そうですね山田先生」

 

 

この時千冬は思っていた

 

 

「(おかしい・・・手慣れすぎている・・・専用機を使っていると言っても、あまりにも戦闘に慣れすぎている)」

 

 

そんな千冬の考えを見透かすように

 

 

「(アチャァ・・・流石はブリュンヒルデやな、アキトの戦闘慣れに気づいとるわ・・・アキト、頼むから面倒な事はせんといてな~!)」

 

 

ノアはアキトが面倒な事をしないように願っていた

そして、戦闘は激化してゆく・・・

 

 

「ドララララララララララララララァッ!」シュババババ

 

「くぅっ!」ヒュン

 

ドガガガガガガガガガガガ

 

 

激しいラッシュが放たれ、セシリアは苦戦を強いられていた

 

 

「WRYYY! どうした!どうした!この俺を倒すんだろう?!」ヒュゥゥゥ

 

 

アキトは先程のセシリアと同じように空から見下ろしていた

 

 

「っ!調子に乗るんじゃありませんわよ!!ティアーズ!」

 

ヒュン ヒュン ヒュン

 

 

セシリアの専用機「ブルー・ティアーズ」から何かが取りだされた

 

 

「おやおやおやぁ?それは「ビット」ってヤツぅ?」

 

「よくご存知で・・・喰らいなさい!」ズギャギャァン

 

「おぉっと危ねぇ!」ヒュン

 

 

セシリアがビットを使う事により、アキトは中々セシリアに近接戦闘が出来なくなり、形勢は逆転した・・・かのように見えた

 

 

「ッチィ!簡単には近づけなくなったか!クソッタレメ!」ヒュン

 

「「王ヨ」」

 

「なんだ朧?!今オメェの話を聞いてる場合じゃねぇんだよ!」

 

「「ナラ、ヨケナガラ聞イテクダサイ王ヨ」」

 

「あぁん?」

 

「「一次移行(ファースト・シフト)マデ後55秒デス」」

 

 

 

―――――――

 

 

 

管制塔にて・・・

 

 

「アチャァ・・・朧のやつ一次移行しちゃうんかいな」

 

「何?では今まで初期段階で戦っていたのか?!」

 

「ファースト・シフト?初期段階?・・・なんだっけ箒?」

 

「授業を聞いてたのか?一夏?とどのつまりパワーアップするという事だ」

 

 

一夏にはサッパリな話だったようだ

 

 

「しっかし、よく第一世代を改造したヤツでやれてるもんやなぁ~」

 

「え!?第一世代ですって?!」

 

「なんや麻耶ちゃん?私言っとらんかったけ?」

 

「聞いてませんよ!専用機だけとしか聞いてません!」

 

「正確には1.5世代やけどな、廃棄されようとしていたISを使ってたけど・・・」

 

「どうした?ノア?」

 

「いや、なんでもないで・・・(私はあのISにAIを搭載した覚えはないやけどなぁ?)」

 

 

 

―――――――

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

「ホラホラホラホラホラ!逃げるだけでは私は倒せませんわよ!」ズギャギャァン!

 

「・・・ッチィ!ヤレヤレだぜ・・・」

 

 

アキトはセシリアのビット攻撃を避けていた・・・その時・・・

 

 

「「王ヨ・・・ファースト・シフトニ移行シマス・・・」」

 

「ならさっさと――」

 

「「ソノマエニ、アナタノ「証明」ヲクダサイ」」

 

「「証明」だと?」

 

「「Yes・・・私ガアナタ・・・王ノ刃タル「証明」ヲ」」

 

「・・・フッ♪いいだろう!くれてやる!」キキッ

 

 

アキトはアリーナの壁の手前で止まった

 

 

「あら?やっと観念しますか?」

 

「観念?違うな・・・朧・・・ナイフをだせ」ピィーン

 

 

アキトの手には刃渡り15cmのナイフが握られていた

 

 

「そんなチンケなナイフでどうしようと――」

 

「朧!くれてやるぞ!これが俺がお前に与える「証明」だ!」

 

 

アキトは握られたナイフを――

 

 

「なっ!?」

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」グサァァッ

 

 

自らの胸に突き立てた!

 

 

 

―――――――

 

 

 

管制塔にて・・・

 

 

「っ!?」

 

「あぁぁ!?何してんだ!!?!暁のヤツ!?」

 

「た、大変です!早く医療班を!」

 

 

管制塔ではてんやわんやとなっていたが・・・慌てない人物がいた

 

 

「待て、山田先生」

 

「織斑先生っ!?何を言ってるんですか!!このままだと暁くんが!」

 

「その暁の様子がおかしい」

 

「え?」

 

 

また、冷静に何処かに電話している人物も・・・

 

 

「ノア?一体何をしているんだ?」

 

「あのアホのアキトを止められる人にや」

 

「?」

 

 

 

―――――――

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

「・・・」ドクドク

 

「あ、あぁ・・・」

 

 

セシリアは胸から血を出しながら、立ち尽くすアキトを見ながら動揺していた

 

 

「・・・動揺しているな?」

 

「ひっ!?アナタ一体何を?」

 

「「――一次移行完了――」」

 

 

アキトの専用機、朧がアキトから流れる血を吸収し、ファースト・シフトへと移行した!

 

 

「ファースト・シフト!?まさかアナタ、今の今まで初期段階で戦っていましたの?!!」

 

「清々しい・・・実に清々しい!例えるならミントタブレット一箱を食べたあとに強い炭酸を飲んだような気分だぁ!!!」

 

「何を言って――」

 

 

シャッン

 

 

セシリアが疑問を口にする前にその場から消え失せ!

 

 

「どこを見ている?・・・俺はここにいるぞぉぉ!」グガァン!

 

「っ!?きゃぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」ギシィィン

 

 

セシリアを背後から強襲した!セシリアはふっ飛んだが、何故か空中に突然「止まった」!

 

 

「こ、これはワイヤー!?なんでこんなものが・・・まさか!?」

 

「その「まさか」だぜ・・・セシリア・オルコット?」ザンッ

 

 

そう!アキトはセシリアから逃げていたあの時!アキトはアリーナにワイヤーを張り巡らせていたのだ!

 

 

「しかし!こんなワイヤーなんて――」

 

「すぐに切れる・・・だがなぁ!そのワイヤーを切れる前に!」ジャララララララ

 

 

アキトは朧から大量のナイフを両手に持っていた!

 

 

「テメェにこのナイフを直撃させたら・・・どうなるだろうな?ギヒィッ♪」ニヤァ

 

「ひっ!!」

 

「まぁ・・・喰らいな!」

 

 

アキトの手から、何十・何百のナイフが投げられた

 

 

ズシャシャシャシャシャシャァ!

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




文章崩壊気味だけどゆるしてね♪


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アナタ・・・覚悟してる人?・・・下

引き続きぃ!キャラ崩壊!




 

ノーサイド

 

 

『セシリア・オルコット』

 

 

彼女はイギリスの貴族、オルコット家の一人娘として生まれ、様々な英才教育をうけた

 

彼女の父親はオルコット家の娘婿であったため、周りにヘコヘコしていた

 

彼女はそんな父親が嫌いだった・・・ISが世に広まる頃にはその思いが強くなるばかりだった

 

しかし、セシリアはそんな嫌いな父親から言われた、ある言葉を何故か覚えていた

 

「君は、誇り高き人になりなさい」

 

 

 

―――――――

 

 

 

ズシャァーーーン・・・

 

 

アリーナには鈍く重い音が響く

 

 

「ハッ・・・くだらない・・・くだらないよ・・・所詮はこんなものか」

 

 

アキトは倒れ付したセシリアを見ながら、そう呟いた

セシリアの周りにはナイフが散らばっていた・・・ISの絶対防御でセシリアの体は守られたが、ブルー・ティアーズはボロボロになっていた

 

 

「ヤレヤレ・・・管制塔聞こえるか?終わっ――」

 

 

「終わったぞ」そう言おうとした・・・が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズギャァーーーン!

 

バチィッ!

 

「ほう・・・」

 

 

管制塔に連絡しようとしたアキトに攻撃をした人物がいた!その者の名は!

 

 

「まだ・・・まだですわ!」

 

「まだ俺に向かってくるか・・・セシリア・オルコット!」

 

 

ボロボロのティアーズを纏い、アキトにライフルを向けるセシリアの眼には先程とは違い、「覚悟」が宿っていた

 

 

「タフだ・・・そのちっぽけ覚悟が・・・実にタフだ!」

 

「私は・・・私はまだ倒れる訳にはいかないのです・・・私は・・・誇り高きオルコット家の娘!」

 

「!」

 

 

「「暁、聞こえるか?勝負はついた、今すぐに――」」

 

「黙ってろ」ブチッ

 

 

アキトは管制塔からの通信を切った

 

 

「アナタ・・・何を・・・?」

 

「これで俺達を邪魔するヤツはいない・・・さぁ!続けようか!!!」

 

「挑むところ!・・・踊りましょう!私とブルー・ティアーズが奏でるワルツで!!」

 

「OK!L'ts Dace !!!」

 

 

ジャキッ

 

 

 

―――――――

 

 

 

管制塔にて・・・

 

 

「千冬姉っ?!早く試合を止めてくれ!このままじゃあオルコットが!」

 

「織斑先生だバカ者!・・・ヤツは通信拒否をした、もう通信はできない」

 

「そんな!」

 

「オルコットに連絡は出来ないのですか?!」

 

「無理です!さっきの戦闘でオルコットさんの通信装置も壊れています!」

 

「こうなったら俺が白式で――」

 

「それには賛成できひんな」

 

 

一夏が管制塔の扉から出て行こうとしたところ、ノアがその扉の前に立ちはだかった

 

 

「何で邪魔をするんだよ?!ノア!」

 

「オルコットさんは危険な状態なんですよ!」

 

「それでもや・・・これは決闘なんやで?1対1の決闘に割り込むのは不粋ってヤツやで?」

 

「関係ないだろう!そんな事!」

 

「それにや・・・もうすぐ「電話」がかかってくるはずや」

 

「何?」

 

 

 

―――――――

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

「行きなさい!ティアーズ!」ビュンビュンビュン

 

「KUAAAAA!させるかぁ!」ダッ

 

 

バギィッ ガキィン 

 

 

管制塔で言い合ってる頃、アリーナでは激しい攻防が両者の間で行われていた

 

 

「やるなぁ・・・やるじゃあないか!Ms. セシリア・オルコット!」

 

「お褒め頂き光栄ですわ!Mr. 暁アキト!」

 

 

二人は先程とは違い、互角の勝負していた

 

しかし!

 

 

「うぐっ!?」ガクン

 

 

戦闘の無理がたたったのか、セシリアは片膝をおり、隙ができた

 

 

「いただきぃ!!!」

 

 

その隙を目掛け、アキトがショートアックスを構えて瞬時加速でビットの間を抜け、セシリアに突っ込んだ!

 

しかし!

 

 

「かかりましたわね!ティアーズは全部で6つあってよ!」

 

「何ぃ!?」

 

 

ビュンビュンビュン  ズガァァン!

 

「がぁぁっ!!」ドォォォーン

 

 

ビット攻撃が直撃したのか、白煙が立ち込めた

 

 

「や、やったんですの?」

 

「ソイツはフラグだぜ!セシリア・オルコットォォォ!」

ズザァァッ

 

 

その白煙の中からアキトはショートアックスを持ちながら突撃してきた!

 

 

「くっ!?ティアーズ!」ビュン

 

「無駄ぁっ!!!」ビューン ズシャァァッ  ドゴォン!

 

 

アキトはアックスをブーメランの様に使ってビットを破壊し、なおも突撃してくる!

 

 

「インターセプター!!」シャッン

 

「WRYYYYYYYYYYYAAA!!! 」

 

 

セシリアの取りだした近接ブレードとアキトのアックスが交差した刹那!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~♪~♪ ~♪「O2」

 

 

アキトの携帯がなった!

 

 

「へっ?」

 

「こ、この着メロはぁ!」スチャッ

 

 

アキトは攻撃をやめ、セシリアそっちのけで電話の相手と話始めた

 

 

「もしもしシェルス?!こんな時間にどうしたよ?!今スペインにいるんだろ?」

 

「「ノアが「アキトがアホな事やる」って電話してきたのよ」」

 

「マジかよ~(ノアのヤツ余計な事を)」

 

「「「ノアのヤツ余計な事を」って思ったわね?」」

 

「ッハ!シェルスと俺の心がつながった!?」

 

「「バカ・・・あと、アキト?私は試合は棄権しなさいって言ったハズなんだけど?・・・どういう事?」」

 

「え!そ、そ、それは・・・その・・・えと・・・」ダラダラ

 

 

アキトは滝のような汗を掻き出した

 

 

「「・・・ねぇアキト?」」

 

「はい!何だいシェルス?!」

 

「「当分アキトからの着信を拒否にするわ」」

 

「え!?ちょっ、ちょっとシェルス?!!!待っ――」

 

「「じゃあね!」」ブチッ

 

ツー ツー ツー ツー ツー

 

 

電話が切られるとアキトは両膝をおり項垂れた

 

 

「嫌われた、きらわれた、キラワレタ」ブツブツ スクッ

 

「あ、暁さん?」

 

トボトボトボ

 

 

 

アキトはブツブツ言いながら立ち上がり、ゾンビの様に歩きながら、アリーナから出ていってしまった・・・

 

 

「え?えぇぇぇぇ~?」

 

 

セシリアは出ていくアキトを見ながら、そんな声を出していた

 

 

 

―――――――

 

 

 

管制塔にて・・・

 

 

「あ、あれ?どうしたんだ?暁?」

 

「なんか哀愁が漂うんだが・・・」

 

「お、織斑先生?」

 

「なんだね?山田先生?」

 

「これってどっちが勝った事にすれば・・・?」

 

「あ~・・・」

 

 

後日、この試合はセシリアが勝利者という形でケリがついたそうな・・・その後日にセシリアと一夏が試合をする予定だったのだが、セシリアのブルー・ティアーズのダメージレベルがCになっていたため、試合は一夏の不戦勝で決着がついたそうな・・・

 

 

 

 

 

 

 

その頃、アキトはショックで自室に引き込もっていたそうな

 

 

 

 

 

←続く

 




無理矢理終わらせました!

反省も後悔は・・・・・・してない・・・かもしれない


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日常風景?・・・


ホノボノは難しい!


 

 

インサイド

 

 

 

俺の朝は早い・・・

 

 

朝の4時には目が覚める

どんなに夜が遅かろうがどんなに眠かろうが、この習慣は8年前から変わらない

 

 

まぁ・・・こんな時間に起きるんだ、暇で暇で仕方ない

朝が早すぎるから食堂も開いてない・・・

だから俺は輸血パックを飲みながら食堂が開くのを待つ

 

「あぁ・・・腹へった・・・」

 

 

 

A.m8:15

 

 

ようやく食堂が開いた時間だ・・・さて飯に行くとする―――

 

 

コンコン

 

「アキトさん居ますか?」

 

「・・・鍵なら開いてるぜ、セシリア」

 

ガチャ

 

「おはようございますわ♪アキトさん」

 

 

ここ最近、この人間・・・もといセシリア・オルコットがよく俺の部屋を訪ねてくる

 

 

「アキトさん?これから私と朝食でもいかがでしょう?」

 

「あぁ・・・行こうか・・・」

 

 

 

・・・これが朝の日課になりつつある

 

 

 

サイドアウト

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

コツコツコツコツコツ

 

 

「お婆ちゃ~ん?おはよーごぜぇーマース」

 

 

まだ人がまばらの食堂にアキトの声があがった

 

 

「あら?おはよう、暁くん?今日も早いわね~」

 

「何時ものことですよ・・・まぁ取り合えず・・・タヌキ蕎麦と豚骨ラーメンと塩鮭定食、頼みます」

 

「全部大盛りだね?相変わらずよく食べるねぇ?関心関心だよ~」

 

 

アキトは朝からしっかりと食べたい派だ

というのも、アキトがいたヴァレンティーノファミリーの幹部、ロレンツォに

 

 

「朝ご飯はしっかりとらないといけません!!」

 

 

などと、口煩く言われていた為である

 

 

 

それからアキトは食堂のお婆ちゃんから、朝飯を受けとり席へと向かった

 

 

「朝からよくそんなに食べれますわね?」

 

 

セシリアがナチュラルにアキトの隣に座っている

 

 

「普通だよ、普通・・・そういうセシリアはあんまり食わないんだな?よくそんなので足りるな」

 

「アキトさんが多すぎるんですわよ」

 

 

アキトはセシリアの朝食(サンドイッチ一皿)をみながら、不思議に思っていた

 

 

「まぁいいじゃんか、俺は腹ペコなんだよ・・・いただきます」

 

「それにしても食べすぎですわ・・・いただきます」

 

 

仲良く揃って、朝飯を食べ始めた二人・・・

 

 

するとそこに・・・

 

 

「あ~♪アキアキだぁ~♪」トテトテ

 

「おん?」ズルズル

 

 

着ぐるみのような服?をきた人物がよってきた

 

 

「おはよ~♪アキアキ~♪いつみてもスゴイ量だね~?」

 

「・・・誰?」ズルズル

 

「ブゥ~!同じクラスの「布仏 本音」だよ~!」

 

 

彼女は布仏 本音・・・クラスのムードメーカー的存在で、クラスの皆からは「のほほんさん」の愛称で呼ばれている

 

 

「あぁ・・・そうだったそうだった・・・ぬほとけ?」

 

「布仏だよ~!ちゃんと覚えてくれないと泣いちゃうよ~?」

 

「悪い悪い・・・塩鮭やるから機嫌を直せ」ヒョイ

 

「わぁ~い♪ありがと~♪アキアキ~♪」

 

 

アキトは塩鮭を布仏の皿に乗せてやった

 

 

「それで布仏さん?貴女は何故こちらに?何時ものご学友は?」

 

「それはね~、何時ものメンバーが遅れるっていったから、先に来たのだ~、そしたらそこにアキアキとセシリーがいたんだよ~?」

 

「ほうか~」ズルズル マグマグ

 

「そうだよ~♪というかアキアキは何食べてるの~?」

 

「おん?見てわからんか?ラーメンと蕎麦をオカズに定食を食ってんの、オワカリ?」

 

「わかった~♪」ハグハグ

 

 

二人からはホンワカなオーラが漂っていた

 

 

 

そんなホンワカオーラを出す場所に・・・

 

 

「あぁ!暁!おはよう!」

 

「・・・ッチ・・・」

 

「あら?おはようございます一夏さんに箒さん」

 

「おはよ~、オリムーにしののん~」

 

 

朝飯を運ぶ一夏と箒が近づいて来たのだ

 

 

「・・・」ズルズル ハグハグ モグモグ

 

「なんとか言ったらどうなんだ暁?」

 

 

箒はここ最近、アキトに対して冷たい

それは箒が武道場でアキトにコテンパンにやられたと言うのもあるが、アキトが一夏に対して無礼であるため、何かにつけてはアキトに食って掛かる

 

 

「おい、箒」

 

「篠ノ之さん?少し言いかたがキツくはありませんの?」

 

「何?私の言い方のどこがキツいんだ?ん?」

 

「もう少し丁寧な言い方もあるのでは?」 

 

「生憎、この男にはそんなものが要らんのでな」

 

「・・・」ピクピク

 

「あわわ~」

 

「おいおい二人とも・・・」

 

 

険悪な雰囲気が流れるようになって、来たと言うのに一方のアキトはと言うと・・・

 

 

「ズルズル ハグハグ ズズズゥ・・・ゴクン・・・プハァー!食った食った」

 

 

あの量を平らげてしまっていた

 

 

「おん?なんだいたのか?ノノ乃ちゃん?」

 

「篠ノ之だ!篠ノ之!何回言えば覚えるんだ!貴様は!」

 

「切れんなよ、耳障りだろ?」

 

「貴様ぁ!」

 

「ご馳走さん、んならセシリア、先に教室に行ってるぜ」

 

「は、はい!」

 

「おい!話はまだ――」

 

「篠ノ之!」

 

 

アキトは大声で叫んだ

 

 

「な、なんだ?」

 

「飯冷めるから早く食え、じゃあな~」コツコツコツ

 

 

アキトは食器を返し、食堂から出ていった

 

 

「く・・・己、暁アキトめ・・・」

 

「箒・・・」

 

 

 

食堂からは箒の静かな怒りの声があがった

 

 

 

それからアキトは何時ものようにダラダラと授業をうけ、一日が過ぎ去っていった

 

 

これが何時ものアキトの日常である・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園入口付近・・・

 

 

「ここがIS学園ね・・・待ってなさい!一夏!」

 

 

 

このとき、アキトは新たな歯車が回り始めている事をつゆも知らない・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





無理に次回に繋げた・・・許して!

アキト[空裂眼刺驚!]ドォン!

あぶな!?


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第弐章『屑鉄人形』
中国からの転校生・・・


さて・・・どうしようか・・・

―――統合しました―――



 

 

 

ノーサイド

 

 

「あぁぁ~・・・腹ペコだぁ~」

 

「あの量を食べて、もう腹ペコなの~?アキアキ~?」

 

 

 

アキトは教室に行って、今は朝の教室でノンビリと過ごしていた

 

 

 

 

そんな中・・・

 

 

 

「そういえば、織斑くん聞いた?」

 

「え?何を?」

 

「転校生が2組にくるんだって」

 

「え~、この時期に?」

 

「あら?私の存在を危ぶんでの転校かしら?」フンス

 

「「「え~・・・それはどうかな~?」」」ジー

 

「なっ、なんですの?!」

 

 

セシリアはクラスメイトから生暖かい目で、見られていた

 

 

「転校生は中国からだって~・・・」

 

「へ~・・・中国かぁ~・・・」

 

「なんだ?一夏、中国に知り合いでもいるのか?」

 

「いや・・・ちょっとな・・・」

 

「そんな事より!織斑くんにはクラス代表戦に勝ってもらわないと!」

 

「そうそう!デザートのフリーパスのためにも!」

 

「専用機持ちは1組と4組にしかいないらしいし!」

 

「お、おう・・・」

 

 

一方・・・

 

 

「中国かぁ~・・・アイツら元気かなぁ~?」

 

「ん~?アキアキ~?中国に知り合いでもいるの~?」

 

「そうなんですのっ?!アキトさん?!!」ズイッ

 

「あぁ、ホントにグレートなヤツだ・・・好きな女のために頑張るヤツだ・・・ツーか近いぞセシリア?」

 

「あ!す、すいません!///」

 

「んん?セシリー、顔が赤いよ~?」

 

「そ、そんな事!///」

 

 

そんな和やかな教室に・・・

 

 

ガラァッ!

 

「その情報古いよ!」

 

 

勢いよく扉を開けて、ある人物が来た!

 

 

「おっ、お前!「鈴」かっ?!」

 

「そうよ!久しぶりね!一夏!この「鳳 鈴音」がきたからにはそう簡単に優勝なんかさせないわよ!」バァーン!

 

 

「鈴」と呼ばれた少女は、扉の前で堂々とポーズをとっていた

 

 

「鈴・・・似合ってないぞ?」

 

「なっ!?なんて事いうのよ!アンタは!!」

 

「なぁ?チビッ子?」

 

「誰がチビッ子よ!!!誰が!!てかアンタ誰よ?!!」

 

「そんな事より、頭上注意だ」

 

「はぁ?何言って――」

 

 

ズバァッン!

 

 

「痛っああぁぁぁあいっ!?!!??何すんのよ!!アンタ!」クルッ

 

 

鈴が文句を言おうと、振り向くと・・・そこには・・・

 

 

「何をしている鳳?」

 

「ち、千冬さん・・・」

 

「織斑先生だ、バカ者」スパァッン

 

「痛っあぁい!」

 

 

千冬に出席簿で叩かれた

 

 

「ククク♪・・・フヒヒハハハハハ♪」

 

「ププ♪笑いすぎですわよ?アキトさん?フフ♪」

 

「「「「「ププ♪」」」」」

 

セシリア並びに数人の生徒は笑いを堪えていた

アキトは笑っていた

 

 

「~~~っ!!///一夏!あとで覚えてなさいよ!あとアンタもよ!」

 

「おやおやおや~?織斑先生、そのチビッ子はもう一発欲しいらしい」

 

「ほほぉ~?そうなのか?鳳?」ギロリ

 

「い、いえ!さっさと戻ります!」ピュー

 

 

鈴は千冬に睨まれると、風のように逃げていった・・・

 

 

「な、なんだったんだ・・・一体?」

 

「一夏!さっきの娘と一体どういう――」

 

「篠ノ之、お前も席につけ」スパァッン

 

「痛いっ!!」

 

 

こうして朝のゴタゴタは過ぎていくのである・・・

 

 

 

―――――――

 

 

午前中の授業が終わり、昼休みに入していた

 

 

「ウオォォォォォォム!飯ぃぃぃ!!」ズドドドドド

 

「あ、アキトさん?!待ってくださいまし!」トトト

 

 

・・・アキトは奇声をあげながら、食堂へ猪突猛進していた

 

 

 

ガラァッ!

 

 

「一夏!待ってた――ってアンタは!!!」

 

「退けぇ!チビッ子ぉ!」ギロリ

 

「ヒッ!?」

 

 

アキトは食券販売機の前に突っ立っていた鈴を睨みつけ、退かした

 

 

「お婆ちゃーん!塩ラーメンに炒飯、それにカツ丼と天丼もね!」

 

「あいよ、全部大盛りだね?」

 

「Yes!」

 

 

 

相も変わらず、大盛りのご飯をとって席へと行き、ご飯を食らっていた

 

 

「~~~♪」モグモグ

 

「よく食べますわね?」コツコツ

 

「おん?セシリアか?相も変わらず少食なのな」

 

「アキトさんが食べすぎなんですよ!」トスッ

 

 

セシリアはアキトの隣に腰掛け、お昼を食べ始めた

 

 

「あ!暁!一緒に飯食べようぜ!」スタスタスタ

 

「アンタ!さっきはよくも!」スタスタスタ

 

「・・・」スタスタスタ

 

 

そんな二人に一夏並びに鈴、箒が近づいて来た

 

 

「おん?・・・なんだ織斑か、それにチビッ子に篠ノ之ちゃんか・・・」

 

「誰がチビッ子よ!誰が!」

 

「はいはい、うるさいですよチビッ子ちゃん?」

 

「だからぁ!チビッ子って言うなぁ!」ムキー

 

「ハハハ♪仲がいいな二人とも」

 

「一夏さん・・・これのどこが仲がいいんですの?」

 

 

アキトにカラカワれて鈴は顔を赤くして怒り、一夏は二人のやりとりを見てにこやかに笑い、セシリアは疑問符を浮かべていた

 

 

「そんな事より!一夏!その転校生とは一体どんな関係なんだ!」

 

「ど、どんな関係って!?そ、それは・・・///」

 

「幼馴染みだよ、幼馴染み」

 

「幼馴染みだと?私はそんな事知らないぞ?」

 

「箒と離れたあとに出会ったから・・・ファースト幼馴染みが箒なら、鈴はセカンド幼馴染みだな」

 

「そうか・・・私はファースト幼馴染みか・・・フフ♪」

 

「ムー・・・」

 

 

一夏の発言に箒はニンマリし、鈴はむくれた

 

 

「それより鈴、元気だったか?オジさんやオバさん達は元気にしてるか?」

 

「そんないっぺんに聞かないでよ・・・元気よ・・・たぶん・・・そんな事より!一夏!アンタこそ便りぐらい出しなさいよ!ビックリしたわよ!アンタがISを動かすなんて!」

 

「そうだな、俺もビックリだぜ♪ハハハ♪」

 

 

一夏と鈴は和やかにしていた・・・一方・・・

 

 

「旨い旨い」ハグハグ ズルズル

 

「アキトさん?放課後に私と特訓でもしませんか?」

 

「おん?そうだなぁ~・・・あ、そうだセシリア?」

 

「なんでしょう?」

 

「セシリアは俺に遠距離戦を教えてくれや、俺はセシリアに近距離戦を教えるから」

 

「は、はい!よろしくお願いしますわ!」

 

 

こちらも和やかだった

 

 

「え?暁も特訓するのか?だったら一緒にやろうぜ?」

 

「何!?一夏は私と特訓するのだろう?!」

 

「え、だって皆でやった方が良いじゃないか?良いよな?暁?」

 

「あ~・・・べつに良い・・・セシリア?構わないか?」

 

「えぇ、構いませんわよ」

 

「なら決まりだな!放課後に第一アリーナで特訓だ!」

 

 

こうして特訓の約束がされた・・・

 

 

「それより、アンタが「二人目」の暁アキトなのね?どう強いの?」

 

「おん?何が?」ズルズル

 

「ISよ!IS!アンタの情報はほとんどが非公開で写真もないから本国側はアンタの情報が欲しいのよ」

 

「強いですわよ、アキトさんは!なんと言ってもこの私と互角の戦いをしたのですから!」フンス

 

「・・・アンタ誰?」

 

「なんですって!?このイギリス代表候補生のセシリア・オルコットを知らない!?」

 

「アタシ、他の代表候補生には興味ないから」

 

「な、なんですって~!」

 

「そんな事より!強いのアンタ?」

 

「・・・言葉で云々語るより、武で語れってな・・・」

 

「え?」

 

「ご馳走さん、先に行ってるぜ?」カチャ スタスタスタ

 

「あ!待ってくださいまし!アキトさん!」カチャカチャ トトト

 

 

アキトは食器を片付けると、食堂から出ていった

 

 

「へ~・・・中々面白いヤツじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




このあとの続きを頑張って考えるとするぜ!


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特訓と相談

ideaがほすぃぃぃい!!!

あとキャラ崩壊あるかも・・・

―――統合しました―――



 

 

ノーサイド

 

 

午後の授業も終わり、今は放課後・・・

 

第一アリーナでは・・・

 

 

「Uryyyyy!!!いきなりMAXダゼ!!!!!!」シャシャシャ!

 

「きゃぁぁあぁあ!?」ヒュンヒュンヒュン

 

 

アキトがセシリア目掛けて、ナイフを投げまくり、セシリアはそれを寸での差でかわしていた

 

 

「ちょ、ちょっと!アキトさん!?特訓のはずじゃあありませんでしたの!?」

 

「俺にとって特訓とは・・・「殺し」をしない「殺し合い」のことだぁぁぁ!くたばれぇぇぇえぇ!!!!!!」ビィュンッ!

 

 

鋭いナイフ攻撃がセシリアに向かっていった!

 

 

「っ!?ティアーズ!!」ズキュゥン!

 

 

そのナイフをセシリアはビット攻撃で撃ち落とした

 

 

「ほほぉう・・・やるじゃあないか」

 

「ハァ、ハァ、何時までもやられている訳にはいきませんのよ!アキトさん!」

 

「そうかそうか・・・ククク♪」シャララン

 

「え・・・あ、アキトさん?そ、その手に持っている大量のナイフはな、なんですの?」

 

 

アキトは大量のナイフを両手に扇子の様に広げ――

 

 

「実は今、セシリアに向かって投げた178本のナイフの約7割しか直撃コースに入っていない・・・俺はこれを9割まで上げたい・・・と言うことで」

 

「と、とい、言うこ、ことで?」ガクガク

 

「その練習に付き合ってもらうぞ・・・セシリア・オルコットォォオ!!!」ジャキィ!

 

「ひぃやぁぁぁぁぁぁああぁあ!!!」

 

 

――「特訓」の皮を被った「狩り」が始まった

 

 

 

 

 

「す、スゲェ・・・」

 

「ふん・・・一夏!集中しろ!」

 

「なんで俺は箒と・・・俺も暁と特訓したかったな」ボソッ

 

「聞こえてるぞ!一夏!デヤァ!」ブンッ

 

「あぶねぇっ!?」ガキィン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20分後・・・

 

 

 

「ゼーハァー、ゼーハァー、ゼーハァー・・・」

 

「朧・・・確率は?」

 

「「セシリア・オルコット二対シテノ直撃コース確率、70.6%カラ88.5%二上昇・・・目標値ノ90%マデ、アト1.5%デス」」

 

「・・・ッチ・・・」

 

「し、舌打ちしましたわね?!アキトさん!私がどれだけ!大変だったか!」

 

「スマン、スマン、俺も熱くなりすぎたよ」ヒュゥゥゥ

 

 

アキトはセシリアに平謝りをしながら、地面に降りていった

 

 

「もう・・・アキトさんたら・・・」ヒュゥゥゥ

 

「それでどうする?もう止めるか?」

 

「えぇ・・・もうヘトヘトですわ・・・」

 

「そっか・・・そうだ!セシリア、今日はこのあと空いてるか?」

 

「え?」

 

「よかったらなんだが、夕食でも奢るぜ?」

 

「は、はい!///喜んで!///」

 

 

アキトはセシリアに夕食の約束を取り付けた・・・

 

 

「なぁ!暁!今度は俺とやろうぜ!」

 

「残念だが、もう時間だ、そろそろ撤収しないと」

 

「えぇぇ~~!マジかよ~!」

 

「残念だったな織斑・・・そんじゃあ俺達はこれでな」

トコトコトコ

 

「では一夏さん、私もこれで」

コツコツコツ

 

「しょうがねぇか・・・行こうぜ箒」

 

「あぁ・・・」

 

 

こうして放課後の特訓は終わった・・・

一夏の方は新たな波乱があり、その波乱に巻き込まれるとはアキトは思いもしなかった・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

インサイド

 

 

コツコツコツコツコツコツ

 

「ゲフ・・・」

 

「ウップ・・・」

 

 

 

俺は特訓終わりにセシリアを連れて、食堂に夕食をとりにきたんだが・・・

 

 

「ヤッパリ特訓終わりの飯って、スゲェ美味いな」

 

「私もアキトさんにつられて、ガラにもなく食べ過ぎましたわ・・・ウップ」

 

「おいおいおい、大丈夫かよ?」サスサス

 

 

セシリアって意外と食うんだな・・・デザートばっかだったが・・・

 

 

「胃薬あるけど飲むか?」

 

「いただきますわ・・・ウップ」

 

 

・・・見てらんねぇな~

 

 

「よっと!」ダキッ

 

「え!?あ、アキトさん何を!?///」アタフタ

 

「おん?何って・・・姫様だっこ?」

 

「そういう事を言ってるんじゃ!ありませんわ!///」

 

「だって、お前なんか辛そうだから・・・ヤッパリ食べ過ぎだったんじゃないのか?」

 

「そ、それは・・・アキトさんがあんなに美味しそうにご飯を召し上がるからですわ!///」

 

「?それって関係あんのか?」

 

「もう!///・・・」

 

 

なんだコイツ?介抱してやったら怒るし、なんか急に黙るし・・・忙しいヤツだな

 

 

「(はぅ~・・・お姫様だっこなんて、初めてですわ!)」

 

 

・・・あ・・・胃薬って、「星刻」から貰ったあの苦~い漢方薬しかないぞ・・・オブラートあったっけ?まぁいいか・・・

 

 

コツコツコツ・・・

 

 

サイドアウト

 

 

 

ノーサイド

 

 

あれからアキトはセシリアを部屋まで送り、自身は漢方薬を取りに行っていると・・・

 

 

 

「グスッ・・・ヒグッ・・・」

 

 

何処からか、泣き声が聞こえてきた・・・

 

 

「(おん?誰だよ泣いてんのは?)」チラッ

 

 

アキトは不思議に思い、泣き声がする方へと眼を向けると・・・そこには

 

 

「ウッウ・・・一夏のバカぁ・・・」シクシク

 

 

泣いている、鈴がうずくまっていたのだ

 

 

「(あぁ・・・アイツは確か・・・ホウボウ?リンク?だったか?・・・なんであんな所で泣いてんだ?)」

 

 

アキトは名前を間違えながら、鈴を認識すると・・・

 

 

「(なんか関わると、メンドくさそうだな)暁アキトはクールに去るぜ・・・」クルッ

 

 

わざと無視を決めて、そこから立ち去ろうとした・・・・・・だが!

 

 

「ちょっと待ちなさいよ!!」ツカツカツカ

 

「ゲッ・・・」

 

 

アキトの存在に気づいた鈴がむくれた顔をして、近づいてきた!

 

 

「なんだよ?え~と・・・ホウボウリンク?」

 

「誰よ!それは!私は鳳鈴音よ!!」

 

「あ~悪い悪い・・・でなんだ?チビッ子?」

 

「私はチビッ子じゃなーい!!!」プンスコ

 

 

鈴は真っ赤な顔をして怒っていた

 

 

「わかった、わかった、なら用はすんだか?では出口はあっちだ」

 

「わかったありがとう・・・じゃなくて!何か私に言う事があるでしょ?!!」

 

「おん?・・・・・・カルシウム摂れよ?」

 

「ちっっっがあぁあう!!!廊下で!麗しき!女の子が!泣いているのよ!何か言う事があるでしょ?!!」

 

「・・・眼が腫れて無様だな?」

 

「なんでそういう事言うのよぉぉぉぉ!!!」ガオッン

 

 

鈴はISを展開した腕で殴ってきた!それをアキトは!

 

 

「よっと」パシッ

 

「えっ!?」

 

 

軽々と掴んで止めた!

 

 

「あ、アンタ!?なんでそんな事が――」

 

「おい・・・」ゴゴゴゴゴ

 

「はっはい!?」

 

 

アキトは素人目にも判る「スゴ味」を出していた

 

 

「何テメェはISを展開した腕で俺を殴ろうとしてんの?」

 

「そ、それはアンタが変な事言うから・・・」

 

「へぇ~・・・ならテメェはそんな事でいちいち、ISを展開して殴ろうとするんだぁ~?さすがは専用機持ち、やることが違うねぇ~?」

 

「うっ・・・それは・・・その・・・」

 

「ふぅ~・・・ん、」スッ

 

 

アキトは鈴のおでこに手をやると・・・

 

 

「え?何?」

 

「これでお愛顧な?」バチィーーーン!

 

「っ!?痛っっっあぁぁああぁ!!!」

 

 

強烈なデコピンを喰らわせた!

 

 

「な、何すんのよ!?アンタは!!」

 

「おん?言ったろ?お愛顧だって?」

 

「それにしても痛いわよ!アンタ!私の頭蓋骨を割る気か?!」

 

「うるせぇなぁ・・・」クルッ コツコツコツ

 

 

アキトは鈴に背を向けて、歩きはじめた

 

 

「ちょっと待ちなさいよ!まだ話は――」

 

「着いてこいよ」

 

「――へ?」

 

「なんか話たい事でもあんだろ?ここじゃあなんだから部屋で話そうぜ?」

 

「え?」

 

「なんだよ?話さないのか?だったら――」

 

「あ、有るわよ!話ならあるから!そんなに前に前に歩かないでよ!」トトトッ

 

 

鈴は先に歩くアキトを追って走りはじめた・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

あれからアキトは後ろに鈴を連れて、セシリアの部屋の前に来ていた

 

 

コンコンコン

 

「セシリア?いるか?俺だ、暁アキトだ」

 

 

シィィィーーーン

 

 

応答がないようだ・・・

 

 

「仕方ねぇな・・・」ガチャ

 

「ちょっとアンタ!勝手に入るのは――」

 

「いいんだよ、了承なら得てる・・・入るぞセシリア」ギィィ

 

「え~・・・」

 

 

アキトが扉を開け、部屋に入ると・・・

 

 

「Zzz・・・スピ~・・・」

 

 

セシリアが丸まって寝ていた

 

 

「おいおいおい・・・起きろよセシリア?」ユサユサ

 

「ん~・・・ダメですわアキトさん・・・エヘヘ///」

 

「・・・」パチン!

 

「っ!?痛い!な、なんですの!?・・・ってアキトさん!」

 

 

アキトはセシリアのデコッパチにデコピンをかまして起こした

 

 

「ほらっ胃薬だ、飲んどけよ」

 

「ありがとうございますわ・・・あら貴女は?鳳さん」

 

「鈴で良いわよ、オルコット」

 

「私もセシリアでいいですわよ、鈴さん?・・・ところで何故鈴さんがここに?」

 

「それは・・・」

 

「お~い、鈴にセシリア?紅茶でいいかぁ?」

 

「はい、鈴さんも紅茶で?」

 

「え、えぇ・・・」

 

「紅茶がねぇな・・・」

 

「戸棚の上から二番目にありますわ」

 

「ほ~ん・・・」

 

 

アキトはセシリアの紅茶をいれ、持ってきた

 

 

コポポポ・・・

 

 

「ほらよ、熱いから気をつけろよ?」カチャ

 

「ありがとう」

 

「コクッ・・・!、美味しいですわアキトさん」

 

「ソイツは良かったよ、ダージリンなんて久々に飲んだなぁ」

 

「あら?アキトさんは紅茶に詳しいので?」

 

「いや、知り合いに紅茶の好きな野郎がいるもんでな」

 

「そうですか」

 

 

アキトとセシリアが雑談をしていると・・・

 

 

「ねぇ?」

 

「何だよ?チビッ子?」

 

「はぁ・・・もういいわ・・・それよりアンタ達はどんな関係なの?」

 

「ど、どんな関係って///そ、それは・・・///」アタフタ

 

「おん?それは・・・「友人」だと思ってるぜ?」

 

「・・・友人ですか・・・」ムッ

 

「何だよセシリア?ムッとして?」

 

「なんでもありませんわ!フンッ!」

 

「???」

 

 

アキトの答えにセシリアはヘソを曲げた

 

 

「アハハ♪アンタも大変ね」

 

「「アンタも」?・・・それでは鈴さんも?」

 

「そうなのよ!聞いてよ二人とも!」

 

「(あ・・・これ長いな・・・)」

 

 

それから小1時間、鈴の話に付き合わされたのであった

内容としては鈴と一夏の馴れ初めやら、鈴が一夏と別れる時に言った、「私の味噌汁~」的なプロポーズを変えた「私の作った酢豚を毎日食べてくれる?」と言ったのだが、一夏はそれを「毎日、酢豚をただで食わせてくれる」などと誤解して覚えていたために鈴の勘にさわり、一夏の頬に1発かまして、今にいたるなどと言うことだ

 

 

「はぁ~ん・・・あっそ」

 

「「あっそ」て何よ!「あっそ」て!私はね私は!」ポロポロ

 

 

鈴は眼からポロポロと涙を流しはじめた

 

 

「あ~!よしよし、泣かないでくださいまし?鈴さん?」

ナデナデ

 

「う~!セシリア、アンタっていい人ねぇ~!」シクシク

 

 

セシリアは鈴の頭を優しく撫でて、慰めた

 

 

「はぁ~・・・ヤレヤレだぜ・・・」ホジホジ

 

「ちょっとアキトさん!アキトさんも鈴さんを慰めたらどうですの?!」

 

 

セシリアは耳をほじくるアキトに言った

 

 

「わかった、わかった・・・なぁ?チビッ子?」

 

「だ~か~ら~!チビッ子って言うなぁ~!」グスグス

 

「アキトさん!」

 

「悪い、悪い・・・んなら鳳や?テメェに聞きたい事がある」

 

「グス・・・あによ?」

 

「テメェは諦めんのか?」

 

「っ!!」

 

 

アキトの問いかけに鈴は固まった

 

 

「アキトさん!?」

 

「口を出すなよセシリア、これは鳳に対しての質問だ・・・さて聞かせて貰おうか?」

 

「そ、それは・・・」

 

「まぁ、別に今から新しい恋を探すのもいいんでないの?どうせ織斑にはあの篠ノ之って言うのがい――」

 

「諦められる訳ないじゃないのっ!!!」

 

「鈴さん・・・」

 

 

アキトが話終わる前に、鈴は怒鳴った

 

 

「小さい頃からの初恋だったのよ!そう簡単に諦められる訳ないじゃない!!!」

 

「でもよぉ~」

 

「でももタワシもないのよ!!私は!・・・私は!・・・一夏の事が好きなのよ!!!」

 

 

鈴はうちに秘めた言葉をさらけ出した・・・すると

 

 

「・・・Great!」パチパチ

 

「え・・・?」

 

 

アキトは拍手をした

 

 

「お前のその「覚悟」に敬意を示すぜ!鳳鈴音!」

 

「私も鈴さんの「覚悟」が響きましたわ!」

 

 

アキトとセシリアは鈴の恋に対しての「覚悟」を称賛した

 

 

「え?どういう事?」

 

「つまりは私達は鈴さんの初恋を応援すると言う事ですわ!」

 

「っ!そ、それ本当!?」

 

「まぁ・・・そういうこった」

 

「・・・ありがとう・・・ありがとう二人とも!」

 

 

鈴は二人の手を握りしめた

 

 

「さてと・・・これからどうするか・・・と言う前に、セシリア?」

 

「なんでしょう?アキトさん?」

 

「持ってきた胃薬を飲んどけよ?」

 

 

こうして鈴との奇妙?な関係がむすばれた

 

 

 

 

 

 

 

←続く




さて・・・次回・・・どうしよ?・・・


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クラス対抗戦前特訓・・・


続き!書けないようで書くのか?


 

 

インサイド

 

 

 

俺とセシリアが鈴と奇妙?な関係を結んで3日たった

鈴は一夏を叩いてしまった事を謝り、仲直りをしたそうな・・・んで、今は何をやっとるかというと・・・

 

 

「ホントにやんのか?」

 

「もちろんだ!」

 

 

何故か、俺は織斑と模擬戦をやることになった・・・なんでこ~なるの?

 

 

「一夏!やってしまえ!」

 

「アキトさ~ん!頑張ってくださ~い!」

 

 

・・・ッチ・・・ヤレヤレだぜ・・・

 

 

サイドアウト

 

 

 

ノーサイド

 

 

アリーナにて、アキト達は前回の特訓の続きをしていた

鈴はクラス対抗戦があるために参加していない

 

 

「行くぜ暁!こい白式!」パァァ

 

「ッチ・・・武装錬金!」ガチャパァァ

 

 

アキトと一夏はISを纏い、位置についた

 

 

「両者とも、勝敗の結果はSE(シールドエネルギー)を500削ったほうが勝ちだ、いいな!」

 

「あぁ!わかったぜ箒!」

 

「へぇ~い・・・」

 

 

審判は箒がする

 

 

「構えて!」

 

 

箒が試合開始の合図を出す前に、一夏がプライベートチャンネルでアキトに通信をした

 

 

「「なぁ暁?」」

 

「「おん?何だよ織斑?」」

 

「「前から気になってたんだが・・・なんで俺の事を名前で呼んでくれないんだ?」」

 

「「あ?んなもん――」」

 

「始めぇぇぇ!!」

 

 

アキトが何かを言う前に箒から試合開始の合図が出た

 

 

「――合図が出たみたいだし・・・くたばれ!」シュバ!

 

「うぉっ!?」カキィン

 

 

アキトはナイフを飛ばし先制攻撃をしかけたが、一夏は白式の専用武器である「雪片弐型」で防いだ

 

 

「いきなりかよ!もうちょっと――」

 

「うるせぇなぁ・・・文句があるなら・・・くたばれ」

シュババババババババババ!

 

「うぉぉぉぉぉっっ!?」カキキキキキィン

 

 

アキトは一夏の戯れ言に耳を貸さず、ナイフを飛ばしまくった

一夏はそのナイフを紙一重で流していた

 

 

「さすがはアキトさん・・・容赦がありませんわ・・・」

 

「一夏!そんな攻撃なぞ、かわしていけ!」

 

 

外野はうるさい・・・

 

 

「・・・」シュババババババババババ

 

「くっ、くそ!」ヒョイヒョイ ヒューン

 

 

一夏は雪片で防ぎ切れなくなり、飛びながら避けていた

 

 

「・・・ッチ」

 

「「王ヨ、ナイフノ残数が0二ナリマシタ」」

 

「そうか・・・朧、ショートアックス」

 

「「Yes 」」ブォン

 

 

アキトはショートアックスを両手に握りしめると・・・

 

 

「オラァ!」ブゥォン!

 

 

片方のアックスを一夏に向けて、投擲した!

 

 

「おっと!そんなのなら!」ヒョイ

 

 

一夏は投擲されたアックスを軽々と避けたが・・・

 

 

「マヌケが・・・」グイッ

 

「え?っ!?うわっ!?」ギシィ!

 

 

投擲されたアックスに鋼糸ワイヤーがついており、そのワイヤーが一夏に巻き付いた!

 

 

「くっ!だが、こんなワイヤーなんて!」ギチチ

 

 

一夏はワイヤーを引きちぎろうとしたが!

 

 

「無駄ぁぁぁっ!!!」グワァッン

 

「うわっぁぁあ!?」ドガァァァァァッン!

 

 

アキトは一夏を地面に叩きつけた!

 

 

「はぁ、はぁ・・・強いな、暁!」

 

「・・・くだらねぇ・・・」ボソッ

 

「え?なんだって?!」

 

「なんでもない・・・」ヒュゥゥゥ

 

「あれ?なんで降りてくるんだよ?」

 

「用事があるのを忘れてたわ・・・帰るわ」パァァ

 

 

アキトはISを解除した

 

 

「え~マジかよ~!」

 

「おい暁!勝手なマネは――」

 

「それじゃあな」トコトコトコ

 

 

アキトは箒の言葉に耳を貸さず、アリーナから出ていった

 

 

「暁~!無視をするなぁ~!」

 

「まぁまぁ、箒さん落ち着いて・・・それでは私もこれで・・・」トコトコトコ

 

 

セシリアもアキトを追って、アリーナから出ていった

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下にて・・・

 

 

トコトコトコトコトコトコ

 

 

廊下を気だるそうに歩きながら、アキトは一言・・・

 

 

「つまらん・・・まったくもってつまらん・・・」

 

 

 

 

←続く





次回!時間がとぶ!


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対抗戦と敵の乱入・・・

ノーサイド

 

 

ワァー

ワァーワァー

ワァーワァーワァー

 

 

 

今日は待ちに待ったクラス対抗戦の日

客席は各学年で溢れ、その生徒目的で出店まで出ている始末である

 

 

観客席にて・・・

 

 

「・・・意外と美味いな」ポリポリ

 

「アキトさん?何味を食べているので?」

 

「キャラメル味食ってる、セシリアは?」

 

「ソルト味ですわ」

 

「交換しないか?」

 

「い、いいですわよ(やった!共有ですわ!///)」

 

 

アキト達は観客席でポップコーンを食べていた

 

 

ワァァァァァァァァァァ!

 

「おん?出てきたみたいだな」

 

 

アリーナには一夏と鈴がISを纏った状態で出てきた

 

 

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

「出てきたわね!一夏!」

 

「おう!それが鈴のISか?」

 

「えぇ、これが私の専用機「甲龍」よ!」

 

「なんか格好いいな!」

 

「ふんっ、褒めても勝たせてあげないわよ」

 

「よく言うぜ!こっちも負けるつもりはないからな!」

 

「なら・・・尋常に――」

 

「――勝負!!!」

 

 

こうしてクラス対抗戦、1回戦が始まった!

 

 

 

観客席にて・・・

 

 

「あれが鈴さんの専用機・・・」

 

「肩にトゲトゲがあるけど・・・あぁ!」

 

「あの肩で攻撃はしないでしょう」

 

「・・・何故わかった?」

 

「なんとなくですわ」

 

「そうか・・・」

 

 

アキトとセシリアはノンビリと観戦していた

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

「タァァァッッッ!」ブゥッン

 

「セイヤァァァッ!」ブォン

 

 

ガキィィン!

 

 

一夏の雪片と鈴の青竜刀が火花をだしなから、何度何度も鳴き声をあげる

 

 

「やるわね!一夏!」

 

「鈴もな!」

 

「だったら・・・これならどう?!」カシャァッン

 

 

鈴は甲龍に収納された物を出した!

 

 

「なんだそれ?」

 

「喰らえばわかるわよ!」ドォォォッン!

 

「うぉっっ!?」ガキン!

 

 

甲龍から発射された何かは、一夏を後ろに退かせた

 

 

 

 

 

観客席にて・・・

 

 

「なんですの!?あの兵器は!?」

 

「たぶん、空気を圧縮して弾にしてんだろうな~」ポリポリ

 

「空気を圧縮?」

 

「あぁ・・・そうすれば弾切れの心配もないし、弾も空気だから敵に悟られる心配もない・・・戦略的な兵器だろうな・・・ズゴゴゴ・・・コーラが無くなったな」

 

「へぇ~、そうなんですの・・・一夏さんはそれを知っていたから防御が?」

 

「さぁな・・・」

 

 

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

「なっ!?アンタ!「龍砲」を初見で受けたの?!」

 

「へぇ~、「龍砲」って言うのか・・・見えない攻撃ってのは厄介だな」

 

「でも!さっきのはマグレみたいだし・・・調子に乗るんじゃないわよ!一夏!」

 

「悪いな鈴!このまま押し切らせてもらうぜ!」

 

ジャキッ

 

 

一夏が雪片を構え直して、鈴に切りかかろうとした・・・その時!

 

 

ドグワァァァアアアアアァァァッッッッッン!!!!!

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「な、なんだっ!?あれは?!」

 

 

アリーナの壁を破壊して、黒い何かが乱入してきた!

 

 

―――――――

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

ドグワァァァアアアアアァァァッッッッッン!

 

 

「な、なんだっ!?」

 

 

アリーナの壁を破壊して来たのは、黒い人型の機体だった

 

 

「何よ!?アイツは?!」

 

「知るかよ!」

 

「「・・・」」ウィィィン ジャキッ

 

 

黒い機体はブレードを構え――

 

 

ドグシャァァァァァァァァァァァァァァッッッン!

 

 

辺りを攻撃しはじめた!

 

 

 

 

 

観客席にて・・・

 

 

キヤァァァー!

タスケテー!

ニゲロォォォッ!

 

 

観客席はパニックに陥っていた

その時、アキトはというと・・・

 

バキィン!

 

「Zzz・・・ふがっ・・・ん?何?」

 

「痛た・・・やっと起きましたわね!アキトさん!大変ですわよ!アキトさん!」

 

 

アキトはセシリアに起こされていた・・・おぼんで殴られて・・・

 

 

「おん?何が大変・・・ってなんだこりは?!!」

 

「あの黒い機体が壁を破壊して現れたんですよ!その機体が辺りを攻撃しはじめまして!」アタフタ

 

「落ち着け落ち着け!先ずは避難するぞ」

 

「はい!」

 

 

スタスタスタスタスタスタスタスタ

 

 

アキトとセシリアは出口へと向かった

 

 

 

 

 

 

ワァー!

ダシテヨォォォ!

アケテヨォォォォォ!

 

 

出口は逃げようとした生徒で埋め尽くされていた

 

 

「・・・なんだ・・・この状況は・・・」

 

「どうしたんですの?!この状況は!」

 

 

セシリアは近くにいた、生徒に問いかけた

 

 

「あぁ!オルコットさん!大変なのよ!出口の扉が開かないのよ!どうしよう?!」

 

「えぇ!なんですって!?」

 

 

どうやら扉がロックされていて、開かないそうだ

 

 

「・・・ッチ・・・少し通るぜ・・・」ツカツカツカ

 

「え!?アキトさん?!」

 

 

アキトは生徒の群れまで行き・・・

 

 

「喧しいぜ!!道を開けな!!!」バァン!

 

「「「「「「「っ!!??!?あ、暁くん!?」」」」」」」

 

 

ツカツカツカツカツカツカツカツカツカ

 

 

アキトは生徒達が開けた道を進んで行き、扉の前に立つと・・・

 

 

「無駄!無駄!!無駄ぁぁぁっ!!!」ドガガガガガガガガッ!

 

ドギャアァァン!

 

 

素手で!扉にラッシュを喰らわせ!ぶち破った!

 

 

「「「「「「「えぇぇーーーっ!?」」」」」」」

 

「これで出口は確保できた訳だ・・・さて、怪我をしないように逃げろよ?」

 

「「「「「「「「は、はい!」」」」」」」」

 

 

ダダダダダダダダダダダ

 

 

生徒達は破られた扉から避難を始めた

 

 

「よし・・・セシリア?」

 

「は、はい!なんでしょう?アキトさん!」

 

「専用機は持ってるか?」

 

「え、えぇ!このピアスがブルー・ティアーズですわ!」

 

「なら、これから俺達は避難に遅れた生徒を救助にいくぞ、いいな?」

 

「はい!このセシリア・オルコットにお任せください!」

 

「よし・・・行こうか!」

 

 

アキトとセシリアは救助に向かった

 

 

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

ガキン!キィィン!バキィィィン!

 

 

ここでは一夏達が黒い機体に応戦をしていた

 

 

「はぁはぁ・・・なんなのよ!アイツは!」ヒュゥゥゥ

 

「なぁ?鈴?」ヒュゥゥゥ

 

「何よ一夏!今は喋ってる場合じゃ――」

 

「アイツ・・・無人機じゃないか?」

 

「はぁ?何言ってんのよ!?ISは人が乗らないと動かないのよ!」

 

「でも!アイツ、動きが機械的だ!」

 

「だから!どうするのよ!」

 

「一定のモーションの隙をついて、ヤツを再起不能にするぞ!」

 

 

一夏は黒い機体が無人機だと見破り、鈴と作戦をたてていた・・・その時!

 

 

「「一夏ぁぁぁっ!!!」」

 

「え!?ほ、箒!?」

 

「なんであんな場所にいるのよ!?」

 

「「男なら・・・男ならそのくらいの敵ぐらい倒してみろ!!」」

 

 

なんと、箒が外からよく見える場所でそう叫んでいたのだ!これに気づいたのは一夏達だけではなく・・・

 

 

「「・・・!」」ウィィィン ジャキッン!

 

 

黒い機体も箒に気づき、目標を変えて突撃していった!

 

 

「っ!?マズイ!鈴!俺をヤツ目掛けて、龍砲を撃ってくれ!」

 

「はぁっ!?何言ってんのよ!?そんな事したら!」

 

「良いから早く!」

 

「もうっ!どうなっても知らないわよ!」ドゴォォォッン!

 

「うぉぉぉぉぉっっ!」バビュゥゥゥン!

 

 

一夏は鈴の龍砲に撃たれ、一直線に黒い機体に突っ込んでいった!

 

 

「うぉおおぉおっ!箒から離れろぉぉぉっ!!!」ズザシュゥゥゥ!

 

「「!!!?」」ヒュゥゥゥ ドゴォォォッン!

 

 

黒い機体は一夏の雪片によって、観客席に落とされた

 

 

 

 

 

観客席にて・・・

 

 

一夏に落とされた黒い機体はまだ生きていた

 

 

「「・・・」」ウィィィン

 

「ひっ!?」

 

 

黒い機体の近くには眼鏡をかけた生徒が尻餅をついていた

 

 

「「!・・・」」スチャァ ブォン!

 

「っ!?キャァァァァァッ!!!」

 

 

黒い機体はその生徒に気づき、ブレードをその生徒に降り下ろした!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズザシュゥゥゥ!

 

「グァァァァァッッッ!」

 

「えっ?!」

 

 

 

 

だが、眼鏡の生徒は切られなかった・・・

代わりに切られたのは・・・

 

 

「あ、あぁ・・・」

 

 

バタリ

 

 

頭を真っ二つに切られた・・・アキトだった!!!

 

 

「い、いやぁぁぁあぁぁああぁ!!!!!!」

 

 

 

―――――――

 

 

 

眼鏡生徒サイド

 

 

私は本音に誘われて、専用機の製作も程々にして、クラス対抗戦を見に来た・・・見に来たんだけど・・・

正体不明の機体が襲撃してきて、人の波に流されて、本音ともはぐれて、避難し遅れて、出口に向かっているところにあの正体不明機が突っ込んできた

正体不明機は私に気づくと、ブレードを私に切りつけてきた・・・でも私は切られなかった・・・私を庇ってくれた人が切られた・・・頭を真っ二つにされて

 

 

「「・・・」」ウィィィン ギロリ

 

「・・・」ドクドク

 

「あ、あぁ・・・」

 

 

正体不明機は庇ってくれた人を切ったあと、私に目標を変えたようだ

 

 

「「・・・」」ウィィィン ジャキッ

 

 

正体不明機はブレードを私に向かってブレードを振りかぶった・・・

 

 

「た、助けて!」

 

「「・・・」」ウィィィン ブォン!

 

 

無情にもブレードを振られた・・・でも!

 

 

「KUAAA !!!」ボゴォッ!

 

「「!??!?!」」ドバゴォッ!

 

「えっ!?」

 

 

正体不明機は何故か、吹っ飛んでいった

私は何がなんだかわからなかった・・・

 

 

「WRYYY・・・大丈夫か・・・アンタ」ツカツカツカ

 

「え・・・ア、アナタは・・・!?」

 

 

白煙の中から出てきたのは、さっき私を庇ってくれた人だった!

 

 

「そ、そんな!?だって貴方は!?」

 

ズリュ

 

「っ!?」

 

 

彼の頭が接着されてない、紙のように2つに「割れた」!

 

 

「ッチ・・・」バチィン トントン

 

「え!あ、あぁ・・・」

 

 

彼は割れた頭を手で張り合わせ、顎を叩いて微調整をした

 

 

「あぁ~・・・クソが・・・血が足りない」ボキバキ

 

 

彼は首をくるくる回し、そう言った・・・

 

 

「だ、大丈夫?」

 

 

私はそう聞いた・・・あんまりにも驚きすぎて、そう聞くしかなかった

 

 

「大丈夫?・・・クククハハハハハ♪大丈夫って?ハハハハハ♪大丈夫な訳ないだろうが・・・」

 

「ご、ごめんなさい」

 

 

彼は笑いながらそう答え

 

 

ギチィ!

 

 

「かはっ!?な、何を!?」

 

 

彼は私の首を掴みあげた!

 

 

「・・・少し、血を貰うぞ・・・いいよなぁ?」

 

 

彼は私の目を覗きながら、言った・・・その時の彼の眼は暗く暗く、紅く色付いていた・・・その眼はとても綺麗だった・・・

 

 

「あ、あぁ・・・///・・・はい///」

 

「ありがとうよ・・・」ゴキュン!ゴキュン!

 

「あぁ・・・///」

 

 

私は彼に血を吸われ・・・そのまま・・・意識を沈めていった・・・とても気持ちがよかった・・・///

 

 

 

サイドアウト

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

バタリ・・・

 

 

「くはぁ~・・・中々に旨かったな・・・」

 

 

アキトは眼鏡の生徒から血を吸いとると、その子を客席に寝かせた・・・

 

 

「あ!アキアキ~!」トトトトト

 

「おん?のほほんか・・・」

 

 

向こうの方から本音が走ってきた

 

 

「アキアキも早く避難――ってかんちゃん!?」

 

「ん?知ってんのか?のほほん?」

 

「うん!私の親友なんだよ~!」

 

「そうか・・・ならそのかんちゃんを連れて避難しとけ」

ツカツカツカ

 

 

アキトはそう言いながら、吹っ飛んでいった正体不明機の元へと歩んでいった

 

 

「アキアキ~!そっちは出口じゃないよ~!」

 

「大丈夫だ・・・すぐに終わらせる!」バッ!

 

 

アキトは穴の空いた観客席から飛んでいった

 

 

 

―――――――

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

ドバゴォッ!ズザザァァァッ

 

 

「なっ!?アイツまだ生きて?!」チャキ

 

「待って一夏!様子が変だわ!」

 

 

一夏によって落とされた正体不明機は、観客席から吹っ飛ばされ、地面に激突した

 

 

「「・・・」」ウィィィン ガシャン

 

「ヤレヤレ・・・まだ生きてやがるか」シュタッ

 

「あ、暁!?なんで!?」

 

「それよりアンタ!!大丈夫なのっ?!!」

 

 

白煙の立ち込める観客席からは頭を血だらけにし、制服を赤く染めたアキトが降りてきた

 

 

「アキト!早く避難しなさい!コイツは私達がやるわ!」

 

「「暁!聞こえるか!?正体不明機は織斑達に任せて、お前は早く保健室に行け!」」

 

 

アリーナにいる、鈴や管制塔からの千冬の忠告に対し・・・アキトは・・・

 

 

スゥゥゥッ!

 

「ヤァァアカァァアマァァァシィィィィィッッッ!!!」

 

「「「「「「っ!?」」」」」」ビリビリ

 

 

アリーナ全体を震わせる程の咆哮をあげた!

 

 

「あ、暁・・・?」キィィィン

 

 

一夏は耳を押さえながら、アキトを見た

 

 

「っ!?」

 

 

今のアキトはドス黒いオーラを纏っていた・・・そして正体不明機に向かって指を突きつけると・・・

 

 

「テメェ・・・テメェだけは俺がケリをつける・・・ケリをつけなきゃぁぁぁぁぁっっっーーーーー!気が済まない!!!」バァン!

 

┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝

 

 

そう言って!核鉄を取りだし!「覚悟」を叫んだ!

 

 

「武装錬金!!!!!!」ガチャ バァァァッ!

 

 

アキトは「朧」を纏うと・・・

 

 

シュッン!

 

「WRYYYYYYYYYYYAAAAAA !!!」ドバキィィィッッッ!

 

「「!?!!??」」ドゴォォォッン!

 

 

正体不明機の懐に一瞬で入り、強烈な一撃を喰らわせた!

正体不明機はアリーナの壁に激突した・・・されど!アキトの追撃は続く!

 

 

「KUAAAAAAAAAAAA !!!」ガシィッ

 

「「!?」」

 

 

バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ!

 

 

アキトは正体不明機の頭?掴むと壁にぶつけ!そのままひきずっていった!

 

 

バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ!

 

チャラン カラン カラン 

 

 

ひきずって行く事により、機体の部品が削られていった

 

 

ズリャリャリャリャリャ!

 

「ドラァッ!」ブゥゥウッン!

 

「「・・・」」ズザザァァァッ

 

 

アリーナの壁を一周すると、アキトは正体不明機をアリーナ中央に投げた。

正体不明機はピクリとも動かなくなった。

 

 

ザッザッザッザッザッ!

 

 

アキトは正体不明機に近づき・・・

 

 

「織斑ぁ!凰!セシリアぁ!聞こえるかぁ?!やるぞ!」

 

 

周りにいる専用機持ちに呼び掛けた

 

 

「な、なんだよ?!暁!」

 

「アキト!どうする気?!」

 

 

一夏と鈴は何がなんだか、わからなかったが・・・セシリアはというと

 

 

「なるほど・・・そういう事ですわね」ビュッン

 

 

セシリアはアキトの言った事を理解したのか、ブルー・ティアーズを纏い、正体不明機に近づいた

 

 

「セシリア・・・行くぜダメ押し!」ジャキィン!

 

「えぇ!もちろんですわ!」ジャキ

 

「「えっ?」」

 

「確実にくたばれスクラップ!」

 

 

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!

シュバババババババババババババババババババババババ!

 

 

その声が合図となり、アキトは正体不明機に向かってナイフを投げまくり、セシリアは正体不明機にライフルやビット攻撃をしまくった・・・

 

 

「う、うわぁ・・・」

 

「こ、これは・・・」

 

 

 

 

 

 

管制塔にて・・・

 

 

「お、織斑先生・・・こ、これは・・・」

 

「あのバカめ・・・やり過ぎだ」

 

 

 

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

正体不明機は元の原型を留めてなく、すでに鉄の塊へと姿を変えた

 

 

ズガガガ カラカラカラ

 

 

「あら・・・ビーム残量がなくなってしまいましたわ?アキトさん?」

 

「俺の方もナイフが無くなったぜ・・・朧、ヤツは?」

 

「「正体不明機体ノ完全大破を確認・・・マモナク爆発シマス」」

 

「そうか・・・ならこう言っとくか・・・」

 

 

アキトは朧から正体不明機の状態を聞くと、右手を顔に持っていき、左手の人指し指を正体不明機に突きつけると・・・

 

 

「自称天災科学者・・・貴様!!見ているな!!!」バァーッン!

 

 

「「!」」チュドォォォーーーン!

 

 

そう言うと、正体不明機は跡形もなく吹き飛んだ!

 

 

「ケッ・・・ザマァみやがれ・・・」

 

 

 

―――

 

 

 

とある研究室にて・・・

 

 

「「自称天災科学者・・・貴様!!見ているな!!!」」

 

ブツン! ザー ザー ザー

 

 

「な、な、な、な、なんだよ!?なんなんだよ!?お前は!?暁アキト!!!」ガシヤァン!

 

 

 

この映像を見ていた、ウサギ耳の科学者はモニターを壊したそうな・・・

 

 

 

 

 

 

←続く

 




統合しますた。


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対抗戦と敵の乱入後・・・

キャラ崩壊・アンチあるかもです・・・
―――統合しました―――



 

 

ノーサイド

 

 

ツカツカツカツカツカ

 

 

「オラァッ!篠ノ之はどこにいやがる!?」

 

「アキトさん!早く頭の止血をしないと!」

 

 

正体不明機体の迎撃後、アキトはすぐさま箒のいる管制塔へとむかっていた・・・頭から血を出しながら・・・

 

 

 

 

 

管制塔にて・・・

 

 

ウィィィン

 

「キャァッ!?あ、暁くん!?まだ止血をしてなかったんですか?!」

 

「あぁ、山田先生か・・・篠ノ之はここにいやがりますか?」ドクドク

 

「し、篠ノ之さんなら奥で、織斑先生に――」

 

「そうか!ちょっと邪魔させてもらうぜ!」ツカツカツカ

 

「ちょっ、ちょっと!?暁くん!?」

 

「待ってください!アキトさん!」トトトトト

 

 

アキトは山田の制止も関わらず、箒がいると思われる奥の部屋へと進み、扉を開いた

 

 

バァン!

 

「誰だ――って暁!?お前はまだ保健室に――」

 

「篠ノ之ぉっ!!テンメェッ!!!」ガシィッ!

 

「ぐっ!?」プラーン

 

 

アキトは箒の姿を見るや否や、箒の襟に掴みかかり、持ち上げた

 

 

「暁!?」

 

「暁くん!?」

 

「アキトさん!?」

 

「篠ノ之!テメェ!自分のやった事がわかってんのか?!あぁん?!!」ギチチィ

 

「く、苦しい・・・」

 

 

アキトは頭に血がのぼり、箒の首を絞め始めていた

 

 

ウィィィン バァン!

 

「暁っ!?止めろ!!!皆も止めろ!」グイッ

 

 

一夏を筆頭に全員がアキトを止めにかかり、ようやく箒からアキトを離した

 

 

「フゥッー!フゥッー!」

 

「かはっ、ゲホッ!ゲホッ!」

 

「大丈夫か!?箒!」サスサス

 

 

一夏は箒の背中をさすってやっていた

 

 

「暁!落ち着け!」

 

「「落ち着け」だぁ?ふざけんな!コイツのせいでな!」

 

「ケホッ、ケホッ、私は一夏に渇をいれるために――」

 

「ふざけんじゃねぇよっっっ!この田吾作がぁぁぁっ!!!」

 

「「「っ!?」」」

 

「アキトさん!落ち着いてください!」

 

「フゥッー!フゥッー!・・・17人だ・・・」

 

「え?」

 

 

アキトは落ち着きを取り戻したのか、何かを言いだした

 

 

「その17人がどうしたんだ暁?」

 

「あぁ?テメェもバカの一人なんですかぁ!織斑一夏くぅん?!」

 

「へっ?」

 

 

一夏には何が何だかわからないようだった

 

 

「負傷者の数ですか?アキトさん?」

 

「Exactly・・・その通りだ・・・」

 

「「「「え!?」」」」

 

 

17人・・・それは今回の負傷者の数だった・・・

 

 

「ま、まさか暁くん!あの短時間で負傷者の数を!?」

 

「暁・・・お前・・・」

 

「負傷者・・・だと?」

 

 

アキトは正体不明機を迎撃したすぐあとに負傷者の数を確認し、手配をしていた

 

 

「あぁ・・・負傷者だとも・・・テメェの勝手な行動で負傷者が出た・・・全員は軽傷で済んだものの、下手すれば死人が出てたかもしれないんだよ!」

 

「でも・・・でも・・・私は一夏の為に――」

 

「自分勝手な行動を正当化するんじゃねぇ・・・テメェのせいで負傷者が出た事に変わりはないんだからよぉ」

 

「ぐ、う、うぅ~・・・」ガクン

 

 

箒は膝を折って、うずくまった

 

 

「大丈夫、大丈夫だから箒・・・おい!暁!お前ここまで言う事ないだ――」

 

「ついでに織斑ぁ!」

 

「は、はい!?」

 

「テメェ!落とす所ぐらい決めとけやぁ!スカタン!」

ゴチン!

 

「いってぇぇぇっ!?」

 

「ふんっ!」クルッ ツカツカツカ

 

 

アキトは一夏の頭に拳をいれると、アキトは部屋から出ていった・・・

そのアキトを追いかけるように千冬が追ってきた

 

 

 

廊下にて・・・

 

 

「おい!待て暁!」

 

「なんだよ・・・織斑先生?」

 

「お前にはあの正体不明機との戦闘の報告書とアリーナの破壊の反省文の提出を――」

 

「嫌だね」

 

「暁!貴様は――」グイッ

 

 

アキトは千冬が何かを言おうとするまでに、千冬を抱き寄せた

 

 

「っ!?暁っ!?///な、何を!?///」カァァァ

 

「アンタの文句なら、アンタの部屋のベットの中でタップリときいてやる・・・だがよぉ・・・今は気分がクソみたいに悪い・・・だからよぉ・・・これだけはアンタの親友に伝えとけ・・・「テメェの思い通りになると思うなよ」・・・とな」

 

「な!?それはどういう!?」

 

「アキトさーん!待ってくださいましー!」トトトトト

 

 

曲がり角の方からセシリアの声がしてきた

 

 

「ッチ・・・時間切れか・・・なら俺はこれでな・・・織斑先生♪」バッ

 

ツカツカツカツカツカツカ

 

 

アキトは千冬の体から離れると、そのまま保健室へと向かっていった

 

 

「あ、アイツは///一体?///」ドキドキドキ

 

「あ!織斑先生!アキトさんは――って大丈夫ですか?顔が赤いですわよ?」

 

「あ、あぁ!///大丈夫だ、問題ない・・・暁なら保健室に向かったぞ」

 

「そうですか、ありがとうございますわ!それでは」

トトトトト・・・

 

「ハァ~・・・どうしたんだ私は?・・・顔が熱い///」

 

 

千冬は無意識の内にアキトに抱き締められた肩を握っていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

一方アキトはと言うと・・・

 

 

ツカツカツカツカツカツカ

 

「あぁ~・・・何やってんだよ俺は・・・///」テレリコ

 

 

さっき千冬にやった行いに照れていた・・・

 

 

「やべ・・・クラクラしてきた・・・血が足りない」フラフラ

 

 

 

―――――――

 

 

 

これはクラス対抗戦の後日談だ・・・

 

 

正体不明機体・・・通称「ゴーレム」の襲撃により、クラス対抗戦は中止となった

 

もちろんデザートのフリーパスもなくなった

 

 

「「「OH! Nooo!!!」」」

 

 

悲痛な声が学園に響いたかどうかは知らない

 

 

ゴーレムの襲撃により出た、負傷者は全員がかすり傷や軽度の打撲で済んだため、大きく知られる事はなかったが・・・

 

 

「ねぇ?あれ誰?」ヒソヒソ

 

「えっ、暁くんじゃないの?」ヒソヒソ

 

「なんであんな「仮面」をつけてるの?」ヒソヒソ

 

「なんか顔に大怪我を負ったみたいよ」ヒソヒソ

 

 

アキトは頭から顔にかけての怪我を隠すために黒い「仮面」をつけていた

 

 

「アキトさん?怪我の具合は?」

 

「おん?・・・まぁボチボチだ・・・傷痕が目立たなくなるまではこの仮面をしておくよ」

 

「そうですか・・・中々に似合ってますわよ」

 

「ありがとよセシリア」

 

 

二人がそんな話をしていると・・・

 

 

ガラァ・・・スタスタスタ

 

 

「暁アキトくんはこちらにいる?」

 

 

数人の生徒がアキトを訪ねてきた

 

 

「おん?俺ならここにいるぜ?」

 

 

スタスタスタ

 

「暁くん・・・今回はありがとう」

 

「は?何が?」

 

「私達はあの時、貴方に助けてもらったのよ?」

 

「?・・・あぁ!」

 

 

彼女達はゴーレムの襲撃により、負傷した生徒達だった

アキトがゴーレムを鉄の塊にした後、負傷者の手当てをしていたのだ

 

 

「気にするなよ・・・俺はただ、やれる事をやっただけだ」

 

「そうなの?でも私達は貴方に助けられたわ・・・ありがとう」

 

「「「「「ありがとう!暁くん!」」」」」ペコリ

 

 

生徒達はアキトに頭をさげた

 

 

「頭をあげてくれ・・・俺はそんな大層な――」

 

「なら?この後、みんなで食事でもどう?こんな事でしか感謝の気持ちを伝えられないけど――」

 

「いいな!行こう!すぐに行こう!」ガタタ

 

「ちょっ、ちょっと!?アキトさん!?まだ朝のHRも始まってませんわよ?!」

 

「あぁ~・・・そうか・・・」

 

「フフフ♪面白い人ね♪・・・だったらお昼はどう?」

 

「いいねぇ!だったらお昼を頼むぜ?」

 

「えぇ♪ではまたね、ナイトさま?」スタスタスタ

 

ガラァ スタスタスタスタスタスタ

 

 

「そんじゃな~」

 

「むぅ・・・」

 

「おん?どうしたよセシリア?そんなにムクれて?」

 

「ふんっ!知りませんわ!」プンスコ

 

「?・・・飯が食えるならそれでいいや」

 

 

アキトは通常運転だったようだ・・・

そんなアキト達を妬ましそうに見る眼が1つ

 

 

「・・・ッチ・・・暁め・・・」

 

 

余談だが、箒のやった事はアキトによってもみ消されていることを箒は知らない

 

 

こうして昼時には、数人の女生徒に囲まれながら、飯を頬張るアキトとムスッとしたセシリアが目撃された

 

そのアキトを怪訝な目で見る人が1人・・・

 

 

「・・・」ジー

 

「どうしたの~?かんちゃん?」

 

「っ!うぅん・・・なんでもない・・・」サスリサスリ

 

 

首もとの小さな刺し傷を触りながら、「更識 簪」はアキトを見ていた

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




こうするしかなかったんだ!俺は・・・俺は!

どうしよう・・・続き・・・


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休日!それは休み日!・・・

 

 

インサイド

 

 

今日から休みだ・・・

昨日中にアリーナ破壊の反省文と正体不明機体との戦闘報告書をまとめた・・・なんとかやっと終わった!終わらせたぜ!コンチキショー!

 

それで今は・・・

 

 

「あ~・・・アジトは落ち着くなぁ~」

 

「アキト~?お昼はお蕎麦でいいですか?」

 

「あぁ!3人前で頼むぜ~!ロレさ~ん!」

 

「食べ過ぎであろー、アキト~」

 

グデー

 

 

 

ドンのアジトに帰省?してるぜぇ~

 

 

 

サイドアウト

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

ズルズル~

 

 

「うっまっ!」モグモグ

 

「ロレンツォ、ワサビをかしてくれであろー」

 

「お待ちくださぁぁぁい!ドォォン!今すりおろしていますので!」スリスリスリ

 

「アキト、めんつゆ取ってくれ」

 

「あぁホラ、ガブさん」

 

 

アキトは休みの日を利用して、ヴァレンティーノファミリーのアジトに来ていた

 

 

「そういえばさぁ~?ズルズルノアは~?モグモグ」

 

「食べながら喋らないの、アキト!」

 

「ふぁ~い・・・モグモグ・・・ゴックン・・・それでノアは?」

 

「ノアなら別室で設計図書いてるぞ」

 

「あ?お昼食べないのかよノアは?」

 

「大丈夫ですよ、もうすぐ来ますよ」

 

 

アキト達がそう話をしていると・・・

 

 

ガラァ・・・

 

「あ〝~・・・お腹減ったぁぁぁ~・・・」トボトボトボ

 

 

ノアが満身創痍で現れた

 

 

「おいおい、大丈夫かよ?ノア?」

 

「あぁ~ん?・・・アカン、頭を使いすぎてアキトの幻覚が見えるわ~」

 

「本物だよ、アホ」トスン

 

「あいたっ!」

 

 

アキトはそんなノアの頭にチョップをかました

 

 

「うぅ~!痛いやんか~!アキトのアホ~!」ポカポカポカ

 

「おん?どうしたんだよノア?らしくないぞ?」

 

「研究が行き詰まっとんのや~!頭がパンクするわぁ~」

プシュ~

 

 

ノアの頭からは湯気が出ていた

 

 

「まぁあれだ・・・蕎麦食え」

 

「・・・うん・・・」カチャ

 

 

ズルズル・・・モグモグ・・・

 

 

「落ち着いたか?」

 

「うん・・・蕎麦美味しい」

 

「そうか、よしよし」ナデリコナデリコ

 

 

アキトは蕎麦を食べるノアの頭を撫でていくと、ノアは落ち着いていった

 

 

モグモグ・・・ゴックン

 

「プハァ~・・・おいしかったで、ロレンツォ」

 

「それはよかったです」

 

「やり過ぎは体に毒であろー」

 

「まったくだぜ」

 

「そういうアキトは食い過ぎだぞ」

 

「うるせぇよガブさん」

 

「「「「「ハハハハハハハハハハ♪」」」」」

 

 

昼食は和やかに終わっていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

昼食後・・・

 

 

ズズッ

 

「そういえば、なんでアキトはここにおんねん?」

 

「そういえばそうだったな・・・ハッ!まさか脱走か!?」

 

「んな訳あるかぁ!!今日は休みなんだよ!休み!!ツーか!ガブさんには伝えただろうが!」

 

「アキトをからかわないんですよ?ガブリエラ?」カチャン

 

「はぁ~い」

 

 

皆でお茶を飲みながら、家族団欒?みたいな感じに和んでいた

 

 

「ところでどうであろー?学校の方は?」

 

「おん?そうだな~・・・楽しくやってるぜ?この前、頭をパックリ真っ二つに切られたけど」

 

「「「「「へぇ~・・・はぁぁぁっっっ!?」」」」」

 

「うおっ!?なんだよ!ビックリするじゃないか」

 

 

ドン達の大声が響いた

 

 

「だ、大丈夫であろー!?アキト!?」

 

「そ、そうですよ!きゅ、救急車!救急車!」

 

「待て待て待て!俺は大丈夫だから!普通頭を真っ二つに切られたらここにいないからな!」

 

「そうやで、ドン?アキトはこう見えて、アーカードなんやから」

 

「そうだぞドン、心配するな」

 

「そのわりには、二人とも湯呑みが震えてるぜ?」

 

 

ガブリエラとノアは湯呑みが震え、動揺していた

 

 

「なんでそうなったであろー?」

 

「それがさぁ~――」

 

 

アキトは、皆に今までの事やクラス対抗戦、そして正体不明機との戦闘までを話した

 

 

ズズッ

 

「とりあえず、正体不明機を送りつけてきたのは、あの科学者だと思うけど・・・ん?どしたよ?皆?」

 

「オノレ・・・うちのアキトになんて事を!」ワナワナ

 

「まったくです!こうなれば!諜報部隊をフルに動かして、居所を掴んで報復を!」

 

「いいなそれは!師匠の提案に大いに賛成!」

 

「フフフ♪・・・私とどっちが天才が見極めるチャンスや」

 

「「「「「フフフ♪・・・」」」」」

 

 

ドン達は黒い笑いをあげていた・・・一方アキトは

 

 

「ぐす・・・皆こんなに心配してくれるなんて・・・俺は幸せ者だぜ!」

 

 

感動の涙を流していた

こうしてアキトの休日はすぎてゆく・・・

 

 

 

 

 

←続く

 

 




「そういえば、この仮面はなんや?アキト?」

「あぁそれはな、怪我を隠すためだ」

「はぁ?怪我なら治っとるやないか?」

「いや血だらけになるぐらいの怪我が、1日で治ったらオカシイだろ?」

「あぁ、なるほどなぁ~・・・でも」

「でも?」

「このデザインはなんや?」

「格好いいだろ?これは日本の甲冑の面宛をモチーフにしてるんだぜ?」

「アキトは良いセンスをしておろー」

「だろ~」



アキトの仮面イメージ
         [ミスターブシドー]の仮面(黒)


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ストーカー?・・・


―――統合しました―――



 

 

ノーサイド

 

 

休日が終わり、アキトは学園に戻っていた・・・

 

 

食堂にて・・・

 

 

「・・・」カリカリカリ

 

「あら?アキトさん?何をやっているので?」コトッ

 

「おん?セシリアか・・・いやちょっとな・・・そうだ、セシリア」

 

「はい、何でしょう?」

 

「ヒエログリフわかるか?」

 

「はい?」

 

 

アキトは食堂でヒエログリフで書かれた、ある書物を翻訳していた

 

 

「ちょっとよぉ、ヒエログリフは難しいんだよな」

 

「はぁ・・・すいませんアキトさん、私にはヒエログリフは・・・」

 

「そっかぁ・・・すまねぇなセシリア」

 

「いえいえ、私こそお力になれなくてすみません・・・ところでその本は?」

 

「あぁ、これはな――」

 

 

アキトが翻訳していた本はヴァレンティーノファミリー経由で手に入れた古代エジプトの書物だった

 

 

「なんでそんな物を?」

 

「いやな、この書物は「真理の書」ってヤツでさぁ、「魔術」をわかりやすく教えてくれる・・・参考書みたいなもんさな」

 

「魔術?」

 

「あぁ、古代エジプトの魔術のすべてが記されている」

 

「へぇ~・・・フフ♪」

 

「おん?なんだよセシリア?笑って?」

 

「いえ、なんだかアキトさんの目を輝やいていたので・・・好きなんですのね?」

 

「あぁ・・・こういう歴史ある物と関わるってのがなんだか好きでね」

 

「そうですか(アキトさんの新たな一面に出あえましたわ♪)」

 

 

セシリアは口角をあげてニヨニヨしていた

すると・・・

 

 

「っ!貴様!見ているな!!!」バァン

 

「っ!?」サッ・・・

 

 

突然アキトは振り返り、指を指した

 

 

「ど、どうしたんですの?アキトさん?」

 

「・・・いや、なんだか誰かに「見られてる」感じがしてな」

 

「「見られてる」?気のせいじゃありませんの?」

 

「いや・・・ここ最近毎日だ・・・いくら男が珍しいと言ってもこれじゃあストーカーだぜ」

 

「ストーカー・・・何だかわかる気がしますわ///」ボソ

 

「はぁ?」

 

「い、いえ!なんでもありませんわ!///まったく!アキトさんをストーカーするなんて!とんだ不届き者ですわね!」

 

「おっおう、そうか・・・お!この単語はこうだな・・・」カリカリカリ

 

 

少し本音が漏れたセシリアは必死で誤魔化した

そんなセシリアをほっときながらアキトはまたヒエログリフの翻訳に取りかかった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下にて・・・

 

 

タタタタタタ タタタタタタ・・・

 

 

人の多い廊下を走る生徒が一人・・・

 

 

「あれ~?どうしたのかんちゃん?そんなに息を切らして?」

 

「ハァハァハァ・・・大丈夫・・・大丈夫だよ本音?」

 

 

息を切らせ、肩で息をしている人物・・・「更識 簪」こそ、アキトを見ていたストーカーもどきだったのだ!

 

 

「本当に大丈夫~?顔もなんだか赤いし?」

 

「そ、そんな事・・・」

 

「え~?でも顔赤いし~?もしかして気になる人でも出来た~?」

 

「そ、そんな事!///」

 

 

簪はアタフタと誤魔化した

 

 

「そうだよねぇ~、かんちゃんに限ってそんな事ないもんね~」

 

「・・・本音?それどうゆう意味?」

 

「あ!もう授業が始まるから、私はこれでね~」トトトトト

 

「あ!ちょっと!本音!?・・・行っちゃった・・・でも気になる人か・・・(暁 アキト・・・彼の事を考えるとなんだか、脈が早くなる・・・それに)」サスリサスリ

 

 

簪は首もとにある小さな刺し傷をさわりながら・・・

 

 

「・・・また、あの気持ち良さを味わってみたい///」

 

 

・・・と瞳を潤ませ、顔を赤く色付かせていた・・・

 

 

 

―――――――

 

 

インサイド

 

 

廊下にて・・・

 

 

コツコツコツコツコツコツコツコツ・・・

 

・・・トトトトトッ

 

 

俺は今・・・例のストーカーにストーキングされている・・・もうこのストーカーにストーキングされて5日だ・・・

授業や部屋にいるとき以外は見られている・・・

しかも、このストーカー・・・

 

 

コツコツコツ・・・

 

「・・・」クルッ

 

「わっ!?わわわっ!」サッ

 

 

・・・ストーキングが下手くそだ・・・ツーか下手くそすぎる!もうちょっとさぁ!上手くストーキング出来ないのかよ!

足音聞こえるし!

気配消せれてないし!

隠れるのも出来てない!

・・・あんまりにもアレだから・・・なんだか見られてるコッチにストレスがかかる・・・

 

 

しかたない・・・・・・・・・今日で始末するか・・・

 

 

ノーサイド

 

 

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

コツコツコツコツコツ・・・タッタッタッタッタッ!

 

 

アキトは突然走り始めた!

 

 

「あっ!?(待って!)」タッタッタッタッタッ

 

 

ストーカーも走り、アキトを追いかけた

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」タッタッタッタッタッ

 

「ハァ、ハァ、ハァ!」タッタッタッタッタッ

 

 

 

アキトは息も切らさず走る走る・・・

ストーカーも負けずに走る走る・・・

 

しかし、ストーカーは気づかなかった・・・アキトが人気のない場所に行っていることを・・・

 

 

タッタッタッタッタッ・・・ストッ!クルッ!

 

 

「っ!?きゃっ!?」バスン

 

 

アキトは急に止まり、振り返った!ストーカーはそんなアキトに驚き、ぶつかった!

 

 

「わっ!?わわわっ///!?」

 

 

ストーカーは驚きのあまり、アキトから距離を置こうとしたが・・・

 

 

グイッ!ドスン!

 

「きゃっ!?」

 

 

アキトはストーカーを壁に強引に押し付け、ストーカーに迫った・・・

 

 

「おい?」

 

「はっ!はい!?///」

 

 

ストーカーはアキトに迫られ、顔を赤く色付かせた

 

 

「お前・・・誰?」

 

「わ、私は///!」

 

「ここんとこ俺の事をつけ回しやがって・・・」

 

「そっ、それは・・・その・・・」

 

「まぁ・・・とりあえず・・・」ガシッ グイッ!

 

「うぐっ!?」プラーン

 

 

アキトはストーカーの首を掴み持ち上げた!

 

 

「テメェの血を飲ませてもらうぜ?」

 

「あ、あぁ・・・///」

 

「叫ぼうとしても無駄だ・・・テメェの喉を潰しているし、監視カメラなんかの機能もダウンさせてる・・・半径20m内に人間の気配もない・・・」

 

「うぐ、ぐぐ・・・///」

 

「暴れんなよ・・・余計苦しむだけだ・・・」グイッ

 

 

アキトはストーカーの首に指を突き刺そうとした・・・がしかし!

 

 

「おん?・・・これは・・・ッチ」パッ

 

ドテラッ

 

「っ!?ケッホ!ゲホッ!ケホ!」

 

 

アキトは何かに気づいたのか、ストーカーの首から手を離した

ストーカーは地面に落とされ、咳こんでいた・・・

 

 

「ケッホ!ケホ!・・・ハァハァ・・・な、なんで?」

 

「あ?なにが?」

 

「なんで・・・なんで!「血を吸ってくれなかった」の?!」

 

「やっぱりか・・・テメェ・・・「かんちゃん」だな?」

 

「っ!?ど、どうしてそれを!?」

 

 

眼鏡ストーカーの正体はかんちゃん・・・もとい「更識 簪」であった

 

 

「本音が教えてくれたよ・・・ッチ・・・よりによって「味見」をしたヤツかよ・・・まったく残念だぁ~ションボリだぁ~」コツコツコツ

 

 

アキトは簪を置いて歩きだした・・・

 

 

「ま、待って!」

 

「おん?」

 

「そ、その///・・・血・・・吸わないの?///」

 

「・・・は?」

 

 

簪は小さな刺し傷がある首をアキトに見せていた

 

 

「・・・俺を誘惑してんのか?」

 

「ゆ、誘惑って///!?そ、それは・・・」

 

「悪いが、俺は飲まねぇよ」

 

「・・・え?」

 

「テメェの血は普通よりは旨い・・・だがよぉ・・・それだけだ・・・所詮はそんなもんだよ・・・お前の血には「魅力」がない・・・」

 

「・・・」

 

「ま!そんなもんだ・・・じゃあ――」クルッ

 

「待って」

 

 

簪はそっぽを向き、歩き出そうとするアキトを呼び止めた

 

 

「あぁ?しつけぇ――」クルッ

 

 

アキトは簪の方に振り向くと――

 

 

「動かないで!」プルプル

 

 

――そこには携帯を手に持った簪がいた

 

 

「・・・何の真似だ?」

 

「さっきの一部始終を携帯に・・・とってある」

 

「は?」

 

 

簪はアキトにハッタリをかました!

簪はここでアキトを逃すとあの快楽は得られないと考えたのだ!

 

 

「(ここで彼を逃がしたら・・・いけない・・・ここで逃がしたらあの気持ち良いのに・・・もうあえない)」

 

 

そんな簪を知ってか知らずか、アキトは・・・

 

 

「・・・なら」シュッ!

 

「っ!?(いつのまに!?)」

 

 

アキトは簪の目の前に近づくと、簪の頭をガッシリと掴み

 

 

「っ!?な、なにを?!」ミシッ

 

「・・・俺の眼をよく見ろ・・・」キィィィーン

 

「え?・・・あ!」

 

 

アキトは前にセシリアにやったのと同じような魔眼を使い始めた

 

 

「お前はなんで俺に構う?」

 

「それは・・・貴方からの・・・吸血が気持ち良かったから・・・それに」

 

「それに?」

 

「貴方を・・・貴方を知りたくなった・・・から」

 

「俺を知りたくなった・・・だと?」

 

「貴方は・・・私と・・・似ている・・・独りぼっち」

 

「・・・」

 

「同じ独りぼっち・・・なのに・・・貴方は独りぼっちじゃない・・・どうして・・・どうして・・・」

 

「・・・お前は独りぼっちなのか?」

 

「私は・・・独りぼっち・・・皆から必要と・・・されてない・・・いやだ・・・いやだ・・・私は無能・・・なんかじゃない・・・助けて・・・助けてよぉ」ポロポロ

 

 

トランス状態に入った簪は涙をながしながら、アキトに訴えた

 

 

「・・・」フワッ

 

「え・・・?」

 

 

アキトは簪の頭から手を離し、そして・・・

 

 

「お前・・・名前は?」

 

「え?」

 

「お前の名前だよ、名前・・・さすがに「かんちゃん」じゃあ、わからねぇよ」

 

「え・・・うん・・・私は「更識 簪」・・・」

 

「知ってると思うが、俺は「暁 アキト」・・・ところで・・・更識?」

 

「簪」

 

「え?」

 

「簪って呼んで」

 

「そうか・・・なら簪?」

 

「何?暁くん?」

 

 

アキトは簪の眼を真っ直ぐに見ながら、ある「問い」を投げ掛けた

 

 

「俺と・・・いや・・・私と「友達」にならないか?」

 

 

こうして、ある人外の男とある独りぼっちの少女の奇妙な関係が築かれた

 

 

 

―――――――

 

 

 

ノーサイド

 

 

あれからアキトと簪は奇妙な関係が築かれた事により、一緒にいるようになった

 

 

 

食堂にて・・・

 

カリカリカリカリ・・・

 

「アキト」

 

「おん?何だよ簪?」カリカリカリカリカリ

 

「ここの翻訳、違うと思う」

 

「え?・・・あ!ホントだ、ありがとよ簪」

 

「どういたしまして」

 

 

簪はアキトのヒエログリフ解読を手伝っていた

 

 

スタスタスタスタスタ ピタッ

 

「あら?あれは・・・アキトさんと・・・誰です?」

 

「ん?・・・あの人はセシリア・オルコット・・・」

 

 

食堂に入ってきたセシリアはアキトの側に座る簪と目が合った

セシリアはアキトに近づいていく

 

 

スタスタスタスタスタ

 

「アキトさん、ごきげんよう」

 

「おん?セシリアか・・・どしたよ、その本?」

 

「あらアキトさん?今日はヒエログリフの解読のお手伝いをすると昨日言いましたわよ?」

 

「・・・ムッ」

 

「あぁ・・・その為の本か・・・ありがとうよセシリア」

 

「いえいえ・・・それよりアキトさん?こちらの方は?」

 

「あぁコッチは――」

 

「アキトに「頼まれて」手伝ってる更識 簪・・・」

 

「ピクッ!そうですか、知っていると思いますが、私はセシリア・オルコット――」

 

「知ってる・・・イギリスの代表候補生・・・」

 

「あら?私を知っているとは――」

 

「アキトにボコボコにされた」

 

「んがっ!?あ、貴女!」

 

「ヒハハ♪確かにそうだな」

 

「あ、アキトさんまで・・・」

 

 

アキトは簪の発言に笑っていたが・・・

 

 

「だがよぉ、セシリアには敬意をはらうに値する覚悟を持っている・・・」

 

「・・・」

 

「アキトさん・・・」ジーン

 

 

アキトはセシリアの持っている覚悟を賞賛した

 

 

「・・・ごめんなさい、オルコットさん」

 

「え?あぁ!いいんですわよ、更識さん」

 

「簪・・・簪って呼んで」

 

「私の事もセシリアとお呼びになって、簪さん?」

 

「うん・・・よろしくセシリアさん」スッ

 

ギュッ

 

 

セシリアと簪は握手をし、挨拶をした

 

 

「そういやぁ、簪も代表候補生だったよな?」

 

「そうなんですの?」

 

「うん・・・一応ね・・・」

 

「一応て言うな、一応て、セシリアみたいに自信を持てよ」

 

「そんなアキトさんたら///」

 

「セシリアは自信を持ちすぎだがな」

 

「・・・はい」ショボン

 

「プッ!フフフ♪」

 

「ニョホホホ♪」

 

「もう!二人とも笑わないでくださいまし!///」

 

「悪い悪い、ニョホホホ♪」

 

「ぜんぜん謝ってるきがしませんわ!アキトさん!」

 

 

三人は和やかな雰囲気をおくっていると・・・

 

 

「お!暁!なにやってんだ?」スタスタスタスタスタ

 

「おん?あぁ・・・萩村か」

 

「誰だよ!織斑だよ!織斑!」

 

「あら一夏さん?今日は箒さんと一緒じゃありませんのね?」

 

「あぁそれがさぁ――」

 

 

どうやら箒は山田先生に呼ばれていたようだ

そんな一夏を尻目になぜか簪は不機嫌なオーラを放っていた

 

 

「ん?君は?」

 

「っ!織斑・・・一夏・・・」

 

「そうそう!俺は織斑一夏、よろしくな」スッ

 

 

一夏はそう言いながら簪に手を差し出したのだが・・・

 

 

「そう言えば織斑?お前のアネキが呼んでたぜ」

 

「アネキ?・・・千冬姉がか?」

 

「え?アキトさんそれは――っ!?///」

 

 

セシリアが何かを言おうとしたが、アキトはそんなセシリアに人差し指をあて、黙らせた

 

 

「そうそう、なんか急ぎの用事みたいだったな~」

 

「そうなのか!だったら急がないと!じゃあな!」ピュー

 

 

一夏は颯爽と食堂から出ていった

 

 

「ヤレヤレ・・・」

 

「・・・ありがとうアキト」

 

「おん?何がだよ?簪?」

 

「なんでもない・・・それより」

 

「それより?・・・ん?」チラッ

 

 

簪に呼ばれて、アキトはセシリアを見ると・・・

 

 

「えへ、エヘヘヘ///」ポワーン

 

 

放心状態のセシリアがいた

 

 

「なにやってんだよセシリア」ピンッ

 

「痛っ!?」

 

 

アキトはセシリアのデコッパチにデコピンを食らわせた

そんな感じで1日は過ぎていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




今回はここまで!


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軍人達の会合

ちょっとしたオリジナルありです


 

 

 

ノーサイド

 

 

 

ここはスイス某所の国連秘密基地・・・

 

この基地にある3人の軍人達が集まっていた・・・

 

 

カツカツカツカツカツ・・・

 

「・・・おや?」

 

「ん?」

 

「これはこれは・・・」

 

 

軍人達は全員、IS部隊の隊長クラスであった

 

イギリス

アメリカ

ドイツ

 

彼女達はある指令により召集されたのだ

 

 

「久しいな「セルベリア」」

 

「貴女もお変わりありませんな「エスデス」中将」

 

「よしてくれ、昔のように呼び捨てで構わないぞ?あと、なぜお前がいる?「クラリッサ」?」

 

「私は「少佐」の代理人です」

 

 

長い銀髪の彼女は・・・

イギリス空軍IS部隊所属 セルベリア・エデム大佐

 

これまた腰まで銀髪をのばした彼女は・・・

アメリカ軍統括IS部隊所属 エスデス・サディラー中将

 

黒髪のショートカットの彼女は・・・

ドイツ空軍IS部隊所属 クラリッサ・ハルフォーフ大尉

である

 

 

「代理人?てっきりあの「シュトロハイム」が来ると思ったんだが?」

 

「シュトロハイム大佐はこの召集に呼ばれていません」

 

「何?それはどういう事だ?」

 

「さぁ?私にもサッパリです」

 

「しかし、こうして集まるのは何年ぶりだ?」

 

「・・・7年ぶりでしょうね?あの「事件」以来ね」

 

「そうか・・・あれから7年か・・・」

 

「「メルサ」や「シェルス」が逝って以来よ」

 

「この7年で変わってしまったな・・・私は中将となり、セルベリアは大佐・・・」

 

「貴女は大尉のままなのだな?クラリッサ」

 

「お二人の出世が早いだけですよ、それに私は今の地位に満足しています」

 

「部隊の副官がか?私の元にくれば高く評価してやるのに?どうだクラリッサ?私の――」

 

「結構です」

 

「・・・まだ何も言ってないだろう」

 

「ハハハ♪エスデス?無理な勧誘はやめておけ」

 

「まったく・・・あのチビッ子のどこがいいんだか・・・そのチビッ子はなぜ来てないんだ?」

 

「「ボーデヴィッヒ」少佐ならIS学園に」

 

「ほう・・・ブリュンヒルデがいるところにか」

 

「はい・・・少し心配ですが」

 

 

3人が話をしていると・・・

 

 

スタスタスタスタスタ・・・

 

「お待たせして申し訳なさありません」

 

「ん?君は?」

 

「私はスイス国連事務官「ココ・エルトム」です・・・どうぞ皆様、私が案内させて頂きます」

 

 

そうして3人は事務官に案内されて別室に通されると・・・そこには・・・

 

 

「なんだコレは・・・!?」

 

 

ある人型生物の頭部を破壊された「残骸」だった

 

 

「人間?なのか?」

 

「いえ、この生物は5日前にスイス軍により退治された「吸血鬼」でございます」

 

「「「っ!?!?」」」

 

「吸血鬼だと!?」

 

「どうしてそんなものがここに?!」

 

「スイス軍に退治されたあとに秘密りに隠したものです・・・我々、国連はこの吸血鬼がアーカードだと――」

 

「違うな」

 

 

事務官が何かを言おうとしたが、セルベリアが口をはさんだ

 

 

「エデム大佐、それはどういう?」

 

「この吸血鬼がアーカードだと?・・・笑わせるな、アーカードがそんな柔なヤツではない」

 

「私もです・・・」

 

「なぜ?お二人はこの吸血鬼がアーカードではないと?」

 

「私は8年前にアーカードと戦闘をしている」

 

「私は7年前・・・あの事件で・・・」

 

 

セルベリアとクラリッサはアーカードと直に戦闘をしているために、この吸血鬼がアーカードではないといったのだ

 

 

「ほう・・・二人はアーカードと戦闘をしたことがあったのか・・・私も・・・」

 

「エスデス・・・妙な考えは持つな」

 

「?なぜだ?セルベリア?」

 

 

ある考えを抱いたエスデスをいさめるようにセルベリアがエスデスに言った

 

 

「ヤツは・・・ヤツは異常だ・・・お前が思っている以上に恐ろしい」

 

「は?ヤツも「蟲」と変わらないのではないのか?」

 

「蟲?違う・・・違うぞ!エスデス!ヤツは恐怖の塊だ!お前はヤツと会ったことがないからそんな事がいえるんだ!」

 

「そうです!サディラー中将!ヤツ、アーカードは恐ろしい!」

 

 

エスデスに話すセルベリアとクラリッサの体はどこか震えていた

 

 

「そうか・・・」

 

「お二人とも落ち着いてください・・・我々は貴女達にこれだけを見せに召集をかけたわけではありません」

 

「なに?」

 

 

そう言って事務官はあるタブレットの写真を3人に見せた

 

 

「これは?」

 

「「ホムンクルス」と呼ばれる生物です・・・現物がないためこのような形ですが・・・」

 

「ホムンクルス?」

 

「まだ調査段階でそのほとんどが謎に包まれていますが・・・わかっている事があります」

 

「それはなんだ?」

 

「このホムンクルスは・・・人間を食料としていることです」

 

「「っ!?」」

 

「ほう・・・人間をか・・・」

 

「それを私達に教えてどうするきだ?」

 

「貴女達にはこのホムンクルスを駆逐するための部隊を率いてもらいたいのです」

 

「ほう・・・」

 

「それは私もですか?」

 

「もちろんです!今すぐにとは言いません・・・選択の中の1つとして考えてください」

 

「・・・」

 

 

事務官の話に黙るセルベリアとクラリッサを尻目にエスデスはにこやかに笑っていた

 

 

「(吸血鬼にホムンクルス・・・実に面白いじゃあないか・・・そしてアーカード・・・フフフ♪会うのが楽しみだ♪)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園教室にて・・・

 

 

「ブェックショイ!チキショイ!おぉっ寒!?」ブルブル

 

「ど、どうしたのよ?!アキト?ビックリするじゃない!」

 

「悪い鈴・・・風邪かなぁ?」

 

「アンタが風邪って・・・」

 

「あぁ?なんだよ鈴?まるで俺がバカみたいに・・・それが古文の教えをこう人間か?あぁん?」

ギロリ

 

「ごめん!ごめん!謝るから睨まないでよ!怖いから!」

 

「アキトさん?この短歌はどういう意味ですか?」

 

「あぁ、ここはな――」

 

 

外国人組に古文を教える吸血鬼系の人外がクシャミをしていた・・・

 

 

 

 

 

 

←続く

 




シェルス[クシュン!]

ノア[どしたんやシェルス姉?風邪か?]

シェルス[うぅん、なんか噂をされてる気がして・・・]

ノア[どーせアキトが[シェルスが恋しい!]なんかって言ってるんとちゃう?]

シェルス[ばっ!?///な、何言ってんのよ!?///]

ノア[ほほぉ~?どうなんやろな~?]ニヨニヨ

シェルス[もうノア!変な事言わないでよ!///]


ヴァレンティーノファミリーのアジトでそんな事があったそうな・・・



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第参章『金の想い銀の願いと偽物の剣』
金の髪と銀の髪・・・



さて・・・どうなる事やら・・・



 

 

 

インサイド

 

 

教室にて・・・

 

今日は朝からなんだか騒がしい・・・

 

食堂でも教室でもだ・・・なんかあんのか?

なんかあるにしても静かに出来ねーのか?

こっちはヒエログリフの解読に簪の「専用機作り」を夜中まで手伝ってたんだよ・・・いくら俺が吸血鬼でも頭脳疲労は勘弁願うぜ・・・

 

 

「ねぇねぇ?聞いた?」

 

「何を?」

 

 

おや?どうやら騒がしさの真相を話してるようだな・・・

 

 

「転校生が来るみたいよ?」

 

「え!?また~?」

 

「最近多いわね~」

 

 

まったくだ・・・鈴が転校してからそんなにたってないってのによ・・・そーいやぁシュバルツからホムンクルスについての電子メールがきてたな・・・見てねぇが

 

 

「大丈夫ですか?アキトさん?」

 

「おん?セシリアか・・・大丈夫大丈夫・・・寝不足だがな・・・」

 

「またヒエログリフの解読をしてたんですの?お体に障りますわよ?」

 

「それもあるが、簪が中々に寝かせてくれなかったんでな・・・フワァ~」

 

「へ~・・・はっ!?それは一体!ど、ど、どういう事何ですの!?」

 

 

簪のヤツめ・・・なんで俺がアイツの専用機の制作なんぞ手伝ってやらなきゃなんねーんだ?

なんだよヒエログリフの手伝いしてやる代わりに専用機の制作手伝って・・・まぁ・・・夜食に釣られた俺も俺だが・・・

夜中の3時までやらせるか?普通?

簪も簪で徹夜しようとしやがったから、眠らせたけど・・・やっぱ夜更かしは肌に悪いもんな・・・

 

 

「ちょっと!アキトさん!どういう事か説明してくださいっ!!!」ズイッ

 

「っ!?うるせぇよセシリア!耳元で怒鳴るんじゃあねぇ!キィーンとしたぞ!キィーンと!」キィーン

 

「そんな事よりも!どういう事か説明を――」

 

 

ガラァ・・・

 

「お前達!静かにせんか!今からHRを始める!席につけ!」

 

「っ!アキトさん!逃げないでくださいね?!」トトト・・・

 

 

ヤレヤレ・・・助かったぜ・・・おん?・・・教室の外に二人か・・・たぶん転校生ってのはそいつらか・・・興味ないし・・・うん、寝よ・・・Zzzzzz・・・

 

 

サイドアウト

 

 

 

ノーサイド

 

 

「皆さんおはようございます!今日は皆さんに新しいお友達を二人紹介します!それでは入ってきてください!」

 

 

山田の元気な声に呼ばれて転校生が入ってきた・・・

 

 

ガラァ・・・スタスタスタスタスタ・・・

 

「え!?あれって・・・」

 

「マジ?!」

 

 

転校生の一人は金の髪を後ろにまとめた少女のような「少年」

腰までのびた銀の髪を持つ黒い眼帯をした少女だった

入ってくると金髪の少年が口を開けた

 

 

「初めまして、フランスからきた3人目の男性操縦者の「シャルル・デュノア」です・・・こちらにいる同じ男性操縦者の――」

 

 

デュノアが自己紹介を終える前に・・・

 

 

「「「「「「「きゃ、きゃあぁぁあぁぁぁあああぁぁぁっ!!!」」」」」」」

 

「っ!?」

 

 

クラスから黄色い叫びがあがった・・・

 

「男子!3人目の!」

 

「キタ!可愛い系男子!」

 

「エメラルドグリーンの瞳・・・綺麗~!」

 

「え、え~と・・・」

 

 

新たな男性操縦者に熱くなるクラスメイトにデュノアは引いていた・・・

一方、他の男子共はというと・・・

 

 

「み、耳が・・・耳がキィーンとする・・・」キィーン

 

「Zzzzzz・・・」

 

 

一夏は黄色い叫びに耳をやられ、アキトは気にせずに眠りこけていた

 

 

「静かにせんか!お前達!あと、いつまで寝ている?!暁!」スパァッン!

 

「フガッ・・・おん?誰?」

 

「寝ぼけるな!」スパァッン!

 

 

アキトは千冬の出席簿連続アタックをうけた

ダメージはあまりないようだ・・・

教室は静かになった

 

 

「よし・・・「ボーデヴィッヒ」、自己紹介しろ」

 

「ハッ!わかりました教官!」コツコツコツコツ

 

 

千冬にボーデヴィッヒと呼ばれた銀髪の少女は前に出ると・・・

 

 

「「ラウラ・ボーデヴィッヒ」だ」

 

 

素っ気ない自己紹介をした・・・

 

 

「え・・・それだけですか?」

 

「以上だ」

 

 

そんな素っ気ない自己紹介をしたラウラは次にした行動とは・・・

 

 

「貴様が・・・!」ツカツカツカ  ヒュッ

 

「へっ?」

 

 

一夏に向かっていき、手を振り上げた・・・しかし!

 

 

パシッ

 

「っ!?貴様!何をする!?」

 

「・・・」

 

 

ラウラの振り上げた手を掴んだのはアキトだった

 

 

「・・・アンタ・・・ドイツ人だろ?」

 

「それがどうした!さっさと手を――」

 

 

グイッ

 

アキトはそんなラウラを抱きよせた

 

 

「スンスン・・・なんだ、アンタ強化人間か?」

 

「っ!?き、貴様!」バッ

 

 

ラウラはアキトから距離を置き、自分の腰に手を伸ばしたが・・・

 

 

「っ!?」

 

「おやおやおや~?お探し物ってこれかい?銀髪ちゃん?ケケ♪」プラーン

 

 

ラウラに見せつけるようにアキトは軍用ナイフを持っていた

 

 

「!?貴様!何時の間に?!」

 

「ヒッヒッヒ~♪一体何時でしょう?」

 

「何をしとるか暁」スパァッン

 

 

ニンマリと自慢気なアキトの後ろ頭を千冬は叩いた

 

 

「お前もだボーデヴィッヒ、このナイフは没収だ」

 

「しかし教官!」

 

「教官ではない、織斑先生だ・・・席につけ、暁もだ」

 

「ヤレヤレ・・・しかたねぇなぁ~」

 

「・・・」

 

 

千冬の言葉でアキトとラウラは席についた

 

 

「え?え?え?」

 

「あ、アハハハ・・・」

 

 

一夏は何がなんだか分からず、デュノアは苦笑いを浮かべていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 

 

 




なんとか出せた・・・次、どうしよ?


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面倒事が起きる授業・・・


行くぜ!
ちょっとしたアレな場面もあるぜ!


 

 

ノーサイド

 

 

 

教室にて・・・

 

HRも終わり、今は休み時間なのだが・・・

 

 

「フワァァァァァァ~・・・寝み・・・」ガタタ

 

「暁・・・アキトくん?」

 

「おん?・・・あぁ・・・アンタは」

 

「初めまして、僕はシャルル・デュノア、これからよろし――」

 

 

デュノアがアキトに自己紹介をしようとしたが・・・

 

 

「おい暁にデュノア!急ごうぜ!」

 

「あ?なんでだよ?」

 

「なんでって、次は千冬姉が担当のISの授業だろ!」

 

 

次の授業はISの授業であり、授業が行われるアリーナから教室までは遠いので、一夏は急いでいたのだ

 

 

「ッチ・・・そうだったな・・・なら行くか・・・」

コツコツコツコツ

 

「あ!待ってよ~!二人とも~!」トトトトト・・・

 

 

急ぐ二人をデュノアは追いかけた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下にて・・・

 

 

3人が急いでアリーナに向かっていると・・・

 

 

「あ!あれって噂の転校生じゃない?!」

 

「黒髪に挟まれたブロンド・・・いいわ!」

 

「者共出会え!出会え~!」

 

ゾロゾロゾロ・・・

 

 

他の生徒に見つかった3人は囲まれた・・・

 

 

「おいおいおいおいおい・・・何時からここは武家屋敷になったんだ?ドンのアジトじゃあるまいし」

 

「知るかよ!てかドンて誰だよ?」

 

「なんで?皆こんなに騒いでるの?」

 

「はぁ?この学園に男は俺達3人だけだろ?」

 

「え?・・・あぁ!そうだよね!そうだった!」

 

 

デュノアは何故かキョトンとしていたが、一夏の発言によりデュノアは急いで肯定した

 

 

「・・・」シラァー

 

「な、何かな?暁くん?どうしてそんな目で僕を見るかな?」

 

「・・・ヤレヤレ・・・しかたねぇ」グイッ ダキッ

 

「えっ!?///」

 

 

突然アキトはデュノアを引っ張ると、そのまま抱き抱えた!お姫様抱っこで!

 

 

「「「「「「「ブはッ!?///」」」」」」」」

 

 

何人かが鼻血を出して倒れた

そんな事を気にもせず、アキトは窓を開けた

 

ガラァ・・・

 

「おい織斑?」タッ

 

「な、なんだよ暁?というかなんで窓に足をかけて――」

 

「コイツらに構ってると授業に遅れるから・・・あと頼むわ」

 

「ちょっ、ちょっと!?暁くん!?///」

 

バッ!

 

 

アキトはデュノアを抱っこしたまま窓から飛びだした!

 

 

「「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」」」」」」

 

「あ、暁!?ここ三階ぃぃぃ!?」

 

 

アキトはそのまま三階から落ちていった

 

 

「きゃ、きゃあぁぁあぁぁぁあああぁぁぁ!?」

 

「うるせぇ、大丈夫だから大人しくしとけ」

 

ダッ タッ タッ タッ タッ

 

アキトは建物の壁を蹴りながら、アリーナへと向かっていった・・・

 

 

「スゲェ・・・まるで忍者だ・・・・・・あ!置いていかれた!?」

 

 

一夏は一人、囲まれたまま置いていかれた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナ更衣室前にて・・・

 

 

タッタッタッタッタッタッタッタッタッ・・・

 

 

「おいアンタ」

 

「キュウ~///」

 

「?、寝るなよ」ペシッ

 

「痛っ!?ふ、ふぇ!?あ、暁くん!?」

 

 

アキトは腕の中で気絶?していたデュノアにデコピンを喰らわせた

 

 

「更衣室についたぜ?とっとと着替えて授業に行こうぜ」

 

「う、うん」

 

ガチャリ・・・スタスタスタ・・・

 

 

「さてと・・・」ゴソゴソ ガチャチャ

 

「っ!?な、何してるの!///」

 

「おん?何って・・・着替えてるけど?」

 

 

アキトが脱ぎ出したのを見て、デュノアは顔を赤くした

 

 

「ぼ、僕!向こうで着替えてくるね!///」クルッ

 

「まぁ待てよ?」グイッ

 

「っ!??!!!?///」

 

 

着替え終えたアキトは向こうに行こうとしたデュノアの手を引っ張り、抱きよせた

 

 

「な、な、な、なにをす、す、するのかな!?///」

 

「あ?抱きよせたんだけど?」

 

「「抱きよせたんだけど?」じゃなくて!///」

 

「良いじゃんか?それとも何か?男とこんなに密着したのは初めてか?「 Ms. 」デュノア?」

 

「!?な、何を言ってるのかな?暁くん?!」アタフタ

 

 

アキトの発言にデュノアは動揺し、尋常ではない汗をかきはじめた

 

 

「どうした?動揺しているぞ?」

 

「ど、動揺なんか!」ガクガク

 

「ふぅ~ん?ならどうしてそんなに汗をかく?」

 

「こ、これは・・・暑いからだよ!」

 

「そうか・・・なら」

 

「へっ?」

 

ペロリ

 

「ヒャアン!?///」

 

 

アキトはデュノアから流れ出た汗を一舐めし――

 

 

「これはウソをついている味だぜ?Ms. デュノア?」

 

「ヒッ!?///」

 

 

デュノアの耳元で甘く囁いた

 

 

「や、やめて・・・暁くん・・・!///」

 

「やめて?何をかな?」

 

「お、男の子同士でこんな事・・・!///」

 

「あぁん?まだシラを切るつもりか?いいんだぜ?このままアンタをひん剥いても?」スルリ

 

 

アキトはデュノアの首もとや腰に手を添わせていった

 

 

「い、いや・・・!///」

 

 

デュノアは恐怖で体が硬直し、抵抗が出来なかった

このままデュノアはアキトにアンナコトやコンナコトをされると思っていた・・・しかし!

 

 

「キヒヒ♪やっぱ止~めた!」バッ

 

「・・・へっ?///」

 

 

アキトはデュノアの体から離れた

 

 

「な、なんで・・・?///」

 

「そろそろ授業の開始時刻なんでな・・・それとも何?このまま最後までやって貰いたかったかい?」ニヤリ

 

「そ、そんな事ない!///」ブンブン

 

「そっか・・・キヒヒ♪ちょっと残念かもな?」

 

「えっ?・・・///」

 

「それじゃあな、授業に遅れんなよ?キヒヒ♪」

コツコツコツコツコツ・・・ガチャリ・・・コツコツコツ

 

 

アキトはデュノアを置いて更衣室から出ていった

 

 

「あ、あ、あ・・・」ヘタリ

 

 

デュノアはズルズルとヘタリこんでしまった

そこに・・・

 

ガチャリ

 

「ハァ!ハァ!や、やっと着いた、早く着替えないと――ってデュノア!?大丈夫か?!」

 

 

置いていかれた一夏が更衣室に入ってきた

 

 

「え!?あ、うん大丈夫だよ!」スクッ

 

「そうか!というか暁は?」

 

「あ、暁!?」

 

「一緒に来たんだろ?」

 

「そ、そうだった!そうだった!暁くんなら先に着替えて行ったよ」

 

「そっか~!あ!こんな事言ってる場合じゃなかった!早く着替えようぜ!千冬姉にどやされるぞ!」

 

「う、うん!」

 

 

更衣室の二人はこんな事を話していた・・・

 

 

 

―――――――

 

 

あれから授業開始時刻にギリギリ遅刻した一夏とデュノアだったが、何故か一夏だけが出席簿アタックを喰らった

 

 

「本日からISの格闘及び射撃の実戦訓練を始める!」

 

 

そして、千冬の号令により授業が始まった

 

 

「それでは訓練の初めとして模擬戦闘を行ってもらう・・・凰!オルコット!前に出ろ!」

 

「「はい!」」

 

 

千冬は専用機を纏った鈴とセシリアを呼んだ

 

 

「それで私は鈴さんと戦えばよろしいので?」

 

「挑むところよ!」

 

バチバチバチィ

 

 

二人の間に火花が散ったが・・・

 

 

「待て小娘ども・・・お前達の相手は――」

 

「うわーーー!?退いてくださぁぁぁーい!」

ギュィィィーン

 

 

千冬が二人を止めようとしていると、上空から量産機の「ラファーレル」を纏った山田が降ってきた・・・一夏目掛けて

 

 

「は?」

 

「織斑くん!退いてくださぁぁぁい!」

 

「一夏!」

 

「一夏ぁ!危ない!」

 

 

誰もが二人が激突するかと思った・・・その時!

 

 

「朧・・・アックスブーメラン」

 

「「承知シマシタ」」ブゥン

 

 

アキトが朧に命じ、鎖の着いたショートアックスを取りだし、それを・・・

 

 

「オォラァッ!」ビュオォォッン! グルグルグル

 

「え!?きゃぁっ!?」ジャキッ!

 

 

山田に向かって投擲し、巻き付けた!そして!

 

 

「よいしょっと!」グイッ

 

「きゃぁぁぁっ!?」ビュオォォッン

 

 

引っ張った!

もちろん引っ張った事により、山田はアキトに向かっていった!

 

 

「アキトさん!危ない!」

 

 

ガシィィィィィィィッ!

 

 

アキトは山田を受け止めた・・・

 

 

「ヒュウ~・・・大丈夫かい?山田先生?」

 

「はっ、はひぃ!あ、ありがとうございます暁くん///」

 

 

受け止められた山田の顔はどこか赤く色付いていた

 

 

「山田くん気を付けてくれ」

 

「す、すいません!織斑先生!」スゥー

 

「ヤレヤレ・・・」

 

 

山田はアキトから離れていったが・・・

 

 

「アキトさん~?」ピキピキ

 

「おん?」

 

 

セシリアがアキトを怖い目で見ていた

 

 

「なんだよセシリア?そんな怖い顔してさ?」

 

「いえ!なんだかアキトさんが鼻の下を伸ばしていたように見えたので!」

 

「?まぁ確かに山田先生は結構、いや実に魅力的だが、鼻の下は伸ばしてないぜ?」

 

「え!?///」

 

 

アキトの発言に山田の顔はもっと赤くなった

 

 

「あ、アキトさん?!」

 

「そんな暁くん!そんなにほ、褒められると///」ゴニョゴニョ

 

「あ?なんか変な事言ったか?俺?」

 

「ハイハイ!茶番はここまでだ・・・山田くん位置についてくれ」

 

「は、ハイ!」スゥー

 

 

千冬に呼ばれ、山田は指定位置に着いた

 

 

「お前達二人には山田くんと戦ってもらう」

 

「え!?2対1でですか?」

 

「それはちょっと・・・」

 

 

鈴とセシリアは千冬の言葉に戸惑ったが、千冬は・・・

 

 

「大丈夫だ・・・お前達ならすぐに負ける」ニヤリ

 

 

と、薄ら笑いを浮かべていた

 

 

 

 

 

 

 

30分後・・・

 

 

鈴とセシリアは山田に惜敗した

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・中々に」

 

「そうね・・・強かった」

 

「お二人とも大丈夫ですか?」スゥー

 

 

山田は膝をつくセシリアと鈴に近づいていった

 

 

「さすがだな・・・」

 

「いえいえ、代表候補止まりだったので・・・」

 

「代表候補生!?」

 

「だからあんなに強かったのね・・・」

 

「でも次からは・・・」

 

「そうねセシリア・・・次は頑張りましょ!」

 

「はい!」

 

 

納得をしたセシリアと鈴は友情を深めた・・・

 

 

「よし・・・ではこれより専用機持ちは前に出て、残りの生徒は出席番号順に別れろ」

 

「「「「「「「ハイッ!」」」」」」」

 

実戦訓練が始まった・・・

 

 

「それじゃあ、やるとしますか・・・」

 

「「「はい!」」」

 

 

ISの授業が始まると、アキトは自分の周りにいた生徒に声をかけた

 

 

「今回は訓練って言っても、ISの初期動作である歩行訓練だ・・・そんなに難しい事はない、じゃ!まずは・・・」

 

「はいはぁ~い!私がやるよ~!アキアキ~」

 

 

アキトの班である、本音が手を挙げていた

 

 

「なら、のほほんからだな・・・先生からは「打鉄」をかりてるから・・・自分で乗れるか?」

 

 

アキト達の前には量産機の1つである「打鉄」が立っていた

立っているために打鉄の操縦席から地上までは2mほどあった

 

 

「え~?登るの~?」

 

「まぁ確かに登らせるのもなぁ~・・・ん?」チラッ

 

 

アキトがすぐ横にいた班を見ると・・・

 

 

「よっと、大丈夫か箒?」ヒュオォォ

 

「だ、大丈夫だ///」

 

 

白式を纏った一夏が箒をお姫様抱っこして、打鉄に運んでいた

 

 

「あぁ・・・おん?」チラッ

 

「「「「「「「ジーーー・・・」」」」」」」

 

 

アキトが視線を戻すと、班の生徒達はアキトに期待の眼差しを送っていた

 

 

「ふむ・・・あらよっと!」ダキッ ダッ!

 

「おぉ~!」

 

 

アキトは本音をお姫様抱っこして、打鉄に飛び移った

 

 

「すごぉ~い・・・ISを「纏わず」にあんなにジャンプするなんて・・・」

 

「暁くんって実はスゴい身体能力を持ってる?」

 

 

ジャンプを見ていた生徒達は喋っていた・・・

 

 

「じゃあ、のほほん・・・動かしてみてくれ」

 

「はぁ~い!よいしょっと!うわわ!?」グラァ

 

「危ねぇ、普通に歩く感じで動かせ!」

 

「う、うん!」ガシィン

 

「そうそう、そのまま動かせよ」

 

 

順調に授業が進んでいた・・・ところが・・・

 

 

「ねぇ・・・あれって!」

 

「ん?何?・・・え!?」

 

「あれってドイツの「第三世代型」じゃない!?本国でもトライアル段階って聞いてたけど・・・」

 

 

他の生徒達が騒ぎだした・・・

生徒達の視線の先には黒いISを纏ったラウラがいた

 

 

「・・・おい、織斑一夏?」

 

「なんだよ?ボーデヴィッヒ?」クルッ

 

 

ラウラは一夏に近づき、声をかけると・・・

 

 

「貴様も専用機持ちだそうだな?・・・私と戦え」

 

「は?何言ってんだよ?」

 

 

戦うように言ってきた・・・

 

 

「無理だな」

 

「何?」

 

「今は授業中だし、それに戦う理由がない」

 

「・・・」

 

「それじゃあな、俺は授業の続きがあるんでな、ボーデヴィッヒも皆に教えてやれよ?」クルッ

 

 

そう言って一夏は自分の班へと戻っていると・・・

 

 

「なら・・・戦えるようにしてやる!」ジャキッ!

 

 

ラウラは一夏の背後にライフルを突き付け、撃とうとした!・・・だが!

 

 

「ドラァッ!」ブゥン!

 

ガギィッン!

 

「なっ!?」

 

 

ライフルにナイフが突き刺さった!

ラウラはナイフを投げたであろう人物を見た

 

 

「暁アキト!」

 

「ヤレヤレ・・・何やってんだよお前ら?」ヒュンヒュン

 

 

そこには、ナイフをジャグリングをしているアキトがいた

 

 

「あ、暁!助かったぜ!」

 

「んな事どーでもいいから、授業を続けようぜ?さっさとしねぇと、うるさいぜ?」

 

「あ、あぁ」

 

「貴様!邪魔をするか?!」

 

「おん?」

 

 

攻撃を邪魔されたのが気に食わないのか、ラウラはアキトに殺気を送っていた

 

 

「なんだよ銀髪?ヤろうってのか?」

 

「ISを装備してない貴様など――」

 

 

ラウラはISを纏ってもないアキトに文句を言おうとしたが・・・

 

 

「あ〝あ〝ん?」ゴゴゴゴゴッ

 

「っ!?」

 

 

アキトはラウラに自らの殺気をぶつけた

 

 

「うぅっ!?(な、なんだ!?この殺気は!?い、息ができない!?)」

 

 

ラウラの呼吸器官はアキトの殺気により、痙攣をおこしていた・・・すると・・・

 

 

「「そこの生徒!何をやっている?!!所属と出席番号を言え!!」」

 

 

管制塔からの怒号が飛んできた

 

 

「ッチ・・・さて授業に戻ろうぜ?あの先生はうるさいからよ?」スゥ

 

「かはっ!?スゥ、ハァー!ハァ!」ガシャン

 

 

アキトが殺気を納めるとラウラは崩れながら、呼吸を再開した

 

 

「おい織斑?お前もそろそろ戻れ、どやされたくなけりゃーな」コツコツコツコツ

 

「あ、あぁ・・・」

 

 

アキトはボーゼンとする一夏をほっとき、歩きだした・・・すると

 

 

「ま、待て!」ハァハァ

 

「おん?」

 

 

まだ呼吸も整ってないラウラがアキトを引き留めた

 

 

「な、なんなのだ?!お前は!?」

 

「はぁ?」

 

 

ラウラの問いにアキトは疑問符を浮かべた後、ニヤリと笑いながら、こう答えた・・・

 

 

「そうだな・・・ただの「バケモノ」さ、ヒヒヒ♪」ニヤリ

 

「っ!?」

 

 

その笑顔は凍りつくような目をした笑顔だった・・・

 

 

「お~い!アキアキ~!」

 

「あぁ!今いく!・・・ボーデヴィッヒ?」

 

「な、なんだ?!!」

 

「お前はちゃんと指導しろよ?じゃあな」コツコツコツコツ

 

 

 

そう言ってアキトは自分の班に戻っていった・・・

 

 

「くっ・・・」ギリィ

 

 

残されたラウラは上唇を噛み締めていた・・・

 

 

こうして午前の授業は過ぎて行く・・・

 

 

 

 

 

←続く

 




廊下にて・・・

アキト[ヤレヤレ、もったいなかったかもな~・・・少しぐらい[味見]してもよかったかもな・・・しかし・・・[男装]までして・・・シュバルツに調べてもらうか・・・]
コツコツコツコツ・・・


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授業終わりの食事会?・・・



お気に入り200突破ぁ!目指せぇ!300!


 

 

 

インサイド

 

 

廊下にて・・・

 

 

コツコツコツコツ

 

面倒事に絡まれた授業も終わって、やっと飯の時間だ!

飯~♪飯~♪お昼ご飯~♪

 

 

「ちょっと!アキトさん!」

 

 

・・・またかよ・・・

 

 

「あぁん?なんだよセシリア?」

 

「さっきの事についてです!」

 

「さっき?・・・あぁ、あれか」

 

 

別にゴチャゴチャ言う事じゃねぇと思うけどな~?

 

 

「「あれか」じゃありませんわよ!ISを装備もしないで喧嘩を売るなんて!」

 

「別にいいじゃねぇか、なんともなかったんだしさ」

 

「それでも・・・それでも!心配しますわよ!!」ウルウル

 

 

あぁ、あぁ、涙なんか溜めちゃって・・・ヤレヤレだぜ

 

 

「ハァ~・・・悪い、悪かったよ」ナデリコ

 

「えっ!?///」テレリコ

 

 

おん?なんでシェルスと同じに赤くなってんだ?ノアとかなら喜ぶのに・・・

 

 

「~~~♪///」

 

 

・・・まぁいいか、喜んでるみたいだし

 

 

「お~い!二人とも!」スタスタスタスタスタスタ

 

 

あ?あれは織斑か・・・

 

 

「なんだよ織斑?」サッ

 

「あっ・・・」ショボン

 

「これからデュノアの歓迎会も兼ねて、屋上で昼飯食うんだが・・・二人もどうだ?」

 

 

屋上で昼飯かぁ・・・簪も用事があるとかって昨日聞いたしなぁ~・・・

 

 

「いい提案ですわ!私は今日はお弁当なので!いいですわよね?アキトさん?」

 

「え?俺は弁当がな――」

 

「いいですわね!」ズイッ

 

 

な、なんだ!?このセシリアからでる「スゴ味」は!?

圧倒的だぜ・・・

 

 

「あぁ・・・別に構わねぇよ・・・」

 

「そうですわね!さぁ!行きましょう!」

 

 

ヤレヤレ・・・こう言うのは慣れないもんだな・・・

まぁいいか・・・セシリアの飯にありつきますか

 

 

 

サイドアウト

 

 

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

屋上にて・・・

 

 

一夏に誘われたアキトとセシリアは屋上に来ていた

セシリアの手にはバスケットが握られていた

 

 

ガチャ・・・

 

「皆、お待たせ!」

 

「遅いぞ!一夏!――ってむ?!」

 

「遅いわよ――って、アキト?」

 

「暁くん・・・」

 

 

屋上には箒や鈴、デュノアが勢揃いしていた

 

 

「なんだよ・・・勢揃いじゃねぇか・・・おい織斑?こりゃどういうこった?」

 

「え?デュノアの歓迎会だけど?・・・箒が誘ってくれたんだけど、皆で食べたほうが楽しいだろ?だから皆を誘ったんだぜ」

 

「むぅ・・・」

 

 

一夏の言い分を聞いていた箒はどこかむくれていた

 

 

「ヤレヤレだぜ・・・」

 

「一夏さん、それは・・・」

 

「アハ、アハハハ・・・」

 

 

アキトは飽きれ、セシリアは顔をひきつらせ、デュノアは苦笑いを浮かべていた

 

 

「ハァ~・・・どうせそうだと思ったわよ・・・」

 

「ん?どうかしたのか?」

 

「なんでもない!とっとと食べるぞ!」

 

「あ、あぁ・・・」

 

 

こうして食事会が始まった・・・

 

 

「ツーか、俺のぶんの飯がねぇんだが?そこんとこどーすんだよ?織斑くぅん?」

 

「えと、僕もないんだけど・・・」

 

「え?デュノアはともかく、暁はないのかよ?」

 

「・・・ッチ・・・お前なぁ・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

 

 

アキトは一夏のセリフにイライラしてきた・・・

 

 

「大丈夫ですわよ!アキトさん!」

 

「あ?そりゃどういうこった?」

 

「ジャーン!」パカッ

 

 

セシリアは持っていたバスケットをあけると、そこにはサンドイッチが入っていた

 

 

「おー!セシリアどうしたんだよ?これ?」

 

「ふふん♪イギリスにも美味しい物がある事を皆さんに教えてあげますわ!」フンス

 

「確かにサンドイッチはイギリス生まれだしな・・・」

 

「そうです!そうです!さぁ!どうぞ召し上がってください!」サッ

 

「あぁ、頂くぜ」スッ ガブリ モシャモシャ

 

 

アキトは差し出されたサンドイッチを渡されると、一口で頬張った

 

 

「ど、どうですか?アキトさん?」

 

「・・・モシャモシャ」

 

 

セシリアは恐る恐る聞いた・・・すると・・・

 

 

「ゴクリ・・・んンまァァァ~~~い!!!」

 

 

アキトは賞賛の声をあげたのだが、同時に・・・

 

 

「「えぇぇ!?」」

 

 

箒と鈴は驚きの声をあげた!

 

 

「ウソでしょ!?アキト!?」

 

「そんなはずはない!」

 

「ちょっと!お二人共!?」

 

 

二人はアキトを信じられないような目で見ていた

 

 

「おいおい箒?どうしたんだよ?」

 

「私と鈴はお前達が来る前に自分達のを交換したんだが・・・」

 

「セシリアのは超絶に不味かったのよ!」

 

「お二人共!酷いですわよ!」

 

 

箒達が言うにはセシリアの作ったものは不味いらしい・・・それでもアキトは――

 

 

「ウマイ、ウマイ」モグモグ

 

 

食べ続けていた・・・

 

 

「ちょっとアキト!口直しに私の酢豚食べなさいよ!」

 

「おん?じゃあ・・・ヒョイ パク・・・うん、旨いな」

 

「そうでしょ!そうでしょ!でもセシリアのは?」

 

「?ウマイよ?」

 

「えぇー!?」

 

 

鈴は再び、驚きの声をあげた・・・すると・・・

 

 

「僕も貰っていいかな?」

 

 

デュノアがセシリアに声をかけた

 

 

「え!?止めたほうがいいわよ!」

 

「鈴さん!少しお黙りになって!・・・もちろんですわよ!デュノアさん!」

 

 

デュノアはセシリアからサンドイッチを受けとり――

 

 

「ありがとう・・・じゃあ頂きます」パク

 

 

小さな口で食べた・・・

 

 

「っ!??!?!!!?」

 

 

食べた瞬間にデュノアの顔はみるみるうちに青くなった

 

 

「どうですかデュノアさん?」

 

「う、うん・・・その・・・えと・・・」オロオロ

 

 

感想を求めるセシリアにデュノアはオロオロしていると・・・

 

 

「じゃあ!俺にもくれよ?セシリア?」

 

 

一夏がセシリアに声をかけた

 

 

「い、一夏!?」

 

「やめておけ!一夏!!」

 

「頂きます!」パク

 

 

一夏は箒や鈴の忠告を無視して、サンドイッチを口にほうりこんだ・・・その時!

 

 

「ぐはぁっ!?!!??」バタリ

 

「「「一夏(さん)ぁ!?」」」

 

一夏は泡を吹きながら倒れていった

近くにいた箒と鈴、セシリアが駆け寄った

 

 

「ちょっとセシリア!アンタ、サンドイッチに何入れたの?!」

 

「え!?それは・・・スパイスにハバネロとか酸味にレモンとか隠し味に山椒とかとかとか・・・」

 

「よくそんな物を入れて、こんな見栄えの良いのができたな――って!しっかりしろ!一夏!」

 

「うぅ・・・ほ、箒・・・?」

 

「どうした?!一夏!?」

 

 

朦朧とする意識の中で一夏は箒に語る・・・

 

 

「もう・・・無理・・・」ガクッ

 

「い、一夏ぁぁぁぁぁ!?」

 

 

一夏はそのまま意識を沈ませていった

 

 

「だ、大丈夫かなぁ?織斑くん?」

 

「気にすんなデュノア、何時もの茶番だ」パクパク

 

「は、はぁ・・・って、よく食べるね暁くん?」

 

「おん?なんだいるのか?」

 

「うぅん!大丈夫大丈夫だよ!」ブンブン

 

「そうか・・・それでさデュノア?」

 

「何?暁くん?」

 

 

アキトはデュノアに声をかけた

 

 

「放課後空いてるかい?・・・」

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 

 

 

 




書いたぜ!
中々にすぐに続きが思い浮かばない!


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制作と真実と・・・


創作欲は湧く・・・だが・・・文章にするのは難しい



 

 

 

ノーサイド

 

 

 

アキトはあの食事会のあと

デュノアに頼まれて泡を吹いて倒れた一夏を保健室につれていったり、メシマズと言われたセシリアを慰めたりした・・・一夏は午後の授業には出れなかった

 

そして場面は放課後に移る・・・

 

 

 

廊下にて・・・

 

 

コツコツコツコツ

スタスタスタスタスタスタ

 

「ちょっと暁くん!待ってよ~!」

 

ピタッ

「遅ぇよデュノア、もうちょっと早く歩けないのか?」

 

「無理言わないでよ!僕と暁くんじゃあ歩幅が違うんだから!」

 

「そうか・・・なら、また抱っこしてやろうか?」

 

「え!?///い、いいよ!そんな事しなくても!///」

 

「そうか・・・なら、ほら?」ヒョイ

 

 

アキトはデュノアに手を差し出した

 

 

「え?何かな?この手は?」

 

「何って・・・手をつなぐためだけど?」

 

「そんな、さも当たり前のように・・・」

 

「まぁ、気にすんな」グイ ギュッ

 

「あっ///・・・」

 

 

コツコツコツコツ スタスタスタスタスタスタ

 

 

デュノアはそのままアキトに手を引かれながら、歩んで行った・・・

 

 

 

 

 

 

 

10分後・・・

 

アキトはデュノアの手を引きながら、ある扉の前で止まった・・・

 

 

「あの~暁くん?ここは?」

 

「実はさぁ、デュノアには「ある事」を手伝ってもらいたいわけなんだよ」

 

「?」

 

「まぁ、そのうちわかる」コンコン

 

 

疑問符を浮かべるデュノアを放っておき、扉をノックすると・・・扉が少し開き・・・

 

ギィィ・・・

 

「・・・誰?」

 

「簪?俺だ、暁アキトだ」

 

「・・・ホントにアキト?」

 

「あぁ、そうだアキトだ」

 

「他に誰かいる?」

 

「あ?そうだな、転校生がいるぜ?」

 

「・・・そう・・・なら貴方が本物のアキトなら合い言葉を言える・・・」

 

「は?合い言葉?」

 

 

少し開けられた扉から喋っている簪は、そう問いただした

 

 

「(合い言葉?・・・そんなモノあったか?)」

 

「・・・私のあとに言って」

 

「あ、あぁ・・・」

 

「じゃあ言うね・・・スゥ、ハァ・・・「暁アキトにとって更識簪はどういう存在?」」

 

「・・・は?」

 

 

簪の発言にアキトはフリーズした

 

 

「・・・どうしたの?早く言わないと、閉め出すよ?」

 

「わかった、ちょっと待ってろよ・・・え~と・・・」

 

「ちょっと何やってんの暁くんン!?」ピトッ

 

「少し、静かにしとけデュノア」

 

「う、うん・・・///」コク

 

 

アキトはデュノアの唇に指をあてて、静かにさせると思考を始めた・・・

 

 

「・・・どうしたの?言えないの?」

 

「待て待て・・・今考えてるから」

 

「・・・5秒前・・・」

 

「カウントをとるな!わかったわかった言うよ!俺にとって更識簪は・・・」

 

「貴方にとって私は?・・・」ドキドキ

 

 

簪はアキトの答えに胸を高鳴らせていた

 

 

「俺にとってお前は・・・」

 

「私は?・・・」ドキドキ

 

「・・・・・・・・・・・・・・・輸血パック?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「暁くん・・・それは・・・」ヒクヒク

 

 

アキトの答えに、隣にいたデュノアは顔を引きつかせていた

 

 

「しょうがねぇだろ!思いつかなかったんだよ!」

 

「・・・今は・・・ソレデモイイ・・・」ボソッ

 

「おん?なんか言ったか?」

 

「うぅん・・・なんでもない・・・入って」カチャ ギィィ

 

 

簪は扉を開けて、二人を向かい入れた・・・

 

 

「邪魔するぜ・・・」

 

「お、お邪魔しまーす・・・」

 

 

二人がそこに入ると、部屋のなかには工具類やら金属機器、パソコンが散乱していた

 

 

「何この部屋?」

 

「ここは簪の制作ラボみたいなもんだよ」

 

「それよりアキト・・・この人は?」

 

「おん?言わなかったか?転校生だよ」

 

「シャルル・デュノアです!よろしくね!え~と・・・」

 

「更識簪・・・簪って呼んでデュノアくん」ヒョイ

 

「うん!よろしくね簪さん!」ギュッ

 

 

二人は自己紹介と握手をしていると・・・

 

 

「それより簪、制作に移ろうぜ?」コツコツコツコツ

 

「ん?「制作」ってなんの?」

 

「え!?アキト、まさかこの人を制作に関わらせる気?!」

 

「え?え?」

 

「そうだけど?流石に俺だけだと限度があるからな」

 

「でも・・・」

 

「ちょっと!二人とも!僕をおいて話を進めないでよ!」

 

 

アキトと簪の話がわからないのか、デュノアが割って入った

 

 

「あぁ、すまんすまん・・・デュノアには制作を手伝って貰いたいんだよ」コツコツコツ

 

「だから、なんの?!」

 

「この――」コツコツコツ・・・バッ

 

 

アキトは部屋の中央にあるシートを剥ぎ取ると、そこには・・・

 

 

「―――この簪の専用機の制作にさ?」ペチペチ

 

アキトは制作途中の簪の専用機「打鉄弐型」を触りながら言った・・・

 

 

「専用機の制作って!?そんなの機密事項なんじゃ?!」

 

「別に構やしないだろ?」

 

「軽いっ!?軽すぎるよ!暁くん!というか!これは簪さんの専用機でしょ!そうでしょ簪さん?!」

 

 

デュノアは簪に問いかけた・・・

 

 

「・・・アキトが連れてきたなら・・・構わない」

 

「えぇぇ!?なんでさ!?」

 

「デュノアも構わないだろ?専用機持ちだし」

 

「そ、それはそうだけど・・・」

 

「何よりさ・・・お前の「目的」も達成できるだろ?」

 

「え!?」

 

 

その発言にデュノアの体は硬直した・・・

 

 

「?・・・アキト、それってどういう事?」

 

「ん?あぁ、わかりやすく言うと・・・この転校生はどっかの回し者・・・つまりは「スパイ」だ・・・そうだろ?シャルル・デュノア?」

 

「え・・・!?」

 

「な、な、何を言っているのかな?!!」オドオド

 

 

デュノアは見るからに動揺していた・・・

 

 

「あれあれあれあれあれあれあれぇ?どうしたんだよ?そんなに動揺してよぉ?」ニヤニヤ

 

「ど、動揺なんかしてないよ!第一!どうして僕がスパイなんて事が言えるのさ?!」

 

「更衣室だよ、更衣室」

 

「更衣室?・・・あっ!ま、まさか・・・」

 

 

デュノアは思い出したように顔を歪めた・・・

 

 

「そのまさかだよMr.・・・いや・・・ 「Ms. 」デュノア?」

 

「「Ms.」 ?・・・という事はデュノアくんは・・・女性?!」

 

「Exactly・・・その通りだぜ簪・・・ちなみにシャルルって名前も偽名だろうな」

 

「うぅ・・・」オドオド

 

 

アキトの冷静な発言にデュノアは唇を噛み締めながら・・・

 

 

「うわぁぁぁ!」スチャ!

 

 

懐から拳銃を取りだし、二人に向けた!

 

 

「っ!?」

 

「ヤレヤレ・・・朧、頼むぜ」

 

「「仰セノママニ」」

 

ビシュッビシュッン!

 

「えっ!?」グリン!

 

 

アキトが朧に命令すると、アキトが挙げた左腕からワイヤーが飛び出し、デュノアの腕や首に巻き付き――

 

 

ズベシィッ!

 

「きゃぁぁあっ!?」

 

 

――床に叩きつけた!

 

 

「おいおいおい?考えなしにピストルを向けるんじゃあねぇよ・・・簪?大丈夫か?」

 

「う、うん・・・」

 

「ぐぐぐ・・・!」

 

「お前も大丈夫か?デュノア?」コツコツコツコツ

 

「え?アキト!」

 

「大丈夫だ簪・・・それで大丈夫か?」スッ

 

 

アキトは床に敷かれているデュノアに近づき、しゃがんだ

 

 

「・・・どうして僕がスパイだと?」

 

「確信はなかった・・・更衣室の時でも、確信を得られなかった・・・だからカマをかけた」

 

「っ!?・・・それはやられたね・・・自分でも完璧だと思ったんだけどな~・・・」

 

「(実を言うと、匂いや皮膚の手触りでわかったんだけどな・・・ま、それは置いといてと)・・・立てるか?」

スチャァ・・・

 

 

アキトはデュノアに巻き付いていたワイヤーを解除し、手を差し出した

 

 

「え・・・僕を開放するの?」

 

「まぁね・・・もちろん、このピストルは没収だがな」チャ

 

「・・・うん・・・」グッ スクッ

 

 

デュノアはアキトに手を引かれ、立ち上がった・・・

 

 

「さて・・・それじゃあ・・・専用機の制作を始めますか」

 

「「えっ!?」」

 

 

アキトの発言に簪とデュノアは唖然とした・・・

 

 

「おん?どしたよ、お二人さん?鳩がサブマシンガン喰らった顔して?」

 

「鳩がサブマシンガン喰らったら、ただじゃ済まないと思う・・・」

 

「それじゃなくて!ど、どうして?!」

 

「は?何が?」

 

 

アキトは惚けた顔をしていた・・・

 

 

「「は?何が?」じゃなくて!どうして、何もなかったように接せられるの?!」

 

「別にいいじゃない?そんな小さな事は」

 

「ち、小さな事!?」

 

「それより簪?昨日どこまで進んだんだっけ?」

 

「え!?・・・昨日は認知プログラムの作成が出来たところ・・・」

 

「だったら、今度は武装プログラムだな・・・デュノア?手伝ってくれや?」コツコツコツコツ・・・パカッ

 

 

アキトはパソコンを開いた・・・すると・・・

 

 

「ま、待ってよ!暁くん!!」

 

「あ?なんだよ?」

 

 

デュノアはアキトを呼び止めた・・・

 

 

「ど、どうして・・・どうして何も聞かないのさ?!」

 

「何も聞かないって・・・そりゃあ・・・別に「どうでもいい」からさ」

 

「ど、どうでもいい!?」

 

「デュノアくん・・・じゃなくて、デュノアさん・・・顔が・・・」

 

 

デュノアの顔はまさに例のような驚き顔をしていた

 

 

「このさい!顔なんてどうでもいい!どうしてさ暁くん?!!」

 

 

デュノアはアキトに問いただした・・・

 

 

「どうしてって・・・俺は別にアンタの正体なんぞ、どーでも良い」

 

「どーでもっ!?」

 

「俺は早く簪の専用機を完成させたいんだよ・・・だから、どーでも良い」

 

「な、な、なっ!?」

 

「アキト・・・///」ジィーン

 

 

その言葉にデュノアは愕然とし、簪は感動していた

 

 

「で、でも!・・・もし僕が簪さんの専用機の情報を漏らすかもしれないよ!」

 

「・・・何?」コツコツコツコツ

 

 

アキトはギラリと眼を光らせ、デュノアに近づいた・・・

 

 

「僕がデュノア社のスパイだという事は認めるよ・・・でも!僕がこのまま簪さんの専用機・・・つまりは日本代表候補生の専用機の情報をデュノア社に持っていくかもしれないんだ――」

 

「その時はこうだ」ガシッ グイッ!

 

「ぐあっ!?」

 

 

アキトはデュノアの首を掴み、持ち上げた!

 

 

「なっ、何を・・・!」ジタバタ

 

「アキト!」

 

「騒ぐな簪・・・で、デュノア?なんだっけ・・・情報を漏らすかもしれない?だったら・・・その前に」グッ

 

「あぐっ!?」

 

「騒ぐな・・・痛みは一瞬だ・・・」

 

「あぁ・・・?・・・ぐっ!?」

 

グググ・・・

 

 

アキトはデュノアの首に吸血のための指をめり込ませた・・・しかし!

 

 

「やめて!アキト!!」バッ

 

「おん?」

 

 

簪がアキトの腕にのしかかった!

 

 

「簪・・・邪魔すんのか?」

 

「・・・じゃ、邪魔なんかしない・・・そ、それより」

 

「それより?」

 

「・・・わ、私の・・・私の血を吸って!///」

 

「か、簪さん・・・?ググ」

 

「・・・ほぅ・・・」

 

 

簪は眼を潤ませ、顔を赤くしながら上目遣いでアキトにお願いした・・・

 

 

「・・・ッチ・・・しょうがねぇ・・・」バッ

 

「かはっ!?」ドシャ

 

 

アキトは掴んでいた手を離した

デュノアは力なく、床に崩れ落ちた・・・

 

 

「けほっ、ごほっ!・・・ハァハァ!・・・」

 

「だ、大丈夫!デュノアさん?!!」トトト サスリサスリ

 

「あ、ありがとう・・・けほっ、簪さん・・・」

 

 

簪は崩れたデュノアに近づいて、背中を優しくさすった

 

 

「・・・ったく・・・ヤレヤレだぜ」

 

「けほっ、ごほっ・・・あ、暁くん・・・?」

 

「あぁ?なんだよ?デュノア?」

 

「き、君は一体・・・?」

 

「デュノアさんっ!?」

 

 

デュノアはアキトに疑問を投げ掛けた・・・

 

 

「そうさなぁ・・・俺はただの「バケモノ」さ・・・あ!そんな事よりも・・・デュノア?」シュッ クイッ

 

「え!?///」ビクッ!

 

 

アキトはしゃがんでデュノアの顎を指で持ち上げ、被っていた仮面を外し、魅了するような甘い声で――

 

 

「俺は君を必要としている・・・どうだ?俺の・・・いや、私の「仲間」にならないかい?」フワァ

 

「ふぇっ!?///え、えと・・・あの、その・・・///」

 

「私は君が必要なんだ・・・どうだい?デュノア?」

 

 

デュノアを誘惑した・・・

 

 

「(な、何・・・?・・・さっきまでの暁くんとは違う・・・仮面を被ってたから、わからなかったけど・・・なんて・・・なんて綺麗な「紅い眼」をしているんだろう・・・それに・・・なんだか・・・とっても安心する・・・///)」トロン

 

「どうした?デュノア?」

 

「「シャルロット」・・・」

 

「おん?」

 

「僕の本当の名前・・・「シャルロット」って言うんだ」

 

 

デュノア・・・いや、シャルロットは自分の本当の名前をアキトに明かした・・・

 

 

「「シャルロット」か・・・良い名前だな・・・そうだと思わないか?簪?」

 

「う、うん!・・・良い名前・・・スゴく良い名前だよシャルロットさん?」

 

「そうなんだ・・・僕のお母さんがつけてくれた名前なんだよ・・・」ポロポロ

 

 

シャルロットは涙を流し始めた・・・

 

 

「あれ・・・?・・・なんでだろう?・・・涙が・・・涙が止まらないよ・・・?」ポロポロ

 

「・・・」ダキッ

 

「・・・暁・・・くん?」

 

 

アキトはシャルロットを優しく抱き締め、その耳元で囁いた・・・

 

 

「大丈夫・・・大丈夫・・・もう我慢する事はないんだよ?シャルロット・・・君はもう一人じゃあないんだよ・・・だから・・・ね?」

 

「うぅ・・・うわぁぁぁぁぁぁん!!!」ボロボロ

 

 

シャルロットは決壊したダムのように涙と泣き声をあげた・・・今まで溜まった、悲しみや寂しさをすべて吐き出すように・・・

 

 

「よしよし・・・」ナデリコ

 

「ヒグッ・・・ありがとう・・・暁くん・・・」

 

「気にするなよ・・・「シャルロット」?」

 

「うん・・・///・・・ねぇ?「アキト」?・・・///」

 

「なんだい?シャルロット?」

 

 

シャルロットはアキトの名前を呼び、そして・・・

 

 

「こんな・・・こんな僕で良ければ・・・僕と「友達」になってくれる?///」

 

「もちろん・・・喜んで・・・」ニッコリ

 

 

アキトはトビキリの笑顔で、そう答えた・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




今日はここまでぇ!
なんという無理矢理感!
続きが難しい!


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帰室までの出来事・・・


引き続き、キャラ崩壊・・・かも・・・

―――編集・統合しました―――


 

インサイド

 

 

 

その後、彼女の事情を聞いた・・・

 

彼女がデュノア社の社長の妾の子供である事・・・

二年前に彼女の母親がある「病」にかかり、意識不明の重体になった事・・・

引き取られた先での「理不尽」と「孤独」な日々を・・・

 

俺はそれを受け止めた・・・その上でデュノア・・・いや、シャルロットを「仲間」として迎い入れた・・・

どことなく、デジャブを感じるが・・・

 

だが・・・シャルロットの話を聞いていて、俺は所々、奥歯にモノが引っ掛かったような胸糞の悪い「違和感」を感じた

 

その「違和感」を拭うために、今日は専用機制作をほどほどにし、簪にシャルロットを任せて解散して、自分の部屋に戻ってたんだが・・・

 

 

「教官!どうしてこんな場所に?!」

 

「ハァ・・・織斑先生と呼べと言うのに・・・」

 

 

なんか通り道の中庭で黒髪と銀髪が言い争っているけど・・・こんな所で言い争うなよ・・・

そうだ!少しヒマを潰すかな♪・・・ニヤリ

 

 

サイドアウト

 

 

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

「教官!どうしてこのような場所で教師などと!?」

 

「ボーデヴィッヒ・・・」

 

 

学園の中庭ではラウラが千冬と言い争っていた・・・

千冬はある「事情」により、ドイツ軍の教官を1年間勤めていた・・・その教官時代の教え子がラウラであった

そのラウラがIS学園に来た理由は、千冬をドイツ軍に戻らせるために来たのだ・・・

 

 

「ここでは教官の才能は生かせません!」

 

「ほぅ・・・」

 

「この学園の連中はISをファッションの一部と勘違いしている!こんな所では教官の才能を腐らせて――」

 

「黙れ・・・!」ゴゴゴゴゴ

 

「うっ!?」

 

 

千冬はラウラを威圧した・・・

 

 

「ISを使えるだけで、もう選ばれた者気取りか?」ゴゴゴ

 

「そ、それは・・・」

 

「確かに・・・その通りかもな」

 

「なにっ!?」クルッ

 

 

ラウラが振り返ると、そこには・・・

 

 

「何をしている?暁?」

 

「いや、なんだか興味深い話を聞いたもんで」

 

「盗み聞きとは、感心しないな暁?」

 

「盗み聞きィ?単に先生の声がデカイだけでは?」

 

「ほぅ?・・・私の声はそんなにデカイか?」

 

「えぇ、かなり・・・ハッ!まさか、お気付きでありませんでしたかな?」

 

「貴様・・・」ゴゴゴゴゴ

 

「え?なんですか?先生?そんなに眉間に皺寄せて?」ニコリ

 

 

凄い形相で睨む千冬とにこやかな眼差しのアキトが顔を合わせていた・・・すると

 

 

「貴様!教官に向かってなんて口を!?」

 

「おん?なんだ居たのか・・・ボーデヴッヒ?」

 

「ボーデヴィッヒだ!分かりにくい間違いをするな!」

 

「すまん、すまんボーデヴッヒ?」ニヤニヤ

 

「貴様ぁ!」グッ

 

 

ラウラはアキトに掴みかかろうとしたが・・・

 

 

「やめんかボーデヴィッヒ!」カッ

 

「しかし教官!」

 

「何度も言わせるな・・・」

 

「す、スイマセン・・・教官・・・」ショボン

 

「カラカラカラ♪ザマァ~♪」

 

「お前もだ暁」ブンッ!

 

「無駄ぁ!」パシッ

 

「何っ!?」

 

 

アキトは振り上げられた、千冬のチョップを白羽取りした

 

 

「キヒヒ♪甘い甘い~!それではお二人さん!バァ~イ!」

タタタタタ・・・

 

 

そのままアキトは風のように去っていった・・・

 

 

「な、なんなんだ?!あの男はっ!?」

 

 

ラウラにはアキトの行動に意味不明と頭を抱えている・・・その隣で・・・

 

 

「・・・フフ♪」

 

「ど、どうしたんですか?教官?」

 

「何、気にするな・・・ではボーデヴィッヒ、私はこれでな・・・」

コツコツコツコツ・・・

 

 

千冬はどこか朗らかな表情をしつつ、中庭から去った

残されたラウラはと言うと・・・

 

 

「暁アキト・・・織斑一夏とは全く違う顔を教官にさせる男・・・・・・ユルスマジ・・・」

 

 

アキトをターゲットとして、認識した・・・

 

 

 

―――――――

 

 

廊下にて・・・

 

 

「レラ♪レラ♪レラ♪」コツコツコツコツ

 

 

中庭でヒマ潰しができたアキトは中々の上機嫌で部屋に帰っていた・・・

 

 

「中々にカラカイがいがあったな~、あの銀髪は・・・後、そろそろブリュンヒルデの方も食いに行こうかな?もう5日も簪だけの血しか啜ってないからな・・・簪にも悪いし・・・まぁ、それよりもデュノア社についての調査を・・・誰に頼もうかね?」

コツコツコツコツ・・・スタッ カチャカチャ

 

 

アキトはブツブツと独り言を喋りながら、部屋の前で止まり、鍵を開けて扉を開けると・・・

 

 

「お帰りなさい♪ご飯にする?お風呂にする?それとも・・・わ・た・し?❤」

 

 

水色の髪をした、女性があられもないエプロン姿でアキトを迎えた・・・

 

 

バタンッ

 

 

アキトは何事も無いように扉を閉めた・・・

 

 

「・・・・・・・・・・・・疲れてんのか?俺は?」

ゴシゴシ ガチャ

 

アキトは目をゴシゴシとこすり、また扉を開け――

 

 

「もう♪閉めるなんてヒドイじゃ――」

 

バタンッ

 

――閉めた・・・

 

 

「・・・!?(何何何何何何何何何何っ!?どうかしちまったのか!?俺は!?!あれか?!あれなのか?!!欲求不満なのか!?いくら最近「口から」の吸血をしてないからって!幻覚まで見え始めたか!?ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!かぶりついて啜りてぇ!!!)」

 

 

アキトは混乱して、本能丸出しの思考を始めたが・・・

 

 

「っ!オラァ! バキッ! 痛っ!ハァハァ・・・」

 

 

突然に自分の顔をぶん殴り、冷静さを保とうとした

 

 

「(落ち着け・・・落ち着けよ・・・俺・・・いくら俺が血に飢えていても、部屋に偶々いたヤツを・・・・・・・・・ん?あれ?)」

 

 

アキトは一瞬フリーズし、ある事が頭に浮かんだのか、扉の上を見ると・・・

 

 

「・・・(ヤッパリ、俺の部屋だよな・・・だったら今、俺の部屋にいるのは・・・侵入者・・・って事は・・・つまり・・・)」ニヤリ

 

 

アキトは動揺から一転、口角を釣り上げ――

 

 

「別に食っても構わねぇって事だよなぁ?」

 

 

獰猛な捕食者の顔をし、扉を開け・・・

 

 

ガチャリ・・・

 

 

「あら♪お帰りなさい♪ご飯にする?お風呂にする?それとも・・・わ・た・し?❤」

 

「お前」グイッ

 

「へ?きゃあっ!?」

 

 

アキトは彼女を抱き抱えると、そのまま運び・・・ベットへと投げた・・・

 

 

ボスンッ

 

「きゃっ!?ちょっ、ちょっと!?」アワアワ

 

「あぁ?なんだよ?・・・あ、そっかぁ・・・これからするのには邪魔だよなぁ?」ベリッ

 

「ヒッ!?」

 

「おん?なんだよ・・・エプロンの下は水着か・・・まぁ構わねぇか」

 

 

硬直した体を押し倒しエプロンを剥ぎ取ると、彼女の足から首までを指でなぞり・・・頸動脈あたりに持っていった!

 

 

「久々のご馳走だ・・・存分に味合わせてもらうぜ?」

 

「い、いやぁ・・・///」

 

「じゃあ・・・頂きまぁ~~~す!!!」

 

グサァッ!

 

アキトは水色の彼女の首に指を突き刺――

 

 

ガシァッ!

 

「WRYYY!?」ギシィッ! バァッン!

 

「えっ!?」

 

 

――す前にアキトは左腕から出たワイヤーにグルグルに巻かれ、壁に縫いつけられた!

 

 

「い、一体何が・・・」プルプル

 

「て、テメェ・・・何しやがる「朧」!?」

 

 

アキトは左腕の待機状態の朧を怒鳴り付けた・・・

 

 

「「申シ訳ゴザイマセン、王ヨ」」

 

「テメェ!折角、ご馳走が目の前にあるってのにテメェは!」

 

「「オ静マリクダサイ・・・」」

 

「あ、ISが喋ってる!?」

 

 

彼女は自律している朧に驚いていた・・・

 

 

「「コレハコレハ、初メマシテIS学園ノ生徒会長殿?」」

 

「っ!?・・・私を知ってるの?」

 

「朧!何、俺を無視して話をしてやがるんだゴラァ!」

ブチブチブチ

 

「「コレハイケナイ、ワイヤーガ切レテシマウ・・・仕方アリマセン・・・」」グサァッ!

 

「ギエェッ!?お、朧!テメェ!」

 

 

朧はアキトの左腕にある薬品を注入した・・・

 

 

「「大丈夫デス、ノア様カラ頂イタ特別ナ「鎮静剤」デス」」

 

「こ、この野郎・・・Zzzzzz・・・」コテ

 

 

アキトはそのまま眠りについた・・・

 

 

「「要約眠リマシタカ・・・サテ、オ初ニオ目ニカカリマスIS学園生徒会長・・・「更識 楯無」様・・・」」

 

「・・・どうやら、ただのISじゃないようね・・・貴方?」

 

「「ソンナ事ハ置イトイテ、早ク本題ニ入リマショウ」」

 

 

IS学園生徒会長・・・「更識 楯無」と朧は話を始めた・・・

 

 

「本題?」

 

「「エェ、本題デスヨ・・・貴女ノ妹・・・「更識 簪」様ニツイテ・・・」」

 

「何ですって・・・?!」ギロリ

 

「「ソウ睨マナイデクダサイ・・・一応私ハ貴女ノ恩人ナノデスカラ」」

 

「・・・それもそうね・・・ところで・・・アナタはどこまで知っているの?朧くん?」

 

 

楯無は睨みをきかせたまま、朧に問いかけた・・・

 

 

「「ソウデスネ・・・貴女の家・・・ツマリ「更識家」ガ代々続ク「暗部」ノ家柄デアル事ト、貴女ガ近年、ソノ更識家ノ当主ヲ襲名シタ・・・グライデショウカ?」」

 

「っ!・・・中々に優秀じゃない朧くん?どう?お姉さんの所で働かない?」

 

「「オ断リシマス・・・」」

 

「もう・・・ツレナイ人ね?」

 

「「元ヨリ人デハゴザイマセンノデ・・・ソレデハ今度ハコチラカラノ質問デス」」

 

「何かしら?もしかしてお姉さんの3サイズとか?」

 

「イエ・・・貴女達ハドコマデ王ヲ・・・イヤ、「暁 アキト」ヲ調査デキテイルノデショウカ?」

 

「「答えない」・・・と言ったら?」

 

「・・・」カチャ スゥゥッ

 

 

楯無の発言に朧はワイヤーを使い、赤い液体を机ノ中から取り出した・・・

 

 

「・・・それは何かしら?」

 

 

楯無は恐る恐る聞くと・・・

 

 

「「コレハ・・・アル薬デス」」

 

「薬?・・・まさか、言わなければ私を殺すと?ハハハ♪ごめんなさいね朧くん?私も一応専用機を持っているから抵抗を――」

 

「「モシカシテ専用機ト言ウノハコレデスカナ?」」プラァン

 

「っ!?」バッ

 

 

朧はアキトの懐から「扇子」を取り出した・・・

 

 

「い、何時の間に!?」

 

「「ホウ・・・デハコレガ貴女ノ専用機デゴザイマスカ」」

 

「答えなさい!一体何時?!!」

 

「貴女ガ王ニ担ガレタ時ニ、王自ラガオ取トリニ」

 

「そんな!?あんな短時間に・・・でもこれで勝ったと思わないでよ!」

 

「「・・・何故?」」

 

「何故って・・・そ、それは・・・」

 

「「アァ、別ニ喋ラクテモ貴女ニ、コノ薬ヲ注入ナドイタシマセンノデゴ安心ヲ・・・」」

 

「え・・・?だったらその薬は何のための――!?」

 

 

楯無は驚いた!何故なら、朧がその薬をアキトに飲ませようとしたのだから!

 

 

「アナタ!一体何をっ!?」

 

「「・・・コノ薬ノ効用ヲオ教エシマショウ」」

 

「えっ?!」

 

「「コノ薬ノ効用ハ・・・理性ノ破壊」」

 

「理性の・・・破壊?・・・まさか!?」

 

 

楯無は青ざめながら、朧の説明を聞いた・・・

 

 

「「エェ、ソウデス・・・コノ薬ヲ服用スレバ、王ハタチマチ目ヲ覚マシ、貴女ヲ死肉ヲ喰ラウハイエナノ様ニ貴女ノ体ヲ貪ルデショウ」」

 

「・・・私がそんな脅しに屈するとでも?」

 

「「妹ノ前デモ、ソンナ事ガ言エマスカナ?」」

 

「なんですって?!」

 

「「モウスグ簪様カセシリア様ガ王ヲ夕食ニ誘ウ頃合イデス」」

 

「なんでそんな事がわかるのよ!?」

 

「「貴女ナラ当然ワカリマスデショウ?ココ最近、王ト簪様ヲ監視サレテイタ貴女ナラ」」

 

「・・・」

 

 

そう!楯無はここ最近簪とアキトを監視していたのだ!それは寝る時間から夕食を誘う時間までが分かるほどに!

 

 

「セシリア様ガ今日誘イニ来ル可能性ハナイデショウ・・・何故ナラ今日、セシリア様ハ急ナ用事ガアルヨウナノデ・・・」

 

「ぐぐぐっ・・・」

 

 

楯無は悔しげな目を朧に向けた・・・

 

 

「「サァ・・・ドウシマス?時間ガアリマセンヨ?・・・ソウダ!イッソノ事、貴女ノ目ノ前デ簪様ヲ――」」

 

「止めて!!」

 

 

今までの表情とはうってかわって、楯無の顔は焦った

 

 

「「・・・」」

 

「お願いだから・・・お願いだから簪ちゃん・・・簪には手は出さないで!」

 

「「・・・ソレデハ話シテクダサイマスネ?」」

 

「話す・・・話すから・・・」

 

 

楯無は観念したのか、アキトに関しての調査内容を全て朧に話した・・・

 

 

「・・・これで全部よ・・・」

 

「「ソウデスカ・・・他ニソレヲ知ッテイル人物ハ?」」

 

「私だけよ!」

 

「「ナルホド・・・」」

 

 

楯無が話終えると・・・

 

 

「う・・・うぁ・・・」

 

 

アキトが目を覚ましたのか、声をあげだした・・・

 

 

「っ!?」

 

「「オヤ、コレハ予想外・・・コンナニモ早ク鎮静剤ガ切レルトハ・・・」」

 

「ど、どうするの!?」

 

「「早ク逃ゲテクダサイ、王ノ記憶ハ改竄シテオキマスノデ・・・ゴ安心ヲ・・・」」

 

「・・・信じていいのね?」

 

「「・・・モチロン・・・後、専用機モ返シテオキマスノデ・・・」」

 

「そう・・・じゃあね!朧くん!」バッバサァッ!ガララァ ダッ

 

 

楯無はそう言うと、扇子をとり、ベットのシーツを被り、部屋の窓から逃走した・・・

 

 

「「・・・速イモノデス・・・モウ、半径20m内ニ生態反応ナラビニ監視機器ハアリマセン・・・王ヨ?」」

 

「あぁ・・・ナイスだ・・・ベテラン俳優も真っ青な名演技だったぜ?朧くん?」ブチブチブチ スタッ

 

 

なんと、今の今までアキトは意識があり、朧と楯無の会話を全て聞いていたのだ!

アキトはワイヤーを引きちぎり、床に足をつけた・・・

 

 

「「イエイエ」」

 

「謙遜すんなよ・・・しかし、咄嗟の事とはいえ・・・かなり痛かったぞ?」

 

「「申シ訳ゴザイマセン・・・何分咄嗟デシタノデ」」

 

「フッ、まぁいい・・・お陰で貴重な情報が聞けれたから良しとしよう・・・」

 

「「ハイ」」

 

コツコツコツコツ・・・

 

 

アキトは制服を整えながら、扉へと歩きだした・・・

 

 

「「王ヨ、何処ヘ?」」

 

「近くから簪の気配が強くなってきた・・・そろそろ夕食に誘われるよ」

 

「「ソウデスカ・・・ソレデハ・・・」」

 

「あぁ、お休み朧・・・」

 

シュゥゥゥン

 

朧はAIシステムをoffにし眠りについた・・・

 

 

「さてと・・・夕食を食べたら、あのお姉さまにバレないように簪から少し血を貰うかな?」

 

コツコツコツコツ・・・ガチャ・・・

 

 

このあと、アキトは簪に夕食に誘さそわれ、食堂に向かって歩いていった・・・

夕食後、アキトが簪から血を貰ったかどうかは定かではない・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 



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夕食後と依頼・・・

さて・・・頑張っていきますか!



 

 

ノーサイド

 

 

 

あれからアキトは簪と合流し、そのあとから用事を終えたセシリアと共に夕食を食べた・・・

 

 

廊下にて・・・

 

 

コツコツコツコツ・・・

 

「ゲフゥ~・・・食った食った・・・」

 

「アキト、食べ過ぎ・・・」

 

「見てる此方がお腹一杯になりますわよ」

 

「そうかぁ?」

 

「「そう」」

 

「ニョホホホ♪ハモるね?」

 

 

和やかに3人は歩いていると・・・

 

 

「そういえば・・・アキトさん?」

 

「おん?なんだよ?セシリア?」

 

「アキトさんは簪さんと放課後に何をしていますの?」

 

「あぁ、それはな――」

 

「アキト!!!」

 

 

セシリアの問いかけにアキトが答えようとしたが、簪がそれを阻んだ・・・

 

 

「か、簪さん?」

 

「別にいいじゃんか簪?」

 

「でも・・・」

 

「なんですの?アキトさん?」

 

「俺は放課後に簪の専用機制作を手伝ってんのよん」

 

「専用機の制作っ!?でも専用機の制作は・・・」

 

 

専用機の制作は従来、操縦者を支援する政府や企業などによって作られるのだが・・・

 

 

「簪の専用機は制作途中で放棄されたからな」

 

「どうして放棄なんて・・・?」

 

「・・・織斑一夏のせい・・・」

 

「え?どうして一夏さんのせいなんですの?」

 

「それはな――」

 

 

簪の専用機「打鉄弐型」の開発が行われいた丁度そこへ、世界初の男性IS操縦者である一夏が発見された・・・その事により一夏の専用機開発が優先となり、打鉄弐型の制作は中止になった

それから簪は自分の専用機を1人で制作していた・・・

 

 

「では簪さんは今の今まで1人で制作を?」

 

「うん・・・」

 

「スゲェだろ?普通は出来んぜ、そんな事よぉ」

 

「ありがと・・・///」

 

 

簪は頬を赤らめて、照れた・・・

 

 

「どうして簪さんは、つい最近までそんな事を?」

 

「それは・・・」

 

「そんな事よりよぉ、セシリア?」

 

「なんでしょう?アキトさん?」

 

「よかったら手伝ってくんない?」

 

「え?」

 

「セシリアはイギリスの国家代表候補生だから、知識も豊富そうだし・・・いいか?」

 

「もちろんですわよ!」

 

「簪もそれでいいか?」

 

「うん・・・よろしくねセシリアさん」

 

「はい!このセシリア・オルコットにお任せください!」

 

 

セシリアは堂々と胸を張った・・・

それからアキト達はセシリアとの制作の約束や、その制作にデュノアが参加する事を伝えて別れた・・・

 

 

コツコツコツコツ・・・

 

 

「アキト?」

 

「おん?」

 

「さっきの事・・・」

 

「あぁ、アレか・・・1人で専用機を作ってた理由が「お姉さんを超える」だったか?」

 

「うん・・・でもそれが間違いなのを教えてくれたのは貴方だよ・・・アキト?」

 

「そうかぁ?俺は当然の事を言ったまでだがな?」

 

「それでも・・・ありがとうアキト・・・」ニコリ

 

 

簪はアキトに向けて、笑みをこぼした・・・

 

 

「そうか・・・ならその礼に・・・」スッ

 

「あっ///」

 

「いいか?」

 

 

アキトは簪の首に手を回した・・・

 

 

「でも・・・///」

 

「嫌か?人の気配ならないが・・・それでも嫌なら・・・」

 

「嫌じゃない・・・飲んで?///」スッ

 

 

簪は制服の首もとを緩めた・・・

 

 

「じゃあ・・・少し貰うぜ?」グスッ

 

「あっうぅ・・・///」

 

コキュン コキュン

 

 

アキトは指を簪の首もとに刺すと吸血した

 

 

ズシュ

「くはぁ~・・・ありがとな簪?」スッ

 

「あぁ・・・///」トローン フラァ

 

「あ!おいおい!簪?!」

 

 

簪は倒れそうになったが、アキトが支えた・・・

 

 

「大丈夫かよ?」

 

「う、うん・・・大丈夫・・・ふらついただけだから・・・」

 

「ホントに?」ズイッ

 

「アキト・・・近い・・・!」グイッ

 

「ぐえ・・・悪い悪い・・・1人で帰れるか?」

 

「うん・・・じゃあアキト、また明日・・・」

 

「あぁ・・・また明日・・・」

コツコツコツコツ・・・

 

 

アキトは簪と別れ、部屋へと戻るとパソコンを開き、何処かへ電話をかけた・・・

 

 

 

アキト自室にて・・・

 

 

トゥルルルルルル トゥルルルルルル トゥルルルルルル

ガチャ

 

「「私だ・・・腐った世界の異端者よ」」

 

「よぉ、「シュバルツ」・・・今大丈夫か?」

 

「「貴様は大丈夫じゃなくても話を続けるクセに」」

 

「ハハハ♪そうだな」

 

 

電話の相手はアキトが最も信頼する「裏」世界のサイコジャーナリスト「シュバルツバルト」だった

 

 

「「それで用件はなんだ?「アーカード」?」」

 

「いや、前にお前に貰ったホムンクルスの情報で何かしらの変化はあったか?」

 

「「ヨーロッパのホムンクルスの事か?それなら変化はナシだ・・・しかし」」

 

「しかし?」

 

「「ホムンクルスとは違うが・・・スイスで「吸血鬼」が一体退治されたそうだ」」

 

「何っ!?ホントかよ?!」

 

「「まぁ、退治された吸血鬼と言っても「石仮面派」の連中ではなく「純血派」の「グール」だがな」」

 

「おいおいおいおいおい・・・グールと言っても純血派のヤツらのグール・・・倒すのは楽じゃないハズだぜ?よく倒せたな?」

 

 

グール・・・それは吸血鬼により作り出された、吸血鬼の出来損ないで紫外線や頭等が弱点であるが、鼠算式に数を増やしていくので厄介極まりない・・・

 

 

「「はぐれグールだったのもあるだろうがな・・・頭を破壊されて、お陀仏だ」」

 

「ナルホドね・・・それでその頭から下の遺体は?」

 

「「秘密裏に国連のある場所に運ばれたらしい」」

 

「え~・・・大丈夫かよ?この事が原因で純血派の「長老級」(エルダークラス)が出てくるかもしれないぞ?」

 

「「そんな事、私の知った事ではないな」」

 

「おい・・・」

 

「「そんな事よりもアーカード・・・こんな世間話をするために私に電話したのか?」」

 

「いや・・・こっからが本題の仕事の内容だ・・・」

 

 

アキトは先程までの雰囲気とうってかわった・・・

 

 

「シュバルツ・・・デュノア社について調べてほしいんだが?」

 

「「・・・・・・何?」」

 

「あ、聞こえなかった?まぁ盗聴防止の機械を着けてるからな・・・もう1回言うぞ、デュノア社に――」

 

「「いや、聞こえなかった訳ではない・・・意外だっただけだ」」

 

「何?」

 

「「お前が私に頼む内容と言えば、吸血鬼やホムンクルスの事ばかりだったからな・・・まさか女か?お前にはシェルス嬢がいるというの――」」

 

「バカを言うんじゃあない・・・!」ゴァッ

 

 

アキトは声を荒げ、濃厚な殺気を出した・・・

 

 

「「・・・冗談だ気にするな・・・」」

 

「・・・ヤレヤレ・・・」

 

「「それで、デュノア社の何を調べればいいんだ?」」

 

「社長や社員・・・あとは経営についてかな」

 

「「わかった・・・なら3万でどうだ?」」

 

「円だな」

 

「「いや$だ」」

 

「・・・安くは?」

 

「「ならない」」

 

「・・・ッチ・・・わかったよ・・・近々に振り込むからな・・・頼むぜ?サイコ記者?」

 

「「任せておけ、アーカード」」

 

ブチッ ツーツーツー

ガチャ

「あぁぁぁぁぁ~・・・」ベチャ~

 

 

アキトは電話を切るとうなだれた

 

 

「・・・さて・・・もう寝よ・・・」パチッ

 

 

こうして、アキトの怒濤の1日は終わりをつげた・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 

 

 




続きが遅くなります・・・悪しからず・・・


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制作と報告書・・・



Please me idea !!!


