神々の狂乱 (初代小人)
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別巻
総集篇


皆様!あけましておめでとうございます!
二時間ほど遅れてしまい申し訳ございませんでした!“〇| ̄|_
今回は新年企画で神々の狂乱の総集編で行きます。よろしくお願いします。



※注意
この回には本編の章のネタバレが多数含まれております。
本編の章をまだ読まれていない方はそちらをお読みいただいてからこちらを読んでください。



はい。ここでは設定などをまとめていきます。まずは固有名詞。実は作者が覚えられないなんてメタい理由は無い。断じてない。

 

 

 

〜固有名詞編〜

(ドラゴン)

太古の時代に存在した爬虫類の王。化石などで時折発見されており、遠い昔に絶滅したとされる。

・クラウィンコロナ

この物語の舞台となる国。黒の王が起こした大戦の際に、小国同士で同盟を組んだのがルーツである。

MSF(魔術特殊部隊)

Magical Special Forcesの頭文字をとったもので、魔術師が起こす不可思議な事件や、警察の手に負えない事件を担当する。

・貴族

クラウィンコロナの身分階級の一つ。平民よりも上、王侯よりも下である。

・平民

クラウィンコロナの身分階級の一つ。奴隷よりも上で、貴族よりも下である。

・七聖剣

大昔、最強の騎士7人が、最上級の鍛冶屋に打たせた、世界最強の武器。

・七聖剣士

七聖剣の使い手の事。

 

次は人物。裏設定などもまとめていってます。

 

〜人物編〜

主人公

記憶を失っており、太古の昔に眠りにつき、勧善懲悪の理を顕すとされる伝説上の「白銀の騎士」だとオズリーゴートに思われ、目覚めさせられた。1話末にサラから「ロキ」と命名される。七聖剣士の1人で、紅蓮の炎を自在に操り戦う。

魔術の固有色は紅蓮(紅)

 

サラ

MSFの総隊長にして、第1分隊の隊長。氷の装甲を持ち、また氷で出来たレイピアで敵を穿つ。

魔術の固有色は透明(純水の色。)

 

オズリーゴート

主人公を目覚めさせた張本人。主人公と戦うも、聖剣を具現化したことに驚き、殺されかける。が、好きをついて逃走。その後の行方は知れていない。

体をいじったせいで幻聴(地の文)が聞こえる。

その昔、魔術師に特権が与えられ、非魔術師が迫害されるという差別的な法制が取られていた国で魔術師に両親を殺され、その怒りのあまり、自らがその魔術師となってしまい、(実は後天性の魔術師はごく稀にしかいない。)また、性同一性障害となった。作者のイジるための便利なキャラ。

博士

MSFの開発顧問。数百人のエンジニアたちをまとめる天才科学者。

MSF隊員が使う鎧や装備を開発、調整、修理などをする。じつは本名を知っているものは誰も…

物知り。

 

小ネタ、没ネタ集!イェーイ!ここからは、本編のNG集をやっていくよ。ネタ100%です。なお、本編のネタバレがあるため、本編を読んでいない方は先にそちらをどうぞ!それでもいいって方は…

 

ゆっくりしていってね。

 

 

1話の序章。ホント最初のシーン。スタート。

 

気がつくと俺は燃え盛る炎の中に居た。

「あっつ!いや、これはおかしい!なんで俺に火がついてんの!熱い熱い!おかしすぎんだろうが!つーか死ぬ!普通に焼死する!熱い!まず登場これってどうなんだ!文字どうり耐えられん!だれか!」

「どうしましたか王子!」

そう言って俺がよく知っている執事が走り寄ってくる。

「物語の開始2行目でまさかの体に火がついてたんだ!頼む、助けてくれ!」

すると執事はニヤリとして、

「嫌です。なぜならこの話の主人公はわしだからの!」

それを聞いて俺は、「ふざけんな!お前みたいなのが主人公だったら読者離れがってあっつ!熱すぎんだろこれ!そもそも俺火属性の魔術師だぞ!こんな簡単に焼死するもんなのか!」

そしてそれを言い終えた頃に俺は、黒焦げの炭になってしまっていた。

「王子…安らかにお眠りください。

王子が死んじゃったから『仕方なく』わしがこのカプセル使って脱出するかな…って何じゃこれは!なんでわしの体に火が!?」

game over…

 

はい。一つ目のネタが終わりました。スピード感って大事だと思うので次行きます。

次は、サラがロキを見つけるシーン。

 

 

サラが率いる、部隊が現場で見たものは

大量の灰に埋もれた、朽ちた服だった布を局所的に纏った男だった。

 

すると、サラが急に気絶して倒れた。

部下の男が代弁する。

「この男…ないぞ…」

 

 

はい。ふざけすぎました。というか主人公の扱いがひどすぎた気がしました。

 

 

以上です。なんとも尻切れトンボな感じでどうもすみませんでした!




どうでしたか?喜んでいただけたなら幸いです。
またネタを思い付いたら書き足していきます。


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本編壱章
異変


どうも小人です。昨年一年間書き溜めていたオリジナル作品の第1話が遂に完成いたしました。9,000字超えの長文です。駄作ですが読んでください。たまにボカロ曲の歌詞が入ってます。わかった方はネタバレ防止のために個人的にメッセージを送っていただけると幸いです


※2016/03/13
大規模な修正を行いました。神々が1話から二柱登場します。今までに読んだことがある方もぜひ読みなおしてみて下さい。


序章

 

気がつくと俺は燃え盛る炎の中に居た。周りは、怒号やら赤ん坊の泣き声で埋まっていく。知っている顔はない。

すくむ足を無理やり動かして、走り出す。

2、3分ほど走ると、よく知ってる執事がいるのを見つけ、そこに駆け寄る。

「爺〜‼︎」と声をかけると、爺はこちらに気づいてすすで汚れた顔を向ける。

「王子様、よくぞご無事で‼︎」それに応えて、

「爺、これは、どういうことだ?」と問うと、「焔の破壊竜(バハムート)の襲撃を受けているのです‼︎」と答え、「あの野郎懲りもせず」と毒づいてから続ける。

「もうこの王国は終わりです。せめて王子様だけでも…」

と、上部が赤色、下部が白色に塗られた巨大なボール、すなわちモ◯スターボールを取り出す。

「ってそれはまた違う世界のやつじゃねーかー‼︎」

というと、爺はいたずらっ子が浮かべるような笑みを浮かべ、

「申し訳ございませんっ。間違えてしまいました。本当はこっちで…」と、こんどは伝説の青い狸を引きずり出す。

すると、青い狸は、「ボクはタヌキじゃない、猫型ロボットだー!」とうわごとを言いながら暴れる。

「だーかーらー‼︎」と怒鳴ると、今度こそは真剣に、大きな黒い球体を取り出す。

「こっこれは⁉︎」と俺が言うと、爺も頷いて、

「はい。王族専用の地面に埋めるタイプの脱出装置です。これで逃げてください。」と言う。

そして俺が「でも、爺や親父は、どうすんだよ?」

というと、爺は哀しい決意のこもった笑みを浮かべて、

「私たちは私たちのやることがあります。あなたのすべきことは逃げることでございます。」

それに対して俺が「で、でも、みんなだけ戦って俺だけ生き残るなんて、そんなこと…」と言うと、爺は哀しみと慈しみの入り混ざった笑みでを浮かべ、「ありがとうございます。あなたのその優しさに、私は救われました。今度は私があなたを救う番です」と言ってから、目にも留まらぬ速さで、俺に電撃をうちこむ。

俺の世界が傾いて、暗転して、消えた。

 

 

 

「おいゼウス!どういう事だ!イレギュラー因子は排除したと言ったではないか!あれは嘘だったのか!?」と、三叉の鉾を携え、程よく日に焼けたハンサムな男が怒鳴りつける。

「いいやポセイドン、確かに焔の破壊竜(バハムート)を送り込み排除したはずだ。ハデスからもそう聞いている。」ゼウスと呼ばれた白い髭を十センチ程たくわえた威厳のある初老の男は答える。

「とにかく!一度冥界に行くぞ!」ポセイドンと呼ばれた男は居ても立っても居られぬ様子で言い、ゼウスもゆっくりと頷いて肯定の意思を示す。

そして2人が冥界で見たものは、壁に縛り付けられ、神術によって封印されたハデスであった。

ゼウスは怒り狂い、術式を即座に走査し、その命令言語が北欧神話の神によるものである事を断定する。

「北欧…オーディンめ…」ゼウスは奥歯をギリリと噛み締める。運命を示し、長針と短針が常にⅫを指しているはずの時計の針は、11:10を示していた。

運命は、北欧の神々の手によって今、狂わされることとなったのである。

そして物語は始まる。

 

 

 

壱章・覚醒

 

時は人界暦3652年。

場所はとある埃っぽい廃工場。

そこで、いかにもマッドサイエンティストな、年齢不詳性別も不詳な謎多き人物が、下品な声と口調でブツブツ独り言を言いながらこれまた謎の機械を操作している。

「これをこうして。」

青白い火花が散る。(軽い粉塵爆発が起きる。)

「あれをああして。」

機械についている赤いライトが不規則に点滅する。」

「それをそうして。」

ドン、という不穏な音がする。

「どこをどうすんの。」

「知らないよ‼︎」と律儀に突っ込んだのは、マッドサイエンティストの周りにいた下っ端の一人である。

マッドサイエンティストの趣味なのか、全員センスが悪い目出し帽をかぶっている。

「センスが悪いとか言うんじゃないわよ、作者‼︎」

だってそういう設定で固まっちゃってるし…

「設定とか言うんじゃないわよ。」

だって…それに。

「それに?」

その目出し帽、シ◯ッカーそっくりじゃん。

「はっ!それはそっちが固めたせっ…」

せっ何かな?バッドサイエンティスト君。

「うっ。そ、それより、できたわよ。」

逃げた逃げた〜〜。

「うるっさいわね〜ちゃんと小説として成立させなさいよ。ここ、崩壊寸前よ。」

へいへい。

と、今まで無数のコードにつながっていた黒い球体(ガ◯ツ)が、

「ふざけないでってば‼︎」

半分に割れた。

「無視!?」

中には若い男が丸まって入っていた。

「アァァァああああ!」

 

 

「アァァァああああ!」

変な叫び声が聞こえる。うるさい。

目が開く。眩しい光が目を刺して痛い。

安らかな眠りを妨げられた怒りが燃え上がる。

そして、

俺の怒りの発露たる紅蓮の炎が舞った。

 

 

Magical special forces

略してMSF(魔術師団特殊部隊)は、魔術師などが起こす、この世の物理法則に当てはまらない事件のための警察のような組織である。

人界歴3652年15月5日

MSFに、ガスが通っていないはずの廃工場が、突然爆ぜたという報せを受けて出動した、総隊長兼であり、第一分隊長でもあるサラが率いる、部隊が現場で見たものは

大量の灰に埋もれた、朽ちた服だった布を局所的に纏った男だった。

 

 

目がさめる。

見覚えのない天井が見える。ほのかに良い香りがする。

そこで初めて、横から女が覗き込んでいるのに気づいた。

ここは、どこだ?俺は、何を?

そうだ。思い出した。あの変な奴らを一瞬で消し炭にしたんだった。

でも、その前は?

謎が謎を呼ぶ中、俺の顔を覗き込んでいた女が話しかけてきた。

「気がつきましたか?ここはMSF本部基地です。

あなたの名前は?私はサラです。」

なまえ

俺の名前。

なんだっけ?そもそもそんな物があったのかどうかも思い出せない。

「思い出せないんですか?」

という質問に、コクリと頷くと、

「博士〜〜ダメです。顔認証はどうですか?」

「引っかからん。一体そやつは何者じゃ?」

と答えた博士というらしい老爺の顔を見た時、なぜか懐かしさが心の中にあふれ、脳裏に紅白に塗り分けられた球や、青ダヌキを引きずる、

博士と瓜二つの顔が、

浮かんで、消えて…

視界が反転した。

 

 

 

保護した、重要参考人の男が、博士の顔をみて倒れた。

反射的に受け止めて、

「どうしましょうか、博士…」

と問うと、

「とりあえず、身体が不安定なようじゃから、健康状態その他諸々詳しく調べた方がいいじゃろう。

暴れられても困るからのう。麻酔をかけよう。

丸一日は寝ているじゃろう。」

「そうですか。」

「小一時間ほどで終わるじゃろう。」

「はい…」

 

 

 

 

約1時間後、ワシは仰天した。

「な、なんと!?」

「どうしたんです?博士?」

こたつに入ってミカンを食べているサラが、ゆったりとした様子で聞いた。

それと対照的に、博士が驚いた様子で、

「これを見ておくれ‼︎」

と、手に持っていた資料を見せる。

「えっ‼︎酸素運搬物質が、鉄じゃなくて、銀!?」

「そうなんじゃ。他にも人間とは違うところが…」

「あれ?俺なんで寝てたんだっけ?」

その声を聞いてわしは戦慄した。

(丸一日寝てるんじゃなかったんですか‼︎?)

(そのはずじゃったんだが……)

サラと目線で会話していると、

「あれ?サラ?博士?どうかしたか?」

「いやはや、お主急に倒れてな。疲れとったんじゃな。」

「そ、そうですよ〜。」

となんとかごまかし、

「ところでお主、いいガタイをしとるのう。

これのテスト被験者になってはくれんか?」

と、博士が投げたのは、銀色の、不思議な形の箱。

「これはなんだ?」と男が聞いた。

と、突然サラが尻に下げていた黒い箱が喋り出した。

「a13ℓ254で、不審な爆発を確認。

大至急向かってください。」

「了解。」とサラが答える。そして無線を切ってから、

「早く行かなきゃ。」

というが早いか、「来れ、我が守護霊よ」

と唱えたのに応えるように、

冷気からなる白いもやが集まり、

凝縮して、氷で出来た、純白のユニコーンになった。

「こやつも連れて行ってやれ。」

と博士が言う。

「とはいえ、この子は2人乗りできませんよ?」

などと話していると、不意に男が、

「来れ、我が守護霊よ」と唱えた。

すると、紅蓮の炎が巻き起こり、集まって、ユニコーンになった。

サラはそのことにおののいた。

だが…

「準備はいいですね?どんな指示でもきちんと従うんですよ。」

ユニコーンは、触れる者をも凍てつかせるほどに冷たかった。

 

 

 

 

サラは、ユニコーンの上で考え込んでいた。

守護霊召喚術は、高等で難しいからMSF隊員以外に使える人はこの国にはいないはず…

ならあの男は一体……?

 

 

 

 

「着きましたよ。」とサラに言われて我に返った。

ユニコーンは初めて乗ったと思えないほど馴染み、意のままに走った。

「しっかしよくついてこられましたね。割と飛ばしたんですけどねぇ。

「いやいや、もう、必死、だっ、たよ。」

息も絶え絶えですねぇ。そんなので大丈夫なんですか?」

と不敵な笑みを浮かべたサラに

「大丈夫だよ‼︎」と答えると、

「そんなに意地にならなくてもいいんですよ?

そうでした。突入する前にそれ、起動させておいたほうがいいですよ。」

と、腕に巻きつけた、博士にもらった箱を指す。

「そうだ、これは一体何なんだ?」と、結構気になっていた疑問をやっと聞くと、

自分の魔力を実体化して、鎧にするための触媒です。」

「どうやって起動するんだ?」

という問いに答えて、サラが、その方法を教える。

「そのレバーを上げて、ベルトについてるメモリーを…」

そして、俺は、銀色の十字架を基調とした鎧をまとった。

「出来たようね。じゃあ行くわよ。」と言ってサラと共になんの変哲もないバラックへと歩き出す。

中は案外広いなーなどと思っていると、

目出し帽をかぶった男たちが、束になって襲い掛かってきた

 

 

 

 

(あぁー危なかった。もう少しで灰にされちゃうとこだったわ。

そんな死に方絶対イヤよ!)

マッドサイエンティストは、男に殺されかけた時、

1人だけ逃げて、今いるバラックに避難したのである。

そして、謎の薬を火にかけていた。

だが、またも失敗である。

薬液が火を噴き、爆音が周囲の空気を震わせる。

(まずいわね。MSFの連中が嗅ぎつけて、来ちゃうじゃない。

まあ、仕方ないか。雑魚どもに時間を稼がせるか。)

そして、素早く術式を組み立てて、どこかへとワープした。

 

 

 

 

 

サラは実際、とても強かった。氷で出来たレイピアで敵を刺し貫いていたかと思えば、

氷の鎧で敵の攻撃を受け流し、バランスを崩した所を蹴倒して別の敵にぶちあてる。

またたく間に敵は全員伸されていた。

と、俺は微かな違和感を感じた。その発生源に近づくと、魔力が流れた痕跡があった。

それに沿って魔力を流すと、テレポート用とみられる術式が、再構成された。

 

 

 

 

 

バラックには、ザコしかおらず、あっけなく全員倒せた。

気絶している大勢の覆面男たちをどう処分したものかと思っていると、

一緒に連れてきた男が、バラックの奥へ、スタスタと歩いて行く。

そして、不意に止まったかと思うとしゃがみこんでなにやらゴソゴソとしていたかと思うと、

麻色の魔法陣が、顕われた。

「えっ!その術式は?」と問うと男は、

「ここに居た誰かが使ったんだろう、転移術式だ。」

「この先はどこへ?」と問うが、

「わからない。」と、答える。若干残念ではあるが、仕方ない。と思ったその時、男が続きをいう。

「けど、術式の精度から見て、大物がいるだろう。」

(なんで、なんでこいつは、私が努力をしても出来ないことを飄々とやってのけるの⁉︎)と思うと、男が、

「嫉妬は弱い奴がすることだぞ」と言う。

(何よ、人のこと馬鹿にしてるの?)という怒りは吹き飛んだ。

なぜなら、男の眼が一瞬、蛇、いや竜のそれのように見え、また、男が今した事が、できる人がほとんどいない、読心術だという事に気付いたからだ。

(今のは…表情からなんてことはないわよね。ポーカーフェイスなんてとっくに習得してるし。なら、こいつは何者なの?)

「そんなこたあ知らねえが、どうすんだ?言っとくが、この魔法陣はテレポートした先にも出てる。

敵さんにバレないウチに行かねーと罠だらけのとこに突っ込むことになるぞ?」

と、言ってくる。

「わ、わかってるわよ!じゃあ突撃よ。」

そういってわたしと男は、術式を使ってまだ見ぬ大物(?)の所へ転送された。

 

間章・壱

少年は怒りで震えていた。

父さん、母さん、帰ってきてよ。

どうして、どうして2人を殺した⁉︎魔術師‼︎

 

弍章・予兆

転移した先は、金属の板を組み合わせて作られた、小さな小屋だった。

すると、マッドサイエンティストと、下っ端ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ(もちろんモブ)が現れた。

俺の攻撃!敵全体に1ダメージ‼︎敵は倒れた。

「じゃなくって!」と、マッドサイエンティストは急にさけぶ。

「なんで私達が無条件で負けなの⁉︎というか、ふざけないでよ⁉︎」

だってその反応を見るのが一番の楽しみなんだもん。やめられるわけないじゃんか。

「心がねじ曲がってるわね……」

それを見て俺が、「あいつ、1人で喋ってんぞ?どうなってんだ?」とサラに聞くと、

「人体改造手術をしようとしたって前に逮捕された時にデータが取られてますね。」

「???」と、俺が理解できていないと顔から読み取ったのか、

「脳も改造しようとしたらしいです。」と、言う。

「しようとしたってのはどういうことだ?」

「失敗したらしいです。その後遺症がまだ残ってて、幻聴が聞こえているのかもしれません。」

「そうなのか。」

そうこうしていると、地の文との会話が終わったらしいマッドサイエンティストが、

「そうだったわ!どうしてここが分かったの?」と、俺たちに問いかける。

サラが答える前に俺が自分のこめかみを指して、

「まあ、ここの違いだな。」というと、サラも

「もう年貢の納め時ですよ?無名無脳のアラフォーおじさん★」と、追い込む。

俺も今気づいたような顔をして、

「ま、まさか、アラフォーのおじさんであの口調って……」

「うっ。バレてしまっては仕方ないわ。そうよ。オカマなのよ。悪い?」

「開き直った。というかそんな下手な発言したら(読者様の)批判が殺到するような難しい問題振るのやめてくれよ。」

と、答えると、

「ナニヨ!オトコナラハッキリシナサイヨっとっと。また発作だわ。」

「なら教えてやるよ。俺はな……」

「何よ‼︎」

「反吐が出そうなくらいオカマが嫌いなんだよ‼︎」

嫌いなんだよ‼︎なんだよ‼︎ナンダヨ‼︎ナンダヨ!

グサササササッ!

「そんなグスンそんなにはっきり言わなくてもグスンいいじゃない…」

「あれあれ泣いちゃったのかな?それに、さっきと言ってる事が違うんだけど?」

「何よ‼︎舐めてんじゃないわよ‼︎」

「誰がてめえなんかなめんだよ⁉︎気色わりー‼︎」

「頭にきたわ‼︎」

そう言うとマッドサイエンティストは、腰に差していた剣を抜き、襲い掛かってきた。

サラがインターセプトして剣をレイピアで受け止める。

しばらくの間、打ち合っていたが、男女(?)の差は大きく、サラは、レイピアを弾かれてしまった。

マッドサイエンティストはとどめとばかりに剣を逆手に構え、大きく振りかぶり……

 

鮮血が舞った。

 

 

 

「あれ?生き…てるんですか?」

そこで私は、全身に生温かい液体をかぶっている事に気づいた。

「ッ⁉︎」

視線を上げると、男の背から剣の切っ先が生えていた。マッドサイエンティストが剣を抜くと、大量の血を吐いた。

「わ、私を庇ったんですか?」

「さあな。だが俺にも一つだけわかる事がある。」

「???」

「女は戦うもんじゃない。護られるもんだ。そこで少し休んでろ。」

その言葉が私の耳に届くと同時に、紅蓮の炎の壁が、私と男の間に出来た。

 

 

 

 

「さて、これからは楽しい楽しい殺し合い(ゲーム)の時間だが、その前に尋問だな。

まあ、場合によっちゃあ拷問になるんだけどね。

なぜ俺を目覚めさせたんだ?答えろ。」

「嫌だと言ったらどうするつもり?」

「あんたも物分かりが悪い。場合によっちゃあ拷問だってさっき言ったろ?」

「分かったわよ。

“昔、白銀の騎士ありけり。その騎士危機に陥りて眠らん。

目覚めし時、その騎士、勧善懲悪の世界を顕現させん”

というか伝説があるのよ。あなたこそがその騎士なの。さあ、私の元へおいでなさい。」

「答えはノーだ。」

闘いの火蓋が切って落とされた。

 

 

断章・弐

 

 

「昔々あるところに魔術師を“優れている”とし、それ以外を“下等”とする国がありました。

そこに、両親とともに楽しく暮らす1人の少年が居ました。

彼の家は特に裕福ではありませんでしたが、1番大切なもの即ち平穏と幸せを手にしていました。

あの日までは…

ある日、少年の家に、何人かの男達が、鍵が外れるカチッという音とともに押し入りました。

「すいませ〜ん。お金や生活に必要なもの等々恵んでくださいませんか?」

リーダーらしい男が、下品な口調でヘラヘラ笑いながら要求しました。

「断る。この家に強盗にくれてやる物など無い。」

父親が拒否しました。

「あれぇ〜〜俺らは困ってるだけだから助けて欲しいだけなのになぁ〜それに」

と、男の顔から笑顔が消えて、代わりにその手に炎が宿りました。

「この通り俺たちは魔術師なんですよー」

少年の国では、魔術師に魔術師でない者が逆らった時には魔術師が直接裁いても良いことになっていました。

「さーあて反逆罪の処罰は何にしようかな?」

「それだけは、おやめください。」

母親が懇願しますが、それも虚しく、

「じゃあ二人とも死罪だ。」

そう言って男は両親を灰にしてしまいました。そして…

「あーれ割といい男の子じゃねーか。」

男たちは、少年を攫って、闇商人に売り払ってしまいました。

それから10年ほど経って、少年はついに反乱を起こしてその国を滅ぼしたのでした。

おしまい。」

「もう夜遅いですから寝なさい。」今さっきまで孫に読み聞かせをしていた老婆が言いました。

「わかったーおやすみー」孫はそう言ってベッドの上に横になりました。

老婆は孫に掛け布団をかけて自分も潜り込む。

そして2人は深い眠りについた。

 

参章・顕現

いやあやっぱり丸腰で手負いの状態で闘うのは少しキツイな。とはいえやるしかないよな。

「うおおおお!」「はああああ!」

マッドが振り下ろしてきた剣を左のコテで受け止め、右腕で殴る。一瞬相手がひるんだ隙に連撃を打ち込む。しかし相手もなかなかのもので俺の右肘に左手を、右拳に右手を添えて、勢いを受け流して投げ飛ばす。

