仮面ライダードライブ school idol project D 戦士と女神の協走曲 (ケモミミ愛好家)
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何故彼の心《じかん》は止まったのか。

初めまして、ケモミミを愛してやまないケモミミ愛好家です。
初めての投稿ですので、誤字脱字があれば教えてください。
後、誹謗中傷のあるコメントは勘弁してください。
豆腐よりもメンタル弱いので。
ほぼモロパクリかもだが、トップギアで行きたいです。
では最後まで読んでくれれば幸いです。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界の破滅ってのは、突然やって来るものだ。

ある者はディナーを、ある者はショッピングなど他愛もない日常を送っていた。

10年前世界の時間は"静止"した。

いわいる『どんより』だ。

後にこの事件はこう呼ばれた。

静止する世界(グローバルフリーズ)と。

各地で起こったこの事件は、世界の人口の3割近くも奪うという未曾有の大災害となった。

だが俺達は知らない、凍りつく世界の中たった一人世界を救うため戦った戦士がいたと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー現在

 

 

 

 

 

 

あの事件から約10年、世界にはまだ事件の爪痕が残っていた、町にもそこに住む人々の心にも。

町のみんなは今でもあの現象を恐れている『どんより』を。

そりゃ恐れるだろ世界を破滅に追い込んだ現象は“今も”続いているんだから。

俺の頭の中も泥が詰まったみたいにどんよりしている。

半年前に起こった“あの事件”は俺の(じかん)を止めた。

あの日から何のやる気もない出ない俺はいつものように、ここ「国立音ノ木坂学院」の屋上で好物のひとやすみるくを食べながら昼寝をしている。

 

 

 

 

俺は泊 進二《とまり しんじ》音ノ木坂学院の3年生だ。

ちなみに今は絶賛授業中、つまりサボリだ。

学校で勉強したものが全て将来活かせるのか?

関数計算や日本史、世界史が日常生活に必要か?

そんなことを考えていると、全てがバカらしくなる。

だから俺はこう言う。

 

 

「考えるのやーめた」

 

「何が考えるのやめたよ」

 

 

ふと声のする方を見た。

そこには西洋人を思わせるような外見の少女がいた。

彼女は「絢瀬 絵里」《あやせ えり》この学校の生徒会長で同じクラスのクラスメイトで俺の親友の従姉妹らしい。

 

 

「げっ 絢瀬!?何で此処に!?何でバレた!?此処に来るまで誰にも気付かれなかったハズなのに!?」

 

「ウチが占ったんよ♪」

 

 

すると出入口から少しぎこちない関西弁で話す服の上からでも分かる高校生離れのナイスバディな少女が入って来た。

「東條 希 」《とうじょう のぞみ》同じ3年で生徒会副会長だ。何でも占いで解決してしまう恐ろしい奴だ。

彼女達とは、3年前から付き合いだ。いわいる腐れ縁ってヤツだな。

 

 

「占っ…マジかよ」

「マジやで♪」

 

 

普通ならときめく様な可愛らしい笑顔も今回ばかりは悪魔の笑みに感じるぜ。

 

 

「てかっお前等授業はどうした?

あっ…解った、お前等もサボリか」

 

「一緒にしないで、貴方を連れ戻しに来たの。

先生の許可は取ってあるわ、教室に戻るわよ。

今なら反省文10枚で許してくれるそうよ」

 

「10枚!?多すぎだろ!?」

 

 

絢瀬の言葉に驚く俺。

そりゃ、たかが授業を一回サボっただけで10枚は多すぎだろ。

呉ちゃんめ、真面目すぎだろ。

 

 

「今回の分だけやないで前回、前々回の過去全ての分で10枚なんよ。

呉島先生は優しい人やで、エリチが100枚って言うたの可哀想やから

10枚に減らしてくれたんやから」

 

 

俺が呉ちゃんの真面目ぶりに軽く泣きそうになっていたら、

東條が事の詳細を教えてくれた。

ありがとう呉島大先生、きっとあんたなら世界を救えるよ。

俺は呉島先生の寛大さに少し泣いてしまった。

今度から授業受けよう。

しかし、疑問に思う事がある。

 

 

ーーーあれ?

東條に心読まれた?

 

 

「読んでないよ♪」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

―――ダッ!!

 

 

 

 

 

 

俺はこの場から走り出した。

いや、逃げ出した。

呉ちゃんには悪いが、それでも10枚は多いよ。

出入口にいる東條を飛び越えて行こうと、踏み込んだ瞬間。

後頭部に何かが当たりバランスを崩した。

刹那、後頭部に飛んできたであろう床に落ちる靴と片足裸足の絢瀬が見えた。

普通靴投げるか?

そのまま俺は倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東條を押し倒しながら…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

息苦しい中、今まで経験したことのない柔らかさと、凄く心が安らぐ甘い香りが顔前に広がる。

そして気付く。

ヤってしまったと。

俺は東條の豊満な胸に顔を埋めるように抱きついていた。

顔を上げれば少し恥ずかしそうに顔を赤らめた東條、振り返れば同じように顔を赤らめた絢瀬がいるが、

こっちは羞恥心ではない。

怒りだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今俺は何故か手錠を付けられ絢瀬に引っ張られ教室に向かっている。

後ろで東條が面白そうに見ているが、手錠よりも左頬に走る痛みの方が俺は気になる。

何故か、絢瀬にビンタを食らったのだ。

すると突然東條が口を開いた。

 

 

「そう言えば、泊くん最近何か疲れとるみたいやけど、何かあったん?」

 

 

本当鋭いよな、コイツ。

確かに今俺はあることで悩んでいる、悩まされている。

謎の声のせいで。

 

 

「い、いや。

何にもないゾ?」

 

「ホンマ?まぁ、泊くんが言うなら別にいいけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に入ると既に次の授業が始まっており、日本史の「本願寺 純」先生が教卓にいた。

心無しか皆の顔がひきつった表情になっている。

そりゃそうだろ。美少女二人が左頬に紅葉が出来た男を手錠で連れてきたのだから。

 

 

「ワオ~。ナイスだよ絢瀬ちゃ~ん、服の色が良かったんだね~、今日のラッキーカラーは青だからね~♪」

 

「本当に日常生活のほとんどが占いだよりだな、先生は」

 

 

陽気に振る舞う先生に、俺は言葉を返した。

 

 

「占いはバカに出来ないよ~、ねぇ~?東條ちゃん」

 

「そうですね~♪」

 

 

 

いつもの日常……

そんなやり取りが終わるといつもの授業が始まる。

そんな中、やはり俺は…止まったままだ。

 

 

 

 

 

 

昼休み、今日は学食にするか購買にするかで悩んでいると、1人の生徒が話しかけてきた。

 

 

「ちょっと、進二」

 

「んー?何だ、矢澤?」

 

「にこって呼びなさいって言ってるでしょ!

まぁいいわ。そんなことより、沢神達から伝言よ」

 

「りんなさんから?」

 

「たまには部活に来いだそうよ」

 

「おぅ、分かった」

 

「前から思ってたけど、あんた達の部活……何だっけ、特殊…じょう?状況?何とかってヤツ」

 

「特殊状況事件観察研究部」

 

「そう!それよ!何してる部活なの?」

 

そう聞いてくる黒髪ツインテールのちんちくりん。

「矢澤にこ」アイドル研究部の部長だ。

 

「何か失礼な事考えてない?」

 

「いや、別に」

 

「それより、何の部活なの?」

 

「さぁ?」

 

「さぁ?って」

 

「俺もよく分かってない。

何でもどんよりについて研究する部活らしいが」

 

「らしいって。よくそんな部活に入ったわね。

私がアイドル研究部に誘った時は断った癖に」

 

「俺も入りたくて入った訳じゃないんだ。

半ば強引に入部させられたんだよ」

 

「ふーん。まぁいいわ。

とりあえず、伝言は伝えたから」

 

「あぁ、ありがとな」

 

 

 

 

 

 

購買に向かうと、見覚えのあるサイドテールがパンを買うために奮戦している。

 

「精が出るな、穂乃果」

 

「あっ、進にぃ。こんにちは。」

 

 

彼女は近所の和菓子屋「穂むら」の娘さんだ。

俺の親父やお袋が穂むらの和菓子が好きでよく買いにいかされたものだ。

その為か、小さい頃は穂乃果と友達二人とよく遊んだものだ。

いわいる幼なじみだ。

 

 

「あら、泊先輩こんにちは」

 

「こんにちは、先輩」

 

 

すると背後から二人の少女がやって来た。

凛とした落ち着いた雰囲気の少女「園田 海未」

どこかほんわかとした感じの少女「南 ことり」

彼女達は穂乃果の友人で一緒遊んだ幼なじみだ。

海未は実家が開いている道場に俺が親父に勧められて入門したさいに知り合った。

何でも海未の親父さんと俺の親父は昔の友人らしくよく二人の武勇伝を聞かされたものだ。

もう二度と聞けない武勇伝を懐かしみながら思い出す。

親父とした最後の、あの約束を。

暗い顔をしていかのか、ことりが心配そうに聞いてきた。

 

 

「先輩大丈夫ですか?」

「いや、何でも無いよ。

それより、その先輩ってのやめないか?

無図痒くて仕方無いんだが、昔みたく名前で呼んでくれていいんだぜ?」

 

「ですが、上級生を名前で呼ぶのは」

 

「真面目だな海未は、名前が嫌なら昔みたいにお兄ちゃんでもいいんだぜ?」

 

「そっちの方が恥ずかしいです!」

 

「じゃあ私は呼ぼうかな?進ちゃんって」

 

「ことりっ!?」

 

「おぅ、いいぜ」

 

「お兄ちゃんまで!?」

 

 

すると海未は顔を真っ赤にしてハッと両手で口をふさいだ。

 

 

「何だ、やっぱり無理に意識して呼んでたんじゃないか。

作戦成功だな、ことり」

 

「だねぇ、進ちゃん」

 

「なになに?何の話?」

 

 

そうこうしてると、購買から穂乃果がパンをもって帰って来た。

そして思い出す。

何をしにここに来たのか。

急いで購買に向かったが、現実は残酷だ。

残っていたのはあんパン一つだけだった。

穂乃果達と別れたあと、飲み物を買うために自販機の前に来たが、こういう時に限って

ほとんどが売り切れという事が起こる。

 

 

「マジかよ……」

 

 

すると1ヶ所だけ売り切れでない商品を見つけ駆け寄る。

 

 

「スーパーゲル状デロドロンドリンク?」

 

 

買うヤツいるのか?そう考えていると。

 

 

「良かったーまだ残ってたにゃー」

 

 

独特の語尾を付けたショートカットの活発そうな女の子が走って来た。

何か買いに来たのか?と思いながら小銭を入れ、地雷のスイッチを押す。

するとデロドロンドリンクのランプが売り切れになると同時に悲鳴が聞こえた。

 

 

「あー!間に合わなかったにゃー…」

 

 

そう言い俺が持つ缶を見つめている。

まさかデロドロンドリンク《これ》買いに来たのか?

今にも絶望してファントム的な何かを生み出しそうな彼女を見ていると、少し心が痛む。

 

 

「良かったら、やろーか?これ」

 

 

俺は手にしている缶ジュースを見せると。

 

 

「えっ!?いいの!?ありがとにゃー!!」

 

 

そう言いジュースを手にし嬉しいそうにスキップしていく彼女を見ていると、嬉しい気分になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーあっ………ジュース代、もらって無い……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー放課後

 

俺は絢瀬に書かされた反省文をもって職員室に来ていた。

 

 

「失礼しまーす。呉島先生いますか?」

 

「おや、泊 進二くん。

君が自らここに来るなんて珍しいな?何か悪い物でも食べたのかい?

でも見た感じはむしろなにも食べて無い様にも見えるが、菓子パンのひとつは食べたみたいだね。

でも喉は余り潤って無いようだが、コーヒーでも淹れようか?安物のインスタントだが、無いよりはましだろう」

 

 

そう言いながらコーヒーを淹れる白衣を着たメッシュの入った長髪の教師「戦極 凌馬」《せんごく りょうま》先生は、物理、科学、歴史様々な

授業を受け持つすごい人だ。

性格や、さっきの様な観察力など本当に凄い人である。

 

 

「そう言えば、貴虎に用があるんだったね。

彼なら何時ものように机でどうすれば君が授業に出てくれるかを模索しているよ?

君が授業に出ないの結構気にしているようだね。

彼はメンタルは強いが、妙なところで打たれ弱いからね。

反省文と共に軽いフォローを入れてくれると助かる。

でないと今日も酒のさかなは君の話になりそうだ」

 

 

そう言いながら先生はコーヒーを手渡しにきた。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

俺はコーヒーを飲み終えると、呉島先生のもとへ向かった。

 

 

 

 

 

 

「先生、反省文出来ました」

 

「ん。そうか」

 

 

そう言い反省文に目を通しながらコーヒーを口にし、読み終えると同時にこちらを向いて聞いてきた。

 

 

「泊、お前はもしかして……私の事が嫌いなのか?」

 

 

直球だ。

ドストレートだ。

結構なんてものじゃない、重症だこれ。

 

 

向かいに座っている、家庭科の凰蓮《おうれん》先生に体育の湊《みなと》先生は笑いをこらえ、隣のにいる経済学の志渡《しど》先生は声を上げて笑いだした。

 

 

どう答えよう……

 

 

そう考えていると、本願寺先生がやって来た。

 

 

「泊ちゃん、ちょうど良かった。これりんなちゃん達に渡しといて。部活いくんでしょ?」

 

「あぁ…分かりました、渡しておきます。

それと呉島先生、俺先生達の事は尊敬していますので、嫌いになんかなりませんから、安心してください。

では、失礼しました。」

 

 

そう言い残し俺は職員室を後にした。

 

 

「やはり彼はまだ"あの事"気にしている様ですね…」

 

「こればっかりは、アイツ自身の問題だからな、

どうするかは、アイツ次第ってことだ……」

 

「そうね。これに関しては自分で答えを導き出さなければいけないものね…」

 

 

湊が口を開くと、志渡が答え凰蓮も賛同する。

半年に起こったあの事件を思い出しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部室棟のある教室

その教室のネームプレートにはこう書かれている

《特殊状況事件観察研究部》

 

 

「ここ来るの久しぶりだな。」

 

 

ドアを開けると、いつものメンツが揃っていた。

 

 

「あっ、進二くんひさしぶりー」

 

「しっ、進二くん久しぶりだね」

 

「遅いです、何してたのですか?」

 

 

特殊状況事件観察研究部ーーー通称《特状部》

グローバルフリーズの原因とも言えるどんよりが起こす事件を

観察研究し、その正体に迫ろうというのがこの部の活動内容だ。

 

最初に挨拶してくれたのは「沢神りんな」《さわがみ りんな》

彼女は戦極先生も認める天才で重加速研究の第一人者である。

重加速つまりどんよりにはある粒子が存在し、重加速が発生すると

その粒子が残るなどの解明をし、あげくにはその粒子の探知機まで作り上げる程だ。

ちなみに、どんよりに重加速と名付けたのも彼女だ。

 

次に挨拶をしてくれたのが、「西城 究」《さいじょう きゅう》

学生でありながら、ネットワーク研究家として有名で、どんより以外にもいろんな情報の入手、検索のプロで俺達特状部の貴重な情報源でもある。

ちなみに、今はアニメ以外にも《スクールアイドル》にはまっているらしく、俺の音楽プレイヤーの中身がスクールアイドル一色になった際は驚いた。

聴いてみると、案外よく特に《A-RISE》の曲は気に入ってよく聴いている。

 

最後に素っ気ない挨拶をしたのが、「詩島 霧子」《しじま きりこ》

秘密主義だか知らないが余り自分の事は話さない。

俺も名前以外は余り知らない、分かっているのは笑わないって事だけだ。

 

そして俺、泊 進二

この四人が特状部である。

ちなみに、本願寺先生がこの部の顧問である。

 

 

「りんなさん、これ先生から」

 

「はーい。ありがとー」

 

「何の書類なのそれ?」

 

 

するとりんなさんはものすごい笑みでこっちを見てくる。

嫌な予感しかしない。

りんなさんに手渡された書類に俺は、俺だけが驚いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《音ノ木坂学院 所属特殊状況事件観察研究部様》

重加速関連事件への捜査協力の要請

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

差し出し人ーーー警視庁警視総監

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けっ、けけけけ警察からの協力要請!!??」

 

「あっ、そうか進二くんいつも会議出てないもんね」

「どういう事!?みんな知ってるの!?知らないの俺だけ!?」

 

「そ、こないだの会議で理事長が来てね、何でも私の研究成果に、西城くんの情報能力、

半年前の事件を解決した進二くんの推理力が買われてね。学校側は余り引き受けたくないみたいだけど、

理事長があたし達に最終決定権を委ねたのよ」

 

「それで返事は?まぁ、分かってるけど」

 

「話が早くて助かるわ。明日から正式に通達があるから、明日からはサボらないでね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー帰り道

 

 

 

 

俺は校舎を後にすると他の生徒とは違う方向に足を運んだ。

そこは職員用の駐車場で、そこには周りから浮いた赤いスポーツカーが一台停まっていた。

いい忘れていたが、俺は去年免許を取得している。

学園から許可を得て車での通学をしている。何故去年免許を取得しているのかって?

俺は今年で19になる、訳あって去年から今年の2月までの半年間に渡って停学をくらい、

もれなく留年って訳だ。だから東條や、絢瀬より一つ年上だ。

警察への協力、これで俺は少しは前に進めるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――絢瀬

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は車に乗り込みシートベルトに手をかけようとしたその時だ。

 

 

『そろそろ戦士になる決心をして、走り出してくれないか?』

 

 

急に車の中から声がした。

そう、昼間東條の言ってた俺の疲れの原因とはこれのことだ。

恥ずかしくて誰にも相談できないだろ?車から声がするなんて。

 

 

「またアンタか、誰だか知らないがいい加減しつこいな」

 

『当たり前さ。君が活動しやすいよう、特状部に入部させ、このマシンを与えたのもワタシだ』

 

「他を当たれよ、見ての通り俺はやる気の無いただの腑抜けさ」

 

『君は超人だ。ただエンジンのかけ方を忘れているだけさ』

 

「エンジンの…かけ方…」

 

 

 

俺は頭のモヤモヤを抱えたまま帰り道についた。

 

 

「久々に穂むらの和菓子でも食べるか」

 

 

運転中そう思い、俺は穂むらへと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーガララッ

 

 

 

 

 

「いらっしゃい、あら?進二くん?

久しぶりねぇ元気?いつもので良いかしら?」

 

出迎えてくれたのは穂むらを営む女性で穂乃果の母親だ。

 

 

「はい、お願いします」

 

 

そう、俺は穂むらに来ると必ず同じものを頼む。

 

 

「はい。穂むら特製苺大福。

後は…………はいこれ、今日はおまけね」

 

そう言い出されたのは、一つのどら焼きだ。

 

 

「いつもありがとうございます。

親父もきっと喜びますよ」

 

「えぇ。でもお供えも良いけど、痛む前にお母さんと食べなさいよ?」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

そして俺は俺と親父の好物をもって帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー家に着いた俺はリビングへ向かった、母親は夜勤でいつも夜遅い。

 

リビングのテーブルにはいつものメモがあった。

 

 

『夕飯は冷蔵庫にあるから、温めて食べてね』

 

 

俺は夕食をとる前にお供えのどら焼きをもって、和室の仏間に向かった。

仏壇にどら焼きを供え置いてある遺影を見て拝む。

 

 

 

 

 

 

ーーーー親父、俺…約束守れるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー辛いときや悩んでるとき……泣きたいときは立ち止まってもいいんだ……

大事なのは、そこからまた走り出せるかどうかだ、お前なら大丈夫だ

何故なら、お前はーーーーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は……」

 

 

 

俺は外に停めてある車《トライドロン》を見て、親父の言葉を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも通りの日常の中

だが、俺達は知らない。

世界と音ノ木坂学院に迫る危機を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




改めて、初めまして。
ケモミミ愛好家です。
如何だったでしょうか?
アドバイスなどがあれば教えてください。

ちなみに、原作の仮面ライダードライブでは親友の名前は早瀬ですがこれは意図的に変えております。
だってややこしいじゃないっすか。早瀬と絢瀬
次回の投稿は不定期ですが早めにしたいと思います。


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謎の声《ストレス》は何処から来るのか。

どうもケモミミ愛好家です。
今回は少し短めの投稿です。
最初の予定では、10話分はドライブの話をモデルにした
内容で、11話あたりからラブライブ本編を織り混ぜて話を作る予定です。
今回は希しか登場してないですが、次回から本格的にミューズのメンバーを
登場させていきたいです。
花陽、真姫ファンの皆さんもう少し待ってください。
では、どうぞお楽しみください。
PS,少しタイトル変えました


 

 

 

 

ーーーーー撃てっ!!撃つんだっ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー泊ーっ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーうぁーーっ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーパーーンッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーっ!!…………夢……?」

 

不意に目が覚めたせいか、目覚めが悪い。

いや、違う。そんなのわかりきった答えだ。

 

「また、あの日の夢か…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………絢瀬」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は朝食を取り、車庫に向かった。

トライドロンに乗り込むや否や、またアイツが話しかけてきた。

 

『朝から疲れてるようだね、夜更かしでもしたのかい?』

 

「半分は誰のせいかを自覚して貰いたいな?」

 

『ワタシは君の睡眠を阻害した覚えは無いのだがね?』

 

「直接はな!?間接的にはしてんだよ!この車!!」

 

『んー、一つ訂正するなら。私は車では無い』

 

「謝罪の1つも無いのかよ…………ん?」

 

今コイツなんて言った?

車じゃない?

じゃあなんだよ?

 

 

俺はおもむろに車内の探索を始めた。

すると、スピードメーターか何かだと思っていた妙な機材が目に入った。

そして俺は謎の声に話しかけた。

 

「あんたは車じゃないんだな?」

 

『あぁ、そうだとも』

 

 

確信出来た。

 

 

「分かったぞ。ここから声がしてるな?」

 

その機材に手をかけると取り外せた。

 

『Exactly 正解だ』

 

「へっ、どんなもん……だーっ!?」

 

 

すると、その機材に付いている帯のような物が暴れだし勝手に腰に巻き付いた。

 

『残念だったね。ワタシはベルトだ』

 

 

機材のディスプレイに顔のようなものが映し出され消えた。

 

 

「ベルトだと?」

 

 

俺がベルト?に触れようとした瞬間、またディスプレイに顔が映し出された。

 

『そんなことより、学校は間に合うのかい?』

 

 

失念した。

すっかり忘れてた。

急いで俺はトライドロンで学校に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー某所

 

暗がりの廃工場、そこに3人の男がいた。

1人は血のように真っ赤なコートを着た、長身の男性

もう1人は緑のスーツと、メガネを着用した知的な男性

そして最後に上下とも紫一色に統一されたライダースーツの男性

 

すると、赤いコートの男が話始めた。

 

「今回のお友達は、どこまでいくかな?」

 

「早く約束の数を揃えなければなりません。

あまり悠長なことは言ってられませんよ?」

 

メガネの男はコートの男が言った言葉に返事をした。

 

すると、ライダースーツの男は無言のまま背後に停めてあるバイクに股がり、

その場を後にし去っていった。

 

 

「相変わらず、無口で愛想の無いヤツだ」

 

メガネの男が皮肉混じりに言うと。

 

「別にいいじゃないか?個性があって。

俺は好きだぜ。ああいう友達は」

 

コートの男は間髪入れずに答えた。

 

「まったく、困ったお人だ。“ハート”は」

 

ハートと呼ばれたコートの男は笑みを浮かべ

 

「お前も大事な、俺の友達さ。“ブレン”」

 

ブレンと呼ばれたメガネの男性はどこか嬉しそうに男が去っていった方向を見て呟いた。

 

「約束の数の為、これからも宜しくお願いしますよ、死神…………いや、“チェイス”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー音ノ木坂学院 3年生教室

 

 

俺は何とか遅刻せずに教室に入れた。

だが俺はソワソワしている、ドキドキしている。

胸が不安で押し潰されそうだ。

何故なら…………

 

 

 

「あれぇ?珍しぃ、泊くんが制服のボタンちゃんと留めてるやん」

 

「とっ東條!?

おっおぅ、今日は少し肌寒いからな……うん」

 

「心配せんでも、今日は昼前には気温上がるらしよ?」

 

「マジか…ありがとなっ?」

 

「何で疑問形?」

 

 

そう……。

今俺は制服の前のボタンを全て留めている。

何がおかしいかって?

俺は普段全開なのだ。

ちなみにうちの制服はブレザーで、

ネクタイも緩め、上着のボタンも留めない、いわいる無気力、不良のスタイルだ。

普通ならスルーしたり、気にも止めないだろう?

だが、普段から俺と接しているヤツからしたら違和感バリバリだろう。

ならどうしてはずさないかって?

それは…………

 

 

ーーーー15分前

 

 

 

「何とか間に合った。

おいベルト、とりあえず離れろ。いや、外れろ。」

 

『呼び捨ては失礼だね。

そうするつもりだったが、いつ奴等来るかわからないからね。

しばらくはこうさせて貰うよ。』

 

「はぁ!?ふざけんな!?こんなん巻いたまま外に出れるか!」

 

ガチャガチャと無理矢理でも外そうとしたが外れない。

 

『無駄なことは辞めて早く教室に行ったらどうだい?

後、10分と48秒で君は遅刻だ』

 

「ふざけんな!?お前外してからだ」

 

マジで外れない、そうこうしていると誰かが窓を叩いた。

俺はとっさに上着の前を閉めて顔を上げた。

そこには霧子が立っており、何か言っている様だった。

 

「何か用か?」

 

車の窓を開けて俺は霧子に話しかけた。

 

「今日の昼休みに部室で会議がありますので、サボらないで下さいね?

ん?様子が変ですね?何かあったのですか?」

 

「イヤ、ナンデモナイゾ?」

 

「そうですか。ではまた。」

 

「おっおぅ。」

 

一息つくと、腰のベルトに目をやった。

 

『ん?どうしたんだい?あまり見つめられると、照れるじゃないか///』

 

そして俺は外すことを諦め、

上着のボタンを留めて車を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーそして現在

 

 

俺は腰に巻き付いた変なベルトに悩まされている。

声の正体は分かったが、状況が最悪だ。

今までは、こいつが車に積まれたままだったから、

車にさえ乗らなければ何ともなかったが、今は違う。

声の主は今俺の腰に巻き付いている。

これで四六時中声に悩まされるって訳だ。

しかし俺は今それ以上の危機にさらされている。

今日は……………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………身体測定

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤバイ、ヤバイヤバイ!ヤバイヤバイヤバイ!!

 

 

 

 

こんなの巻いて学校来てるヤツなんて痛いにも程がある。

 

 

 

 

 

すると救いの声か、悪魔の声か一つの校内放送が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

【テステスマイクテース♪特状部の皆さーん事件が起こりましたので部室に来てくださーい】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてこの事件が、

 

俺の走り出すきっかけとなり、

 

彼女達が出逢うきっかけとなる

 

 

 

 

全ての始まりの事件の始まりだった……………。

 

 

 

 

 




どうです?
無理やりまとめた感すごいでしょ。
次回の投稿は一週間以内には出したいと思います。
感想があれば宜しくお願いします。


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彼は変身する《はしりだす》ことが出来るだろうか。

どぅもケモミミ愛好家です
何とかドライブ1話分が出来た。
真姫ファンの皆さん登場までもう少しお待ちください。
ラブライブ本編はアトリエ事件の後にするつもりですので、もう少し後になります。
ラブライブストーリーをお待ちの方すいません。
でわ、どうぞお楽しみください。
感想受け付けております。
お気に入りもよろしくお願いいたします。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

私が小学生のある時、虐められた。

1人は身長の低い小柄な高校生

1人は坊主頭の女の子みたいな変な声の高校生

そして最後に、お菓子袋を持った高校生には見えない巨体の高校生

この3人に虐められていた、私を守ろうとした凛ちゃんも巻き込まれ、怪我をしてしまった。

近所でも悪名高い3人組は大人たちでも手を妬いていた。

 

「だ‥誰か‥‥助けて…」

 

誰も助けてくれない中

私は聞こえるのか分からないような小さな声で呟いた。

そんな時、私の声が聞こえたのか、

私の前に、(ヒーロー)が現れた。

――――――――――――――

 

 

「何だお前!?」

 

「あ?俺がサーカスの団員に見えるか?

男がよってたかって小さな女の子を虐めてんじゃねぇ!」

 

「てめぇには関係無いだろ!」

 

「あぁ、無いね!

だからって無視する理由にはならねぇし、

関係が有るか無いかと関わらないのは

別問題だからな!」

 

「なら、お前も虐めてやろうか!?」

 

「そうだそうだ!」

 

「イマサラアヤマッタッテユルサナイカラナー!」

 

「上等だ!今の俺は脳細胞がトップギアだからな、

てめぇらがその気なら相手してやる!」

 

するとその少年は右手首を左手で掴むと、勢いよく右手を開いた。

そして、腰を低く落としこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひとっ走り付き合えよ!」

 

 

 

 

 

その少年は1人で3人を相手にしながらも優勢で、

取り巻きの二人を圧倒していた。

 

小柄な少年は軽快なフットワークをすると

 

「コンビネーションから左フックや!えいっ」

 

「何だそれ?!」

 

「あれ?うぎゃっ」

 

少年に殴りかかろうとしたが、呆気なく顎に一撃受けてノックダウンした。

確かアッパーカットって言うのだったかな?

 

ソプラノボイスの少年は関節技をかけられ痛がっていた。

 

「イタイイタイ、チョットハナシテッ」

 

「何だよお前のその声?!気持ち悪いな!」

 

「キモチワルクナイッ!ジゴエッ!」

 

技が解かれるとその少年は地団駄を踏みながら訴えたが、

聞いてもらえずに一撃を受けて伸びた。

 

 

「あ~あ、また始まったか」

 

すると後ろから声がした。

振り向くとそこには私を助けてくれた彼と同じ制服を着た人が立っていた。

その人はこちらを向いて話しかけてきた。

 

「大丈夫?怪我無いか?」

「は、はい!でも…凛ちゃんが突き飛ばされてっ」

 

親友の凛ちゃんは私を庇って怪我をしてしまった。

私は泣きながら助けを求めると、

その人は「分かった、兄ちゃん達に任せろ」

そう言うとバックから消毒液と絆創膏を取りだし、

凛ちゃんの治療をしてくれた。

 

「大丈夫か?頑張ったな。ナイスファイトだ」

 

そう言いながら、凛ちゃんの頭を撫でた。

 

「ありがとう…ございます…」

 

「お兄ちゃん、ありがとにゃー♪」

 

 

すると、その人は立ち上がると喧嘩をしている方を向くと叫んだ。

 

「どうだ泊ー!?終わりそうかー!?」

 

「あぁ絢瀬、今終わったとこ。

イチチッ、唇切っちまったよ。あ~痛っ」

 

不良達を追い払った人は顔を殴られたのか、口から血が出ていた。

私は怖かったからなか、その人に駆け寄ると抱き付いて泣いてしまった。

するとその人は優しく頭を撫でてくれた。

 

 

これは私、「小泉 花陽」《こいずみ はなよ》の記憶

そして、初恋の思い出…………

 

高校生になった今でも、

この日の事を思い出すたびに思う。

 

 

 

 

また、会えるかな…?

 

 

 

「…………よ………ち…ん」

 

何となくだけど、会える気がする。

 

「か…………………ちーん」

 

今度会ったら何話そう、お礼が先だよね?

 

「か…………………ちんってばー」

 

お礼を言ってそれから…………

 

「かーよちんってば!!」

 

「ぴぃっ!?」

 

驚いて振り向くと友達の凛ちゃんがいた

 

「かよちん無視なんてひどいにゃー」

 

「ごめん少し考え事してた」

 

「ふーん。まぁいいにゃ、かよちんは何の部活に入るか決め…」

 

 

【テステスマイクテース♪特状部の皆さーん事件が起こりましたので部室に来てくださーい】

 

 

「変な放送だね、事件って何だろ?」

 

「それより、特状部なんて聞いたことないにゃ」

 

 

私たちは、後にこの特状部と大きく関わっていくこと、

望み続けた再会を果たす事になるとは、思ってもいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

校内放送に呼ばれ俺は部室へと、向かっていた。

 

「事件で俺達が呼び出されたってことは、

前にりんなさんが言ってた警察との合同調査になるのかな?」

 

『そのようだ。君達が呼び出されたとするなら、

間違いなく重加速が絡んだ事件だろう。

だとすれば、“奴等”が関わっているはずだ。

気を引き締めよう』

 

「なぁ」

『何かね?』

 

「いつまでそうするつもりだ?」

 

『君が私の誘いにyesと答えてくれるまでさ』

 

「はぁ、とりあえず会議が終わるまで黙ってろよ?」

 

『その点についてはNo problemだ、

ワタシが自ら自身を晒すことは無いからね』

 

そう言いながらコイツはどや顔をディスプレイに映し出す。

現に腰に巻き付いてる時点で信用ゼロにも思えるが……

まぁいいか、考えるのはやめだ。

そして一つ疑問に思う事をベルトに訊ねた。

 

「なぁ、さっきから言ってる奴等ってなんだ?」

 

『…………いずれ分かるさ』

 

 

「お前、人に信用してもらいたいなら、まず自分から…」

 

「遅いですよ泊さん。会議が始まります、早く入って下さい」

 

「おわっ!?ビックリしたー。心臓に悪いだろ止まったらどうする」

 

「そんなことで止まるようなら、止めておいてください。」

 

「いや、死ぬって。お前、本っ当に俺には冷たいよな?」

 

 

そう言うと、少し不機嫌?表情があまり出ないから分からないが、

気分を害したのか俺が部室に入ろうとした瞬間、ドアを閉められ閉め出された。

改めて部室に入るとすでに知ってる顔がそろっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今すごく機嫌が悪い。

確かに言い過ぎかも知れませんが、

女の子に向かって冷たいは言い過ぎじゃ無いですか?

でも目前でドアを閉めたのはやり過ぎですかね?

謝った方がいいかな?

そんなことを考えていると、泊さんが部室に入って来た。

それと同時に顧問の本願寺先生が話し始めた。

 

 

 

「遅いですよ、泊ちゃん。早く席に着いちゃって下さい。

はーい、泊ちゃんが来たので会議始めまーす……?

あんれー?珍しい泊ちゃん、ちゃんと制服着てるじゃない?」

 

「いや、まぁたまには?それより会議始めません?」

 

「そだね。詳しいことは現場で聞くことになってますが、

りんなちゃんは解析、究ちゃんは情報収集でここに残って貰います。現場には泊ちゃんと霧子ちゃんに向かって貰います。

現場にいる追田警部が窓口ですから、まず彼に合流してくださいね。」

 

「現さんが?」

 

「お知り合いですか?」

 

「まぁ…な。親父の元部下でよく家に来てたし、

半年前は世話になったからな」

 

「半年前?」

 

「そっか、霧子ちゃんは新学期に転校してきたばかりだからね。

知らないんだよね。実は半年前に…………」

 

「早く行かないと、現さん待たせちゃうよー?」

 

 

何も知らない私に西城さんが説明しようとすると、

すかさずりんなさんが遮った。

半年前に何があったのでしょうか?

ふと、泊さんの方を見ると今まで見たこともないどこか寂しそうな表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

俺は今どんな顔をしていたのか?

半年前のことを霧子に知られるのが少し怖かった。

 

「じゃあ、調査に必要な機材持って来るねぇ♪」

 

そう言いながらスキップで去ってくりんなさんを見ていると、

妙な寒気と不安感に襲われた。

 

「何か、嫌な予感がするんだが?」

 

「奇遇ですね、私もです」

 

 

するとりんなさんは大きな箱を台車に乗せてやって来た。

 

「お待たせー♪これが、重加速が起きたさいに放出される微細なエネルギー粒子を測定する万能測定機、

その名も~…重加速粒子測定機【ピコピコ君1号】よー♪」

 

りんなさんが箱から取り出したのは、色とりどりのランプの付いたヘルメットとリュックのように背負えるベルトの付いた変な機械に、それに繋がれた銃のような形をした測定用の手持ちアンテナだった。

 

「なぁ……りんなさん‥……こ、これ…どう使うんだ?」

 

俺は答えの分かりきった質問をした。

現実を受け入れられないから。

そうでないと信じたかったから。

するとりんなさんは今日一番の笑顔で俺の期待を殺した。

 

「そんなの分かりきったことじゃなーい♪

このメットを被って、この機械を背負ってー、この機械を測定したい方に向けて、トリガーを引くだけよ♪」

 

りんなさんはそう言いながら実際に装着してみせた。

 

 

 

‥……

 

…………

 

……………

 

……………………

 

……ダッッセェッーーー!!??

 

 

 

 

マジか!?嘘だろ!?コレ着けて捜査しろと!?

でも一台だけなら霧子に押し付けて、俺は聞き込みとか普通の捜査になるはずだ。

だがりんなさんは笑顔で「もう一台あるから、手分けして捜査できるわよ♪」と一言

俺達は渋々ピコピコを持ってトライドロンに乗って現場に向かった。

 

 

 

 

 

 

現場に着くと既に複数のパトカーが停まっていた。

 

「あそこか、行くぞ霧子」

 

「はい」

 

俺はトライドロンから降りるて現場に向かおうとすると……

 

「泊さん、重加速粒子測定機を忘れてますよ?」

 

忘れてたのに‥……

渋々ピコピコを着け俺達は現場に向かった。

 

 

 

 

 

 

俺は今信じられないものを見ている。

真っ赤に染まった死体だ。

血で赤い訳じゃねぇ、人体そのものが赤く染まった死体だ。

だが鑑識に聞くとこれは死体では無いらしい。

これでもまだ生きてるってことだ。

何をすればこうなるのか?どうしてこん事件(こと)が起きたのか?

この町に一体何が起ころうとしているんだ?

そんな事を考えていると、一人の部下が話しかけてきた。

 

 

「追田警部、特状部と名乗る音ノ木坂学院からの民間協力者が来たそうなのですが………」

 

「おぅ、進二がいる学校か。通してやれ」

 

「それが……………」

 

 

部下に案内されついていくと、変なコスプレをした学生がもめていた。

一人は見知った顔だ、軽く頭痛がした。

するとこっちに気付いたのか、手を振りながら呼んできた。

あんなガキどもに協力してもらうなんて、情けない。

特にあの進二(バカ)にはこういった事にはもう関わって欲しくなかったってのに。

俺はため息混じりに、あいつらに向かって行った。

 

 

 

 

 

 

俺達は今警官たちに止められている。

関係者意外立ち入り禁止らしいが、呼ばれて来たのに酷くない?

すると奥から昔からの知り合いである「追田 現八郎」《おった げんぱちろう》警部がこっちに向かって来た。

 

「ちっす、現さんお久し振りっす!」

 

「話しかけんじゃねぇよ恥ずかしい。だいたい何だ?その格好?」

 

「それ俺も同感、最悪だよこのピコピコ。重加速粒子測定機っていうんだけど」

 

そして俺達は現さんに連れられ現場に向かった。

 

 

 

 

 

 

霧子が周囲一帯の重加速粒子の測定を行っている間、

俺は現さんに詳細を聞いていた。

すると現さんは「聞くより、見た方が早い」

そう言われ追ていくと、信じられない光景を目の当たりにした。

 

「何だこの死体?真っ赤だ」

 

「少し違うな。これはまだ死体じゃない」

 

「え?」

 

「脈も呼吸も正常。状態だけで言うなら、気絶して目を覚まさないってだけで命の問題は無い

体が赤く変色している以外はな?しかも先週から4件同じ事件が続いている。

どんよりだが何だか知らないが、俺は信じちゃいないからな。

いくら上からの命令でも、お前たちみたいなガキが首突っ込んでいい問題じゃねぇ。

上には俺から言っておくからもう帰れ。お前に何かあったら宗介さんはおろか、千早さんにも顔向け出来ねぇからな」

 

「現さん‥……」

 

そう言うと現さんは鑑識さんのいる所へ向かった。

俺も霧子の所へ行こうとしたとき、被害者が落としたゴミの中から、明らかに違うものを見つけた。

 

「何だコレ?紙の‥……切れっぱし?」

 

すると突如、霧子と俺が持っているピコピコが“何か”に反応した

 

「おい、お前らうるさいぞ!その音止めろ!」

 

気になり霧子の方を見るとなんだか焦っているような表情をしている。

鳴りやまないピコピコのサイレンとは違う別の何かに……………

 

『気を付けろ進二、犯人はまだ近くにいる』

 

ベルトが警告してきた、その瞬間だった。

 

 

 

―――周りの時間が静止した

 

 

―「どんより?!」

 

―「これがか?!」

 

 

ゆっくりとした時間の中、“普通”に動けている奴がいた。

 

 

―「アイツ、重加速の中で普通に‥……」

 

 

すると突如、その男の姿が機械のような異形に“変わった”

 

 

―「化け物!?」

 

 

そいつは真っ直ぐこちらに向かいながらこう言った。

 

「活きが良さそうな奴だ、お前にしよう」

 

異形の化け物は俺の首を掴み持ち上げる。

もうダメだ、俺はここで死ぬのか?

 

何もできないまま……

 

約束も守れないまま……

 

ごめん、母さん

 

ごめん、親父

 

ごめん、……絢瀬

 

 

俺が諦めようとした、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『シフトカーズ、集合!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルトの合図と共に火を纏ったオレンジ色のミニカーと手裏剣を飛ばす紫のミニカー、全身に刺を生やした緑のミニカーが異形に攻撃をしかけ、撃退した。

 

「何だ今のちっさい車?」

 

『仲間さ』

 

「あんたのか?」

 

『君のさ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――音ノ木坂学院屋上

 

いつものように俺はここで昼寝をしながら昼間に起きた事を思い出していた。

 

(何だったんだ、さっきの怪物は?それにあのミニカーも……)

 

考えれば、考えるほど分からなくなっていく。

こういう時はひとやすみるくを一粒、必殺!

 

「考えるのやーめた」

 

「まーたこんなとこにいる」

 

「東條か、なんか用か?」

 

東條 希が頭上に立っていた。

 

「いやね、さっきの放送ってなんやったんやろーおもてね♪」

 

「まぁ、色々な。そんな事よりそんな所に立ってると風でも吹いたら……」

 

 

―――ヒュー……

 

一吹きの風が運んだのは、一瞬の至福と頬に走る痛みだった。

 

 

「ごめんな?泊くん悪ないのわかってるけど…反射的に…」

 

「いや、別にいいけどさ……」

 

「‥……‥……」

 

「……………………」

 

気まずい、あって早々なんてトラブルだ

沈黙の中、東條が口を開いた。

 

「泊くんやっぱなんかあったんやろ?」

 

「まぁ…な」

 

「ならどうしたらいいか、ウチが占ってあげる♪」

 

「は?」

 

「いいから、いいから♪ほらっ引いて?」

 

彼女はタロットカードを出した

俺は少し意地悪してやろうと複数のカードを一度に引いてやった。

すると彼女は不満に思うどころか笑っていた。

 

「じゃあ引いたカード見せて?」

 

俺はカードを渡すと彼女は驚いたが、どこか嬉しそうだった。

 

「今貴方には転機が訪れてます。

それは貴方を停止させている過去から、復活するための転機。

その転機をものにするのは貴方の熱い意志。

貴方が復活したとき新たな力と大きな宿命が与えられるでしょう。

こんな感じかな?」

 

いつもと違う彼女の雰囲気に俺は呑み込まれていた。

最後に向けてくれた笑顔が冷めきった俺の(エンジン)に火を着けてくれた。

 

「俺はまだ走り出せるのか?」

 

「それは泊くん次第やで。少なくともウチはそうやと思っとるけどね♪」

 

「そうか……ありがとな。“希”」

 

俺は立ち上がり、緩めているネクタイを締めた。

久しぶりだ、この感覚。

今の俺は…………

 

 

 

 

「脳細胞がトップギアだ!」

 

 

そして俺は走り出す、頭ん中に詰まった泥みたいなものを吐き出すために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼はウチに礼を言うと走り出した。

嬉しかった、やっと“昔のように”名前で呼んでくれたから。

だからウチは彼が見えなくなった後小さく呟いた。

 

「頑張ってな、“進二くん”♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――特状部部室

 

私達は今、調査の結果と先ほど起こった重加速について話していた。

「久しぶり~♪現さん。人生初の重加速経験はどうだった~♪」

 

「い、いや!俺はまだ信じちゃいない!」

 

「なんて潔くないんだ。重加速は謎の怪物達が起こす破壊現象の一つだってのに。

ネットの中じゃ最早常識だよ」

 

「俺は何も見ちゃいねー!見てないものは信じねー!」

 

「だったら俺が真実を解き明かしてやるよ!」

 

突然ドア開け部室に入ってきた泊さんは1枚の紙を私達の前に出した。

 

「おいっ、それは?」

 

「俺が作ったモンタージュだ。

まずはコイツを探し出す」

 

「おい!待て、ガキが首突っ込むなって言ったろ!」

 

すると勢い良く部室を飛び出した。

追田さんも後を追って飛び出すと、みんなは嬉しそうな顔をしていた。

 

「やっとギアが入ったみたいね~♪」

 

「ギア?何のギアですか?」

 

するとりんなさんは満面の笑みで答えた。

 

「脳細胞の♪やっとエンジンかかったのね」

 

「うちの部に来てから初めてじゃないですかね?

昔は相棒と二人で風紀委員として活躍してたらしいけど、

あれが本当の泊ちゃんなのかもね~」

 

 

 

あれが‥……“本当”の泊 進二……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は現さんの抑止を振り切って走り出した。

脚には自信があり、ものの数秒で現さんを振り切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は職員室を後にすると、懐かしくあり得ない光景を目にした。

―――――泊くん走ってる

 

「ちょっと、泊くん!?ローカを走らないで!」

 

「悪い“絵里”、今トップギア入ってるから!じゃあな!」

 

 

え……?今、トップギアって

 

そっかやっとエンジンかかったのね。

 

 

……………………“進二”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校を後にした俺は町で聞き込みをするため走っている

 

 

『走って移動するのかね?』

 

「他人の運転は信用出来ないからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

「あっ、進にぃだ」

 

「あれぇ?進ちゃん、どうしたの?」

 

「ジョギングですか?」

 

「よぅ、穂乃果、ことり、海未。

ちょうどよかった、こんな奴見てないか?」

 

「なんか進にぃ刑事みたーい」

 

「うん♪拳銃持って24時間で事件解決する人みたい?」

 

「それかグリーンのコート着てレインボーブリッジを封鎖するのかな?」

 

「もしかしたら、年輩のベテランさんと二人で事件解決かも♪」

 

「何言ってんだ?二人とも?」

 

 

後ろから肩をつつかれ、振り向くと涙目の海未がいた。

 

 

「ジーパンだけは履かないでくださいね?お兄ちゃん」

 

「海未まで?!」

 

 

て言うか、ジーパンに何があるんだよ?

 

 

「それより、どうだ?見覚えないか?」

 

 

すると海未は何かを思い出したのか驚いた顔をしていた。

 

 

「この人、もしかして増田さんかも私が通っているスポーツジムで良く見かけます」

 

「本当か?!どこだ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

俺は海未から聞いたスポーツジムの向かいの本屋の前にいる

 

 

「増田 信夫 《ますだ のぶお》。間違いないコイツだ」

 

『顔は確かに似ているが、髪が違う、それに体格も別人のようだが?』

 

「黙ってろ!」

 

 

張り込みをしていると、スポーツジムから見知った顔が出てきた。

 

「あれっ?今のって?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今、アイドルとして何時でも活動出来るよう体力作りのためジムに通っている。

決してにこが太ったからじゃない。少し体重増えたけど……………。

走っている途中、突然どんよりが来た。

 

 

「今、どんより来たよね?」

 

 

視線を感じて振り返ると、いつもスポーツドリンクをおごってくれる増田さんがいた。

 

 

「増田さん?久しぶりね、最近ジムに来てないらしいけど?なんかあったの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………人間を襲っていた…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると増田さんは異形の化け物に姿を変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今俺は全力で走っている、矢澤が危ない

化け物が矢澤の首を掴むと、矢澤を見て呟いた。

 

「お前は…ハズレか……」

 

「やめろー!」

 

 

化け物がこっちを見た瞬間どんよりが来た

 

 

―「助け…て…」

 

 

矢澤が俺に手を伸ばしている、

するとどんどん矢澤の体が赤くなっていく。

 

 

『いかんっ!マックスフレア!』

 

 

オレンジ色のミニカーが妙な鉄板と一緒に腰にくっついた、

瞬間体が軽くなった。

 

 

「っ動ける?!」

 

『シフトカーの力だ』

 

 

俺は矢澤を助けるため再び走り出した。

 

 

「その娘を離せ!」

 

 

化け物にしがみついても、簡単には弾き飛ばされた。

 

 

「くそっ、多少動けてもこのままじゃ……」

 

 

すると突然真横から、化け物が2体飛び出して攻撃をしてきた。

 

 

『仲間がいたのか』

 

「矢澤ー!」

 

 

矢澤の体がみるみる赤くなっていくのを見ているだけしか、出来ないのか?

このままじゃ……また‥……

また‥……救えないのか……………俺は‥……

 

「にこーーーー!!!!」

 

 

2体の化け物が俺に向かって光弾を撃った、その瞬間

俺の前にトライドロンが走って来て光弾から俺を守った。

するとトライドロンのドアが開き、謎の人物が拳銃を撃って化け物を怯ませた。

 

 

「きっ霧子?何でお前が?」

 

「何してるんですか!?泊さん!!

エンジンかかったんでしょ!?だったら戦って!

ベルト()と一緒に!!」

 

「何でこのベルトのこと……」

 

 

すると霧子は振り返り、化け物に向かって牽制射撃を始めた。

どうするか?聞く相手なら分かっている。

 

 

「おい!ベルト!」

 

『呼び捨ては失礼だねー』

 

「じゃあ、ベルトさんよ!俺はどうしたらいい?!」

 

『“変身”したまえ』

 

「変身?!」

 

『他人の運転は嫌いなんだろ?

なら、君自身の手で乗りこなすんだ』

 

クラクション音と共に何かを引いた赤いミニカーが走って来た。

すると引かれてきた何かは左手首に巻き付き、ブレスのようになった。

そして俺は、一緒に来た赤いミニカーを掴んだ。

 

 

『シフトカーを回転、レバーにして腕のシフトブレスに装填しろ』

 

 

すると霧子がベルトさんに付いているカギを回した。

 

 

俺は掴んだミニカーを回すと、ブレスにさした。

 

「レバーに……こうか?」

 

『君は過去に大切なものを失った。

だが今なら、救える。

私と仲間たちがいれば、この重加速の中でも、

誰よりも速く動ける、それが、戦士“ドライブ”!』

 

「だったら、今、この場から走り出して、

にこを、救い出せるなら、

もう、考えるのはやめた! 」

 

俺は左腕を突き出しレバーを倒し叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――「変身!!」――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《DRIVE type SPEED!》

 

 

 

 

すると俺の体は赤い光に囲まれ、

赤い鎧に身を包み、タイヤを巻き付けた戦士になった。

 

BGM:『SURPRISE-DRIVE』

 

 

「なんだ?貴様は?」

 

「悪いが俺も知らない、

これから初乗りだ、怪物ども!」

 

 

俺は腰を低く落とし告げる、

昔からの喧嘩前の前台詞

 

 

 

 

 

「ひとっ走り付き合えよ!」

 

 

 

 

 

 

俺は走りだし、最初に近付いてきた奴を蹴り飛ばし、次に迫って来た奴に数発パンチを入れ、

最初に蹴り飛ばした奴が近付いてきたのを捕まえ関節技をかけ左右の脇腹に一撃ずつ入れた。

もう一体の怪物が入れてきた蹴りをすかさず掴み、顔面に裏拳を入れ、

近づく一体に回し蹴りを入れた後に掴んでいるもう一体の足を持ち上げ、投げ飛ばした。

するとにこをを襲っていた奴が近付き、蹴り飛ばされた。

 

 

『シフトレバーで加速しろ!』

 

 

俺はシフトレバーを三回倒した。

 

 

《SP,SP,SPEED!》

 

 

すると、全身の動きが文字通り加速した

 

高速で敵に近付き足払いをして、体制を崩した2体に超高速パンチの連撃を叩き込んだ。

すると、矢澤を襲った奴が本格的に戦闘に参加してきた。

俺はそいつの攻撃を受け吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

私は唖然としている。

彼は初めての戦闘で同時に3体の相手をしている。

うち2体を圧倒している彼の戦闘能力には驚かされている。

だがやはり、数には勝てず劣勢だ。

私では足手まといになる、ならば……………

 

 

「スパイク、シャドウ、ドライブを助けて!!」

 

 

私は腰に付いているシフトホルダーから2台のシフトカーを取りだし、投げた。

私は重加速の影響を受けたが、大丈夫、彼ならきっと勝てる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今劣勢だ。

さすがに3体はキツイ。

すると、2台のシフトカーが援軍に来た。

怪物に攻撃をした2台のシフトカーは腰の鉄板にくっついた。

 

 

『シフトカーを替えればタイヤの能力も切り替わるぞ』

 

「良いね♪走りに幅が出る」

 

 

俺はブレスにセットしたシフトカーを抜くと、

オレンジ色のシフトカー「マックスフレア」に切り替えた。

 

 

《タイヤコウカーン!》

 

「タイヤ交換?」

 

すると火炎車?が飛んできた。

 

「危なっ」

 

とっさに避けてしまった。

 

『避けてどうする?』

 

「ワリー、つい反射で」

 

すると火炎車は最初に付いてたタイヤと交換された。

 

 

《MAX FLARE!》

 

 

まるで火を思わせるようなタイヤに切り替わった。

反撃するとパンチや蹴りに炎が纏われ攻撃力が上がっていた。

 

「なるほど、こう言うことね」

 

俺は右手をスナップさせ、怪物に殴りかかった。

 

「ハァッ、タァッ、ティアッ!」

 

《FL,FL,FLARE!》

 

 

シフトレバーを三回倒し、火炎車を作り出して蹴り飛ばした。

 

 

「次はコイツだ!」

 

《タイヤコウカーン! FUNKY SPIKE!》

次に緑色のシフトカーをセットすると、刺だらけの黄緑色のタイヤに切り替わった。

すると残りの2体が走って来た。

 

1体を蹴り飛ばし、もう1体を羽交い締めにしてシフトレバーを三回倒した。

 

 

《SP,SP,SPIKE!》

 

 

すると高速回転したタイヤが怪物の体がを削ると弾き飛ばした。

飛ばされた怪物は空中で爆散した。

 

 

「うーわ、痛そ」

 

 

残り2体が同時に襲ってきたのを、すかさずかわすと、紫色のシフトカーに切り替えた。

 

 

《タイヤコーカーン!MIDNIGHT SHADOW!》

 

今度は手裏剣のような紫色のタイヤになった。

俺はそのままシフトレバーを三回倒した。

 

 

「これはどんなタイヤだ?」

 

 

すると手先にエネルギーが集まり、巨大な手裏剣が出来上がった。

 

「なるほど、そういう能力ね」

 

俺はエネルギーで出来た手裏剣を相手に投げつけた。

怯んだ奴に連続で投げつけると、そいつは爆発した。

 

「よし!残り1体」

 

『スピードタイヤに戻してフィニッシュだ』

 

「OK」

 

《DRIVE type SPEED!》

 

《ヒッサーツ!Full throttle! SPEED!》

 

 

すると4つのタイヤが怪物を拘束し弾き飛ばした、俺と怪物を囲う様に高速旋回するトライドロンを蹴った、その衝撃と勢いで怪物に蹴りを叩き込み、再びトライドロンを蹴って勢いをつけ怪物に蹴りを叩き込む、これを何回も繰り返し怪物が弱った所に十分加速のついた止めの蹴りを打ち込むと、怪物は空中で爆散した。

 

 

 

 

 

 

俺は急いでにこのいる公園に向かった、すると赤く変色したにこの肌は元に戻っていった。

それを見た俺は安心して変身を解除した。

 

『Nice DRIVE♪』

 

「今度は……救えたんだな……」

 

『あぁ、君のおかげさ』

 

 

 

 

 

 

やっと終わった。俺はそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

にこのウエストポーチから落ちた小さなゴミを見るまでは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は霧子につれられ遠征用バスの車庫に来た。

そこにある寄宿舎の立ち入り禁止札の扉を開けると中に入って行った。

俺は後を追っていくと、信じられないものを目にした。

 

「え?なんだよこれ?どうなってんだ?」

 

『ようこそ、ここがドライブピット。

我々3人の拠点だ』

 

 

そこは様々機械が置かれた、レースカーのピットの様な所だった。

 

 

 

 

「霧子はあんたのエージェントだったんだな。

道理で冷たいわけ?」

 

「我々の存在は特状部の人たちにも秘密です」

 

『他の被害者たちももとに戻ったようだし、まずは初陣を飾ったね』

 

「どうだろな?」

 

俺ははまだ腑に落ちないことがあり、煮えきらないでいた。

霧子が聞き返して来たので答えた。

 

「あいつは本当に殺人が目的だったのか?」

 

俺はは回収した2つのゴミを見つめて言った

 

 

「事件はまだ終わって無いのかもしれない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには赤いコートの男が立っていた。

 

「新しい体が欲しいか?No.029」

 

コートの男は懐から“銀色のシフトカー”を取りだし、029と呼ばれたものに与えた。

するとそれは男の姿になった。

 

「まだだ、まだ足りない

もっと……素晴らしい体を‥……」

 

そう言うと男は機械のような異形に姿を変えた。

戦士に倒されたはずの化け物へと。

 

「素晴らしいやる気だ。

ならこの娘たちはどうだ?」

 

赤いコートの男は2枚の写真を取り出した。

そこに写っていたのは……………

 

 

 

 

 

 

音ノ木坂の制服を着たキレイな顔立ちをした赤髪の少女とメガネをかけた可愛らしい茶髪の少女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうですか?
一応健康誘拐事件は後2話で終わる予定です。
占いは単にタロットが持つ意味をくっつけただけです。
戦闘描写難しい。
でわ、感想、お気に入り 登録宜しくお願いします


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何故事件《ヤツら》は彼女達を狙うのか。

フィギアーツの海未ちゃん届いたぜ♪
後、投稿遅れてすいません。
ちょっと就活とバイトとマインクラフトに時間を取られちゃって。
あと、アーツのタイプフォーミュラ………予約しましたが、いろいろ残念というか、がっかりな感じでしたね。
今回も少し短いですがお楽しみ下さい。


ある日の夜

一つの洋館が火事にあっていた。

燃え盛る火の中、一人の男性が血だらけで倒れていた。

そして男性に近く異形の怪物。

その1体が突然、赤いコートを着た人の姿になった。

赤いコートの男は血だらけで倒れている男を見つめている。

 

 

血だらけの男性はもがきながら赤いコートの男を睨んだ。

 

「死ねない…まだ…死ねない……“コイツら”を野放しにしたままでは…」

 

そして男はそこで“人間としての”命を失った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――っ!夢か……ベルトになっても、面倒な性質は残っているな…』

 

 

 

ワタシは1人、ドライブピット内でかつて1人の人間として迎えた最期を夢に見た。

するとピットの入り口が開き、霧子が入って着た。

ワタシは彼の事が気になり、霧子に尋ねた。

 

『霧子、進二は捜査に出たのか?教室にいないようだが、授業にはちゃんと出ているのか?』

 

「いいえ、絢瀬さんに聞きましたが、サボったそうです。さっき呉島先生が肩を落として職員室に向かってました」

 

『なんだって?エンジンが切れるの早すぎないか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

――――音ノ木坂学院 学生ホール内食堂

 

 

俺は今モヤモヤしている、飴はこれで何個目だろか、すでに飴の包装紙が山の様に出来ている。

昨日の出来事を思い出しながら、また一つ飴の包装紙を剥き口に運ぶ。

すると体育上がりか、穂乃果達が体操着姿でやって着た。

 

「あれぇ?進にぃ、またサボり?」

 

「いいの?進ちゃん補習になっちゃうよ?」

 

「いいさ、どうせ補習は確定だからな」

 

「嘘です。お兄さんの学力なら補習にはならないはずです」

 

 

そんな会話をしながら、再び昨日の出来事を思い出した。

怪物のこと、そして戦士(ドライブ)のこと。

 

――変身し、走りれた、化け物も倒せた………でもなんか、進み切れねぇ

 

そんな事を考えてたら後ろから気配がしたので振り返った。

 

 

「げっ、霧子?!」

「ハンター、ゴーです」

 

 

俺の方を指差しそう告げると、何かが腕をつついた。

そこにはパトカーを模したシフトカーがサイレンを鳴らしていた。

 

 

「シフトカー?パトカーの?」

 

 

すると霧子は手錠を取り出した、俺は絵里達に捕まった事を思いだし、逃げ出した。

ハンターと霧子に学校中追いかけ回され、凰蓮先生に捕まり説教を食らった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凰蓮先生の説教が終わると霧子に連れられ、ドライブピットに向かった。

すると、今日は学校を休んだはずの矢澤がいた。

 

 

「よう、矢澤。体は大丈夫か?」

 

「にこって呼びなさいって言ってるでしょ!

