桜井和生と暗殺教室 (トランサミン>ω</)
しおりを挟む

コラボの時間
桜井和生と心の暗殺教室 コラボの時間 後編


今回初コラボを頼まれまして後編を担当させて頂きました。
この作品を読む前に前編は心の暗殺教室の方に投稿されておりますので確認ください。
では私が執筆した後編をお楽しみください。


「とりあえず上がってくれ」

 

 

翌日、和生は心に連れられて彼の家に行っていた。

 

 

「いいところに住んでるんだね」

 

 

心の家は学生が1人で生活するには有り余るほどに良い環境が整っていた。

和生はケーキ作りに取り掛かる前に彼の素性に興味を持ち、問いかけてみた。

 

 

「心は学生以外に何かやってるの?こんないい所なかなか住めないとは思うんだけど」

 

 

「ああ、本業は殺し屋なんだ。訳あって今は学生をやっているんだがな」

 

 

「ええ!?じゃあ色んな世界を見てきたんだね」

 

 

「そうだな、足もと一面が血で覆われている戦場や硝煙と血の匂いが充満した様な場所も渡り歩いたことがある」

 

 

心が歩んできた人生は和生の想像を絶する程に激しく悲哀に満ちたものであった。

 

 

「そうなのか。じゃあ心は相当な手練れってわけだね?」

 

 

「どうだろうな、俺より強いやつなんて世界にまだいると思うぞ?そんなことは置いといてケーキ作りに取り掛かろう」

 

 

「わかった。とりあえずケーキのコンセプトはどうする?」

 

 

「そうだな、ベリー系のケーキにしようと思ってる。和生は何か考えているのか?」

 

 

心は、倉橋の好物であるベリーを使ったケーキを作ろうとしているようだ。

 

 

「そうだなぁ、ミルフィーユを作ろうと思ってたんだけど。材料は俺の家だし、心の作りたいものでいいよ?」

 

 

「大丈夫だ、材料は基本的に揃えてある。ベリーを使ったミルフィーユか…悪くないな」

 

 

「じゃあ決まりだね。とりあえず俺はパイ生地を焼く準備をするから、心は生地の間に挟むクリームの準備をしてよ。ブルーベリーを使ったクリームでお願い、アクセントにラズベリーも使いたいから少し甘めのクリームを頼むよ」

 

 

「(こいつ…今俺が言った条件でもうレシピを考えたっていうのか?甘いものに対しての力の入れ方が並じゃないな。それに指示も的確だ、こいつとなら陽菜乃を喜ばせられるケーキが焼けるかもな)ああ、わかったよ」

 

 

2人はケーキ作りに取り掛かり始めた。

普段から菓子作りをしている和生の手際はもちろんのこと、心の手際は和生に勝るとも劣らない素晴らしいものだった。

 

 

「心凄いね、やっぱり優れた殺し屋ほど万に通じるとは言ったものだね」

 

 

「その台詞、誰に聞いたんだ?」

 

 

「ああ、担任の先生だよ。ちょっと変わってるんだけどね」

 

 

2人は互いの仕事をテキパキとこなしながらも私生活についての話を始めた。

 

 

「お前の担任も殺し屋なのか?」

 

 

「いや、狙われるほうかな。色々ぶっ飛んだ先生だしさ」

 

 

「(…まさかな)」

 

 

心は殺し屋に狙われている、ぶっ飛んだ教師を1人知っているが、そんなことは有り得ないと脳裏をよぎった考えを消すべく、話題を切り替えた。

 

 

「和生もプレゼントするんだったな、誰にプレゼントするんだ?」

 

 

「俺は恋人にプレゼントするつもりだよ。何時も1番近くで自分を支えてくれてる彼女に感謝の気持ちを込めて作るつもりだよ。」

 

 

和生は凛香のためにケーキを作るようだ。

自分の恋人のことを語る和生の表情は輝いていて、心は不思議な気持ちになった。

 

「そういう心は誰にプレゼントするんだい?」

 

「俺はクラスメイトにだ。あいつには何時も助けられていてな。涙を流した時は側に居てくれたし、何よりあいつといると心が安らぐ」

 

 

「そっか」

 

 

和生は心の話を聞いて彼がそのクラスメイトへ抱く感情がどういったものなのかを察し、微笑を浮かべた。

その後も2人は作業を続け、クリームを作り終えパイも焼き上がり、現在は冷ましているところだ。。

 

 

「じゃあアクセントに使うラズベリーのムースを作ろうか」

 

 

「ああ、よろしく頼む」

 

 

「先ずはラズベリーを細かく切るよ。切ったラズベリーは一旦ボウルに入れておいて、新しいラズベリーと飲むヨーグルトをスムーザーに入れて馴染ませる。あとは溶かして置いたゼラチンとさっき切ったラズベリーをスムージーの中に入れて軽く混ぜた後、バットに移して冷蔵庫で暫く冷やす。これで準備は完了だね」

 

 

和生は工程を心に説明しながらムースの下準備を行った。

ムースが固まるまでの間、手持ち無沙汰になった心は和生にある提案をする。

 

 

「なぁ和生、俺と1戦交えてくれないか?」

 

 

「急にどうしたの?」

 

 

「昨日お前と握手した時にお前が相当な実力者だってことがわかった。お前の手にあるタコは日々の鍛練で付いたものだろ?」

 

 

心は自分が感じた和生への感想を率直に述べ、和生へと模擬戦闘の申し込みをした。

 

 

「実は俺も感じてたんだ、心が強いってことは。君の体から感じられる強者のオーラは隠しきれてないよ。こうなるかもしれないと思って一応刺剣は持ってきてる。いいよ、その勝負受けて立つ」

 

 

「ありがとう、じゃあ付いてきてくれ」

 

 

和生は心からの誘いにのり、彼について階段を降りていく。

暫く階段を降りた後、和生の目に飛び込んできたのは数々のトレーニングマシンや医療機器。

日頃から心がここで修練に励んでいることが伺える場所であった。

 

 

「流石だね、ここなら強くなれそうだよ」

 

 

「そう言ってくれるとありがたい、奥の部屋に行こう」

 

 

そう言って2人は奥の部屋へと歩みを進めていく。

 

 

「ここは?」

 

 

入った部屋は先程とは打って変わって白塗りの壁に囲まれた殺風景な部屋だった。

 

 

「ここなら本気で戦っても何も壊れないからな、壁は強化素材で出来てる遠慮せずに戦ってくれ」

 

 

心はそう言うと、愛用している『フェンリル』を構えた。

 

 

「心の武器はトンファーなんだね、見たところかなりいい代物だね。じゃあ俺も愛剣を抜くとするよ」

 

 

和生は自分の愛剣である『レヴィアタン』を抜いた。

鞘に押し留められていた冷気が溢れ出し、室内の温度が下がる。

 

 

「氷の刃か、戦いがいがありそうだ。ルールは1つ、相手の体に致命的な一撃を与える攻撃をすれば勝ちだ当てる必要は無い。それじゃあ行かせてもらうぞ!」

 

 

先に飛び出したのは心だ、突っ込んでくる心の構えは全く隙が無く、和生の判断が一瞬遅れる。

その隙を心が見逃すわけがなく心は右手のトンファーを和生の脇腹へと叩き込む。

しかし…

 

 

「凄いスピードだね、だけど速さなら負けるつもりは無いよ」

 

 

和生は振りかかる心の右腕を支点にジャンプし、ヒラリと躱した。

 

 

「一撃で仕留められるとは思っていない!」

 

 

心は躱されることを計算していたため、右腕を振る勢いに乗って回転し、左手のトンファーを振った。

その一撃は和生の頬を掠め、そこから血が顔を伝った。

 

 

「やるね、でも今度はコッチの番だ!」

 

今度は和生が攻撃に出る。鋭いし刺突を心へ向けて放つ、その速度は尋常では無く、捌ききれなくなった心の体に幾つかの傷を作り出していた。

 

 

「お前もやるな、だが次で決めさせてもらうぞ!」

 

 

「奇遇だね、俺もそのつもりだ!」

 

 

2人は同じタイミングで動き出した。

心はトンファーを八双の構えに持ち、燕の軌道のように低い体制で和生へと襲いかかる。

一方和生は心へでは無く、壁に向かって走り出した。

 

 

「戦闘中に敵に背を向けるとはいい度胸だ」

 

 

心は壁際で和生に追いつき、鋭い1振りを放った。

 

 

「大丈夫だよ、目では見えてなくても音で判断できるからね」

 

 

「くっ…」

 

 

和生は壁を蹴って心の背後に回り込み彼の首へ向けてレヴィアタンを突き出す。

しかし

 

 

「「…引き分けか」」

 

 

和生の一閃は心の首の寸での所で止まっていた。

しかし和生の耳元にはトンファーがあり、このまま振り抜かれていれば致命傷は間違いなかった。

和生に一撃目を躱されていた心はノールックで和生の顔スレスレに逆手のトンファーを振っていたのだ。

並の人間ではできない超人技に和生は息を呑んだ。

 

 

「心は強いね。久しぶりにいい勝負ができたよ」

 

 

「だが、お互いに全力では無かったな?」

 

 

「あー、バレてたんだ。本気になると性格変わるからさ」

 

 

「和生の力がこんな物じゃないのはすぐわかるさ。そろそろ冷えてるんじゃないか?」

 

 

「そうだね、ケーキ作りを再開しよう」

 

 

2人の死闘は引き分けという結果に終わったが、彼等の表情は晴れ晴れとしていていい好敵手に出会ったアスリートの様であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我ながらなかなかいい出来だよ」

 

 

「ああ、俺もここまでの物が出来るとは思っていなかった」

 

 

2人はパイ生地にブルーベリーのクリームとラズベリーのムースを挟み、最上部に苺を乗せ、ケーキを完成させた。

 

 

「ありがとう和生、今日は有意義に時間を使うことが出来た。俺は今からケーキを渡すことにするよ」

 

 

「こっちこそありがとう。おかげで最高のプレゼントが出来たよ。なぁ心?」

 

 

「なんだ?」

 

 

「もしかして心は…いや、何でもない」

 

 

「そうか、だが恐らく俺もお前と同じことを考えていた。早く恋人のところに行ってやれよ、待ってるんだろ?」

 

 

「わかったよ!じゃあまたね、次会う時は本気の勝負をしよう!」

 

 

「ああ、頼むよ」

 

 

和生は別れの言葉を告げると心の家を出て、凛香の家へと向かった。

 

 

「さて、俺も陽菜乃を呼ぶとするか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔しまーす」

 

 

「突然悪いな、陽菜乃」

 

 

「ううん、心からの誘いならすぐ来るよ!」

 

 

「ありがとう、今日は何時も俺を支えてくれる陽菜乃にプレゼントかあるんだ」

 

 

「え、ほんと?」

 

 

「ほんとうだ」

 

 

心はそう言うと陽菜乃の前にミルフィーユを持ってきた。

 

「わー!すごい!私ベリーが大好きなの!ねぇ、食べていい?」

 

 

「お前に食べてもらうために作ったんだ。いいに決まってるだろ」

 

 

「(そういうこと真顔で言うのずるいなぁ…)じゃあいただきまーす!…っ!!凄い美味しいよこれ!」

 

 

「そうか?じゃあ俺も」

 

 

心も自分の分を1口、口へと運んだ。

 

 

「あいつ…やっぱり凄いやつだな」

 

 

「あいつ?誰のこと?」

 

 

「ああ、それはな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね凛香、急に家に来ちゃって」

 

 

「ううん、いいのよ。私も和生の顔が見たいって思ってたから」

 

 

「っ…///」

 

 

和生はニッコリと微笑みながらそう言う凛香に照れてしまう。

 

 

「それで用って?」

 

 

「…ああ!今日は何時も1番近くで支えてくれる大好きな凛香のためにケーキを焼いたんだよ!」

 

 

「嬉しい…///」

 

 

和生の言葉に凛香の表情が綻ぶ。

和生は凛香の照れた表情に少し見惚れていたが、ハッと気付きミルフィーユを凛香に差し出した。

 

 

「相変わらず和生のケーキは凄いね…」

 

 

「今日は俺1人の力じゃ上手く行かなかったと思うよ」

 

 

「??よくわからないけど、ケーキ食べていい?」

 

 

「もちろん、凛香の喜ぶ顔が見たくて作ったんだからね」

 

 

「もう…///じゃあいただきます…あっ…凄い美味しい」

 

 

「そう?良かったよ。じゃあ俺も1口」

 

 

和生もミルフィーユを口へと運ぶ。

 

 

「心…。君のケーキ、最高だよ」

 

 

「心?誰のこと?」

 

 

「うん、それはね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「有り得たかもしれない別の世界に居る、俺の最高の好敵手のことだ!」」




いかがだったでしょうか?作中に登場するケーキは以前私が作ったものですw
確認、評価待っております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

神栄 碧と桜井和生の暗殺教室 コラボの時間 後編

今回は大先輩である、invisibleさんとのコラボ企画です!
駆け出しの私なんかとコラボして下さったinvisibleさん改めてありがとうございます!
前編は神栄碧と暗殺教室をご覧ください!


神栄と和生は閑静な住宅街を歩いていた。

高級住宅が立ち並び自分の住む世界とは違うもののように和生は感じていた。

 

 

「着いたぞ、とりあえず入れよ」

 

 

「お邪魔します」

 

 

神栄の家はとてつもなく大きいのだが、和生の家も他人のことを言えないほど大きいため然程驚かなかった。

 

 

「とりあえず2階に行ってくれ」

 

 

「2階?なんでだ?」

 

 

「きにすんな」

 

 

神栄に促され、階段を上がっていく和生。

綺麗に片付けられたその部屋は落ち着いた印象を与える。

 

 

「神栄はなに作るの?」

 

 

「そうだな、パスタでも作るか」

 

 

神栄は棚からパスタの乾麺を取り出して茹で始めた。

 

 

「じゃあ俺はソース作ればいいのか?」

 

 

「いや、お前は冷蔵庫の中から適当に選んで前菜でも作ってくれ」

 

 

「わかった」

 

 

和生は冷蔵庫を物色し始めた。

鴨肉と水菜、トマトにマンゴー、バルサミコ酢を取り出した和生は料理を始めた。

そんな様子を横目で見ていた神栄は思った。

 

 

「(こいつはホントに料理が『得意』みたいだな)」

 

 

そんな事を考えながら油にニンニク、鷹の爪を入れ、ぺペロンチーノ?を作っていた。

一方和生はトマトを小さく切り水菜を3センチだいに切った後、鴨肉をスライスし脇にマンゴーのピューレとバルサミコ酢を垂らして完成させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「いただきます」」

 

 

料理を作り終えた2人はお互いが作りあったものを口へ運ぶ。

次の瞬間

 

 

「うわ、これめっちゃ美味い」

 

 

「うっ…これ…は」

 

 

2人からは真逆の感想が飛び出した。

神栄からは感激の声が、和生からは苦痛の声が発せられる。

 

 

「『特異』ってそっちかよ…」

 

 

和生はその言葉を最後に気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、大丈夫か?」

 

 

「あ、ああ…」

 

 

和生が目を覚ますと神栄が「お前なんで倒れたんだ?」と言いたげな顔で自分を見ていた。

彼のそんな様子を見て和生はふと思ったことを訪ねようと体を起こした。

 

 

「神栄…お前彼女はいるの?」

 

 

「は?」

 

 

「いるのかって聞いてるんだ」

 

 

「まぁ、いるよ。飛びっきり可愛いのが」

 

 

神栄は神崎のことを名前は出さないものの簡潔に紹介した。

 

 

「お前さ…彼女が手料理食べたいって言っても絶対に食べさせるなよ…?」

 

 

「は?なんでだよ」

 

 

「このままだとその子の笑顔が歪む事になるぞ…?いいのか?」

 

 

「??」

 

 

「とりあえずもう一回俺と作ろう…」

 

 

「なんでだよ!?俺はゲームをやりたいんだが」

 

 

「でも考えてよ?そんなに可愛いんだろ?もし手料理作って喜んでもらえたら飛びっきりの笑顔が見られるよ?」

 

 

和生の言葉に今度は、そうかもしれないと唸る神栄。

一方和生は神栄の恋人のために彼の料理センスを改造しようと試みた。

 

 

「最近はあいつを悲しませてばかりだし、いっちょやるか!」

 

 

普段あまり気にかけてやれていない神崎の為だと思い、神栄は和生の誘いにのった。

ヘタレがヤル気を出した瞬間であった。

 

「自覚がないってヤバイな…」

 

 

「なんかいったか?」

 

 

和生は混乱していた、神栄の手つきは並の学生より良く、得意と言えるほどの手際であろう。

しかし、自分と同じ手順でやっているのに味は天と地の差があった。

和生は神栄を傷つけまいと遠まわしに特異だという事を告げるのだが神栄は首をかしげるだけであった。

 

 

「はぁ…やっと食べられる位にはなった…」

 

 

和生がそう言えるようになったのは2時間後の事だった。

 

 

「なんか味が変わったような?」

 

 

神栄の成長ぶりには目を見張るものがあった。

もともと集中力が人間のそれを凌駕している神栄だけに飲み込みが早い、神崎のために頑張ったのだろう。

相手を思って作る料理は美味しくなるものだ。

 

 

料理教室も一段落し和生は帰宅の準備を始める。

 

 

「今日はありがとう。いろんな意味でいい経験になったよ」

 

 

「それはこっちの台詞だ。気絶した時はどうしようかと思ったがな」

 

 

2人は苦笑しながら握手をする。

 

 

「いまから彼女さんにご馳走してあげれば?」

 

 

「ああ、そうさせてもらう」

 

 

神栄は携帯を取り出し神崎に電話をかける。

 

 

『はい、神崎です』

 

 

「俺だ神崎、神栄だ」

 

 

『碧くんっ!どうしたの?』

 

 

名乗った途端ぱあっと明るい声になった神崎に神栄は若干照れる。

 

 

「今から家にこないか?晩御飯ご馳走するよ」

 

 

『うんっ!すぐ行くねっ!』

 

 

電話を切った神栄に和生は不思議そうな目を向ける。

 

 

「どうした?」

 

 

「今…神崎って言った?」

 

 

「ああ、そうだが」

 

 

「(そっか…ドンマイ杉野)なんでもないさ!」

 

 

「そういやお前にも恋人はいるんだろ?名前はなんて言うんだ?」

 

 

「速水っていうんだ。ツンデレだけど可愛いよ」

 

 

「(ああ、こいつは…)そうかそうか。惚気ご馳走さん」

 

 

ツンデレで速水という名前に神栄は心当たりがあり過ぎた。

 

 

「じゃあ、そろそろ帰るよ」

 

 

「ああ、またな」

 

 

和生はそう言って神栄宅を後にする。

去っていく彼の後ろ姿を見て神栄は

 

 

「てことはあいつも暗殺者ってわけかw」

 

 

笑いながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方帰り道に和生は考えていた。

 

 

「あんなとてつもない味の料理を食べたのは初めてだ…。夜は美味しいものが食べたいよ…」

 

 

ぐったりした和生はあることを思いつき携帯をいじる。

 

 

「もしもし、凛香?」

 

 

『うん、どうしたの?』

 

 

「凛香の手料理が食べたいなってw」

 

 

『えっ!?今どこ?』

 

 

「凛香の家の前かな?」

 

 

そう言うと速水が急いで窓から顔を出した。

 

 

『すぐ行くから待っててね!』

 

 

言葉通りすぐに降りてきた速水。

 

 

「急にどうしたの?」

 

 

「いや…実はさ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「碧くんって料理するんだね」

 

 

「ああ」

 

 

神栄はやって来た神崎に和生直伝のパスタを振舞っていた。

何も知らない神崎は神栄の料理を躊躇せず口へ運ぶ。

 

 

「美味しい…美味しいよ碧くんっ!」

 

 

まるで女神の微笑みのような笑顔を向ける神崎に神栄は

 

 

「(あいつの言う通り、これはかなりの…破壊力だ)」

 

 

神崎の笑顔に、ノックアウト寸前であった。

流石ヘタレと呼ばれているだけはある。

 

 

「でも急にどうしたの?いつもはほったらかしなのに…」

 

 

「へ?ああ、それはな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「今日は料理が『とくい』な奴にであったんだよ」」

 

 

時を同じくして意味は違えどふたりは同じことを口にしていた。




感想待ってます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

津芽湊と桜井和生の暗殺教室 コラボの時間後編

今回は私が尊敬し、プラべートでも仲良くさせて頂いているケチャップさんとのコラボレーションです!

こちらは後編ですのでケチャップさん執筆の津芽湊の暗殺教室に投稿されている前編を読んでから読んでくださいね!

同じく速水を愛する作者としていい作品にできればと思っています!
そして私が後編を担当している以上、分かっている方もいるとは思いますが!ブラックコーヒー必須ですからね?w

そして今回未熟な私とコラボをして下さったケチャップさん!改めてここでお礼を言わせていただきます。
本当にありがとうございました!>ω</


「ん〜♪体に糖分が染み渡るよ」

 

 

「もっと欲しい?」

 

 

「今はいいかなぁ…向こうから来る風が甘くてしょうがないよw」

 

 

「それもそうね」

 

 

和生と速水は向こうで膝枕をされている一人の剣士を見てそう言った。

 

 

「うるせー!お前らだって甘過ぎるんだよ!俺は今滅茶苦茶恥ずかしいわ!」

 

 

「…そんなに恥ずかしいならやめる?」

 

 

「いや、その必要はないな」キッパリ

 

 

「もう…///」

 

 

ミナトが即答すると凛香は照れながらも嬉しそうに膝枕をされている彼の頭を優しく撫でた。

ミナトはやはり恥ずかしいのか目を閉じてしまう。

そんな彼を見かねた和生が話題を無理矢理違う方向へを向けた。

 

 

「でもこの場所あの時のアレに似てるんだよなぁ」

 

 

「「「「「あの時のアレ?」」」」」

 

 

和生の言葉に他の5人が首を傾げる。

 

 

「うん、本編だと俺は今イギリスに居るんだけどね?」

 

 

「イギリスとか正気かよ…俺は日本から出たくないな…」

 

 

「あはは。まぁ、一応王族だから挨拶に言ってたんだよ。それでついでに『ヴラド』との本契約をしてきたんだけどさ?その時もイメージした武器が手の中に納まってたんだよね」

 

 

「そうですか、桜井君はこの世界をどういう物だと考えていますか?」

 

 

殺せんせーが和生にそう尋ねると、和生は口の中に入っていた飴を噛み砕いてこう言った。

 

 

「まだ完全に理解してる訳じゃないけど…殺せんせーの口ぶりから察するにミナト君たちの世界の殺せんせーなんだよね?それにそこにいる律も。つまり俺と凛香がミナト君たちの世界に取り込まれてしまって、その影響でミナト君と速水さんが律に誘われたとかかな?」

 

 

「ヌルフフフ、いい考察ですが間違っていますねぇ」

 

 

「そうなの?我ながらよく考えたと思うんだけどなぁ」

 

 

「何言ってんだ和生、決まってんだろ?前編を書いたのがコッチの作者だからだよw」

 

 

「あっ…」

 

 

メタい!メタいぞミナト君!作者間で決めた事に触れてはイケナイ!

作者たちがメタ発言に動揺している頃、彼等の話題は先程までの戦いについてに切り替わっていた。

 

 

「ミナト君は刀を使って戦うんだね、やっぱり刀って強いんだなぁ」

 

 

「そう言えばルウシェも刀を使ってるわよね?」

 

 

「うん、『紅桜』の事だよね?」

 

 

和生と速水の会話にミナトがツッコンだ。

 

 

「ルウシェって誰だ?それに『紅桜』って妖刀じゃねーかよ!」

 

 

「ルウシェって言うのは俺の妹だよ。イメージしたら画像とか出てくるかな?」

 

 

和生は目を閉じてルウシェの笑顔をイメージする。

すると電脳世界の一角にイメージ通りの笑顔を浮かべるルウシェの写真が映し出された。

 

 

「「…かわいい」」

 

 

ミナトと凛香はその写真を見てそう言った。

 

 

「見た目に騙されちゃいけないよ?たしかにルウシェは凄く可愛いけど、和生の事を圧倒しちゃうくらい強いんだから」

 

 

「嘘だろ!?俺はさっき結構ギリギリだったぞ!?」

 

 

「うん、私が見てても桜井の実力は相当なものだと思う」

 

 

速水の言葉にミナトは目を丸くして驚き、凛香も表情を崩している。

驚いている2人に和生は苦笑しながらこう言った。

 

 

「凛香が言ってることは本当だよ。『蒼魔凍』って結構危険な技なんだよね。俺はまだ完全には会得出来ていないし…とある戦いの時に暴走しちゃったんだよ。それをルウシェが止めてくれたんだよね」

 

 

「お前の妹凄いんだな…同じ剣士としては是非手合わせを願いたい所だ」

 

 

「また機会があったら連れてくるよ」

 

 

「あぁ、悪いな」

 

 

「いいよいいよ、ルウシェもきっと喜ぶから。それにミナト君ならきっといい勝負になるよ。普通の人なら『蒼魔凍』を使って繰り出される攻撃を躱すことなんか出来ないのに、ミナト君はいとも簡単にそれをやってのけたからね」

 

 

「あー、なんて言うか…来るっ!って分かったと言うか…直感で避けてた」

 

 

「ミナト、カッコよかったよ」

 

 

「うっ…サンキューな///」

 

 

褒めてくれる凛香の笑顔にやはりミナトは照れてしまう。

そんな事だからヘッポコリア充剣士と言われてしまうのだ。

 

 

「うるせぇ!!」

 

 

ミナトは何かを感じ取ったのか凛香の膝から起き上がって電脳世界の彼方へと銃をイメージして乱射した。

 

 

「ミナトどうかしたの?」

 

 

「なんか今すげーディスられた気がした…」

 

 

「ミナト君もいろいろ大変なんだね…」

 

 

「そっちの私も苦労してるんだ…」

 

 

「「哀れむな!」」

 

 

「2人とも仲いいなぁ」

 

 

「ほんとにね」

 

 

息ぴったりの2人に和生と速水は微笑み合う。

 

 

「律さん」

 

 

「はい、殺せんせー?」

 

 

「私たち空気になってますね」

 

 

「仕方ありません。私はあの雰囲気を壊すことは出来ませんから」

 

 

「そうですねぇ…仕方ありませんか…」

 

 

しょんぼりする殺せんせーを律が慰めている。

しかし4人はそんな事を気にもとめずに話し続ける。

 

 

「でもやっぱり違和感あるよね、同じ人物が2人もいるとさ」

 

 

「うん、顔も髪型も全部同じだもんね。違うのは服装くらい」

 

 

速水たちがそう会話している通り違うのは服装だけで全くの同一人物がいるのだ、違和感どころの話ではない。

 

 

「だからさっきも言ったけどちゃんと分かってるからね?間違えるわけないでしょ♪」

 

 

「ふふっ、分かってるわよ」

 

 

「お前ら尊敬するよ…」

 

 

「うん…本当にね」

 

 

和生が速水に笑顔を向けると速水は和生の肩に頭を乗せて寄りかかった。

そんな様子を並んで座っているミナトと凛香は苦笑いしている。

そんな2人に和生は表情をにこやかな物からキリッとした真剣なものに変えると2人に向かって自論を語り始めた。

 

 

「俺は思うんだよ、素直に自分の気持ちを伝えるのはむず痒いし恥ずかしいけど…伝えられずに後悔するよりは少し恥ずかしくてもちゃんと伝えた方がいいと思うんだよね。…ってちょっとカッコつけ過ぎたかなw」

 

 

そう言って頬を指で掻く和生は先程までの真面目な表情から一変してふわりと笑っている。

 

 

「いーや、そんな事ねーよ。お前の言う通り後悔するより行動した方が良いって俺も思う」

 

 

「あはは、同意してくれて良かったよ」

 

 

「凛香もそう思うよ…な!?」

 

 

「…///」

 

 

「ちょ、凛香さん!?」

 

 

ミナトが凛香の方を向くと、凛香は無言でミナトに抱きついた。

 

 

「そっちの私には負けられないから///」

 

 

「(かわいい!!)そ、そっか…///」

 

 

ミナトも照れながらもしっかりと凛香を抱き返した。

 

 

「あぅ…///」

 

 

「凛香?どうかしたの?」

 

 

速水が顔を赤くしているのを見て和生は彼女の顔を覗き込んだ。

 

 

「羨ましいなぁ…って。それと同時にいつも私ってあんな顔してるんだなぁ…って」

 

 

「凛香はいつだって可愛いから大丈夫だよ。それに…」

 

 

「きゃっ!」

 

 

「お望みならないくらでも♪」

 

 

「ばか、こんな時にまで蒼魔凍使わないで…///」

 

 

和生は一瞬のうちに速水の背後に回り込んで後ろから抱きしめた。

辺りになんとも言えない甘い雰囲気が漂う中、申し訳なさそうに4人を呼ぶ声が聞こえる。

 

 

「皆さ〜ん。そろそろお時間ですのでこっちの世界に戻ってきてくださ〜い」

 

 

「「「「はっ!」」」」

 

 

4人は律の声にはっと顔を上げる。

すると律と顔をピンク色にして律に取り上げられたネタ帳とは別の手帳にメモをとる殺せんせーの姿があった。

 

 

「ヌルフフフ、これはいい純愛小説が書けそうです」

 

 

「和生…」

 

 

「うん…考えることは同じだね」

 

 

ミナトと和生は顔を見合わせたあと、殺せんせーに向かって構えをとった。

 

 

「「凛香の可愛い姿をほかの奴らには晒させない!」」

 

 

「にゅやっ!?なんで2人とも来るんですか!?」

 

 

「「待てー!!」」

 

 

ミナトと和生はお互いに武器をイメージして殺せんせーに襲いかかる。

そんな2人の様子を見て速水たちは笑いあった。

 

 

「お互いに大変な彼氏を持っちゃったわね?」

 

 

「そうね、私たちの事になると周りが見えなくなるところとかそっくり」

 

 

「でもそんな彼が」

 

 

「大好きなのよね?」

 

 

「「ふふっ」」

 

 

「にゅやぁ〜!?」

 

 

「よし…手帳確保」

 

 

「ナイスだ和生!」

 

 

「流石の殺せんせーでも蒼魔凍を連発すれば何とかなるもんだね…でも…エネルギー切れ…」

 

 

殺せんせーから奪い取った手帳をミナトへと投げた和生は力尽きて倒れ込んだ。

 

 

「お、おい!大丈夫かよ!」

 

 

ミナトが焦っていると速水が和生の近くにやって来た。

 

 

「心配しなくて大丈夫よ。甘いもの食べればすぐに治るから」

 

 

「難儀な体をしてるんだな…」

 

 

「ほんとにね、じゃあ私たちは元の世界に戻るわね?」

 

 

「ああ、またな」

 

 

「じゃあね、もう1人の私」

 

 

「そうね、そこの剣士さんをちゃんと支えてあげてね?」

 

 

「まかせて」

 

 

「うぅ…ミナト君…そっちの凛香のことは頼んだよ?」

 

 

ヨロヨロと立ち上がりながら和生がそう言うとミナトは拳を前に突き出してこう言った。

 

 

「おう!任せとけ!そっちも頑張れよ?」

 

 

「うん、じゃあまた」

 

 

そう言って和生と速水の2人は入ってきた扉をもう一度開いてその中へ入っていった。

彼等を見送ったミナトたちも律によって現実世界へと無事に送り届けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー!なんだか不思議な体験だったな」

 

 

「本当にそうね」

 

 

「だよなぁ…って凛香!?」

 

 

「そうだけど…?」

 

 

「なんで俺の部屋にいるのでしょうか?」

 

 

「…も…いっ……から」

 

 

「なに?」

 

 

「もうちょっと一緒に居たかったから!律にこっちに送って貰ったのよ!」

 

 

「な、なんだってー!?」

 

 

ミナトは驚きのあまりベッドの上から落ちてしまった。

 

 

「そんなに驚くこと?」

 

 

「い、いやだってさ?目覚めたらベッドにいて隣に好きな奴がいたらビックリするって…」

 

 

「ごめん…」

 

 

「ち、ちがうって!責めてるわけじゃないから!」クゥ-

 

 

「あっ…」

 

 

「そういやまだ飯食ってなかった…」

 

 

「ふふっ 」

 

 

ミナトのお腹の音がなった事に凛香は微笑んだ後、彼の手をとった。

 

 

「なにか作ってあげようか?」

 

 

「いいの!?」

 

 

「うん、いいよ」

 

 

「助かったぁ…今これしか無くてさ?w」

 

 

ミナトは置いてあった激辛焼きそばのパッケージを凛香に見せる。

 

 

「そんなの食べさせるわけにはいかないね。じゃあ台所いこ?」

 

 

「あ、ちょっと待ってくれ!」

 

 

「なに…っ!?」

 

 

ちゅっ

 

 

「た、偶にはいいだろ?///」

 

 

「ば、ばか!早く行くよ!///」

 

 

「わ、わかったよ…///」

 

 

凛香はそう言ってミナトの手を引いて部屋を出て行く、勿論繋いだ手は離さないままに。

手を引く凛香とそれに続くミナトが幸せそうな顔をしていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飴だけじゃもう無理…」

 

 

「しっかりしてよ、普段はあんなにカッコイイのに…」

 

 

彼等と別れた和生は速水に支えられながら光の道を歩いていた。

 

 

「ごめんごめん…だけどやっぱりエネルギー補給は大切だよ?甘いものと凛香を俺から取り上げたら何日で廃人と化すか分かったもんじゃないよ」

 

 

「じゃあどうするの?」

 

 

「甘いものはまぁ…どうにかなるとして。凛香にはずっと一緒に居てもらわないといけないかなぁ…」

 

 

「なら安心よ。私は和生から離れるつもりないから…///」

 

 

「その笑顔は反則だよ…///」

 

 

こちらの2人もまた幸せそうな表情で歩いている。

そんな2人の前に一際大きな光が現れる。

 

 

「きっとこれを通ったら元の世界にいるんだろうね」

 

 

「うん、和生はイギリス、私は日本にね…」

 

 

「すぐ帰るから待ってて?そうだ!帰ったらデートしようよ!そうだなぁ…某夢の国とかでさ?」

 

 

「もう…そんなの要らない…だから…」

 

 

そう言って速水は和生の方を向いて目を閉じる。

 

 

「うん、わかった」

 

 

そう言って和生は速水の顎をクイッとあげると…

 

 

ちゅっ

 

 

速水の可愛らしい唇に口付けた。

 

 

「これでいい?」

 

 

「うん…///じゃあ私待ってるからね!」

 

 

そう言って速水は和生を置いて光の中へ走って行ってしまう。

すると速水の姿はすぐに見えなくなり、和生だけがそこに取り残された。

 

 

「あはは…照れ屋なところも可愛いんだから」

 

 

和生もゆっくりと光の中へと足を運ぶ。

 

 

「「「「(幸せだなぁ…)」」」」

 

 

場所は違えど4人は同じ想いを胸に抱いていた。

暗殺教室通う4人の殺し屋。

しかしそこを離れれば恋する普通の少年少女であり、愛する者のために己を磨き続ける一人の生徒だと言う事を忘れてはいけない。

交わることの無かった世界が交わり、彼等の絆は一層深いものとなったであろう。




最後まで読んで頂いてありがとうございます!

今回の文章は如何だったでしょうか?
私も尊敬するケチャップさんの顔に泥を塗らないように頑張ったつもりです。
とは言ってもまだまだ文才に難ありなんですがね(笑)

感想などお待ちしています!
そして改めてケチャップさん!コラボありがとうございました!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新年コラボ企画『殺執事』後編

はいはい!皆さん明けましておめでとうございます!
最近はめっきり更新が滞っていましたが、夏のハーメルン暗殺教室作家オフ会(3人のみ)で企画されたコラボを!大先輩であるケチャップさんとinvisibleさんと共に執筆させて頂きました!

文才のない私ではありますが、大事なまとめを託されましたので!全力で望んだつもりです!ケチャップさんの前編、invisibleさんの中編をご覧になってから、お読み下さい!

さぁ!ブラックコーヒーの準備は十分か!?


「っくぅ!殺ること殺った後の1杯は格別だな!」

「いやいや……デス栄は何もやって無いだろ?」

「殆ど俺とミナト君の邪魔してただけの様な気が……」

「んだと!?桜井!テメーは女相手に鼻の下伸ばしてただけじゃねーか!」

「いやいや、俺は凛香一筋だし」

「ははは……そこまで言いきれる和生ってやっぱ凄いよ」

 

殺執事閉店後、ミナト、和生、神栄の3人は店内で祝杯を上げていた。とは言っても、3人ともソフトドリンクなのだが……。特別働かず、遂には神崎に完全に封じられて閉まった神栄が1番晴れ晴れしい表情をしている。

ミナトはやっと終わったという安堵からか、肩の力が抜けているし、和生に至っては着ていたネクタイを緩め、ボタンを幾つか外している。幾ら超人的な力を持った中学生である彼らも所詮は子供、戦闘中に見せる程の集中力を常に張っていることは出来ないため、こういっただらけた姿を見せるのも当然である。

 

「とは言ってもなぁ……お前ら良くやるよ。俺には接客なんか無理だ。特に桜井、お前はヤバい」

「なんでさ?」

「だってなぁ……ミナト?」

「まぁ……何人の客が目をハートにして出てったかわかんないしね」

「自覚ないんだけど……」

 

神栄とミナトは思った。無自覚ほど恐ろしいものはないと。それと同時にこんなヤツと付き合っている並行世界の速水に尊敬の念すら抱いていた。

 

「おやおや、3人ともお疲れ様です」

「あっ、殺せんせー。何してたの?」

「ヌルフフフ。3人とも頑張っていましたからねぇ、写真?持ってきて上げましたよ♪」

 

殺せんせーの言葉に3人は今回の報酬を思い出した。宿題の免除もだが、彼等にとって最大の報酬は自身の彼女の写真が入った封筒。最初見せられた時はジックリとは見る事は出来なかったため、殺せんせーの触手に握られたソレは光り輝く黄金の様に彼らの目に写っていることだろう。彼らは男子中学生、青い衝動を持て余していても不思議では無いし、ましてや最愛の女性の写真だ。如何にヘタレな神栄であれ、純情なミナトであれ、常に頭の中が桜色(カルマ曰く)な和生であれ、宿題の免除の何倍も価値のある報酬だ。

 

「さぁ!さぁさぁ!受取りなさい少年諸君!」

 

殺せんせーの触手がそれぞれの前に封筒を差し出した。3人はゆっくりとその封筒に手を伸ばし……受け取った。

 

「こ、この中に凛香の写真が……」

「嬉しそうだね、ミナト君!」

「そ、そりゃ嬉しいよ!ほら……凛香のこと好き……だし」

「ひゅーひゅー」

「あはは、顔が真っ赤だよ?」

「うるさい!」

 

年相応に顔を紅潮させるミナトを見て、和生と神栄がからかっている。そんな様子を見て、殺せんせーがなにかしているのだが、3人は気分が高揚しているからか、全く気づく気配がない。

 

「それにしても、客は大して来なかったし、儲かったのか?法外な値段でもないし」

「んー、まぁ殺せんせーの生活がどうなろうと俺らには知ったこっちゃねーよ」

「俺としては早く凛香の所に帰りたいんだけど……」

「和生はどこまでも欲望に忠実だね……」

「3人とも、今日はもう上がっていいですよ〜。お礼にその制服もあげますから、有意義に使ってください!」

 

殺せんせーからの業務終了宣言。つまりこの後の時間は自由になったということだ。制服もくれるとの事なので、着替えるのが面倒な神栄はそのまま帰宅の準備を開始。ミナトは全身を元の服装に着替え直し、和生は上着だけ別のものに変えた。

 

「それでは和生君と神栄君は私がちゃんと送り届けますので!」

「「いやいや!その謎の魔法陣はなに!?」」

「にゅや?儀式には魔法陣が必要でしょう?さぁ!飛びますよ!!あっ!粋な計らいで恋人の所に飛ばしてあげますね!」

「いやちょ、おま!待てぇ!!」

「あー、うん……」

 

焦る神栄と何かを察したような和生。

 

「ふぁいとー」

 

ニヤニヤしながら神栄に激励を贈るミナト。テメェだけは殺す!そう言いながら神栄が拳を振り上げた時には……もう彼らの姿はその場にはなかった。

 

「あはは、騒がしいやつだったなぁ」

「その割には楽しそうな顔してますね?ミナト君?」

「まぁ……似たもの同士だからさ♪さて!俺も帰るとするよ」

「はい、気を付けて帰ってくださいね?」

「おう!」

 

元気の良い返事をしてミナトも店を後にした。

店内に残るのは……

 

「ニュフフ……ヌルフフフフフ!」

 

不気味な笑い声とともに、段ボール箱を取り出した殺せんせーただ1人のみ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「くっそ……あんのやろぉ……」

 

殺せんせー特製コックスーツを着たままの神栄は、見覚えのある一室に飛ばされていた。殺せんせーの別れ際の一言通り、今彼は恋人である神崎有希子の部屋にいるのだ。幸いな事に有希子本人はいないようだが……

 

「取り敢えずこの姿を見せるわけにはいかねぇ……着替えは持ってるしさっさと元のかっこ……うに」

「あーおくん、こんな所で何してるのかな?」

「あ、いや……えっと……その」

 

つい先程まで殺執事で彼女に良いようにされていた彼は、彼女への恐怖が抜けきっていない。内心では彼女の事を好いているのだが、依然としてヘタレなため、その気持ちを自覚しているだけで恥ずかしいのである。

 

「なぁに?私にご奉仕してくれるの?」

「ははは!そうそう!ご奉仕……はっ?」

「ふふっ、じゃあまずは……さっきの続き、しよっか?」

「つ、続きだと……!?」

 

思い出して頂きたい、彼が職務中に彼女に要求されていたことを。

 

『私をぎゅっと抱いて?』

 

ヘタレ、キングオブヘタレ、恋愛に究極に奥手な彼にとってハードルの高さはエッフェル塔並である。

 

「いやそれそんな高くねぇじゃねーか!エベレストとかにしろよ!」

「碧くんは誰に話しかけてるの?」

「はっ……いやなんでもねぇ……」

「ねぇ……して?」

「うぐっ……」

 

クラス一の美少女と名高い神崎の上目遣い。破壊力は凄まじいもので、ましてや惚れた女のそんな姿に男の理性が壊れないはずは無い。斯く言うヘタレでさえも一瞬フラついた。

 

「碧くんは……私の事好きじゃないんだ……?だからなんにもしてくれないんでしょ?」

「あ、いや!」

 

俯く神崎。その姿を見て神栄の脳裏に、『やーいなかした!』『そんなんだからヘタレ卒業出来ないんじゃない?』とそんな事をニヤつきながら言い放つ金髪と赤髪のクラスメイトの姿が浮かぶ。

 

(うぜぇ……)

 

神栄の中で彼らへのイラつきが高まっている中、神栄のポケットから例のブツが落ちてしまった。

 

「やばっ!?」

「コレって?」

 

神栄が落ちたそれを拾う前に、神崎が封筒を拾ってしまった。神栄はここで察した。終わった……と。

 

「これ……私の……碧くん?」

「い、いやさ!それをあのタコの野郎が持ってやがったから!取り返すために働いてたんだよ!」

 

神栄はどんな神崎の写真が入っているのかも確認出来ていないのだが、殺せんせーの口ぶりからしてかなり過激なものが入っているに違いないとは思っていた。言い訳をしなければ……死ぬ。いや……言い訳もしても死ぬ。彼は分かっていたのだ。自分には残された道はないと。

 

「もう……そんなに見たいなら……いいよ?」

「は?」

 

頬を赤らめた神崎は徐ろに上着のボタンを外し始めた。

 

「は?は?ちょ、は?」

 

何が起こっているのか理解できない神栄は呆然とするばかり。その間にも1つ、また1つとボタンが外されていく。

 

「ま、待て有希子!何してやがる!」

「えっ……だって碧くんは私のこういう姿が見たいんでしょ?」

「はい!?」

 

思わず敬語になった神栄は、神崎の手から封筒をひったくる。その中身を覗くと衝撃の写真が。

 

「あんのエロダコがぁ!!」

 

そこには教室で撮られたであろう神崎の着替え中の写真。脱ぎ掛けの姿は青少年の教育には良くないものばかりである。

 

「あとで殺す……」

「碧くん……?」

「いいか有希子」

「う、うん?」

「俺はヘタレだ。認めたくは無いがヘタレだ。お前を抱きしめてやることもキスしてやることも出来ねぇ。だからってな?自分のことは粗末にするんじゃねーよ。ほら……可愛いんだし」

 

なんという事だろう。あのヘタレが、ついに1歩踏み出したのである。

 

「ふふっ……碧くんって本当にカッコイイね。うんっ、碧くんが求めてくれるまで待っててあげるね」

(た、助か……)

「でも……待てなくなった時は……ね?」

(るのか……?)

 

神栄がヘタレを卒業することは出来るのだろうか。そして待てなくなった時、神崎がする行動とは…!?この続きは何処かの世界線で語られるであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん〜。仕事も終わりで宿題も免除!明日も休みだし本格的に聖地巡礼でも行っちゃおうかな?」

 

殺執事でのバイトが終わり、手持ち無沙汰になったミナトは、今日の朝にやろうと思っていた聖地巡礼について考えていた。

 

「沼津に行って、のっぽパンを買って、水族館に行って、そうだなぁ?あ、みかんどら焼きとかも食べてみたいかも」

 

流石は無類のアニメ好き。アニメについてこと細かく調べているようだ。どこに行こうか、どんなふうに過ごそうか、そう考えているうちに足取りは早くなり、あっという間に家に着いてしまった。

 

「ただいま〜。っと、返事が無いってことは誰もいないのか?」

「いるわよ」

「そっか〜……って凛香!?」

「なに?いたら悪いの?」

「そんな事ないけど!どうして?」

 

ミナトの問いかけに、速水は「ちょっと会いたくなった」と控えめがちに言った。そのたった一つの言葉と仕草だけで、ミナトは顔に熱が集まるのを感じる。

 

「昼間も会ったのに?」

「だってほら……忙しそうだったじゃない?だから……」

「まぁ、いいや!凛香がいて嫌なんて思った事ないしな」

「そ、そう?」

「あはは!当たり前でしょ?」

 

自分の思っている事を素直に相手に言える。これがミナトの魅力の一つなんだろう。速水の表情が優しいものになっている。

 

「それで?何しようか?」

 

場所をミナトの部屋に移し、荷物を片付けたミナトは床に胡座をかきながら、ベッドに腰掛ける速水に問いかけた。

 

「えっと……ミナトの部屋を見てたらこんなの見つけて」

「あ、それは最近ハマってるアニメのタペストリーだな。皆可愛くて頑張ってる姿に応援したくなるって言うかさ!」

「そうなの?ミナトがハマるってことは面白いのね」

「もちろん!特に生徒会長の子が俺は好きでさ?」

「へぇ〜?」

「あれ?凛香どうかした?」

 

先程まで笑って話していた速水の顔が強ばっている。ミナトには理解できていないが、女の子はヤキモチ焼きさんなのだ。自分の好きな人が別の人を、例えアニメの世界の人物でも好きなのは嫌なものらしい。

 

「ミナトが好きなのは私だけよね?」

「恋愛的な意味ではもちろん。凛香より俺を支えてくれる人は居ないし」

「それが分かってるならいいのよ」

「嫉妬してくれるほど俺を好きでいてくれてありがとな」

「……ばか」

「そうだ!今から旅行に行こう!ちょっと行きたい場所があってさ!」

「い、今から?」

「おう!泊まりがけで静岡まで!」

 

クローゼットから聖地巡礼セットを取り出したミナトは速水の手を取って引っ張る。ミナトは内心思っていた。

こんなに可愛い恋人がいるんだから、写真に映るものなんて見て喜んでる時間がもったいないと。一分一秒でも愛しい彼女と時を刻むべきだと。

 

「……もう!ミナトは行き当たりばったりなんだから」

「その割には凛香も楽しそうじゃん?」

「ええ、貴方とならなんだって楽しいわよ」

「……っ。それは反則」

 

2人は夕日の中を手を繋いで走り出す。翌日、どこかの水族館で仲睦まじいカップルが現れたと黄色いタコが語っていたとかなんとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みに、速水の秘蔵写真が伊武鬼に見つかり。ミナトが精神修行をさせられてしまった事は、ここだけの秘密だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……他の次元への出張は疲れるね」

「おかえりなさい」

「ただいま。って言っても凛香の家なんだけどさ」

 

金髪灼眼の少年、桜井和生もまた、愛する人の部屋へと飛ばされていた。

 

「あの……凛香はどうしてほっぺを膨らませてるの?可愛いだけだよ?」

「聞いたわよ。他の次元の私にデレデレしてたんですって?」

「えっ、いやその……うん」

「浮気よね」

「えっ?」

「別の私に浮気したんでしょ?」

「えぇ……」

 

学園内でも一、二を争う頭脳の持ち主である彼でさえも恋人の思考を読み取ることは困難だ。

 

「私だけの王子様じゃなかったの……?」

「……っ!?」

 

たった一言、彼の服の裾を掴んで言ったその言葉は、和生の陶磁器のような肌を紅くするのには十分だった。ここで和生は速水が何を言わんとしているのかを理解した。

 

「寂しかった?」

「……別に寂しくない」

「ふっ、ちょっとだけ待っててね?」

 

彼は速水の髪を何度か撫でた後、ジャケットを脱いでネクタイを締め、制服の上着を羽織った。

 

「お嬢様、この私めになんなりとご命令を」

 

片膝をついて、速水の手の甲に口付けながらそう言った彼の笑顔は、営業スマイル等ではなく、純度100パーセントの笑顔だ。速水もあまりの眩しさに赤面している。

英国の血が半分流れる彼のブロンドの髪はタキシードに映えているし、赤い瞳は、心を掴んで離さない。

 

「じゃあ……ぎゅってして?」

「仰せのままに」

「きゃっ」

 

和生は速水の手首を引いて彼女ごと自分をベッドへと投げ出した。立ったまま抱き締められると思っていた彼女にとっては不意打ちで、彼の胸にスッポリと収まってしまった。

 

「お嬢様、次は何をお望みで?」

 

英国の王子であり、普段は自分が従者を付ける側の彼が自分に奉仕すると言っているのだ。ましてやそれが好きな人であるなら胸が高鳴らないはずが無い。速水は顔を赤くしながらも、次の命令を口にする。

 

「証拠が欲しい……かな?」

「それはどういった?」

「言わせないでよ……ばか」

「ふっ、申し訳ございません。お嬢様が可愛らしかったのでつい♪」

 

下から見上げてくる彼の瞳から、視線を離せなくなってしまった速水。そんなに彼女に不意打ちをする和生。

 

「ひゃ……な、なに?」

「証……欲しいんでしょ?」

「それは……」

「まだ……早いからね?これで我慢して?」

「もう……それじゃ執事じゃなくて吸血鬼じゃない」

「ヴラドにあてられたのかもね」

 

さぁ?彼が愛しい恋人に何をしたのか?皆さんには分かるでしょうか?彼は写真の事なんてすっかり忘れていますが、彼が今幸せなら気づく必要は無いでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。

 

「ヌルフフフ! 彼らの執事姿の写真を売り捌けば更なるお小遣いを手にする事が……」

「ほほう?教師ともあろうものがダブルワークとは……どういうつもりだ?それも生徒の盗撮写真を裏サイトで売り捌こうなどとはな?」

「か、烏間先生!?何でここに!?」

「赤羽君たちから聞いてな……汚職教師がいると!」

「ひぃっ!?」

 

下衆な笑い声をあげる殺せんせーに、正義の鉄鎚が振りおろされる。殺せんせーは隠し撮り写真を忘れて逃げ去ってしまった。

 

「全く……ふざけた教師だ」

 

烏間は残された彼らの隠し撮り写真を手に取った。そして大きなため息をついてこういった。

 

「迷惑をかけた彼女達に送っておこうか。少しはまともな使い道だろうしな。彼らも喜ぶだろう」

 

烏間の選んだベストショットには……達成感に満ち溢れた3人の少年の笑顔が写っていたとか。




どうだったでしょうか?昨年は暗殺教室の映画も映画も公開し、今年は完全に二次作品でしか暗殺教室を追いかけられなくなります。だからこそ、私はゆっくりではありますが、この作品を完結させたいと思います。

そして改めて、今回コラボ、そしてオフ会をして下さったinvisibleさん、ケチャップさん!ありがとうございました!とても貴重な体験と楽しい時間を経験させていただきました!初の三作品によるコラボで至らぬ点もあったとは思いますが、最後までお付き合いありがとうございました!今後とも仲良くしていただけると有難いです。暗殺教室という作品が繋いだ『絆』。それが私達の間にも作られているのでは無いかと思います。こんな事を言うのは少し照れますが、お2人には良い刺激を与えてもらっています。オフ会で夜ご飯を食べた時に、今後の設定や、これまでの内容について話した時、お2人のよく考えられた構成に、負けてはいられないと思いました。それが今の私の作品に活かされていると断言できます。私を成長させてくれたお2人には、頭が本当に上がりません。

ケチャップさんとは、秋葉原の駅前で会ってからすぐに打ち解けることが出来ましたね!お互いに自分の服装の特徴を送りあったり、それっぽい人を見つけたのに声をかけられなかったりもしましたっけ(笑)お仕事で忙しい中私の我儘にお付き合いして頂きありがとうございました。同じく速水凛香というキャラクターをヒロインとする作者の先輩として、この先もずっと尊敬させて頂きますね!

invisibleさんは、学校のテスト後の補講がある中、予定を切り詰めてまで駆けつけてくださいましたね。invisibleさんとは、パズドラでメールを送りあった所から仲良くなって、コラボをして、勉強を教えたりもしましたね?来年度の推薦入試では、行き詰まった時、挫けそうな時、私達の言葉を、語り合った思い出を思い出して、頑張ってくださいね!


そして読んでくださった皆さん!暗殺教室が好きな皆さん!私達の作品を応援してくださっている皆さん!今後とも応援ほどを是非ともお願いします!

それでは感想など!お待ちしていますね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編の時間
新年の時間


皆さんあけましておめでとうございます。
いやー今年は色々なことがありましたね。
幾つも作品を抱えて執筆に時間がかかったりして申し訳ないです。
さぁ!新年一杯目のブラックコーヒーの用意はいいですか!?w


「「新年!開けましておめでとうございます!」」

 

 

桜井家の中でそう挨拶するのは桜井和生と速水凛香。

 

 

「今年は色々あったね」

 

 

「私にとってはホントに驚きの1年だったよ」

 

 

「そうなの?」

 

 

凛香の言葉に和生は首をかしげる。

 

 

「だって、クラスにカッコイイ男の子が転校してきたと思ったら。その男の子と付き合うことになったんだもん」

 

 

「それって…もしかしなくても俺のことだよね?」

 

 

「当たり前でしょ、他に誰がいるのよ」

 

 

2人は新年の挨拶であろうと何だろうと甘い雰囲気を漂わせている。

 

 

「俺は凛香と出会えたことは運命だと思うんだけどなぁ。でも1番驚いたのはトランサミンについてだよ」

 

 

「えっ?作者について?」

 

 

おやおや、私のどんな事を話すのでしょうね。

 

 

「投稿を初めたのが7月の頭だったのに、色んな作品に手を出してさ?投稿ペースが乱れたりして読者の皆さんに迷惑かけてるじゃん?そういう所をしっかりして欲しいよね」

 

 

うぅ、耳が痛い言葉をおっしゃる…

 

 

「まぁそうね、でも頑張ってるみたいだし読者の皆さん許してあげてね?進学先の課題とかで忙しいみたいなの」

 

 

凛香ちゃん…君はやっぱりみんなの天使だよ…

 

 

「まぁ、そうだね。あの人が俺と凛香のことを巡り会わせてくれた訳だし、感謝しないきゃね」

 

 

和生くんも嬉しいことを…

 

 

 

「まぁ、新年の挨拶もいいけど。読者の皆さんはこんなのよりもっと楽しみにしてることがあると思うんだ」

 

 

「和生…?」

 

 

「とりあえずコタツ入ろ?」

 

 

「うん、いいよ」

 

 

2人は居間にあるコタツに手を繋いで入る。

比較的大きめなコタツなだけに2人で並んで座ってもまだ少しスペースにゆとりがあった。

和生はコタツに入ると真っ先にみかんに手を伸ばした。

 

 

「冬にコタツでみかんは幸せ…」

 

 

「ふふっ、かわいい」

 

 

そんな和生の様子に凛香の表情が緩む。

 

 

「凛香、初詣はどうする?」

 

 

「おみくじ引きに行きたいな」

 

 

「じゃあ朝になったら行こっか」

 

 

「そうだね」

 

 

和生がそういうのもそのはず現在の時刻は0:30。

真夜中である。

 

 

「凛香も食べる?」

 

 

「じゃあ1つちょうだい」

 

 

「はい、どうぞ」

 

 

和生が凛香にみかんを渡すと凛香はいたずらっ子の様な顔をした後、剥いたみかんの皮を和生に向けて

 

 

「えいっ!」

 

 

「痛った!?」

 

 

みかんの皮にある汁を飛ばした。

皆さんもやった記憶がありますよね?w

 

 

「さすがツンデレスナイパー…狙いが完璧だよ」

 

 

「その呼び方やめてよ。ちゃんと名前で呼んで」

 

 

「うん、凛香」

 

 

「ふふっ、和生」

 

 

「「えへへ」」

 

 

2人と幸せ絶好調と言った顔をしているが、皆さんお忘れではないだろうか。

桜井家にはもう1人女の子がいるという事を。

 

 

「和生さ〜ん…速水さ〜ん…起きてます…?」

 

 

「あ、律!コッチだよおいで!」

 

 

目をこすりながらやって来る律、どうやらコピーロイドの充電が切れかけているようだ。

 

 

「律ってホントに人間みたいよね。髪の毛もサラサラだし、肌も柔らかいし」

 

 

「はい…、これがコピーロイドの力なんです。和生さんのために私は人間になろうとしたんです…」

 

 

そういって律は和生の右腕にしがみついた。

 

 

「り、律っ!?」

 

 

和生は困惑していた。

右腕に感じる柔らかな膨らみと可愛らしい律の眠そうな表情の破壊力は絶大である。

和生はコピーロイド充電用のコードに手を伸ばすと律の腰の部分に接続するため手を伸ばした。

 

 

「ひゃうっ…和生の手…冷たいですよ」

 

 

「凛香…どうすればいいの…?」

 

 

凛香に助けを求めるも、疑うような目で自分を見るだけで何も言ってくれない。

仕方なく和生は無理矢理コードを接続する事にした。

 

 

「ひゃうっ…くすぐった…あっ…」

 

 

「色っぽい声出さないでくれよ…!」

 

 

和生は恥ずかしがりながらも律の充電を開始することに成功した。

充電中はスリープモードになるため、律が眠っているのと同じようなものだ。

ほっと息をはいた和生は凛香の方に向き帰った。

 

 

「ご、ごめんね。律の充電に手間取っちゃって」

 

 

「ずるい…」ボソッ

 

 

「へっ?」

 

 

「和生は私の彼氏だもん…誰にもあげないんだからね!」

 

 

そういって今度は凛香が和生の左腕に抱きついてきた。

愛する彼女からの嬉しい言葉と抱きつかれた事への恥ずかしさで和生の顔は火が出るほど熱くなっていた。

 

 

「凛香…?」

 

 

「…して」

 

 

「??」

 

 

「キス…して?」

 

 

「っ!?」

 

 

かわいい彼女に上目遣いでキスをせがまれて耐えられるだろうか、いや耐えられない。

和生は右腕を律からスルリと抜き、凛香を思いっきり抱きしめた。

 

 

「ずるいよ…」

 

 

「えっ…?」

 

 

「そういうとこずるいよ…可愛すぎるんだから俺以外には見せちゃダメだよ?」

 

 

「あたりまえで…っ…///」

 

 

凛香が最後まで言い切る前に和生は彼女の唇を塞いだ。

一瞬強ばった凛香の体も長く口づけている間に力は抜けていた。

 

 

「ありがと…幸せだよ」

 

 

「和生にそう言ってもらえて私は嬉しいな」

 

 

「なんか少し眠くなっちゃったな…」

 

 

「じゃあ律を運んで部屋に行くの?」

 

 

「此処でいいよ」

 

 

「風邪ひいちゃうよ?」

 

 

「凛香を抱きしめて寝れば暖かいさ」

 

 

「もう、ばか…///」

 

 

幸せそうに瞳を閉じている3人、こんな幸せが彼らに続くことを作者は願っております。

今年も1年間、多忙な年ではありますが頑張りたいと思います。

これからもこの作品をよろしくお願いします。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

月見の時間

投稿が遅くなり申し訳ありませんでした。

実は作者間でのトラブルなどがありましてメンタルが殺られていましたw
そんな時支えて下さった仲の良い作者さんたちへ感謝の意味を込めて!そして私が書きたいという欲望から季節外れの番外編を書かせていただきます!


皆さんは『月』という物にどんな印象を抱くだろうか。

美しい、儚い、寂しいなど様々な印象を与えてくれる月を見て楽しむという風習が日本には古来より存在する。

これは月明かりのように美しい光を放つ少年と…その光を愛してやまない少女の物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は良い天気!学校もお休み!何をしようかなぁ〜♪律は中村さんの携帯に入って出かけてるみたいだし久しぶりに1人の休日だね」

 

 

美しいブロンドの髪をした少年桜井和生が少し遅い起床をした。

彼の言う通り今日は土曜日、学校が無いので時間を持て余しているようだ。

 

 

「昨日は熱が入って遅くまで修行しちゃったし…流石に体が悲鳴を上げてるや…うーん…あっ!そうだよ!」

 

 

ふとカレンダーを見た和生は何かを思いついたかのようにポン!と手を叩いた。

 

 

「たしか今日は満月何だって律が言ってたもんね♪まぁ、満ち欠けの話でずっと欠けちゃってるんだけど…お団子作って見ようかな♪」

 

 

和生は動きやすい服装に着替えた後、意気揚々と自室を出て台所へと向かった。

 

 

「よし!まずは材料があるかをチェックだね!えぇーっと…お団子用の粉はあるし…上新粉もイイヤツがある。あとは味付けをどうするか…だね。やっぱり甘いもの好きとしてはここは妥協できない!餡子は大納言のこし餡がある…みたらしも作れるし…まぁ、後は気分次第でいっか♪」

 

 

和生はふわりと笑うと鍋に水を入れて軽く温め始めた。

 

 

「まずはボールにお団子の粉を入れてと、耳たぶくらいの柔らかさになるまで少しずつぬるま湯を加えてこねるよ!って誰に説明してるんだろ?まぁ…いっか♪」

 

 

和生は流石の手際で団子の生地を作っていく。

しかし途中でその手を止めた。

 

 

「耳たぶくらい…か。俺の耳たぶじゃなんかなぁ…wもし凛香の耳たぶだったら…」

 

 

和生は愛する恋人の耳たぶの感触を想像して真っ赤になってしまった。

 

 

「はっ…///だめだめだめ!変な事考えちゃダメだよ!取り敢えず今はこれくらいでいいかな?後の仕上げは夕方にたほうがいいかな〜。やっぱり出来立ての方が美味しいもんね!」

 

 

和生はそう言うと作った生地にラップをかけて台所を後にした。

その後軽い昼食を食べ、学校の宿題を終わらせてのんびりとしていた。

すると彼の携帯電話が着信を知らせるメロディーを流した。

 

 

「はい、桜井です」

 

 

『あっ…和生?』

 

 

「凛香、どうしたの?」

 

 

『えっと…』

 

 

「ゆっくりでいいよ?携帯会社同じだから通話料金は気にしなくていいしね♪」

 

 

『ふふっ…そうね。それで本題なんだけど…今から会える…?』

 

 

「いいよ?宿題も終わらせちゃってすること無かったかしね。まぁ、凛香と会うためなら宿題なんてどうでもいいんだけどさ」

 

 

『じゃあ…会えるのね?』

 

 

「うん、今どこにいるの?迎えに行くけど」

 

 

『和…の…の前…』ボソッ

 

 

「ん?」

 

 

『か、和生の家の前…///』

 

 

「ふぇっ!?わ、分かった!」

 

 

和生は速水との通話を切ると急いで玄関へと走る。

そしてドアを開けると…

 

 

「あっ…///」

 

 

頬を赤く染めた速水の姿が。

彼女の姿は普段の凛とした雰囲気とは正反対の可愛らしい水色のワンピース姿。

透きとおるような白い肌と水色のワンピースが良く合っている。

 

 

「なんか…急に来ちゃってごめん」

 

 

「それはいいんだけど…何でまた急に?」

 

 

「それは…」

 

 

「それは?」

 

 

「会いたく…なっちゃったから…」

 

 

「ぐっ…///」

 

 

速水の一言で和生の心が一瞬にして撃ち抜かれる。

E組切ってのスナイパーである彼女は、桜井和生という男の心を射抜く事に関しては誰にも負けないのだ。

 

 

「と、取り敢えず入ってよ…///」

 

 

「あっ、うん。お邪魔します」

 

 

和生は赤くなっている顔を隠すように速水を家の中に招き入れ、リビングへと誘った。

 

 

「あれ、律は?」

 

 

「中村さんと矢田さんと倉橋さんが出かけるらしくて、中村さんの携帯に行ってるよ」

 

 

「じ、じゃあ」

 

 

「うん、期せずして2人きりだね」

 

 

「そ、そうみたいね…///」

 

 

今度は速水が照れてそっぽを向いてしまう。

和生は速水にソファーに座るよう促すと自分もその隣に腰掛けた。

 

 

「でもまさか電話をかけてきた時には家の前に居たなんてびっくりしちゃったよ」

 

 

「ご、ごめん…電話するよりも先に体が動いちゃってて…迷惑だった?」

 

 

「何言ってんのさ?こんなに可愛い凛香の姿が見られたんだから迷惑なわけないよ?言うのが遅くなったけどその服すごく似合ってるよ」

 

 

「あ、ありがと」

 

 

「でも凛香が来るならもう少しお洒落な服装してればよかったよ」

 

 

「もう…どんな格好でも和生はカッコイイから気にしなくていいわよ」

 

 

「あはは…そうだといいんだけどなぁ」

 

 

和生が苦笑していると再び携帯に着信が入る。

 

 

「はい、桜井です」

 

 

『あっ!桜井ちゃん?』

 

 

「中村さん?どうしたの?」

 

 

『今日うちら泊まりやるんだけど、律もずっと私の携帯に居るっていうから連絡をね』

 

 

「あ、了解です」

 

 

『じゃね〜』

 

 

そう言って中村が通話を切ったのを確認すると和生は速水に通話の内容を話した。

 

 

「へぇ〜。じゃあ和生は今夜1人なの?」

 

 

「そうなるかな。まぁ、夜ご飯の準備は出来るから大丈夫だよ」

 

 

「そうなの?」

 

 

「うん!朝から仕込んでるから!ちょっと待ってて!」

 

 

和生はそう言うとソファーから立ちあがり台所へと向かった。

 

 

「これを作ってたんだ!」

 

 

「なにかの生地?」

 

 

和生はボールを速水の元へ持っていき、中身を見せた。

 

 

「お団子!今日は満月って律が教えてくれたから作ってたんだ!良かったら凛香も食べてく?」

 

 

「えっ、いいの?と言うかずっと三日月よ?」

 

「そう言うのは気分が大事なの!だから満ち欠けの周期的には満月だから!寧ろ一緒に食べてくれたら嬉しいよ!1人より2人の方が美味しいに決まってるから!」

 

 

「じゃあお母さんに連絡入れておくね」

 

 

「はーい!」

 

 

このやりとりの後、2人は至って普通に過ごしていた。

テレビでニュースを見てその内容について話をしたり、家にある簡単なゲームをしたりして時間を費やしていった。

そして夕方

 

 

「よし!じゃあお団子を完成させよう!」

 

 

「お、おー?」

 

 

2人は並んで台所に立っていた。

 

 

「まずはお鍋にお水を入れて沸騰させるよ!」

 

 

「はい、じゃあ火をつけるわね」

 

 

「うん、ありがとね。じゃあ次は均等に分けたお団子の生地を丸めるよ。水が沸騰したらお団子を入れて15分くらい茹でて、その後水で〆ておしまい!」

 

 

「案外簡単に出来るんだ」

 

 

「そうだね、でも凛香が手伝ってくれたからこんなに早く出来たんだよ?だから飛びっきり美味しいの作るからね!」

 

 

「あ、ありがと…///」

 

 

和生はその後、みたらしのタレと霙大根つくり餡子を取り出した。

 

 

「じゃあ外行こっか?」

 

 

「そうね、もういい時間だし」

 

 

現在の時刻は夜7時すぎ、あたりもすっかり暗くなっていた。

速水は作った団子と三種類の味変、湯呑みに入ったお茶をお盆に乗せて外へ出る。

和生は簡易テーブルを持って外へ出た。

2人は庭にあるベンチに腰掛け、和生が持ってきた簡易テーブルの上にお盆を置きお団子を口に運んだ。

 

 

「なんだかこういうのも悪くないね」

 

 

「そうね、それに和生の作るお菓子は美味しいし」

 

 

「そう言ってくれると嬉しいな。それに今日は月がよく見えるよ」

 

 

「雲が無いから確かに綺麗ね。…まるで和生みたい」

 

 

「えっ?」

 

 

速水の言葉に和生は首をかしげた。

 

 

「だって和生っていつも綺麗に輝いてて私たちを優しく照らしてくれる…だけどどこか朧気だから」

 

 

「そうなの?」

 

 

「うん」

 

 

「俺が月なら凛香は太陽かな?」

 

 

「どうして?」

 

 

「月ってさ?太陽の光を反射して輝いてるでしょ?」

 

 

「そうだけど…それが?」

 

 

「だから凛香は太陽なんだよ。俺がいつも輝けるのは…頑張れるのは凛香がいるから。凛香がいないと俺の光は無くなっちゃうんだ」

 

 

「和生…」

 

 

「ねぇ凛香」

 

 

「なに?」

 

 

「月が…綺麗ですね」

 

 

「えっ…///」

 

 

「…」ニコッ

 

 

「…死んでもいいわ///」

 

 

「凛香…」

 

 

「和生…」

 

 

2人は見つめ合い…そして…月明かりの下で2人の影が重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月は太陽の光が無ければ輝くことは出来ない。

そして太陽はいつも地上を照らすことは出来ない。

お互いがお互いを支え、どちらが欠けてもいけないのである。

今宵月明かりの下で愛を誓いあった2人に幸福が訪れることを願うばかりだ。




感想などお待ちしていますね♪

設定にミスが見受けられたために修正されています。
ご了承ください♪


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1周年の時間

気付けばこんなに時間が経っていましたね…

今回は久しぶりに昔の書き方で。
この話は本編とは別の世界なので悪しからず。


 

「Happy Birthday!!」

「お兄様?誰に向かって言っているのです?」

「それはまぁ、この作品が始まって1周年だけど誰にも祝ってもらえず、誰にも認知していてもらえなかった可哀想な作者に向かってだよ」

「なるほど!情をかけているわけですね!」

「まぁ、そんな所かな」

 

開幕から生みの親である作者をdisっている2人、書いている私は涙目だが、事実なだけに何も言えない。

2人は庭のベンチに座ってアイスを食べているようだ、この暑い季節さぞ美味しいことだろう。

 

「それにしても暑いよねぇ〜。記念だからって現実と同じ気候にしなくても…」

「はい。ですが、その分アイスが美味しいです!」

「確かにね、このソーダ味の清涼感がまた…格別だよ」

「お兄様はさっぱり系がお好きですね。私はイチゴが好きなので♪」

「幸せだね〜」

「そうですね〜。そういえばお兄様、この作品の事で思った事があるのですが」

「ん?なになに?」

「作者は書き始めてから現段階までは事前に考えておいた筋書き通りだと思っていますけど、張っておいた伏線が多過ぎて回収しきれてないですよね?」

 

非常に痛い所を突いてきますなぁ…確かにたった1話の為だけにあのキャラにあーしてこーしてとかしてるけど…やりすぎた感は否めない…

 

「まぁ、でも呼んでる皆さんは読み返したり、読んでる途中に、あれ?これってもしかして?って思ったりしてくれてるかもしれないでしょ?だから一概には悪いとは言えないよ。それに凛香がメインの話とかも偶にあって嬉しいし」

「私がどうかしたの?」

「お姉様!」

「噂をすれば何とやらだね」

「何言ってるのよ?呼んだのは和生でしょ?」

 

ベンチに腰掛けていた2人のもとに速水がやってくる、速水はこの気候だけあって薄着、オフショルダーの白いシャツに水色のスカート姿だ。誰とは言わないが金髪で赤目の少年が好みそうな服装をしている。

 

「会う度に思うけど、凛香ってオシャレだよね。毎回違う服装でドキッとさせられるし」

「お兄様、口元が緩んでいますよ?」

「あはは、こんなに可愛い恋人がいて俺は幸せ者だなぁと思ってたらついね」

「はぁ…和生って素でそういう事言うんだもんね…」

「嫌だった?」

「べ、別に嫌とは思ってないけど…」

 

ぷいっと首を逸らしてしまった速水を見て和生とルウシェがまた笑った、2人は食べ終えたアイスの棒を数メートル離れた場所にあるゴミ箱に投げ入れた。すんなりと入れてしまうのは修行の賜物なのだろう。

 

「それで?今日は何をするつもりなの?」

「もう少ししたらもう3人、人が来るはずなんだけどね」

「あっ!来たみたいですよ!」

「おーい!お前ら!」

「本当に暑いな…」

「ほらほら千葉くん!だらけないだらけない!」

 

やって来たのは磯貝、千葉、片岡の3人だ。

磯貝はいつも通りのイケメンオーラを発しているし、片岡も凛とした雰囲気を漂わせている。一方の千葉は暑さにやられているのかガックリと肩を落としている。

 

「悠馬!よく来てくれたね!」

「まぁ、親友に呼ばれれば余程のことがない限りはちゃんと来るって」

「それで?私が呼ばれた理由は?凛香ちゃんがいるのはわかるけど」

「磯貝と付き合ってるからでしょ?和生の事だから…」

「よし、悠馬。ダブルデートしようか!」

「んー、メグが良いならまぁ…」

「はぁ…どうせダメって言っても行くんでしょ?」

「私の彼氏が迷惑かけます…」

「俺は何のために呼ばれたんだ…何の関係もないだろ」

 

先程まで項垂れていた千葉が顔を上げてそう言うと…

 

「千葉さんは私の修行に付き合って頂けますか?」

「まぁ…いいけど。なんで俺なんだ?」

「遠距離射撃を紅桜で弾く練習がしたいんです♪」

「お、おう」

 

笑顔でとんでもない事を言い放つルウシェだが、出来てしまいそうな気がするために千葉は頷くしかなかった。

 

「じゃあ一旦ここで解散という事で!行くよ!」

「おいおい…全く。じゃあ俺らも行くか」

「そうだね。ほら凛香ちゃんも」

「うん、わかってる」

 

こうして1周年記念とは全く関係の無い彼らの普通の1日が始まった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「相変わらずここは色んなお店があって賑やかだね」

「結局ここなんだな」

「悠馬くんはよく来るの?」

「ああ、和生と修行した帰りなんかに2人で少し見て回ったりするよ」

「ゲームで負けた方の奢りなんだけど…いつも俺が負けるんだよね…」

「磯貝って何でも卒無くこなすもんね」

 

俺達は今、ショッピングモールに来ています!皆も知ってるよね?俺と凛香がデートで来たところだよ!今日の目的はまぁ、普通にデートしたかったってのもあるけどさ?そろそろ悠馬たちの関係も勧めたいと思って!だって悠馬ってイケメンのくせにヘタレだしね!