「カハッ!」と、痛みにうめいている間に、剣を逆手に持って刺そうとする。

それを、地面を転がって辛うじてかわし、再度立ち上がると、

「力はいらぬか?そやつに打ち勝つ力はいらぬか‼︎」と、力強い男の声が聞こえた気がした。。それにすかさず、

「いる‼︎よこせ‼︎」と答えると、「その覚悟、とくと見た。」という返答が聞こえて、

背中に一対の翼と、右手に炎の渦が巻き起こり、渦が消えると、一振りの太刀が顕れた。

お互い驚いたが、両者すぐに立ち直り、戦闘を再開する。マッドも強いが、俺は翼のおかげで上からも攻撃できる。刃が見えないほどの速度での打ち合いは、俺が制した。そして、トドメを刺そうとしたときに、マッドが、

「待って、最後に言いたいことがあるわ。」

「聞こう。」刃はすでに止まっていた。

「お前の弱点はその甘さだ。」煙幕が吹き出る。逃げられた。つんざくような笑い声と共に声がする。

「名前はわからなかったけど、顔は覚えておくわ。また一戦交える日を楽しみにしているわ。

「クソッ」毒づくがもう遅い。今更のように腹に激痛が襲ってきて、俺は気を失った。

 

 

 

 

炎の壁が消える。私は男に駆け寄った。

炎の壁が消えた瞬間、男の髪は紅かった気がした。

そして、応急処置をしていると、救援が来て、私と男は救急車に乗って基地に戻った。

 

終章

基地に戻った俺は、手当てを受けてから衝撃の事実を知った。

 

 

 

 

「何⁉︎男の声が聞こえて太刀と炎の翼が出たじゃと⁉︎」

「あぁ。あんたが作った鎧の一部なんじゃないのか?」

「お主が万一さらに危害を加えたらまずいからのう。攻撃に転化できるような機能は全て切った。

しっかし〜お主、もしかしてもしかするのか?」

「何がだよ。」

「余談じゃが、ある時、ある所に、善に帰属し、最強と言われた7人の騎士達がいた。」

「関係あるのか?」

「聞けばわかる。

その騎士達は各々同じ武器職人に、最強かつ、能力(アビリティ)をもった、刀剣を作らせ、彼らは、その剣を振るうようになってから、更に強くなり、それらの刀剣はまとめて七聖剣と、彼らは七聖剣士と呼ばれた。」

「そうなのか。」

「互いに争うこともしなかった彼らじゃが、唯一勝てないものがあった。

なんじゃと思う?」

「え…?なんだ?」

「寿命じゃよ。いくら七聖剣士といえど、生身の人間なのじゃから老いることは止められなんだ。

自らの死期を悟り、もう聖剣を振ることすらままならなくなった彼らは戦友に一つの術をかけた。」

「術?」

「その強すぎる力が悪しきもの達に渡ってはならない。

そこで全員が同じ結論にたどり着いた。

自らの最後の生命の灯火を燃やして、自分で、「剣を所持する基準」を剣にインプットして、その条件を満たす者を持ち主とし、その者へと転移し、その者が死ぬと、またロストし、条件を満たす者が現れればまた転移する。過去の文献にも幾度となく登場しておるぞ。

また、歴代の持ち主の望んだ力が付加されておる。

その術は、複雑を極めたらしい。」

「でも複数の剣が同じ人に転移したりしねえのか?」

「それはない。他の聖剣を持っていないことが持ち主の条件に入っているからの。」

「そうか。」

「そして、七聖剣士の中に職人に太刀を頼んだ者がいた。

銘は。竜の血が流れている者に転移する。竜が絶滅してしまったためにすでに封印されたと思われていた。そしてその刀に付与された力が、紅蓮の炎を操る物と、それでできた翼で大空を自由に飛翔するという物なのじゃ。」

「そ、それってもしかして…」

「そう。お主の刀じゃ。」

「じゃあ俺は人間じゃないのか⁉︎」

「それは違う。完全に竜だったら獣のような姿になっていただろう。」

「そんな、ことって…」

「あるのじゃ。これで全て辻褄が合う。

お主の血がヒトのそれとは違ったこと。デモ版なのに剣を受け止められるほど鎧の出力が高かったことも。」

「え…え?」

「ワシが作る鎧は装着者の一定の割合の魔力を定時回収して使用する。使用者が相当な量の魔力を持っていない限り、あんな芸当は出来んはずじゃ。」

博士はもう一つの事実を突きつける。

「それと、鏡を見てこい。」

「なんで?」

「いいから。」

しばらくして、「ギエーーーーーッ」バタン

長い絶叫に続いて人が倒れる音がした。

 

 

 

 

博士に促されるままに鏡を見ると、

自分の眼が、蛇、いや竜の眼になっていた。

「ギエーーーーーッ」叫んでそのまま気絶した。

 

 

 

 

目を覚ました俺が見たものは、『ドッキリ大成功』とかいたプラカードを持ってお茶目に笑っている博士の顔と、少し見慣れた白い天井だった。(こんなこと、前にもあったよな。)と一瞬考えてから、深ーく息を吸って、

「おい‼︎なんだその茶目っ気たっぷりの反省の色0パーセントの笑顔は!

こちとらいまの話のあとだから竜の眼が発動したかと思ったろうが!」

「そこまで驚くとは思っておらなんだ。すまない。」クックック

「そうか…ってまだ笑ってんじゃねえか!やっぱ反省してねえだろ」

「もちろんじゃ。じゃが、竜の眼はおいおい覚醒するはずじゃよ。」

「うーわーなんかやだな。」

と、そこで、いままで黙って聞いていたサラが口を開く。

「これから行くところとかあるんですか?」

記憶もない。まして目覚めて数時間しか経ってないのに、行くあてなどある訳もなく、首を横に振る。

「やっぱり。あの、よければMSFに来ませんか?優秀な方のために私の推薦で養成学校に編入出来ますし、独り身の方には寮もあります。どうですか?」

サラは窺うように俺の顔を覗き込む。

「助かるよ。ありがとう。これからよろしくな。」

「良かった。有望な新人ゲットです‼︎」

「世話をかけるな。」「そんなことないですよ〜」「それなら名前が必要じゃな。」「あの炎すごかったんで、西欧神話にちなんでロキっていうのはどうですか?」「それいいな‼︎」

「 」「 」「 」

人間たちの日常は、緩やかに、けれども確かに等しく流れていく…

To be continued

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ボカロ曲の歌詞、わかりましたか?そして楽しんでいただけたなら幸いです。ノート3冊分以上の原稿をこのシリーズでアップしていきますので、温かく見守って下さい。


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本編弍章
日常


ノートに書いてあった、本当の原作のシナリオからは大幅に乖離しています。こんなはずではなかったのです。
が、これはこれでアリだと僕は勝手に考えています。それでは、どうぞ宜しくお願いします。




序章

 

女は停滞していく思考回路を必死に動かして、状況の確認と、脱出口の捜索をしていた。隣には愛する恋人がいる。周りはすすり泣く声であふれかえっている。

数時間前に私は、恋人と遊園地で幸せなひと時をすごしていた。しかし突然なった「シュー」という音と、それと一緒にどこからか吹き出した、薄く麻色がついた煙が全てをぶち壊した。

私は睡魔に襲われ、記憶が途絶えた。

気がつくと私はわずかに窓から漏れる光しかない、薄暗い部屋にいた。そこでは年齢も、性別もよくわからない、謎の人物が、グツグツと煮えている薬液を火にかけていた。

やがて周りで人が起き出す。彼らも私と同じような状況のようで、驚いたり、泣き出したり、それぞれ一様に反応を示している。まるで起きてからずっと状況の整理を冷静にしていた私が異常であるかの様。

その格好を見て私は、私を含めた全員が、猿轡をされており、ロープのようなもので手足を縛られていることに、気づいた。ということはこの部屋は防音がなされていないということがわかった。

逆に私にはそれしか分からない。

(せめてアイツの目的さえわかれば…)と思っていると、彼(彼女)が口を開く。

その内容は、驚くべきものだった。

 

 

 

壱章・平穏

 

吾輩はロキである。名前はまだない。

じゃねーや。俺の名前はロキ。MSF(魔術特殊部隊)総隊長の推薦を受けて、このMSF隊員養成学校に来た。なぜ隊長と知り合いかという話は長くなっちまうから気になんなら後で個人的に聞いてくれ。

 

 

 

 

オズリーの1件が起きた次の日、俺はわざわざ休暇を取ってくれたサラと、制服や教科書などの学業品を一揃え買って、MSF隊員養成学校の寮に入寮した。更にその次の日には、博士の手によって俺の聖剣が詳しく調べられた。その結果、予想通りというべきか、俺の太刀は、ヤマタノオロチから出てきた魔力を帯びた鉄を、鍛えて作ったとされる、炎を操り、(ドラゴン)の鱗すら容易に切り裂けるほどの切れ味を持つ上に、魔力伝導性は異様なほど高い真性の魔剣、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)であることが確定した。

因みに最初の使い手はかの有名な須佐之男命(スサノオノミコト)だったそうだ。須佐之男命(スサノオノミコト)は、半人半竜の勇猛果敢な戦士であったものの、勇猛果敢さが性格にも出てしまい、乱暴で傲慢な性格だったらしい。

あまりにも有名すぎる剣であるために、文献に記述が残っており、半人半竜の種族としての優秀さに驕り、剣の後継者には自らと同じ半人半竜の強き戦士こそがふさわしいと、所有権の移動条件を定めたらしい。

因みに須佐之男命(スサノオノミコト)自身は天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)を手に入れる前に天上で粗暴を働き、姉である天照大御神(アマテラスオオミカミ)に追放されており、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)に、所有者移動の神術を掛けた後にそれを悟られ、天上から差し向けられた神兵達に討ち取られている。

とはいえ、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)が強力であることに変わりはない。博士曰く、「この剣は下手すると小国の軍隊一つに相当する武力かもしれぬぞ…」だそうだ。

何にせよ、俺は目覚めてから一ヶ月して、MSF隊員養成学校に編入することとなったのである。

 

 

 

 

 

チャイムというらしい、授業の開始や終了などを知らせる、鐘が鳴った。

我に帰った俺は、内容はこんなもんでいいか。あとはサラが言ってた敬語ってやつをちゃんと使えば…などと考えながら教室へと向かう。

階段を上って、一年生の階(とさっき職員室で教師って名乗ってたヤツが言ってた。)である4階へ行き、「1―3」と書かれた札が掛かっている部屋の前に行くと「爽やかさ」と「筋骨隆々」の二つの要素を奇跡的に両立させた美形の男が、

「あ、転校生の人ですね。話は聞いています。今日からここが君の教室です。僕は、先程も会いましたね。あなたの担任です。」

声もイケボかよこの野郎。

かくいうロキもイケメン(主人公補正)ではあるのだが、内心舌打ちをする。

その間ぼーっとしていたロキを見て、担任が

「そろそろ入ってクラスのみんなに挨拶してください。」

「わかりました。」

担任と教室に入ると、担任は俺の名前(カタカナ二文字だけだけど)を黒板に書いて、

「今日から新しくクラスメイトになるロキ君です。ロキ君、自己紹介よろしく。」と、前半はみんなに、後半は俺に言う。

「はい。」と返事してから、クラスメイトの方を向いて、

「俺の名前はロキです。MSF総隊長の推薦を受けてこのMSF隊員養成学校に編入してきました。なぜ隊長と知り合いかという話は長いので、興味がある人は、後で個人的に聞きに来てください。以上です。」

「ありがとう。ロキ君に質問がある人は?」と担任が促すと、

「は〜〜〜〜い。せんせー。」という声がする。その横柄な口調に担任教師は、顔をしかめることもせずに、

「どうぞ、ライアー君。」と言う。

「はい。」ライアーと呼ばれた生徒が口を開く。

「君はどんな能力を持ってるから総隊長の推薦を得ることができたのですかぁ?」

下品な口調の質問に俺は丁寧に答えてやる。

「ええっと…まあこの際だから隠さない事にしましょう。俺はどうやら聖剣士というものらしいのです。」

するとライアーは両脇の生徒と顔を見合わせてから、その両隣の生徒と共に大爆笑を始めた。

それがひとしきりして落ち着いてから、ライアーは、「とんだほら吹きもいたもんだな。さぁ、あの「聖剣士」様は何日でこの学校を去る事になるのかね?俺は長めに見積もって十日で退学するのに100ルッコ」

「それではわたくしは…」と、賭けを始めた。

すかさず担任教師が「こら、お前たち何をやって…」と言って諭そうとしたものの、ライアーは、「先生、いいんですか⁇明日から無職になっても?」と脅すと、何もなかったかのように俺の席を案内した。

案内された席に座ると右隣の、メガネをかけて本を読んでいた黒髪黒眼の生徒が、「僕はラオ。よろしくね。」と、少し引っ込み思案な感じで自己紹介をしてきた。

「ああよろしくな。ところであいつらはなんなんだ?」と訊くと、

「貴族出身の生徒達だよ。」と返答が返ってきた。

サラにも、貴族の子供には気をつけるように言われていた。

「君は?違うのか⁇」と問うと、

「ああ、僕はいたって普通の平民さ。」という答え。なんだかこの人とは仲良くなれそうな気がした。

その時授業の予鈴のチャイムが鳴った。

ラオが「次の授業は…剣技か。ロキ君、剣技場へ行こう。」と、時間割を確認して俺に言う。

「ロキって呼び捨てでいいぜ、そんなにかしこまらなくても。」というと、「なら僕のこともラオって呼び捨てにしてね。」という返答。

そして俺たちは剣技場へと駆け出した。

 

 

 

剣技場に着くと、そこにいた担任(剣技の授業担当らしい)に促されて、準備体操をする。

それが終わると、担任が、「ロキ君は剣の心得があるそうだ。そこでどのようなものかテストするためにここにいる生徒の中の数人と模擬戦をしてもらいたいのだが、ロキ君、いいかね?」と言うので、俺も自身の力を試してみたいということもあって、「いいですよ。」と即答した。

「では、誰か手合わせしてみたい者は、いるかね?」と言うと、ライアーの腰巾着の一人が手を挙げる。

「カロン君、やるのかい?」と担任教師が確認すると、カロンというらしい腰巾着1号は、俺に、聖剣を使って戦ってほしいということを言ってきた。もちろん、聖剣士であることを確かめているのだろう。

俺はそれに応えて、右手に魔力と集中力を込めると、綺麗な銀色に煌めく、一振りの太刀が顕れた。

カロンは若干怯んだようだったが、すぐに立ち直り、剣闘をするためのリング(相撲の土俵をもっと広くして、床を木材で葺いたもの。)に入って、自分の、金色に輝く装飾品が柄についているが、素体となっている金属は鈍く闇色に光っている、俺の太刀とは対照的な両刃の両手剣を抜く。

俺も太刀を構える。

担任教師が掛ける「始め」の合図と同時に、俺とカロンの時は、ゆっくりになる。

先手必勝とばかりに踏み込んで勢いと共に右上から左下に斬り下ろす。それをカロンは剣をぶつけて防ぐと同時に若干間合いを開けて反時計回りに剣を回して俺の太刀を絡め、右下に下ろす。そこから尖った剣尖で俺に突きかかってくる。

俺が横に転がってかわすと、瞬時に逆手に持ち替えて剣を振り下ろしてくる。

それを見た俺は一瞬早く、右手だけで太刀を強引に振りはらい、空いているカロンの足元を払う。カロンは真上に飛んで、縄跳びの様に回避。そして剣を構えたかと思うと、その刃に、闇色の光が宿る。本能的にそこから飛び退くと、明らかに物理法則を無視した加速で、剣を先端に急落下し、一瞬前まで俺がいたところの地面を貫く。だがその技は相手を確実に仕留められる時のみにしか使えない。大剣とカロン自身の体重、謎の加速による運動エネルギーこれらが組み合わさった技は、大剣の、切っ先から四分の一ほどを木で葺かれた床に、埋めてしまった。

好機と思って俺は斬りかかる。しかしこの行動を取らせることこそがカロンの狙いだった。剣の刃に再び光が宿る。俺はマズイと悟るがもう止まれない。相手に太刀の剣尖が刺さるその数瞬前に、これもまた物理法則的にありえない加速を成し、剣を持つカロンの両手を軸にして、円を描く様に剣先が上がる。だが俺も負けるわけにはいかない。上がった刃に十字方向に刀を振り下ろす。太刀は軋み、相手の大剣の速度も2割ほどは減衰するものの完全に止まりはしない。だが俺の狙いは剣を止めることではなくむしろ逆。

アイススケートでは、薄い刃の上にバランスをとって人が立つ。それと同じ様に俺は、刃の上に刃をおき、その上にバランスを取って乗ったのだ。そして刃ごしに伝わった運動エネルギーはおのずと俺を空中へと押し上げる。俺は空中で回転して軌道を制御してカロンの後ろに降り立つ。振り返ってカロンの背中に、上段から太刀を振り下ろす。

そしてカロンの背中に太刀が触れる寸前のことだった。カロンの背中から、赤黒い、闇で出来た暗黒色の翼が吹き出した。

それは俺の紅い翼の色違いに見えた。

「⁉︎」俺は咄嗟にカロンの背後から飛び退く。

驚いている俺の顔を見て、カロンが薄く笑う。その顔は「貴族」のカロンではなく、人間離れした「ナニ」かという表情であった。

「驚いているのだろう?『悪神』にして、『断罪神』ロキよ。無理もない。私はそなたと対となる存在、オリンポス12神に味方する、『善神』にして、『赦免神』なのだから。そなたを下すため、そなたに似て非なる力を得た。私にはそなたを倒す力がある。かかってこい。さもなくばこの邪剣の餌食となるぞ?」

そう言って剣をチラチラと動かして俺を煽る。

ギャラリーである、ラオや、担任教師達の方を見ると、動きが止まっている。

カロンが、「仲間に助けを求めても同じだぞ?この空間は、『時空神』クロノスの力で、時空が切り離されている。気づかなかったか?」と、幼子に教えるように言う。

ならばもはや斬るのみ。と俺は刀身に焔を宿らせ、再度斬りかかる。

カロンは翼を使って空中に逃れる。

それを追って俺は紅い炎の翼を顕して翔ぶ。そこからの剣戟はますます加速していく。もはや一々考えずに、流れで相手の刃を防ぎ、その合間に自らの剣を打ち込む。

本来ならばありえない速度。しかし俺は竜の血が流れているために追いつける。カロンは…むしろ薄笑いを浮かべる余裕すら見せている。

そして、俺が剣尖で相手の心臓を突こうと太刀を右手だけで持って、引き絞ったその時だった。

俺の太刀の刀身に鮮やかな紅い光が宿り、俺の意思とは関係なく、高速で突きを繰り出す。

左から右へ5回、上から下へ5回。それぞれ命中したところには、鮮紅色の光点が残る。それぞれ3つ目は同じところを突き、交わる。こうして9つの点が、カロンの腹部に刻まれる。そしてその十字の上をなぞるように、十字に斬る。

その交点を、まずは斜め上に突き上げる。カロンの身体が、翼の推力とは無関係に浮かび上がる。その交点を今度は斜め下に打ち落とす。その際に俺は、「断罪の紅十字(ジャッジメント・クロス)」と、俺は技名発声をする。

カロンはもはや制動などできず、吹き飛び、わりと離れた地面に墜落する、その寸前、十字の傷跡から、炎が噴き出した。カロンの腹部は当然焼けただれている。

が、「ハハハハッハハハハハハハハハハハッ!」と、唐突に笑い始めた。

「未覚醒でこの実力か。面白い。待っておいてやろう。天界で待つぞ『悪神』ロキよ。」

そう言ってカロンは、黒い灰となってどこかへと消えた。それと同時に時空がつながった。

そして…

この世界から、カロンという人間がいたという証が消えた。

 

 

 

To be continued…

 




どうでしたか?
感想を教えてください。なにぶん書いたのが昨年度なので、みなさまの感想(主に批判)を取り入れてもっともっといい作品にしていきたいと、小人は考えておりまする。それではまた会う日まで、さようなら〜


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混沌

投稿が二ヶ月も空いてしまって申し訳ございませんでした。
リアルの方でごたごたがあったのと、バイトを初めて忙しくなったのと、単純にモチベーションが上がらなかったのが原因です。
エタった訳では無いので安心して下さい(履いてますよ)
それでは、どうぞ。


「アナタ達は、アタシが開発した画期的な薬の被験者になるの。光栄でしょ?」

謎の人物はあくまでも気楽な調子でうそぶく。まるで道化師のように。

しかし私には知りたいことがあった。だから危険承知で声を出してみることにした。

「うぅ〜〜!うぅ!」猿轡のせいでちゃんとした声は出ないけど、相手には聞こえたようで、

「何?何か言いたいことがあるのね?妙なことをしたらすぐ殺すわよ?」と言って謎の人物は私の猿轡を外す。

「その薬の効果は何なの?」という私の問いに、返ってきた答えはあまりにも意外なものだった。

「この薬はねぇ。あなた達みたいな人に、魔術を使う力を与えてくれるのよ。」

とたんに周りの人の目の色が変わる。

それまで心を占めていた恐怖はいと容易く欲望に飲み込まれた。

どうやら無差別に見せかけて魔術が使えない人だけを集めていたようだ。そして私は次の問いを投げかけることにした。

「で、その“お薬”の副作用は何なの?」

私の職業は看護師だ。だからこそ、魔術師を人工的に作る薬には人道を超えるような凶悪な副作用が伴うことを知っている。

「おやおや、ずいぶんと詳しいようじゃないか。でも、今回に限ってはその知識は不要だったようだけどね?」

そう言って謎の人物は何の躊躇もなく、一人の女性を選び、首筋に注射を打つ。

その女性はすぐに叫び声を上げ、苦しみ始めて、やがてそれが終わった時には、胴体はフジツボがついた亀、右腕はシオマネキのそれ、右腕からはイソギンチャクのような触手、顔は鮫、下半身はタコの足が本来のタコよりも明らかに多く生えている。

それを見た周りの人達はようやく状況を理解したようで叫び始める。

その声を他所に、謎の人物は「あ〜あ、外れかぁ」と呟いてから、

「黙りなさい。さもないとお注射するわよ?」といたずらっ子のような笑みを浮かべて言う。

状況と全く伴っていないその笑顔は却って凄みが出て、私たちに底知れない恐怖を与え、有無を言わさず黙らせる。。

そして謎の人物は飄々と道化を演じる。

「あらまぁ静かになっちゃって〜でも忘れてなぁい?みぃんな、この薬の、被験者になるんだよ?黙っても、結局、注射されるの。さあ実験開始。」

幼い子供に教えるように言ってから、謎の人物は私の髪を乱暴につかんで二の腕に注射器を押し当て、容赦なくピストンを押す。

意識が薄れ始め、体の形が変わろうとして激痛が全身を襲う。それでも最後まで愛する恋人を見つめ続けた。

 

そして2人分の涙が床を濡らした。

 

 

 

 

 

 

ハッと気が付くと俺は学校の医務室にいた。どうやら()()()()と行った剣術の実技訓練で油断したところを派手に吹き飛ばされて気絶したようだ。

ようだ、というのは頭を打った衝撃のせいか、実技訓練の記憶が抜け落ちているからだ。

少し違和感を感じるが、まあいいか、と考えるのを止める。

医務室の先生が、内出血と広範囲に及ぶ打撲で、軽傷とはいえ剣術の訓練にしては大きい怪我をしているため今日は帰れというので、寮に帰ることにした。

教室に戻ってカバンをとる時にガローンの一味が薄気味悪そうな目で、ラオが尊敬の眼差しでこっちを見ていたり、「あのガローンと引き分けって…」などとヒソヒソ囁くような声がしたのは気のせいだと信じて今日は帰った。

 

 

 

 

 

 

病院に行き、2、3日は大事をとって学校を休むこととなった。

そして復帰した日。

やはり周辺のクラスメイト(主に女子)は俺の方を見てヒソヒソと何かを話している。

ラオに至ってはもう何だろう、自主的にパシリを始めた。

例えば昼食の時間になると「ロキさん、こちら冷たい飲み物です。」と、どこで調べたのか俺が好きなコッカコーラを自販機から買ってきてくれたり。

俺が少しでも暑そうな素振りを見せるとどこからか明らかに大きすぎる芭蕉扇のような団扇を取り出して扇いでくれたり。

快適だし気持ちは嬉しいのだが、はっきり言って何だろう、凄くやりづらい。

それを伝えるとラオは、「ロキ様、こんな下々の者のことを気遣って下さるとは…やはりお優しい…」とか訳分からんようなことブツブツひとりで言い出してなんか怖いし…結局元の付き合いになるのに三日かかった。

あれ?記憶が確かなら俺とラオが一緒に居たのって最初の一日目だけじゃ…

なんて気にしたら負けだよね。そうだよね。

そんな訳でラオが元通りになってから更に数日が経ったある日。

俺は各々個性的な服装に身を包んだ上級生達、その数実に十数人に教室で取り囲まれていた。

いい加減クラスメイト(主にラオ)の事で苦労していたのだから、溜息こそつけど、その状況で頭を抱えて発狂しなかった俺は褒めてもらっていいと思うんだ。

まずこの先輩達は何なの?

何がしたいの?

この学校の悪しき伝統?

新入生は教室で囲んでリンチしてフルボッコだドン?