お陰様で大事には至らなかったわ。

体調優れないのは一昨日から少し風邪っぽいからで、

特に問題無いわ。

今日学校に来たのは明日も検査があるのと警察の事情聴取があるから、もう一日休む事を呉島先生に言いに来たの。

その………この間は………た、助けてくれて…ありがと………。

次はにこって呼びなさいよね!」

 

 

そう言うと、矢澤は帰って行った。

俺と霧子は矢澤と別れたあと、再びドライブピットに向かった。

ピットに入ると、専用の台座に乗ったベルトさんが待っていた。

 

『すまないね進二、君に我々の事と敵について知って貰うために、霧子に連れて来るように頼んだのだよ』

 

「いや、別にいいけどさ。それについてはこっちも聞きたかったし」

 

 

俺はベルトさんに応えるとクラクションを鳴らした複数台のシフトカー達に囲まれた。

そしてベルトさんと霧子から事の説明を受けた。

 

 

『シフトカー達は全て人間を守り、奉仕する存在だ。

そのパトカー、ジャスティスハンターの様に』

 

「このピットの中にもまだ数台待機してます

他にも、ここにいないシフトカー達は世界中で活動しています」

 

『彼らシフトカー達と真逆の存在が、

人類に破滅をもたらす者、“ロイミュード”だ』

 

「ロイミュード?」

 

『頼む進二、秘密の戦士ドライブとして、ロイミュードと戦ってほしい』

 

「乗りきれないんだよなぁ、どうも」

 

『何故かね?』

 

 

そして俺は一番の疑問を踏まえて答えた。

 

「ベルトさんやシフトカーの力で重加速の敵とタメで戦える、

てことはつまり、アンタ等と敵には深い関わりがあるってことだ」

 

するとベルトさんは歯切れ悪そうな返事をしたが、俺は続けた。

 

「下手すりゃ、出所は同じかもしれない。

そうだろ?

俺、頭がモヤモヤするといろいろ止まる質でさ」

 

「待ってください!」

 

 

俺はピットから出ようとすると、霧子に呼び止められた。

振り返ると、シフトカー達がくっついてた鉄板の様なものを持って来た。

 

 

「シフトブレスとこれは、常に持っていてください。

ドライブには誰にでもなれる訳ではありませんので」

 

「誰にでも……霧子はドライブに…?」

 

「――っ!なれるならならなってます!!

ですから、泊さんには頑張って貰いたいのです!!

それに、事件がまだ終わってない。そう言ったのは泊さんじゃないですか!?」

 

「分かってる………だが、その前に一つだけ、カタをつけて起きたいことがある………」

 

 

そして俺はある場所に向かった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が部室に戻るとすでにみんな揃っていた。

 

 

「せっかくこれ書いたけど、事件解決かなー♪」

 

「先生、何で赤色化事件なのに文字がターコイズカラー何ですか?」

 

「だって私、ターコイズカラーがラッキーカラーなんですもん」

 

「えぇ~?それで?」

 

「まっ、後はコイツを捕まえるだけだ。

お前たちみたいなガキの力は借りねーよ」

 

「なっ、なんて失礼な人なんだ!?ねっ、りんなさん?」

 

「そーよ、きっとすぐに私達の分析力が必要になりますよ!」

 

「ねーよ、オカルト同好会の力なんて借りるか!」

 

 

りんなさんと西城さんが追田さんとケンカしている。

なんと言うか、意外と大人気無いですね、追田さん。

 

 

「あ~あぁ、ケンカしちゃって。この調子だとお先真っ暗だなぁ…

泊ちゃんは例によって居ないしなぁ~………」

 

 

そう嘆く本願寺先生は再び占いをやりはじめた。

私は空席の泊さんの机を黙って見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街中の喫茶店、そこにはメガネをかけた男がコーヒーを飲んでいた。

すると、男は真っ赤なオープンカーが駐車場に入って行くのを見てため息をついた。

オープンカーに乗っていた男が降りて、喫茶店に入り男のもとに近づいた。

メガネの男は呆れた顔して、オープンカーの男に話しかけた。

 

 

「ハート、貴方は本当に、自由で、無警戒で、目立ちたがりやだ

だいたい、あの車はどうしたのですか?」

 

 

すると、ハートと呼ばれた男は笑いながら答えた。

 

 

「たまには笑顔で迎えろよブレン。なぁに、ちょっと借りただけさ。

029に新しい体をくれてやった」

 

 

ブレンと呼ばれた男は自分の頭を指でつついた。

すると、後ろで談笑していたカップルのタブレット端末に異変がおきた。

戸惑うカップルをよそに、そこに映し出された地図を見てブレンは答えた。

 

 

「見つけました。これは、期待できそうです」

 

 

ブレンの言葉にハートは笑みを浮かべた。

 

 

 

ブレンが見た地図が指した場所は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――国立音ノ木坂学院

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音ノ木坂学院近くの路地裏、そこにはノースリーブのパーカーを着た男がフードで顔を隠し下校する生徒を見ていた。

その男の手にはハートからもらった二枚の写真が握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は授業を終え塾に向かうため、下校する生徒の中にいた。

大好きだった音楽を離れ、親の仕事を継ぐために勉強に専念していた。

そのせいか、周りのものが全てつまらなく感じる。

特にスクールアイドルなどと言うアイドルかぶれの音楽なんか特にそうだ。

音楽はそんな薄っぺらい物じゃない。

そんなふうにいろいろなモノを否定して生きているせいか、どこか冷めた日常を送っている。

でも、やはり音楽に未練があるのか、気が付くといつも無意識に音楽室の前に来てしまう。

中に置かれたピアノに触れ、今日だけ、明日は弾かない、今日で終わり、そう考えながら今日も私はピアノを弾く。

どこか寂しげに、何かを求める自分を満たすために………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時計を見ると塾の時間が迫っていた、

私は音楽室を出て、学校を後に塾に向かった。

すると目の前に知らない男の人が現れた。

気味が悪い、そんな事を思っていたら、男の人が口を開いた。

 

 

「見つけた………」

 

「あの、どちら様ですか?

私、急いでいるんですが」

 

「やはり素晴らしい………ハートの目に狂いは無いようだ」

 

「は?私、貴方の事知らないんですが、何か用ですか?」

 

 

何を言っているのだろう、私は男の言葉の意味が理解できなかった。

 

 

「コイツを取り込めば俺は更に進化する………」

 

 

私は得たいの知れない恐怖感に襲われた。

 

 

「あの、警察呼びますよ?」

 

 

私がそう言うと男の姿が《変わった》

 

 

「な、何?何なのあんた?意味わかんない?!」

 

 

まるで機械の様な体の化け物に変わった男は私に近付いてくる、

逃げようと振り返った瞬間体が重くなった。

 

 

―「嘘、こんなときにどんより?」

 

 

私は恐る恐る後ろを振り返り、恐怖した。

どんよりの中を普通に歩く怪物に。

 

 

 

 

 

 

 

私の意識はここで途切れた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今ある場所に来ている。

そこにはいくつもの石が並んでいる、花が添えられている墓碑(いし)が。

俺はその墓碑の中を歩き目的の場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

俺が足を止めた先には一つの墓碑が置かれている。

そこにはこう彫られている。

 

 

 

 

『絢瀬 明 1994―2012』

 

 

 

 

俺はそこに持って来た花束を添え、あの日を思い出す。

拭いきれない後悔と悲しみ、罪悪感を………

 

 

「久しぶりだな………絢瀬」

 

 

俺は墓の前に座ると今は亡き親友に話しかけた。

 

 

「お前が居なくなってからもう半年か………

分かってる。お前はとっくに…いや、最初から俺の事許してるって。

だが、俺は………俺自身が俺を許せない。

“あの男”を、あの時、お前を含めた全てを救えると思ってた、俺の傲りを………」

 

そして俺は墓に手を当て呟いた。

 

 

「お前を殺した(しなせた)俺を……俺は許せない………」

 

 

 

 

 

 

「やっぱり貴方のだったのね」

 

 

聞き覚えのある声に振り返ると、花束を持った絢瀬が………“絵里”がいた。

 

 

「いつも同じ花が添えられているから気になってたの」

 

「絢瀬か‥………」

 

 

そう言うと、彼女は墓に花を添えて話した。

 

 

「前に呼んでくれたでしょ?

絵里で良いわ、昔みたいに………

貴方があの日の事を引き摺って、負い目を感じたから、私や希から距離を取っていたのでしょ?

でもそれが何れだけ希を苦しめたか、分かってるの?

いつも通りふるまってるけど、私も希も苦しんでる、貴方と同じで。

貴方は悪くないとは言わない。

でも貴方が明を死なせたのと同じように、貴方が救ったたくさんの命があるの、それだけは理解して。だから、自分を許しなさい。

許せないなら、私が私達が許すから………明もきっとそう思ってる」

 

「絵里‥………」

 

「さっ、帰りましょ。

車で来たのでしょ?乗せていって」

 

 

そう笑いかける彼女に俺は頷いた。

俺はもう一度墓を見て誓う。

もう二度と、あんな苦しみを誰かに味あわせないために、俺は戦う。

一つの覚悟を胸に俺は墓を後にした。

 

 

駐車場のトライドロンの前に来ると、絵里は鞄から何かを落とした。

 

 

「何だ、それ?」

 

「ん?酔い止めだけど?」

 

「始めから乗って帰る気満々かよ‥………」

 

 

瞬間、頭の中に電気が走る様な感覚がした。

俺は絵里の手を掴み、彼女が持っている酔い止めを見た。

 

 

―「活きが良さそうなヤツだ」

――「紙の…切れっぱし?」

―――「一昨日から少し風邪っぽいから」

――――「お前は……ハズレか………」

―――――「酔い止めだけど?」

 

 

過去の事件に関する記憶が頭の中を駆け巡る。

 

 

 

 

「そうか…繋がった!」

 

「えっ?」

 

 

 

俺は緩めたネクタイを締め直すと驚く絵里を見て告げた。

 

 

 

 

「脳細胞がトップギアだぜ!」

 




次回で健康誘拐事件は終わりです。
タグにオリジナルフォームとありますが最終回あたりの登場予定でオリジナルタイヤはちょこちょこ出すかもです。
いつでも受けますので感想お聞かせください。
お気に入り登録よろしくお願いします。


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少女達を救った戦士《仮面ライダー》とは何か。

お待たせしました。
就活とバイトと税金に追われるケモミミです。
今回も投稿が遅くなり、申し訳ありませんでした。
今回で健康誘拐事件編は終わりです。
次回からみんな大好きチェイスの本格参戦です。
明後日ドライブ、仁良がどうなるか楽しみですね。
夏の劇場版も楽しみに生きてます。
ダークドライブかっこよすぎ!

では、駄文ですがお楽しみください。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

半年前の激しい雨の日。

私はママから、パパにお弁当を持って行くよう頼まれた。

私の両親は大きな総合病院の院長をしている。

「西木野総合病院」

都内でも一番有名な大きい病院である。

私は総合受付でパパに私が来た事を伝えてもらい、受付のあるホールでパパを待っていた。

すると急患なのか、遠くの方から大きな声が聞こえた。

 

 

「ん?何かしら…」

 

 

声のする方を見ると、私は青ざめた。

血だらけの高校生が運ばれて来た。

同じ学校だろうか、その隣で血で真っ赤に染まった同じ制服を着た男の人が叫びながら来た。

 

 

「絢瀬死ぬな!!死なないでくれ!!」

 

 

ナースと共に担架をつきながら泣き叫ぶ彼は応急処置室に着くと医師が現れ、医師は彼に外で待つように告げ中に入った。

その医師は私の父だった。

彼はその場を動こうとしない、応急処置室のランプをただじっと見ている。

やがてランプが消えると、中から悔しそうに顔をしかめた父が現れた。

父が彼に何かを告げた、おそらく運ばれた彼の事だろう。

父の言葉に彼は怒り、父の胸ぐらを掴み叫んだ。

 

 

「アンタ医者だろ?!医者は命を救うのが仕事だろうが!

何で絢瀬を助けられないんだ!!

何で絢瀬が死ななきゃなんないんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――パチンッ!

 

 

 

 

私は気付くと彼とパパの間に入り、パパを背に彼の頬を叩いた。

 

「勝手な事言わないで!パパだって悔しいの!

命を救いたくて医者になった、でも救えなかった!

悔しいに決まってるでしょ!辛いに決まってるでしょ!

命を救えなくて何とも思わない医者が、いるわけないでしょ!」

 

 

すると、パパは私の肩に手を置き少し寂し気な笑みを向けると、私の前に立ち彼に話しかけた。

 

 

「泊君…だったかね?

彼を救えなかったのは、私の力不足だ。すまない。

実は彼から伝言を預かっている、聞くかね?」

 

 

そう言うとパパはポケットから一つのボイスレコーダーを取り出した。

 

 

「こういった仕事をしていると、人の死を他人より多く経験するのでね。

死を迎える人の為、死を見送る人の為に何か出来ないかと思って模索したら、

最期に大事な人達に一言でも何かを伝えたいと言う患者が何人かいてね。

常にこれを持ち歩く様にしているんだ」

 

 

そう言いながらパパはレコーダーのスイッチを入れる。

すると途切れ途切れだが力強く優しい声が聞こえた。

 

 

 

『…泊………すまない………

お前に…苦しい思い、させちまった。

きっとお前は…自分を責めるだろ……

だがな、泊…お前は悪くない……

お前は、他の人達を救ったんだ………

あの時……お前が射たなきゃ…もっと多くの人が死んだかも…知れない。

だからな、泊………自分を責めるな…俺は、お前の事…憎んで、ねぇから…

もし…お前が、俺の事で…自殺、なんかしたら……

それこそ……許さねぇからな……

それと、絵里の事…任せるからな…

あと…東條と上手くやれよ……

せっかく俺が……いろいろ手回し、してやったんだからな……

だから、こっち来んのは…ジジイになってから来い…

シワシワになった面見て…笑って…ッ…迎えてやるから……

 

……………なぁ、泊………………

 

 

お前が………ッ…親友で…良かった……

 

 

こんな俺の………ッ…親友で…いてくれて……

 

 

…………ありがとな………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………進二……… 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこでレコーダーは止まった。

 

 

彼はその場に倒れ込み、泣き叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――っ?……夢…?

何であの時の夢を今さら………」

 

 

私は半年前にあった出来事を夢に見た。

目が覚めると、腕と足に違和感を感じた。

周りが暗くて分かりにくいけど、多分縛られているのだろう。

すると隣に同じように縛られた人が眠っている。

私はこうなる前の記憶を思い出そうとした。

 

―そういえば、変な男の人が来て……怪物に変身して…逃げようとした時にどんよりが……っ!

 

そうだ、私は逃げようとした時にどんよりに襲われて、でも確かあの怪物はどんよりの中を動いてた。

何はともあれ、多分私や、ここにいる人達はあの怪物に襲われ、連れ去られたのだろう。

自分でも不思議なくらい冷静だ。

そりゃ“2回”も誘拐されれば、少しは冷静でいられるのかも知れない。

 

そう、私は今回誘拐されたのは初めてじゃない。

私がまだ小学生の頃、親がそれなりにお金持ちだったからか、身代金目当てで誘拐されたことがある。

確かその時は、一人の刑事さんが助けてくれたのだっけ?

でも刑事さんは私を庇って………

 

 

 

過去の苦い記憶を思い出そうとした時に物音がした。

私はとっさに周りの様に気絶したふりをしていると、あの怪物の声が聞こえた。

 

 

「あと、少し。

あと少しで俺は“約束の数”に……

その為に………あとはコイツを………」

 

 

私は恐る恐る目を開けると、怪物は1枚の写真を持っていた。

そこに写っていた女の子は見覚えがある、確かあの子は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛は今全力で走っている。

同じクラスの子が変な怪物に拐われた。

確か、西木野さんだった。

凛は今、親友のかよちんの手を引いて走っている。

先生たちに言うために走っている。

 

 

「かよちん頑張るにゃ」

 

「凛ちゃん、警察に…言うのが…先じゃないかな?」

 

 

息を切らしながらかよちんが言う。

確かに普通ならそうするけど、あの怪物はこっちを、"かよちん"を見ているような気がした。

怖かった。

かよちんを危険な目に合わせたくない、そう思いながら走ると、目の前に黒いスーツを着た先生と白衣を着た先生が歩いていた。

 

 

「先生!大変!」

 

「ん?どうした、何かあったのか?」

 

「同じ…クラスの、西木野さんが……ハァ、ハァ………変な怪物に拐われました!」

 

「何?!」

 

「それは本当ですかね!?」

 

「本願寺先生…」

 

「今、うちの部に警視庁の刑事さんが来てます。

まずはその人に話しましょう」

 

「お願いします。

凌馬は職員室に報告を、私は辺りを探してみよう」

 

「わかった。一応、湊君と志渡にも捜索するように言っておこう。

もし誘拐が事実なら、校内の生徒は下校させないのが得策だろう」

 

 

そう言うと先生達はすぐに行動を起こした。

凛達は年配の先生に連れられて部室棟に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウチは用事で出掛けたエリチの代わりに生徒会室で仕事をしている。

表情からして、多分あそこに行ったんやろ…

ウチは行ったらアカン、ううん…むしろウチが行かなアカン場所……

でもそこに行くことは進二くんを追い込むかも知れん、嫌われるかも知れん…そう思ってしまう、怖くなってしまう、だから、よう行かん…そう考えてると、一つの校内放送が流れた。

 

 

【あー、んっ!全校生徒諸君緊急事態だ。

校外近辺で我が校の生徒が拉致された。

犯人も拉致された生徒も所在地不明だ。

念のためにもこの拉致事件に巻き込まれないよう、下校は控えてくれたまえ

仮にこの忠告を無視して拉致されても、我々は責任を負わなくてはいけないので、止めてもらいたい。

これ以上厄介事を増やされると、堪ったもんじゃないからね。

だから正門には2本の竹刀を持った凰蓮 厳之介教諭、裏門には鞭を持った泉 京水教諭を配置してあるから、

出ることも出来ないだけでなく、部外者が入る事の出来ない様にしているのでバカな事はしないように。

ではこれで放送を終了する】

 

 

 

いつも一言余計な戦極先生の放送を聞くと、不安がよぎった。

 

――エリチが出掛けたままや

 

ウチは急いで正門に向かった。

すると凰蓮先生がウチに気付きこっちに来た。

 

 

「アナタ放送が聞こえなかったの?!

危険だから早く戻りなさい!」

 

「でも!エリチが…」

 

 

 

すると、見覚えがある赤いスポーツカーがサイレンを鳴らしながら、物凄い速さで学校に入って来た。

 

 

「ちょっと……飛ばしすぎよ…うぷっ…」

 

「わりっ、急いでたから」

 

 

そこから降りてきたのは、顔を青くした親友と私の大切な人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――15分前――――

 

 

 

 

 

「そうか…繋がった!」

 

 

隣にいる彼はそう呟いた

 

 

「えっ?」

 

「脳細胞がトップギアだぜ!」

 

 

 

そう言ながら緩んだネクタイを締める彼を見ると、嬉しかった。

すると彼は車からある物を取り出した。

 

 

「進二?…それって…」

 

「?パトランプだけど」

 

 

さも当然の様に言う彼に私は疑問をぶつけた。

 

 

「なっ、何で貴方がそんな物持ってるの?!」

 

「訳ありでね。警察から借りてるんだ」

 

「ハ、ハラショー…」

 

 

パトカーのランプを車の屋根に取り付けた彼はそのまま車に乗り込んだ。

 

 

「何してる?行くぞ!」

 

「えっ?えぇ…」

 

 

彼に急かされ車に乗った途端、ランプがひかり、サイレンが鳴り響いた。

 

 

「ちょっと飛ばすぞ?」

 

「えっ?っ!キャーー!」

 

彼はそう言うとアクセルを思い切り踏み込み、私の悲鳴と共に車は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………進二………』

 

 

彼らが墓地を去った後少し離れた茂みから二人のやり取りを見ていた、赤いスポーツカーのミニカーが顔出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――現在―――

 

 

 

 

 

俺は今この事件の真相に気付き、それを現さん達に伝えるため学校に戻って来た。

車を降りて部室に向かおうとした時に凰蓮先生に呼び止めれらた。

 

「アナタ達どこに行っていたの!?

今外は危険よ、早く教室に戻りなさい!」

 

「危険って……何かあったのですか?」

 

 

絵里が血相を変えた凰蓮先生に聞いた。

すると先生は悔しそうに答えた。

 

 

「生徒が1人、妙な怪物に拐われたらしいわ…」

 

「そんな!」

 

 

絵里は驚き両手で口をふさいだ。

 

 

「犯人の特徴は分かってるんですか?」

 

 

希が凰蓮先生に質問すると、

 

 

「どうやら、ワテクシと同じくらいの体格でグリーンのノースリーブのパーカーを着た男らしいわ」

 

 

先生の答えに俺は全てを確信したが、同時に焦った。

 

 

「くそっ!間に合わなかった!」

 

―やっぱりこれは殺人未遂事件じゃない!それにまた起こったって事は………

 

 

俺は全力で部室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは今、親友の凛ちゃんと一緒に先生に連れられて部室棟に向かっている。

 

 

 

「「特殊状況事件観察研究部?」」

 

「そ!私が顧問を務めてる部で、縮めて特状部って言うですよ♪」

 

「「特状部?」」

 

「あー!こないだ変な放送してた部だにゃー!」

 

「変な放送って何ですか!私が放送したんですよ!」

 

プンプンといじける年配の先生…確か、本願寺先生だっけ?を見て、わたしと凛ちゃんは苦笑いをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「また赤色化した被害者が出たそうです!それもこの学校の生徒らしいです」

 

「増田の野郎~!」

 

 

 

部室に入ると手帳を持った女の人が報告をしていた。

それを聞いたスーツの人は怒りながら部屋を出ようとした時、わたし達に気付いた。

 

 

「誰だ?関係者意外立ち入り禁止じゃなかったのか?」

 

 

スーツの人はこっちを睨んできた……

怖くて凛ちゃんと手を取って後ずさると、

 

 

「彼女達も関係者ですよ~」

 

 

気の抜けた返事が後ろから聞こえた。

 

 

「本願寺さん、この子達も部員かい?」

 

「いえいえ、目撃者ですよ。誘拐の」

 

「誘拐だ~?!くそっ!唯でさえ連続殺人未遂があるのに、“また”誘拐か……」

 

「“また”ってどういう事?現ちゃん」

 

「現ちゃん?!ま、まぁいい。実は赤色化事件が起こったのと同時期に、行方不明事件もあってな。

その内何件かは、誘拐だという目撃者がいたんだ」

 

「そんな……2件も事件が起こるなんて……」

 

「その両方に、うちの生徒が巻き込まれちゃいましたからね~」

 

 

スーツの人の告白にメモ帳を持った先輩は驚き、先生がぼやいた。

 

 

「いや、事件は最初から一つだ!」

 

 

すると、勢い良くドアが開くと肩で息をしながら男の人が入って来た。

 

 

「泊さん!!どこに行ってたんです………ギアが入ってる?」

 

 

 

先輩はその人を怒ろうとした途端、黙り込んだ。

泊……?どこかで聞いたような…

泊と呼ばれた男の人は、ホワイトボードに貼ってある写真を1ヶ所にまとめて丸で囲んみ、上に×印を付けて余った増田と書かれたの人の写真の上に○印をした。

 

 

「おい進二、なんの真似だ?それ」

 

 

誰もが疑問に思った事をスーツの人が尋ねた。

 

 

「殺人未遂ってのがそもそも間違いなんだ。

この人達は全部ハズレだ。

増田 信夫、この人はアタリだった、だから拐われて顔をコピーされた 」

 

「コピーって人体が目当てって事?」

 

「その通り。犯人は優れた健康な肉体の人間を狙っている。

現場に残された被害者は全て、ハズレと見なされた人達だった。

あの赤い肌は失格の烙印なんだ」

 

 

説明をする先輩に対して、もう1人の女の人が質問した。

すると泊先輩は返事をし、説明を続けた。

 

 

「でも、どうしてそんなこと分かったの?」

 

 

眼鏡をかけた先輩が質問すると、先輩は小さなゴミの入った2つの袋を取り出したって

そして説明を続けた。

 

 

「一昨日の被害者、二人の側に落ちていたゴミだ。

どっちも薬の入れる物だった。

一つはアレルギー用の、にこが持っていたのは風邪薬だった」

 

「体調が万全じゃないと、判断された人はその場に放り捨てられた…

それが被害者達!?」

 

「俺達が連続殺人だと思っていたのは、誘拐事件の食べ残しだったんだ!

ほっておくと人が拐われ続ける!」

 

「おい待てよ…じゃあ今同時に起こってる行方不明事件とこの事件は同じ犯人による一つの事件って事か?」

 

「現さん、ここ一週間の行方不明者を洗えますか?」

 

「誰に物言ってやがるんだよ!」

 

 

そう言いスーツの人は、泊先輩の肩を叩いて部屋を出た。

それに続いて他の先輩達も動き出した。

 

 

「じゃあ僕も、その線でネットを調べて見るよ」

 

「残る問題は犯人の潜伏場所と拐われた人達の居場所だ」

 

「恐らく、顔をコピーした増田さんの居住地域の付近だと思います」

 

「そーこーで♪私の機械の出番よ~♪

犯人が重加速を起こしているなら、反応の濃い場所があるはずよ♪」

 

「あのカッコ悪いピコピコか……でも仕方ないな」

 

「ちょっと~!カッコ悪いってどういう事~!」

 

 

部屋を出ようとした泊先輩はわたし達に気付き、近づいてきた。

 

 

 

「君達が誘拐の目撃者だね?」

 

「は、はい。」

 

「大丈夫。友達は必ず助け出す」

 

「でも、どうして助けてくれるの?」

 

 

凛ちゃんが聞くと、泊先輩は笑顔で答えた。

 

 

「今の俺は脳細胞がトップギアだから…かな?」

 

 

そう言いとわたしと凛ちゃんの頭を撫でて行った。

その台詞にわたしは思い出した、あの人の顔を、手のぬくもりを、優しさを。

そして小さく呟いた。

 

 

「やっと……逢えた…」

 

「?どうしたのかよち…って何で泣いてるにゃー?!」

 

 

望み続けた再開にわたしは泣いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はトライドロンが停めてあるピットに入った。

車を降りた後、ベルトさんが遠隔操作でピットに入れたらしい。

そしてトライドロンに乗り込み、シートベルトを着けると、ベルトさんが話しかけてきた。

 

 

『進二、どうやらカタはついたようだね』

 

「っ!…何故それを?」

 

 

俺はベルトさんの言葉に驚いた。

すると変身する時に使った赤いシフトカーがやって来た。

 

 

『このシフトカーを通して、君と絢瀬生徒会長のやり取りを見させてもらった。

あと、勝手だが…半年前の事件について調べさせてもらった。

すまない』

 

「別に良いさ。

いつかはバレることだし。

………なぁ、この事霧子には……」

 

『無論話していない。

これは君の問題だ、話すかどうかは君が決めたまえ』

 

 

ベルトさんがそう言いと、霧子がピコピコを持って入って来た。

 

 

『さぁ、行こう!

君の仲間、特状部とシフトカーズの探索能力を信じよう』

 

 

 

そして俺達は学校を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は捜索中、究ちゃんからの連絡を受け遊園地に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

廃園になった遊園地を探索していると、一つの倉庫にたどり着いた。

扉の鍵は開いており、ドアに手をかけ霧子と顔を見合せ、互いに頷くとドアを開けた。

その中に不自然にブルーシートで囲まれた場所があった。

そこに入ると、拐われた人達が気を失っていた。

 

 

「拐われた人達だ…良かった、まだ生きてる……

?…この子、どっかで……」

 

 

俺は音ノ木坂の制服を着た子の脈を確認し、安堵した。

恐らくこの子が、拐われた目撃者の友人だろう、そう思い顔を見るとこの子とどこかで会ったような気がした。

すると女の子は目を覚ました。

 

 

「大丈夫か?怪我は無い……っ!」

 

 

俺は見てはいけないものを見てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの間に眠ってしまったのだろ?

私はそんなことを思いながら目を開けると、二人の先輩がいた。

片方の先輩はどこかで会ったような気がする、何処だろう?

すると先輩は私に話しかけてきた。

 

 

「大丈夫か?怪我は無い……っ!」

 

 

突然黙り込み左手で口を塞いで目をそらした先輩は必死にジェスチャーで何かを伝えようとしている。

何処かを指しているのか、先輩が右手で指差した先を見て私はパニックになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカートが捲り上がって、下着が丸見えだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今助けた女の子からビンタを、一緒に助けに来た女の子からは後頭部に回し蹴りを食らった。

痛む頬を左手で抑え、右手で後頭部をさする、助けに来たのになんて仕打ちだよ……そんなことを考えてると後ろから“奴”の声がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は手の縄をほどかれると、悲鳴と同時に先輩の頬叩いた。

驚いたのは同じタイミングで、先輩の背後に立っていた先輩が回し蹴りを頭に入れた。

 

 

「大丈夫ですか?この人に何かされたのですか?」

 

 

何も知らないで後頭部を蹴ったのか?心配そうに聞いてくる先輩に、事の真相を伝えようかと考えてると、奥の出入口からあの男の声がした。

 

 

「人間を取り戻しに来たのか?」

 

「あの声……やっぱり、生きてやがったのか怪物!」

 

 

先輩は頭と頬をさするのを止めると、ブルーシートを引き剥がした。

 

 

「嘘……」

 

 

私は驚きのあまり声を出した。

そこにいたのは、私、“西木野 真姫”だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はブルーシートを引き剥がし、ヤツを見た瞬間、驚いた。

後ろの女の子とまったく同じ容姿をしていた。

本人も驚いたのか、少し怯えている。

 

 

「構わんさ、もう必要ない。

そいつらの優れたパーツは、全て我が身に取り入れた。

あの男からは顔を、その小娘からは髪と肌を……

俺の肉体は素晴らしい!」

 

 

するとヤツは前の男の姿になると、続けて化け物の姿に変わった。

が、さらに化け物は“進化”した。

 

 

「進化した?!」

 

 

ヤツは進化すると重加速を起こし、告げた。

 

 

「後はあの小娘を取り入れれば……俺は更なる存在に、“約束の数”の一人に……」

 

 

そう言い残し、ヤツは去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

都内の喫茶店。

町全体を襲った重加速の中、普通に動く男が二人いた。

 

 

「これは……期待以上の力ですね」

 

「会いに行こうか……新しい友達に…」

 

 

すると男たちは赤と緑の化け物に姿を変え、店を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤツが去った後、遅れてシフトカーたちが到着した。

 

 

「町に出したらヤバいな…ありゃ」

 

「追って下さい!ここは私が」

 

「あぁ、分かった!」

 

 

俺は急いでトライドロンに向かおうとした瞬間、何発もの光弾が襲ってきた。

 

 

「くそっ!また仲間か」

 

 

光弾の飛んできた方を見ると、怪物が2体襲ってきた。

するとクラクション音と共にトライドロンが攻撃しながら走って来た。

怪物達はあの進化したヤツのいる方向に飛んで行った。

俺は急いでトライドロンに乗り込み、そして、ベルトさんに手をかけた。

 

 

『やってくれるのか?進二……』

 

「ヤツに追い付けるのも、の戦える(はしれる)も俺一人、ならやるしか無いんじゃない?」

 

 

ベルトさんの問いに俺は答えた。

そしてベルトさんを腰にあてるとベルトが巻き付いた。

 

「もう考えるのはやめた!俺は誓ったんだ、親友に。

もう誰にも、俺と同じ苦しみや悲しみを味あわせないと!

だから俺は走り出す、(しんゆう)の分も…一緒に!!」

 

 

俺はトライドロンのアクセルを踏み込み、ヤツ等を追った。

 

 

『Good! start your engine !』

 

 

ベルトさんのかけ声と共に俺はベルトさんのキーを回し、側に置かれたシフトカーを掴み叫んだ。

 

 

 

「変身!」

 

《DRIVE type SPEED!》

 

 

 

 

 

ヤツ等の姿が見えると向こうもこっちに気付いたのか、攻撃をしてきた。

俺は親戚の叔父直伝のドライビングテクニックでそれをかわすと、前のトラックの積み荷を投げ飛ばし、それを攻撃して爆発させた。その衝撃でトンネルの屋根が崩れ、下敷きになってしまった。

 

 

「くっそ!調子に乗りやがって!」

 

『ならこちらはタイヤでトライドロンを強化しよう』

 

《MAX FLARE!

FUNKY SPIKE!

MIDNIGHT SHADOW!

タイヤフエール!》

 

 

俺が悪態つくと、ベルトさんは叫んだ。

するとトライドロンにタイヤが装着され、機動力やパワーが上がった。

俺は瓦礫から脱出すると、逃げる怪物2体の攻撃をかわし、反撃をした。

攻撃が当たり、怯んだところに炎を纏ったトライドロンで撥ね飛ばした、

撥ね飛ばされた2体はそのまま爆散した。

 

 

「よし!後は健康筋肉野郎だけか」

 

 

俺は逃げたヤツを追うため、再びトライドロンで走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは凛ちゃんと一緒に下校している。

誘拐騒ぎで凛ちゃんのお母さんが迎えに来てくれることになったので待ち合わせの場所に向かっていた。

 

 

「でもまさかあの先輩が、凛とかよちんを助けてくれた人だったなんてにゃー…

そう言えば思い出したにゃ!あの先輩、前に凛にジュースくれた人だー!」

 

「そうなの?」

 

「凛が欲しかったジュースが売り切れて、ちょうどそれを買った先輩が凛にくれたんだにゃー♪」

 

「良かったね、凛ちゃん」

 

 

そんな話をしていると、突然どんよりが起こった。

 

 

 

―「嘘…また、どんより?」

 

―「もうこりごりにゃ~」

 

 

 

凛ちゃんの方を向くと普通に歩く怪物が目に入った。

 

―怪物?!

 

すると怪物はわたしを見ると、喋り出した。

 

 

「見つけたぞ…ん?

隣のヤツも活きがよさそうだなぁ……二人とも、俺と来い」

 

「どこのカントリーボーイだ、お前?」

 

 

わたしと凛ちゃんに近付く怪物に恐怖した瞬間、後ろから声がした。

振り向くと、タイヤをたすき掛けにした赤い人がいた。

 

 

BGM:『SURPRISE-DRIVER』

 

 

「なってねぇな?レディのエスコートの仕方も知らねぇのか?

なんだったら教えてやるからさ……」

 

 

すると赤いタイヤの人は腰を低く落として言った。

あのポーズ……まさか

 

 

「ひとっ走り付き合えよ!」

 

 

怪物はタイヤの人に殴りかかると、タイヤの人はそれをかわし、パンチを叩き込んだ。

すると怪物の腕が伸びてわたしの後ろにある柱を壊した。

 

 

「っ!危ない!」

 

《SP,SP,SPEED!》

 

 

柱の瓦礫に押し潰されそうになったわたしと凛ちゃんをタイヤの人が瓦礫をものすごい速さ連続パンチで瓦礫を柱ごと吹き飛ばして助けてくれた。

 

 

《タイヤコウカーン! MIDNIGHT SHADOW!》

 

 

するとタイヤの人は腰についた紫色のミニカーを左手のブレスに差し込むと、紫色のタイヤが飛んできて、今着いてるタイヤと交換された。

 

 

《SHA,SHA,SHADOW!》

 

 

左手のブレスを3回倒すと、両手に大きな手裏剣が出来た。

それを投げて、怪物に攻撃をした。

タイヤの人の戦い方に、さっきの言葉……

 

 

―――「ひとっ走り付き合えよ!」

 

 

もしかして、あのタイヤの人は……

わたしはあの人の顔が思い浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はシャドウの手裏剣でヤツを攻撃すると、ヤツは無駄にデカイ腕を前に出すと今度はそれが伸びて、ヤツの攻撃のリーチが伸びた。

くっそ便利だな。

俺はそんなこと考えたせいか、モロにヤツの一撃を受けて、吹き飛ばされた。

 

 

「痛って~…こないだより強くなってる」

 

『ヤツの動きを封じるのが得策だな…』

 

 

俺はベルトさんの言葉に一台のシフトカーを思い浮かべた。

 

 

「なら、そうゆうの得意そうなヤツ知ってるぜ……っ!来たみたいだな…」

 

 

するとパトカーを模したシフトカー、ジャスティスハンターがサイレンを鳴らしながらやって来た。

 

 

「パトカーの援軍って安心するな。

OKハンター、ひとっ走り付き合えよ♪」

 

 

俺はハンターはレバーモードに変形させて、シフトブレスに差し込んだ。

 

 

《タイヤコウカーン! JUSTICE HUNTER!》

 

 

トライドロンから生成された、タイヤが今着けているシャドウと交換されると、右腕の方に重心がもっていかれた。

気になって見てみると、鋼鉄の柵みたいなものを握っていた。

 

 

「ん?オプション付きか……いきなり右肩下がるからビックリのしたぜ」

 

 

握っていた鉄格子ごしに敵が攻撃するのが見え、持ってる鉄格子で防いだ。

 

 

 

 

で?

 

 

……

 

………

 

……………

 

………………

 

コレでどうやって戦えばいいんだ?!

 

 

 

 

 

 

『そのジャスティスケージを敵に投げつけ、シフトレバーを操作しろ』

 

「コレのこと?!」

 

 

俺は言われるまま鉄格子を投げつけ、レバーを倒した。

 

 

《HUN,HUN,HUNTER!》

 

 

すると投げた鉄格子はデカくなり、大きな檻になった。

怪物は檻から出ようと檻を殴った瞬間、電撃が怪物を襲った。

 

 

……うぅわっ…おっかねぇ…

霧子のヤツあれ使って俺を捕まえようとしたのか?

っと今はこっちに集中!

 

 

俺はそんなことを思いながら、ブレスの右にあるボタン・イグナイターを押した。

 

 

《ヒッサーツ!Full throttle!HUNTER!》

 

 

俺は両サイドに出来たタイヤ型のエネルギーに弾かれ、加速し怪物にパンチを入れた。

 

「まさか……貴様は…仮面、ライダー…?」

 

「ん?仮面ライダー?」

 

怪物は俺を指差し、そう言いって爆発した。

 

「今度こそ初陣を飾れたな、ベルトさん」

 

『ありがとう、進二。

改めて君に依頼したい、ロイミュードを全て撲滅して貰いたい。

敵は全部で108体………いや、コレで残り、103体だ』

 

 

 

爆発したヤツのコアを見てベルトさんは告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小さな渡り橋の上を赤と緑の怪物が重加速の中を歩いていた。

すると赤い怪物は何かに気付いた様に上を見上げると隣の緑の怪物も異変に気付き、戸惑った。

二人の怪物が人間の姿になると、当たり一帯の重加速が消えた。

 

 

「見損ねたな………新しい友達を…………」

 

「そんな………あり得ない……あそこまで巨大で広範囲で、威圧的な力を蓄えた、ロイミュードを倒せる者がいるなんて………」

 

 

赤いコートの男は少し残念そうに言うと、眼鏡の男は焦りながら反論した。

しかしコートの男は笑いながら答えた。

 

 

「ふふっ、心当たりが無い訳では無い……だろ?ブレン」

 

「ハート?………まさか!?」

 

「あぁ。そのまさか、かもな?

…!来たか………チェイス…」

 

 

二人が話していると、黒いバイクに乗った上下紫色のライダースーツを着た男が来た。

それを見たコートの男“ハート”はバイクの男に向かって言った。

するとチェイスと呼ばれた男は二人を見て尋ねた。

 

 

「今度は……誰を倒すんだ?」

 

「なぁに、ただの…仮面ライダーさ」

 

 

ハートは笑みを浮かべ答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特状部部室内

ここに頭を抱え悩んでいる男がいた。

 

 

「拐われた人達を助けたは良いが……こんなのどう調書に書けばいいんだよ!」

 

 

悩む現さんをよそにりんなさんと究ちゃんは怪物を倒した謎の戦士について盛り上がっていた。

そんな中、俺は一つの質問を霧子にした。

 

 

「なぁ霧子、“仮面ライダー”って何だ?」

 

「えっ?」

 

「いや、あの怪物が俺のことそう呼んだからさ……」

 

「ロイミュードが、泊さんを仮面ライダーと………」

 

 

そして俺は信じられないものを見た。

 

 

「霧子、今笑っ………」

 

「笑ってません」

 

「いや、笑っただろ?」

 

「笑ってません」

 

「いいや、笑った!」

 

「笑ってません!しつこいですよ!」

 

『いいじゃないか……仮面ライダー…ドライブ』

 

するとシフトスピードを操ったベルトさんが言った。

俺達はそんなやり取りをしながら平和を満喫していた。

これから迫る危機に気付かずに………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある一室

 

 

「やはり避けられないのかしら……これは……」

 

 

そう呟く、音ノ木坂学院の南理事長。

その手に握られた紙にはこう書かれていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【国立音ノ木坂学院 廃校案について】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてこれが、少女達の物語が走り出すきっかけ。

俺達の協走曲(ものがたり)の本当の始まりとなる……

その前奏曲が始まろうとしていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?
さっそく正体がバレる伏線張りました。
これを主人公がどう乗りきるのか?
次回はラブライブ本編に入るための準備と変態アトリエ事件です。
これも2、3話で終らせるつもりです。

では、せめて来週中に投稿出来るよう頑張ります!

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誰が罪人達《かれら》を許すのか。

エリチはキツネで……
希はタヌキ…か?
凛は猫で、花陽はリスかな……
穂乃果は垂れ耳の犬で、海未は立ち耳の犬かオオカミか?
ことりは……羊……か?
真姫はウサギで、にこがなぁ~……猫は凛だしな~‥………‥………‥………‥………
よし!凛は白猫、にこは黒猫だ!
っは?!
すいません、挨拶がまだでした。
どうも、就活に失敗したケモミミです。
就活で落ちたショックをμ'sメンバーのケモミミ&シッポ姿の妄想で和らげてました(笑)
今回は少し日常会話と人間関係が分かるようにしたので、少し長めです。
では相変わらずの駄文ですが、楽しんで頂けたら幸いです。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

都内のある美術館、そこで事件は起きた

 

 

「ホントなんだよ!信じてくれよ、刑事さん!」

 

「俺ら、4人いたんです!」

 

「どんよりがしてる間に女子だけ消えたんです!」

 

 

俺は今、隣にいる同僚の部下と2人で、音ノ木坂の制服を着た男子生徒の事情聴取を行っている。

 

 

「どっか勝手に見に行っただけじゃねぇのか?」

 

 

隣にいる同僚の部下「真倉 俊」《まくら しゅん》が学生に聞くと、学生は続けて話した。

 

 

「違う!俺は見たんだ…怪物が拐ったんだ!」

 

「どんより……怪物……」

 

「こりゃ、また例の民間協力者の出番かねぇ追田?

確か進坊のいる、何だっけか、えーと………」

 

「特状部だよ、刃野」

 

「あー、それそれ」

 

 

そう言いながらツボ押し器で自分の肩を押す同僚、「刃野幹夫」《じんの みきお》がやって来た。

 

 

「ったく、また特状部(アイツ等)の力借りねぇといけないとはな…」

 

「だな、よりによって進坊がいる学校で協力者が進坊達だからな……あれだけの事があったってのに懲りねぇで、誰に似たんだか……」

 

「ま、当然"あの人"だろうな?」

 

「本当によく似てきたな……"泊警部"に………」

 

 

俺と刃野はお世話になった先輩を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現場から離れた物陰から事件の様子を見る1台の洒落たミニカーがその場を去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音ノ木坂学院学生ホール

 

 

 

 

 

昨日の事件も無事解決し、

俺はいつもの様にひとやすみるくを食べながら、

 

 

「はぁ…朝から倦怠感スゲー………何で新学期早々テストがあるんだ?」

 

 

ぼやいていた。

 

俺は昨日、事件が解決した後に忘れ物を取りに教室に行くと、来週からテスト期間である事を希から聞いた。

警察に協力して、事件解決して、怪物と戦って、学生として勉強&テスト…………ハード過ぎない?

俺はベルトさんに俺がドライブであることを、警察か、せめて特状部の皆に話していいかと聞くと、

 

 

―――『敵がどこの、誰と繋がっているか分からない以上、むやみに正体を明かすのは君だけでなく、周りの人達をも巻き込む恐れがある、だから…NOだ!』

…と怒られた………

正体隠しながら警察に協力して学生として過ごす………

やっぱキツいな………

 

そんな事を考えながら、ひとやすみるく食べていると霧子がやって来た。

 

 

「ちょっと活躍したと思ったら、もうエンジン切れたのですか?」

 

 

そう言いながら俺が食べ散らかしたひとやすみるくの包装紙をゴミ箱に入れる。

 

 

「そう睨むなよ霧子、来週のテストにこないだの怪物の事とか、ドライブの事とか考えるとねぇ?

それにさ、ほらバネって縮み過ぎてると逆に力無くなるだろ?次に大きく跳ねるためにはさ、こう…1度、ビヨーーー…………ンって伸ばさないと……」

 

『なるほど…それなりに、説得力があるね』

 

「だろ?」

 

 

俺が熱弁していると、シフトスピードを操ったベルトさんがやって来て同意した。

 

 

「納得しないでください、ダメな人間の言い訳は聞きたくありません、そんなのでは仮面ライダーとはいえませんよ。

ねぇ?ハンター」

 

 

霧子の肩に乗ったジャスティスハンターはクラクションを鳴らし頷いた。

 

 

「相っ変わらず、俺に対して冷たいよな、お前は。

てか、仮面ライダーって何だよ?」

 

 

俺は少し皮肉混じりに返すと、霧子はムスッとした表情になり、肩のハンターはサイレンを鳴らし、反論するかのように飛び跳ねる。

てか、白昼堂々話しかけてくるベルトさんや霧子にべったりくっつくハンターとそれを満更でも無いようにハンターを肩に乗せたままの霧子見ていると、コイツらやシフトカー達は本当に自分達の存在を隠す気あんのか?

 

俺はそんな疑問を思いながら、ハンターで思い出した。

 

「てか、霧子。お前よくハンターと一緒に俺を追うけど、コイツの能力知ってて使ってるのか?」

 

「能力?……もしかしてジャスティスケージで生成される高電圧の檻の事ですか?」

 

「知ってて使ってたの?!」

 

 

なんてヤツだ………

 

 

 

するとパンの入った袋を持った穂乃果達が俺達に気付き、手を振りながらやって来た。

 

 

「おーい、進にぃおっはよう♪」

 

「おはよ♪進ちゃん」

 

「おはようございます、お兄さん」

 

「よっ3人共、おはようさん」

 

「おはようございます………あの泊さん、こちらの子達は?」

 

「あぁ、紹介するよ。

幼なじみの…」

 

「高坂 穂乃果です」

 

「南 ことりです」

 

「園田 海未と申します、お兄さんがいつものお世話になってます」

 

「いえ……?お兄さん?泊さんの妹さんですか?」

 

「いや、実は俺、この子の実家の道場の門下生でさ、彼女の兄弟子なんだ。

それにこの子の親父さんと家の親父が古い付き合いでな、昔から一緒に遊んでたんだ」

 

「なるほど」

 

「はい、穂乃果達と出会ったのもお兄さんからの紹介でした」

 

「そ、私と進にぃ、家が近所でよく店に来てたから、一緒に遊んだりしてたの」

 

「当時私は、家や性格の事もあってなかなか同年代の友達が出来なかったので、お兄さんが穂乃果達を呼んでくれたのですが………」

 

「進ちゃん、寝坊したんだよね?」

 

「ン?ま、まぁな?でも公園に行ったら、3人で仲良く遊んでたから安心したよ」

 

「そうなんですか」

 

「そうなんですよ、ところで先輩は……?っ!まさか!進にぃの彼女?!」

 

「えぇ~!そうなの?!」

 

「本当なのですか?!お兄ちゃん?!」

 

「なぜそうなる?!」

 

「違いますよ、安心してください。

泊さんが私の事を好きになっても、その逆はありませんから」

 

「お前…やっぱ一言多いよな?」

 

「それより進にぃ、仮面ライダーって知ってる?」

 

「ウェ?」

 

「仮面ライダーだよ仮面ライダー」

 

 

穂乃果の言葉に冷や汗をかいた。

 

―――嘘だろ?!噂になるの早くね?!

 

俺は焦る中、いつも通りに振る舞った。

 

「何だ、それは?」

 

「今凄い噂になってるの」

 

「ヘ、ヘ~そうなんだ?」

 

「どうしたの?進ちゃん」

 

「イッ、イヤ、何でもない」

 

「何でも、どんよりの中を動き、人々を救ったらしいですが」

 

「どんな人なのかな~?」

 

「サッサァナ?コトリハドウオモウ?」

 

「う~ん、悪い人じゃないと思うよ♪」

 

「噂ではタイヤを体に巻き付けた赤い人らしいですよ?」

 

「なにそれ、変態じゃん?」

 

「グハッ!」

 

「どうしたの?!進ちゃん?!」

 

「大丈夫ですか?お兄ちゃん?」

 

 

海未が話した俺《ドライブ》の特徴を聞いた穂乃果はバッサリと言い捨てた。

結構なダメージだな、おい

そんなやり取りをしていると、後ろから声がした。

 

 

「あの、…先輩……」

 

「ん?」

 

 

振り向くとそこには、昨日部室にいたメガネをかけた女の子がいた。

 

 

「君は確か昨日の…」

 

「はい!…小泉 花陽と言います。あの、えっと…昨日はありがとうございました!」

 

「あぁ、良いよ別に」

 

「本当は、西木野さんとお礼を言いに来たかったんですが、西木野さん…何か先輩とはしばらく会いたく無いらしくて………だから代わりにわたしが西木野さんの分のお礼をと思いまして…」

 

「西木野さん?」

 

「はい。昨日先輩に助けて頂いた、同じクラスの人です」

 

「あー、あの子ね」

 

「でも西木野さん、何で先輩に会いたく無いんですかね?」

 

 

瞬間俺の脳内にパステルピンクが浮かんだ、多分それが原因だろな。

すると小泉さんは俺の事を凝視している。

 

 

「俺の顔に何か付いてる?」

 

「っ!い、いえ………あの、何でも無いです!」

 

 

えらく慌てて取り乱したが、一呼吸すると真剣な顔でこっちを見て話し出した。

 

 

「あの、先輩!聞きたい事があります」

 

「ん?何?」

 

「先輩 …5年前、わたしと凛ちゃんを助けてくれたの覚えてますか?」

 

「5年前?」

 

「はい、わたし達が不良の人達にいじめられていたのを助けて貰ったんですが………」

 

 

俺は瞬間、3人の不良から助けた後、泣き付いて来た小学生の女の子を思い出した。

 

 

「もしかして………あの時の?」

 

「っ!はい!あの時はありがとうございました!」

 

「いや、良いよ。ああいうのは昔からほっとけない性格だからさ」

 

「はい……それとあの、今日の放課後……空いてますか?」

 

「ん?あぁ、多分大丈夫」

 

「でわ、放課後に体育館の裏にある大きな木の所に来て下さい、お話したいことがあります」

 

「?分かった」

 

「それでは失礼します!」

 

 

そう言いながら小泉さんは顔を赤くして去っていった。

 

 

「話ってなんだろ?なぁ、みんな?」

 

『「「「「えっ?」」」」』

 

「進にぃ…まさか、気付いてないの?」

 

「そう言えば、お兄さんは昔からそうでしたね……」

 

「やっぱり、進ちゃんは進ちゃんだね……」

 

「泊さん………最低です」

 

『……進二………君は少し…バカなのではないか?……』

 

 

何かみんな呆れた声と顔で俺を見ている。

あげくのはてには、ベルトさんまで肩に乗ってため息をつきだした。

………………何だよ?

なぜか糾弾されていると、あの放送が鳴り響いた。

 

 

【テステスマイクテース♪音ノ木坂学院生徒諸君おはようございます、特状部の皆さーん、事件が発生しましたので早く部室に来ちゃってくださーい!ッテイ!】

 

 

そう言って放送は切れた。

 

 

「またあの変な放送だね、海未ちゃん?」

 

「えぇ、特状部とはなんですかね?どう思います?ことり」

 

「うーん……わかんない♪」

 

「あの放送どうにかなんないのかな?」

 

「さぁ、先生に直接言って見たらどうですか?」

 

 

そう言いながら俺が席を立つと穂乃果が話しかけてきた。

 

 

「あれ?進にぃ、どっか行くの?今海未ちゃんとことりちゃんとであの特状部ってのについて話してるんだけど、進にぃはどう思う?」

 

「あー……俺達がその特状部なんだわ」

 

「「「えぇーーー!!!」」」

 

「そこまで驚かなくても……」

 

「何をしている部活何ですか?事件と言ってましたけど……」

 

「まぁ、どんよりについての研究?とそれが起こす事件の解決かな?」

 

「そうなんですか……あっ!呉島先生、おはようございます」

 

「おはようございます、先生」

 

「おはようございます」

 

「おはようございます、呉島先生」

 

「おはよ、呉ちゃん」

 

「あぁ、おはよう。それと泊、その呉ちゃんってのは止めろ。

この間、凌馬や志渡にからかわれて大変だったんだぞ?」

 

「だって呉ちゃん真面目って言うか、カタイんだよ。

だから、少しでも親しみ易いようにフレンドリーにね?」

 

「フレンドリー過ぎるだろ、全く……

それより園田、この間の結果良かったぞ」

 

「ありがとうございます」

 

「あれ?二人とも知り合い?」

 

「はい、呉島先生は私が所属している弓道部の顧問をしていただいてますので」

 

「へぇ~」

 

「それに園田の道場には短い間だが門下生として通っていたんだ」

 

「えっ?!そうなの?!」

 

「はい、お兄さんとは入れ替わりのような形で道場を抜けられたそうです」

 

 

そんな世間話をしていると、霧子に呼ばれた。

 

 

「泊さん、急ぎますよ!」

 

「あ、あぁ!すまん、じゃあ俺はこれで!」

 

 

俺は駆け出すと、今まで見たことの無い洒落たシフトカーが目に入った。

 

 

「なぁ?見たこと無いシフトカーいるぞ?」

 

「えっ?……ベガス?!………まさか!」

 

 

霧子にシフトカーの事を尋ねようとしたら、霧子は顔色を変え持っていたコップを落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は部室に行くとそこで待ってた現さんと合流し、現場に向かった。

 

 

「進二、嬢ちゃん渡す物がある」

 

 

現さんはそう言うと、黒い手帳のような物を渡しに来た。

 

 

「現さん…これは?」

 

「上が用意したもんだ。正直見た瞬間驚いたがな、開いてみろ」

 

 

俺達は言われた通りに手帳を開くと見覚えのあるものだった。

 

 

「これって、警察手帳……ですよね?……ねぇ?泊さん」

 

 

「あぁ、だが細部が違う。」

 

 

俺達が手渡されたのは、警察手帳のような物だった。

 

 

「さすがだな、進二。これはお前達用の警察手帳、まぁ、民間協力の証明書兼、捜査許可書ってところだ。いざとゆうときや、俺が側にいなくても現場で動いたり、捜査するために上が用意してくれたんだ。」

 

「なるほど、確かに警察相手なら普通に協力証明書で何とかなるが、一般人からすれば、協力証明書なんて見てもピンとこないもんな?」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ、実際協力証明書だけで出来ることは限られてるからな。

それと進二、今日はアイツ等も来てるから、挨拶してけ」

 

「アイツ等?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達はピコピコを持って現場に入ると、懐かしい顔を見た。

 

 

「もしかして………刃さん?」

 

「おぅ、久しぶりだな進坊…………何だその格好?」

 

「あー……後で説明します。刃さんがいるって事は、マッキーも来てるんすか?」

 

「真倉さんだろが、クソガキ」

 

「チッス、マッキー。相変わらず小者っぽいな?」

 

「うっせーぞ!てか、何で俺だけタメ口何だ?!」

 

「いや、だって年近いし、昔からの仲じゃん?」

 

 

俺が再会したのは、親父の部下だった刃野 幹夫と真倉 俊、いつもツボ押し器を持ち歩いてる刃さんはよく忙しかった親父の代わりに遊んでくれた人だ、マッキーは俺が小学生の頃の先輩でよく絢瀬とからかって追いかけっこをしたりと、昔からの知り合いだ。

二人には現さん同様、半年前世話になった。

特にマッキーは捜査のし過ぎで過労で倒れた程だ。

あの事件があっても、変わらず接してくれる皆には感謝している。

 

ただ…………

 

 

 

「な、なぁ…追田?本当にあれで大丈夫なのか?」

 

「まぁ……うん、多分な?」

 

「何か周りの視線が痛いんだが?」

 

「心配するな、俺もだ」

 

「刃野さん、追田さん、野次馬があれは何だと集まって来るんですが?」

 

「怒鳴ってでも追っ払え、こんなの警察が誤解されるだけだ」

 

 

 

 

 

 

 

俺達の捜査(ピコピコによる測定)を見て不安な顔するのはやめてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は捜査を終え部室に戻った。

 

 

 

「お帰り~泊ちゃん、どうだった?」

 

「どうもこうも、また赤っ恥かきましたよ先生」

 

「現場にはやはり重加速粒子が残存していました。

他の生徒の証言もありますし、怪物による事件なのは間違いないと思われます」

 

「いや、どう考えても行方不明事件だろ」

 

 

霧子が捜査報告をすると、現さんはそれを否定しようとした。すると、突然究ちゃんが笑いだした。

 

 

「違うんだな~追田警部、ボクが真相を教えて差し上げましょう」

 

 

そう言いと究ちゃんが取り出したのは、1枚のチラシを持った人形とある記事のページを表示したタブレットだった。

 

 

「一週間前に起こった幽霊アトリエ事件、怪物が幽霊を食べていたと言う自称美人主婦の目撃証言、その幽霊は全て女性だった……同じ趣向性を持った怪物の犯行だよ、間違いない」

 

「まーたオカルトか、そんなのはお前の好きなネットの中での話だろが!」

 

 

そう言いながら現さんは究ちゃんの持っている人形を取り上げ俺達の前に放り捨てた。

究ちゃんと現さんが喧嘩している中、俺はチラシを持った究ちゃんの人形を手に取った。

 

 

「究ちゃんが言うと如何わしく聞こえるけど、この情報意外とビンゴじゃね?」

 

「ですね、調べる価値はあると思います」

 

 

そんなやり取りをしていると先生が突然話し出した。

 

 

「あんれ?今日沢神ちゃんお休み?」

 

 

そう言われ辺りを見渡すと、確かにりんなさんはいなかった。

 

 

「珍しいな、りんなさんが休みだなんて」

 

「まぁ、本人は飛び級ですでに大学卒業しているからね」

 

「そうなんですか?」

 

「そっか、霧子ちゃんは知らないんだね。

りんなさんは4年程前に大学を卒業して博士号と教員免許を取ってるんだよ」

 

「そ、ちなみにりんなさんは今年で二十歳、飛び級のせいですごせなかった学生生活を送るために教師でなく生徒としてうちに来たわけ。

何でもうちの学校の理事長とは知り合いらしくて、無理言って入学したらしいぜ」

 

「そうなんですか……」

 

「ハイハイ!では、究ちゃんの言ってたアトリエの捜査は放課後に行いますので、皆さんちゃんと授業受けて来てくださいね。

ハイ、じゃあ今日はここま……」

 

「待ってください!」

 

 

先生がそう言って切り上げようとした時、霧子が声をあげ出した。

 

 

「ビックリした~」

 

「ホントだよ、どうした霧子?珍しく熱くなって」

 

「私は、このままアトリエの捜査に向かうべきだと思います。

もしアトリエにいる人物が犯人なら、被害者が増える一方です」

 

「確かに、霧子ちゃんの言うことは一理あります、ですがあなた達はあくまで学生です。

本来の学業に専念するのが、一番大事なのですよ」

 

「っ!ですが!」

 

「霧子!」

 

 

俺が怒鳴ると、霧子は悔しそうな顔をして部室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は教室に向かう前にピットに寄った。

 

 

 

 

 

『ん?どうした、進二…授業に向かったんじゃないのか?』

 

「なぁベルトさん、聞きたい事あるんだが……」

 

『?何かね』

 

「あの洒落たシフトカー来てから、霧子の様子が変なんだが?」

 

『うむ、シフトカーの中には独自で事件を捜査している者もいる。

彼、ドリームベガスは霧子と深い因縁のある事件を探しているのさ』

 

「因縁…」

 

 

俺がその言葉に考え込むと、ベルトさんが話しかけてきた。

 

 

『それよりも進二、放課後に例のアトリエに向かうのかね?』

 

「ん?それがどうしたんだ、ベルトさん」

 

『…………ハァ…君は、何か忘れていないかね?』

 

「忘れる?………‥……………………………………あっ!」

 

『レディとの約束を忘れるとは………君こそなってないね?』

 

「うるさいよ!何で昨日敵に言った台詞で返すんだよ!」

 

 

そう言いながら、俺はピットを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に戻ると、ちょうど授業が始まった。

ちなみに世界史、呉ちゃんの授業だ。

心なしか、呉ちゃんが嬉しそうに微笑んだような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業が終わり、俺は放課後に例の1年生、小泉さんと会う事を考えてた。

 

―いったい、何のようだろ?お礼ならしてもらったし、話したいならあの場で話せば済むし、わざわざ女の子が放課後に人気の無い体育館裏に呼び出してまでする話って…………」

 

「それって、告白じゃないの?」

 

「なるほど、告白か………って、え゛ぇー!?」

 

「きゃあ?!もぅ、ビックリするじゃない!」

 

「あれ?にこ?…え?いつから?」

 

「わざわざ女の子が…てとこから」

 

「えっ?声出てた?」

 

「えぇ」

 

「マジで?」

 

「マジよ、ハァ…相変わらずアンタはそうよね?私はなれたけど、希が可哀想に思えてきたわ……」

 

「ん?何でそこで希が出てくるんだ?」

 

「ハァ?!」

 

 

俺はにこに質問した瞬間、おもいっきり机を叩かれ、怒鳴られた。

 

 

「本気で言ってんの?!どれだけ飴と車しか興味ないの?!」

 

「い、いや………最近は音楽も聞くようになったぜ!ほらっ、お前が前に言ってたスクール………えっと……「アイドルよ!!」そう、それの曲」

 

 

俺は焦りながら答えた、にこがすごく怖かった。

 

 

「で?どんなの聞いてるの?」

 

「えっ?あ、あぁ…えっと……これだけど………」

 

 

そう言って俺は鞄の中のプレイヤーを出してにこに渡した

 

 

「ふーん、A-RISE ね。まぁ、確かに無難な所ね」

 

「だろ?でも、何でさっき希が出てきたんだ?」

 

「ウチがどないしたん?」

 

「げっ?!希?!」

 

「にこっちひどいなぁ?そこまで驚かんでもええやろ?」

 

「仕方無いでしょ、ビックリしたんだから……」

 

「それで?何かあったん?」

 

「いや、実は……「何でも無いわよ!?私喉渇いちゃった、進二奢ってあげるから、イチゴ牛乳買ってきて希の分も!」…………お、おぅ………」

 

 

俺はにこに500円玉を渡され、背中を押されながら教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

にこは今、バカのお陰で無駄な出費と体力を消費した。

そしてにこは、少し息を整えて希の方を向いて聞いた。

 

 

「ねぇ、希?」

 

「ん?どうしたん?にこっち」

 

「アンタ、進二の事どう思ってるの?」

 

「どうって、いい人やなって…「そうじゃないでしょ!」っ!にこっち……」

 

「ごめんなさい、怒鳴って……でもそうじゃないでしょ、希だって分かってるでしょ?

