ソードアート・ストライン-鋭意製作中- (seresu)
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0章 プロローグ
エピソード 0 クローズドベーターテスト
アインクラッド 第十層 迷宮区
『ギャァァァーー!!!』
迷宮区に響き渡る悲鳴。
しかし、誰も反応する者はいない。
それもそのはず。この迷宮区は現在の最前線である第十層にある。
つまり、到達しているプレイヤーが“ほんの一握り”しかいないのである。
その上、迷宮区は多フロアで構成されている。そんな迷宮区の同じフロアにパーティーメンバー以外の“ほんの一握り”がいる可能性など皆無だ。
“そんな場所にいる一握り”の一人である私は現在
HPが0になったとしても第一層はじまりの町の黒鉄宮にて復活することが出来る上、ここまでまた来る手間もたいした物ではないのだがデスペナルティは存在しているため、これまで極力死なないようにしてきた。
……………閑話休題……………
そうこうしているうちに先ほどの七体からの逃走に成功した私は、安全地帯にて一休みしている。
安全地帯とは迷宮に何カ所か存在している“Mobに索敵されないエリア”である。その上、既にトレイン=<Mobに見つかっている>状態であってもそこに入れば振り切ることができるエリアでもある。その安全地帯が設定されている場所には大まかに2パターンある。フロア移動の為の階段そばの場合と、フロア中間付近にある場合である。
現在私がいるのは中間付近に設定されている安全地帯なのだが、先ほどから剣戟の音がする。
『誰かこの先で戦ってるのか…?…見に行ってみるか…。』
剣戟の音の種類の少なさに興味を持った私は見に行く事にした。
…………………………
先で戦っている人が蹴散らしたのか、Mobの数が激減していて、スムーズに音のする所に着いた。
そこで見た物は複数のMobに囲まれていながらそれをモノともせずに居る一人の剣士だった。
『……。』
言葉が出なかった。一切の無駄が存在しない流麗な剣閃に見とれていたのだ。
どれ程の時を見とれていたのだろうか……私の時を動かしたのは
「後ろっ!」
彼の声に引き戻された私の後ろにMobがリポップしていた。
『どわっ!』
リポップしたMobからの先制攻撃をギリギリで回避する事に成功。
ギリギリだというのに、回避しながら彼を見ると未だ戦闘中。
あれだけの闘いをしながら近くに来た私に気付き、なおかつ私の背後にリポップしたMobにも気付いて注意を促すとは…すげぇな、オイ。
…って、感心して呆けている場合じゃなかった。こんな状態で彼の足を引っ張るハメになるのはいただけない。キッチリ倒さないと…。
改めて敵に向き直った私は戦闘を開始した。
……………戦闘終了
さすが、この迷宮初出の刀スキルMob、あいかわらずの強さだ。いくつかのソードスキルは既に覚えているとはいえ、大変やりにくい相手である。
「大丈夫か?」
先ほどの戦闘を振り返っていると先刻、背後のリポップを教えてくれた剣士が声をかけてきた。
『ああ、さっきは教えてくれて助かった。』
「仮にも迷宮区で呆けてちゃダメだろう。」
『面目ない。実は君の闘いに見とれていた。』
「んなっ。」
『君程の手練を今まで知らなかったとは……実にもったいない事をした。…俺はセレス。君の名を聞いても…?』
「……。あ、ああ…俺はキリト…。」
『キリト…もしかしてデュエル大会常勝の…?』
「…ん、まぁ…な。」
『あのさ、君さえ良ければ…なんだが、次の安地までお供してもいいか?』
「…かまわない。」
『サンキュー。』
この日から私はたびたびキリトと組んで迷宮区に潜った。
キリトの剣技は凄まじく、学ぶ事が多かった。見て学び、直接教えてもらいながら私は自身の技能を底上げする事が出来た。
だが、それでも刀使いMob《オロチ・エリート・ガード》の多岐に渡る技に振り回された私達は、スキルを覚え切るのに手一杯で。結果、ボス部屋にたどり着く事は叶わなかった。
エピソード0 End Next エピソード1
プロローグはこんな感じです。
エピソード1は第一層なので正式サービス開始です。
2016/2/11 18:37
ひっそりと一部改稿および修正しました。
2016/8/16 02:14
ひっそりと一部改稿および修正しました。
2016/8/16 02:30 以下の裏話を追記しておきます。
・キリトとあった後に第4回決闘大会開催。オリ主初参加。準々決勝でキリトと対戦し、敗北。
・初対面の時キリトは5体の敵と交戦中。残り2体になった所でオリ主付近の敵がリポップ。キリトが倒したはずなのにリポップしたのはキリトがダンジョンをバックしながら戦っていた為。オリ主同様進んだ先で7体とエンカウント。安地に向かって戻りながらの戦いを余儀なくされていた。(先まで強制突破するより戻った方が近かった)オリ主と違ってまともに戦っていたのは、キリトが倒しきれると判断した為。
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1章 第一層 はじまりの物語
エピソード 1 ソードアートオンライン
遅延投稿です。すいません。
今月はこのまま交互に週1投稿つづけます。
7月は冒頭で旅行に行くため、7月以降の投稿スケジュールは改めて告知します。
2022年11月6日
ベーターテスターである私はテスター特権で製品版ソードアートオンラインを入手し、正式サービス開始時間を今か今かと待っている。
ソードアートオンライン…
ナーブギアというヘルメット型のフルダイブマシン(
従来のRPGと異なり、魔法が存在せず攻撃は剣でのみ、回復はアイテム又は特殊なスキルでしか行えない。その代わりという訳ではないだろうが、多種多様な“ソードスキル”が存在する。本当に多種多用で、武器に関わる攻撃系スキル、周辺の探索に役立つ補佐系スキル等がある。
つまり、その気になれば剣1本だけでどこまでだって行けるのだ。
とはいえ、武器に関わらないスキルも全部ひっくるめてソードスキルと呼んでいるのは謎である…。
凄まじい倍率だったベーターテストに受かった私は、あの世界に完全に魅了されていた。
13:00 正式サービス開始時間になった直後
『リンク・スタート』
ログインワードを唱え、IDとパスワードを入力し、ベーター時代のデータを引き継ぐ。といっても引き継げるのはアバターデータだけだが…。つまるところ単純にアバター作成のプロセスがスキップ出来るだけという事なのだが、アバター作成プロセスに大変時間がかかるので大幅な短縮になるのだ。
数瞬の浮遊感の後、アインクラッド第1層はじまりの街に降り立った。
『長かった。…やっと戻って来た。』
ふむ、なにからやろう…とりあえず、感を取り戻す為にもザコ狩りかな…。
なんて事を考えながら街を歩いていると路地裏から声が聞こえて来た…。
「待ち合わせ場所どこだっけ?」
「中央の広場だろ。」
「リーダー今頃何してんすかねぇ。」
「俺らの手本になるべくMob狩りしてるかもしれねぇな…。」
「あり得るな…あとでキッチリ教わろう…。」
聞こえて来た声に耳を傾けつつ、この先にあったはずの初期コル(この世界の通貨単位)で買えるにしては、そこそこの性能の装備品を売っている武具屋に向かって足を進める。
すると…
「あ、そこのお兄さん」
『ん、俺?』
「はい、頭にバンダナを巻いた人を見かけませんでしたか?」
『見てないな。…さっき聞こえて来た“リーダー”って奴か?』
「そうっス。自分たちは別のMMORPGでギルド作ってて…そのギルドのリーダーなんス。」
「このソフトも一緒に並んで全員一緒に手に入れたんです。」
『そいつの名前は?』
「…クラインって名前のハズです。
『分かった。見かけたら仲間が探していたと、伝えておこう。
ところで、あんた達はこのまま町中で待つのか?』
「一応そのつもりです。」
「この世界のシステムもまだ把握しきれてませんから。」
『そうか。…なら、まだ装備とか整えてないだろう?』
「ハズカシながら…。」
「どこか良い店知ってるんですか?」
『ああ、ベーター時代と変わってなければこの先に、初期コルで買えるにしてはそこそこ使える武具を扱っている店がある。今から行くとこだったんだが、付いて来るか?』
「「「「「はいっ!!」」」」」
私は出会った5人のプレイヤーと共に向かっていた店(ベータ時代と変わらずにあった)へと赴き、装備を整えた。5人の分も見繕った。
「「「「「ありがとうございま(や)した!」」」」」
装備を身につけた5人から礼を言われ、擽ったいなぁと思いながらも
『気にするな。』
と返した私はそのままこうも告げた。
『このまま街の中で待つなら、フレンド登録を済ませた後で分かりやすい所に連絡要員として1人残しておき、その上でこの町中をくまなく探索し把握しておく事をオススメする。これは私の感なんだが、ほぼ確実にココがこの城全体で最も広い街だと思う。それに、把握しておけば後でリーダーとやらに町中案内出来るぞ。』
「「「「「はいっ、そうします!!」」」」」
彼らがうなずくのを見届けてから、私は改めて感を取り戻す為近場のフィールドで狩りを始めた。
エピソード1 End Next エピソード2
本編スタートです。
キリトがクラインと出会ってるし、この際オリ主さんに他のメンバーに会ってもらっちゃえ…という訳で、風林火山の残りの5人に遭遇させました。
彼らの初期購入装備はオリ主見立てです。
2016/2/12 23:25 ひっそり一部改稿
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エピソード 2 旧友との再会
遅延と言いつつ、だいたいいつも同じ時間(0時から6時)に投稿出来てたりする…。
では、続きです。
狩りを始めて3時間半余り、初日であり “感を取り戻す” という目的を十分に果たせたと思った私は少し休憩を取る事にした。わざわざ街に帰るのも面倒だったので、Mobのサーチエリアの穴を利用する事にして当該場所へ移動した。途中数回のエンカウントはあったが、感を取り戻した私にとって問題になろうはずもなくあっさりと屠った。目的の場所まであと少しという所で見た事のあるプレイヤーに気が付いた。
『あれ?キリト…?』
「ん?…ああ、セレス…か。」
『やっぱり早々にインしてたな。で、調子はどうよ。』
「俺に何か問題が起こると思うのか?」
『んにゃ、愚問だったな。…ところでそいつは誰?』
「ああ、街で会った時に俺がテスターだと見抜いてな…レクチャーを頼んで来た。」
……あれ?この人頭にバンダナ巻いてる…もしかして…
『もしかしてアンタの名前クラインか?』
「え?何で…?」
『ああ、やっぱり。いや、な、街で5人組に ‘頭にバンダナ巻いてるクラインってプレイヤーしりませんか?’ って聞かれてな。なんかリーダーって呼んでたぞ。』
「あいつらに会ったのか…。」