にしてもとりあえず防具を付けるのはまだしも竹刀を持ってくるのやめてもらえませんかねぇ?

あとそこの人。とりあえずそのダンベルは下ろそうね。普通に凶器になるからね。と言うかそもそも既にあなた腹筋シックスパックだよね?もう鍛えなくていいよね?何なの馬鹿なの死ぬの?

などと俺が現実逃避を始めた頃だった。

横からラオが助け舟を出してくれ…

「えーと…課外実戦活動の勧誘ですよね?」

てない。何だよ課外実戦活動とか。知らねえよ。あれですか?漢字並べときゃカッコいいでしょ的なノリですか?

何?ここの運営グループの人達みんな厨二病なの?

と、更に現実逃避を始めていると、ラオが今度こそ助け舟を出してくれた。

「あのね、ロキ、課外実戦活動っていうのは、ほかの学校で言うところの部活動なんだけどね、うちの学校は訓練の延長線上として、自分の得意な分野に特化して研究したり、強くなるために鍛えたりするための場所なんだよ。」

それを聞いて俺は、眼前のプレッシャーの塊、もとい勧誘の先輩方に、「すみません。」と話しかけることにした。

すると1人のリア充満喫してそうなチャラ男…ちょっと待て、前髪が重力に逆らって30センチほど水平になってないか?

その原理を小一時間ほど問い詰めたい…衝動をなんとか抑えていると、そのチャラ…じゃない、先輩が聞き取ったようで、「どうした?俺の胸にCome on!する気になったか?」などとふざけたことを言ってくる。

まず何だよ胸にCome on!って。ふざけてるのはそのまま前髪だけでいいんだって。なに?みんなして俺に精神攻撃してるの?そろそろ突っ込みきれずにパンクするよ?俺。いいの?

 

ゴホン。とはいえ返事しないとこの話が前に進まないので(メタい?ソンナノシラナイヨ?ホントダヨ?)、とりあえず「ごめんなさい、今日は敷地の裏山にあると担任の先生に聞いた小型のダンジョンに行く予定なので失礼します。すみません。」と言ってラオを半ば引きずるようにして連れて、教室を出る。

そこにはポカンとした様子の男達が十数人取り残されたという。

 

 

 

「ふぅーえらい目にあったな、ラオ。」と、ダンジョンの入口の前でラオに声を掛けると、ラオは虚ろな目で、「そりゃあそうだよね、ロキは強いもんね、ほら、世界に七振りしか存在しない七聖剣のうちの一つ、の持ち主だもんね。人気者なのは当然だよね。そもそもホントなら僕なんかが隣に立てる人じゃないもんね。」とブツブツ言っている。影のような何かを纏っているように見えるのはきっと気のせいだ。

というか何なんだよ今日。お願いだからラオまで変にならないで?やめて?俺のライフはもうZEROよ?

「ラオ、ラオ?」いくら話しかけても返事がない。

この辺りでこらえていた何かが爆発した。俺はダンジョンの入口の錆び付いた重い鉄扉を開き、その中にラオを叩き込んで、自分も入った。

その衝撃で我に返ったのか、やっとラオが正気を取り戻す。

「アレ?ここはどこだ?」とか言ってる哀れな友に俺は「ダンジョンに入ってすぐだ。」と、何事も無かったかのようにいう。別にアレだよ?俺が叩き込んだ事がきまりが悪くて隠したんじゃないよ?

そして、状況説明が終わって、ダンジョン内を少し進んだ時だった。

 

▼スライムが現れた。

ロキはどうする?

 

・攻撃←

・逃げる

・ラオとバトンタッチ

 

▼ロキは太刀で切りかかった。

しかし弾力で跳ね返されてしまった。

▼ラオのLv,1火属性魔法

スライムに5のダメージ。スライムに火がついて燃え上がる

▼スライムのターン

しかし炎のせいで動けない。

▼ロキは剣から炎を放った。

会心の一撃!

スライムに5000ダメージ。スライムは燃え尽きて倒れた。

更に追加でラオに10の精神的ダメージ。ラオの特性「嫉妬の炎」により、次回戦闘時の攻撃力が小アップ。

▼スライムとの戦いに勝利した。

ラオは10経験値、手に入れた。ロキは1経験値、手に入れた。

ラオは魔法薬の精製用アイテム、「謎の粘液(緑)」を手に入れた。

 

 

 

 

どうもおかしい。普通にスライムを炎で焼いて倒しただけのつもりなのに…手続きしてた1ヶ月間、暇だったからサラに手合わせしてもらって勝率五分五分くらいだったからあのスライムが弱いんだと思うんだが…さっきからラオが「おかしい…これが才能の差ってものなのか…上級生でも五人で束になって倒せるようなスライムを一撃はおかしい…」とかなんとかブツブツ独り言を言ってるんだが…やっぱり解せぬ…解せぬぞ…

まあダンジョンなわけで当然敵はまだ出てくるわけで…

 

 

▼コボルト・ナイトが現れた。

▼コボルト・ナイトの先制攻撃。

コボルト・ナイトはサーベルで切りかかった。

しかしロキにガードされてしまった。

▼ラオのLv,1草属性魔術

コボルト・ナイトはツタで手足を縛られて動けなくなってしまった。

▼ロキの居合い切り

コボルト・ナイトに80ダメージ。

miss!コボルト・ナイトを縛っていたツタも斬ってしまった。

▼コボルト・ナイトの攻撃

コボルト・ナイトはサーベルを構えて突進攻撃をする。

nice!ロキのカウンターが成功。コボルト・ナイトに10のダメージ。

▼コボルト・ナイトは倒れた。

ラオは11経験値を手に入れた。ロキは2経験値を手に入れた。

ロキは装備用アイテム、「獣人騎士の蛮刀」を手に入れた。

 

 

 

どういう事だ…どんどんラオが暗くなっていくぞ…はっきり言ってもう理由が分からん。というか助けてくれ。この沈黙が肌に突き刺さるようで痛く感じる。

 

▼ロキは状態異常、「精神圧迫」になってしまった。

 

 

そしてその後も敵を倒すごとにラオの闇は深くなっていくのであった。

 

 

その頃ダンジョンの外、サラと博士がいるMSF中央基地では、サラは木刀を持って巨木と、博士はハンダゴテなどの工具を持って機械と、それぞれ格闘していた。

そこに無線が入る。サラが出るとその相手は信じられないようなことを言った。

 

「えっ!?MSF隊員養成学校の半径2キロを突然出現した魔獣が包囲した!?()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

To be continued…

 

 




こんなはずでは無かった。二ヶ月ぶりに書いてみたら、全員キャラ崩壊した…と言うかなんだこれは…もはや違う人物じゃ…
あとホントに原本からのシナリオ乖離が酷すぎる…ホントはロキ君の授業シーンとかあったのに気がついたらカットしてたよ…orz
まずネタに走りすぎた気がするのです。
前の方が良かった、これはこれでいいんじゃない?そもそも駄作だから…など、なにか返信をください。そうしたらまた参考にさせていただきます。
2章はあと1話か2話で終わる予定です。
まあこれでも普通よりは長いですが、まだ読みやすくなったのではないでしょうか。それに関しても返信で教えて下さると嬉しいです。お願いします。

あと、キャラクターの募集をします。
能力、魔法色、属性、性別など、どれか一つでもいいですので、活動報告の方にどしどしお便りをください。お願いします


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獣王

ギガント・コボルト・キング戦です。
ダンジョン編は今話にて終了です。
ラオくんの頑張りはまたその内、外伝の章に投稿しようと思います。
ということで今回もよろしくお願いします。


それから俺とラオは、ダンジョン内を進み続けていた。

出現モンスターはスライムとコボルト・ナイトのみだったようで、それぞれ十数体は撃破した。そしてしばらく歩いた時だった。

「グゥラアァァァ!」獣の雄叫びのような爆音が聞こえて、ギガント・コボルト・キングが俺の正面に現れた。

それと同時に、「ギュルルルルルゥ!」という声が聞こえ、グランド・スライム・エンペラーが背後に現れた。

ギガント・コボルト・キングは、ゆうに刃渡り3mありそうなサーベルを振り回している。

体長は目方で6~7m程度だろうか。

全身が鍛え上げられた筋肉で覆われており、せいぜい刃渡り1m弱しかない天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)では、簡単に致命傷は与えられそうにない。

ラオは移動系魔術を駆使してグランド・スライム・エンペラー相手に機動戦を仕掛けている。あちらにいたかと思えば今度はそちらへ、そちらへ攻撃が迫ると今度はこちらへ、というように瞬間移動や飛行魔術、更にはワイヤーによる移動も織り交ぜて多彩な技で翻弄している。

いつもの自信なさげなラオと同じ人と思えないほどに輝いてすらいるではないか。

それを見てグランド・スライム・エンペラーは安心して任せられると思ったロキは、ギガント・キング・コボルトとの戦闘に集中する事にした。

 

とはいえギガント・コボルト・キングは俺だけでどうにかしなければならない。

負ける訳がないと根拠の無い自信はあるものの、そのサーベルで無事でいられるほどロキは頑丈ではない。

大振りで振るわれるサーベルに、ロキは背中に焔の翼を顕して位置を合わせて、太刀1本で受け流す。

と、1つ作戦を思いついたロキはそれを即座に実行する。

 

余談ではあるが、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)は、七聖剣の中でも、魔力伝導性に特化した剣である。

その異常なまでの伝導性のおかげで、、通常、金属の魔力抵抗により、流す魔力の80%~85%程度までしか術式そのものに使用出来ない所を、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)は、99.9%使用することが出来る。

それによって起こる現象が…

 

 

ロキは天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)に炎の刃を纏わせる。

その刃は焔として敵を焼くと同時に、刃として敵を切り裂く。

天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)の魔力伝導性と相まって、、その刃渡りは、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)の刃渡りの2倍以上にまで伸長し、合わせて刃渡りは3m程となる。

そして炎には重量がないために、その振るわれる速度は本来と同じである。

ギガント・コボルト・キングも相当早くサーベルを振るうが、元が長さ3mの金属の塊、いくらその巨体をしても、鍛え抜かれた体で振るわれる焔の刃にはかなわない。

 

殺るか、殺られるか、極限状態での剣戟は数分に及んだ。

ラオの方は、とっくにグランド・スライム・エンペラーに勝利していたが、両者の剣戟に不用意に割って入れば自分が殺されるどころか、ロキを邪魔してしまうと思い、万一の時に備えて回復魔術を待機状態で五重に展開(これはこれで高等な技術が必要である。)して待っていた。

だが、勝負の行方は誰の目にも明らかだった。

最初は吼え声を上げてロキを刻んで喰らわんとしていたギガント・コボルト・キングは、徐々に防戦一方となり、体に刻む切り傷が多くなっていく。

逆にロキは徐々に相手の攻撃をいなすこともせず連撃に次ぐ連撃で、ギガント・コボルト・キングに斬りつけていた。

そもそも両者の手数が違った。

重い武器で、重い一撃を与えて怯んだところに更に攻撃を加えるギガント・コボルト・キングの、、その重い一撃を難なくいなされた時点で既に勝敗は決していたのかもしれない。

何にせよ戦いの後、ギガント・コボルト・キングは倒れて二度と動かなくなり、ロキは焔の翼を用いてゆっくりと空中から降りてきた。

ラオも、少し垢抜けた様子である。

ギガント・コボルト・キングの亡骸の傍には、その場に不似合いな鉄の扉があった。

どうやら出口のようだ。

ラオは感慨深そうにしている。

俺はなかなかに苦戦を強いられた、偉大なる獣人の王(ギガント・コボルト・キング)の冥福を祈り、そしてラオとともにダンジョンの扉から外へと出た。

 

To be continued…




こんなはずでは無かった…(二回目
ホントならダンジョンの外の様子と同時進行でロキたちの冒険を書き進めていくつもりだったのに…
本当に久しぶりに書いたせいで何故か文体が冷たい感じになってるし…
ロキってあんなキャラだったっけ?
というか、ラオは元々ボンクラキャラだったと思うのだけれども…
何であんなに強くなったんだろう…
原作(と呼んでいいのかは分からないけど)の、ノートに書いてたシナリオからの乖離が激しすぎる…大まかには変わってないけど…



あと、本当に返信を下さい。お願い致します。
読者様の声が聞きたいです。こんな下らん小説!などの罵倒でもいいです。受け止めて改善していきます。だから!お願いします。返信をください。


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魔獣

モチベーションが何故か上がったので連日投稿してみました。
今回は割とシナリオ通り進んだかな?というのが率直な感想です。
ではどうぞ。


コツリ、コツリ、コツリ…

暗くて気味の悪い通風口に、乾いた足音が響く。

出来ることなら今すぐ逃げ出したいが、既に私の体は私の思い通りには動かなくなっている。

この後にさせられることも分かった上で、犠牲が少ない事を心から祈りながら。

コツリ、コツリ、コツリ

暗い通風口で歩みを進める。

 

 

 

 

 

サラに無線で連絡してきたのは、今では一年に数回会う程度になってしまった、MSF隊員養成学校の第1期生時代の友人だった。

が、普段と違ってその口調は焦りを帯びていた。

「サラ総隊長、MSF隊員養成学校が、突然現れた正体不明の魔獣によって学校を中心として半径2キロの円で包囲されたわ。しかも包囲網はどんどん狭まっていってる。早く対処しないと生徒達が…」

サラはその当たりまでしか冷静に聞き取ることは出来なかった。なぜなら…

「MSF隊員養成学校!?そこってちょうど今日ロキが編入したところじゃない!」

ロキに危害が及ぶことを考えてしまったからである。

同時に、普段の心の壁を表していた丁寧な口調はどこかへと消え去った。

他の人の事など二の次にして、ロキの事を考えてしまっている自分に気づいたサラは、自らを恥じた。

任務に私情を挟むなど、MSF隊員としてもっての外、ましてや総隊長がしていいことではないからである。

そして同時に、疑問が湧いてきた。

私は「あの」一件以来、周りの人に非情だ、冷酷だ、と言われるほどの冷静さを保ち続けていたではないか。

それが何故だ、何をこんなにも焦っているのだ?

“たかが”1人の民間人の事ではないか。

しかもあちらは七聖剣の使い手だ。

自分では勝てなかったオズリーにも手負いの状態で勝ってみせたほどの実力者ではないか。

何を心配することがある?

そこでサラは気づいた。

否、元から気づいていたのに目をそらしていたのかもしれない。

ロキが“あんな”風になる事をサラが恐れているということを。

 

「総隊長、サラ総隊長!?」

その時サラは、はっと我に帰った。

「とにかく出動を要請します。第1分隊以外の隊は既に連絡がついて、こちらに急行しています。既に数隊が到着していますので、急いでください。」

「了解。」

そう言って無線での通信を終わり、サラは第1分隊の隊員達を率いて、対策本部へと向かうのであった。

 

 

 

対策本部についたのは、サラたち第1分隊が最後だった。

その到着を皮切りに、作戦会議が開かれる。

それを仕切るのは総隊長でもあるサラだ。

「あれから包囲網の半径はどのくらい縮まったの?え!?今は散らばってて特定の包囲網はないどころか、学校に既に突撃しようとしてる個体もチラホラ出てきてる!?今考えられてる案は?校内の生徒、及び教師と包囲網の内外から挟み撃ち!?却下!!多少訓練されてる程度の一般人と訓練途中の生徒達にそんなことはさせられない!」

と、そこで女の情報官が、

「総隊長、上空を飛来する魔獣が確認されました。」

と報告する。

「何!?MSF空戦部隊の最大出撃可能人数は?150人!?全っ然足りない!戦闘機は?100機!!今のところ地上を進軍する予定で戦闘機の操縦、もしくは空戦が出来る者の人数は?80人!!空戦最大人員は合計で230人!!敵数は?約500体!!?なんて分の悪い!え!?飛翔するヤツ抜きで!?飛んでるのは何体いるの?約200!?ほんとにどうするの!?」

といった風に口調はもはや相当ぞんざいに、けれどもそれとは裏腹に、的確に状況を把握していく。

「避難は済んでるのよね?じゃあ空の事は空戦部隊(そっち)の指揮官に任せるわ。地上部隊の指揮は私が取る。異議があるものは今ここで挙手をして?」

そして数刻待って手を挙げる者がいないのを確認してから、

「無いようなのでこのまま私が指揮するわ。そうしたら、まず私の極大凍結魔法でヤツらを氷漬けにしようと思うの。それが一番手っ取り早くて威力があるから。ただ、その術の準備をしている約十分の間私は動けない。だから足止めと時間稼ぎをお願いしたいのだけれど…」

「ならば我らが第2分隊がその役を引き受けましょうぞ。」と名乗り出たのは第2分隊長、市民出身で努力を重ねて登り詰め、「泥竜の繰り手」の二つ名を持つグラウンである。

隣で「御意。」と同意を示したのは、その実の弟で、第2分隊の名物兄弟のもう1人、「岩獣の駆り手」という二つ名の第2分隊副隊長のグロウンである。

サラはMSF最強の魔術師だと言われている。

実際、最強の名に恥じない強さである。

しかし、このグラウン、グロウド兄弟は二人で連携することによってサラに匹敵するほどの力を発揮する。

別段普通以上に目立って優れた部分はあまり目立たない。

しかし、彼ら二人に限って言えば、1+1の答えは2ではなく、3よりも大きな数字のうちの何か、なのである。

それが4なのか、はたまた10なのかは分からない。

ただハッキリしていることは、彼らが二人で連携すれば常人では太刀打ちできないほどの強さになるという事だけである。

しかし、流石の彼らにも不可能は存在する。

わずか40人程度の第2分隊を率いて500体の魔獣を足止めすることはその不可能なことの中に含まれている。

それを見越してサラは、10ある分隊のうちの5隊の指揮を彼らに委ねることとした。

これで足止めが出来るといいが…

当のグラウンは、「10分持たせれば良いのだな?」という確認だけして5隊を率いてグラウンは泥で出来た竜に、グロウドは岩で出来た猛虎のような獣に乗って進軍していった。

 

 

 

グラウン、グロウドの二人が率いる、第2、第7、第8、第9、第10分隊が「キメラ」と名付けられた魔獣の侵攻している地区に入ると、空を覆う飛翔型のキメラのせいで陽光が遮られて暗くなった。

第2分隊ツートップの兄弟が攻め入り、キメラを殴り、裂き、砕くと、周りのキメラたちがこっちを向いて、動きが止まった。

グラウンが泥波(マッドウェーブ)と唱えて魔術を発動させ、今まで操っていた泥竜の形状保持を解き、泥の大きな波を起こす。

グラウンは泥竜を崩す直前に空高くジャンプしており、上からキメラを見下ろして、泥の波がすべてのキメラを巻き込んだタイミングで「凝固(スティヴェン)!!」と唱え、今まで液体のようだった泥を固め、硬い地盤となったそれにキメラの下半身を埋め、動きを封じる。

MSF隊員養成学校を中心として敷地の境界線に張られた半球状の障壁のおかげで、MSF隊員養成学校に泥の被害は及んでいない。

さらにそのタイミングでグロウドは「岩石豪雨(ロックダウンプーア)!」と鋭く発声し、周辺の地面から細かく、鋭い石が浮き上がり、キメラ達に降り注ぐ。

それらは硬い地盤にあたって砕け、更にグラウンによって固められ、地盤の一部となる。

グロウドが降らせ、グラウンが固める。

キメラの動きは完全に止まったかに見えた。

一体のキメラが、自らのタコのような足が傷つくのも構わずに厚い地盤から足を引き抜く。

その時に生じたひび割れを利用して地盤を砕き、全身を抜く。

それを見ていた他の個体も体を地盤から抜き、脱出する。

「クソっ!破られたか!」

「立腹」と、腹立たしそうな口振りではあるが、強敵と戦う楽しさが表情には現れている。

次の策を試そうと、グラウンが割とながい術式の詠唱を始めた時だった。

「極大魔術、準備完了です。指定の安全圏へ離脱してください。」

というサラの指示が通信回線から聞こえる。

「チッ!もう撤退か。」

「残念」と、2人は名残惜しそうにしながらも撤退指示を出し、兼ねて指示されていた安全圏へと離脱するのであった。

 

To be continued…

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい。今話は、サラを含めたMSF隊員回になっています。次回にはいよいよロキとサラが合流する(予定)です。楽しみにしていてください。
そして思ったのです。
サラ、出番少なくね?と。
ロキと別行動してるからなのは分かりますがもう少し出番を増やしてもいいかな?と思います。
それでは、see you next time…


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竜人

昨日は1日更新をせず、今日更新してみました。
最近は結構モチベ上がりますね。
いつまで持つかわかりませんが頑張ります。
それでは本編をどうぞ!


ロキとラオがダンジョンを攻略して外に出て最初に見たものは、空を覆う気色の悪い怪物、遠くで学校を囲む同様の怪物、そして広範囲に降り注ぐ大量の岩石だった。

「いや、待て、オイオイオイ、ダンジョンは攻略しただろ?ここ、地上だよな?怪物はダンジョンにお帰り下さい?」

思わずツッコミを入れてしまうほど異常な状態だった。不意にパキン!と何かが割れるような音がした。

そっちを見てみると、学校をドーム状に囲んでいた結界に人ひとりが通れる程度の大きさの穴が空いていた。

即座に修復され、穴は塞がったが、怪物が一体入り込んでしまった。

生徒達は酷く怯えていて、隅で固まって震えることしか出来ない。

教師達がそれぞれ武器を構え、交戦するものの、攻撃に威力がなく、今にも全員吹き飛ばされてしまいそうである。

俺は紅い焔の翼を使って急加速し、腰に差していた愛剣である大太刀、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)を鞘から抜き、そのままの勢いで怪物のイソギンチャクのような触手を数本斬り裂く。

思わぬダメージに驚き、怒った怪物は狙いをこちらに変えて、襲いかってくる。

突進とともに伸ばしてきた右腕である大きなハサミを左に半歩動いて躱して、今度は胴体を切りつける。

竜の鱗すら容易く斬り裂いてしまうその切れ味は恐ろしく、ウミガメの甲羅のようなその硬い胴を袈裟に斬ってしまう。

胴体を半ばまで斬られた怪物は当然怒り狂い、左手の触手、右腕のハサミをがむしゃらに振り回し、タコのような足を伸ばしてこちらを蜂の巣にすべく次々に突撃を加えてくる。

一分の隙もないその攻撃にロキの攻撃の手は止まり、それらをいなし、捌ききることに刀を使ってしまう。

怪物の狙いはそこにあった。

攻撃が来なくなったその瞬間、ロキの背後の地面より生え出た怪物の足が伸び、ロキの背中を突き刺す。

グサリ、と体が貫かれる嫌な音が響く。

周りで手を出せなかった教師たちはロキを救うためにそれぞれ攻撃を仕掛けるが、一本のタコ足で全て薙ぎ払われてしまう。

そしてようやく捕まえた獲物を逃がすはずもなく、怪物はロキを突き刺してタコ足で持ち上げ、さあ貫かんとロキの周りに何本もの触手、タコ足、そしてハサミを構える。

それらがロキの身体に迫った時だった。

ボウ、と紅蓮の焔が上がる。

ロキを突き刺そうとしていた全ての怪物の体の先端に火がついていた。

そしてロキの体も燃え上がり、焔に包まれる。

このままでは自分が消し炭になってしまうと悟った怪物はロキを貫いていたタコ足を抜き、なおかつ燃え上がっている先端部分を切り離す。

ドサッと落ちるかと思われたロキはそのまま浮き、足を下にして地面に降り立つ。

そしてその紅蓮の焔が消えた時、そこにいたのは、発達した顎、鋭い牙、長い二本の角、蛇のような瞳、蝙蝠のような形の焔の翼、刺されれば無事では済まない長い爪、そして長くて太い尾を持った、白銀の竜人のような装甲に身を包み、白銀の輝きを放ち、太刀の形をとる聖剣・天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)を腰に差したロキだった。

竜騎士、とでも形容すべきその姿は堂々とした威厳があった。

流石に焦ったように怪物が数本の触手による攻撃を放つと、ロキは跳躍し、体を捻り、空中で一回転しながら上向きに刀による一撃を放ち、それらをすべて弾く。

慄いたように怪物の動きが止まる。

竜人として覚醒したロキは、「グルァァァァァァァ!」と吼え声を上げる。

()()()()で怪物は吹き飛んだ。

喩えではない。

本当に宙を舞い、地面に衝突したのだ。

これは竜王の咆吼(ドラグ・ロアー)と呼ばれる竜人特有の技で、本来、相手に身動きが取れない程度の物理的な圧力をかけて、動きを止める技なのだが、ロキの力が強すぎて、圧力どころか相手を吹き飛ばしてしまったのである。

だが、両者はそんな事を知らない。

生徒達を怯えさせていた怪物は今度は怯えさせられ、攻めるロキはここぞとばかりに手から焔弾を放り投げ、刀で怪物の体を斬り刻む。

竜騎士は敵に情けをかけない。

その焔弾は容赦なく怪物を焼き尽くしていく。

何本もの触手を焼かれ、堅かったハサミは今や欠けて凹み、タコ足の半分以上はちぎり取られた。

今にも死んでしまいそうな怪物は必死に水弾を作り、打ち出そうとする。

しかし、竜騎士として覚醒し、竜の眼(ドラゴンアイ)を発現したロキは本来不可視であるはずのその術式を視認し、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)でその中枢叩き斬る。

天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)魔術殺し(マジカルキラー)が発動し、その術式の発動を阻止する。

最後の活路を奪われた怪物は、せめてこの場にいる数人を巻き添えにして自爆しようと、体内に水を生成し、圧力を掛けて封じていく。|

その圧力が解放され、怪物の体が破裂すれば、確実に死人が出るだろう。

あくまで解放されれば、であるが。

それを見たロキは怪物を焔の渦の中に封じてしまう。

こうすることによって、怪物の体内の水を瞬時に沸騰させ、当たったところで怪我をしない水蒸気に変える。

更に、怪物の体を高温によって強制的に炭化させ、怪物が破裂したところでその衝撃でボロボロと灰になって崩れるようにしたのだ。

怪物はしばらくの間は体を振ったり曲げたりして苦しんていたが、動かなくなり、焔の渦が完全に消え、そこに残ったのはもはや生きていたのかもわからない程の白い灰だった。

 

 

 

「先生、どうなってるんですか?」

戦闘を終えたロキは、ラオと共に担任の教師に詰め寄っていた。

担任の説明曰く、

「君たちがダンジョンに挑戦していた頃、地上(こちら)では、この学校を中心とした半径2キロを、さっきロキくんが倒したような魔獣、『キメラ』が取り囲んだ。

現在はMSFが全ての人員を使って対処している。」だそうだ。

「そうですか。」と俺は答えて、再び背から焔の翼を生やして、そこから焔を吹き出し、ドーム状の結界の頂点まで一気に飛翔する。

竜の眼(ドラゴンアイ)を起動し、外の戦場を見渡すと、岩石の魔術の術者の位置が分かった。

どうやら彼が今のところ戦闘の指揮を取っているようだ。

そして学校からやや離れたところに、透明のとても大きな術式が見えた。

その術者は…サラだ。

術式の完成具合は98%、あと数秒で完成といったところか。

おや、降っていた岩石が止んだ。

どうやら足止めだったようだ。

普通に突破されていたが。

そしてサラの極大魔術が発動した。

大きな波が起きる。高さは10m程度だろうか。

その波はぐんぐんこっちに来て、キメラたちを全て飲み込んで、凍てついた。

全体に行き渡ってから凍結したので高さは低くなっているようだが、それでも目方で2mはある。

キメラを氷漬けにするには十分すぎるほどの厚さの氷ができた。

だが…

ピキッビキビキッビキビキビキッ、バキバキッ、ドカーン!

