乗っ取らせていただきました (茶ゴス)
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転生

 意識が浮上する感覚に目を覚ます。

 自分の手を開いたり閉じたりして身体の調子を確認する。どうやら随分と退化してしまったようだ……今の身体は齢5程度といった所か……

 

 今持っているものは七夜の短刀だけ……か。

 

 

 全く、転生者とやらも随分と物好きなようだ。まさか俺の身体能力を得るために俺の身体を媒体に転生を果たそうとするとはな…その上、どうぞ貰ってくださいと言わんばかりに無防備な精神体。

 有り難く頂いたが、どうやら転生者自体は消えてしまったようだな。

 

 ま、運が悪かったと諦めてくれ……

 

 

 とまあ、余り今の状況は飲み込めないが…取り敢えず現状を確認しなきゃ殺れる物もないか…

 

 確かここはNARUTOとやらの世界だというが……いまいちわからんな。NARUTOとは神か何かの名なのだろうか…もしこいつを殺したらこの世界はどうなるのだろうな……

 

 

 クククっと声を殺して笑い、周囲を見渡す。

 七夜の里を彷彿させる森、どこか偏狭な山なのか、それともこういった光景が当たり前の世界のなのか……

 

 いや、一つ分かる点があるな。周囲の木に存在する無数の黒い線と、黒い線に点在する黒い点。全く、まさかこの眼をあれが望むとは思わなかったな。到底耐えられそうにないぞ。

 この眼は俺やあいつみたいに性格が破綻している奴くらいにしか使えないだろうに……まあ、結果的に俺に直死の魔眼までよこす事になるなんてな。随分と太っ腹なものだ。

 

 まだまだ現状の理解は出来そうにはないが、どうやらこの世界にも人間はいるらしい。なにやらこちらへと近付いてくる気配を感じる。

 それもそうか、あれだけ脆弱な精神体が願った世界だ。あれに生物としての孤独を歩めるとは到底思えんからな。

 

 俺の場合もそうだな、人を殺せない世界だなんておかしくなってしまうだろう。

 

 っと、今はそれどころではないな、取り敢えず気配の元を断ち切っておいてやろうか。

 

 

 木の裏に回り、息を潜める。リーチが短いのに若干の不安を感じるがそうは言ってられないだろう。

 

 折角の獲物だ、そうみすみすと見逃すほど俺は大人じゃない。ただ、殺すために動く、それだけだ。

 

 

 現れたのは一人の男、逆立った白髪に防護服と覆面と額当て、傍から見たらただの不審者だが……しかしまあ、あれは中々に出来るな。あの身のこなし、常に奇襲から対応できるように警戒している。

 こいつが特別かもしれんが、少なくとも今は退屈しなさそうだ……

 

 

 足元に落ちている石を上に投げ、地を這うように回りこむ。

 投げた石が地面に落ちる音に相手は視線を向けた。成る程、この程度では隙が出来ないか…

 

 また、同じ容量で上に投げ、短刀を口に咥え木に登る。

 

 視線が動いた瞬間を見計らい、立っている枝の線を凪いで次の枝に跳ぶ。

 音を立てて枝が地面に落ち、いい具合に相手の警戒心が上がっていく。

 

 息を殺して姿を隠しながら頭の中で秒数を数える。

 1秒、2秒とその時が来るのをまだかまだかと待ち続ける。

 

 

 

 

 

 

 7秒がたった、周囲を警戒している気が少し緩んだ。

 ここだと言わんばかりに茂みの中から短刀を投げる。それと同時に跳躍して相手の頭上に跳び上がる。

 

 虚を付かれたのだろう、相手は驚きながらもなんとか短刀を地面にはたき落とした。

 だが、もう遅い。俺の手が相手の頭を掴み、このまま背骨を引き抜くようにねじ切る……

 極死・七夜。一族の奥義とも言える技は相手の命を刈り取り、

 

 

「……」

 

 

 刈り取り……

 

 

「……なんのつもりだ?」

 

 

 刈り取らなかった、まさか筋力まで落ちているとは……誤算だった。

 ならばこのまま死の線を裂いてやろうと頭に手を当てようとするが、それよりも早く首根っこを捕まえられた。

 

 

「ええぃ!離せ!」

 

「いや、離すわけ無いでしょ。一体どういう目的で俺を攻撃したんだ?」

 

 

 そのまま目線の高さまで上げられた俺はまるで猫のようだ。それにしても子供とはいえ人一人を軽く片手で持ち上げるとは少なくとも一般人ではないな。まあ、あの警戒のしようから同業者だとは思うが……

 

 

「そんな物決まっているだろう?目の前に強そうな男がいたんだ。殺さなきゃ失礼だろ?」

 