 

 

 

ノーサイド

 

 

 

アキトが出会ったあの怒涛の1日から3日がたった・・・

あれからシュバルツからデュノア社についての報告書が届いたのだが・・・

アキトは報告書よりも簪の専用機制作にヤッキになっていた・・・

 

 

 

整備室にて・・・

 

 

「このプログラムをこうして・・・」

 

「ここはこうじゃない?・・・」

 

「「オ二人共、ソロソロ休憩ヲ」」

 

「あぁ、そうだな朧・・・休憩するか簪?」

 

「うん」

 

 

アキトは持参した紅茶をいれた・・・

 

 

コポポポ・・・

 

 

「ほい・・・熱いから気を付けろよ?」

 

「ありがとう・・・コク・・・美味しい・・・」

 

「そいつは良かった・・・菓子の1つや2つ持ってくるんだったな~」

 

 

二人は和やかに茶を飲んだ・・・

 

 

「・・・そういえば、あの二人は?」

 

「おん?セシリアとシャルロットか?」

 

「うん・・・」

 

「まぁ、セシリアはイギリスの代表候補生、シャルロットに至ってはデュノア社のスパイだしな・・・大事なプログラムは俺達二人でやろうぜ?」

 

「二人で?・・・(ということは今日は二人っきり///)」

 

「コクコクコク・・・さてと・・・これ飲んだらもう少しやろうぜ?」

 

「うん!」

 

 

二人は気が済むまで打鉄弐型を魔改造していった・・・

 

 

 

 

 

 

 

廊下にて・・・

 

 

コツコツコツコツコツ・・・

 

放課後の専用機制作を終えた簪はアキトと別れ、自室に歩いていた・・・

 

 

コツコツコツ・・・ピタッ

 

「・・・誰?」クルッ

 

「久しぶりね?簪ちゃん?」スッ

 

 

簪が振り返ると、何処からともなく「更識 楯無」が現れた・・・

 

 

「お姉ちゃん・・・」

 

「どう元気にしてる?」

 

「・・・」

 

 

簪は少し眉間に皺を寄せた・・・

 

 

「・・・ねぇ?もうちょっと、アクションをしてくれない?簪ちゃん?」

 

「・・・何かよう・・・?」

 

「えと・・・簪ちゃん?」

 

「用がないなら・・・帰らせてもらう・・・」クルッ

 

「え!?ちょっ、ちょっと!簪ちゃん?!」

 

 

簪は楯無の事を無視して振り返り、歩きだした・・・

 

 

「ま、待って簪ちゃん!」

 

「・・・」コツコツコツ

 

「簪ちゃん!「暁アキト」とは手を切りなさい!」

 

「・・・」ピタッ

 

 

楯無の言葉に反応した簪は歩みを止めた・・・

 

 

「簪ちゃん、よく聞いて!「暁アキト」は簪ちゃんが思うような人じゃないの!暁アキトはマフィアの人間なのよ!簪ちゃんがあの人と専用機を作ってるらしいけど、そんな人間と――」

 

「五月蝿い!!!」

 

「っ!?か、簪ちゃん・・・?」

 

 

簪は楯無の言葉に大声で拒絶した!

 

 

「お姉ちゃんに・・・お姉ちゃんなんかに彼の何がわかるっていうの?!!」

 

「な、何を・・・?」

 

「私が・・・私が誰と関わろとお姉ちゃん・・・貴女に関係なんてないでしょ!」

タタタタタタタッ

 

「か、簪ちゃん!?」

 

 

簪は楯無を冷たく突き放し、走っていった・・・

 

 

「あ、あぁ・・・」ヘタリ

 

「会長!」タタタッ

 

 

ヘタリこんだ楯無に眼鏡をかけた生徒が駆け寄った・・・

 

 

「うぅ・・・「虚」~!簪ちゃんに嫌われたぁ~!」

 

「あぁ!よしよし、大丈夫ですよ会長」

 

「うわぁ~~~ん!」

 

 

楯無が人目を気にせず、泣いている頃・・・

アキトはと言うと・・・

 

 

 

 

 

 

 

アキト自室・・・

 

 

カチカチ

 

「へぇ~ん・・・「イグニッション・プラン」ねぇ・・・「第三世代型を作れないから、政府からの援助をうけられない」か・・・世知辛いねぇ・・・」

 

 

シュバルツからの報告書を読んでいた・・・

 

 

「しっかし・・・うけられないからって、第三世代を作るために人体実験までやるのかよ・・・トコトン堕ちてるな、この会社・・・だけど・・・金になりそうな技術はあるな・・・ドンに相談したらファミリーの隠れ蓑と資金調達なんかに利用できるな・・・・・・おん?」

 

 

アキトが電子報告書をスクロールしていると、あるページに目が止まり、釘付けとなった・・・

 

 

「ハァ~・・・ククク・・・ハハハ♪コイツは予想外だ!どっからこんな情報を取ってくるだよ?!あのサイコジャーナリストは!良い仕事してるぜ!」

 

 

アキトは面白可笑しく笑いながら、シュバルツの仕事を讃えた・・・

そのページにはデュノア社の上層部に関しての情報がこう書かれていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

――デュノア社上層部について――

 

デュノア社の上層部役員の8割は「ホムンクルス」である

そのホムンクルス達を統率するリーダー各のホムンクルスは「核鉄」を所持している可能性が高い

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 

 

 

 








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放課後の戦闘・・・

スランプ・・・なりたくねぇー!
展開を早めよう!そうしよう!


 

 

 

ノーサイド

 

 

 

シュバルツからの報告書を読んだ、翌日の放課後・・・

 

 

「くぁ~・・・寝み・・・」カポ

 

 

アキトは「打鉄弐型」のプログラムを簪と共に完成間近に作りあげ、仕上げの「山嵐」のプログラムを簪に任せ、自販機が側に置いてあるベンチで缶コーヒーを飲んでいた・・・

 

 

「コクコク・・・うわぁ・・・苦ぇ~・・・」ダラー

 

「「苦イノナラ、ナゼ買ッタノデス?自販機ニハトマトジュースガアリマシタノニ?」」

 

「いいんだよ・・・たまには苦い苦いブラックコーヒーが飲みたいんだよ・・・」

 

「「フム・・・私ニハワカリマセンネ・・・」」

 

「カカ♪そうかそうか♪」

 

 

アキトが待機状態の朧と談笑していると・・・

 

 

「ア、アキト~!」タタタタタ

 

「おん?ありゃあ・・・」

 

「「デュノアサマデゴザイマス・・・王ヨ」」

 

「だな・・・」

 

 

シャルロットが廊下の向こうから走ってきた・・・

 

 

タタタタタ・・・

 

「ハァ!ハァ!ハァ!」

 

「どうした?え~と・・・」

 

「「現在、半径10mニ盗聴機器並ビニカメラノ類イハアリマセン」」

 

「あぁ・・・なら、どしたよ?シャルロット?」

 

「ハァ!ハァ!ちょっ、ちょっと待って・・・すぅ・・・はぁ・・・」

 

「大丈夫か?まぁ飲めよ?」

 

「うん・・・ありがとう・・・コク・・・苦ぁ!?」

 

 

アキトから手渡された飲みかけのコーヒーを飲み、シャルロットは涙目になっていた・・・

 

 

「そんな事よりどしたよ?シャルロット?なんか俺に急ぎの用があんだろ?」

 

「ハっ!そう!そうだった!」

 

 

アキトの言葉にハッとしたシャルロットは――

 

 

「アキト!助けて!」

 

「・・・・・・・・・は?」

 

 

――アキトに助けを求めた・・・

 

 

 

 

 

 

 

事の発端はシャルロットがアキトに助けを求める数十分前に遡る・・・

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

学校の授業も終わり、放課後のアリーナではセシリアと鈴がISの特訓をしており、周りには見学の生徒達がいた・・・

 

 

「スミマセン、鈴さん・・・」

 

「いいわよ、それよりどうしたのよ?セシリア?突然特訓なんて?」

 

「それはですね――」

 

 

「打鉄弐型」の制作から外されたセシリアは行き場のない高鳴りを特訓にぶつけようとしていたのだ・・・

 

 

「ハハハ♪あんたも大変ねセシリア?」

 

「まったくですわ・・・それに・・・」

 

「それに?」

 

「私は強くなりたいのです・・・アキトさんに負けないくらいに・・・」

 

 

そう語るセシリアの目には確かな熱いものが写っていた・・・

 

 

「もちろんよ!頑張りましょうセシリア!」フンス

 

「はい!」

 

 

二人がそんな事を話していると・・・そこへ・・・

 

 

「おい・・・そこのイギリスと中国の代表候補生・・・」

 

 

二人の先には、明らかにお呼びではないドイツ人『ラウラ・ボーデヴィッヒ』がいた

 

 

「貴女は・・・!」

 

「確か、一夏を後ろから攻撃しようとしたヤツね!」

 

 

セシリアと鈴はラウラを警戒するように睨んでいた・・・それに構わずラウラは・・・

 

 

「お前達は専用機持ちだそうだな・・・データ収集のために私と戦え」

 

 

二人に戦闘を申し出た・・・

 

 

「戦えって、あんたねぇ~!」

 

「・・・そうですわね、此方としてもデータ収集としては確かに良いかもしれませんわね」

 

「ちょ、ちょっと!セシリア!?」

 

 

セシリアの発言に鈴は驚いた・・・

 

 

「イギリスのは中々に話が分かる・・・なら早速――」

 

「だが断りますわ」

 

「・・・なに?」

 

 

セシリアはラウラの提案を蹴った!

 

 

「貴女は戦う相手に対して、敬意をはらっていません・・・だから貴女とは戦えませんわ」

 

「セシリア・・・」

 

「・・・」

 

「そういう事なので・・・行きましょうか鈴さん?」

 

「えぇ、そうね」

 

ガシャン スゥーー

 

 

二人はラウラに背を向けて、歩み出していると・・・

 

 

「フン・・・所詮は腰抜けの種馬に当てられたヤツらか」

 

 

ラウラはそんな事を口走った・・・その時!

 

 

ズキューーン! 

 

「っ!?」

    ドォッン!

 

ラウラの側をビーム攻撃が掠めた!

 

 

「貴女・・・今なんて言いました?」ゴゴゴ

 

「アンタ、余程ボコボコにされたいようね?」ゴゴゴ

 

 

ビーム攻撃が飛んできた方向にはプッツンしているセシリアと鈴がラウラに殺気を送っていた・・・

 

 

「フフフ・・・そう来なくてはな!」ダッ

 

 

・・・こうしてセシリア、鈴 VS ラウラの戦闘が始まった・・・

 

 

 

 

 

 

 

数十分後・・・

 

最初、アリーナにいた生徒達は2対1で戦うラウラの苦戦を予想していたが・・・

 

 

ズドォッン!

 

「きゃあぁぁっ!?」

 

「セシリア!くっ!」

 

「フッ・・・こんなものか・・・」

 

 

苦戦を強いられていたのはセシリア達であった・・・

 

 

「な、何なのよ!あのISは!?」

 

「どうやら、動きを止める能力があるようですわね」

 

「な、何よ!その能力は?!卑怯じゃない!」

 

 

ラウラの専用機「シュバルツァ・レーゲン」にはAICと呼ばれる装置が取り付けられていた

 

 

「どうした・・・来ないのなら此方から行くぞ!」ダッ

 

 

二人の動かない様子に業を煮やしたのか、ラウラがブレードを構えて突撃してきた!

 

 

「鈴さん!」

 

「何よ?!」

 

「連携しますわよ!」

 

「っ!やるしかないようね!」

 

 

ガキィッン!

 

「くっ!今よセシリア!」

 

「はい!」

 

「なっ!?」

 

ズキューーンズキューーン!

 

 

鈴がラウラのブレードを青竜刀で受け止めると、その後ろに控えていたセシリアのビットが火を噴いた!

 

 

ガキガキィッン! ザザザ

 

「くっ!貴様らァ!」

 

 

攻撃を受け、後ろに下がったラウラは激昂した!

 

 

「あらあら、こんな攻撃で怒るなんて、ドイツの軍人さんは沸点が低いんですのね?」

 

「違うわよセシリア?このボーデヴィッヒがお子ちゃまなんじゃないの?」

 

「フフフ♪かもしれませんわね?」

 

 

二人がそんな事を言っていると・・・

 

 

「舐めるなよ・・・ド素人どもがぁ!!」ビュッ

 

「「っ!?」」

 

 

激昂したラウラはレーゲンから黒いワイヤーを射出し、二人に巻き付け――

 

 

「フンッ!」

 

「「きゃあっ!?」」

 

 

そのまま二人を地面に膝まづかせた!

 

 

「う、動かない!?」

 

「た、立ち上がれない!?」

 

ザッザッザッザッザ

 

 

そんな動けない二人にラウラは近づいていき――

 

 

「フンッ!」バキィッ

 

「げふぅっ!?」ドゴォッ

 

 

鈴の腹部に強烈な蹴りを入れられ、そのまま吹き飛ばされた!

 

 

「舐めるなよ!ド畜生がぁ!」

 

「鈴さん!?このぉ!」ビュッビュン

 

 

セシリアはビットをラウラに向けたが――

 

 

「邪魔だぁ!」ズガンズガン!

 

ドゴォン!

 

「なっ!?」

 

 

ラウラはビットをライフルで撃ち落とし、そのままセシリアにライフルを撃った!

 

ガン!

ガン!

ガン!

 

「ぐうぅっ!!!」

 

「セシリア!アンタ!よくもぉ!」ギギギ

 

 

鈴は撃たれたセシリアを助けに行こうとしたが、ラウラに甲龍の駆動部分を壊され、動けなかった・・・

 

 

「貴様はそこで大人しく見ておけ・・・」ザッザッザッザッザ

 

「う、うぅ・・・」

 

スチャッ

 

ラウラはセシリアに止めを刺すために近づいていき、セシリアの至近距離にライフルとは別のレールガンを構えた・・・

 

 

「くうぅ・・・」ギロリ

 

「なんだ・・・その目は?」

 

 

セシリアはレールガンを構えるラウラを睨んだ・・・憎しみや悔しさを持った目ではなく、まだ勝負に負けないという闘争本能を持った目でラウラを睨んでいた・・・

 

 

「まぁ良い・・・貴様はここでリタイアだ!」グッ

 

「くっ!(私はこんなところで!)」

 

「やめてぇぇぇ!!!」

 

 

アリーナの周りや動けない鈴は悲鳴をあげた!

その向こうにあるアリーナ出入口から――

 

 

「「命中率97.4%・・・王ヨ、行ケマス」」

 

「おう!ドォラァァァッ!!!」

 

ビュォォォン!

 

 

――レーザーのように投擲された一本のナイフが――

 

 

グサァッ!

 

「ぐあぁっ!?」

 

「「「「「「「っ!?」」」」」」」

 

「な、何よ!一体!?」

 

 

――レールガンを構えいたラウラの腕に刺突した!

 

 

「あ、あのナイフは?!」サッ

 

 

セシリアはアリーナの出入口を見ると・・・そこには!

 

 

「ったく・・・何やってんだよ・・・」

カツカツカツ・・・

 

「き、貴様はぁ!」

 

「あんたは!」

 

「アキトさん!!」

 

 

気だるそうに歩く、朧を纏ったアキトがいた!

 

 

「大丈夫か?二人とも?」

 

カツカツカツカツ・・・

 

アキトは朧を展開しながらセシリアに近づいていった・・・

 

 

「貴様!一体何時の間に!?」

 

「まったくよぉ~、綺麗な顔が台無しだぜ?」サスリ

 

「ちょっ!?ア、アキトさん?!///」

 

「お~~い!チビッ子も大丈夫か~?」

 

「チビッ子言うな!」

 

 

ラウラの問いかけを無視し、セシリアの前でしゃがみ、その頬を優しく撫でていた・・・

 

 

「~~~っ!私を無視するなぁ!!」ジャキ

 

「っ!?危ない!」

 

「おん?」

 

 

無視された事にキレたラウラは、アキトの頭にレールガンを突きつけ、引き金に手をかけた・・・しかし!

 

 

ギシィッ!

 

「なっ!?」

 

 

ラウラは引き金にかけた指を動かす事が出来なかった・・・それどころか――

 

 

「か、体が「動かない」・・・だと!?」

 

 

体の自由が出来ない状態になっていたのだ!

 

 

「・・・どうした?」

 

「っ!貴様、一体――ぐふぅっ!?」

 

ズドゴォッッッ!

 

 

動けないラウラは突然の衝撃により、3m吹き飛ばされた!

 

 

 

「がはっ!(な、なんだ!?今の衝撃は!ヤツからの攻撃か?そんなバカな!ISのセンサーが反応しない攻撃など出来るハズがない!)」

 

「・・・おい・・・」カツ カツ カツ・・・

 

「っ!」

 

 

突然の衝撃に混乱しているラウラを余所に、アキトは先程までラウラを拘束していた「極細の鋼糸ワイヤー」を広げながら迫っていた・・・

 

 

「10分の間だ・・・」

 

「何?」

 

「今、デュノアがお前の愛しい愛しい織斑教官殿を迎えに行っている・・・織斑先生が職員室にいると仮定して・・・そこから、このアリーナまでやく10分かかる・・・」

 

「それがどうしたと――っ!?」サクッ タラリ

 

 

何時の間にか、ラウラの頬に触れていたワイヤーが、その柔肌に傷をつけた・・・

 

 

「だからよぉ・・・その10分間・・・俺はテメェを存分にブチノメス!」

ゴオォッ!

 

 

アキトは体から、多大なるプレッシャーを放った!

 

 

「・・・セシリア?」

 

「は、はひぃ?!!」

 

「まだティアーズが動かせるなら、鈴を連れて避難しろ・・・」

 

「はい!ただいま!」ガシィン シュー

 

「よし・・・なら・・・」ギロリ

 

 

アキトは振り向かずに、セシリアに避難の指示を出し、ラウラを鋭く睨みながら・・・

 

 

「さて・・・ラウラ・ボーデヴィッヒ?」

 

「なんだ!」

 

「スゥ~・・・ハァ~・・・」

 

 

アキトは大きく深呼吸をして・・・こう言い放った・・・

 

 

「トイレは済ませたか? お祈りは? アリーナの隅でガタガタ震える準備はOK?」

 

ラウラを後ろに下がらせたアキトは挑発的に言った!

 

 

「貴様・・・ふざけるなよ・・・!」ジャキ

 

 

ラウラは体勢を立て直し、ブレードを構え――

 

 

「高々、私を下がらせたくらいで調子に乗るなぁ!」

ビュォン!ブン!

 

 

――一気に距離を詰め、斬りかかった!

 

 

ガッキィィィン!

 

 

ラウラのブレードとアキトが取り出したショートアックスから火花が散りに散った!

 

 

「くぅ!中々に重い一撃をお持ちで?これも織斑教官のオカゲかい?」ギリギリ

 

「黙れ!貴様は私の邪魔をした!ジックリといたぶってから止めを刺してやる!」バキィ!

 

「げふっ!?」

ズザァァァ

 

 

剣と斧の鍔迫り合いの中、ラウラはアキトの腹部に蹴りを入れ、後ろに退かせた・・・しかし!

 

 

「・・・クフフフ♪」

 

 

アキトは不敵な笑みを浮かべて、ラウラを見ていた・・・

 

 

「何が可笑しい?!」

 

「おやおやおや~?もしかしてお気付きでない?その腕の「手榴弾」にさぁ?」

 

「なに!?」

 

 

そう!ラウラの腕には一つの手榴弾が張り付いていたのだ!

 

 

「一体何時の間に!?」

 

「ニョホ♪ここで問題です!これから銀髪ちゃんはどうするでしょうか?因みに――」

 

「こんなもので手榴弾一つで私を止められると思ったか!」

ベリィ!

 

 

ラウラは自分の腕に張り付いていた手榴弾を無理に引き剥がした!

 

 

ピン ピン ピン ピン ピン ピン ピン ピン ピン ピン

 

 

「なっ!?」

 

 

引き剥がした手榴弾には沢山の糸が付いており、ラウラが無理に引き剥がした為、その糸の先に付いていた「別の手榴弾」の安全ピンが抜けてしまったのであった!

 

 

「問題は最後まで聞くもんだぜぃ?銀髪ちゃ~ん?」

 

「貴様ァァァァァァァァァァァ!!!」ダッ

 

 

ラウラはレールガンをアキトに向けたが、既に時遅し・・・

 

 

カチッ ドゴオォォォォォォォォォォォォォォォォンン!

 

 

張り付いていた手榴弾全てが爆発した!

 

・・・普通こんな事をすれば、並みの人間なら綺麗にローストされてしまう・・・しかし、この爆発にさらされながらもISを纏ったラウラには多少SE(シールドエネルギー)が削れるも視界がボヤけるのみだったのだ!

 

 

「くっ(なんてヤツだ!何時の間にあんな大量の手榴弾を張り付けていたんだ?・・・まぁ、良い・・・私があんな素人に負けるハズがない)」

 

 

慢心なのか、この時点でまだラウラは自分の勝利を疑ってはいなかった・・・

そして、視界が段々とクリアになっていくと・・・ラウラの目に最初に飛び込んできたのは――

 

 

「WRYYYYYYYYYYYAAAAAAAA!!! 」ビュォォォン

 

 

――眼前に迫り来るアキトの拳だった・・・

 

 

「うわぁっ!??」ヒュン  ドガァァァン!

 

 

寸でのところでアキトの拳を避けたラウラ・・・

避けられたアキトはそのままアリーナの壁に激突した・・・

 

 

ヒュゥゥゥ~~~

 

 

「ハァ、ハァ(あ、危なかった!)」

 

「次にお前は「なんて無茶苦茶なヤツ」と思う!」

 

「(なんて無茶苦茶なヤツ!)――ッハ!?」

 

 

ガチャン ガチャン ガチャン

 

 

土煙の中からニヤニヤと下卑た笑みを浮かべながらアキトは歩いてきた・・・

 

 

「動揺してるな?自分の思考が読まれて狼狽えたか・・・ナァーーー?!!」

 

「っ!そ、そんな事はない!ドイツ軍人は狼狽えない!」

 

「だったら・・・」ブオン スチャ

 

 

アキトはに朧から出した銀色の西洋剣をラウラに向け・・・

 

 

「・・・来いよ三下・・・こっからは俺もチョイと「本気」で行くぜ?」ゴオォッ!

 

「っ!」

 

┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝

 

 

アリーナは先程までと違い、重い殺気に包まれ、この戦いを見ていた生徒の中には泡を吹く者まで出始めた・・・

 

 

「貴様ぁ・・・何処までも舐めるなよぉぉぉ!!!」チャキ!

ビュゥォォォ

 

 

ラウラはブレードを構え直し、突撃してきた!

 

 

「KUAAAAAAAA!!! 」スチャ 

ビュゥォォォ

 

 

アキトも銀色の剣を構え、突撃した!

このまま二人の刃が交差し、火花が散る・・・

二人の戦いを見ていた生徒達はゴクリと息を飲んだ・・・

 

だが!

 

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

ガッキィィィン!

 

「なっ!?貴様は!織斑一夏!!!」

 

「・・・ッチ・・・タイミング悪いなぁ!おい!」

 

 

アリーナのカタパルトから白式を纏った一夏が飛び出し、ラウラのブレードを雪片弐型で防いだ!

 

 

「助けに来たぜ!暁!」ギリギリ

 

「邪魔をするなぁぁぁ!」ギリギリ

 

「まぁ良い・・・このまま両方――」

 

 

アキトは剣を構え直し、鍔迫り合いする二人に突撃しようとしたが・・・

 

 

「遊びは終わりだ暁・・・剣を降ろせ」スチャ

 

 

アキトの後ろから打鉄の刀を突き付ける千冬に止められた・・・

 

 

「おいおいおいおいおい?先生ともあろうと言う人が生徒の背中に刀を突き付けるんですかぁ?つか、お早いお着きで・・・デュノアが呼びに行ってまだ7分くらいしか経ってませんぜ?」

 

「織斑に学園内でのIS使用を許可して、ここまで乗せてもらったのでな」

 

「ウハハァ~い!職権乱用だぁ~」

 

「黙れ・・・ボーデヴィッヒも武器を降ろせ」

 

「しかし教官!」

 

「二度も言わせるな」ゴオォッ

 

「っ!・・・はい・・・」チャ

 

 

ラウラはブレードを納め、後ろに数歩下がった・・・

 

 

「ボーデヴィッヒは後日、処分を伝える・・・部屋で大人しくしておけ」

 

「・・・はい」

 

 

ラウラはアリーナの出口まで進んでいった・・・

すると・・・

 

 

「お~い、銀髪ちゃん?」

 

「・・・なんだ?」

 

 

アキトがラウラを呼び止めた・・・

 

 

「俺に何か言う事があるだろう?」

 

「・・・・・・やる・・・」

 

「何だって?聞こえねぇなぁ~?」

 

「次は確実に狩ってやる!暁アキト!」

 

 

ラウラは指をアキトに突き付けながら、そう言った・・・

 

 

「ニョホ♪ニョホホホ♪楽しみにしてるぜ?ラウラ・ボーデヴィッヒ?」

 

 

アキトは新しい玩具を見つけた子供のように笑った・・・

 

 

「それとお前もだ!織斑一夏!」

 

「えっ!?俺ぇ!?」

 

「教官の汚点は私が消してやる・・・必ず私がな!」

ガチャン ガチャン ガチャン

 

「え!おっ、おい!」

 

 

ラウラは一夏に言葉を吐き捨てるとアリーナから出て行った・・・

 

 

「え?えぇ~?」

 

「ったく・・・ヤレヤレだ」

 

 

こうして、放課後のゴタゴタは幕を閉じた・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

インサイド

 

 

キィィーン パチパチ

 

 

あの放課後の戦闘から2日経った、休みの日・・・

俺は光栄な事に簪の専用機「打鉄弐型」の最終プログラムに立ち会っていた・・・

 

 

パチパチ カチャ・・・

 

「で、出来た・・・出来たよ!アキト!」

 

「おぉ!ついにか!それじゃあこれでも開けるか」

 

 

そうして、俺は持ってきた鞄からボトルを取り出した

 

 

「何?そのボトル?」

 

「これは俺の取って置きのシャンパン」

 

「シャンパン?・・・私、未成年・・・」

 

「大丈夫大丈夫、ノンアルコールだから心配すんなよ」

 

 

キュキュ~

 

俺はコルクを開けようとしたが・・・

 

 

「アキト!待って!」

 

「どしたよ?」

 

「そのままじゃ、シャンペンが噴き出して整備室が汚れちゃう」

 

「そっか~・・・あ!、フフ♪そうだ簪、今から面白いモンを見せてやるよ」

 

「え?」

 

 

キュキュ ポーン! ブシュゥゥゥ!

 

俺はシャンペンのコルクを抜くと、シャンペンが勢いよく噴き出した・・・

 

「え!?ちょっと!」

 

 

簪は驚いているが、コイツを見ればもっと驚くだろうな~!

 

 

「気化冷凍法!」ピキピキピキ

 

「えっ!?」

 

 

俺はシャンペンのボトルを能力で冷却した・・・すると噴き出したシャンペンは綺麗に凍った・・・

 

 

「うわぁ~・・・綺麗・・・これもアキトの吸血鬼の能力?」

 

「まぁ、そうかな?」

 

「スゴい・・・でもこれじゃあ飲めないよ?」

 

 

フフ♪そこは考えているのさ!簪くん!

 

 

「朧?ワイヤー」

 

「「御意ニ」」ブゥン

 

 

俺は朧からワイヤーを出すと、凍ったボトルを宙に投げ――

 

シャッ ズシュゥッン!

 

 

ワイヤーで細かく切り刻んだ・・・切り刻んだ瞬間にシャンペンとボトルのクズを分離し、切り刻まれたシャンペンの中身は雪のように舞い上がり、俺が用意したコップに盛り付けられた・・・

 

 

「完成!ノンアルコールシャンペンかき氷!」

 

「うわぁ~!」

 

「さて、食べますか?」

 

「うん!」

 

 

それから俺達は仲良く二人でかき氷を食べた・・・

 

 

 

サイドアウト

 

 

 

―――

 

 

ノーサイド

 

 

 

シャクシャク・・・

 

 

「あ、頭がキィーンとする・・・」

 

「フフ♪吸血鬼でもなるんだね?」

 

 

二人はシャンペンのかき氷を食べていると・・・

 

 

「そ~いや~、専用機が完成したって事は、簪はトーナメントには出るのか?」

 

「うん・・・その事なんだけど・・・」コト

 

 

簪は食べるのを止めると・・・

 

 

「私とペアを組んでくれない?」

 

 

アキトにペアを申し込んだ・・・のだが・・・

 

 

「あ~・・・それ無理なんだわ」

 

「・・・どうして?」

 

「なんか男子どもは公平にクジでペアを決めるらしい・・・だから無理だなぁ~」

 

「・・・そっか・・・」シュン

 

 

シュンとする簪の頭にアキトは手を乗っけた・・・

 

 

「そんな顔するなよ、簪は一人じゃないんだから、のほほんでも誘ったらどうだ?」

 

「むぅ・・・私はアキトが良いのに・・・///」ボソッ

 

「え?何が?」

 

「なんでもない!」シャクシャク

 

 

簪は勢いよくかき氷を掻きこんだ・・・

 

 

「うぅ、キィーンてする・・・」

 

「ハハ♪何やってんだか♪」

 

 

こうして、和やかに二人っきりの祝賀会は過ぎて行った・・・

 

 

 

 

 

 

 

その3日後・・・トーナメントのペアと対戦表が食堂の掲示板に張り出された・・・そこには・・・

 

 

 

 

 

 

暁アキト&ラウラ・ボーデヴィッヒ ペア

 

VS

 

織斑一夏&シャルル・デュノア ペア

 

 

 

「何でだーーーっ!?」

 

 

吸血鬼もビックリする内容が張り出されていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




アキト[大丈夫か?作者?]

大丈夫だ・・・問題な――ぐふっ!

アキト[・・・今日はもう寝ろ・・・]

・・・・・・あい


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翌日の出来事・・・


シルバーウィーク・・・皆さん楽しんで!

―――統合しました―――



 

 

インサイド

 

 

 

教室にて・・・

 

 

 

・・・生物がイライラするのはある一定の理由があるものだ・・・

 

飯が食えなくてイライラ・・・

友人や恋人と喧嘩をしてイライラ・・・とかとかとか・・・

 

それは人間をやめちまい吸血鬼になった俺にも無関係ではないと・・・

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~・・・」イライライライライラ

 

 

今・・・いやでも実感している・・・・・・クソがぁ

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ?なんで暁くんイライラしてるの?」

 

「知らないの?なんか食堂に貼り出されたのが気に入らなかったみたいよ?」

 

「それで職員室の千冬様まで怒鳴り込んでいったみたいよ」

 

「それで返り討ちにあった・・・と」

 

「哀れ~・・・顔だけは良いんだから黙ってればいいのに」

 

「ちょっと、聞こえるわよ」クスクス

 

 

 

 

 

 

 

・・・聞こえてんだよ、クソガキども・・・

昨日、あの貼り紙をみて職員室に怒鳴り込んだわいいが・・・なに?なんなの?「お前にはボーデヴィッヒの世話を任せる」って・・・俺はあの銀髪ちゃんと戦っていたのを知らんのか?!嫌われてんのを知らんのか?!!元はテメェがほったらかしにした教え子だろうが!何俺に任せてんの?!フザケンじゃねぇ!!!

マジであの時、朧に鎮静剤射たれなかったら襲ってたね!確実にあの首に牙を突き立ててたね!血が飲みてぇ!マジで血が飲みてぇ!簪には悪いが血が足りねぇ!WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY !!!

 

 

「「王ヨ、大丈夫デスカ?殺気ガ漏レマスヨ?」」

 

「・・・あぁ・・・わかった・・・」イライラ

 

 

危ない危ない・・・何をイライラしてんだか・・・俺とした事が・・・あ、そういやぁ・・・

 

 

「なぁ朧?」

 

「「ナンデゴザイマショウ?」」

 

「シェルスからの折り返しの連絡は?」

 

「「・・・マダデス」」

 

「そうかぁ・・・」

 

 

シェルスには頼みたい「仕事」があるんだけどなぁ~・・・マジで着信拒否にされてる?マジであのセシリアとの決闘が原因で嫌われた?・・・あれなんだろ?目からお水がでてくるよ?・・・ドヨーン

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なんか暁くん、今度はションボリしてる」

 

「そんな事より聞いた?」

 

「何を?」

 

「今度のトーナメントで優勝したら織斑くんかデュノアくんと付き合えるんだって~!」

 

「マジ!?」

 

「マジマジ!」

 

「と言う事は暁くんとも付き合えるの?」

 

「「「「え?」」」」

 

「ど、どうしたの?」

 

「アンタまさか、あの男の事!」

 

「そ、そんなんじゃないわよ!///」

 

「だよねぇ~!」

 

「あの男、顔はいいんだけどね~」

 

「でも他のクラスでは人気みたいよ?」

 

「あんなののどこが良いんだか?」

 

 

 

 

 

 

 

・・・なんかイラっとしてきた・・・

 

 

「「ダメデスヨ、王ヨ」」

 

「・・・何がさ?」

 

「「王ノ事デスカラ、アノ人間達ヲ闇夜ニ紛レテ・・・」」

 

「な、何をバカ言っての?」

 

「「ダト良インデスガ・・・」」

 

 

・・・なんて勘の良い・・・さすがはノアだな・・・

 

 

 

このあと、織斑とシャルロット、並びに睨みを利かせた銀髪ちゃんが入って来たり、ムカつくブリュンヒルデが入ってきて今日の授業が始まった・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

イライラしながら1日の授業を終えたアキトは気分転換のために屋上に来ていた・・・

 

 

「ふわぁ~・・・なんか・・・食欲ねぇなぁ~・・・」

 

「「大丈夫デゴザイマスカ?王ガ食欲ヲナクストハ・・・」」

 

「俺を食欲の塊みたいに言うんじゃねぇ・・・」

 

「「シカシ王ハ、ココ最近食欲ガフルバーストシテイマシタノデ・・・御体ガ悪イノデスカ?」」

 

「なんだよ「食欲がフルバースト」って・・・いや、体の方は大丈夫だ・・・ただ」

 

「「タダ?」」

 

「いや・・・なんでもねぇや」

 

「「?」」

 

 

アキトと朧がそんな他愛もない話をしていると・・・

 

 

ガチャ キィィー

 

 

「む・・・貴様は・・・!」

 

「おん?・・・テメェは・・・」

 

 

屋上に入って来たのは・・・

 

 

「銀髪ちゃん・・・」

 

「暁アキト・・・貴様が何故ここに?」

 

「それはこっちのセリフだよ銀髪ちゃん?今、夕飯どきだろ?」

 

「誰があんな者達と夕食を食べるか!」

 

「・・・なるほど・・・ボッチか」

 

「「ボッチ」?ボッチとはなんだ?」

 

「いや気にすんな、些細な事だ・・・それより・・・」

ツカツカツカツカ ヒョイ

 

 

アキトは話を切るとラウラに近づいていき、掌を出した・・・

 

 

「なんだこの手は?」

 

「一応あの独裁先生の暴挙でトーナメントのペアになっちまったから・・・その挨拶かな?」

 

「ふん!誰が貴様などと!いくら教官の指示であるとしても貴様とは相容れない!」パァッン

 

 

ラウラは差し出されたアキトの手を叩いた・・・

 

 

「ヤレヤレ・・・困った銀髪ちゃんだねぇ~・・・まぁ良いや・・・」カツカツカツ・・・

 

「待て!暁アキト!」

 

 

屋上の出口に向かって歩いていたアキトはラウラに呼び止められた・・・

 

 

「なんだよ?銀髪ちゃん?」

 

「貴様は、私と初めて会った時に何故私の事を「強化人間」などと言った?」

 

「おん?・・・あぁ、あれか・・・」クルッ

 

 

アキトはラウラの方に体を向け、自分の鼻を指差しながら・・・

 

 

「臭いだよ、臭い」

 

「「臭い」?」

 

「実は俺の友人に強化人間がいてな、ソイツと同じ臭いがしたんだよ」

 

「・・・」

 

「ところで、なんでそんな事聞くんだよ?」

 

「いや・・・こちらの話だ気にするな・・・それより暁アキト、貴様はトーナメント戦で私の邪魔をするなよ!」

 

「へいへい、わかったよ・・・じゃあな銀髪ちゃん」

ガチャ キィィー バタン

 

「・・・」

 

 

アキトが屋上から出ていき、一人取り残されたラウラは夕焼けに染まる空を黙って見上げ・・・

 

 

「私は・・・私は・・・一体誰だ・・・・・・?」

 

 

そんな言葉を呟いた・・・

 

 

 

 

 

 

 

廊下にて・・・

 

 

カツカツカツ・・・

 

 

「「王ヨ」」

 

「なんだよ?朧?」

 

「「彼女、ラウラ・ボーデヴィッヒカラ何カヲ感ジラレタノデスカ?」」

 

カツカツカツ・・・ピタッ

 

 

アキトは朧からの問いかけに歩みを止めた・・・

 

 

「「出来損ないのドッペルゲンガー」だろうな・・・」

 

「出来損ないのドッペルゲンガー?」

 

「あぁ・・・なりたい者になれずに歪んでいく、ドッペルゲンガーだ・・・」

 

「「・・・私ニハ解リカネマス」」

 

「そっか・・・」カツカツカツ・・・

 

 

アキトはそう言いながら、自室に向かって再び、歩きはじめた・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




シェルス[あら?・・・うわぁ~・・・]

ノア[どうしたんや?シェルス姉?]

シェルス[アキトからの着信歴がイッパイ・・・]

ノア[あちゃあ~・・・]

シェルス[アキト、怒ってるかなぁ~?]

ドン[大丈夫であろー]

シェルス[どうしてドン?]

ドン[アキトはこんな事で怒るほど器の小さいヤツではないであろー]

シェルス[そ、そうかな?]

ドン[そうであろー]ニヤニヤ

ノア[そうやな]ニヤニヤ

シェルス[・・・何をニヤついてんの?]

ドン・ノア[[さぁ?]]


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仕事を頼む・・・

シリアス書きたい・・・でも書けない・・・
せめてシリアル書きたい!

―――統合しました―――


 

 

ノーサイド

 

 

 

「もしも~し?聞こえてる~?」

 

『あぁ、聞こえている」

 

 

 

屋上から自室に帰ってきたアキトはベットに体を横にしながら、電話をしていた・・・

 

 

『こんな時間に何のようだ?』

 

「こんな時間って・・・時差的には、まだそっちは昼過ぎぐらいだろう?」

 

『シエスタの時間に電話をかけてくるな!娘と俺の大切な時間に!』

 

「悪い悪い、すぐに済ませるよ「ディアボロ』

 

 

電話の相手はイタリアのマフィア組織「パッショーネ」のボス「ディアボロ」・・・

 

 

『それで要件はなんだ?どうせお前の事だロクな要件ではないだろう』

 

「・・・テメェの全身の血液を全部抜いてやろうか?でも確かにロクな要件じゃないな」

 

『何?』

 

 

アキトはニヤりと口角をあげながら・・・

 

 

「フランスのデュノア社を潰してもらいたいんだが?いいよね?」

 

『・・・・・・・・・・・・は?』

 

 

仕事を頼んだ・・・

 

 

『は?」じゃないよ?そこは「Yes」でいいじゃない?」

 

『待て待て待て待て待て!そんな事出来るわけないだろう!』

 

「なんで?」

 

『「なんで?」じゃない!いくらアキトの頼みだからと言って!デュノア社をおいそれと潰せるか!』

 

「おいおいおいおいおいおい?ディアボロ?俺がいつ「頼み」って言ったよ?」

 

『なんだと?』

 

「これはビジネス・・・仕事の話だ・・・ディアボロ?シュバルツからの情報じゃあデュノア社は・・・クソッたれのホムンクルスどもの巣だ」

 

『・・・詳しく聞こうか・・・』

 

 

電話先のディアボロの声が途端に低くなった・・・

 

 

「シュバルツからの情報ではデュノア社の上層部・・・何人かは不明だが、その多くがホムンクルス・・・しかも核鉄持ちがいるそうだ・・・」

 

『その情報は確かか?』

 

「逆に聞こう・・・今までシュバルツの情報がデマだった事があるか?」

 

『・・・ないな』

 

「だろ?じゃあ頼むぜ?」

 

『ちょっと待てアキト!』

 

「おん?なんだよ?」

 

『この事をヴァレンティーノは知ってるのか?』

 

「ん~?まだ知らせてない」

 

『おい!』

 

「大丈夫だってディアボロ、心配するな♪じゃあ詳しい話はまた後日・・・じゃあな~」

 

『おい!アキト!まだ話は――』

 

ガチャ

 

 

アキトは中場強引に話を切り上げ、電話を切った・・・

 

 

『王ヨ、ヨロシカッタノデスカ?』

 

「大丈夫さ、ディアボロは確実に仕事をしてくれるさ」

 

『信頼サレテイルノデスネ』

 

「まぁね~・・・おん?朧?」チラッ

 

 

アキトは何かの気配を感じたのか、扉に目をやった・・・

 

 

『ハイ・・・ドウヤラ客人ノヨウデスネ』

 

「ヤレヤレ・・・」スクッ

 

コツコツコツコツコツ・・・

 

 

アキトはベットから体を起こし、扉のほうに歩いていき・・・

 

ガチャ キィィー

 

扉を開けるとそこには・・・

 

 

「よ、よぅ、暁・・・夜分にすまんな」

 

「・・・///」

 

 

深刻な顔をした一夏と少々顔の赤いデュノアが立っていた・・・

 

 

「・・・(ヤ~レヤレだぜ・・・)」

 

アキトは扉の前に立っていた一夏とデュノアを招き入れる・・・

 

 

「で、こんな時間に何のようだ?」

 

「えと、それは・・・」

 

「・・・///」

 

 

一夏は戸惑い、デュノアは赤い顔をしたままうつ向いていた・・・

 

 

「ッチ・・・これじゃあ埒があかないな・・・説明してくれよ・・・デュノアのお嬢さん?」

 

「え!?暁?!」

 

「・・・うん///」

 

 

顔を赤らめたシャルロットの話によると、どうやらシャルロットがシャワーを浴びていると一夏が石鹸を届けにシャワー室に入ってきたらしい・・・その時にシャルロットの変装がバレたそうな・・・

 

 

「はぁ~ん・・・なるほどねぇ~」

 

「まさか暁が知ってたなんて・・・どうして教えてくれなかったんだよ!」

 

「いや、シャルロットの相部屋相手が織斑なんて知らなかったんだよ」

 

「ごめんね・・・二人とも」

 

「いや、シャルルが謝る事じゃあ――」

 

「まったくだ、とんだはた迷惑だぜ」

 

「おい暁!そんな言い方!」

 

「そんな事よりもだ・・・お前ら何しに来たんだよ?」

 

 

アキトはまどろっこしいかったのか、本題を切り出した・・・

 

 

「そ、それは・・・」

 

「頼む暁!シャルルを助けてくれないか!」

 

「は?」

 

 

一夏はデュノア社のスパイとして送りこまれたシャルロットを助けたいという事でアキトに助けを求めたのだった・・・

 

 

「ふ~ん・・・まぁ、俺もシャルルから大体の事情は聞いている」

 

「だったら――」

 

「だが断る」

 

「「・・・え?」」

 

 

アキトは一夏の助けを拒否した・・・

 

 

「な、なんでそんな事言うんだよ?!シャルルの事情を知ってるなら――」

 

「その話の前にさぁ、なんでお前は俺のところに来たんだよ?お前にはブリュンヒルデの姉貴がいるじゃあないか?」

 

「そ、それは・・・千冬姉には迷惑かけられないし・・・」

 

「つまりそれは、俺になら迷惑がかかっていいって事だよなぁ?」

 

「は?なんでそんな話になるんだよ?」

 

 

一夏はアキトの言葉に頭の上に?を浮かべていた・・・

 

 

「いいか?よく聞け織斑ボーイ?シャルルが何故、遠路遥々このIS学園にスパイしに来たんだ?」

 

「え?それは俺達のISを調べるためにだろ?」

 

「誰の命令で?」

 

「それはデュノア社がデュノアに命令して――」

 

「1会社がここまで出来るわけないだろう?」

 

「え?何が言いたいんだよ暁?」

 

 

一夏の発言にアキトは頭に手をおきながら、溜め息を一つつくと・・・

 

 

「このスパイ行為は国の黙認・・・つまりはフランス政府公認のスパイなんだよ」

 

「く、国公認って・・・」

 

「その国公認のスパイをお前は匿おうとしている・・・これは立派な・・・国家反逆罪だぜ?」

 

「っ!」

 

 

アキトの言葉に一夏は顔を青ざめていった・・・

 

 

「ごめん、ごめんね一夏・・・」ポロポロ

 

 

シャルロットは涙を流しながら、一夏に謝っていた・・・

 

 

「ところで聞きたいんだが・・・お前はどうなんだ?シャルル?」

 

「・・・え?」

 

「お前はこれからどうするんだ?」

 

「・・・・・・自首するよ」

 

「シャルル!?」

 

「いいんだよ、一夏・・・これ以上一夏達に迷惑かけられないし・・・」

 

 

部屋にどんよりムードが漂ってきた・・・その時

 

 

「諦めか・・・お前は虫けらだなシャルル・デュノア」

 

「っ!?」

 

「暁!お前!」

 

「だってそうじゃないか?良いように利用されて、利用価値がなくなったらポイ・・・流されるままに使われる虫けらだよ」

 

「う、うぅ・・・」ポロポロ

 

「暁ぃぃぃ!」ビュッ

 

 

一夏はアキトに殴りかかった・・・が

 

パシッ

「危ねぇな」

 

 

アキトは難なく一夏の拳を受け止めた・・・

 

 

「なんでそんな事が言えるんだよ!シャルルが可哀想じゃないか!」

 

「「可哀想」か・・・なぁシャルル・デュノア?」

 

「なに・・・アキト?」グスッ

 

「お前は助けを求めたか?」

 

「え?」

 

 

アキトはポロポ涙を流すシャルロットに問いかけた・・・

 

 

「諦めは人を殺す・・・だがその諦めを殺した時、人は一介の権利人となる・・・お前はこのまま諦めに殺されるのが望みか?」

 

「・・・う・・・」

 

「虫けらのまま生きていく事が望みか?」

 

「・・・がう」

 

「お前は・・・お前はこのまま惨めに生きていくのが望みか?!」

 

「違う!」

 

「シャ、シャルル?」

 

 

シャルロットはアキトに向かって叫んだ・・・

 

 

「ボクは・・・ボクは虫けらなんかじゃない!ボクは人間だ!!!でも・・・でもボクには・・・」

 

「助けて欲しいなら、たった一言「助けて」と言えよ!たった一人で何もかも引き受けるんじゃねぇ!」

 

「あ、暁・・・?」

 

「アキト・・・?」

 

「「シャルロット」・・・俺は前に言ったよな・・・お前は一人じゃないって!」ガシッ

 

「っ!」

 

 

アキトはシャルロットの肩を掴んでいた・・・

 

 

「助けてくれるの・・・?」

 

「助けてやる・・・助けを求めるならな・・・」

 

「う、うぅ・・・助けて・・・助けてよ・・・アキト」

 

 

シャルロットは絞り出すような声で助けを求めた・・・するとアキトは・・・

 

 

「その助け・・・承った」

 

 

シャルロットを助けると言った・・・

その後、話はなんとか終息に向かい、一夏はシャルロットを連れて、部屋に戻っていった・・・

 

 

~♪~♪~♪「O2」

 

その時、アキトの携帯が鳴った・・・

 

ピッ

「もしもし・・・」

 

「「も、もしもし・・・ア、アキト?」」

 

「あぁ、久しぶり「シェルス」」

 

 

電話の相手はアキトが同類と呼ぶ、シェルスだった・・・

 

 

「「やっぱりアキト怒ってる?」」

 

「まさか・・・俺はシェルスの声が聞けれて嬉しいんだぜ?」

 

「「・・・その割には声のトーンが低くない?」」

 

「さっきまでちょっとあったからな・・・」

 

「「そう?・・・それで私に要件があるんじゃないの?」」

 

「あぁ・・・仕事の話があるぜ・・・ホムンクルス関係のな・・・シェルス・・・頼めるかい?」

 

「「もちろんよ・・・あと、アキト?」」

 

「おん?なんだい?シェルス?」

 

「「その・・・今まで着信をとらなくてごめんね///」」

 

 

電話の向こうでシェルスは恥ずかしそうにそう言ったのだが・・・

 

 

「許さない」

 

「「え!?」」

 

「次会ったら、タップリと可愛がってあげるからね?それじゃあね、俺の可愛い可愛いドラキュリーナ?」

 

「「ちょっ、ちょっと!アキト――」」

 

ブツッ

 

「ふふ・・・フフフ♪」

 

 

携帯を切ったアキトは牙を出して笑った・・・

 

 

「次に会うのが楽しみだ・・・フフフ♪」

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




シリアスとシリアル!私は書いてみせるぞ!


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偽者の戦乙女と人外・・・

時は進む・・・ご都合的に!


 

ノーサイド

 

 

色々な事があった日から数日後・・・

学年トーナメント戦の日が来た・・・

 

観客席には大勢の観客の他に様々なIS関連の企業の視察団も来ていた・・・

 

 

 

観客席にて・・・

 

 

「活気だってるわね~」サクサク

 

「それもそうですわ、このトーナメント戦で企業からのスカウトがくるかもしれませんから」モクモク

 

「というかセシリアは何食べてんの?」

 

「屋台のタコヤキですわ、鈴さんは?」

 

「私はフライドポテト・・・ねぇセシリア?交換しない?」

 

「もちろん♪」

 

 

専用機のダメージレベルの影響でトーナメントに出れなかったセシリアと鈴は観客席で屋台の店屋物を食べていた・・・

 

 

「あれ~?セシリーにリンリンだぁ~」

 

「リンリン言うな!ってのほほんじゃない」

 

「あらのほほんさん、ごきげんよう」

 

 

二人に声をかけてきたのはジュースのコップを二つ持った本音だった・・・その後ろには・・・

 

 

「待って・・・本音!」トトトトト

 

 

ヤキソバを持った簪が小走りしてきた・・・

 

 

「あら?簪さんもですか?」

 

「セシリアさん、こんにちは」

 

「簪さんはトーナメントには出られないので?」

 

「私は・・・その・・・」

 

「かんちゃんはアキアキと戦うかもしれないから棄権したんだよ~」

 

「ちょっと!本音!」

 

「あぁ、確かにアキトさんとは戦いたくはないですわね」

 

「まぁ納得ね・・・ところで・・・」

 

「あぁ、鈴さんこの方は4組の・・・」

 

「更識簪・・・簪って呼んで」

 

「私は凰鈴音、鈴って呼んでよ簪」

 

「よろしく鈴」

 

「それよりリンリン、ヤキソバとフライドポテトとタコヤキをシェアしよ~」

 

「だ~か~ら~!リンリン言うな!」

 

 

二人の自己紹介も終り、四人は自分達の持ってきた店屋物をシェアし始めた・・・

 

 

 

 

 

 

 

アリーナ控え室にて・・・

 

 

うって変わって、ここはアリーナ控え室・・・

ここには異様に殺気だった銀髪の戦乙女がベンチに座っていた・・・

 

 

「何を殺気だってんのよんと」ポイッ

 

「っ!」パシッ

 

 

その戦乙女に炭酸ジュースを投げた人外が1人・・・

 

 

「何をする暁アキト!」

 

「そんなに切れるなよ銀髪ちゃん?スマイルスマイル♪」

 

「だれが貴様なんぞに・・・それにこれは何だ?」

 

「何って炭酸ジュースだけど?もしかして苦手だったかい?銀髪ちゃん?」プシッ

 

「誰が苦手だ!こんなモノ」プシッ

 

「あ、因みにその強炭酸だからそれ」

 

「コク っ!?ケホッケホッ!」

 

 

ラウラは強炭酸に驚いたのか、咳き込んだ・・・

 

 

「ニョホホホ♪大丈夫かい?rabbit ?」

 

「ケホッケホッ!だ、大丈夫だ・・・気にするな」

 

「まぁ・・・大丈夫なら・・・そろそろ行こうぜ?お前の憎くてたまらない織斑が待ってるぜ?」

 

「あぁ、もちろんだ・・・」シャァッン!

 

「Show timeってヤツだな♪」シャァッン!

 

ガチャン ガチャン ガチャン・・・

 

 

ラウラはシュバルツェア・レーゲン

アキトは朧を纏い、アリーナへと進んで行った・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

 

ワァー

ワァーワァー

ワァーワァーワァー

 

アリーナの観客達の熱気は高潮していた・・・

 

 

「OH!マンマミーヤ!コイツは良いね♪」

 

 

アキトは年甲斐もなく興奮していた・・・

 

 

「まったく・・・これだから男は」

 

「そう言うなよ銀髪ちゃん?」

 

「ハ、ハハハ・・・」

 

「何やってんだ?暁は?」

 

 

そんなアキトをラウラは呆れ、シャルロットは苦笑いをし、一夏は疑問符を浮かべていた・・・

 

 

「だってそうじゃないか!まるで剣闘士になった気分だ・・・コイツは良い♪」

 

「暁アキト・・・貴様に一つ言っておく・・・」

 

「なんだい?黒兎ちゃん?」

 

「織斑一夏は・・・ヤツだけは・・・」

 

「・・・わかってるよ・・・存分にやりな銀髪の黒兎ちゃん?」

 

「一言余計だ!」

 

「何話してんだ~?」

 

「良いや、こっちの話だ織斑ボーイ」

 

 

そんな話をしていると・・・

 

 

「「両ペア!位地につけ!」」

 

 

管制室から号令がかかり・・・

 

 

「さて・・・ロックンロールと行きますかね?」

 

「「試合開始!」」

 

ビィィィィィィッ!!!

 

試合開始のスタート音が鳴り響いた!

 

 

「チェストオォォォォォォォォォォォッ!!!」ブオォン

 

「うおぉっ!?」ガギィッン!

 

 

スタート音の直後、ラウラは近接戦闘のブレードを構え、一夏に瞬間加速で近づくと、ブレードを降り下ろした!

一夏はこの咄嗟の攻撃を持ち前の反射神経で雪片弐型を構え、これを防いだ!

 

 

「一夏っ!」スチャ

 

 

シャルロットは一夏を援護しようとラウラに向けて、サブマシンガンを構えたが・・・

 

 

「花鳥風流居合――天×――」スシャッン!

 

ジャザァッン! ドゴォッン!

「っ!?」

 

 

その構えたサブマシンガンをアキトは根元から銀の剣で真っ二つにした!

 

 

「ア、アキト!?」

 

「悪いなシャルロットじゃなくてシャルル・デュノア!今回は俺とダンスを踊ろうぜ♪」ザァァン

 

 

アキトは朧から取り出した数百のナイフを構えた・・・

 

 

「お、お手柔らかに?」

 

「断る♪」

 

 

シャルロットのお願いをアキトはシニカルに笑いながら断った・・・

 

 

「ドラララララララララララララァッ!」ビュンビュンビュン

 

「いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁっ!!!」ヒュンヒュンヒュン

 

 

アキトの投げる無数のナイフをシャルロットは悲鳴をあげながら避けていた・・・

 

 

 

 

 

観客席にて・・・

 

 

「う、うわぁ・・・」

 

「え、えげつない・・・」

 

「う、うぅ・・・」

 

「だ、大丈夫!?セシリ~?」

 

「え、えぇ・・・なんだかトラウマが甦っただけですわ」

 

「はい、セシリアさんお水・・・」

 

「あ、ありがとうございますわ簪さん」コクコク

 

 

観客席ではトラウマで気持ちが悪くなったセシリアとそれを気遣う簪達がいた・・・

 

 

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

再び、場面はアリーナに戻る・・・

 

 

「テヤァァァァァァァァァァァァッ!」ブゥッン

 

ガキャァン!

「ぐぅおっ!?なんて力だ!」

 

 

ラウラは的確に白式の可動部を攻撃していたのだが・・・

 

 

「隙ありぃぃっ!」ブゥッン

 

「なっ!?」

 

 

攻撃と攻撃の間に出る僅かな隙を一夏はつき、ラウラに雪片を突き立てようとした・・・が

 

 

「あらよっと!」シュン グイッ

 

「うわぁっ!?」ブン

 

「なぁっ!?」スカッ

 

 

ラウラのレーゲンにアキトがワイヤーを絡ませて引っ張る事により、一夏の攻撃はカスをくった!

 

 

「暁アキト!貴様余計な事を!」

 

「あぁん?そこは「ありがとう」だろうが!」

 

「いつ貴様に助けを求めた?!」

 

「なんだとテメェ?!!」

 

「ヤるか貴様ぁ!」

 

ゴチィッン!

 

 

アキトのラウラは頭突きをしながら睨みあった!

 

 

「ちょっとアキト?ボク達の事無視しないでよ!」

 

「そうだぜ!二人とも!」

 

 

一夏とシャルロットは二人に挑発をかけたが・・・

 

 

「「あ〝あん?ぶっ潰してやる!」」

 

 

火にガソリンをかける行為に等しかった・・・

 

 

「おらぁっ!」ビュッ!

 

「ひっ!?」

 

 

アキトは瞬間加速でシャルロットに近づくとシャルロットの腹部に――

 

 

「必殺!ブラボー正拳!」ズドゴォッ!

 

「ぐうっ!」バキィッ!

 

 

拳を叩きつけた・・・のだが

 

 

「くっ、この野郎!シールドで防ぎやがった!」

 

「うぅ・・・あ、危なかった~!まさかシールドが割れるなんて・・・ちょっと!アキト!加減ぐらいしてよ!」

 

 

シールドを壊された事にシャルロットはアキトに文句を言っていたが・・・アキトはと言うと・・・

 

 

「くく・・・くかけけきかくくけけけけ♪!」

 

 

意味のわからない笑い方をしていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

観客席にて・・・

 

 

「「まずい(ですわね)・・・」」

 

 

観客席でアキトの笑いを見ていた、セシリアと簪はそう呟いた・・・

 

 

「なにがまずいの?」

 

 

鈴が二人に尋ねると・・・

 

 

「アキトさんはテンションが高くなると何かが壊れますのよ・・・」

 

「そして・・・今のアキトはテンションが高くなり始めた初期段階・・・」

 

「「デュノアくん(さん)・・・生きて帰れるかな(かしら)?」」

 

「え、え~・・・」

 

 

二人は危険度が増したアキトを相手どるシャルロットを心配した・・・

 

 

 

 

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

「ア、アキト?」ザッザッ

 

 

シャルロットはアキトの変わり具合に驚き、数歩足を引いた・・・

 

 

「WRYYY・・・シャルル・デュノア・・・?」ギロリ

 

「は、はひぃっ!?」

 

 

アキトは興奮して紅くなった眼でシャルロットを見据えると、指を指しながら・・・

 

 

「程好く、瀕死に、存分にいたぶってやるから・・・簡単に墜ちるなよ?フロイライン(お嬢さん)?」

 

 

一種の宣告を言った・・・

 

 

「ひぃぃぃっ!!!!!!」

 

「WRYYYYYYYYYYYYYAAAaaaaaaaa !!!」

 

 

アキトはシャルロットに襲いかかった・・・しかし!

 

 

「ぐわぁぁぁぁぁっ!」ベキィッ!

 

「どわぁぁぁぁぁっ!?」バキィッ!

 

 

吹き飛ばされた一夏がアキトと激突した!

 

 

「テメェ!織斑!何すんじゃい!」ガシッ

 

「わっ!?待て待て!暁!あ、あれ!」バッ

 

 

ぶつかって来た一夏をアキトはすぐさま掴みあげたが、一夏の指差す方向を見ると・・・そこには!

 

 

「うwAAaAaaaあぁぁぁぁぁぁぁぁアァァァァッッッ!!!」

 

 

黒い何かに飲み込まれるラウラがいた・・・

 

 

「・・・what (なに)?」

 

 

 

―――――――

 

管制室にて・・・

 

 

「な、なんですか!?あれは!?」

 

「あ、あれは・・・!」

 

 

叫び声をあげながら、黒い「ナニカ」に包まれるラウラを見て、管制室の麻耶は驚きの声をあげ、千冬は心当りのあるように言っていた・・・

 

 

「お、織斑先生!あ、あれはなんなんですか?!」

 

「・・・VTシステム・・・」

 

「え!?」

 

「何故、あんなモノが!山田先生!今すぐに観客席の退避警告を出すんだ!」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

「あぁぁぁぁアァァァァ・・・・・・!」ドロドロドロ

 

 

ドロドロとシュバルツェア・レーゲンから出る黒い「ナニカ」はラウラを完全に包みこむと黒い卵のような形状になった・・・

 

 

「ボーデヴィッヒが飲み込まれた!?」

 

「ど、どうしよう?!」

 

 

一夏とシャルロットはオロオロとしたが・・・その黒い卵に刃を向ける者が一人・・・

 

 

「ヒャッハッー!面白くなって来たじゃあないか!」ビュン!

 

「あ、暁!?」

 

「アキト!?」

 

 

アキトは銀の洋剣を黒い卵に突き立てた!・・・しかし!

 

 

バギィィンッ!

 

「なっ!?」

 

 

突き立てた銀の剣はバラバラに砕け散った!

 

 

「か、堅っあ!?テメェ・・・この野郎!」ブゥッン

 

「「オ待チ下サイ!王ヨ!」」

 

 

攻撃を跳ね返され、キレたアキトはショートアックスを構えたが朧に止められた・・・

 

 

「なんだ朧!コノ野郎!」

 

「「解析ノ結果、現在ラウラ・ボーデヴィッヒハ「仮死状態」トナッテオリマス」」

 

「はぁ!?なんでそんな事になってんだ?!」

 

「「ソレハ――」」

 

「「織斑にデュノア、それに暁!」」

 

 

朧が何かを言おうとした途端に管制室の千冬から緊急の通信が入った・・・

 

 

「なんだ?!千冬姉!あれはなんなんだ?!!」

 

「「織斑先生だバカ者!すぐさまアリーナから退避しろ!」」

 

「は!?なんでそんな――」

 

「「説明をしている時間はない!すぐそちらに教師部隊が――」」

 

「だが断る!」

 

 

千冬の退避警告にアキトは「否」の一言を言いはなった!

 

 

「「何を言っているんだ!暁!これは命令――」」

 

「ウルセェ!」

 

「「な、なにぃ!?」」

 

「お、おい!暁!」

 

 

アキトは再び、千冬の命令に逆らった・・・先程のシャルロットとの戦闘でアキトの思考は「闘争欲」の一色に染まっていた・・・

 

 

「きかけけくけかかかくけけくこ♪」

 

「ア、アキト・・・?」

 

「コイツは良い・・・久しぶりだ!この臭い、この感触・・・フリークス(化け物)!フリークス!アイツ!あの野郎はフリークスだ!」

 

「「王ヨ!来マス!」」

 

 

ピシッ

アキトが興奮していると黒い卵にヒビがピシリピシリとはいっていった・・・

 

ピシリ ピシリ ビキャッン! バサァッ!

 

ヒビが鳥の羽根の形に入ると殻が破け、黒い羽根を現した・・・

その包まれた羽根を広げると、そこには!

 

 

「あ、あれは!」

 

「現れたな・・・「歪んだドッペルゲンガー」さんヨォ!」

 

黒い翼を広げたブリュンヒルデ・・・黒い「織斑千冬」がいた・・・

 

 

「や、野郎~!」ピキピキ

 

 

「黒い織斑千冬」を見て、一夏は青筋を立てていた・・・

自らが尊敬する姉の偽者に一夏はキレていたのだ!

 

 

「この野郎!」ビュン

 

「一夏っ!」

 

 

一夏は雪片を構え、シャルロットの声も無視して黒い千冬に突撃した!

 

 

「「・・・!」」ガギィッン! ブォッン

 

 

黒い千冬は自分自身から作りだした刃で雪片を防ぎ、切り払った・・・

 

 

「ぐぁっ!?」ドスゥゥン!

 

 

一夏はアリーナの壁まで吹き飛ばされた・・・

 

 

「一夏っ!大丈夫?!」ビュン

 

 

シャルロットは吹き飛ばされた一夏に近寄ったが・・・

 

 

「退いてくれ!シャルル!」ガシッ

 

「ちょ、ちょっと!一夏!?待ってよ!」ガシッ

 

 

一夏はシャルロットを押し退けて行こうとしたが、シャルロットに止められた・・・

 

 

「離せ!シャルル!」

 

「それは出来ない!一夏の白式のSEはさっきの戦闘でもう殆んど残ってないでしょ!そんな状態で戦ったら!」

 

「それでも!それでもだ!あの刀は千冬姉の刀なんだ!」

ガシッ

 

 

一夏は黒い千冬に突撃しようとしていた・・・その時である!

 

 

ヒュッン! グサァッ!

 

「「っ!?」」

 

「なっ!?」

 

「えっ!?」

 

 

1本のナイフが黒い千冬の眉間に突き刺さった!ナイフを投げたのは・・・

 

 

「Hey!Hey!ドッペルゲンガー!俺と一曲いかが?」

 

 

黒い千冬に向かって歯を見せて挑発するアキトだった!

 

 

「暁!コイツは俺が――」

 

 

「俺がやる」と言う前にアキトは・・・

 

 

「黙ってろ!このスカタン!」

 

「な、何!?」

 

「テメェのSEは殆んど無いに等しいだろうが!そんなヤツがいても足手まといなんだよ!」

 

「なんだとっ!俺は足手まといなんかじゃない!俺だってまだ戦える!」

 

「そうか・・・まだ戦えるか・・・ならよぉ・・・」

スチャ

 

 

アキトは織斑に向かってナイフを構えた・・・

 

 

「暁っ!な、何を!?」

 

「戦えなくしたらいいんだよなぁ!」ヒュッン

 

「ぐぁっ!?」バギィィンッ!

 

 

アキトの投擲したナイフは一夏に胸にクリーンヒットし、白式のSEを0にした・・・SEの無くなった白式は待機状態に戻ってしまった・・・

 

 

「暁!お前・・・ぐふっ・・・」バタリ

 

「一夏!?」

 

「大丈夫だシャルル・デュノア、その馬鹿は気絶してるだけだ、とっととソイツ背負って退避しろ!」

 

「だけど、アキトは?!」

 

「俺は・・・」ジャキ

 

 

アキトはショートアックスを構え、黒い千冬を見据え・・・

 

 

「このフロイラインを黙らせる!」ヒュッン

 

 

突撃していった・・・

 

 

 

 

 

 

 

管制室にて・・・

 

 

ウィーン タタタタタタッ

 

「一夏っ!」バンッ

 

 

管制室に入って来たのは箒であった・・・

 

 

「篠ノ之、ここは関係者以外――」

 

「そんな事よりも一夏、一夏は?!!」

 

「デュノアがアリーナから背負って退避した・・・今は控室にいるはずだ」

 

「ならっ!」タタタタタタッ ウィーン タタタタタタ

 

 

箒は一夏の容体を聞くとすぐさま控室に向かって走って行った・・・

 

 

「まったく・・・それよりも教師部隊はどうしたんだ?!」

 

「お、織斑先生」

 

「どうした山田先生?」

 

「アリーナの出入り口にロックがかかっていて進入できないそうです!」

 

「なにぃ!?」

 

 

 

 

 

 

 

観客席にて・・・

 

 

観客席では突然のトラブルによりパニックになっていた・・・

 

 

「なんか前もこんな事がありましたわね!」

 

「セシリア!口より手を動かす!」

 

「は、はい!」

 

「皆さん落ち着いてください!」

 

「走らないで~!おはしを守って~!」

 

 

観客席にいたセシリア達は避難誘導を行っていた・・・

そんな中・・・

 

 

「・・・」

 

 

随分と落ち着いた様子で観客席に座る者が一人いた・・・

 

 

「ちょっと!そこの貴方!」

 

「?・・・あぁ、俺の事か」

 

「貴方は企業の方ですか?なら早くここから避難を――」

 

「その前に1ついいか?」ユラリ

 

「な、なんですの?」

 

「彼処で戦っている男は?」

 

 

セシリアに呼ばれた男はゆっくりと近づき、黒い千冬と戦うアキトを指差した・・・

 

 

「彼は暁アキトさんですわ!あの方は観客席の私達のために戦っているんですの!だから貴方も早く避難を!」

 

「あぁ、そうなのか・・・ありがとうよ「人間」」ギロリ

 

「っ!?」

 

「・・・」コツコツコツコツコツ・・・

 

 

男はセシリアに礼を言うと、その前を通り過ぎていった・・・

 

 

「(な、なんですの・・・さっきの人は?まるで「人を喰った」ようなあの目は?)」

 

「セシリアさん!こっちを手伝って!」

 

「は、はい!今行きます!」

 

 

セシリアはその男に少し恐怖したが、すぐに忘れていった・・・

 

 

「ん~・・・蝶・最高♪・・・」コツコツコツ・・・

 

 

男は懐からパピヨンマスクを取り出しながら、人ならざる顔で笑っていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

「KUAAAAA!!!」

 

「「・・・!!」」

 

 

ガギィッン! ギィッン! ガァッン!

 

 

アリーナでは、アキトと黒い千冬が刃と刃で激しい火花を作っていた・・・

 

 

「あかくかけけけくきききけけこ♪!」ヒュゥゥゥ

 

「「・・・」」ヒュゥゥゥ

 

「うぅ~ん♪コイツは良い、最高だ!こんな戦いは久しぶりだねぇ♪」ヒュゥゥゥ

 

 

空に止まったアキトは意味のわからない奇声をあげながら、朗らかな顔で笑っていた・・・が、途端にアキトは笑いをやめた・・・

 

 

「・・・朧・・・このアリーナ全体の電子機器に細工できるか?」

 

「「?・・・エェ、可能デス・・・シカシ」」

 

「しかし、なんだ?」

 

「「ソノ為ニハ、ISノ装備ヲ解除シナクテハナリマセンガ」」

 

「それでも構わん・・・やれ・・・俺はこのフロイラインに教育をするからな・・・」

 

「「・・・ワカリマシタ・・・ドウゾ存分ニ」」ピッ

 

「・・・」ヒュゥゥゥ ガシャン

 

「「・・・?」」

 

 

アキトは地面に降りると、両手の指で四角を作り、その四角の中から黒い千冬を見ながら叫んだ・・・

 

 

「フリークス・・・今からお前に教育してやろう・・・本物の・・・化け物同士の・・・『闘争』とやらを!!!」

 

 

 

―――――――

 

 

千冬サイド

 

 

管制室にて・・・

 

 

「「教育してやろう・・・本物のフリークス同士の・・・化け物の「闘争」とやらを!」」

 

 

アリーナにいる暁は指で四角を作りながら、黒い「ナニカ」に飲まれたラウラにそう言った・・・

 

 

「暁は一体何を?」

 

 

私の隣にいた真耶は疑問符を浮かべていたが・・・

私に見えたのは・・・

 

 

「なんだ・・・アイツは・・・なんなんだ!?」

 

「お、織斑先生?」

 

 

「人間」ではない、明らかな「化け物」の姿だった・・・

 

 

 

 

 

 

 

インサイド

 

 

アリーナにて・・・

 

 

俺は朧にある事を命じて、この辺りの電子機器に細工をした・・・その命令は・・・

「俺の姿が必ずカメラ、またはレーダーに映りこむよう」にと言うものだ・・・

 

何故、こんな命令を出したかと言うと・・・

 

 

「拘束術式第3号から第1号まで、目標の沈黙まで限定解除・・・!」

 

 

自分の中にある「化け物」の力を使う為だ・・・

 

 

「WRYYYYYYYYYYY !!! 」

 

 

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

観客席にて・・・

 

 

「あ、あれがアキトの・・・吸血鬼の力・・・!」

 

 

観客席でアキトの変化にいち早く気付いたのは、首の刺傷を触る簪であった・・・

 

 

「簪さん!大丈夫ですの?!」

 

「え、えぇ・・・」

 

「なら早く私達も避難を!」

 

「う、うん!・・・アキト・・・頑張って!」タタタタタタッ

 

 

 

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

「WRYYY・・・」

 

「「・・・?」」ズザッ

 

 

アキトの何かに反応した黒い千冬は数歩あとずさった・・・

 

 

「かきくけけかここくくききき♪どうした?どうした!どうした?!俺の準備は万端だぁ!かかってこいよ!フリークス!!!」

 

「「・・・!!!」」ジャキ ビュオッ!

 

 

黒い千冬はアキトの挑発に乗ったのか、ブレードを構え、アキトに突撃した!

 

 

ズシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!

 

 

ブレードはアキトの体を貫いた!・・・のだが・・・

 

 

ガシッ

 

「「!?」」

 

 

刺さったブレードをアキトは掴み――

 

 

「つ~か~ま~え~た~♪」ニヤリ

 

 

笑った・・・

 

 

「「!?」」ギシッ ギシッ

 

 

黒い千冬はすぐさまブレードをアキトの体から抜こうとしたが・・・

 

 

「あら?逃げようとしてる?だった逃がしてやるよ!お前の体から切り離してな!」ブォッン

 

ザシュゥゥゥゥゥッ!

 

「「~~~~~!!!!!!」」ヒュゥゥゥ

 

 

黒い千冬は声にならない声をあげて、アキトから離れた・・・黒い千冬はブレードを作っていた腕をアキトのショートアックスにより切断された・・・

 

 

ドロリ・・・

 

「うわっ・・・気持ちわりぃ」

 

 

切断された腕はドロリと溶けて無くなった・・・

 

 

「「~~~!」」

 

 

腕を切られた黒い千冬は切られた部分を押さえながら、アキトに向かって叫んでいた・・・

 

 

「ほぉ・・・威嚇か?そうだよなぁ!まだ戦えるよなぁ?」 スシャァ・・・

 

「「?!」」

 

 

アキトは口角をひきつらせながら、黒い千冬の両足に極細のワイヤーを巻き付け・・・

 

 

「きひゃ♪」

 

ズシャアァ

 

「「~~!!?」」

 

 

容赦なく引きちぎった!

 

 

「「~~~~~!」」ズザリ ズザリ ズザリ

 

 

黒い千冬は残された腕を使い、アキトから距離をとった・・・否、「逃げた」のだ・・・

 

 

「どうした?どうした!どうした?!」ザッザッザッ

 

 

アキトはショートアックスを両手に構え、近づいていった・・・それは手負いを追い詰めているようであり、この光景を見ていた者達が恐怖するには充分だった・・・

 

 

「切られた腕を!足を!再形成して立ってみろ!レールカノンを出して、俺に撃ってみろ!牙を出せ!刃を出せ!

Hurry(早く)!

ハリー!

Hurry!

まだ戦いはこれからだ!お楽しみはこれからだ!

Hurry! hurry! ハリー!はりー!Hurry! ハリィィィ!!!」

ザッザッザッ

 

 

アキトは急かした・・・それは遊びを急かす子供のように・・・だが黒い千冬は・・・

 

 

「「A・・・Aaa・・・」」ズルリ

 

 

小さく何かを呟くと・・・

 

 

「「バ・・・バケモノ・・・」」

 

 

・・・と言った・・・

 

 

「あ〝・・・?」ピタリ

 

 

その言葉に嫌悪感を抱いたのか、アキトは足を止めた・・・

 

 

「バケモノ・・・バケモノ!・・・フリークス!!」

 

 

なおも黒い千冬は言い続ける・・・怪物に怯える子供のように・・・

 

 

「・・・お前は・・・貴様は糞だな・・・」

 

 

アキトは顔を少し歪め、嫌悪感いっぱいに言った・・・

 

 

「宿主を乗っ取り、宿主が憧れる者に形を作り、力をふるい、ましてやこの俺を化け物と罵った・・・貴様は化け物の風上にも置けない糞野郎だ!」

 

「「バケモノ・・・バケモノ・・・バケモノ・・・」」

 

「そんな野郎は・・・」ビキビキビキ

 

 

アキトの背中からは、この世のモノではない・・・犬の形をした黒い「ナニカ」が現れ、口を大きく開け・・・

 

 

「狗の糞になってしまえ・・・!」

 

ガブリッ

 

黒い千冬を飲み込んでしまった・・・!

 

 

グチャ ギチュ ベチョ グチャ ゴクリ・・・ペッ

 

 

狗は飲み込んだ黒い千冬をよく噛んで飲み込むと、黒い繭のような塊を吐いた・・・

 

 

スゥゥゥ・・・

 

「・・・」ブチュ ベリベリベリ・・・

 

 

アキトは黒い狗を体にしまうと、黒い繭を引き裂くと、そこには・・・

 

 

「うぅ・・・」

 

 

シュバルツェア・レーゲンを纏ったラウラがうずくまっていた・・・

 

 

「ニョホホホ♪・・・よく眠ってやがる・・・」

 

 

アキトは朗らかな顔でラウラを見ていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




統合しますた。


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戦闘終わりのオチ・・・

連続!連続ぅ!


 

 

ノーサイド

 

 

集中治療室にて・・・

 

 

 

アキトが黒い千冬を沈黙させ、ラウラを助けてから数時間が経った・・・

救出されたラウラはすぐさま集中治療室に運ばれ、事なきをえた・・・

 

 

「あぁ・・・あ?・・・ここは・・・?」

 

 

腕に数本のチューブを付けた状態で意識が覚醒した・・・

 

 

「目が覚めたか?ボーデヴィッヒ?」

 

「教官っ!あがっ!?」ガクッ

 

「おい無理をするな!」ガシッ

 

 

目が覚めたラウラは千冬の気配に気づき体を起こしたが、体に負担が残っているためか、フラつき、千冬に支えらえた・・・

 

 

「私は・・・何を?」

 

「覚えていないのか?」

 

「はい・・・断片にしか・・・ひっ!?」ガシッ

 

「どうした!?ボーデヴィッヒ?!」

 

 

ラウラは何かを思い出したのか、頭を抱えた・・・

 

 

「だ、大丈夫です・・・それよりも・・・」

 

「あ、あぁそうか?なら・・・ボーデヴィッヒ、お前の専用機「シュバルツェア・レーゲン」に「VTシステム」が乗せられていた」

 

「VTシステム・・・」

 

 

VTシステム・・・正式名はヴァルキュリー・トレース・システム、世界の専用機持ちのデータを積み込まれたシステムである・・・

 

 

「何故、そんなモノが?」

 

「今のところドイツ政府にかけよっているが・・・今のところはわからない」

 

「そう・・・ですか・・・」

 

 

ラウラはうつ向いてしまったが・・・

 

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

「は、はい!?」

 

「お前は何者だ?」

 

「私・・・私は・・・」

 

 

ラウラは千冬の問いかけに答えられなかった・・・

 

 

「お前は「ラウラ・ボーデヴィッヒ」だ・・・「織斑千冬」じゃない・・・」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・私はラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

「そうだ」

 

「私はラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

「そうだ・・・だからお前はもう自分を肯定していいんだ」

 

「グスッ・・・ありがとうございます・・・教官・・・!」

 

「織斑先生だ・・・バカ者」

 

「はい・・・すいません・・・グスッ」ポロポロ

 

 

ラウラは嬉し涙なのか、涙をポロポロと流した・・・

すると・・・

 

 

「グスッ・・・そういえば教k、じゃなくて織斑先生?」

 

「なんだボーデヴィッヒ?」

 

「暁・・・暁アキトは今どこに?」

 

「あ、暁だと!?」ガタッ

 

 

ラウラの質問に千冬は明らかに動揺した・・・

 

 

「どうかしたんですか?教官?」

 

「あ、あぁ・・・暁はな・・・」

 

「?」

 

 

このトラブルを終息させたアキトはと言うと・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園地下にて・・・

 

 

「あぁ~・・・暇だに~・・・」ゴロリ

 

 

独房室に入れられていた・・・

 

何故、アキトがこんな処遇なのかと言うと・・・

 

アリーナの破壊

退避命令の無視等でアキトは専用機の引渡し命令が出たのだが・・・

 

 

「だが断る」

 

 

アキトがこんな事を平然と受け入れるタチではなく、当然にこの命令を拒否・・・拒否したためにアキトは独房室に入れられてしまったのであった・・・

 

 

「暇だに~・・・」

 

「「デスネ」」

 

「まさか引渡し命令が出るとはな・・・思いもよらなかったに~・・・」

 

「「シカシ、何故私ヲ引キ渡サナカッタノデ?引渡シタラ、王ハ独房室ニ入ラナカッタノデハ?」」

 

「バカ言え、自分の臣下をおいそれと引渡せるかよ」

 

「「王・・・」」

 

「それに・・・」

 

「「ソレニ?」」

 

「引渡して、お前を解析されたら電子機器をハックしたのがバレるだろうが」

 

「「ア~・・・言エテマスネ・・・」」

 

「あ~ら?何の話?お姉さんも混ぜて欲しいわ♪」

 

「おん?」

 

 

アキトと朧がそんな話をしていると、第3者が現れた・・・

 

 

「アンタは・・・誰だっけ?」

 

「あら?悲しいわね、あんなに私を求めてくれたじゃない?」

 

「あぁ、食い損なった簪の姉ちゃんか!」

 

「・・・その覚えかたは無いんじゃない?」

 

 

アキト達の話に入って来たのは簪の姉、「更識楯無」であった・・・

 

 

「そんで食い損ないが何のようだよ?」

 

「く、食い損ないって・・・まぁ良いわ、それより暁くん?「アレ」は何なのかしら?」

 

「「アレ」?アレって何さ~?アキトくんわかんな~い」

 

「惚けないで!あの「黒い狗」はなんなのと聞いているのよ!」

 

「狗~?」

 

 

楯無はアキトが戦闘で自分自身から出した「黒い狗」について聞いてきたのだ・・・

 

 

「あれはな~・・・俺もよく覚えてないのよね~」

 

「覚えてない?」

 

「あぁ、覚えがない・・・テンションが「ハイ」になってからな~・・・ゴメンちゃいね?お姉さん?」

 

「フザケないでちょうだい!そんなので私を騙せると思っているの?!暁アキト!」ピシッ

 

 

楯無は扇子をアキトに指しながら、声を荒げた・・・

 

 

「うるせぇなぁ・・・「黙れよ人間」?」ギロリ

 

「ぐっ!?」

 

 

アキトは濃厚な殺気を出しながら楯無を睨んだ・・・

睨まれた楯無はその恐怖なのか、呼吸器が痙攣した・・・しかし・・・

 

 

「や~めた!」

 

「っ!かはっ、ケホッ、ケホッ!」ドタリ

 

 

アキトは殺気を何故か納めた、殺気が解かれた楯無は膝をついて肩で息をした・・・

 

 

「ど、どうして?」ハァハァ

 

「おん?」

 

「どうして殺気を納めたの?今なら私を」ハァハァ

 

「確かに殺気を当て続ければ、アンタは気絶してたろうな・・・でも」

 

「でも?」

 

「そこの」ピシッ

 

 

アキトは楯無の後ろの壁に指を指すと・・・

 

 

「そこにいる「人が煩そう」だからな~」

 

「え?」クルリ

 

 

楯無はアキトの指さされた後ろを振り返ると、そこには・・・

 

 

「ハハ♪私を感知するとは・・・さすがはかの「アーカード」殿かな?」コツコツコツ・・・

 

初老の男性はゆっくりと近付いて来た・・・

 

 

「『アーカード』?・・・それはどういう――」

 

「その名前を知ってるって事は・・・アンタ只者じゃあねぇな?」ニヤリ

 

 

初老の男性の発言に楯無は疑問符を浮かべ、アキトは口角をあげた・・・

 

コツコツコツ・・・ピタリ

 

「こんな形でスマナイね、アーカード殿、いや「A.A.」?それとも「アルカード」?どれで呼んだらいいかな?」

 

「どれでもいいさ、好きに呼んでくれや・・・ところで貴方の事はなんて呼べば良いかな?gentleman?」

 

「gentlemanか・・・そうだね私の事は――」

 

「これはどういう事ですか?!「学園長」!」

 

 

初老の男性が正体を明かす前に、楯無は男性を「学園長」と呼んで引き止めた・・・

 

 

「学園長!この件については私に一任されたいたはずですが」

 

「へぇ~!貴方、学園長だったのか?コイツは御見逸れしやした」

 

「それに「アーカード」とか「アルカード」とか一体何の話をしているんですか?!」

 

「いや~、IS学園の学園の長がダンディなジェントルだったとはな~!」

 

「ちょっと暁くん!少し黙っててくれる?!」

 

「断る!」

 

「貴方ねぇ~!」

 

「ハハハハハハハハハハハ♪」

 

 

アキトと楯無が言い争っていると学園長は笑い出した・・・

 

 

「が、学園長?」

 

「ハハ♪いや、すまないすまない、君達の掛け合いが面白かったのでな」

 

「ニョホホホ♪話がわかるね学園長♪」

 

「更識君、この件は私に任せて貰おう・・・」

 

「しかし!」

 

「事情が変わったのだよ・・・良いね?」

 

「・・・は、はい・・・わかりました」

 

「よろしい・・・君は元の仕事に戻ってくれ」

 

「・・・はい・・・それでは私はこれで・・・」クルリ

コツコツコツ・・・

 

「じゃあな~」バイバイ

 

「くぅ・・・」コツコツコツ・・・

 

 

学園長は楯無を黙らせると、楯無は苦虫を噛み潰した顔で生徒会に戻っていった・・・

 

 

「すまないねアーカード殿、うちの生徒が」

 

「構わねぇよ・・・それよりも貴方は?」

 

「申し遅れたね・・・私はこのIS学園の長をやっている・・・「轡木 十蔵」だ、よろしくアーカード殿?」

 

 

初老の男性、轡木十蔵はアキトとの自己紹介を済ませた・・・

 

 

「それで学園長殿は俺になんのようだい?その名前で俺を呼ぶって事は・・・裏のしかも「裏の裏の人間」かい?」

 

「まぁ、これでも学園長の椅子に座る前は「牙狩り」をしていたものでね」

 

 

牙狩り・・・人外、または化け物を専門に狩る仕事を生業としている人間の事である

 

 

「牙狩りねぇ・・・だったら俺と同業者なのか」

 

「ヴァレンティーノファミリーの遊撃部隊隊長殿と同業だったなんて光栄だね」

 

「そうかいそうかい?嬉しいねぇ♪ニョホホホ♪」

 

「ハハハハハハ♪」

 

 

アキトと十蔵は互いに目が笑わずに笑い声をあげた・・・

 

 

「で?元牙狩りで現IS学園長が俺に何のようだい?」

 

「そうですね・・・本題を切り出そう」ペラリ

 

「おん?・・・コ、コイツは!?」ガタリ

 

 

十蔵は懐からある写真を取り出した・・・

その写真には何処かを歩いている男が写っていた・・・

 

 

「「蝶野攻爵」・・・!」

 

「そうです・・・世界初の人型ホムンクルスの成功例、稀代の錬金術師・・・そして――」

 

「「L.X.E」の大幹部・・・」

 

 

 

L.X.E・・・超常超人同盟と呼ばれる、ホムンクルス達による一大組織である

 

 

 

「こんなモノを何時撮ったんだ?」

 

「今日ですね」

 

「そうか今日か・・・・・・はっ!?今日!?今日だってのか!?」ガシッ

 

 

アキトは驚きのあまり、独房の鉄格子を掴んだ!

 

 

「今日って何時よ?何時どこで撮ったんだよ?!おい!」

 

「今日の正午過ぎ・・・君が戦っていた最中の学園の廊下でね」

 

「OH!糞ったれのドチキショウが!フザケやがって!」

ガァッン

 

 

キレたアキトは悔しそうに独房の椅子を蹴りあげた・・・

 

 

「「落チ着ツキ下サイ王ヨ!」」

 

「これが落ち着いてられるか!こん畜生!」

 

「まぁまぁ落ち着いてよアーカード君?そして、その左腕の手甲が朧君かい?」

 

「「オ初ニオ目ニカカリマス、王ノ専用機ヲシテオリマス朧デゴザイマス」」

 

「何を学園長と朧は冷静に自己紹介しとるんじゃい!」

 

 

冷静に自己紹介していた十蔵と朧にアキトはツッコミを入れた・・・

 

 

「ノオォォォォォォォォォォォォォッ!!!逃した!取り逃した!一斉一大の武将首ぃぃぃぃぃ!!!!!!」

ガンガンガン! ズルズル

 

 

アキトは壁に頭を打ち付け、うち崩れた・・・

 

 

「大丈夫かい?アーカード君?」

 

「「大丈夫デスヨ学園長殿・・・ダッテ王ハ」」

 

「ふぅ~・・・スッキリしたぜぇ~」スタッ

 

「「立直リノ達人デスカラ」」

 

 

アキトはスッキリとした顔で立ち上がった・・・

 

 

「それで学園長殿は俺に何のようなんだい?」

 

「あぁ~・・・それなんだがね・・・どうだろうアーカード君?このIS学園に雇われるというのは?」

 

「雇われる?この俺がか?」

 

「そうです・・・アーカード君、いや暁アキト君・・・このIS学園を守ってはもらえないでしょうか?」

 

「・・・・・・」

 

 

十蔵はアキトに学園の防衛の仕事を頼んだのであった・・・

 

 

「もちろん報酬も十分に――」

 

「その前に良いですか?」

 

「なんですか?」

 

「ここから出してくれませんか?さすがに独房に入ったままじゃビジネスの話ができないんで」

 

「それもそうですね」カチャ ピピッ ガチャン

 

ギィィィ コツコツコツ・・・

 

「あぁ、暇だったぜ~・・・」

 

 

アキトは鉄格子の外に出ると・・・

 

 

「学園長?仕事の話の話なんだが・・・あとでドンを通してくれ・・・」

 

「もちろん、そのつもりですよ」

 

「それと・・・俺から幾つかある条件があるんだが・・・良いですかい?」

 

「もちろん良いですよ?それで、その条件とは?」

 

「シャルル・デュノア・・・いや本名で言うと・・・「シャルロット・デュノア」についてなんですが・・・」

 

「ほう・・・詳しく聞きましょうか?」

 

 

それから数時間・・・アキトと十蔵は仕事の話をした・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




Please me idea !!!


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風呂とお見舞い・・・


―――統合しました―――



インサイド

 

 

「くっっあぁぁぁぁ~・・・話込んじまったぜぇ~」

コツコツコツ・・・

 

 

俺は学園長殿とビジネスの話を数時間した・・・あと、デュノア社のスパイであるシャルロットの処遇についても話をした・・・

まぁ、中々に話のわかる人だったから生徒としてのシャルロットの立場は守られるな・・・しっかし!

 

 

「クタクタだに~・・・」

 

 

あの糞ったれを始末したり、独房に入れられたり、学園長殿とビジネスの話をしたりと・・・今日は本当に疲れた・・・

 

 

「「王ヨ、大浴場ニ行カレテハドウデショウカ?」」

 

「おん?大浴場?」

 

「「ハイ、今日カラ男子ノ大浴場ガ開放サレタヨウデス」」

 

 

風呂かぁ~・・・ここ最近シャワーしか行ってなかったから、良いかもな・・・でも

 

 

「風呂に行く前に・・・朧や?」

 

「「何デショウカ?王ヨ?」」

 

「銀髪ちゃん・・・ラウラ・ボーデヴィッヒの所に見舞いに行こうぜ」

 

 

とりあえず、銀髪ちゃんの見舞いに行こうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

保健室にて・・・

 

 

P.m. 8:00を過ぎた頃・・・

ラウラ・ボーデヴィッヒは保健室のベッドで眠っていた・・・

 

 

カラリ コツ コツ コツ・・・

 

 

そんな静寂のなか保健室に入りこみ、ラウラに近づく影が1つ・・・

 

 

コツ コツ コツ・・・ピタリ

 

 

影はラウラのすぐそばまで近づくと、そっとラウラの頬を――

 

 

「誰だっ!?」シャッ

 

 

――触る前にラウラは持っていたナイフを影に突き立てようとしたが・・・

 

ガシッ

 

「おっと!?危ねぇなおい?」

 

「貴様は――暁アキト!」

 

「よぉ、銀髪ちゃん?元気?」

 

 

アキトはナイフの刀身を掴んだまま、シニカルに笑った・・・

 

 

「貴様は独房室にいると聞いていたのだが?」

 

「おん?誰から聞いたのよ?」

 

「教官からだ」

 

「あぁ、そうなのな・・・ところで銀髪ちゃん?」

 

「なんだ?暁アキト?」

 

「大丈夫か?」

 

「何がだ?」

 

「いや、体の方だよ?結構痛めつけちゃったからよぉ」

 

「そんな自覚があったのか?貴様に?」ギロリ

 

 

ラウラはアキトを睨み付けた・・・

 

 

「そんなに睨み付けんでくれよ?銀髪ちゃん・・・まぁ元気そうで何よりよん」パッ

 

「・・・」

 

 

アキトはナイフの刀身を離すと、保健室の扉の方を向いた・・・

 

 

「・・・待て暁アキト」

 

「おん?どったよ?銀髪ちゃん?」

 

 

ラウラはアキトを呼び止め・・・

 

 

「・・・どうして私を助けた?」

 

「はい?」

 

「私はお前に今まで敵意を持ち、嫌悪を持って接していた・・・それなのに何故私を助けた?」

 

 

何故、敵を助けたのかという疑問を投げ掛けた・・・

その疑問にアキトは・・・

 

 

「何故助けたか・・・ソコんとこだが・・・俺にもようわからん」

 

「・・・へ?」

 

 

アキトの呆気ない答えにラウラはポカーンとした・・・

 

 

「それだけか?・・・だったら俺は――」

 

「ま、待ってくれ!暁アキト!」

 

「今度は何だ?銀髪ちゃん?」

 

「せめて・・・せめて貴様に詫びを入れさせてくれ!」

 

「詫びだぁ?んなもんいらねぇよ」

 

「そんな事を言うな!命の恩人に恩を返せないなど、ドイツ軍人の名折れ!」

 

「軍人の名折れて・・・」

 

「どんな事でも構わないから!」

 

「ほう・・・「どんな事でも」ねぇ・・・」クルリ

 

コツコツコツ・・・

 

アキトはラウラの言葉に反応したのか・・・ラウラに近づくと、その目の前に腰をかけると・・・

 

ポンッ

 

「ふぇ?///」

 

 

ラウラの頭に手を置いた・・・

 

 

「おぉ!やっぱり撫で心地パないな」ナデリコナデリコ

 

「な、何をしている!?///」

 

 

アキトはラウラの頭をいとおしいそうに撫でた・・・

 

 

「「どんな事でも構わない」って言ったろ?だから撫でてるんだよ」ナデリコ

 

「そ、そうなのか///・・・てっきり――」

 

「てっきり、銀髪ちゃんを慰み者にするってか?悪いが生憎とそういう趣味はない」ナデリコ

 

「そうか・・・貴様は変わっているな・・・///」

 

「よく言われるよ」ナデリコ

 

 

アキトはラウラの頭を撫で続けた・・・

 

 

「なぁ、暁アキト・・・」

 

「何だよ?銀髪ちゃん?」ナデリコ

 

「お前は戦闘中に私の事を「歪んだドッペルゲンガー」と言っていたな・・・」

 

「何だ?覚えているのか?あの戦闘を?」ピタリ

 

「断片的だがな・・・」

 

 

アキトは撫でるのを止めて、ラウラの話を聞き始めた・・・

 

 

「確かにお前の言う通り、私は教官のドッペルゲンガーだったのかもな・・・」

 

「・・・そうか」

 

「教官の強さを求めて求めて求め続けた・・・」

 

「・・・」

 

「しかし求め続けた結果、私は力に溺れ、飲み込まれた・・・まったく良いざまだ・・・」

 

「・・・それでもさぁ」

 

「ん?」

 

「それでもお前は気付けたんだろ?自分が何者なのかを?ならそれで良いじゃんか」

 

「っ!・・・」

 

 

ラウラはアキトを目を丸くして見つめた・・・

 

 

「おん?どったよ?そんな驚いた顔して?」

 

「・・・くく・・・クハハハハハハハ♪」

 

 

ラウラは突然、笑い始めた・・・嬉し涙を流しながら・・・

 

 

「おいおいおいおいおい?大丈夫かよ?銀髪ちゃん?」

 

「ハハハ♪いや、済まん済まん・・・こんなに笑ったのは初めてだな」

 

「お、おう?そうなのか?・・・おめでとう?」

 

 

アキトには何がなんだかわからず、頭を傾げていた・・・

 

 

「暁アキト・・・ありがとう、貴様のおかげで私は自分が何者なのかを見つけられたよ」

 

「は、はぁ・・・どういたしまして?」

 

「改めて自己紹介をさせて貰う・・・私の名前は「ラウラ・ボーデヴィッヒ」だ、よろしく」

 

「ふぅん、何だかよくわからんが・・・改めてよろしくな銀髪ちゃん」

 

「違うぞ、暁アキト」ガシッ グイッ

 

「おん!?」

 

 

ラウラはアキト顔を強引に掴んで向けると・・・

 

 

「私はラウラ・ボーデヴィッヒだ!決して「銀髪ちゃん」なんて名前ではない!」

 

 

アキトに向けたその目は何処か誇らしげであった・・・

 

 

「・・・ニョホホホ♪」

 

「な、何が可笑しい?」

 

「アンタの左目って綺麗な金色をしてたんだな」

 

「なに?・・・あっ!///」バッ

 

 

ラウラはアキトにそう言われると急いで布団を被った・・・

 

 

「ど、どうしたよ?」

 

「み、見るな!見ないでくれ!まさか眼帯を付けるのを忘れていたとは・・・不覚!///」

 

 

ラウラは「ヴォーダン・オージェ」と呼ばれる金色の目を眼帯で隠していたのだが、アキトの突然の来訪により、眼帯をしていなかったのであった・・・

 

 

「?・・・!、どうしたよ~?ラウラちゃ~ん?俺にもうちょっと見せてよ~」ニヤニヤ

 

「こ、断る!この目はそんな他人においそれと見せられないんだ!///」

 

 

アキトはニヤニヤとしながら、被った布団をツンツンと突っついた・・・

 

 

「そっか~・・・残念だな~・・・綺麗な目をしているのにな~・・・」

 

「・・・そ、そうなのか?」チラリッ

 

「隙あり!」バッ

 

「あっ!?しまった!」

 

 

ラウラがチラリッと顔を覗けた瞬間にアキトは布団を引き剥がした・・・

 

 

「や、やめろ!見るな~!///」バッ

 

 

ラウラは腕で顔を覆った・・・

 

 

「そんな頑なになるなよ?アンタの目は美しいんだから・・・」

 

「でも!でもだな!///」

 

「ほら?俺に良く見せておくれよ?」パシッ

 

「あ・・・///」

 

 

アキトはラウラの腕を優しく掴み、顔を見た・・・

 

 

「~~~!///」

 

「やっぱり綺麗な目をしているな~・・・」

 

「も、もう十分だろう!///」

 

「ダ~メ♪」

 

 

アキトは意地の悪そうに笑いながら、ラウラの顔をまじまじと見た・・・

 

 

「うぅ・・・///」

 

「ニョホホホ♪そう泣きそうな顔をするなよ?撫でてやるからよ」ナデリコ

 

「うぅ・・・///」

 

 

そのままアキトは、ラウラが真っ赤になるまで、撫でまくった・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

インサイド

 

 

コツコツコツ・・・

 

 

銀髪ちゃん、改めラウラの撫で心地を堪能した俺は大浴場に向かっていった・・・しかし・・・

 

 

「撫ですぎたかね~?見事なトロ顔にしちまって来たけど・・・まぁいいよね♪」テヘペロ

 

『王ヨ、似合ッテマセヌ』

 

「・・・朧酷くない?お前ってたまに辛辣~!まぁ、それより朧?ロレさんやシェルスにデータ送ってくれたかい?」

 

『エェ、送リマシタヨ』

 

 

そうか~良かった~、これで大体の仕事内容は行き届いたし・・・これで安心――

 

 

『デスガ』

 

『ですが」・・・何だよ?」

 

『シェルス様カラノ苦情ガ・・・』

 

「あぁ・・・さいですか・・・」

 

 

出たよ・・・シェルスの「ダメでしょ!」が・・・

別に良いじゃんかよ・・・「終わり避ければ全て良し」でさぁ~?

まぁ、それは置いといて・・・

 

 

「大浴場って、ここで良いのか?」

 

『エェ、王ヨ、ドウゾゴユックリ・・・』

 

 

今日の疲れと汚れを洗いながしませうか~・・・

 

カララァ~・・・

 

 

だが・・・俺はこの時気付かなかった・・・まさか、あんな事になるなんて・・・

 

 

「あ・・・あれは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

大浴場にて・・・

 

カララァ~・・・カポン・・・

 

 

「うへぇ~・・・広ぇねぇ~」

 

 

アキトは大浴場の広さに驚きながら、湯を体にかけ、湯船に浸かった・・・

 

ザパァ~・・・

 

「ぐへぇ~~~!気持ち良いぃぃぃぃ~・・・」ザパァ

 

 

湯船に体を沈め、顔に湯を浴びせながらグッタリと体を伸ばした・・・

 

 

「こんなに気持ち良いと・・・アレだな、酒が欲しいな~・・・熱燗、じゃなくてぬる燗を徳利から杯にいれてキュッと一杯・・・」

 

『王ヨ』

 

「何だよ?朧?あるのか?ぬる燗?」

 

 

左腕の待機状態の朧がアキトに話し掛けてきた・・・

 

 

『イエ、ヌル燗ハアリマセンガ、ウィスキーナラアリマスヨ?』

 

「何故にウィスキー?・・・まぁ良いか」ザパ

 

 

アキトは朧からウィスキーとコップを受け取ると空の桶に入れて浮かべた・・・

 

コクコク・・・

 

「かあぁぁ~!美味いだに~!血液が喜んでるぜ~!///」

 

 

アキトがウィスキーで微酔い気分でいると・・・

 

カララァ~・・・

 

「おん?///」

 

「こ、こんばんわ・・・///」

 

 

体にバスタオルを巻いたシャルロットが入ってきた・・・

 

 

「・・・何をしとるか?///」ジー

 

「そ、そんなマジマジと見ないでよ・・・アキトのエッチ・・・///」

 

「おいおいおいおいおい?勝手に風呂に入ってきて見るなって、それは無いだろう?キシャシャシャ♪///」

 

「ア、アキト?」

 

「良いから来いよ///」

 

「う、うん・・・///」トテトテトテ・・・チャプン・・・

 

 

シャルロットはアキトに近づき、湯船に入ったのだが・・・

 

 

「ナァナァナァナァナァ?シャルロットさんや?///」

 

「何?アキ――きゃっ!?」グイッ

 

「ニハハハ♪///」

 

 

アキトはシャルロットの体を引き寄せ、その体を抱き締めた・・・

 

 

「ニハハハ♪柔らけぇ~な~、シャルロットさんや///」

ギュウ

 

「アキアキアキアキト!?///」カァァァ

 

 

アキトはシャルロットの体を優しく後ろから抱き締めた・・・

 

 

「と言うかシャルロットさんや?どうしてお前さんが男子風呂にいるんだに?」

 

「そ、それは・・・///」

 

 

シャルロットの顔は一層にほんのりと赤くなった・・・

 

 

「アキトに・・・お礼を言うため・・・///」

 

「ほぅ?お礼とな?///」

 

「うん・・・僕は確かに今まで悲劇のヒロインを演じてたのかもしれない・・・」

 

「・・・」

 

「その事を・・・私を助けてくれて・・・ありがとうアキト///」

 

「俺は助けてないぜ?」

 

「え?」クルッ

 

 

シャルロットはアキトの顔覗くように振り向いた・・・

 

 

「俺はお前の助かるキッカケを作ったに過ぎない・・・あとはシャルロット自身が勝手に助かっただけだぜ?」

 

「・・・そう・・・なのかな?」

 

「そうだよ・・・だらかお前さんは俺に礼を感じる必要はないんだよ・・・」

 

「うん・・・それでも・・・ありがとう・・・アキト///」

 

 

シャルロットは顔をうつ向かせた・・・

 

チャプン・・・カポン・・・

 

「まぁ・・・そんな事は置いといてさ、シャルロットさんや?」チャプ

 

「何、ヒアッ!?///」

 

 

アキトはシャルロットの上半身を愛撫し始めた・・・

 

 

「お前さんは覚悟の上で・・・だよなぁ?」

 

「か、覚悟って、ヒウッ!?///」

 

ムニムニ

 

「けけ♪柔らかいねぇ♪」

 

「やめ、やめて・・・アキト・・・///」

 

「・・・本当に?」

 

「え・・・?」

 

 

シャルロットの耳で甘く囁いた・・・

 

 

「本当に止めてあげようか?フロイライン?」ペロリ

 

「ひぃっん!?///」ゾクゾク

 

 

アキトはシャルロットの首もとを一舐めし、追い詰めていく・・・

 

 

「食われに来たんだろ?サァサァサァサァサァ・・・正直になれよ・・・シャルロット・デュノア?」スルリ

 

「あぅ・・・うぅ・・・///」

 

 

艶やかな肌に鋭く変形した指が沿わされ――

 

 

「キュゥゥゥ~~~・・・」コテン

 

 

シャルロットは目を回して、気を失った・・・

 

 

「あら?あらあらあらあらあらぁ?やり過ぎちゃったかなぁ?やり過ぎちゃったねぇ・・・ヤバイ・・・本当にやり過ぎちゃった!」ガビーン

 

 

アキトはシャルロットを抱き締めたまま、オロオロしだした・・・

 

 

『落チ着キクダサレ、王ヨ』ピコン

 

「どうしようか?朧ちゃん?」

 

『トリアエズ、シャルロット様ノオ着替エハ、私ガヤリマスノデ・・・王ハ、シャルロット様ヲ湯船カラ出シテクダサイ』

 

「あぁ、わかった」ザプン

 

 

それからアキトはシャルロットを湯船から出し、それを朧がどうにかして、シャルロットを部屋まで連れて行った・・・

 

 

「まさか、こんな事になるとは・・・」

 

 

因みに一夏を起こさずにシャルロットをベットに戻す事は難しかったと、アキトは後に語る・・・

 

こうして、また激動の1日は過ぎて行くのであった・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





やっちまったぜ・・・これは熱のせいなんだ!
そうなんだ!


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一方その頃・・・

他の作者さんの作品をイッキ読み・・・
やはり、自分は読書が好きなんだなと実感・・・
あと、アンチってどう書けばいいのかを模索中・・・


 

 

ノーサイド

 

 

 

一方その頃、屋上にて・・・

 

 

満天の星空を独占するように立っていた、織斑千冬は何処かに電話をかけていた・・・

 

 

トゥルルルルル トゥルルルルル トゥルルルルル ガチャン

 

 

『ハッピ~!ウレピ~!ち~~ちゃ~ん!おひさ~!』

 

「・・・切るぞ・・・」

 

 

電話の相手はISを作り出し、世界を色々と変えてしまった、天災科学者「篠ノ之 束」であった・・・

 

 

『わぁ!待って待って待ってよ!ちーちゃん!ちーちゃんが私に電話をくれるなんて・・・これって――』

 

「黙れ束・・・要件だけ言うぞ・・・「アレ」はお前の仕業か?」

 

 

千冬は束に黒い千冬、VTシステムの事を聞いた・・・

 

 

『んな訳ないじゃ~ん♪あんなちーちゃんの紛い物を私は作んないよ!』

 

「そうか・・・なら別の事を聞こう」

 

『ん?な~に?ちーちゃん?』

 

「暁・・・暁アキトは何者だ?お前があの戦闘を見てないわけがないだろう?」

 

『・・・』

 

 

千冬はアキトの正体を束に聞くと・・・束は口をつぐんだ・・・

 

 

「?、どうした?束?」

 

『・・・気に入らない・・・』ボソッ

 

「束・・・?」

 

 

返ってきた返事はどこか、怒気を混めたモノだった・・・

 

 

『それじゃあ、ちーちゃん!私はやる事があるから、じゃあね~バイビー!』ブツッ

 

「おい!?束!・・・切ったか・・・しかし、束があんな声をするとは・・・暁・・・一体お前は?」

 

 

千冬は切られた携帯電話を仕舞いながら、夜空を見上げた・・・

 

 

 

 

 

研究ラボにて・・・

 

 

ここは地球上の何処かの研究ラボ・・・

ここではある頭にウサギ耳を付けた天災科学者がパソコンをつついていた・・・

 

 

カタカタ・・・バンッ!

 

「もう!訳わかんない!」

 

 

天災兎はある戦闘映像を見ていた・・・

その映像には・・・

黒い千冬が「ナニカ」に一方的に蹂躙されている映像であった・・・

 

 

「なんなのさ!なんなのさ!もう一回巻き戻して!」

 

キュルルル

 

兎は映像を巻き戻した・・・始まった映像には・・・

 

 

『教育してやろう・・・本物の・・・フリークス同士の「闘争」とやらを!!!』バァーッン

 

 

指で四角を作り、黒い千冬を覗き見るアキトの姿があった・・・

 

 

「ここからだよ!ここから何で!コイツの姿が「消える」のさ?!!」バンッ

 

 

兎は再び、机を叩いた・・・

 

何故、こんなにも兎が荒れているかと言うと・・・

この兎はアキトの戦闘をIS学園のカメラをハックして見ていたのだが・・・

アキトの専用機、朧のカメラの細工を暴いてしまい、またく「加工」がされていない映像を見たのだ・・・

 

 

「まったく!まったく!!何なのさ?!この束さんがわからない事なんて・・・しかもコイツ、ISの装備を解除してちーちゃんの紛い物をぶっ壊してやがる!なんなんだよ!?コイツは!「暁アキト」!」ガシャン

 

 

束はそこら辺の電子機器を下に落として、騒いでいると・・・

 

 

ビーコン ビーコン ビーコン

 

 

アラートが鳴った・・・

 

 

「こんな時にだれだよ?この束さんにハックをかけようとする輩は?・・・まぁいいや!ちょちょっいとやっつけて正体暴いてやるぜ!この身の程知らずが!」

 

カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ・・・

 

束はハックに対して応酬していると・・・

 

ビヨン

 

「ん?何コイツ?」

 

 

画面の下に安全ヘルメットを被り、土木作業員の格好をした二足歩行の「ヤギ」が現れた・・・

 

 

『あろーあろー』

 

 

そのヤギはヤギには似つかわない鳴き声をあげると・・・

 

 

バリバリ ムシャムシャ

 

 

黒い千冬とアキトの戦闘映像を食べ始めた・・・

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?何すんのさ!このヤギぃ!?」

 

カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ・・・

 

 

束はこのヤギを消そうとヤッキになったが・・・

 

 

ムシャムシャ・・・ゴックン

 

『プハァー♪旨かったであろー♪』

 

 

ヤギは映像を全部食べてしまった・・・

 

 

「こ、こ、このヤギぃぃぃ!バックアップまで食いやがって!消してやる!消してやるぅぅぅ!」

 

 

束があらぬ顔で怒っていると・・・

 

 

『あろ~!天災兎!貴様見ているな!』バァッン

 

「っ!?」

 

 

ヤギは喋りだした・・・

 

 

『そう簡単にワシのファミリーの映像をくれてやるものか!このヴぁぁぁかぁぁ!!』

 

「な、な、なっ?!」ヒクヒク

 

 

束は顔を引きつかせて、ヤギを見ていた・・・

するとヤギは前足?を頭に持っていくと・・・

 

 

『アリーヴェデルチ!』ピシッ

 

シュンッ

 

・・・そう言いながら、消えた・・・

 

 

「・・・・・・フザケルなぁぁぁぁぁ!!あのヤギィィィィイ!!!!!」ゴシャッン!

 

残された束はパソコンの画面を砕いた・・・

 

 

 

 

 

 

 

ヴァレンティーノファミリーアジトにて・・・

 

 

「シャ~シャシャ♪愉快愉快であろー♪」

 

 

今でパソコンを見ながら、ドン・ヴァレンティーノはケラケラと笑っていた・・・

 

 

「ふう・・・さすがは天災兎って言うくらいやな、ファイアーウォール強かったで~♪」

 

 

その隣で汗を拭うノアはどこか嬉しそうに笑っていた・・・

すると、パソコンを持ったロレンツォが居間の襖が開けて現れた・・・

 

 

「ドォォォン!アキトからの頼みのメールが来ました!あと、ついでに仕事の依頼も!」

 

「なに!?早く見せるであろー!」

 

「うちにも見せてー」

 

 

ドン達の夜はまだまだ長い・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 

 

 




ドン[そう言えば、ガブリエラはどうしたであろー?]

ロレンツォ[ガブリエラなら、シェルスと一緒にフランスに行っていますよ]

ノア[お土産はチーズがええな~]

ドン[ワシはワインがよかろー]

ロレンツォ[なら電話で頼んでおきますよ]


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翌日の事である・・・


擬音語難かしいね・・・マジで
私は擬音語を入れる派です・・・


 

 

 

 

ノーサイド

 

 

ガヤガヤガヤ・・・

 

朝のa.m8:30をまわった頃、1組の教室にはある程度のクラスメイトが集まり、朝のホームルームまで思い思いを過ごしていた・・・のだが・・・

 

ガラァ~・・・

 

「オハヨウさ~ん」

 

「「「っ!」」」シィーン

 

 

頭をかきながら、アキトが入って来た瞬間に教室は一気に静かになった・・・

 

コツ コツ コツ・・・ストン

 

アキトは静かになった教室でいつものように自分の席に座り、うつ伏せになって・・・

 

 

「Zzzzzz...」

 

 

いつものように寝始めた・・・

だが、今回は何時ものとは違った・・・

 

 

「あ、暁くん!」

 

「おん?」

 

 

一人の生徒がアキトに話し掛けてきた・・・

 

 

「あの、その・・・えと・・・///」

 

「おい?」

 

「は、はひぃ!」ビクッ

 

「オハヨーさん」

 

「っ!うん!おはよう!暁くん!」

 

 

アキトはその生徒と挨拶をすると・・・

 

 

「おはよう!暁くん!」

 

「昨日は凄かったよね!」

 

「うんうん!あの黒いワンちゃんって何?」

 

「おっ、おう・・・」

 

 

次々と他の生徒達がアキトに話し掛けて行った・・・

その勢いにアキトもタジタジとなっていたが・・・

 

 

「ちょっと!貴女達!アキトさんが困ってますわよ!」

 

「ゲッ、オルコットさん・・・」

 

「ちょっと!誰です?!「ゲッ」とは何ですか!」

 

「カカカ♪オハヨー、セシリアさんや」

 

「えぇ、おはようございますアキトさん」

 

 

セシリアはアキトと挨拶をした・・・長年の友のように・・・

 

 

「オルコットさんズルい~!」

 

「そうだ!そうだぁ~!」

 

「暁くんを独り占めだ~!」

 

「えっ!?それは良いですね・・・///」

 

「何を言ってるんだ?お前さんは?」

 

 

生徒達がアキトの周りで騒いでいると・・・

 

ガラァ~・・・

 

「皆おはよう!」

 

「あぁおはよう!織斑くん!」

 

 

一夏が入って来た・・・

一夏はコツコツといつもの席に座るかと思いきや・・・

 

 

「・・・おはよう暁」

 

「おん?オハヨさん、織斑さんや?」

 

 

一夏はアキトの座っている目の前に来たのだ・・・

 

 

「暁・・・昨日の事なんだが・・・あれは・・・」

 

「別にどーでも良いよ」

 

「・・・へ?」

 

 

一夏は間の抜けた声を出した・・・

 

 

「アンタが俺を嫌おうがどうしようが、俺は気にしない」

 

「・・・そうか・・・なぁ、暁?」

 

「なんだよ?織斑?」

 

「下の名前で呼び会わないか?」

 

 

一夏の提案にアキトは・・・

 

 

「うん、ごめん断る♪」

 

 

シニカルに笑って断わった・・・

すると・・・

 

ガラリ・・・

 

「お前達、席に着け!これよりホームルームを始める」

 

 

千冬が出席簿を持って入って来た・・・

 

ガラリ・・・

 

「え~と・・・その前に織斑先生?」

 

「あぁ、わかっています・・・ホームルームを始める前に転校生を紹介する」

 

「「「「「「「っ!?」」」」」」」

 

ザワザワ・・・

 

突然の発表により、教室は騒然となった・・・

 

 

「し、静かに!・・・それでは入って来て下さい!」

 

 

真耶がそう呼ぶと、教室に入って来たのは・・・

 

ガラリ・・・コツ コツ コツ・・・ピタリ

 

 

「「「「「「「「「え!?」」」」」」」」

 

「えへへへ・・・どうも皆さんシャルル・デュノア改め、シャルロット・デュノアです」

 

 

スカートを着た、「シャルル・デュノア」が入って来たのだ・・・

 

 

「え~と・・・皆さん、デュノアくんはデュノアちゃんでした~・・・アハハハ・・・」

 

 

真耶が苦笑いをしながら、言っていると・・・

 

 

「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!?」」」」」」」

 

 

驚きの叫びが教室内に響いた・・・

 

 

「そんな!?デュノア様が!えぇっ?!」

 

「可愛い顔してたけど・・・まさかとはね・・・」

 

「NOOO~!」

 

 

生徒達は思い思いの感想を述べていた・・・が・・・

 

 

「そう言えば・・・昨日は男子の大浴場が開いてたよね?」

 

「え・・・と言う事は・・・」

 

「「「「「「「織斑くん!?」」」」」」」ズラリ

 

「えっ!えぇっ?!」

 

 

生徒達が一斉に一夏を疑惑の目で見はじめていると・・・

 

ドガァァァァァァァッン!!!

 

「一夏ぁぁぁぁぁぁあっっっ!!」

 

「どういう事だ!一夏ぁ~!」

 

甲竜を纏い、教室の扉を破って来た怒れる鈴と木刀を構えた箒が現れた・・・

 

 

「り、り、鈴に箒!?ちょ、ちょっと待――」

 

「「問答無用っ!」」ブオン

 

 

鈴と箒は一夏の言葉など聞かず、一夏に青竜刀と木刀をかましたのだが・・・

 

ガァァァッン!

 

「えっ!?」

 

「あ、アンタは!?」

 

「お前は!」

 

 

二人の攻撃を受け止めたのは・・・

 

 

「よぉオハヨーさん、ラウラちゃん」

 

「あぁおはよう、暁アキト」

 

 

専用機を纏ったラウラであった・・・

 

 

「それより大丈夫だったのな?専用機の方は?」

 

「あぁ、ダメージレベルは思ったより低かったのでな・・・それより大丈夫か織斑一夏?」

 

「あぁ・・・ありがとうボーデヴィッヒ」

 

「ラウラで構わん」

 

「そうか・・・ありがとうラウラ」

 

「それと、今まで貴様を目の敵にしてすまなかった」

 

「あぁ・・・別にもう良いぜ」

 

 

ラウラと一夏が和解をしている、その隣で・・・

 

 

「それで・・・二人とも?そんなに暴れたいなら、表に出な・・・俺が相手になるからよぉ?」

 

「「っ!」」

 

 

アキトが素人目にもわかる位にオーラを出していた・・・

 

 

「ちょっと待ってアキト!」

 

「おん?なんだよ鈴ちゃん?」ゴゴゴ

 

「それは・・・そうよ!一夏は昨日、そこのデュノアと風呂に――」

 

「僕は一夏と入ってないよ?」

 

「「・・・え?」」

 

 

シャルロットは一夏と風呂に入って無い事を話した・・・

 

 

「ほ、本当なのか?一夏?」

 

「だから!入ってないって言ってんじゃんか!」

 

「だ、だったら・・・」

 

「お前らの行為は先行き過ぎた訳なんだな・・・しかも」

 

ガタリ

 

アキトは椅子から立ち上がると、朧を部分展開し・・・

 

 

「お前らの攻撃でコッチまで巻き込まれるだろうがぁ!」

 

バキリ

 

「ひっ!」

 

・・・と、机にヒビをいれた・・・

 

 

「おい暁、備品を壊すな!」バシィン

 

「へいへい、すみません」ガタリ

 

 

アキトはふて腐れながら、机に座っていると・・・

 

 

「でも・・・アキトとは入った・・・ね///」

 

「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」ガタリ

 

「・・・おん?」

 

 

シャルロットが爆弾を投げて来た・・・すると・・・

 

ズキューン

 

「あろっ!?セシリア?!」

 

「・・・ちょっと、アキトさん?お話よろしいですか?」

 

 

多大な凄味を出しながら、セシリアがアキトにライフルを向けていると・・・

 

 

「暁アキト!」ズシャン

 

「ちょ、ボーデヴィッヒさん?!」

 

「やらせはせんぞ!やらせは!」

 

 

ラウラがブレードを構えて、セシリアの前に立ち塞がったが・・・

 

 

「ラウラ・・・退けろ・・・俺がやる」ゴゴゴ

 

「暁アキト・・・」

 

 

アキトはラウラを退かせ、セシリアにナイフを突き付けた・・・

 

 

「さぁ!来いよ!やってやろうじゃないか!」

 

「え、えぇ!もちろんですわ!」

 

 

セシリアも中場ヤケクソになり始めたが・・・

 

 

「いい加減にせんか!お前達!!!」

 

 

千冬が辺りを静めようとしたが・・・

 

 

「WRYYY!行くぜ!セシリアぁぁぁ!」ダッ

 

「え、ちょっとアキトさん!?」

 

 

アキトは止まらずにセシリアに牙を向けたが・・・

 

ズドン!

 

「ぎゃぐ!?」バタリ

 

「「「「「「「「え!?」」」」」」」」

 

 

アキトは横からショットガンで撃たれた・・・そのショットガンを撃ったのは・・・

 

 

「か、簪さん!?」

 

「・・・」トコトコトコ・・・ガシ

 

「あぁぁ~・・・」ズルズル

 

 

簪はそのまま倒れたアキトを引き釣りながら、教室から出ていった・・・

 

 

「「「「「「「え、え~・・・」」」」」」」」

 

 

その後、その日のアキトを見たものはいない・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 

 

 





さて・・・次はオリジナルを入れようかな?


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朝のあれから事・・・byアキト


今回はセリフ少ない~・・・文字多い~・・・


 

 

 

インサイド

 

 

 

あの爆弾発言からの狙撃後・・・

俺は簪に整備室まで連れて行かれ、説教をされた・・・

セシリアとは違った『スゴ味』で説教された・・・

まぁ、此方の事情を説明したりしてなんとか乗り切ったんだが・・・

 

説教の最後に簪が吸血を『せがんできた』・・・

 

さすがに指からの吸血では『依存性』は少ないと思っていたが、なにぶん回数が多い・・・吸血が『クセ』になって来てやがるな・・・

簪がただの人間な分だけに吸血にハマるのはマズイ・・・下手をすれば、簪を俺の『眷属』にしてしまうかもしれない・・・

そうなったら、『純血派』のヤツらが血を目当てに簪を狙うかも知れない・・・

それだけは避けなくてはならない・・・

そんな危険な目に・・・俺の友人を会わせる訳にはいかないからな・・・

 

それで当然の如く、断ったのだが・・・説教の時間が1時間延びてしまった・・・ヤレヤレだぜ・・・

 

 

簪からの説教を終えた俺は教室に帰ったんだが・・・

 

セシリアからの視線が凄く冷ややか!

まるで、『養豚場の豚を見る目』だった・・・

スッゲェ!冷ややかだったから午前中の授業が終わったらすぐに食事に誘い、デザートやなんかを奢り、なんとかそれで機嫌を直して貰った・・・んだが・・・

 

この事でシャルロットがむくれた・・・

ヤレヤレ、人の心ってのはわかんねぇもんだぜ・・・

 

午後の授業もソコソコにやり、放課後は『昨日の戦闘の調書をとる』と言う名目で学長室に呼ばれた・・・

 

部屋ではダンディな学園長と、何故か食い損ないのお姉様までいた・・・

 

調書は、『戦闘時に俺が出した『黒い狗』は何なのか』を中心とした内容だった・・・

冗談を交えながら、お姉様をからかいながら調書は終了した・・・

調書が終わったら、お姉様は生徒会の仕事に戻った・・・その後、俺は学園長殿とビジネスの話をした

どうやらドンに学園長殿からの仕事内容は伝わったらしい・・・

 

その仕事の詳細を聞くところによると、学園の防衛を基本としているそうだ・・・

防衛て・・・そんなのは教師陣達に任せとけばよかろうなのだぁ!と言う訳にはいかないらしい・・・

何でがと言うと、殆どの教師達は『ISがあれば、どうと言う事はない』みたいな輩が多く、しかも実戦経験を持っている教師達も少ないと言うモノもあるが、今回のイベントで、ホムンクルスが学園に忍び込んでいた事に学園長殿は衝撃を受け、もしもの為に、毒をもって毒を制す為に俺を雇ったらしい・・・

 

まぁ、学園長殿は元牙狩りだ・・・ホムンクルス等の化け物の危険性は常人よりは理解しているし、学園の生徒を守るってもあるだろう・・・

 

俺は取敢えず、『OK』と言っておいたが・・・

この学園長殿は油断ならない・・・そんな臭いがこの男からはした・・・

ドンも俺も面倒な仕事を請け負っちまったようだ・・・ヤレヤレ・・・

 

 

そんな感じで学園長殿との話を引っ括めて終わったのはp.m.9:00を回った頃だ・・・あの食い損ないの調書が思った以上にかかった・・・糞っ・・・

 

食堂は閉まっちまったので、部屋に大人しく戻って、シャワー浴びて寝よう・・・・・・なんかと思った事もありました・・・

 

部屋に戻ってみると、妙にベットがこんもりと盛り上がっていた・・・

大体、気配でわかるが・・・布団をひっぺ返すと、そこにはラウラちゃんがうずくまって寝ていた・・・

 

もうツッコミ入れるのも面倒臭いから、そのまま寝かせてやろうかと思ったんだが、気配に気付いたのか起きやがった・・・

 

ラウラちゃんに何で俺の部屋にいるのかを聞いてみると、朝の時に俺に伝えて損なった事を伝えに来たらしい・・・

 

その内容を聞こうとしたら、ラウラちゃんは突然俺の頭を両手で掴むと唇を奪おうとしやがった!

まぁ、ラウラの頬を両手で挟んでさせなかったが・・・

 

ラウラにキスしようとした理由を聞いてみると・・・

 

 

『わからん!』

 

 

・・・なんて言いやがった

訳がわからんぞ!

 

よくよく事情を聞いてみると・・・

昨日、トロ顔になるまで頭を撫でた事でラウラの胸のうちに何らかのモヤモヤが出来たらしい・・・その変化を知る為にドイツにいる部下に電話で聞いてみたところ、その部下が・・・

 

 

『少佐!それは恋です!』

 

 

なんて言いやがり、その部下の要らんアドバイスの結果、今に至ると言う事らしい・・・

 

シェルスと同じドイツ人でもこうも違うのか・・・なんて驚きを抱きつつも、その場を納めたのだが・・・ラウラが帰りたがらない・・・ヤレヤレ・・・

 

無理に自室に帰すと先生に見つかる可能性もあるんで、取敢えずはラウラを部屋に泊める事にしたが・・・ただでは泊めない・・・

夕飯を作って貰い、一緒に食べた・・・

 

それから寝る時間になると、ラウラをベットで寝かせて、俺は地べたで寝ようとしたら・・・ラウラが・・・

 

 

『部屋主にそんな事させられない』

 

 

・・・とかなんとか言って来たから、妥協案としてベットで一緒に寝る事にした・・・ヤレヤレだぜ・・・

 

・・・ツーか俺、今日は『ヤレヤレ』しか言ってない気がする・・・

 

まぁ、なんやかんやで俺はラウラに何故か後ろから抱き着かれながら意識を沈めていった・・・

 

 

『あ~・・・今日はヤレヤレだったぜ・・・』

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 

 

 




シェルス[むっ!?]ピキピキーン!

ガブリエラ[どうした?シェルス?]

シェルス[いや・・・なんかを感じ取った・・・かな?]

ガブリエラ[お前はNTか・・・と言うか、もうすぐ着くぞ?フランスに]

シェルス[そうね・・・さぁ!お仕事!お仕事!]


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第肆章『フラスコの小人』
金髪を助ける為に魔女に会う・・・


オリジナル編入れます!どうかご容赦を!


 

 

ノーサイド

 

 

 

あの戦闘から数日がたった、ある休日の朝・・・

 

 

 

アキト自室にて・・・

 

 

スゥー・・・

 

「なぁ・・・ラウラさんや?」クシクシ

 

「なんだ?アキト?」

 

「何でお前はここ最近、俺の部屋に何時もいるんだ?一応ここは俺の部屋なんだが?」

 

 

アキトがラウラを部屋に泊めた日から、ラウラはアキトの部屋を自由に使っていた・・・

 

 

「良いではないか?夫婦とはそう言うモノだろう?」

 

「待て待て待て待て待て待て!何時からお前と夫婦になったんだよ!おい?!!」

 

「手が止まっているぞ?」

 

「「手が止まっているぞ?」じゃねぇ!俺も何ナチュラルにラウラの髪をすいてんだぁ?!俺は切じゃねぇ!」パキン

 

 

アキトはラウラの髪をすいていた櫛をへし折った・・・

 

 

「なんだ?もう終わりか?」

 

「はぁ・・・もういいや・・・面倒臭い・・・」ゴロリ

 

 

アキトは考えるのを止めて、二度寝をする事にしたのだが・・・

 

 

コンコン ガチャリ・・・

 

「アキト?いる?――ってラウラ!?」

 

「おぉ、おはようシャルロット」

 

 

扉を開けて、シャルロットが入って来た・・・

 

スタスタスタ

 

「ちょっと!アキト!どういう事なの?!」

 

「うるせぇ・・・って「シャーロット」か・・・おはよう」

 

「うん、おはよう――じゃなくて!どうしてラウラがアキトの部屋にいるのさ?!」

 

「知るかよ・・・ピッキングで鍵を開けたんじゃない?だよな?ラウラさんや?」

 

「あぁ、マイナスドライバーで開けたぞ!」フンス

 

「・・・ラウラ・・・何やってんのさ・・・」

 

「・・・鍵を替えとかないとな」

 

 

ラウラは胸を張り、自信満々なドヤ顔を見せた・・・

 

 

「はぁ・・・それよりアキト?こんな朝早くから、僕に何のようなの?」

 

「あれ?呼んだっけ?」

 

「呼んだよ!昨日の放課後に呼んだじゃないか!」

 

「あぁ~・・・呼んだけど・・・シャーロットさんや?」

 

「何かな?!ロリコンの暁アキトくん?!」

 

「俺は「出来たら来てくれ」と言ったが、「朝の7:30過ぎに来てくれ」とは言ってないぞ?」

 

「え?・・・あっ!」

 

 

現在の時刻はa.m7:32・・・あまりにも訪ねるには早すぎる時間である・・・

 

 

「こ、これは・・・その・・・///」

 

「シャルロットは何をモジモジしているのだ?」

 

「さぁね」ポン グリグリ

 

「い、痛いぞ!アキト!」

 

 

アキトはラウラの頭に顎を乗せると、グリグリとした・・・

 

 

「そ、そんな些細な事はどうでもいいじゃないか!それとアキト!ラウラが痛がってるから止めなさい!」

 

「あ、誤魔化した」

 

「うるさい!」

 

「へいへい・・・」ヒョイ

 

「うぅ、以外と痛かった・・・」サスリ

 

「悪かったなラウラちゃん」ポン ナデリコ

 

「っ!なんだかポワポワするぞ///」

 

 

アキトは涙目になるラウラの頭を撫で始めた・・・

 

 

「アキト~?僕の話を聞いてる~?」ピキリ

 

「はいはい聞いてる聞いてる」

 

「もぉ~!」

 

「~~~♪///」

 

 

アキトはふくれるシャルロットをほっといて、一頻りラウラを撫でると、ベットから立ち上がり、クローゼットからジャケットを着はじめ・・・

 

 

「だったら行くか・・・」スチャ

 

「え?行くってどこに?」

 

「お前が勝手に助かる為に、手助けをしてくれる人の所」

 

「・・・え?」

 

「取敢えず・・・支度して行くぞ」

 

「え?え?え?」

 

「私も行くぞ!アキト!」

 

「お前はダ~メ」

 

「ど、どうしてだ!?」スクッ

 

 

ラウラは立ち上がり、疑問を投げ掛けると・・・

 

 

「これはシャーロットと俺の問題だから、お前さんはお留守番よろしく」

 

「そんな浮気か?!アキト!」

 

「え!?アキト、ラウラと付き合ってたの?!!」

 

「アホ、んな訳あるか!・・・準備も出来たし行くぞ」

 

コツコツコツ・・・パシッ

 

「え?ちょ、ちょっと!アキト?///」

 

「じゃあラウラ、お土産買ってきてやるからお留守番ヨロピクね~」

 

コツコツコツ・・・バタン

 

 

アキトはシャルロットの手を引っ張って、部屋から出ていった・・・

 

 

「アキト~!浮気は許さんぞ~!」

 

 

部屋に残されたラウラは喚いていた・・・

 

 

―――――――

 

 

 

アキトはあれからシャルロットの手を引っ張り、学園に隠していたバイクに乗せ、走り始めた・・・

 

 

高速道路にて・・・

 

ブゥゥゥゥゥゥゥゥン・・・

 

「ちょっと!アキト!」

 

「おん?何だよシャーロット?」

 

「僕を何処に連れて行くの?!」

 

「あぁ?俺の知人の所だ」

 

「なんでそんな所に――」

 

「喋ってないで、確り掴まっとけ!舌噛むぞ!」キュル

 

「わ、きゃあ!?」ギュ

 

 

アキトはバイクのスピードを上げ、目的地まで爆走した・・・

 

 

 

 

 

30分後・・・バイクは高速道路を降りると、海の見える何処かの地方都市に入った・・・

その都市にある、1つの大きな洋館の前でアキトはバイクを止めた・・・

 

 

スチャ

 

「目的地に到着~!」

 

「ちょっと!アキト!」

 

「なんだよシャーロットさんや?」

 

「飛ばしすぎだよ!もう少しで落ちるとこだったじゃないか!」

 

「だから、確り掴まっとけって言ったろ?それとも何か?怖くてドキドキしたか?」

 

「ドキドキしたよ!・・・色んな意味で///」

 

「ふ~ん・・・まぁ、その話は置いといてだ・・・行くぞ」

 

 

コツコツコツ・・・

 

二人はバイクを降りると、インターホンを押した・・・

 

 

ジリリリ ジリリリ ジリリリ

 

「「うるせぇ!こんな朝っぱらから、何処のドイツが何のようだ!」」

 

 

マイクからの第一声からは怒号が飛び出して来た・・・

 

 

「朝早くから済まねぇな「ガントレット」、俺だ」

 

「「あぁん?その声は「アホカード」か?」」

 

「誰がアホカードだコノヤロウ・・・「ウィッチー卿」はいるか?例の件で会いに来たんだが?」

 

「「生憎と御嬢様は今、朝食中だ!出直して来い!アホカード!」」

 

「そうか・・・ならしかたねぇな・・・」コツコツ・・・

 

「「何だよ?今日は随分と素直――ってまさか!?」」

 

 

そう言いながら、アキトは後ろに数歩下がると門に戦闘体勢を構えると・・・

 

 

「え?ア、アキト?」

 

「シャーロット、少し危ないから下がっとけよ」ダッ

 

「「よせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」

 

 

ドグシャァァァァァァァァァァァァァァッン!!!

 

門を破壊した・・・

 

 

「ちょ、えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?アキト!何やってんのさ?!!」

 

「良し、入り口確保・・・行くぞシャーロット」

コツコツコツ・・・

 

騒ぐシャルロットを他所にアキトは敷地に入って行ったのだが・・・

 

 

バタン!

 

「テメェ!アホカードぉぉぉ!」ダッ

 

バキィッ!

 

洋館の玄関から物凄い剣幕である茶髪の人物が現れ、アキトに向かって、古びだグローブを着けた拳を叩きつけた!

 

 

「よぉ、おはようだなガントレット?」

 

「何が「おはよう」だ!コンノ野郎!」ブゥン

 

「まぁまぁ落ち着けよ?朝からホントに元気だなガントレット?」パシッ

 

「誰のせいだと思ってやがる!このスットコドッコイ!」

バキィッ

 

 

「ガントレット」とことヘレン・ヴィニアーとアキトは敷地の庭先で殴りあいを始めてしまった・・・

 

 

「えぇ!ちょっと!アキト?!」アワアワ

 

 

シャルロットが二人の殴りあいをアワアワとしながら見ていると・・・

 

 

ガチャリ・・・コツコツコツ・・・

 

「何の騒ぎかと思えば・・・貴方でしたか「アーカード」」

 

 

玄関から黒髪の人物が額に指を当てながら、出て来た・・・

 

 

「よぉ、「オクロック」!おはよう!ぶげっ!」バキィッ

 

「また貴方は門を破壊して・・・これで5回目ですよ?」

 

「まぁ良いじゃんか」

 

「良くねぇ!」ブゥン

 

「げぶっ!」バキィッ

 

 

アキトはガントレットに殴られながら、オクロックと話をしていた・・・すると・・・

 

 

「まったく・・・ん?アーカード、あの方は?」

 

「あぁ、ごふっ!あの金髪が、ぐべっ!例の件の、うげっ!」バキィッボキィッバキィッ

 

「そうですか・・・」コツコツコツ・・・

 

 

オクロックはシャルロットに近づいていくと・・・

 

 

「シャルロット・デュノア様でいらっしゃいますね?」

 

「は、はい!」

 

「初めまして私、ウィッチー家に仕える「エーヴェル・サリバン」と言う者です・・・そして、彼方でアーカード――暁アキトさまを殴っているのは、同じくウィッチー家に仕える「ヘレン・ヴィニアー」です・・・どうぞ良しなに」

 

「は、はい・・・」

 

「貴女の事は暁様から良く言付かっています・・・どうぞ此方に」

 

「え、でもアキトは・・・」チラリ

 

 

シャルロットが横目でアキトの方を見ると・・・

 

 

「オラオラオラぁ!」ドガバキボキ

 

「うげっがはっぐへっ!」

 

 

ガントレットに馬乗りにされて、殴られるアキトがそこにいた・・・

 

 

「あぁ・・・あれは気になさらないで下さい」

 

「えぇ!でもあれじゃあアキトが!」

 

「大丈夫ですよ・・・大型犬がじゃれているだけですから」

 

「あぁ〝ん?誰が犬だって?エーヴェル!」ギラリ

 

 

ガントレットがオクロックの言葉に反応して殴るのを止めた・・・その時・・・

 

 

ガシッ!

 

「余所見とは頂けないねぇ~・・・ガントレット?」

 

「て、テメェ!」ミキミキミキ

 

「ドラァッ」ブゥゥゥン

 

ドゴンッ

「ぐはぁっ!」

 

 

アキトはガントレットの頭を掴むと、そのまま敷地の壁にぶつけた・・・

 

 

「え!?ちょっとアキト?!」

 

「はぁ・・・程々にしてくださいよ?アーカード」

 

「あぁ、善処する!シャーロット!」

 

「は、はい!」

 

「俺はちょっと朝の軽い運動をするから、あとの事はそこにいるオクロックに着いていってくれ!いいな?」

 

「う、うん!わかった!」

 

「Good! じゃあ頼むぜ?オクロック!」

 

「はい、それでは参りましょうかデュノア様」

 

「はい、じゃあアキト!頑張って?ね?」

 

「おう!」

 

 

シャルロットとオクロックの二人は洋館に入って行った・・・

 

 

ガシャアン パラパラパラ・・・

 

「ゲホッ、ゴホッ!テメェ・・・アーカード!」

 

「さて・・・来いよガントレット・・・鈍ってないか確かめてやるよ」

 

 

瓦礫の中から立ち上がったガントレットにアキトは挑発をかけると・・・

 

 

「野郎!ブッ飛ばしてやるぅ!」ダッ

 

 

ガントレットは構え直して、アキトに向かって来た・・・

 

 

「ニョホホホ♪そうこなくちゃあなぁ!」ダッ

 

 

こうして洋館の庭先で本格的な戦闘が始まった・・・

 

 

 

―――――――

 

 

「WRYYYAAA ! 」

 

「オラァァァ!」

 

ガキィィィン!

 

アキトとガントレットが庭先で本格的に殴りあいを始めたその頃・・・

洋館に案内されたシャルロットは、ある部屋に通された・・・

 

 

 

広間にて・・・

 

 

ガチャリ・・・

 

「御嬢様、お連れしました・・・」

 

「お、お邪魔します・・・」

 

 

通された広間には、料理が並べられたテーブルに車椅子で着いている金髪の人物がいた・・・

 

 

「やぁ、良く来たね・・・ささ、どうぞ掛けてよ」

 

「は、はい・・・失礼します(綺麗な人だな~・・・)」

 

 

シャルロットは金髪の人物に招かれ、テーブルに着いた・・・

 

 

「朝食はまだかな?ms. デュノア?」

 

「え、えぇ・・・まだですけど・・・」

 

「そう・・・朝食を一人で食べるには心細い・・・どうだろう?貴女も一緒にどうかな?」

 

「は、はい!喜んで!」

 

「それは良かった・・・エーヴェル?」

 

「はい、ただいま・・・」コツコツコツ・・・

 

 

オクロックは広間の側にあるキッチンからティーセットを持ってきて、紅茶を注いだ・・・

 

 

コポポ・・・

 

「どうぞ、熱いので気を付けて」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「それでは私は朝食のご用意を・・・」コツコツコツ・・・

 

 

また、オクロックはキッチンに姿を移した・・・

 

 

「さて・・・このまま彼が来るまで待つのもいいが・・・自己紹介をしておこうかms. デュノア?」

 

「は、はい・・・初めましてシャルロット・デュノアです」

 

「初めまして・・・ボクはヴァイオレット・・・「ヴァイオレット・ウィッチー」・・・君の事は良くアキトから聞いているよ」

 

「そ、そうなんですか・・・」

 

 

シャルロットは緊張しているのか、何処かたどたどしい自己紹介になってしまった・・・

 

 

「フフ♪・・・そう緊張しなくて良いよ?さぁ、紅茶が冷めてしまうよ?」

 

「は、はい・・・いただきます」カチャ コクリ・・・

 

 

シャルロットはウィッチーに促されて、紅茶を飲んだ・・・

 

 

「・・・おいしい・・・おいしいです!」

 

「良かった・・・何か摘まむかい?」

 

「はい、いただきます!」

 

 

それから二人は和やかに会話を酌み交わした・・・

ウィッチーが紅茶を飲み終えると口を開いた・・・

 

 

カチャリ・・・

 

「ところでms. デュノア?」

 

「シャルロットで構いません、ウィッチーさん」

 

「そう・・・ならシャルロットちゃん、君はアキトから「どのくらい」聞いてる?」

 

「え?「どのくらい」って・・・僕はアキトから「知人を紹介する」としか・・・」

 

「え?・・・そうなのかい?」

 

 

シャルロットの答えにウィッチーは少し怪訝な顔をした・・・

 

 

「それが何か?」

 

「いや・・・変な事を聞いたねシャルロットちゃん・・・紅茶のおかわりは?」

 

「ありがとう、いただきます」

 

「デュノア様、朝食をお持ちしました」カチャリ

 

 

オクロックがシャルロットの朝食をテーブルに運んで来ると・・・

 

 

ドバン!

 

「失礼しますぜ」

 

「この!離しやがれ!アホカード!」

 

 

ジタバタするガントレットを担いだ「血まみれのアキト」が扉を蹴って開けた・・・

 

 

「ぶっ!?ア、アキト!?」

 

「おん?シャルロットは朝食あるのかよ!オクロック、俺にも頼むよ」

 

「えぇ、では用意してきますよ」

 

「あ!その前にガントレットの手当て頼むわ」

 

「はいはい、わかりましたよ」

 

 

アキトはガントレットを担ぎながら、オクロックと話していた・・・

 

 

「そうじゃなくて!大丈夫なの?!アキト!そんな血まみれで?!!」トトト・・・

 

 

シャルロットは焦りながらアキトに近寄っていった・・・

 

 

「あぁ、大丈夫だから心配すんな、あと近寄んな血で汚れるぞ」

 

「で、でも~!」

 

「だぁぁぁ!心配するなっての!大丈夫だから!」

 

「と言うか!そんな話をする前に私を離しやがれ!」

 

「わかったわかった!ガントレットもそう暴れるな!」

 

 

アキトは暴れるガントレットを降ろして、テーブルに着いた・・・

 

 

「フフ♪今回も派手にやったね、アキト?」

 

「あぁ結構ボカスカ殴られたよ、アイツの血の気は変わらないね~」

 

「アホカード!テメェも結構変わらな――ってイテテ!エーヴェル痛い!」

 

「大人しくしなさい・・・まったく何時も何時も・・・」

 

 

オクロックはガントレットの手当てをしていった・・・

 

 

「それでウィッチー卿?どうだい?シャーロットは?」

 

「シャーロット?・・・あぁ、英語読みか・・・良い子だね、初対面でも好印象だよ・・・これなら「養子」に迎えても構わないよ」

 

「・・・・・・へ・・・?」

 

 

ウィッチーの発言にシャルロットは一旦フリーズすると・・・

 

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」ガタン

 

 

驚きの叫びをあげた・・・

 

 

「っ!?うるせぇよ!シャーロット!」

 

「ど、ど、ど、ど、どういう事なのかな?!アキト!」

 

「聞いての通りシャルロットちゃんをボクが養子という形で引き取ると言う事なんだが・・・アキト?話してなかったね?」

 

「あれぇ?話してなかったっけ?」

 

「話してないよ!聞いてないよ!今!初めて聞いたよ!」

 

「まぁ、良いじゃない」

 

「良くないよ!」ガシッ ブンブンブン

 

「うげげげ~」

 

 

シャルロットは余りの驚きに半分錯乱して、アキトの首根っこを掴んで激しく振った・・・

 

 

「しかし、ヴァレンティーノおじ様から聞いた時はボクもビックリしたよ・・・彼女を助ける為にボクの、ウィッチー家の養子にするなんてさ」

 

「え!?そ、そうなの?アキト?」

 

「まぁ、そうなんね・・・ツか首離せ」

 

「あ・・・ごめん・・・」パッ

 

 

シャルロットは首根っこを離すとアキトは襟元を正した・・・

 

 

「それで?どうだ?ウィッチー卿の養子になるか?」

 

「そ、それは・・・」

 

「なんだお前!御嬢様の好意を無下にするのか?!」

 

「まだ、手当ては終わってませんよヘレン・・・あと、デュノア様を睨むんじゃありません」

 

「でもよぉ!エーヴェル!」

 

 

ガントレットはシャルロットに詰め寄ったが、エーヴェルに怒られた・・・

 

 

「いや!お話しはありがたいです・・・ありがたいんだけど・・・こんな急に言われても・・・」

 

「フフ♪確かにそうかもね?そんなにすぐにボクも返事を求めないよ」

 

「そぉそぉ、ユックリと考えろよ」

 

「君が言うなよアキト?」

 

「コイツはスイヤセン!それよりオクロックさんや?」

 

「なんですか?暁様?」

 

「あ、暁様て・・・まぁ良いや・・・俺の飯は?」

 

「君は何時もいつも食い気だねアキト?」

 

 

そんな感じで朝の会合は過ぎて行った・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 



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報告文と魔女からの贈り物・・・

連日・・・連続・・・
シリアス書きたい・・・
シリアル書きたい・・・


 

 

ノーサイド

 

 

 

ウィッチー邸での朝食を食べ終えたアキトは血まみれの上着をオクロックに渡し、シャルロットを学園まで送ると「上着を取りに行く」と言う名目でウィッチー邸に引き返した・・・

 

 

 

広間にて・・・

 

 

ガチャリ・・・

 

「ただいま~・・・ってのは可笑しいか・・・」

 

「可笑しくはないよ?アキト」コクリ

 

 

テーブルで紅茶を啜りながら、ウィッチーはアキトの独り言に答えた・・・

 

 

「なんだ、居ましたかウィッチー卿」

 

「「なんだ」とはヒドイな・・・アキト、君がボクの家に婿に来てくれれば、ここは君の家になるんだけど?」

 

「あ~・・・その話なら考えておくよ・・・俺にそんな資格があるかどうかだけどね・・・」チラリ

 

 

アキトはそう言いながら、「片足義足姿」のウィッチーを見た・・・

 

 

「・・・まだ・・・歩けないのか?」コツコツコツ・・・ストン

 

 

そう言いながら、アキトは車椅子に座るウィッチーに近づき、膝まずいた・・・

 

 

「練習はしているんだけどね・・・彼女、シャルロットちゃんは?」

 

「無事に送り届けたよ・・・トマトジュースかなんか無い?」

 

「あるよ?取ってこようか?」

 

「・・・ガントレットやエーヴェルは?」

 

「ちょっと仕事を頼んでいてね・・・」

 

「そうか・・・手伝おうか?」

 

「うん・・・頼むよ・・・」ガシッ

 

 

ウィッチーはアキトの肩に掴まると立ち上がって、キッチンの冷蔵庫まで歩いていった・・・

 

コツ コツ コツ コツ コツ コツ・・・

 

「よいしょっ、よいしょっ、よいしょっと」

 

「大丈夫か?ウィッチー卿?」

 

 

歩みは遅いが、着実に一歩一歩・・・

 

コツ コツ コツ コツ コツ・・・コツリ

 

「着いた・・・やっぱり義足で歩くのは疲れるね・・・ノアちゃんに作ってもらった義足なのになぁ・・・」

 

「・・・ウィッチー卿も飲むか?トマトジュース」

 

「うん・・・頂こうかな♪」

 

 

アキトは冷蔵庫からトマトジュースをとると、ウィッチーをお姫様抱っこして、車椅子に座らせた・・・

 

 

コクリ コクリ

 

「プハ~・・・美味しい・・・」

 

「確かにね・・・コイツは旨いよ」

 

「君には血のほうが良いんじゃない?」

 

「い~や、トマトジュースにはトマトジュースの旨さがあるからな」

 

「ふ~ん・・・よくわかんないや」

 

「ニョホホホ♪さよか・・・」

 

「それよりアキト、フランスの二人からの報告文が来たよ」

 

ペラッ

 

そう言いながら、ウィッチーは書類をアキトに渡した・・・

 

 

「・・・俺が報告文を読む前に質問いいか?」

 

「なんだい?アキト?」

 

「・・・いや・・・なんでもない・・・報告文をくれ」

 

ペラリ

 

アキトは報告文を読んだ・・・そこには・・・

 

 

 

 

 

 

 

――報告――

 

フランス政府をゴシップの情報で脅迫し、外部に情報が漏れなくした上で、デュノア社に政府査察の名目で潜入・・・

先に現地に入っていたパッショーネの構成員とともに会社内のホムンクルスを破壊し、会社を制圧

だが会社内のホムンクルスの一体がこれに気付き、核鉄を持って逃走・・・

P.S

制圧後にわかった事だが、デュノア社の社長「アルベール・デュノア」は2ヶ月前にホムンクルス達に補食されていた・・・

社長を補食したのは核鉄を持って逃走したホムンクルスと同一・・・そのホムンクルスの名前は「キャロライン・デュノア」・・・

現在、行方不明・・・

 

 

 

 

 

・・・と書かれていた。

 

 

「・・・」ビリッ

 

 

アキトは無言のまま報告文を破り・・・

 

 

「アキト・・・?」

 

「・・・糞っ!クソッ!!くそっ!!!」ガンッ

 

 

テーブルに破った報告文を叩きつけた・・・

テーブルにはヒビが入り、アキトの手は血が滴った・・・

 

 

「アキト・・・」ギュッ

 

「・・・悪い・・・少しイラついた・・・」

 

 

ウィッチーはアキトの手を両手で包み込むと、アキトは落ち着きを取り戻した・・・

 

 

「しかし・・・シェルスやガブさんの攻撃を避けたか・・・油断ならねぇな・・・」

 

「それよりもアキト・・・どうするの?」

 

「なにがさ?」

 

「シャルロットちゃんにこの事をどう伝える気なの?」

 

「・・・それは・・・」

 

 

ウィッチーの発言にアキトは口ごもった・・・

 

 

「・・・どうにかして伝えるよ・・・一応、俺が請け負った仕事だからな・・・あと」

 

「ん?」

 

「ガントレットにオクロック・・・貴様ら見ているな!」

 

 

アキトは近くの壁に指を突きつけると・・・

 

 

「ッチ!見つかったか!」

 

「だから止めておくように言ったんですよ」

 

「ウッセェ!エーヴェル!お前こそノリノリだったクセに!」

 

「お前らなぁ・・・」スクッ

 

 

アキトは頭を抱えながら、椅子から立ち上がった・・・

 

 

「おや?帰るのかい?」

 

「あぁ・・・あんまり遅くなると、怒るヤツがいるんでな・・・」

 

「結構モテモテだねアキト?シェルスにチクるよ?」

 

「止めてくれ・・・」

 

「フフ♪冗談だよ冗談」

 

 

ウィッチーは悪戯っぽい顔をアキトに向けた・・・

 

 

「ヤレヤレ・・・」

 

「待ってよ、アキト」

 

「今度は何?」

 

「上着を忘れていくのかい?」

 

「あ・・・そうだったな」

 

「バ~カ、バ~カ!」

 

「うるせぇ、ガントレット」

 

「フフ♪エーヴェル?」

 

「はい、御嬢様・・・」コツコツコツ・・・

 

 

ウィッチーに呼ばれたエーヴェルは「2」着の服を持ってきた・・・

 

 

「おん?俺2着も預けてたか?」

 

「違うよ・・・1着はボクからの贈り物だよ」

 

「へぇ!ありがとうウィッチー卿!」

 

 

ウィッチーから贈られた服は緑と白の網目柄であった・・・

 

 

「また来てよ?アキト?」

 

「あぁ、じゃあな「ヴァイオレット」」

 

「っ!?」

 

「オクロックもガントレットもじゃあな!お邪魔しました~」

 

コツコツコツ・・・ガチャン・・・

 

 

そう言いながら、アキトは学園に帰っていった・・・

その一方、ウィッチー邸の主はと言うと・・・

 

 

「ズルい・・・ズルいよアキト・・・最後に名前で呼ぶなんて///」

 

 

顔を林檎のように赤くしていた・・・

 

 

 

だが人外は魔女が赤くなっているのを知らないのももちろんだが、学園も大変な事が起きていたのも知らなかった・・・

 

 

 

 

 

 

←続く

 

 

 




更新速度遅くなります・・・悪しからず・・・


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襲撃者と復讐者・・・上

胃もたれが・・・皆さんも体調に気を付けてください


 

ノーサイド

 

 

アキトがウィッチー邸にいる頃・・・

 

学園では・・・

 

 

「おや、これはマズイですね・・・よりによって彼が留守の間に・・・」

 

 

IS学園の学園長である十蔵が学長室でモニターを見ながら、呟いていた・・・

そのモニターには・・・ある襲撃者の一団が写っていた・・・

 

 

「なるべく早く帰って来てくださいよ?アーカード君?」

 

 

 

 

 

 

 

職員室にて・・・

 

 

 

ドォッーーーン!!!

 

 

「なっ、なに!?」

 

「なんだ!?」

 

 

突然の爆音に職員室は騒然となった・・・

 

ガヤガヤガヤ・・・

 

「み、皆さん!落ち着いてください!」

 

「山田先生、生徒達の避難を」

 

「え!?織斑先生は?」

 

「学園長の招集がかかったので行ってくる」

 

「は、はい!それでは訓練通りに避難を!」

 

「頼のんだ」

 

ガラリ・・・タタタタタッ・・・

 

 

千冬は職員室を出て、学園長の所へ・・・

真耶は生徒達の避難にかかった・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

学長室にて・・・

 

 

ガヤガヤガヤ・・・

 

学長室には学園長に招集されたある教師達が集まっていた・・・

その教師達は学園の教師部隊である・・・

 

 

「皆さん、お集まり下さって感謝します・・・皆さんを招集したのは他でもない・・・襲撃者です」

 

「「「「「「「っ!」」」」」」」

 

「学園長!本当ですか?!」

 

「はい、襲撃者は壁を爆破して学園に侵入・・・そのまま寮を目指して進行中です」

 

「襲撃者の人数は?」

 

「現在不明です・・・織斑先生、生徒達の方は?」

 

「はい、訓練通り第一アリーナへ避難を」

 

「わかりました・・・しかし、襲撃者の中にISを装備した者がいます」

 

「「「「「「「っ!」」」」」」」ザワザワ

 

「静かに・・・それでは皆さん頼みましたよ?」

 

「「「「「「「はい!」」」」」」」ゾロゾロ・・・

 

 

ざわめいた教師達を十蔵を諌めると、教師達は持ち場に行った・・・

 

 

「・・・さて、私も用意をしますか・・・」ガチャリ

 

 

十蔵は机から銃を取り出した・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

廊下にて・・・

 

 

ザワザワ・・・

 

廊下は避難していく生徒で溢れていた・・・

 

 

「うわぁ・・・多いね」

 

「だな」

 

 

シャルロットやラウラもその溢れている中にいた・・・

 

 

「それよりなんだ?この騒ぎは?」

 

「なんか火事みたいだよ?」

 

「爆発音がしたが・・・」

 

「ガス爆発なのかな?」

 

「そうじゃない気がするが・・・」

 

 

ドゴォッン!

 

「「っ!?」」

 

「また爆発!」

 

「なんなのよ!もう!」

 

「デュノア?」

 

「シャルロットで良いよ、ボーデヴィッヒさん」

 

「なら私もラウラで構わない・・・シャルロット?」

 

「何?ラウラ?」

 

「専用機は持ってきたか?」

 

「え?」

 

 

カランカラン・・・シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・

 

「なっ、なに?!」

 

「なんか・・・眠たく・・・」バタリ

 

「Zzzzzz ... 」

 

 

廊下の奥から何かが投げ込まれた・・・

塊からはガスが噴出され、生徒達は倒れだした・・・

 

 

「こ、これは!?」

 

「シャルロット!身を低くしろ!」ガシッ

 

「うわっ!」

 

ガチャ バタン・・・

 

 

ラウラはシャルロットを別の部屋に引き釣りいれた・・・

 

 

バタン・・・

 

 

 

―――

 

 

 

部屋にて・・・

 

 

「ごほっ!けほっ!・・・ちょっと!ラウラ!何すんのさ!」

 

「シッ!シャルロット、声を低く・・・」サッ

 

 

ラウラは扉に耳を当てた・・・

 

 

「・・・何やってるの?」

 

「静かに・・・」ピタリ

 

コトコトコト・・・

 

「いたか?」

 

「コイツか?」コトリ

 

「Zzz ... 」

 

「違う、金髪のヤツだ」

 

 

廊下では全身フルアーマー装備の襲撃者が眠った生徒達を顔を見ていた・・・

 

 

「マズイな・・・」

 

「ラウラ?」

 

ラウラは扉から耳を離すとシャルロットの方を向き・・・

 

 

「シャルロット、これは火事ではない・・・襲撃だ」

 

「え!?襲撃?なんで?!」

 

「さぁ?こっちが知りたい・・・それより、この状況から脱出しよう・・・専用機は持ってきたか?」

 

「う、うん・・・一応持ってきたけど・・・どうするの?」

 

「取り合えずは避難場所の第一アリーナまで行くぞ」

 

「う、うん」

 

ガチャリ・・・

 

睡眠ガスから難を逃れたシャルロットは軍人であるラウラに手を引かれて、第一アリーナへ向かっていた・・・

 

 

 

―――

 

 

ラウラは自分の専用機のレーダーを使って進んでいた・・・

 

コトコトコト・・・

 

「シャルロット?」

 

「何?ラウラ?」

 

「お前はアキトと何をしていたのだ?」

 

「え!?そ、それは・・・」

 

「・・・変な事を聞いたな、忘れてくれ」

 

「え、いや大丈夫だよ・・・」

 

「そうか・・・ん?」

 

ピコーンピコーン

 

 

ラウラのレーダーに赤い点滅がつきだした・・・

 

 

「・・・シャルロット、専用機の武器を展開しろ・・・来るぞ」

 

「え、武器って・・・」

 

「相手はテロリストかもしれない・・・攻撃の準備はしておけ」シュッン

 

「う、うん!」シュッン

 

 

ラウラは専用機からハンドガンをシャルロットはサブマシンガンを展開した・・・

 

 

ピコーン

ピコーンピコーン

ピコーンピコーンピコーン

 

反応は段々と強くなっていった・・・

 

スタスタスタ・・・ピタリ

 

「・・・」チラリ

 

 

ラウラは壁に張り付き、壁の向こうを覗くと・・・

 

 

「こちら、α1・・・目標はまだ発見できず」ジジッ

 

「「こちらα0・・・良く探せ!オーバー」ピキリ

 

 

フルアーマーの襲撃者数人がライフルを構えて、たむろしていた・・・

 

 

「通信機器を持っているのが一人か・・・」チャキリ

 

 

ラウラはハンドガンのセーフティーを外し、撃鉄を起こした・・・

 

 

「ちょっ!?ラウラ?!」

 

「どうした?シャルロット?」

 

「「どうした」じゃないよ!戦うの?」

 

「ヤツらを倒さなくてはアリーナには進めない・・・大丈夫だ、殺しはしない・・・私がやる」

 

「・・・わかった」

 

 

ジャキリ・・・バッ

 

「動くな!」

 

 

ラウラはハンドガンを襲撃者に構えた・・・

 

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

「床に銃を捨てて――」

 

 

ラウラは襲撃者に警告をしようとしたが・・・

 

ジャキリ・・・

 

ズダダダダダダダダッ!

 

「くっ!」

 

「きゃぁぁぁっ!?」

 

 

襲撃者達は問答無用に銃を撃ってきた・・・

 

 

「話し合う気はないようだな!」

 

「ど、どうするの?!」

 

「強行突破だ!」シュッン ジャキリ

 

 

ラウラはハンドガンからレールカノンに持ちかえると・・・

 

バッ

 

「喰らえ!」

 

ズガン!ズガン!

 

ドゴォッン!

 

「ぐわぁっ!」

 

「どわっ!」

 

 

襲撃者はカノンの衝撃により、吹き飛ばされた・・・

 

 

「こちらα1!攻撃をうけた!反撃を開始する!」

 

「待て!あれは!」

 

「え!?」

 

 

吹き飛ばされなかった襲撃者達はシャルロットの顔を見ると・・・

 

 

「目標を発見!目標の「シャルロット・デュノア」を発見!」

 

「「こちらα0、生きて捕獲しろ!オーバー!」」

 

「了解!」ピキリ

 

ズダダダダダダダダッ

 

襲撃者達は反撃をしてきた・・・

 

 

「聞いたか?!シャルロット!」

 

「うん!どうやらボクが目的みたいだね!」

 

「なら!」ズシュン

 

「遠慮はいらないね!」サシュン

 

 

二人は専用機を全身展開すると・・・

 

 

「「テヤァァァァァ!!」」ドゴォッン!

 

「「「ぐわぁっ!」」」

 

 

そのまま襲撃者達を蹴散らして、建物から脱出した・・・

 

 

「このまま、アリーナに――ぐわぁっ!?」ドガァッン!

 

「ラウラ!?」

 

 

建物から脱出したのも束の間、ラウラは銃撃をうけ、地面に落下した・・・

 

 

シュゥゥゥ~

 

「ラウラ!大丈夫?!」

 

「あぁ、何とかな・・・だがSEのゲージを1/3減らされた」

 

「え!?ということは・・・ISの攻撃!?」

 

 

地面に落下したラウラに寄り添ったシャルロットは辺りを見渡した・・・

 

 

「無駄だ、シャルロット・・・ヤツらはプロだ・・・お前だけでも逃げろ!」

 

 

ラウラはシャルロットに逃げるように言ったが・・・

 

 

「そんな事出来ないよ!」

 

「っ!何故だ!ヤツらの目的はお前だぞ!お前だけでも――」

 

「嫌だ!友達を置いていけれないよ!」

 

「!・・・フフ♪好きにしろ」

 

「あぁ、好きにするさ!」ガシッ

 

 

シャルロットはラウラの肩を担いでアリーナを目指して進んだ・・・

そんな二人を見る狙撃手がいた・・・

 

 

「ククク♪さぁ、逃げなさい・・・狩りはまだまだこれからよ・・・」

 

 

不敵な笑みを浮かべて・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

アリーナにて・・・

 

 

ガヤガヤガヤ

 

 

ここには避難指示を受けて生徒達が集まっていた・・・

 

 

「まだ消火できないのかな?」

 

「結構かかるね~」

 

ガヤガヤ

 

「はーい!皆さん!静かに~!」

 

 

事情を知らない生徒達を真耶はおさめていた・・・

そんな中・・・

 

 

キョロキョロ・・・

 

「ん~?セシリーどうしたの~?」

 

「あ!布仏さん、シャルロットさんを知りませんか?何処にもいなくて・・・」

 

 

セシリアがキョロキョロとシャルロットを探していた・・・

 

 

「そう言えば~、ラウラウもいないね~?」

 

「らうらう?」

 

「ボーデヴィッヒさんの事~」

 

「あぁ、彼女ですか・・・」

 

「どうしたんだよ?二人とも?」

 

 

二人が話をしていると、一夏が話し掛けて来た・・・

 

 

「あ!一夏さん、シャルロットさんを知りませんか?」

 

「え?シャルか?見てないけど・・・」

 

「・・・まさか、逃げ遅れたのかな~?」

 

「「「「「「「っ!」」」」」」」

 

 

本音の一言に周りにいた生徒達は顔を青ざめた・・・

 

 

「そうだとしたら・・・」

 

「マズイな!そんな事なら早く助けに!」ダッ

 

 

一夏はアリーナの入口に足を向けたが・・・

 

 

「ダメですよ!織斑くん!」ザッ

 

 

真耶が立ち塞がった・・・

 

 

「山田先生!そこを退いてください!」

 

「ダメです!これは皆さんの安全の為に――」

 

「シャルがいないんですよ!」

 

「え!?」

 

「まだ外にいるかもしれないので、俺が白式で見てきます!」

 

「で、でも・・・」オロオロ

 

「あぁ!もう焦れったい!それでは先生!」ダッ

 

「あぁ!織斑くん!?」

 

 

一夏はオロオロする真耶を通り越して、アリーナの外へと走っていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

寮付近にて・・・

 

 

生徒達がアリーナに避難している頃・・・

 

 

ズダダダダダダダッ!

 

「ちょっと!何よあれは?!」

 

「ヤツら、「IS用」の火器を使っている!?」

 

 

教師部隊と襲撃者が撃ち合っていた・・・

 

 

「織斑先生?どうします?」

 

「そうだな・・・敵は少数だ・・・一気に殲滅!火力で押しきるぞ!」

 

「「「「「「「はい!」」」」」」」

 

 

ズダダダダダダダダッ!

ズガガガガガガガガガガガ!

 

 

千冬の指揮により・・・

 

 

「ぐぁっ!」バタリ

 

「大丈夫か?!」

 

「もう、持たない・・・うぅ・・・」

 

 

襲撃者は一人、また一人と銃弾に倒れていった・・・

だが!

 

 

「うぅ・・・」

 

「おい!大丈――っえ?」

 

「UGAAAAAっ!」ガブリッ

 

「ぎゃぁぁぁぁあっ!?」

 

 

負傷した襲撃者の一人が仲間の襲撃者の首に噛みついた・・・

 

 

「な、なに?」

 

「仲間割れ?」

 

「待て!様子がおかしい!」

 

 

教師部隊が異変に気付いたのか、攻撃を止めた・・・

 

 

「お、お前まさか!ホムン――」

 

「KUWASEROOOOOo!!!!!!」

 

「うぎゃぁぁぁぁあっ!」

 

ブシュゥゥゥゥゥッ

 

土煙の中からはそれまでとは違い、断末魔が聞こえだした・・・

 

 

「こ、こんなの聞いてないぞ!」

 

「に、逃げ――」

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAAっ! 」

 

「ぎゃぁぁぁぁあっ!」

 

「た、助け――ぎぃぁあぁぁああっ!」

 

ブシュゥゥゥゥゥッ・・・

 

断末魔が続いたが、すぐに止んだ・・・

その断末魔の変わりに聞こえて来たのは・・・

 

 

グチャ グチリ ガチリ グチャリ・・・

 

 

まるで肉を引きちぎるような音が聞こえてきた・・・

 

 

「な、何よ・・・この音?」

 

「テロリストは・・・?」

 

 

教師達が突然の出来事に戸惑っていると・・・

 

 

ヒュ~ン     ベチャ

 

 

土煙の中から、何かが投げられた・・・

その投げられたモノは・・・

 

 

「ひぃぃっ!?」

 

 

食いちぎられた、人間の上半身だった・・・

 

 

「う、うげぇぇぇ・・・」

 

「な、何よこれは!?」

 

 

教師達は突然の事に動揺した・・・が!

 

 

「っ!皆!来るぞ!」

 

「「「「「「「っ!」」」」」」」

 

 

千冬の一声に教師達は反応したが・・・

 

 

「GYAAAAAAA !」ビュッン

 

「きゃぁぁぁっ!?」バキィッ!

 

 

教師の一人が何かの攻撃の餌食になった・・・

 

 

「痛い!痛いぃぃぃ!足が!足がぁぁぁ!」

 

 

攻撃はISの防御を貫き、足の肉を抉った・・・

 

 

「大丈夫か?!!」

 

「ふ、負傷者を引き下がらせろ!」

 

 

教師達は負傷者を後ろに引き下げ、臨戦体制をとった・・・

少しずつ、土煙が晴れていくと・・・そこには・・・

 

 

「な、なんだ・・・あれは!?」

 

 

3mはあるかという、異形のゴリラが牙を向けていた・・・

 

 

「GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!! 」ドンドンドン!

 

異形のゴリラは激しくドラミングをして、教師部隊に襲いかかった!

 

 

「く、来るなぁぁぁ!」ズガガガガ!

 

 

教師の一人がゴリラに向けて、サブマシンガンを乱射し、ゴリラに命中したが・・・

 

 

「Gaaaaaaaaa !」バキィッ

 

「きゃぁぁぁっ!!」

 

 

ゴリラは教師にマウントをとり、殴りだした!

 

 

「いやぁ!た、助けてぇ!!」

 

「やめろぉぉぉ!」ブシュゥゥゥゥゥッ!

 

「Gyaaa !?」

 

 

教師を助けるために打鉄を纏った千冬は刀でゴリラの頭を横一線に切った・・・

ゴリラは教師から離れたが・・・

 

 

「Gggggiiiaaa・・・」ビキビキビキ

 

「さ、再生している・・・だと?!!」

 

 

ゴリラの切られた頭や撃たれた体は自己再生を始めていた・・・

 

 

「なんだ・・・なんなんだ!お前は!」

 

「ひ、ひぃ!た、助けて!」

 

「こ、これは一体・・・?!」

 

 

千冬はゴリラに驚嘆し、襲われたラファーレルを纏った教師は怯え、残された教師は動揺していると・・・

 

 

「GaGaGaGa・・・SERO!」

 

「な、何?」

 

「KUWASERO!クワセロ!!喰わせろぉぉぉ!!! 」ドンドン

 

「しゃ、喋っている・・・?!」

 

 

ゴリラはまたドラミングをしながら叫び声をあげ、また教師達に襲いかかろうとした・・・が・・・

 

 

チャキ

 

ズダァァァァァァッッッン!

 

 

「Gaaaaaaaaa!!?!?」ブジュゥッ!

 

「「「「「「「っ!?」」」」」」」

 

 

教師部隊の後ろから発射された弾丸がゴリラの肩を鈍く撃ち抜いた!

千冬が後ろを振り向くと、そこには・・・

 

「あ、貴方は!?」

 

「ヤレヤレ・・・よりによって「彼」と更識さんが居ない間に襲撃・・・しかもホムンクルスが混ざっているとは・・・」クルクル

 

「学園長!?」

 

「とんだ休日ですよ・・・」チャキ

 

 

リボルバー拳銃をクルクルと回す、十蔵がいた・・・

 

 

「学園長!ここは危険です!我々が――」

 

「すいません・・・織斑先生、それは出来ない相談ですね!」ズダァン!

 

「Gyaaa !?」ブジュゥッ!

 

 

十蔵は引き続いて、ゴリラの間接部位を撃ち抜いた・・・

 

 

「AAAA・・・ナンデダ!?ナンデダ?!」

 

「え?何がです?」

 

「ナンデダ!?ナンデ再生シナイ!?」

 

 

ゴリラは撃ち抜かれた部位を押さえながら、十蔵に叫んだ・・・

 

 

「それはですね・・・まぁ、昔とった杵柄ですかね?」

 

「何を言ってヤガル?!コノ糞野郎――」

 

「少し黙れ・・・」ズダァン!

 

「グギャア!?」ブジュゥッ

 

 

十蔵はまたゴリラの間接部位目掛けて、引き金を引いた・・・

 

 

「コ、コノ野郎・・・」

 

「さて・・・今度はこちらの質問だ・・・貴方達のボスはどこだ?」

 

「学園長?一体何を?」

 

「・・・ククク・・・GyaHAhAhaHa♪」

 

 

十蔵の質問にゴリラは下卑た笑いをあげた・・・

 

 

「・・・何が可笑しい?」

 

「HAhAhaHa♪」

 

「・・・」チャキ

 

ズダン! ズダン!

 

「GuGyaaa! 」ブシュゥゥッ

 

「が、学園長・・・?!」

 

「ご託は良い・・・貴様の親玉は何処にいる・・・?」

ゴゴゴゴゴッ

 

 

十蔵は怒気を含んだ声で、ゴリラに聞いた・・・

 

 

「ゴフッ・・・ボスなら・・・ターゲットヲ見つけて・・・ソチラに行った・・・ゴフッ」

 

「ターゲット?・・・ターゲットとはなんだ?」

 

「ククク・・・誰が教エルカ、この糞ヤロウ・・・」

 

「そうですか・・・なら・・・」

 

 

十蔵は懐から赤い弾丸を取りだし、銃に込めると・・・

 

 

「貴様はもう用済みだ・・・」チャキ

 

ズダァァァァァァッッッン!

 

「っ!」ゴブチャァッ!

 

 

ゴリラの頭に弾丸を喰らわせた・・・

ゴリラは断末魔もあげられぬまま、頭が吹き飛んだ・・・

 

 

「が、学園長・・・?」

 

「あ~ぁ・・・返り血で服が汚れてしまいましたね・・・織斑先生?負傷者は?」

 

「は、はい!約2名います!」

 

「そうですか、では負傷者は至急治療所へ運んでください」

 

「はい!」

 

ピリリリ ピリリリ ピリリリ

 

 

十蔵が千冬に指示を出していると、千冬の携帯電話がなった・・・

 

 

「私だ、どうした?山田先生?」

 

「「せ、せ、先輩!あのそのですね!!」」

 

「落ち着け!山田先生!」

 

「「は、はひぃ!スゥハァ スゥハァ・・・」」

 

「それで要件はなんだ?」

 

「「はい!デュノアさんとボーデヴィッヒさんの行方がわかりません!それで、二人を探すために織斑くんが探しに行ってしまいました!」」

 

「な、なんだと!?本当なのか!真耶?!」

 

「「すいませぇぇん!先輩~!」」ピ~

 

「泣くな!真耶!すぐにそちらに向かう!誰一人としてそこから出すなよ!わかったな!」

 

ピッ

 

千冬は電話の向こうで泣く真耶に指示をだして、電話を切った・・・

 

 

「どうしました?織斑先生?」

 

「すいません学園長、一夏・・・じゃなくて織斑が避難場所から学友を探しに出ていったそうで・・・」

 

「そうですか・・・ならここは、私に任せて行ってください」

 

「はい!失礼いたします!」

 

タタタタタタタタタタッ・・・

 

 

千冬は一目散にかけて行った・・・

 

 

「ヤレヤレ・・・早く帰って来てくださいよ?アーカードくん・・・」

 

 

残された十蔵は大きく溜め息をついた・・・

 

 

 

一方のアーカードこと、アキトは・・・

 

 

「あぁ!なんでこんな時に限ってガス欠なんだよ!このマヌケがぁぁぁ!」

 

 

バイクのガス欠で足をとられていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




続き・・・どうしましょう?!!!


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襲撃者と復讐者・・・中

展開が早い・・・人はそれを何と言うのか・・・?


ノーサイド

 

 

廊下にて・・・

 

 

一夏はアリーナから出てシャルロットとラウラの二人を探していた・・・

 

 

コツコツコツコツコツ・・・

 

「可笑しい・・・火事なのに煙の1つもないじゃないか、しかも空気中の変化もない・・・一体何がどうなってるんだ?」

 

 

一夏がそんな疑問を持ちながら、廊下を歩いていると・・・

 

 

ドガァァァァァッン

 

「のわっ!?な、なんだ!?これは整備室からか?!」

 

タタタタタタタタタタッ・・・

 

 

一夏は爆発音のあった場所へと走っていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

整備室前廊下にて・・・

 

 

タタタタタタタタタタッ・・・

 

「確かここから・・・あっ!」

 

 

一夏が整備室に来て、見たものは・・・

 

 

「ラウラ!」

 

「う、うぅ・・・」

 

 

頭から血流し、倒れているラウラであった・・・

そんなラウラに一夏は駆け寄った・・・

 

 

「おい!しっかりしろラウラ!」

 

「うぅ・・・お、お前は織斑一夏か・・・?」

 

「どうした?!一体何があったんだ!?」

 

ガシッ

 

 

一夏がラウラに問いかけると、ラウラは一夏の胸ぐらを掴み引き寄せ、事情を話した・・・

これは火事ではなく襲撃だということ・・・

そして、今シャルロットが敵と交戦をしていることを・・・

 

 

「ラウラ!シャルロットは何処にいる?!」

 

「私を巻き込まない為に一人でヤツと・・・ぐぅ!」

 

「大丈夫か!おい?!」

 

「大丈夫だ・・・そんな事より、シャルロットを!シャルロットを助けに!」

 

「わかったからそれ以上喋るな!すぐに助けが来る!それまで持つか?」

 

「あぁ・・・頼むぞ!織斑一夏!」

 

「あぁ!任せとけ!」シュン

 

ビュォッン!

 

 

一夏は白式を纏うと、爆発音の方向に飛ばしていった・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

整備室にて・・・

 

 

ズガガガガガガガガガガガ!

 

ズガァッン!

 

 

整備室ではラファーレル・リヴァイブを纏ったシャルロットがフルフェイスマスクとISを纏った襲撃者と戦闘を繰り広げていた・・・

 

 

「このぉっ!」ズガァッン!

 

「フフフ♪」

 

 

戦闘は襲撃者の方が二、三枚上手であるのか、シャルロットは防戦一方であった・・・

シャルロットの銃撃を襲撃者はいとも簡単に避けていた・・・

 

 

「アタレェェ!」チャキ

 

「はい♪残念!」チャキ

 

ズガガガガガガガガガガガ!

 

「うわぁっ!?」ドゴザァァァッ

 

 

シャルロットは敵の攻撃をモロに喰らい、地面に打ちのめされた・・・

 

 

「ぐ、ぐぐぐ・・・」ザッ

 

「ハァ~・・・もうそろそろ終わりにしない?シャルロット?」スチャ スゥゥゥ・・・

 

 

襲撃者はシャルロットの名前を呼びながら、地面に降り、近づいていった・・・

 

 

「ど、どうして私の名前を?」

 

「あら?覚えてないの?貴女の「ママ」を?」

 

「ま、ママ・・・?」

 

「このマスクじゃわからないかな・・・」ザルリ

 

「っ!?」

 

 

襲撃者はフルフェイスのマスクをとると・・・そこには!