『別のゲームでギルメンだったんだろ?探してたよ。んー、でも彼らの予想ドンピシャのようだから心配する事もなかったな。』
「どういうこった?」
『 ‘自分たちの手本になる為にMob狩りに励んでるんじゃないか’ って言ってた。』
クラインとギルメンの話をしていると、思い当たる節でもあったのかキリトも加わって来た。
「…なぁ、さっき俺に ‘フレンド登録をしないか’ って言ってた仲間の話か?」
「ああ、そうだ。けどよ、あいつらは今何をやってんだ?」
『 ‘街中で待つ’ って言ってたからな、街中の把握を勧めておいた。なにせアインクラッド最大の街といって差し支えない規模の街だからな。隅々まで把握しておくに越した事はない。』
「そいつはありがてぇ。…街中の事は後であいつらに聞けば良いってこったな。」
『そういう事。』
「あのよ、こうして会ったのも何かの縁だと思うし、フレンド登録頼んでいいか?」
『構わないぞ。そういやキリトはクラインとしたのか?』
「まぁ…な。」
『へぇ…珍しいな。…まそんな時もあるか。キリト、俺とも頼む。』
キリトとクライン、二人の名前がフレンドリストに登録されました。
「じゃ、俺はそろそろ飯落ちするわ。ピザを頼んである。」
「準備万端だな。」
『キリトはどうすんだ?』
「もう少し狩るけど…」
『じゃ、一緒させてくれ。連携の感も取り戻しておきたい。付き合ってくれると助かる。』
「構わないぞ。……ってクラインどうした?」
「ログアウトボタンがねえ。」
「んなばかな。…ちゃんと見たのか?」
「見た。でもねえんだよ。……俺のてりマヨピザとジンジャーエールがぁ…。」
私も確認してみた。・・・あらら、本当になくなってるわ。
『キリト、俺のウィンドウからも消えてる。』
「!?…俺のもだ。どうなってる…。」
「バグじゃないのか?」
『こんな初歩的で致命的な事、ミスやバグだとは思えない。キリトはどう思う?』
「同感だ。ミスでもバグでもない。となると仕様…という事になるが…」
「仕様ってそれこそあり得んだろうがよ…。」
『それなんだが、GMコールに何の反応もない。これはますます仕様くさいな。』
「「…っ!?」」
「…こんな仕様にして茅場や運営はいったい何をしたいんだ?」
『「「……」」』
ログアウトボタンが消えている事についての意見を交換している中、私は(おそらくキリトも同様だろうが)嫌な予感を拭い去る事が出来なかった。
そしてそんな中、 “ それ ” は起こった。
エピソード2 End Next エピソード3
今回もなんとか朝に間に合ったー。
わたしは1話当たりを下書きに使用しているノートのページ数を目安に作成しています。B5サイズAタイプなら3〜5ページ、Bタイプなら2〜4ページ。
これで大体1000文字〜2000文字になるのです。
1回に1万字とか打てる人たちが凄いと思う。私は長いの打ってると途中でヘタリます。
まぁ、下書きの段階で切れ目に困ってながくなってしまい、あえて、短めで切ってたりもしますが…。
でも実際短めで話数が多いのと、長めで話数が少ないのどっちが良いんだろう…。
2016/2/12 23:33 ひっそりと改稿・・・
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エピソード 3 デスゲーム
お気に入り登録もありがとうございます。
今回は予約投稿に伴い一部コメント等のタイミングのズレが存在するかと思われます。ご了承下さい。
リンゴーン リンゴーン
突然鳴り響くはじまりの街の鐘の音。
直後ベータ時代にお世話になった青い光に覆われた私達は、気付けばはじまりの街の大広場にいた。
『強制転移だと……!?』
「ここは…はじまりの街の中央広場…か。」
「どうなってやがる…。」
あまりにも急な事で右往左往していると誰かが「上を見ろ。」と言った。
その声に導かれるまま見上げた先に、まるで視線が集まるのを待っていたかの様なタイミングで、警告音と真っ赤なタイル調に警告メッセージが広がった。そこには“Warning”と“System Announcement”という二つのメッセージが書かれていた。
そんな警告メッセージの枠線から、血の様なモノがしたり落ちて来た。その血の様なモノはどんどん量を増して行きながら形を変え、最後にはフードをかぶった人型…アバターを構成した。アバターの構成が完了すると共に声が降って来た。
「プレイヤーの諸君、私の世界にようこそ。」
私の世界?…まさか…
「私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロール出来る唯一の人間だ。」
やっぱりか…。だが、今更何をするつもりなのか…
そんな疑問を抱いていた私に直ぐ答えは示された。
その示された内容は大まかにいうと、
いわく…ログアウトボタンの消失はバグではなく仕様である。(推測通りだった)
いわく…外部からの強制停止及び解除も不可能である。
いわく…それでも停止や解除(強制解体)を試みた場合、当該ナーブギアから発生される高圧電流により脳が破壊される。
いわく…とはいえ、外部側のトラブルも考慮し、電源落ちは10分・回線切断は2時間の猶予が設けられている。が、解体・破壊行為への例外は認められない。
いわく…既にこれらの忠告は外部にされている。しかし、その警告を無視したが為に、既に213人が死んでいる。
いわく…おいおいプレイヤーの肉体は病院又は類する施設に搬送されるであろう。
いわく…HPが0になっても脳破壊はなされる。
いわく…この世界からの脱出方法はゲームクリアのみ。しかも攻略階層は100層もある。
とのことだ。
一通り聞いた私の感想は“うわぁ、面倒くさい”と“死ぬのはごめんこうむりたい”、だった。ついでに、脳破壊のプロセスを聞いて電子レンジを想像した。
「それでは最後に諸君にとってこの世界が唯一の現実である証拠を見せよう。諸君らのアイテムストレージに私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え。」
アイテムストレージには手鏡なるものがあった。
手鏡…ねぇ…なんだってのさ…そんな事を思いながらオブジェクト化してみる。鏡を覗き込むと…眩い光がそこかしこで輝き、その光が消えると…
「お前…誰…?」
「おい、誰だよ、おめぇ。」
そんな事を言い合っている連中が大量発生していた。
これ、どうやって収集つけるの…?
面倒くさい事になったなぁと思いながら周りをみまわしていると、キリトとクラインの話はどんどん進んでいるらしく、ナーブギアのスキャン機能とキャリブレーションがこの状態を作り出せた原因だと話していた。なるほど…と思いながら私は二人に話しかけた。
エピソード3 End Next エピソード4
この話が投稿される頃私はハワイ旅行まっただ中。
デスゲーム騒動前半です。次回は後半。ネペントまではキリトと一緒に行動するのは確定していますので、コペルがどういう扱いになるのか…がキーですかね…。一応そこら編までの下書きは出来てますので帰国をお待ちくださいませ。一応ネペントまでを第1層前編として章分けしようかと思ってます。
ボス前までのドタバタ(攻略会議含む)を中編、ボス攻略を後編って感じにします。でも章か分かれるの第1層だけかも…。
2016/2/12 23:44 これも改稿しました。
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エピソード 4 分たれた道
デスゲーム宣言の日(はじまりの街)後半戦です。
多忙なため、打てるうちに前倒しで投稿しちゃいます。
『そっちがキリト、あんたがクラインで合ってるか?』
私は十中八九間違っては居ないだろうと確信しつつも、黒い髪のヒョロいのをそっち、バンダナをあんたと称して聞いてみた。
「「誰っ…?」」
うん、普通そうなるわね。
『……、王道の返しをありがとう。まぁ分からなくて当然だな。……はぁ、まさかこんな事態になるとはなぁ…完全に想定外だ。』
「その口調…まさか…セレス…?」
『おお、さすがキリト。大正解。』
そう答えながら私はサムズアップをする。
「「えええええ———!!」」
「おめえ…女だったんか…。」
「き…気付かなかった…。」
『すまんな。せっかくだから…と男を演じてみたんだ。まさか強制的に現実の姿にされるとは思わなかった。…………さすがにパニックが凄まじいな。』
私の本来の性別に驚いているキリトとクライン。そんな二人ほひとまず放置して現状に対しての感想を述べていると周囲のパニックの凄まじさに気付いた。
しばらく呆然として周囲を見回していると、キリトがハッとした様に
「2人共ちょっと来い。」
と言って人の少ない通りに向かった。私もクラインも付いて行く。
そういや、なんか茅場の話まだ続いてたみたいだが、あのパニックじゃ誰も聞いてないだろうなぁ。かくいう私もほとんど聞いてないし…。ってか周りのザワつきが酷くて聞こえないし…。
中央広場からはなれ、周りに人の喧騒がなくなったのを確認した頃、ようやくキリトが私達を連れ出した理由を話しだした。
「俺はすぐにこの街をでて、次の村に向かう。お前達も一緒に来い。」
キリトの台詞にびっくりしているクラインに対し、キリトは続けて話す。
「
『キリトのいう通りだな。私達は、たとえLv.1の今でも十分安全に次の村までたどり着けるルートを知っている。』
私もキリトの言わんとしている事が分かったから追随する。
クラインもその重要性は分かっているのだろう。だが、彼は首を縦に振ることはしなかった。
「でも…よ。前にも言ったダチと一緒に徹夜で並んでこのソフトを買ったんだ。置いて行けねえ…。」
クラインの答えにキリトの顔が歪んだ。初心者が増える事のリスクを考えたのだろう。私はそんなキリトから目線を外し、クラインを見据えた。
『クライン…、この世界での戦い方の基礎はキリトからしっかり教わったよな?』
「あ、ああ。」
『メンバーにちゃんと教えられそうか?』
「おう。なんとかしてみせらぁ。」
このクラインの回答を聞いてキリトも道を違える覚悟を決めたようだ。
「…クライン…、分かった。なら、一旦ここで分かれよう。何かあったらメッセージをくれ。」
「ああ、分かった。」
『じゃあ、行くとしま……っと、その前にクライン、頼みたい事がある。』
「何をだ。」
『本来なら私達がするべきなのかもしれないんだが、他の初心者・特に身動きのとれなくなっているプレイヤーを見てくれないか?』
「どういうこった?」
『さっきの動揺ぶりから察するに、パニックや絶望から自滅するプレイヤーが出かねない。全部を助ける事は叶わないだろうが、出来うる限り助けたい。だけど…私もキリトも、ベーター時代からずっと最前線に潜って戦う事しかして来なかったから、そういう部分での補佐は出来そうにない。だからこそ、私は誰よりも前に進もうと思う。だから、クラインには後続の育成と保護を頼みたいんだ。』