「……お前、額当てをしていないところから見て、何処かの抜け忍か?」

 

「ヌケニン?」

 

「違うのか?ならば何処かの殺しを生業にしている一族とかか?」

 

「ああ、そうだな。まあ、俺以外は既に死んでいるがな」

 

 

 紅赤朱は既に殺した。もう義理はないが、俺が七夜であることには変わりはない。

 しかしまあ、手が届かないな、触れれば殺せるのに殺せないっていうのはなんてもどかしいのだろうか…

 

 

「お前が殺したのか?」

 

「いいや、まあ、滅ぼしてくれた鬼は既に殺したがな」

 

「………で、お前は何をするつもりなんだ?」

 

「何故そんな事を聞く?」

 

「いいから答えろ」

 

「あんたを殺したい」

 

「……」

 

 

 にしても、おかしいな。いきなりだが意識が沈みそうになっている。

 

 

 

 

 

 まさかとは思うがこの身体で動きまわって疲れて眠たいのか?いいや、そんな筈はない。だって現に今も意識ははっきりして……

 

 

 

「お、おい」

 

「………」

 

「なんで寝る?……仕方ない、木の葉に連れ帰って尋問するか」

 

「………」

 

「にしても、あの短刀の投擲速度、並みの忍…まず下忍なら避けれなかっただろうな」



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牢獄

「……ふむ」

 

 

 目を覚ますと牢獄だった。

 コンクリートの壁に鉄格子、見事な牢屋ではあるが、些か現代風とはいえない。

 少し前時代的だとは思うが……

 

 脱獄するのも面倒だ、取り敢えず誰か来るのを待つとするか……

 

 

「む?」

 

 

 死の線が見えないな、あれは一時的の物だったか?……いや、見えた。

 ああ成る程、転生者にこの眼をよこした奴は随分と優しいんだな。直死の魔眼を閉じることが出来る。本当ならば目を瞑っても死を理解しているならば見えてしまう眼なのだがな……

 

 さて、誰か来るまで自分の置かれた状況を確認するべきか。

 まず持ち物であった七夜の短刀は無くなっている。それは当然だろう、こんな牢屋にいれるのに武器を取り上げないのはあり得ないからな。出来れば回収しておいて欲しいところだが、別段あれが無くとも人は殺せる。七夜という名前に義理も果たし終えているし、俺としてはあれにはあまり思い入れはない。強いていうならばあの強度は少し惜しいとは思うがな。

 

 次に服装にはここに来た時の格好、紺色の和装のままか。まあ、恐らくは隠し武器を調べられただろうけど、暗器などは今は持っていない。

 

 他に目立った外見の特徴はないが……何か身体が変だな。自分に魔力があるのは知っているが、他に何か別のものまであるのがわかる。

 淨眼で見てもいまいち分からないな。まあこの眼は見えないものが見えるだけであって、それが何なのかは解らないから仕方ないが……

 

 しかし魔力以外の何かか……思いつくとすれば気だが、何故かそうではない気がする。

 取り敢えず操れるか確認してみるか……えっと、身体の中心に集まっているな…それに何か血管のように広がる道が存在している…その道が全身に巡っていることから、これを全身に巡回できるとか?

 

 

 ……いまいちわからん。

 まあいい、使えないものをどうにかしようと思っても何も出来ないのが関の山だ。ならば今置かれている状況で最善を尽くす他あるまい。

 

 

「さて、来たようだな」

 

 

 牢屋の鉄格子越しから見える階段から降りてくる気配を感じる。数は3人か……

 

 先程対峙した白髪頭の気配も感じるが……一つ疑問に思うな。どうして俺はここまで気配察知に優れている?本来であればある程度は察知できても今のように手に取るようにはわからなかったはずだが……

 これも転生者が望んだとかいう力のせいなのかもしれないな。ホント無粋な事をしてくれたもんだ。人を殺す上でこんな力ばかりあれば殺しは楽になるが、意味を失ってしまいそうだ。

 

 

「目覚めておるようじゃの」

 

 

 ……傘帽子というやつか、今時そんなものをつけている奴がいるとは思わなんだ。いや、この世界では普通なのかもしれん。

 

 

「体の調子はどうじゃ?」

 

「さてね、随分と便利な身体に俺自身戸惑っているよ」

 

「……どういう意味じゃ?まさかお主大蛇丸と何か関係が……」

 

「おろちまる?」

 

 

 どの世界にでもいるもんだな、人のわからない単語や知らない人物名を上げて何かを疑う奴ってのは。

 にしても今の発現で出てくる名前か、もしや大蛇丸とやらも転生者に関係が?

