インフィニット・ストラトス アグル (K.V)
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プロローグ 1

初投稿ですが、頑張ります。


 

 

とある子どもがいた。その子どもは海が大好きで夏になると家族と海に行くのがその子の楽しみであった。そしてその子は幼い子どもでありながらとある夢を持っていた。海の研究者になると言う夢を。その子の名前は

 

『湊 綾人』

 

と言う。

 

 

 

 

そんなある日の事。綾人は、両親と一緒に海に来ていた。綾人はまだ6歳、当然海を見てはしゃぎ回る。海が大好きな綾人なら、尚更であり、至極当然の事だった。そんな綾人の様子を見ている両親は、とても微笑ましかった。

 

「綾人ー、あまり遠くに行っちゃ駄目よー」

 

「はーい!」

 

綾人の母はそう言い、綾人は元気良く返事をした。

 

「本当に、綾人は海が大好きね」

 

「そうだな」

 

綾人の両親は笑顔で綾人を見た。とても楽しそうな我が子を見て、自然と笑顔となった。2人にとって、綾人は自慢の息子だった。綾人はとても楽しそうに海ではしゃぎ回っている。だが、そうしていくうちにだんだん奥の方へと進んで行った。

 

「綾人ー、そんな所まで行ったら危ないわよー!」

 

「大丈夫だよー!」

 

そうは言うがだんだん深くなっており、6歳の子どもが行くには危険だった。

 

「あなた、ちょっと行って来るわね」

 

「わかった」

 

流石に心配になったのか母が綾人の所まで行こうとした。そして綾人は深くなっている事に気付いたのか、浅瀬の方へと戻ろうとした。だがその時

 

「っ!?」

 

足を攣ったのか、綾人は身動きが取れなくなってしまった。

 

「綾人!?」

 

綾人の異変に気付いたのか、母は海を走り出した。

 

「た、助けて……」

 

綾人は溺れかけていた。そしてついに海の中に沈んでしまった。

 

(僕、このまま死ぬのかな……)

 

綾人は6歳でありながら死を覚悟した。だが、その時

 

(!?)

 

すると突然、海の中で綾人の目の前が光りだした。あまりの眩しさに目を瞑ってしまった。そして光が晴れたのか綾人が目を開けると、そこには、青い巨人がいた。その青い巨人は綾人に気付いたのか、突然振り向き、綾人を見つめ、だんだん綾人に近付いて行った。綾人は青い巨人を見ると、ある事を呟いた。

 

「……ア……グ……ル……?」

 

それと同時に、綾人の意識は遠のいていった。

 

 

 

 

 

 

「う……うん……?」

 

「綾人!」

 

綾人が目を覚ますと、母が泣きながら抱きついた。

 

「お、お母さん……?」

 

「良かった。本当に良かった……」

 

「本当にありがとうございました」

 

綾人の父は誰かに礼を言った。その相手は海の家の人だった。綾人はあの時、ライフセーバーに助けられていた。

 

「いえいえ、無事で良かったです」

 

「本当に、ありがとうございました!」

 

綾人はその時理解した。自分は死に掛けたのだと。自分は両親に凄く迷惑をかけたと。

 

「だから遠くに行ったら駄目って言ったでしょ!」

 

「……ごめんなさい……」

 

「でも無事で良かった」

 

そして綾人達は海を後にした。

 

 

 

 

そして、数ヶ月後。

 

綾人達は逃げていた。一体何から逃げているのか?それはミサイルからだった。それも1発だけじゃない。2000発以上だ。何故こんな事になったのか?それは、各国の軍事システムが何者かにハッキングされたからだ。その結果、日本に2000発以上のミサイルが発射されてしまった。

 

(何で、こんな事に!?)

 

日常があっという間に崩れたのだ、こう思うのも当然だ。それでもにげるのに必死だった。今にもミサイルが迫っていた、その時

 

ドガアアアン!!

 

突如ミサイルが破壊された。綾人は空を見ると、何者かが上空に待ち構えていた。それを見た綾人は

 

「白い、騎士?」

 

するとその白い騎士は次々とミサイルを破壊していった。

 

「す、凄い……」

 

綾人は呆気に取られていた。白い騎士が一人で次々とミサイルを破壊していくのだから。

 

「綾人、行くぞ!!」

 

父がそう言い、3人は再び逃げ出した。綾人は安心していた。あの白い騎士がミサイルを全て破壊してくれると。だが、それは大きな間違いだった。ミサイル1発が落ちてしまったのだ。そこは爆発してしまい爆風が発生してしまった。その時3人は爆風から逃れようとビルの陰に隠れた。だがそれは、ミスだった。爆風の影響でビルの一部が崩れたのだ。

 

「綾人!逃げろ!!」

 

父と母は綾人を瓦礫から逃がした。

 

「お父さん!?お母さん!?」

 

綾人は2人の方を見ると、2人は瓦礫の下敷きになっていた。

 

「綾人……逃げ……」

 

母がそう言いかけると、さらに瓦礫が落ちて、完全に2人は埋もれてしまった。

 

「お父さーん!!お母さーん!!」

 

綾人は一瞬で理解した。両親が死んだと。

 

「う、ウワアアアア!!!!」

 

目の前の現実を受け入れられないのか綾人は走り出した。どこに行くかわからないまま。綾人は走り続けると、海岸まで来た。すると、海を見た綾人はあの時の事を思い出した。自分が溺れた時に父と母2人か心配してくれた事を。目を覚ました時には泣いて喜んだ事を。その事を思い出すと綾人は波を流した。両親はたった今、目の前で死んだ。その事は6歳の綾人には耐えられなかった。だが、今もまだ、ミサイルが迫っていて、白い騎士が破壊している。それを見ている綾人は……

 

「何で……何でだよおおおお!!!!」

 

綾人は思い切り叫んだ。自分の感情を思いっきりさらけ出した。すると突然、綾人の周りの動きが止まった。当然、ミサイルと白い騎士も止まっている。

 

「な、何?」

 

綾人は何がどうなっているのかさっぱりわからなかった。だが、綾人は気付いた。ある物だけが止まっていない。動いている。それは海だった。しかもその海は巨大な波となって、綾人に迫っていた。

 

「ウワアアアア!!!!」

 

波は綾人を飲み込んだ。

 

「……ここは……?」

 

綾人は波に飲み込まれたかと思ったが、謎の場所にいた。

 

「っ!?あれは!?」

 

綾人の目の前にはあの時の青い巨人がいた。

 

「……アグル……」

 

綾人は青い巨人の事を無意識にアグルと言った。するとアグルは、綾人に向かって手を出した。それを見た綾人は、自分もアグルに向かって手を出した。すると、綾人とアグルはだんだん惹かれ合い……

 

 

 

 

 

白い騎士はミサイルを破壊し続けていた。すると白い騎士は誰かに話しかけた。

 

「束、ミサイルは後どれくらいだ?」

 

『後少しだよ!ちーちゃん、頑張ってね!!』

 

「そうか」

 

白い騎士は再びミサイルの破壊に向かった。だがその時、白い騎士とミサイルの間に一筋の光が差し込んだ。

 

「な、何だ!?」

 

光が晴れると、そこには、青い巨人……ではない。普通の人間サイズの

 

『アグル』

 

が、現れた。

 

 




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プロローグ2

俗に言う捏造設定と言う奴です


 

(何!?何が起きたの!?)

 

綾人は自分の身に何が起きたのか全く把握できなかった。波に飲み込まれたと思ったらあの青い巨人と同じ姿になっているのだから。ただ決定的に違うとわかるのは、今は巨人ではないという事だけだ。直感的に今は普通の人間と同じサイズだという事は理解していた。そして目の前には、何発ものミサイルが迫って来ているという事を。

 

(ど、どうすれば!?)

 

綾人は突然の事態にどうすればいいのかわからなくなった。だがその時、綾人の頭の中にとあるビジョンが映った。

 

(これは?)

 

それは、青い巨人=アグルが頭から光線を放つ光景だった。

 

(もしかしたら!)

 

綾人は、ビジョンで見た通りに、右腕を上に挙げた。すると、アグルの頭部から光が出現した。そしてアグルは右腕を振り下ろすとその光は光線となり、ミサイルに向かって放たれた。必殺光線『フォトンクラッシャー』が、ミサイルを一気に破壊した。

 

(凄い、これなら!)

 

綾人は子どもながらに凄いと思った。ミサイルを破壊していると。そしてアグルは、フォトンクラッシャーで次々とミサイルを破壊していった。だが、また次々とミサイルが迫って来る。すると今度はフォトンクラッシャーとは別のビジョンを見た。それは、アグルが両腕で光弾を作り、それを放つ光景だった。綾人はすぐにそれを実行に移った。アグルは両手の間にエネルギーを作り、それを青い光弾に変え、ミサイルに向けて発射した。『リキデイター』でミサイルを破壊した。アグルはリキデイターを連射し、次々とミサイルを破壊した。そして遂に、日本に迫っていたミサイルを一掃した。

 

(やった!)

 

綾人は心の中で喜んだが、それも束の間だった。

 

「貴様、何者だ!?答えろ!!」

 

(えっ!?何つ!?)

 

綾人は突然白い騎士に敵意を向けられた。武器が既に自分に向けられている。

 

「答えないなら、こちらから行く!!」

 

(っ!?)

 

白い騎士が自分を攻撃してくることを悟ったアグルは、咄嗟に右手に光の剣『アグルブレード』を作り、白い騎士の攻撃を防いだ。そしてアグルはそのままアグルブレードで白い騎士を斬りつけた。

 

「うあああ!!」

 

白い騎士を斬りつけたアグルは光り出し、白い騎士の前から消えた。

 

「あいつは、一体……」

 

 

 

 

 

綾人の両親が埋もれた場所に、光が降り立った。その光が晴れると、そこから綾人が現れた。

 

「はあ、はあ……。!?お父さん!?お母さん!?」

 

自分がいる場所が両親が埋もれている場所と気付いたのか、再び両親の所に行くが、既に跡形も無かった。

 

「……お父さん……お母さん……ウワアアアア!!!!」

 

綾人は泣き続けた。6歳の子どもにとって、両親が目の前で死ぬのはあまりにも辛すぎる現実だった。

 

そしてこの事件は、『白騎士事件』と名付けられた。

 

 

 

 

白騎士事件から数日後、綾人の両親の葬儀が行われた。綾人の祖父母、叔父叔母も、当然参列していた。

 

葬儀が終わり、綾人をどうするかの話になったが、田舎の母方の祖父母が引き取る事に決まった。そこには、叔母もいるので簡単に話は纏まった。

 

 

 

 

 

「どういう事ですか!?」

 

(叔母さん、どうしたんだろう?)

 

綾人は叔母が誰かと話している所を見たが、只事では無いようだ。

 

「今お話しした通りです。湊ご夫妻の死因は交通事故という形で世間に公表します。異論は認めません」

 

「そんな!?絶対おかしいです!!」

 

(交通事故?なんで?お父さんとお母さんが死んだのはあのミサイルのせいなのに、何で!?)

 

叔母が言い争いをしていたのは政府の人だった。政府は白騎士事件の事実を隠蔽しようとしていた。そして綾人は、叔母が泣いているのを目にした。

 

政府が綾人の両親の死因を隠蔽したのには理由があった。ミサイルを破壊した白騎士の有用性を示すためだった。白騎士はインフィニット・ストラトス、通称ISと呼ばれるものである。宇宙進出を目的としたマルチフォームスーツであるが、白騎士がミサイルを破壊したため、兵器として見るようになった。それから世界はISが中心となった。だが、ISにはとある欠陥があった。それは、女にしか使えないという事だ。それでも世界はISを受け入れた。その結果、弊害が生まれた。それは、『女尊男卑』だ。政府は女性優遇制度を導入した。その結果、男の立場は完全に無くなったと言って良いだろう。

 

 

 

そして、数年の時が過ぎた。まさかさらに世界を震撼させるとは、この時誰も思わなかった。

 

 




察しているとは思いますが、このアグルはV1です。


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第1話

ここから本編です。


 

 

綾人が引き取られて数年が過ぎた。綾人も今では中学3年生。要するに受験生である。そして今日、綾人の高校受験の日だ。

 

「それじゃあ、行ってきます」

 

「行ってらっしゃい。頑張ってね」

 

叔母は、現在では綾人の母になっている。綾人は、叔母を本当の母のように慕い、叔母は綾人を本当の息子のように可愛がってきた。そして遂に、高校受験の日を迎えたのだ。綾人は、家を出て受験校に向かった。

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

「お帰りなさい。どうだった?」

 

「うん、多分大丈夫だと思う」

 

綾人は受験の状況を母に話した。きっと大丈夫だろうと。

 

 

 

 

夕食の時間になり、綾人達はテレビを見ながら夕食を食べていた。その時、あるニュースが流れた。

 

『本日、ISを動かした男性が現れました』

 

「……IS……」

 

ISと言う単語が出ただけで綾人は嫌悪感を出した。綾人の両親は、ISの犠牲にされたと言っても過言ではない。女にしか使え無く、それが女尊男卑を生んだ。そんな物の為に自分の両親の死が無かった事にされたと言っても良い。それ故、綾人にとって男がISを動かした事など、どうでも良かった。

 

「綾人……」

 

綾人の叔母はそんな綾人をとても心配そうな様子で見つめた。綾人は嫌悪するあまり、箸を握り締めた。だが、悲しいのは綾人だけではない。綾人の叔母だって同じ気持ちだ。だが、そんな2人の事は全く気にしていないようにニュースは続けられた。

 

『これにより、IS委員会は全国一斉に男性を対象とした適性検査を行うと発表しました』

 

「何だと?」

 

結果、綾人も適性検査に参加することになってしまった。当然綾人は乗り気ではない。何故自分がそんな物に参加しなくてはいけないのか?そう思っていても、強制参加のため綾人も渋々参加することになった。

 

 

 

そして適性検査当日。綾人は検査会場に来ていた。既に検査は始まっており、次々と先に検査が終わった男達が出てきた。その結果は適性なし。これが当然の結果なのだが、それでも検査は続いていった。それでも結果は変わらず、動かす者は誰もいない。綾人は時間の無駄だと思いながら自分の番が来るのを待った。無駄だとわかりながら。

 

「次の方、どうぞ」

 

遂に綾人の番が来た。綾人はI何も考えずにISに触れた。さっさと終わらせようと思っていたが、それは叶わぬ夢となってしまった。何故なら

 

「……何で!?」

 

綾人はISを動かしてしまった。それは、ISを憎む綾人にとって皮肉な結果となってしまった。そして、綾人がISを動かした事は、直ぐに報じられた。

 

 

 

 

「何で、何で俺がISを動かした……」

 

綾人は何故自分がISを動かせたのか考えていたが、中々答えが出なかった。そしてとあるブラスレットのような物を取り出した。

 

「アグル、お前なのか?お前が俺にISを……」

 

綾人は、ブラスレット『アグレイター』を見つめ、そう呟いた。

 

 

 

 

「……ごめん、母さん」

 

綾人は母に謝っていた。綾人がISを動かした事で、綾人は強制的に『IS学園』に行く事になった。IS学園とはその名の通りISを学ぶための場所だ。それは別に良かった。問題なのは、自分がISを動かした事でみんなに迷惑をかけるのではないかと思っているからだ。

 

「綾人、私たちは大丈夫よ。綾人は悪くないわ。だからそんな顔しないで」

 

「母さん……ありがとう」

 

これで、綾人がIS学園に行く事になった。

 

 




次回、入学です


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第2話

 

 

入学式当日、式が終わりHRという事で全員教室に集まっている。綾人のクラスは1組だ。そして当然のごとく綾人の周りには女子しかいない。もう一人を除いて。

 

 

(本当に女ばかりなんだな。まあ当然か。確かこのクラスには最初にISを動かした男がいたような……今はそんな事はいいか)

 

そんな事を考えている時、一人の女性が教壇に立った。

 

「新入生の皆さん、入学おめでとうございます。今日から一年間副担任を務める山田 真耶です。宜しくお願いしますね」

 

(副担任?担任は別の人なんだ)

 

「…………………」

 

綾人はそう思っている事とは別に、クラスの人達は何の反応も示さなかった。そのせいで、副担任の『山田真耶』は何故かうろたえていた。それを見た綾人は

 

(おい、もうちょっとしっかりしろよ)

 

と、思った。

 

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で。」

 

真耶は自己紹介ということでこの状況をどうにかした。本当にどうにかなったのかは知らないが。

 

 

 

 

自己紹介が進み

 

「…織斑君。織斑一夏君‼︎」

 

「はっ、はい⁉︎」

 

(織斑一夏、あれが男で一番最初にISを動かした奴か。本当に、どうしてこうなっちゃったのかな)

 

「大声出してごめんね。今自己紹介で『あ』から始まって今『お』なのでお願いできるかな?」

 

「はっ、はい、わかりました」

 

(男でISを動かしたと言っても、至って普通だな)

 

そして、織斑一夏の自己紹介が始まった。

 

「織斑一夏です」

 

(こういう所で緊張するあたり、やっぱり普通の人間か。俺のように、アグルが関わっている可能性がある訳でもない)

 

「い、以上です‼︎」

 

ズゴオォォ‼︎

 

(……え?)

 

織斑一夏の自己紹介が素っ気なく終わったことで女子達がずっこけた。綾人はそれを呆れながら見ていた。

 

ドゴオォォ‼︎

 

(今度は何だよ?)

 

「痛ってええええ‼︎げえ、関羽⁉︎」

 

(関羽?何?どういうこと?)

 

「誰が三国志の英雄だ、馬鹿者」

 

「織斑先生、会議は終わったんですか?」

 

「ああ、すまなかったな山田先生、HRを押し付けてしまって」

 

「いえ、大丈夫ですよ。副担任として当然の事をしたまでです」

 

(あの様子だと、今織斑一夏をあの出席簿で叩いた女の人が担任か。織斑先生ね。ん?織斑?いや、まさかな……)

 

綾人は担任が織斑先生と呼ばれ、とある疑問を持った。そんな疑問は些細な疑問ですぐに解決することになるのだから。

 

「諸君、私がこのクラスの担任の織斑千冬だ。君たち新人を1年間でものにするのが私の仕事だ。良かったら返事をしろ。良くなくても返事をしろ。私の言うことにははいと答えろ。逆らってもいいが、その場合は…」

 

(……織斑千冬。確かモンドグロッソで2連覇をしてブリュンヒルデと言われていたな。あんな物で称えられるのか。ふざけんなよ)

 

綾人はISを『あんな物』と言った。それほど、綾人がISを嫌っているということが伺える。

 

「キャーーーーーー‼︎本物の千冬様よ‼︎」

 

「私、ずっとファンでした‼︎」

 

「私、お姉様のためなら死ねます‼︎」

 

(……何なんだこいつら?)

 

この反応には綾人もドン引きしていた。

 

「毎年よくこれだけの馬鹿者が集まるものだ、私のところに集中させているのか?」

 

「キャ――――――‼︎お姉様もっと叱って‼︎罵って‼︎」

 

「でも時には優しくして‼︎」

 

「そしてつけ上がらない程度に躾して‼︎」

 

(……何でこんな所にいるんだ俺は?こういう奴らがISを使うだと?ただの遊び半分で使うのか?だとしたら、マジでふざけんな)

 

ここまで綾人が切れるのも無理もない。ISを広めるそれだけのために自分の両親の死はなかったことにされた。白騎士事件での死者が0人と公表されたことでISの有用性が世界中に広まった。その裏で何があったのかも知らないで。

 

(くそっ、つくづく腐ってやがる。人間ってのは)

 

「はあ〜。で、お前はもっとまともに自己紹介が出来ないのか?」

 

「いや千冬姉、俺は、」

 

「学校では織斑先生だ」

 

「…はい、織斑先生…」

 

(やっぱりこの2人は姉弟か)

 

これで綾人の疑問は解決された。

 

「まあいい、自己紹介を続けろ」

 

自己紹介が再開され、そして綾人の番が来た。

 

「では湊君、お願いします」

 

(ここは一芝居打つか)

 

「は、はい。み、湊綾人です。う、海が好きです。よ、よろしくお願いします」

 

綾人はわざと自分が弱気であるように自己紹介した。何故このようにしたかはわからないが、こっちの方が都合が良いのだろうか?

 

(まあ、こんなもんか。)

 

それでいて綾人は特に何事もなかったように座った。そして、周りも対した反応をしなかった。

 

「さあ、SHRはもう終わりだ。あまり時間が無いので、諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらうぞ。その後実習だが、基本動作は半月で身体に染みこませてもらうぞ。いいか、いいなら返事をしろ。文句があっても返事をしろ、私の言葉には絶対に返事をしろ。いいな?」

 

この言葉でHRが終わった。

 

 




朔田流星みたいになっちゃいました。


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第3話

早くも3話です。


 

 

HRが終わり、休憩時間になっていた。綾人は先程の自己紹介で弱気な人間を演じた。何故そのようにしたのかはわからない。やはり何かしらの考えがあるのだろうか。

 

(それにしても、今更ながら女子ばかりの環境に男が放り込まれるなんて、世の中何が起きるか知れたもんじゃないな。だからって、さすがにこれはきつい。それに、俺がIS学園にいる事自体がおかしいんだ。俺がISに関わるなんて一生ないと思っていたんだけどな。それなのに、IS嫌いの俺がISを動かすなんて、皮肉だな)

 

「湊綾人だよな?」

 

(織斑一夏?何で急に?)

 

織斑一夏が何の脈絡もなく突然綾人に話しかけて来た。

 

「俺、織斑一夏。よろしくな」

 

(あぁ、ただの自己紹介か。他の男子が俺しかいないから話しかけて来たのか。ここは乗ってやるよ)

 

「湊綾人です。よろしく、織斑君」

 

「同い年だろ?初対面だからってそんな改まんなくていいぜ。一夏って呼んでくれ」

 

「すいません、僕は苗字呼びの方が落ち着くんです」

 

「そんな事言うなよ。せっかく男子がいるんだからさ」

 

「まあ、慣れたらそのうち……」

 

こういった感じで織斑一夏と綾人の話が進んでいった。が、そこに

 

「……ちょっといいか」

 

「え?」

 

「ん?」

 

一人の女子が話しかけて来た。その女子は織斑一夏に用事があるみたいだ。

 

「……箒?」

 

「………………」

 

(何だ?この女子は織斑一夏の知り合いなのか?じゃなきゃ話しかけて来ないか)

 

「織斑君に用があるみたいですよ」

 

「あ、ああ……。で、何の用だ?」

 

「廊下でいいか?」

 

「お、おう……」

 

織斑一夏が女子生徒に連れられて行った。それを見た綾人は何故か考えこんでいた。

 

(確か今のは篠ノ之箒だったな。篠ノ之……確かISの開発者の名前は篠ノ之束……まさかあいつも?)

 

綾人は篠ノ之箒の事をISの開発者である篠ノ之束の妹と考えていた。あの織斑千冬の弟がすぐ近くにいることで、その可能性があった。

 

(それにしても、この喋り方疲れるな。大人しく普段通りにしておけば良かったかな?でも、昔はこういう感じだったのに、俺も変わってしまったな。……これも全部、ISの所為だ。……いや、あの政府の奴らだ。奴らが父さんと母さんの死を隠蔽工作した。そのせいで……、そもそもどうして父さんと母さんは死んだ?ミサイルが一斉日本にに発射された。そのせいで……)

 

キーンコーンカーンコーン

 

チャイムが鳴り、休憩時間の終わりを告げた。

 

(もう休憩終わりか。早いな)

 

 

 

 

 

 

「――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ――」

 

授業始まった。綾人は一応真面目に授業を受けているが、内心ではイライラしている。それもペンを握り潰してしまいそうなくらいに。

 

(落ち着け、落ち着くんだ俺。こんな事でイライラしても、何の意味も無いのに……)

 

「では、ここまでで質問がある人はいますか?」

 

(ようやく落ち着けた。早くどうにかしないと……)

 

「織斑君は何かありますか?」

 

「質問があれば遠慮せずに聞いてくださいね。何せ私は先生なんですから‼︎」

 

(質問タイムか?まあ今は大丈夫か)

 

「…山田先生‼︎」

 

「はい、織斑君‼︎」

 

「ほとんど全部わかりません‼︎」

 

「ええぇ⁉︎全部ですか⁉︎」

 

(全部わからないって……え?)

 

「今の段階でわからない人はどれくらいいますか?」

 

真耶が聞いて見るがここで挙手をする人は誰もいなかった。

 

(まあ、当然でしょう)

 

「湊君はどうですか?」

 

(あ、俺にも聞きます?)

 

「ぼ、僕はまだ大丈夫です」

 

「でもわからない所が会ったら遠慮せずに聞いてくださいね」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

(多分聞くことは無い気がするけど。俺がISの事なんて聞きたくないだけだけどね)

 

「織斑、入学前の参考書は読んだか?」

 

「……分厚いやつですか?」

 

「そうだ」

 

「古い電話帳と間違えて捨てました」

 

(……馬鹿か?電話帳と間違えて捨てるなんて。大体、見間違えるようなものじゃないだろうに)

 

「必読と書いてあっただろうが馬鹿者。まあいい、後で再発行してやるから一週間で覚えろ」

 

「えっ、一週間であの分厚さはちょっと…」

 

「やれと言っている」

 

「……はい……」

 

(……これはもうどうしようもないでしょ)

 

綾人はそんな一夏を哀れな目で見ていた。ただし同情はしていないが。

 

「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった『兵器』を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。そうしたいための基礎知識と訓練だ。理解が出来なくても答えろ。そして守れ。規則とはそういうものだ」

 

(……さっきの様子だと大半の奴らは理解していないように見えたけど)

 

「織斑、『自分は望んでここにいるわけではない』と思っているな?」

 

(……はい?)

 

「望む望まざるにもかかわらず、人は集団の中で生きてなくてはならない。それすら放棄するなら、まず人であることを辞めることだな」

 

(何だこの人?自分がISの世界王者だからって、何故そういうことを平気で言う?姉弟である以前に、一応教師だろ。問題発言になるんじゃないか?)

 

だがそんな綾人を気にせずに授業が進んでいくのであった。

 

 

 

 

「頼む‼︎俺に教えてくれ‼︎」

 

授業が終わると一夏が綾人に教えてくれと頼み込んでいた。綾人はわざとらしくそんな事を言われても困るというような顔をしている。

 

「無茶言わないでくださいよ。僕だって全部わかるわけじゃないんですから」

 

「そんな事を言わずに頼むよ!」

 

(流石にしつこい)

 

だが、この時綾人は思わなかった。この後いろんな意味で面倒な事が起きると。

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「へ?」

 

「ん?」

 

面倒な事が今起きた。

 

「聞いていますの?お返事は?」

 

(何だこいつは?いきなり話しかけて来た癖に、偉そうなやつだ)

 

「あ、ああ。聞いてるけど……どういう用件だ?」

 

「まあ! なんですの、その返事は。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度と言う物があるんではないかしら?」

 

(成る程、女尊男卑思考か。田舎じゃそんな事はあまり無かったから気にしていなかったが、いざ対面すると、ウザいし面倒くさいな)

 

「悪いな。俺、君が誰か知らないし。綾人、お前は知ってるか?」

 

(俺に振るなよ。確かこいつは)

 

「す、すいません。僕もわからないです。(知ってるけど)」

 

「なっ⁉︎知らない⁉︎この私、セシリア・オルコットを⁉︎入試主席でイギリスの代表候補生であるこの私を⁉︎」

 

(流石にそこまでの情報なんか持ち合わせてないって)

 

「あ、質問いいか?」

 

「ふん。下々のものの要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

「代表候補生って、何?」

 

がたたっ!

 

一夏がそう言った瞬間に周りの女子がずっこけた。

 

(……うん。馬鹿じゃねーの?)

 

「あれ? どうしたんだ?」 

 

「どうしたじゃないですよ織斑君。流石にそれはないですよ」

 

「え?」

 

「あ、あ、あ……」

 

「『あ』?」

 

「あなたっ、本気でおっしゃってますの!?」

 

「おう。知らん」

 

(何でそんな堂々と言うんだよ……)

 

「信じられない。信じられませんわ。極東の島国というのは、こうまで未開の地なのかしら。常識ですわよ、常識。テレビがないのかしら……」

 

(……こいつの第一印象は決まった。ウザい。これに尽きる)

 

「なあ、代表候補生って?」

 

「国家代表IS操縦者の候補生の事ですよ。単語から想像すれば分かることですよ」

 

「そういわれればそうだ」

 

(ちょっとは頭使えよ)

 

それでも、セシリアの一方的な話は続く。

 

「そう!その候補生として選出されたエリートなのですわ!」

 

(エリートか。実際凄いんだろうけど、ISのエリートが目の前にいようと、俺には関係ない。そもそも、俺の前でISの話はしないで欲しいんだけど)

 

「とにかく!本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡……幸運ですのよ。その現実をもう少し理解していただける?」

 

「そうか。それはラッキーだ」

 

(全然ラッキーじゃない俺がいるんだけど)

 

「……馬鹿にしていますの?」

 

「あ、貴女が幸運と言ったんじゃないですか」

 

「大体、あなたたち、ISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。男でISを操縦できると聞いていましたから、少しくらい知的さを感じさせるかと思っていましたけど、期待はずれですわね」

 

「俺に何かを期待されても困るんだが」

 

「ふん。まあでも? わたくしは優秀ですから、あなたのような人間にも優しくしてあげますわよ」 

 

(……そろそろウザくなって来たな。すでにウザいけど)

 

「ISのことでわからないことがあれば、まあ……泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

 

(教官を倒すのは、流石代表候補生と言いたいところだけど、こいつにはあまり凄いとは言いたくないな)

 

「入試って……もしかしてあれか?ISを動かして戦うってやつ?」

 

「それ以外に入試などありませんわ」

 

「あれ? 俺も倒したぞ」

 

「「は?」」

 

(教官を倒した?こいつが?素人のくせに?)

 

「お、織斑君、教官を倒したんですか?」

 

「俺の時は倒したっていうか、いきなり突っ込んできたからサッとかわしたら、向こうが勝手に壁にぶつかってそのまま動けなくなっただけだ」

 

「それ、ただ相手が自滅しただけじゃないですか」

 

「そ、そこの臆病者の貴方!貴方はどうなんですの⁉︎」

 

(俺に振るなよ。どいつもこいつも。それに臆病者って、まあそう見えなくも無いか)

 

「ぼ、僕ですか⁉︎僕は負けましたよ」

 

「わ、わたくしだけと聞きましたが?」

 

「もしかして女子ではってオチじゃないのか?」

 

「つ、つまり、わたくしだけではないと……?」

 

「いや、知らないけど」

 

「あなたも教官を倒したっていうの!?」

 

「うん、まあ。たぶん」

 

「たぶん!?たぶんってどういう意味かしら!?」

 

「おい、少し落ち着けって」

 

「こ、これが落ち着いていられ――」

 

キーンコーンカーンコーン!

 

(やっとチャイムが鳴ったか。ずっとこの女と話ていていたのか)

 

「っ………! またあとで来ますわ!逃げないことね!よくって!?」

 

(いや、もう来ないでくれ。頼むから)

 

 



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第4話

 

 

 

「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」

 

この授業は、織斑千冬が担当する授業になっているため、織斑千冬が教壇に立っている。

 

(ISの装備と特性か。父さんと母さんの死をもみ消してまで世界に広めたISの性能、どれほどのものなのか、これでわかる)

 

綾人は自分の両親の死の真相を変えたISの性能の授業ということで何処か心が踊っていた。政府がそこまでして欲しがったISだ。憎い反面、気になるところもあるということだろう。だがしかし

 

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

(クラス対抗戦の代表?ISの勝負か)

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点で大した差は無いが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更は無いからそのつもりで」

 

(要は代表と言う名の雑用、ということか)

 

綾人は内心面倒だと思っていた。それと同時に、自分にはどうでもいいとも思った。

 

「自薦、他薦は問わない。誰かいないか?」

 

織斑千冬がそう言うと、一斉に推薦が始まった。

 

「はい、織斑君を推薦します!!?」

 

「私も織斑君を!!?」

 

(織斑が推薦か。この流れだと、このままあいつに決まりそうだな。まあ、誰がなっても一緒だと思うけどね)

 

綾人は何故か一夏が代表になることを確信していた。それに、さっきまでの織斑千冬の言動を見て考えた結果だった。

 

「おっ、俺!??」

 

「他にいないか?いなかったら無投票当選だぞ」

 

「ちょっと待ってくれ千冬姉、俺はそんなのやら……」

 

「織斑先生だ、それに、他薦された者に拒否権はない。男なら覚悟しろ」

 

綾人の仮説がたった今確信に変わった。それと同時に綾人は織斑千冬にあるイメージが定着した。

 

『横暴』

 

『独裁』

 

この二つが、綾人の織斑千冬に対するイメージになった。

 

「で、どうだ?」

 

(誰でもいいから決めるんだったら早く決めろって)

 

「だったら俺は綾人を推薦する!」

 

(……はい?)

 

あろうことか一夏は綾人を推薦してきた。当然綾人にとっては予想外の事であるため、一瞬だけ思考が停止した。それでもどうにかすぐに我に返った。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ織斑君!どうして僕を推薦するんですか!?」

 

「いいじゃないか別に」

 

(良くねーよ)

 

「他にいないならこの二人で投票だが」

 

織斑千冬は綾人と一夏をクラス代表の候補にした。

 

バンッ!!?

 

(なんだ?)

 

いきなり誰かが机を叩いた。誰が叩いたのかはすぐにわかるが

 

「納得がいきませんわ!!?」

 

机を叩いたのはセシリア・オルコットだった。それと同時に声を挙げた。

 

(なんだあいつ?いきなり声をあげて?)

 

綾人の疑問はすぐにわかる。

 

「そのような選出は認められませんわ!!?大体、男がクラス代表だなんていい恥晒しですわ!!?私に、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!??」

 

(なんだ、そんなことか。全く、女尊男卑の人間いちいち面倒だな。こんなくだらない事でプライドを傷つけられた気になるなんて、気が小さいよ)

 

「実力から行けば私がクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!!?私はこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!!?」

 

(だったら自分から推薦すれば良かったんじゃないのか?)

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で」

 

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

 

(イギリスって料理不味いんだ。初めて聞いた)

 

綾人はどうでもいい事に関心が向いていた。

 

「あっ、ああなたは! 私の祖国を侮辱しますの!??」

 

「先に日本を侮辱したのはそっちだろう」

 

(自分の国を侮辱されたくらいでいちいち怒るなって)

 

「決闘ですわ!!?」

 

(この流れでどうしてそうなるの?)

 

「いいぜ、四の五の言うよりわかりやすい」

 

(あっ、受けるんだ)

 

「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い――いえ、奴隷にしますわよ」

 

「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」

 

(織斑、本気だな。何でそこまで……)

 

「そう? 何にせよちょうどいいですわ。イギリス代表候補生のこの私、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!!?」

 

(そう言えば、オルコットはイギリスの代表候補生だったな。これって、織斑にとっては無謀な勝負になりかねないだろ)

 

「ハンデはどのくらいつける?」

 

「あら、早速お願いかしら?」

 

「いや、俺がどのくらいハンデつけたらいいのかなーと」

 

(……は?いやいやいや、織斑君よ。話を聞いていたか?オルコットは代表候補生なんだぞ。それを素人の自分がハンデをつけるって、何を考えてんだ?)

 

「「アハハハ!!?」」

 

(そりゃあ笑われるって)

 

「お、織斑君、それ本気で言ってるの?」

 

「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」

 

「織斑君は確かにISを使えるかもしれないけど、それは言い過ぎよ」

 

(……ISがあれば女は強い。そう思っている連中しかいないのか)

 

「……じゃあ、ハンデはいい」

 

「ええ、そうでしょうそうでしょう。むしろ、私がハンデを付けなくていいのか迷うくらいですわ。ふふっ、男が女より強いだなんて、日本の男子はジョークセンスがあるのね」

 

(女が男より強いなんて、ISに乗っている時だけだろ。何を勘違いしているんだ?いつも強いわけじゃない。本来、男と女の強さなんて大差ない気がするけど。女が男より強いと思っているやつをIS病患者とでも呼ぼうか)

 

「ねー、織斑君。今からでも遅くないよ? セシリアに言って、ハンデ付けてもらったら?」

 

「男が一度言い出したことを覆せるか。ハンデは無くていい」

 

「えー? それは代表候補生を舐めすぎだよ」

 

(舐めてる舐めてないの問題じゃない。ベテランと素人だ。普通はハンデを付けてもらうべきだと思うけどね)

 

「それで、そこの臆病者の貴方はハンデは要りますか?」

 

(臆病者の貴方?俺のことか)

 

綾人はセシリアに指名された。

 

(こいつと話も勝負もしたくないな。ここは無駄だと思うけど掛け合ってみるか)

 

「あ、あの、織斑先生」

 

「なんだ湊」

 

「ぼ、僕はオルコットさんが代表でもいいと思います」

 

綾人はセシリア・オルコットがクラス代表でもいいと言い出した。

 

「ほう、何故だ?」

 

「オ、オルコットさんはイギリスの代表候補生ですし、そ、それに、僕と織斑君は素人です。僕達とオルコットさんとでは、明らかな実力差があると思います。だ、だからここは、オルコットさんがクラス代表をするべきだと……」

 

「あら、逃げるんですの?」

 

(お前が反応するのかよ)

 

「確かに私が実力があるのは認めますわ。だからと言って勝負をせずに逃げ出すなんて。やっぱり貴方はどうしようもない臆病者ですわね」

 

(お前の意見は聞いてないんだが)

 

「……お、織斑先生、どうなんですか?」

 

「綾人、お前ここまで言われて悔しくないのかよ!?」

 

(いや、今そういうの関係ないから)

 

「織斑君、そういう問題じゃないんですよ。これはクラス代表を決める話し合いです。それが話が脱線してそんな話になっただけです。冷静に考えれば、実力があるオルコットさんが適任です。それに、オルコットさん自身が立候補してるんですから」

 

「で、でもよ……」

 

「お、織斑先生、結果は……?」

 

(無駄だと思うけど)

 

「湊、お前の言っていることはごもっともだが、それは認めん」

 

(ああ、やっぱり)

 

「来週の月曜の放課後に第3アリーナで試合を行う。それでいいな?」

 

結局、綾人も勝負をすることになった。

 




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第5話

 

 

綾人は一夏の勝手な推薦によってクラス代表を決めるための試合に出ることになってしまった。綾人のことだから一夏に推薦された時に大体こうなることを予想していただろう。

 

(しかし、クラス代表決定戦か。随分と面倒なイベントが入ったな)

 

ちなみに、綾人はクラス代表になる気など一切なかった。故に、綾人はどうやって勝つかではなく、いかにして負けるか、ということを考えていた。

 

(オルコットは代表候補生。だから専用機を持ってると考えてもいい。それに対して俺はISに関してはド素人。代表候補生とド素人では天と地の差があるのは間違いない。これの勝負は見えた。オルコットとは普通に戦って負けよう。だけど、問題は織斑だな)

 

綾人が次に考えているのは一夏との試合だった。同じ初心者同士では、まともにISを扱えず大した勝負にならないと思っているのだろう。

 

(あいつとは途中まで本気で戦って、段々追い詰められて負ける事にしよう)

 

綾人は一夏との試合の予定を簡単に脳内でまとめた。セシリアとの試合と一夏との試合、いずれも負ける事が前提の考えだった。それに、わざと負ける方が、綾人にとって色々と都合が良いからだ。

 

「なあ綾人。来週の試合どうする?」

 

「どうするじゃありませんよ織斑君。織斑君が勝手に僕を巻き込んだんじゃないですか」

 

「わ、悪かったよ」

 

綾人と一夏は来週の試合について話すが、綾人はもうどうするかを決めていたため一夏の話を聞く気が無かった。聞く気がないというよりは、もう自分には関係ないと思っているかもしれない。

 

「ああ、織斑君、湊君。まだ教室にいたんですね。よかったです」

 

「はい?」

 

「?何ですか?」

 

そこに山田麻耶が来て綾人達に話しかけた。

 

(俺たちに用があるのか?でも、今更何の用が?)

 

「えっとですね、寮の部屋が決まりました」

 

(寮?そう言えばここは全寮制だったな。でも、確か俺たちは……)

 

「えっ!??でも一週間は自宅から通学してもらうんじゃ?」

 

(織斑の言うとおり、一週間は自宅通学のはずだが……。最も俺は、自宅通学は不可能だけど)

 

「そうだったんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理矢理変更したらしいんです」

 

(無理矢理か。結構政府も必死なんだな。掌返しもいいところだ)

 

「山田先生、でも俺たち荷物の用意してないですよ」

 

(確かに、荷物を用意してないのにいきなり寮に入れってのは無理な話だけども、その事を考えたのか?)

 

「あ、いえ、荷物なら」

 

「私が手配をしておいてやった。ありがたく思え」

 

(ほう、用意周到だな。じゃあ俺の荷物は母さんが準備してくれたのか?)

 

「ど、どうもありがとうございます」

 

「まあ、生活必需品だけだがな。着替えと、携帯電話の充電器があればいいだろう」

 

(確かにそれだけあれば充分なんだろうが……まあ、なんだ。ドンマイとしか言いようがないな。一応俺も聞いておくか)

 

「あ、あの、織斑先生。僕の荷物は……?」

 

「お前の荷物は、親御さんが用意してくれたそうだ」

 

「そ、そうですか。ありがとうございます」

 

(母さんが用意してくれたのか。ありがとう、母さん)

 

「これが寮の鍵です」

 

麻耶は綾人と一夏に寮の部屋の鍵を渡した。だが鍵に書かれていた部屋の番号は二人とも別の番号だった。

 

(違う番号?ということは一人部屋なのか?流石に女子と一緒になるのは考えにくいが……。まあ、それについて何の説明がないから一人部屋なんだろう)

 

綾人は既に自分達は一人部屋だと思い込んでいるが、実際はどうなることだろう。

 

「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂で取ってください。ちなみに各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年ごとに使える時間が違いますけど……えっと、その、二人は今のところ使えません」

 

「え、なんでですか?」

 

(おいおい、これは流石に冗談だろ)

 

一夏の爆弾発言に流石の綾人も呆れてしまった。

 

「アホかお前は。まさか同年代の女子と一緒に風呂に入りたいのか?」

 

「あー……」

 

「織斑君、ここが本来女子校だって事、忘れていません?」

 

「えっ!??織斑君女の子とお風呂入りたいんですか!??だっ、駄目ですよ!!?」

 

「いやいや、女子とは一緒に入りたくないです!!?」

 

「ええっ!??女の子に興味がないんですか!??そ、それはそれで問題のような……」

 

(山田先生も山田先生で何でそういう考えになるんですか?)

 

その後どうにか事が済み、一夏も麻耶も落ち着いた。

 

「えっと、それじゃあ私たちは会議があるので、これで。3人とも、ちゃんと寮に帰るんですよ。道草くっちゃダメですよ」

 

「綾人、行こうぜ」

 

「あっ、はい」

 

こうして、綾人と一夏の入寮が決定し、二人は寮に向かった。

 

 

 

 

 

 

そして二人は寮についた。

 

「じゃあ、俺はここだからまたな」

 

「はい。僕は向こうですので」

 

綾人は一夏と別れ自分の部屋に向かった。

 

「ええっと、俺の部屋はっと……あった。ここか」

 

綾人はドアノブに手をかけたが急に手を離し何かを考え始めた。

 

(待てよ。ここは普通に女子寮だ。そこに俺たちを無理矢理押し込んだ。まさか本当に女子と同室になる可能性が……。いや、流石にそれはないだろう。いくらなんでも男女を一緒にするなんて馬鹿げた事はしないはずだが……そもそも2人しかいない男に一人部屋を与えるか?一人部屋だと思ったが、普通は俺たちが一緒になるはずだ……それを無理矢理で、さらに部屋が別々……まさか……だよな?いや、ここは念には念を入れて……)

 

綾人は何か意を決したのかドアをノックした。反応がない事を願いながら。

 

「は〜い」

 

「……ゑ?」

 

案の定部屋の中から女子の声が聞こえてしまった。綾人は嫌な予感が的中したのか若干放心状態になった。

 

(まさか本当に女子と同室になるなんて……)

 

そんな綾人の気も知らずにドアが開いた。

 

「あっ、あややだ?」

 

(こいつは確か……)

 

「え、えっと、君は同じクラスの……」

 

「布仏本音だよ〜。よろしくね〜」

 

布仏本音。彼女が綾人のルームメイトだった。

 

(……なんだこいつは?妙に調子が狂うな)

 

「あっ、僕は一応この部屋に決まった湊綾人です。よろしくお願いします……」

 

「知ってるよ〜。入って入って〜」

 

「あっ、失礼します」

 

本音に連れられて綾人は部屋に入った。

 

「あやや〜、そんなに堅苦しくしなくてもいいのに〜」

 

「すいません。こっちの方が慣れてるので……それより、さっきから気になってたんですけど、あややというのは?」

 

「あややは私の呼び名だよ〜」

 

「あっ、そうですか……」

 

(あややなんて、小学でも中学でも呼ばれた事無いって)

 

と、内心毒づきながら思った。

 

「そうだ。あややに荷物があるよ〜」

 

「僕にですか?」

 

(まあ、母さんからの荷物だろうな)

 

綾人は荷物を見つけた。それは母からの荷物で、中を開けると手紙が入っていた。

 

(手紙?なんだろう)

 

綾人は手紙を読み始めた。その手紙にはこう書かれていた。

 

『綾人へ。この手紙を読んでいるなら、無事に荷物が届いて良かったです。綾人、IS学園はどう?綾人がISが嫌いなのは、私も良く知っています。でも、憎んでばかりではダメ。綾人にとっては辛い現実だけど、それでも頑張って生きて欲しい。綾人は、死んだ姉さん達の希望だから。

PS 綾人のために海の本も一緒に送りました。姉さん達のためにも、絶対夢を叶えてね。 義母より』

 

「……母さん、ありがとう」

 

そして綾人は手紙をしまい、荷物を出し始めた。その時、本音が海の本があるのを見つけた。

 

「海の本がいっぱいだね〜」

 

「僕、海が好きなんです。だから将来は、海洋学者になるのが夢なんです」

 

「へ〜、凄いね〜」

 

「……なんだか反応が薄い気がするんですけど……?」

 

「そんなことないよ〜」

 

(ふっ、まあいいか。海か。あの時、海の中でアグルと出会ったのも、運命かもしれないな)

 

こうして、IS学園の初日が終わった。

 

 




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第6話

綾人のルームメイトが同じクラスの女子の布仏本音だということが発覚してから一日が過ぎた。その時はもう何事もなく無事に眠りについていた。そして朝になり

 

(……朝か。時間的にも丁度良いな。で、お隣さんは?)

 

綾人は本音が寝ているベッドを見ると、本音はまだ寝ていた。

 

(先に着替えるか)

 

綾人は本音がまだ寝ているうちに着替えを済ませた。

 

(……まあ、同じ部屋同士、ここは起こしてあげるか)

 

「布仏さん、朝ですよ。起きてください」

 

「……ふぇ?あ、あやや?おはよ?」

 

綾人は流石に女子の体を揺すって起こすことはできなかったのか、声だけで本音を起こした。

 

「おはようございます。僕はもう着替えましたので先に行きますよ」

 

「は?い」

 

綾人は本音より先に部屋から出て行った。そして綾人は食堂に向かった。

 

 

 

 

綾人は食堂で一人で朝食を食べているが、そこに一夏がやって来た。いや、一夏だけじゃない。女子が一人一緒だった。

 

「綾人!」

 

(織斑か。朝からテンション高いな)

 

褒めているのか、それとも呆れているのか、はたまた皮肉で言ったのか。それは誰にもわからない。

 

「おはようございます織斑君。えっと、そちらの方は?」

 

(確か昨日の朝に織斑を連れて行った篠ノ之箒だったな)

 

「ああ、紹介するよ。幼馴染の篠ノ之箒だ」

 

「篠ノ之箒だ。よろしく頼む」

 

「湊綾人です。よろしくお願いします」

 

(まあ知ってるけどな)

 

綾人個人としては必要の無い自己紹介だっただろう。

 

「あの、織斑君。一つ聞きたいことがあるんですけど」

 

「ん?なんだ?」

 

「織斑君の部屋って、一人部屋でした?」

 

綾人は一夏に部屋ついての質問をしたが、やはり気になっているのだろうか?

 

「いや、俺は箒と同じ部屋だぜ」

 

(やはりこいつも女子と同室か。要するに同じ条件ってことか。違う点をあげるとすれば、織斑は幼馴染と。そして俺は、全くの初対面との同室か。……明らかに環境が違う。唯一の救いが、同じクラスってことか)

 

「それがどうしたんだ?」

 

「いえ、僕だけじゃ無いってわかったので、ありがとうございます」

 

「じゃあ綾人も女子と同室なのか?」

 

「はい。僕は同じクラスの人と一緒です。いやー、焦りましたよ。違う鍵番号だったのでつい一人部屋だと思ったので」

 

(まあ、こんな話はどうでもいいんだけどな)

 

そしてそんな話をしているうちに綾人は食べ終わった。

 

「じゃあ、僕は食べ終わったので先に行ってますね」

 

「ああ、また後で」

 

綾人は先に教室へ向かった。

 

 

 

 

 

「ところで織斑、お前のISだが準備まで時間がかかる」

 

「へ?」

 

「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」

 

(専用機?まさか、そんなことが……)

 

綾人は一夏に専用機が与えられると知り少々驚いたが、すぐに冷静になった。

 

(これなら今度の試合はわざと負けることはない。訓練機と専用機の性能差で勝負を決められる)

 

綾人は完全に自分が負けるイメージで考えていた。もとより、勝つ気が一切無い綾人にとって、一夏が専用機を持つことは嬉しい誤算だった。

 

「せ、専用!??一年の、しかもこの時期に!??」

 

「つまりそれって政府からの支援が出てるってことで……」

 

「ああ~。いいなぁ……。私も早く専用機欲しいなぁ」

 

(……こいつら、ISをなんだと思ってるんだ?それに、専用機を手に入れたところでどうするつもりだよ)

 

「?」

 

(そして当の本人が全くわかってないっていう)

 

「織斑、教科書の6ページを音読してみろ」

 

「え、えーと『現在、幅広く国家・企業に技術提供が行われているISですが、その中心たるコアを作る技術は一切開示されていません。現在世界中にあるIS467機、そのすべてのコアは篠ノ之博士が作成したもので、これらは完全なブラックボックスと化しており、未だ博士以外はコアを作れない状況にあります。しかし博士はコアを一定数以上作ることを拒絶しており、各国家・企業・組織・機関では、それぞれ割り振られたコアを使用して研究・開発・訓練を行っています。またコアを取引することはアラスカ条約第七項に抵触し、すべての状況下で禁止されています』」

 

「つまり、本来だったら、IS専用機は国家あるいは企業に所属する人間しか与えられない。だからソレ等に所属してないお前が専用機を与えられるのは異例中の異例だ」

 

「へえー」

 

「しかしお前の場合は状況が状況なので、データ収集を目的として専用機が用意されることになった。理解出来たか?」

 

「な、なんとなく……」

 

(要するに織斑はモルモット同然の扱いか。やはりただで専用機は与えてくれないみたいだな。まあ、俺はそんなものいらないけど)

 

「あの、先生。思ったんですけど、篠ノ之さんって、もしかして篠ノ之博士の関係者なんでしょうか?」

 

(誰だか知らないがその事を聞くなんて。確かに俺も気になっていたところだが、そう簡単に答えてくれるのか?)

 

「そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ」

 

(いや、答えるのが早いって。そこは嘘でもいいから無関係って言っておこうぜ。でも、本当にあの篠ノ之束の妹だったのか)

 

「ええええーっ!??す、すごい!!?このクラス有名人の身内がふたりもいる!!?」

 

「ねえねえっ、篠ノ之博士ってどんな人!??やっぱり天才なの!??」

 

「篠ノ之さんも天才だったりする!??今度ISの操縦教えてよ!!?」

 

すると女子達が一斉に箒に詰め寄って行った。

 

(おいおい、本当に単純な奴らだな。有名人の身内ってだけでこれか)

 

「あの人は関係ない!!?」

 

(!??なんだいきなり?)

 

「……大声を出してすまない。だが、私はあの人じゃない。教えられるようなことは何もない」 

 

(要は自分と姉を比べるなって事か?まあ、当然といえば当然か)

 

「さて、授業をはじめるぞ。山田先生、号令」

 

「は、はいっ!」

 

千冬の合図によって授業が開始された。

 

(元はと言えば、あんたが蒔いた種だろ)

 

 

 

 

「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど」

 

(なんだかいちいち態度がでかいな)

 

「まあ? 一応勝負は見えていますけど? さすがにフェアではありませんものね」

 

「?なんで?」

 

「あら、ご存じないのね。いいですわ、庶民のあなたに教えて差し上げましょう」

 

(わざわざそんな大げさに言い回さなくてもいいだろうに)

 

「この私、セシリア・オルコットはイギリスの代表候補生……つまり、現時点で専用機を持っていますの!!?」

 

(やはり専用機を持っているか。まあ、俺としてはありがたいことこの上ないがなl)

 

「へー」

 

「……馬鹿にしていますの?」

 

「いや、すげーなと思っただけだけど。どうすげーのかはわからないが」

 

「……こほん。さっき授業でも言っていたでしょう。世界でISは467機。つまり、その中でも専用機を持つものは全人類六十億超の中でもエリート中のエリートなのですわ!!?」

 

(いや、全人類って言うけどそんなものはあくまでIS操縦者の中での話だろ。その六十億超えの中でもって言うけどISを動かせない奴らを含めても意味が無い。なんでわざわざスケールをでかくするのかねー)

 

「そ、そうなのか」

 

「そうですわ」

 

「人類って六十億超えてたのか」

 

「そこは重要ではないでしょう!??」

 

(織斑って何て言うか……単純バカ?か?)

 

「そこの臆病者のあなた!あなたはどうなんですの!?」

 

(また臆病者か。確かに、思っていることを口に出さない辺り、本当に臆病者かもしれないな。でも今は、臆病者で構わんさ)

 

「ちょっと、聞いていますの!??」

 

「えっ!??あっ、えっと……ぼ、僕には専用機は無いです……」

 

(あったとしても俺には必要のない物だからな)

 

「では、まさか訓練機で私と戦うおつもりで?」

 

「そ、そういうことです」

 

(他に何があるんだよ)

 

「なら、ハンデを差し上げましょうか?」

 

(今更その話かよ)

 

「い、いりませんよ。ハンデは無しで」

 

「そうですか。では無様に負ける事ですね」

 

(元より、そのつもりだからな)

 

 

 

 

 

昼休みの時間になり、綾人と一夏、そして箒が食堂で食事をしていた。

 

「なあ綾人、試合までどうする?」

 

「?どうするとは?」

 

「特訓とかした方がいいんじゃないかと」

 

「……確かに、特訓は必要かもしれませんね」

 

(俺はそんな気は無いけどな)

 

「でも、特訓をするにしてもどうやってやるんですか?僕達二人だけでするのは無茶な気がするんですが」

 

「それなんだよな。どうするかな……」

 

(何も考えてなかったのかよ)

 

「……なあ箒、俺にISの事教えてくれよ」

 

「なっ、何故私が!?」

 

「頼れるのはお前だけなんだ、頼むよ」

 

(この際誰でもいいと思うけどな)

 

「ねえ。君たちって噂のコたちでしょ?」

 

「ん?」

 

「えっ?」

 

綾人と一夏は見知らぬ人に話しかけられた。その人を見ると、相手が先輩であることがわかった。

 

(何でこの人、俺たちに話しかけたんだ?)

 

「はあ、たぶん」

 

「あ、あの、噂ってなんですか?」

 

「代表候補生のコと勝負するって聞いたけど、ほんと?」

 

(やはりそのことか。本当に噂ってのはすぐに広まるんだな)

 

「はい、そうですけど」

 

「でも君たち、素人だよね? IS稼働時間いくつくらい?」

 

「いくつって……20分くらいだと思いますけど」

 

「僕も、それくらいです」

 

「それじゃあ無理よ。ISって稼働時間がものをいうの。その対戦相手、代表候補生なんでしょ? だったら軽く300時間はやってるわよ」

 

(代表候補生なんだからそれくらいは普通なんだろうな。俺は勝つ気がないからそんなことは知ったこっちゃないけどね)

 

「でさ、私が教えてあげよっか?ISについて」

 

「はい、ぜ――」

 

「結構です。私が教えることになっていますので」

 

(いや、まだ何も言ってないだろう)

 

「あなたも一年でしょ? 私の方がうまく教えられると思うなぁ」

 

「……私は、篠ノ之束の妹ですから」

 

(……おい、さっきと言ってる事が違うだろ。掌返しか?)