「セレス…。」
「セレス…、おめえ……。」
私は、デスゲームの宣言を聞いた時は“面倒くさい事になった”としか思ってなかったのだが、直後に目にした周りのパニックを見ているうちに、考えを変えたのだ。
そんな私の言葉にクラインは頷いてくれた。
「分かった。はじまりの街にいる連中の事は出来る限りなんとかしてやる。」
『ああ、頼むな。私は前に進む者として道を作る。』
私の言葉を聞いてキリトも思う所があったのか、決意のこもった眼差しで頷いている。
「じゃあ、またな。そのうちぜってー追いつくからよ。」
『「待ってる。」』
クラインと別れ、私とキリトはホルンカの村へと向かった。
エピソード4 End Next エピソード5
下書きと大まかな話は変わってないのだが、一部の台詞が変わっていたり、地の文を追加したり、以外と文字数増えたな。
という事でホルンカに向かって出発した所でパートを切りました。下書きだと着くとこで切ってたんだけどね…。
こっちの方がしっくり来る事に気付きました。
そして…エピソード0がエプソード0になってたのでこっそり修正…。
もし誤字脱字見つけたらご教授願います。
2016/2/12 23:51 こちらも改稿…
・キリトのクラインをおいていった…という後悔フラグをへし折った。
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エピソード 5 ホルンカの村にて
はじまりの街を出発した私達は、連携の感覚を取り戻しつつ最低限の戦闘をこなす事で無事ホルンカの村に着いた。
この村についてまずする事ははじまりの街で揃え切れていない初期装備のままになっている一部の防具の更新と回復アイテムの補充である。
一通り補充を住ませた私達が次にするのは私やキリトの様な片手直剣使いにとって必須といえるクエストを受注する事だ。
このクエストは村外れの民家を訪問する事で受ける事が出来る。
クエスト受注の流れは
家に入る。
↓
その家の奥方が「水しか出す物がない」と言うのに対し、「それでいい」等、水をもらう為の言葉を紡ぐ。
↓
出された水に口を付けると、鍋に向かい何かを煮込み始める。しばらく待っていると奥の部屋から咳が聞こえて来る。
↓
咳を聞いて表情が曇った奥方の様子を伺って待機していると、金のクエスチョンマークが奥方の頭上に表示される。
↓
困っている事があるのかを奥方に聞く。
↓
奥方に「重病の娘の為に森にいる“頭に花が付いている捕食植物”が持っている胚珠をとって来てほしい。」と頼まれるので引き受ける。その際奥方の話をきちんと最後まで聞かないとクエストが進行しない。
これで受注完了である。
このクエストの報酬が、第一層で手に入る片手直剣の中では最上位の武器であり、この先キッチリ強化して行けば3層半ばまで使える優れものなのである。ゆえに片手直剣使い必須クエと言われるのだ。
無事にクエストを受注した私達はそのまま、補食植物“リトルネペントという”が生息する森に向かうべく村の出入り口に向かった。
すると、途中懐かしい物が目に入った。おヒゲのペイントである。
ベーター時代、いつからあったのかは不明だがすっかり定着してしまった頬のおヒゲペイント。まるで鼠の様に見える事から“鼠”の異名が通り名となった情報屋、アルゴである。どうやらトレードマークになったため、あえて自分で描いたみたいだ。
『なぁ、キリト。あれアルゴじゃないか?』
「そのようだな。……おーい、アルゴ!」
「ん…?お姉さんを呼ぶのはダレかな?」
「あ、そっか。トレードマークのあるアルゴと違って俺達の場合分からないか…。俺だよ、キリトだ。」
「え…キー坊カ?」
キリト同様私も自己紹介をしようとした所で、アルゴの方が気がついた。
「…ってことは…そっちはセレっちか?」
『ああ、アルゴ大正解。あ、そうだ、今どの程度情報集まってる?』
「まだ全然ダネ。さすがのお姉さんでもこんなに早くは情報揃わないヨ。」
そうですよねぇ。アルゴごめん。
「そういや、アルゴは何時着いたんだ?」
「実はついさっきだヨ。」
『ふーん。』
「そういうそっちは何時着いたのさ。」
「2時間くらい前かな。一通りのアイテム・装備の補充を済ませてから秘薬クエ受けて来た。」
「もう受けたのカ。さすがキー坊とセレっちだね。あ、クリアしたら情報買うヨー。」
さすが、アルゴ情報屋の鏡だね。まぁ、アルゴが言い出さなければこちらからクリア後の情報提供は言うつもりだったから好都合かな。
『じゃあさ、戻ったら連絡するからフレ登録よろしく。』
「ほい来た。戻って来るの待ってるヨー。」
『「わかった。」』
私とキリトのフレンドリストにアルゴが加わりました。
さて、気を取り直してクエスト目的地の森に出発だ。
エピソード5 End Next エピソード6
次回:いよいよコペル君登場です。コペル君の運命やいかに!
2015/9/21(月)、一部こっそり修正。
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エピソード 6 初クエスト開始
森の秘薬クエ…まだ終わりません。
現在クエスト目的の森に移動している訳なのだが、ここでこのSAOのシステムを少しばかりおさらいしておこうと思う。
SAOはレベル制のVRMMORPGである。戦闘を繰り返すことでパラメータが上昇していき、生存率も上げられる。様はレベル上げって大事だよね、って事。
そして、戦闘においてレベルと同様に大切なのがこの世界に数多存在する“スキル”である。スキルは実に多岐に渡り、戦闘(武器)スキル・戦闘補助スキル・生産スキル等種類も用途も様々だ。そして、そんなスキルを設定する為の枠<<スキルスロット>>はレベルの上昇と共に増えていく。
レベル1におけるスロットの数は2つ。1つは既に片手剣スキルで埋まっている為、2つ目のスキルの選定が重要になって来る。
ここで2つ目に選択するべきスキルは生存率を考えると2つに絞られる。
その2つとは、
どちらを選ぶべきか悩みどころなのだが、現在受注中の<<森の秘薬>>クエストで戦闘必須Mobである<<リトル・ネペント>>は植物系Mobである。このMobの索敵手段は地面の振動が主なのだ。つまり、隠れたとしても動いてしまうとその振動で見つかってしまうため、隠れる事よりも見つける事を優先させた方がいいという事になる。
思考の隅でシステムのおさらいをしている間に目的の森に着いた。
ちなみに私は、先刻考えた理由から2つ目に索敵をセットしている。…そういやキリトはどっちだろう…。
『キリト…ちょっとマナー違反なんだが…2つ目のスキルどっちにしてんだ?』
キリトの方が腕上だしこれで分かるハズ…というかキリトが選択をミスってるとは思えない…。
「おいおい、…まあセレスならいいか…、索敵。」
『ああ、やっぱりそっちか…。まぁ、このクエストが必須とも言える片手剣使いなら最初はそっちだよなぁ…』
とそんなやり取りをしながら早速ネペント狩りを始めた。
狩りを始めて幾ばくか経った頃、ファンファーレと共にレベルアップの表示が出た。横を見てみるとどうやらキリトも同様の様だ。
レベルアップで貰えるフリーステータスポイント3を筋力2・敏捷力1で振り分ける。私はレベル11までの30ポイントは2:1でこの2種に振ると決めている。
数値の反映を確認し一息ついた所で、パチパチと乾いた音が聞こえて来た。
これ拍手かな…誰だろ…って、キリト驚き過ぎ。
「ごめん、先に一声かけとくべきだったね。」
「いや、俺こそ過剰反応してごめん。」
『別にキリトが謝る必要なくね? 確かにキリト驚き過ぎかな、と思わなくもないが、仕方ないかなとも思う。だってさ、彼の気配全くなかったからな。』
拍手と共に現れたのは私達とそんなに年は変わらないんじゃないかと思える男の子だった。…本当に気配無かったな…。
『で、何か用?』
「れ、レベルアップおめでとう。2人共ずいぶん早いね。」
「それを言うならそっちも早いだろう。他の奴が来るならもう少し後だと思ってた。」
「あははは、僕も一番乗りだと思ってたんだけどなぁ…。」
一声かけてからじーっと現れた少年を見ていた私はある事を確信した。
『ふーん。あんたもベータな訳……あんたさ、もしかしなくても2つ目のスロットに隠蔽入れてるだろ。それ、選択ミスだよ。』
「どういう事?」
「片手剣使いに必須といっても過言じゃないこのクエストの対象モンスターであるリトルネペントは視覚ではない別の感覚器官で索敵している。」
「???」
隠蔽スキルをセットしている事に気付いてそれは過ちだと指摘した私の言葉に飛び出した少年の疑問にキリトが答えるも、少年は理解出来ないようだ。キリトに続いて更なる答えを伝える事にした。
『根で振動を感知してるのさ。だから隠蔽は効果がない。』
「正確にはないのではなく非常に薄いだけなんだが、まあ、役に立たない事に変わりはない。」
「そうなの!? あ…危なかった…教えてくれてありがとう。」
ようやく理解出来た少年はしばし考え込むそぶりをみせた。
「…あの、お願いがあるんだけど…クエスト一緒にやってもいいかな?」
私はキリトと顔を見合わせた。しばし
「ありがとう。僕はコペル。よろしく。」
『私はセレスだ。よろしく頼む。』
「俺はキリト…。」
「キリト…?あれ、どっかで…。」
『ベータ時代の
「ああ、そっか…だからか…。」
私は興味がなく、大体迷宮に籠っていたためベータ終了間際(10層迷宮区でキリトに出会う少し前)に知ったのだが、ベータ時代に2ヶ月で4回開かれた決闘大会において、キリトは参加した大会すべてで優勝している。4回目の大会(キリトと知り合った後に開かれた)のみ、私も出たのだが…。
もっともこれもあとで(キリトに出会った後)知ったのだが、キリトは別の方面ででの名の方が売れてしまっている。だが…私は気にしていない。むしろすごいなぁとしか感じない。
多分コペルがひっかかったのはこの別の方面に関するものだと思うのだが、私は決闘大会の方に話をすげ替えた。その上で、
『じゃ、とっとと狩りを始めよう。』
そう声をかけた。
私達はネペント狩りを再開(開始)した。
エピソード6 End Next エピソード7
コペル登場。
ネペント狩り始めるとこで切りました。
次は胚珠ゲットしてアルゴと会話かな…。
こっそり一部追加…2015/10/6
こっそり一部修正…2015/10/21
こっそり追加修正…2016/2/13
以下同文…2016/8/18
以下同文…2018/7/18
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エピソード 7 クエストクリア
やっと森の秘薬クエ完了です。
3人がかりでリトルネペントを乱獲すること1時間。
森の秘薬クエの真の対象Mob“リトルネペント<花付き>”がようやく出現した。
『やっと出たなぁ・・・。』
「ブーストかけてるのに思ったよりも時間がかかったねぇ・・・。」