 

 

「きゃ、「キャロライン」・・・さん」

 

「あら?どうして「さん」付けなの?あ、そうか私がそう「躾」たんだったわね」

 

「ど、どうしてこんな事を?」

 

「「どうして?」ね・・・それを説明するのはちょっと釈にさわるけど・・・まぁ、お前が必要になったんだよ」

 

「私が・・・必要?」

 

「正確に言うと、お前の目が必要になったのよ」

 

「な、何を言って――ぐぁっ!?」バキィッ

 

 

キャロラインはシャルロットの腹を意味もなく蹴りあげ・・・

 

 

「もう黙りなさい、お前は黙って私に目を渡せばいいのよ」

 

ガシッ シュン

 

「が、あぁ・・・」

 

 

シャルロットの頭を鷲掴むと、キャロラインはナイフを取りだし、シャルロットの目に持っていった・・・

しかし!

 

 

「やめろぉぉぉぉぉぉっ!」ビュォッン

 

「なっ!?」

 

「せいやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」ブォッン!

 

「ぐあっ!?」バキィッ

 

 

一夏が表れ、シャルロットを鷲掴みにしている腕に雪片を叩きつけた!

 

 

ドタリ

 

「い、一夏・・・」

 

「大丈夫か?!シャル!」シュン

 

「うん・・・いや、結構ヤバかった・・・ありがとう」

 

「気にすんな!それよりなんだ!?アイツは?!」

 

「あの人は――」

 

「痛いわねぇ・・・男の分際で!」ズガガガガガ!

 

 

キャロラインは二人に向かって、ライフルをぶちかました・・・

 

 

「ぐぁっ!?」バキィッ

 

「一夏っ!」

 

「あら?世界初の男の「織斑一夏」?なんでこんな所に?もしかしてシャルロットの男?」

 

「アンタは一体?」

 

「あら取り合えず、自己紹介しとくわ・・・「キャロライン・デュノア」、そこにいるシャルロットの母親よ」

 

「母親!?でもシャルの母親は――」チラッ

 

 

一夏は驚嘆し、シャルロットの顔を見ると・・・

 

 

「う、うぅ・・・」

 

 

シャルロットの顔は何処か青ざめていた・・・

 

 

「・・・なるほど・・・アンタがシャルの言ってた継母か・・・」

 

「あら?シャルロット?この男に話したの?自分の惨めな出生を?」

 

「黙れ!お前はシャルに酷い事ばっかしやがったそうだな?許さねぇ!」チャキ

 

「フン、もしかしてその小娘の話を鵜呑みにしたの?世界初の男のIS操縦者と言っても所詮はバカな男ね?」

 

「うるせぇ!このオバハンがぁ!」

 

「・・・なんですって?」

 

 

一夏の一言にキャロラインはひきつった・・・

 

 

「シャルの気持ちも知らない癖にガタガタと五月蝿いんだよぉぉ!」ビュォッン!

 

 

一夏は瞬間加速でキャロラインに近づき、雪片を降り下ろしたが・・・

 

 

ガキィッン

 

「男の分際で!私を侮辱するなぁ!」ジャキ

 

ズガガガガガガガガガガガ!

 

「がはっ!?」ズザァァァッン

 

「一夏っ!」

 

 

キャロラインは雪片を簡単に受け止め、一夏の腹にサブマシンガンを撃ちまくった・・・

一夏は衝撃で吹き飛ばされた・・・

その吹き飛ばされた一夏を睨みつけながら、キャロラインは・・・

 

 

「決定よ、決定!お前はジックリとなぶり殺しにしたあとにゆっくりと食べてあげる!」

ジャキ

 

 

銃を構えながら、不穏な事を言った・・・

それに対して一夏は雪片を構え直し・・・

 

 

「良いぜ!かかって来いよ!」ジャキ

 

動けないシャルロットは見ていた、自らの為に戦う一夏を・・・

 

 

「オラァァァっ!」

 

「くぅっ!」

 

ガキァッン ガキィッン

 

 

一夏は自分の間合いにキャロラインを追い込み、有利に戦闘を進めている・・・ように見えたが・・・

 

 

ガクッ

 

「なっ!?」

 

「もらった!」チャキ ズガァッン!

 

「ぐぁっ!」バァッン!

 

 

一瞬の隙をつかれ、脇腹に銃撃を喰らった一夏は壁に叩きつけられた・・・

 

 

「さっきまでの威勢はどうしたの?坊や?」

 

「く!まだまだぁ!!」

 

 

一夏は雪片を構え直し、瞬時加速で近づこうとしたが・・・

 

シュゥゥゥン・・・

 

「なっ!?」

 

 

白式のエネルギーは限界にきていた・・・

 

 

「考えなしに瞬時加速を使うからよ!」チャキ

 

 

キャロラインは一夏に向かって、グレネード弾を込めたライフルを向け、引き金に指をかけた・・・が

 

 

ズガァッン!

 

「ぐがぁっ!?」

 

 

シャルロットが放った銃撃がキャロラインを襲った!

 

 

「一夏ぁ!いっけぇぇぇ!」

 

「おう!」ビュッン

 

 

一夏は瞬時加速とはいかないモノの高速で隙があいたキャロラインの近づき・・・

 

 

「チェストォォォォォォォォッッ!!」ザシュッ!

 

「ぐぎゃあぁっ!!!」

 

 

単一能力の「零落白夜」で斬った!

斬られたキャロラインはISのSEが0になったのか、地面に落下した・・・

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ・・・か、勝った・・・」シュゥゥゥ

 

 

一夏は一安心したのか、地面に着陸した・・・

 

 

「一夏!大丈夫?!」

 

「シャルロット、今そっちに行くから」

 

 

一夏は動けないシャルロットに声をかけ、近づこうとした・・・その時!

 

 

ドガァァッン!

 

「ぐがあぁっ!?」

 

「一夏!?」

 

 

後ろからの突然の攻撃に一夏は吹き飛ばされた!

壁にまた叩きつけられ・・・

 

 

「かはっ・・・」

 

気を失った・・・

 

 

「一夏!一夏!?」

 

 

気絶した一夏にシャルロットは近づき、体を揺すった・・・

 

 

「この糞モンキーがぁぁぁ!」

 

「ひっ!?」

 

 

シャルロットの目の前には「鎌のような触手」を背中から生やしたキャロラインがいた・・・

 

 

「よくも!よくも!よくもぉぉ!!この私に泥をつけやがってぇぇぇっ!八つ裂きにしてやる!八つ裂きにしてやるぅぅぅっ!!」ヒュンヒュン

 

 

キャロラインは触手は振り回し、辺りのモノを切り刻みながら、二人に近づいていった・・・

 

 

「こ、このぉっ!」チャキ

 

ズガガガガガガガガガガガ!

 

 

シャルロットはサブマシンガンをキャロラインに向けて発砲したが・・・

 

 

「煩わしい!」パキィッン ザシュッ

 

「きゃあっ!」

 

 

キャロラインは発砲した弾丸を跳ね返し、サブマシンガンを切断し・・・

 

グルリ グイッ

 

「うぐっ・・・」

 

 

シャルロットの首に触手を巻き付け、持ち上げた・・・

 

 

「うぐぐぐ・・・」

 

「ハァ・・・脆弱なモノね?人間は・・・」グサァッ!

 

「がっ!?」

 

 

キャロラインは刃のついた触手をシャルロットの脇腹に突き刺した・・・

 

 

「まさか、はるばるお前を追ってこんな極東に来るとわね?」

 

「え?」

 

「良いことを教えてあげる・・・あの男・・・アルベール・デュノアなら死んだわ」

 

「っ!?」

 

「あの男は私に会社を継がせずに・・・お前のような小娘なんぞに!」ギュッ

 

「ぐぐあっ・・・」

 

 

キャロラインは触手の引き締めを強くしたが・・・

 

 

「ぐぐ・・・」

 

「・・・何よ?その目は?」

 

 

シャルロットはキャロラインを睨んでいた!

 

 

「睨んでんじゃないわよ!小娘がぁ!」ギュッ~

 

「ぐぐがあ・・・」

 

「あの女と同じ目で見やがって・・・どいつもこいつもぉぉぉ!」

 

「うぁあ・・・」

 

「このまま締め殺すのも芸がないわね・・・この触手を突き刺して目玉を抉り取って、脳みそをかきみだしてやる」シャキィン

 

「ん~!」

 

キャロラインはシャルロットの目に向けて、触手を持っていった・・・

シャルロットは暴れたが触手の拘束はとけない・・・

 

 

「あわれなモノね・・・お前を救う白馬の王子様はいないのよ!」

 

 

シャルロットは走馬灯が頭を巡った・・・

このまま自分は殺されるかと覚悟した・・・

ただ・・・ただシャルロットは目から涙を流した・・・

 

 

「(助けて・・・助けて!)」

 

 

そう願った・・・

 

 

 

 

 

 

 

そんな思いなのか・・・

その思いが通じたのか・・・

 

 

「WRYYY! 」

 

 

白馬の王子ではなく・・・

 

 

「必殺!」

 

 

紅い眼をした吸血鬼が・・・

 

 

「ブラボーキィィィック!!!」

 

ドガァァァァァッン!

 

整備室の天井を蹴破って現れた!

 

 

「なっ!?」

 

「無駄ァァァ!」バキィッ

 

「ぐはぁっ!」

 

 

アキトは天井を突き抜けると、そのままキャロラインの頭に重い一発を叩きつけた!

アキトの一発を喰らったキャロラインは吹き飛ばされ壁にめり込んだ!

 

 

「き、貴様ぁぁぁ!」

 

「ニョホホホ♪ざまぁねぇな!糞ババァ!」

 

「ゲホッ、ゲホッ!あ、アキト・・・!」

 

「すまねぇなシャルロット・・・バイクがイカれててよ・・・手間取った、すまねぇ!」

 

「ば、バカぁ~!バカバカバカぁ~!怖かった!怖かったよぉ~!」

 

 

シャルロットはアキトに抱きついて、泣いた・・・

 

 

「この糞モンキーがぁぁぁ!また!また私に泥を――」

 

「ヤカマシイ!!!」ゴゴゴゴゴ

 

「っ!?」

 

 

アキトは怒気満々の威圧感を与えながら、キャロラインに言い放った・・・

 

 

「さぁ・・・反撃の時間だ!」

 

 

 

 

 

←続く

 




口調難しい・・・


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襲撃者と復讐者・・・下

無理に纏めるので・・・悪しからず・・・


ノーサイド

 

 

「さぁ・・・反撃の時間だ!」

 

┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝┣〝

 

 

今現在、アキトはキレていた・・・

それと同時に安堵していた・・・

なぜなら、シャルロットがまだ無事だったからだ・・・

 

ウィッチー邸からの帰り、十蔵からの連絡を受けたアキトはバイクを飛ばした・・・

しかし、途中でバイクがイカれた為に背中から翼を生やして、飛んで来たのだ・・・

 

 

「おうおうおうおう!テメェ、糞ババァ!キャロライン・デュノアで間違えねぇな!まさか、こんなに早くシャルロットを狙うたぁ~!頂けないぜ!」

 

「黙れ!雄ブタの分際でよくも!よくもこの私に泥をつけやがっ―「うるせぇ!ズームパンチ!」―ぶげっ!?」

バキィッ

 

 

アキトは喋っている途中のキャロラインに向けて、腕を伸ばして、殴りつけた!

 

 

「貴様っ!まだ喋っ――」

 

「ドラァッ!」ビュォッン

 

「たこすっ!」ブキィッ

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラ!」

 

「ぶげっ!ぶごっ!ばげっ!」バキィバキィバキィ

 

 

アキトは瞬間加速でキャロラインに近づくと容赦のなく、殴り続けた・・・

 

 

「貴様ぁ!!いい加減にしろ!」ビュン

 

「っ!?」サクッ

 

「アキト!」

 

「大丈夫だ、頬を切られただけだ・・・」

 

 

殴打に耐えきれなくなったキャロラインは触手で抵抗は図り、アキトの頬を切った・・・

 

 

「この雄ブタがぁぁ!一度ならず、2度までもぉ!」

 

「どうした?この糞ホムンクルス?まさか怒ってる?怒ってるの?プギャ~♪ワロスワロス♪」

 

「この糞餓鬼がぁぁぁ!」ビュン

 

 

キャロラインは激昂していた!

目の前に突然現れた、アキトにメタメタにされ、キャロラインのプライドはズタズタになっていた!

なんて柔なプライドだ!

 

そんなキャロラインは刃のついた触手をアキトに向けて、襲いかかった!

・・・のだが・・・

 

 

ギシィッ

 

「なっ!?」

 

 

キャロラインの体は「ワイヤー」によって止められた!

 

 

「おやおやおやぁ?気がつかなかったぁ~ん?」

 

「き、貴様!一体何時の間に?!」

 

 

ワイヤーに絡まったキャロラインを見ながら、アキトはケラケラと愉快に愉快にニヤケテいた・・・

 

 

「そりゃぁあぁああ、そうだもんなぁ・・・気がつかれないように張り巡らせて頂きましたアン♪」グイッ

 

「ぐぁっ!?」

 

 

アキトはワイヤーの端を引っ張ると、ワイヤーはキャロラインの触手ごと締め付けていき・・・

 

 

「く、糞餓鬼がぁぁぁ!」

 

 

愉快なヨガのポーズに拘束した!

 

 

「離せ!離しなさい!この餓鬼ぃ!」

 

「さてと・・・大丈夫か?シャーロット?」

 

ツカツカツカツカ

 

ジタバタと動き叫ぶキャロラインを余所にアキトはシャルロットのもとに歩み寄り、立ち上がらせた・・・

 

 

「もう!バカバカバカバカバカ!今までどこに行ってたんだよ!」

 

「おん?ウィッチー卿のとこだよ、言ったろ?」

 

「そうだけど!」

 

「まぁ、そんな事より・・・」グイッ

 

「えっ!?///」

 

 

アキトは突然シャルロットを抱きよせ・・・

 

 

「よく握れよ?」

 

「・・・え・・・?」チャキ

 

 

その手に拳銃を握らせた・・・

 

 

「残弾数は3発だ」

 

「ちょ、ちょっと!?アキト!?」

 

 

アキトは握らせた拳銃をキャロラインに向け、シャルロットの耳に囁いた・・・

 

 

「さぁ、シャルロット・・・復讐をしようか?」

 

冷たい宣告を耳元に

 

 

「ア、アキト・・・?」

 

シャルロットは突然の事に動揺していた・・・

 

 

「おん?どうしたよ?シャーロット?」

 

「と、突然どうしたのさ?アキト?復讐って何さ?!」

 

「「どうした」って?復讐だよ・・・復讐だ・・・お前の父親、アルベール・デュノアはそこの化け物に喰われたんだよ?」

 

「っ!」

 

 

シャルロットは顔をひきつらせて、アキトの言葉を聞いた・・・

 

 

「シャ、シャルロット!その男の言葉を聞くな!」

 

「うるせぇ・・・」ズダン!

 

「!?」

 

「ぎゃあっ!?」

 

 

アキトはシャルロットの指に沿わせていた指で引き金を引いた・・・

拳銃から発射された弾丸はキャロラインの肩を貫いた!

 

 

「き、貴様っ!一体!?一体何を?!!」

 

 

肩を撃ち抜かれた、キャロラインは悲鳴をあげた・・・

何故、悲痛な叫びをあげたかというと・・・

 

 

「何故!なんで!傷が再生しない?!」

 

 

撃ち抜かれた傷は再生するどころか、あたりを腐らせていっていたのだ・・・

 

 

「「何故」かって?この弾丸はよぉ、ちょいと特別製なのだよ・・・だから安心して・・・」

 

スチャ

 

「撃たれてくたばれ」

 

 

照準をキャロラインの頭に向けた・・・

 

 

「あ、あぁ・・・」ガクガク

 

 

シャルロットは震えていた・・・

自らを優しく抱き締め、拳銃を握らせるアキトを・・・

 

 

「大丈夫・・・大丈夫だぜ?シャーロット」

 

「で、でもこれじゃあ・・・!」

 

「・・・お前は良いのか?」

 

「え・・・?」

 

「思い出せ・・・思い出すんだ・・・お前が引き取られてからの屈辱感を・・・孤独感を・・・」

 

「あ・・・」

 

 

アキトの言葉にシャルロットは思い出した・・・

一人ぼっちになったあの時を・・・

引き取られてからの孤独を・・・

そして・・・キャロラインされた屈辱を・・・

 

 

「憎かろう?憎くて憎くてたまらなかろう?」

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

「シャーロット・・・

俺は銃のスライドを引いてやる

弾も込めてやる

セーフティを外し、撃鉄も引き、照準も合わせよう・・・だが・・・」チャキリ

 

 

アキトはシャルロットに囁き続ける・・・

甘く、切なく・・・

 

 

「トリガーを引いてやるのは、お前の仕事だ・・・お前の意志だ・・・さぁ、どうする?」

 

 

アキトからの囁きに、シャルロットは揺れていた・・・

しかし、同時に躊躇していた・・・

目の前で痛みを叫ぶ、キャロラインに哀れみを感じていたのだ・・・

 

 

「ぐあぁ・・・シャ、シャルロット!」

 

「!」

 

 

躊躇しているシャルロットにキャロラインは呼び掛けた・・・

 

 

「た、助けて!」

 

 

哀れでみっともない命ごいを・・・

 

 

「シャルロット!私が!私が悪かったわ!愛人の子である貴女に私は嫉妬していたのよ!ごめんなさい!シャルロット!」

 

「・・・」ピクリ

 

「もう酷いことを貴女にはしないわ!だから助けて!」

 

「・・・」ガクガク

 

 

アキトはシャルロットの変化を感じた・・・

 

 

「(銃を持つ手の震えが強くなったな・・・シャーロットには無理だったか・・・)」

 

 

だが・・・そんな考えは一掃される・・・

キャロラインの・・・

 

 

 

 

 

 

 

「貴女は私の子!貴女の「お母さん」よ!」

 

 

この一言に・・・

 

 

 

 

 

 

 

ブツリ

 

 

 

シャルロットの中の何かが音をたてて切れた・・・

 

 

「うわぁぁぁぁぁっ!!」ガチリ ズダン!

 

「ぎぇっ!?」

 

 

シャルロットはトリガーを何の迷いもなく引いた・・・

 

 

「シャ、シャルロ――」

 

「お前が!お前が!お前なんかが!僕の・・・僕の母親を語るなぁぁぁ!!!」ガチリ

 

 

シャルロットはまたトリガーを引いた・・・

 

 

ズダン!

 

銃口から飛び出た弾丸は真っ直ぐにキャロラインの眼球を貫いた!

 

 

「うぎゃあぁぁあぁっ!痛い!痛い!痛いぃぃ!!」バタリ

 

 

撃ち抜かれたキャロラインは叫び声をあげながら、転げ回った・・・

 

 

「この!この!このぉぉ!!」カチリ カチリ カチリ

 

 

シャルロットは弾の無くなった銃のトリガーを何度も何度も引いた・・・憎悪に支配された眼で睨みながら・・・

 

 

「っ!シャーロット落ち着け!」

 

「離せ!離してよ!アキト!僕は!僕はこの――」

 

 

腕の中で暴れるシャルロットにアキトは・・・

 

 

「シャーロット!こっちを見ろぉぉ!」ガシッ

 

「う、あ!」

 

 

頭を掴み、紅く光った眼でシャーロットの目を覗き・・・

 

 

「落ち着け・・・落ち着け・・・シャーロット・・・」

 

「でも・・・でも・・・僕は・・・」

 

「・・・大丈夫・・・大丈夫だから・・・少しお休み」

 

「あ・・・あぁ・・・zzz 」

 

 

眠らせた・・・

 

 

「ふぅ、なんて爆発力だ・・・シャーロットにこんな力があったとはな・・・」コツコツコツ・・・

 

 

アキトは眠らせたシャーロットを気絶した一夏の隣に寝かせ・・・

 

 

「さてと・・・」

 

「こ、この!餓鬼どもがぁぁぁ!」ブチブチブチ

 

「・・・仕上げと参るか・・・朧?」

 

「「承知」」シャン

 

 

朧を纏い、戦闘体勢へと入った・・・

 

ワイヤーに巻かれていたキャロラインはワイヤーを無理に引きちぎった!

 

 

「この私に舐めたマネを!小娘がぁぁぁ!」

 

「さっきまで無様に命ごいをしてたヤツには見えないねぇ?」

 

「黙れ!黙れ!黙れぇぇぇ!喰ってやる!貴様を喰ったあとにあの小娘も喰ってやるぅぅ!」ドロドロ

 

 

顔の半分が腐ったキャロラインは体を変化させた・・・人の形を僅かに残した化け物に・・・

 

 

「おえぇ~気持ち悪ぃ~!」

 

「私に〝従〝わな〝いヤツハァァァァァァ!!」ビキビキ

 

「しかも自我もほとんど保ってないじゃないの・・・ヤレヤレってヤツだ」シャン

 

 

アキトはショートアックスを取りだし、触手を振り回すキャロラインに攻撃を仕掛けようとした・・・その時!

 

 

「武装錬金・・・黒死蝶」

 

「なっ!?」

 

ドギャアァァァァッン!

 

 

アキトの目の前にヒラヒラと飛んできた黒い蝶が爆発を起こした!

 

 

「ごほっ!げほっ!こ、この攻撃は・・・!」ギロリ

 

 

アキトは自らが穴を開けた天井を睨むと・・・そこには!

 

 

「久しぶりだな?アーカード」バァーン

 

「『2年ぶり』か・・・『パピヨン』・・・いや、「蝶野攻爵」!」

 

 

パピヨンマスクを被り、背中から黒い蝶の羽を生やし、レオタードを着た「変態」がいた!

 

 

「こんな所に来るとわ・・・いってぇ何のようだ?!ここで昔の決着でもつけるか?!!」

 

 

そう言いながら、アキトは自分の右胸に手をおいた・・・自らの核鉄が埋め込んでいる場所に・・・

しかし、パピヨンは・・・

 

 

「いや・・・今日はそんな用で来てはいない」

 

 

平然とアキトに「NO」の言葉を話すと、キャロラインだったモノに指を指し・・・

 

 

「俺はその失敗作を処分しに来ただけだ」

 

「何?」

 

 

内容を話した・・・

 

 

「ふざけるな!私を処分だと!?貴様――」

 

「うるさい喋るな、吐き気がする」パチン

 

ドギャアァァッン

 

「ぐぎゃあぉっ!?」

 

 

パピヨンは小さな黒死蝶をキャロラインの口元で爆発させた・・・

 

 

「はが、はがぁぁ!わだぢのぐぢがぁ!」

 

 

キャロラインの口はグチャグチャになった・・・

 

 

「おいおいおいおいおい?良いのかよ?蝶野?お前の仲間じゃないのかよ?」ザシュゥッ

 

「ぎゃあぁあっ!?わだぢのあじがぁあっ!」

 

 

アキトはパピヨンと話すように、意図も容易くキャロラインの足を引き裂いた・・・

 

 

「組織を裏切るヤツを俺達は仲間とは呼ばん」パチン

 

ドギァッン

 

「ぎぇぇえっ!!みみがぁ!みみがぁぁ!」

 

「ヒュゥ~♪えげつないね~?蝶野?」

 

「お前程じゃあないがな?」

 

「そうか・・・ククク♪」

 

「そうだ・・・フフフ♪」

 

「「ハハハハハハハハハハハハ♪」」

 

 

二人は笑いあった・・・

楽しそうに楽しそうに・・・

一方のキャロラインはというと・・・

 

 

「ひ、ひぃぎぃ~!」ズルズル

 

 

顔を涙と鼻水と血でグチャグチャにしながら、体を引きずり逃れようとしていた・・・が

 

 

「逃げるな」ヒュン

 

「ぎゃあっ!」グサァッ

 

 

アキトはキャロラインの体に長ドスを突き立て、動けなくした・・・

 

 

「だ、だずげて!だずげでぇ!」

 

「ヤレヤレ・・・判決ぅ~」コツコツコツ・・・ガシッ

 

「がべっ!?」ズボッ

 

 

アキトはキャロラインに近づき、頭を掴むと・・・

口の中に手榴弾をねじ込み・・・

 

 

「爆ぜろ」ピッ

 

「あうがぐぁ!」

 

 

安全ピンを引き抜いた・・・

 

バヂャァッン!

 

 

手榴弾は爆発し、モノの見事に頭を吹き飛ばした・・・

 

 

ドチャリ・・・

 

「で?蝶野・・・ヤるか?」チャキ

 

 

アキトはキャロラインの屍を地面に落とすと、パピヨンに刃を向けた・・・

 

 

「いや、用件は済んだ・・・帰る」

 

「そうか・・・じゃあな蝶野・・・」

 

「あぁ、じゃあなアーカード・・・」

 

「「次は殺す」」

 

ヒラヒラヒラ ドゴォッン!

 

黒死蝶がパピヨンの前で爆発し、その爆発でパピヨンは姿を消した・・・

 

 

「ハァ・・・やっと終わったぜ・・・」クルリ コツコツコツ・・・

 

 

アキトは振り返り、倒れた二人に向けて歩いていった・・・

 

 

20分後、二人を抱えたアキトはアリーナに向かう廊下で千冬と出会い、保護された・・・

 

 

余談だが、アキトの血まみれの姿に千冬が驚いて変な声を出したとか出してないとか・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




纏めれた!


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ゴタゴタの後の話・・・


心理描写って中々にアレですな・・・
―――統合しました―――



 

 

ノーサイド

 

 

辺りは暗くなった保健室・・・

 

 

「うぅ・・・あぁ?・・・ここは・・・?」

 

 

一夏はベットの上で目を覚まし、上体を起こした・・・

 

 

「こ・・・ここは?・・・え?」

 

「Zzz ... 」

 

「むにゃ・・・一夏・・・Zzz ... 」

 

 

一夏のそばには箒と鈴が眠っていた・・・

 

 

「・・・俺は・・・痛っ!?」

 

 

突然、頭に激痛がはしり、頭をおさえた・・・

 

ガラリ

 

「起きたか・・・織斑」

 

 

一夏が頭をおさえていると、保健室に千冬が入って来た・・・

 

 

「ち、千冬姉?痛たたた!」

 

「ハァ・・・まったく、お前はまたムチャを・・・」

 

「ムチャって?――痛っ!?」

 

 

千冬は一夏に近づくと、その額にデコピンを喰らわせた・・・

 

 

「ててて・・・ところで千冬姉?」

 

「なんだ愚弟?」

 

「愚弟って・・・それより、なんで俺は保健室にいるんだ?」

 

「・・・なんだと?」

 

 

キョトンとした一夏の問いかけに千冬は目を丸くした・・・

 

 

「覚えてないのか?自分のした事を?」

 

「え・・・確か俺は・・・自室にいたら火事の避難警報が出て、アリーナに避難したら、シャルやラウラがいないってなって・・・それで、二人を探しに行って・・・・・・・・・あれ?」

 

「どうした?」

 

「探しに行って・・・どうしたんだっけ?」

 

 

一夏は整備室での出来事の記憶をなくしていた・・・

 

 

「それから後の事がスッポリと記憶から抜けている・・・なんで俺は頭にケガをしてんだ?千冬姉?」

 

「あぁ・・・それはな――」

 

「うぅん・・・一夏?」

 

「え?」

 

 

千冬が一夏に答えようとした時、眠っていた箒が目を覚まし・・・

 

 

「一夏ぁ!」ガシッ

 

「ぶべっ!?」

 

 

一夏に飛び付いた・・・

 

 

「ぐはっ、ほ、箒、く、苦しい!」

 

「一夏!一夏ぁ!心配させおってぇぇ!」

 

「うるさいわね~・・・静かに――って一夏!?」

 

「り、鈴!」

 

 

箒の騒ぐ声に起こされた鈴は・・・

 

 

「このバカっ!心配させてんじゃないわよ!」バチィッン

 

「ばべっ!?」

 

 

箒と同じように飛び付いた・・・

 

 

「おい鈴!離れろ!一夏が苦しがっているだろう!」

 

「はぁ?!アンタこそ離れなさいよ!」

 

「ふ、二人とも・・・ぐ、苦〝じい〝~!」

 

ピーピーギャーギャー

 

 

騒ぐ3人に千冬は・・・

 

 

「ハァ・・・ヤレヤレ・・・」

 

 

溜め息を吐いていた・・・

少し、笑みをだしながら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学長室にて・・・

 

 

ところ変わって、ここは学長室・・・

ここで十蔵はパソコンを弄り、椅子に腰かけたアキトに語りかけた・・・

 

 

「ご苦労様でしたアーカードくん・・・貴方のおかげで被害は少なくてすみましたよ」

 

 

十蔵はそう言いながら、机の上に封筒に入った札束を出した・・・

 

 

「「少なくて」ねぇ・・・教師の負傷者3人に生徒の負傷者3人・・・決して少ないとは言えない・・・それなのにこんなに貰って良いので?」

 

「えぇ、教師の負傷については慢心によるものですし、生徒については・・・自分から首を突っ込んだ事ですからね」

 

「まぁ、織斑については自業自得か・・・」

 

「それに、貴方が間に合わなければ、3人はあのホムンクルスに食われていたかもしれません・・・貴方には感謝しているんですよ?アーカードくん」

 

「感謝ねぇ・・・」

 

「別に良いんですよ?貴方がいらないと言うのなら、この報酬は――」

 

ガシッ

 

十蔵は封筒を引っ込めようとしたが・・・アキトはそれを阻んだ・・・

 

 

「誰も「いらない」とは言ってないでしょう?Mr. ?まぁ、それでも半分しか受け取りませんが」サッ

 

 

アキトはそう言いながら、封筒から半分の札を抜いた・・・

 

 

「ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ・・・あぁ・・・ところで学園長殿?」

 

「なんですか?アーカードくん?」

 

「教師達・・・いや、学園長が倒したホムンクルスの残骸はどうしたんですか?俺の方は自分で処分しましたが・・・」

 

「あぁ、あのゴリラですか・・・あのゴリラなら」

 

「ゴリラなら・・・?」

 

「地下室の一室に厳重に保管してます」

 

「えぇ!?大丈夫ですか?!誰かが奪いに来ますよ?例えば、「兎耳の科学者」とか「パピヨンマスクの変態」とかに」ズイッ

 

 

驚いたアキトは十蔵に迫った・・・

 

 

「俺に任して貰えれば、キッチリカッチリ処分しますよ?」

 

「う~ん・・・因みにアーカードくん?君はどうやって整備室のホムンクルスを処分したんですか?」

 

 

十蔵は恐る恐るアキトに聞くと、アキトは朗らかな顔で・・・

 

 

「勿論、「美味しく頂きました」よ?骨も血の一滴も残さず、よく噛んで」

 

「は、はぁ・・・そうですか・・・」

 

 

ホムンクルスの処分方法を話した・・・

十蔵は口角をひきつらせて聞いていた・・・

 

 

「いやぁ~食べ方が汚かったのか、返り血が制服にべったりと付いちまって、制服が一着ダメになりましたよ、ハハハハハ♪」

 

「は、ハハハ・・・新しい制服を用意しますよ」

 

「ありがとうございます学園長殿」

 

「ふぅ・・・ところでアーカードくん?」

 

「おん?なんですか?」

 

「彼女・・・デュノアさんはどうしたのですか?」

 

「あ・・・それは・・・」

 

 

十蔵の質問にアキトの顔が強張った・・・

 

 

「ボーデヴィッヒさんの方は織斑先生に口止めをしてもらいました・・・彼女なら口外することはないでしょうが・・・問題はホムンクルスと戦闘を行ったと思われるデュノアさんです」

 

「・・・」

 

「貴方の事ですから、何かしているのでは?」

 

「Exactly・・・さすがは学園長殿だ、畏れ入りますよ」

 

「えぇ、これでも一応学園の長をやってるので」

 

「ハハ♪シャーロット・・・いや、シャルロットには今回の事は記憶の奥深くに閉じ込めました」

 

「ほう・・・それは――」

 

「おっと!ここらか先は企業秘密です」

 

 

アキトは自分の唇に人指し指をそえて、イタズラっぽく笑った・・・

 

 

「ふむぅ、それは残念」

 

「では俺はこれにてドロンで」

 

「はい、それではお休みなさいアーカードくん」

 

「えぇ、お休みなさい学園長殿」

 

コツコツコツ・・・ガチャリ

 

そうして、アキトは学長室をあとにした・・・

 

 

「ふぅ・・・やはり読めませんね?彼は」

 

 

残された十蔵はどこか可笑しそうにアキトの出ていった扉を見ていた・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

騒動のあった翌日、アキトはシャルロットが治療を受けている部屋に向かっていると・・・

 

 

「おん?ありゃぁ・・・」

 

「あら?アキトさん」

 

 

カゴを持ったセシリアが扉の前に立っていた・・・

 

 

「おう、セシリアも見舞かい?」

 

「えぇ、アキトさんもですか?」

 

「まぁね、その手に持ってんのは見舞品かい?」

 

「はい、クッキーを焼きましたの」

 

 

カゴの中のクッキーはなんとも形容しがたい色をしていた・・・

 

 

「流石はセシリアだな、美味そうだ」

 

「エヘヘ、それほどでも///」

 

「なら入るか」コンコン

 

 

アキトは扉にノックをすると・・・

 

 

「どうぞ入って来てくれ」

 

 

何故かラウラの声が部屋の中からした・・・

 

ガチャリ

 

「あ!アキトいらっしゃい、それにセシリアも」

 

「よぉシャーロット元気か?ツーかラウラいたのかよ」

 

 

部屋には上体を起こしてベットに横たわるシャルロットと、その隣で椅子に座ってリンゴを切る、頭に包帯を巻いたラウラがいた・・・

 

 

「私も見舞いだぞ、嫁よ」

 

「は?」

 

「よ、嫁っ!?ア、アキトさん!これは一体どういう事でいやがりますの?!!」

 

 

ラウラの発言にセシリアは顔を真っ赤にして、アキトを睨んでいた・・・

 

 

「ステイステイ、待ってくれセシリア」

 

「どういう事ですの!?アキトさん!事と場合によっては――」

 

「いやいやいやいやいや!話を聞けよ!」

 

 

セシリアは専用機のライフルを取りだそうとしていた・・・そうしていると・・・

 

 

「もうラウラ、「嫁」じゃないでしょ」

 

 

シャルロットが口を挟んできた・・・

 

 

「そうなのか?シャルロット?」

 

「うん、日本では男の人には「婿」だと思うけど」

 

「しかし、クラリッサ・・・部下は好意的な人物に対しては「俺の嫁!」と言うのが、日本の文化だと聞いたぞ?」

 

「・・・どんな部下だよ、ソイツ?」

 

「部隊で一番の日本通だ!」

 

「間違った日本通ですわね・・・」

 

 

ふんぞり返るラウラにセシリアは目を細めて見ていた・・・

 

 

「プッ、フフフ♪」

 

「ニョホ、ニョホホホ♪」

 

 

二人のやり取りにシャルロットとアキトは笑いだし・・・

 

 

「クフ、フフフ♪」

 

 

セシリアも笑いだした・・・

 

 

「ん?何が可笑しいのだ?」

 

 

一人ラウラはキョトンとしていた・・・

 

 

「フフフ♪っ痛!」

 

「あ!?大丈夫ですか?シャルロットさん?!」

 

 

笑っていたシャルロットは突然に胸を押さえた・・・

 

「う、うん大丈夫・・・笑ったら痛めた所が痛いや」

 

「そうですか・・・それにしても災難でしたわね?火事に逃げ遅れて、胸を強打するなんて」

 

「そ、そうだね・・・」

 

「そうだな!まったくもって災難だった!私も頭を強打したからな!」

 

 

セシリアの発言にシャルロットはうつむき、ラウラは激しく頭を縦にふった・・・

そんなラウラの肩をアキトはつつくと・・・

 

 

「(おいラウラ、わざとらしいぞ」ボソッ

 

「(そうか?私としては上手い事やったのだが・・・」

 

「ちょっと、お二人とも?何をコソコソしてるんですの?」

 

「いや、なんでもないぜ?」

 

「そうだ!何もあの火事がではなく、襲撃などと――むがっ!?」

 

「そうかラウラ!腹が減ってんのか!リンゴ食え食え!」

 

「むががっ!」

 

 

アキトはラウラの口の中に切ったリンゴを押し込んだ・・・

 

 

「アキトさん何をやってるので?」

 

「アハ、アハハハ・・・」

 

 

二人のやり取りにセシリアは疑問符をシャルロットは苦笑いを浮かべていた・・・

 

 

「それよりセシリア?そのカゴは何?」

 

「あぁ、これですか?これはお見舞品のクッキーですわ」

 

「へぇ~、クッキー・・・もしかして・・・」

 

「えぇ、私の手作りですわ!」

 

「え・・・」サァ

 

 

その事を聞いたシャルロットの顔から血の気が引いた・・・

 

 

「どうしたシャルロット?青い顔して?」

 

「う、うぅん!なんでもない!大丈夫!大丈夫・・・大丈夫大丈夫大丈夫・・・」

 

「何を自分に言い聞かせてんだ?シャーロット?しかし、セシリアの手作りを食べんのは久しぶりだな♪」

 

「あら?アキトさんの分はありませんわよ?これはシャルロットさんの分なのですから」

 

「えぇ~!」

 

「え〝っ!?」

 

「ど、どうした?シャルロット?変な声を出したぞ?」

 

「え!?いやいやいやいやいや大丈夫だよ!アキトも食べていったら?」ガシッ

 

 

シャルロットは尋常ではない汗をかきながら、アキトの袖口を力強く掴んだ・・・

 

 

「私にも食べさせてくれ」

 

「ちょっ!?ラウラ?!!」

 

「いいではないかシャルロット、私も食べてみたいぞ!いいか?セシリア・オルコット?」

 

「勿論ですわ!あと、セシリアで構いませんわよボーデヴィッヒさん」

 

「私もラウラで構わん、なら頂くぞ」スッ

 

 

ラウラはカゴから百々目色のクッキーを取りだし・・・

 

サクッ

 

「モグモグモグ・・・」

 

 

頬張った・・・

 

 

「モグモグモグ・・・ゴクリ」

 

「ど、どうですか?ラウラさん?」

 

 

セシリアはラウラに感想を聞くと・・・

 

 

「キュゥ~・・・」バタリ

 

「お、おい!?ラウラ!」

 

「ラウラ(さん)!?」

 

 

ラウラは目を回して、倒れた・・・

アキトがラウラを抱き寄せると・・・

 

 

「しっかりしろ!ラウラ!」

 

「あ、暁アキト・・・」

 

「なんだ?ラウラ!」

 

「あ・・・」

 

「あ?」

 

「アヴァロンが見える・・・」ガクリ

 

「え!?ちょっ、ラウラ?!」

 

「ラウラさーん!!」

 

「メディック!メディィィィィック!!!」

 

 

意味のわからない事を言って、気絶した・・・

後に「セシリアのポイズンクッキー」として語られる・・・

 

余談だが・・・後日、ラウラはセシリアを色々な意味で認めたらしい・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 



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第伍章『夏色戦線異状アリ』
表と裏と裏の会談・・・


ほのぼの・・・なのか?


 

ノーサイド

 

 

 

噴水前・・・

 

 

カツカツカツカツカツ・・・

 

あの事件から少し経ったある休日の事・・・

IS学園から少し離れた公園の噴水の前で仁王立ちし、スーツをビシリッと着た千冬がイライラしながら、ある人物を待っていた・・・

 

 

「遅い・・・遅い遅い遅い遅い遅い遅い・・・遅い!」

 

カツカツカツカツカツ・・・ピキリ

 

 

ドンドンと靴音が大きくなり、噴水前のタイルにヒビが入り始めた時である・・・

 

 

「やぁやぁ、すみませんな織斑先生?」

 

 

公園の入り口から、悪目立ちする赤いジャケットを着て、マルメガネのサングラスをかけた人物がヌラリヌラリと歩いて来た・・・

 

 

「やっと来たか・・・5分の遅刻だぞ!「暁」!」

 

「そんなにカッカしなさんな?顔にシワが出来ますぜ?」

 

「このっ!」

 

「おっと」パシリ

 

 

千冬の繰り出した平手を難なく掴みどったアキトはニヤニヤと笑みを溢しながら・・・

 

 

「さて・・・では行きますかな織斑先生?「デート」ってヤツにさぁ」

 

 

 

―――――――

 

 

 

時は1日前まで遡る・・・

 

 

 

食堂にて・・・

 

 

その日、アキトは何時ものように昼飯を食堂に食べに来た・・・

 

 

「今日は~♪何にしようかね~♪何にしようか~♪・・・何が良いと思う?簪さんや?」

 

「カレーにすると良い・・・ほら」

 

「おん?」

 

「今日はタンカレーだから」

 

 

簪が指差すメニューには・・・

 

「「「絶品!タンカレー!!!」」」

 

などと書かれていた・・・

 

 

「よぉーし!ならタンカレーにしよう!おばちゃーん!タンカレーくだ――」

 

 

アキトがタンカレーを頼もうとした・・・その時!

 

 

バァッン!

 

「「「「「「「っ!?」」」」」」」

 

 

食堂の扉が勢いよく開き・・・

 

 

「暁!暁アキトはいるか?!!」

 

「・・・おん?」

 

 

 

アキトを呼ぶ、千冬の怒号が轟いた・・・

 

コツコツコツコツコツ・・・

 

「なんだい?なんだい?なんだい?織斑先生?こんなクソ忙しい飯時にさぁ?」

 

「ちょっと用がある・・・ついて来い」

 

「だが断る」

 

「いいから来い!」ガシッ

 

「あでっ!?な、何をするだーっ!」

 

ズルズルズル・・・

 

千冬はアキトの耳を引っ張ると、そのまま食堂から出て行った・・・

 

 

 

 

 

 

 

廊下にて・・・

 

 

千冬はアキトを時間帯としては人気の少ない通路に連れ、耳を引っ張るのをやめた・・・

 

 

「痛たた・・・ったく何をするんですか?織斑先生」

 

「貴様・・・知っているのか?」

 

「はい?何をですか?質問をするときは主語を付けろと学校の先生にならいませんでしたかぁ~?」

 

「うるさい!」

 

 

スパーンとアキトを頭を強打する・・・

 

 

「ハァ・・・人の頭を太鼓のように・・・まぁ、良いや・・・で何を知りたいので?」

 

「暁・・・あの化け物を知ってるのか?」

 

「ハァ?化け物?何をお喋ってるので?」

 

「惚けるな!」バシッ

 

 

そう言って千冬は、アキトの顔にある写真を叩きつけた・・・

 

 

「アンタは人の頭を叩かなくちゃあ倒れるのか?!この暴力教師!」

 

「いいから、その写真を見ろ!」

 

「へいへい・・・」ペラリ

 

 

アキトは写真を見た・・・

その写真には、先日の事件で教師を負傷させた「ゴリラ」が写っていた・・・

 

 

「・・・ゴリラですねぇ・・・しかもなんて血の気の悪くて血まみれの――」

 

「そう言う事を言ってるんじゃあない!この化け物は何なのかと聞いているんだ?!!」

 

「あぁ~・・・あぁ~・・・知らないですね~・・・」

 

「嘘をつくな!」スパーン

 

 

また千冬はアキトの頭を叩いた・・・

 

 

「面倒だなぁぁぁ~・・・そんなんなら学園長殿に聞けばよろしいですがな、えぇ?ブリュンヒルデ殿?」

 

「その学園長が教えてくれないのだ!暁、貴様は整備室で、このゴリラと同様の化け物に出くわし、打ち倒したらしいな!」

 

「俺はたまたま出くわして、たまたま運良く「撃退」しただけですけど?」

 

「・・・学園長は言った・・・」

 

「ちょっと?俺の話聞いてます?おいコラ、コノヤロウ」

 

「この化け物の事は暁に聞けとな」

 

「・・・・・・・・・・・・は?」

 

 

千冬の発言にアキトの思考が追い付かなかった・・・

そして、思考が追い付いたあと・・・

 

 

「(あの・・・あの学園長・・・何をクソ面倒事を押し付けてんだぁぁぁっ!?)」

 

 

心の中で叫んだ・・・

 

 

「さぁ!教えてもらおうか?暁アキト?」

 

「え~・・・・・・(っ!そうか・・・そういう事か)」

 

 

アキトは渋い顔をしていたが、突然ニヤリと口角をあげ、舐め回すように千冬を見た・・・

 

 

「な、なんだ暁?その目は?」

 

「なぁ?・・・織斑先生?」

 

 

アキトは目を細め・・・いや、紅くした目を隠すようにし、朗らかに愉快に悪戯っぽい笑顔を浮かべ・・・

 

 

「デート・・・しようか?」

 

 

こうして、冒頭に戻る訳である・・・

 

コツコツコツ・・・

カツカツカツ・・・

 

 

ある都市の街道を赤いジャケットと黒のスーツを着た二人組が歩いていた・・・

 

 

「ねぇねぇねぇ?織斑先生?ここら辺は初めてですかね?」

 

 

丸いサングラスをかけたアキトがニヤついた顔で千冬を覗いていると・・・

 

 

「あぁ、確かに初めてだな・・・」

 

 

そんなアキトを千冬はギロリと睨んでいた・・・

 

「ハァ・・・そんなに警戒しないでくださいよ?折角のデートなんですから」

 

「なにがデートだ・・・一昨日突然にあんな事をいうなど・・・お前は何を考えている?」

 

「さぁ?美人と仲良くなりたいから・・・ですかね?」

 

「からかうなよ小僧?」

 

「カカカ♪からかってやるよフロイライン?」

 

 

睨む黒髪の美女に睨まれる黒髪のサングラス男・・・

周りからみれば、異様な光景である・・・

異様な二人は街中を外れ、路地裏に入っていった・・・

 

 

「・・・それで?私をどこに連れて行くつもりだ?もしや・・・このままホテルにでも連れ込むつもりか?」

 

「おん?あぁ!その手もあったか!・・・でも二人きりになるにはちと早いか」コツコツ・・・コツリ

 

「?・・・どうした暁?」

 

 

アキトはあるBarの前で歩みを止めた・・・

 

 

「到着~、さぁ入りましょうか?織斑先生?」

 

 

Barの名前は「Velvet」・・・

アキト行きつけのBarである・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店内にて・・・

 

 

 

カランカラン~♪

 

 

「あら?お客さん?すいませんまだ開店前――」

 

 

二人が入ると、ショートヘアーの女性が現れた・・・

 

 

「あら?開店前?暁の名前で予約しましたけど~?」

 

「あら?その声は・・・アーカ――」

 

「うわっ!?今日は名前で頼みますよ!Ms.ピアニッシモ?!」

 

「なら私の事も名前で呼んでアキトくん?」

 

「OK OK ・・・仰せのままにMs.瞳 」

 

アキトはこのBarのピアニスト「軽子瞳」に慌てた・・・

 

 

「おい暁、この人は?」

 

「あらアキトくん?今日は一人じゃないのね?しかも「彼女」とは違う「声」・・・初めまして、このBarでピアニストをしている軽子瞳よ」

 

 

そうして瞳は千冬がいる方向とは「違う方向」に手を差し出した・・・

 

 

「?・・・暁?彼女は?」

 

「瞳さんそっちじゃないですよ、こっちです」

 

 

アキトは瞳の手をとると、千冬の手に持っていき・・・

 

 

「あぁ、ごめんなさい・・・私、目が悪いの」

 

「いえ、こちらこそスイマセン・・・IS学園で教師をやっている織斑千冬です」

 

 

二人は握手を交わした・・・

 

 

「え!?織斑ってあのブリュンヒルデの?!」

 

「え、えぇ・・・まぁ・・・」

 

「あらあらあら!有名人と握手しちゃったわ!」

 

 

瞳は千冬と握った手を振った・・・

 

 

「瞳さん・・・結構ミーハーなのね?」

 

「ねぇ?ちょっと!」グイッ

 

「のわっ!?」

 

 

瞳はアキトの腕を掴み引っ張った・・・

 

 

「ねぇ?アキトくん?どういう事?」

 

「おん?何がですか?」

 

「世界でも指折りの有名人とこのBarに来るなんて・・・どうしたのアキトくん?」

 

「それはですね~・・・」チラリ

 

「な、なんだ?暁?」

 

 

アキトは千冬の顔を眺めがら・・・

 

 

「デートですよね?「千冬」さん?」

 

 

ニコやかに笑った・・・

 

 

「はぁっ!?///暁、お前まだ私をからかって――」

 

「キャー!///今日は良い曲が弾けそうだわ!さぁ、座って座って!」トタトタトタ・・・

 

「あっ!?ちょっと!?」

 

 

瞳は千冬の言葉も聞かぬまま、奥のステージの白いピアノに向かって小走りをして、鍵盤を開いた・・・

 

 

「アキトくんに織斑さん、今日は一品と一杯サービスよ?」

 

「グラッチェ♪さぁ、何を頼みましょうか?千冬さん?」

 

「・・・ハァ・・・」

 

 

千冬は考えるのを止めた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~♪~♪~♪

 

 

店内には瞳の弾くピアノの音色が響いていた・・・

 

 

「・・・良い音色だな・・・」

 

「おん?まさか千冬さんに音楽を楽しむ感覚があるなんて・・・」

 

「余計なお世話だ、バカ者・・・あと、名前で呼ぶな」

 

「良いじゃないですか、千冬さん?」

 

「お前はっ!」ビュッ

 

パシッ

 

アキトは千冬の叩きを難なく掴み、愛しそうに撫でた・・・

 

 

「っ!?///こ、この!///」

 

「ニョホホホ♪可愛いですな~♪」

 

「お前はっ!///」

 

「おい・・・二人とも・・・」

 

「「?」」

 

 

二人が悪戯に過ごしていると・・・このBarのマスターが話しかけて来た・・・

 

 

「ちちくりあってないで、さっさと注文しろ」

 

「ち、ちちくりあう!?///そ、それは違――」

 

「悪い悪いマスター・・・なら「命の水」と・・・千冬さんは何にする?バーボンで良い?」

 

「お、おい?!暁!?」

 

「次の千冬さんのセリフは――」

 

「「まだ昼下がりの間に酒は飲まない!」――ッハ!?」

 

 

自分の言う事を言われた千冬は驚いた・・・

 

 

「ならソフトドリンクのブラッドオレンジ頼むよ」

 

「あいよ・・・」

 

「暁・・・お前は・・・」

 

「おん?なんですかい?」

 

「・・・もういい・・・本題に移るぞ」

 

「あら?どーしたよ千冬さん?疲れた顔して?」

 

「やかましい!誰のせいだと思っている?!!」

 

 

千冬は怒気を含めた声で荒らげた・・・が・・・

 

 

「・・・おい」

 

「なんだ?!」

 

「・・・静かにしろ」ギロ

 

 

千冬はマスターに冷ややかな眼で睨まれ、注意をうけた・・・

 

 

「す、すみません・・・」

 

「ククク♪怒られてやんの♪」

 

「こ、この!」

 

「おい・・・」

 

「は、はい!・・・すみません・・・」

 

「命の水とブラッドオレンジだ」コトリ

 

 

マスターはストローのささったコップと丸い氷の入ったグラスを差し出した・・・

 

 

「おや?・・・この香りは・・・お前まさか!?」

 

「え?千冬さんやっぱりいるの?」

 

「やっぱり、それは「ウィスキー」じゃないか!!」

 

 

グラスに入った芳醇な香りの飲み物はウィスキーであった・・・

 

 

「命の水(ウィスケベサ)・・・やっぱり酒は良いよね♪」

 

「お、お前と言うヤツは~!」ワナワナ

 

「はいはい、説教ならあとで聞くよ・・・早く本題に入ろうぜ?千冬さん♪」

 

 

アキトはまた、ニヤけた顔で千冬を眺めた・・・

 

 

 

 

ペラリ・・・

 

「ほむほむ・・・なるほどねぇ~・・・」コクリ

 

 

アキトは命の水を片手に千冬から渡された資料に目を通していた・・・

 

 

「俺の事をよくここまで調べたモノだ・・・「更識」って暗部の評価を見直すねぇ~・・・」

 

「あぁ、そうだろう?ヴァレンティーノファミリー遊撃部隊隊長?」

 

「んでもよぉ、なんで本題の前に俺に俺の調査報告書を見せる訳?」

 

 

アキトに手渡された資料は楯無が更識の力を使って調べあげた、「暁アキト」の資料であった・・・

 

 

「この資料がお前への枷だ」

 

「なるほどね~、この資料が表に出されたくなけりゃあ、俺の情報を寄越せってわけね・・・マフィアみたいなやり口だな千冬さん?」

 

「本物のマフィアが言うな」コクリ

 

 

千冬は横目でアキトを見ながら、ブラッドオレンジに口をつけた・・・

 

 

「酷いな~・・・こんな資料が無くても俺は貴女にネットリ教えてあげるのに、態々二人っきりになれる場所まで手配した俺の手間を返してくださいよ」

 

「ネットリってなんだ?ネットリって・・・私も本当はこんな事はしたくなかったさ・・・でも何時ものようにハグらかされるかもしれんのでな」

 

「OH・・・俺ちゃん傷ついちゃう」

 

「では教えて貰おうか・・・あの化け物の事を!」

 

「・・・」コクリ

 

 

アキトはグラスの中身を飲み込み1つ息を吐いて、口を動かした・・・

 

 

「ねぇ千冬さん、「ホムンクルス」って知ってる?」コトリ

 

「ホムンクルス?フラスコの中の小人か?」

 

「あら、びっくり!かのブリュンヒルデがそんなオカルトを知ってるなんて」

 

「黙れ・・・で?そのホムンクルスがどうかしたのか?」

 

「千冬さんが言うあの化け物・・・もといゴリラはホムンクルスってヤツなのよね」

 

「・・・何?」ピクリ

 

 

千冬はアキトの発言にシワをよせた・・・

 

 

「暁・・・貴様真面目に話せ!私がそんなメルヘンでファンタジーな戯れ言を――」ガタリ

 

「信じてもらうぜ?実際に貴女はそのホムンクルスに遭遇したんだから・・・」

 

「!・・・」ガタ

 

 

千冬はアキトの胸ぐらを掴んだが、アキトのキリッとした眼に見られ、大人しく席についた・・・

 

 

「・・・暁」

 

「おん?」

 

「私の知識が正ければ・・・ホムンクルスはフラスコの中でしか生きられないはずだ・・・しかし、あのゴリラは・・・」

 

「あぁ、その疑問は専門家ではない俺には話せない・・・だがこれだけは言える」

 

「なんだそれは?」

 

「・・・アイツらは人を食う化け物だ、決して生かしてはおけない野郎共だ・・・」ピキリ

 

「暁・・・」

 

 

アキトはグラスにヒビが入るくらいに握りしめた・・・

 

 

「まぁ、俺から話せる事は以上だ・・・これ以上の詮索には別料金が発生しま~す」

 

「別料金?――うわっ!?」グイッ

 

 

アキトは千冬の肩を掴んで引っ張ると、耳元で囁いた・・・

 

 

「この後、どうです?俺とジックリとベッドの上で語り合うってのは?」

 

「っ!?///」

 

 

バシンッ!

 

 

驚いた千冬はアキトの頬に平手打ちをかました・・・

歯で口を切ったのか、アキトの口から血がタラリと流れた・・・

その血をペロリと舐めると・・・

 

 

「クク♪こういうのは初めてですか?フロイライン?」

 

「お、お前は!///」

 

「そう言えば千冬さん?」

 

「な、なんだ?!」

 

「もうすぐ臨海学校ですよね?水着は買いましたか?」

 

「は、はぁ!?///な、何を言って――」

 

「千冬さんには黒いビキニが似合いますよ?」

 

 

慌てる千冬にアキトは愉快に艶やかに笑いかけながら言った・・・

 

 

「き、貴様は!!///」

 

「どうします?このまま二人で水着でも買いに行きます?恋人のように?」

 

「だ、誰が行くか!このバカ!///」ガタリ カツカツカツ・・・

 

 

千冬はテーブルに代金を置き席を立つと、出口の方へとズカズカと歩いていき・・・

 

 

「近くまで送りましょうか?千冬さん?」

 

「必要ない!」

 

バタンッ!

 

扉を乱暴に扱って、出ていった・・・

 

 

~♪~♪・・・パタリ

 

「あら~?帰っちゃったの?彼女?」カツカツカツ・・・ガタリ

 

 

演奏を終えた瞳がアキトのいる隣の席に座った・・・

 

 

「えぇ、モノの見事にフラれちゃいましたMs.ピアニッシモ 」

 

「それは残念・・・でも、諦めないでしょ?アーカードくん?」

 

「さぁ?それはどうですかね?・・・しかしサービスだと言うのに代金置いて行ったよあの人・・・まぁ、良いか・・・マスター?ウィスキーもう一杯頼む」

 

「あいよ・・・」

 

「それより大丈夫なの?アーカードくん?」

 

「おん?何がですか?」

 

「「裏」の事を「表」の人に話して?ドンさんに怒られないの?」

 

 

瞳は心配そうにアキトに尋ねた・・・

 

 

「大丈夫ですよ・・・いずれ、「表」のヤツらにも知らせなくてはならないのでね・・・」コクリ

 

 

そう言いながら、アキトはグラスの中身を全て飲み込んだ・・・

そうしていると・・・

 

 

カランカラン~♪

 

「スイマセン・・・Bar「Velvet」はこちらでよろしいですか?」

 

 

白いスーツに白いハット被った男が扉を開けて入って来た・・・

 

 

「あら?お客さん?」

 

「あぁMs. ピアニッシモ・・・俺の客だ・・・ナイスなタイミングだな」

 

「えぇ、少し道に迷いましたが・・・しかし日本は暑いですね・・・英国とは違って湿気が多い」コツリコツリコツリ・・・

 

「今は初夏だ、そんな格好してるアンタが悪い」

 

「まったく貴方と言う人は・・・」ガタリ

 

 

男はアキトの隣の席に座ると、ハットをとり・・・

 

 

「久しぶりだな「紅蓮の」」

 

「えぇ、こうして顔を合わせて話すのは久しぶりですね・・・「アルカード」」

 

 

懐かしい雰囲気を漂わせながら、挨拶をした・・・

 

 

 

―――――――

 

 

「コク・・・良いブランデーですね」

 

「だろう?」

 

「店内の雰囲気も良い・・・貴方にしては良いチョイスだ」

 

「・・・そりゃどういう意味だ?」

 

 

髪を後ろで結び、白いスーツを着た男と赤いジャケットを羽織ったアキトは和やか?に談笑していた・・・

男は注文したブランデーをチビりチビりと飲んでいると・・・

 

 

「それにしても久しぶりだな・・・元気だったか?」

 

「えぇ、この間もホムンクルスと吸血鬼を花火に変えて良い気分ですよ」

 

「・・・ホント、恐ろしい事をサラリと言うよなアンタ」

 

「フフ♪失礼」

 

 

切れ長の目をグラスに向けて、不気味に笑う男にアキトは少し引いていると・・・

 

 

「ねぇ、少し良いかしら?」

 

「はい?なんでしょう?」

 

 

アキトの隣にいた瞳が男に声をかけた・・・

 

 

「私、このBarでピアノを弾いてる軽子瞳よ」

 

「ピアニスト・・・あぁ、なら貴女がMs.ピアニッシモ?」

 

「え?私の事を知っているの?」

 

「えぇ、アルカードからよく聞いてますよ、良い音色を響かせるピアニストだと」

 

「まぁ、嬉しい!ところで貴方は?」

 

「はい、私は」サッ

 

 

瞳の質問に男は姿勢を正し・・・

 

 

「英国陸軍で国家錬金術師をしている「ゾルフ・J・キンブリー」と言います・・・キンブリーとでも呼んでください」

 

 

自己紹介をした・・・

 

 

「錬金術師・・・って・・・え?」

 

「まぁ、知らないのも無理はありませんね・・・表には出回らないし、裏でも知ってる者は少ないですからね」

 

「おいおい、良いのかよ紅蓮の?国家機密をおいそれと話しても?」

 

「別に構いませんよ・・・アルカード、彼女は表の人間ではないでしょう?」

 

「まぁ、確かにな・・・」

 

「ピアニッシモ・・・貴女の音色を是非聞きたいのですが・・・よろしいですか?」

 

「勿論よ、何かリクエストは?」

 

「ならjazz系をお願いしますよ」

 

「わかったわ!なら楽しんでね♪」ガタリ

 

トタトタトタ・・・

 

瞳は白いピアノでjazz系の音楽を奏でた・・・

 

 

 

~♪~♪~♪

 

 

その音色を聞きながら、キンブリーはグラスのブランデーを口に含んだ・・・

 

 

「良い音色を聞きながら、良いブランデーが飲める・・・本当に良いBarだ」

 

「へいへい、そうですね・・・ところで俺に話って何さ?」コクリ

 

「・・・貴方の通うIS学園が襲撃されたようですね」

 

「ぶふっ!?」

 

 

アキトは驚きのあまり、飲んでいたウィスキーを吹き出した・・・

 

 

「汚ないですよアルカード」

 

「げほっ!げほっ!ぐ、紅蓮の!どこで知ったんだよ!その情報?!」

 

 

襲撃事件の情報は一切の秘匿とされ、外への漏洩は無かったハズなのだが・・・

 

 

「シュバルツバルト・・・彼から情報を頂きましたよ」

 

「あぁ、納得・・・アイツは何でも知ってるな」

 

 

シュバルツバルトの仕事ぶりに関心していた・・・

 

 

「で?それがどうしたよ?」

 

「その襲撃の原因を作った「デュノア社襲撃事件」を起こしたのは、貴方のボスだと聞きましてね」

 

「Exactly、その通りだよ・・・てかそこまで知ってるなんて、恐怖するぜ!」

 

「吸血鬼の貴方が恐怖?恐怖感の塊なのに?」

 

「うるせぇ、この爆弾魔が・・・それでそれがどうしたよ?」

 

 

アキトが拗ねた顔をしながら、キンブリーに尋ねると・・・

 

 

「数日前、国家反逆罪で爆破、もとい解体した、ある組織の幹部を拷問、もとい尋問したところ」

 

「おいおいおいおいおい?所々おかしいぞ、コラ」

 

 

キンブリーはアキトを無視しながら続ける・・・

 

「デュノア社から大量の武器をある「組織」に横流ししていました・・・」

 

「「組織」?」

 

「えぇ・・・あったでしょう?4年前、とんでもない計画でヨーロッパを恐怖に落とした狂った組織が」

 

「え?・・・カカクカキキクケケケ♪マジかよ!マジかよ?!マジかよ!?やっぱり、あの野郎共生きてやがったか!」

 

 

アキトは朗らかにニコやかに愉快に笑った・・・

 

 

 

―――――――

 

 

今は昔・・・と言っても、四年前・・・

ヨーロッパを恐怖のドン底に突き落とした狂った組織がありました・・・

 

組織の名は・・・「レギオン」・・・

 

レギオンは数ある「反IS組織」の中の1つに過ぎなかった・・・ある男が組織の長になるまでは・・・

 

男は組織の長になると、ある計画を進めた・・・

その計画とは・・・

 

 

「ヴァンパイアバタリオン」・・・

 

 

人工的に吸血鬼を造りだし、その軍隊を作ろうとしたのだ・・・ISに支配された世界を破壊するために・・・

 

イカれてる、素晴らしくイカれてる・・・

 

 

この計画に他の反IS組織も賛同した・・・

 

金を、武器を、技術を、人員を、土地を、実験台をレギオンに出した・・・

 

計画は順中に進んでいた・・・だが・・・

その計画を良く思わない連中がいた・・・

 

その連中とは、吸血鬼の存在を表に出したくない昔ながらの「純潔派」の吸血鬼共と世界のバランスを壊されたくない政府の閣僚共だった・・・

 

ヨーロッパの各国政府は英国軍を主力とした討伐軍を編成・・・

 

その軍に・・・俺が部隊長を務める、ヴァレンティーノ遊撃部隊加わった・・・

 

何故、マフィアが討伐軍にいるかというと・・・

純潔派のジーさま達――じゃなくて、「長老級」(エルダークラス)の誰かさんが・・・

 

 

「人間達の組織した軍隊だけで、我々吸血鬼の出来損ないを倒せるのか?答えはNOだ!是非討伐軍には、彼が・・・あの「アーカード」が必要だ」

 

 

・・・なんて言いやがり、ドンからのお願いもあり・・・俺は討伐軍にシェルスと共に参加・・・

 

 

そこで俺達はヨーロッパの錬金術師達に出会い、レギオンの計画を台無しにしてやった・・・

まぁ、計画の首謀者どもはのがしてしまったがな・・・

 

 

「「にがした」・・・の間違えでは?」

 

「おん?なんだと?」

 

 

俺の隣にいる爆弾魔がブランデーを旨そうに飲む・・・

 

 

「どーいう意味だよ?紅蓮の?」

 

「そのままの意味ですよ・・・貴方はみすみす彼らをにがした・・・」

 

「「にがした」、なんて人聞きの悪い!もとわと言えば、お前がヤツらの作った「賢者の石」に目がくらんで変な事しなけりゃ!」

 

「ハイハイすいません、その話なら32回目ですよ」

 

「て、テメェ~・・・」ピキリ

 

 

あぁ!何コイツのこの透かした態度?!プラチナムカつく!

・・・まぁ、そんな事よりも・・・

 

 

「ヤツらが動き出したってのは本当なのか?」

 

「さぁ?」

 

「さ、さぁって――」

 

「生憎とその組織が、レギオンらしき組織に「武器を流していた」という事しかわかっていませんからね」

 

「え~?」

 

 

そんな不確定な情報なのかよ・・・

なんか安心したような、ガックリしたような・・・

 

 

「ガックリしないでくださいよ」

 

「え!?ガ、ガックリなんてしてねぇよ!」

 

「顔に出てますよ」

 

 

マジかよ!?俺、ポーカーフェイスには自信あったんだけどな~・・・

 

 

「ですが・・・」

 

「おん?」

 

「その内、彼らも尻尾を出すでしょう」

 

「その「その内」が手遅れにならない事を願うね」

 

「クフフ♪ですね・・・」コクリ カラン

 

ポスリ

 

そう言って、紅蓮のはグラスのブランデーを飲みほし、白いハットを被った・・・

 

 

「もう行くのか?」

 

「えぇ、待たせている人がいるので」

 

「おぉ?まさか紅蓮のに恋の噂が!?」

 

「んな訳ないでしょう・・・あの「氷の女王」ですよ、なんなら貴方も来ますか?あの人も貴方に会いたがっていましたし」

 

「げげげっ・・・」

 

 

よ、よりによってあの人かよ・・・

そう言えば、あの戦いに加わったヤツらは二階級・一階級特進したんだよな・・・

紅蓮のは少佐から中佐になって、あの少将殿の下についたのか・・・

 

 

「ご愁傷様、紅蓮の」

 

「まったくです・・・変わって貰いたいですよ」ガタリ

 

チャリン

 

 

紅蓮のはテーブルにブランデー代を置き、出口まで歩いて行った・・・

 

 

「じゃあ仕事頑張ってね?キンブリーさん?」

 

「えぇ、貴方もねアルカード」ガチャリ

 

 

カランカラン~・・・

 

 

さて・・・明日は臨海学校の買い物だ・・・

 

 

「飲み過ぎないように気を付けないとな・・・」コクリ

 

 

そうして俺は、Ms.ピアニッシモの奏でる音楽とウィスキーに酔いしれっていった・・・

 

 

「コレ、やっぱり二日酔いになるかもしんない・・・」

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




ほのぼの書くぞぉ~!


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男は不敵に口角を釣り上げる・・・


買い物編前に小話入れます!悪しからず!


 

 

 

ノーサイド

 

 

 

アキトが命の水を楽しんでいる頃・・・

 

 

 

ヨーロッパ某所のある施設で長テーブルにつき、ミディアムレアの肉を頬張る男がいた・・・

 

 

カチャカチャ パクリ

 

「クチャクチャ・・・美味い、コイツは美味いなぁ!このソース誰が作ったんだ?「ドクトル」?」

 

 

男の隣にいる「ドクトル」と呼ばれる可笑しな眼鏡をかけた男に声をかけた・・・

 

 

「私が作りました・・・あと、そのピクルスも私が漬けました」

 

「なんだと?コイツは驚きだ!ドクトルは何でも出来るのだな」

 

「いえいえ・・・さぁ、おかわりもまだありますよ」

 

「あぁ、勿論貰おう」

 

 

男はニコリとドクトルに微笑みかけていると・・・

 

 

「おい」

 

 

長テーブルに向かい合って座っていた「パピヨンマスク」の男がイラついた声をかけた・・・

 

 

「どうした?「パピヨン」?食べないのか?」

 

「「食べないのか?」だと?俺は貴様の食事に付き合うために遠路はるばるヨーロッパに来たんじゃないんだよ!」

 

「そう怒るなパピヨン?私は三食しっかり決まった時間に食べないとくたばってしまう体質でね」

 

「まったく貴様は・・・なら食べながらでも構わん、「計画」はどうするつもりだ?」

 

「ふむ・・・」カチャリ

 

 

パピヨンの言葉に男はナイフとフォークを置き、ナプキンで口を拭うと・・・

 

 

「私達だけでやる・・・あの計画は私達のモノだ、誰にも誰にも誰にも渡さない・・・君達ホムンクルスに渡してなるものか」

 

「ふん、そうか・・・」ガタリ

 

 

パピヨンが席を立つと、男の隣に立つもう一人の軍服を着た男がギロリと睨む・・・

 

 

「よせ、「中尉」・・・パピヨンは私の友人だ」

 

「しかし――」

 

「クドイぞ中尉」

 

「ハッ!申し訳ありません・・・」

 

 

中尉と呼ばれた軍服の男はその言葉に素直に従い、パピヨンから目を反らした・・・

 

 

「ふ・・・相変わらず抜き身の刀のようなヤツだ」

 

「珍しい、君が他人を評価するなんて・・・一体どういう風の吹き回しだ?」

 

「さぁな・・・理由があるとすれば・・・ヤツに久しぶりに出会ったからか」

 

「ヤツ?」

 

「・・・アーカード」

 

「!」

 

 

パピヨンの言葉に男は目をいっぱいに見開き、口角を吊り上げた・・・

 

 

「クフフフ♪・・・ソイツは良い!彼は、アーカードは元気だったかい?」

 

「あぁ、元気そうにしていたぞ」

 

「そうか!そうか!そうか!楽しみだなぁ!彼と会うのは楽しみだなぁ!」

 

 

男はケラケラと笑う・・・愉快に愉快に子供のように笑い、グラスに入った水をグビリと飲む・・・

 

 

「・・・しかし」

 

「なんだ?パピヨン?」

 

「貴様らレギオンに勝算はあるのか?」

 

「何?勝算?勝算だと?」コトリ

 

 

男はグラスをテーブルに置くと、語りだした・・・

 

 

「世界を変えて来たのは何時だって夢を掴もうとするバカ共だ・・・世界を続けて来たのは何時だって凡人共だ」

 

「それがどうした?」

 

「パピヨン、私はね世界に衝撃を与えたい!だって世界に衝撃を与えて来たのは何時だって天才だ!私はその天才になりたい!それに勝算だと?フザケルな!勝算など私達には不要だ!」

 

「天才?・・・あの兎のようにか?」

 

「兎?・・・あぁ、彼女の事か・・・いや、私は彼女とは違う道を歩むよ・・・それが私達に割り振られた・・・私のこの世界での「役割」だ」

 

「役割?」

 

「あ・・・君達には少し早い話だったな」

 

「?」

 

 

パピヨンは男の言葉に首を傾げた・・・

 

 

「まぁ、良い・・・貴様がそのつもりなら、俺達は計画には手を出さない」

 

「あぁ、君達の纏め役にそう伝えておいてくれ」

 

「わかった・・・ではなレギオンの「大隊長」」

 

「あぁ、ではなパピヨン」

 

 

話を終えたパピヨンは部屋から出ると、闇に姿を溶かして姿を眩ませた・・・

 

 

「さて・・・帰ったか」

 

「本当に尾行をつけなくてよろしいので?」

 

「良い、彼にそれは失礼と言うものだ・・・それよりドクトル?計画は順調か?」

 

「えぇ、勿論・・・ですが」

 

「ん?どうした?」

 

「我々を探っている紅蓮の錬金術師が厄介で・・・先日も我々に武器を流していた組織がやられました」

 

「それは悲しい事」

 

「ですが、計画に変更はありませんので・・・ご安心を」

 

「そうか!ドクトルが言うには安心だ・・・どれ食事を続けよう」

 

 

それから男は、また楽しそうに美味そうに肉を頬張っていった・・・

 

 

 

 

 

 

←続く

 

 

 





皆さんのおかげでお気に入りが300突破しました!ありがとうございます!

これからも頑張って参りますのでよろしくお願いいたします!


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買い物での出会い・・・

新たなキャラ・・・出る


 

 

?サイド

 

 

その日、俺こと「野崎圭」は勤め先の「因幡探偵事務所」の所長、「因幡」さんに頼まれたお使いでショッピングモール「レゾナンス」に「佐々木優太」くんと来ているのですが・・・

 

 

「貴方、このバッグ買いなさいよ」

 

 

知らない女の人に絡まれてます!そして隣にいたはずの優太くんは・・・

 

 

「フフフフフフフフフ♪」

 

 

俺から離れて、壁に隠れて様子を伺っている!しかも笑いながら!

 

 

「ちょっと?!早く買いなさいよ!男なんだから!」

 

 

えぇ・・・これが女尊男卑!都会は恐ろしい!

 

 

「なんで俺が初対面の人にバッグ買わなきゃならないんだよ」

 

「あら、そんな事言っていいの?男のクセに!警備員を呼ぶわよ!」

 

 

えぇぇぇぇぇっ!?なんでアンタが呼ぶの!?というか優太くん!見てないで助けてよ!誰か!誰か助けて!!

 

と、そんな事を心の中で叫んでいると・・・

 

 

「おや?おやおやおやおやおやぁ?野崎!野崎圭くんじゃあないか!」

 

 

俺の後ろから、聞き覚えのある声が聞こえてきたので振り向いて見るとそこには・・・

赤い縁の丸いサングラスをかけ、リンゴのように赤いジャケット羽織り、真っ黒なズボンをはき、水色の髪の女の子を引き連れた・・・

 

 

「アキト、彼は?」

 

「おん?あぁ、彼は俺の親友の野崎圭くんだぜ?簪」

 

 

あのふざけたヤギが組織する危険なヴァレンティーノファミリーの中で最もまともでイカれた吸血鬼・・・「暁アキト」さんがニヤリと笑って俺を見ていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

ブリュンヒルデをからかい、ボンバーマンキンブリーと情報を肴に酌み交わした翌日・・・

アキトは二日酔いで痛む頭をおさえながら、数日後に行われる臨海学校の準備の為に買い物に来ていた・・・簪と一緒に・・・

二人は必要な物を買って行き、残った水着を買うために水着売り場に向かう途中で圭に出会ったのである・・・

 

コツコツコツ・・・

 

「こんな所で会うとは、いやはや偶然だねぇ?圭くん?」

 

「あ、アキトさんもどうしてここに?」

 

「おん?ショッピングモールには買い物に来るものだろう?可笑しな事を言う圭くんだなぁ?」

 

「は、はぁ・・・」

 

 

ニコやかに笑うアキトに圭は引きぎみに答えていた・・・

 

 

「ちょっと貴方!この男の知り合い?まぁ、貴方でも良いわ、このバッグを――」

 

「煩いなぁ・・・「黙れよ」」

 

「ひっ!?」

 

 

アキトは赤い眼で圭に絡んで来た女を睨んだ・・・

 

 

「俺は今、圭くんと話しているんだよ・・・邪魔をするなアバズレ・・・」

 

「かはっ!?」

 

 

睨まれた女は恐怖のあまりに顔を大きく歪ませ、呼吸困難の一歩手前になっていた・・・

 

「やめてアキト、ここは人が多すぎる」

 

「・・・ッチ、しょうがねぇ、失せろ・・・今度こんな事をしたらその体、引き裂いてやる・・・わかったか?」

 

「は、はい!ごめんなさいぃぃっ!」タタタタタッ・・・

 

 

まるで小さな子供のように怯え、女は泣きながら逃げていった・・・

 

 

「良し・・・大丈夫だったかい?圭くん?」

 

「「良し」じゃねぇよ!アキトさん!」

 

「おん?そこは普通「助けてくれてくれてありがとう」じゃないのか?」

 

「助けてくれてありがとう!でもやり過ぎだよ!端から見ても怖いかったよ!」

 

「ニョホホホ♪そうかそうか」

 

「笑い事じゃねぇよ!この吸血鬼!」

 

 

ケラケラと快活に笑うアキトに圭はツッコミを入れていると、簪が不思議そうに圭を見ていた・・・

 

 

「ねぇ・・・?」

 

「え、何?」

 

「貴方はアキトが吸血鬼だと知ってるの?」

 

「え、知ってるけど・・・ちょっとアキトさん?この人は?」

 

「おん?俺のクラスメイトの更識簪だ」

 

「クラスメイト?・・・あぁ、アキトさん今はIS学園に通ってるのか・・・えと俺は野崎圭、アキトさんとは友達?かな」

 

「親友だろ?圭くん?」

 

「あぁ、はいはい・・・よろしくね更識さん?」

 

「簪で良い・・・よろしく野崎くん・・・それより何でアキトが吸け――」

 

「その前に良いかな?・・・アキトさん」

 

「おん?どうした圭くん?」

 

「場所変えません?周りの視線が痛いです」

 

 

周りには先程の騒ぎで、3人に好奇な視線が注がれていた・・・

 

 

「あぁ、そうだな色々と話をするには面倒だな・・・近くの店で話すか・・・あと」

 

 

アキトは壁の方を見ると・・・

 

 

「いるんだろ?ケーキ奢ってやるぞ優太くん」

 

「わーい!ケーキ!早く行こう!圭くん!」

 

 

隠れていた金髪の子、優太が現れた・・・

 

 

「え?良いんですか?アキトさん?」

 

「あぁ、ちょっと最近収入があったんでな?簪もそれで良いか?」

 

「うん・・・構わない・・・」

 

「なら行きますか♪」

 

 

そうして四人はケーキ屋に向かって行った・・・

 

だが・・・そんな四人を物陰から見つめる金髪二人と銀髪の3人組がいたことをアキトは知っていたのだろうか?

 

 

 

―――――――

 

 

それから四人は場所をケーキ屋に移し、丸いテーブルについて話をし始めた・・・

 

 

「えぇ!?簪ちゃんてISの日本代表候補生だったの?!スゲェ!」

 

「そ、そうかな・・・?///」

 

「そうだよ!スゴいよ!」

 

「あ、ありがとう・・・///」

 

 

圭は簪の正体を知り、簪を称えていた・・・

 

 

「おいおい圭くん?簪を誉め殺さないでくれよ?」

 

「そうだよ圭くんのクセに」

 

「優太くん?それってどういう意味?!」

 

「フフ、フフフ♪」

 

 

四人は楽しく話をしていた・・・

 

 

「しかし、圭くん?何でここに?」

 

「いや~、因幡さんにレゾナンス数量限定シャンプー&リンスを買うように頼まれて」

 

「僕はその付き添いだね」

 

「ふぅ~ん、その因幡探偵殿はどこ行ったんだよ?」

 

「あ~それは・・・」

 

 

急に圭は口を重たくした・・・

 

 

「どうした?圭くん?」

 

「えと、あのですね・・・」

 

「先生なら、あのヤギを鉄人刑事と追っかけてますよ」

 

「・・・なに?」

 

「ゆ、優太くん!?」

 

 

優太は口にケーキを運びながら、話した・・・

 

 

「どうやらあのヤギ、美術館に予告状を送り付けたようですよ?それで先生、張り切って現場に行きましたよ」

 

「え~・・・なんかすまんな、うちのドンが」

 

「まったくですよ」

 

「優太くん!本当でも言っちゃダメ!」

 

「・・・圭くんもな」

 

「あ・・・スイマセン、アキトさん」

 

「いや、気にするな」

 

「ねぇ?アキト?」

 

「おん?なんだよ簪?」

 

「ヤギとかドンとかって・・・何?」

 

「ぶっ!?」

 

 

隣に座っていた簪がコテンと首を傾げてアキトに質問すると、アキトの向かいに座っていた圭が慌て始めた・・・

 

 

「あれアキトさん?簪ちゃんに話してないの?」

 

「おん?何を?」

 

「何ってアキトさんがヴァレンティーノマフィ――「はい!簪ちゃん!このケーキ美味しいよ!シェアしない?!」ちょっと圭くん?」

 

「優太くんちょっと!」

 

 

圭は優太に耳打ちをした・・・

 

 

「優太くん?アキトさんの正体は簪ちゃんには――」

 

「私・・・知ってるよ・・・アキトの事」

 

「え!?そうなの?!!」

 

「だってさ圭くん?それに簪ちゃんは圭くんに言ってたじゃない?「アキトが吸血鬼だと知ってるの?」って」

 

「あ・・・そう言えば・・・」

 

 

簪の言葉に圭は驚愕し、初めて話しかけられた事を思い出した・・・

 

 

「でもアキトさんが吸血鬼な事、何で知ってんの?」

 

「それは――」

 

「おっと簪・・・その話は一時中断な?」ガタリ

 

「え、アキト?」

 

 

アキトは簪の話を止めると、席を立ち、少し離れたテーブルに歩いて行った・・・

 

コツリコツリコツリコツリコツリ・・・

 

「おい」

 

 

テーブルには大きなサングラスに帽子を被った3人組が座っていた・・・

 

 

「コホン、な、な、何ですの?」

 

「そ、そうだよ?何かな?」

 

「なんかアンタらさっきから尾行をしてたけど・・・バレバレだぞ?」

 

「び、尾行!?何の事かしら?!!」

 

「そうだよ!失礼だねセシリア――じゃなくて!え~と・・・」

 

「ちょ、ちょっとシャルロットさん!?・・・あ!」

 

「ハァ・・・説明してくれラウラ?」

 

 

アキトは呆れたようにため息を吐いて、サングラスをかけた黒い髪の人物に声をかけた・・・

 

 

「ふむ、バレたか・・・どうして私だとわかった?」

 

「いや、知り合いに髪フェチがいてな、ソイツからちょっと本物の髪の毛とウィッグの髪の毛を一目でわかるように教えて貰ってたからな・・・あと、残り二人がキョドり過ぎだ」

 

「そうか・・・さすがは嫁だな!」パサッ カチャリ

 

「嫁じゃねぇ・・・」

 

 

そう言いながらラウラは黒髪のウィッグとサングラスを外し、テーブルに置いた・・・

 

 

「ハァ・・・バレてはしかたありませんね」パサッ

 

「そうだね・・・」パサッ カチャリ

 

 

観念したのか、残りの二人・・・セシリアとシャルロットも変装の帽子とサングラスを外した・・・

 

 

「ハァ・・・で、何やってんの?お三方?」

 

 

セシリア・オルコットの場合・・・

 

「私は今日休みなのでアキトさんを誘って――べ、別にデートをしたいとかじゃありませんわよ!臨海学校の準備で誘おうとしたら、簪さんと行くのを偶々見つけまして、その・・・そう!アキトさんが簪さんに不埒な行いをしないように監視をしていましたの!!」

 

「えぇ・・・」

 

 

シャルロット・デュノアの場合・・・

 

「ボクはその――」

 

「シャーロット、お前はまだ入院しとけよ、傷が完治しないだろうが!臨海学校に行けなくなるぞ?」

 

「え?ボクの理由は?」

 

「聞きたかない、と言うか安静にしてろ!」

 

「・・・・・・はい」シュン

 

 

ラウラ・ボーデヴィッヒの場合・・・

 

「私はアキトの水着の好みを知るために誘おうとしたら――」

 

「ちょっと待て、「好み」ってなんだ?」

 

「部下が言うには夏の水着は今後の二人を決めると言っていたぞ!」

 

「ハァ・・・(ラウラの部下よ・・・いつかシメル)」

 

 

そんなこんなで各個人の理由を聞き、アキトは3人に質問した・・・

 

 

「お前ら俺達の話が聞こえたか?」

 

 

その質問に3人は聞こえなかったと答えた・・・

ラウラは口の動きで会話を判断しようとしたが、慣れないサングラスのせいで読唇術は失敗したそうだ・・・

そんな3人をアキトは元々いたテーブルの圭と優太に3人を紹介したところ・・・

 

 

「アキトさんはこの方と一体どんな関係なんですの?!!」

 

「ボクも知りたいなぁ~・・・教えてアキト?」

 

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"

 

セシリアが優太に事を問いただし、シャルロットは凄味をアキトに向けて出した・・・

 

 

「やっぱりこうなったか・・・ヤレヤレ」

 

「あの・・・お二人?」

 

「「なんですの(何かな)?」」ジロリ

 

 

圭はセシリアとシャルロットの凄味に押されながら、聞いてみた・・・

 

 

「えと、やっぱり優太くんは「女の子」に見える?」

 

「は?何を言ってますの?当然見え――へ?「くん」?」

 

「何を言ってるのかな?見た目通りの女の子――え?「太」?」

 

 

二人はフリーズし、目の前の優太は目をキラキラさせていると、ラウラが・・・

 

 

「ん?と言う事は、この人物は男なのか?アキト?」

 

「Exactly・・・その通りでございますってか?」

 

「「・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!??!!」」

 

 

店内にイギリス人とフランス人の驚愕の叫びが轟いた・・・

 

タタタタタッ・・・

 

「お客様?!どうかなさいましたか?!」

 

「いえ、大丈夫です!お騒がせしてスイマセン」

 

「悪いな圭くん、二人とも静かにしろよ」

 

「す、すみません・・・」

 

「ごめんなさい・・・」

 

 

圭の常識力で店員には帰ってもらった・・・

 

 

「でも本当に男性なんですの?」

 

「ホント、ビックリだよ・・・」

 

「これが噂に聞く日本の「男の娘」か!」

 

「えへへへ、嬉しいなぁ~」

 

「まぁ、普通は驚くよ・・・俺もそういう事あったし」

 

 

ニマニマと上機嫌な優太と興味津々なラウラを余所にセシリアやシャルロット、圭はガックリと肩を落とした・・・

 

 

「それより・・・優太くん?」

 

「ん?どうしたの?簪ちゃん?」

 

「このあと二人はどうするの?」

 

「そうだね~・・・アキトさん?どうすんの?」

 

「おん?そうだなぁ~・・・水着買おうぜ」

 

「「「ピクリ」」」

 

「じゃあ僕も着いて行こーと!良いよね?簪ちゃん?」

 

「え、ちょっ!?優太くん?!」

 

「うん・・・良いよ」

 

「じゃあ決定~、圭くんは帰っていいよ・・・帰りにまた絡まれたいなら」

 

「・・・アキトさん・・・着いていっていいですか?」

 

「あぁ、構わないぜ」

 

 

四人がこのあとの事を決めていると・・・

 

 

「「簪(さん)!」」

 

「な、なに?」

 

「「私も着いていってよろしいですか(いいかな)?」」

 

「・・・うん、良いよ」

 

 

セシリアとシャルロットが食いぎみに来た・・・

 

 

「ラウラはどうするよ?」

 

「そうだな、なら私も着いて行くぞ!」

 

「なら決定だな・・・さてお会計をして行くぞ」

 

 

こうして、当初4人だったグループは7人に増え、皆で水着を買うようになったとさ・・・

 

 

 

―――――――

 

 

あれから、アキト達は会計を終えると水着売り場に向かった・・・

すると、そこには・・・

 

 

「あれ?皆で何やってんだよ?」

 

「セシリア達じゃない」

 

「む・・・」

 

「あら?一夏さんに箒さん、それに鈴さんではありませんか」

 

 

制服姿の箒と鈴を連れた一夏がいたのであった・・・

 

 

「どうしてお前達がここに?」

 

「ボク達は臨海学校の準備だよ」

 

「お?暁も来てたのか?」

 

「あぁ、まぁな・・・」

 

 

アキトは一夏に声をかけられた瞬間、自分の背中に簪を隠した・・・

 

 

「・・・アキト?・・・私は大丈夫だから」

 

「そうか?・・・良いのか?簪?」

 

「もう・・・大丈夫」

 

 

簪はアキトの背中から隠れるのをやめ、皆の前に出た・・・

 

 

「あれ?君は・・・確か・・・何時も暁と一緒にいる」

 

「更識・・・更識簪・・・よろしく織斑一夏くん」

 

 

簪はどこかギコチなく自己紹介をした・・・

 

 

「あぁ!よろしくな更識!」

 

「名字じゃなくて・・・下の名前で呼んで・・・」

 

「そうか?なら簪、改めてよろしく!」

 

「うん・・・」

 

「それじゃあ皆さん!水着を選びましょうか!」

 

「そうだね!」

 

 

そんなこんなで男女に別れて、水着を選び始めた・・・

 

 

 

 

 

 

 

簪サイド

 

 

 

アキトと別れた私達は皆でわいわいしながら水着を選んでいた・・・

 

 

「これなんてどうでしょう?」

 

「なんか派手過ぎない?」

 

「セシリアさんにはこっちの青い水着がいいんじゃない?」

 

「そうですわね――って!なんで優太さんがこちらにいるんですの?!」

 

 

・・・何故か男の子の優太くんまで水着を選んでいた・・・

 

 

「だってこっちの水着の方が可愛いじゃない?」

 

「いや、可愛いって・・・」

 

「僕も新しい水着欲しかったしさ~」

 

「え・・・他にも持ってるの?」

 

「そうだよ~、というわけでよろしくねぇ~」

 

「は、ハァ・・・」

 

 

さすがはアキトの知り合いなのかな?凄い馴染んでいる・・・しかも、凄くセンス良い・・・

 

 

「ねぇ簪?」

 

 

私が優太くんのセンスに驚いていると、鈴が声をかけてきた・・・

 

 

「何?鈴?」

 

「アンタ、一夏の事が苦手じゃなかった?」

 

「・・・それは・・・」

 

 

確かに私はあの織斑一夏が苦手だ・・・

専用機の事だってまだ忘れた訳じゃない・・・でも

 

 

「・・・私も変わらないといけないからかな?」

 

「そう?それもあのアキトのお蔭?」

 

「・・・そうかも・・・///」

 

 

私はアキトに会ってから色々と変われた・・・

専用機の事もそうだけど、こんな普通に友達と買い物に行けるようになったのも・・・彼のお蔭だ・・・

 

私は何時もお姉ちゃんの陰に隠れていた・・・

私は何時もお姉ちゃんの二の次だった・・・

何時も何時も何時も、お姉ちゃんの評価と比べられてきた・・・

私はそれが嫌で嫌で嫌で嫌で嫌でしかたがなかった!

だから私は一人でやって来た!たった一人であの姉に、更識楯無に追い付くために・・・

でも・・・

 

彼は・・・アキトはそんな私の考えを・・・「殺して」くれた・・・

私を私として、「更識簪」を肯定してくれた・・・

 

この胸に残るモヤモヤも、首の刺傷も、友達も、私を変わらせてくれたのも・・・

 

あの吸血鬼さんのお蔭だ・・・

でも彼にこんな事を言ったら彼は・・・

 

 

「俺のお蔭ぇ~?そいつぁ違うなぁフロイライン?簪は勝手に変わっただけだ・・・お前はお前で変化しただけだ」

 

 

・・・なんて飄々と言うんだろうな・・・

 

 

「ねぇ~!こんな水色なんて簪ちゃんにはいいんじゃないの~?」

 

「ほら簪、呼んでるわよ?と言うかあの子ホントに男~?可愛すぎない?」

 

「フフ♪今行くよ」

 

 

変われたからこそ、私はまだ変わらないといけないと・・・私が抱える最大の問題を変えないと・・・

 

 

「どう簪ちゃん?これいいんじゃん?」

 

 

・・・ホントに優太くんはセンスが良い・・・

 

 

 

 

 

 

 

インサイド

 

 

 

フロイライン達と別れた俺達、野郎共は水着を選んでいた・・・

 

 

「ねぇアキトさん?」

 

「おん~?どうしたよ圭くん?」

 

「あの人って・・・もしかして・・・」

 

 

圭くんの目線の先には水着を吟味する織斑が・・・

 

 

「あぁ、もしかしなくても世界初の男、織斑一夏だよ」

 

「やっぱり!こんな有名人に会うなんて・・・挨拶した方が良いのかな?」

 

「おん?圭くんはISに興味あったっけ?」

 

 

俺の記憶が正しければ、圭くんはISよりも猫に興味津々だったはずだが・・・

 

 

「まぁ人並みですよ、世界で初めての男性IS操縦者だから、男にとっては明るいですからね」

 

 

・・・そうか、野郎共にとっては織斑は希望のようなもんか・・・

「偽りの英雄」の弟が、世界の野郎共の希望とはコレいかに?

 

 

「でも・・・」

 

「でもなんだよ圭くん?」

 

「・・・うぅん、なんでもないよアキトさん・・・俺、織斑さんに挨拶してくるよ!」

 

 

圭くんはそうして、織斑に挨拶をしに行った・・・

織斑を見た、圭くん目はどこか心配そうな目をしていた・・・彼にはわかるところがあるのだろう・・・

あと圭くん、君は織斑より年上なんだから、もっと堂々としなさいよ・・・ヤレヤレ・・・

 

このあと俺達は自分達の水着を買ったり、女性陣の水着を拝見したりなんかした・・・

面白い事にセシリア達の水着を見ていた織斑が鼻の下を伸ばし、篠ノ乃や鈴に殴られていた・・・

ちなみに圭くんはアタフタしていた・・・ウブよなぁ~

 

あと、何故か山田先生を連れたブリュンヒルデに遭遇したので、適当にからかったら殴られた・・・ヤレヤレ・・・洒落がわからないのかねぇ~?

 

そうして、この知り合いによく遭遇する買い物は幕を閉じていった・・・

 

外に出ると、何処からか夏を告げる匂いがした・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし・・・この時、俺は気づかなかった・・・

その匂いに面倒事の臭いが混ざっていた事を・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




さて・・・出したぞ!毛探偵キャラ!


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旅館での出合い・・・

久々の投稿・・・コツが掴めない・・・

―――統合しました―――



 

 

 

ノーサイド

 

 

 

ここはイギリス・・・

 

 

タタタタタタッ・・・

 

 

首都ロンドンから東へ離れた場所にある、軍司令部にて・・・

 

 

「退け!退けぇ~!」

 

 

司令部の廊下を走る男が一人。

男は司令部のある部屋に飛び込んだ。

 

 

ガチャリ 

 

「大佐いますか?!!」バン!

 

 

部屋にはデスクの上に大量の書類をおき、その処理に追われる軍服に身を包んだ黒髪の男とその右側に立つ軍服に身を包んだ金髪を後ろで纏めた女がいた・・・

 

 

「少尉、部屋に入る時はノックをしろと言っているだろう?」

 

「そんな事より大変なんですよ!大佐!」

 

「何が大変なの?」

 

「おぉ!中尉もいましたか!ちょうど良かった!これを見てください!」バン

 

 

少尉と呼ばれた男は持っていた封筒から書類と写真を出し、大佐に渡した・・・

 

 

「ふむ・・・こ、これは!?」

 

「大佐、この男は・・・!」

 

 

大佐と中尉は写真を見ると顔の血相を変えた・・・

 

 

「「ハボック」・・・何処だ!何処でコイツが撮られた?!!」

 

「はい!今から31時間前に中国、広東省の空港でです!」

 

「大佐・・・どうしますか?」

 

「4年・・・あれから4年たって漸くか・・・!」

 

「大佐?」

 

 

大佐がボソボソと呟いていると・・・

 

ガチャリ

 

「おぉ~!「ロイ」邪魔するぞ~!」

 

「中佐殿!?」

 

 

扉からは眼鏡をかけた男が飄々と現れた・・・

 

 

「昼飯を――ってなんかそんな雰囲気じゃないな」

 

「・・・ちょうど良い時に来たな「ヒューズ」」ガタリ

 

「・・・え?」

 

 

大佐はデスクから立ち上がると中佐に近づき、肩を叩いた・・・

 

 

「ヒューズ、仕事だ」

 

「は?ちょっと待て!何の話だ?!」

 

「4年前の続きだ、「アームストロング」少佐に連絡を頼む」

 

「よ、4年前って!ヤツらの動きが掴めたのか?」

 

「わからん、しかし中国の空港でこの写真が撮られた」

 

「こ、コイツは!?」

 

 

大佐が中佐に見せた写真には群青色のコートに古い軍帽を深く被った白髪の男が隠し撮りされていた・・・

 

 

「人違いの可能性はないのか?」

 

「私の部下だぞ、間違いはないはずだ・・・」

 

「ロイ、ホムンクルスや蟲共の事もある・・・不確定な情報に人員は割けないぞ?」

 

「ヤツらを潰す方が先決だ!」

 

「しかしだな――」

 

ケンケンゴウゴウ

 

「少尉、対象は空港からどこに向かったの?」

 

「待ってください、え~とですね・・・」

 

 

大佐と中佐が言い争っている隣で、中尉が少尉に聞いていた・・・

 

 

「途中で尾行をまかれたみたいなんで、詳しい場所はわかりませんが、大まかな場所なら」

 

「それはどこ?」

 

「日本です」

 

「「なにっ!?」」

 

 

その言葉を聞いて、大佐と中佐は少尉を向いた・・・

 

 

「ハボック、聞き間違えじゃなければ「日本」と言ったか?」

 

「はい、日本すけど・・・それが何か?」

 

「はぁぁぁ・・・」

 

 

大佐は肩をユックリと落としながら、息を吐いた・・・

 

 

「どうするんだロイ?あの国にはあの「アルカード」がいるぞ」

 

「あぁ、確かにな・・・どうしたものか・・・」

 

「あの中尉?」

 

「何?少尉?」

 

「大佐達が言っているアルカードって・・・」

 

「えぇ、4年前の戦役の英雄・・・「暁のアルカード」よ」

 

「なんでその英雄が日本に?」

 

「彼、日本人なのよ」

 

「そうだったんすか・・・」

 

 

中尉と少尉が話をしていると・・・

 

 

「そうだ!」

 

 

大佐が何かを閃いた・・・

 

 

「どうしたんだ?ロイ?」

 

「休みだ・・・休みをとって慰安旅行だ!」

 

「はぁ?」

 

「何言ってすか大佐?」

 

「まさかお前!慰安旅行の名目で日本に行く気だな?!」

 

「その通りだ、紅蓮のもそれで日本に行ってるみたいだからな」

 

「大佐・・・」

 

 

大佐の考えに中尉は頭を抱えて、溜め息を吐いた・・・

少尉も同じように大佐を見ていたが・・・

 

 

「ハァ・・・わかったよ」

 

「中佐?」

 

「中央には俺から話をつけておく、好きにやれ」

 

「ありがとうヒューズ」

 

「ちょ、ちょっと良いんすか?!ヒューズ中佐?」

 

「大丈夫だ、なんとかなるだろう」

 

「えぇ~・・・」

 

「そう言う事だ!中尉、各員に連絡をしてくれ、出発は3日後だ」

 

「了解」

 

「待っていろよ・・・「ワーウルフ」」

 

 

こうして、英国軍の小隊の慰安旅行が決定されたのであった・・・

それはアキト達が臨海学校に行く1週間前の事であった・・・

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

インサイド

 

 

 

トンネルをぬけると、そこから海が見えた・・・

 

 

バスの窓からは風が潮の香りが運び、俺の鼻腔をくすぐる・・・なんともまぁ~、気持ちが良い・・・

 

 

「おい起きろ!嫁よ!」

 

「アキトさん!起きてくださいまし!」

 

「もう着いたよ!アキト~?」

 

 

隣からラウラやセシリア、シャーロットが俺の体を揺らす・・・この揺り心地のなんと良い事か・・・素晴らしい・・・どんどんと眠りの深淵へと誘われる・・・コイツは素――

 

 

「ふん!」

 

バギィィィッ

 

「ぐがっ?」

 

 

・・・なんだよ?なんだよ?なんなんですかぁ?人が折角気持ち良い感じで寝てたのにってのに・・・まぁ

 

 

「麗しの戦乙女に起こされのも良いもんか・・・」

 

「さっさと起きんかバカ者!もう旅館に着いたぞ!」

 

バギィィィッ!

 

・・・アンタは人の頭を叩かないと話が出来ないのか?

 

 

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

「「「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」」

 

 

海辺にある旅館の玄関前ではIS学園の生徒達が挨拶をしていた・・・生徒達の前には

 

 

「えぇ、皆様ごゆっくりと」

 

 

和服美人の旅館の女将が朗らかに笑っていた・・・

 

 

「女将さん、今年もよろしくお願いいたします」

 

「えぇ、こちらこそよろしくお願いいたします・・・それで今年は・・・」

 

「はい!今年は男子がいます」

 

「それはこちらも把握しておりますが・・・」チラリ

 

「え?」

 

 

女将は他の生徒と話をする一夏の方を見た・・・

 

 

「「2人」来ると聞いておりましたが?もうお一人は?」

 

「そ、それはですねぇ・・・も、もうすぐ来ますので!」

 

「(何やってんだ?暁のヤツ?)」

 

真耶は焦りながら、女将に応対し、一夏が疑問に思いはじめたそんな頃・・・

 

 

「さぁ!とっとと歩け!」

 

「痛い痛い痛い!耳を引っ張るんじゃあない!」

 

「ホント良く寝ていましたわ」

 

「お寝坊さんだな」

 

「ハハハ・・・」

 

 

セシリア達を引き連れた千冬に耳を引っ張られながら、アキトが歩いて来た・・・

 

 

「あぁ!来ました来ました!あの人がもう1人の男子の――」

 

「「若旦那」!?」

 

「若旦那くんです・・・ってアレ?」

 

 

女将はアキトを見ると、すぐさまに近寄っていった・・・

 

 

コツコツコツ・・・

 

「若旦那、暁の若旦那じゃあありませんか?!」

 

「おん?これはこれは!女将じゃあありませんか?」

 

「あらまぁ!覚えていましたか?暁の旦那さん?」

 

「もちろんですとも女将さん」

 

 

二人は懐かしく懐かしい挨拶をした・・・

 

 

「暁、知り合いなのか?」

 

「おん?知り合いもなにも、昔からの馴染みの旅館の女将さんですよ」

 

「昔?という事は・・・」

 

「アキトさん!どういう事なんですの?!」

 

 

千冬が何かを言う前にセシリアが口を挟んできた・・・

 

 

「どういう事って言われてもなぁ・・・」

 

「あらあら、「また」ですか?若旦那?」

 

ピクリ

 

 

女将の言葉に反応した者が3人・・・アキトの方をギロリジロリと見る・・・

 

 

「アキトさん?・・・」

 

「アキト?聞きたい事があるの、良いかな?」

 

「嫁よ・・・どういう事だ?」

 

 

そして・・・

 

コツ コツ コツ・・・

 

「アキト・・・?」

 

 

生徒達の波をかきわけ、凄みをだす生徒が歩いてくる・・・

そして、その場にいる生徒達が思った・・・

 

 

「「「「「「「(しゅ、修羅場だ)」」」」」」」

 

 

そんな中、女将はと言うと・・・

 

 

「これはこれは面白いですね~」

 

 

楽しそうに眺めていた・・・

 

 

「おいコラ、女将・・・アンタは・・・」

 

「おぉ、怖い怖い睨まないでください若旦那?」

 

「・・・先生助けて?」

 

 

アキトは耳を引っ張る千冬に助けを求めると・・・

 

 

「ハァ・・・」

 

 

アキトの耳を離し・・・

 

 

「茶番は終わりだ!旅館に入るぞ!今回は一般の方々もいるようなのであまり騒がないように!いいな!」

 

「「「「「「「はい!」」」」」」」

 

 

生徒達に指示を出した・・・

生徒達はゾロゾロと旅館の中に入っていった・・・

 

 

「アキトさん、あとで説明・・・お願いしますね?」

 

「それではな嫁よ」

 

「じゃああとでねアキト?」

 

「アキト・・・またあとで・・・」

 

 

生徒達に続いて4人も旅館に入っていった・・・

 

 

「ヤレヤレ・・・助かったぜ」

 

 

なんとか切り抜けた?アキトは安堵の息を吐いていると・・・

 

 

「暁?」

 

 

千冬が声をかけてきた・・・

 

 

「なんですかな?先生?」

 

「お前の部屋割りは私達と同じだ」

 

「・・・・・・・・・What?」

 

「織斑、もとい一夏との相部屋も考えたがお前は私達といた方が良いと思ったのでな」

 

「はぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

アキトや一夏を相部屋にすると、他の生徒達が詰め寄ると考えた千冬は、職員の部屋と男子の部屋を一緒にしたのであった・・・

 

 

「・・・と言うわけだ、一夏には伝えてある」

 

「OK OK 理解した・・・しかしまぁ、なんとも・・・」

 

「ん?なんだ?暁?」

 

「・・・いや、なんでもございません」

 

 

アキトは言いたい事をグッと我慢していると・・・

 

 

「あら?若旦那の部屋はこちらで用意しますよ?」

 

「え?」

 

 

女将が提案をしてきた・・・

 

 

「女将それは・・・」

 

「良いんですよ織斑先生、暁の若旦那には昔お世話になりましたし・・・それに」

 

「それに?」

 

 

女将は千冬に近づくと耳打ちをした・・・

 

 

「(あの若旦那の毒牙にかかってしまいますよ?」

 

「っ!?///な、なにをバカな!」

 

「あら?織斑先生は彼の毒牙にかかってませんでしたか?」

 

「あ、当たり前です!私があのような青二才などに!」

 

「なぁ、お二人さん?話は終わったか?」

 

 

二人の話に痺れを切らしたのか、アキトが声をかけた・・・

 

 

「すみません若旦那・・・そういえば」

 

 

今度はアキトの方に近より耳打ちをした・・・

 

 

「(旅館の中庭で、若旦那がよく知るお嬢さんがいましたよ」

 

「はぁ?お嬢さんって・・・まさか!」ダッ

 

「お、おい!暁!・・・行ってしまった・・・」

 

 

アキトはそれを聞くと、一目散に旅館に入って行った・・・

 

 

「・・・ったく、なんなんだアイツは・・・」

 

「ふふふ♪」

 

 

残された二人のうち、千冬は飽きれ、女将は朗らかに笑っていた・・・

 

 

 

―――――――

 

 

廊下にて・・・

 

 

ドタドタドタドタドタ・・・

 

アキトは旅館の廊下を忙しなく走っていた・・・

 

 

「ちょっとお客さま!」

 

「すまねぇ!許してくれ!」

 

 

若い従業員に注意されても、アキトは中庭に急いだ・・・

 

 

「な、なんなんだあの人は・・・?」

 

「あら?あれは暁の若さんじゃないか」

 

「知ってるんですか?料理長?」

 

 

若い従業員は料理長に疑問を投げ掛けた・・・

 

 

「そういえば、お前さんはまだ入って日が浅かったな・・・あれは暁の若さんだ、うちの常連で恩人のな」

 

「恩人?」

 

「あぁ、今から数年前にここが大手に買収される話があったろ?」

 

「あぁはい、たしか赤字のために大手のホテルから買い取られる話がありましたね・・・それが?」

 

「その赤字を黒字に変えてくれたのが、あの暁の若さんだ」

 

「へぇ~・・・でも」

 

「「でも」なんだよ?」

 

「あの人、何歳なんすか?その話を聞く限りにとても」

 

「アホっ!」

 

 

料理長は口に人指し指をおいて、若い従業員をしかった・・・

 

 

「あの若に滅多な疑問を思うんじゃない!消されるぞ」

 

「え!?あの人何者なんすか?」

 

 

そんな会話が廊下でおこなわれていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

中庭にて・・・

 

 

「あ・・・」

 

 

廊下の曲がり角を進み中庭に出ると、アキトの目の前には中庭を眺める人物がいた・・・

 

その人物は赤毛の髪を後ろで網目に纏め、青の浴衣をピッシリと着、抹茶をたしなむ女性であった・・・

 

 

「あぁ・・・あぁ!」

 

 

アキトはその人物に向かって勢いよくかけて行き、名前を叫びながら飛び付いた・・・

 

 

「シェルスぅぅぅぅぅ!」バッ

 

 

・・・のだが・・・

 

 

「トオゥッ!」ガシッ

 

「おん!?」

 

 

シェルスは反射的にアキトの腕と胸ぐらを掴むと――

 

 

「セイはぁぁぁぁぁっ!!」ブオン

 

「アイエぇぇぇえぇえっ!?」

 

ドッボォォォーン!

 

 

そのまま背負って投げ、中庭の池にアキトを叩きつけた・・・

 

ザパァッ

 

「な、何をするだっー!」

 

 

池から身をお越し、激昂した・・・

 

 

「あ、あれアキト?なんで?」

 

「「なんで?」じゃねぇよ!臨海学校の宿舎の旅館で久々に会ったのに・・・なんで背負い投げられんだよ!」

 

「ご、ごめん・・・でもアキトが突然飛び付いてくるから・・・」

 

「それは俺もゴメン!でも普通投げるか?というかなんでシェルスがここにいるの?!」

 

「えと、それはね――」

 

「ヴィクトリア殿、ちょっといいかい?」

 

 

シェルスが事情を話そうとすると、シェルスの後ろから男の声が聞こえた・・・

 

 

「おん?」

 

「おや?」

 

 

男は黒シャツにジーンズというラフな格好であった・・・

 

 

「お、お前はマスタング!焔の錬金術師「ロイ・マスタング」じゃあないか!」

 

「そう言うお前は「暁のアルカード」!なんでここに?!!」

 

「それはこっちの――あれ?」

 

「・・・アキト?」

 

 

アキトは突然に別の思考が働いた・・・

 

 

「あぁ、そうか・・・なるほどそうか・・・」ギロリ

 

「え?え?ちょっ、あ、暁の?」

 

 

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"

 

 

アキトはとてつもない凄みを出しながら、マスタングを睨み、近づいて行った・・・

 

 

「ちょっ、ちょっと!アキト!?」

 

「シェルス?あとで話は聞くから・・・その前にそのマスタングの野郎に話があるからさぁ」

 

「いや、話って明らかに違――っ!?」ヒュン

 

 

マスタングが反論する前に、そのすぐ側にある柱にナイフが突き刺さった!

 

 

「お、おい、あ、暁の?」

 

「テメェ・・・「ホークアイ」さんという人がありながら、何うちのファミリーに手を出してんだ?コラ?ぶち殺すぞヒューマン・・・朧、ナイフ」

 

「「御意二」」ヒュン

 

 

アキトは朧からナイフを取り出し、マスタングに突きつけた!

 

 

「おい話を!話を聞け!」

 

「大丈夫だって、お前の頭と胴体を切り離したあとにシェルスから事情を聞くからさ」

 

「いや、それは私が大丈夫じゃないだろう!」

 

「なら説明してくれんの?なんでテメェとシェルスが同じ旅館にいるのかをよぉ!」

 

トタトタトタ・・・

 

「あれ?何かしら?」

 

「あれ、暁くんじゃない?なんでびしょ濡れ?」

 

「ナイフを出してるわよ!」

 

「え、なになに修羅場?」

 

 

騒ぎを聞き付けた生徒達が中庭に集まって来た・・・

 

 

「おい、暁の!ギャラリーが増えてきた・・・ここは抑えてくれないか?」

 

「・・・確かにな」ヒュン

 

 

アキトはナイフをしまい、マスタングに向けてニコリと笑んだ・・・

 

 

「あぁ、良かった・・・なら話を――」

 

「ならステゴロな」ピキピキ

 

「・・・へ?」

 

「WRYYY!」

 

 

変な勘違いをしたアキトがこんな事で止まるハズもなく、牙を剥き出しにし、マスタングに襲いかかった!

 

 

「お、落ち着け!暁の!ってうわ!」

 

「うるせぇ!大人しくクタバリやがれ!」

 

 

アキトの攻撃をマスタングは軽いフットワークでかわしていった・・・

 

ガヤガヤ・・・

 

「何かあったのだろうか?」

 

「騒がしいわね?」

 

「何かあったのか?」

 

 

騒ぎに招かれ、箒と鈴をつれた一夏が現れた・・・

 

 

「あ、織斑くん!なんか暁くんが他のお客さんとトラブってるみたいだよ」

 

「なんだって!?そこを通してくれ!」

 

 

一夏は野次馬の波を押し退け、前に出ると暁に声をかけた・・・

 

 

「暁!何やってんだ!これから授業が始まるんだぞ!」

 

「知るかボケぇ!」

 

「少年!危ないから下がっていなさい!」

 

「え、え~・・・」

 

 

エンジンのかかったアキトと、エンジンのかかり始めたマスタングが一夏の言葉を歯牙にかけるハズもなく・・・

 

 

「やるな・・・衰えてはないな「焔の錬金術師」!」

 

「なら少し本気を出そうか・・・」キュ

 

「良いねぇ・・・望むところだ」ピキピキ

 

 

マスタングはズボンのポケットから赤い紋章の入った白い手袋を着け、アキトが手から冷気を出し始めた・・・

 

 

「KUAAAAA!」

 

「・・・」キリッ

 

 

吸血鬼と錬金術師の攻撃が衝突しようとした・・・その時である!

 

コツリ・・・

 

「大佐?」

 

ガシッ

 

「アキト?」

 

「「・・・え?」」

 

 

マスタングの後ろには金髪を後ろで纏めた女性が・・・

アキトの首根っこを掴むのは赤毛のシェルスが・・・

 

 

「ちゅ、中尉?」

 

「シェ、シェルス?」

 

「大佐・・・」

 

「アキト・・・」

 

「「やり過ぎ(です)」」

 

「「・・・はい、スイマセン・・・」」

 

 

それから二人は大人しく、旅館の奥に連れられて行った・・・

 

 

「え・・・な、なんだったんだ?」

 

「さぁ・・・?」

 

「と言うか、あの人達誰?」

 

 

その場に多くの謎を残して・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

ウィィィーン

 

「あぁ~暑かった~・・・」

 

「日本の夏はジメジメして嫌だな」

 

 

旅館の自動玄関入って来たのは・・・

くわえタバコをした筋肉質の男と恰幅のいいソフトモヒカンの男であった・・・

 

 

「おい『ハボック』、ホテル内は禁煙だぞ」

 

「いけね、いけね・・・あら?あらら?」

 

「どうした?」

 

「なぁ、「ブレダ」?俺の携帯灰皿知らね?」

 

「ハァ・・・お前のズボンの後ろポケットだ」

 

「あ?・・・お!あったあった」ジュッ

 

 

ハボックは携帯灰皿でタバコを消して、辺りを見回した・・・

 

 

「しかし、今日は同じ服のなんか女の子が多いな」

 

「日本の学生旅行だろ、しかもIS学園の」

 

「IS学園ねぇ・・・大佐も良いとこのホテルをとったもんだ」

 

「色目を使って見るな、怪しまれるぞ」

 

「へいへい、わかったよ・・・お!あの子可愛い!」

 

「ハボック・・・」

 

 

二人はそんな会話をしながら、エレベーターを使って部屋に向かった・・・

 

コツ コツ コツ・・・

 

「そういやよブレダ?」

 

「なんだよハボック?」

 

「俺達が情報収集で外に出てたって事は、部屋には大佐と中尉の二人っきりか?」

 

「それはないだろ、大佐の協力者がいたろ?」

 

「あ、そうだな・・・たしか「シェルス・ヴィクトリア」ちゃんだろ?なんとかファミリーの」

 

「ヴァレンティーノファミリーな、あとハボック、口に気を付けろよ?」

 

「なんで?」

 

「あの協力者は、4年前の「ファントムブラッド戦役」の英雄、「暁のアルカード」の相棒なんだぞ」

 

「・・・人は見かけによらないな」ガチャリ

 

 

ハボックは部屋の扉を開けると・・・そこには・・・

 

 

「まったくアキトは何時も何時も何時も!」

 

「大佐聞いていますか?」

 

「「・・・はい」」

 

 

正座をさせられ、シェルスとホークアイに説教されるアキトとマスタングがいた・・・

 

 

「・・・なんだこれ?」

 

「・・・出直すか?」

 

 

その光景を目撃したハボックとブレダは引いた・・・

 

 

 

 

 

数十分後・・・

 

 

 

「ハァ?なら、お前があの「暁のアルカード」なのかよ!?」

 

「戦役の英雄がまさか学生だったとは・・・」

 

「オイオイオイオイオイ、マスタング大佐殿の部下さん達は辛辣じゃあないか?」

 

「致し方なかろう?現に学生なのだからな」

 

「ヤレヤレ・・・」

 

「フフフ♪」

 

 

 

説教も終わり、アキトはシェルスと小隊の隊員達と話をし始めた・・・

 

 

「それよりアキト?」

 

「なんだよシェルス?再会のキスでもする?」

 

「!///」バキィッ

 

「ぐべらっ!?」

 

「「えぇっ!?」」

 

 

アキトの軽口にシェルスは肘鉄を顔に喰らわせた・・・

 

 

「さてと・・・ところでアキト?」

 

「続けるのかよ!?」

 

「気にしないでハボック少尉、彼らの何時もの事だから」

 

「は、はぁ・・・」

 

 

驚くハボックとブレダをホークアイはなだめた・・・

そんな二人をほっといて、シェルスは続ける・・・

 

 

「アキト?貴方授業は?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・あ」

 

「「あ」、じゃないわよ!今すぐ授業に出なさい!」

 

「えぇぇ~・・・」

 

「「えぇぇ~」じゃない!ほら!行った行った!」

 

「ならシェルス?」

 

「何よ――ってキャっ!?///」グイッ

 

 

アキトはシェルスを抱き寄せ、頬に手を添えた・・・

 

 

「ヒュゥ~!やるねぇ!」

 

「二人とも程々にな」

 

「・・・・・・///」

 

「シェルスさん?」

 

「リザ・・・窓を開けてくれる?」スタリ

 

「え?あ、はい・・・」

 

ガシッ

 

「え?シェ、シェルス?」

 

 

シェルスはホークアイに窓を開けてもらうと、アキトの胸ぐらを掴むと・・・

 

 

「シェルス?まさかとは思うがここから投げる気じゃないよな?」

 

「ねぇ?アキト?///」

 

「な、何?」

 

 

シェルスはアキトに赤い顔を見せながら、大きく振りかぶり・・・

 

 

「恥ずかしいのよぉぉぉっ!!///」ブオン

 

「やっぱりかよぉぉぉぉぉぉっ!」

 

 

海の見える窓から外に投げた!

 

 

「ちょ、ちょっとヴィクトリアちゃん?!ここ7階ぃい!」

 

「ちょっと大佐良いんですか!?」

 

「別に構わん・・・あの吸血鬼は頑丈なんでな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅館1階にて・・・

 

 

「かは・・・結構痛いな、おい・・・」

 

 

7階から投げ出されたアキトは1階ベランダの床に大の字にめり込んでいた・・・

 

 

「しかし、シェルスのヤツ・・・「また」か?」バザリ

 

 

アキトは床からめり込んだ体を起こしながら呟いた・・・

 

 

「まぁ、良いや・・・さて、あの恐ろしいブリュンヒルデの授業に行きますかな」

 

コツリ コツリ コツリ コツリ コツリ・・・

 

 

アキトはなんともなく平気そうに立ち上がり、だいぶ遅刻した授業に向かった・・・

 

因みに・・・このあとアキトは千冬にドロップキックを喰らい、生徒達からは中庭のトラブルについて質問攻めにあった・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




無理矢理感がパない・・・
なんとかせねば・・・


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夏の砂浜は暑くて熱い・・・


久々の投稿!アレな表現あります~?
あと、アキトが少しゲスいっす・・・


 

 

インサイド

 

 

 

遅刻して、ドロップキックをされた午前中の授業も終わり、水着に着替えた俺はパラソルを広げた下で・・・

 

 

「キャー冷たーい!」

 

「海だーっ!」

 

 

太陽ギラつく夏の砂浜や海で、健康的な素肌をさらした、若きワルキューレ達が活発に遊んでいるのを眺めている・・・

 

グゥゥゥ~・・・

 

「あぁ・・・腹減った・・・」

 

 

実に実に実に!食欲をそそられる!

あぁ・・・あの素肌に牙を突き刺して、血肉を貪りたい!

というか俺、デイウォーカーで良かった!

これがナイトウォーカーだったら、即灰になってるからな!

吸血鬼の最大の弱点である太陽の光!やはり、肌に突き刺さるぜ!

 

 

「・・・ちょっと?アキトさん?何、鼻の下をのばしてますの?」

 

「おん?」

 

 

後ろから聞きなれた声が聞こえて来たので、振り返ると・・・

 

 

「ヒュゥ~♪」

 

 

専用機ブルー・ティアーズと同じ、青い水着を纏ったセシリアがいた・・・

 

 

「な、なんですか?そんなジロジロと・・・?」

 

「い~や~・・・コイツはディ・モールトベネだ」

 

「へ?」

 

「とっても似合ってるぜ?セシリア」

 

「っ!あ、ありがとうございますわ///」

 

 

あら~・・・顔を赤くしちゃって可愛いなぁ~

 

 

「あ、アキトさんも!ピンクのアロハシャツが似合ってますわよ///」

 

「お?そうかい?嬉しいねぇ~」

 

 

このピンクのアロハシャツ、中々に高かったんだよなぁ~

これで金髪でくわえタバコしたら、どっかの専門家みたいだな・・・タバコは死ぬほど嫌いだが

 

 

「そ、それよりアキトさん?」

 

「おん?なんだい?」

 

「今日は日差しが強いので、その・・・サンオイル塗ってはもらえませんか?」

 

 

・・・なに?サンオイルだと?

 

 

「オイオイオイオイオイオイオイ、セシリア?そんな事を男の俺にさせるのか?」

 

「え、それは・・・皆さんはもう海に出ていますし・・・」

 

「そうだとしても、そう易々と出来る訳がないだろう?」

 

「そ、それは・・・」

 

「もっとちゃんとした理由があるならまだしも」

 

「・・・あ///」

 

「「あ」?」

 

「アキトさんにやってもらいたいんです!///」

 

「だから気に入った!」

 

 

ホント、こういう娘の表情は良いねぇ~

 

そんな訳で、俺はセシリアにサンオイルを塗ることと相成った・・・

 

 

「もう・・・本当にアキトさんは意地悪ですのね!」

 

「まぁ、そう言うなよ?カラカイがいがあって良いぜ?」

チャプチャプ

 

「良くありませんわ!」

 

 

サンオイルを掌で馴染ませながら、俺は寝転ぶセシリアの隣に胡座をかいた・・・

 

 

「それよりアキトさんは、今まで何処に行っていたんですの?トラブルに合われたと聞きましたが」

 

「おん?いやな、旅館で久々に昔馴染みに会ったんでな」

 

「・・・女性を巡った争いになったとか・・・」

 

「おん!?」チャプリ

 

「動揺しましたわね・・・そうなんですのね?」

 

 

ジロリとセシリアの眼光が俺に刺さる・・・

 

 

「そんな怖い顔するなよ?てかなんで怒ってんの?」

チャプチャプ

 

「お、怒ってなんかいませんわ!私はアキトさんが他のお客さんに迷惑が――」

 

 

うるせぇなぁ~・・・こうしてくれる!

 

 

「てい!」

 

「ひうっ!?///」

 

 

俺は怒っているセシリアの背中にサンオイルを塗ったくってやった・・・

 

 

「あ、アキトさん!///突然なんて――あんっ///」

 

「カカカ♪」

 

 

丁寧に丁寧にオイルを塗った・・・

 

 

「ひぃん///うゥん///あぁ!///」

 

 

背中から始まり・・・首、腕、太もも、ふくらはぎ、足首、足の裏・・・

 

 

「あ、アキ――ヒぎっ///」

 

 

丁寧に丁寧に・・・まんべんなく・・・

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ///」

 

 

最初は悶えていたセシリアも、粗方オイルを塗り終えたとこで大人しくなった・・・

 

 

「アキト・・・さん///」

 

 

んン~♪良い表情になって・・・

 

そんなセシリアの耳元で、俺は囁いた・・・

 

 

「(セシリア?もっと可愛がってやろうか?」ボソリ

 

 

トロけきった頭でマトモな思考が出来る訳がなく・・・

 

 

「ふぁい・・・もっと///」

 

 

セシリアは甘い言葉に頷いた・・・

 

そして・・・俺は背中に手を沿わせて、水着のホックを――

 

 

「チェストォォォーッ!!」バキィッ!

 

「げぼらぁっ!?」

 

 

俺は突然の頬の衝撃により、太陽ギラつく砂浜に飛ばされた!

 

 

「ぐぐが・・・が、がぎごぐる?ぎん?!(な、何をする?鈴?!)」

 

「アンタこそ何やってんのよ!大丈夫セシリア?!!」

 

「ふぁ・・・鈴・・・さん?///」

 

 

何を突然、他人の頬に膝蹴りかましてんだよ!このちびっ子はぁ!顎が外れたでしょうが!

 

 

「げめぇ、ぎん!あごががずげがろうが!(テメェ、鈴!顎が外れただろうが!)」

 

「喧しいわよ!遠目で何してるか見てたら、そ、そんなハレンチな事を!///」

 

バキン←アゴハメタ

「痛っ、知るかボケぇ!俺はセシリアにサンオイル塗ってただけだ!」

 

「やり過ぎなのよ!アンタは!」

 

「あん?何処がやり過ぎなんだよ?言ってみろよ?!」

 

「え、そ、それは・・・///」

 

「どうした?ホレホレ言ってみろ?お前も、あの織斑にこんな事してもらいたいんだろ~?もしかして図星か・・・ナぁぁぁぁぁっ?!」

 

「む、む~~~~~!///うっさいわ!バカぁ!」ブォン

 

 

うぉ!クーラーボックス投げるなよ!中身がメチャクチャになるだろうが!ここは一先ず退散だな!

 

 

「逃げるンだよぉ~っ!」

 

「待てぇ~!このセクハラ男~!」

 

ダダダダダ・・・

 

このあと俺は鈴を巻くのに結構時間がかかった・・・

チャンチャン♪

 

 

 

―――

 

ノーサイド

 

 

 

「・・・巻いたか・・・?」

 

 

顎が外されながらも、追っ手を巻いたアキトは海辺の岩影に隠れていた・・・

 

トントン・・・

 

そうしていると、アキトの背中を叩く人影が・・・

 

 

「おん?・・・シャーロットか?」

 

「・・・よく後ろを見ずに正体がわかったね?」

 

「まぁな――って、あぁん?!」

 

 

クルリと後ろを振り替えると、そこには水着を着たシャルロットと・・・

 

 

「バスタオルを巻いた・・・変態?」

 

「誰が変態だっ!」

 

「あは、ははは・・・」

 

 

アキトの不用意な発言で、バスタオルの塊を怒らせた・・・

 

 

「その声は・・・ラウラか?なんでそんな格好してんだ?」

 

「そ、それはだな・・・その・・・///」

 

「おん?」

 

 

バスタオルの塊改め、ラウラは何故かその場にヘタリこんでしまった・・・

 

 

「ほらラウラ、アキトに見せてあげないと」

 

「し、しかしだなシャルロット!」

 

「もう・・・ラウラがそんなに見せたくないなら、ボクがアキトと遊びに行っちゃうよ?」

 

「なっ!?それは・・・」

 

「アキト、遊びに行こ?」

 

「あ、あぁ」

 

 

 

そう言いながらシャルロットは、アキトの腕を引っ張りながら、ラウラから離れようとした・・・

すると・・・

 

 

「ぬ、ぬぅぅぅ・・・待て!シャルロット!」バサリ

 

「おん?」

 

 

ラウラは巻いていたタオルを取ると・・・

 

 

「わ、笑いたければ笑え!///」

 

 

真っ赤な顔して、黒い水着を着けた姿を見せた・・・

そんなラウラをアキトは・・・

 

 

「・・・ふむぅ・・・」ザッザッザッ

 

「な、なんだ!」

 

「アキト?」

 

 

悩ましい顔をして、ラウラに近づくと・・・

 

 

「カ・ワ・イ・イ~~~!」

 

「ふわぁっ!?///」

 

 

ラウラを高く持ち上げ、クルクルと回った・・・

 

 

「ウハハハハハ!可愛いなぁ!可愛いなぁ!お前は私を萌え殺すつもりか?!」

 

「キャー!ギャー!」

 

 

その可愛さに当てられたのか、テンションがおかしい方向に高ぶっていた・・・

 

 

「ちょっと!?アキト!しっかりしてよ!」

 

「あぁ、悪い悪い・・・大丈夫か?ラウラ?」

 

「あ、あぁ・・・少しビックリしただけだ・・・」

 

 

我に返ったアキトはラウラを地面に降ろした・・・

 

 

「もう、アキトったら・・・(ボクの事も見てよ)」

 

「いや、悪い悪い・・・しかし、シャーロットさんや」

 

「な、何?アキト?」

 

「似合ってるぜ?そのオレンジの水着、可愛い」

 

「っ!そ、そんな似合ってるなんて・・・あ、ありがとう///エヘヘ///」

 

 

少しラウラに焼きもちを焼いたシャルロットも、アキトが褒めると、照れ、顔を押さえて悶えた・・・

そんなシャルロットをアキトほおっておき・・・

 

 

「そういやぁ~・・・ラウラや?」

 

「なんだアキト?」

 

「簪は?お前らと一緒じゃないのか?」

 

 

簪の事を聞いた・・・

 

 

「簪か?簪なら4組の授業に出てるぞ、その授業ももう終わっただろう」

 

「そうか・・・」

 

「なんだ?簪に用でもあるのか?」

 

「・・・いや気にするな、ちょっと――っ!?」

 

 

ラウラと話をしていると、アキトは突然にグルリと向こうを向いた・・・

 

 

「どうした?アキト?」

 

 

ラウラがキョトンと疑問符を頭に浮かべながら、アキトを見ていた・・・

 

そのアキトはと言うと・・・

 

 

「ニョホ♪今日はツイてるな!」

 

 

ニヤリと口角を歪ませていた・・・

アキトの視線の先には・・・

 

 

「へぇ~貴女、日本代表なのね」

 

「候補生・・・ですけどね」

 

「でもその年でスゴいわよ、誇りを持ちなさい」

 

「あ、ありがとうございます///」

 

「かんちゃん照れてる~」

 

 

水色の水着を着た簪とぬいぐるみのような水着?を着た本音を連れた・・・

 

 

「あ!アキアキだぁ~!お~いアキアキ~!」

 

「ちょっと本音!走らない!」

 

「フフ♪若いわね・・・そうだと思わない?アキト?」

 

二人を朗らかな顔で見守る、日傘をさした白のワンピース姿のシェルスがいた・・・

 

 

「シェェェルス~♪」タッタッタッ

 

 

アキトが簪と本音を連れたシェルス目掛けて走り、ジャンプした!

 

 

「えっ!アキト!?」

 

「あ、危な~い!」

 

 

ジャンプしたアキトはキレイな項を描き、シェルスに飛び付いた・・・

あわやアキトがシェルスと激突しようとした・・・

 

その時!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「WANABEEEEEEEEEEEEEEEE !!」ドバギィッ

 

「ゲボラァぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「「「えぇぇぇぇぇぇっ!?」」」

 

 

シェルスの右アッパーがアキトに炸裂した!

アッパーは見事に顎にクリーンヒットし、アキトはクルクルと回転しながら、キレイな項を描いて・・・

 

 

「ぁぁぁぁぁぁぁっ!」ドボッーン

 

 

海に落下した・・・

 

 

「あ、アキトぉぉぉっ!?」

 

「おぉ!ホールインワンだぁ~!」

 

「言ってる場合か!大丈夫か?!!アキト!」

 

「アキト!しっかり!」

 

 

四人はアキトが落下した海に駆け寄ると・・・

 

 

ザパァッ!

「アーハハハハハハハ!さすが!さすがたぜ!シェルス・ヴィクトリア!」

 

 

びしょ濡れのアキトが笑いながら、起き上がった!

 

 

「ハァ、ヤレヤレだわ・・・」

 

「貴様!何者だ!?」

 

 

溜め息をついたシェルスにラウラはつかかったが・・・

 

 

「やめろラウラ」ボタボタ

 

 

びしょ濡れのアキトが制止した・・・

 

 

「大丈夫!?アキト?!」

 

「おん?あぁ簪か、授業は終わったのか?」

 

「それよりアキト!顎大丈夫なの!?」

 

「ん?大丈夫大丈夫、シェルスが手加減してくれたからよ」

 

「て、手加減!?あれで?!」

 

「シェルシェル、力持ち~!」

 

 

人一人を5mも殴り飛ばして、まだ手加減な事にシャルロットは驚愕し、本音はのほほんと感想を述べていると・・・

 

 

「アキト!この女は一体何者だ!?」

 

 

戦闘体制のラウラがシェルスを睨みながら、アキトに問いかけた・・・

しかし、そんな事お構いなしにアキトはシェルスに近づき、自分を殴った手をとり・・・

 

 

「手、大丈夫か?」

 

「えぇ、少し捻ったわ」

 

「踏み込みが甘いんじゃないか?少し冷やすぞ」ピキピキ

 

 

回りにいた簪達にバレないように、患部を気化冷凍法で冷した・・・

その冷したシェルスの手を・・・

 

 

「あぁ、冷てぇ~」

 

「ちょっとアキト!///」

 

 

自分の顎に当てて冷した・・・

だが、アキトは忘れていた・・・周りに人がいた事を!

 

 

「ちょっと?アキト~?」グイ

 

「おん?なんだよ?シャーロットにラウラ?あと簪、無言でアロハの裾を引っ張るな」

 

「説明しろ!この女は誰だ?!」

 

 

シャルロットにラウラ、簪が説明を求めた・・・

 

 

「あぁ、この人は[シェルス・ヴィクトリア]、俺の家族」

 

「家族・・・だと?」

 

「どうゆうことかな?アキト?」

 

「というか・・・さっきの間はなに?」

 

 

三人は納得しないのか、顔をしかめ、シャルロットに至っては凄味を出し始めた・・・

そうこうしていると・・・

 

 

「それよりシェルス?」

 

「なに?アキト?」

 

「シェルスはなんで簪達と一緒に?」

 

 

三人をほおって勝手に話を始めた・・・

 

 

「私は彼女に案内を頼んだのよ」

 

「へぇ~」

 

「私の髪を弄るな、てか話を聞きなさい」ビシッ

 

「へいへい・・・って、え?俺に会いに来てくれたの?ウレピー!」

 

「ちょっとアキト!無視しないでよ!」

 

「そうだぞ!アキトはこの女とどういう関係なんだ?!」

 

「うんうん!」

 

 

おやおやアキト、外野が騒ぎ始めましたよ?

 

 

「どういう関係って・・・」

 

「ねぇ、お嬢さん方?」

 

「な、なんですか?」

 

 

納得しない三人にシェルスは声をかけた・・・

 

 

「アキトのクラスメイト?うちのアキトがお世話になってるわ」

 

「う、[うちの]?」

 

「アキトと私は・・・まぁ、言ってみれば[パートナー]よ」

 

「[パートナー]・・・」

 

「貴女はシャルロット・デュノアね?」

 

「っ!?ど、どうして私の名前を・・・?」

 

 

シャルロットは初対面のシェルスに名前を言い当てられて驚いた・・・

 

 

「アキトに頼まれた仕事でね」

 

「仕事?」

 

「それよりシェルス?俺に何かようがあんだろ?」

 

「あ!そうそう、アキトのせいで忘れてたわ」ゴソリ

 

 

シェルスはそう言って、アキトに掌大の黒い核鉄を渡した・・・

 

 

「何これ?」

 

「さぁ?ノアから渡されたモノだから、私も知らないのよ」

 

「ほぉ~ん・・・あと、シェルス」

 

「何――ってキャっ!///」

 

 

アキトはシェルスの腕を引っ張り、抱き寄せた・・・

そして、ゴニョゴニョと囁くと・・・

 

 

「こ、この!///」バチィッ

 

「ぶべらっ!」

 

「アキト!?」

 

 

シェルスは力加減なしにアキトを叩き、その場から立ち去ってしまった・・・

 

 

「アキアキ~?大丈夫?」

 

「大丈夫かアキト?!」

 

「ニョホ、ニョホホ♪・・・Te iubesc シェルス」

 

「え?」

 

 

あとに残されたのは満足気に砂浜に倒れたアキトと駆け寄る四人だった・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





統合しますた。


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吸血鬼と吸血姫・・・


甘くてくどいのが書きたい・・・


 

 

 

インサイド

 

 

 

昼間にシェルスのアッパーとビンタを受けた俺は、そのまま気絶した・・・

まぁ、夕方ぐらいにブリュンヒルデに叩き、いや殴り起こされたけどな・・・

 

そんなこんなで一日目の臨海学校は終わり、今は楽しい夕食時!・・・なのだが・・・

 

 

「おいアキト、この緑の練り物はなんだ?」

 

「山葵ってヤツだ、日本のスパイスだな・・・てかなんでラウラは俺の胡座の上にいんだ?」

 

「む?別に良いではないか」

 

 

いや、[良いではないか]て言われてもな・・・

なんか周りの目が冷たいんだが・・・とくに両隣の二人が・・・

 

 

「あら?どうかされましたか?ロリトさん?」

 

「そうだよ、どうかしたの?ペドト?」

 

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"

 

「いや・・・なんでもない・・・」

 

 

凄味が!金髪二人の凄味が凄い!今、飯時だよな?平和に飯を食べる時間だよなぁ?!あと、なんか向こうの四組の方からも殺気がビシビシ伝わるんだが!?

気のせい!?気のせいなのか?!気のせいだと誰か言って!!!

ツーか、[ロリト]と[ペドト]って何?ロリコンとペドフィリアかけてんのか!?俺は圭くんみたいにツッコミを処理できないぜ!

 

 

「どうしたアキト?食べないのか?ほらアーン」

 

「むぐっ・・・モグモグ」

 

 

あ、美味い・・・じゃなくて!何を冷静にアーンしてんだ?この娘は?!「美味いか?」じゃねぇよ!首をコテンと傾げるな!可愛いだろうが!萌えるだろうが!

 

あぁ、ドンドンとシャーロットの目がツンドラ級に冷たくなってる!セシリアに至っては何時かの、養豚場の豚を見る目だぁ~!誰か助けて!

 

俺は正面に偶々いたのほほんに目をやると・・・

 

 

「アキアキ食べないの~?じゃあ私が食べてあげる~」

 

 

空気を読まずに俺の刺身を取りやがった!

 

 

「なっ!?俺の刺身!のほほん、テメ!」

 

「ゴメンゴメン、アキアキ~、それならアキアキはセシリーやデュノっちに貰えば~?」

 

「「!」」

 

 

オイオイオイオイオイオイ、なんか二人が獲物を見つけたジャッカルのようになったぞ!

 

 

「な、ならアキトさん!ど、どうしてもと言うなら私のお刺身をあげますわよ?///」

 

 

いや、どうしてもでもないし・・・

 

 

「アキト、この山葵ってのをタップリつけたよ///」

 

 

シャーロットさーん?貴女は刺身に山葵をつけすぎでぇーす!限度をしりなさぁーい!

ちょっと、セシリア?!気づいたように刺身に山葵を塗りたくるな!

 

 

「「はい、アーン///」」

 

 

・・・・・・ヤレヤレ、覚悟を決めるか・・・

 

この数秒後、吸血鬼の断末魔の叫び声があがった・・・

何事かと駆けつけたダークスーツのブリュンヒルデにまた殴られた・・・踏んだり蹴ったりだぜ・・・

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ・・・(暁、気の毒に)」

 

「ふん、騒がしいヤツだ・・・ほら一夏、アーン///」

 

「お、おうありがとう箒///アーン」

 

 

 

あと、織斑に篠ノ之・・・イチャつくんじゃねぇ・・・

 

俺はシェルスとイチャつきたい・・・無性に・・・

まぁ、良いか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとでシェルスの部屋に行くからな・・・

 

 

 

―――

 

 

 

カラン カラン カラン・・・

 

殺意に囲まれた夕食も終わり、俺は旅館の離れにある露天風呂に向かって歩を進めていた・・・

 

 

「あぁ、顎が痛~・・・なんであの教師は加減しないんだよ・・・てか人間にしては力が強すぎだろ」

 

 

それに性格に難があるな、あれじゃあ言い寄って来るヤツも居るまい・・・ん?ありゃ・・・

 

 

「誰かと思えば、ホークさんじゃあないか」

 

「あら、こんばんわ暁くん」

 

 

後ろ髪をといた、浴衣姿のリザ・ホークアイさんが向かいの道から歩いて来た・・・

 

 

「ホークさんも露天風呂かい?」

 

「いえ、私はお風呂からあがったばかりよ?とっても良い湯かげんだったわよ」

 

「まぁ、ここの温泉は美肌効果があるって言うからね・・・そういやぁ、大佐は?あの人の事だ混浴にでも入ってるんじゃないのか?」

 

「え、大佐なら・・・・・・」

 

「おん?ホークさん?」

 

「あぁ、大佐なら少尉達と温泉街に行ってるわ」

 

「ふぅ~ん・・・」

 

 

なんか怪しいな・・・顔の筋肉が少しひきつった・・・

何か、隠している・・・?

大体、小隊の慰安旅行にシェルスがついて行ってる事がおかしい・・・

 

 

「ねぇ、ホークさん?」

 

「何?暁くん?」

 

「気になってたんだが・・・なんで、シェルスが小隊の慰安旅行に付き合ってんだい?」

 

「っ、それは私が頼んだのよ、彼女なら良い場所を知ってそうだったから」

 

「ほぅ・・・」

 

「暁くん、そろそろ良いかしら?湯冷めしてしまうわ」

 

「おっと、それは失礼!貴女に風邪をひかせては大佐に焼かれてしまう」

 

「あら上手ね、それじゃあ・・・」

 

 

ホークさんはそう言って、俺の横を通り過ぎて行った・・・

その通り過ぎて行く時の表情を俺は見逃さなかった・・・

 

その表情は俺がよく知る、軍人[リザ・ホークアイ]の顔だった・・・

 

 

「ヤレヤレ、ここで何をやってる・・・ロイ・マスタング?」

 

 

取り合えずはシェルスに事情を聞くか・・・

 

 

「ま、その前に風呂だ」

 

 

そんな感じで、俺は露天風呂に向かった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

部屋の食事を終えたシェルス・ヴィクトリアはパソコンを開き、ある人物とテレビ電話をしていた・・・

 

 

「見える?[ノア]?」

 

「「あぁ待ってなぁ~、お!見えた見えた!見えとるし、聞こえとるでぇ」」

 

 

画面に映ったのは、ヴァレンティーノファミリーの頭脳、[ノア]であった・・・

 

 

「「シェルス姉、そっちの調子はどうや?なんか発見はあったんかいな?」」

 

「どーもこーもないわよ!」

 

「「ど、どうしたんや?シェルス姉?」」

 

「拠点先の旅館にアキトが来るのよ?!」

 

 

シェルスは画面に向かって声をあげた・・・

 

 

「「あぁ、それは知らんかったなー、すまんへんすまんへん」」

 

「ニヤニヤしながら話すな、隠す事ぐらいしなさい」

 

「「え~、だってその方が面白いやんか」」

 

「アンタねぇ~・・・ハァ・・・」

 

 

シェルスは顔を手で隠して、溜め息を一つついた・・・

 

 

「「そんで?[収穫]の方はどうなんや?」」

 

「ハァ、さっぱりよ・・・最後に目撃されたのがここの近くで、3日も探してるけど・・・そっちはどう?」

 

「「アカン、こっちも探してるけどサッパリやで」」

 

「そう・・・」

 

「「でも」」

 

「でも?」

 

「「太平洋沖でアメリカ軍が演習をやってるみたいやで?」」

 

「演習?」

 

「「アメリカとイスラエルの共同開発ISの演習やて」」

 

「そう・・・(ISか・・・)」

 

「「話は変わるんやけど、シェルス姉?」」

 

「なに?ノア」

 

「「その様子だと、アキトとなんかあったんやな?」」

 

「なっ!?///」

 

 

ノアの問いかけにシェルスは顔を赤らめた・・・

 

 

「「あ~!真っ赤な茹で蛸やでシェルス姉!今度はどうやってたらされたんや?」」

 

「ノア~!///」

 

 

画面のノアはニヤニヤとニタニタと笑い、一方のシェルスは画面を睨んでいると・・・

 

 

「教えてやろうかノア?」

 

「っ!?アキト?!」

 

 

シェルス一人だけしかいないはずの部屋に、いるはずのないアキトの声が響いた・・・

 

 

「「なんや、アキトおるんかいな」」

 

「そんなはずないじゃない!扉は施錠してるし、センサーだって反応してないのよ!」

 

「「あ・・・」」

 

 

画面の中のノアは何かに気づいたのか、声を短くあげた・・・

 

 

「[あ]って、何よ?[あ]って!どこにアキトが――」

 

 

シェルスは次の言葉は紡がれる事はなかった・・・

なぜならば・・・

 

 

「スゥ~♪久しぶりのシェルスの良い香り・・・」

 

「んみゅぅ///」

 

 

シェルスの体を、後ろからギュッと抱き締めたアキトがいたからだ・・・

 

 

「「(あ、コーヒー欲しいわ)」」

 

ふと、ノアは思ったのであった・・・

 

 

「スゥ・・・ハァ・・・良い匂い」

 

「やぁ、やめ///」

 

 

現在の状況を説明しよう!

シェルスはノアとパソコンのテレビ電話で話している途中、乱入してきたアキトに抱き締められて、愛撫されているのである!

 

 

「「・・・そろそろええか?アキト?」」

 

「おん?」

 

 

痺れを切らしたのか、画面のノアがコーヒーを飲みながら聞いて来た・・・

 

 

「なんだよノア?俺は今忙しいのだが?」

 

「「シェルス姉を愛撫するのにか?」」

 

「まぁね♪」

 

「んぁん///」

 

 

アキトはシェルスの頭から足にかけてを愛撫した・・・

その愛撫にシェルスは抵抗しようとしたが、アキトに難無く組伏せられた・・・

 

 

「「ハァ・・・それでアキトはなんでシェルス姉の部屋におるんや?」」

 

 

こんな時でもノアは冷静であった・・・

 

 

「なんでって、お前ら・・・マスタング大佐達と何をしているんだ?」

 

「っ!?」

 

「「あちゃあ・・・そこをついてきたかいな」」

 

 

アキトの真をつく問いかけに、シェルスは驚愕をノアは諦めたような表情を浮かべた・・・

 

 

「で?俺に内緒でなに楽しい事してんだい?フロイライン達?俺に納得できるような説明してくれる?」

 

「ハァ、アキトにだけはバレたくなかったけれど・・・仕方がないわね」

 

「「あら、アキトに話ちゃうんかいな?シェルス姉?」」

 

「こうなったらアキトは最後までグズるわよ?」

 

「「・・・せやったな・・・ハァ、ヤレヤレってやつかいな?」」

 

「まったくよ」

 

「では説明してもらおうか?」

 

 

それからノアとシェルスはアキトに大方の説明をした・・・

 

何故、シェルスがマスタング組の慰安旅行に付き合ってるのかと言うと・・・

今から1週間前にある人物が中国で写真に撮られた・・・

その人物は通称[大尉]と呼ばれる白髪赤眼の男であった・・・

 

この男、四年前に騒動を起こした反IS過激団体、[レギオン]の最大戦力と呼ばれる者であった・・・

 

その大尉が、中国から日本に向かったという情報を得たマスタングは、慰安旅行という名目で日本に来ていたのだ・・・

 

その説明を聞いたアキトは・・・

 

 

「・・・う、うぅ・・・」

 

「え、アキト?」

 

「あぁぁんまぁぁぁりぃぃぃだぁぁぁっ!HeEEYYYYYYYY !」

 

「「ア、アキト!?」」

 

「俺をぉぉ、仲間外れにぃぃぃしてぇぇぇ、何を楽しい事してんだよぉぉぉっ!ウワァァァッーン!」

 

 

大泣きをした・・・

まるで小さな子供のように泣きじゃくった・・・

近くにいたシェルスとノアはオロオロと動揺していると・・・

 

 

「グスっ・・・ハァ、スッキリしたぜ」

 

「あらら?!」ガクッ

 

 

アキトはスッキリした顔になった・・・

 

 

「「そういやアキトは、感情が高まると大泣きするんやったな」」

 

「すっかり忘れてたわ・・・慣れないものね」

 

「そんなことより!なんで俺はそんな楽しい事に参加出来てないんだよ!」

 

 

ガックリと肩を落とす二人を余所にアキトはシェルスに迫る・・・

 

 

「ハァ、じゃあ聞くけど、アキトはこの話を聞いたらどうするつもりだったの?」

 

「レギオン関係の案件なら俺は積極的に参加するぜ!」

 

「学校をほっぽりだして?」

 

「もちろん!」

 

「そんな良い笑顔で答えないでよ・・・ハァ」

 

「「シェルス姉、溜め息ばっかりやな」」

 

「そうだぜシェルス、あんまり溜め息ばっかしてると疲れるぜ?」

 

「誰のせいだと思ってるのよ・・・ヤレヤレだわ」

 

 

アキトが、この案件を知らされてなかった理由は簡単である・・・

アキトは興味のある事にはのめり込み過ぎる・・・

そのため、アキトには案件が知らされていなかったのであった・・・

 

 

「それよりシェルスさんや?」

 

「なにアキト?」

 

「てい」

 

「きゃっ!?///」

 

 

納得した?アキトは突然、シェルスの腹を撫でた・・・

 

 

「ほほぉ・・・」

 

「何をするのよ!///」バチッ

 

「ゲボラっ!」

 

 

突然腹部を撫でられたシェルスはアキトの頬にビンタをかました・・・

 

 

「「突然どうしたんやアキト?シェルス姉のお腹を撫でて?」」

 

「痛たた、なぁノア?シェルスって怪我なんかしたか?」

 

「「怪我?シェルス姉怪我しとんかいな?!」」

 

「な、何を言っているのだアキト?!」

 

「軍人口調になってるぜシェルス?どこで怪我した?」

 

「そ、それは・・・」

 

 

アキトの紅い眼に見られて、シェルスは顔を反らした・・・

 

 

「ヤレヤレ・・・ノア?」

 

「「なんやアキト?」」

 

「こっから先は、ノアには刺激が強いから切るぜ」

 

「「え!?ちょっ、アキ――」」

 

ブチ

 

アキトはパソコンのテレビ電話のキーを切ると・・・

 

 

「よっと」ガシッ

 

「わっ!?///」ドタリ

 

 

シェルスの腕を掴み、押し倒した・・・

 

 

「ちょっ、ちょっと?!アキト!なにを!///」

 

 

シェルスは抵抗しようとして、またアキトの頬を殴ろうと腕に力をいれたが、アキトは掴んだ腕から掌を掴み直し、動けなくした・・・

 

シェルスに覆い被さったアキトの眼は先程よりも紅くなっていた・・・

そして、シェルスの耳元で甘く囁いた・・・

 

 

「さて・・・お仕置きの時間だよBaby?」

 

アキトはそう耳元で囁くと、吸血鬼の能力で背中から腕を1対増やした・・・

その増やした腕をシェルスの腹にもっていき、浴衣の帯をときはじめた・・・

 

 

「アキト!やめっ――///」

 

「・・・」

 

 

ジタバタとシェルスは抵抗するが、アキトは腕の力を弱めようとしない・・・

 

そうしていく内に帯をときおえ、浴衣を剥ぐとそこには・・・

 

 

「・・・オイオイオイオイオイオイ」

 

「・・・///」

 

 

胸から下腹部にかけてついた大きな抉り傷といくつもの銃創がシェルスの白い肌に痛々しくついていた・・・

 

 

「・・・シェルス・・・」

 

「そ、そんなマジマジと見ないでよ・・・恥ずかしい・・・///」

 

 

顔を赤らめ、そっぽを向くシェルスにアキトは一つ息を吐くと、シェルスを起こし、その前で腕組みをした・・・

 

 

「もう、乱暴なんだから・・・///」

 

「・・・どこでその傷を負った?」

 

「えと・・・前の仕事で・・・ちょっと」

 

「前の仕事・・・[デュノア社]をやった時にか?」

 

「う、うん・・・その時にガブリエラを庇った時に・・・ね?」

 

 

帯を直しながら、シェルスはオドオドとアキトに答える・・・

 

 

「ハァ~・・・シェルス、お前なぁ!いくら吸血鬼でも限度と言うものがなぁ!」

 

「わかってる!わかってるから!その話ならロレンツォさんから散々叱られたわよ!」

 

「ほぅ、ロレさんから[叱られたと]?」

 

「あ・・・」

 

「ロレさんから叱られたなら・・・回復用の[血液パック]を渡されたよなぁ?」

 

「えと・・・その・・・」

 

 

シェルスは段々と顔色が悪くなり、アキトの目付きは鋭くなっていく・・・

 

 

「何時も言っているが、シェルス・ヴィクトリア!お前は[吸血鬼]だ!しかも太陽光とか銀などの[弱点を克服した]他とは違う特別な吸血鬼だ・・・しかしだな――」

 

「[血を飲まなければ、直せる傷も直らない!]・・・でしょ?」

 

「わかってるじゃないか!それなのに何故なんだ?!」

 

「そ、それは・・・///」

 

 

アキトはキツくシェルスを問いただすと、シェルスは目に一杯の涙をため・・・

 

 

「だって・・・だって!だって!血液パックの血液、[美味しくない]んだもん!///」

 

 

子供のように涙をポロポロと落とし、泣き始めた・・・

 

 

「[美味しくない]って・・・お前なぁ・・・」

 

「アキト!私は血を見るの大丈夫だけど、血を[飲む]のは苦手なのよ!///」

 

「[苦手]て・・・ヤレヤレ・・・」

 

 

泣くシェルスの頭と背中を優しく撫でていった・・・

 

 

「・・・なぁ、シェルス?良いかな?」

 

「グス、ヒグ・・・なにアキト?///」

 

 

頭と背中をさするアキトはシェルスに優しく声をかけた・・・

 

 

「俺はなシェルス・・・君の体に傷があると、俺は身を引き裂かれるように悲しい・・・だから――」

 

「・・・アキト?」

 

「・・・なんだいシェルス?」

 

 

優しくアキトに抱き締められるシェルスは、上目使いでアキトを見つめ・・・

 

 

「・・・頂戴・・・貴方の血を・・・貴方の逞しく猛々しい血を・・・///」

 

 

血を欲しがった・・・

その欲しがるシェルスの眼はアキトと同じように紅くなっていた・・・

 

サクリ

 

アキトは自らの牙で人指し指を切った・・・

切り傷からは薔薇のように真っ赤な血が流れ出た・・・

 

 

「ほら、飲めよ・・・」

 

「・・・ゴクリ///」

 

 

アキトは血が流れ出る指をシェルスの口元に差し出した・・・

差し出されたその指にシェルスは息を飲むと・・・

 

 

「カプッ///」

 

 

両手でアキトの手を掴み、指にしゃぶりついた・・・

 

 

「チュゥ、チュゥ・・・///」

 

「・・・旨いか?シェルス?」

 

 

シェルスはコクリと頷く・・・

 

シェルスがアキトの血を吸っていると、体についていた生々しい傷が信じられない速度でふさがり、回復していった・・・

 

 

「プハッ、美味しい・・・美味しいよアキト///」 

 

 

シェルスは指から口を離すと、蕩けた眼でアキトを見つめた・・・

 

 

「もっと・・・もっと頂戴?///」

 

 

息遣い荒く、アキトにおねだりをした・・・

すると、アキトは・・・

 

キュッ

 

「っ!あふぃほぉ(アキト)?///」

 

 

シェルスの口元からだらしなくチロリと出た舌を指でつまんだ・・・

 

 

「あぁ、シェルス・・・良いか・・・?///」

 

「あふぃほぉ(アキト)・・・ふぃふぃよ(いいよ)///」

 

サクリ

 

許可を得たアキトは、自らの牙で口の内側を傷付け、自分の唇をシェルスの唇に近づけていった・・・

 

 

「(こんな顔を見せられて、イキリ立たないヤツはいねぇ・・・!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唇と唇がもう数cm合わさる・・・その時・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アキト・・・何やってるの・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





温泉街にて・・・

ブレダ「大佐、中尉はどうしたんですか?」

マスタング「中尉なら英気を養ってる頃だろう」

ハボック「はぁ~、俺も温泉に入りたいっす」

マスタング「そう言うなハボック、[ヤツ]を見つけるためだ」

ハボック「うす、頑張るっす」


そう言って3人の男達は夜の街に消えていった・・・


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人外と兎耳の天災・・・

Q.吸血鬼関係で有名な映画と言えば?

A.「ブレイド」シリーズ
 「ヴァン・ヘルシング」
 「吸血鬼ドラキュラ」

―――統合しました―――



 

ノーサイド

 

 

 

カラン・・・コロン・・・

 

「んッン~♪良い気分だ。歌でも一曲歌いたい良い気分だ~♪」

 

朝風呂を頂いたアキトはホカホカ気分で朝日に照らされた中庭を歩いていた・・・

 

 

「ホッコリしたら、腹が減ったな・・・そう言えばココの旅館の朝飯は朝粥が出るんだったな・・・コイツは楽しみだ」

 

[[・・・・・・・・・]]

 

「おん?どうした朧?」

 

[[イエ・・・ナンデモゴザイマセン・・・]]

 

「?。さよか」

 

 

アキトはそのまま旅館の女将が用意してくれた自室に戻って行った・・・

だが、朧は自らのセンサーを張り巡らせ、警戒していた・・・

 

 

[[(コノ気配・・・[彼女]か・・・?)]]

 

 

その後、クラスメイトと合流したアキトは朝飯を平らげた・・・

 

1時間後、海辺の砂浜に生徒達は集められ、打鉄を纏って専用刀の[葵]で素振りをしていた・・・のだが・・・

 

 

「あの織斑先生?どうしてここに箒さんがいるんですの?」

 

 

専用機持ち達は一般生徒とは違う場所に集められていたのだ・・・

そこにはいつもの専用機持ちのメンツに混じり、ISスーツを着た箒がいた・・・

 

 

「それはだなオルコット――」

 

 

溜め息混じりに千冬が事情を説明しようとした・・・その時である・・・

 

 

「ちぃぃぃぃぃ~~~~~ちゃぁぁぁ~~~ッん!!!」

 

 

兎耳のカチューシャをつけた白衣姿の人物が千冬に向かって突撃していった・・・

そんな人物に対して千冬は・・・

 

 

「ふんッ!」バキィッ

 

「ぐべらっ!?」

 

 

ラリアットをかました・・・

ラリアットをかまされた人物は潰れた蛙のような声でひっくり返されたのだが・・・

 

 

「なにすんのさ!ちーちゃん![束]さんの大事な頭脳が壊れたらどうすんのさ?!」

 

 

平気な顔で起き上がり、千冬に向かって文句を言った・・・

 

 

「大丈夫だ。さっきの衝撃で脳には良い刺激になったんじゃないか?」

 

「そうかなぁ~?そうかも!ちーちゃん頭っ良いぃ~!」

 

「ハァ・・・まったく・・・」

 

 

二人の会話に周りは唖然となった・・・

すると一夏が口を開いた・・・

 

 

「た、[束]さん?」

 

「やっほ~!いっくん!久しぶり~!そうだよ!束さんだよ~!」

 

 

兎耳は一夏に向かって実に馴れ馴れしい挨拶をした・・・

 

 

「あ、あの織斑先生?この方は一体?」

 

 

周りがまだ唖然となる中、セシリアが千冬に質問すると、千冬はまた溜め息をついて話始めた・・・

 

 

「コイツはISの生みの親・・・[篠ノ乃束]だ」

 

「ヤッホー♪皆ヨロピクねー♪」

 

 

彼女の名前は[篠ノ乃束]。ISと言う世紀の大発明を一人で創りあげた人物である・・・

 

その事を説明され、驚きの声を周りがあげるなか・・・この男は・・・

 

 

「アキト・・・起きて・・・?」

 

「Zzzzzz・・・」

 

 

目を確りと開けたまま眠るという高等テクニックを使い、簪に寄りかかっていた・・・

 

 

 

―――

 

 

 

専用機持ち達は一人を除いて驚きを隠せずにいた・・・

それもそうだ。今、自分達の目の前には世紀の大発明[IS ]を創りあげた天才科学者[篠ノ乃束]博士がいるのだから・・・

 

そんな天才に向けて、冷たい目を向ける者が一人・・・

 

 

「むふ~♪久しぶりだね♪箒ちゃん!」

 

「・・・姉さん・・・」

 

 

束は手をワキワキさせながら箒に近づいていく・・・

 

 

「久しぶりに会ったから色々と成長してるね~?特にむn――」バキィッ

 

「うるさい・・・殴りますよ?」

 

「殴ってから言った!箒ちゃんひど~い!いっくん!箒ちゃんがイジめる~!」

 

「あは、ハハハ・・・」

 

「ハァ・・・」

 

 

天真爛漫な天才に一夏は苦笑いし、千冬はまた溜め息をついた・・・

 

そんな中・・・

 

 

「あの、篠ノ乃博士?どうして貴女がここに?貴女は確か世界中から指名手配されてるはずでは?」

 

 

セシリアが束に声をかけた・・・しかし、束はセシリアに対して・・・

 

 

「え・・・お前誰?」

 

 

何とも言えない冷たい目と反応を示した・・・

 

 

「イギリス国家代表候補生のセシリア・オルコットですわ。どうぞよろし――」

 

「うるさいよ」

 

「・・・え?」

 

「今、束さんは箒ちゃんにいっくんにちーちゃんと話をしてるんだよ。お前なんかに興味ないから黙っとけよ」

 

「え・・・あ・・・はい・・・」

 

 

まるでセシリアは道端の石ころのように束に冷たくあしらわれ、ショボンとした・・・

そんなセシリアを余所に束の興味の矛先はある人物に向けられた・・・

 

 

「おい、お前」

 

「え・・・?」

 

「お前じゃないよ水色・・・お前だよ黒髪の」

 

「・・・」

 

 

束は簪に寄りかかるアキトに近づく・・・

 

 

「お前・・・なんでISを動かせたんだよ?」

 

「・・・」

 

「この束さんが質問してんだよ!さっさと答えろよ!」

 

「・・・」

 

 

鋭い眼孔で束はアキトを睨む・・・だが、当の本人のアキトは寝ているのだ・・・

これでは会話は成り立たない。しかし、端から見れば二人は睨みあってるように見える・・・

そんな事とは露知らず、束はアキトに対してイライラする・・・すると

 

 

「・・・あの・・・篠ノ乃博士?」

 

「なんだよ水色?お前にようはないんだけど?黙っとけよ」

 

「・・・それでもです」

 

「なに?」

 

 

寄りかかられた簪が束に意見をしだした・・・

 

 

「突然・・・声をかけるにしても・・・少し失礼ではないですか?」

 

「ちょ、ちょっと簪!?」

 

「この束さんが声をかけてやったんだ。ありがたく思えよ。しかもお前にようはないんだよ水色!私がようがあるのはそこの黒髪なんだよ!」

 

「人に声をかける時は・・・主語をつけて話せ・・・と学校で習わなかったんですか?」

 

「な、なんだと~!お前は国語の教師かよ~!」

 

 

二人の間に不穏な空気が流れていき、簪を知る周りはハラハラと手に汗を握った・・・その時

 

 

「やめろ束、大人げないぞ」

 

「でもちーちゃん!」

 

「やめろ、いいな・・・!」

 

「む、むぅ~・・・」

 

「お前もだ更識」

 

「すみません、織斑先生」

 

 

千冬が仲裁?をした

 

 

「ヤレヤレ・・・お前もなにか言ったらどうだ?暁?」

 

「・・・」

 

「暁?」

 

「・・・Zzz」

 

「・・・ふんッ!」

 

「ゲボラッ!?」バキィッ!

 

「「「「えっ!?」」」」

 

千冬は目を開けたまま眠るアキトの顔面に右ストレートをぶちこんだ・・・

アキトはそのまま後ろに倒れた・・・

 

 

「え・・・暁のヤツ、今まで寝てたのかよ」

 

「随分とまぁ、器用な寝方だな」

 

「まったくね」

 

「というかさっきのパンチ、モロにヒットしたよ?大丈夫かなアキト?」

 

「大丈夫でしょう・・・アキトさんですから」

 

「「「「あぁ・・・確かに」」」」

 

 

セシリアの言葉にアキトを知る者は深く納得してしまった・・・

一方のアキトはというと・・・

 

 

「な、何をするだーッ!ゆ、許さん!!!」

 

「やかましいッ!!」バキィッ

 

「ぐべらっ!?」

 

今度は左フックで殴られていた・・・

 

 

「い、痛い・・・」

 

「大丈夫?アキト?」

 

「まったく、一時はどうなることかと・・・」

 

「いや~、悪い悪い」

 

 

ストレートとフックを喰らったアキトは、痛そうに殴られた鼻と頬を簪から貰った氷袋で冷し、セシリアに怒られていた・・・

 

 

「スゲェ・・・千冬姉のパンチを受けて、平気だなんて・・・」

 

「それより姉さん・・・頼んでいたものは?」

 

「[頼んでいたもの]だと?」

 

「オーケーオーケー!もちろん持って来たよ!」

 

 

そういうと束は何処からかあるISを取り出した・・・

 

 

「束さん・・・これは?」

 

「フッフッフ~♪これは束さんが箒ちゃんのために作った新しい[第4世代]のIS・・・その名も[紅椿]!」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

「へぇ~・・・」

 

「え?・・・どうゆう事?」

 

 

束の発言にアキトや一夏以外が驚愕した!

 

 

「だ、[第4世代]ですって!?」

 

「第3世代でもトライアル段階なのに・・・」

 

「なぁ鈴?それはスゴい事なのか?」

 

「い、一夏、アンタねぇ~!」

 

 

一夏の何の気なしの疑問に鈴はガックリと肩を落としながら答えた・・・

世界のISがまだ第3世代までしか作られていない事を分かりやすく説明した・・・

 

 

「――とゆうことよ」

 

「へぇ~・・・つまりは?」

 

「トドのつまりはねいっくん、束さんは天才だって事だよ!」エッヘン

 

「威張るな」ゴチン

 

「痛いよ!ちーちゃん!」

 

 

それから箒に急かされた束は紅椿をフィッティングし始めた・・・

フィッティングは思うように進んでいったのだが・・・

 

 

「・・・」

 

 

そんな場景をアキトは怪訝な顔で見ていた・・・

 

 

「どうかしたのか?嫁よ?」

 

「嫁言うな。なぁラウラ?軍人のお前からみて篠ノ乃はどう見える?」

 

「?・・・そうだな・・・」

 

 

フィッティングを進めていく中で、紅椿を纏う箒の顔をラウラは事細かく観察し、ある答えを導き出した・・・

 

 

「初めて銃を握った[新兵]だな」

 

「その理由は?」

 

「あの顔だ」

 

「ほう」

 

「初めて力を、[殺す]ための力を得たケツの青い新兵だ」

 

「さっすがドイツ軍少佐殿、言うことが違うねぇ~?」

 

 

アキトは茶化すようにラウラを褒めたのだが・・・

 

 

「そ、そうか?て、照れるな///」

 

「おん・・・(ヤバイ可愛い)」ポン

 

「わっ!?///あ、アキト!?///」

 

 

予想外にラウラが素直な反応にアキトは頭を撫でた・・・

 

 

「アキト~?」

 

「アキトさん?」

 

「・・・」

 

 

他の者にジト目で見られながらもラウラの頭を撫で続けた・・・

 

それを余所に紅椿のフィッティングは完了し、箒の顔は何処かほころんでいた・・・

 

 

「(これで・・・これで私はやっと一夏と並べる力を・・・得たんだ)」

 

「・・・」

 

「どうしたの?ちーちゃん?怖い顔して?」

 

「いや・・・なんでもない・・・」

 

 

顔がほころぶ箒を千冬もまた怪訝な顔で見ていた・・・

 

 

「あ、そう言えばお前」

 

「おん?」

 

 

どうやら天災兎が人外吸血鬼に興味を移したようだ・・・

 

 

「・・・だれ?」

 

「篠ノ乃束博士だよ、アキト」

 

「グラッツェ、シャーロット。で?その世紀の大発明者が俺になんのようだい?」

 

「お前の専用機寄越せよ」

 

「・・・・・・あ"?」

 

 

アキトは束の発言に耳を疑った・・・

[テメェ、何を言ってやがるんだよ?このアバズレがぁ!]などど言う気持ちが猛烈に沸き上がったが・・・

 

 

「(落ち着け、落ち着けよ。自然数を数えて落ち着くんだ・・・1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.・・・よし)なんで俺が初対面の貴女に専用機を渡さなくちゃあならんのだ?」

 

「この束さんが寄越せって言ってるだよ。速く寄越せよ凡才風情が」

 

「フフ、凡才風情か・・・(そんな方に俺の朧を渡す訳にはいきませんな)ブチ殺すぞテメェ?」

 

「アキト・・・逆」

 

 

先程の和やかな雰囲気とはうって変わって殺伐とした空気が辺りを塗り替えた・・・

 

 

「なんだとお前?」

 

「おっと・・・コイツは失礼。つい本音が・・・失礼失礼このアバズレ糞兎」

 

「お前ぇ~!」

 

「止めないか二人とも」

 

「でもちーちゃん!」

 

「いいからやめろ束。お前もいいな?暁」

 

「アイアイサー了解しましたよ。・・・ッケ」

 

「む、むぅ~・・・この野郎・・・!」

 

 

殺気だった空気を千冬はうやむやにした・・・

束はアキトをキツく睨みつけたが、アキトはどこ吹く風である。そんな自分に興味無さそうなアキトに束はますます苛立った・・・

 

 

「(ヤレヤレ、シェルスに吸血されたから気が短くなってやがるな・・・どうしようかね~?)」サスリ

 

「アキト・・・?」

 

 

アキトは無意識の中で簪の首を撫でた・・・

その目は血のように、紅椿より赤い紅い目をしていた・・・

周りに気づかれないように何度も何度も簪の髪を触り、匂いを嗅ぐ・・・この変態め

 

 

「ゴクリ・・・」

 

「・・・良いよアキト///」

 

「そうか?なら・・・」

 

 

この吸血鬼、かなり思考回路が食欲に向いているようだ。簪の首に気づかれないように指を刺そうとした・・・その時である!

 

 

「あッ!」

 

「「っ!?」」ビクッ

 

「あれは・・・山田先生?」

 

 

集められた場所から離れた所から真耶が急いで走って来たのだ・・・

 

 

「(あ・・・コレ、絶対面倒臭いヤツだ・・・)」

 

アキトの直感があたるのは・・・すぐ先である・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

インサイド

 

 

 

あれから幾分かの時間が経ったろうか?

昼飯が食いたいでござる!

 

あの糞・・・じゃない、天災兎に絡まれた時にちょうど運良く?山田先生が急いで持って来た[緊急事態]ってのが発端だ・・・

 

これまた、この[緊急事態]が糞面倒臭い厄介なモノで・・・

 

要約するとこうだ

 

今日午前10:47頃、南太平洋沖にて、アメリカ海軍所属のIS[銀の福音]、英名[シルバリオ・ゴスペル]が演習実験中に原因不明の[暴走]を起こしやがった

 

銀の福音・・・長ったらしいから、[銀ちゃん]で良いか

 

この銀ちゃん、アメリカとイスラエルの共同開発で作られた第3世代型のISで、最新鋭の武器が取り付けられている。それが暴走したとなったら、さぁ大変!

 

どうにかこのジャジャ馬を止めようとした軍は、その場の戦力で銀ちゃんと交戦・・・結果は、同行していたイージス艦1隻と巡洋艦2隻が大破、この銀ちゃんを運んで来た空母に至っては中破・・・散々だね

 

んで・・・その尻拭いが俺達にまわって来たとさ・・・めでたしめでたし・・・

 

 

 

 

 

 

 

ふざけるなよ糞が・・・!

 

 

 

―――――――

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

アメリカ海軍からの要請により、アキト達専用機持ち達は秘密裏に旅館の大広間に集められ、千冬から説明と作戦の概要を受けた・・・

 

専用機持ち達は熱心にそれを聞いていた・・・一人を除いて・・・

 

 

「作戦目的としてはアメリカ海軍所属のIS、銀の福音の完全停止だ」

 

「はい。織斑先生」

 

「なんだ?オルコット?」

 

 

仁王立ちした千冬にセシリアが手を挙げて意見する・・・

 

 

「先程の説明で、銀の福音が遠・中距離戦に特化した機体のようですが・・・誰が先陣をきるので?」

 

「うむ、今回の作戦では短期決戦を主軸とする・・・織斑に先陣をきらせる」

 

「えっ!?お、俺っ?!!」

 

 

さっきまでポケーとしていた一夏の顔が驚愕に変わっていった・・・

 

 

「ど、どうして俺が?」

 

「お前の専用機体[白式]の単一能力が必要だからだ」

 

「白式の?」

 

 

一夏の専用機[白式]、その単一能力である[零落白夜]は自らのエネルギーを使い、相手を一気に再起不能にする能力である。この一撃必殺の能力で銀の福音を停止させようとする魂胆である

 

 

「無理にとは言わん・・・どうしても無理だと言うなら――」

 

「いや・・・やるよ。やらせてくれ千冬姉」

 

 

一夏は真っ直ぐに千冬の目を見た・・・

 

 

「――わかった・・・なら織斑のバックアップをオルコ――」

 

 

千冬がセシリアの名前を呼ぼうとした・・・その時!

 

ドタドタドタドタドタ・・・バァァーァン!

 

「ちぃぃぃぃぃーーーちゃぁぁぁん!」

 

「ね、姉さん?」

 

 

 

束が襖をおもいっきり開けて現れた・・・

 

 

「・・・ここは関係者以外立入禁止なハズだが?」ガシッ

 

「痛い!痛い!痛いよ!ちーちゃん!」

 

千冬は有無も言わずにアイアンクローを束の顔にかました・・・

 

 

「ここは断然![紅椿]の出番なんだよ!」

 

「・・・なに?」

 

「紅椿なら、確実に完璧にそこの金髪より白式のバックアップできるんだよ!」

 

 

いつの間にか消えて、また突然現れた束はこの銀の福音停止作戦に紅椿を押した・・・

 

 

「・・・本当か?」

 

「もちもちろんろん!だからこの作戦には紅椿を――」

 

 

束が千冬に熱弁をふるっている、その隣で・・・

 

 

「俺は・・・反対だな」

 

ひっそりと眉間に皺寄せ、腕組みした人外が呟いた・・・

 

 

「おい、どういう意味だよ?」

 

 

アキトの呟きに束は鋭い睨みを向け、千冬は疑問を投げ掛けた・・・

 

 

「暁、それはどういう意味だ?」

 

「そのままの意味ですぜ織斑先生?織斑はともかく、本作戦に篠ノ之が参加する事に反対する」

 

「どういう事だ!暁!」

 

 

アキトの言葉に箒が噛みついた・・・

 

 

「ドウドウ、落ち着けよ篠ノ之。なら聞くが篠ノ之?お前さんは、この作戦の意味がわかってんのか?」

 

「は?何をバカな事を。太平洋沖で暴走中の銀の福音を――」

 

「違ぇーよ・・・んな事言ってんじゃねぇーよ」

 

 

アキトはヤレヤレと首を振りながら、溜め息を吐く。そんなアキトに対して、箒は苛立ちを押さえられずに怒号をあげる・・・

 

 

「だったらなんだと言うんだ?!ハッキリと言え!」

 

「なら言ってやるよ・・・この作戦における敵は、お前達が普段から相手している[生温い敵]じゃない。確実に此方を殺しにかかる[殺意を持った敵]なんだよ。お分かり?」

 

「それとこれと何の関わりが――」

 

「[新しい玩具]を与えられて[はしゃぐ童]には無理な話って訳だ」

 

「なんだと貴様!?」

 

 

その言葉に納得がいかないのか、箒はどこからか木刀を取りだし、アキトに向けた・・・

 

 

「それによぉ~篠ノ之束博士?」

 

「・・・なんだよ」

 

 

今度は束に言葉をかける・・・

 

 

「アンタ、天災なんて自分で言ってけど・・・本当はバカなんじゃない?」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

「は、はぁぁっ!?」

 

 

まったくもってとんでもない言葉を吐いた・・・

 

 

「・・・やめろ暁」

 

「だってよぉ~、世界でも開発されてない最新型をよりによって身内にあげるて・・・バカだろ?」

 

「ど、どういう事だよ暁?」

 

「考えてもみろよ織斑?世界中で未開発の最新ISを天才でも世界最強でもない、剣道が少し上手いだけのただの天才の[妹]がそんなもん持ってたら、世界中がどんな手を使ってでも欲しがるだろうよ。篠ノ之博士?アンタはそれを――」

 

「やめろと言っているのがわからんのかっ!暁ッ!!」

 

「お断りだね!」

 

 

アキトの話を遮るように千冬の怒号が部屋に響く・・・

だが、エンジンがかかってしまっているアキトはそのままベラベラと口を動かす・・・

 

 

「アンタもアンタだ織斑千冬!アンタ、篠ノ之の浮かれ具合に気づきながらも、そこの自称天災博士さまの口車にのってんじゃねぇよ!アホなんじゃねぇよ?!アホなんですか?!態々自分の生徒を危険地帯に放り込むなんざ、さすがは世界最強だね!呆れて呆れて尊敬しちまうよ!」

 

「暁ッ!お前ぇぇッ!!」バキィッ

 

 

一夏はアキトの発言に堪えかねたのか、その肩をつかみ、拳を振り抜いた・・・

しかし、殴られたアキトは怒るどころか一夏に向かってケラケラと笑った・・・

 

 

「カカ♪なんだよ?なんだよ?なんなんですかぁ~?織斑一夏くぅ~ん?お姉ちゃまを貶されて、オコですか~?オコなんですかぁ~?」

 

「暁ィィイッ!」グッ

 

 

一夏はまたもアキトに向かって拳を振りあげた・・・

しかし・・・

 

バシィッ!

 

「「「「っ!」」」」

 

 

アキトを叩いたのは・・・

 

 

「・・・何すんだよ?・・・簪・・・?」

 

 

真剣な面持ちでアキトを睨む簪だった・・・

 

 

「アキト・・・言って良い事と・・・悪い事がある」

 

「はぁ?俺は正論を言っただけ――」

 

「それでも・・・ダメッ!」

 

「っ・・・そうかよ・・・」

 

 

簪に怒られた?のかアキトはツカツカと出口に向かい、襖を開けた・・・

 

 

「どこに行く?暁?」

 

「ッケ、俺はどうやらこの作戦には不似合いらしいんで失礼させて頂きますよ!それでは失礼!」

 

 

バタンと乱暴に襖を扱い、アキトは部屋から出ていった・・・

 

あとに残されたのは重い空気とオロオロする真耶だけだった・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

ノーサイド

 

 

アキトが部屋から出ていったあと、一夏並びに箒を筆頭としたチームが編成された・・・

 

チームが編成されてすぐ、一夏と箒は作戦に出るために控え室に移動し、ISの調節をしていた・・・

 

 

「・・・」

 

 

初めての実戦作戦に一夏の表情は強ばっていた・・・

そんな一夏を余所に箒は嬉しそうに作戦開始時間を今か今かと待っていた・・・

 

 

「緊張しているのか一夏?」

 

「箒・・・?」

 

「大丈夫だ一夏!暁の言う事など真に受けるな。この作戦には私がついているのだから」

 

「あ、あぁ・・・そうだよな!大丈夫だよな!ハハ、ハハハ♪」

 

「そうだ!心配するな!フフフ♪」

 

 

朗らかに二人は笑いあった・・・

このあと、千冬に召集された二人は銀の福音に向けて出撃した・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

旅館のある一室にて・・・

 

 

一夏と箒が作戦に出撃している一方で、残された専用機持ち達は万が一の為に部屋に集められているのだが・・・

 

 

「・・・」ズーン

 

 

部屋の片隅で落ち込む水色が一人、項垂れていた・・・

 

 

「か、簪?そんなに落ち込まないで」

 

「・・・ハァ・・・」

 

 

溜め息を吐き、髪色のごとくブルーになる簪をシャルロットが励ましていた・・・

そんな二人を遠巻きにセシリアとラウラは話をしていた・・・

 

 

「大丈夫なのか?更識簪は?」

 

「どうでしょう?たぶん簪さんは突発的にアキトさんを叩いてしまったから、その罪悪感で落ち込んでるんでしょう」

 

「そうか・・・それよりアキトはどこに行った?」

 

「さぁ?頭を冷やすと言ってから、どこかに行ってしまいましたし・・・なんとも言えませんわね」

 

「ちょっと二人とも!冷静に話してないで簪を励ましてよ!」

 

 

冷静に話をする二人にシャルロットは叫んだのだが、元気のない簪の溜め息が響くばかりだった・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

場面は戻る・・・

 

銀の福音掃討の為に一夏と箒は太平洋上を飛行していた・・・

 

 

「ん?・・・あれは!」

 

 

紅椿のレーダーが数㎞先の反応を告げた・・・

 

 

「こちら紅椿。織斑先生、レーダーに反応あり」

 

「「こちら指令室、こちらも確認した・・・銀の福音だ。織斑、スコープで確認できるか?」」

 

 

一夏は白式に取り付けられたスコープで反応先をみると、そこには海上で静止状態の銀の福音がいた・・・

 

 

「こちら白式、銀の福音を目視で確認・・・」

 

「「こちら指令室、銀の福音の今の状態はどうだ?」」

 

「どうって・・・動いてない。静止状態だ」

 

「「そうか・・・篠ノ之、そちらからはどうだ?」」

 

「・・・」

 

「「篠ノ之?」」

 

「・・・フフ♪」

 

「「応答しろ!篠ノ之!」」

 

「は、はい!?すみません!静止状態で動く気配がありません」

 

 

中々に応答しない箒に千冬は叱咤したのだが、箒の顔は緩んだままであった・・・

 

 

「「まったく・・・これより作戦に移る。双方ともに無理はするな」」

 

「「了解」」

 

「「あと、篠ノ之」」

 

「はい?なんでしょうか?」

 

 

千冬はプライベートチャンネルを箒に繋げ・・・

 

 

「「無理はするな・・・無理だと感じたら、すぐに退却しろ良いな?」」

 

 

忠告したのだが・・・

 

 

「・・・貴女もか・・・」

 

「「何?」」

 

「大丈夫です千冬さん、貴女の代わりに私が一夏を守ります。それでは」

 

「「待て篠ノ之、それは――」」

 

ブチ

 

箒は千冬の言葉も聞かぬまま通信を切った・・・

 

 

「ん?どうかしたのか箒?」

 

「いや、なんでもないぞ一夏。それよりも作戦に集中しろ一夏!」

 

「あぁ、わかってるさ!」

 

「(そうだ一夏・・・私がお前を守ってやるぞ。この紅椿で!)」

 

「なら・・・行くぜ!」

 

 

そうして二人は銀の福音に向けて発進していった・・・

不穏な結末に向けて・・・

 

 

 

 

 

 

 

[[・・・・・・La♪]]

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




出したは良いが口調が難しい・・・

どうしよ・・・想像力に文章能力が追い付かない…


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銀の福音との戦闘


今回はあのキャラの技と似たようなモノを福音が使います・・・
オリジナルな部分もあるので悪しからず・・・

ヒントとしては・・・

「有象無象の区別無く、私の弾頭は許しはしない」

・・・です!