私があのバカをどう思っているのか、自分がどう思っているのか、分かってるでしょ?」

 

「にこっち……ウチは……」

 

「分かってる、アンタがあの時の事、半年前のことでアイツに言えないでいること。

だから、私は‥…にこは、アンタが吹っ切れてから勝負するつもりよ!

それまでは抜け駆けしないから……」

 

「にこっち……でも、どうやって謝ったらええんかわからんのや……」

 

「そんなの、にこが知るわけないでしょ。

まぁ…バカ連れて買い物やカラオケ、遊園地にでも行ってたら?

でも‥………一番効果的なのは、絢瀬の所ね。あそこに行って"二人"に謝るの、それで仲直りするの」

 

「明くんと泊くんに………」

 

「あとそれ!」

 

「えっ?」

 

「えっ?じゃないわよ!その"泊くん"ってのを直す、昔みたいに」

 

 

ちょっとお節介が過ぎたのかしら、それとも説教しすぎた?!

希の顔が暗くなってきたのを見たとたん、にこは焦ってしまった。

でも、希なら大丈夫、そう思う自分がいる。

すると希は、"昔の希"の顔をした。

 

 

「どうやら、吹っ切れたみたいね?」

 

「うん、ありがとうな、にこっち」

 

「と、当然よ!なんたって未来のスーパーアイドル、にこにー様の励ましよ」

 

「お礼に、溜まってたぶんのワシワシでお礼や!」

 

「えぇ?!ちょっ、希、やめっ…やめて…」

 

「ココか~?ココがええんか~?」

 

「に、にこだって負けないわよ!」

 

 

覚悟を決め、希に反撃した私は足を滑らせた。

 

 

「にこっち!」

 

 

気付くと私は希を下敷きにする形で倒れこんだ。

いわゆる、床ドンの形。

 

 

「大丈夫?!にこっち………にこっち?」

 

「やっぱり、アンタはこっちの方が良いわ……」

 

「にこっち……ありがとうな……」

 

「‥…さっ、さぁ!辛気くさいのは無しにして、…善は急げよ、行ってきなさい」

 

「えっ?でも次の授業が……」

 

「次は音楽の紅先生よ?あの人、性格と口だけじゃなく頭も軽いから、何とかなるわ」

 

「酷い言い様やな……」

 

「分かったならさっさと行く!」

 

 

私は希の背中を押し教室から出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウチは今、あの日を受け入れるために進二くんのいる購買に向かっている。

すると向こうからイチゴ牛乳の紙パックを持った進二くんが歩いてきた。

 

 

「あれ?希、どうしたんだ?」

 

「ちょっと、連れてって欲しいとこあるんやけど」

 

「どこ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………明くんとこ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今トライドロンで、希と絢瀬の墓に向かっている。

エンジンと周りの音しかしない中、希が話し出した。

 

 

「ごめんな?急に………」

 

「いや、別にいいさ………………ただ………少し驚いたよ」

 

「えっ?」

 

「希が自分から絢瀬のとこに行きたいなんて」

 

「‥………うん……」

 

「着いたぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は絢瀬の眠る墓の前に、並んでしゃがみこんでいる。

花を添える希の顔は少し辛そうだった。

すると希は何か決心したような顔つきになると口を開いた。

 

 

「実はな………あの日ウチは、二人の事占ったんや……その時、二人にこのカードが出たんや」

 

 

すると希は懐から二枚のカードを取り出した。

 

 

「これは………塔、かなぁ……こっちは………死神か?」

 

「そぅ………意味は、………悲嘆と………死……」

 

「………………………」

 

「ウチは……最初はたかが占いやから大丈夫やと思った。

でも、何回やっても、同じやった……二人に…伝えたら……ッ………

何か変わったかもしれん………だから………ウチ……は………ッ……」

 

「………そうか………だからあの時……」

 

「だから、…ウチは、二人に、謝りたくて……」

 

「謝る必要ねぇよ、希は俺らを助けようとしてくれた、それだけだ………………絢瀬を死なせたのはお前じゃないよ。

あの時引き金を引いたのは、俺だ……」

 

「でも………」

 

「あ"ぁ~もうっ!だったらさっさと謝れ!謝んに来たんだろ?絢瀬に謝って、自分を許せ ‥………

でないと、今度は自分で自分の心(じぶんじしん)を殺すことになる……お前には……そうなって欲しくない」

 

「………………うん」

 

「明くん………あの時は、ごめんなさい……ウチの勝手が明くんを死なせ、彼を苦しめた………こんな身勝手なウチの事……許してくれる?」

 

 

希が墓に向かって謝ると、追い風が吹いた

 

 

―――「許すもなにも、始めっからお前達を怨んだ覚えはねぇよ、だから前向け、自分を許せ、無理なら俺が、お前達を許すよ‥………」

 

 

「「―っ!」」

 

 

驚き振り返ると、絢瀬がいた……だが、瞬きをした瞬間、そこには誰もいなかった………

 

 

「……見えた?」

 

「………見えた」

 

「聞こえた?」

 

「あぁ、聞こえた。希も?」

 

「ウチも……明くん笑ってた………」

 

 

俺だけならまだしも、希にも聞こえていた。

希の方を向くと彼女はうっすらと、涙を流しこう言った。

 

 

「これが本当の……スピリチュアルパワーやね……」

 

「だな」

 

「ねぇ?」

 

「ん?」

 

「ウチの事…許してくれる?」

 

「あぁ‥……‥…………なぁ?」

 

「何?」

 

「俺の事、許してくれるか?」

 

「うん」

 

「そっか………帰るか、希」

 

「うん♪行こ、進二くん♪」

 

 

 

こうして俺達は、また一つ、前に進んだ

 

 

このあと、学校に戻るとカンカンに怒った凰蓮先生に捕まったのは、言うまでもない………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は昼休み、一年生の教室に来ていた。

放課後に捜査に出ることになったので、小泉さんに少し遅れる事を伝えに来たのだが………

 

 

「ねぇ、そこの君ちょっと良いかな?」

 

「はい、何です………あっ!」

 

「………あっ!」

 

 

 

振り向いたのは昨日助けた、西木野さんだった

しばらく無言が続くと、

 

 

「では、失礼します」

 

「まてまて、いきなりどこ行くつもりだ?ホントに失礼だな」

 

「何ですか?痴漢(せんぱい)?」

 

「今何て言った?」

 

「先輩ですが?」

 

「あ、そぅ………」

 

「それより、何か用ですか?」

 

「そぅそぅ、小泉さんって子いる?話があるんだが」

 

「彼女なら飼育係で小屋に行ってます」

 

「そっか……じゃあ伝言頼んで良いかな?」

 

「ヴェェ?!」

 

「ヴェェって………そこまで驚かなくても」

 

 

中学の時の滑舌の悪い友人を思い出した

あまり人付き合いが良くなく、俺と絢瀬以外に友達がいないヤツだったが…… 今なにしてんだろな‥………

 

 

「ちょっと用事が入ったから少し遅れるって伝えといてくれないか?」

 

「まぁ、分かりました………」

 

「じゃあ頼むな?」

 

 

俺はそう言って教室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは飼育係の仕事を終え、教室に戻った。

すると西木野さんが話しかけてきた。

 

「ちょっと」

 

「な、何?西木野さん……」

 

「さっき3年の先輩が来て伝言頼まれたの」

 

「伝言…ですか?」

 

「何でも、放課後に用事が出来たから少し遅れるって」

 

「そぅ……ですか……」

 

「じゃあ伝えたからね」

 

「あっ、はい……ありがとうございます……」

 

 

そう言って西木野さんは席に戻った。

用事ってもしかして朝の放送かなぁ……

わたしはそんなことを考えながら席に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は、究ちゃんの言っていたアトリエに足を運んだ。

 

 

「特殊状況事件観察研究部?まさか、君たちのような若い子供が、警察の民間協力者とは‥……世の中にはいろんな事や物があるんだねぇ……多様な価値観との出会い、アバンギャルドだ!♪」

 

 

「浅矢 一広」《あさや かずひろ》このアトリエの主人で前衛的な美女画で有名な芸術家だ。

絵とかあんまし見ないから凄いのかどうか分からんが………

すると浅矢は霧子の腕を掴むとどこかへ連れていこうとした。

 

 

「っ!ちょっと?!」

 

「いや、失礼……君があまりにも美しかったので、つい。

どうかね?私の絵のモデルにならないか?無論疚しい事はしないさ、見ての通り首から上にしか興味が無いのでね…… それに、君を画いていれば、何か思い出すかもしれない……幽霊騒動の事とかね?」

 

「あっ……あの、先生……」

 

 

すると背後からおどおどとした態度の男性がやって来た。

 

 

「し、失礼ですよ……初対面の女性に……い、嫌がってるじゃないですか……」

 

「だからお前の画は冴えないんだよ藤宮!!理想のモチーフへの欲望が、衝動が、米粒ほども感じられない!!」

 

 

そう怒鳴った浅矢は藤宮と呼んだ男性に、彼が描いたであろうデッサンを投げつけた。

正直俺には、違いが分からなかった。

 

 

「いや、突然失礼。センスの無い弟子でね。」

 

 

浅矢は一呼吸すると冷静さを取り戻し、謝罪した。

そして俺達はアトリエを出た。

 

 

「怪しいですね、浅矢画伯」

 

「あぁ、ビンゴ穴がいきなり4つ空いた感じだな………………あれ?究ちゃんは?」

 

「幽霊アトリエの画像を抑えておくらしいですよ」

 

 

霧子は俺の背後を指差すと、そこには脚立にまたがり、カメラでアトリエの至るところを連写する究ちゃんがいた。

 

 

「アイツの方が怪しいな………」

 

 

俺がため息混じりに言うと、どんよりが起きた。

 

 

―「「っ!」」

 

―「うわっ、どんより来た~」

 

 

すると隣から悲鳴が聞こえ霧子を見た瞬間、驚いた。

霧子の腕が光の糸のようになって消えていった。

霧子の叫びと共に1台のシフトカーが猛スピードで向かって来た、あの時の洒落たシフトカー、ドリームベガスだ。

ベガスは自身の能力でトランプを生成し、それを俺達に向けて飛ばした。トランプは俺達を通りすぎ、背後にいたロイミュードに当たった。

それと同時に、マックスフレア、ミッドナイトシャドウ、ファンキースパイクが俺のホルスターに、ジャスティスハンターは霧子のホルスターに納まった。

 

 

「大丈夫か?!霧子!!」

 

顔を青くした霧子が震えていた、普段からは想像も出来ないような怯えようだ。

すると背後からクラクションが聞こえ、振り返るとトライドロンが停止し、ドアが開いた。

 

 

『こっちだ!進二!』

 

「助かった、いくぞベルトさん!」

 

『OK! start your engine!』

 

「変身!」

 

《DRIVE type SPEED!》

 

 

やって来たトライドロンからベルトさんを外し腰に巻いて俺は急いで変身し、霧子を避難させ戦いに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は泊さんに言われトライドロンの陰に隠れ、さっき消えかけた手を見た。

 

 

「さっきの……もしかして……」

 

―やっと見つけた、アイツはあの時の‥………

 

私は思い出す、今まで抑えてきた、あの時の恐怖と悲しみ、そして、怒りと憎しみの感情を。

そして私は、トライドロンの陰からドライブ(泊さん)の戦いを見守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は絵の具の様なロイミュードと格闘戦をして、間合いを取るとベルトさんが話しかけてきた。

 

 

『気を付けろ!進化体だ、どんな能力を持っているか分からない』

 

「あぁ、さっき見たよ。人間を光の糸にする能力だった‥……っ!」

 

 

するとロイミュードは近くのコンクリートを光の糸に変え、こちらに向けると、もとのコンクリートに戻った。

 

 

 

「マジかよ?!」

 

《SP,SP,SPEED!》

 

 

俺は急いでシフトレバーを操作しかわした。

 

 

「人間以外にも変えられる何てな。

しかも、もとの姿に戻せるだなんて、厄介だなぁ‥………」

 

 

俺はぼやきながら、再びロイミュードに格闘戦を持ち込んだ、互いに掴みにらみ合いになった瞬間、ロイミュードが口を開いた。

 

 

「貴様が″新しい″、仮面ライダーか?」

 

「っ?!″新しい?"」

 

俺はヤツの言った言葉に動揺した。

その一瞬をつかれ、カウンターを受けて吹き飛ばされた。

するとスピードタイヤがみるみる光の糸になって消えていった。

 

 

「やっべ」

 

『早くタイヤ交換したまえ!』

 

 

すると絵の具のロイミュードに攻撃をしながらベガスがやって来た。

 

 

「よし、お前だベガス」

 

 

俺はベガスを掴みシフトブレスに差し込んだ。

 

 

《タイヤコウカーン! DREAM VEGAS!》

 

 

すると金色のタイヤが3つに増えて、タイヤ交換された。

 

 

「おぉ…今度も盾か、しかも2つ」

 

 

俺は盾で攻撃を防ぎながら絵の具野郎に近づき、盾で殴り付けた。

 

 

『いいぞ、止めだ!』

 

 

アッパーカットを入れ絵の具野郎を殴り飛ばし、シフトブレスのイグナイターを押し、シフトレバーを倒した。

 

 

《ヒッサーツ! Full throttle! VEGAS!》

 

 

するとさっき使った盾が体に装着され、ルーレットになった。

派手な音声と共にルーレットは回りだした。

 

 

「うぉ…何コレ……すげェ事起こりそう」

 

 

ルーレットが止まり、タイヤの絵が3つ揃った。

 

 

―――チャリンッ!チリリリリン‥………

 

 

出てきたのは1枚のコインだった

 

落ちたコインの音だけが、虚しく響いた‥………

 

 

 

 

 

 

 

……‥………

 

 

………………………

 

 

………………………………

 

 

‥………‥………‥………‥………

 

 

‥………‥………‥………‥………‥………

 

 

‥………‥………‥………‥………‥………‥………

 

 

 

 

「‥………‥………‥………ん?」

 

 

 

『ハズレだったようだね………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

状況が理解出来ない

ハズレ?今ベルトさん(コイツ)ハズレって言ったか?

 

 

「ゑぇ~?ハズレとかあんの?…必殺技に?………」

 

 

すると絵の具野郎は攻撃をしてきた。

俺はとっさに持っている盾で防ぐと、そこには誰もいなかった。

 

 

「逃げられたか………」

 

『ベガスと戦うにはコツがいるんだ』

 

「えぇ~……そうゆうの先に言ってよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――同時刻―――

 

ある町外れの廃工場、そこに何かから逃げるように息を切らせながら走る男がいた。

男が倉庫に入ると、緑の服を着た男、ブレンと、赤いコート着た男、ハートが現れた。

 

 

「逃げるなよ、友達だろ?」

 

 

ハートの言葉に怯えながら男は答えた。

 

 

「な、なんだよ!?たかが銀行強盗しただけだろ?!」

 

「やり方の問題なのですよ、アナタはあまりに乱暴で、大規模で、無計画………」

 

 

男の言葉にブレンが答えた。

すると男は背後の殺気に気付き、振り返った。

そこには上下紫の服を着た男、チェイスが立っていた。

 

 

「くそっ!死神め!!」

 

 

男は持っていたバックをチェイスに投げつけ、姿を変えたが………

 

 

《Gun…》

 

 

チェイスは持っていた銀と紫の銃の様な物でバックを撃ち抜いた。

ロイミュードに姿を変えた男を見たチェイスは持っている銃のノズルを左手で押し込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《Break up…》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重低音と共に紫色の光がチェイスの姿を変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が裁かれるなら、あの勝手な絵描きもどうにかしやがれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《Break…》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うぁーーーーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その場には男の姿はなく、ロイミュードのコアとなるナンバー“051”だけが残っていた。

 

 

「……もう一度…やり直せ…‥」

 

 

チェイスがそう呟くと、コアはブレンが持つタブレットに吸い込まれ消えると、ハートが口を開いた。

 

 

「確かに、No.051の言う通りだ、見張っておく必要があるな……ブレン」

 

 

「……ペイント…ですね?」

 

 

ブレンの答えにハートは頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達はあの後すぐにアトリエに戻り、ピコピコで調査をした。

 

 

「なかなか精が出るね」

 

 

 

声がした方を向くと浅矢と藤宮がやって来た。

 

 

「その機械良いよ♪実にアバンギャルドだ」

 

 

浅矢は去り際に霧子の肩に触れて去っていった。

その時、霧子と藤宮がぶつかった。

俺は浅矢の態度にイラッときた。

 

 

「余裕だな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、藤宮がこっちを見たような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は一度ピットに戻り、ベルトさんからロイミュードの擬態能力について説明を受けた。

 

 

『ロイミュードは人間の皮脂質に近い膜を全身に張る事が出来る、しかも鼓動などの生物的データを偽装する事が出来る。見破ることは困難だ』

 

「重加速粒子も体から測定出来ないんじゃ、ボロが出るまで、手の出しようが無いってか……」

 

「それまでに何人の女性が犠牲になると思ってるんですか?」

 

「霧子?」

 

いつもとは違う霧子の雰囲気に俺は戸惑った。

 

「それを救ってやれるのが、私達じゃないんですか?

ノロノロとしている場合じゃないでしょ!」

 

「だけどな、霧子。

厄介な相手だぜ?アイツ等は人間の世界に溶け込んでいる方が安全だって事を知ってるんだ。

それに、俺達は学生で警察じゃない、捜査するのはあくまで民間協力だ」

 

「理屈は分かります……ですが、それを飛び越えて人間を救えるのが……」

 

「それが……仮面ライダー………ってヤツ?」

 

 

俺の言葉に悔しそうに顔をしかめた霧子はピットを出ていった。

すると足元からクラクションを鳴らしながら、ベガスがやって来た。

シフトカーにまで責められんのかよ………

 

 

「何だよ……お前まで俺に抗議かよ?」

 

『それだけ霧子は怖い目に会っているのさ‥………10年前にね‥……』

 

 

俺がベガスに話しかけると、何かを知っていそうなベルトさんが話し出した。

 

 

「10年前‥………グローバルフリーズの日か?」

 

 

ベルトさんの言葉に俺は尋ねた。

 

 

『心に傷を負っているのは、君だけじゃないのさ………君が親友を失ったのと同じように、彼女もまた、大切な人を失った‥……』

 

「大切な…人……」

 

『殺されたのだよ……母親を、ロイミュードに……』

 

「っ!」

 

『10年前、当時7歳の霧子達は母親と夕食に出かけていた、その時、グローバルフリーズが起こり、霧子の母親はロイミュードから彼女を庇い、殺された……そして、霧子自身も側にいた人間をデータ化するもう1体のロイミュードに襲われた……その時、彼女を救ったのが“プロトドライブ”………後に敵は彼を仮面ライダーと呼んだ………そしてその名はヤツ等にとって宿敵の異名となった』

 

「仮面ライダー…同時に霧子のナイト様ってわけか……俺より前に先輩のドライブがいたとはね……あの絵の具野郎が言ってたのは、そういう意味だったのか‥………」

 

 

俺はシフトブレスを見つめ、一つの疑問が浮かんだ。

 

 

「待てよ………じゃあ、何で俺がドライブなんだ?

前にもドライブになったヤツがいるなら、素人の俺よりも、そのプロトドライブになったヤツがドライブになった方が良くないか?」

 

『ん……残念ながら、彼は敵を撃退したが、命を落としたんだ‥………』

 

「えっ?」

 

『プロトドライブは君と違って、敵のコアを破壊する力がまだ備わってなかったからね………』

 

「すまん………」

 

『謝ることは無いさ、むしろ謝るのはワタシの方だ………年端もいかない君達を、戦いに巻き込んでしまったからね………』

 

「なぁ、霧子がアンタに協力する様になったのは………」

 

『母親の仇を取るためだろうね………彼女は探しているのだよ、親の仇を……そのためにワタシに協力をする様になった。

霧子は今回の敵を、あの時に自分を襲ったロイミュードの進化体だと睨んでいるようだ』

 

「霧子の母親を襲ったロイミュードのことも、分かってるのか?」

 

『………………………心当たりは、あるがな………』

 

「どんなヤツ何だ?」

 

『すまない………こればかりは、答えられない……』

 

 

何かに怯えている、そんな気がした。

 

 

『そんなことより進二、行かなくて良いのかね?』

 

「何が?」

 

『………………』

 

 

ベルトさんに呆れ顔で見てくる………

 

 

『体育館裏で1人待ち続ける少女………待たせる男は最低だと思わないか?』

 

「っ!やっべ!?」

 

 

俺は約束を思いだし、時計を見て焦り走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は特状部部室の隣の資料保管室で、重加速粒子測定機を片付けていた。

すると私が使っていた測定機に小さな紙が貼られていた。

 

 

 

 

―【詩島さん、今回の事件についてお話したいことがあります。

明日の12時頃、アトリエの裏口を開けておきますので、来てください。

くれぐれも内密に、先生にバレないために1人で来てください。】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今、今までに無いくらいに焦り走っている。

 

 

「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!」

 

 

体育館裏に着くと、小泉さんがいた。

 

 

「ごめん、小泉さん待たせ………」

 

 

こっちに気付き、振り返った小泉さんは今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に申し訳ありませんでしたー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日俺は、人生で初めて土下座をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは先輩に聞きたいことがあり、放課後にここ、体育館裏の大きな木のある場所で待っている。

事件が起こり、その捜査で遅れると聞いたけど、なかなか来ない。

夕陽が差し込み、辺りが暗くなるに連れて不安になる。

すると待っていた人が来てくれた。

嬉しかった、もしかしたら事件の捜査で何かあったのじゃないかと不安で堪らなかった。

無事に来てくれた先輩を見たら涙が出てきてしまった。

涙を拭い、前を見た瞬間、先輩の姿が見えず、下を向くと土下座をして謝る先輩がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は何て事をしたんだ。

こんな女の子を1人でこんな時間まで待たせるなんて。

すると小泉さんは慌てながら駆け寄ってきた。

 

 

「せ、先輩?!やめてください?!そんな、大丈夫で…キャッ!」

 

「え…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顔を上げると勢い良く躓き、倒れてくる小泉さん……

俺は助けようと立ち上がったが、間に合わない……

受け止められたが、中腰の体制でバランスを崩した

俺にはオチが見えた

デジャヴ?

いや、違う……これは前にも経験したな……

ハァ………また、このオチか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―息苦し……くない?

だが甘い香りはする……

 

って!そんなことはどうでもいい!

もう覚悟は出来た、さぁ、来い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は頬に走る衝撃に備え歯を食い縛ったが一向に痛みが来ない…

恐る恐る目を開くと、絶句した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小泉さんを正面から抱きしめる形で、小泉さんの尻を鷲掴みにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁわわわわわ///////」

 

「ごっ、ごめん、小泉!」

 

 

俺は急いで小泉さんを引き剥がそうとした。

が…………

 

 

 

 

 

 

それは軽率かつ愚かな選択だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ムニュン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな擬音語が聞こえるかのように柔らかな二つの膨らみを、俺の両手は感じ取った。

今度は、小泉さんの胸を鷲掴みにしていた。

小泉さんの顔は赤くなり、涙目になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このパターンは初めてだなぁ……………

しかも思いのほか、希ほどじゃないが、絵里と同じ位は………っていかん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は理性の崩壊一歩手前で我に返り手を離したが、突如ケツに痛みが走った。

 

 

「っ!痛ってー!!」

 

「ぴぃっ?!」

 

 

突然叫び出した俺に、小泉さんは驚いた。

 

 

「ごめん、急にケツに痛みが………」

 

 

二度目の絶句

そこには濃い紫を基調とした黄緑のタイヤの猛獣のようなシフトカーがいた。

コイツ見たことあるぞ、ピットでよく見かける、ハンターとしょっちゅう喧嘩する……

確か、マッシブモンスター

何でいんの?何で俺のケツ噛んだの?

そんなことを考えていると小泉さんの口からとんでもない一言が放たれた。

 

 

「あれ、モンスターちゃん?どうしたの?ダメだよ、いきなり先輩のお尻を噛んだら」

 

 

小泉さんに叱られ、申し訳なさそうにクラクションを鳴らし少し後ずさるモンスター

何だ‥二人は知り合いだったのか‥………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………えっ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

「ぴぃっ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっ、まっ、えっ、ええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どっ、どどどどどどど、どういうこと?!

 

なっ、何で小泉さんがモンスターと?

えっ?

モンスターが小泉さんと?

違う違う、ちょっと待って………

何で、小泉さんが、モンスターの、こと、知ってるの?

よし!!

これで聞こう。

 

 

 

俺は頭の中で小泉さんにどう尋ねるか、シミュレーションした。

 

 

「ビックリサセテゴメン、ヒトツキキタイコトガアルンダケド?」

 

「?……はい、良いですけど………先輩大丈夫ですか?」

 

「ナニガカナ?」

 

「汗すごいです………あと、声も変ですよ?」

 

「ソ、そうか?」

 

 

俺は咳払いをし、呼吸を調えて、小泉さんに質問をした。

 

「何で小泉さんはモンスターのこと知ってるの?」

 

「えっと、前に野良犬から学校のアルパカさんを守ろうとしたわたしを、野良犬から助けてくれたんです」

 

「ふーん……そんな事が……」

 

「先輩、もしかしてモンスターちゃんの事を知ってるんですか?」

 

「えっ?」

 

「先輩の聞き方、知ってるみたいでしたから……」

 

「‥………‥………‥………」

 

 

 

 

 

三度目の絶句

しまったー!墓穴掘ったー!

モンスターの事知ってるのって、知ってる人間の聞き方じゃーん

俺は頭脳の全てをフル回転させ返答を探したが、小泉さんの一言で、俺の思考は、頭脳は、体は、完全に停止した。

 

 

「それより、先輩にお尋ねしたいことがあります!」

 

「ん?何かな(言い訳作成中)」

 

「あ、あの先輩は………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………仮面ライダー…なんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?
ただいま設定等作成中です。(思いつき書いたから、何も考えてなかった)
正体に気づかれた主人公がどう乗り越えるのかは、まだ考えてません。
次回も来週中には投稿出来るよう頑張ります。

それでは、感想やアドバイスあれば気兼ねなく書いてください。



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現れた追跡者《しにがみ》は何者なのか。

仕事を探すより、獣っ娘パラダイスがあるであろう異世界への扉を探す方が、俺のためにもなるし、このご時世に安定した職に就くよりかはよっぽど現実的だと、本気で異世界へ行く手段を模索したケモミミです。
夏風邪引いて投稿遅れました。
最近、ドライブ関連の玩具が叩き売りされていたので、買うかどうか本気で悩んでます(笑)
今回も駄文ですが、楽しんで下さい!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩は………………仮面ライダー……何ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今この子何て言った?

俺は自分の耳を疑い聞き直した。

 

 

 

 

「俺が‥………なんだって?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩は仮面ライダーなんじゃないですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

…………

 

 

 

………………

 

 

 

………………………

 

 

 

………………………………

 

 

 

………………………………………

 

 

 

………………………………………………?

 

 

 

 

‥………‥………‥………‥………何で?

 

 

 

―――おかしい

変身するとこ見られた?

いや、前は車の中で変身したし、その前も誰もいない公園だったし………ここはやはり…………

 

 

 

俺が考え抜いた行動は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仮面ライダーって、何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………とぼける事だ

 

 

こんな所で正体を知られたとなると、今度こそハンターの檻の中だ…………

それだけはなんとか避けたい。

ここは下手に誤魔化すより、完全に知らないフリで通すしかない。

 

「えっと、わたしや凛ちゃんを襲いに来た怪物を倒した人です…」

 

「何で俺が、その……仮面ライダー?なんだ?」

 

「えっと、その……ごめんな…さい……」

 

「いっ、いやいや?!謝らなくて良いから、泣かないでくれ、なっ?そうだ!飴あるよ?食べるか?悲しい時や辛いときは甘い物が……ブァッ、グァ……」

 

 

突然涙声で謝る小泉さんを慰めていると、突如、股間を猛烈な痛みが襲った。

 

 

 

下を見ると、エンジンを噴かしながら第二撃のスタンバイをするモンスターがいた。

どうやらヤツが猛スピードで俺の股間に突っ込んで来やがったようだ。

俺が小泉さんを虐めていると勘違いしているのか、敵意剥き出しだ。

両手で股間を押さえる俺を心配し、近づく小泉さんに心配ないと伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛みが和らぎ、俺達は会話を再開した。

 

 

「で、何で俺が仮面ライダーだと思ったんだ?」

 

「先輩が昔、わたしと凛ちゃんを助けてくれた時、先輩はケンカする前、あの不良の人達に言った事覚えてます?」

 

「もしかして‥…この、ひとっ走り付き合えよの事?」

 

 

俺は腰を低く落とし、いつものポーズを取る。

面と向かって見られると、少し恥ずかしいな……

 

 

「はい……実は、その…仮面ライダーさんも、先輩と同じポーズで、同じ台詞を言ったんです」

 

「‥………‥………‥………」

 

「先輩?汗すごいですよ…顔色も悪いし…」

 

「チガウヨ、ボクハカメンライダーナンカジャナイヨ?」

 

「でも……」

 

「ホっ、ホントホント……俺は昨日倒れてくる柱から小泉達を助けてなんかないよ……」

 

「えっ?」

 

「ゑっ?」

 

「わたしは怪物に襲われたとは言いましたが、倒れてくる柱から助けてもらった何て言ってない…ですよね?

どうして、分かったんですか?」

 

 

「‥………‥………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤッベェェェェェェェェェェェ!!!

 

 

 

 

完全にヤっちゃったよ

どうしよ、コレ?

 

 

 

 

俺は自ら掘った墓穴に盛大に飛び込んだ事に焦り、冷や汗がダラダラと流れ出した。

完全に思考が止まったその瞬間‥………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~♪「「!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の携帯から着信音が流れた。

 

 

「ごめん、ちょっと待って」

 

「あ、はい…」

 

 

着信は………りんなさん?

なんだろ……とにかく助かった。

 

 

「はい泊、どうしたんすか?」

 

―〈あ、進二くん?実は今千早さんに会ってね、昨日の事件解決に進二くんが尽力してくれた事を話したら、すごい喜んでくれて、お祝いにみんなでご飯に行こうって話になったの〉

 

「母さんが?」

 

―〈そ、だから今どこ?もし学校なら、多分部室にまだ西城くんが居るから、伝えて来てね?霧子ちゃんにはこっちから連絡するから♪〉

 

「分かった、場所は?」

 

―〈えっと、近所にあるレストランのワグナリアって所〉

 

「あ~、あのファミレスね、了解」

 

―〈頼んだわね~♪〉

 

 

 

俺は通話を終えると携帯をしまい、小泉に話しかけた。

 

 

「悪いな小泉、ちょっと用事出来た」

 

「いえ、気にしないで下さ……」

 