「全くだ。多分、出現率が下方修正されたんだろうな。」
やっとでた花付きに対し感想を言い合っていたら視界にもう1体ネペントが映った。
『うわちゃー、実付きまでいるよ。ベータでも一緒に出ること多かったけど…どうする?』
「実付きを抑える役目か…。実付き2人、花付き1人だな。さて、花付き誰からやるべきか…」
「僕は最後でいいよ。元々2人が先にいたんだし…。」
ここは順当にキリトからかな・・・。
『キリト先にどうぞ。』
「セレス…いいのか?」
『もちろん。師匠を差し置いて先になんて行けないからな。』
「師匠はやめてくれ……。」
「じゃあ、キリト、セレス、僕の順だね。最後までよろしくね。」
キリトの邪魔をされないように、実付きにコペルと2人がかりで対処する。
ふたりがかりで若干余裕があるのかコペルが質問してきた。
「さっきキリトのこと師匠って言ってたけど…」
『ああ、そのことか?言葉の通りだな。ベータ終盤の迷宮区で会ったんだけど、あの終盤だけでかなりのものをキリトから教わったよ。』
「へぇ…。」
『まぁ、見てればわかるよ。』
やはりキリトの動きは違っており、こちらがふたりがかりで実付きを倒したのと同じ時間で花付きを倒していた。
その後、最初の1体が出たことで逆に出やすくなったのか、1時間ほどで残り2体の花付きも出現し、3人分の胚珠を無事確保できた。因みに私やコペルが花付きとやり合っている間、キリトを交えた実付き組討伐時間は短縮されていた。
武器の耐久値を考え、一旦村に引き返すことにした私達は帰り道のネペントをもれなく狩り尽くす事で村に戻る頃には私とキリトはレベル6、コペルはレベル5になっていた。
村に帰還した私達は、あとで一緒に食事をしようと約束し、素直にクエスト達成報告をしに行くことにした。胚珠を入手した順に……。
私とキリトが報告をつつがなく済ませ、コペルの番になった。その時私はアルゴに連絡する事を思い出し、キリトに確認してみた。
『そういえば私、まだアルゴに連絡入れてないな。キリトは?』
「俺もまだだ。」
『どうせだから、アルゴも食事に呼ぶ?そのほうがゆっくり情報の交換出来る気がする。』
「そうだな、ちょっと待ってろ。」
そう言うとキリトはさっさとメッセージを作成して送信した。
『言いだしっぺ私だから私がするのに…。』
そうぼやいたところにコペルが戻ってきた。それと同時にアルゴからの返信も来たようだ。
「僕の報告も問題なく終わったよ。…あれ?キリトメッセージかい?」
「ああ。コペルこのあとの食事の件だが一人加わってもいいか?」
「誰が加わるの?」
アルゴからの返事はOKだったようだ。さて、私も会話に混ざろう。
『アルゴだよ。多分コペルも名前くらいは知ってるんじゃないか?』
「アルゴ……あっ!情報屋の鼠か!」
「クエスト前に会ってな、クリアしたら情報を渡すことになってたんだ。」
「そうだったんだ。うん、僕も顔見知りになっておきたい。むしろ僕の方がご一緒させてくださいって感じかな。」
『じゃ、決まりだな。場所は
「ああ。じゃ、行こう。」
こうして、私達はNPCレストランに移動することになった。
エピソード7 End Next エピソード8
次回はアルゴさん再登場。
そして、コペル君はこのまま生き残れるのか…。
ホルンカに戻ってきた時のレベル、キリトは7までカウントダウン状態、セレスとコペルはレベルアップ直後です。「ここに来た時にキリトとセレスほぼ同時にレベルアップしてたじゃん」と突っ込まれそうですが、単純な腕の差で取得経験値量に差が出来た、という事です。
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エピソード 8 情報屋鼠のアルゴとこれから
待ち合わせのレストランについてみると既にアルゴは来ていた。
メール送ったのついさっきだよね?どこにいたの?早すぎ…。
―――NPCレストラン内―――
「スマン、どうやら待たせたようだな。」
既に来ていたアルゴに気付いたキリトがそう声をかけながら近づいていく。私とコペルもそれに倣う。
「イヤ、大丈夫だよキー坊。たまたま近くにいたダケさ。トコロでそちらさんは?」
『クエスト中に会ったんだ。』
「コペルって言います。よろしく。」
私がクエスト中にあったことを伝えるのにつづいて、コペルが自己紹介をする。
「あの…情報屋の鼠に会う…と聞いてここまでご一緒させていただきました。僕もつなぎを作っておきたくて…フレンド登録もできれば…」
付いてきた理由をコペルが話していると、アルゴが遮って言った。
「セレっちとキー坊はフレ登録しておくメリットの方が知り合いを増やすデメリットより大きいからしてるけど、君とするメリットはあるのカナ?」
「そ…それは…わかりません。」
ひとまず本題を片付けたいからこの件は保留にしてもらおう。
『あのさ、一先ずクエストの件を報告させて欲しいんだけど…。』
「あっ、ごめんね。」
「にゃははは、で、どうだった?」
アルゴの問いにはキリトが答える。
「秘薬クエの内容や敵にベータとの大きな差は見受けられない。」
「大きなってことは小さいのはあっタのカい?」
「パラメータ全体がすこしだけ上方修正されている。」
『確かにね。ベータと同じつもりでいると仕留め損なう可能性が高いな。とは言っても微々たる修正だから、慌てさえしなければ問題はないな。』
「それはいい事を聞いたヨ。攻略本で一応注意を促しておかないと…。情報料はどうしようカナ…まだ集まり方が微妙でネ。」
見返り…か。モンスターデータ等にベータ時との差があることに気づいた時から考えていることがある。
『アルゴにいくつか確認したいことがあるんだが…。』
「ン、何カナ?」
『ベータ時代のクエスト発生ポイント、どの程度網羅してる?』
「かなり、とだけ答えておくヨ。」
『では、ベータ時代になかったクエストを発見する自信は?』
「モチろん、あるヨ。」
これはやはり提案しておくべきだね。
「セレス、今の質問になんの意図がある?」
『ああ、さっきもちょっと出たベータとの差に関することさ。きっちり調べるべきかな、と思うんだが…どう思う?』
「…必要だろうな。HP0=死となった今の
「キー坊の言うこともモットもだね。でもさすがのオイラも一人じゃ調べきれないヨ。」
私の意見にキリトとアルゴが賛成意見をくれた。やっぱりこの2人は流石だね。
『アルゴ、コペルをフレにいれるメリットができたな。』
「どういうこと?」
む、コペル理解力乏しいな…。
「そうか、ペル坊に調べるのを手伝ってもらえばいいんダナ。」
『そういう事。あと、言いだしっぺだからな、私も手伝うさ。』
「俺も…」
キリトまでこっちに来ちゃったら、本筋の攻略の状態がわからないじゃん。
『あ、キリトは基本本筋の攻略をメインに動いてくれ。クエストの起点がキリトがいる場所の近場なら手伝ってもらうつもりだが、こっちは回り道だらけだからな。』
「いいのか?」
『正直、私はキリト以上のプレイヤーを知らない。そのキリトまでこっちに来ちゃうと、本筋の攻略そのものが遅れかねない。一人ぐらい…とか言わないでくれよ。私はキリトならソロでも1パーティ位の仕事はできると思ってるからな。』
「オイラもセレっちに賛成だナ。キー坊には本筋の情報をオイラに変わってある程度見てて欲しい。」
「わかった。」
『じゃあ、キリトはメインルート、私達3人は回り道ルート、でクエスト含めたこの第1層におけるベータとの違いを洗い出すって事で決まりだな。』
「ああ。」「ン。」「がんばるよ。」
三者三様に返事が帰ってきた。
こうして現状調査が決まった。
エピソード8 End Next エピソード9
はい、コペルはオリキャラの提案でベータとの差を調べるために動くことになりました。
結果、アルゴとセレスにこき使われます。
ネタ出しの都合上、細かい調査に関しては概要説明で済ませることにします。
なので1ヶ月の話はさらっと説明だけで終わります。
とはいえ、フロアボス戦の前に1個だけクエストをきっちり書くつもりでいます。
次話から第1層中編になります。
中編のサブタイ何にしよう…考えときます。
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2章 第一層 フロアボスの情報を求めて
エピソード 9 一ヶ月
SAOに閉じ込められて早1月。
いまだ、第1層フロアボスの部屋が見つかったという知らせはない。
この1ヶ月における死者の数はおよそ500人。茅場が最初に告げた213人は含まれない。
人によっては“500人も”と思うかもしれないが、私はむしろ“よくぞ500人ですんでいるな”と思っている。
右も左も分からない世界でいきなり戦え、と言われて戦える人は皆無に等しいだろう。そもそもゲームのはずなのに、HPが0になってはいけない状態なのだからなおさらだ。
むしろその状態だと錯乱や自棄を起こして自殺してしまう人だっているだろう。
死者が500人で抑えられているのは“
私達から初心者のことを託されたクラインは、私達と別れた後即座に仲間と連絡を取り、私達の事を話して聞かせヤケを起こしたり起こしそうなプレイヤーを止める協力を取り付けたそうだ。
そして、“現状でも前に進む連中が居るのだからヤケを起こして命を粗末に扱わない様にして欲しい”と、なだめたのだそうだ。
そのかいもあり、0にはできなかったものの自殺者の数を抑えることに成功した…とのことだ。
つまり、死亡者の大多数はモンスターとの戦闘で亡くなっているのである。
その中で最も死んだのはビギナーではなくテスターだった。
ベータと製品版の差に対応しきれず命を落とすことになったのである。
私達の懸念は現実のものとなってしまったのである。
悲しいことではあるが、そのテスター達のおかげで、私達調査部隊の負担は軽減されることとなった。近くでその死に様を目撃したプレイヤーから情報がもたらされることで…。
当初予定していた量よりは減ったものの、私、コペル、アルゴの3人は時折キリトの助力を得つつ、ベータと現在の差に関するデータを収集・補完していった。
そして、補完したデータを元に追加の攻略本を発行・配布した。
まず、アルゴがベータ時代の情報を元に第1版を作成。それを主にテスターが500コルで購入。その資金で増刷し各種ショップなどで無料配布。
第1版を購入したプレイヤーおよび調査部隊である私達からの追加情報を記載した改訂・補完版をクエスト報酬等を用いて追加配布。
補完内容は、主にモンスターデータ(ステータス・行動)の違いやクエストの内容の変化等である。
一番厄介だったのは、ベータ時代第1層にはデバフ付加技を使ってくるMobはほぼ皆無(迷宮区内に1種のみ)だったにも関わらず、今回は第1層中間を越えたあたりから各エリアに1種ないし2種存在していることだ。敵の攻撃の受け方しだいでは発生を回避できるはずのスタンを確実に引き起こす技、毒(昔からよくある徐々にHPを低下させるアレ)付与、そして麻痺付与。各種デバフのレベルが低いからそれぞれの効果時間は短めで強さも弱めではあるものの、厄介な代物であることに変わりはない。
