ずっとあなたのことが (ぷーすけ)
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聖煌天の麒麟 サクヤ

どうもぷーすけです。

サクヤの究極進化が遂に出ましたね!!

サクヤのことがどうしても好きな作者がそれを記念して書いたものです。

でも恋愛物を書くのは苦手なんでそこらへんはご了承ください。


 

ガヤガヤガヤ……

 

「…………」

 

夕方になりダンジョンが終わり皆が全員揃い賑やかになる大部屋。

私は1人部屋の隅でうずくまるように座っていた。

 

私の名前は聖煌天の麒麟 サクヤ。四神の中の1人だ。

 

「姉さん」と誰かが私を呼ぶ声が聞こえた。 私はその声のする方に顔を上げると私の妹であるレイランがいた。

 

「…どうしたの?」

 

私は力のない声で返答する。

 

「私たちと一緒に夕食を食べない?…」

 

「…ありがとう…。でも大丈夫よ」

 

「大丈夫って、姉さん最近ほとんど食べてないじゃない!」

 

「本当に大丈夫だから…もう向こうに行って…」

 

「姉さん!」

 

「私を1人にさせて!!」

 

私は大声で乱暴に言葉を吐き捨てた。シンと賑やかな大部屋が静まり返る。

 

レイランは悲しそうな顔になり 「私たちに出来ることがあるならいつでも言ってね」 と言うとその場を離れた。

…ああ、妹にまでこんな態度をとるなんて姉として失格だな私。

 

 

ぐう〜とお腹がなる。確かに最近ほとんど口にしていない。だが何か食べようとする気すら今の私には起きなかった。

再び私は顔を下げて小さくなった。

 

 

私がこうなってしまったのには勿論理由がある。

 

 

 

ーーー

 

 

 

私がマスターと出会ったのはちょうど今から1年前、マスターが引いたガチャから金の卵として出た。

 

私が出てマスターはもの凄く喜んでくれた。というのもマスターにとって初めてのガチャだったからだ。

 

私はそんな素直に喜んでくれるマスターが嬉しかった。そしてこの人のために全力を尽くそうと自分の中で誓ったのだ。

 

まあしかしそんなトントン調子に物事がうまく運ぶわけもなかった。

 

 

初めの頃のマスターはまあパズルが下手だった。それも3、4コンボとかじゃなくて1、2コンボ。0コンボもザラにあり、よくこのゲームを始めようと思ったなというレベルだった。

 

 

カラカラカラ

 

「えっとここがこうなって、そこがああなって……って、ん!? 時間たりねぇ!!やばっ!!」

 

「マスター落ち着いてください!」

 

「うおーもう知らん!!」

 

ポローン 1combo!

 

「「……………」」

 

って具合に。

 

こんな調子だったので当然私のリーダースキル (火、木、光、水の同時攻撃で5倍) も発動するわけもなく開始当初から苦戦を強いられたのだ。

 

 

 

 

始めてから1ヶ月。マスターは平均のプレイヤーのダンジョンの進行度の実に半分くらいだった。

 

そんなある日私は彼にあることを提案した。

 

トントン ガチャ

 

「マスター、ちょっと宜しいですか?」

 

 

「ん、 どした?」

 

「リーダーを変えて欲しいのです」

 

「どうしたの?急に?」

 

彼は驚いた顔になる。

 

「どうしたって…分からないんですか? 今の状況が!」

 

彼の鈍感さに私は少し大きな口調になってしまう。

 

「状況? 何のことだ?」

 

彼は相変わらずキョトンとした顔をしていた。

 

「要するにダンジョンが全然進んでないってことです!」

 

「そうか?」

 

「そうです。だから私をリーダーから外して下さい」

 

「…うん。別にいいけどダンジョンが進んでないこととサクヤがリーダーなのと何の関係があるの?」

 

 

もう!この人はどんだけわかってないのかしら! そう思い喋ろうとする私を遮るようにマスターは話始めた。

 

「言っておくけど俺はサクヤとやってて全然不満じゃねーぞ」

 

「むしろ楽しいし」

 

「え!?」

 

私は彼の言葉に耳を疑った。

スキルもろくに発動しない…ダンジョンは失敗する…そんなことの何が楽しいのだろうか。

そんな疑問も浮かんだが同時に嬉しかった。

 