―――統合しました―――



 

ノーサイド

 

 

 

高速で近づく二人に気づかないのか、銀の福音はピクリとも動かない・・・

 

 

「(しめた!)テエヤァァァッ!」

 

 

それをチャンスに一夏は瞬間加速で距離を詰め、雪片を降り下ろした!

 

ガキィッン!

 

「なっ!?」

 

[[La♪]]チャキ

 

 

しかし、福音はその斬撃を軽々とナイフで受け止めると砲口を一夏に突き付け、引き金に指をかけた・・・

 

 

「させるかぁーっ!」ガギィッン

 

[[La!?]]

 

 

ライフルからコイル弾が発射される刹那、箒の斬撃が福音に直撃。コイル弾は明後日の方向に飛んでいき、福音は少し後ろに退いた・・・

 

 

「ボサッとするな!一夏!」

 

「すまん箒、助かった!」

 

[[La~?]]キュゥイン

 

 

福音はメインカメラで二人を不思議そうに見ていると・・・

 

 

[[Laッ!]]ジャキ

 

 

コイルライフルを構え、標準を定めた・・・

 

 

「来るぞ一夏!」

 

「わかってる!」

 

ガン! ガン! ガン!

 

銃身から放たれた3発の弾丸2発を箒が刀で弾くとその隙に一夏がいきなり零落白夜を雪片に纏わせた!

 

 

「早々にカタをつけてやる!」

 

「いけぇぇっーッ!一夏ぁぁ!」

 

 

一夏の斬撃は垂直線上に福音の頭部目掛けて、降り下ろしたのだが・・・

 

 

[[・・・LaLa♪]]

 

 

福音は防御もせずに嬉しそうに鳴いた・・・

まるで「上手くいった」と言うように・・・

 

 

 

 

 

 

 

ズガァッン!

 

「ぐあぁっ!?」

 

 

刀身が福音に当たる直前、一夏が悲痛な叫びをあげた・・・

 

 

「い、一夏っ!?」

 

「う、後ろから攻撃が――」

 

[[La♪]]バキィッ

 

「ぐわーッ!」

 

「うわっ!?」ゴキンッ!

 

 

背中の衝撃に怯んだ一夏に福音は蹴りをいれた。蹴りをいれられ、吹き飛ばされた一夏はピンボールのように箒とぶつかった・・・

 

 

「大丈夫一夏?!」

 

「悪い箒、俺は大丈夫だ。それよりさっきの攻撃は何処から――」

 

[[La~~~♪]]

 

 

一夏が喋る間もなく、福音はライフルに装着させた銃剣を構えながら、瞬間加速で二人に迫る!

 

 

「貴様ぁ!よくも一夏を!」

 

「箒っ!?」

 

 

箒も刀を構え、福音に迫る・・・が!

 

 

[[LaLa!]]カチリ

 

「なっ!?」

 

バゴォッン!

 

 

福音はそれを読んでいたかのように至近距離で脚部装備の小型ミサイルを発射した!

 

 

「箒ッ!」

 

 

ミサイルは爆発し、箒は白煙に包まれたが・・・

 

 

「舐めるなよぉぉっ!福音!」

 

[[ッ!?]]

 

「チェストォォォッ!」

 

 

さすがは第4世代型か、ダメージは軽量に押さえられ、箒はそのまま福音を切り殴った!

 

斬撃を負った福音はそのまま海に叩きつけられ、水しぶきをあげながら沈んでいった・・・

 

 

「やった・・・のか?」

 

「わからん・・・だが手応えは確かにあった」

 

「そうか・・・油断は禁物だな。それにしても箒?」

 

「なんだ一夏?」

 

「お前、凄いな見直したよ!」

 

「な、なにを突然!?///」

 

 

一夏の言葉に箒は顔を赤くし、照れた・・・

 

 

「いや、ホントにスゲェって!」

 

「そ、そうだな!(やれる!この紅椿となら一夏とともになんだって!)」

 

 

箒は内心、喜んでいた。それと同時に自分に酔っていた・・・

今までおいてけぼりを味わっていた箒にとって、紅椿はあまりにも魅力的で強すぎたのだ・・・

もし・・・この慢心がなければ、海面から一夏を狙う福音の銃口に気づいていたかもしれない・・・

 

 

ズガァッン!

 

一夏と箒が空中で静止状態になっていると、1発の銃声が響いた・・・

発射された弾丸は一夏に向かって飛んでいった・・・のだが・・・

 

 

「そこかぁっ!」ヒュンッ

 

ズバァッン!

 

 

一夏は弾丸を避けると銀の福音が隠れる海に雪片を叩きつけた!

 

爆発したような水しぶきがあがり、それに紛れて福音が飛び出した!

 

 

[[La!]]チャキ

 

「同じ手はやらせん!」

 

ハギィッン ガン!

 

 

福音はまたしてもライフルを一夏に向けて撃ったが、箒がそれを阻止した・・・

 

 

「一夏!」

 

「わかってるさ!」ザギィッン

 

 

箒がライフルを弾くと同時に一夏は福音を斬った!

福音は切られた部位を押さえながら、二人と距離をとった・・・

 

 

「勝てる!勝てるぞ一夏!」

 

「あぁ・・・だが、思った以上に歯ごたえがないな」

 

「それは私達が強すぎるのではないからか?」

 

「そうなのか・・・?」

 

「そうだとも!さっさとコイツを回収するぞ一夏!」

 

 

そうして箒と一夏は刃を福音に向けた・・・

その一方で福音は・・・

 

 

[[・・・La♪・・・LaLa♪]]

 

 

二人に指を突き付け、笑うように肩を震わせていた・・・

 

 

「な、なんだアイツ・・・?」

 

「所詮は無人機だ。1つ1つの動作などに意味はないぞ一夏」

 

「だよな」

 

 

その光景に一夏は不気味さを感じた。それでも箒の言葉に頷き、雪片を構え瞬間加速で福音との距離を詰めた!

 

 

「これで終わりだぁぁぁっ!」

 

「チェストォォォッ!」

 

 

二人は刀身を振り上げ、福音に徐々に徐々に近づく・・・

 

もう数十mと迫った・・・その時・・・

 

 

 

 

 

 

 

[[La・・・・・・有象無象の区別無く、私の弾頭は許しはしない]]

 

 

福音が腕をあげながら、喋り出した・・・

 

 

「喋ってる!?」

 

「惑わされるな一夏!このまま再起不能にするぞ!」

 

 

その言葉のあとに一夏の言葉は紡がれる事はなかった・・・何故なら・・・

 

 

 

 

 

 

 

ガン!

 

「ぐあぁっ!?」

 

「一夏っ!?」

 

 

一夏の[後ろから弾丸が飛んで来たのだ]・・・

 

 

ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!

 

弾丸はまるで燕のように縦横無尽に一夏をなぶっていく・・・

 

 

「が、がぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

一夏はどうする事も出来ずに攻撃をうける・・・

 

 

「一夏!?貴様一体なにを!?」

 

 

箒の驚きを含んだ怒号をあげながら、振り向くとそこには・・・

 

 

「え?!」

 

[[La♪]]ハギィッン!

 

「きゃあぁぁっ!?」

 

 

福音が銃剣を突きだし、紅椿を吹き飛ばした!その吹き飛ばされた先の一夏とぶつかり、海に落ちていった・・・

 

 

「さっきの攻撃は一体どこから?!って箒?」

 

 

先程の攻撃に疑問を浮かべていると、一緒に吹き飛ばされた箒が隣でブツブツと呟いていた・・・

 

 

「・・・くも・・・よくも!よくもォォォッ!」

 

「箒っ!?」

 

 

箒は攻撃されてダメージを負った事にキレ、我を忘れ福音に向けて突撃した!

 

 

「おおおぉぉぉォォッ!」ジャキ

 

[[La~♪]]

 

 

向かってくる箒を待ってましたとばかりに、ライフルの銃口を向け・・・

 

 

 

 

 

 

 

ズガァッン!

 

 

 

 

 

 

 

不可視にして縦横無尽の弾頭が発射された・・・

銃身から放れた弾丸は一直線に箒に向かっていき、その身を貫く・・・ハズだった・・・

 

 

「危ない!」ドン

 

「え?」

 

 

弾丸が当たる刹那、一夏が瞬間加速で箒に体当たりをしたのだ・・・当然箒は弾丸の射線上から外れ事なきを得る・・・だが・・・

 

ズブシュッ!

 

「ぐああぁぁあぁっ!!!」

 

 

代わりに射線上に入った一夏を弾丸は無情にも貫いた・・・

 

 

「い、一夏ぁぁあぁあーっ!」

 

 

体当たりされた箒が振り替えって最初に見たものは、胸からの血で白式を紅く染めて墜落していく一夏の姿だった・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




題名って難しいよね・・・

大尉「・・・」

無言の圧力って、重いよね・・・


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吸血姫の夢の中・・・

今年もよろしくお願いしまぁぁぁっす!

アキト「WRYYYYYYYYYYY!オルフェンズおもしれぇぇぇっ!サンダーボルトおもしろそぉぉぉッ!」


 

 

 

シェルスサイド

 

 

 

「・・・ここは・・・どこ?」

 

私はなぜか、赤い水面の上に立っていた。頭上には真っ赤な月が闇夜に光輝いている・・・

 

 

「私は・・・確か・・・あっ!///」

 

 

思い出した!アキトの指から血を飲んでから、歯止めが効かなくなって・・・///

 

 

「アキトの首に・・・かぶりついたんだ・・・///」

 

 

やだ!やだ!何やってんのよ私!///

これじゃあ獣と変わらないじゃない!

 

 

――ねぇ?――

 

 

しかもアキトにあんな・・・キスばっかりして・・・///

 

 

――ねぇってば?――

 

 

引かれた・・・絶対引かれた・・・もうどうしようもなく引かれ――

 

 

――コロコロと表情を変えないで話を聞きなさい!――

 

「ひゃ、ひゃっい!?だ、誰?!!」

 

――やっと気づいてくれた・・・ヤレヤレ――

 

 

・・・え?誰?というか、どこから声が聞こえてるの?

 

 

――あら?私の声を忘れたかしら?[シェルス・ギッシュ]さん?――

 

「っ!?」

 

 

どうして私の捨てた名前を・・・?

それにこの声・・・・・・・・・・・・まさかっ!?

 

 

「あの[博物館の時]の・・・」

 

――Exactly!久しぶりね?シェルスちゃん?――

 

 

その声の主は、私を・・・私を特殊な[吸血鬼]にした[少女]の声だった・・・

 

 

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

――久しぶりね?シェルスちゃん――

 

「え、えぇ・・・」

 

 

闇夜に浮かぶ赤い月と赤い水面に支配された世界にポツリと一人立っていたシェルスは聞き覚えのある声に戸惑っていた・・・

 

その声は、ドイツの博物館で瀕死になっていたシェルスを[石仮面]で[吸血鬼]にした[少女]の声だった・・・

 

 

――7年ぶり・・・かしら?あれから色々とあったみたいだけど、元気そうで何よりね――

 

「・・・そうね」

 

――あら?もしかして戸惑ってる?――

 

「・・・かもね」

 

――シシッ♪そうよね?――

 

 

戸惑うシェルスを余所に少女は楽しそうに朗らかに笑う・・・

 

 

「それよりお嬢さん?ここは何処かしら?」

 

――え?それを聞いちゃう?どうしようかな~?言っちゃおうかなぁ~?――

 

「え~・・・」

 

 

少女はシェルスの質問に随分と勿体ぶりながら、話をする。しかしすぐに飽きたのか、口を開いた・・・

 

 

――ここは貴女の[精神の世界]であり、私の[夢の世界]よ――

 

「・・・?」

 

 

シェルスは「この子、何を言ってやがるのかしら?」などと言うような顔をし、そして次にこう口にした・・・

 

 

――貴女は次に「どうして私を呼んだの?」と言う――

 

「どうして私をここに呼んだの?――ッハ!?」

 

――驚いた驚いた!どうビックリした?シシっ♪――

 

「・・・」

 

 

年相応に笑う少女にシェルスは顔をしかめた・・・

 

 

――ごめんごめん、謝るからそんな顔しないでシェルスちゃん――

 

「・・・それで?私に何のようなの?」

 

――なら本題ね?ねぇシェルスちゃん?――

 

「・・・あによ?」

 

――アキトくんの血を吸いすぎよ――

 

「なっ!?///」

 

 

少女の言葉にシェルスは顔を紅に染めあげながら、アタフタと焦りの色をだした・・・

 

「ま、まさか!貴女!///」

 

――見てたわよ?バッチしとね――

 

「わあぁぁああぁっ!///」バッ

 

 

シェルスは恥ずかしさのあまりに手で顔を覆い、うずくまった・・・

 

 

――というか、見てたってより[感じた]ってとこかしら――

 

「・・・・・・へ?」ムクリ

 

 

シェルスは疑問符を浮かべながら、顔をあげた・・・

 

 

「ど、どうゆう事?」

 

――あら?言ってなかったけ?私、[石仮面]の[妖精]さんなのよ?――

 

「はいィィイィイっ!?」

 

――しかもシェルスちゃん。貴女、今結構ヤバい体調なのよ?――

 

「や、ヤバいって・・・どれくらい?」

 

――体が暴走して爆発するくらい――

 

「にゃにィィイィイーーーッ!?」

 

 

シェルスは少女の言葉に愕然とするしかなかった・・・

 

 

「ど、どうして?!そんな・・・!」

 

――シェルスちゃんは普段から血を飲まないでしょ?しかも今回は3ヶ月以上も飲まなかったから、軽く飢餓状態。そんな状態でアキトくんの[王の血]を飲んだら・・・細胞がビックリ仰天して暴走しちゃうわよ――

 

「ど、どうすれば良いの?」

 

――簡単よ。血を[ぬけば]いいのよ――

 

「血を・・・ぬく?」

 

 

シェルスはチンプンカンプンに頭を捻った・・・

 

 

――まぁ、早い話が・・・彼に[愛される]と言いわよ?――

 

「愛されっ!?な、な、なっ!?///」ボシュン

 

 

シェルスの頭から煙が立ちこめ、オーバーヒートした・・・

 

 

――あらあら。体だけじゃなくて、心まで若返ってるのかしら?初な反応ね~?――

 

「そ、そんな事できる訳ないじゃないの!」

 

――それじゃあ伝えたからね?早目に彼に[愛され]なさいね?じゃ~ね~――

 

 

その少女の言葉をキッカケにシェルスの前から高さ10mの津波が襲いかかった・・・

 

 

「ちょっとちょっとちょっと!冗談じゃないわよ!って!ワァァァ~~~――――――」

 

 

無常にもシェルスは津波にのみ込まれた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワァァァ~~~!!!!!!・・・・・・ってアレ?」

 

 

シェルスは叫び声をあげながら、布団から飛び起きた・・・

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ゆ、夢?うわ・・・汗ビッショリ・・・」

 

 

シェルスは玉のような汗を拭うと・・・

 

ドロリ・・・

 

「え?・・・ってナンじゃこりゃぁぁああぁあッ!!」

 

 

手が血で真っ赤になっていた・・・

その原因は・・・

 

 

「は、[鼻血]って・・・マジ?なら、さっきの夢は・・・」

 

シェルスは先程の夢を思い出していると・・・

 

Prrrrrrrrr

 

携帯から無機質な音が響いた・・・

 

 

「こんな時に誰よ!もしもし!」ピッ

 

 

シェルスは怒号をあげながら、携帯の通話ボタンを押した・・・

電話の相手はホークアイであり、その内容は・・・

 

アキト達が銀の福音迎撃に向かったという内容であった・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 

 

 




お、思った以上に長くなったぜ!

アキト「しかも新年一発目で、本文に主人公の俺が出てねぇじゃあねぇか!この野郎!」ギュ

く、首を絞めないで!あと手が冷たい!気化冷凍法使わないで!出てくるから待っててよ!ね?ね?

アキト「あと、シェルスを血に染めやがてぇぇぇ!」

うぎゃあぁぁぁあ~~~!お許しを~!

朧[[チャンチャン]]

アキト「今年も[人外になった者]をよろしくお願いしますぜ?」

ぐふ・・・お、お願いいたします・・・!


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人外と焔大佐の話し合い

アキト「なあ、作者よ?」

なんだねアキト?

アキト「最近、ヤンデレのアニメばっか見てるけど」

あぁ、[未来日記]とかおもしろかったよ

アキト「・・・ヤンデレ出て来ないよな?」

・・・

アキト「なんか言えよ!」

―統合しました―



 

 

 

ノーサイド

 

 

 

カツカツカツカツ・・・

 

旅館の廊下にヒールの音が響く・・・

その音の主は相変わらずのしかめっ面に眉間にシワ寄せた千冬であった・・・

 

一夏が撃墜されてから、千冬は悲しむ間もなく、福音迎撃作戦に追われ、機嫌のベクトルがマイナスを超えていた・・・

 

その千冬がどこに向かっているのかというと・・・

 

カツカツカツカツ・・・バン!

 

「暁!いるか?!!」

 

 

鍵をかけていたアキトの部屋の扉を強引に開けた・・・

 

何故、千冬がアキトの部屋に来たのかというと、千冬はアキトに何度も何度も何度も通信をいれたのだが、でなかったために部屋に直接乗り込んで来たのであった・・・

 

 

「暁!どこだ!いるんだったら返事をしろ!」

 

 

千冬は次々と部屋の襖を開けていくが、どこにもアキトの姿はない・・・

 

 

「あの野郎!どこに行きおった!」

 

 

どこにもいないアキトに千冬は苛立ちを隠せずにキャラが崩れて来た・・・その時である・・・

 

カサッ

 

「ん?なんだコレは?」

 

 

足元に色のついた紙切れが1枚・・・

千冬がそれを拾うと、文字の羅列がある事に気づいた・・・

 

 

「何何?[ちっとばっかし、福音黙らせるために行ってきます。お土産は無いので大人しく待っていてね?キラッ♪]・・・・・・・・・は?」

 

 

千冬は驚きのあまり、考える事を一時放棄した・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって、太平洋沖・・・

 

 

「さてと・・・朧?行けるか?」

 

[[Yes。何時デモ]]

 

 

アキト並びに専用機持ち達はマスタングが用意したクルーザーに乗って福音のもとに向かっていた・・・

 

 

「それにしてもアキト?」

 

「なんだよ?シャーロット?」

 

「先生達に黙って出て来ちゃったけど・・・」

 

「大丈夫だろう。山田先生の事はハボさんに誘導?してもらったし、織斑先生は・・・・・・書き置きしたし」

 

「ちょっと待って、さっきの間はなに?」

 

「・・・」コツコツコツ・・・

 

「え!ちょっと答えてよアキト~!」

 

 

アキトはシャルロットの質問に答える事なく、クルーザーのコテージへと歩いていった・・・

 

コテージには専用機持ち達がテーブルの上で閣議をしていた・・・

 

 

「おや?」

 

「あらアキト?もう良いの?」

 

「あぁ、朧の武装パックは完全にインストール出来た」

 

「その左腕の[カギ爪]が新しい武装か?それにその[姿]は・・・」

 

 

今の朧の姿は前のような白い甲冑姿ではなく、赤い外套に左腕が一回りも大きなカギ爪が装着されていた。しかも、その外套の背中には・・・

 

 

「なぜ[山羊]の顔のイラストが入っているのだ?」

 

「おん?これか?これはなウチの[ドン]の顔だ」

 

「ドン?」

 

「ドンて何よ?」

 

 

アキトの答えにラウラや鈴は疑問符を頭に浮かべた・・・

 

 

「アキトさん、マスタング大佐さんが呼んでますわ」

 

「おん?わかった今行く・・・」

 

 

アキトはセシリアの声に導かれ、マスタングのもとに向かった・・・

 

福音討伐作戦までの時間が着々と迫る・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

「・・・」

 

 

船内の一室、そこではマスタングが一人で海図とにらめっこしていた・・・

 

ガチャリ

 

「よぉ、何ようかい?焔殿?」

 

 

そこにアキトが朧を纏ったまま現れた・・・

 

 

「あぁ、暁の――って、何だ?その珍妙な格好は?」

 

「え?カッコいいだろう?それに見ろよ、ウチのドンのイラストが入ってんだぜ」

 

 

アキトは背中のドンイラストをマスタングに自慢したのだが、それをマスタングは呆れた目で見ていた・・・

 

 

「まぁ、そんな事は置いといてだ。コレを見ろ」

 

「おん?」

 

 

マスタングはアキトにこの辺り一帯の海図を見せた。その海図には赤い○印で囲まれた部分があった・・・

 

 

「なんだよ?この赤い○で囲まれたとこはよぉ?」

 

「あぁ、ここは・・・福音への[攻撃範囲]だ」

 

「・・・ん?どゆこと?」

 

「ウチの曹長がとってきた情報だと、どうやら上の連中は福音を焼却処分するそうだ」

 

「ん?ん?ん~?つまりは?」

 

「ウラン濃縮弾で焼ききるそうだ」

 

「・・・はあぁあぁぁぁぁあッ!?」

 

 

マスタングのとんでもない話にアキトは顔を歪ませた・・・

 

 

「ちょっと待て待て待て!仮にも絶対防御装置を持つISだぞ?ウラン濃縮弾の1発、2発で――」

 

「誰が1発、2発って言った?」

 

「え?・・・ま、まさか・・・!」

 

「福音がいる場所は何処の国のモノでもない公海だ。1発、2発と言わずに10発、100発、1000発の大盤振る舞いだ」

 

「ふざけんじゃねぇッ!何考えてんだよ上の連中は!?たかだかISごときに核使うなんて!」

 

「それほどに銀の福音は重要な機体だと言う事だ」

 

「大佐!その投下までのリミットは?!」

 

「曹長の情報だと、ウラン濃縮弾を積んだ爆撃機が来るまでざっと・・・[3時間]だ」

 

「さ、3時間・・・」

 

 

[3時間]、それはあまりにも絶望的な状況だった。ISで福音がいる場所まで高速移動しても片道[2時間]・・・

もし福音を沈黙、回収してもウランの火で焼かれるのは目に見えていた・・・

 

 

「どうする暁の?」

 

「・・・」

 

 

アキトは沈黙し、考えこんだ・・・

それに構わずにマスタングは続ける・・・

 

 

「たとえ、ここで作戦を中止しても誰にも責められない・・・だが、もし・・・もし、この作戦が成功するとすれば、それは千に1つか?万に1つか?億に1つか?兆か?京か?」

 

 

マスタングの言葉にアキトはニヤリと口角をあげた・・・

 

 

「それが那由多の彼方でも、俺には十分すぎる程の希望だ」

 

 

アキトは実に実にニコやかに笑った、楽しそうに嬉しそうに・・・

 

 

「ハァ~~・・・お前なら言うと思ったよ・・・爆撃機の事はこちらでも対処する」

 

「ありがとう大佐」

 

「フフ、これでこの[左目]の借りは返したぞ」

 

 

そう言いながら、マスタングは自分の左目瞼に指を当てる・・・

 

 

「まだ覚えてたのかよ?」

 

「当たり前だ。私は借りを作るのは好きじゃないんだ」

 

「律儀なこって」

 

「それで暁の?これを彼女達には?」

 

「言っておくよ・・・最悪、いや、この場合、最善か・・・俺一人でやる」

 

「そうか・・・なるべく早目にな」

 

「わかってるさ・・・」ガチャリ

 

 

アキトはマスタングとの話を終えると、そのままセシリア達が待つコテージへと向かっていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




機体紹介

―朧・紅蓮型―

容姿・ドリフターズの島津豊久

武装・太刀×2
   ナイフ×777
   鋼糸ワイヤー
   輻射波動機構(左腕型)


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人外と戦乙女の戦場

ついに戦闘に入りますぜぇぇぇ!

アキト「やっとかよ・・・」

―――統合しました―――



 

 

インサイド

 

 

 

焔大佐からとんでもない話を聞いた俺は、ある程度の覚悟をしながら、皆がいるコテージへ向かった・・・

 

俺は皆に改めてISが絶対防御で守られているとはいえ、危険な事に変わりはない事や福音が爆撃される事を事細かに説明した・・・

 

爆撃される事を聞いた時にいの一番に口を開いたのは鈴だった・・・

 

 

「それがどうした」

 

 

言葉を口にする鈴の眼には確かな[覚悟]があった

 

その言葉に感化されたか知れずだが、他の皆も作戦の参加に賛同した

 

それから俺達はISを身に纏い、福音迎撃へとブースターを吹かした・・・

 

 

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

太平洋沖にて・・・

 

 

 

それぞれの専用機を身に纏った者達は縦1列に並びながら、福音へと向かっていた・・・

 

 

「こちら暁、全体聞こえるか?」

 

「こちら簪・・・感度良好」

 

「ねぇ!アキト!」

 

「何だ鈴?」

 

 

不意に鈴からの通信がアキトに入った・・・

 

 

「なんで私が[先頭]で、皆を先導してるの?」

 

 

縦1列の順番としては、鈴・簪・アキト・箒・シャルロット・ラウラ・セシリアとなっていた・・・

 

この順番にはある理由があった・・・それは

 

 

「鈴、お前がこの中で一番近接戦闘慣れしている」

 

「それなら私よりもアキトや箒の方が――」

 

「俺や篠ノ之は近接型だが、鈴は近・中距離型だ。福音の適格な戦闘タイプを見極めるために先頭になってもらった」

 

「何それ?!それって私が噛ませになるって事じゃない!」

 

「そうとも言うな」

 

「アンタねぇ!」

 

 

鈴は怒りをアキトに向けたが、アキトは真剣な口調で鈴をなだめた・・・

 

 

「だが、逆に考えると一番槍をお前に任せるんだ。それほどに俺は鈴を信用しているんだ。だから頼む」

 

「っ!しょ、しょうがないわね!任せておきなさいよ!」

 

「あぁ、任せる」

 

 

アキトと鈴がそんな会話をしていると・・・

 

ピコーンピコーン

 

福音の反応を示す電子音が鳴り響いた・・・

 

 

「アキト、反応がでた。1.6㎞先に銀の福音が」

 

「あぁ、こちらも目視で確認した。これより福音迎撃作戦への指示をする。セシリア?」

 

「はい?何でしょうアキトさん?」

 

「セシリアはライフルをスナイパーモードに切り替えて、福音を牽制」

 

「了解しましたわ!」

 

「残りは鈴を先頭に突っ込んだ後に円陣で福音を囲み一気にカタをつける!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

「それに篠ノ之、突出するなよ」

 

「フン、言われなくても!」

 

「ならこれより、福音迎撃へと移る。各員、戦闘準備!」

 

 

そのアキトの掛け声とともに人外と戦乙女達は銀の福音へと刃と銃口を向け、攻撃を開始した・・・

 

 

[[・・・La・・・]]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや?あれは・・・」

 

「・・・?」

 

「見てください大尉、あれは[アーカード]じゃありませんか?」

 

「・・・」

 

「どうしますか大尉?様子見をした後に漁夫の利をえますか?」

 

「・・・」

 

「ムム~ン♪そうですか様子見をしますか」

 

 

アキト達を双眼鏡で確認した人狼とホムンクルスはそんな会話をしていた・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

ボシュン

 

[[La?]]チャキ

 

 

福音はイキナリ飛んで来たスモーク弾に視界を遮られ、警戒の為にライフルを構えた。やがて煙が晴れ、福音がメインカメラで最初に見たものは・・・

 

 

「テェェエッイッ!」

 

[[ッ!!?]]

 

ガギィッッン!

 

 

青竜刀を振り上げた鈴の姿だった!

福音は青竜刀を銃剣で受け止め、体勢を立て直そうとしたが・・・

 

 

「セェッイ!」

 

[[Laッ!?]]ズギゥッ!

 

 

鈴に続いて、すかさず簪が福音に薙刀でスラスト攻撃をして、ダメージを与えた・・・

 

 

[[La~!]]ジャキ

 

 

福音は二人にライフルを向け引き金に手をかけたが、500m離れた場所から発射された弾丸が福音の右肩を貫いた!福音は衝撃のあまりグラついた・・・

 

 

「今です!皆さん!」

 

「「「「わかった!」」」」

 

 

セシリアの銃撃に続けとばかりに福音に攻撃を仕掛ける・・・

まずはシャルロットとラウラが重火器で稼働部に攻撃を喰らわせる・・・

 

 

「わあぁぁぁぁッ!」

 

「落ちろよぉおッ!」

 

ガガガガガガガガガガガガッ!

 

[[~~~!]]

 

 

福音は堪らずに金切り声をあげる・・・

それでも福音は尚もライフルを構えようとするが・・・

 

 

「させるかぁーーッ!」

 

[[La~~~!]]ザシュゥゥッ!

 

 

福音の反撃を箒が許す訳もなく、刀を直線上に降り下げる・・・

 

 

「この!このっ!!このぉっ!!!よくも一夏をぉ~!」

 

ザクザクザクザク!

 

[[La!LaLa!!LaLaLaっ!!!]]

 

 

箒は狂ったように福音を何度も何度も刀で突き刺す!

 

 

「篠ノ之?!ッチ、退け!」ガシィッ

 

「ぐわっ!?暁、貴様ァッ!」

 

「簪、頼んだ!」

 

「・・・任せて」バシィッ

 

 

アキトはそんな箒を掴んで、簪に放り投げる。放り投げるとアキトは朧に指示をかける・・・

 

 

「朧![アレ]頼むぜ!」

 

[[承知。[輻射波動機構]発動]]キュイィイン

 

 

そうするとアキトの左腕に弾薬のようなモノが装填された・・・

 

 

「WRYYYYYYYYYYY!」

 

[[La!?]]

 

 

アキトは左腕を振り上げ、瞬間加速で近づいて行った!

 

 

「銀の福音ンンン!」

 

[[!]]

 

「[彼女]の[紛いモノ]なんぞになりやがっってぇぇッ!渇かず飢えず弾けやがれえェエッ!」ガシィッ

 

 

アキトは叫びながら、カギ爪で福音の頭部を鷲掴みにした!

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その時である・・・

 

 

 

 

 

 

 

――やめて![アルカード]!――

 

「っ!?」

 

 

突然、アキトの頭の中に聞き覚えのある[声]が響いた・・・

 

 

「り、[リップヴァーン]・・・?」

 

[[王ッ!?]]

 

 

その声にアキトの体は硬直し、腕から力が抜けてしまった・・・

 

 

「[リップヴァーン]?貴女・・・なのか・・・?」

 

 

福音はアキトの言葉に答える事はなく、変わりに・・・

 

ズギャアァッン!

 

「がはぁっ!?」

 

 

縦横無尽の弾頭がアキトの胸を貫いた!

 

 

「アキトさんっ!?」「「アキト!!」」「暁!?」

 

「K、KUAAAAA!」

 

 

後ろの叫び声に正気を取り戻したのか、アキトは体勢を立て直し、輻射波動を福音に叩きつけようとする。だが・・・

 

ズギュゥッン

ズギャアァッン

ズブシュゥゥウッ!

 

「GuGyaaa!!!」

 

 

体を貫いたはずの弾丸は燕のように方向を反転、変更しながら、アキトの体を幾度となく貫く・・・

 

 

[[王ッ!]]

 

「U、URYYYYYYYYYYY!」ガシィッ

 

[[La!?]]

 

 

それでもアキトは再び、福音の頭部を鷲掴みにすると・・・

 

 

「うばっしゃあぁぁぁぁッ!」

 

[[La――ッ!]]

 

ドバボォォオ――ンンンッ!

 

 

そのまま太平洋の海水に衝突した。海は爆弾が爆発したような水飛沫があがり、アキトと福音は沈んでいった・・・

 

 

「あ・・・アキト・・・?」

 

 

アキト達が沈んだ場所は、赤く濁っていた・・・

 

 

「あ、アキトぉぉぉっ!!!」

 

 

簪の悲痛な叫びが太平洋沖に轟いた・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

アキト達が福音と戦闘を行っているその一方で、マスタングは2つの事に手を焼いていた・・・

 

まず1つはウラン濃縮弾をつんだ爆撃機の発艦をどうにか止めようと色々なコネを使っている事・・・

 

2つ目は・・・

 

 

「ウチの生徒達をどこに連れていった?!!」バンッ

 

「まぁまぁ、落ち着いてくださいよms. 織斑?」

 

 

机を叩いて生徒達の行方をマスタングに問いただす千冬の応対であった・・・

 

 

「(ヤレヤレ・・・暁ののヤツ、黙って出てきやがったんだな。)」

 

「聞いているのかマスタング大佐?!!」

 

「え、えぇ、聞いておりますよ?それでウチになんの用でしょうか?」

 

「さっきから聞いているようにウチの生徒、暁アキト達はどこに行った?」

 

「ですから、おっしゃってる意味がわかりかねますな。私達は休暇中の軍人の身、お宅の生徒さんの事は知りません。それよりもms.織斑?立ち話もなんですし、紅茶などはいかがですか?丁度良く、良い茶葉が――」

 

バンッ

 

カバンを開けようとするマスタングに対して、千冬はまた机に手を叩きつける・・・

 

 

「貴方がドン・ヴァレンティーノと繋がっている事はわかっている!その貴方がヴァレンティーノファミリー遊撃部隊[バケガリ]所属の暁アキトを知らないはずがないッ!」

 

「!。ほぅ・・・どこでその情報を?」

 

 

突然の千冬の言葉にマスタングは反応したが、悟られないように顔色を変えない・・・

 

 

「それは言えない・・・だが貴方がこの事で糸を引いてる事はわかっているんだ!」

 

 

そう言いながら、千冬は「どうだ」と言わんばかりに覇気をマスタングに飛ばす・・・

 

 

「それで暁達はどこに行った!?」

 

「・・・ms.織斑?」

 

「なんですか?やっと話す気になりましたか?」

 

「確か貴女は今日の正午、あの[天災科学者]と接触していたそうですね?」

 

「な、なに!?」

 

 

今度は千冬がマスタングの言葉に動揺した・・・

 

 

「おや?動揺しましたな?なら本当にあの天災科学者と接触していたんですか」

 

 

マスタングは千冬の反応を見ると、手を組んでニヤリと笑った・・・

 

 

「そ、それとこれと何の関係が・・・?」

 

「簡単な話だ。貴女のご友人である篠ノ之束を此方に[引き渡して貰いたい]」

 

「なっ!?」

 

 

アキトがこの場にいれば、「気持ち悪ィ」と言えるほどのニコやか作りスマイルが千冬に炸裂した・・・

 

 

「篠ノ之束を引き渡してくれると言うのなら、私は貴女に情報を渡す。どうですか?簡単な等価交換だ」

 

「・・・」

 

 

マスタングの作り笑いに千冬はギロリと睨む・・・

二人の間にはバチバチと火花が散っていると・・・

 

コンコン ガチャリ

 

「大佐、失礼します」

 

 

少し焦った顔をしたホークアイが部屋に入って来た・・・

 

 

「どうかしたのかね?中尉?見てのように客人がいるのだが?」

 

「そうですか・・・ならお耳を拝借」コツコツコツ

 

 

ホークアイはマスタングに近づくと、耳元でゴニョゴニョと囁くと・・・

 

 

「っ!?それは本当か?!!」

 

「・・・?」

 

「えぇ、[彼女]が飛び出して行ったので確かかと・・・」

 

「まさか、アイツが・・・」

 

 

マスタングは深刻そうな顔をしていき、千冬は頭を傾げた・・・

 

 

「例の件は?」

 

「なんとかなりました。あとで[彼]を連れていく事を条件に」

 

「わかった。mr. 織斑?」

 

「なんですか?」

 

「急な要件が入りましたので、お引き取りください」

 

「は?ふざけないで頂きたい!まだ質問に――」

 

「さて急ぐぞ中尉」

 

 

千冬の声を無視したまま、マスタングは出掛ける準備を始めた・・・

そうして準備が出来たのか、部屋のドアノブに手をかけた。するとマスタングは不意に千冬に声をかけた・・・

 

 

「あぁ、そうそうms.織斑?」

 

「な、何でしょうか?」

 

「貴女の予想が正しいですよ。それでは」

 

「え?ちょ、ちょっと――」

 

 

マスタングは千冬の答えを聞かぬままにホークアイと部屋から出ていった・・・

 

 

「私の・・・予想・・・?・・・まさか?!!」

 

 

おいてけぼりにされた千冬も何かを悟ったのか、さっさと簡易司令室に大急ぎで戻っていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太平洋沖にて・・・

 

 

「アキト・・・待ってて・・・」

 

 

アキトの事を虫の知らせで察知したシェルスが太平洋上空を自らの翼を広げ、全速力で向かっていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




最後のは伏線に・・・なりえるかな?

次回も頑張る!


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彼にとって・・・




今回は捏造、オリジナル満載でございます。悪しからず

アキト「崩壊しすぎだな。あと、少し[四年前]の事が明かされる?かも」


 

 

インサイド

 

 

 

Q.貴方にとって、リップヴァーン・ウィンクルとは?

 

 

俺はこの質問に対しての答えは[あの時]から変わっていない・・・

 

 

[リップヴァーン・ウィンクル]・・・彼女は反IS組織[レギオン]では[中尉]の階級に位置しており、[ファントムブラッド戦役]においては、討伐軍から[魔弾の射手]のあだ名で恐れられて・・・[いた]。

 

何故、過去形なのかと言うと・・・それはとてもシンプルな理由だ。彼女、リップヴァーン・ウィンクルを俺はこの手で・・・[殺した]・・・

 

だから、最初のQ.に俺はこう答える

 

A.初めて[敬意]を持って[惨殺]した[愛しき敵]である

 

それなのに・・・それなのに、それなのに!

 

 

「何故・・・再び俺の前に現れた?リップさん?」

 

「~~~~~♪」

 

 

[赤い空]に[血のような水面]という、奇妙な世界で。男物のスーツをビシッと着、マスケット銃と踊りながら、歌劇[魔弾の射手]を歌うリップさんに俺は聞いた・・・

 

 

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

太平洋沖に福音と共に墜落したハズのアキトは、何故か奇妙な世界に立っていた

その目の前では、ソバカスに黒髪長髪の女性がドイツ語の歌をマスケット銃と踊りながら歌い上げていた・・・

 

 

「リップさん・・・リップヴァーン・ウィンクル」

 

「~♪・・・」カッツン

 

 

名前を呼ばれた女性は歌と踊りを止め、マスケット銃を担いでアキトの方を向いた・・・

 

 

「久しぶりね・・・[アルカード]」

 

 

リップヴァーンは艶やかな目を向けながら、朗らかに笑った・・・まるで[昔の恋人]に会ったように・・・

 

 

「本当に・・・本当にリップさんなのか?」

 

 

アキトは戸惑うように聞き返した。そんな彼に彼女は意地悪そうな顔をした・・・

 

 

「酷くない?[貴女の事は記憶の片隅に永遠に留めておく]って言ってたのに・・・」

 

「いや・・・それは・・・」

 

「フフ♪ごめんなさい。少し意地悪だったわ」

 

「・・・その笑顔、やっぱりリップさんなのか・・・でもなんで?」

 

 

アキトの疑問にリップヴァーンは少し困った顔をした・・・

 

 

「・・・なんでだろうね・・・?」

 

「え・・・?」

 

「私はアキト、貴方に殺されたあと・・・[ヴァルハラ]に行った・・・[ハズだった]」

 

「[ハズだった]?それは・・・どう言う事だい?」

 

 

それからリップヴァーンは苦笑いをしながら、アキトに語り始めた・・・

 

 

 

「貴方に心臓を潰されたあと、私は[培養液]の中で目が覚めたの」

 

「ば、培養液ィ~?なんだいそりゃあ?」

 

「さぁ?そこまでの経緯はわからない。だけど、目が覚めた時、私は・・・体を[ISに改造されていた]」

 

「ぎゃにィイ~~~!?」

 

 

そのとんでもない理由にアキトは驚愕し、愕然とした!

 

 

「ISに改造された私には、何の感情もわかなかった。心や思考さえも機械のそれになっていた・・・そんな時よ。[あの娘]に会ったのは」

 

「・・・[あの娘]・・・?」

 

「その娘の名前は、[ナターシャ・ファイルス]。銀の福音、つまりは私の[操縦士]よ」

 

「そ、操縦士だって!?だって福音は――」

 

 

アキトは二度目の驚愕を受けた!今まで銀の福音が無人機だと聞かされていたからだ・・・

 

 

「上がワザと伝えなかったんでしょう・・・そういう連中よヤツらは・・・」

 

「・・・」

 

「あの娘は・・・ナタルは私の心の拠り所だった。喋った事はないけれど、心は通じあっていた・・・」

 

 

アキトに語るリップヴァーンの顔は優しそうな親の顔をしていた。そんなリップヴァーンにアキトは聞いた・・・何故、暴走したのかを・・・

 

 

「・・・兎が、私の自我を呼び起こした」

 

「兎?・・・そうか!やっぱりあの野郎が原因か!」

 

「あれだけ憎んでいた科学者に自我を呼び起こされるとは・・・皮肉なモノね」

 

 

そうリップヴァーンは苦笑いをした。しかし、そのあとに彼女は真剣な眼差しでアキトを見つめ・・・

 

 

「アルカードお願い・・・ナタルを助けてあげて」

 

 

操縦士の助けを頼んだ・・・

 

 

「わかった・・・だが俺が彼女を助けたあと、貴女はどうするんだ?」

 

 

アキトの言葉にリップヴァーンは少しの間、沈黙したあとに口を開いた・・・[向かえが来る]と・・・

 

 

「向かえ?それは一体どう言う事だ?!」

 

 

その言葉にリップヴァーンはただただ朗らかに笑うばかりだった・・・

 

 

「笑ってないで答えろよリップヴァーン・ウィンクル!」

 

「・・・頼むわよ。アルカード・・・」

 

 

言葉とともにリップヴァーンは赤い水面に沈んでいった・・・

 

 

「待てよリップヴァーン!まだ話は――」

 

「ねぇ、アルカード・・・?」

 

 

沈んでいくリップヴァーンはアキトにある事を伝えた・・・

 

 

「貴方がつけてくれた[魔弾の射手]ってあだ名・・・私のお気に入りよ・・・じゃあねアルカード・・・じゃあね私の――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インサイド

 

 

 

[[――ヨッ!――ウヨッ!王ヨッ!起キテクダサレ!王ヨ!]]

 

「・・・ゴポ・・・?」

 

 

俺は左腕から叫ぶ朧に起こされた・・・

周りは深い蒼に囲まれ、見上げれば夕陽の光が海中に射し込んでいた・・・

 

 

「ゴポ・・・ゴポポ・・・(朧・・・俺は・・・)」

 

[[王ヨ、喋ラナイデクダサイ。オ体ニサワリマス]]

 

 

そうか・・・俺は・・・弾丸で何度も胸を貫かれて・・・ッ!

 

 

「(朧!リップヴァーンは?!銀の福音はどうなった?!!)」

 

[[ハイ。福音ハ王ト共ニ海中ニ墜落シタ後、レーダーカラ消エマシタ]]

 

 

レーダーから消えた?なら、彼女が目指す場所は・・・

 

 

「(朧!今すぐに福音をサーチしろ!)」

 

[[エ?マサカ!?王ヨナリマセン!王ノ今ノ状態ハ大変ニ危険デス!連戦トナレバ命ノ危険モ――]]

 

「(ヤカマシイッ!!!王の命である!)」

 

[[ッ!!?ワカリマシタ!今スグニ!]]

 

 

俺は朧を無理矢理に黙らせ、福音の・・・彼女の居場所を探させた・・・今度こそ、[魔弾の射手]を沈黙させるために・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 

 

 





長くなったね~・・・さて、どうやって決着をつけるか考えねば!


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銀の福音との最終戦…上

最近買った漫画が大当たりだった件について・・・

アキト「是非、ニヨニヨしたい人は読むべし!その名も[かわいいひと]!堪らなく大当たり!」

そして、展開が早い!

―――統合しました―――



ノーサイド

 

 

 

ヒュゥ――ッ!

 

[[La~♪]]

 

 

アキトから離れた福音は導かれるように飛んでいた。それも歌を歌うように楽しそうに・・・だが

 

ズキュ――ゥン!

 

[[Laッ!?]]バチィッ

 

 

ビームの弾丸が一直線に福音の腕を貫いた!

福音はビームがきた方向を見ると、今度はミサイルが何発も飛んできた。福音はそれを縦横無尽の弾頭で破壊し、防御体勢をとると案の定・・・

 

 

「うりゃぁあッ!」

 

[[Laッ!]]ガキィッ!

 

 

薙刀を構えた簪が福音を攻撃した!福音は銃剣で防いだ。しかし、アキトとの戦闘の傷が深かったのか、防ぎきれずにそのまま突き刺された!

 

 

[[La~~~ッ!]]

 

「この!この!この!この!この!この!」

 

ザス ザス ザス ザス ザス

 

悲痛な叫びをあげる福音を簪は何度も何度も何度も突き刺す!やがて、薙刀が簪の力に耐えきれずに折れるが、簪はそれを構うまいと今度は殴り始めたのだ!

 

 

「簪さん!?鈴さん頼みます!」ズキュゥン

 

「落ち着きなさいよ!簪ッ!」ガシッ

 

 

セシリアは銃撃で福音と簪の距離を離すと、その隙に鈴が簪を取り押さえた

 

 

「離して!離してよ鈴さん!アイツ殺せない!」

 

「か、簪・・・ッ!」

 

 

取り押さえられた簪の目は血走り、鬼気迫っていた・・・

 

 

[[・・・La・・・La]]

 

 

福音は肩で息をしながら逃走しようとしたが・・・

 

 

「逃がさんッ!」

 

「逃さない!」

 

 

ラウラとシャルロットが福音を挟み込んで、何千発の鉛玉を喰らわせると・・・

 

 

「チェストォォォッ!」

 

 

間髪いれずに箒が福音を切り裂いた!

 

 

[[La――ッ!!]]

 

 

福音は断末魔にも似た電子音をあげながら、海に墜落した。だが、海面にぶつかる瞬間に福音はブースターを逆噴射して踏みとどまった・・・

 

 

[[La・・・La・・・La・・・]]

 

 

度重なる連戦に福音はボロボロになっていた。そんな福音が上を見上げると、敵意剥き出しの専用機持ち達が銃口を向け、刃を向けていた・・・

 

 

「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる」

ゴゴゴゴゴッ

 

その中でも異様なスゴ味を出し、ハイライトが消えた目で福音を睨んでいた・・・

 

 

[[La・・・]]ガチャリ

 

 

福音はセシリアに貫かれた腕でライフルを持ち直し、ラウラ達にやられた震える腕でライフルを支えた・・・

 

 

[[La・・・有象無象・・・の区別なく・・・私の・・・弾頭は許しは・・・しない・・・!]]

 

 

福音は絞り混むような電子音を出した。その台詞に聞き覚えがある箒は警戒した・・・

 

 

「気を付けろ!来るぞ!」

 

「「「っ!?」」」

 

ズドン!ズドン!ズドン!

 

その警戒の叫びとともにライフルから弾丸が発射された。飛び出した弾は燕のように自由に飛び回りながら、彼女達を襲った!

 

ヒュン ヒュン ヒュン!

 

 

「こ、これはっ!?」

 

「冗談じゃない![ホーミング能力]がある弾丸なんて!」

 

「こ、これじゃあ近づけないじゃない!」

 

「お、己ッ!」

 

 

発射された3発の弾丸をセシリア達は避ける事で精一杯だった・・・二人を除いて・・・

 

 

「おぉおっ!!」

 

「あぁぁッ!」

 

 

ラウラと簪が弾丸を巧みに避け、福音に迫る!

福音は飛び回る弾丸を自らに集め、防御体勢をとろうとしたが・・・

 

 

「邪魔ッ!」ガキィッ!

 

[[Laッ!?]]

 

 

なんと簪は防御にまわる弾丸を全て打ち落とした!しかも同時に!

 

 

「・・・くたばれ」

 

「墜ちろ!」

 

ガキィンッ!

 

[[Laッ!?]]バチャアァッン!

 

 

そのままラウラはブレードで福音の腹部を斬りつけ、簪は頭部を殴った!福音は衝撃により吹き飛ばされ、海面に叩きつけられた・・・

 

 

「や、やったか・・・?」

 

「あっ!箒さん!」

 

「な、なんだ!?セシリア?」

 

「それ、フラグですわよ・・・」

 

「なに?!!」

 

 

まさにセシリアの言う通りだった・・・水飛沫から出てきたのは[光輝く]福音だった・・・!

 

 

「ま、まさか!アレは?!」

 

「[二次移行(セカンド・シフト)]・・・」

 

「この状況で!?」

 

 

そんな中でも簪は臆する事なく、飛び出した!

 

 

「タアァァァァッ!!」

 

「簪っ!?」

 

「あのバカッ!」

 

 

まさに簪はプッツンしており、まともな思考が出来なかった・・・

折れた薙刀を掴み、福音に突き立てようとした・・・しかし・・・!

 

 

[[・・・]]チャキ

 

「あっ!?」

 

 

福音はあまりにも近づきすぎた簪にライフルを突きつけ電子音とは違う[声]を出し、引き金を引いた・・・

 

 

[[さっさとおっちね糞アマ]]

 

「ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もが簪に弾が当たると思った・・・しかし・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させるかぁぁぁッ!」

 

[[ッ!]]バキィッ ズドン!

 

 

[白い3つの刃]が福音のライフルを切り裂いた!

ライフルは暴発し、使い物にならなくなった。福音は乱入者との距離をおいた・・・

 

 

「大丈夫か?簪?」

 

「あ・・・貴方は・・・!」

 

 

その乱入者は・・・

 

 

「い、一夏ッ!」

 

 

進化した白式を纏う[織斑一夏]だった・・・

 

 

 

「大丈夫か簪?」

 

「う、うん・・・」

 

一夏は姿勢の崩れた簪を起こした。そんな一夏に箒と鈴が猛スピードで近づいていった

 

「一夏ぁッ!」

 

「一夏!ど、どうしてここに?!傷の具合は大丈夫なのか?!それにその姿は――」

 

「待て待て、いっぺんに喋るなよ箒に鈴?実はな――」

 

福音に瀕死の重傷を負わされた一夏は集中治療室で生死の境をさまよっていた。だが、そんな中で一夏は謎のワンピースの少女に出会い息を吹き返したそうな

 

「それでその後に山田先生から皆の事を聞いて急いで――って、おい!どうした鈴!?」

 

「よがっだ、よがっだよぉ一夏ぁあ"!」

 

「おい鈴!?一夏から離れんか!」

 

高揚した鈴は一夏に抱きつき泣きじゃくり、箒はそれを引き剥がそうと躍起になった

 

「ハハ、よかったね。箒、鈴」

 

「それにしても一夏さん?その姿は一体?」

 

セシリアが興味深そうに頭を傾げた。なぜなら、一夏の左腕は大きなカギ爪に変わっていたからだ

 

「あぁ、これか。これはな――」

 

一夏が事情を説明しようとした・・・その時!

 

ズガン!

 

「うおっ!?」バチィッ

 

ミサイルが一夏を襲った!しかし、一夏はそれを簡単にあしらった

 

[[・・・La]]

 

ミサイルが発射された位置には、[セカンドシフト]を終えた福音がギギギと音をたてて、一夏を睨んでいた

 

「・・・どうやらまだ、安心して喋れる時ではないらしいな」

 

「ラウラの言う通りだ。皆!一気にヤツを片付けるぜ!」

 

「あぁ!やってやるぞ!」

 

一夏の声とともに全員が戦闘体勢に入った。そんな中で

 

「ねぇ・・・織斑くん?」

 

「なんだ簪?」

 

「ここに来るまでに・・・アキトを見なかった?」

 

「え、暁か?そう言えば暁がいないな?どこに行ったんだ?」

 

「アキトは・・・」

 

簪はアキトが撃墜され、行方不明である事を口に出そうとしたが・・・

 

『織斑、応答しろ!現在の状況を報告しろ!』

 

「ッ!?」

 

一夏の通信チャンネルから千冬の声が響いた

 

「こちら白式。現在、福音と交戦中!指示をくれ千冬姉!」

 

『フッ、[先生]と呼べと言っているだろう。箒並びにその他の生徒に告げる!』

 

「「「「ッ!」」」」

 

チャンネルから聞こえてくる千冬の声に皆はビクついた

 

『帰ったら覚えておけ。その為に無事に戻って来い!良いな?』

 

「・・・は、はい」

 

「・・・ナンカ、イヤデスワネ」

 

「・・・ドウカンネ」

 

『何か言ったか?オルコットに凰?』

 

「「いえ!なんでもありません!」」

 

チャンネルから聞こえてくる千冬のスゴ味声に怯えたように返事をした。一方で簪は千冬にアキトの安否を確認したが・・・

 

『すまない。暁の所在は不明だ』

 

「そう・・・ですか・・・」

 

『だが更識、気を落とすな。作戦に私情は禁物だ。良いな?』

 

「・・・はい」

 

『良し!なら全体、銀の福音を沈黙・回収しろ!』

 

「「「「「了解ッ!」」」」

 

千冬のかけ声と共に全員が福音に襲いかかった!

 

 

 

 

 

 

 

その一方で・・・

 

ヒュゥ――ッ

「ハァ・・・ハァ・・・ゲフッ」

 

アキトは血を吐きながら、福音に向かってフラフラと飛んでいた。余談だが、千冬がアキトの居所が発見出来ないのは、あまりにも生命反応が薄くなっているからである

 

[[王ヨ、今スグニ救援信号ヲ――]]

 

「しなくて良い!それより福音、リップさんは?」

 

[[イマシタ!前方1.78㎞先ニ確認!]]

 

「あ・・・あ"ァ"ッ!?」

 

朧の音声を聞いたアキトは吸血鬼の眼で前方を確認すると、いかにも怒りを含んだ声を口に出した。そこには、[一夏達に総攻撃を受ける福音がいた]

 

 

 

アキトvision

 

「ぐへへ!くたばれリップヴァーン!」

 

「うぅ・・・助けて・・・アルカード・・・」

 

vision end

 

 

「や、野郎~・・・!」

 

[[エ?チョッ、チョット王?]]

 

福音との戦闘で、吸血鬼でなければ死んでいる傷を受けているアキトはマトモな思考など出来る訳がなく・・・

 

「俺は貴様を躊躇いなく惨殺処刑してくれようぞッ!」

 

眼を真っ赤に充血させ、暴走した!

 

[[王ヨ!落チ着イテクダサレ!]]

 

「黙れ朧!織斑ァッ!苦痛は与えん!」

ズギャアッン!

 

朧の制止も聞かず、アキトの眼から血液ビームが一夏に向けて発射された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




結構なキャラ崩壊だな・・・

次回も頑張ろう・・・


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銀の福音との最終戦…中

最近、[タイムバンデット]の称号を得ました

アキト「なんだそりゃ?」

手抜きではありません。戦闘描写が苦手なだけです!


ノーサイド

 

 

 

「オラアァァッ!」

 

何発もの弾丸が飛び交い、辺りは一杯の硝煙が立ち込めている

 

 

[[Laッ!]]ガキィンッ!

 

刃と刃が何度も何度も重なりあい、火花が散る

 

 

「ハァァァっ!」ザクッ

 

[[ぎぃLaッ!?]]

 

そして、その刃に弾丸に傷をつけられる福音は悲鳴をあげながら、血のようなオイルを体から垂れ流す

二次移行したとはいえ、福音・・・いや、リップヴァーンのSEゲージは度重なる連戦の末に赤くなっていった

 

 

「コイツ、動きが鈍くなって来たんじゃない?」

 

「もう少しですわ!」

 

弱っていくリップヴァーンを前に、彼女達の攻撃の手は強くなっていく

 

 

[[(・・・あぁ・・・)]]

 

リップヴァーンはそんな彼女達の顔を見て、声に出せない声を呟く

 

 

「さっさとくたばれ!屑鉄風情が!」ザンッ

 

[[(・・・なんて酷い顔をしているんだろう。これじゃあまるで・・・)]]

 

「俺が皆を守るんだぁッ!」

 

[[([化物]と変わらないじゃない)]]

 

ザシュゥゥウ!

 

一夏と箒の連携攻撃に彼女は防御姿勢をとる事なく斬られ、ボロ雑巾のように海面に倒れる

 

 

「なんだコイツ?急に手応えがなくなったぞ?」

 

「そろそろコイツも観念するか・・・一夏!」

 

「わかってるさ!コレで・・・」

 

そう言って一夏は箒の単一能力[絢爛舞踏]からエネルギーを受けとり、左腕の多機能武装[雪羅]にエネルギーを溜めた。すると雪羅の爪は蒼白く輝きを放った。一夏の単一能力[零落白夜]だ

 

 

「止めだぁぁぁッ!」

 

一夏は[二重瞬時加速]でリップヴァーンとの距離をつめていった

 

 

[[・・・La・・・]]

 

リップヴァーンは自分を殺しにかかってくる一夏をただ呆然と見ていた

 

 

[[(・・・あぁ・・・私、ここで死ぬんだ・・・ごめんね大隊長・・・私、行けないや・・・でも最期に[彼]に会えてよかった・・・)]]

 

諦め、謝罪、痛み、様々な思いが、今までの記憶が彼女の頭を駆け巡った。その[2度目]の走馬灯を見ていた時、ある人物の顔が浮かんだ

 

[[・・・ナタル・・・]]

 

 

2度目の生を受け、心の拠り所としていた者の事を思い出した

ある兎の身勝手な思惑で体を乗っ取られ暴走し、暴れ回った時にリップヴァーンは彼女をに危険が及ばない、責任が回らないようにように仮死状態にしていた

 

 

[[(私が目の前の子に殺されれば、ナタルは無事に回収されるだろうか?・・・大丈夫かな?大丈夫かな?)]]

 

「テヤァァァっ!」

 

[[・・・ナタル・・・ごめんね・・・]]

 

その声が最期とばかりにリップヴァーンは一夏の刃に大人しくかかる・・・はずだった

 

 

 

 

 

 

 

「空裂眼刺驚ッ!!」ガギュン!

 

「うわぁっ!?」バチィッ

 

「「「「っ!?」」」」

 

[[・・・La・・・?]]

 

零落白夜が彼女に当たる、その直前!真っ赤な光の線が雪羅に直撃し、それを弾いた!

 

 

「な、なんだ!?一体何が起こったんだ?!!」

 

全員は光が来た方向を見ると、その先にいた人物に驚嘆し、歓喜の声をあげた

 

 

「あ、アレはッ!」

 

「い、生きてた!生きていたんだ!」

 

「「「「[アキト]!!」さん!」」」

 

その目線の先にいたのは、血だらけで満身創痍、だがそれでも飢えた獣のように一夏に向かって高速で飛ぶ吸血鬼・アキトの姿がそこにはいた

 

 

「WRYYYYYYYYYYY !!! 」

 

だが、この時簪だけが気づいていた。アキトの異変に。それはアキト自身に[血を吸われた]からこそわかる、彼の、[吸血鬼]という[化物]の危険性を・・・

 

 

「WRYYYYYYYYYYY !」バァーン

 

アキトは咆哮を轟響かせながら、高速で近づいていく

 

 

「暁!」

 

一夏も一夏でアキトの異変に気づかずに自ら近づいて行く。近くの簪が何を言ってるのかも無視して。そして、そのまま朗らかな顔に――

 

 

「URYYY!」

 

「ぐべらぁっ!?」グガァッン!

 

「「「「な、ナニィイィッ!?」」」」

 

アキトの拳がメリ込んだ!

周りは突然の事に驚愕する他なかった!

 

 

「な、何すんだよあかつ――」

 

「無駄ァ!」ガツン!

 

「ぐあぁっ!?」

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!」

 

一夏の言葉も聞かずにアキトは一夏の首根っこを掴み、ボディにラッシュをいれる

 

 

「き、貴様ぁ!暁ィー!」

 

「止めなさいよ!アキト!」

 

殴られる一夏を見て、箒と鈴が黙っているわけがない。鈴は青竜刀で、箒は専用刀でアキトの後ろから斬りつけた・・・しかし

 

 

「KUAッ!」シャンッ

 

「「なッ!?」」クルン

 

「ドラァッ!!」グイ

 

「「「うわぁッ!?」きゃあぁっ!」」ドガシャアッン!

 

彼はワイヤーをISごと巻き上げ、そのまま一夏とぶつけた。衝突した一夏達は彼女、リップヴァーンとの距離を遠ざかるをえなかった

 

 

「あ、アキト・・・ど、どうして・・・!?」

 

「な、なぜだアキト!?」

 

「・・・」

 

シャルロットやラウラの声にアキトは唯、真っ赤な眼でギョロリと睨むばかりでなにも答えようとしなかった

 

そんな中でアキトにライフルを構えるセシリアの手は震えていた

 

 

「(アキトさん・・・私は・・・私は・・・)」

 

その構える先に何故か簪が立ち塞がった。セシリアは怪訝な顔で簪に通信をいれようとしたが、スコープから覗く簪の口は・・・

 

 

「彼を信じてあげて」

 

・・・と動いていた

彼女はその言葉を信じて構えていたライフルを下ろした

 

 

 

「・・・」

 

[[La・・・?]]

 

「暁なにやってんだ!危険だ!離れろ!」

 

「暁、貴様!離れんか!」

 

アキトは騒ぐ外野の事など気にもせず、戸惑うリップヴァーンの前に腕を広げた。

少しの間、二人の間には沈黙が続いたが・・・

 

 

[[・・・]]ガシャアン

 

「なッ!?」

 

「あ、あれは!?」

 

「そんなッ!?」

 

彼女、銀の福音のコックピットが一人でに開いた。そのコックピットにはパイロットスーツを着た[長髪の女性]が乗っていた。アキトはそんな周りの驚く声に動じずにその女性をコックピットから持ち上げ、福音との距離をおいた

 

 

「・・・朧」

 

[[ハッ!]]

 

アキトは静かに朧へと命じると、朧は生気のないパイロットスーツの彼女の体をスキャンした

 

 

[[スキャン完了。現在、福音パイロット[ナターシャ・ファイルス]は[仮死状態]になっています]]

 

「回復の見込みは?」

 

[[アリマス。長時間ノ仮死状態ニモ関ワラズ、臓器並ビニ脳ニダメージハアリマセン]]

 

「そうか・・・」

 

朧の報告を聞き、アキトはホッとした表情を浮かべた。それも束の間、その表情を掻き消すように無言で空中に佇むリップヴァーンにギョロリと睨みをきかせた

 

 

[[・・・La・・・]]

 

アキトに睨まれた福音は何処か安心したように嬉しそうに鳴いた・・・

 

 

「暁!これは一体どういう事だよ!?銀の福音が無人機じゃないって・・・お前、知ってたのかよ?!」

 

周囲が驚嘆で声を失った中・・・

一夏が一人、怒号にも似た叫びをあげた。だが、その声にアキトは答えようとせずに彼女を睨むばかりか、腰に引っ提げた大太刀をスラリと引き抜き、肩に背負うと指を彼女に突きつけた

 

 

「リップヴァーン・ウィンクル、[再び]・・・再び貴女の[(みしるし)]・・・[頂戴]いたす!」

 

そうリップヴァーンに声をあげるアキトは嬉しそうに悲しそうな顔をしていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ムム~~ン♪それはちょっと困りますねアーカード?」

 

「「「「「「ッ!?」」」」」」

 

 

殺気が張り詰めた空気の中で、なんとも場違いで暢気な声にその場にいた全員がそちらを向いた。そこには、海上にまるで[床の上にいるように立っている]人影がいたのだ

 

 

「ム~ン♪」

 

「・・・」

 

その人物の一人は[三日月のような異様な頭]にタキシードという珍妙な格好でケラケラと笑い、その隣にいる熱帯雨林用のコートに軍帽を深く被った[白髪赤眼]の人物は福音を無言で見ていた

 

 

「おいおいおいおいおい、冗談じゃねぇよ・・・!?」

 

アキトは三日月頭の人物を見た瞬間に一気に思考が冷えていった

 

 

「おい!何なんだよアンタら突然?!ここは危険だ!早く逃げるんだ!」

 

「待て一夏!なんか様子がおかしいぞ!」ガシッ

 

「おわッ!?掴むなよ箒――」

 

三日月の男達に一夏は声をかけ、不用意に近づこうとしたところを箒に止めらた・・・その時!

 

 

ズバシャァァァッッッン!

 

「・・・へ?」

 

「きゃ!な、なに!?」

 

一夏が進もうとした先の海が爆裂四散した。

 

 

「ム~ン♪惜しいですねぇ~。もう少しで[破壊]できたのに・・・いやはや残念!」

 

「・・・」ガツン

 

「痛ッ!無言で叩かないでください[大尉]」

 

自らの攻撃が外れた事を三日月の男はニヤニヤと笑いながら、残念がっていた。そんな三日月の男を後ろにいた[大尉]と呼ばれた白髪の男が小突いた

 

 

「何者だ貴様ら!?」

 

「これはこれはこれは失礼いたしました。私は[L.X .E ]所属の[ホムンクルス]、[ムーンフェイス]と申します。そして、私の隣にいるのは[吸血鬼の大隊]所属、本名は私も存じ上げませんが[大尉]と申します。どうぞよしなに・・・」ペコリ

 

「・・・」ペコリ

 

レールガンを向けて、質問するラウラにムーンフェイスは丁寧に自己紹介し、お辞儀をした。大尉もそれに連なり、お辞儀をした

 

 

「[ホムンクルス]?[吸血鬼の大隊]?一体何を言っているのだ!?」

 

「貴様ら!何を訳のわからない事を!」

 

「それにしてもお久し振りですねぇ~?えぇ?アーカード?」

 

「・・・あぁ・・・」

 

ムーンフェイスは騒ぐ周りに気を止めず、ニコやかにアキトを[2つ名]で呼び、下卑た笑い声をあげた

 

 

「ククク・・・」

 

「・・・なんだよ、ムーンフェイス?気持ち悪ぃ」

 

「いえいえスミマセン。それにしても貴方の2つ名[アーカード]って・・・中二びょ――グサッ――おや?」

 

「なっ!?」

 

「な、ナイフが!」

 

ムーンフェイスが言葉を紡ぐ前に、彼の額に刃渡り45cmのナイフが突き刺さった。しかし、ムーンフェイスは何事も無かったようにナイフを額から抜いた

 

 

「痛いですねぇ~・・・折角の再会なのに・・・」

 

「悪いなムーンフェイス。俺は今、物凄く忙しいのだよ。目の前のレディを口説き落とさなくちゃならないし、抱えているフロイラインを連れて帰らなくちゃならない・・・Do you understand?」

 

「No I don't 」

 

「テメェ・・・!」

 

「えぇっい!何をベラベラと喋っている?!!」

 

「箒ッ!?」

 

「待ちなさいよ箒!」

 

「問答無――「うるさいですよ?――」がっ!?」

 

一夏や鈴の声に耳を傾けずに箒はムーンフェイスに斬りかかったのだが、ムーンフェイスは斬りかかる箒の顔を鷲掴みにし静止させた

 

 

「ぐぐッ!(な、なんだコイツは!?人間の力じゃない!)」

 

「はぁ・・・ヤレヤレ、最近の若者は[人の話を邪魔するな]と習っていないのですかネッ!」ドガッ

 

「ぐわっ!?」

 

「箒ッ!?お、お前――ッ!」

 

「「「「一夏ッ!」さん!」」」

 

ムーンフェイスは鷲掴みにした箒の腹に膝蹴りをいれた。その事に激昂した一夏は雪羅を振りかざし、ムーンフェイスに突撃していった

 

 

「大尉」

 

「・・・」コク

 

ムーンフェイスの言葉に大尉は頷くと、ムーンフェイスの前に立つと・・・

 

 

「・・・」ドガッ

 

「がっ!?」

 

一夏に回し蹴りをいれた。しかも無言で!

蹴りをいれられた一夏は何故か、その場に膝まづいた

 

 

「な、なんで・・・(う、動かない!なんでだよ!動け!動けよ!)」

 

「い、一夏・・・」

 

「フッ・・・やはり人間は脆弱だ。ねぇ?大尉?」

 

「・・・」コク

 

大尉に蹴られた一夏やムーンフェイスに何度も蹴りをいれられた箒は力なく、膝まづいた

 

 

「こ、この!」

 

「よくも一夏を!」

 

「一夏と箒を離せ!化け物め!」

 

「[化け物]?[化け物]ですって!?ムム~ン♪」

 

シャルロットの言葉にムーンフェイスはケラケラと笑い始め・・・

 

 

「な、何がおかしいんだよ!」

 

「いえいえお嬢さん、私が[化け物]なら、彼は化け物以上の[フリークス]ですよ。ねぇ?[吸血鬼アキト]」

 

アキトを指刺した

 

 

「え・・・?」

 

「・・・なに?」

 

「ど、どういう事ですか?アキトさん!」

 

周りがムーンフェイスの言葉に驚愕している一方で・・・

 

 

「(あぁ、ヤバい・・・血がヤバイ・・・腕に力が入らない・・・ナターシャさん支えるのツライわ)」

 

 

アキト自身が結構ヤバい状況に立たされていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 



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銀の福音との最終戦…下

改めて思う、このハーメルンには『奇妙な絆』がある
あえて言おう・・・諸君、私はハーメルンが好きだ

アキト「諸君らはハーメルンが好きかな?」

―――統合しました―――




ノーサイド

 

 

 

カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカ・・・

 

誰もいないハズの真っ暗な部屋にキーボードを叩く音が響く・・・

 

 

カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカ・・・バンッ ガシャン!

 

「何なのさ!何なのさ!何なのさ!一体何だって言うのさ!」

 

兎耳のカチューシャをつけた人物はキーボードを床に叩きつけ、パソコンに映る光景を血眼で食い入るように見ていた

 

 

「なんで急に福音が[言うこと聞かなくなる]のさ!?それになんだよ[この男]達はッ!?こんなの[束]さんは知らない!知らないィイ!!こんなの束さんの[予定]に入ってない!どうしてこうなるんだよッ!」バンッバンッバンッ!

 

兎耳カチューシャ、もとい、自称天災科学者[篠ノ之束]は、癇癪を起こした子供のように何度もパソコンを置いたテーブルを叩くと、ガジガジと親指の爪を噛み始めた

 

 

「糞ッ糞ッ糞ッ!このままじゃ、このままじゃ箒ちゃんといっくんが・・・!」

 

「ニシシシ・・・♪」

 

そんな癇癪を起こす束の後ろで、中傷めいた笑い声が聞こえてきた

 

 

「ッ!そこにいるのは誰だよ!?」

 

コツ コツ コツ・・・

「ニシシシ♪コレはコレは失礼・・・」

 

この束の怒号に答えるように物影から笑い声の正体がユックリと現れた

 

 

「・・・誰だよ・・・お前?」

 

「お初にお目にかかります。僕は[吸血鬼の大隊(ヴァンパイア・バタリオン)]所属の准尉、[何処にでもいて、何処にもいない]・・・[シュレーディンガー]と申します・・・ニシシ♪」

 

「[吸血鬼の大隊(ヴァンパイア・バタリオン)]?何なんだよそれは?!」

 

「いやぁ、やってるねぇッ![大尉]なんて生き生きしちゃって!ニシシシ♪」

 

猫のようであり、少年のようで少女のようなシュレーディンガーは束の声にも耳を貸さずにパソコン画面を見てニヤニヤと笑う・・・そんなシュレーディンガーに束はイライラしながら叫び声をあげる

 

 

「束さんの質問に答えろよ!お前は一体何なんだよ!」

 

「あれぇ~?さっき言いませんでしたか?天災科学者なのに物覚えが悪いのかなぁ~?ププ~♪」

 

「~~~~~~!お前ッ!」バキィッ

 

「グベッ!」ブシャァッン

 

中傷された事に怒った束はシュレーディンガーにの顔目掛けて、回し蹴りをした。蹴られたシュレーディンガーは壁に叩きつけられ、グッタリと血を流して倒れこんだ・・・しかし

 

スクッ

 

「っ!?」

 

「あぁ~?痛いなぁ~?何するんだよ?」

 

シュレーディンガーは首が有らぬ方向に曲がりながらも平気そうに立ち上がる

 

 

「そ、そんな・・・なんで首の[骨が折れてる]のにッ」

 

「ニシシシ♪・・・まったく、こんな我慢が出来ない人が世紀の大発明者なんて・・・世も末だ」

 

「何だよ!何なのさお前は?!!」

 

束は自分の目の前で起こってる事に思考が追いつかなかった。そんな事お構い無しにシュレーディンガーは続ける。折れた首のままで・・・

 

 

「僕は貴女に興味があったのに・・・そんな天災科学者にいざ会ったとなれば、コイツは拍子抜けだ。例えるならネットで話題の本を実際に読んでみると「こんなモノか」と言うぐらいに拍子抜けだ・・・ガッカリだよ」

 

「フザけるな!この天災科学者である束さんに突然何だって言うのさッ!」

 

「あ~!ハイハイ、怒るな怒るな。たかが知れるぞ[ガキンチョ]?ニシシシ♪」

 

「~~~?!?!!」

 

今までされた事のない[中傷]に束は開いた口が塞がらずにヒクヒクと痙攣を起こしていた

 

 

「さて・・・そろそろ決着が着くかな?僕も帰るとするか・・・」チャキ

 

「ッ!」

 

シュレーディンガーは懐から古びたモーゼル銃を取りだして、自分のこめかみに銃口を向け・・・

 

 

「い、一体何を――――」

 

「あ、そうそう篠ノ之束博士?」

 

「な、なんだよ!?」

 

「[この世界は君の手の内にあると思ったら大間違いだ]・・・だって」

 

「え・・・」

 

「それじゃあ・・・また会えたら♪」カチ

 

「ッ!?」

 

 

ドギュッッゥッン!

 

そのままシュレーディンガーは銃の引き金を引いた。シュレーディンガーの頭は腐ったザクロのように粉微塵に吹き飛んだ

 

 

「な、な、な、な・・・!」

 

バタリと倒れるシュレーディンガーの屍を見つめながら、束は突然起こった事に腰を抜かし一言・・・

 

 

 

「な・・・何なんだよッ!一体!?」

 

 

まったくその通りの言葉が暗い部屋に響いた

 

その一方で・・・太平洋の者共の戦は終結に向かう・・・

 

 

 

―――――――

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

「(考えろ考えろ考えろ考えろ考えるんだ!)」

 

太平洋のど真中で太刀を構え、片手でナターシャを抱えるアキトは思考をフル回転させていた

 

 

「(目の前には何時襲って来るかもわからないISに改造された『リップヴァーン』、そのすぐ横には上位ホムンクルスの『ムーンフェイス』に焔大佐を苦しめた人狼(ヴェアウルフ)の『大尉』。しかもその化け物に篠ノ之は鷲掴みにされ、織斑は攻撃をうけてうずくまってるし・・・どうするどうするどうするッ!?)」

 

アキトは思考に費やす時間、0.1秒が10時間にもなるような感覚に襲われた

 

 

「(その前に血だ!血が足りない!血を、血を、血を寄越せ!)グルルル」

 

目の前の敵を倒す事よりも、まず『腹がふくれる』事を何よりの先見事項とした

 

 

「アキト!『吸血鬼』とはどういう事だ!?」

 

「アキト・・・!黙ってないで答えなさいよ!」

 

そんな事を露とも知らない者達はアキトに強い口調で問いただす

そんな中でただ一人、簪だけがアキトの異変に気づき、セシリアの通信を開いた

 

 

「セシリアさん、聞こえる?」

 

『え!?えぇ、聞こえますわ!』

 

「ならセシリアさん・・・あの篠ノ之さんを鷲掴みにしている『月顔の男』の腕を撃ち抜いて!」

 

『はいィイッ!?無理ですわ!そんな精密射撃が――「アキトが『暴走』する前に早く!Hurry!」――は、はい!』

 

簪は戸惑うセシリアを黙らせると、セシリアにムーンフェイスへの射撃を指示すると、アキトに通信を開いた

 

 

「アキト・・・!やって!」

 

ズガァァッン!

 

その通信をした瞬間にセシリアのライフルが火を吹いた!

 

 

「グルルル・・・『思考は冷たく、心はさらに冷たく』・・・」

 

ブチィッ

「おやぁ~?」

 

「うわっ!?」

 

アキトは静かに呟き、箒を掴むムーンフェイスの腕がセシリアのライフルで引き千切られ箒との距離があいたのを合図に・・・

 

 

「朧、『パージ』・・・片をつける!シャーロット頼んだ!」バッ

 

「え、えぇッ!?」

 

[[アイアイサー]]

 

アキトは重い鎧をパージすると、シャルロットに向かってナターシャを放り投げた!

 

 

[[がLaッ!?]]グザァッ

 

「無駄ッ!」バキィッ

 

[[Laッ!]]

 

放り投げた瞬間にアキトは太刀で静止するリップヴァーンを串刺しにし、そのまま蹴り飛ばすと、反動を利用し、輻射波動を向けてムーンフェイスと大尉に突撃していった!

 

 

「WRYYYYYYYYYYYッ!!!」

 

「おやおや、ヤレヤレ・・・」

 

「・・・!」

 

牙を剥き出しにして襲いかかるアキトに大尉は口角を少し上げたが

 

 

「大尉?楽しみにしている所すみませんが、『アレ』は私の獲物だ。失礼」ゴソリ

 

「・・・」

 

ムーンフェイスが大尉の前に立つと、懐から掌大の『核鉄』を取り出した

 

 

「『武装錬金』『サテライト30』」パァァァッ

 

その核鉄が輝くと、ムーンフェイスの手には『小さな鎌のようなナイフ』が握られていた

 

 

「ムム~ン♪」

 

「ッ!」ガシッ バチィィィ!

「ムーンッ!」

 

「え・・・?」

 

「な、なんとも・・・!」

 

しかし、なんとも呆気なくムーンフェイスはアキトの左腕のカギ爪に掴まり、輻射熱でドロドロに弾けた!箒や鈴はあまりにも呆気ないムーンフェイスの最期に気をとられていたが・・・

 

 

「ムンッ!」ザシュッ

「ぐぁっ!」

 

「「「な、なにィイッ!?」」」

 

溶かされたムーンフェイスとは『別の』ムーンフェイスがアキトの顔を切り裂いた!

 

 

「そんなバカなッ!?」

 

「アキトッ!」カチ ズガァァッン!

「ムがぁッ!?」

 

ラウラは別のムーンフェイスの頭を撃ち抜いた!だが・・・

 

 

「ムーン♪」バキィッ

「なっ、うあぁっ!?」バシャァッン!

 

また『別の』ムーンフェイスがいつの間にかラウラに近づき、蹴りをいれた。蹴りをいれられたラウラはそのまま海上に叩きつけられた

 

 

「ラウラさんッ!」

 

「こ、これは・・・一体!」

 

 

アキトやラウラがやられた事に周りは目を見開き、その方向を見ると・・・

 

 

「さて・・・集まりなさい『私達』」

 

「「「えぇッ」」」

 

そこには『頭の違う』ムーンフェイス達が佇んでいたのだ!

 

 

「ふ、『増えてる』・・・!?」

 

「そんなバカな!」

 

驚く周りにお構い無く、ムーンフェイスは行儀良くお辞儀した

 

 

「これが私の武装錬金『サテライト30』の能力、私は『半月』」

「私は『三日月』」

「私は『十六夜』」

 

「先程、アーカードと銀髪のお嬢さんに再起不能にされたのは『十一夜』と『十五夜』・・・」

 

「『分身能力』は今尚健在か・・・」

 

「分身・・・能力・・・?!」

 

アキトはヨタヨタと顔を斬られてもムーンフェイスを睨みつけた

 

 

「ムム~ン♪貴方の異常な『再生能力』もね」

 

「まぁな・・・」

 

「・・・」

 

ムーンフェイスに斬られたアキトの顔は綺麗に塞がっていた。そのアキトを大尉は興味深そうに見ていると・・・

 

 

「・・・ってやぁぁぁぁぁッ!」ザシュッゥゥウ

「ぐあぁあッ!?」

 

「『半月』ッ!」

 

先程までうずくまっていた一夏が近くにいたムーンフェイス半月を斬り上げた!

 

 

「よぉ、まだ生きてたか織斑?」

 

「あぁ、それより暁、コイツらは一体・・・?」

 

「一夏ッ!大丈夫?!」

 

雪羅を構えてアキトに寄り添う一夏に箒や鈴が近づいた

 

 

「あぁ、大丈夫だ。それよりさっきやられたラウラは?」

 

「ラウラならシャルロットや簪が向かったわ」

 

「そうか・・・セシリア、聞こえるか?」

 

『は、はい!』

 

一夏はセシリアのチャンネルを開き、ある指示を出した

 

 

「あの変な頭じゃない方、『コートの男の方』の牽制を――「セシリア・・・」――あ、暁?」

 

一夏とセシリアの通信にアキトが口を挟んで来た

 

 

『アキトさんッ!大丈夫なんですの!?』

 

「それより良く聞いてくれセシリア・・・お前らは太刀で串刺しにしたリッ、じゃなくて銀の福音とシャルロットに任せてる操縦者を連れて『退却』しろ」

 

『なッ!?』

 

「な、何を言ってんだよ暁ッ!?」

 

アキトの言葉に一夏達は驚愕した

 

 

「ちょ、ちょっとアキト!何言ってんのよ?!」

 

「貴様はバカか!暁!こちらが数では上だ!あんなオカシな術を使うヤツなど私の紅椿で――「お前らも退却しろ」――き、貴様!私の話を!」

 

アキトは箒の文句なぞ聞き流して、輻射波動の次弾を装填した。そう言うアキトにムーンフェイス達も口を開く

 

 

「そうですね「そうした方が良い」」

 

「なにッ!?」

 

「君達は『弱い』・・・所詮はIS等という『玩具』に喜ぶ童だ。そんな君達には―――おや?」

 

ムーンフェイス三日月の言葉に一夏は雪羅を向ける

 

 

「俺は弱くはない!この『力』で皆を守るんだ!お前らなんかにやられるかよ!」

 

「ヤレヤレ・・・情報で見ましたが、ここまでバカだったとは・・・なら聞きますが織斑一夏?貴方は、そこにいるアーカードより『強い』んですかね?」

 

「さっきから何言ってんだよ?『アーカード』とか『吸血鬼』とかって・・・」

 

「ヤレヤレ・・・知らないのなら、貴方は強いつもりでいる『弱者』だ。『強者』ではない」

 

ムーンフェイス達は中傷めいたように溜め息をつき、アキトの方に顔を向けるとサテライト30を胸にかざした

 

 

「サテライト30、『オーバーリミット』」

 

「「「ッ!!?」」」

 

その言葉をはっすると、ムーンフェイスの体は10体にも『分身した』

 

 

「・・・本気なようだな・・・ムーンフェイス?」

 

「当たり前です」

「貴方は『こちらの世界』では上位レベルの『化け物(フリークス)』」

「本気にならなくちゃあ貴方に対して無礼だ」

 

「・・・しなくて良いのに・・・」

 

「それで?数では・・・何でしたっけ?お嬢さん?」

 

「む、むむ・・・!」

 

ムーンフェイスはニヤニヤとしながら、悔しそうな箒を笑う

 

 

「・・・」

 

「ん?なんですか大尉?」

 

「・・・」

 

「わかりました。大尉は福音の方を頼みますよ」

 

「させると思うか?」

 

ムーンフェイスと大尉は話合うが、アキトが大尉の前に立つ

 

 

「ふむ・・・」

「アーカード?」

「貴方は福音との戦闘で重傷を負ってるではありませんか」

「そんな貴方がこの数の私と大尉を相手できるのですか?」

 

「・・・カカッ♪」

 

ムーンフェイス達の言葉にアキトは乾いた笑い声を短くあげた

 

 

「『仲間を守る』・・・『任務を遂行する』・・・この二つを同時にするのは難しい・・・覚悟はいいか?『俺は出来てる』!」

 

そんな何処かのイタリアンギャングの矜持が口から飛び出した瞬間、あの白眼ニヤケ顔の月顔のホムンクルスが襲って来た。しかも1度に10体!

 

 

「「「「「「「「「「ムムーン♪」」」」」」」」」」

 

「Ryyyyy!」バッ

 

「あ、おい暁ッ!?」

 

後ろで織斑が何か言ってけど、構うものか!この気持ち悪いホムンクルスをここで仕留めて、大尉を再起不能にしなくちゃあならない!

 

 

「弾けろッ!」バチィィィ

「ムーンッ!」

 

輻射熱で一体のムーンフェイスを溶かした。その瞬間に俺の背中に衝撃が響いた!

 

 

「・・・」

 

「なっ、テメッ!?」

 

この狼野郎!ムーンフェイスの群れの中に紛れていやがったのか!

 

 

「このッ!」

 

「・・・」シャッ

 

「なっ!?」

 

俺は後ろの大尉に向けて蹴りを飛ばすが、大尉はそれを俊敏に避けると、額にモーゼル銃を当てやがり・・・

 

「・・・!」カチ

 

「KUAッ!?」ドゥキュゥッン!

 

躊躇なく撃鉄を落としやがった!危ねぇっ!

もし当たっていたら、頭がザクロになっちまってたぜ~!

 

 

「暁ッ!今行くぜ!」

 

「ムーン♪」

 

あのバカ!退却しろって言ったろうが!テメェがいると戦い難いんだよ!

 

 

「たあぁぁっ!!」ザン

「ムがぁッ!・・・なんてね♪」

 

「なっ!?んなバカなッ!?」

 

「ムーン♪」バチィィィ

「がぁッ!?」

 

織斑はムーンフェイスを斬るが、傷が浅いためにムーンフェイスはそのまま織斑に手刀をあて、吹き飛ばしやがった

 

 

「余所見してる場合ですか?」ガッ

「うおっ!」ガギィ

 

余所の心配してる場合じゃないな!コノ野郎!

 

俺はそうしてムーンフェイスの頭に掴んで、狼大尉にぶつけた。するとこの大尉、ムーンフェイスの体をぶち抜いて、投げ返して来やがった!

 

 

「・・・!」

 

この野郎・・・楽しんでやがる!眼が遊ぶ子供のような眼になってやがる!

 

 

「・・・カカッ♪」

 

・・・ヤベぇ・・・

 

 

「カカカッ♪」

 

・・・ヤバすぎるッ!

 

 

「カカカカカカッ♪」

 

超絶無比に『楽しすぎる』!!!

 

久々の『強敵』!久々の『化け物』!久々の『本当の戦闘』!『勇者こそ友、強者こそ真理』!

 

 

「なぁ!大尉さんよぉッ!」ガギィ

「・・・?」

 

カギ爪と大尉のモーゼル銃が火花をあげる中、俺は大尉に問いかける

 

 

「俺は今モノ凄く楽しい!楽しすぎる!アンタはどうだ?楽しいかッ!?」

 

この時の俺の顔は気持ち悪い位にニコやかで艶やかな良い笑顔をしているだろう・・・

「何故わかる」かって?そんなの簡単だ。だって・・・

 

 

「・・・♪」

 

目の前で競り合う大尉が俺と同じ位に『良い笑顔』なのだから・・・

 

 

「ムム~ン♪妬けますねぇ~」

 

「そうかい妬けるかい?悪いなムーンフェイス、俺はお前よりこっちのウルフマンにお熱なのよン♪」

 

「ム~ン!大尉殿ぉ~!」

 

「・・・?」

 

あぁ・・・大尉殿、無言で、無表情で、不思議そうにコテンと首を傾げるその姿でさえ『愛しく』感じてしまう・・・

 

あぁ、本当に本当に・・・「惨殺」してやりたい!

 

だが、この時俺は浮気者の制裁を受けるとは知らなかった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

一方その頃、セシリア並びにシャルロットにラウラ、簪はアキトに指示されたように太刀で串刺しになった『銀の福音』と気を失っている操縦者『ナターシャ・ファイルス』を旅館まで運んでいた

 

 

「すまんな簪」

 

「気にしないでラウラさん」

 

ラウラはムーンフェイスとの戦闘でSE(シールド・エネルギー)を0近くまで取られ、簪に抱えられていた

 

 

「・・・それよりアキト達大丈夫かな?」

 

「ッ・・・」

 

「・・・糞ッ」

 

「ラウラさん・・・」

 

ナターシャを抱えるシャルロットの言葉にラウラは悪態をつく

 

 

「糞ッ!糞ッ!糞ッタレ目が!なんて不甲斐ないんだ!何が軍人だ!何がドイツ軍人だ!こんなの・・・こんなの!」

 

「・・・ラウラ・・・」

 

ラウラは顔を歪ませて悔し涙を流した。その涙に同調するように周りも重い雰囲気に包まれた。しかし

 

 

「それでも・・・」

 

「セシリア・・・さん?」

 

「それでも私達は、アキトさんに『仕事』を任されました。今はそれをやりとげますわよ、皆さん!」

 

セシリアの励ます声を出した

 

 

「しかし――」

 

「「しかし」もヘッタクレもありませんわ!それに・・・」カンカン

 

[[Laッ!]]

 

セシリアはラウラのワイヤーブレードでぐるぐる巻きにして運ぶ福音を叩いた

 

 

「この『お嬢さん』を世話するのも大変な『任務』ですわよ?」

 

「・・・フッ、それもそうだな」

 

「ここで逃がしたら何の為にって事になるしね?」

 

「うん・・・旅館に急いで運ぼう・・・!」

 

そうして四人は旅館に向けてブースターを吹かした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は太平洋の戻る・・・

 

 

「SYAAAaaaaaッッ!!!」

「・・・!」

 

ガカギィィィッン!

 

ここでは・・・

 

 

「「チェストぉおおッ!」」

「ムーンッ!?」

「逃がさない!」

「ムム~ン」

 

ガシュゥウッ!

 

人外と化け物達とIS使い達が刃と刃を合わせて、火花を散らしていた

 

 

「シツコイッのよ!」ドゥッン

「ムガギュゥッ!」

 

「この野郎ッ!」ザン

「ムーンッ!」

 

鈴は『龍砲』でムーンフェイスを吹き飛ばし、一夏と箒は刀でムーンフェイスを斬り伏せる

 

 

「このッ!一夏!」

 

「なんだ箒ッ?!」

 

「数が多すぎる!てかさっきより『増えてる』!」

 

「んな事言われてもよぉ~!」

 

「ムーンッ!」

 

「糞ッたれがあぁぁッ!」ザン

 

一夏達はムーンフェイスの分身能力に手こずっているようだ。一方のアキト達は・・・

 

 

「WRYYYYYYAAAッ!」

「・・・」

 

グギィィイッン!

 

「ムムムーンッ!」

「KKUAAAAA!!!」

 

バチィィィ!

 

「カハハハッ♪」

「・・・♪」

「ムム~ン♪」

 

なんとも楽しく楽しく戦闘(遊んで)いた・・・のだが・・・

 

 

「ぐはっ!」

 

[[王ッ!?]]

 

度重なる連戦にアキトの塞がっていた傷が開き、再生能力も低下していった。その事を狙わない化け物がここにはいない。ムーンフェイスと大尉が連携でアキトを叩いてきた。だが、それでも・・・

 

 

ガシッ

 

「ムムッ「・・・!?」」

 

「ギヒヒヒ♪つぅ~かまえた♪」

 

アキトは大尉とムーンフェイスの脚と腕を捕まえ、掌に冷気を集めた

 

「『気化冷凍法』ッ!」ビキビキィ!

「ッ!」

「ムム~ンッ!?」

 

しかし、それも長くは続かずに大尉に振り払われる

・・・ムーンフェイスは凍らされてバラバラになった

 

 

「ヒュゥ、ヒュゥ、ヒュゥ・・・」

 

アキトは既に気を失う寸前までに疲労していた・・・それでも尚、牙を鳴らして笑う

 

 

「ヒヒ・・・カヒヒッ♪・・・」

 

「・・・」

 

「どう・・・したよ大尉?・・・来いよ。来てみやがれよ!まだ!まだ、全力を出しちゃあいないだろう?ムーンフェイス!来いよ!来やがれよ!俺の、私の『心臓』はここにあるぞ!お楽しみはまだまだこれからだ!早く来いよ!Hurry!Hurry!!Hurry!!!」

 

アキトは中場狂ったように喚き散らす。そこに人間的なモノなど何もなく、ただ『狂気』だけが場を支配していた

 

 

「ムム~~~~~ン♪」

 

ムーンフェイスが愉快に笑う

 

 

「やはり貴方は本当に『イカれてやがる』。ただ殺戮を楽しみ、残虐を好む、その姿。まさに『不死者(ノスフェラトゥ)』!まさに怪異の王『吸血鬼(ヴァンパイア)』!最高だ!」

 

「カハハハハハハハハハッ!お褒めに預かり光栄だぜ!ガハッ」

 

アキトはヨタヨタと血を吐きながら笑うが・・・

 

 

「(ヤベぇ・・・ヤバすぎるぜ・・・血がほとんど体に残ってねぇ・・・ムーンフェイスから血を得ようとしても、ヤツの血は『飲めないほどに』不味い。大尉の方は、かぶりつこうにもコートのおかげで出来ない・・・万事休すってヤツかよ・・・)」

 

「・・・」

 

「ムム?もうダメですかな?アーカード?それでは・・・止めと参りますか。サテライト30『オーバーリミテット』」シャン

 

疲労困憊のアキトを前にムーンフェイスは『完璧なる止め』を刺すために分身をまた10体増やした

 

 

「大尉?よろしいですかな?」

 

「・・・」コクリ

 

「それでは・・・狩らせて頂こう!貴方の『命』!」

 

大尉の了承を得たムーンフェイス達はアキトに向けて飛んだ!

 

 

「暁!」

 

「ムム~♪行かせませんよ!」

 

「糞ッ!退けよぉ――ッ!」

 

一夏達がアキトを助けに行こうとするが、ムーンフェイスの分身がそれを遮る

 

 

「これでThe ENDです!アーカード!」

 

叫ぶ事しか出来ない一夏達を後目にムーンフェイス達の刃は距離を詰める。

 

だが、オカシイ事にアキトは防御の体勢をとらないばかりか、眼を閉じてニヤリと笑った

 

 

 

 

 

 

 

その時である・・・!

 

 

太陽が沈むその彼方から『真っ赤な光線』が唸り声とともに飛んできたのだ

 

 

「『空裂眼刺驚(スペースリパースティンギーアイズ)』ッッッ!」

 

「「「「「「「ムーンッ!?」」」」」」」

 

「「なっ!?」」

 

「わ、私達ッ!?」

 

『赤いビーム』はアキトに襲いかかるムーンフェイス達を無惨にも切り裂いた!

他のムーンフェイスに応戦していた一夏達や本体ムーンフェイスは何が起こったのかと驚愕した。ただ、大尉だけが無言でビームが飛んできた方向を睨んでいた・・・

 

 

「ヤレヤレってヤツだわ・・・」

 

ビームが飛んできた方向には『コウモリ』のような大きな『翼』を広げ、ムーンフェイスや大尉を鋭い『紅い眼』で睨み付ける『赤髪』の女性がいた

 

 

「だ・・・誰?」

 

「敵の増援か・・・!」

 

「こんな時にかよッ!」

 

一夏達は刃をむけるという体勢に移るが、ムーンフェイスはと言うと・・・

 

 

「・・・『真紅の吸血姫(スカーレット・ドラキュリーナ)』・・・」

 

さっきまでの余裕と笑みは消え去り、焦燥感が出ていた

 

 

「これはこれは、ムーンフェイス・・・その顔、二度とおがみたくはなかったわ」

 

「それはこちらの台詞ですよドラキュリーナ?何故、貴女がここに?折角、アーカードと語りあってたのに」

 

「黙れ、ボケ糞野郎。私達はそこにいる『人狼(ヴェアヴォルフ)』にようがあるのよ」

 

「ムム~ン♪・・・ブチ殺しますよ?小娘?」

 

「あ"ぁ"?上等ッ!」

 

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"・・・

 

「な、なんなの?あの人?」

 

「どうやら敵ではなさそうだな」

 

圧倒的な『凄味』をぶつけ合う二人に箒や鈴は引いていると・・・

 

 

「なぁ、アンタ!」

 

「ちょ、ちょっと一夏ッ!?」

 

空気を読まずに一夏が声をかけた

 

 

「あ"ん"?」

 

「アンタ、一体何者なんだ?俺達の敵なのか?それとも・・・」

 

「敵じゃあないわね『坊や』」

 

「ぼ、坊や!?」

 

「『シェルス』・・・」

 

一夏が怪訝な顔をする中、ボロボロのアキトが口を開いた。すると・・・

 

シャン

「アキト・・・」ガシッ

 

「え!?」

 

「い、何時の間に!?」

 

何時の間にかシェルスはアキトの側に移動し、肩を貸した

 

 

「シェルス・・・なんで?」

 

「さぁ?『虫の知らせ』ってヤツ?それより大丈夫?『ドラキュラ』さん?」

 

「カカ♪お腹が減ったよ・・・『ドラキュリーナ』」

 

「そうな・・・のッ!」ズボッ

 

「むがッ!?」

 

「「「なッ!?」」」

 

シェルスは力なく喋るアキトの口に躊躇なく『手を突っ込んだ』!

 

 

「むががぐっ!?」

 

「このバカ!何ここまでボロボロになるまで戦ってるのよ!私が来なかったらどうしてたの?えぇ?!」ガシッ

 

「ぐががべッ!」

 

シェルスはアキトの口に手を突っ込むだけではなく、首を掴んで絞めた。アキトの顔はみるみるうちに顔を青くさせ、生気を失っていった・・・が

 

ガシッ

「あぐっ!」

 

「ひぅッ!?///」

 

アキトは口に突っ込まれたシェルスの手を掴むと、そのまま牙を突き刺した!

 

 

「チュウ・・・ゴクリ・・・チュウ・・・ゴクリ」

 

「うぅん・・・あぅん・・・///」

 

アキトは眼を閉じて、甘く喘ぐシェルスの手を『味わった』

 

 

「ムムッ!?これはマズイ!私達ッ!」

 

「「「「御意」」」」

 

「え!?ちょ、ちょっと!」

 

「「「「ムーン!」」」」

 

アキトがシェルスから『吸血』している事にムーンフェイスは焦り、一夏達に向けていた分身を二人に突撃させた

 

 

「チュウ・・・ゴクリ・・・ゴックン・・・ぷはぁ・・・」

 

「あ、あぁ・・・///」

 

「レロレロレロレロレロレロレロレロ」

 

「ちょ、ちょっと!?アキ――ゥうんッ!///」

 

アキトは口からシェルスの手を引き抜き、その手に残っていた血を綺麗に丁寧に舐め回すと、シェルスの耳に口を近づけ囁いた

 

 

「ごちそうさま❤」

 

「~~~~~~ッ!///」

 

そして、囁いた瞬間にアキトの体・・・

否、『朧』が光り輝いた!

 

 

「な、なんだアレはッ!?」

 

「ま、まさか!?この状況で!?」

 

「一体!何がどうなってんだよッ!?」

 

『王よ!行けます!』

 

声色が変わった『朧』の声にアキトは唸り声を上げ、腰に提げていた刀を思いっきり引き抜いた!

 

 

「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYッ!」ザンッッ!

「「「「ムげるばちょッ!?」」」」ザクリ

 

するとどうだろうか、引き抜いた衝撃波により、襲いかかって来たムーンフェイスの分身達は見るも無惨に切り刻まれた

 

 

「ま、マズイですね・・・コイツはマズイ」

 

「・・・」

 

アキトの変わりようにムーンフェイスの焦りはモロに顔に出た

 

 

「さて・・・シェルス?」

 

「ふぅあ・・・///」

 

「シェルス!」

 

「ふぁ、はい!?」

 

「行きますか?」

 

「ふぅ・・・もちろんよ」

 

アキトは惚けるシェルスの掌を優しく握り、ムーンフェイス達に突きつけた

 

 

「本当にマズイですね・・・大尉殿?退却しませんか?」

 

「・・・」

 

ムーンフェイスは苦笑いをしながら大尉の方を見たが――

 

 

パチンッ!

 

「ッ!」

 

「大尉ッ!?」

 

破裂音とともに大尉の軍服が燃えた!

 

 

「大尉ィィィィィイッ!」

 

「!・・・」

 

破裂音の正体は、高速で迫るボートの船首に立つ錬成陣を描いた手袋をはめた『ロイ・マスタング』だった。マスタングは大尉目掛けて、何度も何度も火焔錬成で大尉を燃やす

 

 

「大佐ッ、やり過ぎないでください」

 

「わかっているさ!」パチン

「!!」ボワッ!

 

「大尉!」

 

「「やらせん!」」ボギャアッ

「ムーン!」

 

アキトとシェルスは大尉を助けに行こうとしたムーンフェイスの頭を吹き飛ばした!

 

ムーンフェイスは確信したのか、また分身を増やした

 

 

「ッチ・・・『サテライト30』『オーバーリミテット』」

 

「この野郎!また増えやがって!」

 

「こうなったらこっちも『武装錬金』で!」

 

「ムーン♪」

 

アキト達の叫ぶ声にムーンフェイスはまた下卑た笑い声をあげた

 

 

「ま、まさかッ!」

 

「ムーン!」

 

「「「ムムーン!」」」バッ

 

「おいおいおいおいおいおい!」

 

分身達の燕尾服の腰には『ダイナマイト』に『C4爆弾』が巻きついていた

 

 

「させるかぁぁッ!」ズガァッン

 

一夏は『雪羅』の『荷電粒子砲』をムーンフェイスに向け、エネルギー弾を発射した

しかし・・・

 

 

「ムーだぁ!」「「「ムムーン♪」」」

 

「ち、畜生ッ!」

 

ムーンフェイスは簡単にエネルギー弾を避け、爆弾の発火スイッチを取り出した

 

 

「大佐ァッ!押させるなぁ!」

 

「無茶を言うなぁッ!届かんぞ!コイツはぁ!」

 

「良いからヤレェッ!押させるなぁッ!」

 

マスタングがムーンフェイスにスイッチを押させないように火焔錬成をぶつけるが・・・

 

 

「ムムーン♪良いや、限界だ!押すね!」

 

「この糞カス野郎がぁぁぁッ!!!」

 

カチリ

 

 

ムーンフェイスは爆破スイッチを押した・・・

 

 

 

ドガァアアアァァァァアァアアァンンンッ!

 

太平洋の真ん中に小さなミニチュア太陽が光った

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




名言の入れ方が中々に難しいぜ・・・


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騒動後、『彼ら』は『再会』する

後にも、先にも考えずに『新キャラ』を出す・・・

しかも『他作品キャラ』!

『後悔』はしてない・・・


インサイド

 

 

 

「ハア~~~・・・ヤレヤレだぜ・・・」

 

俺はある一室で『拘束服』に包まれて溜め息を吐いていた・・・

 

 

ムーンフェイス達の決死の自爆により、ムーンフェイスと大尉を逃がすばかりか、俺達はかなりの深傷を負った。てか、俺だけがボロボロの2乗になった。

何故かと言うと、あの野郎が爆破スイッチを押す直前、俺はシェルスやボートに乗っていた大佐とホークさんを『吸血鬼の力』で庇ったからだ

 

おかげさまで俺はそのまま気絶・・・

良く死ななかったな、俺・・・さすがは俺

 

んで・・・目覚めてみると拘束服を着せられて、鎖でぐるぐる巻きにされていました丸

・・・ッザケンナッ!

 

つか、ここドコだよッ!?

耳を澄ませると波がぶつかる音がするから、『船』の中という事はわかる。だが、その『船』が問題だ!どこの船なんだよ!

態々俺に拘束服を着せるんだ。俺が『危険』だと知ってるヤツだ・・・

シェルスや大佐達は大丈夫だろうか?

そういや・・・ッ!

 

 

「『朧』ッ!聞こえるか?!朧!」

 

シィィ――ン・・・

 

マジかよ・・・朧の反応がないって事は、『取り外されてる』って事だよなぁ!?

マズイマズイマズイマズイ!朧には『ウチの』情報が満載なんだよ!

 

 

「そうと解れば早くアイツを探さねぇと!」カチャカチャ

 

俺は拘束服の鍵と鎖を『髪の毛』を使って壊していると・・・

 

ガチャリ カチャン・・・

 

「・・・おん?」

 

部屋の扉が開けられ、そこにいたのは・・・!

 

 

「・・・久しぶりだな『暁の』」

 

「あ、アンタはッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

「あ、アンタはッ!?」

 

 

アキトは独房のような部屋の扉を開けた人物を見て、驚嘆の声をあげた!

そこには軍服に眼鏡をかけた『女性』がいた

 

「どうかしたか?『暁の』?もしかして忘れたのか?私の顔を?」

 

「・・・ニョホ♪お久し振りです。ms.『マネキン』」ビシッ

 

「・・・」

 

アキトは決め顔で女性に挨拶をした。拘束服で倒れながら・・・

しかし、女性は少し困った顔をした

 

 

「え?・・・まさか違う?え、別人!?『カティ・マネキン』大佐じゃないの?!」

 

倒れたアキトの前に立つ女性の名前は『カティ・マネキン』。『四年前』にアキト達に関わった数少ないアメリカ軍の将校であるのだが・・・今は違う

 

 

「フフ・・・♪」

 

「ッ!な、何笑ってんだよ?!マネキンさん擬き!」

 

「も、『擬き』って・・・いや、すまない。貴方の反応がおもしろかっただけだ・・・クク♪」

 

 

謎の女性は睨むアキトをクツクツと笑う

 

「(・・・あの表情筋、骨格・・・確かに『本物のマネキンさん』だ・・・なのに違う?なら、俺の目の前にいるコイツは誰なんだ・・・?!)」

 

 

「ぷッ、もうダメだ!アハ、アハハハ♪」

 

アキトの思考顔に謎の女性は遂には吹き出した。この事を良く思うアキトではなく・・・

 

 

「貴様ァ・・・惨殺処刑してくれよう・・・」バキャ

 

拘束具を無理に壊し、牙を剥き出しにし、殺気を放った。その時である

 

コツコツコツ

「待て『暁の』」

 

謎の女性を押しのけ、アキトの良く知る人物が現れた。『全身を包帯まみれ』にして

 

 

「『マスタング大佐』ッ!?なんでそんなに『ボロボロ』なんだよッ!?」

 

「話をする前に『牙』を納めろ暁の・・・貴女も暁のをからかわないで下さい『コーラサワー』准将」

 

「おん?『コーラサワー』・・・!?」

 

「フフ♪すまないマスタング大佐、ついこの男をからかいたくなったのだよ」

 

「こちらは冷や汗モノなんだが・・・」

 

「おん?おぉん??おぉぉん???」

 

マスタングと謎の女性が親しく話す光景にアキトは疑問符を幾つも立てて呆けていると、マスタングが『ヤレヤレ』と言わんばかりの表情をしながら、アキトに向けて謎の女性を紹介した

 

 

「ハァ・・・暁の、こちらは『カティ・コーラサワー』准将だ」

 

「ハァ・・・」

 

「お前に解りやすく言うと、『旧姓』は『マネキン』。今は結婚して姓が『コーラサワー』になっている『元』『カティ・マネキン』大佐だ」

 

「・・・・・・・・・・・・what?」

 

「改めてよろしくだ。『暁のアルカード』」

 

そうしてカティ・コーラサワーは朗らかな顔でアキトに手を差し出した

 

 

「え?あ、どうも・・・って、えぇぇぇええッ!」

 

アキトは握手しながら、2度目の驚嘆の声をあげた

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

「で?ウチの子『朧』はどこだよ?えぇ?『コーラサワー』夫人?」

 

鎖を引きちぎり、拘束具を破り捨て、マスタングから受け取った白シャツに着替えながら『コーラサワー夫人』を睨みつけていた

 

 

「そう睨まないでくれアルカード。君の専用機、『朧』と言ったか?その朧なら我々が『補完』している」

 

「いや、『補完』してるじゃねぇよ。『返せ』よ」

 

「?」

 

「『?』じゃねぇよッ!返せよ!俺の専用機!」

 

コーラサワーの反応にアキトは眼を見開いた

 

 

「・・・あの、マスタング大佐?」

 

「・・・」サッ

 

コーラサワーは疑問の眼をマスタングに向けると、マスタングはぶが悪そうに顔を背けた

 

 

「アルカードに『伝えて』ないんですか?」

 

「お~ん?焔大佐ぁ?どういうこったよ?」ギョロリ

 

「・・・」ダラダラダラ

 

そんなマスタングにアキトの殺気の眼を向けた。マスタングはダラダラと嫌な汗をかきだした。沈黙が少し続いた後、コーラサワーが口を開いた

 

 

「実はなアルカード、私が――「准将!?」「黙ってろキザ野郎」――爆撃機の発進を止める見返りにアルカードの専用機を『解析』しても良いと・・・」

 

「去らばだ諸君ッ!」ダッ

 

『事情』が話されると、マスタングは走った。傷だらけの体で、それは電光石火の如く走り――――

 

 

「・・・コロコロしよう」ガシッ

「げぇっ!?」

 

呆気なくアキトに首を掴まれた。そして、そのまま吸血されていった

 

 

「さて、どういう事か説明を求めようか?コーラサワー夫人?」

 

「あが、ががぁ・・・」

 

「あ、あぁ、それはな――」

 

アキトはマスタングに吸血しながら、コーラサワーに説明を求めた。するとコーラサワーは若干引きながら説明しだした・・・

 

コーラサワーの説明によると、『朧の解析』の件はマスタングがウラン濃縮弾爆撃を止める為にアメリカ本国にいたコーラサワーと交渉をつけた『見返り』だそうだ

 

 

「それで君達が『ホムンクルス』、『四年前の脅威』との戦闘をする事をマスタング大佐から聞いて、この艦に戦闘機を飛ばして来た訳だ・・・」

 

「ほぅ・・・そうなんですか・・・」

 

「って大丈夫なのか?大佐は?」

 

「おん?いやいやいや、気にしないで」

 

「・・・」カクリ

 

アキトに掴まれたマスタングは顔面蒼白になっているが、気にせずに話を進める。ちなみにアキト達と同じくムーンフェイスの自爆に巻き込まれたシェルス、ホークアイは無傷で回収され、一夏達、IS組はコーラサワーの『情報』を持って旅館に帰還した

 

 

「んで、コーラサワー夫人?」

 

「なんだねアルカード?」

 

「朧ちゃんを返せよ」

 

そして、話は『朧』の事に戻る。しかし、その話になるとコーラサワーの顔が曇った

 

 

「おん?どうしましたか?」

 

「それなんだが――」

 

「あい?」

 

 

 

―――――――

 

 

『URYYYッ!!!』

ドゴォオオッッッン!

 

「「「うわあぁッ!」」」

 

アキト達が『再会』している頃、軍艦内の一室では激しい『攻防』が行われていた。何故、こんな事になったのかと言うと・・・

 

アキト達が米海軍に回収される

マスタングとの『取引』で気絶したアキトから、待機状態の『朧』が取り外される

『解析』しようとしたら、朧が突然暴れだした

 

・・・とこんな順序である

 

朧は、解析しようとする研究員をワイヤーで叩きだし部屋に籠城した。その朧をどうにかしようと艦内にいた兵士達は銃器で対向するが・・・

 

 

「この!大人しくしろッ!」

 

『無駄ァッ!』バチィ

「ぎゃあッ!?」

 

朧はワイヤーや新武装の『輻射波動機構』を使い、兵士達を翻弄する

 

 

『無駄無駄無駄無駄、無駄ッ!』

ドゴォオオッッッン

 

「のわッ!?とんだジャジャ馬だな」

 

「あぁ、まるでうちの姫さんだな」

 

「誰がだって?」

 

「「げッ!?」」

 

朧の暴れように愚痴を溢す兵士達の後ろにISを装着した人物が現れた

 

 

「こ、『コーリング』中尉・・・!」

 

「い、いたんすか」

 

彼女の名は『イーリス・コーリング』。アキト達と戦った『銀の福音』の搭乗者『ナターシャ・ファイルス』の同僚である

 

 

「くだらねぇ事喋ってんじゃねぇッ!とっととアイツを倒すぞ!」

 

「・・・ソレガデキタラクロウハシナイヨ」

 

「あぁッ?!何か言ったか!」

 

「なんでもありません!」

 

「撃ちまくれ!うちの姫さん怒らせたら大変だ!」

 

兵士達はコーリングを中心に朧に向けて発砲する

だが、朧の抵抗は激化する

 

 

『バルバルバルバルバルバルッ!』

 

朧は奇声をあげ、そこらじゅうに輻射波動をあてる。周りはその輻射熱の影響で融けていく

 

 

「畜生ッ!何だあの野郎は!ちっとも弱らねぇ!『SE(シールドエネルギー)』は抜いてあるんじゃないのかッ!?」

 

「中尉!このままだと艦が沈んでしまいます!」

 

「わかってる!(糞ッ、なんで搭乗者がいないISに引けをとってんだよ!意味がわからねぇッ!)」

 

「この野郎ぉおッ!」

 

そんなコーリング達が悪態をついていると、後ろの通路から二つの人影が出てきた

 

 

「折角休んでたのに・・・ヤレヤレってヤツだわ」

 

「溜め息をつかないの、老けるわよ」

 

「リザ・・・一言余計」ギョロリ

 

「シェルス、怖い顔しないの。すみません状況は?」

 

並んで歩くシェルスとホークアイは近くにいた兵士に状況を聞いた。兵士は二人に顔を赤くしながら答えると、シェルスが前に出た

 

 

「なッ!?そこのお前!」

 

「大丈夫だから気にしないで」

 

「気にするわッ!」

 

コーリングの声も気にせずにシェルスは暴れる朧に近づいていく。すると・・・

 

 

『・・・』

 

朧はシェルスを認識し、攻撃を止めた

 

 

「ッ!?今のうちに――」

 

「待ちなさい」

 

止まった朧にコーリング達は攻撃を加えようとしたが、それをホークアイが止めた

 

 

「お前、なんで止めるんだよ?!つか誰だよ!?」

 

「英国軍特殊班のリザ・ホークアイ中尉よ。よろしくコーリング中尉。ここはあの人に任せてもらえないかしら?」

 

「な、何言ってんだよ!?暴走するISに生身の人間が敵うわけないだろ!」

 

「『人間』ね・・・」

 

「な、なんだよ?」

 

コーリングの言葉にホークアイは目を細めながら、シェルスを見た

 

 

「まぁ、彼女に任せて」

 

「は、はぁ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

そんな周りを気にせず、シェルスは朧に近づいていく

 

「こうやって話すのは『初めて』になるのかしら?『朧』」

 

『そうですね・・・『奥方』さま』

 

「・・・・・・へッ!?///」

 

「「「「・・・は?」」」」

 

「プッ!?」

 

朧を安心させようとしたシェルスは、逆に朧の言葉に驚愕した。周りの兵士達は疑問符を浮かべ、ホークアイは吹き出した

 

 

「へ?え?えぇッ!?///」

 

『それより奥方さま、我が王は御無事でありましょうか?』

 

「ちょ、ちょっと待って朧!少し、頭が追い付かないから待ってもらえる?!てか『奥方さま』って何よ!?///」

 

朧はお構いなしにアキトの安否を確認するが、シェルスは焦りまくる。そんなシェルスに朧は疑問符を浮かべながら答える

 

 

『だって、我が王と――「いい!言わなくていいから!」――・・・そうですか。それで我が王はッ!我が主『暁アキト』はッ!?』ズァッ

 

朧は輻射波動、ワイヤー、ナイフを全面に出しながらシェルスに問いかける

 

 

「興奮しないで朧。アキトなら無事よ。それが貴方にはわかってるはずよね?」

 

『えぇ、わかっていますとも。されど王を心配するのが臣下の務め!しかも王の断りもなく下郎共が私を解析しようとするのは無礼極まりない!全員共々、八つ裂きにして王に献上してくれよう!』

 

興奮する朧はギチギチと奇妙な音をたて、兵士達をターゲットロックする

 

 

「抑えなさい朧!」

 

「コレ以上は無理だ!あとはコッチでやらせてもらうぜ!」

 

「待ってください。まだ――」

 

朧の行動にコーリング達、兵士は銃器を向けはじめていると・・・

 

 

 

 

 

カツン コツン カツン・・・ズルズル

 

「存外に騒がしいですな、貴女の部下は?」

 

「そういう貴殿のISもジャジャ馬ですな」

 

「ヤレヤレ・・・」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

『おぉッ!』

 

青い顔をしたマスタングを引きずりながら、コーラサワーと並んで歩くアキトが出てきた

 

 

「迎えにきたぜ」バァ――ン

 

アキトは『奇妙』な立ち方で周りの視線を釘付けにした。シェルスはヤレヤレと溜め息をついた

 

 

『王よッ!我が主ッ!我が使い手!』

 

「staystay。落ち着け朧」コツコツコツ

 

『これが落ち着いていられますか!?オケガはありませぬか?!傷の具合は大丈夫でございますかッ?!王よッ!我が主ッ』

 

「落ち着けバカヤロウ」ガシッ

 

『のわッ!?』

 

アキトは興奮する朧に近づき、その本体を掴み気化冷凍法で朧を冷やした

 

 

「・・・落ち着いたか?」

 

『申し訳ありませぬ。私の不敬をお許しください』

 

「あぁ、勿論だとも」ジャキ

 

そうしてアキトは冷やした朧を左腕に装着した

 

 

 

「マネキン准将?あの男は?」

 

「何度も言うがコーリング中尉、私は結婚して姓が変わり、今は『コーラサワー』だ」

 

「すみません准将。で、あの男は?」

 

「ハァ・・・あの男は、二人目の男性IS操縦者『暁アキト』だ。そしてその専用機『朧』だ」

 

「あの男が・・・」チラリ

 

コーラサワーの説明を聞き、コーリングは横目でアキトを見ていた

 

 

「んッン~♪気分が良い!やはり良いなお前は!」

 

『感謝の極みでございます』

 

「ねぇ、お二方?」

 

「『おん?』」

 

アキトは声に振り返ると、そこにはニコやかに笑うシェルスがおり・・・

 

バチンッ!

 

「あうッ!?」

 

「「「えぇッ!?」」」

 

アキトに一発平手打ちをかました

 

 

『な、何をするだぁ――ッ!?』

 

「あ、朧。それ、俺のセリフ・・・」

 

「・・・バカ」

 

「・・・はい?」

 

「こっっっのぉバカヤロウゥゥッ!!」バキィッ!

「ぐはぁあッ!」

 

「「「「えぇぇ――ッ!?」」」」

 

そしてそのままシェルスの十八番、『左フック』が炸裂し、アキトは壁に叩きつけられた

 

 

「ぶったね!『オヤジ(ドン)』にもぶたれた事ないのに!」

 

「何バカみたいな事言ってんの!コッチはどんだけ心配したか!」

 

「だからって、全力で殴る事ないだろ?!『普通』のヤツなら頭ごと吹っ飛んでるぞ!」

 

「なら『普通』じゃないアキトは良いのね?」

 

「良い訳あるかボケェッ!」

 

なんと、アキトとシェルスは口喧嘩を始めた

 

 

「貴方って何時もそう!毎度毎度毎度、何時も何時も何時も、私達に心配かけて!」

 

「しょうがないだろ!だいたい――」

 

 

「・・・なんすかコレ?」

 

「さ、さぁ?」

 

「プ、ププ・・・ククク♪」

 

「ホークアイ・・・中尉・・・?」

 

「す、すいません。って大佐ッ!?大丈夫ですか?!」

 

「あぁ・・・暁のに血をかなり抜かれた・・・それより状況は?」

 

「えぇ・・・面白いですよ。かなり」

 

「・・・は?」

 

 

「ククク♪」

 

「准将?」

 

「いや、すまない。ククク♪」

 

過熱する二人の言い争いに兵士達はポカンとし、ホークアイやコーラサワーは笑いを堪えていた

 

二人はそんな周りに関係なく喧嘩を激化させていき、ついに――

 

 

「アキトなんか知らない!『嫌い』よッ!」

 

「KUAッ!?」

 

シェルスの会心の一撃がアキトの心に刺さり、アキトはその一撃に堪えられずに膝を折った

 

 

『お、王よ・・・』

 

そこにいた誰もが勝負を決したと思った・・・しかし!

 

 

「う・・・WRYYY・・・」グググ

 

アキトは立った!会心の一撃を受けて尚、アキトは諦めずに立ったのだ!

 

 

「・・・シェルス・・・」

 

「あ、あによ・・・?」

 

アキトはシェルスの眼を見通し、肩を掴み抱き寄せた

 

 

「ちょ、ちょっとアキト!?///」

 

混乱し、ジタバタと暴れるシェルス。それでもアキトは彼女を離さずにそのまま耳に囁く・・・

 

 

「シェルス、君が・・・どれだけ俺を嫌いになろうと、俺は君を・・・『Ich liebe dich(愛してる)』」

 

「!・・・このバカ・・・私もよ///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だ・・・この茶番?」

 

ニヨニヨする空気にマスタングの疑問が大きく木霊した・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




これを期に色々と出そうかな・・・!


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『取引』



『本編』よ!私は帰って来た―――ッ!!!

アキト「スパロボばっかやってたくせに」

面白いのが悪い・・・イチャイチャ書きたい・・・

―――統合しました―――




 

 

ノーサイド

 

 

 

艦内で行われたアキトとシェルスの『茶番劇』後、彼らは艦長室に通されたのだが・・・

 

 

「・・・カカッ・・・♪///」

 

「・・・ふふ・・・♪///」

 

先程からソファに座ったシェルスはアキトの手を何度も愛しく握り、アキトに至ってはシェルスの編み込んだ長髪を弄り、その髪をあろう事か口に含んだりしていた。そんな二人の周りには・・・

 

 

「・・・・・・」ピクピク

 

デスクに座り、眼鏡を光らせ二人を見るコーラサワー准将と

 

 

「・・・オイオイ・・・」

 

「・・・ハァ・・・」

 

頭を抱えるマスタング大佐と満更でもない溜め息を吐くホークアイ中尉がいた

 

 

「おい、暁の・・・そろそろ本題に入らないか?お前が「話があるから、部屋を頼む」と言ったからこうして場所を用意したのだが?」

 

変態じみた二人に対して、ついに大佐が声をあげた

 

 

「あぁ、悪い悪い。久々にシェルスとこうしていられるからな・・・つい・・・///」

 

「頬を紅に染めるな気持ち悪い」

 

「へぇへぇ、悪うござんした」

 

マスタングに平謝りをしてもシェルスの髪を弄るのをアキトは止めない

 

 

「まったく・・・それで本題とは何なんだ暁の?」

 

「そうそう・・・准将殿?」

 

「・・・なんだアルカード?」

 

「リップヴァーン・・・じゃなくて、あのIS・・・『銀の福音』を俺に『売って』くれない?」

 

「「なッ!?」」

 

「・・・」

 

アキトの要求に大佐と中尉を驚嘆の声をあげだ。しかし、准将は冷静だった

 

 

「別に『タダで寄越せ』とは言わねぇよ。俺と准将殿の中だ、それなりの額は出す。どうだい悪い話じゃあないだろう?」

 

「だが暁の?仮に福音を得たとしても何をするつもりだ?まさか、お前の『新しい専用機』にでもするのか?」

 

『なんですとッ!?』

 

大佐の言葉にアキトの左腕に戻った朧が声をあげた

 

 

「心配するなよ朧ちゃん。そんな事しねぇからよ」

 

「なら何故?」

 

「ウチで・・・ヴァレンティーノファミリーの研究機関で『解析』する」

 

「・・・なに?」

 

その言葉に先程まで黙っていた准将が反応した

 

 

「『解析』だと?オイオイ暁の、ISのコアは完全なブラックボックスだ。それを一介のマフィアの研究者が解析できる訳が―――」

 

「オイオイオイオイオイオイオイオイ・・・」

 

マスタングにアキトはヤレヤレと首を捻った

 

 

「ウチには『虎の子』の研究者がいる・・・そうよね、アキト?」

 

「Exactly!流石はシェルス!」

 

「ほう・・・その研究者の名前は?」

 

「言う訳ないだろ」

 

「・・・ッチ」

 

「舌打ちしないで下さい大佐。本題がズレています。それで暁くん?君は福音を解析してどうするの?」

 

「フッフッフッ・・・」

 

アキトは不敵に笑い、片手で顔を隠しながら奇妙な格好をした

 

 

「フッフッフッ・・・それは・・・!」

 

「それは?」

 

「それは・・・!!!」

 

「『吸血鬼』をISに『改造』した原因を探るためよ」

 

「!?」

 

「ちょっ!?シェルス、なんで言うのさ?!」

 

「時間の無駄よ。無駄無駄ァッ」

 

「ぐあッ!それを言われると痛いな・・・」

 

「・・・それで?その『真相』を暴いたら、貴殿はどうするつもりかアルカード?」

 

「そりゃあ勿論―――」

 

シェルスの言葉に肩を落としたアキトだったが、准将の質問にさも当然のように答えた

 

 

「―――『然るべき手段』を取らせて貰う。何を当たり前な事を」

 

「!」

 

そう答えるアキトの眼は『人間ではないナニか』だった

 

 

「もし・・・」

 

「おん?」

 

「もし『断れば』・・・どうなる?」

 

「そうだな・・・」カタリ

コツ・・・コツ・・・コツ・・・

 

おもむろにソファから立ち上がると窓辺に向かって歩き、窓の外を見た

 

 

「なぁ、コーラサワー『艦長』?」

 

「・・・なんだ?」

 

「この艦には船員が何人いるんでしょうかね?」

 

「それは――「934人」――ッ!?」

 

「『何故、わかった?!』なんて顔をしてるぜコーラサワー艦長?ポーカーフェイスを崩すなよ、『動揺』してるように見えるぜ?カカッ♪」

 

イタズラっぽく笑うアキトに准将は『恐怖』を感じた。

そして、聞こえない声さえも聞こえて来た

 

『断ったなら・・・『今夜の晩飯』はアンタらか・・・『食い放題』だな♪』

 

そのニコやかな声が准将の頭の中で反復した

 

 

「おい暁の・・・!」キュッ

 

「・・・」チャキ

 

マスタング達はアキトから漂う危険を感じとり、武器を手にとった

 

 

「stay stay・・・そんなに殺気立たないでよ。別に変な事言ってないだろう?ナァナァナァナァナァナァ?」

 

「やめなさいアキト」

 

「ニョホホホ♪スマンスマン。気分が良いからついつい。俺の悪い癖。カカッ♪」

 

「・・・」ギロリ

 

軽いノリのアキトをマスタングは睨む

 

 

「それでコーラサワー准将?どうするの?売るの?売らないの?」ズイ

 

「ぬぅ・・・」

 

アキトはニコかな笑顔で准将に迫りながら、捲し立てる

 

 

「さぁ准将殿!声に出して言って貰おうか!『売るのか』!『売らないのか』!」

 

「・・・」

 

准将はアキトに物怖じせずに眼を閉じると

 

 

「・・・他の『取引』は出来るか?」

 

『提案』を出した

 

 

「・・・良いね♪ んで?どうゆう別の『取引』をしてくれんの?」

 

再びソファにドッシリと座ったアキトはコーラサワー准将に聞いた。准将はデスクの引き出しからあるファイルを取り出した

 

 

「准将殿、それは?」

 

「これは銀の福音の『作戦計画書』だ。といってもコピーだがな」

 

「「!?」」

 

「なんですって!?」

 

「へぇ?」

 

准将の答に大佐達やシェルスは驚いた。『作戦計画書』とは軍の上層部に『極秘文書』として管理されているモノだ

 

 

「それを渡すと言う事は『国家反逆罪』に問われてもおかしくはない・・・それを承知で」

 

「無論、『タダ』でとは言わない・・・そちらのアルカードの専用機、朧の『戦闘データ』と交換だ」

 

『ナニッ!』

 

「これはあくまで『非公式』の取引だ。金が動くのはそちらとしても難があるだろう?」

 

「ふむぅ、考えたねぇ・・・流石は軍の策士殿だ」

 

「茶化さないでくれ。こちらとしてもISと吸血鬼が戦った数少ない『実戦データ』だ。それで良いかねアルカード?」

 

「良いよ♪」

 

准将の提案にアキトは何とも軽く頷いた。

その後、アキトは渋る朧を説得し、福音との戦闘データを准将に渡した

 

 

「いやはや、お世話になってしまいましたねコーラサワー准将。旅館まで送ってくれる船まで用意してくれて」

 

「これくらいはする。大事な部下を救出してくれた『恩人』なのだからな」

 

「そう?何を隠そう、俺は救出の達人!」バーン

 

「アキト、調子に乗らないの」

 

「・・・はい」

 

艦内にある高速ボート乗場でアキト達はたわいもない話をしていた

 

 

「しかし、コーラサワー准将?なんで結婚式に呼んでくれなかったんだ?呼んでくれれば、ヴァレンティーノファミリー総力で祝ったのに」

 

「なにぶん、『黒い交際』は控えているのでな」

 

「カカッ♪こりゃ手厳しい」

 

「大佐やリザはどうするの?」

 

「私と大佐はこの艦に残るわ。本国と連絡しなければならないから」

 

「大変ね・・・」

 

「まったくよ・・・」

 

「それじゃあコーラサワー准将にマスタング大佐、今度は戦場で・・・会いたくはないな」

 

「あぁ、それはこっちの台詞だ」

 

そうしてアキト達は高速ボートに乗り、旅館へと送られていった。ボートの姿が見えなくなると、マスタング達は本国連絡の為に通信室へ行き、コーラサワーは艦長室へと戻った

 

 

「ふぅ~・・・」カチャリ

 

コーラサワーはかけていた眼鏡を外し、ソファに体を預けた。そこへ・・・

 

コンコン

 

「コーラサワー准将。失礼します。」

 

イーリス・コーリング中尉が入って来た

 

 

「どうしたコーリング中尉、艦内で何かあったか?」

 

「いえ、そう言う訳では・・・」

 

何故かコーリングは口を渋っていた

 

 

「そう言えば中尉・・・?」

 

「ハッ!何でありましょう!」

 

「君は先程の『取引』を聞いていたな?」

 

「ッ!?そ、それは・・・」

 

「いや、別にそれを咎めるつもりない。だが、内密に頼むよ」

 

「・・・准将」

 

「ん?なんだ中尉?」

 

「あの男・・・『暁アキト』は一体何者なんですか?それに『吸血鬼』とは・・・」

 

「・・・」

 

コーラサワーはコーリングの言葉に口を閉ざした。そして眼鏡をかけ直して真剣な面持ちで口を開いた

 

 

「彼は『英雄』にして『悪党』・・・」

 

「え?」

 

「絶対に敵に廻してはならない『怪物』だ」

 

その言葉には他にはない『重み』があった

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「大丈夫でしょうか・・・?」

 

福音を教師部隊に渡し、旅館の一室に待機している中の一人であるセシリアが呟いた

 

 

「何がだ?」

 

「アキトさんですわよ!あれから何時間もたっていますのよ!」

 

「しょうがないよ。織斑先生の話だとアキト達は米軍の方に戦闘報告してるんだから」

 

「しかし・・・!」

 

「よせセシリア」

 

シャルロットの言葉に反論しようとしたセシリアだったがラウラが肩を叩いた

 

 

「ラウラさん・・・」

 

「今、私達は傷を治す事が先決だ。それにそんな悲しい顔をしているとアキトに気づかれるぞ?」

 

「そうですわね・・・ってあら?」

 

セシリアが何かに気づいたのか、部屋を見渡した

 

 

「そう言えば簪さんは?姿が見えないようですけど・・・」

 

「簪なら温泉に行ったわよ。帰りに会ったわ」

 

セシリアに答えたのは浴衣姿の鈴だった

 

 

「あれ鈴、もう織斑先生との話は良いの?」

 

「かなりコッテリと絞られたわよ・・・まぁ、一夏や箒もこれからもっと絞られるんでしょうがね」

 

「うへぇ・・・」

 

彼女らは福音との事が終わった後、一人一人が千冬の面談という名の御叱りをうけた。なので皆、かなり疲弊している

 

 

「アンタ達も温泉に行ったら?汗の臭いが気になるから」

 

「そうだね・・・なら、皆で行かない?」

 

「それは良いな!日本文化の『裸の付き合い』をするぞ!行くぞセシリア」

 

「は、はい・・・」

 

こうして3人は温泉に向かった

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

簪サイド

 

 

 

ゴソゴソ・・・

 

「はァ・・・」

 

私は福音を旅館まで運び、教師部隊に渡した後、間髪いれずに織斑先生の面談という名の取り調べをうけた

 

あの先生の面談はなんでああも高圧的なのだろうか・・・余計に疲れた・・・

 

カラリ・・・ペチペチ・・・ザパァ~

 

私はかけ湯をした後に湯船につかった

 

 

「あ、アァあぁぁ~、気持ち良い~・・・」チャプン

 

自分でも今まで出した事がない声に驚きながら、ふと・・・アキトの事を思った

 

 

「アキト・・・大丈夫かなぁ・・・」

 

アキトは他の人とは違う『吸血鬼』で心配はないのだろうけど・・・アキトの事を考えると胸が痛くなる

 

 

「いつも心配かけて・・・アキトのバカ・・・」

 

考えないようにしてたのに、不意に考えちゃったから目頭がなんだか熱い・・・

 

ザパァ

 

私は顔を手で覆い隠した・・・すると

 

 

「Summ, summ, summ!Bienchen summ herum~♪」

 

浴場の奥から外国語の歌が聞こえて来た。その歌声は明らかに異性の声だった。そういえば、ここは夜中は混浴になるって女将さんが言ってた・・・もうあがろ

でもその声は・・・

 

 

「なんだ、もうあがるのかい?まだ入ったばかりだろう『簪』?」

 

「えッ!?」

 

私を呼び止めた。私は驚いて声が聞こえて来た方を見た。そこには湯船にゆったりと寛ぐ

 

 

「安心しろ・・・安心しろよ・・・俺だよ簪」

 

私の『気になる吸血鬼』アキトと・・・

 

 

「簪じゃあないの。こっちに来ない?」

 

その吸血鬼をよく知る『謎の人』シェルスさんがいた

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





俺の形態はサブマシンガン!
ショットガンかショットライフルに変えたい!


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露天風呂にて・・・




今回はアレな表現を書こうとして、迷走して、墜落寸前で着陸しました。何故、こうなった・・・!



 

 

 

インサイド

 

 

 

俺達はマネキン・・・じゃなくて、コーラサワー准将の高速ボートに揺られ、二人仲良く船酔いをくらいながら旅館へとついた俺は報告の為にあの暴力教師のもとに行こうと思ったが・・・

 

 

「アキト?」

 

「おん?」

 

「疲れたから久々に温泉入らない?・・・一緒に///」

 

「良いな~・・・でも俺、報告に行かない―――」

 

ギュッ

 

「・・・ダメ?///」

 

「――と思ったが、予定変更。温泉入ろう」

 

「えぇ、そうしましょ♪」

 

シェルスの艶やかな『罠』?にまんまとハマり、温泉に行くことと相成った

帰って来たのが夜中という事もあり、旅館の名物になっている露天風呂に入った。案の定、露天風呂には誰もおらず、俺とシェルスの貸切状態になっていた

 

温泉の温かさが体を包み込み、疲弊していた体が回復していったのが直にわかる

 

 

「Ja~♪」

 

隣で気分の良くなったシェルスが独語で歌を歌い始めた。なので、俺もシェルスから教えてもらったドイツ民謡を一緒に歌った

すると・・・

 

カラリ・・・と温泉と脱衣室を隔てる扉があいた

他の客が来たかと思って温泉から出ようと思ったが、『吸血鬼の能力』かな?足音とか心臓の音から俺の知ってる人物だと判断した

 

その人物は俺の歌う民謡に驚いたのか、入ったばかりの温泉から出ようとしたので・・・呼び止めた。それで呼び止めたのは良いけど・・・

 

 

「どうしてそんな驚愕の顔をしてるんだ?『簪』?」

 

温泉に入ったばかりだというのに瞼を赤くした簪が俺を見ていた

 

 

「どうしたの簪?こっちに来て話でもしない?」

 

「は・・・はい!」チャプン

 

シェルスの言葉に簪は戸惑いながら近づいて来た・・・っておい!?

 

 

「待て待て待て待て待て、簪!」

 

「え・・・なに?」

 

いやいやいやいやいや、そんなキョトンした顔するなよ!

 

 

「今の状況を考えろよ!状況を!」

 

「?・・・あッ!///」

 

漸く気づきやがったな。そうだよ!俺達『裸』なんだよ!今のところ、湯けむりで見えない・・・事もない!流石は『吸血鬼eye』!バッチリ見える!YAHA!

 

 

「ジャネェエッ!」バキリ

 

「ッ!?」

 

「な、何してるのアキト?」

 

取り合えず、自分の顔を殴り事なきを得た?

 

 

「いや、何でもない・・・」

 

「そう・・・」

 

「それより二人とも・・・!」

 

「「おん?」」

 

改めて簪を見えないように見ると、何故だか怒っていた

 

 

「大丈夫・・・だったの?」

 

「何がだよ?」

 

「福音と戦って・・・その・・・大丈夫だったの?」

 

「え・・・あぁ、まあな」

 

拘束されたり、朧が暴れたり、取引したり、色々ありすぎたけどな・・・

 

 

「そ・・・そう・・・良かった・・・グスッ」

 

「え・・・?」

 

「か、簪?!」

 

そう言うと簪は何故か、泣き出してしまった

 

 

「ご、ゴメン・・・ね?なんだか安心しちゃって・・・ゴメンなさい・・・グスッ」

 

「あ、あぁ・・・」

 

俺は泣く簪に何もしてやれなかった。ただ黙って見る事しか出来なかった

 

 

「ヤレヤレ・・・しょうがないわね・・・簪?」チャプン

 

「え・・・?!///」

 

俺がボーゼンとしているとシェルスが簪の肩を掴むと、そのまま抱きしめた

 

 

「大丈夫よ簪・・・不安だったでしょう?辛かったでしょう?よく頑張ったわね。えらいえらい」

 

「ッ!うぅ・・・あぁ・・・」

 

そのままシェルスは簪の頭を優しく撫でると簪は本格的に啜り泣きをはじめてしまった。何が何だかわからず、再びボーゼンとする俺にシェルスがアイコンタクトを送ってきた

 

 

『私共々、抱き締めて』チラ

 

『いや、訳がわからんぞ?』パチクリ

 

『はやく!!』ギロリ

 

その眼の意思にやられ、俺は取り合えず訳も分からず二人を抱きしめた

 

 

「あ・・・」

 

抱きしめてみると、簪は僅かに震えていた。それと同時に『不安』や『怖れ』の感情が肌を通してなだれ込んできた

 

 

「簪・・・お前・・・」

 

「う、うぅ・・・」

 

忘れていた・・・

いくら簪が、良い『覚悟』を持っていても・・・簪は俺達とは違う『普通』の人間なんだ。そうだよな・・・友人が傷ついたらそら怖いし、怒るよな・・・

 

 

「簪・・・すまない」

 

「え」

 

「不安にさせて悪かった・・・すまなかった」

 

「そんな・・・謝る・・・必要なんて・・・」

 

「いや、あるよ・・・すまなかったな簪」

 

「・・・」

 

「簪?」

 

「・・・な、なら」

 

簪は少し押し黙ると、たどたどしく口を開いた

 

 

「『ただいま』って・・・言って・・・」

 

「・・・おん?じゃ、じゃあ・・・『ただいま』」

 

「『おかえり』」

 

「ただいま」

 

「おかえり」

 

「ただいま」

 

「おかえり・・・」

 

「ただいま」

 

「・・・おかえり」ギュッ

 

このやり取りを数回繰り返した後、俺の腕を精一杯握り・・・

 

 

「・・・スゥ・・・スゥ」

 

眠ってしまった。例えるなら巨木を枕にして眠るウサギのように

 

 

「って・・・どうするんだよコレ」

 

「どうやら大分疲れが溜まってたみたいね。安心して眠っちゃった」

 

「オイオイオイ、ここで眠るな簪!風邪ひくぞ!」

 

「良いじゃない寝かせてあげなさいよ」

 

「いや、着替えとか色々大変じゃん」

 

「アキトがやってあげたら?」

 

何をさも当たり前のように・・・てかそれ無理だぞ。何故なら

 

 

「結構、いや、かなり『限界』だ」ギラリ

 

俺の我慢ならない『欲求』が『牙』を伸ばしていた

 

 

「あら?それは危険ね・・・ならどう?」

 

「・・・シェルスさん?なぜ、「どう?」と言いながら『首』を傾げる?誘惑してんの?」

 

「そうだけど?」

 

なッ!?この吸血姫は・・・!

 

 

「本当は部屋でしてもらうのが良いけど・・・で?『吸う』?///」

 

「・・・ヤレヤレだぜ・・・」

 

俺は自分がどんなにクズ野郎だと言う事を卑下しながら、彼女の白い柔肌に牙を突き刺した

 

 

「あ、アァ・・・ぅン、ャン///」

 

「ゴクリ・・・ゴクリ・・・」チュウ

 

シェルスの喘ぎ声で簪が起きないかと焦りながらも吸血を終わらせ、温泉からあがった

 

もちろん、シェルスに簪の着替えを任せて・・・

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

温泉から出た二人は簪を元いた場所であろう部屋へと連れていった

部屋には誰もおらず、取り合えず二人は布団をしいて簪を寝かせた。その帰り道、アキトはふと窓の外を見た

 

 

「おん?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、アレ」

 

「どれどれ?」

 

窓から見える砂浜では、ISを纏った鈴から全速力で逃げる水着姿の一夏と箒が見えた

 

 

「フフ♪なにアレ?」

 

「元気だなぁ~・・・」

 

「なに年寄り臭い事言ってるの。まだまだ若いんだから確りしてよ・・・旦那さま?」

 

「『旦那さま』て・・・言ってて恥ずかしくないか?」

 

「・・・恥ずかしい///」プイッ

 

シェルスが顔を背けると、アキトは耳まで裂けるように口角をつり上げた

 

 

「へぇ・・・」グイ

「きゃ!?ちょ、アキト?!///」

 

「ハム・・・」

「はぅッ!?///」

 

アキトはそのままシェルスを抱きしめ、耳をかじった

 

 

「耳へのキスは『誘惑』・・・どうだいシェルス?」

 

「・・・ブリュンヒルデのところには行かなくて良いの?///」

 

「もう夜中だ。こんな時に訪れるなんて失礼だろう?それに・・・」

 

「それに?///」

 

アキトは小さくそれでいて甘く艶やかな声でシェルスの耳に囁いた

 

 

「昨日、散々『貪られた』んだ・・・今度は俺が『貪る』番だ。異論も拒否も受け付けない。真の髄まで『喰い尽くしてやる』・・・!」

 

「・・・優しく・・・して?///」

 

「カカッ♪『断る』」ダキリ

 

彼は彼女を抱き上げて部屋へと戻り、アキトはシェルスを。シェルスはアキトを。『殺し合う』ように、『愛し合う』ように、『獣』のように、二人の『吸血鬼』は互いに互いを『貪った』・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





中々に難しいな・・・
夏休み篇どうしましょうかね?


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真夜中の猫と騎士と兎と・・・




『世界一カッコいいデブ』・・・斯くありたいモノだ

アキト「あのmadな野郎が久々に出やがる・・・意外と人気なのが・・・腹立つ」

だって『あの人』だからね



 

 

 

ノーサイド

 

 

草木も眠る丑三つ時・・・

 

吸血鬼が吸血姫を、吸血姫が吸血鬼を貪っている頃。

旅館が見渡せる崖に・・・『彼女』はいた!

 

 

「・・・」バァ―――ンッ!

 

その人物は腕組み、仁王立ちをしながら一点を見ていた。その目線の先には・・・

 

 

「えへへ♪ちーちゃん♪」

 

ウサギ耳のカチューシャをつけた天災科学者『篠ノ之束』が満面の笑みを溢していた。その彼女に向かい世界最強のIS乗り『織斑千冬』は鋭い眼光で睨み付けていた

 

 

「束・・・」

 

「こうしてゆっくり話をするのは久しぶりだね♪あの時は色々と忙しくて話せなかったけ―――」

 

「『お前がやったのか』・・・?」

 

「・・・え?」

 

「『お前がやったのか』と聞いているんだ?!!答えろ!篠ノ之束ッ!!!」

 

千冬は鬼気迫る形相で束に迫った

 

 

「お、落ち着いてよちーちゃん!あ、あれはね・・・」

 

「やっぱりお前がやったのか!ハァ・・・」

 

「で、でもアレはいっくんと箒ちゃんの為に―――」

 

「そのザマがあれか!」

 

「ヒっ!?」

 

「お前の勝手な独断で一夏や箒だけじゃなく、他の生徒まで危険な目に合わせた!」コツコツコツ

 

「そ、そんなのどうでもいいじゃん!いっくんや箒ちゃんが強くなる為には必よ――パァンッ!―――・・・え?」

 

千冬は束の頬を叩いた

 

 

「い、痛いよちーちゃん・・・た、束さんじゃなかったら頭が砕けてた――「黙れ」――ヒッ!?」

 

「お前のせいで・・・お前のせいで私はたった一人の家族を『また』失いかけたんだぞ!」

 

「そ、それは・・・」

 

千冬は怒り心頭の頭を振りながら、ぼそぼそと呟きだした

 

 

「・・・現れるな・・・」

 

「え・・・?」

 

「もう二度と―――」

 

『私達の前に現れるな!』・・・と、だがその声は紡がれる事はなかった

 

 

「いやぁ~!白熱してますねぇ~!ニシシシ♪」

 

この人物の登場によって!

 

 

「だ、誰だ・・・?」

 

「お、お前は!?」

 

その人物に千冬は怪訝な顔し、束は驚愕した

 

 

「いやはや、また会いましたね?束博士♪そして、初めまして織斑・・・なんだっけ?ま、織斑操縦士で良っか」

 

「お、お前は誰だ?」

 

「僕?僕はシュレーディンガー。『吸血鬼大隊』または『レギオン』所属の准尉。『シュレーディンガー准尉』とは僕の事ですよ♪ニシシシ♪あと、さっきぶり博士♪」

 

シュレーディンガーはニコやかに自己紹介し、束に手を振った

 

 

「なんでなんでなんでなんでなんで・・・なんで?!どうして『生きてる』んだよ!?理解不能理解不能!」

 

束は顔を歪ませ、シュレーディンガーを睨んだ。そんな事とはお構い無しにシュレーディンガーは千冬に近づき、ジロジロとなめ回すように見た

 

 

「ん~♪ねぇ、織斑操縦士?」

 

「な、なんだ?」

 

「僕の『愛人』にならない?」

 

「な、ななッ!?///」

 

「ま、そんな事は置いといて・・・『弟』さんはお元気かな?」

 

「なに・・・!」

 

「束博士、『妹』さんはお元気かな?」

 

「お、お前!箒ちゃんに何かしたのか?!」

 

興奮する千冬と束を宥めるような動作をおこした

 

 

「落ち着いて落ち着いて・・・別に僕ァ何もしませんよ。『大尉』と『ムーン』さんから生き残った二人のご家族を見にきただけですから。ニシシシ♪」

 

「どうゆう事だ!?」

 

「あら?聞いていないんですか?貴女方の弟さんと妹さんを『殺害』しようとした人達の仲間ですよ僕は。ニシシシ♪」

 

「き、貴様ァア!!」ダッ

 

激昂した千冬はシュレーディンガーに殴りかかろうとした。・・・が

 

 

『でんわだよ♪でんわだよ♪大隊長からのでんわだよ♪』

 

「ッ!?」

 

「あ、ゴメンよ。もしもし大隊長?」

 

『准尉か?なにをしている?』

 

シュレーディンガーの携帯電話からは『男』の声が聞こえて来た

 

 

「ゴメ~ン大隊長。今さ、ブリュンヒルデと天災兎に会ってるんだ♪」

 

『ほう、そうなのか・・・准尉、スピーカーに変えろ』

 

「Ja~♪」

 

シュレーディンガーは男の言うとおり携帯をスピーカーに変えた

 

 

『もしもし、聞こえるかね?フロイライン方?』

 

「お前は誰だ?!」

 

『私は『レギオン』または『吸血鬼大隊』を率いる『大隊長』という者だ』

 

「お、お前がいっくんや箒ちゃんを・・・?」

 

『そうだ兎博士。それを聞いてどうする?』

 

「こ、殺してやる!」

 

『ククク、怖い怖い』

 

大隊長は嘲笑するように笑った

 

 

『でも博士、君が悪いんだよ』

 

「なに?」

 

『君が『あんな事』をするから』

 

「そ、そんなの・・・お前達が邪魔なんかするから!」

 

『逆ギレか?所詮はガキか。クハハハ♪』

 

「お前~!」

 

『でも良かったか悪かったか・・・君達は『あの方』に救われた。なんとも奇妙だ』

 

「なに?」

 

千冬は大隊長のモノ言いが引っ掛かったのか、聞き返そうとしたが・・・

 

 

「お前!お前!お前!どこにいる?!見つけ出してやる!必ず見つけ出して殺してやる!」

 

激情にかられた束にそれを奪われた

 

 

「ハハ♪それはそれは楽しみだ♪話は変わるがブリュンヒルデ?」

 

「な、なんだ?」

 

「君はこの『世界』がおもしろいか?」

 

「・・・は?」

 

大隊長の奇妙な質問に千冬は間が抜けた声を出した

 

 

「正直に答えてくれ。この『世界』はおもしろいか?」

 

「ちーちゃん!こんなヤツの言葉に答えちゃ――「まぁまだ」――ちーちゃん!?」

 

『ほぅ・・・『不思議な答』だ。だが、安心したまえブリュンヒルデ。これから世界は面白くなるぞ!』

 

「・・・なに?」

 

『なんせ君の近くには・・・あの『アーカード』がいるのだからね』

 

「アー・・・カード?誰だそれは?!」

 

『君には是非、彼の『妃』になってもらいたいが・・・それは無理か・・・『第一夫人』はすでに決まってるからな、それに沢山の『夫人候補』もいる・・・ククク♪アァ、なんとおもしろい事か!』

 

「お前!ちーちゃんと話すばっかりしないで――『それではなフロイライン達』――おい!」

 

ブチリ

 

大隊長は電話を切った

 

 

「あ~ぁ、切れちゃったよ・・・ってアツッ!?」

 

「シュ、シュレーディンガーッ!?」

 

電話が切れると同時にシュレーディンガーの体が燃え出した

 

 

「まったくヤレヤレ・・・それじゃあブリュンヒルデに兎博士、またどこかでね♪ニシシシ♪」

 

「お、おい!まだ話は!」

 

千冬の呼び止めも空しく、シュレーディンガーは燃え尽きた

 

 

「い、一体なんなんだヤツは・・・」

 

「・・・さない・・・!」

 

「た、束・・・?」

 

「この束さんをコケにしやがって!絶対に許さない!」

ダッ!

 

「お、おい!?」

 

顔に青筋をたてた束は崖から飛び降り、姿を消した

 

 

「・・・一体・・・一体何が起きているんだ・・・?!」

 

三日月が輝く闇夜にポツリと千冬の声が響いた・・・

 

こうして夜は更けていく・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ここではない何処かにて・・・

 

 

「ただいま~♪」

 

「おかえり准尉。どうだ?楽しかったかい?」

 

「うん!とっても楽しかったよ大隊長!」

 

「そうか・・・それでは報告書を頼むぞ」

 

「ハイハ~イ♪任せてくださいよ!」タタタタタ・・・

 

「さて・・・『おもしろき世をもっとおもしろく』してやろうか!」

 

大隊長は朗らかに楽しそうに笑った・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





今回はかなりシリアスになったな・・・

アキト「なんでだ?」

フハハハ♪・・・わからない

アキト「おいッ!」


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朝の二人の吸血鬼・・・



さて・・・上手く甘く書けたかな?


 

 

ノーサイド

 

 

 

朝陽が顔を出したAm.6:48・・・

旅館の一室で目覚まし時計が鳴っていた

 

 

ピピピ・・・ピピピ・・・ピピピ・・・

 

「おん・・・?・・・うる、せぇ・・・」メキョ

 

布団から出た手が枕元にあった小さな時計を握り潰した

 

 

「あ・・・ヤバ。壊しちった・・・」

 

「ん・・・んン・・・んミュ・・・」ゴソ

 

「ふぅん・・・良い子良い子・・・」ナデリコ

 

「ん・・・///」

 

吸血鬼は隣で眠る吸血姫の頭をいとおしく撫で、布団から出ると裸の上にIS学園の制服を羽織った

 

 

『おはようございます。王よ』

 

「KUA・・・おはようさん、『朧』」

 

『王よ。首から垂れていますぞ』

 

「おん?」

 

朧に言われ、吸血鬼が首を触るとそこには小さな『穴』が二つあいていた

 

 

「あ~、『シェルス』のヤツ・・・思いっきり『噛みやがって』」

 

『王もかなり、奥方さまに『深い跡』をつけていますが?』

 

「・・・うるせぇよ朧。カットバンか何かないか?跡を隠すのに使うから」

 

『ハイハイ・・・仰せのままに』

 

「む、なんか引っ掛かるな・・・ま、いっか」

 

『アキト』は朧からキズテープを貰い、ベッタリと『目立つ』ように『噛み傷』を覆った

 

 

「これならシェルスも文句は無いだろ・・・」

 

『朝食は7時からです。それまでごゆるりと・・・』

 

「あぁ」

 

アキトは朧からの報告を受けとるとシェルスの隣に座り、また頭を撫でた。すると・・・

 

 

「・・・もう、行くの?」

 

撫でられていたシェルスが眼を開け、アキトの腕を掴んだ

 

 

「なんだ起きてたのか?」

 

「目覚まし時計を壊された辺りでね」

 

「結構最初じゃん・・・ヤレヤレ」

 

アキトはシェルスの隣に胡座をかいた

 

 

「それで・・・もう行くの?」

 

「なにぶん臨海学校最終日だからな・・・朝飯食べたらバスに乗ってさよならだ」

 

「そう・・・」ゴソリ

 

「おん?」

 

シェルスは寂しそうな顔をすると立ち上がり、体をアキトに預けた

 

 

「・・・どうしたよシェルス?」

 

「・・・少しこうさせて・・・名残惜しいから」

 

「心配するな。夏には帰るから・・・」

 

「そう・・・・・・ねぇ?」

 

「なんだよ?」

 

「・・・言わせる気?///」

 

「言わせる気」ニコリ

 

「イジワル///」

 

「知ってるだろ?」

 

「知ってる・・・だから・・・ね?///」

 

「ヤレヤレ・・・」

 

アキトは羽織っていた制服を放り投げ、首に貼ったテープをベリリッと剥がし、首の刺傷からタラリとたれる血の雫を薬指でとるとそれをシェルスの唇に塗った

 

 

「「ん・・・///」」

 

塗り終えるとアキトはシェルスと唇を重ねた。最初は唇を重ねるだけだったが・・・

 

 

「・・・カチュ・・・///」

「んむッ!?///」

 

シェルスはアキトの肩に手をまわし、口内に長い舌を入れた

 

 

―カチュ・・・クチュ・・・ピチャ///―

 

互いの舌を絡ませ、歯肉を愛撫した。そのうち二人は唇を離すとツ――と銀の糸が垂れていた

 

 

「フフ♪アキト、顔が真っ赤よ?///」

 

「そう言うシェルスこそ///」

 

コツンとアキトはシェルスの額に額を重ねると頭を屈めていき、口をシェルスの昨夜つけた首の刺傷にもっていき・・・

 

―――ガブリッ!―――

 

・・・と深く、深く、深く牙を刺した

 

 

「あぁaAaa~~~!///」

「チュル・・・チュル・・・コクン」

 

アキトはゆっくり、ゆっくりと血を啜った。シェルスは身をよがらせ、力いっぱいアキトを抱き締め、その背中をガリッガリッと引っ掻いた

引っ掻かれた背中からは血が出るが、吸血鬼の再生能力で傷が塞がる

 

 

「プチュ・・・コクン・・・ハァァ・・・///」

 

満足したアキトは首から口を離し、ペロリと首を舐め、唇に軽くキスをした

 

 

「~~!///AKITO!Wie!Ich mag es und wie es und liebe es~~~♥♥♥///」

 

シェルスは蕩けた顔をしながら母国語で語りかける。それをアキトは不敵な笑みを浮かべ囁いた

 

 

「もちろん俺もだ・・・『Te iubesc (愛してる)』・・・『私の』・・・『私だけの』『吸血鬼(ドラキュリーナ)』? 」

 

そう囁くとまた唇に吸い付き、求めた

 

 

「~~~~~♥♥♥♥♥!!!///」

 

シェルスは求め、求められ、ゆっくりと嬉しそうに意識を手放した。アキトは蕩け顔のシェルスを布団に寝かし付け、また制服を羽織り部屋を後にした

 

その部屋を後にしたアキトの顔は『獰猛』で『冷酷』な『吸血鬼』の顔をしていた

 

 

「あ~、朝から実に気分が良い♪」

 

そう言いながら、アキトは食堂に向かった・・・

 

 

 

―――――――

 

 

インサイド

 

 

 

ズズズッ・・・

「かはぁ・・・美味っ・・・」

 

今、俺は朝飯が用意された旅館の広間でユックリと味噌汁を飲む。白だしがきいていて円やかなお味だ

 

 

「アキトさん?ご飯はどれくらいつぎましょうか?」

 

「アキト?はいお茶」

 

「アキト、この黄色いモノはなんだ?」

 

「セシリア、ご飯ありがとう。シャーロットもお茶ありがとな。ラウラ、それは沢庵つう漬物だ」

 

隣ではセシリアやシャーロット、ラウラがワチャワチャとしている。最初は広間で一人で飯を食ってたんだが・・・

 

 

「アハハハ♪もてもてだな『アキト』」

 

「ッチ・・・気安く呼ぶんじゃねぇ・・・」

 

「いいじゃんかアキト。なぁ、箒?」

 

「そうだな一夏」

 

俺の目の前でのほほんと飯を食ってるバk・・・『織斑』が大きな声で騒ぎやがって・・・

おかげでセシリアやシャーロットには泣かれるわ、ラウラの泣き顔には悶えるわで大変だった

あと篠ノ之、睨むんじゃねぇよ

 

 

「ヤレヤレ・・・」

 

俺は溜め息を吐きながら、漬物を口に放り込んだ

 

 

「あ・・・美味っ」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

朝食を終えた生徒達は帰り支度をし、旅館の玄関に集合して帰りの挨拶をした。挨拶を終えると生徒達はバスに乗っていった

アキトは寝るからと言って窓際の席に座り、グースカと鼾をたてていると・・・

 

 

「ここかしら?」

 

腰まで髪を伸ばした女性はがバスに乗ってきた

生徒達は騒然としたが女性は一夏の前に立ち止まり、話をしだした。彼女は福音のパイロット『ナターシャ・ファイルス』であった

 

ナターシャは一夏と一通り喋ると頬に感謝のキスをした。すると隣に座っていた箒が怒り、鈴が乗り込んで来て騒いだ。それをナターシャはニコやかに笑うとアキトの方へと歩みを進めた

 

コツコツコツ・・・コツン

 

「ちょっとよろしいかしら?」

 

「ん?なんだ貴様は?」

 

ナターシャの言葉を返したのはアキトではなく、何故か膝の上にのるラウラだった。そして、隣に座っていたセシリアやシャーロットまで怪訝な顔で見た

 

 

「貴女は?」

 

「私はラウラ・ボーデヴィッヒだ。そう言う貴様は?」

 

「これは失礼、私はナターシャ・ファイルス・・・『銀の福音』の操縦者よ。よろしくね」

 

「「「なにッ!?」」」

 

自己紹介に三人は驚愕した

 

 

「そ、その操縦者の方がアキトさんに何か御用でしょうか?」

 

「少し彼に『お礼』をしようと思って・・・でも」

 

「Zzzzzz... 」

 

「どうやら無理なようね・・・」

 

ナターシャは眠るアキトを見ると早々に引き返そうとした・・・その時!

 

 

「君は『ナターシャ・ファイルス』だね?」

 

「え?!」

 

突然目を開けたアキトは口をきいた。ナターシャは驚きつつも気を取り直し返した

 

 

「そう言う貴方は『暁アキト』」

 

「ケガが無いようで安心したよ。それで俺に何のようかな?」

 

「貴方にお礼を言おうと思って・・・ダメかしら?」

 

「まさか!貴女のような人に感謝されるなんて光栄だよms. ファイルス」

 

「あら、上手いのね?」

 

二人は見つめ合い、笑いあった。でも、隣にいる人物達はそれが面白くないようで・・・

 

 

「もうよろしいですのファイルスさん?」

 

「あら、どうして?」

 

「僕たち、もう学校に帰らないといけないから」

 

「つまり?」

 

「早くバスから出ろファイルス中尉」

 

隣に座っている三人が威嚇をした

 

 

「ふ~ん・・・」

 

「な、何かな?」

 

「いいえ。それじゃあ―――」

 

「「「あッ!?」」」

 

ナターシャは一夏と同じようにアキトの頬にキスをしようとした・・・が

 

ムニッ

「え?」

 

「何をするだ?」

 

アキトはナターシャの頬をつまみ、顔から離した

 

 

「もう、何するの?」

 

「それはこちらの台詞だ。アンタはアホか」

 

「あ、アホって・・・」

 

「お礼ならそんな事しなくて良い・・・それよりアンタの専用機・・・『福音』は?」

 

「え?」

 

「福音はどうなって聞いてんだよナターシャ・ファイルス?」

 

「そ、それは・・・」

 

ナターシャは少し口をつぐんだが、真剣な顔になり答えた

 

 

「『凍結』になったわ」

 

「そうかい・・・」

 

アキトは少し悲しげな雰囲気を漂わせた

 

 

「ありがとう・・・充分な礼になったよ」

 

「そう・・・」

 

「それと・・・『アッシュフォード社』って知ってるか?」

 

「『アッシュフォード社』?・・・いえ、知らないわ。それが?」

 

「いや、知らないなら良いんだ・・・」

 

「アキト?そろそろ・・・」

 

「だそうだファイルス」

 

「そうね・・・それじゃあね『ナイトさま』」

 

「『ナイト』?まさか、俺は『ヴァンパイア』だよ」

 

「あら?変わってるのね貴方は?」

 

そうしてナターシャはバスから出ていった

 

 

「さて・・・シャーロット?」

 

「な、なに?」

 

「寝るから、着いたら起こしてくれ」

 

「あ、うん」

 

「ヤレヤレ・・・Zzzzzz ... 」

 

その10分後、バスはIS学園を目指してエンジンをかけた。こうして怒濤の面倒続きだった臨海学校は終わっていったのであった・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




もっと甘いの書きたい!欲しい!


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マッドは静かに笑う・・・




前回、夏休み篇に入ると言ったな?その前にオリジナルを入れるぜ。文句は言わないで・・・マジで

あと、オリジナルキャラ出ます



 

 

 

ノーサイド

 

 

 

ここはアメリカ、アラスカ州・・・

その研究施設にて・・・

 

カタカタカタカタカタカタカタカタ・・・

 

真っ暗闇の部屋の一室でパソコンを叩く音が響いていた

 

 

カタカタカタカタ・・・カチッ!

 

「ウケケケ♪良い感じになって来た来た来た!」

 

男はパソコンを弄りながらケラケラと笑う。そして近くにあったマグカップを煽る・・・が

 

 

「ウゲゲゲッ!?マズゥゥい!誰だよ?!誰だよ!僕のマグカップに『青汁』を入れたのは~!」ガシャン!

 

飲み物を吹き出し、マグカップを床に叩きつけた。それを後ろで溜め息を吐く人物が一人

 

「ハァ・・・お前自身だよ『カタギリ』。これで何回目だ?一体誰が床を片付けると思ってるんだ?」

 

「およよよッ!?そう言う君は『ショウ=ザマ』!」

 

「誰がビルバインに乗ってるオーラバトラーだ!?私は『キザキ・L・ヒサタカ』だ!そろそろ寝ろ!『カタギリ・L・ロイド』!」

 

「ウケケケ♪こ・と・わ・る~!何を隠そう!僕は『夜更かし』の達人!」

 

「ヤカマシイ!この糞ガキィ!!とっとと寝ろぉぉ!お前に付き合ってなんで私まで『徹夜』しなくちゃならんのだ?!」

 

「黙れ老いぼれぇ!僕の為に労力を使えぇ!」

 

「こんガキィ!私はまだ20代だ!」

 

キザキと呼ばれた研究者服の男は激昂し、カタギリと呼ばれた男に掴みかかり取っ組み合いの殴り合いをしだした。騒ぎを聞きつけた他の研究員達が二人を取り押さえた

 

 

「カタギリ主任、ホントにマジで寝てください!今回で何回目ですか!」

 

「ウケケケ♪7回目で数えるのを止めた!」

 

「こんのガキィ!!!」

 

「落ち着いて下さい!キザキさん!」

 

今にもカタギリに噛みつこうとするキザキを研究員全員が取り押さえた。

 

 

「そう言えば主任!」

 

「なんだね?え~と・・・β研究員!」

 

「誰がβですか?!それより『本社』から通信がきてますよ」

 

「ま・ずぅいでェ!?ありがとうγ研究員!それでは皆さんサラダバー!僕はモロキューがスキー!」

タタタ・・・!

 

「名前変わってるし・・・」

 

「あの糞ガキィ!何時か殴るゥウ!」

 

カタギリはスキップをしながら部屋から出ていった。そのままカタギリはテレビ通信が使えるモニター室へと・・・

 

 

 

ドガアァァァアァンッ!!!

 

「「何事ッ!?」」

 

体当たりをして入った

 

 

「ウケケケ♪悪いね諸君!通信はどこかな?!」

 

「あぁ、そ、そこです」

 

「ありがとう!」

 

カタギリは朗らかに笑うとモニターの前に座り、通信ボタンを押した

 

 

『5秒の遅刻よ『ロイド』』

 

「ゴメンゴメンゴメンゴメンゴメン!このカタギリ・L・ロイド!君の為ならゴートゥドンドボヤーギ!」

 

『ドンドボヤーギ?何を言ってるか相変わらず意味不明ね』

 

「怪訝な顔も可愛いね『ミレイ』ちゃん!」

 

『な・・・ウソでも嬉しいわ・・・///』

 

モニター画面の金髪の女性、『ミレイ』は少し顔を赤らめた

 

 

「そ・れ・で~?こんな時間に何のようだい?お肌に悪いわよん?」

 

『そ、そうね・・・ロイド?貴方の作品『銀の福音』がおとされたわ』

 

「ふ~ん・・・あっそ」

 

『・・・随分と興味が薄いのね?』

 

「まね。所詮彼女は『試作品』・・・アーキタイプの『ヴァンパイア・ストラトス』に過ぎないよ」

 

カタギリは子供のようにクルクルと椅子ごと回る

 

 

『ならその彼女を撃墜した人・・・知りたくない?』

 

「知りた~い!で誰?」

 

『『織斑一夏』ですって』

 

「あぁ~、あの世界最初の操縦者か・・・筋書き通りか」ボソリ

 

『え?』

 

「ううん!なんでもないよミレイちゃん!しかし、さすがはあの世界最強のIS操縦者『織斑千冬』の弟さんだね!見直しちゃうよ!」

 

『・・・それが違うみたいなのよロイド』

 

「・・・Haん?」

 

カタギリはクルクルと回る椅子を止めると怪訝な顔でミレイを見た

 

 

「どゆことよ?」

 

『『暁アキト』って知ってる?』

 

「暁アキト?誰?」

 

『一応、世界で二番目のIS操縦者なんだけど』

 

「その二番目がどうしたの?」

 

『彼が実質的に彼女を落としたのよ』

 

「でもさっき、最初くんに撃墜されたって・・・」

 

『それは公式発表。諜報部の調べだとその暁アキトが『一人』で落としたのよ・・・』

 

「ま・ずぅいで!」

 

カタギリは突然立ち上がると踊るように回った

 

 

「スゴいスゴいスゴい!そんな人間がいたなんて!僕のパトスがオーバーライド♪『アーカード』さまと同じくらいに興味をそそられる!」

 

『・・・むぅ・・・』

 

「?どしたのミレイちゃん?頬をふくらませて?リスみたいだよ?怒ってる?」

 

『ぜ~んぜん!別にオカルトにハマってる『婚約者』に怒ってるわけじゃないもの!』

 

ミレイはそう言いながらプイッとそっぽをむく

 

 

「そう!それじゃあ僕寝るから!バイバーイ♪」

 

『えッ!?ちょ、ちょっとロイd―――ブチッ

 

「ふわぁ~・・・Zzzzzz・・・」

 

カタギリは悪気もなくモニター画面をあっさりと切り、その場に寝た

 

 

「あぁ~あ・・・」

 

「あのバカ・・・!」

 

「『社長』・・・気の毒に・・・」

 

後ろでは様子をみていたキザキ並びに他の研究員達が溜め息を吐いていた

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





アキト「おい・・・アクが強すぎだろ」

言われてみれば・・・だが後悔はしてない!


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閑話『嵐の前の日常』
嵐の前の日常・・・1





諸君、私は『ほのぼの』が書きたい・・・
『あっちこっち』のようで、『野崎くん』のような『日常』を私は書きたい・・・!

あと、BXのラスボスの声優さんが・・・

アキト「余計な事を言わんでいい」



 

 

 

シャルロットサイド

 

 

 

チュンチュン・・・

 

あの臨海学校の一件から夏休みに入って、もう3日が経つ。僕は朝日に照らされたテラス席で朝ごはんを食べている

・・・いるんだけど・・・

 

 

「どうしたのシャルロット?もしかして食欲がないのかい?」

 

「い、いえ!そんな事ありません!お、美味しいです!」

 

「そうかい。ならよかった・・・でも」

 

「・・・『でも』?」

 

「敬語はやめてもらいたいな。義理とはいえこれでもボクは君の『お姉さん』なんだからね?」

 

ニコリ・・・と正面に座る僕より長い金髪をもち、ゴシックの服を着た女性『ヴァイオレット・ウィッチー』さんが上品に笑う

 

「は、はい・・・『ウィッチー』さん」

 

「ノンノン。『ヴァイオレット』、それか『お姉ちゃん』・・・ね?」

 

「は、はい・・・お、お姉ちゃん」

 

「フフフ♪よく出来ました」

 

ウィッ・・・じゃなくて、『お姉ちゃん』はどこか妖艶な雰囲気を漂わせて笑った。僕は不覚にもドキッとしてしまった

 

 

「シャルロットさま、紅茶のおかわりは?」

 

「シャルロット!たくさん食えよ!」

 

「カカッ♪大変だなシャーロット」

 

僕のまわりではお姉ちゃんに仕える『エーヴェル』さんがカップに紅茶を注ぎ、同じく使用人の『ヘレン』さんがお皿にサラダをどんどん盛り付ける

そんな状況をハムを食べながら笑う『アキト』

 

「ハハ、ハハハ♪」

 

僕は少し口角がひきつりながらもその場を楽しんだ

 

どうしてこうなったのか・・・それは『終業式』の日まで遡る・・・

 

 

 

 

 

 

 

その日は1学期終了を伝える終業式が行われていた。終業式が終わると僕を含めた外国人組がガヤガヤと騒がしい教室で『夏休み』の予定について話をした

 

 

「皆は夏休みどうするの?」

 

「私は本国に帰って『ティアーズ』の戦闘データと学生生活を政府に報告しますの」

 

「私も軍に『レーゲン』のデータを提出しなくてはな。それに部下達にも挨拶をせねばな」

 

「そっか~・・・」

 

セシリアやラウラ、2組の鈴も夏休みの最初は本国の報告が主な仕事のようだ

 

 

「シャルロットはどうするのだ?」

 

「え?そうだね・・・僕は・・・」

 

ラウラの言葉を聞いて僕は口を濁した。なぜなら・・・

 

 

「ちょっと!ラウラさん!」

 

「?・・・あっ!す、すまないシャルロット!」

 

「いいんだよラウラ・・・」

 

僕は『ある事件』の影響でフランス国籍から『自由国籍』に移っている。これは面倒な報告をしなくいいんだけど、それは同時に・・・

 

 

「僕には『帰る国』がない・・・かぁ」

 

「シャルロットさん・・・」

 

別に僕は生まれ故郷を嫌いじゃない、むしろ好きだ。フランスにはお母さんと過ごした思いである。でも僕は『生きる為』にこの選択をした

 

 

「それでシャルロットは夏休みの間はどうするのだ?」

 

「そうだな~・・・学園に留まるつもりだよ」

 

「そうですか・・・」

 

それにしても本当にどうしようかな~?IS学園の夏休みはジュニアスクールよりも長いし・・・簪にオススメのアニメでも聞いてみようかな?

 

・・・そんな風に思っていたその時

 

 

「おやおやおやおやおや?どしたのお三方?織斑先公の有り難迷惑なお話も終わったのに、帰らないの?」

 

・・・と怪訝な顔をした不思議でおかしくて、僕に覚悟を与えてくれた人物『暁アキト』が立っていた

 

 

「アキトさん・・・」

 

「おん?どしたよセシリア?」

 

「・・・いえ、なんでもありませんわ(アキトさんが何気に織斑先生をdisってましたわ)」

 

「そう言えばアキトはどうするのだ?」

 

「何をだよ?」

 

「いや、夏休みはなにか予定があるのか?」

 

「「!」」

 

そうだよ!アキトは夏休みどうするんだろう?何か予定でもあるのかな?

 

そんな好奇心を持ちながら、返答を待っていると急にアキトが思い出したような顔をして、手を叩いた

 

 

「そうだよ、忘れてたよ。シャーロット、行くぞ」

 

「え?・・・どこにかな?」

 

「どこって・・・お前の『家』だよ」

 

「・・・え?」

 

僕はその時、ヘンテコな顔をしていたと思う。そんな僕に対してアキトも変な顔をした

 

 

「アキトさん?それはどういう事なんですの?シャルロットさんは『自由国籍』のはずでは?」

 

「おん?なんでシャーロットが自由国籍なんだよ?」

 

「「「・・・はい?」」」

 

「シャーロットは『イタリア国籍』に移ったろうが」

 

ん?何を言ってるのホントに!?

 

 

「ちょ、ちょっと待ってよアキト!僕はあの『事件』で自由国籍になったんだよね?!」

 

「なったよ」

 

「だ、だったらなんで僕は『イタリア国籍』になるのさ!?」

 

「・・・オイオイオイオイオイオイオイオイオイ」

 

アキトは頭に手をおいて溜め息を吐いた

 

 

「この間、シャーロット、お前が『ウィッチー家』の養子に入るって話をウィッチー卿を交えて話をしたろうが!忘れたのかよ?!」

 

「うぃっちー?・・・あれ?」

 

その時、僕は二月前の出来事を思い出した。アキトが運転するバイクにゆられ、古い屋敷に案内されて・・・

 

 

「あ・・・!」

 

「思い出したか?フロイライン?」

 

「つまりはどういう事なんですの!?」

 

「つまりはシャーロットには『帰る場所』がちゃんとあるって事だよ。understand?」

 

「いぇ、Yes・・・」

 

「ご理解頂けてありがとよ。そんじゃあ―――」

 

そうしているとアキトは呆ける僕の手を握ると椅子から立ち上がらせて、歩きだした

隣にいたセシリアやラウラが目をまん丸にして僕達を見ていた

 

 

「えッ!?ちょ、ちょっとアキト!?///」

 

「なんだよ?」

 

「『なんだよ』じゃなくて!どうして僕の手を引いているのかな!?///」

 

「忘れてたんだよ」

 

「へ?」

 

「今日、お前をあの『魔女』のところに連れていかないと」

 

「は?『魔女』?」

 

「取り合えずは『新しい我が家』に『里帰り』ってヤツだ。存分に楽しもうぜ?」

 

「??~?」

 

こうして僕はトントン拍子でバイクに乗せられ、ウィッチー家の屋敷へと運ばれた

 

僕は催眠術や超スピードなんかじゃない、もっと恐ろしい『ナニか』の片鱗を味わった

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 







ヴァレンティーノファミリー・アジトにて

ドン「あろ?シェルスよ、その荷物はなんであろ~?」

シェルス「あらドン、私言ってなかったかしら?これからウィッチー家に泊まりにいくんだけど」

ドン「そうであったか。そう言えば、ウィッチーには・・・」

ロレンツォ「『新しい家族』が入ったみたいですね。アキトも護衛という形でいるでしょう」

シェルス「そうなのよ。アキト、失礼のないようにやってるかしら?」

ドン「ホントはアキトが目移りしてないか心配なんじゃなかろ~?」ニヨニヨ

シェルス「なッ!?///」

ロレンツォ「変なところで貴女は素直じゃないんですから」ニヨニヨ

シェルス「~~~!///行って来ます!///」バタン!

ドン「しゃ~しゃしゃしゃ!ロレンツォ、赤飯の用意じゃ!」ニヨニヨ

ロレンツォ「仰せのままに」ニヨニヨ


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嵐の前の日常・・・2



BXのガオガイガーが思いの外良かった。voice的にもストーリー的にも
あと、次回作にもカイザーが出てほしい(願望)

今回からクライムエッジ系列キャラを出して行きます

―――――――――――――――――――――――――
(改編しました)



 

 

インサイド

 

 

 

ガヤガヤ・・・

 

雑多な人間共がザワザワと騒がしく動く

 

それもそうだ、ここは『国際空港』。様々な人達が国外から帰って来たり、出ていったりするとこだ。騒がしいのは当たり前だ

 

 

「遅いわね。大丈夫かしら『あの子』?」

 

「心配しなくてもいいよシェルス。一応あの子は『権利者』なんだから」

 

「『権利者』と言ってもまだ子供よ?心配になるわ」

 

隣では車椅子に乗った魔女こと『ウィッチー卿』とその車椅子をおす『シェルス』が空港の入場者ゲートを見ながら話をしていた

 

 

「あの・・・アキト?」

 

俺の隣ではウィッチー卿の趣味のスーツドレスを着たシャーロットが困惑しながら俺に問いかける

 

 

「おん?なんだよシャーロット?」

 

「一体誰を待っているの?」

 

「ウィッチー卿の・・・というか『俺達』の仲間というか家族というか・・・なんだろ?」

 

「いや僕に聞かないでよ・・・というかここ最近、想定外の事ばっかで慣れてる僕がいるよ・・・」

 

そうだよな~。ウィッチー邸にいたらシェルスが泊まりに来るし、フランス政府から問い合わせが来るし、色々あったな~・・・

 

まぁ、なんとか正攻法で解決したし・・・ホントダヨ?