 

「一昨日で八連敗目なんだよね…」

「はいはい、慰めてあげるから」

「じゃあパフェ食べに行こう!あ、やっぱり先に服かな?」

「うん、好きなだけ付き合ってあげる」

 

俺は凛香の手をそっと握ると後ろにいる悠馬達の方へ振り返る。

 

「あれ?2人は手を繋いだりしないの?」

「あはは、俺達はまだ…な?」

「う、うん」

「まぁ、2人が良いならいいけど」

 

相変わらず…か。取り敢えず今はデートを楽しむ事にしようかな?俺達は学生でもお手頃な価格で買うことが出来るアパレルショップに足を運んだ。

俺がいつも使ってるだけあって店員さんとも顔見知りなんだよね〜♪

 

「…どうかな?」

「おぉー!すっごい可愛いよ!流石凛香だね!」

「…ばか///」

 

今何をしているかというと!凛香にいろんな服を着せて楽しんでます!ワンピースやブラウスにいろんなスカートを合わせてるんだけど、どれも可愛いから目の保養には最高だね!

 

「今俺、凛香と付き合えてる幸せを噛み締めてるよ」

「そりゃあ私だって和生と付き合えて幸せだけど…こんな事で?」

「当たり前でしょ?どんな些細な事でも、凛香の事なら俺の中では一番大きな事なんだからさ」

「あーもう!そんなんだから本校舎の女の子達からラブレター貰うのよ!」

「全部丁寧に断ってるんだからいいでしょ!?」

「私は気が気じゃないの!私より可愛い子なんていくらでもいるんだから!」

「…店員さん。今彼女が着ている服、カードで一括お願いします」

「お客さま、かしこまりました」

「…行くよ」

 

俺は速やかに会計を済ませ、凛香を連れて店の外に飛び出した。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「あいつら…どこ行ったんだ?」

「さぁ?でもいいんじゃない?2人だけの方が気楽でしょ?」

「そりゃ、違いないな。メグは着たい服とかないのか?」

「わ、私は別に…」

 

和生達が居なくなってメグも自分の趣味を出せるかなとか思ってたんだけどな…うーん…俺の前くらいは好きな物を好きなだけ着ればいいと思うんだけどな…

 

「俺はどんなメグでも嫌いになるなんて事は無いんだしさ?どんなのが好きなのか教えてくれよ」

「悠馬くん…その…あそこにあるやつが…」

 

メグが指さした方向にあったのは、所謂姫系と呼ばれる服があるコーナーで、こういった1面が見られると、イケメグなんて呼ばれている彼女だけど、やっぱり1人の女の子なんだなって実感する。

 

「良いじゃんか!着てみろって!」

「で、でも私には似合わないって」

「着てみなきゃわかんないだろ?俺達はいつだって不可能なことを可能にしてきたじゃんか!ほらほら!試着試着!」

 

俺は嫌がるメグを選んだ服を持たせて試着室に押し込んだ、次に試着室のカーテンが開いた時に俺が言葉を失ったのは言うまでもないよな?

あの光景は言葉にできないや…

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ここからにするか…」

 

俺は今、学校の裏の山に来ている。ルウシェの修行の内容は至ってシンプル、俺がペイント弾でルウシェを狙い撃ちそれをルウシェが蒼魔凍無しで迎撃するという物だ。練習用のライフルに赤いペイント弾を装填して時を待つ。スコープから見えるルウシェの様子は、目を瞑っていて、気配を探っているようにも見えた。

 

(勘付かれる前に…殺る!)

 

俺はライフルのトリガーをトリガーを引き絞った。

 

「…っ!!」

 

俺は目を疑った。勘違いしないで欲しいが、ペイント弾はしっかりとルウシェに命中している。彼女の肩に命中し赤い水性ペイントが弾けている。

だけど…!ルウシェが紅桜を振り抜いた方角は間違いなくコチラ…コンマ数秒のズレだったとでも言うのか!?

 

「ふっ…桜井兄妹…本当に化け物だな…」

 

俺は狙撃ポイントを移すために移動を開始した。ルウシェが定位置から動く事は無い。俺は二百メートル程移動して再びライフルを構え…トリガーを引き絞る!!

今度は3発、弾道をミリ単位で変えて撃ち込んだ。

 

「…俺の負けだな」

 

撃ったペイント弾は1発は命中したが、2発は弾かれてしまった。ルウシェの反射に驚いているが、それよりも斬られた悔しさの方が大きかった。

俺はそれから暫くの間、残りのペイント弾が無くなるまで彼女を狙い続けた。残弾が無くなったのは日が沈む頃のことだった。

 

「千葉さん!ありがとうございました♪」

「いや、途中から俺もルウシェに当てる事だけ考えてたし。気にするな」

「えへへ、それは良かったです。あ、そこにあるお水取ってもらってもいいですか?」

「わかった」

「ふぅ…気持ちいい〜♪」

 

ルウシェは俺が手渡したミネラルウォーターのボトルを受け取ると、頭から水をかけ始めた。体にまとわりついていたペイントが流れ落ちる。この暑さもあって余程気持ちがいいのだろうか、ルウシェの表情は笑っている。

 

「お、おい!ルウシェ!」

「はい?何でしょう?」

「…透けてるぞ」

「へ?き、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「何も見てなかった事にするから早く隠せ…」

「うぅっ…///」

 

いや…俺も見たくて見たわけじゃないぞ?不可抗力だ不可抗力。俺だって男だ…まぁ、透けた肌や下着を見ればドキドキさせられる訳だが…ここまで恥ずかしがられれば話は別だ。

 

「え、えっと…その…ごめんなさい…見苦しいものを見せてしまって」

「いや、俺は何も見てないぞ…」

「だ、大丈夫です!その…修行の日々であまり綺麗な体ではありませんから」

「だから俺は何も見てないって言ってるだろ?ただ…そうだな。ドキッとさせられたとだけは言っておくよ。綺麗じゃない奴が他人をドキッとさせられるわけないよな」

「…そうなんですか?」

「あぁ…そういうもんだ。帰らないか?アイツらも帰ってきてるだろ?」

「あっ!待って下さ〜い!」

 

自分でもらしくない言葉を掛けちゃったかもな。

でも、桜井と一緒でルウシェも笑ってる方が良く似合うと俺は思う。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「ちょっと!待ってってば!」

 

俺はそんな凛香の制止の言葉も聞かずに走り続けた。気付けばショッピングモールを出ていて直ぐの公園にやって来ていた。

 

「いきなりどうしたの…?」

「凛香が悪いんだよ」

「えっ…」

「自分より可愛い女の子なんていくらでもいるなんて言うから。先に言っとくけどね?凛香は可愛いから、他の皆には悪いけどクラスでも断トツだよ。先ず見た目、文句無しのルックスだよね?さらさらした髪も、透き通るような目も、絹みたいにすべすべな肌も、俺は大好きたしさ。次に性格、偶にぶっきらぼうな時もあるけど、それは照れてるだけで実際嬉しそうにしてるのがわかるから俺は気にしてないし。イヤイヤ言いながら俺のしたいことに付き合ってくれる優しさも…」

「ストップ!ストップ!それ以上は恥ずかしい///」

 

まだ語り切れてないよ!俺の凛香への気持ちを全て語るにはそうだな…最短1週間はかかるね!

 

「私のことを好いてくれてるのはわかったけど…ここ…外だから」

「あ、やっぱり暑いかな?何処かお店入る?」

「そういう事じゃなくて!恥ずかしいの!」

「んー、照れてる凛香も可愛いから俺からすると何の問題もないんだけど…」

「私があるの!」

「そう言えば、服のタグとか取ってなかったね。こっちおいで?」

「…うん」

 

俺は凛香を呼ぶとさっき買ったばかりの服のタグを切り取る、こういう時にキーケースに入ってる仕込みナイフが役立つよね。何事も無く俺は切り取ろうとしたんだけど…

 

「…」

「…和生?」

「…白…なんだね」

「なっ!?見たの!?」

「あはは…いいと思うよ?俺は凄く好きな色だし」

「あーもう!私が喜ぶ言葉で誤魔化さないの!ほら!パフェ食べるんでしょ!行くよ!」

「あ、待って待って!」

「許さないからね!」

「えぇー!?どうしたら許してくれる…?」

「そうだね…パフェ、全部和生が食べさせてくれるならいいよ」

 

それじゃあ御褒美だよ?まぁ、凛香がそれで許してくれるなら何だっていいけどね♪

 

「じゃあ俺の手はそれで塞がっしちゃうから俺には凛香が食べさせてね?」

「…それでいいわよ」

 

あはは!今日も俺の恋人は世界一可愛いです!

 

 

 




1周年記念とは一体なんだったのか。

そして本当にあっという間でしたね。様々な方に応援され、コラボ等の経験もさせてもらい、実りある1年でした!

これからもゆっくりではありますが更新を続けていこうと思います!読んでくれている皆さん、これからも応援してもらえると嬉しいです。

感想や評価などお待ちしています!
次の更新は私の誕生日とかかな…?(笑)

高評価を下さった

はるぴーさん

ありがとうございます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

本編の時間
紹介の時間


主人公のキャラ紹介をしていきます


桜井和生(さくらいかずき)

 

 

 

誕生日 7月18日

身長 169cm 体重 56kg

血液型 A型

好きな教科 社会、体育

苦手な教科 英語

趣味・特技 料理(会話)

所属部活動(過去) サッカー部

宝物 後日追記

好きな食べ物 たい焼き

嫌いな食べ物 茄子、玉ねぎ

好きな飲み物 コーヒー

嫌いな飲み物 緑茶

弁当派or買い食い派 弁当派

選挙ポスター 天使と悪魔のハーフ

弱点 寂しがりや、涙脆い、糖分が切れると落ち込む

外見の特徴 金髪に紅い目をしている髪は肩くらい

ジュリウスを少しショタにしたイメージです。

 

個別能力値(5段階)

体力 4

俊敏性 5

近距離暗殺 4

遠距離暗殺 5

学力 5(糖分が切れると2)

固有スキル 隠密 剣撃

 

 

 

作戦行動適正チャート(6段階)

作戦立案 6

実行力 5

技術力 3

探索・諜報 6

政治・交渉 5

 

 

 

烏間先生の評価

自ら作戦を即座に立てそれを実行できるのはとてもいい。近距離、遠距離両方の暗殺に長けているためクラスで行う暗殺の鍵となっていると言っても過言ではない。

だが余程甘い物が好きなのか没収された時の落ち込み様が暗殺に響かないといいが…

常に殺気を隠しているため俺も油断できない。

心がとても繊細なため少し気遣いが必要なのも特徴と言える。

 

 

 

桜井和生 概要

中学入学までは母親と2人暮らしだったが中学2年の時母親が海外出張中に病死…

それいらい1人で生活をしている。

 

 

 

以前いた中学校では常に学年トップ3には入れる学力を備えており周りからの信頼も厚い生徒であった。

母親の病死を境に周りからの憐れむような視線を感じる様になりとても敏感で繊細な感覚と心を持つ。

ついにその空気に耐えられなくなり転校を決意する。

引越した日にいきなり道に迷うがそこに居合わせた磯貝に助けられ2人は親友になる。

 

 

 

クラスメイトから見た桜井

 

 

カルマ⇒純粋だから悪戯にすぐひっかかる

磯貝⇒優しい心の持ち主

岡島⇒俺のエロが通じない…

岡野⇒ガラスのハートすぎ

奥田⇒カルマ君と同じ位頭がいい

片岡⇒男の中で話が通じる

茅野⇒女の子みたい

神崎⇒笑顔が可愛い

木村⇒なんだろうな…

倉橋⇒動物が好きな人に悪い人はいない

渚⇒親近感を凄く感じる…

菅谷⇒絵の下手さに驚いた

杉野⇒スポーツの話で盛り上がれる

竹林⇒自分の趣味を理解してくれる

千葉⇒話しかけやすい

寺坂⇒体は小さくねぇがまだまだガキ

中村⇒イジると慌てるから面白い

狭間⇒特にない

速水⇒男なのに可愛い、お菓子をあげたら懐いた

原⇒料理の話ができる

不破⇒漫画を教えてあげたい

前原⇒純粋すぎて逆に怖い

三村⇒彼で動画を撮りたい

村松⇒見た目と裏腹に強い

矢田⇒見た目と中身のギャップが凄い

吉田⇒頭がいい

 

 

 

この様な設定で書いていきたいと思います

よろしくおねがいします!!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

友達の時間

主人公と磯貝くんの話になります!


それは彼が3年生になる時の出来事

 

 

「自ら進んでE組に行きたいと言った生徒は君が初めてだよ」

 

 

「じゃあ俺は理事長先生の歴史に残る生徒になるわけですね」

 

 

「いい歴史ではないがね、まぁ明日からせいぜい足掻いてくれたまえ」

 

 

「それじゃあ、失礼しました」

 

 

 

理事長先生と編入の話を終えて理事長室から出てきた俺の名前は桜井和生(さくらいかずき)ついさっき特別クラスへの移動を頼んできた。

3年E組 通称エンドのE組。

成績の悪い生徒や素行不良者で構成されている落ちこぼれのクラス 授業は隔離校舎で行われ学食もなければ部活も出来ないしさらに本校舎の生徒や先生には見下される 最悪の場所。

自ら進んで行くような場所ではないのは確かだ。

だが俺はそんなE組にいる生徒たちが自分のと同じような生徒なのではないかと思えていた。

他にも彼は考えているようだが今は触れないでおこう。

 

 

「夜ご飯の買い物して帰らないと…」

 

 

彼はまだ知らないこの選択が彼の人生を大きく変えることを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「完全に迷った…」

 

 

昨日引越して来たばかりのカズキは椚ヶ丘のことを

ほぼ全くと言っていいほど知らない

奇跡的にスーパーにたどり着くことはできたものほど

帰り道がわからないことに気がついた

 

 

「君、大丈夫か?」

 

 

聞いたことのない声に振り向くと椚ヶ丘中の制服を着たとても爽やかそうな生徒が立っていた

 

 

「昨日引越して来たばかりなんだけど道に迷っちゃったみたいでさ…」

 

 

「この街は結構デカイから引越たばかりじゃ迷っても仕方ないよ、俺は磯貝悠馬、君は?」

 

 

「俺は桜井和生、明日から椚ヶ丘中学校3年E組に編入になったんだ」

 

 

「E組に編入!?、俺もE組なんだよ。よし!これも何かの縁だ、家まで送ってくよ」

 

 

「いいの?」

 

 

「もちろんだ!明日から俺たちの仲間だからな」

 

 

「(イケメンだ…)ありがとう!」

 

 

「いいっていいって!」

 

 

「お礼になるかわかんないけど夜ご飯ご馳走するよ」

 

 

「いや…俺の家兄弟多くてさ。だから送ってったらすぐ帰るよ」

 

 

「じゃあ磯貝くんの家で俺が作ればいいよね?」

 

 

「なんか悪いな…」

 

 

「助けてくれたお礼だって!」

 

 

カズキは磯貝に笑顔を向ける、その笑顔に磯貝が感じたものは

 

 

(何か抱えてそうな笑顔だ…)

 

 

「俺のことは悠馬でいいよ!それじゃあいくか桜井くん」

 

 

「俺もカズキでいいよ?それじゃあお願い」

 

 

 

 

カズキは磯貝の案内で彼の家にいき晩御飯を作ったカズキは料理が得意なので自信のあるロールキャベツを

磯貝に振舞った、磯貝の弟たちにも好評だったらしいそのこと帰り道に教えられた

 

 

「弟たちも喜んでたよありがとうカズキ」

 

 

「道に迷ってる知らない人を助けてくれる悠馬の優しさへのささやかなお礼だよ」

 

 

「カズキも十分優しいじゃないか」

「そうかな?あっ、良かったら友達になってよ」

 

 

「ん?俺たちもう友達だろ?」

 

 

「(笑顔が眩しい…)ありがとう!」

 

 

気がつくと椚ヶ丘中の前まで来ていた。

 

 

「ここまででいいよ、ありがとうね」

 

 

「そうか、じゃあ明日からよろしくな?」

 

 

「うん!また明日!」

 

 

2人は別れて互いの帰路についた家に帰ったカズキを待っていたのは黒いスーツを身にまとった男だった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

依頼の時間

烏間先生の登場です


「誰かいるみたいだ」

 

 

磯貝と別れた後、無事に家までたどり着いたカズキは自宅の前に見慣れない人物が立っているのに気付いた。

 

 

「君が桜井和生くんかな?」

 

 

自分のことに気付いたのだろうか黒のスーツを着ている男性に声をかけられた。

 

 

「はい、そうですけど。なにか御用ですか?」

 

 

「君に話があってな帰りを待たせてもらっていた」

 

 

「こんな時間までお待たせしてすみません!!」

 

 

カズキは勢いよく頭を下げた。

 

 

「そんなにかしこまらなくてもいい俺の名前は烏間だ、明日から君が編入する3年E組で体育の指導をしている」

 

 

男性は烏間と名乗った。

 

 

「とりあえず家の中へどうぞ、立ち話もなんですので」

 

 

「あぁ、すまないな」

 

 

 

烏間を自宅にあげコーヒーとケーキを出すカズキ。

 

 

「気を遣わなくて構わないぞ?」

 

 

「いや…俺が食べたいだけですので」

 

 

「そうか、じゃあ本題を話そう。単刀直入に言うと君が編入する3年E組では今暗殺が行われている」

 

 

「はい?」

 

 

「ターゲットは担任だ」

 

 

「担任を暗殺ですか!?」

 

 

「驚くのも無理は無いだろうが、君の担任は月を破壊した超生物だ」

 

 

「えっ…じゃあ月が三日月になったのは担任の先生のせいなんですか?」

 

 

「そうなるな、奴のことは明日本人から聞くといい」

 

 

「わかりました…暗殺…ですか…」

 

 

「すぐに暗殺しろとは言わない、先ずはクラスに馴染めるよう頑張って欲しい」

 

 

「はい…!」

 

 

「いい返事だ。要件はそれだけだ時間を取らせてすまなかったな」

 

 

「いえ…久しぶりに家が賑やかだった気がします…」

 

 

「君は一人暮らしの様だな…だが明日からは騒がしすぎる程の生活が待っているぞ」

 

 

「楽しみにしておきますね…」

 

 

「それじゃあ俺は失礼する」

 

 

「ありがとうございました!」

 

 

烏間はカズキの家を後にした。

 

 

「彼の抱えるものがE組で軽くなるといいが…」

 

 

烏間はそう呟きながら帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お母さん…」

 

 

今は亡き母親の遺影の前で俯くカズキ。

 

 

「明日から俺…暗殺するんだって…唐突過ぎてわかんないや。でもね?今日友達ができたんだよ?凄くかっこ良くて優しいんだクラスのみんな彼みたいにが優しいといいな…」

 

 

母親の写真にに話しかけるその表情は今にも泣きそうだ。

 

 

「母さんが遺してくれた俺の力が…みんなに役立つといいな…」

 

 

弱々しい声で呟くカズキ。

明日から始まる彼の新しい学校生活

そこで繰り広げられるのはクラス一丸となった暗殺さらにターゲットは担任の教師。

新しい環境と新しい仲間と一緒に桜井和生はどのように成長していくのだろうか…




彼の意外な1面とは?
母親がカズキに遺した力とは…?
次回明らかに


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

編入の時間

「ここが新しい通学路か…急だなぁ…坂」

 

 

まだ時間が早いこともあり通学路には誰も居ない。

 

 

「うわっ!?」

 

 

すると突然突風が吹き見たこともないようなタコ?が立っていた。

 

 

「ヌルフフフ、おはようございます桜井和生くん」

 

 

「(ナンダコイツ、それになんで俺の名前を?)お、おはようございます」

 

 

「私がE組の担任兼ターゲットです、殺せんせーと呼んでください」

 

 

 

「(こいつがターゲット)殺せんせーですね!よろしくおねがいします!」

 

 

「とてもいい返事です!他の生徒たちが揃うまで職員室で待ちましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

HRが始まり廊下に立っていると銃声が聞こえてきた。

きっと殺せんせーへ暗殺が行われているのだろう。

 

 

「それでは和生くん入ってきてください」

 

 

「は、はい!」

 

 

殺せんせーに教室に入るよう言われた。

 

 

「△□中学から転校してきました!桜井和生です!烏間先生から暗殺のことは教えてもらっています、みんなの脚を引っ張らないように頑張るのでよろしくおねがいします!」ニコッ

 

 

カズキは自己紹介をしつつ純粋な笑顔をみんなに向けた。

 

 

「「「(美少年だ…)」」」

 

 

「それでは和生くんには一番前の席、磯貝の隣に座って貰いましょうか」

 

 

「よろしくなカズキ!」

 

 

「悠馬も頼りにしてるよ!」

 

 

「なんだ磯貝は既に知りあってたのか?」

 

 

「昨日道に迷ってるのを助けたんだよ(笑)前原も困ってる人がいたら助けるだろ?」

 

 

「まぁ困ってる女の子がいたら助けるかな(笑)」

 

 

この生徒は前原といい、磯貝の親友らしい。

 

 

「それでは皆さん仲良くしてくださいね?」

 

 

殺せんせーの言葉を最後にHRは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は過ぎ、3時間目の休み時間。カズキは苦しめられていた。

 

 

「あ、甘い物…」

 

 

「カズキくん?どうしたの?」

 

 

話しかけてきた女の子の様な男子生徒は潮田渚だ。

 

 

「渚か…俺さ?、糖分が切れると何も出来なくなるんだ…」

 

 

「えぇっ!?大丈夫…?」

 

 

カズキは糖分が切れると集中力がほぼ無くなるのだ!

 

 

「あぁ…鬱だ…死のう…」

 

 

カズキがうなだれていると…

 

 

「はいこれ」

 

 

「えっ?」

 

 

トン、という音に顔を上げると、女の子が立っていた

 

 

「速水さん?これは?」

 

 

と渚が問うと彼女は。

 

 

「ちょっとした飴よ、これで元気出るでしょ?」

 

 

「あぁ…俺の目の前に天使が…」

 

 

「ちょ、天使ってなに…」

 

 

頬を赤く染める速水。

 

 

「死にかけたところを救ってくれてありがとうね速水さん」ニコッ

 

 

「べ、別に救ったわけじゃないし…///」

 

 

カズキの笑顔に照れる速水

「「「(桜井の純粋さがこわい…)」」」

 

 

クラスみんながカズキをある意味恐れる中

 

 

「んー、飴美味しいな♪」

 

 

カズキは飴をもらってとても笑顔である

 

 

「次の授業は体育だ、カズキ外行こうぜ?」

 

 

「体育か…楽しみだな」

 

 

磯貝の言葉に答え外に出て行く2人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日から桜井くんも一緒にナイフの訓練をしていく」

 

 

「烏間先生!よろしくおねがいします!」

 

 

みんなの番が終わり、遂にカズキの番がやってきた。

 

 

「ねぇ茅野?カズキくんはどんな戦い方をするんだろう」

 

 

「やっぱり渚もきになる?」

 

 

「そりゃ気になるよ」

 

 

クラス一同注目している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遠慮はいらない、全力でかかってきなさい」

 

 

「(このナイフじゃ殺りづらいけど…)じゃあいかせてもらいます!」

 

 

「(雰囲気が変わった、それにあの構えは)…!」

 

 

「母さんから教えてもらった戦い方がどこまで通じるか!試させてもらいます!!」




桜井和生の特徴は糖分が切れると死にかけます(笑)
そして母親が遺した力とは剣術のことです!
この剣術がカズキの主戦法になります
次回、戦いの時間

感想待ってます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

体育の時間

学業優先なので不定期投稿お許しください


クラス全員が注目するなかカズキと烏間の模擬戦闘が始まった。

 

 

「殺せんせー、カズキくんのあの構えは?」

 

 

「あれはアラブの王国剣術ですねぇ、とても興味深い」

 

 

渚の質問に殺せんせーはすぐに答えてくれた。

 

 

「ですが、彼は本調子じゃなさそうですねぇ」ニュヤリ

 

 

「え?」

 

 

渚が殺せんせーの言葉に疑問を持っている頃。

 

 

「(だめだ…ナイフじゃ速度が上がらない…)はぁはぁ…」

 

 

「どうした?君の力はその程度か?」

 

 

「烏間先生、すこし待ってください」

 

 

カズキが苦戦している時、殺せんせーが戦闘を中断させた。

 

 

「お前が口出しするということはなにかあるのか?」

 

 

「和生くん、これを使いなさい」

 

 

「殺せんせーこれって…いいんですか?」

 

 

「ヌルフフフ、これで本気が出せるでしょう?」

 

 

「いや…本気は出せないですけど、さっきよりはいけます」

 

 

「烏間先生、和生くんの本来の力が出てきます本気で倒しに行ってください」

 

 

「ん?お前が言うことが本当なら、本気で行かないとな」

 

 

そういって烏間は腕まくりをした。

 

 

「殺せんせー?カズキになにを渡したんですか?」

 

 

「見ていればわかりますよ」ニュヤリ

 

 

磯貝の言葉に殺せんせーは不敵な笑みを浮かべ答えた

 

 

「(軽い…やっぱり持ちやすいな…)…それじゃあ行きます!」

 

 

「(速い…!?)くっ…そうか君の本当の武器はそれか」

 

 

「殺せんせーあれは?カズキくんの動きが全然違うよ」

 

 

「あれは所謂刺剣ですよ渚くん、フェンシングのサーベルのようなものです」

 

 

「あれがカズキくんの本来のスタイル…」

 

 

渚は思わず見とれていた。

 

 

「はぁっ!」

 

 

「いい動きだ、だがそれだけでは俺には当たらん」

 

 

カズキの連続攻撃を烏間は難なく躱していた。

 

 

「今度はこちらから行くぞ!」

 

 

烏間が攻撃に移ったときカズキは笑みを浮かべていた

 

 

「その瞬間を待ってましたよ」

 

 

烏間の拳を受け流すように弾いたが…

 

 

ピピピピッ!

 

 

時間の終わりを告げるタイマーの音が鳴った。

 

 

「あぁー!、後ちょっとだったのに…」シュン

 

 

「まぁそう落ち込むな、君は十分強い」

 

 

「でも、もっと強くなりたいです!」

 

 

烏間の言葉に笑顔で答えるカズキ、そこにクラスのみんなが集まってきた。

 

 

「すごいよカズキくん!烏間先生と互角に戦えるなんて!」

 

 

渚の言葉にカズキは照れくさそうに答える。

 

 

「殺せんせーがこれをくれなきゃ、ダメダメだったよ(笑)」

 

 

「ヌルフフフ、生徒が全力で取り組めるように準備するのが教師の務めですから」

 

 

「殺せんせーはいい先生ですよほんと、でもちょっと疲れたな…」バタッ

 

 

「「大丈夫か!?」」

 

みんなの声に答えたカズキの言葉は…

 

 

「あ、甘い物…」

 

 

「「また甘い物かい!!!」」

 

 

クラス全員に突っ込まれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後になりカズキが帰ろうとしていると。

 

 

「桜井、すこしいいか?」

 

 

「なにー?」

 

 

「この後時間はないか?」

 

 

「あるけどどうしたの?」

 

 

竹林が話しかけてきた。

 

 

「ついてきて欲しいところがあるんだ」

 

 

「うん、ぜんぜんいいよ?」

 

 

そういって2人で帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なにここ」

 

 

「メイド喫茶だ」

 

 

竹林が連れてきたのはメイド喫茶だった。

カズキは戸惑いながらも竹林について入店した。

 

 

「「「おかえりなさいませ!ご主人様♡」」」

 

 

「…」

 

 

突然の出来事に思考がフリーズするカズキであったが…

 

 

「甘いものが好きだと言っていたから連れてきたんだ」

 

 

「そうなの?」

 

 

竹林の言葉で現実に引き戻されるカズキ、本当に甘いものが好きなようだ。

 

 

「ここは僕のイチオシの店でね、楽しんでくれ」

「わかった!」

 

 

その後カズキは本当に主人の様になっている竹林に苦笑いしつつ口いっぱいにケーキを頬張っていた。

 

 

「今日は楽しかったよ!ありがとう」

 

 

「そう言ってくれるとありがたいよ」

 

 

2人はかなり打ち解けたようでカズキは竹林のはなしに

とても興味深いと嬉々としていた。

 

 

「それじゃあこの辺で」

 

 

「あぁ、またな桜井」

 

 

「またね〜」

 

 

「こういうの…なんかいいな」

 

 

帰っていく竹林の背中を見ながらカズキはぼつりと呟いた…

 

 

「よしっ!明日もがんばろー!」

 

 

そういって帰路につくカズキであった

 




カズキの剣術はマギのアリババくんの戦い方参照です!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

集会の時間

ビッチ先生の話はカットさせてください…
ちょっと個人的に好きじゃないのと
のちのちビッチ先生の話はたっぷり書くので
その時までお楽しみを

イリーナ「なんでやらないのよ!キスするわよ!?」
トランサミン「だからそういうのが書きたくない理由(笑)」
イリーナ「なんですって!?」


「いそぐぞみんな!」

 

 

E組の生徒たちは月に一度の全校集会に出席するため

本校舎に向かっていた。

 

 

「この前は遅れて花壇の清掃やらされたからな。」

 

 

「前原はほとんどサボってただろ!」

 

 

磯貝がそう言うと、一緒に歩いていた岡野が大きな声で叫んだ。

 

 

「あーもう!なんで私達だけこんな目に会わなきゃいけないのよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本校舎まで遠いねー、お菓子もつかなぁ…」

 

 

「あはは、カズキくんはやっぱりお菓子なんだ」

 

 

「まぁね、渚もいる?」

 

 

「ありがとう、ひとつもらうね」

 

 

渚、茅野、カルマ、竹林と歩いているカズキは相変わらず甘いものを片手に笑顔でいる。

 

 

「ねぇカズキー、今度俺とケンカしよー?」ニヤニヤ

 

 

カルマがにやにやしながらカズキに問いかけると

 

 

「じゃあ俺がかったら駅前のプリン100個ね?」ニコッ

 

 

「プリン!?」

 

 

「茅野はプリンに反応するんだ…」

 

 

プリンという言葉に極端に反応した茅野に思わず苦笑する渚であった。

 

 

その時…

 

 

「お前ら危ないからそこをどいてくれー!」

 

 

「「岡島くん⁉︎」」

 

 

ハチの群れを率いて走っていたのは岡島だった。

 

 

彼はそのまま、本校舎に向かって走っていった。

 

 

「あいつ大丈夫かなー?」ニヤニヤ

 

 

「カルマ心配してないだろー?それ」

 

 

「あ、ばれた?」

 

 

「(この二人なんか似てる…かも)」

 

 

渚と茅野は何かを感じ取ったようだ。

 

 

「と、とりあえず急ごっか?」

 

 

「「「はーい」」」

 

 

茅野の言葉に元気よく返事する3人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

E組の生徒はやっとの思いで、本校舎についた。

 

 

「みんな大丈夫か?」

 

 

「烏間先生の方こそ大丈夫ですか?」

 

 

前原はビッチ先生をおぶっている烏間を見ていった。

 

 

「もう足が動かないとだだをこねてな…」

 

 

「か弱いレディーにあんな山道歩かせるんじゃないわよ!」

 

 

「ビッチ先生はか弱くないよね」

 

 

「桜井ー!」

 

 

「逃げろー」

 

 

「まちなさーい!」

 

 

「やれやれ、まだ動けるじゃないか」

 

 

2人のやりとりをみて呆れる竹林のよこで倉橋が烏間に問いかけていた。

 

 

「ところで、殺せんせーは?」

 

 

倉橋の質問に烏間は、呆れたように答えた。

 

 

「あいつも、ついてくるとうるさくてな… 国家機密だから生徒の前に出すわけにはいかない。だからあいつは教室で待機だ」

 

 

倉橋は苦笑いし、烏間先生の苦労を労った。

 

 

その頃山の上の校舎では…

 

 

「先生だけおいてけぼりなんてひどいです…」

 

 

ほったらかしにされた殺せんせーはいじけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、本校舎での全校集会が始まった。

 

E組の差別待遇はここでも同じように続き、彼らは長々と耐えなければならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「カルマくんが集会に来るなんて珍しいよね」

 

 

「カズキと話したかったから来ただけだよ」

 

 

「カズキくん寝てるけどね」

 

 

「幸せそうだから起こしてやろうかな」ニヤッ

 

 

「可哀想だよカルマくん」

 

 

そうE組いじりが続くなかカズキはずっと眠っていた

 

 

「おなかいっぱいだ…えへへ…」

 

 

「なんでこいつはこんなにのんきに寝られるのよ」

 

 

速水は寝ているカズキを見て不思議な気持ちになっていた。

 

 

「(それにしてもこいつの笑顔可愛いな…)」

 

 

「速水ちゃんどうかした?」

 

 

「なっ、なんでもないよ!」

 

 

中村の質問に焦って返す速水。

 

 

「ずっと桜井ちゃんの方見てたねー?」ニヤニヤ

 

 

「うっ…」

 

 

「このことはうちらだけのひみつねー?」ニヤニヤ

 

 

「うん…、おねがい」

 

 

この約束は近いうちに破られるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?もう終わったの?」

 

 

「君はずっと寝ていたからな」

 

 

「竹林が残っててくれて良かったよ」

 

 

カズキと竹林がE組の校舎に戻ろうとしていると渚が元クラスメイトらしき二人ともめているのが見えた

何を話しているかはよく聞こえなかったが、渚が責められているのは分かった。

渚達に近づくと少しずつ、会話の内容が聞こえてきた。

 

 

「なんとか言えよE組‼︎ 殺すぞ‼︎」

 

 

その時カズキは、渚が笑っているように見えた。

 

 

「渚?」

 

 

「桜井?どうかしたか?」

 

 

その時だった。

 

 

「殺そうとしたこともないくせに」ニヤリ

 

 

「えっ?」

 

 

カズキは渚の言葉に驚いた。

 

 

「(今のって、殺気?)」

 

 

「桜井?」

 

 

「あぁ、ごめん!もどろうか」

 

 

カズキは竹林と校舎に戻っていった。

そのころ理事長室では…

 

 

「弱者が強者に抗うなどあってはならない」

 

 

理事長の新たな目論みがたくらまれていた。




カズキと竹林もなかよくさせます!
速水と中村もなかよくさせます!
感想よろしくお願いいたします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二の刃の時間

「さぁはりきっていきますよー」

 

 

教師になって初めてのテストだからだろうかいつも以上にはりきっているのだろう。

殺せんせーは分身を生徒1人に大して1つ作り勉強を教えている。

 

 

「カズキくんは苦手な教科はありますか?」

 

 

「うーん、国語は好きなんだけど他はあんまりかな」

 

 

「それじゃあ君は得意教科を伸ばしましょうか」

 

 

「はーい殺せんせー」

 

 

2人が話していると突然殺せんせーの顔が歪んだ

 

 

「にゅや!?、カルマくん急に暗殺しないでください」

 

 

「えぇー、なんでさー」

 

 

「分身を維持するのは大変なんです、ほら全員顔が歪んでいるでしょう?」

 

 

「この分身って繊細なんだな」

 

 

菅谷が興味深そうに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

「さぁ今日もせんせーと勉強ですよー!」

 

 

「「「なんか増えてる!?」」」

 

 

なんと今日は1人に3人も分身が付いている。

 

 

「…どうしたの殺せんせー? なんか気合い入りすぎじゃない?」

 

 

「んん?そんな事ないですよ?」

 

 

茅野の質問に、3人の殺せんせーが答えた。

 

 

「(きっと理事長になんか言われたんだろうなぁ、減給かな?)」

 

 

カズキはそんなことを考えていた。

 

 

「んー!次が終わればお菓子が食べられるー♪」

 

 

「カズキはそればっかりだな」

 

 

「悠馬…、甘いものは俺の力の源だよ?」

 

 

「ははっ、ちがいないや」

 

 

カズキと磯貝が他愛もない話をしながら廊下を歩いていると前原が走ってきた。

 

 

「殺せんせーが生徒全員校庭に集合だってよ」

 

 

「なんだまたいきなり?」

 

 

「うん、悠馬の言う通りだ勉強は?」

 

 

「わかんないけど、いきなり不機嫌になりやがってさー」

 

 

2人は疑問を抱きつつも校庭に向かって行った。

 

 

「全員揃っていますね?」

 

 

「「「はーい」」」

 

 

全員いるのを確認すると殺せんせーは語り始めた。

 

 

「イリーナ先生、プロの殺し屋として伺います。あなたは仕事をするとき、用意するプランは1つですか?」

 

 

「いいえ、本命のプランなんて思った通り行くことの方が少ないわ、不測の事態に備えて、予備のプランを作っておくのが暗殺の基本よ」

 

 

ビッチ先生は殺せんせーの問にいつもとは違う真剣な顔で答えた。

 

 

「では次に烏間先生、ナイフ術で重要なのは第一撃だけですか?」

 

 

「第一撃はもちろん重要だが、次の動きも大切だ。戦闘でもその後の練撃をいかに繰り出すかが勝敗を分ける」

 

 

殺せんせーの意図を理解できない生徒をおかまいなしに、殺せんせーは校庭の中心に向かいくるくると回り出した。

 

 

「暗殺があることで勉強の目標を低くしている君達にアドバイスです。第二の刃を持たない者は…暗殺者名乗る資格はありません!」

 

 

殺せんせーが回ったことによって発生した竜巻が収まると、校庭は綺麗に手入れされていた。

 

 

「君たち!、中間テストで全員50位いないに入りなさい。入れないようなら暗殺はさせません、先生はどこかにいきますので」

 

 

殺せんせーの言葉に唖然とする生徒たちだが。

 

 

「先生は君達の刃をしっかり育てています。自信を持って振るって来なさい、ミッションを、成功させ笑顔で胸を張るのです。自分達が暗殺者であり……E組である事に‼︎」

 

 

次に言われた殺せんせーの言葉で目付きが変わった。

 

 

そして迎えた中間テスト当日結果はどうなる!?




テストですねー僕もテストは嫌いです笑
みなさんはどうですかね?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

テストの時間

夏休みはがんばって投稿しますので
よろしくお願いします


テストは本校舎で受ける決まりのため試験官ももちろん本校舎の教師が行う。

 

 

「お前ら本校舎に戻りたいからってカンニングなんて真似するんじゃねぇぞー」

 

 

そのためテストであろうと酷い扱いを受けるのだだがE組の生徒たちはそんな言葉も気に止めず問題に集中しているようだった。

試験官の教師もE組がすらすらと問題を解いているのに

驚きを隠せないのか動揺しているようだった。

しかしその表情はすぐに嫌味のある笑みに変わる。

 

 

「「「(な、なんだこの問題!?)」」」

 

 

前半の問題を解き終えたとき生徒たちのペンが止まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テストを全て終えたE組の生徒たちは絶望に近い表情をしていた。

それもそのはず試験直前で試験範囲が大幅に変更されたのだ、さらにその連絡はE組にはされていない。

烏間が本校舎の教師に問い合わせるが、本校舎では理事長自ら教鞭をとったらしい。

全員50位以内を果たすことは出来ず、殺せんせーにも

第二の刃を示すことは叶わなかった。

 

 

「先生の責任です。この学校の事を甘く見てました………君達に顔向けできません」

 

 

如何にも落ち込んでる様子の殺せんせーに向かって、カルマが対先生ナイフを投げた。

案の定躱され、殺せんせーは怒る。

 

 

「にゅや!?カルマ君!先生は今落ち込んでいて…」

 

 

殺せんせーの最後の言葉も聞かずに、カルマはテストを教卓にばら撒く。

 

赤羽業

合計点数:494点

186人中4位

 

 

「俺の成績に合わせて、あんたが余計な範囲まで教えたから、問題変わっても関係なかったんだよねー」

 

 

「あー、言いづらいんだけどさー?」

 

 

続いてカズキもテストを片手に殺せんせーの前までやってきた。

 

 

「俺もがんばったんだけどなー?殺せんせー、落ち込むことないよ?殺せんせーの教え方解きやすかったから」

 

桜井和生

合計点数:490点

186人中5位

 

 

「ここのテストって案外簡単だったんだね。それに俺は自分からこの教室にきたから向こうになんていく気さらさらないんだけど?」

 

カズキの一言にクラスが驚愕する。

 

 

「あー、奇遇だねカズキー、俺もここにいる方が楽しいし戻る気はないよー、それともなにー?殺せんせー俺らに殺されるのが怖いから逃げ出すわけー?全員50位以内に入れなかったからっていうのは言い訳でしょー?ほんとチキンタコだよねー」ニヤニヤ

 

 

挑発的なカルマの台詞にカズキが皆にむかってウインクする。皆なにかを感じ取ったのか次々に口を開く。

 

 

「なーんだ。殺せんせー、怖かったのかぁ」

 

 

「なら正直に言えばいいのに」

 

 

「『怖いから逃げたい』ってねー」

 

 

クラス全員の長髪に殺せんせーは顔を真っ赤にして怒る。

 

 

「にゅや――――――!逃げわけありません!!期末テストであいつ等にリベンジです!」

 

 

僕らは暗殺者、この教室でいろいろな刃を磨いていく

今回は僕らの武器がつうじなかったけど戦えるようになるまで

磨き続けていこうと思う。




ご都合主義お許しください、
感想待ってます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お出掛けの時間

ご都合展開お許しください
ほんとごめんなさい
カズキ「俺はうれしいけどなー?」
速水「わ、私はそんなことないし」
少しふたりを近づけるだけだから
速水「わかったわよ…」


「桜井くん班はもうきめた?」

 

 

「ふぇ?片岡さん、班ってなんのこと?」

 

 

「もうすぐ修学旅行だよ?どこの班に入るのか決めておいてね?」

 

 

「わかった!ちゃんときめとくよ!」

 

 

「なんだよカズキ?お前はもう班は決まってるだろ?」

 

 

「悠馬?」

 

 

「俺の班に入ってるだろ?」

 

 

「(悠馬がいつもより輝いて見える…)ありがとな!」

 

 

「もちろんだよ!俺たち親友だろ?」

 

 

「俺もそのつもりだよ!」

 

 

「「「(相変わらず2人は輝いてるなぁー…)」」」

 

 

「じゃあ私たちと一緒ね」

 

 

「片岡さんも一緒なのか!他には誰がいるんだ?」

 

 

「男は俺と前原とカズキと竹林だよ」

 

 

「竹林も一緒なんだ」

 

 

「カズキと仲いいだろ?だから誘ったら来てくれたよ」

 

 

そう、カズキと竹林は頻繁にメイド喫茶に行っている。

もっともカズキはお菓子目当てであるが。

 

 

「女子は私と速水さんと中村さんよ」

 

 

「わかった、それじゃあ楽しめるようにいろいろ考えなきゃね」

 

 

「暗殺もするらしいからちゃんとかんがえよう、月曜日に聞くから土日のあいだに何かかんがえておいてくれよな?」

 

 

「「了解!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして土曜日カズキは修学旅行の買い物をしにショッピングモールに足を運んでいた。

 

 

「お菓子は家にたくさんあるから〜♪何買おっかな〜久しぶりに服でも見に行こうかな〜」

 

 

カズキは服を見に行くことにしたようだ。

 

 

「や、やめてよ!はなして!」

 

 

「あれって?速水さん?」

 

 

「いいじゃんいいじゃん、ちょっと遊ぼうぜ?」ヘラヘラ

 

 

「い、嫌よ!誰があんたたちなんかと…いたっ」

 

 

「素直についてくればいたいことはしないよー?」ニヤニヤ

 

 

「ねぇねぇ、お兄さん」

 

 

「あぁ?邪魔すんじゃ…ぐえっ!?」

 

 

「あー、手加減したんだけど大丈夫?」

 

 

「餓鬼がぁ!舐めやがって!」

 

 

「はぁ…わかってくれないか」バシッ

 

 

「なっ…」バタッ

 

 

「どうするー?今なら見逃すよー?」

 

 

カズキは蹴り1発で速水に絡んでいた不良を地に伏せた

 

 

「あ、兄貴が一撃で床ペロかよ!?」

 

 

「早く逃げな?」ニコッ

 

 

「「は、はいっ!」」

 

 

不良たちは兄貴と呼ばれる人物を引きずりながら一目散ににげていった?

 

 

「速水さん大丈夫?」

 

 

「大丈夫だけど、桜井は…なんでここに?」

 

 

「服を見に行くことなんだけど速水さんがこまってたから」

 

 

「そっか、その…ありがと」ボソッ

 

 

「え?何か言った?」

 

 

「な、なんでもないわよ!」

 

 

「なんでもないなら甘いもの食べにいこーよ!」

 

 

「あんたはいつも甘いものなのね」

 

 

若干呆れ気味の速水である。

 

 

「奢るから行こ?」

 

 

「もう、わかったわよ」

 

 

「じゃあしゅっぱーつ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここのたい焼きがおいしいんだよー」

 

 

「そうなの?」

 

 

「そうそう、味はどうする?」

 

 

「桜井と同じでいいよ」

 

 

「おっけー、おじさん!カスタード2つちょーだい!」

 

 

「おっ、兄ちゃんまた来たか。なんだー?今日は彼女連れか?」

 

 

「そ、そんなんじゃないよ!クラスメイトだよ!」

 

 

「そんな狼狽えるなって(笑)はいよ!カスタード二つな」

 

 

「ありがと!はいお金」

 

 

「まいどあり、またこいよ?」

 

 

「わかった!」

 

 

そういってカズキは速水のもとにもどっていった。

 

 

「はいこれ!」

 

 

「ありがと」

 

 

「じゃあたべよ!」

 

 

「「いただきまーす」」

 

ぱくっ

 

 

「なにこれ!?すっごいおいしい」

 

 

「でしょ?ふわふわの皮とトロトロのカスタードが絶妙なバランスなんだよ!」

 

 

「桜井って、甘いものに関してはすごいわね」

 

 

「まぁ、好きだから」ニコッ

 

 

「(その笑顔反則…)そ、そうだよね///」

 

 

「速水さんはまだ用事ある?」

 

 

「いや、ないけど?」

 

 

「じゃあ帰ろっか?送ってくからさ」

 

 

「あんた服買うんじゃないの?」

 

 

「また絡まれたら危ないじゃん」

 

 

「いいの?」

 

 

「いいのいいの!じゃあまたしゅっぱーつ」

 

 

「はいはい出発」

 

 

2人が帰路につく時見ていた人物が一人

 

 

「へぇー、はやみん頑張ってんじゃん」ニヤニヤ

 

 

この人物が修学旅行で波乱を起こす…かも?




文才がなくてすみません…
見てたのはだれでしょうね?(笑)
きっと皆さんわかるでしょうがお楽しみに
感想御指摘まってます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

旅行の時間

とりあえずアニメでやったとこまでは
いきたいですね
そしたら他の作品も試してみたいです(笑)

渚「ちゃんと書こうよ!?」


「準備はおっけー、お菓子もいれたししゅっぱーつ」

修学旅行に出発しようとしたカズキは配達物に気付く

「なんだろこれ、送ってきたのは…防衛省?」

差出人は防衛省だった。あけてみると

「これって…!?手紙もあるけど」

from 烏間

to 桜井

これからの暗殺において君の力は必要になる

それを最大限に引き出すためにこれを送ろう

有用に使ってくれたまえ

 

 

 

「烏間先生…、こんなものもらっちゃったらがんばるしかないよね」

殺せんせーの暗殺を改めて胸に誓ったカズキであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椚ヶ丘中の修学旅行は新幹線で京都に向かうのだが

ここでもE組は差別される。

しかしE組の生徒たちは全く気にしていないようだ。

「席とかどうでもいいよねみんな一緒ならさー」

「カズキくんは相変わらずだねー、僕もそう思うよ」

「渚もだよなー、楽しめればいいよね」

「ところで殺せんせーは?」

「あー、駅ナカスイーツ買い忘れたっていって買いに行ってたけど?」

「おいおまえら…あれ見ろよ」

「菅谷くん?」

「張り付いてるぞ服だけ」

「殺せんせー透明になってるね」

「次の駅で入ってくるみたいだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スイーツ美味しいですねぇー、ヌルフフフ」

「俺は前日に買っておいたのに準備悪いね殺せんせー」

「にゅや!?、カズキ君はスイーツに関しては流石ですねぇ」

「みんなも食べる?」

「いいのか?」

「もちろん」

カズキは自分の買ってきたスイーツを

班のメンバーと食べ始めた。

「お、これうまいな」

「悠馬は目をつけるところがいいね!」

磯貝が手に取ったのは茨城のメロンを使ったカステラだ

「桜井、これもなかなかいける」

「前原の奴は値段がすごかった…」

前原はアップルパイを食べているようだった

「桜井…これはまさか…」

「そのまさかだよ竹林くん」

竹林が目にしたのは二人がよく行くメイド喫茶の

メニューのテイクアウトであった。

「なになに〜?桜井はメイドさんが好きなのー?」ニヤニヤ

「中村さんそこには触れないで…」

「桜井のメイド喫茶での人気はすごいぞ」

「竹林それいうなよ〜!?」

「(メイド…)桜井そういうとこいくんだ…」ボソッ

「はやみ〜ん?どうした〜?」ニヤニヤ

「莉桜には関係ないでしょ!?」

「え〜?いろいろ知ってるよ?でもそれは夜話すね?」

「わ、わかったよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都に着いた生徒たちはそれぞれが決めたルートに

従って行動していく、というのもそれぞれが決めたルートに、スナイパーが配置されて暗殺が行われるのだ

「殺せんせーの暗殺まで時間あるから少しあるこっか」

カズキたちがいるのは清水寺、ここで暗殺するようだ

「はやみん桜井のとこいってくれば?」ニヤニヤ

「いい加減にして…」

「速水さんは桜井が気になるの?」

「片岡まで…」

「はやみんはツンデレだからなぁ〜」ニヤニヤ

「ツンデレってなによ!?」

「あはは…」

ふたりのやりとりに苦笑する片岡だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ竹林あれはなんだ…」

「僕にも理解しかねるよ…」

二人の視線の先には金髪の少年とクラスの委員長がいた

「でもまぁ、あいつらは目立つだろうなぁ」

「そうだとしてもこれは異常だ」

二人が思うのもそのはず二人の周りには

本校者の女子たちで埋め尽くされている。

「あ、あの磯貝くんこれ受け取ってください」

「え?ありがとう」ニコニコ

「は、はいっ///」

そういって1人のせいとがはしっていった

遠くから歓声がきこえてくるようだった

「悠馬はもてるなぁ」

「そんなことないとおもうぞ?」

「キャーキャーいわれてるじゃん(笑)」

「やめてくれって(笑)」

「ほらもう一人来た、これで何人目だ?」

「さぁどうだろう」

また一人やってきたようだ、ところが

「あ、あのっ桜井くんだよね?」

「あ、うんそうだよ?」

「これっ受け取ってください」

「ありがとう、あとで読むね」ニコッ

「はいありがとうございました///」

カズキの対応に磯貝は驚いていた

「カズキ…お前恐ろしいやつだな…」

「営業スマイルってやつだよ」

「そ、そうか。そろそろ時間だないこうか」

「じゃあみんな集めてくる!」

「頼んだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗殺の舞台は清水の舞台どんな暗殺になるのやら…




最近空戦魔導士候補生の教官にハマっていまして
そちらも書いてみたいなーなんておもったりしてます
あ、書くとしたらヒロインはレクティです(笑)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

旅行の時間2

暗殺よりも中村の速水いじりのほうが
書いててたのしかったですw
速水「へぇ〜?」
中村「楽しく書かなきゃいみないよー?はやみーん」
その通りだ!だから許して!
速水「しかたないなぁ…」


「みなさんすみません、いろいろあって少し遅れてしまいました」

カズキたちと合流するやいなや殺せんせーは謝った。

「気にしなくていいよー殺せんせー?」

「中村さん…ありがとうございます」ホロリ

「とりあえず清水の舞台いこーよ」

中村が殺せんせーを慰めていると前原がいった

そう、カズキたちが暗殺に選んだ場所は清水の舞台

カズキたちが撹乱した後スナイパーが狙撃する

手筈になっている。

「ヌルフフフ、楽しみですねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「すごい景色!」」」

清水の舞台にたったカズキたちは歓声を上げた。

「下には緑も見えますねぇとても美しいですね」

殺せんせーも見とれているようだった。

「殺せんせー少しいいですか?」

「どうしましたか磯貝くん?」

振り向きざまにナイフを振るった磯貝だったが

殺せんせーはよんでいたらしく簡単によけてみせる。

「俺もいるのを忘れんなよ?殺せんせー!」

「2人とも素晴らしいコンビネーションです。

ですがまだまだあまいですねぇ」

前原も加わったが殺せんせーは余裕の表情だ

顔が緑色の縞模様になっている。

「殺せんせー!」

「な、ななな、なんですか!?」

殺せんせーが驚くのもそのはず片岡速水中村が

殺せんせーの触手に抱きついたのだから

そして3人の腕には対先生ナイフの破片

殺せんせーの触手は3本破裂した。

「や、やりますねぇ」

殺せんせーが触手を再生させようとした時

「殺せんせーこっち見てよ」

「カズキ君!?」

清水の舞台の端で満面の笑みを浮かべたカズキが

殺せんせーに向けて言い放った。

「清水の舞台から飛び降りると願いが叶うらしいよ」

「ま、まさか」

殺せんせーは触手を再生させるのも忘れ

カズキの元へ飛んでいく。

「それじゃあまたね!」

そしてカズキが飛び降りた。

「ガキ共もなかなかやるじゃねぇか、そんじゃくたばれ化け物教師」

スナイパーが狙撃を行った。

「なっ!?」

殺せんせーはその狙撃を触手1本を犠牲にしてふせぎ

カズキを追って飛び降りた。

「来てくれると思ってたよ殺せんせー。でも満身創痍だね?」

「この程度まったく問題ありませんよ」

「でも勝負はここからだよ?」

そう言い放ちカズキは近くにあった木に飛び乗り

そのまま殺せんせーに向かってジャンプし殺せんせーに飛び付いた。そして

「烏間先生からのプレゼント受け取ってね?」ニコッ

「にゅや!?その武器は厄介ですね。なのでこうしましょう」

殺せんせーは脱皮をし、その皮でカズキを包んでしまった。

「あー、惜しかったのに」

「それにしてもカズキ君、そのレイピアは烏間先生から?」

「はいそうです!」

烏間が送ってきたいたのは対先生物質を練り込んだ

レイピアだったようだ。

殺せんせーとカズキが話していると皆が降りてきた。

「竹林データとれてる?」

「バッチリだぞ桜井」

「ありがと」

全員が集まると殺せんせーは

「皆さんの暗殺素晴らしかったですよ。」

殺せんせーの顔に丸が浮かんでいる。

「でも疲れちまったよ」

「旅館でゆっくり休んでくださいね」

「「「はーい」」」

そういってカズキたちはもどっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜

 

 

 

 

 

 

 

カズキと渚とカルマの3人で大浴場に向かっていた。

すると男湯の前に二人の生徒がいた

「誰かな?」

渚が口にすると2人とも振り向いた。

「あ、なんとなくわかった」

「カズキくんも?僕もだよ…」

「まぁ誰が見てもわかるよねー」

そこに居たのが中村と岡島だったこともあり

3人ともなにをしているのかわかったようだった。

「2人のも誰の覗きしてんのさ」

カルマが問い詰めると中村が

「殺せんせーの覗きよ!あの服の中きになるでしょ?」

「まぁ、言われてみればそうかも。」

何故か皆意気投合し大浴場の扉をあけるとそこには

泡だった浴槽に入る殺せんせーがいた

「「「「女子か!?」」」」

「にゅや?」

「てか殺せんせーここって入浴剤禁止でしょ?」

「この泡実は先生の粘液なんですよきめ細かく泡立って汚れが綺麗に落ちるんです。」

「でもせめて裸くらいは見せてもらうよ!」

中村がそういうと

「そうはさせません!」

殺せんせーが立ち上がると浴槽の水が固まり

殺せんせーの体をかくしていた

「「「「煮凝りか!?!?」」」」

「裸はみせませんよー、ヌルフフフ」

そういって窓から逃げて行った

「なぁ中村…この覗き虚しいぞ…」

岡島がそうつぶやいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虚しい覗きの後3人は入浴を終えて

カズキと渚は苺牛乳、カルマはレモン煮オレを

片手に部屋にもどっていったのだが:

部屋の扉を開けた時唐突に話しかけられた。

「気になるクラスの女子?」

渚が問い返すと磯貝が答えた。

「皆答えてるからな逃げ場はないぞ?」

流石委員長?、抜け目がない

「僕は気になるというかよく話すのは茅野かなカルマくんは?」

「俺は奥田さんかな」

 

奥田さんはメガネにおさげの女子で、理科の成績がとても良い生徒だ。

 

「意外だなー、なんで?」

 

「だってあの人怪しげな薬とか作れそーだし、俺のイタズラの幅が広がるじゃん。」

 

(絶対くっつけたくない2人だな…)

クラス全員がそう思った

「それで最後はカズキだな?」

前原が問うと

「俺は………うーん…」

長考しているあいだにクラスの注目が集まる。

「速水さんかなー?お菓子くれるし」

「カズキはやっぱりカズキだな」

「悠馬どうゆうことだよー?」

そういって皆で笑いあっていると

ピンク色いのタコがメモをとり逃げるのを見つけた

「みんな捕まえろ!情報を守れ!」

磯貝の掛け声に合わせて男子が殺せんせーを追いかけていく。

一方そのころ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほーらガキども一応就寝時間よ」

「ビッチ先生一応ってどういうことよ」

「どーせ夜遅くまで恋バナでもするんでしょ?」

「じゃあビッチ先生も一緒にしよー!」

「え?まぁいいけど」

倉橋の誘いをイリーナは受け入れてくれた。

「アンケート取ったのねそれで烏間が1位ってどういうことよ」

「だってかっこいーんだもん」

「はいはいわかったわよ、生徒だけだと1位は磯貝で

他はカルマの2票と、渚と桜井の1票ね…ふーん」

「ビッチ先生詮索はだめだよ!アンケートの意味なくなっちゃうもん!」

倉橋になだめられイリーナは詮索をやめた

「(まぁ渚は茅野でしょうけど桜井は誰かしらね)」

そんな時に中村が爆弾を投下した

「桜井に入れたのは、はやみんでしょー?」ニヤニヤ

「はぁっ!?なんでそうなるのよ!」

「だってこの前デートしてたの見たよ?」ニヤニヤ

「あ、あれは不良に絡まれたの助けてもらっただけ!」

「2人で会ってたのは否定しないんだね?」

「っ…」

しまった、と速水は思った。

クラスの女子全員がニヤニヤしている。

だが片岡が助け船?を出してくれた。

「桜井くんと磯貝、清水寺でラブレターもらってたよ」

「「「ほんと!?」」」

それを聞いた女子たちは何故か納得がいっていた。

「あんた達ももっと女を磨きなさいよ、平和な所に生まれたんだから、そんで桜井や磯貝みたいなイケメン落としてやんなさい」

「ビッチがまともなこといってる」

「毒蛾みたいなキャラの癖に…」

「濃い人生がつくる毒蛾の様な色気…って誰だいま毒蛾つったの!?」

「じゃあビッチ先生の話聞かせてよ」

「いいわよ、あれは…」

「にゅふふ」

「さりげなく紛れ込むな!女の園に!」

「いいじゃないですか先生もききたいです」

「じゃあ殺せんせーの話聞かせてよ!」

「…」

殺せんせーはマッハで逃げた。

「捉えて吐かせて殺すのよ!」

イリーナの言葉を合図に女子たちは暗殺にむかった。

それから男子も合流して小一時間暗殺が行われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふー、生徒たちに恋バナを吐かされそうになりました」

「お前にもそんなのあるのか?」

「もちろんです、この手足で数え切れない程に」

「それはお前の手足が2本ずつだったときか?」

「…」

「いや、やめておこうどうせ話はしないだろうからな」

「賢明です烏間先生、いくら旅先でも手足の本数まで聞くのは野暮ですから…」

 

 

 

 

 

 

こうしてE組の修学旅行は幕を閉じた。




作品に浮気したくなってくるこのごろです
もしかしたら気分転換で書くかもなので
そちらもよろしくお願いします。
また感想ご指摘よろしくお願いいたします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

転校生の時間

さぁセカンドヒロイン律ちゃんの出番ですよー
それと途中までカズキが空気です。
カズキ「流れ的にしかたないんだけどね」


通学路を歩く、渚、杉野、岡島の3人は、昨晩烏間から送られた一斉送信メールの話をしていた。

 

『明日から転校生が1人加わる。

多少外見で驚くだろうが…あまり騒がず接してほしい』

「…うーんこの文面だとどう考えても殺し屋だよな。」

「ついに来たか転校生暗殺者。」

杉野と岡島がそう言うと、杉野は疑問を抱く。

「転校生って事は、ビッチ先生と違って俺らと同年齢なのか?」

「そこだよ!」

急に大声を出す岡島に2人は驚いた。

「気になって顔写真とかないですかってメールしたんだよ。そしたらこれが返ってきてさ。」

そう言いながら岡島は携帯の画面を2人に見せる。そこには、可愛らしい女子の写真が表示されていた。

「なんだよ、普通にかわいーじゃん!」

「仲良くなれっかなー。」

いくら暗殺を行うクラスであっても彼等は中学生

転校生という響きに興味がわくのは当然だ

彼等は胸をときめかせ教室の扉を開けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかあれが転校生?」

渚は目を疑った。

「ノルウェーからきた自律思考固定砲台さんだ」

「ヌルフフフ、みなさん仲良くしてくださいねぇ」

「「「(仲良くも何もひとじゃないんだけど!?)」」」

クラス全員がそう思った。

授業が始まり皆が真面目に取り組んでいると

「これより暗殺を開始します」

そういって自律思考固定砲台さんは体から

幾つもの銃を取り出し射撃をはじめた。

「その程度なら生徒たちも簡単にやってのけますよ

それと授業中の発砲は禁止です」

「以後気をつけます。それでは第二射撃に入ります。」

しかし殺せんせーは難なくそれを交わし最後の一発を

チョークではじいた…はずだった…

「にゅや!?」

「右指先破壊。増設した副砲の効果を確認しました。次の射撃で殺せる確立0.001%未満。次の次の射撃で殺せる確立0.003%未満。卒業までに殺せる確立90%以上。卒業まで、よろしくお願いします、殺せんせー」

成長する暗殺者がE組にやってきた。

クラス全員がこれなら殺せるかもと期待したが

それと同時に悔しさを覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局その日は一日まともに授業を受けることはできなかった。

自律思考固定砲台さんの射撃に皆頭を伏せているしかなかったのである。

「壊れたら何か言われそうだけどこれなら壊れないよね」

そう言ってカズキは放課後学校にやって来て

防弾ガラスで自律思考固定砲台さんを囲んでいた。

「悪く思わないでね、皆のためだからさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の朝投稿してきたみんなはそのガラスのことを

不思議に思ったがカズキのしたことだとしると

皆納得してくれたようだ。

「朝八時半。システム全面起動。今日の予定、六時間目までに215通りの射撃を実行。引き続き殺せんせーの回避パターンを分析、射撃を開始します」

しかし銃弾はガラスに弾き返されてしまう

「殺せんせー、これを外してください生徒への危害は契約違反に値します。」

「それやったの殺せんせーじゃなくて俺だから契約違反じゃないよ?それに君が殺せんせーを殺しても賞金は君の製作者のもので俺たちには入らないし、授業はまともに受けられないしデメリットしかないんだ。だから我慢してね。」

そう言われると自律思考固定砲台さんは今日一日

ずっとシャットダウンしていた。

 

 

 

 

 

 

放課後全員が帰った後カズキはガラスを外していた。

「自律思考固定砲台さん、今日はごめんね意地悪して」

「いえ、みなさんの言い分も考慮するべきとは思います」

「ありがとうね、じゃあこの後殺せんせーが来るから

いろんなこと話すといいよ。それじゃあまた明日」ニコッ

「はい、また明日。」

機械的な挨拶を返し自律思考固定砲台は考えていた。

するとカズキの言葉通り殺せんせーがやってきた。

「どうですか?自律思考固定砲台さん。E組にはなれましたか?」

「なぜあんなことになったのかわかりません…マスターに対策をお願いしようとしていました。」

「ダメですよ、保護者に頼っては。」

なぜですかと問う自律思考固定砲台に殺せんせーは応える。

「あなたは生徒であり転校生、皆と協調する方法はまず自分で考えなくては。」

「…協調?」

「そのソフトをインストールしてみてください」

「これは!?」

「クラスの皆と共に暗殺を行った場合の演算ソフトです。これで協調が如何に大切かわかったでしょう?」

「はい…、しかし私は協調の仕方を知りません先日はみなさんを困らせてしまっていたようです。」

「そこで先生の出番ですよ」

「暗殺者を向上させて良いのですか?」

「あなたは暗殺者である前に私の生徒ですから。」

「ありがとうございます、ですがこのスイーツ検索ソフトは本当に必要なのですか?」

「にゅや!?、そ、それはあなたを変えてくれたであろうカズキ君がスイーツ好きだからですよ」アセアセ

「そうですか…カズキさんが…」

「はい、ですから仲良くなれるように頑張りましょう」

「はい、先生」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日

「ガラス外したままだけど殺せんせーうまくやったかな?」

そういって教室に入ったカズキが見たのは

昨日までとは違いモニターが大きくなった自律思考固定砲台だった。




少しずつではありますが進めてまいります。
アニメのところまで書いたら別の作品を書こうかと思っています
そして暗殺教室のアニメの2期がやる頃にでも
さいかいしようかとおもっていますので
ご了承ください


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

律の時間

「おはようございます‼︎みなさん‼︎」

彼女の変わりように誰もが驚きを隠せなかったようで

彼女の皆集まっていた。

「親近感を出すための全身表示液晶と体・制服のモデリングソフト、全て自作で8万円‼︎」

殺せんせーは、笑顔で自信満々に応えていた。

「今日は素晴らしい天気ですね‼︎

こんな日を皆さんと過ごせて嬉しいです‼︎」

「豊かな表情と明るい会話術、それらを操る膨大なソフトと追加メモリ

同じく12万円‼︎さらにタッチパネル昨日15万円!!」

その時、数名を除くE組の生徒達は思った、

(転校生がおかしな方向へ進化してきた)

「先生の財布の残高…5円‼︎」

しかし誰も先生の残高には触れなかった。

「庭の草木も緑が深くなってますね、春も終わり近づく初夏の香りがします!」

ムード音楽が流れる中自律思考固定砲台はご機嫌だった。

 

 

「いやーたった一晩でえらくキュートになっちゃって…」

「岡島、顔がやばいぞ…」

千葉に言われ岡島は慌てふためく。

「何ダマされてんだよおまえら、全部あのタコが作ったプログラムだろ。愛想良くても機械は機械、どーせまた空気読まずに射撃すんだろポンコツ。」

 

「…昨日までの私はそうでした。ポンコツ…そう言われても返す言葉がありません。」

寺坂にポンコツと言われた自律思考固定砲台は思わず泣き出してしまう。

 

「あーあ泣かせた。」

「寺坂君が二次元の女の子泣かせちゃった。」

「なんか誤解される言い方やめろ‼︎」

片岡と原が寺坂をせめたてている。

「いいじゃないか2D、Dをひとつ失うことろから女は始まるカズキもそう思うだろう?」

「竹林の言ってることはよくわかんないけど確かにすごく可愛くなったよね。」

カズキはタッチパネル付きになった画面に触れた。

「ひゃうっ、くすぐったいですよカズキさん…///」

「ごめんごめん」

そう謝りつつもカズキは触るのをやめない、自律思考固定砲台さんもまんざらではなさそうだ。

頬を染めながらも自律思考固定砲台は口にする

「皆さんご安心を、私は協調の大切さを学習しました。皆さんの合意を得られるようになるまで…私単独での暗殺は控えることにいたしました。」

 

「そういうわけで仲良くしてあげてください。ああもちろん先生は彼女の殺意には一切手をつけてはいません。」

殺せんせーがそう言うと、自律思考固定砲台は笑顔で銃を展開した。

「先生を殺したいなら彼女はきっと心強い仲間になるはずですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

それから彼女クラスにどんどん馴染んでいった。

「教科書を伏せて菅谷君、網膜の細胞は細長い桿体細胞と、あと一つ太い方は?」

「ええーっと」

「菅谷さん」

自律思考固定砲台の声に菅谷が振り向くと太ももに答えが書いてあった。

「錐体細胞です」

「自律思考固定砲台さん!ずるを教えるんじゃありません!」

「でも殺せんせーは皆さんにサービスをするようにと」

「カンニングはサービスではありません!」

2人のやりとりにクラスに笑いがおこった。

 

 

 

 

 

 

そして昼休み。

「すごい!こんなのもつくれるんだ!」

「はい、特殊なプラスチックを合成してなんでもつくれますよ」

「じゃあ花束つくってほしいな!」

「わかりました矢田さん、花のデータ調べておきますね!そして千葉くん王手です」

「つよすぎる…」

自律思考固定砲台さんはクラスに完全に馴染んだようだった

「自律思考固定砲台さんじゃ呼びづらいし名前考えようよ」片岡が提案すると

「あ、あの…私、カズキさんにきめてほしいです…」

自律思考固定砲台からカズキに指名が来た。

「んー、じゃあ律にしよ自律の律で」

「安直じゃないか?」

カズキのネーミングセンスに皆が意見を言う中

「自律思考固定砲台ちゃんは桜井につけて欲しいんだもんね〜?だから律でいいよね?」

「はい!律とお呼びください!」

「上手くやっていけそうだね。」

その光景を見ていた渚がカルマに話しかけた。

「んーどーだろ、機械自体に意思があるわけじゃないし、あいつがこの先どうするかは…あいつを作った開発者が決める事だよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日

「おはようございます皆さん」

彼女は初日のような姿になっていた。

授業が始まりまたあの射撃が繰り返されると思ったその時

「花を作る約束をしていました。殺せんせーは私に沢山の改良をしてくださいました。その殆どは開発者によって撤去されてしまいましたが大事なデータを私はメモリーの隅に隠しました。」

「つまり律さんあなたは!」

「はいっ!自分の意志でマスターに逆らいました!」

律は可愛らしく笑った。

「それに…カズキさんに名前もつけていただいたので…///」

「気に入ってくれて嬉しいよ」ニコッ

「殺せんせー、このようなことを反抗期と呼ぶのですよね律は悪い子でしょうか?」

「中学生らしくて実にいい、あなたは素晴らしい生徒です」

こうしてE組に新しい仲間、律が加わった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

克服の時間

「それじゃ木村、really《リアリー》言ってみなさい。」

「…リ、リアリー」

「それじゃダメよ」

そう言うとイリーナは木村の前まで行き、ディープキスをした。

イリーナの授業では、間違っても正解してもどっちみち、公開ディープキスの刑が執行される。

「次は桜井、やってみなさい」

「really」

「なかなかいいわね、じゃあご褒美よ」

「いやです」ニコッ

「問答無用よ!」

「後悔しますよ?」

「なっ、んっ…ふぅ…なかなかやるじゃないの」

「まぁ、一応は…」

「それじゃあ次はー、速水発音してみなさい」

「りありー、ですか?」

「まだまだね、それじゃあいくわよ?」

「え、いや」

キーンコーンカーンコーン

「あら、もう終わりかしら今回は見逃してあげるわ」

「助かった…」

イリーナの英語の授業は賛否両論あるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、イリーナは殺せんせーを暗殺できずに

いることに焦りを感じていた。

そのため仕掛けられたワイヤートラップに

気づかずにかかってしまった。

「驚いたよイリーナ、まさかお前が教師をしているとはな」

「…!?せ、せんせい…」

「お前ではあいつを殺すことは出来ん諦めて戻れ」

「そ、そんな…」

イリーナの師匠、ロヴロは非情にも事実を告げた

「それはいけませんねこの教室にはイリーナ先生は

必要不可欠ですから、なのでゲームをしましょうか

烏間先生にも伝えておきますので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

烏間先生の話によれば、ビッチ先生の残留をかけて、殺し屋屋のロヴロ氏と模擬暗殺をすることになったらしく、そのターゲットが殺せんせーではなく、烏間先生になったらしい。