 

~~~♪

 

 

 

すると今度は小泉の携帯が鳴り出した。

 

 

「すいません……はい、もしもし…お母さん?‥……え?……うん……うん……分かった…うん、じゃあ、お仕事頑張ってね…」

 

「どうしたの?」

 

「お母さんからです、仕事が長引いて今日は遅くなるそうで、晩ごはんは自分で作って食べてだそうです…」

 

 

「そっか……それなら、一緒に来るか?」

 

「えっ?!」

 

「俺のせいでこんな時間まで待たせちまったからな。

もう暗いし、俺車通学だから、小泉を家まで送って行くつもりだったんだ。

用事もみんなでメシ食いに行くだけだから、晩飯も食えるし、ちょうどいいだろ?」

 

「でも…ご迷惑じゃ……」

 

「全然、むしろみんな歓迎してくれると思うぜ。

ちょっと待ってろ…………

………もしもし、りんなさん?一人増えるけどいいよな?」

 

―〈いいけど誰呼ぶの?〉

 

「この間の目撃者の子だよ」

 

―〈ハハ~ン♪確かに可愛い娘達だったけど、もう手を出したの?〉

 

「何でそうなる」

 

―〈冗談よ♪目撃証言で協力してくれたし、むしろ歓迎よ~♪〉

 

「ありがとな、じゃあ連れてくから………………

な?大丈夫だったろ」

 

「はい、じゃあ………お言葉に甘えて…」

 

「おぅ、じゃあ行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは今、駐車場に向かっている。

泊先輩に先輩は部室に用があるから、先に車の所で待っておくように言われたからだ。

先輩は………「俺の車、赤いスポーツカーだから、多分見たらわかるかな?そこで待ってて」………そう言っていた。

 

 

「赤いスポーツカー…赤いスポーツカー……あれかな?

……えっ?……この車…」

 

 

わたしは初めて見るはずの先輩の車に驚いた。

 

 

「この車…やっぱり、先輩が……」

 

 

でも……どうして先輩は………

 

 

 

 

 

 

しばらくして先輩がやって来た。

わたしは、胸に残ったモヤモヤを抱えたまま、学校を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺と小泉がファミレスに入ると、店員さんが出迎えてくれたが………

 

 

「いらっしゃいませ、ワグナリアへようこそ。

2名様ですか?」

 

「‥………?あっいえ、沢神か、泊で待ち合わせしているものですが………」

 

「お待ちしておりました。

では、12番テーブルですので、ご案内致します」

 

 

そう言って出迎えてくれたのは、小学生くらいの女の子だった。

さすがに小泉も驚いていた。

店員の女の子に案内してもらうと、りんなさんが座っていた。

 

 

「遅いわよ進二くん」

 

「わりー、わりー」

 

「あの…お邪魔…します……」

 

「いらっしゃい♪」

 

「りんなさんは……紹介しなくていいな」

 

「ひっど~い」

 

「小泉、りんなさんは分かるな?」

 

「あ、はい」

 

「今日集まるのは特状部のメンバーだから、初対面なのは……あれ?母さんは?」

 

「お手洗い……あ!来た来た、千早さーん」

 

「えっ?千早……?」

 

「あら?進二、その娘貴方のガールフレンドかしら?」

 

「開口一番に何てこと言いやがる。

小泉、このひ……「ふぇ、」……ふぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フエェェェェェェェェェェェェェェェ!?」

 

 

 

 

 

 

 

突然叫びだした小泉に俺らはもちろん、店中の人達が驚いていた。

 

 

「びっくりした~、どうした小泉?」

 

「ど、どどどどどどど、どうしたもこうしたも無いですよ!先輩!あっあの御方は……」

 

「お客様、どうかなさいましたか?」

 

「あぁ、すいません。なんでも無いで……えっ?」

 

 

小泉の叫びに反応した女性店員がやって来たのだが、俺はその店員に言葉を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何でこの人、帯刀してるんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その女性店員は腰に日本刀にしか見えないものを腰につけている。

俺は店員さんに何でもない事を再度伝え、席についた。

小泉を見ると、まだ口をパクパクとしながら驚いていた。

 

 

「とりあえず落ち着け小泉、なんかあったか?」

 

「小泉ちゃんどうしたの?」

 

「…あ…あの!!」

 

「えっ?な、何かしら?」

 

 

またもや突然、小泉は俺の母さんの前に立ち大声を出した。

母さんも戸惑っている。

すると小泉は目を輝かせながら言った。

 

 

「あの!もしかして、元スーパーアイドルの如月 千早さんではないでしょうか!!」

 

「え、えぇ。そうですけど……」

 

「やっ、やっぱり……あの!サインを!あ、握手をしてもらっていいでしょうか!」

 

「お、落ち着け小泉。母さんが困ってる」

 

「はっ!…す、すいません!」

 

「いいわよ、気にしないで」

 

「しっかし驚いたな、さっきまでとは別人だな」

 

「私も~、前に部室に来たときはおとなしい娘だと思ってた」

 

「あぁ、意外な一面ってヤツだな。

てか、母さんってアイドルだったの?」

 

 

「「「えっ?」」」

 

 

「な、何だよ。

てか、究ちゃんいつの間に来たんだよ?」

 

「今さっきだよ。

それよりも進二くん、まさか如月 千早を知らないなんて、君はそれでも千早さんの息子かい!」

 

「私も千早さんの事は知ってたわよ?」

 

「えっ、りんなさんも?

母さんってそんなに凄い人なの?」

 

「凄いなんてものじゃ無いですよ!」

 

「小泉?キャラ変わってるぞ?」

 

「如月 千早さんは、無名だった小さな事務所に所属していながらも、当時のメンバー12人で一躍有名になった伝説のアイドル。

当時メンバーが学生だった事から、学生でもトップアイドルになれる事を証明し、スクールアイドル誕生のきっかけを作ったとされる、まさに生きる伝説!

その上、メンバーの中でも群を抜いた歌唱力を持ち、その歌声は奇跡だと言われるほどで、千早さんを越えるアーティストは未だに現れておらず、世界中では彼女を越える歌姫は二度と現れないと言われるほどの人智を越えたアーティスト!伝説のアイドル伝説でも特集を組まれるほどの超有名人ですよ!」

 

 

熱弁する小泉は、今までとはまったくの別人と言えるほどの豹変ぶりを見せつけた。

 

 

「な、なるほど……」

 

「進二くんが来る前に、何人かの人がサイン貰いに来たのよ?」

 

「そうなの?母さん」

 

「えぇ。でも、アイドルはもう引退したから、普通に接してもらいたいわ」

 

「すいません…」

 

 

しょんぼりとする小泉を見た母さんは、クスクス笑いながら手を差しのべた。

 

 

「まぁ、サインはダメだけども、進二のガールフレンド候補の娘だし、握手位なら良いわよ?」

 

「アンタ何言ってんの?!」

 

「ありがとうございます!」

 

「小泉?!」

 

 

 

母さんの爆弾発言はスルーしたのか聞こえてなかったのか、がっしりと母さんの手を握る小泉はものすごく嬉しそうだった。

 

 

 

「そういや霧子は?」

 

「何でも今日は予定があるらしくて、無理だって」

 

「霧子ちゃん…今日の事件から、様子へンだよね?」

 

「西城くんもそう思う?」

 

「まぁ、霧子なりになんかあんだろ……それより何か頼もうぜ。

腹へって仕方ねぇ」

 

 

 

 

 

みんながそれぞれ注文すると、俺と究ちゃんはドリンクバーに人数分のドリンクを取りに行った。

その時に、奥の厨房から皿の割れる音が連発し、男の怒鳴り声がすると思えば、今度は女の子の悲鳴と打撃音、男の断末魔が聞こえた。

小学生くらいの女の子といい、帯刀女といい、この店大丈夫なのか?

 

 

 

 

席に戻りみんなと雑談していると料理が運ばれた。

頼んだメニューは

究ちゃんがカレーライス

りんなさんはハンバーグステーキ

母さんがドリアにデザートと称しソフトクリームを3つ

小泉は特盛ご飯とご飯のお供セットと言う変わったものを注文した。

ちなみに俺は、超激辛担々麺。

どうでもいいが、俺は飴が大好物だが、味覚は辛党なのだ。

運んできたメガネの男性店員の頬は片方腫れていた。

断末魔の持ち主は彼だな、そんな事を思いながら料理を口にした。

味は普通に旨かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事がすみわたしは今、先輩の車に乗せて貰い家に向かっている。

それにしても今日は驚いた。

まさか先輩が、あの如月 千早さんの息子さんだったなんて。

食事の時の会話や雰囲気を思いだし、笑いが込み上げてきた。

 

 

「フフッ」

 

「どうした?小泉」

 

「いえ、今日は楽しかったなって…」

 

「あ~、確かに。

たまにはあんな風に、みんなで飯食うのも悪くないな。

‥………久しぶりだよ、あぁやって母さんと笑いながら食事するの」

 

「えっ?」

 

 

先輩の言葉に質問すると、何でもないと笑いながらはぐらかされた。

でも、その時の先輩の笑顔は、どこか悲しく、寂しそうな笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

商店街のとあるゲームセンター

そこには、レースゲームを楽しむ赤いコートを着た男、ハートがハンドルを握り、ゲームを楽しんでいた。

 

 

「こんな所に居たのですか?ハート」

 

「ん?…ブレンか、何か様か?」

 

「様も何も、何をなさっているのですか?」

 

「ゲームと言うらしい、なかなかに楽しいぞ。

どうだブレン?一勝負」

 

「遠慮しておきます」

 

「つれないな……」

 

「何時からここにいらしたのですか?」

 

「ほんの6時間ほどだよ…おっと!」

 

「6時間?!

ハート……あなたは我々の長です。

そんなのでは、他の者達に示しがつきません、何故6時間もゲームなんかを……」

 

「あぁ……最初は本当に暇潰し程度の気持ちだったんだがな…やっているうちに‥……」

 

「おや、ゴールしましたね。

なかなかのタイムですね?」

 

「いや、またダメだった……」

 

「また?」

 

「あぁ……見てみろ」

 

「総合ランクSS……順位は"2位"ですか……」

 

「何度やっても1位になれなくてな、6時間挑み続けてたのさ…」

 

「相変わらず、負けず嫌いなお人だ…」

 

「一度でもいいから、直接会って対戦してみたいものだよ、"1位"とは………」

 

 

 

 

 

 

そう言いハートは、画面に表示された名前を指でなぞりながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

「いつか相見えたいものだ……"SHINJI"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘ…ヘックシュッ!……ズァ…風邪か?」

 

俺は小泉を家に帰し、自室でくつろいでいた。

 

 

「進二?入るわよ」

 

 

ドアを開けて入って来た母さんは手にケーキをのせた皿を持っていた。

 

 

「どうしたの?そのケーキ」

 

「フフッ、ちょっとしたお祝い」

 

「お祝い?」

 

「りんなちゃんから聞いたわよ、希ちゃんと仲直り出来たみたいね?」

 

「あぁ、まぁな」

 

「絢瀬くんの事、あの娘も気にしてたのね……」

 

「………………」

 

「ッ!ごめんなさい……一番辛いのは進二だったわね」

 

「いいよ、もう吹っ切れた。

それに絢瀬とも約束したからな……」

 

「そ……吹っ切れたの本当みたいね?」

 

「分かんの?」

 

「当たり前よそんなの。

なんたって、貴方の母親だからね?」

 

 

微笑む母さんの顔は凄く綺麗だった。

余談ではあるが、俺の母さんは年齢と外見が一致しない。

昔から確かに若く見えるってのは知ってたが、結婚してからはほとんど変化していない。

ケーキと一緒に置かれた紅茶を口にした瞬間、突然母さんが爆弾を投げてきた。

 

 

「それで希ちゃんとはいつ付き合うの?」

 

「ブッ!?ゲ…ゲホッゴホッ…ガハッ………はぁ?」

 

「あら?違うの?

もしかして、今日連れてきた…花陽ちゃん?

それとも絵里ちゃん?

それとも…………」

 

「まてまてまて、何言ってやがる」

 

「そう考えると貴方、女の子の友達多いわね」

 

「えっ?」

 

「だって、希ちゃんに絵里ちゃん、りんなちゃんに穂乃果ちゃん、海未ちゃんにことりちゃん、今日来た花陽ちゃんと来なかった霧子ちゃん……男の子の友達は究くんと明くんしか知らないわよ?」

 

「いや、他にもいるよ!?」

 

「例えば?」

 

俺は学校でよく話す人物を思い出した。

 

 

 

 

女子

絵里

穂乃果

海未

ことり

にこ

小泉

雪穂

西木野(知り合い)

星空(知り合い)

りんなさん

霧子

湊先生

理事長

 

男子

究ちゃん

絢瀬(故人)

現さん

呉ちゃん

志渡先生

戦極先生

本願寺先生

 

オネェ

凰蓮先生

泉先生

 

…………………あれ?

 

 

「見事に女の子が多いわね」

 

「……………………」

 

「まぁ…どの娘にするのかは、貴方次第ね?」

 

「い、いない訳じゃないから……男友達…」

 

「フフッ…なら、大事にしなさい。大切な友達…」

 

「あぁ……分かってる」

 

 

そうして俺と母さんはケーキを食べた。

母さんはどう思っているか分からないが、俺はこのケーキにもう一つのお祝いを付け足そう。

 

俺と母さんが

 

元の親子に戻れた祝いを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

俺と究ちゃんは昼休みに部室で捜査の整理をしていた。

 

 

―――あ~もやもやする。

光の糸?女の子を糸にしてヤツはどうするんだ?

 

 

俺が考えていると、背後から奇声染みた笑い声がした。

 

 

「ヌァッファッファッファッファー……魅せてやるぞ…僕の情報網の凄さを…キエーー!」

 

「何してんの?究ちゃん」

 

「あのアトリエ周辺で消えた美女のリストアップさ……」

 

 

そう言いながらリズム良くタイピングする究ちゃんのリストを見た。

 

 

「ッ!ちょっと待って究ちゃん、2つ前の画像見せて!」

 

 

究ちゃんが画像を引き出すと、俺のギアが入った。

 

 

「そうか……脳細胞が、トップギアだぜ……解ったぞ霧子!……あれ?先生」

 

「霧子ちゃんなら、今日は部活に来てませんよ?」

 

「何?何が解ったの?」

 

「究ちゃん!急いでもう一つ調べてくれ!」

 

「何を?」

 

「浅矢画伯の人間関係」

 

先生の言葉に俺の中に不安が過った。

究ちゃんが調べ終わると、結果は俺の予想通りだった。

質問してきた究ちゃんを無視して、俺は部室を飛び出した。

 

―――もし俺の予想が正しければ、霧子が危ない!

 

俺はトライドロンに乗り込み、学校を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は昨日見つけたメモの通りに浅矢画伯のアトリエにやって来た。

藤宮さんの指示された通りに裏口に向かうと、鍵が開いており、そこから中に入った。

 

 

「藤宮さん?…………いらっしゃいますか?……藤宮さん?」

 

 

アトリエに入り、浅矢画伯の作品が置かれた部屋に入ると、絵が置かれた方から声がした。

そして私が絵を手にすると、絵が喋りだした。

 

―助けて……

―ここから出して……

―苦しいよぅ……

―お願い、出して……

 

 

「そうか…ヤツは人間をデータ状に変換出来る、拐った人達を絵に書き込んだのね!」

 

 

私が真相に気付くと、足音が聞こえた。

 

 

「こっちヘ…」

 

 

すると藤宮さんが現れ、私を外に連れ出した。

少し離れた公園まで走って行くと藤宮さんが立ち止まった。

肩で息をする藤宮さんに私は声をかけた。

 

「ありがとうございます、藤宮さん。

貴方、浅矢画伯の犯罪を伝えようとして……藤宮さん?」

 

「貴女は…先生には勿体無い……貴女を下書きにすれば…今度こそ………最高の画が…描ける気がする………」

 

 

そう言う藤宮さんの顔は狂い出したような笑顔で持っていたスケッチブックを開いた。

そのスケッチブックは、浅矢の絵と同じように女性の声がした。

 

 

「僕の絵の………生け贄になってください!」

 

 

そう言った藤宮さんは、ロイミュードに姿を変えた。

そして重加速を起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は浅矢のアトリエに向かう途中、絵を持って逃げる霧子と藤宮を見つけ、後をつけた。

すると藤宮はロイミュードに姿を変え、霧子に襲いかかった。

俺はトライドロンから飛び出し、ロイミュードを蹴り飛ばした。

霧子のシフトホルダーにシャドウとスパイクをセットして、藤宮が持っていたスケッチブックを拾った。

 

「間に合ったな、霧子………はい、これ持ってて」

 

「泊さん?…どうして…」

 

 

今にも泣き出しそうな霧子に、俺は拾ったスケッチブックを渡し、事の真相を説明をした。

 

 

「やっとエンジンかかってさ………

そのスケッチブックに描かれた顔と、行方不明者の特徴が重なった…」

 

 

俺は藤宮だったロイミュードの方を向き、説明を続けた。

 

 

「幽霊アトリエ事件は、絵から逃げ出した人間達を、お前が引き戻す光景だったんだ!

究ちゃんに調べてもらった、浅矢画伯に藤宮なんて弟子は存在しないそうだ…」

 

「ギア入るの遅いです!泊さん!」

 

 

元気を取り戻した霧子は、早速突っ掛かって来た。

うん、大丈夫。いつもの霧子だ。

 

 

「安心しろ……こっからは速いぜ、なぁ?ベルトさん…」

 

『最高速で倒そう!start your engine!』

 

 

俺はベルトさんのキーを回し、シフトカーをブレスに差し込んだ。

 

―もう、完全にいたについたな……

 

そんな事を考えながら、いつものように叫んだ。

 

 

「変身!」

 

《DRIVE type SPEED!》

 

 

 

俺は霧子に隠れておくように言うと、ロイミュードに格闘戦を持ち込んだ。

 

 

「ハッ、タァ!……オリャッ!」

 

 

俺は数発の打撃を打ち込み、ロイミュードを噴水に投げ込んだ。

 

 

「ハハッ、気持ちいいだろ?」

 

噴水の中で再び格闘戦に持ち込み、回し蹴りでロイミュードを噴水から蹴り飛ばした。

 

 

「どうした?今日はキレがないな?」

 

 

少し調子に乗ってしまい、俺はヤツの吐いた糸をもろに受けてしまった

 

 

「ヤッベ、動けねぇ…」

 

「食らえ!」

 

 

ヤツは光弾を連射し、クリティカルヒットした。

 

 

「グァ…痛って~…」

 

『タイヤ交換だ!』

 

 

ベルトさんがそう言った瞬間、昨日の事を思い出した。

 

 

「いや、ベガスはちょっと勘弁だわぁ…」

 

『ピットから援軍を呼んである』

 

 

すると2台のシフトカーがロイミュードを撥ね飛ばし、俺に巻き付いた糸を引き剥がしてくれた。

俺はその2台を掴むと少し驚いた。

 

 

「あぁ、こいつらね…」

 

 

来たのはモンスターと確か…ミキサーだったかな?

 

 

「よし、行くぜ!」

 

 

BGM:『SURPRISE-DRIVER』

 

 

俺はミキサーをレバーモードにし、ブレスに差し込んだ。

 

 

《タイヤコウカーン! SPIN MIXER!》

 

「うおぁ…重いな……」

 

スピードタイヤから交換された瞬間、体が重くなった。

気になり交換されたタイヤに触ると、100%コンクリートだった。

そりゃ重いわけだ…

 

………

 

 

………………

 

 

………………………

 

 

………………………………

 

 

………………………………………

 

 

だから、どうやって戦えってんだよ!

ハンターやベガスみたいに、なんかオプション付いてるならまだしも、ただのコンクリじゃん!重いだけじゃん!

 

 

するとロイミュードは木に蜘蛛の巣を張り、そこから攻撃してきた。

 

 

「クッソ!こうなりゃ自棄だ!」

 

 

俺はベルトさんのキーを回し、ブレスのイグナイターを押した。

 

 

《ヒッサーツ!Full throttle!MIXER!》

 

 

するとミキサータイヤが高速回転し、コンクリート弾を撃ち出した。

木の上のロイミュードに当たると落ちて来た。

 

「グァ!…ナッナンダ、ウゴケナイ?!」

 

 

ロイミュードの足にこびりついたコンクリが固まり、動きを封じた。

 

 

『スピンミキサーのコンクリート弾は強力だ!

次はマッシブモンスターのパワーで噛み砕け!』

 

 

俺は言われた通りにミキサーからモンスターにタイヤ交換した。

 

 

《タイヤコウカーン!MASSIVE MONSTER!》

 

 

今度は緑のタイヤから紫のタイヤが飛び出し、タイヤ交換された。

 

 

「これまた、凄いの来たな……」

 

 

俺は両手に装備された緑のモンスターの顎の様な武器でロイミュードを攻撃し、キーを回しイグナイターを押した。

 

 

《ヒッサーツ!Full throttle!MONSTER!》

 

 

今度は紫のタイヤから舌?が伸びロイミュードを捕縛し、巨大なエネルギー体となった両手の武器で、文字通り噛み砕いた。

ロイミュードを破壊したのと同時に、スケッチブックの絵が消えた。

 

 

「OK…元の人間に戻りそうな感じだな……」

 

『ん?こっちの絵は戻らないぞ?』

 

「えっ?」

 

 

ベルトさんの言った通り、霧子が持っていたキャンバスの絵は戻っていなかった。

 

 

「そうか……これは藤宮が描いた絵じゃない……進化体は虹色の光だったが、さっきのロイミュード(藤宮)の光は灰色だった……」

 

「だからナンバーが違ってたんだ!あのロイミュードは10年前に私を襲ったヤツじゃありません……」

 

「人間を絵に閉じ込める犯人は他にもいることになる……だとすると……」

 

「もう一人はおそらく……浅矢 一広……」

 

「あぁ、だとすれば急いで……ッ!危ない!グァ!」

 

「ッ!泊さん!」

 

 

俺と霧子が推理をしていると、背後から殺気を感じ、咄嗟に霧子を庇い何者かの攻撃を受けた。

攻撃のする方を向くと、黒いバイクに股がった紫の服を着た男が銃の様な物をこっちに向けていた。

 

 

「………仮面ライダー…か

俺の仲間を……殺ったな……」

 

『この男……まさか!』

 

 

ベルトさんはコイツを知っているのか?

男はバイクから降りると持っていた銃の様な物のノズルを反対の手で押し込むと、謎の重低音が流れた。

 

 

《Break up…》

 

 

そして重低音と光が男を包み、男の姿を変えた。

黒と紫を基調としたジャンク品とバイクのエンジンを思わせる鎧は、ロイミュードの体というよりは、ドライブ()に近い物だった。

 

 

「お前は?!」

 

「俺は《魔進チェイサー》……ロイミュードの番人にして……"死神"だ……」

 

《Gun…》

 

そう言い近づいて来るヤツは再び銃のノズルを押し込んだ。

 

―ヤバい……コイツ、今までのヤツとは桁違いだ。

 

俺の体は本能的にヤツから滲み出る殺気を危険と感じた。

一歩……また一歩と互いに距離を詰め、同時に飛び出し、格闘戦を始める。

海未ん家の道場でも師範から太鼓判を押されていたし、親父からは総合格闘技を、学校では元軍人&傭兵のオネェ教師二人に近接格闘術を習っている。

格闘戦なら自信がある。

格闘戦に持ち込めば、勝機はある……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………そう思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァッ!タァ!トリャッ!」

 

「ヌゥ……クッ……」

 

 

俺の変則的な技にヤツは防戦だ

 

―よし!この調子なら……

 

ヤツに関節技をいれようと掴んだ瞬間、ヤツは圧倒的なパワーで掴み反してきた。

 

 

「ッ!何ッ!」

 

「フンッ!」

 

「ガァッ!」

 

 

俺は腹に一撃を受け、怯んだところに回し蹴りを入れられ、蹴り飛ばされた。

そしてヤツは銃を俺に向けて来た。

 

 

「ッ!マズイ!……グァ!」

 

 

俺はヤツの放つ弾丸をかわさずに受けた。

 

 

「霧子下がれ!」

 

《Break…》

 

 

再び銃のノズルを押し込んだヤツは銃をナックルの用に使い攻撃してきた。

霧子を下がらせたは良いが、パワーの差は埋まらない。

ヤツの重い一撃が一発、また一発と打ち込まれる。

俺はダメージのあまり、反撃できずにいた。

いや、反撃は出来る…だが……

 

 

『この戦士、プロトドライブを研究して造られたのか?』

 

 

ベルトさんがヤツの正体を推測するが、俺はそれどころではない。

 

 

「何をやってるんです、反撃して!泊さん!」

 

「簡単に言うなよ!」

 

 

防戦一方の俺にしびれを切らし、霧子が怒鳴って来たが俺も怒鳴り返した。

近接戦ならパワーで押される……

距離を空ければ銃で攻撃される……

そうなると下手すりゃ……

 

 

「クッソ!こうなりゃ盾だけでも欲しいぜ……」

 

 

そうぼやくと、ベガスが飛んで来た。

 

 

「ベガス~♪」

 

 

俺はベガスを掴むと嬉しさのあまりにキスをした。

 

 

《タイヤコウカーン! DREAM VEGAS!》

 

 

すかさずベガスにタイヤ交換をし、盾でヤツの弾丸を防いだ。

 

 

「アンタ無口だねぇ…デートの時とか、間がもたなくて困んない?」

 

 

俺はどうでもいい様な雑談を持ちかけたが、ヤツは無視して撃ってきた。

 

 

「ッ!あぶねっ!」

 

 

撃たれた銃弾を再び防いだ。

 

 

「無視かよ……」

 

 

ヤツが再び銃の引き金に指をかけた瞬間、トライドロンがクラクションと共に砲撃をしながらやって来た。

 

 

「霧子乗れ!」

 

 

俺はベガスの盾をヤツに投げつけ怯んだ隙に、霧子と共にトライドロンに乗り、その場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃がしたか……」

 

 

チェイサーが悔しそうに去った後、離れた茂みから絵の具を模したロイミュード、《ペイントロイミュード》が姿をみせた。

 

「魔進チェイサー……死神め…仮面ライダーを追っ払うとは、どうやら何もかも、私に都合良く動いてくれそうだ…」

 

 

そう呟いたペイントロイミュードは、浅矢 一広に姿を変えた。

 

「あの小娘……やはりあの時の……これはまた、描きたい絵が増えたなぁ…"ヤツ"からもらったこの写真の娘と言い、また私のコレクションが増える、これは実にアバンギャルドだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言う浅矢の手には、弓道着に身を包んだ少女の写真が握られていた。




どうでしたか?
また写真オチですが、これは伏線なのでご了承下さい。
主人公の携帯着信音は脳コメのサントラに収録された、「party time チャラ神のテーマ」です
どっちかというと剛っぽい感じの曲(作者の着信音)
多分次回でドライブVol,1分は終わりです。
その次からラブライブ本編+オリジナル展開を考えてます。
アーツのデットヒート・マッハ予約しないと♪
それでは、いつも通り感想、お気に入り登録、評価お願いしますか


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笑顔を捨てた復讐者《きりこ》の決意とは何か。

アーツのタイプワイルドとことりを入手し喜び狂うケモミミです。
ようやく完成しました。
投稿遅れてすみません。
いっちょまえにスランプになりました。
いつも通りの駄文ですが、楽しんでください。









 

 

 

 

 

 

ドライブピット内

 

俺たちは死神との戦いの後、トライドロンに霧子を乗せ、退却した。

あの死神について、ベルトさんに聞きたいことは山程あるが、まずは浅矢の事に専念するべきだと意見が一致し、事件の整理をすることになった。

 

 

『では、事件を整理してみよう』

 

 

そう言いベルトさんは自分をセットした専用の台座に付いてあるカメラから映像を映し出した。

 

 

『敵は、人間をデータの線にして、絵に描き込む事が出来る…そして犯人は二人……同じ能力を持つロイミュード』

 

「アトリエから脱け出して、幽霊騒動を起こしたのが……藤宮(ロイミュードNo.084)の被害者だった…多分力が足りずに、絵から脱け出してしまったのが、幽霊騒動の真相…」

 

『あぁ、そのNo.084のスケッチブックは白紙になり、被害者である人間の無事も確認されたが、浅矢 一広の絵は戻らないままだ……』

 

 

俺とベルトさんが互いに推理していると、突然霧子が割って入った。

 

 

「泊さん!なぜさっきの戦闘、防戦一方で逃げ出したんですか?」

 

 

―何かと思えば、そんな事か……

やっぱしコイツ、一番大事な事に気づいてないな……

 

俺はため息して、霧子の方を向いて話した。

 

 

「だってさぁ、あの死神のダンナ、無茶苦茶強いんだぜ?」

 

「だからって…「何より!」ッ!」

 

 

まだ突っかかる霧子に俺は少し怒鳴った。

 

 

「人間が入っている絵が側にあったんだ」

 

「えっ?」

 

「頼りなく見えるけど、俺は命を…悲しみから皆を守る為に戦っているんだ……現さんに頼んで、なんとか絵だけでも浅矢から押収出来るように頑張るから……」

 

 

俺は霧子の肩叩いて、ピットを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泊さんが部屋を出た後、私は呆然と立ち尽くした。

するとクリムは私に話しかけてきた。

 

 

『霧子、君は何故、ロイミュードと戦う事を選んだ?』

 

「母さんの仇を討つためです。

私は、その為に生きている、戦っているんです!」

 

『なら君は……目的の為なら…何でもするのかね?』

 

「母さんの仇を討てるなら……私はなんだってします」

 

『そうか……なら質問を変えよう……

君はワタシが、何のために、何をするために、ドライブを造り出したか、理解出来るかね?』

 

「それは……全てのロイミュードを破壊する(ころす)為です」

 

『当たらずとも遠からず、だね……

確かにワタシは、ロイミュードの撃退ではなく、破壊を目的として、ドライブを造り出した……

なら何故、装着者を必要とする造りにしたと思う?』

 

「……?言っている意味が解りません」

 

『ロイミュードを破壊するだけなら、別に装着者が必要な鎧型にせずとも、ミサイルや銃など、兵器にすればいい……ワタシが聞いているのは、

"何故、兵器としてではなく、鎧という形にしたのか"

その理由を聞いているのだよ…』

 

「…………………」

 

 

『霧子、何故進二がヤツとの戦いにおいて防御に徹したのか解るか?』

 

「…………いえ…」

 

『進二が言っただろ……守る為に戦っていると……』

 

「っ?!まさか…泊さんは……」

 

『そうだ霧子、進二は君とその絵を庇いながら戦っていた、君たちの無事を最優先したんだ……

そしてそれが、私がドライブをあの形で造り出した理由さ……

人間を守る、その為の戦士……それが、ドライブだ……

改めて質問しよう……君はさっき、目的の為なら何でもすると言った……そこに、人間の命の生き死には含まれているのかね?

"人間の命よりも、ロイミュードの殲滅を優先する……"

それが君の考えかね?』

 

「……ですが!守ってばかりでは、ロイミュードは倒せません!ましてや、あの死神を倒すことも!」

 

『確かに…今度また、あの死神が襲って来たら、次こそ危ないなぁ……ちょっと失礼……………ハロー、元気かね?ワタシだ……ドライブの"新戦力"を急いでほしい…』

 

 

クリムがあの人に連絡している間、私はピットを出た……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は間違っているのだろうか……………

 

 

 

でも……やっぱり、憎しみは、恨みは、怒りは……

 

 

 

消せない……………

 

 

 

私を襲ったアイツを……

 

 

 

 

 

ロイミュードを許せない……………

 

 

 

 

 

 

母さんを殺した……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冷気を…氷を操る、あのロイミュードを殺すために……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑顔を……………捨てたのだから……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある廃墟、その中に置かれたベンチに、1人の男が座り、手に持った銀色の銃を眺めていた。

 

 

「仮面ライダーを仕留め損ねたそうですね?チェイス……」

 

「ブレンか………何の用だ?」

 

「いえ、あなたも獲物を仕留め損ねる事があるのですね?」

 

「……………」

 

「癇に障ったなら謝りましょう……

実は貴方に別の任務を頼みに来たのです」

 

「仮面ライダーの始末はどうするつもりだ?」

 

「それについては、貴方には待機してもらいたい」

 

「……何故だ?」

 

「自ら仮面ライダーに挑むと言う輩が現れましてね……」

 

「?…誰が……」

 

「"クラッシュ"……ヤツですよ……」

 

「なるほど……で、俺に頼みたい事とは何だ?」

 

「ペイントの、見張りと護衛さ……」

 

「ハート……」

 

「どうやらヤツは何か企んでいる、それを調べて貰いたい」

 

「その為の見張りか……護衛と言うのは?」

 

「ただ単に、友達が仮面ライダーに殺られないためさ……」

 

「疑うのに守るのか?」

 

「友達だからな」

 

「……良いだろう…引き受けた…」

 

「ありがとう、友よ」

 

「では、仮面ライダーについては、クラッシュに一任する……と言うわけですね?」

 

「あぁ、俺たち程では無いにしろ、間違いなくアイツは強い……任せてみても良いだろう」

 

「分かりました……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は現さんと共に、浅矢から絵を押収するために、アトリエにやって来たが……………

 

 

 

「クソッ!……やられた…」

 

「おい、どういう事だよ進二?絵なんて何処にも無いじゃないか…」

 

 

俺たちの目に写ったのは何もないアトリエだった。

 

―やられた………藤宮を倒したんだ、浅矢が絵を隠さない訳がない。

 

俺が次に打つ手を考えながら、絵が置かれていた場所を見ていると、大量のコンセントと配線の拡張機材が置かれていた。

すると背後から浅矢がやって来た。

 

 

「絵なら、この間入ったこそ泥に盗まれてしまってねぇ」

 

「盗難ですか?事情聴取の為、本庁に御同行お願いします」

 

 

白々しく嘘をつく浅矢に現さんが話しかけた。あらかじめ現さんには浅矢がこの事件の重要参考人であることを伝えている。

浅矢さえ抑えられれば、直接の被害は防げるはずだ。

俺と現さんは、浅矢を警視庁まで連行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はクリムと話終わり、1人、中庭の木の側に座っていた。

 

 

「守る為に戦う……」

 

 

泊さんがやろうとしたことも、クリムの言うことも解る。

でも……

 

 

「あれ?先輩?」

 

「……?貴女は確か……」

 

 

そこにはパンを持った女の子がいた。

 

 

「高坂 穂乃果です!」

 

「どうしてここに?」

 

「パンを食べに!ここで食べるパンはまた、格別なんです!」

 

「そうですか…」

 

「先輩こそ、どうしてここに?」

 

「…それは……高坂さん」

 

「?はい」

 

「貴女は、"守る"って何だと思いますか?」

 

「守る…ですか?」

 

「私には、解らないんです……」

 

「私にも、難しいことは……進にぃや海未ちゃんなら、何か良いこと言ってくれると思うけど…」

 

「泊さんが……」

 

「私は、多分…みんなを笑顔にする事、悲しみや苦しみから、他の人を助ける事だと思います」

 

「え?」

 

「これも、進にぃの受け売り何ですけど……」

 

「泊さんの?」

 

「進にぃ、苦しいのとか悲しいが嫌いで、自分がした嫌な経験を、他の人達にしてほしくない、そう言ってたんです。

私も、それは同じです。

命を守るのも、約束を守るのも、言葉や意味は違っても、最後は人の心を守ることに繋がると思うんです。

だから………えっと…嫌なものからみんなの心を守る事、そうすれば、幸せになる!笑顔になる!

……それが、"守る"ってことじゃないですかね…タハハァ…」

 

そう言うと彼女は、照れくさそうに自分の頭を撫でながら笑った。

 

 

「心を……」

 

 

でも…やっぱり私は……

 

 

「穂乃果!」

 

「海未ちゃんにことりちゃん。どうしたの?」

 

「貴女、財布落としましたよ?」

 

「えぇ~?!嘘?!……ない、…ない!」

 

「ハァ……常に注意する様に言ったいるでしょ……」

 

「はい、穂乃果ちゃん♪」

 

「私の財布~!ありがと~、ことりちゃ~ん」

 

「お礼なら、見つけた海未ちゃんに言おうね?」

 

「ありがと~、海未ちゃ~ん」

 

「分かりましたから、抱きつかない!

それより穂乃果、先輩と何を話していたのですか?」

 

「ちょっとした……お悩み相談?」

 

「穂乃果ちゃん悩みとかあったの?!」

 

「ことりちゃん酷~い!」

 

 

私は彼女達のやり取りを見ていると、心のどこかが、温かくなった。

すると彼女達が、悲しむ姿が脳裏によぎった……

 

―彼女達には、あんな思いをしてほしくない……

そのために、私に出来る事があるなら……

 

そんな気持ちがこみ上げて来た。

 

 

 

そうか……この気持ちが……

 

 

 

 

「じゃあ、何の話をしていたのですか?」

 

「だから悩み相談だって」

 

「穂乃果の悩みなんて、パンを沢山食べたいや、和菓子が飽きたなどでしょ?」

 

「ひどいよ、海未ちゃん~」

 

「違います…話しを聞いてもらったのは、私の方です」

 

「先輩が?」

 

「はい、高坂さん…ありがとうございます」

 

「い、いえいえ!…お役に立てたかは分かりませんが……」

 

「いえ、一つ……答えが見つかりました」

 

「答え……?」

 

 

首をかしげる高坂さんに私は、一礼し、クリムの所に向かった。

私が見つけた、答えを伝えるために……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『少し……言い過ぎてしまったかね……』

 

 

ワタシは1人、ドライブピットで、霧子に言った言葉を思い出していた。

 

 

『ワタシも…あまり人の事は、責められないのにな……』

 

 

ワタシ自身、復讐も、怒りも、恨みも抱いている。

そんな事を考えていると、霧子がピットに戻って来た。

その瞳は、何かを決めたような、真っ直ぐな目をした……

 

 

『どうした、霧子?』

 

「クリム……私は、復讐心をすてるつもりはありません。

……ですが、………人間の命を最優先して行動します」

 

『!……そうか…』

 

 

ワタシは霧子の言葉に喜びを感じた。

 

 

「あの子と話し、気付いたこともあります」

 

『?…何かね……』

 

「それは……いえ、これは私だけの秘密です……」

 

『気になるじゃないか……』

 

「普段から秘密主義のクリムに、秘密の一つや二つをしてもバチは当たりませんから…」

 

 

そう言った彼女の表情は少し明るく見えた。

 

―本当に気になる……………

しかし、霧子が話したあの子とは……

 

ワタシが考え込んでいると、進二から連絡が来た。

 

 

内容は……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浅矢 一広を確保したという内容だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バァン!

 

 

「おいおい、これじゃまるで、取り調べじゃないか?

私は、被害者なのだよ?」

 

 

浅矢の態度に腹を立てた現さんが思い切り机を叩いた。

当の浅矢は飄々とした態度で挑発してくる。

俺は怒りをこらえ、浅矢を睨む。

 

 

「しかし、人間を絵に描き込む怪物ねぇ……

もしそれが本当なら、羨ましい事この上ない……」

 

「何だと?」

 

 

浅矢の言葉にこらえていた怒りが、沸き上がって来た。

 

 

「私が、もし、その怪物なら…こう言うね……

"絵の中の女達は、人質だ……俺を追うな"ってね?」

 

 

その瞬間、俺の頭の中で何かがキレた。

俺は浅矢の胸ぐらを掴み上げ、浅矢を睨んだ。

現さんの抑制も今回ばかりは無視させて貰う。

 

 

「何かね?」

 

「俺の顔、よ~く覚えておけよ?三流芸術家……

つまらない自己満足の為に、女の子を苦しませるなら……お前は俺が裁く……」

 

 

俺はそう言い捨て、取調室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、クリムから浅矢が警視庁の取調室に居ることを聞き、取調室横の一室で浅矢の取り調べをみていた。

浅矢の言葉に私は、部屋を飛び出しそうになったが、泊さんの一喝が、私に冷静さを取り戻させた。

そして私は、一つの決意を胸に、あの人の元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちは、浅矢を容疑者に絞りはしたが、物的証拠がなく、証拠になりうる絵を隠されたため、部室で現さんを交え、対抗策を考えていた。

 

 

「やっはろ~♪久しぶり~」

 

 

気の抜けた挨拶と共に、りんなさんと霧子が部室に入って来た。

 

 

「あ~れ、りんなちゃん、久しぶりじゃない?

今まで何してたの?」

 

 

同じく気の抜けた返事で返す先生は、りんなさんに質問をした。

そして返ってきた返事に俺達は驚いた。

 

 

「ちょっと野暮用でね~、霧子ちゃんにも~、浅矢の絵の分析を頼まれたし~」

 

「「「浅矢の絵?!」」」

 

「霧子…お前……」

 

「ちょっと待て、浅矢は絵が盗まれたって言ってたな?…その絵はどっから持って来た?」

 

 

そう尋ねる現さんを本願寺先生がなだめた。

りんなさんが持っている絵は、霧子が藤宮と逃亡した際に持っていた絵だった。

するとりんなさんは少し険しい表情で説明を始めた。

 

 

「結論から言うわ。

この絵は生きている……正確には、生きた人間が入っているの。

絵から生体反応が検知されたわ。

気になって、西城くんの作った行方不明者リストを見たらどんぴしゃ、絵の女性とほぼ同一人物だと思われる人がいたわ。

進二くんの報告書にあった、人間をデータ状に変える怪物が、キャンバスにその人を閉じ込めたのね。

それと、これはただのキャンバスじゃない、特殊な化合物で生成されているの。

だから、データ状に変換した人間を描き込む事ができる。

でも、それをフィックスしておくには、大量の電力を必要とするの……」

 

 

俺はアトリエで見た、異常なまでのコンセントと配線の拡張機材を思い出し、りんなさんの説明で、俺の中の全てが繋がった。

 

 

「繋がった……確かに、あのアトリエがそうだった……究ちゃん、浅矢のアトリエのここ最近の電力消費量を調べられるか?」

 

「もう調べたよ、確かに浅矢 一広のアトリエは、ある日を境に異常なまでの電力を消費している……ビンゴだね」

 

「ちょっと待て、だとすれば……絵が隠された場所は……」

 

「人気が少なく……消費電力が多い所……究ちゃん!」

 

「それなら、もっと詳しい人がいるから、協力して貰おう………知り合いに電気関連に詳しい人がいる、その人に頼めばイッパツだよ」

 

「おいおい、一般人、ましては学生がそんな事調べるんじゃ……「まぁまぁ」」

 

 

 

正論を述べる現さんを先生がまたなだめた。

 

 

「よし、なら究ちゃん、場所が特定出来たら連絡くれ。

俺はめぼしい所を片っ端から調べてみ…「待ってください!」…霧子?」

 

 

俺が部室を出ようとした瞬間、霧子に呼び止められた。

 

 

「泊さんは浅矢の動きをマークしてください。

絵の隠し場所は、私達で必ず見つけ出しますから」

 

「気合い入ってんな、でも絶対無茶はするなよ」

 

 

すると霧子は、俺の机の上にいたハンターを掴み、部室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨が激しく降る中、俺はベルトさんと共にトライドロン内で、浅矢に動きが無いか、張り込みをしている。

 

 

「……まだ特に、目立った動きは無いな…」

 

『あぁ……霧子からの連絡だと、調査は湾岸倉庫街に絞られたそうだね』

 

「あぁ、向こうは進展あっても、こっちは………ん?あれ……ベガスか?」

 

 

激しく降る雨の中、一台のシフトカー、ドリームベガスが浅矢邸を見つめていた。

 

 

「アイツもこっち組か?……スゲェ執念だな…」

 

『もし、浅矢が本当にあの時のロイミュード〈No.010〉なら……霧子だけでなく、ベガス自身の……仇でもあるからね……』

 

「えっ?」

 

『10年前……彼の親友、ディメンションキャブは、ヤツとの戦闘で、ボディに重症を負って…今も、戦線離脱している……』

 

「親友が……」

 

『それ以来、洒落っ気のある彼の遊び心は、吹っ切れてしまった……』

 

 

俺はベガスに絢瀬を失った時の自分を重ねた。

 

 

「お疲れ、ベガス。

話は聞いた、……お前の気持ち、少し解るよ…」

 

 

俺はベガスのそばに行き、話しかけた。

相棒を、親友を失う辛さは……俺も知っている。

ベガスが俺の過去を知っているかは知らないが、クラクションを鳴らすベガスは、俺を慰めてくれた様に感じた。

雨が止み、雲間から日の光が見える空を、俺達は見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし……ベガス、必ずヤツを…ッ!」

 

 

俺がベガスに話しかけた瞬間、ペイントロイミュードが屋根の上から、こちらを見ていた。

 

 

「あの野郎、とうとう逃げ出す気だな……ベガス、追跡頼む!俺もすぐに追い付く!」

 

 

俺はそう言って、トライドロンに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『追うんだ!進二!』

 

「分かってる!……ぜってぇ、逃がさねぇ」

 

 

俺はベルトさんを巻き、トライドロンを走らせた。

 

 

『Start your engine!』

 

「変身!」

 

《DRIVE type SPEED!》

 

 

変身し、ペイントロイミュードを追うと、突然の銃撃が俺達を襲った。

銃撃が来た方向、そこには死神が……魔進チェイサーが立っていた。

 

 

「へっ…精々死神と遊んでろ!バイバイ……」

 

 

そう言って、ペイントロイミュードは逃げていった。

 

 

 

 

『マズイ…逃げられる……ッ!魔進チェイサー?!』

 

 

トライドロンから降りた俺に、死神が襲ってきた。

 

 

「おいっ、邪魔すんな!こっちは急いでんだ!」

 

 

格闘戦中に俺が愚痴混じりに悪態をつくと、チェイサーは声を上げ喋った。

 

 

「俺は確かに死神だが、コアは壊さない!

ロイミュードにやり直すチャンスを与える!」

 

 

ヤツの圧倒的なパワーに押され気味の俺は苦戦を強いられた。

 

「だが、貴様はコアを破壊し仲間を減らす!」

 

「くっ…なんだと?!」

 

 

俺と死神は互いに掴み、睨み合った。

 

 

「貴様こそ、本当の死神だ!」

 

 

そう言って、俺の脇腹を蹴り、怯んだところに、持っている銃で俺を殴り付け、距離を空けた途端に撃ってきた。

俺は飛んでくる銃撃をかわしながら、大木の陰に隠れた。

 

 

「互角……いや、パワーと経験の差があるから、向こうの方が強いかな……」

 

『Good!正確な解析だ、その差は"新戦力"で埋めよう』

 

「"新戦力"?」

 

 

ベルトさんの言葉を聞き返すと、トライドロンから"何か"が飛んできた。

 

 

俺は飛んできた"それ"を掴んだ。

 

 

「これって……」

 

『ドライブ専用の加速剣、新開発の圧縮SO-1合金で出来ている、名前は未定だが……』

 

 

 

俺が掴んだのは、刀身の刃にあたる部分が青く透き通った機械的な外見の剣だった。

ただ、普通の剣と違い、"ハンドル"が付いていた。

だがこの際それは気にならない。

何故なら、今までハンターの鉄格子やベガスの盾、モンスターの顎など、ろくな武器が無かったからだ。

だからこの剣という真っ当な武器は、むしろ俺に安心感を持たせた。

 

 

 

「名前ね…どう考えても、"ハンドル剣"だろ……」

 

『いや、見たまんまだねぇ……もう少し、エクセレントな名前つけないか?』

 

 

驚いた様な呆れた様な、微妙な声で反論するベルトさん。

思い返せば昔からそうだ、俺が名前をつけると、何かと周りは反対する。

母さんや穂乃果達、希達に、親友の絢瀬すらもだ。

だが今回は押し通す!

そんな事を考えていると死神は再び撃ってきた。

俺はすかさず剣で防御し、この剣の名前を決めた。

 

 

「いいや!ハンドル剣で決まり!」

 

 

俺はハンドル剣で死神に反撃に出た。

切りつけようと剣を振ると、ハンドル剣が高速で振動し、剣その物が"加速"した。

 

 

「うぉ……こいつ、なかなかの暴れ馬だな……肩持ってかれるかと思ったぜ…」

 

『直感的に戦うんだ!』

 

「OK…考えるのはやめた、フィーリングで勝負だ! 」

 

 

俺はハンドル剣で死神を攻撃すると、すかさず死神が防御した。

 

 

「…これならどうだ!」

 

《ターン!》

 

「ッ!ぐあっ!くっ…」

 

 

俺はハンドル剣のグリップガードに付けられたハンドルをきった。

すると、剣の加速速度が上がり速度に追てこれない死神は俺の攻撃を受けた。

 

 

「いいねぇ……もういっちょ!」

 

《ターン!》

 

「ぐおっ!」

 

「まだまだ!」

 

《ターン!Uターン!》

 

 

死神の横腹を切りつけ、ハンドル剣の加速を利用し、振り向き様にもう一撃を入れた。

死神の銃撃をかわし、距離を空けないように踏み込んだ。死神がハンドル剣を持っている銃で受け止めると、互いに掴み合い、均衡状態になった。

 

俺と死神は互いに距離を空けようとした瞬間、重加速が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある湾岸倉庫街、私と西城くんは倉庫の周辺を調査していた。

 

 

「ヤバい……運動不足だ……疲れた………」

 

「私は寝不足~……フアァ…」

 

 

寝不足と運動不足に愚痴る私と西城くんの足取りは重く、なかなか調査は進まなかった。

 

 

「こっちはハズレかしら~……霧子ちゃんの方は大丈夫かしら…」

 

 

ふと、手分けして調査に行った霧子ちゃんが心配になった。

妙な胸騒ぎが、私を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今、重加速反応が強い倉庫の内部に侵入し、調査をしていた。

 

 

「反応が強くなってきた……それに最近、ここに誰かが立ち入った形跡がある……泊さんに連絡を…ッ!」

 

 

私が携帯を出した瞬間、光弾が私の携帯を弾き飛ばした。

 

 

「やはり君は…アバンギャルドだ!」

 

「浅矢……やはり貴方が、No.010だったんですね?」

 

「初めて会ったあの時よりも、美しく成長してくれて、嬉しいよ……」

 

「まさか……私の事を、覚えていたの?!」

 

「当然さ!……と言っても、気付いたのはついこの間だがね。

君を逃してからは、様々な女達を絵にしたが……あの時の、恐怖に染まる君の表情を越える女は現れ無かった。

君の前では、ここにいる他の絵の女達が、霞んで見えるよ……」

 

「やはり、ここに絵が…」

 

「仮面ライダーは、死神と殺り合っている…邪魔は入らないさ……ハハハハハッ!」

 

そう言いながら、浅矢は一枚の写真を取り出した。

 

 

「"ヤツ"から渡された写真の女を絵にしてから、日本を去ろうと思っていたが……気が変わった!この女の前に、君を絵にして行こう……君とこの女を絵にすれば、私は満たされる……更なる高みへと進むことが出来る……」

 

 

そう言った浅矢の持つ写真に写っていた女性を見た私は、驚きを隠せなかった。

そこには弓道着を着、凛とした態度で弓を構える少女の姿が写っていた。

 

 

「嘘……あの娘、確か高坂さんの……」

 

「おや、知っているのかね?」

 

「彼女をどうするつもり?!」

 

「言っただろ、日本を去る前に絵にすると……

ようやく、君に匹敵する素材を見つけたんだからね……

この女の表情が、恐怖に染まるのを想像するだけでも…興奮する!」

 

 

 

瞬間、私の頭の中に、絵にされ…恐怖に泣き叫ぶ園田さんと、友人を失い…悲しむ高坂さん達の顔が浮かんだ。

 

―頼りなく見えるけど、俺は命を…悲しみから皆を守る為に戦っているんだ……―

 

私は、泊さんの言葉を思い出した。

 

 

「私……その言葉の意味…少し、解りましたよ…泊さん……」

 

 

私は懐に隠している、拳銃を浅矢に向けた。

 

 

「正気か?そんな銃でロイミュードに歯向かうなど…」

 

「10年前……母さんが死んでから、私は貴方達に復讐するためだけに生きてきた。

貴方達を皆殺しにするために。

母さんを殺したアイツを……"氷を操るロイミュード"を殺すために……私は、笑顔を捨てた。

今もそう、復讐の為ならなんだってする覚悟がある。

貴方達を皆殺しに出来るなら、私は死んだってかまわない、そう思ってる。

でも、あの娘達と出会って気付いた……私は……私と同じ悲しみ、苦しみを、他の人達にしてほしくないと……その為に、戦う事が……"守る"事が出来ると!」

 

 

私は戦う、母さんの仇のために

 

私は守る、もう誰にも悲しい思いをさせない為に

 

 

復讐の為だけに戦わない、そう心に決めたんだ。

 

 

「それが!私の見つけた答えだから!」

 

「バカめ!」

 

 

私は銃の引き金を引こうとすると、浅矢はペイントロイミュードに姿を変え、重加速を起こすと同時に、私の腰のシフトホルダーに攻撃し、付けてあるハンターを弾き飛ばした。

 

 

 

 

そして私は、重加速にさらされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!重加速?!……まさか…ベルトさん!」

 

 

突然の重加速に俺とベルトさんはある事に気付いた。

 

 

『あぁ!湾岸倉庫街からだ』

 

「やっぱり……「よそ見をするな!」…ッ!グアッ!」

 

 

重加速に気をとられた俺は、死神の一撃にダウンした。

 

 

「…クァッ…やっ…べ……」

 

「終わりだ!」

 

 

死神が俺に銃を向け、引き金を引いた瞬間、目の前に黄色い輪っかが盾になり、死神の放った銃弾を吸い込み、俺を助けた。

 

 

「何?!ッ!グアッ!」

 

 

黄色い輪っかはそのまま、吸い込んだ死神の銃弾を吐き出し、死神にダメージを与えた。

足元をみると、1台の黄色のシフトカーがいた。

 

 

「何だ、今の?このシフトカーがやったのか?」

 

『ッ!…ディメンションキャブ!復活したのか』

 

「こいつが?べガスの相棒の…」

 

『新開発の圧縮SO-1合金が、彼のボディの修復に役立った様だ』

 

 

するとべガスが、キャブの側に駆けつけ、嬉しそうにクラクションを鳴らしながら、走り回った。

 

 

「良かったな、べガス…親友が元気になって。

お前が心から羨ましいぜ」

 

 

死神が怯んでいる間に、俺はトライドロンに乗り込み、走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくすると、死神がバイクに乗って、追って来た。

 

 

「チェイサーって名乗るだけはあるな……まともに追いかけっこしたら、振り切れそうに無いな……フレア、スパイク、モンスター…頼む!」

 

《タイヤフエール!》

 

 

タイヤによる攻撃に怯んだ死神はすぐに持ち直し、追って来た。

 

 

「クソダメか…このままじゃ間に合わない……」

 

『進二、キャブを使え!』

 

「?…わかった、頼むキャブ!」

 

《タイヤフエール!》

 

 

すると、目の前に黄色いゲートが現れた。

俺がゲートを抜けると同時に、ゲートは消えた。

俺は目の前の光景に驚愕した。

 

 

 

ゲートを抜けた先は、俺達が目指していた、湾岸倉庫街だった。

 

 

「……えっ?……ワープ…した?」

 

『キャブの能力さ……詳しい説明は後だ、まずは……』

 

「あぁ、急ごう」

 

 

そして俺達はトライドロンで、目的地に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―「ッ!?」

 

 

重加速が発生し、気付くと、私の手があの時のように光の糸になって消えていく。

 

 

 

「身動きの取れないまま、恐怖に染まった顔の絵になれ!

君こそ私の、最高傑作になる女だ!」

 

 

そう言いながら、高笑いをする浅矢。

 

 

「さぁ、私のコレクションになれ。

君のお友達も、すぐコレクションに加えてやる……っ?!」

 

 

 

奥の 倉庫の扉が開くと、そこには……何も無い光景だった。

 

 

「バカな?!絵が、絵がない!何処に…「ハァッ!」グアッ!」

 

 

動揺する浅矢を殴り飛ばし、私を救ってくれたのは、ずっと待っていた泊さん(バディ)だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は浅矢を殴り、スパイクを霧子に向けて投げた。

 

「大丈夫か?霧子」

 

「泊さん?」

 

「心配するな、絵は全部トライドロンの中だ」

 

 

すると、ペイントロイミュードは浅矢の姿に戻り、叫んだ。

 

 

「何故ここがわかった?!」

 

「霧子がお前に、わざと重加速を起こさせたからだ!」

 

「何?!」

 

『発生した重加速圏内に居れば、ワタシには、その中心点が分かる』

 

「俺達に絵の場所を教えるためだと、すぐにピンと来た。

…まったく、無茶するなって言ったのに」

 

 

「私、信じてましたから。

一度重加速さえ起こせば、必ず駆けつけてくれるって」

 

「嬉しい事言ってくれるね……」

 

『Good! nice buddyだ、君達は。

だが、ワタシとしては少々妬けるがな……』

 

「バカな?!死神はどうした?!何故絵がない?!何故貴様らのようなガキに?!」

 

 

荒れ狂う浅矢は再びペイントロイミュードに姿を変え、地団駄を踏みながら叫んだ。

すると霧子は前に出て答えた。

 

 

「答えは簡単、それはこの人が…仮面ライダーだからです!」

 

 

振り向く霧子の言葉に俺は頷き、霧子の前に立ち、浅矢に言った。

 

 

「覚えてるか?俺が取調室でテメェに言った事……お前は俺が裁く!」

 

 

俺は一つの決心と共にエンジンキーを回した。

 

 

『Start your engine!』

 

「変身!」

 

《DRIVE type SPEED!》

 

 

 

 

 

 

 

―名乗ろう、お前たちを倒す者の名を……

 

 

 

 

 

 

――名乗ろう、世界を守る為に戦う者の名を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――受け継ごう、人々の命と幸せを守る戦士の名を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は一つの覚悟を胸に叫んだ

 

 

 

 

 

 

 

「俺は…仮面ライダー……ドライブ!」

 

「仮面ライダー……ドライブ?」

 

 

「……ひとっ走り付き合えよ」

 

 

 

BGM:『Don't lose your mind』

 

 

俺は駆け出し、ペイントロイミュードの攻撃を防ぎ、奴にパンチの連打を叩き込み、エルボーで怯ませた後、渾身の一撃で外に殴り飛ばした。

 

 

 

「よ~し、じゃあさっきの質問の答えを教えてやろう……」

 

 

俺はエンジンキーを回し、シフトスピードを抜いて、ディメンションキャブをシフトブレスに差し込み操作した。

 

 

《タイヤコウカーン!DETERMINATION CAB!》

 

 

「?!」

 

 

黄色いタクシーの様な柄のタイヤに交換されるとタイヤが半分に割れ、タイヤに仕切れた頭部からの右上半身が地面に落ちた。

その様子を見たペイントロイミュードは驚き動揺していた。

そりゃそうだ、いきなり頭を含めた上半身の右半分が"外れた"のだから……

子供見たら泣くぞ、これ……

 

 

「~♪バイバ~イ♪」

 

 

俺(右上半身)はそう言うと割れたタイヤの中に別れた右上半身を入れて、消えた。

 

 

「何?!」

 

 

 

タイヤだけが残った光景に驚くペイントロイミュードは、ひとりでに転がるタイヤに警戒し、俺(右上半身)が顔を出すと、触手を束にして攻撃してきた。

俺(右上半身)はそれをかわすと、触手をつたって、ペイントロイミュードの顔面をタコ殴りにし、アッパーで殴り飛ばした。

怯むペイントロイミュードに、俺(残り本体)は背後から蹴りを入れて追い討ちをかけた。

 

 

「そうか……この力で私の絵を!」

 

 

俺は体を元に戻し、肩を回した。

やっぱりあれは慣れそうに無いな……

俺が体を気にしていると、ベルトさんが答えた。

 

『Exactly……このディメンションキャブの能力は独自に生成したゲートで、空間レベルの移動を可能にする事だ。

その力で倉庫の外から絵を奪還したのさ』

 

「死神からもその力で逃れたのか、私の愛する作品を……この盗人め!」

 

「誘拐犯にだけは言われたくねぇ!こい、ハンドル剣!」

 

 

俺が呼ぶと、トライドロンが走りながらハンドル剣を飛ばして来た。

俺はハンドル剣を掴み、クラクションを鳴らした。

 

 

 

BGM:『SURPRISE-DRIVER』

 

 

俺はハンドル剣でペイントロイミュードに斬りかかり、斬撃を繰り出すと、べガスが飛んできた。

 

 

「どうした?べガス」

 

『進二ならスリーセブンを当てられるんじゃないかと言っているぞ』

 

「えっ?!あれ、俺が止めていいの?!何だよ、先に言えよ~」

 

 

俺は愚痴りながら、べガスにタイヤ交換した。

 

 

《タイヤコウカーン!DREAM VEGAS!》

 

 

「遊び心が戻った様だな、べガス。……いくぜ!」

 

 

 

すると、胸のルーレットが"777"になり、大量のコインが、ペイントロイミュードの攻撃を押しきり、ダメージを与えた。

 

 

『べガスを剣に装填してフィニッシュだ!』

 

「OK」

 

 

ベルトさんに言われた通りに、べガスをハンドル剣に

差し込むと、俺は剣を構え直した。

 

 

 

《ヒッサーツ!DREAM VEGAS!Full throttle!》

 

 

 

 

 

 

 

ハンドル剣の高速斬撃の連続に耐えきれず、ペイントロイミュードは爆発した。

 

すると、炎の中から虹色光の塊が現れ、雨の様に降り注いだ。

俺は変身を解除し、光が降り注ぐ光景を見つめた。

 

 

「見ろよべガス、霧子………虹の雨だ……

きっとこの雨が、お前たちの心の傷を癒してくれるさ……」

 

 

柄にもない台詞を吐きながら二人を見た。

すると、少し微笑む霧子に言う……

 

 

「あれ?お前今笑っ…「てません」…はい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部室内

俺達は浅矢から回収した絵から、解放された人達の無事を知り、安堵していた。

現さんは消えたキャンバスにずっと驚いている。

りんなさんの話では、隠されていた絵の中浅矢本人がいたらしく、事情聴取に追われているそうだ。

俺は警察に提出する報告書から逃れるために、屋上に来ている。

風にあたりながら、俺は一つの疑問を考えていた。

 

 

―何故、死神はあの場所に来なかったのか……

 

 

 

単純に浅矢から場所を知らされていなかったのか?

だが用意周到なアイツが、そんなミスをするのか?

俺には分からない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、この原因を知るのは、そう遠くなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また友達が減ったか……」

 

「チェイス、何故あの後ペイントの下に向かわなかったのですか?」

 

「奴から絵の隠し場所を聞き出せなかったからだ……」

 

「そうですか…やはり奴は、何かを隠していたみたいですね?」

 

「あぁ……そのようだ……」

 

 

 

 

俺は嘘をついた……

本当はペイントからどこに絵があるのかを聞いていた。

だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

「ッ!逃げられたか……」

 

「なぁ、待てよ……」

 

「…?……誰だ…」

 

 

俺がペイントの下に向かおうとした時、帽子を深くかぶり、パーカーのフードを帽子の上に被った男が立っていた。

 

 

「ここは退いてくれないかな?アイツの所には僕が行くからさ……」

 

「誰だと聞いている…」

 

 

俺はブレイクガンナーを男に向け尋ねた。

 

 

「怖い怖い、そんな物騒な物仕舞おうよ…………とりあえず、僕は味方だからさ」

 

「なら正体を表せ」

 

 

俺はブレイクガンナーの引き金を引くと、奴は姿を変えた。

 

 

「やはりロイミュードか……」

 

「いきなり酷いな~…ま、同じロイミュードだし、これで信用してくれるかな?」

 

「………………」

 

「別に信用して貰わなくて良いから、とりあえずここは任せてよ♪」

 

「……良いだろ…」

 

「ありがと♪じゃあ、行って来るね♪……と、いけないいけない……くれぐれも、僕と会ったことは、《No.002》と《No.003》には秘密にね?それじゃ!」

 

 

そう言い残し、奴は去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―奴は何者なんだ……

 

 

 

 

 

俺は一つの疑問を胸に、ハート達の下を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある倉庫の屋根の上、辺りは夜で暗くなるなか、一人の男が座っていた。

男の手には何かが握られており、男はそれに話しかけた。

 

「まったく……僕が来なかったら、危なかったね?」

 

「すまないね……だが、君に助けられるとは思ってなかったよ……」

 

「まぁ、良いさ……新しい体は少し待ってね?

こっちにもやることあるから」

 

「分かっているさ……だが、描き損ねた女がいるからね、早くまた"絵が描きたくて仕方がないよ"あの小娘は諦めるが……あの写真の娘だけでも、欲しいものだ」

 

「フフッ、まぁ少しの辛抱だよ?…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………No.010(ペイント)……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辺りはすっかり夜になり、全ての生徒が帰った中、

特状部部室、そこに一人の女が立っていた。

泊 進二の机の上にあるタクシーのミニカーが女に近づくと、女はそれを掴み、細く笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?
早速オリキャラと原作ブレイクしてみました。
どう展開するかはお楽しみという訳で。
次回からようやくラブライブ本編に入れます!
出来る限り早く投稿出来るよう頑張ります!
では、いつものごとく、お気に入り登録、感想、評価、お願いします!


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夢をみる少女《はなよ》が見た現実とは何か。

サプライズ・フューチャー見ました!
個人的には、ライダー映画の中で一番の出来だと感じます!
月末にはデート・ア・ライブの劇場版も観に行く予定です!
ただ……甲子園のせいで2週間もドライブが見れないなんて……………

えっ?投稿が遅いって?
確かに私が執筆をサボったり、気分転換と称し違う作品を投稿していたからな……
私に否があることは認めよう……
だが、私は謝らない。
何故なら君たちが、文句を言いながらも読んでくれると信じているからだ……………









マジ遅れてすんませんっしたー(泣)






 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新学期が始まり、2週間が過ぎた

そんなある日に事件は起きた。

 

 

 

 

 

 

 

「…ふぁぁ……おはよう……」

 

「おはよ、進二くん♪」

 

「珍しいわね、アンタが遅刻しないなんて」

 

 

眠い目を擦りながら、俺は希とにこに挨拶をした。

 

 

「うるせぇ…そんなに遅刻してないだろ」

 

「してなくても、何時もギリギリじゃない」

 

「良いんだよ、してなきゃ」

 

「また屁理屈言って」

 

「まぁまぁにこっち、進二くんに言っても無駄やと思うで?」

 

「そうだ。無駄だぞ、にこ」

 

「アンタ自分で言って悲しくないわけ?!」

 

 

何時もの様な朝に足りないものを感じ、俺は希に尋ねた。

 

 

「そういや、絵里は?」

 

「「………………」」

 

 

突然の沈黙、そしてにこが口を開いた。

 

 

「アンタ、まだ聞いてないの?」

 

「聞く?何が……」

 

「ハァ…………実は……」

 

「?」

 

 

 

そして俺がにこから聞いたのは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の朝、全校集会が急遽行われ、にこの言った"ある事"が、南理事長の口から告げられた。

 

 

 

 

 

それは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音ノ木坂学院廃校の知らせだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は部室に向かいながら、持っている缶コーヒーを開け、朝の出来事を思い出していた。

 

―まさかあの噂がホントだったなんてな……

まぁ……俺達がどうこう出来る話じゃないしな……

 

そんな事を思っていると、部室の前に着いた。

だが妙に騒がしい、中で何をやっているのか気になり、扉を開けた。

 

 

 

そして、俺の目に映ったのは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や~だ~!や~だ~!何で学校が廃校になるの!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

床を転がりながら幼児の様に駄々をこねるりんなさんの姿だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なにやってんだ………あの人……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「泊さん……どうしましょう……?」

 

「……………ほっとけ」

 

 

戸惑いながら霧子が尋ねて来たので、俺は一番良い対処法を教えた。

俺はこの光景は他の奴で見慣れている。

よく和菓子飽きた、餡子飽きた、パンが食べたいやらで手を妬かされたからな………

すると、俺に気付いたりんなさんは、涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔で抱き付いてきた。

 

「あっ!!進二く~ん!ど~しよ~、学校が廃校になっちゃうよ~、うわぁ~~ん!」

 

「ちょっ?!りんなさん、くっつくな!てか鼻水!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく泣き止んだりんなさんは、俺の持っていた缶コーヒーをかっさらい、飲み干した。

 

 

「で?何でそこまで荒れてたわけ?」

 

 

缶コーヒーを奪われ、少し不機嫌な俺はりんなさんに尋ねた。

 

 

「どーもこーも無いわよ!聞いたでしょ?学校の事」

 

「あぁ、廃校になるらしいな?」

 

 

俺はりんなさんの言葉に返事をしながら、ポケットからひとやすみるくを取りだし、口に運んだ。

 

 

「ちょっと、何よ!その反応!」

 

「「「ッ!」」」

 

 

怒鳴るりんなさんに俺達は驚いた。

 

 

「何って言われてもな……」

 

「僕たちに当たられてもね……」

 

 

俺と究ちゃんが小声で言うと、りんなさんは俺と究ちゃんの胸ぐらを掴み、顔を近付けた。

 

 

「何か言った~?」

 

「「イッ、イエ……マリモ…………」」

 

 

りんなさんの顔にびびった俺達は、恐怖のあまり舌が回らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

りんなさんから解放された俺達は、りんなさんから少し距離を置いて、話を続けた。

 

 

「話戻すけど、学校が廃校になるってだけで、何であそこまで荒れてたわけ?」

 

「学校が廃校になるのよ?!」

 

「あぁ」

 

「学校が無くなるのよ?!」

 

「ん、それで?」

 

 

―ガシッ!

 

 

次の瞬間、俺の頭部はりんなさんのアイアンクローによって、粉々に砕かれそうな勢いだった。

 

 

「イタッ、ちょっ!りんなさん?!力強っ!…痛いっ!マジヤバイ!頭蓋がメキメキ言ってる?!ちょっと?!りんなさん?!力強くなってない?!アタタタタタタ!!マジすんません!ホント痛いんで……イタタタタタ!!」

 

「何でそこまで、ドライなの?

どこまで、飴と車しか興味無いわけ?」

 

「イヤ、廃校なんて俺達じゃどうしようも無ぁ……イタタタタタ!」

 

「りんなさん!それ以上すると泊さんが危険です!」

 

「えぇ?しょうがないわね~」

 

 

霧子が俺の頭から発せられた音に気付き、仲裁に入ってくれた。

 

 

 

「痛って~…あ~、マジで痛かった……」

 

「だ、大丈夫かい?進二くん…」

 

「指の痕が、陥没してますね……」

 

 

痛がる俺に、究ちゃんと霧子が心配してくれた。

霧子が俺を心配するなんてめったにないから、驚きながらも、嬉しがる自分がいた。

 

てか、陥没するほどね握力って………

ゴッドですか?

シャイニングなんですか?

流派東方不敗でも体得したんですか?

 

俺は密かにりんなさんの右手のに紋章が無いか調べた。

 

 

 

「何か失礼な事考えてな~い?進二くん?」

 

 

笑いながらりんなさんは、りんなさんが飲み干した、俺のコーヒーの空き缶(スチール)を握り潰した。

 

 

「いやいやいやいやいやいや?!何も!全然!これっぽっちも!」

 

「ホント~?」

 

「ホントホント」

 

「私って、キュート~?」

 

「も、もちろん…」

 

「私って、ラブリ~?」

 

「もちろん…」

 

「私って、スキャーリ~?」

 

「もちろん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺の意識は、ここで途切れた…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?……あれっ?俺…いつの間に寝たんだ?」

 

 

気がつくと、俺はドライブピットにいた。

するとベルトさんが俺に気付き、やって来た。

 

 

『気がついたかね?』

 

「なぁ…ベルトさん。

俺…いつからここにいた?さっきまで部室に居た気がするんだが……… 」

 

『……覚えて無いのか?』

 

「あぁ……痛っ………えらく首が痛いな、寝違えたか?」

 

『間違い無く、キミはさっきまで部室に居たよ………

ただ、地雷を踏んでここに来ただけだ。

ワタシも驚いたよ、霧子が気を失ったキミを担いで来たのだからね。

だいたいの事情は霧子から聞いたさ』

 

「霧子が?………そうか、確か俺…りんなさんにチョークスリーパーをくらって………」

 

『思い出したようだね?』

 

「あぁ、でも何でりんなさんは、俺にチョークスリーパーを………」

 

『言っただろ?地雷を踏んだと……』

 

「地雷?」

 

『スキャーリーとは、"scary"の事だ。

意味は"怖い"、主な使い方としては、

"Scary face"《怖い顔》や"Scary people"《怖い人》だ。』

 

「なるほどねぇ……だからりんなさんは俺に……」

 

『そんなことより進二、この学校が廃校になると言うのは、本当なのかね?』

 

「ん?あぁ、まだ確定した訳じゃないが多分な。

何でそれを?」

 

『いや、霧子から聞いたのと、シフトスピードを通して、全校集会を覗かせてもらったのさ』

 

「なるほど」

 

『進二』

 

 

俺はソファーから離れ、ピットを出ようとすると、ベルトさんが俺を呼び止めた。

 

 

「どうした?」

 

『霧子からの伝言さ、目が覚めたなら部室に来て貰いたいそうだ』

 

「おぅ」

 

 

俺はピットを後にし、部室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――はっ?!………夢?…な~んだ!」

 

私はチャイムの音で目を覚ました。

 

 

「何で保健室に居るんだろ?ま、いっか♪」

 

「おや?目が覚めたかい?」

 

 

私に気付き、奥から男の先生が入って来た。

 

 

「びっくりしたよ、いきなり気を失った生徒が運ばれてくるんだから」

 

「すいません……先生…」

 

「気にしなくていいよ。

気分が良くなるまで休んでて良いから」

 

「いえ、夢だったので大丈夫です!失礼しました」

 

 

私は先生に挨拶をしてスキップで保健室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夢?………」

 

 

俺は今、医者になるための勉強をするために、知り合いから学校の保健医をやらないかと誘われた。

俺は一応教員免許も取得している。

何でも、担当の先生が産休で代わりの人が居なくて、困っていたらしい。

その先生が戻るまでの間、ここ音ノ木坂学院で保健医になることになった。

 

―それにしても驚いたな……

いきなり女の子二人が生徒を担いで来たからな…

でもさっきの子、夢って何の事だろ…

 

 

どうやら"あそこで過ごした日々"の様な、慌ただしい日常が待っているような気がする。

あそこでの日々を思い出していると、婚約者から電話が来た。

 

「もしもし………あぁ、なかなか面白い所みたいだよ………まぁ、アイツ等に頼まれたらな………文人は土下座までしだすし、ゆりなんて脅してきたからな?……秀樹はまだユイと新婚旅行だそうだ………あぁ、まさか、"みんなが同じ世界、同じ時間になる"なんて、思ってなかったからな………だな…すまん、そろそろ仕事に戻るよ……あぁ、また後でな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………奏……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が部室に向かう途中、あるものを見た。

 

 

 

「ランラランララ~♪おっはよ~♪

ヒデコ、フミコ、ミカ、おっはよ~♪

あっ!進にぃも、おっはよ~♪

今日も良い天気~♪ 」

 

 

 

 

バカみたいにスキップしながら、バカみたいなテンションで、通りすぎる人みんなに挨拶していく幼なじみ(穂乃果)の姿だった。

 

 

なにしてんだ…?あいつ……

 

 

 

「ついにおかしくなっちゃったのかな?」

 

「穂乃果ちゃん、元気いっぱいなのは良いけど……」

 

「何か勘違いしてるよね?」

 

「勘違いって、何がだ?」

 

 

 

俺は側に居た穂乃果の友人である3人に尋ねた。

彼女達とはそれなりに面識があり、海未やことりを交え、穂乃果による苦労を解り会う事ができる友達だ。

 

 

「あっ!泊先輩」

 

「よっ、3人共」

 

「こんにちは、先輩」

 

「こんにちは」

 

「おぅ…で、さっきの勘違いって、どうい……

 

「アァァァーーーーーー!!!」

 

「「「「っ!」」」」

 

 

突然の悲鳴に何事かと振り返れば、掲示板に食い付き、肩を落として去っていく穂乃果だった。

 

なるほど……勘違いって、そういうこと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が部室に戻ると究ちゃんと霧子、本願寺先生の3人とメガネをかけた知らない人がいた。

するとその男性はこちらに気付き、話し出した。

 

「おや?本願寺さん、こちらの少年が例の…… 」

 

「えぇ、この部の頭脳と言っても過言ではない、推理担当の泊 進二くんですよ」

 

 

先生の過言な説明を受け、成る程と頷く男性は、俺を見て何か思い出したような顔をした。

 

 

「泊…進二……?……っ!もしかして…君が半年前の"あの事件"を解決させた「すいませんっ!」っ?!」

 

 

男性が半年前の事件を持ち出そうとした瞬間、俺は大声を出してしまった。

 

 

「あ……えっ…と………すいません……

突然叫んだりして……えっと、どちら様ですか?」

 

「ん?あぁ!失礼、自己紹介がまだだったね。

私は、警視庁 公安部の「桐原 英治」《きりはら えいじ》と言います 」

「警視庁の?」

 

「はい。実は今回、そちらに事件の捜査協力の依頼に伺った次第です。」

 

「協力ですか?」

 

「えぇ、実際に2件の事件を解決している実積があります。

私達公安の者は一課とは違い、あなた方を評価していますので」

 

 

そう言うと桐原さんは、一つの封筒を取り出した。

 

 

「今回の事件にまつわる資料です。

すでに5件の被害が出てます」

 

「これは………連続輸送車襲撃事件…?」

 

「はい、今解っているのは、約1週間間隔で起きているのと、現場周辺でどんより……そちらの言う"重加速"が発生している事だけです」

 

「重加速が……」

 

 

俺は渡された資料に目を通すと5枚の写真に違和感を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閉館した劇場

 

そこにはチェイスが舞台に立っていた。

その向かいに置かれたソファーには、ハートが座り、その隣にはブレンが立っていた。

静かな中、チェイスが喋りだした。

 

 

「ハート……一つ…聞きたいことがある」

 

「どうした、突然?」

 

「ブレンもだ…」

 

「私もですか?

言っておきますが、貴方の過去については、前に話した事以外は不明ですよ?」

 

「いや、今回は俺の事じゃない。

ハート……お前達は108体、全てのロイミュードを把握しているのか?」

 

「何かと思えば、そんなことか…」

 

 

そう言いハートはソファーから離れ、チェイスの側に立った。

 

「はっきりと言えば、ノーだ……

俺達ロイミュードは個人主義な奴ばかりだからな。

ブレンの様に、俺に付いている奴以外は、把握しきれていない。

それがどうかしたか?」

 

「いや、ただ残った仲間の数が気になってな……」

 

「…そうか……」

 

「私達が把握しているのはごく少数です」

 

「少なくとも、俺達の知らない所で友達が仮面ライダーに殺られていなければ、残ったロイミュードは俺達を入れて"100体"だ」

 

「…?待て……ロイミュードは全てで108体……

仮面ライダーに殺られた仲間は"7体"だ……

あと1体はどうした?」

 

「…………10年前の戦いで死んだのさ……」

 

「…そうか……」

 

「チェイス」

 

 

チェイスが劇場を出ようとした瞬間、ハートはチェイスを呼び止めた。

 

 

「お前、何か隠してないか?」

 

「ッ?!………だとしたら……俺を消すのか?」

 

 

チェイスは懐からブレイクガンナーを取り出した。

それを見たブレンはロイミュードに姿を変え、身構えたが、ハートはブレンの前に手を伸ばし、抑制した。

 

 

「いや、そんな事はしない………秘密の一つや二つ、誰だってするものさ。

かくゆう俺も、お前に隠している事がある。

お互い様さ……ただ……内容によるがな……」

 

 

そう言うとハートはロイミュードの姿に変わり、チェイスの肩に手を置くと人間態に戻り去っていった。

ブレンもチェイスの側で人間態に戻ると舌打ちをし、

去っていくハートに続き、劇場をあとにした。

 

 

「………………」

 

 

チェイスは無言のまま、その場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェイスと別れたハートとブレンは、街道を歩いていた。

 

 

すると突然、ハートは立ち止まった。

 

 

「どうかしましたか?ハート」

 

「いや………胸騒ぎがしてな……

ブレン、何故チェイスは残った友の数を聞いてきたと思う?」

 

「それは………ヤツが死神としての仕事を全うする為では?」

 

「あぁ、俺も最初はそう思った………

だがアイツは、そんな事をわざわざ俺達に聞きに来るのかと思ってな……」

 

「?……どういう事でしょうか…」

 

「いや………ただの考えすぎだ……気にするな」

 

 

そう言いハートは再び歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は部室を後にし教室に向かう途中、絵里と希が中庭に向かうのが見えた。

 

 

「ん?あれって……」

 

 

二人を目で追って見るとそこには、穂乃果達3人が談笑していた。

すると、絵里達が穂乃果達と何かを話し出した。

 

 

「アイツ等…何話してるんだ?」

 

 

俺は気になり、その様子を見ていた。

しばらくして、絵里達は話が終わると、こちらに戻って来た。

 

 

「よう、絵里。

アイツ等と何話してたんだ?」

 

「別に、貴方には関係ないでしょ……」

 

「そうかも知れないけどさ、何か今日のお前、ピリピリしてないか?」

 

「っ!してないわよっ!」

 

「エリチ!」

 

「っ?!ごめん……ちょっと気分が優れないから、保健室に行くわ」

 

「エリチ………」

 

 

そう言って去っていく絵里を俺と希は見送った。

 

 

「何だアイツ?便秘か?」

 

「進二くん?セクハラやで」

 

 

ジト目で俺を見る希の視線は少し痛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、南 ことりはこの学校についていろいろと調べている。

理由は穂乃果ちゃんが言い出した、学校を廃校から守るために何か出来ることは無いかを見つけ出すため。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁ~!何か無いの!」

 

「穂乃果、うるさいですよ」

 

「だってだって~!」

 

「穂乃果ちゃん、図書室は静かにしなきゃ」

 

「でもさ~!」

「ちょっと、図書室では静かになさい!」

 

 

穂乃果ちゃんが駄々をこねていると、ガッチリとした体型の泉先生が注意してきた。

 

「申し訳ありません、泉先生」

 

「ごめんなさい先生」

 

「ごめんなさい」

「分かれば良いの、今度から気を付けなさい」

 

 

前から思ってたけど、何で泉先生や凰蓮先生は女の人みたいなしゃべり方するのかな?

 

 

泉先生と話していると、向こうから幼なじみの進ちゃんがやって来た。

 

 

 

「あ、進ちゃん」

 

「よっ!お前らなにしてんだ?」

 

「お兄さん、実は………」

 

「進にぃ!聞いてよ~「高~坂~」すいません!泉先生!」

 

「って、師匠…「ん~?」…じゃなかった、泉先生。

何話してたんすか?」

 

 

師匠?進ちゃん、泉先生とどんな関係なのかな?

 

「ただこの娘達が図書室で大声出したから、注意しただけよ」

 

「なるほど…あんまし騒ぎ起こすなよ、穂乃果」

 

「何で私だけ?!」

 

「だって騒ぐのお前ぐらいだろ?」

 

「進にぃひど~い」

 

 

ふてくされる穂乃果ちゃんを見て、やれやれとため息をする進ちゃん。

 

いつ見ても飽きない光景、幼なじみの私達はいつまでもこんな関係なのかな?

 

そんな事を思うと、楽しい筈なのに何故か少し、胸が痛くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「学校を廃校から救う方法?!」

 

「お兄さん、声が…」

 

突然の事で大声を出してしまった。

海未に注意され、後ろを見ると、指を鳴らしながらこっちを見る師匠の姿があった。

 

 

「う~わ…泉先生、まだこっち見てる……」

 

 

ぶーと膨れる穂乃果に苦笑いしながら、ことりは俺に一つの質問をしてきた。

 

 

「そう言えば進ちゃん、泉先生の事"師匠"って呼んでたけど、どうして師匠なの?」

 

「確かに、凰蓮先生の事もたまに"教官"って、呼びますよね?」

 

「あぁ、二人には近接格闘戦の体術やいろんな武術を教わっているんだ。

凰蓮先生は元フランスの軍人で、泉先生は元傭兵だから、かなり強いんだよ。

俺が荒れてた時期に二人からお灸すえられてな、そのまま俺を更正させるって、武術の稽古させられたんだ。

親父や海未ん家で格闘技教わってたからか、筋が良いって気に入られて、俺自身結構楽しんでたから、そのまま二人の弟子にさせてもらったわけ」

 

「へ~…って!あの先生達軍人さんなの?!」

 

「し~…穂乃果ちゃん、泉先生また来ちゃうよ?」

 

「はぅ!」

 

 

ことりの警告に両手で口を塞ぎ、席についた穂乃果を俺達は苦笑いしながら見ていた。

 

 

「そう言えば廃校はまだ決まった訳じゃないんだよな?」

 

「はい、入学希望者が定員を上回れば、廃校は間逃れるそうです」

 

「なるほど……確か、雪穂は来年受験だよな?」

 

「うん、だから1人分は確保できてるよ」

 

「確保って……」

 

「あははは…………」

 

「全く……そう言えばお兄さん、確か"あの子"は雪穂と同い年でしたよね?」

 

「ん?あぁ~……ダメだ」

 

「どうしてですか?」

 

「確か、ホームステイでアメリカにいるんだよね?」

「あぁ、いつ帰るどころか、全く連絡をよこさないからな……

母さんもかなり怒ってたし……」

 

「千早おばさん、怒るとかなり怖いよね?」

 

「あぁ、ことりと海未は見たこと無いんだっけ?」

 

「うん、でも……ね?」

 

「えぇ、二人のへこみ具合を見たら……」

 

「「あははは…………」」

 

 

俺と穂乃果は、昔母さんに怒られた時の事を思い出して、苦笑いをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は忘れ物をしたのを思いだし、穂乃果達と別れ部室に向かった。

 

 

 

 

 

 

~~~♪

 

 

 

 

 

 

「ん?…ピアノの音か?」

 

 

それはとても綺麗な音だった。

俺は誰が弾いているのか気になり、音のする方へ向かった。

 

 

「……音楽室…か…ん?」

 

 

中を覗き込むとそこに居たのは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~『愛してるばんざーい!(真姫 ピアノvar.)』~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はまた、音楽室に来てピアノを弾いている。

いつまでも消せない音楽への未練が、私の足をここに運ばせる。

 

クラスに馴染めず、誰とも馴れ合わない私は、今日も1人、いつもの様に、ピアノを弾く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私自身を…癒すために……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~♪

 

 

「…ふぅ……」

 

 

 

 

 

 

パチパチパチパチパチ……

 

 

 

 

 

 

私がピアノを弾き終わると、どこからか拍手が聞こえた。

驚き音のする方を向くと、あの人が立っていた。

 

 

「凄いな、ピアノはもちろん、歌も上手い……聞き入っちまったよ」

 

「そっ、そんなの当たり前でしょ……

てゆうか、何でこんな所に居るんですか?

 変質者(センパイ)

 

「ルビ使って虐めるの止めてくれないかな?」

 

 

そう苦笑いする先輩は飴を投げ渡してきた。

 

 

「何ですか?これ……」

 

「う~ん……チップ?」

 

「なにそれ?意味わかんない……」

 

「かもな?……でも凄いと思ったのは本当だよ。

ピアノ習ってるのか?」

 

「…"習ってた"わよ……」

 

 

 

あまり聞かれたくないことを聞かれたので、私は少し不機嫌になった。

 

 

 

「何かマズイ事言っちまったか?