 

 

「あら?・・・アキト!」

 

「おん?」

 

「あれ!」ビシッ

 

どうやらシェルスが見つけた見たいだ。指を指す先には自分と同じくらいのキャリーバックを運ぶ小さな体躯の赤いランドセルを背負った『赤髪の女の子』がいた

 

 

「『オープナー』!」

 

「!」タタタタタ

 

俺がそう呼ぶとオープナーは俺目掛けて走って来た

 

 

「シャルロット、少しアキトから離れたらほうが良いわ」

 

「え?なんでですか?」

 

「良いから。『巻き込まれる』わ」

 

「え?」

 

「『アーカード』ォォオッ!」タタタタタッ

 

俺は走って来るオープナーを抱き止めようと腕を広げた・・・んだが・・・

 

 

「とうッ!」ダッ

 

「おん?」

 

「え?」

 

「「あ・・・」」

 

オープナーは小刻み良くステップを踏んでジャンプをすると―――

 

 

「てやぁぁあッ!!」

「ぶべらぁッ!?」ボギャアァッ!

 

「えぇッ!?」

 

俺の顔に膝蹴りをかました。衝撃のあまり、そのまま後ろに倒れる

 

 

「オイオイオイ・・・いきなり膝蹴りたぁ、頂けないね『オープナー』?」

 

「うるさい。『えみりー』の事をその名前で呼ぶな『アーカード』・・・!」

 

「そりゃあそうか・・・お帰り『レッドハンズ』」

 

「だめ!えみりーの事は名前で呼んで!『アーカード』!」

 

「なら、お前も俺の事を名前で呼べよ『エミリー』」

 

「やだ!」

 

オープナー改め、『エミリー』はそのまま朗らかに俺の頭を抱き締める

 

 

「はいはい、そこまでよエミリー」ガシッ

 

「やー!離せ~!」

 

ヤレヤレと溜め息を吐きながら、シェルスはエミリーの首根っこを掴み引き離す。エミリーはジタバタと暴れる

 

 

「お姉ちゃん・・・この子は?」

 

「ん?この子は『エミリー・レッドハンズ』。私の・・・私達の『家族』さ」

 

ちょっとウィッチー卿、見てないでどうにかしろよ。あの二人、『殺し愛』をはじめようとしてるんだけど~!

 

 

「WAANABEEE・・・」ギラリ

 

「ふっふっふ・・・エミリー今度は負けない・・・!」

 

「・・・ハァ~・・・ヤレヤレ・・・」

 

俺はしょうがなく二人を止める為の『冷気』を掌に溜めた

 

 

「WRYYY・・・」

 

5分後、空港のロビーは極寒の冷気に包まれた

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

ノーサイド

 

 

 

『殺し愛』をはじめたシェルスとエミリーを止める為にアキトが空港のロビーを絶対零度にした後、5人はヘレンが運転する車で空港から乗り去った

 

 

「ひゅ~・・・危なかった~」

 

「お前ら何やってんだよ!?いきなり車に飛び込んで来やがって!お嬢様、大丈夫ですか?」

 

「あぁ、ボクは大丈夫。シャルロットも大丈夫かい?」

 

「う、うん。僕も大丈夫だよ」

 

「そうかい。それにしても・・・」

 

ウィッチーがチラリと横を見るとそこには・・・

 

 

「む~!シェルスのせいで怒られた!」

 

「アンタが大人しくしとけば良かったのよ」

 

「な~に~!」

 

「何よ!」

 

互いに額をぶつけ睨み合う二人がいた。その二人に

 

 

「・・・おい・・・!」

 

「「なにッ!?」」

 

「凍らせんぞ?」ピキ

 

アキトは手をワキワキしながら、良い笑顔でドスのきいた口調で語りかけた。その凄味に二人は互いに抱き合い震えた

 

 

「ぷっ・・・」

 

「ウィッチー卿?」

 

「ごめんごめん、なんだか懐かしくてね。フフ♪」

 

「それよりウィッチー」

 

「ん?なんだいエミリー?」

 

「この金髪・・・だれ?」

 

「え・・・僕?」

 

「アーカー・・・じゃなくて、アキトの『恋人』?」

 

「えぇッ!?こ、恋人?!///」

 

エミリーは怪訝な顔でシャルロットに指を指した。慌てるシャルロットに代わり、アキトが答えた

 

 

「違ぇよエミリー、コイツの名前はシャルロット。まぁ、ウィッチー卿の『妹』になった娘だ。あと、恋人じゃないからな」

 

「へ~・・・そうなんだ。よろしくねシャルロット。えみりーはエミリーだよ」

 

「(か、可愛い!)よ、よろしくねエミリーちゃん」

 

エミリーはニンマリ笑顔でシャルロットと握手をした

 

 

「そう言えばシェルスはシャルロットと面識があったのかな?行きの車でも何か話をしてたけど・・・」

 

「少し前にね。ね、シャルロット?」

 

「うん、そうだよ。それよりアキト?」

 

「おん?なんだよ?」

 

「さっきのアレは何?」

 

「『アレ』とは?」

 

「なんか『凍らせて』いたけど・・・アレってどうやったの?」

 

「「あ・・・ッ!?」」

 

シャルロットの言葉にシェルスやウィッチーは焦った。何故ならアキトの正体を彼女は知らないからだ

 

 

「え?そんなのアキトが吸血k――フガッ!?」

 

「エミリー、長旅で疲れたでしょ?飴でも食べなさい!」

 

「フガフガ・・・おいしい・・・ってなにするの!?」

 

シェルスは口走るエミリーの口に車に備え付けてあった飴玉を押し込み黙らせた

 

 

「エミリー、シャルロットはアキトの正体を知らないから黙っているのよ」コソコソ

 

「そうなんだ~・・・」コソコソ

 

「?二人は何コソコソしてるの?」

 

「「ううん!なんでもない!」」

 

「ふ~ん・・・」

 

シャルロットは腑に落ちない顔をしたが、再度アキトに問いかけた

 

 

「あれは・・・『マジック』だ」

 

「『マジック』?凍らせるマジックなの?」

 

「あぁ。昔、ルーマニアで教わったマジックなんだ」

 

「へ~・・・」

 

アキトは「納得しろ!頼むから!」と心で願う。シャルロットは頭に疑問符を浮かべたが・・・

 

 

「そう言えば、エミリーちゃんは一体どこに旅行に行っていたの?」

 

「えみりー?」

 

「そうそう。俺もエミリーの話が聞きたいな~」

 

「私も~」

 

「ボクも聞きたいな」

 

「そうだね・・・えみりーね―――」

 

シャルロットの興味はエミリーに移った。そのままエミリーは土産話を意気揚々と話した

 

5人を乗せた車はウィッチー邸へと向かって、エンジンをふかした

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





続きを・・・どうしよ・・・


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嵐の前の日常・・・3



今回は『彼』からはじまります
俺はこの『彼』に尊敬を抱いている



 

 

???サイド

 

 

 

今日は『ウィッチー』に屋敷に招かれ、一年ぶりに海外から帰って来た『エミリー』の歓迎会?をしている。そんなエミリーと他の招待者が『僕』の『彼女』と戯れている

 

夏の陽射しが彼女を照らし、涼風が彼女の艶やかな黒髪を撫で浮かせる。その黒髪が白のワンピースにあって尚の事良い

 

 

「あ!」ブンブン

 

見ている僕に気づいたのか、朗らかな笑顔で僕に手を振ってくれる。僕もそれに答えるように手を振る

 

 

「次にお前は『幸せだな~』と思う」

 

・・・幸せだな~・・・ハッ!?

 

 

「って『アキト』さん!?」

 

「ニヤニヤしてんじゃねぇよ『クライムエッジ』」

 

いつの間にか隣にはシタリ顔の『吸血鬼アーカード』こと『暁アキト』さんがいた!

 

 

「い、何時の間に・・・?!」

 

「お前がエミリーと戯れる『女王陛下』を見ながらニヤニヤしてる辺りで」

 

「全部じゃないですか!?」

 

「まぁ、そう言うなよクライムエッジ?お前らが青春してる事は十二分にわかったからな♪」ナデナデ

 

アキトさんはニヤニヤとしながら僕の頭を撫でる

 

この野郎~・・・何時もながらに腹立つ・・・!

 

 

「それよりアキトさん、その呼び方止めて下さい」

 

「おん?呼び方ってのは何だよ?え?『クライムエッジ』さん?」ニヤニヤ

 

こ、この人、わかって言ってやがる・・・

 

 

「僕は・・・『僕達』はあの『呪い』に打ち勝ったんだ。その名前で呼ばれるのは・・・『気に入らない』」

 

「・・・カカッ♪」

 

ニヤリとまた口角を引き上げ、嫌な笑顔を浮かべる

 

この人、『暁アキト』は『吸血鬼』だ

今でも信じられないけど、『一年前』の『戦い』で彼の『おぞましさ』や『恐ろしさ』、そして『覚悟』を嫌がおうでも知らされた

 

 

「そう怖い顔をするなよ?『昔の顔』に戻ってるぜ?クライムエッジ」

 

「む・・・だから止めろって!」

 

「カカカッ♪悪い悪い。お詫びに何か飲み物持って来てやんよ。何がいい?」

 

「え・・・なら、サイダーを」

 

「OK OK !彼女の分もいるよな?『祝専用変態KIRIkun』!」

 

「なっ!?///」

 

そう言うとアキトさんはサイダーを貰いに行った

 

あの人はホントに・・・

 

 

「どうしたの『切』?」

 

僕が落ち込んでいると彼女に負けない位の美しい赤髪を持った美少女が声をかけてきた

 

 

「あ、シェルスさん・・・」

 

「ショボくれた顔して・・・らしくないわよ」

 

「いや、ちょっと・・・アキトさんに・・・」

 

「あ~・・・」

 

シェルスさんはこめかみに中指をあてて困った顔をしたかと思ったら―――

 

 

「フフ♪」

 

朗らかに笑った。その笑いに僕は驚き、身を少し引いた

 

 

「フフ♪ごめんなさいね切。やっぱり貴方、アキトに好かれてるわね」

 

「・・・は?」

 

何言ってんだこの人?

 

 

「流石はアキトと『戦った』だけの事はあるわね」

 

「いやいやいや!どこがですか!」

 

会えば何時もおちょくるような事して・・・

 

 

「彼、好意を持ってる人にはイジワルしたい人だから」

 

何だよソレ・・・好きな娘をいじめる小学生男子かよ!?

 

そんな悪態を心中でついていると、突然シェルスさんは僕に顔を近づけた!

 

 

「な、なんですかッ!?///」

 

シェルスさんは僕の首辺りの臭いを嗅いだ

 

アレ?僕、臭いかな?

 

 

「スンスン・・・ふ~ん・・・」

 

一頻り臭いを嗅ぐとシェルスさんは・・・

 

 

「切も好きな子にはイジワルしたい派ね?」

 

「・・・へ???」

 

「クフフ♪それじゃあね『殺人貴』さん?」

 

・・・と言ってそのまま行ってしまった

ホント、何なんだ・・・『吸血鬼』ってのはあんな人達ばっかりなのか?

 

そんなふうに考えていると・・・

 

 

「切くん!!」

 

前から僕を呼ぶ声が聞こえて来た

 

 

「む~・・・」

 

前を向くとそこには小柄な体で仁王立ちをし、フグみたいに頬を膨らませた愛しい彼女・・・『祝ちゃん』がいた

 

 

「どうしたの祝ちゃん?」

 

「む~・・・切くん?さっきシェルスさんと何してたの?」

 

「え?それは・・・(あッ!)」

 

まさか、さっきのを祝ちゃんに見られてた?!それで祝ちゃんは・・・

 

 

「『嫉妬』してくれてる?」

 

「なッ!?そ、そんなんじゃないもん!別に切くんがシェルスさんと話をしていて、それに対してモヤモヤなんかしてないもん!///」

 

「真っ赤な顔で弁明しても説得力ないよ?祝ちゃん?」

 

「ッ!?き、切くんのバカッ!変態!スケコマシ!///」

 

・・・あ~・・・

 

僕はそれから何も言わず彼女を抱き締めた

祝ちゃんはビックリして少し暴れたけど、すぐに大人しくなった

 

 

「大丈夫だよ祝ちゃん・・・僕は君の全部が好きだから///」

 

「っ!・・・切くん・・・❤///」

 

あぁ!僕の彼女はこんなに可愛い!

 

しかし、この時・・・僕はあるミスをしていた。それは祝ちゃんと抱き合ってる場所が『パーティ会場の中央』だったことを・・・

 

それに気づいた時には既に時遅し・・・

 

 

「へ~、お兄ちゃんやるぅ~♪」

 

「あらあら♪」

 

「ヤレヤレ、まったくあの二人は・・・」

 

「「わぁ・・・///」」

 

「灰村くん!羨ましいぞ!」

 

皆から注目され、顔から火が出そうな程顔が赤くなるのが自分でもわかった

 

その時、何故か僕は後ろを見た。不穏な気を感じたからだ

 

その僕の後ろには・・・

 

 

「カカカッ、カカッ♪」

 

サイダーが入ったグラス二つを持って、僕を見る吸血鬼が楽しそうに笑っていた

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




なんかキャラが崩壊してる・・・
何故、こうなった・・・?

ご愛敬という事で悪しからず・・・


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嵐の前の日常・・・4




BGMは『ジョジョ』と『コードギアス』が良い・・・



 

 

 

インサイド

 

 

 

夏休みに入ってもう2週間ちょいが経った

 

ウィッチー家に養子に入ったシャーロットも周囲と慣れ、数日前に日本に帰って来たエミリーやシェルスとも仲が良好だ。今ではウィッチー卿やオクロック、ガントレット共々姉妹のようになってしまっていて、男一人の俺は肩身が狭い

 

それに俺達と因縁があったクライムエッジ改め『灰村 切』や髪の女王こと『武者小路 祝』ちゃんとも早くに打ち解けてちょっと悔しい・・・今日この頃・・・

 

今日もクソ暑い外に出ずにダラリとクーラーがキンキンに冷えた部屋でアイスキャンディーをカジりながら学園から出された大量の『宿題』という名のフリークスを討ち取っていた・・・んだが・・・

 

 

「・・・なんで『お前等』がこの場所を知っている?」

 

「え~と・・・」

 

何故かウィッチー邸の門の前に立っている『金髪』、『銀髪』、『水色髪』に俺は疑問を投げかけていた

 

 

「ここは学園側にも知らせてない場所なんだが?」

 

「そ、それは・・・」

 

門に寄りかかりながらアイスキャンディーをかじる俺に白のハットにワンピースの金髪こと『セシリア』がモジモジと口を渋る

 

 

「シャルロットに教えてもらったのだ」

 

「ちょっ、ラウラさん!?」

 

あ~・・・やっぱりか・・・そういや、休みに入る前に携帯の連絡ツール交換してたしな~・・・てか

 

 

「俺、今日遊びに来るとか聞いてないんだが?」

 

「それは・・・サプライズってやつ・・・をしようと思って・・・でも」

 

「でも?」

 

「シャルロットが迎え出てくれる・・・予定だったんだけど・・・」

 

予定外に俺が出迎えちまって事か・・・

道理でシャーロットが昨日からソワソワしてた訳だ。でも残念、等の本人は夏バテと言う名のフリークスに呑まれてグロッキー状態。リビングのソファーでウィッチー卿やエミリーに看病されている

 

 

「しかし、困ったな・・・」

 

「何がですの?もしかして何かご用事がありましたか?」

 

「いやな――「どうしたのアキト?お客さん?」」

 

「あ、貴女は!?」「貴様は!?」

「・・・『シェルス』さん・・・」

 

たむろっていると後ろから甚平姿のシェルスが声をかけてきた・・・てか、それ俺の甚平!

 

 

「あら、簪にセシリアにラウラちゃんじゃない。どうしてここに?」

 

「何故、私だけ『ちゃん』付けなのだ?」

 

「なんかシャーロットがサプライズで呼んだらしい。あと、シェルス・・・それ俺の甚平だよな?」

 

「いいじゃない。『俺のモノは俺のモノ、お前のモノは俺のモノ』って格言が日本にはあるでしょ?」

 

「お前は何処のガキ大将だよ!?」

 

このマイペースドラキュリーナめ・・・まぁ、似合ってるから許すけども

 

 

「な、ななな!//」

 

「おん?どしたよセシリア?」

 

たわいもない話をしてるとセシリアが赤い顔をしながら携帯のバイブレーションみたいに震えた

 

 

「ふ、//」

 

「「ふ?」」

 

「フレンチですわ!//」

 

「「フレンチ?」」

 

「・・・ハレンチじゃないの?」

 

あぁ、ハレンチか・・・って!

 

 

「なんでだよ!?」ガビーン

 

「まぁ、それよりこんな暑い中で話しないで中に入らない?アイスキャンディーがあるわよ」

 

「おぉ!」

 

ラウラは目を輝かせた。なんか改めて見るとラウラってエミリーと似てるよな~。無垢って言うか、子供ッポイと言うか・・・

 

ま、そんな訳で3人を屋敷に招き入れた・・・ウィッチー卿に説明しないとな

 

 

 

―――――――――

 

 

(屋敷内にて・・・)

 

 

 

「おや?君達は?」

 

「お客~?」

 

クーラーのきいた部屋ではソファーに横たわるシャーロットに団扇で扇ぐウィッチー卿とエミリーがいた

 

 

「うぅ・・・う?アレ?皆?」

 

どうやらグロッキーシャーロットも此方に気づいたようだ

 

 

「大丈夫か?!シャルロット、何があった!?」

 

「いや、ちょっと・・・夏バテでね?」

 

食欲ないって言って素麺ばっか食ってるからだ。肉を食え肉を

ラウラが「夏バテとはなんだ?」みたいな疑問符を浮かべてんぞ

 

 

「アキト?それよりこの娘達は誰だい?」

 

おおっと、そうだったそうだった

 

 

「こっちは学園の愉快な仲間達だ」

 

「なんですか、そのおざなりな紹介は!」

 

俺の言葉にセシリアが噛みつく

 

 

「もうちょっとちゃんと紹介してくださいまし!」

 

「悪かったよセシリア、そう怒んな。こちらは右からイギリスの―――」

 

「国家代表候補生のセシリア・オルコットですわ!IS学園ではアキトさんにとても『良く』してもらいましたわ!」

 

 

―――って、お前がするのかよ!?

あと、なんか所々イントネーションが強いのは何でだ?

ま、気を取り直して・・・

 

 

「それでこっちが―――」

 

「ドイツ国家代表候補生のラウラ・ボーデヴィッヒだ。それとアキトは私の『嫁』だ!」

 

オイ・・・オイオイオイオイオイオイオイ!

ラウラちゃん?君は余計な事を言わないの!シェルスの眼光が鋭くなってるから!

ウィッチー卿?朗らかな顔して『凄味』を出さない!

エミリー!ニヤニヤするなぁ!

 

 

「ラウラ、俺はお前の『嫁』さんじゃあないからな」

 

「む、そんな事を言うな。私とお前の中じゃあないか」

 

だから、この子は・・・人の話を―――

 

 

「なら、ラウラはアキトの『眷属』なの?」

 

「な!?ば、バカッ!?」サッ

 

「ふがっ」

 

「ん?『眷属』ってなんですの?」

 

俺は慌ててエミリーの口を押さえる

俺の『正体』をシャーロットやセシリア、ラウラは知らない。平穏の為にも知られたくはない

その気を感じてくれたのか・・・

 

 

「ま、そんな事は置いといて・・・続けましょ」

 

シェルスが助け船を出してくれた。なんとかウヤムヤになり、引き続き紹介を続ける

 

 

「私は更識簪です・・・よろしく・・・」

 

「ん~?」

 

「え・・・なに?」

 

簪が自己紹介をすると何故かエミリーが近づきジロジロと顔を見た。暫く観察すると

 

 

「ウィッチー、この子『インテグション』に似てる」

 

なんて言い出した

 

 

「確かにそうだね。同じ眼鏡属性だからかな?」

 

「いんてぐしょん?」

 

確かに言われてみれば『あの子』に似てるよな簪って。容姿的にも色々と

 

 

「???」

 

簪は頭に沢山の疑問符が浮かべてるよ。この後、ウィッチー卿とエミリーの紹介をした

 

 

「んで、シャーロット?体は大丈夫か?」

 

「何か食べれるモノある?」

 

「うん・・・大分よくなったよ」

 

「そうですわ!」ピコーン

 

どうしたセシリア、頭の上に電球が光ってんぞ

 

 

「アキトさん、食材はありませんか?」

 

「食材?」

 

「(なんだろう、嫌な予感しかしない)」

 

「もうすぐお昼ですし、私がお昼を作りますわ!突然来たお詫びも兼ねて」

 

「「ッ!」」ビクゥッ

 

なんかシャーロットとラウラが怯えるようにビクついたぞ?

 

 

「それは良いわね。セシリアの料理は美味しいってアキトから聞いていたし」

 

「そうなのかい?それは楽しみだね」

 

そうだな。セシリアのサンドイッチとかクッキーとか美味かったしな

 

 

「ちょっ、ちょっと待ってセシリア!今日はこの暑い中に歩いて来たんだよね?だったら無理しなくて良いからね!」

 

「そ、そうだぞセシリア!」

 

なんかシャーロットやラウラが必死なのはなんでだ?

 

 

「でも今日は料理担当のエーヴェルやヘレンは仕事でいないよ?」

 

「あ・・・」

 

そうなんだよな、今日はオクロックやガントレットも『外の仕事』でいないんだ

 

 

「今日は俺とシェルスが作るつもりだったけど、セシリアが作ってくれるなら任せようかな」

 

「はい!お任せあれ!」

 

「「あ~~~・・・!」」ガクン

 

「大丈夫かい?シャーロット?」

 

さっきからシャーロットとラウラの動きが激しいな

 

 

「なら・・・私はセシリアさんの手伝いをする」

 

「えみりーもする~!」

 

「お!お手伝いとは偉いなエミリー」ナデナデ

「えへへ~♪もっと撫でてアキト!」

 

「む・・・」

 

「おん?なんだよ簪?あ、そうか・・・」ナデナデ

「ん・・・///」

 

なんか簪が不機嫌な顔したけど撫でてやったら機嫌が直った

 

 

「むぅ!私も手伝うぞ!」

 

「そうか。頑張れよラウラ」

 

「な・・・撫でてくれないのか?」ショボン

 

「おん?・・・あぁ、はいはい」ナデナデ

「ん・・・悪くない///」

 

なんかこうして撫でてると子供を持ったようだな

 

 

「アキト!」「アキトさん!」

 

「おん?なんだよウィッチー卿にセシリア?」

 

「ボクも撫でて!」「私も撫でてください!」

 

「なんでだよ・・・」

 

「フフ♪」

 

「ハハハ・・・(良いなぁ~・・・)」

 

笑うなシェルスにシャーロット

 

そんなこんなで料理に移っていく。俺とシェルス、ウィッチー卿にシャーロットは待ってる事にした

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

キッチンには金、銀、水色、赤の四人が集まっていた

 

 

「さて、何を作りましょうか?」

 

「はーい!」

 

セシリアの言葉にエミリーが元気良く、手を挙げる

 

 

「はい、エミリーさん」

 

「えみりー、パスタが食べたい!このところソーメンばっかりだったから」

 

「そうですわね。それなら夏バテのシャルロットさんも食べる事ができましょう」

 

「それで何味にするの?」

 

「そうですわね・・・」

 

セシリアは考える

 

 

「ミートソースはどうだ?」

 

「パスタ麺にカペッリーニがあるよ」

 

「和風・・・」

 

「スープパスタ!」

 

「シーフード!」

 

「烏賊墨!」

 

「カルボナーラ」

 

「バジルソース!」

 

考え込んでる間に次々と案が出る・・・その結果・・・

 

 

「じゃあ全部入れましょう!そうすれば掛け算方式でもっと美味しくなりますわ!」

 

「「「お~!」」」

 

盛り上がるキッチン

はてさて・・・どうなる事やら・・・?

 

 

 

 

 

 

 

数十分後・・・

 

四人の手で作られたパスタが出来上がり、テーブルの上に並べられた

 

 

「こ・・・これは?」

 

シャルロットは恐る恐るセシリアに聞く

 

 

「皆で作ったオリジナルパスタですわ!」

 

テーブルの上にあるパスタは百々目色をしており、異様な湯気が出ていた

 

シャルロットは少しヨロッと傾き、隣にいたラウラに詰め寄った

 

 

「(ラウラ~?!」ボソリ

 

「(すまん・・・セシリアを止める事が出来なかった」

 

「(そ、そんな~・・・」

 

シャルロットはその事を聞いて血の気が引いた

 

 

「どうかしましたかシャルロットさん?」

 

「う、ううん!なんでもないよ!それよりセシリア?」

 

「ん?なんですの?」

 

「このパスタ・・・味見した?」

 

ゴクリとシャルロットは固唾を飲んだ。その質問にセシリアは・・・

 

 

「そう言えばしていませんでしたわ」

 

「!」ガーン!

 

ケロッとそう答えるセシリアにシャルロットは気を失いそうになり、ラウラは申し訳なさそうにうつむいた

 

 

「えみりー、お腹ペコペコ!早く食べよ~!」

 

「そうだね。それじゃあ、いただきまーす」

 

そんな事とは露知らず、ウィッチー達はフォークにパスタを巻き、口に運んだ

 

 

「あ!?」

 

シャルロットは小さく悲鳴をあげた。ラウラは諦めるように目を細めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「美味しい!」」」「美味い!」

 

「「・・・へ・・・?」」

 

予想だにしない答えに二人はスットンキョウな声をあげた

 

 

「このドロッとした感じが良いわね」

 

「それに酸味があって、また口に運びたくなる」

 

「おいし~♪」

 

「やっぱり美味いな♪」

 

「そうでしょうそうでしょう!皆さんに喜んでもらえて嬉しいですわ!」

 

「そんなバカなッ!?」とシャルロットやラウラは声に出せない叫びを心中であげた。そして、それを確める為にその百々目色パスタを食べた

 

 

「「お、美味しい・・・!!!」」

 

そのパスタの異常な美味しさに二人は目を見開き、顔を合わせた

 

 

「ど、どうして・・・?」

「な、何故だ・・・?」

 

今、目の前で起こっている状況に納得できない二人は料理を手伝っていた一人のある人物を見た!

その人物は二人の視線に気づくと・・・

 

 

「・・・」ブイッ

 

Vサインを二人に出した

 

 

「「か、『簪』・・・!」」

 

あのセシリアの独壇場の料理でたった一人、簪だけは気づかれないようにフォローしていたのだ!

 

二人はそんな簪に感謝をしながら百々目色のパスタを食べた

 

 

「そう言えばアキト?」

 

「なんだよ簪?」

 

「今日は何かあるの?門の前で何か言おうとしてたけど・・・」

 

アキトは簪の言葉に思い出したように答えた

 

 

「おん?あぁ、今日は近くで『夏祭り』があるんだよ。それに参加するのに家をあけるんだが・・・良かったら皆で行くか?良いよな?ウィッチー卿?」

 

「あぁ。シェルスも良いかい?」

 

「もちろんよ。大人数の方が楽しいわよ」

 

こうして、結構な人数分で夏祭りに行く事と相成った

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





オリジナルが強くなる今日この頃・・・

次回、あのキャラが登場!

ヒント・「あろー」



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嵐の前の日常・・・5




マクロス作品の『歌』はどれも良い・・・



 

 

 

インサイド

 

 

 

昼間はノンベンダラリと皆でボードゲームをしたりして過ごし、親交を深めた。そして・・・

 

 

ワイワイ・・・ガヤガヤ・・・

 

外はトップリと暗くなり、辺りは人の賑わい声がひしめき、屋体からは食べ物の良い匂いが漂う・・・

 

 

「わぁ~い♪」タッタッタ

 

「おいエミリー!走るな!」

 

「フフ♪転けないでくれよエミリー?」

 

俺はウィッチー卿の乗る車椅子を押しながら、俺達の前を無邪気に走るエミリーに注意する

 

 

「てかウィッチー卿、浴衣の着付け出来たんだな」

 

「これでもウィッチー家の当主だからね。それに日本の夏祭りには浴衣でなくてはダメだと聞かされていたしね」

 

「・・・因みに誰からそれを?」

 

「え?教授からだけど?」

 

やっぱりアイツからか・・・

 

今のエミリーを見たら、あの教授は泣いて喜ぶだろうな~・・・

 

無垢な赤い髪に合うような白をベースにした浴衣。似合ってんな~・・・

 

 

「む・・・アキト?エミリーに見とれないでよ。君も教授のようにロリコンなのかい?」

 

「まさか!あの浴衣が似合ってるなって見てただけだよ」

 

「そう・・・なら、ボクはどう?」

 

「おん?」

 

「ボクの着ている浴衣はどう?」

 

見返り体勢でウィッチー卿は俺を見る

 

 

「そうだな・・・ウィッチー卿の美しい金の髪に合った白と紫をベースにした浴衣・・・良いセンスだ」

 

「・・・フフ♪ありがとう。お世辞でも嬉しいよ・・・アキト・・・///」プイッ

 

そう言ってウィッチー卿はソッポを向く。耳まで真っ赤だ

照れるなら最初から言わなきゃいいのに・・・

 

 

「・・・なにかなアレは?」

 

「むぅ・・・何か引っ掛かるな」

 

「後ろから見ていると・・・まるで夫婦のようですわ」

 

・・・夫婦か・・・

 

後ろについてくるセシリアやシャーロット、ラウラが聞こえないような声で喋るけど・・・聞こえてんだよ。流石は吸血鬼ear・・・良く聞こえる!

 

 

「アキト・・・?」

 

そうしてるといつの間にか隣に簪がいた。ウィッチー卿から借りて着付けた淡い水色の浴衣を着ている

 

 

「どうした簪?」

 

「シェルスさんは・・・どうしたの?」

 

「あぁ、シェルスは―――」

 

シェルスは俺達と一緒に屋敷を出たが、『ある事』の為に別行動をしてる。その『ある事』を『カタギ』である簪達に言う訳にはいかないんで、なんとか誤魔化した

 

 

「アキト~食べる~?」

 

エミリーがリンゴ飴を片手に走って来る。って

 

 

「お前、コレ食いさしじゃあないか」

 

「もういらな~い!アキト食べて~」

 

「オイオイオイ・・・勿体ないだろエミリーさん・・・ヤレヤレだぜ・・・」

 

俺は仕方なくエミリーの噛じりさしのリンゴ飴を受けとり、噛じる。美味いなコレ♪

 

 

「ちょ、アキトさん!?///」

 

「おん?なんだよセシリア?」

 

「そ、それ・・・!///」ワナワナ

 

セシリアが何故か震えながら俺の持つリンゴ飴を指差す。なんだよ食いたいのか?

 

 

「あ、アキト!そ、それは間接キスになるんじゃないかな!?///」

 

「おん?」

 

まぁ、確かに間接キスになんのか・・・んでも

 

 

「俺は気にしないし」

 

「「気にして(ください)ッ!///」」

 

「フフ♪言われてるねアキト?」

 

笑ってないでエミリーを押さえてくれよウィッチー卿?アイツ、はしゃいで何処に行くかわからんから

 

と、んな事をしてると・・・

 

 

「アキト?」

 

「おん?何だよラウラ?」

 

何だかラウラがモノ欲しそうにリンゴ飴を見る

 

 

「・・・いるか?」

 

「良いのか?!なら・・・」カプリ

 

目を輝かせながらラウラは俺が差し出したリンゴ飴を噛じる。そして・・・

 

 

「美味い!美味いなアキト!」ニコー

 

ニンマリ笑顔を浮かべる・・・教授がいたら鼻血モノだな

 

 

「さ、流石はラウラッ!」

 

「私達に出来ない事を平然とやってのけますわ!」

 

「えと・・・そこに痺れる憧れ・・・る?」

 

・・・なんでそんな流暢な事言ってんだ?あと、簪、最後に『?』をつけるな。ウィッチー卿、口元押さえるな。笑うなら笑ってくれ

 

そんなこんなで皆で祭りを楽しんでいた・・・

 

 

 

 

 

 

 

・・・んだが・・・

 

 

 

「あれ?アキトじゃないか?『鈴』?」

 

「え?・・・ホントだ。アキトじゃない!それにセシリア達も!」

 

「あら!?『一夏』さんに鈴さんじゃあありませんの」

 

・・・なんで『コイツ』らがココにいるんだよ!?

 

 

「・・・どうしてココに?」

 

「え?俺や箒の家、この近くなんだよ。それで―――」

 

オイ・・・オイオイオイオイオイオイオイオイオイ、マジかよ!よりによってコイツの家が近くかよ?!

 

 

「それよりなんでアキト達がココにいるんだ?」

 

「いえ、実はですね――「ボクが彼女達を正体したのさ」――ってウィッチーさん?」

 

セシリアの説明にウィッチーが口を挟んだ

 

 

「アンタは?」

 

「ボクはヴァイオレット・ウィッチー。一応、アキトやシャルロットの後見人さ」

 

ちょっ!?ウィッチー卿?!

 

 

「そうなのか。俺は織斑一夏だ」

 

「へぇ・・・君が世界で最初の・・・」

 

ウィッチー卿は目を細め、織斑を見ると手慣れたようにニコリと作り笑いをして手を出し、握手をした。そして横目で隣にいた黄色の浴衣の鈴を見た

 

 

「それでそちらは織斑くんの彼女さんかな?」

 

「え、は、あ、私!?///」

 

鈴よ、動揺するな。バレバレだぞ

 

 

「え?違うよ、鈴はただの幼馴染みだ」

 

「・・・む・・・」

 

織斑ァ・・・お前はバカか・・・

 

鈴はイッキに不機嫌になるのが手に取るようにわかるぞ

それとウィッチー卿、また笑いを堪えてんのかよ

・・・貴女も好きね

 

 

「それより一夏さん?箒さんが居ませんけど・・・どうかされましたの?」

 

そう言えばあの人間見ないな・・・

 

 

「箒なら『神楽』をする為に準備してるぞ?」

 

「かぐら・・・なんですか?それは?」

 

「『神楽』・・・昔からある固有の『舞』みたいなモノだ」

 

「ダンス・・・かな?」

 

「そんな感じだな」

 

それをあの人間がしてるとは・・・曲がりなりにも・・・か

 

 

「それオモシロそう!アキト!見に行こう!」

 

「ハイハイ、わかったから袖を引っ張るな」

 

はしゃぐエミリーを押さえながら、俺達は神楽が行われる舞台に行った。舞台の周りは多くの人間が集まっていた。そして、神楽がはじまった

 

―――シャン・・・シャン・・・♪―――

 

「おぉ~!」

 

「これが日本文化か!」

 

「綺麗~・・・」

 

巫女服を纏った少女が神楽を舞う姿に外国人組は感嘆の声をあげた

 

確かに神楽は美しく、素晴らしいモノだった

・・・でも・・・

 

「・・・アキト?」

 

「・・・いや、なんでもないよ簪・・・」

 

 

何故か、この現状に俺は違和感を感じてしまうのだ。例えるのなら、水に浮かぶ油のように・・・

 

たまに俺はこの感覚をおぼえる。それは俺が『普通』とは違う『化物』だからだろうか?それとも・・・

 

 

そんな憤りと寂しさにも似た感情を持ちながら、俺達を最後まで観覧した

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

アキト達が祭りを楽しんでいる・・・その裏で・・・

 

 

「しゃ~しゃしゃしゃ♪もうすぐ『表』の祭りが終るであろ~」

 

「終わったらすぐに『裏』の祭りが開催されますね!」

 

「そうであろー!今回はウィッチーがスポンサーについておるから『賞品』が楽しみであろ~」

 

ある『山羊』と『袋』がクツクツと笑っていた

 

 

「ちょっとお二人とも?笑ってないで準備して」

 

そんな笑う二人に赤い髪の女性が注意をする

 

 

「そうであったそうであった!今回は1位を取るであろ~!『ヴァレンティーノファミリー』ファイトォ!」

 

「ドオォォンンンッ―――!」

 

こんな騒がしい中、『裏』の祭りが着々と準備されていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





心理的描写は難しい・・・

でも謎的な感じが出た・・・かな?

次回は色々登場!


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嵐の前の日常・・・6


今回はキューティクルネタが多いです



 

インサイド

 

 

 

現在の時刻・・・22:00

 

21時位には『表』の夏祭りも御開きなり、俺達はシツコイ織斑共と別れると真っ直ぐウィッチー邸に戻った

 

セシリアやラウラはウィッチー卿の進めで泊まる事になった。一応、簪に「家まで送る」と言ったんだが・・・

 

 

「・・・帰りたくない・・・」

 

・・・と言ってきたので泊める事になった

 

一時はセシリアやラウラ、シャーロット、簪、エミリーは一緒の部屋でキャイキャイと騒いでいた。しかしその内にエミリーがお眠の時間となり、次々と眠っていった

 

 

「ふぅ・・・やっと眠ったか・・・」

 

これより先は『普通』ではない『祭り』の時間・・・

 

真ん丸お月さんが輝く夜に俺は眼を紅くし、背中に翼を生やした

 

 

「お手をどうぞ?ウィッチー卿?」

 

「優しく頼むよ『アーカード』?」

 

屋敷の中庭からウィッチー卿の乗る車椅子ごと担ぎ上げ、『裏』の祭りの会場へと飛んだ

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ノーサイド

 

 

 

『月が輝く真夏の夜に今年も『祭り』の季節がやって来たァッ!!』

 

「「「「「うおぉぉぉぉぉッ!」」」」」

 

『表』の夏祭りが行われていた場所の裏側で厳つい者達の声が轟く

 

 

『さぁ!俺達の祭りをはじめよう!ウグイス嬢はこの人!ヴァレンティーノファミリーが誇る、天才科学者『ノア』!それではノアさん、どうぞ』

 

ここまでMCをしていた人物から小柄なヴァイオレットの髪を持つナース服の少女にマイクが渡された

 

 

『ありがとさん。それでは今回のメインイベント!全国裏組織、夏のトライアスロン『敵揶祭~花火のように散ってこそ~』をはじめるでぇ!』

 

『『『『『うおぉぉぉぉぉッ!』』』』』

 

敵揶祭の会場には多くの『カタギ』じゃない人達が騒いでいた

 

 

『あと、なんか優勝賞品が増えたでー。トロフィーと賞金の他に副賞つくでー。刀鍛冶『大場宗真』のバカ弟子『鬼塚鉄謙』の身柄や。日頃の恨み晴らしたいヤツはチャンスやで~。ピチピチ18歳がいらんヤツはウチに献体ヨロシクー♥』

 

「んー!んー!」ジタバタ

 

放送のテントではヤギと袋に段ボールの箱に詰め込まれる赤い髪の男がいた

 

 

「コーラコラコラ、賞品で遊ばんでや。出場するんやろ?さっさと準備してや」

 

ノアはヤギと袋に注意する。そんなヤギと袋は暴れる鉄謙を担架に乗せる

 

 

「箱に入らないのでせめてリボンを」

 

「んーッ!」

 

「騒がしいヤツやな、注射でもうって鎮めたろか?」

ブスッ

 

ノアはジタバタ暴れる鉄謙に注射を刺した

 

 

「そういや、ドン達に賭けとるヤツ、あんまりおらんで。万馬券になっとる」

 

「なんと!ヤギでも万馬!!」

 

注射された鉄謙を袋ことロレンツォが子守唄を歌う

 

 

「ねんねんころりよ~おころりよ~♪」

 

「一番人気は『大矢親子』とアキトとシェルス姉のペアやな」

 

「ほほー」

 

そんな話をしていると・・・

 

 

「あんなデカブツと弟分達に負けてられるか」

 

手錠を首にかけた『三澤夏輝』を連れたガブリエラが現れた

 

 

「姐さん、手錠やて・じょ・う。首輪とちゃうで」

 

「なんじゃガブリエラ、夏輝と出るのであろーか?頼りないであろ~」

 

「いやコイツ、影が薄くて、頭も悪いがアキトにつぐ怪力で足も速いんだぞ。頭は悪いが」

 

「2回言ったス!?」ガーン

 

「そーいやいつも『もやし』おぶって走っとったな・・・それよりドン?アキトはまだ来とらんのか?」

 

「そうなのよ」

 

「「「「わッ!?」」」」

 

いつの間にか、シェルスがノアの隣にいた

 

 

「び、ビックリしたっス!」

 

「あら夏輝、久しぶり」

 

「お久しぶりっス!シェルスさん!」

 

「あ~!相変わらずバ可愛いわね~♪」ナデナデ

 

「『バ』は余計っス!」

 

シェルスは夏輝の頭をぐしぐしと撫でる

 

 

「それよりシェルス、あのバカはまだ来てないのか?もうすぐはじまるぞ?」

 

「そうなのよ、ウィッチーと一緒に来るって言ってたんだけど」

 

「あろ?なんでウィッチーと来るであろ~?」

 

「実は―――」

 

シェルスはドン達に事情を説明した

 

 

「―――なのよ」

 

「そうやったんやな・・・あ、だから祭りの準備に来なかったんか~」

 

「それでもシェルス、心配だな」

 

「?・・・なんでよ?」

 

ニヤニヤと笑顔を浮かべるガブリエラにシェルスは怪訝な顔をした

 

 

「だって、アキトはウィッチーと『深い仲』なんだろ?心配だろう?」ニヤニヤ

 

「そうであろ~。心配であろ~」ニヤニヤ

 

周りはニヤ気顔でシェルスを見るが・・・一方のシェルスはポカンとした後にクツクツと笑った

 

 

「シェルスさん?何が可笑しいんスか?」

 

「だって、私はウィッチーより、アキトとは『深い仲』よ?」ニヤ

 

その顔は自信に満ちていた

 

 

「こ、これが『正妻』の余裕っスか?!」

 

「そうであろー・・・」

 

「あら?噂をすれば」

 

「あろ?」

 

ドンがシェルスの声に反応し、夜空を見た。するとそこには・・・

 

 

「WRYYYYYYYYYYY~!」

「きゃあぁぁぁぁ!」

 

大きな翼を広げ、ウィッチーが乗った車椅子を担いで飛ぶアキトがいた。そのままアキトはテントの前に着陸した

 

 

「俺・・・参上ッ」

 

「遅いであろー!アキト!」

 

「いや、ゴメンゴメン。ウィッチー卿を担いでたら案外スピードが出せなくてね」ガシャン

 

「それは・・・どういう意味・・・だい?」

 

ウィッチーは目を回しながら、アキトを睨んだ

 

 

「大丈夫、ウィッチー?」

 

「久しぶりにジェットコースターに乗った気分だよ・・・」

 

「もうアキト!祭りのスポンサーを酔わせたらおえんで!」

 

「結構、スピード落としたんだけどな・・・ごめんよウィッチー卿」

 

アキトは頭をかきながら、ウィッチーに謝った

 

 

「まぁええわ、ウィッチーさんはこっちで手当てするから、皆はさっさと移動してぇな。はじめるで」

 

「「「「「「ハーイ」」」」」」

 

ノアの声に6人は会場へと向かった

 

 

「ヤレヤレやで・・・」

 

「フフ♪だね・・・」

 

ノアが溜め息を吐いていると・・・

 

 

「ノア」

 

・・・とノアを呼ぶ声が聞こえた。振り返るとそこには見知った顔の『佐々木優太』と『野崎圭』がいた

 

 

「優太!来とったんか」

 

「『九条組』の蔵見さんの相方が変更になったんで、申込みに・・・」

 

「ノアはずっとここにいるの?」

 

「これからゴール地点に移動すんねん。一緒に来たらええよ」

 

「行く行く~~!」

 

「久しぶりだね圭くん?」

 

「はい!お久しぶりです!ウィッチーさん!車椅子押しましょうか?」

 

「うん。頼むよ」

 

こうしてノアとウィッチーは優太達とゴール地点に行く事になった。ついでに副賞になっている鉄謙を連れて

 

 

「ねえ大丈夫?!ねえっ」ユサユサ

 

「たぶん起きないよ。麻酔でも射たれてるんだろう」

 

「え~・・・」

 

圭は車椅子を押しながら担架と並走し、その上で白目をむく鉄謙をゆすった。そんな事は他人事にノアと優太は話をする

 

 

「レースの様子は見れないの?」

 

「監視カメラがあちこちにあんねん。ゴール地点の放送テントの方でモニター出来るで。レース中は追跡カメラ使うしな」

 

「へ~」トコトコ

 

「レースは簡単や。各所で待ち構える的屋の課題をクリアして進むだけ!最後にゴール地点の花火を打ち上げればゴールや」

 

「危なくはないの?」

 

「殺しは失格やけど、武器所持は自由や。飛び入りでもくじ引きで買えるで?」

 

「的屋で本物売ってんの!?」

 

驚愕する圭にノアはヤレヤレと首を振った

 

 

「当たり前やで助手。ここは裏組織の祭り会場やで?なんでもありや。ヤクザもマフィアも人狼も・・・ついでに吸血鬼もな」

 

「お、おう・・・」

 

「やっぱり日本の祭りは一味も二味も違うね」

 

そんなこんなでゴール地点の放送テントに着く。着くとノアはマイクを手に取り口を開いた

 

 

『んじゃ、そろそろ始めるで~。全国裏組織夏祭りのメインイベント!『敵揶祭~花火のように散ってこそ~』スタート!!!』

 

『・・・って言ったらスタートね』

 

ガクッ!と会場の参加者達は膝を着いた

 

 

「「「「「「「「ベタな!!!」」」」」」」」

 

『コラ優太!いらんこと言うな!』

 

「「「「「「「「え!?どっち!?」」」」」」」」

 

そんなハプニングもありながら、『裏』の祭りははじまった

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




次回ぐらいで最後・・・


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嵐の前の日常・・・7




コイツで仕上げ・・・

アキト「今回も毛探偵達との絡み」

あと、初めての7000字越え・・・驚き!



 

 

ノーサイド

 

 

 

その日、キューティクル探偵こと『因幡洋』は依頼人の『大矢太朗』の父親、通称『船長』を探すためにこの場所に来ていた

 

・・・のだが・・・

 

 

『的屋の難題越えて、ゴールの花火を打ち上げろ!全国裏組織、夏の最大イベント『敵揶祭~花火のように散ってこそ~』スタートせいや!』

 

ダッ!!!

 

紆余曲折あり、『九条組』の若頭『蔵見虎泰』と共に敵揶祭に参加していた

 

ギュン!

 

『おお~!速い速い大矢親子!さっすが本命馬、初っ端から魅せるねー!』

 

まず先頭にたったのは白い髪の大矢親子、その後ろを追いかけるのは・・・

 

 

『おっ?』

 

┣"ン

 

『二番手は我らがヴァレンティーノの女帝『ガブリエラ』や!』

 

ガブリエラと夏輝ペア、観客はそれに騒ぐ

 

 

「「「姐さ~ん♥♥♥」」」

 

「うるせぇッ、撃つぞ!」

 

『レース中でもファンサービス忘れず罵倒や!敵揶祭の華の1つやな。ポロリもあるで』

 

「ねーよッ!!」

 

その遥か後ろを因幡達は走っていた

 

 

「はえーな、アイツら・・・」

 

「急ぐか?鉄謙は大矢に任せるとして・・・探偵さんはどうする?」

 

「もちろん、ヤギ逮捕だ。あっ、そうか、お前、優勝狙ってんのか」

 

「いいよ。あの親子と吸血鬼さん達が出てちゃあ諦めもつく・・・あ」

 

因幡と話をしている途中で蔵見は何かを思い出したように声をだした

 

 

「どした?」

 

「敵揶祭の中での喧嘩は一切不問だ。喧嘩も祭りの華ってヤツでね。それ目的で出てるヤツも少なくない」

 

「つまり?」

 

「つまり、悪いんだけど―――」チャキ

 

「喰らえ虎ぁッ!」ブンッ

 

蔵見は腰に差していた脇差しを抜くと直ぐ様、後ろから襲って来る金属バットを防いだ!

 

ギィンッ!

 

「俺も狙われるんだ」

 

「うぉッ!危ねぇッ!?」

 

そんな因幡達の横をドンを担ぎ、ローラースケートを履いたロレンツォがガ――ッと過ぎ去った

 

「「「「「ずっりー!!なんだアレ!?」」」」」

 

「シャーシャシャ♪これも武器であろー!」

 

あまりの出来事に因幡は襲って来た輩をノシた蔵見に声を発した

 

「このままじゃ引き離される!俺らも先頭集団に入るぞ!」

 

「どうやって?」

 

「これを使って!」

 

因幡はポケットから『茶髪の毛』を取り出し、口に含んだ

 

 

「快適であろー」

 

「優勝賞金はいただきですねー」

 

余裕のドン達だったが・・・

 

 

「待ちやがれヤギ―――ッ!!」

 

「「えぇ~~~!!?」」

 

蔵見を担ぎながら虫のような羽で飛んで追いかけてくる因幡に驚愕した!

 

 

『最近の法の番犬は空飛ぶで、皆、気ぃ付けてなー!』

 

「ず、ズルいであろー!狼ィ!」

 

「うっせぇ!お前が言うなぁッ!」

 

・・・と言い争うヤギと飛行狼の後ろから・・・

 

 

「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYY !!! 」

 

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"・・・

 

叫び声が聞こえて来た!

 

 

「げッ!?こ、この声は!」

 

「おぉ!この声は!」

 

叫び声の正体は後ろから参加者達を蹴散らして行き、ついにドン達に追いついた!

 

 

「やぁ『吸血鬼』さん」

 

「おん?『ミラクル蔵見ン』じゃないか、久しぶり!あと狼も!」

 

「テメ!『吸血鬼』!」

 

叫び声の正体はシェルスをお姫様抱っこしたアキトであった

 

 

『おおっと!ここでもう1つの本命馬、我らがヴァレンティーノの鬼札(ジョーカー)『アーカード』や!』

 

「「「往生せぇ!吸血鬼ィッ!!」」」バッ

 

「無ぅうううう駄ぁぁぁぁあッ!」ドゴォッン!

「「「ぎゃあぁぁッ!?」」」

 

襲ってくる刺客をシェルスを担いだままアキトは器用に蹴散らす

 

 

『頑張れ~アーカード~』

 

『ウィッチーさんの暢気な事は置いといて、救護班急いでな~』

 

「行けぇ~!アキト~!」

 

担がれるシェルスはアキトにエールを送った

 

先頭集団は独走して行き、最初の的屋に着いた

 

 

『第一の的屋の課題は『射的』!言うまでもなく実弾やで!!』

 

射的の的は棒にくくりつけた人形の頭に的袋を被せたモノである。『的が怖すぎる!』と放送テントに圭のツッコミが響く

 

 

「よし、得意分野だ」

 

「やったっスね」

 

「・・・俺がやんのか?」

 

「・・・」グイグイ

 

「弓道の大会なら優勝したけど、銃はわかんねーぞ」

 

「シェルス、任せた」

 

「Ja~、任せて」

 

各々が射的場にあるライフルに弾を込めている中・・・

 

 

「悪いな探偵さん。重かったろ?」

 

「あぁ!超重い!でもロン毛だから許す!」ゼーゼー

 

荒く息を吐く因幡にドンとロレンツォは目をギラッと輝かせ―――

 

 

「狼ィい!クタバるが良かろ―――ッ!」

 

ライフルを因幡に向け、引き金に指をかけたが・・・

 

ドンッ!とガブリエラのライフルが火を吹き、ぶばッ!とドンの額を撃ち抜いた!

 

「首オォォ領!!!」

 

「ガブさん!?何やってんだよッ!?」

 

「あ・・・つい・・・クセになってるな」

 

「「クセになってるな」じゃないわよガブリエラァ!!」

 

一方で・・・

 

 

「(今のうちに)」ドンッ

 

大矢太朗がライフルを的に向けて撃った。ビシャッ!と人形の頭に穴が開き、ダラリと赤い液体が垂れた

 

 

「ッ!?」

 

大矢太朗はドキリと驚愕した。すると、ノアの明るいアナウンスが聞こえて来た

 

 

『的の中身はスイカでした~。あとでスタッフが美味しく頂くで~』

 

「脅かすな!!!」ドキドキドキドキドキ・・・

 

場面は戻り・・・

 

 

「逮捕だヤギ!」バッ

 

因幡がヤギを掴もうとしたが、ロレンツォが刀を抜いて因幡に降り下ろした!

 

ガギィンッ!

 

しかし間一髪、蔵見が脇差しを抜いて防いだ!

 

 

「首領には指一本触れさせませんよ!さぁ!かかって来なさい!」

 

ロレンツォは刀を振り回した。その刀を掴む腕につられ、ロレンツォと一緒に手錠をしているドンがぶんぶんと振り回された

 

 

「ヤギが!」

 

「ヤギが振り回されてんぞ!落ち着け!!」

 

だが、そんなロレンツォに振り回されるドンは落ち着いた口調で喋る

 

 

「狼よ!ここは1つ賭けをするであろー!」

 

「なに?!」

 

「この敵揶祭で、お主がワシらに勝ったら大人しく捕まってやろー!」

 

「お?言ったな!若、優勝狙えるぜ」

 

「いいって言ったのに」ガシャ

 

二人はグーでハイタッチをした

 

 

「ただし、ワシらが勝ったらお主の命を―ドンッ「行こうぜ!」―聞くであろ――!」

 

因幡達はさっさと次の的屋に走っていった

 

 

「急ぐであろー!狙うは優勝であろ~!」

 

「ハイ!!」

 

ドン達も続けとばかりに課題をクリアした

 

因幡は再び背中に羽を生やし、蔵見を担いで飛んだ。先に課題をクリアしたアキトとガブリエラ達を追い、ついに追いついた

 

 

「おっ先に~」

 

因幡はシタリ顔で二組の前を通り過ぎようとするが

 

 

「めっめっ!」バシバシバシ!

「だ!あだ!?」

 

「WABEEE!」バギィッ!

「ぐべらッ!?」

 

夏輝には刀のみねで殴られ、シェルスには吸血鬼パンチ(弱)を叩きつけられた。その後ろをロレンツォが猛スピードで追撃する

 

 

『さすがは駆除係!茶バネ狼にも怯まんな~。ローラーロレが火花散らして追っとるで~!』

 

「(どうなってんだ後ろは・・・?!)」

 

大矢太朗は疑問符を浮かべながら次の的屋に着いた

 

 

『お次は輪投げ!!・・・と思わせて裏大会らしく、手錠投げや!っとどや顔』

 

『そんな上手い事言ったろ感出されても』

 

「いや、見えねーよ」

 

冷静なツッコミをしながら大矢親子は手錠を手に持つ

 

 

「あのマネキンの手首に入れりゃあいいんだな。親父も投げろよ」

 

「・・・」ヒュッ

 

大矢船長が手錠を投げるとマネキンの手首がスパッと切れた

 

 

「ヘタクソ!」

 

「・・・」シャルリラ♪

 

『ヘタとか問題ちゃうで息子。大矢親子、苦戦の予感!』

 

なおも苦戦する大矢親子に次いで

 

 

「ついに来たか!俺の見せ場!!」

 

「うわ!?ボロボロだ!」

 

頭にタンコブを幾つも作り、顔面も腫れ上がった因幡達とアキトペア、ガブリエラペアが、その次にドンペアが来た

因幡は手錠を持つと――

 

 

「警察犬に生まれ、物心ついた時からコイツを触ってた・・・法の番犬の手錠捌きをとくと見やがれ!悪党に吸血鬼!」ヒュッ

 

意気揚々と手錠を投げた。しかし、手錠はマネキン手首を倒すだけだった

 

 

「見たぞ」

 

「見たっス」

 

「見たであろー」

 

「見ましたよ」

 

「見たぜ」

 

「見たわ」

 

「うるせぇ!見てんじゃねーよッ!///」

 

顔を真っ赤にして怒る因幡を余所に大矢親子がちゃっかりクリアして次なる的屋へ走っていった

 

 

『お次の的屋はイカ焼にタコ焼やで』

 

「(早食いか)」

 

大矢親子が次の的屋に着くとそこには真っ黒な水が注がれた大きな生け簀があった

 

 

『好きな方獲って来いや~!』

 

「漁獲かよ!?」

 

『水、真っ黒だよ!?』

 

『イカスミとタコスミや。気にすんな』

 

大矢親子は仕方なく生け簀に飛び込む

 

 

『大矢さんはイカに縁があるね。イカ親子って呼ぼうか』ハフハフ

 

『タコ獲ったら失格やで、イカ親子は』ハグハグ

 

『なんで!?』

 

『イカ焼って美味しいね~』マムマム

 

イカ親子の息子はスミ生け簀から顔を上げ、肺に酸素を入れていると

 

 

「ご苦労、獲物を寄越しな」

 

ガブリエラがイカ息子にハンドガンを突き付け横取りを狙った

 

 

しかし・・・

 

ウネウネ

 

大矢太朗の手には3m級のクラーケンが握られていた

 

 

「・・・やっぱいい!」

 

「遠慮するな受けとれ!」ポーイ

「「ぎゃあぁぁっ!」」

 

大矢太朗はクラーケンをガブリエラペアに投げつけた。クラーケンはガブリエラ達をプールに引きずり込む

 

 

『コラァ!イカ親子!姐さんにイカはイカンでエロすぎるで!ちゃうちゃうダジャレやなくて!でも代表して言っとく、ようやった!』

 

「ノア、後でゲンコツ10発!!」ヌラヌラ

 

「そいや!」「「とうッ!」」ドボン

 

『先頭集団がドンドン生け簀に入っとるで!ここが一番の山場や!追いつくなら今のうちやで~!』

 

なんて言ってると因幡達が生け簀にたどり着いた

 

 

「チャンスだ若!一気に差ぁつけるぜ!」

 

「「「「「「?」」」」」」

 

因幡はポケットから『金髪の毛』を取り出し、邪悪な笑みを浮かべて口に含んだ

 

「・・・ギヒィ♪」

 

「あ、あの野郎!?」

 

アキトは気づくも既に時遅し、金髪を含んだ事により因幡の体からは電撃が走った。そのまま因幡は生け簀に手を突っ込み

 

 

「『キューティクルボルト』ォォオッ!!!」

バリバリバリバリバリィ!

 

「「「「「「ぐぎゃあぁぁッ!!!」」」」」」

 

一撃必殺の電撃『キューティクルボルト』を生け簀に流した!

 

 

『『全国の外道もドン引きだよ(や)!!』』

 

圭とノアのツッコミが炸裂する。

 

 

「良し!若、タコとイカどっちが―――」

 

生け簀には白目をむいた者達が浮かぶ。それに因幡は満足し、相棒の方を向くと

 

 

「―――ってうわッ!?誰だお前!?」

 

「ははっ♪ひどいな探偵さん」

 

電撃で蔵見の頭はチリチリになり、黒焦げになっていた

 

 

「ごめんごめんごめん・・・あぁ俺のバカ!若のストレートが、サラサラストレートが・・・」

 

「良いから食べなよ」

 

謝る因幡に蔵見は露店で買ったタコ焼を進め、因幡は泣きながらタコ焼を食べていると

 

ザバッ

 

「あ、大矢!」

 

大矢親子が生け簀から這い上がって来た

 

 

「さすがにしぶといな」

 

「後は任せとけ!優勝して、鉄謙を保護。ヤギも逮捕だ♪」

 

因幡と蔵見が朗らかに話していると・・・

 

 

「誰が優勝するって・・・?」

 

「・・・え?」

 

「俺達に決まってんだろ」

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"・・・

 

大矢親子はとんでもない『凄味』を出していた

 

 

「やだ!!なんか怒ってる!」

 

『そりゃ怒るよ!!!』

 

そして、ここにも怒れる一組が・・・

 

 

「おぉん?大矢?もう一度言ってみろよ?」ザバッ

「・・・」

 

アキトとシェルスも生け簀から這い上がって来た

 

 

「あ、吸血鬼さん」

 

「お前もしぶといな」

 

「それで大矢・・・誰が優勝するって?」

 

「あ"?だから俺達に決まってんだろ」

 

「カカカ・・・寝言が言いてぇなら寝かしつけてやるぜ!」

 

「優勝するのは私達よ・・・!」

 

「・・・あ"?」

 

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"・・・

 

ぶつかり合う『凄味』と『凄味』、重苦しい圧がその場所にかかった。

 

 

『法の番犬が眠れる虎と恐怖の吸血鬼達を起こしたで!ブランクを心配去れとった息子もここで覚醒や!』

 

『久々にアキトとシェルスのあの顔見たよ』

 

「急ぐぞ探偵さん!」ダッ

 

「吸血鬼達はわかるが、アイツあんな怖いヤツだったの?」

 

睨み合う四人から逃げるように因幡達は走った

でも・・・

 

 

┣"ンッ!

 

四人は風のように因幡達を抜き去った

 

 

「「めちゃくちゃ速ぇ―――ッ!!」」

 

因幡達も負けじと走る

 

 

 

 

 

 

 

一方、生け簀では・・・

 

 

「は・・・ハローでアロー!!」

 

「「ッ!」」ガバッ

 

生け簀に浮かぶドンが突然叫んだ。それを合図に生け簀に浮かんでいた者達が一斉に起きた

 

 

「首領!ご無事ですか?!」

 

「ったくなんてヤツだ」

 

ガブリエラは虚ろな目の夏輝を起こす

ドンは眉間に大きく皺を寄せた

 

「今からでは追いつかないであろー!我らはリタイアして賞金はアキトに任せ、ゴール地点へ先回りして狼のゴールを阻止するであろー!」

 

「「おぉ!」」

 

ドン達はゴール地点に走っていった

 

いよいよレースも佳境に入る・・・

 

 

 

『さぁ!ゴールまで、あと一息!今度の的屋はカキ氷や!ジャンボカキ氷を完食せなアカンで!シロップはかけ放題。赤ーい液体入ったビンが沢山あるやろ?』

 

『あるねズラーッと』

 

『苺シロップは1つだけや・・・』

 

『あとは何ッ!?』

 

因幡と蔵見は山盛りのカキ氷を二つテーブルに置き、食べていった

 

カッカッカッカッカッカッカッ!

 

「・・・ッ!地味にキツイ」キーン

 

「これは時間かかりそうだね」キーン

 

二人は山盛りカキ氷に苦戦していた

そこに異様な『凄味』を出す四人が現れた。アキトと大矢太朗はシロップのボトルに山盛りカキ氷を入れて溶かした。それを・・・

 

 

「「ぐびぐびぐびぐびぐびぐび」」

 

「「飲むの―――ッ!?」」

 

「試合に出たからには勝つ・・・」

「獲物が出たからには狩る・・・」

 

「「誰であろうと譲らねぇ・・・!」」

 

「それが大矢だ!」「それが吸血鬼だ!」グビビビ

 

二人はラストスパートをかける

 

『皆、イッキコールや!』

「行けぇ!アキトォ!」

 

ワァァァァァ――――――――――――――――――!

 

会場の熱気が最高潮に達した・・・その時!

 

 

 

 

 

 

 

┣"オォォォォォオオオッッンッ!!!!!

 

ゴール地点が爆発した!

原因はリタイアしたドン達が誤ってゴール地点の花火を爆発させてしまったのだ

 

 

「「「「「「なんだ―――ッ!?」」」」」」

 

『なんや―――ッ!?』

 

『どこのアホや?燃えとるやないか?!』

 

『逃げようノアにウィッチーさん!圭くんを置いて!』

 

『何故あえて置くかな!?』

 

爆発の火により、放送場は炎に包まれた

 

 

放送場にて・・・

 

「鉄謙さん!起きて!火事だよ!」ベベベベベ!

 

圭は倒れた鉄謙を起こそうと殴る

 

 

「入り口が燃えとる・・・どっから出んねん」ゴホゴホ

 

「ノアしゃがんで」

 

「マズイね・・・皆、口をハンカチで押さえて」

 

四人はアタフタと慌てふためき、それがマイク越しに伝わる

 

 

『誰か助けて!』

 

その声は確かに・・・

 

 

「無駄ァッ!」バギィッ

 

「ふん!」ガンッ

 

・・・聞こえていた

 

 

「「仕事だ」」

 

太朗はくじ引きで当てた手斧で手錠を切り、アキトは手刀で手錠を切った

 

 

「若頭、人集めて消化頼む」

 

「ああ」

 

「行くぜシェルス、大矢」

 

「ええ」「おう」

 

アキト並びにシェルス、大矢はゴール地点に急いだ

 

 

「探偵さん、俺達も―――ってアレ?」

 

いつの間にか因幡もいなくなっていた

 

 

 

 

 

 

 

ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッ!

 

アキト達は現場へとかけ上がる・・・『赤い狼』に導かれて

 

その現場では・・・

 

 

「ノア―――ッ!」

 

トテトテ パシャ トテトテ パシャ トテトテ パシャ

 

ドン達は近くにあった柄杓で火事に対処していた

 

 

「これではキリがなかろー!!」

 

「火事でも冷静な判断!流石はドン!」

 

「「邪魔」」ガンッ

 

「首―――領!!」

 

ドンは走って来たアキトと太朗にシロップボトルで殴られた

 

 

「夏輝ちゃん、誰も出てないのか?」

 

「ハイっス、アキトさん!」

 

「だそうだ」

 

「ならこれでリレーしてくれ」ポイ

 

「は、ハイっス!」

 

太朗は夏輝にシロップボトルを渡した

 

 

「シェルスは『気化冷凍法』頼むぜ?」

 

「アキトはどうすんのよ?」

 

「決まってんだろ・・・行くぜ、大矢!」

 

「おう!」ザバッ

 

水を被ったアキトと太朗は火中に飛び込んでいった

 

 

 

放送場では皆は床に張り付いていた

 

「トンカチ・・・あるかな?」

 

ようやく麻酔薬から醒めた鉄謙がそんな事を言った

 

 

「なんや?寝惚けとるんか?」

 

「二度寝で永眠できるよ」

 

「本当だよ」

 

「やめなさいよ二人とも」

 

ウィッチーが変な事を言う圭と優太を叱った

 

 

「音鳴らして・・・場所知らせんと・・・」

 

「似たような形しとるで『喉頭鏡』」

 

「喉開くやつだね」

 

「ん・・・」

 

鉄謙はノアから喉頭鏡を受け取るとフラリと立った

 

 

「オイ、立たんほうがええで」

 

「危ないよ!」

 

「刀鍛冶舐めるでないよ・・・こんくらいの火で参ったりしないさ・・・タロさは必ず来る。ちゃんとここにいるって教えてやらんと・・・」カンカン

 

鉄謙は叩けばよく鳴るモノを探した。そして、それを見つけると喉頭鏡を振り上げ―――

 

 

「火の中で迷子にさせてられんさ・・・お前らも信じて待っとれ!」

 

―――降り下ろした。カ―――ンと高い音が鳴ると同時に・・・

 

 

「無駄ァッ!」ドゴォッ!

 

「全員無事か!?」

 

アキトと太朗が入って来た。それを見るとノア達は

 

 

「『信じとったでタロさ』」キリッ

「『絶対来るって信じてた』」キリッ

「『信じて待ってた』」キリッ

 

助けたあとに鉄謙が言うであろう台詞を吐いた

 

 

「言―――う―――な―――よ―――もぉ―――っ!!///」

 

鉄謙は悶えていた。大矢太朗はここまで案内してくれた赤い狼を撫でた

 

 

「ここまでありがとう。お前は賢い犬だな・・・どこの犬か知らんが」ナデナデ

 

赤い狼は嬉しそうにしていた

 

「あっちも中々賢いで」

 

「いいこだよ」

 

「ほめてあげて」

 

「いいってもぉ―――っ!///」

 

「それじゃあ皆で逃げようか・・・アキト?優しく頼むよ?」

 

「へいへい仰せのままに魔女殿。ノアもハケるぞ」

 

「了解や」

 

アキトはウィッチーとノアの手をとると背中から吸血鬼の翼を生やし、大矢太朗に気づかれないように二人を包み霧になって消えた

 

 

「なっ!?アキトさんは!?」

 

「消えた・・・」

 

 

 

その後・・・消防がすぐさま来て、火事は鎮火され事なきをえた

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

インサイド

 

 

無事に火事から逃れた俺達は部屋で眠るエミリー達に気づかれないように屋敷に入った

 

 

「ヤレヤレ・・・とんでもない事になったな」

 

「お陰で賞金もパァ・・・踏んだり蹴ったりね」

 

「・・・そうでもないよ?」

 

「「おん?」」

 

その台詞に疑問を持った俺達はウィッチー卿に質問した。すると

 

 

「スポンサー権限で二人に賞金をあげるよ」

 

「「おぉ!」」

 

「でも・・・その代わり」

 

「おん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ウィッチー卿・・・賞金を貰うのは嬉しいんだが・・・

 

 

「ン~♪アキトは冷たくて気持ち良いね~♪」

 

「・・・何ぶん吸血鬼なもんで・・・」

 

なんで賞金貰う代わりが俺の添い寝なんだよ?いつの間にかシェルスも俺の隣にいるし

 

 

「ちょっとウィッチー!引っ付きすぎよ!」

 

「え~!シェルスは何時もアキトと一緒にいるじゃあないか、たまにはボクが独占してもいいだろう?」

 

「そ、それはそうだけど・・・それでもダメ!」

 

「ケチ」

 

「ケチで結構!」

 

「・・・あの二人とも?俺を挟んで喧嘩するなよ。あと、隣でエミリー達が寝てるから静かにしてくれ」

 

「「イヤ!」」

 

「・・・ハァ・・・ヤレヤレだぜ・・・」

 

こうして夏の『裏』と『表』の祭りは過ぎて行った

 

 

 

・・・でも・・・俺はこの時、まだ知らなかった。まだ今年の夏には世界を巻き込む『イベント』があった事を・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





漸く終わったが・・・まだまだ、これはオリジナルの序章に過ぎない!



次回・・・どうしよ?


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第陸章『幻想血譚紐育』
人間達の会談・・・





今回からオリジナル感があります

わかる人にはわかるキャラをモデルにしたキャラが出ます



 

 

 

ノーサイド

 

 

 

アキト達が夏を謳歌している頃、ISサイドの人間達はある男を委員会に召喚していた・・・

 

 

「それでは・・・『轡木』殿、今年の生徒と一学期の学園について報告をお願いします」

 

「はい」

 

IS学園の学園長『轡木十蔵』は円卓に座る各国のIS関係上層部連中にこれまでの学園で起きた事を細かに説明した

 

 

「『ゴーレム』の襲撃に『VTシステム』の暴走、そして『銀の福音』の鎮圧」

 

「いやはや、今年は波乱に満ちていますな。ハハハ♪」

 

配布された資料に目を通し、眉間に皺をよせる者、関係ないと笑う者、ロクに資料を見ない者、様々な者達がいた

 

 

「(・・・豚どもめ)」

 

十蔵は作り笑いを浮かべ、心中で悪態をついていた

しかし、円卓の中心に座っていた人物が資料を机に叩きつけた

 

パンッ

 

「「「「!?」」」」

 

「これはどういう事かしら?Mr. 轡木?」

 

叩きつけた人物はIS委員会の長『マーサ・グスト・カーバイン』女史。この人物は数あるIS産業の中で大企業と呼ばれる『グスト社』のCEOである

 

 

「どういう事と言うと?」

 

「とぼけないで。貴方、『デュノア社』のスパイの件がこの資料に書かれてないのだけど?」

 

「ほう、それは興味深い。説明してくれないかね?轡木殿?」

 

「・・・それは―――」

 

十蔵はデュノア社、シャーロットの件について円卓の者達に説明した。説明を聞いたマーサは苦虫を潰したような顔になっていき

 

 

「この件に『ゴシップ』が関わってるわね」

 

と、十蔵に確認した。それに対して十蔵は

 

 

「それはどうでしょう?」

 

と、惚けるように朗らかな笑顔で頭を捻った

 

 

「ッチ・・・(この狸が・・・)」

 

「フン・・・(このアバズレが・・・)」

 

なんだか冷たい空気が周りを包んだ。そんな空気のまま、委員会は収束していった・・・

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

十蔵サイド

 

 

 

グビリ・・・

 

「あぁ・・・ここのコーヒー不味いな・・・」

 

私は委員会の役員共に糞面倒な報告を終えて休憩室のロビーで糞不味いコーヒーを煽っていた

 

利益の事しか頭にない者・・・

生徒を邪な目で見る者・・・

そして・・・

 

 

「『裏』を知ろうともしない者・・・」

 

私はこの立場に立った時から『裏の者』達の危険性を発信してきた。しかし、ヤツらそんな事に耳を傾けずにいる

 

 

「豚共め・・・」

 

「それはアタシも入っているのかしらん?」

 

私の一人言に答えたのは男であるのに顔に化粧をし、中世の貴族を思い浮かべるような服を着た

 

 

「貴方か・・・『ラン・ジェルマン』卿」

 

「うふふ♪そんな他人行儀な事言わないの『十蔵』ちゃん?」

 

『ラン・ジェルマン』卿。あの役員共の中では異色を放つ貴族の家柄出身のフランス人だ。そして

 

 

「『ちゃん』付けはやめてくれ、私はもう五十がくるのだぞ?」

 

「ふん、なら昔の名前で呼ぼうか『銃剣』?」

 

「・・・それでいいよ『伯爵』」

 

私の『過去』を知る人物でもある

 

 

「それにしても・・・こうして話すのは何年ぶりかね」

 

「そうね・・・四年前の『騒動』以来?でもあの時は顔を合わせるだけだったし・・・ゆっくり話すのは『20年』ぶりかしら」

 

「そうか・・・アレからもう20年も経つのか」グビリ

 

そうして私はまた糞不味いコーヒーを煽り、飲み干した

 

 

 

20と数年前、『私達』は人知れず『牙』と呼ばれる『化物』を狩っていた

 

ヤツらは闇夜に潜みに人を喰らう。そんな化物を私はジェルマン卿と『もう一人』の男と共に切り刻み、撃ち倒し、封じ込めていた・・・『あの日』までは・・・

 

 

「あら、な~に~?なんか怖い顔になってるわよ銃剣?『彼』の事でも思い出してた?」

 

ジェルマンは私の顔に手を添える

 

 

「いや・・・それにしても君は変わって、変わらないな」

 

「『変わって、変わらない』?どうゆう意味?」

 

「その『容姿』だよ」

 

「はぁ?」

 

20年も前のジェルマンは女性に見間違う程の美男子で化粧も薄かったのに・・・今じゃあ厚化粧を顔に塗りたくっていてケバい

 

 

「余計な御世話よ!」

 

「それでも君は『あの頃』とちっとも変わらない『若さ』のまま・・・まるで」

 

「『吸血鬼』みたい?私はまだ『再生者』よ。このおバカ」

 

「『リジェネーター』、『再生者』か。久々に聞いたよ、その言葉」

 

『再生者』―化物を倒す為に化物と同じになる術式だ。私も昔はこれを受けていたが・・・

 

 

「なにぶん、私はこの地位を任されてから術式は受けてないからな」

 

「ふ~ん・・・そう言えば銃剣?吸血鬼と言えば、貴方の学園に『彼』が通ってるのよね?」

 

「『彼』?」

 

「あのアバズレは騙せても私は騙されないわよ銃剣?『アーカード』の事よ」

 

『アーカード』、9年前に突如として現れた『真祖』級の吸血鬼だ。ヨーロッパを中心に暴れまわり、手に終えなかった。でもある時

 

 

「イタリアのマフィア『ヴァレンティーノファミリー』に退治された、あのアーカードよ。それが何故かISを動かせて、貴方の学園に通ってるんでしょ。こっちはわかってるのよ、正直に吐け」

 

「あぁ、確かに通ってるよ。成績も悪くなく、問題行動もあまりない。危険性はないよ」

 

ただ、IS至上主義の生徒には容赦なく。ある生徒は『吸血』されてるがね

 

 

「ふ~ん・・・なら銃剣、昔のよしみで彼をウチにくれない?」

 

「そんな近所に野菜をねだる感じで監視対象の吸血鬼をホイホイとやれるか!」

 

「ケチ」

 

「ケチじゃない!」

 

アーカードは身元が不明瞭な点もあるためにこうして彼を狙う輩は多い。学園でも彼を狙ったハニートラップもあったが、逆に彼はそれを『餌』にしてたがな

 

 

「それにそんな事すれば、ヴァレンティーノと『ゴシップ』が黙ってないぞ」

 

「フン、あのヤギと小娘が怖くて生きていけるか!」

 

ジェルマンはふんぞり返る

そんなタワイモ無い話をしていると彼の部下が来た

 

 

「おひいさま、そろそろお時間よ」

 

『類は友を呼ぶ』のだろうか、その部下もジェルマンと同じくらいに異様だった

 

 

「あら、いい男」

 

「そんな変な目で見ないの。それじゃあね銃剣、また会いましょ」コツコツコツ・・・

 

ジェルマンは部下を連れて帰って行った

 

 

「さて、私も帰るか」

 

私は使い捨てカップをゴミ箱に捨て、ロビーから出ていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

ノーサイド

 

 

 

Prrrrrrrrr Prrrrrrrrr Prrrrrrrrr

 

ある場所のある部屋の机の上にある電話がなった

 

 

「お♪」

 

電話の前に座っていた、小太りで眼鏡をかけた男は嫌な笑みを浮かべながら受話器をとった

 

 

「もしもし・・・おぉ!久しぶりだね元気だったかい?」

 

男は電話の相手と楽しそうに談笑しはじめた

 

 

『――――――?』

 

「ん?あぁ、もちろん。しかし」

 

『?』

 

「いやね、準備は万端なのだが、最近『兎』が邪魔をして来てね。これがウザいの何のって、ククク♪」

 

『―――ッ!』

 

「「笑い事じゃない」?そりゃそうだ。クハハハ♪」

 

男は電話相手に怒られながらも楽しそうに笑った

 

 

「なら、予定通り『作戦』を実行するよ・・・だから、ISの方はよろしく頼むよ『伯爵』?」

 

『わかってるわよ。お前もヘマするなよ『マックス』』

 

電話相手は男の名前を呼んだ

 

 

「オイオイ、また昔のように呼んでくれよ『伯爵』。また昔のように『少佐』とね」

 

『イヤよ』

 

「即答か!クハハハハハハ♪なら『大隊長』と呼んでくれ」

 

男、『レギオン』の『大隊長』は朗らかに笑った

 

 

「そう言えば伯爵?彼、『十蔵』は元気だったかい?」

 

『―ブチッ―ツー・・・ツー・・・ツー』

 

「・・・クク、ククク♪」ガチャリ

 

電話相手は突然に電話を切った。大隊長は受話器を静かに元に戻すと立ち上がり、ドアの方に歩いていく

 

ガチャリ

 

「あ!もう遅いよ大隊長!」

 

ドアを開けるとそこには猫耳の少女のような軍服姿の少年が待っていた

 

 

「スマンスマン。ちょっと旧友と電話で長話をしていた」

 

「早く行こう!皆、待ってるから」

 

「わかったわかった、わかったから手を引っ張るな准尉」

 

大隊長は准尉に手を引かれ、兵士達が待つ広間に行った・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





諸君、私は―――!


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化物達の集会・・・




『イカれ』具合って難しい・・・

アキト「だな」



 

 

 

ノーサイド

 

 

 

ガャガヤ・・・

 

大きな広間には黒い軍服を着た者達が集まっていた。その者達は肌の色も出身地も性別も違っていたが皆、『人間』ではなかった

 

 

「ん?お、おい!アレ!」

 

その中の一人の兵士が前にある舞台場を見て声をあげた

 

 

 

コツ・・・コツ・・・コツ・・・コツリ

 

舞台には白い軍服を着た男、『大隊長』がいた。大隊長は舞台にあったマイクの前に立つ

 

 

「全体!敬礼ッ!!」ザッ!!!

 

号令に兵士達は一糸乱れぬ敬礼を大隊長に行った

 

 

「ありがとう。『ランスロット』中尉」

 

「ハッ!勿体なき御言葉!」

 

大隊長は全兵士達に号令をかけた『顔に大きな傷がある』将校に声をかけた。将校は深々と礼をする

 

 

「固いな~ランスロット中尉は。もうちょっとフレンドリーに出来ない~?僕みたいにさ」

 

「お前はフレンドリー過ぎるのだ、ランスロット中尉を見習え『シュレーディンガー』!」ゴチン

「あ痛ッ!?痛いよ『ドク』~!」

 

珍妙な眼鏡をかけた男、『ドク』が猫耳准尉『シュレーディンガー』に拳を落とす

 

 

「フッ・・・」

 

「なッ!?『大尉』~!髭面が笑った~!酷いよ~!」

 

「・・・」ナデリ

 

その状況に笑う西部劇に出てくる服を着た『トバルカイン』中尉。それにムカついたシュレーディンガーは隣にいた熱帯雨林用の黒コートを着た大男、『大尉』にすがる。そんなシュレーディンガーを大尉は優しく撫でる

 

 

「コラ、お前ら静かにせんか。少佐・・・大隊長の話を聞け」

 

「「はーい」」「・・・」コクッ

 

じゃれあう3人に『右半身に奇妙な紋様の刺青』をいれ、大鎌を持つ筋肉質の女性将校『ゾーリン・ブリッツ』中尉が注意をする

 

 

「それでは大隊長・・・お願いしますよ」

 

「うむ・・・」

 

ドクに促され、大隊長は壇上の上に立つ

 

 

サァ――――――――――――ッ!

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

大隊長が兵士達の前に立つと空気が一瞬にして変わる。兵士達は凍るようにゾクリと鳥肌が立ち、背筋がピンと伸びる

 

 

『あ、あ~・・・マイク、マイクのテスト中~・・・ドク、もうちょっと音量を上げてくれ』

 

「はいはい、わかりましたよ」キュイ

 

『うんうん、良い感じだな』

 

大隊長はマイクの音量に満足するとニヤついたあの笑みを浮かべた

 

 

『やぁ諸君、気分は如何かな?』

 

ワァァァァア―――――――――――――――ンッ!

 

大隊長の言葉に歓声があがる

 

 

『ん、中々に良いようだ。・・・諸君、ついに我々の『作戦』を行動に移す時が来た』

 

大隊長は朗らかに笑い、冷やかな声で話す

 

 

『諸君らは長きに渡り、『準備』をして来た。しかし、その大切な準備を我々は幾度となく阻まれた!』

 

「『四年前』だ!四年前の『幻想の血』だ!」

 

「「「「「許すまじ!許すまじ!」」」」」

 

一人の兵士が声をあげる。それに呼応するように他の兵士達も声を張り上げる

 

 

『そうだ!四年前、我々が大事に、大事に、大事に温めて来た作戦をヤツらは台無しにしてくれた!その結果どうだ?我々は数々の『同胞』を失った!こんなに悔しい事はない!!』

 

「「「「「「「そうだ!そうだ!」」」」」」」

 

悔しさで歯軋りをする者、涙を流す者、拳を握り締め血を流す者・・・様々な者達がいた

 

 

『だが・・・諸君らに聞こう・・・ここで諦めるのか?悔しさに苛まれ、血ヘドを吐きながらオイソレと地ベタをはい回る亡者に成り果てるか?あんな『ガラクタ(IS)』に支配にされたままで良いのか?あんな便所の鼠のゲロにも劣る者達に世界を任せるのか?』

 

「「「「「「「否!否ッ!・・・否!!」」」」」」」

 

兵士達は一個の者として叫んだ。悲痛にも似た怒号を叫んだ

 

 

『・・・ならば聞こう・・・さすれば君達は何だ?地ベタを這いずり回る亡者でなければ何だと言うのだ?答えろ、答えてみろ』

 

「「「「「「「ッ!・・・」」」」」」」

 

その大隊長の言葉に熱気立った兵士達は口を閉ざしてしまった。それでも口を開く者はいる

 

 

「・・・我等、『レギオン』・・・」

 

大隊長側近の将校、『スカー・ランスロット』は答えた

 

 

「俺はISに・・・あのガラクタに奪われた!大切な人を、尊厳を、名前を!」

 

『ほぅ・・・』

 

全兵士の視線がランスロットに注がれた

 

 

「ここにいる者達はそうではないのか?何かを取り戻したいと願う者、復讐を望む者、変革を願う者・・・理由は違えど『目的』は同じだ・・・そして『手段』も」

 

『・・・』

 

静寂が空間を包む。重苦しい空気がのし掛かる

 

 

『ならば聞こう・・・貴様はなんだスカー・ランスロット?』

 

「俺は・・・」

 

ランスロットは眼を輝かせ、叫ぶ・・・

 

 

「我は『レギオン』!『レギオン』の『ソルジャー』、その一人だ!貴様らもそうだ!お前も!お前も!お前も!!」

 

「「「「「「「「然り!然り!然り!」」」」」」」」

 

兵士達の声が木霊する。その兵士達の眼は『紅く』染まり、口からは『牙』が見え隠れする

 

 

『良いだろう・・・ならば作戦を第一段階に移す。トバルカイン!!』

 

「ハッ!」

 

大隊長に呼ばれ、トバルカインが前に出る

 

 

『先方の一番槍を任す。存分に力を振るえ』

 

「ハッ、この伊達男『トバルカイン・アレハンブラ』、誠心誠意全力を尽くします」

 

トバルカインは執事のように深々と礼をする。そして彼は3個小隊分の兵士達を連れ、広間から出ていく

 

それからこの集会は終息し、兵士達はある場所へと召集されていった

 

 

 

コツ・・・コツ・・・コツ・・・

 

広間から離れた廊下を大隊長は歩く。その後ろをドクとランスロットが付いて歩く

 

 

「ランスロット、実に良い『狂奔』だった。兵士達の指揮は万端だ」

 

「ありがとうございます」

 

ランスロットはまた深々と礼をした。大隊長は今度はドクの方を向く

 

 

「ドク、『亡国』の連中に気づかれてはいまいな?」

 

「さて、どうでしょう?もしヤツらが我々に気づいていても・・・」

 

「『叩き潰す』だけか・・・良いな♪実にシンプルで良い♪ククク♪」

 

「ですな♪ワハハハハ♪」

 

狂人達は笑う。楽しそうに愉快に笑う

 

 

「それでは大隊長、あとは『手筈通り』に」

 

「あぁそうだ。『筋書通り』に進めるぞ。兵士達を『飛行船』に詰め込み、『はじまりの地』を目指す。トバルカイン中尉はその為の『囮』」

 

「彼も重々招致です。というか、彼自身が買って出た『役回り』なのですから」

 

「ククク♪楽しくなって来た!こんなに楽しいのはもう20年ぶりだ。クハハハハハハ♪」

 

それから3人はエレベーターに乗り、どこかに向かった

 

 

down down down・・・

 

『嵐』は刻一刻と迫る

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





幕が開きはじめる・・・


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宣戦布告


今回・・・短め!



 

 

インサイド

 

 

 

夏休み中、俺は課題に苦しむシャーロットを助けたり、シェルスやウィッチー卿の買い物に付き合ったり、エミリーの勉強を教えたりした。その時に切や祝ちゃんが遊びに来たりして交友を深めたりした

 

・・・んだが・・・

 

 

「あ~・・・(胸くそ悪ィ~)」イライラ

俺は今、IS委員会の円卓会議場の中央にいる。イラついた目で円卓に座るIS委員会役員共の顔を睨む

 

何故、こんな事になったのか・・・順を追って説明しよう

 

ある日、俺はIS学園のジェントルマン『轡木 十蔵』学園長に呼び出され、俺は仕方なく学園長殿が指定した場所に行った。ところがどっこい!なんとそこは『IS委員会』が入っている施設だったのだ!

 

それを察した瞬間、俺は走った!まことに迅速!

その速さ正に電光石火のごとき速さでここまで来たタクシーに急いだ!

 

・・・んだが・・・

 

 

「・・・」チラリ

 

「ん、なんだ?」

「どしたのアキト?」

 

「・・・ハァ・・・」

 

俺の後ろで学園長と並んで立つ麗しの赤髪の『吸血鬼』と黒髪の『戦乙女』を見て溜め息をつく・・・

 

察しの通りだ。一緒に来たシェルスには捕まり、ブリュンヒルデには学園長御用達の専用手錠をかけられるという始末・・・これじゃあまるで裁判じゃあないか

 

 

「それで君が二人目・・・『暁アキト』くんかね?私は―――」

 

円卓に座る役員共が順に自己紹介的なモノをする。役員の面々はその道で名を馳せる重要人物ばかり・・・特に

 

 

「フン・・・貴方が二人目・・・」

 

円卓の中央でふんぞり返る人物『マーサ・グスト・カーバイン』、コイツが喰えない女だ

コイツはグスト社の財力で『裏』の俺達の仕事を何度も何度も何度も何度もそれはまぁネチネチネチネチと邪魔してくれやがった憎きenemy野郎!

『表』の用事で呼ばれてなきゃ、首から上を握り潰してるところだ

 

 

「暁くん?ちゃんと聞くように」

 

「・・・ウェイ」

 

・・・ッチ、学園長の面前もある。ここは大人しくしてやろうか

 

 

「それでは暁アキト。君が何故、この誉高きIS委員―――」

 

「知らん、御託は良いから用件を言え」

 

「なっ!?」

 

「おい暁!」

 

生憎と腕に素敵なブレスレッドをかけられた状態を喜ぶ性癖はないからな!

 

 

「こちとら騙された形で連れて来られたんだ。気分が良いわけないだろうが・・・で?用件はなんだよ用件は?とっとと言えよ」

 

「き、貴様!生徒の分際で!我々を誰だと思って――「学園長?アンタから話してくんない?話が長くなりそうだからさ」―――コラ!聞かんか!」

 

癇癪を起こす役員は放っておいて、俺は学園長に言葉をかける

 

 

「ヤレヤレ・・・」

 

学園長殿は溜め息を吐きながら俺の側に近寄り、リモコンを取り出した。円卓の後ろには大きなモニター画面が降りてきた。そして、その画面には口角をあげ、嫌な目付きで笑う男が映った

 

 

「『少佐』・・・いや、今は『大隊長』だっけか?」

 

「そうよ、『暁』の坊や」

 

「おん?って、あ"ん?!」

 

誰だよと声のする方を見て、俺は目を見開いた!

そこには金髪にケバい化粧をし、中世の装飾品をゴテゴテと付けたドレスを着た男?がいたからだ

 

 

「だ、誰・・・!?」

 

「『ジェルマン』卿、遅刻ですよ」

 

「ゴメンなさいね~、お化粧に時間かかちゃってね」

 

そんな事を言いながら男?は円卓の空いた席に座った

 

 

「初めましてね『坊や』。私は『ラン・ジェルマン』よ。よろしくね」

 

ジェルマンはそう自己紹介をしながらウィンクをしてきた。それにあまりにもゾッとしてしまったが動揺を上手く隠して質問する

 

「は、はぁ・・・それでこの男がどうかしたのかよ?早く終わらせて帰りたいんだが?」

 

「まぁ、そんな事言わないの坊や。貴方に頼みたい事があって呼んだんだから」

 

おん?どうゆうこった?

 

 

「暁くん、君にこの男・・・大隊長を『捕縛』してほしい」

 

・・・・・・・・・・・・・・・what?

 

 

「ど、どういう事ですか?!!」

 

ってブリュンヒルデ、何でアンタが驚く?

 

 

「学園長、暁には『デュノア』の事に関しての説明のはずではなかったのですか?!」

 

いや、俺まったく聞いてないんだけど・・・

 

 

「てか俺、一応『一般人』なんですけど~?」

 

「何が一般人だか」

 

「おん?」

 

惚けた声に反応したのは中央に座るグストだ

 

 

「『ヴァレンティーノファミリー』の一員だと言う事はわかっているのですよ暁くん?」

 

「・・・ヤレヤレ」

 

と俺は溜め息を吐きながら、今日視聴予約した『ヤクザVSエイリアン』までに帰れるか心配した

 

 

 

―――――――

 

 

ノーサイド

 

 

 

『やぁ、腐った世界の管理者ども。御機嫌はいかがかな?私は『レギオン』の全体統括者、皆からは『大隊長』などと呼ばれている。』

 

円卓前のモニターには白い軍服を着用し、ニタニタと笑う男が映し出されている

 

 

『今回、君達にこんなビデオレターを送ったのにはある理由がある・・・我々は『作戦』を実行に移す。『四年前』の騒動よりドきついヤツをな』

 

大隊長は一人掛けのソファに体重をかけクツクツと笑う

 

 

『君達に我々の作戦は邪魔出来ないし、阻止する事も出来ない。しかし・・・ククク♪』

 

大隊長は目を閉じ、嫌な笑みをもっと嫌にするように笑う

 

 

『我々の作戦を止める事が出来る人物が一人いる。その人物の名前は『暁アキト』、言わずと知れた『二人目』の男だ。彼なら『また』我々の作戦を台無しにしてくれるだろう・・・クヒヒヒ♪では諸君、舞台は『星条旗』の国で』ブツン

 

映像はそこで切れた

 

 

「と言う訳で・・・暁アキトくん、君には『アメリカ』に行ってもらいたい」

 

「いや、これ絶対『罠』だろ」

 

役員の言葉にアキトは冷静にツッコミをいれた

 

 

「暁くん、これはIS学園からの命令だ。拒否する事は出来な――「知るかボケ」――なっ・・・」

 

「俺は態々罠に引っ掛かりに行くようなアホじゃないんだよ」

 

アキトは呆れたように悪態をつく

 

 

「だがこの男は君を名指しで指命している。余程君にご執心なようだ」

 

「いや、知らないよ。コイツが何しようと俺には関係ない。傭兵でも雇ってこのイカれた男を捕まえればいい」

 

「しかし―――」

 

「しかしもヘッタクレもねぇよ。てかこの手錠外してくんない?手首がそろそろ痒くなってきた」ジャラ

 

アキトは手錠を役員に見せつけながら顔をしかめる

 

 

「なら『依頼』はどうかしら?」

 

「・・・おん?」

 

ザワザワ

 

彼はしかめた顔で提案を出して来たジェルマンを横目で見る。役員達はコソコソと静かにざわめく

 

 

「どういう事ですかジェルマン卿?」

 

「彼は私達IS委員会からの命令だと言う事が気にくわない・・・なら『ヴァレンティーノ』の『バケガリ』に依頼するというのはどうかしら?貴方もそれで良いかしら?『アキト』くん?」ニコリ

 

ジェルマンはアキトの目を見ながら笑う

 

 

「・・・気安く名前を呼ばないでもらいたいね」

 

「あら、ゴメンなさいね」ホホホ♪

 

「だが気に入った。その依頼受けよう。良いよねシェルス?」

 

アキトは振り返り、後ろに立つシェルスに声をかける。シェルスも「構わないわ」と言う

 

 

「それでさぁ、そろそろこの手錠外してく―――」

 

アキトがまた手錠の解除を要求していた、その時である

 

 

パチ・・・パチ・・・パチ

 

「―――おん?」

 

会場のすみから手を叩く音が響いてきた。その音がする方向をみるとそこには・・・

 

 

「お、お前は!?」

 

「何故アンタが反応するんだブリュンヒルデ?」

 

「久しぶり~!ブリュンヒルデにアルカード」

 

半袖半ズボンの軍服に身を包んだケモミミの人物がアタッシュケースを背負いながら立っていた

 

 

「・・・あぁ・・・久しぶりだな、『シュレディンガー』」

 

アキトは呆れた顔で半袖半ズボンの少年『シュレディンガー』に手を振って答えた

 

 

「だ、誰だ君は?・・・!」

「ここは関係者意外立ち入り禁止じゃなかったのか!」

 

ガヤガヤ

 

役員達は不測の事態に騒ぎだす。そんな事とは気にせず、シュレディンガーは朗らかに歩いてくる

 

 

「やぁやぁ皆さん、今回はお集まり頂き恐縮の限りだよ」

 

「え!?もしかして本当はこの為に呼ばれたの俺?!」

 

「んな訳ないでしょアキト・・・」

 

シェルスが呆れた口調で話す

 

 

「警備員!この侵入者をつまみ出せ!」

 

「一体どこから入って来た!?」

 

役員の一人が立ち上がり、シュレディンガーに指をさす。すると

 

 

「ん~・・・うるさいな。『僕は何処にでもいるし、何処にもいないんだ』。何処から入ろうと僕の勝手だ」カサッ

 

シュレディンガーはポケットから拳銃『ワルサー』を取り出し、標準を立ち上がった役員に合わせ

 

チャキ

「へ?」

 

「だからクタばれよ」ニコ

カチリ

 

躊躇なく引き金を引いた

 

 

 

┣"ンッ!

 

だが・・・

 

シュウゥゥ~

 

「ひ、ひぃッ!?」

 

発射された弾丸は役員の頭を逸れ、その後ろの椅子を貫いた

 

 

「ふん・・・なんで邪魔するかな?」

 

シュレディンガーは自分の手に添えられた手の持ち主、『十蔵』を睨んだ

 

 

「生憎と私は君達『化物』の邪魔をするのが生き甲斐でね」

 

「学園長!」

 

千冬が慌てて十蔵に駆け寄ろうとするが

 

 

「来るな!ブリュンヒルデ!」

 

「なっ!?」

 

アキトが睨みをきかせ、制止させた

 

 

「そこを動くなよ!」

 

「しかし!」

 

「動かない方がいいわよ千冬」

 

「え?」

 

「役員の皆さん方も動くなよ、頭がザクロになりたくなけりゃあな!」

 

それから膠着状態が少しあったが

 

 

「まぁまぁ皆さん、僕はただの『使者』だから」

 

シュレディンガーが背負っていたアタッシュケースを円卓の上にドカリと無造作に置く。そこからノートパソコンを取り出すと起動ボタンを押した

 

 

「・・・?」

 

「一体何がしたいの貴方は?」

 

「ちょっと黙っててよ、このパソコン重いんだから・・・」

 

真っ暗なパソコンも漸く起動した。その画面から

 

 

『あ、あ!おいドク、これはもう話して良いのか?』

 

白い軍服を着用した男が映しだされた

 

 

「もしもし『大隊長』~?こっちは聞こえてるし映し出されてるよ~」

 

『ん?・・・おぉ!こっちも映しだされた。なんとも文明の利器は素晴らしいものだ♪』

 

画面の男は愉快そうに笑う。だが、その画面を睨む者が一人

 

 

「『モンティナ・マックス』・・・!」

 

「ん?この声は・・・クク、クハハハハハハハ♪」

 

キレた声を聞きき、大隊長はそちらを向いて笑う

 

 

『久しぶりだな~十蔵!こうして会うのは20年ぶりか!いや懐かしいな!』

 

「やはり生きていたか・・・死にぞこないめ!」

 

十蔵は今まで見たことのないような顔で画面を睨んだ

 

 

『そう恐い顔をするな十蔵。悪いが今回、私はお前に会いに使いを出した訳ではない』

 

「なに?」

 

『准尉』

 

「Ja~!」

 

大隊長はシュレディンガーに命じるとシュレディンガーは画面をIS委員会委員長グストに向けた

 

 

『やぁ、マドモアゼル。私は『レギオン』の指揮をしている通称『大隊長』だ。よろしく』

 

大隊長は嫌味ったらしくグストに自己紹介をした

 

 

「はじめまして、大隊長?『本名』で呼ばなくていいのかしら?」

 

『悪いな。生憎、『本名』はすでに捨てている。それに今の名前を気に入っているのでな』

 

大隊長とグストは互いの腹を探るように話をはじめた

 

 

「それで私達に一体何のようなのかしら?こんな無礼な使者を寄越して」

 

「エヘヘ♪」

 

「いや、誉めてはないわよ」

 

シュレディンガーは照れ臭そうに頭をかく

 

 

『それはすまない。だが確認しておきたかったのだよ』

 

「確認?」

 

大隊長はフッと笑みを溢し声を張り上げ指をある人物にさす

 

 

『そこで笑いを堪えるイカれた男が我等の作戦に参加するかをな!』

 

指の先にいたのは・・・

 

 

「カカッ・・・カハハ♪」

 

口を手で押さえ、目を見開き、可笑しそうに笑う黒髪の吸血鬼がそこにはいた

 

 

「カハハハハハ♪やはり!やはり生きておられましたか!大隊長殿!」

 

アキトは嬉しそうに『牙』を出しながら笑う

 

 

「あ、バカ!」ヒュッ

「ハハハ―――痛ッ!?」ゴチン!

 

シェルスの投げた物がアキトの頭に直撃した

 

 

「何すんじゃい!」

 

「アキト、歯!歯!」

 

「おん?あ!ヤベヤベ」

 

「え・・・(あれは・・・『牙』?)」

 

アキトは急いで牙を引っ込め、画面の大隊長に向きなおす

 

 

「それで大隊長?一体何のようなんだい?」

 

『『宣戦布告』だ』

 

「「「「「宣戦布告?」」」」」

 

アキト達は大隊長の言葉を復唱する

 

 

「それはどういうわけかしらミスタ?」

 

『簡単なことだ。あのビデオレターは気に入ってくれたかい?』

 

「あぁ、それならさっき皆で鑑賞したけど」

 

『君には聞いてない』

 

「ひどッ!?」

 

大隊長は呆れた口調でアキトにツッコむ

 

 

「それがどうかしたのか?」

 

『おや、この声は・・・ブリュンヒルデか?准尉、向けてくれ』

 

「喜んで~!」

 

シュレディンガーは画面を千冬に向ける

 

 

『やぁ、久しぶりだねフロイライン』

 

「おん!?なんだよアンタ!大隊長と面識があったのかよ!?」

 

アキトはその事に驚きの声をあげるが大隊長達はお構い無しに話を続ける

 

 

「大隊長とか言ったな。お前達の目的はなんだ?どうしてこんな事をする?お前達に一体何の得が―――」

 

『得?得だと?』

 

大隊長は顔をしかめる

 

 

『ブリュンヒルデ、君は『阿呆』か?』

 

「なに?!」

 

『ならよく覚えて置くと良い。この世界には損得を考えないどうしようもないヤツらがいるのだ。『手段』の為なら『目的』を選ばないどうしようもないもないヤツラがな』

 

「な、何を・・・」

 

「何を言ってるの?」

 

役員達は目をまん丸にして大隊長の言葉を聞いている

 

 

「マックス・・・お前というヤツは」

 

十蔵は拳を震わせ、敵意を剥き出しにする

 

 

『それで一応確認なのだが・・・『アーカード』?』

 

「なに!?(アーカードだと?!!)」

 

「・・・おん?」

 

『君はどうするのだ?』

 

「そ~だな~」バキリ

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

アキトは腕にはめられていた手錠をいとも容易く引きちぎると先程シェルスにぶつけられた物を取り出し、シュレディンガーの口に押し込む

 

 

「むご?」

 

その口に押し込んだのは黒光りする38口径のハンドガンだった

 

 

「暁、一体何を!?」

 

「これが俺の答えだ・・・!」

 

そして、クタバレと言わんばかりに引き金を引く。ドン!ドン!ドン!と3発の銃声が響く

 

シュレディンガーの脳髄はザクロのように弾け、力なく膝をつき倒れる

 

バタリ

 

「ひっ!」

 

「な、なんて事を!」

 

役員達は腰を抜かし椅子に突っ伏す者、気絶する者とに分かれた。その光景に画面の大隊長はと言うと

 

 

『ククク・・・クハハハハハハハハハハ♪』

 

盛大に手放しで大笑いをしていたのだ

 

 

「暁・・・貴様は―――!」

 

「さて・・・ご満足頂けましたかな?大隊長殿?」

 

『あぁ最高だ!使者を問答無用で殺したのだ。最高の宣戦布告だ!それではなアーカード』

 

「あぁ、それでは星条旗の国でな」バキン

 

アキトは構わずにパソコン画面を砕いた

 

 

「さてと・・・学園長?後片付け頼みましたよ」

 

「・・・君はどこへ行くつもりだ?」

 

十蔵は立ち去ろうとするアキトに言葉をかける。それにアキトは振り返らずに答える

 

 

「世紀の狂人をぶちのめしに。シェルス行こうぜ」

 

「ヤレヤレだわ」

コツコツコツ・・・

 

アキトはシェルスを連れて立ち去る

 

 

「暁・・・」

 

「なんだよブリュンヒルデ?腰ぬかしてんのか?」

 

「貴様は一体・・・?」

 

立ち去る途中で尻餅をつく千冬にアキトはニヤリと笑い答えた

 

 

 

 

 

 

 

「俺はただの『吸血鬼』だよ」

 

その眼は血よりも紅い色をしていた

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




続きどうしょ・・・?


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星条旗の国にて彼らは集まる



バナオドとミカクーがツボる今日この頃・・・



 

 

インサイド

 

 

 

「KUAぁ~・・・」

 

「眠いわ・・・」

 

俺達は時差ボケで眠い瞼をこすりながらニューヨークの空港で迎えを待っている

 

IS委員会のあれから帰ると屋敷のウィッチー卿とシャーロット達にオブラート包の事情を話して数日後にこの国にやって来た

 

 

『お土産よろしく』

 

エミリーからは土産を頼まれたり

 

『見敵必殺であろー』

 

ドンからは『許し』を得たりと様々

 

 

「本当にこの場所で間違いないの?」

 

「一応、あの『焔大佐』に連絡しといたんだ。そしたら『使い』を出すとか言って、この場所を指定したんだからな」

 

そうだ。焔の錬金術師こと『ロイ・マスタング』に大隊長の事を話したら飛びついて来た。それで英国軍の特殊班と合同作戦をする事になり、その使いを待っている

 

 

「でももう5分も待ってるだけど」

 

「シェルス、その時計、10分進んでるからな」

 

「・・・そういえばそうだった」

 

 

シェルスのお茶目にクツクツと笑っていると

 

 

「おぉ!暁殿にヴィクトリア殿!」

 

「おん?」「あら?」

 

人混みを掻き分け、体躯の良い特徴的な頭をした人物が歩いて来た

 

 

「アキト・・・アレって」

 

「カカ♪」ダッ

 

俺はその姿を見るやいなや、脚に力を込めて思いっきりその人物のもとへと走り、腕を挙げた

 

 

「「筋肉!」」ガシィッ

 

その人物も腕を挙げ、俺の腕と交差するようにぶつける

 

 

「久しぶりだな!『剛腕』少佐!」

 

「お久しぶりである暁殿!」

 

この人物は英国陸軍特殊班所属の少佐『アレックス・ルイ・アームストロング』。高名な英国貴族の家の出で、『剛腕』の二つ名を持つ『錬金術師』でもある

 

 

「相変わらずデカイわね少佐」

 

「ヴィクトリア殿もお久しぶりです」

 

シェルスも少佐に近づき、拳を軽くぶつける

 

 

「悪いな少佐。非番だったろうに」

 

「いえいえ、『ヤツら』の関連とあればこのアレックス・ルイ・アームストロング、どこにでも駆けつける所存である!」バーン

 

少佐はポーズをとりながら答える

 

 

「・・・ここで脱ぐなよ少佐」

 

「・・・もちろんである!」

 

「さっきの間はなに?」

 

因みにこの人、『筋肉』が自慢である

 

 

「まぁ、感傷に浸るのはこれぐらいにして・・・そろそろ飯食わね?」

 

「そ、それはやはり!」

 

「いや、血とかそう言うのじゃないから。なんか腹にいれたいんだよ」

 

「そうね。私もお腹すいちゃった」

 

時計の針は12時を過ぎ、俺の胃はキュルキュルと音をたてている

 

 

「それは丁度良い!集合場所となっている店のバーガーが絶品なのだ」

 

「そいつは良い!少佐の舌を唸らせるバーガー・・・フッ、楽しまずにはいられないな」

 

こうして俺達は集合場所にガラガラと旅行カバンを引きながら向かった

 

・・・まさか、そこに『あの野郎』が来るとは露知れず

 

 

 

―――――――

 

 

 

ここはニューヨークの繁華街・・・

 

 

「おい・・・少佐・・・?」

 

その一角にあるレストラン『ダイナーズ・ダイナー』の・・・

 

 

「えと・・・少佐?」

 

あるテーブル席にてアキトとシェルスは向かいに座るアームストロングに疑問符を投げ掛けていた

 

 

「「なんでコイツがここにいる?」!」ビシッ

 

「ダァーっハハハハハハ!」

 

隣に座るドイツ陸軍のミリタリージャケットをまといモノクルをかけ豪快に笑う金髪の男『ルドル・フォン・シュトロハイム』に指を突きつけて

 

こうなったのには訳がある。順をおって説明するとこうだ

 

意気揚々と少佐が気に入ったというレストランに案内される

この店名物のバーガーを人数分を頼む

その時、厳つい者共を連れたシュトロハイムがドカドカと入ってくる

シュトロハイムがアキト達を見つける

両者驚く・・・が何故かシュトロハイムがニンマリ笑顔で近づきアキト達の隣に座る←今ココ

 

 

「そ・れ・で!なんでココにこのシュトロハイムがいるんだよ少佐!?」ギラリ

 

アキトは物凄い剣幕でアームストロングに迫るとアームストロングは申し訳なさそうに答え―

 

 

「そ、それはですな・・・今回の―――」

 

「俺達もこの作戦に呼ばれたんだよ」シュボ

 

「・・・お"ん?」

 

――る前にシュトロハイムが煙草に火をつけながら答えた

 

 

「どういうこったよシュトロハイム?」

 

「なんだ貴様は連中から聞いてないのか?アァァカァアドォォオくぅん?」

 

ピキ

「・・・よしシュトロハイム。外に出やがれ『喧嘩(殺し合い)』しようぜ?」スクッ

 

「上等だ」

 

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"・・・

 

二人の間に険悪なムードが漂い、近くの席にいた厳つい者共も立ち上がる

 

 

「!(ま、まずい!これでは!)」スチャ

 

アームストロングは慌てて懐の『ナックル』を取り出しはめ、止めようとしたが

 

 

「・・・ちょっと?」

 

「「あ"?」」

 

「迷惑だから静かに・・・して?」ニコリ

ゴゴゴゴゴ

 

シェルスが笑顔と凄味で二人を注意する

 

 

「あ、ハイ・・・」

 

アキトは素直に反応する

・・・がしかし

 

 

「ん~?それはどういう事かね?フロイライン?」

 

シュトロハイムは突っ掛かった

 

 

「店の人の迷惑になるから止めてと言ったのよ。お分かり?」

 

「それもそうだな・・・」

 

「なら―――」

 

「しかし、先に仕掛けたのは君の隣にいるその男だ。だから邪魔をしないでもらおうかフロイライン?」

 

「・・・あ"?何だって『機械野郎』?」ギラリ

 

この時、アキトはある『重要』な事を忘れていたのだ

 

 

「(お腹を減らしたシェルスはジャッカルよりも凶暴だった!」ボソッ

 

「(ど、どうするでござるか暁殿?!ヴィクトリア殿の眼が先程より『紅く』なっていますぞ!」ボソ

 

「(そんな目で俺を見るんじゃあねぇよ少佐!取り合えずナックルはそのままはめといて、二人が動き出した瞬間に『錬金』頼むぜ少佐!」

 

「(御意!」

 

アキトとアームストロングは何時でも対処出来るように体勢を整えた

 

 

「・・・WANABEEEEE・・・」

 

「・・・」メキメキ

 

「「・・・ゴクリ」」

 

皆が二人の動向を見守る中・・・

 

 

「えーと・・・『スペシャルバーガーセット』と『ホットドッグセット』の方?」

 

「「あ、はい」」

 

従業員がアキトとシェルスの注文品を持ってきた

 

取り合えず、この争いは一旦終息する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで?なんでテメェがここにいんだよシュトロハイム『大佐』?」モクモク

 

「食いながら話すなアーカード。そこはアームストロング、頼むぞ」

 

「わかったのである」

 

シュトロハイムは頼んだビールを飲みながらアームストロングに説明を丸投げした

 

 

「今回、我々は米軍のIS部隊を中心とした部隊であの大隊長に対処する」

 

「それは来る途中の飛行機の中で資料を読んだよ。なんでコイツが呼ばれてるのかを聞いてるんだが?」

 

「まぁ、そう急かさないでくれ暁殿」

 

「はーい」

 

「我々には共通点がある。それは『四年前』の出来事に関わっているからである」

 

「ほーん・・・あ、なるほど」パクッ

 

アキトは一人納得し、付け合わせのピクルスを口に放り込んだ

 

 

「つまりは『四年前』連中は裏方で、IS連中が表でヤツらを倒す事にする・・・って事かしら」

 

「その通りだヴィクトリア殿」

 

アームストロングの答えを聞いてシェルスはヤレヤレと呆れるように首をふる

 

 

「ッチ。IS派の連中はまだわかってねぇのか・・・あの戦役で討伐軍のISが残骸の残骸にされたのをもう忘れたのかよ」

 

「フン、所詮人間なぞそんなものだ。貴様ら『吸血鬼』と違ってな」

 

「うるせぇよ『サイボーグ』野郎」

 

「フン・・・」

 

そうして二人はコーラとビールを飲み干した

 

 

 

 

 

 

 

「てか、シュトロハイム?お前よくその体で空港の検問通れたよな?どんな裏技使ったんだ?」

 

「これか?我がIS部隊の追加武装とともに貨物機に運ばれた」

 

「おん?・・・ちょっと待て・・・まさかドイツはIS部隊を連れて来てるのか?」

 

「あぁそうだ。今回の作戦では我が部隊『シュバルツ・ヴォルフ』とIS部隊『シュバルツ・ハーゼ』が参加する。・・・ん?」

 

シュトロハイムは何かを思い出したようにニヤリと笑った

 

 

「そう言えば貴様はハーゼの隊長であるボーデヴィッヒと懇意にしているそうだな?なんでも貴様は『嫁』だとか」

 

「・・・・・・アキト?」ギロリ

 

シェルスはハイライトが消えた目でアキトを睨む

 

 

「ちょ、ちょっと待て。睨むな睨むな!俺はラウラとはただのクラスメイトなだけだから」

 

「ほぅ、ただのクラスメイトをファーストネームで呼ぶとは」

 

「いや、普通だからな!だからシェルス、首を絞めるな!そろそろ苦しい!」ギチチ

 

「む~」

 

アキトの首をシェルスは手加減無用で絞める

 

 

「ハハハ♪暁殿も隅に置けませんな」

 

「笑ってないで助けろ少佐!」

 

そのままシェルスはアキトの首をへし折ろうとしたのだが何か気づいたのか手を放す

 

 

「どうしたヴィクトリア孃?」

 

「少佐、今回参加するISは全部でいくつなの?」

 

「・・・」

 

「少佐?」

 

シェルスの言葉にアームストロングはグッと口をつぐんだ

 

 

「どうしたんだ少佐?そんな汗をかいて?」

 

「フン、言ってやれアームストロング」

 

「えと・・・今回参加するISは・・・全部で『5』機である」

 

「「・・・・・・は?」」

 

答えを聞いてアキトとシェルスはポカーンとしてしまった後

 

 

「「はぁぁぁぁぁっ!?」」

 

驚愕の叫びを店内に響かせた

 

はてさて、どうなる事やら・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 






ディエパンや遊アキも外せない・・・


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作戦前の基地にて

この作品はの吸血鬼は3つのタイプに分かれます

1、身体能力を主体としたタイプ

2、異能力を主体としたタイプ

3、1と2をバランス良く使えるタイプ

アキト「俺は3かな?」

―――――――――――――――――――――――――

増やしました


 

ある日、ドイツ陸軍『シュバルツ・ハーゼ』部隊隊長『ラウラ・ボーデヴィッヒ』は日本から帰って来た3日後に緊急召集され、その日の内にアメリカに発った

 

それから数日、米軍との連携や作戦の準備などの目まぐるしい事態に軍人であると言えどもラウラは溜め息を吐く日が続き、副官の『クラリッサ・ハルフォーフ』やバックアップの隊員達が心配していた

 

だが、今日は違う

 

 

「~♪」

 

米軍と独軍のIS部隊が駐在するニューヨーク軍事基地の食堂にて、ラウラにしては珍しく鼻唄混じりの上機嫌である資料を読んでいる

 

資料には今作戦に参加するISの名簿が書かれていたのだ。その名簿の中に・・・

 

 

――IS学園所属『朧』――

 

・・・と書かれていた

 

 

「まるで運命だな・・・フフッ///」

 

ラウラは薄紅色の頬でウットリと資料を見つめていると

 

バッ

 

「っ!?」

 

この資料を後ろから取られたのだ。ラウラは驚いて振り向くとそこには群青色の髪を肩まで伸ばしたパイロットスーツ着た若い女性がいた

 

 

「なにをするんだ?!『ベルサ・ガーベラ』!」

 

「アンタが珍しくニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべてたんでね。なんだいコレは?」

 

ラウラは激昂し、資料を奪い返そうとするがラウラよりも身長の高いベルサは届かないように腕をあげる

 

 

「何を見てたと思ったら名簿をみて・・・頭でも狂った?」

 

「そんな訳がないだろう!いいから返せ!」ピョン

 

ラウラはジャンプをして尚も取り返そうとする

 

 

「そう言えば聞いた?」

 

「な、に、を、だ!」ピョンピョン

 

「なんでも今日、学園から『男』の操縦士が来るみたいよ」

 

「そ、そうなのか!?」

 

ラウラは驚きつつもどこか嬉しそうに聞いていたが

 

 

「ッチ。下郎な男風情がISを使うんじゃないわよ」

 

「・・・何?」

 

ベルサの発言にラウラはカチンと反応する

 

 

「ISは私達が正しく使えるのよ。それを男なんぞに使わせるとは」

 

「・・・だがそれは」

 

「そう言えばボーデヴィッヒ?アンタ、学園の男と懇意にしてるらしいじゃない」

 

「あ、あぁそうだ!」

 

ラウラはベルサにアキトの事を話そうとしたが

 

 

「やめて置きなさい」

 

「え?」

 

「その男はその内『実験道具』にされるんだから。変な情を持つんじゃないわよ。それに」

 

「それに?」

 

「どうせロクな男じゃないわ。男ってのはね千差万別低俗な輩なんだから」

 

「!・・・き、貴様・・・ッ!」

 

ラウラは青筋をたてる

 

 

「何?まさかアンタ、その男にホのじなの?所詮は『アドヴァンス』の欠陥品ね。低俗な男がお似合いね」

 

ベルサはフンと鼻息をたててラウラを中傷する

 

 

「・・・私の事は何を言ってもいい・・・」

 

「ん?」

 

「だが、アキトの事を悪く言うのは・・・ッ!」グッ

 

ギロリとラウラはベルサの顔を睨む。そして、名一杯握りこんだ拳をその顔に叩きつけようとする

 

しかし

 

ピンッ

 

「ッ!?」

 

その腕はピクリとも動かない

何故だ!とラウラは戸惑っていると

 

 

「ヤレヤレ・・・来てはいいものの、あまり品性に欠ける輩がいるな」

 

「なんですって?」

 

「!。この声は!」

 

ラウラは驚愕し、振り返るとそこには黒のアンダーアーマーに黒のミリタリーパンツの全身黒づくめの男が鋼糸ワイヤーをラウラの腕に絡ませていたのだ

 

 

「『アキト』!」

 

「数週間ぶりだなラウラ?元気だったかい?」

 

その眼は微かに紅く光っていた

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

inside

 

 

バーガー屋のダイナーズダイナーの一件から翌日。俺達は少佐の案内で作戦の拠点となるニューヨーク近郊の基地に連れてかれた

 

基地には最新鋭の設備が充実していて、兵士達にも快適な空間となっている

そんな基地に着いた俺達はそこの司令室に通された

 

司令室はエアコン完備のこれまた快適な部屋で、壁にはこの部屋の持ち主の私物が掛けられているんだが・・・

 

 

「なんで武器・・・?」

 

壁には一昔前のライフルやナイフ、さらには暗器なんかもかけられてる

 

 

「ここの司令官の趣味じゃないの?」

 

俺の疑問にシェルスが答えてくれた

俺達はそんな部屋でここの司令官を待っている。実に暇だ。しかも立てって

てか、なんで俺がここに連れて来られなきゃならんのだ?早く部屋で『朧』の調整をしてぇのに・・・

 

そんな風にイライライラとしている中・・・

 

 

ガチャリ

 

「おん?」

 

俺達の立っている前の扉からある人物が入って来た

その人物は白を基調とした軍服の胸元を大きく開け、に蒼銀の髪を足まで伸ばした見た目峰麗しい女性であった

 

 

「げっ・・・ッ!?」

 

何故か隣にいるシェルスが顔を歪める

 

 

「・・・フン、」

 

その人物は俺達の顔を人通り見るとドカリと司令室の椅子に座り、足を組む。って

 

 

「シュトロハイム・・・まさか・・・」

 

俺は恐る恐る一つ隣に立つシュトロハイムに聞くと相変わらずのしたり顔で答える

 

 

「そうだ。俺達の前にいるこの女が今回の作戦総指揮にあたる『エスデス・サディラー』中将だ」

 

「貴様が『暁のアルカード』か・・・聞いているより随分と幼いな」

 

なんか雰囲気からして色々と癖が強い人だな・・・

 

 

「・・・え"ぇぇぇぇぇ~・・・」

 

又もや何故かシェルスが大きめの溜め息に似た声を出した。何?知り合い?

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

noside

 

 

 

そのままアキト達は椅子に座るエスデスを交えて今作戦の内容を話始めた・・・のだが

 

 

「なんで今回の作戦に投入されるISがたったの5機しかないんだよ?!おかしいだろッ!」バンッ

 

「それは政府の意向だ。理解しろ」

 

「まぁまぁ」

 

どうやら話は難色なようだ

 

最初は普通通りに作戦について話をしていたのだが、エスデスとアキトのレギオンに対する意見の食い違いや作戦内容や戦力で対立した

 

 

「大体コッチはなぁぁ~にも聞かされてなくて、作戦内容も教えて貰えないてどうゆうこった?!」

 

「貴様らは主力部隊のバックアップの為に呼ばれただけだからな」

 

「その主力部隊が俺を含めた5機のIS部隊て、アイツらを舐めてんのか!?」

 

「所詮は狂人の集まりだ。十分だろう」

 

「・・・オイオイオイオイオイ・・・!」

 

アキトは頭を抱えてシュトロハイムとアームストロングの肩に腕をかけ耳打ちする

 

 

「(おいおいシュトロハイムに少佐?俺が委員会のヤツらから聞いていたのとは違いすぎんだが?どうなってんの?」

 

「(仕方ないだろう。これは委員会とアメリカ政府のせめぎあい中の一個にしか過ぎない。それにしても情報が錯綜しすぎだ」

 

「(我輩もまさかここまでとは・・・」

 

三人はコソコソと話してる最中

 

 

「そう言えば」

 

「はい?」

 

エスデスは話を聞いていたシェルスに言葉をかけた

 

 

「君は『シェルス・ヴィクトリア』だったな」

 

「・・・それが何か?」

 

エスデスはシェルスの顔を覗く

 

 

「『シェルス・ギッシュ』という人物を知っているか?」

 

「ッ!」

 

シェルスは一瞬顔を歪めるが悟られないように表情を立て直す

 

 

「さぁ、『はじめて聞く』名前だわ。それが?」

 

「・・・ならいいんだ」

 

エスデスは怪訝な表情でシェルスを見ていると

 

グイッ

 

「きゃッ!?」

 

アキトがシェルスの手を引いて抱き締めた

 

 

「ms.サディラー?This is mine.understand ?」

 

「ちょ、ちょっとアキト!?///」

 

アキトはシェルスを後ろから抱き締めながらエスデスを睨む。エスデスもアキトを睨み返す

 

 

「フっ・・・それはすまなかったなアルカード」

 

しかし、エスデスはニヤリと笑った

 

そしてそのまま今日の軍義は終息した

 

 

「軍義だったのか、アレ!?」ガン

 

「何叫んでんのアキト?」

 

アキトは廊下の真ん中で何故か叫び、他の隊員達の注目を集めた

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

inside

 

 

コツコツコツ・・・

 

俺はイライライラとしている。何故なら今回の作戦に穴がありすぎるからだ

 

まず第一に戦力の問題。『人工』とはいえ『吸血鬼』を相手にするんだ。たったの5機じゃあ戦力にもならん

 

 

「アキト?」

 

第二にヤツらの居場所がもう『断定』されているという事だ

 

 

「アキト・・・?」

 

そのいると断定された場所がニューヨークのど真中のホテルて・・・明らかに『罠』だろ!しかも市民には知らされてないと来た

 

『屍喰鬼(グール)』大発生フラグの条件が揃ってる

 

でも・・・でもなんでだ?

 

 

「アキトってば!」

 

なんでヤツらはまだ『仕掛けて』こない?それに軍のヤツらにも積極性がない。もしかして正確な作戦の内容が全体に『伝えられてない』?だから政府と委員会の作戦内容に食い違いがあったのか。でもそれだと・・・

 

 

「アキト!!!」バチン

「痛ッ!?」

 

考え込んでいるとシェルスのデコピンが俺の頬に炸裂した

 

 

「な、何すんだよシェルス?!痛ぇじゃあねぇか!」

 

「何度も呼んでいるんだから返事ぐらいしなさい!」

 

どうやら俺の反応がなくてシェルスはお冠なようだ

 

 

「いや悪い。考え込んじまってた」

 

「作戦の事?」

 

「あぁ、俺達が委員会に依頼された内容とあの将軍さんが言ってた内容が違いすぎる。『合同演習』って何だよ?『吸血鬼退治』と知ってるのがごく一部の俺達だけっておかしいだろ?しかも知ってるはずの指揮官まであまり知らないて・・・」

 

何か・・・何かがおかしい

 

 

「「裏切り者がいる」―――っておん?」

 

俺とシェルスの言葉がハモる

 

 

「やっぱりシェルスもそう思うかい?」

 

「えぇ、あまりにもズサンすぎるわ。情報操作をしてる輩がいる。確実性にかける『勘』だけどね」

 

「シェルスの勘は良く当たるからな~・・・」

 

そうなのだ。シェルスの勘は97.2%(朧が出した演算)の確率で当たる

 

 

「考えすぎかしら?」

 

「どうだろな」

 

一応、もしもの為に『あの子』に頼んどくか

 

 

「アキトはこの後どうするの?」

 

「おん、この後?」

 

俺達が歩く廊下の窓からは夕焼けの空が見える

 

 

「軍義も終わったし、夕食でもご一緒にどうかしらドラキュラさん?」

 

「あらら、先に言われちゃったよ・・・でも勿論喜んでドラキュリーナ」

 

「それじゃあ部屋に戻って着替えたら食堂でね?」

 

「あぁ、それじゃあまた」

 

俺はシェルスと別れると用意された個室に行き、少佐から借りた軍服を脱ぎ、動きやすいアンダーアーマーの服に着替えて食堂に向かった

 

食堂に行くと人通りは少なく、まだシェルスも来てないようなので、入り口で待っていると中から聞き覚えのある声が聞こえて来た。気になって覗いてみると、独軍の軍服を着た銀髪の子がパイロットスーツを着たヤツから何かを奪い返そうとジャンプしていた

 

 

「何やってんだ・・・?」

 

疑問を持ちながら遠目から眺めていると「下郎」とか「男の分際」とか色々とムカツク単語が聞こえてくるじゃあありませんか。ま、俺はこんな事で殴りかかるような単細胞生物じゃないから蔑んだ目でパイロットスーツのアマを見ているとラウラが怒り腕を奮わせ、腕を振り抜こうとした

 

 

「おん、コイツはまずい。『朧』」

 

『御意に』

 

俺は左腕で待機中の朧に命じてワイヤーをラウラの腕に絡めた

 

「何故だ!?」なんてラウラはパニクってる。ヤレヤレ・・・出てみるか

 

 

「来てみてはいいものの・・・あまりにも品性にかける輩がいるな」

 

そして冒頭に戻る

 

 

 

―――

 

 

食堂には全身黒づくめのアキトと彼を睨むパイロットスーツのベルサ、そして固唾を飲む銀髪のラウラ

 

 

「取り合えず・・・ラウラ?」

 

「は、はい!?」

 

不意に名前を呼ばれ、ラウラはビクッと体を震わせる

 

 

「なぜ敬語?それより手を降ろせ、いいな?」

 

「あ、あぁ・・・っわッ!?」

 

ラウラは言う通りに拳を降ろすとアキトはワイヤーをラウラごと手繰り寄せ、顎を持ちながら顔を覗く

 

 

「わわわッ!?///」

 

「大丈夫か?なんだか疲れた顔してるぞ?それになんだか顔も赤い」

 

「そ、そ、それはお前がこんなに近いから!??!///」

 

「ちょっとアンタ達?」

 

「おん?」

 

アキトがラウラと話をしているとベルサが歪んだ睨みを向けた

 

 

「あららん?まだいたのかアンタ?」

 

「アンタ、軍の関係者じゃないわね?誰?」

 

「おん?コイツはご紹介が遅れた。俺は『暁アキト』。テメェがさっきから散々と言ってくれた『男』のIS操縦者よん」

 

「へぇ・・・アンタが・・・」

 

ベルサは睨みからアキトを見回るように物珍しい目で爪先から頭の毛先までなめ回すように見る

 

 

「へぇ~・・・」

 

「おぉん!?(なんか気持ち悪ッ!?)」ゾクリ

 

「アンタ、中々に良い男ね?」

 

「ソイツはどうも。素直に嬉しいよ・・・あんな事を聞いていなけりゃね」ニコリ

 

アキトは笑ってない眼でベルサに笑顔を向ける

 

 

「あ、アキト・・・?」

 

ただラウラだけは眼帯越しから『越境の眼』で見ていたのだ

 

 

「(また・・・またアキトが『紅い』・・・!)」

 

「聞いていたのならしかたないわね・・・アンタ、なんでISを動かせるの?男の分際で」

 

「オイオイオイオイオイ・・・その手の質問なら学園とかなんやらで、かれこれ10000回は聞かれたぜ?てかそれしか聞けれぇのかテメェらは?」

 

「ISは私達の物よ。それを卑しい男が・・・動かしてんじゃないよ!」

 

ヘラヘラと笑うアキトにベルサは激昂し、睨み合う

その後、ベルサが口を開く

 

 

「アンタ・・・そこのアドヴァンスと良い仲らしいじゃない?」

 

「『アドヴァンス(強化人間)』?・・・ラウラの事か?」

 

「どうせ下劣な男の事だ。その出来損ないを毎晩毎晩、喰い物にしてるんでしょ?汚ならしい男」

 

「貴様っ!」

 

ベルサの言葉がカンに触り、ラウラは獲物に飛びかかろうとする猫の体勢になるがアキトはそれを許さず、引き止める

 

 

「なんだいなんだい?モテないからってラウラに嫉妬かい?」

 

「なんですって?」

 

「そりゃあテメェみたいな品性のかけたアバズレより、純真無垢に近いラウラの方が断然良いさ。僻みにしか見えないぜ?醜いね~?」

 

「あ、アンタ・・・」ヒクヒク

 

アキトのまくし立てにベルサは青筋をたてる。もし彼女の腰にホルスターがかけられていたなら迷わず銃を引き抜き撃っていただろう

 

しかし、この後ベルサは間違いを起こす

 

 

「フン。そう言えばアンタ、学園の外に女がいるそうじゃない?」

 

「おん?なんで知っての?」

 

「そこの銀髪が愚痴るのをたまたま聞いてね」

 

「・・・ラウラ?」ギロリ

 

「す、すまん(ってなんで私は謝ってるのだ?!)」

 

アキトは少し紅い眼で睨む

 

 

 

ところで皆さん、『逆鱗』という言葉をご存じだろうか?

 

 

「どうせアンタみたいな野郎を好きになる輩なんだもの―――」

 

元々は竜の顎辺りにある逆さになっている鱗を指すのだが・・・これを触ると竜は激情し、怒り狂う

 

そのアキトにとっての逆鱗をベルサは・・・

 

 

「余程頭の悪い、低俗なアバズレみたいね?ククク♪」

 

金属鑢で激しく擦った

 

シュンッ

 

「・・・へッ?」

 

刹那、掠れる音が聞こえるとベルサは自分の頬を触った

 

 

「な、何よコレッ!?」

 

頬を触った手にはベットリと血がついており、頬はぱっくりと裂けている

 

 

「きゃ、キャアァァ―――ッ!?」

 

「おい・・・テメェ・・・『今、なんつった?』」ビキリ

 

驚き叫ぶベルサにアキトは『真っ赤な眼』で質問する

 

 

「アキトッ!?(な、なんなのだこの『紅』は!?)」

 

アキトはラウラを自分から遠ざけると腰を抜かすベルサにゆっくりゆっくりと近づく

 

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"・・・

 

 

「『貴様、俺の『半身』が何だって?』」

 

眼は先程より真っ紅に色づき、耳まで裂けた口からは2本の長い『牙』が見え隠れする

 

 

「ヒぃッ!?」

 

アキトから発せられる『プレッシャー』にベルサは顔を強張らせ、怯えた。そこをアキトはお構い無しにベルサ近づくと腰を降ろし目線を合わせた

 

 

「『私はな、自分を貶されて怒ることは少ない・・・でもなぁ・・・』」

 

アキトはおもむろに自分の掌を手刀の形にすると大きく手を挙げると

 

 

「『あの子を貶されるのは霧消にムカッ腹が立つ。だからあの子を貶す輩はこうして―――』」

 

「イ、イヤっ――――――ッ!?」

 

「『真っ二つに裂いてやらんとなぁッ!!!』」

 

何の躊躇いもなくアキトは手刀をベルサに降り下ろした

 

 

「アキトォオ!」

 

ラウラは強張る体でただ叫ぶ事しか出来ず、アキトの手刀を止められない。このままベルサの頭はスイカのように弾ける・・・筈だった

 

 

ガシッ

 

「WRYッ!?」「ッ!?」

 

手刀がベルサの額に当たる寸前でアキトの腕を掴む者が一人

 

 

「き、貴様は!」

 

「・・・何だよ『シェルス』?」

 

彼の腕を掴むのは動きやすい服装をし、眼を紅くするシェルスであった

 

 

「(い、何時の間に!?)」

 

「・・・何時来たんだよシェルス?」

 

「貴方ならわかるでしょ?それより何やってるの?」

 

「何って・・・見ての通りだけど?」

 

客観的に見てみると、ほぼ吸血鬼化したアキトが涙を流し白目を剥ける女性兵士にチョップをきめているように見える

 

 

「はぁ~・・・ヤレヤレってヤツよ」

 

シェルスはこめかみに指をあてながら溜め息を吐く。そんな光景を見てラウラが口を開く

 

 

「シェ、『シェルス・ヴィクトリア』・・・」

 

「あら?ラウラちゃんじゃない?夏祭りの時以来ね。元気だった?」

 

シェルスは困惑するラウラに満面の笑みを向ける

 

 

「で?アキトさん?何、夕飯の約束をないがしろにして、ナンパしてるの?ちょっと頭にくるわ」

 

「オイオイ、勘違いしないでくれよ?これはちと・・・口喧嘩が少しヒートアップしただけだよ。だよなラウラ?」

 

「え・・・あ、あぁ・・・そうだ・・・?」

 

紅い眼に見つめられ、ラウラは肯定するしかなかった

 

 

「そんな事より・・・どうするのよコレ?」クイクイ

 

シェルスは白目を剥くベルサを指差す

 

 

「おん・・・そうだなぁ~・・・カカッ♪」

 

アキトは少し考え込むとニヤリと牙を覗かせながら嫌な顔で笑い

 

 

「シェルス、ラウラを」

 

「?・・・あぁ、はいはい。わかったわよ。ラウラちゃん?」コツコツコツ

 

「え?わぷッ!?」

 

シェルスに何かを頼んだ。頼まれたシェルスはラウラに近づくとその眼と耳を手で塞いだ。ラウラは何がなにやらわからず暴れるが

 

 

「『落ち着いて、大丈夫だから』」

 

「ッ!?あ、あぁ・・・」

 

シェルスの能力を使った甘い声ですぐに大人しくなる

 

 

「ふぅ、そのまま頼むぜシェルス・・・」シャキィッ

 

アキトは指を異形に変形させベルサのこめかみへブスリと突き刺し

 

 

「何だよ。やっぱしコイツ、『女尊派』の連中と関わりが深いな・・・」

 

「アキト、『記憶を覗いて』ないで」

 

「わーってるよ。さっさと記憶を『消す』よと!」

グヂャリ

「あが・・・ッ!?」

 

頭から血の塊を取り出すと口の中に含み咀嚼する

 

クチャクチャ・・・ゴクリ

「ぅん~・・・微妙~」

 

「『味』の感想なんていいから、この後どうするの?」

 

「ふむ・・・」ガシッ

 

アキトは気絶したベルサの首根っこを掴み長椅子まで引きずり横にした

 

 

「さて・・・一段落ついたし」

 

「ついてないわよ。さっきのアレ、どうゆう事か説明してもらうわよ?」

 

「えぇぇ~・・・」

 

シェルスの睨みにアキトは愚痴る

 

 

「と言うか・・・いつまで私は目と耳を塞がれるのだ?」

 

一方でラウラは腕組みをして二人に疑問を投げかけていた

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

inside

 

 

 

面倒事によりさっさと食堂から退散した俺達は施設内にあるBarに逃げ込んだ

 

食堂にあんまり人いなかったから目撃者もいないし、食堂にあった監視カメラも朧でどうにかなったし、よかった

 

 

「よくないわよ!」

 

「はい、すんません・・・」

 

今、俺はバーカウンターに正座をしてシェルスの説教を大人しく受けている

 

 

「ブワーハッハッハ♪ざまがないな!暁のォオ!」

 

「暁殿・・・」

 

あとなんでシュトロハイムと少佐がいるんだよ?!

少佐ぁあ!「ご愁傷さま」みたいな目でみるんじゃあない!それにシュトロハイムはうるせぇッ!

 

 

「それはすまない。我輩とシュトロハイム大佐がここにいるのは・・・その・・・」

 

少佐はバツが悪そうな表情をする

 

どうせアレだろ?そこにいる人間スピーカーがヘマなんかして食堂を出禁になったんでしょう?

 

 

「次に少佐は「何故それを?!」と驚くわ」

 

「何故それを?!―――ッハ!?」

 

俺の得意技をシェルスが使い、少佐が驚く。てか予想通り過ぎて逆に引くわ~

 

 

「あぁ。それでクラリッサが困った顔をしていたのだな」ウンウン

 

ラウラが納得した顔で頷いている

 

 

「フンッ!バカ騒ぎでもしないと軍人など務まらんわ!」

 

とシュトロハイムはジョッキのビールを煽る

 

 

「うむ!不味い!やはりアメリカのビールは薄味だな!」

 

なら飲むなよ。てかそんな事言うなよ!店のマスターがすんごい目で見てるぞ!

 

 

「そんな事より暁の!貴様、『黒兎』のチビと懇意にしていたとはな!」バンッ

 

「痛"ッ!?背中を叩くな!このサイボーグ!」

 

普通の人間なら背骨が砕けてるぞ!

 

 

「それに『嫁』とはな!ついに我がドイツ軍に来る事を決めたんだな!!」

 

「どぅうかぁぁあらぁ!俺は嫁じゃあねぇええッ!」

 

何百回言えばわかるんだコイツは!てかこの話題の度にシェルスよ、絶対零度の眼で見るな。体が凍りつきそうになる・・・

 

 

「・・・」

 

・・・ん?

 

 

「どうしたボーデヴィッヒ?今日は何だか静かだな?」

 

何時もなら得意顔で「アキトは私の嫁だ!」みたいな事言うのに・・・何だか大人しいな。まるで借りてきた猫だ

 

 

「そう言えば暁殿は飲まないのであるか?」

 

「おん?飲むに決まってんじゃん!その為に来たんだから!」

 

「いやいや、違うからね。アキトのせいで夕飯を食べ損ねたし・・・」

 

「ならヴィクトリア孃は飲まないのか?」

 

「飲まないなんて言ってないわよ」

 

やっぱし飲むのかよ。って

 

 

「おん?どうしたよラウラ?そんなキョトン顔して?」

 

ラウラが何故か怪訝な顔で俺とシェルスを見ていた

 

 

「いや・・・シェルスはともかく、アキトは『未成年』ではないのか?」

 

あ・・・

 

 

「ブッ!何だと貴様?!」

 

「暁殿が未成年?プフフ♪」

 

おいコラ、シュトロハイムに少佐!笑うんじゃあない!そういう『設定』なのを忘れてたんだよ!

 

 

「な~ら、アキトは飲めないわね♪残念ね~?♪」

 

なんだろシェルスのシタリ顔がムカツク!

 

 

「い、良いんだよ!ドイツじゃあ14からビールが飲めるんだから!」

 

「しかしアキト、ここはアメリカであって、ドイツではないぞ?」

 

「フッ・・・苦しい言い訳ね・・・」

 

ちょいちょいラウラさんや!当然みたいな疑問を真顔で投げ掛けんな!それにシェルスは乗っかるな!素晴らしい連携だな、おい!何時の間にそんな仲が良くなったんだ?

 

 

「良いんだよ、細けぇ事はよ!マスター!取り合えず俺にはウィスキー。赤髪の彼女にはビール。銀髪の彼女にはノンアルコールのカクテルを頼む!」

 

我ながら苦しい言い訳を盾に酒盛りがはじまった

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




アンチって難しい・・・


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酒盛りと告白




今回長め・・・

アキト「今回はそういう表現はあるが、未成年は飲まないでくれよ?」



 

 

 

苦しい言い訳を盾にアキトはウィスキーをロックで、シェルスはビールを飲んでいたのだが・・・

 

 

「むィ~・・・///」グリグリ

「ちょっ、痛い痛い」

 

ラウラが赤い顔と涙目でアキトの頬をグラスの縁で押していた。何故にこんな事になったのかと言うと・・・

 

アキトがシェルス達の分の酒を頼んだついでにシェルスが駆けつけ一杯のテキーラをショットグラスで頼んだ、『三杯』も。アキトの分とシェルスの分とラウラの分だ

 

そのテキーラをシェルスによって、ラウラはイッキ飲みしてしまったのだ

 

 

「まさか、ここまで弱いとは・・・知らなかったわ」

 

隣で大ジョッキを煽りながらシェルスは反省する

 

 

「『知らなかったわ』じゃねぇよ!未成年にアルコールを飲ますな!」

 

「ごめんなさい。アキトがドイツルールって言うから・・・ついね?」

 

「確かにそうは言ったが・・・それは『ビール』の話であって『テキーラ』の話じゃあねぇんだよ!」

 

「・・・その理由で『ウィスキー』を飲むアキトが言えるの?」

 

「ぐっ!そ、それは・・・」

 

アキトはニヤつくシェルスに押し黙った。すると

 

 

「むぅ~!私にもかまえ~よ~め~///」ギチチ

 

酔っぱらいのラウラがアキトの頬を今度はつねる

 

 

「えぇい!完全な絡み酒じゃあねぇか!」

 

「う~る~さ~い~!///」

 

「ワッハッハッハ♪暁殿も形無しですな♪」

 

「フンッ」グビリ

 

アームストロングがバーボンを片手に笑い、ナッツを食べる。その隣では無言だがシュトロハイムも楽しそうにジョッキを煽る

 

 

「なでろ~♪///」グリグリ

「あ~、はいはい。わかったわかった」

 

ラウラはアキトの脇腹に頭を擦り付け、アキトはウィスキーを飲みながら頭を撫でる。撫でられたラウラは気持ち良さそうに目を細める

 

ナデナデ

「フフ~♪///」

 

「・・・」ギチ

「いふぁい!?」

 

何故かシェルスはアキトの頬を引きちぎる程につねると機嫌が悪そうに鼻息をたてビールを煽る

アキトはつねられた頬を押さえながら溜め息を一つ吐くと今度はシェルスの頭を撫でる

 

 

「フンッ///」グビリ

 

「・・・むぅ///」グリグリ

 

ラウラは頬を脹らませてアキトの脇腹をつつく

 

 

「おい暁の。そろそろ子供はお眠の時間だ。寝かして来い」

 

「む!わたちはこどもではありましぇん!シュトロハイムたいちゃ!///」

 

「・・・呂律が回ってませんでござるよ?ボーデヴィッヒ少佐?」

 

「うるひゃ~い!わたちはまだのめる!///」

 

ラウラは空のジョッキの振り回す。それを

 

パシッ

 

「むっ!?///」

「ハイハイ、そこまでよラウラちゃん」

 

シェルスが容易く受け止める

 

 

「シェルス?頼めるかい?一応君のせいでこうなったんだし」

 

「ヤレヤレ・・・ハイハイ、お任せあれよ」

 

そのまま彼女はラウラを担ぎ上げると入り口まで歩いて行き

 

コツコツコツ・・・

「のわ~!?てんちがひっくり返るぅう!?///」

 

「それでは皆様、お休みなさい」ガチャリ

 

自分の部屋へと歩を進めた

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

inside

 

 

 

シェルスがラウラを連れてbarを出ていくとイッキに室内は静かになった

 

 

「そーいやぁ・・・なんでこの時間帯なのに客が入んないんだ?」

 

「・・・今更ですか暁殿」

 

そうなのだ。俺達がこのbarに逃げ込んでからカレコレ2時間半は経つ・・・そろそろ客が入りはじめてもいいはずだ。まさか―――!

 

 

「(流行ってないのか?この店?」ボソッ

 

ギロリ

 

少佐への耳打ちが溢れたのか、店のマスターが睨む。そんなマスターに俺は丁重に謝る

 

 

「俺が『貸し切り』にした」

 

シュトロハイムが10杯目のビールを飲み干しながら答え、11杯目のビールをマスターから受けとる

 

 

「それを早く言え」

 

「早とちりした貴様が悪い」

 

「ッチ」

 

俺は舌打ちをしながら7杯目のウィスキーを飲む

 

 

「で?貸し切りにしたって事は何かあるのかよ?」

 

ゴンッ!

「勿論だろうとも!」

 

シュトロハイムはジョッキをカウンターに叩きつける。ジョッキの底はピキリとヒビが入る

 

 

「貴様・・・ボーデヴィッヒとは何処までいった?」

 

・・・・・・は?

 

「ぶっ!?た、大佐殿?!///」

 

隣にいる少佐が吹き、シュトロハイムの方を向く

 

 

「で?どうなんだ?!!」ズイ

 

モノクルを掛けた血走る目が俺に迫る

 

 

「ど、どうって・・・」

 

「寝たのか・・・?!」

 

「ね、寝たッ!?///」

 

お、おいシュ、シュトロハイム?

 

 

「寝たってのはどういう意味で?」

 

「勿論、『抱いた』のかという意味でだ!!」

 

「いや、そりゃねぇよ・・・」

 

同じベットで一緒に寝たのは寝たのが・・・『そういう意味』じゃあねぇな。あとアームストロング少佐、口元拭け

 

 

「てか、なんでそんな事聞くんだ?」

 

お前、最初はラウラの話に合わせてたじゃないか

 

 

「ボーデヴィッヒはな・・・ボーデヴィッヒはな―――!」

 

そこから長ったらしい昔話がはじまった・・・

 

ラウラが試験管ベビーで軍に期待されていたが『越境の眼(ヴォーダン・オージェ)』の移植手術の失敗で『失敗作』のスティグマを負った。そんなラウラをシュトロハイムが自分の部隊に入れ、鍛えたとかウンヌンカンヌん

 

 

「しかし!あの、あの女、『織斑千冬』にラウラを奪われた!そりゃあボーデヴィッヒが強くなるのは嬉しいさ!でもなぁ・・・でもなぁ!」グイッ

 

シュトロハイムはまたビールをイッキ飲みする

 

「強くなるにつれて俺達と疎遠になるとはどういう事だ!我がドイツの代表候補生になった時に祝いの品を送った時に「結構です」なんて、真顔で拒否されたんだぞ!お父さん悲しい!」

 

「え、え~・・・(お父さんて・・・」

 

「わかります!わかりますぞ!シュトロハイム大佐殿!」パシッ

 

「なに!?」

 

何故かアームストロングも涙を流しながらシュトロハイムの手をとった

 

 

「我輩にも年の離れた妹がおります。昔は「お兄様、お兄様」と我輩の後ろをついて来て「将来はお兄様のお嫁さんになります」なんて言ってくれたのに!今では今ではあぁぁッ―――!」

 

「そうか!お前もかアームストロング!」

 

二人は肩を抱き合ってオイオイと泣く。確か、アームストロングには年の離れた妹さんがいるって、ホークさんから聞いたな~

 

 

「お、おい二人とも、そこいらで―――「『A.A(エーツー)』!」―――な、なんだよシュトロハイム?昔のコードネームで呼んだりなんかして?」

 

不意にシュトロハイムが物凄い形相で睨んで来た

 

 

「貴様が・・・今度は貴様が・・・!」

 

「な、なにが?」

 

「貴様のお陰でボーデヴィッヒが『あの一件』から織斑千冬の事は言わなくなった」

 

『あの一件』?・・・あぁ、『VTシステム』の暴走か

 

 

「それでボーデヴィッヒを軍から排除しようしたクソッタレ共の排除も出来た」

 

「そ、それは良かったな・・・って、排除!?排除ってなに?!!」

 

「だが!」バギャン

 

「スルーかよ!?」

 

シュトロハイムはジョッキを握り潰し、また俺に濃い顔が迫る

 

 

「今度は貴様だ!A.Aゥ!」

 

「な、なにが?」

 

「「なにが?」ではなーーーい!あの一件から報告書から定期連絡まで貴様の事で一杯だ!」

 

え・・・そうなの?

 

 

「やれ「アキトは凄い」だの。やれ「嫁はカッコイイ」だの。貴様の事ばっかりだ!どうしてくれる?!」

 

「いや、知らねぇよ!」

 

「それだけでは飽きたらず・・・貴様の家に何日か泊まったらしいなぁぁあ?!!」

 

「なんと!?」

 

「いやいや、それはウィッチー卿の屋敷で他のヤツも―――」

 

「本国に帰って来た時に嬉々と話してくれたわ!」

 

聞いちゃいねぇよ、この酔っぱらい・・・

 

 

「貴様・・・貴様!よくもうちの可愛いボーデヴィッヒを!」ギリギリ

 

「おいサイボーグ、目からオイルが垂れてんぞ」

 

シュトロハイムは目から血の涙?を流しながら襟元を掴み、俺を睨む。だが

 

 

「・・・しかし不本意だが・・・A.A」

 

「な、なんだよ今度は?」

 

襟元を離すとシュトロハイムは改まって頭を下げた

 

 

「お、おい?!シュトロハイム?!!」

 

「ボーデヴィッヒを頼む」

 

「・・・どういう事ですか大佐殿?」

 

アームストロングの疑問にシュトロハイムは顔をあげ、左手のグローブをとる。その左手は『機械』でできていた

 

 

「A.A。貴様の知っての通り、俺は『四年前』の戦役でこの体になった」

 

「それは知ってるよ。お前が「我がドイツの科学力は世界一ィィイ―――ッ!」って自慢して来ただろうが」

 

あの時は皆ビックリして、気絶するヤツもいたな・・・

 

 

「それが今回の事と何が関係しているので?」

 

「俺はこう見えて向こう見ずな所がある」

 

そりゃ知ってる

 

「そのせいでこの体になった。それはこれからもあるかも知れん・・・だから―――むぐっ!?」

 

そこで俺はシュトロハイムの口に出されたナッツを押し込んだ。シュトロハイムは「何をする?!」なんて口からナッツを溢しながら怒る。それを俺は冷ややかな目で

 

 

「まさかテメェ、自分に何かあったらラウラを俺に託すつもりか?」と答えてやると、シュトロハイムは「そうだ」と答える

 

なので俺は

 

 

「無駄ァッ!」バギ

「げぶぅッ!?」ガシャン

 

「えぇぇ!?」

 

吸血鬼の力で思いっきりシュトロハイムの頬を殴り抜いた!

 

 

「え、A.A!貴様ァッ、何をする?!」

 

「ヤレヤレ・・・あのさぁ?シュトロハイム?」

 

「なんだぁあ!」バギィ

「ぐほッ・・・!」

 

シュトロハイムの反撃が顔面に喰らうが動じずに続ける

 

 

「お前は何時から人一人の人生を決めるような偉い立場の人間になったんだ?」

 

「・・・なに?」

 

シュトロハイムは俺の顔面に拳を入れながら止まった

 

 

「お前がラウラを長年、親のように見てきたのはわかった」

 

「なら、何故?お前ならラウラを守れるだろう?!吸血鬼であり、ヴァレンティーノファミリーの『ゴミ処理係』の貴様なら!」

 

確かにそうかも知れない・・・

 

 

「でもよぉ~、それはあの子の決める事だ。お前じゃあない」

 

「ッ!?・・・それは・・・」

 

シュトロハイムは腕を降ろした

 

 

「それによ、『不死身のシュトロハイム』が弱気な事言ってるんじゃあないぜ」

 

「何?」

 

「お前がラウラから俺の事を聞いてるように俺もラウラからシュトロハイム、お前さんの事を聞いてるんだよ」

 

何時からか、俺がラウラに部隊の仲間の事を聞いた事がある。その時に出てきたのがシュトロハイムの名前だ

 

『祖国の英雄』

『不死身大佐』

『不死身のシュトロハイム』etc.....

 

色々と二つ名が多いもんだ

 

その事を聞いてシュトロハイムが驚愕の顔をしている

 

 

「つまり、ラウラにとってお前は織斑千冬と同等かそれ以上の尊敬する人物なんだよ。おわかり?」

 

「い、いやしかし、そんな事は俺の前では・・・」

 

「言う訳ないだろう。わかってないね」

 

「『親の心、子知らず』のように『子の心、親知らず』ですかな?」

 

さすがアームストロング!良いこと言うね!

 

 

「そ、そうなのか・・・」

 

「おん?もしかして泣いて・・・るぅう~?!」

 

「ば、バカを言うな!ドイツ軍人は泣かない!」

 

なんて言ってるが頬に光的なにかが見えてるんだよ

 

そんなシュトロハイムを肴にまた俺達は酒を酌み交わした

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

noside

 

 

 

アキト達が酒を酌み交わしている中、シェルスはデロデロに酔ったラウラを担いで自分の部屋に戻っていた

 

ガチャリ

「ホラ、ラウラちゃん。着いたわよ」

 

「ゥい~・・・///」

 

シェルスは酔って赤い顔をしたラウラをベットに降ろし、洗面所から水の入ったコップを持って来て酩酊状態のラウラに渡した

 

 

「ラウラちゃん、飲める?」

 

「ぬぅ?ありあと~///」

 

ラウラはそれを受けとるとイッキに煽った

 

 

「ッ!?げほっ、がほごほっ!」

 

「ホラほら、イッキに飲むから・・・」

 

「・・・」

 

咳をするラウラの口元を拭くシェルスをラウラは無言で見はじめた

 

 

「ん?どうしたのラウラちゃん?」

 

「アキトは・・・」

 

「え?おわっ!?」

 

ラウラはシェルスの頭を両手で掴み、まじまじと見る

 

 

「ど、どうしたのラウラちゃん?」

 

「アキトはこんな顔がすきなのか?」

 

「へ?」

 

ラウラの突拍子のない言葉に変な声を出した。ラウラはそのままシェルスの髪をすき、匂いを嗅いだ

 

 

「ちょ、ちょっとラウラちゃん?///」

 

「綺麗な赤毛だ。それにいい匂いがする」ギュウ

 

そしてシェルスを抱き締めた。シェルスは突然の事に少しパニックになり、ラウラを引き剥がそうとしたが

 

 

「私はアキトが好きだ」

 

「!」

 

その言葉に止まった

 

 

「あの食堂での事は、アキトがシェルスの悪口を言われて怒ったのだ」

 

「・・・そうなの」

 

シェルスは静かに聞いている

 

 

「でもその時わかったのだ。アキトは・・・貴様、シェルスが好きなのだ」

 

「・・・」

 

「貴様はどうなのだシェルス・ヴィクトリア?貴様は・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・ラウラちゃん?」

 

「くぅ~・・・すぴ~・・・zzz」

 

ラウラはシェルスに抱き付いたまま意識を深く沈めた。シェルスはラウラを体から引き剥がし、布団をかけた。そして眠るラウラの頭を撫でた

 

 

「私も・・・あの人が・・・好きよ。あの寂しがりやの『ドラキュラ』がね・・・」

 

その顔は慈愛に満ちた母親の顔をしていた

 

 

 

 

 

 

←続く

 







22:37.barにて・・・


アキト「そういやぁ作戦て何時からやんだよ」

アームストロング「え・・・?!」

アキト「・・・なんだよ、その驚きようは?」

シュトロハイム「お前は何も聞いてないんだな・・・」

アキト「・・・は?」



作戦開始まで残り、22時間32分57秒・・・


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戦夜一夜のはじまり




後先考えずにまたクロス!
俺は一体なにを考えているんだろう・・・



 

 

 

 

8月初旬某日

その日、デイリー新聞社の二流新聞記者『ウィル・ウィトウィッキー』は場違いな高級ホテルに宿をとっていた

 

この人物、新人の頃は数々の賞を総なめにする程に期待されていた人物だった。しかし、『八年前』彼は人生を変える人物に出会った

 

『吸血鬼アーカード』

 

彼はその吸血鬼に魅了された人間の一人である

そして、彼は吸血鬼を追って世界中を回った。ついでに変人奇人の烙印も押された

 

そんな彼は今日も吸血鬼の情報に流され、こんなニューヨークの一等地の高級ホテルに宿をとり、聞き込みをする・・・はずだった

 

 

 

 

 

 

「うわぁァア―――!」ダッダッダッ

 

「「「Aaaaaaaaaaaaaa!」」」ドドド

 

今現在、彼はおどろおどろしい『屍喰鬼(グール)』達から逃げていた。何故こんな事になったのか?それは簡単な事である

 

 

「情報源のヤツの取材に最上階のスイートルームを訪ねたら部屋じゃあ人が『喰われてる』ってどうゆうこった?!」

 

『運が悪かった』のだ

 

 

「VAaaaaaaa!」

 

「ぎゃあぁあ!こっちに来んなアァ!」

 

ウィルは屍喰鬼から逃げながら、首にかけていた一眼レフで状況を撮っている

 

 

「あ、あれはエレベーター!」

 

ウィルは目の前のエレベーターを見つけると必死にボタンを連打する。だが、遅いながらも屍喰鬼は迫る

 

 

「早く早く早く早く早くゥ!このままじゃあ喰われちまうよ!早くしてくれぇええ!」カチカチカチカチ

 

チン!

 

彼の願いが通じたのか、エレベーターは最上階につき、開いた。ウィルは安堵するようにエレベーターに乗り込もうとしたが

 

 

「「「Vaaaaaaaaaaaaaa !」」」

「ぎゃあぁあッ!?」

 

扉の開いたエレベーターには屍喰鬼が溢れていた。屍喰鬼達はウィルを喰う為に捕まえようとするが寸での所でウィルは身を引き、非常階段へと走る。だが

 

 

「「「Aaaaaaaaaaaaaa!!」」」

 

非常階段の方向からも屍喰鬼達の群れが迫ってくる

 

 

「う、ウソ・・・だろ?」

 

ウィルはその場に膝をつき、項垂れた。しかし

 

 

「こうなったら・・・」

 

彼は諦めずに一眼レフを構え、自分に迫り来る屍喰鬼を撮りまくった

 

 

「吸血鬼には会えなかったが・・・屍喰鬼に会えて良かったぜ!記者冥利に尽きたぜぇえ!」

 

カメラのフィルムが切れると壁に背もたれ、少し笑った

 

 

「(このまま俺はコイツらに喰われて、屍喰鬼の仲間入りか・・・フッ、これが裏を追ったヤツの末路か・・・)」

 

「VAAAAAAAAAAAAAA!」

 

屍喰鬼の一体がウィルの体を掴もうとした・・・その瞬間!

 

グイッ

「へ?うわぁぁあッ!?」

 

背もたれていた壁の近くの扉が開き、引きずり込まれた。ウィルは何がなんだかわからず暴れた

 

 

「うわぁぁあ!やっぱり喰われたくねぇよぉ!助けてくれぇえ!」

 

「大丈夫ですよ。しっかりしてください」

 

「・・・え?」

 

屍喰鬼とは違う生者の声にウィルは恐る恐る目を開けるとそこには顔を包帯でまいた執事服の男がいた

 

 

「ぎゃあぁあ!屍喰鬼の次はミイラ男かよ!?助けてぇえ!」

 

「誰がミイラ男ですか。よく見てください」

 

「?・・・え、人間?」

 

「そうですよ。大丈夫ですか?」

 

執事服の男が人間とわかり、ウィルは今度こそ安堵した。男の後ろには育ちの良い赤毛の少年がウィルを心配そうに見ている

 

 

「助けてくれて恩にきる。あ、アンタ達は?」

 

「申し遅れました。私は『ギルベルト・F・アルトシュタイン』。こちらは私が支える坊っちゃまの『クラウス・V ・ラインヘルツ』でございます」

 

「あ、えと俺はデイリー新聞社勤務の『ウィル・ウィトウィッキー』です。・・・って『ラインヘルツ』!?」

 

「ッ!?」ビクッ

 

ウィルは少年の名前を聞いて驚き、まじまじと見た

 

 

「おや、ご存知で?」

 

「ご存知もなにも『ラインヘルツ家』と言やぁ、『牙狩り』の名門貴族じゃあないか!」

 

「・・・貴方は同業者か何かで?それにしても格好が・・・」

 

ギルベルトは怪訝な目でウィルを見る

 

 

「いや同業者じゃあないよ。さっきも言ったように俺はしがない新聞記者だよ」

 

「しかし、なぜ『牙狩り』をご存知で?」

 

「いや、それは―――ガンッ!―――な、なんだ!?」

 

ウィルが口ごもったその刹那、部屋の扉が大きく揺れた

 

 

「どうやら・・・それどころではないようですな」

 

「確かに」

 

『『『Vaaaaaaaaaaaaaa !』』』ガンッガンッ

 

外では屍喰鬼が扉を壊そうと暴れていた。ミシミシと扉が音をたてる

 

 

「ウィトウィッキー様、バリケードを作るために手伝ってくださいませんか?」

 

「ウィルで構いませんよギルベルトさん!俺も食べられたくはないんでね!クラウスくんも手伝ってくれる?」

 

「う、うん!」

 

そこからの3人の行動は速かった!ベットやら備え付けのタンスやらを扉の前に並べて揃えて開かないようにした。だが

 

 

「ふ、ふ~・・・こ、これなら大丈―――」

 

『Vaaa!』バギィ

「のわぁッ!?」

 

屍喰鬼達は扉を殴り、ぶち抜いた

 

 

「こ、この野郎!屍喰鬼ってのはここまで力が強いもんなのかよ?!」

 

「まあ一応、『吸血鬼』の出来損ないの『眷属』ですからね!」バギィ

『VooAaッ!?』

 

ギルベルトは落ち着いた口調で扉をぶち抜いた屍喰鬼の腕をへし折った。折れた腕は根本から引きちぎれ床に転がり、ピクピクと動く

 

 

「き、気持ち悪ぃ~!」

 

「だ、大丈夫・・・?」

 

「あ、ありがとうクラウスくん・・・オェ・・・」

 

吐き気を抑えるウィルの背中をクラウス少年が優しくさする

 

 

「そ、それにしても・・・よく平気だねクラウスくんは・・・」

 

「う、うん・・・だって『いつもの事』だから」

 

「ッ!?い、『いつもの事』ォオ?!!」

 

ウィルはクラウス少年の言葉に人間技ではない顔をして驚き、ギルベルトの方を見た。ギルベルトはさも当然のように

 

 

「えぇ。ま、今回は結構『特殊』なケースですけどね」

 

「え、えぇ~・・・」

 

ニッコリと肯定した

 

 

「そ、それで・・・ギルベルトさん?」

 

「はい。なんでしょうウィル様?」

 

「この後・・・どうするんですか?」

 

「ふむ、そうですね・・・おや?」

 

質問されたギルベルトはふと部屋の窓から下を見た。最上階から遥か下ではパトカーのサイレンやらの点滅が見える。生き残ったホテルの誰かが呼んだのだろう

しかし・・・

 

 

「もう『遅い』ですね・・・」

 

「なんだって・・・?!」

 

ポツリとギルベルトは残念そうに呟いた。それを聞き取ったウィルは尚も聞き直す

 

 

「『遅い』って・・・どういう事・・・ですか?」

 

「言葉の通りですよ。ですよね坊っちゃま?」

 

「うん。『屍喰鬼を一匹見れば、千匹いると思え』。だよねギルベルト?」

 

「さすがは坊っちゃま。復習がちゃんと出来ていますね」

 

「エヘヘ///」

 

ギルベルトはクラウス少年の頭を撫でる。実に微笑ましい

 

 

「『微笑ましい』じゃあねぇよッ!」

 

ウィルは二人にツッコミを入れた

 

 

「扉の外には屍喰鬼の群れ、窓の外は地上50階の高さ!まさに逃げ場がない!どうするんですか!いつまでもこのバリケードがもつ訳もないですし!」

 

ウィルは叫び、目からドバドバと涙を流し項垂れる

 

 

「アァ!もうダメだ!俺はアイツらに食われて屍喰鬼になっちまうんだぁああああ!こんな事ならここのホテルの高級ワイン飲んでおくんだったぁああああ!」

 

「もう、大の大人がみっともない。しっかりしてくださいウィル様」

 

「だ、大丈夫?」

 

ギルベルトとクラウス少年はそんな彼の肩を叩く。そんな時、クラウス少年が

 

 

「そ、そうだ!気分転換にテレビを見よう!ギルベルト、リモコンは?」

 

「はい坊っちゃま。ここに」

 

クラウス少年はギルベルトからテレビのリモコンをとるとバリケードに使ったテレビをつけた

 

ピチュン

 

『こんばんは、夕方のニュースをお伝えします』

 

テレビからは夕方のニュースを放送していた。ニュースからはありふれた日常が放送される

 

 

「あぁ・・・」

 

ウィルはそんなテレビを項垂れながらクラウス少年とともに見ていた。しかし、次のニュースをキャスターがテレビスタッフから紙を受けとるとそのキャスターは顔を驚愕にそめた

 

 

『つ、次のニュースです!』

 

「・・・なんだ?」

 

そのニュースは―――

 

 

 

 

 

 

 

『ニューヨークのグランドホテル『ニューリタナー』にテロリストが立て込もっているとの事です!』

 

 

 

―――戦を告げるモノだった

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





ショタウスさんの口調がわからん・・・


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戦夜一夜のホテル1



アキトの出番はないです。次回は出るかな?

アキト「マジかよ?!」



 

 

一流ホテル『ニューリタナー』からの通報により、警察が駆けつけた。しかし、駆けつけホテルに突入した警察官達は屍喰鬼達に難なく喰われお仲間入りとなってしまった

 

それから『特殊部隊』やら『強行部隊』やらが突入していったが・・・

 

「「「ぎゃあぁあッ!?」」」

 

『『『VaGuGyaaa!!』』』

 

呆気なく新人屍喰鬼が増産された

ようやく自分達の手に終えない事に気づいた警察は軍に応援を要請。それから2時間後、ホテルを厳重に取り囲んだ警察部隊のテントに軍用トラックが駆けつけた

 

 

「お、おい!見ろよアレ!」

「スゲェ!」

「コイツは素敵だ!」

 

テントの近くにたむろしていた野次馬達がトラックに向かって喚声を上げる

近くにいたレポーターが野次馬達の目線のモノを伝える

 

 

『ごらんください!ホテルに立て込もっているテロリストを排除するためにIS部隊が投入されます!』

 

トラックからは黒をベースにした色調に胸元には星条旗がついた『全身装甲』の機体が『3機』出てきた。そして隊員の一人が野次馬達に手を振るとホテルへ入っていった

 

 

「「「おぉ―――!」」」

 

『関係者によるとあの機体は我が国最新鋭のISの模様です!機体名は『フラッグ』です!』

 

「「「USA!USA!!USA!!! 」」」

 

観衆は熱気に沸き上がる

そんな情景を双眼鏡で隣ビルの屋上から見る人影が一つ・・・

 

 

「あ~らら、熱狂しちゃって・・・これだからヤンキーは・・・」

 

双眼鏡を外し、その人物は溜め息を吐く。すると腰の無線をとり、通話する

 

 

「もしも~し、こちら『猫』。どうぞ?」

 

『もしもし、こちら『伊達男』。どうした?』

 

無線からは雑音混じりに渋い声が聞こえてくる

 

 

「目標の『乙女』達が到着したよ。そしてそのままパーティ開場に『玄関』から入場。どうぞ」

 

『了解。エスコート係を向かわせ、たっぷりとウェルカムシャンパーニュをぶちまける。招待客は他にいるか?どうぞ』

 

「ん~・・・あ!」

 

『猫』は何かを見つけたのか、声をあげる

 

 

『どうした猫?どうぞ』

 

「『V.I.P. 』を発見。乙女達の乗って来たベンツに乗ってるよ。あと『半機械』も確認。どうぞ」

 

『そうか・・・ククク♪ありがとう猫。『少佐』によろしくな。どうぞ』

 

「それじゃあね『伊達男』。ご武運を」

 

『あぁ。お前もな・・・『シュレーディンガー』』ブチリ

 

相手の男は猫の名前を呼ぶと無線を切った

無線を切られた猫は少し寂しそうに笑うと闇夜へと姿を融かした

 

 

「さぁ・・・『夜がはじまる』。僕達の『夜』が・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ホテル『ニューリタナー』内部にて・・・

 

 

カシャン・・・カシャン・・・カシャン

 

全身装甲のIS『フラッグ』を装着した隊員達はホテルの廊下を進んでいた

が「・・・おかしい」と隊員の一人が呟く

 

 

「どうしたのフラッグ2?」

 

「おかしいでしょう。我々が突入する前に警察が入ったんですよね?だったら何故、こんなにも『異変』がないんでしょう?それにこの『30』階まで何もなし・・・」

 

ホテル内部はテロリストが立て込もっているにしてはあまりにも『綺麗すぎたのだ』。それに警察が突入しているのに廊下には銃撃戦の跡も争った跡もない

 

 

「まるでゴーストホテルね・・・」

 

「フラッグ3、レーダーに反応は?」

 

「ありません」

 

そうして隊員達はホテルの奥へ奥へと進んでいく

 

 

「そう言えばフラッグ1」

 

「なにフラッグ3?」

 

「あのトラックに乗っていた少年は誰なんですか?ドイツの『強化人間』の『番』ですか?」

 

「さぁ?そうなのかどうかは知れないけど『学園の男』らしいわ」

 

「え!?マジですかフラッグ1!」

 

隊員が驚く

 

 

「いいなぁ~、私も彼氏欲しいなぁ~」

 

「そうね。こんな職業だと『ベルサ』隊長みたいになるわよね」

 

「そう言えばあの人、どうしたんですか?」

 

「なんか食堂で倒れていたようですよ」

 

「これも日頃の不健康さね・・・」

 

隊員達は駄弁りながら尚も奥へと進む

すると目の前にゴシック調の両扉が見えて来た

 

 

「フラッグ3、ここは?」

 

「パーティ開場みたいです。ここまで人っ子一人いなかったので多分ここにはいるでしょう」ガチャリ

 

フラッグ3が重々しい扉を開けた

 

 

「「「・・・え・・・!?」」」

 

3人の隊員達は目を見開き顔を青ざめながら驚愕した。そこで3人が見たのは・・・

 

 

グチャリグチャリグチャ・・・

「くっは~・・・やっとこさ、やっとこさかいかいかいかいかい?もう遅すぎだぜ?お嬢さん方?」

 

血みどろの屍の山に胡座をかき、涙を流す若い女性の頭部を蜜柑のように生皮をむき咀嚼するバーテン姿がいた

 

グチャリグチャリ・・・

 

「アは♪アハハは♪」コツコツコツ

 

バーテン服の男は積み上がった屍の山を踏んづけながらフラッグ達に笑顔で近づく

 

 

「ぜ、全体!射撃用意!」

 

「「は、はい!!」」

 

フラッグ1は2と3に命じてリニアライフルをバーテンに向ける

 

 

「およ?およよよよよ?どうして皆さんは僕ちんに銃を向けるんだいだいだいだい?」

 

バーテンは惚けた笑顔でフラッグ達に質問する

 

 

「ど、どうしたもこうしたもない!き、貴様がテロリストか?!」

 

「こ、この山はい、一体・・・!?」

 

フラッグ2.3は戸惑いを隠せずにたじろく

 

 

「え~?見てわかんないの?御覧の通りの僕ちん達の『晩御飯』だよ~?」

 

「ば、『晩御飯』!?」

 

「そうだよ。ね~?皆~?」

 

バーテン服の声に答えるようにパーティ会場の側からゾロゾロと『黒い重装備兵』が出てくる出てくる

兵士達の目は『赤く光っている』

 

 

「・・・貴様らの目的はなんだ?どうしてこんな事を?」

 

フラッグ1はバーテンに言葉をかける。するとバーテンは悪びれる様子もなくいい放つ

 

 

「は?・・・は?は?は?んなの決まってるじゃん。『殺戮』だよ♪」

 

「「ッ!?」」

 

その屈託のない言葉にフラッグ達は固まり、ISの下の顔が強張る

 

 

「そう・・・」

 

「そうだよ?それよりさぁ!お嬢さん方!またパーティには不似合いな汚い『ドレス』を来てるねぇ?こっちにおいでよ!僕ちん達が優しくエスコートしてあ・げ・る♪」

 

「・・・そんな事しなくていいわ。それよりプレゼントがあるのよ・・・受け取ってくれる?」

 

「え~?なになになになに~?」

 

フラッグ1は冷静、しかし怒りを含んだ声で叫ぶ

 

 

「鉛弾を喰らいやがれ糞野郎!」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

ガガガガガガガガカガガガガガガガガッ!!!

 

フラッグ達は一斉にリニアライフルの引き金を引く。銃口から飛び出た銃弾はまっすぐに飛び、バーテン達の体を貫く!

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!

 

「この野郎ゥゥウ!」

 

「クタバリやがれぇえ!!」

 

「ぎゃひ!?」

「あばばば?!」

「ぐべぇッ!?」

 

バーテン達の肉や臓物、脳味噌までもが会場に飛び散り、真っ赤に染まっていた会場はもっと赤く染まりあがる

しかしその内にライフルの弾は尽き果て、カラカラと音が鳴る

 

 

「ハァ!ハァ!ハァ!」

 

「ざ、ざまみやがれ!」ガシャン!

 

弾が無くなり、使い物にならなくなったライフルをフラッグ達は残骸に成り果てたテロリスト達に投げつける

 

 

「・・・フラッグ2、本部に連絡。30階のパーティ会場にいたテロリストを已む無く射殺・・・とね」

 

「了解・・・フラッグ3、生存者は?」

 

「生体反応は・・・なし・・・」

 

「くっ・・・了解・・・!」

 

フラッグ達は苦虫を噛み潰した心境で本部に連絡しようと無線を開いた

 

 

 

・・・その時・・・!

 

 

 

「え?もう終わりなの?」

 

「「「ッ!?」」」グルリ

 

フラッグ達は声がする方向を振り向き、驚愕し、そして青ざめた

 

 

「そ、そんなバカな・・・!?」

 

「ウソでしょ?!!」

 

そこには銃撃で千切れた腕をプラモデルのようにはめるバーテン達がいた

その後ろには先程の銃撃で蜂の巣になった兵士達も平気そうに立ち上がる

 

 

「な、なんだ・・・なんだ貴様らは!?」

 

フラッグ達は恐怖する。目の前で起こっている事態に足を1歩退がる

 

 

「アハハは♪・・・僕ちん達は『レギオン』・・・『吸血鬼の大隊』、『レギオン』だよ」

 

バーテンを静かに答え、また屍の山から屍を引き釣り出し、引きちぎり喰らう

 

グチャリグチャ・・・

 

「んぐ・・・さて・・・お嬢さん方?今度はこっちがその体を味わわせてもらう番だよ。クヒ♪」チャキ

 

「ッ!迎撃体せ―――」

 

フラッグ1の指示が下る前に

 

 

「ぎゃは♪」

 

「ッ!?」

バゴォオン!

 

バーテンは『生身の拳』でISであるフラッグを殴る。殴られたフラッグは数m後ろに吹っ飛ぶ!

 

 

「ッ!?フラッグ1!!」

 

「余所見はダメだよぉ~?」

 

「「「Vaaaaaaaaaaaaaa!!」」」

「きゃあッ!?」バガァッン!

「うわぁあッ!」ゴギャアン!

 

フラッグ2.3も重装備兵に殴られ、壁に叩きつけられる

 

 

「???!」

「ど、どういう事?!」

 

叩きつけられたフラッグ達は頭が真っ白になり、疑問符をいっぱいに浮かべる

 

 

「あ、ISが・・・ISが『ただの人間』に『吹きとばされた』!?」

 

「う、ウソでしょ?!」

 

フラッグ達は戸惑う。世界最強であるISが『生身の人間』のしかもただの『グーパン』で吹き飛ばされたのだ。無理はない

殴られた箇所は大きく凹む

 

 

「今のでSEが『半分まで減る』なんて・・・」

 

「こ、こんなの聞いてない!ウソよ!ウソ!このぉお!」ダッ

 

「ま、待てフラッグ2!」

 

混乱したフラッグ2が回転刃のブレードを引き抜き、テロリスト達に突撃する

 

 

「おっと!」グイ

ズブリ

「なっ!?」

 

バーテンは近くにいた重装備兵を掴むと盾にしてフラッグ2のブレードを食い止める

 

 

「はい、捕まえた!」

 

「い、いや――バギィッ!――かはっ!?」

 

バーテンは容赦なくフラッグ2の鳩尾殴った。するとISのSEはあっという間に0になった

 

 

「か・・・かは・・・!」ドサリ

 

SEが0になった事によりISが解除されたフラッグ2はその場に倒れる

 

 

「およよ?これは中々に可愛いお嬢さんだった!」

 

バーテンはフラッグ2の髪の毛を掴み、まじまじと顔を見るとベロりと頬を舐める

 

 

「貴様ぁ・・・フラッグ2から離れろ!」

 

「もちろん。離れるよ」

 

「へ?」

 

「こうやってね!」

 

そういうとバーテンはフラッグ2を重装備兵達が集まる方に投げた。投げられたフラッグ2に重装備兵達が群がる

 

 

「・・・御上がりよ♪」

 

「や、」

 

「やめろぉぉおッ!」

 

フラッグ達の悲痛な叫びも空しく、フラッグ2はISスーツを剥かれ、重装備兵達に『喰われる』。グチャリグチャリと音をたてて・・・

 

 

「「あ、あぁ・・・!」」

 

フラッグ達は項垂れ、涙を流す。あまりの恐怖に体は震える

そして数分も経たぬまにフラッグ2は無惨な肉の残骸へと変わる

 

 

「皆~?次はあのお嬢さん達だよ~?」

 

「ひっ!?」

 

バーテンの声に重装備兵は反応し、フラッグ1、3の方を向く

 

 

「さっきのお嬢さんも可愛いかったんだ。このお嬢さん達も勿論可愛いよね?それにさっきは『喰う』だけで味気なかったよね~?」

 

「「「Vaa!」」」

 

「だ~か~ら~」

 

バーテンは口を歪みに歪ませ邪悪に笑う

 

 

「あのISを剥いで、スーツも生皮も生爪も、剥いで剥いで剥いで、汚して汚して汚して汚して、そして食べよう。きっとおいしいよ!」

 

「「「「「Vaaa」」」」」

 

重装備兵の目がフラッグ達に注がれる。涎をたらし、ナイフを取りだし、恐怖で震えるフラッグ達にジリジリと近づく

 

 

「く、来るな!来るなぁ!」

 

「本部!本部!応答願います!本部!応答を!」

 

フラッグ3は恐怖のあまり錯乱したように引き抜いたブレードを振り回す。フラッグ1は無線から何度も何度も本部に応答をかける

 

 

「本部!本部!」

 

「う・る・さ・い・よ?」バギィッ!