その氷はキメラの動きを封じるには不十分なものだった。

キメラたちは氷漬けにされたことに対する怒りの進撃を始め、MSFの隊員達は落胆と絶望で呆然とし、サラは術式の反動でぐったりとして動けない。

しかし、MSF隊員にも匹敵する実力を持つ竜騎士が、生徒の中に一人だけ居た。

灼熱地獄(インフェルノ)」と唱え、怪物がいる範囲をすべて火の海にする。ちゃんとMSFの隊員を含め、人間には燃え移らない様にしておいた。

そして容易く結界の外へと出て、空中から大きな声で吼える。

「おい、誰に断ってこの学校に攻めてんだ?このバケモノ共が!」

最強の天才竜騎士と人工のキメラとの凄絶な闘いが始まった。

 

 

To be continued…

 




ロキ君が強過ぎる…
天叢雲剣の威力もチート級だしキャラインフレして潰れなければいいけど…

批判、罵倒、賞賛、コメントをお待ちしておりますよ。


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勝鬨

またもや連続投稿。
最近は短くまとめられて読みやすくなったかな?という感じがします。
短くなった分速度でカバーしていこうと思います。
それでは本編、どうぞ。


私の渾身の水流極大魔術、大津波(タイダル・ボウア)が完成する。

即座に退避命令を出して発動させる。

本物顔負けの津波がキメラ達を次々と飲み込んで行く。

しかしその激流だけではキメラは殺し切れないため、次なる凍結極大魔術、絶対零度(アブソリュート・ゼロ)を発動させ、大津波をまるごと凍りつかせる。

それによってキメラ達は厚さ2m以上の氷の中に全て封じられる。

その動きは完全に止まったかに見えた。

が、氷に細かく亀裂が入り、全体に広がり、氷は砕け、キメラが中から何事も無かったかのように出てきて怒りの吠え声を上げる。

MSF最強の魔術師による、最強の極大魔術二連続。

これが破られたことにより、今、MSF隊員の間には、キメラにはもう誰もかなわないといった雰囲気が漂っていた。

その時だった。

地面から紅蓮の炎が噴き上がる。

その面積はキメラが居るところすべてをカバーしている。

続いて、サラにとっては聞きなれた、威厳のある吼え声が聞こえた。

「おい、誰に断ってこの学校に攻めてんだ?このバケモノ共が!」

その姿はさながら地獄の焔で罪人を焼き払う竜騎士で。

焔で灼かれるキメラ達の動きは止まっている所かロキの声で怯んでるようですらあった。

そしてロキが素早く空中から降り立つ。

どちらかと言うと着弾といったその速さは、地面に楽々とクレーターを作り、周辺のキメラを瞬時に砕く。

そこからのロキは三面六臂の大活躍だった。

眼前のキメラを切り裂き、背後から迫るキメラを焔の渦で数秒としないうちに灰に還し、右から迫ったハサミをかわして左のキメラにぶつける。

地中から伸びてきて足に巻きついたタコの足は瞬時に燃え上がって消滅し、その本体は一瞬の後に切り刻まれている。

キメラ達はロキの焔に適応したようだったが、それでも動きは鈍る。

対してロキは、焔の中でこそ活躍する。

地面から噴き出している焔には知覚効果があり、範囲内にある物や、その動きを逐一把握することが出来る。

よって全ての不意打ちは無効となる。

ロキは依然舞うようにキメラを切り裂き、歌うように口から焔弾を打ちだして、キメラの数を一体ずつ減らしていく。

しかし、もともとの数があまりにも多すぎた。

その処理能力を持ってしても、キメラを全滅に追い込むのは流石に無茶というものである。

疲弊したところを殺されてしまうのが関の山だろう。

そこまで思い至ったサラは、グラウン、グロウドと共に帰還していた戦力を含めたすべての隊員に、「今あそこでは一人の学生が自らの学舎を守るために奮闘している。かれに天才的な戦闘能力があるとしても我々MSF正式隊員は一般の生徒に先を越される程度のものなのか!今こそ我らの力の全てを見せてやる時ではないか!」

と、惚けたように突っ立っていた隊員達に発破をかけて、紅蓮の焔が燃え上がる戦場に守護霊に乗って向かう。

幸い隊員達は立ち直ったようで、私の後ろについてきた。

そして戦場に入った私はロキに応えるように、

「これからは私達MSFとあなた達キメラとの戦争です!人間の底力、とくとご覧なさい!」

と宣言する。

少し恥ずかしくて久しぶりに口調が敬語になってしまったが、味方たちも勝鬨の声を上げてくれた。

士気は充分高まった。

舞台も整った。

さあ、これからは反撃の時間だ!

 

 

To be continued…




話が全然進まなーい。
次の話でロキとサラがやっと合流するかな?って感じです。予定なのでわかりませんけど。
感想お待ちしております。


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終戦

昨日も投稿しようと書き進めたのですが、寝落ちしてしまいました。
生活習慣を整えなければ…
お待たせしました。今回でとりあえず一段落つきます。
あと、お気に入り登録して下さった方が二人も増えていました。とても嬉しい事です。ありがとうございます。これからもこの作品をお願い致します。


それではどうぞ


天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)MSF隊員全員を率いての戦闘が始まる。

雄叫びを上げてキメラに襲いかかるMSF隊員達はその圧倒的戦闘力でキメラを貫き、砕き、吹き飛ばしていく。

しかし彼らですら、ロキの戦果を上回ることは出来ない。

実は古代の竜人の奥義である煉獄(プルガトリオ)というらしい魔術でキメラを焔の渦の中に次々と閉じ込めていく。

彼の周りには常に十個ほどの焔の繭がある。

キメラは頑丈な殻に包まれているにもかかわらず、その渦は5秒ほどでキメラを灰にして消滅する。

その火力はMSFきっての炎魔術の使い手である『焔獅子』ウィルソンよりも高いのではないだろうか。

依然として舞うようにキメラを斬り続けながら合間に焔の渦を顕してキメラを行動不能に追い込み、そのまま焼き殺してしまう。

更に彼は無意識の内に陽炎が発生する程の純粋な熱を体のまわりに纏った状態で戦っている。

最初は煌めきを放っていた白銀の竜騎士の鎧は今では赤熱してしまっている。

これは古代の竜人の防御用焔属性魔術の奥義、陽炎の鎧だったがそんな事はロキの知るよしもない。

竜人の奥義三つも同時に発動させたロキは完全であるように見えた。

だがその防壁は唐突に破られる。

 

前後左右、全方位をキメラに囲まれているロキ。

その顔に焦りはない。

既にどのキメラから斬っていくかなどは決まっている。

手始めに斜め前のキメラを煉獄(プルガトリオ)で捕獲し、灰にする。

それと同時進行で左手から焔弾を投げて周りのキメラを半歩ほど後ろに下がらせる。

後は天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)で回転切りをすれば周辺の敵をまとめて処理できるはずだった。

そこに唐突に無粋な黒い鉄の塊が乱入する。

その正体は空戦舞台の投下式爆弾なのだが、少し身を躱して直撃を免れようとするとキメラ達に襲われてしまう。

しかし躱さなければ爆殺されてしまう。

いくら分厚い鎧に身を固めていたとしても爆弾を直撃させられては無事では済まないだろう。

味方からの誤爆。これこそがロキを窮地に追い込んだただひとつの原因であった。

さあ爆弾がロキに着弾しようか、という時だった。

ロキの周りの地面から鋭い氷が氷柱のように生えてキメラ達を貫いて一掃した。

おかげで空間に余裕をもてたロキが術者を確認する。

右手で鞭を構えていて、流水の鎧を纏った見覚えのある魔術師だった。

「サラ!」

ロキは思わず名前を呼び、再会を喜ぶ。

サラも、「ロキ、良かった、良かった…」と言っている。

感無量の様子で、装甲で表情は見えないが、涙声になっている。

とはいえキメラはまだ沢山いるため、周りからじわじわとにじり寄ってくる。

交戦しようとしたその時、キメラを錆色の炎が襲う。

立っていたのは獅子(ライオン)をモチーフにした装甲を纏った戦士だった。

鬣の部分が錆色の炎になっている。

「ウィルソン!?」

サラはなにやら驚いた様子だ。

「おいおいお二人さんよぉ、お熱いのもいいがちゃんと奴らを片付けちまってくれよぉ。特にサラ総隊長はそいつの世話をちゃんとしてやれよ?強くても一般人なんだからよ。」

と錆色の獅子はおどけた様子で言う。

「そ、そんなんじゃ!無いわよ!」

と否定するサラの装甲の水は今や熱湯となり、湯気が出ている。

ウィルソンは「へいへ〜い」と言って立ち去り際にロキの耳元で小声で嘯く。

「サラのこと、護ってやってくれよ?」

ロキには意味が理解できない。

この場合はサラをキメラから護ってやれという事なのか?と解釈してその通りに動く。

 

サラへと迫る触手を全て叩き落とし、足りない分は焔を幕のようにして防ぐ。

太刀の切っ先でぐるりと時計回りに小さく円を書き、焔の渦を纏わせる。

そしてそれを振るい、焔の竜巻として打ち出す。

道筋にあったキメラの体の一部は全て一瞬の内に灰に還る。

だがロキはギリギリまで気づけなかった。

サラの体の陰になっている部分。その方向から触手が迫っていることに。

気づいたのはサラの肩の上を超えて、あと数刻でロキに命中するという時だった。

鋭い触手はロキの体を貫かんばかりに高速で飛んでくる。

が、その勢いは突然落ちる。

サラが高圧水流の刃を振るってまとめて触手を切り落としたからである。

地面に落ちた触手の断片はピチピチと跳ねながら、麻色の霧となって消えた。

「え!?」

ロキはそれを見て驚く。

彼にとってキメラは灼き殺すもので、雲散霧消する前に灰として無機物に還元していたからである。

その様子を見たサラはすべてを察して、「ロキ、人に造られた魔獣は死に際、製作者の魔術の痕跡と共に消えるの。」

と教えてくれた。

そのあいだも2人はどんどんキメラを屠っていく。

切れ味の落ちない聖剣、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)はその使い手が振るい続ける限りすべてを斬り続ける。

その性能もそうだが、何よりもロキとサラ、二人の連携がとてもスムーズに働き、効率よくキメラを霧と灰に還していく。

ロキの死角をサラが、サラの死角をロキが埋め、周辺の敵を駆逐し尽くし、移動する。

闘う場所を10回ほど変えた時だった。

目の前がすっきりとして、周りを見回すとキメラの影がどこにもない。

ロキの焔による探索にも引っかからない。

地上のキメラが殲滅された瞬間だった。

ロキは安全だと確認してから灼熱地獄(インフェルノ)を解除する。

焔の紅で気づかなかったが、辺りにはキメラの体だった麻色の霧が立ち込めている。

そこで初めて空から射す陽光に気付き上を見上げると、飛翔型のキメラはすべて撃墜されていた。

同時にサラの無線に連絡が入る。

「サラ地上部隊長に連絡です。空戦部隊、損害34で勝利、敵反応完全に消滅しました。」

小鳥は啼き、暖かい陽の光が射す。

皆がそう感じたその時だった。

立ち込めていた麻色の霧が凝集して、フードを被った巨大な人間の胸から上になった。

そしてその大きな人形のモノは言った。

 

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次回からはサラ外伝と称して、ロキが目覚める少し前のサラの話を投稿していきますのでよろしくお願いします。

感想、お待ちしていますよ。


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本編零章・サラ外伝『虎馬』
悪夢


今日の投稿です。バイト終わってから書くんで投稿のタイミングがバラバラです。大体1時から4時の間くらいですかね~?
今回からサラ外伝という事で何と!ロキ君が出ません。
この章では主人公をサラにしてお送りします。
ロキファンの方々、しばらくお待ちください。
サラファンの方、喜んでいただければ嬉しいです。
それではサラ外伝、どうぞ!


気がつくと私は流れる水の鎧を纏って貴族に対する反乱軍(クーデター)と交戦していた。

「まただ。」と私は言うが、目の前の敵を屠る手は止まらない。

敵の1人1人は弱いものの如何せん数が多いので圧倒的な物量の違いにMSFは苦戦していた。

また、彼ら反乱軍(クーデター)はこちらを殺す気で襲いかかってくるが、こちらはなるだけ敵を殺さずに無力化しなければならない事も苦戦の原因であった。

 

 

人界暦3650年、クラウィンコロナ各地で、横柄な貴族達に平民達が暴動を起こし、反乱軍を結成、武器を取って国中の貴族を襲撃、殺害して回った未曾有の大事件が発生した。

警察だけではとても手に負えないその状況にMSFも出動、交戦することとなる。

反乱軍の多すぎる戦力に、

MSFも戦力を分断されてしまう。

大抵の場合MSFが勝利し、その地の反乱軍を鎮圧したが、やはり負けてしまう部隊もいた。

そして勝利すればそれぞれ近くで闘っているところに乱入し、場を掻き乱し、味方を援護する。

その結果起きたのはどのMSF隊員も経験したことのない史上最長の戦闘だった。

それによってMSF側では疲労により集中力が下がり、全体的な戦闘力、術式の精度などが下がっていった。

だが反乱軍側では疲労は力を与えた。

彼らは理性を失い、憎しみが残った。

そしてその憎しみはMSF隊員に向けられ、彼らは暴徒となった。

しかし総隊長のサラが率いる部隊は、彼女が士気を上げ、自らも鼓舞した為に効率的に反乱軍の人員を確保していった。

そして間もなく目の前の敵を壊滅させられるという時、

彼女に悪夢のような瞬間が訪れる…

 

 

 

「キャーーーーーーッ!」

ベッドから跳ね起きる。

息が荒い。服が寝汗でびっしょりと濡れている。時計は5:26を示している。

「随分うなされておったがサラよ、大丈夫かの?」

と尋ねてきたのはMSFの頭脳である博士だ。

「大丈夫ですよ。」と私は答える。

「またあれを見たのか?」と博士が問うてくる。「あれ」というのが何なのかは二人の中ではわかっている。

なのでサラは「ええ。」と短く肯定する。

「睡眠薬はいるかの?」

という博士の気遣いに、サラは「もう一時間半したら起床時刻だから大丈夫ですよ。」と答える。

そしてそれに続けて「起こしてしまったならすみません」と律儀に謝罪すると、博士は

「あの、な。サラや。落ち着いて聞いておくれ。前々から言おうと思っておったんじゃがな。」

となにやら気まずそうに博士が話すのを聞く。

「不謹慎なんじゃが、サラや、お主の寝汗でパジャマが濡れるじゃろう?そしたら、だな。あの、下着が、透けて見えてしまう…んじゃよ。」

博士が言いにくそうにするのは当然である。サラはMSF養成学校時代から容姿、器量共に優れており、有り体にいうと「モテて」いた。

さらに第二次性徴が来て、学生の頃はなかった胸も今はそれなりにあるため、男性からすればとても言い出しづらいことなのである。

そしてそれを聞いたサラが耳まで真っ赤になって部屋の隅で着替えたのも仕方の無いことだろう。

 

 

 

それから数日後。

「あ、もう月末ですか。」とサラが持っているチラシは毎月月末に行われる恒例イベント、MSF分隊対抗戦の告知だった。

MSF分隊対抗戦とは、その名の通り各分隊対抗で行われる集団の模擬戦で、博士が発明した電脳世界構成機が作る電脳世界に電脳体(アバター)としてダイブする技術のお陰で負傷者を出さずに安全に実戦訓練を行えるのである。

チラシを持って私が第1分隊の詰所に行くと…

「おはようございます、サラ様。今日もお美しい。」「「サラ様、ついにこの時が来ました。今こそ…(以下略」

「サラ様」「サラ様」「サラ様」「サラ様」

勤務中だというのにこの態度である。怒った私は

「あなた達には真面目さというものはないのですか!?」と怒ると、一人の隊員が、「サラ様、お怒りになった声と顔すらもお美しい…」と言うので、

「もういいです!!あなた達なんてもう知りません!」と言って詰め所から出てきてしまった。

 

1方詰め所に残された隊員達はというと。

「さ、流石にやりすぎたか…」

「いや、流石に怒ってるのに言うのはやりすぎだろw」

「いや面目ない。サラ様毎年この時期になると哀しそうだから…」

「早く吹っ切れて欲しいんだけど生真面目なとこが仇になってるんだろうね…」

という会話をしていた。そこに…

「冥福祈願」

と、第二分隊副隊長のグロウドがさりげなく混じっていた。

「わぁ!?グロウドさん、今日はどうしてこちらに?」と、割と歴戦の勇士である隊員の1人の問いかけにグラウドは

「宣戦布告」と答える。

「そうなんですか。」と相槌を打つと、

「隊長不在、再来予告」と言ってから果し状を机に置いて詰め所から退出する。

第1分隊と同格の戦力を持つ、いわばライバルである第二分隊。その副隊長、グロウドは無口で、漢文のような話し方をするのが特徴であるため、ある程度分かるものにしか意味がわからない。

ちなみに先程の「隊長不在、再来予告」とは、隊長が居ないようなのでまた出直すという意味である。

「それにしても隊長は一途だからなぁ~」

「ま、俺らが出るとこじゃないっしょ。」

「さてと、謝りに行きますか。」

彼らは支度をしてサラに謝るべく詰め所に鍵をかけて出発していった。

 

 

To be continued…




今回はプロローグといった所でしょうか。終わり方が微妙ですがこのまま書き進めたらサラ外伝を一話で終わらせてしまいそうなので。そんな長文は見るに耐えないので若干無理やりな感じではありますが分割します。


感想、並びに活動報告のアンケートにご協力ください。
誤字があれば教えてくださいませ


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結束

今日も投稿です。
昨日からバイトが四連勤でやや体調がしんどいです。
ああ働かずに生きていきたい…無理ですけども。
本格的に自宅警備会社への就職を考える今日このごろです。

今回はシリアス回(?)です。早くバトルシーンが書きたい!次回かその次にグラウン&グロウド兄弟VSサラの頂上決戦が書けるかな?って思ってます。このペースで行くと今月中にサラ外伝は書き終わるのかな?と思ってます。
外伝ですがきちんとシナリオに関係があるので読んでいただけると嬉しいです。
それでは、どうぞ!


サラが詰め所を飛び出して向かった先はMSFの中央司令室だった。

そこには博士の研究室があり、博士は何やら工具を使って作業をしていた。

サラが入ると博士はそれに気づいて、「どうしたのじゃ?随分と早かったが。作戦会議は終わったのかの?」と聞いてきた。

それから何も答えないサラの表情を見て、「何かあったのか?」と更に質問を重ねる。

「何でもないです。」

そう答えるサラ。しかしそれを見て博士は全てを察して、「不貞腐れとるのう。まぁあいつらの事じゃ。ふざけておったんじゃろう?」

と見透かしたように言い当てる。

サラは少し動揺して、「ど、どうして分かったんですか?」と聞いた。

その返答は、「サラは毎年このくらいの時期になると暗い顔をしておるからのう」というものだった。

そこまで聞いてやっと全てが繋がったサラは、司令室を出て、謝罪すべく自らの部下達の元へと向かう。

その背中を博士は慈しむような目で見ていた。

 

 

 

私が司令室を出て少し歩くと、通路で第1分隊の隊員達と鉢合わせした。

十中八九私に謝るために司令室に向かっていたのだろう。

流石に気まずく、サラも隊員達も黙り込んでしまう。

「あ、あの」私が伺うように言うと、副隊長のクィンドが、「な、何でしょう?」とおずおずと答えた。

サラは、恥ずかしいやらバツが悪いやらで一気に言いたい事を言ってしまう。

「さっきのって私に怒られるのを覚悟して、その上で私を元気づけるためにあんなふうにしてたんですよね?それなのに、私、何も考えずにあなた達のことを叱って…隊員のことが分かってないだなんて私、隊長失格ですね。」

するとクィンドは、「隊長、何やら悟ったような顔をされてますが全く当たってませんよ?」と否定する。

へ?というような拍子抜けした表情のサラに更に言葉を投げかける。

「いや、そもそも俺らがそんなイイコちゃんな訳もないですし、いい部下な訳ないじゃないですか~ww」と言う。

でもサラにはそのセリフすらも自分のことを思いやっているように聞こえて、目尻が熱くなり、涙腺が決壊する。

「こんなに、グスン、頼りない隊長なのに、グスン、みんなはこんな隊長で、グスン、良いの?」

「いやいや、MSF最強の魔術師が隊長で不満があるならもうそいつぁMSFに居場所なんかねぇでしょうよ。それより、」

とと言ってクィンドが取り出したのは宣戦布告と墨で表に書かれた紙である。

「グロウドさんがこれ置いていきましたよ。やっぱりウチを指名するみたいですね。早いとこ戻ってヤツらに勝つための作戦考えましょうや。」

「そうですね。」

と私は涙を拭って彼らと共に詰め所へと歩き出す。

どうやらいい部下達に恵まれたようだ。

そして詰め所のドアの前にいたのは、締め出しを食らったグロウドだった。と言った。

 

 

 

「あ〜サラのヤツ、まだいなかったのか?でもうかうかしてたら他の隊に先越されちまいそうだしな~何せ奴らは最強の隊って名高いから。グロウド、悪ぃけどもういっぺん行ってきてくれねぇか?」

「御意」

兄の頼みだ、それに自分もサラと闘いたい。断る理由もなく、頼みを聞いてもう一度第1分隊の詰所に出向く。

ただ一つ誤算だったのはサラに謝罪するために第1分隊の全員が詰め所を出ており、そこには誰もいなかったことである。

今帰ったとてもう一度来なくてはならないことは予想できる。

「帰還待機」と独りごちてドアの前でサラ達を待つ。

なお、サラ達が戻ってきたのは15分後の事だったらしい。

 

 

 

詰め所の前には珍しく苛立った様子のグロウド(依然無表情だが仕草から読み取れる。)が居た。

グロウドはサラたちを見るなり、「長時待機。我再来予告。留守番皆無。然施錠済。故我不可入。」と言った。

ちなみにこれを通常の文に戻すと、「俺はもう一度来ると言ったのに鍵が締まっており、留守番もいなかったため、外で長時間待たされた。」となる。

グロウドの長文記録を更新する長さのセリフからも彼の苛立ちが伝わってくる。

「グロウド、申し訳なかった。少し色々とありまして。」と更が謝罪すると、分かれば良いといったふうにゆっくりと頷いている。

「宣戦布告ですよね?