「先生も苦労が耐えませんね」

「君たちには迷惑をかけないようにするから

普段通りにしてくれて構わないぞ」

「「「はーい」」」

両者ともにナイフを当てられないまま半日が過ぎた。

さらにロヴロは腕を負傷し暗殺を断念していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、見てみ渚君あそこ」

カルマが指差す方を見ると、そこでは烏間が昼食をとっていた。

「その烏間先生に近づく女が1人、やる気だぜビッチ先生。」

イリーナは得意のハニートラップでしかけているようだった

しかしそれはカモフラージュで烏間はイリーナに

マウントポジションをとられてしまった。

しかしイリーナが振り下ろしたナイフを烏間は

いとも簡単に受け止めたのである。

「(根本的な力じゃ勝てないっ…)烏間ぁやりたいのだめ?」

「勝手にしろ…付き合ってられん…」

烏間はナイフから手を離した

「「「ビッチ先生残留けってーい!!!」」」

生徒たちが喜ぶ中殺せんせーとロヴロは話していた

「イリーナ先生は、一つずつ弱点を克服させてくれる

授業をしてくれています。だからこそこの教室に必要

なのです。」

「勝手にしてくれ…」

ロヴロは諦めてくれたようでイリーナの残留が

正式に決定した!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

転校生の時間2

6月半ばE組にもう一人転校生がやってくる。

「皆さんおはようございます、今日は転校生がくると

烏間先生から聞いていますね?」

「まぁこの時期だと殺し屋だろうね」

「律さんには痛い目を見させられましたから

今回は先生も油断はしませんよ」

「律はなにかきいてないのー?」

カズキが聞くと

「少しだけならわかります。本当は私と同時にクラスに

編入する予定でしたが、彼の調整に時間がかかったの

と、私の方が彼よりも劣っていたので単独での編入に

なりました。」

1日で殺せんせーの体の一部を破壊した律が劣るとは

どれほどの暗殺者なのだろうか。

すると教室の扉が開き白装束を身にまとった人が

教室にはいってきた。

「驚かせてすまないね、私は転校生の保護者

シロとでも呼んでくれ」

シロと名告る人物が自己紹介するとカズキが反応した

「シロさんって白が好きなの?僕も好きなんだけど」

「あぁ、好きなほうだな」

「そうなんだー、じゃあよろくしねシロさん」

「皆いい子そうでよかったよ、これならあの子も

馴染めやすいだろう、イトナはいっておいで」

シロが転校生の名前を呼ぶと扉にクラスの視線が集まった。

しかし転校生は後ろから壁をぶち破って入ってきた。

「「「(ドアからはいれ!!)」」」

クラス全員が心の中でそう思った。

「堀部イトナだ、仲良くしてやってくれ」

白ずくめの保護者と話が読めない転校生、今まで以上にひと波乱ありそうだと渚が思った時だった。

「イトナくん、外から入ってきたのにどうして濡れてないの?」

カルマの問にイトナは別の返答をした

「お前は恐らくこのクラスで1番強いだが俺の方が強い

だからお前は殺さない」

「「「(何こいつめんどくさそう!?)」」」

またもクラス全員の思考か一致した。

「俺が殺すのは、殺せんせーお前だけだ」

「ヌルフフフ、君じゃ私を殺せませんよ」

「そんなはずはない、俺たちは兄弟なんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

兄弟というイトナの言葉の真意がわからないまま

放課後になり殺せんせーとイトナが決闘することになった

「普通の暗殺はつまらない、リングの外に出たら

処刑ということにしよう」

「いいですが、観客に怪我をさせればそれも処刑です」

殺せんせーの言葉にイトナは頷き机で作ったリングの中で2人の勝負が始まった。

始まった瞬間にクラス全員が驚いた、

殺せんせーの触手が切り落とされたのださらに

切り落としたのも触手であった。

「それを何処で手に入れた!!!!!!」

殺せんせーの顔は真っ黒、ド怒りだ

「君にいう義理は無いね殺せんせー。これで彼が君の兄弟ということはわかってもらえたかな?しかし怖い顔をするねぇ、何か…嫌なことでも思い出したかい?」

「…どうやらあなたにも話を聞かなきゃいけないようだ。」

そう言って殺せんせーは、切り落とされた触手を再生した。

「聞けないよ、死ぬからね。」

そう言いながら、シロは袖口から何らかの光を放った。

その光を浴び、殺せんせーの体は硬直していた。

「全部しっているんだよ君の弱点は。」

「死ね、兄さん。」

硬直した体に、イトナの触手の攻撃が繰り出されるが、殺せんせーは隠し技の脱皮を使いなんとかかわしていた。

しかし殺せんせーはどんどん追い詰められていく

クラス全員がもうダメだと思った時イトナの動きが

止まった。

「あ、やっぱり効くんだ」

クラス全員の視線がカズキに集まった。

カズキの手には鏡があった。どうやら白の出している

光線を反射してイトナに当てたようだ。

さらに殺せんせーは渚が持っていた対先生ナイフを

偶然を装ってイトナに当てていた。

そして脱皮した皮にイトナをつつんでリングのそとに

投げた。

「ルール上これで君は死刑ですねぇ、触手をつかっても

まだ先生の方が上手でしたね。」

「俺が…勝てない…?」

そう呟くとイトナは暴れ始める、シロは麻酔でイトナを

眠らせ連れ帰ろうとしていた。

「待ちなさいシロさん!あなたにも聞きたいことが!」

殺せんせーが触手で捉えようとすると触手が弾け飛んだ

「この服を着ている限り君は私に触れられない、さらばだ」

そういってシロとイトナは消えて行った。

その後生徒たちは殺せんせー誕生の由来を質問したが

殺せんせーは今は話せない、また暗殺することが

絆だとつたえてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大勢で俺のところに来てどうした?」

生徒たちは烏間のところにやってきていた。

「あの…もっと教えてくれませんか?暗殺の技術を。」

「…?今以上にか?」

烏間には何故磯貝がそんなことを言うのか疑問だった。

「今までさ結局誰が殺るんだろってどっか他人事だったけど。」

「ああ、今回のイトナ見てて思ったんだ。誰でもない、俺等の手で殺りたいって。」

磯貝に続き矢田と前原も口にする。

烏間は彼らの目をみて納得し

「これからの訓練は厳しくなるがついてこれるか?」

「「「はいっ!!」」」

「ではこれからは希望者に放課後追加で訓練を課す」

こうしてE組の生徒たちは強くなることを

誓ったのだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

距離感の時間

ご都合主義で球技大会はカットです
理由は野球が苦手だからなんですけどね(笑)


7月になり殺せんせー暗殺の期限まで

残り8ヶ月となった頃

生徒たちは烏間とナイフ術の訓練を行っていた。

生徒たちのナイフを防ぎつつ烏間は考えていた

「(訓練を始めて4ヶ月、有望な生徒が増えてきたな)」

磯貝悠馬と前原陽斗

「(2人のコンビネーションは目を見張るものがある

身体能力の高さもあり、2人がかりなら

俺にナイフを当てられるようになっているな)」

「よし!2人とも加点1だ!!次!!」

赤羽業

「(いっけんのらりくらりとしているがその目には

悪戯心が見えている、何処かで俺に

恥をかかせようとしているのだろうがそうはさせん)」

カルマが行動に出た時烏間が距離をとったので

カルマは舌打ちをした。

「次は誰だ!」

「俺はナイフじゃなくてこれでいきますね」

桜井和生

「(彼の使う王国剣術には注意しなければならない

俺が送った武器も有用に使ってくれているようだな

それにしても時々彼の気配が消えるのがきになるが

彼の持ち味である速さとあいまって脅威的だ)」

烏間が男子の相手をしていると女子の2人がやってきた

岡野ひなた、片岡メグ

「(岡野さんはクラス1のバランスかんかくと体の

しなやかさを武器にしかけてくる、片岡さんも

男子に劣らないリーチの長さと運動能力で有望だ)」

生徒たちの成長を実感していると背後から異様な

空気を感じ取り烏間は思い切り腕を振るった。

「…いったぁ」

「すまない、力を入れすぎたたてるか?」

「あ、へいきです」

そう答えたのは潮田渚彼から異様な気配を感じる。

しかしその気配を周りに感じさせず放つ者がもう1人…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業が終わり、皆が教室に戻ろうとした時倉橋は烏間に歩み寄った。

「せんせー!放課後皆でお茶してこー!」

「…誘いは嬉しいがこの後防衛省からの連絡待ちでな」

そう言って烏間は1人校舎に戻っていった。

「烏間先生私達との間にカベっていうか、一定の距離を保っているような…」

「うん、厳しいけど優しくて私達のこと大切にしてくれてるけど、やっぱり…ただ任務だからに過ぎないのかな…」

矢田と倉橋が残念そうに言う中殺せんせーはみんなの中に入り否定した。

「そんなことありませんよ、彼にもちゃんと素晴らしい教師の血が流れていますよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

烏間は校舎に戻り先日上司に伝えられたことを

考えさせられていた。

「(もう1人人員を増やす…か、適任の男とはだれだ…)」

そう考えていると1人の男がやってきた。

「よっ!烏間!」

「…鷹岡」

その男は持ってきた袋や段ボールを置き自己紹介を始めた。

「俺は鷹岡明‼︎今日から烏間を補佐してここで働く!よろしくなE組の皆!」

鷹岡が持ってきた袋や段ボールの中には、高級エクレアやロールケーキがたくさん入っていた。

「モノで釣ってるなんて思わないでくれよ?お前らと早く仲良くなりたいんだ。それには…皆で囲んでメシを食うのが一番だろ!」

鷹岡は、早くもE組の輪に入っていた。

「お〜殺せんせーも食え食え‼︎まぁいずれ殺すけどなはっはっはっ!」

「同僚なのに烏間先生とずいぶん違うスね。」

「なんか近所の父ちゃんみたいですよ。」

「はははいいじゃねーか父ちゃんで」

木村と原の言葉に鷹岡は笑顔で応える。

「同じ教室にいるからには…俺達家族みたいなもんだろ?」

その後鷹岡は今後の体育の授業について説明を始めた。

「明日から体育の授業は鷹岡先生が?」

「ああ!烏間の負担を減らすための分業さ。大丈夫!さっきも言ったが俺たちは家族だ‼︎父親の俺を全部信じて任せてくれ‼︎」

そう言うと、再び鷹岡を囲みE組の生徒達はお菓子を食べ始める。しかし

「俺は要りません…殺せんせー今日は早退します…」

E組きっての甘い物好きのカズキが鷹岡のもってきた

スイーツを拒否し早退して行ったことをE組全員が

驚いていた。カズキは帰り際烏間のもとにいっていた。

「桜井君どうしたんだ」

「あの人が持ってきた甘い物は毒ですよ。僕にはわかる」

「そうか…」

次の日、カズキの言葉通り毒が生徒たちを

蝕むことになる。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

笑顔の時間

翌日

カズキは朝、シャワーと朝食(ケーキ)を済ませると

地下の部屋に降りて行った。

「今日は何か起こりそうな気がするから1番安全な奴

もっていっておこうかな…」

そういってしまってあったレイピアを1本手に取り

ゆっくりと学校へ足を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…よーしみんな集まったな!では今日から新しい体育を始めよう!ちょっと厳しくなるが…終わったらまたウマいモン食おうぜ!」

「そんな事言って自分が食いたいだけじゃないの?」

「まーなおかげ様でこの横幅だ。」

中村の問いに目をそらしつつ鷹岡は応え、そんな鷹岡をみんなが笑っていた。

「さて!Eの時間割も変更になった。これをみんなに回してくれ。」

そういって回された時間割を見た時生徒たちは

言葉を失った。そこに書いてあったのは最低限の

授業と夜遅くまでの訓練、土曜日まで組まれていた。

「このぐらいは当然さ、理事長も地球の危機ならしょうがないと言ってたぜ。」

「ちょっ…無理だぜこんなの‼︎勉強の時間にこれだけじゃ成績落ちるし、遊ぶ時間もない‼︎できるわけねーよこんなの‼︎」

バシッ!

「前原!」

鷹岡は無表情で前原の腹に膝蹴りをくらわせる。嗚咽を吐きながら地面に転がる前原を岡野が支えていた。

「できないじゃないやるんだよ。言ったろ俺たちは家族、俺は父親だ。世の中に…父親の命令を聞かない家族がどこにいる?」

その時の鷹岡の表情に、E組の生徒は恐怖した。

カズキが言っていた毒とはこのことである、

E組の生徒たちはスイーツにつられ鷹岡のことを

父親だと認めてしまった。それがいけなかったのである

神崎の頭に手を乗せ鷹岡はいった。

「お前は父ちゃんについてきてくれるよな?」

すると神崎は

「私は…いやです、烏間先生の授業を希望します。」

笑顔で言った神崎に鷹岡は平手打ちをする。

「神崎さん!」

茅野が神崎の元に助けにいく。

すると鷹岡は今度は速水のところにいった。

「お前はどうだ?」

「絶対に嫌よ!こんなの軍隊じゃない!私達は学生よ!」

速水の言っていることは間違っていないしかし鷹岡は

速水にも手を挙げた。

「はやみん!」

すかさず中村が助けに向かう、どうやら無事のようだ

みんなが大変な事態になっているときカズキが遅れてやってきた。

「遅刻とは父ちゃん感心しないな〜」

「俺、家族もういないからさそんなのわかんないよ」

カズキの言葉に皆驚いている。そこに烏間もやってきた。

「やめろ鷹岡!前原君、神崎さん大丈夫か?」

烏間は助けには来たがまだ迷っていた。

「(鷹岡のような家族のように接する教育の方が

いいのだろうか…)」

すると鷹岡は提案してきた。

「じゃあ教育者としてお前の育てた1番の生徒をだせ

そいつが俺に1回でもナイフを当てられたら勝ちだ

俺は出ていくことにする」

そういって鷹岡は本物のナイフを取り出した。

「やめろ!彼らには人を殺す訓練はさせていない!」

「じゃあ生徒を見捨てるんだな?」

烏間は苦い顔をしつつある生徒の前までいった。

「渚君、やる気はあるか?」

烏間が渚を選んだことに、渚自身も他の生徒達も驚いていた。

「返事の前に俺の考え方を聞いてほしい。地球を救う暗殺任務を依頼した側として…俺は、君達とはプロ同士だと思っている。プロとして君達に払うべき最低限の報酬は…当たり前の中学生活を保障する事だと思っている。だからこのナイフは無理に受け取る必要はない、その時は俺が高岡に頼んで…報酬を維持してもらうよう努力する。」

(僕はこの人の目が好きだ。立場上僕等に隠し事もあるだろう、なんで僕を選んだのかもわからない。けど信頼できる、この先生が渡す刃なら。それに神崎さんと前原君、速水さんのことせめて一発返さなきゃ気が済まない。)

この時イリーナと殺せんせーは話をしていた。

「渚を選ぶなんてどうしたのかしら。」

「大丈夫です、私もこの状況なら渚君を選びます

もしくはカズキ君ですかね」

「桜井?あいつは渚よりは勝機あるかもね」

「カズキ君はまだ自分の本当の力に気づいてませんから」

「?」

殺せんせーの言葉をイリーナは理解しかねていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚はナイフを手に取り烏間の言葉を思い出していた

「君は倒さなくていい一度だけナイフを

あてればいいんだ。」

「(そうだ倒さなくていいんだ…殺せば勝ちなんだ)」

渚は笑顔を見せながら普通に歩いて近づいた。まるで通学路を歩いているように。

渚はそのまま鷹岡の腕にポンとぶつかり寄りかかった。

その時思い切りナイフを振り抜いた。

この時初めて鷹岡は自分が殺されかかっていることに

気づいたようだった。

鷹岡は大勢を崩したので渚は服をつかんで倒し、

防がれないように後ろに回って確実に。

「捕まえた」

渚はナイフの峰を鷹岡の首に当てていた。

(殺気を隠して近づく才能、殺気で相手を怯ませる才能、本番に物怖じしない才能。渚には…暗殺の才能がある。)

「あ、峰じゃだめなんですっけ?」

「そこまでです!」

そういって殺せんせーが現れナイフを食べてしまった。

「こんな危ないものを生徒に持たせるなんてダメですよ」

殺せんせーがそういっていると

「こ、この餓鬼ぃぃぃ!」

激昴した鷹岡が渚に襲いかかった。

「怒りに任せた攻撃を弾くのは簡単だよ」

だがカズキにはじかれてしまった。

その後やってきた理事長に辞表を通達され

鷹岡は帰って行った。

生徒たちは烏間にスイーツをねだり放課後皆で

食べに行った。土下座しながらついてくる殺せんせーは

シュールだったそうな…



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

現場の時間

久しぶりの投稿になりました。
向こうの作品がもうすぐ一区切りつきますね。
今度はこちらを進めて行きたいと思います。
いつも通りのご都合展開及び時間の都合上の割愛を
お許しください。


夏真っ盛りとてつもない暑さの中カズキはひとり、部屋にいた。

なぜ部屋にいるのか

「ごほっぼこっ」

そう、つまりは夏風邪を引いたのである。

しかもこじらせてしまい長い間学校を休んでいる。

カズキが休んでいる間にプールが裏山にできたり

片岡に時に突き放すことの大切さを教えたり、

殺せんせーが水に弱いことなど色々なことがあったと

渚から連絡されていた。

「やることないし…ひまだなぁ、静かで寂しいし…」

「そうなんですか?」

「うん、そうそう……ってえぇっ!?」

「どうかなさいましたか?」

カズキが驚くのもそのはず律がいたのだ、携帯に

「い、いやなんでここにいるのかなって…」

「みなさんとの協調を図るためにみなさんの携帯に

私のデータをインストールさせていただきました。

モバイル律とでも思ってくださいっ!」

「じゃあやっぱり携帯もタッチパネルだし、律には触られてる感覚があるの?」

そういってカズキは律に触り始めた。

「ひゃぅ、やめてくださいっ///」

「ごめんごめん、ひとりだったからさみしくてさ。律が来てくれて嬉しいよありがとう。」ニコッ

「はいっ!それでですね、明日はこれますか?」

「行けなくはないかな、どうかしたの?」

「寺坂さんが明日暗殺をするともうしておりまして、ですが最近の彼は様子がおかしく、私のデータ上嫌な予感がします」

「律がそういうならそうかもしれないね…ごほっぼこっ」

「カズキさん大丈夫ですかっ!?」

「大丈夫大丈夫、明日はいくよ」

「わかりました、みなさんに伝えておきますねっ!」

「うん、じゃあまたね」

「はいっ!、また明日です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

「うー、頭痛い…」

カズキは律との約束通り学校に向かっていた。

かなり遅れてはいるが。

「あっれー、大遅刻じゃーん」

「カルマかよ…お前もサボりなら大概だろ…」

「みんなプールいっててさー?寺坂につきあってんの」

「あー、律がいってたやつか」

「そうそ…」

ドガーン

「な、なんだ!?」

「あれって…カズキいそぐよーなんか嫌な予感する」

「はぁ…わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃プールでは

「お、おい…ウソだろ…!?」

その影で微笑むものが1人

私の計算では7〜8人は、死ぬよ

水に入って助けなきゃ殺せんせー

シロは寺坂をはめたのだ。

「さぁイトナ後は任せたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、カルマ」

「…」

「プールなんてないんだけど」

「お、お前ら…」

やってきたカズキとカルマが見たのは

気持ち悪い程焦る寺坂と壊れたプールだった。

「お、俺は悪くねぇ、あのシロってやつが…グえっ」

カルマは躊躇なく寺坂を殴った。

「良かったね先生がマッハの超生物じゃなかったら、お前は大量殺人犯だ」

「殺せんせー!イトナがいるっぽいからそっちいってー」

「で、ですが皆さんを」

「それは俺に任せてよ、ね?」

「カズキくん…わかりました、ですが無理はしないでくださいね」

「了解だよ!」

そういってカズキは制服のまま水に飛び込んだ。

「カズキもやるねー」

「あいつ…」

カズキはどんどんクラスメイトを助けていく

だが速水の姿だけは見つけることが出来なかった。

「カルマー、速水だけ見つからないから俺はまだ潜る。そのあいだになーんかいい策かんがえといて」

そういってまた水中に消えていった。

すると今度は渚がカルマに話しかけた。

「でもカズキくんはどうして速水さんだけっていったの?原さんもいないけど」

「原さんなら木の枝に捕まってる。それが原因で、殺せんせーうまく戦えないんだ」

「そうだな、あのタコが先に助けたやつらは触手の射程範囲内だ」

「おい、寺坂!なんで呑気なこといってんだよ!まさかお前、あいつらに操られてたのか!?」

「ああそうだ、俺みたいなやつは操られる運命なんだよ。でもな操られるやつくらいは選びてえ、あいつらはもうこりごりだ。だからカルマ、お前の狡猾なオツムで俺に作戦与えてみろよ」

「実行できんの?死ぬかもよ」

「やってやんよこちとら実績持ってる実行犯だぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃カズキは水の中でかくとうしていた。

服がビショビショで動きづらいし、体力も限界が近いな

なにより頭痛いんだよほんと

そういいながらも速水を探して泳ぎ続ける。

いた!!カズキは速水をみつけた。

すぐに速水をだき抱え地上まで戻った。だが…

「やば…意識がと…ぶ…」

そのまま倒れてしまった。もちろん速水をだき抱えたまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいイトナ!俺とタイマンはれや!」

「寺坂君!危険です!」

そういって寺坂はシャツを脱ぎ構える

「布キレ1枚で防ごうとは健気だねー」

「カルマくん!」

「いいんだよ、死にはしない、だから必死にくらいつけって、それに寺坂の、シャツ昨日と同じやつなんだ。だからスプレーの、効果も残ってる」

「へくしょん」

「イトナ?」

「つまりイトナの粘液も出てくわけ、触手の弱点は水だよ?さぁ皆ー飛び込もーか」

そういって生徒達は飛び込み始める。

イトナの触手はビショビショになり、もう戦える状況じゃない。

「さーどうするの?みんなあんたに殺されかけて怒ってるみたいだしやるなら徹底して水遊びするけど?」

「そうだねここは一旦引くとしようかかえるよイトナ」

そういって2人は去っていった。

そしてクラスではカルマが皆に水をかけられ怒るなど

また仲のいいクラスに戻っていた。はずだった。

「あっ!」

「茅野?」

「桜井くんと速水さんは!?」

「あっ、忘れてた」

「カルマくん!?」

「「「さ、さがせーっ!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ、ううん…」

先に意識を取り戻したのは速水だった。

「そっか…プールが爆発して流されて…皆は!?」

「うぅ…」

「へっ?///」

漸く速水は自分の状況を理解した。

目の前には金髪の少年水に濡れていて大人っぽい雰囲気を醸し出している。

「な、なんで桜井が私を抱きしめてるの!?」

「うぅっ…」

「桜井…?うなされてるの…?」

「いやだ…いかないで…ひとりにしないで…寂しいよ…」

「えっ?」

「っ…いってて…」

「大丈夫…?」

「あ、速水さん無事だったんだ」

「うん」

「「「ふ、ふたりとも…?」」」

「「へっ?」」

「いやー2人はそういう関係だったんだー」

「ヌルフフフ、これはいいネタになりますねぇ」

「あっ」

カズキは漸く状況を理解したようだ

なんといっても速水はカズキにだき抱えられたままなのだ。

「…///」

速水は照れでなにもいえなくなっている

「速水さんを助けた後に気絶しちゃってさー、カルマはうまくやったのかー?」

「あーやったよー」

「そっかーじゃあおやすみ…」

「「「へっ?」」」

「すぅ…すぅ…」

「寝ちゃったね」

「そうだね、幸せそうだから起こさないでおこうか」

「先生が責任をもって家まで送りますから皆さんは帰ってください」

「「「はーい」」」

皆が帰っていく中速水も帰ろうとカズキの腕から出ようとした。

「でれない…」

「うーん、困りましたね、速水さんもカズキくんの家に行きましょうか」

「えっ?ちょ、まって!」

「待ちませんよー、ヌルフフフ」

そういってカズキたちを抱え殺せんせーはとんでいった。




さぁ次回は無自覚イチャイチャ回ですよー


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

看病の時間

ご都合展開でございます。


「はい、到着です」

「こ、ここが桜井の家?」

殺せんせーに連れられてきたのはいかにも富豪が住んでいそうな家だった。

「そうですねぇ、彼はここで一人暮らしをしています」

「一人暮らしなんだ…」

速水は思う、こんな広い場所でひとりだなんて寂しいに決まってるいると。

「では、先生突入しますっ!」

そういって殺せんせーは家に入っていく。

さっきまでの超スピードとはうって変わってゆっくりと

2人を運びこみカズキの部屋のベッドに寝かせた。

「ねぇ、先生」

「なんですか、速水さん」

「制服持ってきてよ、これじゃ流石にね」

「わ、わかりましたっ!マッハでとってきますっ!」

そう速水はプールの授業のままここに来たのだ。

制服などは全て教室にあり、今は学校指定の水着を着ているだけだった。

その水着もまだ濡れており、このままでは風邪をひくのは間違いないため殺せんせーに頼んだのだ。

数分後に殺せんせーが戻ってきた。

「速水さん、持ってきましたよ。では先生は戻りますので、カズキ君のことは任せましたよ」

「う、うん…」

殺せんせーはそう頼むとまた飛んでいってしまった。

「とりあえず着替えないと」

速水は多少力が抜けたカズキの腕から抜け出し制服に着替えた。

「床とかも濡れちゃってるし拭いておこうかな」

速水は床が濡れてしまっているのに気づきタオルで拭き取り始めた。

しかしもっと大きな濡れている存在に気づいていない。

「これで、いいかな」

全て終わらせた速水はカズキの部屋に戻った。

そこで重大なことに気がついてしまった。

「桜井の服…どうしよ…」

そうカズキはまだビショビショの制服を着ているの。

ましてや夏風邪で休んでいた彼である。

「で、でも脱がせるのは恥ずかしいし…」

そうかんがえていると。

ピンポーンとインターホンがなった。

速水は誰だろうと玄関まで行き扉を開けた。

そこには彼女もよく知るクラスの委員長がいた。

「磯貝がどうしてここに?」

「殺せんせーが俺のとこきてさ、ひとつだけ仕事を頼まれたんだ」

「そうなんだ。で、仕事って?」

「カズキの着替えだよ、流石に速水でも無理だろうって殺せんせーが言ってきたから」

「あ、ありがと…」

「クラスメイトのためだからさ」

その時速水はクラスメイトたちが彼をイケメンだと言う理由がわかった気がした。

「じゃあやってくるから速水はまっててくれ」

「うん」

そういって磯貝はカズキの部屋に入っていきしばらくすると戻ってきた。

「終わったから俺は戻るよ、後はよろしくな」

「わかった」

そういって磯貝も帰っていった。

これで正真正銘桜井と2人きりだ…

速水はそう思い、少し照れながらカズキの部屋に入っていった。

着替えたカズキの姿は黒を基調にライトグリーンのラインが入ったジャージという楽な格好で、磯貝の気遣いが感じられた。

「2人って仲いいもんね」

速水はカズキの寝ているベッドの傍に近くにあった椅子を置いて寝顔を眺めながら呟いた。

「桜井って風邪で休んでたのに水に飛び込んで助けてくれたんだよね…ありがとう」

そういってカズキの手を握って疲れのせいか眠ってしまった。




タイトル詐欺とはこのこと
看病とはなんだったのか
そして磯貝くんイケメンですね。
イチャイチャはまだ続きます



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2人の時間

数時間経ちがたち

「…っ、はぁー良く寝たでもなんで部屋にいるんだろ」

学校でカルマと話したあと意識を手放してから、気づけば自室のベッド上で、左手がなにか柔らかいものに包まれている感覚。

カズキはまだ状況を理解できていなかった、つまり寝ぼけているのである。

数秒後頭が冴えてきたカズキは

「えっ、ちょっとなんで、速水さんが俺の手を握ってるの?」

カズキの視界に入ってきたのはベッドの脇で椅子にすわり、自分の手を握りながら眠っている速水の姿だった。

「あ、そっか。あんなことがあったら疲れちゃうよね。眠らせてあげなきゃ」

カズキは速水の手からそっと自分の手を離し速水を自分のベッドに寝かせた。

そして時計をみると針は6時を指していた。

「もうこんな時間か、あれから結構たってるし速水さんが起きたらご飯食べられるように作っとこうかなー」

そういってカズキはベッドから抜け出しキッチンに向かっていった。

「寝顔…可愛かったな…///」

その呟きを聞くものは誰もいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一時間後、速水も目を覚ました。

「どういうこと…?」

目覚めた速水は自分がベッドで寝ていることに困惑していた。

それから部屋にカズキがいないことに気づき急いで下の階に行くと電気がついている部屋があったのでそこに入った。

「おはよう、速水さんよく眠れた?」ニコッ

「ごめん…」

「なんであやってるの?俺のこと見ててくれたんでしょ?」

「うん…でも寝ちゃって…」

「今日は色々あったから疲れてたんだよ、だからきにしないでね?」

「あ、ありがと…」

部屋に入った速水はカズキにこれまでの経緯を説明した。

「そろそろ夜ご飯できるからそこに座って待ってて」

「そ、そんなのわるいよ。すぐ帰るから」

「でも2人分で作っちゃったから速水さんが帰っちゃったら俺食べきれないよ。それに久しぶりに1人じゃない夜ご飯が食べたかったんだけど…」

そう言ってカズキは哀しそうに笑った。

「そこまで言うなら…お願いする」

そういって速水は自宅にその旨を伝えるメールを母親に送った。

「ありがとうね、じゃあ仕上がるまで待っててね」

「うん」

速水が座っているあいだにカズキはテキパキと料理をこなしていく

「桜井は料理いつもしてるの?」

「家に俺以外誰もいないからするしかないよw」

そういってカズキは笑った。

「さみしくないの…?」

するとカズキはビクッと震え、少しの沈黙の後答えた。

「さみしくないわけないけどさ、慣れたから」

そう言ったときのカズキの笑顔はなんだか冷たいと速水は感じた。

「よし、完成した。じゃあ一緒にたべよ」

「…っ!すごい!」

「速水さんのためにちょっとだけ張り切って作ったんだ」

カズキが作ってきたのはグラタンとチーズトーストだった。

「よくこんなの作れるね」

「日々の努力の賜物かな?w」

桜井はどれだけの努力をしたのだろうと思っていると。

「冷めちゃうから食べよっか」

「うん、じゃあ頂きます」

「はーい、召し上がれ」

「…おいしい」

「よかったぁ…、じゃ俺も、うんいつもより美味しいや」

「そうなの?」

「うん!、速水さんと食べてるから一層ね!」ニコッ

「…っ///」

カズキがそんなことを笑顔で平然と言うのだから、その威力は計り知れないものだ。

その後2人は談笑しながら夕食を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあそろそろ帰るね」

速水は荷物をまとめ帰ろうとした。

するとカズキは少しだけ玄関で待っててねといい、自室に走っていった。

戻ってきたカズキの姿は青いシャツに白のパンツという

先ほどまで来ていたジャージとは違いかなりお洒落な服装になっていた。

「どうしたの、その格好?」

「夜遅いしさ、送っていくよ」

時刻は8時半夏といえども外は真っ暗である。

カズキは夜道を女の子1人で帰らせるような性格の持ち主ではないので送っていこうとしたのである。

「でもなんでそんな服装してるの?」

「外に出る時ジャージ着ないんだよ、だからこの格好」

「そっか、じゃあそろそろいかないと」

「じゃあしゅっぱーつ」

「はいはい」

2人が夜道を歩いていくと

「凛香?なにしてるんだ?」

速水が名前を呼ばれ振り向くと

「お、お父さんなんでここに!?」

「仕事がいつもより早く終わってな、それでそっちの彼は誰だい?」

「申し遅れました、凛香さんと同じクラスの桜井和生と申します。本日は僕が学校で倒れてしまって、凛香さんが僕の看病をしてくださったんです」

「おお、そうだったのか、桜井君といったかい?そんなに堅苦しくならなくていいよ。私は凛香の父親だ凛香を送ってくれているのだろう?もう遅いから後は私に任せて君は帰りなさい」

「わかりました、じゃあまたね速水さん」

「うん、今日はありがとうね夜ご飯ももらっちゃって」

「良かったらまた来てよ、じゃあまたね!」

そういってカズキは引き返していった。

「なぁ凛香」

「何?お父さん」

「いつの間にあんな格好いい彼氏を作ったんだ?」

「ち、ちがうわよ!桜井は彼氏なんかじゃないっ!」

「そ、そうか…」

「いいから帰ろ?」

「ああ、そうだな。でももし彼氏ができたら紹介しろよ?」

「あーもうその話はこんどね」

速水親子も仲良さそうに帰路についていた。




速水の家って母親は厳しそうだけど
父親は優しそうなイメージがあります。
まぁ、ご都合展開なんですがねw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

期末の時間

ミス申し上げます深くお詫び申し上げます


期末テストの時期である。

椚ヶ丘中学では成績が全て。

E組を誰に恥じることも無いクラスにする

そう目論む百億円の賞金首にとってこのテストは

一学期の総仕上げであり、決戦の場である!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヌルフフフ、皆さん1学期の間に基礎がガッチリできてきました。こそ分なら期末の成績はジャンプアップか期待できます」

「殺せんせー、今回も全員が50位以内を目標にするの?」

渚がそう問いかけると

「いいえ、先生はあの時総合点ばかりきにしていました。生徒それぞれに合う目標を立てるべきです。そこで今回は……この暗殺教室にぴったりの目標を設定しました!」

そういう殺せんせーと寺坂はなにか通じあったのか

「だ、大丈夫です!寺坂君にもチャンスがある目標ですから!!」

そういってまた説明を続けた。

「さて、前にシロさんが言った通り、先生は触手を失うと動きが落ちます」

そういって分身を使って説明してくれたところによると、触手1本につき先生が失う運動能力はざっと20%らしい。

「そこでテストについて本題です」

殺せんせーが何を言うのか生徒達は注目している。

「前回は総合点で評価しましたが…今回は皆さんのもっとも得意な教科も評価に入れます。教科ごとに学年を取った者には……答案の返却時、触手を1本破壊する権利をあげましょう」

生徒達は驚いた。

「チャンスの大きさがわかりましたね?総合と5教科でそれぞれ誰かがトップを取れば6本もの触手を破壊できます。これが暗殺教室の期末テストです、賞金百億に近づけるかどうかは皆さんの成績次第なのです」

僕達はおもった、この先生はやる気にさせるのが本当に上手いと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「珍しく気合い入ってんじゃん奥田さん」

「はいっ!理科だけなら私の大の得意ですから!やっと皆さんの役に立てるかも!」

「そうだね、1教科限定なら上位ランカーは結構いるから、皆もかなり本気でトップを狙ってるね」

茅野の言う通りであった。

いくらエンドのE組であっても、成績上位者はいる。

彼らは本気でトップを狙っているのだ。

さらに理事長には烏間とイリーナが不正を行わないように釘を指してくれたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし………

「でも、まだわからないぞ。進藤から電話かかってきたんだけどさ、五英傑って奴らがいるらしい」

杉野が言うにはA組には各教科ごとのスペシャリストがいるらしい。

 

 

 

前回総合2位 放送部部長 荒木鉄平

 

前回総合3位 生徒会書記 榊原蓮

 

前回総合6位 生物部部長 小山夏彦

 

前回総合7位 生徒会議長 瀬尾智也

 

そして………

 

前回総合1位、全国模試第1位

理事長の息子であり、生徒会長でもある

 

 

 

 

浅野学秀

 

彼らを抑えなければE組に勝利はない。

そう渚が思っていると、磯貝から本校舎の図書室へ誘われた。

カズキも誘われたのだが、家で勉強するといって断った。

それぞれが目標にむけ努力をしているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

「A組とテストの勝負するのー?」

「うん、そうなっちゃった」

カズキは少し楽しそうだとわくわくしていた。

なぜなら勝者は敗者になんでも命令できるとのこと。

「じゃあこれをかけてもらいましょう」

そういって殺せんせーはあるものを提案した。

触手6本と賭けの報酬、最高の勝負になった。

最後に殺せんせーは暗殺者ならトップを狙えと言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

双方の利害が交錯する期末テスト、ある者が勝者になりある者は敗者になる。

いざ決戦の時!!!!!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決戦の時間

試験日当日

カズキと磯貝はいち早くテスト会場にやってきていた。

「カズキ…あれは誰だ?」

「わ、わかんない」

ふたりが戸惑っていると烏間がやってきた。

「律役だ、流石に人工知能の参加は許されなくてな。ネット授業で律が教えた替え玉を使うことでなんとか決着した。」

「そ、そうなんですか」

「交渉の時理事長に、『こいつも大変だな』という哀れみの目を向けられた俺の気持ちが君たちにわかるか」

2人はおもった。

いや、本当頭が下がりますっ!!

「俺からも律と合わせて伝えておこう頑張れよ」

「…はい!!」

そうして2人はテストに臨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椚ヶ丘中学のテストはモンスターだ

 

 

 

 

 

 

 

英語

「どいつもこいつもラストの問題でやられてるだろーなぁ、でも俺は違う1年LAにいたんだ今更日本の中学レベルの問題でつまずくかよぉ!………嘘だろ?倒れない!?」

瀬尾が躓いていると

「お堅いねぇ、力抜こうぜ優等生!」

「E組ごときが満点解答だと!?」

「多分読んでないっしよ?サイリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』」

「やった!」

中村に続き渚も解けたようだ。

「いやータコにすすめられてよんどいてよかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理科

「そぉ〜らっ!理科は暗記だ記憶野の閃光で敵の鎧を剥いでいく、だが頭の装甲だけが剥がせないちゃんと暗記したはずだが」

すると奥田がモンスターの方に乗って現れた。

「本当の理科は暗記だけじゃ楽しくないです。君が君である理由をわかってるよってちゃんと言葉にして伝えてあげたら、この理科とっても喜ぶんです!」

奥田は感じでいた。

理科にも届く国語力が必要って殺せんせーが言っていたのは本当だったと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

社会

「し、しくじったぁ…!?」

今回の問題はアフリカ開発会議の首相の会談の回数だった。

「ふー危なかった、一応覚えておいてよかったよ」

「磯貝キサマ…社会でこの俺を出し抜くとは…」

「たまたまだよ、俺んち結構な貧乏でさ。アフリカの貧困にちょっと共感して調べてたら現地に連れてかれて、さらに興味が広がっただけさ」

「…クククたった一問解けたくらいで調子に乗るなよ…何故なら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国語

「思った以上にやるようだなE組顔だけでなく言葉もなかなか美しい!」

「神崎さんも頑張ってるんだね」

「桜井くん?なんで休んでるの?」

「休んでる?ちがうよ、ほら俺の周りを見てご覧」

「えっ?」

「なにっ!?」

カズキの周りにはモンスターの一体もいることはなく、桜吹雪が舞っていた。

「榊原くんもがんばってねー?」

「神崎さんならできるから大丈夫だよ」ニコッ

「うんっ!」

そう言うとカズキは桜吹雪の中にきえていった。

「だが、ただ一片の会心の回答ではテストの勝敗は決まらないっ!」

そう我々には総合力の怪物がいるのだから…

榊原はそう言い残しきえていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数学

「僕には全教科死角はない、クラス対決も頂上対決も圧勝で制し、E組には父を支配する駒になってもらう」

浅野の野望は恐ろしいものだしかし彼にはそれを実現しかねない実力がある。

「あーあ、みんな目の色変えちゃってまぁ…正しい勝ち方教えてあげるよ」

そういってカルマも戦場へ繰り出した。

2日間の攻防の末すべての戦いが幕を下ろした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

挫折の時間

いろいろ割愛です、受験生のため時間が無く
申し訳ありません。



うちの学校では学年内順位も答案と一緒に届けられる。

テストの行方は一目瞭然だ。

「では発表します。まずは英語から…E組の1位…」

クラス全員が固唾を飲む

「そして学年でも1位!中村莉桜!!」

中村莉桜

英語 100点 学年1位

 

「完璧です、君のやる気はムラっ気があるので心配でしたが」

「うふふーん、なんせ賞金100億かかってっから。触手1本忘れないでよ、殺せんせー?」

「はい、渚君も健闘ですが肝心なところでスペルミスを犯す癖が治ってませんね」

「うーん…」

「桜井くんはいつもながら素晴らしい、1位ではないにしろ、好成績ですよ、E組では2位です」

「ありがとー、殺せんせー」

「さてしかし、1教科でトップを取ったところで潰せる触手はたった1本。それにA組との対決もありますから喜ぶのは全部返した後ですよ…続いて国語…」

みんなが神崎に注目を集める中、神崎はカズキの方を見ていた。

「E組1位は…桜井和生!学年でも1位です!」

「「「おぉー!」」」

桜井和生

国語 100点 学年1位

「しかし…1位は2人、もう1人は浅野学秀です。A組もやりますねぇ」

「やっぱり浅野はとってくるよな」

「強すぎ、英語だって中村と一点差の2位だぜ?」

「流石全国1位、中間より難易度高かったのに全教科相変わらずスキがない」

「そうだねー五英傑なんて呼ばれてるけど、浅野くんを倒せないと学年トップは取れないよー」

「でもカズキさんもすごいじゃないですか!私の情報によれば…」

「律ー?それは秘密ね?」

「は、はい。すみません…」

「後で国語教えてあげるからね?」

「わかりましたっ!」

「「「(ん?なんだろ)」」」

クラス一同カズキと律の会話を不思議に思っていた。

「神崎さんも大躍進です学年2位ですよ」

「神崎さんもすごいね!」

「ありがとう渚くん」

「では続けて返しますね」

現在A組とは2:1でE組がリードしているが、まだ油断は出来ない。

「社会!E組1位は磯貝悠馬97点!!そして学年では…」

みんな心配そうだ…

「おめでとう!浅野君を抑えて学年1位!マニアックな問題が多かった社会でよくぞこれだけ取りましたね!」

「おめでとう悠馬!」

「カズキみたいに100点は取れてないけどな」ハハッ

「では次は理科です。E組1位は奥田愛美。そして学年でも1位です!素晴らしい!」

「これで3勝1分け!数学の結果を待たずしてE組の勝ち越し決定!!」

「やったっ!」

「仕事したな奥田!触手1本お前のものだ」

「ってことは賭けの報酬はいただきだな」

「楽しみだね〜」

それぞれが思い思いに喜んでいる。

「あれ?」

そこで渚は気づいた。カルマがいないことを

「数学の1位は浅野くんでした、そして総合1位も浅野くんです」

「やっぱり総合は無理か…」

みんなそう思っているようだ。

「惜しかったですねー、カズキ君」ニュヤリ

「殺せんせーどこで勝負がついたの?」

「やはり数学と英語の2点差でしょうか。社会では勝っていましたし」

「まだ足りないかー」

「「「えっ!?」」」

クラス全員が驚きを隠せない

「総合2位桜井和生、本当に惜しかったです」

「「「す、すげー!!!」」」

「刃って言うのは磨けば磨くほど鋭さをますものだよ?」

「「「(か、かっこいい)」」」

全員がそう思う中、カルマは校庭の外れの木陰にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石にA組は強いカズキ君は大健闘でしたが結局はかてませんでした。」

「なにがいいたいの?」

「恥ずかしいですねぇ〜『余裕で勝つ俺カッコイイ』とか思ってたでしょ」

カルマは顔を真っ赤にしている。

「先生の触手を破壊する権利を得たのは中村さん磯貝君、カズキ君、奥田さんの4名。君は今回、暗殺においても、賭けにおいてもなんの戦力になれなかった。」

「…」

「わかりましたか?殺るべき時に殺るべき事を殺れない者は…この教室では存在感を失います、刃を研ぐのを怠ったものは暗殺者じゃない、ただのガキです」

そういって殺せんせーはカルマの頭を触手で撫で回す。

「チッ……」

そういってカルマは教室にもどっていった。

「よかったのか?」

「強者は敗北を知った時にこそ強くなります。だからいいのです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後寺坂君たちの策でさらに4本の触手を破壊する権利を得た僕らは賭けで手に入れた報酬で暗殺をすると殺せんせーに誓った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

終業の時間

期末の後はほどなく1学期の終業式

けど僕らにはやるべき事が残っている

「おお〜、やっときたぜ生徒会長サマがよ」

「何か用かな?君たちに構う暇なんて無いけど」

「浅野、賭けてたよな。要求はさっきメールで送信したものだ。構わないよな?」

「ああ…」

「なんなら家庭科もいれてやってもいいぜ?それでもかつけどな」

全員が思った。寺坂の顔…うざい…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カルマ珍しいな、お前が全校集会来るなんて」

磯貝の問いかけに

「だーってさ。今フケると逃げてるみたいで嫌だし」

「?」

全校集会が始まろうとしているが、皆ニセ律が気になるようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終業式はつつがなく進む、いつものE組いじりもウケが悪い

エンドのE組がトップ争いをしちゃったから

今日ここに殺せんせーはいないけど僕らは前を向いていられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

E組の校舎に戻り殺せんせーのホームルームが始まった。

「1人1冊です」

ドンっという効果音とともに分厚いしおりが配られた。

「でたよ恒例過剰しおり」

「アコーディオンみてーだな」

「これでも足りないくらいです!夏の誘惑は枚挙にいとまがありませんから」

「お、重っ…」

あまりの重さに速水がふらつく

「大丈夫?」

すかさずカズキが支えた

「う、うん…」

「「「(美少年だ……)」」」

「さてこれから夏休みに入るわけですが皆さんにはメインイベントがありますね?」

「ああ、賭けでとったこれのことね?」

「本来は成績優秀クラスつまりA組に与えられるはずだった特典ですが、今回は君たちにももらう資格はあるはずです」

そう《夏休み椚ヶ丘中学校特別夏季講習!!沖縄離島リゾート二泊三日!!》

 

 

 

 

 

「君たちの希望だと触手を破壊する権利はここでは使わず、この離島の合宿中に行使するということでしたね。触手8本の大ハンデでも満足せず四方を先生の苦手な水で囲まれたこの島も使い万全に且つ貪欲に命を狙う。正直に認めましょう、君たちは侮れない生徒たちになった。」

生徒たちは殺せんせーに褒められて満足そうな表情をしている。

「親御さんに見せる通知表は先ほど渡しましたがこれは先生からのあなたたちへの通知表です」

ぶわっと教室中にばらまかれた教室いっぱいの二重丸。

ターゲットからのこの三ヶ月で嬉しい評価だ。

「1学期で培った基礎を存分に活かし、夏休みも沢山遊び沢山学びそして何より、沢山殺しましょう!!暗殺教室の基礎の1学期これにて終了ですっ!!」

そういって殺せんせーはホームルームに幕を下ろした。

僕らは暗殺者、ターゲットは先生。

様々なことを教えてくれる彼への一番の恩返しは殺すこと。

夏休み、絶対に殺って見せると全員で誓った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

策謀の時間

南の島での暗殺旅行が1週間後に迫り、今日はその訓練と計画の詰めに集まった。

勝負の8月殺せんせーの暗殺期限まで残り七ヶ月だ。

「夏休みの特別講師のロヴロさんだ、今回の作戦にプロの視点からアドバイスをくれる」

烏間の言葉に生徒たちは驚いた。イリーナの師匠が自分たちを鍛えてくれると言うのだから。

「それで、殺せんせーは今絶対に見てないな?」

「ああ、予告通りエベレストで避暑中だ。部下がずっと見張っているから間違いない」

「ならばよし、作戦の機密保持こそ暗殺の要だ」

烏間とロヴロが入念なチェックを行ってくれているようだと、生徒たちは安心した。

そしてロヴロが言うには、今回はプロの暗殺者は使用されないらしい。

つまりは生徒たちが殺さなければならないということである。

それを知った生徒たちは俄然やる気をだしている。

「作戦は、先に約束の8本の触手を破壊し、間髪入れずに攻撃して奴を仕留める。それはわかるがこの最初の『精神攻撃』というのは何だ?」

ロヴロの問いかけに渚が答えた。

「まずは動揺させて動きを落とすんです。殺気を伴わない攻撃には…殺せんせーもろいとこあるから」

さらに前原も続く。

「この前さ殺せんせーエロ本拾い読みしてたんスよ。クラスの奴らには言うなってアイス1本配られたけど…、今どきアイスで口止めできるわけねーだろ!!クラス全員でさんざんにいびってやるぜ!!」

「他にもゆするネタは幾つか確保してますからまずはこれを使って追い込みます」

「残酷な暗殺法だ」

ロヴロは思わず生徒たちをおそれた。

「…で、肝心なのはトドメを刺す最後の射撃。正確なタイミングと精密な狙いが不可欠だが…」

「不安か?このクラスの射撃能力は」

「いいや逆だ、特にあの2人は素晴らしい。」

「そうだろう、千葉龍之介は空間計算に長けている。遠距離射撃で並ぶものは無いスナイパーだ。速水凛香は手先の正確さと動体視力のバランスが良く、動く標的を仕留めるのに優れたソルジャーだ。どちらも主張が強い性格ではなく、結果で語る仕事人タイプだ」

烏間が千葉と速水のことを褒める。

「ふーむ、俺の教え子に欲しいくらいだ。他の物も良いレベルに纏まっている、短期間でよく見出し育てたとのだ。人生の大半を暗殺に費やした者としてこの作戦に合格点を与えよう。彼等なら充分に可能性がある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロヴロさん」

「…?」

渚がロヴロに問いかける。

「僕が知ってるプロの殺し屋って…今のところビッチ先生とあなたしかいないんですが。ロヴロさんが知ってる中で……1番優れた殺し屋ってどんな人ですか?」

「あ、それ俺も興味ある」

話を聞いていたのかカズキも便乗してやってきた。

「(よくよく見れば2人とも素質があるフフフおまけに)興味があるのか?殺し屋の世界に」

「あ、いいやそういう訳では」

「俺はちょっと…色々と?」

「そうだな…俺が斡旋する殺し屋の中にそれはいない。最高の殺し屋、そう呼べるのはこの地球上にたった1人。この業界ではよくある事だが………彼の本名は誰も知らない、ただ一言仇名で呼ばれている。曰く《死神》と」

渚とカズキは息を呑む。

「ありふれた仇名だろう?だが死を扱う我々の業界で《死神》と言えば唯一絶対奴を指す。神出鬼没冷酷無、夥しい数の屍を積み上げ、死、そのものと呼ばれるに至った男。君たちがこのまま殺しあぐねているのなら…いつかは奴が姿を現すだろう。ひょっとすると今でも、じっと機会を窺ってるかもしれないな」

2人は思った。そんな人がいるのならうかうかしてられない。南の島のチャンスは逃せない!

「……………では背の小さい少年よ君には《必殺技》を授けてやろう」

「!?ひっさつ…?」

「そうだプロの殺し屋直接教える…《必殺技》だ」

「ロヴロさん、俺にはなんにもないの?」

「君には何故か必要がない気がしてな、言うなれば君の中に眠る物が目を覚ました時、その意味がわかるはずだ」

「??わかりました」

渚は期待し、カズキはなにやら不思議そうにしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして南の島の暗殺ツアーが幕を上げる。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

島の時間

「んー、離島って何が起こるかわからないよね」

カズキは考え事をしていた。

今日は暗殺旅行当日、カズキも荷物をまとめて出発しようとしていたのだが。

不安に駆られ地下室にもどっていた。

「備えあれば憂いなしって言うし、烏間先生がくれた奴も含めて、3つ持ってこうかな」

そういってカズキは対殺せんせーレイピアと、さらに2本本物のレイピアを手にした。

「まぁ、こっちは少し不安があるけど。いざとなったらそんな事言ってられないしね」

カズキは手にしたうちの1本の青い刀身をもつレイピアをみて呟いた。

「あ、やばい遅刻しちゃうよ!」

そういって慌てて家を飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゅやぁ…船はやばい…船はマジでやばい…先生、頭の中身が全部まとめて飛び出そうです…」

殺せんせーは相変わらず乗り物酔いが凄い。

「殺せんせー起きて起きて!見えてきたよ!」

倉橋が対殺せんせーナイフを振りながら起こす。

杉野と前原も続いて話す。

「東京から6時間!!」

「殺せんせーを殺す場所だぜ!」

「「「「島だぁーっ!!!」」」」

そういってクラス全員がさけんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

島に着いた生徒たちはホテルにチェックインした後、サービスで配られたトロピカルジュースを飲んでいた。

「カズキは飲まないのー?」

「カルマも飲んでないじゃん」

「俺はあんまり甘いのが好きじゃないの、でもカズキは違うでしょ?」

「あー、なんか眩しいなって思っててさ」

「どーゆーこと?」

「なんでもないよ」

気にしないでくれと言われたカルマだが、気にしないわけがなかった。

何故ならカズキから冷たさを感じたから、見た目や態度はいつもと同じなのにとカルマは不思議に思っていた。

「殺せんせー!例の暗殺は夕食の後にやるからさー、それまでは遊ぼーぜ!」

「いいでしょう、よく遊びよく殺すそれでこそ、暗殺教室の夏休みです」

前原の誘いに殺せんせーは簡単に乗ってくれた。

本当はこれも作戦なのだ。

生徒たちはプラン通りに暗殺ができるか、入念に現地をチェックする。

そのあいだに殺せんせーに気づかれないよう、各班が殺せんせーと遊んで注意を引いておくのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、遊んだ遊んだ。おかげで真っ黒に焼けましたよ」

「「「黒すぎだろ!!」」」

「歯まで黒くなりやがって…」

「それじゃあもう表情が読み取れないよ…」

木村と岡野が殺せんせーのあまりの黒さに呆れている。

「じゃ、殺せんせー。暗殺は飯の後なんで、レストラン行きましょうか」

そう言われ殺せんせーはウキウキしながら磯貝について行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕飯はこの貸切船上レストランで夜の海をたっぷり堪能しながら食べましょう」

「…な、なるほどねぇ…まずは先生を酔わせて戦力を削ぞうというわけですか」

「当然でふ、これも暗殺の基本ですから」

「実に正しい、ですがそんなに上手くいくでしょうか」

「「「黒いわ!!!」」」

先生は舐めたような口ぶりだが顔が黒くてわからない。

「ややこしいからなんとかしてよ…」

「表情どころか前後もわかんないよ…」

「ヌルフフ、お忘れですか皆さん?先生には脱皮があるんですよ?」

「あ、月1回の脱皮だ!」

「本来はやばい時の奥の手ですが…はっ!?」

「あーばかだなー、暗殺の前に自分の戦力削いでヤンの」

生徒たちは思った。どうしてこんなドジを未だに殺せないのだろうかと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーて飯の後はいよいよだ」

「会場はこちらですぜ」

生徒たちに案内され歩く殺せんせー、案の定酔っている。

「このホテルの離れにある、水上パーティールーム」

「ここなら逃げ場はないよ」

「楽しい暗殺」

「まずは映画鑑賞から始めようぜ?」

そう言われ席につく殺せんせー。

いよいよ僕らの暗殺が始まった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決行の時間

「まずは三村が編集した動画を見て楽しんでもらい、その後テストで勝った8人が触手を破壊しそれを合図に皆で一斉に暗殺を始める。それでいいですね?殺せんせー」

「ヌルフフフ、上等です」

磯貝の説明に殺せんせーは、如何にも余裕そうにしている。

「セッティングごくろーさん三村」

「頑張ったぜ、皆がメシ食ってる間もずっと編集さ」

菅谷が三村を労い、三村は笑っている。

「(この小屋は周囲が海で囲まれている。壁や窓には対先生物質が仕込まれている可能性もある。脱出はリスクが高い、小屋の中で避けきるしかないようですねぇ)」

「殺せんせー、まずはボディチェックを。いくら周りが水とはいえあの水着を隠し持ってたら逃げられるしね」

「入念ですねぇ渚君、そんなヤボはしませんよ」

渚は思う。これだけ直に触っている状態からでもこの先生は僕の攻撃など余裕で躱す。けど、皆で、この作戦なら…!!

「準備はいいですか?、全力の暗殺を期待しています。遠慮はいらないですから、ドンと来なさい」

殺せんせーの言葉に生徒たちは頷いた。

「言われなくてもそのつもりだぜ殺せんせー、それじゃあ始めるぜ」

そういって岡島が小屋の灯を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動画が始まった

「(後ろの暗がりでしきりに小屋を出入りしている。位置と人数を明確にさせないためでしょう。…しかし甘い2人の匂いがここにないのをわかっていますよ、ホテルに続く陸の方向の窓から…E組きってのスナイパー、速水さんと千葉くんの匂いがしてきますねぇ。………しかしこの動画よく出来ている、編集とナレーターが三村君ですかカット割りといい選曲といいセンスが素晴らしい。ついつい引き込まれ……)」

『先ずは内容の前に情報提供者からの言葉を聞いていただこう。買収は失敗した』

「失敗したしたぁぁぁぁ!?」

すると画面に大量のエロ本を熟読する殺せんせーが映し出された。

『おわかり頂けただろうか我々の担任の恥ずべき姿を。最近のマイブームは熟女OL全てこのタコが1人で集めたエロ本である』

「違っ…ちょっ岡島君達皆に言うなとあれほど…!」

『お次はこれだ、女子限定のケーキバイキングに並ぶ巨影……誰であろう奴である。バレないはずがない女装以前に人間でないことがバレなかっただけ奇跡である』

「エロ本に女装に恥ずかしくないの?このド変態」

狭間が殺せんせーを罵ると、殺せんせーは触手で顔を隠してしまった。

『給料日前の奴である。分身でティッシュ配りに行列を作り、そんなにとって何をどうするんだと思いきや……なんと唐揚げにして食べ始めたではないか。教師…いや生物としての尊厳はあるのだろうか。こんなものでは終わらないこの教師の恥ずかしい映像を1時間たっぷりお楽しみいただこう』

「あ、あと1時間も!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後

「…死んだ、先生もう死にました。あんなの知られてもう生きていけません」

『さて秘蔵映像にお付き合い頂いたが何かにお気づきではないだろうか殺せんせー?』

チャプチャプ

「(いつのまに床全体に水が…!?誰も水を流す気配などなかったのに。……まさか満潮か!!)…!?」

「俺らまだなんにもしてねぇぜ、誰かが小屋の柱を短くでもしてたんじゃねぇか?」

寺坂の言う通りこの小屋には細工がしてあった。

「船に酔って、恥ずかしい思いして、海水すって。だいぶ動きがにぶってきたよね」

「さぁ本番だ約束だ、避けんなよ?」

「(やりますね…しかしスナイパーのいる方向はわかっているそちらの窓さえ注意すれば)」

「じゃあいくよ?」

そういって8人が一斉に発砲し殺せんせーの触手が全て破壊された。

その瞬間そとに待機していた生徒たちがジェットスキーで小屋に繋がれたロープを引っ張る、すると小屋の壁や天井が壊れた。

「(これは…水圧で飛ぶフライボード!!水圧の檻か!)」

「早々!!もっといっぱい飛び跳ねて!」

外では倉橋が下へ逃がさないようイルカ達をしじしている。正直すごい

殺せんせーは急激な環境の変化に弱い。木の小屋から水の檻へ!!弱った触手を混乱させてさらに反応速度を落とす。

殺せんせーがあたふたしていると、律たちが現れた。

「射撃を開始します。照準・殺せんせーの周囲全周1m」

殺せんせーは当たる攻撃に凄く敏感だ。だから敢えて一斉射撃は先生を狙わない。弾幕を張り逃げ道を塞いでおく。

「ねぇ踊ろうよ殺せんせー?」

「カ、カズキ君!?」

そこに対殺せんせーレイピアをもったカズキが殺せんせーへトドメの一撃

「にゅや!?」

殺せんせーは短くなった触手で辛うじて防ぎ切るもこれも生徒達の想定内、カズキはフェイクでトドメの2人。陸の上には2人の匂いが染み込んだダミーを置き、本物のふたりはずっと水中にいた。殺せんせーにずっと陸を警戒させフィールドを水の檻に変えることで新たな狙撃点を創り出す。2人の匂いも発砲音も水が全部消してくれる。

「「(もらった!!)」」

「(よくぞ…ここまで…!!)」

その夜、殺せんせーの全身が閃光と共に弾け飛んだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

落胆の時間

「うぶっ…」

「わあッ」

生徒たちは衝撃で飛ばされてしまった。

「「「殺ったのか!?」」」

今までの暗殺とは明らかに違う!殺せんせーが爆発して…後には何も無い。殺った手応え!!

「油断するな!!奴には再生能力もある。片岡さんが中心になって水面を見張れ!」

「はいっ!」

烏間の言葉に生徒たちは捜索を始める。

水圧の檻と対先生弾のふたつの檻逃げ場はどこにも無かったはず!

「あっ!」

倉橋が声を上げた。水面がぶくぶくと泡だっているのである。

生徒たちが注目している。

次の瞬間生徒たちが見たものは殺せんせーの…顔が入った透明とオレンジの変な球体。

その時生徒たちは思った。

「「「(なにあれ!?)」」」

すると殺せんせーが説明を始めた。

「これぞ先生の奥の手中の奥の手、完全防御形態!!」

「「「完全防御形態!?」」」

殺せんせー曰く、外側の透明な部分は高密度に凝縮されたエネルギーの結晶体らしい。水も対先生物質も効かず所謂無敵状態らしい。

24時間で自然崩壊するらしいがそこは抜かりなく対策しているらしい。

「チッ、何が無敵だよこんなもん」

そういって寺坂がスパナで破壊を試みるが失敗。

すると今度はカルマの手に殺せんせーが渡った。

「そっか〜弱点ないんじゃ打つ手ないね」

「にゅ?にゅやーっ!?」

カルマは殺せんせーの秘蔵映像を携帯で流し殺せんせーに見せている。

「やめてーっ!手がないから顔を覆えないんです!!」

「ごめんごめん、じゃとりあえず至近距離で固定してと」

「全く話をきいてない!?」

「そこで拾ったウミウシもつけとくね」

「ふんにゃぁぁぁぁ」

そう殺せはしないもののある意味いじり放題だ。

「こういう時のカルマくんは天才的だ」

渚は若干あきれている。

「とりあえず解散だ、こいつの処分は上と検討する」

そういって烏間は殺せんせーをビニール袋にいれた。

「先生のことは殺せませんでしたが、皆さんは誇っていい。世界中の軍隊でも先生をここまで追い詰めたことはなかった。ひとえに皆さんの計画の素晴らしさです」

殺せんせーはいつものように生徒たちを褒めてくれたが殺せなかったことに落胆を隠しきれなかった。

かつてなく大掛かりな、全員での渾身の一撃を外したショック異常な疲労感とともに…彼等はホテルの帰途についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒たちはホテルに戻りコテージで休んでいた。

そこで千葉は律を呼び問いかけた。

「律、記録は取れてたか?」

「はい、可能な限りのハイスピード撮影で今回の暗殺の一部始終を」

「俺さ、撃った瞬間わかっちゃったよ『ミスった、この弾じゃ殺せない』って」

「断定はできません、あの形態に移行するまでの正確な時間は不明瞭なので。ですが千葉くんの射撃があと0.5秒早いか速水さんの射撃があと標的に30cm近ければ気づく前に殺せた可能性が50%ほど存在します」

律の解析を聞いた千葉と速水は落胆を隠せなかった。

練習と実践のいがいを大いに痛感していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃カズキはコテージから離れてビーチにいた。

「はぁ…」

「どうしたんだよ、溜め息なんてついてさ」

「悠馬…」

「なんかあったのか?」

「まぁね、ここに来てからなんか眩しくて」

「たしかに夏の日差しは眩しいよな、でも今は夜だぞ?」

「悠馬はやっぱり悠馬だな」

そういって笑うカズキ。

「どういうことだよ」

磯貝も苦笑しながら答えるが、カズキの笑顔が少し冷たいと感じていた。

「そろそろ戻った方がいいかな?」

「…ああ、そうだな。…なぁカズキ」

「なに?」

「無理に言えとは言わないけどさ、俺達は、少なくとも俺は話してくれるのを待ってるよ」

磯貝にそう言われるとカズキは困ったように笑って

「ありがとう、親友。さぁいこう皆悠馬のこと待ってるよ」

「そうだな、戻ろうか。心配させちゃうしな、俺とカズキがいないとやっぱりダメだろうし」

「それ、みんなの前でいうなよ?」

「あたりまえだろ?」

そう言って戻るふたりを待っていたのは、苦しそうにしているクラスメイトとそれを心配するクラスメイトだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

伏魔の時間

「な、なんだよこれ!?」

「どういうこと…」

磯貝とカズキは戻ってきて驚いた。

暗殺に失敗したとはいえ異常なほど疲労の色をみせている。

烏間がフロントに島の病院の場所を聞いたが無駄足だったようだ。

程なくして烏間の携帯に非通知で電話がかかってきた。

「やぁ先生、可愛い生徒たちがずいぶん苦しそうだねえ」

「何者だ、まさかこれはお前の仕業か?」

「ククク、最近の先生は察しがいいな。人工的に作り出したウイルスだ。感染力はやや低いが一度感染したら最後…潜伏期間や初期症状に個人差はあれ、一週間もすれば全身の細胞がグズグズになって死に至る。治療薬も一種のみのオリジナルでね、あいにくこちらにしか手持ちが無い。渡すのが面倒だから直接取りにしてくれないか?山頂にホテルが見えるだろう、手土産はその袋の賞金首だ」

どうやら生徒たちが苦しまされている原因は人工的に作り出されたウイルスによるもののようだ。

「その様子じゃクラスの半数はウイルスに感染したようだな、フフフ結構結構」

「もう一度聞くおまえは…」

「俺が何者かなどどうでもいい。賞金100億を狙っているのはガキ共だけじゃないってことさ、治療薬はスイッチ一つで爆破できる。我々の機嫌を損ねれば感染者は助からない」

「……念入りだな」

「そのタコが動ける状態を想定しての計画だからな、動けないなら尚更こちらの思い通りだ。山頂の『普久間殿上ホテル』最上階まで1時間以内にその賞金首をもってこい。だが先生よお前は腕が立つそうだからな、動ける生徒の中で最も背が低い男女2人に持ってこさせろ」

「くっ…」

そう言われ烏間は渚と茅野に目を向ける。

目を向けられた2人はキョトンとしている。

「フロントに話は通してある、素直にくれば交換はすぐに済む。だが外部と連絡を取ったり…時間を少しでもすぎれば即座に治療薬は破壊する。礼を言うよ、よくぞそいつを行動不能まで追い込んでくれた。天は我々の味方のようだ」

この状況での第3者の乱入、烏間は生徒たちに説明をし同僚にホテルへかけあわせてもらうがプライバシーを繰り返され意味をなさなかった。

ホテルには様々な悪い事情があるらしく打つ手がないらしい。

「どーすんすか!?このままじゃいっぱい死んじまう!!こっ…殺されるためにこの島に来たんじゃねーよ!」

吉田が悲痛な叫びを上げると

「落ち着いて吉田くん、そんなに簡単に死なない死なない。じっくり対策考えてよ」

原が落ち着くよう諭してくれた。

寺坂も要求を無視して都会の病院に運んだほうがいいといったが、竹林に無駄だと言われてしまった。

「対症療法で応急措置はしとくから急いで取引にいったほうがいい」

「竹林、お前ほんと頼りになるな」

「やめてくれよ桜井、それほどでもないさ」

打つ手なし交渉時間もあまりない中で殺せんせーが口を開いた。

「いい方法がありますよ」

「え?」

渚が思わず聞き返す。

「病院に逃げるより、おとなしく従うよりは律さんに頼んだ下調べも終わったようです。元気な人は来てください、汚れてもいい恰好でね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、烏間先生の同僚の方ですよね?」

「はい、そうですが。どうかされましか?」

カズキは殺せんせーの元へ行く前に外務省の人を訪ねていた。

「スーツを1着貸してください」

「どういった理由で?」

「おそらく今から必要になると思いますので、すぐに着るわけではありません」

「わかりました、すぐに準備させますので」

「ありがとうごさいます!」

「いえいえ、ご武運を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たけぇ…」

思わず呟く程の高さであった。

「ホテルのコンピュータから内部の図面と警備の配置図を入手しました。」

律によればこの崖の上にある非常口から侵入可能なようだ。

「律えらいよ、よく頑張ったね」

「はいっ!ありがとうございます」

カズキに褒められ、頬を染めながら喜ぶ律。とても可愛らしい。

「敵の意のままになりたくなければ手段は1つ、患者10人と看病に残した2人を除き、動ける生徒全員であそこから侵入し最上階を奇襲して治療薬を奪い取る」

「「「…!?」」」

生徒たちは殺せんせーの言葉に驚きを隠せなかった。

「…危険すぎるこの手馴れた脅迫の手口、相手は明らかにプロだぞ」

烏間も危険だといっている。

「ええ、しかも私は君たちの安全を守れない。大人しく私を渡した方が得策かも知れません。どうしますか?全ては君たちと…指揮官の烏間先生次第です。」

殺せんせーの言葉に生徒たちは

「それは…」

「ちょっと無理だろ…」

「そーよ、無理に決まってるわ!第1この崖よこの崖!ホテルにたどり着く前に転落死よ!」

イリーナの言葉に烏間も2人に持っていかせるしかないと思ったのだが

「渚君、茅野さんすまないが…」

生徒たちがいなくなっていた。

そして頭上から声が聞こえてきた。

「いやまぁ…」

「崖だけなら余裕だよね」

「いつもの訓練に比べたらね」

「ねー♪」

生徒たちは容易く崖を駆け上がっていく。

「でも、未知のホテルで未知の敵と戦う訓練はしてないから。烏間先生、難しいけどしっかり指揮を頼みますよ」

磯貝の言葉に寺坂とカズキも続く

「おお、ふざけたまねした奴らに…キッチリ落とし前つけてやる」

「どうするんですか?烏間先生。俺はやる気ですけど」

「見ての通り彼等は只の生徒ではない。あなたの元には15人の特殊部隊がいるんですよ。さぁ、時間はないですよ?」

殺せんせーの言葉に烏間は

「注目!!目標は山頂のホテル最上階!!隠密潜入から奇襲への連続ミッション!!ハンドサインや連携については訓練のものをそのまま使う!いつもの違うのはターゲット層のみだ!3分でマップを叩き込め!!19時50分作戦開始!!」

「「「「おう!!」」」」

生徒たちへ作戦を伝え、それに生徒たちは大きな声で答えた。

E組のミッションが今始まろうとしている。




最近、カズキが空気みたいになってますが
後でちゃんと出しますのでご安心を。
感想ご意見まっております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロの時間

「みんなおいてくよ〜?」

「やっぱ身軽だな岡野は」

「あー、こういうことやらせたらクラス1だ」

そう生徒たちと3人の教師は崖をよじ登っていた。

しかし教師が3人とはいっても、ひとりは行動不能。もうひとりは今のところ足でまといだ。

しかしどうにかこうにか誰一人欠けることなく非常口までたどり着くことが出来た。

「律、侵入ルートの最終確認を頼む」

「はい、烏間先生。私たちはエレベーターを使用できません、従って階段を上るしかないのですか…。その階段もバラバラに配置されており…、最上階までは長い距離を歩かなくてはなりません」

「テレビ局みたいな構造だな」

「?千葉くん?」

千葉の言葉に茅野が聞き返す。

「テロリストに占拠されにくいように複雑な設計になってるらしい」

「こりゃあ悪い客が愛用するわけだ」

それをきいて菅谷は険しそうな顔をする。

「行くぞ時間がない。状況に応じて指示を出すから見逃すな」

烏間の言葉に生徒たちは頷き、いよいよ潜入が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず最初の関門が立ちはだかる。

上の階に行くためにはロビーを通らなければならないのだが、当然警備のチェックも最も厳しい。

烏間がどのように通過するか決めあぐねていると。

「なによ、普通に通ればいいじゃない」

イリーナがそう口にし、堂々と歩いていった。

「まて、イリーナ!」

烏間の制止の声にも振り向かずイリーナはロビーに入っていく。

その足取りは、フラフラとして酒に酔っているようにも見える。艶やかに歩くイリーナの姿に警備も目を奪われていた。

そのままイリーナは一人の警備にぶつかった。

「あっ…ごめんなさい。部屋のお酒で悪酔いしちゃって」

「お、お気になさらずお客様」

「来週そこのピアノを弾かせて頂くものよ。早入りして観光してたの」

警備たちはホテルに頻繁にやってくるピアニストのひとりと勘違いしているようだ。

「酔い覚ましついでにね…、ピアノの調律をチェックしておきたいの。ちょっとだけ…弾かせてもらってもいいかしら?」

「えっ…と、じゃあフロントに確認を」

「いいじゃない…あなた達にも聴いて欲しいの。そして審査して…?」

「し、審査?」

「そ…私のことよく審査して…ダメなとこがあったら叱ってください…」

そういってイリーナはピアノの演奏を始めた。

幻想即興曲、その腕前もさることながら。全身を艶やかに使って奏でるその音色にその場にいる全員が釘付けになった。

「ねぇ…そんな遠くで見てないで。もっと近くで確かめて…?」

「お、おお…」

警備たちはイリーナに魅了され近くに集まっていく。

「(20分稼いであげる、いきなさい)」

生徒たちはイリーナの美しさに目を奪われつつも、上の階に続く階段をあがっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すげーやビッチ先生、あの爪でよくやるぜ」

「ああ、ピアノ弾けるなんて一言も」

菅谷と磯貝が尊敬の言葉を発している。

「普段の彼女から甘く見ないことだ、優れた殺し屋ほど万に通じる。君たちに会話術を教えているのは、世界で1、2を争うハニートラップの達人なのだ」

生徒たちは改めて自分たちの先生の凄さを思い知った。

しかしそれは相手も同じ敵も手ごわいプロなのだとも思い知ることとなる。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