「グハァッ!?」

 

バーテンはフラッグ1を躊躇いなく何度も何度も何度も殴る。フラッグ2も重装備兵に囲まれ、SEが無くなるまで暴行をうける

その内にSEが底をつき、スーツ姿を曝す。それでもバーテン達は暴行を続ける

 

 

「だ・・・だずげて・・・」

 

「こ・・・この・・・」

 

彼女達の歯や鼻は折れ、涙と血で顔を汚す

 

 

「良いねぇ!良いねその顔!ゾクゾクするよ!」

 

「いや・・・いやぁ・・・!」

 

バーテンは彼女達の髪の毛を掴み、床に叩きつける。その内に気がすんだのか、髪の毛を離すと腹に蹴りをいれる

 

 

「さてさてさてさて!良い顔になったし・・・汚してやろう!皆で仲良く、喧嘩しないでお嬢さん方を汚して汚して汚してやろう!ゾクゾクするねぇ!」

 

「や・・・やめ・・・!」

 

バーテンはフラッグ1のスーツを引き裂くとその首筋に長くのばした牙を突き立てようとした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ザシュッ・・・

 

「・・・え?」

 

しかし牙を突き立てる前に彼女を掴んでいたバーテンの腕が粘土のようにポロリと『切れた』

 

 

ザシュッ

ザシュッ

ザシュッ

 

そのままフラッグ2を囲んでいた重装備兵も首や頭を切り刻まれる

 

 

「な、なんだ?なんだ~?!」クイ

 

バーテンは動揺し、辺りを見回そうと顔をあげる

するとどうだろう。目の前に拳が迫ってくるではありませんか

 

ゴギャッ!

「ぶげらっ!?」ガシャン!

 

バーテンは吹っ飛び、会場内にあったバーカウンターに激突する

 

 

「・・・ヤレヤレ・・・急いで来たと思ったら、すでにか・・・糞ッタレめ・・・!」

 

拳の持ち主は残骸になったフラッグ2を見ながら呟く

 

 

「なんだお前!僕ちん達の楽しみを邪魔するなんて!何者だ?!!」

 

「き、君は・・・!」

 

バーテンは激昂し、自分を殴った人物に向かって叫ぶ。フラッグ1はその人物の顔を見て驚く

 

 

「自己紹介が遅れたな。俺は『アルカード』、『暁のアルカード』。今からテメェらを惨殺死体に仕立てあげる男の名前だ。糞野郎」

 

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"・・・

 

そこにはヤギのマークの入った赤い軽装鎧を身に付け、真っ赤に染まった眼でバーテン達を睨む『暁アキト』こと『アーカード』が立っていた

 

 

 

 

 

 

←続く

 




バーテン服は黒・・・ですよね?


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戦夜一夜のホテル2



『人間讃歌』と『鉄血にして冷血にして熱血』
どっちが強かろな?




 

 

颯爽と駆け付けたアキトはバーテンを一睨みするとフラッグ達の方を向き、朧から上着を取りだし二人にかける

 

 

「大丈夫か?」

 

「え、えぇ・・・」

 

「でもどうして?」

 

フラッグ1は掛けられた上着を掴み、アキトに声をかける

 

 

「状況が変わった」

 

「え?」

 

「それは一体どういう事?」

 

そこからアキトは二人に事情を話す

 

 

「アンタ達がホテルに突入した後、ホテルの入口やら窓やらから『屍喰鬼(グール)』が溢れ出た」

 

「ぐ、『屍喰鬼』?!」

 

「お陰でホテルの外は阿鼻叫喚の地獄絵図だ。そして心配して駆け付けてみりゃあ今度は『吸血鬼』か。糞野郎!」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

フラッグ1がアキトに口を挟む

 

 

「なんだよ?」

 

「さっきから『屍喰鬼』やら『吸血鬼』やら一体何を言っているんだ!?そんなオカル――」

 

「目ぇ見開いてしっかりと見やがれ!」

 

「「ッ!?」」

 

アキトが指差す先にはフラッグ2の残骸が転がっていた

 

 

「これが現状だ!目の前のもんが真実だ!」

 

「で、でもそんな事―――」

 

「なぁ?」

 

「おん?」

 

バーテンがアキト達に声をかける

 

 

「なぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁ?もういいかいかいかいかいかいかい?」

 

バーテン達はナイフを取りだし、盾を持ち、銃を構える

 

 

「ッチ、ド畜生が!立てるか二人とも?!とっととズラかるぞ!」

 

「させると思う~?」ダッ

 

バーテンはナイフを突き立てようとアキトに襲いかかる!

 

 

「危ない!」

 

「避けて!」

 

フラッグ達の叫びがあがる。しかし

 

 

「無駄ァッ!」

「ぐべぇらッ!?」

 

アキトは襲いかかるバーテンに回し蹴りを決めた。しかもただの回し蹴りではない

 

 

「「なっ!?」」

 

「「「「「Aッ!?」」」」」

 

「ぐががッ、ぐぢが!?」

 

回し蹴りを決められたバーテンの下顎は抉られ、なくなる程の威力!

アキトは攻撃の手を休める事なく、今度は拳を構え

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!」

ドガガガガガガガガガガッ!!

「げきべぼラァッ!?」

 

「「「「「Vaaaaa?!」」」」」

 

バーテンの体全体にラッシュを叩き込む!バーテンはそのまま重装備兵の群れと激突する。さながらボーリングのように!

 

 

「き、君は一体・・・?!」

 

「説明は後だ!逃げるンだよ~!!」カチッ

 

「きゃっッ!?」

 

バシュウウゥゥゥウゥッ~

 

アキトは二人を抱えると腰に提げていたスモークグレネードのピンを抜き、辺りに撒き散らした。そして急いでパーティ会場の扉を破壊して出ていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダッダッダッダッダッダッダッダッ!

 

「糞糞糞糞糞ッ!エレベータが屍喰鬼でいっぱいって、ザケてんじゃあねぇぜ!糞ッタレがぁッ!」

 

パーティ会場を出たアキト達はホテルの長ったらしい非常階段を駆け降りる

 

 

「ちょ、ちょっと!君!待ってくれ!」

「と、止まってぇ!」

 

「おぉん?!なんだよぉッ!?」キキィッ

 

アキトは呼び止められ、立ち止まる。立ち止まるとここまで抱えられていた二人はアキトの腕を抜け出し

 

 

「「お、おえぇぇッ!」」

 

嘔吐を階段にぶちまけた

 

 

「おいおいおい?大丈夫かよ?それでも軍人なのかよ?」

 

「ふ、フザケルな!戦闘機のG並の負荷がかかったぞ!」

 

「げ、げぇえっ・・・ハァ、ハァ、ハァ・・・き、君は一体?」

 

血の混じった嘔吐を吐き終えたフラッグ1はアキトに尋ねる

 

 

「おん?さっきも言ったろ。俺は『暁のアルカード』。今回の作戦に参加している『学園の男』だよ。てか、軍用トラックで会ったろうが」

 

「それはわかった。なら『アレ』はなんだ?!」

 

「おん?『アレ』?」

 

「あの『化け物』達の事だ!なんなんだアレは!ISがまるで玩具のように!」

 

「それもさっき言った。『屍喰鬼』達だよ。あのバーテン服のヤツは『吸血鬼』だろうがな」

 

「フザケルなぁ!」ガシッ

 

平然と答えるアキトの襟をフラッグ3は掴み、声を荒らげる

 

「ちょ、フラッグ3!」

 

「そんなオカルトが私に通じるかぁ!アイツらは!アイツらはフラッグ2を・・・マインを・・・」

 

「ミネルバ・・・」

 

フラッグ3こと『ミネルバ・ベスケ』は涙を流しながら何度もアキトを揺らす

 

キッ

「殺してやる!今すぐに戻ってヤツらを!」

 

「そりゃあ出来ねぇな」

「なにぃ!――グフッ!?」ガスッ

 

「な、ミネルバ!?」

 

アキトは会場に戻ろうとしたミネルバの鳩尾を殴り、意識を刈り取る

 

 

「き、貴様!なにを!」

 

「悪いな。このままだとこの人、態々死にに行くハメになったからな」

 

「それは・・・」

 

「わかったところでとっとと・・・おん?」

 

フラッグ1を黙らせたアキトはミネルバ達を担ごうとしたが、何かにアキトは反応する

 

 

――Vaaa・・・――

 

「な、なに?」

 

非常階段の下から何とも言えないおぞましい叫び声が木霊聞こえて来た

 

 

「オイオイオイオイオイ・・・冗談じゃあないぜ!」

 

「どうしたんだ?一体なにが」

 

「HQ!HQ!こちら暁!応答を願う!」

ザーザー

 

アキトは無線のチャンネルを開き、応答を試みるが無線からは雑音の音だけが聞こえて来るばかり

 

 

「無駄みたいね」

 

「糞ッ、ジャマーなんか仕掛けやがって」

 

『王よ来ます!』

 

「なッ、ISが喋って?!」

 

「んな事はいい!行くぞ!」ガシッ

「え、きゃあ!?」

 

アキトはまた二人を担ぐとその階の扉を開け、走って行く。アキト達の去った階段の下からはワラワラとオドロオドロしい屍喰鬼達が上がり、上からは重装備の屍喰鬼達を率いて下顎のないバーテンが降りてくる

 

 

「――、―――――――ッ!!!(野郎、ぶっ殺してやぁるぅッ!!!)」

 

「「「「「「「Vaaaaaaaaaaaaaa!」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

アキト達がホテル内でシッチャカメッチャカしている頃。そのホテルの外では・・・・・

 

 

「むぅッン!!」

「Vaaaッ!?」ドオォッン!

 

「WANABEEEッ!!」

「Aaaaaaaaaaaaaaa!」ザシュッ!

 

「スカッとするぜぇぇえッ!」

「「「Vaaaaaaaaaaaaaaッ!?」」」ガガガガガガッ!

 

拳が交わり、銃弾が飛び交い、鋼が火花を咲かせる。それにより鮮度の悪い血が飛び散り、火薬と焼けた鉄の臭いが広がる。

フラッグ達がホテルに突入した数分後、一人の血だらけの人物が玄関から出てきた。軍は勿論の事にこの人物を保護しようと近づく・・・・・それが間違いのはじまりであった。

血だらけの人物は保護しようと近づいた兵士に『牙』突き立て襲いかかる。それを合図に玄関から、窓から次々とオドロオドロしい『屍喰鬼』達が濁流のように溢れ、ホテルを囲んでいた野次馬達や兵士達に襲いかかった!

そして10分と経たない内にホテルの周囲は血みどろの戦場とかした

 

 

「ぬおおおぉぉッ!」パンッ

 

英国陸軍特殊班専用の青い軍服を纏ったアームストロングは錬成陣の描かれたメリケンサックをはめた拳をぶつけ、地面を殴る。すると地面から拳の形をした支柱が何本も飛び出、屍喰鬼達を潰す

 

 

「Ryyyyy!」ザンッ

 

赤と黄をベースにしたバトルドレスを着たシェルスは自らの血で造った大鎌を振り回し、屍喰鬼達を斬殺に処す

 

 

「ダーッハッハッハッ!!!」ガガガガガガガッ

 

ドイツ陸軍の黒い軍服を纏ったシュトロハイムは改造された自慢の体から重機関砲を出し、問答無用に撃ちまくる。シュトロハイム部隊の者達も本国から持って来た対吸血鬼用の武装で屍喰鬼を残骸にする

各個人がそれぞれの個性を発揮し、それでいて連携もとれた攻撃。まるで歌劇のようだ

 

 

「す・・・・・凄い・・・」

 

そんな光景を見て、民間人の防衛を任されたラウラは感嘆の声をあげる。二日酔いの頭痛から開放されたその眼は一番星を見つけた子供のように輝く

 

「続けぇええ!」

 

「うおぉぉッ!」ズガガガガガッ

 

一方の米軍兵達も残存兵力で屍喰鬼に対処し、少ないながらも屍喰鬼を破壊していく

 

 

 

 

 

 

 

「おぉぉ!!!」

「ワーッハッハッハ!」

「チェストぉッ!」

ザッ

シェルスはアームストロングとシュトロハイムと背中合わせになる。するとシュトロハイムはシェルスに向かって親指を立てながら言葉をかける

 

「おいシェルス嬢?貴様の『コレ』からは何時になったら連絡が来るんだ?!」

 

「知らないわよ!」

 

「どうせ合流対象のIS乗りのアメ公共とシッポリやってるんじゃあないか?ダハハハ♪」

 

「なんですって!?このサイボーグ野郎!その口の中に手榴弾ぶちこむわよ!!」

 

「お二方!喋ってる場合では――「Vaaaaa!!」――ホラ来たぁッ!」

 

そんな三人に屍喰鬼達が襲いかかる。・・・・・が

 

 

「「やかましいッ!!!」」

「「「Vaaaaaaaaッ!?」」」ズブシッ

 

二人の突き上げられた拳と鎌は屍喰鬼達の体を貫く

 

 

「アキトォォオ!!とっとと連絡入れなさァ――い!!」

 

そのままシェルス達はまだまだいる屍喰鬼達を蹴散らしていった

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




『敬意を表す』
それは簡単なようで難しい事がらだ


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戦夜一夜のホテル3

「あいうえ!お?」

「あいうえ! お!」に

今回、アレなのもあります・・・



 

キュ、キュ・・・・・ポン!

 

先にホテルに突入したアメリカのIS乗り達。確か『フラッグファイター』つったけな? ソイツらとの合流並びにホテルの外で暴れる『屍喰鬼(グール)』達の親、『グールマスター』の排除を任された俺は『朧』を展開してホテルの玄関から突っ込んだ。外の屍喰鬼達はシェルス達に任せて・・・

濁流のように襲いかかる屍喰鬼達を千切っては投げ、千切っては投げ、たまに千切った部位を味見をしてホテルのエレベーターに乗り、フラッグファイターの反応を追って、30階のパーティ会場へと向かう。

 

 

カランカラン・・・・・

 

しかし、向かってる途中でフラッグファイター達の機体反応が朧のレーダーから消えた。

「こりゃあノンビリ向かってる場合じゃねぇ!」なんて言いながら、俺は動いているエレベーターの天井をぶち抜き、ブーストを全開にして向かった。

 

だが・・・・・時既に遅く。フラッグファイターの一人が無惨な肉塊へと変わっていたのだ。

されど不幸中の幸いか、まだ残りの二人はISが強制解除していて、屍喰鬼達からボコボコにされてはいたものの、まだ『喰われては』いなかった。

 

 

トクトクトク・・・・・

 

そんな中に屍喰鬼達とは一線を隠す野郎がいた。『吸血鬼』だ。しかも『人工』ものではない、『石仮面』で吸血鬼になった厄介な輩。

何故わかるって? そんな事簡単、俺も『吸血鬼』だから。

 

このバーテン服の吸血鬼がフラッグファイターの一人のISスーツを引き裂き、頸動脈あたりに汚ならしい牙を突き立てようとしやがったので、俺の十八番の鋼糸ワイヤーで辺りにいた屍喰鬼もろともフラッグを掴んでいた腕を切り刻み、その顔面に拳を思いっきり入れてブッ飛ばした。

ブッ飛ばした後、あられもない姿になっちまっていたフラッグファイターの二人に上着をかけ、事情を説明する。勿論の事か、二人は混乱しちまったが無理矢理に肉塊になった仲間を見せて黙らせた。今思えば、酷な事をしたなと反省・・・・・

その後、また俺に襲いかかって来やがったタフなバーテンくんの顎を抉り蹴った俺は二人を抱えてエレベーターに直行。さっさとズラかろうと思ったら、エレベーターは屍喰鬼で満員。流石の俺も怪我人を抱えての処理は難しいと判断。非常階段を駆け降りた

 

 

グイッ・・・グビ、グビ、グビ・・・

 

途中、怪我人の一人が殺意の眼でパーティ会場に戻ろうとしやがったので、取り合えず鳩尾にグーパン入れて黙らせた。そんな事をしてたモンだから、血の臭いを嗅ぎ付けた下の階にいた屍喰鬼共が上がって来る。本部に回線をいれてもヤツらがジャマーを仕掛けていて繋がらない。もう最悪!

悪態をつきながら、俺達はその階『12階』に逃げ込んだ。勿論、非常階段の扉はバーナーでキッチリカッチリ蓋をして。

12階は免税店のようになっていて、上みたいに酷い有り様。千切れた肉片やら血やらで白い大理石の床は赤のフローリングになっちまってる。

しかし、おかしな事にこの階からは嫌なヤツらの気配がしなかった。最初は罠かと思ったが、違うようだ。

どうやらここは『上を攻めるヤツら』と『下を攻めるヤツら』の丁度中間地点になってる事が床にこべりついている血を舐めて読み取れた。しかも全員出払っている。

これを好機とばかりに・・・

 

 

「くぅっっはぁぁあ~~~ッ! 生き返んゼ!」

 

取り合えず店頭に置いてあった上物のスコッチを開けて一息ついている

 

 

「飲んどる場合かぁあッ!?」バゴォ

「ぐえぇッ!? な、何をするんだ――ッ!?」

 

そんな一息いれてる俺の頬をフラッグ1こと『リタル・クルーガ』が殴る。殴られた事でスコッチを注いでいたグラスが床に落ちて弾ける。・・・まだ飲みかけだったのに

 

 

「「何をするんだ――ッ!?」じゃあない! 何を暢気に君は酒なんか飲んでいるんだ?! 頭がイカれているのか?!」

 

「良いじゃあないか! ちゃんと金は払ってるしよ~!」

 

「日本円じゃなくて、$で支払え! それに君は仮にも『IS学園』の生徒だろう? 未成年じゃあないか!!」

 

「カッカッカ♪ ・・・・・何時から俺が未成年だと勘違いしていた?」

 

「ダ、ダにィっ!?」

 

なんかこの人、表情がコロコロ変わっておもしれぇなぁ~

 

 

「そんなに騒ぐなよ。手当てした傷口が開くぜ?」

 

「誰のせいだと思っている?!」

 

「勿論、俺のせい♪」・・・なんて言ったら、ホントに傷口が開きそうだからやめとこ

 

 

「まぁまぁ、取り合えずアンタも飲めよ。気分が少しは落ち着くぜ?」

 

「私はワイン派だぁあッ――!」

・・・ブチリ

 

あ・・・傷口開いた・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

アキトのせい? で傷口がで開いたリタルはもう一度傷口を縫合してもらうと、アキトの持って来た高級ワインボトルを奪い取り、ラッパ飲みをする

 

 

「っか~~~ッ! 美味い! 美味すぎる!//」

 

「よっ! 良い飲みっプリ!」

 

血まみれの大理石の床に腰をおろし、包帯まみれの気絶したミネルバを真ん中にヤケ酒を飲む二人。・・・・・異様だ。

そんな中、程好く酔ったリタルがアキトの襟を掴んで引き寄せる

 

 

「おい、暁青年!//」

 

「なんだいクルさん? てか酒臭ッ」

 

「これからどうするつもりだ?! ヤツらには武器がきかない! しかも再生能力もあると来た! それに対してこっちはボロボロが二人に素人が一人と来た!//」

 

「あぁ・・・そうだな~…てか近いよクルさん」

 

「しかも! 救援を呼ぼうにも無線はヤツらによって使えない! まさに絶対絶命だ! ヂキショウ!//」ゴンッ

「痛"ッ!?」

 

「うわぁぁあッ!//」

 

リタルは赤い顔でアキトの顔面に頭突きをするとそのままアキトに抱き、涙をボロボロと流す

 

 

「え、ちょっと、クルさん!? 酒弱すぎじゃないか?! まだ5分の1も飲んでないだろ? どんだけ下戸なんだ!」

 

アキトは突然の事に戸惑い、アタフタとする。

そんな事を余所にリタルは赤く腫らした眼でアキトを覗く。その眼はどこか熱っぽく艶やかだ。

 

 

「おい・・・・・暁青年・・・//」

 

「な、なんだよ・・・クルさん?」

 

「私を・・・・・抱け///」

 

「・・・・・・・・・・ぎゃ、ぎゃにィッ!?」

 

そう言うとリタルはISスーツを脱ぎはじめた。

 

 

「オイオイオイオイオイッ!? 待て待て待て!落ち着けクルさん! 俺ちゃん展開に着いてけない!」

 

「あんなヤツらに殺られるのならここでアイツらごと自爆してやる。だが、その前に最期の思いでに君に私の『ハジメテ』をあげようと思ってな。なにぶん恥ずかしい事にこの歳で初めてでだな、色々と間違えてしまうかもしれないが・・・ ///」

 

「ちょいちょいちょい、クルーガさん!?」

 

「そんな他人行儀はよしてくれ。『リタ』と呼んでくれ///」

 

「ならリタさん?! 俺の話聞いて?!」

 

「ん? ミネルバの事か? 心配するな。そうなったら一緒に『3P』すれば良い。ミネルバも『まだ』だしな。それに君は私達の命の恩人だ。気にするな///」

 

「そう言う事を言ってるんじゃあないぜ!」

 

叫ぶアキトをこれまた余所にリタルは下の方へと腕を伸ばし、下部武装のベルトに手を―――

 

 

「落ち着け馬鹿野郎!!!」ゴチン

「あうッ!?」

 

――かける前にリタルの頭にアキトの強めのチョップが炸裂した

 

 

「な、何を――」

 

「「何を」じゃあねぇ! 何を勝手に悪酔いしてサカっていやがる?! この阿呆!」

 

アキトは眼を真っ赤にしてリタルに向かって怒鳴りあげる

 

 

「何を勝手に諦めてやがる? 何を勝手に覚悟決めてやがる? 仲間の仇はとりたくは無ぇのか?! 生き残りたくは無ぇのか?! 生きてやりたい事は無ぇのか?!」

 

「そ、それは・・・・・」

 

リタルはアキトの言葉にグウの音も出ないのか、口をつむぎ俯いた。しかし・・・

 

 

「・・・たい・・・」

 

「おん?! 何だと?!」

 

「生きたいに決まってるだろう!!」

 

リタルはすぐに顔をあげ、アキトの襟を掴んで叫んだ。目に涙を溜めて

 

 

「まだ生きていたい! 好きな人と出会って恋がしてみたい! 新しい家族を持ちたい! 何より・・・そして何より!」

 

名一杯の声でアキトに叫ぶ!

 

 

「私達の仲間をゴミのように扱ったあの糞野郎をブチ殺してやりたい!!! でも! でも・・・」

 

リタルはそれだけ叫ぶとまた力なく俯く。アキトはそんな彼女の背中に手を回し、優しく抱きしめる

 

 

『よくぞ・・・よくぞ言った』

 

「・・・え? あ・・・!」

 

アキトはリタルの目を『紅い眼』で覗く。その怪しく光る眼に覗かれたリタルは意識が薄れていく

 

 

「き、君は・・・何を・・・・・?」

 

『あとは俺に任せてくれ。何を隠そう、俺は『用意の達人』。『用意』が出来るまでお休みフロイライン?』

 

「へ? ・・・あぁ・・・」

 

無邪気に笑うアキトの顔を見ながら、リタルは意識を深く沈めていった。

眠ったリタルと気絶したミネルバを比較的安全な場所に隠すように寝かせると朧からヴァレンティーノファミリー特製のロボ『高性能小型万能ロボ』、通称『ミニ・ドン』を数体をおくと命令を出す。

 

 

「それじゃあミニ・ドン達? 用意が出来たら知らせるから、フロイライン達を起こしてくれよ? あと、それまでの護衛と二人が起きたら『コレ』を二人に渡して」

 

『『『『『『『『アロー』』』』』』』』

 

アキトはミニ・ドン達にこれまたヴァレンティーノファミリー特製の『ISの予備バッテリー』を渡し、非常階段の方へと歩いて行く。

 

 

『アロー、アロー!』チャッ

 

『『『『『『『アロー!!』』』』』』』チャッ

 

ミニ・ドン達はそんなアキトに敬礼をした。

 

 

 

コツコツコツとアキトはテンポ良く靴を鳴らして非常階段へと向かう。

その眼は『紅く』。口からは白く長い『牙』が見える。

 

 

「・・・朧?」キュ

 

『なんでしょう、我が王よ?』

 

アキトは手の甲に紅い紋章がはいった白い手袋をはめながら、自らの愛機である朧に尋ねる

 

 

「ナイフ並びにその他の貯蔵は十分か?」

 

『勿論でございます』

 

「ならヤツを・・・ヤツらを『仕立て』に参ろう。久々の『闘争』だ。腕が鳴る」

 

コツコツコツと靴音だけが妙に静かに響いていく

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




変化は少し、されど着実に変わっていく・・・


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戦夜一夜のホテル4



戦国無双4Empiresやってて思った事・・・

日本統一したら、世界統一やりたいな・・・

アキト「『夢幻の如く』みたくな」



 

 

ガンッ! ガンッ! ガンッ!

 

バーナーで接着された非常階段の扉から大きな金属音が響く。屍喰鬼だ。

扉の向こう側から屍喰鬼達が扉を無理矢理こじ開けようと扉を砕いている。しかし・・・

 

ガンッ!! ガンッ!! ガンッ!!

 

一向に扉が開く気配はない。それもそうだ。この階層に入った時、アキトはバーナーで扉を接合するだけでなく、其処らの物を置いてバリケードを作っていたからだ。

 

ガンッ! ガンッ!! ・・・・・

 

・・・音が聞こえなくなった。諦めたのだろうか?

いや、今度は金属音の代わりにピッピッピッと電子音が聞こえて来るじゃあありませんか。

その電子音も30秒テンポを合わせた後、カチリとスイッチが入る音がしたと思ったら―――

 

ドッゴオォォォォォッッンン!!!

 

非常階段扉とバリケードが火を噴いて吹き飛んだ!

辺りは土煙に包まれ、パラパラと塵が舞う。その土煙の中をゾロゾロと屍喰鬼の群れが進んでくる。

 

 

「!」

 

屍喰鬼の一体が何かに気づいたのか、ライフルを前に突きつける。辺りの土煙が晴れていくと屍喰鬼達の前には赤い軽装鎧を纏い、頬杖をついてドカリと椅子に座るアキトがいた。

 

 

「ヤレヤレ・・・これまた派手な登場だな~」

 

アキトは溜め息のように言葉を吐くと紅い眼で屍喰鬼を睨む。屍喰鬼達は全員、銃の標準を男に合わせて引き金に指をかける。しかし、その群れを掻き分けてバーテン服の男がアキトの前に現れた。

 

 

「おん? なんだよテメェ、もう顎が再生したのかよ?」

 

「うるせぇッ! お前、よくもぼくちんの顎を抉りやがって! 殺してやるぅう!」

 

バーテンは激昂している。その形相は人の物ではないほどに歪んでいる。するとバーテンは辺りをキョロキョロと見渡す。

 

 

「お前、お嬢さん達をどこにやりやがった?!」

 

「おん?」

 

「お前が連れ去ったヤツらだよぉぉお!」

 

「あ~…」

 

アキトは指でポリポリと頬をかくと一言。

 

 

「知らね」

ドギュンッ!

 

その一言を言った瞬間にアキトの頬を銃弾が掠める。撃ったバーテンは青筋を立てて、ギリギリと牙を鳴らす。

 

 

「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやるぅ!ぼくちんの顎を抉るだけでなく、楽しみも奪うとは許さん許さん許さん許さん許さん!」

 

「・・・ふむ」

 

どこかで聞いたような駄々を捏ねるバーテンを見ながら、アキトは指を指し、誘うように曲げる。

 

 

「来いよゲテモノ野郎。残骸に仕立ててやるからよ~」

 

「ッ! なぁあめぇぇえるなぁぁぁあ!!」

 

怒りに火をつけられたバーテンは隣にいた屍喰鬼からライフルを奪うと引き金を引いた。

 

ズガガガガガガガッ!

 

銃口からは弾丸が噴き出し、薬莢が飛び散る。屍喰鬼達もマネするようにアキトに向かって銃の引き金を引く。

弾丸は真っ直ぐ向かって飛ぶ。

 

 

「・・・・・ッカ♪」

 

しかし、それをアキトは避けようともしない。それどころか不敵に笑んでいると掌を弾丸に向けた。すると・・・

 

 

「なっ!?」

 

飛んできた弾丸達はアキトの目の前で『止まった』。空中で静止したのだ。

 

 

「な、なんだよ?! どうして弾丸が止まるんだよ?! 理解不能理解不能!」

 

驚愕し、目を丸くするバーテンを他所にアキトの口が開く。

 

 

「テメェらは俺の『結界』の中にいる」

 

「は? なにを――」

 

「さぁ、残骸になりな。糞袋ども!!」ザンッ

 

「ッ!?」ザッ

 

アキトは腕を交差するように降り下ろす。それを危険と察知したバーテンは急いで後ろに下がる。

 

バシュゥッ

 

すると最前列にいた屍喰鬼達の頭、腕、胴体、足がバラバラに飛び、臓物と血がベチャリと床に散る。

 

 

「・・・・・ッチ!」

 

アキトは不機嫌そうに牙を鳴らす。

 

 

「なんだなんだなんだなんだなんだなんだ?! なんなんだ?!」

 

バーテンは疑問に疑問を浮かべる。

 

 

「テメェ、この野郎。首寄越せ! 首寄越せこの野郎!」

 

アキトはギリギリと牙を鳴らしながら腰にかけていた刀をスラリと抜いて近づく。

 

 

「み、皆! ぼくちんを守れ!」

 

怯んだバーテンは屍喰鬼に命じて、自分を守るように囲ませる。他の屍喰鬼達はアキトに襲いかかるが近づく度に勝手に屍喰鬼はバラバラになってしまう。

 

 

「(なんでだ? なんでだなんでだ?! どうして? ってアレは?)」

 

バーテンはふと壁の隅を見た。そこには小さなドローンが階層の至るところに飛んでいたのだ。

 

 

「(そうか! あのドローンにワイヤーをかけて斬っていたのか! そうとわかれば!) おい!」

 

「Va?」

 

「あれを撃て!」

 

バーテンは配下の屍喰鬼にドローンを撃ち落とすように命じた。命じられた屍喰鬼はドローンに向かって発砲し、全てを撃ち落とした。

 

 

「アハハは♪ なんだ、こんな子供騙しだったのかよ!これでお前の優勢はお仕舞いだ! 行け! お前達!」

 

「「「「「「Vaaaaaaaッ!」」」」」」

 

落ち着きを取り戻したバーテンは配下の屍喰鬼に命令を下した。屍喰鬼はナイフを取りだし、アキトに襲いかかる。が・・・

 

 

「邪魔だぁあ、退けぇ!」ザンッ

 

アキトはバターをナイフで切るように屍喰鬼の体をかっさばく。

 

 

「ッ!? い、行け行け! 数ではこっちが上だ!潰せ潰せ!」

 

「「「「「Vaaaaaaa!」」」」」

 

それでも尚、屍喰鬼は次々とアキトに襲いかかる。されど変わらずにアキトは屍喰鬼を切り伏せる。しかし・・・

 

 

「Va!」

 

「テメ、この――」

 

「「「Vaaaaaaaaaaaaaa!」」」

 

胴体の千切れた屍喰鬼の一体がアキトの足を掴み、バランスを崩す。これを好機とばかりに屍喰鬼が覆い被さる。

 

 

「それそれ! 今だ! 潰せ潰せ!」

 

「「「「「Vaaa!」」」」」

 

屍喰鬼はとんでもない力で殴り、刺す。

普通ならフラッグ達と同じようにSEを0にされ、そのまま剥き出しとなった肉を喰われているだろう。

 

・・・だが、それは『普通』だったらの話だ。

 

 

「『拘束術式・第三号』解放」

 

「ッ!?」

 

屍喰鬼が飛び付き、団子のようになったアキトから声が聞こえてくる。その声に、その言葉にバーテンは『恐怖』を感じ、ゾッとした。

 

 

「な、なんだよ・・・・・なんなんだよお前はよぉ!?」

 

「なに、ただの吸血鬼さ」

 

バリバリバリバリバリ!

 

団子のように固まった屍喰鬼は突如として現れた身の丈5mはある『黒い狗』に『喰われた』。

グチャリグチャリと音をたてて屍喰鬼を咀嚼し、他に残っていた屍喰鬼全てをも飲み込んでしまった。

 

 

「お~、よしよしよしよしよしよしよしよし。美味しく食べれてよかったね~」

 

『グルル・・・』

 

そんな黒い狗の頭をアキトは思いっきり撫でる。狗は気持ち良さそうに目を細める。

 

 

「う、うわぁぁぁぁぁあ!!」

 

怖じ気づいたバーテンは非常階段へと逃げる。そこには先程まで余裕ぶっていた姿はなかった。

 

 

「させると思うか?やれ『ニコ』」

 

『ガウッ』ダッ

 

「ひッ!?」

 

そう易々と敵を逃すアキトではなかった。アキトの命令で黒い狗『ニコ』はバーテンが向かう非常階段の前に素早く立ち塞がる。

 

 

「ど、退けぇ! 化け物ぉ!」

 

バーテンは吸血鬼の力を全開にしたグーパンを繰り出したが・・・

 

 

『ガウ』ボガ

「でぶしッ!?」

 

ニコの狗パンチにバーテンは潰され、転がされ、噛みつかれ、玩ばれる。それにより、バーテンの骨は砕かれ、筋肉は千切れる。

 

 

「ニコ。カムカム」

 

『ワフ? ガウ!』ブンッ

「がぶらッ!?」

 

呼ばれたニコは遊んだ『玩具』をアキトに放り投げる。投げられたバーテンは綺麗な放物線を描き・・・

 

 

「あらヨット!」ダギャ

「あげぇらッ!?」

 

足元に落ちてきた。それをアキトはなんの躊躇いもなく頭を踏んだ。メキメキと音がなり、バーテンは悲鳴をあげる。

 

 

「さぁ~~て、コイツどうしようか?その前にニコ、戻りな」

 

「ワフ」ドロリ

 

アキトは体内にニコを溶け込ませながら、バーテンの頭をグリグリと踏みつける。

 

 

「た・・・」

 

「おん?」

 

「たずげで・・・たずげでぐだざぁ~い!」

 

バーテンはボコボコで酷くなった顔で涙と鼻水を流しながらみっともなく命乞いをする。

 

 

「ほぅ・・・助けて欲しいか?」

 

「! たずげでくれるんですか?!」

 

「そうだ・・・な!」バギ

「げぶっ!?」

 

アキトは左腕のパネルを叩くと蔑んだ目でバーテンの頭を蹴った。何度も何度も何度も、まるでサッカーボールのように。

 

 

「がふ・・・たずげ――ぐぇッ!?」

 

「うるせぇよ糞袋野郎・・・テメェはそう言って助けを求めたヤツをどうした? え?」スラリ

 

「や、やめ――ぎゃあぁッ!?」

 

アキトはバーテンの足を、腕を、腹を刀で突き刺し切り裂く。そして切り裂いた場所を踏んで潰す。バーテンは断末魔をあげて苦しみの悲鳴をあげる。

ザク、ザク、ザクと何度も斬りつける。

 

 

「ふん・・・」

 

「も、もう、やめ・・・」

 

バーテンの声なのか、それとも飽きたのか、アキトは刀で斬りつける事を止める。そして、バーテンの髪の毛を鷲掴みにし顔を覗く。

 

 

「おい、テメェ?」

 

「は・・・はい・・・!」

 

「テメェ、吸血鬼なんだろう?さっさと傷を『再生』しろよ。とっとと立って向かって来いよ」

 

かなり強い口調で、尚且つ冷淡にバーテンに言葉をかける。それに対してバーテンは・・・

 

 

「た、たずげで・・・・・くだざい・・・」

 

そう答えるしかなかった。

 

 

「・・・・・ッチ・・・!」グシャッ

「ぐべら!?」

 

アキトは忌々しく舌打ちをするとバーテンの顔を床にめり込ませる。

めり込ませたアキトはそのまま立って後ろを向いた。

 

 

「・・・行けよ」

 

「え・・・・・?」

 

「とっとと体を再生させて行けよ」

 

「こ、殺さないんですか?」

 

「あぁ・・・」

 

短くそう答えるとアキトはそのまま歩き出した。

 

 

「そうですか・・・・・ありがとう――」

 

バーテンはアキトが完全に後ろを向いたのを確認すると

 

 

「なんて言うと思ったか、このマヌケがぁあ!!」

 

直ぐ様に体を再生させて、アキトに襲いかかる。

 

 

「ヤレヤレ・・・マヌケはテメェだ、マヌケ」

 

「なにッ!? ギャアァアッ!?」ブスリ

 

アキトに襲いかかったバーテンの頭と胸にコンバットナイフがぶっ刺さった。

 

 

「それじゃあ、あとはヨロピク~」

 

「任せておけ・・・」

 

コンバットナイフを投げた人物達は交わり時にハイタッチをする。

 

 

「あががが? お、お前らは?!」

 

バーテンの前には黒い全身装甲のIS『フラッグ』を纏ったフラッグ1『リタル』とフラッグ3『ミネルバ』が立っていた。手にブレードを持って。

 

 

「貴様ぁ・・・さっきはよくもやってくれたな・・・・・!」

 

「仲間の仇・・・取らせて貰うぞ!」

 

「ひ、ヒィィィィイ!!」

 

バーテンは二人の凄味に圧倒され、ズルズルと後ろに身を退く。そして、アキトに向かって叫ぶ。

 

 

「お、お前~! 話が違うじゃあないか! ぼくちんを殺さないって!」

 

この言葉にアキトは振り向き答える。

 

 

「あぁ、殺さないよ。俺『は』殺さない」

 

「・・・へ?」

 

「あ。あとコレ」

 

アキトは思い出したようにポケットから『懐中電灯』を取り出すとフラッグ1に渡す。

 

 

「これは?」

 

「これは『紫外線掃射式懐中電灯』だよ。こんなふうに・・・」カチリ

「! ウギャアァアァアァア!?」

 

アキトは電灯の紫外線をバーテンの腕や足にあてる。そうすると紫外線が当たった部位は燃え上がり、溶けた。

 

 

「こんなふうに使うんだよ。understand ?」

 

「O.K. 把握」

 

「そんじゃあ・・・楽しんで?」

 

コツコツとアキトはウィスキーが置いてあるショーウィンドーへと向かって歩いていく。

 

 

「さて・・・」

 

「タップリと仕返しをしてやろう・・・」

 

「あ・・・あぁ・・・・・ウギャアァアァアァアァァッ!!!」

 

アキトの後ろでは新たな断末魔が響いて、階層全体に轟く。

 

 

「ヤレヤレ・・・恐ろしいねぇ、『復讐』ってヤツは」

 

そんなフラッグ達の私刑を見ながら、アキトはウィスキーを煽った。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




そろそろ・・・かね?


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戦夜一夜のホテル5


『オーバードライブ』と『オーバーライド』て似てない?

アキト「似てない」



 

トゥルルルル!

トゥルルルルル!!

トゥルルルルル!!!

 

ここはデイリー新聞社。

その仕事場ではひっきりなしに電話をかける者が多くいる。そして、その周りでは勤める記者達が普段の10倍は動いていた。

 

 

「おい! あの資料どこだって?!」

 

「明日の朝刊には間に合うよな!?」

 

「印刷機が壊れた~!」

 

何故、こんな事になったのか?それは数時間前に遡る・・・

 

 

 

『ホテル・ニューリタナーで反ISのテロリスト立て籠りか?』

 

テレビからは夕方の特報を伝える内容を伝えていた。

普通の新聞社ならこの特ダネを追うために急いで現場に向かうだろう。しかし、この新聞社は違う。

 

 

「あ~…腹減ったな」

 

「仕事しろバカタレ」

 

『新聞社・デイリー』。発足当初の頃は様々なスクープを物にしていた。しかし、10年前に起きた『白騎士事件』を批判した事により、世界中の女権団体から叩かれ、今では日常のくだらない事や眉唾物のオカルトを発信しているありさまだ。

そんなうだつの上がらない連中が集まった職場に・・・

 

トゥルルルルルルルルルル!

 

会社の運命を変える一本の電話が鳴り響いた。

 

 

「お~い、『チャック』。電話~」

 

「編集長が出てくだざいよ~」

 

「言う事聞かなきゃ、減俸だ~」

 

「・・・ッチ・・・はいはい、わかりましたよ。出りゃあいいんでしょ・・・ったく・・・」ガチャ

 

アメコミを読む編集長に促され、デイリー新聞社勤務の『リベート・チャック』はダルそうに電話の受話器をとる。

 

 

「はい、もしもし? こちらデイリー新聞社編集部・・・・・って、なんだよ『ウィル』かよ」

 

電話の相手は同僚の『ウィル・ウィトウィッキー』からだ。

 

 

「ウィル、オメェどこにいんだよ? 『特ダネを掴んだ~!』なんて出てっから――・・・は? 『そんな事よりテレビを見ろ』?」

 

チャックは言われた通りにテレビを見る。テレビからはテロリスト立て籠り事件をやっている。

 

 

「今、テロリストの立て籠り事件のニュースやってるぜ? は? どんな状況かって? つかお前どこにいんだよ? 編集長カンカンだぞ―――ってうるせぇッ!?」

 

ヘラヘラと笑うチャックの耳元にウィルの怒号が響き、チャックの鼓膜をつんざく。

 

 

「オメェ、耳がイカれるだろうが!! はいはい、わかったわかった。どんな状況かだろ? IS部隊様が今、突入したぜ。まったくよぉ~、コイツらのせいで俺達の食いぶちが減ったんだよなぁ~…相変わらずムカつく」 

 

テレビではISを讃える内容が放送される。チャックはそれを苦虫を潰した顔でみる。

 

 

「それで? オメェはどこにいんだよ?・・・・・え?」

 

ウィルの返答を聞いたチャックは驚愕し、固まってしまった。

 

 

「あん? どうしたチャック? ウィルからの電話だろう。さっさと帰って残りの仕事やれって伝えとけ」

 

「へ、へ、へへへ、編集長!」

 

「なんだ?」

 

「こ、コレ!」

 

驚愕の表情をしたチャックから受話器を渡された編集長は疑問の顔で電話をとる。

 

 

「おいウィルか? さっさと帰って、残った仕事をやれ! でお前今、どこに――――・・・は?」

 

編集長もウィルの言葉に固まってしまう。

なんだなんだと他の暇な記者達が集まる。

 

 

「う、う、ウィル!! 本当にそこにいんのか!?」

 

「どうしたんすか編集長?」

 

「またウィルが変な事したのかよ。今度はなんだ? 世界遺産に無許可で入ったか?」

 

「ありえそう~」

 

「「「「「キャハハハ♪――「黙ってろオメェら!!」――ッ!?」」」」」

 

笑う他の記者達をチャックは黙らせる。その目は血走っている。

 

 

「ど、どうしたんすかチャックさん? そんな大声出して?」

 

記者の一人がチャックに聞く。

 

 

「アイツはな、アイツはな~…今! 『ニューリタナー』にいるんだよ!!」

 

「ニューリタナー? ・・・・・って」

 

「「「「「えぇえええぇぇぇえッ!?」」」」」

 

編集部は騒然となった。あのウィルが現在、テロリストが立て籠っているホテルにいるのだから!

 

 

「な、なんでそんな所にいるんだよ!?」

 

「知るかぁッ!」

 

騒ぐチャック達を他所に編集長はウィルの話を神妙に聞き、メモをとる。

 

 

「ふん、ふん・・・わかった。」カチャリ

 

「編集長! ウィルは何やってんすか!?」

 

「編集長! てかあのバカは無事なんすか?!」

 

「「「「「編集長ッ!」」」」」ズイッ

 

ウィルの話を聞き終えた編集長は受話器を置いて電話を切る。その編集長に記者達は次々と詰め寄る。

 

 

「やかましぃィイ!!」ドーン

 

「「「「「「ッ!?」」」」」」

 

編集長は記者達に向かって叫ぶ。

 

 

「チャック!」

 

「は、はい?!」

 

「お前、あのホテルの設計図を持ってたよなぁ?! それに俺がボツにした化け物の話題も! 持って来い! 今ずくにだ!」

 

「は、はい!」

 

チャックは急いで資料室に走り込む。残った記者達に編集長は指示を出す。

 

 

「お前ら! 今から朝刊のトップニュース張り替えだ! とっと持ち場につきやがれぇえ!」

 

「「「「「は、はい!!」」」」」

 

こうして冒頭へと至る。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

ピッ

「・・・・・これでいいのか?」

 

ウィルは携帯の電話をきり、目の前のソファにユッタリと座る『白いコートとハット』を着用した持ち主でる髭面の男に返す。

ウィルの隣にはクラウス少年と『ワイヤーで拘束された』ギルベルトがソファに座る。そして、その周りを武装した『屍喰鬼兵』が囲む。

 

ウィル達がバリケードを作ってスイートルームに立て籠っていたが、突如てして現れたこの男によってバリケードごと扉を破壊され、反撃の間もなく三人は捕まったのである。

 

 

「私達の事は話してないな?」

 

「聞こえてただろうが・・・話してないよ」

 

「Goooood!」

 

男はウィルの答えを聞いて、満足そうに携帯を受けとるとコートの内ポケットに入れる。

この髭面の男こそ、今回のホテル立て籠りの実行犯、吸血鬼大隊所属中尉『トバルカイン・アレハンブラ』通称『伊達男』その人である!

 

 

「ふむ・・・」

 

トバルカインは珍しそうにクラウス少年の顔を覗き、口を開く。

 

 

「君は真っ直ぐな眼をしているねクラウスくん。」

 

「・・・?」

 

クラウス少年は疑問符を浮かべながらもトバルカインの目を見る。その目は吸血鬼特有の『紅』に染まっている。

 

 

「こんな状況でも『恐れ』を君から感じない。実に真っ直ぐで強い眼だ。君は良い『戦士』になるよ」

 

「・・・あ、ありがとう・・・?」

 

「クックック♪ どういたしまして」

 

トバルカインは愉快そうに笑う。そんな笑うトバルカインにウィルが声をかける。

 

 

「少しいいか? アレハンブラ?」

 

「ん? どうしたウィトウィッキー記者?」

 

「どうしてこんな事を? お前達の目的は?」

 

「そうか・・・目的か・・・」

 

トバルカインはウィルの言葉を聞いて少し考え込むとニヤリと口角を上げ、クツクツと笑う。そんなトバルカインにウィルは目をつり上げ睨む。

 

 

「何がおかしい?」

 

「いや、我々の『指揮官』の言葉を思い出してね」

 

「なに?」

 

「『我々は『手段』の為なら『目的』は選ばない』」

 

「『君主論』をもじっていますな」

 

ギルベルトの言葉にトバルカインは頷く。

 

 

「その『手段』ってのが『殺戮』か? フザケルな!」

 

「ほぅ・・・」

 

ウィルが激昂し、トバルカインに掴みかかろうと身を乗り出すが周りにいる屍喰鬼兵に睨まれたので止める。

 

 

「ウィトウィッキー記者」

 

「・・・なんだよ」

 

「私は・・・いや、私達はご存知のように『吸血鬼』だ」

 

「・・・だからなんだよ」

 

「『IS』なんて物が出てきてからというものの『男』という存在はこの世界では生きにくい」スクッ

 

トバルカインはソファから立ち上がるとウィル達の周りを歩きはじめる。

 

 

「既存の兵器はガラクタになり、ISを扱う者は時代錯誤の特権を得る。おかしいじゃあないか。世界は平和だと言いながら裏では差別が横行し、尊厳が土足で踏まれている。悲しいことだ・・・そうだとは思わないか?」ガシ

 

そして、ウィルの前に来ると彼の肩を掴む。

 

 

「『男』と言うだけで差別され、踏みにじられる。こんな理不尽な事はない。だからこそ・・・」

 

「だからこそ・・・?」

 

「『吸血鬼』という新たな『抑止力』が必要なのだよ」

 

「・・・」

 

トバルカインの言葉にウィルは黙ったままで答えない。

 

 

「これはその『抑止力』を世間に見せつけるための『催し』なのだよ」

 

「『催し』・・・催しだと? フザケルんじゃあねぇ!」

 

ついにキレたウィルはトバルカインの襟を掴み上げる。屍喰鬼兵がウィルを止めようと近づくがトバルカインがそれを止める。

 

 

「その『抑止力』だかなんだかわからねぇモノを見せつける為に罪もない人間を殺したのか?!」

 

「『罪もない』? それは違うな『罪』ならある」

 

「なにッ!?」

 

「『無知の罪』だ。知らないというのは罪な事だ」

 

トバルカインは澄ました顔で答える。

 

 

「何が無知の罪だ! わからねぇヤツがいるなら口で教えてやれよ! 話し合えば良いだろう!?」

 

「それが出来ないからやっているのだよ」

 

「なにぃッ!?」

 

「ウィトウィッキー、君は何か勘違いをしてないか? 我々は『正義』の為に行ってないのだ。『正義』を暴く為に行うのだよ」

 

「な、何を言って――あがッ!?」メキャ

 

トバルカインはウィルの頭を掴むと高く上げると床に投げる。

 

 

「かはッ!?」ベシャ

「「ウィルさん(さま)!!」」

 

床に転がるウィルにクラウス少年とギルベルトが駆け寄る。トバルカインは鼻息をたてて、捕まれていた襟元を直すと懐から拳銃を取りだし構える。

 

 

「ウィル・ウィトウィッキー。君とは気が合いそうだったのに残念だ。」

 

「ッケ! 誰がお前なんぞとわかりあえるかイカれ野郎!」

 

「そうか」

 

トバルカインが引き金に手を添えた・・・・・その瞬間!

 

 

 

『もっしも~~~し! 聞こえてるか実行犯の###野郎!?』

 

「「「「!?」」」」

 

館内放送が大音量で聞こえて来たのだ。

 

 

『お、おい、暁青年?! な、なにを――』

 

『まぁまぁ、ここは任せといて・・・・・聞こえてるよなぁ?! この#####癖の糞野郎! 今からそっちに行って、テメェの脳髄をバーナーで焼き潰してやるからな! 待ってやがれよ、この####野郎!!!』ブチッ

 

館内放送はそのまま終わる。ポカーンと場が静かになる。

 

 

「な、なんだったんだ・・・?」

 

ウィルの疑問の消すように突如としてトバルカインは笑う。「来たか、来たか!」と言いながら。

 

 

「これは良い機会だ。クラウス少年、来るといい。君にとっても素晴らしい物が見れるぞ。ついでにウィトウィッキー、君もだ」

 

「「え?」」

 

そう言うとトバルカインはクラウス少年の手を引こうとするがギルベルトがギロリと睨む。

 

 

「そう怖い顔をするな、別に何もしないさ。執事さんも連れていく。おい」

 

「「「Vaaaa」」」

 

トバルカインが命じると屍喰鬼兵は縄に捕らわれのギルベルトを背負う。

 

 

「さて、行くぞ」

 

「・・・どこに?」

 

クラウス少年の言葉にトバルカインは優しく答える。

 

 

「屋上だよ、クラウスくん」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ふぅ、言ってやったぜ」

 

「何をしてるんだぁあ!」ガン

 

満足そうにマイクを握るアキトの頭をリタルが殴る。

三人はバーテンを処した後、20階まで屍喰鬼を倒しながら進むと放送室をみつけ、放送を行ったのだ。

 

 

「あんな敵を挑発するような放送! 君はバカか!?」

 

「いいじゃんか。フラストレーションが溜まってたんだよ~」

 

「そうだとしてもやり過ぎだ!」

 

リタルとミネルバに怒られ、耳を塞ぐアキト。溜め息を一つ吐くと・・・

 

 

「てい!」

 

「「へ?」」

 

二人の眉間に人指し指を指した。二人が疑問符を浮かべた・・・その時、ズブリ! と指の第2関節までめり込んだ。

 

 

「「あぎゃッ!?」」

 

二人は白眼を剥く。アキトはそのまま二人の耳に語りかける。

 

 

『いいかい二人とも? 二人はこれから本部に帰還するんだ。途中、屍喰鬼に出会うかも知れないけど大丈夫だからね。戦わずにそのまま逃げるんだ。良いね?』

 

「「は・・・ハイ・・・」」

 

「なら行っといで」

 

二人の眉間から指を抜いて、肩を叩くと二人は出口へと向かっていった。

アキトはそれを確認すると掌を伸ばして、背伸びもする。

 

バキバキバキ

「よし・・・なら!」ピタリ

 

掌を壁に添えて目を瞑る。

 

 

「10階層ごとに屍喰鬼が11~14ぐらいって感じか? ・・・おん?!」

 

何か感じとったのか、さらに集中する。

 

 

「『人間』? 生存者か? でも近くに『吸血鬼』の『反応』がある・・・そのまま『屋上』へか・・・この『吸血鬼』が実行犯か・・・?」

 

アキトは腕組みをして考え込むが・・・

 

 

「考えるの止~めた! 朧?」

 

『なんでしょう?』

 

「『輻射波動』頼むわ」

 

『御意に』

 

朧はアキトの左腕に鉤爪を装着し、エネルギーを放出する。

 

 

「それじゃあ・・・・・行くぜェエ!!!」ドゴォッ!

 

アキトは天井を突き破り、『屋上』を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

コツコツコツ・・・

 

俺達は屍喰鬼共に囲まれ、前を歩くアレハンブラについていく。

ズキズキとさっきアレハンブラにやられた頭が痛む。血は出てないが内出血で青くなってやがる。

 

 

「大丈夫・・・?」

 

手を繋いで歩くクラウスくんが心配そうに俺の顔を覗く。俺の手を掴む、その小さな手はどことなく震えている。

 

『牙狩り』のその世界で有名な『クラインヘルツ家』の人間でも年さながらの怯える姿に何故だか俺は安心してしまっていた。

 

『あの日』から俺は闇に住まう者『吸血鬼』達を追ってきた。人間を喰らい、人間を魅了し、人間を同族に変えてしまう恐ろしい種族。

それを追って行く中で化物達を専門に倒す者達の事も自然と耳に入って来た。

 

『牙狩り』、『スレイヤー』、『ヴァンパイアハンター』。何世紀も前から人間を影から守って来た者達。

クラウスくんもその者達になっていくのだと初めて彼に会った時、『心で感じた』。俺が知っているどんな牙狩り達にも負けない牙狩りになる直感的に感じたのだ。

でも・・・そんな彼でも人間なのだ。まだ10にも満たない子供なのだ。

 

 

「ハハ♪ 大丈夫だぜクラウスくん?」

 

「うん」

 

俺はそんな震える彼の手を強く握り、笑顔を向ける。

 

 

「(この赤い髪の未来有望な彼は俺の数十倍も不安なんだよ! 大人の俺が不安になってどうする!? 屍喰鬼共に運ばれてるギルベルトさんだって心配そうな目で見てるんだ。確りしなくては!)」

 

そんな変な使命感を持ちながら俺達はアレハンブラと共にエレベーターに乗る。どこに連れて行かれんのかわからねぇ感情を持って、俺達は屋上のヘリポートに連れて行かれた。

 

外は真っ暗な夜だ。星がちらほらと見え、サイレンの音が微かに聞こえる。

 

バババババババババババ・・・!

 

「うわ!? 眩しッ!」

 

「ふん・・・」

 

どこかのテレビ局の撮影ヘリが俺達をライトで照す。アレハンブラは不機嫌そうに鼻息を漏らす。

 

 

「少し騒がしいが・・・・・まぁ、いいか・・・」

 

「アレハンブラ? お前・・・何するつもりだ?」

 

「なに・・・ちょっとした『闘争』だよ」

 

「闘争?」

 

「!・・・来たようだな・・・」

 

「え?」

 

アレハンブラがそう呟き、目を紅くする。俺達もヤツが見る方向を見る。すると・・・

 

ブチブチブチ・・・

 

ヘリポートのコンクリートがまるでマグマのように赤く変色し、ボコりと泡をふくように破裂した!

 

 

「熱ッ・・・くない? てかやっとこさ着いた~・・・て、おん?」

 

その破裂した穴から人が登って来た。その人はヘリポートに立つと腕を回す軽い運動をし、気付いたように此方に目を移す。

 

その人物は黒髪の東洋人の男で赤いジャパニーズサムライアーマー? みたいな物を着け、手には獣ような鉤爪がついている。

 

 

「テメェさん方が実行犯達かい? 俺は――「知っていますよ。mr. 暁」――・・・んだよ知ってんのかよ・・・」

 

「あ、『暁』?・・・・・まさか!?」

 

「さっしの通りだウィトウィッキー。彼が『暁のアルカード』だ」

 

「そんな・・・」

 

「あの人が・・・」

 

『暁のアルカード』。俺が吸血鬼を追いかける中で知った最強の牙狩り・・・でもその最強の牙狩りが・・・

 

 

「んだよ? そんなジロジロ見やがって?」

 

その牙狩りが俺の目には『青年』に見えた。10代後半から20代前半の俺よりも年下に。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

「それにしても・・・中々に派手な登場の仕方で」

 

「仕方ねぇだろ。どの階層にも屍喰鬼共がウジャウジャいたから『近道』してきたんだよ」

 

「それはご苦労な事で」

 

「「ハハハハハハ♪」」

 

驚くウィル達を他所に二人はカラカラと笑っていたが・・・突然、アキトの目がギロリとつり上がる。

 

 

「・・・テメェが屍喰鬼マスターか?」

 

「そうですよ?」

 

「そっ・・・か!」シュタッ

 

トバルカインの言葉を聞くとアキトは物凄いスピードで鉤爪を突き立てようと迫るが・・・

 

チャキ

 

「「「ッ!?」」」

 

トバルカインは銃をクラウス少年に突き付け、撃鉄を起こす。アキトはそれを目の当たりにして鉤爪を寸での所で止める。

 

 

「テメェ・・・!」

 

「取り合えず手を降ろして貰えますか? アルカード?」

 

トバルカインはしてやったりの顔をしながらアキトに笑いかける。そんなアキトに屍喰鬼共は銃を突き付けるので、仕方なくアキトは手を降ろす。

 

 

「て、どうするよ? このまま俺を蜂の巣にするか?」

 

アキトはヘラヘラと笑ってない目で笑い、ギチギチと牙を鳴らす。

 

 

「まさか! 貴方にはやってもらいたい事があるのでね」

 

「やってもらいたい事?って、おん?」パサッ

 

トバルカインはニヤリと笑うと手に着けていた手袋を外しアキトに投げつけ、言い放つ。

 

 

「暁のアルカード・・・私と『決闘』をしてもらおう」

 

「「・・・は?」・・・って誰だよアンタ?」

 

「あ、新聞記者のウィル・ウィトウィッキーです」

 

アキトとウィルはスットンキョウな声を出してしまったのであった・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




武装錬金!


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戦夜一夜のホテル6



今回、最後らへんでアキトが・・・・・

アキト「・・・なんだよ?」

それではどうぞ・・・

アキト「ちょ、最後まで言えよ!」



 

 

「アームストロング家に代々伝わる防御錬金術ゥウ!」

バ――ン!

 

アームストロングが錬金術で壁を造り、屍喰鬼の蔓延を防ぎ、シェルスとシュトロハイム並びに米軍がそれをサポートする。という防御と攻撃を合わせた連携により、ホテルの外の喧騒は終息に向かっていった。だが・・・

 

 

「ッ! おい! アレ!」

 

「マジかよ?! 救助だ、救助! 要救助者だ!」

 

ホテル内の屍喰鬼を完全に閉じ込める壁を錬金術で錬成する直前に窓から血みどろの黒い鎧が落ちてきた。フラッグ達だ。

最初はフラッグ達までも屍喰鬼になっているかと危惧していたがシェルスの『検査』により、屍喰鬼でない事がわかり、救助される。

その後、二人は比較的安全な作戦本部まで連れて行かれるとホテル内の状況を洗いざらい話す。

 

 

「ウソだろ・・・・・」

 

「そんな・・・バカな・・・!」

 

二人の話す内容に関係者達は驚きの色を隠せずにいる。世界最強の兵器であるはずのISが実体が不確定で曖昧な吸血鬼などという存在にボロ負けしたのだから。

それを隣で聞いていたシュトロハイム達が「やっぱりか・・・」と溜め息混じりに呟く。そんな雰囲気の中でただ一人・・・

 

 

「それでアキトは今、どこにいるの!?」

 

シェルスだけがアキトの居場所を聞いていた。

 

 

「え・・・アキト・・・って?」

 

「貴女達と合流した黒髪の男よ!」

 

「黒髪の・・・あぁ! 暁青年か! 彼はアキトと言う名前なんだな・・・」

 

状況を話していたリタルが少し顔を赤らめながら、アキトの名を呟く。

 

 

「そうよ! その暁アキトはなんで貴女達と一緒にいないの?! 一体どこに?!!」

 

「そ、それは・・・私達もわからないんだ」

 

「ハァア!?」

 

「彼と一緒に行動していたんだが・・・いつの間にか外に・・・・・」

 

「っっっ~! あのバカ!!!」

 

ゴンッとシェルスは鉄製の机をへこませ、怒りを露にする。

 

 

「ちょ、落ち着いてくだされヴィクトリア殿!」

 

「これが落ち着いていられるかぁ!! これからホテルに戻ろうにしても少佐の壁を砕けば、屍喰鬼共がまた溢れ出る! どうすりゃいいのよ!」ガシリ

 

「ぐぇええッ!? お、落ち着いて~!」

 

シェルスはアームストロングの首を掴んで振り回す。

 

 

「・・・心配なんだな、君は」

 

リタルがシェルスに言葉をかけるとシェルスは

 

 

「当たり前よ! 早くしないとホテルにミサイルが落ちてくるんだから!」

 

とんでもない事を口にする。

 

 

「・・・・・・・・はァ!?」

 

リタルは驚愕の声をあげる。そう、ホテルの屍喰鬼を完全に駆逐する為にホテルをミサイルで破壊する事が軍部により決定したのだ。

 

 

「ど、どうしてそんな事に?!」

 

「上のバカタレ共が判断したのよ! 糞ッタレが!」ザンッ

 

「「「ッ!?」」」

 

口が悪くなるシェルスは今度は机を蹴りあげる。蹴りあげられた机は真っ二つに千切れる。そんな中・・・

 

 

「大佐! これを!」

 

シュトロハイムの部下が一つのPCを急いで持って来るとそれをシュトロハイムに見せる。

 

 

「なんだ? 今・・・ヴハッ!? グワハハハハハハ♪」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

シュトロハイムは驚き、吹き出す。そして盛大に笑い転げる。周りは驚き、怪訝な目で見る。

 

 

「ど、どうしたでござるか? シュトロハイム大佐?」

 

「いやな・・・ワハハハハハハ♪ 今やってるニュースが・・・ワハハハ――「うっさい!!」――げばッ!」

 

笑いを抑えてるようで抑えてないシュトロハイムの腹をシェルスが殴る。殴られたシュトロハイムは倒れるがそれでも笑う。

 

 

「シュトロハイム・・・貴様、よほど鉄屑にされたいらしいわね? てか、何を見て笑ってるのよ?!」

 

シェルスはポキポキと拳を鳴らし、シュトロハイムからPCを奪い取り、画面を見る。

 

 

「って!? 何よコレぇええッ!?」

 

画面には今、生放送でニュースが放送されている。

そこで中継されている内容はホテルの屋上で向き合う赤い鎧を装備したアキトと白いコートとハットを被った男。それを囲む武装する屍喰鬼達。後ろには拘束された生存者らしき者も見えたのだ。

 

 

「そう言えば、ボーデヴィッヒ少佐は?」

 

「え? 確か野次馬共の護衛にまわっていたはずじゃあ・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

ホテル屋上のヘリポートは異様な雰囲気に包まれている。

アキトの目の前にはさっき投げつけた白い手袋をはめる髭面の男、トバルカインがいる。周りは武装した屍喰鬼共が二人を囲む。

 

 

「どうしたんですか? 暁のアルカード?」

 

「いや・・・それで俺はどうすりゃいいのかな?」

 

アキトは眉間に皺を寄せてトバルカインに尋ねる。トバルカインは内ポケットから取り出した煙草に火をつけ一服する。

 

 

「なら、そのISを解除して体から外してもらおうかな」

 

「なにッ!? ISだって?!!」

 

トバルカインの言葉に食いついたのは二人を後ろで見るウィルだ。

 

 

「まさか『暁のアルカード』ってのは――」

 

「・・・・・朧?」

『え、しかし!!――「いいから」――・・・御意に』カシャン

 

アキトは言われた通りにISを解除し、待機状態の朧を足元に置く。朧が解除された事により、赤い鎧から黒一色のアンダーアーマーの姿へと変わる。

 

 

「――『男のIS操縦者』!?」

 

ウィルはビックら仰天して顎をあんぐりと開ける。隣で拘束されていたギルベルトも驚く。

 

 

「まさか男性IS操縦者だったとは・・・いやはや・・・これは驚きですな」

 

「?・・・??」

 

クラウス少年は何が何だかわからないようだ。

 

 

「で? 言われた通りにしたけど・・・どうするよ? 殴り合う?」

 

アキトはポーズをとる。

 

 

「まさか本当に解除するとは・・・・・だが、好都合」

 

「おん?」

 

「IS無しでの貴方の強さ、計らせてもらおう!」ゴソッ

 

「ッ!? ソイツは・・・・・!」

 

トバルカインは内ポケットから掌大の『六角形の鉄塊』を取り出し、アキトの顔が歪むのを確認したトバルカインは『核鉄』を構え『覚悟』を叫ぶ!

 

 

「『武装錬金』!!」

 

「「「ッ!?」」」

 

核鉄が光り輝くとトバルカインの周りを幾つもの『トランプカード』が飛び回る。

 

 

「No.22の武装錬金『フォースアルカナイト』。これで貴方の命、討たせて貰う」

 

「・・・うそ~ん・・・・・」

 

トバルカインの台詞にアキトは少々困った顔をして、戦闘体勢をとる。

それは左腕を盾のように突きだし、右腕を槍のように構える。まるで『古代ローマの重装歩兵』のようだ。

 

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"・・・

 

二人を中心に周りの温度は下がっていく。

 

 

「・・・・・」

「・・・・・」

 

両者は何も動かず、相手の出方を伺う・・・

 

 

「これが・・・これが牙狩りと吸血鬼の闘争・・・! ぶつかる前からなんて異様な空気・・・なんて恐ろしい圧迫感・・・!」

 

遠目から二人を見ているウィルはガチガチと顎を震わせ、手に汗を握る。

 

 

「・・・!」

 

ウィルの隣にいるクラウス少年も目を見開き、ゴクリと唾を飲み込みながらアキトを見る。

 

 

「・・・スゥ~…」

 

戦闘体勢のまま固まっていたアキトが突然、大きく息を吸い込んだ。肺にある肺胞全てをパンパンに膨らませる程に吸い込むと・・・

 

 

「『WRYYYYYYYYYYYッッ!!!』」ダッ

 

脚の力を爆発させ、トバルカインに飛び込んだ!

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

その日、ラウラ・ボーデヴィッヒは頭痛によって起こされた。

昨晩シェルスにより飲まされたテキーラで頭は金槌で打たれるように響き、胸焼けが止まらないという最悪のコンディションで出撃した。

 

 

「な・・・なんだコレは・・・!」

 

そこで彼女が見たものは信じられない光景であった。

ホテルから溢れるオドロオドロシイ人の形をした化物共。

戦場を知る彼女にとってもそれは異様であり、奇妙であった。そして何よりもその化物達と戦う彼等がラウラ・ボーデヴィッヒには夜空に輝く星のように映る。

 

 

「快感だゼぇえ――ッ! がぁ――ハッハッハッ!!」

 

ひどく大口を開けて笑い、毎分800発もの弾丸を発射できる自慢の重機関銃で敵をほふる我等がドイツ軍のシュトロハイム大佐。

 

 

「ヌゥう――ッん!!」

 

獣のような唸り声を上げ、両手にはめたナックルと不思議な能力で敵を潰すイギリス軍のアームストロング少佐。そして・・・

 

 

「腸を~・・・・・ブチまけろッ!!!」

 

ステップを踏み、舞を踊るように赤い戦鎌を振るい敵を切り裂く恋敵? のシェルス。

 

この三人が夜空に浮かぶ綺羅星に見えたのだ。

しかし、それと同時にラウラの心に何時かの虚無感が覆う。『戦いたい!』それが彼女の思考を埋めた。

だが・・・彼女は理性ではなく、本能で理解していた『自分では敵わない』と・・・

 

そんな思いを抱きながら、化物共と戦う綺羅星達を遠目にラウラは市民の避難を促していた。

 

 

 

それから幾時が経ったであろう・・・

三人の活躍により、外にいた屍喰鬼を粗方片付け、アームストロングが屍喰鬼がもう出てこないように錬金術で蓋をする。それで漸く、軍並びに警察、市民の負傷者の手当てに人手が回るようになった。

そんな時である・・・・・

 

『ホテルに立て籠る危険人物達を一掃する為、爆撃をする』という「ハァッ!? フザケてんのか!?」と誰かが叫ぶような緊急通告が作戦本部に飛び込んで来たのだ。

 

これにラウラは皆と同様驚愕したと同時にホテルに突入しているアキトの事が頭を過った。

 

 

「また・・・・・また私は『失う』のか・・・?」

 

彼女の奥でアキトによって封じ込められた『マイナス』が顔を覗かせる。

 

 

「・・・嫌だ・・・・・アレはもう嫌だ!」

 

「ちょッ!? 少佐、どこへ?!!」

 

部下の制止も聞かずラウラは愛機『シュバルツア・ハーゼ』のエンジンブースターに火を噴かせ、星がちらつく空へと飛翔した。

 

ラウラはまずアキトの専用機『朧』の反応を追って、ホテルの上へ上へと上っていく。

 

 

「速く・・・もっと速く!」

 

祈るように声を張るラウラが漸く屋上のヘリポートまで上った時、彼女の眼に最悪な状況が映った。

 

 

「フン」

 

「・・・ぐ・・・げほっ・・・・・!」

 

そこには後ろに武装した屍喰鬼を率い、浮かぶトランプカードを操るコートを羽織った男とその目の前には血みどろの人物が膝まづいていた。

ラウラはその血塗れの人物の名前を叫ぶ。

 

 

「あ・・・アキトォオ―――ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




いつの間にかピンチの吸血鬼!
そこに急いで現れた銀の戦乙女!

こんな展開に誰がした?!

アキト「お前だ!」

一体どうなってしまうのか?!
デュエルは続くよ、どこまでも!


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戦夜一夜のホテル7

着陸地点を見失わないように~♪

・・・・・止めをさす・・・


 

 

 

「ぐふ・・・ゲふッ・・・・・!」ベチャリ

 

目の前で血を吐きながら膝まづく傷だらけのアキトに『あっけない』と伊達男、トバルカイン・アレハンブラは思うのだった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

幾時前・・・

 

専用機『朧』を外し、ローマの重装備兵の戦闘体勢のままアキトはトバルカインに飛び込んだ。

しかし! それを読んでいたようにトバルカインはトランプの武装錬金『フォースアルカナイト』でアキトの槍のように突き出された拳を防ぎながら切り刻む。

 

 

「ぐぅッ!?」

 

アキトは少し顔に苦悶の表情を浮かべながらも今度は鋭い蹴りをトバルカインにいれる。

 

 

「ッ!?」

 

蹴りはトバルカインの食わえていたタバコとハットを吹き飛ばすだけだった。

 

 

「この!」

 

「なッ!?」

 

トバルカインはガシりとアキトの足を掴むとそのまま地面に叩きつける。

 

ドオォォオォオ――ッン!!

 

「ぐがァアッ!?」

 

アキトは叩きつけられた衝撃で口から血を吐く。なおもトバルカインは攻撃の手を緩める事はなく。叩きつけたアキトに釘を打ち付けるように蹴りをいれる。

 

 

「がはッ!?」

 

その蹴りにより『ボキリッ!』と骨が折れる音が木霊する。

 

 

「ぐ・・・こ、この・・・!」

 

アキトは自分の体に打ち付けられたトバルカインの足を掴もうとするが・・・

 

 

「無駄だ」バキャン!

 

「ガフッ!?」

 

トバルカインは吸血鬼独特のあり得ない動きをするとアキトの頭に回し蹴り決める。蹴られたアキトは前に5m程転げ回り、屋上端のフェンスに叩きつけられた。

普通の人間なら全身の骨が砕かれ、筋肉も内臓もズタズタにされてなっているだろう。しかし!

 

ダンッ!

 

「て、テメェ・・・この野郎・・・・・!!」

 

彼は立った! 肋骨は折れ、肺に刺さっていようと右拳がズタズタに引き裂かれていようとアキトは立った。

 

 

「ほぅ・・・あの攻撃でなおも立ち上がるか・・・」

 

トバルカインはニヒルな顔で笑っている。だが、こんな余裕な顔を浮かべるトバルカインにはある『なんとも言えない疑問』が思考を埋めた。

 

 

「(おかしい・・・・・さっきの攻撃は確実に頭を熟れたトマトのようにグチャグチャにしていたハズ・・・それなのにヤツの顔は赤く腫れ上がっているのみ。さすがは『暁のアルカード』と言ったところか? だが、それでも・・・・・『弱すぎる』! これが少佐が危惧していた『脅威』なのか? これが『四年前』の『惨劇の化物』なのか? だとしたらなんて滑稽だ)」

 

トバルカインは血を吐きながら此方を睨みつけるアキトを怪訝な顔で見ていると

 

 

「あ、暁のアルカード!」

 

「お・・・おん?」

 

「「ウィルさん(様)?!」」

 

トバルカインの後ろで拘束されていたウィルがアキトに向かって声を上げる。

 

 

「早く、早くISを纏うんだ!」

 

「・・・・・」

 

「このままじゃあ君はその男に本当に殺されてしまうぞ!」

 

ウィルは必死に叫び、ISを装着するように促す。されどアキトは・・・

 

 

「イヤ・・・だね・・・・・!」

 

「「「なッ!?」」」

 

首を縦に振ろうとはしなかった。口から血が吹き出そうともアキトは不敵にニヤリとトバルカインを睨みつけ、フラフラと立ち上がる。

 

 

「ッ!(そんな・・・あの状態で立てるのか?! なんて精神力! これが実際の牙狩りなのか?!!)」

 

そんなアキトの姿にウィルは驚愕し、マジマジとアキトを見ている。その隣で・・・

 

 

「・・・・・?」

 

「どうしたのギルベルト?」

 

「いえ・・・なんでもございませんお坊っちゃま。それよりお目を閉じていて下さい」

 

「?・・・わかったよ」

 

クラウス少年はギルベルトに言われたように目を手で覆う。

ギルベルトは気づいていたのだ。言い表せない、アキトの内側にある恐ろしい『ナニか』に

 

 

「・・・舐められたモノだな」

 

「おん・・・?」

 

トバルカインは宙に浮くトランプを飛散させ、まるで魔方陣のようにアキトを囲む。

 

 

「体はボロボロだというのに・・・人の助言に耳を傾けないとは・・・・・君はバカ者だな」

 

「・・・ニョホ、ニョホホホッ♪」

 

蔑んだ目で見るトバルカインにアキトはまるでバカにしたよう笑い声を上げる。

 

 

「・・・何がおかしい?」

 

「アンタ、実は結構焦ってるんじゃあないのか?」

 

「何・・・?」

 

「さっきの『蹴り』。アンタのフルパワーだろ?」

 

アキトは左手の人指し指をトバルカインに向け、ケタケタと笑う。

 

 

「まっっったく、効かなかったね。これならタンスの角に足の小指をぶつける方がもっと痛い」

 

「・・・」ピクッ

 

「つまりだ。アンタの吸血鬼としての身体能力は別段大した事はねぇヘボ野郎ってこった! その武装錬金の方がよく効いたぜ? 何が吸血鬼だ。この分だとアンタらの頭の『大隊長』ってヤツも大したことはないなぁ!」

 

「貴様・・・!」ピキリ

 

トバルカインはニヤニヤとケタケタと笑うアキトに青筋を立てる。すると腕を大きく上へ広げた。

 

 

「そんなにこのフォースアルカナイトに切り刻まれたいようだな? 良いだろう! その体、切り刻んでくれよう!!」ビュッ

 

トバルカインは上へ上げた腕を大きく降り下ろす。それにより、アキトを囲んでいたトランプが勢いよくアキトに飛んでいく!

 

 

「あ、危ない暁のアルカード! 避けるんだァアッ!」

 

「もう遅い。回避不可能よ! クタバレぇえッ!!」

 

ザシュユゥウゥゥッ!!!

 

トランプはアキトの体を所余す事なく切り刻んでいく。まるでキャベツの千切りをするように。しかし・・・!

 

 

「・・・カッ♪」

 

アキトは断末魔や呻き声をあげる事はなく。それどころか逆にニヤリと嫌な笑みを浮かべたのだ。だが、それをトバルカインは知らない。トバルカインにあったのはシンプルな答え『仕止めた!』只それだけだ!

血飛沫がそこらに飛び散り、アキトは崩れ落ちていく。それを見てトバルカインはニヒルに笑う。

 

 

「アルカードォオ!!」

 

ウィルの悲痛な叫びが風の音とともに屋上に響く。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

その1.2分後、シュバルツア・ハーゼが屋上に飛び込んで来た。ラウラは崩れ落ちて膝まづくアキトに近づき、その体を揺すりながら抱き締める。

 

 

「アキト、アキト! 返事を・・・返事をしてくれ!」

 

されどラウラがいくら名を呼んでも返って来るのは無言だけである。その内にアキトから流れる血がシュバルツア・ハーゼに付き赤黒く機体が染まり、ポタポタと顔にラウラの涙が零れる。

 

 

「これはこれは・・・実に感動的でロマンチックだ」

 

「アキト・・・アキトォ・・・」

 

トバルカインは涙を流し、アキトを抱き締めるラウラを見て新しい煙草を口に食わえると火をつける。

 

 

「・・・貴様・・・・・!」

 

「ん? なんだn――ッ!?」バァチィッ!

 

言葉に反応したトバルカインの食わえていた煙草が頬肉ごと抉れる。トバルカインは口元をおさえ、ギロリと前を睨む。その先には銃口から煙を立てるレールカノンを構えたラウラがいた。

 

 

「ヤバイ! 逃げろ銀髪ちゃ――うげッ!?」ガスッ

 

後方のウィルがラウラに向かって叫ぼうとするが近くにいた屍喰鬼にライフルで殴られる。

 

なおもラウラはレールカノンの標準をトバルカインに合わせ、引き金に指をかける。だが!

 

ザンッ!

 

「なッ!?」

 

飛んできたトランプにレールカノンの銃身は胡瓜のように輪切りになる。

 

 

「ヤレヤレ・・・困ったフロイラインだ」

 

「ッ!? き、貴様!!」

 

ラウラは驚いた。何故なら目の前には先程、頬を抉ったハズのトバルカインが無傷でいたからだ。それにラウラは体が強張り、上手く動けなくなった。

 

 

「そんな・・・さっき貴様は!」

 

「えぇ。貴女の攻撃で頬が『抉れ』ましたよ。だが・・・『それだけだ』。たったの『それだけだ』」

 

「なにィ・・・?!――「銀髪ちゃん!!」――な、なんだ!?」

 

怪訝な顔のラウラに後方で屍喰鬼に顔を踏まれるウィルが叫ぶ。

 

 

「その男、『トバルカイン・アレハンブラ』は『吸血鬼』だ! ホテルの外に溢れる屍喰鬼とは比べられない程の再生力がある! 早く、ここから――アデデデッ?!」

 

叫ぶウィルに屍喰鬼の踏む力は強くなっていく。

 

 

「コラコラ、ウィル・ウィトウィッキー。君はお喋りだなぁ~? 少し黙っててもらおうか。隣を見たまえ、クラウスくんは大人しく目を手で覆っているぞ?」

 

「黙りやがれ、この糞屑野郎! オメェなんぞに指図される覚えはねぇんだよ!」

 

「なら・・・・・生かしておく覚えもないな」

 

「え"――グシュクッ!――ぐぎゃあぁああぁッ!?」

 

「ッ!? ウィルさん!!」「ウィル様!」

 

トバルカインは躊躇いもなく、ウィルの土手っ腹に穴を開ける。間近でその断末魔を聞いたクラウス少年は振り返る。拘束されているギルベルトもジタバタともがく。

ウィルの腹からは血がひっくり返したペットボトルのように流れる。

 

 

「貴様ァ・・・・・人質ではなかったのか?」

 

「私にとって口喧しい輩を『人質』とは呼ばん」

 

トバルカインは「フン!」と鼻を鳴らして答える。

 

 

 

「あぁ・・・・・く・・・糞ッ・・・タレめぇ・・・・・!」

 

「ウィルさん! ウィルさん!!」

 

腹から血を流すウィルは虫の息であった。腹からは出る血を止めようとクラウス少年が必死に傷口を小さな手で押さえる。

 

 

「ガフッ・・・・・(く、糞ぅ・・・これは、もう・・・ダメか・・・?)」

 

朦朧とする意識の中、ウィルは辺りを見回す。その眼に涙を堪えながら手を血に染め、必死に自分の傷口を小さな手で押さえる赤髪の少年『クラウス・V・ラインヘルツ』が写った。

 

 

「(あぁ・・・この将来有望なこの子を見ながらクタばっていくのか・・・・・? 口惜しい・・・実に悔しいなぁ・・・目の前には世界をひっくり返すようなスクープがあるってのに・・・・・この子の将来の姿を見たいってのに・・・・・)」

 

薄れゆく意識の中、ウィルは悔やんだ。歯を喰い縛り、悔し涙を流しながら悔やみに悔やんだ。

悔やんで

悔やんで、悔やんで

悔やんで、悔やんで、悔やんで・・・・・眼を見開いた!

 

 

「ッ!?」

 

今まで味わった事のない、例えるなら背中にドライアイスや液体窒素を入れられたような絶対零度の『恐怖』が彼の身を包んだ!

 

 

「(なんだ・・・なんだこの感触は?! これがクタバッテいく意識なのか・・・? イヤ違う! もっと恐ろしい『感触』・・・!)」

 

見開いたウィルの眼の先には『ヤツ』がニヤリと笑っていた!

 

 

 

「さて・・・フロイライン?」

 

「・・・」

 

トバルカインはニヤリと嫌な顔をしてラウラを見る。

 

 

「 私としてもこれ以上、犠牲者が増えるのはイヤなのだよ。だから・・・『降伏』してくれないか?」

 

「なん・・・だと・・・・・!」

 

「勿論、タダでとは言わない。君に『不老不死』を与えてあげよう。どうだ? 悪い話じゃあないだろう?」

 

トバルカインの言葉にラウラは顔色一つ変えずに言い放った。

 

 

「断る!!」

 

「・・・・・ほぅ・・・どうしてかね?」

 

ピクリとこめかみを動かし、トバルカインはラウラの話を聞く。

 

 

「さっきから『吸血鬼』だの、『屍喰鬼』だの、『不老不死』だのとゴチャゴチャ訳のわからない事ばかり! だが、これだけはわかる。貴様は私の大切な人を傷つけた・・・・・貴様は忌むべき敵だ! 掛かって来い化物め! 倒してやる!」

 

「・・・・・クク・・・プククク・・・♪」

 

ラウラの言葉にトバルカインは笑う。

 

 

「何が可笑しい!?」

 

「なぁァアめぇえるぅなよォオ! この糞餓鬼がぁあ!!」

 

「!」

 

トバルカインは憤怒の表情で激昂する。

 

 

「下手に出てりゃあイイ気になりやがって! 『倒してやる』だと? 笑わせるな! 今の私はそこで残骸に成り果てた『暁のアルカード』を倒せる実力さえ持っているのだ! それを高々ガラクタ乗りが調子に乗りやがって! 今の私が貴様を手にかけるのは――「『赤子を殺すより楽な作業よ』ってか?」――その通りだ! って何?!!」

 

トバルカインは自分の台詞を被せてきた声に驚き、その声がした方を見た。そこには・・・

 

 

「次にお前は『何故・・・何故、生きているアルカード!!』と言う」

 

「何故・・・何故、生きているアルカード!!――ッハ!?」

 

ラウラに抱き締められながら眼を真紅に染め、不敵に笑う男がいた!

 

 

「あ、アキトッ!?」

「「暁の?!」」

「アルカード・・・?」

 

「Yes I am!!!」

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




確実に・・・完全なる止めを・・・・・!


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ホテルの終幕と新たな誘い




ドリフターズ5巻を手に入れた。改めてこの作品に出てくる登場人物達の殆どが史実の人達だという事に驚き・・・



 

 

 

コキッ、コキッ

 

「W~・・・RY!」バーン

 

平然と起きた血塗れアキトは首を一回転させるとなんとも奇妙な立ち方をする。

 

 

「あ、アキト・・・だ、大丈夫なのか・・・?」

 

ラウラは立ち上がり、呆然とアキトの顔を覗く。

 

 

「おん? あぁ、大丈夫だぜ。いやぁよ、中々に『位置』を頭に入れるのに時間がかかっちまってよ~。心配かけたな。あ、血ィ付くから撫でるのは止めといた方がいいか」

 

アキトはのほほんと笑う。一方のラウラは呆然と見た後俯き・・・

 

 

「おん? ラウラちゃん?」

 

「この・・・この・・・この馬鹿者がぁ!!」ドゴォッ!

「げぶィッ!?」

 

シュバルツア・レーゲンを展開した腕でアキトの鳩尾に一発いれた。強烈な一撃をいれられたアキトはそのままラウラに襟元を掴まれる。

 

 

「お、お前・・・ラウラ・・・・・!」

 

「この馬鹿者! 生きてるなら生きてると言え! 私はアキトが・・・アキトが・・・・・」

 

ラウラは涙を流しながらアキトの首を振る。

 

 

「だからそれは『位置』を把握するのに――「喧しい! もう一発殴らせろ!」――何でだよ?!」

 

「貴ィィイサァアマァラァア!!」

 

ギャーギャーと口喧嘩をするアキト達を遠目にトバルカインの青筋がビキリとキレる。

 

 

「何をチンタラちんたらと痴話喧嘩をしてやぁがるぅ?! というかアルカードォオ! 何故、貴様が生きているぅう!? 貴様はあの時確実に『仕止めた』ハズ。なのに何故、そんな平然と立ち上がっているんだ?!!」

 

トバルカインは確実にアキトの体をフォースアルカナイトで切り刻んだ。それは頸動脈にはじまり、脛動脈、頸静脈、脛静脈、大動脈、大静脈と様々な血管と骨、筋肉を斬っており、それに伴い多量の血も流れていた。

 

 

「例えそれで息があっても今の貴様のようにベットから起き上がるように立てるハズが・・・・・ない!!」

 

その通り、確かに『普通』の人間ならTHE ENDだろう。だがそれは『普通』の『人間』だったらの話である。

 

 

「『トバルカイン・アレハンブラ』通称『伊達男』」

 

「!」

 

アキトはラウラを引き剥がすとまた奇妙な立ち方して、トバルカインに指を指す。

 

 

「四年前、東欧で起こった『ファントムブラッド戦役』において討伐軍の将校並びに下士官を合わせて87名を殺害。その後、討伐軍の装甲車を奪って逃走。そこから今まで行方不明・・・だった。その危険人物が今、俺の目の前にいやがる・・・」

 

「それがどうした? 何のトリックか知らんが、もう一度切り刻んでやるだけよ!」

 

「! く、来る!」

 

トバルカインはもう一度切り刻むためにフォースアルカナイトを魔方陣の体形にする。しかし、アキトは逃げる処か防御の体勢をせずに突っ立てるだけである。

 

 

「先程の戦いでわかった事がある。――「アキトッ!? 何をしている?!」――まぁ、待てってラウラ。今、良いとこなんだからさ♪ それより聞きたい? その『わかった』事をよぉ?」

 

「な、何を言って!?」

 

焦るラウラの肩を叩いてアキトは冷静ニヤリと笑うばかりである。

 

 

「その餓鬼もろとも今度こそ木っ端微塵になってしまえッ!!!」バンッ

 

トバルカインは横に広げていた腕を素早く交差させる。それを合図に空中に留まっていたトランプが勢いよく二人に襲い掛かる!

 

 

「くッ!!」

 

ラウラがアキトの前に立ち、防御体勢を急いでとる。

迫るトランプの武装錬金『フォースアルカナイト』。それに対するのはドイツの第三世代機体『シュバルツア・レーゲン』。だが、この二つがぶつかる・・・その刹那!

 

 

「その『わかった』って事はよ~・・・トバルカイン、アンタ、今まで『同族』と『戦った事がないな』?!」

 

ザギィッ!!

 

「なッ!?」

「なんだコレは!?」

 

いく百もの『朱槍』が襲い掛かるトランプを貫く。その光景は地面から棘が生えているようである。

 

 

「い、一体・・・こ、これは・・・!?」

 

この状況をラウラは飲み込めず、頭が真っ白になりながらも後ろを恐る恐る振り向く。そこには・・・

 

 

「ホラぁ・・・やっぱしナ♪」

 

眼を真紅に染め、ギヒリと『牙』を覗かせながら笑う『吸血鬼』がいた。

 

 

「だ・・・・・ダブル・・・ショック・・・・・!!」

 

血を流し倒れ伏すウィルは眼を見開き、青ざめる。

 

 

「(真っ昼間にUFOを見るような奇妙で衝撃的な感覚! 最強の牙狩り『暁のアルカード』が俺より年下で男性IS操縦者も驚きだが、この『状況』・・・・・まさか・・・まさか、アルカード! アンタは――ッ!)」

 

「きゅ、『吸血鬼』・・・なのか・・・貴様ァア?!」

 

「Exactly!」

 

体幹がグラつくトバルカインに彼は肯定の意を示すようにまた奇妙な立ち方をする。

 

 

「アキトが・・・吸血鬼・・・・・こ、これは・・・!!」

 

状況が二転三転し、もっと状況が読み込めなくなりぐるぐると目を回すラウラにアキトはゆっくりと肩に手を置き、耳元で囁く。

 

 

「・・・安心しろ・・・・・安心しろよ・・・ラウラ・ボーデヴィッヒ? 大丈夫だからさ。退ってな?」

 

「う・・・うん・・・・・///」

 

トロンと目を艶やかに煌めかせ、ラウラはアキトの後ろに退く。

 

 

「さて、どうする伊達男? 仕切り直しか・・・ナぁア~~ッ?!」

 

「くッ!」

 

シタリ顔のアキトに対してトバルカインは焦り、急いでフォースアルカナイトの体形を整えようとする。がッ!

 

 

「させると思うか、このマヌケがぁ!」

 

アキトは円を描くように腕を廻し、辺りに飛び散った自分の血を集める。

 

 

「『血液創造(ブラッドメイク)』『朱槍(ゲイ・ボルク)』ッ!!」

 

その集めた血で長さ2m近い一本の槍を造り出した。この間僅か0.5秒!!

 

「!!」

 

トバルカインは防御体勢をとろうと動くが、時既に遅し。

 

 

「ゲイ――――――――ボルクッ!!!」ギュオォッン!

 

吸血鬼の豪腕から放たれた朱槍は次元を越える程の速さで真っ直ぐ飛び―――

 

ズシユュウゥウゥゥゥッッ!!!

 

「ぐGyaaaぁあぁぁアアァァッ!?!!」

 

トバルカインの心臓の抉り取った!

朱槍はそのままアキトの手元へと帰る。

 

 

「す・・・スゴい・・・・・!」

 

ウィルの傷口を押さえながら、クラウス少年は目を見開き、その場景を脳に刻む。

 

心臓を抉られ、倒れていく『トバルカイン・アレハンブラ』。その先には黒髪赤眼の青年『暁アキト』が心臓が刺さった朱槍を担いで、一言・・・

 

 

「・・・決まったぜ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

アキトが人工吸血鬼の味に酷い評価をつけている、その頃・・・ホテル近辺に構える作戦本部では・・・

 

 

「ぬぅおおぉ――ッ! 離せェエっ!!!」

 

「お、落ち着いてください大佐ァア!!」

 

「取り押さえろぉお!」

 

一人のサイボーグ兵士、というか『ルドル・フォン・シュトロハイム』が暴れ、今にも封鎖したホテルへ突撃しようとしている。それを米兵とシュトロハイムの部下達が取り押さえて阻止していた。

 

何故こんな事になったのか。それはとてもシンプルな事である。

 

――数分前、隊員達は食い入るようにネット配信のテレビ中継を見ていた。

画面は安いカメラを使っているのか、画質が悪い。ただカメラに映る光景は隊員達を驚かせるには充分だった。

 

敵の親玉だと思われるコートの男。それに赤の鎧から黒の服へと変わったアキトだと思われる青年。その青年が無謀にもコートの男に突撃していき、返り討ちにあい切り刻まれる惨状であった。

 

 

「いやぁぁぁァアッ!!」

 

叫んだのはリタルである。彼女は嘆く。たった数刻の間彼に助けられ、少しの間だけ彼に恋をしていたリタルにとってその惨状は痛ましいものであった。しかし・・・

 

 

「・・・ヤレヤレってヤツだわ・・・」

 

「ククク・・・・・♪」

 

アキトと関係の深いシェルスは叫ぶどころか、溜め息を漏らしていたのだ。シュトロハイムに至っては笑いを堪えている。

 

 

「・・・ハァ・・・あのバカ・・・なんで『格下相手』に『手加減』してるのよ。あれほど『遊ぶな』ってキツく言ったのに・・・!」

 

「アイツの『悪い癖』だな。それにしても気持ち良いくらいに切り刻まれてるな」

 

「イヤイヤイヤ、お二方! 何を呑気な・・・!」

 

シェルスはイライラと画面を見ながら爪を噛み呟き、シュトロハイムはクツクツと口を押さえ、周りにバレないように笑う。そんな二人にアームストロングが慌てる。

 

 

「大丈夫よ少佐。知ってるでしょう? あのバカアキトは一応、バカでも『アルカード』よ?」

 

「そ、それはそうでござるが・・・」

 

「と言うかヴィクトリア孃? さっきからバカバカと言い過ぎじゃあないか?」

 

「いいのよ。本当にバカなんだから・・・」

 

三人がそんな事を言っていると・・・

 

 

「ん? お、おいコレ!」

 

「なんだよ・・・って、何ィィイッ!?」

 

兵士の一人が何かに気づき、驚きが伝染していく。

 

 

「んン? どうしたお前達? ついにアルカードがヤられたか?」

 

気になったシュトロハイムがテレビ画面を見るとそこには・・・・・

 

 

「なッ!! 何故、ボーデヴィッヒがァアッ!?」

 

銀髪の小柄な戦乙女が倒れるアキトを抱き締めていた。そして、場面は戻る。

 

 

「離さんか貴様らァアッ! このままではボーデヴィッヒがァア!!」

 

「なりません! なりませんよシュトロハイム大佐殿!!」

 

画面に映るラウラを助けに行こうとするシュトロハイム。それを必死で止める部下並びにアームストロング。

あれからラウラがテレビ画面に映ってから少しした後、テレビ中継が止まった。

 

 

「もうすぐ『爆撃』がはじまります! それにもしかしたら、もう『脱出』しているかも!」

 

そう。ホテル爆撃の時間が迫り、屋上を撮影していた連中がはけたのだ。

 

 

「そんな事は俺の目で確かめるゥウ!!」

 

「仕方ありませぬな・・・フン!」

「ぬおッ!?」

 

暴れるシュトロハイムをアームストロングが錬金術で固める。

 

 

「何をするアームストロング?! このままでは・・・このままではボーデヴィッヒが!」

 

「落ち着いてくだされ大佐殿!」

 

「ぬぅおおぉッ!!!」

 

「私が・・・私があの時止めていれば・・・・・!」

 

「ボーデヴィッヒ少佐・・・・・」

 

作戦本部は暗いムードに包まれている。そんな中・・・

 

 

(・・・アキト・・・・・頼むわよ・・・!)

 

シェルスは真剣な眼差しで夜空を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

「「「「「Vaaaaaaaaaaaaaa!!?」」」」」

 

「屍喰鬼が!」

 

「『溶けて』・・・いく・・・!?」

 

トバルカインが倒れるとアキト達を囲んでいた屍喰鬼兵がドロドロと蝋燭のように『溶けて』いったのだ。

 

 

「『グールマスター』を倒したからな。芋づる式に抹殺完了だ。大丈夫か? 新聞記者さんよ?」

 

心臓が刺さった槍を地面に突き刺したアキトは待機状態の朧を腕にはめ、ウィルに近づいて行き腰をおろす。

 

 

「君が・・・あの『暁のアルカード』・・・か?」

 

「喋らない方がいいぜ新聞記者さん。坊や、このナイフで包帯さんの拘束を切ってやってくれ」

 

「う、うん!」

 

「ラウラ、傷口を押さえて」

 

「わ、わかった!」

 

ゼロゼロと生気のない声で語りかけるウィルにアキトは治療をはじめた。

 

 

(内臓にダメージはいってないが、出血が酷い。傷口を縫い合わせようにもワイヤーは全部使っちまったし・・・)

 

「どうするのだアキト? このままでは・・・!」

 

「・・・ッチ・・・糞・・・」

 

ラウラと共にウィルの傷口を押さえるアキトは考え込む。この状況を打破しようと。

 

 

「! 朧?!」

 

『なんでございましょう王よ』

 

何かを閃いたのか、朧の名を呼ぶアキト。

 

 

「『輻射波動』のエネルギーはまだ残ってるか?」

 

『はい。あと一回分残っています。』

 

「よし! ラウラ、少し任せるぞ」

 

「何をするつもりだアキト?」

 

アキトはラウラに傷口を任せると左腕に輻射波動装置を展開させた。そして、朧から刀を取り出すと刀身を左手で掴む。

 

 

「溶かさないように熱する・・・なぁ包帯さん、手を貸してくれ」

 

「わかりました」

 

クラウス少年に拘束を切られたギルベルトはアキトの指示でウィルの上半身を押さえる。

 

 

「な・・・何を・・・?」

 

アキトの手には刀身が赤く焼けた刀が握られている。

 

 

「新聞記者、これからアンタの傷口を焼いてふさぐ。かなり痛いが・・・ショックで逝くなよ? ラウラ、下半身押さえて」

 

「わかった」

 

「お、おい・・・マジで――ジュワァ!――ウギャァアあァアあ――――ッ!!?」

 

躊躇いなくアキトは傷口に焼けた刀を押し当てる。ウィルはあまりの痛みに仰け反り、あたりには焼けた肉の臭いが立ち込める。

 

 

「か、あがが・・・が・・・・・」ガク

 

「ウィルさん!?」

 

「大丈夫だ坊や。泡を吹いてるが気絶しただけだ」

 

「そ、そう・・・」

 

彼はそのまま気化冷凍法で患部を冷やす。

アキトはギルベルトとラウラにあとの処置を任せると朧を展開させ、先ほど心臓を抉り取られ倒れ伏すトバルカインに近づく。

ゴロリとその亡骸を仰向けにすると先程地面に突き刺した槍を引き抜き、喉元に刃を当てる。

 

 

「・・・起きろよ。まだ息はあるだろう?」

 

「・・・ククク・・・・・バレ、たか・・・」

 

なんと心臓を取られながらもトバルカインは生きており、口から血を吐きながらもニヤリと不敵に笑んでいたのだ。

 

 

「アンタら『人工吸血鬼』がゴキブリと同等以上にしぶといのは『戦役』で学んでる」

 

「そう、か・・・ククク・・・流石は英雄『暁のアルカード』と言ったところか・・・見くびっていたよ・・・」

 

息も絶え絶えに、しかし嬉しそうにトバルカインは笑う。

 

 

「それで伊達男、『少佐』は・・・アンタ達の『大隊長』はどこにいる? あの人のことだ、どこかで俺たちをニタニタと見てるんじゃあないのか?」

 

「・・・ククク・・・・・クハハッハッハハハハッ♪」

 

突然、トバルカインは面白可笑しそうに笑いだし、口を歪める。

 

 

「ダメだ。それじゃあA判定は貰えないぞ、アルカード・・・・・いや『吸血鬼(ドラキュラ)アーカード』」

 

「・・・どういう意味だトバルカイン・・・?」

 

怪訝な顔のアキトにトバルカインは得意そうに語る。

 

 

「君は我らが『同志』の依頼を受け、まんまとこの国に『おびき出された』」

 

「なにッ!? なら・・・・・!」

 

アキトの脳裏にはあの化粧の濃く、ド派手な人物が浮かぶ。

 

 

「私の任務はな、アーカード・・・君を一分でも多くこの国に止めておく事だ」

 

「なんだと?! なら大隊長は今どこに!?」

 

「・・・『はじまりの地』」

 

「『はじまりの地』? なんだいそりゃあよぉ!」

 

アキトはトバルカインの胸倉を掴み、激しく揺さぶる。それでもトバルカインはその不敵な笑みを崩すことはなかった。

 

 

「どうしようもない私達を・・・・・どうしようもないこの世界を造ってしまった『原因』が生まれた地へだよ!」

 

「まさか・・・まさかぁあ!?」

 

一気にアキトの顔色は青ざめていく。汗腺が広がり、ダラダラと汗が噴き出た・・・その時!

 

ボワッツ

 

「なッ!」

 

突然、トバルカインの体が青白い炎に包まれた!

 

 

「フッ・・・・・どうやら時間切れのようだな。フハハハ・・・我、作戦遂行シタリ。我、作戦遂行シタリ。ククク」

 

トバルカインは満足そうに笑い、ボロボロと体が尽きていく。

 

 

「待て伊達男!! まだテメェには聞かなくちゃあならない亊が!」

 

「まったくアーカード、私は幸運だ。あの方に身も心も魂さえも救われ・・・最後に君のような『本物』の吸血鬼と戦えた・・・・・本当に幸運だ」

 

「テメェ、コノヤロウ! 人の話を―――「アーカード」―――ッ!?」

 

燃えるトバルカインは突如としてアキトの襟元を掴んで引き寄せた。

 

 

「私に勝ったあかつきに君に良い事を教えてやろう」

 

「なにィい?」

 

「我々は標的として・・・・・君のところの『科学者』を狙っている」

 

「ッツ!?」

 

「さあ・・・どうする吸血鬼・・・・・ククク・・・クハハハ、ア―――ハッハッハ!!」

 

そうして盛大に笑うトバルカインは燃え尽きていき、アキトの手の中で灰に変わってしまった。

灰は風に吹かれ、屋上の外へと舞い散る。

 

 

「アキト、大変だ! もうすぐここが爆撃されるそうだ! 早く避難を―――「・・・さねぇ」―――えッ?」

 

ラウラの声に反応もせず、アキトは力一杯手を握りしめる。手からはポタポタと赤い雫が滴り落ちる。

 

 

「許さねぇ! ファミリーに手を出すヤツは何だろうとネジ切ってやるぅぅう!!!」

 

眼は赤く染め、獣のように長く伸びた牙を晒し、アキトは雄たけびを上げた。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

ここではない何処かにて・・・椅子に座った一人の軍服姿の男が眼を瞑り、一言。

 

 

「さようなら・・・・・中尉・・・ヴァルハラで会おう」

 

そう言って椅子から立ち上がると部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 

 

 

 

 





あと、何気に初のPCからの投稿・・・


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急げ吸血鬼、極東へ!



ご都合的に進めていくのもまた一興



 

 

ドオォォ――――――オッンンン!!!

 

PC画面には爆撃をうけ、上からジェンガのように崩れ落ちる映像が映っている。

 

 

「・・・クックックッ・・・アッハッハッハ♪」

 

そんな映像を見ながら、体全体を包帯でグルグル巻きにし、厚手のコートを着た男がオモシロおかしく笑っていた。

 

 

「・・・・・何がおかしい?」

 

男の向かいに座る青髪の美女『エスデス・サディラー』は眉間に皺を寄せて睨む。男は愉快に笑いながらも答える、「面白くなるぞ」と・・・

 

 

「・・・どういう意味だ?」

 

エスデスの疑問に男は笑うばかりで答えようとはしない。エスデスの目はドンドン鋭くなるが気にした事はないようにケラケラと笑う。口を大きく歪めてゲラゲラと笑う。

 

 

「・・・貴様は一体何が目的なんだ? 私から『人質』とっておいて・・・何故、こんな事をする? 貴様はあの『男』の部下なのか? 答えろ黒の記者『シュバルツ・バルト』!!」

 

男・・・シュバルツ・バルトは笑い声を抑え、ニヤリと口を歪めたまま答える。「君に答える事はない」と。

それでもシュバルツに噛みつこうとするエスデスだったがグッとそれを抑えた。

 

 

「・・・それで・・・・・」

 

「ん? なんだね将軍?」

 

「・・・それで・・・『タツミ』は・・・タツミは無事なのか?」

 

エスデスは項垂れるようにシュバルツに聞く。それをシュバルツはニヤついた笑みで答える。

 

 

「大丈夫、無事だとも・・・今日は早く帰ったらいい。家で愛しの旦那様が君の帰りを待ってくれているよ」

 

そう言ってシュバルツは椅子から立ち上がり、部屋の扉へと向かうとドアノブに手をかけた。その時、何かを思い出したように振り返った。なんだとばかりにエスデスは身を引き締める。

 

 

「将軍。さっきの質問だが、やはり答えてやる」

 

「・・・なに?」

 

「私はあの男の部下じゃあない。それに私の求める物はたった1つのシンプルな事だ」

 

「・・・なんだそれは?」

 

「フッ・・・『スクープ』だ」

 

シュバルツの言葉にエスデスはポカンと頭に疑問符を浮かべる。そんな反応を見て、シュバルツはまたクツクツと笑う。

 

 

「あ~、そうそうサディラー将軍? もう、こういう関係には関わらない方が良い。大切な者を失いたくなければな」

 

「え・・・?」

 

「それでは去らばだ・・・世界が変わる瞬間を見逃してはならないのでな」

 

そう言ってシュバルツは部屋から出ていく。あとに残されたエスデスは少しの間深く考えた後、家路を急いだ。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

パラパラ、パラ・・・

 

爆撃をうけ無惨に倒壊したホテルに叫び声が響く。

 

 

「オォ――ッい!!」

 

「返事をしてくれぇ――!」

 

それは独軍のシュトロハイムの部隊の者だった。

爆撃の直前、シュトロハイム達の呼び掛けに答えたラウラだったがそれから3分もしない間に爆発がおこり、倒壊した。

瓦礫を退かす者、レーダーをかざす者、様々な者達が生存者達を探している。

 

 

「おい! ヴィクトリア孃!! 本当にボーデヴィッヒは無事なんだろうな!?」

 

「近くにアキトがいたなら大丈夫なはずよ・・・・・たぶん」

 

「なんだその曖昧な表現はぁッ!?」

 

目を反らすシェルスにシュトロハイムは食って掛かる。

 

 

「アキトは必ずに『仲間』と認めた者は決して見捨てないわ。それは貴様もわかっているだろうシュトロハイム?」

 

「そ、それは・・・・・」

 

「それに」

 

「それに・・・・・なんだ?」

 

「・・・わかるのよ。あの人に『血を吸われてる』から」

 

「・・・・・」

 

首もとの小さな『刺傷』に指を指し、弁解するシェルスにシュトロハイムは押し黙った。その刹那である!

 

 

「ウワァァアああ!?」

 

部下の一人が叫び声を上げた。なんだなんだと兵士達がその方向をみると

 

 

「フSYウアaaaaa!!」

 

瓦礫を押し退け、ボロボロの悲惨な姿の屍喰鬼が現れた。兵士達は戦闘体勢をとり、対吸血鬼武器を向ける。

 

 

「あの爆撃で生き残っていやがったのか?!」

 

「気を付けろ! 手負いの屍喰鬼程、面倒で危険な物はないからな!」

 

ジリジリと辺りに緊張が走る。そんな時、アームストロングが何かに気づいた。

 

 

(む・・・この屍喰鬼、何かに『怯えている』? )

 

「・・・Vaaaaa!」ダッ

 

「「「なっ!?」」」

 

ボロボロの屍喰鬼は突然、後ろへと走った。呆気にとられた兵士達だったが、すぐさま武器の照準を合わせ、追いかけようとする。・・・・・が

 

 

「ッ! 待つのだ!」パンッ

「「「・・・へ? あだァ!?」」」ベチィ

 

アームストロングは錬金術で追いかけようとする兵士達の前に壁をつくり止める。

 

 

「痛たた・・・」

 

「な、何をするんですかアームストロング少佐!?」

 

「このままじゃあ屍喰鬼が!」

 

「皆、落ち着け・・・アレを」

 

「は?」

 

アームストロングは焦る兵士達を諌め、逃げる屍喰鬼に指を指す。

足を引きづりながら逃げる屍喰鬼。しかし、瓦礫に蹴躓いて転んだ瞬間・・・・・

 

バクゥッ!!

 

「「「ッ!?」」」

 

形容しがたい『獣』が地面を突き破り、屍喰鬼に食い付き、グチャリグチャリと音を起てて咀嚼する。

 

 

「な・・・なんだ・・・コイツは?!」

 

兵士達はダラリと冷や汗をかき、顔が青ざめる。

獣は屍喰鬼だった物を飲み込み、ギロリと兵士達を睨む。兵士達は体が硬直し、泡を吹きそうになる。

 

 

「こ、コヤツ・・・・・!!」

 

アームストロングはこの得体の知れない獣に立ち向かおうと軍服を脱ぎ、ナックルを握る。だが・・・

 

 

「『ニコ』!」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

アームストロングの後ろでシェルスが声をあげる。

 

 

「! クゥゥウ!」

 

獣は自分の名前が呼ばれるとアームストロングを通りすぎ、シェルスのもとへと這いよる。

 

 

「良し良し、イイ子ね」

 

「クゥゥ~♪」

 

「ヴィ、ヴィクトリア殿。その・・・化け物は・・・・・!?」

 

ニコと呼ばれた獣の頭を撫でるシェルスにアームストロングは恐る恐る確認をとる。

 

 

「この子は『ニコ』。アキトの・・・・・使い魔みたいなものよ」

 

「暁殿のですか?!」

 

「そう。ニコ?」

 

「クゥ?」

 

「アキトは何処かしら?」

 

シェルスがそう聞くとニコは自分の尻尾をたぐり寄せた。その尻尾の先は卵のように楕円形となっている。

シェルスは持っていたナイフでその尻尾を切り裂くとドロリと膿のような物が溢れでる。シェルスはその切り裂き口に手を突っ込み、何かを引きづり出す。

 

 

「ゲホッ! ゲホッ!!」

 

引きづり出されたのは朧に薄い膜のようなバリアで守られているラウラ達であった。

 

 

「大丈夫か! ボーデヴィッヒ!?」

 

シュトロハイムが近寄り、膜を破ると体を支える。

ラウラを筆頭に赤い髪のクラウス少年に顔面包帯のギルベルト、そして怪我人のウィルが出てきた。 

急いで救護班を呼び寄せ、手当てを施すが・・・

 

 

「・・・カはッ・・・ヒデぇ目にあった・・・・・ランサーの真似なんかするもんじゃあないな・・・」

 

最後に自力で出てきたアキトは目も当てられない酷い状態であった。

朧を纏っていなかった為に全身は火傷で赤く焼けただれ、顔半分は識別できない程に変化しており、生きているのが不思議なくらいだ。

 

 

「アキト!!」

 

ヨロヨロと歩くアキトをシェルスは優しく抱き止め、アキトは全身の体重をシェルスに預ける。

 

 

「シェルス・・・血がついちまう・・・ぜ?」

 

「良いのよ・・・貴方を抱き締められるなら汚れても良いわ。それより早く血を―――っむぐッ!?///」

 

アキトは有無も言わさずにシェルスの唇を塞ぎ、舌を入れる。そのままアキトは肺に溜まった血を流し込む。

 

 

「ムグゥッ!? アキ―――っンン!?」

 

シェルスは驚いてアキトから口を離そうとするが強引にまた口を奪われ、血を胃に流し込まれる。

突然の事に混乱するシェルスだったがその内に大好物の彼の血を受け入れ、味わう。

余分な血を吐き出し、今度は彼女の新鮮な血を吸う。それにより傷が徐々に治っていく。

 

 

「わ、わぁ・・・///」

 

「な、なんと破廉恥な!!///」

 

「・・・何をやっているんだ貴様は!!」ゴチィッ

「「むげッ!?」」ガチィ!

 

呆れたシュトロハイムがアキトの後ろ頭を鋼鉄の拳で殴る。それによってアキトの歯とシェルスの歯がぶつかり、やっと二人は唇と唇を離す。

 

 

「痛ぇじゃあないかシュトロハイム・・・怪我人の楽しみを邪魔するんじゃあない」

 

「喧しい! ろくに連絡も寄越さないばかりか、ボーデヴィッヒを危険な目に合わせるなど!」

 

「そう言えばラウラは? アイツ、赤髪の坊やをかばって肋骨が2、3本折れてんだよ・・・・・」

 

「さっき救護班に運ばれた。他の生存者も無事だ」

 

「そっか・・・」

 

それを聞くとアキトは安心したのか、ホッと溜め息をついた。

 

 

「それよりA.A! 『ヤツ』は!?」

 

「わかってるよ・・・・・ここを主導してたのは『トバルカイン・アレハンブラ』。だが『ヤツ』はここには・・・この国にはいない」

 

「なんだとッ!? なら何処に?!」

 

喚くシュトロハイムにアキトはまたヨロヨロと動きながらラウラ達を守っていた朧を左腕にはめる。

 

 

『王よ、ご無事ですか!?』

 

「喚くな朧。吸血鬼舐めんな、こんなのすぐに治る。それよりもアームストロング少佐?」

 

「な、なんでござろう暁殿?!」

 

「確か・・・・・この近くに英国の最新鋭戦闘機が止まってたよな?」

 

「そ、それがなにか?」

 

困惑のアームストロングにアキトは真剣な眼差しでこう言った。

 

 

「それ貸せ。緊急にいるからよ・・・事情はあとで話す」

 

「・・・・・へ?」

 

この30分後、シェルスと共にアキトは戦闘機に乗って極東へと飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

ダンッ!!

 

「なんだコレはッ!?」

 

モニターを囲む円卓に座った人物が拳を降り下ろす。モニター画面には米国の最新鋭ISが素手の男になぶられる様が映し出されていた。

 

ここはIS委員会本部。円卓に座った主要人物達がザワザワとざわめく。

映像は今現在ネットで全世界に配信されている。この映像が原因で緊急集会が開催された。円卓の外には呆れた顔の十蔵がたたずんでいる。

 

 

「一体、この映像はなんだ?! エイプリルフールはとうの昔に過ぎているぞ!」

 

「配信を止めろ!」

 

「あの男は誰だ!? それにこの集団は?!」

 

驚く者、顔を青ざめる者、喚く者。そんな様々な者達がいる中・・・・・

 

 

「・・・クックック・・・・・♪」

 

口を隠しニヤリと笑う者が一人・・・・・

 

 

「・・・『ジェルマン』・・・・・?」

 

「ククク・・・ア――ッハッハッハ!」

 

モニターを見ていたジェルマンがゲラゲラと笑い出した。

周りの人間は怪訝な顔でジェルマンの方を見る。

 

 

「何がおかしいのですかジェルマン卿?」

 

「いやね・・・ククク・・・・・可笑しくて可笑しくて・・・・・クハハハ! もう可笑しくて堪んないの!」

 

「だから何が!?」

 

憤るグストにジェルマンは澄ました顔で笑って説明する。

 

 

「あの男は『吸血鬼』ね。しかも『石仮面』でなったパワータイプの輩ね」

 

「吸血鬼ィ? 何を馬鹿馬鹿しい事を!」

 

「『馬鹿馬鹿しい』? 馬鹿馬鹿しいですって?!」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

澄ました笑顔から青筋をたてて、ジェルマンは叫ぶ。

 

 

「コレを見て馬鹿馬鹿しいなんて・・・・・やはりこの世界はどうしようもないわね。権威にしがみついた薄汚い糞にも劣る下朗共」

 

「なんだと!?」

 

ガタリと席を立ったジェルマンは懐から・・・

 

 

「なッ!?」

 

「ジェルマン卿?!」

 

「ジェ、ジェルマン!?」

 

カチッ

 

一昔前の先込め式の拳銃を取り出すと目の前にいた人物に向け、引き金を躊躇なく引いた。

引き金が引かれた事により仕掛けが作動し、撃鉄の火打石が擦れて火花が散る。その火花が火皿の火薬に点火し、銃身内に押し込めた火薬を爆発させる。爆発する事で込めていた鉛弾が銃口から吐き出され、目の前の人物の額を貫き、綺麗に柘榴を飛ばした。

 

 

「あ・・・・・あぁあ!?」

 

「な、な・・・・・なんて事を!?」

 

「フゥ~♪」

 

ジェルマンは一仕事終えたように銃口からでる煙を吹く。

 

 

「ジェルマン・・・何故・・・・・!」

 

十蔵は護身用の拳銃を抜き、ジェルマンに向ける。向けられたジェルマンは流し目で十蔵を見ながら答える。

 

 

「もう飽き飽きしたのよ」

 

「・・・なに?」

 

「ここにいる連中はISから出る利益で世界をまるで我が物にしたように笑ってやがる・・・・・実に気に入らない」

 

「まさか・・・それだけか?」

 

十蔵の驚いた顔にジェルマンは溜め息をひとつ吐く。

 

 

「んな訳ないじゃない。ただ世界を変わる瞬間が見たくなったのよ」

 

「どういう事だ?!」

 

「あの硝煙と汗と埃と焼けつく血の臭い・・・・・それが懐かしくなったのよ」

 

「!」

 

十蔵の顔は微かにひきつる。

 

 

「く、狂ってる!」

 

「前々から狂っているとは思っていたが・・・まさかここまで!」

 

「た、助けてくれ!」ダッ

 

円卓に座った一人が出口の扉に向かって走り出す。

 

 

「無駄よ」

 

ジェルマンの呟きを語るように扉はひとりでに開き・・・

 

ドオッン!

 

銃声と共に逃げ出した人物の頭が柘榴に散る。そしてゾロゾロと派手な服装の者達が入って来た。

 

 

「なッ・・・!?」

 

「ご苦労様、アンタ達」

 

派手な服装の者達は円卓会議の連中を囲み、十蔵にも銃を突きつける。

 

 

「お前達は!」

 

「おひいさま、だいたいの制圧は出来ましたわ」

 

「もう、遅いわよ! こうもっと派手に出来なかったの?」

 

「一応、ダイナマイトをここに――「危ないわよ! 馬鹿ッ!」――痛ッ!?」

 

ジェルマンは主犯格の人物の頭を叩く。

 

 

「ジェルマン卿・・・貴方の目的は何? この映像と何か関係があるの?」

 

グストの質問にジェルマンはまたニヤリと笑う。

 

 

「世界が未知を知る為よ」

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





中々にアンテーしないな・・・・・


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第柒章『血界狂騒曲』
諸君、私は―――!



人間になる事は簡単なようで難しい。
化物になる事は難しいようで簡単だ。

深淵を覗けば、深淵もこちらを覗く。

アキト「人間と化物を分ける物って何かね?」

そしてあの名演説(改変あり)・・・・・行きます!



 

 

コツン・・・・・コツン・・・・・

 

宙に浮いた巨大な飛行船、その内部のある空間。白い軍服を来た小太りの男が歩いている。

 

コツン・・・・・コツン・・・

 

男の履いた軍靴の音が静かに響く。男の前には黒軍服の兵士達がズラリと綺麗に並んでいる。

 

コツン・・・・・コツン・・・・・

 

兵士達はそれぞれ違った。

『性別』も『年齢』も『人種』も・・・ましてや『種族』さえも。

 

コツン・・・・・コツン・・・・・カツン!

 

男は階段を上がり、舞台へと立つ。そしてマイクの前へと歩みよる。その姿を確認すると兵士達は男の方を向き、敬礼を一礼する。

男は応えるように手を挙げる。そして、男はマイクの音量をあげ、その嫌にニヤつた口を開く。

 

 

「諸君・・・・・・・・私は『戦争』が好きだ」

 

一言・・・たった一言でその場所の温度は一気に下がったように寒くなる。何人かの兵士はガチガチと顎を震わせ、冷や汗をかく。

 

外からは飛行船のエンジン音が聞こえる。

 

 

「諸君、私は戦争が好きだ 。諸君、私は戦争が大好きだ」

 

甘美で恐ろしい男の声に兵士達は引き込まれていく。眼を艶やかせ、涎を垂らす者までいる。

 

 

「殲滅戦が好きだ。電撃戦が好きだ。打撃戦が好きだ。防衛戦が好きだ。包囲戦が好きだ。突破戦が好きだ。退却戦が好きだ。掃討戦が好きだ。撤退戦が好きだ」

 

ゾクリ、ゾクリと男の声が全体を包み込んでいく。

 

 

「平原で、街道で、塹壕で、草原で、凍土で 、砂漠で、海上で、空中で、泥中で、湿原で・・・この地上で行われるありとあらゆる戦争行動が大好きだ」

 

男の眼はどんどん輝いていく。

 

 

「戦列をならべた砲兵の一斉発射が、轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが好きだ…! 空中高く放り上げられた敵兵が効力射でばらばらになった時など心がおどるッ!!」

 

まるで大好きなアニメを見る子供のように興奮する。

 

 

「吸血鬼兵の操るティーゲルの88mmがあの『ガラクタ』を撃破するのが好きだ。悲鳴を上げて、燃えさかるガラクタから飛び出してきた敵兵をMGでなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった・・・ッ」

 

男の声とともに兵士達の前にモニターが出される。そのモニターには米国の最新ISがバーテン服の男に殴られる様が映し出されていた。

男は尚も続ける。

 

 

「銃剣先をそろえた我が吸血鬼兵の横隊が敵の戦列を蹂躙するのが好きだ・・・恐慌状態の新人吸血鬼が、既に息絶えた敵兵を何度も何度も刺突している様など感動すら覚える。IS至上主義の糞共を街灯上に吊るし上げていく様などはもうたまらない。泣き叫ぶ慮兵達が、私の振り下ろした手の平とともに金切り声を上げるシュマイザーにばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ・・・ッ!」

 

歯を見せて、男はひきつるように笑う。

 

 

「哀れな人間達が、雑多な小火器で健気にも立ち上がってきたのを貪り尽くした時など絶頂すら覚える・・・! 空挺兵団に滅茶苦茶にされるのが好きだ。必死に守るはずだった日常が、尊厳が、平和が無惨にも壊されていくのは悲しいものだ」

 

男の声に兵士達は力いっぱい拳を握り、歯を食い縛る。眼からは血が滴り落ちる。

 

 

「圧倒的物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ。ISに追いまわされ、害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ・・・!」

 

奮える声に応えるように兵士達もギリギリと歯軋りをたてる。

 

 

「諸君、私は戦争を・・・地獄の様な『戦争』と『変革』を望んでいる。諸君・・・私に付き従う大隊戦友諸君。君達は一体何を望んでいる?更なる戦争を望むか? 変革を望む闘争を望むか? 情け容赦のない糞の様な戦争を望むか? このどうしようもない世界を限りなく焼き尽くし、三千世界の鴉を殺す、嵐の様な闘争を望むか・・・?!」

 

男の疑問の声が兵士達の耳に伝わり、鼓膜を震わせ、情報が脳に到達した瞬間・・・・・!

 

 

『『『ウオォォォオオッ!!!』』』

 

歓声が、雄叫びが辺りを支配した。

 

 

「戦争!」

 

一人の兵士が叫ぶ。続けとばかりに叫びが轟く。

 

 

『『『戦争! 戦争!! 戦争!!! 戦争!!!!』 』』

 

幾十、幾百もの『化け物』達の叫びが徒然と響き、轟き、木霊する。

 

男は笑う。待ってましたとばかりに口を三日月に歪める。

 

 

「よろしい・・・・・ならば戦争だ」

 

男の声が馬鹿に良く響く。こんなに騒がしいのに馬鹿に良く響く。

 

 

「我々は満身の力をこめて、今まさに振り降ろさんとする握り拳だ…! だが!この暗い闇の底で屈辱の『10年』を堪え続けてきた我々に・・・ただの戦争ではもはや足りない!!」

 

男は腕を横にきり、声を張る。

 

 

「大戦争を!! 一心不乱の大戦争をッッ!!」バ――ッン!

 

化け物達は奮える。

 

 

「我らはわずかに一個大隊。千人に満たぬ敗残兵に過ぎない・・・・・だが、諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している。ならば我らは諸君と私で総兵力100万と1人の軍集団となる」

 

その『言葉』に奮える。

 

 

「我々を忘却の彼方へと追いやり、眠りこけている連中を叩き起こそう。髪の毛をつかんで引きずり降ろし、眼を開けさせ思い出させよう。連中に恐怖を味わわせてやる・・・・・・・・連中に、我々の軍靴の音を聞かせてやる・・・ッ! 」

 

その男に奮える!

 

 

「天と地のはざまには、ヤツらの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる」

 

こことは別の部室から声が響く。

 

 

『『『始まりの地! 始まりの地の灯だ!!』』』

 

その部屋の窓からは明々と点滅する光が見える。

 

 

「一千人の吸血鬼の戦闘団で世界を燃やし尽くしてやる・・・ッ!」

 

『『『然り! 然り!!』』』

 

化け物達は嬉々と高らかに声を張り上げる。

 

 

「そうだ。アレが我々が待ちに望んだ光だ・・・私は諸君らを約束通り連れて来てやったぞ? あの懐かしの場所へ・・・あの懐かしの戦争へ・・・!」

 

『大隊長殿! 大隊長! 大隊指揮官殿!』

『大隊長殿! 大隊長! 大隊指揮官殿!』

『大隊長殿! 大隊長! 大隊指揮官殿!』

 

化け物達の声が、讃える叫びが一声に、一斉に揃う。

 

 

「そして・・・我々は遂に大洋を渡り、陸(おか)へと上る・・・!」

 

男はそこで息を少し吸った。そんな刹那でも長く感じる程に息を吸い、一気にそれを言葉と共に吐いた!

 

 

「レギオン大隊各員へ伝達!大隊長命令であるッ! 全フラッペン全開! 旗艦デクス・ウキス・マキーネ号始動! 離床!! 全ワイヤー全索引線解除! 吸血鬼大隊大隊指揮官より、全空中艦隊へ ! 目標、日本、関東上空!! 『アシカ作戦』状況を開始せよ。征くぞ、諸君 ・・・・・」

 

こうして序章からの第2幕がはじまる。

 

 

「良い夜だ・・・・・戦場を輝かせるには絶好の夜だ・・・! そうは思わないか・・・?」

 

男の呟きに誰も答える者はなし。ただ、空には月が輝くだけ・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





な・・・長かった・・・・・!


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CRAZY PARTY




2000文字を目安に書いていきたいな~

アキト「以上?以下?」

もちろん以上だ!



 

 

「・・・・・なんだ?」

 

ここは防衛省、緊急特別会議室。

 

 

「なにが起こっているんだッ!?」

 

円卓の会議室に次々と舞い込んでくる書類の山、山、山。

 

時は数時間前に遡る。

その日、何時もより早く陽が落ち、土砂降りのゲリラ豪雨が関東平野を覆ったその日。

突然、関東全域の領空内観測機器全てがダウンした。

 

 

「各自衛隊基地並びに米軍基地にて、正体不明の敵と交戦中とのこと!!」

 

「ありえない!」

 

円卓の誰かが言った、だが事実だ。領空を監視するすべてのレーダーが安物のパソコンみたくフリーズしたのだから。それに首相官邸に連絡がつかないというオマケ付きで・・・・・

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

外はゲリラ豪雨が止み、空には月が明々と海沿いの街を照らしている。

雨が止んだことで、人々はまた夏の夜へと足を向けた。

 

仕事終わりの一杯を求めて歩む中年、デートの待ち合わせ場所へと急ぐ青年、道を我が物顔でたむろする若者達。

大勢の老若男女が様々な思いを巡らし、雨上がりの街へと繰り出して行く。

そんな中で・・・・・ふと、浜辺で飲んでいる誰かが空を見上げて言った。

 

 

「おい・・・」

 

「なんだよどうした?」

 

「ありゃ・・・なんだ?」

 

その目線の先には大きな白い鯨のような飛行船が迫って来ていた・・・・・

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

『『『最大船速ッ! とばせ!!』』』

 

飛行船内のガラス窓に張り付いた吸血鬼兵達が叫ぶ。

 

 

『『『もっとだ!! もっともっとッ!!!』』』

 

おもちゃをねだる子供のように喚き散らすように叫ぶ。

 

 

『『『エンジンが焼き付くまで回せ! もっともっと!!』』』

 

その叫びに呼応するように飛行船は半島を越え、街の中心部へとスピードを上げる。

 

 

『『『突っ走れ! 突っ走れッ! 微かに見える都市の灯へと向かって突っ走れ!!』』』

 

前へ前へと進み、明かりが煌々と光る都市が見えてくる。

 

 

『『『待ちに待ちわびた、あの幻想の場所へと向かって突っ走れぇッ!!』』』

 

ゴウンゴウンと飛行船はエンジン音を発てて街を進んで行く飛行船に街の人間達は興味津々でカメラを向け、スマホを向けて動画を取り、写真を撮る。

 

 

「―――来ましたね・・・・・」

 

そんな喧噪の中で夏だというのに季節違いな白いコートを着たアジア系イギリス人がニヤリと口を歪ませ、頭上を通り過ぎる飛行船を見ていた。

 

誰も彼もの目が空を悠然と泳ぐその飛行船に釘付けとなった。

ネット上では早くも飛行船の話題がSNSで拡散され、『映画の撮影か?!』『ISのイベントか何か』などと呟きが入り、過熱していく。

その時、どこかの誰かの呟きが全SNS利用者をポカーンとさせた。

 

『『血界の眷属(ブラッド・ブリード)』の夢』

 

この呟きはすぐに他の呟きに埋もれていくが、なんとも的を射た呟きであった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

飛行船内。大きなモニターが置かれた指令室では白い軍服を着た大隊長が整列した黒い軍服の兵士達の前に言葉を発した。

 

 

「大隊総員、注目!」

 

兵士達は足並みを揃えて大隊長の方を向く。大隊長の両隣には熱帯雨林用のコートを着た大尉と珍妙なメガネに白衣姿のドクトルをはじめた幹部クラスがたたずんでいる。

 

 

「諸君、夜が来た。無敵の敗残兵諸君、最古参の新兵諸君、満願成就の夜が来た」

 

大隊長は両手を広げ、薄ら笑いを浮かべながら言う。

 

 

「戦争の夜へようこそ・・・!」

 

『『『ワアァァァァァッッ!!!』』』

 

兵士達は装備している銃器と共に歓声を高らかに上げる。

誰もが笑っている。無表情な大尉でさえも顔には出さないが眼は輝いていた。

 

 

「それでは皆さま。お手元の栞をご覧ください」

 

ドクトルの声と共に歓声は止み、兵士達は『しおり』と書かれた本を開く。

 

 

「大隊上陸戦『アシカ作戦』。三ページ目『都市大爆発! ぶっちぎり吸血鬼達(ヴァンパイアーズ)』をご覧くださーい」

 

パラパラとページをめくり、兵士達は作戦内容を確認する。

 

 

「ゾーリン・・・『ゾーリン・ブリッツ』中尉」

 

そんな中、大隊長がニヤツいた顔で幹部兵士の名前を呼ぶ。

 

 

「御前に」

 

大隊長の前に現れたのは右半身にルーン文字の入れ墨を入れ、大鎌を担いだ女性士官『ゾーリン・ブリッツ』である。大隊長は後ろのモニターに地図を出す。そこには・・・

 

 

「我々の目標は『ヴァレンティーノ』。そして、『アーカード』の打倒だ」

 

都市郊外にあるヴァレンティーノファミリーアジトの住所が映っていた。

 

 

「ブリッツ中隊を先遣隊とする。チェッペリンツーリで急行せよ」

 

「了解」

 

「・・・だが」

 

「?」

 

「強行は避けたまえ。私の本隊の到着を待つように」

 

「お手を煩わせる事はありません。アーカードなしのヴァレンティーノなど赤子同然」

 

「・・・・・クックック」

 

古びた眼鏡のレンズを光らせながら言った大隊長の言葉にゾーリンは口角を上げ答えるが、大隊長はクツクツと笑って首を横に振る。その動作にゾーリン並びに前に整列した兵士達もが呆けたように疑問符を浮かべる。

 

 

「あのヤギを甘く見るな・・・『ドン・ヴァレンティーノ』とその一味を甘く見るな・・・!」

 

大隊長は二ヤツいたまま喋り、母親が子供に言いつけるように喋る。

 

 

「『ドン・ヴァレンティーノ』・・・彼は欧州随一のマフィアだぞ。欧州諸国から疎まれ恐れられたならず者達をまとめ上げたファミリーの当主だ。あのアーカードが認めた、あのアーカードの『主』だ。恐ろしく滑稽で、ふざけていて・・・・・だがそれ故に私は彼を・・・『彼ら』をアーカードと同様の『宿敵』と結論している。だからゾーリン・・・もう一度言う、強行するな。私の到着を待て」

 

「・・・了解しました。大隊指揮官殿」

 

それにゾーリンは眉間を寄せて答える。

 

 

「よろしい・・・! ならば関を切れ! 戦争の濁流の関を切れ! 目標は都市全域。目に入る者、物すべて燃やせ」

 

大隊長は椅子に体重をかけ、手を組みながら命令する。

 

 

「大隊長・・・IS博物館は?」

 

「爆破しろ。当然だ、元々そうするつもりだったからな。かけらも残すな」

 

「女権至上団体の各所はどうしますか大隊長?」

 

「燃やせ。不愉快だ、消し炭も残すな」

 

「女尊男卑主義者のリストがここに」

 

「殺せ。断末魔を上げさせろ」

 

その命令に付け加えるように次々と兵士達が意見する。

 

 

「目についたモノは金橋から壊せ。目についたモノは金橋から喰らえ。存分に食い、存分に飲め。今日、この都市の者達は諸君らの晩飯と成り果てるのだ」

 

まるで子供のようにはしゃぐ大隊長に一人の兵士が近づいて行く。その手にはカクテルグラスを持っている。

 

 

「さて・・・諸君、殺したり、殺されたりしよう。死んだり、死なせたりしよう。」

 

そう言いながら大隊長はカクテルグラスを受け取る。前の兵士達にもシャンペンの入ったグラスが回っていく。

 

 

「さあ、乾杯をしよう。宴はついに・・・今宵、この時より開かれるのだ」

 

セリフと共に飛行船のハッチが次々と開かれていく。ハッチの中にはミサイルや爆弾頭がズラリと並べられおり、点火装置に青白い光が灯っていく。

大隊長は嫌に笑う顔までグラスを持っていき、高々と叫ぶ。

 

 

「乾杯っ!」

 

つられて兵士達も叫ぶ。

 

 

『『『乾杯!!!』』』

 

そして、一気にシャンペンを飲み干すと床にグラスを叩きつける。

 

ガシャ———ン!

 

その砕け散る音と同時に飛行船から幾千発ものミサイルが放たれた。

ついに狂気の宴が火蓋を切ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




ついにここまで来た。ヘルシングのオリジナルは何時見ても魅了される。



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ナイトメアパーティ:上


BGMはおすきなモノを・・・

アキト「後キャラが少々、黒い」


 

ドシュゥッ! ドシュゥゥッ! ドシュゥゥゥッ! と飛行船から発射された戦略的ミサイルの大群はそこらかしこに勢いよく飛んでいく。

そして、建物等にに当たると腐りかけの果実のように弾け、劫火の炎を立てる。

大隊長達はそれを嬉しそうに楽しそうに見る。

 

 

火花が上がる。

 

「うわぁぁぁッ!」

 

炎が上がる。

 

「ギャあぁぁ!?」

 

断末魔があがる。

 

肉が焼かれ、骨が砕かれ、モノが破壊されていく都市。その都市に先程降ったゲリラ豪雨のようにミサイル群が落ちていく。

あっという間に美しい街並みは業火に包まれる。

 

 

「・・・まだだ」

 

大隊長が楽しそうに口を開いた。

 

 

「武装吸血鬼兵隊降下準備!!」

 

「ハッ!」

 

大隊長の命令で飛行船内部のカラクリが作動する。撃ち尽くされたミサイル格納庫は射出カタパルトへと変貌し、ゾロゾロと吸血鬼の兵隊共が並ぶ。

 

 

『ミサイル、全弾発射! 戦果は大打撃、大打撃ッ!!』

 

興奮した放送が艦内に響きわたる。

 

 

「まだだ・・・」

 

大隊長は椅子から立ち上がり、喚き散らすように叫ぶ。

 

 

「もっと戦果を・・・もっと戦火をッッ!」

 

 

 

 

 

燃え上がる街、劫火に包まれる街、人々の断末魔があがる街を見下ろしながら飛行船内の吸血鬼の一人が歪んだ口元で喋る。

 

 

「綺麗だ・・・戦場が輝いている・・・」

 

その言葉に後ろにいる吸血鬼達が答えるように笑う。

 

 

「俺たちは化物だ・・・あそこでしか生きられない。あそこにしか行きたくない・・・!」

 

眼に映る状況に恍惚の表情を浮かべる。

 

 

『着陸上陸作戦開始。降下部隊、出撃せよ』

 

ニタニタと笑う吸血鬼達の耳に待ってましたとばかりに艦内放送が聞こえてくる。兵隊達は顔を見合わせ、もっと口を歪める。

 

 

「行くぞ前線部隊・・・戦争だ!!!」

 

号令と共に兵士達はカタパルトに足を固定し、合図を待つ。

 

 

『5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・出撃ッ!』

 

カタパルトは火花を散らし、兵士を空に放り出す。次々と、次々と。その光景は下から見るとまるで銀の雫が落ちてくるようだったという。

 

 

 

 

 

 

 

「来た・・・来た来た来た来た来たぁッ!」

 

一方その頃、私兵部隊でIS委員会を占拠しジェルマンの部下たちはケラケラと嬉しそうに騒ぎ立てていた。

 

 

「な・・・なんて事だ・・・!」

 

十蔵は戦々恐々としていた。吸血鬼の恐ろしさをよく知る彼だからこそ余計に。

 

 

「ふん・・・アイツにしては随分とまぁ派手でいいじゃない」

 

「ジェルマン! 貴様、自分が何をしているのかわかっているのか?!」

 

「はぁ?」

 

役員の一人がジェルマンに食ってかかる。

 

 

「アンタ・・・状況がわかって言ってるの? わかっていて言ってるのなら大したものね」

 

「貴様こそわかっているのか! これはISを、つまりは世界を敵に回す行為。立派な反逆だぞ! 今に貴様は———「うっさい、ヤレ」「ハイ」―――ぎゃぁぁあッ!!!」

 

「「「ヒイィィっ!」」」

 

役員はジェルマンの部下に頭からバリバリと文字通り喰われると生き残った者達の悲鳴が部屋に響く。

 

 

「さて・・・順調にいけば、ここにも半時と満たない間にヤツラがくるわね」

 

「・・・ジェルマン・・・」

 

「ん? 何かしら十蔵ちゃん?」

 

黄昏るように呟くジェルマンに十蔵は絞るような声で声をかける。

 

 

「君は・・・・・いや、貴様は何時からヤツと・・・?」

 

「・・・いいわ。教えてあげる」

 

「おひいさま!」

 

「いいのよ。一応、十蔵ちゃんには知る権利があるものね」

 

「私も知りたいわね・・・ジェルマン卿?」

 

「アンタはダメ・・・と言いたいけど・・・まぁイイわ、ついでよついで」

 

そうしてジェルマンはこれまでのいきさつを話し出す。

 

 

「今回のキッカケは『四年前』に遡るわ」

 

「四年前・・・というと『ファントムブラッド戦役』か」

 

「そう。欧州で武装蜂起を企んでいた反IS組織をIS委員会直属の部隊が殲滅、撃破した事ね。この事でISは確固たる力を世界に示した。というのが『表』向きね」

 

「どうゆうことだ? まるで『裏』あるようだぞ」

 

「どうやら『真実』を生き残った連中は知らないみたいね? マーサ・グスト・カーバイン委員長閣下?」

 

「っく・・・」

 

ジェルマンはどうだと言わんばかりに顔を歪めて『真相』を話していく。

 

 

「あの戦役で30機以上の貴重なISと35000人もの兵士が投入され、100名弱の犠牲を払い、ISによる勝利を収めたと言うけど実際は違う」

 

「実際、投入されたISの半数近くが再起不能にされ、討伐軍並びに民間人合わせて10000人以上の被害と犠牲が出た」

 

「ついでに街と近辺の村が合わせて3つ『全滅』したわね」

 

「「「ッ!!?」」」

 

ジェルマンの話に十蔵とカーバイン以外の役員が驚嘆する。

 

 

「知らないのもわかるわ。だって、その時の役員は全員『不慮』の事故でこの世にいないんだものね?」

 

「な、なんだそれは!」

 

「そんなの亊私達は知らないぞ! どういう事だ委員長?!」

 

「一応言っとくけど、証拠なら色々とこちらで押さえてあるわよ? 言い逃れは・・・できない」

 

役員達はカーバインに詰め寄る。カーバインは眉間に皺を寄せて、答えていく。

 

 

「・・・確かにその通りよ」

 

「なんだと!?」

 

「でも、それは当時は必要な事だったのよ!」

 

カーバインの言葉に役員達は顔を見合わせて、疑問符を浮かべる。

 

 

「当時、まだISは世界に影響を与えていてもISに疑問を持つ者が多かった。それを打開するためにもあの戦いは必要だったのよ! それにあの戦いで貴方達は多額の利益を得たでしょうッ!?」

 

「そ、それは・・・」

 

カーバインの論説に役員は押し黙る。

 

 

「そうねぇ、確かにあの戦いでISは確固たる地位を固めたわ」

 

「そうでしょう!」

 

「でも・・・・・そのせいで多くの人間が被害をうけたわ」

 

「へ・・・?」

 

ジェルマンは淡々と話していく。

 

 

「ISの登場でそれまでの現存兵器はガラクタに成り果て、多くの兵士が職を失ったわ」

 

「そ、それは平和の為に!」

 

「その平和の為とやらで『女尊男卑』なんて言う時代錯誤の差別が大きくなったのも事実よ」

 

「!・・・・・」

 

「男だからという理由で理不尽な事をされ、男だからという理由で子供が捨てられる。一体これのどこが平和なの?」

 

ジェルマンの言葉には悲しみと憎しみの両方が込められているようであった。しかし、ここである疑問が浮かんだ。

 

 

「ジェルマン伯・・・聞いていいか?」

 

「なにかしら?」

 

「何故・・・貴様がそんな事を知っている?」

 

「それに関しては私が答えましょう」

 

男の役員の質問に答えるように部屋の扉が吹き飛んだ。

 

 

「「「ッ!?」」」

 

吹き飛んだ事でジェルマンの部下達が巻き添えをくらう。それだけでは収まらず、土埃に紛れ何者かが部下達を切り結んでいく。

部下達は悲鳴も上げられぬまま倒れていった。

 

 

「い、一体誰ッ?!」

 

「あら・・・・・この声は・・・」

 

土埃が晴れていくと声の主の姿が露になってきた。

そこには現代風にアレンジされた巫女服に美しい黒髪の少女が立っていた。

 

 

「き・・・君は・・・・・!」

 

「! あら・・・『金の魔女』の末裔が来るかと思いきや・・・まさか貴女が来るなんてね・・・・・『皇』の姫さま?」

 

彼女の名は『皇神楽耶』。日本でも有数の名家の当主であり、ヴァレンティーノファミリーと友好を築いている人物でもある。

 

 

「これはこれは皆様、御揃いで。轡木のおじさまもお久し振りでございます」

 

「どうして君が・・・?」

 

十蔵の疑問も間もなく、ジェルマンの部下が彼女にライフルを向ける。しかし・・・

 

 

「チェストぉおッ!」ザシュゥウッ!

『『『グギァアャアッ!?』』』

 

スニーキングスーツを着たオールバックの男が異様な刀で切り捨てる。

 

 

「姫さま、ご無事で?」

 

「ありがとう『藤堂』」

 

そうして扉からゾロゾロと皇家の私兵が入って来る。

 

 

「なッ!? いつの間に?!」

 

「下の階にいた貴様らの兵どもは大方切り捨てた。後は貴様らだけだ、人に仇なす化物ども・・・!」

 

ケバい部下の驚きの言葉に藤堂は鋭く睨んで答えると同時に皇家の私兵達が臨戦体勢をとる。

 

 

「お久し振りですジェルマン伯。こうしてお会いになるのは一年ぶりでしょうか?」

 

「・・・どうしてここへ? 皇家の幼いご当主さま?」

 

ジェルマンの疑問に神楽耶は息を調え、答える。

 

 

「暁アキトさまからです」

 

「なんですって?」

 

神楽耶の言葉にジェルマンは疑問符を浮かべる。

 

 

「アキトさまは委員会の内部に間者がいるかもしれないということで私達に依頼していたのです。まさか間者が貴方とは・・・思いもしませんでしたが」

 

「暁君が・・・!」

 

「・・・ふん・・・・・さすがは『アーカード』と呼ばれる吸血鬼だけの事はあるわね。それで? なんで私が真相を知っていると?」

 

神楽耶はフフフと含んだ笑みを浮かべると口を開いた。

 

 

「それは貴方がIS委員会に入る前に『貴族』の方達と繋がっていたからです」

 

「『貴族』?」

 

「『貴族』というのは、欧州を拠点としている吸血鬼の方達です」

 

「吸血鬼・・・また吸血鬼か・・・・・!」

 

「皇神楽耶と言ったね。その吸血鬼というのは一体なんなのだね?」

 

役員は神楽耶に吸血鬼について聞いていく。

 

吸血鬼・・・闇夜に住まい。人を喰らう知性を持った人類最大の天敵である種族。

 

 

「その方達と・・・ジェルマン卿、貴方は『牙狩り』時代から情報を交換していた。そうですね」

 

「・・・そうね。全部が全部と言う訳でもないけれど・・・その通りよ」

 

「認めるのかジェルマン・・・!」

 

「えぇ。今まで黙っててごめんなさいね」

 

「いや、謝るな・・・・・・・・殺しにくくなるだろう?」

 

十蔵はギラギラと殺気だった眼でジェルマンを睨む。

 

 

「フフ・・・フハハハ♪ 良いわねぇ! 流石は吸血鬼達から『銃剣』と呼ばれた化物だけはあるわねぇ?」

 

ケラケラとゲラゲラとジェルマンは楽しそうに笑う。

 

 

「おひいさま! 笑ってる場合じゃあありませんわよ!」

 

「かなりマズイ状況ですわ!」

 

皇家の私兵とジェルマンの部下達では戦力に大きな差が出来ている。比率にするとジェルマンが3に対して皇家が7である。

 

 

「ジェルマン卿」

 

「何かしら皇の姫さん?」

 

「『降伏』してくださいませんか? 身柄は悪くはいたしませんから」

 

神楽耶はニッコリとジェルマンに降伏勧告を出す。ジェルマンはうーんと悩むが・・・

 

 

「やだ」

 

「「流石おひいさま! でも、その返答はマズすぎますわ!」」

 

なんとも子供っぽい返答をした。それを聞いた神楽耶の答えは・・・

 

 

「そうですか、残念です・・・・・なら、大人しく死んでください」

 

「あら、なんか好きになれそうだわ。こんな出会い方じゃなかったら私達、良いお友達になれたかもね」

 

「えぇ・・・本当に・・・・・藤堂!」

 

「はッ!」

 

神楽耶の声に藤堂は懐から灰色で六角形の塊を取り出し、大きく『覚悟』を叫んだ。

 

 

「『武装錬金』ッ!」ガチャッ

 

合金の塊『核鉄』が光るとその人物の唯一無二の武器へと変化する。

 

 

「日本刀の武装錬金『サムライソードX』!」

 

「コイツはたまげた! 中々に良い男だけじゃないって事ね。でも良いのかしら? こっちには人質が――」

 

ジェルマンは銃をカーバインに向けるが、神楽耶は動じずに答える。

 

 

「それには及びません。アキトさまから人質は轡木のおじさま以外どうでも良いと事ずかっていますので」

 

「な、なんですっッ!?」

 

「あらら~? と言う事は・・・・・?」

 

十蔵は立っていた位置が扉に近かった為に皇家の私兵達に囲まれている。だから・・・

 

 

「轡木殿。銃剣はありませんが刀を」

 

「かたじけない」

 

十蔵は私兵から刀を受けとるとスラリと抜いた。

 

 

「全員・・・・・カカレェェエッ!」

 

『『『うおぉぉッ!』』』

 

藤堂の合図と共に皇家の私兵達は一斉に襲いかかっていく。

ジェルマンの部下達も銃を構え、引き金を引こうとするが真っ先に斬り込んだ藤堂に銃を刻まれ、そのまま切り捨てられていく。

 

 

「ヒィイッ!?」

 

「た、助けてく―――グギァアャアッ!?」

 

人質と当てにしていた役員までもが皇かジェルマンに撃たれ、斬られてしまう。

 

 

「あら、まさかあの娘最初から・・・・・やるわね」

 

「敵に関心してどうするんですのおひいさま! 逃げるわよ!」

 

「全員、撤収~~~!」

 

ジェルマンの部下はこれまでと悟ると纏めたダイナマイトに見せ掛けた煙玉を発火させる。あたりは紫色の毒々しい煙に包まれ、ジェルマン達は壁を破壊して逃げていく。

 

 

「じゃあ~ね~。皇の小娘~」

 

「チィッ、逃がすな! 追――「よいのです」――姫さま、しかし!」

 

ジェルマンを追おうとする藤堂を神楽耶は抑えると指示を出す。

 

 

「ここにはもう用はありません。私達はアキトさまが戻って来られるまであの方達を押し止めましょう。よいですね?」

 

「・・・わかりました、主命とあらば。凪沙、姫さまを頼んだ」

 

「お任せください」

 

「良し。行くぞ!」

 

『『『おぉぉッ!』』』

 

藤堂は神楽耶の命令を聞くと私兵を連れて業火包む都市へとかけていった。

十蔵は神楽耶に近づき、伺う。

 

 

「皇当主」

 

「轡木のおじさま、お怪我はありませんか?」

 

「いや、大丈夫だ。それよりどうして君が? 私はてっきりウィッチーの者が来るかと・・・」

 

「ウィッチーの御姉様は欧州の方達を相手どられています。戦後の支援とこれからについて。この戦、勝とうが負けようが終われば、自ずと『彼ら』は世間の目にさらされますので」

 

「なッ!?」

 

十蔵はその事に驚いた。それはまるで予期していたかのような手際であったからだ。

 

 

「君は一体・・・!?」

 

「姫さま」

 

「はい。おじさま参りましょう。ここは危険です。」

 

「あ・・・あぁ・・・・・」

 

呆ける十蔵を連れて、神楽耶達は委員会をあとにした。

 

 

「凪沙・・・後は手筈通りに」

 

「承知でございます」

 

20分後、IS委員会の入ったビルは見るも無惨に木っ端微塵になってしまう。

 

 

 

まだ、パーティははじまったばかり・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




証拠も何もかも木っ端微塵ッ!


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ナイトメアパーティ:下


原作というか、OVAのヘルシングでも音楽が多く使われている。

アキト「ロックが多い」



 

闇夜に闇夜に明かりが灯る。

 

「わぁぁぁあああッ!?」

 

赤い紅い朱い炎が灯る。

 

「ぎゃあぁぁああ!!」

 

炎から逃げ惑う人々。爆発から逃げる人々。

その人々を後ろから追って行くのは黒い軍服に銃火器を装備した吸血鬼の兵団である。

 

シュッパァァッ―――ンと軽快な音と共にナイフが鞘から引き抜かれると「ぐあぁぁあぁッッ!!?」と断末魔の叫びを上げて首が宙を舞う。

 

 

「あ、あ・・・わぁぁあ!!」

「キャアァあああああ!」

 

恐怖の叫びを上げ逃げ惑う人々。

容赦なく降り注ぐミサイルの雨霰。

吸血鬼の兵団から放たれる鉛玉に安全ピンを抜かれた手榴弾。

 

懸命に逃げる人々は無残にも為すすべもなく貫かれ、焼かれ、斬られ、肉の塊へと変わっていく。

吸血鬼の兵団はそれでもなお進軍して行く。

彼らから逃げる者はすべて獲物であった。彼らの後ろには死屍累々の山が積もっていく。

 

 

「ぎゃあ―――ぁぁ!!」

 

爆音を轟かせ、ナイフで体を串刺し、斧で頭を割る。

 

 

「た、助け―――うぎいぁああっ!」

 

腹が空けば自慢の牙で喉元にかぶりつく。喉が渇けば屍の腹を裂き、流れる血を豪快に飲む。男だろうが女だろうが、若いだろうが年増だろうが関係なく肉を引きちぎり骨を砕いて腹の底へと沈める。

 

 

『『『グハハハ・・・ギャハハハッ!!!』』』

 

吸血鬼兵達は唸り声にも似た笑い声を上げると空になった弾倉に弾を込め、また進撃して行く。

 

 

 

「・・・・・・う・・・ヴヴヴァぁア・・・」

「・・・ヴァぁア・・・」

『ヴぁ・・・VAAAAA!!!』

 

兵士に殺されて肉を齧られ、喰われ、捨てられた人々が一人でに立ち上がっていく。そして、のそりのそりと生気のない動く死体『屍喰鬼(グール)』と化した彼らは生きた人間を、食料を求めてさまよいだす。

 

吸血鬼兵のある者は殺した人間の首を銃剣に突き刺して喜び、またある者は生きたまま人間の皮を剥ぎ取り、それを自分の顔に被って遊ぶ。

まさに阿鼻叫喚。一時間と経たぬ内に都市は化物達の巣窟と化してしまった。

 

 

 

 

 

「糞ッ糞ッ!!」

 

「畜生! 畜生!!」

 

ダン! ダン! と警察官達は逃げる民間人達を守るべく道にバリケードを作り、襲い来る屍喰鬼に向けて発砲する。しかし、屍喰鬼は頭か心臓を破壊されないかぎり死なず、腕や足を貫いても襲いかかってくる。

 

 

ダン! ダン! ガチッ、ガチッ!

 

「ッ! 糞! 弾だ、弾をよこせ!」

 

「もうこれで最後です!」

 

「なにィ!?」

 

携帯している弾薬は一人10発未満まで減ってしまった。その時、どこからともなく警官達を嘲笑うかのような声が聞こえてきた。

 

 

「弾はもうそれで最後か。そいつは最悪だ、この世の終わりだ。でも、これはまだ始まりに過ぎない・・・!」

 

「ヒィッ!!?」

 

声のする方向を見て、警官達は息を飲み驚愕した。黒い戦闘服に身を包んだ吸血鬼の兵士がバリケード近くにあるビルの壁を平坦な道を歩くように垂直方向に歩いて来たのだ。そうして兵士は驚く警官達の背後に回った。

 

 

「う、撃て! 撃て撃て!!」

 

「「「うおおぉぉぉっ!!!」」」

 

警官達は兵士に向けて一斉に射撃を開始した。銃口から発射された弾丸は兵士の腕や足、胴体に着弾する。だが、兵士は苦しんで悲鳴を上げるのではなく、ニタニタと嫌な笑みを浮かべた。そして、持っていた自動小銃を警官達に向け、引き金を引いた。

ダダダ、ダダダと銃口は火を噴き、発射された弾丸は体を貫くと警官達は「グギャぁあああっ!」という断末魔と共に倒れ伏していく。

 

 

「あ・・・あぁ・・・・み、皆・・・!」

 

運が良いのか悪いのか、致命傷を受けずに肩を負傷した刑事が起き上がり、周りに声をかける。返ってきた返答は言葉ではなく呻き声であった。

 

 

「ほう・・・まだ息があるのか」

 

吸血鬼兵は息がまだある事に気づくと近づいて、瀕死の体を踏んだ。

 

 

「や、やめろ・・・!」

 

「お前はそこで見てな。あとでお前もコイツらのようにしてやるよ!」

 

制止も聞かず、吸血鬼兵は銃を頭に突き付け、引き金を引こうとした・・・・・・その時!

 

ドギュウゥゥンッ!!!

 

「ガはぁああッ!?」

 

「!?」

 

一発の銃声が響き、吸血鬼兵の頭を貫いた。吸血鬼兵はすぐさま反撃体勢に移ろうとするが体がいう事を聞かない。

 

 

「な、なんで・・・!?」

 

疑問の声を上げたのは刑事だった。彼は銃声のした方向を見るとそこには黒いスーツに身を包んだ一人の『鉄人刑事』が拳銃を構えて立っていた。

 

 

「あの吸血鬼特性の『徹甲琉銀弾頭』だ。反応から見るに貴様らには調度いいモノのようだな・・・」

 

「ガ、グがぁぁああッ!」

 

鉄人刑事の声と共に吸血鬼兵を形成していた細胞が崩壊を起こし、塵にへと変わり消滅した。鉄人刑事は消滅を確認すると刑事のもとへと駆け寄る。

 

 

「大丈夫か」

 

「は、はい!・・・でも皆が・・・!」

 

「大丈夫だ。手当をすれば助かる」

 

「本当ですか?!」

 

「あぁ」

 

「よ・・・良かっ・・・た・・・」

 

鉄人の言葉に刑事は安心すると意識を沈め、気絶した。鉄人は彼と負傷した警官達を背負っていると鉄人の名前を呼ぶ声が後方から聞こえて来た。

 

 

「『荻野』警部! 大丈夫ですか―――って、その人達は!?」

 

「避難民を守り、ヤツらを足止めしてくれていた。至急、手当を頼む」

 

「わかりました!」

 

荻野は負傷者を後から来た部下たちに任せると応援の機動隊と共にバリケードを強化した。

 

 

「ここから先にヤツらを通してはならん! 発砲は任意に、されど確実に仕留めろ! 発砲には支給された『徹甲琉銀弾』を使え!」

 

「弱点は頭と心臓です。必ず近接戦闘はさけてください!」

 

「では、各自位置につけ! 死ぬなよ皆!」

 

『『『はいッ!』』』

 

こうして現場の者たちの長い奮闘の夜がはじまった。

 

 

「『剣持』、アレを持って来たか?」

 

「はい! 荻野警部専用の銀製の警棒です!」

 

「良し! 行くぞ剣持ィ!!」

 

「はい!」

 

『荻野警部無双伝説』もついでにはじまった。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




吸血鬼も恐れる警察官! その名はクニハル・ミソジ・オギノ!


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戦場の華達



ゴジラとFateにハマって結構かかってしまった・・・・・
これがきのこの感染なのか?!

あと新キャラ出ます。



 

 

荻野警部達、現場組が奮闘している中。

緊急対策本部が置かれた警視庁の通信指令センターはてんやわんやしていた。

 

 

「民間人の避難が先決だ! テロリストとの戦闘はなるべく避けろ! どうしてもの時は支給した『徹甲硫銀弾』を使用してくれ!」

 

現場に指示を出す指揮台にいるのは場に不釣り合いな髪色の人物であった。

彼の名は『緒方柚希』。チャラついた格好をしているが、こう見えて警視庁警備部警護課の警視である。

今回彼は警護部でありながら、都市への広範囲テロと言う想定外の緊急事態で上から現場の指示を任されたのであった。

 

 

「まさか、あの吸血鬼くんからの警告と贈り物がこんな形で役立つとは・・・・・」

 

「緒方警視!」

 

「どうしたの?!」

 

「荻野警部がテロリストの群れに突撃したとの事です!」

 

「マジかッ!?」

 

緒方は管制官の言葉を聞くと驚くが、すぐにある事を思い出す。

 

 

「あ~・・・でも別に大丈夫だろ」

 

「えぇッ!?」

 

「アイツはダイナマイトの衝撃にも耐える強靭な体だ。だから吸血鬼でも大丈夫!・・・たぶん・・・」

 

「たぶんて・・・・・」

 

「お、緒方警視ッ!」

 

管制官が緒方の荻野への評価に戸惑っていると別の管制官に緊急情報が入って来た。

 

 

「どうした?!」

 

「官邸からの連絡です!」

 

「官邸から? 一体なんだ!?」

 

管制官からの次の言葉に緒方並びにそこにいた全員が驚いた。

 

 

「警官隊を退げろとの通達です!」

 

「なんだって!?」

 

「オイオイオイ、冗談じゃあないぞ!」

 

「何を考えてんだ上の連中は?!」

 

通達にその場は混乱するが、緒方は溜め息混じりに頭を抑えた。

 

 

「『IS』の出撃か・・・・・」

 

『『『!』』』

 

漸く首相と連絡がとれた官邸は想定以上・想定外の大規模テロに特例を出した。それは・・・

 

 

「『自衛隊』による実力か・・・」

 

「でもなんでISが・・・こういうのは自衛隊でも専門的な部門がいるはずだろう?」

 

ガヤガヤと指令室に動揺がはしる。

 

 

「無駄話はあとだ! 民間人の避難はどれぐらいできてる?!」

 

「は、はい! 襲撃地区域の避難は完了しています。しかし・・・・・」

 

「テロリストに対応している警官隊が・・・まだ・・・」

 

「連絡はつくのか!? 連絡がつきしだい、退がらせろ!」

 

「はい!」

 

緒方は各区域に通達命令を出すとドカリと指揮台の椅子に座る。

 

 

「ふぅ~・・・(ISの出撃には、もしかしなくても『女権団体』の圧力がかかってるだろう・・・でもISで倒せるのか? あの人類の天敵に・・・・・?)」

 

緒方は天井を仰ぎながら深呼吸を一つすると指令室のモニターを見た。

 

 

「(・・・死ぬなよ荻野・・・・・!)」

 

火中に飛び込んだ腐れ縁の親友を思いながら・・・

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

その日、陸上自衛隊特別戦略車輌課所属の『本田 稲』二等陸尉は、テロリスト襲撃によるスクランブルで同じ課に所属する『久野井 千代』三等陸尉と『北条 甲斐』三等陸佐と共に国産IS『打鉄・壱式』に乗り、襲撃地へと出撃した。

 

 

「これは一体・・・ッ!」

 

襲撃地付近に到着した本田が見たのはまさしく火の海であった。爆発音が炸裂し、銃声が轟き、断末魔が聞こえる。

 

 

「本部。こちらベアー1、目的地に到着」

 

北条が通信機で本部に連絡をいれると現場指揮官の『上杉 綾』一等陸佐に繋がった。

 

 

『こちら本部。正体不明のテロリストは北上を開始しています。ベアー小隊はテロリストの本部となっている地域の偵察、並びに先に現地で交戦している部隊と迎撃をお願いします』

 

「了解。ではこれより行動に移行します。over」

 

通信を切った北条は他の二人に目配せをする。三人は打鉄に装備されている専用武器を構え、戦場へと飛び込んだ。

 

 

 

襲撃された街はミサイルや爆弾により、見るも無惨に破壊されている。辺りには血が転々とまかれ、肉塊が転がる。

 

 

「これは・・・・・!」

 

「酷いわね・・・」

 

「一昨日見たスプラッタ映画みたいだにゃあ」

 

二人とは違う久野井のあっけらかんとした感想に北条がガクリと肩を落とす。

 

 

「ちょっとアンタ! 今、どんな状況かわかってる?!」

 

「どうどう。落ちついてください熊姫さん」

 

「熊姫言うな!」

 

「ふ、二人共!」

 

北条と久野井が言い争っていると本田が声をあげた。

 

 

「どうしたの稲ちん?」

 

「あ・・・あれを!」

 

本田が指差す先にはワラワラと大量の屍喰鬼が迫って来ていた。

 

 

「・・・どうやらあれがテロリストってヤツみたいね?」

 

「『バイオハザード』のゾンビみたいだにゃあ」

 

「でも良いんでしょうか?」

 

本田の問いかけに二人は頭を傾げた。

 

 

「あのテロリスト達は元々民間人だったのですよね? なら保護すべき対象なのでは?」

 

「稲ちん・・・」

 

「稲、アイツらはもう民間人じゃない。報告によるとアイツらは人を襲って食べるそうよ。そして、仲間を増やしていく『化物』」

 

「化物・・・」

 

「なんか益々、バイオハザードのゾンビみたい。そうとわかれば」

 

「あ! 久野井!」

 

久野井は装備されている専用クナイを構えて、屍喰鬼の群れに飛び込んだ!

久野井はクナイを屍喰鬼に放つ。放たれたクナイは屍喰鬼の額に突き刺さる。が・・・

 

 

『Vaaaaaaッ!』

 

「ィイッ!?」

 

屍喰鬼は気にせずに三人に襲いかかってくる。

 

 

「どうやら頭を完全に破壊しないと倒せないみたいね!」

 

「そうですね!」

 

北条は装備されている専用の鞭剣を、久野井は専用の弓を構えた。

 

 

「稲は遠距離からの援護を久野井は中距離の援護を頼むわよ!」

 

「わかりました! 射抜いてみせます!」

 

「甲斐さんは血気盛んだにゃあ~」

 

「うっさい! 行くわよ化物共ッ!」

 

三人は近中遠距離に別れて攻撃を開始した。

 

本田が弓で放った矢は次々と屍喰鬼の体を射抜いていく。しかし、矢は屍喰鬼の体に刺さるだけで足止めには遠い。

 

 

「今です!」

 

本田は弓の持ち手についているスイッチを押した。

 

 

ドオォォォォオッンンッ!!

 

『『『Vaaaaaaaッ!?』』』

 

スイッチを押した途端に放たれた矢の起爆装置が点火され、爆発を起こす。爆発により、周りの屍喰鬼達の体は木端微塵となる。

 

 

「ひゅ~♪ 稲ちんやるぅ~。なら私も!」

 

久野井はクナイを屍喰鬼の足元へと放つ。放たれたクナイは屍喰鬼の足を貫き、膝を地面につかせる。

 

 

「今ですよ熊姫!」

 

「だぁ~かぁーら~! 熊姫言うなァァあッ!」

 

膝をつかせたところで北条が鞭剣を振り回した。振り回された鞭剣は屍喰鬼の首に巻き付き、そのまま首を切断する。

 

 

「さっすが甲斐さん! カックいい~!」

 

「それほどでもあるわ!」

 

そうして三人は順調に屍喰鬼の群れを減らしていく。しかし、彼女達はあまりにも敵地の奥に来すぎていた。

 

 

「甲斐さん! 11時の方向に人影!」

 

「なに、また化物ッ!?」

 

索敵係の本田が不審な人影を発見した。その人影は黒い軍服を着ていた。

 

 

「甲斐ちん・・・あれは・・・・・」

 

「ええ。報告にあった正式なテロリストみたいね・・・」

 

北条は考えた。

 

 

「(このままヤツらと交戦してもいい。でも相手の戦力は未知数・・・それにあまりにも奥に来すぎている。ここは・・・・・)久野井、稲。このまま撤退するわよ」

 

「えッ、しかし!」

 

北条の命令に本田は難色を示したが、彼女は自分の置かれている状況がわからない程に愚かではなく、北条の命令に従った。

 

 

「よし。久野井、偵察写真のお願い」

 

「あいあいさー」

 

北条が久野井に写真をとるように命じると久野井は黒い軍服の人影達の記録を録った。だが、おかしい事に写真を一枚撮った瞬間に軍服の人影がフレームから消えた。

 

 

「え・・・ッ!?」

 

久野井はあまりの突然の出来事にフリーズする。その時!

 

 

「くのちん!」

 

「ひにゃぁッ!?」

 

久野井のすぐ横顔を本田の放った矢が通った。久野井は驚いて本田に文句を言おうとしたが・・・

 

 

「Guがァァあッ!?」

 

「にゃあッ!?」

 

「久野井ッ!?」

 

矢は久野井を襲おとナイフを振りかぶった軍服のテロリストの喉に突き刺さった。

久野井は驚くが、すぐさま体勢を立て直して戦闘体勢をとる。

 

 

「Gaaaッ! 糞ッたれ目!」

 

テロリストは喉に突き刺さった矢を引き抜くと眼を血走らせて三人を見る。

 

 

「なんだコイツら?」

 

「おい、ISだぞアレ!」

 

「人間だ! 殺せ殺せ!!」

 

他にも次々と眼を血走らせたテロリストが現れる。その手にはナイフや自動小銃が握られている。

 

 

「甲斐ちん・・・?」

 

「ええ・・・まずいわね・・・ッ」

 

いつのまにやら周りを軍服のテロリストに囲まれてしまった。すると、矢が突き刺さっていたテロリストが叫んだ。

 

 

「コイツら殺す! 皆殺しだ! 殺せ殺せ!!」

 

叫びに呼応するようにテロリスト達は威嚇するように口元の牙を鳴らす。

 

 

「皆・・・・・生きて帰るわよ!」

 

「合点でいッ!」

「はい!」

 

こうして日本で初めてのISと吸血鬼の戦闘が始まる。

 

 

『『『GaRurururu・・・ッ・・・・・!』』』

 

三人のIS操縦者を黒い兵士の小隊が周囲を囲む。

 

兵士達は通常の人間ではなく、奥歯から前歯までが全て鋭い針葉樹の葉のような牙が生え、眼は血走り口は大きく耳まで裂けている。

この兵士達は『人間』ではない。怪異の中の怪異、人類種最大の天敵・・・・・・・・『吸血鬼』だ。

 

しかし、彼らは純然たる吸血鬼でも『石仮面』から生み出された吸血鬼でもなく、科学的に生物学的に『人工的』に造られた吸血鬼である。

 

その基本ステータスは一般的なナイトウォーカーや希少なデイウォーカーには大幅に劣る。だが・・・・・

 

 

『『『Gu・・・GAAAaaaaaaaaaaaッ!!』』』

 

「「「!?」」」

 

その『力』は、並の人間を容易く引き裂ける程である。

 

彼らは、彼女らは獣の牙をガチガチと火打石のように鳴らし、威嚇する。

 

腰に差したナイフやサーベルを抜く者。自動小銃に弾丸を装填する者。突撃銃に銃剣を装着する者。

行う動作は各々違えど、眼前にある肉が柔らかそうで、濃厚な良い薫りを漂わせる三人に今でも飛び付きそうな勢いだ。

 

こんな状況に三人は額に汗を流し、ゴクリと唾を飲む。

 

 

 

「・・・ろす・・・・・殺す! 殺してやるッ!!」

 

先程、三人の内の一人『本田 稲』に喉を貫かれた吸血鬼兵が叫ぶ。

 

 

「生爪を剥がして殺す。生皮を剥がして殺す。歯を折って殺す。筋肉を磨り潰して殺す。骨という骨を砕いて殺す。全ての臓器を抉り取って殺す!」

 

眼は絵具の赤よりも紅く染まり、顔の皮膚はひび割れていく。

 

 

『『『殺せ、殺せ、殺せ!!』』』

 

周りを囲む他の吸血鬼達も呼応するように叫び、持っている得物を叩く。

 

 

「こ・・・これは・・・マズイんじゃあないか・・・にゃぁ~?」

 

「言われなくてもわかってるわよ・・・ッ」

 

頬を引きつらせながら苦笑いをする久野井に北条が苦虫を噛み潰したような苦悶の表情で答える。

 

 

「うGAAAああぁッッ!!」

 

そうしていると吸血鬼兵が牙をむき出しにジャンプする。そのまま吸血鬼兵は腰に差していたダガーを引き抜き、まずは矢を射られた恨みからか本田に襲い掛かる。

 

 

「!?」

 

「「稲(ちん)!!」」

 

北条と久野井は本田を援護しようとするが・・・

 

 

「させないよッ!」

「フンッ!!」

 

「「ッ!?」」

 

横から別の吸血鬼の攻撃が二人を襲う。

北条には長身の女の吸血鬼がサーベルで斬りつけ、久野井には丸い体格の男がナックルダスターで殴りつける。

 

ギャァアアンン!!

「「きゃあぁッ!!?」」

 

あまりの突然の攻撃に体が反射できずにモロに攻撃を二人は喰らい、二人は左右別々に吹き飛ばされる。

 

 

「甲斐さん! くのちん!!」

 

「余所見してるんじゃあねぇぇえ!!」

 

「!」

 

吹き飛ばされた二人に気を取られた本田に吸血鬼の攻撃が迫る。

 

 

 

ガギィィイイッ!!

 

「こ、コイツぅ!?」

 

本田はとっさに構えていた弓に装備されていた短刀で攻撃を受け流し、その反動を利用して後ろに退がる。

 

 

「くッ!(なんですかこの力は!? ISの模擬戦闘でもこんな衝撃はありません。これは一体?!)」

 

受け流した攻撃の威力に本田は内心驚愕する。しかし、すぐに頭を切り替え、弓矢を構える。

 

 

「なるほど・・・コイツはISの能力を過信しないヤツか・・・」

 

「これは殺しがいがある・・・」

 

周りの吸血鬼が本田の身のこなしに関心を示し、次々と前にでる。

 

 

「多勢に無勢とは・・・!」

 

本田はIS操縦者の中にいる数少ないIS至上主義者ではない者だ。そんな彼女だからこそ、今の状況に焦っていた。なぜなら先程の攻撃を受け流すのに使った短刀が折れたからである。

 

 

「(専用ライフル弾の直撃でも傷一つつかない刀がプラスチックのおもちゃのように折れた・・・あの攻撃をまともに喰らうのは危険・・・)ならば!」

 

本田は弓に装填していた矢の本数を1本から3本に増やし、遠・中距離戦を行う事にした。

 

 

「・・・」

 

『『『・・・』』』

 

本田と吸血鬼兵達との間にしばしの沈黙が流れる。

1秒か、2秒か、それとも1分かの短い沈黙を最初に破ったのは・・・・・本田だった。

 

 

「射貫いてみせます!」

 

『『『!』』』

 

装填されていた矢が勢いよく吸血鬼兵達に向かって飛んでいく。

 

 

「こんな矢など!」

 

吸血鬼の一体が3本の矢を素早く掴む。

 

 

「掴みましたね?」

 

「なに?―――ッ!?」

 

本田の言葉に吸血鬼兵が掴んだ矢を見るとそれにはプラスチック爆薬が仕込まれていたのだ。

 

 

「炸裂しなさい!」

 

『『『!?』』』

 

ドオッォオオオン!!!

 

本田は手元の発火装置のボタンを押した。矢は大きく炸裂し、矢をつかんでいた吸血鬼だけではなくその周りにいた吸血鬼兵も爆発に巻き込まれた。

辺りには肉片と血が飛び散る。

流石にこれはやったと本田は思う。だが・・・・・!

 

 

『『『gうAAあぁああ!!』』』

 

「なッ!??」

 

白煙の中から爆発の影響で傷を負った吸血鬼兵達が襲い掛かって来た!

本田は吸血鬼兵の突然の攻撃に反応できず、防御体勢をとる。

 

そのまま吸血鬼兵はフルパワーで本田のISを殴りぬいた。

 

 

「きゃぁぁあああッっ!!?」

 

大きな打撃と破壊力が本田を襲う。

腕に装備していたISの装甲は粉々に砕かれ、彼女は10m程後ろにあった民家まで吹き飛ばされると民家の壁を突き破り、屋内に入ったところで漸くストップした。

 

 

「ごほ! ゲほッ!! 痛ッ!」

 

攻撃をモロに喰らった本田のIS『打鉄』のSE(シールド・エネルギー)は一気に30%近くまで減少し、打撃の衝撃で両腕の骨にはヒビが入った。

 

 

「まさか、ここまでの威力だとは・・・」

 

本田はどうにかして体勢を立て直そうと立ち上がり、民家から出ようとした。その時!

 

 

ドグォオオ―――ッン!!

 

「うわッ!?」

 

またしても民家の壁を突き破って、何者かが入って来た。本田は痛む腕をなんとか上げて、瓦礫の山に弓を構える。でもその瓦礫からは聞き覚えのある声が聞こえて来た。

 

 

「ま、まって稲ちん!」

 

「え・・・?」

 

「私達よ・・・!」

 

瓦礫をどかし、土煙の中から現れたのはボロボロに損傷した北条と久野井であった。

 

 

「甲斐さん、くのちん! 無事だったんですね!」

 

「ええ、まあね」

 

「ヒドイ目にあったんだにゃあ」

 

3人は互いに抱き合い、無事を喜び合った。

 

 

「生存確認が出来たところで・・・久野井、無線の方は?」

 

「ダメですにゃあ。妨害電波がビシビシ入ってるし、さっきの攻撃でぶっ壊れましたよ」

 

「糞ッ、早くこの事を本部に知らせたいのに・・・!」

 

喜び合うのも束の間、テロリストの予想以上の攻撃力を本部にどう伝えようかと思案しだした。

 

 

「安全地帯まで退却するのは?」

 

「どこからが安全地帯なのかわからないし、さっきの戦闘で結構SEを持っていかれたし・・・」

 

「それはそうと・・・・・皆、どれくらいSEが残ってるん?」

 

久野井の確認に各自のISSE残量を見る。

結果としては北条が17%、久野井が23%、そして本田が31%である。

 

 

「皆・・・3割を切っているんですね・・・」

 

「というか2割も切っている人がいるとは・・・・・さすがは熊姫」

 

「熊姫言うな! しょうがないじゃない! あの女テロリストが!」

 

「まぁまぁ、甲斐さん落ち着いて」

 

本田が激昂する北条をなだめていると・・・・・

 

 

「―――ッ!」

 

久野井がいち早く、こちらに近づいてくる気配を察知した。

 

 

「甲斐ちん、稲ちん」

 

「どうやら・・・お喋りはここまでみたいね・・・」

 

3人は気配がする方向に武器を構える。

ゴクリと緊張が3人の体にまとわりつき始めた・・・・・・・その時。

 

 

カラン・・・カラン・・・

 

「え?」

 

突き破られた壁の穴から緑色の網目模様の入ったパイナップルと金槌の形をした物が計5個放り込まれた。

 

 

「ッ!!?」

 

「し、手榴だ―――――!!」

 

叫ぶ間もなく、安全装置の外れたパイナップルと金槌は大きな爆音を轟かせて炸裂した。

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい。あれじゃあコンガリと肉がやけるじゃあないか。俺は生の方がいいのに・・・」

 

黒煙を上げる民家を遠巻きにみるのは本田達3人を襲った吸血鬼兵達である。その内の一人が残念そうに声を漏らす。

しかし、手榴弾を放った吸血鬼がクツクツと笑う。

 

 

「なんだよどうしたよ?」

 

「IS操縦者ってのは自分の力を過信した馬鹿ばかりだと思っていたけれど・・・・・そうでもないみたいね」

 

「なに?」

 

吸血鬼が指さす先にいたのは・・・・・

 

 

「大丈夫・・・ですか、くのちん?」

 

「にゃ、にゃは~ん・・・わっちは大丈夫・・・でも」

 

「う・・・う~ん・・・」

 

ISが強制解除され、気絶した北条を肩に抱えるボロボロでススだらけの久野井と北条であった。その爆発から辛うじて助かった3人を吸血鬼達が囲んでいく。

 

 

「手こずらせやがって・・・・・!」

 

「俺、もう我慢できない!」

 

吸血鬼兵達は下卑た笑いを響かせながら口から涎を垂らし、ナイフや鉈を取り出してジリジリと近づいて来る。

 

 

「足だ足。とくに太もものあたりが美味い!」

 

「臓器が美味いだろう?とくに心臓が!」

 

「わかっちゃいねえな。やはり人間の美味い部位は腹周りだろう!」

 

「ひッ!」

 

すでに人間の皮は剥がれ、醜い化物の顔が見えている兵士達に本田は小さく悲鳴を上げる。

 

 

「こ、この!」

 

久野井は最後まで残していたクナイを投擲する。

 

 

「無駄なんだよ。無駄無駄ァ! そんな面白くもなんともない攻撃なんぞ効かんワぁ!」

 

「痛ッぅ!」

 

されど、クナイは簡単に跳ね返され、久野井の頬をかすめる。

 

 

「さぁ・・・お遊びはこれまでだよ・・・・・観念して食われなぁあ!!!」

 

『『『Ggg・・・・・GsYaaAAAaaッ―――っ!!』』』

 

ああ、もはやこれまでか・・・・・本田の脳内にそんな言葉が浮かんだ。今までの人生が走馬燈のように過ぎた。

 

 

「私は・・・私はここで果てる訳にはいかないのです!!」

 

「稲ちん!」

 

しかし、それでも彼女は痛んだ腕を奮い起こし弓矢を構えた。

 

その覚悟に呼応するように・・・・・

 

 

 

「好きにはさせん!!」

 

『『『ッ!?』』』

 

勇ましき声が響き渡ったと同時に高速回転する炎のリングが現れた、

 

 

ザァアンンッ!!

「なっ!?―――ギャaAAああぁ!!?」

 

炎のリングは本田に飛びかかった吸血鬼兵の胴体を斜め一線に切り裂いた!

切り裂かれた吸血鬼兵は絹を裂くような断末魔を上げて火だるまへと変わった。

 

 

「な、なんだぁ!?」

 

「こっちに来るぞ!!」

 

炎のリングはそのまま円を描くように次々と吸血鬼兵達を切り裂いていく。

 

 

「ふざけやがって!!」

ギィイイン!