 

「篠ノ之って――ええ!?」

 

「ですので、結構です」

 

「そ、そう。それなら仕方ないわね……」

 

流石に先輩も篠ノ之束の名前に押されたのかここは退いた。

 

「なんだ?」

 

「なんだって……いや、教えてくれるのか?」

 

「そう言っている」

 

(なんだこいつ。さっきは関係ないと言っておきながら、ここではそれを利用した。随分と都合のいい奴だな)

 

「じゃあ、僕はこれで」

 

「綾人、お前も一緒に特訓するか?」

 

「僕は大丈夫です。二人で頑張ってください」

 

綾人は一人で食堂を出て行った。

 



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第7話

本日3回目の投稿です


試合当日になった。綾人はこの一週間、セシリアに勝つための特訓を、一切してこなかった。クラス代表になる気のない綾人は勝つこと自体が問題であるからだ。

 

(さて、今日はさっさと負けるか)

 

この時点で綾人がやる気のない事が良くわかる。負けてなに言われようが聞き流すつもりだろう。

 

(確か試合の順番は織斑からだったが、まだ肝心のISが来てないみたいだが……)

 

一夏の専用機がまだ来ていない。それ故に今だに試合ができない状況だった。

 

「来なければ仕方が無い。湊、お前からだ」

 

「ぼっ、僕からですか!?わ、わかりました!」

 

(やはり俺からか。まあ、こうなるだろうな)

 

千冬の指示により綾人から試合をすることになった。

 

「綾人、頑張れよ!」

 

「は、はい!頑張ります!」

 

(お前が巻き込んだくせに良く頑張れなんて言えるもんだな。他人事だと思って。まあ、俺は端っからこの試合はやる気ないけどな)

 

綾人は量産型のIS『打鉄』を纏い、アリーナに出撃した。アリーナではすでにセシリアが空中で待機していた。

 

(流石は代表候補生か。なかなかの姿勢だな)

 

「あら、逃げずに来ましたのね」

 

「だ、だって逃げられないじゃないですか」

 

「最後のチャンスをあげますわ」

 

(チャンス?)

 

「チャ、チャンスですか?」

 

「私が一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、ボロボロの惨めな姿を晒したくなければ、今ここで謝るというのなら、許してあげないこともなくってよ」

 

「そんなことはできませんよ。ちゃんと勝負しないといけませんから」

 

「そうですか、では行きますわ!」

 

 

 

 

 

 

 

結果は、セシリアの勝ちとなった。圧勝と言っていいだろう。綾人はセシリアが先制攻撃をして来た時に、明らかに避けられるはずだったが素人丸出しを見せるためにわざと当たった。その後綾人はブレード一本だけを持ちセシリアに突撃するも、簡単に迎撃されてしまった。これもわざとだ。そしてセシリアは自身の専用機の『ブルーティアーズ』に装備されているビット兵器で綾人に攻撃した。それを綾人は普通に食らった。だがこの時綾人はセシリアのビット兵器の弱点を見抜いていた。それはビットを制御している間は自分は動けないということだ。綾人はそのことに気づいていたがあえて気づかない振りをした。そして綾人はそのままセシリアの猛攻を受け、反撃ができずに、否、反撃をせずに、シールドエネルギーが尽き、綾人の敗北となった。綾人はそこで計算通りと思ったことだろう。

 

綾人は管制室に戻った。そこには、一夏、千冬、麻耶、そして何故か箒もいる。その時綾人は、何食わぬ顔で管制室に入った。

 

「す、すいません。負けてしまいました」

 

(予定通りだけど)

 

「ふん、男のくせに軟弱だな」

 

(何で篠ノ之がいるんだよ。それにお前に言われる筋合いは無い)

 

「なんだあの動きは?全然なっていなかったぞ」

 

(そりゃあ全くISの特訓をしなかったからな)

 

「はい……すいません……」

 

「で、でも湊君は良く頑張りましたよ!」

 

(山田先生、大丈夫です。わざとですから)

 

「じゃあ次は俺だな。行ってくるぜ、綾人!」

 

「頑張ってください!織斑君!」

 

(まあ、お前の専用機の力を見せて貰うよ)

 

 

 

 

 

一夏VSセシリアの結果は、セシリアが勝った。一夏はいいところまで行ったが、最後に一夏の専用機の『白式』の装備である『雪片弐型』で単一仕様能力の『零落白夜』を発動した時に、シールドエネルギーが尽きてしまい一夏の負けとなった。いわば自滅である。そしてこの瞬間にセシリアの勝利が決定したが、消化試合ということで綾人VS一夏の試合をする事になった。

 

「綾人!負けないからな!」

 

「僕だって負けません!」

 

(負けるけどね)

 

 

 

 

試合結果は一夏の勝利となった。言わずもがな性能差で綾人が負けた。これで、クラス代表決定戦が終了した。

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日。

 

「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」

 

(いや何で?)

 

クラス代表は何故か一夏に決定した。セシリアが2勝して本来ならセシリアが代表をするはずだ。それが何故か一夏に決定していた。

 

「先生、質問です」

 

「はい、織斑くん」

 

「どうして俺はいつの間にかクラス代表になっているんでしょうか?」

 

「それは――」

 

「それは私が辞退したからですわ」

 

(何で辞退を?あんなにやりたがっていたのに)

 

そう思っているうちに満場一致で一夏がクラス代表に決定した。

 




手抜きみたいになってすいません。どうせ負けるならという事でこうなってしまいました。


アグルはしばしお待ちを


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7.5

凄い久しぶりなんですが7.5話です。待っていらした方々、申し訳ありません。


 

 

クラス代表決定戦の後、セシリアはクラス全員に謝罪した。当然その中には綾人も含まれていた。

 

(何だいきなり?どういう風の吹き回しだ?)

 

綾人はセシリアの謝罪にむしろ戸惑っていた。女尊男卑に染まっていた彼女が謝罪してくるとは思っていなかったからだ。それに以前よりも大分丸くなっている。するとセシリアは綾人の所へ行き始めた。

 

(……何だよ?)

 

「……オ、オルコットさん?」

 

「湊さん、貴方の事を何度も臆病者と罵ってしまって申し訳ありませんでした!」

 

(……え?)

 

なんとセシリアは綾人個人に謝罪の言葉を述べた。綾人はそれ対してに思考が追いついていなかった。

 

「あの〜、オルコットさん?」

 

「本当に申し訳ありませんでした!」

 

(いや、あれ演技だから別に気にする事じゃないんだけどね)

 

「オルコットさん、気にしてないから大丈夫ですよ。それに、臆病者だって言うのは本当の事ですので……」

 

「ですが……」

 

(そこまで言うなんて、本当はこいつ、根は良い奴なのか?)

 

「あの〜、オルコットさん」

 

「な、なんでしょう?」

 

「後で少し話しませんか?」

 

「お、お話ですか?」

 

「はい。嫌なら別にいいんですが」

 

「い、いえ。私で良ければぜひ」

 

「では、放課後に」

 

(……何を言ってるんだ俺は?)

 

こうして綾人はセシリアと話をする約束を取り付けた。

 

 

 

 

放課後になり、綾人はセシリアと2人で話をすることになった。

 

(本当、何でこんな約束してしまったんだか)

 

綾人は自分で言っておきながら若干後悔しているようだった。

 

「湊さん、それでお話というのは?」

 

「さっき思ったんですけど、オルコットさんって本当は自分で思ってるよりも優しい人なんじゃないですか?」

 

「なっ⁉︎///いきなり何を言うのですか⁉︎///」

 

セシリアはいきなりとんでもない事を言われてしまうが、綾人は御構い無しに話を続けた。

 

「最初こそは女尊男卑主義者っていう印象が強かったんですけど、今朝の様子を見ると、何かが原因でそうなってしまったと思うんですが……?」

 

「……」

 

「すみません、軽々しく口をきいてしまって。もしかして、嫌な事思い出させてしまいました?」

 

「いえ、大丈夫です。お話ししますわ。何があったのかを」

 

セシリアは話した。男尊女卑の時代だったころから実家発展に尽力した母親のことは尊敬していたが、婿養子という立場の弱さから母親に対し卑屈になる父親に対しては憤りを覚えていたこと。両親を列車の事故で亡くしたこと。

 

(なるほどな。そんな事があれば、ああなるのも無理はない。こいつも女尊男卑の被害者だという事か)

 

「それで私は必死に勉強をして、イギリスの代表候補生になったのですわ」

 

「そうだったんですか……。オルコットさんってやっぱり凄いですね」

 

「そんな、私は……」

 

「凄いですよ、オルコットさんは。亡くなったご両親の遺産を守る為に必死に勉強して、さらに代表候補生にまで登りつめたんですから。それに比べて、僕なんかは……」

 

「湊さん、自分をそんなに卑屈になさらないでください。貴方だってきっと」

 

「オルコットさんばかりに喋らせるのも悪いですね。僕の事も話しましょう」

 

そして今度は綾人が自分の事を話した。

 

「僕の両親も死んでるんです。ずっと昔に」

 

「そ、そうなのですか……」

 

「それも、殺されたようなものですよ。ISに」

 

「それって、どういう事ですか?まさか女尊男卑が原因で……」

 

「そんな物じゃないですよ。一応事故死って事にはなってるんですけど、本当は……」

 

湊は拳を強く握りしめていた。

 

「湊さん……」

 

「だから僕はISを憎んでいます。どうしようもないほどに。だから実を言うと、授業中とかはイライラしてました。でも、僕には心の支えがあります」

 

「心の支え、ですか?」

 

「はい。今の母です。母には憎しみに囚われるなと言ってくれています。だから、僕は今のままでいられるんです」

 

「湊さんも、辛かったんですね」

 

「今はもう大丈夫です。それにこんな事、今まで誰にも話したこと無かったんですけど、オルコットさんが初めてです。少しスッキリしました」

 

「私もです。私も気が楽になりましたわ。今日はありがとうございました」

 

「こちらこそありがとうございました。オルコットさん」

 

「そんな、セシリアで構いませんわ湊さん。それに、敬語でなくてもよろしいですわよ」

 

「でも、僕は基本的に苗字呼びで、敬語はもう昔からの癖っていうか……、そんな事言ったら、オルコットさんも苗字呼びで敬語じゃないですか」

 

「あら、それもそうですわね。ではいつも通りという事で?」

 

「はい、その方がお互いに落ち着きますので」

 

「しかし名前で呼びたくなったらいつでもよろしいですわよ。私もいつかは名前で呼ぶかもしれませんわ」

 

「じゃあその時はよろしくお願いします。オルコットさん」

 

「こちらこそよろしくお願いします。湊さん」

 

そして綾人は1人となった。

 

(セシリア・オルコットか。案外、似た者同士かもしれないな。唯一違うとすれば、俺はいつまでも引きずってる捻くれ者、という事か)

 

 




全く関係ないんですけどレッドアイズを強化する為に巨神竜復活を3個買ったんですが3個でデッキができそうでパーツがなくなりそうです。


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第8話

綾人がIS学園に入学して数日が経ったある日、ある噂が広まっていた。

 

「織斑くん、湊くん、おはよー。ねえ、転校生の噂聞いた?」

 

「転校生? 今の時期に?」

 

「いえ、初耳です」

 

(こんな時期に転校生?まるで意味がわからない)

 

「そう。なんでも、中国の代表候補生なんだってさ」

 

「ふーん」

 

(中国の代表候補生か。だったら尚更今になって来るのかがわからなくなって来た)

 

噂とは中国から転校生が来ることだった。別に綾人達のクラスに入って来るわけではないが、転校生はやはり気になるものなのだろう

 

「あら、私の存在を今更ながら危ぶんでの転入かしら?」

 

「このクラスに転入する訳では無いのだろう? 騒ぐほどのことでもあるまい」

 

「どんな奴なんだろうな~」

 

(女尊男卑で無ければいいと思うけど。どうせなら普通の奴が良いけどね)

 

「む……気になるのか?」

 

「ん? ああ、少しは」

 

(他のクラスの転校生なんか気にする必要も無いだろうに)

 

「他のクラスの転校生なのにどうして気になるんですか?」

 

「あ、いや、何と無くだよ」

 

「あっ、そうですか」

 

(そんな理由かよ)

 

「ふん…今のお前に他人を気にしている余裕が有るのか? 来月にはクラス対抗戦があるというのに」

 

「そうですわ一夏さん! 対抗戦に向けて実戦に近い訓練をいたしましょう! 相手なら私が……」

 

(クラス対抗戦か。まあ、俺には関係ないな)

 

「織斑君、がんばってねー」

 

「フリーパスのためにもね!」

 

「今のところ専用機を持ってるクラス代表って一組と四組だけだから、余裕だよ」

 

(織斑が専用機を持ってるとしても、差はあるだろう)

 

「――その情報、古いよ」

 

(ん?なんだ)

 

教室の入り口から声が聞こえ、クラス全員が入り口のところを見た。そこには腕を組み、片膝を立ててドアにもたれている見知らぬ女子がいた。

 

(なんだあいつ?いきなり現れて)

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 

(二組も専用機持ち?そうか、こいつが例の)

 

「鈴……? お前、鈴か?」

 

(まさか、織斑はこの女と知り合いなのか?)

 

「そうよ。中国代表候補生、凰 鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」

 

(織斑って、意外に顔が広いのか?それより、やはりこいつが中国の代表候補生か)

 

「何格好付けてるんだ? すげえ似合わないぞ」

 

「んなっ……!? なんてこと言うのよ、アンタ!」

 

(……これは知り合いを通り越して、友人……なのか?)

 

「それはそうと鈴、早く教室に戻ったほういいぞ」

 

「はぁ?何言ってんのよ?」

 

「おい」

 

「なによ?」

 

バシイィン!!

 

(うわぁ……どれだけ容赦無いんだよあの人)

 

「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」

 

「ち、千冬さん……」

 

「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入り口を塞ぐな。邪魔だ」

 

「またあとで来るからね! 逃げないでよ、一夏!」

 

「さっさと戻れ」

 

「は、はいっ!」

 

(何ていうか……テンション高いな)

 

 

 

 

 

 

昼休みになり綾人は食堂に向かっていた。一夏達と一緒に。最も、綾人が一人で行こうとした時に一夏達がついてきたのだが。そして食堂に着くと、凰 鈴音が立ち塞がっていた。

 

「待っていたわよ! 一夏!」

 

(いや、邪魔なんだけど)

 

「まあ、とりあえずそこどいてくれ。食券出せないし、普通に通行の邪魔だぞ」

 

「う、うるさいわね。わかってるわよ」

 

(だったら最初からそこに立つなよ)

 

「…なぁ鈴。何でラーメン持ったままなんだ? さっさと食わねぇと伸びるぞ?」

 

「わ、分かってるわよ! 大体アンタを待っていたんでしょうが! 何で早く来ないのよ!」

 

「ハ、ハハ……」

 

綾人は二人のやりとりを見て笑って誤魔化した。

 

(なんだか、面倒なやつだな)

 

「それにしても久しぶりだな。あれから丸1年になるのか。元気にしてたか?」

 

「げ、元気にしてたわよ。アンタこそたまには怪我とか病気しなさいよ」

 

「どう言う希望だよそりゃ……」

 

(やっぱり、あいつらはすでに友人関係だな)

 

「あー、ゴホンゴホン!」

 

「ンンンッ! 一夏さん、注文の品、出来てましてよ?」

 

「お、サンキュ」

 

(ワザとらしいぞお前たちは)

 

そして綾人達は適当に空いているテーブルに座った。

 

「一夏、そろそろどういう関係か説明してほしいのだが」

 

「そうですわ! 一夏さんまさかこちらの方と付き合ってらっしゃるので!?」

 

「べ、べべ、別に私は付き合ってる訳じゃ……」

 

「そうだぞ。なんでそんな話になるんだ。ただの幼なじみだよ」

 

「………………」

 

「?何睨んでるんだ?」

 

「なんでもないわよっ!」

 

(……あぁ、成る程ね……理解したくないけど理解したよ)

 

「幼なじみ……?」

 

「あー、えっとだな。箒が引っ越していったのが小四の終わりだっただろ? 鈴が転校してきたのは小五の頭だよ。で、中二の終わりに帰ったから、会うのは一年ちょっとぶりだな」

 

(ふーん、そういうことか。だからあんなに仲のいい感じに話してたのか)

 

「ふうん、そうなんだ。初めまして。これからよろしくね」

 

「ああ。こちらこそ」

 

(……既に険悪な雰囲気なんだが)

 

「ん、んんっ。私の存在を忘れてもらっては困りますわ。中国代表候補生、凰 鈴音さん?」

 

(あぁ、すっかり忘れていたよ)

 

「……誰?」

 

「な!? 私はイギリス代表候補生セシリア・オルコットでしてよ!? まさかご存知無いないと!?」

 

「うん、アタシ他の国とか興味無いし」

 

(あの時からずっと思ってたんだが、代表候補生ってそこまで有名なのか?)

 

「い、言っておきますけど私あなたの様な方には負けませんわ!」

 

「そ。でも戦ったらあたしが勝つよ。悪いけど強いもん」

 

「い、言ってくれますわね……」

 

「で、そこのあんたは?あんたが二人目の?」

 

(ん?ああ、俺のことか)

 

「湊綾人です。よろしくお願いします」

 

「あんたって強いの?」

 

「僕は全然弱いですよ。この前織斑君とオルコットさんと試合をしましたけど、僕は手も足も出ませんでしたし」

 

「そうよね。あんた弱そうだもん」

 

(うるせーよ)

 

「一夏、アンタ、クラス代表なんだって?」

 

「お、おう。成り行きでな」

 

「あ、あのさぁ。ISの操縦、見てあげてもいいけど?」

 

(いや、クラス違うだろ。それにクラス対抗戦で戦う可能性があるのにそんな事をする必要がある。……そうか、別の目的があるか)

 

「一夏に教えるのは私の役目だ。頼まれたのは、私だ」

 

「あなたは二組でしょう!? 敵の施しは受けませんわ」

 

(オルコットの言ってる事は正論だが、凰が言ってる事に今はそんな事関係ないだろうな)

 

「あたしは一夏に言ってんの。関係ない人は引っ込んでてよ」

 

「か、関係ならあるぞ。私が一夏にどうしてもと頼まれているのだ」

 

「一組の代表ですから、一組の人間が教えるのは当然ですわ。あなたこそ、後から出てきて何を図々しいことを――」

 

「後からじゃないけどね。あたしの方が付き合いは長いんだし」

 

(それこそ今は関係ないだろう。それより、もうこの空間にいることが辛くなった。元はと言えば、あいつらが勝手について来たんだ。ここはもう逃げよう)

 

「じゃ、じゃあ僕はこれで失礼します」

 

綾人は逃げるように食堂から出て行った。



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第9話

二組に中国の代表候補生、凰 鈴音が転校して来たその日の放課後、綾人は図書室にいた。本当は一夏にISの訓練をしないかと誘われていたが、それを断ってまで図書室で本を読んでいた。綾人は一夏にはちゃんとした理由で断ったが、本心はあの輪の中に入りたくなかったからだ。綾人はあの中にいると精神が辛いらしい。

 

(もうこんな時間か。そろそろ部屋に戻るか)

 

綾人は長い時間図書室にこもっていたみたいだ。

 

 

 

 

綾人が自分の部屋に戻る時はいる一夏の部屋の前を通るのだが、一人の場合は素通りするのだが、今日は一人のはずなのに素通りしなかった。否できなかった。なぜなら綾人が一夏の部屋の手前にいる時に、鈴音が一夏の部屋から飛び出して来たのだ。

 

(!?何で凰が織斑の部屋から出てきた!?それに泣いてるし、何があった?)

 

「ファ、凰さん……?ど、どうしたんですか?」

 

「何よ!あんたには関係ないわよ!」

 

(確かに凰が何で泣いてるのかは俺には関係ないが、何故だ?放っておこうとすると凄まじい罪悪感に見舞われてしまう)

 

「あ、あの……僕で良かったら話を聞きますけど……」

 

「……聞いてくれる?」

 

「は、はい。じゃあ場所を変えましょう」

 

綾人は廊下から場所を変え、鈴音の部屋で聞くことになった。そして綾人は鈴音から事の顛末を聞いた。なんでも、一夏に料理が上手くなったら毎日酢豚を作ってあげると約束したらしいが、一夏はそれを奢ってくれると勘違いしたらしい。鈴音はそれで一夏が約束を覚えてないと思い泣いて出てきたそうだ。それを聞いた綾人は……

 

(うんまあ、なんて言うか……馬鹿なんじゃないかな?)

 

綾人は呆れ返っていた。

 

「あ、あの凰さん、それって要するにプロポーズですよね?」

 

「……そうよ」

 

「今日の様子を見て思ったんですけど、織斑君にそういう遠回しに言うのは無謀だと思うんですけど」

 

「……一夏がああ言う性格だってわかってたわよ。でも、気付いてくれると思って……」

 

(織斑って、意外に女に好かれるんだな)

 

「凰さん、僕からは大したことは言えませんが……もう率直に言った方が良いと思いますよ」

 

(じゃないと見てるこっちが辛いからな)

 

「それができないからこうしてるんでしょ!」

 

(……ダメだ。もう付き合いきれない)

 

「じゃ、じゃあ、頑張ってください。いろいろと」

 

「ねえ!話聞いてくれるんじゃないの!?」

 

(これ以上は無理だ)

 

「す、すいません、僕はこれで失礼します。じゃあクラス対抗戦、頑張ってください」

 

そして綾人は鈴音の部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

そしてクラス対抗戦当日。最初の対戦カードは1組VS2組。つまり一夏VS鈴音だ。最初からこの組み合わせは、皮肉なものである。

 

(いきなあいつらか。ついこの間因縁ができたばかりだぞ)

 

綾人がそう言っても、決まっているものは仕方が無い。そして綾人は一人でアリーナのギャラリーにいた。

 

(まあ、今回は純粋に楽しませてもらいますか)

 

そして試合が始まった。

 

 

 

 

 

(流石、代表候補生だけあって凰は強いな。だが、それに負けてない織斑も中々だ)

 

一夏と鈴音の勝負は互角になっている。鈴音は専用機『甲龍』をまとっている。その時、甲龍の肩が開き、球体が光だした瞬間に一夏が吹っ飛ばされた。あれは甲龍による『衝撃砲』というものだった。

 

(今回は凰に軍配が上がるか?それとも……)

 

そして一夏は鈴の隙を突いて 『瞬時加速』を使い、接近したところを雪片で鈴に攻撃をする瞬間……悲劇が起こった。

 

ズドオオオオオンッ!!!

 

「ッ!?」

 

突然大きな衝撃がアリーナ全体に走った。

 

(なんだ今のは!??明らかにあいつらから出た衝撃じゃない!)

 

今の衝撃でアリーナは砂煙が充満していたがすぐにその煙は晴れた。そこには、全身装甲の謎のISがいた。

 

(なんだあれは!?あれもISなのか?)

 

綾人が思考している間に避難指示が出されたが、綾人は避難せずにアリーナを見ていた。アリーナは、突如現れた謎のISが一夏と鈴音に襲いかかっていた。

 

(何なんだよあれは……)

 

綾人は突如現れたISを見て若干だが怒りの感情が湧いていた。

 

(あんなもののために父さんと母さんは……)

 

綾人の両親の死はISを世界に広めるために隠蔽された。そしてそのISが今、目の前で襲撃しているのだ。しかもそのISは一夏と鈴音を倒そうとしていた。

 

(……ふざけんなよ……)

 

そして綾人の怒りは頂点に達した。

 

「ふざけんなああああ!!!」

 

綾人の右手首にはブレスレット『アグレイター』が装着されていた。アグレイターのブレード部分が左右に展開すると中央の発光体が点滅しながら青く発光した。綾人はアグレイターを腕の前に持ってくるとアグレイターが回転し、ブレードの上部から青い光が開放され、綾人を包み込んだ。その光は、綾人を包み込むと綾人ごとそこから消えた。

 

 

 

 

アリーナでは一夏と鈴音が襲撃者と戦っていたが、状況はあまり良くなかった。それでも一夏達は襲撃者に立ち向かって行ったが、その時

 

「一夏ぁっ!」

 

「箒……?」

 

「ちょ、ちょっと! あの子何考えてるのよ!?」

 

突然箒が大声を上げ一夏を見ていた。

 

「男なら……男なら、そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!」

 

箒の声に襲撃者が反応した。襲撃者は狙いを箒に変えた。

 

「箒、逃げろ!!」

 

だが遅かった。箒に向けてISのビームが発射された。

 

「箒ぃぃぃぃぃぃ!!」

 

ISの攻撃が箒に迫る。だがその時、空から光が落下しISの攻撃を弾いた。そのため箒に攻撃が当たることはなかった。

 

「な、何だ?」

 

「まさか、新手!?」

 

二人はまた別の敵が来たのではないかと思った。だが、そこから現れたのはISではなく、青い光の戦士、『アグル』だった。




アグル降臨(人間サイズ)


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第10話

ようやく書けました。


『白騎士事件』。それは10年前に起きた2000発以上ものミサイルが日本に迫った未曾有の大事件。それを迎撃したのが『白騎士』と呼ばれるIS。これに伴ってこの事件は白騎士事件と名付けられた。だが、ミサイルを迎撃したのは白騎士だけではなかった。突如として現れた謎の青い戦士。青い戦士は超人的な力で次々とミサイルを破壊していき、更には白騎士にダメージを与えた。その超人的な力を持つ青い戦士を、人々は『ウルトラマン』と呼んだ。

 

 

 

 

 

しかしウルトラマンは、白騎士事件以来姿を見せることは無かった。

 

 

 

 

 

 

そして10年後の現在、その時が起きた。

 

 

 

IS学園はクラス対抗戦中に乱入者が現れた。乱入者によってクラス対抗戦は強制的に中断され、一夏と鈴音はその乱入者と戦っていたが、その時あの青い戦士が降臨した。

 

 

 

 

「織斑先生、あれはまさか⁉︎」

 

「……ウルトラマン……」

 

千冬は青い戦士をとても忌々しいものを見るような目で見ていた。それも以前に会った事があり、交戦したかのあるかのように。

 

 

 

アグルが乱入者の攻撃から箒を庇い、そのまま立ち上がった。その時、アグルは一瞬箒と目を合わせた。

 

「っ!?」

 

箒はアグルと目が合うと、箒は何故か背筋が凍るような感覚に襲われた。

 

「なあ鈴、あれって……」

 

「私に聞かないでよ!」

 

(まさかまたアグルになる時が来るなんてな。力を貸してくれ、アグル)

 

するとアグルは空中にいる乱入者に体を向けた。乱入者も標的を一夏と鈴音からアグルに変えた。そして乱入者はアグルに武器を構えた。だがアグルはそれを見ても動じなかった。そして乱入者が先に攻撃を仕掛けた。乱入者はアグルにビーム攻撃をした。

 

だがアグルはその攻撃を空中に飛んで避けた。そしてアグルは乱入者に向けて空中から高速てキックを放った。そのキックは乱入者に直撃し、乱入者は地上に落下した。

 

アグルもそのまま地上に降り、右腕を乱入者に向けた。すると右手から小型の光弾『アグルスラッシュ』を発射した。乱入者はアグルスラッシュを避けるがアグルはそのままアグルスラッシュを連射した。しかしアグルスラッシュは乱入者に当たることはなかった。

 

(こんな攻撃をしても無駄か。なら一気に決めるしかない)

 

乱入者は再び空中に上がり、上からアグルに攻撃をしようとした。そしてアグルも空中に上がった。そしてアグルは空中で乱入者に掴みかかった。アグルは乱入者を地上に落とそうとするが乱入者はアグルに向けて至近距離でビームを撃った。

 

(しまった!?)

 

アグルはビームを直撃し地上に落下した。

 

(くっ、あいつ本当に人間か!?なんで俺が現れた時何も動じなかったんだ!?……いや、あのISには人間が乗っているのか?もしあれが無人で動いているのだとしたら……)

 

アグルは透視能力で乱入者を見た。すると乱入者には人間の反応が一切なかった。

 

(成る程、やはりこいつは)

 

アグルは乱入者が無人ISであることがわかると、アグルは再び空中に上がり、無人機の武器が装備されている腕に掴みかかった。そしてアグルは右手から『アグルブレード』を発生させ、そして無人機の腕を斬り落とした。

 

「なっ!?」

 

「嘘っ!?」

 

一夏と鈴音はアグルが無人機の腕を斬り落とすのを見て理解した。あれが無人機だと。

 

「そんな!?ISは人が乗らないと動かないはずじゃ!?」

 

「でも鈴、あれ、全部機械だぞ……」

 

アグルは更に無人機のブースターさえも斬り落とし、無人機を地上に叩きつけた。そしてアグルも地上に降りた。

 

(終わりだ)

 

アグルは両腕を頭の前でクロスさせ、右手を上に上げると『ブライトスポット』にエネルギーが集約され始めた。そしてアグルは右腕を振り下ろし、ブライトスポットから光線が発射された。『フォトンクラッシャー』が無人機に放たれた。無人機はフォトンクラッシャーが避けれずに直撃してしまった。すると無人機は頭から爆発していった。無人機が完全に破壊された。

 

「あのISを、簡単に……」

 

「な、なんなのよあいつ……」

 

そしてアグルは二人を気にせずに飛び去った。

 

 

 




個人的なアグルV1のイメージ

容赦ない

ツンデレ



それにしてもウルトラマンの戦闘描写は難しいです。ウルトラマンの声とかってどうすればいいんでしょうね。


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第11話

ちょっとスランプ気味になってしまいました。


 

IS学園の校舎の人気のないところに青い光が降り立った。そしてその光が晴れるとそこから綾人が現れた。

 

「はあ、まさかこんなところでアグルの力を使うことになるなんて……それにしても、奴は一体何者だったんだ?無人で動くISなんて、一体誰が何のために……?」

 

綾人は誰が何の目的で無人機を送り込んできたのかが気になっていた。

 

「今までもこういうことがあったのか?もし前例があったなら、対策は確実にしてるはずだ。だから今回が初めてのケースということか。だが何故だ?何故急に襲撃を……?……そうか、今年は俺と織斑、男でISを動かした俺たちがいる。もし俺たちが狙いだとすれば説明がつかない事もないが……」

 

綾人はそう考えるが確信は持てなかった。しかし、今回現れた襲撃者は一夏の試合中に現れた。あまりにも襲撃するタイミングがよすぎるため、そう考えるのは妥当だろう。

 

「……あそこでアグルになったのは、流石にまずかったか?」

 

今度は、アグルに変身したことを後悔し始めた。

 

「あの日以来姿を見せなかったアグルが、こんな所に出てくるなんてあまりにも都合がよすぎる。それに、IS至上の世の中だ。絶対にアグルの存在を良しとしない連中がいるだろう。それに、襲撃者が現れた所にピンポイントで出てきたんだ。下手すればアグルの正体がIS学園にいることを特定されかねない。それだけは御免だ。だが、アグルの正体を追おうとしない限りは多分大丈夫だと思うが、そうはいかないだろうな」

 

綾人が危惧していたのはアグルの正体が自分だとバレる事だった。もしバレるような事があれば何をされるかわからないと考えているからだ。

 

「まあいい。バレなければ問題無い。それに、もしアグルの正体が人間だとわかったところで、俺だということには気づくまい」

 

それでも綾人には正体がバレないという自信があった。

 

「だが、念には念を入れておかないといけないな」

 

 

 

 

 

 

IS学園の地下にある部屋に、千冬と真耶がいた。

 

「織斑先生、あのISの解析結果が出ましたよ」

 

「ああ。どうだった?」

 

そこにはアグルが破壊したISの残骸が解析されていた。

 

「はい。あれは――無人機です」

 

その答えに千冬は険しい顔をした。

 

「そうか。コアはどうだった?」

 

「……それが、登録されていないコアでした」

 

「……そうか。それで、ウルトラマンは?」

 

「はい。10年前に現れたウルトラマンと一致しました」

 

それを聞いた千冬は更に険しい表情をした。

 

「……織斑先生?」

 

「ウルトラマン……奴の正体は必ず暴く。絶対にな」

 

そう言うと千冬は自分の胸に手を当てた。いつか必ずウルトラマンの正体を暴くと誓いながら。

 

 




ジャンド(シンクロン)を現役で使っている(クェーサーはない)私でした。












シンクロもっと活躍しないかな……?


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第12話

久しぶりの更新です。前回が唐突な7.5話でしたが今回普通に続きからです。7.5話でいきなり綾人とセシリアが仲良くなりましたが今後も営業します。


 

無人機襲撃事件から数日が経ち、平穏が続いていた。だが、綾人は未だに難しい表情をしていた。それは、教室にいる時もそうだった。突然現れた無人機のこともそうだが、アグルの事が殆どだった。

 

(あれから織斑達からはウルトラマンのウの字も出て来ない。アリーナにいた奴らは確実にアグルを見ている。織斑と凰、そして篠ノ之。後は管制室にいたであろう山田先生と織斑先生か。ここまで話題にならないとなると口外するなと言われたのか?何れにせよ、話に出て来ない事にこしたことはない。ただ、問題があるとすれば……)

 

「あの、湊さん?」

 

(ん?)

 

「えっ?ど、どうしたんですかオルコットさん?」

 

セシリアに話しかけられた事で綾人は漸く我に帰った。

 

(しまった。全然気づかなかった。これは怪しまれたか?)

 

「最近難しい顔をしているみたいですが、何かあったのですか?」

 

(見られていたか。よりによってオルコットか。あの時からオルコットは俺に絡むようになっている。完全に失念していた)

 

綾人はセシリアにどう誤魔化そうか考えた。セシリアは心配そうな顔をしているのが余計にネックだった。綾人は一応セシリアとは比較的良く接しているため何故か少し罪悪感を感じていた

 

(ウルトラマンの事を考えていました、なんて言えるわけがない。だいたいウルトラマンは自分の事だ。自分の事を他人に話してどうする)

 

綾人は思考を張り巡らせだ結果こう答えた。

 

「ちょっと考え事をしていました」

 

(だんだんこの喋り方も面倒になってきたな)

 

「考え事ですか?良ければ、わたくしが話を聞いて差し上げますが……」

 

(まずい、余計に罪悪感が……)

 

「だっ、大丈夫ですよ。くだらない事なので……」

 

「そ、そうですか。ですが、何かあったら相談してくださいね」

 

「は、はい。ありがとうございます……」

 

そしてセシリアは綾人の所から離れた。セシリアがいなくなり綾人は安心したのか一気に力が抜けた。

 

(はあ、我ながら苦しい言い訳だった。これからは人前でアグルの事を考えるのはやめよう)

 

綾人はそう決心した。そしてHR開始のチャイムが鳴り織斑千冬と山田真耶が来た。

 

「諸君、おはよう」

 

「お、おはようございます!」

 

「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもないものは、まあ下着で構わんだろう」

 

(お、おう……)

 

「では山田先生、ホームルームを」

 

「はい。ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します!しかも二名です!」

 

「「「えええええっ⁉︎」」」

 

(転校生?来るのは良いけど、2人とも同じクラスに入れる必要はあるのか?)

 

教室の扉が開き、転校生と思われる2人が入ってきた。

 

「失礼します」

 

「……………」

 

入ってきたのは、銀髪の少女と、金髪の男子だった。

 

(男?そんな馬鹿な?)

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

 

「お、男……?」

 

(何で今更?どういうことだ?フランスは公表しなかったのか?)

 

綾人は何故今になって男が来たのか疑問に思った。

 

はい。こちらに僕と同じ境遇の方々がいると聞いて本国より転入を」

 

「きゃ……」

 

「はい?」

 

「きゃあああああああああーーーーーっ!」

 

綾人が考える暇もなく女子の叫びが教室中に響き渡った。

 

(何でそんな声が出せるんだよ!?)

 

「男子!三人目の男子!」

 

「しかもうちのクラス!」

 

「美形!守ってあげたくなる系の!」

 

「地球に生まれて良かった~~~!」

 

シャルルの紹介にクラスの女子達が思い思いの感想を述べた。それを聞いた綾人は呆れていた。

 

(全く、現金な奴らだ。それにしても、シャルル・デュノアか。あいつは一体……?)

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

「み、皆さんお静かに。まだ自己紹介が終わってませんから~!」

 

自己紹介は銀髪の少女に回ってきた。

 

「……………………」

 

(もう一人は、やけに静かだな。それにあの雰囲気は、只者じゃないな)

 

「……挨拶をしろ、ラウラ」

 

「はい、教官」

 

(教官?織斑千冬が?)

 

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」 

 

「了解しました」

 

(奴は軍人なのか?なら織斑千冬が教官と呼ばれる事に頷ける)

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「……………………」

 

(必要以上の事は話さないか。あの雰囲気からすると、こうなるだろうね)

 

「あ、あの、以上……ですか?」

 

「以上だ」

 

自己紹介が終わるとラウラは何故か綾人の所へ向かった。

 

(え?何だよ?)

 

「貴様が織斑一夏か?」

 

(いや、いきなり何を言いだすんだよ)

 

「い、いいえ、あっちです」

 

「む、そうか」

 

すると今度は一夏の所に向かった。

 

(何だったんだ、一体?)

 

「貴様が織斑一夏か?」

 

「ああ、そうだけど?」

 

パシィイン!

 

(……は?)

 

ラウラは一夏に平手打ちをかました。それを見た人たちは呆気にとられてしまった。

 

「織斑一夏、私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

 

(……意味がわからない)

 

「ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は2組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 

(ま、まあ今は授業を優先するか……)

 

 

 

 




今までの感想を拝見しましたが、中にはウルトラマンでアンチしたいだけではないかとの指摘がありました。これについては、個人的な偏見ではありますが、原典の藤宮が初期では地球を救うために人類を排除しようとしました。流石にこの作品では人類の排除は規模が大きすぎるので、ISに対する憎しみにしました。全く共通するものがないのですが、綾人君はまだ子供なので思考がまだ未熟な所もあります。この作品ではそういうものだと割り切って読んでいただけたら幸いです。今後も応援よろしくお願いします。


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第13話

 

綾人達は第二グラウンドに集合した。綾人と一夏、シャルルが更衣室に向かおうとした時には噂を聞き付けた女子達に囲まれたがどうにか逃げ切り無事に更衣室に辿り着き着替えを済ませた。だが、着替えの時のシャルルの言動が所々おかしかった。何がおかしかったのかと言うと、一言で言えば女々しい。女子力が高いとそれまでだが、それがあからさますぎていて綾人は違和感を感じた。更にはシャルルが着替えようとした時は綾人と一夏を自分の視界から外させた。綾人は別に人の着替えを見る趣味はないが、あそこまで念を押されるとは思わなかった。綾人は、そんなシャルルに疑念を抱きながら授業に出た。

 

(シャルル・デュノアか。男子とは言え、警戒しておいた方がいいな)

 

「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」

 

(ISを使うのは今に始まったことじゃない。俺がISを動かしてしまった以上、ISを使わなければならない事はこれから多くあるはずだ。ISが憎いのは今も変わらない。だが、それを面に出さないようにするには、大人しくこうやって授業を受けるしかない。母さんに迷惑をかけないためにも……)

 

綾人はそんな事を思いながら授業に臨んだ。

 

「今日は戦闘を実演してもらおう。ちょうど活力が溢れんばかりの十代女子もいることだしな。凰!オルコット!」

 

千冬はセシリアと鈴音を指名した。

 

「何であたしが!?」

 

「な、なぜわたくしまで!?」

 

「専用機持ちはすぐにはじめられるからだ。いいから前に出ろ」

 

(オルコットと凰か。どちらも代表候補生で専用機持ち。手本を見せるなら、妥当だな)

 

セシリアと鈴音は最初は乗り気では無かったが何故かいきなりやる気を出した。

 

「それで、相手はどちらに?わたくしは鈴さんとの勝負でも構いませんが」

 

「ふふん。こっちの台詞。返り討ちよ」

 

「慌てるなバカども。対戦相手は……」

 

(この2人で戦うわけじゃないのか。じゃあ誰が?)

 

千冬が対戦相手を言おうとした、その時だった。

 

キィィィィン……

 

(……何だこの音は?何かが近づいてきてるようだけど?)

 

何かが近づいている音がした。そしてそれが近づくにつれて、正体がわかった。

 

「ああああーっ!!ど、どいてください~っ!!」

 

その正体はISに乗っている真耶だった。

 

(えっ?山田先生?……え?)

 

綾人はISに乗っているにも関わらず落下してくる真耶を見てただただ呆然としていた。まさに開いた口がふさがらない状態になっていた。

 

(どうして山田先生が……落ちた)

 

綾人がそう考えている間にも真耶は落下してしまった。……一夏の所に。

 

(え、え〜?)

 

綾人は既に頭が目の前の状況についていけてなかった。

 

「あ、あのう、織斑君……ひゃんっ!」

 

(……何やってんだあいつ?)

 

一夏は真耶が落下してきた時の衝撃もあり、真耶の胸を鷲掴みにしていた。

 

「その、ですね。困ります……こんな場所で……。いえ!場所だけじゃなくてですね!私と織斑君は仮にも教師と生徒でですね!……ああでも、このまま行けば織斑先生が義姉ねえさんってことで、それはとても魅力的な」

 

(……何言ってんだこの人?)

 

遂に綾人は目の前の状況から目を逸らし現実逃避をしてしまった、

 

 

 

そして綾人が現実逃避をしてる間に話は進んでいた。

 

「さて小娘どもいつまで惚けている。さっさとはじめるぞ」

 

(山田先生が2人の相手か。いくらオルコットと凰が専用機持ちとは言え、どうなるか)

 

「え?あの、二対一で……?」

 

「いや、さすがにそれは……」

 

「安心しろ、今のお前たちならすぐ負ける」

 

千冬はセシリアと凰に負けると言い放った。それは誰がどう見ても挑発にしか見えなかった。

 

(ほう。随分と言うようだ。山田先生はそれ程の実力なのか)

 

「では、はじめ!」

 

(始まった。先生対生徒とは言え、専用機持ち2人を同時に相手にするなら、山田先生はハンデなしか)

 

「さて、今の間に……そうだな。ちょうどいい。デュノア、山田先生が使っているISの解説をしてみせろ」

 

「あっ、はい。山田先生の使用されているISは」

 

シャルルが説明をするも、綾人はシャルルの説明をほとんど聞かずに勝負を見ていた。そして、説明をしている間に決着がつきそうだった。

 

「ああデュノア、いったんそこまででいい」

 

決着がついた。結果は真耶の勝利となった。

 

「くっ、うう……。まさかこのわたくしが……」

 

「あ、アンタねえ……何面白いように回避先読まれてんのよ……」

 

「り、鈴さんこそ!無駄にばかすかと衝撃砲を撃つからいけないのですわ!」

 

「こっちの台詞よ!なんですぐにビットを出すのよ!しかもエネルギー切れるの早いし!」

 

(まさか本当に山田先生が勝つなんて思わなかったな)

 

「これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」

 

(まさかそれを伝えるためだけの勝負だったんじゃあるまいな?まあ、そんな事はどうでもいいか)

 

「専用機持ちは織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰だな。では九人グループになって実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな? では分かれろ」

 

千冬の指示に従い生徒達は分かれた。途中イザコザがあったがグループ分けは出来た。結果、綾人はセシリアのグループに入る事になった。

 

(オルコットか。オルコットなら、大丈夫か)

 

「オルコットさん、よろしくお願いします」

 

「湊さん、先ほどは無様な姿を見せてしまいましたわ」

 

「仕方ありませんよ。先生が相手でしたから。それでも戦えたんですから、オルコットさんはやっぱり凄いですよ」

 

「ふふっ、ありがとうございます。では始めましょう」

 

セシリアによる指導が始まった。セシリアの説明は論理的だったが綾人はそれを理解したのか、言う通りしたら出来た。

 

「湊さん、上手ですわね」

 

「そんな、オルコットさんの教え方が上手いんですよ。でも、ありがとうございます」

 

(オルコットの指導なら、俺は付いていける。他の奴らは知らないけど。俺が人並みにISを使えるようになるには、まだ時間がかかる。一応使えるようにしないと、俺が怪しまれる。そのためには、こいつが必要だ。なら)

 

「あの、オルコットさん」

 

「?湊さん、どうされました?」

 

「時間がある時でいいので、良かったら僕にISの事教えてくれませんか?」

 

「わ、わたくしがですか?」

 

「はい。どうですか?」

 

セシリアが少し考え、すぐに結論を出した。

 

「わたくしで良ければ、ご指導いたしますわ」

 

(よし)

 

「ありがとうございます!よろしくお願いします!」

 

綾人のこの思いは本心か?それとも……

 

 

 

 



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第14話

今回は短いです。


 

 

 

綾人がセシリアにISの指導を頼み、早速練習を始めていた。相変わらずセシリアの教え方は専門用語や論理的な説明が多かったが、綾人はやはりそれを理解し行動に移していた。できているかどうかは別として。

 

(やっぱりISでは俺の思う通りに動かない時がある。多少は制限がかかってしまうのか。まあ、それがわかれば問題ない。いや、寧ろ好都合だ)

 

何故動きに制限がかかるのが好都合なのか。それは、アグルの時と戦い方を別にするためだ。そして何故戦い方を別にするのかと言うと、自分がウルトラマンだとバレないようにするためである。察しの良い人間がいる場合、戦い方が同じだったら

 

『ウルトラマン=湊綾人』

 

となる可能性を考えたからである。戦い方を模倣したと言えばそれまでだが、ISに関しては初心者でど素人の人間がそれを言うのは無理があると思ったからだ。それも専用機ではなく量産型なら尚更だ。故に、綾人はアグルの時とは違う戦闘スタイルを身に付けようとしていた。そして綾人が今使っているISは

 

『ラファール・リヴァイヴ』

 

である。これは汎用性が高いため、多種多様な戦い方ができる。その為に綾人はこれを選んだ。そして今も、ISでの戦い方を模索している。

 

「では、今日はここまでにいたしましょう」

 

「はい、ありがとうございました」

 

「湊さんは飲み込みが早いですわね」

 

「基礎はもう頭に叩き込んであるので、あとはオルコットさんの言うことを実行するだけです」

 

「ですが、すぐにできる方はあまりいないですわよ」

 

「一応自分は頭は良い方だと自負しているので。あと、確かに感覚的にやっているところもありますね」

 

「感覚ですか?感覚と言うよりは、イメージしているのでは?ISではイメージも重要になりますので」

 

「イメージと言われると……そうですね。とりあえずイメージしてどうするのかを頭の中で咄嗟に判断しています。と言っても、その場の思いつきですけどね」

 

「それでも初心者でそのように出来るのはすごいですわ」

 

「オルコットさんにそう言ってもらえると、嬉しいです」

 

それからしばらく綾人とセシリアは談笑を交わしていた。綾人はセシリアと話す時に自然体な笑顔になっていたが、綾人はそれに気付いていなかった。それは、セシリアも同じだった。

 

 

 

 

 

「部屋替えですか?」

 

特訓の後、綾人は真耶に呼び出されていた。内容は寮の部屋を替えるためらしい。

 

「はい。明日から湊君は1人部屋になります」

 

「明日からですか。じゃあもう荷物はまとめておいた方がいいですよね?」

 

「そうですね。急にごめんね湊君」

 

「いえ、大丈夫ですよ。調整してくれてありがとうございます」

 

「では、今のうちに新しい部屋の鍵を渡しておきますね」

 

「はい、ありがとうございます」

 

綾人は鍵を受け取り、一旦部屋に戻った。そして部屋に戻ると荷物をまとめ始めた。

 

「あやや〜どうしたの〜?」

 

ルームメイトの本音が荷物まとめている綾人に話しかけた。

 

「明日から僕の部屋が変わるのでその準備です」

 

「あややいなくなるの〜?」

 

「いなくなるって……部屋変わるだけですよ」

 

「寂しくなるな〜」

 

「クラスで会えるじゃないですか」

 

そんな会話をしながら綾人は荷物をまとめた。

 

 

 




今後の方針も決まり安定して投稿できそうです。

ウルトラマンオーブの放送が楽しみです(地方民)


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第15話

3か月放置してすいませんでした。

お待たせしました。第15話です。


ある日の朝、綾人が教室に入ると、クラスがソワソワした雰囲気になっていた。いつもなら賑やかな感じなのだが、今はそれが感じられなかった。

 

(……何だこれ?)

 

教室に入るなり、綾人はそんな事を思ってしまった。いつもとは違う雰囲気に流石の綾人も戸惑ってしまったのだろう。そして鈴音がしれっと混ざっていた。

 

「あの〜オルコットさん」

 

「あら、湊さんおはようございます」

 

「これ、どうしたんですか?凰さんもいるんですけど?」

 

「実は、月末の学年別トーナメントで優勝できたら、一夏さんとお付き合いできるという噂が……」

 

「あ〜、そう言う事ですか」

 

(それなら他の奴らがこうなっている事に納得ができるな)

 

綾人は勝手に納得していた。

 

「俺がどうしたって?」

 

「「「きゃあああっ!?」」」

 

一夏が教室に入ると女子達は大声を出した。

 

(だからいきなり叫ぶなよ)

 

「で、何の話だったんだ?俺の名前が出ていたみたいだけど?」

 

(全く、織斑という奴は……)

 

綾人は一夏の性格にもはや呆れかえっていた。

 

 

 

 

昼休み、綾人はたまたまセシリアと一緒になり、ある話をしていた。

 

「湊さん、タッグトーナメントのパートナーは決まりましたか?」

 

「タッグトーナメントですか?」

 

2人が話していたのはタッグトーナメントの事だった。綾人はセシリアに言われるまで、完全にその事を忘れていたようだった。

 

(そう言えばそんなのあった気がする。全く考えていなかったな。そもそもタッグってのが厄介だよ)

 

「いえ、まだ何も決めてないです」

 

「では、私とタッグを組みましょう」

 

「……え?」

 

あろうことか、セシリアは自分とタッグを組もうと提案してきた。綾人はまさかセシリアから組もうと言われるとはおもってもいなかったのである。そして綾人本人はそのことに頭が追いついていなかった。

 

(ちょっと待て、オルコットは今なんて言った?俺と組もう?本気で言っているのか?)

 

「?如何なさいました?」

 

(如何なさいましたじゃないよ。ちょっと混乱してるよ)

 

「あの〜、僕なんかでいいんですか?オルコットさんなら、僕よりももっといい人がいると思うんですけど……」

 

「あら?何かご不満でもございました?」

 

「いえ、そう言うわけじゃあ……」

 

(な、何このなんとも言えないような雰囲気?)

 

「では、私と組む事でよろしいですわね」

 

(ちょっと待って)

 

「……理由を聞いてもいいですか?」

 

「そんなの決まってますわ。私が貴方と組みたい、それだけですわ」

 

(いや、理由になってない)

 

「そ、そうですか。では、よろしくお願いします」

 

(いいのか、これで?)

 

「今日の放課後も第三アリーナで特訓ですわ」

 

「あ、今日の放課後ちょっと用事があるので少し遅れます」

 

「では、お待ちしておりますわね」

 

この時2人は、あんな事になるとは、全く思っていなかった。

 

 

 

 

放課後、綾人は用事を済ませ第三アリーナに向かっていた。

 

「おーい、綾人!」

 

(ん?)

 

綾人が振り返ると一夏とシャルルが一緒にいた。

 

(何だ、こいつらか)

 

「織斑君とデュノア君に、どうしたんですか?」

 

「僕たち、今から第三アリーナに行くんだ」

 

(こいつらも行くのか。考えることは一緒だな)

 

「奇遇ですね。僕もです」

 

「そうなのか?じゃあ一緒に行こうぜ」

 

「……そうですね、一緒に行きましょう」

 

(こいつがいると、どうも調子が狂う……)

 

 

 

アリーナに着き、ラファールを展開した綾人達だったが、とんでもない光景があった。

 

(……何だ、あれは?)

 

それは、セシリアと一緒にいた鈴音がラウラに蹂躙されているところだった。その光景を見た綾人は、頭の中で別のビジョンが目の前の光景と重なっていた。

 

『お父さあああん!!お母さあああん!!』

 

(ッ!?)

 

それは、自分の両親が瓦礫に埋もれて死んでしまった時のものだった。綾人はその時の事と自然に重ね合わせていた。

 

「ッ!?セシリアッ!?」

 

セシリアの名を言った綾人だが、ラウラによる攻撃の手は止まらない。

 

「まずいよ一夏!早く止めないと!!」

 

「ああ!!」

 

一夏達が止めに入ろうしたその時、綾人がラファール・を纏い、誰よりも早くラウラに突撃していった。

 

「やめろおおおおおお!!」

 

綾人の攻撃に気付いたラウラは咄嗟に反応し、綾人の攻撃を防いだ。

 

「お前は?」

 

「何をしている貴様!?」

 

「貴様はあの腑抜けか。貴様には関係のないことだ」

 

「何……!?」

 

「ふん!」

 

「なっ!?」

 

(かっ、身体が!?あいつの能力か!?)

 

綾人はラウラの専用機である『シュヴァルツェア・レーゲン』のAICにより動けなくなった。

 

「そんな物で、私に勝てると思うな。ハアッ!!」

 

「ぐあああっ!!」

 

空中で動けない綾人をラウラは地面に叩き落とした。

 

「あ……綾人さ……ん……」

 

ラウラはレールカノンを構え、綾人に狙いを定めた。

 

「失せろ」

 

「綾人!!」

 

「綾人君!!」

 

そして、ラウラは綾人にレールカノンを放った。

 

「うあああああああ!!」

 

ラウラの攻撃を受けた綾人は気を失った。

 



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第16話

『お父さあああん!!お母さあああん!!』

 

それは、突然の出来事だった。突如2000発以上のミサイルが日本に迫って来た。何ともない日常に突然の脅威が目の前にあった。そしてそのミサイルはビルに直撃し、破壊されたビルの瓦礫は無情にも近くにいた3人の人間を巻き込み落下した。だが、3人のうちの1人である子供は2人の人間に助けられ1人生き延びた。

 

『うわあああああああ!!』

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

綾人はハッとなったように目を覚ました。

 

「ハァ、ハァ、ハァ……ゆ……夢……?」

 

綾人は夢を見ていた。あの時の、綾人の家族が死んだ出来事である白騎士事件の夢を。

 

(何で……今更……)

 

綾人はわからなかった。何故今になって白騎士事件の夢を見たのか。白騎士事件の直後はその時の夢を頻繁に見ていたが時が経つにつれてその夢は見なくなっていた。だが、たった今、綾人は白騎士事件の夢を見たのだ。

 

「湊さん、起きられましたか?」

 

「え?」

 

綾人は声がした方を向くと、セシリアがいた。

 

「オ、オルコットさん?」

 

(何でオルコットが……?ここは、医務室か?)

 

「だいぶ魘されていましたけど、大丈夫ですか?」

 

「魘されていた?」

 

「全く、五月蝿くて寝れたもんじゃないわよ」

 

「凰さん。す、すいません」

 

(そうか、俺はあの時……)

 

綾人は思い出した。ラウラを止める為に立ち向かったが逆にやられてしまった事を。そしてその時に気を失った事を。

 

(ボーデヴィッヒにやられている2人を見て、俺は感情のままに奴に向かっていった。そして俺は奴に負けた。それにしても……)

 

すると綾人はセシリアと鈴音の方を見つめた。

 

「?どうされました?」

 

「あっいえ、何でもないです……」

 

(俺があそこまで感情的になるなんて……そうか、俺は2人を父さんと母さんに重ねていたのか。だからあんな真似を……。だが、まずいな。あそこで俺は素の俺を出してしまった。確実に見られている。いや、上手く誤魔化せればどうにかなるか……?)

 

綾人はラウラと対峙した時に本来の自分を出してしまった。綾人にとってそれはかなり致命的なことだった。普段と全く違う自分を見たことにより、自分に対して疑念を抱かれるのではないかとおもったからだ。その結果として、自分がウルトラマンだと勘付かれるとではないかとも思った。

 

「それで、あの後どうなったんですか?」

 

「織斑先生が来てその場はおさまりましたわ」

 

「そうですか……」

 

(来るのが遅いんだよ。でも、騒ぎを聞きつけてから来るんだから無理ないか)

 

綾人はそう思い無理矢理納得した。

 

「それと、山田先生からですが、私達は今度のトーナメントには出られないということになりました」

 

(まあ、そうなるだろうな)

 

「仕方ないですね。僕等がこんな状態なんですから」

 

綾人達は、トーナメントに出られなくなった。確かに、綾人達の身体の事を考えれば妥当な判断だろう。

 

「残念ですわね。私と湊さんとの初めての共同作業でしたのに」

 

(……何を言ってるんだこいつは?)