スマンな、西木野」

 

「別に……って!何で私の名前知ってるんですか!」

 

「いやいや?!小泉から聞いただけだって、マジで……」

 

 

慌てながら答える先輩の言葉に、思い出した。

確かに、同じクラスの小泉さんが一緒にお礼に行こうと誘って来た。

でも私は、しばらくこの人の顔を見たく無いと断ったんだった。

 

 

「そぅ……」

 

 

私は一息つき、音楽室を出ようとした時、先輩は何かを思い出したように、声をかけてきた。

 

 

「なぁ、西木野」

 

「今度は何ですか?」

 

「いや、自己紹介まだだったなと思って……

俺は泊、泊 進二

よろしくな、西木野」

 

「……西木野……………真姫……」

 

 

 

私は小さく応え、音楽室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………泊………進二……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、聞き覚えのある名前を呟き、もらった飴をポケットにしまい、教室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は放課後、何もすることがなく家路についている。

本願寺先生から、今日の部活は休みだと聞かされ、いつもより早く帰れたからだ。

思いの外、早く家に着いたので、久しぶりに歩いて散歩する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩いていると、見覚えのあるショートカットの女子中学生が見えた。

 

 

「おーい!雪穂~!」

 

「?……あっ!進二兄ちゃん、やっはろ~♪」

 

 

何それ流行ってんの?

 

 

彼女は「高坂 雪穂」《こうさか ゆきほ》

穂乃果の妹で、穂乃果よりもしっかりしている。

兄弟ってのは、片方がちゃらんぽらんだと、もう片方はしっかりとした性格になると聞いたが……バカにならないな……

昔はよく、兄弟同士で遊んだものだ。

 

 

「こんな所で何してたんだ?」

 

「実はうちのクラスに転校生が来たんで、町を案内してたんですよ。

今はその帰りです」

 

「そっか」

 

「進二兄ちゃんこそ、何してたの?」

 

「散歩だよ」

 

「徒歩で?珍しいね、進二兄ちゃんが車を使わないなんて」

 

「まぁな………ん?」

 

 

そんな会話をしていると、雪穂のバックからはみ出ている紙が目に入った。

 

 

「なぁ雪穂、バックから何かはみ出てるぞ」

 

「え?……あぁ、パンフだよこれ」

 

「パンフ?……何の?」

 

 

すると雪穂は、バックからその紙を取り出し、渡してきた。

 

 

「UTX……学院?」

 

「そっ!私が受ける高校のパンフ」

 

「ふ~ん……?」

 

 

雪穂の言葉に俺は疑問を浮かべた。

 

 

「お前、ここ受けんの?」

 

「そうだけど?」

 

「音ノ木坂受けないのか?」

 

「うん……」

 

 

俺は何度もパンフと雪穂を交互に見た。

 

 

「……マジで?」

 

「……マジ…」

 

「……あっそ…………まぁ……どこ受けるかは、お前の勝手だからな……頑張れ」

 

「ありがとう……」

 

 

俺は雪穂にパンフを返し、質問をした。

 

 

「そう言えば、何で音ノ木坂を受けないんだ?」

 

「だって……音ノ木坂…廃校になるんでしょ?」

 

「あぁ~…………多分な?」

 

「多分?」

 

「正確にはまだ確定した訳じゃないんだがな」

 

「それに…………仮に入学しても……進二兄ちゃん……いないし……」

 

「ん?……何か言ったか?」

 

「んん~!何でもない!……じゃあ、またね!」

 

 

そう言うと、雪穂は駆け足で去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は久しぶりに行き付けのゲームセンターに寄り、大好きなレーシングゲームのある場所に向かった。

 

そこには、真っ赤なコートを着た男性がゲームをプレイしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「上手いですね?」

 

「ん?…あぁ……ありがとう

ただ、1位になかなか勝てなくてな……」

 

「そうですか……良かったら、ひとっ走り付き合いましょうか?」

 

 

俺はそう男性に告げ、コインを入れて対戦モードを選択した。

 

このゲームは様々な車種があるが、スペックの違いが存在せず、単純にプレイするドライバーの実力だけがものを言うゲームだ。

 

 

俺はいつもの赤いカラーリングのホンダNSX

コートの男性は同じ赤いカラーリングのキャデラック エルドラド コンバーチブル(1975)

 

を選択し、レースを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果は0,7秒差での俺の辛勝だった。

 

 

 

 

 

 

「いい戦いだった……負けたというのに、凄く気分が良い……」

 

「いや、俺もまさか…ここまで追い込まれるなんて……でもおかげで、自己新記録達成しましたよ……」

 

 

お互いに称え合っていると、男性は手を差し出してきた。

 

 

「自己紹介がまだだったな、俺はハー……んっ、阿津喜 心造(あつき しんぞう)だ」

 

「俺は泊 進二」

 

 

互いに握手すると、阿津喜と名乗る男性は俺の名前を聞くと、首をかしげ尋ねてきた。

 

 

「進二……もしかして、お前が1位のSHINJIなのか?」

 

「まぁ…ね?」

 

「そうか……実に良い気分だ…もう一勝負といきたいが、友を待たせているのでな、また今度勝負をしよう」

 

「あぁ、アンタとの勝負、今までのどの勝負の中でも、一番熱くなれた。

楽しみにしておくよ、阿津喜さん」

 

「フッ……呼び捨てで良い……」

 

 

俺が拳を向けると、阿津喜は笑いながら拳を突き返して来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母さんと夕食を食べ終わると、俺は自室でくつろいでいた。

 

すると突然携帯に着信が入った。

 

 

 

 

 

―誰だ?

 

 

 

 

 

画面を見るとそこには海未の名前があった。

 

 

 

 

 

「もしもし、どうした海未?」

 

―〈すいません、こんな遅くに〉

 

「いや、遅くって……まだ9時半だぞ?」

 

―〈ですが、寝る時間にお電話するのは……〉

 

 

そうだ……海未はかなり早い時間に寝るんだった……

 

「いや、気にするな……それより、何の用だ?」

 

―〈はい……実は学校の事でご相談が〉

「やっぱりか……」

 

―〈はい、やはり私達では、廃校を防ぐ事は出来ないのでしょうか……〉

 

「さぁな……ただ…」

 

―〈ただ?〉

 

「俺達生徒が廃校を防ぐ事が出来るのかは、正直分からないが…何もしないよりかは、マシだろ」

 

―〈ですが……〉

 

「何もせずに、起こるかどうか分からない奇跡を待つなら、自分達で足掻いて、奇跡を起こすほうが良いんじゃないか?

何もしないと運命は変わらないからさ……」

 

―〈そうですね……ありがとうございます、話を聞いて頂いて〉

 

「気にするな、俺とお前の仲だ。

困ってる妹を助けるのは、兄貴の務めみたいなもんだからな」

 

―〈はい……ではお休みなさい、お兄ちゃん…〉

 

「お休み」

 

 

俺は電話を切り、寝床についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はお兄さんとの電話を終え、床についた。

目を閉じ、眠ろうとした時、お兄さんの言葉を思い出した。

 

―困ってる妹を助けるのは、兄貴の務めみたいなもんだからな―

 

お兄さんにとって、私はずっと妹のままなのか……そんな考えが浮かんだ途端、胸が苦しくなり、なかなか寝付けずにいた。

 

 

―どうしてしまったのでしょう………

今までこんな感じになった事など一度も無かったのに……

もしや、新手の病気?!

ですが健康管理に手を抜いた覚えは無いですし……

 

 

考えていたら、目が冴えて眠れなくなってしまった。

その後、母に相談をした。

すると母は、「大丈夫、心配しなくて良いわ。病は病だけど、この病は誰もが患うものだから」と言い、嬉しそうな顔をした。

どうしてでしょう?

 

ただ、この日はほとんど寝付けなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもより早く目が覚めた俺は、リビングに向かった。

するとリビングでは、母さんが慌てた様子でバタバタしていた。

 

 

「おはよう母さん……あれ?飯は?」

 

「ごめんなさい進二、ちょっとお母さん急用が出来たから、朝ごはん自分で食べて、それと洗濯お願いして良いかしら?」

 

「あぁ、気を付けてな」

 

「ありがとう、行ってくるわね」

 

 

母さんが出掛けた後、俺は洗濯物を干し、朝食を取り、トライドロンに向かった。

 

 

 

俺は穂むらの前を通りかかった瞬間、絶句した。

 

 

 

穂乃果がこんな朝早くに起きて、しかも、登校しているだと?

普段から俺以上の寝坊助で、遠足の日以外は絶対早起きしない、そんな穂乃果が……

 

 

俺は穂乃果の近くを通ると、クラクションを鳴らした。

 

 

「穂乃果!」

 

「あっ!進にぃ、おはよう!」

 

「おぅ………ってそうじゃなく、今日は遠足なのか?」

 

「違うよ?どうして?」

 

「いや、お前が早起きなんて、あり得ないからさ……」

「ひっど~い!私だって起きるときは起きるの!」

 

「わりー…じゃあ、何で早起きしたんだ?」

 

「それは、行きたい所があるから」

 

「行きたい所?」

 

「うん……そうだ!進にぃ、連れてって!」

 

「どこに?」

 

 

 

 

そして穂乃果は1枚の紙を取りだして言った。

 

 

 

 

 

 

 

「UTX学院!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トライドロン車内

 

俺と穂乃果は今、UTX学院に向かっている。

 

 

「それにしても、何でUTX学院なんだ?」

 

「UTX学院って、今凄い人気なの!」

 

「うん、で?」

 

「だから、その人気の秘訣を、音ノ木坂の生徒集めに使えるかなと思って」

 

「なるほど………でも、何でそこまでするんだ?」

 

「……実は……最初はただ学校が無くなるのが嫌だなぁって、思ってただけなんだけど……」

 

「けど?」

 

「昨日、お母さんが昔のアルバムを見てたんだけど、少し悲しそうな顔してたから……」

 

「そういや、おばさんは音ノ木坂の卒業生だったな……」

 

「うん………で、改めて思ったの……やっぱり思い出の場所が無くなるのは嫌だなぁって……」

 

「…………………」

 

「進にぃ?」

 

「え?あ、あぁ………何でもない…っと、着いたぞ」

 

 

 

俺はトライドロンを近くのパーキングエリアに停め、穂乃果と共にUTX学院に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ~…これが学校……?…………凄い……」

 

 

そう言いながらガラスに貼り付く穂乃果を離れた場所から見て、俺は苦笑いしか出来ないでいた。

 

それにしても…………

 

 

「ホントにデカイな……」

 

 

 

学校というよりは、一流企業のオフィスビルみたいだな……

 

 

辺りを見回していると、サングラスにマスクという、不審者が目に入った。

 

 

―まさかな……

 

 

見覚えのあるツインテールに、俺は軽い頭痛がした。

 

 

 

【UTX本校へようこそ!皆さ~ん、お元気ですか~!】

 

 

突然、校舎の壁一面に設置された、巨大モニターから声がした。

 

 

―あれ?あの娘達……確か、あの時の……

 

 

俺はモニターに映った三人に見覚えがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「かよち~ん、遅刻しちゃうよ~」

 

「ちょっと待って」

 

 

聞き覚えのある声に振り向くと、小泉とその友達の星空が走って来た。

 

 

 

―アイツ等まで、なんだ?

 

 

するとモニターから音楽が聞こえ、モニターに目を戻すと、そこに映っていたのは……

 

 

 

 

~『Private Wars』A-RISE~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魅了された……

 

ドキドキした……

 

凄いと思った……

 

これが、スクールアイドル……

 

 

私は隣の不審者さんに教えてもらった、スクールアイドルを見て、感じた。

 

 

 

 

この時、私の中で最高のアイデアがひらめいた!

 

 

 

 

 

 

 

「これだ………見つけた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺がモニターから流れる音楽に聞き入っていると、パトカーが何台も猛スピードで走って行った。

 

 

「事件か?」

 

 

すると、携帯に着信が入った。

 

 

「ん?霧子から……?」

 

 

―なんだ?

 

 

俺は気になりながら、通話ボタンを押した。

 

 

 

「もしもし泊、どうした霧子?」

 

―〈泊さん、今何処です?!〉

 

「何処って……UTX学院だけど…」

 

―〈ゆ……〈UTX学院?!〉ッ?!西城さん、邪魔です!…泊さん、落ち着いてください実は……ーーーー〉

 

「霧子?聞こえない、もう一度頼む」

―〈ですから!その近くで……

 

 

 

 

ドカーーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音する方を向くと、黒い煙が上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘だろ……悪い霧子、俺行くわ!」

 

 

俺は携帯の通話を切り、穂乃果達のもとに走った。

 

 

 

「何?!なんの騒ぎ?!「穂乃果!」っ!進にぃ!」

 

「とりあえずお前は避難しろ!良いな!」

 

「えっ?でも進にぃは…」

 

「俺も後で避難するから……にこ!」

 

「えっ?!進二?!何でこんな所に?!」

 

「コイツの事頼む、安全場所に避難しろ!」

 

 

俺は穂乃果の腕を掴み、にこに預けた。

 

「アンタはどうするのよ?!」

 

「ちょっくら、行ってくる!」

 

「ちょっと!待ちなさいよ~!」

 

 

俺はにこと穂乃果を置いて、現場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重加速が発生した。

 

 

 

 

 

―「っ!?どんよりか?!」

 

 

俺の体が重加速の影響を受けた瞬間、背後から来た3台のシフトカー達がホルダーに収まった。

 

 

「っと!どんよりが来たって事は……『進二!』っ!?ベルトさん!?」

 

 

声のする方を向くと、シフトスピードを操ったベルトさんが走って来た。

 

 

「やっぱりロイミュードか」

 

『あぁ……それに重加速の範囲や力からして……おそらく、進化体だ』

 

「ベルトさんはトライドロンで現場に来てくれ!

俺は直接現場に向かう!」

 

『?!待て、危険だ!進二!』

 

 

 

ベルトさんの抑制を無視し、俺はそのまま走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重加速が起きるなか、1人"動ける"少女は戸惑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれっ……凛ちゃん?……皆…止まってる……?どんよりなの?…でも、わたしは動けてる……どうして?」

 

 

するとわたしのポケットの中で何かが動いた。

 

 

「何かな?……あれ?モンスターちゃん?」

 

 

それはわたしの小さな友達、ミニカーのモンスターちゃんだった。

 

 

「どうしてモンスターちゃんが?」

 

 

クラクションを鳴らしながら体を振るモンスターちゃんは何かを言っているように思えた。

 

 

「もしかして、わたしを守ってくれてるの?」

 

 

するとモンスターちゃんは体を縦に振って頷いた。

 

 

「ふふっ、ありがとう♪……ん?あれって……」

 

 

わたしが見たのは"どんよりの中を走る"先輩だった。

 

 

「先輩……何で………モンスターちゃんごめんねっ!」

 

 

わたしはモンスターちゃんをポケットに入れて、先輩の後を追いかけた。

 

 

 

 

「先輩……煙の方に向かっている……というより……先輩、脚…速い……?」

 

 

先輩を追いかけていると、後ろからクラクションの音が聞こえてきた。

 

 

「あれって……先輩の車だよね……わたしや先輩だけじゃなく、先輩の車まで……動いてる……えっ?」

 

 

 

わたしはどんよりの中を走る車よりも気になるものを見た……

一瞬だったけど確かに見た……

 

 

 

 

―あの車……人が………乗ってない……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は全力で煙の上がる現場に向かった。

そこで見たのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブアァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

雄叫びを上げ、トラックを破壊し、辺り一帯を破壊するロイミュードの姿だった。

 

 

「…野郎……ッ?!」

 

 

 

突然の殺気に俺はバックステップをした。

 

 

「やっぱり……お前か、死神!」

 

 

 

殺気のする方を向くと、そこには銃を構えた魔進チェイサーがいた。

 

 

《Brake up…》

 

 

死神は姿を変え、こちらに向かって来た瞬間。

 

 

「おい!死神!仮面ライダーは俺の獲物だ…手ぇ出すな!」

 

 

「………分かった……油断するなよ……クラッシュ…」

 

 

ロイミュードの言葉に死神は銃をおろし、その場を去った。

 

 

どうなってやがる……?

 

 

「どうした?やらないのか?だったら俺から殺らせて貰うぜ!」

 

 

ロイミュードのハンマーの様な腕が俺の頭めがけて飛んできた。

 

 

「ッ?!…危ねぇ…………でも、動くのはそんなに速くないな……」

 

「何ごちゃごちゃ言ってやが…グアッ?!」

 

 

俺は敵の特徴を観察していると、近づいて来るロイミュードに光弾が当たった。

振り向くとトライドロンがクラクションを鳴らしながら走って来た。

トライドロンは俺の横に停まると、ドアが開き、ベルトさんが顔を出した。

 

 

『待たせたな!』

 

「いや、『待たせたな!』っじゃなくて!俺を撥ね飛ばす気か?!

それに光弾撃つなら距離考えてくれ!危うく俺まで巻き込まれる所だったぞ?!」

 

『君こそ、ワタシの忠告を無視して無茶するのが悪いだろ?!』

 

「いーやっ!そもそもシフトスピードじゃなく、ベルトさん本体が来ればよかっただろ!」

 

『どうやって君のもとまでワタシが向かえばいいんだ?!足が無いのだぞ!』

「そんなの知るかっ!?自分で考えてくれ!」

 

『なんだと!?』

 

 

トライドロンのドアが開き、俺はベルトさんを取り出すやいなや、ケンカを始めた。

 

 

 

「ごちゃごちゃうるせぇぞ!!」

 

「『テメェ(君は)すっこんでろ(いたまえ)!!』」

 

 

俺達のケンカにイライラしたロイミュードが、怒りながら近づいて来たのを、俺は生身ので蹴りで蹴り飛ばし、ベルトさんを腰に巻き付けた。

 

 

『ケンカの続きは、ヤツを倒してからだ!

start your engine!』

 

「上等だ!後でシロクロ、はっきりさせようじゃないか!」

 

 

俺はそう言いながら、ベルトさんのキーを回した。

 

 

「変身!」

 

《DRIVE type SPEED!》

 

 

俺は変身を終えると、腰を低くし、いつものポーズをとった。

 

 

「ひとっ走り付き合えよ!」

 

 

そして俺は、ロイミュードに向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは信じられないものを目にした。

でも不思議と驚きはしなかった。

 

それは……

 

 

 

 

 

「やっぱり……先輩が、仮面ライダー………」

 

 

 

 

 

 

 

先輩が車から何かベルトの様な物を取り出すと、ケンカ?をし始めた、しばらくしてそれを腰に巻くと、左手に巻いたブレスレットに赤い何かを合体させた。

その瞬間、先輩が"変身"した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はクラッシュロイミュードに格闘戦を持ち込むために接近し、パンチを繰り出した……………

 

 

 

 

が…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ?!……痛ってぇ~~!!」

 

 

 

予想以上の固さに、俺は悲鳴を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だったら!」

 

 

 

 

俺は右手に走る痛みをこらえ、ヤツの頭に回し蹴りを入れた……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ΦΧΔΨΩ☆$%〇\!?」

 

 

 

 

足に走る強烈な痛みに俺は、声にならない悲鳴を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

「何だぁ?その弱っちぃ攻撃は?

パンチってのはこうするんだよ!」

 

 

そう言いながらヤツは勢い良くパンチを繰り出した。

 

 

「グアッ!……ガハァッ!」

 

 

俺は異常なまでのパワーに殴り飛ばされた。

 

 

「あぁ?そんなもんか?!」

 

 

そう言いながらヤツは拳を叩きながら近づいて来た。

 

 

 

―クソッ!硬いだけじゃなく、なんつーパワーだ……

 

 

「気を付けろ、進二……恐るべきパワーだ!」

 

「あのさぁ?そう言うの殴られる前に言ってくれないかなぁ……」

 

 

俺はベルトさんの遅すぎるアドバイスに文句を言いながら、シフトカーをシャドウに変えた。

 

 

《タイヤコウカーン! MIDNIGHT SHADOW!》

 

 

シャドウのエネルギー手裏剣を投げつけ、攻撃をするが、ダメージを与えられない。

 

 

「クソッ!これもダメか……なら…こい、ハンドル剣!」

 

 

俺はハンドル剣でヤツに斬りかかった。

 

 

「グアッ?!……ドアッ!」

 

 

ハンドル剣の斬撃がヤツにダメージを与えた。

 

 

「よし!これならいける!」

 

『ターン!』

 

「グハァ!」

 

 

回転斬りに怯んだ、クラッシュロイミュードに追い討ちを入れようと、剣を振り下ろした、その瞬間……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキィィィィィィィィィンッ!………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤツの拳が、ハンドル剣の刃を折った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「折れたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 

 

 

『何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ?!』

 

 

 

 

「よそ見するなぁ!」

 

 

ポッキリと折れたハンドル剣に俺とベルトさんが驚いていると、クラッシュロイミュードは攻撃してきた。

 

 

「グハァァ!…」

 

 

ヤツの重い一撃が俺を襲った。

 

 

 

「痛ってぇ……って!それより、ベルトさん?!ハンドル剣折れたんだけど?!

これじゃただのハンドルだよ…」

 

『落ち着け、進…ッ?!進二、避けるんだ!』

 

 

するとクラッシュロイミュードが勢い良く突進して来た。

 

 

俺はベルトさんの助言により、かわす事が出来た。

 

 

 

だが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャァァァァァァァ!」

 

 

 

「『ッ?!』」

 

 

 

 

突然の悲鳴に俺とベルトさんは驚いた。

悲鳴の先にいたのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!小泉?!何で?!」

 

『……?!進二!あの少女、重加速内で動いているぞ!』

 

「えっ?!」

 

 

俺はベルトさんの言葉に耳を疑った。

なぜ、小泉が重加速の中で動けるのか……

それより、今は……

 

 

 

「ベルトさん!トライドロンだ!」

 

『…?……そうか!』

 

 

 

ベルトさんの遠隔操作により、トライドロンが砲撃をしながら走って来た。

 

 

「グハァァ!」

 

トライドロンの光弾が直撃し、クラッシュロイミュードは吹き飛んだ瞬間、重加速は解除された。

 

 

「……ここは…逃げた方が勝ちだ!」

 

 

トライドロンの砲撃に怯んだクラッシュロイミュードは、姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は周りに人がいないかを確認し、小泉に話かけた。

 

 

「小泉、どうして重加速の中で動けた?」

 

 

すると小泉はキョトンとした表情になった。

 

 

「あの……どうして、わたしの名前…知ってるのですか?」

 

「あ~……」

 

 

俺は思わず、顔を反らしてしまった。

 

 

『……………』

 

 

顔を反らした先には、ベルトさんの呆れ顔があった。

 

 

「そんな顔で見るなよ、ベルトさん!」

 

『いや………』

 

「あの……先輩?……」

 

「ん?何だ?」

 

「…えっ?」

 

『……あっ…』

 

「?………ハッ!……」

 

 

 

 

重加速は解除されたはずなのに、俺は周りの時間が、止まったかの様に感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、改めて遅れてすみませんでした。
今回はドライブ5話の前日談(オリジナル)にラブライブ!Aパートを織り混ぜた内容です。
ラブライブは基本的に主人公サイドで展開していくので、ラブライブ本編の裏事情などアニメではなかった視点も書くつもりです。
今回のゲストの保健医は、少し遅いですがBD-BOX発売記念で、某アニメの主人公です。
次回は早く投稿出来る様に頑張ります!
では、いつも通り感想、評価、お気に入り登録お願いします!



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廃校を拒む少女《ほのか》は何を決意したのか。

待たせたな!(段ボールとエロ本好きの工作員風に)


いろいろあって投稿が遅れました。

べっ、べつにサボってた訳じゃないんだからねっ!


まぁ、悪ふざけはほどほどにして……



大変お待たせいたしました。
先に忠告いたします。
今回ある人物が盛大?にキャラ崩壊します。

いつもの低クオリティですが、楽しんで下さい。
※今回戦闘シーンはございません




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドライブピット

 

 

それは、音ノ木坂学院の地下に秘密利に作られたドライブの活動拠点であり、主にトライドロン、武器、装備品類の整備、及び新装備の開発、ロイミュード事件の情報の保管などを目的とした万能ピットであり、関係者以外は知ることのない場所である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………………」

 

 

 

 

『……………………………………………………』

 

 

 

 

 

「ほぇ~………ふぁわ~………あっ!この子かわいい♪」

 

 

 

 

 

「何か言い訳はありませんか?2人共……………」

 

 

 

 

 

今、俺とベルトさんは、霧子の前で正座をさせられている。

 

すぐ近くでは、その様子を見ていたシフトカー達に興味津々な小泉がキャブとハンターを撫でていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして、小泉がドライブピット(ここ)にいるかって?

何故俺達は正座させられているかって?

 

 

 

 

 

 

 

 

それは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遡ること、約30分前―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人気のない路地裏、そこには1人の女子高生と赤い装甲にタイヤをたすき掛けした、変態がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『誰が変態だ(かね)!』」

「ど、どうしたんですか?先輩……」

 

「いや、何でもない……じゃなくて!俺は君の先輩じゃない!」

 

「でも、わたしの名前、知ってましたよね?」

 

「それは…………えっ……と……………俺が超能力者だからさ!」

 

『…苦しいな……』

 

「うるせぇな、黙ってろ!」

 

「やっぱり、その機械…喋るんですね……」

 

「えっ?」

 

「先輩以外の話し声と、先輩しゃべってたので……」

 

「いや、……これは……ワッ、ワタシの腹話術さ……」

 

『微妙に似てないな……』

 

「頑張って庇ったのに!」

 

『顔を隠しているのに、腹話術も何もないだろ?』

 

「そっち?!」

 

『それにワタシの事は、然程隠す必要はないだろ』

 

「そうなの?!」

 

『君が隠すのは、君自身の正体であって、ワタシではないからね』

 

「先に言え!」

 

「あの……無理しなくても、大丈夫ですよ?先輩……

声で分かりますし……

それに……今さらかも知れないですが……見ちゃいましたから……いろいろ…」

 

「『えっ?』」

 

「見たって……何を?」

 

「先輩がどんよりの中を走ってるの……とか…」

 

「うっ!」

 

「先輩の車が、人が乗ってないのに動いてるの……とか…」

 

『むっ!……』

 

「その車がビーム撃ったり…」

 

『あちゃ~…… 』

 

「ドアが勝手に開いたり……」

 

「ハハハ……ハァ~……」

 

「最後に車から、その…喋る機械を出して、喧嘩した後、…先輩が…仮面ライダーに……なるの……とか…」

 

 

 

 

 

「『…………………………………………………………』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―見られてた……全部見られてた……

 

 

 

 

俺は今、小泉の言葉に肩を落とした。

 

 

 

 

 

「…なぁ……ベルトさん………」

『ん~……ここまでバレては、仕方ないね……

何より、変身する所を見られては、誤魔化しようがない』

 

 

俺はベルトさんの言葉にため息をつき、変身を解除した。

 

 

『Nice DRIVEwww』

 

「笑うな!」

 

 

俺はベルトさんと話した結果、小泉をピットに連れて行く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とベルトさんは小泉をピットの入り口前に待機させ、中で話し合った。

 

 

 

 

 

 

 

「なぁベルトさん、小泉の事だが……」

 

『あぁ、分かっている……

なかなか可愛らしい容姿をしているね。

発育も、高校1年生とは思えない。

あどけなさの残った容姿に、あのボディ………

なかなかに、グッと来るモノがあるね……』

 

「あぁ、それにあのメガネ……下に秘められた未知の可能性……将来化けるぜ、ありゃ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………じゃねぇよ!!ムッツリベルト!!

何を分析してんだ!俺が聞きたいのは、『彼女のスリーサイズかね?』……気になるけど?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ~……そうなんですか……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『…………………………………………』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とベルトさんが、訳の分からない会話を繰り広げていると、背後から二つの視線と、一つの殺気を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私"達"も……混ぜてくれませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『……………………………………………………』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐る恐る背後を見ると、顔を真っ赤にし、涙目になった小泉と、怒りと殺気を露にした……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼神(きりこ)の姿があった……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――現在

 

 

 

 

以上の経緯を経て、現在に至る……………

 

 

 

 

 

えっ?ベルトさんは正座できないって?

 

 

 

 

出来なかったら、置くだけさ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピットに置かれた低めのテーブルに置かれたベルトさんと、床に正座させられている俺は、目の前の鬼神(きりこ)になす術がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「泊さんが無茶をして怪我をしたのではないかと、心配して来たら、入り口の前にこの子が居たので事情を聞きました ……………………

二人揃って何してるんですか!迂闊にも程があります!」

 

 

「いや……霧子、それはだな…「泊さんは黙ってなさい!」…はい……」

 

『いや…今回ばかりはだな…「シャラップ!」…はい…』

 

「二人の言いたいことは分かります。

何故彼女が、重加速内で動けたのか……ですよね?」

 

「あぁ、それについては……ベルトさん」

 

『あぁ…ここに着く前に、進二に彼女の事を調べる様に頼まれたからね』

 

 

そう言うとベルトさんは自分の帯を操り、台座に登った。

 

 

―器用だな……

 

 

 

『先に断っておこう、ミス小泉……

君の事をいろいろと調べさせてもらった。

今から君の個人情報をここにいる二人に公開させてもらうが、宜しいかね?』

 

「は、はぁ……」

 

 

台座に乗ったベルトさんは、映像を映し出した。

 

 

 

 

 

『彼女は小泉 花陽

音ノ木坂学院1年1組所属

年齢は15才

身長156㎝

体重…「だめぇ~!」……失礼……

1月17日生まれ

血液型はB型

好物はご飯……白米だねぇ

家族構成は、母と兄、祖母の四人暮らし

父親は海外に赴任中

内気な性格なため、自分を出すことはあまりなく、交友関係はそこそこ

運動能力は平均より下回るレベル

成績は上の中

後、スリーサイズは上からB82/W60/H83

ちなみにバストは現在も成長ちゅ…

「お前何調べてんの?!」…彼女の詳細データだが?』

 

「誰がスリーサイズまで調べろって言った?!」

 

『君が彼女を徹底的に調べる様に言ったんじゃないか……』

 

 

後ろを振り向くと小泉は、腰を引いた状態で、両腕で胸を隠し、顔を赤くしながら睨んでた。

 

 

「限度があるわ!それに俺が頼んだのは、彼女が何故重加速内で動けたのかだ!」

 

『そんなの分かるわけないだろ』

 

「はぁ?!」

 

『まぁ少なくとも、彼女はロイミュードではない』

 

「何でそんなこと分かるんだよ?

擬態したロイミュードを見分けるのは困難だって言ったの、ベルトさんだろ?」

 

『それは肉眼や、通常の機材で測定した場合さ……

彼女をここに連れてきた時点で、すでに専用の機材を用いて、調査済みだ……』

 

「じゃあ他に何があるんだ?

重加速内で動けるのは、ロイミュードとドライブだけ、霧子や変身前の俺、普通の人間が重加速内で動くには、シフトカーの力を………シフトカーの力?………」

 

 

瞬間、俺の頭に一つの考えが浮かんだ。

 

 

「なぁ、ベルトさん?」

 

『何かね?』

 

「ここ最近、連絡が取れない、もしくは見かけていないシフトカーはいるか?」

 

『どうしたんだ、急に?』

 

「良いから、どうなんだ?」

 

「どうしたんだですか?泊さん…」

 

「俺の考えが正しければ、小泉が重加速内で動けた理由が解るかも知れない」

 

 

すると小泉に撫でられているハンターが突然、サイレンを鳴らした。

 

 

『?……ふむ……なるほど…

ハンターの言い分では、確かにここ最近、姿を見せてないシフトカーがいるそうだ』

 

「それって……もしかしなくても、モンスターじゃないか?」

 

 

俺の言葉にハンターはクラクションを鳴らした。

 

 

『その通りだそうだ』

 

 

俺は小泉の方を向くと、小泉のポケットがモゾモゾと動くのが目に入った。

瞬間、全ての確証を得た。

 

 

「ハァ~……、繋がったわ…」

 

 

俺は小泉に近付きながら尋ねた。

 

 

「小泉、ポケットの中にあるもの、出してくれないか?」

 

「ポケットですか?」

 

 

小泉がポケットに手をいれ、何かを取り出した。

それは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫を基調としたシフトカー

 

 

 

 

マッシブモンスターだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりな……」

 

 

俺はモンスターを見て、ため息をついた。

 

 

「どうしてモンスターが?」

 

「あの……モンスターちゃんの事、怒らないであげて下さい……

モンスターちゃんは、わたしを守る為に側に居てくれたんです!」

 

 

霧子の質問に対し、小泉は小さな声ながらも力強く答えた。

 

 

『なるほど…つまり彼女が重加速内で動けたのは、モンスターと共に居たから……という訳かね?』

 

「あぁ」

 

「でも、どうして彼女はモンスターと……」

 

「それは……」

 

「わたしとモンスターちゃんはお友達だからです……」

 

 

俺が霧子の質問に答えようとした時、小泉がその質問に答えた。

 

 

「先輩にはお話ししたんですが、モンスターちゃん……わたしが、野良犬に襲われそうになったのを助けてくれたんです……」

 

小泉が話し終わると、モンスターは無図痒いのか、体を小刻みに動かした。

 

 

『だがモンスター……何故、勝手な行動をした?

君の勝手な行動が、どれだけの……「それは違うぜ、ベルトさん」…どういう事かね?』

 

 

説教モードに入ろうとしたベルトさんを俺は止め、

小泉とモンスターの方を向き、笑顔で答えた。

 

 

「モンスターはシフトカーとしての義務を、役割を全うしようとしたんだよ。

人間に奉仕し、人間を守る役割を……」

 

 

俺は小泉の手のひらの上にいるモンスターの頭を撫でた。

 

 

『それは……しかしだなぁ…』

 

「大人げないぜ、ベルトさん。

シフトカー達は、アンタの命令に従っている……それをコイツは守ったんだ……褒めてやっても良いと思うぜ?」

 

「先輩……」

 

「泊さん…」

 

『……………分かった……今回の事に関しては、不問にしよう……

ただ、一つだけ解決しなくてはならない問題がある』

 

「小泉の事……だな?」

 

「わたしですか?」

 

『あぁ、君は不可抗力とは言え、我々の事を、ドライブの事を知ってしまった。

これには君の返答次第で、我々も手を考えなければならない。

例えそれが非人道的な手段でもね……

脅迫めいてしまったが、どうかね?

我々の事、ドライブの事、ここで見た全てを、他言しないと約束してもらえるかね?』

 

「ベルトさん、なにもそんな言い方しなくても……」

 

『進二、確かに優しさは必要さ……先ほどの君の言葉に、ワタシも考えを改めた。

だがこの問題に対して、君は事の重大性に気付いていない。

仮に彼女が、この事を第三者に漏らしてしまった場合、敵にここを知られる恐れがある…そうなるとどうなるか……分からない訳ではないだろ?』

 

 

瞬間、ベルトさんの言葉に俺の背筋は凍り付いた。

 

 

『理解できたようだね……敵は結集出来る限りの戦力を持ってここ、音ノ木坂学院に攻撃を仕掛けて来るだろう。

そしてその被害はピットだけでなく学校にも及ぶ、そうなれば最悪……「もういいだろ!ベルトさん!」……………』

 

 

俺はベルトさんの言葉を遮った。

何故なら……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顔を真っ青にし、震える小泉を……俺は見ていられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、お茶で良かったのか?」

 

「はい……ありがとうございます、先輩……」

 

 

 

わたしは中庭側のベンチに座り、先輩は自動販売機で飲み物を買って来てくれた。

 

 

「悪いな、ベルトさんも悪気は無いんだ。

ただ少し大げさに言っただけだからさ、気にするな」

 

「いえ、あのロボットさんの言う通りです」

 

「ロボット……?あぁ、ベルトさんの事ね」

 

「ベルトさん?」

 

「そ、だってあれベルトじゃん?

最初にベルトって呼び捨てにしたんだがさぁ、アイツ呼び捨ては失礼だって言うから」

 

「だから…ベルトさん……」

 

「そう言うこと」

 

 

―そう言えば先輩、ハンドルの付いた剣の事、ハンドル剣って言ってたなぁ…

もしかして、先輩って……

 

 

「あの…先輩?」

 

「どうした?」

 

「今朝先輩が使ってた、剣なんですけど…」

 

「ハンドル剣の事?」

 

「いえ、あの……その名前って、先輩が付けたのですか?」

 

「そうだけど、それがどうかしたか?」

 

『どうかしてるのは、君のセンスだよ……』

 

 

 

突然現れたミニカーに、わたしと先輩は驚いた。

 

 

「っ?!……ビックリした…急に出てくんなよ、ベルトさん」

 

『すまない、ただ彼女に謝りたくてね』

 

 

喋るミニカーと話す先輩の会話にわたしは、疑問を感じた。

 

 

―今先輩、"ベルトさん"って言った?

それにさっきの声……

 

 

「もしかして……さっきの……」

 

『あぁ、この姿で話すのは初めてだね。

ワタシはあの様な体だからね、自由に動けないのだよ。

だからこのシフトカーを通して、話したり、外の様子を見たりするのさ』

 

「なるほど…」

 

『話がそれてしまったね……

実はさっきも言った通り、君に謝るために、ここに来たのだよ』

 

「わたしに……ですか?」

 

『先ほどは本当に申し訳なかった。

ワタシもあそこまで強く言うつもりはなかったのだが、下手に答える訳にもいかなくてね…

物事の重大性を理解させるには、ありのままを伝えるのが一番だと思ったのさ』

 

「いえ、わたしの方こそ……わたしが先輩を追いかけたりしなければ、こんな事にはならなかったと思うので……」

 

 

わたしとベルトさんはお互いに謝っていると、先輩はクスクスと笑っていた。

 

 

「いや、悪い……ミニカーと話したり謝ったりするのって、端から見るとスゲーシュールだなって思って」

 

『今さらではないか?』

 

「だな」

 

 

互いに笑い合う先輩達を見ていると、たった一人で世界を救う戦いに身を投じている風には見えなかった。

 

 

 

 

 

この人は、

 

 

ただの高校生で、

 

 

先輩で、

 

 

 

わたしの好きな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これからも先輩は1人で、誰にも知られず、誰も動けない凍り付いた時間の中で、たった一人……孤独に戦い続けるのだろうか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰にも感謝されることの無いまま……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ1人……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傷付きながら、戦う戦士(仮面ライダー)は……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて、悲しいのだろう……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとりぼっちの寂しさや、悲しさは………わたしもよく、知っている……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日まで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛ちゃんと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"あの子達"に出会う、あの日まで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしはひとりぼっちだったのだから……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事を考えていると、胸が痛くなってきた。

自然とこぼれる涙をこらえ、わたしは先輩を見た…

わたしには、先輩の笑顔が凄く……悲しく思えた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの…先輩……」

 

「どうした?小泉」

 

「先輩は辛く無いんですか?」

 

「辛いって…何が?」

 

「誰にも感謝されず、たった一人で戦うのが……先輩は辛く無いんですか?………寂しく無いんですか?!」

 

「小泉……」

 

「っ?!ごめんなさい先輩……」

 

「気にするな」

 

 

先輩は、謝るわたしの頭を撫でると、空を見上げた。

 

 

「でも寂しいか……考えた事ないな」

 

「えっ?」

 

「確かに、仮面ライダーは俺1人かもしれない……

でも、戦っているのは俺だけじゃないさ、ベルトさんや霧子、シフトカーの皆……

皆はそれぞれ、自分の出来る戦いをしている。

皆のサポートがあるから、俺は……仮面ライダーは、戦える。

それに俺は、誰かに感謝してもらう為に戦っている訳じゃない。

平和な日常を、皆の幸せを、悲しみから守る為に戦っているんだ。

皆が幸せで居られるなら、感謝されなくても、それでいい……」

 

『進二……』

 

「……強いですね……

どうして………先輩は、そんなに強いんですか?」

 

「……………約束……したからかな………」

 

「約束……ですか?」

 

 

そう言う先輩の表情は、少し悲しそうだった。

わたしの視線に気付いたのか、先輩はおもむろにポケットから箱を取り出した。

 

 

「あの…それは?」

 

「飴だけど?」

 

「………えっ?」

 

「飴……食うか?」

 

 

そう言いながら先輩は、箱から飴を取り出して口に運ぶと、飴を舐めながら、箱をわたしに向けた。

 

 

『いい加減、糖尿になるぞ?』

 

「いいんだよ、好きな物食って病気になるなら、文句ねぇし」

 

 

そう言いながら先輩は一つ、また一つと飴を口に運んだ。

わたしには、何かを誤魔化すために、わざと振る舞った様に見えた。

 

そうこうしているとチャイムが鳴り響き、わたしと先輩は、自分の教室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は小泉と別れた後、教室に戻らずにピットに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺がピットに入ると、俺に気付いたベルトさんは寄ってきた。

 

 

『ん?進二、教室に戻ったのではないのかね?』

 

「ちょっとな……………なぁ、ベルトさん」

 

『何かね?』

 

「小泉なんだが……」

 

『ウム、やはり彼女は我々と関わらない方が良いだろう……その方が我々の、何よりも彼女の為になるだろうからね……』

 

「あぁ……そうだな………ただ…」

 

『ただ?』

 

「…………いや、何でもない」

 

 

 

俺はピットを出て、教室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドライブピットを後にし、俺は教室に向かった。

教室に戻ると、血相を変えたにこ達3人が駆け寄ってきた。

 

 

「ちょっと進二!あなたあの後どこ行ってたの?!」

 

「心配したんやで?!電話も通じやんし」

 

「詩島さんから事情は聞いたけど、いくら警察と協力関係にあるかって、避難誘導なんて無茶しすぎよ!」

 

「ちょっちょっちょっ、ちょっと待って!

どうしたんだよ、3人とも?」

 

 

一気に問い詰めてくる3人をなだめると、一呼吸おいて尋ね返した。

3人はきょとんとした表情で俺を見た。

 

 

「貴方……なにも知らないの?」

 

「何を?」

 

 

すると絵里は携帯を取りだし、あるニュース記事を俺に見せた。

 

 

そこに書かれた内容に、俺は頭を強く殴られた様なショックに襲われ、持っていた携帯を落としてしまった。

 

記事の内容は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《謎のトラック爆発 襲撃者は怪物?!》

 

 

《どんより内を動く怪物 通行人を無差別攻撃》

 

 

《負傷者多数 輸送車襲撃事件》

 

 

《怪物の犯行?! 輸送車爆発 死者多数》

 

 

《10年前の最悪再び?! どんよりによる死者発生》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘…………だろ………………

 

 

 

 

 

「――――――――――――?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人が………………死んだ……………………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっ―――――――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は………………また……………………?

 

 

 

 

 

 

 

「――――!―――ん―――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約束…………したのにか………………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう……二度と………………―――――――……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また……………………俺は……………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目ぇ覚ましなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――パチンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然走った頬の痛みが、俺を引き戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前を見ると、心配そうに俺を見るにこと希……

 

 

そして、俺を叩いたであろう絵里は涙を浮かべていた。

 

 

 

 

 

「叩いた方が泣いてんじゃねぇよ…………ありがとな、正気に戻ったわ」

 

 

俺は痛む頬をさすりながら、皮肉混じりに絵里に礼をした。

 

 

「ならいいわ…………ごめんなさい、叩いたりして…」

 

 

涙を拭いながら、素っ気ない返事をする絵里は謝ってきた。

 

 

「いいよ別に…………悪いな?携帯、落としちまった」

 

 

俺は落とした携帯を拾い、絵里に返した。

 

 

「いいわよ、別に……そろそろ授業が始まるわ、席につきましょ?」

 

 

絵里の言葉に、俺達は席に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

授業の途中、俺は気分が優れないと言って、教室を出た。

 

 

 

 

 

その日、俺は丸一日授業に出ず、ずっと屋上で過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、部室に公安の桐原さんがやって来て、今朝の事件が、連続輸送車襲撃事件だと話した。

ただ、この事件による死者が出たのは今回が初めてらしい。

 

目撃者の話では、トラックが爆発する前に重加速が発生し、重加速内を動く怪物が、近くにいた人達を殴り飛ばしたとのことだ。

実際に奴の攻撃は、ドライブに変身した状態で、あそこまでのダメージを与えた、生身の人間が受けたとすると……

犠牲者の中には、頭部の無い死体もあったそうだ。

ほとんどの死体は、肉体の損傷がひどく、身元確認に時間がかかるらしい。

 

 

俺もベルトさんも、奴との戦闘や、小泉の事に気を取られていたとはいえ、奴を倒すどころか、止める事も出来ず、周りの被害にも気付けず、命を……約束も守れなかった自分の未熟さが、俺は許せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《―――。続きまして、昨日起こった輸送トラックの、謎の爆発事件に関する報道です。昨日―――》

 

 

俺はいつもの様に朝食を取りながら、ニュースを見ていた。

ニュースで報道されているのは、昨日起こった輸送車連続襲撃事件だった。

ロイミュードによる犯罪……今回が初めてな訳じゃない。

だが俺は、やるせない気分だった……

 

 

《―――による被害に、負傷者27名、中には意識不明の重体に陥った方も確認されており、…………え~、只今入りました情報によりますと、病院に搬送された重傷者の内、2名の方が亡くなられたとのことです。

これにより、今回の事件による死者は13名に―――》

 

 

俺はテレビを消すと、手に持ったリモコンを壁に投げつけた。

すると背後から、シフトスピードがやって来た。

 

『進二……』

 

「……ベルトさんか、どうした?」

 

『あまり自分を責めるな、君は救える限りの命を救った。

君がいなければ、もっと多くの命が失われていたかもしれない』

 

「分かってる……今俺達がする事は…………」

 

『あぁ、奴を倒し、この事件を終わらせることだ……』

 

 

俺はベルトさんの言葉に頷き、トライドロンに乗り、学校に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み、俺はいつもの様に昼寝をするために、屋上に向かった。

すると向こうから1年生が、西木野がやって来た。

 

 

「……よっ西木野、また音楽室に行くのか?」

 

「……………悪いですか?」

 

「いや、悪くないけどさ……そう睨むなよ、せっかくの可愛い顔が台無しだぜ?」

 

「っ?!うるさいわね!そんなの、私の勝手でしょ!」

 

 

そう怒鳴って、西木野は音楽室に入って行った。

 

 

「……褒めたのに…何だよ、顔赤くして……そこまで怒らなくても良いだろ……」

 

 

俺は音楽室を後にし、屋上に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

階段を上ると、屋上の出入口の前の踊り場に人影が見えた。

 

 

「希?」

 

「っえ?!進二くん?!」

 

 

そこには希が、外の様子を覗いていた。

 

 

「何してたんだ?」

 

「ん~ん、何も!ほなな?」

 

 

慌てながら階段を下りる希を、俺は見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ハァ~ァ~…良い考えだと思うんだけどな……」

 

 

私、高坂穂乃果は今、屋上に居ます。

 

私は昨日、UTX学園に行って思い付いた、学校を廃校から救う方法を、海未ちゃん達に話すと、反対された。

スクールアイドル……良い考えだと思ったんだけどな……

 

 

 

 

 

 

 

「ありゃ、先客がいたか……」

 

声に振り向くと、幼なじみの進にぃが入って来た。

 

 

「よっす穂乃果…………どうした?」

 

「ううん、進にぃこそ、どうしたの?」

 

「昼寝」

 

「あはは……さすが進にぃ……ん?」

 

 

即答する幼なじみに苦笑いすると、どこからか歌が聞こえた。

 

 

「おっ?始まったな」

 

「始まったって、何が?」

 

 

歌を聞いた進にぃが言った言葉に、私は聞き返した。

すると進にぃははにかみながら答えた。

 

 

「音楽室に行ってみな、良い物聴けるぜ?」

 

 

そう言って進にぃは、制服の上着を畳んで枕にすると、昼寝を始めた。

 

 

「音楽室……」

 

 

私は進にぃの言葉に従い、音楽室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~『愛してるばんざーい(真姫 ピアノvar.)』~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歌の聞こえる音楽室を覗き込むと、1人の女の子がピアノを弾きながら、歌っていた。

 

 

「……綺麗な声…………」

 

 

私はその子の歌に聞き入ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はピアノを弾き終え、一息ついた。

 

 

―昨日は先輩……拍手してくれたな……

 

 

私は昨日の出来事を思い出していると……

 

 

 

 

パチパチパチパチパチパチパチパチ……

 

 

「……?う"ぇぇ?!」

 

 

 

 

今度は知らない先輩が、扉越しに拍手をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごいすごいすごい!感動しちゃったよ!」

 

「べ…別に……」

 

 

 

入って来るや否や、誉めて来る先輩に私は少し戸惑った。

 

 

「歌上手だね!ピアノも上手だね!それに、アイドルみたいに可愛い!」

 

 

 

 

 

―――せっかくの可愛い顔が台無しだぜ?―――

 

 

 

 

 

先輩の言葉に、少し前に言われた言葉を思い出してしまった。

 

 

 

 

 

 

―何でアイツの台詞が!

 

 

 

 

 

 

同様を隠せない私は席を立ち、音楽室を出ようとした瞬間、先輩は私を呼び止めた。

 

 

 

 

 

「いきなり何だけど……あなた、アイドルやってみたいと思わない?」

 

 

先輩の言葉の意味が分からなかった。

 

 

 

「なにそれ……意味分かんない!」

 

 

 

先輩を背に、私は音楽室をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ~ぁ~~……よく寝た……ん?」

 

 

俺は昼寝を終え、教室に戻ろうとした時に、メールが入って来た。

 

 

「……ことりから?」

 

 

―【放課後に、進ちゃんに話したい事があるんだけど、大丈夫かな?大丈夫なら食堂に来てね】―

 

「なんだろ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「進ちゃん!こっち」

 

 

俺はことりに呼ばれ、食堂に来ていた。

 

 

「ごめんね進ちゃん、急に呼び出しちゃって…」

 

「いや、いいよ別に。

そより何だ?話したい事って」

 

「実は……」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど………"アイドル"……ねぇ…」

 

「うん………進ちゃんは、どう思う?」

 

「アイドルかぁ………」

 

 

 

さすがは穂乃果と言うべきか………

 

俺は少し驚きはしたが、納得もした。

多分、昨日スクリーンで見たライブの影響だろ…

 

 

「穂乃果ちゃん………いろいろ調べた見たいで…」

 

 

そう言ったことりは、隣に置いていた紙袋の中を取り出した。

 

それは数冊の雑誌だった。

 

 

「ハイスクールアイドルス………スクールアイドルの秘密に迫る…こっちは、今を輝くスクールアイドル……

全国スクールアイドル大全集……スクールアイドル激カワ少女 水着特集……」

 

 

―なんか1冊間違ってる気がするが…………

 

 

「これ全部穂乃果が?」

 

「うん……穂乃果ちゃん、今流行りのスクールアイドルならいける!…って私と海未ちゃんに……」

 

「相談した瞬間に誘って来たと……」

 

 

―さすが穂乃果……

 

 

「うん……私としては、穂乃果ちゃんの考えに反対する訳じゃ無いんだけど……海未ちゃんも言ったように、この本に載ってる子達は、プロの人と同じくらい努力して、頑張ってる人達だから……私達に出来るのかな……って思って……」

 

「なるほどな………良いんじゃないか?」

 

「え?」

 

「お前達の気持ちが本物なら、きっと頑張れると思うし。

3人共顔も可愛いと思うし、歌も得意だろ?

……何より、アイツがやりたいって言った事を、途中で投げ出す様な奴じゃないってのは、幼なじみの俺達が一番良く知ってるだろ?

それにさ、アイツの身勝手に巻き込まれた時に、いつも感じるんだよ…………"楽しかった"、"やって良かった"………尻拭いや後始末、最後は全部俺の所に来て、散々な目に遭って来たけどさ………後悔だけは、しなかった……………

ことりもそうだろ?」

 

「………うん……いつも、毎日が楽しい日々だったよ……

私、やってみようかな……アイドル………」

 

「おぅ。

なんかあったらいつでも呼べよ?力になっから」

 

 

俺はことりの頭を撫でた。

 

 

「ありがと♪進二ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音ノ木坂学園にある弓道場

 

 

園田海未は弓道着に身を包み、弓を構え的を見据えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

的には矢は当たらず、すでに6本の矢が的の側に刺さっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

7本の矢が的を外れた瞬間、彼女は倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その理由は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ…………いけません!余計な事を考えては!」

 

 

私、園田海未は悩まれている。

理由は幼なじみの穂乃果から告げられた、学校を廃校から救う方法……

 

 

 

…………スクールアイドル……

 

 

 

 

何度も頭をよぎるアイドル姿の自分の幻影に、私は悩まされていた。

 

 

 

「園田、調子が悪いのか?」

 

 

私が床に伏せて考え込んでいると、顧問の呉島先生が心配そうに声をかけてきた。

 

 

「無理はするな、今日は自主トレーニングだ。

ちょうどお前にお客さんが来ている、少し休んで来い」

 

 

そう言った呉島先生の後ろには、もう一人の幼なじみのことりが立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はことりに連れられて、校内を歩いている。

目的地を聞いても、"良いからついてきて"としか、返してくれない。

一体どこにいくのでしょう?

するとことりが私に話しかけてきた。

 

 

「そういえば海未ちゃん、今日調子悪いの?

珍しくいっぱい外してたけど」

 

「穂乃果のせいです、全然練習に身が入りません……」

 

「てことは、ちょっとアイドルに興味があるって事?」

 

「違っ……それは……」

 

 

図星をつかれ、私は少し戸惑った。

だけど………

 

 

「やっぱり、上手く行くとは思えません……」

 

「でも、いつもこういう事って、穂乃果ちゃんが言い出してたよね?」

 

 

ことりの言葉に、私は幼少期の事を思い出していた。

 

 

 

 

 

木を登ろうと誘いかけてくる穂乃果と登る事に驚くことり、木の大きさに弱音を吐く自分、そして側で苦笑いを浮かべながら見守っているお兄ちゃん。

懐かしい光景が浮かび上がると、続けてことりは話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達が…尻込みしちゃう所を、いつも引っ張ってくれて」

 

「そのせいで、散々な目に何度も遭ったじゃないですか……そのたびに、お兄ちゃ……んっ、お兄さんにご迷惑をかけて……」

 

 

 

 

 

登った木の枝が折れ、下で見守っていたお兄ちゃんに直撃したうえ、木から降りられなくなった自分達を思い出すと、恥ずかしさでどうにかなりそうになた。

他にも、キャンプに行った際に、山道で迷子になったりと、いろいろあった。

 

 

 

「そうだったね……」

 

ことりもいろいろと思い出したのか、苦笑いを浮かべながら同意した。

 

 

「穂乃果はいつも、強引過ぎます」

 

 

私が穂乃果の短所をあげると、ことりは笑顔で私に問いかけて来た。

 

 

 

「でも海未ちゃん……後悔した事ある?」

 

 

 

その瞬間、私は穂乃果達と過ごした日々で、自分が感じていた感覚を思い出した。

 

降りられなくなった木から見るきれいな夕日や、帰り道の分からない山から見た星空、様々な物見て、経験して感じた、"楽しさ"、"充実感"、そこに後悔はなかった。

 

 

 

 

 

 

目的地についたのか、ことりが立ち止まると、人気のない校舎裏だった。

 

 

 

 

「見て……」

 

 

 

ことりが見る先には……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人でダンスの練習に励む、穂乃果の姿だった……

 

 

 

 

 

「ねぇ海未ちゃん……私、やってみようかな……

海未ちゃんは、どうする?」

 

 

尋ねてくることり、目の前の穂乃果……

そして、自分の気持ち……

 

 

気が付くと私は、穂乃果のもとに向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は校舎裏でダンスの練習をしていた。

本当はいつもみたいに、親友二人と一緒に3人でやりたかったけど、私は学校を救いたい!

その為に、1人でも頑張ろう……

 

考え事をしてしまったせいか、勢い良く滑って転けてしまった。

 

 

 

 

するとどこからか、手が差し伸べられた。

その先には………

 

 

 

 

 

「海未ちゃん……?」

 

 

親友の海未ちゃんとことりちゃんがいた。

 

 

「1人で練習しても、意味がありませんよ?

やるなら、"3人"でやらないと」

 

 

 

「海未ちゃん」

 

 

 

 

私は嬉しさのあまり、涙を流してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ドライブピット

 

 

 

「なぁベルトさん」

 

 

俺はピットに入ると、ベルトさんに話しかけた。

 

 

『ん?どうしたのかね、進二』

 

「その………どうだ?ハンドル剣……直りそうか?」

 

 

それは前回の戦闘により、折れたハンドル剣の事だ。

 

現時点で奴に、クラッシュロイミュードに有効な手は、ハンドル剣だけだった。

 

 

『ん~……まだ少し、かかりそうかな……

今回は修復だけでなく、前回の轍を踏まない為にも、ハンドル剣その物を強化する必要があるからね。

それにハンドル剣にも"奥の手"を搭載する事になった』

 

「奥の手?」

 

『楽しみにしていたまえ…フフンッ』

 

 

そう言ったベルトさんの顔は笑っていた。

 

 

「そっか」

 

 

しかし困った、ハンドル剣がないと奴と戦うのに手間取りそうだ。

そうなるとまた………

 

 

「なるべく早く頼む」

 

『ウム、急ピッチで仕上げよう』

 

 

 

俺は入り口側のソファーに、仰向けでもたれかかった。

 

 

 

―どうすりゃ、アイツの硬い装甲を……タイプスピードのパワーじゃ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――音ノ木坂学院 正門

 

 

 

 

そこに肩を落とし、歩く3人の姿があった。

 

 

 

「がっかりしないで……穂乃果ちゃんが悪い訳じゃないんだから……」

 

「生徒会長だって、気持ちは分かってくれているはずです……」

 

 

 

 

 

 

 

高坂穂乃果は、園田海未と南ことりを連れて生徒会室に向かい、生徒会にアイドル部の申請をしたのだが、人数不足により、あっさりと断られたのである。

それだけでなく、穂乃果達の動機を知ると、設立を認めないとまで言われたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも……部活として認められなければ、講堂は借りられないし、部室もありません……何もしようが無いです」

 

「そうだよね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

海未の言葉に同意することり。

 

目の前の問題に、不安になる3人少女

 

生徒会室でなす術がなく、途方にくれる2人少女

 

ドライブピットで悩む1人の少年

 

 

 

 

様々な想いが交錯するなか、少年と少女達は呟いた。

 

 

 

「あぁ……これから一体どうすれば……」

 

 

 

「どうすれば……」

 

 

 

 

「「どうすれば良いの……」」

 

 

 

 

「…どうすれば、良いんだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~『ススメ→トゥモロウ』~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜舞い散るなか、少女(ほのか)は一つの決意を胸に叫んだ。

 

 

「私、やっぱりやる!やるったらやる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?
ベルトさんが年齢相応のスケベ親父と化してしまいました。

シリアスにもってくの下手だなぁ(泣)

※設定において、第1話の細部変更しました。

今月届くアーツのトライドロンを楽しみに、頑張って生きたいと思います。
訂正、行きたいと思います。

来週のドライブ、マッハの融合進化態?楽しみですね!

ではいつもどうり、評価、登録お願いします。


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少女《おさななじみ》達が得たのは何か。

いやー長かった………
どうもケモミミです。
就活に本腰入れた為、かなり間が空きました。
その成果あって、就職決まりました。
ですので、投稿も定期的になるかもです。


遅れましたが、仮面ライダードライブ

キャストならびに製作者の方々

オツカーレ(マッハドライバー風)






 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある中華料理店

 

人が1人もいない中、動く3つの影があった。

 

 

 

 

「アニキ~、俺達を置いてどこ行ってたんですか?

あのケース超~重いんすよ?」

 

「フタリデヤット、ハコンデキタンデスヨ?」

 

「おぅ、ちょっと仮面ライダーと殺り合ってな。

死神と渡り合ったって聞いたら期待してみたが……た~いした事ねぇのな?!ガッハハハハ!!」

 

「スッゲ~…」

 

「サスガアニキ~♪」

 

「まぁな~♪」

 

 

「油断は禁物ですよ?クラッシュ…」

 

 

 

大声で笑うクラッシュ達の側に、タブレット端末を持ったブレンと後ろの壁に腕を組んでもたれかかるチェイスの姿があった。

 

チェイスの姿を見た途端、クラッシュはチェイスの側に向かった。

 

 

 

「よう~死神~♪…お前、あんな奴に手ぇ焼いてたのか?

あの仮面ライダー……超~~~弱ぇ~じゃねぇ~か~?」

 

 

そう言いながらクラッシュは、チェイスに顔を近付け、持っている菓子をチェイスの耳元で、音を立てながら食べ始めた。

 

 

 

「それってつまりさぁ~…俺がお前より強いって事じゃないのか~?