 

吸血鬼兵もやられてばかりではなくサーベルを持った兵士が炎のリングを弾いた。

弾かれたリングは回転力を失いクルクルと宙を舞った。次第に回転力を失ったリングは一本の刀へと変貌する。その刀は仕込み刀のようで、柄の先からも刃が伸びている。

その宙を舞う刀を一人の人影が掴んだ。

 

刀を掴んだ人物は本田達の前に着地する。

その人物は赤と青をベースにした鎧を着こみ、闇夜に浮かぶ月のような銀色の長い髪を後ろで一つに束ねた紅い眼の青年が刀を構えていた。

 

 

「すまない。だいぶ遅くなってしまった」

 

「え・・・えぇ・・・」

 

突然の謎の人物登場に本田はポカンと呆けてしまう。だがこれだけでは終わらない。

 

 

「兄上!」

 

今度は十文字槍を肩に抱え、火のように赤い鎧とバンダナを纏った青年が走って来た。

 

 

「なに・・・あのイケメン・・・///」

 

「え・・・?」

 

本田の隣にいた久野井が頬を赤らめて黒髪の青年に見とれる。

 

 

「な、なんだ貴様らはぁ?!!」

 

吸血鬼兵達は突然の第三者の出現に戸惑い、動揺する。

そんな渦中の人物である銀髪の青年は答える。吸血鬼兵達に名乗りを上げる。

 

 

「私は、皇家当主『皇 神楽耶』様からの救援を承った『眞田 信雪』と申す!」

 

「同じく、信雪が弟『眞田 雪村』と申す! 人に仇なす化物よ、成敗いたす!」

 

二人はまるで戦国時代の武将のように刀と槍を構えて名乗りを上げる。

吸血鬼達もまさか、こちらの問いかけに答えてくるとは思いもしなかったようでポカンと呆気にとられる。

 

だが、そんな呆気にとられた空気を一変させたのは・・・・・

 

 

「ヤレヤレ・・・お二人とも先に急ぎすぎです」

 

またしても第三者であった。

今度の人物は夏だというのに季節外れの白いコートと白のスーツを身に纏い、白いハットを被ったアジア人であった。

 

 

「お・・・おいアレ・・・」

 

「ウソだろ・・・!」

 

そのアジア人の男の顔を見て、先程まで呆気にとられていた吸血鬼達の顔が強張っていく。

 

 

「すいませぬ。この方達が危険な目にあっていましたが故に」

 

「そうですか。ならば仕方ありませんね・・・・・おや、よく見ると自衛隊のIS部隊の肩じゃあありませんか」

 

「は、はい・・・あ、あの・・・!」

 

「何ですか?」

 

「あなたは一体・・・・・?」

 

「これは失礼―――」

 

自分の顔を覗き込んだ謎の人物に本田は問いかけると白コートの人物は丁寧にお辞儀をして自己紹介をした。

 

 

「私はキンブリー・・・・・『ゾルフ・J・キンブリー』という者です」

 

今ここに世界最強の爆弾魔が現れた瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




新キャラの元ネタはわかる人にはわかります。

・・・でも知ってる人少ないかな?


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戦場の華火




久々の投稿。

久々の登場キャラも出します。

主人公は、移動中。



 

 

 

「さて、吸血鬼の皆さん・・・お久しぶりです」

 

自己紹介を済ませたキンブリーは、手を広げながら群れ為す吸血鬼達の方を向いた。その両掌には、月と太陽を模った刻印が入っている。

 

 

「ぐ・・・『紅蓮の錬金術師』・・・!」

 

「イカれた国家錬金術師が、何故ここに?!」

 

吸血鬼兵達は驚愕する者、青ざめる者、憎しみを浮かべる者と表情は様々であった。

突然現れた眞田兄弟にも驚いたが、この男の登場はその数段上をいく程である。

 

 

「ふむ。本隊を通した皇家の応援要請に答えて来たものの・・・これはどうして『大当たり』のようだ」

 

「き、気を付けてください! そのテロリスト達は、何らかの人体改造を―――ッ!?」

 

キンブリーの後ろで、負傷した本田がテロリストの危険性を叫ぶ。だが、それを途中でやめた。

何故、やめたのか?

 

 

「ククク・・・」

 

見てしまったからだ。口を三日月に歪め、玩具を見つけた子供の様にあどけなく笑うキンブリーを。

笑っているだけなのに本田は、言いようのない恐怖心を抱いた。さっきまで戦っていた吸血鬼兵にも勝る異常なオーラ。

 

 

「キンブリー殿、助太刀は?」

 

「構いません。貴方方は彼女達を連れて、彼らと合流してください。ここから先は、私の仕事です」

 

「わかりました、武運をキンブリー殿。兄上」

 

「ああ。では、参りましょう」

 

「え、ちょっと!」

 

キンブリーの返答を聞いて、眞田兄弟は本田達を担ぐ。そしてそのまま、後方彼方へと走って行った。

 

 

「・・・さぁ、はじめましょう。楽しい楽しいお仕事の時間です」

 

キンブリーは彼らが行ったことを確認すると満面の笑みを浮かべて、パンッと掌を合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

眞田兄弟は走っていた。兄の信雪は本田を抱え、弟の雪村は北条と久野井を担いで走っている。『彼等』と合流する為に。

 

 

「待ってください!!」

 

不意に抱えられていた本田が、待ったをかけた。「どうしました」と信雪は答えるが、その足を止めようとはしない。

 

 

「あのキンブリーというお方一人では、あのテロリスト達には対処できません。今すぐに引き返してくださいッ!」

 

あれよあれよという間に抱えられて、元いた場所から大分離れてしまい。本田は、あの数をキンブリー一人では対処出来ないと考えた。

ISでもピンチに追い込まれたのだ。それをISが纏えない男一人で立ち向かえば、結果は火を見るより明らかだと。

 

 

「フッ、その心配には及びません」

 

「え?」

 

そんな彼女の心配を余所に信雪はほくそ笑む。それがどうしたとばかりにほくそ笑んだ。

 

 

「貴女方、表の人間は知らないでしょうが、彼は『ゾルフ・J・キンブリー』。英国軍特殊班部隊中佐の国家錬金術師です。そして、吸血鬼退治のプロフェッショナルでもある」

 

「錬金術師? 吸血鬼? い、一体なにを―――」

 

「兄上ッ!」

 

何処からか、ズガガッ! と銃撃が彼らの前方を塞ぐ。銃声のした方角を見ると大よそ20もの屍喰鬼を率いた吸血鬼兵が立っていた。

 

 

「くッ! もうこんなところにまで!」

 

眞田兄弟は武器を構えるが、どうにも本田達を抱えている為に得物が巧く操れない。そんな状況などお構いなしに化物の群れは彼らに襲い掛かって来た。

 

 

「致し方ない!」

 

こんな不利な状況でも戦うしかないと覚悟を決め、刃を抜いた・・・その時である。

 

 

「吸血鬼、その首もらい受けるッ!」

 

「Gあぁあッ!!?」

 

『ッ!』

 

刀撃の一閃が吸血鬼兵の頭を切り裂いた。その攻撃に続けとばかりにいぶし銀の銃弾が屍喰鬼に降り注ぐ。攻撃を受けた化物の群れは見るも無残な肉塊へと変貌した。

 

 

「『藤堂』殿ッ!」

 

信雪が声をかけたのは先程、吸血鬼を切り裂いた黒い戦装束の男『藤堂 鏡志朗』である。彼の後ろには、部下であろう兵士達が並んでいる。

 

 

「す、すごい・・・!」

 

本田は、圧巻とした。自分達があれ程までに苦戦していた吸血鬼をたったの一撃で倒してしまったのだから。

 

 

「無事であったか、眞田。その人達は?」

 

「はい、IS部隊の方達です。ヤツらに襲われている所に我らが」

 

「そうか」

 

藤堂は、意識のしかっりしている本田の方に顔を向けると現在の状況を話し出した。

 

 

「私は、藤堂 鏡志朗。今回のテロで自衛隊と連携することになった部隊の頭だ」

 

「連携? という事は貴方方はPMCの者で?」

 

「詳しい話は後だ。大方の周辺の避難は完了した。我らは一時退却し、防御陣形を整える」

 

「待ってください! キンブリーという方がまだ、帰って来て―――」

 

ドグォオ―――――――んンッ!!!

 

本田が言いかける前に後方彼方から轟音が響く。真っ赤に燃える紅蓮の炎が、大きな火柱を建てていた。

 

 

「どうやら・・・あの爆弾魔を連れてきて、正解だったようだ」

 

「ここらが、火の海になる前にいざ!」

 

「わかっている。全体、退却! 『ヤツ』が来るまで持ちこたえるぞッ!!」

 

『『『応ッ!』』』

 

轟音響いた火柱を合図に藤堂隊は、戦火を逃れる様に退却していった。

 

 

 

―――――――

 

 

 

一方、その頃・・・

 

 

「ハハハハハハハハッ!!」

 

キンブリーは即席で作り上げた巨大な壁で吸血鬼兵の進軍をさえぎりながら、辺り一帯に爆発を巻き起こしていた。

 

 

「あAaaああッ!!」

 

「Wgやぁぁあ!」

 

吹き荒れる爆風、焼ける肉の臭い。焦げ付いた血は絶え間なく漂う。

対峙していた吸血鬼の部隊は、彼の得意とする『火薬錬成錬金術』によって薪の様に火にくべられていた。

 

 

「ああ・・・この感じ、この多幸感ッ!」

 

爆発の渦中にいるキンブリーは、どこか身を捩らせながら爆発に心を昂らせている。

 

 

「何よりもこの『音』・・・体の底に響く実にいい音だ。脊髄が悲しく踊り、鼓膜が歓喜に震える。そしてそれを常に死と隣り合わせのこの地で感じることができる喜び・・・・・なんと満ち足りた事かッ!!」

 

良い笑顔である。傍から見れば、とんだ異常者だ。

 

 

「キンブリィイイイイイイイイイイイイイっ!!」

 

吸血鬼兵の一人が、キンブリーに襲い掛かる。

余程の恨みがあるのだろうか、その顔は到底人間の原型を留めていないくらいに崩れていた。

キンブリーは、その攻撃を難なく受け流すと軍服に火薬錬成を施す。

 

 

「クフフ・・・」

 

「ッ!!?」

 

「さあ、貴方はどんな音を響かせてくれますかね?」

 

後は簡単。軍服に施した錬成陣を発火させる。

吸血鬼兵は断末魔を上げる間もなく、爆散した。果実が弾けるような音を発てて。

 

 

「ああ、この音・・・・・吸血鬼を素材にしないとこの音は出ない。人間の音も良いですが、やはり吸血鬼は別格だ。響きが違う。フフフ・・・フハハハハハ・・・フハハハハハハハハッ!!」

 

彼は高らかに笑う。楽しそうに、嬉しそうに。

その声を聞きつけて、屍喰鬼が、吸血鬼が集まって来る。肉を喰らおうと戦果をあげようと襲い掛かってくる。

 

 

「もっと・・・もっとです! もっと私に音を聞かせてください!!!」

 

キンブリーは、それさえも楽しむ様に仕事に精を出していった。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





キンブリーさん・・・味方の筈なのに・・・・・ヴィランぽい。

アンチヒーローって、調べると結構多い。

引きずられている感があるぜい。


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立ち向かう者達




久々に本編にちょっと出てきます。
あと、ギャグキャラがシリアスになろうとして、誰おまな感じです。
てな訳で・・・・・どうぞ・・・



 

 

 

高度3000m。

彼と彼女は真っすぐ進んでいる。音速を超える勢いで真っすぐ、直線に。

ニューヨークの一件から1時間もかけない内に彼らは、付近の軍事基地に停泊してた英国の戦闘機『ユーロファイター』をかっぱらい、日本に向けて飛び立った。

 

 

「ハァ・・・・・」

 

戦闘機の後部コックピットで、しかめっ面をした男が一つため息を吐いていた。足元には、医療用の輸血パックの空袋が散乱している。

 

 

「まだか・・・まだかッ・・・まだか・・・!」

 

焦るような、楽しいような、嬉しいような、怒ったような口調で男は何度も呟く。何度も何度も何度も、壊れたカセットテープのように。

 

 

「まだよ・・・これでも飲んで、落ち着いて」

 

そんな彼に前部座席の彼女から新しい輸血パックが渡された。彼はそれを取ると一気に胃の中に流し込む。

すると突然・・・

 

 

「・・・臭いだ」

 

「え?」

 

「懐かしい臭いがする・・・」

 

輸血パックを飲み干した彼は、鼻をヒクヒクとさせて再度呟いた。

彼は大きく息を吸い込む。

 

 

「突き刺される男のニオイ。斬り倒される女のニオイ。焼き殺される子供のニオイ。撃ち殺される老人のニオイ・・・・・死のニオイ・・・感じるだろう『シェルス』?」

 

「・・・・・えぇ、感じるわ『アキト』。思い出したくもない『4年前』と同じニオイが・・・」

 

先程までの焦燥の表情から一変、薄ら笑みを浮かべたアキトの呟きにシェルスが苦虫を潰した様な表情で答えた。

 

 

「カカッ・・・戦のニオイ、殺し合いのニオイ・・・・・もうすぐだ、もうすぐ・・・」

 

二人の表情は互いに異なっている。

だが、その眼は二人とも『紅く』輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

「クハハハ!」

 

進撃を止めない人口吸血鬼軍団を率いる大隊長は、司令室で笑っていた。歓喜していた。

目の前のモニターには、殺したり殺されたりする吸血鬼兵の姿が映し出されており、彼はそれを実に楽しそうに見ていた。

戦果を挙げれば拍手をし、損害を出されるともっと拍手をした。

大隊長は心の底から楽しんでいる。

惨劇を、殺戮を、虐殺を、打撃を、剣撃を、銃撃を、爆撃を、ありとあらゆる行いと結果を楽しんでいる。まるで、幼い無垢な童の様にケラケラと。

 

 

「クふッ。ゾーリン、進撃せよ・・・!」

 

『了解』

 

大隊長は、モニターに映り込んだゾーリンに命令を通達する。ニヤリとほくそ笑んだ口元で、ゆっくりと。

 

 

「チェッペリン・ツーリ、エンジン再動。ゾーリン・ブリッツ隊、進撃ッ! 目標、ヴァレンティーノファミリー本部!」

 

煙草を咥え、大鎌を担いだゾーリンが操縦士達に命令を下すと飛行船のエンジンが火を噴いた。

本隊の飛行船『デクス・ウクス・マキーネ号』から離れたチェッペリン・ツーリは、悠々と火の海と化した街の上を進んで行く。さながら黒煙の海を泳ぐ一匹の白鯨であった。

 

 

 

 

 

そんなチェッペリン・ツーリは業火燃ゆる街中を離れ、郊外に居を構えるヴァレンティーノファミリーのアジトへと進んで行く。

街から離れた郊外は、不気味な程に静まり返っていた。

 

 

「間もなく目標地点上空です」

 

「よし・・・総員戦闘準備」

 

ゾーリンの号令と共に飛行船内の吸血鬼兵達は、各々の準備に取り掛かる。街に突撃していった同胞達と同じように装備を整え、カタパルト装置に足をかけた。

 

 

「旗艦からの支援攻撃来ます!」

 

「デクス・ウクス・マキーネからの露払いか・・・ヴァレンティーノに腹一杯食わせろッ!」

 

大隊長からのプレゼントか、街を火の海にした戦略的ミサイルがヴァレンティーノファミリー本部に降り注ぐ。その数は30発は優に超えており、当たれば辺りは業火に包まれる事必須であった。

 

ヒュン! ドォオーン!

 

ドドォオオ―――ッン!!!

 

『ッ!!?』

 

ところが、そのミサイル群が前方彼方から飛んで来た銃弾によって、次々と撃墜される。

 

 

「な、何事だ・・・何だ・・・何をされているッ!!?」

 

指令室で現状を目の当たりにしたゾーリンは、大きく動揺した。あれ程発射された多くのミサイルが次々と破壊されて、空に大輪の火花を咲かせたのだから。

 

 

「狙撃されています!」

 

「狙撃だと?!」

 

「ヴァレンティーノ本部からの狙撃です!」

 

「・・・ヤツだ・・・!」

 

ゾーリンは知っていた、この狙撃手を知っていた。大隊長に渡された資料の中に載っている闇世界随一と呼ばれる暗殺者の名前を。

そうこうしている内にミサイルは撃墜されていき、最後の一発が破壊される。またしても空に轟音けたたましく鳴る華火が咲いた。

 

 

「み、ミサイル全機撃墜!!」

 

「バカ言え・・・34機、同時攻撃だぞ」

 

「ッチぃイ!!」

 

旗艦からの攻撃が全弾迎撃され、兵士達はあんぐりと呆然とし、ゾーリンは悔しそうに歯軋りをした。

 

 

「サーチライト! ヴァレンティーノファミリー本部を照らせッ!!」

 

「お止めください、狙い撃ちされてしまいます!」

 

ゾーリンの命令に士官の一人が待ったをかけた。

サーチライトを向ける事で、狙撃手の位置や正体を確認できる。しかしそれは逆を言えば、自らの精確な位置を知れせてしまう事に繋がるのだ。

 

 

「構わんッ! あの『女』には、もう見えている!」

 

それでもゾーリンは命令を強行した。

チェッペリン・ツーリに備え付けられている全てのライトが、前方1km先のヴァレンティーノ本部を明々と照らしていく。

 

 

「あア!」

 

下士官の一人が何かを発見した。それにつられ、他の全員が目線の先の者に釘付けとなる。サーチライトに照らされ、煙草をふかしながら此方を睨む一人の眼鏡の彼女に。

その彼女の周辺には、重々しい銃器がズラリと並べられている。銃口から白煙をたたせながら。

 

 

 

『全機撃墜やで、姐さん。新装備の出来栄えは上々やんなぁ~・・・流石は、ウチとアキトで設計した『対城塞式ライフル』や』

 

耳に嵌めていた通信機から関西弁の少女の声が聞こえて来る。そのまま少女は、彼女の使用している銃器についての説明をはじめだした。

 

 

『『ハルコンネン(ツー)』。30mmセミオートカノン、最大射程4000m。総重量345kg・・・馬鹿に冗談が総動員の化物兵器や。ホントはシェルス姉専用の武器やったんやが・・・人間の姐さんが使うと体に負担がメッチャかかるから人間用にしといたんやけど、どうや?』

 

「悪くない。むしろ清々しい気分だ『ノア』」

 

『そりゃあ良かったで。作ったかいがあるちゅーもんや』

 

『『ガブリエラ』』

 

彼女『ガブリエラ』の返答にヴァレンティーノファミリー随一の天才少女『ノア』が、満足そうに云々と答えていると今度は別の人物から通信が入った。

この人物こそ、名高きヴァレンティーノファミリーを率いる頭目『ドン・ヴァレンティーノ』その山羊(ひと)である。

 

 

『そこから街が見えるであろうか?』

 

「・・・見えるぞ」

 

アジトの屋上に立つガブリエラには、確かに見えている。空に浮かぶチェッペリン・ツーリよりも先にある空が赤く染まっている様子がハッキリと見えた。

ドンもノアにハッキングしてもらった街中の監視カメラから火の海と化した街をモニター越に見ていた。

 

 

『よく皆で遊びに行っていたデパートも、商店街も灰になってしまったであろー。ワシらのシマが、今では地獄と同義語であろー』

 

「そうだな・・・」

 

淡々とガブリエラは、ドンに応対する。そのドンの口調はどことなく冷めきっており、どことなく熱い感じを滲ませている。

 

 

『ワシはこの国が好きであろ。そりゃあ、IS発明の地であるから差別主義者も多かったであろー。でも、そんな輩はごく一部で、あとの者達は優しくて良いヤツばかりであった。この国で新たに仲間になった人達も狼を除けば、良いヤツばかりであった。・・・・・そんな彼らは、この闘争に何の関係もない者達であろー』

 

「そうだな」

 

『そんな者達が・・・ワシの好きな国の者が、ワシらのシマの者達が、死体になって死体を喰ってる。それがワシには勘弁ならん。いくらワシが、極悪非道の悪党だとしても勘弁ならん・・・!』

 

その通信はガブリエラだけでなく、アジトに構える他の構成員全員にも届いていた。

冷静から一転、怒りを滲ませた山羊の声が再度響く。

 

 

『皆の者・・・仇討ちであろー。やっちまおう、アイツらをやっちまうであろー!』

 

頭目山羊の言葉を聞いて、他の構成員の代わりにガブリエラが答える。ゆっくりと体を起こしながら、覚悟の眼差しで答える。

 

 

「わかってる、わかってるさドン」

 

ガブリエラは、新しい煙草に火を灯しながらニカッと笑って答えた。

 

 

「さぁ来いよ、出来損ない糞ッタレ化物(フリークス)共! 今日の私は、いつにも増してドSだぞ!」

 

今ここにヴァレンティーノファミリーと吸血鬼兵団との火蓋が、切って落とされようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





ウチでは、こんなキャラです。


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Capra contro Mostro:1




題名は洒落た感じにイタリア語です。訳すと『山羊対化物』。
あと、特殊タグを使ってみました。
てな訳で・・・・・今回もどうぞ・・・



 

 

 

ガシャンッ!とガブリエラは、重々しい二つのハルコンネンの銃身を持ち上げる。それと同時に弾丸が装填されているマガジンボックスが屋上に固定された。

 

 

『目標ッ! 敵、弩級飛行戦艦!! 砲打撃戦用意ぃ!!』

 

指令室からのドンの声が無線機から全ヴァレンティーノファミリー構成員に伝わる。指令に呼応するように構成員達も携帯砲弾を構えて、目標を狙った。

 

 

『ッテぇえ―――――ッ!!』

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッッ!

 

攻撃命令と共にハルコンネンをはじめとした砲弾兵器が一斉に火を噴いた。発射された弾丸達は真っすぐに、項を描く様に射線上の飛行戦艦に向かって飛んで行く。

 

ドォオーン!!!

 

『『『うわぁぁあッ!!?』』』

 

「くぅッ!」

 

対迎撃兵器を乗せていない飛行船チェッペリン・ツーリは為す術もなく、攻撃を全面に受ける。船体は大きく揺れ、船内は大混乱に陥った。

 

 

「やっちまおう・・・ヤツ等をやっちまうであろー!」

 

火蓋が切って落とされた瞬間をモニターで見ながら、ドン・ヴァレンティーノは再度呟いたのであった。

 

 

 

『『『うぉおおおお!!』』』

 

ガブリエラや構成員達は躊躇いもなく撃ち続けた。

ガブリエラに至っては、射撃の反動で後ろへと退っていく。それでも尚、撃ち続ける。ヤツラを仕留める為に。

 

ドオン!

ドォオン!!

 

サーチライトは破壊され、船体内には休む間もなく弾が突っ込んでくる。着々と内部は火に包まれていき、外部に黒煙を噴いていた。

 

 

「第1、第3、第4ブロック被弾!」

 

「第2歩兵準備室で爆発ッ!」

 

「第4、第5エンジン部崩落!!」

 

「・・・っチぃ!」

 

チェッペリン・ツーリの艦長であるゾーリンは眉間に皺を括り付けて、大きく舌打ちをした。

ヴァレンティーノを強襲し、追い詰める筈が逆に自分達が追い込まれている。ゾーリンとしては、完全に出鼻をくじかれた苛立たしい事である。

 

 

「飛行能力、32%低下!」

 

「中尉! 艦を、艦を後退させなければ!」

 

「もう遅い!! あの火砲の前では、こんな艦の軽金装甲など紙風船だ。このデカブツは逃げられん・・・!」

 

ゾーリンの言う通り、今やチェッペリン・ツーリは完全なハリボテの的となってしまっていた。今更後退したところで、撃墜されることは必至である。だから・・・

 

 

「下降だぁ、着陸させろッ! 強行着陸だ!!」

 

これ以上の被害を出さない為にも着陸せざるを得なかった。しかし、ただの単純に着陸させるのでは芸がない。

そこでゾーリンは、残っているエンジンをフルスロットにするよう命令を出す。そのままチェッペリン・ツーリは、下降しながら最大船速で進んで行く。

 

 

「ヴァレンティーノファミリー本部に・・・いや、『ヤツ』にぶつけろ! ヴァレンティーノファミリー幹部、『ガブリエラ』にッ!!」

 

最早、風前の灯火となったチェッペリン・ツーリは、黒煙をあげながらガブリエラに突っ込んでいく。

 

 

「ヤベェ! 野郎、突っ込んで来るぞ!」

 

「ガブリエラ様を守れぇえ―――ッ!!」

 

構成員達はガブリエラを守ろうと砲弾や迫撃弾を打ち込むが、一発の弾丸と成り果てたチェッペリン・ツーリの進行は止められない。

 

「ッチ!」

 

『いかん! 逃げろガブリエラ!!』

 

ドンがガブリエラに逃げるよう叫ぶが、もう遅い。

ガブリエラは止まらない、止められないチェッペリン・ツーリにこのまま押しつぶされるのかと誰もが思った・・・

その時!

 

 

『姐さん!』

 

「わかっている!!」

 

ノアからの無線を合図にマガジンパックからドラム缶の様な弾頭が銃口にセットされる。

 

 

『『広域制圧用爆裂焼夷擲弾弾頭・ヴラディーミル』! ぶちかませ、姐さん!!』

 

「ウおおぉぉぉぉぉ―――――ッ!!」

 

雄叫びを高らかに上げながらガブリエラは、引き金を引いた。

 

 

ドヒュゥウ―――ッ!!!

 

「くうぅう―――! のわッ!?」

 

発射されたヴラディーミルの風圧に耐えられなかったガブリエラは、そのまま後ろに吹き飛ばされる。

 

ガシィッ

 

「大丈夫ですか、ガブリエラ!?」

 

そんな彼女を受け止めたは、麻袋を被った和装の男『ロレンツォ』であった。

 

 

「って重!!?」

 

「バカ! 何してんだ!!」

 

受け止めたのはいいが、身に着けていたハルコンネンのマガジンパックの重さに耐えられずに崩れおちた。ちょっとカッコ悪い。

 

 

「それよりも飛行船は?!」

 

崩れおちたもののロレンツォの目線は、すぐさまヴラディーミルが飛んで行った方向を見据えた。

 

ドォオン!

 

ヴラディーミルはウロウロしながらもチェッペリン・ツーリの頭にぶち当たり、火花を咲かせた。

 

 

『『『うわぁアァァ―――!?』』』

 

「せ、制御不能! 制御不能!!」

 

「お、墜ちまぁ―――す!!」

 

ヴラディーミルの爆発衝撃によってチェッペリン・ツーリは大幅に失速してしまい、後少しのところで空中分解して墜落した。

 

ドグオオォン!!

 

墜落による爆風が屋敷に吹き付ける。なんとも焦げ臭い風が吹き付ける。

 

 

「・・・や、やった」

 

「よっしゃあ、やったぞぉ!」

 

『『『オオオォォ―――ッ!』』』

 

飛行船の撃墜に屋敷内で待機していた構成員達は大きく声を張り上げた。

 

 

「まだだ!!」

 

だが、起き上がったガブリエラが叫んだ。

 

 

『そうだ、まだであろーbambini(子供達)。目を開けろ・・・来るであろー!』

 

ドンの無線に全員が目を見張る。

そこには・・・・・

 

 

「あ、あれは・・・!」

 

「ホント、弟分の言う通りだ。ゴキブリみたいなしぶとさの連中だ!」

 

チェッペリン・ツーリが墜落した地点からは、黒い戦闘服に身を包んだ兵士共がムクリと起き上がって来たのだ。

 

 

「落ちる寸前に脱出したんだ!」

 

「そんなバカな!? あの高さから何も着けずにか?!」

 

双眼鏡で墜落地点の現状を覗きながら構成員達は目をむく。普通なら肉塊と成り果てている筈なのにヤツ等はピンピンしていたのだ。

 

 

『そうだ。アヤツ等は人間じゃあない。化物であろー』

 

「化物・・・!」

 

目の前で起きている事に構成員達の顔は青ざめていく。

 

 

「クク・・・ハハハ」

 

だが静寂と動揺が周囲を包む中、一人の構成員がケラケラと笑いだした。それにつられて他の少数の構成員も笑い出す。

「どうしたんだ?」と気でも違ったと心配した構成員が、笑う彼らに問いかけると彼らは答える。

 

 

「どうした皆、なにをビビッていやがるんだ」

 

「化物? それがどうした。あんなのが化物なら、ウチの『若頭』と『お嬢』は一体なんなんだよ?」

 

彼らの応答に次々と彼らの表情が晴れていった。

 

 

「フッ・・・違いねぇな」

 

「ああ、間違いねぇ」

 

「あんな紛い物より、俺達の『若頭』と『お嬢』の方が何十・・・いや、何千倍も化物だ!」

 

『『『ああ、違いねぇ違いねぇ!』』』

 

彼らは知っていた。

前から向かって来る化物達よりも恐ろしく強い『バケモノ』を知っていた。

 

 

「そうと分かれば・・・・・やろうぜ皆、やっちまおう!」

 

「こっからが正念場だ! 全員配置つけぇ!」

 

『応ッ!!』

 

現場には先程までの動揺はなく、それどころか士気が先程よりも上がりはじめていた。

そんな声を聞きながら、ドンは次の一手の指示を出した。

 

 

『ガブリエラは退って補給。ロレンツォはワシと共に前線に向かうであろー』

 

「「Acque territoriali(了解)ッ!」」

 

ガブリエラは重いマガジンパックを銃身から外すとロレンツォ共々、屋上から屋敷内へと進んで行く。

一方、二人に無線で伝えた後のドンは無線機を仕舞って椅子から立ち上がった。

 

 

「ノア」

 

「なんやドン?」

 

「これから先はカチコミをしてくるヤツ等との決戦であろー」

 

「まさか・・・子供は引っ込んどけとも言う気かいな?」

 

「いや、負傷者の手当てを頼むであろー」

 

「フッ・・・任せといてな!」

 

ノアの返答に満足すると部屋を後にする。

部屋の外には物々しい装備に身を包んだヴァレンティーノの兵隊共が待ち構えていた。

 

 

「見せてやるであろう。我らヴァレンティーノファミリーの戦を・・・・・さぁ、前戯は終わりであろー。行くぞ者共、仕事の時間であろー! Rock 'n' roll!!」

 

『『『consenso(承知)!!!』』』

 

遂に戦場は、遠距離戦からの近距離戦闘へと移行した。

 

ヴァレンティーノファミリーの彼らが士気を結託し、迎撃態勢を整える中・・・・・飛行船の墜落地点では、赤い眼を輝かせる兵士達を率いる大鎌を持った吸血鬼兵が、静かに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





イタリア語って不思議である。


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Capra contro Mostro:2




山羊(ドン)「今回も活躍するであろー」

ギャグキャラなのにシリアスだぞ、ドン!

・・・では、どうぞ・・・



 

 

 

ゴオゴオと地面が燃ゆる。血を噴き出す鯨のように飛行船の残骸から炎が吹き荒れる。

火は辺りの草木に燃え移り、小さいながらも火柱を建てていた。

 

 

「残存兵員42名ッ」

 

「あの弾頭、ただの代物ではありませぬ・・・!」

 

その火柱を前にゾロリと並び立っているのは、墜落した飛行船から脱出した吸血鬼兵の面々である。

 

 

「半数以上と銃火器の大半を焼失してしまいました・・・」

 

吸血鬼兵共は同胞を殺された事への悲しみと武器を焼かれた事の悔しさで、顔を歪めている。

 

 

「されど我ら、良き結構!」

 

『『『ククク・・・』』』

 

しかし、段々とその悲悔の表情は狂気の笑みへと変貌していく。

彼らは朗らかに笑う。これからピクニックでも行くような、アトラクションを楽しみにしている子供達の様に朗らかな笑みを浮かべる。

 

 

「ご命令をッ、ゾーリン・ブリッツ中尉!」

 

兵士達の目線は、ヴァレンティーノファミリー本部を見据えるゾーリンに集まる。

 

『強行は避けたまえ。私の本隊の到着を待つように』

 

出撃前、大隊長から通達された命令が彼女の脳内に浮かぶ。

しかし・・・

 

 

「充分だ・・・ヤツらを皆殺しにするには充分だ」

 

ゾーリンには沸々と湧き出る闘志があった。今にも喰らい付いてきそうな獰猛な狂気が、彼女の心を支配した。

それでも、隊を指揮する頭目からの命令もある。それを破ればどうなる事くらいには、わかっている。

 

 

「殺す・・・!」

 

だが、もう心の内を止める事は出来なかった。

出鼻を挫かれた屈辱よりも、同胞を失った悲しみよりも、銃火器を破壊された悔しさよりも、なによりも吸血鬼としての闘争心が勝ってしまった。

 

 

「全員殺すッ!!」

 

『『『ウヲォォォオオ!』』』

 

ゾーリンの持っていた大鎌を掲げたと同時に吸血鬼兵の群れは、ヴァレンティーノ本部に向かって突っ込んで行く。

100mを10秒以下なんて目じゃない速度で進んで来る残像が、定規で引いた黒鉛みたいに道を作っていく。

 

 

 

「流石は吸血鬼・・・紛い物でも恐ろしいモノであろー・・・」

 

前線に出て来たドンは、2階からそんな光景を何処を見ているのかわからない山羊の眼で見据えた。隣には屋上から駆け付けた腹心の麻袋、ロレンツォが立っている。

 

 

「ロレンツォ」

 

「なんでしょう首領(ドン)?」

 

ドンはロレンツォに囁くように語る。その囁きは無線機を通して、他の者にも聞こえくる。

 

 

「思い出したのだが・・・吸血鬼という者は『アレ』であろう?」

 

「『アレ』とは?」

 

「人間離れした反射神経や運動能力。獣のように殺気を感じ、恐ろしい馬鹿力を持つ。人間の殺気を感じ、動きを読む。心を盗んで、鋭く動く。銃撃を剣撃を容易く避け、相手を襲って、血を貪る。まったく、恐ろしい生物であろー」

 

「ええ、そうです。アキトと()()()()()()時の事を思い出しますね」

 

「仕掛けは?」

 

「バッチリです」

 

 

 

カチッ

 

「?」

 

真っすぐ屋敷に突っ込んで来る吸血鬼兵の一人が、何かを踏んだ。

 

 

「あぁ!!?」

 

その音が何なのかを知っていた吸血鬼兵は、ドンッ! という爆発と共に木端微塵になった。

 

ドゴォン!

ドゴン!!

 

他の吸血鬼兵も次々と爆発に巻き込まれて、粉微塵の肉片に変貌してしまう。

 

 

「『地雷原』! 地雷原だ!!」

 

地面に埋まった恐ろしい兵器『地雷』で、吸血鬼兵の進行スピードは0となった。

 

 

「止まりましたね・・・今です」

 

「はい!」カチッ

 

畳み掛ける様にドンの通達が下る。

命令を受けた構成員は、手元のラジコンスイッチのボタンを押していく。

 

バシュッン!

 

押されたスイッチで草むらに隠れていたトラップ兵器が火を噴いた。

 

 

「ぐワぁあッ!!」

 

爆発と共にビー玉サイズの鉄球が弾け飛んで、吸血鬼兵の身体を抉った。

休む間もなく、他のトラップも弾ける。戦争映画の爆撃シーンを彷彿とさせる爆発が、どんどん起こっていく。

 

 

「ッチ!」

 

これには、ゾーリン並びに各吸血鬼兵は制止せざるを得ない状況に立たされる。

 

 

 

Grande(素晴らしい)! 流石はロレンツォであろー」

 

「いえいえ、これもアキトとの知恵や今までの吸血鬼達との戦闘で培ったノウハウのおかげです」

 

拍手しながら褒め称えるドンにロレンツォは麻袋を紅潮させながら照れる。

 

 

「殺気も、心も、動きもない発動装置。そして、転では避けられない面攻撃。ノア特製の硫化銀製ボールベアリングクレイモア地雷の60個同時点火・・・ホント、皆で仕掛けるの大変でした」

 

うんうんと周りにいた構成員達が、ロレンツォと一緒に頷く。

 

 

「ワシらはマフィアであろー。だから、相手の嫌がる攻撃方法は熟知しているのであろー、出来損ないの吸血鬼共よ」

 

「このまま彼らに頭を上げさせないでください! グレネード弾分隊、斉射ッ!」

 

ロレンツォの指揮で、進行が止まった吸血鬼兵の群れにグレネードランチャーの雨が降る。

ヒューヒューと打ち上げ花火特有の音と一緒に爆撃の音が鳴りやむ事はない。

 

 

「ライフル分隊は、分隊火力の全てを集中弾幕射撃です!」

 

グレネードランチャーの隙間、隙間にオートマチックライフルの銃撃音が小刻みに響く。

いつの間にか、屋敷内は硝煙のニオイでいっぱいとなった。

 

 

「失礼します、ロレンツォ隊長!」

 

そうしているとロレンツォの部下の偵察部員が、彼に駆け寄って来た。

 

 

「連中の進撃が止まりました。降下の斜面に伏して、ピクリとも動くません」

 

「ふぅむ、何か企んでいますね・・・ですが、今はそれで良いです。近づけさせなければ、我々の勝利です」

 

「連中、退きますかね?」

 

止むことのない銃撃と爆撃を聞きながら部下が、再度ロレンツォに問いかける。

 

 

「・・・()()ならね。でしょう、首領?」

 

「ああ。そうであろー」

 

ロレンツォの言葉にドンは、忌々しそうに眉間に皺を寄せて発言する。

 

 

「普通の人間なら退く。間違いなく、とっくに。だが、ヤツらは人間ではない・・・・・紛いなりにも()()()()であろー」

 

ドンの言葉にゴクリと部下は、固唾を飲んだ。

 

そんな言葉を裏付けるように降下斜面に逃れたゾーリンが、何かを始めた。

 

 

「■■■■■―――!」

 

文字刺青が、満遍なく彫られた右半身を前に突き出すと右掌に目玉が浮かび上がる。

それを呪文を口ずさみながら、地面に叩きつけた。するとどうだろう。右半身の刺青が、地面に流れ込んでいく。流れ込んでいくと共にボコボコと地面が盛り上がっていった。

 

 

「な・・・なんだ?」

 

突如として起こった異様な現象に引き金を握っていた構成員達の手が徐々に止まる。

盛り上がった土は形状を固めていき、大きな人の形へと変わっていく。

 

 

「なんなんだ・・・なんなんだアレは!!?」

 

泥の巨人は、遂に形を完成させる。

その姿は、おおよそ40mはあろうかというゾーリン本人であった。

 

 

「う、うわぁ・・・!」

 

「お・・・俺達は正気なのか・・・!?」

 

その突拍子もない光景に構成員達の手は完全に止まった。

 

 

「こ、これは・・・!」

 

「い、一体これは・・・なんの冗談であろー!!?」

 

驚愕を隠せないヴァレンティーノ一味にゾーリンは、ギョロリと大きな眼を覗かせると手にした大鎌を振り上げる。

 

 

「い、いかん! 退―――!」

 

ズガシャァアアン!!

 

逃げる間もなく巨大化した大鎌が屋敷に振り降ろされた。

 

 

「うわぁぁぁ!!」

 

「ギャあぁぁッ!」

 

振り下ろされた衝撃で屋敷は崩壊し、その滑落に構成員の多数が巻き込まれる。

 

 

「こ、こんな・・・馬鹿な事があるかー!!」

 

巨大ゾーリンは、自分の攻撃で大混乱となった様子を確認するとまた大きく大鎌を振るう。

 

ズガアァアアン!!

 

『『『グわあぁあぁぁああ!!』』』

 

「ば、化物だぁ!」

「足が、足がぁあ!」

「腕が! 俺の、俺の腕がぁ!!」

 

攻撃を受けた彼らは次々に致命傷を負った。

さっきまであんなにも優勢だったヴァレンティーノ勢は、一気に追い詰められた。

 

 

 

「糞ッ! なんなんだ一体!!?」

 

補給を終えたガブリエラは、この惨状に驚きつつも気を取り直して、ドン達の方に向かう。

そして、ドンの所に着くとそこには信じられない光景が広がっていた。

 

 

「う、うう・・・!」

 

「首領! しっかりしてください首領ッ!!」

 

なんと頭から多量の血を噴き出しながら、ドンがロレンツォに抱えられていたのだ。

 

 

「ロレンツォ! 一体これは?!」

 

「壁が崩れる際、ドンが私の身代わりに!」

 

ドンは崩壊する壁からロレンツォを庇って、頭を瓦礫で強く打ち付けたのであった。

 

 

「首領、首領! しっかりしてください!!」

 

「おい、誰かノアを呼んで来い!」

 

「ふ、二人とも・・・!」

 

ボロボロと涙を流すロレンツォと慌てるガブリエラにドンが、満身創痍で語り掛ける。

 

 

「首領ッ、大丈夫です! すぐにノアが来ますので、お気を確かに!!」

 

「いや・・・その必要は・・・ないであろー・・・」

 

「なに言ってんだよ、ドン?!」

 

「いいから・・・よく聞くであろー!」

 

「「ッ!」」

 

最早これまでと悟ったドンは、二人にこれからの事を話しはじめた。

 

 

「生き残った者で部隊を再編し、事にあたるであろー・・・ワシは、ここまでだ・・・あとの指揮は・・・ろ、ロレンツォに任せるで・・・あろー・・・」

 

「首領! そんな・・・そんな事を言わないでください!」

 

ロレンツォは息も絶え絶えになるドンを必死に励ますが、段々と握っているドンの握力が弱まっていく。

 

 

「ロレンツォ・・・ここで散っていくワシを許してくれ・・・」

 

「ダメです! 首領!! 行かないでッ!!」

 

「・・・ファミリーを・・・頼んだ・・・・・ぞ・・・」

 

ガクッ

 

等々、ドン・ヴァレンティーノはゆっくりと眼を閉じたのであった。

 

 

首ォオオオオオオオオオオオオオオオ領(ドォオオオオオオオオオオオオオオオン)!!」

 

「糞! 糞ォォオオッ!!!」

 

ロレンツォの悲しみの絶叫が屋敷内に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何を勝手に死んどんのや、ドン!!』

 

『『『ッ!!?』』』

 

悲痛な叫びの中、無線機から大音量でノアの声が響き渡る。

 

 

「だ、だって首領が!」

 

『よく見てみぃや、ロレンツォ!!』

 

「へ?」

 

「・・・・・あろ?」

 

よくよく見てみると頭から噴き出す血など微塵もなく、ドンは怪我なんてしていなかったのだ。

 

 

「痛ぇよぉ! いてぇよぉ!」

 

「腕が、腕がぁ!」

 

他にも崩落に巻き込まれた構成員達は致命傷どころか、かすり傷もついていなかった。しかし、本当に痛いように患部を押さえていたのだ。

 

 

「こ、これは・・・一体どういう事であろー?」

 

「それよりも! ドンがご無事で何よりです!!」

 

「ベえッ!? く、苦しいであろー、ロレンツォ!」

 

無事であったドンをロレンツォは力一杯抱きしめる。

ドンは苦しいのか彼の腕をタップするが、その表情はどこか嬉しそうであった。

 

 

「気持ち悪い事、やってるんじゃあない! ノア、これは一体?!!」

 

『幻覚や』

 

「げ、幻覚ぅ?」

 

通信機から伝わるノアの言葉をガブリエラは信じられなかった。目の前にそびえ立つ巨人が虚像の塊である事に驚きを禁じ得なかった。

 

 

『姐さん! 試しにそのデカブツを狙い撃ってぇな!』

 

「わ、わかった!」

 

ガブリエラは彼女の指示通りに銃口を向け、撃った。すると発射された弾丸は、巨大ゾーリンの体をすり抜けていくではないか。

 

 

「こ・・・これは!」

 

『本体はデカブツの後ろにおる。指示通りに射撃よろしゅう!』

 

ノアには見えていた、虚像を創り出すゾーリン本体が。

何故、ノアには幻覚が見えていないのかというとカメラを通して現場を見ている彼女には、ゾーリンの眼組織に訴えかける幻覚は効いてはいなかったのだ。

 

 

『11時の方向、距離500m!』

 

「11時の方向、距離500m」

 

『撃ちまくれッ、姐さん!!』

 

「うおおぉ!」

 

ズドォッン!

 

ガブリエラは撃ちまくった。

弾倉が空になるまで撃ち尽くす。発射先は弾丸口径の威力で、幾つもの小さなクレーターを作っていった。

 

ッビシュゥッ

 

「っうウ!!?」

 

その内、一発の弾丸がノアに指示された場所に術式を展開するゾーリンの右頬を切り裂く。それと同時に虚像の右頬も切り裂かれ、砂の城のように虚像は崩れていった。

 

 

「な・・・なんだ・・・?」

 

「う、う・・・腕が・・・ある・・・!」

 

「なんだ・・・どうなってるんだ?」

 

「なんなんだ、今のは?」

 

虚像の崩壊により、構成員達にかかっていた幻覚作用は解ける。今までの出来事が何だったのか、構成員達は終止唖然となった。

 

 

「しっかりしろ、皆!」

 

「さっきの幻であろー!」

 

「ま、幻?!」

 

「幻術だってのか?!!」

 

あの巨体も攻撃による致命傷もが、幻覚である事に皆が驚愕した。その反応がわかるのか、先程の攻撃で頬に傷を負ったゾーリンがクツクツと笑う。

 

 

「その通り、幻だ。流石はヴァレンティーノファミリーの頭脳であるノアか・・・・・だが、もう遅い!!」

 

ガシャーンッ!

 

『『『ッ!?』』』

 

虚像に気を取られ、銃撃を止めてしまったのを好機到来とばかりに生き残った吸血鬼兵が屋敷の扉や窓を破壊し、侵入してきた。

 

 

「GAaaッ!」

 

「ギャああ!?」

 

吸血鬼兵は飛び込んだと同時に周りの構成員達の喉元へと齧り付いた。他にも吸血鬼特有の馬鹿力で胴体を真横に切り裂き、手刀で首を落す。

 

 

「こっのぉお!」

 

「ガブリエラッ!」

 

ガブリエラはハルコンネンを構えて走る。そのまま引き金を引き、吸血鬼兵の体をぶち抜く。

 

 

「GRyyy!!」

 

「う、うわぁアァァ!!」

 

一体の吸血鬼兵が、構成員に襲い掛かる。

仲間を守ろうと他の構成員がライフルをぶっ放すが、飛んでくる鉛玉をものともせずに吸血鬼兵は大口を開けて、襲い掛かって来た。

 

 

「オラァッ!」

 

「グべぇえ!!?」

 

ガブリエラはそんな吸血鬼兵の大口に銃口をブッ込むと天井に突き上げる。

 

 

「私の部下(げぼく)共に手を出すな!!」カチッ

 

ズドンッ

 

そのまま容赦なく引き金に手をかけて、頭を粉砕した。

 

 

「おお!」

 

「ガブリエラ様に続けぇえ!」

 

『『『オオォォォッ!!』』』

 

ズダダダダダダダダダッ

 

「Gaaああッ!!?」

 

ガブリエラの活躍に気を取り直した構成員達は陣形を再編し、侵入してきた吸血鬼兵に鉛玉を喰らわせる。心臓と頭を破壊するように確実に掃射した。

結果としては、1階を飛び越えて侵入してきた吸血鬼兵の掃討に成功する。

だが・・・

 

 

ドグゥオオオンンッ!

 

「これはいけません、正面が破られました!」

 

外にいた別動隊の吸血鬼兵が携行ナイフを地面に突き刺して、地雷をかいくぐって来たのだ。

 

 

『こちら正面玄関ッ、玄関前に敵兵殺到! 侵入されます!』

 

以前の様な弾幕射撃が出来ない事を良い事に吸血鬼兵達は、残った爆弾やロケット弾で強固に固めた玄関を突破した。

 

 

「・・・残った者を集めるであろー」

 

こんな時でもドンは冷静であった。

幻覚攻撃では大きく動揺させられたが、流石は一家の頭目。すぐに冷静さを取り戻して、各員に無線通達をはじめた。

 

 

「分散した者は地帯戦闘をしながら退却させ、残った者はここに全て集めるであろー」

 

『『『はい!』』』

 

「弾薬と手榴弾をありったけ持つであろー」

 

ゴクリと緊張が各々に走る。ここから先は本当の決戦になるだろう。

 

 

「ガブリエラ」

 

「・・・なんだドン?」

 

「ワシらは立てこもる、ワシらが守備(ディフェンス)でガブリエラは攻撃(オフェンス)であろー。ワシらがここを守る。その間にガブリエラはヤツらをやっつけろ」

 

「ああ、わかった」

 

「ワシらが細切れになる前にやっつけろ」

 

「ああ・・・!」

 

ガシャンと新しい弾倉を装填し、部下たちを率いて行く。

 

 

「あ・・・忘れていたであろー」

 

「ん? なんだよ、ドン?」

 

「各員に伝達であろー!」

 

ドンは再び、通信機を掴んで叫ぶ。難題だとしても、願うように叫んだ。

 

 

「皆・・・死ぬではなかろー・・・ッ!」

 

「・・・ククク・・・」

 

ドンの言葉にガブリエラをはじめとする全員が静かに笑った。

 

 

「別に逃げたいヤツは逃げても構わん。逃げても良いから、死ぬではなかろー」

 

「馬鹿言わないでくださいよ、首領」

 

「俺達はとっくの昔に首領に命、預けているんですから」

 

「お主ら・・・」

 

構成員達は皆、良い笑顔をしていた。

本当は怖い。逃げ出したい気持ちで一杯だ。でも・・・

 

 

「ご命令を首領(ファーザー)・・・」

 

ろくでもない自分達を拾ってくれたこの摩訶不思議な山羊を捨てて逃げ出す方が、それ以上に恐ろしかった。

例え、この命が喰われようと守ってみせる。恩人を、家族を、家を。

 

 

「ならば見せるであろー。魂もない薄汚れた出来損ない共に見せるであろー・・・我らヴァレンティーノファミリーの誇り高き魂を!!」

 

『『『応ッ!!!』』』

 

掛け声とともに彼らは行った。

弾倉を装填し、銃剣を装着させ配置場所へと駆けて行った。

 

 

『『『ハッハッハッハッハッハ♪』』』

 

朗らかで陽気に高笑いしながら。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




BGMは、しっとりとしたバラードで・・・


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Capra contro Mostro:3




最後の方に胸糞悪い展開がありますので、ご了承ください。

今回もシリアスでお送り致します。

それでは、どうぞ・・・・・



 

 

 

「俺はドンに魅かれたんだろうな」

 

「・・・あろ?」

 

陽もだいぶ傾いたスイスはグラウビュンデン州にある別荘のコテージで、ロックグラスを持った黒髪の青年『暁 アキト』がヴァレンティーノ家が当主『ドン・ヴァレンティーノ』にそう語り掛けた。

ロッキングチェアーに座ったドンは、青年の言葉に疑問符を浮かべながらも彼の言葉を聞いていく。

 

 

「ここには色んなヤツらが集まる。金の為、主義の為、故郷の為、家族の為、食い物の為・・・とまあ、色々だ。でもよぉ~、そんな違う考えをそれぞれ持ったヤツらをアンタは惹き付けちまう。なんでだろうな?」

 

「それはワシが類い稀なるカリスマを持っているからであろー」

 

「カリスマ・・・ねぇ?」

 

「なんであろー、その物言いは?」

 

ケラケラと困った様に笑う彼にドンは不思議そうに眉をひそめた。

 

 

「ドン・・・ただのカリスマだけでここまでの人が集まって来るだろうか? 俺は違うと思う」

 

「ほう・・・ならば、何故ワシがここまでの組織を築き上げたであろうか?」

 

彼の答えが気になったのか、少し楽しそうにロッキングチェアーを傾けてワイングラスを持つ。

 

 

「『器』だろうね」

 

彼はコテージの手すりにもたれかかるとグラスに入った液体を呷り、言葉を紡いだ。

 

 

「器・・・であるか?」

 

「そう。ドン・ヴァレンティーノって人物は、清濁含めたモノ全て受け止める器だ。それが例え、自らに害するものであってもな」

 

アキトはニヤリと口を歪める。その口からは鋭いナイフの様な歯が見えた。

 

 

「俺は異形だ。人ならざる者、『人外』だ。そんな俺でさえドンは受け止め、導いてくれた」

 

「されど、初めて会ったお主には手を焼かされたであろー」

 

「カカ♪ そりゃあ悪かったよ」

 

呆れるドンの反応に彼は苦笑いを浮かべる。

 

 

「でもドンは、こんな俺にも帰れる場所を作ってくれた。だからこそドン・ヴァレンティーノっていう人物に魅かれたんじゃあないかな? ま、他にも色々と魅かれる理由はあるんだけどね」

 

「嬉しい事を言ってくれるであろー。して、その他の理由とはなんであろー」

 

「そりゃあまた今度って事で・・・ね?」

 

「ムムム、気になるであろー!」

 

「カカカカカ♪」

 

ドンとアキトは笑いあった。

休日を楽しむ親子の一時の様に彼らは笑いあう。

 

 

 

 

 

「アキト・・・ワシはまだ、そのほかの理由を聞いていないであろー・・・・・」

 

そんな思い出を浮かべながら、ドンは壊された窓を通して夜空に浮かぶ赤い月を眺めているのであった。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「急げ! バリケードになりそうな物を持って、最終ラインまで後退だ!!」

 

「了解ッ!」

 

「B班にも連絡。グズグズするな!」

 

ゾーリンの幻覚攻撃によって防御陣形を崩された事で、屋敷内は大混乱の一途を辿っていた。

 

 

「うワぁァアアッ!!」

 

「助けてくれ・・・助けてくれ、助けてくれ助けてくれぇえ!」

 

「突っ込んで来るぞッ!」

 

吸血鬼兵共の突入で最初の餌食となったのは、玄関先を防衛していたB班であった。

彼らはこれでもかというくらいに雷管を叩く。カラシニコフやブラックライフル、トンプソン等の自動小銃から何百、何千もの銀製弾丸が発射される。

 

 

「撃て、撃て、撃てぇッ!」

 

「弾が、弾が当たらない!!」

 

「畜生ッ、畜生! チキショぉおーッ!!」

 

だが、銃撃は糠に釘を打つように暖簾に腕を押すように空を撃つばかりである。

彼等から繰り出される銃撃を容易く避けた吸血鬼兵達は、持ち前の得物と怪力で構成員を討ち取っていく。

構成員の体を引きちぎり、叩き折り、突き刺す。そうして、10分と経たない内に見るも無残な屍の山と血の池が玄関先に出来上がった。

気を良くした吸血鬼兵共は更に奥へ奥へと駒を進めていく。進行を阻む者は何であろうと喰らい付くし、殺し尽くす。

 

 

『此方B班、敵方の攻撃苛烈にて合流は不可能。繰り返す、合流は不可能ッ!』

 

ドンの持っている通信機に連絡が入る。ノイズ音と銃撃音と一緒にか細い通信連絡が入った。

 

 

「馬鹿を言うな、這ってでもくるであろー! こっちは屋敷内で一番頑丈なノアの研究室で立てこもり準備中であろ。ここなら暫くはしのげる」

 

ドン達、守備(ディフェンス)がいたのは屋敷内に設備されていた科学研究室であった。

ここには、バリケードになりそうな備品の他にもノアの生物化学で造り出された人造生物『カイゴハザード』もいる。ロレンツォやノアは、そんな彼らに指示を出しながら、自分達も決戦に備えて準備をしていた。

 

 

「そこでは簡単にクタばってしまうであろー、諦めるな!! どうにかして来るであろーッ!」

 

『・・・・・いいや無理です、首領・・・!』

 

「ッ!」

 

通信機からは聞こえて来た返答は、否定形の言葉であった。

ドンはそんな言葉は聞きたくはなかった。しかし、聞こえてくる。

 

 

『自分を含めて、負傷者だらけです』

『コイツはもうダメだ・・・早く処理してやれ、屍喰鬼になっちまう』

『水を・・・水をくれぇ・・・』

 

通信機を通して、彼らの痛みの怨嗟が聞こえてくる。ドンは彼らの声を聞いて、ただ下唇を噛むしかなかった。

 

 

『首領、ここでやれるだけ粘ってみます。バリケードは閉めてください! ご武運を、さようなら!』

 

「うつけぇッ・・・!」

 

ドンは吐き捨てる様に罵詈を叫ぶと砕けんばかりに歯軋りをする。

 

 

「・・・畜生・・・!」

 

だが、ここで部下の覚悟を無駄にする訳にはいかんとドンも腹をくくった。

 

 

「そうであるか・・・楽しかったぞ、馬鹿者」

 

『こちらこそです、首領。拾ってくださって、今までありがとうございました。では・・・お先に。オーバー!』

 

ブツリと通信は切れ、それっきり彼等からの通信はかかってこなくなった。

 

 

「・・・バリケードを閉めるであろー」

 

「ドン・・・Bの連中はどうなったんや?」

 

「・・・・・ダメであろー」

 

「そうか・・・」

 

悔しい声を漏らすドンにノアは、同調したように口を開いた。

周りも悲しそうな悔しい雰囲気を漂わせていく。

 

 

「もうダメだ! 俺達はもうおしまいだ!!」

 

そんな時だ。泣き叫ぶ童のような怒号が響いたのは。

 

 

「うるせぇ、馬鹿野郎ッ!」

 

「もう化物の相手なんか嫌だ! もう限界だッ! アーカードの若やカミーラのお嬢だって、俺達を見捨てやがった!」

 

遂に恐怖に耐えられなくなった構成員の一人が喚きだしたのだ。周りの構成員も同じ思いなのか、下を俯き始める。

 

 

「あの阿呆ッ・・・!」

 

「よせ、ノア・・・」

 

ノアは喚く構成員の態度が気に入らず、説教を垂れようとする。が、それを何故かドンは止める。何故とノアがドンを睨むとドンは、目線をノアからある人物に移す。そこには麻袋の右腕、ロレンツォが真剣なオーラを漂わせていた。

 

 

「何言ってるんですか貴方は? どこにも出れないし、どこにも行かせはしませんよ?」

 

丁寧な物言いであったが、その口調はどことなく冷淡のである。

 

 

「ッ! 俺は帰る、もう嫌だッ!」

 

「フッ・・・どこに帰るんですか? 貴方の家はここでしょう? 墓標はこの屋敷、墓守は我らが首領『ドン・ヴァレンティーノ』ですよ。碑文にはこうです。『スゴくカッコいいマフィアが悪い吸血鬼をやっつけて、スゴくカッコよく散りました』です」

 

「う・・・うぅ・・・!」

 

ドドドドドドドドドドド・・・

 

ロレンツォは圧を出しながら喚いた構成員に一歩ずつ近づいていく。その圧に他の構成員達ものまれていった。

 

 

「ですが・・・貴方のせいで変わってしまいます。貴方がメソメソしているから『ヘタレの根性無し。子供のように泣いて、家族を貶しながら虫けらのようにくたばる』・・・・・冗談じゃあない!!」

 

「ヒぃいッ!?」

 

ロレンツォは構成員の胸倉を掴んで高く持ち上げる。

袋を被っていて表情はわからないが、明らかにロレンツォが怒っているのは明白であった。

 

 

「貴方には無理矢理でもカッコよく散ってもらいます! 好き好んで我々について来たのですからもうにげれません。ましてや同じ家族を侮辱するような事など言語道断! 貴方も我々と同じように好き好んで、戦って散れぇッ!」

 

彼にしては珍しいキツイ言葉を羅列させると掴んだ構成員を床に打ち付ける。打ち付けられた構成員は目元に涙を出しながら「糞、糞ッ!」と再度喚いた。

 

 

「それにまだ死ぬと決まってもいませんし、アーカードは・・・アキトは必ず来ます・・・!」

 

『『『・・・・・』』』

 

場は静寂に包まれる。

自分達は好き好んでこの道に入った、この山羊についていくと決めた。その覚悟をロレンツォの言葉で、改めて再認識した。

 

 

「ロレンツォ・・・」

 

「ッ・・・すみません首領。つい、熱くなってしまいました・・・」

 

ロレンツォはドンに自分の非礼を詫びるようにお辞儀をかえする。ドンは「構わん」とロレンツォの非礼を許すと床に打ち付けられた構成員を起こした。

 

 

「皆、さっきロレンツォが言ったようにまだ死ぬと決まった訳ではなかろー。ワシらはディフェンスだ、オフェンスが今に点をひっくり返すであろー!」

 

『『『・・・はい・・・』』』

 

「そうと分かったなら、ちゃっちゃとバリを組むんや!」

 

『『『はい!』』』

 

あわや恐怖に飲み込まれそうになりながらも生き残った守備部隊はバリケードの強化に邁進していった。

 

 

 

―――――――

 

 

 

ドォオオ―――ッッン

 

一方その頃、攻撃(オフェンス)を任されたガブリエラ率いる部隊は二手に分かれて吸血鬼に応戦していた。

一つは後退しながらも仕掛けた爆薬で通路を破壊し、吸血鬼兵の行く手を阻む部隊。もう一つは遊撃手といった部隊だ。

阻む部隊は玄関先のB班と合流し、吸血鬼兵の進行速度が爆発で止まると休む間もなく銀製弾丸を喰らわせた。

 

 

「畜生、当たれッ!」

 

「来い化物! 来やがれ化物共ォおッ!!」

 

ズダダダダダダダッ

 

「GRYYYYYッ!!」ズシュウゥッ!

「ぐギャァアア!」

 

だが、溶岩にじょうろで水をかけても熱は冷めない様に吸血鬼兵は銃撃を難なく避けていき、普通の生物では在り得ない鋭い牙で喉元を噛みちぎっていく。

 

 

「逃げるな、戦え!」

 

「もう・・・ダメだ・・・」

 

「しっかりしろぉ!!」

 

ズダダダダダダダダダッッ

 

「「「グワァアぁああッ!」」」

 

牙の他にも手元に残った自動小銃を乱射し、着実に進行方向に留まる構成員の命を奪っていく。

そんな吸血鬼兵達が作った血の滴るカーペットを悠然と歩く人物が一人。

 

 

「燃やせ、燃やせ!」

 

その人物は大鎌を担ぎ、右半身には余すところなく文字刺青が彫られている。

 

 

「皆殺しだ、皆殺しだ!」

 

この人物こそ屋敷で行われる惨劇の発起人、ゾーリン・ブリッツ中尉であった。

 

 

「これがヴァレンティーノの力だって? これが欧州が恐れる裏組織だって? 笑わせてくれるねぇ!」

 

彼女の後ろには武装された二人組の吸血鬼兵が連なる。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

それを通路の物陰から見る者が一人。

彼はゾーリンが一人になるのを待つ。そうしているとゾーリンが吸血鬼兵に命令し、隙が出来た。

 

 

「今だ! ウおぉぉッ!!」

 

ダダダダダダダダダッ

 

これを好機とばかりに彼は飛び出して、徹甲琉銀弾を込めたカラシニコフをぶっ放す。

 

 

「無駄だ」

 

「ッ!!?」

 

しかし、ゾーリンの命令に従い離れていた筈の吸血鬼兵が盾となって攻撃を防いだ。ゾーリンは攻撃を防いでくれた崩れ落ちる部下の体から手を伸ばす。

 

 

「雑魚が・・・鬱陶しいんだよぉお!」

 

「ヒぃッ!?」

 

ゾーリンの伸ばした手が通路の壁に触った瞬間、虚像を作り出したように刺青の文字が壁全体を覆った。全体が文字に覆われた時、彼の目の前には在り得ない光景が広がった。

 

 

「え・・・こ、ここは・・・!?」

 

硝煙香る屋敷から一変、彼の周りは和やかな雰囲気漂う風景が広がった。

 

 

「そ、そんな・・・馬鹿な! ここは・・・俺の住んでいた・・・家ェ・・・!?」

 

それは彼が昔、住んでいた家であった。視覚の他の感覚までもが、我が家を懐かしんでいる。

 

 

「お父さん」

 

不意にまたもや懐かしい声に呼ばれ、振り返る。

 

 

「ッ!!? わ、うわぁ・・・ッ!」

 

「お父さん、お帰りなさい」

 

するとそこには、幼い少女が立っていた。

 

 

「ミシェルなのか・・・・・そんな・・・そんな馬鹿な!」

 

その少女は彼の娘であった。だが、何故か彼はうろたえる。幻術と知り得ながらも激しくうろたえた。

 

 

「お前は・・・ISの暴走事故に巻き込まれて、死んでしまったじゃあないか!!」

 

そう。彼の娘は、もうこの世にはいない。

 

 

「どうしたの、お父さん? 怖い顔して?」

 

だが、目の前には確かに存在するのだ。我が愛しい自分の子供が。

 

 

「幻覚・・・幻覚だぁ・・・」

 

力の抜けた彼の手からカラシニコフが落ちる。そして、目の前に立つ少女の頭を撫で頬を触る。そこには確かに人間を触っている触感があった。

 

 

「これは幻なんだ。なのに・・・・・畜生、畜生ッ! これも幻覚だって言うのかぁあ?!!」

 

とうとう彼は少女を抱きしめた。目からは雫が落ち、頬を伝っていく。

 

 

「ミシェルッ、お前も幻なのかぁあ!!?」

 

「ウッソでぇえ―――すッッ!」

 

「ッ!」

 

彼の目の前に広がった幻覚は掻き消え、その代わりに大鎌の刃が彼に迫る。

 

斬ッッッ

 

彼は断末魔も上げられぬままに真っ二つの肉塊へと変貌してしまった。

 

 

「全部ウソ! 全くの嘘ッ! 阿保は死ななきゃ治らねぇ~!」

 

ゾーリンはゲラゲラと笑った。それは愉快に楽しそうにゲラゲラ、ゲラゲラと笑う。

もう性根まで人間ではなかった。もう完璧な化物であった。

いや・・・この場合は『外道』といった方が正しいのだろう。そこまで、ゾーリンは堕ちているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





BGMは・・・この場合ない方がいいのか?


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彼らは戦い、彼らは来た




ドン「今回もワシが奮闘するであろー」

山羊みたいなドンはこんな感じですが、内容はシリアス気味です。

それでは、どうぞ・・・・・



 

 

 

吸血鬼兵の襲撃によって惨劇の館と化したヴァレンティーノファミリー本部。

銃撃と剣戟、爆撃が繰り広げられる中、何処からかムシャリムシャリと何かを食べる音が聞こえてきた。

 

 

「曹長、そっちはどうですか~?」

 

「おお、ちょっと待てよ」

 

音と一緒に気の抜けた声も聞こえてくる。

その音の正体は、休憩がてらに殺した構成員の血肉を喰らう吸血鬼兵であった。

 

 

「この酸味は・・・お! A型のRHマイナスだ。どうだ今度は合ってるだろう?」

 

「おお、スゴイ。大正解です、大正解。よくわかりますね」

 

吸血鬼兵達は効き酒ならぬ『効き血』をしていた。

殺した構成員の血を飲み、その血が何型かを当てるゲームをしている。辺りにはバラバラにされた構成員の骸と効き血の正解に使われたドッグタグがゴロゴロ転がっている。

 

 

()()が違うよ、丸みが」

 

「そうですか、すごいな~」

 

()()()が違うよ。それになA型の血はこう、なんというか―――」

 

それから先の自称グルメ吸血鬼兵の言葉は紡がれはしなかった。

何故ならば・・・

 

グシャァアン

 

「ッ!?」

 

その頭を発射された砲弾によって、吹き飛ばされたからである。

 

ズダダダダダダダダダッ

 

「ギゃぶッ!?」

 

「ぐギャァー!!」

 

休憩していた全ての吸血鬼兵は立ち上がろうとするが、戦闘態勢を取らせまいと射撃を続ける。

 

 

「ウオオオォォオオッッ!!」

 

砲弾をぶっ放したのはアシストスーツに身を包み、2丁のハルコンネンを自由自在に操るガブリエラであった。

彼女は撃ちまくる。これでもかと、吸血鬼兵が肉片になるまで撃ちまくる。

 

タタタタタタタタタタタッ

 

「ん?!」

 

ガブリエラの銃撃を聞きつけ、仲間の吸血鬼兵が駆けつけて来た。

 

 

「この!」

 

「ガブリエラ様、我らにお任せください! 皆!」

 

『『『応ッ!!』』』

 

ズダダダダダダダッ

 

彼女の後ろから襲い来る吸血鬼兵の間に入ったのは、ガブリエラの部下であった。

彼らはガブリエラを守ろうと扇型の防御陣形をとると一斉射を行う。ズダダダと薬莢内で弾けた弾丸は、銃口から真っすぐに吸血鬼兵の身体を貫いた。

 

ガシャーンッ

 

「ヤァ―――!」

 

「わかってんだよ、糞ッタレ!!」ズダン!

 

「ガぁべらッ!!?」

 

窓を蹴破ってきた吸血鬼兵の頭を粉砕するとそのまま銃口を床へと向け、ズドンと撃ち抜く。

 

 

「ぐぎゃ!?」

 

床に撃ちつけられた弾丸は床を突き抜け、下の階でロケット弾を構えた吸血鬼兵の頭を破裂させた。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

「お見事です、ガブリエラ様!」

 

部下からの賞賛に返さず、ガブリエラは息を切らして辺りを見回した。

辺りは先も言ったようにヴァレンティーノファミリー所属構成員の屍の山が築かれている。そんな場景に彼女はどう思ったのか、敬礼をした。

 

 

「お前達・・・任務ご苦労・・・!」

 

「ガブリエラ様・・・!」

 

涙は彼女の瞳からは出なかったが、仲間を思いやる眼差しは部下達からは見て取れた。

 

 

「・・・行くぞ、お前達。先に逝った部下達の為にもやってやろう。アイツら全員ここから一歩も出してはやらない。全員、やっつけてやる!」

 

『『『・・・応ッ!』』』

 

静かにしかして、確実に闘志を燃やして彼らは駆ける。圧倒的不利なこの状況で、未だ勝利を信じて駆けて行く。

 

 

 

―――――――

 

 

 

オフェンスが屋敷内の吸血鬼兵を駆逐している頃。バリケードが敷かれた研究室前では吸血鬼兵共が集結していた。

部屋の前に人気がないのを確認すると一人の吸血鬼兵が腰にぶら下げていた手榴弾を扉の前に放り投げた。

 

ドゴォオッン!

 

『『『グわあぁあッ!!?』』』

 

手榴弾の爆発によって、まだ完全な状態ではないバリケードを一部破壊した。

 

 

「糞ッ、やられたであろー! ノア、負傷者の手当てを頼むであろー!」

 

「任せといてぇな!」

 

爆発の衝撃で飛び散った木片で怪我をした者をすぐさま奥へと退避させる。

 

 

「そっちの椅子を持ってこい! 早くッ!」

 

「塞げ、早く! バリケードだ、早くしろ!!」

 

「ハザァァァド!」

 

怪我が軽傷、または無傷な者は後ろに控えていたカイゴハザードと一緒にバリケードの修繕に取り掛かった。

 

 

 

「畜生ッ、畜生!」

 

構成員の一人が爆発で空いたバリケードの穴からカラシニコフを撃ちだした。

 

 

「馬鹿ッ! 身体を出さないでください!!」

 

ロレンツォが叫び、構成員の体を引っ張ろうとするが、時すでに遅し。

 

ズダダダンッ!

 

「ガはッ!?」

 

待ってましたとばかりに吸血鬼兵が構成員の頭を撃ち抜いた。

 

 

「おのれぇ・・・!」ヅダダダッ ダダダッ!

 

ロレンツォは撃たれた構成員の骸をどかすと頭を下げた状態でブラックライフルを撃ち、応戦する。

 

 

「もう・・・・・もうダメだぁ・・・!」

 

「もう嫌だもう嫌だ・・・もう嫌だッ!」

 

「死にたくない!!」

 

その時、地面に伏せていた構成員が悲痛な胸の内を叫んだ。またしても嫌なムードが場に流れていく。

 

 

「阿保言うな、ボケカス共!」

 

「ノア嬢・・・」

 

イヤなムードが漂う中、ノアが声を上げた。

 

 

「ウチらは勝つんや、勝てねばならんのや! 泣き言なんて聞き飽きたわ! それにウチだって死にとおないわ、ボケェッ! 生きるんや。勝って、必ず生きるんや!!」

 

「ノアの言う通りであろー! ゴチャゴチャ言わんと残弾を再分配するであろー!」

 

「クッソぉお! 絶対に生き残ってやるぞお!!」

 

「ノア嬢の言う通りだ。生きて勝つ、勝ってやるぞぉお!!」

 

下がったムードを持ち直し、彼らは銃に装填された銃弾を改めて分配する。

 

 

「首領にロレンツォさん、コイツを。コイツで看板です、硫化銀弾が尽きました」

 

「っち。何万発もあったのに・・・これで最後か」

 

「もっと作るか、警察に提供しなければ良かったですね、首領?」

 

「言うとる場合かいな。無駄口たてんと仕事や仕事!」

 

生き残った者すべてに弾丸がいきわたると防御陣形を整え、応戦を開始した。

 

ズダダンッ ダダンッ

 

響き渡る発砲音、起ち込める火薬のニオイ、飛び交う銃弾、そして聞こえてくるは苦しい呻き声。

 

 

「首領、思い出しますね」

 

「なんだロレンツォ?」

 

突然、ロレンツォがドンに語り掛けて来る。

 

 

「シチリアの空港、第2ターミナル。そこで敵対マフィアの襲撃にあった時もこんな感じでした」

 

「ああ、そんな事もあったであろー」

 

「あの時は偶然の爆発で逃げれましたが・・・今回は逃げ場がありません。ホントどうしましょうか?」

 

疑問文で語り掛けられた彼の言葉にドンはニヤリと笑って答えた。

 

 

「シャシャシャ、お主ほどの猛者でも苦しいか、ロレンツォ?」

 

「いいえ、ちっとも。首領が御側にいますし、なによりも・・・・・ね?」

 

「そうであろー、アヤツは絶対に来る。必ずやって来るであろー! そういうヤツであろー!!」

 

「ですね!」

 

ロレンツォもドンの言葉に満足して、カラリと笑う。

 

ヒュ―――――ン

 

そんな時だ。銃撃と共になんとも間の抜けた音がドンの二人の耳に入った。

 

 

「ッ!?」

 

「マズい! 皆、バリケードから離れるであろー!!!」

 

ズドゴォォオ―――ッンッッ!!

 

ドンの言い放った言葉と共にバリケードが吹き飛ぶ。手榴弾とは比較できない程の威力の爆発が彼らを飲み込んだ。

 

 

「ゲッホ、ゲッホ!」

 

「ケホ、ケホ! 皆、無事かいな?!」

 

部屋は土煙に覆われ、爆発の衝撃で怪我人が溢れた。その中で、軽い瓦礫に埋もれたドンが身を起こす。

 

 

「糞・・・連中はまだ、あんな物を! ロレンツォ、被害報告であろー!・・・・・ロレンツォ?」

 

ドンは見当たらないロレンツォを探して、振り向いた。

 

 

「ッ!? ロレンツォ!!」

 

「う、うう・・・!」

 

目線の先には腹部に木片やガラス片が突き刺さり、左腕が焼け爛れたロレンツォが苦しそうに息をしていたのだ。

 

 

「ロレンツォ!」

 

「ロレ!」

 

ドンはすぐさま彼に駆け寄った。他にもカイゴハザード達の防護壁で無事だったノアも駆け寄る。

 

 

「ど・・・首領・・・ご無事で・・・なによりです・・・!」

 

「うつけッ! お主はボロボロであろー!」

 

「騒ぐな、ドン! ロレ、立てるか? 見立て通りだと命に関わるような怪我やないけど・・・戦うには、もう無理やで!」

 

「し、しかし・・・!」

 

「喧しい! ここは医者の意見に耳を貸さんか! カイゴハザード!」

 

ノアは爆発で生き残った内のカイゴハザード2体を呼びつける。

 

 

「「ハザァァド」」

 

「ロレンツォを奥の方に連れて行って、他のカイゴハザードも重傷者を奥に! 急げッ!」

 

『『『ハザァァァド!!』』』

 

カイゴハザード達はすぐさま行動を開始した。

吸血鬼にも負けない素早い反応と動きで爆発に巻き込まれた構成員を奥へと運んで行った。

 

 

 

 

 

「命中です。突入しますか?」

 

バリケードから離れた後方にヤツらはいた。

貴重なロケット弾を発射した吸血鬼兵がすぐそばにいるゾーリンに指示を仰ぐ。

 

 

「いや、まだだ。もう一発ぶち込め!」

 

「対戦車ロケットは、あと1本しかありません。虎の子ですよ?」

 

「構わん、やれ。吹き飛ばしてやれ、哀れな連中を木端微塵にしろッ!」

 

「了解ッ」

 

命令を受けた吸血鬼兵は最後の虎の子である一発を装填した。

吸血鬼兵は構える。満身創痍のヴァレンティーノ一味に向かって、本当の止めの一発を構える。

ゾーリンは喜びで笑いを堪えれずにいた。命令違反をしてまでも実行した殲滅作戦がこのたった一発で終わるのだから。喜ばずにはいられなかった。

 

 

「やれ!」

 

遂に号令が下った。

吸血鬼兵はヴァレンティーノファミリーの命運を握った引き金に指をかけた・・・・・瞬間!

 

ヒュン

 

ドグシャァァアッ!

 

『『『なにィイッ!!?』』』

 

ロケットランチャーを構えた吸血鬼兵の上顎からすべてが木端微塵に吹き飛んだのだ。

 

ズダダッ ダダンッ

 

「ギえぇッ!?」

 

「グギャぷ!!?」

 

これだけでは止まらず銀の小塊が次々とゾーリンの周りにいた吸血鬼兵の身体を貫く。

これにはゾーリンもたまらずに上へとジャンプして、難を逃れる。対応に遅れた吸血鬼兵達はその間にも臓器や脳を破壊されていった。

 

 

「ッ・・・ダイレクトカノンサポート・・・貴様は!」

 

床に着地したゾーリンが銃弾が飛んで来た方向を見るとそこには、2丁の重々しいライフルを構えた人影とそれを取り囲む多数の人影がいるではないか。

 

 

「ど・・・首領・・・!」

 

「シャシャシャ、来たか・・・・・屋敷内の化物共を掃討し、挟み撃ちの体系を整えた。ここまで耐えた甲斐があるってものであろー・・・後でキスしてやるであろー、『ガブリエラ』ッ!!」

 

「んな気持ち悪いものいるか、バカッ!」

 

身体に化物共の血のミストを浴び、火薬の香水を纏ったオフェンス、ガブリエラ部隊が立っていた。

 

 

「おい・・・糞ッタレ」

 

「あぁん?」

 

彼女は睨む。

運が良いのか悪いのか、銃撃を避けてたった一人になった吸血鬼兵、ゾーリンに鋭い眼光を突き刺す。

 

 

「残ってるのは、お前だけだ。糞ッタレの出来損ないッ!」

 

「・・・フン」

 

ゾーリンはこんな状況でも不敵に笑う。味方の吸血鬼兵を全て殺されても尚、ゾーリン・ブリッツという吸血鬼はあざ笑うかのように堂々としていた。

 

 

「それが―――」

 

「ッ!? マズイ、何か来るであろー!!」

 

「―――どうしたぁあッ!!」

 

大鎌を軽々振り回すと右掌を床へと叩きつける。

床に掌が接触した瞬間、右半身に描かれた文字刺青が、真っ新な半紙にぶちまけた墨汁のように通路を、屋敷全体を侵食して、染み込んだ。

 

 

「ッチ、悪あがきを!」

 

「あ・・・あぁ!!?」

 

「う、うわぁアァァ!!」

 

「おい、どうした?!―――ッ?!!」

 

屋敷全体に刺青の侵食が完了するとガブリエラの部下達は身悶えはじめた。何が起きたのか起こったのか、わからず彼女は後ろを振り返る。

 

 

「ガブリエラ」

 

「ガブリエラガブリエラ」

 

「ガブリエラガブリエラガブリエラ」

 

「なッ―――ッ!!?」

 

振り返った先にいたのは、彼女の忌まわしき記憶であった、過去であった、トラウマであった。

 

 

「一族の恥」

       「暗殺者としては出来損ない」

   「恥さらし」

 

多くの虚像がガブリエラの周りを囲む。彼女よりも大きな体躯で迫っていく。

 

 

「幻覚だ・・・幻覚だ! これは幻覚だ!!」

 

ガブリエラは叫ぶ。

ゾーリンの能力を垣間見ている彼女には、目の前の者が幻だとわかっている。

 

 

     「お前は誰からも必要とされていない」

               「もう、やめろ。お前には無理だ」

「欠陥品のガブリエラ」

 

「やめろやめろ、やめろぉ! 私を見下すなぁアッ!!」

 

それでも幻覚は、彼女の心に沁み込んでいく。

その内、幻覚は彼女自身を飲み込んでいった。体は幼児期のそれとなり、目の前に迫る虚像はもっと大きくなる。

 

 

「やめろ・・・やめろ、やめてくれ・・・私は・・・・・わたしは・・・」

 

「アッハッハッハ! 心の内をちょいとひっかける位でこの様・・・・・脆い、脆すぎるんだよ、人間ッ!!」

 

未だ覚めぬ悪夢から銃から手を放し、泣き崩れるガブリエラにゾーリンは大鎌を振りかぶる。

 

 

「それじゃあそろそろ・・・死んでもらおうかねぇ! その首を輪切りしちゃいましょうかねぇえ!!」

 

「あぁ・・・あぁあ・・・ぁあ!!」

 

「死・・・ね!」

 

ゾーリンは振り下ろす。ガブリエラの首筋に向かって大鎌を振るう。中世の死刑執行人が罪人の首をちょん切るみたいに振るった。

 

 

 

 

 

その時ッ!

 

 

「五月蠅いですよ! 品性の欠片もない、糞ブスぅ!」

 

「ッ!?」

 

「チェエッストォォオッ!!」

 

バギィイイッ

 

刃がガブリエラの首に掛かる瞬間、ゾーリンの顔面にブラックライフルが叩きつけられた。

 

 

「・・・あ・・・あぁ!」

 

棍棒の要領でゾーリンの顔面にブラックライフルを殴りつけた人物をガブリエラは知っていた。自暴自棄になっていた時期に自らを導てくれた『麻袋』を被った師匠。

 

 

「『ロレンツォ』!」

 

「大丈夫ですか、ガブリエラ?」

 

ヴァレンティーノファミリー幹部、ロレンツォであった。

ガブリエラに向かって大鎌が振られる瞬間、ロレンツォは重傷を負った体で駆け込んだのである。

 

 

「こ、この死にぞこないがぁあ!」

 

「くぅッ!」ギィインッ

 

ゾーリンもこのままオメオメと倒れる者でもなく、ロレンツォの首目掛けて大鎌を振るう。

だが、その攻撃を彼はブラックライフルでガードし、衝撃の反動でガブリエラの首根っこを掴んで後ろに退いた。

 

 

「おまけであろーッ!」

 

ズダンッ

 

「なッ―――ッぐギぃッ!?」

 

すかさずロレンツォの背中に張り付いていたドンが、愛用の火縄銃でゾーリンの胸部を撃ち抜く。

銀製の弾ではなく鉛弾を使用している為に吸血鬼には効かないが、口径が大きいので後ろに吹っ飛ばすには丁度良い代物である。

 

 

「今や!」

 

カラン カランッ シュウゥゥウ―――

 

ノアの掛け声と共にスモークが焚かれ、一斉にカイゴハザード達が走り出す。カイゴハザードは幻覚で再起不能となったガブリエラの部下を引きずって退避する。

 

 

「他のはこっちで引き受ける! ドンにロレ、姐さん早うッ!!」

 

「首領、ロレンツォさん。早く!」

 

ノアを筆頭とした他の構成員もドン達を助けようと向かい、手を差し伸べる。

だが・・・・・!

 

 

ザクゥウッ

 

「あろッ!!?」

 

『『『なッ!!?』』』

 

「ど・・・首ォォオオオオオオオオオ領ッ!!!?」

 

ロレンツォに張り付いていたドンの背中に大鎌が突き刺さったのだ。

刺さった衝撃からか、ドンはロレンツォ諸共前のめりに倒れる。

 

 

「首領ッ、首領! しっかり、お気を確かに!!」

 

「ど、ドン・・・嘘だろ・・・?」

 

「いやや・・・いやや、イヤぁァアアアアッ!!」

 

「う、うぅ・・・あろぉ・・・・・」

 

ロレンツォは勿論の事、ガブリエラやノア、生き残った構成員全員がドンに駆け寄った。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・ご、ゴミ屑が気張りやがって!」

 

大鎌を投擲したのは紛れもないゾーリン本人であった。

ゾーリンは、ドンに火縄銃で撃たれた直後に部下の吸血鬼兵の屍で回復したのだ。

 

 

「ゴミの様な虫ケラの分際で、喧しく飛び回るからそうなるんだよぉ!」

 

「や、野郎―――ッ!」

 

「さて・・・よくもまぁ、やりもやってくれたねぇ? さて、どうしてくれようか?!」

 

構成員達はゾーリンに銃を向ける。

だが、土煙が晴れていくにつれて、ゾーリンの後ろに新たな吸血鬼兵の群れが姿を現したのだ。その数は、軽く10を超えている。

 

 

「え・・・援軍ッ!?」

 

「別動隊か?! まだこんなにも!!?」

 

「五月蠅い子虫は、平手で潰してしまいましょう!」ピキィッ

 

前に向けられたゾーリンの右掌に眼球が浮き上がる。そして、またしても呪文の羅列が屋敷全体を覆う。

 

 

「ああ! うわぁあ!」

 

「またか、またかチキショ―――ッ!」

 

幻覚術式の出現に構成員は絶叫する。

組織の頭目は攻撃で倒れ、応対できる戦闘員は敵の10分の1。戦いは終わり、これからはじまる虐殺にヴァレンティーノ一味は悲惨な場景を想像する。

 

 

『・・・おいテメェ、今・・・なんつった?』

 

「・・・あん?」

 

「え・・・?」

 

「グすっ・・・なんや?」

 

そんな時、声が聞こえた。

声はすすり泣くロレンツォ達の中心で聞こえて来る。ノイズ音混じりの怒気を含んだ若い男の声が聞こえて来た。

 

 

「あ・・・ろ!」

 

「「「首領ッ!」」」

 

「馬鹿なッ!? 確かに手応えはあったはず!」

 

声に反応したドンは意識を取り戻し、起き上がったのだ。これには仕留めたと信じていたゾーリンも驚きを隠せない。

 

 

「シャーシャシャ! 我がヴァレンティーノファミリー特製のマントのおかげで助かったであろー!!」

 

いつも身に着けているドンの黒マントは防弾防刃の優れ物にであり、回復直後で力が半減していたゾーリンの力ではマントに穴を開ける事は出来なかったのである。

 

 

「首ォォオオオ―――領ッ!!」

 

「この・・・心配させやがって!」

 

「良かったぁ! ドン、生きとった―――!」

 

「痛たた・・・皆、心配かけてすまないであろー」

 

心配していたロレンツォ達に抱きしめられドンは苦しそうであったが、嬉しそうでもあった。

 

 

「だ、だが、虫けら一匹増えたところで―――」

 

『また、言いやがったな糞野郎ッ!』

 

「こ、この声は・・・!」

 

またしても怒った男の声が聞こえて来た。その声はドンの胸元にある通信機から聞こえてくる。

声に聞き覚えがある者は口角を引きつらせ、百面相をした。

 

 

『人工の出来損ないが、よくも俺の・・・俺達の家族を傷つけやがったな・・・!』

 

「どこだどこにいるッ?!」

 

キィイ―――――――ッン

 

ゾーリンが辺りを見回すと同時に高い音が聞こえて来た。その音はまるで、刃で風を斬るような音であった。

 

 

「・・・あ、姐さん?」

 

「ああ・・・マズイ・・・!」

 

「皆、身を低くするであろー!」

 

音は段々と大きくなり、遂に音の正体が窓ガラスの向こう側へと現れた。

 

 

「なッ!?」

 

その正体とは戦闘機であった。

音の速度を超え、真っすぐに飛んでくるそれは―――

 

ドグォオオオオオオオンッ!

 

『『『えぇぇ―――ッ!!?』』』

 

ドンとゾーリンの間に割って入る様に屋敷に突っ込んだ!

 

 

「な、な・・・なんだ・・・なんだコイツは!??」

 

理解が追い付かないゾーリンを余所に戦闘機の操縦席ハッチが開く。操縦席から現れたのは、人工的に作られた異常など歯牙にもかけない常軌を逸脱した異常なオーラを纏う二人の―――――

 

 

「WRYyy・・・」

「URYYy・・・」

 

―――紅い吸血鬼であった。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





本格的に参戦。筆がノリノリ。
ウチのギャグキャラは、シリアスでも不穏なフラグは躊躇なく折ります。それはもう乾麺の様に真っ二つに。


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本物の吸血鬼




彼らは来たり、吸血鬼。

ドン「行くであろー!」

それでは、どうぞ・・・・・



 

 

 

―――『恐怖』―――

それは全ての生物が等しく持つ、ごく一般的な感情。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

 

「あ・・・あぁ・・・!?」

 

「な、なんだ・・・コイツら・・・?!」

 

たとえ、それが人を喰らう化物である吸血鬼であっても持っているモノだ。

 

吸血鬼兵は恐怖する。

屋敷に突如として突っ込んできた戦闘機の操縦ハッチから現れた二人の人物に恐れおののく。目の前に佇む年若い男女に吸血鬼兵達は心の底から恐怖した。

 

 

「あ・・・あぁ・・・!」

 

「あ、あろぉ・・・ッ!」

 

「ハハ・・・ハハハ・・・!」

 

ゴクリと後ろにいたドン達も二人の出すオーラに喉を鳴らす。生き残った構成員達は二人の登場に顔を引きつらせて笑った。

 

 

「「・・・・・」」

 

二人は辺りを見回すと男の方が床に跪く。そして床に掌を添わせ、床に付いていた血をとって舐めた。

 

 

「・・・ドン、無事かい?」

 

指に付いた血をアイスキャンディーみたいに美味しそうに味わった彼は、後ろでへばっているドンに語り掛ける。ドンは少々おっかなびっくりであるが、冷静さを取り戻して口を開く。

 

 

「・・・大丈夫であろー・・・」

 

「そうか、良かった・・・被害状況は?」

 

「わからん・・・だがわかっている事はロレンツォが重傷を負い、多くの命が奪われた。最悪の一言であろー・・・!!」

 

「そうか・・・そうか・・・!」

 

彼は静かに呟き、立ち上がる。ギロリと眼を紅く光らせ、ギチチッと牙を噛み鳴らす。

 

 

「『シェルス』・・・ここは・・・」

 

「Jaー。わかってる、わかってるわ『アキト』。存分にやってやりなさい。遠慮は無用よ、私が守るから」

 

「あぁ・・・!」

 

アキトは前にシェルスはドン達のいる後ろへと進む。

 

 

「シェルス姉ッ!」

 

「ノア、無事で良かった」

 

近づくシェルスにノアは勢いよく抱き着いた。その頬には小さな雫が流れる。

 

 

「シェルス!」

 

「シェルス、無事だったんだな」

 

「シェルス・・・」

 

「ドンにガブリエラも無事で良かった。さ、ロレや他の皆を運ぶわよ!」

 

「や・・・優しく頼みますよ・・・?」

 

彼女は皆との再会を端的に済ませ、負傷したロレンツォを抱えてバリケードが損壊した研究室へと走り込んだ。

 

 

「シェルス! どうするであろー!?」

 

この時、肩に乗ったドンがシェルスに心配そうに語り掛けて来る。

 

 

「なにが?」

 

「何がではなかろーッ! アキトの事であろ!」

 

叫ぶドンの目線の先には吸血鬼兵達に向かうアキトがいた。その姿はとてもじゃないが、元気そうではない。

顔の左側の皮膚は焼け爛れ、右頬からは歯茎が見えている。機内で血液パックを飲んだとはいえ、彼の戦いの傷は癒えてはいなかったのだ。

 

 

「大丈夫よ」

 

「あろッ?!!」

 

「ぷッ!」

 

「ククク・・・」

 

されど、シェルスは平気な顔をして答えた。

彼女の言葉にドンは唖然とし、周りにいたガブリエラやノアはたまらず噴き出した。

 

 

「アキトを・・・信じているんですね・・・」

 

「Jaー。勿論よ、それに・・・」

 

「「「「それに?」」」」

 

「今のアキト、最高にセクシーでゲファール(危険)よ?」

 

『『『OH・・・』』』

 

悪戯っぽく笑って惚気るシェルスに全員、何も言えなくなった。

 

 

 

「WRyyy・・・」

 

満身創痍、傷の回復も済んでいないアキトは一歩、また一歩と吸血鬼兵達との距離を詰める。

 

 

「・・・行こう・・・」

 

彼が歩く度に血が跡から湧き出る。

その血の一滴、1μℓまでが屋敷で討ち果てた構成員達の仲間達の血液であった。歩いた跡から噴き出た血は、彼の足から上へ上へと纏わり付いていく。

 

 

「行こう・・・行こうぜ・・・」

 

身体に纏わり付いた血は赤いジャケットスーツへと変わり、傷や焼け爛れた肌は陶磁器の様に白く透き通って完治していく。

 

 

「行こうぜ、皆・・・ッ!」

 

瞬きの次に開かれた眼はガーネットの様に深く、ルビーの様に真紅で、ルベライトの様に輝いていた。

 

 

「なんだと・・・!?」

 

「周囲の技が・・・!」

 

床から溢れた血が全て吸収されると同時に屋敷に張り巡らされていたゾーリンの術式がひっくり返したパズルのようにバラバラと崩壊していく。

 

 

「一緒に行こうぜ・・・・・アイツらを・・・アイツらをやっつけようぜッ!!

 

「(なんだ・・・なんだコレは?!)」

 

自分が敷いた術式が崩れ去る光景を目の当たりにして、ゾーリンは辺りを見回す。

 

 

「(兵士共が脅えているッ、あの吸血鬼達が! 戦場を跋扈し、砲火を疾駆した百戦錬磨の武装吸血鬼兵がッ・・・!)」

 

周りにいたのは近づいて来る目の前のアキトに釘付けとなり、額から脂汗を噴き出す部下の姿であった。

 

 

「(眼前の・・・一人の小僧に脅えている・・・・・満身創痍の一人の小僧に脅えているッ! コイツは一体・・・・・なんだッ!!?)」

 

「WRYYYyyyyyyy―――――ッ!」

 

アキトは走る。脚に並々ならぬパワーを注ぎ込んで走る。

 

 

「う、撃てッ、撃て撃て!」

 

「うおおぉぉ!!」

 

ズガガガガガガガガッ

 

吸血鬼兵はこちらに向かって来るアキトへ一斉射撃を行う。

しかし、彼は秒速900mで迫る弾丸を容易く避け、撃って来た吸血鬼兵の真上に移動した。

 

 

「うわぁああッ!」

 

「無駄ァアッ!」バメギャァッ

 

大きく振り抜いたアキトの拳は、吸血鬼兵の頬にめり込む。その殴った勢いのまま吸血鬼兵頭は砕け、首は捻じ切られて吹っ飛ぶ。

 

 

「ひッ!!?」

 

「KUAAAAA―――ッ!!」

 

ドシュバッ!!!

 

そのまま床に着地すると同時に鋭い手刀で吸血鬼兵達を切り刻み、押し潰す。

尚も吸血鬼兵共は彼に向かって銃を乱射するが、当たらずに斬壊される。

 

 

「ウげェッ!」

「グギャぶ!!」

 

「(ヤバい・・・ヤバいッ!)」

 

「いギャああッ!!」

「ギげぇぇえ!!」

 

「(なんだかよくわからんがッ、コイツはヤバい!!)」

 

前で陣形を張っていた部下が軒並み惨殺されていく現状にゾーリンは新たな大鎌を構える。

 

 

「ブぎァアッ!!」

 

「Aaa・・・嫌いだ・・・」

 

「なに・・・?!」

 

最後の吸血鬼兵の頭を引き千切った時、アキトは静かに言い放つ。言葉一つ一つに怒りを織り込んで言い放つ。

 

 

「『グール』の肉は嫌いだ、胸焼けがする。『ゾンビ』の肉は嫌いだ、胃もたれがする。だが―――――」

 

ガシャァアッ!

 

「ぶゲェエッッ!!?」

 

「―――テメぇら『ド外道』の肉は食えたもんジャあねぇッ!!!」

 

ドゴォッ

 

彼は素早く回り込むとゾーリンの頭を掴み、壁へと打ち込んだ!

ゾーリンが構えていた鎌は宙を舞い、床へと突き刺さる。

 

 

「ぐぐ・・・! こ、この糞餓鬼ィイッ!!」

 

ゴキィッ

 

「がッ!」

 

防御の姿勢も取れずに壁に打ち付けられたゾーリンは、この体勢から脱しようとアキトの顔面に拳を叩きこむ。吸血鬼特有の腕力で叩き込まれる殴打は、常人が喰らえば一発で顔面をグチャグチャにされる威力だ。

 

 

「このッ、この! 離しやがれ糞餓鬼ィッ!」

 

ゴキィ バキィッ

 

そんな殴打を何発受けようと諸共せず、彼は掴んでいる力を強める。

 

ガコリッ!

 

遂にゾーリンの殴打が鬱陶しくなったのか、その拳に喰らい付き、嚙み砕いた。

 

 

「ウギャァァアアア―――ッ!!」

 

「っぺ」

 

牙で噛み砕き、嚙み千切った拳の肉を彼は吐き出す。

 

 

「貴様の血など一滴、一片、1μℓと飲んでやるものか!! やるものかァアアッ!!!」

 

「うグググ、グえッ!!」

 

押さえ付けられる力は益々強くなっていき、壁が陥没していく。

 

 

「ぐぐ・・・ぐアアッ!!」

 

ガシィッ

 

「ッッ!!?」

 

ゾーリンは逆転を賭け、アキトの顔面を掴んだ。そして、そのまま術式を彼の頭に流し込んでいく。術式の影響からか、彼はゾーリンの頭から手を離してしまう。

 

 

「げへへへへへッ! 奥へ、もっと奥へ!」

 

ゾーリンは術式を完全で完璧な物とするべく脳内を覗いていく。

 

 

「奥へ、もっと奥へ、もっともっと奥へ!!」

 

だが、幸か不幸かゾーリンは知らなかった。

 

 

「ッ! な、なんだ・・・誰だこれは!?」

 

この黒髪の青年が世界中のミディアン(怪物)達から一目置かれ、恐れられる本物だという事を。

 

 

「違うッ、()()()()()()()()()()()!」

 

彼の頭の中の記憶には、()()()の記憶も混ざり込んでいる。

 

 

「誰だコレは、なんだコレは!? 違う、コイツはコイツじゃないッ! 記憶が、心が混ざり合って!」

 

一人につき、一つの身体と記憶と心。これを基本とするのが人間である。

しかし、彼は違う、人工とは違う本物の吸血鬼。吸血の本質を理解している真の怪物。

 

 

「なんだ、誰なんだ! ()()()()?!!」

 

血を啜るという事は、即ち魂を我が物とする事である。その今まで我が物としてきた魂が錦糸細工の様に彼の心を形にしていたのだ。

これではゾーリンの得意にして、逆転技の術式は使えない。

 

 

「血液とは魂の通貨、意志の銀盤。血を吸う事、血を与える事とはこういう事ッ」

 

「はッ!?」

 

覗いた記憶の欠片からヒョコリ現れたのは、犬耳を生やした小柄な少年。この少年をゾーリンは知っている。

 

 

「お元気~? まだ生きてる?」

 

「『シュレディンガー』?!!」

 

吸血鬼の大隊(ヴァンパイアバタリオン)所属特務参謀准尉シュレディンガー。そんな彼もしくは彼女は、ゾーリンに笑顔を向ける。

 

 

「どうしてお前がここに!?」

 

「そんなに驚かないでよ~! 『僕は何処にでもいるし、何所にもいない』。ゾーリン♪ 大隊長からの伝言をお伝えしま~~~す☆」

 

シュレディンガーはハニカミながら半ズボンのポケットからメモを取り出す。そのメモを見ながら陽気なテンポでシュレディンガーは話し始めた。

 

 

「え~と、何々~? 『抜け駆け、先討ちは兵の華。ああやっぱり、ならばさして命令を反し、あたら兵を失った無能な部下を処断するのも又、指揮者の華』だってさぁ~☆」

 

「ッ!」

 

「本当なら今頃、体内の発火装置でボーボー燃えカスになってる所なんだけど! 大隊長もドクトルも今、戦火拡大に夢中でお前に構ってやる時間が無いんだってさ~。そ・れ・に! その怪物は―――」

 

「おい、喧しいぞ・・・!」

 

「な・・・に・・・!?」

 

シュレディンガーの言葉に割って入ったのは―――

 

 

「さっきから人の頭ん中通して喋ってんじゃあねぇよ!」

 

―――術式をかけられているアキトであった。

 

 

「ハハッ☆ 流石は本物。人工的に作られた吸血鬼なんて、歯牙にもかけない恐ろしい怪物・・・『吸血鬼アーカード』」

 

「あ・・・アーカードだと?! この青ッちょろい餓鬼が、アーカードだって言うのか?!!」

 

ゾーリンは身を凍らせる。この男が大隊長が言っていたアーカードなら自分の能力である術式が効かないことも頷けるとゾーリンは思った。そして、恐怖した。蛇に飲まれる蛙の気持ちが理解できる程の恐怖を全身に感じた。

 

 

「うるせぇよ、シュレディンガー・・・喧しんだよ、ゾーリン・ブリッツ!」

 

ガシィイ!!

 

「うがぁあッ!!?」

 

再びゾーリンは頭を鷲掴みにされる。彼は、そのままゾーリンを無造作に空中へと投げる。

 

 

消えろッ! 俺の前から・・・俺の心からッ!!」

 

彼は両腕を大きく振り抜いた形で構え、力を込めた脚で投げたゾーリンに一気に近づき―――――

 

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!!」

 

「グぎゃギャぁぁァアアああああああアアああアアッッ!!?」

 

怒涛のラッシュを放った!

ラッシュからのフック、ラッシュからのアッパーカット。ついでのラッシュ、ラッシュッ、ラッシュッ!

 

 

「潰す、潰す、ぶっ潰す! ミンチになるまでぶっ潰す! スープになるまでぶっ潰してやらぁぁあ―――ッ!!」

 

目標の頭を砕き、心臓を破壊し、臓器をぶちまけても尚、アキトの攻撃が止むことはない。

 

 

「無駄無駄無駄無駄、無駄ァアッ!」

 

ベシャァァアッ

 

漸く攻撃が終わる頃。ゾーリン・ブリッツだった肉の塊は粉微塵のそれに成り果て、通路の壁には人の形をした血の絵が出来上がる。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・・スゥ―――ッ・・・!」

 

息を切らし、肩を震わせるとアキトは大きく息を吸い込んだ。

 

 

「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYAAAAAAAッ!!!」

 

得物を仕留めた吸血鬼の勝鬨の雄叫びが屋敷に木魂した。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





BGMはロックテイストで・・・


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紅い流星は向かう




今回は短いです。

MSは出てきません。

アキト「それでは、どうぞ・・・・・」



 

 

 

「や、やったッ!」

 

『『『オォォ―――ッ!!』』』

 

勝鬨の雄叫びを上げたアキトの後ろで、一部始終を見ていた構成員達はガッツポーズをし、彼の勝利に歓喜する。

 

 

「・・・いや、まだよ」

 

「え・・・?」

 

「ま、まだって・・・!」

 

歓喜の声が上がる中、ゾーリンの始末を終えたアキトを見ながらシェルスが静かに呟く。彼女の言葉に構成員達は動揺した。

 

 

「そうだ・・・まだであろー。コヤツらは斥候、まだ本隊はあの街にいるであろー・・・」

 

「そ、そんな・・・!」

 

「そうだ・・・まだいるんだ。あの街にヤツラが!」

 

そう。ヴァレンティーノ本部を襲撃したゾーリン・ブリッツ小隊は、本隊の一部でしかない。まだ本隊にはこの倍以上の戦力が存在し、今も街を蹂躙している。大本を叩かない限り、幾らでも襲い掛かってくるのだ。

 

 

「そうだ・・・ドンの言うように根本は、あの街にいやがる」

 

「若ッ!」

 

「若旦那!!」

 

討ち果てた仲間の血で敵を殴殺し、傷を治したアキトがゆっくりと野戦病院と化した研究室に入る。

 

 

「行くのですね・・・?」

 

「行くしかあるめぇよ、戦うしかあるまいよ。でなけりゃ、繰り返しだ」

 

「アキト・・・」

 

「ヤツらを叩いて潰す、根本まで斬り潰す・・・!」

 

鋭い眼が光っていた。紅い眼がギラついていた。仲間を、家族を傷つけられた怒りと闘争の快楽が彼の心を支配していた。

 

 

「行ってくる。構わないよな、ドン?」

 

「・・・・・うむ。ならば、ワシも連れていくであろー」

 

『『『なッ!?』』』

 

ドンの言葉に構成員達は唖然となった。

 

 

「な、なにをおっしゃっているのですか首領!!?」

 

「今、ヴァレンティーノファミリーは未曾有の大打撃を受けました! ここで首領の身になにかあったら!」

 

「それに街の状況をご覧になったでしょう?! 今、街はここよりも酷い状況で、本部を襲った化物も倍以上いるんですよ!!」

 

残存戦力の殆どを失ったヴァレンティーノ一味。そんな状況にも関わらず、この山羊は自ら戦場にヴァレンティーノファミリー最大戦力と共に乗り込むと言ったのだ。

街には化物が我が物顔で跋扈し、火の手は凄まじい勢いで拡大している。とてもじゃないが、ただの二足歩行で人語を喋る山羊には荷は重すぎる。

 

 

「それでも行くのであろー! ワシ自ら、仲間の仇をとるであろーッ!!」

 

「しかし!!」

 

「・・・首領・・・・・」

 

ドンと構成員達が言い争う中、床に寝かされているロレンツォが怪我を負った体を起こし、ドンに目線を向ける。

 

 

「ロレンツォ・・・」

 

「ロレンツォ隊長からも何か言ってください!」

 

「このままでは首領がッ!!」

 

「皆さん・・・少し、黙っていなさい

 

『『『え・・・ッ!?』』』

 

酷い怪我を負いながらもロレンツォは独特のオーラを纏う。そのオーラに当てられ、騒々しかった構成員達の口は塞がれる。

 

 

「本当に・・・行くのですか、首領?」

 

「うむ。お主もワシを止めるのか・・・ロレンツォ?」

 

二人から出される覇気と覇気。二つの覇気が互いにぶつかり、研究室という空間に重々しい空気が降り積もった。

ドンとロレンツォの間に言葉はなかった。互いの眼を見つめ合い、自らの思いをぶつける。

 

 

「フフ・・・首領、くれぐれもお気をつけて」

 

『『『なッ!?』』』

 

沈黙の後、行動を起こしたのはロレンツォであった。彼は袋を被った状態でもわかるほくそ笑みを浮かべたのだ。

 

 

「ロレンツォ隊長、何を言っているのです?!」

 

「いいのです。いいですか? 我々ヴァレンティーノファミリーの頭目は、このドン・ヴァレンティーノです。その頭目の決めた事に私は逆らいはしません」

 

『『『ッ・・・・・』』』

 

「ロレンツォ・・・」

 

ロレンツォは長年に渡り仕えて来た一味の頭目の言葉を了承した。構成員達も一味のナンバー2であるロレンツォならばと口を塞いだ。

 

 

「ですが、首領・・・これだけは守ってください」

 

「あろ?」

 

「必ず・・・必ず生きて帰ってきてください!ギュッ

 

麻袋を被っている為に表情はわからないが、ロレンツォの心情をドンは感じ取った。握られた手から感じられる、大切な人を失ってしまうかもしれないという心とその人が決めた事柄を尊重しなければならない心との葛藤を。

 

 

「大丈夫よ、ロレ」

 

ロレンツォの感情を感じ取ったのはドンだけではない。シェルスもその気持ちを汲み取った。

 

 

「ドンには私達が付いている。だからロレ・・・心配しないで」

 

「・・・わかりました・・・なら頼みましたよ・・・シェルス、アキト!」

 

「あぁ・・・任せてくれよ、ロレさん」

 

「ならば、行くであろー! ヤツらを叩き潰す為に・・・!」

 

「その前に・・・ノア、これを頼む」

 

「え・・・こ、これは!」

 

アキトがノアに渡したのは銀色の手甲である。この手甲は彼の専用IS『朧』の待機状態なのだ。

 

 

「アキト、アンタッ!」

 

「向こうで、えらく無茶な使い方しちまってな。エネルギーが切れちまったんだよ」

 

「エネルギーが切れたって・・・アンタ、どんな使い方したんや?!!」

 

朧のエネルギーは空っぽになっていた。

ニューヨークでの戦闘の後、AIの補助バッテリーを含めたすべての動力が0となったのだ。その為、朧はシャットダウン状態となった。

 

 

「でもアキト、朧がない状態でどうやって戦うつもりや?! 武装は全部、朧に収納してあるんやでッ!」

 

ノアの言う通り、アキトは丸腰である。ニューヨークでの戦いに使った刀や輻射波動機構は朧に組み込まれている為、朧が再起不能となった今、全ての武装は使えないのだ。

 

 

「構わんさ」

 

「な、なに言って!・・・・・あぁ、そうか。そうやったな」

 

それでも彼は大丈夫と言い放つ。ノアは何を言っているのだと反論しようとしたが、ある事を彼女は思い出した。

 

 

「俺の・・・俺達の武器はここにある」

 

アキトが親指で刺したのは右胸であった。その場所に何があるのかノアのみならず、ドンもロレンツォもガブリエラも、彼に関わる全ての者が知っていた。

『暁 アキト』が、何故にあのマッドジャーナリストから異端の吸血鬼と呼ばれるかの所以がそこにはあった。

 

 

「それじゃあ行くか。しっかり捕まってろよ、ドン」

 

「わかったであろー!」

 

「ガブリエラ、皆を頼むわ」

 

「任せておけ」

 

「じゃあ・・・行ってきます!」

 

タッタッタッタッタッタッタッ バサァアッ!

 

アキトとシェルスは通路を駆けて行くと破壊された窓から飛び出す。

そして、背中から翼竜の様な赤黒い翼を生やして飛び立つ。遠くから見るとそれは、紅い流星の如くである。

 

 

「頼みましたよ・・・」

 

そんな紅い流星にヴァレンティーノ一味は敬礼をする。夜が白み始めた、暁の空が待つ方向に向かって、全員が敬礼をした。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





紅い流星と言っても、赤い彗星とは関係ありません。


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斯くして両軍は相対す




槍衾の三勢力ではなく、二勢力です。

ドイツ語がありますが、お構いなく。

それでは、どうぞ・・・・・



 

 

 

ズダダダダダダダダッ

 

銃声が響く。

 

ドッゴォオ―――ッン!!

 

爆音が轟く。

 

「うギャァアアッッ!」

 

悲痛な絶叫が木魂する。

 

海辺に位置するあの煌びやかに輝いていた美しい街は跡形もなく、ゴウゴウと燃えている。炎と共に噴き出した黒煙はその体で空に浮かぶ満月を覆い隠し、地上の火を反射して赤黒く色付いている。

化物達の進撃から早数時間。火の手は彼らの思惑通りに進行していた。

 

 

「・・・ククク・・・」

 

この惨状を眼下にせせら笑う男が一人・・・・・

 

 

「ハッハッハッハッハッ・・・!」

 

男は飛行戦艦の屋上デッキから地上を眺めていた。

断末魔の劫火、怨嗟の業火が燃え上がる光景に男は心を躍らせ、身震いする。

 

 

「ハァ・・・ッ」

 

白いコートを風でたなびかせ、男は二ヤツいた口からため息を漏らす。

 

 

「これだ・・・これが見たかったッ・・・・・あァ、スゴく良い・・・!」

 

満面の笑み。どうしようもない程に男は良い笑顔を浮かべていた。

空へと伸ばした右手には、生温かい空気が触れている。

 

 

「ゾーリン死んじゃったよ~、『大隊長』~。『』みたいに」

 

笑う男『大隊長』の後ろに忽然と現れたのは、シュレディンガーである。彼、もしくは彼女はどこか朗らかにヴァレンティーノの屋敷でゾーリンが果てた事を言づけた。

 

 

「ククク・・・やっぱりな・・・馬鹿な小娘だ・・・」

 

大隊長はさも当然の様に言う。死んで当然だと言わんばかりに冷たく、単調に。

 

 

「『滅び』が始まったんだ。心が躍る・・・!」

 

彼は楽しんでいる。心の底から殺戮を、戦慄を。それが例え、部下の死であっても、それすら大隊長は楽しんでいた。

 

 

「酷い人だ、貴方は・・・・・どいつもこいつも連れまわして、一人残らず『地獄』に向かって進撃させる気だ」

 

シュレディンガーは呆れながらに言う。どうしようもない我らが頭目にシュレディンガーは呆れ果てる。口角を三日月に歪めながら呆れ果てる。

 

 

「クク・・・戦争とは『それ』だ。地獄はここだ。私は無限に奪い、無限に奪われるのだ。無限に滅ぼし、無限に滅ぼされるのだ。その為に私は野心の昼と諦観の夜を越え・・・今、『ここ』に立っている・・・・・・・・見ろッ!」

 

大隊長は眼を見開き、彼の方向を見定める。

 

 

「来るぞ・・・『滅び』が来る。焼夷と共に・・・ッ!!」

 

大隊長は感じていた。薄々だった『気配』が、直に肌を凍らせる『気配』へと変わって行っている事を『本能』で感じていた。

 

そして、ここにもその気配を感じる者が格納庫に一人・・・・・

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・

 

「感じる・・・・・感じる・・・!」

 

笑顔の絶えない兵士共の中で一人だけ・・・ギリギリと歯を食いしばり、青筋を立てる者がいた。

その者の装いは大隊の大半を占める吸血鬼兵が来ている黒の戦闘服ではなく、『白』を貴重とした『甲冑』である。他に特出すべき点があるならば、それは顔左半分を覆う『火傷』であろう。

 

 

「中尉殿・・・『ランスロット』中尉殿」

 

白銀の鎧に身を包んだ男に部下であろう、同じ白の戦闘服に身を包んだ吸血鬼兵が声をかける。

 

 

「・・・どうした?」

 

「スカー・ランスロット中尉。大隊長閣下より、『ゾーリン・ブリッツ中尉の敗死を受け、貴官の出撃準備されたし』との事です」

 

「・・・・・」

 

彼は兵士の方を向くと吸血鬼兵は手元の通達紙を読み上げた。

通達を受けるとランスロットはゆっくりと無言のまま腰をあげ、ツカツカと出撃用カタパルトへと向かって歩き出す。

 

 

「・・・Was gleicht wohl auf Erden dem Jägervergnügen~♪」

 

歩きながら彼はアカペラで歌いだす。

 

「Wem sprudelt der Becher des Lebens so reich♪」

「Beim Klange der Hörner im Grünen zu liegen♪」

「den Hirsch zu verfolgen durch Dickicht und Teich~♪」

 

歌いつられてランスロットの後ろに一人、また一人と兵士が連なっていく。懐かしむ様に歌いなれた歌を唄う。

『あの人』が好んで唄った歌を高らかに。

 

 

「「Ist fürstliche Freude, ist männlich Verlangen~♪」」

「「Erstarket die Glieder und würzet das Mahl♪」」

「「Wenn Wälder und Felsen uns hallend umfangen♪」」

 

彼らの装備は他の吸血鬼兵とは違う物だ。

全員が長物のライフルを担ぎ上げ、先端には切先鋭い銃剣が装着されている。そして、背中には半身を覆う程の大きさの長方形の盾を背負っている。

 

 

『『『Tönt freier und freud'ger der volle Pokal!♪』』』

「Jo, ho!」

『『『Tralalalala! lalalalalala・・・・・』』』

 

彼らは出撃用カタパルトに足を入れると同時に白いヘルメットを被った。黒の軍勢が占める中に色も装備も雰囲気も違う彼らの部隊の名は・・・・・

 

 

「『狩人(イェーガー)部隊』出撃、戦場に油をぶちまけるぞッ!!」

 

『『『Ja―――――――ッ!!!』』』

 

彼らは飛び出す。鯨が吹いた潮の様に勢い良く飛び出していく。

歌劇『魔弾の射手』を高らかに歌いながら・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

「あそこを見張れ、そこを見張れッ。人に仇なす化物共をここから先へ一歩も通すなッ!!」

 

『『『はい!!』』』

 

爆裂烈火走る地上では、皇家特設武装連隊を率いた『藤堂 鏡志朗』が破壊された瓦礫を用いて、吸血鬼兵の進行ルートに簡易バリケードを造設していた。

 

 

 

「藤堂隊長ッ、東部方面から連絡。『我ら、藤堂元二等陸佐の指示に従う』との事です! 他にもこちらの応答に加わる者が多数!」

 

「昔の伝手が役に立ったな・・・・・なら、普通科連隊は機動隊と共に東エリアへの敵進撃を阻止。テロリストとの近接戦闘は避けよと通達。あと、テロリストは頭か心臓を確実に破壊する事を忘れない様に!」

 

「了解ッ!」

 

他にも藤堂は昔の伝手や同期だった者等を惜しみなく使い、自衛隊や警察組織などと連携線を展開していった。

 

テロリストの掃討などISで簡単に済むなどと考えていた上層部、内閣の混乱で一時は多大な犠牲者を出すかに思えた。だが、藤堂をはじめとする退役士官達の尽力で不利だった状況は僅かばかりに好転していく。

陸自が誇る戦車や装甲車、対戦ヘリやらが次々と出動し、砲口を敵へと向ける。

 

 

『撃てェッ!!』

 

ダァッン

ドォオッン

ズダダダダダダダダッ

 

彼らは撃った。

歩兵も、戦車も、対戦ヘリも撃った。民間人()()()者へ、化物に()()()者へ、進撃する人に仇なす怪物共へと撃った。

 

チュドォオーンッ

 

「ぬおおッ!!?」

 

勿論、放たれた銃弾や砲弾は空を悠然と泳いでいた飛行戦艦にも当たる。

飛行船の甲板が爆発によって吹き飛ばされ、宙へと舞っていく。

 

 

「だ、大隊長! ヒエッ!?」

 

吹き飛ばされた装甲が屋上に上って来たドクトルの頭上を掠めた。彼は船体にへばり付きながら大隊長の元へと進んで行く。

 

 

「大隊長、中にお入りを! 特殊軽金装甲とて、長くは持ちません!」

 

ドクトルは叫ぶ。

 

 

「大隊長、大隊―――・・・ッは!!?」

 

しかし、彼は目前の大隊長に息を飲む。ポカンと口をあっ広げて息を飲んだ。

 

 

「お・・・音楽を奏でている・・・『戦場音楽』をッ!」

 

ドクトルの目の前に立つ大隊長は、小刻みにテンポを取りながら腕を振っていたのだ。その姿はまるでオーケストラを先導する指揮者であった。

 

 

「指揮を・・・しておられる! 戦争音楽をッ!」

 

彼は随分と楽しそうに腕を振る、手を振る。

銃撃に合わせて右へ、爆発に合わせて左へ、剣戟に合わせて上へと上体を傾ける。

 

 

「我々は()()だッ。音色をあげて、吠えて這いずる一個の楽器だッ! 誰も、誰もあの方を邪魔できない・・・!」

 

そんな常人には手に負えない本当の狂騒曲を指揮する大隊長の隣に飛行戦艦の下から対戦ヘリが現れ、ライトを彼へと向ける。

 

 

「敵上官と思しき人物を視認!! 飛行船上です!」

 

「何をしてやがるッ?!」

 

ヘリのパイロットはチェーンガンの安全装置を外して、照準を大隊長へと定めていく。

 

 

「狂人め、テロリストめッ! 死ねぇッ!!」

 

「大隊長ッ!!」

 

チェーンガンの銃口が向いているにも関わらず、大隊長は逃げもせずに大の字でヘリのライトを浴びる。

カラカラとパイロットが発射スイッチを押した為にチェーンガンの砲身が回り出し、銃弾が彼の分厚い皮膚にめり込むかと思われた・・・その時ッ!

 

ズザアァッン!!

 

「ッ!!?」

 

硬い装甲版に覆われたヘリが飴細工の様にバラバラに切り刻まれ、爆発した。

 

 

「良い仕事だ・・・湖の騎士(ランスロット)

 

一体目の前で何が起こったのか分からないと呆然としているドクトルを余所に、大隊長は平然と口元を緩める。

ヘリを墜としたのは、先程地上へと出撃した『白騎士』であった。

燃えるヘリの残骸がすぐ横に落ちると同時に、彼は一緒に落ちて来た『十文字の槍』を掴む。

 

 

 

「フハハハハハッ! さぁ・・・さあッ! 油を注ぐぞ、火にくべるぞ! 戦火にもっと油を注ぐぞッ!! フハッハッハッハッハッハッ!!」

 

彼らの進撃いずれも止まらず。

戦争の賛歌と惨禍を唄いながら吸血鬼兵の軍隊は進撃する。

敵を殺し、仲間を殺され、彼等は進んで行く。

 

だが・・・

 

 

 

「ってぇえ―――ッ!!」

 

ズガガガガガガガガガガガアッ!

 

「ぐぎゃッ!?」

 

「ぶゲエェッ!??」

 

そんな彼らの前に立ち塞がったのは、この国の人間であった。彼らが()()とする種族であった。

人間達は化物達に有効な山羊印の銀製武器で対抗し、遂に彼らの進行を止める事に成功した。

 

 

「GRyyy・・・」

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

斯くして両軍は相対した。

IS委員会本部での宣戦布告から数日、ニューヨークでの狼煙から数時間。

互いの主義主張もISがどうとかの理由もなくなり、人間と化物との泥沼の戦いになってしまった。

 

 

 

「止まった・・・? 止まったぞ、ヤツら!」

 

「どうする? このままだと持久戦だぞ」

 

「援軍はどうなってる?!」

 

「このまま進めるな!!」

 

「人間め!」

 

「化物めッ!」

 

銃による攻撃から互いが互いを罵り合う()()に変わり、膠着状態が始まった。

 

 

「どうします、藤堂隊長?」

 

「先走るのは危険だ。銀製弾は幾つ残ってる?」

 

「・・・もう残り少ないです。精々もって、一人20発でしょうか」

 

「もうそんなにか・・・無駄弾は使えないな・・・」

 

藤堂は焦っていた。

自衛隊や警察と連携し、敵よりも兵力は多いといっても所詮は人間。訓練された吸血鬼兵には到底敵わない。それに吸血鬼兵に有効な硫化銀弾が尽きれば、一気に形勢は傾く。それだけは防がなくてはならない。

かと言って太陽が顔出す日の出までは待てない。何故なら、それまでには吸血鬼兵が突撃でもして来るだろう。そうなれば、彼らの威圧に押されて進撃を許してしまう。

どちらにしても進撃を止めたは良いが、人間軍に打つ手はなくなってしまっていたのだ。

 

 

「(どうする? 『紅蓮の錬金術師』は突撃したまま、音信途絶。警察の最大戦力である『荻野警部』は他のエリアに廻っている。ここを破られれば、首都への進撃を許しかねない。この場において素でヤツらに対抗できるのは、武装錬金を使える私と牙狩りの術を持っている眞田兄弟だけだ)」

 

他にもISが吸血鬼兵に対抗できるのだが、男である藤堂の指示には従えないという事で女尊男卑主義者のIS操縦士達は勝手に戦線を離脱してしまっていた。

因みに離脱という言葉を使っているが、決して逃げた訳ではない。()になって離脱したのだ。文字通りの餌に。

 

 

「(どうする・・・一体どうすれば・・・!)」

 

「と、藤堂さん! 藤堂隊長ッ!」

 

悩む藤堂の元に一人の部下が飛び込んで来た。ゼハァ、ゼハァと肩で息をしながら彼の元へと駆け寄った。

 

 

「どうした朝比奈?」

 

部下に不安を悟られまいと何時もの古武士の面持ちで部下の方を向く藤堂。そんな彼に部下は短く答える『来ました』と、『鬼札(ジョーカー)が来ました』と。

藤堂の周りにいた他の隊員達は、なんだなんだと騒めき出す。

 

 

「・・・来たか・・・」

 

「ええ、来ました」

 

藤堂は再度確認し、再び部下の言葉を聞いて確信した。

 

 

「(コイツは素敵だ・・・・・全部、台無しだ)」

 

藤堂はすぐさま『彼ら』に会いに行った。まるで奈落の底の様な眼をした、人の形をした恐ろしい彼らに。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





次回:台無しの歌が唄われる。


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My name is―――――




ドン「彼の者の台無しの歌であろー」

いつ見てもあの場面は滾る。

それでは、どうぞ・・・・・



 

 

 

黒煙黒雲が覆う空の下、両軍は睨み合っていた。

 

一方は黒衣の戦装束を纏った化物の軍団。

一方は戦火に怒れる国の防人達。

 

両軍一歩も引かず、幅10mともない場所で眼光鋭く互いを射殺す視線を送り合っている。

 

ザンッッッ!

 

『『『ッ!!?』』』

 

そんな両軍の間に調度上空を通った飛行戦艦から何者かが着陸した。

硝煙臭い土煙の中から現れた『それ』は亜熱帯用の軍コートを羽織り、古臭い軍帽を深く被っていた。

 

 

「ゴクリ・・・!」

 

「た・・・『大尉』・・・ッ!!」

 

黒衣を纏った化物達は戦慄した。

目の前に現れたそれは、自分達では到底敵わないと理解できる程のオーラを纏った『本物』であったからだ。

その本物が自分達の『味方』である事に化物達はニコやかな表情を浮かべる。

 

 

「あ・・・あれは・・・!」

 

「なんだ・・・なんだアイツは!?」

 

防人達は怯えた。

自分達を睨みつける白髪赤眼で寡黙な敵に、彼等は無意識に体を強張らせた。

それが自分達の『敵』である事に防人達は歯をガタつかせる。

 

しかし・・・噂になっている当の本人は、そんな彼等の視線など眼中にもなかった。

ただ自分の見つめる視線の先から来る『彼』に、夢中であったからだ。

 

シャァアッン!

 

『『『ッ!!?』』』

 

またしても睨み合う両軍の間に何者かが現れ出でる。

軽快なステップで防人達から駆け抜けて飛び出た『それ』は黒のパンツにワイシャツを着こなし、その上に目が醒める程の紅いジャケットを羽織っていた。

 

 

「だ・・・誰?」

 

「なんだ・・・ありゃ?」

 

防人達は戸惑った。

突如として自分達の前衛から現れた黒髪紅眼で、笑みを浮かべている人物に大半の者が頭に疑問符を浮かべる。

 

 

「あ、あれは・・・!」

 

「出やがった・・・遂に出やがったッ!!」

 

だが、化物達は眼前のそれに愕然とした。

『4年前』、自分達の計画を()()()にし、多くの同胞達を無残にも()()()()()()それの正体を知っていたからだ。

 

 

コツ・・・コツ・・・コツ・・・

 

彼等は両軍の視線など気にせずに歩み寄っていく。

白髪の男は無表情のまま、黒髪の男は笑顔のままに次第に距離を詰めていく。

 

コツ・・・コツ・・・コツン!

 

そうして二人の距離幅は30cmまでに詰め寄った。

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

両者、無言のまま。目線を逸らさずに互いを見つめる。

愛おしそうに、見定めるように、狩り殺す様に、お互いを見つめた。

 

 

 

「我らは漸く相対した・・・」

 

感慨深く地上の情景を飛行戦艦の屋上ブリッジから見ながら大隊長は呟く。

 

 

「反インフィニット・ストラトス組織『レギオン』所属、吸血鬼化装甲擲弾兵戦闘団『吸血鬼の大隊(ヴァンパイア・バタリオン)』。残存総兵力572名・・・」

 

彼は口を三日月に歪め、クツクツと笑いながらこの場に集結した兵員戦力を述べていく。

 

 

「『皇家特設武装親衛隊』+『東部方面陸上自衛隊』。現総兵力2875名・・・そして、『ヴァレンティーノファミリー』。残存兵力2名と1匹・・・」

 

戦場に推参した個々と個々を大隊長は賛美する。

 

 

「斯くして役者は全員演壇へと登り、暁の惨劇(ワルプルギス)は幕を上げる・・・!」

 

これから始まるであろう侵略者と防人達との闘いを・・・・・いや・・・これから始まるであろう一方的な『虐殺』を今か今かと彼は待ちわびていた。

 

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

地上では未だ膠着状態が続いていた。

防人達を背にする『本物』と化物達を背にする『本物』は、未だに目線をぶつけている。

 

 

「・・・首領(ファーザー)よッ! 我が首領『ドン・ヴァレンティーノ』よッ!! 命令(オーダー)をッ!!!」

 

ここで薄ら笑みを浮かべていた黒髪が突然眼を大きく見開き、自らの『主』の名を呼んで命令を請う。響く声は後ろに佇む防人達の間を抜け、彼等の後ろに建っているビルの屋上へと届く。

 

 

「我が息子・・・吸血鬼アーカードよ! 命令するであろー・・・」

 

その屋上には『山羊』がいた。赤い紅い髪を持った『本物(シェルス)』の肩に乗った山羊がいた。

 

 

「我らに刃向かう化物には力を以って、朱に染めよ! 我らを襲う怪物には技を以って、緋に染めよ!」

 

 

山羊は人語を喋り、アーカード(アキト)に命令する。

 

 

「一木一草尽く我らの敵を赤色に染め上げよ! 見敵必殺(サーチ&デストロイ) 見敵必殺(サーチ&デストロイ)!!

 

我らが愛する国に攻め込んで来た化物を殲滅する為の命令を下す。

 

 

総滅せよ! 彼らを生かしてこの島から帰すな!!!

 

「了解・・・認識した・・・・・我が首領・・・」

 

下された命令に満足したアキトはクスリと笑う。その笑顔に呼応する様に戦場に一迅の風が吹いた。

 

 

『拘束術式零号』解放ッ! 帰還を果たせ! 幾千幾万となって帰還を果たせ!!

―――――――謳うであろー!!!

 

「・・・スゥウ―――――――・・・・・」

 

アキトは大きく息を吸い込んだ。冷血なる彼の瞳に眼前の化物達が映りこむ。

 

 

 

「私はヘルメスの鳥」

 

『『『ッ!!?』』』

 

短く謳った彼にその場にいた全ての者が背筋を凍らせた。視覚で、聴覚で、嗅覚で、触覚で感じた。

 

 

「私は自らの・・・羽を喰らい」

 

『『『ウオオオオオオオオオオッ!!!』』』

 

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!

 

化物達は目の前の男に『恐怖』をその身に感じ、こう思った。

殺さなくてはならない。言葉が、何かが出てきてしまう前に、あの男を殺さなくては』と。

化物の軍団はアキトに殺到する。

大尉は岩をも砕く強烈な一撃を頭に入れ、吸血鬼兵達は一斉射撃を行う。

 

 

「た・・・退避! 退避ィイッ!!」

 

『『『うわぁああああああああああああッ!!』』』

 

人間達は眼前の男に『狂気』をその身に感じ、こう思った。

逃げなくてはならない。言葉が、何かが出てきてしまう前に、あの男から逃げなくては』と。

 

 

「ここにいる全てが感じた事だ。『恐ろしい事になる』と。この怪物を倒さなければ、逃げなければ、恐ろしい事になると!!」

 

「言ってる場合ですか藤堂さんッ! 退避しますよ!!」

 

人間達が退避する中、吸血鬼兵達は恐怖の根本へ攻撃の手を緩める事はなかった。

 

 

「飼い・・・慣らされる」

 

銃撃が貫き、剣戟が突き刺し、爆撃が焼く。

されど、それは意味が無かった。燃え盛る業火を前に、水滴を掛けるような物でしか無かった。

 

 

「来るぞ・・・・・『川』が来る・・・『死の川』が!」

 

大隊長は戦々恐々としながら、嬉々と地上を眺める。

 

 

「死人が舞い・・・地獄が謳う(Hellsing)!!」

 

楽しそうに笑う彼に吊られて、周りにいたドクトルやシュレディンガーらも笑う。

 

 

「撃ち方止めぇ! 撃ち方止めぇッ!!」

 

漸く吸血鬼兵の攻撃が止まる頃には、謳っていたアキトの身体は粉微塵のそれとなっていた。

血が辺りを濡らし、肉が散り散りに飛び散っている。

 

 

「や・・・やった!」

 

吸血鬼兵は安堵を漏らす。

だが、彼等は知らなかった。その漏らした安堵が盛大なフラグを建てた事に。

 

ビシュゥウッン!

 

「へ?」

 

ズルリと一人の吸血鬼兵の頭が落ちる。

 

ザシュッキィッ!

 

「ひ、ヒギャッ!?」

 

その隣にいた吸血鬼兵は胴体が半分になった。

 

 

「な、なんだぁあ!!?」

 

「うギャァアッ!?」

 

『血』で造形された剣が、槍が、斧が、獣が彼等を襲ったのだ。このモノ達はどこから現れたのか? それは極めて簡単な事。

 

 

「WRYyy・・・」

 

人の形さえもなくなったアキトの血肉から現れたのだ。

飛び散った血肉から容量を大きく超えた血が泉の様に湧き出てくる。その『意志』を持った血は濁流の様に流れ、津波の様に吸血鬼兵共に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





人間をやめちまった者の歌が戦場に響いた。


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紅の真からの赤の軍勢




流れる水は腐らず、血流の同等。

アキト「血は水よりも濃く、血は間違えない」

では、どうぞ・・・・・



 

 

 

ゾッゾッゾッゾッゾッゾッゾッ―――!

 

「あ・・・ああぁッ!」

 

「う、うわあああ!!?」

 

溢れて来るは鮮血の川。流れて行くのは赤色の波。飲み込まれるは化物の兵。

『紅い眼』を幾つも浮かべた河は地面を這いずり、大波を打ち立てて戦場を緋に染め上げていく。

 

 

「おぉ・・・!」

 

「す・・・スゲェ・・・ッ!」

 

身の危険を察知し、後ろへと退避した防人達は感嘆の声を漏らす。

上陸から数時間程度で街を劫火にくべた化物の群れが水に溺れる蟻の様に紅い河に飲み込まれ、人間の悲痛な断末魔から一転、戦場と化した街に化物の絶叫が響く。

 

 

「お・・・おい・・・」

 

「な、なんだよ、どうした?」

 

「あ、アレ・・・!」

 

「え・・・あ、アレは・・・!?」

 

一人の防人が指差した方向を見て、その場にいた全員が息を飲み込んで身を凍らせた。

 

ベチャリ・・・グチャリ・・・

 

「A・・・AAa・・・!」

 

「Aaaaaa!」

 

『『『VAaaaaaッ!!』』』

 

指差した濁流ヘドロから現れたのはおぞましく、痛ましい姿形をした亡者の軍勢であった。

彼等は口から目から血を吹き出し、両手を上げながら這いずって流れていく。

 

 

『『『あ・・・あぁ・・・!!』』』

 

『呆然自失』、正にそんな言葉が相応しい。吸血鬼兵達も防人達も眼前の在り得ない状況に、この世のモノとは思えない恐ろしい場景に言葉を失う。

 

 

「あれが吸血鬼アーカード・・・アキトそのものであろー・・・」

 

ビルから眼下に広がって流れる血ヘドロの川を目の当たりにしながらドンは言葉を紡いでいく。

 

 

「血とは魂の通貨命の貨幣・・・命の取引の媒介物にすぎぬ。血を『吸う』という事は、命の全存在を我が物とする事であろー。アヤツから血を与えられた者ならわかるであろー? シェルス・ヴィクトリア・・・」

 

「・・・ええ」

 

ドンの言葉にシェルスは、そっと静かに答えた。

 

 

 

ズブ・・・ズブブ・・・

 

「あ、アレはッ!」

 

藤堂は驚嘆した。血のヘドロから形を現した二つの『旗』を見て、声を上げられずにはいられなかった。

ヘドロから形を現した最初の旗は布の代わりに『鍋』を掲げた軍旗であった。次に現れた旗は、甲冑を身に纏った騎兵が掲げた何処かの国旗だ。

一見、風変わりとも見れる旗と古臭い旗だ。しかし、それが何を意味しているのかを藤堂は知っている。

 

 

戦鍋旗(カザン)・・・『イェニ=チェリ軍団』! そして、『ワラキア公国軍』!!」

 

一つ目の旗は『イェニ=チェリ』。それは歴史に名を刻んだオスマン帝国が領土を拡大する過程で創設された最強軍団の名前である。そして、二つ目は現在のルーマニアに居を構えていた国の軍である。

だが、これだとどうしてもイェニ=チェリ軍団の方が知名度的に勝ってしまう。しかし、ワラキア公国軍の戦旗が出て来たという事には大きな意味がある。

 

 

「アーカード、お前は一体どれだけの命を持っている!? 一体どれ程の人間の命を吸った!? お前は一体何者なのだ!!? これでは・・・これではお前は、まるで―――」

 

何故ならば、ワラキアには故国を侵略から守るために戦った英雄がいたからだ。

その英雄の名は―――――

 

 

「―――真祖(ドラキュラ)』!!!

 

ヒヒ―――ッン!

 

藤堂の叫びは血のヘドロから次々に現れた騎馬の慟哭に掻き消えた。

 

流れる血の河から現れ出でた亡者の群れや軍団は周りにいた敵を粗方飲み込むと血が湧き出る中心の河の底へ集結していく。

 

 

「・・・・・」

ゾォオッン

 

河の底から現れたのは、漆黒の甲冑を纏った騎士。

背中に身に着けたボロボロのマントを堂々と靡かせるこの男こそ、この百鬼夜行の軍勢を束ねる者『アーカード』である。

 

バッッッン!

 

彼が両腕を振り上げ、そのまま振り下ろすとその背に幾千幾万の騎兵が姿を表す。手には剣が、槍が、斧が、弓が、棍棒が構えられている。

それらの騎馬が一斉に声を上げ、騎兵達は怨嗟の声を響かせながら敵へと向かい駆けて行った。

 

 

『『『WAAaaaaaaaッ!!』』』

 

騎兵に先導され、亡者共も勢い良く怨嗟の雄叫びを轟かせながら()()()()()。凝り固まりながら進んで行く様は、さながらジェルで構成された津波であった。

 

 

「方陣だ! 方陣を組めぇえッ!!」

 

吸血鬼兵達はすぐさま陣形を再編し、事に当たろうとする。

 

 

「なんだ! 何が・・・何が起きている!!?」

 

騎兵突撃の射線上から逃れられた防人達は目の前の状況に未だ思考が追い付いておらず、疑問を叫んだ。

そんな彼らの疑問に答える様に飛行戦艦屋上でニタニタと笑う男が叫んだ。

 

 

『死』だ! 死が起きている!!」

 

実に楽しそうに鬼気として大隊長は狂喜を表情に出す。

 

 

「お、おお・・・・・! 良いなコレ・・・欲しいッ! 素晴らしいッ!!」

 

地上を進撃する河に大隊長の隣にいたドクトルまでもが魅了され、あんぐりと呆けた口から徐々に不気味な恍惚の笑みを浮かべている。

 

 

ザッザッザッザッザッザッザッ!

 

赤色に彩られた騎兵大隊は陣形を乱さずに前へ前へと直進していく。

 

 

「撃て・・・撃ちまくれぇえ!」

 

ズダダダダダダダダダダダダッ!

 

彼等は撃ちまくる。手元の残弾数などお構いなしに撃ちまくる。虎の子だろうが何だろうが、出し惜しみ等せずに撃ちまくる。

ロケット弾で、手榴弾で、ライフルで、ピストルで撃って撃って撃って撃って撃ちまくる。

 

 

『『『WaaAAaaaAッ!!』』』

 

それでも濁流は止められはしない。

発射された弾丸は亡者を貫きはするが、止められはしない。

爆発した榴弾で騎兵を馬諸共吹き飛ばすが、止められはしない。

 

 

「う、うわぁあああああ!!」

 

「ギャァアアアアアッ!」

 

朱の河は容赦なく彼等を飲み込む。緋の亡者は欲望のままに彼等に襲い掛かる。赤の騎兵は躊躇いもなく彼等を斬り刻む。

撃てども撃てども、殺せども殺せども、河は塞き止められない。それどころか、彼等を飲み込んでいけば、飲み込んでいく程に速度は増し、範囲も広くなっていく。

そんな時だ―――

 

ザンッ

 

―――河の進行射線上に白装束の部隊が現れたのは。

 

 

「・・・」

 

部隊の隊長を任された傷顔の将校『ランスロット』は、ジッと自分達に迫り込んで来る河を眺めている。

 

 

だ、今しかない・・・!」

 

彼はギリリと歯噛みし、眉間に皺を集める。

 

 

「アーカードが拘束制御を全開放した今、只今がその時だ!」

 

こんな状況を「待ってました」とばかりに言葉を紡いで叫ぶ。

 

 

「あの河は、ヤツの持つ全ての命を全て開放して全てを攻撃に叩き込む術式だ。(からだ)から全ての兵士を出撃させた総掛かりだ。城の中に残っているのは領主・・・ただ一人ッ!

 

ランスロットの言う通り、この『零号解放』は体に納められた全ての命を外へと放出する術式。

つまり―――――

 

 

「―――ヤツは一人だ、ただ一人!! 今やただ一人の吸血鬼、ただ一個の『命』だッ!!」

 

全ての力を出し尽くしている今こそが、常軌を逸脱した怪物を倒す千載一遇のチャンスなのだ。

 

 

「全ては万事この時の為! 我ら同胞とこの地の民が犠牲となったのも全てはこの時の為ッ! さあ、死合おうぜアーカード! 『四年前』の続きだッ!!」

 

彼の言葉尻に狩人部隊は背負っていた盾を構え、剣を構える。

 

 

「往くぞ諸君! 御然らばだ諸君ッ! 何れまた、あの世で会おうッ!!」

 

『『『JA―――ッ!!!』』』

 

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"・・・

 

白き騎士達は駆けて行く。到底生きては帰れそうにない死地へと向かって、足並みを揃えて駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





彼等は走る。彼らが宿敵に、因縁の敵に向かって駆けて行く。


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黒騎士と白騎士




自分なりに書いていったら、ヒールみたいになってしまった。

ヒーローなのにヒールて・・・一文字でだいぶ違ってきますな。

では、どうぞ・・・・・



 

 

 

ヒュウゥゥウウウウウウ・・・

 

河の奥底、血の源流、血の軍勢が現れ出でた周辺は『森』に囲まれている。

幾百幾千の枝のない木が立ち並び、頭上には『奇妙な果実』がなっていた。

果実は熟れ過ぎているのか、その()から『赤い汁』を垂れ流している。木の幹を伝って流れる汁は地面に沁み込まず滞留し、赤いため池を作っていた。

 

グチャリ・・・

 

「ガブリ・・・」

 

黒い甲冑を纏った森の主は木から果実を引きずり落とし、美味そうに奇妙な果実をほうばった。

グチャリグチャリと音を発てて果肉を噛み千切り、咀嚼する。

 

 

「ゴクリ・・・・・ぷはァ・・・」

 

彼は果実の味に満足すると持っていた果実を後ろに放り投げた。

 

 

『ガウッ!』

 

放り投げられた果実に喰らい付いたのは身の丈3mはあろうかという黒い獣であった。

獣は自分の主人から与えられた果実をバリバリ、バリバリと『骨』ごと噛み砕いて飲んだ。

 

 

『グゥ~』

 

「・・・」

 

獣は腹が満たされた事に満足すると彼へと擦り寄った。彼は甘えた声で寄って来た獣の頭を撫で、頬を揉みしだく。

 

コツ・・・コツ・・・コツ・・・

 

「!」

 

不意に後ろから足音が聞こえて来る。すると彼はその方向に体を向け、跪いた。

 

コツ・・・コツン

 

足音が止むと彼の前には山羊が立っていた。

汚れを知らぬ白い体に漆黒のマントを靡かせて、跪く彼『吸血鬼アーカード』の前に山羊『ドン・ヴァレンティーノ』は立っていた。

 

「・・・・・」

「・・・・・」

 

ヒュゥウ・・・と場に風が吹きすさぶ。

両者共に無言であった。無言であるからこそ通じ合えるモノが二人の間には漂っていた。

 

 

「・・・息子よ」

 

先に口を開いたのはドンであった。

 

 

首領(ファーザー)

 

ドンの言葉に反応した彼は深く垂れていた頭を起こし、言葉を紡いだ。

 

彼の容姿は随分と様変わりしていた。

身長は大きく20cm程伸び、髪も肩まで伸びている。口元には整えられた髭も見受けられる。

 

 

「お・・・お疲れ様、『アキト』・・・いえ、『アーカード』?・・・・・どっちで呼んだらいいの?」

 

ドンの後ろにいた赤髪の吸血鬼『シェルス・ヴィクトリア』が恐る恐る彼に語り掛ける。

 

 

「・・・・・」

 

彼は身を立たせるとゆっくりと手を彼女に伸ばす。

 

 

「!?」

 

シェルスは上位である彼の動作に身構えてしまう。しかし、彼はそのまま手を彼女の腰へとまわし、手繰り寄せた。

 

 

「『アキト』・・・アキトでいい。君にはそう呼んで貰いたいんだ、愛しい吸血鬼(ドラキュリーナ)『シェルス・ヴィクトリア』・・・」

 

彼『暁 アキト』は朗らか笑んだ。

『吸血鬼アーカード』として戦場に君臨しても尚、彼は彼女に対していつもと変わらぬ優しい笑みを浮かべた。

 

 

「・・・ええ、そうするわ・・・アキト・・・」

 

シェルスは少しだけ口角を上げると彼の胸元に身を預けた。

 

 

「ふむぅ・・・ヤレヤレであろー」

 

『ワフッ』

 

二人のやり取りにすっかりドンは蚊帳の外状態となり、アキトの使い魔『ニコ』と一緒に呆れながら眺めていた。

その時ッ!

 

 

「キェエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」

 

「「ッ!?」」

 

遥か彼方から猿叫と共に『彼』は現れた。

白銀の鎧を身に纏った騎士が一目散に駆け抜けて来る。

 

 

「ッェエエエエエエエエエエッ!」

 

彼は得物の十文字槍を真っすぐ構え、一直線にアキトへと突っ込んでいく。

 

 

「ニコッ!」

 

『ガウ!!』

 

「え? きゃッ!?」

 

彼はシェルスをニコへ放り投げると腰に差していた刀を引き抜いた。

 

ギャァンッ!

 

刃が同士が擦れ、火花が散る。

刹那、火花がお互いの狂喜の笑みを一瞬照らす。

 

ズザァアッ

 

「GRUUUッ!」

 

「WRYYY・・・!」

 

互いの距離を置くと黒い騎士は笑い、白い騎士は睨んだ。

 

 

「知っている・・・知っているぞ。その『眼』を、その『傷』をッ。見事だ、武勇の誉高き叛逆の騎士(ランスロット)よッ!!」

 

ケラケラと黒い騎士は嘲笑う。目の前に現れた恐ろしくも愛おしい敵に歓喜する。

 

 

「我らはレギオン。世界に捨てられ、見放され、世界の摂理に挑む大逆の使徒。我らが使命は、我が道に立ち塞がる愚者をその肉の最後の一片までも絶滅することッ!!

 

ザッン

 

ギラギラと白い騎士『ランスロット』は睨む。目の前の怨敵に殺意を送る。

 

 

「SYYyAAAAAッ!」

 

ダァンッ ダァアン!

 

ランスロットが突っ込むと同時に背負っていた長物のライフルをぶっ放す。が、放たれた弾丸はあらぬ方向へと飛んで行く。

 

ギュインッ

 

「ッ!?」

 

ところが彼の撃った弾丸は燕の様に向きを変え、アキトの四肢へと喰らい付こうとしたのだ。

 

 

「KUAッ!」

 

ギィインッ

 

彼はそれを刀で切り払った。

しかして、大きく腕を振るった為に隙が開かれてしまう。

 

 

「AAAAAAAAッ!」

 

「アキト!!」

 

その開かれた隙目掛けてランスロットは携えた槍を弱点である心臓へと穿つ。

 

 

「・・・カカカ♪」

 

『『『!?』』』

 

だが、こんな状況でもこの男は笑う。

「コイツは素敵だ」と言わんばかりに口角を引きつらせて、敵も味方も嘲笑う。

 

 

「『空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)』ッ!!!」

 

ズギャァアン!

 

突如としてアキトの左目の眼球が裂け、その亀裂から高圧に濃縮された体液が噴出される。

 

 

「グあぁあッ!!?」

 

発射された血液の線は彼が首を横に振った事で水圧カッターの様にしなり、ランスロットの腕を槍ごと斬り落した!

 

 

「無駄ァア!!」

 

すかさずアキトは切り払いに使った刀身を反転させ、止めの一撃を振ろうとする。

 

ギギャアンッ

 

「ッ!?」

 

だが、刀身はランスロットの身体へは到達しなかった。

 

ザンッ

 

何故ならば、斬り落とした筈の腕と槍が、枝を伸ばす植物みたいに()()()のだ。

彼は再生した穂先の刃で刀を振り払い、アキトと距離をおく。

 

 

「その『槍』にして、その『身体』・・・・・カカカ・・・カハハハハハ・・・!」

 

ランスロットの得物の正体に気づいたアキトは又しても愉快に、楽しそうに笑う。

今の彼には人間味のある『暁 アキト』としての人格はもうなく、残忍で狂気染みた『吸血鬼アーカード』としての人格が心身を支配していた。

 

 

「何という男だ・・・あんなヤツらの巣窟にいながら、貴様は『』じゃあないか。カハハハ・・・良いぞ良いぞ、我が御敵よ。その槍を、『武装錬金』を、この心臓に突き立ててみせろ! あの日の様に! 『四年前』の様に!! この『私』の夢の狭間を終わらせてみせろ!!!」

 

久方ぶりの強敵に出会えた事をアキトは狂喜する。

『敬意』を持つに値する強者に、自らを『殺す』に値する勇者に喜びを隠せないでいた。

 

 

「語るに及ばず!!」

 

ダッ!!

 

湖の騎士は猛然と目の前の化物に向かって駆けて行く。

残弾尽きた『マスケット銃』の先に銀の銃剣を装着し、二槍流で突き通す。

 

ギィンッ

ガキャァアン!

 

十文字槍と銃剣の矛先をアキトは一本の刀だけで応戦する。

宙を舞い、地面に這いずり。踊る様に、お道化る様に彼からの攻撃を避け、必殺の一撃を刻む。

 

 

「SIYYYYYYYYYYYYッ!!」

「WRYYYYYYYYYYYYッ!!」

 

二人の声が重なり、互いの殺意を命一杯ぶつける。

刃の交わりで、何度も何度も火花が散る。仕舞いには、マスケットが叩きつけられる衝撃でバラバラに分解されてしまう。

 

ガキィインッ

 

「「ウォオオオオオオオオ!!!」」

 

それでも互いに決着の一撃を叩きつける事は叶わず、斬り合いは長引くばかりであった。

 

シャァアン

 

「なッ!!?」

 

しかし、ここでアキトが後ろへ飛んだ。

飛び移った先には、いつの間にやらあの亡者の軍勢がはびこっていたのであった。

 

 

「お前の持っているその槍・・・シリアルナンバー12、十文字槍の武装錬金『激戦』。能力は使用者並びに激戦自体の超高速修復。『不死身』を体現した武装錬金だと聞いた事がある。見せてみろよ、その不死身さを!」

 

軍勢が担ぐ御輿に佇み、彼は興味深そうにランスロットを挑発する。

 

 

「どうする? 化物はここにいるぞ? 掛かって来いよ!」

 

『『『VAAAAAAAAAAAA!!』』』

 

腕を上げて振り下ろすと前にいる亡者の騎兵が槍を掲げて、ランスロットへと突っ込んでいき、グサリと腹や胸を貫いた。

 

 

「私を倒すんだろう? 勝機はいくらだ? 千に一つか万に一つか、億か兆かそれとも京か?」

 

ザシュゥウンッ!

 

「それがたとえ那由他の彼方でも、俺には十分過ぎるッ!!」

 

ランスロットは『激戦』で体にに纏わりついた騎兵を一掃すると血だらけの穴だらけになった鎧を脱ぎ捨てて、赤い河へと飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





主人公がえげつない。


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白は駆け、紅は待ち構う




現在のアキトは彼であって、彼ではありません。

ドン「どういう事であろー?」

では、どうぞ・・・・・



 

 

 

『ウルフッド小隊、連絡途絶!』

 

『ベルディウェール隊も連絡応じません!!』

 

『空中巡洋艦より打電ッ、ウィルゴー小隊の連絡途絶! 誰も応答しませんッ!!』

 

大画面のモニターが映し出された飛行戦艦『デクス・ウクス・マキーネ』の一室。

ここでは時代遅れの無線機から各部隊、各員から引っ切り無しに通信が入っていた。

そんな騒めかしい空間の中で白い軍服を纏った眼鏡の男がモニターから発する状況をレンズに映しだし、画面に食い付いて見ている。

 

『ウゲェエエエエエッ!!』

 

『ギャァアアアア!!』

 

『拘束術式零号』の解放により、一気に形勢は逆転してしまった。

通信機からは亡者の怨嗟と共に吸血鬼兵の阿鼻叫喚がスピーカーを叩き、モニターにはゴミの様に血の河に飲み込まれる姿が映し出されている。

 

それでも尚―――

 

パチ・・・パチ・・・パチ・・・

 

「街は滅び・・・IS部隊は滅び、吸血鬼の大隊(ヴァンパイア・バタリオン)も滅びつつある・・・・・()調()だ」

 

この男は、大隊長は『笑っていた』。

愉快に・・・素敵だからと言わんばかりに拍手をし、嬉しそうにニタニタと薄ら笑みを浮かべて笑っていた。

 

 

「そしてアーカードはそこにいる。そして私はここにいる。全ては順調、全く以って順調だ

 

もし・・・ごく普遍的な知識と論理観を持っている真っ当な一般人がここにいると仮定したならば、大隊長を一目見た者はこう言うであろう―――

 

 

「さくりさくりと死んでいく。だが、涙一粒舌打ち一ツ誰一人こぼさない。何故なら彼らの心にあるのは歓喜だからだ。一つの歓喜を共通意思として無数の命が一つの命のようにうごめきのた内、血を流しながら血を求め、増殖と総滅をくりかえしながら無限に戦い続ける・・・・・夢のようじゃないか・・・!」

 

―――――『狂っている』と。

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

「ウヲオオオオオオオオオオオ!!」

 

ザシャァアンッ

 

阿鼻叫喚。怨嗟の渦と化した地上において、白銀の衣を纏った戦士が血の河に逆らって進んでいた。

 

 

「VAAAAA!」

 

「VRyyyyyyyッ!」

 

「邪魔だァアア!!」

 

ガシュゥウ!

 

襲い掛かる亡者の波を携えた得物で薙ぎ払い、ただひたすらに前へと駆けて行く。

 

肉が切られても前へ。

骨が砕けようと前へ。

腕が斬られようと前へ。

脚が折れようと前へ。

眼が刺されようと前へ。

耳が千切れようと前へ。

鼻が潰されようと前へ。

 

斬られ、砕かれ、折られ、刺され、潰された身体を武装錬金の能力で『修復』し、前へ前へと進む。

 

 

「デァアアアアアアアッ!!」

 

彼の眼に亡者の兵は映ってはいなかった。

ただ眼前の目の前に薄ら笑みを浮かべて立つ、たった一人の化物の心臓に刃を突き刺す為にランスロットは駆け抜けていく。

 

 

「ガはッ!」

 

されど超高速で傷を修復するには、当然のことながら自らの生体エネルギーを使用する為に疲労が蓄積される。

 

 

「ハァ・・・! ハァ・・・!」

 

蓄積された疲労は修復の妨げとなり、人体の修復スピードは徐々に衰えていった。

 

「AAAAAAAA!」

 

ザクリッ

 

「ぐアッ!!?」

 

その間にも亡者の兵はランスロットに剣を斬り、槍で突き刺す。

 

 

「ぐ・・・グ・・・ウヲオオオオオオオッ!!」

 

ザンッ!

 

『『『VAAAAAAAAAッ!!?』』』

 

それでも彼は倒れはしなかった。

斬りつけられた剣を薙ぎ払い、突き刺さった槍は兵ごと叩き折ると呼吸を整えはじめる。

 

 

「どうした誉高き騎士よ、調子はどうだ? 化物はここだぞ?」

 

「ゼェ・・・! ハァ・・・!」

 

不意に臣下が担ぐ御輿で見物を決め込んでいた化物(アキト)がランスロットに語り掛けて来た。彼はそれを乱れた息で答える。

 

 

「満身創痍・・・だな。腕が千切れかけているぞ? どうするんだ?・・・・・おまえは犬か? それとも人間か?」

 

彼は楽しそうに笑う。嬉しそうに眺める。

激戦の修復力が衰え、全身から血を吹き出し、片腕の筋肉が露わになっても此方に殺気を送る騎士に羨望の眼差しを送る。

 

 

「それがどうした吸血鬼・・・?!」

 

ランスロットは肉が露わになった片腕を僅かばかりに修復すると体勢を整える。

 

 

「まだ、腕が千切れかけただけじゃあないか! 能書き垂れてねぇで来いよ、かかって来い!早く(ハリー)早く(ハリィイイ)!!

 

「ッ・・・!」

 

彼の言葉にアキトは感嘆する。

ボロボロになりながらも向かって来るその姿に驚き、喜々とした。

 

 

素敵だ・・・やはり、人間は素晴らしい」

 

刹那の静寂。

一秒にも満たない静寂が場に起きる。

 

 

「SIYYYYYAAAAAッ!!」

 

その静寂をぶち破るかのようにランスロットは、槍を構えて走る。

騎士は狂戦士となり得ながらも、新たな傷を負おうとも、『宿敵』に向かって走り続ける。

 

 

『『『VAAAAAAAAAAAA!!』』』

 

「キィイイイヤァアアアアアッ!」

 

凝り固まった亡者の津波を斬り刻み、突き刺し、押し進んで行く。100m、200m、300mと徐々に徐々に距離を詰める。

 

 

「『爆導鎖』ッ!!」

 

ボグォオッン!

 

懐から鎖に繋がれた破裂榴弾を投げつけ、点火。

一直線にばら撒かれた榴弾が轟音を響かせながら爆発すると遠目にそびえ佇む黒騎士の姿が見えた。

 

 

「オオオオオ!! 前へ! 前へ!! 前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ、前前前前前ッ!!!」

 

爆発によって開いた道に亡者が雪崩れ込む。それでもランスロットは止まらない。

鮮血に肌を濡らし、流血に衣を濡らし、白が赤へと変わろうとも騎士は尚も歩みを止めない。

 

 

「何という男だ・・・」

 

アキトは此方に向かって来る彼を見ながら『何時かの日』を思い出した。

 

 

「まるで・・・まるであの『男達』のようだ」

 

彼の記憶の奥底。

残忍で冷血で気まぐれな闇の者(ミディアン)だった頃に出会った最初の『強者』。

 

 

「来いよ! さぁ来いよ、叛逆の騎士(ランスロット)! 私を完全に『絶って』みせろ!! あの男達のように、あの(ヤギ)のように! 見事・・・私の心の臓腑に刃を突き立ててみせろ!!」

 

又してもアキトの容姿が変化していく。

黒衣の鎧は零号解放前のジャケット姿へと変わり、整えられた髭は綺麗さっぱりなくなった。

ただ・・・解放前と違っていたのは、その表情が狂喜に塗りつぶされた吸血鬼(ヴァンパイア)の顔をしている点である。

 

 

「ヲオオオオオオオッ!!」

 

「VAAAAAA!!」

 

開かれた道を猛進するランスロットの前に巨漢の亡者が行く手を塞いだ。

 

 

「どけぇえ! 邪魔ァアするなァアアアアアッ!!」

 

ズブシッ!!

 

彼は激戦の矛先を亡者の口の中へと刺した。

 

ズシュウッ

 

「ッガぁあ!!?」

 

その瞬間、亡者は口に刺さった刃を歯で固定し、ランスロットの身体に銛を突き刺したのだ。

銛には鋭利な返しが付いており、彼を離すまいとする。

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ

 

これを好機とばかりにその首を挙げようと槍を携えた騎馬の群れが向かって来た。

 

 

「む・・・ムゥウ・・・!」

 

『ここまでなのか』とランスロットは見開いていた眼を細め、迫りくる騎馬兵を見据える。

前衛の騎兵達は隊列を乱さずに血に濡れた矛先をランスロットへ集中させていく。

―――――――刹那!

 

 

ズガガガガガガガガガガガガガガッ!

 

「ッ!?」

 

彼の後ろから耳をつんざく電動ノコギリの音が響いた。

響いたと同時に燕の様に曲がりくねる不可解な動きをする弾頭が、ランスロットへ槍を向けた騎兵と銛を突き刺す亡者の頭を吹き飛ばす。

 

 

「貴様らぁ・・・! 来やがったか、この・・・この馬鹿野郎共! 大馬鹿野郎共めッ!!

 

叫び声を上げながらランスロットが振り向くとそこには、彼と同じ白衣の戦装束に身を包んだ騎士甲冑の部隊がいた。彼と道を共にすると誓った極悪中隊がそそり立っていた。

 

 

「抜け駆けとは頂けぬなッ、ランスロット中尉!」

 

「吸血鬼兵共の撤退助力で、あの大隊長への恩義は十分に果たした! 今こそ、貴方の御側に仕えるッ!!」

 

「さぁこれより、我ら狂人の手管を御覧にいれましょうッ!」

 

騎士達は大手をふってランスロットへ並び立つ。彼らが同胞にして、狩人(イェーガー)部隊の筆頭『スカー・ランスロット』へ並び立つ。

 

 

「馬鹿野郎供がッ! 誰も彼も、どいつもこいつも俺について来やがるか! ふざけやがって、どうしようもないイカれ共めッ! これでは当分地獄(リンボ)満杯になっちまって、代わりに本営の守りはガラガラだッ!!」

 

彼は横へ後へ立つ同胞に罵詈雑言の悪態を言い放つ。

 

 

「良いだろう、ついて来い。これより地獄へ墓穴(まっしぐら)に突撃する! いつものようについて来い!!

 

だが、ランスロットはすぐに彼等と同じ方向を見た。嘲笑うハロウィンカボチャの様に顔を歪ませる怪物に己が刃を向け直した。

そして、彼等の口上を命一杯、戦場に言い放つ。

 

 

「我らは己らに問う、汝ら何ぞや?!」

 

『『『我らは軍団(レギオン)軍団(レギオン)兵士(ソルジャー)なり!!』』』

 

「ならばレギオンよッ、汝らに問う。汝らの右手に持つ物は何ぞや?!」

 

『『『剣と爆弾なり!!』』』

 

「ならばレギオンよッ、汝らに問う。汝らの左手に持つ物は何ぞや?!」

 

『『『棍棒と銃なり!!』』』

 

「なァアらばレギオンよ、汝らは何ぞや?!!」

 

『『『我ら兵士にして、兵士にあらず。戦士にして、戦士にあらず。忠臣にして、忠臣にあらず。逆臣にして、逆臣にあらず! 我ら一なり、一にして全なり。ただ伏して世界を見守り、ただ伏して世界に刃向かうものなり!!』』』

 

彼等は叫ぶ。轟かせる。

 

 

『『『闇夜で剣を振い、戦場に発破をかける者なり。我ら刺客なり、刺客(レギオン)の兵士なり! 時至らば、我ら棍棒で砕き、銃を撃ち放つなり!!』』』

 

自らが何者であって、何者でないのかを響かせる。

 

 

『『『さらば我等徒党を組んで、地獄へと下り。隊伍を組みて、布陣を布き。幾千幾万の闇の者(ミディアン)と合戦所望するなり、この身滅ぶ日までッ!!』』』

 

バ―――――――ッン

 

何とも言い例えのないオーラが彼等を包み、満身創痍だったランスロットの身体に力が漲っていく。

 

 

「アキトッ!!」

 

これには二人の戦いを手を出さずに見守っていたシェルスも堪えを聞かず、ドンを背中に乗っけたままアキトの前へと急ぎ立つ。

彼女は知っていた。手負いの戦士がどれだけ強いのかを知っていた。

 

 

「・・・良い」

 

「え・・・ッ?」

 

「とても良い・・・素晴らしい。素晴らしい戦士達だ」

 

だが、彼は前に立つシェルスなど眼中に入ってはいなかった。ただ、ただ、目の前に立並ぶ騎士の軍団に惚けていた。

 

 

「あ・・・・・」

 

シェルスは彼のその眼を見て、一瞬で理解した。油絵具の赤よりも『紅く』、どんな宝石よりも輝く『朱い眼』を覗き込んで理解した。

『闘い』たがっている。『殺したい』と願っている。『殺されたい』と望んでいる。

彼から血を与えられ、血を吸われている彼女だからこそ理解できる、感じる事のできる『吸血鬼の心』。

 

 

「そう・・・そうなのね・・・」

 

「シェルス・・・?」

 

『止める』事ができないと、『並び立つ』事ができないと理解してしまった彼女は寂しそうに呟くと後ろへ退いた。

 

 

「行きましょう、ドン。ここは彼の・・・『彼等』の戦場だわ」

 

「・・・うむ、わかったであろー。ならば、往くであろー!」

 

バッシュンッ

 

シェルスは背中に翼を広げて、飛び立った。今、自分にしか出来ない事を行う為に彼女はドンを乗せて、飛び立った。その飛んで行く様は、朱い矢羽の様に美しい。

 

 

「・・・・・追わないのか?」

 

飛び立った矢羽を目で確認した化物は、構える騎士に問いかける。

 

 

「構いはしない」

 

「あの娘はいい子だ。そして、恐ろしいぞ?」

 

「貴様が言うのならばそうなのだろう。されど悲しくて、可哀そうな娘だ。貴様のような怪物に見初められた可哀そうな子だ・・・・・『あの人』のように・・・」

 

騎士が答えると夏だというのに凍えた。

吹きすさぶ冬の北風が戦場に舞い降りるかのように凍えた。

 

 

「もうすぐ陽が昇る・・・・・お前の命も還る時だッ!!」

 

「我が兵よ、我が愛する英傑達よ、征け・・・我に相対する者は一人で良いッ!!」

 

ドウッ

 

凍える風から一転・・・灼熱の熱波を纏い、赤の軍勢と白の軍団が駆けだした。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





次回は、着目シーンをずらしていきたいと思います。


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イカれた彼等は狂っている




私には、頭のネジが吹っ飛んでるテンプレがこの人です。

ドン「あまりにも極端ではなかろーか?」

では、どうぞ・・・・・



 

 

 

『撃てェエエ―――ッ!!』

 

ズドォオンンッ!

 

戦局を大きく傾かせる事となった『零号解放』から一時間。

元陸上自衛隊二等陸佐、現皇家特設親衛隊隊長『藤堂 鏡志朗』の指示の下。東部方面戦車連隊が巻き返しの砲撃を放つ。

 

ボグォオンッ

 

「やった! 当たったぞ!」

 

「ざまぁみやがれ、テロリスト共ッ!」

 

ISの配備によって、陽の目を見る事が少なくなった戦車・戦闘ヘリ部隊の士官達は訓練の倍以上に張り切っている。

 

 

「高射の方から支援攻撃が来る。普通科の方に連絡! あの訳わからん援軍にも伝えろ!」

 

「鎧を着た季節外れの仮装集団は味方だッ。当てるんじゃあないぞ!!」

 

「なんか騎馬が負傷者運んで来たんだが、治療しても構いませんねッ!」

 

彼等は零号解放によって出撃した騎兵や亡者共と連携を張り、吸血鬼兵への包囲網を完成させた。

 

 

『目標。敵、飛行巡洋艦。前方距離2000m、誤差修正・・・ってェエ!!』

 

ドゴォオッン!

 

雷管が叩かれ、重厚な砲身から放たれた砲弾は狙い通りに飛行艦のどてっぱらにぶち込まれる。

 

 

『空中巡洋艦3番艦『アルテラルタイセイ・ゲバルト』着底ッ! 往信途絶ッ、原状維持できません!!』

 

ボゴォオオンッ

 

雨霰と砲弾とミサイルの猛襲に晒された飛行艦は、次々と地に伏せて行く。

一斉砲火を浴び、空中分解するもの。形を保ったまま、着底と同時に爆発するものとあれ程、空を悠然と泳いでいた飛行艦隊は見るも無残と成り果てていった。

 

 

「2番艦『アルフレッド・ローゼンベルク』、炎上中!」

 

「上陸部隊との連絡取れませんッ!」

 

「第7小隊、往信途絶!」

 

「全滅したのでは!?」

 

「全滅だと!!?」

 

大隊の本営艦『デクス・ウクス・マキーネ』には次々と撃墜、通信途絶の連絡が雪崩れ込む。

あれ程までに猛撃を続けていた軍団が、たった一人の吸血鬼のせいで崩れ去った。その突然すぎる崩壊によって、動揺の色が全体に広がっていたのであった。

 

 

「出撃した狩人(イェーガー)部隊との連絡も途絶!」

 

「どうなっている?! 下では一体何が起こっているんだッ?!!」

 

「だ、大隊長!」

 

「大隊長殿、ご指示を!!」

 

追い詰められる焦燥感から烏合の衆へとなり始めた兵士達は、指揮官席を陣取る頭目に指揮を仰いだ。

 

 

「ガブリ・・・ムグムグ・・・」

 

だがそこには、焦る彼等などお構いなしにホットドックを頬張る大隊長が悠長に構えていたのであった。

 

 

「大隊長殿!!」

 

「ムグムグ・・・ゴクッ、ぷはぁー・・・・・うるさいなぁ、静かにしろ」

 

『『『ッ!?』』』

 

圧倒的な温度差を兵士達はすぐさま感じ取った。

突然の大打撃に慌て、焦りを募らせる兵士達の一方。このデブ眼鏡の男は額に冷や汗一粒もかかず、クラシック音楽でも聞いているかのようにリラックスしていたのだ。

 

 

「出し物の佳境くらい静かに鑑賞したまえよ。たかが()()()()()()()()()()()()()()で、初めての生娘のように泣き出すなんて・・・」

 

『『『あ・・・あぁ・・・』』』

 

呆ける兵士達をよそに大隊長は立ち上がり、指揮台を降りる。

 

 

「艦長」

 

「はッ!!」

 

「全艦の残存全乗員に火器と弾薬を分配しろ、負傷兵で立てる者全てだ。立てない者には手榴弾を配れ」

 

「なッ!!?」

 

彼の指示に艦長は息を飲む。この男は、部下共々『特攻』をかける気でいる事は明白であった。

 

 

「し、しかし・・・しかし、全員分の銃も弾薬ももはやありません」

 

「じゃあ鉄パイプでも資材でもなんでもいい、兵隊は武装して集結だ。『アレ』が終わったら、皆一緒に突撃しよう。楽しいぞ、すごく。歌なんか歌いながら皆で遮に無に突ッ込むんだ、楽しいぞォ」

 

「ッ・・・!」

 

「Zum letzten Mal Wird Sturmalarm geblasen! Zum Kampfe steh’n Wir alle schon bereit!♪・・・・・どうした、なぜ歌わない?」

 

隣で歌うどころか、苦虫を噛み潰したように顔を歪める艦長に大隊長は不思議そうに語り掛ける。

 

 

「も・・・もうウンザリだ! ISに対する意地で我々は貴方に、レギオンについて来た。だが、もうウンザリだ!!」

 

艦長は吸血鬼化されていない人間であった。彼の他にも焦燥感にかられる兵士達も人間であった。

彼等はISという発明品に人生を狂わされ、その底を味わった。そんな時に彼等は反ISを掲げるレギオンに入った。しかし・・・

 

 

「これはもう戦いじゃない! 部下をこれ以上殺させるわけにはいかない!!」

 

人間の器ではもう堪えられなくなった。これが出来損ないでも吸血鬼ならば、まだ堪えられただろう。でも、所詮は人間の心。今、起きている現状と場景に潰れたのだ。

 

 

「オイオイ・・・ここまできてまだ闘争の本質がわかってないのか。なんとも物わかりの悪い。『彼]』と800年間、狭い島国で殺し合って来た戦士の末裔を相手にする時点でわかる事だろう」

 

『ヤレヤレだ』と大隊長はため息を漏らし、呆れ果てる。

 

 

「・・・だが・・・まぁいい。抗命は戦いの華だ。ドクトル」

 

「はい、大隊長」

 

呆れた表情のまま、彼は隣に立っていたドクトルを呼ぶと彼は大隊長に輝くほどに磨かれた拳銃を渡す。

 

 

「クふッ」

 

「ひッ・・・!?」

 

ダンッ ダンッ ダンッ ダンッ!

 

大隊長は拳銃を受け取ると同時に艦長に向けて発砲した。だが、放たれた弾丸は右にそれ、左にそれて全く当たらずじまいである。

 

 

「ダメだ、ドクトル。当たらん」

 

「ハァ~・・・相変わらず射撃が下手すぎます。それでも元牙狩りなんでしょう? どうやって戦っていたんですか?」

 

至近距離である意味スゴ技と言える所業に笑う彼にドクトルは困り顔で呆れ笑う。

 

ザッザッザッザッザッザッザ

 

「ッ!?」

 

大隊長が笑う中、難を逃れたへたり込む艦長の周りを黒い戦闘服に身を包んだ兵士、吸血鬼兵が囲む。

 

 

「大隊長殿ッ」

 

「ん? ああ、射殺しろ。敗北主義者だ」パチンッ

 

ズダダダダダダダダダダッ!

 

音と同時に艦長へ構えられたアサルトライフルが火を噴く。艦長は最期の断末魔も上げられぬままに細切れの見せしめの肉塊と化した。

 

 

「憲兵少尉」

 

「はッ!!」

 

「残存兵員に武装させろ。命令に従わない者は君の判断にまかす」

 

「了解致しました、大隊長殿ッ。総員注目! これより武装を装着する。戦えるものは立っても伏しても戦え! 大隊長命令だ!! 従えぬ者は粛清とするッ!」

 

大隊長から少尉へ、少尉から全総員に伝えられた最終決戦の通達。喜々とし、嬉々としていたのは化物とイカれのみである。

 

 

「物事にはハレもケもある。闘争の根幹を教育してやれ。何者かを打ち倒しに来た者は、何者かに打ち倒されなければならぬ。それに作戦は全て計画通りじゃないか。この戦争は、この私の小さな手の平から出た事など一度たりともないのだ」

 

彼はニタニタと相も変らぬ薄ら笑みを浮かべて、指揮台へと着席する。楽しい楽しい夢の続きを見ている子供の様に大隊長は朗らかに、狂ったように笑い続ける。

 

そうして、飛行戦艦『デクス・ウクス・マキーネ号』は自衛隊の指揮する戦車部隊の砲撃によって、地面へと緩やかに不時着した。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





今後の展開に頭がフル回転するゼェ。


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溜息混じりに彼と彼女は来た




今回は導入回なので、短いです。

ドン「ワシの出番は?」

さぁ? では、どうぞ・・・・・



 

 

 

空を悠々自適に泳ぎ、街に災厄を振りまいた飛行船の群れは緑の防人達から浴びせられる火矢によって、次々と地上へ堕ちる。

これで漸く戦いは終わったと誰もが思い胸を撫でおろした。

 

しかし・・・

 

 

「RYYAAAAAAAAAAッ!」

 

「UYYYYYYYYYYYY!!」

 

ズガガガガガガガガガガガガッ

 

燃え盛る飛行船内部から腹をすかせた黒衣の吸血鬼兵共がウジャウジャと溢れ出て来たのだ。

吸血鬼兵達は一心不乱に銃火器の撃鉄を叩く。手持ちの銃弾が無くなれば、近接戦闘用のナイフを引き抜き、持ち前の怪力と牙で襲い掛かった。

 

 

「あったけぇ血ィイ!!」

 

「頸動脈を引きずり出して、ベロベロしてやるぜェエッ!」

 

「ひ、ヒいッ!?」

 

その勢いに防人達はたじろいでしまう。

脚を、腕を、肩を、胸を、腹を、頭を損傷しようとも化物共は止まる事を知らない。

 

 

「ヒャハハハ! お先に!!」カチッ

 

ボグォオンッ!

 

行動不能となった者から順に身体に巻き付けた爆弾を発火させ、周り諸共吹き飛んでいく。それも笑顔で、朗らかにだ。

今、彼等は死せる為に、死に花を咲かせる為だけに走っているのだ。

 

 

「敵戦闘員の抵抗激しく、押さえられません!」

 

「ヤツら死ぬのが怖くないのか?! 手榴弾を抱えて突っ込んで来るぞ!」

 

「このままだと形勢をひっくり返されるぞッ!」

 

常軌を逸脱した吸血鬼兵の行動に現場は混乱の坩堝へと流れ込んでいく。

人間の精神では到底理解できないイカレているともとれる吸血鬼兵達の反撃に緑の防人達は動揺させられていた。

 

 

「(忘れていたッ。ヤツら化物(フリークス)が追い込まれた時が最も危険だという事をッ!!)」

 

藤堂は目の前で繰り広げられる惨劇を目の当たりにしながらも武装錬金『サムライソードX』を振りかざし、襲い掛かる吸血鬼兵をバッタバッタと薙ぎ払う。

 

 

「(暁のあの『援軍』で、大方の形勢は此方に傾いた。しかし、手負いの獣となったヤツらを叩くには勢いが足らない・・・)」

 

吸血鬼兵は自分達の飛行船を囲む防御陣形を張るだけではなく。そこらに転がる骸に齧り付き、栄養補給と屍喰鬼(グール)の生産に着手した。

 

 

「ヴぁ・・・VAAAaaaaaaッ!!」

 

「こ・・・コイツは・・・!」

 

屍喰鬼となった骸は新鮮な肉を追い求めるように防人達に襲い掛かる。

すぐにでも倒さなければ鼠算式に数をズラズラと揃えてくるのだが、新たに屍喰鬼となった骸は先程まで共に戦っていた仲間であった。

 

 

「お・・・お前、俺がわからないのかッ!?」

 

同じ釜の飯を食った仲間が、自分の肉を喰らおうと襲い掛かって来る。殺さなければ、喰われる状況であっても彼等には躊躇いがあった。

 

 

「VAAAAAAAAッ!!」

 

「う、うわああああアアッ!!?」

 

「好きにはさせん!!」

 

ザンッ!

 

かつての仲間に襲い掛かった屍喰鬼に向けて、前線に出ていた眞田兄弟が兄、信雪が刀を振るう。振るわれた刃は頭を切断し、屍喰鬼は断末魔を上げる暇もなく散滅した。

 

 

「大丈夫か?! しっかりしろッ!」

 

「あ・・・ああ。畜生ッ、畜生が!!」

 

襲われた自衛官は放心状態となったが、すぐさまに気を取り直し小銃を握りしめた。

 

惨劇はここだけでは収まらず、他の場所でも死に場所を求めた吸血鬼兵が特攻を駆けまわっていた。

 

 

「『日の出』まで1時間を切っている! あと少し、あと少し耐えるんだ!!」

 

猛反撃を続けている吸血鬼兵だが、そんな彼等にも銀の武器の他に弱点はある。

それは『太陽のエネルギー』。人智を越えた存在になった吸血鬼といえども太陽光をモロに浴びれば一溜まりもなく灰になる。

―――――――そんな時。

 

 

「GURYYYYYYYYYY!!」

 

『『『な、何ィイイッ!!』』』

 

燃え上がる飛行船から吸血鬼兵達を押しのけ、一体の屍喰鬼が現れた。その屍喰鬼を見た者は思わず二度見をし、心臓が飛び出る程の悲鳴を上げる。

 

 

「そ、そんな馬鹿な!?」

 

「オイオイオイオイオイ・・・冗談じゃあないぞ!!」

 

何故ならば、その屍喰鬼はISを纏っていたのだ。その屍喰鬼は指揮権を持った藤堂に逆らって、吐出したIS操縦士であった。

 

 

「馬鹿に冗談が過ぎるぞ!」

 

「悪夢だ・・・コイツはなんて悪夢だ!!」

 

ただでさえ厄介極まりない屍喰鬼が、『絶対防御』なんていう最強の盾をもった鎧を纏ったという事実ににその場にいた全員が目を疑った。

 

 

「VAAAaaaaaaaッ!!」

 

ドグオォオン!!

 

『『『ぐわァアアアアッ!!?』』』

 

だが目の前のどうしようもない現実は、彼らの反応などお構いなしに振り上げたハンマーを振り下ろす。打撃の衝撃は実に破壊的で、粉塵と相まって衝撃波を起こした。

 

 

「VAAAAAAAAAAAAAッ!」

 

『『『うおおおおおッ!!』』』

 

ズガガガガガガガガガガガガッ!