 

 もしそうなら速やかに殺すとするか、何分俺を呼び出しておいて殺すまもなく消えてくれたからな、他の転生者でも構わんだろ。

 

 

「いや、関係ないならいいのじゃ。で、お主に聞きたいことがあっての」

 

「それよかそこの白髪頭の人、俺の短刀は回収してくれたのかい?」

 

「あ、ああ。だが渡すわけにはいかないがな」

 

「いや、ちょいっと確認したかっただけだったんでな」

 

 

 そうか、回収してくれたのか、そいつは上々。あるっていうのなら貰っておくとするか。

 

 

「で、聞いても良いかの?」

 

「ま、俺が知る範囲で頼むよ。何分ここに来て少しだから情勢には疎くてね」

 

「……お主は何処の里の者じゃ?」

 

「里か、まあ生まれは七夜の里だな」

 

「…聞いたこともない名前じゃが忍の里なのか?」

 

「忍?そんな空想上の者存在するわけ無いじゃないか。魔法使いや吸血鬼、夢魔ならまだしも」

 

「……忍を知らぬと申すか…ではお主は何じゃ?」

 

「殺人鬼、人外専門の暗殺一族の最期の生き残り、祟り、ま、色んな肩書はあるが好きに呼んでくれ」

 

 

 にしてもこの傘帽子、話し方からして随分と重役にも見える……

 

 

「なあ、あんたはここで一番偉いのか?」

 

「まあ、ある意味ではそうじゃろうな。しかし火影すら知らぬとは…」

 

「……へぇ」

 

 

 思わず口角があがる。それと同時に左右の二人が傘帽子の前に出た。

 おっと、殺気が漏れちゃったか、我慢出来ないってのは俺の悪い癖だな。

 

 しかし、子供相手にここまでの殺気を放てるとは面白い。随分とこの世界は殺伐としていると言えるのだろう。

 

 

「お下がりください三代目!」

 

 

 白髪頭はさっきの手合いである程度の実力の一端はみた。俺には到底正面切って戦えるような相手ではない。

 もう片方のバンダナにコート着た男も恐らくはそれなりにやるのだろうな。

 

 さて、未だ自身の身体については不明瞭な事が多い中、自分よりも格上の相手をするという状況か……いい感じに不利ってやつだ。

 この状況で殺せたらどう思うのだろうか……知りたい。

 

 

「目が蒼く?」

 

「知ってたかい?お三方、この世界ってのは脆く壊れやすいんだぜ?」

 

「何を言って……」

 

「地面なんて無いに等しいし空なんて今にも落ちてきそうだ」

 

 

 おかしな感覚だ、本来であれば脳を焼き切るような感覚に放り込まれるものを、感じる痛みは幻痛だと理解できる。

 はは、ノーリスクで死を見るなんてな、こんな事を知れば何処ぞのピアニストが発狂しかねない。

 

 

「世界はこんなにも死に溢れている。だから、こんな囲いもこうやって」

 

 

 鉄格子の死を爪でなぞる。2度なぞることで音を立てずに鉄格子が切断され、床に落ちた。

 それに相手は身を引き締めたように構えた。なにやら俺の中にもあった何かを高めているのがわかる。

 

 手に集めているな、いや、白髪頭の方は眼か…

 

 

「さあ、殺し合お」グゥ

 

「……」

 

 

 ……腹が鳴った。そう言えば何も食っていなかったか…

 

 

「……さあ、殺し合おう」

 

「いや、仕切り直しできる空気じゃないでしょ」

 

「ええぃ、煩い!子供の身体故に仕方ないだろう!大人ならば黙って見逃すのが礼儀ってもんだ」

 

「……なんとアンバランスな子供なのだ」

 

「お主がいかにその鉄格子を切ったのかは知らぬ。チャクラを纏わしたようにも見えなかったしのう……してお主は何がしたいのじゃ?」

 

「……人殺し」

 

「…理由をきいても?」

 

「理由なんてあるわけないだろ。人を殺すのにそんなものは無粋だ。理由なんてただの言い訳にすぎないさ」

 

 

 俺の言葉に一度息を吐いて傘帽子はその帽子を抑えた。

 

 

「ではお主は殺して何を得る?」

 

「なにも?強いていうならば俺は殺す存在だからだ」

 

「……世知辛いのう、お主のような幼子の意思をここまで歪めるとは…」

 

「じゃあ、殺し合おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 数分でやられた。

 

 魔術のような物をバンバン撃ってくるわ手裏剣が分裂してくるわ、随分と非現実的なまでの戦いで俺は捕まった。今度は腕も縛られて。

 元より俺は正面切って戦うような人種ではない。虚を突いて暗殺することが俺の戦い方、否暗殺者としてのスタイル。敵に正面から戦うことになるなんて未熟の証拠だ。

 