「いやそりゃサクヤが自分の力が発揮出来ないことに不満だったら外すのも仕方ないけどさ…」

 

マスターは 「まあ俺のパズル力が無さ過ぎるからな」 と言って申し訳なさそうに頭をかいた。

 

「い、いえ! そんな事全く思ってません! むしろ私も楽しいです!」

 

「そうか、そんなこと言ってくれて嬉しいよ。それじゃあ引き続きリーダーをお願いしてもいいか?」

 

「え、ええ!」

 

 

そう言ってニコッと笑う彼の笑顔に一瞬私はドキッとした。

その時私は今まで彼に持ち続けてきた感情は恋であると確信したのだった。

 

 

ーーー

 

 

 

それからいくらか月日が経った。

 

あの日以降毎日のようにパズルの勉強をしていたマスターは私のスキルも毎回のように発動させるほどパズルが上手くなっていた。

 

他の仲間も強くなりダンジョンも連戦連勝。もう向かう所敵なしといった感じで私とマスターの絆はどんどん深まっていき、あの2人はお似合いね とモンスター達の間でも話題になったくらいだ。

 

そう。そうやって全てがうまくいくはずだったのだ。

 

 

 

あの日がくるまでは………

 

 

 

 

 

 

「さあて。久々のガチャだなあ!」

 

「気合入ってますね! マスター!」

 

「当たり前よ!」

 

マスターは指をポキポキ鳴らす。

 

「よーし…………せいっ!!」

 

マスターがガチャドラの腕を引く。ガチャドラはガラガラと音を立ててお腹から金の卵を出した。

 

「うお! 金だ! やったぞサクヤ!」

 

「やりましたねマスター!」

 

金の卵が光に包まれながら割れていく。 そしてそこから出てきたのは…

 

 

「どうも初めまして。 私の名前はカーリーといいます。どうぞよろしくお願いします」

 

「うおぉぉぉ!! 凄い別嬪さんじゃん! バンザーイ!!」

 

「べっ、別嬪だなんてそんな//////」

 

カーリーは顔を赤らめる。

 

「そうやって照れた顔もかわいいなー」

 

「な!?!?//////」

 

そういってマスターはカーリーの頭を撫でた。突然のことに私もカーリーもびっくりする。

 

「あ、あの……マスター?」

 

「ごめんごめん。かわいかったからつい…」

 

「い、いえ! 私は大丈夫です! むしろ…」

 

「ん?」

 

「また撫でて欲しいかなー…なんて…」

 

「別にいいぞ」

 

「え!?」

 

「言ってくれればいつでもやってあげるよ」

 

「ありがとうございます!」

 

「ああ、じゃあこれからよろしくな!」

 

「はい!」アハハハハ……

 

 

 

「……………」

 

私はそのやりとりを隣で黙って見ているだけだった。

 

それはそうだろう。 1番長い付き合いの私ですら撫でられたことがないのに出会って間もないカーリーさんが撫でられた……。 私はただ唇を噛んで見ているしかなかった。

 

 

 

それからというもの私はリーダーからサブになった。 理由はカーリーさんを育てたいからというマスターの要望だった。

 

確かにカーリーさんは強い。 リーダースキルも私と似ているし、ましてや私より強いかもしれない。

 

 

マスターには強くなってほしい。 でも私を今まで通りリーダーとして使ってほしい。 いろんな思いが頭の中を巡っていた。それに1番にカーリーさんに今のポジションを奪われてしまうといった不安があった。

 

私はそういったことをあまり考えないようにした。 これは短い期間のことだけであってまたすぐに元に戻るだろうと。

 

 

けれどもそんな私の予想に反して状況はさらに悪化していく。

 

 

カーリーさんがリーダーになりしばらくしたある日のこと。

 

私はサブモンスターからも外された。

おそらくマスターが私がサブには向いてないと判断したのだろう。

マスターには休養をとれと言われたがきっとそんな気がした。 その時から私がマスターの部屋に訪れることはなくなった。

 

マスターの姿を見るのは食事の時ぐらいだった。私が前までいたマスターの隣にはカーリーさんが座っていた。 その時のマスターは私の時よりも楽しそうだった。

 