 

防人の各員はIS屍喰鬼に向けて、根限りの銀製弾を撃ち込む。だが、チート級の防護壁を備えるISにそれは鋼鉄に豆鉄砲を当てる様なものであった。

 

 

「GRYYYYYYYYYYYYYYY!!」

 

「止まらない! コイツ止まらないぞ!!」

 

「例えるなら『知恵の輪が出来なくて癇癪を起したヒステリー持ちの大男』って感じだ!」

 

ドカドカと新鮮な血肉を求めて、IS屍喰鬼は彼らに突進していく。そして、構えたハンマーを振り上げられた・・・・・刹那ッ!

 

 

「『武装錬金』!!!」

 

ズギュシュゥウウ!

 

「VGYAaaaaaaaaaaッ!!?」

 

怒号にも似た叫びと共にIS屍喰鬼の胸に白銀に光る一筋の刃が突き刺さる。刃は屍喰鬼となった操縦士の心臓とISコア諸共を貫いていた。

IS屍喰鬼は断末魔を一つ響かせると力なく地に倒れ伏す。

 

 

『『『ッ!?』』』

 

その場にいた全員がIS屍喰鬼を倒したであろう人物の方を振り向いて、驚愕した。

 

 

「・・・・・ヤレヤレってやつだわ」

 

「まあ、そう言うでなかろー」

 

そこには『処刑鎌』の武装錬金を構えた美しき女吸血鬼と彼女に背負われた白山羊が佇んでいたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





新たなる『武装錬金』。わかる人にはわかります。


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Ziegen und Vampiren




クリスマスに書いている~。

ドン「内容はシリアスであろー」

では、どうぞ・・・・・




 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

 

その場にいた全員が怒り狂う猛牛のように暴れまわるISを纏った屍喰鬼(グール)をISコア諸共粉砕した『赤毛の彼女』に釘付けとなった。

その装いは、髪と同様に紅いコートを黒のボディアーマーに纏わせ、黒のホットパンツに身を包んでいる。

中でも特出すべき点は、彼女の両太腿に取り付けられた4本の『マジックハンド』である。そのマジックハンドの先には、鋭利な鎌が銀色に光っていた。

 

 

「・・・戻っておいで」

 

彼女がそう言うと屍喰鬼に突き刺さった刃が独りでに飛んで行き、元の位置へと装着された。

 

 

「な・・・なんだ? 誰だ?!」

 

「今度は一体なんだ?!」

 

「いや・・・この際、誰でもいい! 何だっていいッ!」

 

()()()だ!? ()()()なんだ?!!」

 

防人達は動揺した。

彼等は厄介極まりない化物を倒してくれた事には感謝するが、目の前のISをコア諸共破壊した彼女からは敵となっている吸血鬼兵共とはまた違った『危険なオーラ』を感じていたのだ。

こんな輩が自分達の敵となれば、一気に窮地に叩き込まれると容易く予想で出来る程に眼前の彼女は恐ろしかったのだ。

しかし・・・

 

 

「あ・・・アレは・・・・・!」

 

「はははッ、そりゃあそうだ! 」

 

「『アーカード』がいるなら。そりゃあ、アンタもいる訳だ!」

 

一方で彼女を知っている者は頬を引きつらせ、吸血鬼兵共は狂喜に打ち震えた。

自分達、出来損ないとは比べ物にならない怪物の中の怪物、化物の中の化物。人類種最大の天敵。正真正銘、本物の『吸血鬼』がすぐ目の前に立っていたのだから。

 

 

「・・・・・酷いもんよねぇ・・・ホント、聞いていた以上に酷いものじゃあないの。『ドン』?」

 

「・・・そうであろー。画面で見るよりも、ずぅうと酷いものであろー」

 

周りを拝見し、黄昏れて呟く彼女に背に背負われている山羊『ドン・ヴァレンティーノ』が言葉を返した。

 

 

『『『VAAAYYYYYYYYYYYYYYYYッ!!』』』

 

「なッ、来やがった!」

 

「危ないッ!!」

 

そんな黄昏る彼女目掛けて、吸血鬼兵達は牙を剥き出しにして襲い掛かる。

吸血鬼兵共の行動によって、彼女が味方であろうと感じ取った防人達は援護しようと銃口を吸血鬼兵に向ける。

 

 

「止せ! やめろぉ!」

 

『『『ッ!!?』』』

 

だが、それを駆け付けた藤堂が止めたのだ。

「何故ですか」と言い寄る部下に藤堂は「巻き込まれるぞ」と忠告し、身を低くするよう呼び掛ける。何が何だかわからない彼らはとりあえず、身を地面に伏せた。

次の瞬間ッ!!

 

 

臓物(ハラワタ)をブチ撒けろッ!!」

 

ズザシュッッ!

 

『『『・・・へ?』』』

 

4本あるマジックハンドのリーチが四方に伸び、襲い掛かる吸血鬼兵共の胴体を一瞬の内に斬り刻んだ。お歳暮のハムを切る様に。

それは面上に前方20mまで伸ばされており。もし、藤堂の言う通りに地面に伏せていなければ、防人達は吸血鬼兵達と同じ末路を辿っていたであろう。

 

斬り刻まれた吸血鬼兵の身体は肉塊のそれとなり、中に詰まっていた体液が地面を濡らし、赤い水溜まりを作った。

 

ジジ・・・ガガッ・・・

 

『やっとのご到着か。欧州裏組織連合が筆頭『ドン・ヴァレンティーノ』』

 

『『『!?』』』

 

突如として、黒煙を上げる飛行艦『デクス・ウクス・マキーネ』の艦外スピーカーからこの惨劇を引き起こした張本人の声が響いて来た。

 

 

『そして・・・ククク・・・あのアーカードが見初めた吸血姫(カーミラ)『シェルス・ヴィクトリア』よ。来たまえ、ゴールだ!』

 

ギギ・・・ガコン!

 

大隊長の言葉と共に吸血鬼兵達が出撃してから閉ざされていた入場ハッチが開いた。

 

・・・コツ・・・コツ・・・コツ・・・

 

「「・・・・・」」

 

Hey, du Ninin ist. Willkommen in meinem Schiff(やあ、お二人さん。ようこそわが艦へ)♪」

 

ドンとシェルスがハッチへと歩み寄って行くと入場口には小柄で少女のような少年『シュレディンガー』が礼儀正しく佇んでおり、二人へ丁寧に歓迎の挨拶を述べる。

 

 

「・・・・・」

 

ザンッ

 

「うゲ♪」

 

無言のまま眉をひそめるシェルスは、そんなシュレディンガーの首を自らの武装錬金『バルキリー・スカート』で斬り落とす。

 

 

「全てを・・・全て終わらせるであろー・・・!」シュタッ

 

背負われていたドンは彼女の背中から降りるとシェルスと共に飛行戦艦内部へと進撃していった。

 

 

「・・・な、なぁ?」

 

「なんだよ?」

 

「これ・・・『開いてる』よな?」

 

「あ、ホントだ・・・『開いてる』」

 

防人達は二人の行動に呆けていたが、すぐに気を取り戻す。そして、敵本営の入口が開けっ放しな事に気づいた。

 

 

「今、行けば・・・なあ?」

 

「ああ・・・今、行けば・・・!」

 

『『『殺せるッ!』』』

 

千載一遇、絶好のチャンスである。

このまま残存兵員全員で突撃する事が出来れば敵の本営を落す事ができ、この狂った戦いに終止符を打つ事が出来るのだ。

 

 

『あ。そうそう・・・憲兵少尉?』

 

「や・・・・・ヤー・・・!」

 

だが、そうは問屋が卸さなかった。

伝える事を忘れたかのように大隊長が語り掛けると先程、シェルスが作り上げた血溜まりから一人の吸血鬼兵が上体を起こす。

 

 

「オイ・・・オイオイオイ?!」

 

「な、なんてヤツだ・・・ッ!?」

 

起き上がった憲兵少尉は、文字通り()()しかなく。ズルズルと這いつくばって、血溜まりから脱した。

 

 

『わかっていると思うが・・・今し方、招待客を我が艦内に招き入れた。どうやらその招待客に紛れて、そこの礼儀を弁えない連中が無礼を働こうとしている。そこでだ少尉・・・君の最後の仕事は、そこな無礼者を艦に近づけさせないでくれ。いいな?』

 

「は・・・い・・・了解・・・いたしました・・・!」

 

『それでは少尉、ヴァルハラで会おう』

 

スピーカーがこと切れると少尉は懐に手を伸ばし、目的の物を取り出した。

 

 

「あ、アレはッ!!? マズい! アレは絶対的にマズイ!!」

 

藤堂は少尉が取り出した『ソレ』を目視で確認し、悲鳴にも似た叫びを上げる。

 

 

「止めろッ! ヤツを止めるんだ! 『アレ』を()()()()()()()()()!!」

 

少尉の取り出した『ソレ』は石で出来ていた。

石で出来ていた『ソレ』の右表面には古代的な幾何学模様が入っており、人の顔の様な仮面の作りをしていた。

 

 

「撃てッ、撃つんだ! 『アレ』を破壊しろォ!!」

 

「もう・・・遅いッ・・・!」

 

ただ違っていたのは、仮面の口の部分から二本の『』が突き出していた点である。

 

 

「大隊長・・・ヴァルハラで会いましょう・・・!」

 

バンッ

 

そうして少尉は、出来損ないから魂のない薄汚れた本当の怪物になる為にべっとりと血に濡れた『石仮面』を被った。

 

ザクザクザクザクザクッ

 

「あ・・・あア・・・アァアアアアアアAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!?」

 

仮面の側面から飛び出した『骨針』が少尉の頭に突き刺さり、脳内を()()

 

 

「URY・・・URYYYYYYYYYYッ!!」

 

石仮面の力によって『吸血鬼』になった少尉は損傷した身体を修復し、辺りに溜まっていた血液をすべて吸収した。

 

 

「まったく・・・これは骨が折れるな! 行くぞ、眞田ッ!!」

 

「「御意ッ!!」」

 

藤堂は他の防人達に援護を任せると自分の武装錬金を構え、化物殺しの術を持つ眞田兄弟と共に本物の吸血鬼となった憲兵少尉に向かって飛び出して行った。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





次回はドンの天敵、無口な狼が登場します。


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Ziegen und Vampiren und Werwölfen




ドン「『狼』はワシの不倶戴天の敵であろー!」

だが、この『狼』はただの狼ではない。

では、どうぞ・・・・・



 

 

 

コツ・・・コツ・・・コツ・・・

 

藤堂達が石仮面の力によって、出来損ないではない吸血鬼へと変貌した憲兵少尉としのぎを削っている頃。飛行戦艦『デクス・ウクス・マキーネ号』内部へと進んで行った二足歩行山羊『ドン・ヴァレンティーノ』と彼を背中に担ぎなおした吸血鬼『シェルス・ヴィクトリア』は、この戦争狂の一団を統率する長の元へと殺気立ったオーラを携えて進んで行っていた。

 

タッタッタッタッタッ・・・

 

『『『ウヲオオオオオオオ!!』』』

 

二人が指令室へと通じている廊下を進んでいると奥から大隊長の護衛として残ったであろう吸血鬼兵小隊が、アサルトライフルを構えながら走って来る。

 

ズガガガガガガガガガガガガッ!

 

彼等は引き金をこれでもかと引き、機械仕掛けの撃鉄が薬莢の雷管を撃ち叩く。撃ち叩かれた雷管は発火。そのまま薬莢内のガンパウダーに火を着けて、先頭に込まれた鉛玉を銃口から吐き出す。吐き出す嗚咽音は、まるで電動ノコギリのようにけたたましく廊下に響いた。

 

 

「・・・」

 

ドンを背中に負ったシェルスは、自らに迫りくる弾丸をものともせずに進む。

 

ギャギャッギィインッ!!

 

そして、自分諸共ドンを貫くであろう弾丸を身体に受ける一歩手前で武装錬金『バルキリー・スカート』の刃で斬り弾いていく。

 

 

「ドン、振り落とされないようにね?」

 

「了解であろー!」

 

ダンッ

 

シェルスは弾丸を斬り弾いたと同時に床を蹴り踏んだ。

吸血鬼保有の脚力で踏まれた床は瞬く間に陥没し、その反動でシェルスは時速100kmなんて目じゃない速度のまま前へと飛び出す。

 

 

「WANABEEE!」

 

「ッッ!?」

 

ドグシャァアッ!

 

時速100km以上のスピードに乗った彼女から繰り出されたパンチは吸血鬼兵の頭をスイカのように割る事などいとも容易い。

 

ザシャァアン!

 

『『『ぐギィヤァアアアアアアッ!!?』』』

 

拳を振り抜いた体勢で体を回転させる事によって、バルキリー・スカートの切先が吸血鬼兵共の身体を捌く。

 

 

「GURYYYYYY!!」

 

「むッ?!」

 

攻撃によって出来た隙に付け入ろうと先程の斬撃で生き残った吸血鬼兵が、後ろからシェルスの頭目掛けて戦斧を振り上げる。

 

 

「させんであろーッ!」チャキッ

 

ドオゥウッン!

 

そうはさせまいと彼女の背に張り付いていたドン愛用のフリントロック式単筒火縄銃が火を噴き出す。黒色火薬の爆発によって、33口径ソフトポイント弾が銃口から飛び出した。

 

 

「ぎゃべプッ!?」

 

現代の銃に比べて威力も性能も劣ると認識されがちである火縄銃だが、弾丸の鉛部分を硬い金属で覆っていない事と現代の小銃や散弾銃と比べると口径が大きい為に弾丸自体がかなり重い。しかも1mと離れていない至近距離での発砲ともあってか、頭蓋を五万ピースのパズルの一片のように粉々に砕く事など簡単であった。

 

 

「・・・・・」

 

「長かった・・・長かったぞ・・・!」

 

バルキリー・スカートの斬撃で片足を斬り落とした吸血鬼兵に止めを刺そうとシェルスは近づいて行く。するとその吸血鬼兵は口に巻いていたマスクをおろし、三日月に歪めた口を晒した。

 

 

「お前が俺の『死』か? 『俺達』の『死』か?!!」

 

バッシュッ!

 

彼女は少しの躊躇も微塵もなく、吸血鬼兵の頭をバルキリー・スカートの鎌で胴体と分離する。勢い良く振り払われた刃は、その吸血鬼兵の首の他に既に息絶えた吸血鬼兵の骸までもを斬り刻んだ。

斬られた衝撃で肉片と血が廊下をベッタリと濡らし、後に残ったのは()()()()()()()表情で転がった吸血鬼兵共の残骸だけであった。

 

 

「・・・・・皆笑って死んでいくであろー・・・そうだ、ヤツらは死ぬためにやって来たのだからな」

 

「そんなに死にたきゃ・・・ッ! So viel Tod Takerya'(そんなに死にたけりゃ)ッ!! Willkürlich schnürten Hals(勝手に首くくれ)!! Vor schnürten Hals auf die vier Jahre Tag(4年前に首を括れ)ッ!!」

 

ドンの言葉にシェルスは我慢ならなくなった怒号を上げた。あまりにも感情的な為につい出てしまった彼女の流暢な母国語が艦内に響き渡る。

 

 

ピピッ・・・ガガッ・・・

 

『そう言う訳にはいかんのだよ、Fräulein(お嬢さん)

 

「「ッ!?」」

 

シェルスの怒号に答える男の言葉が艦内放送で聞こえて来た。

 

 

『ただ死ぬのは真っ平御免なんだ。それ程までに度し難いのだ。我々は、世界中の全ての人間が我々を必要となどしていない。世界中の全ての人間が我々を忘れ去ろうとしている・・・』

 

男は悲しそうに、哀しそうに唄う。

 

 

『それでも我々は、我々のために必要なのだ。ただただ、死ぬのなんかいやだ。それだけじゃいやだ!

 

そして、潤滑油を注したタービンのように勢い勝手に楽しそうに、嬉しそうに語り出す。

 

 

私達が死ぬにはもっと何かが必要なのだ。もっと・・・もっと!!とそうやってここまでやって来た、来てしまった!! もっと何かをッ! まだあるはずだ! まだどこかに戦える場所が!! まだどこかに戦える敵が!! 世界は広く!! 驚異と脅威に満ち!! 闘争も鉄火も肥えて溢れ!! きっとこの世界には、我々を養うのに足るだけの戦場が確実に存在するに違いないと!!

 

カツンッ・・・

 

「はッ!?」

 

「あやつは・・・ッ!!」

 

捲し立てられた大隊長の言葉に合わせるように一人の兵士・・・いや、熱帯雨林用のコートに身を包み、古びた軍帽を深く被り、真紅に輝く眼を白髪から覗かせる一匹の『』が二人の前に現れた。

 

 

『我々が死ぬには何かが・・・もっと何かが必要なのだ。でなければ、我々は無限に長く歩き続けなければならないッ! 死ぬためだけに!! だから君達が愛おしい、君達はそれに価する!! 欧州裏組織筆頭格『ヴァレンティーノファミリー』・・・・・君達は私達が死ぬ甲斐のある存在であり、君達は私達が殺す甲斐のある存在なのだから!!』

 

『吸血鬼』と並び称される最上格の化物(フリークス)、『人狼(ヴェアヴォルフ)』が二人の前に立ち塞がったのであった。

 

 

「ドン、先に向かって!」

 

「シェルス?!」

 

シェルスは直感した。

眼前に立ち塞がるこの狼は、自分の全力を持って相手にしなくてはならない極上の怪物だと彼女は判断したのだ。

それに・・・

 

 

「早く・・・あの男の元へ! あの男に・・・あんな戦争狂いにこれ以上ッ、もう一言だって喋らせちゃあいけない!!」

 

あの戦争狂いの人の皮を被った化物にこれ以上の我慢が出来なかった。

 

シュタッ

 

「・・・うむ・・・死ぬなよ? 許さんぞ、絶対に許さんぞ・・・!」

 

ドンはそんなシェルスの意図を汲み取ったのか、その背中から降りるとクスリと笑いながらドンは愛銃に新たな弾を装填した。

 

 

「・・・・・」スッ・・・

 

「「?」」

 

すると二人の前に立っていた人狼こと『大尉』が無言で通路の壁に貼ってあるプレートを指差す。プレートには『指令室行』の文字と矢印が描かれていた。

 

 

「フン・・・律儀な狼であろー・・・」

 

コツ・・・コツ・・・コツ・・・

 

指令室が何処にあるかを教えたという事は、大尉はドンと事を構える気はないという意思表示だ。

 

 

「ワシの不俱戴天の敵である狼にこれを言うのは癪であるが・・・まぁ、良いであろー」

 

「?」

 

ドンはそのまま歩みを進めて行くと指令室へ繋がる通路の一歩手前で止まり、大尉に語り掛ける。

 

 

「ご苦労であろー」

 

コツ・・・コツ・・・コツ・・・

 

それだけ言うとドンは指令室へと繋がる薄暗い通路を一直線に進んで行った。

 

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

あとに残されたのはお互いを点と点が結んだ線のように睨み合う二体の化物(フリークス)であった。

外からは藤堂達と出来損ないではなくなった少尉との戦闘であろう銃撃音と爆発音が聞こえている。しばらくするとその戦闘で出たであろう炎が飛行船に引火し、二人のいる通路まで燃え広がって来た。それでも二人は睨み合ったままに動こうとはしない。

 

 

ガチャッン

 

ふと・・・シェルスが足元に転んだ吸血鬼兵共が使ったであろう二丁の機関銃を蹴り上げ、掴みあげた。

機関銃にはまだ弾が残っており、セーフティーも外されている。

 

 

「・・・」

 

「・・・」

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・

 

だが、これでも二人は動かない。西部劇のガンマンの決闘のように二人は、お互いを殺す勢いで睨み合う。拳と拳、牙と牙で戦うだけが闘争ではないのだ。

自らの覇気で相手の覇気と殺し合う。今、正に二人は己の覇気をぶつけ合い、殺し合っている。

・・・されど、この戦いは長くは続きはしなかった。

 

ジャキィイッッン!!

 

炎が通路を、二人を完全に囲んでしまったその時・・・!

シェルスは機関銃を大尉は愛用のモーゼルを構えて、引き金に指をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





アキト「俺、忘れられてない?」

大丈夫、これからだよ。

ドン「次回もシリアスであろー」


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Vampiren und Werwölfen




実を言うと人狼は吸血鬼よりも古い伝説を持ってたりする。

ドン「されど、狼よりも吸血鬼の方が有名であろー」

では、どうぞ・・・・・



 

 

 

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!

 

ダンッダンッダンッダン!

 

轟々と炎が燃え滾る中、遂に白髪の人狼と赤毛の吸血鬼による物理的な戦闘の火蓋がきって開けられた。

互いに構えた銃が火を上げ、激しい銃撃戦が展開される。が、両者の放った銃弾はするりするりと間を抜け、その身体に当たりはしなかった。

 

タタタタタタタッ

 

シェルスは、撃鉄が連打される機関銃を両片方に担ぎながら大尉に向かって走る。

彼女は撹乱の為に銃撃を展開し、自分の武装錬金『バルキリー・スカート』で一気に決着をつけようとしたのだ。

 

ボグォオンッ!

 

そして、銃撃による粉塵と外からの引火によって生じた小規模の爆発に紛れ、シェルスは大尉の身体に刃を突き刺すべく飛び込んだ。

 

バッサァッ

 

「なッ!?」

 

だが、煙をかき分けた時、彼女の目に最初に飛び込んで来たのは大尉が羽織っていたコートであった。そのコートがシェルスの視界を奪い、奇をてらう筈が逆に利用される形へと至ってしまったのだ。

 

 

「・・・」

 

ダァッン!

 

「がッ!?」

 

視界を奪われたこの瞬間を逃す程、大尉は甘くはない。彼はまず彼女の腰へと一発、鉛玉をめり込ませる。

 

ダァッン!

 

「グぁあッ!!?」

 

次に体勢がよろけ仰向けになったシェルスの口に銃口を咥えさせ、脳本体をグチャグチャにする為に止めの一発を撃ちこむ。

 

 

「!」

 

普通の出来損ないや並の吸血鬼ならば、脳を破壊された時点で再起不能の致命傷を負ってしまうであろう。

 

シャキンッ

 

「フフッ!」

 

しかし、彼女『シェルス・ヴィクトリア』は違う。

何故ならば彼女は『選択者』にして、アキトこと『吸血鬼アーカード』から血を啜られ、血を与えられた最上特級の吸血鬼であるからだ。

そんなシェルスは、大尉から受けた傷をありえない速度で治癒すると高速移動の為に仕舞っていたバルキリー・スカートの刃を大尉へと振り向ける。

 

ズザザ・・・

 

「・・・」

 

思わぬ反撃に斬られた頬から血を垂らす大尉であるが、人狼特有の凄まじい反射速度で跳ねて後退する。

 

 

「WRYYYYYYッ!!」

 

後退着地場所をあらかじめ予測していたシェルスは、大尉が着地すると同時にその切先を肉に喰い込ませようとマジックハンドを伸ばす。

 

ピシィイイ・・・!

 

「!?」

 

が、刃は彼の身体へは届く事はなかった。見えない力のようなモノが働き、寸での所で刃が止まったのだ。

 

 

「・・・・・GRUUUA・・・!」

 

その見えない力は紛れもない大尉本人から発せられていた。

加えて、何時でもどんな状況になっても一言も言葉を発しようとはしない一文字に閉じられた彼の口が開いている。そこから見えるのは、得物の肉を断ち切る鋭い『牙』が生え揃っていた。

 

ゴゴゴゴゴゴゴ・・・

 

そして、大尉の褐色の燃える肌に純白の毛が生える。体毛が皮膚を覆っていくと同時に人型に編成されていた骨格が変形し、筋肉が膨張していく。

 

 

「あ・・・あぁッ・・・!?」

 

そうしてシェルスの前に顕現したのは、身の丈5mを優に超える銀色の大狼であった。

 

 

「GURUU・・・!」

 

「こ・・・この・・・!」

 

射殺す大尉の眼から逃げようとシェルスは必死に体を動かそうとする。されど彼から打ち付けるプレッシャーに筋肉が硬直してしまっていたのだ。

 

 

「GAAAAAAAaaッ!!」

 

「いぃッ!?」

 

大きく咆哮を上げた銀狼は、蛇に睨まれた蛙のように固まった彼女目掛けて襲い掛かった。

 

バキィイイ!

 

「ぐバはッ!?」

 

狼大尉はその巨体に似合わぬスピードでシェルスに体当たりをする。常人ならば一撃で全身打撲の複雑骨折をする攻撃を受けた彼女は後ろ数mまで吹っ飛ぶと通路の壁へと身体をめりこませ、血反吐をぶちまけた。

 

 

「GUOOOOOOOOOO!!」

 

「な・・・舐めるんじゃあないわよッ!」

 

追撃の一手を放とうと高速移動で近づいて来る狼大尉。今度は止めの一撃であろう噛み付き攻撃がくると予測したシェルスは、その巨体にバルキリー・スカートを突き刺そうと待ち構える。

 

シュバ―――ンッ

 

「え?!」

 

ところが大尉は高速で移動をしながら狼形態から人型形態へと身体を変化させ―――

 

ズドゴォオオッ!!

 

「ぶハァアアッ!!?」

 

―――刃の合間を縫って、強烈な蹴りを彼女の腹部に叩きつける。蹴りの衝撃で壁ごと吹き飛ばされたシェルスは、飛行艦の真下へと落下していった。

 

ドゴォオオオン

 

「が・・・は・・・!」

 

通路の下にあった大きな空間へと叩きつけられたシェルスは、力なく倒れ伏している。

 

 

「・・・・・」シュタッ

 

そこへ人間態へ戻った大尉が止めを刺そうと下へと降りて来た。

二人が今いる空間は、様々な大型兵器や組織の資金源が積み込まれた大型倉庫である。

 

 

「(・・・ダメだ・・・・・強すぎる・・・)」

 

・・・コツ・・・コツ・・・コツ・・・

 

「・・・」

 

此方へ近づいて来る自分よりも格段に強い敵にシェルスは虚ろな目で見据えている。

大尉はまたしても大狼形態へと身体を変化させ、確実なる止めを刺すべくゆっくり彼女に近づくと勢いよく跳躍した。

 

 

「(・・・ダメだ・・・・・だめ・・・)」

 

意識が徐々に掠れ、瞼がどんどん重くなっていく。

眼を瞑れば、全てから解放される。こうして、シェルスはゆっくりと瞼を―――――

 

 

 

 

 

 

 

≪―――ヤレヤレ。()()()ないわよ、シェルスちゃん? 貴女、アキトくんを置いていくつもり?―――≫

 

「・・・アァッ!?」

 

―――見開いた

 

 

≪―――立ちなさい。私の知ってる『シェルス・ギッシュ』とアキトくんが愛する『シェルス・ヴィクトリア』は、もっと往生際の悪い女だったわよ? シシっ♪―――≫

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォオオッッン!

 

「・・・・・?」

 

「仕留めた」と大尉は思った。だが、蹴り突き刺した足に得物の手応えがない事に疑問符を浮かべる。

辺りには、彼の蹴りによって破壊されたコンテナから飛び出した組織の資金である紙幣がバラバラと舞っている。

 

ダンッ

 

「ハァ・・・はぁ・・・!」

 

「・・・!」

 

クルリと後ろを振り向くとそこには息を切らし、身体中に傷を負った満身創痍の女吸血鬼が立っていた。

 

 

≪―――このお馬鹿ちゃん。目は覚めた? 寝坊助さん?―――≫

 

「ハァ・・・ハァ・・・フフッ・・・ええ、勿論よ!」

 

シェルスはこの声を、この『少女』の声を知っていた。

『7年前』、博物館の騒動で瀕死になった彼女を吸血鬼に生まれ変わらせた自称『石仮面の妖精』を名乗る少女の声であった。

 

 

≪―――さぁて、目も覚めた所で・・・行きなさい、シェルスちゃん。あのワンころに貴女の力、存分に見せてあげなさい!―――≫

 

ズザンッ!

 

先程とは打って変わり、シェルスの表情は明るくなった。

虚ろだった眼は闘志の炎に掻き消え。苦悶に曲がった唇は、大きく三日月に歪んでいた。

 

バシュゥウッ!

 

「!」

 

シェルスは紙幣の紙吹雪に紛れて、発射された弾丸の速さで大尉に飛び蹴りをぶちかます。大尉はそれを難なく避けるが、先程よりも彼女の移動速度が上がっている事を本能で感じた。

 

ズザザ・・・

 

「ッチ!(『点』の攻撃では、向こうが有利。なら、これは!)」

 

「?」

 

シェルスは傷から流れる血を掌に塗りたくり、それを床へと叩きつける。

 

 

「『血液創造(ブラッド・メイク)(ランス)』!」

 

ズザシュゥウッ!

 

「!?」

 

叩きつけた掌から血で造られた槍が四方八方に伸び、前から後ろから大尉の身体を貫いた。

 

 

「取った?!(あ!? ヤバい、これフラグ!)」

 

「・・・」

 

シュゥウウ・・・

 

彼女が自分で言って自分で気づいた様に大尉は貫かれた自分の身体を霧状へと変化させ、血槍から脱する。彼は霧へと変えた身体を実体化させるとシェルスの造った血槍の穂先に佇んだ。

 

 

「『人狼(ヴェアヴォルフ)』。御伽話に出て来る伝説の怪物。最も古い起源を有する化物の中の化物。『狼男』ッ!」

 

≪―――あら、シェルスちゃん? 良い顔になって来たわね?―――≫

 

シェルスが大尉を見据えながら口上のような文句を垂れていると又もや少女が彼女に語り掛けて来た。

 

 

≪―――でぇも。さっきみたいに自分で敵の生存フラグを建てるのは頂けないわね?―――≫

 

「まったく、自分でも嫌になるわ。この頃、暇な時にアキトとアニメ見てたせいね・・・って、あら?」

 

カラカラと少女の嫌味に柔らかい表情で答えていると叩きつけた掌に違和感を覚えた。手を挙げてみるとそこには金色に光る貨幣が血に濡れていた。

 

 

「金貨・・・? じゃあこれ全部・・・!」

 

シェルスの血槍攻撃によって、辺りのコンテナが皆ひっくり返された為に詰まっていた中身が外へとブチ撒かれる。中身の正体は『4年前』、レギオンが本拠地としていた東欧から奪って来た金塊やら札束であった。

 

 

「なるほど・・・要するにそういう事なのね。お前達レギオンは、軍団とか言ってるけど軍隊ですらないじゃない。言ったところの殺し屋集団じゃあないの」

 

最初はISによって差別された者が、格差を差別をなくす為に作られた組織だったのだろう。しかし、それを理由にした略奪や殺戮はただの賊と同類なのだ。

 

 

「認めない・・・糞程も認めないわ。『無敵の軍隊』? 『鋼鉄の騎士』? ッハ! 笑わせないでよ」

 

「・・・」

 

キィイイン!

パシッ

 

「ッフン・・・何よコレ?」

 

大尉の健脚の蹴りによって投擲さえた物をシェルスが掴み取ってみる。するとそれは銀で制作された指輪であった。

 

 

「これって・・・!」

 

「・・・・・」

 

決してそれが大尉からシェルスへの好意による贈り物なんかではない。

 

 

「そう・・・お優しい犬ッコロね。これで()()って事? その為に私をワザとここに連れ込んだってワケ?」

 

「・・・・・」ザッ

 

大尉は決して答えようとはしない。その代わりに言葉ではなく、態度で示し合わせるように戦闘態勢に身体を構える。

 

 

「沈黙は肯定と受け取るわ。そうね、そうなのね。『黙して戦え』と『言葉はいらない』と、そういう訳ね。良いじゃない来なさい! 死にたがりの戦争の犬(ウォー・ドック)! 私がアンタに引導を渡してやるわッ!!」

 

「・・・!」

 

ダッッ

 

「待っていた。そんな言葉を待っていた」とばかりに大尉は跳躍した。

 

 

「逃げないッ。受け止める!」

 

身体を霧状にして、スピードに乗ると剣戟の刺突のような鋭い蹴りを放つ。

 

バキバキィイッ!

 

「ぐゥうウ!!?」

 

鈍い嫌な音が蹴りを受け止めた腕から聞こえてくるばかりか、内部から骨が肉を押しのけて突き出した。

 

 

「・・・フフ!」

 

だが、シェルスは笑う。「もらった」とばかりに不敵に笑う。耳まで裂けるくらいに獰猛な笑みを浮かべる。

 

 

「!」

 

彼女の表情に大尉は「?」を浮かべる。が、すぐにその笑みが何を物語っているのかを理解した。されどもう遅い!

 

 

臓物(ハラワタ)をブチ撒けろッ!!

 

ズザシュッ!!

 

「!!?」

 

解除していたバルキリー・スカートの4つの刃が大尉の腹部に貫通したのだ。今度は確実に肉を捉え、実体を捕らえた。

 

 

「狼男、4年前のどっかの誰かの御返しよ。取っておきなさい!」

 

グシュゥウウ!

 

「!!!」

 

シェルスは指に抓んだ銀の指輪を大尉の心臓へとめり込ませた。

人智を超越した反射速度と運動能力、変幻自在の能力を持っている人狼でも体内に一片の銀は致死量である。

 

 

「あばよ、戦争の犬(ウォー・ドック)・・・!」

 

ブシャァアアッ

 

心臓から突き刺した手を引き抜くと噴水のように血が溢れ出し、大尉はそのままドタリと力なく身体を横たえる。

 

 

「・・・・・・・・

 

倒れた大尉は無表情で通していた顔をクシャリと皺をつけ、満面の笑みを浮かべた。

 

ボワァッ

 

浮かべた笑顔のまま、蒼白い炎が彼の身体を包むと炎は狼の遠吠えのような音を上げて燃える。

 

 

「(まるで・・・・・まるで楽しい夢を見た子供のよう・・・)」

 

燃える蒼白い炎は辺りに引火し、大きな火柱を建てていく。

 

 

「(そうだ・・・きっと今日、今夜のこの夜は、彼等の満願成就の・・・・・一夜の夢なんだ・・・)」

 

その炎は遠巻きに眺めてもさぞや美しい炎であった。

 

 

「ねぇ・・・?」

 

≪―――どうしたの、シェルスちゃん?―――≫

 

炎を見ながら大尉から受けた傷を修復するシェルスは、少女に語り掛ける。

 

 

「貴女はこれからどうするの?」

 

≪―――眠るわ。だから、当分起こさないでね?―――≫

 

「フフ・・・わかったわ。ありがとう。そして、おやすみなさい」

 

≪―――ええ・・・おやすみ、シェルスちゃん―――≫

 

それからパタリと石仮面の妖精を名乗る少女の声は聞こえなくなった。

 

 

「・・・・・」

 

コツ・・・コツ・・・コツ・・・

 

少女の声が聞こえなくなった途端、シェルスは蒼白い炎を背にして歩き出す。彼等を終わらせる為に、醒めない夢を終わらせる為にドンの後を追った。

 

静かになった通路に足音だけが響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





『仮面の娘は一体誰なのか?』は後の話にしようと思っています。

次回は、あの男・・・じゃなくて、あの山羊からいきます。

そろそろ、この章に名前を付けようか・・・な?


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山羊と狂人の鑑賞




暫くしての登場です。

ドン「ワシとヤツとの初対面であろー」

では、どうぞ・・・・・



 

 

 

「ハァ・・・・・痛た・・・結構手酷くやられたモンね・・・」

 

純血種の人狼『大尉』との決戦に勝利した吸血鬼シェルスは、大尉につけられた傷を自力で修復していた。

 

 

「早いとこ合流しないと・・・!」ペタリ

 

修復が完了すると彼女は壁に手を当てる。壁を通して、ドンの気配をサーモセンサーのように読み取る。

 

 

「いた! でも・・・近くにもう一つの反応? ま・・・まさか?!」

 

ドンとは別の反応を感じたシェルスは、すぐさま疾風のように飛んで行く。

 

 

「待っていなさいよ、『戦争狂』ッ!!」

 

その反応は、書道に使う墨汁よりもドス黒い瘴気を放っていた。

 

 

「・・・・・」

 

一方その頃。

ヴァレンティーノファミリーが頭目『ドン・ヴァレンティーノ』はシェルスと別れた後、大隊長のいる指令室へと繋がる薄暗い通路をシリアス5割増しの表情で歩いていた。

いつもはギャグキャラとしてファミリーを率いる彼だが、今回のドンは小さい体から吸血鬼をも圧倒させる『覇気』を漂わせている。

 

コツ・・・コツ・・・コツ・・・

 

外の喧騒とは打って変わり、不気味な静寂が辺りを包んでいる。護衛の吸血鬼兵などを含めた人っ子一人もいない静かな薄暗い通路が延々と続いていく。

 

ガシャ、ウィイーン

 

進行ルートはドンが、前に進むたびに堅固に作られた扉が自動的に次々と開いていく。そして、最後には「ようこそ」とイタリア語で書かれた札が貼ってある大仰な扉が開いた。

 

コツ・・・コツ・・・コツ・・・

 

ドンは躊躇いもせずにズカズカとその部屋へと入って行くと此方に好奇な眼差しを送る眼前の者へ殺気立った眼を突き刺す。そこにはゆったりと座り心地の良さそうな指令席へ腰を落した、白い軍服姿に眼鏡をかけたお世辞にもスマートとは言えない男が口角を三日月に歪めているではないか。

この男こそ、今回の事件の首謀者にして諸悪の根源。

反インフィニット・ストラトス組織『レギオン』の総帥にして、武装吸血鬼化装甲擲弾兵戦闘団『吸血鬼の大隊(ヴァンパイア・バタリオン)』の大隊指揮官。通称・・・『大隊長』である。

 

 

「大隊長・・・ッ!!」

 

「よぉ! これはこれは、欧州にその名を轟かせるファミリーの主、ドン・ヴァレンティーノ。漸く直にお目見え出来て嬉しい限りだねぇ」

 

チャキッ、ズダァアッッン!

 

響き渡る一発の銃声と黒色火薬の硝煙の香り。ドンと大隊長の初会合は、怒号と銃声に始まった。

勿論、怒号と銃声を響かせたのはドンである。ドンはここに来る前に仕込んだ火縄銃を大隊長目掛けて撃ち込んだ。

 

バキンッ!

 

だがどういう訳か、銃口から放たれた弾丸は大隊長の頭を吹っ飛ばさずにその一歩近くで跳ね返ったのだ。

 

ガシャコン

 

ズダダダダダダダダダダッ!

 

ドンはその事に驚きもせずに火縄銃を投げ捨てると腰に提げていた予備のサブマシンガンを連射する。

 

バキンッバキキィインッ!

 

しかし、これも銃弾は大隊長の一歩手前で跳ね返る。跳弾した弾丸は四方に飛んで行き、周りの機器を貫く。

 

 

「残念だが、その銃では無理だよ。なァに・・・()()()()()()だ」

 

シャキンッ

 

「あぁあああろぉおオオオ―――ッ!!」

 

タタタタタタタタタタッ

 

今度は愛用の刀を引き抜くとドンは刃を渾身の力で突き立てようと走った。

 

ガキンッッ!

 

「ぬぅううッ!!」

 

ところがどっこい。白銀に輝く刀の切先は、ストップモーションのように空中で静止してしまったのだ。

何故にドンの攻撃が1mmも大隊長に届かないのかというと。二人の間には、厚さ10cmはあろうかという防弾防刃ガラスがそびえていたのだ。

 

 

「この出し物に遅れるのではないかと内心ヒヤヒヤしていたが・・・間に合って良かった」

 

大隊長は席から立ち上がると苦悶の表情で透明な盾に挑むドンへと相も変らぬ歪めた笑顔のまま目線を合わせる。

 

 

「折角、今宵限りのショーなんだ。どうせなら素晴らしい好敵手に値する君と最高の席で見なければ、失礼じゃあないか」

 

「ふざけるでなかろーッ!!」

 

「楽しみ給えよ、白山羊さん」ピッ

 

「あろッ!?」

 

ドンの怒号に息も返さず、彼は元いた席に腰を沈めると手元のリモコンを操作する。するとどうだろう。二人の前にそびえる大画面モニターに良く見知った人物が映り込んだ。

 

 

「これは、ここ数世紀の中でも三本指に入る一夜の劇だ」

 

「こ・・・これは・・・!」

 

映し出されたモニターに釘付けとなっているドンに大隊長はいつものように嬉しそうな三日月に歪めた口で言い放つ。

 

 

「何故ならば・・・今宵、『不死者(ノスフェラトゥ)アーカード』が、滅びるのだから

 

「なにッ!!?」

 

モニターに映りこむ世界最強の化物(フリークス)『吸血鬼アーカード』が倒れるという言葉を。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





クライマックスの構想を・・・思いついた。

けれど・・・結構、あっけない。

どうしよう・・・?


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Vampiro del sole e berserker spinoso


―――統合しました―――



 

 

 

ドンと大隊長の前に映り出されたモニターには、一人の騎士が立っている。

満身創痍のボロボロで、身体中から血を吹き出しながら息を切らして立っていた。

 

 

「己らに問う・・・汝らは何ぞや?」

 

しかして尚も誉高き『湖の騎士』を名に持つ騎士は燦然たる眼を輝かせ、血潮の闘志を燃やしている。

 

 

『『『我等、軍団(レギオン)。レギオンの兵士(ソルジャー)なりッ!』』』

 

その彼が燃やす血潮の炎は、後ろに連なる騎士達にも燃え広がっていた。

 

 

「ウヲオオオオオオオオ!!」

 

『『『オオオオオオオッ!!』』』

 

傷だらけの騎士『スカー・ランスロット』を先頭とした必滅降下部隊『狩人(イェーガー)』が前へ前へと駆ける。その姿は真っすぐに放たれた白き矢の如くである。

 

 

『『『VAAAAAAAAAAAッ!!』』』

 

そんな彼らに対するは、紅の衣に身を包んだ幾万と流れる河のような亡者の戦士達。彼等は自らが仕える紅蓮の王『アーカード』を守ろうと布陣を敷き、立ち向かう騎士と相対する。

 

 

「オオオオオ!!」

 

「AAAAAAAAッ!」

 

ガキィイッン

 

ズダァアッン!

 

刃と牙が、銃弾と刃が、牙と刃が乱れ合わさる。ぶつけ合う刃は火花を散らし、飛び交う銃弾は血を啜った。

 

 

『『『ヲオオオオオオオッ!!』』』

 

ドドドドドドドドドドドドドドッ

 

騎士達は脇目も降らずにただ前へ前へと突っ切る。嘲笑う王の身印を奪う為に猪突猛進する騎士達のその姿は、流れ来る赤色の濁流を登る鯉のようだ。

 

 

「VRYYYYYッ!」

 

ズザクッ!

 

「グがッあ!?」

 

しかし、そんな騎士達の猛攻をただ黙ってやられている亡者達ではない。

仕える主を守ろうと進撃する彼等の身体に構えた刃と牙を突き刺す。それも一本や二本ではない。騎士達よりも多勢な事を活かした圧迫攻撃だ。

 

 

「・・・フ・・・ッ!」

 

「AA?」

 

だが・・・斬られ、突き刺され、貫かれた騎士はほくそ笑む。まるでこうなる事を予めわかっていたように。

 

 

()()()()!」

 

騎士の身体には大量のダイナマイトが括り付けられており、彼は手にはその起爆スイッチが握られている。

 

「いけぇッ!!」

 

「ヴァルハラで会いましょう!!」カチ

 

ボグォオンッ!!

 

仲間の声援を受けて、彼はスイッチを押した。すると彼に纏わり付いていた亡者ごと爆発四散し、火柱を昇らせる。

 

 

「お先に!!」カチッ

 

ドゴォオッン!!

 

「ヴァルハラでッ!」カチリ

 

バゴオォオンッッ!

 

先へ先へと、進めば進むほどに爆発は連鎖し、目の前にいる亡者を吹き飛ばす。

起爆スイッチを押した彼等は知っていた。自分がどんなに敵を殺そうとどれだけ前に進もうとあのニッコリと笑顔を浮かべた化物には、到底叶わない事を。

 

 

「行ってください!!」カチッ

 

「ランスロット中尉ッ!!」カチ

 

ボゴォオッッン!

 

だからこそ、彼等はその化物に対抗し得る力を持った者を送り出すために自らを犠牲にし、『』を作り出していたのだ。

 

 

「SIYYYAAAAAAAAAAッ!!」

 

バァ―――ッン

 

仲間が自らの命と引き換えに作り上げた道をひた走り、血生臭い硝煙の香りを漂わせる黒煙の中から笑って逝った彼等の思いを背負って、彼『ランスロット』は現れた。

 

 

「・・・私の前に立ったか・・・」

 

彼に語り掛けるのは、紅蓮の眼を輝かせてほくそ笑む()()()()()となった吸血鬼、アキトこと『アーカード』であった。

二人の周りには血に濡れた赤衣の亡者の姿はなく、ただ愛おしそうに見つめる者と殺気立った視線を突き刺す者がいるだけである。

 

 

「流石だ。流石はレギオン・・・流石は叛逆の騎士『ランスロット』ッ!!」

 

アーカードは喜々とし、嬉々としていた。

自らのこの長ったらしい夢を終わらせてくれるに足る『人間』が目の前にやって来たのだから。

 

 

「・・・・・」

 

だが、楽しそうなアーカードに対して、ランスロットは静かである。まるで何かを決心したようなそんな面持ちであった。

 

 

「さぁ、死合おうぜ誉高き騎士よッ!! 貴様が『4年』もの歳月をかけて培った全力で私に挑んで来い!!」

 

アーカードはそれに気づいてはいない。普段ならばすぐに気がつく理性が、冷静な思考が本能によって完全に機能していないからである。

 

 

「・・・殺しきれる武器を持っているのは、お前だけじゃあないんだぜ?」

 

「?」

 

スチャ・・・

 

ランスロットはそう言うとあろう事か、ここまで構えて来た自分の武装錬金『激戦』を待機状態へと戻したのだ。これにはその武器で向かって来るだろうと予想していたアーカードの眉がひそむ。

 

 

「・・・」

 

「?・・・・・ッ!」

 

ランスロットは激戦を待機状態に戻したと同時に戦闘でボロ雑巾と化した自分の衣服を脱ぎ捨てた。

 

 

「それは・・・・・その『術式』は・・・ッ!?」

 

アーカードは彼の衣を脱ぎ去った上半身を見て驚愕し、口を三日月からへの字へと歪める。彼はランスロットに施された『術式』なるモノを知っていた。

 

 

「『エンバーミング』・・・だと?! 完成していのかッ!?」

 

「そうだぁ・・・」

 

上半身裸となったランスロットの身体には、幾つもの縫合と機械的な装置が左胸に内臓されていた。

 

装置並びに術式の名を『エンバーミング』。

元々は19世紀にドイツの科学者『ヴィクター・フランケンシュタイン』によって発明、開発された禁忌とも言える術だ。

この術式を施された者は運動機能等が特化し、人智を超越した力を得られる。しかし、その代償として・・・・・

 

 

「『自らの命をもって、『怪物』となる』・・・」

 

「そうだァアアッ!!」

 

ランスロットは、その術式の起動及び動力となる核鉄を左胸の窪みに勢いよくはめ込もうとする。

 

 

「やめろッ! ランスロット!!」

 

「!」

 

はめ込まれる直前。アーカードの叫びが響く。その言葉が届いたのか、彼は一歩手前で核鉄を留めた。

 

 

「化物になるきか! アイツらと同じような、私と同じような化物に!!」

 

アーカードは言い聞かせるように説得する。

 

 

「不死身の本当の玩具に成り果てる気か? そうならば同じだ・・・まるで同じ糞ッタレだ! 人間でいられなかった者と人間でいられた者と・・・そんな出来損ないの残骸を使って、お前も化物に()()()()()つもりか?!!」

 

癇癪を起し、泣きじゃくる童の様に怒りと悲しみを無我夢中に吐露する。

 

 

「やめろ・・・やめてくれ・・・! 俺を・・・お前を・・・俺たちの闘争を・・・彼岸の彼方へ追いやるつもりか? 俺のような化け物は・・・人間でいる事にいられなかった弱い化け物は、人間に倒されなければならないんだ。頼む騎士よ・・・化け物にはなるな・・・私のような・・・ッ!」

 

泣き出しそうな表情で、懇願するような口調で、アーカードは「やめてくれ」と叫んだ。するとそんな彼の瞳を覗くようにランスロットが口を開く。

 

 

「・・・『4年前』と今。これ程戦ったのだ・・・本当はお前もわかっているはずだ」

 

「・・・・・」

 

「俺はあのガラクタが世に出てから全てを奪われた。何もかもだ」

 

彼もまた悲しそうに語り出す。自らの心の内を。

 

 

「だから俺は戦った。こんなイカれた世界が憎かったから戦った・・・・・だが、4年前・・・お前があの人を・・・中尉を・・・『リップヴァーン・ウィンクル』を倒した時から全てが変わった。お前を倒したい。お前を倒す剣でありたいと思った・・・・・心無く涙もない無尽蔵に作られた唯の刃になりたいと思った・・・」

 

それだけの言葉をランスロットは並べるとクスリと笑い―――――

 

 

「これをはめ込む事で、()()なれるなら・・・・・俺は喜んで・・・お前の言う化物に成り果てよう・・・・・ッ!」

 

―――声にならない叫び声を暁の空が覆う戦場に轟かせながら・・・窪んだ空っぽの胸へと核鉄をはめ込んだ

 

 

 

―――――――

 

 

 

「『エンバーミング』・・・『フランケンシュタインの怪物』・・・とんでもない外法を使ったモノであろー・・・ッ!」

 

モニターを眺めながらギリリとドンは奥歯を噛み締める。

画面には声にならない叫び声を上げる怪物になろうとしている人間と哀し気で悔しそうな表情でそれを見つめる化物が映っていた。

 

パチ・・・パチ・・・パチ・・・

 

「素晴らしいモノだろう。とてもこの技術が2世紀以上前に造られたものだとは、到底考えられない。いやはや、闇に葬られた先人たちはとんでもないモノを残してくれたものだ。因みにあれは、ウチのドクトルが設計した『再生機能特化型』だ」

 

モニターを眺めながらケラケラと大隊長は拍手をする。まるで映画を楽しむ子供のように。

 

 

「だが、あの術式は不完全なモノであろー。数時間とせぬ内に自壊する! よくもあんな無茶な施術をしたものであろーッ!」

 

「・・・・・ククク・・・ッ」

 

「ッ!?」

 

ガラスの向こう側で此方に蹄を指しながら言葉をぶつけるドンに対して、彼は相も変わらない歪んだ三日月を浮かべる。

 

 

「な・・・なにがおかしいであろー?!」

 

「ドン・ヴァレンティーノ。それはだ」

 

「?」

 

「我々の与える物は全てあの者に与えた。我々が奪える物は彼の者から全て奪った。自分の人生。自分の名前。自分の信義。自分の心得。全て賭けてもまだ足りない!!」

 

彼はいつものように言葉を並べていく。

 

 

「だから、君と同じようなヤクザ者な我々からも賭け金を借り出した。例えそれが一晩明けて鶏が鳴けば身を滅ぼす法外な利息だとしてもだ。あの男は、あのアーカードと勝負するために全てを賭けた。我々と同じ様にな。一夜の勝負に全てを賭けた!

 

 

言い聞かせるように、語り掛けるように、大隊長は言い揃える。

 

 

「運命がカードを混ぜ、賭場は一度! 勝負は一度きりッ! 相手は鬼札(ジョーカー)!! さてお前は何だ? 傷だらけの騎士(リッター・フォーラカッツァ)?!

 

画面の向こう側で怪物へと成り果てていく一人の騎士に向かって。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

ガチャンッ

 

六角形の窪みに核鉄がはめ込まれた事で左胸の装置が起動し、術式が作動する。その為か、装置からウネウネと薔薇の棘のような触手が肉の内から身体を覆っていく。

 

 

「こ・・・このォ・・・ッ!!」

 

そんな状況を見ながら・・・悲しさから一変、怒りを全身から滲みだす男が一人。『アーカード』である。

 

ザッザッザッザッザッザッザ・・・

 

彼は赤いジャケットを戦場の風になびかせ、牙を不機嫌にギチギチと鳴らして、怪物へと変わり果てていく宿敵『ランスロット』へと歩を進める。

 

ザンッ

 

「・・・」

 

ドドドドドドドドドドドドドド・・・

 

化物と怪物は無言で相対する。

怪物は目の前に化物が来ても跪いたまま、ボンヤリと虚空を仰ぐ。対する化物は怒りの眼のまま自らの血潮で槍を創造した。

 

 

「大馬鹿がッッ!!」

 

アーカードは創造した槍を構え、渾身の力で串刺しにしようと腕を振り下ろす。

 

シャキィインッッ!

 

「ッ!!?」

 

ところが、槍の切先はランスロットの肉に喰い込みはしなかった。その代わりに刃の一閃が槍を構えた腕ごと、アーカードの首を斬り裂く。

裂かれた腕からは真っ赤な血飛沫が舞い、斬り落とされた頭は苦悶の表情が伺える。

 

 

「・・・」

 

彼を斬ったのは、先程まで薄らボンヤリ虚空を見つめていたランスロット。その手には、腰に差していた二刀の刃が握られていた。

 

ザグシュゥウッ!

 

「ッ?!!」

 

対するアーカードもやられているばかりではない。頭が胴体を離れるその瞬間に鞘に収めていた刀を抜刀し、ランスロットの下顎から上を斬壊する。

正に一瞬の出来事であった。一秒にも満たぬ瞬きの間にアーカードは片腕と頭を。ランスロットは下顎から上を失ったのだ。

攻撃の衝撃で、二人は血を噴水のように噴き出しながら徐々に倒れていく。

 

ダンッ

 

だが、両者共に踏みとどまった。そして、同時に吹き上げる血も空中で静止した。

斬り落とされた腕と頭が噴き出した血によって元へと復元し、潰れた頭が棘によって構築される。

 

 

「ッ・・・!!!」

 

アーカードは歯を喰い縛りながらランスロットを睨み射貫く。未だ声帯が復元出来ていない為であろうか、ギリギリと歯軋りの音だけが聞こえてくる。

 

 

「い・・・ばら・・・棘か・・・」

 

しかし、軋んだ音を弾ませた後に声帯が復元されるとその口から吐き出される言葉は先程までとは打って変わり、いやに冷淡なものであった。

 

 

「身体は『人』ではなくなった・・・・・お前も私も死んで朽ち果てるには『ここ』を抉るしかないようだ・・・」

 

ポンッとアーカードが掌を置いたのは左胸。そこには人体で最も重要な内臓が潜んでいる。

 

 

「この・・・心の臓腑を・・・・・ッ!」

 

「・・・・・」

 

ダンッ

 

ランスロットは返答の代わりに地に足を踏み込み、二刀の剣を縦横に重ねて構えた。

 

「・・・・・」

 

カチャン

 

無言の言葉を受け取ったアーカードもまた刀を鞘に戻し、抜刀の体勢を整える。

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・

 

両者の間にある温度が、空気が、大気が夏だというのに凍えそうになる程に冷たくなった。凍てついた空気が肌を刺し、生気のなくなった血潮が鼓動を叩く。

化物は怪物を、怪物は化物を目標にし、己が刃を喰い込ませようと殺気をぶつける。

 

 

「WRYYYYYYYYYYッ!!」

 

シァアキィイッン!

 

「!」

 

先に仕掛けたのはアーカード。彼は居合の体勢から自らが得意とするナイフの投擲を繰り出した。

 

ザスザスザスザスザスッ!

 

居合からの抜刀をフェイクにしたナイフ投擲によって放たれた幾十もの刃渡り15cmの刃は、余す所なくランスロットの身体を突き刺す。

 

ズブシュゥウ!

 

「がッ!?」

 

しかし、こんなものでランスロットは止まりはしない。大きく振り抜いた腕は剣と共にアーカードの心臓目掛けて突き出される。

突き出された刃は寸での所でアーカードが放ったナイフで軌道が外れ、心臓には当たりはしなかった。が、その数cmを貫いた。

 

 

「RYYY!」

 

ザシュッ!

 

アーカードは突き刺された刃を回避する為に今度こそ刀を鞘から抜刀し、剣を掴んでいるランスロットの腕ごと叩き切る。

 

グチャ

グチュチュッ

 

両者の互いに傷付けた箇所は、ビデオの逆再生のように塞がった。

 

 

「『血液創造(ブラッド・メイク)・レッドハンズ』ッ!!」

 

今度は血液創造で生み出した手でランスロットの腕を拘束する。

 

 

「・・・『Schwert von Dornen(棘の剣)』・・・」

 

シュババッ!

 

「ッチィイ!」

 

だが、ランスロットは腕に纏わり付いた赤い腕を自分の肉から突き出した棘をもって切断する。これではとんだイタチごっこだ。

 

 

「!」

 

その時、アーカードの目線の先に装置が見えた。ランスロットの左胸に取り付けられた核鉄が埋め込まれている古めかしい装置『エンバーミング』が。

 

チャキン

 

彼はこの隙を逃さまいと自分の中で最速の技を放つ為に刀を鞘に収め、構える。

 

 

「花鳥風月流居合『鳴雲雀(なきひばり)』ッ!」

 

ピィイイイイイイイッ!!

 

吸血鬼の特性である怪力無双の力で引き抜かれた刀身は、切っ先から音速を超えた鋭い衝撃波を飛ばした。

 

ザキィインッ!

 

「ッ!!?」

 

メスのような鋭く研ぎ澄まされた衝撃波は、ランスロットの左胸にぶち当たる。加えて衝撃の反動からか。メキメキと骨が軋む音も聞こえ、シュゥウッと煙が立ち込み、苦しそうにランスロットは胸を抑えている。

 

 

「!?」

 

しかし、煙が晴れるとアーカードは目を見開く。止まっていたのだ。

衝撃波が装置に当たる瞬間、身体から棘が突き出して装置を斬撃から守ったのである。

 

 

「SIYYYYYYYAAAAAAAAッ!!」

 

バ―――ンッ

 

ランスロットは駆け飛ぶ。眼前に立つアーカード目掛けて飛んだ。飛んだと同時に棘が彼の背中を覆い尽くし、アーカードの視界を『棘の翼』が包んだ。

それは最早人でなく、魔でなく、昼でなく、夜でもない。

 

 

「WRYYYYYYYAAAAAAAッ!!!」

 

チャッキン

 

アーカードは迎撃しようと刀を駆け飛んで来るランスロットへ向ける。

 

ズッザシュッッ!

 

「あ・・・ガッ!!?」

 

だが、遅かった。

こんま何秒か、それ以下が命運を分けたのであった。

 

バタンッ

 

ランスロットが突き出した剣がアーカードの額を貫き、彼は地に跪いてしまう。

 

ヒュッッッン!

 

額を貫いた剣を握ったランスロットの腕から棘が伸び、アーカードの身体に巻き付いていく。彼の身体を棘が縛り付け、刃を心臓へと運ぶ。

力なく地に沈んだアーカードの表情は、どこか恍惚さが感じられる。

 

 

「・・・」

 

シュボォオオオオオ・・・

 

心臓に向かって刃が進んで行けば、進み行くほどに消滅の炎が彼の身体を包んだ。

 

ボォッ

ボボォオッ!

 

「な、なんだ?!」

 

「も、燃えている!?」

 

王に炎が包まれると芋づる式にその臣下達である亡者達も炎に包まれる。

突然、目の前で謎の援軍が何故か自然発火した事に近くにいた者達に動揺が走った。

 

シュゴォオオ・・・

 

「・・・・・」

 

自らの身体から噴き出す炎を見つめながらアーカードは、無言のままに重くなった瞼をゆっくりと閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『許さない』

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

『・・・熱い・・・・・身体が熱い・・・』

 

棘に締め付けられ、心臓に向かって銀の刃が進む。

意識が朦朧とし、頭の中を闇が覆っていく。

だが、なんと心地の良い事か・・・

 

『満たされる』

空っぽだった胸の奥底が、酒が注がれる杯のように満たされていく。

 

 

『なんて気分が良い・・・・・これが『最期』というヤツか・・・『終わり』というヤツか・・・』

 

どうしようもない眠気が思考を浸す。

焼けただれる肉の臭いが、焦がれる血の香りが、燃え盛る炎のさえずりがドンドン眠気を誘ってくる。

 

 

『よく眠れそうだ・・・グッスリと寝れそうだ・・・』

 

『私』は漸く自らの『生』に決着がつけられる。

ああ・・・なんと度し難い程の心地良さか・・・・・これが私の―――

 

 

 

 

 

 

 

≪―――・・・つまらない・・・―――≫

 

『・・・・・・・・おん?』

 

聞こえて来たのは、ヤレヤレと呆れ果てたように吐き捨てる言葉。

 

 

≪―――つまらない。全くもってつまらないぞ、お前―――≫

 

馴れ馴れしく語り掛けて来るこの声を『僕』は知っている。

 

自分自身の中にある混濁した記憶の中で最も古い記憶。

燃える炎。痛む身体。聞こえてくる悲鳴と断末魔。そして、手から伝わる血液の感覚。

 

 

≪―――あれだけ欲した『生』を、あれだけ望んだ『生』をこんなよくも分からない怪物においそれと渡してしまうのか? だとしたらお前、とんでもなくつまらないぞ―――≫

 

『煩いなあ・・・もう寝かせておくれよ。私はもう眠いんだ』

 

己を憂う力』を『今までの記憶』と引き換えに与えた。僕を『俺』にした謎の声。

『力』の使い方を身体に馴染ませ、力を受け継がせた。俺を『私』に変えた正体不明の声。

 

 

≪―――『眠い』? 馬鹿な事言ってるんじゃあないぜ―――≫

 

「おん?」

 

―――『夢』ならもうとっくに醒めているだろうが―――

 

「・・・・・は?」

 

疑問符を浮かべ、ただ茫然と佇む私の耳にある声が聞こえて来た。

 

 

『助けてくれ』

 

『まだ、生きていたい』

 

『嫌だ、死にたくない』

 

『生きていたい』

 

『生』に固執するみすぼらしい、見るに堪えない、聞くに堪えない言葉が。

 

ふざけるなよ。

私が何人殺して来たと思っているんだ。何百人の肉を喰って来たと思っているんだ。何千人の命を奪って来たと思っているんだ。ふざけるなッ!

それを自分の番が来たと言って『死にたくない』だと? フザケルナ!!

 

私が生きる為に。俺が生きる為に。僕が生きる為に啜って来た命だ、奪って来た命だ、喰って来た生命だ。その罪による罰が今まさに執行されようとしている。

ならば、私はそれを甘んじてこの身に受けよう。それが私の『贖罪』だ。

 

 

「許さない」

 

『え?』

 

その時だ。

見るにも聞くにも堪えない言葉とは全く違う言葉が聞こえて来る。

 

 

「何故そんなにも『死』を望む? それがただの『諦め』だと何故わからない?」

 

「『死』を望むのなら何故あの日、『生』を渇望した?」

 

『それは・・・ッ』

 

憎らしい程に『生』に執着したのは、皮肉にもここで『死』による罰を望んでいる私自身であった。

 

 

「お前は言ったな。『人間でいる事にいられなかった弱い化け物は、人間に倒されなければならない』と」

 

「ならば何故、お前は怪物へと成り果てた者に殺されようとしている?」

 

「許さないぞ。そんな事、お前らしくないだろう」

 

『・・・らしく・・・ない・・・?』

 

「それに・・・それにだ」

 

この声が『誰』の声なのかを私は知っている。

 

 

「愛する家族を」

 

「愛おしくも恋しいあの娘を」

 

「置いていくなんて許さない」

 

紛れもない自分自身の声

『暁 アキト』というあの山羊に拾われた禄でもない化物の声だ。

 

 

≪―――そう。お前の中の『私』が許してもお前の中の『俺』がそれを許さない。お前は『あの日、あの時』から夢なんてものから醒めて、現を歩んでいるのさ―――≫

 

『・・・カカカ・・・♪」

 

笑いがこみあげて来た。

 

 

「そうだ、何を『人間』みたいな事を考えていやがるんだよ。『化物』の癖に何を深く考えていやがるんだよ『俺』は」

 

そうだ、俺は人間なんかじゃあない。『化物』だ。

諦めを踏破し、進みゆく姿に。立ち向かって来る姿に。『憧れ』を抱くただの化物(フリークス)だ。

 

 

≪―――そうとわかれば・・・・・さあ、 踊れ躍れ! まだ怪しげな曲は終わってないぞ? 人外?―――≫

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

「SIYYYYYYYAAAAAッ!!」

 

ズブリ・・・ズブリ・・・ッ!

 

ランスロットは突き立てた剣を心臓へと進ませる。徐々に肉を斬り裂いていく事で、炎の出力は上がっていった。

 

 

『GUAAAAAAAAッ!』

 

ガブリッ!

 

「ッぐ!!?」

 

斬り裂く剣を掴むランスロットの腕に齧り付いた黒い獣が一匹。使い魔の『ニコ』である。

今まで自分の主の心を知って別行動で戦場を疾駆していたが、主の危機を感じ取って駆け飛んで来たのだ。

 

 

『UGAAAAA!!』

 

ニコはワニにも勝る力で顎を締め上げる。厚さ10cmの鋼鉄もひしゃげる勢いでだ。

鋭い犬歯が腕の肉を貫き、バキバキと骨を砕いていく。黒い毛並みに紅の炎が燃え移ろうとお構いなしに。

 

 

「AA・・・AAAAAAA!!」

 

『ガッ!?』

 

それでもランスロットは腕の力を弱める事はない。それどころか、今まで以上に力を込めて刃を心臓へと進める。

『零号解放』で出撃した亡者の河は、一変して紅蓮に燃える炎の海へと変貌した。

 

 

『GUAAッ、GAAAAAAAッ!!』

 

ニコは叫んだ。「主、主!」と叫ぶように吠えた。「起きてください」と唸った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるさいぞ、ニコ」

 

『ワふッ!?』

 

そんな咆哮に答える声がニコの耳に聞こえた。

いつも頭と頬を撫でまわしながら語り掛けて来る自らの主の声が。

 

 

「お前の鳴き声は相変わらずよく響く。まるで目覚まし時計のアラームのようだ」

 

『ガうッ!!』

 

「くッ!」

 

寝ぼけた眼を擦り、アーカード・・・いや、アキトは損傷した手を復元させると自らに突き立てられた剣を掴むランスロットの手を掴んだ。

 

 

「ランスロット。お前に倒されても良かった・・・『あの日』なら」

 

「ッ!」

 

「あの暁に染まる荒野なら・・・あの日なら・・・お前に心臓をくれてやっても良かった」

 

アキトは物寂しそうにランスロットに語り掛ける。

 

 

「でももう・・・最早ダメだ!」

 

バキィイッン!

 

「ッ!!?」

 

突き刺さった剣を砕き、身体に絡み纏わり付いた棘をブチリッと千切ったアキトはニコと共にランスロットと距離をおいた。

 

 

「お前に私は・・・・・いんや・・・俺は倒せない。何故なら、化物を倒すのはいつだって人間だ。人間でなくてはいけないのだ!!!

 

ビシッ!

 

彼は斬り裂かれた傷を復元しながら傷口から『核鉄』を取り出す。取り出されたその核鉄は他の物とは違うある特徴がある。『黒い』のだ。

 

 

「お前を『カテゴリーV』と認識。出し惜しみは無しだ」

 

その核鉄は所謂『黒い核金』と呼ばれる物であり、彼『暁 アキト』が世界中の闇の者(ミディアン)達から異端の吸血鬼と呼ばれるかのもう一つの所以がその核鉄であった。

 

 

 

「武装錬金ッ!!!」

 

キィィインッッ

 

覚悟の声に反応し、起動した核鉄は光を放つ。暖かい『山吹色』の光を。

 

 

WRYYYYYYYAAAAAAAッ!!

 

光はアキトの身体全体を焼き尽くすと吸血鬼独特の白い肌を灼熱の赤銅色へと変化させ、漆黒の髪を蛍火に煌めかせる。その手には大剣のような突撃槍が握られていた。

彼を包む光はまるで『太陽』のようである。

 

 

「ロストナンバーⅢ『サンライトハート』・・・・・推して参るッ!」

 

「『暁の・・・・・アルカード』ォオ・・・ッ!」

 

山吹色の光が納まり現れたのは、陽を纏いし闇者であった。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





遂に自らの武装錬金を現せたアキトッ!
『飛行船事件編(仮)』はいよいよ終盤に!
章の結末は、予想の斜め上をいくあっけないモノにッ!・・・なるだろうか?


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作戦は順調。されどあっけなく




なんだかんだここまで書いて来ましたが・・・

ドン「戦の終盤はいつもあっけないモノであろー」

では、どうぞ・・・・・―――また加筆しました。



 

 

 

「『終わり』であろー、大隊長ッ!!」

 

ドンは防弾ガラスの向こう側に鎮座している大隊長に向かって叫ぶ。

 

 

「最初はどうなる事かとヒヤヒヤしたが、『あの』状態になったアーカード・・・いや、アキトを止める事はエンバーミングを施した者でも最早敵わぬであろーッ!」

 

一人と一匹の前にあるモニターに映し出されていたのは、圧倒的な捕食者(プレデター)の姿であった。

赤銅色の肌に蛍火の髪と灼眼の眼。手にはまるで大剣のような槍を握りしめ、山吹色のエネルギー波を放っている化物が恐れる怪物が、怪物が恐れる化物がそこにはいた。

 

 

「素晴らしい。怪異の王、吸血鬼を越えた吸血鬼。化物の中の化物。我々の思惑なんて、すんなりと飛び越えてしまう存在。『吸血鬼アーカード』と『暁のアルカード』の二面を持つ存在。『暁 アキト』・・・・・彼は素晴らしい! 正に闇の英雄ッ!」

 

自分が一体どんな化物を目覚めさせたのか、理解しているのか理解していないのかどちらとも取れる言葉を並べながら相も変らぬ嫌な笑みを大隊長は浮かべている。

 

 

「だからこそ・・・英雄の末路はあっけない

 

「なにッ!?」

 

パパッン

 

大隊長はリモコンのスイッチを押すと他の情景がモニターに映し出された。

 

 

『MYAaaU・・・』

 

「あ・・・アレはッ、『アヤツ』はッ!!?」

 

そこには何処かのビルの屋上で舌なめずりをする少女のような少年、少年のような少女の姿をした『猫』が立っている。また、別のモニターには矢印の形をした血の線が『ある場所』に向かって伸びていく映像だった。

 

 

「この『血の矢印』は彼の兵だ。彼の城壁だ。それらを持って、彼はまた城壁を築きはじめた。私の勝ちだ

 

「まさか貴様?!」

 

ドンは大隊長の恐ろしい魂胆を理解した。頭ではなく、心からそれを理解したのだ。

 

 

「彼のあの状態での固有能力『エネルギードレイン』・・・・・周囲に存在する生物から生命エネルギーを奪い、自らの糧とする。これで彼は、彼単体で不死身の身体を得た。だが、『中身』はどうだろうか?」

 

アキトは、その場に存在するだけで周りの生命エネルギーの象徴である『血液』を取り込んでしまう。自分の意志とは関係なく『命』を取り込んだ彼は、『零号解放』以前よりももっと強大な吸血鬼となるであろう。しかし・・・

 

 

「その兵を戻し、再び城壁を築き上げていく最中に『異物』が紛れ込んだらどうなるだろうか? 『どこにでもいて、どこにもいない』という者の血が紛れ込んだら一体どうなるんだろうか?」

 

モニターに映ったその能力を持つ『シュレディンガー准尉』こそが、大隊長が切り札としている者であった。

エネルギードレインで喰らう大量の(いのち)にシュレディンガーの血が紛れ込み同化すれば、アキトは『どこにでもいて、どこにもいない』能力を得られる。だが、それは自らに取り込んだ幾百万の命の中で、自身を認識する事ができないという事だ。

そうなれば、彼は生と死という二つの矛盾する性質が混じり合っている中で己の存在を確立できない虚数の塊となって消滅してしまうのである。

 

 

「私は彼をはなから人だなどと思っていない。いや、むしろ吸血鬼とすら思っていない」

 

大隊長はクツクツと三日月に口を歪めながら語っていく。

 

 

「彼は城であり、彼は運動する領地だ。暴君の意志が率いる死の河という領民達だ。倒すにはどうすればいい。屠るには何をすればいい。私は寝ても覚めてもそればかり考える。それが私の、たった一つの戦争のやり方だからだ。戦争、戦争だ。彼と私との。全身全霊で戦わねばならん。私には何がある? 彼には何がある?」

 

己が掌を見つめて、彼は尚も語っていく。

 

 

「体を変化させ、使い魔を使役させ、力をふるい、心を操り、体を再生させ、他者の血をすすり、己の命の糧とする。それが吸血鬼(かれ)だ。私には何もない。なぜなら私は『人間』だからだ」

 

自らが何の施術も受けていない正真正銘の『人間』である事を吐露しながら、彼は見つめていた手を組む。

 

 

「きっと吸血鬼になれば素晴らしいのだろう。無限永久に生きて、無限永久 戦い続けられれば、それはきっと歓喜なのだろう。だが・・・私はそれはできない。それだけは決して・・・」

 

大隊長は羨んでいたのだろう。人間を越えた存在を、人を超越した存在を。しかし、それでは反するのだろう。己の『意志』に反するのだろう。

 

 

「全ては準備だ。この瞬間の為に何もかもが、この時のためにあったのだ。彼が『高速術式・零号』を開放し、全ての命を放出し、彼が『彼の城にただ一人』となった時にあの騎士は彼の者の心臓に剣を突き立てるだろうか? 私は『否』だと思う」

 

だからこそ彼は『人』として戦うのだろう。化物としてではなく、一人の人間として化物を指揮して彼を倒そうとしている。

 

 

「彼は、彼一人でも恐ろしい吸血鬼だ。たった一人で人間を震え上がらせた男だ。たった一人で化物を震え上がらせた男だ。そして再び彼が血を吸い始めれば、それでもう全て台無しだ。何というズルだ、何というチートだ。生も死も全てペテン。今がまさにその最中」

 

『戦争』という手段を用いて、一つの目的に向かって作戦を進行させている。

 

 

「そんな狂王を殺すにはどうしたらいい? 戦場で十重二十重の陣を踏み破り、無限に近い敵陣を滅ぼして首級を上げるか? 『否』ッ! 彼は再び血を吸うだろう。大飯喰らいの王様だ。その彼の最大の武器が、彼の弱点でもある。」

 

幾百、幾千、幾万の骸の上に成り立つ周到に準備された作戦。その作戦を今まさに決行しようとしている。

 

 

「古今東西、暴君は己の倣岸さ故に毒酒をあおる」

 

大隊長の言葉と共にモニターに映るシュレディンガーは、腰に提げていた近接戦闘用のナイフを取り出し、その根元を頸動脈に押し当てた。

後はこれを引き裂く事で彼女のような彼の首は麩菓子のように断ち切れ、肉塊と成り果てた体から血を吹き出しながら下に流れる血の河に落ち込むだろう。

 

 

王手(チェック・メイト)。お前の負けだアーカード・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・シャシャシャ・・・」

 

「・・・んン?」

 

大隊長が勝ち誇った笑みで最後の作戦執行に合図を出したというのに目の前のドンはほくそ笑んだ。不気味に面白可笑しくいつものような独特の笑い声で、笑った。

 

 

「なにが可笑しいのかね? ドン・ヴァレンティーノ?」

 

これには笑んだままだが、大隊長も眉をひそめる。

 

 

「大隊長・・・確かに貴様の言うようにアキトは、とんでもない化物であろー。アレを倒すのに我等ファミリーがどんな手をも使い尽くして、やっと仕留めた大物であろー。そして、ファミリーに入ってからも幾千、幾万もの命を啜って来たであろー」

 

ドドドドドドドドドドド・・・

 

ドンは自身特有のオーラを身体に纏わせながら語っていく。

 

 

「でもなァ、大隊長。アヤツは幾千、幾万もの命を奪って来たように同じ幾万もの命を救ってきたのであろー」

 

「?」

 

「まだ分らぬのか、大隊長? つまり・・・この戦場にアキトに『借り』がある者がいるというわけであろーッ!!」

 

「まさか・・・ッ!?」

 

大隊長は失念していた。

この戦場には『4年前』、アーカードと同じくレギオンに大打撃を与えた錬金術師がいる事を!

 

 

「すみませんね、戦争狂の大隊指揮官殿。私も一応、彼には借りがある(I owe him)もので」

 

ボッン!

 

「ぎニャッ!?」

 

首に押し付けたナイフを今まさに引こうとした瞬間。冷淡でどこか聞き覚えのある声と共に小さな爆発が起こり、シュレディンガーの持っていたナイフが弾け飛んだ。

 

 

「・・・ククク・・・そうか、君か・・・『君達』か」

 

新しくモニターに映ったのは、季節外れの所々焼け焦げた白いコートに少し焦げた白いハットを身に纏った紅蓮の錬金術師『ゾルフ・J・キンブリー』が立っているではないか。

 

 

「ニャオン!!」

 

「逃がしはしませんよ、迷い猫(ストレイ・キャット)?」

 

ジャラララララッジャギンッ!

 

「ギにゃグ!!?」

 

逃げようとするシュレディンガーにキンブリーが指を鳴らすと銀色に光る手錠と鎖がシュレディンガーの手首にはめられ、身体を拘束する。

 

 

「現行犯だ、猫!」

 

「ハァ・・・ハァ・・・あ、あなたを逮捕します!」

 

その鎖の手綱を操るのはブラックスーツに身を固め、ヒィヒィと息を切らす部下『剣持』を従える警視庁随一の鉄人刑事『荻野 邦治』であった。

 

 

「大隊長・・・貴様が倒そうとしたアヤツが、ここにいたのならこう言ったであろー・・・」

 

ヴァレンティーノファミリーが頭目、ドン・ヴァレンティーノは大隊長に向かってこう言い放った。

 

 

「『相手が勝ち誇った時、そいつは既に敗北している』・・・であろー」

バ―――――――ン

 

 

「・・・・・ククク・・・クハハハッ・・・アーハッハッハッハッハ!!」

 

「あろ?!」

 

渾身の決め姿で言い放つドンに対して、パチパチと大隊長は大手を振って拍手しながらゲラゲラと笑い出した。

いつもとは違う嫌に歪めた三日月の笑みではなく、何でもないような高笑いをする。

 

ドグォオンッ!

 

「ドンッ!!」

 

すると二人の後ろにある扉を赤毛の吸血鬼『シェルス』が自らの武装錬金、バルキリー・スカートでぶち抜いて突入してきた。

 

 

「シェルスッ、無事であったか!」

 

「おおッ、これはこれは峯麗しき吸血鬼のお嬢さん。君がここに来たという事は・・・大尉は逝ってしまったのかね?」

 

突然の来訪者を気にも留めずに彼は喜々とした眼で、されど寂しそうな口調で彼女に語り掛ける。

 

 

「ええ。死にたがりの戦争の犬(ウォー・ドッグ)なら、アンタ達の金庫で炎に包まれているわ」

 

「そうか・・・・・こんな美人と戦えたのだ。羨ましい限りだよ・・・」

 

ドンを庇うシェルスの返答に大隊長は嬉しそうにほほ笑んだ。

 

 

「大隊長。もう、今度こそ終わりであろー! 機会は永久に近く失った。千載一遇の・・・『吸血鬼アーカード』を物理的に打倒するたった2つの好機を失ってしまった。貴様らレギオンの4年は・・・いや、貴様の人生は『今』ッ、『台無し』になった。貴様の負けであろー!!」

 

「ククク・・・」

 

ドンは再度言葉を投げかけるが、相変わらず彼はほほ笑むままである。これにはドンもその笑顔を不気味に思う。まるで「これで良かった」とばかりの笑顔に。

 

 

「何が可笑しいであろー?!」

 

「ククク・・・ああ、そうだとも私の負けだ。私の負けだとも・・・だが、これでいいのだカチリッ

 

ボグォオオッッン!!

 

「「なッ!!?」」

 

大隊長はリモコンの髑髏マークの入ったスイッチを押した。

押すと共に至る所から地響きが大きく唸りを上げ、火柱を噴き出す。

 

 

「大隊長ッ! 貴様一体何をしたであろー?!!」

 

「ドン・ヴァレンティーノ。君は素晴らしい山羊だ」

 

動揺し、怒号にも似た言葉を投げ掛けるドンに構うことなく、大隊長は語り出していった。

 

 

「力だけの『獣』に心を与え、理性ある『化物』へと育て導いた・・・文字通りの迷える子羊を導く山羊だ。()()()()真祖とは全く違う真祖を育て上げたのだよ、ドン・ヴァレンティーノ」

 

「な・・・何を言っているであろー・・・ッ?」

 

まるで何を言っているのか、ドンはさっぱりわからない。目の前でガラス越しに語っている男の言葉に頭が追い付かない。

 

 

「真祖・・・『Dracula』ッ・・・『Alucard』!」

 

「なに! どういう事であるかシェルス?!」

 

「『ドラキュラ』の逆読み」

 

「ッ!」

 

吸血鬼であるシェルスには何となく理解できた。『アーカード』の逆綴り、それが『真祖(ドラキュラ)』を示している事を。

 

 

「そうだ、そうだとも。私はアーカード・・・あのお方を本気で倒そうとした試練なのだ」

 

「試練?」

 

「そう試練だ。彼が『今代の真祖』に相応しいかの試練。それがこの私と戦争だ」

 

彼は二ヤツいた笑みを惜しげもなく披露し、言葉を並べる。

 

 

「先代達・・・例えを上げるならば、『ヴラド』は国の為に真祖に成り得た。『エリザバート』は美しさの為に成ってしまった。ならば、彼は? 『暁 アキト』はどうして真祖に成り果てた? 一体何の為に?」

 

大隊長はアキトを初めて見た時から疑問に感じていた事があった。

 

 

「『4年前』の彼は真祖であって、真祖ではなかった。彼の言葉を借りるなら、『出来損ないの真祖』だった」

 

それでもアキトは強かった。出来損ないでも真祖の力を()()()()()()()化物だ、倒せなかった。いや、敢えて()()()()()()

 

 

「私は彼を見てみたくなった。彼が本物の真祖になった姿を! そして、今わかった! 彼は君達と君の為に真祖へと至ったのだとッ!! 私の二十年は無駄ではなかったのだと!!!」

 

ドゴォオオッッン!!

 

「あろッ!?」

 

「ドン!」

 

爆発は三人のいる指令室まで舞い込み、炎が周りを包む。もうすでに火の手は飛行艦全体を包もうとしている。

 

 

「ドン、もうそろそろここも持たないわ! 早く脱出しないと!」

 

「しかし!」

 

ドンは大隊長の方を見るが、彼は笑顔のまま声を発さずに口を動かした。『早く行け』と。

 

 

「ドン!!」

 

「くッ! わかったであろー!!」

 

バサァアッ

ダン!

 

シェルスはドンを肩に背負うと紅に染まった翼をはためかせ、天井を突き破って行った。

 

 

「行きましたね」

 

飛び立った二人を眺める大隊長の後ろに現れたのは、複眼のような奇妙なメガネをかけたレギオンの科学者『ドクトル』。彼の着ている白衣は所々焦げており、手にはブランデーの入った小瓶と二つのグラスを持っている。

 

 

「いやぁ。ここに来るまでに火の手がすごくて、お気に入りの一張羅が焼けてしまいましたよ」

 

「おお、それは済まなかった。なにぶん気分が高まってしまってな。あんな光景に魅せられたからといって、『自爆スイッチ』を押すのは軽率な行為であったよ」

 

「まったく、お茶目さんなんだから~」

 

彼は大隊長にグラスを渡すとそれにブランデーを自分のとあわせて注いだ。

熟成された芳醇な香りが炎の黒煙と共に立ち込める。

 

 

「ほぉ、アプリコットか・・・」

 

「はい。お好きでございましたでしょう?」

 

「流石はドクトルだ。乾杯」

 

「乾杯」

 

二人はグラスの酒を呷り、深々と息を吐く。炎はあっという間に二人を取り囲んでギィギィと嫌な音を発てている。

 

 

「もうすぐ日の出か・・・その前には焼け落ちるだろうな。どうだドクトル、君だけでも逃げないか? 逃げて、研究を続けると良い」

 

「それは出来ません。大隊長を置いて私だけ逃げおおせるぐらいならば、頭に鉛玉を喰らいましょう」

 

「ククク・・・嬉しい事を言ってくれるな」

 

「それに私ではあの研究は完成しません」

 

「ふむ。それは何故だ? 君は天才だろうに」

 

「『天才』だからです」

 

「ん、どういう事だ?」

 

大隊長はドクトルの言葉が引っかかり、グラスを傾けるのを止めた。

 

 

「かの有名な偉人がこう残しています。『馬鹿と天才の違い。それは前者に限度はないが、後者には限度がある』。ですから私は馬鹿にはなれません」

 

「ハッハッハッ! なら、もう()()()のか?」

 

「ええ、送りました。『アレ』と共に送りました。きっと・・・きっと誰かが私の研究を引き継ぎ、『奇跡のような化学を科学のような奇跡』を実現してくれるでしょう」

 

「そうか、そうか! ハッハッハッ!」

 

ご機嫌な彼らはグラスの中身を空にするとブランデーをまた注ぐ。

 

 

「ドクトル・・・『今回』はどうだった?」

 

「良かったです。『良い戦争』でした。大隊長は?」

 

「勿論・・・『良い戦争』だった・・・とても良い、戦争だった・・・」

 

ドボォグォオオオオオッッン!!

 

大隊長の呟きと共に指令室の天井が落下し、大規模な爆発が巻き起こる。

紅蓮の炎が舞い上がり、辺りを焼き尽くすと痕に残ったブランデーの小瓶がピシりと音を立てて砕けた。

 

 

 

―――――――

 

 

ドグォオオオッオオンッ!!

 

「ああ・・・ッ!」

 

鮮血に染まる戦場に白い白鯨の断末魔が響き渡る。

吸血鬼の大隊(ヴァンパイア・バタリオン)の大型戦闘飛行母艦デクス・ウクス・マキーネ号が轟音を上げながら、死に体と成り果てた吸血鬼兵達の目の前でその生涯を終えたのだ。

 

 

「大隊長・・・ッ・・・」

 

その艦が堕ちるという事はどういう事なのかをその場にいた憲兵少尉並びに自衛隊の面々と戦っていた吸血鬼兵達はすぐさま理解した。

 

 

「もう終わりだ・・・人に仇名す化物よ!」

 

「ハァ・・・ハァ・・・ッ!」

 

「フゥ・・・フゥ・・・!」

 

燃える艦を見つめる憲兵少尉の前にいる剣士、藤堂鏡志朗が叫ぶ。彼の身体は返り血と硝煙の香りに包まれ、憲兵少尉との戦闘で左腕を折られている。そんな藤堂の両脇には息も絶え絶えながらも得物を構える眞田兄弟もいた。

 

 

「貴様らの城は落ちた、あのイカれた男も冥土へ至ったろう。貴様らの負けだ! 貴様らの夢は遂に潰えたッ!」

 

「「ウオヲオオオッ!!」」

 

ザグッッ!

 

この隙を見逃すまいと化物と成り果てた憲兵少尉の横腹を眞田兄弟は得物で貫く。確実に二人の刃は体内の内臓を抉り、心臓をを串刺しにした。

 

 

「・・・ククク・・・ハハ・・・ハッハッハッ!」

 

「「ッ!?」」

 

しかしそれでも憲兵少尉は生きていた。

彼は肉を貫かれた事で表情を苦悶に歪める事も、断末魔を上げる事もない。それどころか、何だか楽しそうに朗らかな笑い声を上げる。

 

 

「・・・酷い御人だ。私よりも先にヴァルハラへ逝くとは・・・酷い隊長様だ・・・」

 

「マズイ! 離れろッ!!」

 

バキィイッ!

 

「「ゲふぁッ!!?」」

 

藤堂の声も虚しく、憲兵少尉は二人の腹に拳をめり込ませる。至近距離から放たれた吸血鬼の剛腕は少尉が弱っているとはいえ、二人の肋骨をへし折って吹き飛ばす位には十分であった。

 

 

「眞田!!」

 

「余所見とは頂けぬなァア!!」

 

ガキィイッン!

 

藤堂は少尉からの攻撃を自らの武装錬金で受け止める。金属が激しく当たる事で火打ち石のように火花が出た。

 

 

「極東の戦士よ・・・死に体の私に貴様は上等であった。感謝するぞ!!」

 

「ならば、その情念を抱いたまま・・・討ち果てろッ!!」カチッ

 

ガシュウゥゥウッ!!

 

藤堂の武装錬金『サムライソードX』は今までの戦闘で蓄積した疲労をエネルギーに変換して放出できる。

最大出力で放出されるエネルギーは少尉の身体を包み込み、細胞核の一片に至るまでをも焼き尽くしていく。

 

 

「クハハハ! ひゃハハハハハッ!!」

 

そのエネルギー波に飲まれる少尉は、姿形がなくなるまで歓声のような笑い声を戦場にどこまでも広く響き渡らせた。

 

 

「笑って逝くか・・・貴様ら化物は・・・どこまでも・・・ッ!」

 

命果てていく少尉の姿に藤堂はどこか哀愁を感じた。

 

もうすぐ夜が明ける。

東の最果てが、暁に染まっていっていた。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 







次回:『決着を着けようぜ。この戦いの決着をよ―――ッ!』


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惨劇の終わり




まず最初に・・・
一か月もの間放置しており、大変申し訳ございませんでした。
しかし、それでもこの『人外になった者』にお付き合い頂き、お気に入りが500件突破という事に驚きと途方もない感謝をしています。どうもありがとうございます。

では、どうぞ・・・・・



 

 

 

東の彼方が暁に染まる頃。

鮮血と流血と腐血に描かれた戦場へ一人の化物が推参した。

 

 

「WRYyy・・・」

 

その化物の髪は蛍火のように煌めき、肌は赤銅色に燃えていた。

その化物の眼は紅蓮に冷え切り、鋭利な牙がガチガチと音を発てていた。

そして・・・その化物の手には槍が握られていた。

 

その槍は鉄塊と見間違う程に大きく、大剣と見間違う程に鋭利であった。

槍は銀の光沢を纏い、山吹色の輝きを放っていた。

その輝きは正しく太陽のようであった。太陽そのものであった。

 

 

「SIyaa・・・」

 

それと対を為す様に、化物の眼前には怪物がいた。

 

その怪物の衣は鮮血に染まり、身体は流血に彩られていた。

その怪物の眼は蒼炎に熱せられ、噛み締められた歯がギリギリと音を発てていた。

そして・・・その怪物の全身には無数の棘が巻き付いていた。

棘は魂を削りながら、赤く咲き誇っていた。

その様は奇しくも薔薇のようであった。薔薇そのものであった。

 

そんな二人の周りを激闘を物語る炎が、犠牲となった人間と化物達の屍が、血だまりが囲んでいた。

 

 

 

「あア・・・KUAAAAAAAaaaッ!!」

 

ダッッ

 

化物は槍の切先を怪物へと目掛けて駆け抜ける。

 

 

「AAAAAAAAAAAッ!!」

 

シュバババッ

 

怪物は鋭く研磨された棘を向かって来る化物へと差し向ける。

しかして化物は差し向けられる棘に躊躇する事もない。

皮膚を引き裂かれようと、筋肉を貫かれようと、骨を砕かれようと、臓器を潰されようとも止まる事はない。

 

何故なら皮膚が引き裂かれれば、引き裂かれた処から・・・

何故なら筋肉が貫かれれば、貫かれた処から・・・

何故なら骨を砕かれれば、砕かれた処から・・・

何故なら臓器を潰されれば、潰された処から・・・

 

戦場にて散った人間のを口から、鼻から、眼から、耳から吸収し尽くす事で回復した。

戦場から逝った化物のを手から、足から、毛から、爪から喰らい尽くす事で修復した。

その内に化物は鬱陶しくなったのか。向かって来る棘を槍で斬り払い、押し潰し、引き千切りながら進んで行く。

 

 

「WRyYYAAAaaaッ!」

 

化物は断末魔のような鬨の声を響かせ、渇望のような絶叫の声を轟かせる。

闘争から闘争へ。

一目散に怨敵へと向かうその姿と形相は余りにも『恐ろしく』。余りにも『滑稽』で。余りにも『哀れ』で。余りにも『美しい』ものであった。

 

ズブシュゥウウッッ!!

怪物に近づいた化物は自らの腕を其の胸へと突き刺さし、ブチブチと嫌な音を点てながら人体の組織を引き裂く。すると其の掌の中には六角形の鋼の塊が掴まれていた。

 

 

「RYyyyyy!」

 

バギィイイッ!!

 

化物はその鋼を粉々に握り潰す。化物の・・・吸血鬼の力で破壊された鋼塊は、木端微塵に四散した。

 

 

「・・・ッ・・・!」

 

ドタッン・・・

 

弱点である術式中枢を破壊された怪物は、糸を切られた操り人形のように地へと力なく倒れる。

 

 

「ハァ・・・ハァッ・・・ハァ・・・ッ!」

 

「・・・・・」

 

終わった

4年前から続いていたガキみたいな化物同士の喧嘩が今この時、漸く終止符がうたれたのだ。

それなのに・・・

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・・・っく・・・」ギリリッ

 

化物の表情は優れなかった。それどころか、歯噛みをして『悔しい』顔をしていたのだ。

怨敵である筈の怪物に勝ったというのに、決着を着けたというのに、化物は今にも泣き出してしまいそうだった。

 

 

「・・・お前は・・・()()()()()()()!!

 

悔しくて、悔しくて。悲しくて、悲しくて。哀れで、哀れで。そして、なによりも美しいその怪物の姿に化物はそう叫ばずにはいられなかった、そう嘆かずにはいられなかった。

 

 

「お前は『俺』だ・・・俺もこの通りの『()()』だった! 俺もこの通りの『()()』だったんだ・・・ッ!!

 

化物は静かに泣き叫ぶ。

地面に膝つき、大粒の血の涙をボロボロと流す顔を両掌で覆う。

 

 

・・・ッハッハッハ・・・

 

「ッ・・・!?」

 

其の時だ。静かに咽び泣く彼をあやす様な声が耳に聞こえて来た。

その声を化物は知っている。

 

 

「ラ・・・『ランスロット』・・・ッ!」

 

声の主は、化物の前に仰向けで倒れている怪物・・・『スカー・ランスロット』。彼は身体を斜め左右に斬壊されても尚、まだ息があったのだ。

ランスロットは息も絶え絶えに言葉を紡いでいく。

 

 

『鬼』が泣くなよ・・・鬼が泣くな・・・・・」

 

「・・・ッ・・・」

 

化物は声を聞くと血涙を拭って立ち上がり、彼の空虚な眼を覗いた。

 

 

「泣きたくないから・・・『鬼』になったのだろう? 人は泣いて・・・涙が枯れ果てるから・・・『鬼』になり、『化物』になり果て・・・『成って果てる』のだ・・・ッ」

 

「・・・ならば・・・・・ならば、どうしろと・・・どうしろというのだッ?」

 

「・・・『笑え』

 

「ッ!」

 

「傲岸に、不遜に笑え・・・明朗に、快活に笑え・・・いつものように・・・・・『あの人』のように・・・」

 

「・・・・・あぁ・・・」

 

ランスロットの言葉を受けた化物は微笑む。彼がよく見えるように。

化物が微笑むのを確認したランスロットの身体は徐々に崩れていく。活動限界が間近に迫ってきている証明だ。

 

 

「俺はもうすぐ逝く・・・・・だが・・・その前に・・・聞きたい事・・・がある・・・」

 

「なんだ・・・?」

 

「何故・・・あの日、あの時・・・あの人を・・・中尉を・・・・・『リップヴァーン・ウィンクル』を・・・どうして喰わなかったんだ・・・?」

 

「・・・それは・・・・・ッ」

 

化物はランスロットの問いに口籠もるが、答えは決まっている。『あの日、あの時、あの瞬間』からその答えは確実なものであったからだ。

 

 

「・・・それは彼女が『敬意』を持って『惨殺』した『愛しき敵』であったからだ。その姿が余りにも美しかったからだ・・・だから喰わなかった。・・・・・お前もそうだッ。お前も俺の『愛しき怨敵』だ」

 

「・・・そうか・・・そうか・・・・・ならば・・・頼みがある・・・『太陽の心臓』を持つ者よ・・・俺を・・・俺を・・・ッ」

 

「・・・・・あぁ・・・」

 

朽ち果てては崩れゆくランスロットの言葉なき頼みを受け取った化物は、携えた槍を天高く掲げると詠唱を綴り始める。

 

 

「『この槍は太陽の憑代。安らぎを与えたる魂の心槍。我が愛しき敵よ。貴殿を久遠の穏地へと還す其の名は―――』」

 

すると掲げた槍が山吹色の温かな光をもっと強く放ち始めた。

その光の中にランスロットの瞳は、先に逝った仲間達と想い人の顔がうつる。

 

 

「・・・あぁ・・・ただいま・・・皆・・・・・随分と・・・待たせたね・・・」

 

「『―――太陽の心槍(サンライトハート)』」

 

シャッァァアアアッッン・・・!

 

掲げた槍をそっと寄り添わせるとランスロットの身体は温かな山吹色の炎に包まれ、燃えていく。

そのままランスロットは、安らいだ表情のままに燃え尽きて行った。

 

 

―――ありがとう・・・アルカード―――

 

宿敵に恩義を伝えて・・・

 

 

「あぁ・・・宿敵よ、いずれまた・・・・・」

 

ヒュォオオ・・・

 

燃え尽きた灰を吹き散らす一陣の風が戦場に吹きすさぶ。

奇妙な友情を悠久の彼方へと運ぶように。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「アキトォオ! どこであろー!!」

 

爆発炎上する飛行大型戦艦デクス・ウクス・マキーネ号から脱出したヴァレンティーノファミリーが頭目『ドン・ヴァレンティーノ』は、共に突撃&脱出を果たした吸血姫『シェルス・ヴィクトリア』の背に乗っていた。

 

 

「あろォオオ!! 返事をするであろーッ!」

 

「泣かないでよ、ドン。鼻水が服に付くじゃあないッ」

 

「返り血満載の服に今更であろー! それよりもアキトはどこであろー!! 無事なのであろー?!!」

 

「喧しい! 今、探しているわよッ!・・・けど、アキトの気配がそこら中に溢れてわからない・・・!」

 

戦場と化した街には彼方此方で『零号解放』によるアキトの気配が蔓延しており、その中から本体である彼を探すのは至難の業である。

 

 

「あの・・・あのバカッ! 一体何所をほっついているのよ?! 本当にあの馬鹿野郎はッ!!」

 

「(涙目で今の台詞を叫んでも、ツンデレなだけであろー」ボソッ

 

「あ”ァ”? 何か言ったの、ドン?」ギロリッ

 

「な、なんでもないであろー!!・・・って、アレは何であろー?」

 

「え?」

 

ドンは未だ炎が燃える戦場の遠方に動く何かを確認する。其れは山吹色に光り輝く人並み大の球体であった。

 

 

「まさか・・・ッ!」キュッ

 

「ちょッ、シェル―――」

 

ダッンッッ

 

ドンの言葉も聞かず、シェルスは凄まじい勢いで駆けだす。背中からドンが落っこちようと関係なしに。

シェルス自身、炎上する戦艦内でとんでもない化物生物との戦闘で疲弊していた。しかし、今の彼女はそんな事など忘れさっていた。

 

 

「このッ!」

 

ズブリッ!

 

球体へと近づいたシェルスは其れ目掛けて手刀を突き刺し、ブヨブヨとした球体の表面を引き裂くとドロリとした血膿のような生臭い液体が流れ込んで来た。

 

 

「アキト・・・アキトッ!」

 

流れ込む血膿にホンのちょっぴりのデジャヴを感じつつも、シェルスは血膿を掻き出す。さすれば、球体の奥底から真っ白な顔をした想い人の顔が出て来た。

 

 

「・・・あ・・・・・おん・・・ッ?」

 

「アキト! 大丈夫なのアキト?!!」

 

「そう・・・やいやい言わねぇでくれよ・・・()()()だろう・・・」

 

「え・・・なッ!?」

 

アキトはそう言うと左眼辺りが、急に焼け爛れる。それは武装錬金使用の『後遺症』であった。

 

 

「ど・・・どうしてッ・・・!?」

 

普段の万全の状態ならば、自身の武装錬金の使用で後遺症は出ない。しかし、ニューヨークでの激闘並びにランスロットとの戦闘で途中、血液を摂取しようとも彼はかなり疲弊していた。

その状態で武装錬金を使ったものだから、ランスロットを見送った後に太陽と同じ波長を持った自らの槍で身を焦がされたのだ。

 

 

「心配すんな・・・少し休んだら・・・大丈夫だ」

 

「で、でも・・・」

 

「カカッ・・・泣き顔も可愛いな・・・」

 

彼女の眼に一杯に溜まった涙を人差し指で拭い、ペロリと其れを舐める。口に含んだ涙は薄荷のように清々しく身に染み渡っていった。

 

 

「・・・美味い・・・君の涙は、透き通るように甘いな・・・血とはまた違う美味なるモノだ・・・」

 

「・・・・・馬鹿・・・ッ」

 

「すまんすまん・・・・・終わったのか?」

 

「ええ・・・終わったわ。・・・そっちは?」

 

「・・・終わったよ・・・やっと・・・・・やっとな・・・」

 

「・・・そう・・・」

 

アキトの言葉にシェルスは静かに答える。

それだけで十分伝わった、それだけで通じ合った。血を吸い合った仲だけに余計に。

 

 

「なぁ・・・シェルス・・・ッ?」

 

「ん?」

 

「家に・・・家に帰ろう・・・・・俺達の家にさ・・・」

 

「ええ・・・帰りましょう、私達の家に・・・」

 

戦場と成り果てた街に朝を告げる本物の太陽が顔を出す。

 

こうして後に『飛行船事件』として語り継がれる惨劇は、終わりを告げる。

 

皮肉にもその日は、今回の騒動の発端となった発明品である世界初のIS(インフィニット・ストラトス)『白騎士』が出現した『白騎士事件』が起こった日であった。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





これからもどうか、今作をよろしくお願いいたします


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ラウンド・モンストローズ




『人外になった者』よ! 私は帰って来たァアアッ!

約半年ぶりの投稿に待ってくれていた方も、そうじゃない方も、お待たせいたしました! 新話投稿ですッ!

今回は久々に登場するキャラもいれば、新キャラも出します。
では、どうぞ・・・・・



 

 

 

「・・・やってくれたな・・・」

 

豪華絢爛のシャンデリアが輝く洋室間。その中央の円卓席に腰かけた一人の男が眼前に吊り下げられているモニターを見て呟く。

そのモニターには、常人には耐え難い余りにも凄惨な映像が映し出されていた。

 

 

「やると思っていたが、まさかこれ程とは・・・」

 

「しかも、よりにもよって不可侵領域である『()()()』に仕掛けるとはのぉ・・・ッ」

 

男の隣にいる他の人物達も口々に呟く。

呟きは風の音に掻き消えてしまいそうな程に小さいものであったが、その一つ一つに焦燥や怒り等の感情が織り交ぜられていた。

 

映像が切りの良い所まで移されるとモニターは天井部へ収納されていき、同時に円卓の一人の金髪の男が立ち上がる。

男は何とも古めかしい中世ヨーロッパの軍服を身に纏い、水晶のような美しい『赤い眼』を持っていた。

 

 

「今の映像は数時間前に起こった『かの国』での惨状だ。我が手の者が先程、大方の情報と共に送付してくれた。『ヤツら』は半島から30マイル北へ武装飛行船で進撃し、その先で待ち構えていた自衛隊と交戦。三時間後、自衛隊に合流した『彼』と『彼の軍勢』によって『殲滅』された」

 

「被害程度は?」

 

「ヤツらは進撃時、大量破壊兵器の投下や地上部隊による破壊活動を行っている。しかも破壊行為によって出た犠牲者を喰らい『屍喰鬼(グール)』にもしている為、死傷者数は推定で一万から二万・・・それに連なる被害者数も合わせると数十、数百万人はくだらないだろう・・・」

 

情報を聞いて、円卓の面々は泥にでもなったかのようにドンヨリとした雰囲気(ムード)に包まれた。

だが!

 

 

「?。なにをそんなに落ち込んでいるの? 高々、『家畜』が幾らか死んだだけじゃあないの

 

『『『ッ・・・』』』

 

あっけらかんした声が部屋に木霊し、円卓に坐した皆の視線が声の主に注がれる。

視線の先には、一本一本が純金で出来たような美しい髪に宝玉のような艶めかしい琥珀色の眼を有し、露出多めのドレスを身に纏う容姿端麗な『吸血鬼』がいた。

 

 

「『レイズナー卿』・・・・・あまりそういった発言は控えて頂きたい! 今はこの大事に対処する為の会合なのですぞッ」

 

「?」

 

金髪の男の言葉に彼女、『リディア・L・レイズナー』は『何言ってるんだコイツ?』みたいな表情を浮かべ、周りは『またかよ・・・』と呆れたように溜息を吐いた。

 

 

「レイズナー卿、いくら貴女が『あのお方』の末裔であっても、先のお言葉は看過できぬッ。状況を考えてもらわないと困るぞ!」

 

「いや、レイズナー嬢の言う事にも一理ある。何故に我々があのような下等生物に下賜づけなければならぬ?」

 

「何を言うか! 此度の一件で『(あちら)』と『(こちら)』の均衡が崩れてしまうどころか、かの国との『友好関係』が破棄されてしまうのかもしれんのだぞ! 『出来損ない風情』のせいでッ!!」

 

「どうした? 何をそんなにも熱くなっている『アルチェーリ』卿? そう熱くなるのは、自らの立場が危うくなるからか?」

 

『『アンヘル』・・・ッ! 貴様ァ・・・!!』

 

レイズナーの一言から、円卓は真ん中から陣営を分け隔てて騒ぎ始めた。

中には議論に熱くなって、偽装した人間の仮面から本性を溢す輩まで表す始末。

 

 

「・・・止さないか」

 

『『『!』』』

 

そんな中で円卓中央に坐す初老の人物が声を発した。

すると激しく繰り広げられていた議論がピシャリと止まり、皆の視線がその人物へと注がれる。

 

 

「今は内輪揉めをしている場合ではない、此度の一件はアメリカとかの国だけでは済まぬのだ。かの国での一件から、数時間と経たぬ間にアジアならびにヨーロッパでも組織的な武装蜂起が起こった。そして、そのどれもが『あの男』の息の罹った兵が先導している始末。・・・・・『長老(エルダー)』達も即座の解決を求めている」

 

「しかし・・・それは難解ではないだろうか? ネットやその他メディアでは、もう既に大きく取り出されている」

 

「それをどうにかするのが貴殿の役目だ『シュマイザー』卿。今回の一件を()()()()()に、()()()()()()()()()()()()()

 

「・・・ふへッ!? ま、待て待て待て、待ってくれ『ウルフガング』卿ッ!! 」

 

初老の銀髪灼眼の人物『ジルベルト・R・ウルフガング』の言葉に『ゲルベルト・C・シュマイザー』は四白眼で迫る。其れもその筈、彼の今言った事はとんでもない無理難題であるからだ。

 

 

「今起こっている喧騒を情報操作で何とか収める事は出来よう。だがッ! ニューヨークの一件は『イカれジャーナリスト』が引っ搔き回し、かの国では『彼』が『軍勢』をだなァ!!」

 

「では頼むぞシュマイザー子爵。貴官の尽力が必要だ」

 

「ッ・・・はァ・・・・・任を承った。これより事にあたる、失礼」ガタリ

 

突然出された無理難題に表情を重々しく歪めながらもシュマイザーは席をあとにするとその身体を霧状へと変身させ、姿を消した。

 

 

「それでは各自、任地での収集と終結に努めろ。解散!!」

 

会議が終了すると『貴族』達は人型ではないものへと姿を変え、各々の持ち場へと向かっていった。

そんな皆に対してウルフガングは席から動こうとはせずに壁際に飾って絵画へと目線を向ける。それは純金の額縁が施された風景画であった。

 

 

「・・・さて・・・これでよろしいかな? 『ウィッチー』卿」

 

『・・・はい。お手数をお掛け致しました、ウルフガング殿下』

 

彼の話しかけた風景画は偽装されたモニターであり、それに映し出されたのは、金髪碧眼を有する艶やかな女性。

彼女こそ、秘密結社『醜聞(ゴシップ)』の総帥『ヴァイオレット・ウィッチー』その人である。

 

 

「殿下は止せ、ヴァイオレット。今は私一人だ、いつもの様で構わぬさ」

 

『では、ジルおじさま。よかったの? ボクがその場に召喚されなくて。一応、ボクは彼の監視担当なのだけれども』

 

「構わん。というより、君は来なくて正解だった」

 

『・・・どういう事かな?』

 

彼の言葉にウィッチーは少々眉間に皺を寄せる。彼女とて、若いながらも一つの結社を治める長。先のウルフガングの物言いは勘に障った。

 

 

「そう気分を害すな。君を蚊帳の外に出したのは警戒の為。そして、それが功を奏した」

 

『?』

 

「・・・レイズナーの小娘が円卓に現れた」

 

『ッ!・・・そう・・・やっぱり・・・ッ』

 

ウィッチーは彼の口から発せられた名前を聞いて、何とも言えない暗い顔を浮かべた。

どうやら、ウィッチーとレイズナーには浅はからぬ因縁があるようだ。

 

 

「アヤツ、今までの招集には耳も貸さなかった癖に・・・小童の事となると直ぐに飛び付きおった。しかも、大人しくしているかと思いきや、散々場を引っ搔き回しおってからに・・・ッ!」

 

『ハハハッ、それはご愁傷様。でも彼女が円卓に来たって事は・・・彼の活躍を見る為だけではないだろう?』

 

「あぁ・・・『支配派』の連中がまた動き出すだろう・・・・・ああッまったく! ここ十年の悩みの種が再びか・・・再びかァアッ!!」

 

ウルフガングは牙をギリギリ擦りながら片方の手で腹部を抑え、もう片方の手でガリガリと額をかぐる。かぐった額は皮膚ごと肉が抉れ、筋肉が見え隠れするが、不思議と血は出なかった。

 

 

「まぁいい・・・それよりも小童の方はどうだ? 映像を見たんだが、エラくべらぼうに力を使い過ぎたんじゃあないか?・・・()()()()()()()

 

『う~ん・・・それが彼どころか、ドンのおじさま達とも連絡がとれないんだよ・・・だから・・・・・』

 

「心配するな。小童もだが、あの白山羊は殺しても死なないだろう。生きているさ」

 

『うん・・・だといいんだけどね・・・』

 

「ったく・・・あと、情報操作の手筈はしておいた。だが、ニューヨークでの一件と小童の『河』は、あの『シュバルツバルト』が裏で引っ搔き回して此方ではどうにもならん。皮肉な事を言うようだが・・・・・あの男も少しは情報操作の出来る女権主義連中を残して置けばいいものの・・・そういう者共ばかり優先的にやりおってからに・・・・・。他にも、かの国への支援の手筈は整えてある。出入国の規制が出ているが・・・シャルロットと言ったか? 彼女を連れて帰れ、私のプライベートジェットなら問題なかろう」

 

『ありがとう、ジルおじさま』

 

「構わぬさ『金の魔女』。ではな」

 

カチリッとモニター画面を切り、また元の風景画へと戻るキャンバス。そのキャンバスを眺めながら、ウルフガングは一つため息を漏らして伸びをする。

 

 

「KUAaa~・・・(あのインフィニット・ストラトスという代物が出て来てからというものの・・・勘違い思考を持った女権主義者共の影響で行き場をなくした男共が増え、不満のある輩を利用して支配派連中が勢力を増強する。ったく、負のスパイラルだな。これだから人間も我々もどうしようもない。人間の最初と二度目の大戦でも危なかったのに・・・・・また『700年前』のように人魔入り乱れての大戦でもしようというのか)・・・ったく、ヤレヤレだな・・・・・」

 

混沌散漫たる現状にウルフガングは物思いに耽るように再び大きく息を吐いたのであった。

 

―――世界は再び動乱へと進む―――

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





スランプを乗り越えろッ!


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兎は黒い森へと導かれる




どーもお久しぶりです。毎度ながら不定期更新のrainバレルーkです。
今回から焦点をずらして、『一方その頃~』みたいな話を書いていきます。
では、どうぞ・・・・・



 

 

 

―――『『篠ノ之 束』は天才である』―――

 

それはこの世界の誰もが知る一般常識である。

もしこれを知り得ないのならば・・・・・その人物は次元を飛び越えて来た異界の人物か、余程の無知ぐらいな者であろう。

しかし、何故に彼女が『天才』などともてはやされるのか?

それは彼女があるものの発明者であるからだ。

 

インフィニット・ストラトス』。通称『IS』。

10年前に束によって発表された宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツである。

開発当初は注目されなかったが、彼女と()()()()()()()()によって引き起こされた『白騎士事件』によって従来の兵器を凌駕する圧倒的な性能が世界中に知れ渡ることとなり、宇宙進出よりも飛行パワード・スーツとして軍事転用が始まり、各国の抑止力の要がISに移っていった。

 

されど、ここで一つの『問題』が発生した。

 

『既存の兵器を凌駕する』。

此れだけなら、まだ世界の均衡バランスのステータスが少し上がるだけだったろう。

だが、問題はその『斜め上』を征くものであった。

 

実はこの代物、原因は不明であるが()()()()()()()()()()()()()()()『欠陥品』であったのだ。

そのお陰で、何を勘違いしたのか解らない頭がお花畑で出来た連中によって、この世界はISを扱えない野郎共にとっては生きにくい『女尊男卑』の世の中になってしまった

 

しかし、その要因足る発明品を造り上げた彼女はそんな事など気にも留めず。『467機』のISを残して、さっさっと雲隠れしてしまった。

此れもただ雲隠れするだけなら良いのだが、そういう訳にもいかないのが彼女の特徴であろう。

 

『白式のデータ収集』、『紅椿のデータ収集』、『妹である『篠ノ之 箒』を華々しくデビューさせたい』、『友人である『織斑 千冬』を楽しませたい』などといった超私的理由を行使し、これまで『ゴーレム乱入事件』『福音事件』といった迷惑極まりない事件を起こしている。

もはや『天才』というより『天災』と言った方が良いレベルだ。

 

 

 

・・・・・だが、そんな自他共に認める天才科学者『篠ノ之 束』にも理解できない事が『二つ』あった。

 

 

WRYYYYYッ!!!

 

一つ目は、『世界で唯一ISを扱える男子』であると発見された『織斑 一夏』の次に発見された『()()()()()()I()S()()()()()()()』と新たに発見された二人目・・・『暁 アキト』である。

 

彼女にとって、身内も同然な一夏が自分の発明品を()()()()()()という事はとても良い事なのだろう。だから彼の専用機には、共犯者との思い出深い『白騎士のコア』が使われている。

 

しかし! 彼女自身全く予想だにしていなかった『二人目の男』であるアキトに対して、彼女は『疑問』と『嫌悪』をぶつけた。

 

『疑問』に関しては『なぜ男であるアキトがISを扱えるのか』に尽きるが、その他にもある。それはなぜかこの男、『過去がわからない』のだ。

天才科学者である自分に知り得ない情報など一つもないと豪語する彼女でさえも、その正体を捕まえる事が出来ない存在だ。顔でさえ、あの福音事件の時に初めて確認したのだから。

しかも、その正体に辿り着く三歩前には、いつもいつも山羊顔のコンピューターウイルスや何処からともなく飛んで来る隕石などといった訳の解らない災難が降りかかるお墨付きもある。

この捉えどころのない存在に彼女は『嫌悪』を抱いている。生まれて初めて出会う理解できない存在にイラついているのだ。

 

 

 

そして、彼女が理解できない『二つ目』の事柄は・・・・・

 

 

『『『UREEEYッ!!』』』

 

日本史上に今後最も最悪のテロ事件として語り継がれるであろう『飛行船事件』の首謀者達『吸血鬼の大隊(ヴァンパイア・バタリオン)』である。

 

彼等は銃火器で武装された飛行船で街にやってくると蹂躙を開始。

街を焦土にし、男を撃ち殺し、女を切り殺し、子供を殴り殺し、老人を焼き殺し、人間という人間を喰い殺した。

けれども()()()()が彼女の勘に障ったのではない。

 

あのテロリスト達は()()()()()I()S()()()()し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

それが不思議でならなかった、それが理解しようとも理解できるものではなかった。

 

ISはその攻撃力、防御力、機動力は非常に高い『究極の機動兵器』。特に防御機能は突出して優れており、シールドエネルギーによるバリヤーや『絶対防御』などによってあらゆる攻撃に対処でき、操縦者が生命の危機にさらされることはほとんどない・・・筈だった!

なのにあの化物共は生身の拳で装甲を粉々にし、手刀で操縦士の心臓を抉り出した。

有り得ない筈なのに、有り得る訳がないのにッ!!

 

 

『そういえば・・・中国の若造が言っていたな『有り得ないなんて、ありえない』・・・とな』

 

「ッ!?」

 

そんな悩んでいる彼女にPCモニターの向こう側から聞いた事のない男の声が聞こえた。

 

彼女は驚き、警戒した。

何故なら、彼女の造り上げたファイアーウォールはアメリカ国防省でも破る事が出来ない自信作であったからだ。

それをこの男は難なく突破し、こうして彼女に語り掛けている。

 

 

『そう警戒するな・・・『腐った世界の作成者』』

 

男は警戒する彼女に対して、無遠慮で太々しい態度で語り掛ける。彼女は男の態度にムッとしながらも言葉を返す、『お前は誰だ』と。

するとモニターに顔全体を包帯で覆った男の顔が浮かび上がり、酷く歪んだ表情でこう言った。

 

 

『私の名は『シュバルツ・バルト』。どうだ小娘? お前の知らない私の知っている『真実』を知りたくはないか?』

 

・・・『黒い森』は『兎』を誘う。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





サブタイで気づいたアナタにはNTの才がある?!


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第捌章『戦闘覚悟』
鉄人警部から毛探偵社への依頼





今回から次章への繋ぎ的な章に移っていきます。
ひっちゃかメッチャかにやろうと思っております。
オリジナル設定をぶち込んでいきたいと思っております。
『誰おま』な感じにしたいと思っています。
そろそろ作品全体を編集・統合したいと思っています。

では、どうぞ・・・・・



 

 

 

【飛行船事件】

 

十年前の【白騎士事件】を優に超える史上最悪のバイオテロの総称。

推定でも死者ならびに行方不明者数は五万人を超え、被害総額は戦前戦後を合わせ過去最大のものとなった。

 

首謀となったのは、四年前東欧で国家転覆を狙った大規模テロ未遂を引き起こした反IS団体『レギオン』。通称『吸血鬼の大隊』。

そして、この事件を皮切りに世界各国で反IS主義を唱えるクーデターやテロが次々と引き起こされたのである。

 

 

 

―――――――

 

 

 

その凄惨な事件から二週間後のある日。

俺、『野崎 圭』は因幡探偵事務所所長『因幡』さんと同僚の『優太』くんと共に『剣持』刑事の運転する車で警視庁へ向かっていた。

 

 

「どうしたの圭くん? 突然ナレーションなんかして?」

 

「優太くん、普通は人のナレーションに割り込まないのがお約束だと思うんだけど?!」

 

「まぁアレだ。荻からの直々の依頼で態々出向いてやっているんだよな」

 

「因幡さんまで俺のナレーションに入って来ないでください!!」

 

「ハハハ・・・」

 

剣持さんまで苦笑いの始末。

だが因幡さんの言う通り、俺達は警視庁警備課所属の『荻野』警部からの依頼で向かっている事は確かだ。

 

飛行船事件以降、今まで成りを潜めていたISに異を唱える団体や女権主義団体に虐げられていた被害者グループなどが日本各地で大規模なデモを起こした。それが原因の一つかどうかはこの際置いておいて・・・治安は事件前よりも悪化してしまった。

世の中の隠され抑えつけられていた不満が一気に溢れ出た為だろう。ついこの間も、ISによる『女性優遇法案』に加わった代議士が暗殺されかかる事件が起こっている。

そのせいで警察は猫の手も借りたい位に大忙しなんだろうな。

 

 

「ちなみに・・・猫の手って肉球が気持ちが良いよね」

 

「圭くんキモい☆」

 

「そんな笑顔で言わなくてもッ!」

 

「まぁ大方、『吸血鬼』についての案件だろうよ」

 

「吸血鬼・・・」

 

 

『吸血鬼』

それは世界で最もメジャーな化物の一種だ。

なぜここでこの話題が出たのかというと、あの事件には多くの吸血鬼なるものが関係していると噂されているからだ。

実際ネットには、絶対防御領域を持つ筈のISが生身の人物に殴り壊されている動画や長い牙を皮膚に喰い込ませて血を啜る動画が何件も投稿されている。

 

 

「まったく、吸血鬼なんて馬鹿らしいぜ」

 

「いや、『狼男』の因幡さんの言える台詞じゃないでしょ」

 

モンスターといえば、この因幡さんも世界でも有名な『人狼』と呼ばれる種族。

人狼は個体差もあるが様々な能力を持っていて、その自慢の能力で因幡さんは数々の難事件を解決してきた優秀な『秘密警察犬(シークレット・ドーベルマン)』だ。

 

 

「ですが、あの事件を治めたのは・・・あの『アーカード』という情報がありますので・・・・・」

 

「ッチ・・・久々に聞いたぜ、その化物の名前・・・」

 

剣持さんのある言葉に因幡さんは忌々しそうに歯噛みをする。

 

『アーカード』。その道の世界では知らぬ者はモグリとまで言われる程の有名人だ。

因幡さんが追っかけている『ヴァレンティーノファミリー』の遊撃部隊隊長と呼ばれる幹部の一人で、今までに沢山の麻薬カルテルなどの反社会組織を壊滅している人物だ。

 

『反社会的組織を壊滅している』。

それだけ聞くと何だか正義の味方のように聞こえるが、それは違う。アーカードは、潰した組織が持っているモノを全て奪う事で有名だからだ。金も、情報も、物も、そして『命』も。だから、彼が襲撃した場所には何も残らない。

・・・・・『()()()()()()()()』は。

 

・・・とまぁ、怖い話が多いが、アーカードの逸話の殆どは噂でしかない。

実際のあの人は―――――

 

 

「でもなんであの吸血鬼ヤローの名前が出て来るんだ?」

 

「事件から生還した人たちの多くが、『赤いジャケットを身に纏った不気味な笑顔を浮かべる不審人物』を目撃しているんですよ。しかもその不審者・・・『()()()()()()()()()()()()()()()』なんていう証言も・・・」

 

「うェ~・・・絶対あのヤローだ」

 

絶対にあの人だ・・・

 

 

「ところで・・・あの国家の犬からの依頼って何なんでしょうかね?」

 

「優太くん辛辣だよ」

 

「まぁ何であれ・・・この俺にかかればラクショーだぜ!!」

 

「そんな自惚れな所も素敵です先生!」

 

相変わらずの因幡さんと優太くんは置いといて・・・

そんな我々因幡探偵事務所一同は、依頼人の待つ警視庁へと向かうのだった。

 

 

 

―――――――

 

 

 

トゥルルルンッ

 

「おいッ、 備品が足りてないって報告が!」

 

「こっちの書類を各階に回せ!!」

 

「誰か俺の携帯知らね?!!」

 

お気楽だけど腕は確かな因幡探偵事務所の面々が目的地に到着すると内部は案の定の天手古舞に騒がしく忙しい。皆は目の下を黒いくまで染め、因幡達に見向きもせずにギラついた眼で職務に追われていた。

 

 

「うわぁー! 皆さん大変そうですねぇ」

 

「えぇ。あの事件以来、人員が追い付かずにこの有様です。まだここなんて良い方ですよ。外に出回っている組はここよりも・・・」

 

「面倒な事してくれたぜ、あのレギオンとかいう連中は」

 

「まったくです」

 

現場の惨状に皆が壁々していると奥の扉からガチャリと無精髭を生やした男が現れ出でた。

 

 

「来たか、洋」

 

「!? オイオイオイッ、どうしたんだよ荻ィイ!!」ビュンッ

 

「因幡さん早ッ?!」

 

依頼人の髭面を認識したと同時に因幡は光の速さで荻野警部へ接近し、その無精髭を撫で・・・

 

 

「洋、待て」

 

「ワン!」

 

・・・まわす前に静止させられた。

 

 

「因幡さん・・・」

 

「・・・ッハ?! し、しまった・・・いつもの癖で・・・・・」

 

「なにをやっとるんだ、お前たちは?」

 

因幡を説き伏せたこの男こそ、警視庁が誇る鉄人刑事『荻野 邦治』だ。

飛行船事件では警備課でありながら機動隊の指揮権を一任され、事件に巻き込まれた多くの人命を救出。さらにレギオンの幹部の一人である『シュレーディンガー准尉』を剣持と共に逮捕した功績を持っている。

 

 

「それで国家の犬畜生さん。僕達に一体何の用なんですか」

 

「そーだそーだ! 俺達は忙しい合間を縫って来たんだから早く要件を言いやがれ! あと、その髭を撫でさせろ! 愛でさせろォッ!」

 

「因幡さん・・・」

 

「まぁ、そう叫ぶな洋。詳細を離すから、ついて来い」

 

無精髭に唸りを上げる毛フェチ人狼を諫めた荻野は探偵社一同をエレベーターへと案内していく。

 

 

「・・・? おい、荻ここ・・・」

 

しかし、何故だか荻野は彼等を警視庁内でもあまり使われていない階へと通したのだ。

その階に因幡は見覚えがあった。自分が幼少期を過ごし、自らのルーツとも言える階層であったからだ。

 

階層名は『公安0課』。

通称『零課』と呼ばれる現在はその存在すら抹消された秘匿階層である。

 

 

「荻さん、なんでこんなトコに?」

 

「因幡探偵に助手の方々、失礼しますね」

 

「へ?」

 

不思議そうな表情をする因幡達に対して、剣持は何やら棒状の機械で身体全体をさわった。

 

 

「剣持・・・」

 

「はい、大丈夫です。発信機ならびに盗聴器の類いはありません」

 

「おい荻! こりゃあ一体なんだよ!!」

 

「因幡さん・・・また容疑者リストに入ったんですか? これで三回目ですよ」

 

「俺はなんにもやってねぇッ!!」

 

圭の言うように因幡は過去に警察からマークされていた事があった。まぁ、そのどれもが濡れ衣であったが。

 

 

「もう酷いじゃないですか! セクハラで訴えますよ、エロポリ公!」

 

「すまん。用心の為にな」

 

「用心?」

 

「なにかあったんですか、荻さん?」

 

「・・・あぁ・・・実は警察内部に『内通者』がいる疑いがあってな」

 

「「えぇッ!?」」

 

荻野の話だと、このところ警察内部で極秘扱いにされていた文書がネットに流出していたり、IS反対に湧くデモ隊の摘発情報がリークされていたりと・・・散々なものだ。

 

 

「だからこんな人気のない場所を・・・」

 

「という事は・・・・・荻ぃ、今回の依頼は余程重要な件なんだろうなぁ?」

 

因幡の言葉に荻野はゆっくりと一息入れて、声帯を震わせる。

 

 

 

「ああ・・・・・今回、お前達探偵社に頼みたい事は―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――IS学園生徒の護衛だ

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





サブ主人公候補を何人かに絞っている・・・


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助手達は出会う


壱か月・・・壱か月以上も経ってしまった!
今年も残す所あと少し。
ノロノロ書いているこの作品を閲覧していて下さる皆様に多大なる感謝をしながら、投稿します!
そして、フラグ的なものを建設したいと思っています。

では、どうぞ・・・・・

―――
結合しました。



 

 

 

『IS学園生徒の護衛』だぁあッ?」

 

「あぁ、どうやら学園側は二学期の始業式を早めるらしい。その為に今、秘密裏に国内の生徒を一か所に集めているらしい」

 

「どうして? あの事件から、ISへの非難は過激の一途を辿るばかりなんですよ。なのにどうして・・・?」

 

「どうせあれですよ。『面目を保つため』とか抜かしやがる汚い大人の考えですよ~。あ~ヤダヤダ」

 

「でもなんで俺達に依頼を? それに一か所に集めるんじゃなくて、バラバラに向かった方が・・・・・まさか・・・!」

 

「あぁ、洋の言うようにバラバラで向かう筈だったんだが・・・『内通者』の手引きで反IS主義の輩に警備の者が襲われた。不幸中の幸いにも生徒は無事だったがな」

 

「それで警備のしやすい団体行動ってか。・・・・・荻ぃ・・・まさか俺に内通者探しを頼むつもりじゃないよな?」

 

「そのつもりだと言ったら?」

 

「え~ッ!」

 

「・・・頼む、洋。お前しかいないんだ」

 

「え~! マジかよ~! しょうがねぇなぁッ!!」

 

「(因幡さん、マジちょろい。見えない尻尾振ってるぜ)」

 

「それに洋。お前にとってはこの仕事・・・『嬉しい事』があるぞ」

 

「?」

 

 

 

―――――――

 

 

 

「・・・あ~・・・あの時の荻さんの台詞って、こう言う事だったのか・・・」

 

「ヒャッハッ―――ッ!!」

 

あの依頼から数日後。

隣ではしゃぐ因幡さんを尻目に俺は荻さんの言葉を脳内で反芻している。

何故こんなに因幡さんが興奮しているのかというと・・・

 

ガヤガヤ・・・

 

目の前に集まった警護対象、IS学園生徒に興奮しているのだ。

『IS学園生徒に興奮している』と言ったが、別段因幡さんがJK好きの変態野郎な訳ではない。その生徒たちの『髪の色』に興奮しているのだ。

 

・・・・・訂正。やっぱり因幡さんは変態だ。なんか生徒たちが怪訝な目で俺達を見て来たし。

 

 

「見ろよ圭ッ! 青だとか、紺だとか、オレンジとかッ!! あれ全部『地毛』なんだぜ!! 信じらんねえ!!!」

 

聞いての通り、因幡さんは『毛フェチ』だ。

此れは因幡さんが秘密警察犬(シークレット・ドーベルマン)である事に関係しているのだが・・・それは一旦置いておこう。

 

数十分前、荻さんからの依頼で指定されたホテルに来た俺達はロビーで身体検査をうけると三階の広間に通された。

広間の入口や通路は物々しい装備を担いだゴツイ特殊部隊の面々が警備に付き、室内はブラックスーツをビシッと決めたSPの人達がいる。

その中央に日本のIS学園生徒が集まっていた。

そこで因幡さんは彼女たちの髪質を見るなり、地毛と判断し、その色彩の豊かさに興奮している次第となったんだよなぁ。

因みに俺達は怪しまれないようにフォーマルスーツを着用している。優太くんはレディースだけど。

 

 

「なにを騒いでいる?」

 

「ん?」

 

ほら、因幡さんが大声で騒ぐから怒られ―――

 

 

「―――って、『織斑 千冬』!?・・・さん」

 

後ろから声をかけて来たのは、整った顔立ちにブラックスーツを纏った清鑑な女の人。

彼女こそ世界で知らぬ者はいないと言わしめる世界最強のIS操縦士。『ブリュンヒルデ』こと『織斑 千冬』が立っていた。

 

 

「君達は? ここには関係者以外入れない筈だが」

 

「あ・・・えっと、俺達は因幡探偵事務所の者です。決して怪しい者ではないです、はい」

 

「因幡探偵事務所・・・? あぁ、緒方警視の言っていた民間の・・・・・随分と若いな」

 

「はい?・・・あ! 違いますよ、俺じゃあなくて・・・ちょっと因幡さん!!」

 

「ン? なんだよ圭、今いいところなんだが」

 

この人はホントに・・・・・綺麗な髪の毛を目の前にするとダメダメだなぁ・・・ヤレヤレ。

 

 

「紹介します。こっちが我が探偵社所長の因幡 洋さんです」

 

「君が緒方警視の言っていた因幡探偵か」

 

「ああ。そういうアンタはブリュンヒルデ。アンタがここの責任者?」

 

「代理だがな」

 

「そうか。警備の状況と通行ルートを知りたい、今どうなっているんだ?」

 

「詳しい話はこっちで。緒方警視からの確認事項もある」

 

「わかった。圭、お前は優太と一緒に室内の見張りを頼む」

 

そう言って因幡さんと俺は別行動をとる事になった。

なったんだが・・・・・

 

 

「あれ~・・・優太くん、いつの間に何処いったんだ?」

 

いつの間にやら一緒に来ていた筈の優太くんの姿が消えていた。

優太くんは女装癖でSだけど、あれで人見知りだからな~。どこ行ったんだろう?

 

 

「あれ? 圭ッ、圭じゃないか?」

 

「ん?」

 

迷い子の優太くんを探していると遠くの方から人混みを掻き分けて、IS学園指定の白い制服にみを包んだ()が近づいて来た。

俺はその顔に見覚えがあったし、制服を着ている男子生徒なんて、『あの人』以外一人しかいない。

 

 

「『一夏』くん!」

 

そう。世界最初の男性IS適合者の『織斑 一夏』くんだ。

彼とは飛行船事件前にモールのレゾナンスで『あの人』と一緒に出くわした時に知り合った一人でもある。

 

 

「どうして圭がこんな所に? それにその恰好は」

 

「いや・・・ちょっと仕事の手伝いに駆り出されてね」

 

「仕事? 俺とそんなに年は変わらない筈だろう? 学校はどうしたんだよ」

 

「え・・・あぁッ、あの事件以来休みになってね。それでバイトさ」

 

彼にはこう言ったが・・・俺は家庭の事情で高校には行っていない。

『あの人』からも高校に行くように言われた事もあるが、妹の為にこうして働いているし、給料の良い今の仕事にも満足しているから平気だ。

 

 

「ふ~ん、そっか。まぁそんな事よりこっち来いよ。皆を紹介するぜ」

 

「え、でも・・・」

 

「いいから来いって」

 

「え、ちょっと!?」

 

「お~い皆ぁ!!」

 

為すがままに一夏くんに手を引っ張られて、生徒の人混みに連れて行かれる俺。そのまま他の生徒たちに紹介されるのだが・・・・・如何せん、彼女たちの眼が怖かった。

一夏くんの目は誤魔化す事ができても、俺に対する『興味』や男に対する『嫌悪』、学園のアイドルと仲が良さげに見える事に対する『嫉妬』などが目に見えた。

はっきり言って・・・お世辞にも気持ちの良いものじゃない。気持ちが悪い

 

 

「おい、一夏!」

 

「ん? なんだよ箒」

 

「なんだではない! いつの間に私から離れて・・・って、お前は・・・」

 

「あ、どうも。覚えているかな?」

 

一通りの生徒に面通し(半強制)が終わると俺達をポニーテイルの女の子が呼び止める。彼女も夏休みの一件で出会ったIS学園の生徒、『篠ノ之 箒』ちゃんだ。

珍しい名字の通り、彼女はあのIS発明者『篠ノ之 束』の近親者だそうだが・・・詳しい事はあんまり俺も知らない。何故かというと、あの時にその話題を出したら、彼女の眉間がよったのであまり言及しなかったからだ。

 

 

「どうしてお前がこんな所に? ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ」

 

「あはは・・・さっきも一夏くんにも説明したんだけど、ここにはその・・・バイトでね」

 

「バイト?」

 

「そういえば圭、バイトって一体なんのバイトをしているんだ?」

 

「一夏・・・お前はそんな事も聞かずに連れ廻っていたのか? まったく・・・」

 

「いいじゃないか。圭はもう俺の友達なんだからさ。なぁ、圭?」

 

「え・・・あぁ、うん・・・」

 

彼のコミュ力に若干の違和感を抱きつつも、俺は二人に事の内容を当たり障りのないように説明する。

あんまりにも真をついた事を話すと彼はこの一件に首を突っ込みそうなので、やめておこう。

 

 

「しっかし警備のバイトか~。・・・圭って見た目によらず、腕っぷしがあるのか?」

 

「いやいや。俺はただの付き添いみたいなもんだよ」

 

「ふん・・・馬鹿馬鹿しい」

 

「え・・・?」

 

篠ノ之さんはそう言って腕を組む。なんだか大層ご立腹のようだ。

 

 

「デモか吸血鬼かなんだか知らないが、どうして私達がこんなこそこそしなくてはいけないんだ。あんな輩など、ISで叩きのめしてしまえばいいのに!」

 

「でも、ネットではあれがISを再起不能にしてたって・・・」

 

「そんなの、ISを良く思っていないヤツらの出鱈目に決まっているだろう。それにもし仮に本当だったとしても、私の紅椿で斬ってやる!」

 

「はぁ・・・」

 

まぁ、篠ノ之さんの言う通り・・・『絶対防御を持っているISが突然現れた訳の解らない異形に負ける筈がない』なんて声が多い。

実際、発信元となった動画は事件発生後に削除されている。・・・まぁ、拡散はされたが。

 

だが実の所、あの動画は嘘のような真実なんだろう。

・・・というか、俺にはあれが本当に『ただのテロ』であって欲しい。

それなら『ISならばモーマンタイ』なんて言う、訳解らん理論で片付けられれば此れ幸いなのだから。

『化物』や『怪物』・・・つまりは、『あの人』サイドの者が関わる一件は総じて・・・世界をひっくり返すような厄介事だ

あ~・・・本当にヤレヤレってやつだ。

 

 

「・・・あッ!」

 

「どうしたんだよ、圭?」

 

「そういえば二人とも、優太くんを見なかった? ここに来る途中にはぐれちゃったんだけど」

 

「優太・・・? あぁッ、あの女装の。それに似たような人なら、さっきのほほんさんと一緒にいるのを見たぞ」

 

「のほほん・・・さん?」

 

野補本(のほほん)』?

流石はIS学園か。随分と変わった名字の人もいるんだなぁ。

 

 

「その人はどっちに?」

 

「あっちだ。さっきすれ違ったものでな」

 

「わかった、ありがとう篠ノ之さん」

 

そうと解れば話は早い。

俺は二人と別れて、彼女の指差した方に向かっていった。

 

 

 

―――――――

 

 

 

箒に言われた方向に進んで行くと、見慣れた金髪頭が圭の目に入った。

 

 

「お~い、優太く~ん!」

 

「ん? やっとボクを見つけたのかい、圭くん」

 

「『やっと』じゃないよ、優太くん! 急に居なくなるから心配するじゃないか!」

 

「ごめんごめん」

 

『ペロ☆』っと舌を出しながら謝る探し人の優太。彼のいつも通りの反応に圭は溜息を吐いて軽く呆れた表情を浮かべた。

すると・・・

 

 

「あ~、ゆうゆう見つかった~?」

 

「こらッ本音、走らない!」

 

「彼がそうなの?」

 

二人に着ぐるみのような制服を着た茶髪と眼鏡をかけた茶髪、それに目立つ水色の髪をした女生徒が寄って来る。そのどれも男心をくすぐるような整った容姿を持ち合わせていた。

 

 

「えと・・・優太くん、この人達は?」

 

「迷子の迷子の圭くんを一緒に探してもらっていたIS学園の生徒さん達です」

 

「いやいや、迷子になってたの優太くんだから!」

 

「フフッ」

 

「あ・・・ッ///」

 

ボケとツッコミの漫才のような二人の掛け合いに水色髪の少女がほくそ笑む。

その表情に気づいた圭は、少し照れくさそうに頬を小指で引っ掻いた。

 

 

「あら、ごめんなさい。あんまりにも仲が良さそうに見えたから」

 

水色髪の少女は広げた扇子で口を覆い、笑みを返す。扇子には『良き哉』と墨筆で書かれていた。

 

 

「心外だなぁ『楯無』さん。圭くん如きなんかと仲が良いように見えるなんて」

 

「コラ、どういう意味だ。・・・って、『たてなし』?」

 

圭は優太の言った水色髪の少女のものであろう名前に疑問符を宛てた。

前もって荻から渡されていたIS学園の協力者リストの中に彼女と同じ名前の者が載っていたからだ。

 

 

「えッ・・・もしかして君が、『更識 楯無』・・・さん?」

 

恐る恐る聞く圭に対して、水色髪の彼女は再び扇子を広げる。そこには『ご名答』の三文字が書かれていた。

 

 

「ええ、待っていたわ。因幡探偵事務所の助手さん」

 

「え・・・え~・・・!?」

 

圭は表には出さないが、その事実に酷く驚いた。

何故なら、前もって渡されたリストには字面しか載っていなかった為に名前から男性だと彼はイメージしていたからだ。

 

 

「な~に~その如何にも『驚愕』って顔? まさか、協力者がこんな美少女だって思わなかったかしら?」

 

楯無は悪戯っぽく口角を緩ませて、圭の顔を覗き込む。

普通はこんなルックスの良い女性の顔が近づくとどんな男だろうと頬を薄紅色に染めて鼻を伸ばすか、照れて顔を背けるだろう。

 

 

「そうだね。俺の想像力が足りなかったよ」

 

「!」

 

だが、圭はしっかりと楯無の目を見て微笑み返す。

彼はこれまでに『あの男』との関係からか、様々な人物と会合している為にこういう事には耐性を持っていたのであった。

 

 

「へぇ~・・・面白い。お姉さん、君に興味が湧いてきちゃった」

 

「へ?」

 

『興味』と書かれた扇子を広げ、楯無は薄めで圭を見つめる。

圭はその彼女の表情に『あの男』との既視感を感じ、怪訝に顔を歪めた。

 

 

「・・・会長、そろそろ」

 

「そうね『虚』ちゃん。優太くんに圭くん、ついてらっしゃい。君達に頼みたい仕事があるから」

 

「はぁ~い。行こう、圭くん」

 

「え・・・あ、うん。行こうか」

 

『なんだか目を付けられたような気もするが・・・まぁ、いいか』と圭は深く考える事を止めた。

 

ここから先。彼等は彼等にしか出来ないような仕事を任せられるのであった。

 

 

 

―――――――

 

 

 

協力者であるIS学園生徒会長『更識 楯無』さん並びに生徒会の面々と会合を果たした俺達は、彼女たちの案内を受けてある部屋へと通されたのだが・・・

 

 

「・・・・・はッ?」

 

その部屋に用意されていたのは、IS学園指定の『制服』。

勿論、一夏くんやあの人が着ているような特注の男子用ではない。正真正銘本来の『女子制服』だ。

 

 

「君達には制服を着て、生徒の中に潜入してもらうわ」

 

「え~ッ!?」

「お~ッ!!」

 

前者の反応が俺で、後者の反応は優太くんだ。

IS学園の制服は時代の象徴とデザイン性もあってか。世間のみならず、()()()()()()でも人気で、ブラックマーケットでは模倣品等が出回る程の高額品だ。

その本物が着れる訳なのだから、優太くんは女装家冥利に尽きるだろう。

だが!

 

 

「それって・・・絶対ですか?」

 

言っておくが、俺は極めて普遍的な『一般人』であると自負している。

これまでに『山羊のマフィア』だとか、『魔女の秘密結社』だとか、『最強の吸血鬼』だとか、奇妙奇天烈摩訶不思議で人外魔道魔境エトセトラの事件に巻き込まれて来てはいるが・・・俺は至ってノーマルだ。

だから、女の子の制服を着て嬉しがる性格ではない。決してだ!!

 

 

「優太くんは兎も角、俺にはこれ以外の他の事が出来る事があるんじゃないかな~・・・と思うんですけど・・・」

 

「そうね・・・」

 

楯無さんは俺の言葉に一瞬考えるそぶりを見せながら・・・

 

 

「でもダ~メ。君の仕事はこっち」

 

「いィッ?!」

 

ニッコリとした表情で俺の小さな願いを打ち砕いた。

 

 

「圭くん」

 

「え・・・?」

 

「頑張ろうね~~~?」

 

其の時の優太くんの顔と言ったら、本当にあくどい顔をしていた。

優太くんのこういう所、ホント嫌い。

 

 

 

―――――――

 

 

半ば強制的に女装させられた圭と嬉々と制服に袖を通した優太達は、すぐさま学生たちの集団の中へと放り込まれた。

勿論、ただ単純に指定の学生服に身を包んでは芸がない。というか、すぐにバレて変態野郎の烙印を押された挙句にISでタコ殴りの袋叩きにされてしまう。

そんな事にならない様に圭は全身のムダ毛を優太に処理され、彼自前のメイク道具一式で劇的ビフォーアフター。

おかげで見た目だけは、結構可愛い容姿に変身させられてしまった。

 

それから劇的変身(強制)を遂げた圭と優太が放り込まれた集団は、IS学園に向かうであろう大型バスへと組ごとに分かれて乗車した。

 

因みに。

彼等が乗車したバスの周りには、パトカーと物々しい装甲車が護衛に付いている。

 

 

「ハぁ~・・・」

 

バスは予定時刻通りに発車。

しかし、これがまた圭に更なる受難を与える事になったのだ。

 

 

「ね~それでね~」

 

「アハハ! なにそれ~」

 

『女子三人寄れば、姦しい』というだけに車内はなんとも華やかで楽しい雰囲気だ。

それぞれ各個人が夏休みで会えずにいた久しぶりのクラスメイト達と会話を弾ませる中で、圭はただ息を殺して溜息を吐く。

 

彼に与えられた任務は、『学生内に内通者がいるかどうか』。

本来は生徒会の役目であろう仕事だが、同世代で信用のある外部の()()()調()()()として圭と優太が当てられた。

だが、バスの乗車振り分けの影響から、一組と二組が乗車している一号車には優太が。三組と四組が乗車している二号車には圭が乗る事に成ってしまったのだ。

そのせいで圭は肩身の狭い思いをしている。

 

 

「圭くん、じゃなかった『圭子』ちゃん・・・溜息しないの。あと・・・がに股だよ」

 

「あ・・・ごめん。『簪』ちゃん・・・」

 

幸いな事に彼の乗ったバスには、ショッピングモールの一件で知り合った日本代表候補性『更識 簪』がいた為に胃に穴が開く程のストレスはかけなくて済んだが。

 

 

「しかし・・・大丈夫かなぁ、優太くん・・・じゃなくて、『優』ちゃん。ああ見えて、人見知りだからなぁ~」

 

「大丈夫・・・一号車(あっち)には、織斑くんや篠ノ之さん達がいるから・・・多分、平気。それよりも・・・・・」

 

簪は圭との話を区切って、中腰で前方を見る。その視線の先には、彼女と同じような髪色をした生徒が。

 

 

「・・・なんで、『お姉ちゃん』がここに・・・ッ?」

 

「!」

 

そんな彼女の視線に気づいたのか、生徒会長『更識 楯無』は簪に手を振った。

 

 

「・・・フンッ」

 

「ッ!?」

 

だが、簪は傍から見ても解るようなつっけんどんな表情で顔を背けて座る。あからさまな其の態度に楯無の背後には『ガーン』の文字がそそり立った。

 

 

「・・・君もなんだか大変だね」

 

「・・・うん・・・」

 

圭は楯無に対する簪の態度が引っかかったが、いつものように深くは考えない様にする。というか、どこかで見た事のあるような光景だと思った。

・・・・・それと同時に護衛車に乗った人狼探偵がクシャミをするのだった。

 

 

「・・・そんな事より、圭子ちゃん・・・」

 

「ん? なんだい簪ちゃん?」

 

「・・・『アキト』・・・今、どこにいるの?」

 

「ッ!」

 

その言葉とまるで見透かしたような視線に圭は固まった。

 

彼女の言うように二号車を含め、一号車にも『二人目』である男、『暁 アキト』はいない。

『あの事件』以来、世間に広まる反IS思想を理由に学園を離れる生徒は少なからずいたが、『男のIS適合者』を逃す程に新IS委員会は馬鹿ではない。

教師達の話だと、彼は夏休み後半に帰省先で『事故』に遭遇し、始業式まで外部で養生しているとの事らしいが・・・

 

 

「どこにいるの・・・?」ゴゴゴゴゴ・・・

 

あの男の『本当の素性』を知っている簪は、彼があの『飛行船事件』に関わっているのではないかと疑っているのだ。

 

 

「あ~・・・それは・・・その・・・」

 

「それに・・・あの『魔王』の正体・・・アキトじゃあないの?」

 

『魔王』

それは、あの飛行船事件において目撃された正体不明の人物である。

彼はISを簡単に打ちのめす謎の兵団をステーキ肉を切るように斬り裂き、文字通り・・・『喰らった』

そして何よりも恐ろしいのは、この者が戦局をひっくり返す程の兵力を持っていた点である。

一体でも複数のISに勝る化物を軍団単位で使役するこの者を日本を含めた世界が指名手配しているのだ。

因みに名前の由来は、現場にいた目撃者の証言からである。

 

 

「・・・それはわからないよ」

 

「・・・・・」

 

「うぅ・・・ッ(視線が痛い・・・!)」

 

圭は息を飲み、一呼吸おいて口を開く。

そんな彼を簪は、無言の圧力とジト目で針のむしろにする。

 

 

「・・・わかった」

 

「え?」

 

しかしすぐに簪は彼に対する圧力を止め、ホッと一息落ち着いた。

なんともあっけない彼女の変わりぶりに圭は拍子抜けしてしまう。

 

 

「ごめんね、圭・・・子ちゃん。意地悪な質問しちゃって。圭・・・子ちゃんなら・・・アキトの事知っているじゃあないかと思って・・・」

 

「い・・・いや良いよ、そんな。・・・やっぱり、アキトさんのこと心配?」

 

「心配してない・・・って言えばウソになる。でも・・・あの人なら、心配ないって思える自分がいる」

 

「・・・」

 

彼女にとって彼は、自分を救い上げてくれた恩人以上に特別だ。

だからこそ、簪は心は計り知れない。

 

 

「・・・君は強いね」

 

「え? ッ!///」

 

圭はそんな彼女の頭に手をあてがい、そっと撫でる。

 

 

「そんなに複雑な気持ちにならなくても大丈夫だよ。今までなんだかんだ言ってあの人、大丈夫だったし」

 

「う・・・うん///」

 

「まったく・・・あの人は周りに心配ばっかかけるなぁ~。ヤレヤレ・・・」

 

呆れたようにほくそ笑む圭。

だが、圭少年よ・・・お前いいのか?

 

 

「ギギギ・・・ッ!!」

 

「・・・会長。乙女が出してはいけない声を出しています」

 

「だって虚ちゃん! あんなに簪ちゃんの頭をなでなで・・・なでなでしているのよ!! 私だって、長い事やってないのにィイ!!」

 

「はぁ、ヤレヤレ・・・(また出ましたか・・・お嬢様の持病(シスコン))」

 

「虚ちゃん! すぐに彼、『野崎 圭』の情報を集めて!!」

 

隠しカメラで一部始終を覗いていた楯無に圭は本格的に目を付けられてしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・そうか、わかった。生徒を乗せたバスは予定通りにB地点を通過・・・・・出番だぞ」

 

「・・・ゲロゲロリ♪」

 

・・・どうやら、暗雲は知らない所で確実に迫って来ているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




これが今年最後の投稿かどうかは、今の所不明です。
全ては『HANNIBAL』のレクター博士が魅力的なせい。
あと、ウィルは純真すぐる。


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襲撃者は突然に




さぁ・・・さぁさぁッ!
ご覧の皆様。
待っていて下さった皆様、そうではない皆様もお久しゅうございます。
初の完結作品を終えた作者でございます。
半年ぶりの今作は之より『再開』でございます!

では、どうぞ・・・・・



 

 

ブロォロロオオォ・・・

 

物々しい装甲車と防弾素材を施された私服パトカーに護衛され、目的地へ急ぐIS学園指定バス。

未だうだるような残暑が照り付けようとも、バス車内はキャッキャウフフと楽しい話声が聞こえて来る。

 

 

「呑気なもんだな・・・あんな事があったって言うのに」

 

「コラ。私語を慎め、小橋」

 

「青木隊長・・・」

 

外まで聞こえて来る彼女たちの声に外の警戒を終え、装甲車車内に戻った小橋一等兵曹の憎まれ口を青木上等兵曹がたしなめる。

 

 

「ですけどねぇ、隊長。こちとらあの『事件』で駆り出されてクタクタだっていうのに・・・血税使って遠足かっての!」

 

「そう言うな小橋。損害が少なかった我々の隊が任を与えられたんだ。これも仕事だ、割り切れ」

 

「・・・はいッ・・・」

 

青木の言葉に小橋は不満気な表情を晒しながらも押し黙る。

だが、小橋の言う事にも一理あった。

日本のみならず、世界中を騒がせる事となった反IS思想過激派組織による大規模テロ。通称『飛行船事件』

 

夏の短い夜の間に起こった其れは翌日の朝焼けと共に収束した。

しかし、この事件に急遽動員された多くの自衛隊員が十分でない装備の為か、大損害とも言える被害にあってしまった。

甚大な被害に事件の事後処理と。休日返上の連勤に各員は疲労困憊のへきへきだ。

 

それに加えて最後の大仕事とばかりのIS学園生徒の警護並びに護衛。

ISの登場から、隊内に増殖したIS至上主義の隊員や上層部に冷遇されて来た者達にとっては皮肉とも言える。

 

 

「(皆からの疲れの色が犇々と伝わって来るな・・・。だが、これが終われば休みが約束されている。・・・皆、あともう少しだけの辛抱だ。堪えてくれ)」

 

「・・・? 隊長ッ、前方に何かいます!」

 

そんな青木の思いを打ち壊すかのように進行する一団の前に奇妙な着ぐるみがトコトコと現れ、立ち塞がった。

 

 

「な・・・なんだありゃあ・・・?」

 

「ネズミ?」

 

「いや、クマだろ」

 

「そうじゃなくて! このままだとぶつかるぞ!! どけろッ、ヘンテコ生物!!」

ブッブーッ!!

 

彼等は急いで装甲車のクラクションを鳴らすが、よくわからない灰色な正体不明の着ぐるみは微動だにしない。

・・・いや、語弊があった。

 

スチャッ

 

「「「へッ?・・・!」」」

 

着ぐるみは何処からともなく対戦車砲であるRPG7を取り出し―――――

 

 

『ふもっふ!!』

カチリッ

―――なんの躊躇いもなく引き金を引いたのであった。

 

 

『『『うわぁあアアッ!!?』』』

ドゴォオオ―――オンッ!!

発射されたロケット弾は装甲車の腹を爆音共々道路にひっくり返す。

まるで玩具のようにひっくり返されてしまった事で、後に続いていた後続車は停止を余儀なくされた。

 

 

「なんだッ!? 何が起こった?!!」

 

「まさか、こんな白昼堂々とやって来るなんて!!」

 

余りの突然の出来事に現場は騒然となる。

護衛車は急ブレーキをかけ、斜めになったバスの前方を囲んでバリケードを作る。

 

 

「な、なにッ、なんなの?!!」

 

「キャ―――ッ!!?」

 

当然と言うか。

バスの車内も和気藹々とした空間から一転し、混乱の坩堝へと化す。

 

 

「千冬姉ッ、一体何が?!」

 

「一夏ッ!!」

 

そんな混乱の中、一夏が怯える生徒を掻き分けて千冬のもとへと近づいた。

 

 

「襲撃だ。先の事件に感化された過激派組織かどうかはわからないが、こんな大胆な事をしてくるとはな」

 

「言ってる場合かよ、千冬姉!! すぐに俺達がISで加勢に入らないと! 箒ッ!」

 

「あぁ、わかっている!」

 

「馬鹿者ッ!!」

スパァッ―――ン!

 

『『『ッ!?』』』

 

後ろに続いていた箒と共に車外へ出ようとした一夏を千冬は持っていた出席簿で叩きつける。

その乾いた音が車内に響き渡るや否や、混乱の坩堝とかしていた車内は静まり返った。

 

 

「~~~ッ!!? 何すんだよ、千冬姉?!!」

 

「これも予想範囲内の事だ。だからお前達が戦う必要などない。あと、何度も言っているが、織斑先生と呼べ」

 

「でも!!」

 

ピリリリリリッ

引き下がらない一夏を遮るように千冬の無機質な携帯着信が鳴り響く。

彼女はそれを手に取ると電話先の人物と何かを話すと手短に電話をきった。

 

 

「織斑、お前と言い争っている暇はない。席に戻れッ」ギロリッ

 

「・・・ッ・・・わ、わかった・・・織斑先生・・・」

 

千冬のなんとも度し難い覇気に気圧された一夏は大人しく後ろへと引き下がる。

他の生徒たちも、彼女から発せられるその覇気は車内の空気をに2・3°下がらせるように感じた。

 

 

「全員よく聞け! 我々は現在、テロリストより襲撃を受けている。これより緊急避難を開始する! 返事はッ?!」

 

『『『は、はいッ!!』』』

 

ギャルルルッン

 

千冬の声に混乱していた生徒は我に返った。

そのまま生徒達を乗せたバス二台は急速バックをし、戦線離脱を開始する。

 

 

『ふもるる・・・!』

 

だが、どうやら襲撃者は彼女等を逃がすつもりはないらしい。

着ぐるみが合図をすると道路のマンホールから、ゾロゾロゾロゾロとゴキブリのような色をした何かが現れ出でた。

しかも、その全部がアサルトライフル装備の状態でだ。

 

 

『キシャァアアアアアッ!!』

ズダダダダダダダダダダッ!

 

「どわぁあああッ!!?」

 

「なんでゴキブリがマシンガンぶっ放してくるんだよ?!」

 

鉛玉のシャワーを噴射しながら迫りくるゴキブリ兵。

その異常で異様な状況に護衛を任されている隊員達は怯み、応戦が出来ないでいた。

しかし!

 

ズダァアッン!

『キシャッべッ!!?』

 

『『『ッ!?』』』

 

先頭に立っていたゴキブリ兵のド頭をボルトアクションライフルでものの見事に吹っ飛ばした者が一人。

 

 

「『剣持』刑事ッ!!」

 

「応戦してくださいッ! ヤツラを彼女達に近づけさせないで!!」

 

警視庁所属の刑事『剣持 和臣』である。

彼はその日本人平均身長以下の小柄な体躯ながら、飛行船事件ではあの『鉄人刑事』と共に戦場を駆け抜けた若き獅子であった。

 

 

「悪いが、ここから先は一方通行だ! 大人しく尻尾まいて、元の場所に引き返せ! このゴキブリ共がァッ!!」

 

ズダダダァアッン!!

『『ぶキィイッ!!?』』

 

「くかかカかかカカカァッ!!」ザァッン

 

剣持刑事はライフルの先に銃剣を装備し、跋扈するゴキブリ兵の群れに突撃する。そこから始まったのは狂喜乱舞の無双パーティー。

迫りくるゴキブリ兵をちぎっては投げ、ちぎっては投げ・・・・・。

 

 

「そ・・・相馬さん。剣ちゃん・・・あの事件から変わりましたね。まるで荻野警部だ・・・」

 

「あぁ・・・どうしてこうなった。全体、剣持に続けッ!! 応戦しろォオ!!」

 

『『『お、オオ―――ッ!!』』』

 

まるで、どこかの白髪灼眼のもやしのような奇声を上げて敵兵を退けていく剣持刑事を筆頭に護衛隊の応戦が始まった。

 

その隙に二台のバスは予め用意されたルートとは別のルートに直進。

襲撃者の奇襲から脱するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

『ふももッ、ふもるる!』

 

「・・・ッチ、わかった。そのままお前達はヤツらを釘付けにしろ、いいな。」

 

『ふもっふ!!』

 

「まったく・・・。だが、まぁいい。これは想定内だ。精々、我々の掌の上で泳いでいろ。全ては『計画』の為なのだからな」

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





はい。という訳で、半年ぶりの投稿でした。
久々の投稿で勘とコツが鈍っていると思いますが、これからもお願い申し上げます。
・・・あと、中の人ネタが分かった人は静かに挙手で。


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戦慄の変貌




「」→地声。
『』→機械音声、通話、人外語。
『『『』』』→大勢
「()」→心中。
・・・と、しています。

では、どうぞ・・・・・



 

 

 

「あ・・・アレは・・・・・!」

 

突如として現れた謎の襲撃者たち。

彼等の攻撃から脱する為に急バックを開始した一号車と二号車。

 

退避行動の最中。

二号車に乗っていた潜入者『野崎 圭』は、窓ガラス越しに襲撃者の正体を刹那に垣間見る。

その襲撃者の一人(?)である珍妙な着ぐるみに彼は見覚えがあった。

 

 

ボン太くんッ!? って、のわぁアアッ!!?」

 

「圭くん!」

 

『『『キャ―――ッ!!』』』

 

急発進の反動で座席から振り落とされる圭。

彼の他にもピクニック気分でシートベルトをしていなかった者が何人か振り落とされ、車内に悲鳴が響き渡る。

 

 

「大丈夫ッ、圭くん?!」

 

「あ、うん! ありがとう、簪ちゃん。・・・ッあ」

 

心配し、手を差し伸べる簪の小さな掌を掴む圭。

僅かだが、その手は微かに震えていた。

 

 

「皆、落ち着いて!!」

 

『『『!!』』』

 

「お嬢さ・・・・・会長!」

 

悲鳴轟く車内に一羽の鶴が甲高く鳴く。

皆、その猛獣でも説き伏せるかのような声に注目し、静まり返った。

 

 

「襲撃者が何者であれ、私達が混乱してはヤツらの思う壺。ここは冷静になって対処するのが先決よ!」

 

『『『・・・はい!』』』

 

口元を隠す様に開かれた扇子には『冷静沈着』の文字が書かれている。

そんな彼女の言葉に今まで阿鼻叫喚だった生徒達は静まり返り、急いでシートベルトを装着していった。

 

 

「お~、スゲェな・・・(ああいう事が出来るって事は、更識さんて結構なカリスマ性があるんだなぁ)」

 

「・・・・・」

 

圭は彼女の在り方に関心を示すが、妹である簪はなんだか何とも言えない物憂げな表情を晒した。

 

ニャァニャニャッにゃにゃ~!

 

「・・・ネコ?」

 

「あ、俺の携帯だ」

 

と、ここで不意に圭の携帯着信が鳴る。流石は自他共に認める猫馬鹿か。着信音は勿論の事、子猫の鳴き声。そして、電話相手に表示されたのは、先程の襲撃者に対応している彼の上司『因幡 洋』であった。

 

 

「はい、もしもし」

 

『無事かッ、圭?!!』

 

「五月蠅ッ!?」

 

電話越しからでも解る焦燥感に満ちた因幡の声。

圭はなんとかそれを諫める様に現在の状況を述べていくのだが・・・。

 

 

『圭ッ・・・なん・・・こと・・・おい・・・ッ・・・!』

 

「因幡さんッ? なんかザーザー言ってて聞こえないですけど?」

 

『ぼう・・・が・・・電・・・が・・・やばッ・・・気を・・・ろ!!』ブチッ

 

「えぇッ・・・ちょッ、因幡さん!!?・・・あぁッ・・・もう、最悪・・・!!」

 

「・・・どうしたの、圭くん?」

 

ノイズ混じりの因幡の声に何かを察した・・・いや、察してしまった圭はシートベルトを外して立ち上がると声高々に叫んだ。

 

 

「皆、何かに掴まれ!! ひっくり返されるぞ!!」

 

『『『・・・は?』』』

 

最初は何を言っているのか、皆解らなかったが五秒後にそれを理解する事となる。

何故ならば・・・。

 

 

「ほれ」カランッ

ドゴォオオオ―――ッン!!

 

待ち伏せていた別動隊襲撃者の手投弾によって、文字通りバスがひっくり返されたのだから。

 

 

「ちょッ、えぇええー!!?」

 

「ちょっと、一夏くん。大人しく座っててよ。あ、ポテチ食べる?」

 

「んな事言ってる場合か、佐々木ィ!!」

 

もしもの為の避難ルートを走っていた二号車がひっくり返された事に驚嘆する一夏をはじめとした一号車生徒一同。

だが、圭と同じ潜入者である『佐々木 優太』は呑気にスナック菓子をつまんでいる。

 

 

「佐々木ッ、二号車には野崎が乗っているのではないのか?! 何をそんなに呑気に!!」

 

「そうだぞ、優太! 早く二号車を助けに行かないと!!」

 

「え~、圭くんなら大丈夫だよ。それに・・・」

 

「それになんだ?!!」

 

「向こうの心配している場合じゃないと思うよ、ほら」

 

「え?」

 

おもむろに優太がバスの窓を指差すと、其処には得も言われぬ人外魔境の何かが張り付いていた。

 

 

『キシャァアアアアアッ!!』

 

『『『キャ―――――ッッ!!?』』』

 

黒光りする超大型Gに再び阿鼻叫喚の悲鳴が車内に轟く。

そして・・・あろうことかこのG、窓ガラスに頭を打ち付けて中に入ろうとしているのだった。

 

 

「もう我慢ならん!! チェストぉおオ!!」

 

ザバリィイッン!

『ギシャッぶッ!?』

 

これには勘弁ならなかったのか。

遂にキレた箒がISを部分展開。内蔵武装である日本刀で突き刺し、道路に放り投げた。

 

 

「ナイスだ、箒!」

 

「ふふんッ。これくらい造作もない事だ!」

 

「・・・篠ノ之、弁償するんだぞ」

 

「織斑先生、そんな!?」

 

だが、知らなかった。

この攻撃によって絶命した同族の血肉を喰らったゴキブリ兵がさらに興奮している事に。

 

 

「(まったく・・・・・圭くん、ガンバ!)」

 

加えて、その開けた僅かな穴を目掛けて、さらにゴキブリ兵共が集まり、自らの体液を吹きかける事になろうとは。

 

 

 

「イタタタ・・・大丈夫かい、簪ちゃん?」

 

「う・・・うん・・・」

 

「皆、大丈夫ッ?!!」

 

『『『はぁーい』』』

 

一方、ひっくり返った二号車では生徒全員の安全確認が行われていた。

どうやら、直前に行われた圭の声掛けのおかげで生徒たちは全員無事だった。

そう、生徒は。

 

 

「ッ!? 圭くん・・・血がッ・・・!」

 

「え?」

 

彼は生徒達に声をかけようとシートベルトを外した為、バス転倒の衝撃で左前頭部を何かで切ってしまっていた。

傷は深くはなかったが、タラリと血が顔の曲線をなぞる。

 

 

「あ・・・ホントだ」

 

「これ、使って」

 

「え・・・いいよ、これくらい。慣れてるからさ」

 

「でも・・・」

 

「いや・・・」

 

どこかの人外魔境との事件に仕事上巻き込まれがちである為、向う傷や怪我の一つや二つが日常茶飯事な圭にはこれくらい軽いものなのだが、優しい簪は自らのハンカチで止血をしようとする。

それを遠慮する圭と簪の間で、何度かのやり取りが行われていると・・・。

 

 

「そこぉッ、こんな非常時にイチャイチャするなぁあ!!」

 

「・・・会長」

 

血の涙でも流してそうな程に更識会長ががなり立てた。

・・・というか、それどころではない。

 

 

『キシャァ』

 

『キチャシアアアッ!』

 

転倒したバスの周りを別動隊のゴキブリ兵がゾロゾロと取り囲む。

バスに付いていた別動隊の護衛車はとうに襲われ、大破。

状況は最悪と言って差し支えない。

 

 

「更識、化物共は私達教師部隊がISで引きつけるから、貴女は他の生徒達の避難をお願い!」

 

「そんな! 先生、ゴキブリ苦手なのに・・・! 私も戦います!!」

 

「ふッ、生徒たちの為ならこれくらい・・・頼んだわよ、生徒会長」

 

「ッ・・・はい、わかりました。ご武運を横島先生」

 

新鮮な肉を求めて着実に迫りくるゴキブリ兵を前に武装を準備する二号車教師部隊。

まさに一触即発の事態が刻一刻と迫っていた。

 

カランッカランッ!

 

『キシャ?』

 

先に仕掛けたのは、転倒したバス内にいる教師部隊。周りを囲むゴキブリ兵目掛けて、ありたっけのスモークグレネードを投げつける。

 

ボシュウゥウウッ―――ッ

 

大量の煙幕が転倒したバス全体を覆い隠し、ゴキブリ兵の視界を遮った。

 

 

「チェストォオオッ!!」

 

ブシャァアッ!!

『ギキャァアッ!!?』

 

その煙幕の中から教師部隊隊員が電光石火の勢いで飛び出し、ゴキブリ兵の身体を斬り抉る。

刀で抉られた箇所からは何とも言えない青紫色の鮮血は噴き出し、隊員の装備している量産型IS・打鉄の装甲版を染め上げた。

 

 

「ッ!? うェッお! クッさ!!」

 

噴き出した青紫の血液は色もさることながら、この世のモノとは思えぬほどの悪臭を放ち、横島教諭の鼻をつんざき嗚咽を導いた。

 

 

『キシャァア!!』

 

「ッ!」

 

ズシャァアッン!

『ギャベッツ!!』

 

酷い臭いにたじろいだ横島教諭を仕留めんと他のゴキブリ兵が襲い掛かる。

彼女はそれを草でも刈り取るように撫で切って行くが、流石に一人でまかなえる量ではないようで、徐々にSE(シールドゲージ)と体力を削られていく。

 

ズガガガガガガガッ!!

『グキャッ!!?』

 

『キシャァア!?』

 

「横島先生!!」

 

そんな彼女を援護すべく、バス内からの連続射撃が放たれる。

流石はIS専用の突撃銃(アサルトライフル)と言ったところか。その威力たるや、一発でゴキブリ兵の身体を臓物諸共吹き飛ばすには十二分である。

 

 

『ギキキ・・・ッ!』

 

『ギチチチ!』

 

攻守共に連携がとれた攻撃に僅かばかりか、ゴキブリ兵共の勢いが弱まる。

彼等は蟲特有の威嚇音を響かせながら、バスとの距離を置いた。

 

 

「(動きが止まった? 私達としてはこのまま退いてくれた方がいいのだけれど・・・。っていうか、なんなの?! 一つ一つの攻撃がISのゲージを確実に削っている。有り得ない! 本物の化物じゃない!!)」

 

戦闘態勢を崩さないままに百面相する横島教諭。

『現存する全ての兵器類を凌駕する性能』と銘打っているISが、突如として現れた得体の知れない人間サイズの蟲に微々ながら苦戦しているのだから。

 

 

『・・・ギシャァア!』

 

『グギギキッ!!』

 

そうしているとゴキブリ兵共が動きを見せた。

彼等は攻撃を受けて倒れ伏した同胞の身体を寄せ集め・・・・・。

 

グシャ・・・バリィ・・・ムシャッ・・・!

 

「な・・・ッ!?」

 

「た・・・・・『食べてる』?!」

 

散らばった臓物を、転がった肉を貪るゴキブリ兵。

其れは自然界に潜んでいるゴキブリ達がする一種の『共食い』とは少し違った。

 

ボゴンッ

ドクンッ

 

倒れ伏した同胞の肉を喰らえば喰らう程にその体躯は膨れ上がり、異形はさらに異形へと強靭に変貌していったのだ。

 

 

「・・・ちょっと、ちょっと・・・!」

 

「うそ・・・でしょ・・・ッ!」

 

『『『グギシャァアアッッ!!』』』

 

そして、再びゴキブリ兵が戦闘態勢をとる。

身の丈2m弱はあろうかという大柄な体躯のゴキブリの群れがファランクスの陣形に得物を構える。

 

 

「最悪じゃないの・・・!(なんとか持たせるしかないようね・・・・・頼んだわよ、楯無ッ!)」

 

横島教諭は戦々兢々しながらもこの場を脱した生徒達を思う。

ISで地下下水道へと逃れた生徒達の事を。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





はてさて、どうなる事やら。

話は変わりますが、『ダリフラ』良かったですね。傑作でしたね。
特にミツココがいい。
終始ヒロゼロかと思いきや、まさか中盤でぶち込んで来るとは・・・!
なんか気に喰わないキャラだと最初は思っていたけれど、なんと男らしいキャラか!
ミツル、お前イイ男!!

是非に映画化期待!


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逃走経路




『原作』の方が公式的に誰も予想していない方向に舵をとり、そのまま完結に向かっていますが、どうなんでしょうか?

オリジナル路線を進む者、原作に添わせる者に別れて行っているとは思いますが、一体何が正解なんでしょうかね?
まぁ・・・私は『正解がないのが正解』というのが、二次創作だと思っていますがね。

では、どうぞ・・・・・



 

 

 

バシャバシャバシャ・・・ッ

 

薄暗いマンホール下に広がる地下通路に弾ける水音が木霊する。

夏だと言うのに涼し気な空気と鼻を曲げる臭気が通路を走り抜ける生徒たちの肺を浸し、学園独特の白を基調とする制服が弾けた下水でシミを作った。

 

 

「ハァッ、ハァッ!」

 

「くぅ・・・ゥウ・・・!」

 

走りながらも先程の出来事に対しての恐怖心で瞳に涙を溜める者も少なからずいた。

だが、足を止めれば結果は知っての通りだろう。幾らISを纏った教師部隊が時間稼ぎをしているとは言え、あの気色の悪い餓えた化物共はすぐさま追っ手を必ず差し向けて来る。

あの不気味で不快な襲撃者達から逃れる為には足を止めてはいけない、動きを止めてはいけない。

逃げ切らなければ、専用機を持たない大半の生徒は確実にその若い身体を色々な意味で貪られる事になるだろうから。

 

しかし・・・。

 

 

「あッ・・・!」

ドシャッ

 

「大丈夫?!」

 

「え、ええ・・・ッ」

 

逃走という慣れない行動に生徒の一人が転ぶ。

周りにいた他の生徒が駆け寄り、無事な事を確認するが、その生徒の足からはジワリと血が滲む。

そんな彼女の他にも靴擦れによる擦過傷を負った生徒達が次々と出始めた。

 

まさか、天下のIS学園生徒である自分達が過激な武装組織に襲撃される等とは露にも思ってもみなかった彼女たちの危機意識が露呈した瞬間である。

そして、注目やパニックを避けるためとはいえ、護衛の数を敢えて増員しなかった事が今回の失敗でもあった。

 

 

「会長ッ、ここは」

 

「ええ・・・ここは二手に分かれて行動するのが良さそうね。・・・でも・・・」

 

行動が制限されていく中で、一人でも多くの生徒達を生還させる為にも教師部隊から一任された楯無はどうすれば追っ手を振り切れるのかを考察する。

 

『二手に分かれる』

敵の追手を分断するには良い手である。

だが、もし追手に追い付かれ、その追手に対処できる専用機持ちの生徒は楯無と彼女の妹である簪の『二人』だけ。

日本代表候補性とは言え、実戦経験の乏しい簪が敵と接触した場合どうなるか・・・考えたくもない楯無であったが、そんな事を言っている状況ではない事は確かであった。

 

 

「・・・・・なんか・・・おかしいな」

 

「どうしたの、圭くん?」

 

そんな楯無から離れた場所にいる圭は、自分達が走って来た後方彼方を鋭い視線で見据えていた。

 

 

「簪ちゃん・・・レーダー探知機に何か異常はない?」

 

「え・・・ううん、レーダーには何も映ってないよ」

 

「そっか・・・」

 

短絡的に答えを返す圭。

ISのレーダー探知機は、そこいらの軍用探知機よりも高性能。そのレーダーに何も引っ掛かっていないならば、問題はない。

 

 

「(でも、なんかおかしい。明らかに何かが近づいている・・・気がする。吐き気を催すゲロ以下の何かが俺達に近づいている・・・たぶん)」

 

所々、自信がない部分はある。

けれども、彼は今まであのふざけた『山羊』やら『吸血鬼』やらに振り回されて来た経験上、深く勘繰らずにはいられない性格になっていた。

 

 

「・・・更識会長、お話しがあります!」

 

「圭くん・・・ッ?」

 

用心をしたうえで、なんの手立てもしないのは愚の骨頂。

思い立った圭は急いで楯無に進言せんと通路に固まった人波を掻き分けていく。

 

 

「何かしら、野崎く・・・さん?」

 

「更識会長、爆破系統のIS武装を今持ち合わせてませんか?」

 

「「・・・は?」」

 

彼の脈絡のない言葉に楯無と虚の二人はキョトンとなる。

 

 

「圭くん・・・主語がないよ」

 

「あ、すいません。俺が言いたいのは、追っ手がこれ以上此方に近づかない様に今通って来た通路を破壊する為の武装はないかと言いたかったんです」

 

「は、破壊ッ!? 野崎さん、あなた何を言って―――――むッ///?!」

 

この提案に声が上ずる虚に対して、圭はすかさず自分の人差し指を彼女の唇へ縦に添わせる。

圭が女装しているとはいえ、傍から見れば実に百合百合しい光景だ。

 

 

「すいません、布仏さん。更識会長、もしかしたら敵は何らかのステルス能力を持っているんだと思います。ISのレーダーを掻い潜れる程のものを」

 

「そんなのは有り得ません。ISの高性能レーダーを掻い潜れるものなんて、それこそISでもない限り―――・・・まさかッ・・・!?」

 

「追手も『ISを保持している』・・・かもしれない。そう言いたい訳かしら?」

 

「え・・・あ・・・あぁ、そんな所です」

 

圭としては、その追手がただのIS乗りのテロリストならどんなに楽だろうかと思考する。

相手がISを主戦力に置いていてくれたら、こちらとしても対IS戦闘がやりやすい。しかし、圭が危惧しているのは、追手がISではなく『化物』であるという事だ。

 

 

「でも・・・どうしてそう思うのかしら? 相手がそんな能力を持っているなんて?」

 

「え・・・それは・・・」

 

楯無の言っている事は当然である。

協力者とは言え、圭は外部から来たよそ者。そんな彼がどうして相手の能力を、武装を知っているのだろうか。

 

 

「私達は街のすぐ下にある所にいるのよ。それを逃げる為とはいえ爆破するって・・・!」

 

「あ・・・ッ・・・」

 

通路を爆破すれば、確かに追手からの時間稼ぎにはなるだろう。しかし、この下水通路の上には街が並んでいる。

爆破を慣行すれば、無関係な民間人を撒き込んでしまうかもしれない。

 

 

「それにこの際、言いたくはないのだけれど・・・信用できる筋からの協力者と言っても私は、あなたを信じる事ができないわ」

 

「お嬢様ッ」

 

「・・・・・まぁ、そうですよね。俺の『勘』だけで、皆を危険な目には合わせられません。出過ぎた真似でした、すいません」

 

彼女から最もな事を言われてしまい、圭は自分でも考えすぎかと思い退こうとした・・・矢先。

 

 

「圭くん・・・これで足りる?」

 

「・・・え!?」

 

「「か、簪ちゃん/簪お嬢様ッ!!?」」

 

彼の振り向いた視線の先には、自らの専用機『打鉄・弐式』の武装を取り出した簪が立っていたのだった。

驚愕する一同を余所に彼女は、専用武装から取り出したミサイルの信管を慣れた手付きで解体していく。

 

 

「ちょ、ちょっと簪ちゃんッ!」

 

「なにやってるの、簪ちゃん?!!」

 

「・・・圭くん、私はあなたの事を信じてる」

 

「え・・・ッ」

 

「あの時・・・圭くんが叫ばなかったら、もっと大勢の人が怪我をして逃げ遅れていたかもしれない。だから・・・私は圭くんの案に乗る」

 

「ッ!」

 

ガチャリガチャリと音を発て、ミサイルを簡易的な時限爆弾に変えた簪は意思の籠った視線を楯無に送る。

そんな彼女の熱視線に楯無は戸惑いを隠せずにいた。

 

 

「しょ、正気なの、簪ちゃん?!」

 

「・・・はい。専用機としてISを使えるのは二人だけというこの状況なら、このままじゃあ追手に掴まる。それに私は悔しいけれど実戦経験に乏しい。・・・二手に分かれたところで、どちらか一方が餌食になる。だったら、ここは圭くんの提案に乗るべきだと思います・・・・・『更識会長』」

 

「ッ!! か・・・簪ちゃん・・・私は!」

 

血のつながった姉妹だと言うに楯無を冷たくあしらう簪に彼女はつい声を荒らげようとした、その時だった。

 

・・・ドドドドドッ

 

「な・・・なにこの音?」

 

「なんか、段々と近づいてきてない?」

 

遠くから地を揺らす様な轟音が響いて来た。

その轟音は徐々に近づいて行き、ついにはISの高性能レーダーに引っかかる事となる。

津波のような下水の濁流を。

 

 

「あぁ、最悪・・・やっぱり、『あの人』関係はこんなのばっかり!!」

 

「言ってる場合?! 皆ッ!! 早く何かに掴まって!!」

 

そのまま彼と彼女等は、汚濁した鉄砲水をまともに喰らう羽目となる。

 

ドバシャァア―――アアッアアアン!!

 

濁流の音が反響する生徒たちの悲鳴を洗い流していった。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





・・・あなたはどちらでしょうかね?


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