とはいえ、割合早期に形が整ったからか、モンスターとの戦闘で命を落とすことになるプレイヤーの数はだんだん減ってきている。
私たちのやっていることを理解し、協力を申し出てくれたプレイヤーも増えた。
こうして攻略に関する大雑把な流れが固まって来た頃、アルゴから大規模な連続クエスト…主にお使い系…の起点を見つけたと連絡があった。
いつも通りに任せる(お使い系はアルゴの担当)つもりでいたのだが、ただの報告ではなく、応援要請だった。
エピソード9 End Next エピソード9裏
投稿予定だったのは昨日…1日遅れです。
正直に言います。忘れてました。
第2章以降、時々別視点…主にキリト視点…の話が間に挿入されます。
タイトルの付け方は・・・エピソード9裏・・・のように裏と付きます。
一応そのうちアスナ視点も書いてみようかと思っていますが、回想のような番外編になると思います。
次話は早速裏ストーリーです。
2016/3/27 23:40頃
各話の一部を修正・追記しました。
内容の補完とオリキャラのセリフのブレを修正しました。
修正しきれていないかもしれないので、今後もちまちま直すかもしれません。
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エピソード 9裏 これまでの一ヶ月と新しい出会い
この裏では『』がキリトさんです。
しかし、一人では当然進める量にも限界がある。その上、デス・ゲームと化した事でパーティなどを組んでいても攻略の進行速度は遅く、一ヶ月近くが経過した今でも第1層がクリアされずにいる。
そんな2022年12月2日、深夜2:00 MobのPOP率上昇を狙ってマッピングを兼ねた狩りを先頃開いたばかりの迷宮区で始めた。ここに来る前にクエストを1個受けている。
今のところ、
現在の俺のレベルが19。前回会った時の感じからセレスとコペルも似た様なレベルだろう。
<第1層の調査もそろそろ終わりが見えてきたから適当なところで合流しよう>と連絡も来ていたし、今回の狩りの後にでもメッセ飛ばしてみるかな…
等と思考を巡らせていた俺の耳に他人の戦闘音が聞こえてきた。
その場所に向かった俺が見たものは4年ぶりの流れ星だった。…もとい、流星の様な“リニアー”だった。
そこで戦っていたのは一人の
細剣カテゴリの初期スキルであるリニアーをあそこまで完璧に使いこなすプレイヤーを見たのは初めてだ。ただ、何かに追い立てられているかのような余裕のない戦い方をしていた。
ルインコボルトトルーパーだけにとどまらず、コボルト達は基本的にとてもスキのある戦い方をするMobで一人でも決して苦戦する相手ではない。とはいえ今の状況は完全に多勢に無勢なうえ、あの戦い方では非除に危険だ。
そこまで考えた頃、目線の先にいる細剣使いが強攻撃を受けてスタンした。
俺はすぐさま“ホリゾンタル”を発動。細剣使いを取り囲んだコボルト達をハジキ飛ばした。
俺のレベルが想定外に高いのか、その一撃で周囲にいたコボルト共はポリゴンと化していた。
「よけいな…こ…」
ドサッ
スタンが解除されたものの集中やもろもろが限界だったのであろう細剣使いは、助けた俺に文句を言おうとして気絶してしまった。
仕方ない、裏技で外に運ぼう。裏技の詳細は…聞かないでくれ…。
迷宮から出て少し道を逸れ、Mobのでない区域にて休むことにする。
すると思っていたより早く細剣使いが目を覚ました。
「余計なことを…。」
目を覚ました細剣使いの最初の一言がそれだった。
『余計な事…か。あんたにどんな思惑があるのかは知らないが、目の前で気絶されて放って置ける程俺は人でなしじゃないんでね…。』
「…そうね…一応お礼は言っておくわ。ありがとう。じゃ、私は行くわ。」
『ちょっと待った。一応あんたも攻略に参加してるんだろ? だったら会議に顔出してみたらどうだ。』
「……会議!?」
『そう、第1層フロアボス攻略会議。今日16:00から最寄りの町であるトールバーナで開かれるらしい。』
即座に立ち去ろうとした細剣使いを呼び止めて、フロアボス攻略会議のことを話しておくことにした。
エピソード9裏 End Next エピソード10
又しても遅刻。しかも2日近くも!無念なり。
こちらもサラッと1ヶ月の話を流しました。
寄り道クエストの一つは当然逆襲の雌牛クエストです。因みにこれはアルゴ含めた件の3人もやってます。しかもクリーム集め兼ねて調査そっちのけで1日中繰り返し受注してました。しかもこの時はキリトも合流してました。
以下追記……2016/3/20 0:30頃
因みにオリキャラ達との関係の結果、キリトのコミュ障が若干改善されています。
+コペルのMPKフラグをへし折ったこともあり、原作にあるキリトの闇部分が発生していません。
ルビふりに関して、確実にそう読んで欲しい場合は振ってます。同じ単語でも降ってないところは、前出のルビもしくは通常読みのお好きな方で読んでください。
そして、一部抜けてる部分があったものでひっそりと修正
2016/3/25 23:10頃
さらに一部追加…今後の作品との微調整のため
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エピソード10 フロアボス情報開示クエスト -前哨-
このクエスト完了後、第3章フロアボス攻略編に入ります。
で、第1層は終わりです。
パートいくつになるのか・・・。
要請に伴ってアルゴと合流した私達に告げられたのは、アルゴが見つけたクエストが“フロアボスの情報を開示する為のクエストである”というものだった。しかもその為なのか、初期で判明しているだけでもお使いの規模が尋常ではなかった。件数も然ることながらエリアがとにかく広い。スタートであるはじまりの街から最前線であるトールバーナ、はては通常は行く事の無いはずれの村である“フリンジ”まで、あまりの広さに思わずクエストの放棄を検討したくなった。
そこで、アルゴ・コペルとも相談しパーティ共有アイテム
まず、第1層を大きく3つに分け担当者を決める。その上で、自分が担当するエリアにおいて、アイテムの集荷・配達をする。その際に配送先がエリア外であった場合、当該アイテムを共有枠に移動する。そして、他エリアの担当者に連絡する。
アルゴの担当エリアにおいてアイテム集荷の際に戦闘が必要かつ強敵と予想される場合は、私かコペルどちらか近くにいる方が赴きアイテム入手次第共有枠に入れる。その際、届け先にてアルゴは待機しておく。ただし、配送先が元々のアルゴの担当地区もしくは戦闘に趣いた人の担当地区だった場合。戦闘に趣いてない人の担当地区が配送先の場合は担当者が趣いて待機する。
以上を基本とし、あとは都度臨機応変に対処していった。
1日中かけずり回り、ようやく終点が見えて来た頃、このクエスト最大の問題が発覚した。そう、ボスの存在が明らかになったのだ。各種配達時に次のお使いの内容等の情報が明かされていったわけだがここに来て、最後のお使いの対象アイテムが第1層外れにある遺跡の中に納めてあり、なおかつ守護者がいる事が発覚したのだ。
ボスの存在に辟易した所に追い打ちをかける様にマズい状況まで発覚した。
なんと、迷宮区にてボス部屋が見つかりそうだ、というのだ。
ほぼ確実に明日中に攻略会議が開かれる事になるだろう。
そうなって来るとフロアボス戦は明後日ということになる。
そう、現在進行中のクエストの残りを明日中に片付けなければならなくなったのである。
当初、このボス戦はソードスキルを極力使わずに長期戦で挑むつもりだった。
集中が続くのか?という問題はあったものの、スキル
なぜなら、クエストのボスである以上1パーティ(6人)で倒せる設定だろうと思われるからである。
だが、時間的猶予がなくなった事でソードスキルの使用が必須…短期決戦必須…となってしまった。
そこで、残りのクエスト…ボス戦手前までをこのまま私とコペルで行い、アルゴにはトールバーナに向かってもらい、今回のクエストの存在を攻略リーダーに伝えボス戦の延期(多分1日が限界だろう)と2回目の攻略会議の開催を頼み、その上でキリトに応援を頼む事になった。
クエスト続行の際、私達はボスのいるエリアまで先行しておく事にした。理由は当該エリアのMobの排除である。pop率の非常に低いエリアであるため、一度排除してしまえば半日位敵のいない状態が維持されるのだ。その為、追いかけて来る予定のキリト達はMobに煩わされる事無く追いつく事が出来るはずだ。
…え、ベータ情報じゃないですよ。お使いの際にさんざん通った(私の担当)エリアです。
ここまでの取り決めを行った後、翌日に備え、寝ておく事になった。
エピソード10 End Next エピソード10裏
なんとか水曜中に投稿出来た。
えっと、オリジナルの村が出てきました。村の名前はまんま“外れ”を意味しています。外ベリとか外周って意味の単語から引っ張ってきました。
次回こそ予約投稿で投稿したい…。
次回も裏、キリトサイドです。当然、アスナさんもいます。
2016/3/25 23:00頃 一部内容を追記
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エピソード10裏 第一層フロアボス攻略会議
あと、一部のイベントが前後しています。
会議の話をした後、トールバーナまで
4時間ほど狩りをしてから町に戻り、クエストクリアの報告を済ませたところ、報酬の経験値でちょうどLv.20になった。もうひとつの報酬はアイテムだったのだが今のところ用途が分からない。後でアルゴにでも相談してみよう。
そうこうしているうちに会議の時間が近づいてきたので会場である噴水広場に向かうことにした。
44人。それが噴水広場に集った会議の参加者の数である。
1パーティの上限が6人。つまり、1レイドの上限は48人。その48人揃った状態をフルレイドという。
フロアボス戦に関しては、そのフルレイドが2つできるのが望ましい。のだが44人では少ない、と判断せざるを得ない。
ため息が出かけたところで パン パン と乾いた音がし状況が動いた。
「はーい、5分遅れたけどそろそろ始めさせてもらいます。皆、もうちょっと前に集まろうか。」
そう集まった者達に声をかけながらひらりと噴水の縁に飛び上がった声の主は、そこそこの金属防具を身に纏った片手剣使いの男性で、現在ではまだ手に入れにくい髪染めアイテムを入手したのか鮮やかな青に染められた長髪(男性にしては長いレベル)をしている。
「今日はオレの呼びかけに応じて集まってくれてありがとう。知っている人もいると思うけど改めて自己紹介しておきます。オレはディアベル、職業は気持ち的に“ナイト”やってます。」
そんな出だしで場の空気をを和ませた彼はさらに言葉を紡いでいく。