 

「何ですか共同作業って?」

 

「ふふっ、冗談ですわ」

 

(……冗談に聞こえなかったんだが……)

 

「……ねえ、そういう話は他所でしなさいよ」

 

今迄口を出さなかった鈴音が遂に口を開いた。

 

「あら?別に深い意味はございませんが?」

 

「だったらそんな言い方するんじゃないわよ!」

 

「あの〜、僕から聞きますけど逆にどんな意味があるんですか?」

 

「自分で考えなさいよ!」

 

(何だその理不尽?)

 

「鈴さん、そんな声をあげると傷に響きますわよ」

 

「あんた達のせいでしょ!」

 

(だから何だその理不尽は。それに俺まで一緒かよ)

 

「全く、あんたも一夏と同じね」

 

すると鈴音は綾人は一夏と同類と言い出した。

 

(あいつと一緒にするなよ。だが、何だこの感情は?)

 

綾人にはある感情が芽生えていたが本人はそれが何なのかわかっていなかった。

 

「……綾人さん」

 

「はい?ッ!?」

 

綾人はセシリアが自分を名前で呼んだ事に気付いた。

 

(こいつ、今俺を名前で!?いや、これこそ深い意味はないだろ!ただ名前で呼んだだけだ、そうに違いない!)

 

綾人は自分にそう言い聞かせているが自分もある事を思い出した。

 

『セシリアッ!?』

 

ラウラに立ち向かった時に無意識にセシリアを名前で呼んでいたのだ。

 

(俺もあの時、あいつを……)

 

「かっこよかったですわ。」

 

「あ、ありがとうございます……?」

 

(かっこよかった?冗談言うなよ。俺は無様に負けたんだぞ。それなのに……)

 

「だからそういうのは他所でやれって言ってるでしょうが!!」

 

(だから何だその理不尽は)

 

最後に鈴音の怒号が響いた。

 

 




ウルトラマン要素が無いですが、基本的には非常事態でない限りアグルにはなりませんのでご容赦ください。当たり前ですが。

そしていずれ「懺悔の用意は出来ているか」的な台詞を言わせたいと考えちゃったりしています。機会があればの話ですが。


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第17話

あれからしばらくして、綾人は自由に動けるようになった。元々大した怪我ではなかったのだが、安静にしていろとのことで部屋で待機していた。しかし、身体の方が大分回復してきたのでそれが解除された。それでも、今度の学年別トーナメントに出られないことには変わりはないが。

 

「部屋に籠もりっぱなしも、案外悪くなかったな。そうか、一日中1人だったこと自体が久しぶりか」

 

そう言いながら綾人は歩いていた。何気に綾人は休日でも誰かといることがが結構あったのだ。そんな事を思いながら歩いていた、その時だった。

 

(……あれは、ボーデヴィッヒか?)

 

歩いている時に綾人はラウラと遭遇した。だがラウラは綾人の事はスルーして通り過ぎようとしていたが、綾人が自分を見ていた為立ち止まった。

 

「何だ?」

 

「いえ、別に」

 

「ならばどけ」

 

ラウラは今度こそ通り過ぎようとした。

 

「……謝ったんですか?」

 

「……何?」

 

なんと綾人が自分からラウラを呼び止めた。

 

「オルコットさんと凰さんに謝ったんですか?」

 

綾人はラウラにセシリアと鈴音に謝ったのか問い詰めた。

 

「ふん、そんな事か。何故私があいつらに謝らなければならない?」

 

(こいつ……)

 

ラウラは逆に何故自分が謝るのかと質問を質問で返した。

 

「あれはやり過ぎです。あそこまでする必要は無かった筈です」

 

「ふん、弱い奴が悪いのだ。あの2人が同時に掛かって来たのにもかかわらず負けた。それだけだ」

 

「ッ!?」

 

ラウラの言っていることは間違っていない。確かに、あの時は2対1だった。それでも結果はラウラの圧勝である。二人掛かりなのにもかかわらずラウラが勝ったのは、かなりの実力差があると言えるだろう。

 

(弱い奴が悪い……確かに、そうかもな……)

 

綾人はラウラの言葉に不本意ながら納得してしまっていた。綾人自身もラウラに負けた。それは、自分自身も弱いからだという事だ。そして綾人は2人がやられている所を両親が死んだ瞬間とダブって見えた。その時も何も出来ずにただ黙って見ているしか無かった。もっとも、当時6歳だった子どもに、何ができるのか。だが、綾人はそこでアグルの光を掴み、今こうして生きている。

 

「……それでも、限度ってものがあるでしょ……」

 

「言っただろ、弱い奴が悪い」

 

それを聞いた綾人は、無意識に拳を握りしめていた。

 

「話は終わりか?なら私は行かせてもらう」

 

そう言うとラウラは去って行った。綾人は、去って行くラウラをただ黙って見ていた。

 

(そういえば……)

 

綾人は、ラウラがある会話をしていたのを思い出した。

 

 

 

『なぜこんなところで教師など!』

 

『やれやれ……』

 

『何度も言わせるな。私には私の役目がある。それだけだ』

 

『このような極東の地で何の役目があるというのですか!お願いです、教官。我がドイツで再びご指導を。ここではあなたの能力は半分も生かされません』

 

『ほう』

 

『大体、この学園の生徒など教官が教えるにたる人間ではありません』

 

『なぜだ?』

 

『意識が甘く、危機感に疎く、ISをファッションかなにかと勘違いしている』

 

『そのような程度の低いものたちに教官が時間をさかれるなど』

 

『そこまでにしておけよ、小娘』

 

『っ……!』

 

『少し見ない間に偉くなったな。十五歳でもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る』

 

『わ、私は……』

 

 

(そうか、あいつ軍人か。だからあそこまでの実力を。そして、その時の教官が織斑千冬。……面倒だな)

 

そして、綾人も歩き出した。

 

 

 

学年別トーナメント当日

 

会場となるアリーナの観客席は大勢の人々で溢れかえっていた。その中には、各国政府や企業の代表もいる。

 

(全く、わざわざこんなものを見に来るなんて、ご苦労なこった)

 

そんな事を思ってる綾人も客席の中に紛れていた。今回、トーナメントに出ない綾人は、大人しく客席に回ることにしたのだ。

 

(まあ、今日は黙って見物でもさせてもらうか)

 

トーナメントに出られない綾人だが、実は本人にとっては都合が良かったりする。何故なら、今回のトーナメントに来ている来賓の中に、白騎士事件を隠蔽した政府の連中がいる可能性があると思ったからだ。仮にその連中がいたとして、トーナメントに出た場合に目をつけられたくは無かった。もし目をつけられた場合、何か仕掛けてくるだろうとも考えていた。それはやはり、『白騎士事件の被害者』と、『ISを動かした2人目の男』というレッテルが大きいだろう。前者は、政府にとっては邪魔な存在でしかない。既に白騎士事件での死者は0だと全世界が認識している。それが実際は、死者がいたと知られる事になれば、政府にとっては大惨事である。そして後者は、あくまで2人目だということだ。最初に動かした織斑一夏には、織斑千冬という後ろ盾がいる。だが、一般人の綾人にはそんなものはない。男でもISに乗れるようにするための、モルモットにされかねない。そして、男がISを動かした事を良く思わない奴がいた場合には、真っ先に自分が狙われるだろうと思った。

 

(オルコットには悪いが、これで良かったのかもな)

 

と、思っていた時だった。

 

「湊さん?」

 

「オルコットさん?」

 

なんとセシリアが話しかけてきた。

 

(何でオルコットがここに?)

 

「あれ?確か凰さんと一緒だったんじゃ?」

 

「そうだったのですが……」

 

 

 

『セシリア、あんた綾人の所に行きなさいよ」

 

『?どうしてでしょうか?』

 

『あんたね〜。いいからさっさと行きなさい!』

 

『わ、わかりましたわ』

 

 

 

「と、いうわけですの」

 

「は、はあ……?」

 

(まるで意味がわからない)

 

ちなみに呼び方はいつも通りに戻った。

 

「それにしても、これだけ人がいて、あの時みたいなことが起きないといいんですけどね」

 

「あの時ですか?」

 

「はい、クラス対抗戦の時です。あの時は、人が多く無かったので僕も含めてみんな避難出来ましたけど、しかし今日は、これだけの人がいるんです。もし何かあった時の事を考えると……」

 

「……何も起きない事を、祈るしかないですわね」

 

 

 

対戦カードが発表された。最初の対戦カードは、

 

『織斑一夏&シャルル・デュノア』VS『ラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒』

 

 

 




スティーラー禁止は他のシンクロを使う人にダメージがでかすぎます。(私です。レベル5シンクロのウォリアーどうやって出せばいいんですか!?)


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第18話

少し遅くなってしまいました。


学年別トーナメント1回戦、最初の対戦カードは

 

『織斑一夏&シャルル・デュノア』VS『ラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒』

 

となった。

 

(初戦からこいつらか。まさか専用機持ち同士が最初に当たるとはな。1年の専用機持ちは確かあいつらを含めて5人。その内の2人の枠が消えた。故に3人だけ。そして専用機持ち同士がペアか。これはこの後の試合の調整も兼ねてるのか?)

 

綾人はそう考えた。そう考えた方が、この組み合わせにも納得できるのだろう。

 

(まあ、試合結果どうなろうが知ったこっちゃないけどな)

 

「湊さんは、どちらが勝つと思いますか?」

 

セシリアは綾人にどちらが勝つか聞いた。

 

「そうですね……やはり、ボーデヴィッヒさん達ですかね?」

 

「理由を聞いてもよろしいですか?」

 

「理由は単純ですよ。あの中ではおそらくボーデヴィッヒさんが1番実力が高い。場数も相当踏んでると思います。例え2対1になったとしても、ボーデヴィッヒさんならどうにかなるでしょう」

 

綾人はそう答えた。

 

(じゃないと、あの時の事に説明がつかないからな)

 

「湊さんは、よく考えていらっしゃるのですね」

 

「……まあ、それが取り柄みたいなものですから……」

 

綾人は半笑いしながらそう答えた。

 

 

 

 

 

 

試合が始まった。試合が始まると、一夏とラウラ、シャルルと箒という組み合わせで1対1となった。

 

(まずは互いに1対1に持ち込んだか。最初は普通にこうなるか)

 

しばらくして動きがあった。箒がシャルルにやられたのだ。

 

(こればっかりは運が悪かったとしか言いようがないな。どちらも専用機持ちとなると、勝つ事自体が難しい)

 

綾人はそう結論付けた。実際、訓練機が専用機2体を相手にするには、武が悪すぎる。

 

(これで2対1か。ボーデヴィッヒはどう出る?)

 

2対1になった事により、一夏とシャルルが有利となった。数だけ見れば一夏達が有利だが、ラウラなら2対1でもどうにかなるだろうと、綾人は予想している。だが、綾人の予想は外れた。一夏がラウラを少しずつ追い詰め始めたのだ。

 

(ほう、意外だな。織斑がボーデヴィッヒを追い詰めるなんて。あいつ、強くなってるのか?)

 

綾人がそう思っているうちに、段々ラウラが追い詰められていた。あと少しすれば一夏が勝てるところまで来ていた。そして

 

 

 

 

 

 

異変が起きた。

 

 

 

 

 

 

「うあああああああああああ!!!!」

 

なんとラウラのISが溶け始めたのだ。

 

 

 

 

 

 

(何だ、何が起きた!?ISが溶けているだと!?いや、あれはISがボーデヴィッヒを取り込んでいるのか?)

 

ISはラウラを取り込み、別の姿へと変わった。

 

(あれは……ISが別のISに変わったのか?だが、あれは何なんだ?)

 

「あれは……暮桜?」

 

綾人がそんな疑問を抱いている時に、セシリアは変形したISを暮桜と言った。

 

「暮桜?」

 

「はい、織斑先生が現役時代に使用していたISですわ」

 

(あれが織斑千冬が使っていたISだと?)

 

「でも、何でボーデヴィッヒさんのISが織斑先生のISになったんですか?」

 

「……まさか、VTシステム!?」

 

「VTシステム……?」

 

(何だそれは?聞いた事がないぞ)

 

「ヴァルキリー・トレース・システムですわ。過去のモンド・グロッソの部門受賞者の動きをトレースするシステムだと聞いております」

 

(そのまんまの名前のシステムだなおい)

 

「それがあれ……ですか」

 

「しかし、VTシステムの使用は、条約で禁止されているはずなのですが……」

 

「じゃあ違法じゃないですか」

 

(何をやってるんだ、ドイツの連中は……)

 

『非常事態発令!トーナメントの全試合は中止!状況をレベルDと認定、鎮圧のため教師部隊を送り込む!来賓、生徒はすぐに避難する事!繰り返す!』

 

避難警報が鳴り響き、アリーナにいた人々は一斉に避難を始めた。

 

(これ、相当ヤバイって事だよな)

 

綾人は最悪の事態を考えた。アリーナのギャラリーは埋め尽くされている状態で一斉に避難をしたら逆に危険ではないかと。だとしても、安全に避難をしようとしたら避難に間に合わない人々も出る。さらに、VTシステムにシールドが破壊されたらタダでは済まないと。結果、綾人がとる行動は1つだった。

 

(……やるしかないよな)

 

綾人は立ち上がり、人混みを掻き分けて行くのだった。

 

「みっ、湊さん!?何処へ!?」

 

セシリアは綾人を追いかけようとしたがすぐに見失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

綾人は人気の無い所に来ていた。そして、右手首にはアグレイターが装着されていた。

 

「さあて、あの時の借りを返させてもらうぜ」

 

どうやら綾人は、ラウラにやられた事を根に持っていたらしい。

 

綾人は、アグレイターのブレードを展開させた。そして、アグレイターから青い光が放たれ綾人を包み込み綾人ごと消えた。

 

 

 

 

 

その頃、アリーナでは

 

「あの野郎おおおお‼︎」

 

一夏はVTシステムに対して怒りを露わにしていた。

 

「一夏、いったいどうしたのさ⁉︎」

 

そんな一夏をシャルルは落ち着かせようとしていたが、一夏の怒りは治らない。

 

「あれは千冬姉のデータだ。千冬姉の動きだ。あれは千冬姉だけの物なんだよ!だから俺がやらなくちゃならないんだ!!」

 

一夏は自分がVTシステムを倒さなければならないと言った。その時

 

ドゴオオン!!

 

突如、青い光弾が上空にいたVTシステムに直撃した。光弾を食らったVTシステムは地上に落下したが、それでも光弾は止むこと無く、何発も降り注いだ。

 

「なっ、何!?」

 

シャルルは何が起きたのかわからなかった。すでに周りは砂煙に覆われており何も見えない状況だった。

 

「まさかっ!?」

 

一夏ら上空を見上げた。それに釣られてシャルルも上空を見上げた。

 

 

 

 

 

「湊さあああん!!」

 

セシリアは綾人を探していた。急に立ち上がったと思ったら何も言わずに何処かへ行ってしまったのだ。それも避難する方向では無く、全く別の所へと走って行ったのだから。それでもセシリアは綾人を探し続けた。しかし、綾人を探している最中、避難している人々の足が止まっていることに気付いた。人々は皆、同じ方を向いていた。それは、上空だった。セシリアも足を止め、上空を見た。

 

「あれは……?」

 

セシリアと人々の視線の先には、青い発光体があった。

 

 

 

 

 

 

 

「織斑先生、あれはもしかして……?」

 

「……ああ、ウルトラマンだ」

 

 

 

 

 

 

光が晴れると、そこには両手を突き出した状態のアグルがいた。アグルはリキデイターを連射していたのだった。

 

「一夏、あれってまさか!?」

 

「ウルトラマンだ。でも、何でまた!?」

 

 

 

 

 

避難していた人々もアグルの出現に驚愕していた。IS関係者は特に驚いていた。

 

 

 

 

 

 

(結構撃ったが、この程度じゃ効いてないだろう)

 

煙が晴れるとVTシステムの視線がアグルを捉えていた。

 

(まあ、そうなるだろうな。いいぜ、来いよ)

 

アグルはVTシステムを挑発した。アグルを敵と認識したVTシステムは空中にいるアグルに向かって飛び上がった。アグルはVTシステムが来た事を確認すると、さらに上に飛んだ。VTシステムは暮桜の武器である『雪片』を装備しアグルを追い掛けるが、アグルはひたすら逃げ続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

管制室ではアグルの戦いを見ていた真耶がアグルの戦い方に疑問を持っていた。

 

「どうしたんでしょうか?最初はあんなに光弾を放っていたのに、今は逃げているだけなんて?」

 

「……まさか、時間稼ぎか?」

 

「時間稼ぎですか?」

 

「まだアリーナの避難は終わっていない。あのまま戦うのは危険だと判断したんだろう」

 

千冬の言う通り、アリーナの避難はまだ終わっていなかった。アグルは避難が終わるまで自分に注意を向けて人々を安全に避難させようとしていた。

 

 

 

 

 

 

(そろそろいいか)

 

アグルは避難が終わったと確認すると、逃げるのをやめ、VTシステムに振り向いた。そしてアグルは、光の剣『アグルブレード』を装備した。

 

(来い)

 

VTシステムは雪片でアグルに斬りかかって来たが、アグルもアグルブレードで攻撃を始めた。アグルブレードと雪片がぶつかり合い始めた。そして互いに距離を取った。今度はアグルから攻撃を仕掛けた。VTシステムも咄嗟に反撃に出た。再びアグルブレードと雪片がぶつかり合う。そして、何度もぶつかり合い、互いを弾いていた。

 

(こいつ、織斑千冬のデータだけあって手強い。隙が全然ない)

 

アグルは左手から『アグルスラッシュ』を放つが全て弾かれてしまう。するとVTシステムは猛スピードでアグルに接近してきた。

 

(ぐっ!?)

 

アグルは咄嗟にアグルブレードでVTシステムの攻撃を防いだ。すると、アグルの胸ランプ『ライフゲージ』が赤く点滅を始めた。

 

(くそっ、エネルギーが……)

 

アグルは、ゼロ距離で左手からアグルスラッシュを連射した。するとVTシステムはアグルから距離を取らざるを得なくなった。

 

(攻撃を当てるなら、あのタイミングしかない)

 

アグルはアグルブレードを懐に収め、ある構えを取った。アグルが何かするだろうと悟ったVTシステムは、アグルが何かする前に倒そうと思ったのか、VTシステムは零落白夜を発動し、アグルに向かって行った。アグルはVTシステムが攻撃をして来たとわかった。

 

(ここだ!!)

 

アグルはVTシステムが雪片を振りかざした瞬間、アグルがVTシステムに接近し、アグルブレードで斬りつけた。そしてアグルはさらにアグルブレードから衝撃波を放ち、VTシステムの背中に直撃させた。すると、背中からラウラが少し見えて出した。アグルはすかさず『フォトンクラッシャー』を放った。

 

(どうだ……?)

 

フォトンクラッシャーを食らったVTシステムは、強制的に解除されラウラが剥き出し状態になった。

 

(しまった!?)

 

ISが解除されたラウラはそのまま地上に落下し始めた。

 

「ラウラーー‼︎」

 

ラウラが地上に激突しようとした瞬間に、一夏がラウラを助けた。ラウラが助かったとわかったアグルは、光となって消えた。

 

「一夏!」

 

「シャルル」

 

ラウラを助けた一夏の所にシャルルが駆け寄った。

 

「あれが、ウルトラマンなんだね……」

 

「ああ……」

 

 

 

 

 

「また助けられましたね……」

 

「……そうだな」

 

そう言う千冬は拳を握りしめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

人気の無い所に光が降り立ち、光が収束すると綾人が現れた。

 

「はあ、キツかったな……」

 

綾人はすぐに戻ろうしたが……

 

「湊さん!」

 

そこにセシリアがやってきた。

 

(何でオルコットが!?まさか、見られたか!?)

 

綾人はセシリアに自分が急に出てきた所を見られたのかと思った。だが、そうでは無かった。セシリアは綾人の所に駆け寄ると綾人の前に立ち止まった。

 

「何処へ行ってたんですか!?心配したんですから!!」

 

「す、すいません……」

 

(流石にマズかったか。いきなり何処かに行くのは……)

 

綾人は今更に後悔した。何も言わずに消えたのだから。

 

 

 

 

 

 

その日、男子の大浴場が解禁され、綾人は風呂に浸かっていた。一夏も一緒にいた。

 

「なあ綾人」

 

「……はい?」

 

「ウルトラマンって、何なんだろうな」

 

「えっ?」

 

(何を言いだすんだこいつは?)

 

「俺、ラウラが変わった時、許せなかったんだ。千冬姉の紛い物を使っていて。だから俺があいつをぶっ倒そうって思ってた。でも、ウルトラマンが来て、あいつを倒した。そのお陰であいつは助かった。ウルトラマンは、味方なのか?」

 

「……さあ、僕には何とも言えないです。もう上がります」

 

そう言うと綾人は大浴場から出た。

 

綾人が大浴場から出ると、今度はシャルルが来た。

 

「あ、綾人君。一夏ってまだいる?」

 

「ええ、デュノア君は今からですか?」

 

「う、うん」

 

「時間決まっているので急いだ方がいいですよ」

 

「うん、ありがとう」

 

そしてシャルルは、大浴場へと向かって行った。その時綾人は、シャルルに対して違和感を感じた。

 

(あいつ、やはり……)

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今日はみなさんに転校生を紹介します。けど紹介は既に済んでいるといいますか……」

 

真耶が再び転校生を紹介すると言ったが、言い方が淀んでいた。そして綾人は気付いた。シャルルがいない事を。

 

(なるほど、そう言う事か。ん?じゃあまさかあの時?)

 

綾人は察した。

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」

 

教室に入って来たのはシャルロット・デュノアと名乗った女子だった。

 

「ええと、デュノア君はデュノアさんでした。……はぁぁ……また寮の部屋割りを組み立て直す作業がはじまります」

 

山田先生、うんまあ、お疲れ様です。

 

「え?デュノア君って女の子……?」

 

「美少年じゃなくて美少女だったのね」

 

「って、織斑君、同じ部屋だったから知らないってことは」

 

「ちょっと待って!昨日って確か、男子が大浴場使ったわよね!?」

 

(あいつ、終わったな)

 

綾人が心の中で笑ったその時、自分に向けられている殺気に気付いた。綾人はそれがセシリアから来ていることがわかった。

 

(……まさか?)

 

綾人は恐る恐るセシリアの方を見た。

 

「湊さん?」

 

セシリアは嫌に笑顔だった。

 

(……やべえ……)

 

「あの、確かに昨日僕は大浴場に行きました。でもデュノア君、じゃなかった、デュノアさんとは入れ違いです。『僕は』決して一緒になったって事はありません。決して」

 

綾人は僕を強調して必死に弁明した。

 

「本当ですの?」

 

「本当です」

 

「……そうですか。確かに湊さんはそう言う事をする人では無いのはわかってますわ」

 

「ありがとうございます」

 

(もし出るのが遅かったら、俺も一緒になっていたのか)

 

その場合は、完全に不可抗力だが。

 

 

 

こうして、その他諸々の事態は収束した。

 

 

 

 




遅くなつたので色々詰め込んだので無理矢理になったのと駆け足気味になってしまいました。話を進めたかったのもありますが。


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第19話

多勢の大人が集まっている。その殆どの人が、ただならぬ雰囲気を醸し出している。そしてその中には、織斑千冬もいた。今千冬達がいるのは、IS委員会の会議場である。この会議は緊急で開かれたものだ。そして委員の1人が口を開いた。

 

「ウルトラマンが前にもIS学園に現れたというのは本当ですか?」

 

「はい」

 

委員の質問に千冬は答えた。千冬が答えるとすぐに他の委員が質問を始めた。

 

「その時、ウルトラマンは一体何を?」

 

「クラス対抗戦の時です。試合中に謎のISが襲撃してきました。止む無く生徒と交戦状態になってしまった時にウルトラマンが現れました。その時、ウルトラマンは避難が遅れた生徒を庇いその後、襲撃者と交戦しました。ウルトラマンと襲撃者は互角の戦いを繰り広げましたが、ウルトラマンが光線を放ち、襲撃して来たISは破壊されました」

 

「ISが破壊された!?」

 

ISが破壊されたと聞いた委員会の人々は一斉にざわつき始めた。

 

「ISが破壊されたと言ったが、搭乗者は?」

 

「襲撃して来たISは無人機でした」

 

「無人機ですと?」

 

「皆目見当がつきませんが、何者かが送り込んで来たのは確実でしょう」

 

ISがウルトラマンに破壊されたと知った委員会の人々は、何か考え出した。

 

「無人機とは言え、ISを破壊するとは恐れ多い」

 

「現時点でウルトラマンは我々の味方だと思いますか?」

 

「白騎士事件、そしてIS学園では我々を助けてくれました。しかし、ウルトラマンが何者かわからない以上、味方だとは断言できません」

 

千冬はそう言った。その言葉には、個人的な感情が含まれている感じがした。

 

「確かに、ウルトラマンは我々にとって未知の存在だ。ISを破壊できるとなると、敵になった時には大きな脅威となる」

 

委員の1人がそう言った。すると他の委員の人々はその言葉に大きく頷いた。

 

「我々はウルトラマンの事を知る必要がある。もしもウルトラマンが現れたならば、捕獲をする事とする」

 

代表と思われる人がいうと、委員の人々は皆賛同した。

 

(……ウルトラマン……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある休日、綾人は街に買い物に来ていた。ただしセシリアの荷物持ちとして。

 

「湊さん、次行きますわよ」

 

「は、はい……」

 

すでに綾人の両手には荷物でいっぱいだった。

 

(どうしてこうなった……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは数日前の事だった。ある日、綾人はセシリアに呼び出されていた。

 

(話があるって、一体何なんだ?)

 

綾人は何故呼び出されたのか全く見当がついていなかった。目の前にいるセシリアは少し表情が怖いと思った。

 

(俺、何かあいつにやらかしたか?)

 

思い出そうとしてもそんな記憶はなかったかに思えた。そして遂にセシリアが口を開いた。

 

「湊さん、今度の休日は空いていますか?」

 

(休日?特に何も無かったが?)

 

「はい、空いてますが……?」

 

「では、今度の休日ワタクシに付き合いなさい」

 

「……はい?」

 

(なさい?命令形?お願いじゃなくて命令?え、何?どういこと?)

 

綾人はセシリアの言った事に混乱してしまった。いきなり付き合えと命令形で言われたのだ。セシリアは綾人が了承する前に決め付けようとしていた。

 

「あの〜、付き合いなさいってどういうことですか?」

 

「そのままの意味ですわ。今度の臨海学校で必要な物を買いに行きますので湊さんにはその荷物持ちをしてもらいますわ」

 

(荷物持ちかよ。って、臨海学校の準備ぐらい1人でできるだろ)

 

「拒否権は?」

 

「ありませんわ」

 

(即答かよ)

 

「……理由を聞いても?」

 

「わからないのですか?」

 

「……はい」

 

(逆にちゃんとした理由があったのか)

 

「あの時貴方は急にいなくなったんですわのよ。ワタクシがどれだけ心配したと思ってるのですか」

 

「す、すみません……」

 

(それが荷物持ちにどう繋がるんだよ)

 

「なのでワタクシを心配させた罰として買い物に付き合っていただきますわ!」

 

「……絶対ですか?」

 

「絶対です。これは決定事項ですわ」

 

「え〜……」

 

 

 

 

 

 

 

と言う事があり、綾人は絶賛荷物持ち中である。

 

(臨海学校に必要な物はもう買い揃えているよな?)

 

確かに、セシリアは既に臨海学校に必要な物は殆ど買っていた。故に、今は臨海学校とは全く関係の無い買い物をしているのである。

 

(……女の買い物って、結構面倒くさいな……)

 

1人で愚痴る綾人であった。

 

「あの〜オルコットさん、少し休憩しません?」

 

「あら?もうお疲れになったのですか?」

 

「だって、こんなに買い物してるんですよ。それは疲れますよ」

 

「…… そうですわね。では少し休憩しますか」

 

(はあ、やっと休める)

 

綾人とセシリアは近くのベンチに座った。ベンチに座った綾人は大きく息を吐いた。

 

「大分お疲れのようですわね」

 

「……どの口が言うんですか……」

 

(だいたいお前が買いすぎているんだよ……)

 

「これは失礼しました。ですが、これは罰なのですからこれくらいしていただいませんと」

 

「そうですか……」

 

(……酷くないかそれ?)

 

「湊さん、休憩は終わりです。次行きますわよ!」

 

「……はい」

 

そして綾人は、再びセシリアに振り回されるのであった。綾人本人は既に諦めている様子だった。

 

 

 

 

 

 

ショッピングモールを出た綾人とセシリアはモノレールに乗っている。綾人は何とかシートに座っているが、半目状態だった。

 

(やべえ、すっげー眠い……)

 

1日中セシリアに振り回された綾人は既に疲れ切っていた。

 

「ふふっ」

 

半目状態の綾人を見たセシリアは軽く笑った。

 

「何ですか……?」

 

「いえ、何でもありませんわ」

 

(何だか馬鹿にされた気がしたな)

 

セシリアの様子に腑に落ちない綾人だった。

 

 

 

 

 

 

しばらくして綾人とセシリアは学園に戻ってきた。

 

(やっと戻って来た……)

 

「湊さん、今日はありがとうございました。湊さんのお陰でたくさん買い物ができましたわ」

 

「は、はあ……」

 

(だったら少しくらい自分で荷物持って欲しかったが)

 

「あら?ワタクシとショッピングはご不満だったかしら?」

 

セシリアのその言い方には少し嫌味がこめられている様に感じられた。

 

「いえ、別にそう言う訳では無いんですが……」

 

(荷物は持って欲しかったけどな)

 

綾人は内心愚痴った。

 

「では、またお願いしてもよろしいですか?」

 

「……荷物持ちでなければ……」

 

(これ以上は勘弁してくれ)

 

「考えておきますわ。では、ワタクシはこれで失礼します」

 

「お疲れ様でした」

 

綾人とセシリアは各々部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

部屋に戻った綾人はすぐにベッドに倒れこんだ。

 

「はあ、結構疲れたな……」

 

1人になった綾人は、素の喋り方になり眠りかけていた。

 

「……悪く無いな、こういうのも」

 

そう言った綾人は完全に目を閉じた。

 

(……結構楽しかったな……)

 

 

 

 



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第20話

綾人は今バスに揺られている。そのバスは海沿いの道路を走っている。綾人の他にはクラス全員が乗っている。綾人達は臨海学校に向かっているのだ。

 

「海だー!」

 

(海……か……)

 

女子生徒は海を見てはしゃいでいるが綾人海を見ながら黄昏ていた。そして、綾人の脳裏には昔の出来事が浮かんでいた。まだ小さい時に家族3人で海に行った事を。だが、それは過去の事だ。

 

(もう、戻れないんだよな……)

 

それは綾人本人が一番解っている事だった。あれから既に10年が過ぎている。どんなに願おうとも戻れるはずがない。そう思っている綾人は自然と涙を流した。

 

「どうした綾人?何かあったのか?」

 

涙を流している綾人を不思議に思ったのか、隣にいる一夏が話しかけてきた。一夏に話しかけられて綾人はハッとなった。そして綾人は初めて涙を流しているのに気付いた。

 

「えっ!?ああ、ちょっと目にゴミが入ってしまって……」

 

誤魔化しながら綾人は涙を拭った。

 

「そうか?もうすぐ着くから降りる準備しておけよ」

 

「は、はい……」

 

(……泣いていたのか、俺は……?)

 

 

 

 

 

 

 

目的地に着いた。生徒達はバスを降りて整列を始めた。

 

「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月壮だ。全員、従業員の仕事を増やさないように注意しろ」

 

『よろしくおねがいしまーす』

 

「はい、こちらこそ。今年の一年生も元気があってよろしいですね」

 

この女将の様子を見た綾人はある事を思った。

 

(すげえ良い人そう)

 

女尊男卑が浸透しているこのご時世、全ての女が女尊男卑思考である訳では無いが、この女将からは女尊男卑というものが全く感じられなかった。綾人は見ただけで女将から優しい雰囲気が醸し出されていると感じた。

 

「織斑先生、こちらの2人が……?」

 

「ええ、まあ。今年は二人男子がいるせいで浴場分けが難しくなってしまって申し訳ありません」

 

(わざわざ俺たちのためだけに浴場分けの調整をしてくれたのか。ありがたいと同時に、申し訳ないな)

 

「そんな。それに、いい男の子達じゃありませんか。しっかりしてそうな感じを受けますよ」

 

(何をどう見てしっかりしてると思ったんだ?)

 

「感じがするだけですよ。さあお前達、挨拶をしろ」

 

「お、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

「み、湊綾人です。きょ、今日から三日間よろしくお願いします」

 

綾人はワザと緊張しているように振舞いながら女将に挨拶をした。

 

「ふふっ、こちらこそよろしくお願いします」

 

女将は微笑みながら挨拶を返してきた。

 

(やっぱり良い人だな)

 

綾人はそれしか考えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

綾人達は部屋へ移動する時にある事を思い出した。

 

(そう言えば俺と織斑の部屋ってまだ知らされてなかったよな?)

 

「織斑君、僕たちの部屋ってどうなってるんでしょうね?」

 

「そう言えばそうだよな。しおりにも書いてなかったし」

 

2人の言う通り、男子2人の部屋は知らされていなかった。

 

「安心しろ、ちゃんと用意してある」

 

2人の疑問に千冬は答えた。

 

(むしろ用意してもらわないと困るんだが)

 

「お前達の部屋はここだ」

 

千冬に案内されて着いた部屋に、2人は驚いた。

 

「綾人、この部屋って……」

 

「ですよね……」

 

2人が案内された部屋は、千冬と同じ部屋だった。

 

「何をしている?早く入れ」

 

「あの、ここって織斑先生の部屋ですよね?」

 

「そうだ」

 

「理由を聞いても?」

 

「時間を無視した女子たちがお前たちの部屋に群がる可能性があるからだ」

 

「ああ、そういう……」

 

千冬の説明を聞いた綾人は何故か納得した。そして綾人は一夏をチラ見した。

 

「どうした綾人?」

 

「いえ、何でもないです……」

 

「お前達、早くしないと時間が過ぎるぞ」

 

「そうだな。綾人、行こうぜ」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

水着に着替えた2人は早速浜辺に来た。そこには既に女子たちがいた。だが綾人はそんな事を気にせずに1人で海に向かって歩き出した。

 

「綾人?」

 

一夏の声に気づいているのか気づいていないのか、綾人は足を止めなかった。そして、海水が膝下まで来た時に一度立ち止まった。そして立ち止まると、海を見渡した。

 

(俺は、この広大な海の中でアグルと出会った)

 

綾人はアグルと邂逅した時の事を思い出していた。初めて出会った時も、この広い海の中だった。

 

(そして……)

 

綾人は海の中に潜った。そしてひたすらと泳ぎだした。

 

(そして、アグルの光を掴んだ)

 

さらに深くまで潜ると、目の前に青い光が発生した。

 

(!!)

 

綾人はその光に向かって手を伸ばした。

 

「……アグル……」

 

綾人が手を伸ばすと、初めてアグルと出会った時のように、アグルが綾人を見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

綾人はハッとなって海から上がった。

 

「ここまで来てたのか……。それに、今のは……?」

 

綾人は泳ぎだしてから遠い所まで来ていた事に気付いた。

 

「戻るか……」

 

綾人は浜辺に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「綾人、どうしたんだよ。急に行くなんて?」

 

「えっ?ちょっとテンションが上がっちゃって。少し休みます。」

 

「そ、そうか」

 

そう言って綾人は近くのベンチに腰掛けた。

 

(やべえ、メッチャ疲れた……)

 

綾人は顔を上げる気力が無くなっていた。だがそこに、セシリアが来た。

 

「湊さん、どうされたのですか?」

 

「……泳いだら疲れました」

 

綾人はセシリアに簡潔に説明した。

 

「それより、この水着どうですか!?あの時買ったやつなんですけど!」

 

そう言われて綾人は顔を上げた。だが綾人は虚ろな目をしていた。

 

「……似合ってますよ」

 

「……本当にそう思ってるんですの?」

 

「思ってますよ。疲れてるだけです」

 

そう言われたセシリアはムッとなった。

 

「もういいですわ!ふん!」

 

怒ったセシリアは1人で何処かに行ってしまった。

 

「……何だったんだ?」

 

再び休もうとしていた所に今度は鈴音が来た。

 

「あんた何してんのよ?」

 

「何がですか?」

 

(何だ?こう次から次へと?)

 

「せっかくセシリアが自分の水着姿見せたってのに、素っ気なさすぎるわよ」

 

「仕方ないじゃないですか。疲れてしまったんですから」

 

「仕方ないじゃないわよ。疲れてたとしてもちゃんと見て上げるべきだったのよ」

 

「それはそうでしょうけど……」

 

「いい?後でちゃんと謝りなさいよ」

 

(何で俺が悪いみたいになってるんだ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食の時間になり、綾人達は宴会場に移動した。綾人は鈴音に言われた通りセシリアに謝ろうとしたが、顔をあわせる度に外方を向かれていた。

 

(これは面倒くさいやつだ)

 

綾人はそう確信した。そして宴会場に着くと皆それぞれの場所に座った。綾人も座ると、何故か向かい側にセシリアが座った。セシリアが目の前に来た事に綾人は驚くが、セシリアは綾人を見てもすぐに顔を逸らした。そしてまた確信した。

 

(これは絶対ワザとだ)

 

その証拠として、セシリアは顔を背けても綾人をチラ見していた。故に、本気で怒ってないように思えた。それに気付いた綾人は話しかけるタイミングを探った。

 

(謝ると言っても、どうすれば良いんだ?)

 

綾人はどう謝るか考えるが、大した事は思いつかなかった。

 

(しょうがない、普通に謝るか)

 

「オルコットさん、あの、さっきはすみませんでした」

 

「……知りませんわ」

 

(こいつは手強いな)

 

「お詫びと言ったら何ですけど、いつかオルコットさんに何かしてあげますから」

 

「……本当ですか?」

 

「はい。何でもしてあげます(……やべっ!)」

 

「では、また荷物持ちでも頼もうかしら?」

 

(……は?)

 

「また荷物持ちをしてくれるのなら、許してあげてもよろしくてよ」

 

「そ、それで許してもらえるなら……」

 

「では、その時はよろしくお願いしますね」

 

「は、はい……」

 

結構簡単に綾人は許してもらえた。

 

(俺はオルコットのなんなんだ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色々あったが食事を食べる綾人。食べる時は何も気にせずに食べていた。ふと、目の前のセシリアを見ると、何やら辛そうな表情をしていた。

 

(どうしたんだ?)

 

「大丈夫かセシリア?顔色良くないぞ」

 

「だ、大丈夫ですわ……」

 

(いや、大丈夫に見えないんだが)

 

セシリアはそう言うが何度も足を摩っていた。それを見て綾人はセシリアがどういう状態かわかった。

 

(足痺れてんのか)

 

綾人はセシリアを気にせずに料理を食べようとしたが手が止まった。

 

(何だか見てられないな)

 

足の痺れに悶絶しているセシリアを綾人は見ていられなくなったのか、綾人はセシリアにある提案をしようとしたが……

 

「セシリア大丈夫か?辛かったら俺が食べさせてやろうか?」

 

一夏が食べさせてやると言いだした。

 

(……は?何言ってんだこいつ?)

 

「す、すいません。お願いしますわ」

 

一夏は刺身を摘み、セシリアに食べさせた。

 

(……何だこれ?)

 

その光景を見た綾人は若干イラついていた。

 

「綾人君いいの?このまま一夏にやらせて?」

 

今度は綾人の隣にいたシャルロットが話しかけてきた。

 

「な、何がですか?」

 

「早くしないとセシリア食べ終わっちゃうよ」

 

シャルロットが何を言いたいのか理解した綾人は向かい側に移動した。

 

(やっぱり、そうなのかな?)

 

シャルロットは何かを思った。

 

「織斑君、代わります。後は僕に任せてください」

 

「いいのか?」

 

「はい。なので早く代わってください」

 

「お、おう……」

 

一夏は何が何だかわからないまま、戸惑いながらも綾人に代わった。

 

「どうしたんだ綾人のやつ?」

 

「一夏にはわからないんじゃないかな」

 

一夏の疑問にシャルロットはそう答えた。

 

「湊さん……」

 

「オルコットさん、どれがいいですか?」

 

「……では、これをお願いします」

 

「わかりました」

 

綾人はセシリアに言われた刺身を摘み、セシリアの口に運んだ。

 

(……何やってんだ俺?)

 

やり始めてから綾人は自分のしていることに疑問を持った。

 

 

 

 

 

 

その後、綾人と一夏は風呂に入り、綾人は疲れたからと、就寝時間になるとすぐに寝た。臨海学校1日目が終了した。

 

 

 

 

 

 



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第21話

臨海学校2日目、この日より本格的な装備試験が行われる。故に、全員真剣な表情になっている。

 

「さて、それでは各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。専用機持ちは専用パーツのテストだ。全員、迅速に行え」

 

「じゃあ綾人、俺はこっちだから」

 

「はい、また後で」

 

そう言われて専用機持ちとそうでない者達で分かれた。だが、何故か箒が専用機持ち側に呼ばれた。

 

「ああ、篠ノ之。お前はちょっとコッチに来い」

 

「はい」

 

(何だ?何故篠ノ之があっちに?あいつは専用機持ってないだろう)

 

そんな綾人の疑問はすぐに解消される事になった。

 

「ちーちゃ~~~~~~~~~~ん!!」

 

突如、謎の奇声が鳴り響いた。

 

(な、何だこの声は?)

 

その奇声と共に、1人の女が現れた。

 

「………束」

 

千冬はその女を『束』と呼んだ。

 

(束?いや、まさか……)

 

「やあやあ!会いたかったよ、ちーちゃん!さあ、今すぐにハグハグしよう!そして愛を確かめ――ぶへっ」

 

すると、束と呼ばれた女は千冬に近づこうとしたところ、千冬にアイアンクローをかまされた。

 

(何だあれ……)

 

「うるさいぞ、束」

 

「ぐぬぬぬ……相変わらず容赦ないアイアンクローだねっ」

 

束は、今度は箒の所に向かった。

 

「やあ!」

 

「……どうも」

 

(あの女、まさか本当に……)

 

「えへへ、久しぶりだね。こうして会うのは何年ぶりかなぁ。おっきくなったね、箒ちゃん。特におっぱいが」

 

ゴンッ!

 

「殴りますよ」

 

「殴ってから言ったぁ!しかも日本刀の鞘で叩いた!ひどいよ!箒ちゃんひど~い!」

 

(……何を見せられているんだ俺たちは?)

 

「おい束。自己紹介くらいしろ。うちの生徒たちが困っている」

 

「えー、めんどくさいなぁ。私が天才の束さんだよ、終わり」

 

束は超簡単に自己紹介をやった。

 

(本当にあんなのが篠ノ之束なのか?でも妹に話しかけたから本物なのか……?だとしたら、バカと天才は紙一重と言うが、こういうこと……なのか?)

 

すると、束は綾人が視界に入ると、綾人の所に近づいてきた。

 

(あいつ、俺の所に来るのか?)

 

「……な、何ですか……?」

 

「君がいっくん以外にISを動かせる男なんだ」

 

(いっくん?織斑のことか?)

 

「そ、そうみたいですね」

 

束は、綾人の身体を満遍なく観察し始めた。

 

(何なんだこいつは?他人の身体をジロジロと)

 

「ねえねえ!君の身体解剖して調べても良いかな!?」

 

「……は?」

 

束の顔は、好奇心と狂気でが重なっていた。

 

(正気かこいつ!?身体を解剖だと、ふざけんな!!)

 

「やめろ束」

 

すると千冬が束の頭をグーで殴った。

 

「痛い!酷いよちーちゃん!」

 

「お前が湊を解剖すると言うからだ」

 

「や、やだな〜ちーちゃん。冗談に決まってるじゃん」

 

「お前の冗談は冗談に聞こえん。いいからさっさと用事を済ませろ」

 

「はーい」

 

束は綾人から離れ、箒のいる所に戻った。

 

(何だったんだ、解剖するとか言いやがって)

 

「先生、何なんですかあの人?」

 

「気にするな。ただの馬鹿だ」

 

(やっぱりバカと天才は紙一重……か)

 

「そ、それで姉さん、頼んでおいたものは……?」

 

頼んでいたもの?妹のあいつが姉の篠ノ之束に頼む者とすれば…….まさか

 

「うっふっふっ。それはすでに準備済みだよ箒ちゃん。さあ、大空をご覧あれ!」

 

束がそう言うと生徒全員が空を見上げた。すると

 

ズドォーン‼︎

 

(な、何だ一体……)

 

空から轟音と共に落下したもの、それは

 

「じゃじゃーん!これぞ箒ちゃん専用機こと『紅椿』だよ!全スペックが現行ISを上回る束さんお手製のISだよ!」

 

篠ノ之の専用機?まさか、姉に自分の専用機を作らせたというのか?それに、現行を上回るISだと……

 

「さあ箒ちゃん、今からフィッティングとパーソナライズをはじめようか!私が補佐するからすぐに終わるよん」

 

「……それでは、頼みます」

 

そして束は作業を始めた。だがそれをよく思わない者たちがいた。

 

「あの専用機って篠ノ之さんがもらえるの……?身内ってだけで」

 

「それってズルくない?」

 

(それ以前にいいのか?そんな理由で専用機を手に入れるのは)

 

「おやおや、歴史の勉強をしたことがないのかな?有史以来、世界が平等であったことななんか一度もないよ」

 

(こいつ……)

 

すると今度はセシリアが束の所に行った。

 

「あ、あのっ!篠ノ之博士のご高名はかねがね承っておりますっ。もしよろしければ私のISを見ていただけないでしょうか!?」

 

セシリアは束に自分のISを見てくれないかと頼んだ。だが

 

「はあ?だれだよ君。金髪は私の知り合いにはいないんだよ。そもそも今は箒ちゃんとちーちゃんといっくんと数年ぶりの再開なんだよ。そう言うシーンなんだよ。どういう了見で君はしゃしゃり出てくんの?理解不能だよ。って言うか誰だよ君は」

 

束は侮蔑するかのような目でセシリアを拒絶した。

 

「え、あの……」

 

「うるさいなあ。あっちいきなよ」

 

「う……」

 

徹底的に拒絶されたセシリアは涙目になりながら引き下がった。

 

(なんだあいつ?さっきまでと態度が違いすぎる)

 

綾人は束に不審感を抱き、束に詰め寄ろうとした。だが

 

「よせ」

 

「先生……?」

 

千冬が綾人の肩を持ち、綾人を止めた。

 

「あれがあいつなんだ。言っても無駄だ」

 

(なんだそれは?ただのコミュ症じゃないか)

 

そしてそんなやり取りをしているうちにフィッティングを終わらせた。そしてそのまま試運転を開始させた。すると紅椿は凄まじいスピードで飛んでいった。

 

(速い!?何だあのスピードは!?)

 

紅椿のスピードに、綾人だけでなく他の全員をも驚かせた。そして今度は刀を装備した。すると、十六連装ポッドからミサイルが発射された。

 

「箒!」

 

一夏は箒を心配して叫んだが、その心配を他所に箒はミサイルが来るのを身構えた。

 

「やれる……この紅椿なら」

 

そして箒は刀を振るうと帯状となったレーザーが、十六発のミサイルを全て撃墜した。

 

(……あれが現行を上回るISだと言うのか……)

 

「.........すごい性能だな、束」

 

「そうでしょ~、何たってこの紅椿は『第4世代機』なんだから!!」

 

(第4世代!?バカな!?第4世代なんて前例は聞いたことがない。あいつら、自分達が何をしようとしてるのかわかってるのか……?)

 

「織斑先生、本当に篠ノ之さんにあのISを与えるんですか?」

 

「そう言うことになる。それがどうした?」

 

「やめた方が良いと思いますよ」

 

「何?」

 

「そもそも篠ノ之さんは候補生じゃありません。織斑君は例外として、今ここで専用機を持っているのは代表候補生のみです。それに、学園にいる候補生の中には、まだ専用機を持ってない人もいるでしょう。それなのに候補生でもない篠ノ之さんがいきなり専用機を持つのはおかしな話です。さっき他の人が言ったように、篠ノ之博士の妹だから専用機を貰えると言うのは理由になりません。はっきり言って、ただの身内に対する贔屓です。それが知れ渡ったら、さっきみたいに他の人に目の敵にされるだけです。篠ノ之博士の妹というアドバンテージは、もはや関係なくなります。それに、今の篠ノ之さんは、専用機を手に入れたことで、慢心しています」

 

「湊、お前の言いたい事はわかる。だが、これは決定事項なんだ。覆す事は出来ない」

 

「他にもまだあります。あれが第4世代と言うことです」

 

「……ああ」

 

「第4世代なんて聞いたことがありません。それがいきなり出てくるなど、大問題です。それを候補生でもない篠ノ之さんが持つことになるなんて。最悪、第4世代を狙ってくるかもしれないんですよ」

 

「だがISの軍事利用は禁止されている。そう簡単には動けない」

 

「……ISの為なら手段を選ばない。それが現実でしょ……」

 

その時綾人は、ISの実用性を広めるために、両親の死が無かった事にされたことを思い浮かべた。

 

「湊、お前……」

 

千冬は綾人がここまで発言する事に驚いた。普段の綾人は少し弱気な感じがしているのだが、今は自分の意見を言った事で、普段とは違う様子だと気付いた。

 

「ねえ君、束さんの作った紅椿に文句があるの?」

 

「お前は自分が専用機を持てないから嫉妬しているだけだろう」

 

(嫉妬か。それだったらまだマシだったかもな)

 

「やめろお前達」

 

千冬は2人を静めるが、それでも綾人を睨みつけた。

 

「織斑先生、大変です!!」

 

すると突然、真耶が大慌てでやってきた。千冬は話を聞いた瞬間、険しい顔つきに、なった。

 

「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと写る。今日のテスト稼動は中止。各班、ISを片付けて旅館に戻れ。連絡があるまで各自室内待機する事。以上だ!」 

 

千冬の言葉に生徒達はザワつき始めた。

 

『え……?』

 

『ちゅ、中止? なんで、特殊任務行動って……』

 

『状況が全然分かんないんだけど……』

 

(特殊任務だと?どういう事だ?)

 

「専用機持ちは全員集合しろ!織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰!それと、篠ノ之も来い。湊、お前も早く戻れ」

 

「は、はい」

 

(一体、何が起きようとしているんだ……?)

 

 

 



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第22話

遅くなりまた。最近忙しかったものでして……


特殊任務行動と言われ一般生徒達はISの片付けに追われていた。片付けをしている生徒の中には今の状況に飲み込めない者もいる。

 

「特殊任務行動ってどういう事?」

 

「わかんないよそんなの……」

 

他の生徒達も困惑しているせいか、片付けの作業が捗っていなかった。そしてそこには、すでに専用機持ち達はそこにはおらず、一般生徒達だけが残ってISの片付けをしている。その中には、今の状況に不安を覚えている者もいるようだ。

 

(特殊任務行動……、何が始まるんだ?)

 

綾人も考えながらISの片付けをしている。

 

「ねえ、湊君はどう思う?」

 

同じ1組の生徒が綾人に聞いてきた。普段は弱気で大人しいと思われている綾人だが、頭が良いという事はクラスでは周知の事実となっている。そして、千冬に意見を言った事が、クラスメイトに綾人の印象をさらに変えさせた。

 

「そうですね……」

 

綾人が喋ると同時に、皆が綾人に注目した。だが綾人はそれを気にせずに話を続けた。

 

「まず言える事は、只事じゃないって事は確かです。山田先生の慌てようと織斑先生のあの表情、確実に何かあります。僕たち一般生徒が踏み込める領域じゃない何かが」

 

「それってどういう事?」

 

「織斑先生が特殊任務行動に移ると言った時、専用機持ちに招集をかけました。素人の織斑君とついさっき専用機を貰った篠ノ之さんも一緒に。これはおそらく、戦力が欲しかったんじゃないでしょうか?猫の手も借りたいほどの」

 

「せ、戦力って?」

 

「今日の予定を全部中止にさせてまで特殊任務を行う。多分この特殊任務というのは軍事絡み、もしくは国家絡みだと思います」

 

「そんな大袈裟なものなの?」

 

「じゃなきゃ専用機持ちを呼びませんよ。仮にそうだった場合、最悪この付近は、戦場になる」

 

「戦場ッ!?」

 

戦場という単語を聞いた瞬間、生徒達はザワつき始めた。

 

「戦場って、またこの前みたいな事になるの……?」

 

「そんなのもう嫌だよ……」

 

一同の不安はさらに増した。既に怯えている者がいるのも少なくない。

 

「飽くまで最悪の場合です。その為に専用機持ちが呼ばれたんですから。皆を信じましょう。僕たちも早く旅館に戻らないと」

 

綾人がそう言うと、片付けを終わらせて全員旅館に戻った。

 

 

 

 

 

 

部屋に戻った綾人は、1人で考え事をしていた。

 

(特殊任務行動がIS学園側に通達されたのは、おそらくその原因が俺たちに近い所にいるからか。そして専用機持ちは代表候補生の4人に加えて織斑と篠ノ之がいる。だが、そうは言っても所詮は学生だ。それなのに学園側に特殊任務を通達するのはどういう事だ?これがもしも本当に軍事絡みだとしたら尚更だ。そんな大事なことを学生如きに任せるか普通?まさか自分達で対処できないから学園側に押し付けたのか?だとしたら、ふざけてるにも程があるな)

 

綾人はそんな事を考えていた。ちなみに部屋には綾人1人しかいない。

 

「まあ、俺がこんな事を考えても仕方ないか」

 

だがその瞬間、綾人は懐に違和感を感じた。懐にしまってあったアグレイターを取り出してみると、アグレイターのランプが光り輝いていた。

 

「これは……?」

 

綾人は何か感じたのか、部屋の窓を開けた。

 

「……俺に行けというのか……アグル!」

 

綾人はアグレイターを展開させ、光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

旅館のある一室、そこにはセシリア、鈴音、シャルロット、ラウラ、千冬、真耶がいる。全員が真剣な面持ちをしていた。

 

「織斑先生、作戦領域上空に謎の発光体が出現したとの報告がありました」

 

真耶がその報告を受け、千冬に伝えた。

 

「発光体だと?」

 

「映像を解析します。……ウルトラマンです!!」

 

「何ッ!?」

 

ウルトラマンと聞いた瞬間、千冬は驚きの声をあげた。映像を表示すると、そこには確かにアグルの姿があった。千冬はアグルを見ると、険しい顔つきになった。

 

「ウルトラマン……あれが……」

 

ラウラは初めてアグルを見た。

 

「うん。あの時ラウラを助けたのも、あのウルトラマンなんだ」

 

シャルロットはラウラにそう言った。

 

「でも、何でウルトラマンがいんのよ!?」

 

「この前もウルトラマンが現れましたが……どういう事なのでしょう……?」

 

 

 

 

 

 

 

(どこだ……どこにいる……?)

 

アグルは空を飛びながら探している。これから逢うであろう未知の存在に気を引き締めていた。

 

(あれは……?)

 

「一夏!? 一夏!?」

 

(篠ノ之と織斑か? 他の奴らはいない。まさか2人だけで来たのか? それにあの様子だと、織斑があれにやられたようだな)

 

アグルは一夏と箒の他に別のISを見つけた。そしてそれと同時にそのIS『銀の福音』が今回の原因だと理解した。

 

(篠ノ之の奴、いつまでそこにいるつもりだ?格好の的だぞ! ……仕方がない)

 

アグルはすぐに箒達の所に向かった。

 

 

 

 

「一夏!! 目を開けてくれ!! 一夏!!」

 

箒は何度も呼びかけるが一夏は目を覚ます気配がない。そして福音は、それに構わず止めを刺そうと構えた。

 

「ッ!?」

 

箒は福音が攻撃する瞬間に目を瞑った。だが

 

ドガアアアン!!!!

 

謎の衝撃音が鳴り、箒は恐る恐る目を開けた。目を開けると、そこにはアグルブレードを構えたアグルがいた。

 

「ウ……ウルトラマン……?」

 

アグルは福音の攻撃を全て弾いていた。アグルはゆっくりと箒の方を振り向いた。

 

「ッ!?」

 

箒はアグルと目が合うと背筋が凍る感覚に襲われた。前にも一度、味わったものだった。アグルは首を振ると、箒はアグルの考えを悟ったのか、戦闘領域から一夏を連れて離脱した。

 

(こいつか。ISが絡んでるのは間違いないと思ったが、何だこいつは?)