 

「お主、人殺しが出来ればよいのじゃな?」

 

「有り体に言えばそうだな。欲を言えばアンタ当たりを殺したい」

 

「物騒なことを言い寄るわ。そんなお主に提案じゃが、暗部に入らぬか?」

 

「暗部?」

 

「暗殺部隊、言わばお主の一族のような事を仕事にしないかと言っておるのじゃ」

 

「……こんな子供に暗殺部隊なんてよく言ったな」

 

「お主ほどの実力ならば問題あるまい?で、答えは?」

 

「乗った。だけどな、もしあんたが俺に対する警戒を怠るようなことがあれば、その時はあんたの首を貰うぜ?」

 

「……わかった。しかしお主が何の正当性もなく里の者を殺せば、その時はお主を殺す」

 

 

 ほう、コレがこの里の長の殺気、紅赤朱程ではないが随分な威圧感を放っている。

 全く、とんだ化け物だ、それくらいじゃないと殺り甲斐がない。



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 暗部に入隊すると言った翌日、充てがわれた家で眼を覚ました俺は体の調子を確かめに近くの広場に向かった。

 流石は忍の里といった所か、広場にもよほど訓練に使われているのか少し抉れた丸太が置かれている。

 

 俺はその広場の側の森の中に入る。一度、二度その場で跳ね、息を殺して木の枝まで跳ぶ。着地と同時に跳躍、次の木に移る。音も立てずに次から次に移動し、一度ミシリと枝を撓らせ、ある所へ一直線に向かう。

 

 朝からずっと感じていた視線。七夜を見張るには少しお粗末な監視の主である人物の背後を取り、首に腕を回し、ぶら下がるようにしてから話す。

 

 

「随分と舐められたものだ」

 

「くっ!!」

 

 

 仮面を着けた男は降参だと言わんばかりに両手を上げる。俺はそれに両手を離し地面に着地する。身長が低いのが問題だな、速い内に慣れないとこれは困るぞ。

 取り敢えず、体を伸ばしもう一つの監視者に視線を向ける。

 

 するとそちらもヤレヤレと言いつつ茂みから出てきた。

 今獲った男よりも隠形は格段に上手い男だと思ったが、まさか白髪頭だとは思わなかった。こいつは暇なのだろうか。

 

 

「お前、自分がどんな立場か解ってるわけ?」

 

「ああ、いつ誰かを殺すかわからない普通の少年だろう?」

 

 

 あっけからんと答える俺に呆れるように首を振った白髪頭は俺に棒状の筒を渡してきた。

 棒状の筒、仕込み刀はあの時俺が投げた七夜の短刀だ。まさか俺に返すとは思わなかったな。まだ俺には怪しいところが多数あるだろうに…この里の長、火影とやらは随分とおめでたい頭をお持ちのようで。

 

 

「暫く暗部では俺がお前を見る。まあ、まだ監視は解けないが我慢しろ」

 

「監視する割に案外簡単に武器を返すんだな。少し拍子抜けだよ」

 

 

 七夜の短刀を受け取り服に忍ばせる。

 ああ、やっぱり誰かを殺せる凶刃を持ってるだけでこうも安心感が違う。これでもしも誰かに襲われた時に遠慮なしに殺すことが出来る。

 

 

「そう言えばまだ自己紹介していなかったな。俺ははたけカカシ、お前の先輩に当たる」

 

「ん、俺は七夜志貴、まあ精々俺がこの里のやつを殺さぬよう目を光らせておくんだな」

 

 

 俺がそう言い終えるとはたけカカシが俺の背後にいる男に目配せをした。それに男は頷き里の方へ走っていった。

 

 

「とまあ、お前を暗部に入れるにあたって一つ問題があってな」

 

「確かに問題だろうな、俺みたいな普通な少年があんな仮面をつけるのは違和感しかない」

 

「……俺は何も言わんが、違うぞ」

 

「他に見当たらないが?」

 

「お前、忍術使えないだろ」

 

 

 はて、忍術とな…確かに俺は暗殺術なら問題はないが忍術のにの字も知らない。むしろそんな妄想みたいな物を知っている方がおかしいが…

 少しなら魔術の心得もあるにはあるが、別に魔術を行使できるって訳ではなく、どういったものかを理解している程度だ……

 

 

「そこで、お前がある程度忍術の使えるようになったら正式に暗部に入隊となるってわけだ」

 

「……それまでは?」

 

「忍者学校に通ってもらう」

 

 

 ……今更寺子屋に通わされるとはな、あと数年で成人だというのに情けない話だ。

 ああ、それに元ではあるが一応ご主人様の命令で女子供を殺すのは禁止されているからな……殺しが出来ない暗殺者に何の価値がある?