「さて、こうして最前線で活動している言わばトッププレイヤーの皆に集まってもらったのは今日、オレ達のパーティーがフロアボスの部屋を発見したからだ。」
ディアベルの報告に一気にどよめきが広がっていく。
「一ヶ月、ここまで一ヶ月もかかったけどオレ達は示さなきゃならない。ボスを倒し、いつかこのゲームをクリアすることができるのだと。そのことをはじまりの街で待っている人達に伝えなければならない。それこそがトッププレイヤーたるオレ達の義務なんだ!そうだろう、皆。」
ディアベルの演説は非の打ち所がなく、言っていることも間違ってはいない。
それ故に場はどんどん盛り上がっていく。だが、その盛り上がりが最高潮に達しようかというタイミングでダミ声が水を差した。
「ちょう待ってんか、ナイトはん。」
その声の主は、まるでモーニング・スターの様なトゲトゲ頭をしておりやや大型の片手剣を背負った小柄ながらがっちりした体躯の男だった。
「そん前にこいつだけは言わしてもらわんと仲間ごっこはでけへんな。」
「フム、意見は大歓迎さ。ただし、自己紹介はしてもらうよ。」
「フン…、ワイはキバオウってもんや。こん中に5人か10人ワビ入れなあかん奴らがおるはずや!」
そう怒鳴りながら周りを睨みつける。それを受けてディアベルが続きを促す。
「侘び?誰にだい?」
「はっ、決まっとるやろ。今までに死んでった500人にや。奴らが何もかんも独り占めしよったから、一ヶ月で500人も死んでしもたんやろが!」
「……。キバオウさん。君の言う“奴ら”とはつまり、“元ベータテスター”の人達のことかな?」
「決まっとるやろが!」
そこから続いたキバオウの言葉に俺は呆れを通り越して怒りを覚えた。というか、ブチギレた。
『ちょっと待ってくれ!』
「誰や!」
『俺はキリト。あんたの言うベータテスターだ。』
「何やと!そんなら早速ワビを…」
『だから、待ってくれ…と言っている。先に確認しておく。あんたは、死んだ500人の大半はビギナーだ、と考えているのか?』
「せや、だからワビ入れぇ言うとる。」
これを言うのは気が引けるが仕方ない。
『残念というのは違っているが、その認識は間違ってるぞ。』
「どういう意味や!」
『死んだ500人の内300人近くはテスターだ。』
「そんなわけあるかい!!」
『キバオウ、確かにテスターはシステムにはビギナーより慣れてるし、持っている情報も多い。だが、だからこそそれが落とし穴になるんだ。』
「……」
キバオウがそこで押し黙る。そこに今まで黙っていたディアベルが言葉を挟んできた。
「えっと、キリトさん。どういうことですか?」
『ここは既にベータじゃない。当然修正が入っている。その修正されたものが、クエストの報酬や内容の変更、モンスターを倒した時の取得経験値・入手コルの増減であれば問題はないが、モンスターのpop率や各種ステータスの異常な上昇並びにアルゴリズムの変化だったりするとベータ知識はむしろ邪魔になる。そこにシステムなどへの慣れから来る油断が重なることで足元をすくわれることになる。そして実際に足元をすくわれたテスターがかなりいる…ということだ。』
今度は周りの全てが押し黙ってしまった。そこに心地いいバリトンが響いた。
「俺も発言いいか?」
その言葉に我に返ったディアベルが許可を出した。
「俺は、エギル。キリトの言葉の真偽は一先ず置いておくとして、キバオウさん、あんたはテスターが何もかも独り占めした、と言っていたがそれは違う。少なくとも情報はあった。」
そう言って、エギルが指摘したのは鼠のマークが入ったエリア別攻略本のことだった。
この攻略本は最初からアルゴが発行予定だったもので、ベータ時代の情報を元にクエストの起点・内容・報酬ならびにMobのステータス・行動・取得経験値・入手コルなどありとあらゆる情報が網羅されている。そこにセレスの発案による調査で早期に追加情報が載ったバージョンも発行されることになった。当然、そこには死んでいったテスターからもたらされた情報も網羅されている。
エギルのおかげで場は落ち着きを取り戻し、全員が元いた位置に戻っていった。
その後、ディアベルがボス情報の本が発行されていたことを話し、6人パーティを作るよういわれたのだが、俺と細剣使いさんは見事にあぶれてしまい、そのまま2人で組むことになった。そのため、ディアベルに取り巻きつぶしを頼まれることとなり、その際に自分のパーティに2人加わる予定であることも伝えた。
そして、ボス戦は翌12月3日午後1時に開始する予定となった。
エピソード10裏 End Next エピソード11
抑えられた死者の数に対しテスターの死亡者数はほとんど変わっていません。
そして、テスターの死者数の異常さを演出するため、死亡総数を減らしました。
これに伴い過去話の数値も変更しました。変更漏れを発見したらご連絡ください。
あと謎なアイテムのフラグを立てました。ですが、まだ何も考えてません。
なんのアイテムにしよう……。
諸々のセリフが原作からのコピーだらけになってしまうのを回避するため、一部キリトさんによるナレーション描写で省略しました。
同日19:00頃 一部誤表記を発見 修正するとともに、ほかの部分も修正。
一部追記、ディアベルは原作同様キリトのことを覚えています。それゆえに“さん”付けです。
キバオウもさん付けですが、さんに込められている意味が違います。
2022/11/06 0:25 一部修正
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エピソード11 トールバーナにて
2022年12月2日11:00
前日までのハードワークのツケが出たのか3人してかなり寝過ごしてしまった。
まず食事を取りながら状況を確認したところ、本日16:00に攻略会議が開かれる事が発覚。連絡自体は前日から来ていたがクエストに集中していたのと疲れから簡単な予定の確認をしただけだったので気づくのが遅れてしまった。
そこで前日に立てた計画にのっとり私とコペルはクエストの続行に向かい、アルゴは私達と別れて会議が開かれる迷宮区最寄りの街トールバーナに向かった。
昨日のクエスト状況から始まりの街に宿をとっていた為アルゴの速度をもってしてもトールバーナに着く頃には会議は終わっているだろう。よっぽど大きな問題が起こっていなければだが……。
トールバーナの町
2022年12月2日17:00、ようやくトールバーナに着いたアルゴは一先ず会議が開かれていたはずの噴水広場に向かった。終わっていたとしても一部の人は残っているだろう、と考えたからだ。
そして、その推測はあたっていた。しかも運のいいことに会議の開催を提唱したディアベルもいたのだ。
「ディアベル!」
「アルゴさん?どうしたんですか?」
「頼みたいことガある。」
「頼み…ですか?アルゴさんが頼み事とは珍しいですね。」
ディアベルの“アルゴ”という呼びかけに周りのプレイヤーが話を中断し2人の話に耳を傾ける。
「ボス戦を延期シテ欲しい。」
「何故ですか?」
「ボスの情報を開示させられるクエストが見つかっタ。早ければ今日中、遅く見積もっても明日のお昼ころまでには終わる予定ナンダ。そうすれば、ベータ時代の情報でなく、現行の情報が手に入る。1日か2日程度なら延期する価値あるダロ。」
「そうですね…。分かりました。一先ず1日延ばします。明日の16:00にもう一度会議を開きます。それでいいですか?」
「ありがとう。」
「では、キリトさんへの伝言はお願いしますね。」
「わかッタ。ディアベル、後はよろしくナ。」
アルゴは元々このあとキリトに会うので気にせず伝言の件を了承した。
ディアベルが伝言を頼んだ理由は実に単純で、この広場にキリト以外のパーティーリーダーが全員残っているからだ。
そのことをアルゴは知る由もないが後のことはディアベルに任せておいて大丈夫だろうと判断し、噴水広場を立ち去った。
噴水広場を出たアルゴはすぐ様キリトに<急いで頼みたいことがある。直接話したい、どこに行けばいい?>とメッセージを送り、返信が来るまでの間にアイテム等の補給をする。
割と直ぐに返信がきた。町はずれの農家を指定され、急いで移動する。
ノックからのタイムロスも惜しいと言わんばかりに家が見えてきたところで<開けて!>と短いメールを送信する。
通常こんなメールで扉を開けるような奴はいないはずなのだが、長い付き合いだからかキリトは扉を開けた。
開いた扉を目にしたアルゴは走っている勢いのままその扉に文字通り飛び込んだ。
そんなアルゴの前にコップに注がれたミルクが差し出された。それを飲み干したアルゴは一呼吸おいてキリトにお礼を言った。
「ありがとう、ごちそうサマ。」
アルゴが続けて言葉を発する前に、キリトの方が核心を突いてきた。
「アルゴ、あんたがあそこまで切羽詰ってここに来た、という事は何かあったのか?」
その質問に、フロアボスの情報を開示させられるクエストが見つかった事、それが連続クエストでありその終盤にクエストボスが存在している事、そしてセレスとコペルが続行しておりすでにボスクエストまで受注しているであろう事を話した。
2人だけで先行してボス戦を始めている可能性とその危険性に気づいたキリトにアルゴは怒鳴られる事になった。
と、そこに隣室から一人のプレイヤーが出てきた。
「あら、来客ってアルゴさんだったの?」
それは迷宮区でたまたま助けることになった細剣使い、Asunaだった。
結果として、細剣使いAsunaも応援要員としてキリト共々セレス・コペル・アルゴのパーティに加わることになった。
アスナなのでアルゴはアーちゃんと呼んでいる。
ゲーム自体が初心者らしく、パーティ戦闘の基礎をキリトが教えながら目的地に向かう事になった事。その道中モンスタードロップでウィンドフルーレという細剣を入手し、その剣を大変気に入っていた事をここに追記しておく。
エピソード11 End Next エピソード11裏
今話の主人公はアルゴさんでした。とはいえ、メインはあくまでオリキャラ・セレスなので会話の『』はなしです。そのため地の文はあまりモノローグ調ではないと思います。(正確にはアルゴのモノローグではないです。)
この話と、エピソード12は一部の時間軸がかさなっているため、裏のキリトサイドとの時間のずれが気になる人もいるかと思いますが、視点が飛びすぎると逆に読みにくいのでは?と思い、アルゴの話をひとつのエピソード内にまとめました。ご了承ください。
次は会議の後のキリトさんサイドの話しです。
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エピソード11裏 トールバーナにて
そして、アルゴはまだ来ません。
会議がお開きになった後、俺はまずエギルに声をかけた。
『エギル、さっきはありがとう。』
「いや、俺は俺の考えを述べたまでだ。…キリトだったな、それにしても随分詳しいな…。」