 

アグルは透視能力で福音を調べた。そして、人が乗っている事がわかった。

 

(人が乗っているだと?しかも意識が無さそうだが……暴走しているのか?)

 

アグルがそう考える束の間、福音はアグルに攻撃を仕掛けた。

 

(ぐっ!?)

 

アグルブレードで防ぎ、そのまま福音に接近した。

 

(ハアアアアッ!!)

 

アグルは福音に斬りかかるが福音は腕でアグルブレードを防いだ。その瞬間、アグルブレードと福音の間から謎の光が発生した。

 

(何だ…….今のは……?)

 

アグルは謎の光を見上げたがその光は空に消えた。福音は隙を見つけ、エネルギー弾を全てアグルに向けて放った。

 

(くっ!!)

 

アグルも反射的にフォトンクラッシャーを放った。フォトンクラッシャーとエネルギー弾がぶつかり合う。そして再び、謎の光が発生した。

 

(ッ!また!?)

 

光は空に消え、フォトンクラッシャーとエネルギー弾のぶつかり合いも互いの爆発により強制的に終わった。そしてそこは爆煙に包まれた。

 

(奴は!?)

 

煙が晴れると、そこに福音の姿はなかった。

 

(逃げたのか……? それに、あの光は一体……?)

 

アグルも光に包まれ、姿を消した。

 

 

 



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第23話

「おかしいな〜?」

 

とある場所、そこに篠ノ之束はいた。束は1人で『銀の福音』の戦闘の映像を見ている。

 

「あそこまで強くなるはずないのに……何でかな〜?それに、ウルトラマンか……気に入らない!」

 

束は不穏な言葉だけを残した。

 

 

 

 

 

 

 

旅館の一室、そこに一夏がいる。だが一夏は、戦闘で負ったダメージが原因で、昏睡状態になってしまっていた。そして、真耶、箒、セシリア、鈴音、シャルロット、ラウラが一夏を心配そうに見ている。だが、千冬だけは険しい表情をしていた。その沈黙の中、千冬が口を開いた。

 

「篠ノ之、銀の福音と戦闘中にウルトラマンが現れたな?」

 

「は……はい……」

 

「奴はどのタイミングで現れた?」

 

「……ウルトラマンは、一夏がやられた後に現れました……。一夏を抱えて呼びかけていた時に、敵が私を攻撃してきました……。その時に、ウルトラマンが私の前に現れました……」

 

箒の言葉に覇気はなかった。どんよりと、沈んだ声で千冬の問いに答えた。

 

「……そうか」

 

「ウルトラマンが敵の攻撃から私と一夏を守ってくれたんです。でも、ウルトラマンが私に向けた目は……あの時と同じ……」

 

箒は喋り続けるうちに段々涙声になっていた。

 

「……もう良い、わかった」

 

千冬は箒が何を言いたかったのか察したのか、箒の言葉を止めた。

 

「……ウルトラマンがもっと早く来てれば、一夏は助かってたって事?」

 

今度は鈴音が話し始めた。

 

「鈴さん、まさか一夏さんがやられたのはウルトラマンの所為だと言いたいんですの?」

 

「だってそうでしょ!? ウルトラマンが来るのが遅かったせいで一夏はこうなったんでしょ!!」

 

鈴音は一夏がやられた原因をウルトラマンの所為にしようとしている。

 

「違う!! 私が悪いんだ!!私が傲慢だった所為で……専用機を貰って調子に乗って……あいつの言う通りだったんだ。私は専用機を持つべき人間ではないんだ……」

 

箒は一夏がやられた原因は自分の所為だと言った。そして箒は綾人の言葉を思い出していた。この言い合いに千冬は黙り込み、真耶はオロオロしている。

 

「2人とも、落ち着いてよ!今はこんな事言い合ってる場合じゃないよ!」

 

「それに、ウルトラマンだって都合良く来ないという事だ」

 

シャルロットとラウラが言い合いを止めた。それでも鈴音は納得していないようだ。その時、千冬が立ち上がった。

 

「織斑先生、どちらへ……?」

 

「すまない、1人にさせてくれ。お前達は待機していろ」

 

千冬はそう言って部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのIS、何だったんだ?唯の暴走とは思えない……」

 

綾人は部屋で銀の福音について考えていた。

 

「大方、特殊任務ってのは暴走したISを止めろって事か。でも、そんな大事な事普通学生にやらせるかよ。どこのどいつだか知らないが、何考えてんだ」

 

綾人は1人で喋った。誰もいないのを良いことに、独り言を言っていた。

 

「それにしても何だったんだ、あの光は……?」

 

今度は、銀の福音とぶつかった時に発生した光について考え始めた。

 

「あんな事、今まで一度も無かったのに、どういう事だ……?」

 

綾人が1人で考えている、その時

 

ガラッ

 

「ッ!?」

 

部屋の戸が開かれた。独り言を聞かれたのかと思い、思わず戸の方を向いた。すると千冬が部屋に入ってきた。

 

「せ、先生……?」

 

「湊?そうか、ここはお前の部屋でもあったな」

 

(自分で決めたんだろうが)

 

「いやっ、あの……どうしたんですか?」

 

(我ながら白々しいな)

 

「別に、何でもない」

 

(何でもない筈がないだろう?)

 

それもそのはず、綾人は現場にいたのだから。そんな事を知る由もない千冬はどうにかやり過ごそうとしていた。

 

「……特殊任務、終わったんですか?」

 

「何?」

 

「特殊任務ですよ。さっき言ってたじゃないですか」

 

「お前が気にする事ではない」

 

「……その言い方はまだ終わってないと捉えて良いんですね?」

 

綾人はまるで千冬を挑発しているみたいだった。

 

「終わってないではなくて、失敗したのが正しいですか?」

 

綾人は追い討ちを掛けるように続けた。それに対し千冬は……

 

「余計な詮索はするな!! これはお前が首を突っ込んで良いものではない!!」

 

そう言うと千冬は部屋を出ようとした。だが……

 

「みんな言ってましたよ。もうこんな思いをするのは嫌だって。IS学園に入学してすでに2回も危険な目に遭ってるんです。それに加えてこの特殊任務行動。みんな不安になってます。不安どころか、もう怯えてますよ」

 

綾人の言葉で千冬は足を止めた。千冬は拳を握りしめている。

 

「そんな事はわかってる!! 私だって生徒達を危険な目に遭わせたくない!!」

 

(じゃあ何で織斑と篠ノ之を行かせた?本当にそう思ってるんだったら他にも適役がいるだろう)

 

綾人と千冬、互いに意見がぶつかり合う。千冬には彼女なりの葛藤があるようだ。綾人はそれに気づいているのかいないのか……。

 

「お、織斑先生!! 大変です!!」

 

そこに真耶が来たが、かなり慌てている様子である。

 

「どうした、何があった?」

 

「銀の福音が再び出現したんですが、専用機持ちの子たちが勝手に出撃してしまいました!!」

 

「何だと!? あの馬鹿どもが……」

 

(銀の福音って言うのか、あのIS。て言うか、俺がいるのにそんな大事な事言っていいのか?)

 

完全に丸聞こえである。だが千冬と真耶はそんな事を気にしている暇は無かった。

 

「あの……先生……」

 

「何だ!? お前に構っている暇などない!!」

 

「いや、聞こえちゃったんですけど……」

 

それを聞いた2人は同時に黙りだした。

 

「……湊、今の事は絶対に誰にも言うな。わかったか?」

 

「は……はい……」

 

千冬は威圧しながら綾人に言い、そのまま部屋を出た。2人がいなくなると、綾人は窓を開け、外を眺めた。

 

「あのIS、銀の福音が再び現れた。そして今度は専用機持ち全員が勝手に出撃している。おそらく織斑は重症。それでも専用機持ち全員とは、数だけなら有利だが、どうするつもりだ?」

 

綾人は険しい表情で外を見る。あの海の上が再び戦場になると思うと、さらに険しくなった。

 

「専用機持ち全員という事は、オルコットも……」

 

綾人はふとそんな事を思った。専用機持ち全員ならセシリアも含まれる。当たり前だが何故かセシリアのことを考えてしまった。

 

「ん?」

 

綾人は再び懐に違和感を感じた。それはやはり、アグレイターが点滅しているからだ。だが綾人はアグレイターを手に取るが、すぐに変身しようとしない。

 

「あの光、もしまた出てきたら……」

 

綾人は再び謎の光が発生する事を危惧している。その光が何なのかわからない以上、迂闊に攻撃はできないだろう。それでもアグレイターは点滅を続けている。

 

「……わかったよ、アグル。行けばいいんだろ、行けば。この際光の事は無しだ。奴を倒す、それだけだ」

 

綾人はアグレイターを装着し、展開させ光に包まれた。

 

 

 

 

 




福音戦にはあまり時間をかけたくないので、少々駆け足気味かもしれません。福音戦は次回で終わると思います。福音戦は……


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第24話

一ヶ月以上更新できなくてすみませんでした。デュエルリンクスとか黒ウィズとか仕事とかで中々手がつけられずにいましたが、第24話です。どうぞ。


海上を箒、セシリア、鈴音、シャルロット、ラウラがそれぞれのISを身に纏い飛行している。それは勿論、これから出逢うであろう『銀の福音』を倒すためだ。だが今の箒達の行動は完全に命令違反である。しかし全員命令違反を承知で出撃している。自分達で福音を倒すために。

 

「もうすぐ遭遇ポイントだ」

 

ラウラがそう言うと全員気を引き締めた。

 

「しかし、本当良いのでしょうか?勝手に出撃してしまって……?」

 

「今更何言ってんのよ。ここまで来て引き返せるわけないでしょ」

 

「そうだよ。僕たちがやらないでどうするのさ」

 

「それはそうですが……」

 

セシリアだけは無断出撃に異議を唱えていた。頼みの綱である一夏がやられた、そしてウルトラマンでさえも的を逃してしまった。まともに戦えるの、は自分達専用機持ちだけの状況だ。だからこそ、この無断出撃に異議を唱えているのかもしれない。

 

「それに、またウルトラマンが現れるとは限らん。だから私たちがやるしかないんだ。ウルトラマンに頼らずともな。箒、覚悟はできているな?」

 

ラウラは箒に問いかけた。

 

「ああ。もう二度と、あの様なヘマはしない!」

 

箒は自分のせいで一夏がやられたと責任を感じている。それ故にずっと落ち込んだままだったが、今は『銀の福音』を倒すことを考えていた。

 

「……わかりましたわ。私も覚悟も決めます!!」

 

セシリアも覚悟は決まったようだ。

 

 

 

 

 

そして、時は来た。

 

「敵の反応が出た、行くぞ!!」

 

ラウラの言葉で、全員戦闘態勢に入った。

 

 

 

 

 

 

同じ頃、アグルもまた海上を飛んでいた。

 

(あの時奴は逃げたがそこまで遠くには行ってないはずだ。もし奴の方から現れるのであればもうすぐ遭遇する)

 

アグルがそう考えていると、別の方向から激しい音が聞こえた。アグルはその音が何なのかすぐに理解した。

 

(あっちか)

 

アグルは音がした方向に飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

「山田先生、状況は?」

 

「はい、すでに戦闘に入った模様です」

 

部屋では千冬と真耶が待機している。千冬は神妙な面持ちになっていた。

 

「今はあいつらに任せるしかないのか……」

 

千冬は専用機持ち達に望みを託した。自分が出撃できない分、無断出撃に関しては見て見ぬ振りなのだろうか?

 

「織斑先生、ウルトラマンはまた来てくれるでしょうか?」

 

「何?」

 

「今、再び銀の福音が現れました。だからウルトラマンも銀の福音と戦うために現れるのではないかと思いまして……」

 

それを聞いた千冬は更に顔が険しくなった。

 

「山田先生はウルトラマンを当てにしたいるのか?」

 

「い、いえ、そういう訳では……。ただ、ウルトラマンが我々の前に姿を現してから、2度も私たちを助けてくれました。この前も、ボーデヴィッヒさんを救いました。だから今回も、ここにいる人たちの為に戦うと思うんです」

 

真耶はウルトラマンを信じているようだ。だが千冬は納得していないみたいだ。

 

「本当にそう言い切れるのか?」

 

「えっ?」

 

「ウルトラマンは我々にとって未知の存在だ。そんな奴を簡単に信用できるのか?」

 

「しっ、しかし現にウルトラマンは私たちを!」

 

「ウルトラマンが敵になったらどうする。ウルトラマンが何者かわからない以上、すぐに味方だと決めるのは軽率だ。それに、ウルトラマンはISを破壊するほどの力を持っているんだぞ。とんでもない力を持つ得体の知れない奴を、私は信用できない……」

 

「そんな……」

 

千冬の言葉にショックを受ける真耶だった。だが千冬には、また別の感情が感じられたが、真耶にとってそれは知る由も無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海上では既に福音と交戦している。始めにラウラが砲撃をしたが福音はそれを撃ち落としながらラウラに接近した。

 

「セシリア!!」

 

今度はセシリアが仕掛けてきた。セシリアはブルー・ティアーズをステルスモードにしていた為強襲には気付けなかった。

 

「行きますわよ!!」

 

セシリアはレーザーライフルでで狙撃する。だが福音はその持ち前の機動力でセシリアの射撃を避ける。

 

「遅いよ」

 

今度はシャルロットによる射撃が福音を襲った。福音はすぐにシャルロットに反撃をしたがシャルロットはシールドでそれを防いだ。

 

福音は三方向による射撃によりその場から離脱しようとした。

 

「させるかぁっ!!」

 

「離脱する前に叩き落す!!」

 

今度は紅椿と甲龍が現れた。箒の乗る紅椿が福音に突撃する。そして鈴音は衝撃砲の発射準備を始めた。鈴音は機能増幅パッケージ『崩山』を戦闘状態に移行させる。そして、計四門の衝撃砲が一斉に発射された。

 

箒は衝撃砲が発射されると同時に離脱し、衝撃砲による弾丸が福音に降り注いだ。

 

「やったか!?」

 

「……まだよ!」

 

福音はまだ機能を停止していなかった。すると、福音からエネルギー弾が全員に向かって一斉発射された。

 

「くっ!!」

 

「まずい!!」

 

全員防御態勢をとるが直撃は免れない。その時だった。

 

どこからか白色の光線が発射されエネルギー弾を全てかき消した。

 

「今のは……まさか!?」

 

セシリアがそう言うと全員光線が発射された方を見た。全員が見た先には、フォトンクラッシャーを放ったアグルがそこにいた。

 

 

 




これで福音戦を終わらせる予定でしたが長くなりそうなので区切りました。次回で決着をつけさせます。

今日ウルトラマンオーブの最終回みたいでしたが、地方民の私はBS勢なのでまだ先です。配信でも見れるのですがせっかくなのでテレビ画面で見たいので気長に待ちます。


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第25話

今回で福音と決着です。


福音が光弾を放った時、アグルが出現しフォトンクラッシャーで打ち消した。再びアグルが現れた事で、セシリア達は言葉を失った。

 

「ウ……ウルトラマン……」

 

最初に口を開いたのはセシリアだった。

 

「ウルトラマン……まさか直接見ることになるとは……」

 

ラウラはこれがアグルを初めて生で見ることになる。他にもアグルに対する様々な思いが専用機持ち達から感じられる。

 

(全く、無茶な奴らだ)

 

アグルは専用機持ち達に対してそんな事を思った。そしてアグルはすぐに気持ちを目の前の福音に切り替えた。

 

(行くぞ)

 

アグルは福音に向かった。福音はアグルに狙いを変え、光弾を発射した。だがアグルは光弾を予測していたのか接近と同時に回避行動をとった。

 

(ハアアアア!!)

 

アグルは福音に接近すると殴りかかった。そして福音も思わずアグルに拳を突き出した。

 

ドガアアアン!!!!

 

「ぐっ!」

 

「きゃあああ!?」

 

アグルと福音の拳がぶつかり合った。その時、凄まじい衝撃が発生し、専用機持ち達は巻き込まれまいと必死にその場に留まった。それと共に、あの謎の光のエネルギーが発生し空に上がった。

 

(またか。何なんだこれは?)

 

アグルは光のエネルギーに気を取られ、福音の攻撃に反応が遅れてしまった。

 

(しまった!!)

 

福音は零距離でアグルに光弾を放った。アグルは避けれるはずもなく全弾直撃してしまった。

 

(ぐあああああ!!)

 

光弾を食らったアグルは海に落下しそうになるが、うまく体勢を立て直し再び空に上がった。

 

(ちっ、俺とした事が……)

 

アグルは気を取り直して福音と対峙した。

 

 

 

 

 

「お前達、私たちも行くぞ!!」

 

「ええ!ウルトラマンだけにやらせないわよ!!」

 

「うん。僕たちがやるんだ!」

 

「ああ、今度こそ絶対に!」

 

4人が気合を上げる中、セシリアだけはアグルの戦いをただ見ていた。

 

「どうしたセシリア?行くぞ!」

 

「は、はい!」

 

ラウラに叱咤され、セシリアも福音に向かい始めた。

 

(……何でしょうか、この感覚は……)

 

セシリアはアグルに対して違和感を覚えた。

 

 

 

 

 

アグルは『アグルスラッシュ』で牽制しながら接近する機会を伺っていた。

 

(奴のあの機動力、半端な物じゃない。どうする……)

 

アグルが考えている時に、福音は再び光弾を放とうとした。

 

(ちっ、またか)

 

アグルが回避行動を取ろうとしたその時、上空から砲撃が発射された。福音は反応が遅れ砲撃が直撃した。

 

(今のは!?)

 

アグルが上空を見ると、そこにはレールカノンを構えたラウラがいた。

 

「私を忘れてもらっては困るな」

 

(ボーデヴィッヒか!)

 

福音はラウラに狙いを変えたが、今度は更に別の2方向から射撃をくらった。

 

「僕たちもいるよ」

 

「デュノアさんの言う通りですわ」

 

セシリアとシャルロットの同時攻撃が福音を捉えた。

 

(今度はオルコットとデュノアか)

 

福音は再び離脱しようとした。

 

「だからさせるかぁっ!」

 

鈴音の声に反応した福音が鈴音の方を見ると、甲龍から衝撃砲が発射された。福音は衝撃砲を食らうと、体勢を立て直そうとした。

 

「うおおおおお!!」

 

今度は箒が紅椿の刀で吹っ飛ばされている福音を斬りつけた。

 

「はあああああ!!」

 

鈴音も続けて『双天牙月』で斬りつけた。

 

(篠ノ之に、凰か……)

 

専用機持ち達5人よる攻撃が福音を追い詰めた。

 

(これがあいつらの力か。やるな)

 

アグルも5人の所に行った。

 

「ウルトラマン……」

 

誰がそう呟いた。アグルは5人と顔を合わせると無言で頷いた。

 

「行くぞ!」

 

アグルの意図を理解し、ラウラが先頭に立った。だがそれより先に福音が動いた。福音からエネルギー弾が発射された。

 

「させないよ!」

 

シャルロットが前に出るとシールドでエネルギー弾を防いだ。

 

「ラウラ!」

 

「任せろ!」

 

ラウラはAICで福音の動きを止めた。

 

「今だ!ウルトラマン!!」

 

無言で頷いたアグルはリキデイターの構えをとった。

 

(くらえ!!)

 

『デヤアアアアア!!』

 

アグルが放ったリキデイターは福音に直撃した。結果、福音は落下し、海に沈んだ。

 

「やった!!」

 

「私達の勝ちだ!!」

 

(……いや、違う!!)

 

すると海の中から青い雷を纏った福音が出現した。

 

(何だ、これは……?)

 

「これは……!? 一体、何が起きているんだ……?」

 

「!? まずい! これは第二形態移行だ!」

 

ラウラが叫んだ瞬間、福音が動き出した。

 

『キアアアアアアアア……!!』

 

すると、福音はアグルに飛びかかった。

 

(なっ!?)

 

福音のスピードにアグルは反応できず、首を掴まれてしまった。

 

(ぐあっ!! ああぁ……)

 

アグルは抵抗できずに首を強く締め付けられる。

 

「ウルトラマンが!!」

 

シャルロットはアグルを助けようとするが……

 

「待て!」

 

ラウラが制止するもシャルロットは福音に近づいた。そして近接ブレードを装備して攻撃するが、空いてる手で掴まれてしまった。

 

「くっ、このっ……」

 

福音はエネルギーの翼を生やした。福音はシャルロットを離し、翼をアグルに向けた。

 

(やべえ……)

 

そして翼からエネルギー弾が発射された。当然アグルは逃げられるわけがなかった。

 

『ウアアアアアアアア!!』

 

(ぐああああああああ!!)

 

アグルはそのまま放り投げられるが何とか体勢を立て直した。

 

(こいつ、さっきよりもパワーが上がっている。これがセカンドシフトって奴か……。それにこいつは、俺を狙っている!!)

 

そう、福音のターゲットは完全にアグルに絞られている。他の5人は既に眼中に無かった。

アグルはアグルブレードを装備し、福音に接近しようとするが、スピードは完全に福音が上回っている。そのため全てにおいて福音に先手を取られる。結果、アグルが近づくより先に福音が接近した。

 

(ぐっ!?)

 

接近した福音はアグルに蹴りを入れ、更にエネルギー光弾を放った。

 

(ぐああああああ!!)

 

「私達も行くぞ!!」

 

ラウラの指示で他の4人も接近しようとするが福音がエネルギー光弾を放った。

 

「ダメだ!! これでは近づけない!!」

 

「どうすんのよ!!このままじゃウルトラマンもやられるわよ!!」

 

鈴音の言う通り、アグルのライフゲージが点滅を始めた。

 

(どうする!? どうすればいい!?)

 

アグルは必死で対策を考えるが当然そんな暇は与えられない。そんな時だった。

 

ドガアアアアアアン!!

 

(……何だ!?)

 

強力な荷電粒子砲が福音に直撃した。

 

「俺の仲間は、誰一人としてやらせねえ!!」

 

そこには、白式第二形態・雪羅を纏った一夏がいた。

 

(織斑なのか……?それにあれは?まさかあいつもセカンドシフトを?)

 

「一夏!!一夏なのだな!?」

 

「ああ、待たせたな箒」

 

「一夏ァ!!」

 

「鈴、みんな、悪いな。心配かけて」

 

「全くですわ」

 

「本当だよ。心配したんだからね」

 

「だが、信じていたぞ」

 

「ああ、じゃあ再戦と行くか!」

 

その時一夏はアグルに気が付いた。

 

「ウルトラマン……」

 

アグルも一夏を見続けていた。

 

(こいつは俺一人では無理だ。あいつを頼るしかないようだな)

 

アグルは一夏と顔を合わせると無言で頷いた。

 

「ッ!! 行くぞ!!」

 

アグルと一夏は共に剣を構え福音に接近した。福音は一夏の斬撃を避けるとアグルにエネルギー光弾を放った。

 

(同じ手は食らわない!!)

 

アグルはアグルブレードを高速回転させエネルギー光弾を防いだ。

 

「うおおおおお!!」

 

その隙に一夏が福音を斬りつけた。更にアグルも福音に接近し福音に斬撃を浴びせる事に成功した。そしてエネルギーの翼を破壊した。

 

(止めだ!)

 

アグルは福音にフォトンクラッシャーを放った。そして一夏も零落白夜で斬りつけた。結果、シールドエネルギーがゼロになり、福音は完全に停止した。

 

「はあ……はあ……はあ……」

 

『やったあああ!!』

 

福音が解除されると、操縦者が落下し始めたが、アグルが超能力で落下を阻止した。そしてそのまま海辺へと移した。

 

 

 

 

 

 

その頃、作戦室では福音の反応がなくなった事が分かった。

 

「織斑先生、銀の福音の反応が、完全になくなりました」

 

「そうか。ボーデヴィッヒに繋いでくれ」

 

「はい」

 

真耶はすぐにラウラに通信を繋げた。

 

「ボーデヴィッヒ」

 

『教官!? もっ、申し訳ありません、無断出撃をしてしまい……罰は甘んじて受けるつもりです。」

 

「今はその事はいい、福音はどうなった?」

 

『はっ、はい。福音は完全に機能を停止し、解除されました』

 

「操縦者はどうなった?」

 

『操縦者はISが解除された後にウルトラマンが謎の能力で海辺へ送りました』

 

「ウルトラマンだと……?」

 

『はい。今回敵を倒せたのは、ウルトラマンが力を貸してくれたおかげでもあります』

 

「……ウルトラマンはまだそこにいるのか?」

 

『はい、ウルトラマンはまだいますが?』

 

「そうか……ならお前達に命令する」

 

『命令……ですか?一体何を……?』

 

「ウルトラマンを攻撃しろ!!」

 

 

 

 

 




今回でようやく共闘したと思ったらのこのラストです。


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第26話

ほぼ一カ月振りとなってしまいました。

こんな筈では無かったのに……

それでは、どうぞ。


千冬がラウラに下した命令、それは『ウルトラマンを攻撃しろ』というものだった。それはラウラと真耶にとっても信じられない命令だ。

 

『教官!! ウルトラマンを攻撃しろとはどういう事ですか!?』

 

「そうですよ織斑先生!! 何を言ってるんですか!?」

 

ラウラと真耶は当然千冬に食ってかかる。だが千冬は冷静を保っていた。

 

「お前達はウルトラマンを攻撃し、可能であればウルトラマンを捕獲しろ」

 

千冬は更に、攻撃に加え捕獲しろとも言った。

 

『捕獲!? 何故そのような事を!?』

 

ラウラからすれば、千冬の命令は信じがたいものだ。それもそのはず、ついさっきまで共に戦っていたウルトラマンを捕獲しろと言うのは、あまりにも酷な話である。さらには、自分達の窮地を救ってくれたウルトラマンを攻撃、捕獲をするのは、恩を仇で返すに等しい。

 

そして千冬は、ラウラの質問に答える。

 

「ウルトラマンの正体を暴く為だ」

 

『正体を暴く……?』

 

「ウルトラマンは未知の存在だ。ウルトラマンがどういう存在かわからない以上、味方だと断定できない」

 

『なっ!?ウルトラマンは味方です!!』

 

千冬の言葉に反論するラウラ。それでも千冬は話を続ける。

 

「本当そう言いきれるのか?」

 

『……それは、どういう意味なのですか……?』

 

「ウルトラマンが今まで戦ってきた相手はISだ。今回もな。ウルトラマンが敵とみなしている相手がISならどうする?」

 

『それは……』

 

ついに口ごもるラウラ。確かに千冬の言ってる事は最もだった。これまでにウルトラマンが戦ってきたのはISだけだ。同じISを纏っているラウラ達も標的になる可能性が無いわけでは無いのだから。

 

「今回は利害が一致しただけにすぎなかった可能性もある。次にお前達が狙われるかもしれないんだぞ」

 

『しかし、ウルトラマンが我々を助けたのは事実です!!』

 

「それはお前達が勝手に助けられたと思っているだけなんじゃないのか?」

 

『そ、そんな……』

 

確かに、素直にウルトラマンが助けてくれたとは言い切れない。ウルトラマンが助けてくれたのは、飽くまで自分達の都合のいい考え方にすぎない。

 

「ウルトラマンはISを破壊するほどの力を持っている。最悪の事態を想定する為にも、ウルトラマンを捕獲し、正体を暴く必要がある。その為にも、このチャンスを逃してはならない。だからもう一度言う。ウルトラマンを攻撃し、可能であれば捕獲しろ!!」

 

『りょ……了解……』

 

ラウラは千冬の命令を了解し、通信を切った。

 

「どうしてですか織斑先生!!どうして!?」

 

「聞いてなかったのか。ウルトラマンを調べる為だ」

 

「だからってどうしてそんな事を!?」

 

「これは、IS委員会の意思でもあるんだ……」

 

「そんな……」

 

 

 

 

 

 

 

海上にいるラウラは悩んでいた。千冬の命令通りにするべきか。それとも恩に報いる形で逆に何もしないか。

 

(どうする?教官の命令を遂行するか?だが、ウルトラマンは……)

 

ラウラはウルトラマンが助けに来てくれたと思っている。だが千冬の言ったように、思い込んでいるだけなのだとしたら?助けたのはただの気紛れなのか、それとも本当に助けてくれたとしたら?その答えは、ラウラにわかる筈も無かった。

 

(軍にとって、上司の命令は絶対。だが今は、作戦を無視して無断で出撃してきた。これ以上、命令を無視するわけにもいかない。それに、教官の言ってる事は間違っていない。教官の言うように、勝手に味方だと思っていただけかもしれない)

 

ラウラの覚悟は決まった。それは、軍人の性から来るものだった。

 

(悪く思うな、ウルトラマン)

 

ラウラは、ウルトラマンに向かって銃口を向けた。

 

 

 

 

 

(どうにか敵は倒せたが、あの光は何だったんだ?今まであんな事は無かった筈なのに……)

 

アグルはまだ考えていた。福音との激突で発生した光のエネルギーの事を。

 

(まあいい。わからない事をこんな所で考えても仕方が無い、もう戻ろう。長居は無用だ)

 

アグルは背を向け消えようとした、その時

 

ドガアアアン!!

 

『ウアアア!?』

 

(ぐあああっ!?なっ、何だ!?また敵が!?)

 

アグルは背中にビームが直撃された。アグルは新たな敵が現れ自分を攻撃したのかと思った。そう思い振り向くが、そんなものはどこにもいない。何故なら、アグルを攻撃したのはラウラだからだ。

 

(ボーデヴィッヒ!?何故あいつが!?)

 

ラウラはさらにアグルに攻撃するが、アグルはそれを避ける。

 

(くそっ、なんの真似だ!?)

 

「ラウラ何してるの!?」

 

シャルロットはアグルに攻撃するラウラを責め立てるが、ラウラは吹っ切れているのかとても落ち着いていた。

 

「教官からの命令だ。ウルトラマンを攻撃しろとな」

 

「攻撃って、どうしてそんな事!?」

 

「命令だからだ。黙って聞け!!」

 

「ラウラ!」

 

ラウラは一人でアグルに向かって行った。

 

「ちょっと、ウルトラマンを攻撃ってどういう事よ!?」

 

「僕にもわかんないよ!でも、織斑先生からの命令だって……」

 

「千冬姉が!?何でだよ!?」

 

「だからわかんないって!」

 

他の面々も、何故ウルトラマンを攻撃しなければならないのか意味がわかっていない。わかるわけが無かった。

 

「わたくし達が、ウルトラマンを攻撃……」

 

「だが、ラウラがそれを聞いてるということは、やらなければならないのだろう。行くぞ!!」

 

「箒!!待てよ!!」

 

箒につられ、一夏達もアグルに向かって行った。

 

 

 

 

 

 

「はあ!!」

 

ラウラはレールカノンでアグルを攻撃していく。アグルはそれをただただ避ける。

 

(織斑千冬の命令だと、何考えてやがる!?)

 

アグルは何故自分を攻撃するように命令されたのか、考える暇も無かった。

 

(くそっ、このままじゃただのジリ貧だ……。しょうがねえ、やってやろうじゃねえか!!)

 

アグルも戦う覚悟を決めた。一先ず、牽制でラウラにアグルスラッシュを放った。

 

「ちっ、奴も攻めてくるか」

 

アグルスラッシュを避けるラウラ。そしてラウラはさらにレールカノンを発射した。

 

(食らうか!)

 

アグルはレールカノンを避けるとそのままの勢いでラウラにキックを決めた。

 

「うっ!!」

 

そしてアグルはアグルブレードを装備し、次の手に転じようとした。その時だった。

 

「はああああ!!」

 

(何だ!?)

 

今度は紅椿を纏った箒がアグルに斬りかかった。アグルは咄嗟にアグルブレードで防いだ。

 

(篠ノ之か……)

 

アグルは箒振り払うと蹴りで箒を飛ばした。

 

「ぐっ!!」

 

「箒!大丈夫か!?」

 

箒の元に駆け寄る一夏。一夏はまだ困惑している様子だった。

 

「ああ、大丈夫だ」

 

(まさかこいつら全員が相手だと……ぐあっ!?)

 

攻撃されと方を見るアグル、そこには鈴音がいた。

 

「やればいいんでしょ!やれば!!」

 

鈴音は双天牙月でアグルに斬りかかるが、アグルもアグルブレードで対応した。

 

(凰……じゃあさっきのは衝撃砲か!)

 

アグルはゼロ距離でアグルスラッシュを連射し、鈴音から離れた。

 

「きゃあああ!?」

 

「鈴!!」

 

「よくも!!」

 

今度はシャルロットがアグルに銃撃をするが、アグルはそれを避けつつ接近した。そしてそのままシャルロットを斬りつけた。

 

「うわああああ!!」

 

「シャル!!」

 

「大丈夫か!?」

 

ラウラがシャルロットの元に駆け寄る。

 

「う、うん。装甲部分に当たっただけだから……」

 

アグルの今の攻撃は偶然外れていた。それでも、衝撃は強かったのだろう。

 

(キリがない。纏めて片付ける!)

 

アグルはリキデイターを発射しようとした。だがその先にはセシリアがいた。

 

「ウルトラマン……」

 

セシリアも銃口をアグルに向けていたが、それは震えていた。

 

(セシリアッ!?)

 

アグルはリキデイターの発射圏内にセシリアがいたのがわかると、途中で発射準備をやめてしまった。

 

「やめろおおおお!!」

 

(っ!?ぐあああ!!)

 

アグルが戸惑っている時に、一夏がアグルを斬りつけた。それと同時に、アグルのライフゲージの点滅の速度が速まった。

 

(ダメだ、もうこれ以上は……)

 

アグルは専用機に囲まれた。数的にも、体力的にも、圧倒的にアグルの不利となった。そして、アグルのやる事は決まった。

 

(このまま撤退だ!!)

 

アグルは光となり、消えた。

 

 

 

 

 




オリジンサーガにアグル参戦となりましたが、プライム会員ではない私にはどうしようも無いっていう。


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第27話

一週間以上かかってしまいました。


アグルと一夏達の戦闘中、アグルは一夏達に囲まれた。それはかなり緊迫した状況になっている。一夏達はそれぞれの武器をアグルに向けた。

 

「ウルトラマン!お前がみんなを攻撃するなら、俺がお前を止める!!」

 

一夏はそう言うが、アグルは一夏の言葉を聞いている様子は無く、状況を確認していた。一夏達はアグルがいつ攻撃してくるかと警戒していると、アグルは突然光を放った。

 

「うわぁっ!?」

 

「何だっ!?」

 

目を眩ませる一夏達。やがて光が収まり、一夏達が目を開けると、そこには既にアグルの姿は無かった。

 

「……ウルトラマンが、消えた?」

 

一夏がそう言うと、全員が周りを確認し始めた。

 

「逃げたのか?」

 

「もしかしたら別の所から来るかもしれないよ。気を付けて」

 

箒の言葉にシャルロットはそう答えた。そして全員が再び辺りを警戒する。しかし、しばらく経っても攻撃が来る気配は無い。

 

「ねえ、これって本当にウルトラマンは逃げたんじゃないの?」

 

「かもしれんな。一向に攻撃して来る気配も、現れる気配も無い」

 

そしてラウラは千冬に通信を繋いだ。

 

「教官、ボーデヴィッヒです」

 

『ボーデヴィッヒか。ウルトラマンはどうなった?』

 

「申し訳ありません。ウルトラマンに逃げられてしまいました」

 

『……そうか、分かった。お前達は戻ってこい』

 

「了解です。お前達、旅館に戻るぞ」

 

「ああ、わかったぜ」

 

みんなが旅館に戻ろうとする中、セシリアだけすぐに動こうとしなかった。

 

「セシリア、早く行くよ」

 

「はっはい。今行きますわ」

 

シャルロットに促されセシリアも動いた。

 

(ウルトラマンは、あの時何故……?)

 

セシリアは、アグルが自分にだけ攻撃をしてこなかった事に疑問を感じていた。何故アグルが必殺技を途中でやめたのか、今のセシリアにはまだ、わかるはずもない。

 

 

 

 

 

 

旅館の一室に光が降り立った。光が消え、そこから綾人が現れるが、すぐに膝をついてしまった。

 

「はぁ、はぁ……くそっ、何だってんだよ……」

 

綾人はかなり体力を消耗していた。戦闘区域と旅館はかなり距離が離れているが、あそこからピンポイントで旅館の自分の部屋にテレポートできたのは奇跡と言っていいだろう。

 

「何故奴らは俺を……いや、命令をしたのは織斑千冬……。じゃあ何で織斑千冬が?」

 

綾人は考える。何故織斑千冬が自分を攻撃するという命令を下したのか。

 

「いや、考えれば簡単な事か。タッグトーナメントで観衆の前で姿を見せてしまったもんな。その中にはIS委員会の連中もいたはずだ。奴らにとって、正体不明の存在のウルトラマンは野放しにはできない。そして、織斑千冬程の奴なら委員会にいてもおかしくはない。その時に、織斑千冬がウルトラマンが現れたら攻撃なり何なりしろとの事を言われたなら、ボーデヴィッヒ達にウルトラマンを攻撃しろとの命令をするのも納得がいく。それが今回だったというわけか。くそっ、ふざけた話だ」

 

綾人の考えは当たっている。実際にIS委員会がウルトラマンを捕獲しろと言っていたのだから。だが、その事を綾人は知るはずもない。

 

「ダメだ、このままじゃ……」

 

そう言って綾人は立ち上がるが、息がきれきれだった。

 

「くそっ、歩くのも楽じゃない……」

 

綾人は多少ふらつきながらも敷き布団を引っ張り出した。そして布団に倒れるとそのまま意識が遠のいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「教官、只今戻りました」

 

ラウラを先頭に、他の専用機持ち達も部屋に入った。

 

「ご苦労だったお前達。銀の福音の操縦者も命に別状は無い。今は部屋で寝ている。ボーデヴィッヒ、ウルトラマンが消えた時の状況を説明をしてくれ」

 

「ハッ。ウルトラマンは我々との戦闘中、突如光を放ち、姿を消しました。最初は我々を油断させる為かと思いましたが、その様な気配が無いと判断しました」

 

「……そうか、ウルトラマンの事についてはわかった」

 

「千冬姉!!何で俺たちにウルトラマンを攻撃させたんだよ!?」

 

すると、一夏がラウラと千冬の会話に横入りしてきた。

 

「お前がそれを知る必要は無い」

 

千冬は一夏の問いを一蹴する。

 

「でもウルトラマンはあたし達をっ!!」

 

「そうです!僕たちには理由を知る権利があるはずです!!」

 

鈴音、シャルロットも納得がいかず、千冬に理由を求めた。

 

「……理由ならボーデヴィッヒに話してある。聞きたければボーデヴィッヒから聞け」

 

「そうなの?ラウラ」

 

「あ、ああ……」

 

ラウラも答えるのを渋っている感じだった。

 

「もうすぐ夕食の時間だ。今はそれまでに休んでいろ。それと無断出撃についての処罰は後で言い渡すからそのつもりで」

 

「わ、わかりました」

 

一夏達は部屋から出て行った。それを見計らって真耶が千冬に話しかけた。

 

「あの、織斑先生……」

 

「山田先生、どうした?」

 

「織斑先生はどうしてそんなにウルトラマンに拘ってるんですか?」

 

「……何だと?」

 

「前にウルトラマンが現れた時も、織斑先生はいつもより感情的になってた気がするんです」

 

「それがどうした?」

 

「だから織斑先生は、ウルトラマンについて何かあったんじゃないかと思うんです。ウルトラマンの捕獲命令をあの子達に下したのも、IS委員会の意思とは別に、織斑先生の個人的な感情もあったんじゃないですか!?」

 

真耶が若干感情的になりながらも、千冬に問いかけた。

 

「……それがどうした?」

 

「えっ?」

 

千冬の返答に、真耶は思わず声を出した。

 

「私個人の感情でウルトラマンを攻撃させた……確かに、それは間違ってないかもな。だが、それはあくまでウルトラマンの正体を暴くためだ。ISを凌駕する存在、それを見過ごせないのは、ある意味では当然だと思うが」

 

「それはそうですけど……だからって、攻撃する必要はあったのでしょうか!?」

 

「敵を捕獲するのに相手の体力を消耗させるのは普通だ」

 

「そ、そうですが……」

 

「もういいか?余計な詮索をされるのははいい気分ではないのでな」

 

「……わかりました。変な事を聞いてしまって……」

 

「ならいい。そろそろ夕食だ、私達も行くぞ」

 

「はっ、はい」

 

真耶が先に部屋を出た。千冬はまだ部屋に残っている。

 

「ウルトラマン……」

 

千冬は白騎士事件を思い出す。白騎士がミサイルを破壊している時に現れた青い超人、それこそがウルトラマンだ。ウルトラマンはミサイルを次々と超人的な力で破壊していく。全てを破壊した時、今度は白騎士がウルトラマンに攻撃する。だが、逆にウルトラマンの攻撃がした騎士は受けてしまった。

 

「今でも忘れんぞ、あの時の攻撃を」

 

千冬は右手を胸に当てる。何故千冬がこんな事を言っているのか?なぜなら千冬こそが白騎士の操縦者だからだ。あの時ウルトラマンに食らった攻撃の感触を、千冬は今まで一度たりとも忘れたことはない。

 

「ウルトラマン、お前の正体は私が暴いてみせる」

 

千冬はそう胸に誓った。




次回で臨海学校は終わらせたい(願望)

何でこんなかかったんでしょうね。一カ月の更新頻度が少ないからですかねやはり。更新頻度もっと上げなければ……。

今後もよろしくお願いします。


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第28話

臨海学校編ラストです。


「ラウラ、千冬姉は何で俺たちにウルトラマンを攻撃させたんだ?」

 

部屋を出た一夏達は、別室に行きウルトラマンへの攻撃命令の理由をラウラから聞き出そうとしていた。

 

「ウルトラマンの正体を暴くため、だそうだ」

 

「正体を暴くだって?」

 

「ああ。ウルトラマンを攻撃させたのは、ウルトラマンを弱らせて捕獲するためだ。その上で、教官は正体を暴くつもりだったのだろう」

 

「その為に僕たちにウルトラマンを攻撃させたの?」

 

「そうだ。詳しくは知らないが、教官はウルトラマンの正体はわからない以上、ウルトラマンを味方とは断定できないらしい」

 

ラウラはそう答えるが、一夏達はまだ納得していなかった。

 

「でもウルトラマンは俺たちを助けてくれたじゃないか!!」

 

「それはわかっている!!私だってウルトラマンに助けてもらった!!だが教官は、私たちがそう思い込んでいるだけと言っていた」

 

「それってどういう事よ?ウルトラマンは別にあたし達を助けたわけじゃないって事?」

 

「教官はそう言っていた。ウルトラマンが加勢したのはあくまで利害が一致したからに過ぎないと。だから完全に味方だと決めるには、判断材料が足りん」

 

「確かに、そうかもな」

 

ここでラウラの言葉に反応したのは箒だ。箒はラウラの言っている事に肯定的だった。

 

「そうかもって、何言ってんだよ箒!?」

 

「あの時、ウルトラマンが私に向けた顔は、優しいものじゃなかった。冷たく、哀れむような顔だった」

 

箒は二回ウルトラマンに助けられている。それも敵の攻撃から自分を庇う形で。その時に箒に向けたウルトラマンの顔は、確かに優しいものではなかった。

 

「でもそれは……」

 

シャルロットが何かを言おうとしたが、何て言えばいいのかわからず、何も言えなかった。

 

「それに、ウルトラマンは実際に私たちに攻撃してきた」

 

「それってあんたが先に攻撃したからでしょ」

 

鈴音の言っている事は御尤もだ。あの時ウルトラマンはラウラが自分を攻撃されたから反撃したにすぎない。

 

「それはそうだ。しかしウルトラマンが反撃してきたということは、私たちを敵とみなしたということになる。敵とみなせば、ウルトラマンは私たちにも容赦しなかった」

 

ラウラの言う通り、ウルトラマンも反撃に転じた時には本気で掛かって行った。

 

「確かに、僕もあの時カッとなってウルトラマンを攻撃したけど、ウルトラマンも本気で僕に攻撃してきたよ」

 

「やられたら誰だってそうなるわよ。でも、それを踏まえるとウルトラマンが敵に回ったらやばいわよね」

 

「それって俺たちが何もしなきゃウルトラマンも反撃してこないだろ」

 

一夏の言う通り、あの時何もしなかったら、ウルトラマンも何もしなかった。

 

「嫁よ、それは無理だろうな」

 

「無理って何でだよ!?俺たちがウルトラマンに何もしなきゃいい話だろ!?」

 

ラウラは一夏の言葉に非を唱えた。当然一夏はラウラに反論する。

 

「今回の一件で、ウルトラマンは私たちを完全に敵とみなしているだろう。それに、もし再び我々とウルトラマンが対峙するような事があれば、教官がまたウルトラマンを攻撃しろと命令を下すだろう」

 

「で、でもよ……」

 

「戦場で私情を挟む事は許されない。そして、上からの命令は絶対だ。今回私たちは無断出撃をしたが、本来であれば許される事ではない。だからウルトラマンが敵であろうと味方であろうと、命令があれば遂行しなければならない。それに嫁よ、お前は言ったはずたぞ」

 

「言ったって何をだよ?」

 

ラウラが指摘するが、一夏本人がわかっていなかった。

 

「ウルトラマンがみんなを攻撃するなら自分が止めると」

 

そう言われてようやく一夏は思い出した。確かにそんな事を言ったなと。

 

「だから覚悟しなければならない。ウルトラマンとの戦いを」

 

ラウラの言葉に全員の気が引き締まった。

 

「大丈夫だ。私たちはウルトラマンを追い詰めることが出来た。だからウルトラマンが逃げたんだ」

 

箒は大丈夫だと言う。ウルトラマンを退けた事で、変な方向に自信がついているのかもしれない。

 

「調子に乗るな箒!!最初の作戦も貴様の過信が原因で失敗したんだ!!もっと緊張感を持て!!」

 

箒の言葉にラウラは怒鳴り付ける。箒はすぐに自分の軽率な発言に気付いた。

 

「そうだったな、すまない」

 

箒はちゃんと自分の非を認めた。

 

「ていうかセシリア、あんたさっきから黙りっぱなしだけどどうしたの?」

 

鈴音の言うように、セシリアは今まで一切発言をしていなかった。

 

「僕も気になってたんだけど、ここに戻る前からそんな感じだったよね。何かあった?」

 

「えっ!?べっ、別に何でもありませんわ!!ちょっと考え事をしていただけですので」

 

そうら言うが明らかに動揺していた。

 

「ふーん。まあいいけど」

 

「そっ、それよりもうすぐ夕食の時間になりますわよ!!」

 

「そうだね、じゃあ行こっか」

 

「俺は綾人を呼びに行ってくるから先に行っててくれ」

 

「うん、わかった」

 

一夏は綾人のいる部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

綾人は布団の上で完全に寝ていた。だが、寝顔はあまりいいものではない。

 

「綾人、飯の時間だから行こうぜ」

 

部屋に入るなり一夏はそう綾人に声をかけた。だが綾人には全く聞こえていない。

 

「寝てるのか?おーい綾人ー、飯の時間だぞ」

 

近づいて起こそうとするも起きる気配は全然なかった。

 

「しょうがないな、後で持ってきてやるか」

 

一夏は綾人を置いて一人で宴会場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

宴会場には既に人が集まっていた。

 

「あれ?一夏あいつはいないの?」

 

鈴音が綾人がいない事に気付いた。

 

「ああ、呼びに行ったら寝てたんだよ。起こそうとしても全然起きねえから逆に起こすのも悪い気がしてな。だから後で綾人の分を持ってってやろうと思ってよ」

 

「ふーん」

 

それを聞いていたシャルロットは何か思いついたような顔をした。

 

「セシリア残念だったね。綾人君が来なくて」

 

「なっ、何がですか!?」

 

セシリアはまたもや動揺しはじめた。確かに、綾人が来ない事を聞いた時に、明らかに落ち込んでいた。

 

「だって綾人君に食べさせてもらえないでしょ」

 

「なっ!?何を言っているのですかデュノアさんは!?」

 

「じゃあ何でまたここに座ってるの?」

 

「えっとそれは……」

 

セシリアは座布団に正座している。外国人向けの為に椅子も用意されているが、セシリアは敢えて正座でいた。

 

「ふふ、やっぱり。ねー一夏、綾人君の分はセシリアが持って行くって!」

 

「デュ、デュノアさん!?」

 

「え?でも部屋は俺と同じだぜ」

 

「いいから。ね、セシリア」

 

「は、はい……」

 

シャルロットによって強引にセシリアが綾人の分を持っていくことになった。

 

「あっ、今度はセシリアが食べさせてあげたら?」

 

「デュノアさん!!」

 

「ごめんごめん。ほらセシリア、綾人君の分取ろうよ」

 

綾人の分を取りながら夕食は進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、結局セシリアが一人で綾人の分の食事を持って行く事になった。

 

「全く、デュノアさんたらもう」

 

愚痴をこぼすがちゃんとタッパーに詰めて持っていている。

 

「湊さん、お食事持ってまいりました」

 

反応が無い。未だに寝ているようだ。

 

「本当に眠ってるのですね」

 

セシリアは綾人の寝顔を見ると、少し魘されている事に気付いた。

 

「湊さん?」

 

 

 

 

 

 

(何だ……これは……?)

 

目の前に広がっている光景、それは、倒壊していくビル、それに巻き込まれていく逃げ惑う人々、そして、ビル等を次々と破壊していく巨大生物。それらの光景が目の前で起きていた。

 

(何なんだこれは!?何なんだあいつは!?)

 

巨大生物は怪獣と言った方が正しい。怪獣は街を次々と破壊していった。そしてその破片が、目の前に飛んできた。

 

(うわあああああああああ!?)

 

 

 

 

 

 

「ハッ!?」

 

綾人は飛び起きた。息を切らし、全身汗だくとなりながら。

 

(ゆ、夢か……?)

 

綾人は夢を見ていた。怪獣が街を破壊していく夢を。

 

(何だよ今の!?怪獣が出てくる夢にしちゃリアルすぎだぞ!!)

 

その夢はあまりにもリアルすぎた。人々の悲鳴も、体感も。

 

「大丈夫ですか湊さん?随分魘されていましたけど?」

 

(オルコット?何でここに?)

 

「オルコットさん?どうしたんですか?」

 

綾人はすぐに対人モードに切り替えた。

 

「夕食をお持ちしましたの。それよりも魘されていましたけど大丈夫ですか?」

 

(夕食?ああそうか。結構寝てたんだな)

 

「ちょっと悪い夢を見てしまって。でももう大丈夫です」

 

「なら良かったですわ。あこれが夕食です」

 

セシリアは夕食を袋から取り出した。

 

「あっ、ありがとうござい……ん?」

 

綾人は受け取るつもりだったが、何故かセシリアは自分でタッパーを開け、更に割り箸を割り、刺身をつまむ。そしてそれを綾人の口元に持っていった。

 

「はい、どうぞ」

 

(……は?)

 

綾人は意味がわからなかった。何故そんな事をしているのか。手足は自由に動く。なのに何故こんな事をされているのか。綾人は俗に言う『はい、あーん』というものを自分がされている。

 

「?どうしました?」

 

「いっ、いえ。いただきます」

 

綾人は食べた。だが思考が追いつかずに味わってもいない。そんな綾人をよそにセシリアは次の物をつまんだ。綾人はそれを無言で食べる。それが繰り返される。

 

(……何だこれ?)

 

そのうち綾人は思考放棄した。

 

そして食べ終わった。ゴミはセシリアが片付けている。

 

「オルコットさん、ありがとうございました。僕の為にわざわざ」

 

「いえいえ、お互い様ですわ。では、わたくしはこれで失礼します」

 

「はい」

 

セシリアは部屋を出た。

 

「……何だったんだ?」

 

 

 

 

 

 

部屋を出たセシリアは廊下を走っていた。

 

(わっ、わたくしが綾人さんにあんな事を……恥ずかしいですわー!!)

 

一人で荒ぶっていた。

 

 

 

 

 

 

一方、別室では銀の福音の操縦者が眠っていた。そばには千冬がついている。すると、操縦者が目を覚ました。

 

「気がついたか?」

 

「……千冬?どうして……それに、ここは?」

 

「旅館だ。学園は臨海学校があってな」

 

「そう」

 

彼女は『ナターシャ・ファイルス』。銀の福音の操縦者だ。

 

「お前のISが暴走したのは、お前が一番わかっているな?」

 

「ええ、試験稼動中にね」

 

「それを我々が対処する事になり、専用機持ちの生徒達でそれを行なった」

 

「じゃあ、今私がここにいるのはあなたの生徒達が止めてくれたからなのよね?」

 

「……ウルトラマンだ」

 

「えっ?ウルトラマンって、あのウルトラマン?」

 

ナターシャはウルトラマンと聞いて驚きを隠せなかった。

 

「そうだ。ウルトラマンがお前のISを止めた」

 

「ウルトラマンが……ねえ、あの子は?」

 

「銀の福音の事か?」

 

「そうよ。あの子はどうなったの?」

 

「……凍結処分が、決定された」

 

「……そうなの」

 

それを聞いたナターシャはショックを受けるが落ち着いていた。

 

「ごめん。少し一人にさせて」

 

「……わかった」

 

ナターシャの気持ちを汲んでか、千冬は部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜〜♩」

 

旅館から少し離れた所、そこには篠ノ之束がいた。篠ノ之束は今回の戦闘データを見ていた。

 

「束」

 

そこに千冬が現れた。

 

「やーちーちゃん。どうしたの?」

 

「お前に聞きたい事がある」

 

「ん?何かな〜?」

 

「今回のISの暴走、お前が絡んでるんじゃないか?」

 

「どうしてそう思うのかな?」

 

「それはお前が一番わかっているだろ」

 

「だよねー。でもねちーちゃん、もし仮に私が何かやったとしてもあそこまで強く出来ないよ」

 

「何だと?」

 

「ちょっと調べたけど、確実に別の何かが干渉していたのは間違いないね」

 

「別の何かだと?何だそれは?」

 

「詳しいことは束さんでもわかりませーん。こんな事初めてだよ」

 

「……そうか」

 

「ねえちーちゃん、ウルトラマンってどう思う。束さんはすごく気に入らないよ」

 

「そうだな……今は何とも言えんな」

 

「そっか」

 

すると束は姿を消した。

 

 

 

 

 

 

翌日、臨海学校の全ての日程が終わり、バスに乗り込んでいた。

 

(銀の福音との戦いで発生した光、そしてあの夢……一体何なんだ?)

 

綾人は光と夢について考えていた。綾人を悩ませる物が増えて、少し疲れていた。すると1人の女がバスに乗り込んできた。

 

(何だ?……あいつは、銀の福音の……)

 

バスに乗り込んできた女はナターシャだった。

 

「織斑一夏君はいるかしら?」

 

ナターシャは一夏に用があった。

 

「俺ですけど……あなたは?」

 

「ナターシャ・ファイルス。銀の福音の操縦者よ」

 

(何故福音の操縦者がここに?)

 

「あの子を助けてくれて、ありがとね」

 

「えっ?」

 

するとナターシャは、一夏の頬にキスをした。

 

「えっ?あっ……」

 

(……いや意味がわからない)

 

ナターシャはバスから降り、綾人は関わると面倒なると思い、一夏から体を背けた。案の定面倒くさい事になった。それでも綾人は体を背ける。綾人はただ、バスの中から海を見続けていた。

 

 

 

 

 

 




これで臨海学校編は終了です。

途中か書いてで自分で意味わからなくなっちゃいました。


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第29話

臨海学校が終了し、いつも通りの日常に戻っていたが、綾人にはある変化が起きた。それは、怪獣が暴れまわる夢を頻繁に見るようになったのだ。

 

最初こそはただのリアリティーのある怪獣の夢だと思っていた。だが、学園に戻ってからはほぼ毎日怪獣が夢の中に出てきている。

 

これには綾人も異常だと感じていたが、誰にも相談せずにいた。否、するだけ無駄だと自分でわかっていた。したところで笑われるのと、良くて気にするなと言われるのがオチだからだ。

 

そして、今も見ていた。

 

怪獣が街中で縦横無尽に暴れまわる。その光景を綾人が見つめている。綾人の周りには既に人影などいない。あるのは破壊されているビル群とその瓦礫だけだった。その光景は夢の中の綾人にとって既に見慣れてしまっていた。夢の中綾人は、黙って怪獣を見上げるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!?……くそっ、またか。これで何日連続だよ……?」

 

目を覚ました綾人。その身体は既に汗塗れになっていた。

 

「……シャワー浴びるか……」

 

 

 

 

シャワーを浴びた綾人は制服に着替え、購買で買っておいたパンを食べた。

 

綾人は例の夢を見るようになってからは食堂に行く暇が無くなっている。故に前以て購買でパン等を買うようにしている。

 

パンを食べ終えた綾人はすぐに部屋を出た。自分の部屋と教室はそれなりに距離があるため早足気味で教室に向かう。そして角を曲がろうとしたその時。

 

ドンッ

 

「うっ」

 

曲がり角を曲がろうとした時に向かいから来た誰かとぶつかった。幸いどちらも倒れるなんてことは無かった。

 

「すみません、大丈夫ですか?」

 

今のは素で敬語になった。ぶつかった相手は綾人を見ると何故か笑みを浮かべた。

 

(何だいきなり?それにこいつ、2年か?何で2年がここに?)