「肯。是印也。」

と正式な書類を渡してくる。

そのままグロウドは帰っていった。

それから一時間半程度作戦を練った。

そして解散しようか、という時だった。

つい一昨日に入隊したばかりの新人、()()()君の実力を推し量るために模擬戦をすることになった。

電脳世界構成機はMSF分隊対抗戦の前日までは自由に使うことが出来る。そこでそれを使って模擬戦をすることとなったのである。

カロンはサラと闘いたがったものの、闘争心を燃やしたクィンドが相手をすることとなった。

 

 

 

電脳世界にダイブしたカロンは不思議そうに自分の装備を見ている。

この世界では常に魔装は展開されている。

魔装が解除されるほど大きなダメージを受ける頃には損傷過大で強制ログアウト、所謂“死亡”とされる状態になり、その戦いにはもう参加出来なくなる。

それらのルールを教えたクィンドは戦闘開始を宣言し、(うぐいす)色の魔力で出来た矢をカロンに向けて射掛ける。

練られた技によってそれらはほぼ同時に発射される。

それをカロンは様子見程度に躱した。

続けて飛んできた二の矢、三の矢に、黒灰木(こっかいぼく)で出来た長さ14cm、やや短めの杖を向け、もれなく闇黒の球体を命中させる。

球体が当たった矢は空中で静止する。

「何!?」機能にない動きをする矢に驚いたクィンドが射撃を止めたところで矢の向きを反対にして、クィンドの方へ向ける。

杖を振るい、クィンドの方へ矢を飛ばす。

「魔術の操作権限の奪取か!!」と言ってクィンドは避けようとするがカロンも簡単には避けさせない。

現在カロンたちがいる場所は打ち捨てられた住宅街、廃墟が多く立ち並ぶ場所で、影が多い。

拘束(ホールド)」と唱えてクィンドの足元の影を伸ばし、クィンドの体を覆わせて動きを封じる。

このように相手の動きを封じたり、相手の行動を逆手に取ったりして闘うのがカロンの十八番だった。

だがクィンドも負けてはいない。「妖精達の大合唱(フェアリーズ・コーラス)」と唱え、鶯色の波紋を生み出し、矢と体を覆う影とを破壊する。

「ッ!?」驚いた様子のカロンにクィンドは余裕を保ちながら、「ま、入隊三日目でこれだけ出来りゃ上出来だろ。まあ訓練生程度なら即無力化できそうだしな。でも、」

そこでクィンドはニィと凄絶な笑みを浮かべる。

「正規の隊員を殺ろうと思ったらあと10倍の威力とあと100倍のテクニック、発想力が必要だわな。ここからは正隊員の力、見してやるよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

結局の所、カロンは負けた。むしろ勝てるはずもなかった。クィンドは終始余裕の笑みを絶やさず、講釈を続けながら闘い続けた。

最終的にクィンドに式神である“妖精王”オベイロンを召喚され、慌てて“堕天使”ルチフェルを召喚したものの操作がうまくいかず、結局オベイロンに浄化されて消えてしまった。

そしてカロンも四肢を射止められて心臓を貫かれて“死亡”したのだった。

そして二日後。

MSF分隊対抗戦の日がやってきた…

 

 

 

To be continued…

 

 




感想、並びに活動報告のアンケートメッセージを下さい。お待ちしております。
あとお気に入り登録してくださったXXX様、本当にありがとうございます。これからも頑張りますのでよろしくお願い致します。


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獅子

皆さん、こんばんは。
毎日書いてると前書き、後書きに書く事が無くなってきました。
なので前書きはこれだけです。それではどうぞ。



「私達は勝たなければなりません。常に勝利を手にする。それこそが最強と言われる第1分隊のあり方だからです!」

私は第1分隊の詰所でMSF対抗戦直前の演説をしていた。

「今回はクィンドに張り合うほどの阻害魔法の使い手であるカロン君が入隊してくれました。彼は私達の新しい戦力として活躍してくれることでしょう!しかし、油断していてはなりません。勝って兜の緒を締めて、日頃の訓練の成果を、圧倒的な戦力の差を見せてやりましょう!」

既に詰め所には男達の熱気がこもっている。

気合十分である。

そして詰め所を出て、会場のサーバールームに入る。

ヘッドギアを被り、私は電脳世界へと飛び立った。

 

五感が戻ると、わたしは既に氷で覆われた鎧を身につけていた。

接近戦をする際に展開する尖った重装備は今の所カットしており、動きやすさを重視した(一部では通常型と呼ばれている)ほぼ素体の形のままの、女性らしい丸みを帯びた装備である。

腰にはバトン形態のレイピアが吊られている。

普段はこうして柄の部分のみにしておく事で軽量化が出来る上に、そこから氷弾を打ち出すなど応用的な戦法を取れるようになるのだ。

ステージは砂漠。気候が高く、乾燥しているため、草属性魔術の使い手には苦手なステージである。

徐々にダイブしている人数が増えていく。段々と各部隊から全員揃ったという報告が来るようになった。

あと数分で戦闘開始という時に第1分隊は全員揃った。

そして大きなゴングの音が鳴り、いよいよMSF分隊対抗戦が開幕する。

サラが率いる第1分隊は有名であるが故に狙われるため、最初の位置からほとんど動かずに待ち伏せをする戦術をとっていた。

包囲して勝とうとした隊もあったものの圧倒的攻撃力で包囲網を突き破り、分散した敵を駆逐した。

それくらい最強の名は伊達ではないということだ。

 

 

最初に攻撃してきたのは第5分隊だ。

お調子者の「焔獅子」ウィルソンが率いるこの隊には勢いがあり、油断していると猛烈に攻撃を受けて倒れてしまう事になる。

だが彼はお調子者であるが故に相手の隊長は自ら倒そうとする。

サラもその心意気を受け、隊員達に手出しをしないように言ってある。

他の隊も横槍は入れないであろう。

サラとウィルソンの一騎打ちというイベントが開始早々起きようとしていた。

 

「よ~うサラ、相変わらず寒々しい鎧だなぁ。一人だけ氷河期なんじゃねえか?」

とウィルソンは手始めにサラを挑発する。

負けじとサラも「いえいえ、誰かさんのせいで酷くなってる地球温暖化を止めようとしてあげてるんですよ?存在だけで暑苦しいんですよ。」と言い返す。

「いや、ここバーチャルだから地球は関係ないと思うけどなぁwま、砂漠でせいぜい蒸発してろよ“最強”さん?」

「はいはい、雑魚の僻みはいいですよ。所詮ザコはザコなんですから分を弁えて引っ込んでてくださいよ?いまなら見逃してあげますよ?」

「んな事するわけ、ないだろっ!と」と、ウィルソンは錆色の焔弾をサラに向けて投げる。

サラは魔術で焔弾そのものを凍結させて撃ち落とす。それと同時にレイピアに手をかけ、針のような鋭い刃を具現化させる。

「なら、徹底的に叩き潰すまでです!」

サラは一呼吸で5回もの刺突を繰り出す。

一発一発が的確に急所を狙った精密な攻撃をウィルソンは両手のトンファーを使って軽く逸らし、更に圧力魔術を乗せた打撃をサラの腹部に向けて打ち込む。

しかしサラも手練。足元の砂を蹴り上げてそのまま凍らせて一枚の大きな盾にして防ぐ。更に砕けた砂混じりの氷を操ってウィルソンに向けて打ち出す。

ウィルソンは地面を殴り、衝撃波で散弾のような小さな数百個もの氷の粒を吹き飛ばす。

サラはいつの間にかレイピアを柄だけにして腰に戻し、ウィルソンに殴りかかる。

その手には氷で出来た棘が幾つも付いている。

これこそがサラの鎧の強みである。

本来鎧とは定形のものである。しかしサラの鎧は氷で出来ているが故に変幻自在であり、多彩な使用方法をすることが出来るのだ。

人はこれを「変形外装」と呼ぶ。

しかしこれはまだ第一形態。鎧の一部のみにしか変形させていない。

とはいえこのまま殴られてはウィルソンも無事では済まない。即座にトンファーで受け止める。

本来空気中の水蒸気を凍結させて戦うサラにとって乾燥した砂漠は戦いづらい戦場なのである。

それを察しているウィルソンは好機とばかりにサラに反撃を仕掛け、そこからラッシュに繋げる。

一撃、ニ撃、三撃と打ち込むトンファーをサラは全て躱し続ける。

そして詠唱を始める。

「魔女さん魔女さん、背中に翼を下さいな。私にあの大空を翔ばせておくれ。も一つお願い魔女さんや、この身には棘を。大きな氷柱で私を守っておくれ。」

サラのシンデレラの物語をモチーフにした独自魔術。その効果は絶大である。

背中には大きな氷の鳥の羽が出来、なめらかだった氷の鎧はゴツゴツとして、たくさんのトゲがついている。

変幻自在の鎧の第二形態であった。

最終形態である第三形態までサラを追い込んだ事があるのはMSFでは第二分隊のグラウン&グロウド兄弟のみである。

細かい変化としては、両手に手甲と、ネコ科動物のそれを彷彿とさせるような長い爪が付いたことくらいである。

空を翔んで氷弾を撃つサラ。その狙いはまばらでどれもウィルソンには当たらない。

しかしサラが「標識起動(マーカー・オン)」と唱えた瞬間、外れた氷弾が着弾した位置から大きな氷山が盛り上がる。

ウィルソンは完全に囲われた形である。

トンファーでそれを砕こうと殴りつけるのと、トンファーが砕けたのとは同時だった。

右手のトンファーが粉々になり、錆色の光の粒となって魔力に還る。

そもそもサラが檻として用いる氷をそんなヤワなものにしておくはずが無いのだ。そしてサラは長めに延ばして最早槍となったレイピアを空から投擲する。

それは寸分違わずウィルソンの胸部を貫き、仮想の心臓を破壊し、無傷だったウィルソンを一撃で葬った。

大将が倒れた第5分隊は主に司令系統が崩れて統制が取れなくなり、敗北したのであった。

 

To be continued…

 

 

 




今回はウィルソンvsサラの一騎打ちを書いていきました。次回はいよいよ第二分隊戦です。
結果がどうなるのか、エキサイティングな戦闘シーンを書けるように頑張ります。
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藤色

今日の投稿です。遅くなってしまってすみません。
ではどうぞ


第5分隊に勝利したサラ達を次に襲ったのは、「一匹狼(ローン・ウルフ)」や「孤高の狙撃手」などの異名を持つ藤色の雷撃使い、ライグだった。

ライグの戦闘の特徴は、多彩な雷撃によって相手を振り回す事と、度を過ぎたほど精密な狙撃、そして速すぎる弾速であるが、これらは全て些事でしかない。

そのような魔術師は過去にも存在し、また、努力すればなることが出来るからである。

それならば何が彼の強みなのかというと、独自魔術による一斉掃射であった。

彼は標的を見つけてすぐには攻撃をしない。

彼の一撃目は必ず上空に放物線を描かせて、その術式を設置するものだからである。

その術式はライグの任意の位置に正確に設置される。

そしてライグの指示を受け、敵を殲滅すべく雷撃を連続で打ち出す。

 

 

 

サラがライグの存在に気づいた時、彼は既に独自術式を射出し、第1分隊を包囲していた。

そして次の瞬間、第1分隊を圧倒的射撃数の雷撃の嵐が襲う。

それらの一撃一撃はそれぞれ一撃で相手を死亡、あるいは最低でも失神させる威力をもっている。

包囲、殲滅。この戦法に第1分隊は大いに苦しめられてきた。「これまでは」

この時のためのカロンである。

サラは即座に彼に指示を出す。

カロンはかねてから用意してあった、「呑闇(アベイラー・シャドウ)」を発動させる。

この魔術は効果範囲内の魔力と術式、及び魔術によって作られたものを呑み込み、そしてカロン自身の魔力に変換する。

当然全て範囲内にあったライグの術式は飲み込まれ、破壊される。

あっという間にライグはいわば丸腰の状態になってしまったのだ。

そしてその後、サラはライグに凍結魔術を絶え間なく打ち込み続けた。

ライグはその対処に追われて撤退することが出来ない。

数回自らを電子の粒に変換して逃走しようとしたものの、その度にサラが的確に電子同士を分けるように氷弾を打ち込み、それを阻止する。

そして第1分隊は二つに分かれ、クィンド率いる別働隊はライグを挟み撃ちにするようにライグの背後に回る。

そして二つの部隊はそれぞれライグから見て横に広がり、その両端はお互いに近づいてやがて合流し、第1分隊はライグを包囲する。

そこからライグは数十人もの隊員達の攻撃を一斉に受け、MSF分隊対抗戦の舞台から下りることとなった。

 

 

 

第1分隊は元来最強と呼ばれている隊である。

そのため脅威となる敵はとても少なく、攻撃してくる敵は一方的に殲滅することが出来る。

楽に生き残っていたが、その眼前にいよいよ永遠のライバルであるグラウンとグロウドが率いる第2分隊が現れる。

彼らとは分隊同士の集団戦を行わなければならない。

サラは通信術式ではなく、拡声魔術を用いて声を張り、気合を入れて指示を出す。

「第二分隊を確認!射撃部隊!用意!」

幾多もの術式が準備される。

「撃て!」

朱、群青、鶯、闇、暗紫etc、etc…

カラフルな弾幕が空を覆い、第二分隊へと殺到する。

しかしそれらは全て不可視の純粋な魔力の塊で出来た障壁にすべて防がれる。

今度はこちらの番とばかりに今度は第二分隊から第1分隊へと様々な術が殺到する。

無論どれも人ひとりが簡単に殺されてしまうようなものである。

サラは大空に向かって、レイピアを時計回りに回す。

あたかも上空の大気を掻き回すかのごとく、最初はゆっくりと、そしてだんだんと早くなり、それに伴って太陽が輝いていて蜃気楼すら発生している空は鈍い灰色の雲に覆われていく。

そしてやがて雪が降り始めて風が強くなり、激しい吹雪となった。

その吹雪は雪の混じった竜巻のようになり、飛来した術式すべてを飲み込んで互いに衝突させ、無効化する。

これらの一連の流れは毎度行っている、こちらの実力を誇示するためのものである。

これが終わると同時に戦闘は開始する。

その証拠に「突撃!」という声とともに隊列を組んだ第二分隊がこちらに向かってくる。

いよいよ白兵戦が始まる。

お互いの隊長は最初、隊員達に指示を出し、陣形や戦略を考える。

しかしある程度戦闘が佳境に入ると、各々出陣し、戦場の真ん中で切り結ぶ。

戦場を突っ切るわけだから当然大将の首を取ろうとする不届きものもいるが、大抵そういう者は隊長直々に手を下されて早めに脱落する。

そしてグラウン・グロウド兄弟とサラは出会い、苛烈な戦闘は始まる。

 

グロウドが飛ばした大岩をサラが砕き、そのままレイピアで貫こうとするエネルギーをグラウンが泥で完全に殺す。しかし突風を伴った刺突は泥を弾きグラウンの視界を奪う。それを利用してサラは頭上から大きな氷をグラウンに落として圧殺しようとするもそれは地面から生えた鋭い岩で防がれてしまう。

他者が割り込むことが出来ないMSF最高クラスの戦闘にサラは知らず知らずのうちに薄く笑みを浮かべている。

海底のような冷たく、静かな超然的集中の境地で、サラの心は徐々に熱く煮えたぎっていく。

そしてその熱気は、凍てついた鎧すらも一時的に融かしてしまうのだった。

それによる変化は唐突に訪れる。

 

 

グロウドが小さな弾丸のような石礫を飛ばしてきたので、レイピアで突いて砕こうとしたその時、氷で出来たレイピアが高圧で噴射された水の刃となっていた。

鎧はというと流れる水をたたえた、やはり元々のものになっていた。

石礫は破壊できたものの、やはりレイピアとは扱いに違いがあり、そして本来の武器であった水刃を使うのにもブランクがあったこと、何よりも動揺した事によって、本来の実力が出せず、グロウドのハンマーで剣を弾かれ、同時に粗く削られた岩のナイフが数え切れないほどに飛んでくる。

(ああ、これは負けたわね…)

そう思った時だった。目が回るような感覚とともに視界が暗転する。

一瞬の後、視界が戻った時、そこは蒼い海底のような場所だった。

周りは氷に覆われているが、前方には体は虎、四肢は馬の化物がいた。

そしてその化け物は名乗った。

「我が名は虎馬。そなたの心に棲みついた怪異だ」と…

 

To be continued…




いかがでしたか?感想、評価、並びに活動報告のアンケートへのコメントをお待ちしております。


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恋人

書き上がってから気づきました。今回3000字普通に超えてることに。
長いですが割と気に入ってる話です。それではどうぞ。


暗く、冷たく、歪で異様。

彼はそんな場所で生まれた。

生まれた、という表現が正しいかはわからない。

 

 

 

彼には生命が宿っていない。例えるならばそう、AIが搭載されたロボット。

生命が宿っているように見えるだけのハリボテ。

そして彼はそこ以外の場所を知らない。

だから彼にはそこが暗く、冷たく、歪で異様なことは分からない。

 

 

 

ただ彼は1人ではなかった。

彼のこの世界での唯一の居場所である虚無の海底には、1人の人間の女性が仰向けになって浮かんでいた。

プカリプカリ。そんなふうに浮かぶ彼女は浮かびながらも水面に出ることは決してない。

彼は寂しさのあまりその女性とコンタクトを取ろうと試みた。

しかし彼女は毎回拒んでしまう。

その事が最初は哀しくて、悲しかった。

しかし何時からだろうか。

その事に彼が卑屈になり始めたのは。

 

 

 

あるいは最初からそうだったのかもしれない。

やがて彼の周りには氷が漂うようになった。

その氷はやがて大きくなり、海底全てを覆い尽くし、目の前に浮かぶ女性と彼との間を完全に断ち切ってしまった。

それは彼の意思による変化でも、女性の意思による現象でもなかった。

なぜならその氷は、彼の、そして女性の孤独感を象徴するものだったからである。

 

 

 

(えっと…ここはどこだろう。)

穏やかな海底で異形の怪物の名乗りを聞いたサラは本来できないはずの呼吸をごく普通にすることが出来た。

(これは…夢…?私ったらついに白昼夢まで見れるようになったのかしら?だとしたらいよいよ不味くないかしら?)

などと半ば現実逃避のようなことを思案していると、目の前の怪物がまた口を開いた。

「これは夢ではない。そなたの精神世界、心の中だ。」

それを聞いたサラはようやく目の前の異形と会話を始める。

「私の…心の…中?どういうこと?」

「そのままの意味だ。ここはそなたの心。ここの環境はそなたの精神状態によって左右される。足元を見てみろ。」

という虎馬の指示に従って足元を見ると、そこには小さな海底火山があり、辺りの氷を辛うじて溶かしていた。

その海底火山は一つだけではなかった。

よく良く見てみると、あちらこちらにまばらに存在している。

「そなたの心は戦いの最中に久しぶりに熱くなり、その結果として海底火山が出来て、氷を溶かしたのだ。そしてそのタイミングで我が接触を図り、今に至る訳だが、どうしたい?」

と、虎馬は唐突に問いかけてくる。

 

 

 

「どうなりたいって…どういう意味よ。」

サラは虎馬の意図を計りかねて問い返す。

すると眼前の氷に、無数の鋭い小石に全身を貫かれようとしている自分が写った。

「我はそなたの心の傷が具現化した怪異だ。と同時にそなたの封じられた力その物なのだよ。それは即ち、我がそなたに力を貸せば、そなたは一時的に本来の能力を取り戻すことが出来るという事でもある。本来の力さえ取り戻せばこの戦況の打開など容易かろう?」

確かにそのとおりだ。二年前よりも前の私ならすぐに逆転することが出来る。

「私に力を貸してくれるの?」という問いに虎馬は、

「勘違いするな。我の力は元よりそなたのものだ。力を返す、という方が正しいのだ。時間が無い。力が必要なら目の前の氷に触れろ。」

と答えた。

 

 

 

私は指示通り目の前の氷に掌を当てる。虎馬はというと、俯くように額を氷に当てている。

と、私の掌と虎馬の額との間に幾何学的な光の線が幾本も走る。

そして力が漲るような感覚が私の体に訪れる。

それと同時に鋭い痛みが頭に走り、私は頭を抱えて蹲って倒れ、そのまま気を失った。

意識が落ちる寸前に私は、懐かしい声を聞いたような気がした。

 

 

 

 

気がついた時、たくさんの石礫が私を貫かんと襲いかかり、あと数瞬後にはそれらを受けてしまう所だった。

それに対して私は右手を振り、水蒸気爆発を起こし、石礫をすべて払う。

それを見てグラウンとグロウドは明らかにたじろいでいる。

相対する私には余裕があり、悠々と二人に向かって歩みを進める。

グラウンとグロウドはその歩みを止めるべく様々な攻撃を仕掛けるもののその全てが水蒸気による爆発に吹き飛ばされ、、氷の厚い壁に阻まれ、流れる水に押し流される。

砂漠ステージだろうが関係ない、そう言うような圧倒的な力量と魔力の量。

正しく最強の魔術師に、グラウンとグロウドが付け入る隙などあるはずがなかった。

そもそもサラが液体、気体、固体の三態を操れた頃には他の者の追随を許さないほどの圧倒的力量だったのだ。

 

 

 

二人がかりで来られたとてその差が埋まるはずもない。

私は右足を強く踏み込み、グラウンの足元から鋭い氷山を生やす。

電脳世界とはいえリアルに作られたこの世界をグラウンの血が湿らせる。

グロウドはいよいよ怯え、第二分隊全員とともに降伏し、MSF分隊対抗戦を棄権した。

一番の関門であった第二分隊に勝利を収めた頃には、もうほかの隊は全滅していた。

長い戦いだった。

深い感慨に耽りながらもサラは電脳世界から退出(ログアウト)するのだった。

 

 

 

 

第1分隊がMSF分隊対抗戦優勝の栄光に輝いた1週間後のことだった。

サラの元をグロウドが訪れた。

「力戻調子如何?」(力が戻ってから調子はどうだ?)

「いや〜あれから何回試してもダメなんですよね〜」

「安心」(よかった)

「あ!でも貴方達ともう一回戦ったらまたもどるかもしれないなぁ〜?」

そう言うとグロウドは、「急用思起。吾戻」(急用を思い出したから戻る。)と言ってそそくさと帰っていった。

「ふーーー。」

と深く息をついて再びのんびりしようと思った時だったわ

「廃工場敷地内で不審な爆発が発生。座標は…」

と、ポケットの中の小型無線機から出動命令が入る。

すぐに第1分隊の中の少数精鋭部隊を率いて現場に向かう。

そこでサラたちが見たものは、()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の敵勢力を全員倒し、リーダー格の人物を討とうとした時だった。

血に染まった地面に、“何か”を持った目標(ターゲット)が見える。

その目標(ターゲット)が持っている物が何であるかは知っている。

それなのに体は勝手に前へと進む。

“前までは”そうだった。体が動かないのである。その代わり、いつも見る光景を少し離れたところから見る。

「お前らは!我らの大事な同士達の!命を奪った!目には目を!歯には歯を!命には命で持ってその罪を贖うがいい!」

 

 

嫌だ嫌だ嫌だいやだいやだいやだイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ…

そして叫んだ男は掴んでいたモノーーーサラの当時の恋人であるペルクスの心臓をナイフで貫く。

男は返り血に染まり、満足気な表情でペルクスの死体を無造作に放り投げる。

「ペルクス~〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

視界がぼやけ、最も大事なものを失った絶望でサラの流水の鎧が凍りつく。

そして夢は覚め……ない。

 

 

 

ペルクスの死体がマリオネットのように唐突に立つ。人間にしては不自然な立ち上がり方である。

そして嵐が訪れ空を灰色の雲が覆い、吹き荒れる暴風はサラとペルクス以外の全てのものを吹き飛ばし、辺りを綺麗な更地にする。

 

 

顔が真っ青で血にまみれていたはずのペルクスにはいつの間にか生気が戻っていた。

そしてペルクスは

「あぁ、サラ。御免よ。随分君を苦しめてしまった。」

これは夢だ。それをサラは知っている。

それなのに。サラの双眸からは涙が溢れて止まらない。

 

 

 

「ほ、本当よぉ。何、何簡単に殺されて死んじゃってんのよぉ。あれからどれだけ寂しかったか、悲しかったか。どうしてくれるのよぉ。ねぇ!」

「すまない。本当はサラを見守るだけのつもりだったんだけどあまりに辛そうだったから…嗚呼そうだ。僕が死んだ後、君の心に生まれた「虎馬」という怪異は君の心の傷を具現化している。そこに僕の魂を上書きした。虎馬の正体は僕だ。悪夢を見せるつもりじゃなかったんだ。それも、ごめん。」

「ペルクス、貴方体が…」

ペルクスの体は光の粒になって消え始めていた。

「もう時間が来てしまったのか。最期に、最期に、逢えて、少しでも話せてよかった。」

「まっ、待ってよ!ペルクスと話したいこともやりたいこともまだまだ沢山あるんだよ…」

「ゴメンね。サラ。あと言い忘れてたことなんだけどね。」

「何?」

 

 

 

「僕が死んだのは、殺されたのはサラのせいじゃないよ。僕が弱かったから殺されたんだ。」

「え…?」

 

 

 

「それからもう一つ。サラには幸せになる権利と義務がある。僕なんかのことは忘れてさ、新しい恋人を作りなよ。もう二年も経ったんだよ?僕はサラの笑顔が見たいよ。」

「そんな…そんなこと………出来るわけないじゃない…」

ペルクスの体がいよいよ光になって天に昇り始め、端の方から消えていく。

 

 

 

「どんな事になっても、サラがどんな道を選んだとしても。僕は、僕だけは君の味方でいるよ。君は絶っっ対に1人じゃない。どうやら別れの時が来てしまったようだ。今まで愛してくれて、ありがとう。たくさんの幸せを、ありがとう。今度は君が幸せになってね。」

 

 

 

そう言ってペルクスは涙で濡れたサラの頬を拭い、そっと唇をサラと重ね、その一瞬後にサラにペルクスの感触と温もりを遺して儚い光の粒となって、高く、高く、天へと昇っていった。

 

 

To be continued…

 




今回でサラ外伝・虎馬は終わりです。
一応注意書きしておくと、最終回ではないです。
これ、原本書いてる時も「もうこれで終わっていいんじゃね?」って思ったんですけど、ロキ君の方がまだまだ解決してないんで。残念ながら終われない。かと言ってこの話はこの時系列でしとかないといけないから最後に持っていくことも出来ない。結果としてこの最終回(?)な感じになってしまったというのがこの話です。
もう一度言います。この話は最終回ではないです。連載は続きます。
という事で次回もよろしくお願いします。


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本編参章
解明・前編


昨日は投稿できなくて申し訳ございませんでした。
久しぶりに外出してみた結果、昼寝が出来ず、眠たすぎて書き上げることができませんでした。
埋め合わせとして解答編を本日12:00に投稿する予定です。
あくまで予定です。今作を投稿後に書き上げるのでもしかしたら睡魔に負けるかも…


という訳でどうぞ!