 

 

「暫くは我慢しろ。と言ってもお前の場合おそらく一年程度で入隊となるだろうがな」

 

「仕方あるまい、現世ってのは柵だらけだと改めて実感させられるよ」

 

 

 俺の言葉にため息を吐いたはたけカカシはそのままその場から消えた。恐らくはまたどこからか監視しているのだろう、場所は分からないが監視されているということくらいはわかる。

 取り敢えず朝食をとるために昨日手渡された賃金を取りに家へと向かう。はてさて、俺はどこまで我慢ができるのかね……



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自主任務

 夜、あの街よりもよく見える星空の下、監視の視線を感じながら俺は妙な気分になっていた。

 高揚するようにそれでいて頭がどんどん冷えていくような感覚……

 

 ああ、こういう日は人を殺すのに限る……しかしまあ、今の俺は安易に人を殺すことを許されていない身。別に破ることには何も感じないが、間違いなく俺は捕まり、下手をすれば殺されてしまうだろう。

 殺されるのは頂けない。死んでしまったら誰も殺せないのだから……あぁ、誰か侵入者でもいないかな……

 

 そうある筈もない思いを抱きつつ俺は夜の里を闊歩していった。

 

 

 ふと、妙な気配を感じた。ここから数百m離れた場所を移動する存在。これは2つ移動しているな、だが余りにも動きが同率しすぎている。恐らくは抱えられているのか……

 

 

 さて、もしかしたら俺のこの欲求が満たされる自体になっているのかもしれない。口角を上げるのを抑えきれず笑みを浮かべ俺は疾走する。

 動いている存在が向かっているのは里の入り口、これで侵入者だっていう可能性は高くなったか。

 

 しかし、侵入者をどう里の者ではないと判断するかが肝だが……なるようになるか。

 

 

 監視の視線は今ははたけカカシではない。あれならばこの程度の速度に追い付いてくるだろうが、監視の視線はどんどん離れていくばかり。さて、いいのか悪いのかは判断付かないが、今は走るのが優先だ。

 俺の乾きを潤して貰おうか……

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 おかしな存在…男と小脇に抱えられた気絶した幼女の2人は里の入り口に向かってはいるが姿を隠すため森に身を潜めつつ進んでいるようだな……だが、それは随分と悪手だ。なんたって夜の森なんて俺には格好の狩場なんだからな……

 

 しかしまあ、ここまで近付いてやっと分かったが幼女の誘拐とはねぇ……身代金が目当てかそれ以外の目的があるかはわからないが、少なくとも里の者でもこの状況で殺しは許されぬとも行動不能にすることくらいならば問題ないはずだ。

 適当に悪事は見逃せなかったとでも言えばどうとでもなるだろう。まあ、殺しの出来ない飢えは残るだろうけど何もしないよりはマシか……

 

 

 周囲を警戒しながら進む男の背後数mに石を投げる。当然男は石が落ちた音に反応し視線を向けるが、そこには茂みしか無い。

 ここで慌てないのが大事だ。数秒経つまで息を殺す。人間ってのは最大限の警戒心は大抵数秒しか持たない。何かあるなら別だが、何も変化がなければ長くても10秒程度で警戒を一度緩めてしまう……

 

 

 だからこそ、そこが狙い目なんだよ。

 

 

 跳躍し音もなく背後から男に近づく。身体が小さいというのはこういう時に障害物の隙間を跳べるから便利だな。

 まあ、欠点のほうが多いがそれは仕方あるまい。

 

 何にせよ、まずはその足から貰おうか。

 

 

「斬」

 

 

 一刀、足の付根から死の線をなぞり切り落とす。男は一瞬何が起きたのか理解も出来ずに突然襲いかかった痛みに大声をあげて倒れこんだ。

 俺はその時に放り出された幼女をキャッチすると、そっと地面に寝かせ男へと視線を向ける。

 

 こちらを恨めしげに睨む男、額当てと覆面という何処かで見たような格好をした男は血走った目を浮かべていた。

 

 

「不用心にも程がある。犯行に及ぶなら自身を狙う死神に注意をすべきだろう。じゃないと、今みたいになっちまうぞ?」

 

「クッ!貴様!こんな事をして唯で済むと思っているのか!」

 

 

 ふむ、里の者なのか?しかし額当ての模様がはたけカカシ等とは違うが……

 まあどっちでもいい。こいつは忍だってことには変わりはないのだ。取り敢えずは簡単に死なれない様に気絶させるとしようか。

 

 特大の殺気をぶつけつつゆっくりと近づく。男にとっては恐怖だろう。意味もわからぬ内に年端もいかぬ餓鬼に自身の足が切り落とされ、おおよそ子供が出せるであろう殺気を超えた物を身に浴びて短刀を片手に近づかれたら。

 

 男は足のせいで上手く逃げることすら出来ない。

 いや、男の腕が動いてクナイをなげてきた。それを少し横にずれることで躱した俺は一歩一歩ゆっくりと歩を進める。

 さて、お前はどう楽しませてくれる?