 

綾人は目の前にいる相手が2年だとわかった。その生徒はミステリアスな雰囲気を醸し出し、扇子を口元に当てている。

 

「えぇ、大丈夫よ。今度からは気を付けてね、湊綾人君♪」

 

(何ッ!?)

 

綾人は見知らぬ人間に自分の名前を言われた事に驚いてしまった。

 

(いや、俺の顔と名前は既に割られている。2年が俺を知っていてもおかしくない。だが、何だこの感じは?)

 

「早く行かないと遅れちゃうわよ。じゃあ後でまた会いましょうね」

 

そしてそのまま2年の女子生徒はどこかへ歩いて行った。

 

(何なんだあの女は?何が後でまた会いましょうだ、ふざけんな。……何だったんだ、一体?)

 

綾人はむしゃくしゃしながら教室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に着いた綾人。だが綾人はその時点で既に疲れ切ったかのようだった。主に精神面が。

 

「綾人、どうした?」

 

そんな綾人を心配してか、一夏が尋ねてきた。

 

「どうしたって、見ての通りですよ」

 

「見ての通りって言われてもな〜」

 

綾人の返答に困る一夏だった。

 

 

 

 

 

 

そのまま時間が進み、放課後になった。

 

「湊さん、少しよろしいですか?」

 

「は、はい。何ですか?」

 

セシリアが綾人に話しかけた。綾人は何故今このタイミングで話しかけられたのかわかっていない。

 

「あの時の約束を果たしてもらいますわ」

 

(約束?何かあったか?)

 

「すみません、どの時の約束ですか?」

 

綾人は完全に忘れているようだった。セシリアは綾人の返答にはあっとため息を吐いた。

 

「まったく、女性との約束を忘れるとは何事ですか。臨海学校の時ですわ」

 

「臨海学校の時……ああ、思い出しました」

 

(そういえばしてたっけな)

 

「今度の休日に買い物に付き合ってもらいますわ。当然、荷物持ちとしてです」

 

(やっぱりそれか)

 

それを聞いた綾人は露骨に嫌そうな顔をする。

 

「そんな顔をしても駄目ですわ。あの時と今の約束を忘れていた事に対する罰なので拒否権はありませんわよ」

 

「はあ、わかりました。次の休みですね」

 

既に諦めを通り越して呆れている綾人だった。

 

 

 

 

 

 

 

寮への帰り道、綾人は帰路についている。いつも通りそのまま自分の部屋まで戻ろうとするが、途中後ろから声をかけられた。

 

「はーい、湊綾人君。今朝ぶりね」

 

自分の名前を呼ばれた綾人が振り返ると、そこにいたのは朝に自分とぶつかった2年の生徒だった。朝と同じように扇子を持っている。

 

(こいつは朝の……後で会うってのはこの事か)

 

「何なんですかいきなり」

 

「早速で悪いんだけど、私に着いてきてもらえるかしら?」

 

そう言われたが、綾人君着いて行こうとはせずに立ち止まったままだった。

 

「あら、どうしたの?ひょっとして、おねーさんに見惚れちゃった?」

 

(……何言ってんだこいつ?)

 

綾人はいきなりの事で頭が着いて行けてなかった。

 

「あいにくですけど、知らない人に着いて行くなと、親と小学校の先生に習ってるので」

 

「あらごめんなさい。私は更識楯無。この学園の生徒会長よ。よろしくね」

 

少女は『更識楯無』と名乗った。楯無が扇子を広げると『よろしく』と書かれてあった。

 

(生徒会長?生徒会長が何だって俺に?)

 

「生徒会長が一体何の用なんですか?」

 

「実はあなたに話があるのよ。ここじゃ話しにくいから生徒会室に来てくれる?」

 

(最初からそう言えよ。それより、俺に話って何なんだ?)

 

綾人は少し考える。生徒会長が直々に自分を呼び出してまで話す事が気になっていた。そして、考えていくうちに答えは決まった。

 

「わかりました。行きましょう」

 

「ありがと。じゃあ着いてきて」

 

綾人と楯無は生徒会室に向かった。

 

 

 

 

 

 

生徒会室

 

綾人が生徒会室に入ると、楯無の他に既に2人の人物がいた。そのうちの一人は綾人もよく知っていた。

 

「あ、あややだ〜」

 

「……布仏さん?」

 

綾人のクラスメイトで元同居人の布仏本音だった。

 

(ここにいるってことは、こいつ生徒会だったのか)

 

若干驚くも綾人はすぐにもう一人を見た。もう一人の人物は3年生とわかる。その女子は綾人と目が合うとお辞儀をした。綾人はお辞儀をされたので自分も返した。

 

「じゃあ改めて、私は生徒会長の更識楯無よ。本音ちゃんは同じクラスだから大丈夫よね。そしてこちらが布仏虚ちゃんよ」

 

「布仏虚です。妹が前までお世話になりました」

 

(姉妹なのか、この2人)

 

「み、湊綾人です。よろしくお願いします」

 

綾人も自己紹介をした。

 

「早速本題なんだけど……綾人君、生徒会に入らない?」

 

楯無が言っていた話とは、生徒会への勧誘だった。綾人はいきなりの勧誘で反応できなかった。

 

(開始早々生徒会の勧誘?どういう事だ?)

 

「……理由を聞いてもいいですか?」

 

「質問を質問で返すようで悪いけど、綾人君、自分がどういう立場にいるかわかる?」

 

(そんな事か。決まっているだろ)

 

「世界で二番目にISを動かした男性操縦者という肩書きの“ただの”一般人……ですけど」

 

綾人は『ただの』を強調して答えた。

 

「そう、あなたはISを動かしたとは言え、ただの一般人にすぎないの。あなたならこれが何を意味するかわかるわよね?」

 

「ええ、いつどこで誰に狙われてもおかしくないと言う事ですよね」

 

「そうよ」

 

「それが何故生徒会に入る事に繋がるんですか?」

 

綾人の疑問はこの事が何故生徒会に入る事に繋がるかだった。

 

「IS学園内でも、女尊男卑思想の生徒や教師は少なくないの。その中には当然あなたの事を快く思わない人もいるわ」

 

「でしょうね」

 

「随分と落ち着いているわね。だからその手の人達からあなたを保護する為にも生徒会に入ってほしいの」

 

「生徒会に入っただけで、そんな事が可能なんですか?」

 

綾人の更なる疑問は、生徒会にそんな力があるのかだ。

 

「可能よ。ここの生徒会はそれほどの力を持っているわ」

 

(どうなってんだよここの生徒会……?)

 

「でもそれって、結局は学園内だけですよね?学園外は学園内以上ですよ」

 

「それについても大丈夫よ。生徒会に入れば私とあなたで繋がりを持つ事ができる。私がバックにいれば、他も迂闊に手は出せなくなるわ」

 

(こいつ一人にそれほどの力があるって事なのか?まあ、そう言う事にしておくか)

 

「まあ、話は大体わかりました。生徒会に入れば、僕の安全はある程度は保証されると言う事ですね?」

 

「そうよ。噂通り、理解力が早くておねーさん助かるわ」

 

(何がおねーさんだ。ふざけてんのかこいつは?)

 

「綾人君の安全の為にも、是非とも生徒会に入ってほしいのよ」

 

「そうですね、この先何が起こるかわかりませんし、僕からもお願いします」

 

「ありがとう綾人君。それが懸命な判断よ。君ならそう言ってくれると信じてたわ。これが入会の書類「とでも言うとおもいましたか?」……えっ?」

 

綾人の思いもしなかった言葉に、楯無だけでなく、本音と虚も驚きを隠せなかった。

 

「あやや入ってくれないの〜?」

 

「はい。僕は生徒会には入りません。では、これで失礼します」

 

「待って!!どうして!?生徒会に入ればあなたの安全は保証されるのよ!!なのにどうして!?」

 

「簡単ですよ。僕はあなたを信じていない」

 

「信じてないですって……?」

 

「はい。生徒会に入るだけで安全が保証される?そんな上手い話信じられると思いますか?」

 

「本当よ!!」

 

「だとしても、あなたが女尊男卑側の人間の可能性が僕の中にはあるんです。その可能性がある以上、僕はあなたを信用できない」

 

「私は女尊男卑じゃないわ!!」

 

「どうだか。兎に角、今後一切僕に関わらないでください。では、失礼します」

 

「待っ……」

 

綾人は最後まで聞く事なく、生徒会室から出た。残された生徒会メンバーには重い空気がのしかかった。

 

「あやや、なんだか怖かったよ〜……」

 

「お嬢様……」

 

「まさか、こんなにも手強かったなんてね……」

 

 

 

 

 

 

 

宇宙

 

広大なる宇宙。宇宙空間では、少しの歪みが発生していた。

 

 

 




今回より楯無が登場しました。楯無と綾人の戦闘をしようとしていたなんて言えない……。


次回遂に奴らが……

ところでヒロインタグは付けた方が良いんでしょうかね?


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第30話

お待たせしました。遂に例のあれが動き出します。

ではどうぞ。


綾人はまたあの夢を見ていた。怪獣が暴れまわる夢、これで何度目だろうか?夢の中の綾人は呟いた。

 

(……破滅……)

 

だが、今までほぼ同じ内容の夢だったのに対し、今見ている夢は少し違っている。否、夢が進んでいるのだ。怪獣が暴れまわるのは変わらない。夢の中の綾人はそれをただ見ているだけだったが、変化が起きた。怪獣の目の前に光が降り立ったのだ。

 

(これは……?)

 

光が晴れる。すると現れたのは青い巨人だった。その青い巨人の姿は、綾人は知っている。

 

(……アグル!?)

 

そう、青い巨人はアグルだった。綾人が驚く中、アグルは怪獣に立ち向かっていった。

 

(……)

 

綾人は黙ってアグルの戦いを見ている。夢の中の綾人は目の前の光景を見てどう思っているのだろうか?

 

 

 

戦況が動き出した。アグルはフォトンクラッシャーを発射し、怪獣に直撃した。フォトンクラッシャーを食らった怪獣は爆発四散した。

 

怪獣を倒したアグルは綾人を見下ろす。そんな綾人も、アグルを見上げていた。

 

「……アグル……」

 

綾人を見下ろしているアグルは空を見上げる。そこにはただ、風が吹くばかりだった。

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

綾人は目を覚ました。今回は比較的マシに起きれたようだ。

 

「今日の夢は今までの続きなのか……?それにあの巨人は……アグル……なのか?」

 

綾人が気になっている事、それは巨人の事だった。夢ではアグルだとわかっていても、本当にアグルなのかが疑問だった。

 

「まあ、今考えてもしょうがないか」

 

そう自分の中で言い聞かせた。そして綾人は時間を確認した。時計を見た瞬間、綾人は顔を引きつらせた。

 

「……やべえ」

 

時計の時刻は9時50分である。この日がセシリアと約束していた外出の日なのだ。綾人は急いで準備を始めた。集合場所は校門なのだが、集合時間が10時なのである。今から全力で掛かれば良くてギリギリ間に合うがその望みは薄い。

 

「……無理だな」

 

綾人は完全に諦めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園校門前

 

時刻は10時10分。集合時間を10分過ぎている中、セシリアは何も言わずに待っていた。すると、綾人が小走りでやってきた。

 

「す、すみません……遅れました」

 

セシリアは無言で時計を見た。

 

「10分遅刻ですわ。全く、約束の時間を10分も遅れるなんて」

 

「すみません……」

 

(これは面倒くさいパターンだ)

 

「遅れた分、今日はわたくしに尽くしてもらいますわ」

 

「わ……わかりました……」

 

(やっぱそうなるか……)

 

完全にセシリアの尻に敷かれている綾人だった。

 

 

 

 

 

 

宇宙

 

宇宙空間の歪みは徐々に広がり始めていた。そしてその歪みは『ワームホール』となり、謎の青い物体が出てき始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街に着いた綾人とセシリア。街に着くなりセシリアはすぐにショッピングモールへと移動を始めた。

 

「あの〜オルコットさん?ちょっと早いんじゃ……」

 

「誰かさんのせいで10分も遅れてるんです。このくらいで何言ってるんですか?」

 

「……そうですか……」

 

そしてショッピングモールに着いた。今の綾人は完全にセシリアのご機嫌取りとなっている。文句を言えば何されるかわかったものじゃない。

 

その後セシリアはアクセサリーショップ、服屋などに行き30分以上滞在するが、何も買わずにただ商品を見ているだけだった。それを何度も繰り返しあっという間に時間が過ぎていった。店に何分もいては何も買わずに出て行く度に綾人は何度も思った。

 

(結局何も買わないのかよ)

 

と。

 

 

 

 

 

それから昼食を済ませ、ショッピングモールを出て近くの広場に来ていた。2人は並んでベンチに座っている。

 

「今日は良い物が見つからなかったですわ」

 

「散々振り回しておいてそれですか……」

 

「何か言いました?」

 

「いえ、何も……」

 

「では別のお店に行きますか」

 

セシリアがそう言うと綾人は溜息吐いてうな垂れた。

 

(……ん?)

 

綾人は何か違和感を感じた。微かだが綾人は何かの音を聞き取っていた。その音の出所が空からだとわかると綾人は空を見上げた。飛行機だと思いながら空を見上げると、そこには謎の青い物体が空から出現していた。

 

(何だ、あれは……?)

 

綾人は思わず立ち上がりそのまま空を見続ける。

 

「湊さん?」

 

急に立ち上がった綾人を見てセシリアも空を見上げた。空を見たセシリアは驚きの声を上げた。

 

「なっ、何ですかあれは!?」

 

周囲にいた人々はセシリアの声に釣られ同じように空を見上げた。すると青い物体を見た人々は各々反応を示した。驚きをあげる者、恐怖する者、不安になる者、騒ぎ立てる者、興味を持つ者、面白おかしく写真を撮る者、そして撮った写真をSNS等にアップする者様々だ。

 

「湊さん、あれは一体……?」

 

「……まさかな……」

 

 

 

 

 

IS学園食堂

 

休日でも開放している為、昼食時になると人も多くなる。学園の食堂であれどテレビが備え付けられている。

 

その食堂には一夏達専用機持ちも集まっていた。

 

「なあ、今日綾人とセシリア見てないけどどうしたんだ?」

 

「2人なら今日街に行ってるよ」

 

一夏の疑問にシャルロットが答える。シャルロットは何故かとても楽しそうだった。

 

「あの2人ってホントベッタリよね」

 

「セシリアにとっての嫁が綾人なのだろう」

 

「ラウラ、それはちょっと違うよ……」

 

ラウラの的はずれな発言に突っ込みを入れるシャルロットだった。

 

「ねえ箒、セシリアと綾人っていつからあんな感じなの?」

 

鈴音は敢えて箒に聞いた。

 

「私に振るな。まあ、私もわからないんだ。気付いたらあんな感じだったからな」

 

「まあ仲が良いのは良いことじゃないか。でもあいつらも何で2人だけ何だ?出掛けるなら大勢の方がいいのにな」

 

「一夏、2人の中に僕達が入るのはお邪魔なんだよ」

 

「?何で邪魔になるんだ?」

 

一夏がそう言うと全員一斉に大きく溜息を吐いた。この溜息の意味に一夏は理解できなかった。

 

『臨時ニュースです』

 

「何だ?」

 

食堂に設置されているテレビがニュース番組に変わった。見ていた番組が急にニュースに変わり文句を言う者がちらほらいる。

 

『突如都心上空に、謎の青い巨大な物体が現れました』

 

「青い巨大な物体?」

 

「何それ?」

 

食堂に入る者はニュースの内容の意味がわからなかった。

 

「ねえ、これの事じゃない?」

 

鈴音がSNSを一夏達に見せる。画面には確かに青い巨大な物体の写真が載っていた。

 

「何だよこれ……?」

 

「映画の撮影ってわけじゃなさそうだね」

 

そしてテレビにもその青い物体が映し出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室

 

楯無と虚もワンセグを使ってニュースを見ていた。

 

「お嬢様……」

 

「……何が起きているの……?」

 

 

 

 

 

 

職員室

 

「織斑先生、あれは一体……?」

 

「……」

 

真耶が千冬に聞くが千冬は険しい表情で黙ってテレビ画面を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

青い巨大は地上約200メートルで停止している。

綾人もワンセグを使ってニュースを見ながら現状を確認していた。

 

「湊さん、わたくし達も学園に戻った方が……」

 

「それは無理です。あれの影響で交通機関は全てストップしています」

 

「じゃあ、どうすれば……」

 

「周辺には避難指示が出ています。なので今はそれに従うしかありません」

 

「……わかりました」

 

綾人とセシリアも避難を開始した。

 

 

 

 

 

 

青い物体の周辺には戦闘機と軍のISが待機していた。ISは全てラファール・リヴァイヴである。

 

「戦闘機なんて邪魔よ」

 

「ええ、あんな物ISだけで充分だわ」

 

「まだ攻撃指示が出てないわ。あと油断しないで」

 

「大丈夫ですよ。ISは最強の兵器なんですから」

 

それが油断だと知ってかいないのか、IS部隊の女達は余裕があった。

 

 

 

 

 

 

地上

 

物体周辺から人はいなくなってはいるが、その先は思うように避難が進んでいなかった。休日だという事もあり、人が大勢いるが故だった。

 

「あんたどきなさいよ!!」

 

「何するんだ!?」

 

「女が先に決まってるでしょ!!」

 

「今はそんな事関係ないだろ!!」

 

避難中だと言うのに女尊男卑の女共がギャーギャー騒いでるのが見られる。綾人はその光景を目にした。

 

「……本当に愚かですね。こんな時だと言うのに……」

 

「わたくしも、あれと同類だったと思うと、恥ずかし限りですわ……」

 

綾人とセシリアは改めて女尊男卑を否定した。

 

すると、上空に動きがあった。

 

「攻撃許可が出たわ。一斉攻撃よ」

 

「了解」

 

「一回で破壊してやるわ」

 

「ISの力、見せてあげるわ」

 

IS部隊と戦闘機の部隊が青い物体を囲んだ。

 

「発射!!」

 

ISと戦闘機が同時に攻撃をした。それを見ていた人々は一斉に安堵した。これであれは破壊されたと。だが

 

「そんな!?」

 

「嘘!?何でよ!?」

 

IS部隊は青い物体を破壊できなかった事に驚愕した。ISなら破壊できると思っていただけに信じられなかった。だが、破壊できなかった、それだけで終わらなかった。青い物体から光が発せられた。すると周辺のビルの窓ガラスが砕け散った。それと同時に青い物体が地上に落下した。

 

「うあああっ!!」

 

「キャアアア!!」

 

落下した衝撃で人々は転び出す。

そして、青い物体は崩れだした。いや、殻を破っているのが正しいか。殻を突き破って出てきたのは巨大生物、否、怪獣だった。両手に鎌を備えた怪獣『宇宙戦闘獣コッヴ』が出現した。コッヴが出現した事で人々は更にパニック状態となった。

 

『キャアアアアア!!うあああああ!!』

 

人々はコッヴを見ると我先にと逃げ出し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

IS学園食堂

 

『怪獣です!!怪獣が出現しました!!』

 

食堂にいる生徒達はテレビに釘付けになっていた。

 

「なあ、これってドッキリだよな!?」

 

「当たり前でしょ!!こんなの現実じゃないわよ!!」

 

一夏と鈴音は現実逃避するかのように振る舞った。

 

「いや、現実だこれは」

 

ラウラがそう言うと、外を指差した。それは怪獣が暴れていると思われる衝撃音が伝わっていた。

 

 

 

 

 

 

職員室

 

職員室にいる教員達も怪獣の出現に驚愕していた。

 

「おっ、織斑先生!!」

 

「何なんだあれは!?」

 

千冬も目の前の事に声を荒げた。

 

 

 

 

 

 

「湊さん!!早く避難を!!」

 

セシリアは綾人に避難を促すが綾人は動こうとしない。ただコッヴを見てるだけだった。

 

戦闘機がコッヴを攻撃するが全く効いていない。するとコッヴは額から光弾を戦闘機に発射した。光弾は戦闘機に直撃し戦闘機は撃墜された。

 

「そんなので敵うわけないでしょ!!」

 

「行くわよ!!」

 

IS部隊もコッヴに攻撃するが大したダメージは与えられなかった。

 

「そ、そんな!?」

 

「ISが効かないなんて……」

 

コッヴは今度はIS部隊に向かって光弾を発射した。すると数人が光弾に被弾した。

 

(これが、破滅なのか……?)

 

綾人は自分が見た夢と重ね合わせていた。怪獣が街を破壊していく。それが目の前で起きている。夢が現実に起きてしまっているのだ。

 

「……こんな世の中じゃ、破滅に向かうのも当然か……」

 

「湊さん、何を……?」

 

「こんな事になったのは、人類の自業自得なのかもしれない……」

 

「えっ……?」

 

「自分勝手な人類のせいで、この世界は腐ってしまった。これは、人類への罰なんだ……」

 

「確かに、人類は大きな過ちを犯したかもしれません!!でもわたくしは、その過ちを正せると思います!!」

 

「セシリア……」

 

「えっ?」

 

セシリアは綾人が自分を名前で呼んだ事に驚いた。綾人はアグレイターを見た。

 

「湊さん、それは……?」

 

(アグル、お前はこうなる事がわかっていたのか?だから俺にあんな夢を見せたのか?)

 

綾人はアグルに問いかける。だが、アグルは応えてはくれない。

 

(もしあの夢がこれの事なら、アグルは……まさか!?)

 

そして綾人は思い出した。初めてアグルと出会った時、アグルは巨人だった。つまり、あれが本当のアグルなのではないかと思った。

 

(あの夢が本当なら……アグル、お前は……)

 

綾人は決心したのか、一人でコッヴのところへ行こうとした。だがそれを見たセシリアが綾人の腕を掴み止めた。

 

「待ってください!!どこへ行くつもりですか!?」

 

「セシリア……」

 

「また一人で勝手にどこかへ行くんですか!?あの時も貴方は……わたくしがどれだけ心配したと思ってるんですか!?」

 

「悪い、だが俺は行かなければならない」

 

「湊さん……?」

 

さっきの自分を名前言った時もそうだがセシリアは普段と話し方が違う綾人に驚いていた。さらに自分を『俺』と言っているため雰囲気も違うように感じた。

 

「約束する、俺は必ず帰ってくる。だから大丈夫だ」

 

セシリアは何も言えなくなり掴んでいた手を自然と離した。そして綾人は一人でどこかへ行ってしまった。

 

「綾人さああん!!」

 

セシリアは綾人の名前を叫ぶだけで追いかける事ができなかった。

 

「パパー!!ママー!!」

 

どこからか泣き叫ぶ声が聞こえた。セシリアは声が聞こえた所へ行くと、5歳くらいの女の子がしゃがみこんでいた。

 

「大丈夫ですか?」

 

セシリアは優しく声をかけるが、女の子は泣いたままだ。

 

「どうされました?」

 

「パパとママがいなくなっちゃったの……」

 

「パパとママがですか?」

 

それを聞いたセシリアは2つの事を思った。混乱のせいではぐれたか、最悪既に瓦礫に埋もれてしまったか。だがセシリアは後者の可能性を捨てた。女の子を心配させないために。

 

「大丈夫、はぐれただけできっと無事ですわ。今はここから離れましょう」

 

「うん……」

 

「わたくしも一緒に探しますので大丈夫ですよ」

 

「ありがとうお姉ちゃん!」

 

セシリアは女の子と手を繋ぎその場を離れた。

 

(綾人さん……)

 

 

 

 

 

 

 

 

綾人は一人人気のない場所に来ていた。綾人はコッヴとIS部隊の戦闘を見ている。戦況は最悪だった。既に何機ものISが墜とされていた。

 

綾人はアグレイターを構えた。

 

「アグル、行くぞ」

 

アグレイターを展開、回転させると、青白い光が綾人を包み込んだ。

 

 

 

 

 

セシリアと女の子は避難所まで向かってた。

 

「うわっ!」

 

女の子が瓦礫に躓き転んでしまった。

 

「大丈夫ですか……ッ!?」

 

セシリアは女の子を抱きしめた。何故ならコッヴがこちらに向かって光弾を発射しようとしているからだ。セシリアは女の子を守ろうとして抱きしめたのだ。セシリア自分の背中をコッヴ側に向ける。女の子を護るために。

そして、コッヴが光弾を発射した。

 

「ッ!!」

 

セシリアは死を覚悟した。せめてこの子だけでも守ろうと思いながら光弾が直撃するのを覚悟した。

 

ドガアアアン!!

 

大きな爆発音と地響きが鳴り響く。だが光弾はセシリアには届いていなかった。

 

「……えっ……一体、何が……」

 

セシリアは何が起きたのかわからなかった。確かに光弾が発射されたのは見た。なら何故当たっていないのか。

 

「お姉ちゃん、あれ」

 

女の子は指を指した。セシリアは女の子が指を指した方を向くと、驚きの表情をあげた。

 

「あれはっ……!!」

 

 

 

 

 

 

「今度は何よ!?」

 

コッヴと戦っていたIS部隊の一人が声をあげた。戦闘中にコッヴとは別の何かが来たのだから。

 

「また敵!?」

 

「……光の……巨人……?」

 

 

 

 

 

セシリアは目の前のそれを知っていた。だが、大きく違っているのは今いるのは巨人なのだ。だが巨人でも、外見は全く同じだった。巨人は顔をセシリア達に向けた。

 

「……ウルトラマン……」

 

そう、セシリアの前にいる巨人はウルトラマン。

 

青き海の光の巨人、ウルトラマンアグルが降臨した。

 

 

 

 

 




30話で初めて怪獣が登場しました。最初はやはりコッヴですね。

そして遂にウルトラマンアグルの登場です。変身の所は巨大化シークエンスがあったと思ってください。

人類は癌細胞と言っておきながら人間を護りながら登場するアグルはかっこいい。異論は認めない。

どうでもいいですけど自分リンク召喚最初は否定してましたけど今は楽しみとなりました。今メインで使ってるのはSRWWなんですけどね。クリスタルウィング1体なら立てらるし。破壊されてらファストも出せるし。要するにエースは1体で充分ということですね。ソリティアしたいんですけどね。


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第31話

アグルVSコッヴです。どうぞ。


青き海の光の巨人、ウルトラマンアグルが降臨し、コッヴの攻撃からセシリアと女の子を救った。アグルはセシリア達に顔を向けている。

 

「今のうちに行きましょう」

 

セシリアはアグルから何か感じ取ったのか、セシリアは女の子を連れてその場を離れた。

 

アグルはセシリア達がいなくなったのを確認し、立ち上がってコッヴと向き合った。そして歩き出しコッヴと対峙した。

 

 

 

 

避難をしている人々も、アグルが出現した事で動きが止まっていた。

 

『な、何だあれは!?』

 

『青い巨人……?』

 

『味方なのか!?』

 

『悪い奴なの!?』

 

人々にとってアグルは敵か味方なのかはわからない。神の使いか悪魔の使者か。それは現時点ではわからない。

 

『かっこいい!!』

 

だが子ども達は、アグルを純粋にかっこいいと思っていた。

 

 

 

 

 

コッヴと戦っているIS部隊も、数十機から数えられる程度にまで減ったいた。IS部隊もアグルの出現で攻撃が止まっていた。

 

「何なのよあれ!?あれも敵なの!?」

 

一人は銃口をアグルとコッヴに交互に向けていた。

 

「迂闊に攻撃しないで。今は2体の様子を見るのよ」

 

リーダー格の女が言うと、銃口を向けていた女は武器を一旦おろした。

 

 

 

 

 

 

(これが俺なのか……)

 

綾人は巨人になった事でどこか特別な気分になっていた。普段変身している時は人間と同じサイズだが、今は巨人となっている。周りのビルが自分と同じくらいの高さ。見上げていた敵が目の前にいる。そして、地上から何十メートルもある高さだというのにちゃんと地面に足が着いていて高く感じない。そんな感覚になっていた。

 

(まあいい、感傷に浸るのは後だ。今はこいつが先決だ)

 

アグルは改めてコッヴと対峙した。

 

 

 

 

 

 

『ギャアアアア!!』

 

雄叫びを上げるコッヴ。それはアグルの出現に動揺したのか、それともアグルに対する威嚇なのか。どちらにしても、コッヴは吠え続ける。だがアグルは一切動じない。アグルはただコッヴと向き合うだけだ。

 

そして遂に、コッヴはアグルに向かって走り出した。アグルはコッヴを待ち構える。

 

今、ウルトラマンアグルとコッヴの戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

IS学園食堂

 

そこにいる生徒達、生徒だけでなく、食堂の職員達もテレビに釘付けとなっている。それは当然、ウルトラマンとコッヴの戦闘が中継で映されているからだ。そして、ウルトラマンを知っている一夏達も、今のウルトラマンの姿に驚愕していた。

 

「な、なあ……あれって……」

 

「ウルトラマン……だよね……」

 

「ああ。紛れもないウルトラマンだ」

 

一夏とシャルロットの疑問にラウラが答える。ラウラは冷静を装っているが内心では驚いている。

 

「何でウルトラマンがあんなに大きくなってんのよ!?」

 

「私が知るかそんな事!!」

 

ウルトラマンが巨人になっている事に当然疑問に思う一夏達だった。

 

 

 

 

 

 

生徒会室

 

生徒会室にいる楯無と虚もワンセグでウルトラマンの戦闘を見ている。

 

「お嬢様、これは一体……?」

 

「一体、何がどうなっているの……?」

 

楯無はいつになく真剣な表情で見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

職員室

 

「あれって、ウルトラマン……ですよね?」

 

真耶が千冬に尋ねるが、千冬は映像を見て震え上がっていた。

 

「あれが……あれがウルトラマンだと言うのか!?」

 

声を上げる千冬。千冬からすれば、今まで目の敵にしてきたウルトラマンが、まさか巨人になれるとは思いもしなかった。それと同時に、自分はとんでもない存在を相手にしてきたのかと思った。

 

 

 

 

 

 

『ギャアアアアアアア!!』

 

コッヴはアグルに向かって走り出した。それと同時にアグルも走り出す。アグルとコッヴの距離が縮まると、先に仕掛けたのはコッヴだ。コッヴは両手の鎌を同時にアグルに振り下ろした。

 

だがアグルは両腕でコッヴの鎌の攻撃を防ぐ。そしてコッヴはさらに力加えた。アグルも両腕に力を入れ対抗した。するとアグルはその状態からコッヴの腹に膝蹴りを3発与えた。それによりコッヴはアグルから離れた。

 

『デヤアッ!!』

 

コッヴが離れた直後、アグルはコッヴの頭目掛けて蹴りを入れた。それによりコッヴは倒れこむが、アグルはコッヴを無理矢理起き上がらせ、コッヴを掴んだまま連続でパンチを食らわせた。結果、コッヴは後ずさる。

 

『ギャアアアア!!』

 

アグルは歩きながら間合いを取る。その様子はクールで、余裕すら感じさせていた。

 

するとコッヴは頭から光弾を発射した。距離が近かった事も有り、光弾はアグルに直撃した。コッヴは光弾を連射し、それは全てアグルに直撃した。

 

『ウアアアア!!』

 

光弾を食らったアグルは後ろのビルを崩しながら倒れた。コッヴは倒れているアグルにのしかかる。そしてマウントポジションを取り鎌でアグルに攻撃するが、アグルはそれを両手で掴んだ。アグルにそのままコッヴを振り払った。

 

アグルは立ち上がると自分の体を払った。

 

『ギャアアアア!!』

 

コッヴは再びアグルに近づいて鎌で攻撃をしようとするが、アグルはアグルブレードを装備した。

 

『デヤアア!!』

 

アグルはアグルブレードでコッヴの鎌を2本とも斬り落とした。

 

『ギャアアアアアアアアアア!!』

 

コッヴは声にならない程叫ぶ。それは正に悲鳴だった。

 

『ハアアアア……』

 

アグルは頭の上で両腕をクロスさせ、フォトンクラッシャーの発射準備をした。

 

コッヴはアグルが何をしようとしたのかは知らないが光弾を連射した。だが光弾はアグルに直撃するも、アグルは全く怯まない。そしてフォトンクラッシャーに発射準備は整った。

 

『デアアアアアアア!!』

 

アグルはフォトンクラッシャーを発射した。それはコッヴに直撃した。

 

『ギャアアアアアアアアアア!!』

 

ドガアアアン!!

 

フォトンクラッシャーを受けたコッヴは曝発四散した。

 

『うおおおおおおおおお!!』

 

アグルがコッヴを撃破した事で人々は歓喜の声を上げた。

 

そしてセシリアもアグルが勝った事で安堵した。

 

「さあ、行きましょう」

 

「うん!」

 

セシリアは女の子を連れて避難所に向かった。その時セシリアは、ウルトラマンが自分達に顔を向けた時の事を考えていた。

 

(あの時のウルトラマン……いえ、そんなはずは……)

 

セシリアはウルトラマンに対して何かを感じていた。

 

 

 

 

 

IS学園食堂

 

中継を見ていた一夏達も、ウルトラマンが勝った事に安堵していた。

 

「ウルトラマンが勝った!」

 

「嫁、まだ安心は出来ないぞ」

 

「何でだよ?ウルトラマンが勝ったじゃないか」

 

一夏の言葉にラウラは非を唱えた。一夏は当然疑問に思う。

 

「一夏、そういう意味じゃないよ」

 

「そうだぞ一夏。ウルトラマンと私達は敵対しているんだ」

 

そう。一夏達とウルトラマンは今は敵対関係にある。

 

「でも、あたしたちあれと戦うかもしれないって事でしょ?」

 

鈴音の言っていることはもっともだ。一夏達は巨人と戦う可能性がある。

 

すると食堂にいる何人かが電話をかけ始めた。

 

「……繋がんないよ!」

 

「私も!!」

 

「あそこの近くに家族いるのに……」

 

電話をしたのは家族の安否を取るためだった。怪獣が出現した地区周辺に実家を持つ者も少なくない。だが電話は繋がらない。故に不安になる者や家族を思い泣き出す者も出はじめた。

 

「セシリアと綾人君達も、あそこに……」

 

「大丈夫なのかよ……」

 

 

 

 

 

生徒会室

 

「……大変な事になったわね……」

 

楯無はただ、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

職員室

 

ウルトラマンが怪獣を倒した事で、千冬呆然としていた。

 

(あれがウルトラマンの力だと言うのか……。じゃあ、今まで現れたのは何なんだ!?)

 

「織斑先生!!」

 

「あ、ああ」

 

職員室の教員達も対応に追われていた。そして、外出した生徒の確認を始めた。

 

 

 

 

 

「な、何なのよあれは!?」

 

IS部隊の一人がそう叫んだ。ISが効かない相手を簡単に撃破したのだから。

 

「落ち着いて。警戒を怠らないで」

 

リーダー格が言った。すると、ウルトラマンが光り出し、消えた。

 

「……巨人が、消えた?」

 

「……了解。帰投するわよ」

 

リーダー格がそう言うと、堕とされた部隊を回収し、IS部隊は帰投した。

 

 

 

 

 

 

人気が無いところに光りが降り立った。光が晴れると綾人が姿を現した。だがすぐに綾人は膝をついてしまった。

 

「はあ……はあ……」

 

綾人は息を吐き続ける。大分疲弊しているようだ。

 

「俺が……やったのか……」

 

アグレイターを見つめる綾人。綾人は自分が怪獣を倒した事自分自身驚いている。そして、綾人は立ちあがり、歩き出した。

 

 

 

 

 

 

避難所

 

そこは、大勢の人々で溢れかえっていた。救急隊も、病院に入りきらない人の対応に追われている。泣き叫ぶ者や黙り込む人様々だ。そしてそこに、セシリアと女の子が到着した。

 

「この子の親御さんは……」

 

セシリアは女の子の両親を探し始めた。女の子を探しにここに来ていることを信じて。すると

 

「ミカー!!」

 

女の声が聞こえた。その後に男の声もした。同じ名前を呼んで。

 

「パパ、ママ!!」

 

それに女の子が反応した。そして男女二人が走ってきた。

 

「ミカー!!」

 

セシリアは確信した。この2人がこの子の両親だと。それと同時にこの子の名前をミカだと知った。

 

「貴女がこの子を?」

 

「はい。無事で良かったですわ」

 

「ありがとうございます!!」

 

二人はセシリアに礼を言った。

 

「お姉ちゃんありがとう!!」

 

そう言われセシリアは自然と笑顔になった。セシリアは心の底から良かったと思っていた。

 

「綾人さん……」

 

そしてセシリアは綾人を探しに行った。

 

 

 

 

綾人は歩いている。避難所に向かって。だが、歩いている綾人は少し辛そうだった。

 

「はあ……はあ……」

 

歩くだけで綾人は息をする切らしそうになったわね。

 

「綾人さん!!」

 

「っ!?」

 

綾人は自分を呼ぶ声が聞こえた。それはセシリアからだった。セシリアは綾人を見つけるとすぐに綾人元に駆け寄った。

 

「セシリア……」

 

「良かった……無事で……どうして貴方は心配させることばかりするんですか!?」

 

「……悪い……」

 

綾人は演技せずにセシリアに謝った。だがセシリアはそれに気づかなかった。

 

 

 




書いてて思ったんですけど、ウルトラマンの世界の人間の神経図太すぎません?怪獣が出てもすぐに日常に戻れるんですから。



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第32話

大変お待たせしました。1カ月ぶりの投稿になってしまいました。

展開は決まっているのに話の内容が決まらないという最悪な状況に陥ってしまいました。


無事合流した綾人とセシリア。2人は避難所に来ていた。避難所には今大勢の人々がいる。特に泣いている人が多い。それもそのはず、今までの日常があっという間に壊されたのだ。

 

怪獣の出現。それは誰も予測していない。予測できるはずもなかった。怪獣の出現など一体誰が予測できるか?だが、怪獣は現れてしまった。今までの日常は、怪獣の出現によって消えてしまったのだ。

 

避難所の様子を見た綾人には、あの記憶が蘇っていた。

 

「ッ!?」

 

綾人の小さい時のトラウマが蘇る。目の前で瓦礫の下敷きになる自分の家族。何もできずにただ見て泣き叫ぶだけの自分。綾人はそれに重ね合わせていた。

 

「綾人さん?」

 

様子が変わった綾人にセシリアは声をかける。綾人は少し息を切らしていた。

 

「はあ……はあ……いや、何でもない……」

 

「……そうですか……」

 

セシリアは気になっていた。綾人の喋り方がいつもと違うと。綾人が1人で何処かに行こうとした時も、敬語を使わなかった。そして、自分を名前で呼んでいた。いつもならオルコットさんと言うはずだが、セシリアと言い、さん付けもしなかった。その時の綾人は、まるで別人みたいだった。

 

(そういえば、あの時も……)

 

だが、これが初めてではない。前にも一度あった。それは、セシリアと鈴音がラウラと戦った時だ。圧倒的な差でラウラに負けた時、綾人は自分の名前を叫びながら乱入してきた。あの時の綾人の表情も、普段とは違っていた。その時は大して気にも留めなかったが、今改めると、疑問に思い始めた。

 

(綾人さん、貴方は一体……?)

 

そしてセシリアは、自分が綾人を名前で呼んでいることに、気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

IS学園職員室

 

そこはもう職員達でゴタゴタしている。元々が休日なだけあって、外出している生徒達も多い。故に、外出届けを出している生徒達の確認をしていた。

 

「織斑先生、1組で外出届けが出ているのは湊君とオルコットさんです」

 

「二人だけか?」

 

「はい」

 

(湊、オルコット……)

 

安否確認ができない今、無事を祈ることしかできなかった。

 

「千冬姉!!」

 

すると、一夏達専用機持ちが職員室に入ってきた。

 

「み、皆どうしたんですか!?」

 

「何の様だ。今はお前達に構っている暇は無い」

 

「セシリアと綾人君は無事なんですか!?」

 

シャルロットが聞いてきたのは綾人とセシリアの安否だった。

 

「……それはわからない」

 

「わからないってどういう事だよ!?」

 

「怪獣の影響で安否確認ができない。湊達だけじゃない。他の生徒達もだ」

 

「教官、現地に行く事はできないのですか?」

 

「無理だ。怪獣がいつまた現れるかわからない以上、こちらも下手に動く事ができない」

 

「じゃあ、あの二人はどうなんのよ!?」

 

「どうにかならないんですか?」

 

「……」

 

箒が聞くが、千冬は答えられない。

 

「だったら俺たちが!!」

 

「馬鹿な事を言うな!!お前達を行かせられる訳ないだろ!!それに、お前達が行ったところで何ができる!?」

 

「じゃあどうするんだよ!?見捨てんのかよ!?」

 

「だから今考えているんだろう!!」

 

千冬の声が職員室に響く。それにより一夏達は何も言えなくなった。一夏達は千冬の想いを考えず一方的に自分達の意見を言うだけだった。

 

「わかったなら出て行け。忙しいんだ」

 

そう言われ一夏達は職員室を追い出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、綾人は1人離れたところ破壊された街を見つめていた。そしてコッヴとの戦いを振り返っていた。

 

(アグル、お前はずっと前からからこうなる事が分かっていたのか?いずれ破滅が訪れる事が……)

 

綾人はいつものようにアグルに問いかけるが、当然アグルは答えてくれない。

 

(アグル、お前は一体……?)

 

「湊さん?」

 

その時、セシリアが綾人に声をかけた。

 

「……オルコットさん……」

 

「(オルコットさん……)む、向こうで炊き出しが始まりますので一緒に……」

 

「……はい、すぐ行きます」

 

綾人はいつもの調子に戻り敬語で話した。それと同時に、セシリアはオルコットさんと呼ばれた事に少しショックを受けていた。

 

「……あ、あの!」

 

「……はい?」

 

「……いえ、何でもありませんわ……」

 

セシリアは思うように話せなかった。

 

 

 

 

 

 

そして、夜が明けた。避難所の人々は、また怪獣が現れるのではないかと不安になっている。それはセシリアも同じだ。だが、そんな人々の不安をよそに、綾人は外に出ていた。破壊された街を見つめ物思いにふける綾人。そんな時。

 

「湊さん、どうされたのですか?」

 

「少し考え事をって……何してるんですか?」

 

後ろからセシリアが話しかけてきたが、そこにいたのはセシリアだけではなかった。セシリアが助けた女の子のミカがセシリアと手をつないでいた。

 

「さっきお会いしたんです。この子がわたくしを見つけた時にお姉ちゃんと呼んでくださったんです」

 

「えへへ、お姉ちゃーん!」

 

「ふふっ」

 

2人を見た綾人は何とも言えない気持ちになっていた。

 

「……姉妹みたいですね」

 

「あら、本当ですか?」

 

姉妹と言われたセシリアとミカは自然と笑顔になっていた。それを見た綾人も笑みを浮かべた。だが、その時

 

ゴゴゴゴゴ……

 

「なっ、何ですか!?」

 

突然地面が揺れた。その揺れは徐々に大きくなっていく。それも立っていられなくなるくらいだ。セシリアは咄嗟にしゃがみこみミカを抱きしめた。

 

「じ、地震!?」

 

「……いや、違う!!」

 

その瞬間、地面が割れ、土砂が吹き上がった。それと同時に、地底より『マグマ怪地底獣ギール』が出現した。

 

「か、怪獣!?」

 

「お姉ちゃん……」

 

ミカは怪獣に恐怖してセシリアに抱きついた。セシリアはしゃがんでミカを優しく抱きしめる。そのおかげでミカは少し落ち着いた。

 

「大丈夫ですよ。(わたくしが、この子を守らなければ……)」

 

(地球から怪獣だと……まさか、最初から地球にも怪獣がいたのか!?)

 

綾人はアグルに変身するためにその場から離れようとするが、それをセシリアに見られた。

 

「待ってください!!」

 

「何だ!?」

 

綾人はセシリアに呼び止められた。そのせいで口調が素に戻ったが、今はそれを気にしている暇などなかった。

 

「この子をお願いします」

 

「お願いしますって、何を言ってるんだ!?」

 

「わたくしが怪獣を引きつけます。その隙にミカさんを連れて逃げてください」

 

セシリアが言っていることは自分が囮になると言っているようなものだ。それは綾人からすれば無謀としか思えなかった。

 

「自分が何を言ってるかわかってるのか!?相手は怪獣なんだぞ!!」

 

「そんな事はわかってますわ!!確かにISでは怪獣には敵わないかもしれません。ですが、わたくしはイギリスの代表候補生です。戦う力があるのに戦わないなんて、何が代表候補生ですか!!」

 

「セシリア……」

 

セシリアは自分の思いを綾人にぶつけた。セシリアは純粋に守るために戦いたいと思っている。相手がどんなに強大でも守りたいものがある。セシリアにとって、ミカは偶然出会った女の子でも、かけがえの無い存在だ。だからこそ、セシリアは自分が行くと言った。ミカを守るために。

 

「すみません綾人さん。ですが、わたくしが行かなければいけないんです!!」

 

「お姉ちゃん……」

 

「大丈夫です。わたくしは絶対に帰ってきますわ。綾人さん、お願いします」

 

セシリアはブルー・ティアーズを展開し、ギールに向かっていった。

 

「馬鹿野郎……」

 

だが、セシリアの思いを無駄にするわけにもいかない。綾人はミカを連れて一緒に避難した。

 

 

 

ギールは4足歩行でひたすらに前進している。目の前にビルがあろうが、ビルを破壊しながら前進していた。

だが、ひたすら進み続けるギールに一発のビームが撃ち込まれた。

 

「ここら先へは行かせませんわ!!」

 

セシリアだ。セシリアがスターライトmkⅢをギールに発射した。だが、やはりと言うべきか、一発では直撃してもダメージにはならない。せいぜい足止め程度だった。

 

「だとしても!!」

 

それでもセシリアは攻撃を続けた。だがギールは走り続けている。

 

「なら!!」

 

セシリアはギールの背後に回りこんだ。

 

「ティアーズ!!」

 

セシリアはギールの背中にビット兵器を同時に撃ち込んだ。後ろからの攻撃でギールも振り向いた。

 

「行きますわ!!」

 

そのままセシリアとギールの戦いが続いていく。

 

 

 

 

 

綾人はミカを両親に届けたあとすぐにギールのところへ向かった。

 

「無茶しやがって……」

 

セシリアとギールの戦いを見た綾人はそう呟いた。

 

「くっ……」

 

いくら攻撃してもダメージを与えられずに、エネルギーも残り僅かとなってしまった。

 

「このままでは……」

 

その時、ハイパーセンサーがあるものをとらえた。

 

「綾人さん!?どうしてここに!?」

 

それは綾人だった。セシリアは何故綾人が戦闘現場の近くにいるのか疑問に思った。綾人はアグレイターを既に装着しており、展開していた。そしてセシリアは目撃してしまう。

 

「一体何を……?」

 

アグレイターから光が発せられると、綾人が光に包まれ飛び上がった。

 

「綾人さん!?」

 

綾人が消えた事でセシリアは驚きの声をあげた。光に包まれたと思ったら綾人が消えた。セシリアは何が何だかわからなかった。その時だった。

 

ドゴオオオン!!

 

空から光が落下し煙が充満した。それによってセシリアは咄嗟に 顔を伏せてしまった。煙が晴れ、目を開けると、そこにはウルトラマンアグルがいた。

 

「ウルトラマン……まさか!?」

 

セシリアはある考えに至った。戦闘現場に来た綾人。謎のブレスレット。それが光った瞬間に綾人も光に包まれる。その光がウルトラマンとなって降臨した。それによって導き出される答えは一つだった。

 

「綾人さんが……ウルトラマン……?」

 

 

 




はい、セシリアにバレました。しかし展開上ここでバレたほうが都合が良かったりします。

そして今後についてですが、コッヴとギールを出しましたが、投稿ペースを考えると、ガイアの怪獣のほとんどは出ません。怪獣との戦いはやりますが、ほとんど端折ります。ガイア本編で重要な怪獣でも端折ります。流石に全部は無理です。他のウルトラシリーズから何か出すかもしれませんが。

ウルトラマンと言えば、やはり防衛隊ですよね。(ゲス顏)


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第33話

はい、申し訳ありません。また1ヶ月かかってしまいました。月1ペースになりかねないと思います。


「綾人さんが……ウルトラマン……?」

 

セシリアが目にしたもの、それは綾人がウルトラマンに変身した瞬間だった。セシリアは動揺を隠しきれない。織斑千冬が執拗に付け狙っていた存在、その正体が綾人だったからだ。

 

「どうして……どうして綾人さんが……?」

 

セシリアは困惑する。何故綾人がウルトラマンなのか?ウルトラマンが綾人に化けていたのか?そんな疑念がセシリアの頭を駆け巡った。だが、そんな事を考えてる暇などなかった。アグルとギールの戦いが始まった。

 

ギールが四つん這いでアグルに迫ってくる。だがアグルはそれに動じずギールを待ち構える。そしてアグルは接近してきたギールの首を掴み、顎に膝蹴りを浴びせ、更にアッパーを加えた。

 

『デアアァッ!!』

 

ギールが立ち上がったところを狙い、アグルはギールの脇腹を狙い強烈なキックを決め、ギールは仰向けで倒れた。

 

「綾人さん……」

 

セシリアはアグルの戦いを見て複雑な気持ちになっていた。綾人=ウルトラマンということがわかった今、アグルの戦い方は自分の知っている綾人からは考えられないものだからだ。それ故に、セシリアは不安になっていた。

 

アグルは歩いてギールに近づく。その瞬間、ギールの腹部が開いた。

 

『ッ!?』

 

するとギールの腹部からマグマ弾が発射された。まさか腹部から攻撃されるとは思わなかったのか、アグルは反応が遅れマグマ弾が直撃してしまった。そしてギールは起き上がりマグマ弾を乱射した。

 

『ウアアアアア!!』

 

アグルは八方から来るマグマ弾を避ける事が出来ずにほとんどを食らってしまい、アグルは跪いた。結果、ギールとの距離が近い為、ギールの接近を許してしまった。そしてそのまま、ギールに右足首を噛まれた。

 

『ウアアアアア!!』

 

ギールとの牙が深く食い込む。アグルは必死でギールを剥がそうとする。そしてどうにかギールを離してそのまま投げ飛ばすが、ライフゲージが点滅してしまった。

 

(綾人さん……)

 

セシリアはただ見る事しかできなかった。ウルトラマンと怪獣との戦いを。

 

するとギールが起き上がり、再び腹部を開いた。アグルは足首のダメージですぐに動く事が出来ない。

 

「させませんわ!!」

 

その時、セシリアが動き出した。セシリアは残りのビットとビームをギールの腹部に撃ち込んだ。それが決め手となり、ギールは後ずさった。

 

セシリアが動いたのは理屈ではない。ウルトラマンのピンチに自然と動いていた。たとえ綾人がウルトラマンだったとしても今前線で戦っているのがその綾人本人だからだ。

 

セシリアからの援護を貰ったアグルは思わすセシリアを見た。アグルの視線に気付いたセシリアは頷くと、アグルもまた頷いた。それは、セシリアの意思をアグルが理解したからだろう。

 

アグルは立ち上がり、フォトンクラッシャーの構えを取った。

 

『ハアアァァ……デアアアアア!!』

 

フォトンクラッシャーが発射され、ギールに直撃した。

 

『ギャアアアアアアア!!』

 

ギールは悲鳴をあげ、爆破した。ギールを倒したアグルは一度セシリアに振り向いた。

 

「あっ……」

 

アグルはセシリアに背を向けると、空へ飛び去った。

 

「綾人さん……」

 

セシリアは地上に降り、ISを解除した。そしてそのまま綾人を探し始めた。ウルトラマンは空に飛んでいってもこの付近に綾人がいる。そう考えたからだ。

 

 

 

 

「うっ……」

 

綾人は、戦闘現場とはそう遠くないところにいた。だが、その歩く姿は少しぎこちない。右足をほぼ引きずっている感じだった。

 

「綾人さん!!」

 

「セシリア……」

 

セシリアが駆け寄ると、綾人は右足首を抑えた。するとそこから多量の血が流れていた。

 

「綾人さん、その怪我は……」

 

「……大丈夫だ、心配いらない……」

 

そんなはずないとセシリアは思い、そして思い出した。あの時ウルトラマンの足首が怪獣に噛まれた。それと同じところから出血している。これで完全に綾人=ウルトラマンという事が成立した。

 

(綾人さん、やはり貴方は……)

 

セシリアは想った。ウルトラマンが綾人という事は、今まで戦って来たのが全て綾人という事になる。無人機、VTシステム、そして銀の福音。それら全て綾人が戦ってきたのだ。そしてなにより、福音戦の時、自分達はウルトラマンに攻撃してしまった。それはつまり、綾人に攻撃したという事になる。そして、今までの綾人の接し方は、自分がウルトラマンである事を隠すため、ウルトラマンとして戦う時にバレないようにするためだとしたら説明がつく。敬語を使わないで話す時の綾人が本当の綾人だ。

 

「綾人さん、ジッとしていてください」

 

「一体、何を……」

 

セシリアは自分の履いているスカート破り、ガーゼと包帯代わりに綾人の傷口に巻いた。

 

「これで少しは抑えられる筈ですわ」

 

「……あ、ありがとう……」

 

(それが本当の貴方なのですね、綾人さん)

 

ウルトラマンが綾人だとしても、それと同時に最前線で戦っているということになる。その為に今までの自分を偽っていたとしても、綾人の優しさは本物だ。でなければ、今まで助けてくれない。そう思った。

 

(綾人さん、ありがとうございます)

 

 




ウルトラマンと人間の無言の頷きは最高で互いに信頼してる証だと思います。


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第34話

早めに投稿できました。


その日、政府による会見が行われた。ワームホールを通じて出現する存在を『根源的破滅招来体』と命名。それを迎撃するためにISによる特殊部隊を結成することを発表した。そして、青い巨人『ウルトラマン』の存在を公表。だが、現時点では敵か味方の判断は下していない。特に一般人の中ではウルトラマンが一番の話題となっていた。ISが敵わなかった怪獣を撃破した。ウルトラマンの戦いは、子どもたちから見ればヒーローそのものだ。街を破壊する怪獣をやっつけてくれた事で、子どもたちの憧れとなっていた。だが、ウルトラマンを気にくわない者もいる。それは、IS至上主義の女達だ。ISが怪獣に効かなかった事を認めたくないが故にウルトラマンを蹴嫌いしてる。さらには怪獣を倒す程のパワーを持つことと、未知の存在ということから、ウルトラマンも破滅招来体と同じ化け物だと言い出す者も少なくなかった。

 

 

 

 

夜、避難所では炊き出しが行われている。セシリアは盛り付けの手伝いをしながら綾人の分も用意した。

 

「綾人さん、どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

綾人は今までのように敬語に戻していた。何故なら綾人はセシリアに自分がウルトラマンだとバレていないと思っているからだ。だがセシリアは綾人がウルトラマンである事に気付いているため意味がなかったりする。それに、度々素が出ているので最早関係なかった。

 

(……こっちの方が不自然ですわね)

 

セシリアからすると、敬語の綾人にはもう違和感しかなかった。そしてセシリアはミカとその両親のところに行き配った。

 

「ミカさん、お父様とお母様もどうぞ」

 

「ありがとうお姉ちゃん!」

 

「ふふっ、どういたしまして」

 

ミカのお礼にセシリアも自然と笑顔になる。

 

「すみません、私たちのために。それに、娘も本当に喜んでるみたいで」

 

「わたくしも、ミカさんの笑顔が見れて嬉しいです」

 

「セシリアさんにすっかり懐いちゃって、母として少し嫉妬しちゃいます」

 

「そんな、わたくしなんて……でも、ミカさんがこんなわたくしを姉のように接してくれて、本当に妹ができたみたいで……すみません、お母様にこのようなお話を」

 

「ふふっ、大丈夫ですよ」

 

「お姉ちゃーん」

 

セシリアは寄ってくるミカの頭を撫でた。その光景にミカの両親も笑顔になった。

 

(何だ?)