引率の時間

生徒たちは世の中をなめているかのように歩いていた。

と、いうのも。烏間曰く客の中には甘やかされて育ち、幼い頃から悪い遊びに手を染めた子供も多いようで、彼等はそんな子供たちに紛れるようにしているのである。

その作戦が功を奏しトラブルを避けて移動できていた。

しかし、それが慢心に繋がり波紋を生み出す。

「へっ楽勝じゃねーか。時間ねーんだからさっさと進もうぜ」

そういって寺坂と吉田は先頭の烏間を追い抜いて走り出してしまった。

そして前方から歩いてくる男がひとり。

「寺坂くん!!そいつ危ないっ!」

何かに気づいたのか不破が叫んだ。

すると次の瞬間烏間がふたりを力づくで引き戻すが、それと同時に男も何かを噴射してきた。

烏間はそれを噴射している道具を蹴り飛ばすも、直撃してしまった。

「ちっ、なぜわかった。殺気を見せずすれ違いざまに殺る。俺の十八番だったんだがなオカッパちゃん」

不破は自分のボブカットをオカッパと呼ばれたことに若干の苛立ちを覚えつつも説明を始める。

「おじさん、ホテルで最初にサービスドリンク配った人でしょ?」

「「「……あ!?」」」

ほかの生徒たちも気づいたようだ。

「断定するには証拠が弱いぜ?ドリンクじゃなくても…ウィルスを盛る機会は沢山あるだろ」

「みんなが感染したのは飲食物に入ったウイルスから…そう竹林くんがいってた。クラス全員が同じものを口にしたのはあのドリンクと船上でのディナーだけ。けど、ディナーを食べずに映像編集をしてた三村くんと岡島くんも感染したことから感染源は昼間のドリンクに絞られる。それに昼間のドリンクを飲んでないカルマくんと桜井くんはここにいるしね。従って犯人はあなたよおじさん君!!」

「ぬ…」

不破の名推理に生徒たちは感心する。

しかし烏間に異変が起こり、みな我にかえった。

「毒物使い…ですか。しかも実用性に優れている。」

男によれば象でも気絶させる麻酔ガスらしい。さらに外気に触れればすぐ分解され証拠も残らない代物だ。

「ウイルスの開発者もあなたですね?無駄な感染を広げない取引向きでこれまた実用的だ」

殺せんせーが的を得た発言をする。

「さぁな、ただお前たちに取引の意思がないのはよくわかった。交渉決裂だな」

そういって男はボスと呼ばれる人物に報告するべく戻ろうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがそれは叶わなかった。

「(…早い!!いつの間に出口を…!!)」

「敵と遭遇した場合、退路を即座に塞ぎ連絡を絶つ。既に指示は済ませてある」

そういって烏間は再び立ち上がった。

男もすかさずガスで応戦しようとするが、烏間の蹴りの速さに対応出来ず崩れ落ちた。

しかしそれと同時に烏間も崩れ落ちてしまった。

「「「烏間先生!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガスを浴びてしまった烏間は戦闘ができる状況ではなくなってしまった。

まだここは3階標的のいる10階はまだまだ先だ。

生徒達に不安がつのるなか。

「いやぁ、いよいよ『夏休み』って感じですねぇ」

呑気なことをいっている殺せんせーの入っている袋を渚は思いっきり振り回した。

その後渚が問いかける。

「殺せんせー、なんでこれが夏休みなの?」

「生徒と先生は馴れ合いではありません。そして夏休みとは先生の保護がない場所で自立性を養う場でもあります。大丈夫、普段の体育で学んだことをしっかりやれば、そうそう恐れる敵はいない。君たちならクリアできます。この暗殺夏休みを」

生徒たちは思った。この先生は無理難題を押し付けているが、やるしかないのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の敵は堂々と生徒達の前に姿を現した…



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

カルマの時間

生徒たちは5階の展望フロアにいた。

その廊下の途中に佇む男がひとり。

「……お、おいおい。メチャクチャ堂々とたってやがる」

「…あの雰囲気」

「…ああ、いい加減見分けがつくようになったわ。どう見ても『殺る』側の人間だ」

ここは狭くて見通しの良い展望通路。奇襲もできず数の利も活かせない。

烏間はこの島で実弾の銃が欲しくなるとは思ってもいなかった。

すると突然男が寄りかかっていた窓ガラスに亀裂が走った。

生徒たちは驚きの色を隠せない。

目の前で起きたことが理解出来ないのだ。

男は素手でガラスを割ったのだから。

「…つまらぬ、足音を聞く限り…『手強い』と思えるものが一人も居らぬ。精鋭部隊出身の引率の教師もいるはずなのぬ…だ。どうやら…スモッグのガスにやられたようだぬ。半ば相討ちぬと言ったところか。でてこい」

先ほどのガス使いはスモッグと言うらしい。

生徒たちは恐る恐る素手でガラスを割った男の前に姿を現す。

だが生徒たちは全く別のことを考えていた。

恐怖から誰も言い出すことは出来ていないが…そのなんだ

「『ぬ』多くねおじさん?」

いった!!カルマがいてよかった!そう生徒たちは心の中で叫んだ。

どうやらサムライのような口調にしたいと思っていたらしいが失敗したようだ。

「素手…それがあなたの暗殺道具ですか」

殺せんせーが問いかける。

「こう見えて需要があるぬ。身体検査に引っかからぬ利点は大きい。近づきざま頸椎をひとひねり、その気になれば頭蓋骨も握りつぶせるが」

その光景を想像してしまった岡野は身震いした。

「だが面白いものでぬ。人殺しの為の力を鍛えるほど、暗殺以外にも試してみたくなるぬ。即ち闘い、強い敵との殺し合いだ。だががっかりぬ、お目当てがこのザマでは試す気も失せた。ボスと仲間を呼んで皆殺しぬ」

そういって男が携帯に手をかけた瞬間カルマが造木を使って携帯をガラスごと破壊した。

「プロって意外とフツーなんだね。ガラスとか頭蓋骨なら俺でも割れるよ。ていうか、ソッコー仲間呼んじゃうあたり、中坊ともタイマン張るの怖い人?」

カルマは男を挑発している。

「よせ!無謀…「大丈夫だよ烏間先生」

烏間がカルマを止めようとするがカズキが遮った。

「そうです烏間先生、カズキ君の言う通りです」

殺せんせーもカズキと同意見のようだ。

「なぜそういえる…?」

「アゴが引けている」

「うん、これまでのカルマと違って油断なんてないし、ちゃんと相手を見てる」

カルマはテストでの敗北でしっかりと学んだようだ。

「さぁ、カルマ君。存分にぶつけない。高い大人の壁を相手に!!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

カルマの時間2

「柔いもっと良い武器を探すべきだぬ」

「必要ないね」

男はカルマの振った造木をいとも簡単に握りつぶした。

そのまま男はカルマに掴みかかってきた。

「(頭蓋骨を握りつぶすほどの握力。一度掴まれたらゲームオーバー、普通に考えて無理ゲーだけど。立場が逆なだけだいつもやってんだよねその無理ゲー)」

「す、すげぇ…」

「お、おお…」

カルマは器用に体を使って全て躱すか捌いていた。

「烏間先生の防御テクニックですねぇ」

「(殺し屋にとって防御技術は優先度が低い。教えた憶えはないが、目で見て盗んだな。俺が生徒のナイフを避ける動きを。赤羽カルマ、このE組でも戦闘の才能は頭一つ抜けている)」

カルマは攻撃を全て躱しているが、攻めることが出来ずにいた。

すると男が動きを止めた。

「…どうした?攻撃してこなければ永久にここを抜けられぬぞ」

「どうかな〜あんたを引きつけるだけ引きつけておいてその隙に皆がちょっとずつ抜けるのもアリかとおもって」

「…」

カルマの言葉に男は険しい顔をする。

「…安心しなよ、そんな狡いことは無しだ。今度は俺から行くからさ、あんたに合わせて正々堂々。素手のタイマンで決着つけるよ」

「…」

カルマはそういったが寺坂は怪訝そうな顔をしている。

「良い顔だぬ少年戦士よ、お前とならやれそうぬ。暗殺稼業では味わえぬフェアな闘いが」

その言葉を聞くとカルマは走り出し男に飛び蹴りを食らわせ、その後ラッシュから、隙のできた足元にローキックを食らわせた。

男もよろけ背中を見せた。

生徒たちはチャンスだと思った。

そのとき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブシューッ

男は隠し持っていたガスをカルマに食らわせた。

そのままカルマはフラフラと倒れ込み男に掴まれてしまった。

「これで一丁上がりぬ、長引きそうだったんで。スモッグの麻酔ガスを試して見ることにしたぬ」

「き、きたねぇ。そんなもん隠し持っといてどこがフェアだよ!」

吉田が男に抗議の言葉をかけた。

「俺は一度も素手だけとは言ってないぬ、拘ることに拘りすぎない。それもまたこの仕事を長くやってく秘訣だぬ。至近距離のガス噴射予期してなければ絶対に防げぬ」

そうして男が振り返ったとき

ブシューッ

「な、なん…だと…」

「奇遇だね〜、二人とも同じこと考えてた」

カルマはしてやったりというニヤニヤした表情。

逆に男はなぜお前がそれを持っているという驚きの表情。

「ぬぬぬううう!!」

わけのわからぬ叫びを上げつつナイフを取り出し男が襲いかかってくるもガスで弱った攻撃は簡単にカルマに抑えられてしまう。

「ほら寺坂早く早く、ガムテと人数使わないとこんな化けモン勝てないって。」

「テメーが素手でタイマンとかもっと無いわな」

寺坂に続き生徒たちは全員が男の上にのしかかりガムテープで捕縛した。

「くっ…」

「毒使いのおっさんが未使用だったのくすねたんだよ。捨てるのが勿体ないくらい便利だね」

「何故だ…俺のガス攻撃、お前は読んでいたから吸わなかった。俺は素手しか見せてないのに…何故だぬ」

「とーぜんっしょ、素手以外の全てを警戒してたよ。あんたが素手の闘いがしたかったの本トだろうけど、俺らを止めるためならどんな手段でも使うべきだし、俺がそっちの立場でもそうしてる。あんたのプロ意識を信じたんだよ。信じたから警戒してた。」

渚はおもった。

「(カルマくん変わったな…いい感じに )」

「大きな敗北を知らなかったカルマ君は…期末テストで敗者となって身をもって知ったでしょう。敗者だって自分と同じ、いろいろ考えて生きてる人間なんだと。それに気づいたものは必然的に…勝負の場で相手を見くびらなくなる。敵に対し敬意を持って警戒できる人を戦場では『隙が無い』というのです。」

彼は将来大物になれると殺せんせーは感じていた。

「そんな変わってなさそうだよ?殺せんせー」

「にゅ?」

カズキの言葉に殺せんせーは疑問を覚える。

「…大した奴だ少年戦士戦士よ。負けはしたが楽しい時間を過ごせたぬ」

「え、何言ってんの?楽しいのはこれからじゃん!」

「…なんだぬそれは?」

「わさび&からしおじさんぬの鼻の穴にねじ込むの」

「なにぬ!?」

「こんだけ拘束したら警戒もクソもないでしょ、これを入れたら専用クリップで鼻ふさいでぇ…口の中にブートジョロキアぶちこんで、そう上から猿轡して処置完了」

皆カルマを敵にしなくてよかったと心底おもっていた。

「さぁおじさんぬ、今こそプロの意地を見せるときだぬ」

「…殺せんせー、カズキくんの言う通り変わってないね」

「…ええ、将来が思いやられます」

その後男から悲痛な叫びがずっと発されていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

女子の時間

5階の展望フロアを通過した生徒たちは、6階のバーフロアに到達した。

この階の階段は店の内側にあるらしく店内に潜入して裏口の鍵を開けなければならない。

「先生たちはここで待ってて!私たちが潜入して鍵を開けるから」

「そうそう、こういうところは女子だけの方が怪しまれないもんね」

片岡と矢田の提案に烏間は

「女子だけでは危険だ…」

そういったのだが、カルマが手を振るポンと叩き

「じゃあ渚くんいってみよーか」

「な、なんで僕を見るのさ」

「確かに渚なら大丈夫だよ、女装すれば」

「女装がやだよ!それに大丈夫ってなに?」

カズキの言葉に反抗する渚だが

「クラスのみんなの為だって、お願いだよ」

「うぅ…わかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6階の店内は宿泊客たちが音楽に合わせて踊ったりなど非常に五月蝿い場所だった。

「ほら渚くん、男でしょ!ちゃんと前に立って守らないと」

「無理だよ…前に立つとか絶対無理…」

「諦めなって、男では欲しいけど男にはチェック厳しいんだもん」

「自然すぎて新鮮味がない」

「そんな新鮮さいらないよっ!!」

女装させられている渚は嫌そうだが、女子たちは案外楽しそうだ。

すると渚の方に野球帽をかけた見知らぬ少年が手をかけた。

「ね、君らどっからきたの?そっちで俺と酒飲まねー?金あるから何でもおごってやんよ」

女子たちは冷たい目を少年に向けながら

「渚お願い、相手しといて」

「え、ええ?」

片岡に押しやられ渚は少年に連れていかれてしまった。

一方その頃そとの男子たちは

「なー磯貝?」

「どうしたんだ菅谷?」

「やっぱ渚だけじゃ心配だって」

「でも、俺らの中に潜入できそうなやつは…」

磯貝がそう言い淀むと殺せんせーが口を挟んだ。

「カズキ君、君ならいけますね?その鞄のなかのものを使って」

「あ、やっぱりバレてた?」

「どういうことだ」

殺せんせーの言葉を不審に思い、烏間は問い返す。

「見ていればわかりますよ、磯貝君。」

「はい、なんですか」

「カズキ君が今から着替えますので盾になってあげてください」

「??わかりました」

そう言って着替えるカズキ、そして盾になる磯貝、さらにしれっと携帯を構えるカルマに誰もツッコムことはなくカズキは着替えを終えた。

「そこまで動きづらいものでもないんだね、スーツって」

全員がカズキの姿に驚愕した。

「桜井君それはどこで」

「烏間先生の同僚の人から借りました。潜入っていったら変装も必要かなーって」

「カズキ似合ってるねー」

「写真撮るのやめてよカルマ」

「高く売れそうじゃん」

カルマの言葉にも頷ける、それほどまでにカズキのスーツ姿はかっこよかった。

「それではカズキ君、潜入し女子を助けてきてください」

「わかったよ殺せんせー」

「しかし厳重なチェックがあるぞ?」

烏間の言う通り男には厳重なチェックが入る。

するとカズキは

「ビッチ先生の言ってたことわかるかもしれない。そのまま普通に行けばいいんだよね」

「はい、カズキ君。普通に行きましょう」

そういってカズキは店内にいとも容易く侵入していった。

警備員に気づかれることもなく

「「「えッ!?」」」

生徒たちは驚きの声を上げる、烏間もどういうことかわからないというような顔つきだ。

「ヌルフフフ、彼は気配を消すことに長けています。黒いスーツが暗さ紛れ一層気づかれないんですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カズキが店内に侵入して数分後女子たちに他の男が言い寄っていた。

「よう、お嬢たち女だけ?今夜俺らとどーよ」

「はぁ…次から次へと」

片岡も呆れてため息をついている。

「お兄さん達カッコイイから遊びたいけど、あいにく今日はパパと来てるの。うちのパパちょっと怖いからやめとこ?」

「ひゃひゃひゃパパが怖くてナンパができっか…」

「じゃあパパに紹介する?」

矢田がそう言って見せたのはヤクザのエンブレム普通ならこれで引くはずだが

「どうせそれ偽モンだろ、もしそうなら護衛のひとりやふたりつけるはずだ」

男たちは全く引く気配がない。

「他にはここにいないんだろ?だったら遊ぼーぜ?」

そういって矢田と速水の腕を掴む男たち

「や、やめてください」

「さわらないでよ」

いくら訓練をしていても女子中学生、大人の男に力で勝てるはずがない。

女子たちがやばいと思ったその時

「「ぐえっ!?」」

ひとりの男性が、二人の腕をつかんでいた男たちの手を捻りその場に倒れさせた。

その男性はスーツを身にまとっていて、後ろ姿はどことなくクラスメイトに似ていた。

「てめぇ、何しやがる!!」

「邪魔すんじゃねぇ!」

男たちは激昴して殴りかかってくる。

「お頭の娘さんたちに手を出したんだ、それなりに覚悟はできてるんだろ?」

そういって男性は男達の拳を受け流し再び転ばせた。

「お頭は利益のない争いは好まない、立ち去るなら今のうちだ」

「し、失礼しました…!」

男性の怒気をはらんだ声に、怯えた男たちは足早に退散していった。

「あ、あの。助けて頂いてありがとうございます」

「おかげで助かりました」

矢田と片岡が続けてお礼をいうと

「桃花お嬢様と凛香お嬢様に何もなくて良かったです」

「あ、あのどちら様ですか?」

茅野が問いかけると

「だからあれほど女子だけでは危ないといったんです、でも…何もなくて本当に良かった」

そう言って男性が振り向くと女子たちは驚いた。

「「「さ、桜井くん!?」」」

「うん、ほんとなにもなくてよかったよ。矢田さんのあれで普通なら逃げる筈なんだけどね、彼らはちょっと肝が据わって見たいだから」

「どうしてここに?」

「皆が心配だっていうから殺せんせーに頼まれて来たんだよ、ちょうどスーツも持ってたから」

「で、でもどうやってはいってきたの?」

「え、普通に」

「警備員は?」

「きづかなかったよ?」

「はぁ!?」

カズキの言葉に女子たちはまた驚かされる。

「でも桜井くんスーツにあってるねー」

不破はそこまで驚いていないのかカズキの見た目を褒めている。

「まぁ、ちょっと恥ずかしいけど。ふたりが腕を掴まれた瞬間いてもたってもいられなくなってさ」

「その…ありがとうね」

「いいのいいの、俺の任務はこれだから。じゃあ俺はまたこのフロアに紛れてるから任務遂行よろしくね」

「ええ、ありがとう桜井くん」

「うん、ところで渚は?」

「まぁいろいろあってね」

「そ、そっか…」

そう言ってカズキは苦笑いしつつバーの闇に紛れていった。

「桜井くんかっこよかったねー」

茅野がそういうと

「そうだね、助けてもらった時ちょっとドキドキしたよ」

矢田も照れくさそうに返した。

「凛香ちゃんもそうでしょ?」

片岡がそういうと速水は顔を真っ赤にして

「別に、そんなこと思ってないっ!」

全否定しているが他の女子たちは

「「「(かわいい…)」」」

とても失礼なことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして女子たちはフロア奥の階段の前までたどり着いた。

茅野が渚を呼びに行き、全員合流したのは良いのだが…

「待てって彼女等、大サービスだ俺の十八番のダンスを見せてやるよ」

そう言って野球帽の少年に引き止められてしまった。

正直邪魔以外の何者でもない。

さらに少年は近くにいた他の客にぶつかり服を汚してしまった。

「おいガキちょっとこいよ」

「あ、あの…今のはわざとじゃ…」

そういって男性に絡まれている。

「ひなたちゃん助けてあげて」

「もー、しょうがないなー」

そういって岡野は男性にハイキックを御見舞する。

それを上手く利用して階段の前の店員を移動させた。

その後裏口の鍵を開け、待っている男子と合流した。

腰を抜かしている少年に渚は

「女子の方があっさりかっこいいことしちゃっても、それでもかっこつけなきゃいけないから、辛いよね男子は」

そういって少年にほほ笑みかける。

合流した渚は

「僕がこんな恰好した意味って…」

「面白いからにきまったんじゃん」

「撮らないでよカルマくん!」

そんな渚に茅野は

「そんなことないと思うよ、きっと誰かのためになってる」

そう優しい言葉をかけてあげた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

武器の時間

「渚着替えるの早いな、そのままいきゃよかったのに。暗殺者が女に化けるのはよくある話だぞ?」

「磯貝くんまで!?」

「渚くん、とるなら早い方がいいらしいよ」

「とらないよっ!大事にするよっ!」

「その会話は後にしてくれないか」

「もう二度としません…」

「でもカズキは着替えないんだな」

「悠馬もわかるだろうけどあんまり時間がないからさ」

そのとおり、もう時間はあまり残されていない。

客個人が雇った警備も徘徊している。

上の階へ続く階段の前にもそいつらはいた。

「彼らを倒すには、寺坂君。君の持っている武器が有効でしょう」

「さっきの桜井のスーツのときといい、テメーには透視能力でもあんのか?」

「できるのか?」

そう烏間が問うと

「任せてくれって、おい木村あいつらをここまで誘い出してこい」

「俺がァ?どーやってさ」

「じゃあこう言ってみ?木村」

そうカルマに囁かれ木村は警備の前にあるいっていった。

「ん?なんだボウズ」

そう聞かれると

「…あ、あっれぇ〜脳みそ君がいないな〜。こいつらは頭の中まで筋肉だし〜。人の形してんじゃねーよ豚肉どもが」

「おい!」

「待てコラ!」

これだけいえば怒るはずだ、警備たちは木村を追いかける。

しかしE組きっての俊足の木村に追いつけるはずもなくこちらまで誘い出すことが出来た。

警備のスピードが落ちたところに寺坂と吉田がタックルし、スタンガンで警備を気絶させた。

寺坂に寄れば臨時収入で手に入れた代物のようだ。

「寺坂君それもいい武器ですがそのふたりの胸元を探ってください。もっといい武器が手に入るはずですよ」

そう言われ寺坂が探りを入れると本物の銃が姿を現した。

「そしてこの銃は、千葉君速水さん。君たちが持ちなさい、ですが殺すことは許しません。君たちの実力なら殺さずとも倒す方法はいくらでもあるはずです。」

そういって銃を手に取る二人だが

殺せんせーの暗殺で失敗したふたりは酷く動揺していた。

「さぁ行きましょう、このホテルの様子を見る限り、雇われている殺し屋はせいぜいひとりふたりです」

「おう!さっさといったぶち殺そうぜ!」

そう意気込み、生徒たちは次の階へ足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8階コンサートホールそこに第三の刺客が現れた。

「………15…いや16匹か?呼吸も若い殆どが十代半ば驚いたな動ける全員で乗り込んできたのか」

そう言って男は背後にある照明を銃で撃ち抜いた。

「言っとくがこのホールは完全防音でこの銃は本物だ。お前らを全員撃ち殺すまで誰も助けに来ねぇってことだ。お前ら人殺しの準備なんてしてねーだろ!!大人しく降伏してボスに頭下げとけや!!」

そういう男に一発の弾丸が飛んでいった。

だがそれは外れ後ろの照明をもう一つ壊しただけだった。

「(外した…銃を狙ったのに…)」

撃ったのは速水敵も実弾の銃を持っていることに驚いている。

「意外とうめぇ仕事じゃねーか」

そういって男はホールの照明を全開にした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

引き金の時間

非常に眩しい状況になった。

照明の逆光でステージも見づらい。

「今日も元気だ銃がうめぇ!!」

そういって男が放った弾丸は速水の顔スレスレを通過した。

「一度発砲した敵の位置は絶対忘れねぇ、もうお前はここから絶対動かさないぜ。下で見張ってた二人は暗殺専門だが俺は軍人上がりだこの程度の一帯多数の戦闘は何度もやってる。ジュニアごときに遅れをとるかよ。さぁてお前らが奪った銃はもう一丁あるはずだが」

「速水さんはそのまま待機!!」

男の声を遮るように殺せんせーが声を発した。

「今撃たなかったのは賢明です千葉君!君はまだ位置を知られていない。先生が敵を見ながら指揮をするので…ここぞという時まで待つんです!」

「どこからしゃべって…」

男が見渡すと一番前の席に殺せんせーはいた。

しかもニヤニヤして顔は縞模様、明らかになめている。

「テメー何かぶりつきで見てやがんだ!!」

「ヌルフフフ、無駄ですねぇこれこそが完全防御形態の本領発揮です。これくらいの視覚ハンデはいいでしょう」

「…チッ、その状態でどう指揮執るつもりだ」

「では木村君5列左へダッシュ!!寺坂君と吉田君はそれぞれ左右に3列!」

「なっ…」

殺せんせーは生徒達の名前を使ってシャッフルを試みた。

だが敵も名前と位置を覚え始めていた。

「出席番号12番!!右に1で準備しつつそのまま待機!」

「へ?」

「4番と5番はターゲットを撮影律さんを通して敵の様子を千葉君に報告!」

「ポニーテールは左前列へ前進!バイク好きも左前に2列前進!」

今度は殺せんせーは生徒の番号や特徴で指示を出し始めた。

「最近竹林君オススメのメイド喫茶に興味本位でいったらちょっとハマリそうで怖かった人!!錯乱のために大きな音を立てる!」

「うるせー!なんで行ったの知ってんだテメー!」

寺坂が大声を上げて椅子をどんどん叩く。

「甘いもの好きの金髪スーツは女性銃手の不安をとるために、手を握る!!」

「そ、そんなこともするの!?」

カズキは困惑しながらも速水の手を握る

「桜井…」

「がんばろうね」ニコッ

敵もだいぶ翻弄されているようだった。

そこで殺せんせーは最後の指示を出す。

「さて、いよいよ狙撃です千葉君。速水さんは状況に合わせて彼のフォロー。次の先生の指示のあと君たちのタイミングで撃ちなさい。ですがその前に、表情をあまり出すことのない二人に先生からアドバイスです。君たちは今ひどく緊張していますね?先生への狙撃を外したことで自分たちの腕に迷いを生じている。ですが大丈夫です。君たちは一人でプレッシャーを抱えることは無い、外した時の作戦もちゃんと用意しています。ここにいる全員が訓練と失敗を経験しているからこそ君たちは安心して引き金を引きなさい。その引き金は全員で引く引き金です。」

そう言ってふたりに殺せんせーはアドバイスをした。

「では行きますよ、出席番号12番!たって狙撃!」

そう言って立ち上がったところに男は狙撃をした。

「ビンゴォ!」

しかし当たったのは千葉ではなく菅谷がつくった人形だった。

「分析の結果、狙うならあの一点です」

「オーケー律」

そういって千葉は射撃を行った。

しかしその弾丸は男に当たることはなくその横を通り抜けていった。

「フヘヘ、へへへ外したなそれで二人目も場所がっ…!?」

千葉が狙ったのは吊り照明の金具だった。

吊り照明が男に叩きつけられていた。

しかし相手もプロそれでもなお千葉に銃口をむける。

が、それは速水の弾丸に阻まれた。

「ふーっ、やっと当たった」

速水によって銃が吹き飛ばされ男は無防備になった。

そしてすぐに寺坂たちがガムテープで拘束する。

その状況に烏間は

「肝を冷やしたぞ、よくこんな危険な戦いをやらせたな」

「どんな人間にも殻を破って大きく成長できるチャンスが何度かあります。しかしひとりではそのチャンスを活かしきれない。集中力を引き出すような強敵や、経験を分かつ仲間達に恵まれないと。だから私は用意できる教師でありたい。生徒の成長の瞬間を見逃さずに高い壁を良い仲間をすぐに揃えてあげたいのです」

烏間はなんて教育だとおもったが生徒たちの表情をみて杞憂だなと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし…

「きゃっ!?」

生徒たちは次の階に向かおうとして振り返る。

悲鳴の先には男が一人、その手には速水が掴まれていた。

「ククク、上には行かせねぇよ」




次回オリキャラ登場です。
若干不快な思いをさせる描写もあるかもしれませんが
次回からはカズキがメインの回になります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

異変の時間

「速水さん!!」

殺せんせーが思わず叫ぶ…

「あいつは…」

「烏間先生、しってるんですか?」

含みのある言い方に磯貝が問いかける

「ああ、あいつは世界的に有名な犯罪者だ。その犯行方法は卑劣極まりない」

「どんな方法なんですか…?」

茅野が心配層にきく

「やつの犯行方法は婦女暴行だ、それも標的は十代の女性…」

「ほほう、俺のことをしてってるみたいだなー先生」

「幼喰のロミオ、まさかやつが雇われているとは…」

「日本ではそこまで喰ってないんだがね、でも今日は沢山食えそうだ。ククク」

「いやぁ…」

そういってロミオは速水の首筋に口付ける。

速水は泣きながら抵抗するも力の差から何も出来ない。

「生徒を離せ!お前達の目的はこいつだろう!」

烏間は殺せんせーを指差し叫んだ。

「俺はそんなやつに興味はねー、雇われている以上仕事はするが俺の本職は女を喰うことなんでね。ククク」

「なんだと…!?」

「お前らの目の前で喰ってやるよ。それとも刺激が強すぎるかー?」

ロミオはニヤニヤしながら言い放ち、速水の服のファスナーに手をかけた。

「や、やめて…」

「やだねー、お前結構可愛いなー。その顔が歪むのが楽しみだ。クックック」

速水が捕まっている以上、迂闊なことはできない。

しかしこのままでは速水が危ない…そう烏間が思っていると…背後から異様な雰囲気を漂わせる人物の存在に気がついた。

生徒たちも速水を心配しているが、その異様な雰囲気に気を取られている。

まだロミオには気づかれていないようだ。

「殺せんせー、ごめん」

「カ、カズキ君…?」

意外にも殺せんせーもあまりの異様さに恐怖していた。

「殺しちゃいけないんだよね…でも守れそうにないや」

そう、異様な雰囲気を漂わせていたのは桜井和生。

その手には一本の刺剣が握られていた。

そのままカズキは至って普通に歩いていく。

数歩歩いたところでロミオもカズキに気づいたようだ。

「なんだお前、そんなに近くでこいつが壊れるところが見たいか?」

余程の自信があるのか、ロミオは一歩も動じない。

「誰の許しを得た…」

「あぁ?よく聞こえねぇな」

「誰の許しを得て触れている…」

その時生徒たちが耳にしたカズキの声はひどく冷たいものだった。

「うるせーな、そこまで言うなら勝負してやるよ。条件はそうだな、俺が勝ったら俺はこの女を喰う、お前が勝ったらこの女は解放してやるよ」

そういってロミオは速水を柱に縛り付けた。

「勝負が着くまで他のものは手出しできない、手を出せばあの女は勿体ないが殺すことにしよう。勝敗は、どちらかが戦闘不能になるか、降参を言うかだ。それでいいな?」

「…構わないよ」

「よせ、桜井君!奴は危険だ!」

「そうです、カズキ君!」

烏間と殺せんせーの制止をカズキは聞く気がない。

「それじゃあ殺し合いの始まりだな」ニタァ

カズキとロミオの速水をかけた闘いがはじまった。




さぁ、始まりです。
カズキがどのように成長するか
楽しみにしててくださいね。
感想ご指摘まってます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

カズキの時間

殺し合いの火蓋が切って落とされた。

カズキは手に持っていたレイピアを素早くロミオに突き刺す。

しかし、あいても世界を渡り歩く犯罪者。そう簡単には攻撃は届かない。

「どうしたぁ〜?そんなんじゃ殺せないぜ〜?」

「うるさい…」

一見カズキが多くの攻撃を繰り出しているため優勢に見えるが、そんなことは無かった。

「じゃあこっちも行かせてもらうぜ」

「くっ…」

ロミオが攻撃に転じた。ナイフを使って繰り出される鋭い剣戟はカズキに防戦を余儀なくさせる。

カズキも捌ききれなくなり体に傷が増え始めた。

「烏間先生…カズキは大丈夫なんですか…?」

磯貝が心配そうに問いかける。

「厳しいな、敵も相当の手練だ。このままだと…」

「殺されますね」

「「「殺せんせー!?」」」

殺せんせーが放った殺されるという言葉に生徒たちは驚愕した。

「ぐっ…」

「オラオラどうしたぁ〜?」

生徒たちがカズキに視線を戻すと既にカズキは満身創痍の状態だった。

縛り付けられた速水は

「桜井…私の為にあんなにボロボロになって…」

カズキの姿を見て涙を流していた。

「なんだ?もうおわりか〜?」

「くそっ…」

「そういえば桜井っていったなぁ?もしかして桜井麻友の子供か?」

その言葉にカズキの動きがとまる。

そしてロミオのナイフがカズキの右腕に突き刺さる。

「そうかそうか、あいつの息子か」

「母さんの何を知ってる…」

「病死に偽装されて暗殺されたってことくらいかぁ〜?」ニタァ

「そんな…」

「酷すぎるよ…」

岡野と矢田はとても悲しそうな顔をしている。

「なぜそんなことがわかる…」

「俺もその計画に1枚噛んでたからなぁ?喰えはしなかったがなかなかいい女だったぜ〜?」

「カズキ君…」

殺せんせーが不安げな声を上げる。

「母さんは殺され…た?」

「あーそうだ、俺は主犯格じゃなかったがな。そういやなんでこんな所にいるんだ?諜報屋によれば息子は精神崩壊してたはずだが?」

「「「えっ?」」」

生徒たちは驚きの声を上げる。

「精神崩壊だって?そんなの大したことなかったよ。独りぼっちの寂しさに比べれば」

「そうだよなぁ?お前に家族はもういないもんなぁ?」ニタァ

「うん、もういないよ。俺は独りぼっちだ、もう慣れたつもりだったんだけど」

「そうかぁ寂しいならお前もあの世に送ってやるよ。あの世で母親とでも仲良くしていやがれ!!」

そういってロミオはトドメの一撃をカズキに振りかざした。

カズキの意識は朦朧としているもう防御は不可能だ。

だがその時

「やめてっ!!」

「なんだよ?」

速水が叫びロミオの行動を止めた。

「私のことは壊していいから…滅茶苦茶にしてもいいから…桜井を殺さないで…」

「あぁ?そんなに喰われてぇなら喰ってやるよ」

そういってロミオは速水を縛っていたロープを外し服に手をかけた。

「速水さん!!」

烏間が止めようと試みるもまだ力が戻っていない。

「なかなかイイ身体してんじゃねーか。ククク」

そう言って服の中に手を入れようとした次の瞬間。

グサッ

「なっ…!?」

「ホントは見せたくなかった…でも殺らなきゃ…殺られるのは免れない…」

「貴様っ…」

「えっ…?桜井…なの…?」

その時速水が目にしたのは今までに見たこともないような冷たい…金色の目をしたカズキの姿だった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

凍える時間

烏間は自分の目を疑った。

先程まで倒れていたカズキがいつの間にかロミオの背後から容赦なく刃を突き刺したからだ。

「殺せんせー、どうなってるの?」

渚も不思議な光景に殺せんせーへの答えを要求する。

「彼は至って普通に近づいたのでしょう、それを私たちが視界で捉えられなかった。そういうことでしょう」

「殺せんせーにもみえなかったの?」

「いえ、私には見えていましたよ。彼の近づく姿も、そして……彼の才能の片鱗も…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確かにお前は動けなくしたはず…何故そこにいる…」

ロミオの疑問は至極真っ当だ。

「うるさいよ…さっさと離れてくれるかな」

そういってカズキは速水をロミオの手から奪い取り、抱き抱えみんなの元へもどる。

速水はカズキの腕の中で不思議な言葉をきいた。

「いままでありがとう」

「えっ?」

そう言ってカズキは速水をみんなの元へ連れていき、すぐさまロミオの元へともどった。

「速水さん大丈夫!?」

片岡が心配して近づいてきた。

「う、うん…桜井のお陰で…」

「でも、凄く体が冷たいよ?」

「怖かったからかな…」

「大丈夫、もう大丈夫だからね…」

そういって片岡は速水を抱きしめ、頭を撫でた。

だが彼女たちは気づかない…その冷たさが速水を救った少年からの物だとは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良くもやってくれたなテメー!」

「それはこっちのセリフだよ…隠してた感情が出てきちゃったじゃないか…」

「テメーだけは絶対に殺す!!」

そういってロミオはカズキに斬りかかってきた。

「こっちも今出せる本気で行かせてもらうよ…」

「「「……!?」」」

その場にいた全員が感じ取った。

カズキから発せられるとても冷たい雰囲気を。

カズキは手に持っていた刺剣を投げた。

その刺剣は磯貝の目の前に突き刺さり、磯貝はそれを手に取った。

そして

「カズキ…無事でいていくれよ…」

心配そうに呟いた。

「さっきまでのは本気じゃねーっかぁ!?」

ロミオは激昴してカズキに斬りかかる。

カズキはそれを躱すが、何回かは直撃してしまっており身体から流血が止まらない。

「殺せんせー!止めなくていいの!?」

「そうだよ!もう桜井はボロボロだ!」

不破と菅谷が殺せんせーに問いかける。

「とめなければなりません…しかし今の彼を止められる人間はこの場にはいません」

「おい、それはつまり」

「えぇ、あのロミオという男でも無理でしょう」

殺せんせーは心配しながらもカズキを信じて微笑んでいた。

「はぁはぁ…」

ロミオが攻撃を一旦中断し距離をとった。

「じゃあ今度はこっちからいくね」

カズキは腰に下げていたもう一本の刺剣を鞘から抜いた。

その剣は透きとおった蒼い刃を持ち冷気を放っている。

「零剣レヴィアタン、永久凍土で作られたつくられた刺剣…母さんが遺した刺剣だ」

シュゥッ

次の瞬間カズキがとった行動に全員が驚いた。

カズキは傷口にその刃を当てて血液を凍らせてしまったのだ。

「お前の斬撃などこの程度だ、本当の剣戟を教えてやる」

カズキはひどく冷たい声でそう言い放つと。

着ていたスーツのジャケットを脱ぎ、投げ捨てた。

全員がそのジャケットに気を取られた一瞬のうちにカズキは姿を消した。

「ど、どこへいった」

ロミオも動揺を隠しきれない。

「ここだよ」

「!?」

カズキは突然ロミオの左に現れ刺剣を一突き、それに驚いたロミオは後ろへ倒れてしまった。ロミオの目は既に恐怖に染まっており、戦意が感じられるものではなくなっていた。

一方カズキの金色の目は恐ろしく冷たいものとなっている。

「いけません!!彼を止めないと!」

殺せんせーが焦っている。

「や、やめてくれぇ…」

ロミオは恐怖から涙を流し始めた。

「この剣は嫌いだ…冷たさが俺の心を映したようで…そろそろ終わりにしようか」

冷たく言い放ち、カズキはトドメを刺そうとした。

「凍えて眠れ…永遠に覚めることのない眠りにいざなってやる」

そうしてカズキが最後の攻撃をしようとしたその時

「桜井だめ…命まではだめ」

「速水…さん?」

速水がカズキを後ろから抱きしめた。

「さっきいままでありがとうっていったわよね?そんなの許さないよ…だから帰ってきて…」

「烏間先生!今です!速水さんがカズキ君を止めてくれている間に奴を!」

「わかった、みんなも手伝ってくれ!」

「「「はいっ!」」」

生徒たちは一致団結してロミオを拘束した。

カズキがロミオを殺そうとしたことを気にしながらも彼を問い詰め用とはしなかった。

「速水さん…もういいよ…殺さないから…」

「違うでしょ…?いなくならないって言うまで離さないから…」

「…」

速水の言葉にカズキは黙ってしまう。

「カズキ君、速水さんを救おうとしたその姿勢は素晴らしい。ですが闘い方は褒められたものではありません、わかっていますね?」

「はい…すみません」

「わかればいいんです、そんな身体でよく頑張りました。」

「はい…」

カズキは剣を鞘にしまった。

するとカズキの傷口を塞いでいた氷が砕け、再び血が流れ出した。

「カズキ…これ」

磯貝は手に持っていた刺剣をカズキに渡す。

「ありがとう…」

「皆さんカズキくんの傷を処置しだいすぐにターゲットを目指します。時間がもうありません。そしてカズキ君このミッションが終わったら君のことを話してもらえますか?」

「うん…もう隠せないし」

「ありがとう、それではいきましょうミッション再開です!」

「「「おうっ!!」」」




一度カズキの話は終わりですが。
潜入の話が終わったらまたやりますので
またお楽しみに
ご指摘感想まってます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黒幕の時間

「ふうぅ〜…だいぶ体が動くようになってきた」

「ひぃぃ…」

烏間が見張りの首を絞めて落とすところを見て、茅野はすこしびびっている。

「まだ力半分ってところだがな」

「力半分ですでに俺らの倍強ぇ…」

「あの人ひとりで侵入った方が良かったんじゃ」

木村と片岡も烏間のあまりの強さに若干引いている。

生徒たちが進んでいると律から情報が入った。

「最上階部屋のパソコンカメラに侵入しました、上の様子が観察できます」

そういって律はそれぞれの携帯に映像を送る。

「確認する限り残るのは…この男ただひとりだけです」

「「「(こいつが…黒幕か)」」」

生徒たちは黒幕を確認し憤りを感じる。

「テレビに映ってんのウィルスにかかった皆じゃねーかよ。とられてたのか」

「楽しんでみてやがるのが伝わってきやがる。のらさ野郎が」

吉田と寺坂が怒りを言葉にする。

「あのボスについて、わかってきたことがあります」

殺せんせーが説明をはじめた。

「黒幕の彼は殺し屋ではない、殺し屋の使い方を間違えています。もともとは先生を殺すために雇った殺し屋、ですが先生はこんな姿になり…警戒の必要が薄れたので見張りと防衛に回したのでしょう。…ですがそれは殺し屋本来の仕事ではない、彼等の能力はフルに発揮すれば恐ろしいものです」

「…確かにさっきの銃撃戦も戦術で勝ったけど、あいつ…狙った的は1センチたりとも外さなかった」

「カルマ君もそう、敵が正面から現れず忍びよられたら、瞬殺されていたでしょう」

「…そりゃね」

敵は殺し屋ではない、見張りの姿をみて烏間はまさかと思う。

「烏間先生?」

片岡が心配そうに問いかけるが

「いや…。さぁ時間が無い、こいつは我々がエレベーターで来ると思っているはずだが。交渉期限まで動きが無ければ流石に警戒を強めるだろう。ここに役割を……」

烏間がこれからの作戦を支持する中、寺坂の様子がおかしいことに渚が気づいた。

「寺坂くん、まさかウィルス…んっ!?」

「黙ってろ渚、俺は体力だけはあんだからよ。こんなもん放っときゃ治んだよ」

「そんな…無茶だよ」

「烏間の先公がガス浴びちまったのは…俺が下手に前に出たからだ。それ以前に俺のせいでクラスの奴らを殺しかけたこともある。こんなとこで脱落してこれ以上足引っ張れるわけねーだろ」

「寺坂くん…」

「それによぉ渚、もっとやべぇ状況で闘ってやつがいんだろうが」

寺坂の視線の先には磯貝に支えられながら歩くカズキの姿があった。

「桜井くん…」

「あんなの見せられちまったら、やるしかねーだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「悠馬わるいな…」

「気にすんなって、それより傷は大丈夫なのか…?」

「血は止まったし大丈夫じゃないかな」

「それにしてもカズキは無茶するよな」

「あ、あはは…」

「ちゃんと後で説明してもらうからな?親友に隠し事はなしだ」

「あとでちゃんと皆に説明するよ、それにしても悠馬はやっぱイケメンだな」

「傷だらけでクラスメイトを助けるやつの方がよっぽどかっこいいさ」

「そういってくれると…救われるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最上階

生徒たちは9階の見張りが持っていたカードを使って部屋に侵入した。

部屋は広いが遮蔽物も多く最大限に姿を消せばかなり近くまで忍び寄れる。

生徒たちはナンバと呼ばれる歩行法を用いて黒幕の男に近づいていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが後少しというとき

「かゆい」

男の声に生徒たちは動きを止めた。

「思い出す度にかゆくなる。でもそのせいかな、いつも傷口が空気に触れるから…感覚が鋭敏になってるんだ」

その男の声は生徒たちにとって聞き覚えのある声だった。

しかも前よりももっと邪気を孕んで。

「連絡がつかなくなったのは……三人の殺し屋のほかに身内にもいる。防衛省の機密費を盗み俺の同僚が姿を消した。…どういうつもりだ」

烏間の言葉とともに男は振り返った。

「鷹岡ア!!!!」

「悪い子達だ…恩師に会うのに裏口からくる。父ちゃんはそんな子に教えたつもりはないぞ」

生徒たちの表情が引き攣る。

「仕方ない、夏休みの補修をしてやろう」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

鷹岡の時間

「屋上へ行こうか、愛する生徒に歓迎の用意がしてあるんだ。ついて来てくれるよなァ?おまえらのクラスは…俺の慈悲で生かされてるんだ」

そういって鷹岡は生徒たちに笑った。

供給と憎悪が刻み込まれた顔面で。

思い出されるのは、クラスメイトの苦痛の記憶…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上ヘリポート

「気でも違ったか鷹岡、防衛省から盗んだ金で殺し屋を雇い、生徒たちをウィルスで脅すこの凶行…!!」

「おいおい烏間、俺は至極真っ当だぜ?お前らが大人しく2人にその賞金首を持ってこさせりゃ俺の暗殺計画はスムーズに仕上がったんだけどよ」

「どういうことだ…?」

「計画ではな、茅野とかいったか?女の方を使う予定だったんだ。部屋のバスタブに対先生弾がたっぷり入れてある、そこに賞金首を抱いて入ってもらう。その上からセメントで生き埋めにする、対先生弾に触れずに元の姿に戻るには…生徒ごと爆裂しなきゃいけないって寸法だ、生徒思いの殺せんせーはそんな酷いことしないだろ?大人しく溶かされてくれると思ってな」

あ、悪魔だ…生徒たちはそうおもった。

「そんな真似が許されるとでも思いますか?」

殺せんせーもマジギレだ、顔が真っ黒になっている。

「これでも人道的な方さ、お前らが俺にした…非人道的な仕打ちに比べればな。」

そう言って鷹岡は顔面をかきむしり始めた。

「屈辱の目線と騙し討ちで突きつけられたナイフが頭ン中チラつく度にかゆくなって、夜も眠れなくてよオ!!落とした評価は結果で返す、受けた屈辱はそれ以上の屈辱で返す。特に潮田渚、俺の未来を怪我したお前は絶対に許さん!!」

「…!!」

「背の低い生徒を要求したのは…渚を狙ってたのか」

「カンペキな逆恨みじゃねーか!」

千葉と吉田は鷹岡の真意を知り思い思いくちにする。

「へー、つまり渚くんはあんたの恨みを晴らすために呼ばれたってわけ。その体格差で本気で勝って嬉しいわけ?俺ならもーちょっと楽しませてやれるけど?」

カルマも怒っているようだ。

「イカレやがって、テメーが作ったルールの中で渚に負けただけだろーが。言っとくけどなあの時テメーが勝ってようが負けてようが俺らテメーの事大ッ嫌いだからよ」

「ジャリ共の意見なんて聞いてねェ!!俺の指先でジャリが半分減るってこと忘れんな!!」

寺坂の言葉に鷹岡は激昴する。

「チビ、お前ひとりで登ってこい。この上のヘリポートまで」

「渚!いったらダメ」

「…………行きたくないけど…行くよ」

「早く来いオラァ!!」

「あれだけ興奮してたら何するかわからない。話に合わせて冷静にさせて、治療薬を壊さないよう渡してもらうよ」

そう言って渚は鷹岡の元へ歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘリポートの上

鷹岡は渚が来たのを確認すると梯子を窪みに落とした。

これでもう誰もヘリポートへ上がることは出来ない。

「この前のリターンマッチだ足元のナイフを取れ」

「まってください鷹岡先生、闘いに来たわけじゃないんです」

「だろうなぁ、一瞬でやられるのは目に見えてる。だが一瞬で終わっちゃ俺としても気が晴れない…だから闘う前にやることやってもらわなくちゃなぁ」

そう言って鷹岡は地面を指さした。

「謝罪しろ、土下座だ。実力がないから卑怯な手で奇襲した。それについて誠心誠意な」

渚は何も言わず地面に膝をついた。

「……僕は…」

「それが土下座かァ!?バカガキが!!頭こすりつけて謝んだよォ!!」

「僕は実力がないから卑怯な手で奇襲しました…ごめんなさい」

渚の地面に頭をつける姿を見て生徒たちは悔しい思いをした。

「おう、その後偉そうな口も叩いたよな?『でていけ』とか。ガキの分際で大人に向かって、生徒が教師に向かってだぞ!!」

鷹岡は地面についた渚の頭を踏み付ける。

「ガキのくせに、生徒のくせに、先生に生意気な口を叩いてしまい、すみませんでした。本当に…ごめんなさい」

その言葉を聞くと鷹岡は満足そうに

「…よーし、やっと本心を言ってくれたな。父ちゃんは嬉しいぞ。褒美にいい事を教えてやろう」

そう言うと鷹岡は渚に背を向け治療薬の入ったケースに手をかける。

「あのウィルスで死んだやつがどうなるかスモッグのやつに画像を見せてもらったんだがな?笑えるぜ、全身デキモノだらけ顔面がブドウみたいに晴れ上がってな。………見たいだろ?渚君」

そう言うと鷹岡はケースを中に投げ…

「やッ、やめろー!!!!」

烏間の悲痛な叫びも虚しく爆破してしまった。

烏間や生徒たちは絶望の表情、鷹岡は狂気にそまった表情をしている。

特に渚は絶望感に苛まれていた。

「あはははははは、そう!その顔が見たかったんだよ!」

鷹岡は渚の絶望した顔に満足気に笑っている。

渚は寺坂の方を振り返った。

そして寺坂の苦しそうな表情を見た時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚はナイフを手に取り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺…してやる…」

そう言い放ち鷹岡にナイフを向けた。

「クククそうだ、そうでなくっちゃな」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

渚の時間

「殺してやる…良くもみんなを」

怒気の入った声で渚が言い放つ。

「ははははは、その意気だ!殺しに来なさい渚君!」

「渚…キレてる」

「俺らだって殺してぇよあのゴミ野郎。けどよ渚の奴まじで殺る気か!?」

生徒たちが心配の眼差しを向ける。

「渚君の頭を冷やしてください。君にしかできません、寺さ…」

殺せんせーがそう言いかけた時、寺坂が渚にスタンガンを投げつけた。

「チョーシこいてんじゃねーぞ渚ァ!!薬が爆破された時よテメー俺を哀れむような目で見ただろ。いっちょ前に他人の気遣いしてんじゃねーぞこのモヤシ野郎!!ウィルスなんざ寝てりゃ余裕で治せんだよ!!」

「寺坂…お前まさか…!!」

「そんなクズでも息の根止めりゃ殺人罪だ。テメーはキレるに任せて百億のチャンス手放すのか?」

寺坂が叫ぶように渚に問いかける。

「寺坂君のいう通りです渚君。その男を殺しても何の価値もないし逆上しても不利になるだけです。そもそも彼に治療薬に関する知識はない、下にいた毒使いに聞きましょう。こんな男は気絶程度で充分です」

殺せんせーが渚を諭す。

「おいおい、余計な水差すんじゃねぇ」

「渚君、寺坂君のスタンガンを拾いなさい」

「……」

「その男の命と先生の命、その男の言葉と寺坂君の言葉。それぞれどちらに価値があるのか考えるんです」

渚は黙ったまま話を聞いている。

「寺坂!!お前これねつやべぇぞ!!」

「こんな状態できてたのかよ!!」

吉田と木村が寺坂に歩み寄る。

「やれ渚、死なねぇ範囲でブッ殺せ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また渚の中で何かが動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚は上着を脱ぎ捨てスタンガンを腰にさげた。

「お〜お〜カッコいいねぇ」

「烏間先生、渚君の生命に危機がきたら…迷わず撃ってください」

殺せんせーがここまで言うということは間違いなくまずい状況だ。

今渚が暗殺に持込もうとしても…

「あぐッ……ゲホッゲホッ」

「おらどうした?殺すんじゃなかったのか?」

近づく渚に鷹岡は膝蹴りをくらわせた。

何度渚が暗殺を仕掛けてもことごとく返り討ちにされる。

今の鷹岡は完全に戦闘モード、心が狂気に満たされても精鋭軍人。いかなる奇襲も通じないほど隙がない。奴を戦闘で上回るのは全国模試で一位をとるより何倍も難しい。

「勝負にならない…」

「勝てるわけねーよあんな化物」

血を吐いて倒れる渚の姿を見て生徒たちは危機感を感じていた。

「俺もそろそろコイツを使うか」

そういって鷹岡もナイフを手に取った。

「(ナイフと共に夢に出てくるトラウマがある。あいつがあの時見せた笑顔だ。あの笑顔に虚をつかれてから全てが狂った。もう同じ過ちは繰り返さない)手足切り落として標本にしてる、手元に置いてずっと愛でてやるよ」

「烏間先生!もう撃ってください!渚死んじゃうよ!!」

茅野が悲痛な叫びを発するが。

「まだだよ」

「カズキ正気?俺もそろそろ参戦したいんだけど」

「渚には…まだあれが残ってる…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(このままじゃ殺られる…ロヴロさんの必殺技の条件は…)」

 

1つ、武器を2本持っていること!!

2つ、敵が手練であること!!

3つ、敵が殺される恐怖を知っていること!!

 

「(良かった…全部揃ってる…鷹岡先生、実験台になってください)」

そうして渚は笑って歩いて行く。あのときとは少し違うが、あの時を思い出させる。

渚はロヴロに言われたことを思い出していた。

『必殺技といっても、必ず殺す技ではない。暗殺から戦闘に持ち込まれてしまった時に、ノーモーションから最速でできるようにしておけ。これは、必ず殺せる状況を作る技だ』

「この…クソガキぃ」

鷹岡は以前と同じ状況に集中力を高めていく。渚の一挙一動を逃すまいと。

「(タイミングは…ナイフの間合いの少し外…敵に接近すれば接近するほど、敵の意識はナイフに集まる。そのままナイフを意識ごと空中に置くように捨て…)」

渚がナイフを手放した瞬間、鷹岡の意識は完全にナイフに集中していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音の爆弾が鷹岡に襲いかかった。

「な…にが…おこっ…た」

「(暗殺者はその数瞬を逃さない…流れるように二本目の刃を抜くが早いか)」

渚は腰にさげたスタンガンを素早く抜き鷹岡の脇に電流を流した。

「…ウソ…だ…こんなガキに…二度も…」

「ハァ…ハァ…」

その場にいた全員が渚の行動に驚いた。

「トドメをさせ渚、首あたりにたっぷり流しゃ気絶する」

寺坂の言葉を受け渚は鷹岡の首をスタンガンで持ち上げる。

「(殺意を教わった、抱いちゃいけない種類の殺意があるって事。その殺意から引き戻してくれる友達の大切さも。殴られる痛みを、実戦の恐怖を、この人から教わった。酷いことをした人だけど、それとは別に授業には感謝をしなきゃいけないと思った。感謝を伝えるなら)」

「(やめろ…)」

「(そういう顔をすべきだと思ったから)」

「(その顔で終わらせるのだけはやめてくれて…その顔が一生悪夢から離れなくなる)」

次の瞬間、渚は笑顔をつくり

「鷹岡先生、ありがとうございました」

電流に流した。

鷹岡は気絶した。

そう、つまりは

「よっしゃああ、ボス撃破!!!」

生徒たちは渚の元へ駆け寄っていく。

しかも渚の表情は優れない、治療薬が壊れ足りなくなってしまったからだ。

烏間がヘリを呼び毒使いを連れてこようとした時。

「フン、テメーらに薬なんざ必要ねぇ、ガキどもこのまま生きて帰れると思うなよ?」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大人の時間

現れたのは銃使いのガストロ、毒使いにのスモッグ、おじさんぬのグリップ。そしてグリップにつかまれ譫言のように何かを呟き続けているロミオだった。

生徒たちは暗殺者たちの登場に身構える。

「お前たちの雇い主は倒した、もう戦う理由はないはずだ。俺は充分回復したし生徒たちも充分強い、これ以上はやめにしないか?」

烏間は暗殺者たちに交渉を持ち掛ける。

「ん、いーよ」

「諦め悪ぃな!こっちだって薬が…え?」

吉田が食ってかかろうとするが彼らの言葉に踏みとどまる。

「ボスの敵討ちは俺らの契約には含まれてねぇ、それに今言ったろ。お前らに薬なんざそもそも必要ねぇ」

ガストロの言葉にスモッグが補足する。

「お前等に盛ったのはこっち、食中毒菌を改良したものだ。あと三時間くらいは猛威を振るうがその後急速に活性を失い無毒になる。そんでこっちがボスに指示された方、こっちを使ってたらお前らマジでやばかったな」

生徒たちは暗殺者たちの言葉に驚く

「使う直前で話し合ったぬ、ボスの交渉期限は1時間。だったらわざわざ殺すウィルスじゃなくても取引はできると」

「交渉にあわせて多種多様な毒を持ってるからな、お前らが命の危機を感じるには充分だったろ?」

「…でもそれって、命令に逆らったってことだよね?お金もらってるのにそんなことしていいの?」

「アホかプロが何でも金で動くと思うなよ?もちろんクライアントの意に沿うように最善は尽くすが、ボスはハナから薬を渡すつもりは無いようだった。カタギの中学生を大量に殺した実行犯になるか、命令違反がバレてプロとしての評価を落とすか。どちらが俺らの今後にリスクが高いか冷静に秤にかけただけよ」

「ま、そんなわけでお前らは誰も死なねぇその栄養剤を飲ましてやんな。感謝の手紙が届くほど代物だ」

そういってスモッグは薬の瓶を渡した。

「「「アフターケアも万全だ!!」」」

「信用するかは生徒たちが回復したのを見てからだ。事情も聞くししばらくは拘束させてもらうぞ」

「…まぁしゃーねーな、来週には次の仕事が入ってるからそれまでにな」

鷹岡と見張りたちは拘束されヘリに連れ込まれていた。

「…なーんだ、リベンジマッチやらないんだおじさんぬ、俺のこと殺したいほど恨んでないの?」

「俺は私怨で人を殺したことはないぬ、だから依頼される程の人物になるぬ」

そういってグリップはカルマの頭をポンと叩きヘリに乗り込んだ。

「テメー桜井とかいったか?」

「うん、そうだけど」

ガストロがカズキに話しかけてきた。

「ロミオってやつがよ、ずっとなんかいってんだよ。桜井やめてくれて、とか殺さないでくれ許してくれとかよ。お前ら何やったんだ?」

「………殺そうと思ってあいつを見ただけだよ、剣は振り下ろしてない」

「お前の中にはとんでもないもんが眠ってやがる、間違った使いかたすんじゃねーぞ?その見たってのが原因だろうな」

「うん…そうするよ」

そういってガストロもヘリに乗り込み最後に全員に言い残した

「本気で殺してきて欲しかったら偉くなれ。そんときゃプロの殺し屋のフルコースを教えてやるよ」

殺し屋たちは去っていった。

こうして生徒たちの大規模な潜入ミッションは

ホテル側の誰ひとり気づかないままコンプリートとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘリの中

「…寺坂くん」

渚は寺坂に話しかけた。

「あの時声をかけてくれてありがとう、間違えるところだった」

「…ケ、テメーのために言ったんじゃねぇ。一人かけたらタコ殺す難易度上がんだろーが」

「うん…ごめん」

 

 

 

 

 

生徒たちは皆がまつホテルに戻り、大丈夫なことを伝えてそれぞれが泥のように眠り、起きたのは次の日の夕方だった。

起きた時見たものは殺せんせーを殺すための準備をする烏間の姿だった。

生徒たちはおもう。尊敬すべき人は追いかけて、ダメだと思った人は追い越して、そうして大人になるのだろと。

結局殺せんせーの暗殺は失敗してしまったようだが、生徒たちは結果を予想していたようだった。

「先生の不甲斐なさから苦労させてしまいましたが、皆さん本当によく頑張りました!」

「おはようございます殺せんせー、やっぱ触手がなくちゃね」

「はい、おはようございます。旅行の続きを楽しみたいところですが」

「「「なにかあるの?」」」

ウィルスで寝ていた生徒たちは何があるのか分からないと言った様子だ。

「カズキ君わかってますね?」

「うん、話すよ。俺の過去について」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

過去の時間

E組の全員はカズキの部屋に集まった。

クラス全員が注目する中カズキはポツリポツリと話し始めた。

生徒たちはカズキの言葉を聞き逃すまいとじっと見ている。

「物心ついた時から父親はいなくて…母さんと二人暮らしだった。母さんは帰りが遅かったり、出張が多かったりしたけど…誕生日とか大事な日にはいつも一緒にいてくれて…大好きだった…刺剣の使い方だって母さんが教えてくれたんだ。いろんな国の剣術を知ってた。最初に教えてくれたのは王国剣術だったよ。厳しかったけど…稽古をつけてもらってる時は本当に楽しかったんだ」

そういってカズキは悲しそうに笑って続ける。

「ずっとこんな日々が続くと思ってたんだ…でも…そんなことはなかった…。去年の夏、母さんが出張からなかなか帰ってこなくてさ…心配になってさ。母さんの勤め先に問い合せたんだ…帰国予定日は何時だってね。」

「その勤め先ってどこなんだ?」

磯貝がカズキに問いかける。

「防衛省…烏間先生と同じだよ」

「「「………!?」」」

生徒たちは驚いて烏間の方を振り返った。

「ああ、桜井君の母親は俺の上司だ。とても多忙な人でな、皆からの信頼も厚かった」

「そうなんですか…」

烏間の言葉に渚は返事が弱々しくなる。

「問い合せたらさ…防衛省にも連絡がなかったんだって…任務がおわったら連絡がある筈なのにって…。それから2週間が経った時に俺の家に女の人が二人来て…母さんの死を告げられた…。遺体はちゃんと戻ってきて…葬式も親戚がしてくれた。でも俺は受け入れられなかったんだ…たったひとりの家族がいなくなって…ひとりになったことに。俺に残されたのはひとりにしては大きい家と、母さんがくれた3本の刺剣…そのうちの2本は今回使ったやつだよ…。母さんの葬式から少し経ってようやく母さんがいなくなったことをちゃんと理解したよ…そこで壊れちゃったんだ…潜入してた皆は聞いたと思うけど…精神崩壊って言葉が正しいとおもう。周りの目が気になって仕方がないし、独りの孤独が本当に辛かった。それでね…心が冷たくなっちゃったんだ…俺に心はもうないのかもしれない…」

そう言ってカズキは泣き出してしまった。

すると殺せんせーが

「心がない人は仲間を助けようとしませんよ。君は速水さんを命を賭けてまで助けたじゃないですか」

「そんなの…俺の身勝手だよ…俺はさ、このクラスに自分から来たんだよ…?みんな俺と同じような人達だと思ってた。でも違ったんだ、みんなは眩しかった…暖かかった…俺の凍えるような冷たさとは違ったんだよ…だから失いたくなかった…」

「カズキくんはすごいね」

「渚…?」

「だって守ったじゃない?速水さんのこと、失わせなかった」

「でも…俺はあいつを…ロミオを殺そうとしたんだぞ?いや…殺したのかあいつの心を…」

「カズキくん…」

渚の慰めも虚しくカズキの涙は止まらない。

「俺は…寂しいよ…ひとりぼっちは寂しい…」

「桜井はひとりじゃないよ?」

「えっ…?」

生徒たちは驚いた、速水がカズキの事を抱きしめたのだ

「私たちがいるじゃない、ひとりじゃないよ?このクラスに来た時からずっと」

「速水さん…」

「速水さんのいう通りですカズキくん、君は今たくさんの人に関わっている。君はちゃんと心を持っています。もしそれが凍っていると言うのなら、それは仲間がとかしてくれるでしょう。そうですよね皆さん?」

「あたりまえじゃん!」

「桜井がいなかったら俺の命も危なかったしな」

生徒たちは強く返事をする。

「みんな…」

「今は頑張らなくていいよ…辛かったら泣いていいの…ずっとそばにいてあげるから」

「速水さん…ありがとう…ごめん…ごめんね。うぅっ…」

そういってカズキは速水の腕の中で泣き始めた。

心にせき止められた雪解け水がすべて流れ出すかのように

「話してくれてありがとうカズキ君、みなさんは一度部屋に戻ってください。夜9時にビーチに集合です。それまではゆっくりと休んでください。カズキくんのことは速水さんに任せますね」

「うん、わかった」

「それでは一度解散です」

殺せんせーに促され生徒たちはカズキの部屋を後にする。

「殺せんせーどうして凛香ちゃんにまかせたの?」

「それはですね、速水さんがカズキ君の本質をさらけ出させたからです」

倉橋の問いに殺せんせーは答える。

「ほんとにそれだけー?」

中村がそう疑ってかかると

「あと、ちょっとふたりがいい雰囲気でしたので」

殺せんせーの顔がピンクになっている。

下世話だ、とても下世話だ。

「やっぱ殺せんせーは殺せんせーだね」

「にゅや?どうゆうことですか?」

「いつかわかるよ」

渚の言葉に殺せんせーは首をかしげる。

生徒たちはそれぞれの部屋に戻っていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

暖かさの時間

作者の趣味全開です(笑)
申し訳ございません。


カズキの部屋では

「うぅ…ひっく…ひとりはやだよぉ…」

「ひとりじゃないよ、大丈夫」

未だに泣き止まないカズキを速水が慰めていた。

「俺は人殺しだ…武器を使わなくても人を殺しちゃう…」

「ううん、そんなことない。命は奪ってないもの」

「でも…心を殺したよ…?」

「桜井のおかげで私の心と身体は守られたの。あのとき助けてくれなかったら私は死んじゃってたよ」

「でも、それは俺の身勝手で助けただけで…」

「それでもわたしは嬉しかったよ、ありがとう」

「速水さん…」

そういって速水は笑いかけカズキの頭を撫でる

「うぅ…でも…みんないなくなっちゃうんだ…瞳を合わせるだけで…」

「瞳?」

速水はその言葉に心当たりがあった。

今みているカズキの瞳はを普段通りの紅い瞳、しかしあの時速水が見たのは金色の瞳。

金色だったカズキの瞳は恐ろしいほど冷たいものだったと思い出し速水は少し怯えた。

しかし

「わたしは桜井と瞳を合わせても全然平気だよ?」

「ほん…とう?」

「うん、だから大丈夫。思いっきり泣いていいの全部吐き出して?」

そういって速水はそっとカズキを抱き寄せた。

「速水さん…ありがとう…うぅ…寂しいんだ…あんな広い家に…自分以外誰もいない…あいさつを交わす人もいないし、ご飯はいつもひとり…ずっと寒かった…みんな何処かへいっちゃうんだ…離れていっちゃうんだ…」

カズキの凍った心が少しずつ溶け言葉になっていく。

速水はそれを全て受け止める。

「みんな一緒にいるっていってたじゃない」

「でも…卒業したら離れるし…」

「わたしはそばにいるから、ずっとそばにいる。ひとりになんかさせないわよ」

「でも…どうしてそんなに優しくしてくれるの…?」

「それは…」

速水は顔を赤くする。

「それは…?」

「わたしにとって桜井が…その」

「…?」

「大切なクラスメイトだからよっ///」

「ほんとう…?」

上目遣いでカズキが速水を見る。

「うん、ほんと」

「ありがとう…速水さんって暖かいね、安心する」

「桜井はちょっと濡れてて冷たいけどね」

「あはは、ごめんごめん」

「あ、やっと笑った」

「速水さんのおかげだよ、ありがとうね」

「助けてもらったし…そのお礼」

「ありがとうねほんと、そろそろ時間だから行こっか」

「うん、殺せんせー待ってるもんね」

「それに…ちょっと恥ずかしいし…」

「あ、ごめん離すね!」

そういって速水はカズキから離れる。

「悠馬にも謝んなきゃなー」

「磯貝に?」

「うん、親友に隠し事なんて良くなかったよ」

「そうだね」

カズキは思う、話して良かったと。

皆は受け入れてくれたのだと。

そうおもいつつ速水と共にビーチに向かうのであった。




注意
桜井くんはまだ自分の気持ちをわかっていません。
ですがとても愛に飢えた少年ということだけわかっていただけると幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

怖い?時間

前期の後半がスタートしなかなか更新出来なくなります
申し訳ないです…
渚「第二の刃も大切だからね」
茅野「うんうん!」
二人とも…(´;ω;`)


約束の9時まであと少し、ビーチには生徒達が集まっている。

そこにカズキと速水は二人でやってきた。

それぞれ男子と女子の元へ行き話している。

「カズキもう大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ、それとごめん悠馬は親友なのに隠し事してて…」

「きにすんなって!初めてあった時からカズキにはなんかあるとは思ってたしな」

「イケメンだ…」

カズキと磯貝が友情を再確認していると、岡島が話しかけていた。

「なーカズキ!速水とどうだったんだ!」

「どうって?」

「二人きりだっただろ?何かしらあっただろ!?」

「岡島くん落ち着いて!」

ヒートアップする岡島を渚が宥める。

「あぁ…いわなきゃだめか?」

「あったりまえだろぉ?」

「いや…あのその…皆がいなくなったあとな…?思いっきり泣いちゃって、その…ぎゅーってしてもらったくらいだよ…?恥ずかしい…」

「ぐはっ!?」

「岡島!?」

倒れ込む岡島を前原が支える。

「なぁ、渚」

「磯貝くんどうしたの?」

「カズキって自覚ないのか?」

「ないんじゃないかな?」

「ちょっといってくる」

「やれやれうちの委員長は世話やきだねー」

「カルマくんだってそうじゃない?」

「俺は面白いからってだけー」

「そ、そっか」

 

 

 

 

 

「カズキちょっといいか?」

「いいよ?」

磯貝の問をカズキは真摯に向き合おうとしている。

「カズキは速水のことが好きなのか?」

「「「へっ?」」」

カズキを含め男子がアホみたいな声を出す。

「さっき、ずいぶん嬉しそうに話してたからな」

「でも…俺さ、誰かを好きになったことなんてないし…わかんないけど」

「じゃあカズキは誰の前でも思いっ切り泣けるのか?」

そこでカズキははっと気付く、母が居なくなった日から思い切り泣いたことは無かった。

「で、でもさ…」

「じゃあ速水といた時どうおもったんだ?」

「それは…安心した…暖かいなって…」

照れくさそうに言うカズキに聞いている男子も恥ずかしくなる。

「きっとお前は速水が好きなんだよ、お前が暖かさを感じたんだからな」

「悠馬…」

「俺は全力で応援するぞ?」

「まだ好きって決まったわけじゃ…」

「カズキは表情に出やすいぞ?」

「そうかなー?あっ…」

「ん?どうした?」

「あんな恥ずかしい姿見せて…ぎゅーってしちゃって…嫌われたんじゃ…!?」

「「「(鈍感すぎるぞ…)」」」

「うー…怖い…」

カズキは速水に嫌われていないか、男子たちはカズキの鈍感さに怖いと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方女子はというと

「はやみん〜!どうだった〜?」

「凛香ちゃんどうだった!」

中村と矢田が速水に何があったのかぐいぐい訊いてくる。

「別に…慰めてただけだって」

「え〜好きな男とふたりきりだったのに?」

「べ、別に好きとかじゃないし…///」

「凛香ちゃんみんな知ってるからね?」

「うー…///」

「「「(か、かわいい……///)」」」

目に見えて狼狽える速水をみて女子たちはニヤニヤしていた。

「カズキさんのことなら私も好きですよ?」

「「「え?」」」

律のセリフに女子たちは困惑する。

「律も桜井ちゃんのことが好きなの?」

「はいっ!頼れるお兄ちゃんみたいでかっこいいです!何でもできますし」

「確かに桜井くんって勉強も運動もできるね」

「料理もできるよ…女子力ホント高いよ…」

倉橋と速水がことばをつなげる。

「じゃあはやみんと律はライバルってこと?」

中村がそういうと律が否定した。

「いえ、カズキさんは明らかに速水さんに心を開いていますよ。私はカズキさんを支えたいんです」

律の健気な姿勢に女子たちは心を打たれる。

「それにおふたりの熱い抱擁は素晴らしかったです」

「り、律!?」

「律!!動画は!」

「もちろんあります!!」

「だ、だめっ!」

律の抜かりのない行動に女子たちは恐怖を覚えたのだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

怖いの時間

ペアの組み合わせなどは割愛、磯貝くんとカズキのところを書きたいと思います。


「みなさん集まってますねぇ〜」

殺せんせーがやってきた。

「こんな時間に何やんのさ?」

中村が殺せんせーに訊くと。

「真夏の夜にやることはひとつですねぇ暗殺肝試しです」

「「「暗殺肝試し?」」」

「先生がお化け役を務めます、もちろん殺してOK男女二人一組のペアでやってもらいますよ」

殺せんせーの説明を受けて生徒たちは喜んでいる。

二人の生徒を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして殺せんせーの思惑…カップル成立はなるのか……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

磯貝、片岡ペア

「いやー案外ちゃんとしてるんだな」

「そ、そうだね…」

片岡の声が震えている。

「ここは血塗られた悲劇の洞窟決して二人離れぬよう…一人になればさまよえる魂にとり殺されます」

殺せんせーが超スピードで現れた。

「きゃあっ!!」

「大丈夫か!?」

「その…こういうの苦手で…」

「っ…!?」

いつもの凛とした片岡が打って変わって、涙目で怖がっている様子に磯貝はドキッとする。

しかし磯貝はここでもイケメンぶりを発揮する。

「ほら」

「えっ?」

「手、繋げば怖くないだろ?それに離れるなっていってたしな」ニカッ

「う、うん…///」

二人の様子を見ているに殺せんせーのスキャンダル作戦も悪くないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜井、速水ペア

「(なんか意識しちゃって恥ずかしい…)速水さん大丈夫?」

「べ、べつに大丈夫よ!早く抜けちゃいましょ!」

「滑ったら危ないからゆっくり行こうよ!」

しかし速水は先に進んでいってしまう。

すると…

「きゃっ!?」

「速水さん!!」

カズキが走って駆けつけるとそこには洞窟について説明する殺せんせーと顔を隠してしゃがんでいる速水がいた。

しばらくすると殺せんせーは説明を終えて消えていく。

そして速水も立ち上がった。

「速水さん大丈夫…?」

「桜井っ…怖いよ…」

「っ…///」

涙目で訴えてくる速水に思わず照れてしまうカズキ

「じゃあこうしよっか、えいっ」

「ふぇ…?」

カズキは速水の肩と膝裏に手をかけて持ち上げた。

そう、所謂お姫様抱っこである。

「怖がらせたくないしさ、一気に抜けるから捕まっててね」

「うん…」

そういって速水はカズキの首に腕を回し抱きついた。

一方カズキはというと

「(うー…すっごい恥ずかしい、でも速水さんのためだから頑張らなきゃ!)」

人間好きな人のためなら頑張れるものである。

作者にそのような経験はないが。

カズキは途中途中語りかけてくる殺せんせーを全て無視して突っ切っていく、すると前方に人影が見えた。

「悠馬と片岡さん?」

「カズキ!?」

「桜井がどうしてこんなに早く?」

「速水さんが怖いって言ってたから…全力で飛ばしてきた…」

カズキは荒い呼吸で二人に答える。

「凛香ちゃん大丈夫?」

「メグ…?」

速水も片岡の声に反応して瞑っていた目を開ける。

「それにしてもカズキもやるなー…」

「うっ…悠馬が意識させたくせに…それに悠馬だってよくやるよ…」

「お、俺のことはいいだろ…!」

「はいはい…」

親友二人はお互いの状況を見てちょっかいを出し合う。

すると殺せんせーがすごい勢いで出口の方へ飛んでいった。

速水と片岡はその音にまた怯えてしまう。

「「そういやE組で一番ビビリなのって…」」

カズキと磯貝はそう呟いた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ビッチと清楚の時間

いやー、久しぶりの暗殺教室ですね
長らくお待たせして申し訳ないです。
受験が終わったんですけど…学校変えるかもなんですよ
なのでまた投稿が不定期になりますが
ご了承ください。


「要するに…怖がらせて吊り橋効果でカップル成立を狙ってたと」

肝試しを終えた生徒達は殺せんせーを問い詰めていた。

「結果を急ぎすぎなんだよ」

「怖がらせる前にくっつける方に狙いがあるのがバレバレ!!」

生徒たちからボロクソに言われてしまった殺せんせーはとうとう本音を語り始めた。

「だ、だって見たかったんだもん!!手ぇ繋いで照れるふたりとか見てニヤニヤしたいじゃないですかっ!」

「泣き切れ入った」

「ゲスイ大人だ…」

倉橋と木村の指摘に全員が頷く。

「殺せんせー、そーいうのはそっとしときなよ。うちら位だとさ、色恋沙汰とかつっつかれるの嫌がる子多いよ?皆がみんなゲスイ訳じゃないんだからさ」

「うぅ…わかりました」

中村に宥められ、殺せんせーは反省しているようだ。

するとその時…

「なによ結局誰もいないじゃない!怖がって歩いて存したわ!」

「だからくっつくだけ無駄だと言ったろ。徹夜明けにはいいお荷物だ」

「うるさいわね男でしょ!美女がいたら優しくエスコートしなさいよ!……………stupid」

生徒たちの視線に気づいたイリーナは烏間からそそくさと離れていく。

「桜井くん、ビッチ先生は最後になんて言ってたの?」

「多分だけどstupidだね、バカとか愚か者って意味だよ」

それを聞いた他の生徒たちと殺せんせーの目が変わった。

「…どうする」

「明日の朝の帰る時間までまだあるし…」

『くっつけちゃいますか!?』

「渚、悠馬…結局さ」

「うん…」

「全員ゲスかったってことか…w」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの堅物…私に見向きもしないじゃない…」ボソッ

鈍感にも程があると思っていたイリーナに生徒たちが話しかけた。

事情を聞いたところ…

「ムキになって本気にさせようとしてる間に…こっちがね」

頬を赤く染めながら話すイリーナを見て生徒たちは

「かわいいとおもっちまった…」

「なんか屈辱…」

「なんでよ!!」

「まぁ、俺等に任せろって!2人のためにセッティングしてやんぜ」

「やーん、南の島のディナーで告るとかロマンチック〜」

「あんたたち…」

生徒たちのビッチ告白計画が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、恋愛コンサルタント、3年E組の会議を始めます」

スーツに身を包んでノリノリの殺せんせーが進行を務める。

「ノリノリねタコ」

「同僚の恋愛を応援するのは当然です。女教師が男に溺れる愛欲の日々…甘酸っぱい純愛小説が書けそうです」

「「「明らかにエロ小説を構想してんじゃねーか!!」」」

「まぁ、それはこの際置いといて」

「まずさぁビッチ先生、服装を変えようよ。」

「たしかにね、とりあえず露出しとくみたいなのやめよ」

「烏間先生みたいなお堅い日本人の好みじゃないよ、もっと清楚にせめないとね」

「むぅ…清楚か」

ゲスイ生徒たちではあるがちゃんと考えているようだ。

「清楚っていったら神崎ちゃんか。昨日着てたの乾いてたら貸してくんない?」

「あ、う、うん!」

神崎が自室へ服を取りに戻る。

「E組のイケメンおふたりさんはどんなのがいいの〜?」ニヤニヤ

全員の視線が磯貝とカズキに向けられる。

「なにが?」

「服装よ服装。どんなのが好きなの?」

「俺も確かに悠馬の好みは気になるな。高く売れそうだしw」

「売れそうってなんだよw。そうだな…無駄に飾らないその人にあった服装かな?」

「「「「イケメンだ…」」」」

「お、おい?なんなんだ?」

「悠馬…模範解答を有難う…」

「あ、ああ」

「んじゃ桜井ちゃんは?」

「俺?んー、俺も清楚な感じかな?白が似合う人っていいと思う。神崎さんが昨日着てたのやつはすっごいかわいいと思ったけど」

「ほほぅ…だってよ〜?神崎ちゃん」

「あ、えっと…」

中村が呼んだ方をみると、顔を真っ赤にした神崎がたっていた。

「カズキ…」

「ん?」

「月の出てない夜には背後に気をつけた方がいい…」

「え、ちょ。ないそれ!?」

可笑しな会話が飛び交いつつもビッチ先生の告白作戦は続く。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

告げる時間

暗殺教室を書く意欲がおさまりませんので
連投させていただきまする。
進路も決まるといいなー…(。•́︿•̀。)


「まぁ、神崎ちゃんの服を着ればすこしは清楚に…」

中村がそう言おうとするとイリーナが戻ってきた。

「「「(なんか逆にエロい!?)」」」

「まぁ、そもそも服のサイズがあってねーよ」

「神崎さんがあんなエロい服を着てたと思うと…」ニヤニヤ

冷静に分析する吉田とニヤニヤしてよからぬことを考えている岡島。

「なぁ、岡島」

「なんだ桜…」

「ていっ!」

「ぶべらっ!?」

カズキが岡島を呼んだと思うと、振り向いた岡島に腹パンを食らわせた。

「さ、桜井…なんでだ…」ガクッ

「クラスメイトで卑猥な妄想をするんじゃないよ」

「わ、わりぃ…」

「わかればよし」

カズキの正論に岡島は素直に謝った。

「もーいーよ。大切なのは乳よりも人間同士の相性よ!」

岡野の発言に、コクコクと全力で頷く茅野をみて生徒たちは思わず苦笑いする。

「烏間先生の女性の好みを知っている人はいますか?」

「あ!そういえばさっきTVのCMであの女の人をベタ褒めしてた!『俺の理想のタイプだ』って!」

殺せんせーの問いかけに矢田が声を上げた。

矢田指さす方に目を向けるとALSOKのCMをやっていた。

「「「理想の戦力じゃねーか!!」」」

女性の好みもわからずじまいである。

「じゃ、じゃあ手料理とかどうでしょう?ホテルのディナーも豪華ですけどそこをあえて2人だけは烏間先生の好物で」

いつもは奥手な奥田が案を出す。

「烏間先生、ハンバーガーかカップ麺しか食ってるの見たことねーぞ?」

「それだとふたりが不憫すぎる…」

生徒たちは思った。

やばい……付け入る隙が全くない…。

「と、とにかく出来ることをしましょう!女子は堅物が好むようにスタイリングを男子はふたりの席をムードよくセッティングです。それとカズキくんはこっちに来てください」

「「「はーい」」」

「なんで俺だけ別行動なの?」

「少し作って欲しいものがありまして」

「わかった。出来ることなら手伝うよ」

「ぬるふふふ、お願いしますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

21:00ディナー開始

「…なんだこれは」

「烏間先生の席はありませーん」

「E組名物先生いびりでーす」

「先生たちは邪魔なんで外でどうぞご自由に食べてくださーい」

生徒たちは先ずは烏間を外へと誘導する。

烏間が外へ行ったのを確認すると生徒たちは窓際に集合する。

イリーナの待つ席へと座った烏間はイリーナに問いかける。

「なんで俺達だけ追い出されたんだ?」

「…さぁ、わからないわ」

明らかにドキドキしているイリーナに生徒達も緊張する。

「あのショールどうしたの?」

「売店で買ってミシンを借りて作ったの、ネットを見てブランドに似せてみたんだけどどうかな?」

「原さん家庭科強いだけあって凄いよ」

フィールドは整った。

あとは先生たちしだいだと生徒たちは思っている。

イリーナと烏間が料理を食べ進めていると、コースにないはずのケーキが運ばれてきた。

それを見た生徒たちは疑問を感じている。

「あれは何なんだろ?」

「殺せんせーが用意したの?」

矢田と岡野の疑問に殺せんせーが答える。

「あれはですねぇ、カズキ君の手作りです」ニヤニヤ

「えっ」

「どうゆうこと!?」

茅野と渚が声を荒らげる。

「俺だけ別行動だったのはこれの為なんだよね。お酒を入れたケーキなんて初めてだから大丈夫だといいけど」

「大丈夫ですよ。シェフのお墨付きじゃないですか」

「えへへ、そうかな?」

生徒たちは思う。

桜井和生、こいつもかなり隙がないっ!!