ガーッハッハッハッ……ッング!?」

 

 

 

ロイミュードの姿に変えたクラッシュが、チェイスの肩に手を置き、大声で笑い出した瞬間、チェイスはブレイクガンナーでクラッシュの顔面を殴り付けると、怯んだ隙をつき、横腹に膝蹴りを入れ倒れ込んだクラッシュの頭にブレイクガンナーを突き付けた。

 

 

 

 

「な……何?」

 

「分かりましたか?クラッシュ…

彼はまだ実力の半分も出していない。

コアを破壊しない様に、手加減して来たのです。

今回はそれが仇になっただけ……"ドーピング"している貴方とは格が違うのですよ?」

 

 

 

無言のチェイスの代わりに説明したブレンは、クラッシュに突き付けられたブレイクガンナーを抑えた。

するとチェイスは、ブレイクガンナーを懐に戻し、その場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

~~~♪

 

 

「ん?誰だろ…穂乃果?」

 

 

俺がドライブピットで考え込んでいると、突然携帯に着信が入った。

 

 

―何だろ…

 

 

「もしも…―〈どうしよう!助けて、進にぃ!〉ッ?!」

 

 

いきなりの大声に俺は携帯を耳から遠ざけた。

 

 

「どうしたんだよ、穂乃果?」

 

―〈実は……〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど、ライブに使う場所ねぇ…」

 

 

穂乃果からの電話は、絵里にアイドル部の設立を反対された事と、ライブに講堂を使いたいという内容だった。

 

―〈そうなの……生徒会長さんにいろいろ反対されて……〉

 

 

最近のアイツ、ピリピリしてるとは思ってたが……

 

 

「そもそも講堂は申請さえ出せば、部活に関係無くうちの生徒は誰でも使えるだろ?

それにアイドル部はすでに…―〈それ本当?!〉…話を途中で遮るな……」

 

 

―相変わらずだよなぁ…こいつは……

 

 

俺は変わらない幼なじみにため息をつき、会話を再開した。

 

 

「本当だよ、生徒手帳に書いてあるだろ」

 

―〈ええぇっ?!嘘ぉぅ?!……………………ホントだぁ!〉

 

「な?書いてただろ?」

 

―〈うん、でも何でそんなに詳しいの?〉

 

「元風紀委員長ナメるなよ?」

 

―〈えっ?!進にぃ、風紀委員長になったの?!〉

 

「元だ、元…」

 

―〈あっ、…そう…だったね……〉

 

 

半年前を思い出したのか、突然歯切れが悪くなった穂乃果に俺は気にするなと伝えた。

 

 

「まぁ…アイツはいい奴だから、話せば分かってくれる筈だ…」

 

―〈うん、ありがとう〉

 

「別にいいよ……それと穂乃果」

 

―〈?…何?〉

 

「頑張れよ」

 

―〈…うん!〉

 

 

 

穂乃果と話し終えると、俺は携帯を前に置かれているテーブルに置いた。

 

 

 

「……あっ!」

 

 

―アイドル部の事、話し損ねた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――翌朝

 

 

 

 

俺はコーヒーを買いに購買に向かう為、近道で生徒会室の前を通った時、希と絵里が生徒会室から出てきた。

 

 

 

「よう、お二人さん」

 

「おはよ♪進二くん」

 

「おはよう…」

 

 

妙にご機嫌な希とその逆の絵里は挨拶を返してきた。

 

 

「何か絵里のやつ、やけに不機嫌だな?何かあったのか?」

 

 

俺が希の耳元で話すと、希はクスクスと笑いながら答えた。

 

 

「ちょっとな…」

 

 

希の話では、廃校阻止の為にスクールアイドルを結成した2年生が、ライブをするために講堂の仕様申請を出してきたらしい。

 

 

「最初は、部活動として機能していない事を理由に、講堂は使わせない算段やったんやけど……校則に詳しい"どっかの誰かさん"が入れ知恵したみたいでな?

エリチの作戦は失敗したわけや」

 

 

そう言いながら俺を見る希は、意味ありげな笑みを浮かべていた。

 

 

 

「なるほど…それでご機嫌斜めと……」

 

 

「うるさいわね…」

 

 

希の視線から目を反らし、絵里の方向くと、絵里は複雑な表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は教室に向かう途中、掲示板にある物を見た。

 

 

「ライブ、決まったんだな……ん?」

 

 

それは穂乃果達のライブの広告だった。

 

 

ただ……

 

 

 

 

―穂乃果……間違いじゃないが"公堂"じゃなく、"講堂"な…

 

 

 

 

チラシの誤字?に心の中で訂正していると、スケッチブックを持ったことりがやって来た。

 

 

「よう、ことり」

 

「あっ!進ちゃん♪」

 

「頑張ってるみたいだな」

 

「うん……ただ、衣装考えるの難しくて…」

 

「衣装か……それはアドバイスしずれぇな……」

 

 

俺は自他共に認めるほど、服に……というより、オシャレ等には興味がなく、服は自分で選ぶと、安い無地のシャツとジーンズしか買わず、その上に黒のジャケットを着るだけで、ほぼ毎日同じ様な格好をしていた。

それに見かねた、絢瀬や母さん、服が好きなことりが選んでくれて来たのだ。

 

 

「そうだよね……進ちゃん、センス無いから…色々と…」

 

「そこまで言うか?」

 

 

少し泣きそうになった時、ことりは何かを思い出したかの様に質問してきた。

 

 

「そう言えば進ちゃん、オシャレしないけど、いつも同じネックレスしてるよね?」

 

「ん?…あぁこれか」

 

 

俺は首もとからドックタグと鍵のついたチェーンのネックレスを取り出した。

 

 

「昔から着けてたよね?」

 

「あぁ……いつからだったかなぁ…」

 

 

思い出そうとしたがなかなか思い出せず、俺は諦めて話しを戻した。

 

 

「話し戻すけど、どんな衣装何だ?」

 

「う~んとね、まだ途中なんだけど…こんな感じ」

 

 

そこにはヒラヒラとした、いかにも"アイドル"のような絵が描かれていた。

 

 

「へぇ~……いいじゃん」

 

「ありがとう♪」

 

「そう言えば、お前らのグループ名って何なんだ?」

 

「えっ……」

 

「気になってな……何てグループ名にしたんだ?」

 

「………………」

 

「ことり?」

 

「…………エヘッ♪」

 

 

 

 

 

―ホントに大丈夫なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ライブのチラシの一番下に"グループ名募集"と書き足されたのは、言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、高坂穂乃果は親友の海未ちゃんとことりちゃんと一緒に、アイドル活動の為に練習できる場所を探している。

 

 

 

 

 

 

 

中庭……

 

 

 

 

運動場…………

 

 

 

 

体育館………………

 

 

 

 

空き教室は閉まってる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、駄目でしたね……」

 

 

海未ちゃんが肩を落としながら言った。

そう……空き教室も狭く、音漏れなどの理由で使わせて貰えなかった。

 

 

「どっか良いところ無いかなぁ~…」

 

 

ぼやく私にことりちゃんは、「きっと見つかるよ」と励ましてくれた…

 

 

三人で宛もなく、ただ単に歩いていると、幼なじみの進にぃがジュースを片手に歩いていた。

 

 

「進にぃ!」

 

 

私が呼び掛けると進にぃは振り返った。

 

 

「ん?……穂乃果、何かあっ…ふあぁ…」

 

 

いつもの様に無気力で眠そうな表情の進にぃは、アクビをしながら答えた。

 

 

 

「えっとね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「練習場所か……」

 

 

俺は今、穂乃果達に広くて周りに迷惑のかからない練習場所を聞かれ、考えている。

 

 

「あるっちゃあるが……」

 

「本当?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここだ」

 

「「「やっぱり……」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が3人を屋上に連れていくと、3人肩を落とし、ため息をついた。

 

 

 

「何だよそのリアクション」

 

 

―ちょっとへこむぞ……

 

 

俺がせっかく、サボりの聖地であるここ、屋上を提供してやろうと言うのに……

 

 

「まぁ……進にぃの言う通りかな…」

 

「ここしか無いようですね……」

 

「日陰もないし、雨が降ったら使えないけど、贅沢は言ってられないよね……」

 

 

低いテンションで話す3人は、この屋上の素晴らしさに気付いてなかった。

 

 

「贅沢も何も、ここほど素晴らしい場所は無いぜ?」

 

「「「えっ?」」」

 

 

俺の言葉に3人は食いついてきた。

 

 

「日陰は時間制だが、お前らが練習する頃には、そこと…そこに日陰が出来るし、周りに誰もいないから、音や場所に迷惑をかけることはない、その逆もしかりだ。 周りに誰もいない事は、邪魔になるものがない、つまり集中して練習できる。

それに、ほどよい風が心地いし、日の光もいい感じで、横になれば…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……昼寝にはもってこいだ」

 

 

 

 

 

最後の俺の本音に、3人はずっこけた。

 

 

 

 

 

 

 

「進にぃの言う通りだね!

よ~し、頑張って練習しなくちゃ!」

 

 

そう言って並ぶ3人

 

 

「まずは歌の練習から!」

 

「「はい!」」

 

 

穂乃果の言葉に力強く答える2人を見ていると、なんとかなりそうな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………曲は?」

 

「私は…知りませんが…」

 

「私も……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとかなりそうな気がした……気がする…………のか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、俺はベルトさんに呼び出されて、ピットにいる。

 

 

 

「それで?何かあったのか、ベルトさん」

 

『それはだなぁ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロイミュードが2体以上いるかもしれない?!」

 

『あぁ…今回の事件、ワタシ達はあのクラッシュロイミュード1体だと思い込んでいたが、少し妙だと感じた事があってね……

進二、君はあの時に発生した重加速は覚えているかね?』

 

「あぁ……確か、爆発が起こって…それから……っ?!」

 

 

俺はベルトさんの質問にある疑問を思い浮かべた。

 

 

『気付いたようだね?』

 

「あぁ……俺達が感じた重加速、それはあの進化態ロイミュードの起こしたもの、それは爆発の後に起こった……」

 

『あぁ……だが、ニュース等で報告された目撃証言等は、重加速後に爆発が起き、怪物…ロイミュードが現れたとなっている。

さらにワタシが調べた結果、貨物が持ち去られた形跡があった。

だがヤツは、そんな素振りは見せなかった』

 

「つまり、爆発前に…進化態が重加速を起こす前に、ベルトさんが感知出来ない範囲で重加速を起こした奴がいる、そしてソイツが、貨物を持ち去った……って事か?」

 

『その可能性はあり得る…警戒しておいてくれ』

 

「わかった」

 

『それと進二』

 

「?」

 

『ハンドル剣なんだが…』

 

「直ったのか?」

 

『いや、まだ少しかかるようだ…

だから代わりの物を用意した。』

 

 

ベルトさんがそう言うと、シフトカー達が何かの台を牽引してきた。

 

 

台の上には布を被せた"何か"があった。

 

 

 

『……と…その前に、これを渡そう』

 

そう言ってベルトさんは自身の台座からあるものを出した。

 

「っ?!……ベルトさん…これって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……"銃"……だよな?…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルトさんが取り出したのは、見るからに拳銃だった。

 

 

『Exactly………実銃だ…

本来なら、渡すべきでは無い物だが……

最悪の事態を想定するなら、必要不可欠だ。

まぁ、あくまでも"護身用"と思ってくれてかまわない』

 

「…随分と物騒だな」

 

 

―でも、何で銃なんか……そういえば、霧子も持ってたよな……

 

俺はハンドガンを手に取ると、マガジンを取りだし、弾の有無の確認、再度マガジンを装填し、上部スライドをコッキングし、薬室に弾を送った。

 

 

するとベルトさんが驚いたのか、俺の手から、銃から目を離さなかった。

 

 

『……随分と慣れているね…』

 

「あぁ……訳ありでな…

ベルトさんなら知ってるだろ?」

 

『うむ、詮索はしないさ……ただ、あくまでそれは護身用だ。

間違っても、私情に……ましてや私怨には使わないでくれたまえ』

 

「分かってる……あぁ…分かってるよ…」

 

 

俺は拳銃を台に置き、一緒に出されたホルスターを腰に取り付けた。

上着を羽織れば隠れるので、問題はない。

肩掛け型(ショルダータイプ)のマガジンポーチも上着で隠れる。

 

 

「手錠まで……まるで刑事だな」

 

『それも護身用だ』

 

 

ベルトさんの一言で、俺の中の疑問が全て繋がった。

 

 

「なぁ……それって、敵は"ロイミュードだけじゃない"って事か?」

 

 

俺は手錠を専用ケースに、ハンドガンをホルスターに収めながら尋ねた。

 

 

―そう、ロイミュード相手に、通常の兵器……ましてや、手錠なんかは意味を持たない。

それはベルトさん自身がそう言った。

つまり、ロイミュードと戦うドライブ(オレ)には必要無いもののはずだ。

ならなぜ、ベルトさんはロイミュード戦に必要無いものを手配したのか……

 

おそらくそれは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロイミュード"以外"の脅威に対しての対処……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり、敵はロイミュードだけじゃない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく……嫌になるぜ…」

 

 

俺は愚痴りながら、台に乗せられたもう一つの物に目を向けた。

 

 

 

「もう一つは……これか」

 

 

被せられた布を捲ると、そこには……

 

 

「…っ?!これって……」

 

 

 

そこに置かれた物に俺は、驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、園田海未は悩んでいる。

 

 

―…歌詞、か……

 

 

私は穂乃果達に頼まれ、ライブ用の歌詞を考えている。

 

 

「体力づくりのメニューは簡単に思い付いたのに……なかなか上手く出来ませんね…」

 

 

 

 

家は代々日本舞踊の家元だが、父が武術の道場を開いており、体力づくりのトレーニング等にたいしては、部活動もしているので、すぐに出来上がった。

 

 

上手くいかず、行き詰まってしまったので、一息つこうと筆を置いた。

 

 

おもむろに私は携帯電話を手に取ると、いくつかのメールが入っていた。

 

 

「穂乃果に、ことり……応援文ですか……」

 

 

親友2人の応援に励まされ、再びペンを握った瞬間、またメールがきた。

 

 

―?……お兄ちゃん?!

 

私はメールを開き文を呼んだ。

 

 

―【穂乃果から聞いた。

気のきいた事言えないが、作詞頑張れよ】

 

 

私は素っ気ないメールに少し笑いそうになった。

思えばいつもそうだ…

どんなときも、お兄ちゃんは私達を支えてくれた……

大会の結果が悪いときは、励ましに…

上級生にいじめられた時も助けに……

 

 

いつも支えて、励ましてもらってばかりだ……

 

 

それなのに私は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達は、"半年前"に…何も出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

励ますことも、助けることも、支えてあげることも…

お兄ちゃんがしてきてくれた事を……

 

私達は、してやれなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事を考えていると、一つの考えが浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"誰かを励ます…元気つける様な……歌"…」

 

 

 

 

そして私は、筆をとった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――早朝

 

俺は迫るクラッシュロイミュードとの戦闘に備え、ある場所に向かっている。

 

 

 

 

 

 

 

「ここ来るのも久しぶりだなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洒落た洋菓子店……俺は中へと足を運んだ。

 

 

そこは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ……あれ?…進二くん?」

 

「……お久しぶりっす、城乃内さん」

 

「うん、久しぶりだね。

ここに来たってことは……」

 

「…はい」

 

「わかった、ちょっと待ってて……パティシエー!」

 

 

城乃内さんに呼んでもらった人、それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アラ?アータがこっちに来るなんて、久しぶりね?

今日はどうしたの?ワテクシの愛弟子」

 

 

「実は、頼みがあって来ました。

凰蓮先生………いえ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………教官」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは、洋菓子店"シャルモン"

 

 

 

凰蓮先生の実家で、土日祝日限定で、凰蓮先生の手製スイーツが販売される。

 

 

そんな店に俺が足を運んだ理由……それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……特訓に付き合って貰えませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウチはここ、神田神社でお手伝いをしている。

そこでウチは、あるものを見ている。

 

それは……

 

 

 

 

 

「初ライブ、上手くいきます様に」

 

「「上手くいきます様に」」

 

 

拝殿の前でお祈りをする3人の姿。

彼女達はこの間、廃校阻止の為にスクールアイドルを結成した2年生達だ。

 

 

 

「あの3人、本気みたいやな……」

 

 

お祈りをする3人の姿を見ていると、彼女達の熱意が伝わってくる。

 

その熱意は、昔の"彼"を思わせる。

すると気のせいか、彼女達の姿が"彼"と重なって見えた。

 

 

 

「アイツ等の覚悟、分かったろ?」

 

「うん……体はもう大丈夫なん?」

 

「あぁ……体のあっちこっち悲鳴上げてるが、疲れはとれたよ」

 

「それ、大丈夫って言えるん?」

 

 

隣に現れた"彼"は、彼女達の幼なじみらしく、お祈りをする彼女達にお賽銭を渡したのも彼だ。

 

 

「それにしても驚いたで……神社の前で行き倒れてるんやもん」

 

「ははは……まぁ、思いの外特訓が厳しくてな…」

 

「行き倒れなんて、初めて見たで?

何してるかは聞かんけど、無茶せんといてな?進二くん」

 

「おう」

 

 

そう返事を返す彼は全身ボロボロで所々に絆創膏と包帯が巻かれていた。

 

 

「まぁ……しっかし…」

 

 

そう言いながら、ウチを見る彼にウチは尋ねた。

 

 

「何?」

 

「いや、前から思ってだが、相変わらず似合うな……巫女姿」

 

「あ、ありがとう……」

 

 

照れながら答えた彼の言葉は、嬉しかったが恥ずかしくもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――夕方

 

 

俺は家に着くと、母さんに誘われ夕飯の買い物に近所のデパートに向かった。

 

 

「母さん、今日の夕飯って何?」

 

「そうねぇ……特売品によるわね」

 

「だよなぁ…」

 

「何かリクエストでもあるの?」

 

「いや、たまには肉食いたいな…って」

 

 

そんなありふれた会話をしていると、目の前のカフェテリアに二人の男性がいた。

 

眼鏡をかけた人と真っ赤なコートを着た人、片方のコートの人は、見覚えがあった。

 

 

「母さんごめん、ちょっと待ってて」

 

 

俺は母さんにそう言って、、カフェテリアに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の男はデパートにあるカフェテリアで話していた。

 

 

「で……どうだった、クラッシュの様子は?」

 

「はい、油断が目立ちますが……問題はないと思います」

 

「相手は仮面ライダーだ……油断が一番の危険要素になる、気を引き締めるようクラッシュに伝えておいてくれ」

 

 

赤いコートを着た男《ハート》がそう言うと、眼鏡の男《ブレン》は分かりましたと、返事をした。

 

ハートが置かれているコーヒーに手を伸ばすと、一人の少年が声をかけてきた。

 

 

「久しぶり、阿津喜」

 

「ん?…泊 進二、久しぶりだなぁ」

 

「ハー…阿津喜さん、そちらの少年は?」

 

「あぁ……コイツは、泊 進二

この間、俺を負かした男だ」

 

「貴方が負けた?!」

 

「え、えぇ……レースゲームで…

あ、俺……泊 進二って言います」

 

 

阿津喜が負けたと言うことに、酷く動揺するブレンに、進二は驚きながら自己紹介をした。

 

 

「失礼……彼が負けた事に驚いてしまいました。

私は能見 壮《のうみ そう》と申します」

 

「彼は俺の友達でな、よく一緒に居るんだよ」

 

「そうなんですか」

 

「えぇ…"いつも"一緒に居ます」

 

 

やけにいつもを強調したように聞こえたが、進二は気に止めなかった。

 

 

「ここであったのも何かの縁だ、ちょうどそこにゲーセンがある……どうだ?一勝負…」

 

「あぁ……すんません、ちょっと母を待たせているので、また今度で」

 

「そうか……残念だ…ではまた、逢えることを楽しみにしておこう」

 

 

進二が二人に一礼をして去った後、入れ違いでチェイスが現れた。

 

 

「どうした?ハート」

 

 

「チェイスか…いや、少しフラれただけさ。

さぁ行こうか、我が友達よ」

 

 

そしてハート、ブレン、チェイスはその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ、母さん」

 

「ううん、さっきの方達、お知り合い?」

 

「あぁ、ゲーセンで知り合ったんだ」

 

「そ………ん?………あの人…どこかで…」

 

 

母さんが俺の後ろを見ると、そう呟いた。

 

―阿津喜さんの事知ってるのか?それとも、能見さんか?

 

 

俺が後ろを振り返ると、そこに二人の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朝から、なんなよ……あの先輩…」

 

 

私、西木野真姫は教室に戻っている。

 

 

実はさっき、2年の先輩に作曲を依頼された。

 

―どうして私が……何で、私なの…

音楽を辞めようとしてる私を、どうして……

 

 

考えながら歩いていたら、誰かとぶつかってしまった。

 

 

「すいません!考え事してて」

 

「いえ、こちらこそ………貴女は、確か…」

 

「……?」

 

「覚えてませんか?」

 

「………っ?!あの時の?!」

 

 

私はぶつかってしまった3年生に見覚えがあった。

 

 

「ちゃんと自己紹介してませんでしたね?

私は詩島 霧子と言います」

 

「西木野……真姫、です…」

 

 

自己紹介をする詩島先輩に、私も自己紹介をした。

 

 

「すいませんね?私も考え事をしていたものですから」

 

「いえ、私の方こそ…すいません」

 

 

私が謝ると、先輩は気にしなくてもいいと言った。

 

 

「それと………この間は、ありがとう…ございます」

 

「いえ、私よりも体を張って頑張った泊さんにお礼を言ってあげて下さい…では」

 

 

そう言って先輩は去って行った。

 

 

 

 

―そう言えば、お礼…言ってなかったっけ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今、屋上で生徒会長に言われた言葉を思い出していた。

 

 

―――「私もこの学校が無くなって欲しくない…

本当にそう思っているから、簡単に考えて欲しくないの」―――

 

 

廊下を歩いていると、進にぃと会った。

 

「どうした?元気ないな?」

 

「うん………ねぇ、進にぃ」

 

「どうした?」

 

「私、簡単に考えすぎなのかな……」

 

「なんだよ、急に……」

 

「私のしてること、間違ってるのかな?」

 

「……何があった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は進にぃに、さっきあった事を話した。

 

「……て、事があったの…」

 

「……はぁ…何やってんだアイツ…」

 

 

すると進にぃは頭をかきながらため息をついた。

 

 

「前から思ってたけど、生徒会長さんと進にぃって、どんな関係なの?

この間も、副会長さんと話してたよね?」

 

「……絵里は…アイツは、絢瀬の従妹なんだよ」

 

「明にぃの?!……あっ!生徒会長さんも"絢瀬"だ!

じゃあ、副会長さんは?」

 

「アイツは………絵里が一緒に居たから知り合っただけだ…」

 

 

そう言うと進にぃは、少し暗い顔をした。

 

 

「ただ、それだけだ……」

 

「そうなんだ……」

 

 

そう言った進にぃは、いつもの"癖"をした。

進にぃが、あることをするとこの癖を出す。

ただ、滅多に無い事なので千早さんと私以外は、誰も知らない……

進にぃがこの癖をする時……

それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

進にぃが……"嘘を吐いた"時だ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ…何にせよ、誰かに止められて止まるお前じゃ無いだろ?

それに…お前らの気持ち、伝わっている奴結構いるぜ?

少なくとも俺とのぞ……――――!……っと、電話だ」

 

 

 

突然進にぃの携帯が鳴り出した。

 

 

「……進にぃ、着メロ変えた?」

 

 

いつもの奇抜な音楽ではなく、オーソドックスな音に変わっていた。

 

 

 

「あぁ……霧子にダサいって、無理矢理変えさせられてさ…」

 

そうぼやきながら携帯を取り出した進にぃは、電話に出た。

 

 

「もしもし…どうした、霧子?……ん…え?……っ?!それ本当か?!

あぁ……分かった」

 

 

話が終わったのか、進にぃは携帯をしまった。

 

 

 

「わりー穂乃果、ちょっと部室に行くわ……とそれと」

 

「何?」

 

「お前が本当にしたいことを、後悔はしない事をしろよ?

辛い時は俺や海未、ことりがいる。

いつでも全力で支えてやっから」

 

 

そう言って去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

進にぃと別れた後、ヒデコ達がやって来て応援してくれた。

 

―やっぱり……私は…

 

ヒデコ達の言葉に励まされた私は、グループ名募集箱を開けた。

そこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「入ってた?!」

 

「本当?!」

 

「あったよー!1枚!!」

 

 

 

驚く海未ちゃんとことりちゃんに、私は答えた。

 

 

ドキドキしながら入れられていた紙を開くと、そこに書かれていたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――μ's――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ユー…ズ……?」

 

「多分、ミューズじゃないかと…」

 

「あぁ!石鹸?」

 

「違います…

おそらく、神話に出てくる女神から付けたのだと思います」

 

「へぇ~……」

 

「良いと思う、私は好きだなぁ」

 

 

私は、紙に書かれた文字を見つめて呟いた。

 

 

「……μ's(ミューズ)……

…うん!今日から私達は、μ's(ミューズ)だ!」

 

 

―なんだろう…この感じ……

 

 

 

こみ上げてくるこの気持ちを胸に、

 

私はもう一度、1年生の教室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は放課後、家に向かって歩いている。

 

 

 

夕陽が差し込むなか、私は放課後に2年の先輩に言われた言葉を思い出した。

 

 

――――毎日、朝と夕方に階段でトレーニングしてるから、良かったら遊びに来てよ

 

 

 

――――私、西木野さんの歌声大好きなんだ

 

 

 

 

 

 

嬉しかった………

 

 

歌を聞いてくれる人がいるのは、やっぱり嬉しい。

 

 

でも、私はもう………

 

 

 

私は渡された歌詞の書かれた紙を開いた。

 

 

そこに書かれた歌詞を読み終えると、私の足はある場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今、神田神社で穂乃果達に付き合って、階段の往復練習をしている。

 

 

「もう…ダメぇぇ~…」

 

「もう……動かない…」

 

「ダメです!まだ2往復残ってまいすよ?

それとも諦めますか?」

 

「もう!海未ちゃんの悪代官!」

 

「それを言うなら……鬼教官だよ~…」

 

「海未も意外とスパルタだな」

 

 

倒れ込む穂乃果達に渇を入れる海未に、俺は呉ちゃんや教官モードの凰蓮先生の姿を重ねた。

 

 

「っていうか、進にぃ……何で息切れ…してないの??」

 

「私達の倍は走ってたはずだよ~…」

 

「鍛えて増すから…ッシュ」

 

 

ぜぇぜぇと息を荒げる穂乃果とことりに俺は右手首を振って答えた。

 

 

 

 

すると……

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下の方から聞こえた悲鳴に俺達は驚いた。

 

 

「っ?!何?!」

 

「穂乃果達はここで待ってろ!」

 

 

穂乃果達を下がらせ、急いで階段に向かった。

 

 

―まさか…ロイミュードが?!ベルトさんがいない以上、コイツを使うしか……

 

 

 

俺は階段をかけ下りながら、腰に隠したハンドガンに手をあて、いつでも抜ける様にした。

 

残り数段の位置で飛び降り、悲鳴のした所を見ると、そこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後ろから両胸を鷲掴みにされている女子高生(西木野)

 

 

 

女子高生の胸を、背後から鷲掴みにして揉み出す巫女()の姿だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はその光景に気を取られ、着地に失敗しずっこけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫?進二くん」

 

「あぁ……心配はいいから、状況説明して?」

 

 

俺は起き上がりながら、心配してくる希に尋ねた。

 

 

「この娘の胸をワシワシしてるだけやけど?」

 

 

そう言いながら西木野の胸を再び揉みしだく希。

 

 

「いや、俺が聞きたいのは…「てか、いつまで揉むのよ!!」…だな」

 

 

希の魔の手を振りほどき、両手で自分の胸を隠すと、希ではなく俺を睨んできた。

 

 

―何で?

 

 

 

「そう言えば、西木野は何でここにいるんだ?」

 

「別に!たまたま、ここを通っただけよ」

 

「ホントかなぁ~?」

 

「なっ…何よ?!」

 

 

ズイズイとジト目で迫る希に、西木野はたじろった。

 

 

「何か目的あったんとちゃう~?」

 

「何の事?!」

 

 

すると希は微笑んだ。

 

 

「恥ずかしいんなら、"こっそり"って、手もあると思うんや……」

 

「だから何?!」

 

「分かるやろ?」

 

 

そう言って、希は去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん~…まぁ、何の話か俺はさっぱりだが、俺からも一言。

自分が本当にしたいことを、後悔しない選択をしろよ」

 

 

そう言って、俺は西木野の頭に手を置いた。

 

 

「ちょっ?!」

 

 

驚いたのか、顔を真っ赤にして引き下がる西木野を見て、気付いた。

 

 

「あっ…悪い、いつもの癖だわ。

年下の女の子見てると、妹みたいに思えてつい」

 

 

昔から海未に穂乃果、ことりや雪穂達にこうしてきた俺は、女の子を慰めたり、話したりすると、頭を撫でてしまう。

小泉が無抵抗だったから忘れていた。

 

実際、初対面だった時の希や絵里、とくににこの時は酷かった。

 

 

俺は西木野に謝り、階段に向かおうとした。

 

 

「ちょっと!待ちなさいよ!」

 

 

西木野に呼び止められ、後ろを振り返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顔を真っ赤にして睨む西木野の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………やっべ…相当怒ってる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は2,3発殴られる覚悟をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……あの時は…その、あ、ありがとうございました!」

 

 

 

そう言った瞬間、全力疾走で去って行く西木野を、俺は見送った。

 

 

「ホント、素直じゃないな…まぁ、どっかの誰かさんも大概か……」

 

 

俺はある人物を思い出しながら、階段を登った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――翌朝

 

 

「行って来まーす!」

 

 

私はいつもの練習の為に、朝早く家を出た。

 

 

「お姉ちゃ~ん」

 

「?」

 

妹の雪穂に呼び止められた私は、振り返った。

上を見ると、二階から雪穂が話しかけてきた。

その手には、封筒とCDの様な物が持たれていた。

 

「これお姉ちゃんの?宛名が無いんだぁ……ミューズって、書いてあるけど…」

 

「え?」

 

 

雪穂から受け取ったCDと封筒を見つめた。

 

 

「これって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は海未ちゃんとことりちゃんを呼んで、屋上に来た。

その理由は………

 

 

「いくよ……」

 

「「うん……」」

 

 

私は目の前のパソコンに、雪穂から受け取ったCDを入れ、再生ボタンを押した。

するとピアノの音と一緒に一つの歌が流れた。

 

 

~『START:DASH!! (Prepro Piano Mix) 』~

 

 

「……っ?!この歌声…」

 

 

私はこの声が誰なのか、すぐに分かった。

 

 

「すごい……歌になってる…」

 

「私達の…」

 

「私達の…歌……」

 

 

するとモニターにあるものが表示された。

 

 

「評が入った?!」

 

 

驚く海未ちゃん達、私はその画面を見つめた後、立ち上がり二人に告げた。

 

 

「さぁ!練習しよう!」

 

 

「「…うん!」」

 

 

 

そうだ、私は決めたんだ……

 

後悔はしない、諦めないし、立ち止まらない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――学校近くの河川敷

 

そこに立つ少女は、一つの音楽プレイヤーを手に、空を見上げていた。

 

その表情はどこか柔らかく、吹っ切れた様な笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ED

 

~『きっと青春が聞こえる』~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――とある道路

 

 

俺とベルトさんは、トライドロンで急行している。

 

 

 

 

 

 

 

「急ぐぞ!ベルトさん!」

 

『あぁ、この話が本当なら必ず止めなくては!

start your engine!』

 

「変身!」

 

 

《DRIVE type SPEED!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は公安の桐原さんからの情報である場所に、ある物を追っている。

 

 

 

公安からの情報、それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に襲われる輸送車が判明した。

 

 

 

 

 

 

連絡を受けた俺達は予測された輸送車に向かっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『進二、すぐこの近くにあるはずだ』

 

「あぁ、早く見つけないと!どこだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いた!フォントアール社のトラックだ!」

 

『そこの路地に入ったぞ!』

 

「あぁ!」

 

 

俺達がUターンをした瞬間…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………重加速が発生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?
ラブライブの2話を無理矢理まとめたので、急展開過ぎるかもですが。
ちなみに進二の着信音はドライブ本編のものになりました。(作者ケモミミも妹や家族にダサいと言われ変えました*現在は鎧武の戦極ドライバーの法螺貝風待機音)
進二が入手したハンドガンはケモミミの好みで、スプリングフィールド XD-40 です。

ではいつもの低クオリティ作品でしたが、お気に入り登録、評価、お願いします。
感想やアドバイスもどしどし、お願いします。

なんとか今月中に3バカ強盗事件を終わらせたいです。




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人間の悪意《しんじつ》はなぜ残酷なのか。

急遽始めた仕事で、俺の体はボロボロだ!





改めて、新年あけましておめでとうございます


再就職してからなかなか忙しく、過労でバタン、胃炎でバタン、携帯壊れ、アクシデント続きで遅れました。


いつもの駄文ですが、読んでいただければ幸いです。



 

 

 

とある道路

 

運送業に励む男性は今日も仕事に励むため、ハンドルを握っている。

 

 

すると鼻歌混じりに運転する男性を、重加速が襲った。

 

 

「―――っ?!………今、どんより来たよな…」

 

 

気になりトラックを降りた男は、辺りを見回した。

 

 

「気のせいかな……ん?あれって…」

 

 

男が見たのは、町では有名な不良グループで、ここ最近行方不明になっていた3人組だった。

 

 

「?………何でアイツ等こんなとこにいるんだ?」

 

 

男が気になりながら3人を見た瞬間、重加速が発生した。

 

 

 

―「嘘だろ?!……またどんよりか…っ?!」

 

 

男は信じられない物を目にし、驚いた。

それは……

 

 

「匂う…匂うぞ!"また"美味いモノが食えるぞ!」

 

「アニキ~、覚醒した力、また見せてくださいよ~?」

 

 

「ミタイミタイ!」

 

 

「仕方ねぇ~なぁ~♪

……イギャオーーーーーーー!!!」

 

 

「「ギャオーーーーーー!!!」」

 

 

 

重加速の中で動く3人

 

そしてその3人が、"異形"に姿を変える瞬間だった。

 

1人だけ、ハンマーを模した様な姿になった異形は、トラックの荷台の扉に向かった。

 

 

「フンッ!…よしお前ら、"アレ"探し出せ!」

 

「「カシコマリー」」

 

 

ハンマーの異形は扉を破壊し、従えているであろう残りの異形に命令すると、拳同士を叩きながら男に歩み寄った。

 

 

「さぁ~て、お前はどうなると思う~?」

 

―「たっ…助けてくれー!」

 

「ヤダネ!死んじまえ!」

 

 

男を殺そうと異形が拳を振り上げた瞬間、クラクションの音がその動きを止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はクラクションを鳴らしロイミュードの注意を惹くと、そのままロイミュードを撥ね飛ばし、トライドロンから降りた。

 

 

 

「何だテメェは?!」

 

「ん?俺がピザ屋にでも見えるのか?」

 

 

トラックの荷台から降りてきた、ロイミュードはまるでチンピラの様にからんできた。

 

アレ?…‥何か、デジャブ

 

 

「またテメェか?仮面ライダー」

 

「あぁ、また俺だ!今度こそぶっ倒す!」

 

「上等だ!行けテメェ等!!」

 

「「カシコマリー!」」

 

 

クラッシュロイミュードが命令すると、2体のロイミュードは俺に向かって攻撃を始めた。

 

 

 

かかってくる2体のロイミュードを俺は、文字通り瞬殺してやった。

 

 

「あたたたた~…アニキ!?仮面ライダーめっちゃ強いでっせ?!」

 

「アンナニツヨイナンテ、ハンソクダヨ!」

 

「いや、お前らが弱すぎるんだよ…」

 

 

一瞬で返り討ちにしてやったロイミュード達がぼやく中、俺はため息混じりに返した。

 

 

「ちょっとはマシになったのか~?」

 

「特訓したからな、当たり前だ!

伊達にジープに追いかけ回されたり、飛んでくる鋼鉄製のブーメランを避けたり、時速150㎞で飛んでくるボールに書かれた数字を読んだりしてないんだよ!」

 

「お前、どんな特訓してきたんだ?」

 

 

俺の話した特訓内容に、少し可哀想な者見るような目?をしたクラッシュロイミュードは呆気にとられ、動きを止めた。

 

 

「うるせぇな!?お前には関係ねぇだろ!」

 

 

俺はそう叫びクラッシュロイミュードに攻撃をした。

 

クラッシュロイミュードの攻撃を紙一重でかわし、攻撃をするが奴は平然とノーガードで俺の攻撃を受け止める。

 

 

「すばしっこくなってもパワーが足りねぇな!」

 

「しまっ…グアッ?!」

 

 

俺が蹴りを入れようとした瞬間、奴は俺の懐に入り込み、攻撃をしてきた。

奴の一撃を受け俺は吹き飛ばされた。

 

 

「ゲホッ…痛って~…」

 

『気を付けろ、ヤツのパワーが前よりも上がっている』

 

「だからさぁ…殴られる前に言って?!」

 

『ん…ピットから援軍を呼んだ、使ってくれたまえ』

 

 

ベルトさんがそう言うと、黄色シフトカーがやって来た。

 

 

「ダンプカーかぁ」

 

 

俺は掴んだダンプカー型のシフトカーをブレスに差し、タイヤ交換をした。

 

 

《タイヤコウカーン!RUNMBLE DUMP!》

 

 

「おっ!今度はドリ…ッ?!」

 

 

タイヤが交換された瞬間、俺の体は激しく宙に舞った。

 

 

「うわぁ~?!何だこれ?!ちょっ…止まっ…ダ、ダレカタスケテ~!?」

 

 

突然交換されたタイヤが高速回転、オプションのドリルに引っ張られるかの様に俺は空中を舞い、当たり一面にぶつかっていると、その巻き添えを受けたかのようにロイミュード達は荒れ狂うドリルの猛攻を受け、俺と同じように宙を舞った。

 

 

「何だよ、アレ…」

 

『やはりタイプスピードとは相性が悪いか…』

 

「え?」

 

 

強制解除されたダンプに驚いていると、ベルトさんが何か呟いたが俺はそれどころかではなかった。

 

 

「ヤベー、お前ら撤退だ!」

 

「「「イギャオーー!!!」」」

 

 

 

戸惑っている俺をよそに、目の前でダウンしていたロイミュード達は謎の雄叫びを上げ逃げていった。

 

 

「ッ?!…逃げられたか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は輸送車のドライバーの様子を見に駆け寄った。

 

 

「大丈夫ですか?怪我は…無いようですね、良かった…」

 

「アンタが、"仮面ライダー"なのか?」

 

「ん?まぁね。じゃあ、お互い安全運転で」

 

 

俺はドライバーの運転手に敬礼をして、その場をさった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――特状部部室

 

俺達特状部は放課後、今回の事件について話し合っていた。

 

 

「いや~今回、7件目にしてこの事件を未然に防ぐ事が出来ました。これも全て、ひとえにあなた方特状部の方のご協力のおかげです、本当にありがとうございます」

 

 

そう言って俺達に頭を下げる桐原さん。

今回、桐原さんからの情報のおかげで、この連続輸送車襲撃事件を未然に防ぐ事が出来たのだ。

 

 

「いえいえ、こちらもお力になれて良かったです。

生徒が危険な目に会わない程度なら、いくらでも協力させていただきます」

 

「ありがとうございます。

我々公安、いや、警察組織そのものがどんよりに対して無力、そして無知過ぎる。

あなた方の協力ほど心強いものは無い。

…ですが、やはり年端もいかない子供たちにこんな協力を依頼するのは、今回限りにしたいものです」

 

 

本願寺先生の言葉に桐原さんは本音と建前、いや、2つの本音をもらした。

警察としての本音、1人の大人としての本音を。

すると桐原さんは、少し不思議そうな様子で話始めた。

 

 

「そう言えば、事情聴取をしたトラックの運転手は仮面ライダーを目撃したと言います。

そちらで何か情報を掴んでいませんかね?」

 

 

「それが…何とも…‥」

 

 

仮面ライダーについて尋ねる桐原さんに、本願寺先生は歯切れ悪く返事をした。

 

 

「仮面ライダー…正直、眉唾物ですがね」

 

「なっ?!何を言ってるんだい!彼はネットの中ではヒーローなんだよ!」

 

「証拠は?」

 

「が…画像は、まだ無いけど…」

 

 

文字通り重苦しい空気が漂うなか、ケンカしている現さんと究ちゃん、そんな2人を止めたのは意外な人物だった。

 

 

「まぁまぁ追田警部補、私も彼が正義のヒーローであること望んでいます」

 

 

究ちゃんと現さんのケンカを止めたのは桐原さんだった。

そんな桐原さんに霧子は、抱いていた疑問を投げかけた。

 

 

「そう言えば桐原さん、なぜ今回の襲撃車を予測出来たのですか?

見たところ、食品メーカーの運送トラックという共通点以外、襲われたメーカーの順番、積み荷の種類、車種、場所、時間…全てがバラバラで法則性がありません、無差別に襲っているようにしか思えませんが…」

 

 

淡々と疑問点をあげる霧子に、桐原さんは驚いた表情をしている。

霧子の言う通り、襲われた会社も場所も時間もバラバラ。

実際、運送トラック以外の共通点は皆無だ。

これは俺と霧子、ベルトさんの3人で推理した結論である。

ただひとつ気になるのは、前回の襲撃。

今回と同じく襲われたのは、フォントアール社のトラックだが、ベルトさんが独自に調べた結果、中の積み荷が持ち去られた形跡があった。

だが、実際にフォントアール社に確認をしてもらったが不足品は無し。

つまり、何も持ち去られていないという事だ。

これが何を意味するのか、俺達には解らなかった。

 

 

「いえ、こちらにも優秀な捜査官がいますので。

それに重加速に詳しい専門家の協力があります」

 

「桐原さん、重加速の説明準備が出来ました~」

 

 

そう言いながら部屋に入って来たのはりんなさんだった。

 

 

「もしかして公安の協力者って…」

 

「そっ♪みんなのアイドル、りんなちゃんだよ~」

 

「まぁ…重加速の専門家は"先生"位だしなぁ」

 

 

りんなさんの登場に驚く俺達。

現さんはどことなく納得していた。

 

 

 

 

 

…………ん?

 

 

 

 

 

今現さん、りんなさんの事…

 

 

 

 

「なぁ現さん、聞き違いじゃなきゃ…今りんなさんの事、先生って……」

 

「ん?あぁ、この前どんよりについて少し教えて貰ってな、まだ全部信じちゃ無いが…

なんつーの……頭脳?

頭の良さに感服してな、1人の人間として尊敬したからそう呼ばさせてもらってるんだ」

 

「なるほど…」

 

 

俺は現さんの話しを聞き終わると、ひとやすみるくを口にした。

 

 

「それと桐原さん、外にお客様が来てるようですが?」

 

 

りんなさんがそう言うと、思い出したかのように桐原さんは話始めた。

 

 

「そうでした…

実は皆さんに是非とも会いたいという方がおりましてね。

どうぞ」

 

 

桐原さんが声をかけると、りんなさんの後ろから作業服を着た感じの良さそうな男性が入って来た。

 

 

「どうも皆さん、はじめまして。

私、フォントアール社で社長を務めております、倉持というものです」

 

 

そう言って名刺を配る倉持さんは、俺の前で止まると手を握り涙をためた目で話し出した。

 

 

「この度は、本当に…ありがとうございます!」

 

「え?」

 

「おかげさまで、社員が怪我をせずにすみました!」

 

 

そう言って俺の手を強く握る倉持さんは、頭を下げた。

 

 

「本当に…本当にありがとうございます!」

 

「いえ、お役に立て良かったです」

 

 

倉持さんが手を離し、一礼をした後、霧子は倉持さんに話しかけた。

 

 

「倉持さん、今回の襲撃に何か心辺りは?」

 

「それが…全然。

取引先ともめた事はありませんし、恨みを買うような事も…」

 

 

霧子の質問に答えた倉持さんは堪えきれなかったのか、涙を流し始めた。

 

 

「失礼…ただ、何故こんな理不尽な事がと思いまして…いつ社員達が危険な目に遭うかもしれない。

それでも、配送を止める訳にはいかない…

こんなに辛い思いをするのは、初めてで…

それに…君達の様な学生を、こんな危険な事に捲き込んでしまって、申し訳ないと…」

 

「倉持さん…

ありがとうございます」

 

「えっ?」

 

 

俺が放ったお礼に、倉持さんは目を丸くした。

 

 

「嬉しいんです…倉持さんも、桐原さんも、俺達の事を気にかけてくれる。

俺達を心配してくれる、それが嬉しかったんです」

 

 

俺はポケットに手を伸ばし、ハンカチを取り出した。

 

 

「安心してください。

犯人は必ず、俺達と警察で捕まえます」

 

 

俺は倉持さんにハンカチを渡しそう告げた。

 

 

「はい…お願いします!社員は私の宝なんです!」

 

 

ハンカチを受け取る倉持さんに、俺はもう一度「任せてください」と告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

前回の襲撃から、特にこれと言ったてがかりもなく5日過ぎた。

 

そんなある日、俺はピットに向かうため学校に徒歩で向かっている。

何故か?

トライドロンは整備中、よって徒歩で向かうしかなかった。

 

 

「学校って…こんな遠かったっけ?」

 

 

なまじ車で登校していたせいか、徒歩だとえらく遠く感じる。

 

 

「穂乃果達、いつもこの距離歩いてるのか…

って、俺も半年前までは自転車か…」

 

 

そんな独り言を呟きながら俺は歩き続けた。

通学路だった神社のそばを通りかかったその時、見覚えのある後ろ姿が見えた。

 

 

「西木野?」

 

「ッヒャアァ?!」

 

 

俺の呼び掛けに驚いたのか、肩を大きく動かして飛び跳ねた。

 

 

「おっ、脅かさないでよ!」

 

「わりー」

 

 

目にうっすら涙を浮かべ、顔を真っ赤にして怒鳴る西木野に俺は謝った。

 

 

「てか、こんな所で何してる?」

 

「べっ‥別に!あんたには関係無いでしょ!」

 

「まぁ…そうだけど」

 

 

西木野が見ていた先に目を向けると、そこには練習に励む穂乃果達の姿があった。

 

 

「ライブまで後3日か…」

 

 

俺がそう呟くと、西木野は不思議そうな顔で告げた。

 

 

「貴方、あの人達とどういう関係なわけ?」

 

「あの人達?…あぁ、穂乃果達か。

ただの幼なじみだよ」

 

「そぅ…」

 

 

そう言って西木野は穂乃果達の方に再び目を向けた。

 

 

「…アイツ等が気になるのか?」

 

「べっ、別に!!」

 

 

そう言って西木野は去って行った。

 

 

「あの娘、いつも3人の様子見に来てるんよ」

 

「うおぅッ?!」

 

 

俺が西木野が去って行かくのを眺めていた時、突然かけられた声に俺は驚いた。

 

 

「…ビックリした~、脅かすなよ希」

 

 

俺の背後でクスクスと笑う巫女姿の希に、俺はため息混じりに話しかけた。

 

 

「ごめんごめん、2人が話し込んでたから話し掛けずらかったんよ」

 

 

謝りながら告げる希は申し訳なさそうに言った。

 

 

「いつもって…毎日か?」

 

「うん、前に来てからずっと」

 

「前に?」

 

「ほら、前に進二くんが勢いよう飛び出して転けた時」

 

「あぁ~…‥」

 

 

思い出すだけで恥ずかしい。

悲鳴が聞こえたと思い飛び出してみれば、女子高生に痴漢行為をいそしむ巫女の姿だったからなぁ。

 

 

「まぁ…前に進めたみたいで良かったわ」

 

「何が?」

 

「何にも♪」

 

 

そう言いながら希は神社へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!進にぃ~!」

 

 

声のする方を向くと、制服姿に着替えた穂乃果達が神社から出てきた。

 

 

「おはよっ、進にぃ」

 

「おはよう、進ちゃん」

 

「おはようございます、お兄さん」

 

「あぁ、おはよう」

 

 

俺は3人と合流すると学校に足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

ドライブピット

 

俺達はそこで、再び事件の整理をしていた。

 

 

「それにしてもサプリメントや健康食品ばかり…

もしかしてあのロイミュード、メタボを気にしてるのか?

それともコラーゲンでも採りたいのか…

それか、ただ単に腹が減っただけか…」

 

「何バカな事言ってるんですか」

 

「いやだって、アイツの目的が分からないと捜査進まないだろ?

襲われたのはほとんど健康食品やサプリメントを扱う企業だ。

そう考えるのが普通だろ?」

 

「確かにそうですが…」

 

 

そう言いながら霧子が手帳を開いた。

 

「襲撃はフォントアール社が3回、アカツキ製菓が2回、四ツ葉フーズとユウヒ食品がそれぞれあ1回…」

 

「目的が何にしろ、やっぱりロイミュードが手当たり次第に襲ってるようにしか思えないよな…」

 

 

情報を読み上げる霧子に俺は率直な感想を述べた。

そして俺はある事を思い出した。

 

 

「あっ…‥そう言えばベルトさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

『…なるほど、公安部は仮面ライダーの存在に興味深々と言うわけか…』

 

 

そう言って考え込むベルトさんに俺は前々から思っていた事を話す事にした。

 

 

「なぁベルトさん、やっぱり特状部のみんなや、警察に…公安部だけにでも、俺達の事話したらダメか?」

 

『…‥…‥…‥…‥…‥』

 

「沈黙が答えね…‥」

 

 

だんまりを決め込むベルトさんに、俺はそう言って座っているソファーのクッションを枕に横になった。

 

 

『前にも言ったが、信用できる人間は‥限られているという事さ』

 

「用心深い事で…‥」

 

 

『しかし敵の力は厄介だ、次は“ニューボディ”を試してみよう』

 

「“ニューボディ”?」

 

 

俺は聞き捨てならない単語に興奮し、飛び起きた。

 

 

『タイプスピードに次ぐ新たなボディ…その名も“タイプワイルド”』

 

 

そう言ってベルトさんは台座から映像を投影しだした。

 

 

「タイプワイルド…」

 

『ランブルダンプの様なパワータイプのシフトカーを楽々と扱える、パワーと防御力に特化したボディだ。

要は馬力の強い車に乗り換える様なものだ』

 

 

説明をするベルトさんの話を聞きながら、投影された映像のグラフに目をやった。

 

 

「パワーに防御力、すごい数値ですね‥‥」

 

 

霧子が興味深そうに見ていた。

確かにすごい、…

隣に表示されたタイプスピードのグラフと比較しながら見たが、パワーと防御力は桁違いだ。

 

ただ‥‥

 

 

「スピードが…悲しいくらい下がっているな」

 

 

そう‥‥

 

タイプワイルドは確かにすごいが、スピードが劇的に低いのだ。

 

 

『パワーと防御力を上げるには、色々と搭載するからどうしても装甲重量と装備重量が上がってしまうんだよ…

だったらいっそのこと、スピードは最低限まで落とし、残りをパワーと防御力に回そうと思ったんだ。

そのおかげでパワーと防御力は桁違いにまで跳ね上がったよ』

 

 

説明するベルトさんに俺は限度があるだろと心の中でツッコミを入れた。

 

 

『現在最終調整中だ』

 

「まぁ、適材適所だな。

試乗するのが楽しみだ」

 

 

俺は立ち上がると同時にネクタイを締めた。

 

 

「珍しく最初からトップギアですね」

 

「まぁな、俺達特状部も少しずつ認められてきたんだ、何より倉持さんや桐原さんの様に、俺達の事を第一に考えてくれる人が居るんだ、その人達の役に立ちたいしな」

 

『何よりだ、タイプワイルドにはキミの熱いパッションが必要だ』

 

「そろそろ授業が始まります、教室に戻りましょう」

 

「だな」

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

昼過ぎ、学校が午前中に終わり、腹を空かせながら俺と霧子は帰路についていた。

 

あれから何の進展もなく、テスト期間が近づいた事で、部活動を全体的に止められた俺達は暇をもて余している。

 

 

 

「はぁ~…暇だな」

 

「仕方無いですよ、テスト期間で部活動は基本的に休みなんですから」

 

「まぁ、そうだけど」

 

 

ひとやすみるくを取り出しながら愚痴る俺と霧子は、事件の捜査が行き詰まった事から、息抜きに食事に向かうことにした。

本来なら特状部皆でいくはずだったが、究ちゃんはアイドルのイベントに、りんなさんはあれから公安につきっきりで不在である。

 

 

俺達が他愛もない会話をしていると、背後から呼び声が聞こえた。

 

 

「進にぃ~!」

 

「ん?‥‥穂乃果か」

 

 

駆け寄ってきたのは穂乃果達3人だった。

 

 

「進ちゃん今暇?」

 

「何か要か?」

 

「実は練習まで少し時間がありますし、お昼でもと思いまして」

 

「そ!でぇ~…海未ちゃんとことりちゃんとどっか食べに行こうって話になったの。

そしたら進にぃ達が見えたから一緒に…と思ったんだけど、お邪魔だった?」

 

 

何やら良からぬ事を考えているのか、怪しい顔でヒヒヒと笑う穂乃果の頭にチョップを入れた。

 

 

「アホか…邪魔も何も、俺達も飯食いに行くところだよ」

 

「なら尚更じゃん」

 

 

頭を両手で擦りながら、ぶ~と頬を膨らませジト目で睨む穂乃果に俺はため息をついた。

 

 

「余計な気遣いだ。

俺と霧子はそんな関係じゃないって、前にも言ったろ」

 

「そうですよ、私も暇だったので付いてきただけです」

 

 

霧子の説明に穂乃果は「な~んだ」と言ったが、心なしか、3人の表情が緩んだ気がした。

とくに気に止めず、俺は行くかと4人に言った。

 

 

「はぁ‥‥」

 

「何だよ霧子、ため息なんて珍しい」

 

「いえ、何でも。

ギアが入っていても、これはどうしようもな無いなと思っただけです」

 

 

霧子の言葉に俺は首を傾げると、一瞬霧子の額に青筋が見えた様な気がした。

 

 

「そう言えば…この間桐原さんから謝礼金が出ましたよね?」

 

「あ、あぁ‥‥」

 

「皆さん、今日は泊さんが奢ってくれるそうです」

 

「はぁーーーーー?!」

 

 

霧子の突然のカミングアウトに、俺は叫んでしまった。

その気になって喜ぶ穂乃果、ことりはクスクスと笑っていた。

 

 

「いえ、いくらなんでも…お兄さんにご迷惑なのでは…‥」

 

「いいえ、今のこの人に何をしてもバチは当たりません」

 

 

申し訳なさそうな海未の言葉をバッサリと切り捨てる霧子。

 

マジで容赦ねぇ…

 

 

「確かにライブの衣装代や、色々と使ったので助かりはしますが…」

 

 

海未も本音を漏らし始めた瞬間、俺の中の警告アラートが鳴り出した。

 

…ヤバい“アレ”が来る

落ち着け泊 進二、“アレ”のせいでどれだけ痛い目にあったと思っている!

“アレ”に惑わされるな、気をしっかり持て!

 

1人葛藤している俺を霧子は少し戸惑っている。

 

 

「泊さん?そんなにご迷惑でしたか?」

 

「違うよ先輩、アレは…」

 

 

穂乃果が霧子に説明をしていると、とうとう“アレ”が来た。

 

俺の目の前に来てうつ向くことり。

 

 

「進ちゃん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

‥‥お願い!!」

 

 

 

勢い良く顔を上げたことりは少し顔を赤らめ、潤んだ瞳と甘い声で頼み込んだ。

 

…‥そぅ、“アレ”とはことりの必殺技と言っても過言ではない、ことりのお願い攻撃。

 

俺はことりと10年以上の付き合いになるが、アレに対し少しの耐性を持つことすら出来ていない。

 

だが……

 

 

「ぐっ……」

 

「進にぃが耐えた?!」

 

 

耐え続ける俺の姿に、穂乃果達は驚いた表情になる。

 

ナメるな小娘、この俺の…鉄の意思と…鋼の強さを持ったこの心、そう簡単には落とさせない!!

 

 

「こうなったら‥‥海未ちゃん、出番だよ!」

 

「わっ、私ですか?!」

 

「海未ちゃん止めを!」

 

 

穂乃果の無茶フリと煽ることりに戸惑いながら海未が近づいてくる。

 

意を決したように深呼吸をし、俺の前で立ち止まる。

 

わざとなのか素なのか、引っ込み思案だった頃の仕草で、海未は俺の袖を引っ張り、ことりと同じように顔を赤らめ、潤んだ瞳で俺を見つめる。

 

そして‥‥

 

 

 

 

「お願い…‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お兄ちゃん‥‥」

 

 

 

 

 

 

 