 

その時、ヘリコプターが一機降りてきた。何事かと思い次々と人々が集まって来る。すると、ヘリコプターから一人のスーツ姿の女性が出て来た。その女性はセシリアのところへ行った。

 

「イギリス代表候補生、セシリア・オルコットさんですね?」

 

「は……はい。あの、貴女は?」

 

「私は、対根源的破滅招来体IS部隊の草薙麗美です」

 

「対根源的破滅招来体の部隊の方……ですか?」

 

セシリアの元に訪れたのは、対根源的破滅招来体のIS部隊の『草薙麗美』だった。

 

「IS部隊の方が、何故わたくしのところに……?」

 

「今から私とIS学園に戻って欲しいのです」

 

「いっ、今からですか!?」

 

草薙麗美が言ったのは、今から一緒にIS学園に戻って欲しいというものだった。それを聞いていた綾人も少し不信に思った。

 

(どういう事だ?何故IS部隊の人間がセシリアに?)

 

「そこで貴女と大事な話があります」

 

「わたくしにですか……?」

 

「はい」

 

「あの、お話ならここではダメなんでしょうか?わたくしだけここを離れるわけには……」

 

「それについては心配ありません。軍からの派遣を増員させるので支援は問題ありません」

 

「ですが……」

 

「お願いします。貴女の力が必要なんです」

 

「わたくしの力が……?それは一体どういう……」

 

「それについて詳しくはIS学園でお話しします。お願いします。今は私について来てください」

 

話が見えないセシリアはどうすればいいかわからなかった。今ここを離れればまた怪獣が現れた時に戦える者がいなくなる。現在足を負傷している綾人を戦わせるわけにはいかないと思っていた。

 

「お姉ちゃん、行っちゃうの?」

 

何よりミカの存在だった。自分を姉のように慕ってくれるミカを寂しい思いをさせたくはなかった。だが、いずれは別れる事になるのはわかってはいるが、それが今になるとは思っていなかった。だがそれが先になるほど別れは辛くなる。それを考えたセシリアは答えを決めた。

 

「大丈夫です、また会えますわ」

 

「本当?」

 

「はい、約束します」

 

「約束だよ」

 

ミカは涙目になるが、二人は指切りをしてまた笑顔になった。

 

「いいんですか?本当に付いて行って。相手はまだ本当に部隊の人かどうかも……」

 

「仮にそうだとしても、付いて行ってみない事には何もわかりませんわ」

 

「しかし……」

 

「わたくしの事は心配いりませんわ。しかし、やはりここの方達が心配ですが……」

 

「じゃあ、僕はここに残ります」

 

「足を怪我しているのに、いいのですか?」

 

「大丈夫です。無理をしないぐらいなら平気ですから」

 

「……では、ミカさん達をお願いします」

 

「はい」

 

「話は纏まりましたね。行きましょう」

 

セシリア達はヘリコプターに乗り込み、避難所から飛び去った。綾人とミカは飛び立つセシリアを見送った。

 

 

 

 

 

 

ヘリコプターはその後問題無くIS学園に付いた。予め来ることを伝えられていた千冬と真耶は外で待っており、セシリアが降りてくると千冬と真耶が駆け寄った。

 

「オルコット!!」

 

「オルコットさん!!」

 

「織斑先生、山田先生、心配をおかけしました」

 

「そんな、無事で良かったですよ!」

 

「湊はどうした?一緒だったんじゃないのか?」

 

「綾人さんは、向こうに残りました。多くの人を支援するために」

 

「残っただと?」

 

「だっ、大丈夫なんですか!?」

 

「大丈夫です。綾人さんなら」

 

千冬と真耶は気弱な綾人しか知らない。一人で残った事にセシリアは大丈夫と言うが、それでも二人は心配だった。

 

「織斑千冬先生ですね?」

 

「はい。オルコットを送って来てくれてありがとうございます」

 

「織斑先生とオルコットさんとお話しをしたくて参りました」

 

「話ですか?」

 

「はい、今回はその為に来ました」

 

「……わかりました。山田先生、彼女を案内してくれ」

 

「は、はい。こちらです」

 

真耶は草薙麗美を案内し、セシリアと千冬もそれに付いて行った。

 

 

 

 

 

 

「改めまして、私は対根源的破滅招来体IS部隊リーダーの草薙麗美です」

 

「今日、会見で発表されたあの?」

 

「はい」

 

「そのIS部隊のリーダー、私達に話とは?」

 

「単刀直入に言います。セシリア・オルコットさん、貴女に部隊に参加していただきたいのです」

 

草薙麗美が言い出したのは、IS部隊に入ってくれとの事だった。まさかの事に千冬は驚いてしまう。

 

「IS部隊の参加はつまり、怪獣と戦うという事ですか?」

 

「そうなります」

 

それを聞いた千冬は思わずテーブルを叩いて立ち上がった。

 

「オルコットはまだ学生です。いくらオルコットが代表候補生だからと言って、そんな危険な事をさせるわけにはいきません!」

 

千冬は臨海学校の時に暴走ISと戦わせてしまった事がある。その時に弟の一夏が生死を彷徨った。しかも今回は破滅招来体という正体不明の敵である。臨海学校の時とはあまりにも規模が違う。

 

「それはわかってます。しかし、こちらとしても戦力が欲しいのです。最初に怪獣が現れた時、殆どが怪獣に堕とされてしまいました。絶対防御のおかげで命は助かりましたが、恐怖心から多くのものが部隊から降りてしまいました」

 

「だったら尚更……!!」

 

「今日も怪獣が現れた事は知っていますね?」

 

「……それが何か?」

 

「彼女は一人で怪獣に立ち向かいました。彼女がいなかったら、被害はもっと広がっていたと思います」

 

「ですが……!」

 

「オルコットさんはどうなのですか?」

 

「わたくしは……」

 

「無理強いはしません。嫌なら断ってもいいですが」

 

セシリアは考える。どうすればいいかを。もし部隊に入れば怪獣と戦う事になる。そして、怪獣が現れれば綾人はウルトラマンとして戦うだろう。

 

(わたくしがIS部隊に入れば、少しは綾人さんを……)

 

「参加します。参加させてください!!」

 

セシリアはIS部隊の参加を決めた。

 

「オルコット、お前……」

 

「念のため、理由をお聞きします」

 

「今のわたくしには、守りたいものがあります。草薙さんはわたくしの力が必要と言ってくれました。大切なものをわたくしは守りたい。守る為に、わたくしはIS部隊に参加します!!」

 

セシリアは綾人の事は伏せて説明した。だが、セシリアの言っている事に間違いはない。それはやはり、ミカの存在が大きいだろう。

 

「決まりましたね」

 

「待ってください。オルコットは良いと言っても、彼女はまだ学生です。そして何より私の大切な生徒でもあります。なので条件があります」

 

「何でしょうか?」

 

「私もその部隊に参加させていただきます。私は既に引退した身で戦闘に参加はできませんが、力にはなれるはずです」

 

「わかりました。オルコットさん、織斑先生、よろしくお願いします」

 

これにより、セシリアのIS部隊の参加が決まった。

 

 

 




細かい事は気にしない方向でお願いします。


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第35話

お待たせしました。やっぱりウルトラマンには防衛隊ですね。(棒)


セシリアと千冬が草薙麗美と話をしていた時、一夏達がセシリアが戻ってきたと聞きつけ、真耶のところに駆け込んだ。

 

「山田先生!」

 

「皆さん、どうしたんですか!?」

 

「セシリアが戻って来たって本当ですか!?」

 

「綾人君も一緒なんですよね!?」

 

質問攻めをされ困る真耶だが気を取り直して質問に答える。

 

「落ち着いてください!確かに、オルコットさんは無事に戻って来ました」

 

「セシリアは……?」

 

「綾人は!?綾人はどうなったんですか!?」

 

「湊君は、現場に残ったみたいです……」

 

「残ったって、どういうことですか!?」

 

「私にもわかりません!!でも、オルコットさんは湊君なら大丈夫としか……」

 

それを聞いた一夏達は困惑する。何故綾人は向こうに残ったのか。そして何故セシリアだけが戻って来たのか。それをさらに聞き出そうとした時、部屋の扉が開いた。

 

「全く、騒がしいと思ったらお前達か」

 

「千冬姉!?」

 

話を終えた千冬達が部屋から出て来た。当然、セシリアも一緒に出てくる。

 

「セシリア!!」

 

「皆さん……ご心配をおかけしました」

 

「おかけしましたじゃないわよ!!」

 

「そうだよ!!僕たち本当に心配したんだから!!」

 

「綾人はどうしたんだ?あいつは残ったと聞いたが?」

 

「はい。綾人さんは避難している方々の支援をする為に残りました」

 

それを聞いた一夏達は納得したのかしてないのか気持ちが複雑だった。その中でどうでも良いことを考えているのが約2名ほどいる。

 

(ねえ、いま綾人さんって言ったわよね?)

 

(うん。言ったね)

 

「教官、そちらの方は?」

 

ラウラが後ろにいる草薙麗美に気付き千冬に尋ねる。

 

「ああ、この人は……」

 

「対根源的破滅招来体IS部隊の草薙麗美です」

 

「対根源的破滅招来体IS部隊、今日の会見で言っていた……ですが、何故その人がここに?」

 

「それはわたくしがスカウトを受けたからですわ」

 

ラウラの疑問に答えたのはセシリアだった。その答えを聞き全員が驚愕する。

 

「スカウトって、あんたまさか……」

 

「はい。わたくしはIS部隊に参加する事にしました」

 

それを聞きさらに驚愕する。まさかセシリアがIS部隊からスカウトを受け、さらにセシリア自身がそれの参加を決意したのだから。

 

「そんな!怪獣と戦うなんて危ないよ!」

 

「そうです!!いくらなんでも危険すぎます!!どうしてそんな……!?」

 

シャルロットと真耶は当然の反応をする。怪獣と戦うなどと危険極まりない。何故セシリアはIS部隊への参加を決意したのかわからなかった。

 

「今のわたくしには、守りたいものがあるからです。ただ、それだけですわ」

 

落ち着いた様子でセシリアは答える。そしてその内容は至ってシンプル、守りたいものがあるというものだった。

 

「だからってそんな…、」

 

「やめろ、山田先生」

 

「織斑先生!?しかし……」

 

「これはあいつ自身が決めたことだ。私達が口出しする事じゃない」

 

そう言われると真耶は何も言えなくなる。そして、次に口を開いたのは草薙麗美だった。

 

「貴女達も、専用機を持っていましたね?」

 

「はい。ここにいる私達全員、専用機を持っています」

 

代表してラウラが答える。そして、千冬は草薙麗美が何を言いたいのか悟った。

 

「草薙さん、貴女まさか……」

 

「貴女達も是非、我が部隊に参加していただきたいです。当然、無理強いはしません」

 

今度はセシリアだけでなく一夏達もスカウトした。これには一夏達も、驚きを隠せない。まさか自分達がスカウトされるとは思いもしなかっただろう。

 

「俺達が、IS部隊に……?」

 

「でもそれって……」

 

「怪獣と戦うってことだよね……?」

 

皆思い思いの事を口にする。IS部隊へのスカウトは怪獣と戦う事だ。いきなりそんな事を言われても『はい』となど言えない。怪獣との戦いはまさに命懸けなのだ。沈黙する空気の中、それを破ったのはラウラだった。

 

「はい。私もその部隊に参加させてください」

 

「ボーデヴィッヒ、お前……」

 

「ラウラ!あんた本気なの!?」

 

「ああ。私は既に軍属だ。こんな事が起きてしまった以上、遅かれ早かれ怪獣と戦う事になっていただろうからな」

 

「ありがとうございます。他の皆さんは?」

 

「ぼ、僕も参加します!!怪獣と戦うのは怖いですけど、このまま黙っているのは嫌です!!」

 

次にシャルロットが参加を決めた。本音を言うがそれ以上の意志が上回った。

 

「だったらあたしも参加するわよ」

 

「私は代表候補生ではありませんが専用機を持っています。専用機を持つものの責任として、私も参加します」

 

続いて鈴音、箒が参加を決意した。残っているのは一夏のみとなった。

 

「俺は……」

 

「貴方は織斑先生の弟さんですね。世界で初めて男でISを動かした」

 

「一夏、草薙さんは無理強いはしないと言っている。それにお前は、もう危険な目に遭って

 

いるんだ。これ以上は……」

 

千冬は一夏には参加してほしくないと思っている。臨海学校の時に一夏は命を落としかけた。これ以上危険な目に遭ってほしくないのが姉としての本音だった。

 

「俺は、みんなを守るって決めたんだ。その力が俺にあるなら……俺も参加します!!」

 

「一夏……」

 

一夏が参加を決意し、千冬は複雑な気持ちになった。一夏が決めたことなら自分は口出しできないが、それでもやはり心配だった。

 

「皆さん、ありがとうございます」

 

これで一夏達のIS部隊への参加が決まった。

 




正直セシリア以外のキャラの動かし方がわからなくなってきてしまいました。特に箒。


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第36話

お待たせしました。36話です。


セシリア達1年の専用機持ち達が、IS部隊に入隊してから1週間が経った。怪獣の出現、IS部隊への入隊、それに伴い、IS学園の休校が決定した。とは言うものの、一般生徒達にとっては、帰省しようにも交通機関の殆どが動いていないため帰省する事ができない。そのため、実質ただの自室待機となる。そして、いつ怪獣が現れるかもしれないという不安を抱きながら過ごしていくのだった。

 

 

 

 

 

その1週間、セシリア達は対怪獣の訓練を受けた。主に射撃の訓練が行われ、草薙麗美が直接指導をした。特に射撃が苦手な一夏と箒は徹底的にしごかれた。そして同時に回避の訓練も行なった。怪獣の攻撃は強力であるため回避は必須である。それらの訓練を1週間休む間も無く行われた。千冬はそれをただ見守っていた。

 

そしてその1週間で、少しずつだが実力は伸びていった。代表候補生の4人は元々の実力もあり飲み込みが早く、一夏と箒も草薙麗美の指導の甲斐もあり射撃の腕もある程度伸びた。

 

 

 

 

一方、避難所に残っている綾人は、ギールとの戦い戦いで負傷した足が治っていた。そして子供や老人に食事を配ったりするなどの手伝いをしている。時には避難先にまでいる女尊男卑の女の対処もしていた。女が何か我が儘を言ったりすると、綾人は頭のキレの良さを活かしてその女に対して論破して黙らせていた。

 

 

 

 

そして同じ頃、銀色の謎の飛行物体が猛スピードで海上を飛んでいた。

 

 

 

 

草薙麗美が率いるIS部隊は森林地帯にあるIS研究所を拠点としている。いつ出撃してもいいように、セシリア達はIS部隊に所属している間は、例外を除きIS学園の寮ではなく基本的にそこに常駐する事になる。そして今は、訓練を終え、各自待機していた。だがその時、研究所全体にアラームが鳴り響いた。

 

「どうしたんですか!?」

 

アラームを聞きつけたセシリア達は研究所内にあるコマンドルームに集まった。

 

「未知の飛行物体が海上を飛行中。このままの進路だと飛行物体は市街地に突入します」

 

オペレーターそう言うとその映像を出した。その映像には確かに謎の飛行物体が海上を飛んでいた。

 

「何だよあれ!?」

 

「隕石じゃないわよね……」

 

「解析して」

 

麗美からの指示でオペレーターが飛行物体の解析を始めた。それでわかった事は、その飛行物体の材質は金属である事、そして、飛行物体そのものに生体反応があると言う事だ。

 

「あの金属が、生きてるっていうのかよ……」

 

「金属生命体か……」

 

ラウラは飛行物体を金属生命体と呼んだ。すると麗美は専用機持ち達に向き直った。

 

「みんな、行ける?」

 

麗美がそう言うと、専用機持ち達は一度顔を合わせた。ついにこの時が来たのかと全員に緊張が走った。そして、全員の決意が決まると麗美に向き直った。

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

「これより、あの飛行物体を金属生命体と呼称、市街地に入る前に絶対に食い止める事。では、出撃!!」

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

専用機持ち達がコマンドルームから出ていくと千冬と麗美が残った。

 

「まだ子供だというのに、大丈夫でしょうか……?」

 

「信じましょう、彼女達を」

 

 

 

 

 

専用機持ち達は金属生命体との遭遇ポイントまでヘリコプターで移動している。機内には緊張感が漂っている。

 

「いよいよだね……」

 

「ああ、とうとう来てしまったな」

 

実戦ということでシャルロットとラウラは思い思いの事を口にした。緊張を和らげるためではなく、ただ思った事を口にしただけだ。

 

「だがここまで来てっしまった以上、もう後戻りはできないぞ」

 

「そんな事わかってるわよ。あんたもビビんないでよ」

 

「お前もな」

 

箒と鈴音はそんなやりとりをした。

 

「俺たちの手で、絶対に止めるんだ!!」

 

「絶対に、街には行かせません……!」

 

そして全員ISを装着した。

 

「行くぞ!!」

 

ラウラの指示とともに、全員ヘリコプターから飛び降り金属生命体の元へ向かった。そしてついに、金属生命体と遭遇した。

 

『各機、攻撃開始』

 

「了解。みんな、行くぞ!!」

 

現場リーダーのラウラの合図とともに、全員が動き出した。金属生命体の前方に回り込み、各自射撃を行なった。相手が大きいため、攻撃は当たるものの全て弾かれてしまった。

 

「やはり金属だけあって装甲は硬いか。ならば、各自散開して同時攻撃だ!!」

 

「わかった、うおおおお!!」

 

一夏達は散開し八方から金属生命体を取り囲んだ。そして、攻撃準備を整えた。

 

「発射!!」

 

ラウラの合図で、ラウラはパンツァー・カノニーアを、一夏は雪羅の荷電粒子砲を、箒は空裂のエネルギー波、セシリアはスターライトmkⅢを、鈴音は衝撃砲を、シャルロットはアサルトカノンを同時発射した。ラウラ達の攻撃は金属生命体に直撃し、制御を失った金属生命体はそのまま人気のない森林地帯に落下した。

 

「やった!!」

 

金属生命体を撃墜した一夏達は喜びの声を上げた。だが、その喜びも一瞬だった。突如地上から槍のような物が迫って来たのだ。

 

「うわっ!!」

 

「シャル!!」

 

その攻撃はシャルロットに当たりそうになったが間一髪で避けることができた。

 

「こ、今度は何よ!?」

 

地上に落下した金属生命体は姿を変え、人型になった。金属生命体『アパテー』が誕生した。

 

 

 

 

 

 

「これは……?」

 

避難所にいる綾人はアグレイターからあるものを感じた。それは、臨海学校の時のようにアグレイターのランプが光り輝いていたのだ。

 

「……また敵が現れたのか……?」

 

綾人はアグレイターを装着し、人気のないところに移動した。そして、アグレイターを展開させ、光を放ち、綾人は光とともに消えた。

 

 

 

 

 

 

ラウラ達はアパテーに苦戦を強いられていた。人型になった事でアパテーも攻撃に転じたのだ。アパテーは右腕をサーベルに変え、近づく者たちに攻撃をしていた。ラウラ達も焦っているため、攻撃が雑になり始めた

 

「お前達、大丈夫か!?」

 

「ええ、なんとかね……」

 

「だが、このままではジリ貧だぞ」

 

一向に優勢にならない状況にラウラ達は焦りを感じ始めた。アパテーもラウラ達を堕とそうと動き始めたその時。

 

ドガアアアアン!!

 

「な、何だ!?」

 

突如空から光が降り立ち、轟音と共にウルトラマンアグルが出現した。

 

(綾人さん!)

 

セシリアは綾人が来てくれたと喜びと同時に不安にもなった。セシリアはまだ綾人の脚の怪我が治っているかわからないためである。

 

「ウルトラマン……!」

 

「マジかよ……」

 

ラウラは巨大なウルトラマンの姿を見て驚愕せずにはいられなかった。テレビで見たとはいえ、この目で実際に見るとなれば、そうなるだろう。一夏もそれしか言葉が出なかった。

 

「本当に、あれがウルトラマンなんだね……」

 

「夢じゃないわよね……?」

 

「ああ、現実だ」

 

今まで人間サイズのウルトラマンしか見てこなかったシャルロット達も、実際に巨大なウルトラマンを目にすると驚きしかなかった。

 

 

 

 

 

コマンドルームでも、ウルトラマンの出現は確認していた。

 

「ウルトラマン……」

 

「現れたわね」

 

ウルトラマンが出現したことでコマンドルームでも緊張感が高まった。特に千冬は、厳しい目つきとなった。その時、ラウラから通信が入った。

 

『巨大なウルトラマンが現れました。指示をお願いします』

 

「今は金属生命体を優先してウルトラマンの様子見、状況に応じてウルトラマンの援護を」

 

『ッ!!了解!!』

 

ラウラからの通信が切れると、千冬は麗美の判断に疑問を感じた。

 

「ウルトラマンの援護とは、本気ですか?」

 

「ウルトラマンは間違いなく金属生命体を倒すために現れた。そして最優先事項は金属生命体の殲滅。下手にウルトラマンに攻撃して敵を増やすよりも、今はウルトラマンの味方についた方が最善。それに、ウルトラマンは私たちにとっても大きな戦力であることに間違いない」

 

「……」

 

 

 

 

 

ウルトラマンの出現でさらに緊張感が高まった。そしてアグルは、周りにセシリア達がいる事に気付いた。

 

(どうしてセシリアが!?他の奴らも!?どういう事だ!?)

 

アグルは何故セシリア達がここにいるのか疑問に思うも、すぐにアパテーに向き直った。そして、アパテーに立ち向かった。

 

『ハアアア!!』

 

アグルとアパテーの戦いが始まった。アグルとアパテーは互角の戦いが繰り広げられる。互いに武器を使わず、肉弾戦のみで戦っている。そして、次第にアグルが優勢となった。

 

『デエエアアア!!』

 

アグルのキックがアパテーに決まり、アパテーを吹っ飛ばした。

 

「す、凄え……」

 

一夏は目の前の戦いに思わず呟いた。すると、アパテーが立ち上がると、アパテーの身体に変化が起きた。アパテーの肩と腰に新たに武装が追加されたのだ。武装の強化にアグルは驚くも、すぐに構えなおした。そしてアグルは気付いた。アパテーの胸に自分と同じライフゲージをしている事を。さらにアパテーは、右腕をサーベルに変えた。それを見たアグルも、アグルブレードを装備した。

 

『ハアアア!!』

 

今度は互いに剣と槍を装備して戦いを始めた。だが、アグルの体力が消耗していき、次第に追い詰められてしまった。そして、アグルブレードとアパテーのサーベルがぶつかり合う。

 

『ウワアアアア!!』

 

アグルが力負けをしてサーベルに斬りつけられた。それと同時にアグルブレードも消滅し、ライフゲージも点滅を始めた。その隙を見て、アパテーがアグルにジリジリと迫って行く。

 

(綾人さん!!)

 

その時、セシリアが動いた。セシリアはスターライトmkⅢをアパテーに発射した。さらにビット兵器で追撃した。

 

「私達も行くぞ!!」

 

セシリアに続いてラウラ達もアパテーに攻撃してアグルを援護した。セシリア達の攻撃でアパテーは怯んだ。そして、その隙にアグルは立ち上がり、フォトンクラッシャーの準備を取った。

 

「来るぞ!!」

 

ラウラの指示でセシリア達はアパテーから離れる。

 

『ハアアア……デアアア!!』

 

アグルはフォトンクラッシャーを発射し、アパテーに直撃した。フォトンクラッシャーを食らったアパテーは爆発四散した。アグルはアパテーを倒した事を確認すると、一度セシリア達に向いた。

 

『……ゾアアッ』

 

アグルはすぐに空高く飛び上がり、空の彼方に消えた。

 

『みんな、お疲れ様。帰投して』

 

「了解。みんな戻るぞ」

 

ラウラ達は、待機していたヘリコプターに乗り込んだ。

 

(綾人さん、これからはわたくしも、貴方と共にたたかいます)

 

 

 

 

 

コマンドルームに戻ったセシリア達は、千冬と麗美に迎えられた。

 

「みんな、初陣でよく頑張ったわ。今日はゆっくり休んで、明日に備えて」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

 

 

 

 

綾人は避難所に戻り、さっきの戦いの事を考えていた。

 

(何故セシリア達があそこにいたんだ……?それにさっきの奴は破滅招来体とみて間違いない)

 

そして綾人はセシリアを迎えに来た女の事を思い出した。

 

(あの時の女、確かIS部隊の人間だったな。……まさか!?)

 

そして綾人は一つの結論に至った。

 

(セシリアはIS部隊に入ったのか?それに他の奴らも。だから奴と戦っていたのか)

 

綾人はあれ以来セシリアとは連絡を取っておらず、セシリアが何をしているのか不明だった。それが、戦いを通じてセシリアの近況がわかったのだ。

 

(セシリア……)

 

綾人はただセシリアの身を案じるだけだった。

 

 




今回はアパテーでした。ライフゲージはアグルと同じアパテーです。アルギュロスではなくアパテーなんです。

入隊してから一週間の訓練だけで実戦に出すって中々鬼畜だと思う。

そしてアグレイターがエボルトラスターと化している件について。

次回もどうぞお願いします。


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第37話

お待たせしました、37話です。どうぞ


ある昼下がり、ある街ではいつものような日常があった。根源的破滅招来体の脅威など遠い場所の事のようだった。だが、その日常も終わりを迎えようとしていた。

 

「何だこれ、砂?」

 

「何でこんな所に砂降ってくるの!?」

 

突然砂が降りかかって来た。そして、それと同時に異変が起きた。ビルが砂となり倒壊した。それも1つや2つではない。多くのビルを砂のように変え、崩れていった。

 

『うわああああああ!!』

 

『きゃああああああ!!』

 

突然崩れ始めるビルに人々はパニックに陥る。倒壊するビルに巻き込まれないように人々は必死に逃げていた。

 

 

 

 

 

 

コマンドルームではこの異常事態に専用機持ち達が招集された。

 

「街が砂漠になるなんて……」

 

モニターの映像を見たシャルロットの言う通り、街はもはや砂漠と化していた。

 

「幾ら何でも、やばすぎよ」

 

「こんな事が出来るのは、破滅招来体か……」

 

「たった今救助部隊を向かわせたわ。それに、今織斑先生が言ったように、これは破滅招来体の仕業の可能性が極めて高い。きっとどこかに潜んでいる筈よ。見つけ次第迎撃、殲滅を。出動して」

 

『了解!!』

 

草薙の命令で専用機持ち達は出動した。

 

 

 

 

 

その頃、テレビでは街が砂漠化したニュースが報じられていた。ニュースでも破滅招来体の仕業ではないかと言っている。綾人も避難所のテレビでそのニュースを見ていた。

 

「……」

 

 

 

 

 

専用機持ち達が現場に到着した。

 

「これは、酷いな……」

 

箒が街を見た第一印象はそれだった。街が辺り一面砂だらけとなり、ビルだった物が無惨にも砂に埋もれてしまっている。

 

「街を砂漠に変えるなんて、一体何者なんでしょうか?」

 

すると、上空に巨大なクラゲが出現した。

 

「く、クラゲ!?」

 

「何なのよあの巨大なクラゲは!?」

 

「まさか……」

 

クラゲ、『メザード』がまだ倒れていないビルの上に行くと、そのビルは一瞬で崩れてしまった。そして専用機持ち達はあのクラゲが街を砂漠にしたのだとわかった。

 

「あのクラゲが、街を砂漠にしたのかよ……!?」

 

「敵の正体がわかったら、やる事は一つだ。行くぞ!!」

 

ラウラが先行してメザードに攻撃した。だが、ラウラが撃ったビームはメザードを通り抜けた。そして同時にメザードの姿も消えた。

 

「何っ!?」

 

「こっちだ!!」

 

箒が見つけるがまたすぐに消えた。

 

「今度はこっちよ!!」

 

鈴音も反応するがこれもまたすぐに消えてしまった。

 

「どうなってんだよこれ!?」

 

メザードは出て来ては消え、出て来ては消えるのを繰り返している。しかも出現する場所はバラバラで捉えることが出来ない。

 

 

 

 

「これは……どうなっているんだ……?」

 

中継を見ていた綾人も、メザードに動揺していた。

 

 

 

 

「くそっ、どうすりゃいいんだよ!?」

 

メザードの行動に専用機持ち達も打つ手がない状況だった。

 

「そこっ!!」

 

シャルロットが反応し攻撃するが、やはり攻撃は通らなかった。

 

「やっぱりダメか……」

 

 

 

 

 

コマンドルームも、攻撃出来ない事で焦り始めていた。

 

「草薙さん、ここは一旦引かせましょう。攻撃が通らないのであれば、無駄にSEが減る一方です」

 

「そうね。みんな、一度帰投して」

 

『……了解』

 

千冬の提案で、草薙は専用機持ち達を撤退させた。それと同時に、メザードも姿を消した。

 

 

 

 

 

コマンドルームに集められた専用機持ち達はメザードへの対策を考えていた。だが、何故攻撃が通らないのかわからないため、中々策が見つからなかった。

 

「みんな、何か思いついた?」

 

「いいえ、やはり攻撃が当たらない理由がわからないので、何も……」

 

「それ以前に、私達はあの怪獣の事自体何もわからないぞ」

 

箒の言うように、メザードの情報そのものが無いため、対策のしようがないのだ。このような前例がないために、どうしようも無かった。

 

「じゃあ、このまま街が砂漠になるのを黙って見てろって言うの!?」

 

「でも、攻撃が当たらないんじゃどうしようもないよ……」

 

鈴音の言うことも尤もなのだがシャルロットの言うように攻撃が当たらないのでは意味がないのだ。

 

「打つ手なしかよ……」

 

「私達では、何も出来ないのでしょうか……?」

 

誰もメザードへの対策が思い浮かばずに諦めかけたその時、コマンドルームに通信が入った。

 

「外部から直接ここに通信?どう言うこと?」

 

草薙は不審に思いながら通信を開きモニターに映した。すると

 

『やっほー!みんなのアイドル束さんだよー!!」

 

「束っ!?」

 

「姉さん!?」

 

その通信は篠ノ之束からだった。まさかの相手に千冬と箒はおろか、全員が驚いている。

 

「束?まさか篠ノ之束博士?あれが……?」

 

「束、何故お前が?それに何の用だ?」

 

『みんなあのクラゲの事で困ってるんだよねー?』

 

「ああ。お前、クラゲに攻撃が当たらない理由がわかるのか?」

 

『わかるよ』

 

「なら教えろ。どうして攻撃がクラゲに当たらないんだ?」

 

『あたるわけないよ。だっていないんだもん』

 

束の答えに全員何を言ってるのかわかっていなかった。

 

「いないだと?一体何を言ってるんだ?」

 

「そうですよ!!あいつは俺達の目の前に!!」

 

『言い方が悪かったね。こっちの空間にいないんだよ』

 

「こっちの空間?」

 

束の言ってる事に誰一人として理解していなかった。

 

『あのクラゲはね、波動生命体なんだ』

 

「波動生命体?」

 

『これを見て』

 

束は別の映像に切り替えた。

 

「束、これは一体……?」

 

『あのクラゲは複数の箇所に同時に存在してるんだよ。だから君達が見えていたのはあくまで1つの影みたいなものかな。それに、最初に言ったこっちの空間にいないっていうのは、あいつが異次元の存在だからなんだよ』

 

「異次元だと?」

 

『そうだよー。だからあいつがこっちに干渉出来てもこっちからはあいつに干渉出来ないんだ』

 

「ではどうすればいいんだ?」

 

『簡単だよ。あいつをこっちの空間に引きずり出せばいいんだよ』

 

「そんな事が出来るのか?」

 

『出来るよ。これを使えばね』

 

束はさらに別の映像に切り替えた。

 

『パイロットウェーブシステム。これを使えばあのクラゲを一点に集中させてこっちの空間に引きずり出せるよ。あとこれは簡単に作れるからね。じゃあ頑張ったねー』

 

束の通信が切れると同時に、パイロットウェーブシステムのデータが送られてきた。

 

「確かに、これは簡単に作れる。しかし、1個が限界ね」

 

「では、だれがこれを使うか、ですね」

 

「わたくしがやります。いいえ、わたくしにやらせてください!!」

 

セシリアが一番に立候補した。千冬と草薙は互いに頷いて了承した。

 

「ではオルコット、頼むぞ」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

その頃綾人は、砂漠化した街の近くに来ていた。そこは既に立ち入り禁止区域になっており、入る事は出来なかった。

 

「……酷いな」

 

 

 

 

 

夕方になり、パイロットウェーブシステムが完成し、セシリアのブルー・ティアーズに搭載され、専用機持ち達は再び現場に向かった。

 

「セシリア、私達が奴の注意を引く。その隙にお前がパイロットウェーブシステムを発射だ」

 

「わかりましたわ」

 

「お前達も下手に攻撃はするな。姿を消されてはたまらいないからな」

 

ラウラの作戦が説明され、間も無く戦闘が始まるその時、メザードが姿を現した。

 

「よし、行くぞ!!」

 

ラウラの合図で全員出撃した。そして作戦通り、セシリアはメザードに狙いを定め、ラウラ達はメザードの注意を引き始めた。だがメザードは光弾を発射した。その光弾はセシリアの所へ向かった。

 

「くっ!!」

 

セシリアはメザードの光弾を何とか避け、体勢を立て直し再びメザードに狙いを定めた。

 

「行きます!!」

 

セシリアはパイロットウェーブを発射した。それは波のように広がり、その空間にいたメザード達が1つに集約され、実体化した。

 

「みなさん、やりました!!」

 

「よし、行くぞ!!」

 

ラウラの合図でメザードに一斉攻撃をした。メザードは実体化した事によって、ラウラ達の攻撃が全てメザードに直撃し、その結果メザードは炎上し、地上に落下し、爆破した。

 

『やった!!』

 

だが、そんな喜びも束の間、メザードの姿は変わっていた。白いクラゲから、黒い生々しい怪獣の姿になっていた。

 

「ちょっと、嘘でしょ!?」

 

「そんな、倒したと思ったのに……」

 

「怯むな!!行くぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

コマンドルームにいる2人も、メザードが姿を変えた事で焦りを感じていた。

 

「草薙さん、これは想定外でしたね……」

 

「ええ。破滅招来体は一筋縄では行かないと言うことね」

 

 

 

 

 

 

 

 

専用機持ち達とメザードの戦いはほぼ互角となっていた。だが、互角と言ってもメザードの攻撃を避け続け、メザードに攻撃するがダメージは通らない。その為メザードは怯まず攻撃を続ける。まさに泥仕合だった。

 

「ダメだ、攻撃が効いてねえ!!」

 

「このままでは私達のSEが先に尽きてしまうぞ!!」

 

箒の言う通り、長期戦になるとエネルギー切れになる可能性がある。そうならないためにも早く決着を付けなければならない。

 

「くそっ、どうにかしなければ……」

 

 

 

 

 

専用機持ちとメザードの戦いを遠くから見ている人間がいた。それは綾人だ。綾人は専用機持ちとメザードの戦いを今まで見ていたのだ。そして綾人はアグレイターを展開させアグルに変身し、メザードの前に姿を現した。

 

「ウルトラマン!!」

 

(綾人さん、来てくれたのですね)

 

アグルが現れた事でメザードは標的をISからアグルに切り替えた。アグルもメザードが自分を標的にしたと認識し、手招きするようにメザードを挑発し、メザードに歩いて近づいた。するとメザードはアグルに長い首を突き出した。アグルはその首を掴み、そのまま首を握りしめた。

 

『ハアアアアア!!』

 

メザードはもがき苦しみ、触手でアグルを攻撃するもアグルはそのままメザードの首を絞め続ける。そこでメザードは触手でアグルの首を絞め、そのまま電流を流した。

 

『ウアアアアア!!』

 

アグルは思わず手を離してしまい、今度はアグルがもがき苦しんだ。メザードは一旦触手を戻し、今度は複数の触手でアグルの両手両足を掴み、4本全ての触手から電流を流しこんだ。

 

『ウオアアアア!!』

 

メザードはさらに光弾を発射し、首でアグルの胸に打撃を浴びせた。アグルは触手を払おうとするが上手くいかず、両手両足を封じられているため身動きも取ることが出来なかった。そしてメザードはさらにアグルに電流を流し続ける。

 

『ウアアアアア!!』

 

そして遂にアグルのライフゲージが点滅を始めた。

 

(綾人さん、今助けます!!)

 

セシリアは右手を絞めている触手にビット兵器全てとスターライトmkⅢで集中的に攻撃した。そして遂に触手がちぎれた。触手が取れた事で右腕が自由になったアグルはアグルブレードで他の触手を切り裂いた。触手から解放された事でアグルを跪いてしまった。だがすぐに立ち上がり、鬱憤を晴らすかのようにメザードに蹴りを浴びせた。メザードは宙に弧を描くように少し吹っ飛んだ。そして、少し距離が出来た事でアグルはフォトンクラッシャーの発射準備を取った。

 

『ハアアア……デアアアアアア!!』

 

アグルはフォトンクラッシャーを発射した。フォトンクラッシャーはメザードに直撃し、木端微塵に粉砕された。そしてアグルはすぐに飛び去った。

 

「ウルトラマンがいなかったら、やばかったな」

 

「そうだな、一夏」

 

「お前達、帰投するぞ」

 

「うん、わかった」

 

(綾人さん、大丈夫でしょうか……)

 

「セシリア、早く行くわよ」

 

「は、はい」

 

 

 

 

 

コマンドルーム

 

「何とか終わったわね」

 

「そうですね……」

 

千冬はどこか納得していない様子だった。

 

(やっぱり、ウルトラマンの力が必要ね)

 

 

 

 

 

 

綾人はアグルから元に戻ったが、綾人へのダメージが大きかった。そのため、息を切らし続けている。

 

「はあ、はあ……さすがに、きついか……」

 

綾人は何度も跪きながら歩いて行った。

 

 

 

 

そして、どこかで篠ノ之束はアグルの映像を見ていた。

 

「ウルトラマンか〜、やっぱり気に入らないな〜。でも、そろそろやばいんじゃない?」

 

 




今回はメザードでした。正直メザードに関しては理解してない部分が多いので説明不足感があります。

因みにこのメザードは燃えてません。フォトンクラッシャーを受けたら普通に木っ端微塵になりました。何故かと言うとアグルの技で倒されたメザード達は燃えずに爆破したのでそうさせました。クインメザードは倒したのはガイアですがリキデイターがアグルの技のためです。なのでそれにあやかりメザードを粉砕したわけです。アグルの技だからって関係ないと思いますけど。やっぱり海の巨人なのでそう解釈したら面白いんじゃないかと思いして。

それでは、時間もお願いします。



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第38話

今回は短いです。


根源的破滅招来体が襲ってきてかなりの日数が経った。それからほぼ毎日のように怪獣が出現していた。止む事のない怪獣の出撃に人々には不安がよぎっていた。そして今もまた、山の中でウルトラマンと怪獣の戦いが続いていた。

 

『ウアアアアア!!』

 

アグルは怪獣の攻撃に押されていた。何時ものような余裕は無く、苦戦を強いられている。それもそのはず、連日連戦続き、身体が疲労してしまいそれが影響してしまっているのだ。そして、今まで受けてきたダメージも完全に回復していないため、本調子が出せていない。故に、アグルは今自分の思うように戦えていなかった。

 

『ウアッ……アッ……』

 

アグルはどうにか立てる状態だった。怪獣はそれを狙ってアグルに迫ってきた。

 

「行くぞ!!」

 

その時、ラウラの指示で専用機持ち達が怪獣に一斉攻撃を仕掛けた。直接的なダメージは無いものの、足止め程度にはなった。アグルはその隙を見て怪獣にフォトンクラッシャーを放った。フォトンクラッシャーは怪獣に直撃し、爆破した。

 

『ウアッ……』

 

アグルは怪獣を倒すと跪いてしまった。それと同時に息を切らしているのもうかがえる。

 

『お疲れ様、戻ってきて』

 

「了解。みんな、戻るぞ」

 

専用機持ち達は、待機していたヘリコプターに乗り込んだ。そしてアグルは跪いたまま、光

が収束され、綾人の姿に戻った。

 

「はあ、はあ……ぐっ……。これは、やばいかもな……」

 

綾人は息を切らしながら歩いて行った。

 

 

 

 

 

戦いを終えた専用機持ち達はコマンドルームにもどっていた。それを千冬と草薙が出迎えた。

 

「お疲れ様 。みんなのおかげで被害が出ずに済んだわ。これからも頑張ってね、期待してるわよ。じゃあ、今日はゆっくり休んで」

 

「はい、ありがとうございます」

 

ラウラが代表して礼を言い、コマンドルームから退出した。

 

「草薙さん、ありがとうございます。何から何まで、あいつらのために……」

 

「彼女達が頑張っているのは事実です。それに、戦いを強いたのは私ですから」

 

「それでも、草薙が直接訓練をしてくれているおかげであいつらも戦えているのですから」

 

「私は自分が出来る事をしているだけです。ここまで戦えたのはあの子達自身の力です」

 

「しかし、実際はウルトラマンが……」

 

「むしろ、彼女達がいるからウルトラマンも勝てるのではないですか?」

 

「と、言いますと?」

 

「今日の戦い、そして以前の戦いでも、彼女達の援護が無ければウルトラマンは負けていたでしょう。一概に、ウルトラマンがいるから勝てるとは言えないと思いますよ」

 

「草薙さんは、ウルトラマンをどう思いますか?未知の存在にいつまでも頼り続けるのは、いささか危険だと私は思います」

 

「確かに、ウルトラマンに頼り続けるのは良く無い事です。いつ敵になってもおかしく無いですから。しかし、ウルトラマンも怪獣と戦ってる以上、我々にとっても貴重な戦力です。なので、ウルトラマンの力は必要不可欠ではないでしょうか?」

 

「……そういうものでしょうか?」

 

「私はそう思います。さあ、私達も今日は休みましょう」

 

「そうですね」

 

千冬と草薙も、コマンドルームから退出した。

 

 

 

 

 

夜、セシリアは1人自室で考え事をしていた。

 

(綾人さん、戦いが続いてがお身体大丈夫でしょうか?)

 

そしてセシリアは綾人に電話をかけた。

 

 

 

 

 

 

その頃、綾人はどうにか避難所に戻っており、がっくりとうな垂れていた。戻って来るときにも体力を使ったため、相当疲れているようだった。そして、自分に電話がかかっていることに気づいた。

 

「ん?セシリアからか、はい」

 

綾人はセシリアからの電話に出た。あの日、セシリアと別れてから初めての電話となる。

 

『綾人さん、お久しぶりです。あ、あの、そちらの様子はどうですか?』

 

「こっちは大分落ち着いています。もう避難所にも慣れた感じですね。……そっちはどうなんですか?今はどうしてるんですか?」

 

綾人はセシリアに聞いた。セシリアと別れて以来、何をしているか不明だったが、アパテーの時にIS部隊に入ったと確信した。だがそれでも確認のために聞いた。

 

『私は……』

 

セシリア自身も自分がIS部隊にいることは綾人に知られている事に気付いている。それでも答えにくかった。

 

「言えないなら大丈夫ですよ。大事な事をしているなら……」

 

『すみません、綾人さん。ミカさんはどうしてますか?元気ですか?』

 

「はい。今は寝ています。なのでまた今度かけてください。きっと喜びますよ」

 

『そうですか。では、またお掛けします。綾人、お身体には気をつけてください。それでは、失礼します』

 

そして、電話が終わった。

 

「……セシリア……」

 

 

 

 

 

そして、草薙麗美がコマンドルームとは別の部屋に1人で入った。草薙は、モニターを起動すると、今日のウルトラマンの戦いの映像を映した。それも1つではない。様々な視点からの映像があった。そして、映像はウルトラマンが消える所まで進んだ。すると、ウルトラマンが消える瞬間をズームで捉えた映像がった。草薙はそれを拡大した。その映像は、ウルトラマンが消え、人間の姿になる所まで映っていた。それは顔も鮮明に映っていた。そしてそれには綾人の顔が映し出された。

 

「ふふっ、見ーつけた♫」

 

 




はい、草薙さんにバレました。これからどうなるんでしょうね。
ある意味で平和な戦いは終わりかもです。

では、次回もお願いします


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第39話

お久しぶりです。今回よりタグの他ウルトラシリーズネタ有りが仕事します。


草薙麗美がウルトラマンの正体が綾人だと知り、草薙は綾人の事を調べ上げた。

 

「湊綾人、あの時セシリア・オルコットと一緒にいた男ね。そして織斑一夏に次ぐ男のIS操縦者。ISを動かせるのはウルトラマンが関係してるかもしれないわね。それで、10年前に両親を事故で亡くし、母親の妹に引き取られた。経歴を見れば湊綾人は普通の人間。ウルトラマンの力は後付けで間違いないわね。ウルトラマンが初めて現れたのは、今から10年前、白騎士事件の時。という事は、5、6歳でウルトラマンになったって言うの?」

 

草薙は調べた事を口にしながら、自分の考えを述べた。

 

「それに、両親の死んだ年と白騎士事件は同じ10年前。それと同時にウルトラマンが現れた。これって偶然なのかしら?でも、まあいいわ。ウルトラマンの正体がわかったんだから」

 

笑みをこぼす草薙の後ろに、1台のISが置かれていた。すると草薙はそのISに近づいた。

 

「待ってなさい、ウルトラマン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー、昨日セシリアお姉ちゃんから電話あったの?」

 

「はい。ミカさんが寝てた時ですけど」

 

避難所では、綾人がミカにセシリアから電話が来ていた事を伝えた。するとミカは不貞腐れた。

 

「何で起こしてくれなかったのー?」

 

「いや、まあ、起こすわけにもいかなかったと思って。でもまた掛けてくると言っていましたよ」

 

「本当!?」

 

「はい。なので気長に待っていましょう」

 

「うん!!」

 

そして、ミカが走っていくのを見送り立ち上がった時、一瞬立ち眩みを起こしてしまった。だが綾人はすぐに気を取り直した。

 

 

 

 

 

 

 

太平洋上空、小型のワームホールが出現した。そのワームホールから、多くの銀色の球体が出現し、海の中に飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

コマンドルームに警報が鳴り、専用機持ち達がコマンドルームに集められた。

 

「海上より怪獣が出現、このままの進路だと都市部に入るわ。都市部に入る前に怪獣を殲滅。出撃!!」

 

『了解!!』

 

専用機持ち達がコマンドルームから出ていくと草薙は少しだけ笑みを浮かべた。

 

(これはチャンスね)

 

草薙の笑みに、千冬は気づいていなかった。

 

 

 

 

 

避難所にいる綾人のアグレイターのランプが点滅し、綾人も現場に向かった。だが、その足取りはあまり良くない。

 

「いや、大丈夫だ」

 

綾人そう自分に言い聞かせ、走り出した。

 

 

 

 

 

専用機持ち達は現場に到着し、怪獣『大海魔 ボクラグ』と対峙した。

 

「都市部に入る前に止める。行くぞ!!」

 

専用機持ち達は攻撃を開始した。始めにセシリア、シャルロット、ラウラの3人がそれぞれビーム攻撃をした。だが、ビームは当たるとすぐに消えてしまった。

 

「そんな!?攻撃が消された!?」

 

「くそっ、また通常攻撃が効かない怪獣か」

 

ボクラグは専用機持ち達を無視し、霧を撒き散らしながら進行を続ける。

 

「これ、海水か?」

 

「それがどうしたのよ。海から出て来たんだから海水くらい当たり前でしょ」

 

一夏の疑問に鈴音が答えた。確かに、海から出て来たのだから海水が身体にあってもおかしくない。

 

「だが、あの量は尋常じゃないぞ」

 

箒の言う通り、ボクラグから出ている霧の量はあまりにも多かった。

 

「それよりも、今は怪獣を止めないといけません!!」

 

セシリアはボクラグの足元に攻撃をし、進行を妨げた。

 

その頃、綾人は人目のつかない所にいた。綾人はアグレイターを展開させ、アグルに変身した。そして光となり、ボクラグの背後に轟音を立て降臨した。

 

「ウルトラマン!!」

 

ボクラグもアグルに気付き、霧を撒き散らしながら振り向いた。

 

(悪いがすぐに終わらせてやる)

 

アグルはボクラグに接近し、パンチ、キックを叩き込んだ。ボクラグが後ずさるとアグルはアグルブレードを装備した。

 

『ハアッ!!デヤアア!!』

 

アグルブレードでボクラグの身体は斬り裂かれた……はずだった。ボクラグの斬られた部分はすぐに修復されたのだった。

 

『アッ……!?』

 

(なっ、何……だと……!?)

 

攻撃が効かなかった事にアグルは動揺してしまった。そして隙のできたアグルに、ボクラグは両腕の巨大なハサミでアグルの首を挟んだ。

 

『ウアッ……アッ……ウアアア!!』

 

ボクラグはアグルのエネルギーを吸い取り始めた。さらにボクラグはアグルに電流を流し込む。

 

『ピコン ピコン ピコン』

 

エネルギーの吸収と電流の攻撃により、アグルのライフゲージが点滅を始める。

 

「ウルトラマンが!!」

 

(綾人さん!!)

 

セシリアがボクラグに攻撃するがやはり攻撃は消されてしまう。

 

「どうすれば……」

 

「奴の噴出している海水の霧……そしてあの再生能力……まさか、あの怪獣は海水で出来ているのか!?」

 

ラウラはボクラグの身体は海水で出来ているのではないかと考えた。

 

「じゃあ、僕たちの攻撃が効かなかったのって……」

 

「おそらく、奴の水分のせいだろう」

 

「だったらどうすんのよ!!攻撃が効かないんじゃ手も足も出ないわよ!!」

 

「いや、さっきのウルトラマンの剣技が効いていた。それなら!!」

 

箒の発言で全員がハッとなる。

 

「それなら俺に任せろ!!うおおおおお!!」

 

一夏はボクラグのハサミの部分に近づいた。そして雪片でボクラグのハサミを切断できた。

 

『ウアッ!!』

 

ボクラグのハサミが切断された衝撃でアグルは吹っ飛んだ。

 

「よしっ!!」

 

「いいぞ一夏!!」

 

『ウアッ……アッ……ハアァ……ダアッ!!』

 

アグルは踠きながらボクラグのハサミを首から外した。立ち上がろうとするがアグルは体力の消耗によって跪いてしまう。そしてボクラグのハサミも瞬時に再生された。

 

『デアアアッ!!』

 

アグルは何とか立ち上がりボクラグの首に回し蹴りを決める。すると、ボクラグの首が簡単に吹っ飛ぶが、やはりすぐに再生された。

 

『ハアァッ』

 

アグルはボクラグの背後に回り、尻尾を掴んだ。そしてボクラグを振り回し始める。アグルはボクラグを何回か振り回すと、遠くに投げ飛ばした。アグルはボクラグを投げ飛ばすと、両手でエネルギーを貯め、それを球状にした。

 

『ハアアア……フン……デアアア!!』

 

アグルは『リキデイター』を放った。リキデイターはボクラグに直撃、爆破と同時に大量の水しぶきを上げ、蒸発した。

 

「やった!!」

 

ボクラグを倒したアグルだったが、またもや跪いてしまう。それもそのはず、アグルのライフゲージの点滅は早くなっていた。今までの戦闘のダメージと身体の疲労が十分に回復しないままでの今回の戦闘。ボクラグのエネルギー吸収と同時のダメージ。アグルのダメージは綾人の身体にも直接反映されるため、影響は大きい。

 

「よし、戻るぞ」

 

だがその時、数体のラファール・リヴァイヴが現れた。

 

「何だよあれ?」

 

「別動隊かな?」

 

「何よ今頃。もう終わったわよ」

 

「コマンドルーム、こちらrボーデヴィッヒ。別動隊と思われるISが現れました」

 

『気にしなくていいわ。貴女達は戻ってきて大丈夫よ』

 

「わ、わかりました。みんな、気にしなくていいそうだ」

 

草薙からの命令で全員が戻ろうとした。だが……

 

「ターゲット確認、攻撃開始」

 

なんとラファール部隊は一斉にアグルに攻撃を始めた。

 

『ウアアアアアア!!』

 

「なっ!?」

 

「なっ、何やってんのよ!?」

 

「ウルトラマンを攻撃したぞ!?」

 

全員ラファール部隊がアグルを攻撃した事に驚愕するが、ラファールはそれを一切気にせずアグルに攻撃を続ける。

 

「草薙さん、ラファール部隊がウルトラマンを攻撃しました!!」

 

ラウラは草薙に指示を求める。だが

 

『気にしなくていいと言ったわよね。貴女達は手を出さないで』

 

「しかし!!」

 

『これは命令よ』

 

「りょ、了解……」

 

ラウラは草薙の圧に押され命令に従う事にした。

 

「草薙さんの命令だ。戻るぞ」

 

「でもウルトラマンが!!」

 

「戻るぞ!!」

 

シャルロットはラウラの怒号に怯んでしまう。

 

「草薙さんの事だ。何か考えがあるはずだ」

 

「ああ、きっとそうだ」

 

箒のフォローでラウラも少し落ち着きを取り戻す。だが納得しないまま全員戻ろうとするが、セシリアだけはアグルの所に飛び込んだ。

 

「セシリア!?」

 

「やめてください!!」

 

だがラファール部隊は耳を傾けずアグルに攻撃を続ける。

 

「お願いします!!攻撃をやめてください!!」

 

それでもセシリアは叫び続けるがラファールは聞き入れない。

 

「……仕方ありませんわ」

 

するとセシリアはラファールに攻撃をした。

 

 

 

 

 

コマンドルームにいる草薙はセシリアの行動に心の中で舌打ちをした。

 

(余計な真似を……)

 

「ボーデヴィッヒ、セシリア・オルコットを止めなさい!!」

 

『りょ、了解!!』

 

「草薙さん、これは一体?」

 

千冬もいきなりの流れに戸惑いを隠せない。

 

「貴女もウルトラマンへの攻撃には賛成だったはずですよ。それが今だとういうだけです」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

セシリアはアグルを守りながらラファールに攻撃するが、相手の数が多い故か部が悪い。そして

 

「ッ!?身体が!!」

 

セシリアの動きが止まった。否、動けなくなった。

 

「やめろセシリア!!草薙さんからの命令だ、戻るぞ!!」

 

「離してください!!」

 

「ダメだ!!」

 

ラウラはセシリアを無理矢理掴み、戦闘エリアから離脱した。

 

(綾人さん!!)

 

セシリアの思いも虚しく、アグルの元から引き離された。

 

『ウアアアアアア!!』

 

アグルはラファールからの攻撃を受け続ける。ボクラグとの戦いの影響で、ラファールの攻撃はアグルにとってかなり大きいものだった。そして遂に、アグルは消えてしまった。

 

「うあっ……がっ……な、何なんだあいつら……」

 

アグルから戻った綾人は立ち上がることすら困難になってしまった。するとそこにラファール部隊が降りてきた。

 

「あっ……」

 

(やべぇ……)

 

綾人は正体がバレたと勘付く。その場から逃げようとするが、動くことができなかった。そして、ラファール部隊の1人に無理矢理捕まれた。

 

「うっ……」

 

綾人はラファールに気絶させられてしまった。

 

「捕獲、完了」

 

 




はい、綾人君が捕まりました。これからどうなるんでしょうね。

ところでBSのウルトラマン枠が消えるって本当なんですかね?


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第40話

お待たせしました。最新話です。

Mステのtake me higherでテンションが上がった人間の1人です。


パアァン!!