そんな事を生徒たちが話していると、イリーナが過去の話を始めた。

初めて人を殺した時のこと、それからの人生を。

そして最後に…

「好きよカラスマ。おやすみなさい」

そういってナプキンで関節キスをして去っていった。

それを見た生徒たちは。

「なんだよ今の中途半端な関節キスは!」

「いつもみたいに舌入れろよ!舌を!」

がやがやと文句を言い始めた。

やはり皆がみんなゲスイのであった。

こうして3年E組の暗殺旅行は幕を閉じたのであった。




感想などまってます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

家族の時間

暗殺旅行を終えてから数日が経ち、いよいよ夏休みが終わろうとしていた。

ピンポーン

「はーい!少し待ってくださいね!」

カズキは自宅に鳴り響いた呼び鈴の音に反応して玄関へと向かう。

「はい、どちら様で…って烏間先生!?」

「突然来てすまないな」

「いえ、それはいいんですけど後ろの荷物はなんですか…?」

「旅行の時に家が寂しいと話していたからな、囁かなプレゼントというわけだ」

訪れたのは烏間であった。

なんでもカズキに渡すものがあるらしい。

しかし、それにしては量が多い。

ダンボール箱が5個ほどとかなり大きめのケースがひとつある。

「とりあえず中に入ってください」

「わかった。荷物を運んでくれ、終わり次第帰っていいぞ」

荷物が家に運び込まれそれが終わると烏間と二人だけになる。

「それでこれは一体なんですか?」

「くわしく説明すると時間がかかるから簡潔に話す」

「お、お願いします」

「これはコピーロイドと呼ばれるものだ」

「コピーロイド?」

「先ずはダンボール箱を開けてみてくれ」

「これって…!?」

カズキが烏間に言われるまま、ダンボール箱を開けたところ。

そこには女性用の服が沢山入っていた。

「それの中で好きなものをコピーロイドに着せてくれ」

「わ、わかりました」

カズキは白のブラウスと薄いピンクのスカートをコピーロイドに着せた。

着せている最中に感じたのは、まるで人間のような手触り出会ったことだ。

人肌のような暖かさと張りがあり、髪?もサラサラとしている。

「着せられたようだな、それでは電源を入れるぞ」

烏間が電源を入れると髪が紫色に変化し、コピーロイドに表情が現れた。

「こ、これって…!?」

「こんにちわっ!カズキさんっ!」

「烏間先生!律じゃないですかっ!」

「ああ、今日から君の家族になる自律思考固定砲台さんだ」

烏間は律が転校してきた時と同じように律を紹介する。

「よろしくおねがいしますっ!」

「あとは律から聞いてくれ。それじゃあ俺は帰るぞ」

「あ、はいっ!ありがとうございます!えっとケーキ持ってってください」

「ありがとう。いただくよ」

カズキからケーキを受け取り烏間は帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、律なんだよね?」

「はいっ!」

「どうしてこんなことに?」

「カズキさんが旅行中に話していたことから推測して、家族が必要だと烏間先生は考えたようです。そこで私が立候補させていただきました」

「それでコピーロイドなんだね」

「はいっ!これからよろしくおねがいしますっ!」

「うん、よろしくね」

「おやおや、律さん。随分可愛くなりましたねぇ」

「あ、殺せんせー久しぶり」

「お久しぶりです、殺せんせー」

「はい、律さんはその姿で学校に来るんですか?」

「いえ、基本的には普段通りです。外出は可能ですが、あまりボディに良くないので」

「そうですか、なら今日のお祭りは来れますか?」

「あー、今日はお祭りだっけ。律?行っておいでよ」

「カズキさんは行かないんですか?」

「律の部屋と荷物をまとめておくから行けないかな」

「なら私も行かずにお手伝いを…」

「いいのいいの!律は遊んできて?お金は多めに渡すからお土産期待してるよ?烏間先生に聞いたけど食べたり飲んだりもできるみたいだからきっと楽しいよ。あとお願いも頼まれて欲しいから」

「なんでしょうか?」

「悠馬にこれを渡して欲しいんだ」

カズキが律に手渡したのは手紙と封筒だった。

「??わかりました」

「そういうわけだから殺せんせー。律をよろしくね」

「はい、もちろんです。それでは律さん参りましょう」

「はいっ!カズキさん、いってきますっ!」

「うん、いってらっしゃい!」

挨拶をかわす2人、殺せんせーに乗って飛んでいく律の後ろ姿を見て…

「いってらっしゃい…か。やっぱりこういうのっていいな」

カズキは小さく呟いた。




感想などまってます!
ほかにもカズキと凛香にこんなことをしてほしいなどありましたら、感想に書いていただけるとうれしいです!
『コピーロイド』ロックマン好きならわかりますよね?笑


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

衝撃の時間

「祭りねぇ…、ターゲットからのお誘い。有難いが今は日本から離れていてな」

『にゅやっ!?仕方ありません…またいつでも殺しに来てください』

殺せんせーはロヴロも誘っていたようだがフラれていた。

「烏間に聞いた話ではあの少年、俺が教えた技を難なく実践で決めたとか。さらには金髪の少年もその片鱗を見せたようだな。才能というものは何処にでもいるものだ」

サクッ…

「…!?」

ロヴロが気配に気づくと、目の前にはカロ〇ーメイトをかじる男がいた。

ロヴロは慌てて距離をとるも…

「私はいつも君の隣に…畏れるなかれ『死神』の名を」

男の言葉と共に血を吹き出して倒れるロヴロ。

運命が動き出す予感がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、思いのほか集まってくれて良かったです」

「それはいいんだけどさ、殺せんせー…」

「にゅ?」

「「「「その律はなに!?」」」」

「それは私自ら説明致します」

律は自分の状態をすべて説明した。

コピーロイドというものにアクセスしていること。

カズキの家に住むことになったこと。

これはすべて烏間の意向だということを。

「じゃあつまり今日からカズキくんと二人暮らしなんだ」

「はい、渚さんのおっしゃる通りです」

「ねぇ律〜♪」

「なんでしょうか、中村さん?」

「じゃあ桜井の私生活が丸見えなわけだよね〜?」ニヤニヤ

「はい、そうなりますね。ですがプライバシーですので情報を漏洩することはありませんよ」

「ちぇっ」

「中村さんはぶれないねw」

生徒たちは思い思いのことを口にしている。

話に一区切りついたところで自由行動となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「千葉くんと速水さんはどうして落ち込んでるの?」

茅野と2人で回っていた渚は落ち込んだ様子の2人に声をかけた。

「射的で出禁を食らったんだ」

「イージー過ぎて調子乗っちゃって…」

「そ、そうなんだ」

射撃センストップの2人には、射的程度ぞうさもないようだ。

一方その頃、カズキにお使いを頼まれた律は片岡と中村と共に行動していた。

「あ、磯貝さん!」

「律?どうかしたか?」

律は手に金魚が一杯に入った袋を手にしている磯貝を発見した。

「はいっ!カズキさんにこれを渡して欲しいと頼まれましたので」

律は頼まれていた手紙と封筒を磯貝に手渡した。

「ありがとう律、なんか悪いな」

「いえいえ、大丈夫です」

「じゃあうちらははやみんを探しに行くからまたね〜」

中村に連れられて律と片岡は去っていく。

「とりあえず開けてみるか」

磯貝は渡された手紙を開いた。

《親愛なる親友へ

旅行の時は本当に悪かったよ。隠し事なんかするもんじゃなかった。それに悠馬は俺の心を素直に、正直にさせてくれた。本当にありがとう。これはほんの少しの気持ちだから受け取って欲しい。弟君たちにもよろしくな》

「カズキ…」

磯貝は涙目になりながら封筒を開く。

そこには福沢諭吉が描かれた紙幣が3枚入っていた。

「あいつ…ほんとに馬鹿野郎だよ。でも大好きだぜ親友」

磯貝は涙を流しながら、親友へ感謝の言葉を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はやみ〜ん♪」

「莉桜?どうかしたの?」

「実はちょっと頼まれて欲しいことがあって」

「なに?」

「それは律から聞いてね〜♪」

速水を見つけた律たちは声をかけた。

「実はですね、私の荷物を整理してくださっているためにカズキさんはお祭りに来れないのです」

「そうなんだ…」

少ししゅんとする速水を見て、中村はニヤニヤしている。

「私は、お土産を買ってくるように頼まれたのですが…」

「これから、うちとメグメグとお話があるのよ」

「そういうわけだから凛香ちゃん。律の代わりに桜井にお土産を届けてくれないかな?」

「えっ?なんで私?」

「だってはやみん桜井の家知ってるでしょ?」

「まぁ、そうだけど」

「それに速水さんのほうがカズキさんが喜びますよ」

「そう…かな?」

「大丈夫だよ凛香ちゃん!頑張って!」

「わかった…何をもっていけばいいの?」

「はいっ!これだけですから大丈夫な筈ですよ」

そういって律が手渡したのは袋詰めされたわたあめとたこ焼き、そして花火のバラエティーパックだった。

「う、うん」

「それじゃあ今すぐいってきてね。射的の景品は殺せんせーに運ばせるから」

「いってらっしゃい!」

「2人きりでごゆっくり」

「莉桜っ!一言余計っ…///」

照れながら歩いていく速水を見送る3人の表情はとても柔らかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃

「君も楽しめましたか?」

殺せんせーはある生徒と神社の陰で話していた。

「えっ…?E組を脱ける?」

二学期は波乱の幕開けをするようだ…




次回からはイチャイチャ会を投稿したいと思います。
ふたりを見てニヤニヤしたい皆さんお待たせしました笑
オリジナルストーリーになりますのでご注意を。
感想やご指摘まってます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

花火の時間

さぁ、やってまいりました。
皆さんコーヒーとカメラの用意はいいですか?笑


「ふぅ…。やっとおわった…」

 

 

律の荷物を整理していたカズキだが、丁度作業を終えたようだった。

 

 

「流石に女の子用の下着とかが入ってた時はどうしようかと思ったよ…」

 

 

いろんな意味で疲弊した表情を見せるカズキは、アイスココアを冷蔵庫から取り出してコップに注ごうとする。

しかしそのとき

 

 

『ピンポーン』

 

 

「あ!律に合鍵渡すの忘れてた…。うっかりしてたなぁ。でも帰ってくるには早くないかな?」

 

 

そんな疑問を抱きつつも玄関の扉を開くカズキ。

するとそこには…

 

 

「こ、こんばんわ」

 

 

「…っ!?」

 

 

速水がたっていた。

その姿は、ピンクを基調に白ユリが描かれた浴衣姿。

あまりの美しさにカズキは目を奪われてしまった。

 

 

「さ、桜井…?」

 

 

「………ああ、ごめん。あまりに綺麗だったから見とれちゃって」

 

 

「そ、そうなんだ…///」

 

 

お互いの気持ちには気付いていないが、両想いのふたりは目に見えて意識しあっている。

 

 

「とりあえず中にはいって?」

 

 

「うん、おじゃまします」

 

 

カズキは速水の姿にドキドキしつつも、饗す準備に取り掛かった。

さっきまではアイスココアを飲もうとしていたはずなのに、心を落ち着かせようと紅茶を用意している。

 

 

「はいこれ、それで速水さんはどうしてここに…?」

 

 

カズキは恐る恐る問いかける。

 

 

「律にお土産を届けて欲しいって頼まれたの」

 

 

そういって速水はお土産と花火をカズキに手渡す。

 

 

「あ!わたあめだ!」

 

 

「(かわいい…)」

 

 

わたあめを見て嬉しそうに目を輝かせるカズキを、速水は赤い顔で見つめていた。

 

 

「せっかくだから花火やらない?」

 

 

「えっ?」

 

 

「ひとりでやっても楽しくないでしょ?」

 

 

「そうね、やろっか」

 

 

2人は靴を履き、庭へと歩いていく。

バケツと蝋燭を準備して、花火の袋を開いた。

2人は長めの花火を手に取り、火をつけた。

すると速水の持っている花火からは青い光が溢れ出し、

カズキの花火からは、赤い色の光が溢れ出す。

 

 

「綺麗…」

 

 

速水は溢れ出した光を見て、思わず呟いた。

カズキはと言うと

 

 

「っ…///」

 

 

うっとりと花火を見つめる速水を見て高鳴る心臓を落ち着かせようと必死になっていた。

2人はその後もいろんな種類の花火を取り出して遊んでいく。

言葉は少ないものの、2人の表情は花火から溢れる光の様に輝いている。

 

 

「あっ…」

花火が残り少なくなってきたところで速水が声を上げた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

カズキはできる限り平静を装って話しかけた。

 

 

「この花火の光が…桜井みたいだなって…」

 

 

「えっ…?///」

 

 

「あ、いや、あのね?桜井は金髪だし、そのクラスの光みたいだから」

 

 

「そ、そうかな?」

 

 

「うん…///」

 

 

ふたりはお互いの顔を見て恥ずかしくなり、また無言になってしまう。

 

 

「次で最後だね」

 

 

「そうみたい」

 

 

楽しい時間というのはあっという間に過ぎてしまう。

ふたりは最後に線香花火を手に取った。

ふたりはしゃがみこんで線香花火に火をつける。

小さくも力強い光が放たれる。

 

 

「夏休みも終わりだね」

 

 

「沖縄ではたくさんのことだあったしね」

 

 

「速水さんの狙撃、凄かったよ。相手の拳銃を撃ち抜いてて」

 

 

「ありがと。桜井も助けてくれてた時はカッコよかったよ…///」

 

 

「あ、ありがとう……///」

 

 

「でも…」

 

 

「でも?」

 

 

「もうあんな無茶はしないで…?」

 

 

「うん…俺はもう1人じゃないから」

 

 

「ならいいの」

 

 

2人は夏休みの出来事を振り返った。

結局殺せんせーを暗殺できなかったこと。

渚の女装に、カズキのスーツ姿。

先程までの沈黙が嘘のように会話が弾んだ。

 

 

「あっ」

 

 

話しているとカズキの花火の火が落ちてしまった。

 

 

「わたしの勝ち?」

 

 

「そうみたいだね」

 

 

2人は顔を見合わせて笑いあった。

その後すぐに速水の火も落ちたので、2人は片付けをして庭のベンチに座った。

 

 

「楽しかったよ、ありがとう速水さん」

 

 

「桜井が喜んでくれて良かった」

 

 

「花火なんてしたの何年ぶりだろ、小学生の頃に母さんと2人でしたのが最後…」

 

 

母さんという言葉と共にカズキの表情が曇る。

それを見逃さなかった速水はカズキの手をそっと握った。

 

 

「じゃあ殺せんせーを暗殺して来年もやらないとね」

 

 

「あはは…そうだね」

 

 

2人の間に沈黙が起きる。

そのあいだカズキは考えていた。

隣で自分の手を握っている少女への自分の気持ちを。

告げるべきか、それともまだ告げないべきか。

カズキは暫く考えた後。

 

 

「ねぇ…速水さん」

 

 

「なに?」

 

 

意を決して、速水に話しかけた。




いかがだったでしょうか?
次回は桜井くんの告白です。
彼の想いは届くのか。
次回もブラックコーヒーとカメラのご用意を笑
感想、ご指摘まってます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

想いの時間

「沖縄のときはありがとう。溜め込んでたものを全部吐き出させてくれて」

 

 

「私が好きでやったことだから、きにしないでいいよ」

 

 

「ううん。あんなに思いっきり泣いたのは母さんが死んでから初めてだった…」

 

 

「そうなんだ…」

 

 

「でも、それを受け止めてくれたのが速水さんでよかった」

 

 

「えっ?」

 

 

「俺はさ、速水さんがいなかったらとんでもない間違いをしちゃったと思うんだ」

 

 

カズキがポツリポツリと自分の想いを吐露し始める。

 

 

「速水さんはそれを止めてくれたし、俺が吐き出したものを全部受け止めてくれた。それに…」

 

 

「それに…?」

 

 

「嬉しかったんだ。『友達としてずっと傍にいる』って言ってくれたことが」

 

 

カズキは顔を速水の方から空へと向けた。

 

 

「でも俺は、ホントはそんな事望んでないんだ」

 

 

「えっ…そんな…」

 

 

カズキの言葉に速水は気を落とし、繋いでいた手を離そうとする。

しかしカズキが強く握り返してきたために離すことは叶わなかった。

 

 

「あのね、速水さん」

 

 

「うん…」

 

 

今から何を言われるのか分からず、怯えてしまう速水。

カズキがゆっくりと視線を速水に向け、2人は見つめ合う形になる。

暫くの沈黙の後、漸くカズキが口を開く。

 

 

「速水さん…」

 

 

「さ、桜井…?」

 

 

「ずっと言いたかった言葉があるんだ」

 

 

「うん…」

 

 

カズキは立ち上がり、隣に座っている速水の前に立つ。

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひゅ〜っ、ど〜ん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

 

カズキの言葉と同時に打ち上げ花火の音が鳴り響く。

 

 

「っ…///さ、桜井っ…い、今なんて?」

 

 

カズキの声は花火の音にかき消されてしまったが、速水はカズキの口の動きを見逃さなかった。

 

 

「うぅ…///」

 

 

意を決して自分の想いを言葉にしたのに、花火に負けてしまったカズキは途端に恥ずかしくなり黙ってしまう。

 

 

「ねぇ…もしかして今…」

 

 

速水は自分の目を疑った。

カズキの口の動きが『好きです』と言っていたから。

 

 

「もう一度言うね…」

 

 

「は、はいっ」

 

 

途端に恥ずかしくなり、速水はカズキの手をぎゅっと握る。

 

 

「速水凛香さん、君のことが好きです。俺は友達としてじゃなく、恋人として。愛する人としてずっと傍にいて欲しい」

 

 

「それって…///」

 

 

「うん、俺と付き合ってください」

 

 

カズキは速水の瞳を真っ直ぐ見つめてそう言い放った。

 

 

「…///」

 

 

「…っ!?」

 

 

一瞬の沈黙の後、速水がカズキに抱きついた。

突然のことに少しよろめきながらも、しっかりと受け止めるカズキ。

速水は腕の中から上目遣いでカズキを見つめる。

 

 

「ごめんね桜井、私は好きじゃないの」

 

 

「えっ…それじゃあ…」

 

 

「うん、大好きだから…///」

 

 

「っ…///」

 

 

速水の不意打ちにカズキの顔は真っ赤になってしまう。

 

 

「告白の返事は勿論受けるよ、これからは恋人としてずっと傍にいるから」

 

 

「あ、ありがとう!」

 

 

2人は最高の笑顔で見つめあっている。

2人は暫く抱き締めあった後、家の中に入った。

花火で使った道具をかたして、今はソファに座っている。

勿論手は繋いだままだ。

 

 

「ねぇ速水さ…」

 

 

「だめ」

 

 

「へ?」

 

 

「私たち付き合ってるんでしょ?」

 

 

「うん、付き合ってる」

 

 

付き合っている、その響きだけでカズキの顔は綻ぶ。

 

 

「なら…名前で呼んで欲しいな」

 

 

「…」

 

 

「だめ…?」

 

 

「だ、だめじゃないよ!!」

 

 

愛しい恋人に名前で呼んで欲しいと上目遣いで言われれば、男は嬉しいものだ。

 

 

「…凛香?」

 

 

「うん、カズキ」

 

 

「「…///」」

 

 

2人は自分たちが醸し出す甘い雰囲気に照れてしまう。

この状況を変えようとカズキが動く。

 

 

「飲み物とってくr…っ!?」

 

 

しかし手を握っていたため、体制を崩してソファに倒れしまう。

 

 

「いったた…ごめん…///」

 

 

「うん…///」

 

 

現在の状況を説明しよう。

体制を崩したカズキが凛香の上に覆いかぶさっている。

簡単に言えば押し倒しているのである。

 

 

「ど、どくね…」

 

 

カズキが体を話そうとすると凛香が腕を背中に回して離さない。

そして凛香は静かに瞳を閉じた。

意味を理解したカズキはゆっくりと顔を近づけ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちゅっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お互いの唇が重なった。

どれくらいキスをしているのだろうか。

2人は時間がゆっくりと動いているように感じていた。

2人はゆっくりと唇を離し、見つめあう。

 

 

「しちゃったね…///」

 

 

「うん…///」

 

 

「好きだよ」

 

 

「わたしも」

 

 

「お2人はもうそんなご関係になられたんですね」

 

 

「「っ!?」」

 

 

「お邪魔してしまいましたか。ですがカズキさん、それ以上はまだ早いと思います」

 

 

いつの間に帰っていたのだろうか、2人の視線の先には律がいた。

 

 

「それ以上はって?」

 

 

「速水さんの姿を見ればわかりますよ」

 

 

「っ…!?!?」

 

 

速水の浴衣へと視線を送るカズキ。

彼の瞳に映ったのは、肌蹴た浴衣から覗く透き通るような白い肌。

 

 

「り、律!これは誤解だよ!」

 

 

「そ、そうよ。そんな事まだしないから」

 

 

「ふふっ。まだ…ですか」

 

 

「えっと…」

 

 

「それは…」

 

 

「まぁ、この辺にしておきましょう。カズキさん、もう遅いですから速水さんを送ってあげてください」

 

 

「言われなくてもそのつもりだよ」

 

 

カズキは立ち上がり傍においてあった黒い上着に腕を通した。

速水も肌蹴た浴衣を直して立ち上がる。

 

 

「じゃあ律、いってくるよ」

 

 

「お邪魔しました」

 

 

「はい、いってらっしゃい!」

 

 

2人はしっかりと指を絡めて歩いていく。

そんな2人の後ろ姿を見て律は

 

 

「お2人とも幸せそうで何よりです」

 

 

天使のように微笑んでいた。




いかがだったでしょうか?
次回までオリジナルストーリーです。
2人で歩く夜道、彼らに忍び寄る人物が1人。
あれ?前にもこんな展開が?
感想などまってます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

強敵の時間

いつも読んでいただいてありがとうございます。
ほんとうに感謝の限りです。
今回の話ですが、私事で心が荒んでおり若干やっつけです笑
ほんとうに申し訳ない…(ノ_・,)
ことと次第によっては数日間の休載もありますので、ご了承ください…
執筆と読者の皆さんの感想だけが心の癒しです…
_( _´ω`)_


祭りも終了したようで、2人が歩いている住宅街は閑散としている。

 

 

「凛香は何時から俺のことを?」

 

 

「不良に絡まれたのを助けてくれた時かな」

 

 

「それってすごい前だね」

 

 

「うん、カズキは?」

 

 

「俺は…沖縄での1件があってから」

 

 

「そっか…」

 

 

「でも、ずっと目で追ってたし…。自覚して無かっただけかもしれないw」

 

 

「そうだったら嬉しいな」

 

 

2人は指を絡め、微笑みながら寄り添って歩いていく。

この時間がずっと続けばいいのになぁ…と2人は思う。

 

 

「明日は色々ありそうだ」

 

 

「莉桜からいろいろ言われそう…」

 

 

「2人って仲いいもんね。ちょっと羨ましいや」

 

 

「どうして?」

 

 

「学校だとあんまり凛香と話す機会ないから」

 

 

「これから作ればいいんじゃない?」

 

 

「それもそっか」

 

 

お互いの想いが通じ合い、言葉がどんどん溢れてくる。

2人は終始笑顔で話している。

「ところでカズキ」

 

 

「なに?」

 

 

「その手の箱はなんなの?」

 

 

「あ、これ?」

 

 

凛香はカズキの自分と繋いでいる手とは逆の手に握られている箱について問いかけた。

その箱は夜外を出歩くには少々可笑しいと思われる代物だ。

 

 

「うん、ずっと気になってて」

 

 

「今日の朝焼いてたケーキだよ。烏間先生にも渡したんだけど、凛香にも食べて欲しくてさ」

 

 

「あ、ありがと…///」

 

 

「家族で食べてね」

 

 

「うん、そうする」

 

 

自分のことを第1に考えてくれるカズキの優しさに、凛香の表情はついつい綻んでしまう。

しかし、次の瞬間。

2人の表情は凍りつくこととなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凛香?」

 

 

「…お父さん」

 

 

「…」

 

 

カズキは思う。

以前もこの様な展開があった気がすると。

そして、此処での行動が自分たちの人生を左右する事になると。

 

 

「久し振りだね。桜井君だったかな?いつも凛香から話は聞いているよ」

 

 

「はい、名前を覚えて頂いてありがとうございます」

 

 

「なぁ凛香」

 

 

「な、なに?」

 

 

「お前、桜井君とは付き合って無いんじゃなかったのか?」

 

 

速水の父は2人が繋いでいる手を見てそういった。

 

 

「それは…」

 

 

「速水さん、それは僕から説明させてください」

 

 

「ああ、構わないよ」

 

 

「実は今日、僕がお祭りに行けなかったことを気にしてくれた凛香さんが家にお土産を持ってきてくれたんです」

 

 

「そうだったのか」

 

 

「はい、僕は以前から凛香さんへ特別な感情を抱いていたのでとても嬉しかったです。その後僕が彼女へ告白し、今はお付き合いをさせて頂いてます」

 

 

カズキは自分たちの関係を包み隠さず話した。

できるだけ真摯にひとつひとつ丁寧に説明する。

 

 

「そうか。じゃあ2人は今日から付き合ってるのか」

 

 

「うん、そういうことなのお父さん」

 

 

「まぁ、いつもの凛香の話を聞いていればわかりきったことだが」

 

 

「えっ!?」

 

 

「桜井君の話をする時の凛香は、いい顔をしてたよ」

 

 

「そ、そうかな…?///」

 

 

「しかしだ」

 

 

「「…っ」」

 

 

速水の父の言葉に2人は息を呑む。

 

 

「このまま2人の交際を認めるわけにはいかない」

 

 

「お父さん!どうして!?」

 

 

「桜井君、一度しっかり話がしたい。次の日曜日に我が家へいらっしゃい。そこで凛香を好きになった理由とどれ程の想いなのか聞かせてもらうよ」

 

 

「速水さん…」

 

 

「お父さん…」

 

 

「今日は凛香を送ってくれてありがとう、今日は帰りなさい」

 

 

「はい、わかりました。じゃあ凛香、これは渡しておくね」

 

 

「うん、ありがと」

 

 

カズキはケーキの箱を凛香に手渡す。

 

 

「じゃあまた明日。今日はありがとう!」

 

 

「うん、またね!」

 

 

カズキは手を振って来た道を帰っていく。

凛香は父親とともに後ろ姿が見えなくなるまで見送った。

 

 

「よかったな、凛香」

 

 

「うん、カズキは私を守ってくれるし大事にしてくれる」

 

 

「付き合った当日にそこまでわかるのか?」

 

 

「お父さんに話してないけど、何回も助けられてるの。だから私はカズキを好きになったんだから」

 

 

「お父さんは凛香が幸せならそれでいいけど、ちゃんと勉強も頑張るんだぞ?」

 

 

「大丈夫!カズキは学年で2番の成績だし、教え方も上手だから」

 

 

「桜井君…侮れないな…」

 

 

速水の父は、凛香からの話を聞いて。

日曜にカズキと話すのが楽しみになっていた。

明日からの二学期では、どの様な波乱が待ち受けているのだろうか。

彼等の暗殺教室はまだまだ続く。




感想や評価、お待ちしております


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

呪いの時間

ひさびさですねぇ。
かなりひさびさですねぇ。
はい、すみませんでした!
空戦魔導士候補生の教官の方に力を入れていたので少し遅れてましたね。
頑張るのでどちらも応援お願いいたします


二学期の始業式。

殺せんせーの暗殺期限まであと6ヶ月、折り返しの時期である。

 

 

「久しぶりだなE組ども」

 

 

話しかけてきたのは浅野を除いた五英傑たち。

 

 

「ま、お前らは二学期も大変だと思うがよ」

 

 

「メゲずにやってくれギシシシシ」

 

 

開校早々にディスってくる彼らに和生が口を開いた。

 

 

「そうだね、君らも俺に負けてる様じゃ五英傑(笑)だからね。浅野を見習った方がいいんじゃないか?」

 

 

「チッ」

 

 

和生の言葉に言い返せないのか彼らは去っていった。

やけにニヤニヤしながら。

 

 

「出五かぁ…縁起わりーな」

 

 

前原が苦虫を噛み潰したような顔でそう言うと。

 

 

「でも桜井くんも言うよねぇ?」

 

 

不破が和生を茶化し始める。

 

 

「まぁ、とりあえず始業式頑張ろうよ」

 

 

「はーい」

 

 

こうしてE組の二学期が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始業式の終わりに何か報告事があるようだ。

 

 

「今日から3年A組にひとり仲間が加わります。昨日まで彼はE組にいました」

 

「「「「!?」」」」

 

 

E組の生徒たちは驚きを隠せない。

何故なら壇上に現れたのは…

 

 

「竹林考太郎くんです!」

 

 

何故竹林が!?E組の生徒たちは目を疑いながらも竹林の言葉に耳を傾ける。

 

 

「僕は四ヶ月あまりをE組で過ごしました。そこは言わば地獄、ヤル気のないクラスメイト、先生方にもサジを投げられ、自分の怠けの代償を知りました。こうして本校舎に戻れたことを嬉しく思います。二度とE組に落ちぬよう頑張ります。以上です」

 

 

シンと静まり返る体育館。

静寂を破るように拍手の音が聴こえてきた。

 

 

「おかえり竹林くん」

 

 

浅野がそういった途端、体育館は竹林を賞賛する声であふれる。

E組の生徒たちはポカンとしたまま動くことが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんなんだよあいつ!」

 

 

「ここのこと地獄とかほざきやがった!」

 

 

「言わされたにしたってあれはないよ…」

 

 

生徒たちは次々に竹林への文句を口にする。

 

 

「みんなやめてくれ」

 

 

制止の言葉をかける少年が1人。

 

 

「和生くん…」

 

 

渚は待ったをかけた和生を心配そうに見やる。

 

 

「なんだよ桜井、お前一番あいつと仲良かったじゃねーか。何も思わねーのかよ」

 

 

前原も和生に喰ってかかるが

 

 

「仲が良かったからこそお前らよりも解ってるつもりだよ。あいつは何時も悩んでた。出来て当たり前の家族の中で自分だけ出来ない事、暗殺にも禄に貢献できてないこと。あいつはいつも誰よりもちゃんと考えてたさ。なんでもできる家族と、自分の弱さに縛り付けられてるんだ。俺には家族が居ないから解んないけどな」

 

 

淡々と話す和生の姿に生徒たちは黙り込んでしまう。

 

 

「私は桜井くんの言葉…解るよ」

 

 

口を開いたのは神崎。

 

 

「私もね…家族に色々言われるのが嫌でいろんなことしちゃってた。だから家族の呪縛の強さは解るよ」

 

 

しんみりとした空気が流れる教室に

 

 

「ニュルフフフフフ」

 

 

少し間抜けな笑い声が響き渡った。

 

 

「「「黒っ!?」」」

 

 

真っ黒に焼けた殺せんせーがやって来た。

 

 

「アフリカで焼いてきました。これで闇に紛れられます」

 

 

「どうしてそんなことするの?」

 

 

岡野が殺せんせーに問いかける。

 

 

「もちろん竹林くんのアフターケアですよ。彼が馴染めるまで見守らないといけませんから」

 

 

「「「…」」」

 

 

殺せんせーの言葉が生徒たちに響く。

 

 

「俺らも見に行ってやっか」

 

 

「理事長に洗脳されたら困るしな」

 

 

「竹ちゃんが変わっちゃうのはやだもんね」

 

 

「殺意が結ぶ絆ですねぇ」

 

 

生徒たちの声を聞いて殺せんせーはニュヤリと笑った。




竹林の話はさらっといきますね!
この話の後に桜井VSあの人が行われますw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

竹林の時間

いろいろすっ飛ばしますがご了承ください。
受験生なんですヽ(;▽;)ノ


竹林は悩んでいた。

生徒のことを全く考えない授業。

余裕のない生徒の姿。

そして窓を見ればE組の仲間と黒くなった先生。

自分がここに何を学びに来たのかわからなくなった竹林はどうすればいいのかわからなかった。

そんな時

 

 

「竹林くん、理事長が君を呼んでいるよ。君を必要としているようだ」

 

 

理事長からの呼び出しがかかった。

呼び出しの理由は至極簡単だった。

創立記念日の集会でスピーチをするという簡単な役目。

しかし、内容が恐ろしかった。

E組の生徒を管理更生する組織の立ち上げについての内容。

これを見た竹林は思わず息を飲んだ。

悩んだ末竹林は…

 

 

「…やります」

 

 

そう一言だけ呟いて理事長室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「警察呼びますよ?殺せんせー」

 

 

「にゅやっ!?な、なぜ闇にまぎれた先生を!?」

 

 

「何のようですか?」

 

 

殺せんせーは超スピードで竹林にメイクを施した。

 

 

「ビジュアル系メイクです。君の個性であるオタクキャラを殺してみました」

 

 

「こんなの僕じゃないよ」

 

 

殺せんせーは竹林のメイクを落としながら話し始める。

 

 

「竹林君、先生を殺さないのは君の自由です。でもね?『殺す』とは日常に溢れる行為ですよ。君ならいつか自分の中の呪縛された君を殺せるはずです。いつでも殺しに来てください、相談があれば闇にまぎれてまた来ます」

 

 

そう言って立ち去る殺せんせーの後ろ姿を竹林は呆然と眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創立記念日、予定通り集会が開かれた。

竹林が壇上に上がってくる。

 

 

「…っ」

 

 

「千葉、どした?」

 

 

杉野が身震いした千葉に話しかける。

 

 

「竹林からさっきを感じる。なにか大事なものを壊してしまうみたいな」

 

 

次の瞬間竹林が話し始めた。

 

 

「僕のやりたいことを聞いてください。僕のいたE組は弱い人達の集まりです。学力という強さがなかったために本校舎の皆さんから差別待遇を受けています」

 

 

竹林は淡々と話し続けるが、次の瞬間表情が柔らかくなった。

 

 

「でも僕は、そんなE組がメイド喫茶の次くらいに居心地良いです。…僕は嘘をつきました。強くなりたい一心に、でもE組の仲間たちは何度も様子を見に来てくれた。先生は手を替え品を替え教えてくれた。だからこそ僕はまだ弱者でいい」

 

 

竹林を壇上から降ろそうと浅野がやってくる。

 

 

「僕はこれからも弱者でいい、弱いことに耐え、強いものの首を狙う生活に戻ります」

 

 

「竹林!撤回して謝罪しろ!」

 

 

そんな浅野の言葉に竹林は行動で答える。

竹林が取り出したのは理事長室にあった表彰楯。

 

 

「過去にこれを壊した生徒がE組送りになったそうですね」

 

 

ガシャン!

竹林はポケットから取り出した鈍器でそれを叩き割る。

 

 

「理事長はいつも合理的で正しい。合理的に考えれば、E組行きですね。僕も」

 

 

こうして短い竹林のA組生活は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二学期からは新しい要素を暗殺に組み込む。その一つが火薬だ」

 

 

「「「か、火薬!?」」」

 

 

「空気では出せない力が暗殺に大きな力になる」

 

 

そういって烏間は分厚い参考書を取り出した。

 

 

「俺の許可とその1名の監督が火薬を使う条件だ。さぁ?誰か覚えてくれないか?」

 

 

「(うわ〜分厚い参考書…)」

 

 

「(やだよ、あんな国家資格の勉強…)」

 

 

「勉強の役にも立たない知識ですが、まぁこれもどこかで役に立つかもね」

 

 

生徒たちが彼の方を見る。

 

 

「暗記できるか?竹林君」

 

 

「ええ、アニメのopの替え歌にすればすぐですよ」

 

 

そういった彼の表情は晴れ晴れとしていた。




感想、評価まってまーす!
コラボとかもいつかしてみたいですなぁ…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

強敵の時間 2時間目

皆さんお楽しみだったでしょう
桜井VS速水父の対決ですねw
頑張って書いていきますよ!
あと、プリンの話と作中の時間が被っていますのでプリンの話は割愛させて頂きます。
ご了承ください。


「あー、ごめん渚。茅野には行けないって伝えてくれ」

 

 

『いいけど。何かあるの?』

 

 

「まぁな、先約がいるんだよ」

 

 

『そうなんだ。じゃあ後で結果は教えるね』

 

 

「ありがとうな。じゃあ」

 

 

『うん、またね』

 

 

和生は渚と電話をしていた様だ。

その内容はE組で行われるプリン暗殺に参加出来ないという旨を伝えてもらうもの。

なぜ参加出来ないかというと。

 

 

「なぁ、律。この服装変じゃないよね?大丈夫だよね?」

 

 

「和生さんは心配し過ぎですよ?大丈夫です。いつも通り格好良いですよ」

 

 

「ほんと?今日は俺の人生を左右する日なんだよ!?」

 

 

「落ち着いてください、和生さんなら大丈夫です。では私はそろそろ本体に戻りますね」

 

 

次の瞬間律はコピーロイドからプラグアウトした。

 

 

「はぁ…」

 

 

和生がこんなにも緊張している理由はただ一つ。

今日は凛香の父親に呼ばれている日なのだ。

和生は紺色のデニムとオフホワイトのシャツに身を包み外へ出た。

凛香からのLINEにある指示のとおりに歩いていくと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、桜井君。待っていたよ」

 

 

「は、はいっ!お待たせしてすみません」

 

 

比較的大きめの一軒家の前に凛香の父親が立っていた。

 

 

「とりあえず上がりなさい。凛香も妻も出かけていて今日は私しかいないからね」

 

 

「あ、有難うございます」

 

 

「なに、そんなにかたくなる必要は無い」

 

 

凛香の父親に連れられて和生は家に入る。

玄関を通り抜けると綺麗に整頓されたリビングへと通された。

 

 

「そこの椅子に座りなさい、今何か出すよ。コーヒーと紅茶どちらが良い?」

 

 

「あ、お気遣いなく」

 

 

「遠慮しなくていい。私と同じでいいかな?」

 

 

「あ、はい。お願いします」

 

 

和生は目に見えて緊張しており、それをみて速水の父は苦笑している。

暫くして速水の父がコーヒーを入れたカップを2つもって対面の椅子に座った。

 

 

「名乗っていなかったね。私は速水正樹だ。どうだい?私が入れたコーヒーは」

 

 

「頂きます。あ…うまい」

 

 

心を落ち着かせるような優しい味、それでいてコーヒー特有の苦味や深みが出ている。

 

 

「こう見えてコーヒーには拘っていてね」

 

 

「そうなんですか。僕は紅茶には拘りがあります」

 

 

「ほほう、そうなのか。」

 

 

和生は暫くの間、正樹と談笑していた。

優しく話しかけてくれる正樹に和生の緊張も幾分か和らいでいる。

 

 

「それで今日呼んだ本題なんだが」

 

 

「…っ」

 

 

和生は、来たか…。と思いつつ話を聞く。

 

 

「先ずは凛香との出会いを教えてもらおうか」

 

 

「はい。凛香さんとは椚ヶ丘中学のE組に編入した時に会いました」

 

 

「凛香に君は非常に頭が良いと聞いているんだが、どうしてE組に?」

 

 

「僕は両親が居なくて一人暮らしなんです。寂しさに耐えきれなくなった時に精神崩壊を起こしました。それでE組なら僕と同じように何かを抱えた人たちがいると聞いてE組に自ら進みました」

 

 

「そうだったのかい」

 

 

「はい。凛香さんとの関わりが深くなったのは修学旅行前に買い物に行った時です。凛香さんが不良に絡まれていたので、その不良を撃退した後彼女を送っていった事がきっかけですね」

 

 

「そうか、では凛香との一番の思い出は?」

 

 

「そうですね…」

 

 

和生は悩む、殺せんせーの事や暗殺のことを話すことは出来ない。

そこで、和生は自分が凛香を好きだと自覚した時の出来事を話すことにした。

 

 

「夏に沖縄に行った時の事なんですが、僕は自分の心の弱さに負けてしまいました。いつも家にひとりでいる寂しさや弱さを見せられないことの辛さに。それを凛香さんは『ずっと一緒にいる』と言ってくれました。本当に嬉しかったんです。僕はこの出来事で凛香さんへの気持ちを自覚しました」

 

 

「そうだったんだね。君も苦労しているんだね」

 

 

「でもそれをみんなで乗り越えるのがE組ですから」

 

 

「いい目をしている。君なら凛香を任せても良さそうだ」

 

 

「じゃあ!」

 

 

「うん、君たちの交際を認めるよ。妻にも私から話しておく。だからたまには遊びに来なさい、未来の家族になるかもしれないしな」

 

 

そういって正樹は笑っている。

『未来の家族』という言葉に和生は顔を紅くしてしまう。

 

 

「もういい時間だ。今日はありがとう」

 

 

「はい!僕の方こそありがとうございました!」

 

 

そうして和生が帰ろうと席を立ったとき

 

 

「ただいま〜」

 

 

「おかえり凛香」

 

 

「お、おかえりなさい」

 

 

「お父さんこんなに長く話してたの?」

 

 

「ああ、もう昼だからな。いい時間を過ごさせてもらった。凛香今日は母さんはいないから外で食べてきなさい」

 

 

そういって正樹は凛香にお金を渡す。

 

 

「あ、ありがとう」

 

 

「桜井くんとデートでもしてきなさい」

 

 

「な、なにいってんの!」

 

 

「ははは、ごめんごめん。それじゃ桜井くん、凛香を頼んだよ?」

 

 

「はい、任せてください。何があろうと僕が守ってみせます」

 

 

和生と正樹の話は上手くいったようだと凛香はホッとした。

 

 

「じゃあ着替えてくるから待っててね和生」

 

 

「うん、ゆっくりでいいから。凛香の可愛い姿を想像して待ってるよ」

 

 

「ばか…///」

 

 

そんな2人のやり取りを見た正樹は

 

 

「(昔の私たちを見ているようだな…)」

 

 

自分と妻のことを思い出し、懐かしげな表情をしていた。




どうだったでしょうか?
本作品は甘さ多めで行きますのでよろしくお願い致します。
次回は2人のデートですね!
次回には今後の展開に関わる大事なヒントが隠されていたりしなかったり!
評価、感想まってます!
あとコラボとかもまってますねw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

デートの時間

今回の話には今後の展開に大きく関わる
何かが出てきますよ!
見つけられますかね?w
なんにせよ!2人のイチャイチャを
お楽しみください!
ブラックコーヒーの準備はいいですか?


「凛香は何か食べたいものはある?」

 

 

「わたしはなんでもいいかな…。あっ」

 

 

「なにか思いついた?」

 

 

「あのたい焼き屋さん行きたいかな。今思えばあれがカズキとの初デートでしょ?」

 

 

「そうだね…///じゃあお昼は軽く食べようか」

 

 

「そうだね」

 

 

2人はショッピングモール内にある喫茶店へ入った。

席に着くと店員がやってくる。

 

 

「お客様は恋人様でございますか?」

 

 

「あ、はい」

 

 

「そうでしたらこちらのメニューが本日半額となります」

 

 

「「…っ!?」」

 

 

2人は目を見開いた。

店員が開いたメニューに書かれていたのは、ハート型に切られたサンドイッチや2人で飲むジュースなど頼むのが恥ずかしくなるような物ばかり。

 

 

「どうなさいますか?」

 

 

店員は目に見えて狼狽える2人にニコニコと天使のような笑顔を向けている。

 

 

「じゃあこのハート型のサンドイッチを1つと紅茶を2つお願いします…///」

 

 

「はい、かしこまりました」ニコッ

 

 

店員が戻っていくのを確認すると。

 

 

「いいの、カズキ?恥ずかしいんじゃない?」

 

 

「それは凛香もでしょ?でもあの量なら2人で丁度いいし、たい焼きもあるから安めにしといた方がいいでしょ?」

 

 

「まぁ、そうだけど…」

 

 

「それに、凛香とだったらいいかなとか」

 

 

「そういうこと真顔で言うところキライよ…///」

 

 

「嫌いって酷いなw」

 

 

2人が談笑していると

 

 

「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」

 

 

持ってこられたサンドイッチの形を見て2人はやはり恥ずかしくなる。

 

 

「まぁ、食べれば恥ずかしくなくなるか」

 

 

「そうだといいんだけど」

 

 

2人は食事をしながらもまだ話を続ける。

凛香は店に備え付けられているテレビに視線を向けた。

そこには海外の記事を取り上げているニュースが映っている。

 

 

「イギリスの王様って恰好いいってよくきくわよね」

 

 

「じゃあ皇太子さまも恰好いいんだろうね」

 

 

「残念だけど今の王様には女の子の子どもしかいないわ。それに奥さんはもう居ないらしいのよ」

 

 

「へー、そうなんだ。じゃあ皇太子さまいないんだね。世継ぎとか大丈夫なのかな?」

 

 

「王様の兄弟には男の子どもがいるみたいだから大丈夫じゃない?」

 

 

「そうなんだ。意外とビッチ先生とか会ったことあったりしてね」

 

 

「流石に王様はないんじゃない?」

 

 

「そうだよねw」

 

 

「カズキも少し外国人みたいな感じの顔よね」

 

 

「あー、言われてみればそうかもしれないな」

 

 

「でしょ?ほら見てテレビに映ってる王様。綺麗なブロンドの髪」

 

 

「手入れに気を遣ってるんだろうな」

 

 

「カズキも綺麗な金髪だよね。まるで王子様みたい」

 

 

「凛香の王子様ならなってもいいけどね」

 

 

「だからそういうこと真顔でいわないでよ…///。そろそろ出る?」

 

 

「そうだね、出ようか」

 

 

カズキはそう言うと立ち上がり、伝票をもって会計に向かった。

 

 

「あ、ちょっと待ってよカズキ!」

 

 

凛香がカズキのところへ行くと、既に会計を済ませた後だった。

 

 

「ごめんごめん」

 

 

「もう、それで私の分は幾ら?」

 

 

「ん?何の話?」

 

 

「だからお会計」

 

 

「えっ?」

 

 

「えっ?」

 

 

「とりあえず行こ?」

 

 

「う、うん」

 

 

カズキは凛香の言葉に答えず、手を握って外へ出た。

 

 

「まぁ、俺の奢りってことで」

 

 

「いやよ、カズキの負担にはなりたくないもの」

 

 

「沢山のものを貰ってるからこれくらいさせてよ。じゃあ少し歩いてたい焼き買いに行こっか?」

 

 

「…ばか」

 

 

「なにか言った?」

 

 

「なんでもないわよっ!早く行きましょ!」

 

 

「あ、ちょ、引っ張らないでよ」

 

 

今度は凛香がカズキを引っ張る。

引っ張られるカズキはポリポリと頬を掻きながら凛香について行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、兄ちゃん久しぶりだな」

 

 

「おじさんもね。カスタード5個頂戴!」

 

 

「あいよ。それで?あの彼女とはどうなったんだ?」

 

 

「え、いやまぁ、付き合うことになったよ」

 

 

「そりゃ良かった。んじゃあの子は兄ちゃんのお姫様ってとこか?」

 

 

「そうだといいけどね」

 

 

「自信持てよ?ちゃんとしねーと離れ離れになっちまうぞ?」

 

 

「そうならないように頑張るよ」

 

 

「そうかいそうかい。はい、カスタード5個お待ちどう」

 

 

「はい、お代ね」

 

 

「おう、んじゃ気をつけて帰れよ」

 

 

「ありがと。じゃあまた!」

 

 

「またな」

 

 

カズキは店主に別れを告げて凛香の元へ戻る。

 

 

「随分と成長したみたいだ。…そろそろかもな」

 

 

店主がそう呟くと…

 

 

「たい焼きをひとつ貰えるかな」

 

 

「おっと、気付かなかった。お客さんごめんね」

 

 

店主が意識を戻すとそこには濃紺の髪をした男が立っていた。

 

 

「大丈夫だ。俺はすべて気付いている」

 

 

「はっ?」

 

 

次の瞬間店主の視界は真っ暗になった。

 

 

「俺の存在に気付かないとは、ここまで落ちたか。レグルス」

 

 

その男は一瞬で店主を店の奥へと押しやった。

 

 

「桜井和生…やはりここにいたか」

 

 

その男はニヤリと不気味に笑った後、人ごみの中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ凛香、ごめんね」

 

 

「大丈夫よ。…そんなに買ったの?」

 

 

凛香はカズキが持っているたい焼きの袋の中を見てそう言った。

 

 

「2つは俺たちの分、残りはお土産かな。律と凛香の家族に」

 

 

「なんでわたしの家族にまで?」

 

 

「今日正樹さんにコーヒーご馳走になったし…ほら」

 

 

「??」

 

 

「未来の家族になるかもしれないし…」

 

 

「っ…///」

 

 

「あ、あはは。…今のは聞かなかったことにして」

 

 

「だめ、ちゃんと有言実行してよね?」

 

 

「えっ」

 

 

「ずっと一緒でしょ?」

 

 

「凛香のこと大好だし、頑張るよ」

 

 

「ふふっ、ありがと。そろそろ帰ろ?」

 

 

「うん、そうしようか」

 

 

2人は手をとりあって歩いていく。

幸せな時間はあっという間に流れていくものだ。

気づけば2人は凛香の家の前までやってきていた。

 

 

「今日はありがとうね。お父さんのことも説得してくれたみたいで」

 

 

「ううん、気にしなくていいよ」

 

 

「あのね、カズキ」

 

 

「ん、なに?」

 

 

「最後にぎゅってして欲しいな…なんて」

 

 

「…」

 

 

凛香の不意打ちの一撃にカズキは固まってしまう。

 

 

「カズキ…?」

 

 

「…はっ。もちろんいいよ。おいで」

 

 

カズキは腕を開いて凛香を呼ぶ。

 

 

「…///」

 

 

凛香はカズキの胸に飛び込んでぎゅっと抱きついた。

カズキも凛香の背中に腕を回して抱き締め返す。

そして、2人の視線がぴたりと合うと。

2人の顔は次第に近づいていき…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちゅっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

可愛らしいリップの音と共に唇が重なった。

 

 

「ふふっ、ありがとうね。またねカズキ!」

 

 

凛香は照れくさそうに家の中へ入っていった。

 

 

「うん、また学校でね」

 

 

カズキは幸せを噛み締めながら帰路につく。

ゆっくりと歩みを進め家に着くと律が笑顔で出迎えてきた。

 

 

「おかえりなさい!カズキさん」

 

 

「うん、ただいま。はい、お土産のたい焼き」

 

 

「ありがとうございます!…ですがその前にこちらをご覧になってください」

 

 

「ん?」

 

 

律用にカズキが買った携帯を律が見せてくる。

そこには…

 

 

「なっ!?…///」

 

 

『桜井ちゃん。明日これについて深くきかせてもらおうか〜?』

 

 

カズキと凛香のキスの画像の添付とともに中村莉桜のメッセージが映っていた。

 

 

「カズキさん、明日は大変になりそうですね」

 

 

「あ、あは、あはははは」

 

 

遂にバレてしまったふたりの関係、次の学校で弄られることを覚悟しカズキはガックリと肩を落とした。




3千文字ちかくも書いてしまいました。
ここに来て新キャラの予感ですねぇ〜
ですが今後の展開に大きく関わる大事な何かとは別のものですよw
解っても秘密にしててくださいねw
個人的にメッセージを送ってもらえればお答えしますw
感想、評価まってます!
どなたかコラボして下さる方がいれば…声をかけて下さると嬉しいです!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

名前の時間

皆さんお久しぶりです。
勉強が忙しくてなかなか書けないトランサミンです。
まー、あとモンハンクロスが楽しすぎるのもありますかね。
久しぶりの投稿なので腕がなまっていると思いますが、暖かい目で見たいただけると嬉しいです。
あとがきには読者の皆さんがメシウマな報告があったりして…w
あ、因みに今後のオリジナル展開のためにイトナ編はこの後に殺りますからね。
ケイドロ編と名前編を併せてやっちゃいますので
そこの所も了承願います。


現在E組の教室は二つのグループに分かれて盛り上がっていた。

 

 

「なぁ、桜井?これはどういうことだよ!?」

 

 

「え、えっと…あ、あはは…」

 

 

凄い勢いで問い詰めてくる岡島の手には、先日中村から送られてきた凛香とキスをしている画像があった。

 

 

「桜井ちゃ~ん?うまくやってるみたいだね~?」

 

 

「中村さん…いつの間に撮ってたんだよ…」

 

 

「そんなの決まってんじゃん!ショッピングモールで見かけたあとずっとつけてたんだからねw」

 

 

「…」

 

 

カズキは呆れて何も言うことが出来ない。

思考停止したままでいると、磯貝が口を開いた。

 

 

「まぁまぁお前ら、そのへんにしといてやれよ。お前らだって私生活を覗かれたら嫌じゃないのか?」

 

 

磯貝のもっともらしい意見にカズキを取り囲んでいたグループは若干静まり返る。

 

 

「ねぇねぇ、凛香ちゃん!桜井くんとはどうなの!」

 

 

もう一方のグループでは速水が中村を除いた女子たちに囲まれ、質問攻めにあっていた。

 

 

「どうって言われても…普通に?」

 

 

速水は何時ものように簡潔に質問に応答するのだが、明らかに顔は赤く照れくさそうにしている。

 

 

「でもキスしたんでしょ!?どうだった!?」

 

 

矢田が何時もとは明らかに違うテンションで問い詰めてくるため、速水は若干引き気味に答えた。

 

 

「甘かった…かな?///」

 

 

「「「…っ!?」」」

 

 

照れくさそうに、しかしうっとりとした表情でそう言った速水に、女子は思わず息を呑んだ。

今の速水の表情を例えるなら、恋する乙女と言う言葉がぴったりだと言える。

 

 

両方のグループが静かになった時…

 

 

「あっ!」

 

 

「どうしたの?陽菜ちゃん?」

 

 

倉橋が口を開き、それに原が反応した。

 

 

「木村くんって今日いないけどどうしたんだろ?」

 

 

「「「「あっ」」」」

 

 

倉橋の一言でクラス全員が木村がいない事に気付いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(俺は病院が嫌いだ。うちの近所の病院は皆フルネームで呼ぶからだ。これのせいで俺の人生は苦労が絶えない)」

 

 

「次は…っと。木村さーん…」

 

 

「(き、きたっ!?)」

 

 

待合室で待つ木村がビクッとする。

 

 

「き…木村…『じゃすてぃす』さーん…」

 

 

アナウンスのコールに木村の前に座っていた老夫婦がお茶を吹き出した。

 

 

「はぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『正義(ジャスティス)』!?『正義(まさよし)』だとおもってたよ…」

 

 

茅野が木村の話に驚きの反応を見せる。

 

 

「皆武士の情でまさよしって呼んでくれてんだよ。殺せんせーにも頼んでるし」

 

 

木村は苦笑しながら話す。

 

 

「親のつけた名前に文句は言えねーし…どんだけ子供がからかわれるか考えたことねーんだろうな」

 

 

「そんなモンよ親なんて」

 

 

木村が嫌そうに話すと狭間が口を挟んだ。

 

 

「私なんてこの顔で『綺羅々(きらら)』よ?『きらら』っぽく見えるかしら?」

 

 

「い、いや…」

 

 

「うちの親はメルヘン脳のくせに…気に入らないことがあるとすぐヒステリックに喚き散らす。そんな家庭で名前通りに可愛らしく育つわけないのにね…」

 

 

狭間が話していると…

 

 

「大変だねー皆。変な名前つけられて」

 

 

このクラス1名前が厨二病な少年赤羽カルマが話しかけてきた。

 

「俺は気に入ってるよ?親の変なセンスが遺伝したんだろうねーたまたま」

 

 

「殺せんせーも不満があります。未だに烏間先生とイリーナ先生は名前で呼んでくれません」

 

 

殺せんせーの一言に烏間とイリーナはギクリとする。

 

 

「じゃあ1日コードネームで呼ぶってのはどう?」

 

 

「にゅや?」

 

 

矢田の提案に殺せんせーは首を傾げる。

 

 

「名前で呼ぶのが恥ずかしいなら渾名にすればいいんだよ!沖縄の殺し屋さんもそうしてたじゃない?」

 

 

矢田の提案は的を得ていてとてもいいものだったため、殺せんせーはすぐ様採用し準備に取り掛かった。

 

 

「皆さん今から紙を配りますので、全員分のコードネームを考えてください。その後外へ出てある競技をします。烏間先生?生徒達にフリーランニングを教えていますね?」

 

 

「ああ、基本的なものではあるがな」

 

 

殺せんせーの言う通り生徒達はフリーランニングを習っていた。身体能力を最大限に活かした動きを少しながらできるようになっているのだ。

 

 

「では鬼ごっこをしましょうか。鬼は私と烏間先生ですよ」

 

 

殺せんせーはにゅやりと笑った後、教室の外へ出ていった。

生徒達はクラスメイトに渾名をつけることに違和感を感じながらも、思い思いのコードネームを紙に書き記していた。




感想、評価まってますよー!
メシウマなことっていうのはですねw
実は恋人に振られまして…かなり精神が不安定な状態なんです。
なので暫く恋愛描写は書けないと思われますのでご了承下さい。
慰めて下さる方がいたら泣いて喜びます…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二つ名の時間

「今からケイドロをやりますよ!」

 

 

警官の格好に着替えた殺せんせーがグラウンドに集まった生徒たちの前に現れた。

 

 

「なんでケイドロなの?」

 

 

矢田が殺せんせーに問いかける。

 

 

「ぬるふふふ、先生も昔はよくやったので」

 

 

殺せんせーは意味あり気な笑みを浮かべながらそう言った。

 

 

「ルールは簡単!今から一時間の間、君たちは裏山を逃げ回るドロボウです。警察は私と烏間先生。君たちが全員捕まれば明日の宿題が2倍、君たちが1人でも逃げ切れば烏間先生のサイフでケーキを食べられます。仲間を呼ぶ時は先ほど渡したコードネーム一覧を見て呼ぶように、間違えればペナルティですよ。先生は残り1分まで動きませんので、頑張って烏間先生から逃げてください。5分後に追跡を開始します、さぁ皆さん逃げてください!」

 

 

殺せんせーの丁寧な説明を聞いた生徒たちは裏山へと散り散りになっていく。

日頃の訓練の成果もあり、5分という短い時間でもかなりの距離を移動できていた。

 

 

「いくら烏間先生でもこの広い裏山じゃ全員は捕まえられないだろ」

 

 

変態終末期(岡島)が現状を分析する。

 

 

「変態終末期、そんなに甘く見ない方がいいぞ」

 

 

ギャルゲーの主人公(千葉)は周囲を警戒している。

彼の言葉に近くにいた、このマンガがすごい(不破)とキノコディレクター(三村)も警戒を強める。

 

 

 

 

 

 

 

しかし…

 

 

 

 

 

 

 

 

「変態終末期、ギャルゲーの主人公、キノコディレクター、この漫画がすごい。逮捕だ」

 

 

突如として現れた堅物(烏間)にあっさりと捕まった。

その後も生徒たちは次々に捕まっていき、既に半数を切っていた。

 

 

「野球バカ、どうしようか?」

 

 

性別(渚)が野球バカ(杉野)に案が無いか聞く。

 

 

「ケイドロと言えば、仲間の解放だろ?牢屋までいこうぜ」

 

 

その提案に乗った性別と中二半(カルマ)は牢屋へと向かう。

近くに永遠のゼロ(茅野)もいたのだが

 

 

「永遠のゼロってなに…。ゼロじゃないし…ちゃんとあるし…」

 

 

うわ言のようにそう呟くだけで全く反応しないので、彼等は放置することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「て、鉄壁だ…!」

 

 

野球バカは最強の壁がいることを失念していた。

残り1分まで動かない殺せんせーは最強の守り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のはずだったw

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スッ

変態終末期が胸ポケットから巨乳美女の水着ブロマイドを手渡すと殺せんせーはあっさりと生徒たちを開放した。

その後もポニーテールと乳(矢田)の泣き落としや、生徒による買収で殺せんせーは脱獄を許していた。

それをしった堅物は殺せんせーに次に逃がしたら辞めるという旨を伝えると、再び戦場へと赴いていった。

その場に残された殺せんせーは

 

 

「次からはそんなに簡単には捕まえられませんよ」

 

 

にゅやりと笑った後、

 

 

「ヌッヒョー!この乳やべぇ!!」

 

 

変態終末期に渡された巨乳ブロマイドでニヤニヤしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、糖分?堅物の気配は感じる?」

 

 

「うーん、ちょっと難しいかな。ツンデレスナイパーは何かわかった?」

 

 

「ううん、残念だけど」

 

 

裏山の奥まった位置に糖分(カズキ)とツンデレスナイパー(速水)が隠れていた。

2人は足跡を残さないように木の上に2人で建っていた。

 

 

 

「さっきから牢屋の人数が増えたり減ったりしてる」

 

 

糖分は携帯を眺めながらツンデレスナイパーへと伝えた。

 

 

「そう、でも油断は出来ないよ。堅物はやっぱり次元が違うし」

 

 

2人はできるだけ気配を殺して他の生徒達の動向を観察していた。

 

 

「そろそろ悠馬に指示させた作戦をやる頃かな」

 

 

「どういうこと?」

 

 

ツンデレスナイパーは糖分の言っていることがわからず首をかしげた。

その可愛らしい仕草に糖分は彼女の頭にそっと手を置いて、髪を撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、堅物は凛として説教(片岡)、女たらしクソ野郎(前原)、そしてジャスティスと対峙していた。

 

 

「俺と勝負しようというのか?」

 

 

「はい、俺らもできるってとこ見せないといけませんから」

 

 

女たらしクソ野郎が合図をすると3人は散開、女たらしクソ野郎と凛として説教がジャスティスを援護するような陣形になった。

 

 

「(基礎がしっかりと身についていていい動きだ、だがしかしまだ本気の俺には勝てんな)」

 

 

堅物がすかさず詰め寄り、女たらしクソ野郎と凛として説教を捕獲した。

堅物は残っているジャスティスも捉えようとスピードを上げる。

しかしここで堅物は気付いた。

 

 

「(これは…!?あたりが平面かつ走り易い地形だこれだと…)」

 

 

堅物の予想通りジャスティスはグングンスピードを上げていく。

ジャスティスの平坦での直線における加速力と最高スピードは堅物をも凌ぐものであり、E組トップの代物だ。

 

 

ジャスティスと堅物の距離が徐々に開いていく。

しかし堅物も黙っているわけがなく足もとが不安定な場所へとジャスティスを誘導することによって捕獲に成功した。

 

 

「これで俺達の勝ちだな」

 

 

「いや、先生たちの負けですよ」

 

 

「なんだと?」

 

 

「先生は今からプールまでは戻れませんよね?」

 

 

「そういうことか!?」

 

 

ここで堅物は自分が誘導されていたことに気付いた、殺せんせーはプールに入ることは出来ない、つまりプールに隠れている生徒は捕らえられないのだ。

残り時間は1分、生徒達の勝利が確定したようなものだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゅやっ!?」

 

 

突如として殺せんせーを取り囲むように白い布で覆われた檻が降ってきた。

 

 

「やぁやぁ、ごきげんよう殺せんせー」

 

 

そこに現れたのはシロ。

 

 

そして殺せんせーと同じ檻の中にいるのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今度こそ殺すよ、兄さん」

 

 

更に凶暴化した触手を宿した、イトナの姿であった。

 

 

烏間は生徒を追いかけていたため、牢屋から離れている。

 

 

殺せんせーはこの状況をどうやって打開するのだろうか。




感想、評価まってますよ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

リミットの時間

いやー、学校が早く終わるっていいですね。
先日初コラボをさせて頂きましたが、今度は私から誰かに頼もうかなと思っている次第でありますw
ハーメルンには面白い作品を書く作家さんが大勢いるので作者としても嬉しいですね!
さてさて、今回はイトナの話ですよー!