「グハッ?!」

 

 

 

 

 

ことりの愛らしさとはまた違った、儚さの様なもの醸し出す海未の降るまいに、俺の自慢の鉄の意思と鋼の強さを持った心は、撃沈した……

 

 

「‥‥はぁ‥分かったよ」

 

 

ため息混じりに俺は了承し、海未の頭を撫でた。

 

 

「ありがとう…ございます」

 

 

少し恥ずかしいのか、うつ向いたままの海未は小さく礼を言った。

 

 

「「「‥‥シスコン」」」

 

 

ジト目で睨む霧子達3人

奢ってやる人に対しこの仕打ち、俺の味方は海未だけか…‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

俺は談笑する4人の後ろを歩いていた。

すると少し離れた喫茶店近くに見覚えのある後ろ姿を目にした。

 

 

「…小泉?」

 

「ヘェッ?!…‥せ、先輩?!」

 

 

驚きながら振り向く小泉に、俺は笑いを堪えきれなかった。

 

 

「フッ…わりー、そこまで驚くとは思わなかった」

 

「も~…先輩、酷いですよ」

 

「だから悪かったって」

 

「いいですけど……あっ!先輩」

 

 

そんな会話をしていると、小泉が何かを思い出したのか俺に話しかけてきた。

 

 

「何?」

 

「実は先輩にお話がしたかったんです」

 

「俺に?」

 

「はい、実は……」

 

「進にぃ!早くしないと置いてくよ~!」

 

 

小泉が話し出すタイミングと被って穂乃果の叫び声が聞こえた。

 

 

「悪い小泉、また今度でも大丈夫か?」

 

「あっ、じゃあお礼だけ…

兄を助けて頂きありがとうございます」

 

 

そう告げた小泉は一礼した後、去っていった。

 

 

「小泉の兄を俺が助けた?」

 

 

身に覚えがない、考えていると穂乃果がまだかと叫んでいる。

俺はひとまず、考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果達と話した結果、

俺達はハンバーガーショップに向かう事にした。

 

 

他愛もない談笑、その瞬間‥‥

 

 

 

 

 

―「「「「「っ?!」」」」」

 

 

 

 

 

重加速が発生した。

 

 

―「これって…」

 

―「どんより?」

 

―「体が…‥」

 

 

突然の重加速に驚く穂乃果達、すると後ろからシフトカー達がやって来た。

 

 

「っと、まさかまた…」

 

「かもしれません」

 

 

 

俺達が話し出した瞬間、重加速はおさまった。

 

 

「進にぃ、今のってどんよりだよね?!」

 

「あぁ……霧子は穂乃果達を頼む」

 

「分かりました、無茶はしないでください」

 

「えっ?ちょっと進にぃ?!」

 

「進ちゃんどこ行くの~?!」

 

「危険です、戻ってください!」

 

 

叫ぶ3人を無視し、俺は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく走ると、背後からクラクションの音と共にトライドロンが走って来た。

 

 

『進二!』

 

「ナイスタイミング、ベルトさん」

 

 

やって来たトライドロンに乗り込もうとすると、再び重加速が発生した。

 

 

「またか?!」

 

『いや、この重加速は…』

 

 

ベルトさんが話そうとした瞬間

 

 

 

「先輩!」

 

「小泉?!」

 

 

走って来たのは小泉だった。

 

 

「何でこんなとこに?」

 

「それが、モンスターちゃんが…まるで何かに怯えてる見たいで…そしたら、どんよりが来て」

 

 

小泉の言う通り、小刻みに震えるモンスター。

すると何処からかエンジンの音が聞こえた。

 

 

「まさか…‥小泉乗れ!」

 

「えっ?でも…」

 

「いいから急げ!」

 

「はっ、はい?!」

 

 

小泉をトライドロン乗せた後、俺もトライドロンに乗り込み、乗り込むのと同時に変身、重加速反応の強い場所に向かった。

 

 

「ベルトさん、2回目の重加速って…」

 

『あぁ、恐らく…

っ?!進二!!』

 

「噂をすればか?!」

 

 

バックミラーに写ったのは、黒いバイクとそれに股がる死神の姿だった。

 

 

「先輩何か来ましたよ?!」

 

「ったく、しつこいな…

小泉、絶対車から降りるなよ?」

 

 

トライドロンから降りた俺は、目の前で停車したバイクに向かって歩いた。

 

 

「おい!そんなに俺が好きならサインやるから帰れ!」

 

 

《Gun…》

 

 

振り向くと同時に、銃撃を繰り出す死神。

 

とっさの事で避けられなかったが、何とか耐えることは出来た。

 

 

「相変わらずクールだねぇ…」

 

 

バイクから降りた死神と俺は徐々に距離を詰め、同時に駆け出した。

 

 

「ハッ!フン!タァッ!」

 

 

格闘戦に持ち込んだが、やはり死神の方が強い。

互いに連撃を入れてはかわし、攻撃をしてはかわす。

硬直状態に入ったとたん、マックスフレアが援護に出た。

 

 

「クッ…‥フン!」

 

 

フレアの一瞬の隙をつき、死神はフレアを叩き落とした。

 

 

「フレア!」

 

 

すると死神はフレアを拾い上げ、信じられない行動に出た。

 

 

《Tune…Max Flare》

 

「ぁ、それ俺の…」

 

 

死神はフレアを自前の武器に差し込み、フレアの能力を使いだした。

 

 

『やはり奴はプロトドライブのシステムを再現して造られたようだ…

シフトカーの力まで使う事が出来るとは…』

 

「マジかよ?!」

 

 

火炎弾を撃ち出す死神に苦戦を強いられるなか、何とか奴の懐に潜り込むことが出来た。

 

 

「返せ!」

 

 

奴の銃に差し込まれたフレアを奪い返した俺は、すかさずフレアにタイヤ交換した。

 

 

《タイヤコウカーン!MAX FLARE!》

 

 

再び格闘戦に入り、互いに距離を空けた瞬間に死神は口を開いた。

 

 

「人間を助けに行くのか?」

 

「ア"ァ?!」

 

「助ける価値などない、知恵を持つことで、人間の本質は…‥“悪となった”」

 

「ハッ…悪党御得意の演説か?」

 

 

俺が再び距離を詰め、上段蹴りを入れた。

死神はそれを受け流し距離を開き、銃撃を繰りた出した。

間一髪それを回避し再び構えると、死神は構えを解いていた。

 

 

「もういい…終わった頃だ」

 

 

そう告げると死神は、バイクに乗って去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

ドライブとの戦いを終えた死神、チェイスは歩道橋の上で自身の武器、ブレイクガンナーを見つめていた。

 

 

「仮面…ライダー…‥

奴を見ているとイライラする…」

 

「ならこれで機嫌を直せ」

 

 

そう呟くチェイスに、赤いコートを着た男、ハートが近付き、黒いケースを手渡した。

 

 

「これは?」

 

「俺とブレンからの、プレゼントだ」

 

 

チェイスの質問に笑顔で返すはハートは、ケースを開きその中身を見せた。

 

そこに仕舞われていたのは、銀の車体に蝙蝠、蜘蛛、蛇の意匠を型どった3台のミニカーだった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

あの戦いの後、俺達が重加速の発生源に着いた頃には手遅れで、輸送車は襲われた後だったが、

幸いにもドライバーは命に別状はなく、骨折ですんだらしい。

 

穂乃果達と別れてすぐ、俺と霧子は学校に戻る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部室にはすでに現さんと桐原さんが来ており、俺達を待っていたらしい。

 

 

 

「今回は仮面ライダーが現れなかったらしいですね。

前回は公安からの情報提供にあわせて駆け付けた様ですし。

失礼ながら、私も一介の高校生が襲撃を防げたとは思えません。

これはあくまで個人的な推測ですが、あなた方…もしくは、あなた方の中の誰かが…仮面ライダーと繋がっているのではないでしょうか?」

 

 

桐原さんの言葉に、俺は肩をビクつかせてしまった。

 

 

「そんな事は~…」

 

 

そう言いながら俺達を見る本願寺先生、

 

(ヤメテ見ないで)

 

俺は本願寺先生から目を反らし、側に置いてある缶コーヒーに手を伸ばし口にした。

 

(ヤベー味わかんねー)

 

気になって霧子に目を向ければ、いつも通りクールにしていた……訳でもなかった。

机の下では、足がガクガクに震えていたのだ。

 

究ちゃんは…‥

 

 

「変~…身!」

 

 

(何やってんだコイツ…)

 

 

お気に入りの人形を使って、変なポーズをしていた。

 

 

 

「ナイナイ、あるわけ無いですよ~」

 

「デスヨネー」

 

 

しょんぼりとした顔でへこむ究ちゃん、それを苦笑いしながら見る桐原さん。

 

 

 

 

「では…私は本庁に戻ります」

 

 

そう言って桐原さんは部室を後にした。

するとりんなさんも後を追う様にドアに向かった。

 

「あれれれれ、ちょっとりんなちゃん?

公安さんの方へ?」

 

「ごめんなさ~い♪こっちにもいろいろあるんで☆」

 

 

りんなさんは先生の質問に答えると、ウインクをして部室を出ていった。

 

 

「すっかりあっちの人になったな、先生の嬢ちゃん」

 

 

現さんの言う通り、この事件が始まってからりんなさんはほとんど部室に来ていない。

それどころか、学校にも顔出さない日もあった。

 

 

「面白くねぇ、おい進二!

こうなったら輸送車の監視につくしかないな」

 

「そうっすね」

 

 

りんなさんがどうあれ、俺達は俺達の出来ることをしよう。

現さんの言葉に俺は返事をすると同時に席を立った。

 

 

「今度は俺がフォントアール社、お前がアカツキ製菓だ、この二つが襲撃回数が多いからな。

一応アカツキ製菓には刃野もつける、犯人が出たさいは無理せず刃野に任せろ」

 

「うすっ!現さん、何か気合い入ってますね?」

 

 

現さんから溢れ出る気合いに俺は、気圧されかけた。

 

 

「当たり前だ、俺はなぁ…二枚目のエリートが大嫌いなんだよ!!」

 

 

すると現さんは浅矢の取り調べの時よりも覇気のこもった声で叫び、勢いよく部室を飛び出していった。

 

 

「「「わかりやす~…」」」

 

 

その姿を見た俺達は顔見合わせて呆れたような、感心したような、微妙な声色でハモった。

 

現さんの意外な一面を見た俺は気を引き締め直した。

 

 

「よし、行くぞ霧…‥どうした?」

 

 

俺が見たのは、現場写真を凝視し、俺に引けを取らない量のひとやすみるくをくちにする霧子の姿だった。

 

 

「な~んか、モヤモヤするんですよ」

 

「とりあえず話はトライドロンでしよう、刃さんを待たせちまう」

 

「はい」

 

 

そう言うと霧子は、現場写真を手に部室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

 

トライドロン車内

 

俺達はアカツキ製菓に向かいながら、霧子の感じた違和感について話し合った。

 

 

「この現場写真、何か妙だと感じません?」

 

 

そう言って霧子は現場写真を俺に見せてきた。

 

 

「まぁ…確かに、俺も気になってたんだ。

何でフォントアール社の被害だけが他のよりも大きいんだろって…」

 

 

俺は最初に現場写真を見た時に感じた違和感を、霧子に話した。

 

 

「それですよ!

破壊の度合いも、積み荷の燃えかた、フォントアール社だけが他とは違う!」

 

「つまり敵には何かしらの目的があると…」

 

 

現場に向かいながら霧子と推理をしていると、霧子の携帯に連絡が入った。

 

 

「桐原さんからの襲撃予測です!

次に狙われているのは…フォントアール社です!」

 

「分かった!」

 

 

俺はトライドロンにパトランプを付け、アクセルを踏んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

 

輸送車の護衛についていた2人の刑事は目の前の異形に動揺していた。

 

 

「ついに見ちまった…‥

あれが先生の嬢ちゃんが言ってた怪物…」

 

「追田さん…‥アレ、“ドーパント”じゃ…ないですよね…?」

 

「風都に現れたって怪物か?」

 

「はい…」

 

「確か先生の嬢ちゃんはあの怪物の事は、確か…‥ロイ…ロリ、…何だっけか…」

 

「とりあえず、ドーパントじゃ無いんすよね?」

 

「あぁ…今するのは…」

 

 

追田の言葉に真倉は頷き、車を飛び出した拳銃を構えた。

遅れて追田も車から降りて懐から拳銃を取りだした。

 

2人が目の前の異形に立ち向かおうとした瞬間…

 

 

 

 

2人を重加速が襲った。

 

 

 

 

 

―「また、これか~!」

 

―「どんよりきた~?!」

 

 

緊張感の無い悲鳴を上げる2人は、動かない体でも果敢に立ち向かおうとした。

 

 

―「くっそ~…」

 

 

静止しつつある体に鞭を打ち、追田は引き金を引いた。

だがそれは、無意味で、無茶で、愚かな選択だった。

 

 

「ハッハッハ~♪お巡りさんの最期~♪」

 

 

異形、ロイミュードは打ち出された弾丸を、追田に向けて弾き返した。

 

 

―「嘘だろ…」

 

―「追田さん?!」

 

 

迫り来る弾丸、無力にも動けない2人は成す術がなく、立ち尽くすしかなかった。

 

 

―「俺…死んじまう~!」

 

 

死を覚悟しても、ゆっくりと迫る銃弾には恐怖を感じずにはいられない。

 

そんな絶望から彼を救ったのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…“赤い手”だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

 

 

 

俺はトライドロンから見た光景に驚いた。

ロイミュードは現さんの撃った銃弾を弾き返し、現さんに迫る。

 

それを見た瞬間、俺の中で“何か”が弾けた。

 

すかさずベルトさんのキーを回し、シフトスピードを差し込んだ。

 

 

「変身!!」

 

《DRIVE type SPEED!》

 

 

俺は走りながらシフトスピードを倒し、現さんの元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

とあるビルの屋上、そこに1人の少年が座っていた。

 

 

「ふ~ん…やっぱり…‥」

 

 

少年はあるもの見ていた。

 

 

「トリガーはアレか…まぁ、分かってたけど♪」

 

「お前の目的は何だ?」

 

 

無邪気な声で笑う少年の後ろに一つの“影”が立っていた。

 

 

「何だキミか?」

 

 

少年にさっきまで無邪気さはなく、冷徹な声で話始めた。

 

 

「邪魔しないでくれる?キミ達の介入はまだの筈だよ、操り人形くん」

 

「…誰が、…ッ?!グッ、…ガ…‥」

 

 

少年と話していた影は突然苦しみだした。

しばらくすると影は落ち着いた。

 

 

「…‥すまないね、“この子”がまた、勝手な事をしたみたいで」

 

 

落ち着いた影は“さっきとは違った声色”で話始めた。

 

 

「まったく、しっかりしてよね?」

 

「面目無い、私はこれで失礼するよ」

 

 

そう言うと影はその場から消えた。

 

 

「仮面ライダー…‥か、楽しみにしてるよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……この時代の(オールド)ドライブくん…」

 

 

そう言いながら少年はその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

 

間に合った…‥

 

 

俺は現さんに迫る銃弾を掴み、握り潰した。

 

 

 

「来たな、仮面ライダー!」

 

 

俺の姿を見たクラッシュロイミュードは吼えると、こっちに向かって走り出した。

 

 

「現さん邪魔!」

 

 

現さんには悪いが、現さんの体を無理矢理パトカーに放り込み、クラッシュロイミュードに向かった。

 

 

 

 

 

 

クラッシュの一撃をかわし、取り巻きの2体に格闘戦を持ち込んだ。

 

 

 

「前回は使う機会なかったが、こい!」

 

 

俺の叫び声と共に飛んできた“ソレ”を、俺は掴んだ。

 

 

「ソレ、この間アニキが折った剣か?」

 

「ナンダナオッタノカ~?」

 

 

俺の掴んだ“ソレ”に奴らは驚いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――数日前…‥

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベルトさん、これ…‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…‥ハンドル剣、だよな?」

 

 

被せられた布を捲ると、そこに在ったのはハンドル剣と同じモノだった。

 

ただ一点を除いて…‥

 

 

『Exactly…‥だが少し違う。

見ての通り、ソレはハンドル剣だ。

制御ユニットを取り付ける前の、プロトタイプだがね』

 

 

そう…‥

このハンドル剣にはあるものが無い。

ベルトさんの言う制御ユニット、ハンドルが無いのだ。

 

 

「完成前の試作品って事か…‥」

 

 

『剣としてのスペックは変わらないが、制御ユニットが搭載されてない分、加速能力の制御が出来ない。

運用には十分注意してくれ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

俺は手にしたハンドル無しハンドル剣を構えると奴等に向かって振りかざした。

 

 

「ハァ!ッタァ!」

 

 

加速する斬撃に2体のロイミュードはついて来れず、斬撃を食らっていた。

 

見た感じは優勢に思えるが、実際は…‥

 

 

「やべー…ハンドル無いとマジで暴れ馬だよコイツ」

 

 

ハンドルが無い事で加速の制御が出来ず、腕に負荷がかかる。

 

 

「馴れるまで時間かかりそうだな…」

 

 

愚痴りながら再び剣を構え、深呼吸をし敵を見る。

 

奴等の動きに合わせ攻撃回数を最小限に、なおかつ一撃一撃を深く…

 

俺は目の前の敵に集中し、ハンドル無しハンドル剣

を使い攻撃をした。

 

 

「匂う、匂うぜ…ここだな!」

 

 

俺が取り巻きのロイミュードと戦闘していると、戦闘に参加していなかったクラッシュロイミュードは輸送車の荷台、その奥にある扉を破壊し、中から“大きなケース”を持ち出した。

 

 

「へへへ…‥見つけたぞ!お前ら、行くぞ!」

 

 

それを高らかに持ち上げると、そのケースを持って奴は逃げ出した。

 

 

「マッテマッテ~!」

 

「何だアレ…」

 

『進二、逃がすな!』

 

「あ、あぁ…」

 

 

逃げ出したロイミュードを追おうとしたが、残ったロイミュードが俺の行く手を阻んだ。

 

 

「くそ、行かせるか~!」

 

「邪魔だ!」

 

 

俺はすかさずシフトスピードをハンドル無しハンドル剣に差し込み、構えた。

 

 

《ヒッサーツ!SPEED!Full throttle!》

 

「ハアッ!」

 

「ギャ~?!」

 

「よし、後はアイツ等を…ッグァ?!」

 

 

俺は向かって来るロイミュードを一刀両断にし、逃げ出した2体を追いかけようと駆け出したが、背後からの銃撃に怯んだ。

銃撃の正体は簡単に分かった。

 

 

「またお前か!」

 

 

そこには予想通り死神が立っていた。

 

 

「安心しろ、これで最後だ…」

 

《Break Up…》

 

《Break…》

 

 

姿を変えた死神は、俺に向かって走り出した。

俺も死神に向かって駆け出し、近接戦に持ち込んだ。

死神の打撃と俺の斬撃、2つの金属音が交錯する戦いは、俺の劣勢で続く。

 

俺は勢いをつけて剣を降り下ろした。

剣自身の加速による超高速の斬撃を繰り出すも、奴は剣ではなく持ち手のグリップガードに自身の武器を当て、攻撃を止めた。

 

 

「何?!」

 

「フンッ!」

 

「グァァァ?!」

 

 

動揺した隙をつかれ、俺は勢いよく飛ばされた。

 

 

『進二、シャドウだ!』

 

「あぁ、頼むぞ!」

 

《タイヤコウカーン!MIDNIGHT SHADOW!》

 

 

俺がシャドウにタイヤ交換をし、シャドウのエネルギーを剣に送り、降り下ろした。

 

エネルギー体の手裏剣を無数に飛ばしたが、死神にダメージを与えることは出来なかった。

 

 

「フッ…」

 

 

すると死神は、禍々しい装飾の施された銀色のシフトカーを取りだし、自らの武器に差し込んだ。

 

 

《Tune…Chaser…Spider…》

 

 

「何?!」

 

 

紫色のエネルギーが死神の右腕に集中すると、鋭利な爪の付いた盾の様な銀色の武器と化した。

 

 

「ハァ!」

 

「ック?!…ガッ…」

 

 

謎の武器を用いて繰り出す死神の連撃を、俺は捌ききれずにいた。

 

 

死神はエネルギーを武器に集中させる。

 

デカイのが来る…

 

分かっていても体が動かない。

 

 

「ヌンッ!」

 

「ガァァァァァッ?!」

 

 

具現化したエネルギーの爪に俺は吹き飛ばされた。

 

 

「悪いがもう、お前に勝ち目は無い…」

 

 

そう言うと死神は武器のノズルを押し込んだ。

 

 

《Execution…》

 

「さすがに…アレは食らったらヤバイよな…」

 

 

俺はシャドウを剣に装填、エネルギーを集中させる。

 

 

《ヒッサーツ!SHADOW!Full throttle!》

 

《Full Break…Spider…》

 

 

お互いのエネルギーが衝突、相殺し合う中、余波エネルギーが全体に拡がり衝撃波となって俺達を襲った。

 

 

「何とか相殺出来たか…‥ん?」

 

 

死神の攻撃をしのぎきったと安心したのはつかの間、外野にいたクラッシュロイミュードが手にしている赤い液体が光だしたのだ。

 

 

「ヤベーゾ!」

 

「何だあの液体?!」

 

「アニキハヤクステテー!」

 

 

クラッシュロイミュードは取り巻きロイミュードに言われて、目映い光を放つ液体を放り投げた。

 

液体は海に落ちると同時に大きな爆発を起こした。

 

俺はその光景を見て、一つの考えが頭をよぎった。

 

 

「まさか、爆薬?!」

 

『何故そんなものが食料輸送車に』

 

「そういう事か…」

 

 

1人納得する死神は俺を見て告げた。

 

 

「俺の言う通りじゃないか…人間の本質は、悪だと言った筈だ」

 

「どういう事だ?!」

 

「分からんのか?

人間が密輸していたんだ、あの…爆薬を」

 

「何?」

 

 

クラッシュロイミュードが持つケース、その中の液体爆薬を指差しながら、死神は話した。

 

 

「勿体ない事した~…お前が悪い!」

 

「イタイ?!エエェェェ~…」

 

 

クラッシュロイミュードは取り巻きロイミュードに八つ当たりすると、再び爆薬を取り出した。

 

 

「この匂い、これだ…やっと満たされるぜ~」

 

 

そう言ってクラッシュロイミュードは爆薬をグビグビと飲み干した。

 

 

「爆薬を飲んだ?!」

 

「これを飲むとよ~、溢れるんだぜ~!とんでもない力がよ~!」

 

 

クラッシュロイミュードの行動に動揺した俺は奴の攻撃をかわせなかった。

 

殴り飛ばされて分かった、奴の力が増している。

 

クラッシュロイミュードの行動、爆薬を飲むことで増した力、輸送車の襲撃、消えた積み荷、爆薬、全てが俺の中で繋がった。

 

 

「そうか!アイツは…最初の襲撃であの爆薬を見つけたんだ!

そしてその味と力にハマって、輸送車を襲い続けた…フォントアール社の事件だけが酷い破壊状況なのは、アイツが爆薬を飲んで暴れたから…?

じゃあ…爆薬を積んでいたのはフォントアール社だけになる!」

 

 

繋がる真相、信じられない現実、

そして浮かび上がる倉持さんの顔…

 

 

「そんなバカな?!

あの人の良い社長が、爆薬を…」

 

「社長~?!何の事だ~!!」

 

「グァッ?!」

 

 

再びクラッシュロイミュードに俺は殴り飛ばされた。

 

すると、俺のもとに1台のシフトカーがやって来た。

 

 

『シフトワイルドだ!これでタイプワイルドになれ!』

 

「例のニューボディか?」

 

『この状況を逆転するにはそれしかない』

 

「分かった」

 

 

俺はシフトワイルドを掴むとレバーモードにし、ブレスに差し込んだが…‥

 

 

「シフトレバーが入らないぞ?!」

 

 

レバーが入らない…‥

 

つまりニューボディになる事が、出来ない…

 

 

「キミのパッションが低いんだ…

ニューボディと心のギアが噛み合わない…」

 

 

ベルトさんは原因を説明する…

 

シフトワイルドが使えない、その原因が俺を更に苛立たせる。

 

 

「こんな嫌な気分のままで、情熱なんて上がるか!」

 

 

何かが折れた…‥そんな気がする

 

俺はその場に座り悪態を付いた。

 

 

「ナンダ~…やる気無いのか~!」

 

 

俺の首をつかみ、持ち上げるクラッシュロイミュード、奴の一撃をモロに受けた俺は、立ち上がる事が出来なかった。

 

 

「まっ…待て…」

 

 

去っていくクラッシュロイミュード

俺は手を伸ばすが、意識が朦朧とする。

入れ代わるように歩み寄る死神…

 

絶望、諦め、虚無感、様々な感情が溢れる

 

意識を手放しかけた瞬間、

 

 

誰かが俺の首をつかみ、持ち上げる。

誰だか分からない、視界が霞む、力が入らない

 

誰だ…

 

 

「フフ…仮面ライダー…‥愚かで、哀れで、惨めな男だ…」

 

 

俺を掴み上げる誰かが喋る…

 

聞いた事のある声…‥

 

どこで聞いた…

 

誰だ…

 

 

「そうだな…グズの悪事を守って、正義の味方気取りだ」

 

 

側に立ち喋る死神

 

 

「ご褒美に、私の毒を…プレゼントしよう」

 

 

この言葉の後、激痛が俺の体を襲った。

 

 

「ッ?!…グアァァァァァァァ!」

 

 

強制的に引き戻された意識。

 

熱が、吐き気が、頭痛が、痺れ、痛みが、内側から俺を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「苦しみなさい」

 

 

突如現れた進化体ロイミュードが放った毒に、進二はもがき苦しんだ。

耳を塞ぎたくなるような痛々しい悲鳴が響く中、死神と進化体ロイミュードは話し始めた。

 

 

「ブレン、クラッシュの力を上げるために、わざと自由にさせていたのか?」

 

「そういう事です」

 

 

(ブレン…‥敵の幹部か?)

 

話す内容、口調、それらからワタシは推測した。

話し終えた死神はこちらを向いた。

 

 

「ブレンの毒にやられれば、そう長くはもたまい…楽にしてやる…」

 

 

そう言って死神は銃を進二に向けた。

 

マズイ、今の彼では避けられない!

 

 

死神が引き金に指をかけた瞬間、ドリームベガス、ジャスティスハンター、ディメンションキャブが、それを阻んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死神が引き金を引くの防いだベガス達は、果敢に2体の敵に立ち向かう。

 

 

『よし!』

 

 

ベルトさんはタイミングを見計らい、オートでタイヤ交換をした。

 

 

《タイヤコウカーン!DREAM VEGAS!》

 

 

よりにもよってベガスかよ…

 

交換されたタイヤに心の中で愚痴る。

 

 

「俺の悪運を…試せってか…‥」

 

 

痺れる体でイグナイターを押し、レバーを操作する。

 

 

《ヒッサーツ!Full throttle!VEGAS!》

 

 

ベガスタイヤから大量に噴き出すコインの雨に、死神ともう1体のロイミュードは怯んだ。

 

俺はその隙に体を引き摺り、海に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

コインの雨が止むと、死神は辺りを見渡した。

 

 

「ク…逃げられたか…」

 

「構いません…どうせ毒で死にます」

 

 

悪態つくチェイスにブレンはそう言ったが、チェイスは納得出来ずにいた。

 

 

「分からんぞ…仮にも奴は、仮面ライダーだからな…」

 

 

そう言ってチェイス達はその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…ッ?!…ック…ハァ…」

 

 

海から這い上がる俺、なんとか敵の追撃から逃れる事が出来たのだ。

 

 

『キミの悪運はたいしたものだ』

 

 

そぅ…

 

出たのはスリーセブン

 

マ○レーン顔負けの悪運だ…

 

 

「いや…‥ベガスの運を、借りただけさ…」

 

 

俺はそう言ってシフトブレスに手を伸ばした。

 

 

『待つんだ!強化されたドライブでこの様だ…

変身を解くと、毒で一瞬の内に死んでしまう!』

 

「じゃあどうすりゃいいんだよ」

 

 

俺が悪態をついていると、サイレンと共に1台のさシフトカーがやって来た。

 

 

「救急車のシフトカーか?」

 

『ありがたい!彼は本来、人間を救うために作られたシフトカーだ。

彼の能力なら、毒を消すことができるはずだ』

 

「ホントかよ~…」

 

 

半信半疑で俺はシフトブレスに装填、レバーを倒した。

 

 

《タイヤコウカーン!MAD DOCTOR!》

 

「マッドドクター?!

また物騒な…」

 

 

ぼやきながら俺はイグナイターを押し、レバーを操作した。

 

 

《ヒッサーツ!Full throttle!DOCTOR!》

 

 

すると俺の体はた宙に浮いた。

 

これでひと安心……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

することは無かった…‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛いッ?!…イタッ?!、ちょっ…イタタタッ?!グァッ?!、ガァァァ!?」

 

『言い忘れていたが、マッドドクターの治療は死ぬほど痛い』

 

「だから今言うなっ?!って、マジ痛ぇー!?」

 

 

マッドドクターの治療が終わると、変身が強制解除された。

 

 

「スゲェ…毒が消えてる…でも、もぅ…使いたくねぇや…」

 

 

自然と落ちるまぶた、俺の意識は、ここで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 




どうも、ここ最近○リコン疑惑をかけられているケモミミです。

私はただ、ごちうさのEDでメグがくるくる回るシーンで、「アングル高いよ!(カメラの)何やってんの!(スタッフ)」と口走っただけなのに。

まぁそれは置いといて、

お久しぶりです、大変お待たせしました。
リアルで、アクシデントが続いてなかなか投稿できませんでした。
一応3バカ強盗は後2話位で終わる予定です。
ホントペース遅くてすんません。
誤字脱字あれば、ご報告下さい。

まぁいつもどおり、感想、評価、お待ちしてます。


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START:DASH!!《ファーストライブ》は何を動かしたのか。

GEAT視聴→ケモっ娘……( ^U^)感動的だな

二期視聴→デリラ(声優:楠田さん)を利用したゾルザル!
     てめぇはムッコロス!(<::V::>)
     食らえ!スピニングダンス!

一同「やめんか!」

ケモ「ヴェアッ?!」

進二「ったく……何でこんなに投稿が遅れた」

チェイス「読者を待たせないのが、人間のルールじゃないのか?」

霧子「何で投稿が遅れたんですか?」

ケモ「えっ……と…」

1.前回投稿から残業が続く
2.ラブライブ!×ココスのコラボスタート。
 自宅から片道1時間の距離を毎週往復。
3.外食、ガソリン代で小遣いが無くなる。
 貯金無し、バトライドウォーを買い逃す。
4.給料取得、買いに行くも売り切れ。
 予約していたガンダムブレイカー購入、プレイ。
5.つい先日バトライドウォーを購入、初回を逃し発狂。
 やっぱりファイズが一番使いやすい。

以上の事を踏まえると……


ケモ「全部、ワ・タ・シのせいだ!」

一同「開き直るな!」



*注意*
何時もの低クオリティな上にいろいろ詰め込んだのでメチャクチャです。





 

 

 

 

 

西木野総合病院

 

 

その病室のベッドに眠る進二、その周りには1人の医師とりんなを除いた特状部の面々、千早、追田が居た。

 

 

「…‥…………」

 

[……………………]

 

「………うん、命に別状はありませんね」

 

 

医者の言葉に、その場に居た全員が安堵のため息をついた。

 

 

「…良かった…‥」

 

「うん…‥でも進二くん、何で海に…」

 

「進二の事よ、大方無茶しただけだわ」

 

「すいません、千早さん。

 俺がもっと注意してれば…」

 

「追田さん、気にしないで下さい。

 この子もあの人に似て、無茶を知らないだけですから」

 

「それでも、私達に否があります…

 霧子ちゃんと息子さんを2人で行かせたのが、そもそもの原因なので」

 

 

いつもの様な明るさを無くした本願寺は、追田と共に千早に頭を下げた。

 

 

「私にも…責任があります」

 

 

霧子の言葉に、その場に居た全員が目を向けた。

 

 

「私は…その場に居たのに、泊さんを‥」

 

 

涙を堪えていたのか、震えた声で話す霧子を千早は優しく撫でた。

 

 

「貴女のせいじゃないわ、霧子ちゃん。

 言ったでしょ?

 ただ単に、うちのバカ息子が無茶しただけよ」

 

「…‥はい…」

 

 

力無く答える霧子に、千早は微笑みかけた。

 

 

「進二くん!!」

 

 

すると勢い良く扉が開き、肩で息をする希が入って来た。

 

 

「進二くん!!」

 

 

いつもとは明らかに違う希の姿に、千早と追田以外が驚いた。

 

焦り、恐怖、不安、それらが感じ取られる希の表情に、本願寺は納得した表情で、千早と追田は目を伏せた。

 

普段の希を知る霧子は、まるで希の姿をした他人と錯覚するほどに驚いた。

 

 

「君、彼は無事だから落ちt…「ッ?!ホントですか?!」…」

 

 

一心不乱に進二の名を叫び続ける希を止めようと、医師は希の肩を掴む。

瞬間、希は医師の両腕に掴みかかり叫んだ。

 

この行動は予想していなかったのか、千早も驚いた。

 

 

「本当です…‥ただ‥」

 

 

医師の言葉に安堵する希。

だが医師の次の言葉に、希を含んだこの場にいる全員が驚いた。

 

 

「バイタルからしてみれば、本来なら意識を取り戻してもおかしくない筈なんです。

 よほど疲労が蓄積されていたのか…‥

 あるいは、事件に巻き込まれた精神的ショックから…彼自身が無意識に目覚める事を拒否しているのか…

 もし後者なら、しばらくの間…このまま目を覚まさない可能性もあり得ます」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、周囲は驚きの表情を浮かべ、希はその場に泣き崩れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

時刻も夜22時に差し掛かるころ、霧子からの情報を基に捜査をした刃野が病室に訪れ、追田は刃野と共に署に戻った。

落ち着きを取り戻した希と西城は本願寺に送られ、帰宅した。

 

 

病室に残った千早と霧子。

無言が続くなか、霧子は口を開いた。

 

 

「‥‥あの、千早さん」

 

「…‥何?」

 

「東條さんの事………何か知っているんですか?」

 

「…‥どうしてそう思うの?」

 

「さっきの東條さんを見た時、千早さんは‥‥なんと言うか、東條さんがああなるのを“分かっていた”様に感じられたので‥‥」

 

「それを聞いて、貴女はどうするつもり?」

 

「っ?!」

 

 

さっきまでとは違う圧のある声色に、霧子はたじろぐ。

 

 

「‥‥驚かせちゃったかしら?

 ごめんなさい‥‥でも、この事に関しては…いくら霧子ちゃんや西城くん‥穂乃果ちゃん達にも話せないわ」

 

「高坂さん達にもですか?」

 

 

千早は静かに頷く。

 

 

「詳しい事は、進二と希ちゃんしか知らないわ。

 私や追田さん達は“表向きの内容”しか知らないの‥‥」

 

「‥‥どういう事ですか?」

 

「隠してるのよ…‥何か、大事な事を…この子達は…」

 

 

千早は静かに進二を撫でると、再び話し始めた。

 

 

「もうすぐ1年になるわ‥‥“あの事件”から」

 

「…あの事件?」

 

 

霧子が尋ね返すと、千早は霧子を見つめる。

その瞳に霧子は息を飲んだ。

 

 

「この話しは、直接この子か希ちゃんに聞いてちょうだい。

 ただ‥‥」

 

「ただ?」

 

「もし話しを聞いて、この子や彼女を糾弾したら‥‥私は貴女を一生許さない」

 

「…………」

 

 

彼と希の過去に何があったのか。

霧子は眠る進二を見つめた後、千早に一礼をして病室をさった。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

病室を後にした霧子は、帰路についていた。

 

 

ーーー(隠してるのよ…‥何か、大事な事を…この子達は…)

 

 

泊さん達の過去に、何があったのかしら…

 

 

『気になるのかね?』

 

「クリム…」

 

 

考えながら歩いている霧子の側に、シフトスピードを操ったベルトさん(クリム)が現れた。

 

 

「貴方は何か知っているのですか?」

 

『…yes‥…ただ、ワタシもMrs.千早の言う表向きの内容までさ…

 とても十代の若者が背負う内容じゃない…

 それに進二からこの事は他言しないよう、頼まれている』

 

「そう…ですか…」

 

『もし…この事を彼に尋ねるなら、彼との今後の関係に支障が出るかもしれない。

 下手をすれば、君たちの関係を壊しかねない…

 真相を知りたいのなら、それだけは…肝に命じておいてくれ』

 

「分かりました…」

 

 

相棒だと言うのに…‥

 

何も出来ない歯痒さが、霧子を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

翌日、霧子は進二の様子を見に病室を訪れた。

 

 

「…‥東條さん?」

 

 

病室に入ると、そこには椅子に腰かけた希がいた。

 

 

「……あ…霧子ちゃん、おはよ」

 

「おはようございます」

 

 

無言が続く、霧子はあまり人とは話さない為か、あまり友人関係は広くない。

 

ましてや希とは別のクラス。

絵里やにこ、希と話すときは、いつも進二が間を取り持っていた。

 

 

静かに時間だけが過ぎるなか、希が先に口を開いた。

 

 

「…昨日は、恥ずかしいとこ見られてもたな」

 

「いえ…」

 

「「…………………」」

 

「東條さんは、泊さんとどういったご関係なんですか?」

 

「…せやな…友達以上恋人未満?なんて…」

 

「…………」 

 

「冗談やから睨まんといてぇな。

 …まぁ……強いて言うなら……一種の共犯者…かな…」

 

「共…犯者…?」

 

「うん…‥」

 

 

そう言った希は暗い表情を浮かべた。

 

 

「ウチらの為に進二くんは…‥…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………人を……殺してもたんや…」

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-------

 

 

 

 

昼休み、霧子はローカを歩きながら今朝希と話した事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

--

 

 

 

 

 

 

「泊さんが、人を‥‥殺した……?」

 

「と言っても、殺意を抱いて手にかけた訳やないよ?」

 

 

そう言いうと、希は眠る進二の手を握った。

 

 

「もうすぐ1年か……

 あの事件で、ウチ等の関係は大きく変わってもた」

 

 

(あの事件‥‥もしかして千早さんが言ってた1年前の……)

 

 

霧子は希の話しを聞き、千早から耳にした話しを思い出す。

 

 

「1年ぐらい前に、ウチ等はある事件に巻き込まれてな。

 そん時に一緒にいたのが、進二くんにウチ、エリチと…‥明くん…」

 

「泊さんと絢瀬さんが……

 その、もう一人の方は…」

 

「絢瀬 明……進二くんの親友にして最高の相棒‥‥

 そして、エリチの従兄弟にあたる人や」

 

「絢瀬さんの……」

 

「その事件を、進二くんと明くんが解決したんよ」

 

「泊さんがですか?」

 

 

希は静かに頷く。

 

 

「でも…‥それは世間からしてみれば良い結末だったけど、ウチ等には最悪な結末をやった」

 

「最悪な…結末?」

 

 

暗いながらも柔らかい笑みを浮かべながら話す希は、霧子を見る。

その表情は厳しく、真剣なものになった。

 

 

「…‥霧子ちゃんは、“大切な人の為になら…殺す事…同じぐらい大切なものを犠牲にする事が出来る?”」

 

 

 

 

 

 

----------

 

 

 

 

 

霧子は図書室の一角、古い新聞や週刊誌が置いてある場所で、ある資料を探していた。

 

 

「…‥……あった」

 

 

資料手にした霧子はそれを基に、側にあるパソコンを使い、資料に書かれた内容を検索する。

 

そこに書かれていたのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-久留間ショッピングモールテロ事件-

 

 

 

 

 

 

 

 

「‥‥これが…」

 

 

霧子は資料を読み進める。

 

そこにはさまざまな内容や、事件に対する意見や見解もつづられていた。

 

 

「…………っ?!……

 ……そんな……こんなの…」

 

 

読んでいくうちに、目を背けたくなる。

霧子は資料を最後まで目を通すと、目に涙を浮かべた。

 

 

そこには、こう記されていた。

 

 

 

 

 

 

 

久留間ショッピングモールがテログループ「ネオシェード」により占拠され、内容は不明だがネオシェードは政府にある要求を提案。

要求を満たさない場合ショッピングモールを爆破、人質を皆殺しにすると言う犯行声明があげられた。

しかし政府は要求を拒否、これにより人質の男性1人が屋上から銃殺され、遺体は屋上から投げ落とされた。

遺体の身元はモールの警備員だと判明。

これにより警察は武装部隊の突入を決定。

硬直状態が続くなか、モール内で数発の発砲音が発生。

後に人質と思われる数十名がモールから脱出、それを合図に警官隊が突入、モール内を鎮圧した。

モール内を捜索中、最上階にて発砲音を聞いた警官が最上階に突入、そこにはテロリストと思われる男性と4名の学生が確認された。

現場に居た学生の内2名は軽傷、残り2名は重傷を負っており、その内の1人は瀕死の状態だった。

テロリストの男性は気を失っており、逮捕された。

軽傷を負ったのは若い男女で、擦り傷や切り傷によるものが大半で、男性の方は銃創や辺りに打撲を負っていたが命に別状はなかった。

重傷者の女性は、衣類を剥がれた状態で辺りに打撲の後があり、発見時には気を失っていた。

恐らくテロリストによる暴行を受けたものと思われる。

外傷は打撲程度だが、精神的ストレスからか、意識を取り戻した際に一部の記憶障害を確認。

同じく重傷者の男性は背中に銃創を受け、辺りに打撲、切り傷などが確認された。

発見後男性は病院に搬送されたが、搬送後病院にて死亡が確認された。

学生達本人の供述から、以下の事実が判明した。

実際あの場に居たのは7人で、そこにはテロリストの幹部と首謀者の2名、学生4名と人質にされていた子どもが1名だった事が判明。

警察が駆けつけた時にはテロリストの首謀者は逃亡、子どもは連れ去られ行方不明となった。

死亡した学生の死因は、片方の学生がテロリストから拳銃を奪い発砲、その弾がテロリストと掴み合っている学生に当たったとのこと。

発砲した学生本人の供述だが、真偽は不明。

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

霧子は無言のまま記事を見つめる。

恐らく4人の学生とは進二達のことだ。

そう直感した霧子はある部分に目をつける。

 

 

「記憶障害…?」

 

 

希の話しを聞く限り、彼女である可能性は低い。

あるとすれば………

 

 

「もしかして…絢瀬さんが?」

 

 

 

 

 

 

----------

 

 

 

放課後、霧子は下校しようと鞄を手にし、教室を出た。

 

 

「詩島さん、少し良いかしら」

 

「絢瀬さん?」

 

 

背後から呼び止められ、振り向く霧子の前には小さな花束を持った絵里が立っていた。

 

 

「何かご用ですか?」

 

「頼みたい事があるの」

 

 

そう言って絵里は手にしていた花束を渡す。

 

 

「これ、進二の所に持って行って欲しいの。

 今日の会議で私と希はお見舞いに行けないから」

 

「分かりました……あの、絢瀬さん」

 

「何?」

 

 

 

貴女は1年前あの事件にどう関わっていたんですか?

 

 

 

そう言いそうになった霧子は言葉を呑む。

 

軽々しく聞いていい内容ではない、私の考えが正しければ、絢瀬さんの身内を手にかけたのは泊さんだ。

そんなの、絢瀬さんに聞ける訳がない。

それにもし“あの記事に書かれていた事”が事実なら……

 

そう思い霧子は口を閉じた。

 

 

 

「どうしたの?」

 

「いえ、何も…

 分かりました、泊さんの病室に持って行きますね」

 

「ありがとう」

 

 

そう言い残して霧子は絵里と別れ、病院へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

夢を見ていた…‥

 

 

小さい頃に親父に連れられ遊びに行った日に、俺は迷子になった。

 

そこで俺は、1人の少女と出会った。

 

綺麗な歌声、俺は彼女の歌声に聞き惚れた。

 

 

「歌上手だね」

 

「ーーーーー!」

 

「俺は泊 進二!キミは?」

 

「ーーーーー!」

 

「いっしょに遊ぼうよ!」

 

「ーーーーー!」

 

 

顔は影に覆われていて分からないが、どこか懐かしい…‥

 

俺はこの子を知っている?

 

どこで会った?

 

彼女は‥‥

 

 

 

 

 

 

…‥誰だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「…………ん……?………ここは……?」

 

 

夢を見ていたのか?

俺は朦朧とする意識の中、辺りを見回した。

 

 

「目が覚めましたか?」

 

「………霧子…?」

 

 

目の前には安心した顔で俺を見る霧子の姿だった。

 

 

「登校前にお見舞いに来たんです。

 でも良かった……丸2日死んだように眠っていましたが、無事で良かったです」

 

 

「…お前が、助けてくれたのか?

…‥ありがとな」

 

「いいえ、付近にいた方が助けてくれたそうです…‥」

 

 

そう言いながら霧子は側にある椅子に腰掛けた。

 

俺は再び天井に目を向け、先日の出来事を思い出した。

 

 

「っ!そうだ…‥フォントアール社が、爆薬の密輸を!」

 

『それなら既に、ワタシが伝えてあるよ』

 

 

俺は慌てて飛び起き、事件の真相を告げた。

詳細はベルトさんが話してくれたようで、霧子は分かってますと応え、俺の体を支えながらベッドに寝かし付けてきた。

 

 

「もう少ししたら、倉持さんの事情聴取を追田さんと部室で行います、ですから泊さんは休んでてください」

 

 

そう言って霧子は立ち上がると、病室を去っていった。

ふと時計を見れば、まだ朝の8時を過ぎたばかりだった。

 

 

「…休んでられるか」

 

 

霧子が病室から出ると俺はベッドから降り、壁に掛けられた制服に手を伸ばす。

海に落ちてずぶ濡れになったはずなのに、制服は磯臭いどころか、シワひとつ無かった。

制服を手に取ると、胸ポケットの中に紙が入っていた。

 

 

ーーーお父さんみたいに、あまり無茶はしない様に……千早

 

 

 

どうやらお見通しの様だ。

 

 

自然と口元が緩んだが、俺は再び顔を引き締め、シャツに袖を通した。

 

 

『進二、キミは何故、特状部の仲間や警察に正体を明かさないのか、ワタシに聞いたな』

 

「あぁ」

 

 

着替え始めた俺に、ベルトさんは話しかけてきた。

 

 

『かつて一人のある科学者がいた。 

 彼は人類にとって革新的な発明をした…

 だがそれは、大きな破壊を生む結果となった』

 

 

いつものように冷静な口調で話すベルトさん。

その話から俺は、何を話したいのかを察した。

 

 

「要するに、ドライブの力はまだ…人間の手に余ると‥‥」

 

『yes。 

 ロイミュードと戦うためとは言え、ドライブ自体も‥重加速を引き起こせる』

 

「つまり、ドライブの力を悪用する奴がいるかも知れない…」

 

『その可能性は、なきにしもあらずだ』

 

「……なぁ‥もしかしてその科学者って、アンタの事か?」

 

 

俺はベルトの話した人物はベルトさん自身だと感じた。

 

 

『フフン♪ハズレだね‥‥

 科学者の名はノーベルだ、ダイナマイト発明した彼は、後に世界平和を願ってノーベル賞を設立した』

 

「何だよ、上手くはぶらかしやがって」

 

 

俺はベルトさんのはぶらかし方に文句を言うと、ベッドに腰掛けた。

 

そして思い出す、先日の出来事を…

 

そして理解する、ベルトさんの話しの真意を…

 

 

「だが‥今なら分かる話だ…」

 

 

ベルトの隣に置かれたシフトブレスを手に取るも、今の俺はそれを腕に巻く事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

俺は学校に着くと、部室に向かうために走っていた。しばらくすると、向かいからにこがジュースを片手に歩いて来た。

 

 

「進二?!アンタもう退院したの?!」

 

 

俺の姿を見たにこは、驚きのあまり手にしていたジュースを派手にぶちまけた。

 

 

「退院…‥つうか…まぁ……」

 

 

ヤバイ……冷静に考えれば俺、病院抜け出してんじゃん……

 

 

「何よその歯切れの悪い返事は?」

 

 

ジト目で睨んでくるにこから、俺は視線を反らした。

 

 

「まぁいいわ。

 それより一昨日は大変だったのよ」

 

「何が?」

 

「‥‥希がアンタの事を聞いた時に、軽くパニック状態になって気を失ったのよ。

 たまたま近くに先生が居たから良かったけど…

 目が覚めるなり病院に行かせてくれって」

 

「………………」

 

「アンタのせいじゃないのは分かるけど、少しは気にしなさい。

 大事な人が居なくなるのは……ホントに辛いんだから…

 アンタもそれくらいは分かるでしょ?」

 

「…あぁ‥‥すまない」

 

 

大事な人を失う悲しみを…俺達は知っている。

 

親友を失った俺達を励ましてくれたのは、他の誰でもない……にこだった。

 

彼女は父親を無くしていた。

彼女の弟が生まれた日に事故に合ったらしい。

 

そんな彼女だから、身近な誰かを失う辛さが分かる。

 

 

何となくにこを見ていると、制服のポケットから1枚の紙がはみ出ていた。

 

 

「なぁにこ」

 

「何よ?」

 

「…それ」

 

「ん?…あぁこれね」

 

 

にこは紙を取り出した。

それは穂乃果達のライブチラシだった。

 

 

「お前も行くのか?」

 

「行くわけ無いでしょ」

 

 

そう言うとにこはチラシを俺に向けた。

 

 

「アンタはどうなの?行くの?」

 

「まぁ……そのつもりだが」

 

「…そ」

 

 

短く返事をしたにこは、どこか寂しげな表情を浮かべる。

 

俺はにこの過去を知っている。

 

ある意味それが、俺とにこの出会うきっかけとなった。

 

 

あの時のにこの表情を……痛みを…絶望を……

 

俺は知っている。

 

 

でも……きっとアイツらなら…

 

 

穂乃果達なら…にこを、救ってやれるのかもしれない。

 

 

そんな事を考えながら、俺はにこが散らかしたジュースを片付ける手伝いをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

すでに新入生歓迎会が始まるなか、俺は部室棟に足を運んだ。

 

俺が部室に入ると、すでに事情聴取が始まっていた。

 

 

「あんれ~?泊ちゃん、早いね~。

 そんなに急がなくても良かったのにぃ‥

 体はもう平気なの?」

 

「えぇ、まぁ‥‥」

 

 

本願寺先生は俺の側まで来ると、そぅと言って肩をパンパンと叩いた。

 

 

「なら良かった。

 いやね?倉持さんたらだんまりしちゃって、話しにならないのよ~…困ったねぇ~…」

 

 

俺は聴取が行われている霧子達の方を向いた。

 

そこには長机に向かい合って座る倉持さんと霧子、その隣には現さんが座っていた。

 

 

「なぁ社長、これは取り調べじゃ無いんだからさ、もっと気楽に…お喋りしような?」

 

 

そう言いながら現さんは、究ちゃんの机にあったぬいぐるで倉持さんに語りかける。

 

 

「今回密輸に使用されていた爆薬は、法律上で禁止されている科学化合物です。

 フォントアール社なら、製造が可能ですよね?」

 

 

そう言って霧子は、手元の資料を倉持さんに突きつけた。

 

それでも黙秘を続ける倉持さんに、俺は真相を尋ねた。

 

「なぁ倉持さん、本当の事を言ってくれ。

 アンタが作って密輸していたのか?あんな危険な爆薬を?

 なぁ…応えてくれよ?!どうなんだよ?!応えろよ?!倉持さん?!」

 

「ちょっと泊さん?!」

 

「そこまでにして下さい」

 

 

気付けば俺は倉持さんに掴みかかり、恫喝まがいな聞き方をしてしまっていた。

 

ただ一言、違う、俺はその一言が聞きたかった。

 

ヒートアップする俺を、みんなが抑える。

そんな中、部室の扉を開き入って来た桐原さんの言葉に、俺達は落ち着きを取り戻した。

 

 

桐原さんが来た、後は桐原さんに倉持さんの事を任せるしかない、この人なら真相を暴き出してくれるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…‥‥‥‥そう、思っていた

 

 

 

 

 

 

「倉持社長には、お帰り頂きます」

 

 

 

 

 

 

…‥‥‥‥っえ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ以上の取り調べはご遠慮頂きたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

何でだ……何を言っているんだ?

 

桐原さんは、何て言ったんだ?

 

 

「取り調べも何も、ただ任意で話しを聞いているだけじゃないか?」

 

 

現さんは桐原さんにかけよるが、桐原さんは首を横にふると淡々と話しだす。

 

 

「勝手な事をしないで貰いたい。

 いくら協力関係にあるからといっても、取り調べの権利はこちらにあります。

 ただの学生がでしゃばらないで下さい」

 

「現に証拠が出ている、帰す訳にはいかないでしょう?!」

 

 

桐原さんに食って掛かる現さんに、桐原は表情を変えず話す。

 

 

「学生が集めた物を鵜呑みにする訳にはいかないでしょう。

 それに、貴殿方一課は管轄外です。

 仮にその資料が正しかったとしても、製造を裏付けるかどうかは別問題。

 よってこの件は証拠不十分、倉持さんにはお帰り頂きます」

 

 

桐原さんの言葉に誰もが驚く。

 

理解出来ない。

これだけの証拠を前に、倉持さんを見逃すつもりなのか?

 

 

「もう、いいですね?」

 

 

困惑する俺達をよそに、倉持さんは涼しげな顔で席を立った。

 

 

「では失礼‥」

 

「アンタやっぱり…」

 

 

倉持さんの表情、態度から嫌でも分かる。

 

すれ違う瞬間、倉持さんは“笑っていた”。

 

 

「おい‥ちょっと待てよ」

 

「止めなさい」

 

 

俺が倉持さんに掴みかかかろうとした瞬間、背後から桐原さんに止められた。

 

 

「どういう事だよ桐原さん、説明してくれ」

 

 

苛立つ俺は桐原さんに問い詰めた。

 

そしてかえって来たのは、予想外の答えだった。

 

 

「残念ですが、公安委員会の判断により、契約を破棄、事件の捜査からてを引いて貰います。

 それと今回の事件にまつわる全ての捜査関係資料は公安が管理、資料回収完了までこの部屋から立ち退いて貰います。

 それにあたって、貴殿方(あなたがた)の使用しているメインシステムを落とします、沢神さん」

 

 

桐原さんの言うメインシステムは、りんなさんのアイデアの基、究ちゃんがプログラミングしたアプリ型の通信エンジンだ。

重加速を感じた人がアプリを起動、通報する事でその情報を共有。

アプリをダウンロードした人はその周辺の重加速を知ることができる、といったシステムで、特状部にはその情報を全て管理する事が出来るものがある。

 

それがメインシステムだ。

 

桐原さんの言葉に頷くりんなさんは、部室にあるどんより通報管理システムの前に向かう。

 

 

「そんな事したらどんよりの通報が見れなくなっちゃいますよ?!」

 

「ごっめ~ん☆」

 

 

慌ててりんなさんを止めようとする究ちゃんは、りんなさんから書類でアッパーカットを食らい、倒れたところを霧子に流され地に伏した。

 

 

…‥‥受け止めてやれよ霧子

 

 

 

「止めてください!」

 

 

りんなさんの肩を掴み自分の方を向かせた霧子は、悲しげな表情をしていた。

 

だがりんなさんは悪びれる様子もなく、霧子の手を掴み肩から離した。

 

 

「ダメよ~…霧子ちゃん、偉い人に逆らっちゃ☆」

 

 

いつもの様にキャピキャピとした態度で霧子に向かって手を広げる、それを見た霧子は目を見開き、次の瞬間にはりんなさんを睨み付けた。

 

 

「りんなさん‥‥貴女にはガッカリしました」

 

「ひど~い、どうして?」

 

「公安部に媚びて、私達を裏切ったからです」

 

「私がどこで何しようと、勝手だと思うんだけどなぁ」

 

 

そう言ってシステムの電源を落とすりんなさん。

 

 

「では、貴殿方にも退室して貰います」

 

「バイバ~イ♪」

 

 

りんなさんに見送られながら、俺達は部室を追い出された。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

新入生歓迎会が終わり、様々な部活が新入生を勧誘する。

 

 

そんな中俺達は、桐原さんが部室を占領され、捜査協力の契約を破棄されたことにより、特状部はやる事がなくなった。

 

 

いく宛もなくただ単にぶらついていると、俺は無意識に屋上に来ていた。

 

 

「はぁ…」

 

 

ひとやすみるくを取りだし、口にしようとするも途中で止まる。

 

 

ーーー(人間の本質は…悪となった)

 

 

「結局、あの死神の言う通りか…」

 

 

脳裏に浮かぶ死神のセリフに俺は苛立ちを感じ、屋上の手摺に拳を振り落とした。

鈍く響く金属音、じわりと拳に痛みがはしる。

 

 

「じゃあ…‥‥正義ってどこにあんだよ‥‥

 守りたいもの(人間)が悪だってんなら、正義って何だよ‥

 仮面ライダー()は‥‥何の為に戦えばいいんだよ…」

 

 

手摺に落とした拳に数滴の涙が落ちた。

 

裏切られ、突き放され、何を守ればいいのか、俺は全てを見失った。

 

 

「物に当たるのは感心しないな」

 

 

ふと背後から声が聞こえ、振り返った。

 

 

「‥呉ちゃん」

 

 

そこには呉ちゃんが、担任の教師である呉島 貴虎が立っていた。

 

 

「少しいいか?」

 

 

そう言って俺の隣に立ち、手摺に背中を預けるようにもたれかかる、その両手には缶コーヒーが握られていた。

 

 

「まぁ飲め」

 

「‥ぁざっす」

 

 

缶コーヒーを受け取り、俺はそれを口にする。

同様に呉ちゃんもコーヒーを口にし、しばらく無言が続いた。

 

 

「……昔、ある男がいた」

 

 

沈黙の中、突然呉ちゃんは話しを始めた。

 

 

「その男は、その甘さと愚かさ故に騙され、裏切られ、見限られ、見捨てられた」

 

「…‥‥…‥‥」

 

「この世界には理由の無い悪意すら存在する、理由無き悪意‥‥それをよしとしないその男は、全てを犠牲にする覚悟でその悪に挑んだ‥‥が‥結果何も出来なかった」

 

「…‥‥…‥‥…‥‥」

 

「男は諦めた、そしてけして許されることの無い方法で世界を救おうとした。

 これから起こりうる全ての罪を背負う‥‥その覚悟と共に‥‥男は決断した。

 それが間違いだと分かっていても、男にはそれが限界だった。

 仕方がない、自分にはこれぐらいしか出来ない、そう自分に言い聞かせ‥‥最悪な最善の策を選んだ」

 

 

話しつづける呉ちゃんは、どこか暗く、悲しげな表情だった。

 

 

「だがしばらくしない内に、男の前に1人の青年が現れた。

 まっすぐな目をし、仲間と共に過ごすそいつは、その悪をよしとせず立ち向かおうとした。

 男にはそいつが、昔の自分と重なって見えた。

 共に手を取り、悪に立ち向かう事も出来た…‥

 だが悪はあまりにも強大で、果てしない。

 結果、男はそいつに現実を突き付け、絶望に叩き落とした」

 

「‥‥何でそいつは、そんなことをしたんだ?」

 

「…ただの嫉妬…いや、苛立ちからの八つ当たりか‥‥まぁそんなとこだ。

 何も知らず、“お前達は間違っている”だの、“世界を守る”なんぞほざくそいつが、よっぽど勘にさわったんだろう‥

 案の定そいつは絶望し失意のなか、奈落に落ちた」

 

 

すると呉ちゃんは飲み干した缶を足元におき、ポケットから一つの飴を取り出した。

 

 

「だがそいつは立ち上がり、男の前に立ちはだかった。

 どんなに絶望の底に叩き落とされようと、己が信じた希望の為に何度も立ち上がり、戦い続けた」

 

 

手にした飴を見つめながら話す呉ちゃんは、さっきとは違う、柔らかい表情をしていた。

 

 

 「そして、その男は自らが望んだ未来を手にした。

 だが‥‥それはそいつから、全てを奪う結果となった」

 

「‥?‥‥それってどういう‥‥」

 

 

すると呉ちゃんはしまったと言わんばかりの表情をした。

 

 

「すまん、話し過ぎたな」

 

 

すると呉ちゃんは手にした飴を俺に向けた。

 

 

「お前は飴が好きだったよな?」

 

「‥ありがとうございます」

 

 

俺がオレンジ色の飴を受け取ると、呉ちゃんは空を見上げた。

 

 

「泊…‥‥お前は“アイツ”に似ている‥‥」

 

「アイツ‥って‥‥?」

 

「‥俺の恩人‥‥と言ったところだ」

 

 

すると呉ちゃんは思い出したように告げた。

 

 

「そうだ、お前に渡す物があった」

 

 

そう言って呉ちゃんが取り出したのは、一枚の紙だった。

 

 

「何ですか?これ‥」

 

「事情はある程度聞いている。

 海に落ちたお前を助けてくれた方だ、礼を言っておけ‥‥」

 

「はい…‥‥小泉?」

 

 

相手の名前も書かれており、俺は携帯を取りだし、番号を打ち込む。

 

 

 「まったく…海に落ちるなど、他人の気がしないな」

 

 

呉ちゃんが小声で何か言った気がした。

気になったものの、ちょうど電話が繋がった為、聞く事を止めた。

 

 