 

コマンドルームに乾いた音が響く。それは草薙がセシリアをぶったからだ。戦闘からコマンドルームに戻るなり草薙は何も言わずにセシリアをぶったのだ。その一連の流れを見た時、千冬を含め一同は言葉を失ってしまった。

 

「セシリア・オルコット、さっき自分がした事を言いなさい」

 

草薙はいつもより低めの声でセシリアに問い詰めた。セシリアは顔をぶたれた時の衝撃から顔を俯かせたままだった。

 

「ウルトラマンを、ISの攻撃から……守ろうとしました……」

 

顔を上げずにセシリアは答える。セシリアの様子はあまりにも弱々しかった。

 

「守るために何をしたの?」

 

「ISを、攻撃しました……」

 

草薙はその時の出来事をリアルタイムで見ていたが敢えてセシリアの口から言わせた。

 

「その時私が何を命令したのか覚えてる?」

 

「……帰投命令です……」

 

「そうよね、私は帰投命令をしたはずよ。ISへの攻撃命令、ウルトラマンの護衛の命令はしてないわ。一応聞くけど、どうしてそんな事をしたの?」

 

「ウルトラマンを、守るためです……」

 

セシリアはウルトラマンを守るためと答えたが、それは草薙の求める答えるではなかった。

 

「そのウルトラマンを守ろうとした理由を聞いてるの。答えなさい」

 

「それは、ウルトラマンが……」

 

ここでセシリアはウルトラマンが綾人だと答えそうになったが、咄嗟にやめた。そして、セシリアは顔を上げ、草薙の目を見た。

 

「ウルトラマンは、共に戦う仲間だからです!!」

 

「仲間……ですって?」

 

セシリアが答えたのは、ウルトラマンは仲間だという事だ。それを聞いた草薙は眉をひそめる。

 

「ウルトラマンはわたくし達を何度も助けてくれました!!わたくし達だけではありません、他の大勢の人もです。初めて怪獣が現れた時、わたくしはもうダメだと思いました。ですが、その時にウルトラマンが来てくれたのです。ウルトラマンのおかげでわたくしは助かることができました。そして怪獣たちと戦うようになり、ウルトラマンはわたくし達がピンチになった時にはいつも助けてくれました。ウルトラマンは傷付きながらこの地球のために最前線で戦っています。それなのに、人間のせいでウルトラマンが傷付くのをただ黙って見てるだけなんて、わたくしにはできません!!」

 

セシリアは目に涙を浮かべながら言った。これはウルトラマンの正体を知っているセシリアだから言えることだ。セシリアはウルトラマンのダメージが綾人にも及ぶ事を実際に見ている。だからこれは、綾人が傷付いて欲しくないという事の表れでもあった。

 

それを聞いた草薙はどこか冷めたような表情になった。

 

(オルコット、お前の言いたいことはわかる。確かにウルトラマンはお前達と一緒に戦って来た。だが……)

 

「確かに、ウルトラマンと貴女達は共に戦ってきた。でもね、ウルトラマンは仲間……それを決めるのは貴女じゃないわ。セシリア・オルコット、貴女には命令違反、他のIS部隊を攻撃した罰として、一週間の謹慎処分を下します」

 

「そ、そんな……」

 

「貴女のウルトラマンに対する気持ちはわかったわ。でも、それとこれとは話が別よ」

 

草薙はセシリアに謹慎処分を下した。だがそこで、一夏が待ったをかけた。

 

「待ってください!!どうしてセシリアが謹慎なんですか!?」

 

「聞いてなかったの?命令違反と他のIS部隊を攻撃したことへの罰よ」

 

「だからって謹慎なんて……」

 

「 言っておくけど、謹慎だけならまだ甘い方よ。今は大目に見てあげてるけど、次に同じような事をしたら、わかってるわよね?」

 

「……はい……」

 

「わかったなら、早く行きなさい」

 

「……」

 

セシリアは無言でコマンドルームから出て言った。一夏達は退出するセシリアに声をかける事が出来ずにただ見送るしかなかった。

 

「いい?貴女達も、何かあったら今のように処罰をする可能性があるから、そのつもりでいなさい」

 

そして草薙もコマンドルームから出て行き、専用機持ち達と千冬が残ったが、いつもと違う草薙にただ戸惑っていた。

 

 

 

 

 

 

とある山間部上空、ワームホールが出現しまたもや銀色の球体が出現した。そして銀色の球体は、ある一定の部分に謎の光を浴びせた。しばらくすると、銀色の球体はワームホールの中に入り、ワームホールは消えた。

 

 

 

 

 

謹慎を言い渡されたセシリアは自室に戻ると、すぐに綾人に電話をかけた。下手に動けないセシリアが綾人の安否を確認できるのは電話しか手段がない。だが、何度掛け直しても綾人が電話にでる気配はなかった。そしてセシリアは不安を抱きながら電話をかけるのをやめた。

 

「綾人さん、どうかご無事で……」

 

 

 

 

 

「うっ……ここは……?」

 

綾人は目を覚ました。目を開けると知らない天井、そしてベッドに寝かされており、さらにベッドに身体を拘束されていた。

 

「なっ、何だこれは……?」

 

拘束から抜けようとするが身体に力が入らず動く事が出来ない。するとそこに一人の女がやって来た。

 

「あら、目が覚めた?」

 

「お前は……?あの時の……」

 

「覚えていてくれてたのね。対根源的破滅招来体IS部隊の草薙麗美よ」

 

その女は草薙だった。

 

「よろしくね、湊綾人君……いいえ、ウルトラマン」

 

「なっ!?」

 

綾人は突然ウルトラマンと言われ戸惑った。だが同時に自分がウルトラマンとバレている事を確信した。

 

「ふふっ、驚いてるわね。見ちゃったのよね。ウルトラマンが貴方の姿に戻るところ」

 

そう言われた綾人はいくつか思い当たった。綾人はその場で元の姿に戻った事がある。その時に見られてしまったと。

 

「じゃあラファールの部隊に俺を攻撃させたのは……?」

 

「ええ、私よ。でも安心して、他の人達には言ってないから。それにしても驚いたわ。ウルトラマンの正体がこんな子どもだったなんて。いえ、ウルトラマンが人間に化けてるのかしら?(あの時、セシリア・オルコットが感情的になっていたのはひょっとして……)」

 

「俺は人間だ!!」

 

綾人は草薙の言うことに反論したが、草薙はまるで気にしていなかった。

 

「そう。でもそんな事今はどうでもいいわ。重要なのはウルトラマンの力よ」

 

「ウルトラマンの力……?」

 

「ええ。貴方のウルトラマンの力、それが根源的破滅招来体の唯一の対抗手段よ」

 

「その唯一の手段をこんな状態にして、何を考えている?」

 

「そうね……解剖でもしようかしら?」

 

「何だと……!?」

 

「ふふっ、冗談よ。私は優しいのよ、そんな事はしないわ。でも、ウルトラマンの力は欲しいわね。だから、利用させてもらうわ」

 

草薙はウルトラマンの力を利用すると言いだした。

 

「何をする気だ……?」

 

「これを見なさい」

 

草薙はモニターに映像を映し、綾人に見せた。

 

「これは……?」

 

綾人が目にしたのは、1台のISだった。

 

「このISは対怪獣用のISよ。でも、ISだけでは怪獣を倒すことは出来ない。そこで、ウルトラマンの力を利用させてもらうわ」

 

「利用?……まさか!?」

 

「察しがいいわね。このISにウルトラマンの力を取り込む事で、ウルトラマンと同等の力のISを使う事ができる。最強のISが誕生よ。」

 

そう、そのISはウルトラマン力を利用する事で初めて完成するISだった。

 

「最強のISだと……?」

 

「ええ。だからこれが完成すればもう貴方は用済み、ウルトラマンなんて必要ないのよ!!」

 

そう言って草薙は高らかに笑いあげる。ウルトラマンと同等の力を持つIS、それが草薙の狙いだったのだ。

 

「貴様……!!」

 

「じゃあまずは、貴方の身体をじっくり調べないとね〜。湊綾人君」

 

草薙はジリジリと綾人に近づいていった。

 

 




草薙さんの本性が出ました。

やばいですね。

そこ、女版檀黎斗とか言わない。

それでは、次回もお願いいたします。


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第41話

お久しぶりです。間が空いてしまいましたがどうにか投稿できました。

それでは、どうぞ。


「うわああああああああああああ!!」

 

綾人の叫びが部屋中に響き渡る。それは、綾人が拘束され、全身に電流を流されているからだ。草薙は電流に苦しむ綾人を面白おかしく見ていた。そしてしばらくすると草薙は電流を止めた。

 

「うあ……あっ……」

 

電流は止まったが、それでも綾人への負担は大きかった。

 

「へぇ、案外しぶといのね。流石、ウルトラマンってところかしら。あと、この部屋は防音設備がされているから貴方の恥ずかしい悲鳴は聞かれることはないから安心しなさい」

 

「うっ……貴様……」

 

綾人は何とか意識は保っているが、苦しそうにしているのは明らかだった。

 

「これだけやっても何も反応がないなんて、どうやらこれが必要みたいね」

 

「っ!?それは……!?」

 

そう言って草薙取り出したのはアグレイターだった。

 

「その反応、これにウルトラマンの力があるのは間違いないわね」

 

草薙はアグレイターを透明なケースに入れ、ある機械に取り付けた。それに綾人は草薙がこれから何を始めるのかを察した。

 

「貴方のウルトラマンの力、使わせてもらうわ」

 

「貴様に……アグルの力が使えるものか……」

 

「アグル?それがウルトラマンの名前なのね。ふふっ、貴方にウルトラマンの力が使えて、私に使えないわけないでしょ」

 

そう言う草薙の表情は実に冷たかった。そして遂に機械を作動させた。

 

「やめろ!!」

 

綾人は草薙を止めようとするが身体が拘束されているため、身動きが取れずにただ見ていることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

「セシリア、大丈夫かな……?」

 

そう口にしたのはシャルロットだった。謹慎処分を下されたセシリアに接触する事は禁じられているため、心配するのは無理もない。

 

「あいつは命令違反をしてしまったんだ。謹慎になっても仕方がない」

 

「でもよ、1回命令違反をしただけで謹慎にするなんて、厳しすぎないか?」

 

「確かにそうかもしれないが、草薙さんの立場を考えてみろ」

 

「草薙さんの?」

 

「ああ、私達が戦っている相手は根源的破滅招来体という未知の存在だ。それと戦っている私達の命を預かっているのが草薙さんなんだ」

 

ラウラはそう一夏に説明する。

 

「お、おう」

 

「草薙さんは私達の命を預かっている。その命を預かっている人の命令を無視して私達の誰かが死んでしまったら、草薙さんはどうなると思う?」

 

「それは……」

 

「草薙さん自身が責任を取らされ、処分が下される。それだけじゃない、自分のせいで死人を出してしまったと思うだろう。草薙さんは私達を戦場に送っているが、それと同時に生きて帰ってきて欲しいと思っている筈だ。だから危険な事をさせないためにも、一度謹慎にさせておいた方が良かったのかもしれない」

 

「でも今回はあのラファール部隊がウルトラマンを攻撃したからじゃないか!!」

 

「確かに、セシリアは誰よりもウルトラマンを信頼しているからな」

 

「ああ。今回はあのラファールの部隊がウルトラマンを攻撃した事によるものだ。だが、草薙さんは私達に撤退命令を出した。それが草薙さんにとって最善の事だったんだ」

 

「何でウルトラマンが攻撃されているのに俺たちは撤退しなくちゃならないんだよ?」

 

「それは私にもわからない。だがセシリアはラファールの部隊に攻撃してしまった。おそらくそれが不味かったのだろう」

 

「確かに、向こうも命令で動いてるのに他のISに攻撃されちゃ溜まったもんじゃないわよね」

 

「そうだ。もしも今後似たような事があれば、セシリアは間違いなくウルトラマンを守ろうとISに攻撃をするだろう。そのせいで、その部隊から敵とみなされたくない。だから草薙さんはセシリアを落ち着かせるために謹慎にしたのではないか?」

 

ラウラは自分の考えを述べた。あくまで自分の考えであるため、草薙がどう思っているのかは知る由もない。

 

「でも、これからしばらくはセシリア抜きで戦うんでしょ。それはどうすんのよ?」

 

「そうだよ。今までセシリアのおかげで勝てた戦いも多かったから……」

 

そう、セシリアが謹慎になったということは、その分の戦力が減ると言う事である。そしてシャルロットの言う通り、セシリアが率先してウルトラマンを援護していたため勝てる戦いが殆どだった。

 

「それは私達が強くなるしかない」

 

「そうだ、俺たちがセシリアの分まで強くなるんだ!」

 

一夏の言葉に全員が頷き、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

アグレイターを取り付けた機械を作動させると、アグレイターから青い光が流れISのコアに吸収されていた。

 

「やめ……ろ……」

 

綾人は散々電流を浴びせられたせいで体力が消耗していた。今も身体に力が入らず抵抗すらできない。草薙は綾人を気にせずにISを見ていた。だが途中で機械からアラームが鳴った。

 

「これが限界ね」

 

すると草薙は機械を止めた。

 

「流石にウルトラマンの力全てとはいかなかったわね。でも、これくらいで十分よ。良かったわね、ウルトラマンの力が残って。でも、その身体でウルトラマンに変身したところで、まともに戦えないでしょうけど」

 

「貴様……」

 

綾人は歯をくいしばりながら草薙を睨む。だが草薙は綾人を全く気にせずに残りの作業を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

(わたくしは、これからどうすればいいのでしょうか……?)

 

セシリアは1人で考えていた。謹慎になってしまい怪獣が現れても出動する事が出来ない。そして仮にウルトラマンが現れても自分がいないので援護できない。最悪の場合また他のIS部隊がウルトラマンを攻撃する可能性がある。だが、今のセシリアではどうする事も出来ない状況なのだ。謹慎を無視して動こうとなると、最悪自分のISが没収されるかもしれない。そうなれば綾人を助ける事が出来なくなってしまう。『今』綾人を助けたいと思っても、今の自分では何もできない。そんな歯痒さがセシリアにはあった。

 

(わたくしは、なんて無力なんでしょう……)

 

 

 

 

 

草薙が作業を始めてから数時間、遂にその時が来た。

 

「ふふっ、完成したわ」

 

「なん……だと……!?」

 

「これがウルトラマンと同等の力を持つ、最強のISよ!!」

 

そこには、アグルと同じ青と黒のカラーリングをしたISがあった。

 

 

 

 




はい、遂に完成しました。

そして地味に綾人以外の初めてのアグル発言でもあります。

この話を読んだ方はどうか活動報告もご覧になっていただきたいです。どうかお願いします。

それでは、次回もお願いします。


ジードのopでマグニフィセントのシーンの所ホリゾント見えてる気がする。気のせい?



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第42話

お待たせしました。まさかこれほど時間がかかるとは思ってませんでした。

それでは、どうぞ。


草薙麗美がウルトラマンと同等の力を持ったISを完成させてから数日が経った。あれから怪獣の出現は報告されていない。

 

「せっかく完成したのに、使う機会が無くて残念ね」

 

草薙はISを完成させたものの、怪獣の出現が無かったためまだISをまだ使っていなかった。そしてこれは極秘で行なっていた事もあり完成してもすぐに言うわけにもいかなかった。

 

「……何をするつもりだ……?」

 

満身創痍の綾人が聞く。綾人はあれだけの人体実験や拷問を受けながらも尚意識を保っていた。

 

「何をするって、根源的破滅招来体と戦うに決まってるでしょ」

 

「何……?」

 

「前に言ったでしょう、これは対怪獣用のISだって。これで根源的破滅招来体と戦うのよ」

 

「それで破滅招来体と戦う……だと……?」

 

「そうよ。今まで怪獣達を倒してきたのはウルトラマン、つまり貴方よ。ISだけで怪獣を倒せた事は一度もないわ。でも現存のISでは怪獣を倒す事はできない。だから怪獣を倒せるISを作る必要があったのよ」

 

草薙は綾人にISを作った経緯を説明した。

 

「その為にアグルの力を……!」

 

「ええ。ウルトラマンの力を使えば怪獣を倒せるISができる。その力が今、ここにあるのよ!!」

 

そう言う草薙は高笑いする。草薙は自分の作ったISに余程の自信があるのだろう。

 

「何が目的だ……?」

 

「このISがあれば怪獣、根源的破滅招来体を倒す事ができる。これさえあればISが最強の兵器として君臨し続ける。この世界を救うのはウルトラマンじゃないわ。ISなのよ!!」

 

草薙はISが根源的破滅招来体を倒す事でISが最強の兵器になると言った。結局は草薙も、IS至上の人間に過ぎなかった。

 

「そんな物で……世界が救えるものか!!」

 

綾人にとってISは忌むべき存在である。しかし今までの戦いで助けられたのもまたISである。ISの助けが無かったら勝てない戦いもあった。だが今、自分の持っている力を無理矢理利用されているISが目の前にある。これに綾人はとてつもない憤りを感じていた。

 

「今の貴方に何ができるの?ウルトラマンの力はまだ残っているとしても、それで変身して戦えたとしても、足手まとい、邪魔にしかならないわよ。もう、貴方は用済みよ」

 

「貴様……!!」

 

と、その時。

 

『Pーー!!Pーー!!Pーー!!』

 

部屋中に怪獣出現の警報が鳴り響いた。すると草薙は笑みを浮かべた。

 

「来たわね。貴方はそこでお寝んねでもしてなさい」

 

草薙がそう言い残して部屋から出て行き、綾人が一人残されるが、拘束されている為身動きを取る事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

草薙がコマンドルームに戻ると続けて一夏達も戻って来た。

 

「山間部に怪獣が出現。怪獣の進行方向には市街地があるわ。市街地に進入する前に怪獣を迎撃、殲滅。いいわね」

 

草薙がそう指示すると、一夏が口を開いた。

 

「草薙さん、セシリアは……?」

 

一夏はセシリアのことを聞いた。

 

「残念だけど、彼女はまだ謹慎中よ。出動させる事はできないわ」

 

「そんな……どうにかならないんですか?」

 

今度はシャルロットが聞いて来た。

 

「規則なのよ。わかってちょうだい」

 

「二人とも、行くぞ」

 

ラウラが一夏達を連れてコマンドルームを出ていった。

 

「草薙さん、あいつらだけで大丈夫でしょうか……?」

 

「オルコットさんの事は仕方ありません。ですが今は、彼女達を信じましょう」

 

 

 

 

 

 

移動中のヘリコプターの中で、シャルロットが口を開いた。

 

「ねえ、僕たちだけで大丈夫かな……?」

 

「何弱気な事言ってんのよ。あたし達だけでもやるしかないでしょ」

 

「そうだ、セシリアがいない今、私達だけで戦うしかないんだ」

 

鈴音と箒が答える。

 

「そうだね、弱気になんてなってられないよね!」

 

「俺たちがセシリアの分まで戦うんだ!!」

 

「みんな、怪獣が見えた。行くぞ!!」

 

ラウラの指示で出撃する一夏達。一夏達の前には『豪腕怪地底獣 ゴメノス』が市街地に向かって進み続けていた。

 

「ここから先は行かせないよ!!」

 

シャルロット、鈴音、ラウラが先にゴメノスに遠距離攻撃を仕掛けた。足止め程度にはなったがダメージはあまり無いようだ。

 

「ならば!!はああああああ!!」

 

今度は箒が接近しゴメノスを斬り付けるが、これも効果は無い。

 

「くっ、ダメか!!」

 

するとゴメノスは口から火球を吐き出した。

 

「うおおっ!?」

 

間一髪で避ける専用機持ち達。反撃に移ろうとするも、ゴメノスは続けて火球を放った。

 

「クソッ!!」

 

 

 

 

 

 

コマンドルームでは千冬が緊張な面持ちで戦闘を見ていた。すると、草薙が動き出した。

 

「草薙さん、どこに行く気ですか?」

 

「ここを頼みます」

 

草薙は千冬に頼むと言い残し、コマンドルームから出て行った。

 

「草薙さん、一体何を……?」

 

 

 

 

 

草薙は一人研究室に戻った。そこにいた綾人が草薙が戻って来た事に気がついた。そして草薙はあのISがあるところに行った。

 

「貴様……」

 

「いよいよ出番よ……」

 

「お前まさか……!?」

 

この時、草薙は笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

一方、ゴメノスと戦っている一夏達は苦戦を強いられている。攻撃してもダメージを与えられず、ゴメノスは火球で攻撃し、それを避けるのに精一杯となっていた。

 

「クソッ、このままじゃ……」

 

エネルギーも少なくなり、徐々に押され始めている。

 

「諦めるな!!まだ終わったわけじゃない!!」

 

ラウラが叱咤するが、現実は厳しい。ゴメノスは怯んでる様子は一切ない。だが専用機持ち達はエネルギーが少なく、まともに戦うには難しい状態だった。するとゴメノスは再び火球を放った。

 

「くっ!!」

 

専用機持ち達は火球が来るのを身構える。だが、その時。

 

ドガアアアアアアン!!

 

専用機持ち達の後方から光線が発射され、火球を打ち消しゴメノスに直撃した。

 

『ギャアアアアアアアアアア!!』

 

ゴメノスは倒れ込み、爆散した。

 

「い、今のは……?」

 

「ウルトラマンの光線よね……?」

 

「じゃあ、ウルトラマンが来てくれたって事?」

 

シャルロットはウルトラマンが来てくれたのかと思った。この前人間がウルトラマンを攻撃した事で今回は来ないと思われていた。だが今の攻撃は間違いなくウルトラマンの必殺技である『フォトンクラッシャー』だった。専用機持ち達は光線が発射された方を見ると……

 

「あれは!?」

 

「……間に合ったわね……」

 

そこにいたのは、青と黒のISを纏った草薙麗美だった。

 

 

 




はい、今回はゴメノスでした。大分飛びましたね。さすがに全部は無理です。

そして今回遂にISだけで怪獣を倒しましたよ。やったね(棒)

では、次回もお願いします。



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第43話

お待たせしました。また1ヶ月かかりました。もはや月1ペースな気がします。1ヶ月かかった内容ではないと思いますが、どうぞ。


「みんな、集まったわね」

 

コマンドルームにセシリアを除く専用機持ちと千冬が招集されていた。理由は当然、あのISのことだった。

 

「草薙さん、説明をお願いします。あのISが一体何なのかを」

 

千冬が草薙に説明を求め、全員の注目が草薙に集まった。それを確認すると、草薙は遂に口を開く。

 

「あれは対根源的破滅招来体用ISアルギュロス"よ」

 

「対根源的破滅招来体用IS……?」

 

「アル……ギュロス……?」

 

草薙が答えるが、一夏達はピンと来ていなかった。

 

「草薙さん、対根源的破滅招来体用とは、どういう事ですか?」

 

千冬はさらに草薙に質問をする。

 

「そのままの意味です。対根源的破滅招来体に特化したISで、地球の怪獣も、破滅招来体が送り込んでくる怪獣も、このIS、アルギュロスなら倒す事が出来ます。現に、先ほどの戦いでは怪獣を倒す事が出来ました」

 

「凄え、そんなISがあるなんて!!」

 

一夏は草薙の話を聞いて素直に凄いと思った。

 

「草薙さん、怪獣を倒したあの攻撃、ウルトラマンの技と酷似していたのは一体?」

 

今度はラウラが草薙に質問をした。ゴメノスを倒した攻撃はフォトンクラッシャーと同じだったのが気になっているのだろう。

 

「それは、アルギュロスはウルトラマンを元にして作った物だからよ」

 

「ウルトラマンをですか?」

 

「ええ。破滅招来体を倒すにはウルトラマンの力が必要なのよ。現行のISでは怪獣を倒すのは困難なのは、みんながよく分かってるわよね?」

 

「……はい。確かに私達だけでは、未だに怪獣を倒すには至っていません」

 

代表してラウラが答える。だが少し、伐が悪そうだった。未だに自分達だけで怪獣を倒していない事に負目があるのだろう。

 

「そのためにアルギュロスを作ったのよ。ウルトラマンと同じ力を持ったISとして」

 

「ウルトラマンと同じ力を持ったIS……」

 

それを聞いたラウラは感心と同時に、少し複雑な気持ちになっていた。

 

「だからこれからは、私もみんなと一緒に戦いに行くわ」

 

「本当ですか!?」

 

「草薙さんと一緒なら、私達も心強いです」

 

それを聞いた鈴音と箒は、草薙と一緒に戦える事に喜んだ。

 

「あの……僕たち、足手まといには……?」

 

シャルロットが不安そうに聞いた。自分達は足手まといになってしまうのではないかとシャルロットは思っていた。

 

「それはないわ。いくらアルギュロスを使っているからと言っても、一人じゃ怪獣となんて戦えないわよ」

 

「……そうですね。変な事言ってすみません。僕も力になれるように頑張ります!」

 

「ありがとう、みんな」

 

「ウルトラマンと力を合わせたら怖いもの無しですよ!!」

 

一夏がそう言うと、千冬は草薙に苦言を呈する。

 

「ですが草薙さん、その様なISを使うのは些か危険ではないでしょうか?」

 

「確かに、今の私達がウルトラマンと同等の力を持つのはまだ早いかもしれません。しかし根源的破滅招来体の脅威がある今、力が必要なんです。もっと強い力を持たなければ私達だけでは到底根源的破滅招来体と戦う事はできません。それに、今日の様にウルトラマンが現れない時がこれからもあるかもしれません。その時に戦えるのは、私達だけです。」

 

「それはそうですが……」

 

「千冬姉、草薙さんを信じないでどうするんだよ」

 

「……そうだな。草薙さん、失礼な事を言ってすみません」

 

「大丈夫です。私も責任を持って使います」

 

「あの、セシリアには……?」

 

シャルロットがこの場にいないセシリアの事を聞いた。

 

「彼女にも後で伝えるわ。じゃあ、今日はゆっくり休んで」

 

 

 

 

 

 

そして、一週間が経った。あれから地球やワームホールから怪獣が出現し、草薙を含めた6人が出撃した。戦いでは一夏達が隙を作り草薙がアルギュロスのビームで倒すという至ってシンプルな戦い方だった。そのどれもが上手くいき、確実に怪獣を倒す事ができていた。そして、その全ての戦いに、ウルトラマンが現れる事は無かった。

 

「どう?私が作ったアルギュロスの凄さは?」

 

草薙は監禁している綾人に聞いて来た。草薙は毎回アルギュロスで怪獣を倒す所を綾人に見せつけていた。だが綾人には、それをまともに見られるほどの気力は無かった。捕まってからまともな食事もできずに、さらに拷問も受けていたため意識も無いに等しい。

 

「起きなさいよ」

 

「がっ……」

 

綾人は草薙に腹を殴られ目が覚めた。だがそれでも弱っているままだった。

 

「自分の力が平和のために有効に使われているのよ。光栄でしょ?」

 

「ふざ……けるな……」

 

「そんな口の聞き方していいのかしら?」

 

「ぐああっ!!」

 

草薙は再び綾人の腹を殴った。今度は強めに殴ったため、綾人の身体に激痛が走った。

 

「見ててわかったでしょ、アルギュロスの強さを。これでもう、ウルトラマンは必要ないわ。貴方はもう、御役御免ね」

 

「……貴……様……」

 

「もう貴方も保たないでしょう。ねえ、最後にセシリア・オルコットに会いたくない?」

 

「セシリア……だと……?」

 

草薙は綾人にセシリアに会いたくないかと提案した。綾人は草薙の意図が全くわかっていない

 

「そう、貴方のガールフレンドよ。会っておきたいでしょう?」

 

すると草薙は綾人を置いて部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

「入るわよ」

 

草薙はドアをノックするとセシリアの部屋に入った。

 

「草薙さん!?わ、わたくしに何か……」

 

「話があるわ。着いてきて」

 

驚くセシリアを尻目に草薙は歩いて行った。セシリアは状況が飲み込めなかったが、草薙に着いて行くことにした。だが草薙の進んでいる方向はセシリアが知らない所だった。

 

「草薙さん、どちらへ……?」

 

セシリアの問い掛けに答えず草薙は進んで行く。セシリアは疑問に思いながらも大人しく着いて行った。そして目的地に着いた。

 

「あの、ここは……?」

 

「入りなさい」

 

言われた通りセシリアは部屋に入った。そして電気が付いた。するとそこには

 

「ッ綾人さん!?」

 

セシリアが目にしたのは、ボロボロになって倒れている綾人だった。それを見たセシリアはすぐに綾人の所に駆けつける。ここは何なのか?何故綾人がここにいるのか?今のセシリアにはそれを考える余裕は無かった。

 

「うっ……セシ……リア……?」

 

「綾人さん!!しっかりしてください!!草薙さん、これは一体どういう事ですか!?」

 

セシリアは草薙に問い詰めるが、草薙は聞く耳を持っていなかった。

 

「私は根源的破滅招来体と戦うために、ISを作ったわ。そのISの名はアルギュロス」

 

「草薙さん、何を……?」

 

「アルギュロスを作るためには、ある力が必要だったのよ。ウルトラマンの力が」

 

「ウルトラマンの力が?……まさか!?」

 

「彼の力、使わせてもらったわ」

 

草薙はアルギュロスの真実をセシリアに告げた。それを聞いたセシリアは衝撃を受けた。そして何、故草薙がウルトラマンの正体を知っているのか疑問に思った。

 

「何故、綾人さんの事を……?」

 

「見たのよ。ウルトラマンが彼のすがたになる所を。貴女も知ってるんでしょ、彼がウルトラマンだって」

 

「そ、それは……」

 

「やっぱりね。あの時の反応、どう見ても正体を知ってる風にしか見えなかったもの」

 

「では、あの時別働隊がウルトラマンを攻撃したのは……?」

 

「私の命令よ。その坊やを捕まえるためにね」

 

「どうして、どうしてこんな事を!?」

 

「どうして?必要だったのよ、湊綾人の持つウルトラマンの力が。根源的破滅招来体と戦うためにはウルトラマンの力がなければならない。だからウルトラマンと同じ力を持つISが必要なのよ」

 

「だからと言ってこんな……こんなの酷すぎます!!」

 

「酷い?何言ってるの?こういう事に犠牲は付き物でしょ。それに、貴女ももう用済みよ」

 

すると草薙はアルギュロスを部分展開し銃口をセシリアに向けた。

 

「貴女はここを見ちゃったもの。それに、貴女にはこれ以上余計な事をして欲しくないのよ。だからここで、その坊やと一緒に逝きなさい」

 

「草薙さん……貴女って人は!!」

 

セシリアは声を荒げて草薙を睨みつける。今まで信じてきた、自分を頼りにしてくれた。時には厳しく、時には優しく見守ってくれた。そして戦いを終えた後は笑顔で迎えてくれた。だが、それがたった今、この短時間ですべて裏切られ、打ち砕かれた。セシリアも今まで草薙に利用されていたにすぎなかった。

 

「じゃあね」

 

草薙がセシリアと綾人を始末しようとした……その時

 

『PーーーーPーーーーPーーーー』

 

怪獣出現の警報が鳴り響いた。草薙は部分展開を解除しモニターを映す。それにはワームホールから銀色の球体が無数に現れるのが映されていた。『宇宙球体 スフィア』が出現した。

 

 




はい、機体名はアルギュロスにさせていただきました。アルギュロスで構わないとの意見がありましたので採用しました。意見をしてくださった方々、ありがとうございました。

そして、ウルトラマンダイナよりスフィアを出させていただきました。何故スフィアなのかって?スフィアが破滅招来体でも違和感がないと思ったからです。というよりスフィアを出したかっただけです。スフィアが破滅招来体でもいいじゃない。



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第44話

早めに投稿できました。どうぞ。


『宇宙球体 スフィア』が出現した事で、綾人とセシリアを始末しようとしていた草薙はその手を止めた。

 

「出現場所はここの近く……直接ここを狙って来たのね、まあいいわ。さて、貴方達をすぐにでも始末したかったところだけど、まずはこのアルギュロスの力をその目に焼き付けなさい。始末するのはそれからよ」

 

草薙はそう言い残すと、綾人とセシリアを残して出て行った。

 

「まっ、待って……綾人さん、綾人さん!!」

 

セシリアは草薙を追おうとしたが、綾人を放っておく事は出来ないため草薙を追わずにその場に残った。

 

「うっ……セシリア……」

 

「綾人さん、大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ……」

 

セシリアの呼びかけで綾人は目を覚ました。だがそれでも弱っている事には変わりはなかった。

 

「綾人さん、掴まってください。すぐにここを出ましょう」

 

セシリアは綾人を連れてそこから出ようとするが、綾人はセシリアの元には行かなかった。

 

「あっ、綾人さん、何を!?」

 

綾人はセシリアの制止を聞かずに、草薙に奪われたアグレイターを取りに向かっていた。

 

 

 

 

 

 

コマンドルームに一夏達が集まり、その後草薙も入って来た。

 

「この近くにワームホールが発生。その中から無数の球形生命体が出現。奴らは間違いなくここを狙って来ている。ここは防衛の要となる拠点。何としても死守するのよ」

 

『了解!!』

 

「草薙さん、私は非戦闘員の避難をしてきます」

 

「お願いします。みんな、行くわよ」

 

草薙の指示で一夏達は出撃した。

 

 

 

 

 

 

研究所近くでは、スフィアの群れが侵攻していた。このまま行けば間違いなく研究所に辿り着いてしまうだろう。するとそこに、草薙率いる一夏達専用機持ち達が到着した。

 

「みんな、奴をできるだけ一ヶ所に集めて。一気に片付けるわ」

 

「はい!!」

 

一夏達は分散し、スフィアに牽制攻撃を行い、一ヶ所に集まるように誘導した。元々群になっていたこともあり、スフィアはすぐに集まった。

 

「みんな、離れて!!」

 

草薙がそう言うと、一夏達はスフィアから離れた。そこに草薙はフォトンクラッシャーを発射した。フォトンクラッシャーは全てのスフィアに直撃し、そこにいたスフィアは全て倒された。

 

「やったぜ!!」

 

「意外に呆気なかったわね」

 

一夏と鈴音が安堵していたその時、再びワームホールが発生した。

 

「ワームホールが!?」

 

「また出てくるの!?」

 

ワームホールが発生した事でラウラとシャルロットが驚愕する。するとスフィアの群れが再び出撃した。

 

「なら、もう一度倒すまでよ」

 

草薙ももう一度フォトンクラッシャーを発射した。そこにいたスフィアは倒したが、すぐに別のスフィアが現れた。

 

「一体何体出てくるんだ!?」

 

するとスフィアは、草薙に向かってビームを発射した。

 

「ちっ」

 

草薙はビームを避けるとすぐに反撃した。だが別のスフィアもまた、草薙に攻撃をしてきた。

 

「あいつら、草薙さんを狙ってるのか?」

 

一夏はスフィアは草薙を狙っていると考えた。その通り、スフィアは草薙しか狙っていなかった。

 

「草薙さんを援護するぞ!!」

 

ラウラの指示で一夏達は草薙の援護を開始した。手始めにシャルロットがスフィアに攻撃をしたが、攻撃をされた事に気付いたスフィアは分裂を始めた。

 

「ぶっ、分裂した!?」

 

分裂したスフィアは大きさは少し小さくなっているが、一夏達からすれば大きい事には変わりはない。

 

「こんなのどうしろって言うのよ!?」

 

「こんな時に何でウルトラマンは来ねえんだよ!?」

 

一夏はウルトラマンが来ない事に文句を言っているが、来ないのではなく来れないと言うことを、一夏達は知る由もなかった。

 

「くっ!!」

 

草薙は1人で無数のスフィアを相手していた。次々に攻撃をしてくるスフィアに草薙は避けるのが精一杯だった。隙を見て反撃をするが、その度にスフィアは分裂を繰り返して数を増やしている。まさに、多勢に無勢だった。

 

「何をしてるの!?ちゃんと援護しなさい!!」

 

草薙は援護を求めるが焦りからか言葉が荒くなっていた。

 

「そんな事言われても……!!」

 

草薙を援護しようとは思っても、他のスフィアが壁となり阻んでくる。スフィアは一夏達など眼中に無かった。

 

「こうなったら……」

 

草薙はスフィアから距離を取り、フォトンクラッシャーを撃とうとした。

 

「これで終わりよ……」

 

草薙はフォトンクラッシャーを発射しようとしたが、フォトンクラッシャーは発射されなかった。

 

「し、しまった!!」

 

最初に2発撃ったせいでもう1発撃つだけのエネルギーが残されていなかった。その隙にスフィアは草薙に攻撃した。

 

「キャアアア!!」

 

動揺していた草薙はスフィアの攻撃に反応が遅れ、草薙に直撃し、地上に落下した。

 

「草薙さん!!」

 

「っ……こんな……こんな事があってたまるか!!」

 

草薙は再び飛び上がり、スフィアにできる限りの攻撃をした。

 

「アルギュロスは最強のISなのよ!!こんな奴らに、負ける筈がないのよ!!」

 

草薙は完全に冷静さを失っていた。自分の作った最強のISが負けている事を認めたくないからだ。アルギュロスはウルトラマンの力を使っているため、決して弱くわない。実際、怪獣を何体も倒している。だが、今回は相手が悪かった。強力な力を使っているため、その分消費も激しい。スフィアに消耗戦をされたため、この結果になってしまった。そして、無闇に攻撃をしていたアルギュロスだが、遂に全ての武器を使い果たしてしまった。

 

「そ、そんな……!?」

 

そしてスフィアは、草薙に近づき始めた。

 

「来ないで……来ないで!!」

 

草薙の顔が絶望に染まる。目の前に巨大な不気味な球体が無数にいる。そしてアルギュロスが使い物にならない。もはや成す術がなかった。

 

「あっ……あっ……」

 

草薙は目に涙を浮かべながら恐怖で震えている。言葉もまともに発せられなかった。そして

 

「イヤアアアアアアアアアアアアァッ!!」

 

スフィアは草薙ごとアルギュロスを取り込み始めた。

 

「草薙さん!!」

 

「待て!!」

 

一夏が草薙を助けようとするがラウラに止められた。

 

「何で止めるんだよ!?草薙さんが!!」

 

「お前まで取り込まれるぞ!!それに、このままでが草薙さんも巻き込んでしまう!!」

 

「じゃあどうすんだよ!?」

 

その時、草薙を取り込んだスフィアは徐々に形作り始めていた。

 

 

 

 

「何だ……あれは……?」

 

非戦闘員を非難させた千冬がコマンドルームに戻り映像を見ると、それに衝撃を受けていた。

 

 

 

 

 

「綾人さん、あれを……」

 

「あれは……?」

 

綾人とセシリアも、スフィアが草薙を取り込んでいる映像に衝撃を受けた。

 

 

 

 

 

草薙を取り込んだスフィアが形を変えた。ウルトラマン程の大きさとなり、アルギュロスと同じ武器を装備し、顔は生々しく変貌した。『スフィア合成獣 ゼルガギュロス』が誕生してしまった。

 

「草薙……さん……?」

 

一夏は目の前の存在に頭が追いついていなかった。スフィアが草薙を取り込んだと思っていたら怪物になっているのだから。

 

「な、何なのよあれ……?」

 

ゼルガギュロスは一夏達に目を向けるがすぐに別の所に目を向けた。そこには数台の車が走っていた。その車は研究所から非難した研究員が乗っている車だった。それを見つけたゼルガギュロスは銃口を車に向け、光弾を発射した。

 

ドガアアアン!!

 

光弾は車に直撃し、声を上げる間も無く研究員達は全滅した。すると今度は研究所に狙いを定めた。

 

「やめろ!!」

 

一夏の声は届かずゼルガギュロスは研究所に光弾を放ち、研究所に当たった。

 

「うああああ!!」

 

コマンドルームにも衝撃が走り、千冬がバランスを崩すと天井が崩れ始めた。そしてゼルガギュロスはどこかに飛び去った。

 

「千冬姉が!!千冬姉がまだあそこに!!」

 

千冬がまだ研究所にいるため一夏は動揺する。

 

「私とシャルで奴を追う、お前達は教官を!!行くぞ!!」

 

「うん!!」

 

ラウラとシャルロットはゼルガギュロスを追い、一夏、箒、鈴音が千冬の救出に向かった。

 

「千冬姉、無事でいてくれ……」

 

 

 

 

 

とある街、そこはいつも通りの平和な風景が広がっていた。だが……

 

ゴオオオオ……

 

「何だ?」

 

人々が変な音に気づくと、空よりゼルガギュロスが降り立った。ゼルガギュロスはビルに銃口を向けた。銃口を向けられたビルの中にいた人々は咄嗟に逃げようとするが、すぐに光弾が撃ち込まれた。中にいた人々は光弾に飲み込まれ、そのまま焼け死んだ。そしてそのビルの近くにいた人々は瓦礫の下敷きになった。

 

『うあああああああ!!』

 

突然のゼルガギュロスの出現に街は大混乱した。人々はアルギュロスから逃げようとするが……

 

『あっ!!ああああああ!!』

 

走っているうちに転んでしまい、そのままゼルガギュロスに踏み潰された。その人だけでなく、ゼルガギュロスは近くにいる人達全てを踏み潰しながら歩いている。

 

『イヤアアアアアア!!』

 

『助けてくれえええええ!!』

 

ゼルガギュロスはビルに光弾を次々と撃ち込み、中にいる人は逃げれるはずもなく、光弾に飲み込まれた。そしてそのビルの下にいた人たちは瓦礫に押しつぶされた。そしてゼルガギュロスは地上に銃口を向けた。地上にはまだたくさんの人達が逃げていた。ゼルガギュロスはその人々に向かって、フォトンクラッシャーを放った。これにより、地上にいた人たちは爆発に飲み込まれ、焼け死んだ。老若男女問わず、一瞬にして何千、何万人もの人間が死んだ。街はたった数分で地獄と化した。

 

 




はい、草薙さんはスフィアに取り込まれました。

ゼルガノイドとアルギュロスを組み合わせてゼルガギュロスです。ネーミングセンスが無くてすみません。これしか思いつかなかったんです。

次回はどうなるでしょう。



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第45話

やっとできました。前回草薙さんがスフィアに乗っ取られゼルガギュロスが誕生しました。さあどうなる第45話。(ビルドっぽく)


スフィアがアルギュロスを草薙麗美ごと取り込み、ゼルガギュロスが誕生した。ゼルガギュロスは本拠地を置いている研究所を破壊、そこに所属する所員を殺害した。そして街に降り立ち、そこでも破壊の限りを尽くし、人々を惨殺していった。

 

 

 

 

「ぐっ……」

 

その頃、千冬は自力で崩壊した研究所から脱出していた。着ているスーツは所々破け、身体から出血もしている。

 

「千冬姉!!」

 

その時、一夏、箒、鈴音がやって来た。

 

「一……夏……?」

 

「千冬姉、大丈夫か!?」

 

「ああ。大丈夫だ、この程度……」

 

「千冬さん、セシリアは大丈夫なんですか!?」

 

鈴音がセシリアの安否を聞いた。その時、千冬は3人から目を逸らした。

 

「オルコットは……いなかった」

 

「いなかったって、どういうことなんですか!?」

 

「いなかったんだどこにも!!自分の部屋にも!!あいつはこの研究所からいなくなっていたんだ……」

 

「じゃあ、どこに行ったんだよ!?」

 

「わからない。だが、奴らが現れた時には既にいなかった。おそらく、その前にはもうここにはいなかったんだ」

 

「だったら尚更どこに……」

 

「お前達、今は奴を追え」

 

「千冬姉はどうすんだよ!?」

 

「私は大丈夫だと言っているだろう。いいから早く行け!!」

 

「千冬姉……」

 

「一夏、私が千冬さんは私に任せろ。一夏達は草薙さんを追え」

 

「箒……わかったぜ、行くぞ鈴!!」

 

「ええ、そっちは頼んだわよ!!」

 

箒が残り、一夏と鈴音がゼルガギュロスを追った。行方がわからないセシリアを案じながら……。

 

 

 

 

 

 

ゼルガギュロスの破壊行動は今も尚続いていた。ビルが燃え、人々は悲鳴をあげて逃げ回る。それはもう地獄そのものだ。そしてゼルガギュロスは、止まることなく進み続けていた。

 

するとそこに戦闘機の部隊が飛んできた。戦闘機だけではない。IS部隊も一緒にやって来た。そしてすぐに2つの部隊がゼルガギュロスに攻撃を開始した。

 

「ISの力、見せてあげるわ!」

 

一斉攻撃にゼルガギュロスは怯む……なんて事は無く、亜空間バリアを張り攻撃を防いでいた。

 

「そ、そんな!?」

 

ゼルガギュロスはフォトンクラッシャーを発射して戦闘機を全て撃ち落とし、IS部隊は断末魔をあげる事無く全員消し炭となった。するとそこにシャルロットとラウラが到着した。

 

「ひ、酷い……っ!?」

 

シャルロットはゼルガギュロスが踏み潰した人間の肉片を見てしまった。それも1人だけの物ではない。数え切れないほどの肉片がそこら中に散らばっていた。

 

「行くぞ、奴を止める」

 

「でも中には草薙さんが!!」

 

「そんな事言ってる場合か!!今目の前にいるのは、ただの化け物なんだ!!」

 

「そんな……」

 

「シャルー!!ラウラー!!」

 

そこに一夏と鈴音が遅れてやって来た。

 

「一夏、鈴!!」

 

「教官は無事なのか!?」

 

「ええ、箒が一緒にいてくれてるわ」

 

「これ、草薙さんがやったのかよ……?」

 

一夏は破壊された街を見てそう言った。今まで自分達を見守ってくれた人がこんな事をするなんて思いたくなかったのだろう。だが、これが現実なのだ。

 

「あいつを倒すぞ。これ以上好きにはさせん!!」

 

「待ってくれラウラ!!草薙さんは、草薙さんはどうするんだよ!?」

 

「奴を倒すのが最優先だ。これ以上被害を出さないためにも、倒すしかない」

 

「じゃあ、草薙さんを見捨てんのかよ!?」

 

「この惨状を見てそんな事が言えるのか!!もう、倒すしかないんだ、行くぞ!!」

 

「そんな……草薙さん!!」

 

一夏の叫びはゼルガギュロスに届いているのかはわからない。それでも一夏は、街を破壊したのが草薙だったとしても、見捨てたくなかった。そしてラウラ達は戦闘を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……」

 

「綾人さん、大丈夫ですか?」

 

その頃、研究所の地下にいる綾人達は、ゼルガギュロスの攻撃の衝撃で倒れ伏していた。地下にまで攻撃が届かなかったのは、不幸中の幸いだろう。

 

そして綾人は遂に、ふらつきながらもアグレイターを取り戻した。そして綾人はすぐにアグルに変身しようとするが、セシリアに止められた。

 

「待ってください!!そのお身体では……」

 

「大丈夫だ……これくらい……」

 

そうは言うが綾人は今にも倒れそうなくらいだいぶふらついている。それでも綾人は戦おうとしていた。

 

「セシリア……俺は戻ってくる。必ず……」

 

「綾人さん……」

 

綾人はアグレイターを構えた。

 

「アグルウウウウウウウウウウ!!」

 

アグレイターの光は綾人だけでなくセシリアも包み、光となって飛んでいった。

そして、ウルトラマンアグルがゼルガギュロスの前に降り立った。だが……

 

『ウアッ……』

 

アグルは立ち上がってすぐに跪いてしまった。

 

「ウルトラマン!?」

 

「ウルトラマン……!!あの中に草薙さんがいるんだ!!」

 

一夏はアグルにそう訴えるが、アグルには一夏の声はおそらく届いていない。一夏の訴えを聞ける状態ではなかった。アグル自体もすでに立ち上がるのがやっとの状態だからだ。

 

ゼルガギュロスは、アグルにフォトンクラッシャーを発射しようと銃口を向けた。それを見たアグルもフォトンクラッシャーの発射体勢を取った。

 

『ハアアアア……デヤアアア!!』

 

アグルとゼルガギュロスは同時にフォトンクラッシャーを発射した。2つのフォトンクラッシャーがぶつかり合い、凄まじい衝撃が発生する。

 

「うわあああ!!」

 

一夏達も衝撃に巻き込まれそうになるがなんとか逃れた。そしてフォトンクラッシャー同士がぶつかり合った事でその衝撃からエネルギーが発生し、空へと上がっていった。そしてフォトンクラッシャーは互いに消滅した。

 

『ウアッ……』

 

フォトンクラッシャーを撃ち終えたアグルはまた跪き、ライフゲージも点滅を始めた。ゼルガギュロスはそんなアグルを嘲笑い、そして今度はリキデイターを発射した。

 

『ウワアアアア!!』

 

アグルはリキデイターをまともに受けてしまい、ビルを巻き込みながら吹っ飛ばされた。そしてゼルガギュロスはアグルに近づき、アグルを踏みつけ、蹴り飛ばす。さらに無理矢理起き上がらせると銃口でアグルの顔を殴った。

 

「ねえ、何だかウルトラマン変じゃない?」

 

「うん、いつもより動きが鈍い気がする」

 

「ウルトラマンが、弱っているのか?」

 

ラウラ達はアグルの動きがおかしい事に気付いた。いつも万全な状態で来ているのに今回はすぐにバテているのだ。

 

「頼むウルトラマン、草薙さんを助けてくれ!!」

 

それでも一夏はアグルがくれ草薙を助けてくれると願っていた。

 

 

 

 

「綾人さん……」

 

セシリアは、離れているところでアグルとゼルガギュロスの戦いを見ていた。綾人がアグルに変身した時にセシリアも一緒に脱出させていたのだ。

 

「何故、そんなボロボロになるまで……」

 

 

 

 

 

 

そして遂にアグルのライフゲージの点滅が早まった。ゼルガギュロスはアグルに近づきフォトンクラッシャーをゼロ距離で撃とうと銃口を向けた。

 

『ハアアア……』

 

その時アグルはゼルガギュロスの腹部に拳を当てた。ゼルガギュロスはアグルが自分を殴ろうとしてただ拳が触れただけだと思いそんなアグルを嘲笑った。確かに拳がゼルガギュロスの腹部に触れていた。その時だ。

 

ズシャッ

 

何が起こったのか、ゼルガギュロスは自分の腹部を見た。すると、光の刃がゼルガギュロスの腹部を貫いていた。アグルは逆に自分がゼロ距離でアグルブレードを発生させ、ゼルガギュロスの身体を貫いていたのだ。

 

『ギャアアアアア!!』

 

思わずゼルガギュロスも声をあげてしまった。アグルはすぐにアグルブレードを抜き、ゼルガギュロスから距離を取った。そして、フォトンクラッシャーの発射準備を始めた。

 

「待ってくれウルトラマン!!中には草薙さんが!!」

 

「やめろ!!もう手遅れだ!!」

 

「何で止めるんだよラウラ!?草薙さんが!!」

 

「もう手遅れだって言ってるだろう!!」

 

一夏はアグルを止めようとするが、それをラウラが止めた。

 

『デヤアアアアア!!』

 

アグルはフォトンクラッシャーを発射した。それはゼルガギュロスに直撃した。そして……

 

ドガアアアアアン!!