私は悔しかった。カーリーさんに全てを奪われたことが。私が1番マスターのことを理解している。愛している。 けれどももうどうしようもなかった。 マスターには私よりカーリーさんの方が魅力的に映ったのだろう。 あの反応を見るからに出会った時に一目惚れしたに違いない。

 

そのうちモンスター達の間でもその2人が付き合っているんじゃないかと噂になった。

 

 

もう何もかも私の負けだった……。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

気づくと私は涙が出ていた。

 

 

何度かマスターのことを忘れようと試みたがその度にマスターとの楽しかった日々が思い出され、それを阻んだ。

 

私はマスターが好きだ。 その気持ちは他の誰よりも負けない。

 

でも今のマスターには私など映ってないだろう。

 

…だったらいっそのこと……

 

そう考えるのと同時に私は立ち上がり歩き出していた。

 

私がフラフラと歩いているのに気づいたレイランが再び私に近寄ってくる。

 

「姉さんどこ行くのですか?」

 

「………」

 

「具合でも悪いのですか?」

 

「…………」

 

「姉さん! 返事をして下さい!!」

 

レイランは私の肩を掴み私を振り向かせる。

 

「あっ……」

 

「………」

 

「ね、姉さん…どうして泣いているのですか?」

 

「………」バッ

 

「あっ、姉さん!!」

 

私はレイランの手を振り払い駆け出した。後ろからレイランの呼び止める声が聞こえる。

 

 

 

…ゴメンねレイラン……こんな姉で………いつも気にかけてくれてありがとう……さよなら……

 

私は高難易度のダンジョンへ1人で勝手に入っていった。

 

 

ーーーー

 

 

中ではヘラが退屈そうにしていた。

 

「暇ねえ……」

 

それもそのはず。こんな難しいダンジョンを挑もうとする者があまりいないからだ。

 

「……あら誰か来たみたいね」

 

そういってヘラは体を起こす。

 

「あら、あなたはサクヤじゃないの。 しかも1人でどうしたの?」

 

パーティではないと分かったヘラは少しがっくりする。

 

「…頼みがあって参りました」

 

「頼み?」

 

「ええ…」

 

「………なるほど、これからは攻撃を手加減してくれとかそういったお願いね? うーん悪いけどこっちも…」

 

「私を消して欲しいのです」

 

「仕事だから…って、え!?」

 

思ってもない返答におもわずヘラは聞き返した。

 

「消す? あなた何を言ってい…」

 

「貴方の攻撃で私を殺して下さい」

 

「……何かあったの? よければ相談に乗るわ」

 

ヘラがそう言うとサクヤはポロポロと涙を流して事情を話した。

 

 

「そう……よっぽど辛かったでしょう」

 

「もういいんです…だからお願いします」

 

「…本当にいいの?」

 

「ええ」

 

「「…………」」

 

しばらく2人の間に沈黙が続いた。

 

「…分かったわ」

 

そういってヘラは魔力を溜め出した。

 

 

 

 

これでいいんだ。 これでマスターは幸せになれる。 邪魔者はいなくなった方がいいんだ………

ああ、マスターの笑顔。最期にもう一度見たかったなあ……

 

「魔力が溜まったわ…いくわよ?」

 

「…ええ」

 

私が覚悟を決め目をつぶろうとした時、聞き慣れた声がダンジョン内に響きわたる。

 

「ストップストップ!! お前ら何やってんの!?!?」

 

私はその声の方を見る。 マスターだった。

 

「マ、マスター、どうしてここに?」

 

「レイランが教えてくれたんだ。 んで急いで駆けつけてみたら…何無茶な事してんだ。 1人じゃ無理に決まってるだろ。心配させるなよ全く…」

 

「いえ…私は…」

 

「あーあ なんで邪魔が入るのよ! もう少しで倒せたのに!」

 

私が喋りかけたときヘラがわざとそれを遮るかのような大きな声で言った。

 

「そうはさせるか! 後で俺の最強パーティでお前をボコボコにしてやるからな!」

 

「あら、じゃあ楽しみにしているわね」

 

そう言ってヘラはそのダンジョンから去って行く。

 

別れ際にヘラの方を見ると目配せをしていた。 …ありがとうございますヘラさん。

 