「先ずはフィールドを劇的に変化させ動揺させる。当てるより囲むが易し。君たちの戦法を使わせてもらったよ」

 

 

「シロッ!テメー何しにきやがった!!」

 

 

突如として現れたシロとイトナに寺坂が食って掛かる。

 

 

「決まっているだろう?殺しに来たのさ。あの檻を覆っているのは対先生繊維の強化布、戦車の突進でも破壊されない代物さ。イトナの触手に装備したのは刃先が対先生物質で出来ているグローブ、高速戦闘ようにしてるから効果は落ちているが触手同士が接触する度に一方的にダメージを与える。そしてイトナによる上からの攻撃だ、これであいつは逃げられない。これで倒せないようではね」

 

 

シロの説明通り殺せんせーは環境の変化による動揺とイトナの攻撃に防戦を強いられている。

 

 

「俺の勝ちだ、兄さん」

 

 

イトナは殺せんせーを殺して一つの答えを出そうとしていた。

それは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『最強の証明』

 

 

イトナが止めの一撃を殺せんせーに放つ、すると…

 

 

ぬるんっ

 

 

「見事ですよイトナ君、一学期までの先生なら殺られていたでしょうね。でもね、いかに速くても、いかに強くても、いかに保護者が作を練ろうとね、三回目になれば君の攻撃は見切れるんですよ。単純な攻撃ではあたりませんねぇ」

 

 

殺せんせーはぬるりとイトナの攻撃を躱して触手を胸の前に集める。

 

 

「先生だって学習するのです。先生が日々成長せずしてどうして生徒に教えることが出来るんですか?さて、こんな布は始末してしまいましょう夏の完全防御形態から先生は学びました。一部だけ圧縮してエネルギーを取り出し、放出する」

 

 

殺せんせーの周囲に莫大なエネルギーが発生する。

 

 

「覚えておきなさいイトナ君。先生にとって暗殺は教育、暗殺教室の先生は教える度に強くなるのです」

 

 

殺せんせーは収束させたエネルギーをイトナへと放つ、イトナはその爆風に耐えられず吹き飛ばされた。

 

 

「(何故だ…俺は強くなったのに…何故勝てない!?)」

 

 

殺せんせーは触手でふわりとイトナを受け止めた後シロへとこう言い放つ。

 

 

「これでわかりましたか?どんな奇襲も通じませんよ、イトナ君をここへ預けておとなしく去りなさい」

 

 

殺せんせーがシロに話していると隣から呻き声が聞こえてくる。

 

 

「頭が痛い…脳みそが裂ける…!!」

 

 

そこには苦しむイトナの姿があった。

それを見てシロは

 

 

「これも計算のうちさ」

 

 

そういってロケットランチャーを構え放った。

殺せんせーは生徒たちを庇うため触手を広げたが、そこから爆発は起きず変わりにネットが現れイトナを絡めとった。

 

 

「私たちは逃げさせてもらうよ、生徒を放っては置かないよな、先生?」

 

 

シロは今度こそ煙幕を投げつけ、姿をくらました。

殺せんせーはそんなシロを追って飛んでいってしまった。

それと時を同じくして烏間や和生、前原たちが戻ってくる。

 

 

「何事だ!」

 

 

烏間は生徒たちに説明を求める。

 

 

「シロとイトナが襲ってきて、殺せんせーが倒したんだけど…逃げられちゃって殺せんせーが追って行ったの」

 

 

矢田の的確な説明に和生が提案をする。

 

 

「そっかそっか。じゃあ今度は俺達が警察ってわけだね?」

 

 

「えっ?」

 

 

和生の言葉に凛香が首をかしげる。

 

 

「つまりは今回は誘拐事件だ。被害者であるイトナを俺達で助け出すってわけ」

 

 

和生の言葉に生徒たちの目つきが変わる。

 

 

「律、殺せんせーの位置はわかる?」

 

 

「はいっ、和生さんおまかせくださいっ!」

 

 

律によって殺せんせーの位置も割り出され、生徒たちは追跡の準備を始める。

 

 

 

「じゃあ行こうか、やられっ放しは皆も趣味じゃないよね?」

 

 

「「「おうっ!」」」

 

 

和生の掛け声を合図に生徒たちは走り出す。

果たしてイトナを救出することはできるのだろうか




ちょっと今回は手抜き感が否めないかもですw
じ、次回はちゃんとやりますからっ!
原作では下着泥棒でしたが、本作ではイトナ誘拐事件とさせていただきました。
オリジナル展開のオンパレード、お楽しみください!
感想、高評価待っております!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

執着の時間

今日はいつもより少し多めに書こうかなと思います。


「イトナ君!!」

 

 

生徒たちが殺せんせーの追跡をしている頃、殺せんせーはシロに追いついていた。

殺せんせーはすぐさまイトナに絡まったネットを外そうとするが、イトナの触手が溶け始めていることに気付く。

 

 

「(これも対先生物質か…!?)」

 

 

「ご察しの通りだよ、そしてここが君たちの墓場となる。撃て、狙いはイトナだ」

 

 

シロが手を上げると殺せんせーの周囲から眩い閃光が放たれる。

 

 

「(これは…私の動きを一瞬止める圧力光線!!)」

 

 

イトナへと降り注ぐ弾丸を殺せんせーは風圧と服で辛うじて防ぎ、鋏みを取り出してネットの切断を試みる。

 

 

「対先生物質とチタンワイヤーを使って出来てるネットだ、いくらおまえでもこの弾幕の中で防ぎながら救い出すのは難しいよ。先程までのダメージと圧力光線で動きが鈍っている、少しでも目を離せばイトナの触手は破壊され、イトナ諸共絶命間違いなしだ」

 

 

しかし殺せんせーはイトナへと触手を差しのべるのをやめない、救える可能性を信じて、教師として最善を尽くそうとしているのだ。

 

 

「(私は約束したんです!どんな時でも生徒から手を離さないと!!)」

 

 

殺せんせーが必死に救出を試みているころ、イトナは自分の弱さを悔いていた。

 

 

「(俺は無力だ…協力者にも裏切られ、殺す相手に守られて…俺は…こんなザコ達に負けるのか)」

 

 

そんな時、ある言葉が戦場に響き渡った。

 

 

「全員散開!確実作戦通りに、殺せんせーを助けるぞ!」

 

 

その言葉を合図に、生徒たちがシロの手下に襲いいかかる。

 

 

「これ、対タコの服だろ?おかげで俺らがやんねーといけねーんだよ!」

 

 

寺坂やカルマ、前原と岡野が木の上にいる手下たちを下へ落とし、倉橋や杉野たちが彼らを簀巻きにする。

先程まで攻勢だったシロたちは防戦一方になり、あっという間に弾幕が無くなった。

 

 

「お前ら…なんで…」

 

 

助けにやってきた生徒たちにイトナは問いかける。

 

 

「カン違いしないでよね、シロのやつにムカついてただけなんだから。和生が助けに行くって言ったからきたんだからね」

 

 

速水があくまでイトナの為ではなく、和生の為だと言うようなセリフを言うと。

 

 

「桜井、自分の彼女のツンデレに対してどう思う?」

 

 

竹林が和生に今の速水のセリフの感想を問う。

 

 

「あー、うん。何ていうか、可愛いよね」

 

 

戦場にあるはずの無いほのぼのとした空気が流れる中、カルマが口を開いた。

 

 

「こっち見てていいのーシロ?撃つのやめたらネットなんて根本から外されちゃうけど?」

 

 

カルマの言葉の通り、殺せんせーはネットを外し、体を再生させていた。

 

 

「貴方はいつも周到な計画を練りますが、生徒たちを巻き込めば台無しになる。当たり前のことに早く気づいた方がいい」

 

 

「仕方ない、そんな時子はくれてやろう。せいぜい2日、3日の命だ」

 

 

シロはそんな捨て台詞を残して去っていった。

その場に残されたのは殺せんせーと生徒たち、そしてボロボロになったイトナ。

そんなイトナについて、不破が語り出した。

 

 

「気になって律に調べてもらったんだけど、イトナくんの家ってスマホの部品生産の会社だったらしいんだけど、負債抱えて倒産して…イトナくんを残して親は雲隠れしたみたい」

 

 

不破の言葉にイトナの勝利への執着のわけを生徒たちは悟る。

 

 

「彼の執着心を取り除けば、触手を外すことはできます。ですが取り除けるのか…」

 

 

「てめぇら、こいつ俺らんトコで面倒見させろや」

 

 

寺坂がイトナの執着心を取り除く役目に名乗り出た。

 

 

「寺坂〜?バカなのにできんの?」

 

 

カルマがいつものように寺坂を煽る。

 

 

「誰だって悩みくらい抱えてんだよ、それが重いか軽いかの話だろーが。俺らでなんとかしてやんよ、それでもし死んだらそれまでだ」

 

 

「寺坂にしてはいいこと言うね」

 

 

「んだと桜井!てめぇもバカにしやがって!」

 

 

和生も便乗して煽り、クラスに笑顔が戻る。

イトナもこんな風に笑えるようになって欲しいと、心の底から願う殺せんせーであった。




さあー次回は寺坂組の話と、ラジコンの話をやりましょうねw
個人的には次の次の話を早く書きたいですねっ!
感想待っておりますよっ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

吐きそうな時間

最近あまり投稿できなくてすみませんm(__)m
いやー、進学先の学校から出た課題が一月からありまして、それの予習に追われる毎日でございますw
今日は頑張って書きますので、お楽しみください。


「寺坂のやつ、どうするつもりなんだ?」

 

 

磯貝が心配そうに呟く。

生徒たちはイトナを連れて何処かえ歩いていく寺坂組(寺坂、吉田、村松、狭間)を追いかけていく。

 

 

「…さて、おめーら」

 

 

寺坂が意を決したように一言発した。

吉田、村松、狭間に緊張が走る。

しかし

 

 

「どーすっべ、これから」

 

 

3人の表情がポカンとしたものになったあと、吉田と村松が寺坂に食ってかかる。

 

 

「考えてねーのかよ、何にも!!」

 

 

「ホンッット無計画だな、テメーは!!」

 

 

「うるせー!!4人もいりゃ何か考えあんだろーが!!」

 

 

生徒たちは思った。

 

 

「「「(コイツらに任せて大丈夫なのか…!?)」」」

 

 

寺坂組の唯一の良心…?である狭間が溜息をつきながら話す。

 

 

「村松んち、ラーメン屋でしょ?一杯食べたらこの子も気ぃ楽になるんじゃない?」

 

 

4人は意識が朦朧とし、足元が覚束無いイトナを支えながら村松の家のラーメン屋にたどり着いた。

 

 

「…マズい」

 

 

イトナが久しぶりに発した言葉はこうだった。

 

 

「だろ?親父に何度言ってもレシピ改良しやしねぇ」

 

 

「ああ、マズいうえに古い。手抜きの鶏ガラを化学調味料で誤魔化している。トッピングの中心には自慢げに置かれたナルト、昭和のラーメンとしか言えない」

 

 

「(こいつ意外に知ってやがる!!)」

 

 

イトナは思う。

 

 

「(こんな店、チェーン店でも出来ればすぐに潰れる。うちの親は勉強してても無残に負けた)」

 

 

表情が冴えないイトナに

 

 

「じゃあ今度はうちに来いよ、こんな化石ラーメンとは比較に何ねー現代技術を見せてやっから」

 

 

「んだとォ!?」

 

 

吉田が誘いをかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どーよ、イトナ!?スピードで嫌なことなんか吹き飛ぶだろ!?」

 

 

吉田は自宅の敷地内でイトナをバイクに乗せていた。

 

 

「テンション上がってきたか?」

 

 

「…悪くない」

 

 

これにはイトナも興味を示したようで、それに気を良くした吉田がさらに速度を上げる。

 

 

「必殺高速ブレーキターンだ!」

 

 

次の瞬間

 

 

「あ」

 

 

あまりのスピードに耐えられず、イトナは吹き飛ばされ木に突っ込んでいた。

そんな彼らの姿を見て生徒たちは

 

 

「何にも計画ないみたいだな」

 

 

「ただ、遊んでるようにしか見えない…」

 

 

などと思い思いのことを口にしている。

しかし、カルマと和生はそんな彼等の姿を見て不敵に笑っていた。

 

 

「復讐したいでしょ?名作復讐小説『モンテ・クリスト伯』これ読んで憎悪を高めなさい」

 

 

「難しいわ!」

 

 

狭間はイトナに、本を勧めるが内容が内容だけに寺坂が突っ込みをいれた。

そんなやり取りをしているとイトナがブルブルと震えだした。

 

 

「やべぇ、ブルブルしてんぞ」

 

 

「これってもしかして」

 

 

「ええ、触手の発作。また暴れだすよ」

 

 

吉田、村松、狭間はイトナか離れていく。

 

 

「俺は適当にやってるお前らとは違う。今すぐあいつを殺して、勝利を…!!」

 

 

「おうよ、俺もそう考えてた時があった。あんなエロダコ今日にでも殺してやりてーよ。でもな、テメーにゃ今すぐあいつを殺すなんて無理なこった。無謀なビジョンなんて捨てちまった方がいいぜ?」

 

 

「うるさい!!!!!」

 

 

イトナは寺坂の言葉に怒りを顕にし、触手で襲いかかった。

しかし寺坂はしっかりとその触手を受け止めた。

 

 

「2回目だし弱ってっから捕まえやすいわ、吐きそうな程痛てーけどな」

 

 

イトナは以前として寺坂を睨んでいる。

 

 

「吐きそうと言えば村松のラーメンだけどよ、あいつはタコに経営の勉強奨められてんだ。今はマズくてもいい、継ぐ時に経営手腕と新しい味で繁盛させてやれってな。吉田だってそーだ、いつか役にたつかもしれねーってよ。なぁイトナ、1回、2回負けたくれーでグレてんじゃねーよ。いつか勝てりゃいいじゃねーか」

 

 

寺坂はそう言ってイトナに1発の拳骨を落とす。

 

 

「耐えられない…そのいつかまで俺はどうやって…何をして過ごせばいい…」

 

 

「なーにいってんだ。そのために俺らがいんだろ?今日見てーにバカやって過ごすんだよ」

 

 

イトナの目が鋭いものから驚いたような大きいものに変わる。

 

 

「あのバカさぁ?あーいう適当なこと平気で言う」

 

 

「そうだな、でもバカのあーいう一言ほど気を楽にしてくれるものはないよ」

 

 

カルマと和生の言葉に生徒たちは頷いた。

 

 

「俺は焦ってたのか…?」

 

 

イトナの瞳から怒りや、勝利への執着の色が消えた。

それを見計らって殺せんせーがイトナに問いかけた。

 

 

「今なら君の触手を取り払えます。大きな力を失う代わりに、沢山の仲間を得ることになるでしょう。殺しに来てくれますね?明日から」

 

 

「…勝手にしろ、この触手(ちから)も兄弟設定も飽き飽きしてた所だ」

 

 

こうして堀部イトナが3年E組の暗殺教室に加わった。




感想、評価まってますよ!
次回はラジコンの話!その後にE組きってのイケメンコンビの話になりますよ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

紡ぐ時間

いやー、もうすぐ冬休みですねー!
そして作者にとって最大の敵…クリスマスの夜がやってくるw
僕とクリスマスを過ごしてくれる人はいませんwww
寂しいトランサミンですw
唐突なのですが、桜井君のcvは代永翼さんでイメージした頂けると嬉しいですね。
はい、みんな大好きアイチ君voiceです。
今後の展開的に彼の声を理解して欲しいしだいであります。


「な…イトナ君何作ってんの?」

 

 

イトナが生徒達と同じように学校に通うようになって数日経った昼休み、黙々と作業を行うイトナに渚が声をかけた。

 

 

「見ての通り、ラジコンの戦闘車だ。今まであいつに勉強漬けにされて腹が立った。こいつで殺してやる。寺坂が馬鹿ヅラで言った、『いつか殺せればいい』と。だからダメ元で行く」

 

 

「殺しに行くって…」

 

 

渚はラジコン何かで殺せるのかと思うのだが

 

 

「で、でもこれスゲーハイテクだぞ!?」

 

 

隣にいた杉野がイトナのラジコンを見て叫んだ。

その声にクラスの男達が集まってくる。

 

 

「スゲーなイトナ!自分で考えたのか!?」

 

 

前原もイトナの技術に感動の声を漏らす。

 

 

「大体のやり方は親父の工場で見て学んだ。こんなのは寺坂以外なら誰でもできる」

 

 

その言葉に寺坂は若干キレかけているが、生徒達は気にしない。

イトナは組み立てを終え、床に戦闘車を下ろして死運転を始めた。

置いてあった空き缶を見事に砲撃する戦闘車の姿は男達の心を鷲掴みにした。

 

 

「スゲーな、撃つ時も全然音がしない」

 

 

「これは使えそうだな」

 

 

菅谷と千葉の言葉にイトナが答える。

 

 

「電子制御を多用する事でギアの駆動音は抑えている。ガン・カメラはスマホのものを流用した、銃の照準と連動しつつコントローラに映像を送る。それとお前らに教えてやる、奴には心臓がある。場所はネクタイの真下だ、そこを狙えば一撃で絶命できるらしい」

 

 

新たにわかった殺せんせーの弱点に生徒たちは俄然やる気を出していた。

生徒たちはラジコンを走らせ殺せんせーが居るであろう職員室に向かわせた。

しかしそこに殺せんせーの姿はなかった。

 

「しゃーねぇ、死運転を兼ねてそこら辺走らせよーぜ」

 

 

岡島の提案で校内を偵察することになった。

暫く走らせていると、足音と共に女子の声が聞こえてきた。

 

 

「校庭まで競争ね~!」

 

 

「あっずるいよ~!」

 

 

「負けないからね!」

 

 

中村、矢田、岡野が戦闘車の通り抜けた瞬間、男達の目はコントローラの画面の1点に集中した。

 

 

「見えたか!?」

 

 

静寂を破るように岡野が呟く。

 

 

「いや、カメラが追いつかなかった。視野が狭すぎるんだ」

 

「ならばレンズを魚眼にしたらどうだ?律に補正を頼めば視野は広がるはずだ」

 

 

竹林がレンズについて案を出す。

 

 

「なら俺が用意しよう」

 

 

岡島がレンズを用意するようだ。

 

 

「録画機能も必要だな」

 

 

男達は殺せんせー暗殺という本来の目的を忘れ、女子の下着偵察に没頭しているようだ。

 

 

「いつも殺せんせーにはドン引きしてるくせに」

 

 

渚は呆れたように下着偵察に参加していないカルマ、和生、磯貝にそういった。

 

 

「しょうがないよーあいつらバカだしね」

 

 

「カルマくん、言い過ぎだよ」

 

 

カルマを渚が注意するが、事実だけに言葉に覇気がない。

 

 

「なぁ和生」

 

 

「どうした?」

 

 

「俺に剣術を教えてくれないか?」

 

 

「刺剣ってこと?」

 

 

「いや、刺剣に限らず何でもいい」

 

 

「急にどうしたんだ?」

 

 

「いつもお前に無理ばかりさせてるからな、たまには俺も前に出て戦わないとダメだ」

 

 

「悠馬らしい理由だな。じゃあいいよ稽古をつけてやる、でもどの武器を持つのかは自分で決めること」

 

 

「悪いな」

 

 

「親友の頼みを断る奴はいないからね、気にすることはないよ。隣にたって戦える時を待ってるさ」

 

 

「ああ!」

 

 

和生と磯貝が熱く語り合っている頃、下着偵察組は作戦をたて終えたようだ。

 

 

参謀

竹林考太郎

 

カメラ整備

岡島大河

 

高機動復元士

木村正義

 

駆動設計補助

吉田大成

 

偽装効果担当

菅谷創介

 

ロードマップ制作

前原陽斗

 

糧食補給班

村松拓哉

 

イトナを中心としてクラスが一体となっていた。

渚たちが苦い顔で彼らを見守っていると

 

 

「「「バケモンだぁー!?!?」」」

 

 

どうやら戦闘車が何かに遭遇したようで壊されてしまったようだ。

そんなやりとりの中

 

搭載砲手

千葉龍之介

 

が新たな仲間にされていた。

 

 

「開発に失敗は付き物だ、糸成1号は失敗作だが、ここから紡いで強くする。お前らよろしくな?」

 

 

「「「おうよ」」」

 

 

殺意が結ぶみんなの絆、これから楽しくなりそうだ。

 

 

「よっしゃ!!三月までには女子全員のスカートの中を偵察するぜ!」

 

 

岡島がそう叫ぶと、男達の表情が凍りついた。

それもそのはず、岡崎の背後には鬼の形相をした片岡と軽蔑の目を向ける女子たちが立っていたのである。

それに気づいた岡島は苦し紛れの言い訳を捻り出した。

 

 

「これはだな!桜井と磯貝が主犯なんだよ!」

 

 

「「えっ?」」

 

 

和生と磯貝の表情がポカンとしたものになった。

それと同時に片岡がゆっくりと2人へ振り返る。

 

 

「それは本当のなの…?2人とも」

 

 

彼女の表情はまさに鬼のよう、2人の表情が徐々に焦りに変わる。

 

 

「いやいや、俺達は関係ないって!」

 

 

「俺には凛香がいるのになんでそうなるの!?」

 

 

「渚くん、それはほんとうなの?」

 

 

片岡は真相を解き明かすべく、渚を問いただす。

 

 

「うん、2人は関係ないよ?因みに僕とカルマくんも関与して無い」

 

 

渚の言葉に男達の表情が凍りつく。

その後は察しの通りであった。

岡島はロッカーに頭を突っ込んだまま気絶しているが、彼以外は一応無事だ。

E組での暗殺はイトナの参加によって、加速していくだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃

「烏間から連絡があってね、確実に殺せる訳でないなら活動を謹んで欲しいそうだ。私からもそう思うぞ」

 

 

シロは自分の暗殺に釘を刺されていた。

 

 

「分かりました、私は1度身を潜めましょう。あの教室にはイトナ以上の怪物が2人いる。1人は虫も殺さぬ顔をして本人も気付かぬほどの凶悪な殺意を持っている。もう1人はまだ覚醒こそしていないものの覚醒すれば楽しいことになりそうだ」

 

 

シロは不敵に笑った後、そこから姿を消した。




いやー!次回はイケメン2人のおはなしですよ!
磯貝君はどんな武器を手に取るのか、そして体育祭はどうなるのか!?
乞うご期待です!
感想、評価まってます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

修行の時間

さぁ、遂にここからE組の生徒達の物語の後半に続く布石が少しずつ増えてくるんですよね。
まぁ、その一つ目が磯貝の修行になります。
彼の成長がE組にどんな影響を及ぼすのか乞うご期待です。


E組下着偵察事件が起きた放課後、和生と磯貝は和生の家の地下室にいた。

 

 

「ここが和生の修行場か…」

 

 

磯貝の眼前に広がるのは修行する為に使うのか分からない機器の数々であった。

ピッチングマシンにガラス張りの部屋、スムーザーに巨大な冷蔵庫。

 

 

「なんか色々すごいな…あんなデカイ冷蔵庫何が入ってるんだ?」

 

 

「ん?まぁ、スムージーの材料とかアイスとか」

 

 

「どこまで行っても和生は和生だなw」

 

 

「まぁなw。でもエネルギー補給班大事だからさ」

 

 

和生はそんなことを言いながらトランクのような物を取り出した。

 

 

「とりあえず悠馬には獲物を選んで貰わなきゃいけないよ」

 

 

和生がトランクを開くとそこには様々な武器が入っていた。

 

 

「この中から選べってことか?」

 

 

「そういう事になるな。気に入ったやつで修行しよう」

 

 

和生の言葉に磯貝は頷いた後、獲物に手を伸ばした。

彼が最初に手に取ったのは直剣、西洋の騎士が扱う一般的な剣である。

磯貝は一振りしたあと、「少し重いな」と呟きトランクにしまった。

 

 

「この武器はなんて言うんだ?」

 

 

磯貝は手に取った武器について和生に問いかける。

 

 

「それはファルシオン、所謂曲剣だね。刃が薄い分軽くて使い易いから手数と流れるような動きで戦う武器って感じさ」

 

 

和生の言葉に磯貝は、確かに軽いと感じ曲剣を使うことに決めた。

 

 

「これにするよ」

 

 

「悠馬の運動神経ならキツめの修行でも大丈夫だよな?」

 

 

「あはは…お手柔らかに頼むよ」

 

 

和生は磯貝をガラス張りの部屋に通した。

 

 

「とりあえず素振りを500回ね」

 

 

「500だけでいいのか?」

 

 

磯貝がそう思うのもその筈、500という数字は普段の体育でもやるような数字だからだ。

 

 

「まぁ、楽しみにしてなよ」

 

 

2人はガラス張りの部屋に入ると和生は機器の操作を行った後、刺剣を。

磯貝はファルシオンを構えた。

 

 

「和生、今何をしたんだ?」

 

 

「今からこの部屋の酸素濃度は普段の約半分」

 

 

「は?」

 

 

「疲労度は普段の3倍だと思った方がいい」

 

 

「え、ちょ」

 

 

淡々と説明をする和生に表情が固くなる磯貝であった。

 

 

「じゃあ始めるよ。いーち、にー、さーん」

 

 

「い、いーち、」

 

 

そこからは磯貝にとって地獄であった、疲れで呼吸が乱れても吸う酸素が部屋にはなく、和生のペースが落ちることも無い。

辛うじて同じペースで素振りを終えることが出来たが、終わる頃にはヘトヘトで座り込んでしまった。

 

 

「和生はいつもこんなにのをやってるのか?」

 

 

「まぁ一応ね、振らないと鈍っちゃうしさ。平日は出来なくても土日は必ずやってる。じゃあ次の奴行こうか」

 

 

『次』という言葉に磯貝は苦笑しながら和生の後に続いてガラス張りの部屋を後にした。

 

 

「次はピッチングマシンから飛んでくるソフトテニスのボールを避けるよ」

 

 

和生は3台のピッチングマシンを起動させた。

 

 

「さ、3台使うのか?」

 

 

「あ、5台がよかった?」

 

 

「いや、3台でいい…」

 

 

3台のピッチングマシンから放たれる球を持ち前の動体視力で躱す磯貝。

それを見た和生は

 

 

「じゃあ球速を上げるね」

 

 

ニッコリと笑って球速を60km/hから80km/hに上げた。

 

 

「うおっ!?」

 

 

急激に上がった速度に磯貝は先程の疲労もあってかボールが当たり始める。

暫くして和生はスイッチを切った。

 

 

「はい、お疲れ様」

 

 

「さんきゅうな…」

 

 

和生は磯貝に桃のスムージーを手渡す。

 

 

「あ、美味いなこれ」

 

 

「まぁ、それなりに研究してるからな。どうするまだやる?」

 

 

「あー、悪い!この後喫茶店でバイトなんだ。だからそろそろ帰るよ」

 

 

そう言って立ち去ろうとする磯貝に和生が衝撃の一言を言った。

 

 

「あ、そういう事なら俺も手伝うよ。その体じゃいつもみたいには働けないだろうし、俺の分の給料も悠馬が貰ってくれ」

 

 

「そんなの悪いよ」

 

 

「俺が追い込んだ結果だし、何より悠馬が強くなろうとしてくれることが嬉しいんだ」

 

 

「そう…なのか。ありがとうな、マスターに言っとくよ」

 

 

磯貝のこの言葉が後に波乱を呼ぶことになるのを彼らはまだ知らない。




磯貝の武器はファルシオンですね!
ダクソ廃人の私としてはやはり自分が使っていた武器種を持たせたいもんですw
対人もかなりやり込んでましたねw
感想待ってますよ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

イケメンの時間

今日はもう少し書こうかなと思い投稿します。
勉強バッカで辛い生活の中、私の癒しは執筆と読者の皆様の声、そして某アルテミス実況者様のモンハン動画ですw


「うーむ、イケメンだ」

 

 

渚、茅野、前原、岡島、片岡の5人は磯貝がバイトをしている喫茶店にいた。

 

 

「でも和生くんも働いてたなんて知らなかったな」

 

 

磯貝だけでなく、和生も働いている様子に渚が驚きの声を上げる。

 

 

「それにしてもあの2人が並ぶと何か眩しいなぁ」

 

 

茅野が目を手で隠すようにそう言うと、ほかの4人が苦笑した。

 

 

「いらっしゃいませー!あ、原田さんに伊藤さんいつもどうも!」

 

 

「ゆーまちゃん元気~?もー、コーヒーよりゆーまちゃんが目当てだわこの店」

 

 

どうやら近所に住んでいるマダムが来店したようだ。

 

 

「いやいや、そんな事言ったら店長がグレちゃいますよ。原田さんがモカで伊藤さんがエスプレッソWでしたよね?」

 

 

「ええ、そうよ」

 

 

磯貝がテキパキと注文をとっていると、そこに和生がやって来て

 

 

「本日、店長のオススメでシフォンケーキがありますがいかが致しますか?」

 

 

「あら、新人の子?」

 

 

「はい、短期間ではありますが」

 

 

「じゃあそのシフォンケーキも貰おうかしら」

 

 

「まいどありがとうございます」

 

 

注文を取り終えた2人は席から離れていく。

そんな2人を見て5人は思う。

 

 

「実にイケメンだ。うちのリーダーとその相棒は」

 

 

「殺してぇ」

 

 

岡島の心の声が聞こえた気がするが気にしないでおこう。

 

 

「(皆それぞれいい所はあるけれど、E組1番のイケメンは誰かと聞かれたら間違いなくこの2人で迷うだろう)」

 

 

渚がそんな事を思っていると磯貝が近づいてきた。

 

 

「お前ら紅茶1杯で粘るなー」

 

 

「いーだろ?バイトしてんの黙ってやってんだから」

 

 

前原が磯貝にそう言うと彼は

 

 

「はいはい、揺すられてやりますよ。出がらしだけど紅茶オマケな?」

 

 

「「「(イケメンだ…)」」」

 

 

5人のカップに紅茶を注いだ後、隣の席を片付け始めた。

 

 

「(磯貝がイケメンたる所以は何よりその人格だ。前原くんやカルマくんみたいな危なっかしさはなく友達には優しく目上の人には礼儀正しい。それにクラスの中でも全ての能力がトップクラスだ)」

 

 

渚がそう思いながら先程来店したマダムたちに視線を送るとケーキとコーヒーについて説明している和生の姿が目に入った。

和生はふわりとした表情でマダムたちの心をグッと掴んでいる。

 

 

「「「イケメンだ…」」」

 

 

「(和生くんも磯貝くんに負けず劣らず全てがハイスペックだ。イケメンと言うよりは美少年と言った感じだけどいざと言う時はすごく頼りになるし、何より速水さんが事件に絡んだ時の強さは男の僕から見てもカッコイイし憧れる)」

 

 

「桜井君だっけ、どうしてバイトしてるの?」

 

 

「悠馬の家が母子家庭なのは知ってますよね?最近は彼に辛い役回りばかりさせているので少しでもチカラに成れればと思ってるんです。あいつは1度バレて痛い目見てるんで、次はその痛み半分背負ってやろうって感じです」

 

 

「(イケメンだ!!)」

 

 

和生のセリフに茅野が感動していると話が逸れてきた。

 

 

「あいつらってスゲーよな、欠点すらイケメンに変えちゃうのよ」

 

 

前原の言葉に4人は興味津々だ。

 

 

「磯貝は貧乏だけどよ、服は激安店のを安く見せずに清潔に着こなすしよ」

 

 

「「「(イケメンだ!!)」」」

 

 

「和生くんは容姿が外国人っぽいのを気にしてるってこの前話してたけど、駅で外国人に話しかけられたときの対応は完璧だったよ」

 

 

「「「(イケメンだ!!)」」」

 

 

「あいつらが入った後のトイレよ、紙が三角にたたんであったぞ」

 

 

「「「(イケメンだ!!)」」」

 

 

「あ、それなら俺もたたんでるぞ」

 

 

岡島がそう言うと

 

 

「「「(汚らわしい…!!)」」」

 

 

この扱いの差は何なのだろうか。

 

 

「見ろよあのマダムキラーっぷり」

 

 

「「「(イケメンだ!!)」」」

 

 

今度は渚が

 

 

「僕も近所のオバチャンにおもちゃにされる」

 

 

「「「(シャンとせい!!)」」」

 

 

「そういやあいつら未だに本校舎の女子からラブレター貰ってるぞ?桜井に至っては速水が嫉妬してくれるから悪くないってさ」

 

 

「「「(イケメンだ!!)」」」

 

 

「私もまだ貰うなぁ…」

 

 

4人は片岡が後輩の女子からラブレターをもらう姿を想像し

 

 

「「「(イケナイ恋だ!!)」」」

 

 

「イケメンにしか似合わないことがあるんですよ。彼等や…先生にしか」

 

 

「「「(イケメ…誰だ貴様!?)」」」

 

 

「ここのハニートーストが絶品でねぇ、これに免じて磯貝君のバイトは見逃してます。和生君も手伝っているのは想定外でしたが。ですが皆さん、彼等がいくらイケメンでもさほど腹が立たないでしょう?何故でしょうか」

 

 

殺せんせーの問に前原が即答する。

 

 

「だってあいつら単純にイイヤツだもん、それ以外に理由いるか?」

 

 

ほかの4人も、うんうんと頷いている。

 

 

しかしそこに…

 

 

「おやおやおや、情報通りバイトしてる奴がいるぞ」

 

 

「いーけないんだぁ~磯貝君」

 

 

五英傑がやって来た。

 

 

磯貝君の表情が戦慄する。

和生もしまったと言うような表情だ。

 

 

「2度の校則違反、桜井君も成績が良いから少しは期待していたんだが。見損なったよ2人とも」

 

 

「(浅野くん…!!最悪だ…!!)」

 

 

磯貝は急いで浅野のたちを店外に連れ出し説得を始める。

 

 

「…浅野。この事は黙っててくれないか?今月いっぱいで必要な分は稼げるからさ。和生は給料を貰ってないしボランティアみたいなもんだ」

 

 

「そうだな、ならチャンスを上げようじゃないか」

 

 

浅野は理事長さながらの悪い笑みを浮かべこういった。

 

 

「体育祭の棒倒し、そこで勝負をつけようじゃないか」

 

 

E組に新たな波乱の予感!?




いやー、イケメンの話は書いてて楽しいですね!
もう1話投稿したくなっちゃうくらいですよw
桜井君はどちらかというと美少年ってほうが似合いますがねw
さぁ、次回からは体育祭の準備に入りますね!
磯貝はリーダーとして桜井という相棒と共にE組を勝利に導けるのか!!
乞うご期待です!
感想待っております!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

体育祭の時間 1時間目

最近遊戯王ばかり書いててすみません…
今回から体育祭に入ります。
桜井君は何の競技に出るのでしょうかね。


「A組と棒倒しで対決だぁ!?」

 

 

磯貝から説明を受けた岡島は驚きの声を上げた。

そんな彼に前原がこと細かく説明する。

 

 

「そう、勝てば磯貝たちのバイトは見逃してくれんだとよ」

 

 

「…でもさ?俺らってもともとハブられてんじゃないのか?」

 

 

木村の言う通り、E組の生徒は団体種目には出ることが出来ない。

戦うも何も無いのだ。

 

 

「浅野くん曰く、挑戦状を叩きつければ大丈夫らしいよ」

 

 

渚の言葉に男子達は納得のいかなそうな顔をする。

 

 

「第一、A組男子は28人E組男子は16人。とても公平には思えないな」

 

 

竹林の言葉に生徒たちはため息をもらす。

 

 

「ケッ、俺らに赤っ恥かかせるって魂胆が見え見えだぜ」

 

 

「どーすんだよ。やらなきゃ磯貝は下手すりゃ退学なんだろ?桜井だって停学くらいにはされるだろ」

 

 

寺坂に続き杉野も思いを口にする。

そんな彼らを見て磯貝が重い口を開いた。

 

 

「いや…やる必要はないよ皆。浅野の事だから何されるか分かったもんじゃないし、俺が撒いた種だから責任は俺が全部もつ。クビ上等!暗殺なんて外からでも狙えるしな」

 

 

そんな事を清々しい顔で言う磯貝を見て男子達はこういった。

 

 

「「「イッ…イケ…イケてねーわ!!」」」

 

 

「ええ!?」

 

 

「何自分に寄ってんだこのアホ毛貧乏が!」

 

 

男子達から批判を受けまくる磯貝に前原が話しかける。

 

 

「難しく考えんなよ磯貝、ガリ勉のA組と暗殺者の俺達だったら楽勝じゃねーか!」

 

 

前原が磯貝の机の上に対せんせーナイフを立てる。

 

 

「そりゃそーだ。寧ろバレてラッキーだな」

 

 

「日頃の恨みはらしてやろうぜ」

 

 

そのナイフに三村、寺坂が手を重ね次々に男子たちの手が集まっていく。

そのナイフを磯貝は手に取った。

磯貝がナイフを手に取った後、握っている手に和生が手を重ねてこう言った。

 

 

「悠馬。お前はこのナイフを1人で振り抜くんじゃないさ。最初は切れ味の悪い刃でも、磨けば鋭く研ぎ澄まされる。俺達はこれまでそうやってチカラを付けてきたんだろ?」

 

 

「和生…」

 

 

「俺達は殺すつもりで行けばいいんだ。いつもみたいにな」

 

 

「そうだな…よし!いっちょやるかお前ら!!」

 

 

「「「おうっ!!」」」

 

 

男子達のそんな様子を見て殺せんせーはこう思っていた。

 

 

「(イケメンも高い能力も彼の一番の強みではない。決して傲らず地味な仕事も買って出て、自分よりもクラスのことを優先する。それが積み重なって生まれた『人徳』こそがリーダーとしての彼の一番の魅力でしょう。)どうれ、イケメン同士私も一肌脱ぎましょうかねぇ」

 

 

こうしてE組の体育祭が幕を開けたのである。




次回からは体育祭らしく運動しますよw
感想や質問など待ってます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

体育祭の時間 2時間目

いやー、大掃除とかでなかなか書くことが出来ずストレスが溜まっているトランサミンです。
今年の新年は小説を書きながら迎えたいなーとか考えてます。
はい、作者の私情はここまでにしてw
今回から競技が始まりますね。
和生くんの活躍は今回と次回の2回に分けて書きますね!
つまり本日は連投しますw
次回は確実にブラックコーヒーですなw


『100m走は我が校のエリートたちがリードを許す苦しい展開!!頑張れエリートたち!』

 

 

100m走を1位で走り抜ける木村への放送席の批難の声が会場を包む。

 

 

「やっぱここでも相変わらずだなーこのアウェイ感」

 

 

「言えよ、E組ってw」

 

 

いつもの事なので杉野も中村も苦笑いしている。

そんな彼らに岡野が話しかける。

 

 

「うちにもいるじゃん、すっごい味方が」

 

 

岡野が指さす方に顔を向けるとそこには

 

 

「ふぉぉ!カッコイイ!木村君!!もっと笑って笑って!!」

 

 

テンションMAXでカメラのシャッターを切る殺せんせーの姿があった。

その横にいる茅野や速水は苦い顔をしている。

 

 

「この学校の体育祭はいいですねぇ!近くで見れるので迫力がある競技を目立たず観戦できます」

 

 

「目立ってないといえば違うと思うんだけど」

 

 

殺せんせーの言葉に思わず渚は苦笑い。

確かに普段訓練しているだけあって本校舎の生徒たちとも互角以上に闘えている。

その結果殺せんせーから見れば教え子の頑張っている姿を間近で見られるため、嬉しいようだ。

その後も競技は続いたが、いくら暗殺者としての訓練をしていてもその道のスペシャリストには勝てないため、いい線は行くのだが1位を取れた生徒は僅かだった。

足の遅さを『正確無比』なパン食いで帳消しにして見せた原がパン食い競争で1位を取ったり、お互いに触発されたのかセクハラなどと言いながらも息ぴったりな前原と岡野が二人三脚で1位を取ったり。

茅野も障害物競走で尋常ではない編みくぐりを見せ1位を取ったのだが、周りから聞こえる『摩擦が無い』、『体に凹凸がなく抵抗が無い』などと言う言葉にキレかけているのを渚に宥められていた。

 

 

「次は借り物競走だな。桜井、糸成、渚頑張ってこいよ」

 

 

登竜門へと行こうとする3人に背後から杉野の激励が入る。

杉野曰く、体育祭の借り物競走はおかしなお題が紛れているため1位を取るのは至難の技の様だ。

 

 

「まぁ、本番は『棒倒し』なんだし程々に頑張るよ」

 

 

「カズキくん…一応1位を狙おうよ」

 

 

「俺は『秘密兵器』だ。だから自重しよう」

 

 

3人は思い思いの言葉を残して歩いていった。

生徒たちは3人を笑いながら送り出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先ずは渚だな、俺と糸成は同じレースだから先制攻撃入れてこいよ」

 

 

「うん、頑張るよ」

 

 

カズキの激励を受け渚がスタートラインに着く。

そして、弾けるような爆発音と同時に走り出した。

お題の紙を手に取った渚は真っ先に内容を考え始めた。

 

 

「えーっと、お題は『尊敬する人』か…。殺せんせーは人じゃ無いからここは…」

 

 

考えがまとまった渚はE組の座席の方へと走っていく。

 

 

「烏間先生!一緒に来てください!」

 

 

「俺か?わかった」

 

 

烏間の手を握り、渚はゴールまで走っていく。

審査員の女子生徒の所に着くと渚は質問された。

 

 

「じゃあお題の紙を見せてね、うんうん『尊敬する人』か。じゃあ尊敬してる所を教えて」

 

 

「えっと、烏間先生は誰よりも強いんですけど誰よりも僕たちのことを考えてくれてて。体育の時間以外でも放課後とかに忙しい中補講を付けてくれるところかな」

 

 

「はい、OKだよ」

 

 

「ありがとう!」

 

 

OKを貰った渚は烏間と共にゴール、見事1位を勝ち取った。

 

 

「尊敬する人か、俺でよかったのか?」

 

 

ゴールした後に烏間が渚に問いかける。

 

 

「はい、殺せんせーは人じゃないしやっぱり烏間先生は男子の憧れですから」

 

 

「ふっ、そうか」

 

 

烏間はそう言うと、E組の座席に戻っていった。

戻った烏間に中村が問いかけた。

 

 

「烏間先生〜!渚のお題は何だったんですか?」

 

 

「ああ、『尊敬する人』だそうだ」

 

 

E組の生徒たち曰く、そういった時の烏間の表情はどこか嬉しそうだったと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、行くぞ桜井」

 

 

「任せてよ」

 

 

最終レース、遂に和生と糸成の出番がやって来た。

 

 

「和生頑張って…!」

 

 

「はやみん〜もっと大きい声じゃないと聞こえないとおもうよ〜ん?w」

 

 

周りには和生を応援している後輩女子生徒たちがいる。

そんな状況に対抗意識を持ったのか速水は

 

 

「り、莉桜…そ、そうだよね。頑張れ和生!!」

 

 

大きな声で和生にメッセージを送った。

速水の声が聞こえたのか手を振って応える和生。

その姿に周りの後輩女子生徒たちも「きゃーっ!!」と黄色い声を上げているのだが、その対応は速水だけに対するものだと分かっているE組の生徒たちは後輩女子生徒たちを「(不憫だなぁ…)」と思っていた。

 

 

いよいよ競技がスタートし、和生と糸成は同時にお題の書かれた紙を手に取った。

糸成は迷うことなくE組の座席へ、しかし和生はその場で止まったまま動かなくなった。

 

 

「和生…?」

 

 

速水が心配そうに見つめる和生の姿のその理由は、彼のお題の中にあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のお題は……って!?」

 

 

紙を開いた瞬間表情が凍りつく、その理由は今の和生ではどんなに頑張っても解決不可能なお題だったからだ。

そのお題は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『家族』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体育祭は保護者や兄弟も観覧に来ることが出来るため、このお題は本来ならばさほど難しいものでは無いのだが和生は状況が違う。

父親は顔すら知らず、母親は既に他界してしまっている。

唯一の家族である律もコピーロイドで外へは出られないためモバイル律として応援してくれている。

 

 

「拙い…このままだとゴール出来ない」

 

 

和生は打開策を必死に考える、その頃には糸成はイリーナを連れて審査員の元へと息、審査員に苦笑いされながらも1位でゴールしていた。

本校舎の生徒たちも次々にゴールしてく中、和生は寂しそうな表情でE組の座席の方を見た。

そこには愛する女性が心配そうに自分を見つめる姿が、ここで和生はある人物の言葉を思い出した。

 

 

『たまには遊びに来なさい《未来の家族》になるかも知れないんだしな』

 

 

和生は考えた。

 

 

「(そうだ、今の家族じゃなくたっていい!『ずっと一緒にいる』って約束したんだ!だから今は彼女の元へ)」




感想まってます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

体育祭の時間 3時間目

みなさんブラックコーヒーの用意は出来ていますか?
今回は私の小説の一番の魅力(笑)である甘々恋愛小説要素たっぷりで行きたいと思います!



E組の生徒たちは和生の姿を見て混乱していた。

お題の書かれた紙を開いた瞬間から表情は曇り、悲しそうな顔でこちらを見ていたからである。

 

 

「桜井のやつどうしたんだ?」

 

 

「まさかとは思いますが…」

 

 

「殺せんせー!和生はどうしたって言うんですか!」

 

 

前原、磯貝が殺せんせーに詰め寄る。

 

 

「あのお題には和生くんにとって最も難しく、最も簡単なものが書かれているのでしょう」

 

 

「どういうこと殺せんせー…?」

 

 

矢田が殺せんせーに不安そうに問いかける。

 

 

「みなさん心配する必要はありませんよ。彼なら大丈夫、和生君は1人じゃありませんから。ほら見てください」

 

 

殺せんせーが触手で指した方を見ると、殺せんせーの言葉通り和生が先程とは打って変わって晴れやかな表情でこちらに走ってきていた。

 

 

「和生…」

 

 

「ごめん凛香、待たせちゃったね」

 

 

「えっ?」

 

 

「さっ、いこ!」

 

 

生徒たちの元へと走ってきた和生は真っ先に愛する彼女に話しかけた。

速水は混乱したまま和生に手を引かれて審査員のいる所まで連れていかれる。

 

 

「ヌルフフフ、それでいいんですよ和生君。自分の信じるままに走り抜きなさい」

 

 

殺せんせーの表情は笑ってて顔には大きな2重丸が浮かび上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「和生、これはどういうことなの?」

 

 

和生に手を引かれなが速水は彼に問いかけていた。

 

 

「ごめんね、審査員の所に行けば分かるからチョットだけ待っててね」

 

 

そういって速水にウィンクする和生。

先程までの悲しそうな表情とは真逆な輝いた瞳に速水は従うしかなかった。

審査員の所まで到着した和生はお題の書かれた紙を手渡した。

次の瞬間審査員の顔が火のついたように赤くなり、直ぐに質問をしてきた。

 

 

「あ、あの…お題は『家族』なんですけど…」

 

 

「えっ、そうなの?」

 

 

何も知らなかった速水は審査員の言葉に耳を疑う。

和生の方を見てそうなのか確認すると、彼は曇のない表情で言い放った。

 

 

「うん、だってその紙には『家族』としか書かれていないじゃん?つまりはね?『未来の家族』でもいいってことでしょ?」

 

 

「「え?」」

 

 

その場にいた審査員たちは彼が何を言っているのか分からないといった様子だが、彼の意図を理解した速水の顔はこれでもかという程赤くなっていた。

 

 

「俺の母親は既に死んでしまっているし、父親は行方が分からない。だからこのお題はさっきまでの俺にとっては難しすぎたよ。でもさ?こんな俺のことも受け入れてくれる人がいる。ここにいる彼女は俺に『ずっと一緒にいる』って言ってくれたんだ。この意味分かるよね?ずっと一緒にいるんだ。ちゃんと彼女の親御さんにも挨拶はしてる。だから問題はないよね?」

 

 

「は、はいっ。ど、どうぞゴールしてください」

 

 

「うん、ありがとう♪」

 

 

1通りの説明をした後、和生は堂々とゴールを通り抜ける。

もちろん速水の手に指を絡めたままに。

隣を歩く速水は赤い顔で下を向いたまま彼に付いていく。

会場の雰囲気が一瞬静まった後、混沌と化した。

主に女子の歓声で。

 

 

「あ、あれってプロポーズよね!?」

 

 

「さ、桜井先輩に彼女がいたなんて…」

 

 

「きゃーっ!!私もあんなこと言われたい!!」

 

 

収拾がつかなくなった会場を教師陣が鎮めにかかる。

和生と凛香は結局最下位であったものの、どこか和生の表情は満足していて、E組の座席へ戻る時には最高の笑顔で戻ってきた。

 

 

「凛香ごめんね、恥ずかしかったよね?」

 

 

「ばか…///」

 

 

ふたりの様子を見てE組の雰囲気がホッコリとした様な気がした。

 

 

「和生君もやりますねぇ」

 

 

「殺せんせー、だって家族って言うのは自分が命をかけてでも守りたいもので何より大切なものでしょ?だったら俺は迷わず凛香だって答えるよ」ニコッ

 

 

彼のそんな様子を見て生徒たちは思った。

 

 

「「「(び、美少年だっ!!)」」」

 

 

しかしそんな甘い雰囲気も放送席の言葉によって一気に崩れさる。

会場は混沌と化しているが、競技は続行されている。

現在行われているのは綱引きだ、その光景に会場は一気に静まり返った。

何故ならA組には屈強な外国人助っ人がいることが分かったからである。

 

 

 

『次の競技は棒倒しだ!E組VS我が校の最強エリート浅野君率いるA組の戦いだ!我らがA組がE組を成敗してくれるぞ!!』

 

 

放送席のアナウンスに今度は3年男子たちが歓声を上げた。

先程の和生と速水のやり取りを見て嫉妬したのだろうか、「潰せ」や「やっちまえ!」と言った暴言まで飛び交っている。

そんな状況に我らがE組リーダーである磯貝の表情に曇が出来た。

 

 

「殺せんせー、俺にはあんな助っ人を呼べるような語学力はない。とても浅野には及ばないんじゃ…」

 

 

「確かにそうかもしれませんね。彼を一言で言うなら『傑物』です。いくら君が万能でも社会に出れば君より上がいるのは必然です、彼のようなね」

 

 

「…どうしよう。俺のせいで皆が痛めつけられたら」

 

 

不安そうにそう告げる磯貝に殺せんせーは優しく語りかける。

 

 

「社会において、1人の力には限界がある。仲間を率いて戦う力、その点では君にかなうものはここにはいません」

 

 

そういって殺せんせーがカメラを構えると磯貝の周りに男子たちが棒倒しの棒を持ってやって来た。

殺せんせーは笑顔でシャッターを切った後、磯貝が置いていた鉢巻に触手を伸ばす。

 

 

「君がピンチに陥った時は、必ず仲間が助けてくれる。それが君の人徳です。先生もね、浅野君よりも君の担任になれたことが嬉しいですよ」

 

 

殺せんせーはにゅやりと笑ってて磯貝に鉢巻を結んだ。

全員がいい表情になった所で生徒たちはグラウンドの真ん中へと走り出す。

 

 

「和生!」

 

 

「なに凛香?」

 

 

「絶対勝ってね、怪我しないで戻ってくるの待ってるから」

 

 

「分かってるよ、俺だけの『プリンセス』」

 

 

そう言って和生は速水の額にキスを落として仲間の元へ走っていった。

 

 

「ばか…でも大好きだよ。私の『王子様』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「磯貝くん」

 

 

「ん、どうしたんだ片岡」

 

 

リーダーとして戦場に向かう磯貝を呼び止めたのは片岡だった。

 

 

「私は磯貝くんに学校をやめて欲しくないから勝ってほしい。だけど怪我だけはしないで…?あなたが傷付く方が私はいや」

 

 

「それって…」

 

 

「うん…」

 

 

「とりあえずその話は俺が無傷で帰ってからにしよう。絶対に戻る、待っててくれよな」ニカッ

 

 

磯貝は片岡に最高の笑顔を向けて戦場へと走っていき、相棒と合流した。

 

 

「悠馬どうしたんだ、そんなに嬉しそうな顔して」

 

 

「お前らと一緒に戦えることが本当に嬉しいんだよ。よっし皆!!いつも通り殺る気で行くぞ!!」

 

 

「「「おうっ!!」」」

 

 

一方A組では

 

 

「彼らはライオンに処刑される異教徒だ。A組の名を聞くだけで震えて鉛筆も持てないようにしてあげよう」

 

 

「「「おうっ!」」」

 

 

常に仲間と並びたち共に歩むリーダーと常に先を歩き道を標すリーダー、相反する両者がぶつかり合う時どんな結果が待ち受けるのだろうか!

今!!戦いの火蓋が切って落とされる!!




なにやら磯貝くんと片岡さんがいい雰囲気だったりして?
次回は棒倒しの話にやっとはいります!
感想待ってます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

体育祭の時間 4時間目

さぁさぁ遂に棒倒しの開幕です!
政経の課外日程が終了したので少し時間が増えますね。
頑張って更新していきたいと思います。


棒倒し。

そのルールは至ってシンプルだ。

相手の棒を倒せば良いのだから。

しかし、この戦場には倒すまでの『過程』を最重要視する、傑物がいた。

 

 

「(観客とは白熱した勝負も好きだが、圧倒的な虐殺も好きだ。今この会場はさっきまでの桜井の行動もあり、どれだけE組を吹っ飛ばすのか楽しみにしてるだろう。そしてE組はこの人数さで勝ちたいならば攻めるしかない筈だ。責めに来たところを鉄壁の布陣で潰してやろう)」

 

 

A組を率いる傑物こと浅野学秀は臨機応変に対応できるよう、陣形をカウンター型にとらせている。

しかし、E組の陣形はそんな浅野の思考を読んでいるかのようであった。

 

 

「お、おい…勝つ気あるのか?アイツら」

 

 

「!?」

 

 

「E組は攻めるやつが1人もいないぞ!!」

 

 

E組の陣形は殺せんせーの完全防御形態をモチーフとした完全守備。

それぞれのリーダーの戦略がせめぎあう。

 

 

「(攻めてこいよ、浅野!)」

 

 

「(誘い出すつもりか、だが甘いぞ)ケヴィン、行け」

 

 

「オーケー浅野」

 

 

アメリカアメフト代表であるケヴィンがギチギチと筋肉を軋ませながらE組へと進軍してくる。

彼に続くように数人のA組生徒も突撃してくる。

 

 

「(僕等の目的はただ勝つだけじゃない。E組を全員潰すことだ。怯えた奴らが飛び出してくればこちらの思う壷だ)」

 

 

浅野の読み通り、E組から吉田と村松がA組に向けて突貫する。

 

 

「くそが!!」

 

 

「無抵抗でやられてられっかよ!」

 

 

しかし、2人の攻撃はケヴィンのタックルで無駄になる。

2人は10mは先である筈の観客席まで吹っ飛ばされていた。

そんな姿に女子たちに不安の色が満ちる。

 

 

「やばいよ殺せんせー!1人ずつ殺られたら守っててもさ…」

 

 

茅野の声に殺せんせーは何も言わない。

ただ洗浄をみていた。

 

 

「亀みたいに守ってないで攻めたらどうだ?」

 

 

英語で挑発してくるケヴィンにカルマが挑発を返す。

 

 

「いーんだよこれで。あの2人はうちの中では最弱って感じ?御託はいいから攻めてくればぁ?」

 

 

「ふん、では見せてもらおうか」

 

 

ケヴィンはE組に向かって突進、そんな彼の対処にとったE組の戦法は…!

 

 

「今だ皆!『触手』!」

 

 

磯貝の掛け声と共に棒を守る生徒たちが上に飛んだ。

 

 

はなから棒ではなく生徒を狙っていたケヴィン達は地面に倒れ、その上にE組が降ってくる。

 

 

陣形、触手絡み

 

 

敵の攻撃を躱し、棒を半分倒すことで敵を自らの防御に絡めとるのだ。

E組の暗殺教室らしい棒を凶器にした戦法だ。

浅野はその戦法に素早く適応、E組との消費人数差を計算し両翼の遊撃部隊を進軍させる。

 

 

「攻撃部隊!出るぞ!」

 

 

磯貝の掛け声に続いてカルマ、前原、木村、岡島、杉野、そしてリーダーの磯貝が前線へと走り出す。

両サイドから攻めてくるA組の真ん中を突っ切って彼らと交差した時、A組が反転してきた。

 

 

「攻撃はフェイクかよ!?」

 

 

浅野が仕掛けた巧妙な罠によって敵に挟まれる磯貝たち、そのまま進めば格闘の名手であるジョゼとカミーユに潰されてしまうだろう。

そんな生徒達の姿に烏間が殺せんせーに問いかける。

 

 

「ここからはどうする。防衛省からの連絡では生徒に怪我させることはNGだ」

 

 

「ヌルフフフ、大丈夫ですよ。社会科の勉強がてら、わたしが助言しておきました」

 

 

そういう殺せんせーの表情はニュヤリと笑っており、なにかたくらんでいるように見えた。

 




申し訳ありません!
執筆している携帯が不調だったのだ細かく切って投稿します!
すぐに続編を出しますので少々おまちを!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

体育祭の時間 5時間目

区切ってしまって申し訳ない!
続きです!(〃・д・) -д-))ペコリン


『2倍の敵を討ち取った好例としては、先生はカルタゴのハンニバルが好きですねぇ』

 

 

『…ああ、古代ローマを苦しめたっていう』

 

 

『道無き道を進軍して、敵が警戒していない場所に戦場を創り出す。防御を工夫して、秘密兵器も投入する。作戦のすべてに常識はずれを混ぜなさい。E組の暗殺者たちは君の描く奇策を実行できるだけのチカラがちゃんとあります』

 

 

この殺せんせーとの会話がE組たちの勝利の方程式だ。

逃げ場を失いつつあった磯貝たちは観客席へと闘争を始める。

 

 

「場外なんてルールは無かった。来なよ、この学校全てが戦場だ」

 

 

カルマの挑発にのったジョゼ、カミーユを含むA組が彼らを追いかけて観客席に進軍する。

会場はパニックに包まれていた。

しかし浅野はちゃんと見切っていた。

A組の目的はE組を潰すこと。

一方E組の目的はA組の棒を倒すこと。

目的がしっかりしているため対策が取りやすいのだ。

そんな中会場の雰囲気も変わり始めていた。

今度はどんな手を使ってE組が勝つのか…という、興味の視線が飛び交っている。

 

 

「磯貝、木村、赤羽の3人には気をつけろ!位置取りをして監視するんだ!」

 

 

敵と味方の能力と顔を把握した浅野の戦術を殺せんせーは褒めている。

 

 

「彼にとってはここまで想定内のことなのでしょう。親譲りのいい能力ですねぇ。しかし我らのリーダーもさる事ながら素晴らしいですよ。ヌルフフフ」

 

 

そんな殺せんせーを知ってか知らずかカルマが磯貝に合図を促す。

 

 

「ねー磯貝。そろそろじゃね?」

 

 

「…ああ」

 

 

磯貝はチラリとA組の棒の付近に視線を飛ばす。

そこにはなんと、最初に吹き飛ばされた二人の姿が。

磯貝が手を上げると2人はA組の棒に飛びついた!

 

 

「オマエたちいつの間に…!」

 

 

「へっ、受身は嫌ってほど習ってっからな」

 

 

「客席まで飛ぶ演技の方が苦労したぜ」

 

 

吉田と村松の奇襲に焦る浅野。

2人は吹き飛ばされた振りをして、観客席を回ってA組の死角に紛れていたのだ。

 

 

「逃げるのは終わりだ!!全員『音速』!!」

 

 

「「「よっしャア!!」」」

 

 

これを機に客席を逃げていた6人が一斉にA組の棒に飛びかかる。

棒に対する守りの人数差ならE組が勝る展開となった。

 

 

「フンガー!降りろチビ!!」

 

 

長身のサンヒョクが強引にE組を剥がそうとするとA組の棒がバランスを崩した。

 

 

「や、やめろサンヒョク…棒が倒れる」

 

 

「じゃ…打つ手がないのか…!?」

 

 

「…そうじゃない。支えるのに集中しろ、こいつらは僕1人で片付ける」

 

 

そう言った次の瞬間、彼は吉田の手首をつかんで捻りあげ地面に突き落とし、岡島に蹴りを入れて戦力を削り出した。

訓練を受けたE組の暗殺者をいとも容易く倒した浅野は磯貝の頭を踏み台にして棒の頂点に立った。

 

 

「君たちごときが僕と同じステージに立つ。蹴り落とされる準備は出来てるんだろうね?」

 

 

そんな浅野の姿をみて渚は言った。

 

 

「あ、あのラスボス感、まさに魔王だよ…」

 

 

そんな時、棒の支えに徹していたあの少年が足早にA組へと駆けていく。

 

 

「(ああ、そうだ。魔王を倒すのは勇者って決まってるんだ)」

 

 

渚にそう感じさせた少年、桜井和生が進軍を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

E組は棒に飛びついたものの防戦一方、そんな様子に速水が不安そうな声を上げる。

 

 

「…やばい、詰みかけてる。客席に散ってたA組も戻り始めてるしこのままじゃリンチされるのが目に見えてる」

 

 

彼女の言葉に女子たちの顔に陰が指す。

しかし、殺せんせーはそんな少女たちにこういった。

 

 

「1人で戦況を変えられるだけのチカラをもったリーダー。浅野くんが指揮をとる限りA組は負けないかもしれない。磯貝君はそういうリーダーには慣れないでしょう」

 

 

「そ、それじゃあ…」

 

 

殺せんせーが話している時、浅野が磯貝を蹴り落とした。

そんな様子を見た片岡が顔を伏せる。

そんな時、倒れる磯貝の元へ並び立つものが1人。

 

 

「悠馬、大丈夫か?」

 

 

「随分と遅い登場だな和生」

 

 

そんな様子をニヤニヤしながら見ている殺せんせーは言葉を続ける。

 

 

「磯貝君には『相棒』が居ますから。1人で戦う必要なんて全くないんですよ」

 

 

並び立つ2人の勇者がいざ魔王討伐へと反撃の狼煙を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なりを潜めていたと思っていたが。このタイミングで来るか、桜井」

 

 

「悪いけど行かせてもらよ。悠馬は戦況に応じて指示を出してくれ、信じてるよ相棒」

 

 

「ああ!任せとけ!」

 

 

そういって拳を合わせた後、和生は全速力で浅野の待つA組の棒へと駆け出した。

観客席から戻ってきていたジョゼとカミーユが彼に立ちはだかる。

 

 

「ここは通さん」

 

 

「さっきまでの恨み晴らさせてもらう」

 

 

2人は体制を低くして和生にタックルしてくる、そんな彼らに対し和生は1度スピードを完全に殺してバックステップ。

そして次の瞬間、中を舞った。

 

 

「随分と鈍い刃じゃないか。そんなんじゃ俺のことは捉えられないよ」

 

 

彼の姿をみていた女子たちは殺せんせーに何が起こったのか説明を求めた。

 

 

「桜井くんはなにしたの?」

 

 

「彼は、A組の2人が体勢を低くしていたのをちゃんと見抜いていたようですね。バックステップで敵との距離をしっかりと測り、彼らを支点に前方宙返りで躱したのでしょう。いつの間にあんな事を教えたのですか?烏間先生」

 

 

殺せんせーの言葉に女子たちの視線が烏間へと集まる。

 

 

「放課後の護身訓練でのことだ。桜井くんに頼まれてな、格闘術やフリーランニングの応用も教えている。飲み込みの速さに俺も驚いていたところだ」

 

 

そんな彼らの会話を知ってか知らずか、和生は再び進軍を開始した。

 

 

「お前たち!弾丸の装填は出来てるか!?」

 

 

和生の進軍を確認した磯貝は棒を守っていた仲間に声をかける。

 

 

「「「おう!」」」

 

 

次の瞬間大勢を低くした磯貝の上を5発の弾丸が飛んでいった。

その弾はA組の棒を捉え、浅野を苦しめる。

そしてそこにあの少年がやってくる。

 

 

「渚!背中かりるよ!」

 

 

弾丸の1発であった渚の背中を踏み台にして和生が棒の先端へと飛びかかる。

しかしそのまま黙ってやられる浅野ではない。

 

 

「(コイツを凌げば僕らの勝ちに等しい)」

 

 

しかし、そんな彼の心情を読み取ったのか和生は不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「こい!糸成!」

 

 

棒の下では磯貝がジャンプ台のように構え、そこに糸成が走り込んでていた。

そんな様子を見た殺せんせーは嬉しそうにこういった。

 

 

「暗殺者はその数瞬を逃しません。2本目の刃を如何に抜くが速いか」

 

 

そうだ、一本目の刃である和生はダミー、磯貝の手を踏み台にして大ジャンプした糸成がA組の棒にしがみつき、全体重を乗せて地面に叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、勝った勝った」

 

 

A組に勝利したことが嬉しいのか岡島の顔がニヤけている。

そんな時磯貝が後輩女子生徒に捕まっているのを目撃した。

 

 

「磯貝先輩〜!!カッコよかったです!」

 

 

「おー、ありがとな。でも危ないからマネすんなよ?」

 

 

そう言って椅子の片付けを手伝う磯貝はやはりイケメンだ。

それと同時にE組の男子達は感じていた。周りの評価が変わり始めていることを。

それは自分たちのチカラに酔っているのかもしれない、しかし勝利の余韻というものはやはり甘美なものなのだ。

 

 

「磯貝」

 

 

そんな彼らの元に浅野がやってくる。

 

 

「浅野、約束だ。今回のことは黙っててくれよな」

 

 

「僕は嘘はつかない。安心してくれ。姑息な手を使ったりはしないさ」

 

 

外人助っ人をよぶなどここまでやっておいてよく言うなと思いながらもE組の男子達は磯貝の無事を喜んだ。

浅野と分かれた後、彼らは殺せんせーや女子たちが待つ所へと移動した。

無事に勝利の凱旋を果たした男子に女子たちが労いの言葉をかける。

 

 

「「「おかえり〜!」」」

 

 

女子が笑顔で迎えてくれたため男子たちの調子がさらに上がるという悪循環が起こるのだが、今回ばかりは烏間や殺せんせーも見逃しているようだ。

 

 

「片岡、約束通り怪我しないで戻ってきぞ」ニカッ

 

 

「うん、ありがとうね」

 

 

まるで長年連れ添った夫婦のようなやり取りをする2人に和生が茶々をいれる。

 

 

「2人って付き合ってるの?」

 

 

「ん、なんでだ?」

 

 

「だって、なんかすごい信頼しあってるというか。お互いのこと分かってるというかな」

 

 

「付き合ってないからな?お前みたいに」

 

 

「ふーん」

 

 

よく見ると和生だけでなく周りの生徒たちもニヤニヤしている。

そんなとき我らがE組きってのムードメーカー中村が声を発した。

 

 

「とりあえず打ち上げやろーよ!」

 

 

「いいねいいね!」

 

 

「あっ、わたしもやりた〜い!」

 

 

彼女の意見に矢田と倉橋も賛同する。

明日は休みと言うこともあり、この熱が冷めないうちにみんなで遊ぶのも悪くないだろうと打ち上げが決定した。

 

 

「場所はどうする?」

 

 

「やっぱカラオケとか?」

 

 

様々な意見が飛び交う中、速水が恐る恐る声をあげる。

 

 

「あのさ…律とも一緒にやりたいからあんまり和生の家から遠くない方がいいと思う」

 

 

お祭りの時は会場と和生の家が近かったこともあり、外出できたが比較的律のコピーロイドは外に出られないのだ。

その意見に和生が賛成の声を上げる。

 

 

「じゃあいっそうちでやる?1人500円出してくれれば料理とか出すよ」

 

 

「お、い〜ねそれ」

 

 

「和生くんの家、いってみたいかも」

 

 

カルマと渚は和生の家でやることに賛成のようだ。

 

 

「いいのか?和生」

 

 

「うん、なんなら泊まってって暮れてもいいよ。大きめの部屋が幾つかあるし」

 

 

磯貝の問いかけに和生はにこやかに答える。

 

 

「じゃあ男子は18:00に駅集合ね。泊まりたい人は準備しといてね。女子は凛香に付いてくれば分かるはずだよ」

 

 

「「「は〜い」」」

 

 

こうして打ち上げ会場が決まったのだが、このとき和生は知らなかった。

自分の発言がこんなにもカオスな状況を生むことになるということを。




体育祭編次回でやっと完結ですね!
次回は打ち上げ回です!
お楽しみにしていてください!
感想などもお待ちしています!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

打ち上げの時間

ついに明日暗殺教室2期スタートですね。
非常に楽しみで御座いまする。


18:00 駅前にて

E組の男子たちがぞろぞろと集まっていた。

 

 

「流石にこの人数いると目立つな」

 

 

菅谷がそういうのもよく分かる。

中学生と言えどもここまで集まると周りの人もチラチラと振り返ってくるのだ。

そんな彼らは和生の先導に続いて歩いていくのだがそんなとき和生に前原があることを聞いてきた。

 

 

「なー桜井。泊まっていいとか言ってたけどよ、どうすんだ?この人数」

 

 

前原が危惧しているのは人数が入る部屋があるのかということ、和生の家に来たことのある磯貝は大丈夫な事をわかってはいるが寺坂、吉田、村松以外は泊まる意思のようでかなりの人数がいる。

 

 

「気にしなくていいよ。俺と律だけじゃ広過ぎる位の家だからね。正直いうと宴会場みたいなのが2つあるからさ」

 

 

家に宴会場とは意味不明なんだよと言う和生はあっけらかんとしているが周りの男達は正直どんだけ広いんだと思想を膨らませている。

そんな話をしている間に和生の家に着いた。

それをみた男子たちの第一声は

 

 

「「「で、でかい…!」」」

 

 

あまりの大きさに驚いているようだ。

そんな様子を気にもとめない和生は自宅の敷地へと入っていき、玄関にある大量の靴を整理し始めた。

続いて男達もおじゃまする事にする。

 

 

「「「おじゃましま〜す」」」

 

 

男子たちは和生に促されリビングへと入っていく。

そこには女子たちが既に到着しており、楽しそうに談笑していた。

少し遅れて靴を整理していた和生が合流、そこで女子たちの荷物を見て恐る恐る声をかけた。

 

 

「まさかとは思うけど…」

 

 

「お、桜井ちゃ〜んじゃましてるよ〜」

 

 

中村がやけにニヤニヤしながら和生に反応する。

 

 

「女子も泊まるつもりだとは想定外だ…」

 

 

女子たちは全員が宿泊用の荷物を持ってその場にいることに和生は絶望の表情をする。

年頃の男女が同じ屋根の下で一夜を過ごす、何が起こるかわかったもんじゃない状況に右手で頭を抑えた。

 

 

「ごめん…止められなかったの」

 

 

頭痛がしているかのような様子の和生に速水が駆け寄る。

 

 

「盲点だったよ…発案者は中村さん?」

 

 

「まーね♪でも矢田ちゃんもノリノリだったもんねー♪」

 

 

中村と矢田という女子を引っ張る二人の発案ということもあり全員が賛同したようだ。

男子達としては良く狭間も乗ってくれたなと感じているが、それを理解したのか狭間が口を開いた。

 

 

「男どもが寝てる間に呪いをかけ放題なんて滅多にない機会じゃない。楽しまなきゃそんよね。フフフ」

 

 

邪悪な笑みを浮かべる彼女を見て、男子の背筋におカンが走ったのは言うまでもない。

 

 

「と、とりあえず夕飯の支度をするからみんなは遊んでて」

 

 

「「「は〜い!」」」

 

 

和生は現実逃避するかのようにキッチンに逃げていった。

そんな彼の元に数人の男女がやって来た。

 

 

「和生くん、手伝うよ」

 

 

「私たちもお手伝いするね」

 

 

「料理なら任せて」

 

 

渚、神崎、原の3人が和生の手伝いを名乗り出た。

3人はキッチンにいる和生に指示を求めるが3人がどれくらい料理ができるのか知りたかった和生はそれぞれに好きなものを作るようにお願いした。

特にE組の母とまで呼ばれる原の実力には興味があったようだ。

原は巨大な寸胴鍋に肉や野菜を入れてスープを作るようだ原曰く

 

 

「温かい料理は心を落ち着けてくれる」

 

 

だそうだ。

渚は和生と協力してホワイトソースを作り、オーブンに入れてグラタンを作っていた。

その間に和生はパスタを茹でており、余ったホワイトソースでカルボナーラも作っていた。

そんな和生に神崎が話しかけてきた。

 

 

「桜井くん、味見して欲しいんだけど」

 

 

「いいけど何を?」

 

 

「ちょっと待ってね」

 

 

神崎が作っていたのは唐揚げの甘酢餡掛けだ。

食欲をそそるいい香りに和生の表情が緩む。

 

 

「神崎さん凄いね。美味しそうだよそれ」

 

 

「そうかな?美味しいかどうかは食べて判断してね。はい、あ〜ん」

 

 

「えっ?」

 

 

「なぁに?」

 

 

現状を理解出来ていない和生、E組1の美少女と呼ばれる神崎が自分に向けて唐揚げをつまんだ箸を差し出している。

 

 

「ほら、早く味見して?」

 

 

無垢な笑顔でそう言ってくる神崎に和生は焦り渚に助けくれと目配せをする。

一方渚はというと苦笑しながら和生を見たあと、リビングでゲームや談笑をしているクラスメイトたちを見た。

和生の恋人である速水は矢田や茅野と談笑に花を咲かせており、こちらを見てはいない。

しかし神崎にベタ惚れな杉野はというとその状況を凝視しており、今にも崩れ落ちそうになっていた。

 

 

「桜井くん…?」

 

 

呆然とする和生に神崎が首をかしげた。

 

 

「わたしの料理なんか食べたくないの…かな?」

 

 

寂しそうな顔をする神崎に和生は腹をくくった。

 

 

「(凛香…杉野…本当にごめん。今回だけは見逃してくれ)そ、そんなことないよ。食べる食べる」

 

 

「じゃあはい、あ〜ん」

 

 

「あ、あ〜ん…」

 

 

笑顔の神崎から食べさせられる料理は口に入った瞬間にバルサミコ酢の風味が広がり、肉を噛めば噛むほど旨みが溢れる素晴らしいものだった。

だが和生は美味しさとともにクラスメイトと恋人への罪悪感で一杯であった。

 

 

「おいしい?」

 

 

「あ、ああ、うん。すっごく美味しいよ」ニコッ

 

 

どうにか笑顔を作り上げた和生はリビングに視線を向ける、速水は相変わらず気づいていないようだが杉野の顔は死にそうなものになっている。

和生は心の中で杉野に何度も謝ったのであった。

この和生の行動がのちに波乱を呼ぶことになる。

 




いやー、修羅場にするためにいろいろと考えた結果がこれですよ。
なかなか難しいものですね。
それと杉野本当にスマンかった。
感想待っております、夜にはまた投稿できるようにがんばりたいとおもいます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

嵐の前の静けさの時間

私生活に追われ、勉強に追われ、なかなか更新出来ない悲しみに包まれているトランサミンです。
人生って難しいなぁ…


夕食の準備を終えた4人はリビングのテーブルとさらに組立式の簡易テーブルをだしてクラスメイトたちを呼んだ。

そこで各々が集まってできる集団で行われている会話を見てみよう。

 

 

「渚ぁ〜俺はどうしたらいいんだぁ…」

 

 

「す、杉野おちついて…」

 

 

項垂れる杉野と慰める渚の周りにはカルマと千葉がいる。

 

 

「まぁまぁ杉野そんなときもあるっしょ〜。それに桜井が速水さん以外に靡く訳ないじゃん?」

 

 

「まだチャンスはあるんじゃないか?」

 

 

どうやら3人は先程の件で落ち込んだ杉野を立ち直らせているようだ。

 

 

「でもよぉ?もし…もしも神崎さんが…うわぁ…」

 

 

杉野が神崎に好意を寄せているのは周知の事実、こうなってしまった以上渚たちは困惑するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神崎ちゃん〜さっきは楽しかった?」

 

 

「莉桜ちゃん?」

 

 

今度は中村、神崎、茅野、奥田の4人だ。

先程の1件に気付いた中村が神崎に詰め寄っている。

 

 

「なになに!神崎さんがなにかやったの?」

 

 

「えぇーっと。どうしたんですか?」

 

 

興味津々の茅野とキョトンとしている奥田、そんな様子に悪ノリした中村の追求に拍車がかかった。

 

 

「神崎ちゃんがさっき桜井ちゃんにあ〜んしてたんだよ〜?」ニヤニヤ

 

 

次の瞬間、茅野と奥田の表情が凍った。

この人は何を言ってるんだ?神崎さんがそんな事をするはずがない。

 

 

「うん、したよ?」

 

 

さらに凍った。

 

 

「な、なんで?」

 

 

「お料理の味見をしてもらってたの」

 

 

「な、なんであ〜んなの…?」

 

 

「何でだと思う?」

 

 

「えぇーっと。その…あれですかね!桜井くんお料理上手ですから!」

 

 

実に奥田らしい素直な答えだ。

しかし茅野はというと苦い顔をしており、中村は腹を抱えて笑っている。

 

 

「神崎さん…もしかして…?」

 

 

「ふふっ」

 

 

彼女の笑う姿を見た茅野は思った。

絶対楽しんでるよこの人!!!!