 

ゼルガギュロスは爆散した。街を破壊し、大勢の人間を惨殺したゼルガギュロスが今、ウルトラマンアグルの手によって、倒された。

 




はい、ゼルガギュロスが倒されました、

元人間の怪獣をウルトラマンが倒す。実際どうなんでしょうね。


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第46話

お久しぶりです。気づいたら2ヶ月かかってしまいました。ある程度時間はあったのですが中々モチベーションが上がらなかったのです。

では、どうぞ。


大勢の人々の命を奪ったゼルガギュロスはアグルに倒された。それは同時に、スフィアに取り込まれた草薙麗美の死も意味していた。

 

『ウアアッ……』

 

アグルは体力を消耗している状態でアグルブレードとフォトンクラッシャーを続けて使用したため地に膝を付けていた。同時にライフゲージの点滅も早くなり、そのまま地面に倒れこんだ。だが、そんな状態のアグルに一夏は怒りを露わにしていた。

 

「何で……何でだよ!?あの中には草薙さんがいたんだぞ!!なのに、何で助けなかったんだよ!?」

 

一夏はアグルが草薙を助けなかった事に怒りを感じていた。一夏にとって草薙は自分達を見守ってくれていた恩人であるため、草薙を助けなかった事が許せないのだ。だが一夏は知らない。草薙がスフィアに取り込まれた時点で既に人間として死んでいるという事を。一夏のアグルに対する怒りは、今は一方的でしかなかった。それ故、一夏はアグルを攻撃しかねない状況だ。

 

「ちょっと何してんのよ!?」

 

「そうだぞ!落ち着け!!」

 

そこに鈴音とラウラが一夏を止めにはいった。

 

「リン、ラウラ放せよ!!俺はウルトラマンを許さない!!」

 

「落ち着いてよ一夏!!ウルトラマンだって必死だったんだよ!!」

 

「だから何なんだよ!?ウルトラマンは草薙さんを見捨てたんだ!!見殺しにしたんだ!!」

 

一夏はアグルに対する怒りで興奮状態になっている。今にも一夏はラウラ達を振り解き、アグルに攻撃しようとしていた。その時だった。

 

「いい加減にしてください!!」

 

「えっ……?」

 

一夏に浴びせられた声、それはブルーティアーズを纏ったセシリアだった。

 

「セシリア、どうしてここに……?それより、無事だったんだな!!」

 

一夏はセシリアが何故ここにいるのか疑問だったがそれよりも行方不明だったセシリアが無事だった事に安堵した。だがセシリアにとって、そんな事は今はどうでもよかった。

 

「一夏さん、どうしてそんな酷い事が言えるのですか!?」

 

「酷い事って、ウルトラマンは草薙さんを見捨てたんだぞ!!俺はあの中に草薙さんがいるって教えたんだ!!ウルトラマンはそれを無視したんだ!!だいたいウルトラマンがもっと早く来ていればこんな事にはならなかっただろ!!」

 

「一夏さん、それ本気で言ってるんですか……?」

 

「だってそうだろ!?ウルトラマンが来なかった所為で草薙さんやこの街の人たちが死んだんだ!!」

 

それを聞いたセシリアは一夏の自分勝手な発言に怒りを覚えた。

 

「一夏、それは言い過ぎだよ!!」

 

シャルロットが咎めるが一夏のアグルに対する怒りはヒートアップする一方だった。そして遂にセシリアの怒りは爆発した。

 

「ウルトラマンだって……ウルトラマンだって命を懸けて戦ってるんです!!今までも、そして今も、ウルトラマンは命を懸けて戦ってきたんです!!それに今日は身体が弱ってる状態で戦っていたのがわからなかったのですか!?」

 

「ウルトラマンが、弱ってた……?」

 

「お前、本当にわからなかったのか?」

 

「ウルトラマンの動き、明らかに何時もと違ってたでしょ……」

 

どうやら一夏は本気でわからなかったらしい。一夏はアグルが草薙を助ける事しか考えていなかったようだ。

 

「でも、でも!!」

 

「いい加減にしろ!!今は教官の所に戻るぞ」

 

「……」

 

ラウラ達は戻ろうとするがセシリアは動こうとしなかった

 

「セシリア、どうしたの?」

 

「私は、行けません」

 

「行けないってどういう事よ?」

 

「今は、行く事はできません」

 

「……わかった。お前が無事だという事は教官に伝えておく」

 

「すみません……」

 

ラウラ達は千冬の所へと向かった。そしてアグルは綾人の姿に戻った。

 

「綾人さん!!」

 

セシリアが綾人のもとに行くが綾人には意識がなかった。

 

「早く病院に!」

 

セシリアは綾人を抱え病院に向かった。

 

その後救援部隊が到着したが生存者は極僅かだった。

 

 

 

 

 

「千冬さん、戻ってきました」

 

箒が一夏達が戻って来たのに気付き、千冬を呼び出した。

 

「お前達、無事だったか……草薙さんはどうなった?」

 

「草薙さんは……いえ、草薙だった怪獣は、街を破壊、大勢の人々の命を奪い、そしてウルトラマンと戦い、倒されました……」

 

ラウラは千冬に説明をした。それを聞いた千冬は何とも言えない表情をしていた。

 

「……そうか、ウルトラマンが……」

 

「見捨てたんだ、ウルトラマンは」

 

一夏は未だにウルトラマンが見捨てたと言っている。草薙の死が余程ショックだったのだろう。

 

「あんたまだそんな事言ってんの!?」

 

「セシリアだって言ってたでしょ!!ウルトラマンだって命懸けだったって!!」

 

「セシリア?オルコットがいたのか?」

 

「はい。どういうわけかセシリアも現場にいました。でもセシリアは無事です。ここには戻って来れないと言っていましたが……」

 

「オルコットは無事なんだな。それがわかっただけでも良しとしよう。それと学園に救援を頼んでおいた。もうすぐ来るはずだ」

 

「教官、以前言っていたウルトラマンの力を持ったISを使うのが危険だと言うのはこう言うことだったのでしょうか?」

 

「いや、私もそこまで考えていたわけではない。ただ、強大な力は人類には早いのではないかと思っただけだ。だが、こんな事になるとはな……」

 

擬似的とは言え、草薙はウルトラマンと同等の力を手に入れた。その結果、敵に奪われ、利用され、大きな被害をもたらす事になったのだ。

 

「とにかく今は、迎えが来るのを待とう」

 

そしてしばらくして救援のヘリが来て、千冬達はヘリに乗り込みIS学園へと戻った。

 

 

 




何だか一夏アンチっぽくなってしまいました。そんなつもりなかったのに……。

最近オリ主を既存ウルトラマンにしていいのかと自問自答しています。

これからも不定期ではありますが頑張って更新してきたいです。今後もよろしくおねがいします。


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第47話

比較的早目に投稿できました。


 

IS学園からの救援のヘリを貰い千冬達はIS学園に戻って来た。

 

「織斑先生!皆さん!無事で良かったです!!」

 

ヘリから降りた千冬達を真耶が出迎えた。真耶は千冬達が無事に戻って来た事に安堵するが、同時にセシリアがいない事にも気付いた。

 

「あの〜、オルコットさんは……?」

 

「……オルコットは今、別行動をとっている」

 

「別行動……ですか?」

 

「ああ、あいつ自身が決めた事らしい。そうだな、ボーデヴィッヒ」

 

「はい。真意はわかりませんが、セシリアには何か考えがあると思われます」

 

「湊君だけでなく、オルコットさんまで1人で残るなんて大丈夫なんでしょうか?」

 

「今は2人を信じるしかない」

 

 

 

 

 

 

翌日、とある病室では綾人がベットに横になっていた。その側にはセシリアがいる。セシリアはラウラ達と別れた後に綾人を病院まで運んでいた。近くの病院は既に満員となっていたため郊外にある病院まで来ていた。

 

「……うっ……」

 

その時、綾人が目を開けた。

 

「綾人さん、目が覚めたのですね」

 

「セシリア……?ここは?」

 

「病院ですわ。貴方はあれからずっと眠っていたのです」

 

綾人はゼルガギュロスを倒しアグルから戻った後ずっと気を失っていた。今までの戦闘ダメージや草薙麗美からの人体実験や拷問、そしてゼルガギュロスとの死闘によるダメージ、体力の消耗、疲労が重なった状態だが、1日足らずで意識を取り戻したのは奇跡と言っていいだろう。

 

「お前がここまで俺を運んだのか?」

 

「はい。少し遠くまで来てしまいましたが……」

 

「そうか、すまな……うっ……」

 

綾人は起き上がろうとするが、身体に傷がまだ残っているため痛みが来た。

 

「綾人さん、無理しないでください!今までの分も、あるのですから……」

 

「……いつからだ?」

 

「え?」

 

「いつから気付いてた?俺がアグルだという事に」

 

「アグル……それがウルトラマンの……。すみません、見てしまったのです。避難所の近くに怪獣が現れて、私が1人で戦っていた時に、貴方がウルトラマンになるところを」

 

「……あの時か」

 

セシリアがギールと戦っている時に綾人はアグルに変身した。そこをセシリアに見られていたのだ。

 

「見られていたのか……」

 

「すみません、そのようなつもりは無かったのですが……。何か買ってきますわね」

 

セシリアは気まずくなったのか逃げるように病室から出た。

 

「セシリア……」

 

 

 

 

 

売店で軽く買い物をしたセシリアは、ロビーで殆どの人達がテレビを見てる事に気付き自然と足を運んだ。番組内容はゼルガギュロスが街を襲った時のニュースだった。ゼルガギュロスの襲撃で大多数の死者が出た事、街が壊滅した事を報道していた。そして次に会見の映像が出た。だが、それは信じ難い内容だった。

 

『あの怪獣はウルトラマンに倒されました。しかし、あの怪獣の体内には人質がいたという事が判明しました。ウルトラマンは人質がいたのにも関わらず、怪獣を倒しました。ウルトラマンは人質の命を無視し、結果、人質は亡くなってしまいました。ウルトラマンは敵の怪獣を倒すために人質を見捨てました。ウルトラマンは怪獣を倒すためなら我々人類がどうなろうと知った事ではないのです。我々は、ウルトラマンがいずれ人類の脅威になると判断しました。よってウルトラマンを攻撃対象に指定しました』

 

会見の内容、それはウルトラマンを攻撃対象にした事だった。IS委員会はウルトラマンが人質ごと怪獣を倒したとして、人間を簡単に見捨てる、命を軽視してる事を理由にウルトラマンが人類の脅威になると判断した。これはウルトラマンと根源的破滅招来体を同一視しているという事になる。これを見たセシリアは、信じられないような顔をした。

 

「どうして……どうしてこんな!?」

 

セシリアはすぐに病室に戻った。何故この様な決定をだしたのか、それは前日に遡る。

 

 

 

 

 

『では、報告を』

 

「はい」

 

千冬はモニター越しでIS委員会にゼルガギュロスの事件の事を報告をしていた。IS学園に戻った後、すぐの事だった。

 

「まずは、対根源的破滅招来体IS部隊隊長の草薙麗美さんは、極秘で対根源的破滅招来体用ISを開発していました。そのISは、ウルトラマンと同等の力を持つISと言っていました」

 

『ウルトラマンと同等の力を?』

 

「はい、現に何体か怪獣を倒しています。そのISは草薙さん自身が使用していました。そして今日、基地に球形生命体、スフィアが襲撃してきました。この時も、草薙さんも出動しました。そのISでスフィアを撃破したと思いました。しかし、スフィアは次々に現れ、更には分裂をして数を増やしていきました。これには草薙さんでも多勢に無勢でした。スフィアはこの時草薙さんを執拗に狙っていました。そしてそのISがエネルギー切れを起こし、スフィアは草薙さんに取り付いていきました」

 

『取り付く?』

 

「草薙さんに取り付いたスフィアは巨大化し、ISを装備した怪物になりました。あれはまさに、人間が怪獣になった姿でした。その怪獣は基地の全職員を殺害、基地も破壊されてしまいました。怪獣は街に行き、多くの人々の命を奪い、街を破壊していきました。そこにウルトラマンが現れ、怪獣を倒しました」

 

『草薙隊長はどうなったのだ?』

 

「草薙さんもそのまま、死亡しました」

 

『という事は、ウルトラマンが人を殺したということか』

 

「いえ、スフィアが取り付いた時点で、既に死亡したと思われます」

 

『本当にそう言い切れるのか?』

 

「はい?」

 

『草薙隊長はまだ生きていた可能性もあるのだろう?』

 

「確かにそれは否定できませんが……。隊員もまだ生きていると思いウルトラマンに助けを求めたようです」

 

『なウルトラマンは中に人がいる事を知っていたということですな』

 

「それはそうですが……、それが何だと言うのでしょうか?」

 

『ウルトラマンは人質を見捨てたという事になりますね』

 

「しかし、あそこで倒していなければ被害は更に拡大していました」

 

『だとしても、ウルトラマンが人を殺した事に変わりはないでしょう。ウルトラマンが我々人類の脅威になる可能性があります。なのでウルトラマンをこれ以上野放しにしておくわけにはいきません。よってこれより、ウルトラマンも攻撃対象に指定します』

 

これによって、ウルトラマンは攻撃対象に指定された。何故そこまでするのか?それは単純に気に入らないからである。ウルトラマンが登場してから、世間はISよりウルトラマンが評価されていた。それが気に入らないIS委員会と一部の政府が、ウルトラマンが人質を見捨てたと陥れるためにしたものだった。しかもタチの悪い事に、ゼルガギュロスは元々ISだったという事を会見では一切言わなかった。

 

 

 

 

 

「……」

 

「何だセシリア……」

 

セシリアが病室に戻るなりいきなり綾人に近づいた。

 

「綾人さん、もうウルトラマンにはならないでください」

 

「何?」

 

セシリアは綾人にウルトラマンになるなと言った。いきなりの事で綾人は思考が追いついていないが、セシリアの目は真剣だった。

 

「先程会見で、ウルトラマンを攻撃対象にすると言っておりました。理由は、ウルトラマンが人質を見捨てたからと……」

 

「人質……あの女の事か。そうか、俺はあいつを殺したのか」

 

「殺したなんて、そんなこと言わないでください!!貴方は人を殺してなどいません、あの人はあの時にもう……。それに、貴方にはもう傷ついて欲しくないのです!!」

 

綾人は自分を人殺しだと思った。だがセシリアはそれを否定した。ゼルガギュロスは元々草薙麗美だったが、その時点では既に草薙麗美は死んでいたからだ。そして何より1番の理由は綾人に傷ついて欲しくないからだ。セシリアはこれまでにウルトラマンが傷つくところを見てきた。それは綾人自身にも及ぶ事を知っているからでもある。だからセシリアは綾人にはこれ以上傷ついて欲しくなかった。

 

「セシリア……」

 

だが、その時

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

病院が大きく揺れる。綾人とセシリアは周りの物を掴みバランスを取り始める。

 

「これは……!?」

 

ドガアアアアアアン!!

 

「あ、あれは!?」

 

地底より、以前倒したギールに酷似した怪獣『ギールⅡ』が出現した。

 

 




人が大勢死んだ事よりもウルトラマンが人質を見殺ししたという事を全面的に伝える畜生。

久しぶりにコスモスvsジャスティスを見たのですがジャスティスがグローカーと戦うところで泣きそうになりました。


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第48話

6月になる前に投稿できました。


病院の近くにギールⅡが出現した事で病院の中はパニックに陥った。

 

「そんな……こんな所にまで怪獣が……!?」

 

「……」

 

綾人はベッドから降りて病室から出ようとするが、セシリアに見られてしまった。

 

「綾人さんダメです!行ってはいけません!!」

 

「……止めるなセシリア」

 

「今の貴方は狙われている身でもあるんです!!それにそのお身体で戦ったら、本当に!!」

 

「それでも!!奴を放っておけない。やるしかないだろう」

 

綾人はセシリアの制止を振り切り、病室から出て行った。

 

「綾人さん、待ってください!!」

 

セシリアは綾人を追おうと病室を出ると、病院スタッフと患者が必死に逃げ惑っていた。中には患者を放って自分だけ逃げているスタッフもいた。綾人は反対方向に進んでいてセシリアは追おうとするが中々前に進めなかった。その時。

 

「あっ!」

 

セシリアは松葉杖をついている老人が倒れているのを見つけた。誰もその人を助けようとはせずに、自分が先にと見捨てるように逃げていた。セシリアは綾人とどちらを優先するか迷ったが、目の前の人を助けることに決めた。

 

「大丈夫ですか、立てますか?」

 

「は、はい。ありがとう……」

 

「皆さーん!!落ち着いて避難してくださーい!!」

 

セシリアは看護師が避難誘導をしているのを見かけた。

 

「すみません、この人をお願いします!!」

 

「わかりました、貴女も早く避難してください!」

 

セシリアは頷くと今度こそ綾人の元へ行こうとしたが……

 

「ウルトラマン!!助けて!!ウルトラマン!!」

 

向かいの病室から男の子の声が聞こえ、セシリアはすぐに病室に入った。するとそこには車椅子から転げ落ちた男の子がいた。

 

「大丈夫ですか!?」

 

セシリアはすぐに男の子を車椅子に座らせて病室から出ようした。

 

「お姉ちゃん、ウルトラマン来てくれるよね!?」

 

「……ウルトラマンは……」

 

セシリアは言い淀んでしまう。セシリアは極力綾人にウルトラマンに変身してほしくないと思っている。だが今目の前にいる子どもはウルトラマンを必要としていた。セシリアは複雑な思いを抱いた。

 

「大丈夫です、ウルトラマンはきっと来てくれますわ」

 

セシリアは男の子の思いを汲み取ってウルトラマンは来てくれると安心させる事を選んだ。

 

 

 

 

 

綾人は病院に屋上に立っていた。そこからはギールⅡが病院に迫っているのがよく見えている。それを見ながら綾人はアグレイターを構えた。

 

「行くぞ……アグル!!」

 

綾人はアグルに変身し、ギールⅡの前に降り立った。だがやはりライフゲージは既に点滅している状態だ。それでもアグルはギールⅡを抑え込んでいる。

 

「ウルトラマンだ!!」

 

男の子はウルトラマンが来てくれたと喜びを見せる。だがセシリアは不安な様子で戦いを見ていた。

 

(綾人さん……)

 

「さあ、行きましょう。(綾人さん、私も後で行きます)」

 

セシリアはまず男の子と一緒に避難した。

 

 

 

 

 

 

「大変です織斑先生!!病院の近くに怪獣が現れました!!」

 

「何だと!?」

 

IS学園の一室では、千冬と真耶、専用機持ち達が揃っていた。真耶は怪獣が出現した知らせを受け、その映像を映した。

 

「既にウルトラマンが戦っているようです!!」

 

「ウルトラマン……!?」

 

ウルトラマンと聞いた一夏が露骨に嫌悪感を見せた。未だ草薙麗美の事が許す事が出来ていないようだった。そして他の専用機持ち達も映像を見ると、ウルトラマンが苦戦しているのが見られた。

 

「やはりまだウルトラマンの体力が回復していないのか?」

 

「まだ一日たってない状態なのに、どうしてそこまで……?」

 

「あんな戦いがあったのに、無茶しすぎよ!!」

 

「だがこのままじゃ、ウルトラマンがもたないぞ」

 

(何故だ!?何故そんなにボロボロになりながら戦う!?ウルトラマン!!)

 

千冬はわからない。何故ウルトラマンがそうまでして戦うのか。その答えは、まだわからない。

 

 

 

 

『ハアアアア!!』

 

アグルはギールⅡの頭突きを受け止め、そのまま蹴りを浴びせた。だがアグルはすぐに跪いてしまった。

 

セシリアは男の子と一緒に病院から出たが、そこは病院から出てきた人たちで溜まっていた。患者がいるため急ごうにも急げないのだろう。

 

「ウルトラマンだ!」

 

「ウルトラマンって人質を見殺しにしたんじゃ……」

 

人々はウルトラマンをみて様々な感情を抱いた。ウルトラマンが助けに来てくれたと思う者、会見を見て、別に自分達の為に戦っているわけじゃないと思う者様々だ。それらを見たセシリアは複雑な思いを抱くが、まずは避難させる事を最優先にした。

 

「皆さん、ウルトラマンが怪獣を抑えている間に避難を!!」

 

ウルトラマンへのフォローをしながら避難を促す。だがその時、ギールⅡの腹部が開きマグマ弾が発射された。

 

『ウアアアア!!』

 

一発はアグルに直撃した。だが、発射されたのは一発だけだはなかった。その後ギールⅡはマグマ弾を乱射した。アグルに直撃する程ではないが、方向がまずかった。その内の一発が人々の所へ向かっていた。

 

「うわああああ!!」

 

「キャアアアア!!」

 

マグマ弾が発射され、人々は恐怖に陥った。そして……

 

ドガアアン!!

 

「あ、あれ……?」

 

「助かった……?」

 

人々は何故助かったのかわからない。音はしたのに何故当たっていないのか。

 

「あ、あれは!?」

 

一人が上を見上げると、ある事に気付いた。それは……

 

『ウア……アッ……』

 

そこには、自分達の所を向いているウルトラマンがいた。マグマ弾が直撃する直前にウルトラマンが駆けつけ人々を庇っていたのだ。

 

(綾人さん!!)

 

「ウルトラマンだ……」

 

「ウルトラマンが、守ってくれたの?」

 

アグルはどうにか立ち上がり、ギールⅡの所へ向かっていった。そして……

 

「ウルトラマアアアン!!頑張れえええ!!」

 

セシリアと一緒にいた男の子が声を出してウルトラマンを応援した。

 

「頑張れ!!ウルトラマン!!」

 

「ウルトラマン!!頑張って!!」

 

周りの人々も、ウルトラマンに声援を送った。大人も一緒になり声援を送った。ウルトラマンが自分達を助けてくれた。助けてもらった自分達に何が出来るのか?それはウルトラマンへの応援だ。既に人々は会見の事など忘れ、目の前で戦っているウルトラマンへの勝利を願っていた。それを見たセシリアは安堵した。

 

(綾人さん、私も行きます!!)

 

人々の声援を受けたアグルはギールⅡの前に立ち塞がる。だが、それでも今のアグルは立っているのがやっとだった。そしてギールⅡは再びマグマ弾を放とうと腹部を開いた。アグルは身構えるが、その時後ろからビームが飛んできた。ビームはギールⅡの腹部に直撃した。アグルは後ろを見ると、セシリアがブルーティアーズを纏い、ギールⅡに攻撃していた。セシリアはビットで次々とギールⅡの腹部に攻撃を当てていく。それにより、ギールⅡは開いた腹部に攻撃が直撃したためダメージが大きく入る。セシリアとアグルは目が合うと、互いに頷いた。

 

「今ですわ!!」

 

『ハアアアア……デアアアアア!!』

 

アグルはフォトンクラッシャーを発射した。フォトンクラッシャーはギールⅡに直撃し、そのままギールⅡは爆散した。

 

『ワアアアア!!』

 

ウルトラマンが勝った事で、人々が喜びの声をあげる。アグルとセシリアは再び向き合い、アグルはゆっくりと頷いた。セシリアも頷いたその時だった。

 

『ウアア!?』

 

「えっ!?何が!?」

 

どこからか飛んできたビームがアグルに直撃した。アグルとセシリアはビームが来た方向を見ると、ラファール部隊がやって来ていた。

 

 




ギールⅡを倒しました。そしてまたもやラファール部隊がやって来ました。因みにこのラファール部隊は最初にアグルを襲ったのとは別です。アグルを襲ったラファール部隊はゼルガギュロスによって既に全滅しています。

次の投稿はいつになるかわかりませんが、次回もお願いします。


最近思った事。ギンガビクトリーって別にギンガとビクトリー融合してないんじゃないかということを。


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第49話

すみません。気付いたらこんなにたってました。お待たせして申し訳ありません。
久しぶりと言う事もあり短めです。ブランクとスランプです。




 

アグルがギールⅡを倒した次の瞬間、どこからか飛んできたビーム攻撃がアグルに直撃した。その攻撃の正体は、ウルトラマンを排除するように命じられて来たラファール・リヴァイヴの部隊だった。

 

「ラファール・リヴァイヴ……まさか、ウルトラマンを!?」

 

「各員、攻撃開始!!」

 

隊長の号令と同時に、他のラファール・リヴァイヴによる攻撃が始まった。最初の隊長の不意打ちを受けていたアグルはまだ立ち上がってはおらず、倒れたままの状態で他のラファール・リヴァイヴの攻撃を受けた。

 

『ウアアアア!!』

 

倒れている且つ体力がただでさえ無いが故に、避ける事が出来ない。さらにダメージも大きく受けている。ライフゲージの点滅も早くなっており、変身が解けるのも時間の問題だった。

 

『ウアッ……アッ……』

 

一度攻撃が止むも、もう既にアグルはボロボロだった。

 

「とどめよ」

 

隊長機がアグルにとどめの一撃を与えようと武器を構えた。その時だった。

 

「やめてください!!」

 

セシリアがアグルを守るようにラファール・リヴァイヴ部隊の前に立ち塞がった。

 

「どきなさい。でなければ貴女も撃つわよ」

 

「何故このような事をするのです!?」

 

「何故って、ウルトラマンを倒すよう命令を受けたからよ」

 

隊長はそう答えた。このラファール・リヴァイヴの部隊はあくまで上からの命令で動いているにすぎなかった。

 

「ですがウルトラマンは、ここにいる方達を命懸けで守りました!!なのに何故!?」

 

「命令だからって言ってるでしょう。いいからどきなさい。本当に撃つわよ」

 

銃口を向けられてもセシリアは一切動じず、相手を見据えている。絶対にアグルーーー綾人を傷付けさせないという意志が現れていた。互いに銃口を向けあい、いつ引き金を引いてもおかしくない、そんな時だった。

 

「やめろーーー!!」

 

「撃たないでーー!!」

 

「ウルトラマンは俺たちを守ってくれたんだ!! 」

 

地上にいる人々が、ラファール・リヴァイヴ部隊に攻撃をやめるよう訴えかけた。あの時、ウルトラマンが自分達を守ってくれた。それなのに、何故ウルトラマンがこのような仕打ちを受けないといけないのか?こんな理不尽な事があって良い筈がないと、人々は声をあげた。会見を見てウルトラマンが攻撃対象にされている事は知っている。だがウルトラマンは自分達を守った。命懸けで守ってくれた。戦いを見て確信した。ウルトラマンは味方であると。

 

「皆さん……。お願いします、攻撃をやめてください!!」

 

隊長はセシリアと人々の声を聞き考える。ウルトラマンは本当に倒すべき存在なのか?確かに人質ごと敵を倒したかもしれない。そもそもそれは本当の事なのか?しかしあそこで倒さなければあれ以上に被害が広がっていたのは確実である。そして今、ウルトラマンは病院と人々を守った。それは紛れも無い事実である。ウルトラマンがいなければ、病院ごとここにいる人々は全滅していたに違いない。なら何故ウルトラマンを攻撃するのか?命令を受けたからである。しかし、命令を受けたからと言ってこれは本当に正しい事なのか?ウルトラマンを攻撃する事になんの意味があるのか?……意味など無い。

 

「……総員、撤収するわよ」

 

「たっ、隊長!?」

 

「本当にいいんですか!?確かに今、ウルトラマンを攻撃する事に疑問はありますが……」

 

「いいわよ。責任は私が取るわ、撤収よ」

 

「りょ、了解!!」

 

ラファール・リヴァイヴ部隊は撤収を始めた。

 

「あの!」

 

セシリアは隊長を呼び止めた。

 

「何かしら?」

 

「あ……ありがとうございます」

 

「勘違いしなで。私達が世間から悪く言われたく無いだけよ」

 

隊長はそう言い残し、他の隊員と共に撤収していった。攻撃を止めた事に、セシリアだけでなく人々も安堵した。

 

『ウアッ……』

 

アグルもようやく立ち上がった。まだふらついてはいるが、あの場で変身が解けなかっただけで十分だろう。

 

「綾人さん……」

 

その時、アグルはセシリアを右手に乗せた。

 

「え?な、何をするのですか?」

 

セシリアが困惑する中、アグルは次の行動に移った。

 

『ダアッ!!』

 

「キャアアッ!?」

 

アグルはセシリアを手に乗せ、そのままどこかに飛んで行った。

 




今回はツンデレ隊長さんが出てきました。今後も何かで出したいですね。
そしてアグルがセシリアを拉致りました。(語弊のある言い方)

次もいつになるかわかりませんがお願いいたします。


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第50話

遅くなりました。約一年ぶりです。今回もあまり進んではいませんが、読んでいただければ幸いです。


アグルはセシリアを無理矢理手に乗せて病院を後にし、今はどこかの海の上を飛んでいた。セシリアは当然、アグルが何故こんな事をしたのかわかっていない。だが、案外満更でもなかった。

 

(綺麗な海ですわ……)

 

セシリアは空から直接見る海に感動していた。ISで空を飛ぶ事はあるが、ゆっくり海を眺めている余裕などない。だが今はウルトラマン、綾人と同じ目線で海を見ているのだ。

 

だがその時、アグルのライフゲージの点滅が早まった。

 

『ウアッ……』

 

「綾人さん!?」

 

アグルは徐々に透明になっていき、姿を消した。当然、セシリアが乗っていた手も消え、落下してしまった。

 

「キャアアッ!?」

 

だがセシリアはすぐにISを展開し、体勢を立て直した。セシリアは落下を免れ、綾人を探した。

 

「綾人さん!!」

 

綾人は比較的早く見つかった。セシリアはすぐに綾人の元へ行き、何とか海に落ちる前に捕まえた。だが綾人は無理をしすぎていたためかすでに気を失っていた。

 

「本当に、無茶ばかりするんですから」

 

今度はセシリアが綾人を抱え飛び出した。早く綾人を休ませようと飛び続けていると、浜辺が見つかりすぐにそこへ向かい、地上に降りた。休める場所がないか探しているセシリアは、あることに気づいた。

 

「ここは確か……」

 

セシリアと綾人が降りた場所、そこは偶然にも、以前臨海学校で訪れた場所だった。そうとわかったセシリアはすぐに花月荘へと向かった。

 

「失礼します……」

 

「はーい……あら?貴女は確か……?」

 

「IS学園のセシリア・オルコットでございます。実は……」

 

セシリアが旅館に入ると、すぐに女将の清洲景子が出迎えてくれた。セシリアは事情を説明し、女将は快く聞き入れ、綾人を部屋まで案内させてもらった。

 

 

 

 

 

 

 

「病院付近に現れた怪獣はウルトラマンが倒しました」

 

「ああ……」

 

IS学園では、千冬と真耶、専用機持ち達がアグルがギールⅡを倒したところを見ていた。その後の映像はなく、ラファール部隊が一度攻撃したことまでは知らない。セシリアが一緒にいたことも気づいていなかった。そして千冬は、アグルが病院とそこにる人々を守ったことに安堵していた。

 

(安心しているのか、私は……?)

 

千冬は内心ではウルトラマンを一方的に憎んでいた。だが、今までの戦いで自分の生徒達、弟の一夏がウルトラマンに助けられたというのは事実だ。

 

(いい加減、私も大人にならないとな)

 

千冬はウルトラマンに対しての敵対感情を今だけは捨てる事にした。だが憎しみは完全に消えた訳ではない。あくまで今現在の状況を鑑みてのことだ。それでも、これは大きな一歩といえるだろう。

 

「ウルトラマンの奴、病院守って罪滅ぼしのつもりかよ」

 

対して、今度は一夏がウルトラマンへの憎しみが生まれてしまった。草薙が死んでしまったことが余程こたえている。

 

「やめろ。今はそんな事を言っている場合じゃない」

 

「千冬姉……でも、千冬姉だってウルトラマンを!!」

 

「状況が状況だ。今の私たちは、ウルトラマンに頼らざるを得ない。悔しいことにな。だから今は余計な考えは捨てろ」

 

「千冬姉……」

 

一夏は千冬の言う事は理解はできているが納得はできなかった。草薙のことを忘れろと言われているようだった。そしてセシリアを除く専用機持ち達が集められ、今後の対策が話し合われた。

 

 

 

 

 

地球からそう遠くない宇宙空間。その空間は今、歪んでいる。宇宙空間の歪み、それを意味するのは、脅威。かつてない脅威が、地球に迫ろうとしていた。

 

 

 




一夏と千冬の立場が逆転しました。千冬さんを早く完全に味方にしたいです。そして、あれの用意もできました。次回もいつになるかわかりませんがお願いします。


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第51話

お久しぶりです。結局1年近くなってしまいした。やりたい事が多すぎてこちらか手につかない状態です。
久しぶりなのでお粗末かもしれませんが、どうぞ。


 

 

『ギャアアアアア!!』

 

その辺り一面は、火の海となっていた。建物は崩れ、木々は燃え、全て炎に包まれていた。そしてそこには、火の玉を吹く、超巨大生物が、ありとあらゆるもの破壊していた。

 

『ウアッ……』

 

当然そこにもアグルもいる。だがアグルは既に跪き、ライフゲージも点滅していた。その超巨大生物は、今まで戦ってきた怪獣の比にならない大きさだ。その前には、アグルでさえもちっぽけな存在だった。そんな絶体絶命の状況で、超巨大生物が吹いた火の玉がアグルに迫っていく。その火の玉はアグルを飲み込む程の大きさだった。アグルは自分に迫ってくる火の玉を前に動けず、そして……。

 

 

 

 

 

「うわあああああ!?」

 

声を大きく上げて飛び起きる。綾人は汗をかきながら、今の状況を確認した。

 

「はぁ、はぁ……夢……?」

 

綾人は見ていた夢を思い返す。燃え盛る大地。破壊の限りを尽くす超巨大生物。その前に倒れるアグル。その夢はあまりにも凄惨なものだった。

 

「今の夢は……まさか……」

 

綾人は嫌な予感がした。以前夢に怪獣が出てきたことがあり、その後実際に怪獣が出現した。あれがアグルが見せた夢なら、今回もそういう事になる。だが、今見た夢は、最初に見たもの以上の怪獣だった。これもアグルが見せたものなら、それが現実となる可能性がある。そんな事を考えている時、外から足音が聞こえてきた。

 

「綾人さん、大丈夫ですか!?」

 

セシリアが声を上げて入ってきた。綾人の叫び声を聞いて来たのだろう。

 

「セシリア……?そういえばここは?」

 

綾人は自分が今どこにいるのかわかってなかった。セシリアを捕まえた時に、あてもなく飛んでいたからだ。

 

「ここは花月荘ですわ」

 

「花月荘?」

 

「はい。それより、声を上げていましたけど、大丈夫なのですか?」

 

「あぁ、嫌な夢を見てた」

 

「夢、ですか?」

 

「あぁ。だから心配はいらない」

 

「心配します!!飛んでる途中で姿が戻ってからずっと寝込んでいたのですから!!」

 

「そうだったのか……悪いな、心配ばかりかけて」

 

「そう思うのなら絶対に無茶はしないでください」

 

「……善処する」

 

そう言うと綾人は、一人で部屋から出ようとする。

 

「綾人さん、どこに行くのですか?」

 

「ちょっと外の空気を吸ってくる」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、IS学園では今後の対策会議が行われていた。草薙がいなくなった今、千冬が指揮を執っている。

 

「お前たち、草薙さんに代わって私が指揮を執る。やる事は今までと変わらんが、敵も強くなっている。命がけの戦いである事には変わりわない。今まで以上に気を引き締めていけ」

 

『はい……』

 

専用機持ちたちは返事をするがどこか元気がなかった。草薙が死んだショックがまだあるのだろう。

 

「教官、ウルトラマンの事はどうするのですか?」

 

ラウラが千冬に聞く。今までの千冬はウルトラマンを敵対視していた。だが、そうも言ってられない状況なのだ。

 

「ウルトラマンとは共闘路線をとる。ウルトラマンがこちらをどう思ってるのかは知らないが、こちらが敵意を見せなければ、おそらく大丈夫だろう」

 

千冬はウルトラマンと共闘路線をとると宣言した。ウルトラマンを敵対視していた千冬がそう言うと、専用機持ちたちは最初は驚いていたが、すぐに安堵した。千冬がウルトラマンは敵ではないと思ってくれていると。

 

「本気かよ千冬姉!?」

 

だが一夏だけは否定的だった。どうも気持ちの整理ができていないらしい。

 

「さっきも言っただろう。今の私たちにはウルトラマンに頼らざるを得ないんだ」

 

「でも……」

 

「でもも何もない。わかってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

綾人は砂浜に来ていた。そこで綾人は、遠くの海を眺め、黄昏ている。そこは漣の音が響いていた。

 

「綾人さん」

 

「……」

 

セシリアが呼びけるが、綾人は特に反応をせずに海を眺め続ける。

 

「お隣、失礼しますね」

 

セシリアは綾人の隣に座り、一緒に海を眺めた。綾人は隣に座られても、特に嫌がらずに、変わらず眺め続けた。

 

「海、好きなのですか?」

 

「……物心ついた頃には、もう海は好きだった。自分でもわからないけどな。夏になると、父さんと母さんが海に連れて行ってくれてたんだ」

 

セシリアの問いかけに綾人はそう答えた。綾人は楽しそうに話すが、同時に哀しくも感じた。

 

「綾人さんにとって海は、大切な思い出の場所なのですね」

 

「あぁ。丁度10年前か、海ではしゃいでいた時に、溺れてしまったんだ。子供ながらに死ぬんじゃないかと思った。だがその時、目の前に光が現れた」

 

「光……ですか?」

 

「海の中が急に光って訳がわからなかった。だが、そこにあいつがいたんだ」

 

「あいつとは?……まさか!?」

 

「アグルだ。そこで初めてアグルと出会った。我ながらあの世に行ったのかと思ったよ。海の中のはずなのに、目の前に巨人がいるんだからな」

 

「それで、綾人さんはウルトラマンに……」

 

「いや、まだ出逢っただけだ。実際に力を手に入れたのは、その後だ」

 

「そうなのですか?」

 

「あぁ。あの後色々あってな。アグルの力を手に入れて10年経ったが、まだわからない。この力がなんなのか、アグルは何者なのか。何故俺に力を与えたのか。今でも全然わからないんだ」

 

綾人はアグレイターを握りしめ、セシリアに打ち明けた。アグルとの出会いを。与えられた力の意味を。

 

「わたくしの考えですけど、綾人さんが海を好きでいるからではないですか?」

 

「……どうなんだろうな」

 

「きっとそうです。海が好きだから、綾人さんを選んだ。わたくしはそう思います」

 

「……そうか」

 

「では中に戻りましょう。女将さんが食事を用意してくれるそうですわ」

 

「あぁ、行くか」

 

話を終え、2人は旅館へと戻った。少しだが綾人は気持ちがスッキリとした感じがした。本人は思ってないかもしれないが、誰かに聞いてほしかったのだろう。そして、2人が気付かないであろう宇宙空間は、今もまた歪んでいた。

 

 




気付けば初投稿って5年前なんですよね。時間の流れは早いですね。5年があっという間です。

この作品でやりたい事と出したい怪獣は3年くらい前から考えてるんですけど、話が進まないというのが……
ちなみにガイア以外の怪獣をもっと出したいと、これも3年前から思っています。ギャラクトロンとか、ギャラクトロンとか、ギャラクトロンとか。

次回もいつになるかわかりませんが、よろしくおねがいします。


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第52話

お待たせしました。半年ぶりの投稿となってしまいました。読んでる皆様に申し訳ないです。では、どうぞ。


宇宙空間で発生している歪みは、今もなお続いている。それどころか、歪みは段々と確実に大きくなっていた。

 

「これは流石にまずいかな……」

 

あの篠ノ之束がまずいと言うほどに、この状況はかなり異質である。宇宙空間が歪むなど、誰も思うはずのない事なのだから。だが、現実にそれは起きている。篠ノ之束でさえあれはかなりヤバいと直感でわかるくらいに。

 

「ちーちゃんに教えとかないとね」

 

 

 

 

IS学園、会議を終え千冬達は一旦解散という流れになり、それぞれ退出しようとしていた時だった。

 

「通信?束か?」

 

束から通信が来て、千冬はモニターを映した。

 

「姉さん!?」

 

『やっほー、ちーちゃん、箒ちゃん、いっくん!!』

 

「束さん、一体どうしたんですか?」

 

『今日は話したい事があるんだよ。聞きたい?』

 

「話したい事があるなら勿体ぶらずに早く言え」

 

『じゃあこれを見て』

 

束はリアルタイムでの空の映像を見せた。ぱっと見では特に何の変哲もないただの夜空だ。

 

「ただの空……ですか?」

 

「束、何を見せたいんだ?」

 

『これだよ』

 

束は空の映像を拡大した。すると拡大された部分の空は異様に歪んでいた。

 

「こ、これは一体……?」

 

「空が、歪んでる!?」

 

「どういう事よ……?」

 

専用機持ち達は歪んでいる空の映像を見て驚愕した。空が歪むなど、普通では考えられない。当然の反応だ。

 

「束、これはどういう事だ?」

 

『見ての通りだよ。はっきり言って、かなりヤバいよこれ』

 

「あの束さんがヤバいって言うなんて、なんなんだよ一体?」

 

『調べてみたんだけどこれ、ワームホールと繋がってるみたい』

 

「ワームホールと繋がってるだと!?」

 

「ワームホールと繋がってるって、かなりヤバいじゃないの!?」

 

『それで、実はこれ初めてワームホールが出現した時には既にこうなってたんだ。多分だけど、これが原因でワームホールが出現したかもしれない』

 

束はいつになく真面目な口調で話している。それほど束にとっても緊迫しているのだろう。

 

「その言い方、この歪み自体は前からあったみたいだな」

 

『うん。私が初めて観測したのは、銀の福音とウルトラマンが戦った後だね』

 

「ウルトラマンと銀の福音が?どう言う事だ?」

 

『あの2体の戦闘で謎のエネルギーが発生してたんだ。多分あの時に発生したエネルギーが空間を歪ませたのかもしれない』

 

「あの時の戦いがトリガーになったのか。それがワームホールを出現させたというのか?」

 

『そうだよ。でもそれはワームホールを出現させただけ。ここまで歪みがはっきりしたのは、あのIS擬きの時だよ』

 

「IS擬きって……?」

 

「草薙さんか……」

 

束はゼルガギュロスをIS擬きと言い出した。ISの生みの親としては、あれはISではないらしい。

 

『あのIS擬きってウルトラマンと同じ力を持ってたんだよね?IS擬きとウルトラマンの光線がぶつかった時に、福音の時以上のエネルギーが発生したんだ。敵はそれを利用したんだろうね』

 

「じゃあ、そのせいで草薙さんは……」

 

『バカだよねー。ウルトラマンと同じ力を持つISを作るなんて。敵に使ってくださいって言ってるようなものじゃん』

 

「束さん!?何言ってるんですか!?草薙さんは怪獣と戦うために!!」

 

一夏は草薙をバカにされたことで声を荒げた。草薙のおかげで助かった事もかなりあるからだ。

 

「よせ、こいつに当たってもしょうがない。それで、結論はどうなんだ?」

 

『結論はねー、多分だけど、今まで以上の敵が現れる。って事くらいかなー』

 

「今まで以上の敵って……」

 

「そんな……」

 

「これまでも強力な敵だったが……」

 

「さらに強い敵が現れるというのか……」

 

束の発言で専用機持ち達は弱気になってしまった。今までも苦労して戦ってきたが、それ以上の敵が来るとなれば、こういう反応にもなるだろう。

 

「束、お前の予測では、後どれくらいで敵が現れるんだ?」

 

『ちょっと待っててねー』

 

そう言って束はその敵が現れるというワームホールが発生するかを計測を始めた。千冬は少しでも対策を取るために、遅くなれと願っている。一番は、ワームホール自体が発生しない事だが、すでに歪みが発生している以上、敵が現れる前提で考えなければならない。そして、束の計測が終わった。

 

『えっとねちーちゃん……』

 

「束、どうなんだ?」

 

『言いづらいんだけどね……』

 

次に束から出た言葉、それは……

 

『もう出てくる』

 

 

 




すみません。今はこれくらいしか書けないです。あいつが出てくるのに出るところまでいかないです。投稿しなくちゃと思ってもモチベーションが上がらないのです。次回もいつになるかわかりませんが待っていただければ幸いです。


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第53話

一週間程度で投稿する事ができました。


食事を終え、片付けを済ませた綾人は再び砂浜に来ていた。綾人は砂の上で仰向けとなり、夜空を見上げる。こんな時でも、空は雲ひとつない夜空で、星がキラキラと輝いてる。こんな綺麗な空が歪んでいるなんて、思いもしない程に。すると

 

「綾人さん、またここにいらしてたのですか」

 

セシリアの声が聞こえ、綾人は振り返る。するとセシリアは綾人の隣に行きそのまましゃがみこんだ。

 

「今度はどうされたんですか?」

 

「実は、夢の事が気になってたんだ」

 

「夢、ですか?一体どのような?」

 

「かつてないほどの、巨大な怪獣が現れる夢だ」

 

綾人は自分が見た夢をセシリアに話した。ワームホールから超巨大な怪獣が現れ、全てを焼き尽くし、破壊する事を。そしてその怪獣に、ウルトラマンが敗北する事を。

 

「そ、それは、綾人さんが見たただの夢ですよ。綾人さんが気にする事ではありませんわ」

 

夢はただの夢。そう思うのが普通だ。だが綾人はそれはただの夢ではない思っている。いや、そう思わざるをえなかった。それはもう確信だった。

 

「ただの夢なんかじゃない。初めて怪獣が現れた時も、いや、その前から夢を見てたんだ」

 

コッヴが出現した際、綾人はそういう夢を見ていた。その夢が現実に起きた。だからこそ、あの夢は現実になる。そう確信していた。

 

「そんな……本当にその怪獣が現れたら、一体どうすればいいのですか……?」

 

「どうするも何も、戦うしかないだろう。俺が、アグルの力で」

 

心配するセシリアを余所に、綾人はそう平然と答える。怪獣が現れたら自分が戦えばいい、そう言った。

戦うしかない。それを聞いたセシリアは

 

「綾人さん、その時は私も一緒に戦います。綾人さんだけに戦わせるわけにはいきませんから」

 

「セシリア……ん?」

 

その時、空気が変わった。綾人は空を見上げてみると、空が歪んでいるのがわかった。歪みが視認できるようになっていたのだ。そしてそれが夢に出てきた怪獣を呼び寄せるものだと、直感でわかった。そして、ワームホールが出現した。

 

「綾人さん、まさかあれが!?」

 

「……来る!!」

 

 

 

 

「束、もう出てくるとはどういう事だ!?」

 

『ごめんちーちゃん。気付くのが遅かったみたい』

 

千冬は束にもう出てくると言われ焦り出した。流石の束自身もこうなるとは思っていなかった。

 

「織斑先生、ワームホールが出現しました!!」

 

「何っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

ワームホールが出現し、空の歪みも広がっていく。そして、遂に現れた。

 

『ギャアアアア!!』

 

咆哮が響き渡る。ワームホールから超巨大な頭が、それに続いて長い首が現れる。

 

『巨獣 ゾーリム』が出現した。

 

「綾人さん、ひょっとしてあれが……」

 

「ああ。だがあいつは頭しか出てきていないが」

 

綾人の言う通り、ゾーリムは頭しか出てきていない。ワームホールから出てきたはいいものの、身体が大きすぎるため全身が出てこれない状態だった。だが頭だけでも、その大きさは計り知れない。ウルトラマン以上の大きさである事は見ればわかる事だが。

 

「奴は俺が食い止める。セシリアは旅館の人と逃げるんだ」

 

「ダメです!!綾人さんも傷は完全に癒えていないんです!!だから一緒に!!」

 

「ここで奴を食い止めないと、辺り一面火の海になる。だから俺は行く」

 

「なら私が行きます!!綾人さんは皆さんと一緒に……!!」

 

「セシリア!!」

 

「ッ!?」

 

急に綾人は声を張り、その迫力でセシリアは孕む。綾人がこんな風になるなど、今までなかったからだ。

 

「見てわかるだろ。あれは人間がかなう相手じゃない。奴を止められるのはアグルだけだ。だからお前は逃げろ」

 

「ですが綾人さんの見た夢が本当なら、ウルトラマンは負けているのですよね!?もし今の状態の綾人さんが戦ったら、本当に……」

 

セシリアはアグルが負けるのではないかと不安になっている。話を聞いたからのもあるが、ゾーリムは顔だけでもかなりの大きさだ。ウルトラマン以上のサイズであることは間違いない。そして、綾人の体力。綾人は今までの戦いでの体力も回復していない。

 

「それでも、アグルの力を持っている以上、俺がやらなきゃいけないんだ。俺が戦わなければならないんだ!!」

 

「仮にあの怪獣に勝ったとしても、綾人さんが無事でいられる保証はないんです!!もし、万が一の事があったら、私は……」

 

「俺は絶対にあいつを倒す。万が一の事があったら、その時はその時だ。最悪、死んでしまうかもな」

 

「そんなの絶対にダメです!!綾人さんもちゃんと生きて帰ってくるんです!!死んでしまうかもなんて、簡単に言わないでください!!」

 

今度はセシリアの感情が大きくなる。セシリアは綾人の無茶を何度も見ている。今までが無事だったとはいえ、今回も無事であるとは限らない。

 

「セシリア……悪かった。お前は心配性だからな。わかった、絶対に戻ってくる。約束する」

 

「それだけでは足りませんわ。平和になったら、買い物に付き合っていただきますわ」

 

「どーせ荷物持ちだろ」

 

「ふふっ、当然です」

 

「しょうがないな、約束だ。あいつを倒して、絶対に戻って来てやる」

 

「はい、約束ですわ」

 

綾人とセシリアは約束を交わす。綾人が絶対に戻ってくるようにと。そして、荷物持ちをしてもらう事を。

 

「ああ、じゃあ行くぞ。アグルウウウウウウゥゥゥゥ!!」

 

綾人はアグルに変身し、ゾーリムに向けて飛び立った。アグルとゾーリムの戦いが、幕を開けた。




遂にゾーリムが登場しました。ここまで長かった。ゾーリムとの戦闘は次回からです。

次回もいつになるかわかりませんがお願いします。


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第54話

また半年以上待たせてしまいました。一回投稿するとモチベーションが下がってしまい、結果こうなってしまいました。



 

 

巨獣ゾーリムが出現し、IS学園にいる千冬達もモニターでその姿を確認した。モニター越し、そして頭部だけでも、その大きさはかなり伝わってくる。

 

「な、なんて大きさだ……」

 

「あんなのと、どうやって戦えばいいのよ!?」

 

「束、これがお前の言っていた奴なのか……」

 

千冬はゾーリムの姿を見て、驚愕はしたが一周回って冷静になっていた。他の専用機持ち達と真耶が恐怖に駆られている中で、自分は冷静でいなければと思ったのだろう。

 

『まさか束さんでもこんなのが出てくるなんて思わなかったよ。でも大きすぎて頭しか出てないみたいだけど』

 

束でもあれほどの巨大なものが出現するとは思っていなかった。

 

「教官、出撃します!!全身が出る前に、奴を殲滅します!!」

 

ラウラはそう言った。全身が出る前に倒そうと千冬に提案した。だが……

 

「……ダメだ。出撃は許可できない」

 

「何故ですか教官!?このままでは街が!!」

 

「そうだぞ千冬姉!!俺たちが行かないでどうするんだよ!?」

 

千冬は出撃を許可しなかった。それに対してラウラと一夏が千冬に噛みつく。

 

『ここはちーちゃんの言う通り行かない方がいいと思うよ』

 

「姉さんまで……?」

 

『無謀だからだよね、ちーちゃん』

 

束が千冬の代わりに言った答え、それは無謀というものだった。

 

「束の言う通りだ。ISだけで奴と戦うのはあまりにも無謀すぎる。死にに行くようなものだ」

 

「では、どうすれば……」

 

「……ウルトラマンに、任せるしかないのかな」

 

シャルロットがそう言うと、千冬が俯きながら少し間を置き、「……あぁ」と答えた。

 

『癪だけどそうするしかないよねー。でも、ウルトラマンでも勝てるかなー、あいつに』

 

「俺たちは、何もできないのかよ……!!」

 

ISという力があるのに何もできない。その歯痒さが、一夏をはじめ、専用機持ち達にのしかかる。ISではあの巨大な怪獣に敵わない、戦うのは無謀である。そんな事はわかりきっていた。それでも戦えるならと思ったが、千冬ですら無謀と言わせる相手に、自分達だけでどうにかできるわけがない。それが現状なのだ。

 

だが、その時だった。

 

「織斑先生、ウルトラマンです!!ウルトラマンが現れました!!」

 

ウルトラマンが現れた。真耶のその言葉を聞いた千冬達がモニターに目を向けると、ゾーリムに立ち向かおうとするアグルの姿が映っていた。

 

「ウルトラマン……」

 

一夏はアグルを見るなり拳を握りしめる。それはアグルに対する憎しみか、それとも現状アグルに頼るしかないという不甲斐なさからなのか。

 

「一夏、気持ちはわかるが今はウルトラマンに任せるしかないんだ。それに、草薙さんのことだって、ウルトラマンでさえああするしかなかったんだ。ウルトラマンを恨んでもしょうがないだろう」

 

「箒、そんな事はわかってる。わかってるさ!!でも……」

 

一夏は箒の言うことを理解はしていた。あの時ウルトラマンは草薙を倒すしかなかった。頭では理解しているが感情が追いついていなかった。ウルトラマンならもしかしたらと、勝手に期待し、勝手に裏切られた。それは一夏本人も百も承知なのだが、やはり精神面がまだ未熟であるがゆえなのか。

 

(ウルトラマン……)

 

千冬もまた、ウルトラマンに思うところがあるようだった。

 

「今はもう、ウルトラマンに任せるしかないのよね……」

 

「頼んだぞ、ウルトラマン」

 

 

 

 

 

 

綾人がアグルに変身し、ゾーリムに向かっていく。ゾーリムは地上からかなり離れたところにいるが、その巨体ゆえに近くに感じる。

 

アグルはある程度飛び立つと、ゾーリムに対しリキデイターを発射した。だが当たったには当たったがダメージは無いに等しかった。

 

すると今度はゾーリムが反撃に出た。ゾーリムは口から火球を一発アグルに放った。アグルはバリアを展開し、攻撃を防いだ。だが……

 

『ウアアッ!?』

 

火球の力が強かったのか、その衝撃でアグルは大きく仰け反り、バランスを崩した。だが途中でどうにか体勢を立て直すことに成功した。

 

「綾人さん……」

 

旅館の人たちを避難させたセシリアは綾人の身を案じていた。アグルとゾーリムの戦いは、当然離れた場所からでも見えている。そして戦いの激しさも、その身に伝わっていた。

 

ゾーリムは再び火球を放った。アグルはアグルブレードを装備し、火球を斬りつけることで、相殺させた。だがゾーリムはこれでもかと火球を連射させてくる。アグルは火球をなんとか避けたり、斬りつけたりしているが、だんだんと体力が消耗していた。それもそのはず、アグルブレードはエネルギーが消費しやすいため、長時間使用すると体力も消耗してしまう。そのため、アグルのスピードも落ち始め、アグルブレードも消えてしまった。それと同時にライフゲージも点滅を始めた。だが、ゾーリムは攻撃の手を止めない。

 

『ッ!!』

 

ゾーリムの放った火球がアグルの目の前に来た。アグルは反応に遅れてしまい、避ける事ができず、直撃してしまった。声を上げる間も無く、アグルは火球の勢いに押され海へと落下し、そのまま沈んでしまった。

 

 

 




ゾーリム相手に出撃させないのは妥当だと思います。ISといえどまだ学生ですから戦いで死なせるわけにはいきませんから。だったら最初から怪獣と戦わせるなって話になりますがそれは言わないでください。

アグルがゾーリムの攻撃で海に沈んでしまいました。さて、どうなることやら。

次回で決着つけたいなぁ……。次回もいつになるかわかりませんがお願いします。



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第55話

皆様、お久しぶりです。覚えていますでしょうか。最後の投稿から1年以上経ってしまいました。


 

 

「ウルトラマンが……」

 

「負けた……」

 

アグルがゾーリムの攻撃を受け、海へと落下してから今だに出てこない。モニターで戦いを見ていた一夏たちはウルトラマンはゾーリムに負けてしまったと思い始めた。その所為もあり、その場の空気は完全に沈んでいた。

 

「そんな……」

 

「ウルトラマンが負けるなんて……」

 

今までどんな相手でも最後は必ず勝っていたウルトラマンが負けてしまった。それはかつて無い程の絶望感だった。

 

「教官、我々の出撃を‼︎」

 

それでもラウラは出撃要請をするが……

 

「ダメだ‼︎」

 

だがすぐに千冬はラウラの申し入れを却下する。

 

「教官‼︎」

 

「ウルトラマンでさえ勝てなかった相手だ。今のお前たちがどうにかできるレベルじゃない……」

 

「もう、何もできないのですか……」

 

出撃許可が下りず、何もできないことにラウラ達は悔しがる。だが実際問題、千冬の言う通り今の自分達では死にに行くようなものだった。

 

「織斑先生、私たちはどうなってしまうんでしょうか……」

 

その言葉、千冬は答えることができなかった。

 

 

 

 

 

「綾人さん‼︎」

 

その場で戦いを見ていたセシリアも、アグルが海の中に落ちてから戻って来ない事で綾人の身を案じていた。まだ身体が万全じゃない状態で戦っていたため、尚更だった。

 

『ギャアアアアア』

 

そこはゾーリムの雄叫びのみが鳴り響き、正しく破滅が訪れようとしていた。

 

「綾人さん‼︎絶対に戻るって約束したじゃないですか‼︎なのにいつまでその中にいるつもりなんですか‼︎あの怪獣を倒して、またわたくしの荷物を持ってもらうんですからね‼︎だから……だから早く戻ってきてください‼︎綾人さん‼︎」

 

目に涙を浮かべながら綾人に向けて叫び続ける。海の中にいる綾人に届いているのか、ゾーリムに掻き消されてないか、それでもセシリアは綾人に向けて叫んだ。

 

 

 

 

 

(……どうなったんだ、俺……)

 

アグルは綾人の姿に戻っており、そのまま海の中を漂っていた。僅かに意識は残っているようだが目は開いていない。

 

(海の中なのか……このまま俺は死ぬのか……まあ、海の中で死ねるなら本望だな……)

 

元々海が好きな綾人にとって、海の中で死ぬのは確かに本望だろう。だが……

 

(父さん、母さん、今から会いに行くよ。……母さん……?)

 

綾人の母は一人ではない。亡くなった実母の他にここまで育ててくれた母親がいる。亡くなった母を想ったと同時に今の母を想っていた。

 

(俺が死んだら母さんはどうなる?今度は俺の所為でまた母さんを悲しませるのか?それだけは絶対にダメだ‼︎それに……)

 

今度はセシリアの事を想った。自分を待っているのは母親だけじゃない。セシリアもまた、綾人が戻ってくるのを待っているのだ。

 

(セシリア、約束破ったらまた面倒なことさせるんだろ)

 

そんな事を思っていると、綾人はセシリアが自分の事を叫んでいるように聞こえた。だが、実際にセシリアは叫んでいる。綾人の無事を祈って。

 

(そうだ、俺はまだ死ねない……。こんなところで、終わるわけにはいかない‼︎)

 

そして綾人は目を開けた。すると、目の前に青白い光が出現した。綾人は直感的に、それがアグルの光だとわかった。

 

(アグル、俺はまだ戦える。だから俺に力を貸してくれ‼︎)

 

綾人は光に向かって両腕を伸ばした。そして

 

「アグルウウウウウウッ‼︎」

 

 

 

 

「あの光は……」

 

海から光が溢れているのがセシリアには見えていた。すると海の中から大きく水飛沫をあげながら光が出現した。そしてその光から、光の巨人、ウルトラマンアグルが再び降り立った。

 

「綾人さん……!」

 

セシリアはアグルが戻ってきた喜びと同時に綾人が無事だということに安堵した。するとアグルはセシリアの方に振り向き、無言で頷いた。それを見たセシリアも、アグルに向かって頷いた。そしてアグルはゾーリムの方へ向き直った。

 

『ダアッ‼︎』

 

アグルはゾーリムへ向かい飛び出した。ゾーリムはそんなアグルに向けて火球を放つ。だがアグルはバリアを貼り、そのまま向かっていく。ゾーリムが攻撃を止めると同時にアグルもバリアを解く。そしてそのままゾーリムへ向かって行った。

 

「綾人さん、まさか!?」

 

セシリアの予感は的中した。アグルはゾーリムの口の中へと飛び込んでいったのだ。そしてアグルはゾーリムの体内へと入った。ゾーリムの体内に入ったアグルは一度周囲を見渡した。そして……

 

『ハアアア……デヤアアアアッ!!』

 

アグルはゾーリムの体内でフォトンクラッシャーを放った。ただ一方にではない、全方向に向けてフォトンクラッシャーを放っていた。

 

「綾人さん……」

 

地上からでもわかるくらい、ゾーリムが苦しんでいるのがわかる。中で何かしているのが容易に想像できるくらいに。

 

『ハアアア!!』

 

これでもかと放ち続ける。ライフゲージが点滅していても尚放ち続ける。

 

『ダアアアアアア!!』

 

アグルはフルパワーでフォトンクラッシャーを全方位へと放つ。ライフゲージの点滅も早くなり始めた。そして遂に……

 

『ギャアアアアアアアア!!』

 

体内からの攻撃に耐えきれず、遂にゾーリムは爆発してしまった。地上にいるセシリアは思わず顔を伏せてしまう。それと同時に、ゾーリムがいたワームホールも消滅した。

 

「綾人さん、やったのですね……」

 

ゾーリムが倒されたことに喜ぶセシリアだったが、あることに気づく。

 

「綾人さん……?」

 

ゾーリムの体内にいたアグルがいないのだ。それに気づいたセシリアは周囲を見渡す。

 

「綾人さん!?」

 

どこを見渡しても綾人がいない。そこにアグルがいないなら綾人の姿に戻っていると思ったからだ。だがまだ見つからない。

 

「綾人さん‼︎」

 

セシリアは綾人を呼び続ける。が、返事はない。するとその時……

 

「あれは!?」

 

セシリアは一瞬光が見えた。もしかしたあそこに綾人がいるのではないかと一筋の希望に賭け、そこへ向かった。

 

「これは……」

 

そこには綾人の姿はなく、あったのはアグレイターのみだった。アグレイターを手に取ったセシリアは周囲を見渡す。だが、綾人の姿はなかった。同時にセシリアには最悪の可能性を思ってしまった。そして、アグレイターに一粒の雫が落ちた。それはセシリアの涙だ。セシリアの目には大粒の涙が浮かんでいた。

 

「綾人さん……いや……イヤアアァァーー!!」

 

 

 




ゾーリムとの決着が着きました。着いたはものの……という感じです。一応ゾーリム戦は最初からこうする予定でした。こんな終わり方にして次はいつになるのやら。投稿したらそれで満足してしまうようになってしまいまして。それでも待っていただけたら幸いです。

補足としてこのアグルはV2ではありません。あくまで原作のアグル誕生のアルギュロス2戦目の時以上のパワーアップの状態です。

次もいつになるかわかりませんがよろしくお願いします。


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