「サクヤ」

 

ヘラが居なくなって2人きりになったダンジョン内でマスターが私の名前を呼び近づいてくる。

 

こんだけ身勝手な行動をしたんだ。怒られるに決まっている。これでまた私とマスターとの距離が離れていく。

 

命は助かったが結局状況は悪くなるばかりだ。 私は目をつぶった。

 

しかしいきなり今までにない感触が私の体に伝わった。

 

目を開ける。 私は抱きしめられていた。

 

「え…あ///」

 

「サクヤ…よかった…君が無事で」

 

「…いえ私が勝手な行動をしたばからりに…」

 

マスターの体の温もりが伝わってきて体がとろけてしまいそうだった。

願わくばずっとこのままでいたい。そう思った。

 

「ごめんな、サクヤ。最近ずっと待機させてしまって…怒ってるだろ…?」

 

「いえ、怒ってなんか…」

 

「ホントに?」

 

「ええ」

 

「よかったー、俺サクヤに嫌われたら生きてけないよ」

 

ハハハとマスターは冗談交じりに笑う。

 

「…それは嘘です」

 

「え?」

 

「マスターは私なしでも生きていけます」

 

「むしろ私なんていない方がいいんです」

 

「どうかカーリーさんと幸せになって下さい。 私はそれを願ってますから………」

 

「…本当にそう思っているのか?」

 

「…はい」

 

「じゃあ何で泣いているんだ?」

 

「えっ」

 

気づくと私は涙を流していた。何故か泣いていた。 慌ててそれを堪えようとするが次から次へと目から大粒の涙が滴り落ちていく。

それと同時にそれまで中に溜まっていたものが溢れ出す。

 

「……私は」

 

「私はマスターのことが出会った時から大好きです、好きです、愛してます!!」

 

 

「最初の頃は良かった。でもカーリーさんが来てから全てが変わってしまった。 もうマスターは私のことを見てくれない。今さら何をしても無駄……もう何もかも終わったんです」

 

「ですからもういいんです。 私は諦めましたから…」

 

マスターは黙っていた。

早く返事を言って欲しい。 そうだね、とただ一言言ってくれればいいのだ。

 

実はな、と言ってマスターが口を開く。

 

「昨日カーリーから告白されたんだ」

 

ズキッと心が痛む。 それぐらいのこと分かりきっていた筈なのにそれでも聞くのが辛かった。

 

「…お返事はしたんですか」

 

そんなこと聞かなくても分かっている。 きっとそれを聞いて諦めがつくと思った自分が心の何処かにいたのだろう。

 

しかしマスターの口から思いがけない言葉が返ってきた。

 

「いや、断ったよ」

 

「どうしてですか!?」

 

「でもな。カーリーもそんな悲しまなかったよ。 そのことを分かっていたから」

 

「…そのこと、とは?」

 

マスターが少し黙る。 そして ふぅ、と深呼吸をして次の言葉を言い放った。

 

 

 

 

 

「俺もサクヤのことが好きだ。 もしこんな俺でよければ付き合ってくれないか?」

 

 

 

 

 

 

それは私がこれまで望んでいて、しかし手の届かないところにあると感じていた言葉だった。

 

折角泣き止んだのにまた目に涙が溜まる。

 

「こんな私で良ければ喜んで…」

 

私は涙ぐんで返事をした。

 

ようやく今までやってきたことが報われた。 そんな気がした。

 

 

ーーー

 

 

 

 

その後パズドラ界に息ぴったりの抜群のコンビが現れるのはまた別の話。

 

 




サクヤまじで最高!

決して弱くなんかないぞ!!

皆さんも是非使ってあげて下さい(笑)


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守護命の青龍 カリン

第二弾です。

カリンって特に愛着があるわけではないんですがなんか想像しやすかったので書いてみました。


 

ダンジョンの最深部。 そこで俺達はボスと激闘を繰り広げていた。

 

 

「あと少しよ! マスター!!」

 

「ああ、任せろ」

 

カラカラカラ………と俺が揃えたパズルが次々とコンボしていく。

 

……7.8.9combo!!