 

 

しかし中村に予想はついていた。

何故かというと…

 

 

「(まぁ、沖縄であんだけ褒められたらそりゃ落ちちゃうよね。はやみんと喧嘩にならなきゃいいけど)」

 

 

彼女が感じたものは事実なのか、はたまた外れているのか。

今後の展開に期待である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わって桜井、磯貝、前原、竹林グループ。

 

 

「そういや最後は竹林と寺坂の2人で棒を守らせてたけど外野からなんか言われたりしなかったか?」

 

 

前原が聞いているのは棒倒しでのこと。

最後は竹林と寺坂以外での全員攻撃を仕掛けたため、守りはザルであった。

たった2人で外国人をも止めていた2人に外野が何も言わないわけがないのだ。

 

 

「梃子の原理と言ったらみんな黙ったよ。桜井の言う通りだった」

 

 

「梃子?あれか?支点力点作用点の」

 

 

「そうさ」

 

 

「和生はなんでそんな事を言わせたんだ?」

 

 

「本校舎の生徒ってさ?A組以外は大したことないから梃子って言えば納得しそうだなぁって」

 

 

「和生…」

 

 

このとき磯貝は思った。

本校舎の生徒は和生の中でここまで評価が低いのかと。

そんなことを思っていると今度は話の方向が磯貝に向いた。

 

 

「というか、悠馬はいつ告白するの?」

 

 

「奇遇だな桜井!俺も聞きたかったんだ!」

 

 

和生と前原が嬉々とした顔で磯貝を問い詰める。

 

 

「い、いや。いつと言われてもな?」

 

 

同様する磯貝に竹林が声をかける。

 

 

「いいのかい?もしも殺せんせーを暗殺出来なければ未来はない。想いを伝える時間は少ないと思うが」

 

 

「た、たしかに…」

 

 

今の磯貝には今日の棒倒しを勝利に導いたリーダーの面影はなく、3人に言いくるめられている。

 

 

「悠馬、今夜な」

 

 

「はぁ!?」

 

 

「嫌なら今後、修行のメニューは3倍です」

 

 

「くっ…それは流石に辛い」

 

 

逃げ場をなくした磯貝は力無く肩を落とした。

 

 

「どうする?」

 

 

「わ、わかった。すればいいんだろすれば!その代わり協力しろよお前ら!」

 

 

「「「仰せのままに」」」

 

 

こうしてここでは磯貝の告白が決定していたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてラスト




感想待っておりますよぉー!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

修羅場の時間

みなさん安心してくださいね!
主人公はヒロイン一筋ですからっ!!
そして暗殺教室2期!!
射的でしょんぼりする凛香が可愛いすぎて発狂しました!!ww
これからが楽しみですねぇ。


「なんでよ…」

 

 

「り、凛香ちゃん落ち着いて!」

 

 

「き、きっと何かの間違いだからね!?大丈夫だよ!」

 

 

速水は気づいていた、神崎が自分の彼氏にあ〜んをしていた事を。

周りに悟られないように気丈に振舞ってはいたものの、矢田と片岡に見つかったという訳だ。

 

 

「ちょっと神崎ちゃん呼んでくる!」

 

 

「矢田さんお願い!!」

 

 

片岡の言葉に頷いた矢田。そうして少しして神崎を連れてきた。

 

 

「ねぇ神崎さん。凛香ちゃんが言ってることは本当?」

 

 

「うん、そうだけど」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、凛香は涙ぐんだ目を擦りながら和生の元へと向かい出した。

 

 

「こないで…!」

 

 

「…っ」

 

 

凛香から放たれる僅かな殺気に片岡は怯んで動けなくなった。

一方で矢田が神崎を問い詰めていた。

 

 

「何でそんなことしたの?」

 

 

「桜井くんお料理上手だからかな?」

 

 

「ほんとにそれだけ?」

 

 

「うーん。たしかに他にもあるけど」

 

 

「教えて教えて」

 

 

「最近やったゲームでね?男の子ああいう事すると喜ぶってあったからやったの」

 

 

「じゃあ何で桜井くんなの?」

 

 

「そのゲームの主人公に似てたの。すっごくカッコイイんだよ?」

 

 

そのセリフにキョトンとする矢田。

 

 

「それって…桜井くんが好きなんじゃなくて。桜井くんに似てるゲームのキャラが好きってこと?」

 

 

「うん!」

 

 

その言葉を聞くと同時に矢田は思った。

 

 

「(桜井くん…とんだとばっちりを受けるんじゃ…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「和生!!!!どういうことよ!!!!!」

 

 

「り、凛香?」

 

 

「なに?浮気なの?有希子とあんなことするなんて」

 

 

「あ、あれは仕方なく!」

 

 

リビングに速水の怒号が鳴り響く。

クラスメイトたちが全員振り向いた。

 

 

「私だってまだ和生にそういうことしてないのに!ねぇ、何で!!」

 

 

「こ、断るのも悪いかと思って…」

 

 

なぜ彼が怒られているのかわからないけどクラスメイトたちはその場にいたであろう渚に説明を求めた。

 

 

「いやまぁ、神崎さんが和生くんに料理の味見を頼んだんだけど、そのやり方が…ね?」

 

 

渚の言葉ですべてを理解したクラスメイトたち(神崎と矢田、渚、杉野、カルマ、千葉、磯貝以外)は和生に軽蔑の目を向けた。

 

 

「え、あ、いや。ごめんなさい…」

 

 

周囲からの痛い視線に和生は謝る。

しかし彼の中に眠っていた記憶が蘇ってきた。

 

 

『桜井くんのお母さん死んじゃったらしいよ…』

 

 

『可哀想…気を遣ってあげなきゃね…』

 

 

『ちょっと距離置こうかな…』

 

 

転校する前に通っていた学校での出来事、親を失った彼に向けられた哀れみの視線。

今向けられている視線がそれと重なってしまい、彼はすべてを思い出した。

辛かった過去を…そして自分がどんな人間なのかを。

 

 

「律、この後のことは任せるよ」

 

 

「はい?和生さん?」

 

 

和生はそれ以上何も言わず、玄関へと足を進めた。

 

 

「和生くんどこ行くの!?」

 

 

渚がそう言うと和生は首だけ振り返りこう言った。

 

 

「頭、冷やしてくるよ。全部思い出した。俺がどんな人間だったのか」

 

 

「待てよ和生!」

 

 

「悠馬、それ以上言うと…わかるよな?」

 

 

「「「…っ!?」」」

 

 

和生から放たれる紛うことなき殺気。

それに怯んだ彼らはここを後にする彼を止めることは出来なかった。

外に出た和生が最後に呟いたのは。

 

 

「あぁ…風が冷たい。でも俺にはこれが似合ってるよ」

 

 

そうつぶやく彼の瞳は、沖縄での一件の時のように酷く冷たい金色に染まっていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

破壊の時間

修羅場が続きます。ご了承ください。


「俺は誰かを幸せに出来るような人間じゃなかった。そんな事まで忘れてたのか…」

 

 

和生は冷たい夜風が頬に突き刺さる中、E組校舎に来ていた。

忘れていた自分を思い出した彼は教室に来てきた。

和生は保管してあった放課後の自主練用レイピアを取り出して裏山へと出ようとした。

そこへヌルフフフという奇妙な笑い声とともに担任が現れる。

 

 

「今から自主練ですか?こんな遅い時間に外へ出るのは感心しませんねぇ」

 

 

「あぁ、殺せんせー。大丈夫だよ、不審者なんかレイピアで一刺し、自分の身ぐらいは守れるさ」

 

 

殺せんせーは和生の声を聞いて違和感を感じとった。

彼の声は言わば沖縄でロミオにトドメを刺そうとしていた時のものであったからだ。

 

 

「和生君…なにかありましたか?」

 

 

「殺せんせーには関係ないよね?一人にしてよ」

 

 

「にゅや!?それはなりません!私は君の先生ですから!」

 

 

殺せんせーはこのまま彼を行かせてはならないと察知し制止の声をかける。

 

 

「一人にしてって言ってるだろ?」ギロリ

 

 

「にゅ…ですが」

 

 

和生から放たれる殺気、そして金色に染まった冷たい瞳に殺せんせーは言葉をつまらせる。

 

 

「じゃあ行くから。付いてくるなら明日からは学校には来ないよ」

 

 

「仕方ありませんね…ですが遠くからは見させていもらいますよ?」

 

 

「いいよ、成層圏からね」

 

 

「にゅ、にゅやぁ…」

 

 

ひどく冷たい声でそう言う彼に殺せんせーは頷いた後、宣言通り成層圏へと飛んでいった。

恐らくそこからでも自分のことが見えるのだろうと感じた和生は裏山へと歩みを進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃和生の自宅、クラスメイトたちはリビングでクラス会議を行っていた。

 

 

「ごめんね…凛香ちゃん」

 

 

「有希子…何であんなことしたのよ」

 

 

「うん…あのね」

 

 

神崎はすべてを話した。

彼に好意を寄せている訳では無いこと、ゲームのキャラに似ていた彼故にやってしまったこと。

そしてこんな事になってしまったことへの謝罪をした。

 

 

「ごめんなさい!」

 

 

「「「…」」」

 

 

彼女の誠心誠意で行われた謝罪に彼らは黙るしかなかった。

さらに言えば許すかどうかを決めるのは速水だからだ。

 

 

「じゃあ和生とそういう関係ではないんだね?」

 

 

「うん…2人の幸せそうな顔を壊しちゃってごめんね…」

 

 

そう謝る神崎の顔をよく見れば泣いているではないか、恐らくは先程の和生の殺気を思い出したのだろう。

いつも日々を幸せそうに過ごしていた彼の殺気、あれ程までのものとは思っていなかったようだ。

 

 

「いいよ…私は許す。浮気じゃなかったんだし…」

 

 

「凛香ちゃん…」

 

 

「でもね?有希子。和生がいいって言っても簡単にやっちゃダメ。優しすぎるんだもん…和生はっ…」

 

 

そういった所で今度は速水が涙を流し始めた。

渚に呼び止められた時に振り返った和生の顔は絶対零度という言葉が相応しかった。

怒り、苦しみ、悲しみ、寂しさ。

全てが凍りついたかのような表情。

再び彼にあんな顔をさせてしまったことへの罪悪感と彼を信じられなかった自分への嫌悪感で涙が溢れてくるのだろう。片岡と中村が速水と神崎に寄り添って慰め始めた。それに続いて女子たち全員がふたりを取り囲む。

 

 

「渚、和生がどこに行ったか心当たりはあるか?」

 

 

「うーん…そうだなぁ」

 

 

磯貝たち泊まりをやる組は和生の居場所を特定しようと話し合いを進める。

寺坂たち泊まらない組は親が心配するだろうと磯貝と渚が帰宅させた。

 

 

「おい、磯貝やばいそろそろやばいぜ?探しに行くにも補導される時間だしよ」

 

 

岡島の言う通り、現在の時刻は21:30。

和生が出ていってから1時間が経ち、あと30分で中学生は補導対象となる。

既にE組である彼らにとってはこれ以上校則違反などは出来ないのである。

 

 

「一つだけ心当たりがあるよ」

 

 

「「「よくやった渚!」」」

 

 

「いや僕まだ何も言ってないよ!?」

 

 

そんな一連のくだりが終わったあと、渚が自分の推測を話し始めた。

 

 

「裏山じゃないかな?あそこなら頭を冷やすにはもってこいだよ。体も動かせるしね」

 

 

「よし、行くか」

 

 

「本気か磯貝!?」

 

 

渚の言葉の後に即決した磯貝、そんな彼に前原が口を開く。

 

 

「棒倒しで繋がった首を何でまた切ろうとしてんだよ!俺らが行く。お前は待ってろ」

 

 

「親友があんな顔して出てったってのに黙って待ってられるか!棒倒しだってあいつが居なきゃ勝てなかっただろ!?」

 

 

磯貝の言葉に黙る男たち。

そんなとき、律が衝撃の発言をした。

 

 

「和生さんからメールです」

 

 

「「「…っ!?」」」

 

 

全員が息を呑む中、律は内容を音読し始める。

 

 

「『絶対に探そうとするな。もし来ようものならクラスメイトだろうが友人だろうが容赦はしない。それに今は誰とも顔をあわせたくないんだ。出来れば俺も友人たちを傷つけたくはないんだ、わかってくれ』だそうです…」

 

 

「傷つけるたってアイツは丸腰で出てっただろ?素手ならカルマが抑えられるんじゃないか?」

 

 

「まぁ素手の勝負なら俺の方が上だと思うよ」

 

 

「なら」

 

 

「無理だよ」

 

 

菅谷とカルマの会話を渚が遮る。

 

 

「何〜?渚くん。俺が負けるってこと?」

 

 

口調は怒っているようだが脳天気な声でカルマが問う。

 

 

「和生くんは放課後の自主練用にレイピアを1本持ってる。ピッキングも多分出来ると思うし、裏山に行ってるなら持ってるはずだよ」

 

 

「ピ、ピッキング?」

 

 

三村の間の抜けた声がリビングに響く。

 

 

「一応僕もできるよ。ロヴロさんに教わったんだ」

 

 

渚の言葉で男たちは納得する。

放課後に和生と渚が頻繁に自主練をしているのを知っているからだ。

どうやら烏間だけでなくロヴロにも教えられているようだ。

 

 

「じゃあ朝になるまでほっとくしかねぇのかよ!?」

 

 

岡島が言うようにそうするしか道はない、しかしここで磯貝が起死回生の一手を出した。

 

 

「でもアイツ。速水には切っ先を向けられないだろ」

 

 

「何言ってんの磯貝?」

 

 

「さっきのメールにあったけど、クラスメイト、友人には容赦はしないらしいけど恋人って書いてなかったろ?つまりアイツは速水には何も出来ないはずだ」

 

 

磯貝の一言で僅かな希望が見えてきた。

しかし…

 

 

「それはやめといた方がいんじゃね〜?」

 

 

「カルマ?」

 

 

起死回生の一手をカルマが潰す。

 

 

「もしそうだとしても、和生のことだこんな時間に彼女を出歩かせるなんて許さないでしょ?なにより和生は速水さんに嫌われたって思ってるでしょ?」

 

 

「「「あっ…」」」

 

 

速水を溺愛していた和生の事だ、たしかにこんな時間に出歩かせることは許さないだろう。

彼が嫌われたと思っている。これは確信を持って言えることだ。

 

 

「明るい時間まで待つ方が得策だと思うね〜俺は。あの和生があんな顔したんだ、きっと殺せんせーも止められてない。これ以上アイツを傷つけたくないなら大人しく従った方がいい」

 

 

その言葉に黙ってしまう男子たち、さらに言えば速水も今は出歩ける状況では無いのだ。

 

 

「寝る部屋は作ってあります。皆さんは1度休んでください」

 

 

現在の時刻は22:00を過ぎたくらいだ。

体育祭の疲れもあって彼らは限界だろう。

気を遣った律が就寝を促す。

 

 

「でも律!」

 

 

片岡が律に異論を述べようとする。

 

 

「いいから休んでください!今のあなた達が行っても無駄です!皆さんは忘れましたか!?和生さんの過去を!和生さんはっ…うっ…誰よりも繊細でっ…優しくてっ…周りの目を気にしてる人でしたっ!皆さんは向けたんですよっ!?和生さんが最も恐れていた『視線』をっ!」

 

 

泣きながら叫ぶ律の言葉に全員が押し黙った。

蔑むような視線を向けてしまったという事実は変えられない、向けていなかった者もいるが彼の心情を理解してやれなかったのだから。

 

 

「わかったら今日は休んでください。烏間先生に頼んでおきましたので」

 

 

烏間という言葉に生徒たちは何故か安心する。

いつも生徒を気にかけ、理解している烏間なら見つけてくれるような気がしたのだ。

自分たちの役目は見つけることではない、連れ戻すことだと理解した生徒たちは律に促されるまま客間へと連れていかれる。

しかし速水だけは律に止められた。

 

 

「律っ…?」

 

 

未だ泣き止まない彼女に律が自分も泣き止んでいないというのに飛びっきりの笑顔を向けた。

 

 

「速水さんはこちらですよ」

 

 

手を引かれるままに連れてこられたのは和生の部屋。

 

 

「どうして…?」

 

 

「もし夜中に和生さんが帰ってきた時、きっと一番最初に部屋に来るはずです。きっとボロボロでしょうから。その時最初に速水さんが目に入った方がいいと思うんです」

 

 

「ありがとう…律…」

 

 

「それに和生さんの布団は和生さんに包まれてるみたいで安心しますよっ」

 

 

「わっ」

 

 

トン、と律に押された速水は和生のベッドに倒れ込む。

 

 

「それではおやすみなさい」

 

 

そう言って律は扉を締めていった。

部屋に残された凛香は和生のベッドにおとなしく入った。

 

 

「和生…ごめんっ…ごめんねっ…うっ…うぅぅぅぅっ…大好きなのに…あんな顔させちゃって…ごめ…ひっく…うわぁぁぁぁ…」

 

 

「速水さん…」

 

 

扉の向こう側で速水の泣き声を聞いた律は辛そうに階段を降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜井君。こんな時間に外出は校則違反だ。君は暗殺者である前に生徒だぞ」

 

 

裏山でひたすら気を刺突し続けていた和生の元にあの人物が現れた。

 

 

「烏間先生ですか。何のようです?」

 

 

「律から話は聞いた。勘違いとはいえ大変だったようだな」

 

 

「俺が全部悪いんですよ。だからこうして悪いところを治してるんだ」

 

 

和生身体は既にボロボロ、とても中学生の姿とは思えない。

 

 

「君を家に届ける。それが俺の仕事だ」

 

 

「嫌だと言ったら?」

 

 

「無理やりでもだ」

 

 

「じゃあ殺りましょうよ」

 

 

そういって和生はレイピアの切っ先を烏間に向けた。

 

 

「そんな体では俺には勝てんぞ」

 

 

「やって見なきゃわからないですよっ!」

 

 

そう言って和生の刺突が烏間を襲った。

和生VS烏間

死闘が今始まる!!!




感想など待っております


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

死闘の時間

いやー、今日は進学先の近くに借りる部屋を探してましてね。
申し訳ありませんでしたぁっ!!


「貫けっ!」

 

 

和生の声に込められた覇気、それを感じ取った烏間はニヤリと笑った。

 

 

「甘いぞ、そんな速度では奴には当たらんな!」

 

 

和生の刺突を難なくいなし続ける烏間、そして反撃に出る。

 

 

「ふんっ」

 

 

「ぐうっ…」

 

 

烏間の回し蹴りを受けた和生は辛うじて体の軸をずらしたものの、凄まじい衝撃により吹き飛ばされた。

 

 

「いったぁ…」

 

 

「まだまだだ!」

 

 

和生に烏間のラッシュが入る。

急所から狙いを外させても、当たることは確実。

和生の既にボロボロだった身体がさらに傷つき続ける。

体育祭の疲れも残っている和生はその場で膝をついた。

 

 

「鍛錬が足りんな。今日は家でゆっくりと休み、その後に訓練しろ」

 

 

そう言って烏間が和生に手を伸ばした時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何が起こった!」

 

 

そこに和生の姿は無く、烏間の左肩から血液が噴き出していた。

 

 

「絶対零度の冷酷さと…神速の刺突…やっとたどり着けたよ」

 

 

烏間の背後には恐ろしく冷たい殺気を放つ和生、烏間は彼の動きを視界で捉えられなかった。

 

 

「くっ、ならばこれでどうだ!」

 

 

烏間が右フックからのラッシュを放つ、それを難なく躱す和生。

先程までは防戦一方だったにも関わらず、今となっては一撃も食らうことは無い。

 

 

「(世界がゆっくりに見える。まるで凍りついていくみたいだ )うらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

和生が刺突を放てば、烏間が傷を負いながらもいなしていく。

烏間が拳を放てば、和生はそれを予知しているかのようにひらりと躱す。

 

 

「くそ、このままではジリ貧だな」

 

 

「俺は…まだ殺れる…まだ速くなれる…もっと冷たくなれるっ!」

 

 

そう告げながら斬りかかってくる和生の表情はを言い表すなら『苦痛』が一番妥当だろう。

身体の危機に脳の処理速度、血液が活性化している。

何がそうさせるのかは分からないが、リミットを超えて戦っているのは明らかだった。

持って後1発。

和生は大きく助走をつけ、地面と平行になるように全力の突きを放った。

神速の剣、普通の人間ならば捉えられない速度の刺突が烏間を襲う。

そんな時、あの超生物が現れる。

 

 

「忘れてましたか?見られていたこと」

 

 

「お前…!」

 

 

「殺せんせー…」

 

 

「君の体は限界です。大人しく家に帰ってお風呂に入りなさい。ゆっくり傷と心を癒せばいいのです。無理して学校にも来なくていい、私は君の方が大切なのです」

 

 

殺せんせーの言葉を聞いた和生はそこで意識を失った。

 

 

「おいお前、桜井君に何が起こったのかわかるのか?」

 

 

「いえ、私にはわかりません。しかし強いていうならば血がそうさせているのでしょう」

 

 

烏間は意味がわからんと言った後裏山を後にする。

 

 

「和生君のことは私が責任を持って届けます。烏間先生もその肩の傷を癒してください」

 

 

「そうさせてもらう」

 

 

和生の暴走は殺せんせーによって止められた。

殺せんせーは優しく彼を抱き上げると呟いた。

 

 

「私は生徒を守れましたか…?あぐり」

 

 

少しだけ悲しそうな顔をした殺せんせーはいつもの超スピードではなく。

ゆっくりと飛行していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ…殺せんせー?」

 

 

「目が覚めましたか。もう家につきますよ」

 

 

殺せんせーの一言で目覚めた和生の顔が一瞬で歪んだ。

 

 

「どんな顔して変えればいいのさ…」

 

 

「そのままでいいんですよ。君のいい所は素直な所だ、ありのままの姿で帰ればいいんです」

 

 

殺せんせーの言葉に和生は力なく頷いた。

いつの間についていたのだろうか、殺せんせーが和生を下ろした。

 

 

「それではおやすみなさい」

 

 

「うん、おやすみなさい」

 

 

和生はそれだけ言うと家に入っていった。

静まり返る我が家を見て和生は理解した。

 

 

「律が宥めてくれたんだろうな。よく出来た子だよ」

 

 

そう言って自室に戻るべく階段を上った。

自室の前に行く間に和生が考えたことは、シャワーで血を洗い落とすこと。

着替えを取るため扉を開くとそこには

 

 

「…凛香」

 

 

自分のベッドで泣きつかれて眠っている速水の姿があった。

顔に泣き腫らしたあとが見て取れるため辛い思いをさせたのだろうと和生は自分をせめた。

どんな事があろうと愛する人を悲しませたことは罪だと自分に言い聞かせ、涙のあとが残る彼女の目元と可愛らしい唇にキスを落とし、こう呟いた。

 

 

「ごめんね。これで最後だから」

 

 

乾いた笑を浮かべた和生は着替えを持って浴室へと向かった。

その体から血液を滴らせながら。

和生が浴室へと向かった数分後

 

 

「和生…?」

 

 

彼の気配を感じとった速水が目を覚ました。

ぼやけていた意識を口に感じる鉄の様な味が覚醒させる。

そして床に散らばった血液を見てそれが記す場所へと走り出した。

 

 

「ちゃんと謝らなきゃ…それで伝えなきゃ…!好きなんて言葉じゃ測れないくらい貴方のこと愛してるってことを!」




感想待っております。
次回、ブラックコーヒー必須


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

熱い時間

なんかタイトルからヤバイ感じがしますよねw
ブラックコーヒーの準備は宜しいですかな?


「いったぁ〜…」

 

 

浴室でシャワーを浴びる和生が最初に言葉にしたのはこれだ。

体に出来た無数の傷口に暖かいシャワーが染みる。

和生はそれを浴びながらあることを考えていた。

 

 

「別れた方がいいんだろうなぁ…あんなことになっちゃった訳だし…」

 

 

不幸にするくらいなら、傷つけるくらいなら自分が一緒にいない方がいい。

どうしてもそう考えてしまっていた。

そんな事をぼーっと考えていると脱衣所の扉が開いた。

 

 

「えっ?」

 

 

振り返るとそこには。

 

 

「ご、ごめんなさいっ///」

 

 

顔を真っ赤にした速水が速水がすぐに扉を閉めた。

 

 

「え、えぇぇぇぇぇぇっ///」

 

 

見られた、確実に見られた。

その事実と羞恥心が和生の顔を真っ赤に染める。

その後数十秒の沈黙があり、扉の向こうから速水が話しかけてきた。

 

 

「ごめんね…わたし和生の気持ちも考えずに酷いこと言っちゃった…」

 

 

とても弱々しい声でそう話す速水、無性に抱き締めたいと感じる和生だが、最後だと先ほど決めたんだと自分に言い聞かせた。

 

 

「大丈夫、頭は冷やせたよ。それよりも俺も謝らなきゃね、ごめん。あんな顔させて、辛かったよね」

 

 

「ううん…いいの。お互い様だもん」

 

 

「そっか…と、とりあえず出たいから部屋にいっててくれるかな?」

 

 

「わ、わかった」

 

 

速水が出ていったのを確認してから和生は外に出て着替える。

ボロボロの服はゴミ袋に入れて処分した。

 

 

「あぁ…どんな顔して会いに行けばいいんだ…」

 

 

重い足取りで階段を上り部屋の前に立つ。

 

 

『ありのままでいいんですよ』

 

 

 

殺せんせーの言葉を思い出し、クスリと笑った後、和生は部屋の扉に手をかけた。

 

 

「おかえりなさい」

 

 

「うん、ただいま」

 

 

こういったやり取りをしていると恋人への愛おしさが溢れてくる。

先程までは最後などと思っていたのに今となってはそんなことはどうでも良くなっていた。

 

 

「和生…いなくなっちゃやだよ?」

 

 

「うっ…」

 

 

涙ぐんだ瞳、上目遣い、可愛らしい服装。

全てが相まって和生の理性が崩れかけた。

どうにか踏みとどまった和生は速水が腰掛けている自分のベッドに彼女と隙間を開けて腰掛けた。

 

 

「なんで間を開けてるの?」

 

 

「…もう俺は凛香の隣にいる資格はないんじゃないかなって」

 

 

「えっ?」

 

 

「俺はもう凛香を抱きしめる資格も、口付ける資格もないんじゃないかなって思ってるんだ…」

 

 

和生から放たれる衝撃の言葉。

みるみるうちに速水の瞳に涙が溢れる。

 

 

「なんで…?好きじゃなくなっちゃった…?」

 

 

今にも泣き出しそうな声で問いかける速水、和生は彼女の目を見ることが出来ないまま自分の想いを吐露していく。

 

 

「何言ってるんだよ…好きだよ。大好きだよ!!だから嫌なんだ!凛香にあんな顔させた事が、涙を流させた事が!俺といたら幸せには成れないよ…」

 

 

想いと共に溢れ出る涙、意を決して和生は速水の方に振り向いた。

するといつの間に距離を詰めたのか目の前には速水の顔があった。

驚いているうちに彼女から唇が重ねられる。

一瞬体が強ばるが、その甘いキスに体の力が抜けてしまう。

暫くして離れていった時にもっとしたいとさえ思わされてしまった。

 

 

「資格なんて要らないの。わたしが一緒にいて欲しいって言ってるんだよ?和生がいて、ぎゅってしてくれて笑顔でいてくれたらわたしは幸せなの。キスされたら幸せすぎて溶けちゃいそうだもん…///」

 

 

少し照れながら微笑む彼女に和生は思わず抱きしめた。

 

 

「ごめん…嘘ついてごめん…ほんとはずっと一緒にいたいよ…ずっとずっと凛香のそばでその笑顔を守りたいよ。好きなんて言葉じゃ足りないくらい大好きなんだよ…」

 

 

涙ながらにあらん限りの愛を囁く和生を速水は抱きしめ返す。

 

 

「わたしも一緒大好きなの、愛してるの。私の全部をあげちゃいたいくらいにね」

 

 

そう言って2人は再び見つめ合う。

 

 

「俺も愛してるよ」

 

 

「ふふっ」

 

 

そう言ってゆっくりと瞳をとじて口づけを交わす。

そのままベッドに倒れ込み、苦しくなるほどに抱きしめ合う。

そして熱く熱く口づける。

何度も何度もお互いの気持ちを確かめ合うように。

愛を確かめあった2人は微笑みあった後、力が抜けたように眠りに落ちた。

抱きしめあったまま、幸せそうに。




感想お待ちしています。
新作の執筆を開始したので投稿が不定期になります。
ですが主軸はこちらですので頑張りたいと思います!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

約束の時間

勉強に次ぐ勉強!そしてラブライブ!にハマってしまったこと!
これが投稿が遅れた全ての原因です!
本当に申し訳ございませんil||li _| ̄|○ il||l

さぁ、言い訳は置いといて。
皆さん!和生と凛香が仲直りしたのはいいですが何かを忘れていませんか!そうです!あれですよっ!


「んっ…朝か」

 

 

カーテンの隙間から差し込む包み込むような朝日に目を覚ました和生、眩しさから手で顔を覆った。

再び自分に襲いかかる睡魔に微睡みながら彼は体を起こそうとして失敗した。

 

 

「そっか…昨日は一緒に眠ったんだっけ」

 

 

自分の左腕をしっかりと抱きしめながら眠る速水を見て和生は状況を理解した。

気持ちよさそうに眠る彼女の頭を撫でながら現在の時刻を確認した。

 

 

「8:30か…いるんだろ?隠れてないで入ってこいよ」

 

 

「「「…」」」

 

 

ゾロゾロとクラスメイトたちが彼の部屋へと入ってくる。

全員は入れるわけもなく、1部部屋からはみ出しているが和生にとってはそんなことはどうでも良かった。

 

 

「何のよう?俺は凛香の寝顔を眺めるのに忙しいんだけど」

 

 

「「「ごめんなさい!!」」」

 

 

皆が一斉に頭を下げてきた。

そんな様子に和生は耐えきれず。

 

 

「くっ…ふっ…あはははは。別に気にしなくていいさ、勘違いなんて誰だってある事だよ」

 

 

「和生くん…」

 

 

渚が和生の言葉を聞いて安堵の表情を浮かべる。

しかし次の瞬間和生の表情が一変する。

 

 

「俺はまだ聞いてないんだけど、結果はどうだったんだ?」

 

 

「結果?」

 

 

「前原、あれはどうなったの?」

 

 

「あれって…あぁー!あれか!磯貝の!」

 

 

「そうそう、やらなかったら修行メニュー3倍のやつ」

 

 

「や、やってないな…」

 

 

磯貝がかぼそい声を上げた。

 

 

「じゃあ、今日から3倍か今すぐここでするか。好きな方選んでいいよ?」

 

 

そう、今の和生の表情は先程までの爽やかなものではなく、笑っているのが笑っているようには見えないといった感じだ。

一部のクラスメイト以外はキョトンとしている。

 

 

「じ、じゃあ…今からいうよ」

 

 

「うん、なら許す」

 

 

和生の言葉に意を決した磯貝が片岡の前まで歩いていく。

 

 

「磯貝くん?」

 

 

「片岡、お前は俺に無事に帰ってきて欲しいと言った。俺もそうありたいと思った。だからこれからは俺が帰る場所になってほしい。俺と付き合ってくれ」

 

 

「…っ!?」

 

 

部屋が静まり返った。

そんな沈黙を破ったのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい…ずっと貴方の帰りを待っています」ポロポロ

 

 

磯貝を受け入れる片岡の返事だった。

 

 

 

「「「おめでとうっ!!」」」

 

 

クラスメイトたちが拍手を送る、岡島が血を吹いて倒れたが、糸成に引きずられて行った。

女子たちが片岡に駆け寄り、男子は磯貝の肩をバンバン叩いた。

テンションが上がりすぎたクラスメイトたちを和生は部屋から追い出した。

下の部屋はまるで宴会のようにうるさくなっている。

 

 

「凛香、起きてるんでしょ?」

 

 

「あれだけうるさかったらね…」

 

 

和生の腕に抱きついていた速水が起き上がった。

 

 

「メグが報われよかった…」

 

 

「凛香と片岡さんは仲いいもんね。俺らも下いく?」

 

 

「うん、お祝いしてあげなくちゃ」

 

 

「じゃあ行こっか」

 

 

そう言って和生は起き上がろうとする。

しかし彼を速水が制止した。

 

 

「和生、ちょっとだけ目を瞑って?」

 

 

「?いいよ」

 

 

そういって和生は目を瞑った。

その後に感じたのは抱きしめられるような柔らかい感触と…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っ!?!?」ゾクゾクッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

首筋に感じる熱い吐息と柔らかい感触だった。

和生は恐る恐る目を開けてみると。

愛しい恋人が自分の首に顔を埋めていた。

 

 

「い、いまのって…///」

 

 

「和生が私の彼氏って証拠をつけたのっ!…///」

 

 

和生は自分の首に触れてみた、そこには未だに感触が残っており、顔が焔のように紅くなる。

 

 

「ずっと信じてるからっ!ほら、下行こ!」

 

 

「…うん、俺も信じてるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれが好きな人を信じていれば、トキメキを抱いて進めるだろう。

 

「(とびきりの笑顔で今のなかを生きていこう!)」

 

 

こうして和生は新たな1歩を踏み出しのであった!!




皆が以外忘れていそうなフラグを回収しました。
こんかいは私が好きな歌のフレーズをもじって入れてみました。
感想など、待っております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

間違う時間

小説を書くのってやっぱり楽しいですね!
再認識したトランサミンでありますっ!(  ̄ー ̄ )ゞビシッ


「さぁ!二学期中間テストの時期ですよぉ!!いよいよA組を越える時が来たのです!!」

 

 

浅野に仕掛けられた体育祭の罠もかわしきり、E組の生徒達はテスト勉強に集中できていた。

だがその一方で…皆どこか落ち着かない様子であった。

殺せないまま勉強の時間だけが過ぎていくことに彼らは焦りを感じていた。

 

 

「あ〜疲れた。分身使って立体視まで活用してくるとかよく思いつくよな、殺せんせーは」

 

 

下校途中の生徒達は杉野の言葉に振り返る。

 

 

「でもさ、勉強に集中してる場合かな?私達。あと五ヶ月だよ?暗殺のスキルを高める方が優先じゃないの?」

 

 

「仕方ねーだろ。勉強もやっとかねーとあのタコが来なくなんだからよ」

 

 

矢田の言葉に吉田が苦笑しながら答える。

 

 

「クックック、あんま難しく考えんなよお前ら。俺に任せろ、スッキリできるグッドアイディア見つけたからよ」

 

 

「「「…?」」」

 

 

岡島の言葉を理解出来ないまま、生徒達は彼について行く。

すると彼らは住宅街の一角に繋がる丘へとたどり着いた。

岡島がジャンプで住宅の屋根に飛び移る。

 

 

「ここは?」

 

 

「すげー通学路を開拓したんだ。ここからフリーランニングで建物の屋根を伝ってくとな?ほとんど地面に降りずに隣駅の前まで到達できる。ただの通学が訓練になるってわけだ」

 

 

「えぇー…危ないんじゃない?」

 

 

「そーだよ。烏間先生も裏山以外ではやるなって言ってたでしょ?」

 

 

倉橋と片岡が危険性を述べるのだか、そこは岡島も想定内なのだろう。

 

 

「へーきだって!行ってみたけど難所は無かったし、鍛えてきた今の俺らなら楽勝だって!」

 

 

「やめた方がいいんじゃないか…?俺らにはまだ早いだろ」

 

 

磯貝が岡島の考えを否定し、安全面を考え止めることを提案する。

 

 

「俺も悠馬に賛成だね。こんな鍛え方しなくてもいいと思うし、怪我しちゃったら元も子もないよ」

 

 

和生も岡島の意見には賛同せずといった様子だ。

しかし好奇心旺盛な生徒達は2人の言葉に聞く耳を持たない。

 

 

「いいじゃねーか2人共!勉強を邪魔せず暗殺力も向上できる!2本の刃を同時に磨くなんて殺せんせーの理想だろ?」

 

 

前原の言葉に周りの生徒達はヤル気になったようだ。

 

 

「よっしゃ!先導するぜ、ついてこい!!」

 

 

「おう!」

 

 

「いぇーい!」

 

 

「ちょ、ちょっと皆待ちなさいよ!」

 

 

岡島を先頭に一部を除いた生徒達が建物に飛び移る。

 

 

「和生…どうする?」

 

 

「しかたない…危ないようなら止めよう」

 

 

2人は危険と判断した場合に止めるため、先頭の方まで一気に追いつく。

残った女子たちは

 

 

「元気だねー若人は」

 

 

「あはは、安全そうなら明日いってみようかな?」

 

 

彼らの後ろ姿を笑って見送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うは!きもちーっ!」

 

 

生徒達は風を切るように建物から建物へと飛び移っていく。

彼らは自分たちのチカラがどれ程までに凄いものなのかを実感していた。

日々の訓練でチカラを付け、本校舎の生徒も少しずつ彼らのことを見直していた。

出来ることがどんどん増えていくその感覚に彼らは酔いしれていた。

 

 

「ん?」

 

 

「どうした和生?」

 

 

何かを感じ取ったのか和生が怪訝そうな顔つきになる。

 

 

「悠馬悪い、背中借りるよ」

 

 

「は?」

 

 

「よっと!」

 

 

和生は磯貝の背中を踏み台にして先頭のすぐ後ろについた。

先頭を走る木村と岡島がゴールへとたどり着こうとしていた。

 

 

ガタガタ…キイッキイッ

 

 

「(この音…拙い!!)」

 

 

「よっしゃ!一番乗りゴー…っえ!?」

 

 

「いや俺…うおっ!?」

 

 

木村と岡島が飛び降りようとした時、和生が二人の首をつかんで後ろへと引っ張った。

しかし和生は2人を引っ張った反動で前に出てしまった。

それも体制を崩した状態で…

 

 

「和生くん!」

 

 

渚が和生の名前を叫ぶ。

下に落ちていく彼を生徒達が上から見下ろした時、彼の落ちる先には驚いて体制を崩す、自転車に荷物を積んだ老人の姿。

落ちていく和生が思ったことは。

 

 

「(あぁ…間に合わなかったか。お爺さん無事だといいんだけど…)」

 

 

彼の意識はガシャン!!という大きな音と左腕に感じた痛みと共に失われた。

 

 

「和生!しっかりして!」

 

 

「和生くん!」

 

 

「さ、桜井…?おい大丈夫…だよな?」

 

 

その頃周りでは、青ざめた顔をした生徒たちが気を失った和生と痛みに悶え苦しむ老人を取り囲んでいた。

そこに若い男性の声が響く。

 

 

「今の大きな音何があった!?事故か!?大変だ!救急車!!」

 

 

その数分後には甲高いサイレン音と共に救急車が到着、怪我をした2人を病院へと搬送していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自動ドアが開き、烏間が病院から出てくる。

 

 

「老人の方は右大腿骨の亀裂骨折だそうだ。落ちてきた桜井君に驚いてバランスを崩して転んだ拍子にヒビが入った。程度は軽い方らしく二週間程で歩けるそうだが、なにせ君たちのことは『国家機密』だ、口止めの示談の交渉をしている。頑固そうな老人だが部下が必死に説得中だ」

 

 

「…」

 

 

烏間の言葉に生徒たちは俯いたままだ、何故なら彼らのクラスメイトも怪我を追っているのだから。

 

 

「桜井君の方だが、左腕を地面と強打した為に肩を痛めたそうだ。気を失ったのは衝撃による脳震盪。後遺症もなく同じく2週間程で退院できる。大事に至らなくて本当に良かった」

 

 

「「「…っ」」」ゾクゾクッ

 

 

烏間が言い終えるのと同時に生徒達は背後に殺気を感じた。

そこにいたのは顔を真っ黒にした殺せんせー、本気で怒っている時の顔だ。

 

 

「だ、だってまさかあんな小道にチャリに荷物いっぱい乗せたじーさんが居るとは思わねーだろ!!」

 

 

「そーだよ。もちろん悪いことしたとは思うけど…力をつけるためにやったんだもん…」

 

 

「地球を救う重圧と焦りがテメーにわかんのか?」

 

 

その言葉を聞いた殺せんせーは『ビシッ』と触手で僕たちの頬を叩いた。

 

 

「…今のは生徒への危害と報告しますか、烏間先生?」

 

 

「…今回は目をつぶろう。暗殺期限までに時間が無いために危険を承知で高度な訓練を取り入れたが…君たちにはまだ早かったようだな」

 

 

烏間はそれだけ言い残して病院内へと戻っていった。

カツンカツンと足音が響く中

 

 

「「「…ごめんなさい」」」

 

 

生徒達は小さくつぶやいた。

 

 

「今の君達は本校舎の生徒と何ら変わりません。身につけた力に酔い、弱い者の立場になって考える事を忘れてしまった。少し強くなりすぎたのかも知れませんね。」

 

 

叩かれると痛くて悔しいのに、返せる言葉が一つもなかった。

生徒達は理解した、これが間違うという事なのだと。

 

 

「話は変わりますが、今日からテストまでクラス全員のテスト勉強を禁じます」

 

 

「「「!?」」」

 

 

そう言って殺せんせーは教科書を取り出して破り捨てる。

 

 

「罰ではありません。今やるべき事をやるだけです。教え忘れた先生にも責任があります先ずは被害者を穏便に説得してきますので、君たちは和生君の様子を見てきてください。その後は被害者の方にちゃんと謝りましょう」

 

 

殺せんせーはそれだけ言い残して飛び去っていった。




感想おまちしております!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

微笑みの時間

いやー、最近のアニメは素晴らしきこと限りなし
凛香の勘違いしないでよね!に吐血し、今日のラブライブ!のロリ海未ちゃんに吐血したトランサミンであります!(`-´)ゞ ビシッ!
あー、幸せ〜w
私、暗殺教室以外にもラブライブ!、空戦魔導士候補生の教官、遊戯王など様々な作品を執筆しております!
興味がありましたら是非とも読んでみてくださいね!


「左腕が上がらないと大変だなぁ…何にもできない」

 

 

E組の生徒たちが和生の病室に向かっている頃、怪我をした本人は痛みに顔をしかめながらも案外けろりとしていた。

 

 

「落ちた時にもあの時と同じで少しだけだけど世界がゆっくりに見えたんだよなぁ…あれをものに出来れば殺せんせーの暗殺にも役立つと思うんだけど…」

 

 

烏間との死闘の中で辿りついた自分の中に眠る何かしらのチカラ。

世界が止まって見えるならいくら速い殺せんせーでも暗殺できるはずだと彼は考えているようだ。

そんな彼がいる病室の扉を誰かがノックした。

 

 

「どうぞー」

 

 

「「「…ごめんなさい」」」

 

 

「えっと…何事?」

 

 

入ってきたのはE組の生徒たち、入ってきて早々に頭を下げる彼らに和生は首を傾げる。

そんな彼に岡島が事の次第を説明し始めた。

 

 

「お前らの制止を振り切って飛び出した挙句…怪我までさせちまって…本当にすまねぇ…」

 

 

「何言ってるのさ?怪我したら元も子もないって言っといて怪我したのは俺でしょ?お前らは悪くないよ。俺に謝るくらいならお爺さんに謝った方がいいんじゃない?」

 

 

そういって和生はクラスメイトたちに微笑みかける。

クラスでも1位、2位を争う美少年の微笑みにクラスメイトたちの雰囲気も僅かではあるが明るくなる。

 

 

「和生くん、ホントに大丈夫なの?肩は」

 

 

渚が和生に肩の調子について問う。

 

 

「肩はまぁ、上がんないから食事とか少し困るかなぁ…くらいだね」

 

 

「そっか…和生くんは左利きだもんね。何かして欲しいことがあったら言ってよ、できる範囲でやるから」

 

 

「ありがとな、渚。じゃあ甘いものが…」

 

 

「「「やっぱり甘いものなのかよ!?!?」」」

 

 

「うわっ!お前ら全然元気じゃん!?」

 

 

和生の甘いもの発言にクラスメイトたちがツッコミを入れる、どうやらいつもの雰囲気が戻ってきたようだ。

 

 

「あ、あと一つお願いが」

 

 

「なに?和生くん」

 

 

「少しでいいから凛香と2人きりにしてくれないかな?」

 

 

この男桜井和生、どこまで行ってもぶれないのだ。

 

 

「はいはい、ごゆっくり」

 

 

中村が呆れ半分にそう言うと、速水以外の生徒たちが病室から出ていく。

部屋に残った速水はベッドの横にある椅子に腰掛けた。

 

 

「ホントに大丈夫なの?肩、痛むんじゃない?」

 

 

「あはは…動かさなきゃ痛くないよ?大丈夫大丈夫!」

 

 

「みんなの事になるとすぐ無茶するんだから…」

 

 

「まぁね。でも本気になるのは凛香が危ない時だからさ」

 

 

「ほんと口が上手いんだから…///」

 

 

「あ、あはは…でも嘘入ってないでしょ?」

 

 

「そうね。でも危ないことはダメよ?」

 

 

「勿論だよ。それでなんだけど、お願いがあってさ」

 

 

「なに?私にしか頼めないから残らせたんでしょ?いいわよ、何でも聞いてあげるから」

 

 

「っ…///」

 

 

「なに?」

 

 

愛しい恋人の何でもしてあげる発言に顔を赤くする和生。

ちゃんとその辺に反応するあたり、彼の中にもそういった欲があるしょうこなのだろうか?

 

 

「銃を教えて欲しいんだよね。右手で撃てるようになりたいんだ」

 

 

「銃を?突然どうしたの?」

 

 

「銃が使えれば、なんというかさ…凛香と一緒に戦ってる感じがするなぁ…と」

 

 

「もう…そういうこと真顔で言うとこ嫌いよ…///」

 

 

「顔を赤くして言っても説得力無いよ?」

 

 

「ばか…。いいわよ教えてあげる、でもきっとあんまり来れないわよ?」

 

 

「だろうね。だから取り敢えず明日銃と的を持ってきてよ」

 

 

「わかった」

 

 

『はやみーん!殺せんせーが呼んでるよー!』

 

 

「莉桜が呼んでるからそろそろいくね」

 

 

「うん、ちょっと寂しくなるな」

 

 

「そうね、なら毎日電話してあげる。それなら大丈夫でしょ?」

 

 

「やった!ならいいや!行ってらっしゃい!」

 

 

「もう、現金なんだから」

 

 

速水は和生に微笑んでから病室をあとにした。

 

 

「はぁ…痛みなんて、笑顔ひとつで消えちゃうんだな。俺にとって凛香は最高の薬だよ」

 

 

部屋に残された和生の顔は緩みきっていた。




感想お待ちしておりますよん!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

器用さの時間

皆さん1週間もお待たせして申し訳ない(〃・д・) -д-))ペコリン
いやー、テスト期間だったもので…って言い訳は通じませんよねw
だってラブライブ!の方は更新してたんですからw
とまぁ、言い訳は置いといてですね!
自由登校期間に入りましたので私は自由投稿期間にしようかなと。
そして本作品では若葉パークでの出来事にはほとんど触れません!
ここはオリジナル展開で行きますよっ!そう!和生くんの入院生活をお届けしますw


「左肩が上がらないから勉強が出来ない、食事も右手で摂るしかないから正直面倒。やることは銃の訓練くらいかぁ…そういえばアイツらはお手伝い行ってるんだっけ」

 

 

病院の個室で暇を持て余している和生。

速水が持ってきてくれたエアガンと的を使って右手で銃を使う訓練をしている。

左肩以外はピンピンしているため、早期の退院を烏間に提案したのだが、家に帰ったら無理をするだろうとクギを刺されたためおとなしく入院している。

 

 

「銃って難しいな…凛香も千葉もよくもまぁあんなに上手に撃てるよな。日々の訓練の賜物なんだろうけど、それでもすごいと思うよ」

 

 

和生は右手で銃を構えて的に向かって引き金を絞る。

発射されま対先生BB弾は見事に命中し、的にしていた紙コップを倒した。

入院3日目、極端にやることがなく1日中射撃訓練をしていたため病室程度の距離なら命中するようになっていた。

 

 

 

「あらあら、またやってるの?」

 

 

「あ、どうも」

 

 

部屋にやって来たのは女医の先生であった。

和生の担当医であり、1日に必ず1度は訪れてくる。

 

 

「肩の痛みはどう?」

 

 

「動かさなければ痛みは全くないです。でも動かすと痛いので左腕は全く使えてないですね」

 

 

「わかったわ。明後日には軽く動かせるようになると思うから安心していいわよ」

 

 

「わかりました、いつもすみません」

 

 

「気にすることないわ、お大事にね」

 

 

そう言って病室を後にする女医の先生。

病状を気にするだけで和生がエアガンを撃っている事などには何も突っ込まない。

そのお陰で和生も手持ち無沙汰にならずに済んでいるのだが…

 

 

「病院食美味しくないんだよなぁ…うぅー…チーズケーキ食べたい…」

 

 

甘いものが切れると、途端にネガティブになってしまうのだ。

彼にとってここでの生活は謂わば地獄。

糖分補給が出来ず、やることもない。

腕の自由が効かず、気が滅入る。

 

 

「もういいや…寝よ…」

 

 

そう、和生はやることが無く不貞寝してしまうのだ。

夜になればテレビを見ることも出来るが日中は昼ドラ等しかやっていないため見る気にもなれなかった。

寝てしまった和生が目を覚ましたのは夜の9時。

遅い時間のため病院食も片されているが、動いていないため食欲の無い和生は全く気にしなかった。

 

 

「はぁ…凛香電話出てくれるかなぁ…」

 

 

普段はキリッとして美少年さを全面に出している和生だが、糖分が切れた今、彼は非常に弱々しくこの世の終わりのような顔をしている。

和生は携帯を取り出して速水に電話をかけ始めた。

 

 

『…はい。どうしたの?』

 

 

「あ、凛香ぁ…?俺もうダメかもしれない…」

 

 

『えぇ…どうしたのよ?また甘いもの?』

 

 

「そうです…俺は…もう耐えられないよ…」

 

 

『我慢よ我慢。まだ3日でしょ?』

 

 

「もう3日の間違いでしょ…?冗談抜きでもうだめ…甘いものもない…凛香にも会えない…俺の心の癒しはどこにも…」

 

 

『退院したらご褒美あげるから。頑張りましょ?』

 

 

「ご褒美ってなに…?何をくれるの…?」

 

 

死の淵に立たされたような顔をしている和生。

今の彼の状態を見たら誰もが心配するような顔をしている。

 

 

『そうね、何が欲しいの?できる範囲のことならするわよ 』

 

 

「じゃあ…凛香」

 

 

『なに?』

 

 

「だから凛香がほしい…」

 

 

『ええっ!?///』

 

 

「病室って静かで寂しいんだよね…人肌っていうか…なんというか…恋しくなるんだよね…だから…退院したらぎゅーってして欲しいなぁ…」

 

 

『そういうことね…いいわよしてあげるから』

 

 

「わーい…」

 

 

『はぁ…糖分が切れるとすぐこうなんだから』

 

 

「えへへ…やっぱりもうだめ…おやすみなさい…」

 

 

『うん、おやすみ』

 

 

和生は満足したのか電話を切って消灯する。

昼間ぐっすり眠ったのにも関わらずすぐに眠りに落ちた。

その次の日から彼は速水に貰えるご褒美のために必死になって自分の欲求を抑え込み、生活を続けた。

そして退院日、彼が速水からの抱擁で一気に体力を回復したことは言うまでもない。

しかしその次のは二学期の中間考査…勉強をあまり出来ず糖分も不足していた彼は惨敗であった。




テストの結果などは次に詳しくやりましょう!
オリジナルはどうでしたかね?
ほかの作者様の作品とかぶらないようにがんばってくつもりです!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

吐き出すの時間

このタイトルの意味とは?


若葉パークの手伝いをしていたE組の生徒たちと怪我とエネルギー不足でテストに惨敗した和生はトボトボと下校していた。

そこに如何にも不快感を覚える声が聞こえてくる。

 

 

「拍子抜けだったなぁ」

 

 

「やっぱり前回のはマグレだったようだね〜」

 

 

「棒倒しで倒すまでもなかったな」

 

 

「ぐ…」

 

 

現れたのは五英傑、総合点数493点、学年1位の浅野を筆頭に上位を占めていた者達だ。

そんな彼らに惨敗したE組の生徒たちは言葉も出ない。

 

 

「言葉も出ないねぇ?まぁ、当然か」

 

 

「この学校では成績がすべて、下のものは上に対して発言権はないからね」

 

 

E組の生徒たちを蔑む五英傑、そこにある人物が現れる。

 

 

「へーえ。じゃ、あんたらは俺になんにも言えないわけね?」

 

 

赤羽業総合点数492点、学年2位。

 

 

「まーどうせうちの担任は『1位じゃないからダメですねぇ』とかぬかすだろーけど」

 

 

「…カルマくん」

 

 

「気づいてないの?今回本気でやったのは俺だけ。他の皆は手加減してた、おまえらが負けっぱなしじゃ立場がないだろーからってね」

 

 

「なにぃ〜!」

 

 

カルマは挑発的に言葉を紡ぐ。

 

 

「でも、次は全員容赦しない。三学期になれば内部進学組と俺らのテストは違うんだ。2ヶ月後の二学期期末、そこで全ての決着をつけようよ」

 

 

「…チ…上等だ」

 

 

「皆、いこーぜー」

 

 

仲間を気遣うカルマの言葉、早い段階で敗者の気持ちを知ったからこそできることだ。

失敗も挫折も成長の源、今回の事件が更にみんなを強くする。

翌日学校にいった生徒たちは烏間に謝罪しに行った。

 

 

「烏間先生、ご迷惑をおかけしました」

 

 

「これも仕事だ、気にしなくていい。君らはどうだ?今回のことは暗殺にも勉強にも大きなロスになったと思うが、そこから何か学べたか?」

 

 

烏間の問いに渚が答える。

 

 

「…強くなるのは自分のためだと思ってました。殺す力は名誉とお金のため、学力をつけるのは成績のため。でも身につけた力は他人のためにも使えるんだって思い出しました。殺す力を身につければ地球を救える、学力を身につければ…誰かを助けられる」

 

 

渚はチラリとカルマを見る、しかしカルマは知らん顔だ。

 

 

「もう下手な使い方しないっす、多分」

 

 

「気をつけるよ、いろいろ」

 

 

岡島と前原の言葉を聞いた烏間が顔を上げる。

 

 

「考えはよく分かった。だが今の君らでは高度な訓練は再開できんな、何せこの有様だ」

 

 

烏間が取り出したのはボロボロのジャージ、日々の訓練で傷だらけになってしまったのだろう。

 

 

「ハードな訓練にはもはや学校のジャージでは耐えられない。ボロボロになれば親御さんにも怪しまれるしな、第一君らの安全を守れない」

 

 

烏間がそう言うと廊下から段ボール箱を抱えた大人が入ってくる。

 

 

「防衛省からのプレゼントだ、本日から体育はそれを着て行うものとする。先に言っておくぞ、それより強い体育着は地球上に存在しない」

 

 

烏間から生徒たちにプレゼントされたのは新たな体育着、耐火性、切断耐性、衝撃耐性など様々な機能が付いており、全てが世界トップクラスの代物だ。

特殊迷彩も備えており、どんな場所にでも紛れることが出来る優れものだ。

生徒たちはこの体育着を真っ先に殺せんせーに見せに行った。

そして誓った、自分たちが身につけた力は誰かを守るためにしか使わないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、裏山で拳銃を右手に刺剣を左手にもった少年が訓練をしている。

そこに殺せんせーがやって来た。

 

 

「和生君、調子はどうですか?」

 

 

「決して良くはないかな?すっごい悔しいし」

 

 

桜井和生総合点数356点学年58位。

 

 

「まさかテスト中に腕が上がらなくなるとは驚きです」

 

 

「ほんとにねー。痛み止めが切れちゃったみたいでさ?英語の答案白紙で出しちゃったよw」

 

 

「ヌルフフフ、英語を白紙で出してこの点数なら悪くは無いですよ。ですが君は気に入らないのでしょう?」ニヤニヤ

 

 

「もちろんだよ殺せんせー!さっきまでずっと刺剣振り回してたからさ、痛みになれちゃったんだよ!これならもう大丈夫かもしれない!」

 

 

「大丈夫じゃありませんよっ!?君はいつも無茶しすぎですっ!」

 

 

あはは、と乾いた笑いを漏らす和生に殺せんせーはビックリしている。

 

 

「俺さ?あの時思ったんだ。落ちたのが俺でよかったって。確かに病院は甘いものもないし凛香もいないし地獄のような場所だったけど、おかげで銃は相当上手くなったしさ?それになにより……皆が怪我しなくてよかったかな」ニコッ

 

 

「そうですかそうですか。素晴らしい答えです」

 

 

殺せんせーの顔に二重丸が浮かび上がっている、満足のいく答えだったようだ。

 

 

「では私は邪魔になりますのでそろそろ行きますね」

 

 

「ん?わかった。ありがとね、殺せんせー」

 

 

和生のお礼を聞くと同時に殺せんせーは飛び去っていった。

そして入れ替わるように速水が和生の元へやってくる。

 

 

「和生、帰らないの?」

 

 

「あ、ごめん!待っててくれたんだ」

 

 

「当たり前でしょ?バレてるわよ?強がってるの」

 

 

「な、なんのこと?」

 

 

「テストの時何度もペンを持ち直そうとしてたじゃない。ペンを落とす音で皆分かってたわよ」

 

 

「うん…まぁ…そう…だね」

 

 

和生が俯きながらそう言うと、速水が和生を抱きしめた。

 

 

「悔しいなら泣いていいのよ?今は私以外に誰もいないはずだし、いつも全部一人で背負って。辛い時くらいは頼ってよ。私はあなたの恋人なんだから」

 

 

「凛…香っ。うん…悔しい…悔しいよっ!うぅっ…だって…俺の2本目の刃が少しも通じなかった…確かに勉強は出来てなかったし…甘いもの食べてなかったから頭が働かなかったのもあるよ…でも…でも…それでも!俺は悔しいよっ…!これまで頑張って磨いてきたのに…うわぁぁぁぁぁぁぁ…」ポロポロ

 

 

「うん…和生は頑張ってる。私は知ってるからね?だから安心して、今は全部吐き出して」

 

 

速水に抱きしめられながら胸の内を吐露していく和生の表情は涙でぐしゃぐしゃだ。

速水の背中に回した腕は力強く彼女を抱きしめている。

速水も和生の頭を撫でながら優しく言葉をかけ続けている。

 

 

「…っぐ…ひぐっ…うぅ…俺はなんでこんなに弱いんだ…こんなんじゃ凛香を守れないよぉ…」ポロポロ

 

 

「ううん、和生は強いよ。皆をいつも守ってくれる、それに私は和生がいなきゃここにはいないの。だから和生は凄く強い。涙を堪えるだけが強さじゃないの…だから今は…今だけは私にもあなたの辛さを背負わせて?」

 

 

「うん…うん…ありがとう…俺はやっぱり凛香がいなきゃ生きていけないよ…好きだ…大好きだ…愛してる」

 

 

「ふふっ私も」

 

 

涙ながらも笑顔を見せる和生と微笑む速水。

強く抱きしめあいながらお互いの気持ちを確認している。

そんな彼らを陰から見ているものたちが数人。

 

 

「桜井くん…あんなになるまで…」

 

 

「メグ、俺たちは邪魔だよ。帰ろう?」

 

 

「そうだね、悠馬くん」

 

 

「渚、私達も」

 

 

「うん…」

 

 

見ていたのは磯貝、渚、片岡、茅野の4人であった。

4人は和生の弱い部分をみて思っていた。

 

 

「「「「(彼1人に頼ってばかり入られない、自分たちも頑張らないと!!)」」」」




感想などお待ちしております!
甘々な話を連想していた皆様!少し甘さ控えめ、そして優しさ多めの話だったかと思います。
ひとりで溜め込んでしまって押しつぶされてしまいそうな時、誰しも必ずあると思うんです。
だからこそ今回はこのような文にさせて頂きました。
次回からは死神編へと入っていきます。
オリキャラ等も登場しますのでお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プレゼントの時間

さぁ、死神編に入っていきますよん♪
今週の暗殺教室の、磯貝くんがイケメン過ぎてテンション激上がりのトランサミンであります。


さぁ、前振りはここまでにして大事な話を始めましょうか。
本作品の今後のストーリー展開についてお話します。
死神編ではオリキャラが多数登場するためそういった類の物が苦手な方はご了承ください。
その他については後書きにて話そうと思います。
それでは本編へどうぞ!!


「この超体育着すごいよね!」

 

 

「あら?気に入ってくれたのね」

 

 

E組の生徒達が烏間からのプレゼントテンションを上げながら下校していると、イリーナが話しかけてくる。

 

 

「女子のはね、私がデザイン案を出したのよ。カラスマの奴男女同じ服にしようとしてたからさ?女子のはとっとラインを出しなさいって言ったの。防御力も大事だけど、女の子なんだから可愛くないとね?」

 

 

「流石ビッチ先生!」

 

 

茅野がイリーナの登場に喜びの声を上げる。

するとイリーナは表情を暗くし、ポツリポツリと話し始めた。

 

 

「アイツ本当女心分かってないから…結局私には何もくれなかったし…あのタコでさえ分かってたのに!!」

 

 

イリーナは思い出して腹が立ったのかズンズン先を歩いていってしまう。

そこで生徒達は思い出した。

自分たちが課外授業として若葉パークの手伝いをしている間にイリーナの誕生日が過ぎてしまっていたことを。

 

 

「烏間先生がくれるのを期待したけど、案の定何も無くて、プライドが高いから自分からは何も言い出せすか。相変わらず不器用だなぁ…」

 

 

「でも、原因は私たちにもあるよ」

 

 

吉田と矢田の言葉に生徒達がイリーナに視線を向ける。

自分たちと遠ざかった彼女の足取りは先程のように勢いはなく、トボトボと歩いていた。

そんな彼女の様子を見て彼らは決意する。

 

 

「…よーし。また俺らが背中押してやろうかね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、外国のある住宅街で一人の男が追い詰められていた。

 

 

「(ヤバい…あいつらは絶対にヤバい…まさか噂に聞いたあの…!?だが、もう1人の方は見たことも聞いたこともないぞ!?とにかく隠れてやり過ごさねぇと)」

 

 

追われている男はレッドアイ、E組の修学旅行で暗殺に協力してくれた殺し屋だ。

そんな彼が敵襲を察知し逃亡している。

 

 

「あの遠距離から身の危険を直感するとは、流石は“レッドアイ”の異名を持つ名狙撃手だ」

 

 

「全くだ、刈り取るのが惜しいくらいにはな」

 

 

もの陰に隠れたレッドアイの背後に音も立てずに現れた2人の男。

1人は黒いコートに身を包み影のように彼に忍び寄る。

もう1人は濃紺の長い髪をした長身痩躯の男だ。

その男もまた影のように忍び寄り、彼に話しかける。

 

 

「ちょっ…ちょっとまてよ。なんだよその『レッドアイ』って名前は、人違いだろ。ビビらせやがって、観光先で尾行されたらそりゃ逃げるだろーよ。一服つけねーと…」

 

 

そう言ってレッドアイは隙を突き懐に隠しておいた拳銃を構えるのだが…それよりも先に黒いコートの男が手を銃の形にして彼の横を通り抜けた。

次の瞬間、レッドアイの体から血が吹き出した。

レッドアイは薄れゆく意識の中で引き金を絞ろうとしたが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビュン…

 

 

という風を切る音と共にその手が切り落とされた。

そこで彼はなっとくした。名うての殺し屋が次々と殺られた“殺し屋殺し”あのロヴロでさえ闇討ちでやられたという技術。

この攻撃、そして抜かりなく対象を処理するチカラ…コイツらが伝説の殺し屋…なのかもしれないと。

 

 

「畏れるなかれ『死神』の名を」

 

 

そう言う黒コートの男が操作する端末にはイリーナの顔が映されていた。

 

 

「イリーナ・イェラビッチ…ハニートラップの達人か…次はそいつを始末するのか?」

 

 

「まさか?彼女には…文字通り蜜になってもらうよ。あの超生物をおびき寄せる餌を誘き出す蜜にね」

 

 

「俺の仕事の邪魔になるようならば貴様も刈り取るぞ?」

 

 

「大丈夫、超生物をおびき寄せる餌のなかに君のターゲットもちゃんと入っているからさ」

 

 

「ふん、貴様が伝説の『死神』だとはにわかに信じ難いが…その腕は確かだからな。利用するまで」

 

 

「でもまさか、君の雇い主がねぇ…あの人物だとは」

 

 

「貴様に雇い主の話は無用だ。それ以上無駄口を叩くならば首から上が宙を舞うぞ」

 

 

濃紺の髪をした男は何処から取り出したのか巨大な鎌を構え、黒コートの首筋に切っ先を突きつける。

 

 

「わかってるさ。君のターゲットはあの坊やだろう?」

 

 

「あぁ…そうだ。ヤツに関わった者は全てDELETEしなければ…この『ハダル』の名にかけてな」

 

 

濃紺の髪をした男が胸から取り出した写真には…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜井和生の姿が写っていた。

 

 

「桜井和生…いや、『カズキ・エルレンシア』貴様を母親と同じ場所に送ってやろう…」

 

 

十月の教室に…死のプレゼントがやってくる。

そしてあの少年にも…




感想などお待ちしておりますっ!
今後の展開ですが、前書きでも言ったとおりオリキャラが多数登場しています。
また、デートの時間の文章が1部改変されていますのでそちらを読み直していただけると有難いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

動き出す時間

死神編を考えるのが楽しくして仕方がありません!
まぁ、おおよそのストーリー構成は考えてあるのですが!
どんどんこうしたいああしたいと思ってしまい、指がなかなか動きませんw
こんなダメ作者をどうかお許しくださいませ…


現在E組で行われている作戦、それは『ビッチ先生と烏間先生を近づけよう作戦!』である。

矢田や片岡といった普段イリーナに教えを受けている女子達を筆頭に2人を引き離し、その間に渚たちがプレゼントを調達するという作戦だ。

 

 

「うーん…大人から大人に渡すのに相応しいプレゼントか…」

 

 

「クラスのカンパは5000円、これで何とかしなきゃだしね」

 

 

杉野と渚がプレゼントを考えるのに頭を悩ませていると優しげな声が彼らにかけられる。

 

 

「あっ!君たち大丈夫だった!?」

 

 

「あっ…あの時の」

 

 

そう、話しかけてきたのは和生とお爺さんが怪我をした時に救急車を呼んでくれた花屋の男性だ。

 

 

「あの時のお爺さんは大丈夫だったかい?」

 

 

「はい、すごい怒られましたけど…タダ働きで許してもらえました」

 

 

渚があの事件後の経緯を説明すると花屋の男性はホットしたような表情になる。

そして話を続けてきた。

 

 

「プレゼントがどうとか言ってたよね?こんなのはどうかな?」

 

 

「あっ…」

 

 

男性が一輪の花を神崎に差し出した。

それを見た茅野が顔を輝かせる。

 

 

「あっ!花か!」

 

 

「そう、ものの1週間で枯れてしまうものに高いお金をかける。ブランドバッグなんかよりもずっと贅沢なんだ」

 

 

花屋の男性の力説を聞いているうちに渚たちは話にどんどん引き込まれていく。

 

 

「今、色んなものがプレゼントされるなかで何で花が未だに第一線を張れているか分かるかい?色が、香りが、儚さが、人の心にピッタリあっているからだよ」

 

 

「説得力がありますね!」

 

 

話を聞いていた奥田が笑顔でそういうと。

 

 

「そうだねぇ、それで電卓持ってなかったら良かったんだけどね」

 

 

「あはは…一応商売なもんで。どうする?これも花の縁だ、安くしとくよ?」

 

 

渚たちは、その提案に乗ることにした。

5000円の輝きを放つ花束は人の心を魅了するには十分だろう。

買出しを終えた渚たちは烏間にイリーナにプレゼントするように促したのだが…

 

 

「これが最初で最後の誕生日プレゼントだ」

 

 

「えっ…?」

 

 

「今年で地球が終わるか、任務が終わるかのどちらかだからな」

 

 

初めは烏間からのプレゼントに喜んでいたイリーナであったが、烏間の言葉からこれが生徒たちによるものだと感づき、窓を開けた。

 

 

「やべ…バレた」

 

 

「どうせんこんなこったろうと思ったわ」

 

 

イリーナが窓を開けるとそこには生徒達の姿、イリーナは彼らに実弾を放ち威嚇した後、花束を捨ててさっていった。

 

 

「ありがとう…おかげで目が覚めたわ」

 

 

「ビッチ先生!」

 

 

生徒たちの静止も虚しくイリーナは帰っていってしまうのだが、烏間が言うには色恋で鈍る刃は要らないらしいのだ。

烏間は1人前の大人には本当に厳しい人のため、生徒たちも納得せざるを得なかった。

そして帰宅するイリーナを見ている男が1人。

 

 

「畏るなかれ死神の名を、君はもうあのクラスに戻ることはないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、英国のとある場所ではこんな会話が行われていた。

 

 

「お父様!レグルスから連絡が入りましたっ!お兄様の身に危険が…!」

 

 

「くっ…マユに続いてカズキまでも手にかけるつもりか…」

 

 

金髪の少女が父親と思わしき人物のもとに兄の危険を知らせに来ていた。

 

 

「お父様…」

 

 

「眷属であるレグルスが殺されかけたという事は相手も相当な手練のはずだ…」

 

 

少女の父親は手の甲に顎を乗せ悩んでいる。

美しい金髪と整った顔立ちが魅力的な男性と、ふわりと咲いた花のように可愛らしいが若干東洋の人のような顔に大きく輝いた金色の瞳のショートカットの少女が話しているとそこに連絡が入った。

 

 

「レグルス様からの連絡をお伝え申し上げます!カズキ様に全てを打ち明けるとの事です!」

 

 

「そうか…事態が事態だ…許可しよう。もともとカズキの事は彼に任せてある」

 

 

男性が使用人と思わしき人物からの連絡を聞くと少女が顔を上げた。

 

 

「お父様、わたしが日本に向かってもよろしいでしょうか?」

 

 

「なっ!?ルウシェ!ダメだ、許可できん!お前の命も狙われているのだぞ!?」

 

 

ルウシェと呼ばれた少女の発言に父親が声を荒らげる。

 

 

「では無視してでも参ります。わたしはお兄様に会うことを夢見て生活してきました。去年お母様がわたしを庇って亡くなられたときにわたしはお母様に言われたのです!いつかお兄様に危険が及んだ時は助けてあげてと!お父様が泣きそうな時、辛そうな時は支えてあげてと!わたしの命はお母様のおかげでここにありますっ!ならわたしはお母様の望みを叶えなければならないのですっ!」

 

 

「しかしだな…お前が国外に出るのは…それにやはり危険が…」

 

 

「プライベートジェットで飛びます。秘密裏に行えば大丈夫なはずです。護衛はカノープス1人で十分です。カノープス、いますか?」

 

 

「ルウシェ様がお呼びであればどんな場所からでも馳せ参じます」

 

 

金髪の少女が呼ぶと緑色の長髪をたなびかせ、凛とした女性が現れた。

 

 

「ルウシェ…本気なのか?」

 

 

「はい、お父様には申し訳ありませんが行かせていただきます。お母様がお話しして下さるお兄様のお話はいつもわたしの憧れでした。そんなお兄様に危機があるというのならわたしは行きます。お母様から授かったこの『紅桜(べにざくら)』と共に」

 

 

金髪の少女は腰に下げていた刀を手に取って父親に見せた。

 

 

「わたしは1人ではありません、お母様もついています。お兄様を必ず守り、わたしも無事帰還することをお約束します」

 

 

「…そうか。そこまで言うのなら良いだろう。しかし準備が必要だ、2日待ってくれ」

 

 

「わかりました。お父様、ありがとうございます」ニコッ

 

 

「…ああ」

 

 

少女と緑色の髪をした女性は一礼して部屋を出ていった。

残された父親が頭を抱えていると今度は二十代後半と思われる赤髪の男性が入ってくる。

 

 

「良かったのですか?デュナミス様」

 

 

「プロメテウスか…仕方あるまい。他でもないルウシェの頼みだ。しかし…2人が無事か心配でならん…」

 

 

「そうですね、お2人とも立派な…」

 

 

「皆まで言うな。子供たちを信じるのも親の務めであろう?」

 

 

「そうですね」フフッ

 

 

そして翌々日。

金髪の少女は緑髪の女性が運転するプライベートジェットで日本へと向かっていた。

 

 

「ルウシェ様、カズキ様と会ったらどうするのです?」

 

 

「そうですね…まずは思い切り抱きしめていただきたいですっ!」ニコッ

 

 

「では、必ず守り抜かねばなりませんね」フフッ

 

 

「はい、この『ルウシェ・エルレンシア』エルレンシア家の誇りをかけて、そして妹として必ずお兄様を守って見せます」

 

 

E組に死神の影が迫る頃、海の向こう側からも一人の少女がやってこようとしていた。

 

 

「お母様…紅桜…わたしにチカラを…おかしください」

 

 

少女が胸にだく1本の刀には桜の紋様が描かれていた。




はい!超展開!
和生くんの正体…何者なんでしょうか!
全ては次回語られることになりますよっ!
感想などお待ちしております!
ルウシェちゃんのイメージは空戦魔導士候補生の教官のレクティ・アイゼナッハで、CVは石原夏織さんです!
まぁ、具体的な声のイメージは白猫プロジェクトのシズクちゃんみたいな感じですね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

正体の時間

この作品の死神編は殆どオリジナル展開です!ご了承くださいませ。
今回ついに、謎が明らかに?