「MSF隊員養成学校は頂いた。返してほしいならばMSFの主導権を渡せ。」

麻色の巨大な人型のモノはそう要求した。

あたかもそれが当然であるかのように。

 

 

 

「タイムリミットは24時間後だ。そちらの賢明な判断を望むよ。」

そう言い終えるとソレは今度こそ消えた。

「サラ、どうするんだ?」

俺は何も分からず、さらに指示を仰ぐ。

 

 

 

「ど、どうしましょうか…とりあえず基地に戻りますけど、良かったらロキも来ますか?」

と返ってきた。やや驚きつつも俺は

「いいのか?」と聞き返すと、

「ええ。貴方がキメラの侵攻を遅らせたこと、並びにキメラとの交戦でMSFに協力したことも既に分かってますから、「協力者」として例外的に今後の方針を話し合う「会議」という名目で呼ぶことはできます。実際の所、大半のMSF隊員に並ぶレベルの実力を持っていることは既に証明されてますし。」と説明してくれた。頭が冷えたのか口調が敬語に戻ってしまっている。

 

 

 

「分かった。じゃあ行こう。」

そう言うと、サラは守護霊呪文を唱えて氷のユニコーンを召喚する。

俺は竜騎士の本能に従って「吾、龍騎のものなり。我が眷属よ、時空の狭間を越えて出でよ。」と、別の呪文を唱える。

すると俺のすぐ横の空間に直径3mくらいの穴が開き、そこから俺の鎧と同じ白銀色の体長3m程度と小型な(ドラゴン)が出てきた。

 

 

 

この呪文を見たことがないらしく、サラは目を丸くしている。

俺がドラゴンに跨ろうとすると、紅色の鞍と手綱が竜に装着された。

そして手綱を掴む。

「では行きましょう。」とユニコーンを操り、俺が最初に保護されたMSF中央基地へと急ぐサラを追って急上昇し、雲と同じくらいの高さを翔ぶ。

 

 

これが空を飛ぶという事か。

自分の翼で飛ぶのとはまた違う感覚に驚嘆しながら、練習とばかりにインサイドループ、アウトサイドループ、テールスライド、並びに焔を纏いながらの飛行や焔で複数の分身を作った上でそれらと協調した上での集団戦の練習などをしていた。

それでもサラからはぐれることは無かったのでこの小型の竜の飛行速度は相当速いのだろうと思う。

そうこうしている内に少し懐かしいMSF中央基地に到着したのだった。

 

 

 

 

基地の中の人たちの慌ただしさからどれだけ異常な事態が起きているかというのがロキにもわかる。

更にエレベーターに乗り、博士が居るらしい中央司令室へと向かう。

部屋に入った途端、博士が受話器の口を抑えてサラに「犯行声明じゃ。サラや、出ておくれ。」と言って受話器を渡す。

 

 

 

電話を変わったサラは「電話変わりました。こちらMSF総隊長のサラです。はい。 はい。 その件はこちらで慎重な審議をさせて頂きます。 はい。それでは。」と、何度か受け答えをしてから電話を切る。

「犯人はなんて?」とサラに訊くと、「大体は現場(あっち)でいってたのとおなじです。24時間後にあちらからもう一度電話がきます。もし拒否すれば人質は全員殺す。もしもその時に答えられない場合は30分ごとに人質を1人ずつ無作為に選んで殺していく。だそうです。」

それを聞いて博士が首をかしげながら言う。

「なんともおかしな話じゃのう。もしMSFの指揮権を手に入れたとしても下に付く隊員達の反乱を受けてたちまち瓦解するじゃろうに…」

それもそうだ。いや、待てよ…?

と一つの事実に思い当たったロキはサラに「サラ、魔術の固有色が他人とかぶるって事はあるのか?」

と聞くとそのような例は確認されたことがないという答えが返ってきた。

それによってロキの中ではすべてが繋がった。よし、これで犯人がわかった。

ロキの頭の中は澄み渡ってスッキリとしていた。

 

 

 

 

To be continued…

 

 

 

 

 




今話は2章の続きです。時系列は章の数字通りの順番になっています。1以降がロキが目覚めてからの話、0以前がロキが目覚める前の話です。
犯人が分かった方は僕に直接メッセージを打っていただけると、気づいた時に正解、不正解の返信を送らせていただくかも知れません。
締切は解答編が投稿された時となります。昼の12時の予定ですがまだ未定です。
それでは解答編もお楽しみに〜




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解明・後編

無事間に合いました。お昼の12時をお知らせします。
今回は解明編です。
さあ犯人は誰なのか。何故かサスペンスチックになってきた本編第4章。そもそもこの路線で続けて大丈夫なのか。
何はともあれIt's show time!


「そういう事なら犯人は分かった。」

 

 

俺がそういうとサラはたいそう驚いている。

「え!ロキ、それはホントなのですか?」

「ああ。まず証拠は二つ。一つ目はさっきのキメラを殺した時の霧の色だ。」

「麻色…でしたよね?」

「ああ。次に俺がサラの任務に同行した時(本編壱章の「異変」を参照下さい)の転移術式の色だ。あの術式には術式をの生成者の魔力が大量に残っており、それを使って俺は術式を発動させた。つまりあの術の色はオズリーのものだ。そしてその色は?」

「麻…色…」

 

 

 

俺に遅れてすべてを理解したサラは口を抑えて驚愕を隠せない様子だ。

「まあっ…!?」

「あの転移術式の作成者はオズリーだった。そしてその色は麻色だった。なおかつキメラの親の魔術の固有色は麻色。色かぶりが有り得ないと仮定するならばこの事件の犯人はオズリー・ゴートだと断定できる。」

「ええ。正しいです。これならオズリーに逮捕状を出せます。」

サラは事件が解決へと向かって晴れ晴れとした顔をしている。

 

 

 

「だけどまだ問題があるんだ。」

 

 

そんな俺の発言を聞いてサラは眉をひそめる。

「一つ目は単純に人質が取られてること。もう一つは俺がオズリーの能力を何一つ知らないことだ。まさかキメラ作るだけの能力ってことはないだろうしな。」

ロキがオズリーと戦った時、オズリーは丸腰と油断して魔術を使わなかった。

結果として突然聖剣を顕現させたロキは純粋な剣技での戦闘となり、一時的にロキが勝利し、オズリーが逃走するという形で終わった。

 

 

 

キメラを殺した際には麻色の霧が出た。

即ちオズリーは魔術固有色が麻色で、少なくとも水属性の魔術を使うということしか分からないのである。

サラも頭を悩ませている。

 

 

 

俺は色々なパターンをシミュレーションする。

オズリーの要求通りMSFを明け渡す…のは論外だ。反乱が起きるまでに何をされるかわかったもんじゃねえ。

かと言って人質を殺させるわけにはいかねえ。

 

 

どうすれば…どうすれば…

頭を抱える二人を見かねてか、博士がアルミの銀色の盆に三つのコーヒーカップを載せて、「まあ、二人共。時間はまだあるんじゃ。そう焦っていてはいい案など出るはずもなかろう。まずは落ち着いてコーヒーでも飲んで頭を冷やして、それから考えてみるのじゃ…おっとワシとした事が頭を冷やせと言いながらもホットコーヒーを入れてしまったわい。年は取りたくないもんじゃ。」

 

 

そう言って博士はカラカラと笑う。

俺とサラは椅子に座り、博士の言う通りコーヒーを飲む。

そして飲み終えると同時に言う。

「やっぱりヤツの思い通りになるのは癪だし気に入らねぇ。タイムリミットより前に突入して強引にでも人質解放をしよう。」と。

 

 

To be continued…

 

 




犯人予想、当たってましたか?次回投稿はいつになるかわかりません。
今晩深夜になるか、明日の昼間になるか、神のみぞ知る。という状態です。
小人にもわかりません。まあ近々になるとは思いますけど。
という事で次回を、待て。


追記:本編に書きそびれていたのですが、オズリーの目的はMSFの進んだ研究技術です。国中の魔術師が集められたMSFには、逃亡生活ではどうしても手に入らない設備があり、それを使いたいだけです。なので、MSFの支配も研究する間の一時的なものであることもオズリーの計算の上です。


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勇気

まず、投稿が遅れてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
祖母の家に泊まっていたのですが、初稿の原稿を忘れてしまうという失態を犯してしまったのと、携帯を夜充電することが出来ず、こうして夜に書き上げることが出来なかったことが原因です。
以後はまた出来るだけ早めの投稿を心がけますのでこれからもよろしくお願いします。
それでは本編です。どうぞ。


俺の提案を聞いて、サラは少しの間何やら考え事をしていたが、すぐに俺の方に向き直り、「やはり後手後手に回って対処が遅れるよりも今すぐ動く方が犠牲も少なくて済みます。私もその案に賛成です。ただ、お願いがあるのですが…」と言った。

 

 

 

俺は「お願い?なんだ?」と問う。

するとサラは、「やはり「ただの民間人」で「訓練中の学生」であるロキ君の提案とするよりも私の発案とする方がMSFの上層部に通りやすくなると思うのです。」と言う。

 

 

 

要はこの案をサラが発案したものである。という建前で行く方がMSF上層部に意見が通りやすい。

だからこの案をサラに譲って欲しいという事なのだろう。

そういう事なら俺に拒否する理由などない。もちろん快諾した。

 

 

 

それとほぼ同時にサラはMSF上層部の会議に殴り込みをかけ、「キメラ退治の竜騎士」と「MSF最強魔術師」の2人による隠密潜入部隊の出動許可をもぎ取った。

代わりに俺は現場でサラの部下となり、サラの命令は必ず聞かなくてはならなくなったがそんな事は元からそのつもりである。

 

 

 

そして俺とサラは第一分隊副隊長のクィンドの「風膜(ウィンドヴェール)」という魔術でお互い以外の者から姿が見えなくなり、更に感知型の魔術のセンサーにもある程度引っかからなくなった。

そして俺とサラはそれぞれ白銀の竜と純白のユニコーンを操り、MSF隊員養成学校へと向かった。

 

 

 

 

ロキが結界の外へ出た。

その背中は彼が本来背負うべきではない重い覚悟を背負っていた。

ラオはロキを止めようとした。

だというのに、だ。

 

 

 

足が動かない。

まるで鋼鉄の重りを付けられているかのように。

口が動かない。

まるで唇を縫いつけられてしまったかのように。

 

 

 

ようやく体が動いた時、ロキは既に結界の外に出ていて、地は真っ赤に燃え上がり、鳥肌が立つような恐ろしい吠え声と共にキメラに怒りを表し、威圧していた。

そして勇敢にも数え切れないほどの量のキメラの軍団の中に飛び込み、キメラを次々に切り刻んでいく。

それを見たMSF隊員達は勇気を感じ、自らを奮い立たせ、キメラに再び戦いを挑んでいく。

しかしラオはそれを見て「悔しさ」を感じた。

 

 

 

(ダンジョンの中でも僕はロキに沢山救われた。多分ロキがいなかったら僕は今ダンジョンをクリアしていない。挑戦すらしていないだろう。それなのに。僕はまたロキに護られている。助けられている。)

それは自らの弱さを自覚するが故の悔しさであった。

 

 

しかし、その悔しさは卑劣なもの、本当に矮小な者には感じられないものである。

ラオが勇敢で、強靭な精神をもつからこそ、彼は悔しさを感じているのである。

 

 

 

そしてその悔しさをバネにしてラオは結界を飛び出そうとする。担任教師に頼み、結界を一部解除して穴を開けてもらえるよう交渉した。

 

 

 

もしもあと5分、いや三分早くその行動に出れていたならば、ラオは結界の外に出ることが出来ただろう。

しかし運命は彼を阻む。

担任教師が結界を解除することを決定したその瞬間だった。

麻色の霧がラオの視界を覆う。

同時にその霧を吸い込んでしまったラオは容赦なくその意識を刈り取られそうになる。

既に結界には穴があいている。

 

 

 

(早く、早く外に出てロキを助けないと…)

ラオは重い体を動かしてロキの元へと向かう。

周りでは生徒や教師が倒れ込んでいる。

その中でラオは強い精神力によって辛うじて意識を保っていた。

そして結界の穴に到着したその時だった。

「この霧を吸って起きてられるなんて相当心が強いのね。褒めてあげるわ。でも、残念だけど寝てて貰わないといけないのよ。」

ラオは背中に強い衝撃を受けて倒れ、同時に集中力が切れて、倒れ込んで眠ってしまった。

 

To be continued…

 

 




今回、なんかラオ君が脇役ながらもカッコイイ気がします。
実際、こんなふうに逆境でも諦めずに抗おうとする人の方が強いと僕は思うのです。
感想、誤字脱字の報告、並びに活動報告のアンケートへのコメントお願いします。


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潜入

遅くなって申し訳ないです。
モンストで超絶クエストが立て続けに降臨して、そちらの方へ行ってました。以後気をつけます。
あ、一応ID書いておくので、もしプレイしておられる読者様がおられれば、プレイヤー名、ランクとフレンド使用キャラを個人メッセージもしくは感想欄で教えていただいた上でフレンド申請をしていただければフレンドになる(かも知れません。)
ちなみに僕はランク148でIDは925.313.483で、フレンド使用キャラはアーサーでやってます。プレイヤー名は「烏芻沙摩明王」です。よろしければフレンド申請してください。
ちなみに先着です。
話が逸れてしまいましたが本編に行きましょう。
それでは、どうぞ。


俺とサラがやって来たのはMSF養成学校の秘密の裏口だった。

もっとも一見マンホールにしか見えないが。

 

 

 

サラが呪文を唱えるとマンホールが半分に割れて縦穴とハシゴが現れた。

俺は無言でサラよりも先にハシゴを降りる。

そして底に罠のたぐいがないことを確認してからサラにサインを出して降りて大丈夫だと伝える。

サラは降りてからまた呪文を唱えて入口を閉じた。

 

 

 

もう後戻りはできない。

そんな緊張を感じ取ったのかサラが俺に向き直って言う。

「あ、あの、この事件が解決したら、今度の建国祭に一緒に行きませんか?」

何故かサラの鎧の氷から湯気が出ている。

驚いた俺は「あ、ああ。いいぞ。サラとなら楽しめそうだしな。」と答える。

サラは息を飲んで数秒フリーズしていたかと思えば、次の瞬間飛び上がって喜び、また次の瞬間には「すみません、取り乱しました。」と、いつも通り冷静なサラに戻っていた…つもりらしい。

 

 

 

実際その仕草からは明らかな喜びが見えている。

(たかが祭りだろうになんでサラはこんなに喜んでるんだ?)

と思いながらロキはサラを追って進むと、不自然な突き当たりに当たった。

 

 

 

サラがバトン状になったレイピアの柄を、壁に固定されている読み取り機にかざすと、岩にしか見えなかった壁は開き、MSF養成学校の職員室に続いていた。

潜入は成功である。

出発前にサラと相談して決めていたとおり、人質が集められていそうな剣技場へとむかう。

そこにはオズリー・ゴートと、猿轡を咬まされて、紐で手足を縛られているMSF養成学校の生徒や教師たちがいた。

 

 

 

オズリーは人質一人ひとりに、順番に猿轡を外して、自己紹介をさせていた。

そしてその中にラオの姿を見つけた時、俺は走り出しそうになった。

短い時間しか一緒にいなかったが、俺はそれほどまでにラオを大切な友人だと思っていた。

しかしそれを止めたのは隣にいたサラだった。

 

 

 

「今行ってどうするんですか。私たちが人質に加わる事になるだけでしょう。」

「アイツを、ぶっ倒す!」そう答える俺に、サラは冷たい目線を向けながら「それをしたら、今はまだ無事なあの子も犠牲になるんですよ?」と問いかけてくる。

それを聞いて思いとどまった俺にサラは更に言葉を紡ぐ。

 

 

 

「MSFの人質解放任務では、例外なく人質の安全並びに解放が最優先されます。もちろん個々の希望によって妨げられることは許されません。」

 

 

 

その冷たさは何かの裏返しなのか、それとも怒りなのか。

女心を解することが出来ないロキには分からなかったが、頭が冷えたロキは飛び出すことを止めた。

 

 

 

 

 

剣技場には、オズリーと共に沢山の人質がいた。

その中にはロキの友人も居たようで、ロキは激情に駆られて走り出そうとする。

それを見てサラは、今ロキが行ってしまったらもう二度と会えなくなるような気がして、「今行ってどうするんですか?私たちが人質に加わる事になるだけでしょう。」

そんな言い方をしてしまうほどにサラは恐れていた。

知人を目の前で亡くすことを。

 

 

 

ただ、ロキに対しては他の人以上にその恐怖は強かった。

その事がサラには不思議でたまらなかった。

あの、ペルクスと最後に邂逅した夢の後、サラは悪夢を見なくなった。

まるでペルクスが「自分のことは忘れてくれ」と再三言っているかのようだった。

 

 

 

 

だが、凍りついてしまった心はそれでも癒えなかった。

それなのに、だ。

MSF養成学校が包囲され、ロキに危害が及ぶかもしれないと思った瞬間、いつもの冷静過ぎるほど冷静なサラはどこへやら。

心は熱く煮えたぎり、氷河は熔けてしまっていた。

サラにはもう制御することは出来なかった。

「MSFの人質解放任務では、例外なく人質の安全並びに解放が最優先されます。もちろん個々の希望によって妨げられることは許されません。」

ああもうダメだ。

 

 

 

 

こんな言い方をしてしまっては、ロキが生き残ったとしても嫌われてしまう。

嫌われて「しまう」?私はロキに嫌われたくないの?

ロキは突撃をやめたものの、気まずくなったのか、話題を変えようと「あのさ、キメラと戦ってた時にさ、ウィルソンってやつが、立ち去る時に「サラのことを、護ってやってくれ。」って言われたんだが、どういう意味なんだ?」

と言った。

その意味を一瞬考えてから、飲み込んで、「いやいやいや、あんのバカ!そろそろ頭オカシイんじゃないの!?」

と、ヒソヒソ声で叫ぶ。

 

 

 

 

意味は分かる。言いたいことも。

だがそれは早計で、思い込みが過ぎる。

ふと我に帰ってロキを見ると、キョトンとしている。

気まずくなって、「と、とにかく、人質の解放をします。後ろからあの縄を解き、なおかつオズリーにはバレないように手早く正確に縄を解いていきましょう。」と、作戦の指示をすると、

「おう。」と短い返事が返ってきた。

サラとロキの人質解放が今始まる。

 

To be continued…

 

 

 




はい。サラの苦悩回をお送りしました。
いやーうじうじしてる女の子って可愛いですよね。
変態ぽくなってるのでやめましょう。
次回の投稿もいつになることやら…早めにしますので待っててください。ではまた次回もお願いします。


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解放

遅くなってしまい、申し訳ございません。
作者も学校が始まったので、投稿が不定期に戻るかも知れません。なるだけ早めの更新を心がけますが、遅れる場合もございます。ご了承ください。
ということで本編行きます。
世界の果てまで?イッテ?
「「「「「Q!」」」」」



俺とサラはクィンドに掛けてもらった風膜(ウィンドヴェール)を利用して、オズリーにバレないように人質の拘束を解いていく。

幸い全員が座っている状態だったために、人質の陰から縄を切ることが出来た。

サラは氷の小刀で、俺は魔装の爪で縄を順調に解いていく。

 

 

 

因みに俺はラオの縄を真っ先に解いた。

縄を解く際に後ろから、「MSF潜入部隊のロキだ。今縄を解くが、全員解放されるまでもう少し待ってくれ。」と言うと、逃げ出すものは誰ひとりとしていなかった。

 

 

 

しかし、オズリーは勘が鋭いのか、「そこで縄を切ってるのは誰?出てきなさい。」と言う。

指示を仰ぐためにサラの方を見ると手でバツを作っている。

出ていくなということだろう。

俺はそのまま縄を解き続ける。

 

 

 

しかしオズリーは、「出てきなさい。さもなくは人質を殺すわよ。」と言った。

周りを見て、全員を解放するのにサラ1人でも一分かからないだろうと予想した俺は、サラに(俺が出る。時間を稼ぐからその間に人質開放を頼む。)とジェスチャーで伝えてから、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)を使って天風膜(ウィンドヴェール)を解除し、姿を現す。

 

 

 

 

周囲の人質たちは、突然現れた俺に驚いていたが、オズリーは俺を見た途端にギリギリと歯ぎしりをし、唸るような声で「またお前か…今度は負けないわよ…」と言った。

それを見ながらも俺は余裕のある態度で「俺はMSF隊員養成学校第一学年生徒のロキだ。なおかつ今はMSF養成学校占拠の事件の隠密潜入部隊として活動している。」と言うと、オズリーは「キィィィィィィイイイ!また私の邪魔をををを!そうはさせない。させないわよっ!この計画をそう簡単に阻止されて貯まるもんですか!」と怒った。

 

 

 

(そうだ。そのまま俺だけを見ろ。冷静さを失え。)

 

 

 

 

心臓が早鐘のように打っている中、俺はそう心の中で祈っていた。

しかしそんなふうには見えないように堂々とした風を装いながら折り畳まれた紙を2枚開いてオズリーに見せながら、「ここに逮捕状、並びに魔術による無力化の執行許可状がある。お前の生死は問わず、確保することが最優先されるそうだ。最後のチャンスをやろう。投降し、矛を収め、平和に事件を終結させるという意志はあるか?」と、諭すように言うふりをして、時間を稼ぐ。

 

 

 

 

「そんなのクソくらえよ!まずそれで投降するなら最初からこんな事してないわ!いいの?こんなことして。人質はまだいるのよ?」というオズリーの返答には、いつの間にか俺の隣に立っていたサラが答えた。

「へぇ〜〜?()()、ねぇ。そんなのどこにいるのかしら?」

同時に人質が全員逃げ出す。

オズリーはわなわなと震えながら、「お、お前は…MSF総隊長、“絶対零度”のサラじゃないの!」と叫ぶ。

「あぁ〜そんな二つ名もあったわねぇ。でも私も犯罪者達に有名って事は、ある程度警戒されてるのかな?」と、サラは挑発するような笑を浮かべながら答える。

 

 

 

その時、身長と同じくらいの長さの大きな杖を持った少年がこちらへと駆け寄ってきた。

「ロキ!僕も加勢するよ。魔術でなら後方支援(バックアップ)得意だし。」と言ったその少年は他でもないラオだった。

心なしか、ロキと分かれた時よりも大人びて見える。

そんな彼の姿を見て、頼もしく思ったロキは、「下手すりゃ死ぬぜ?いいんだな?」と確認をとる。

ラオは珍しく悪戯っぽい笑みを浮かべながら「ああもちろん。僕を攫ったやつなんだ。少しぐらいやり返してもいいでしょ?」

 

 

 

 

そう言って杖を握り直し、戦闘態勢を取る。

俺とサラはそれぞれ刀とレイピアを抜き、構えている。

無論二人共鎧は装着済みだ。

 

 

 

対するオズリーは、上位種と見られる、カブトムシの角、カマキリの鎌、甲虫の胴、そしてサソリの尾を持ったキメラを2体とも集結させ、俺と戦った際のシンプルなデザインの剣を構えている。