 

 

「よし! 終わりだ!」

 

「りょうかーい!!」

 

 

今までで一番のコンボが決まったおかげでさらにパワーアップした俺達のパーティはボスにとどめを刺した。

 

「よし、なんとかクリアーだな」

 

「ますた〜!!」

 

なんとか激戦を制することができ一息ついている俺のところにリーダーにしているカリンが駆け寄ってくる。

 

「やったね! マスター大好き!!」

 

 

彼女は駆け寄ってくるなり俺に抱きついた。なんとも柔らかい胸の感触が俺に伝わってくる。

 

「こ、こら離れなさい!」

 

「あっ…」

 

俺は慌てて彼女を引き離す。 さすがにこんなことされると動揺してしまう。よくこんなことを平気でするもんだ。

 

「マスター……もしかして私のこと嫌い?」

 

「はっ⁉︎」

 

 

いやだからなんで女の子ってそんなに極端なの?

 

 

「いやそうじゃなくてさ…こういうことはダメっていうか…」

 

「……嫌なの?」

 

「う、」

 

彼女が上目遣いで俺のことを見てくる。 それは反則だろ。

 

「い、嫌じゃないけどさ…その…」

 

「じゃあオッケーだね‼︎ マスター‼︎」

 

俺がいい終わる前に彼女はまた抱きついてくる。

 

またいつものパターンかよ、と思いつつ俺は他のパーティメンバーに助けを求める。

 

「おい、ルシファー! 助けてくれ!」

 

「くくく、お似合いですぜ旦那」

 

ルシファーはこんな状況をいつも外から楽しんでいる。 後でぶっ飛ばしてやるからな。

 

 

という感じでこれが俺の日常の一片である。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「はあー疲れたー」

 

今日のダンジョンが一通り終わって部屋でくつろげる至福の時間。俺がソファーでゴロゴロしているとドアのノックする音がする。

 

「はあ、またあいつか」

 

「どーもー! 遊びにきたよー!愛しのマスター!」

 

ドアを開けて入ってきたのは我がパーティのリーダーカリンだった。

 

「なんだよ、何か用か? 俺疲れてんだけど」

 

「だったら私がマスターの癒しになるね!」

 

「うお!」

 

彼女はそう言うなりソファーに飛び込んできた。それと同時に俺はソファーから素早く離れて回避する。

 

「あっぶねー、ギリギリセーフ!」

 

そういって彼女の方を見るとなにやらショボンとした顔になっていた。

 

「…そうだよね。疲れてるから迷惑だよね」

 

「え?」

 

「…私に出来ることはないか……じゃあ部屋に戻るね……」

 

「ち、ちょっとまって」

 

いつもはもっとがっついてくるはずなのにそれと真反対の行動を取られ慌てた俺は思わず呼び止めてしまった。

 

 

「…俺今温かい物が飲みたくてさ……良かったらお茶を入れてきてくれないか?」

 

「うん、 いいよ」

 

彼女は少し笑みを取り戻しお茶を入れに行った。

 

 

 

「なんかあいつ元気なかったな…」

 

俺は再びソファーに寝転がり、天井を見つめてカリンのことを考える。

 

 

 

「…カリンか……」

 

 

 

 

カリンと俺の出会いは初めてのガチャだった。 それも俺にとっては壮絶な。

 

 

なんと彼女は卵が割れて出るや否や俺に抱きついてきたのだ。

 

もうその時の俺はびっくりの一言。 何が起こったのか分からずしばらくなされるがままだったが、慌てて気づいて彼女を引き離す。

 

「な、なんだよ‼︎ いきなり!」

 

「私カリン! よろしくね! マスター大好き‼︎」

 

「………………」

 

いきなりの告白?に呆れて物も言えない俺。

 

要するにカリンの俺への好意は当初から始まっていたのだ。

 

まあでもその好意が-Love-ではなく-Like-であることは分かっている。

 

最初は この子俺のこと好きなのかも、とか期待していたが、彼女は人懐こくてどんなモンスターにもそのように関わっていたので俺もその一部に過ぎないんだな、と感じたわけだ。

 

 

カリンに元気が無かったのもおおよそ見当がついている。

 

最初のうちはそんなカリンのノリに乗ってあげていたが最近は鬱陶しく感じることが多くなってきて、ついつい冷たい態度をとってしまったのが原因だろう。

 