 

 

 人間というのは恐怖を感じるとまず否定する。状況を否定しようとするのだ。その状態の人間とは余りにも無防備で、簡単に殺せも生かすも出来る。

 腕を振り上げ短刀を勢い良く振り下ろす。丁度男の目の前、覆面が少しキレる程度に地面に突き刺すと、男は白目を開けて失神した。

 

 ふむ、随分と鍛錬が足りないのだな、忍というものは。しかし、面白半分でやってみたは良い物の獲物が動かないというのはつまらない。ただ無機物を殺しても満たされることなど無いのだから、

 

 さてどうしたものか。別に人を傷つけて喜ぶような変態的趣向を持っているわけではないし、かと言ってこのまま放置して帰るというのもつまらない。

 

 ああ、柵というのは本当に面倒くさいぞ。

 

 

 

 ん?ようやく監視の暗部が来たか随分と遅い到着だな……

 

 

「こんな所にいたか……この血は?」

 

「ん?大丈夫さ別に人を殺したってわけではない。ただ、いたいけな少女を連れ去ろうとしていた輩を懲らしめてやっただけさ」

 

 

 俺の言葉に気絶した男と寝ている幼女を確認した暗部はなにやら術を行使しだした。

 

 

「こちらテンゾウ、七夜志貴を第23演習場にて発見、少女一人を誘拐していた雲隠れの忍と交戦し無力化をした模様」

 

 

 成る程、通信を行う術もあるのか……しかし、無線機くらいはないのだろうか?確かこの里にはテレビや電話があるのだからあっても不思議ではないのだが……

 

 

「はっ、少女の特徴から見て先程通達された日向ヒナタで間違いないかと……了解」

 

 

 暗部は通信を終えたのかこちらへと視線を向けてきた、どうやらこの男は違う里の者らしい。勿体付けず殺しておいたらよかった。いや、今からでも遅くはないか?

 

 

「お手柄だよ。この少女は日向家のご令嬢だ。恐らくは白眼を狙っての犯行だろうな……」

 

 

 白眼ってなんだ?また俺の知らない言葉が出てきたぞ。まあ、ニュアンス的には魔眼の一種か……

 

 

「しかも殺さなかったのが尚良かった。足を切り落としてはいるが、命を奪わなかったお陰で雲の里にとやかく言われる心配も少ない」

 

 

 ふむ、別に殺してもいいだろう。もし何か言ってきたならば問答無用で皆殺しにすればいいだろうし……

 

 

「兎に角、あとは任せてくれ。もう遅いし君も帰るといい」

 

「……正直物足りないが仕方ない。あまり俺に我慢を強要しないでくれよ?」

 

「……カカシ先輩に言っておくよ」

 

 

 ああ、暗部に入隊するのが待ち遠しいな。何の柵もなく人を殺せるようになるにはどれだけ時間がかかるのやら……

 今日の所はこれくらいで帰るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 家へと歩を進めていくと、暫くして眼の色が薄い男とすれ違った。随分と奇っ怪な目をした奴もいるもんだな……



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日向

「この度はヒナタを救っていただき真に感謝する」

 

 

 あの誘拐犯をとっちめてから次の日俺ははたけカカシに連れだされ、日向家とかいう家の屋敷に来ていた。

 どうにも昨日の幼女がここの娘だったようで、木の葉の里でもうちはとかいう家と並んでトップクラスに由緒ある家柄だったらしい。

 

 まあ忍の里故に由緒あるっていうのは秘術を持っているもので、昨日の奴さんはその秘術目当てに誘拐をしたらしい。

 

 

「もし私が追いついていたならば間違いなくあの忍を殺してしまっていた」

 

 

 目の前に座っている男、名前は日向ヒアシは昨日すれ違った男だ。あの時と同じように色の薄い目で此方を見ている。

 成る程、あの目がこの家の秘術ってわけか……興味が無いわけではないが、特に興が乗らないな。殺す相手としては別段どうでもいいという感じか……

 

 

「雲の里とは同盟を結んだばかりでな、もしあの忍を殺していれば何を要求されたかわかったものではなかった」

 

 

 あの忍は既に雲の里に引き渡したらしい。自決させる事すら許さず、本人も生かされたとあってはいかに足を切り落とされようと文句のつけようがなかったらしい……まあ俺としてはどうでもいい事だ。

 