互いに戦闘態勢に入ったところでオズリーが俺に向けて走り出し、俺の目の前で急停止、反動を利用して左から右へ水平に斬ろうとする。

それを太刀で逆方向へ弾き、隙が出来た腹を左下から右上へ切り上げようとする…のを変種キメラがサソリの尾で防ぐ。

 

 

 

 

 

サラはもう一体のキメラと交戦中で、こちらを助ける余裕はなさそうだ。

(おいおい、二対一かよ…)と思った矢先、琥珀色の閃光がキメラを吹き飛ばす。

もちろんラオによる攻撃である。

多分光属性の基礎魔術だろうが、威力と精度が段違いである。

日々練習を重ねていたのだろう。

続けてラオは「捕らえよ!」と唱えると先端に枷がついた琥珀色の金属鎖とが地面から生え、ウネウネと動き、キメラの四肢と尾の動きを封じる。

そして「凍てつけ!」という呪文と共に枷を中心としてキメラが凍結し、完璧に動きを封じられる。

これは基礎の捕縛呪文と凍結呪文の合わせ技であるのだろうが、本来基礎呪文とはそこから派生した様々な呪文への架け橋になるもので、そこまで極めるものが居らず、ラオが放つ基礎呪文は、横で戦っていたサラが初めて見たというくらい洗練されたものだった。

 

 

 

 

 

更に「砕けよ!」とラオが唱えると、氷漬けになっていたキメラは木っ端微塵に砕け散った。

するとそれを見たオズリーは、「よくも…よくも私の研究の成果を…」と激怒している。

剣を構えて突進してくるオズリーを、すんでのところで回避する。

危うく腹に穴が開くところだった。

オズリーはデタラメに剣を振るってくる。

 

 

 

 

これまである程度規則的だった剣戟は、どんどん激しく、不規則になっていく。

しかし反応速度は俺の方が早く、やがて剣戟の主導権はオズリーから俺へと渡った。

するとオズリーは自らの不利を悟ったか、バックステップで一時撤退し、仕切り直そうとしてくる。

そうはさせるまいと追撃したその時だった。

オズリー唇の端が吊り上がる。

嫌な予感がしてふと剣を握っていない左手を見ると、麻色の術式が既に組み上がっている。

そこからは圧縮された水弾が放たれた。

それは俺の無防備な腹へと当たり、圧力は解放されて俺は吹き飛ばされ、向かいの壁へと衝突した。

もろに頭を打ってしまった俺の視界はすぐに暗転してしまった。

 

To be continued…

 

 

 




ラオ君がついに前線ログイン。しかし肝心のロキがログアウト。
さあどうなってしまうのか。次回に期待です。
ではまた。


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暴走

祝!20話!ということで(どういうことだよ)今回は少し短めです。
なぜならここで切らなければ終わらなくなるから。
この本編第参章も、いよいよ残すところ2話(予定)となりました。参章終了後は再び外伝としまして、サラとロキの建国祭となります。
ちなみに初稿を書き上げた際に「ロキとサラをいちゃつかせようとしたのにどうしてこうなった…」と頭を抱えたのはまた別の話。
と、とにかく本編に行きましょう。
さあ、どうぞ。


僕の…僕のせいだ…僕をカバーしようとしてロキが…

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!」

僕の周りの床から無数のツタが生え、僕の心のように荒ぶり、激しく揺れる。

床は凍り、頭上には厚い雲が立ち込め、数え切れないほどの雷撃が落ちる。

小規模な竜巻が起こり、放射状に放たれる。

それら全てはラオの魔術固有色である琥珀色だった。

 

 

 

 

それらの一つ一つはあくまで基礎の、単純な術式であった。

しかし、それほどまでの数の属性魔術を発動させる魔術師はこれまでに存在したかどうかも定かでない。

オズリーは完全に攻撃の手を止めて回避に専念し、少し離れたところから惚けたような表情で「こんな数の術式を…1人で発動させるなんて…」などと呟きながら口をパクパクさせている。

 

 

 

しかし、流石にそこまで多属性の魔術の同時行使は心身へと負担が大きく、視界は血の色に染まっていき、塗りつぶされている。

気が付くとラオは走馬灯のように、MSF隊員養成学校に入学した頃を見ていた。

 

 

 

中学ではまずまずの生活を送った僕は、そのまま中堅レベルの高校に進学する予定だった。

実際入学試験にも合格していた。

物心付いた頃から、激怒したり、号泣したりすると、火が出たり激しい水の流れが発生したり不思議な事が起き、他人からは気味悪がられていた僕は、違う環境で人間関係を作り直そうと思っていた。

 

 

 

初恋の女の子を虐めるガキ大将からその子を守ろうとガキ大将の手を弾いたところ、同時に石礫が飛んでいって、初恋の人にも気味悪がられて距離を置かれたりもしたが、環境を変えれば解決すると思っていた。

そんな時だった。

 

 

 

僕の家に1通の手紙が届いた。

その内容は

「 拝啓ラオ殿

貴方はMSF隊員養成学校の上位コースへの挑戦権を得ました。

挑戦するのであれば5/6の午前8時までに会場で受付をしなさい。」

という物だった。

 

 

 

両親との相談の末、時折起きる「不思議な事」の解決ができるかも知れないということで受験することになった。

試験では、サラマンダーを召喚したり、部屋中凍らせたり、僕よりも明らかにすごい人がいて、僕は不合格だと思った。

しかし数日後に届いたのは「合格通知」と書かれた封書だった。

 

 

 

訝しく思いながら入学し、その後知ったことなのだが、普通の魔術師は一つから二つ、多くても三つまでしか属性魔術を使えない。

しかし僕はテストで発現しただけでも5~6種の基礎魔術が発動した。

僕は一つ一つの威力が低い代わりにすべての魔術が使える「全属性」使いだったのだ。

それこそが僕が倍率10倍以上の狭き門を突破できた理由だった。

 

 

To be continued…

 

 

 




ぶっちゃけラオ君ってぶっ壊れキャラじゃないですか?一応基礎魔術だけという縛りは設けましたがそれでも強い気がする…
ということで次次回終結です。まとまるのか?そもそもまとめられるのか?やや不安ではありますが頑張ります。(メタいですがプロットはあるのでなんとかなるでしょう。)
ということでまた次回までおまちくだされ。


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白銀

投稿が遅れてすみません。
またモンストしてました。
とはいえ学校も始まったので寝落ちしてしまうかもしれないので三月末のように連日投稿は多分できないです。すみません。


サラは戦慄していた。

話には聞いたことがある。

全ての属性の魔術を使うことが出来る人間がいると。

しかしその人数は過去に記録が残っているだけだと五人もいなかったはずである。

つまり、ロキの友人の少年は本来こんな所で埋もれていていい人材ではないということである。

しかし残念ながら彼は今も魔力を暴走させてしまっている。

 

 

 

止めなければ、と急ぎ気味に自分が相対していたキメラを氷像にして、少年の元へと走る。

荒れ狂うツタと雷撃のスキを縫って今にも少年に攻撃しようとしているオズリーに、助走をつけてレイピアによる激しい突きを繰り出す。

しかしそれは瞬時に弾かれた。

オズリーはブツブツと、「コイツは、コイツだけは…」と言っている。

 

 

 

その目論見を阻止しようと珍しい日本語による鋭い技名発声と共に発動させたのはサラの一番得意な剣術、「氷撃・輪廻(ヒョウゲキ・リンネ)」だ。

すぐにサラのレイピアの刀身に淡い水色の光が宿り、外側から渦を描くように目にも止まらぬ速さで突きが繰り出され、突いたところには刀身の色と同じ色の光点が残り、最後に渦の中心を突くとその渦巻きが貫通したかのように20個もの鋭い氷の刃がオズリーの背中から生えるはずだった。

肉体改造により驚異的な動体視力を手に入れていたオズリーは、水色の切っ先を剣の腹で寸分の違いもなく防ぎきり、最後の一撃を、その勢いを利用してレイピアごと弾き、サラの首筋に刃を添え、「手を上げろ。」と命令した。

 

 

 

オズリーはいつの間にか我に帰っていた様だった。

「とりあえず、あなたには死んでもらうわ。」

そう言ってオズリーは剣を振りかぶる。

その様はサラにはスローモーションのように見えていた。

存外悲しくもなくて、(ペルクス…今あなたのところに行くわ…)などと思っていた時だった。

白銀の光がサラの右側をすり抜けて、前方に集まり、それはロキになった。

竜騎士の物ではなく、太刀のイメージとぴったり合った和風の鎧を着込んでいた。

兜は被っておらず、輝くような、透ける様な、そんな銀髪が見えていた。

 

 

 

そんなロキは、低く、威厳のある声で、「雷神の神罰(サンダリアー・ディムネイション)」と技名発声する。

すると、太刀の刀身に白銀の光を宿し、オズリーに切りつける。

斬った後には白銀の線が残る。

その線で描かれたものは五芒星だった。

 

 

 

その瞬間、変化は起きた。剣技場の屋根の更に上、空の彼方から白銀の雷撃がオズリーに襲いかかったのだ。

立て続けに容赦なく落とされる雷をすべて防げるほどオズリーの動体視力は良くなかった。

やがてオズリーはプスプスと音を立てて雷撃に焼かれて死んだ。

あまりに容赦がなさすぎて普段のロキとはとても思えない。

 

 

 

サラは思わず「あなたは…ロキ…なのですか?」と訊いてしまった。

するとロキは「そうであり、そうでない。答えが分かる日も近かろう。戦乱まであと少しだ。強くなるのだぞ?それでは吾はもう少し眠ることとする。また会おう。“戦姫”ミネルバよ。」

そう言ったと同時にロキの体から力が抜け、倒れそうになった。

すかさず支えて、サラは困惑と安堵のため息を大きくついた。

長かった1日が今、終わったのだ。

 

 

To be continued…

 

 




睡魔に襲われながら書き上げたので、誤字、脱字、文脈が変なところがあれば教えてください。
次回がエピローグとなります。その次からはついにお祭り編開幕です。乞うご期待。


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事後

どうも、小人です。
バイトの後で死ぬほどしんどいです。流石にきついっすな。
ということでエピローグです。
ではどうぞ。


「これらの功績により、ロキ殿、ラオ殿の両名に栄誉勲章を、サラ殿にはMSF特別貢献賞を授与する。」

というこの国の偉い人(詳しくは知らん)の言葉の後に、サラ、俺、ラオの順番に首にメダルがかけられる。

ラオは緊張して隣でひたすらかしこまってガチガチになっている。

 

 

 

あの後、オズリーの遺体は刑務所付属の火葬場で葬られ、その灰は海に流されたと聞いた。

そのアジトからは不審な薬品が押収され、解析された結果、その効果が人間を魔獣にするものであることがわかり、解毒剤が直ちに開発された。

 

 

 

同じところから、数体のキメラが頑丈な檻の中に閉じ込められているのが見つかり、解毒剤を使用して彼らは人間に戻った。

解毒剤が使用され、彼らは再び人間へと戻った。

 

 

 

サラは「罪のない命をたくさん奪ってしまった」と気に病んでいたが、キメラにされていたうちの1人の、「彼らも苦しかったことでしょう。その苦しみから解き放ってくれた貴方には感謝こそすれ恨んだりはしないと思いますよ。」という言葉を聞いて何とか吹っ切れた様だった。

 

 

 

そして俺とラオは事件解決の中心人物として栄誉勲章を貰うこととなり、実戦が出来ることが証明されたため、俺は学問を、ラオは肉弾戦の技術と同じく学問をそれぞれ習うこととなった。

俺の授業を担当することになったのは、熟練の剣士であり、優秀な教師でもある老年の男だった。

彼は俺とは違い、繊細な剣の操作で相手を追い詰めていくような戦い方をし、気を抜けば負けてしまう程強い。

学問を教えるのも上手く、話を聞けば聞くほど知識が身についていく。

 

 

 

そしてラオは、オズリーとの一戦と勲章をもらったことで自信と度胸がついたのか、今は前よりも少し背筋が伸びている。

さあこれで平和な学園生活を過ごすことが出来る…ということではなく、まだ俺には謎だらけ。

俺が気絶した後、「俺」は目覚め、どうやら雷の剣術を使ってオズリーを一片の慈悲もなく感電死させたらしい。

その後オズリーの死体を見ても顔色一つ変えなかったらしい。

その表情はいっそ冷酷なまでに落ち着いていたそうだ。

しかし俺にはその記憶が全くないのだ。

だがその名残なのか、気がつくと俺の髪は輝くような銀糸のような白銀色になってしまっていた。

俺は一体何者なのか、そもそもどこで産まれ、どこで育ち、どうして地中に埋まっていたのか。

考え始めてしまったら止まらなくなる。

まあ、ぼちぼち一つずつ減らしていきゃあいいか。ということで、俺の数奇で珍妙な人生はまだまだ続くのであった。

 

 

To be continued




どうだったでしょうか。面白かった、つまらなかった、など、他愛のないことでも構いません。感想の書き込みをお願いします。


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閑話・祭典
前話


遅くなってしまいすみませんでした。
プロローグが思ったより短く、まとめるのに時間がかかりました。申し訳ないです。
この章は感覚的には3.5章といった感じで、3章から4章の間という認識でお願いします。
元々はブラックコーヒー必須なサラとロキのイチャイチャを書くつもりでした。
が、上手く行かず、結果としてサスペンス的な路線に行きます。
間の話ではありますが、本編に大きく関わってきますので読んでください。
それでは本編へどうぞ。


サラとロキが暮らすクラウィンコロナという国は、先の“第一次魔術対戦”の際に黒の王国に滅ぼされることを恐れたいくつかの小国と滅ぼされた国の生き残りの人達が結んだ、「小国間共闘連合」がルーツとなっており、加盟した国々は戦争の集結と同時にクラウィンコロナとして独立を宣言した。

それが認められた16月9日は、建国記念日として、クラウィンコロナの国全体の祝日となっており、その日1日は、国中のどこへ行っても屋台が目にされる。

というのは全て建前で、実際の所はというと思いの丈をぶつけ、恋が実り晴れて恋人同士となったもの、なかなか思いを伝えられないものがそれぞれの想い人を誘ったりする、一年に一度のデートスポットである。

ということを知った上でサラはオズリーが起こした事件の最中、気が付いたらロキをその建国祭に誘っていた。

 

 

 

そして今日は15月の末。

サラは顔を真っ赤にして、頭を抱えていた。

(私ったら…どうしてロキの事をお祭りに誘ったんでしょう…別にそんなふうに思ってるわけじゃ…ない…です…よね?あれ?どうしてこんなに鼓動が早いんですか?そもそも、そもそもですよ?どうしてこんなにお祭りが楽しみなんですか?もう訳がわからないんですけど。)

とてもソワソワしている彼女の事を、物陰から生温い目で見守っているのは皆さんおなじみの第1分隊の隊員達。

 

 

 

そしてふとサラが振り向いた瞬間、そこにいたクィンドがサラと目が合う。

そして両者はすべてを瞬時に理解し、走り出す。

クィンドが逃げ、サラが追う。

例え彼の行動がサラのことを思っての事だとしても容赦はしないサラ。

数分後、彼らは全員確保され、詰所にて長時間の説教の後、罰としてサラに高級洋菓子店のケーキをワンホール買う事となった。

 

 

 

その頃ロキはというと…

「えええ!?ロキ、サラ総隊長に誘われて建国祭に行くの!?」

学校でラオに仰天されていた。

「あ、ああ…そこまで驚くことか?別に祭りに行くだけなんだし…」

と何事もないように言うロキ。

 

 

 

(えっと…やっぱり…そういう事だよね?ロキってサラ総隊長に好かれてるの…?そんな事ってあるの?…)

結論から言うと、異性に建国祭に誘われたということは、その異性は自分に恋愛感情を向けている、ということなのである。

それはこの国でのいわば常識だった。

 

 

 

しかしその事をロキは知らない。だからロキとラオの間にここまでの温度差が生まれているのではあるが…

(どうしよう、やっぱりロキは気付いてないよね…僕が言うのも可笑しいし…というかロキはどうなんだろう?)

と思ったラオは、「ねえ、ロキってサラ総隊長の事どう思ってるの?」と聞く。

「ん?どう思ってる?どゆこと?何の話だ?」

ラオにとっては予想はしていたもののやはり普通ではない返答が帰ってきた。

 

 

 

「うーんと、可愛いな、とか、そういう感じ?」と、ラオは言葉を選びながら質問を投げかける。

すると、「かわ…いい?サラが?」とロキはフリーズしてしまった。

どうやらロキはサラ総隊長のことを異性と認識していなかったらしい。

(サラ総隊長、これはなかなか厄介ですよ。頑張ってください。)

ラオは心の中でサラにエールを送る。

 

 

 

 

「可愛い…とは思うな。あと、なんだろう、サラが殺されかけた時は勝手に体が動いたしな…よく分からんが。まあ嫌いではないな。」

とロキから返答が帰ってきた。

というか直球である。

ロキ自身、面倒ごとや、回りくどいことが嫌いなタイプではあるが、これは流石にストレートに言い過ぎではないだろうか。

そしてここまでで何も気づかないのかなロキ。

普通気づくでしょ。

あ、もういいや。考えるのやめよ。

「そ、そうなんだ。」

ラオは流石に考えてられなくなって思考を放棄した。

建国祭はあと10日ほどまで迫っていた。

 

To be continued…




今回は序章なのであまり話は進みません。強いて言うなら建国祭の設定解説回と言ったところでしょうか。
感想をお願いします。


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壱回目・壱

この章は色々と例外的なもので、まずサブタイトルが二文字単語ではありません。壱回目、弐回目と進んでいき、更にそれらを壱、弐と分割していきます。
そんな感じでお願いします。
あと、今回は甘いのが苦手な方はブラックコーヒーの準備をお願いします。


キメラの事件の後、建国祭が終戦と建国を祝う祭りであることを教わり、割と切羽詰まった様子で「一緒に行ってくれませんか?」と改めて頼まれた。

一緒に行くのはいいとしてもあの上目遣いで頼むのは…断りづらいよな…いや、元々一緒に行くつもりだったけど。

 

 

 

その後ラオにも誘われたが、サラと一緒に行く旨を伝えて断るとなにやら驚いていたが、何を驚いてんだ?と訊いても全然答えてもらえなかった。

どういうことだったんだろう…などと、サラと待ち合わせていた場所で思い返していると、「ごめんなさい、待ちましたか?」と言いながらサラが来た。

もっと言うなら服装にやたらと気合が入っているサラが。

 

 

 

俺にはもう訳がわからない。

ラオは驚く、博士は「早めに行って待ってないフリをしろ」とか言うし。

サラに至っては化粧はバッチリ、大きな宝石がはまったネックレスとブーツを身につけ、普段はシンプルにポニーテールにしている髪は編み込みがされている。

明らかに気合の入り方がおかしい。

 

 

 

たかが祭りだろ?

 

 

 

挙句の果てに後ろの電柱の陰にはもう1人の同行者(ストーカー)

竜騎士の能力に目覚めてから、何もしてなくても人の気配が分かるようになった。

勲章の授与式がTVなどで放映されたために顔が知られており、常にどこかから通行人や屋台の人の視線が向けられている。

 

 

 

 

これ、明日の週刊誌で「MSF総隊長、“竜騎士”の英雄と熱愛か!?」なんてことにならないかな?

というかまず落ち着かなさすぎるんだが…

などと思っていると、「ロキ、どうしたんですか?」と、サラが心配と訝しさが半々で混じったような顔で聞いてくる。

俺はとっさに「いいや、何も無いぞ?」と聞き、まず一番の疑問を問いかける。

「その服どうしたんだ?」

「いや〜、一年に一度のお祭りですしね。頑張ってお洒落しちゃいました。どうですか?」とクルリと一周回る。

その瞬間、俺の脳裏にラオの言葉が浮かぶ。

 

「ロキってサラ総隊長の事どう思ってるの?」

 

──いや、待て待て俺。

そりゃこんなサラが可愛くない筈はないけど。

別にただの友達とかそういうやつだろ?

俺は少し考えた後本心からサラに「似合ってるよ。可愛い…な。」と言う。

いや待て俺よ。どうしたんだよ。

 

 

 

こんな事言うつもりじゃなかったんだが?というか暑っついな。

急に暑くなってきやがった。

「あ…ありがとうございます…まさかそんなにストレートに言われると思わなかった…」

サラ顔真っ赤じゃねえかよ。

その顔もその顔で可愛…おいおいおい!待てい!

なんで俺こんなことばっか考えてんの?

周りはおかしいなとは思うけどこれ自分もおかしいよな。

 

 

 

あーもう釈然としねえ。

訳がわかんねぇやどうしよう。

サラはめっちゃ嬉しそうだし。

の割にお互い気まずくて話さないから沈黙が立ち込めてるし…

「と、とりあえず屋台回ろうぜ?せっかくの祭りなんだし。な?」

と言って俺とサラ(と同行者(ストーカー))は露店の出ている道を歩き出した。

 

To be continued…

 

 

 




どうでしたか?
イチャイチャを書いてみました。僕の文才が不足しています。
不満でしたらごめんなさい。
それでは次回投稿もお願いします。


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壱回目・弐

更新が遅れてしまい申し訳なかったです。
バイトと学校かぶるときついスッね。
ということで本編どうぞ。


それから数時間後、サラの手には綿菓子にりんご飴、更には紙袋に入ったベビーカステラが持たれており、ロキの腕にはサラが当て物などで当てた景品がパンパンに詰められた袋が左右それぞれ三つずつ掛かっている。

流石に量が多すぎるため、重く感じる。

 

 

 

サラはやけにはしゃいで色々な屋台を見て回り、それを後ろからロキが付いていく。

そしてその後ろを同行者(ストーカー)がつける。

周りの視線はロキに集まる。

異様過ぎる光景であった。

 

 

 

「あっ!あんなところに射的がありますよー?ハズレなしだそうですよ!?」と、サラは一つの屋台に向けて走り出す。

(はぁ。まだ増えるのか。ああいうの、サラの身体能力でやると基本的に大当たりをとってくるんだよなー…)

ロキはさすがに疲れを隠しきれない。

後ろをトロトロとゆっくり追いかけていると、けたたましく鐘が鳴らされ、「大当たり~」という声が聞こえる。

 

 

 

その中心にいるのは…やはりサラだ。

「見て下さいよロキ~こーんな大きなぬいぐるみ貰いました~。どこに飾りましょう~?」

と、大当たりの景品を抱えて満面の笑みでこちらに走り寄ってくる。

その表情を見たらもう少し頑張れる気が…しないでもない。

 

 

 

もはや疲れで思考がまとまらないロキが、そんなとりとめのないことを考えていると、その表情を読み取ったのか、「ああ、またやってしまいましたね。私は…」と言いながら大きな大きなリュックをどこからか取り出し、俺が持っていた荷物をすべて詰め込んだ。ふと周りを見ると太陽は既に沈んでいて、空には数多の星が瞬いていた。

 

 

 

 

「あ~もうこんなにくらくなっちゃったんですねぇ。指先が冷えるのも当たり前ですね。」

そんなサラの言葉と共に、日々の鍛錬でタコだらけの指がロキの指に絡んだ。

その行為は二人に安らぎをもたらした。

しかし、それは油断にも直結するのである。

 

ロキの目に、背後から高速でこちらに突っ込んでくる何かが映り、続いて隣で生々しい音が響く。

ロキの焔よりも紅い血潮、周りの人達の悲鳴、サラが地面に倒れる音。

対処しきれない状況がロキにはまるでスローモーションのように見えた。

そして世界に時間が戻った時、俺の足元には血溜まりと、そこに横たわるサラがいて、振り返ると血にまみれた小刀を両手で握りしめ、返り血を浴びた女が不気味に何かブツブツと言っていた。

その声はだんだん大きくなっていき、やがて金切り声での絶叫となった。

「ロキ様は…ロキ様はお前なんかと一緒にいる人じゃない!あんたなんか!あんたなんか!死んじゃえばいいんだ!」

(コイツはヤバい。)

ロキはそう感じるものの、生理的な嫌悪感のせいで体が思い通りに動かない。

 

 

 

するとサラが今にも消えてしまいそうな声を絞り出して、「そういう、奴は、大体、相手の事なんて、考えずに、自分勝手に、動く、んです、よ。ねぇ?妄想(こい)する乙女さん。」

それを聞いて我に帰った俺はサラと女の間に立ち、そして女を取り押さえた。

急いでやってきた警備員に引き渡してから、救急車に乗ってロキは病院にむかったのだった。

 

To be continued…

 

 




サラ、命の危機のお知らせ。
ヒロインが死にかける小説ってどうなんでしょうかね?
今後の展開に期待ください。
それではまた。


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壱回目・参

気がついたら前回投稿から五ヶ月弱も空いていた…申し訳ございません。
今回で壱回目終わりです。次回からは弐回目になります。


サラはMSF付属の病院に運ばれた後、すぐに緊急手術することとなった。

医師曰く、「最強の魔術師のためです、手を尽くしましょう」との事だった。

 

 

ああ心配だ。

頭の中にサラの色んな顔が浮かんで消えていく。

怒った顔、照れた顔、悲しそうな顔、嬉しそうな顔、はしゃいだ顔。

そして、血にまみれた苦しそうな顔。

 

 

 

俺には一つわからないことがあった。

刺されて痛かっただろうに、女から俺を守るために文字通り血を吐きながら言葉を紡いだサラ。

どうしてわざわざ相手を刺激するようなことを言ったのか。

学校では犯人をなるだけ刺激せずに確保しろと習った。サラもわかっていたはずだ。

 

 

 

疑問だけが頭の中をぐるぐると駆け巡る。

ラオがもしこの場にいたらすぐに答えにたどり着いて苦笑いしたのであろう。

しかしロキは人間の機微に疎く答えが出せない。

 

 

「…ん!ロキさん!」

 

 

白衣を着た医師に起こされた。

見慣れない天井に、寝心地の悪いベッド。

いいやこれはベッドじゃない、病院のソファーだ。

どうやら考え込んだまま眠ってしまったようだ。

 

 

「ロキさん、手術は終了しました…」

少しだけバツの悪そうな顔に思わず不吉な想像をしてしまう。

その想像を打ち払いながら、「どうなりましたか?」と問いかける。

 

 

 

「最善は尽くしたのですが…残念なガラ…モウシワk…ゴシュウsyou…」

その言葉の意味を理解して、その後の意味が、言葉が、理解出来なくなった。

 

 

 

サラが、死んだ?あの、サラが?