流石に少しあざといとはいえ慕ってくれているのにその態度はないよな…。

 

 

 

「……よし」

 

俺は最近構ってなかったことをカリンに謝ると決めた。

 

 

その時ドアをノックする音がした。

 

「ん、入っていいぞ……お?」

 

てっきりカリンがお茶を持ってきたのかと思ったが、そこにいたのはカリンと同じパーティのサブメンバーであるフレイヤだった。

 

「どしたー?」

 

「マスター、次のダンジョン攻略の書類を持ってきましたよ!」

 

「おお、いつもありがとな」

 

「いえ! 私は当然の事をしたまでで……でもお役に立てたのなら嬉しいです!」

 

フレイヤは顔を赤らめて答える。

 

 

俺のダンジョン攻略は行く前に必ず作戦を立てるようにしている。

 

まあそれは普通俺のやる仕事なのだけれど、ある日フレイヤが折角主力メンバーに入れさせて頂いているのでもう少しお役に立ちたい、と言うのでその日以降任せているのだ。

 

彼女の作戦は完璧であり、おかげでほとんどのダンジョンをクリアーすることができた。 多分俺が立てる作戦より全然いいと思う。

 

だから今こんなに強くなったのも彼女があってこそである。

 

 

そんなフレイヤに何かお返し出来ないかと思い聞いてみる。

 

「なあ、フレイヤ」

 

「なんでしょうか」

 

「何かしてもらいたいことはないか?」

 

「え?」

 

「いや、日頃のお礼といってはなんだけど何か望みを聞いてあげようと思ってさ……いや無かったらいいんだけど」

 

それを聞いたフレイヤは俯いて少しして顔を上げた。

 

「で、では……一つだけ……」

 

「おう、いいぞ」

 

「じ、十秒間だけ目を瞑って欲しいです」

 

「え、それだけでいいのか?」

 

「え、ええ。 でも途中で絶対に目を開けちゃダメですよ!」

 

彼女は恥ずかしいのか顔を真っ赤にしている。 何この子超かわいい。

 

「分かった。 じゃあ目を瞑るぞ」

 

そういって俺は目を瞑った。 フレイヤの絶対ダメですよ、という声が聞こえる。

 

分かってるよ。と答えようとした瞬間、頬の一点に柔らかい感触が伝わる。

 

 

 

…………ん?

 

 

 

 

………………………え? ちょっとまって……… これってもしかして………

 

開けてはいけない目をほんの少し開けて横を見ると、顔を真っ赤にして目を瞑って頬にキスしているフレイヤの顔があった。

 

俺は慌てて目を閉じる。

 

まじかよ‼︎ ふ、フレイヤって大人しそうに見えて意外と大胆なところがあるんだな………ってかどうすればいいんだ⁉︎この状況‼︎

 

そう思いつつとりあえず高鳴る胸の鼓動を抑えてなんとか落ち着かせようとしていると、

 

 

 

 

 

ガシャーン!!!

 

 

「「!!!???」」

 

入り口の付近で大きな音がしたので驚いた俺とフレイヤが目を開けてその方を見ると

 

 

 

 

 

「うそ…………」

 

 

そこには持ってきたお茶の器を落として呆然と立ち尽くしているカリンの姿があった。

 

「おいおい、大丈夫か? 」

 

「カリンさん‼︎大丈夫ですか⁉︎ 」

 

 

「……そ、そんな………」

 

 

「気を付けろよ? 怪我とかしてないか?」

 

 

「……マスターとフレイヤちゃんが?………」

 

 

「おーい聞いてるー?」

 

 

「……うそだ………」

 

 

「どうかしたのか?」

 

何を言ってもカリンはブツブツ言って返答しないので近寄ろうとすると

 

 

「うそだー!!!」

 

 

そう言い放ってカリンは部屋を勢いよく飛び出していった。

 

 

 

「「……………」」

 

 

再び部屋の中はフレイヤと二人きりになる。

 

「どうしたのでしょうか…」

 

「……………」

 

 

フレイヤは気付いていないのかもしれないが俺には見えた。

 

 

「………カリンが泣いていた?」

 

ボソッとフレイヤに聞こえないような声で俺は呟く。

 

たしかに部屋を出て行く時に見えたカリンの横顔からは涙が溢れていた。

 