 現にあの時は辺に高揚した精神に身を委ね行動したまでであり結果的に誘拐犯を無力化しただけである。

 でも今思えば殺しておけばよかったか……もし何かを要求してきても木の葉としては俺を差し出せば済む話。次いで俺は雲の里で大虐殺を行える。

 

 ああ、勿体無いことをした……今からでも追いかけて殺してやろうか…いや、雲の里の場所なんて知らないから無理か、忍の里なんだそう安々と見つかる筈もあるまい。

 

 

「そう言えば名を聞いていなかった、教えてくれるか?」

 

「七夜志貴だ」

 

「……七夜、聞いたことのない名だな」

 

 

 それはそうだろう、この世界に七夜なんて一族は存在しない。いや、ある意味七夜というのは何処に行ってもここにしかいないのだから。

 

 

「つい先日木の葉に流れ着いた殺人鬼の成れの果てだよ」

 

「……ふむ、殺人鬼か」

 

 

 思う所はあるだろう。そりゃそうだ、娘を助けたであろう勇敢な少年は実は殺人鬼でしたってどう考えてもやりきれないだろうしな。

 だが別に訂正する気はない、俺は勇敢な少年になりたいわけでもないし恩着せがましいことをしたいわけではない。ただ人を殺したいだけ。多分世間一般的には性格が破綻していると言われるだろうな。だが七夜志貴としてはこの感情が正常であり人助けだなんて起こす日にはそれこそ破綻したと言えるだろう。

 

 

「それでも娘を助けてくれたことには変わりない。何か困ったことがあれば出来る限り手を貸そう」

 

 

 思わずアンタを解体したいって言いそうになっちまった。恐らく背後にいるはたけカカシは俺が口走りそうな内容に薄々気付いたのだろう、絶対に口にだすなよ?といった視線を感じる。

 

 ふむ、これは世間一般にで言うフリというやつではないだろうか、ならばその期待に答えてやらなくてはいけないか。

 

 

「アンt」グゥ

 

「……」

 

 

 ……肝心のところで水を差すなこの身体は……

 全く前回と言い今回と言い何故勝手に腹がなる。確かに今日は朝食を食べずに連れだされてはいるが、それにしても空気を読んでほしいものだ。

 

 

「…そういえばいい時間だな、よし今日はここで昼食を取っていくといい」

 

 

 ま、それくらいならご恩恵に与ろうか。以前のように食事のいらぬ身体というのも便利だが、やはり美味いものというのはそれだけで少し満たされるというものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 配膳された料理を口に運びながら何故このような空気になってしまったのかを考える。

 いや、考えるまでもないな……原因は俺の横で食事をする幼女、確か日向ヒナタとかいう奴のせいだ。何故か無言で此方をチラチラと見ながら食事をしている。視線を合わせてみると直ぐに顔を伏せるなどして視線を外してくる。思いの外鬱陶しい。

 

 何を言いたいのかは分からないが、言いたいことがあればはっきりと言ってほしいね。あと数年か10年程度待ったほうがいい肉付きになって解体しがいがあるが、どうしても解体してほしいと言うのだったら惜しみながら解体してやるのだがな……

 

 ま、俺から解体する事はないだろうな。現世においても縛り続ける元ご主人様の言いつけは随分と仕事熱心なようだ。

 今も頭をよぎって仕方ない。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 何やら日向ヒアシの方も何か考えながら俺と娘を見ている。

 少しして何か納得したように頷いていたが、一体何を考えているのやら。

 

 

 ま、もう関わることもあるまい。それよりも早い所忍術の一つでも身につけて暗部に入隊しなければいけないな……

 

 

 



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暗部

 俺が木の葉にきてから3年が経った。年齢は里に来たのが5歳とし、現在は8歳の少年としてアカデミーに通いながら暗部に所属している。暗部にはアカデミーに入学してから3ヶ月で入隊した。半年くらい人を殺せなかったら恐らくは何かの拍子に人を数人ばかり解体してしまっていただろう。まあ、何故暗部にそこまで早く入隊できたのには理由がある。俺の眼、淨眼は他人や自身のチャクラの動きを見ることが出来る。まあ、他人の感情ですら見えたり出来る眼だ。この程度驚くことではない。まあ、その眼を使用すると手本となるもののチャクラの動きを模倣すれば良くなるわけだ。カカシからはまるで写輪眼のように模倣しているとまで言われた。写輪眼、うちは一族の血継限界だったか、いつか一人くらい解体したいが……我慢するしか無いだろうな。

 

 暗部に所属してから1年間はカカシの監視のもと暗殺を行ってきた。無駄に殺しはしなかったためそれからは一人での任務も任されるようになった。と言っても大体が2人1班(ツーマンセル)での任務のほうが多いが……忍故に少しでも任務の成功率を上げるためだとか……正直面倒だ。