「もしもし、小泉さんでしょうか?

 泊と言う者ですが…」 

 

ー〈あぁ、あん時の兄ちゃんか〉

 

「先日はどうも助かりました」

 

ー〈いいって事よ。

  実は、仮面ライダーのついでだったんだけどよ〉

 

 

……仮面ライダーのついで?

 

 

ー〈実は俺、フォントアールの運転手やってんだ〉

 

 

その瞬間、俺は思い出した。

あの時、フォントアールの輸送車を守った際に出会った運転手を……

 

 

ー〈前に仮面ライダーに助けてもらってよ、その恩返しをしようとしたら、あんたを見つけたんだ〉

 

 

……そっか‥‥俺を助けようと‥

 

 

「ありがとうございます」

 

ー〈だからいいって。

  実のところ、あんた自身にも用があったからな〉

 

「俺にですか?」

 

ー〈いや、妹が何度か世話になったみたいでな?〉

 

「妹さんが?」

 

 

この時、俺の脳裏に小泉の顔が浮かんだ。

 

 

ーーー(兄を助けて頂き、ありがとうございます)

 

 

「もしかして、小泉さんの…」

 

ー〈あぁ、花陽の兄の小泉 勇蔵だ。

  妹が世話になってる〉

 

「いえ、こちらこそ」

 

ー〈まぁなんだ、妹がいろいろ世話になってるし、そのお礼ってことで‥〉

 

「はい‥」

 

ー〈後それと……〉

 

「?」

 

ー〈妹泣かせたら…ただじゃおかねぇからな?〉

 

「は、はい!」

 

 

何だよ電話越しに来るこの殺気…‥

 

何だろう‥‥小泉を泣かせると、黄色い忍者にボコられそうな気がする。

 

 

ー〈まぁともかく、無事で良かったよ〉

 

「はい、本当にありがとうございました」

 

 

俺が電話を切ると呉ちゃんが再び話しかけて来た。

 

 

「ちゃんと礼は言えたようだな」

 

「はい」

 

「世の中捨てた物じゃない。

 確かに世界は悪に満ちているだろう…‥‥

 だがそんな世界でもまっすぐ生きている奴はいる、きっとそいつらは…アイツの様に輝いて見えるのだろうな…‥‥」

 

 

そう言った呉ちゃんは出入口の方を向きだした。

 

 

「そろそろ出てきたらどうだ?」

 

「え?」

 

 

呉ちゃんの言葉に姿を見せたのは、小泉 花陽だった。

 

 

「小泉?」

 

「こんにちは、先輩。あの、お体の方は‥‥」

 

「ん?…あぁ、問題ないよ」

 

 

答える俺の顔を、小泉はじっと見つめる。

 

 

「あの‥先輩、良かったらこれ‥‥」

 

 

そう言って小泉が出したのは、穂乃果達がするライブのチラシだった。

 

 

「わたし、辛い時や悲しい時とか…‥アイドルの歌を聞くと、元気になるんです‥だから‥‥」

 

「どうして…‥」

 

「先輩、どこか辛そうだったので‥‥

 それで…よ、よければご一緒に‥‥

 あっ‥‥よ、余計なお世話ですよね?!

 ごめんなさい!」

 

 

盛大に頭を下げる小泉に、俺は大丈夫と答えた。

 

 

 

…‥で、

 

 

 

「何で小泉がここに?」

 

「実は新入生歓迎会が終わったあと、凛ちゃんと2人でいろいろ部活を回っていた際に、詩島先輩とお会いして、そしたら先輩が海に落ちたって聞いて‥‥居ても立ってもいられなくて‥‥」

 

「なるほど…でも何でここだと?」

 

 

すると小泉はポケットから1つの手帳を取り出した。

 

 

「それは?」

 

「詩島先輩がくれたんです、何でも先輩の全てを記した物らしくて…好きな物とか、よくサボりに使う場所とか…」

 

 

霧子の奴‥いつの間にそんな物を…

 

 

「ほぅ…それは興味深いな‥‥」

 

 

そう言って割って入って来た呉ちゃんは、小泉から手帳を取り上げるとそれを読み始める。

 

 

「ふっ…‥なるほどな…」

 

 

あっ…‥‥一番渡ってはいけない人物に手帳が渡ってしまった。

 

 

「これは俺が詩島に返しておこう」

 

 

そう言って呉ちゃんは去って行った。

 

 

「えっ…と…‥‥

 先輩、大丈夫ですか?」

 

「うん…‥‥これから大丈夫じゃ無くなるかも…」

 

 

床に四つん這いになってへこむ俺を、小泉は心配そうに見ていた。

 

 

「かよちんいたー!あっ!先輩こんにちはー!」

 

 

突然現れた星空は小泉の手を掴んだ。

 

 

「かよちん行くよ?

 先輩の変な部活は行けなかったから、一緒に陸上部見に行こ」  

 

「り、陸上部?!でも、わたし先輩と…」

 

「かよちん、少し運動してみたいって言ってたじゃーん、早く陸上部に行っくにゃー♪」

 

「ちょっと凛ちゃん?!まだ先輩と話しが?!

 ちょっ…ま、せっ‥センパイタスケテー?!」

 

 

叫びながら物凄い速度で連れ去られる小泉を、俺は苦笑いしながら見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

音ノ木学園 食堂ホール

 

そこには部室を追い出され、食堂で暇をする者がいた。

 

 

「何でこんな事になっちまったのかな~…」

 

「仕方ないですよ、警察の方から契約を破棄したんだから、僕達に出来る事なんて無いですよ。

 ‥‥……ていうか、何で追田警部が居るんですか?

 しかもうどんなんか頼んで……学校としては一応部外者ですよ」

 

 

食堂に居たのは、部室を追い出された究と追田だった。

うどんをすすり終えると、追田は話した。

 

 

「細かい事は気にすんな、究太郎」

 

「究ですよ、究。

 西城 究、究太郎じゃありません」

 

 

間違いを訂正した究の言葉を、追田は聞き流しながらうどんを食した。

 

 

「しかし…‥こうなると、何か俺まで悔しくなるぜ…」

 

「もう追田警部も立派な僕達の仲間ですよ。

 怪物も、仮面ライダーも見たんだから‥‥」

 

「そうだった…‥俺、とうとう見ちまったんだ…」

 

 

究の言葉に、肩を落とす追田。

そんな追田をよそに、究は目を輝かせながら尋ねた。

 

 

「ねぇ、仮面ライダーって、どんなデザインだったの?」

 

 

あまりの気迫に、追田はたじろぎながら答えた。

 

 

「‥‥あ、赤かった…」

 

「うんうん」

 

「‥‥手が」

 

「手しか見てないのか~…

 なんて使えないんだこの人は…」

 

「そこまで言わなくてもいいだろ」

 

 

がっかりしながら席に戻った究は、ポケットから1枚の紙を取り出した。

 

 

「それ何だよ、究太郎」

 

「ライブの告知のチラシです、クラスメイトがスクールアイドル始めたんで」

 

「アイドルねぇ‥‥俺ぁ興味無ぇな…」

 

 

興味無さげに再びうどんをすする追田。

 

 

「一度聴いてみるといいですよ、きっと気に入りますから」

 

「いいよ俺ぁ、ただ単に若い娘っ子が歌って踊るだけだろ?芸がねぇよ」

 

「アイドルをバカにするなんて、なんて人だ!」

 

「2人共!何喧嘩してるんですか?」

 

 

追田は究の提案を一蹴、その理由に究は腹を立て、喧嘩に発展、その喧嘩を止めたのは霧子だった。

 

 

「2人に頼みたい事があります、手伝ってください」

 

 

霧子の言葉に、2人は首を傾げた。

 

 

 

 

 

ーーーー-----

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上から場所を変え、ライブまでの時間潰しに俺は校内を歩き回った。

 

 

「進二くん?」  

 

 

中庭に入ると、背後から声をかけられた。

振り返るとそこには、資料を両手に抱えた希が立っていた。

時間的に、新入生歓迎会の資料だろう。

 

 

「進二くん!?体は大丈夫なん?!」

 

 

俺の姿を確認したであろう希は、両手の資料を放り出して駆け寄ってきた。

 

 

「怪我は?!もう平気なん?!」

 

「あ、あぁ…」

 

「ホントに?」

 

「あ、あぁ…大丈夫だ、落ち着け」

 

「そぅ…良かった…」

 

「希?」

 

「‥‥‥‥‥‥っ!」

 

 

次の瞬間、俺の脳細胞はエンストを起こした。

 

 

「のっ、希?!」

 

 

突然抱き付いてきた希に、俺は成す術が無く、ただ呆然としていた。

 

両腕を首に回し、もたれかかる様に俺に抱き付く希は、小さく声を漏らした。

 

「‥‥っ、‥スン‥良かった…

 ‥本当に、良かった…」

 

「希‥‥」

 

「病院で目が覚めないって聞いた時、怖かった…

 今度は進二くんが居なくなるんじゃ無いのかって‥」

 

 

そう言った希は腕に力を入れ、さらに体を寄せる。

 

 

「もう…誰かが居なくなるのは嫌だよ…」

 

「……すまん」

 

 

いつもの話し方を忘れ、素の自分をさらけ出す。

そこにはいつもの様な明るい表情はなく、今にも泣き出しそうな弱々しい表情をする希がいた。

そんな希に、俺は謝る事しか出来なかった。

 

 

互いに無言、静寂の中に希のすすり泣く声が頭に響く。

 

 

また、希を泣かせてしまった…

 

 

「悪かったな、心配かけて…」

 

 

罪悪感と後悔がのしかかる中、俺は希の頭を撫で、もう一度謝った。

 

 

 

そして気付く、今の自分の状況を、今俺達が居る場所を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周りに居る生徒達が、騒いでいる。

 

女子は小声でキャーキャーと騒ぎ、男子は何やらニヤニヤと笑う者と仇を見るかの様に睨み付けてくる者が。

 

ある者は指をさし、またある者は携帯で写真まで撮り始めた。

 

 

……恥ずかしい…

 

 

「な、なぁ希?そろそろ離れないか?」

 

 

無言で首を横に振る希は、さらに体を寄せる。

必然、そうなると希の持つ2つの膨らみは形を変えながら俺に当たる。

 

ーヤバい…

 

胸元に当たる柔らかい感触に、俺の理性が崩れそうになる。

 

だが、ある人物を目にしたとたん、俺は冷静さを取り戻すと同時に、その人物に殺意を抱いた。

 

 

何やらジェスチャーで伝えようとするソイツは、隣の生徒2人に何か頼み出した。

するとその2人の生徒は互いに抱き合う、それを指さし、満面の笑み+サムズアップ。

 

 

その片手にはビデオカメラがあった。

 

 

 

 

 

ー何やってんだあの戦極先生(バカ教師)は……

 

 

 

 

 

呆れた表情で戦極先生を見ていると、希が口を開いた。

 

 

「ねぇ…進二くん、約束して‥」

 

「…約束?」

 

「うん…無理やと思うけど、もう無茶せえへんって」

 

「‥‥あぁ、善処するよ」

 

「‥‥うん…」

 

 

希は俺から離れると、落とした資料を拾っているとふと周りを見回した。

 

 

「…えっ‥と‥‥?」

 

 

困り果てた希は俺を見る‥‥

 

 

ーうん、全部見られてた。

 

 

俺はどんな表情をしていいのか分からず、とりあえず希に頷く事にした。

すると希は顔を赤くし、資料に顔を埋める様にして、この場を去って行った。

 

 

希の様子を見て察したのか、周りにいたギャラリー共は何も言わず去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ1人を除いて‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「泊 進二、何故あそこで抱きしめ返さない?

 いつも公衆の面前でラッキースケベ(破廉恥行為)をしている男とは思えないね。

 全校生徒、教師の前で女生徒の胸を揉みしだいた男が、ハグに躊躇するのかい?

 君はあれか?

 貴虎と同じチキンか、君はチキンなのか?

 付き合い出してから結婚するまで性行為はおろか、キスすら自分から出来なかったあの貴虎(チキン)と同じなのか?

 だとしたらガッカリだよ、泊 進二。

 まさか君までチキン(貴虎)だったと…アグッ?!」 

 

 

不服そうに、それでいて楽しそうにべらべらと喋る戦極先生は突然倒れた。

その後ろには、鬼の形相で倒れた戦極先生を見下ろす呉ちゃんが居た。

その右手には勢いよく何かを殴ったのか、背表紙から折れた出席名簿が握られていた。

 

 

チキン(貴虎)で悪かったな?凌馬」

 

 

戦極先生に一撃を入れた呉ちゃんは、手にした名簿を直しながら、まるでゴミを見る様な冷たい目を向ける。

 

 

「まったく‥貴様という奴は‥‥」

 

「呉ちゃん?」

 

「や、…‥‥やぁ…チキン(貴虎)‥何かy…フブァッ?!」

 

「まだ懲りないのか?」

 

「むやみやたらに殴らないでくれたまえ貴虎。

 私の体は君の様に全身ルナ・チタニウム合金で出来てないのだよ。

 私は華奢なんだ、ガラス細工みたいなものなのだよ、もう少しデリケートに扱ってくれたまえ」

 

「誰が白い悪魔だ、そもそもガラス細工なのは貴様の人間性だ。

 だいたい何故そんな事を知っている?」

 

「いやなに、晶くんから相談を受けただけだよ」

 

「やはりか…晶の奴、相談相手を間違えるにも限度があるだろ…」

 

「…ッフ」

 

 

ケンカをしている2人を見ていると、無意識に笑ってしまった。

 

 

「あ、すいません。

 やっぱり2人って仲良いなって‥‥」

 

「別にかまわないさ泊 進二、まぁ私と貴虎は小学年からの仲でね、それなりに互いを知っているつもりだよ。

 ちなみに湊くんと志渡とは高校の時からの仲さ」

 

「高校3年間同じクラスになれば、多少はつるむようになるさ」

 

「まぁ‥‥私と貴虎は小学年の頃を入れるなら、9年間ずっと同じクラスだがね」

 

「何故あの時、転校して来た貴様に声をかけたのか…今でも後悔している…人生最悪の間違いだった」

 

「酷いな貴虎。

 そのおかげでこんな素晴らしい友にめぐり逢えたんじゃないか」

 

「どの口が言う」

 

 

笑いながら話す2人を見ていると、自分と絢瀬の姿が重なる。

 

 

「そういや先生、何時もと格好が違いますね?」

 

 

俺は何時もの白衣姿出ない戦極先生に質問をした。

今は4月の末、夏には少し早いような短パンに裾周りが少し長いカーディガン姿だった。

 

「あぁ…これかい?

 私の私服さ、実は今朝貴虎にコーヒーを吹き付けられてね?

 急いで着替えたのさ」

 

 

嫌みそうに言いながら戦極先生は呉ちゃんを見た。

 

すると目を背け、ばつが悪そうに呉ちゃんは話した。

 

 

「いきなりお前が飴を持って来るからだ」

 

「飴?」

 

「私が作ったフルーツフレーバーのキャンディさ。

 どうだい泊 進二、1つ食べてみるかい?」

 

 

そう言いと戦極先生はカーディガンの裏に手を入れると、飴の入ったバスケットを取り出した。

 

………どうなってんだ…あのカーディガン…

 

俺は目の前で起こった手品の様な現象に驚かされた。

 

 

「“戦極キャンディ”だ。

 フレーバーは、オレンジ、パイン、イチゴにメロン、ブドウにキウイにマンゴー、レモンとスイカにドリアン…バナナを作ってみた」

 

「えっ?!バナナ?!バナッ?!バナナ?!」

 

 

余りの衝撃に俺は取り乱した。

気のせいか、戦極先生がバナナのキャンディを取り出した際にファンファーレが聞こえた様な気がした。

 

実際、バナナやドリアンのフレーバーは見たことがない。

ある事はあるらしいが、余り良い評判は聞かない。

 

 

「そんな事より泊、園田を見てないか?

 弓道の実演を頼みたかったのだが、いなくてな」

 

「あぁ海未達ならスクールアイドル始めたので、そのライb……」

 

 

ふと時計をみると、時刻は14時55分。

ライブまで残り5分だった。

 

 

「やっべ?!ライブ!!」

 

 

俺は全速力で講堂に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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音ノ木坂学園 講堂。

 

 

その舞台に立つ3人は、目の前に現実を突き付けられていた。

 

誰も居ない静かな舞台席、こらえようとするほど溢れだす涙、冷たい現実が穂乃果達を襲った。

 

 

走馬灯の様に駆け巡る練習風景、その記憶がより穂乃果を苦しめる。

 

 

「‥‥そりゃそうだ!

 世の中そんなに甘くない!

 …‥……ッ‥‥」

 

 

強がり。

 

穂乃果は周り心配かけまいと、作り笑いをする。

 

どんなに悲しくても、ここで泣いてはいけない……

 

無意識に、無自覚に、心のどこかでそう思う。

今にも泣き出しそうな穂乃果の顔を見たことりと海未、その目には涙が滲んでいた。

 

静かな講堂が、穂乃果達を絶望へと誘う。

 

泣け……

 

泣き叫べ……

 

そうすれば楽になる‥‥

 

現実に、真実に、世界に、絶望しろ‥‥

 

聞こえもしない幻聴が、穂乃果達に迫る。

 

 

声を上げ泣き叫ぼうとした瞬間、講堂に1つの音が響いた。

 

 

 

 

勢いよく開かれた扉、静寂に包まれた講堂にいた誰もが、音の先を向く。

 

そこに居たのは凛に連れられた花陽だった。

 

凛から逃れた花陽は息を切らせながら講堂に飛び込んできた。

 

 

「あれ?…ライブは?あれ‥‥?あれ~?」

 

 

困惑しながら辺りを見回す花陽を見た穂乃果の瞳には

、涙が浮かんだままだが、さっきまでとは違力強い眼差しになっていた。

 

 

「やろう」

 

「え?」

 

「歌おう、全力で!」

 

「穂乃果…」

 

「だって、その為に今日まで頑張って来たんだから!」

 

「「!!」」

 

 

穂乃果の言葉に海未とことりは思い出した。

自分たちが何の為にここにいるのか。

自分たちが何の為に努力して来たのかを。

 

 

「歌おう!」

 

「穂乃果ちゃん…

 海未ちゃん!」

 

「えぇ!」

 

 

だが穂乃果達は無意識に辺りを見回す。

望むもう1人の観客が居ないことに、3人は肩を落とす。

それでも、たった1人でも、来てくれた花陽(かんきゃく)の為に、全力で歌おう‥‥そう決めた。

 

 

 

 

‥‥……瞬間

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ?…‥もしかして…もう、終わった?」

 

 

待ち望んだ観客が来た。

 

 

「進‥‥にぃ?

 何でそこに?」

 

 

何故か舞台裾から顔を出した進二に、3人はおろか、花陽にフミコ達までクスクスと笑いだす。

 

 

「近道して裏から入って来たんだが‥‥間に合わなかった?」

 

「だ、大丈夫だよ!

 ささっ!席について~」

 

 

そう言って背中を押しながら舞台から進二を下ろす穂乃果の顔は、笑顔になっていた。

 

同様に海未とことりの表情も、明るいものになっていた。

 

 

進二が花陽の側に立つと、穂乃果は舞台へ。

 

フミコ達も、それぞれの持ち場に向かった。

 

 

舞台に並ぶ3人は、先ほどまでの悲しみや絶望を感じさせない、凛とした態度で立っていた。

 

 

そして、音楽が流れる。

 

 

 

 

~『START:DASH!』~

 

 

 

 

 

 

 

ステージで歌い、踊り舞う“3人”の少女。

 

 

それを間近で目を輝かせて見る少女と、少し離れ出入り口の扉の側で3人の歌に耳を傾ける“2人”少女。

 

 

 

そして、響く歌声、その音色につられるかの様に‥‥

 

 

“4人”の少女が訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めてだ…‥‥

 

 

俺は穂乃果達3人の歌に驚かされた。

 

隣では小泉が目を輝かせ、その隣の星空も食い付く様にライブを見ている。

 

 

かく言う俺も、完全にライブに魅了されていた。

 

 

 

3人が歌い終わり静まる講堂に、小さな拍手が、講堂に響き渡った。

 

 

「すごかったですね!先ぱぃ…先輩?」

 

「…え?」

 

 

小泉に声をかけられ気付く、

 

小泉の顔がボヤけて見える…

 

頬を何かが伝う‥‥

 

 

俺の目には、涙が浮かんでいた。

 

 

「ったく‥‥なんだよこれ‥‥なんつう歌詞だよ…」

 

袖で涙を拭いながら自然とこぼれる笑み…‥

 

そうだ…

 

俺が、 

泊 進二が、こんな所で、こんな事で止まるわけ無い…‥

 

そんな事、俺自身が一番分かってる…‥

 

 

 

「…何かお前にも、励まされちまったな‥‥ライブ、誘ってくれてありがとな、“花陽”」

 

「っ!…はい!」

 

 

笑顔で答える花陽に俺は笑い返す。

 

その時、俺の携帯に着信が入った。

 

 

「もしもし、俺だ」

 

ー〈泊さん!倉持さんが何者かに拐われたと連絡が来たんです!〉

 

「何だって?」

 

ー〈おそらく拐ったのは‥‥〉

 

「輸送車を襲撃した奴等か‥‥」

 

ー〈それもクリムが感知出来ない範囲での犯行…‥メインシステムが無い以上、特定に時間がかかります。

  シフトカーズを先行させていますので、泊さんはピットに、私はまだやることがありますから、それが済み次第…‥「いや、メインシステムを奪い返す」っ泊さん?!〉

 

「今から部室に乗り込んでみる。

 今動けるのも、ロイミュードを止められるのは、俺達だけだ!」

 

ー〈…‥‥分かりました…私達も、すぐ向かいます〉

 

「あぁ」

 

 

携帯をしまい、目を閉じ、深呼吸をする

 

 

思い出せ…‥

 

最初に変身した時を…

 

初めて人を守った時を……

 

 

思い出せ……

 

絢瀬との約束を……

 

あの時に決めた覚悟を……

 

 

思い出せ……

 

俺が戦うと決めた理由を……

 

俺が守りたいと思ったものを……

 

 

「……繋げるまでもねぇ…」

 

 

目を開き、首もとに、ネクタイに手を伸ばす。

 

 

「行くんですね?先輩」

 

 

俺がネクタイに手を伸ばしたのを見て、花陽は尋ねる。

ネクタイを絞め、花陽の言葉に俺は答えた。

 

 

「あぁ、脳細胞が…トップギアだ!」

 

 

俺は席を外れ通路に出ると、その場で振り返り、ステージ上の穂乃果達に向けて叫んだ。

 

 

「3人共!」

 

「なーにー?進にぃ?」

 

 

3人を代表してか、穂乃果が答える。

 

 

「最っ高のライブだった!」

 

 

俺の言葉に3人は笑顔になり、嬉しそうに振る舞う。

 

 

「…ありがとな…励ましてくれて、思い出させてくれて」

 

「何か言ったー?」

 

 

俺が小声で呟くと、何かを感じたのか聞こえたのか、穂乃果は俺に呼びかけてきた。

 

 

「次のライブ!楽しみにしてっからな!」

 

「「「うん!(はい!)」」」

 

 

俺が振り返り通路をかけ上がると、向かいから絵里が降りてくる。

 

すれ違い背中合わせになった俺と絵里は、互いに足を止めた。

 

 

「海に落ちたって聞いてたけど、元気そうね」

 

「まぁ…心配かけたな」

 

「良いわよ……

 貴方の場合、心配するだけ無駄だから。

 ただ……‥もう希を、私達を泣かせるような事はしないで」

 

「…あぁ」

 

 

絵里はステージを向いたまま、視線を動かさない。

その瞳は、穂乃果達を捉えていた。

 

 

「それに…やっぱり貴方だったのね?彼女達に助力していたのは…」

 

「お前が何考えてるかは知らないけどさ、アイツらは諦めないぜ……絶対に」

 

「それでも……私にも譲れない物はあるわ」

 

「なら全力でぶつかれ?

 アイツら…特に穂乃果、ピンクの衣装の奴は俺よりタフだから」

 

「言われなくても…そのつもりよ」

 

 

絵里はステージ向かい歩き出す。

それと同時に俺も出入口に足を運んだ。

 

 

「‥やっぱり来たんだな?」

 

「べ、別に!ただせっかく作曲したのに、変に歌われてないか気になっただけよ」

 

 

少し顔を赤らめながら視線を反らし答える西木野に、俺は吹き出した。

 

 

「何よ?」

 

「いや、やっぱりお前が作曲してくれたんだな?」

 

「えっ!あ、いや…だから、えっと…」

 

「ありがとな」

 

 

同様し、髪を弄りながら視線をそらし続ける西木野に、俺は礼を言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また事件?」

 

 

出入口を過ぎると、壁に背を預けてもたれる希がいた。

 

 

「お前も来てたのか……西木野といい、絵里といい、にこにお前まで…」

 

 

俺は講堂を出る途中、隠れる様に姿勢を低くし、座るにこを見つけていた。

 

 

「行くん?」

 

「あぁ……いろいろと吹っ切れた。

 それに…」

 

「それに?」

 

「“悲しみに閉ざされて、泣くだけじゃつまらない”からな……行ってくる」

 

「うん……あっ!ちょっと待って……はい!」

 

 

そう言って差し出されるカード。

 

 

「引けと」

 

 

俺は少し右側のカードを引いた。

 

 

「あれ?」

 

「どないしたん?」

 

「いや、2枚重なってた」

 

 

俺はくっついた2枚のカードをはがす。

 

 

「1枚目は…裸の男女?

 2枚目はライオンと…飼い主か?」

 

 

俺が引いたカードの絵柄を言うと、希は引きつった笑みを浮かべる。

 

 

「何だよ‥‥。

 結果気になるけど、俺急ぐから、またな!」

 

 

俺は占いの結果を聞かず走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

希は進二の引き当てたカードをみた。

 

 

「例えかた…やっぱり進二くん、すごいセンスやね」

 

 

希が持つ進二の引き当てたカード。

 

 

「恋人と力…

 恋人は価値観の確立、絆、そして…‥情熱…

 力の意味は強固な意志、勇気、…力‥」

 

 

進二が走り去った後を見つめ、希は小さく呟いた。

 

 

「溢れる情熱が…新たな力となる‥‥」

 

 

希は感じた、この2枚が進二だけをさすものでないと。

 

 

走り去る進二、その胸には情熱が、それが彼に新な力を与えてくれると。

講堂内で絵里と睨み合う穂乃果達、その瞳には強固な意志が、そして彼女達の絆が不可能を可能にするかもしれないと。

希はそれらを見て呟いた。

 

 

「完敗からのスタートか……」

 

 

その言葉を残し、希はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

~『きっと青春がきこえる』~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

講堂の向かいの校舎、そこに1人の男がいた。

 

 

呉島 貴虎は進二が走って行く姿を見つめ、小さく微笑んだ。

すると貴虎は、進二に渡したものと同じ飴を取り出した。

 

 

(本当にお前に似た男だよ、アイツは…)

 

 

取り出した飴を口に含み、舌で飴を転がす。

口の中に拡がるオレンジの味と香りに一息つき、貴虎は空を見上げた。

 

 

「今こうして世界があるのは、お前のおかげだ。

 …だがお前は何がしたいんだ?

 あの戦いで、“死んでいった奴らを生き返らせ、世界からあの戦いの記憶まで消して”、お前は何がしたい‥‥

 それに…‥‥何故、俺なんだ‥‥…」

 

 

誰にも聞こえない様な声で呟く。

 

 

 

…‥‥…‥何故、“俺だけ記憶を残した”?

 

 

…‥何のためだ、教えてくれ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

‥…‥‥‥‥“葛葉”……‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




魔法使い「「キュアップ・ラパパ!」」

ケモ「……こいつらエクスプローションとか撃たないよな…」


どうも、キュアミラクルがエクスプローションを撃たないか、マジで気にしてるケモミミです。


遅れてすみません!
何とかタイプフルーツの伏線をはれた。
因みに、鎧武は本編通りで結末が同じ脚本家の魔法少女の様になっていると思って下さい。

仕事とココス通いとバトライドウォーとブレイカーで時間が無く遅れました。

誤字脱字あればご報告を!
まぁ、これからもいろいろとお待たせするかもですが、よろしくお願いいたします!


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情熱の力《type WILD》。彼が見つけた答えとは何か。


忘れた頃にやってくる…


どうも皆さん!
いや、ドゥモドゥモ。
ケモミミです。

お待たせして申し訳ありません。
更新する度に文章力が下がっているような…

グダグダの低クオリティの駄文ですが、楽しんでいただけたら幸いです!


 

 

 

 

 

 

 

「あの蛮族共め!!」

 

 

廃墟と貸したバーで1人、ブレンが暴れていた。

 

 

「どうした?ブレン…」

 

 

背後から表れたチェイスの言葉に暴れていたブレンは動きを止め、何時もの様に振る舞う。

 

 

「チェイスですか…

 クラッシュが……奴が大量のバイラルコアを持ち去ったんですよ!」

 

 

1度は平静に戻るも、再び怒鳴り出すブレン。

その表情は普段とは正反対の怒りに満ちた顔だった。

すると奥に置かれてあるソファーから笑い声が聞こえる。

振り向いたに2人の前には、ソファーに腰かけたハートの姿があった。

 

 

「…クラッシュ……

 奴は盗賊そのものだな」

 

「呑気に構えてられないですよハート。

 バイラルコアは我々ロイミュードの体の基礎となる貴重なもの…

 もしあれを大量に摂取したりでもしたら…」

 

「まぁ…なるようになるだろ」

 

 

笑いを耐えるつもりもないハートの態度に呆れながらブレンはため息をつき、手に持っているタブレット端末を操作しはじめた。

 

 

「これで2回目…やはり……“前回のバイラルコア紛失”も、クラッシュの仕業でしょうね」

 

「前回…?

 ブレン、前にもあったのか?」

 

 

タブレットの操作を終えたブレンの言葉に、ハートは反応した。

 

 

「えぇ…ペイントが殺られてしばらくした日に、数台」

 

「………少しきな臭い感じがするな…

 それに、このアジトにあるバイラルコアの保管場所はブレンと俺…このアジトにいたチェイスとペイント、クラッシュとそのおまけ2人だけしか知らないからな」

 

「死んだペイントは除外、そうなると必然的にクラッシュ達になる…そういう事か?」

 

 

ハートの証言にチェイスは推理し、ブレンに尋ねた。

 

 

「恐らく……

 まったく……コレだから低脳で、野蛮で、強欲な奴は嫌いなんですよ」

 

「まぁそう言ってやるなブレン…

 それも個性だ、そこが奴が奴たる個だ。

 我々ロイミュードは個人主義、今に始まった訳じゃないだろ」

 

「ですがハート、今回ばかりは目に余ります。

 しかるべき処置が必要です……チェイス」

 

「何だ、ブレン?」

 

「今すぐとは言いません、もしクラッシュの奴がまた何か仕出かすのであれば、構わず“処刑”しなさい…」

 

「いいのか?

 この間は処刑をするなと言っていたが…」

 

「まぁ…ブレンの言う通り、今回はおいたが過ぎたと言う事だな…」

 

「……分かった」

 

 

ハートからの許可も得たチェイスは、その場を後にした。

 

 

「…………」

 

「どうしたんですか?ハート」

 

「いや……言っただろ、きな臭いと…

 少し気になるんだよ…この間のペイント事と言い、妙な胸騒ぎがな…」

 

「考えすぎでは…」

 

「だといいが…」

 

 

そう言ったハートは懐からシフトスピードに似た“黒いシフトカー”を取り出した。

 

 

「……まさか…“アイツ”が……」

 

 

取り出したシフトカーを見つめるハートは、誰にも聞こえない声で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音ノ木坂学院

 

その教室の1つに2つの影あった。

 

 

「ハァ~……ほんとなら穂乃果ちゃん達のライブに行ってる筈なんだけどな……」

 

 

そう愚痴りながらパソコンを操作する究は、再びため息をついた。

 

 

「仕方ないじゃないですか…

 私だって行く予定だったんですよ」

 

 

究の愚痴に返事をしたのは、携帯をポケットにしまい、究の隣で書類をまとめる霧子だった。

 

 

「こうなったら本気だ……

 ライブに行けなかったこの怨み……

 高くつきますよ……」

 

 

フフフと低い声で笑う究の目は本気だった。

実際、必要な書類は手に入ったのだがライブに行けなかったはらいせに、究は必要以上の情報を入手していた。

霧子が若干相手に同情していると、部屋に追田が入ってきた。

 

 

「嬢ちゃん、究太郎。

 こっちの方は裏がとれたぜ、そっちはどうだ?」

 

「こちらも準備出来ました。

 西城さん、もう行きますよ?」

 

「ちょっと待って、あとこれで……出来た!

 ぬふふふふ……覚悟してろよ……」

 

 

勢いよく席から立ち上がると、究は今まで見せた事の無いような、どす黒いゲスな笑みを浮かべた。

 

それを見た霧子と追田は心の中で思った。

 

 

ー((あれは怒らせたらヤバイタイプだ……))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧子から連絡を受けた俺は、部室に全速で向かった。

 

 

「…ご丁寧にこんなものまで貼りやがって」

 

 

部室の扉には『関係者以外立ち入り禁止』と書かれた貼り紙が貼られていた。

俺は勢い良くそれを剥がし、部室のドアを開けて中に入った。

 

 

中は既にりんなさんと桐原さんの2人だけで、今回の襲撃事件の資料などは持ち去られていた。

 

俺に気付いた桐原さんは、明らかに嫌そうな表情でこちらを見ると同時に、俺に聞こえるようにため息をついた。

 

 

「立ち入り禁止と申した筈ですが?」

 

「倉持さんが拐われた」

 

「っ?!

 ………何かと思えば…何故そんな事を君が知っているのですか?

 そんな連絡は入ってな…失礼…

 何のようだ?……何だと?!すぐに捜索班を出せ!モタモタするな!」

 

 

突然鳴り出した携帯に桐原さんは出ると、大声を上げて驚いた表情で俺を見た。

恐らく倉持さんの事だろう、俺から視線を反らし会話を続け、電話を切った。

 

 

「倉持さんの事、本当だったろ?」

 

「君には関係ない話です、すぐに退室しなさい」

 

「アンタらにどうこう出来るのか?

 恐らく倉持さんを拐ったのは、襲撃犯の奴らだ。

 アンタ達警察は、今までアイツ等の襲撃を防げたか?」

 

 

俺は桐原さんの言葉にため息をついて反論をした。

俺の台詞に桐原さんは怒り、苛立ちに満ちた表情で俺を睨む。

そんな事は御構い無しに、俺はりんなさんの側に歩いていく。

 

 

「な~に?進二くん。

 お姉さんに何か用かしら?」

 

 

いつものしゃべり方、だが今回はいつもの様な明るさはなく、落ち着いた低い声で俺に話しかける。

まるで俺を試すかのように。

 

 

「頼むりんなさん、メインシステムの電源を入れてくれ」

 

「どうして~?

 もしかして、倉持さんを助けるため?

 あの人、犯罪者かも知れないんだよね?

 だったら~…ほっとけば良いじゃない?」

 

「沢神さん?!」

 

 

りんなさんの台詞に、流石の桐原さんも動揺した。

 

 

「そ、れ、に…

 ど~して進二くんはそんな事するのかな~?

 あんな酷い事されたのに~?」

 

 

煽るように、俺を見透かした態度でりんなさんは話す。

 

 

「それは……確かにそうかもしれない…「だったら…」…でも!」

 

 

俺はりんなさんの言葉を遮り、続ける。

 

 

「それとこれとは関係ない…

 好き嫌いで助ける人を選ぶほど、俺は子供じゃないし、それに…」

 

 

俺は深呼吸をし、まっすぐりんなさんを見据える。

 

 

「倉持さんが犯罪者なら、助けて……罪を償わせる」

 

 

罪を償う……

それは生きていなくては絶対に出来ない。

親父の教えの1つだ。

 

 

「勝手な行動をとらないで頂きたい。

 それに現在は契約を破棄しています、場合によっては貴方を公務執行妨害と見なし、拘束しますよ」

 

「勝手にしろ、今動けるのは俺たちだけだ!」

 

 

再び妨害を謀ろうとする桐原さんに、流石の俺もしびれを切らし、言い返した。

 

 

「そう…それが貴方の答えなのね?」

 

 

その様子を黙って静観していたりんなさんは、そう言って俺に近づいてきた。

 

 

「オ…ッケ~♪

 良い答えに、良い顔、流石は進二くん♪

 心配しなくても、メインシステムの電源は落ちてないよ~♪」

 

「「は?」」

 

 

りんなさんの態度、台詞、全てが理解出来ず、俺と桐原さんは変な声を上げてしまった。

 

 

「落としたのはディスプレイ、画面の電源でした~♪

 ちなみに、桐原さんの部下が持って行ったあの資料、実は中身をすり替えた別物で~す」

 

 

ブイブイ☆

そう言いながらダブルピースを決めるりんなさん。

正直、状況が理解できない。

何でりんなさんはこんな事を……

すると後ろに立っていた桐原さんは声を荒げた。

 

 

「なっ……何て事をしてくれたんだ沢神博士、反逆行為だぞ!」

 

「反逆もなにも、初めから私達は警察じゃ無いですし、先に契約を破棄したのはそちらじゃ無いですか?」

 

 

背後からする声に、俺は振り向いた。

そこには霧子、現さん、究ちゃんがいた。

 

 

「皆……」

 

 

りんなさんが画面の電源を入れシステムをひらく。

 

 

「通報いっぱいきてるよ~♪」

 

 

りんなさんの言葉に究ちゃんは駆け寄り、場所を特定した。

 

 

「大田区の…フォントアールの科学工場だ」

 

「先に行け進二。

 お前等なら何とかなるんだろ?」

 

「現さん…」

 

「ただし、刃野達が着くまで無茶はするなよ?」

 

「ありがとう、現さん…皆」

 

 

俺は皆にお礼をして部室を後にした。

すると何故か部室の外にひなおばさん…もとい理事長と本願寺先生がいた。

俺は2人にも一礼をして、部室棟を出た。

 

 

 

 

 

 

 

「おい!「おっと」…っ!」

 

 

進二を捕まえようとする桐原を追田は掴んで止める。

桐原はその腕を振り払うと、恨めしく追田を睨む。

 

 

「許さないぞ貴様達…」

 

「どの口が言うんですか?

 許せないのは私達の方です」

 

 

そう言って霧子は数枚の紙を取り出し、桐原に突きつけた。

それを見た桐原は顔色を変え、動揺した。

 

 

「桐原さんの事、いろいろ調べさせてもらいましたよ~♪

 桐原さん、倉持社長とは遠縁の関係なんですね」

 

 

究の煽りを含んだ言葉に、焦りだす桐原は平常心を保とうとしていた。

 

 

「裏は取れてんだよ。

 アンタはフォントアール社の液体爆薬海外密輸を黙認する事で、報酬としてその分け前を貰っていた…そうだな?」

 

「な、何をバカな事…」

 

「最初から妙だと思ってたんです…

 何故、無差別で襲撃する怪物の行動を予測出来たのか…」

 

「なるほど~…

 それは犯人の目的が爆薬だと解っていたから…

 それに気付く事が出来るのは……積み荷の中身を知っている、桐原さん……貴方だけになりますね?

 仮面ライダーと繋がりがあると予測した私達に情報を流す事で、仮面ライダーに護衛させようとした」

 

 

追田の推理を否定するが霧子が疑問を投げつけ、それを本願寺が推理した。

 

 

 

「でも、貴方の予測を上回る泊くんの推理力によりフォントアール社の犯罪が暴かれた。

 真相に気付いた泊くん達が目障りになった貴方は、特状部そのものの活動を封じる為に我が校との契約を破棄、証拠となる物を全て回収し隠滅しようとした…

 違いますか?」

 

 

南理事長は普段では想像がつかないような、鋭い表情で桐原を問い詰める。

追い詰められた事を理解した桐原は、ふとりんなを見た。

 

 

「っ?!まさか君が…」

 

「そっ☆

 最初から貴方の行動や言動には不信感しかなかったの~…

 だから仲間になったフリをしていろいろ探ってたの♪」

 

「そして桐原警視、貴方の事を調べるよう手がかりをくれたんです」

 

「こんな感じでね♪」

 

 

そう言って両手の平を広げたりんなの手には、マジックペンでこう書かれていた。

 

“桐原警視とフォントアール社の繋がりを調べて”

 

それを見た本願寺は嬉しそうにネクタイをつまみ揺らす。

その表情は笑顔に満ち溢れていた。

 

 

「やっぱりラッキーカラーは身につけるものですね~

 おそろ~♪」

 

「お、おそろ~…」

 

 

本願寺に合わせるように、少しひきつった笑みを浮かべながらりんなは、白衣の下の制服をつまんだ。

 

 

「桐原 英二、非合法爆薬製造とその密輸の黙認、及びそれにまつわる職権乱用の容疑で逮捕する」

 

 

そう告げた追田は手錠を取り出し桐原を拘束。

桐原は肩を落とし、その場で膝をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はトライドロンでフォントアールの科学工場に全速力で向かっていた。

何故過去形か?

それは目の前でバイクに跨がっている死神が行く手を阻んでいるからだ。

俺はベルトさんを片手に、トライドロンから降りた。

 

 

「そこをどけ!」

 

「やはり……生きていたか。

 命を拾っても愚かさは変わらないな…

 馬鹿は死んでも治らないと聞いたが……あながち間違いでは無いようだな」

 

「……何が言いたい」

 

「何故そこまでして人間を守る?

 人間に守るべき正義など無いと、知った筈だ」

 

「あぁ…お前の言う通りだよ、死神。

 人間に悪人がいないなら、そもそも警察も…法も必要無い。

 右も左も、ずるい悪党でうんざりする事ばっかりだ。

 だけどなぁ…」

 

 

ベルトさんを腰に巻くと、ゆっくりとシフトカーホルダーに付けているシフトスピード…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その下のシフトワイルドを手に取る。

 

 

『…Oh…シフトワイルド…』

 

「だからこそ、そんな中でもまっすぐ生きている人達が光ってみえる」

 

 

シフトワイルドを手にし、シフトキーを回す。

 

響き渡る待機音、俺はシフトワイルドをレバーモードに変形させた。

 

 

 

そして俺は思い出す。

 

 

いつも世話になっている人達を…

 

笑い合う特状部の仲間達を…

 

俺を救ってくれた恩人達を…

 

俺を慕ってくれる後輩達を…

 

俺を励ましてくれた幼馴染み達を…

 

いつも側で俺を支えてくれる大切な人達を…

 

 

 

次々に思い浮かぶ大切な人達。

その姿が、その笑顔が、俺を動かす。

世界の平和や正義を守る為なんて、そんなたいそうな理由じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「正義なんかじゃない…

 俺は皆を!悲しみから守る為に戦ってんだ!」

 

 

 

「変身!!」

 

 

 

 

《DRIVE type…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ……WILD!》

 

 

 

 

 

「?!」

 

 

タイプスピードとは違った重量感のある音と共に装甲が展開され、シルバーホワイトのアンダースーツに黒の装甲が装着される。

そしてタイプスピードの時とは違い、タイヤが右肩に装着され、変身が完了する。

 

シルバーホワイトと黒を基調とした、4WD車を模した様な姿。

パワーと防御機能に特化した、ドライブの高馬力形態。

 

仮面ライダードライブ type WILD(タイプワイルド)

 

 

 

 

 

 

BGM:『Don't lose your mind』

 

 

 

 

 

 

『Good!キミのpassionはフルゲージだ!』

 

「何だ…その姿は?」

 

 

新たなドライブ()の姿に死神は驚くが、すぐさま銀色の銃を取り出した。

 

 

「姿が変わろうが、倒すのみ!」

 

《Brake Up…》

 

 

魔進チェイサーに姿を変えた死神は、バイクから飛び降りると同時にドライブに打撃を入れた。

 

が……

 

 

「何っ?!」

 

「ハッ!」

 

「ック!」

 

 

俺は死神の一撃を避けずに受け止め、カウンターを入れる。

微動だにしない俺に死神は驚愕したが、カウンターを交わし、すぐさまバックステップで距離をひらいた。

 

 

「…すげぇな、ほとんどダメージがない」

 

『何も受け止める必要は無いだろ?』

 

「いや、どれぐらい違うのか知りたくて」

 

 

呆れた声で尋ねるベルトさんに、俺は苦笑いで答えた。

 

 

 

「なるほど…

 防御に優れた形態か……」

 

「防御だけじゃ無いぜ!」

 

 

タイプワイルドの特徴に気付いた死神に、俺は攻撃を入れる。

右肩のタイヤを盾に、時にはタイヤを武器にタックルを入れ、怯んだところに連続で打撃を入れる。

 

「ハッ!タァ!」

 

「…ッ?!ングッ?!」

 

「ドリャー!!」

 

 

大振りの攻撃を死神に連続で入れる。

最後の一撃を交わした死神も反撃にでる。

 

 

「ハァッ!」

 

「ック!…何の!」

 

 

互いに腕を掴み硬直状態になるが、今のドライブは前までとは違う。

 

 

「パワーの違ってヤツを見せてやる!」

 

 

 

死神の腕を掴んだまま、壁に向かって走り出す。

俺はその勢いで死神を壁に叩きつけた。

壁に張り付けた死神にパンチの連打を入れ、反対方向に投げ飛ばす。

 

 

互いの攻撃が行き交う中、俺と死神は再び距離をひらく。

 

 

《Tune…Chaser…Spider…》

 

 

死神が銀色のシフトカーを取りだし、それを自身の銃に装填する。

すると背中に巨大な羽が展開し、右腕に移動すると同時に巨大な爪に変わる…って?!

 

「またソレかよっ?!」

 

『ならコチラも助っ人を呼ぼう!

 come on!Dump!』

 

 

ベルトさんの呼びかけに応じてやって来たのは、ダンプだった。

 

 

「おぅ…コイツか……」

 

 

手にしたダンプを見て呟く。

 

コイツのせいでエライめにあったんだよな…

 

 

『No problem!

 今のキミなら、タイプワイルドなら扱える!』

 

「だったら試すか。

 ダンプ、ひとっ走り付き合えよ!」

 

 

ダンプをレバーモードに変形させると同時に、セットしレバーを倒す。

 

 

《タイヤコウカーン!RUMBLE DUMP!》

 

 

右肩のタイヤが交換され、オプションのドリルはタイヤの表面に取り付けられた。

 

 

「ダアッ!」

 

「ック…」

 

 

オプションのドリルをタイヤから取り外し、左手に装備して攻撃する。

前回とは比べ物にならないくらいにタイヤが軽く、安定している。

 

 

「スゲー!嘘みたいにタイヤが軽い、まるで浮き輪だな」

 

 

死神の打撃を、右肩のタイヤでガードし反撃する。

距離をひらき銃撃に移る死神、俺は構わず特攻紛いに突進し、一撃を入れた。

 

 

『よし!このまま一気に決めろ!』

 

「あぁ!」

 

《ヒッサーツ!Full throttle!DUMP!》

 

 

タイヤ内の全エネルギーが左手のドリルに集中する。

 

 

《Execution…Full Brake…spider…》

 

 

死神もエネルギーを爪状の武器に溜め撃ち出してきたが、ダンプのドリル状に集中したエネルギーで弾き返し、死神に向けた。

 

 

「ハァ~…ダァ!!」

 

「ッグアァ?!」

 

 

ダンプの一撃に耐えきれず、死神は吹き飛んだ。

 

ダウンした死神を後にし、俺はトライドロンに乗り込みフォントアールの工場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フォントアール社 化学工場

 

 

既に半壊しているその建物には、重加速から逃げようとしている人々で溢れていた。

 

そして、その原因である異形…

クラッシュロイミュードは、自分の子分と両手に巨大なケースを持ちながら、1人の男性を追いながら歩いていた。

ケースの中身の爆薬を確認すると、子供の様に喜んだ。

 

 

「コレダ、コレダ~♪」

 

「ヤッタネアニキ~♪」

 

 

するとクラッシュロイミュードは追いかけていた男性、倉持社長に眼を向ける。

 

 

「オ前は、ドウナルと思う~♪」

 

ー「たっ…助けてくれ~!」

 

「ヤダネ!もう用はナイ、ブッ殺s…ブバァッヴ?!」

 

 

無慈悲にも降り下ろされようとしたクラッシュロイミュードの拳は、数発の砲撃音と共に防がれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

工場に向かうと建物は既に半壊しており、重加速の中をたくさんの作業員達が逃げようとしていた。

 

 

重加速の発生源に向かうと、製品補完用だと思われる建物に、倉持さんの姿があった。

 

俺はトライドロンに搭載されている、光子砲でクラッシュロイミュードを攻撃した。

 

瞬間、重加速が解かれて倉持さんは逃げ出せた。

来る途中に重加速でまともに動けずにいたパトカーや刃さん達がいたし、倉持さんは刃さんに任せよう。

てか…

 

 

「体がゴツくなったからか?!

 運転しずらっ!!運転席狭っ!!

 タイヤのせいでろくに右側見えないし!」

 

 

俺が少し愚痴ってるとロイミュード達は立ち上がり、俺に気付いたのか、焦りだした。

 

 

「オイ!こうなったら“アレ”を使え!」

 

「ハ~イ♪…コレコレ!

 パクッ♪パァクッ♪パァククッ♪

 …ン~~~…Yummy~♪」

 

 

すると子分のロイミュードは、死神が使っていた銀色のシフトカーに似た青いシフトカーを取りだし、上に向けて放り投げ口で吸収した。

 

その瞬間、子分のロイミュードは突然ヘビの様な生き物になり巨大化しだした。

 

 

「ハァ?!そんなのアリかよ?!」

 

その光景に俺は焦り、急いでバックする…が

 

 

「ダアッ~?!クッソ!動かねぇ!」

 

 

何かに当たってトライドロンが動けず、変化した子分ロイミュードに巻き付かれ、締め付けられた。

 

 

「だぁぁぁぁぁぁ?!ヤバイヤバイヤバイ!!

 メキメキ言ってる?!車が出しちゃいけない音がするぅぅぅ?!」

 

 

テンパる俺を嘲笑うかの様に、ヘビ型の巨大ロイミュードは締め付けていたトライドロンを投げ飛ばしやがった…って?!

 

 

「だあぁぁぁ?!死ぬぅぅぅぅ?!」

 

《ドロン!TRIDORON!type WILD!》

 

 

ベルトさんの掛け声に反応したトライドロンは、俺のいる運転席ユニットを分離し、トライドロン本体の車体が反転、前輪が回転し前後も反転、赤のカラーリングから黒を基調としたカラーリングになると同時に、変形したトライドロン本体と俺のいる運転席ユニットが合体した。

 

 

「え?エ?ゑ?……トライドロンすげぇ…」

 

《TRIDORON! BOMBER!》

 

 

俺は変形したトライドロンに戸惑いながらも、それを運転し反撃にでた。

 

変形した事により馬力の上がったのか、半壊した建物内をすいすい進む。

巨大ロイミュードの体に難なく乗り上げられ、その巨体を這うように走る。

トライドロンが乗り上げ走る事でダメージを与えたのか、巨大ロイミュードの体は崩れ始めた。

 

 

「ナニやってンだ?!」

 

 

その様子にしびれを切らしたのか、クラッシュロイミュードは巨大ロイミュードに乗り上げた。

 

 

「オラ、行け!」

 

 

クラッシュロイミュードの言葉に巨大ロイミュードを起き上がり、俺を追いかけて来る。

 

光弾を吐きながら追いかけて来るロイミュード達の攻撃をかわしながら、俺は反撃にでた。

 

 

《タイヤフエール!Go!TRIDORON!》

 

 

タイヤフエールでダンプを装備したトライドロンで巨大ロイミュードを攻撃、巨大ロイミュードは攻撃に耐えきれずに爆散、コアが砕け散った。

クラッシュロイミュードは紙一重でかわし落下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

トライドロンから降りると同時にクラッシュロイミュードを見る。

クラッシュロイミュードは起き上がると地団駄を踏みながら吠え出した。

 

 

「クロくなったからって!調子にノンな!」

 

「あぁ?新車だ!」

 

 

くってかかってくるクラッシュロイミュードに答え、いつものポーズをとる。

 

 

「ひとっ走り付き合えよ!」

 

「また返り討チにしてやるゼ!」

 

 

俺はクラッシュロイミュードに向かって走りだし、勢いのついた打撃を入れる。

 

 

「ハァッ!」

 

「うがァ?!」

 

 

ノーガードで攻撃を受けたクラッシュロイミュードは勢い良く転がって行く。

 

 

「ナンだそのパワーは?!」

 

「新車だって言ったろ!」

 

 

起き上がりながらわめくクラッシュロイミュードに俺は答え、再び距離をつめ格闘戦に持ち込んだ。

 

 

「ハァッ!タァッ!」

 

「ぐァ?!コの!」

 

「フンッ!ダァッ!」

 

「がァァァ?!」

 

 

クラッシュロイミュードの両手にあるハンマーの攻撃を右肩のタイヤで防ぎ殴る、再びクラッシュロイミュードが攻撃してきたのをかわし蹴る、タイヤを盾に、時には武器として使いクラッシュロイミュードを追い詰める。

 

 

「どうした?本物のパンチってのはそんなものか?」

 

「ぐッ?!

 オレのハンマーが効かネェ?!」

 

「ダァッ!」

 

「ヴバァッ?!」

 

 

スピードが落ちた分一撃当たりが強力で、相手が怯んだりダウンしたりするので、動きの遅さをカバーした戦いができる。

最後に右肩のタイヤを使ったタックルでクラッシュロイミュードを吹き飛ばした。

 

 

『進二、ハンドル剣の修理は完了だ!』

 

「ホントか?

 よし、これで終わりだ!来いハンドル剣!」

 

 

右腕を横に伸ばし、ハンドル剣を待つ。

 

が……

 

 

「…………ん?

 ……………あ、あれ?

 …ン……ん?……ぇ?」

 

 

静寂、風の音だけがむなしく響く。

 

 

「ベルトさん?

 何か、ハンドル剣来ないだけど…

 直ったんだよな?」

 

『ぁ…いや、今車に無いんだ……もう少し待ってくれ…』

 

「えぇぇ…何で?」

 

 

1人バカみたいに右腕だけ上げた俺の姿に、クラッシュロイミュードも心なしか戸惑っている風に見える。

諦めてフルスロットルで決めようと、キーに手を伸ばそうとした瞬間…

 

 

「お待たせ~!」

 

「…ん?」

 

「ハンドル剣ならここよ~♪」

 

 

聞き覚えのある謎の声に振り返ると、絶句した。

そこにいたのは…

 

 

 

「え?……りんなさん?

 ……ぇ…何で?」

 

 

ハンドル剣を抱えながら走って来たのは、我ら特状部の設立者兼部長、音ノ木坂学院で良い意味でも悪い意味でも有名な自称みんなのアイドル、沢神りんなその人だ。

駆け寄ってきたりんなさんは俺にハンドル剣を渡してきた。

俺の戸惑いに気付いたのか気づいてないのか、りんなさんはいつもの様に振る舞う。

 

 

「いいからいいから♪

 これで決めちゃって♪」

 

「え?……ぇ…はい…」

 

 

ハンドル剣を俺に渡すと、りんなさんはガッツポーズで応援する。

状況を未だに理解出来ない俺は、生返事しかできずにいた。

 

 

『ハンドル回して、クラクションを押せ!』

 

「え?……こうか」

 

 

ベルトさんの言葉通りにハンドル剣のハンドルを回し、クラクションを押す。

 

《ターン!》

 

《ドリフトカイテーン!》

 

「行くぞ!」

 

 

ハンドル剣を構え駆け出す、すると剣ではなくドライブ俺自身が加速し始めた。

ターンしようとした瞬間、ドリフトの様な動きで方向転換を始めた。

 

 

「ハァッ!タァッ!ヤァー!」

 

 

加速する動きと加速する斬撃、ドリフトの動きを合わせた連続攻撃、クラッシュロイミュードはその猛攻に耐えきれず爆散、コアも粉々に砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『という訳でりんなは、影でメカニックをしていたんだ』

 

 

ドライブピット内

 

そこのソファーに座る俺の目の前には満面の笑みでピースをするりんなさん、いつもの様に落ちた様子の霧子の2人。

そして少し困っているのか、形容し難い表情の花陽が俺の側に座っていた。

 

 

 

ベルトさんからりんなさんについて、一通りの説明を受けた俺達。

事故とはいえ一応関係者になった花陽にも説明しておこう、そのような経緯で花陽はピットに呼び出されていた。

 

 

「……ハァ…」

 

「あ……ギアが落ちた」

 

「先輩…何かあったんですか?

 

「少し…」

 

 

俺が秘密主義が嫌いである事を知らない花陽は、霧子に説明してもらおうとしたが、霧子も少し困った表情して応えようとした。

 

 

「もぅ~…機嫌直してよ進二く~ん」

 

 

その原因の1つがこれじゃなぁ…

ホントため息しか出ない。

するとりんなさんは俺の腕を引くと腕を組み始めた。

 

 

「お陰で公安にも邪魔されずに装備も仕上がったでしょ~…

 そ、れ、に♪

 これからは美少女が3人、ピットに花が増えるじゃな~い♪

 ハーレムよ?ハーレム☆ハーレム☆」

 

「ふえぇ///」

 

 

俺を囲う様に左側にりんなさん、右側に霧子。

りんなさんに捕まり、体を押し付けられた花陽が前にいる。

普通なら喜ぶところだろ、確かに3人とも可愛い。

りんなさんと霧子は綺麗系か…

まぁ美少女3人が密着させてくる状況を喜ばない男子はいないだろう。

だが俺はそのような状態にあるにも関わらず、平静である一点を見ていた。

 

 

「む、無視ですか?!」

 

 

霧子がなんか言ったが無視だ。

 

花陽達から離れ、俺はベルトさんに近づいた。

 

 

「秘密主義も大概にしろよな?

 もうねぇだろうな!」

 

『……………………』

 

「ここで沈黙かよ…

 マジで胡散臭いな、このベルト!『イテッ』」

 

 

俺はベルトに一撃、ゲンコツを入れてその場を去った。

 

 

『呼び捨ては失礼だろ…

 さんを付けたまえ……』

 

「ちょっと進二く~ん?!」

 

「泊さん?!」

 

「せ、先輩?!」

 

 

背後から声がするが、知るか無視だ!

 

ドアを勢い良く閉め、そのままドアにもたれかかる。

 

ホント……あのベルトは…もぅ…

 

 

「あぁ~!もう考えるの止めた!」

 

 

 

 

地下のピット外の廊下に響き渡る大声で、俺は叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあファーストライブの成功を祝って、カンパ~イ!」

 

「カンパ~イ♪」

 

「か、カンパ~…イ」

 

 

りんなさんの一件、ピットを出た俺は帰ろうと教室にカバンを取りに行った際、穂乃果達と出会い、ライブの打ち上げをするとの事で招待された。

 

それにしても…

 

 

「まさか、警察との契約がいきてたとはな…」

 

『恐らく桐原警視の独断だったのだろう…

 学生であるキミ達なら、簡単に騙せると思っての行動なのかも知れない』

 

 

俺の肩にのり小声で話すシフトスピード(ベルトさん)

 

 

「だとしたら最悪だぜ…」

 

「でね、進にぃ。

 頑張った穂乃果達にはご褒美があっても良いなと思うの!」

 

「相変わらずお前は…

 大したもんじゃないが……ほら海未、ことりも」

 

「わ~い♪」

 

「ありがと、進ちゃん♪」

 

「有難う御座います」

 

 

俺は持っていた袋から紙製の箱を取り出した。

 

 

「ケーキだけど、好きなの選んで食えよ」

 

 

瞬間、目の前の3人が固まった。

 

 

「し、進ちゃん…こ、これ…」

 

「何だよ?」

 

「進にぃ…これが何なのか分かってるの?」

 

「ケーキだろ?嫌いだったか?」

 

「い、いえ…そうではなく……これは」

 

 

ことり、穂乃果、海未の順に話す。

最後に3人が同時に生唾を飲んだ瞬間…

 

 

「「「シャルモンのケーキ?!」」」

 

「うおっ?!」

 

 

3人の気迫に押された俺は、少し腰が引けた。

 

 

「どうした、いきなり…」

 

「どうしたもこうしたもないよ!」

 

「シャルモンのケーキは凄い人気で、普通じゃ手に入んないんだよ?!」

 

 

海未は無言でケーキを仰視しながら頷いている。

 

 

「そんなに凄いのか?

 まぁ、早く食おうぜ」

 

 

俺がケーキ箱の蓋を開けると、色とりどりのケーキが姿を見せ、穂乃果達を笑顔にした。

 

 

「穂乃果コレ~♪」

 

「私はチーズケーキ~♪」

 

「では、私はこのケーキを」

 

 

穂乃果は苺たっぷりのショートケーキ、ことりは好物のチーズケーキを、海未は抹茶のムースを手に取った。

 

 

「俺はチョコっと…」

 

 

俺がケーキを手に取ると、海未は首をかしげた。

 

 

「あの、お兄さん。

 ケーキが1つ余りましたが…」

 

そう、箱にはケーキが5つ。

この場には俺達4人しかいない。

 

 

「良いんだよ、これで」

 

 

俺の答えに顔を見合せることりと海未。

すると…

 

 

「ちょっと雪穂に自慢してくる~♪」

 

 

そう言って部屋を飛び出した穂乃果。

数秒後に血相を変えた雪穂が入ってきた。

 

 

「シャルモンのケーキってホント?!」

 

「あぁ、もう1つあるから…

 ほら、雪穂も」

 

 

俺は余ったケーキを紙皿に乗せて雪穂に渡す。

すると雪穂は目を輝かせた。

 

 

「~!ありがとー進二兄ちゃん!」

 

 

その光景を見たことりと海未は、納得した表情でこっちを見る。

 

 

「穂乃果の事だ、絶対雪穂に自慢すると思った」

 

 

俺の呟きに海未は「流石ですね…」と返してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆でケーキを食べながら談笑していると、穂乃果はある話しを切り出した。

 

 

「これで私達も、立派なスクールアイドルの一員だね!」

 

「そうだね~♪」

 

「これからも練習を続けて、次のライブを目指しましょう!」

 

 

すっかりスクールアイドルに染まった穂乃果達。

 

すると穂乃果はイタズラっぽい笑みで話しだした。

 

 

「もしかして、もうファンの人とかいたりして」

 

「どうかな~…始めたばっかりだし、まだじゃないかな?」

 

 

穂乃果の疑問に答えることり、すると雪穂は少し緊張した表情で話し始めた。

 

 

「純粋なファンなら良いけど、アンチとか気を付けてね?

 特にストーカー!

 また最近行方不明があったらしいから」

 

 

雪穂の話しに海未が肩を震わせた。

 

 

「どうした海未」

 

「い、いえ…大丈夫です。

 少し寒かっただけです」

 

「そっか」

 

 

そのまま気にせず、俺達は談笑を続けた。

 

 

 

 

 

 

この時、なぜ俺は気づいてやれなかったのか。

俺が気づいてさえいれば、あんな事にはならなかっただろうに。

 

 

迫り来る新たな脅威に、俺達はまだ気付けずにいた。

 

 

 

 

 

 

 





この間友人達と遊戯王の大会に参加した際に、ラブライブの話しをしまして推しメンはと聞かれ、「推しメン何ていない!皆大好き!皆が一番!μ’s最高!」と答え周りから距離をおかれたケモミミです。


ラブライブ!サンシャイン!も始まり、ホントにμ’sの時代が終わるんだなとしみじみ感じています。

これから始まる新たな物語に期待を膨らませながら、コンプリートアルバムを待つとしましょう(笑)

また更新が遅くなると思いますが、これからもよろしくお願いします!


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