 

「………!!」ダッ

 

「マスター⁉︎」

 

 

俺は何か嫌な予感がしてすぐさまカリンの後を追いかけた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

マスターの部屋を飛び出た私は自分の部屋の隅で疼くまった。

 

「マスター……」

 

さっきから涙が止まらない。 ここに来てこんなに泣いたのは初めてだった。

 

私、失恋しちゃった………。 マスターへの愛なら誰にも負けない自信があったのにな………

 

 

最近どおりで私に対して素っ気なかったんだ。 おかしいとは思っていたけどさっきフレイヤちゃんにキスされているのを目撃して確信した。

 

 

マスターはフレイヤちゃんが好きだったんだ。 私もすごいアピールしてたのにな……

 

そう思うとさらに涙が目から流れ出てくる。

 

 

これからマスターとどう接したらいいのだろう……そう考えていた時、

 

 

トントン

 

 

ドアをノックする音がした。

 

「俺だ。 入っていいか?」

 

マスターだ。 マスターにこんな姿を見せるわけにはいかない。 そう思い慌てて涙を拭いた。

 

「…いいですよ」

 

ガチャ、とドアを開けてマスターが入ってくる。

 

「ごめんな、急に」

 

「…………………」

 

 

マスターがここに来た理由はだいたい分かっている。

 

「…それで、さっきのことなんだけど…どうしたんだ?」

 

「………………」

 

やっぱり。 でも今の私には言い出す勇気が無かった。

 

ただ今の私が言えることは、

 

 

「………マスター……」

 

「ん?」

 

「………マスター、おめでとう……フレイヤちゃんと幸せに……」

 

 

今できる精一杯の笑顔をつくる。 ……ダメだ、このままだとまた泣いてしまいそうだ。

 

「…じゃあ私はここで…」

 

そう思って頭を下げ、部屋から出て行こうとする。 すると、

 

「カリン」

 

呼び止められた。 まあそうだろう。 まだマスターの質問に答えていないのだから。

 

「……はい」

 

「……カリン、お前さ……」

 

「…………はい…」

 

「単純過ぎない?」

 

「……へ?」

 

ぷっ、とマスターが笑う。

 

「もしかしてさっきの光景を見てそう思ったの?」

 

こくりと私は頷く。 間違いない、あれは絶対に…

 

「いや、違うからな」

 

「へ?」

 

「だからな……」

 

また変な声を出す私にマスターは笑いながら説明してくれた。

 

 

 

………………

 

 

 

 

「な、なんだ…そうだったんだ…」

 

事情を聞いた私は安心したせいかどんどんと体から力が抜けていくのを感じる。

 

よかった。 マスターはまだ付き合ってなかったんだ………

 

 

………まだ? まだってことはいつかは誰かと付き合うってこと?

 

「ま、マスターは…」

 

「ん?」

 

「マスターは今気になる人っているんですか?」

 

「ん…ああ。 いるよ」

 

「………その人は誰ですか?」

 

 

もうこの際だから思い切って聞いてみることにした。

ドクン、と胸の鼓動が速くなっているのがわかる。

 

 

すうっとマスターが息を吸う。

 

 

「その子はな、いつも笑っていて俺に元気を与えてくれる」

 

「 ドジなところもあったり、おっちょこちょいだったり、おまけに少し絡みがあざといところもあるけど、そんなところが彼女らしいんだ」

 

「最近少し冷たくあたってしまったけれど、それでも俺は彼女が好きだ。 まあ彼女にはその気はないだろうけどな」

 

 

 

 

 

 

 

「カリン。 君のことが好きだ。俺と付き合ってください」

 

 

 

 

 

 

一瞬マスターが何を言っているかわからなかった。

私のずっと待ち望んでいた言葉がそこにはあった。 目から出た滴が頬を伝わっていくのがわかる。

 

 

 

「遅すぎ……」

 

「え?」

 

「私は出会った時から本気でマスターのことが好きだよ」

 

 

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

私は満面の笑みで答える。

 

私の出会いからのマスターへの思いが今ようやく伝わったのだった。

 

 

 

 




いやーカリン欲しいよー‼︎ (とても宝玉が貯まりすぎてるからなんて言えない……)


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