 

 まあ里には面白い奴もいる。確かうずまきナルトという奴か、あいつは恐らくNARUTOの世界の中心人物に当たるものなのだろう。大きいチャクラに腹の中に何かを隠してやがる。いや、何かではない。九尾とか言う化け物か。それを聞いて俺の中にあるはずの殺害衝動が機能しなくなったのを理解した。人外、妖かしに対して発動する衝動。それによって七夜の一族に殺しという力を植え付けてきた衝動。少し違和感は感じるがこれで俺にとって人外は人間と同等の殺害対象に成り下がったわけだ。

 

 他にはうちはイタチ、確か先日暗部に入隊したうちは一族のエリートか。何でも史上最年少でアカデミーを卒業したらしい。因みに俺はアカデミーに未だ通っているのには理由がある。通常の卒業、12歳まで在学することにより暗部という事実を隠遁しているのだ。暗部の間は狼という名前で黒い仮面を付けて任務を行っている。まあ、普段は3代目火影の任が多いのだが。何でも俺の立場は火影専属の暗部となっているようだ。火影の無駄なお節介なのだろうが、俺の任務は基本的に近場に限っている。まあ、俺としては文句も言われずに殺しているからいいのだが、そろそろ里を抜けたいという衝動にも駆られてきた。

 

 柵というのは少なくとも存在する。まあ、肉の檻に囚われている時点で存在しているとも言えるが……俺にとっては里にいるよりも里から抜けたほうが柵が少なくて済みそうなんだよな。

 かと言って抜け忍になったとすれば今度は追手が鬱陶しくなってくる。まあ、やってくるのを片っ端から解体すれば良い話だが、うちは一族や日向一族が出張ってきたら少々厄介だ。いくら俺の眼でうちはや日向の真似事が出来るって言ってもそれは一部分のことだし、本来の使用方法から乖離したものを俺自身使いこなすことなど出来ない。精々隙を見つけて死の点をつくくらいしか俺に出来る事がないだろう。

 

 何故かは分からないがこの身体は前世に比べると少々身体能力が高い。少なくとも俺基準の身体では無い。だとすればあの転生者が望んだのは七夜の技術ってとこか……それなら親父でも良かったとは思うがね。まあ、親父でもどっちみち奪っていただろうな。あれほどまでの脆弱な精神に自身を乗っ取られるのなんて溜まったものじゃないだろうし。

 

 

 さて、長々と思考を巡らせたわけだが、何故か俺は今日向家の屋敷にいる。なんでも日向ヒナタの弟か妹が生まれるそうだ。いくら考えても俺を読んだ理由はわからんが……

 まあいい。俺にとってはそちらよりも日向家の血継限界である白眼の観察の方がここに来た理由としては十分だ。今は俺の一つ下の少年、確か日向ネジだったか?それの稽古ついでに白眼を見定めている。

 確か経絡系を見るのと視野の増加が主な効果だったか……流石に経絡系は淨眼では見きれないし、視野の拡張は出来なくもないが白眼にははるかに劣る。

 

 まあ、こいつが見ている所に何かしらの物があるのだろうことはわかっている。ある程度の視線の限定は可能だし、もし経絡系にダメージを負わせようとする攻撃だとしても柔拳によるチャクラ放出は視えているわけだ。身体能力が拮抗しているなら勝てるかを置いておいて負けることはないか……

 

 

「クッ!」

 

「遅い」

 

 

 突き出してきた掌底を一歩引いて躱しつつ腕を足で蹴り上げる。一応ある程度の手加減をしているとはいえこの程度か。まあこの年でこの程度動けるならば大したものなのだろうが、如何せん相手が悪い。

 

 チャクラを放出しながらの掌底を掻い潜って懐に潜り込む。

 

 

「蹴り穿つ!」

 

「ガッ!」

 

 

 閃走・六兎、相手を6発の蹴りで打ち上げる七夜の蹴技、ここから更に追い打ちはかけられるが、今回は必要ないな。

 どさりと音を立てて地面に落ちた日向ネジを一瞥したあと踵を返して日向の屋敷に向かう。

 

 

「まて!まだ俺は戦える!」

 

「これ以上続けても無駄だろう。お前の攻撃は視えているんだぞ?」

 

「……クッ!」

 

 

 悔しげに吐き捨てたあと日向ネジは走り去っていった。

 

 さて、厄介者もいなくなったことだし、そろそろ帰宅したいところだが……

 残念ながらそうも行かないかね。とっとと生まれるなら生まれてほしいものだ。

 

 願わくば解体しがいのある猛者になるような赤子であらんことを。



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