やめてくれ、そんな悪い冗談は。

そんなわけないだろう?今日はエイプリルフールじゃないだろう?

 

 

今日は…今日は…

 

 

 

今日今日今日今日今日今日今日今日今日今日今日今今今今今今今iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii……

 

あれ?今日って何日だっけ?

 

 

目の前の景色がぐるぐると回って、回って、回って。

何周したかわからないうちに、消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと気がついた。

まるで眠りから覚めたかのように意識が覚醒した。

 

 

 

「ここは…建国祭の会場?サラと…待ち合わせてた時間…え?どういう…ことだ?」

 

 

考えがまとまらない。理解が出来ない。

悲劇なんて()()()()()()()()()()()()()俺は平然とそこに存在していた。

 

 

「何が起こっていやがるんだ…時間遡行魔術なんて…そんな大掛かりなもんまで使って…それとも…ただの夢?」

そうであればどれほどいいか、そんな希望を込めて俺はつぶやく。

 

 

しかし夢ではないと否定するように彼女はやってきた。

 

 

「ごめんなさい、待ちましたか?」

 

怪我などしていない、元気な姿のサラが、変わらぬ服装でやってきた…

 

 

To be continued…

 




次回投稿もいつになるやら…
感想や評価お願いします。


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弐回目・壱

少し遅めですがあけましておめでとうございます!
新年企画は全作品合併で「徒然なるままに…」の方に投稿しましたのでよかったらそちらもご覧ください
今回から二回目です。与えられたチャンスをロキは活かせるのか、サラの運命やいかに!?


状況を整理しよう。

俺はそう考えた。

死んだはずのサラが生きていて、後ろには相も変わらずストーカー。

 

 

時計を見るとどうやら時間が巻き戻っているらしい。

そしてそのことに気づいているのは俺だけ。

そこで一つのことに思い当たった。

サラを助けられるかもしれない、その事に。

 

 

 

足早に時間は過ぎ去った。

サラはとてもはしゃいでいたが、俺にそんな余裕はなかった。

MSF養成学校で一通りの護身術は習っている。

来るとわかっている襲撃を防ぐのはそう難しいことでもない。

 

 

やがて日が沈んでいく。

運命の瞬間が近づくのを悟って、ロキはゴクリと唾を飲み込んだ。

既に口の中はカラカラである。

サラがロキの両手の荷物に目をやる。

来たか、とロキは身構えた。

 

 

 

「ああ、またやってしまいましたね。私は…」

言いながらサラが大きなリュックを取り出す。

一回目と全く同じ流れである。

そしてサラがロキの右手の指に左手の指を絡める。

 

 

 

「☆$#☆$#○\:°#€*○\:°☆$#○\:°#€*#€*!」

ついにストーカーが小刀を構え、奇声を挙げながら襲いかかってくる。

 

 

ロキは右手でサラを遠ざけて逃がし、後ろに引いて突進小刀をかわすと、手刀で小刀を叩き落とし、そのまま背負い投げでストーカーを拘束した。

ストーカーは「ロキ様…?どう…し…て…?」とうわごとのようにつぶやき、涙を流していたが気にせず駆けつけた警備員にストーカーを突き出した。

 

 

その時だった。

ガラガラガラ、バタバタ、ドッシャーン!

という音に続けて誰かの悲鳴が聞こえた。

 

 

屋台が崩落したようだった。

その下に誰かがいた。

胴体を地面に挟まれ、血を流しているのはロキがよく知っている黒髪の美しい女性。

 

 

 

 

サラは、事故に巻き込まれて救急搬送されることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

付き添いで病院に行ったロキは思い悩んでいた。

サラは緊急手術をすることとなった。

執刀医は言った。

最強の魔術師のためです、手を尽くしましょう」と。

その言葉を聞いてロキは察した。

この手術は失敗するのだろうな、と。

 

 

まだ決まった訳では無いが、とどのつまり一回目と同じであった。

ロキの行動は全くの無駄となったのである。

ロキは涙した。

泣かずにはおれなかった。

サラが死んでしまうことを確信してしまったのだから。

 

 

ロキは苦悩していた。

どうすればよかったのか。

何をすべきだったのか。

 

 

 

終いにはせっかくのチャンスを活かせなかった自らが情けなくなった。

 

 

 

 

その時だった。

「おい、諦めていいのか」

そんな低い、獣の唸るような声が聞こえたのは。

 

 

 

To be continued…

 



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弐回目・弐

ふぅ〜モチベが上がったので投稿。このまま建国祭編を抜けてしまいたい…


その時だった。

「おい、諦めていいのか」

そんな低い、獣の唸るような声が聞こえたのは。

 

 

 

「誰だ!?」

そう言って辺りを見回すロキに声は言った。

「俺はサラの中に棲む怪異、虎馬だ。」

「そうか。俺はロキだ。」

 

 

 

 

「ほう…俺のことを疑わないのか?」

「んなモン俺は竜人だ。化けモンなのはお互い様だろ?」

ロキがそう言うと虎馬はカラカラと笑った。

「ハッハッハ…それもそうか…こりゃ一本取られたか」

 

 

「ところでそんな怪異が何の用だ?自己紹介しに来ました〜なんてことはないだろ?」

「うーむ…どこから言ったらよいか…一応聞くが今起きている異変には気づいておるか?」

「お、おう。なんか繰り返してるこれだろ?」

「そうだ。呼びづらいのでこれ以後「輪廻」と呼ぶことにしよう。最初に言っておくとこの輪廻は魔術によるものだ。」

 

 

それから彼は説明した。

輪廻はかなり複雑な時間逆行魔術で、相当大きな魔力が必要であること。

虎馬は宿主の心の傷を癒すために、宿主の願いを叶えるということ。

人間の魔力で輪廻を起こすことは難しいので、虎馬が起こしているのであろうということ。

そして輪廻の性質として、輪廻を自覚できるのは術者となっている虎馬、軸になっている人のみであること。

 

 

 

最後に虎馬はこう締めくくった。

「サラが死んだら俺の存在も消えてしまう。それは困る。お前もサラが死んだら困るんだろう?なら犯人探しを手伝って欲しい。何か質問はあるか?」

 

 

ロキは聞いた。

「俺はストーカーのサラへの襲撃を阻止した。サラが死ぬのは普通に考えれば阻止できるはずだ。それなのにサラは事故なんかでもうすぐ死にそうになってる。どうなってやがるんだ?」

虎馬は答えた。

「恐らくサラは…今日死ぬ運命なのだろう。今回はお前の歴史改ざんが歴史の修正力に負けてしまったが修正が間に合わなくなる程までに歴史を歪めれば別の運命をたどるはずだ。運命とはそういうものだ。」

「よく分からんが…わかった。要するに俺はサラを助けて、この異変の元凶を探し出してとっちめりゃあいいんだろ?」

「とても大雑把だが…まぁそういうことだ。」

 

 

 

虎馬は少したじろいでいた気がした。

 

 

 

 

「そんなわけでとりあえず時間逆行させなきゃならない。準備はいいか?」

「任せろ!サラは俺が助ける!」

「その意気だ。三周目で会おう」

 

 

 

そして全ての時計が止まった。

既に白黒になった風景がねじ曲がり、ぐるぐると渦を巻きマーブル模様を描く。

 

 

意識が覚醒した時、そこは建国祭会場だった。

 

 

 

「ごめんなさい、待ちましたか?」

その声を聞きながら俺は覚悟を決めるのだった。

 

 

 



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参回目・壱

ほぼ10ヶ月も更新しなくてごめんなさい!
他の小説上げたりモンハンしたりモンハンしたりモンハンしてました!
いい加減上げないとな…と書き始めたはいいですが気まぐれに設定追加したせいで話が長くなるという…
本当に申し訳ございませんでした!

追記(2017/11/05):サラの髪型を壱回目に合わせて「ポニーテールに編み込み」に修正しました。


「ごめんなさい、待ちましたか?」

サラは最早見慣れてしまった編み込みがされてあるポニーテールを揺らしながらそう言った。

同時に低いしわがれた声で「おい、お前運がいい。お前から見て八時の方角に同族(虎馬)の宿主が居るぞ。恐らくこの輪廻の主だろう。」という声がした。

その方向にあるのは同行者(ストーカー)が隠れている電柱だけ。

 

 

俺はサラに大きな罪悪感を感じながら体調が悪くなったと嘘をついてサラを博士の所まで見送った。

その後人気の無い裏路地に何気ない様子で歩いていけば、案の定こちらを探りながら向こうも着いてくる。

 

 

完全に人目がないところについてから「おい、もう分かってんだよ。そこの女、出て来な。」

すると虎馬のものであろう掠れた老婆のような声が「おや案の定気づいていたのかい。軸となる者だもの、当然といえば当然だねぇ。」と言った。

 

 

同行者(ストーカー)はというと、小声で「ロキ様に見つかってしまった。()()拒絶されるの?嫌だ、嫌だ…」と言ったふうにブツブツ言っている。

それを聞きつけたのか老婆の声が「おや、また暴走するのかい、しゃんとしな!でないと出来ることも出来ないよ!」と叱りつけるが、肝心の女は「嫌だ………嫌、だ嫌だ嫌だ嫌だいやだいやだいやだイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダァ!」とちょうど最初にサラを刺した時のように呻き、慄き、泣き叫んだ。

 

 

老婆の声の虎馬が嘆息してから「私達についてある程度知っているんだろう?なにぶん宿主の望みは断れないのさ。私から頼むよ、この子を止めてやっておくれ。」と言った。

同時に、今まで女の中に封じられていた魔力が、女の全身に行き渡るのが視えた。

いつの間にやら竜の眼(ドラゴンアイ)が起動していたらしい。

とはいえ相手は魔力が使える一般人。天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)は使えないので、鎧を顕現させ、白銀の竜人の姿になる。

 

 

と、いきなり女がドンッ!という音と共に一瞬で距離を詰めてきた。

慌てて左に一歩ズレてかわそうとするが、次の瞬間女の右拳から放たれた衝撃波で吹き飛ばされる。

 

 

「力学系の魔術師か…めんどくせぇ」

そう呟いた数瞬の間に女は左足でさらに地面を蹴って右の肘打ちを顔目掛けて打ち込んでくる。

 

 

「めんどくせぇけど、分かってりゃ対処出来ねぇことはねえな。」

そう言いながら俺は翼で空気を叩き、衝撃波同士をぶつけて無力化して、そのまま足を払う。

しかし女は明らかに不自然な動きで倒れかけていた向きと反対に動き体制を立て直した。

そしてそのまま正拳突き。

拳自体には当たらないものの打ち出された空気の塊が亜音速で飛んでくる。

 

 

流石に分が悪いと思い天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)を顕現させ気弾を打ち払う。

数十発の気弾を捌ききると、埒が明かないと見たか、女の動きは止まった。

 

 

力学系の魔術師はその名の通り物理学的な力を操って戦う。

その中でも主に三段階にわかれ、初歩的なものは自分の体、例えば走る際に地面を蹴る力を強くして高速移動する、殴る際の速度をあげる、など自分の体を動かす力を増幅、あるいは減衰させる。

それが発展すると身の回りのものを触れただけで動かせるようになる。

分子の熱運動をある方向にのみ加速させることによってその物質を動かす。

そして最終段階ともなると強烈で、視認できるありとあらゆる物質を動かすことが出来る。

 

ここまで来ると一見念動力(サイコキネシス)系の魔術師と見分けがつかない。

両者の違いはというと、0から力を生み出せるかどうか、という点。

力学系魔術はあくまで元々在った運動エネルギーを操作する魔術。

しかし念動力(サイコキネシス)系の魔術は、魔力を運動エネルギーに変換することで、絶対零度で分子運動すらしていない物質をも動かすことが出来る。

 

 

この枠組みに当てはめるなら今俺が相対している女は初歩の第一段階ということになる。

とはいえ、まだ隠し玉があるかもしれないから気は抜けないが。

 

 

と、女が再び突貫してきた。

振るわれた拳を横に避けて少し油断したその瞬間。

余りにも早く再び女の腕がブレる。

俺は態勢を整えきれず裏拳を手で掴もうと掌を向ける

しかし振るわれたのは予想だにしなかったものだった。

 

 

 

(手刀…!?)

 

その破壊力は抜群であった。

しかし素人が手刀を使えば負傷は免れない。現に俺の手に命中した小指からはミシリ、と嫌な音がした。

 

 

元々手を痛める可能性が高いのだ、力学系魔術を使い加速してまで使えばそうもなるだろう。

竜の眼(ドラゴンアイ)で女の腕を視てみると、骨に細かいヒビが入っているのが見えた。

あと数回拳を奮っただけで折れ砕けてしまいそうな程の損傷だった。

 

 

(早くケリを付けねぇと…とはいえやりづれぇな)

ロキの魔術は火、それも相手を殺傷するものがほとんどである。

ストーキングされたからと言って一般人を焼き殺すわけにもいかない。

従ってロキは魔術を使うことが出来ない。

 

 

「こうなったら隠し玉を使うしかねぇか」

そう言ったロキは徐々に姿が薄れていって、やがて完全に見えなくなった。

 

 

 

(さぁって、ここからどうしたものか…)

ロキの作戦が始まろうとしていた…

 

 

To be continued…

 




次回投稿もいつになるか未定です。
頑張って早く挙げられるよう善処します。


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参回目・弐

書きたくなったので投稿。読者様には迷惑をおかけしますが、このスタンスが割と健康にもいい気がする。

言い訳ですごめんなさい。不定期投稿でごめんなさい。
このお祭りのお話も長くなってきたのでそろそろ終わらせねば…


さて、どうしたものか。

ロキは陽炎の中で策を練る。

炎の熱によって周りの空気の光の屈折率を操ることで自らが他人に見えないようにするのがこの術の原理である。

もっとも、あまり早く動きすぎると空気が掻き乱されて解けてしまう不十分なものだが。

 

 

 

必要なのは目の前の女、そしてその中に巣食う老婆の声の虎馬。

但し、相手の負傷は最小限に抑えなくてはならない。

その中には相手の自滅による負傷も含まれる。

 

 

…もうさっさとMSFに通報して援軍を呼んだ方がいいんじゃないか、と思うがそれをすると高確率でサラが来てしまう。

そうしたらきっと目の前の女は取り押さえられてもサラは助からないだろう。

 

 

なら…あれしかないか。

 

 

覚悟を決めて俺は鎧を消失させ、陽炎の中から女の後ろに姿を現した。

すぐさま察知して回すように振るわれた右の拳を俺の拳で包むようにして受け、そのまま回転しながら引き寄せ、回転の半径を小さくしながら投げる!

 

 

急速に加速しながら地面に叩きつけられた女は当たりどころを調節しておいたため、重傷こそ負わなかったもののショックで呼吸が出来ず地面に倒れ伏して苦しそうにもがいている。

 

 

すかさず組み伏せ無力化しながら、「なぁ、聞いてんだろ虎馬ァ」と話しかけた。

すると「なんだい、近頃の若者は口が悪いねえ」と、随分皮肉気な答えが返ってきた。

 

 

「お前を無力化すりゃぁこのふざけた輪廻が終わるって聞いてんだが、どうすりゃ無力化できんだ?さっさと吐かねえとお前ごとコイツをMSFにぶち込むぞ?」

「そんな事かい。このこの願いはあんたと居ること、さ。全く…こんな生意気な小僧の何処がいいのやら。まあ、あたしも自分の立場くらいわかっているつもりさ、だからお願いさせていただくよ。」

 

そういうと老婆の虎馬は一呼吸おいて、「お願いだ。あんたと少し話して、この子の恋が終わってしまえば、この子の願いは叶って、この輪廻からあんたも、この子も、そしてあたしも、解放されるはずなんだ。おかしな事を言ってることは分かってる。でも、この子にこれ以上罪を背負わせないでやって欲しいんだ…お願いだ…」

 

 

それを聞いて俺はどうにも毒気が抜かれて、「あ、あぁ…」と答えた。

 

 

しばらく待つとストーカーは起き上がって俺の顔を見て、「ふぇ?」なんて気の抜けた声を出した。

その後、「え、なんで?ロキ様なんで、え、どういうことなのムネシちゃん!」と慌てる女の声と、くつくつ、と愉快そうに笑う虎馬の声がしばらく響いた。

 

 

 

────────

 

 

 

 

本当はいけないことだ、そう分かって居ながら私はロキ様の後を尾行していた。

隣にはMSF総隊長のサラさんがいて、悔しいくらい美人で、私はロキ様の横には立てないという現実を改めて突きつけられた。

 

 

出会いなんて言えるものはそもそも無くて、「MSF隊員養成学校立てこもり事件」の解決に貢献したとして表彰されているロキ様に私が勝手に一目惚れしただけ。

それでふと、「あーあ、あんな素敵な人と建国祭に行けたらな〜」だなんて呟いた。

 

 

それから建国祭の日になって、惨めになることはわかっていたけれど私もお祭りの空気を楽しみたくて建国祭に出かけた。

今年は唯一の友達のムネシちゃん───虎馬っていう怪異で本名はアムネシアって言うらしい───もいるし寂しくないもん!って思ってた。

昼頃だとカップルも多くて虚しくなるから朝早く行こうってムネシちゃんと決めて行った。

 

 

そしたら…ロキ様が居た。後はさっき言った通り。

 

 

ムネシちゃんは声も性格も私の死んだおばあちゃんみたいで、よく世話を焼いてくれるけど、自分についてはっきりと教えてくれたことは無い。

ただ、前に言ってたのは、「あたしの仕事はシオン、あんたを幸せにすることだよ。」だった。

ちょっと照れ臭くて「何それ旦那さんみたい〜」って茶化したら、ムネシちゃんも照れててすごく可愛かった。

って言っても直接姿を見たことはないんだけど。

 

 

 

声だけの不思議な友達ムネシちゃんは時々大胆で、ロキ様を見つけた時に後ろについて行こうって言ったのもムネシちゃんだった。

まあ、言いなりになっちゃった私も私だけど…

 

 

そうやって、変だけどロキ様とお祭りを回ってる気分でしばらくすると、ロキ様はサラさんと別れたようだった。

といってもカップル的な別れるじゃなくて行動の面で、だよ?

 

 

そのまましばらく付いていくとロキ様は恐ろしい声でおい、もう分かってんだよ。そこの女、出て来な。」と仰った。

ふと、ありえないはずの記憶が頭の中に入ってきて、拒絶される悲しみが一気に去来して私の意識は暗転した。

 

 

 

目が覚めると目の前にロキ様がおられた。

 

 

「ふぇ?」思わず間抜けな声が出て、一気に意識が覚醒する。

顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。

ムネシちゃん…嬉しいけど心臓に悪いよ…

 

それでもロキ様はやっぱりお優しくて、しばらくしてから「んー、落ち着いたか?ちょっととりあえずさ、話しようか。そこの公園でいいか?あ、これスポーツドリンクな。」と、自販機で買ってきたと思われるスポーツドリンクを差し出しながら仰って下さった。

 

 

ただ歩いてるだけだけどもう…死んでもいいくらい幸せです。

 

 

 

To be continued…

 




次回予告

語られるシオンの過去。アムネシアの願い、そしてロキが出した答えとは…

次回、「打ち砕かれてなお、輝く希望」

※なおこのタイトルは投稿時には反映されません。ご了承ください。


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参回目・参

話が進まない上に文体が「君の膵臓」の方に引っ張られる!
どうにも書いてる時の気分に内容が引っ張られますね…
おかげで方向性がぶれっぶれ。
文体はまた書き直すかもしれません。

それではよろしくお願いします!


信号を渡って公園にたどり着いて、ベンチに座る。

幸い大通りから外れた小さな公園に祭りの日に来ようという物好きは居なかったらしく、公園には俺とシオンしかいない。

ところで…

 

 

「おーい、大丈夫か?」

そう言って俺は目の前で顔を真っ赤にしている女の目の前で手を振ってみる。

熱でもあるのだろうか。

あるいは調整したつもりでも先程投げ飛ばした時のあたりどころが悪かったのだろうか。

そのような逡巡は杞憂だったようで、シオンは今度は焦ったように────実際焦っているのだろうけれど────早口で弁明を始めた。

 

 

さらに数分して、ようやくシオンは落ち着いたようで、肩で息をしながらペットボトルの中のスポーツドリンクを呷る。

「ぷはっ、はあっ、はあっ、ゴホゴホッ!」

 

 

…どうやら噎せたらしい。

戦っていた時はもう少しばかり緊張感があったのになどと遠い目で現実逃避しながらロキはシオンの背中をさすろうとした。

 

 

しかしそれは為されなかった。

シオンが肩を跳ねさせ、ロキから飛び退くように離れようとした挙句ベンチの肘掛けの部分に背中を打ったからである。

 

 

ぶつけたところを擦りながら「痛た…」と言うシオンの中にいる虎馬に思わず聞いた。

「こいつちょっとそそっかし過ぎねぇか?」

 

 

だが、どうやら虎馬は別の事を思っていたらしく深く溜息をついてから、「天然でやってたのかい…」とだけ言った。

 

 

 

天然?魚の話だろうか。

そういえば虎はネコ科の動物だが虎馬も魚を食べるのだろうかなどという最早自分でも何を考えているかわからない位の酷い現実逃避を無理に終わらせながら、俺はシオンに「それでえぇっと…そういやお前はなんで俺なんかを尾けてたんだ?」と聞いた。

 

 

きだから…

「え?」

 

 

 

「好きだったんです!テレビで勝手に見て!一目惚れして!バカみたいですよね、私。笑ってください。それが当然なんですから!」

シオンの表情は少し風が吹いただけで綻んで涙が零れ落ちそうな、そんな笑顔であった。

 

 

ロキは端的に言ってとてもモテる。

整った顔に、透き通った銀髪は本人の意図せぬところでミステリアスな雰囲気を醸し出し、アルビノでもないのに紅色の瞳はそれを更に増長させていた。

さらにロキ自身頼りがいがあり、また腕っ節も強く、それも女子からの人気を集める一因となっていた。

という事で、かなり人聞きが悪いがロキはある程度このような状況に慣れており、自らがどのような立場を取ればいいかについても、人並み以上に理解しているはずであった。

 

 

 

しかし実際の所そう上手くはいかなかった。

何故ならシオンの告白には他にない、得体の知れない重みがあったからである。

 

 

(さて、どうするか…)

 

 

大前提として当然ながら、ロキにシオンと付き合おうという気は毛頭ない。

かと言ってここで突き放してしまえない程度には情もわいていた。

何よりここで突き放すと壊れてしまうのでないかと初対面のロキに心配させてしまうほどにシオンはどこか儚い女性であった。

 

 

 

黙っていても仕方が無いから、とロキはいよいよ決心して言葉を紡いだ。

「笑わねぇよ。あんたは本気で俺を想ってくれたんだろ。それは嬉しい。」

 

 

 

「でも、申し訳ないけど応えられない。俺さ、記憶喪失で名前もサラに付けてもらうまで無かったし、サラと出会うまで何してたか分かんねぇんだ。そんな俺にシオンと付き合う権利ねぇよ。」

 

 

「ただな、そんな俺だけど、辛かったらそれを聞くくらいはできる。そんなに強い虎馬産んじまう位辛かったんだよな、キツかったんだよな。」

 

 

そうして落とした言の葉と同じだけ、シオンの目から涙がこぼれる。

 

 

「分かってやれるとは言わねぇ。でも、せめてもの罪滅ぼしに、相談に乗らせてくれねえか?」

俺は最後にそう問うた。

 

 

シオンは嗚咽を堪えながら首を数度縦に振った。




そろそろお祭り終わらせなきゃなと思いながらグダグダ続いてる…年内に建国祭編終わるんですかね…不安になってきた…

誤字脱字感想ございましたらよろしくお願い致します。


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