『元々、ベータとの差によるテスターの死は懸念していたんだ。だからアルゴに裏をとってもらった。』
「ほう、鼠と懇意にしてるのか…。」
『ああ、クエストなんかの情報本に関しては俺も情報を提供させてもらってる。元々受ける予定だったものだけじゃなく…な。』
エギルは俺の言葉に引っ掛かりを覚えたのか、すこしだけ突っ込んだ問を投げてきた。
「どういう事だ?俺はてっきりベータ知識からテスター達が自分用に受けたクエストの情報を鼠が買ってるんだと思っていたんだが…。」
『確かにそのパターンもあるんだが、一部のプレイヤーがあえて調査目的で片っ端からクエスト受けてクリアしてる。別のプレイヤーから情報が来たらそれは除外して続行してるんだ。俺は攻略メインで動いてはいるものの、そいつらの依頼でクエスト調査を一部請け負ってる。』
「なるほど、そりゃ詳しいはずだ。」
『まぁ、そんな奴らもいるって覚えておいてくれるとありがたい。』
「分かった。 で、俺達の様に追いついて来たやつもいるんだが、手伝えることは?」
『…手伝ってくれるのか?』
「当然だろう。」
会話の流れで調査部隊のことを知ったエギルから、手伝いの申し入れをがあった。
理解者が増えるのはありがたいことだ。あとで、アルゴ達に相談してみよう。
『皆に聞いてみる…。』
「キリト、フレンド登録を頼んでもいいか?」
エギルとは今後もいい関係を築いていきたいと思っていた所に、エギルからフレンド登録の申し込みがきた。ありがたく、受ける事にした。
『むしろ、こちらから頼もうかと考えてた所だ。こちらこそよろしく頼む。』
トールバーナ 路地裏
エギルとフレンド登録を済ませた後、どこかで腹ごしらえをしようと思い移動していると、俺の視界に先程パーティを組んだばかりの、
『けっこう美味いよな、それ。』
声をかけたとたん、ものすごい勢いで睨まれた。俺は小さく咳払いをすることで気を持ち直してから再び声をかけた。
『隣、座っていいかな?』
しばし逡巡する様子を見せたものの小さくだが頷いてくれた。
隣に座ってしばらくすると細剣使いが言った。
「ねぇ、さっき言ったこと本気?」
『ん、さっき?』
「このパンを美味しいって言ったことよ!」
『ああ、ほとんど俺の食事はこれだしな。もっとも少し工夫するけど。』
そう言いながら俺はアイテムストレージから小壺を一つオブジェクト化する。
『騙された。と思ってそのパンに使って食べてみるといい。』
まず自分が使ってみせてみる。すると細剣使いも見よう見まねで同じ動作をした。
その途端黒パンにごってりと盛られた白いモノに、目をぱちクリさせている。
「クリーム?こんなものどこで…?」
『一コ前の村で受けられる“逆襲の雌牛”ってクエストの報酬。クリアに時間かかるからあんまりやる奴いないんだけどな…。』
そんな話をしている間に一口目を口に含んだ細剣使いはあっという間にパンを食べきってしまった。
気に入っていただけたのなら何よりである。
「ごちそう様。」
ぼそっと細剣使いがお礼を言ってきた。
『どういたしまして。まだクリームあるけどいる?それとも牛クエストやる?後者ならコツ教えるよ。』
「いい、私は美味しい物を食べる為にこの町まで来た訳じゃないから。」
『そっか……。何の為か聞いても?』
「私が私でいる為よ。最初の街に閉じこもってゆっくり腐って行く位なら、最後の瞬間まで自分のままでいたいの。たとえ怪物に襲われて死ぬことになったとしても…この世界に負けたくはないの…どうしても…。」
聞かされた理由はある意味至極もっともな物だった。
自分が自分である為…ある部分では俺の戦う理由も同じ物だからだ。
ただ、俺のそれは
『いいんじゃないか?それもまた
「……」
とまぁそんな感じでゆっくりではあるが話をしていく。
そのなかで宿の話になったのだが、細剣使いはお風呂に食いついて来た。女性であるなら当然だろう。
結果として俺の借りている部屋に案内する事になった。
その宿で、飛び込んできたアルゴからとんでもない話を聞く事になるのだが、俺はまだそのことを知らなかった。
エピソード11裏 End Next エピソード12
というわけで黒パンイベントでした。
宿に関する会話はキリトさんの説明で省略しました。
次回の投稿に関してなのですが、できたら表裏一気に投稿したいと思っています。
有言実行なるか!
この雌牛クエスト、一ヶ月の時にも書きましたが、4人総出で1日中受注を繰り返してました。結果クリームを大量に所有しています。
そして、ボス戦後にアスナもこっそり大量に集めにいきます。
それと、このクエストは後々受注者がとんでもなく増えます。
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エピソード12 フロアボス情報開示クエスト -対峙-
一方セレスとコペルは…。
アルゴを送り出した私達は残っていたお使いをこれまでの手法でクリアし続けた。
ようやくボス戦のあるクエストを受注できる状態になったところで各種アイテム…主に回復薬…を買い込めるだけ買い込み、クエストを受注しに向かった。
2022年12月2日 15:30
クエストの目的地・西の森のはずれにある遺跡“エンシェント・プライマリー・シュライン”にたどり着いた。遺跡なので宝箱などもそこそこあるだろうと思われる。
ボス戦が長期戦になるのは目に見えているため本来であるなら時間短縮のために真っ直ぐ最深部(ボス部屋)を目指すべきなのだが、今回はアルゴがキリトを連れて追いかけてくることになっている。余りにも早く私達がボス戦を始めてしまうと、私達自身の消耗が激しくなってしまい、合流組の負担が却って増えすぎてしまう。2人だけで対処する時間がある以上、レベルももう少し欲しいところだ。そこで、遺跡の探索もくまなくやることにした。
ところが、思っていたほど探索に時間がかからなかった。正直、外から見て想像していたより床面積が狭かったのである。
フロアそのものは4層あるものの、床面積が狭すぎるため、1層にかかる時間が短く済んでしまったのだ。ついでに言うと、天井もえらく低かった。
その為にボス部屋前の安地にて少し長めの休息を取ることにした。
2022年12月2日 18:30
十分休息が取れた、と判断した私達はボスと対面することにした。
ベータ時代に何度か入ったフロアボスの部屋ほどではないが、かなりのサイズの扉があった。扉のサイズにさえ目をつぶればまるでフロアボスとこれからやり合おうとしているかのような錯覚を覚える程、良く似ている扉だった。
その扉を押し開ける。そして、今まで感じていた違和感-外の見た目に比べて内部の床面積が狭かった-の理由を理解した。
この最深部のボス部屋は4フロア分の吹き抜けになっており、この部屋の床面積は迷宮部分の床面積のほぼ半分-つまり全体の1/3-を占めていたのだ。
その部屋の奥にクエスト対象ボスモンスター“クールファング・ザ・コボルト・フォーマー”がいた。
部屋に入った私達に反応し、フロアボスよろしく壁の灯りが奥に向かって灯ってゆく。
それに伴いボスが動き出した。しかもお供まで用意されている。
そのお供もまた、ベータ時代の第一層フロアボス戦を彷彿とさせた。
そう、レベルは低く設定されている上にpop数も1体ではあったが、お供モンスターは間違えようもなく、“ルイン・コボルト・センチネル”であった。
そのセンチネルの最初のpop位置は、最奥にいるボスと入り口付近にいる私達のちょうど中間地点だった。
ならば、ここは最速でセンチネルを狩るのみ!
そう決めた私は即座にコペルにもその意思を伝え即刻センチネルに対処する。
さすがに今の私達の敵にはなりえず、コボルト対処セオリー1セットできっちり撃破する。
そして、そのままボスに視線を向ける。
ボスのHPゲージは2本。クエストボスとしては妥当なところだろう。
とはいえ、こちらは現在2人きり。スキル
やはり長丁場確定だな。
スキルの使用を極力抑えることをコペルに伝えようとして、私は気付いた。
このボスの容姿が、ベータ時代の第一層フロアボスモンスター“イルファング・ザ・コボルト・ロード”と似ていることに。
まるで、コボルト王をそのままミニチュア化(それでも人より大きいが…)したかのようだ。
さらに付け加えると、なんと武装もほぼ同じだった。
片手斧、バックラー、そして腰に差してある曲刀のような物。全てがかつての第一層フロアボスを模していた。
『コペル、ベータ時代にコボルト王とやり合った事は?』
「もちろんあるよ。そういうセレスは?」
『当然、やり合った。』
「で、それがどうしたの?」
『気付かないか、あいつの姿。』
「そういえば、コボルト王に似てる…。」
『その通りだ。この戦闘、そのコボルト王のつもりでやろう。ソードスキルなしで。』
「ちょっ、どれだけかかると…」
『確かに時間がかかりすぎるが、スキル
「わかったよ。」
最低限の確認を終えた私達は改めてボスとの戦闘に突入した。
2022年12月2日 20:30頃
戦闘開始から2時間あまりが経過した。
やはり硬い。スキルなしだからHPが殆ど削れない。
それでもなんとか1本目のゲージを半分に減らすことが出来た。
その時、センチネルがリポップした。
げ、そこもボス戦と同じなの!?
『コペル、なんとかボスのタゲ頼む!リポップしたセンチネル倒してくる。』
「分かった。」
リポップしたセンチネルを放置しておくわけにも行かないため、ボスのタゲをコペルに任せて私はセンチネルと向かい合った。
1分程でセンチネルを倒し、ポリゴン片になったのを確認した後、ボスと相対するために再びボスへと目を向けた私の視界に、ボスのクリーンヒットをくらって吹っ飛ぶコペルの姿が映った。
何があったのかはわからないものの、推測するに、取り巻きのリポップ・ボスの硬さなどの要素に焦ってしまいうっかりスキルを発動させてしまったようだ。というのも、先ほど目にしたボスの攻撃の直前にスキルのサウンドエフェクトが2つ聞こえてきたのだ。
攻撃…強攻撃だったようだ…をくらい吹っ飛ばされたコペルのHPが一気にイエローに突入した。
その時、今まで3人分だったHPバーの数が5本になっていることに気がついた。
一人はもちろんキリトのもの。もう1本は…Asuna(アスナかな)とあった。
ならば、私がすることはコペルが回復するための時間を稼ぐこと。
『コペル!さっさとポーションで回復しろ。その間のタゲは私がとる。それと、キリト達はこちらに向かってる。だから焦るな!』
私の言葉にようやく事態を把握しきれたのか、はっとした後、おとなしくポーションを飲み始めた。
コペルが回復につとめている間私は、スキルを封印したままボスの攻撃をさばき続けた。とはいえ、ボスのソードスキルを完全に相殺しきることは叶わず、私のHPはジリジリと削られていく。
そんな中、コペルが3本目のポーションを飲もうとしたところで、ボスの攻撃が私の武器をハジいてしまい、その結果、私は大きくバランスを崩すこととなった。
ヤバっ!
この体勢は非常にまずい。削られ続けた私のHPは今の強攻撃を捌き切れなかった事ですでにレッド手前。
ここで追撃をくらうと最悪の結果も起こり得る。
…私が死を覚悟したその時、追撃しようとしていたボスの背後から弾丸が突っ込んできた。
エピソード12 End Next エピソード12裏
えっと、ボスとの対峙シーンでのんきにしゃべっているのはセンチネルを倒した地点にそのままいるからです。
そしてボスは悠然と歩いています。
もっというならば、センチネルは中間地点にpopしてますが、直後にプレイヤーに向かって走ってきてます。なので、実際の撃破地点はプレイヤーの初期位置とセンチネルの初期位置の中間になり、倒した時点ではボスの位置は初期位置のままです。
なので観察と簡単な意思疎通の時間が取れたのです。
って解説しなくてもわかったかな・・・。
それとキリトさんサイドは今日中には上げますが、夕方になります。
2016/5/2 14:20頃 一部修正
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エピソード12裏 フロアボス情報開示クエスト
<急いで頼みたいことがある。直接話したい、どこに行けばいい?>
すぐさま、俺は今借りている部屋をメールした。
部屋に到着
『さ、どうぞ。風呂はそっちな。…あ、2つ程注意点がある。
一点目、VR環境の水の再現度はあまり高くないから過度な期待はしない事。
二点目、造りの関係上風呂場に鍵がないという事。このあと人が来ることになっているから一応注意してくれ。』
「水に関してはお湯と感じられるものがたくさんあればそれ以上は望まないわ。鍵の件は覚えておく。」
『では、ごゆっくり。』
細剣使いがお風呂に入ってしばらく、アルゴのボス攻略本と俺の記憶のすり合わせを行っていた。
するとそこに、再びアルゴからメッセージが来た。
<開けて!>
たった4文字のメッセージ。普段のアルゴらしくないな、と感じながらもメッセージのとおりドアを開ける。その途端、アルゴが文字通り飛び込んで来た。
あまりの慌てっぷりにこのままじゃマズイと思い、とりあえず俺はミルクをコップに注いで渡した。ミルクを一気にあおったアルゴはそれで一応落ち着いたのか礼を言ってきた。
「ありがとう、ごちそうサマ。」
とはいえ、アルゴの様子が普段とかけ離れていることに変わりはない。これは早々に本題を聞くべきだろう。
『アルゴ、あんたがあそこまで切羽詰ってここに来た、という事は何かあったのか?』
「そうなんだヨ。オイラが見つけたクエストの中にフロアボスの情報を開示させられるクエストがあるンダ。」
『な…何だって!!』
「お使い系の連続クエストだったんだけど、最初のを受けた段階で派生数がとんでもなく膨大なのがわかったから、セレっちとペル坊に応援頼んでこなしてたんだ。そうしたら終盤になってクエストボスの存在が分かってね。今日、ボスのいるクエストの受注も可能になるんだ。」
アルゴの話に嫌な予感がした。
「で、いまはセレっちとペル坊が残ってるお使い部分を続行しててね……ってもうボスクエ受注されてる!」
『それを先に確認しておけ!』
思わず怒鳴ってしまった。
とその時、細剣使いが風呂から出てきた。
「何事?」
「……」
登場した細剣使いにアルゴが固まった。
「あら、来客ってアルゴさんだったの?」
『ああ。…て、アルゴ、急がないとヤバいんじゃないのか?』
「ああ、そうだった。オイラキー坊に応援要請に来たんダッタ。」
『フェンサーさん、あんたも手伝ってくれ!事情は道すがら話すから。で、アルゴ場所は?』
「チョットまって…西の森の外れにある遺跡だネ。」
こうして俺達は急いでセレス達の援護に向かうことになった。
事情説明の最中、アルゴからディアベルに先に会っており、すでに攻略の延期と明日16:00にもう一度会議を開く事が決まっていると聞かされた。
タイムリミットが伸びたことにホッとした。
道中、細剣使いにパーティ戦闘のいろはを教えつつ、当初予定していたMobとエンカウント出来た為、細剣使い用の新しい細剣“ウィンドフルーレ”のドロップに成功した。
その後、最低限のMobだけ蹴散らして、遺跡にたどり着いた。
あらかじめ、アルゴがパーティ編成の権限を持っていたこともあり、ここに来る途中で俺と細剣使いもアルゴのパーティに参入されており、クエストの情報の確認は出来るようになっている。
その情報によると、対象のボスモンスターは遺跡の最深部にいるようなので一気に突っ切ることにする。
先行していると思われるセレスとコペルが蹴散らしてくれているからか、殆ど戦闘をすることなく最下層への階段にたどり着いた。
その時、視界左上にあるコペルのHPゲージが一気に半減した。
あまりの事態に俺は速度を上げた。アルゴもゲージに気付いたようだ。アルゴも速度を上げている。細剣使いはよくわからないまま、速度を上げた俺達に付いてくる。
あっという間に最深部が目視できる状態になった。その頃にはコペルのHPは回復していた。
が、その代わり、コペルが回復する時間を稼ぐためタゲを取っているのだろうセレスのHPがレッド手前になっていた。
そして、俺の目に映ったのは、ボスの攻撃にバランスを大きく崩したセレスの姿だった。
それを目にした瞬間、頭の中の何かがハジけ飛んだのか、気づいた時にはボスの追撃がセレスに届くより早く、俺のソードスキル“ソニックリープ”がボスの背中にクリーンヒットしていた。
エピソード12裏 End Next エピソード13
表と裏の終了位置がこれで同じ時間になりました。
思ったより早くかけた(うてた)ので少し早めの投稿です。
エピソード13で戦闘が終わり13には裏はありません。
そして、再びネタの充電期間に入ることになるかもしれません。
14以降の進みがとにかく遅いのです。
投稿日21:10頃追記
・アルゴの名前がおかしなとこになってるとこを発見修正しました。
・一部のセリフを修正
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エピソード13 フロアボス情報開示クエスト -撃破-
よくよく落ち着いて見てみると弾丸だと思ったのは突進系のソードスキルで突っ込んで来たキリトだった。背後からの不意打ちと綺麗に背骨に入ったことによる2重クリティカルにより、ボスの動きが止まった上、ボスのHPゲージが1本目の1/4位まで一気に減った。
『キリト! 助かった。』
「セレス、のんびり喋ってないでさっさと回復しろ!」
『了解。』
すみやかにボスから距離をとり、ポーションを飲む。レッドに突入しちゃったからとりあえず4本飲んどきたいな…5本飲めたら御の字だな。などと考えながらも視線は戦局を追っていく。
キリトと3本目のポーションを飲みきって戦線に復帰したコペルが二人でタゲをとりつつ攻撃をしているのだが、やはりキリトは別格だった。レベル的には私と大差ないはずなのだが、私がさばききれずにジリジリ削られた“スキルを通常攻撃で相殺する”という芸当をやりきっている。
その上、キリトが連れてきたAsunaという細剣使いがこれまた凄い。あんなリニアー初めて見た。
アルゴもさすがで、威力が高めのスキルは発動前に背後からの不意打ちになるようにピックを投げてスキルの発動そのものを阻害している。
私が3本目のポーションを飲めるようになったところで、ボスのHPゲージの1本目が消えた。そして再びセンチネルがpopする。それと同時に私は3本目を飲み干した。
「何!? 取り巻きがいたのか?」
『そうなんだよ。キリトたちはボスを頼む。そのセンチネルは私が倒す。』
「回復は?」
『今3本目飲んだ。クールタイムできっちり倒しきれるから大丈夫。』
「分かった。まかせた。」
今度は私自身の残HPの事もあり、慎重に対処する。されど、2分でセンチネルを倒せた。
そしていま一度回復に専念する。
その後大きな問題は起こらず、5本目のポーションを飲んだところで私も戦線に復帰した。
その時点のボスの残りHPは2本目の70%程だった。
だが、私が復帰したことでソードスキル発動の余裕が生まれ、ダメージ効率が上がりそのあとのボスのHPの減りは早くなり、あっという間に50%を切った。
そこで再びセンチネルがpopした。今回はボスの雄叫びというおまけ付きで…。
『キリト、フェンサーさんにセンチネルの対処法教えた?』
「まだだ。…行ってくる。」
『よろしくー。』
キリトがアスナさんを連れてセンチネルの対処をしにいく。
そう、フロアボスの取り巻きもセンチネルだと思われるため、その予行演習だ。
その間、回避に集中するつもりだったのだが、ボスは雄叫びをあげた後、斧とバックラーを投げ捨てた。
そこにキリトたちが戻ってきた。…って、早っ!!
「おいおい、こんなとこまでフロアボスと同じなのかよ。」
『どう考えてもフロアボスの予行演習だよ…な……って、あれはっ!?』
「何アレ…。」
「キー坊、セレっち、2人はあの武器知ってるネ?」
『「ああ、刀だ!」』
そう、斧とバックラーを投げ捨てたボスが腰から抜いたのは“刀”だった。
そこからはさらに大変だった。何せ《オロチ・エリート・ガード》がベータ時代刀使いの初出だったのだ。当然、アルゴ・コペル・アスナは対処しきれない。その上、フロアボス自体に仕様変更の可能性が浮上、それに合わせてお供のリポップもまだある可能性まで出てきた。
そこで、コペルにセンチネルがリポップした場合の対処をまかせ、私とキリトがスキルの相殺と合間の通常攻撃、アルゴはこれまでどおり遠距離からちまちまピックを投げつつ時折接近してクロウで殴って即離脱、アスナもこれまで同様スキル相殺の合間にリニアーをひたすら当てる、ということになった。
結論を言おう。センチネルのリポップはやはりというかあった。一定間隔でボスが倒されるまで無限湧きだった。
高火力のキリト・私・コペルが刀になって以降スキルをほとんど封印(キリトと私はスキル相殺に使うため、攻撃で使えなかった)せざるを得なかった為、かなりの長丁場となったものの、2022年12月2日23:30、クエストボス“クールファング・ザ・コボルト・フォーマー”は倒された。
戦績 MVP:キリト、一撃ダメージ量:キリト(Wクリティカルのソニックリープ)、LA:キリト
……途中からだったのに全部キリトに持ってかれました。
LAは靴だったそうです。その名も“ナイトレザーブーツ”。ATK・DEF・SPD全てに補正が掛かっているユニーク装備である。
クエストクリアの報告と共に改めてフロアボスの情報をもらったのだが、やはりというかクエストボスそのものが情報のヒントになっていた。
以下がフロアボスのデータである。
名:イルファング・ザ・コボルト・ロード HPケージ:4本(1本あたりおよそ10万)
武装:斧、バックラー、残HP1/4(ラスト1本)で野太刀
お供:レベル12ルイン・コボルト・センチネル3体 ゲージが1本無くなる毎にリポップ
されどボスの武装が野太刀になって以降、ボスが健在の間3分毎にリポップ
リポップ数は常時3体
注意点:刀のスキルには全体攻撃がある。発動条件が周囲を取り囲まれること、なので立ち位置に気をつけること。
この情報を持って、第2回フロアボス攻略会議に、私とコペルも参加する事になった。
エピソード13 End Next エピソード14
くっ、なんとか水曜中に間に合った。
これにて第2章終了。
3章以降の書き溜めがないため、再びお休みをいただきます。申し訳ありません。
2022/11/06 2:40 ボス情報のHPを修正(数値)
2022/12/04 17:40 ボス情報のHPを再修正(ゲージ) プログレ本に合わせます
今作の注意、アスナは一言も喋ってません。
そして、キリトのセンチネル講義のシーンは割愛いたします。=裏はありません。
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