あの一件があってからイリーナは学校に来ていない、既に3日が経過していた。

 

 

「もう3日だぜ…」

 

 

「余計なことしちゃったかな…」

 

 

自分たちの行動が彼女を傷つけたのではないかと心配している。

 

 

「肝心の烏間先生は放課後まで1日いねぇしなー」

 

 

そう、前原の言う通り烏間は仕事の関係で放課後まで防衛省に戻っている。

 

 

「でも仕方ないだろ?殺し屋との面接と…」

 

 

「和生くんにお客さんが来てるんだよね?」

 

 

磯貝の言葉に渚が続く。

 

 

「あぁ、だから和生も烏間先生について防衛省に行ってるらしい」

 

 

彼らが言うように和生も烏間と同様に防衛省に足を運んでいる。

 

 

「はやみ〜ん?桜井ちゃんがいない寂しい〜?」ニヤニヤ

 

 

「そ、そんなことないわよっ!」

 

 

「えぇー?はやみんの事だから『和生がいなきゃ学校に来ても…』とか思ってたんじゃないの?」ニヤニヤ

 

 

「べ、別にそんなこと思ってなんかないわよ!…ちょっとだけしか」

 

 

「はやみんかわいい〜」

 

 

速水をからかっていた中村だが、速水の反応があまりに可愛らしかったので速水を抱き締めた。

 

 

「ちょ、ちょっと莉桜っ…///」

 

 

2人のやり取りにクラスの雰囲気がやや明るくなる。

しかしやはりイリーナと烏間の先生2人が学校に来ていないため必然的に座学が一日続く。

殺せんせーの授業は面白いかつわかりやすいのだが、皆イリーナの一件を引きずっているため全然頭に入ってきていなかった。

放課後になり殺せんせーはブラジルにサッカーの試合を観戦しに行った。

教室に残っていた生徒たちはイリーナと自分たちの関係がどうなるのかを案じていた。

 

 

「ビッチ先生大丈夫かな…」

 

 

「携帯もつながらないし…」

 

 

「まさか…こんなんでバイバイとかないよな…?」

 

 

「そんな事ないよ。彼女にはまだやってもらうことがある」

 

 

「だよねー!何だかんだいたら楽しいもん」

 

 

千葉の言葉に男が返し、それに岡野が言葉を返す。

 

 

「そう、君たちと彼女の間には充分な絆が出来ている。それは下調べで確認済みだ。僕はそれを利用させて貰うだけ」

 

 

男は平然と教卓の前に立ち、花束を置いた。

次の瞬間に生徒たちは驚愕した、平然と自然に教室に溶け込んできた男性は、渚たちが花束を購入した花屋の男だったからだ。

生徒たちが自分に注目したのを確認した男は話し始めた。

 

 

「僕は『死神』と呼ばれる殺し屋です。今から君たちに授業をしたいと思います」

 

 

死神と名乗った男に生徒たちは開いた口が塞がらない。

 

 

「花はその美しさで人間の警戒心を打ち消し、心を開きます。渚君、君たちに言ったようにね」

 

 

男が1輪の花を取り出すと律に1通のメールが届いた。

 

 

「でも、花が本来美しく、芳しく進化してきた目的は。律さん、送った画像を表示して」

 

 

俺が指示すると律は素直にメールに添付された画像を表示する。

律の画面に映し出されたのは…

 

 

「虫をおびき寄せるためです」

 

 

体を縛られ箱に詰められたボロボロのイリーナの姿だった。

その姿を見せられた生徒たちはさらに驚愕する。

 

 

「手短に言います。彼女の命を守りたければ、先生達には決して言わず君達全員で僕が指定する場所に来なさい。来たくなければ来なくてもいいよ?だけどその時は彼女の方を君たちに届けます。全員平等に行き渡るように小分けにして。そして次の『花』は君たちのうちの誰かにします」

 

 

この言葉を聞いた時渚は確信していた。

この花屋の男がロヴロが言っていた『死神』なのだと、恐ろしいことを平然と口にしているというのに、それが嘘ではないとわかるのに、なぜか心が安心していたからだ。

そして奥田もカルマの言葉を思い出していた。

『警戒できない、怖くないって実は一番怖いんだなって思った』

そんな時寺坂、吉田、村松の3人が死神に詰め寄った。

 

 

「…おうおう兄ちゃん。好き勝手くっちゃべってくれてっけどよ?俺らにあの高飛車ビッチを助ける義理なんてねーんだぜ?俺らへの危害もちらつかせちゃいるが、そんなのは烏間の先公やタコが許さねーよ。第一、ココでボコられること考えなかったのか?」

 

 

寺坂の言葉に反応した生徒たちが男を取り囲む。

 

 

「残念、寺坂君。それは全て間違っている。君たちは自分たちで思っている以上に彼女が好きだ。話し合ったとしても見捨てるという結論は出せないだろうね」

 

 

優れた殺し屋ほど万に通ずる。

生徒たちの思考を読むなどお手の物だった。

 

 

「そして、人間が死神を刈り取ることなどできはしない。畏れるなかれ、死神が人を刈り取るのみだ」

 

 

死神がそう言って花束を投げると彼の姿は忽然と消えた。

その場に残されたのは指定された場所の地図と散らばった花弁のみだ。

 

 

「くっそ!花束に盗聴器が仕掛けてあったのかよ!」

 

 

前原が発見した盗聴器を床に叩きつける。

生徒たちは指定された地図に書かれたメッセージを読む。

 

 

「今夜18時までにクラス全員で地図の場所に来てください。先生方や親御さんにはもちろん…外部のものに知られたらビッチ先生の命はない…か」

 

 

「シロの時と同じだな。俺らを人質にして殺せんせーを誘き出すのが目的だろう」

 

 

「しょーがないんじゃない?私等大金稼ぎの1等地にいるわけだし。世界一の殺し屋もそーするのが必然よ」

 

 

千葉と狭間の考察は概ねあっているだろう。

しかしここで問題が発生する。

 

 

「和生は…烏間先生と一緒にいるんだよな?」

 

 

「「「あっ」」」

 

 

磯貝の一言でクラス全員が声を上げる。

一瞬の沈黙のあと、竹林が口を開いた。

 

 

「死神としては桜井がいない事よりも烏間先生に知られる方がやっかいだろう。ここは桜井抜きで行って死神に事情を説明するべきだ」

 

 

「…」

 

 

竹林の言葉に渚が俯いた。

 

 

「これ?使うか?」

 

 

寺坂が取り出したのは超体育着。

 

 

「守るために使うって決めたんだしね。今着ないでいつ着るってのさ」

 

 

「だな、あんなビッチ先生でも世話になってるし」

 

 

中村、岡島が超体育着を手に取る。

 

 

「最高の殺し屋だか知らねーがよ。そう簡単に計画通りにさせるかよ」

 

 

E組の生徒たちによる死神への反撃が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に死神がやって来ている頃烏間にはロヴロから連絡が入っていた。

死神が動き出したという事、生徒たちに危険が迫っていることを告げられた。

しかしまだ仕事中時間が無くあまり話すことが出来なかった。

それもその仕事というのが極秘任務らしく指定された部屋に向かう途中に厳重な警備がしかれている。

烏間は和生を連れて指定されたに向かっているのだが、部屋に通される時持ち物のチェックを受けていた。

 

 

「烏間先生…何事ですか?」

 

 

「すまないが俺も聞かされていないんだ。恐らくは上層部の人間しか知らない極秘情報なのだろう」

 

 

「それが俺に関係あるんですか?」

 

 

「その様だな」

 

 

準備が整い、烏間が扉を開けるとその部屋には30代後半と思われる茶髪の男性がいた。

和生が入室するのを確認するとその人物は立ち上がり深々と頭を下げた。

 

 

「カズキ様。再びお会いすることが出来て光栄です」

 

 

「はい?」

 

 

和生は自分が様付けで呼ばれたことに首を傾げながらも烏間の誘導で席についた。

全員が席についたところで烏間が口を開く。

 

 

「貴方は一体何者なんだ?こんなに厳重な警備、そして桜井君のことを様付けで呼ぶ理由を聞かせて欲しい」

 

 

「はい、私の名は『レグルス』。カズキ様の眷属に属するものです。今回はある事をカズキ様にお伝えするために参りました」

 

 

「えっと…俺はイマイチ状況が理解できてないんだけど…」

 

 

「申し訳ありません。度々ご無礼を…」

 

 

「度々って…初対面ですよね?」

 

 

和生がそう言うと男はタオルを取り出して頭に巻いた。

 

 

「これでわかるか?兄ちゃん」

 

 

「あ、あぁ!たい焼き屋のおじさん!?」

 

 

「はい、そうです。先程のように無礼な口調で話しかけてしまったことを深くお詫び申し上げます」

 

 

「え?いや、無礼とか言われても…たい焼きは美味しかったし…先ず俺に無礼ってなんなんですか?」

 

 

和生の言葉に烏間も同意見のようで頷いている。

 

 

「では…先ずカズキ様の素性を話さなければなりませんね」

 

 

「えっと…お願いします」

 

 

「はい、単刀直入に申し上げますと…カズキ様のお名前は桜井和生であり、桜井和生ではありません」

 

 

「え…」

 

 

「あなたの本当の名前は『カズキ・エルレンシア』。英国王家、エルレンシア王家の御氏族になられます」

 

 

レグルスの言葉に烏間が反応する。

 

 

「英国王家だと!?それは麻友さんが最後の仕事で護衛を務めた…」

 

 

「はい、マユ様はその任務後にルウシェ様…カズキ様の妹様を庇ってお亡くなりになりました」

 

 

「ま、待ってくださいよ!じゃあ母さんは俺の母親じゃなかったって言いたいんですか!?」

 

 

「いえ、違います。マユ様は列記としたカズキ様とルウシェ様の母親です。そして貴方の父親は…英国王子『デュナミス・エルレンシア』です」

 

 

「それって…」

 

 

「はい、烏間様。マユ様は長期の任務で英国に滞在されていましたね?」

 

 

「ああ、そのはずだ」

 

 

「その時に王子とマユ様は恋に落ちた…いえ、最初は王子の一方的な愛情でした。マユ様はあくまでも任務対象であり、自分との身分の違いを訴えておりました。ですが王子から注がれる愛に惹かれてしまったらしいのです。二人の間には子供が出来ましたが公には出来ないためにマユ様の故郷である日本に送られたのです。それがカズキ様です」

 

 

「いや…ちょっと待ってよ…わけわかんないよ…俺が王子の子ども?ふざけないでよ…」

 

 

和生は俯いてしまったのだが、レグルスは話を続ける。

 

 

「すぐには受け止められないのはわかっていますが…全て事実です。カズキ様、生活する中で世界が凍りついたように感じることはありませんでしたか?」

 

 

「…っ」

 

 

「やはりありましたか。それは『蒼魔凍』と呼ばれる我国の王族にのみ扱える秘技です。貴方の血が王族のそれである事を証明するものなのです」

 

 

「桜井君、大丈夫か?」

 

 

「烏間先生…大丈夫です…」

 

 

和生は自分に入ってくる莫大な情報と自分の正体に愕然とする。

それでも話を聞かなければならないと踏ん張っているようだ。

 

 

「そしてここからが本題です。その後も任務で何度か英国を訪れていたマユ様には2人目の子供が出来ました。それがルウシェ様です。しかしルウシェ様は公に公表されました」

 

 

「な、何故ですか?」

 

 

「それはある人物の陰謀です。王子には妻がいないのにも関わらず娘がいる。そのニュースは世界を飛びました。ですがルウシェ様は養子であるとされ大事にはならずに住んだのですが…去年のことです。マユ様が再び王子の元を訪れた時にそれは起こりました。ルウシェ様の命が狙われたのです。子供がいなければ王座は血縁者の子孫になります。それを狙った者達がルウシェ様を狙って殺し屋を雇い、暗殺を計画しました。そしてそれは決行されルウシェ様を庇ってマユ様は…」

 

 

「母さんがそんなことを…」

 

 

「はい、そしてその時の殺し屋の1人が現在カズキ様を狙っております。さらには貴方の級友たちをも」

 

 

「なっ!?」

 

 

「生徒達をか!?」

 

 

これには驚いたようで烏間も声を荒らげた。

 

 

「そこで今回の件をお伝えさせていただいた次第であります。そしてこれを…カズキ様にお渡しするべく」

 

 

レグルスが取り出したのは異形の銃と弾丸。

片手で持てるサイズではあるが拳銃とは比べ物にならないサイズで弾丸はまるで杭の様な形をしている。

 

 

「これは?」

 

 

和生がその銃の正体を聞く。

 

 

「この銃の名は『ヴラド』。王族にのみ使用が許された武器です。王族以外が扱えばたちまちその血を喰らい尽くすという恐ろしい銃ですが、カズキ様ならば存分に扱えるかと」

 

 

「これで…俺は…どうすれば」

 

 

「簡単です。守ってください。ご自身をご友人を、そして英国で貴方を案じている家族を」

 

 

「そう…ですか…」

 

 

「1度には語りきれませんので今日はここまでにしましょう。烏間様、これからもカズキ様をお願いします」

 

 

「わかっている、まかせてくれ。桜井君、校舎に行こうまだ生徒たちもいるはずだ」

 

 

「はい…」

 

 

和生はヴラドと弾丸が入ったケースを受け取ると、烏間と共に校舎へと帰ることにした。

校舎に向かうタクシーの中で和生は烏間に問いかけた。

 

 

「俺が王族だったなんて…皆は受け入れてくれますかね?」

 

 

「どうだろうな。だが、君たちの絆というのはそれだけで壊れるものではないと思うぞ」

 

 

校舎の近くまで来たところで2人はタクシーから降りる。

烏間が和生と並んで歩いていると花屋の男性の足元に花が落ちているのに気付いた。

烏間はそれを拾って男に手渡した。

 

 

「商品、踏みそうだぞ?」

 

 

「あ、これは有難い!お礼に一輪どうぞ」

 

 

「…最近見た花だ」

 

 

「ガーベラです。わりと繊細な花でしてね。あなたは野に咲く花の方かお好きでしょうが…手元の花は水をやらねばすぐ枯れてしまいますよ」

 

 

「?せいぜい長持ちさせるさ。ありがとう」

 

 

意味深な発言をする店員に別れを告げて烏間は和生のもとに戻る。

一方男とはと言うと。

 

 

「接近してみて改めて超人的なチカラを感じた。だが我敵になるレベルではない。彼も花束に加えようか。それとあの坊や。あの先生といるってことはあとから花束に加えることになるな。いや…彼に摘み取られるか…」

 

 

烏間と和生が校舎に戻るまであと数十分。

その頃ほかの生徒たちは地図に記された場所に向かっていた




和生くんの正体!驚きですよね!
ですが彼の超人的な能力、そして家の大きさ、優れた容姿にこれで納得がいったのでは?
そして次回からはいよいよ死神との闘いが始まります。
様々なことが交錯する死神編!どうぞこれからも宜しくお願いします!
感想などお待ちしております!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

死神の時間

投稿時間が遅くなって申し訳ないです!
いよいよ、死神のアジトへ潜入ですね!


「…あの建物か」

 

 

生徒たちは地図で指示された場所へやって来ていた。

糸成が製作したヘリで周囲と建物の屋上を偵察し、乗り込む準備をしていた。

 

 

「あのサイズじゃ中に手下がいたとしても少人数だね」

 

 

「あぁ、周囲や屋上にも人影はない」

 

 

「それと花束に盗聴器を仕込む必要があったって事は、逆に考えればそれの直前のことは把握してない可能性が高いよ」

 

 

生徒達は速水の考察、糸成の調査、不破の読みを頼りに作戦をねる。

 

 

「いいか皆?この超体育着や皆がそれぞれ殺せんせーを暗殺するために開発した武器、敵がどんだけ情報通でも…俺達の全てを知ることは不可能。おとなしく捕まりに来た振りをして、隙をみてビッチ先生を救出し、全員で脱出だ」

 

 

「律、12時を過ぎて戻らなければ殺せんせーに事情を話して」

 

 

「はい、皆さんどうかご無事で」

 

 

「…いくぞ!」

 

 

磯貝の作戦通りに生徒達は建物に侵入した。

そこはだだっ広く、アチコチに散らなければどこから襲われるかわからないような場所だった。

全員が入るとアナウンスが流れる。

 

 

『1人足りないけどまぁいいか、閉めるよ?』

 

 

スピーカーから死神の声が聞こえると同時に入ってきた扉にロックがかかる。

 

 

「…ふん、やっぱりこっちの動きはわかってるんだ。死神ってより覗き魔だよね」

 

 

『皆揃ってカッコイイ服を着てるね?隙あらば一戦交えるつもりかい?』

 

 

「確かに桜井くんは来れていないけど!ちゃんと来たわよ!ビッチ先生を返してくれればそれで終わり!」

 

 

『ふむふむ、部屋の端々に散っている油断のなさ、良く出来ている』

 

 

そこの声と同時に今度は部屋全体が下に落ちる。

そして次の瞬間生徒達の目に映ったのは…

 

 

「捕獲完了、予想外だろ?」

 

 

自分たちを捕らえた死神の笑顔だった。

 

 

「部屋すべてが昇降式の監獄。ちゃんと君たちのために作ったんだよ?こんな風に捕らえるのがリスクが一番少なく一番早い」

 

 

「あっ!ビッチ先生!」

 

 

矢田が捕まっているイリーナを見て声を上げる。

 

 

「お察しと思うけど、君たち全員あのタコをおびき寄せる人質になってもらうよ。大丈夫、奴が大人しくくれば誰も殺らない」

 

 

「くそっ!」ガンガン

 

 

「出しやがれ!」ガンガン

 

 

生徒たちは壁を叩いて脱出を試みる。

その間に片岡が死神に問いかける。

 

 

「本当に?ビッチ先生も今は殺すつもりは無いの?」

 

 

「人質は多いに越したことはないよ。場合によっては大量の見せしめがいる。交渉次第では30人は殺せる命が欲しいね」

 

 

「でも今は殺さない、本当だな?俺達があんたに反抗的な態度を取ったら頭に来て殺したりは?」

 

 

岡島が再度確認する。

 

 

「ああ、しないよ?子どもだからってビビりすぎだろ」

 

 

「いや、ちょっぴり安心した」

 

 

「竹林!ここだ!」

 

 

岡島がそう言うと、三村が壁を指さす。

次の瞬間、奥田がカプセル煙幕を投げ、竹林が指向性爆薬で空間のある壁を破壊し脱出した。

 

 

それを見て死神の顔つきが変わる。

 

 

「いいね!そうこなくちゃ!前代未聞のモンスターを殺す最難関の仕事。27人の殺し屋は肩慣らしには丁度いい」

 

 

死神は考えた、1人2人は死んでもいい、万を超える死神のスキルを思い出そうと。

椚ヶ丘中学校3年E組、一致した一つの目標と校内での苦い経験から強い結束を持った暗殺者たち。

 

 

『聞こえるかな?E組の皆。君たちがいるのは閉ざされた地下空間だ外に出るための電子ロックは僕の眼球の虹彩認証だけ、つまり出たかったら僕を倒すしかない。実はね、君たちが逃げてくれて少し嬉しいんだ。これだけの訓練を積んだ殺し屋たちを一度に空いてできる機会は滅多にないからね。人質だけじゃもったいない、君達全員に僕のスキルを高める相手をしてもらう。どこからでもかかっておいで?』

 

 

まるでゲームのように話しかけてくる死神の顔が見えないことに渚は不安を覚えていた。

その頃E組の校舎には3人の人物が集まっていた。

 

 

「おかしい…この時間なら遊びや自主練で残っている生徒がいるはずだが…!」

 

 

「烏間先生!皆の超体育着が無いです!」

 

 

「なんだと!どういうことだ…」

 

 

「ええ、おかしいですねぇ。誰にも連絡が繋がらない」

 

 

「殺せんせー!」

 

 

「和生くん、すぐに超体育着に着替えてください。そして一度君の家に飛びレヴィアタンを準備しましょう。烏間先生も武装をお願いします」

 

 

「わ、わかった!」

 

 

「そうだな、胸騒ぎがする」

 

 

「私は生徒たちの匂いを辿るための準備をしてきます。その間にお願いしますね」

 

 

烏間と和生は殺せんせーの指示通り素早く準備をする。

そして何故か犬の姿をした殺せんせーに抱き抱えられ一度和生の家に飛んだ。

 

 

「律がいない…とりあえずレヴィアタンの準備だ!」

 

 

和生は地下室からレヴィアタンを取り出して右腰に下げ、殺せんせーのもとへと戻った。

 

 

「烏間先生、早速このヴラドを使うことになりそうですね」

 

 

「そのようだな。しっかりと守り抜かないとな」

 

 

「ヌルフフフ、良い武器です。必ず3人で探し出しましょう!」

 

 

和生はヴラドをホルスターに入れ、左腰に下げる。

 

 

3人は殺せんせーの誘導で生徒たちの捜索に乗り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃生徒たちはというと。

 

 

「役割を決めて3手に分かれよう。狭いここじゃ全員でいても身動きがとれないからな」

 

 

クラスのリーダーである磯貝の発案でチーム分けをする事になった。

 

 

Aチーム

戦闘をを目的としたチームだ。

メンバーは

 

 

磯貝、前原、木村、吉田、村松、カルマ、渚、千葉、茅野、岡野だ。

 

 

Bチーム

イリーナの救出をメインとするチームだ。

メンバーは

 

 

矢田、片岡、速水、倉橋、三村、神崎、岡島、中村、杉野。

 

 

Cチーム

脱出経路の捜索をおこなうチームだ。

メンバーは

 

寺坂、糸成、菅谷、不破、原、奥田、竹林、狭間だ。

 

 

「監視カメラは見つけたら即破壊、そして律、各班の円滑な連絡を頼んだぞ」

 

 

「やる気しねぇ〜、死神さんに逆らうとかありえねーし」

 

 

…ハッキングされていた。

 

 

「ま、まぁ、トランシーバーアプリでも連絡は取れるから、臨機応変に行こ?」

 

 

「そうだな、警戒を忘れるな!散るぞ!!」

 

 

生徒たちはチーム事に散り散りになる。

まず最初に敵と出会ったのはAチームだ。

死神の不意打ちを警戒していた彼らだが、真っ正面から襲いかかられた。

 

 

「殺し屋になって最初に磨いたのは正面戦闘のスキルだった。殺し屋には99%いらないスキルだが、これがないと1%を取り逃がす。世界一の殺し屋を目指すなら必須のスキルだよ」

 

 

次々と仲間が倒れていく中、渚が行動に出た。

猫騙しをやるつもりだったのだが…死神に先手を打たれ失敗、Aチームの生徒たちはそこで気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いてBチーム、イリーナを無事発見した彼らは彼女を担いで退散しようとした。

その時だ。

 

 

「6ヶ月くらい眠ってたわ、本来の自分の姿も忘れて」

 

 

死神側へ寝返っていたイリーナによって彼女を担いでいた杉野と片岡が倒された。

 

 

「逝かせてあげるわ。ボーヤたち」

 

 

「ビッチ先生…そんな人だとは思わなかったよ…」

 

 

中村が悲しそうに語りかける。

 

 

「こんな人よ。どんな人だと思ってたわけ?」

 

 

「え…いや…身勝手で…欲望に弱くて…男がいないと性欲で全身が爆裂して死ぬ…あ、わりとこんな人か!」

 

 

「怖い設定付け足すな!!」

 

 

「な、なぁビッチ先生?いくら先生でも俺ら全員を相手にするのは無理だろ?」

 

 

「クス、そうかしら?なら最後の授業をしてあげるわ」

 

 

そういってイリーナが麻酔入りのインジェクターを構える。

それに応じて生徒たちも武器を構えた。

しかし次の瞬間。

 

 

「あっ痛うっ!!ぐ…ハダシで石踏んだ…」

 

 

「だいじょ…」

 

 

イリーナのダサさに生徒たちは手を差し伸べようとする。

しかし…すぅっという素早い身のこなしでイリーナが矢田、三村、中村、岡島にインジェクターを打つ。

そして脚に絡まっていたシーツを神崎と速水に被せて視界を奪った後、彼女たちにも打ち込んだ。

 

 

 

「ず、ずりぃ…」

 

 

「しんぱいしちゃったじゃん…」

 

 

「訓練にはこんな動きなかったでしょ?いいことヒヨッコども?訓練ができても結果が出せなければ意味が無いのよ。これは経験の差、渡り歩いた修羅場の数が違うと心得なさい。そして最後に凛香、もう桜井とは会えないわ」

 

 

「えっ…?」

 

 

生徒たちはその言葉を最後に意識を失った。

Bチームもこれで全滅。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてCチームは新たな人物と遭遇していた。

 

 

「貴様らは戦える力を持っていないな?どうする大人しく人質になった方が見の為だぞ?」

 

 

彼らの前に現れたのは濃紺の髪に巨大な鎌を構えた男『ハダル』。

 

 

「行くぜイトナ!俺とテメーでアイツを倒す!」

 

 

寺坂は糸成と協力してハダルを倒すつもりのようだが、糸成は殺せんせーとの会話を思い出して降伏を宣言した。

 

 

「今は勝てなくてもいい、何時か勝てる時までチャンスを待つ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして捕らえられた生徒たちは手錠と首に小型爆弾を付けられ、脱出不可能な場所に閉じこめられた。

 

 

「練習台はもういいから後は人質でいてね」

 

 

「はーあ。ビッチ先生に裏切られて悲しい」

 

 

「フン」

 

 

生徒たちは確信していた、自分たちが意識を失った時点で自分たちの死が確定していたことを。

そして自分たちが何人いても彼らには勝てないことを。

 

 

「さて、次は烏間先生と桜井君だ」

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

烏間と桜井という言葉に生徒たちとイリーナが反応する。

 

 

「彼らなら、君たちよりはいい練習台になるだろう。それに彼らを捉えておくメリットある。それにハダルの標的は桜井君だしね」

 

 

生徒たちはコイツならやりかねないと思っていた。

そして速水が反応する。

 

 

「和生が標的ってどういうことよ!」

 

 

「フン、貴様らにいう義理はない」

 

 

「くっ…」

 

 

そんなやり取りが行われている一方で、寺坂は糸成に話しかけていた。

 

 

「…なぁイトナ?あっさり降伏なんざらしくねーぞ?えらくかわったな」

 

 

「あの頃の俺は1人の殺し屋だった。だが今はここの生徒だ」

 

 

2人が話している時カルマが声を上げた。

 

 

「死神さーん!モニター見てみ?あんたまた計算違いしてたみたいだよ?」

 

 

「…何故分かった?」

 

 

「今は…俺はE組の生徒だ。タコが言った『生徒に越せない壁があったなら…その時は先生の出番です』と」

 

 

死神が見るモニターには、建物の入口に立つ、烏間、和生、そして犬の格好をした殺せんせーがいた。

 

 

「ここです。犬に変装したお陰で自然に臭いを辿れました」

 

 

「無理があるよ…」

 

 

「本当だ、こんなうすらでかいどこが自然だ」

 

 

モニター越しに彼らの存在を知った生徒たちは声を上げる。

 

 

「殺せんせー!」

 

 

「烏間先生だ!」

 

 

「和生っ!」

 

 

生徒たちが捕まっていることを知らない殺せんせーたちは外で話している。

 

 

「生徒の臭い、花の匂い、おそらくこれを私が辿って来たところを殺す気でいたのでしょうが。敵にとって一番の計算外なのは私が試合を見ずに戻ってきたこと、そして2人と来たことでしょう。敵も万全の状態ではないはず、行きますよ2人とも」

 

 

3人が入ってくるのを確認した死神たちは彼らの元へと向かう。

この時生徒たちは思った、3人はイリーナが裏切ったことを知らない。

 

 

「イリーナ!?」

 

 

「イリーナ先生!」

 

 

「ビッチ先生!?」

 

 

「お前はこの前の花屋の…」

 

 

「そう、聞いたことはあるかい?死神の名を」

 

 

「にゅ…」

 

 

死神という単語に殺せんせーが黙り込む。

 

 

「皆もここのどこかに?」

 

 

「そうだよ、桜井君」

 

 

3人は感じ取っていた、世界一の殺し屋の実力を、そして…

 

 

「貴様が来るのを待っていたぞカズキ・エルレンシア」

 

 

「へぇ…じゃあ鎌のお兄さんがレグルスさんが言ってた殺し屋さんなんだ。その名前を知ってるってことはそうだよね?」

 

 

「レグルスが生きていたか…まぁいい。貴様の相手はあとだ」

 

 

「先ずはタコからだからね?彼女と生徒たちには爆弾を取り付けてある、僕の合図一つで殺せるよ?」

 

 

「随分と強引ですねぇ…ですが私が脅しだけで死ぬとでも?」

 

 

「さぁねぇ?」

 

 

「(鎌の男は動く気配がない…なら彼の銃にだけ気をつけれ…ば!?)」

 

 

 

次の瞬間、殺せんせーの不意をつくようにイリーナの手錠に仕込まれていた銃が殺せんせーの触手を撃ち抜き、落とし穴が作動した。

3人が驚いていると死神が壁に捕まろうとする触手を銃弾で弾く、殺せんせーはあっけなく牢屋に入れられてしまった。

 

 

「さぁ、お別れを言いに行こうか」

 

 

死神たちに続いて和生と烏間もしたに降りていく、そこで見たのは閉じ込められた生徒たちと殺せんせーの姿。

 

 

「気に入ってくれたかい?君が最後を迎える場所だ」

 

 

「皆さん…ここは?」

 

 

殺せんせーの問いに死神が答える。

 

 

「洪水対策で国が作った地下防水路さ。密かに僕のアジトと繋げておいた。上の部屋から指示を送れば毎秒200tの水が流れ込む。その恐るべき水圧は君の体の自由を奪い対先生物質の頑丈な檻でところてんの完成さ」

 

 

死神の言葉に生徒たちと烏間の顔が青ざめる。

 

 

「待て!生徒ごと殺す気か!?」

 

 

「当然さ、今更待てない。生徒を詰め込んだのもアイツが逃げられないようにするため」

 

 

「イリーナ!お前それを知った上で!」

 

 

「…プロとして結果を優先しただけよ…あんたの希望通りでしょ?」

 

 

そう言うイリーナの顔は苦しげだ。

 

 

「ヌルフフフ!最近先生は対先生物質を克服しました!これを見よ!」

 

 

そう言って殺せんせーは檻を舌でペロペロし始めた。

 

 

「それを続けたら1人ずつ生徒の爆弾が弾けるよ?」

 

 

「えぇっ!そんなぁ!?」

 

 

生徒たちは当たり前だと呆れている。

それと同時に悔やんでいた、賞金も、殺せんせーの命も、自分たちの命も死神に狩られるのだと。

 

 

「さて急ごうか?ハダルの仕事もあるしね」

 

 

しかし歩いて上の司令室へ向かおうとする死神の肩を烏間掴んだ。

 

 

「…なんだいこの手は?日本政府は僕を止めるのかい?たしかに多少手荒だが、地球を救うまたとないチャンスを潰すのかい?そもそも君では僕は止められないよ?」

 

 

この時烏間は考えていた。

政府の見解を、上司はこういった。

『現場の者が判断しろと』

 

 

「(要するに俺の見解が政府の見解だ)」

 

 

ゴスッ!!!!

 

 

烏間は拳で歩こうとする死神の顔を殴りつけた。

 

 

「日本政府の見解を伝える。生徒たちの生命は地球より重い、それでもお前が彼らごと殺すというのなら俺はここでお前を止める」

 

 

「「「烏間先生!!」」」

 

 

しかし次の瞬間ハダルの鎌による一閃が烏間を襲う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パキィンッ!!

 

 

その一閃を和生がレヴィアタンで弾いた。

 

 

「黙って聞いてれば多少手荒い?皆ごと殺す?ふざけるなよ?」

 

 

「「「和生!(桜井くん!)」」

 

 

「言っておくがイリーナ、プロってのはそんなに気楽なもんじゃないぞ」

 

 

「鎌のお兄さん?俺も言っておくよ。俺が標的だってなら俺を狙ってきなよ?俺の大切な友達、先生、そしてこれが一番だが、俺の大切な人に手を出しておいてただで済むと思うなよ?」ギロッ

 

 

和生の今までにないほど鋭い眼光と殺気。

彼の瞳はやはり冷たい金色に染まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、空港では。

 

 

「カノープス!急ぎます!お兄様の血と私の血が感応しています!」

 

 

「はい、ルウシェ様!」

 

 

あの少女が日本に到達していた。

 

 

「お兄様…必ず助太刀に参ります!」

 

 

少女を乗せた車は超スピードで和生の場所へ向かっていった。

 




かなり長くなってしまいましたね!
感想などお待ちしております。
次回から戦闘シーンですね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

強者の時間

遂に戦いの火蓋が切って落される。
そして強者たちの戦い方と弱者の戦い方にも注目ですね!


「どうする死神?生徒ごと溺死させると言うなら俺はここでお前を倒す」

 

 

「(ふーん、思ったより隙が無いな。武装もちゃんとしてるし、殺すのに時間がかかると計画が綻ぶ。ここはタコを優先するべきだな)ハダル、ここは引くよ」

 

 

「止むを得まい、行くぞ」

 

 

死神とハダルは操作室に向ってとてつもないスピードで走り出した。

 

 

「チッ…させるか!」

 

 

「烏間先生!追いましょう!」

 

 

烏間と和生も彼らを追って走り出す。

 

 

「2人とも!トランシーバーとアプリをONにして!!」

 

 

殺せんせーの指示通り2人は無線をONにして駆け抜けていく。

そんな彼らの姿を見てイリーナは首の爆弾を解除しながら殺せんせーたちに話し出す。

 

 

「彼らを倒そうなんて無謀ね。このタコですら簡単に捕らえた死神と桜井の親を殺したハダルよ?確かに烏間は人間離れしてるし、桜井も強いわ。だけど彼らはそれ以上よ」

 

 

「ビッチ先生…」

 

 

「俺らごと殺すってわかっててやったのかよ!」

 

 

「何でよ…仲間だと思ってたのに…」

 

 

前原と岡野の悲痛な叫びが響く。

 

 

「怖くなったんでしょ?プロだプロだ言ってたアンタがゆるーい学校生活で殺し屋の感覚忘れかけてて、俺ら殺してアピールしたいんだよ。私は冷酷な殺し屋よ〜ってね」

 

 

カルマが煽るようにそう言うとイリーナが外した爆弾を檻に投げつけた。

 

 

「私の何がわかるのよ…考えたことなかったのよ!自分がこんなフツーの世界で過ごせるなんて!弟や妹みたいな子と楽しくしたり、恋愛のことで悩んだり…そんなの違うの…私の世界はそんな眩しい世界じゃない」

 

 

イリーナが感情を顕にすると死神から連絡が入る。

 

 

『イリーナ手伝って欲しい。操作室に向かう途中に罠を仕込んだ。彼らが罠に手こずる間にハダルと挟み撃て、所詮この国の人間は殺される気構えなど出来てはいない、死と一緒に生きてきた君の弾は躱せないさ』

 

 

「…わかったわ」

 

 

イリーナも指示通り2人を追って階段を上っていく。

残された生徒たちには殺せんせーが話し始めた。

 

 

「流石は歴戦の殺し屋たちです。『味方だと思っていた人が敵だった』それは私が苦手とする環境の急激な変化です。イリーナ先生はそれを私に悟らせなかった。まだ君たちが勝てる相手ではない。死神が設置していた監視モニター…断片的にではありますが強者たちの戦いが覗けそうですよ」

 

 

殺せんせーが生徒たちに話している頃、烏間と和生は一つ目の扉に差し掛かっていた。

 

 

ガチャ、カリッ

 

 

「ドアノブに違和感がある。手こずると操作室に行かれてしまうな。桜井君、開けるぞ」

 

 

「はい、恐らくは爆薬でしょうから、レヴィアタンで対処します」

 

 

烏間が扉を開けると爆風が2人を包んだ。

モニターでその様子を見ていた生徒たちはその破壊力に驚いている。

しかし…

 

 

「思ったより強力だったな」

 

 

「ですね、でもこの超体育着のお陰で平気です」

 

 

2人は何事も無かったかのようにその場を通り過ぎていった。

それを見て生徒たちは黙り込む。

 

 

「…え?何が起こったの?」

 

 

「爆風に巻き込まれた2人が何事も無く進んでったぞ」

 

 

そんな生徒たちの疑問に殺せんせーが答える。

 

 

「2人は読んでいました、この短時間で仕掛けられるのはせいぜい爆薬程度。しかも威力はそこまでではないと考えられる。それを見越してあえて扉を開け、烏間先生は爆風と同時に後ろ受け身を取りました。ドアも盾になり烏間先生に爆風は届きませんでした。和生君もレヴィアタンの冷気で爆風を相殺したようですね」

 

 

生徒たちは思っていた。

 

 

「「「(冗談だろ!?あの短時間でそこまで!?)」」」

 

 

そんな彼らの気も知らず2人は走り続ける。

彼らが曲がり角に差し掛かるところで原が2人に声をかける。

 

 

「2人とも!その曲がり角は危ない!」

 

 

その言葉の通り2人がそこに差し掛かると銃を体に巻き付けたドーベルマンが彼らに一斉射撃を始めた。

 

 

「銃を撃てるように調教されたドーベルマン。あれだけの数を仕込むとは…死神の手腕ですねぇ」

 

 

「くっ…卑怯な…」

 

 

烏間がゆっくりと角に出る。

その時モニターに映った彼の顔は…恐ろしい笑顔だった。

 

 

「俺はな…犬が大好きなんだ。だから傷つけられない、お前らの主人には悪いが優しい通らせて貰うぞ」

 

 

「「「(え、笑顔ひとつで抜けおった!!)」」」

 

 

しかし生徒たちは犬の気持ちが分からなくもなかった。

何故なら、烏間が笑っている時の半分は人を襲っている時だからだ。

その後も2人は先に進み続ける。

鉄骨が飛んでくれば烏間が受け止め、火炎放射が飛んでくれば和生がレヴィアタンで打ち消す。

短時間でこれだけのトラップを仕掛けた死神とそれをことごとく無効化する烏間。

生徒たちが感じたのは人類最強決定戦なのでは!?という事だった。

 

 

「彼らは強い、それにこの牢屋もとてもツヨイ。では君たちはどうしますか?この場で彼らや檻よりも強くなるか?それとも無理だと土俵を降りるか?どちらも違いますよ。弱いなら弱いなりの戦い方がある、いつものように戦うんです」

 

 

「つってもなぁ…この状況でどーやりゃ…」

 

 

「出来るかもよ。死神に一泡吹かせること!全部うまく行けばだけどね」

 

 

三村が生徒たちにある提案をする。

その頃烏間と和生はというと。

 

 

「来たか…」

 

 

「烏間先生、迎え撃つしか無さそうですね」

 

 

「正直見くびっていたよ。まさかあんなにトラップを躱すとはね」

 

 

「レヴィアタン、絶対零度の剣か…良い武器だな」

 

 

現れたのは死神とハダル。

そして後ろから…

 

 

ズギュッ!

 

 

「ちゃんと当てなよ?イリーナ」

 

 

「ごめんね。次はちゃんとやるわ」

 

 

「…死ぬぞイリーナ」

 

 

「ビッチ先生、やめときなよ」

 

 

「アンタたちには理解出来ないだろうけど、彼らは分かってくれたわ。同じだって」

 

 

イリーナがそう言うと死神が話し始める。

 

 

「そうだね。昔話をしてあげたっけ?テロが絶えないスラムに生まれ、命なんてすぐ消えるあやふやな世界。信頼出来るのは金と己がスキルと『殺せば人は死ぬ』という事だけさ。だから分かってくれる。たとえ…僕が捨石に使ってもね?」

 

 

「捨石?どういうことさ!」

 

 

「桜井君、こういうことだよ?」

 

 

死神が端末を操作すると和生、烏間、イリーナの頭上にある天井が崩れた。

 

 

「いったぁ…烏間先生…?生きてます?」

 

 

「大丈夫だ…生きている」

 

 

「生きてるとは流石だね。だけど閉じ込めた。君たちだけなら抜けられたかもしれないけど。彼女はそんな君たちを惑わすためだけに雇った」

 

 

和生と烏間が後ろを見ると崩れた天井にイリーナの姿があった。

 

 

「可愛らしいくらい迷ってたよね彼女」

 

 

「その迷いは貴様らにも移っていた。それが敗因だ、それでは我々は行くとしよう。最後の仕上げだ。そして次はカズキ・エルレンシア。貴様だ」

 

 

そういって死神とハダルは去っていく。

 

 

『烏間先生!モニターに爆発が見えましたが2人とも無事ですか!?』

 

 

「ああ、俺達は平気だ」

 

 

「でも、ビッチ先生が下敷きになってる」

 

 

『『『!?』』』

 

 

「だが…かまっている暇はない。瓦礫をどうにかして奴らを追う」

 

 

「その方がいいかな。ビッチ先生には悪いけどね」

 

 

『ダメ!』

 

 

先に進もうとする2人を無線から倉橋が呼び止める。

 

 

『どーして助けないの!?』

 

 

「倉橋さん、彼女なりに結果を求めた結果だ。責めもしないし助けもしない。プロなら自己責任だ」

 

 

「俺は約束したから大切な人たちを守るって」

 

 

『プロとかどーでもいいよ!15の私がなんだけど…まだビッチ先生は20歳だよ!?桜井くん!ビッチ先生は大切な人じゃないの!?』

 

 

『うん、経験豊富な大人なのにちょっと抜けてるよね』

 

 

『たぶんだけど…安心のないところで育ったから…大人の欠片をいくつか拾い忘れちゃったんだよ』

 

 

倉橋と矢田の言葉に烏間と和生はハッとする。

 

 

『助けてあげて、2人とも。私たちをいつも助けてくれるみたいに』

 

 

「時間のロスで君らが死ぬぞ」

 

 

『大丈夫!奴らは目的を果たせずに戻ってきますよ!だから2人はそこにいて!』

 

 

そんな会話が行われている中、イリーナは薄れゆく意識の中で人生を振り返っていた。

初めて人を殺した時のこと、冷たい血の海のような日常が終われてよかったと感じていた。

陽の当たる世界で温もりを思い出してしまう前に。

しかし…

 

 

「さっさと出てこい。重いもんは背負ってやる」

 

 

「もう一回、起き上がって見ようよ?ビッチ先生」

 

 

烏間と和生が彼女の世界に再び光を射し込んだ。

その頃死神とハダルは動揺していた、監視カメラから見た牢屋の中が空っぽだったからだ。

彼らは再び彼らを捕らえるべく、踵を返した。

しかし生徒たちはまだ牢屋の中にいた。

カメラと爆弾の解析をし、菅谷が施した迷彩で壁に紛れていたのだ。

活躍したメンバーがラジコン盗撮の犯人たちということもあり、なかなか味のある作戦だった。

 

 

死神たちが戻ってくる頃、烏間がイリーナの応急処置をしていた。

 

 

「お前に嵌められてもなお、生徒達はお前の身を案じていた。それを聞いてプロの枠に拘っていた俺の方が小さく見えた。思いやりが足りていなかったな。済まなかった」

 

 

「えっ…」

 

 

「話はあとだ…戻ってきたようだな。イリーナ、お前が育った世界は違うかもしれん。だが、俺と生徒がいる教室にはお前が必要だ」

 

 

烏間がそう言うと瓦礫を死神が崩してやって来る。

 

 

「イリーナ、烏間たちは?」

 

 

「別の道を探しに行ったわ。酷いじゃない私ごとやるなんて」

 

 

「いやぁ、ごめんよ。でも僕らの世界は出し騙されだろ?文句があるなら次は確実に殺してあげるよ?」

 

 

「別にいいわ…私もね?すぐオトコを乗り替えるビッチだから♡」

 

 

「え…」

 

 

イリーナがそういって治療された腕を見せると背後から烏間が死神を捕らえた。

 

 

「小細工出来ないスッキリした場所に移ろう」

 

 

「正気か!?」

 

 

烏間はそのまま空中に身を投げた。

そして下へ落ちていった。

 

 

「思ったんだが、お前…そんなに大した殺し屋か?」

 

 

落下する中で烏間が死神に言ったのはこの一言だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビッチ先生、上手くいったね。先に下に降りててよ」

 

 

「桜井、アンタはこないわけ?」

 

 

「まぁ、行かせてくれそうにないしね」

 

 

カツン、カツンという足音とともにゆっくり現れたのはハダル。

巨大な鎌を構えて和生を見据えている。

 

 

「ビッチ先生!早く行って!」

 

 

「わ、わかったわ!死ぬんじゃないわよ!?」

 

 

「さっきまで俺らを殺そうとしてたのにやっぱビッチ先生はかわんないねw任せといてよ」

 

 

イリーナはそう言うと和生たちがもときた道を戻っていく。

 

 

「遺言は終わったか?」

 

 

「なんでお兄さんは出てこなかったの?あと、俺の遺言は愛する人に言うって決めてるから。さっきのは違うよ」

 

 

「ふん、あの男は死神ではないだろう。あの程度の実力ではな。更に言うなら俺の標的はお前だ。カズキ・エルレンシア」

 

 

「お兄さんはハダルだっけ?その名前で呼ぶの止めてくれない?俺は桜井和生だから」

 

 

和生はそう言いながらレヴィアタンを左手で構える。

刀身から放たれる冷気が和生の殺気を一層際立たされる。

 

 

「さぁ、母親のもとへ行く覚悟は出来ているか?」

 

 

「んー、確かに母さんには会いたいよ?でも今は守るべき人がいる。愛している人がいる。俺はまだこんな所で別れたくないよ。それにまだ、家族とも会ってないしね」

 

 

「ふん、戯言を」

 

 

「まぁ…母さんを奪ったお前に…負ける気は無いってことだよ。行くぞ!!」

 

 

和生はその言葉と共に、ハダルに斬りかかった。




一旦ここで切らせてもらいます。
感想など待ってますね!
出来るだけ早く、続きもかきますねっ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

血の時間

和生くんVSハダル、烏間VS死神が開戦します。
拙い文ではありますが、読んでいただけるとありがたい限りです(〃・д・) -д-))ペコリン


烏間は死神を拘束して空中に身を投げた後、地面ギリギリのところで拘束を解き受身をとった。

その様子に生徒たちも声を上げる。

 

 

「烏間先生!」

 

 

「…死神も!」

 

 

しかし生徒たちの言葉に烏間が応えることはなく、彼は死神に話しかけていた。

 

 

「受身のスキルは流石だな。一つ一つのスキルの凄さで強引に結果は出せるだろうが…生徒たちには踊らされ、イリーナには騙された。ツメも脇も甘すぎる、ブランクでもあったのか?」

 

 

烏間がそう言うと死神が立ち上がる。

そして死神の脇には顔の皮と思わしきものが浮かんでいた。

 

 

「黙って聞いてりゃ言ってくれるね?」

 

 

とてつもない殺気を放っている死神の顔はとても人間のものとは思えないものだった。

 

 

「お前…なんだその顔は!?」

 

 

「顔の皮は剥いで捨てたよ。変装のスキルを極める上で邪魔でしかない。全てを犠牲に磨き上げた『死神』のスキル!!お前も殺して顔の皮を頂こうか!!」

 

 

「この教室から退出願おう。お前は生徒の教育には悪すぎる」

 

 

飛び掛かる死神と迎え撃つ烏間。

2人の戦いの火蓋が切って落とされた。

それぞれの攻撃を全て受け止め、躱す烏間と死神。

死神がナイフとワイヤーで襲いかかれば、烏間が躱し肘でカウンターを放つ。

それに死神も反応し、ナイフを盾に蹴りを放つ。

 

 

「なんか…なんか凄い戦いだー!!」

 

 

「何言ってるかさっぱりだよ!殺せんせー!」

 

 

「分かるように説明しろよ!」

 

 

「にゅやっ!?」

 

 

生徒たちは烏間の事が心配なのか殺せんせーに実況を求めたのだが、殺せんせーのあまりの下手さにキレかけていた。

しかし殺せんせーもちゃんと考えているようで生徒たちに心配しなくてないい旨を伝える。

 

 

「心配せずとも大丈夫ですよ。烏間先生はそう簡単には殺られません。『死神』の持つスキルは確かに多彩。しかも全てが世界最高レベルです、いくら警戒していても彼の前では裏をかかれる。だから烏間先生は敢えて接近戦に持ち込んだ。場所も…水とコンクリートだけのシンプルな舞台、罠を仕込むヒマもない通常戦闘なら烏間先生のスキルは死神以上です。烏間先生やイリーナ先生のようなエキスパートが君たちを教えているからこそ…先生も退屈せずに殺される日々を送れるのです。…ただ、一つ心配なのは『死神』はこんな状況でも秘密兵器を隠し持っているだろうこと」

 

 

殺せんせーが話しているあいだも2人の死闘は続いている。

しかし、烏間との戦闘を長引かせたくなかった死神が行動に出た。

 

 

「真実を言うよ、烏間先生。僕は実は大金持ちの何の不自由も無い家庭に生まれたんだ。悲惨な境遇で育ったなんて嘘っぱちさ。あの女を引き入れるためのトークスキルさ」

 

 

「お前…」

 

 

烏間の声に怒気が孕む。

 

 

「だが、僕の親は殺し屋に殺された。いろいろ恨まれる商売をやっていたし、家でも理不尽だったから死んでもなんとも思わなかったよ。そのかわり…目の前で親を瞬殺した殺し屋の動きを見てこう思った。『なんて美しいスキルだろうか』とね。目の前で見るプロ野球選手の華麗なキャッチは少年の夢をそれだけで変えるインパクトがある、僕の場合はそれが暗殺だった。その場で僕は殺し屋になることを決めたよ。殺傷法、知識、対人術。暗殺とはそれらの美しいスキルの集合体だ。人を殺せばスキルが身につき、殺して得た『死神』の名声は更なる仕事とスキルをもたらす」

 

 

死神は話し終えるとコートの内側から1輪の赤い薔薇を取り出し空中に投げた。

烏間の意識が一瞬薔薇に向いた瞬間、右手を銃の形にした死神が手で作った銃を放った。

 

 

「…なんだ?」

 

 

『死神のスキル』、''死神の見えない鎌''僅か十口径、極小サイズの仕込み銃から放たれる弾丸は普通に撃っても殺傷能力は0に等しいが『死神』の射撃スキルは不可能を可能にする!!

筋肉と骨の間をすり抜けた弾丸は大動脈に亀裂を入れる。

1箇所裂けた大動脈は自らの血流圧で裂け目を広げ…血が吹き出し、大量出血で死に至る。

次の瞬間、烏間の胸から赤い液体が噴き出し、烏間は崩れ落ちた。

 

 

「極小の弾丸は血流に流され体の奥へ、銃声もしないから凶器すらわからない。標的の体と精神の波長を見極め、鍛え抜かれた動体視力で急所を撃ち抜く。『死神』にしか出来ない総合芸術さ」

 

 

烏間を仕留めたと確信した死神は烏間に近づきながら得意気にそう語った。

しかし…

 

 

「(ん?なんだこれは皮膚と同じ色のチューブが血を噴いている?)」

 

 

死神がチューブの存在に気付き、繋がっている先に視線を向けると…殺せんせーがトマトジュースを飲んでいた。

それを見ている生徒たちも微妙な顔をしている。

 

 

「(これは…タコの触手!?)」

 

 

「この短時間で脱出するのは難しいですが、触手1本位ならギリギリ出せます」

 

 

苦しげな顔でトマトジュースを飲む殺せんせーに不破が問いかける。

 

 

「殺せんせーってトマトジュース飲むっけ?」

 

 

「いえ、あまり好きじゃないですが…2人とここに来るまでに買いました。必要になると思いましてね」

 

 

死神が呆気に取られていると…

 

 

ドゴッ!!

 

 

「!?!?!?…うぐおぉぉぉぉ!?」

 

 

烏間の全力の拳が死神の股間を直撃した。

 

 

「やっと決定的な隙を見せたな。死神でも急所が同じでホッとしたぞ」

 

 

そこで死神は理解した。

殺せんせーが烏間の血管の位置に触手を貼り、それで弾丸を受け止めた上にジュースで出血に見せかけていたことを。

 

 

「あのタコの頭の回転は尋常ではない。お前に殺られた殺し屋の様子を話したら瞬時にスキルの正体を見破ったぞ。『私と一緒の空間にいるなら必ず守れる』と言っていた、狙う標的に守られるのは癪だがな。…覚悟はいいな?死神。俺の大事な生徒と同僚に手を出したんだ」

 

 

烏間が怒気を孕んだ声でそう言うと、降りてきているイリーナがその声に気付き微笑んだ。

 

 

「ま、待てっ!!僕以外に誰がアイツを殺れると…!」

 

 

「スキルならうち全部揃っている!」

 

 

烏間はその言葉と共に怯える『死神』の顔面を殴りつけた。

死神はそこで気を失い、烏間の戦いに決着がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

烏間が死神と戦っている頃、別の場所でも戦いが繰り広げられていた。

 

 

「貴様をこの鎌の錆にしてくれる」

 

 

ハダルの鋭い斬撃が和生を襲っている。

彼の細身の体と巨大な鎌からは想像出来ないほどの速度で振り抜かれる鎌を持ち前の動体視力で辛うじて躱す和生だが、反撃の好奇を見失っていた。

 

 

「(くっ…近づけない…)」

 

 

開いていく傷口をレヴィアタンの冷気で無理矢理止血しながら戦う和生。

 

 

「貴様もマユ・サクライと同じだな」

 

 

「…なんだと?」ピクッ

 

 

「遅いのだ、貴様らはな。戦っていて不快だ、さっさと散れ」

 

 

ハダルは鎌の刃とは逆側の部分で和生の体を吹き飛ばした。

 

 

「ぐぁっ…」

 

 

和生は激痛に顔を歪め、片膝を付いた。

 

 

「次で終わりだ。なぶり殺しにするのも悪くは無いが、一思いに母親のもとへ送ってやろう。安心しろ、お前を殺した後にお前の仲間も、家族も、全員後を追わせてやる」

 

 

ハダルは跪く和生の首を掴み、烏間たちが落ちていった場所に彼を投げ捨てた。

ハダルの攻撃で超体育着も最早効果をなさない状況で下に落ちれば確実に死に至るだろう。

和生は薄れゆく意識の中で左腰に下げられた『ヴラド』に手を伸ばした。

その時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和生の中に流れる血が波打った。

そして和生の脳内に声が聞こえてくる。

 

 

『汝か…余を呼び覚ます主は』

 

 

『お前は?』

 

 

『我が名はヴラド、血を喰らうものだ』

 

 

『あぁ、ヴラドか。初めましてだね、俺に何のよう?』

 

 

『余は汝の血の呼びかけに応じ、馳せ参じた。汝の望みはなんだ?』

 

 

『俺の望み?そうだな…俺は…みんなを守りたい。例え自分を失ってでもだ。約束した、大切な人たちを、俺を待っているまだ見ぬ家族を、そして愛する人…凛香を守るって』

 

 

『汝の望み、良きの気高さだ。なかなかに響いたぞ!カズキ・エルレンシア!汝を我が主として認めようぞ!』

 

 

『あぁ…よろしく頼む。ヴラド』

 

 

和生は脳内でいつの間にか握っていたヴラドのトリガーを引き絞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシャーン!!

 

 

とてつもない音と共にカズキが上から降ってくる。

そして彼の死を確認するためにハダルも飛び降りてきた。

 

 

「桜井君!」

 

 

「和生くん!大丈夫ですかっ!?」

 

 

烏間が落ちてきたカズキを心配して駆け寄ろうとすると…

 

 

バァンッ!!

 

 

杭のような形をした異形の弾丸が烏間の足もとに突き刺さっていた。

弾丸が飛んできた方向を全員が見ると、そこにはこれまでとは比べ物に習いほどの覇気を纏ったカズキが立っていた。

 

 

「おかしいですね…」

 

 

「殺せんせー…?桜井くんはどうしたの?」

 

 

岡野が殺せんせーの言葉に反応し疑問をぶつける。

 

 

「和生君の瞳は…沖縄の時のように冷たい金色になっています。ですが…彼には殺意がない…」

 

 

「「「えぇっ!?」」」

 

 

「あぁ、今の桜井君には殺気が微塵も感じられない」

 

 

烏間が殺せんせーの言葉に付け加えるとカズキが反応した。

 

 

「桜井って誰ですか?俺はカズキ・エルレンシアですよ」

 

 

「桜井君…君は…」

 

 

「フハハハハハハッ!やっと認めたか。だが、その体ではもう命が尽きるのも近いだろう。わざわざ立ち上がらず逝けば良かったものを」

 

 

烏間の言葉を遮るようにハダルの笑い声が響く。

そんな中生徒たちは困惑していた…カズキが桜井という名前を否定したことにだ。

 

 

「和生!どうしたっていうの!」

 

 

速水がカズキに向けて声を発する。

 

 

「凛香ごめん…すぐに終わらせる」ニコッ

 

 

カズキは1度だけ笑顔を速水に向ける。

しかしそれはこれまでの和生の温かみのある笑顔ではなく、冷たく、それでいて凛とした笑顔だった。

 

 

「ハダル…このカズキ・エルレンシアが息子として、そして英国王子として貴様を倒すっ!」

 

 

「ふっ、殺れるものなら殺ってみるがいい!」

 

 

カズキの言葉を聞いた途端、ハダルは再びカズキに斬り掛かる。

 

 

「行くぞヴラド…蒼魔凍…」

 

 

そうカズキが呟くと、カズキの目の前に広がる世界が凍り付いた。

彼の脳の処理速度が…血液の流れが…世界を上回ったのだ。

 

 

「貫けっ…!!」

 

 

カズキは凍り付いた世界でハダルの左に回り込むと右手に握ったヴラドのトリガーを2度引き絞る。

するとヴラドの銃身に赤いラインが入り、真紅の杭が放たれた。

杭の1発はハダルの鎌を弾き飛ばし、もう1発は鎌を持っていた右手に直撃した。

しかしこれは凍り付いた世界での出来事…カズキが蒼魔凍を解除すると世界が再び動き出した。

 

 

「ぐふっ…な、何が起こった…!?」

 

 

その場にいた全員が今起こった事を理解することが出来なかった。

 

 

「速く…もっと速く…速く…速ク…速ク…はヤク…はヤク…ハヤク…ハヤク…セカイヲオキザリニシロ」

 

 

カズキは再び蒼魔凍を発動。

絶対零度の世界で、光をも置き去りにするスピードでヴラドのトリガーを何度も引き絞り、ハダルの急所を外して真紅の杭を撃ち込んだ。

そして…再び世界がふたたび温度を取り戻す。

 

 

「ぐがぁ…っ!?き、貴様…ぁ!!」

 

 

ハダルが全身を走る激痛に悶えながらカズキの方を振り向く、すると…

 

 

カチャリ

 

 

ヴラドのトリガーに指をかけ、冷たい笑みで自分を見下ろすカズキの姿がハダルの瞳に映った。

 

 

「カズキ・エルレンシア…!貴様は一体何をしたぁ!」

 

 

「遺言はソレダケかい?じゃあ…サヨナラだ」

 

 

カズキがトリガーを引き絞ろうとする。

 

 

「何故だ!殺気は無いはずだぞ!」

 

 

「烏間先生!彼を止めなければ!和生君!やめなさい!」

 

 

「和生!ダメッ!命はダメよっ!」

 

 

しかし…烏間の声は…殺せんせーの声は…そして…彼の最愛の人の声は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

届かない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の世界は凍り付いていた。

 

 

「これで…終わりだ」

 

 

蒼魔凍によって凍り付いた世界の中、カズキはヴラドのトリガーを引いた。

しかし…

 

 

「お兄様。間に合ったようで良かったです」

 

 

放たれた杭は、1人の少女。

ルウシェ・エルレンシアによって弾かれた。

 

 

「君は…?」

 

 

「私はルウシェ・エルレンシア!お兄様の妹です!私が貴方の世界に温度を取り戻してみせるますっ!!」

 

 

「ヴラド…やるぞ」

 

 

『御意』

 

 

カズキがそう言うと彼の脳内でヴラドが返事をする。

すると今度はルウシェが呟く。

 

 

「『紅桜』私の血に応じ…咲き誇れ!」

 

 

『参りましょう…主』

 

 

凍り付いた世界の中で…2人の戦いが始まろうとしていた。




感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エルレンシアの時間

2人のエルレンシアが遂に激突。
蒼魔凍を使用する2人の戦い…どうなるのでしょうか!
それでは今回も拙い文ですが読んでいただけると嬉しい(〃・д・) -д-))ペコリン


「先ずはそこにいる方からです!」

 

 

ルウシェは倒れ込んでいるハダルの首を掴みとり、少女とは思えない力で烏間たちの方へ投げ飛ばした。

一方その烏間たちはと言うと。

 

 

「な、何が起こっている!?」

 

 

突然ハダルが自分たちの方へ飛んできたことに驚きを隠せずにいた。

 

 

「殺せんせーでも見えないの?」

 

 

倉橋が殺せんせーに見えないのか問いかける。

 

 

「すみません…もう少しで目が慣れそうですから、待っていてください」

 

 

「和生…いったいどうしちゃったっていうの…?」

 

 

速水は和生の身を案じて涙を浮かべていた。

その時中村が烏間たちにあることを言った。

 

 

「ねぇ、殺気から桜井ちゃんの動きが全く見えないけどさ?ハダルって奴は倒したんでしょ?今は誰と戦ってるの?」

 

 

「「「あっ!?」」」

 

 

生徒たちと教師たちはその言葉に驚きの声を上げる。

 

 

「確かにおかしいよねぇ〜?誰かほかに敵がいるっての?」

 

 

「カルマ君、それは違うようです」

 

 

「殺せんせー?」

 

 

カルマの言葉を否定した殺せんせーに茅野が問いかける。

 

 

「目が慣れました。今なら辛うじて見えます、2人とも止まっていますので」

 

 

「2人だと?」

 

 

「烏間先生、和生君には妹がいるんですか?」

 

 

「お前…何故それを?」

 

 

「助けに来てくれたんですよ、妹さんが和生君のことをね」

 

 

「「「妹!?」」」

 

 

殺せんせーの言葉に生徒たちが叫び声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、周囲の安全が確保できた事ですし…行きますよ?お兄様」

 

 

「ルウシェだよね。いいよ、でも俺も手加減は出来そうにないからね?」

 

 

2人の数秒見つめあった後、少ない言葉を交わして戦闘に入った。

 

 

「覚悟っ!」

 

 

ルウシェが居合いで瞬時に間合いを詰める、カズキはその一閃をレヴィアタンで受け止めながらヴラドのトリガーを引き絞る。

真紅の杭がルウシェに襲いかかるが、ルウシェは紅桜の紅い刃をレヴィアタンの刀身を滑らせて杭と衝突させる。

 

 

「流石ですお兄様!お母様の仰っていた通りとても強く、カッコいいです!」

 

 

ルウシェはカズキの戦いの最中にも関わらず笑顔だ。

 

 

「ルウシェはまだまだ余裕そうだね」

 

 

「はい!嬉しいんです!こういうのを兄妹喧嘩と言うのですよね!ずっとしてみたかったんです♪」ニコッ

 

 

「兄妹喧嘩か…ふふっ…そうだね。じゃあお兄ちゃんも本気でぶつかってあげなきゃね」ニコッ

 

 

ルウシェの純粋な笑顔がカズキの心の温度を一瞬戻した。

 

 

「ヴラド、トリガーをセカンドに移行する」

 

 

『承知した。だが主よ、セカンドからは余を両手に携えるのだ』

 

 

「わかった…!」

 

 

カズキは左手に持っていたレヴィアタンを鞘に納め、もう一丁のヴラドをホルスターから引き抜く。

するとカズキがレヴィアタンの冷気で止血していた傷口が再び開き出す。

カズキの上半身から血が溢れ出した。

 

 

「ヴラド…『喰らえ』」

 

 

『…拝領』

 

 

カズキの腕を流れていた血液がヴラドの銃身へと取り込まれていく。

文字通り血を喰らっているのだ。

 

 

「ルウシェ、お兄ちゃんあんまり時間が無いんだ…だからもう終わりにしよう」

 

 

カズキはヴラドを構えた腕を胸の前でクロスさせる。

そんな様子を見たルウシェの顔は一層笑顔になる。

 

 

「お兄様、約束して頂いても宜しいでしょうか?」

 

 

「なに?」

 

 

「この勝負、私がお兄様を止めることが出来たら…思いっきり甘えさせてくださいますか?」

 

 

「…止められたらね」

 

 

「わかりましたっ!ではこちらも本気で行かせて頂きますね?」パァッ

 

 

ルウシェはカズキの返答を聞くやいなや紅桜を鞘に仕舞った。

 

 

「紅桜…『百鬼夜行』」

 

 

ルウシェが小さくそう呟くと、彼女の脳内に紅桜が語りかけてくる。

 

 

『宜しいのですか?』

 

 

「はい、お兄様を止めれば甘えさせて頂けるのですから、負けるわけにはいきませんっ!」

 

 

『では…紅い桜を咲かせましょう』

 

 

次の瞬間、紅桜の柄から黒い木の根のようなものが生え、ルウシェの腕に絡み付いた。

その根は腕に絡み付くとその色を紅く染める。

 

 

「ぐぅっ…」

 

 

ルウシェが一瞬苦悶の表情を浮かべるが、すぐに笑顔に戻す。

 

 

「それではお兄様、初めての兄妹喧嘩に決着を付けましょう!」

 

 

ルウシェはそう言うと紅桜を鞘から引き抜く。

引き抜かれた紅桜の刀身は先程とは打って変わって黒くなり、紅い桜の紋様が浮かび上がっている。

 

 

「じゃあ俺も行かせてもらう!」

 

 

そして2人は同時に動き出した!

ルウシェは間合いを詰めるようにカズキに向けて走り出す。

一方のカズキはヴラドをルウシェの方に向け、トリガーを引く。

 

 

バァンッ、バァンッ

 

 

2発の銃声が鳴り響く…しかしルウシェに向かってくる杭の数は優に50は越えていた。

しかしそれを前にしてもルウシェは止まらない、普通の人間と蒼魔凍を用いる人間の戦いならばこの量を捌く事ができるかもしれないが、カズキも蒼魔凍の使用者だ。

余りにも無謀に思える突進だが、ルウシェがその行動をとるのには理由があった。

 

 

ヒュンッ!!ガキィンッ!!

 

 

 

ルウシェが1振りの斬撃で全ての杭を弾き飛ばした。

 

 

「くっ…!」バァンッ、バァンッ

 

 

再びカズキが杭のを撃ち出すのたが…

 

 

「無駄ですっ!」

 

 

ルウシェがことごとく弾き飛ばす。

 

 

「何故だ!セカンドトリガーを解放したヴラドの1発の杭は25発だぞ!」

 

 

「甘いですお兄様っ!『百鬼夜行』状態の紅桜の斬撃は『一閃百殺』です!1振りの斬撃は空中に百閃の斬撃を残留させます!残念ですが私の勝ちです!」

 

 

ルウシェはカズキの放つ杭を全て弾き飛ばした後、カズキが携えるヴラドをも残留する斬撃で弾き飛ばしてしまった。

武器を失ったカズキにルウシェは『百鬼夜行』を解除する。

そして…

 

 

「お兄様ぁ〜♪」

 

 

紅桜を鞘に納めたかと思うとカズキのむねにダイブした。

 

 

「がはっ…ルウシェ…ごめん…今は甘えさせられないや…でもお兄ちゃんの負けだ…」ガクッ

 

 

「え、ええっと!お、お兄様っ!」

 

 

戦いを終えた瞬間に和生は気を失った。

 

 

「あっ!ヴラドを弾き飛ばしてしまったからですね!ごめんなさいお兄様!」アウアウ

 

 

ルウシェは和生の元へヴラドを拾って持ってくる。

そして彼の手にヴラドを再び握らせた。

しかし気を失っている和生の蒼魔凍は解除されている。

つまりルウシェが蒼魔凍を使っているため動かないのだ。

 

 

「ヴラドを戻したので出血は問題ないでしょう。それでは私も蒼魔凍を解除しましょうか。『紅桜』ありがとう」

 

 

ルウシェは紅桜にお礼を一言いうと蒼魔凍を解除した。

 

 

「桜井君!!」

 

 

先程までは視界で捉えられなかった和生の姿を確認すると烏間が急いで駆け寄る。

 

 

「あなたがお兄様の先生ですか…?」

 

 

「あぁ、そうだ。君がルウシェさんか?」

 

 

「はいそうです。お兄様は時期に目を覚まします。恐らく命には別状は無いでしょう」

 

 

「なぜそう言えるんだ?」

 

 

「『血属器』であるヴラドがありますので、生命維持は問題ないはずです。なので今はしっかりと休める場所に…連れて行ってくださ…い…」フラッ

 

 

ルウシェはそう言うと和生に寄り添うように気を失った。

 

 

「先ずは生徒たちの解放だな」

 

 

烏間は死神の胸ポケットから奪った端末で生徒たちを解放する。

 

 

「和生っ!」

 

 

真っ先に飛び出したのは速水だ。

 

 

「また無理して…」ポロポロ

 

 

速水は余程和生のことが心配だったのか和生のもとへ駆け寄ると涙を流し始めた。

 

 

「烏間先生、和生君の自宅へは私が送ります。烏間先生は他の生徒達を送ってあげてください」

 

 

殺せんせーがそう言って和生とルウシェを抱き抱えようとすると呼び止められた。

 

 

「では私の車に乗ってくださいますか?」

 

 

「あなたは一体?」

 

 

呼び止めたのは緑髪の女性、カノープス。

 

 

「私はカノープス。ルウシェ様の眷属にあたるものです。私が車で送りますのでどなたか道案内をお願いできますか?」

 

 

「で、ではわた…にゅやっ!?中村さん!何するんですかっ!?」

 

 

殺せんせーが名乗り出ようとすると中村がナイフを殺せんせーに投げつける。

 

 

「殺せんせー、空気読みなよ?はやみん、行っておいで?」

 

 

「莉桜っ…?」グスッ

 

 

「きっとまた桜井ちゃんは冷たくなっちゃってるからさ?はやみんが温めてあげなよね?」

 

 

「そうだね!凛香ちゃんがいいとおもう!」

 

 

「わたしもわたしもーっ!」

 

 

女子たちが満場一致で速水を推薦している。

 

 

「速水さん、お願いできるか?」

 

 

遂には烏間までもが速水に声をかけた。

 

 

「親御さんには俺から連絡しておくから安心してくれ」

 

 

「じゃ…あ、行きます…」

 

 

「では速水様、こちらへ」

 

 

カノープスは和生とルウシェを軽々と抱えると速水に手招きして建物の外へと歩いていく。

そんな時、もう一人歩いていこうとする者が…

 

 

「ビッチ先生!逃げないでよね!」

 

 

「そうだよ!明日からも一緒だから!」

 

 

矢田と倉橋が逃げようとするイリーナを引き止める。

 

 

「なんで…?アンタたちを殺そうとしたのよ?」

 

 

「ビッチ先生?桜井君の無線から聞こえてたよ?『死ぬんじゃないわよ!?』だっけ?やっぱりビッチ先生はビッチ先生だよっ!」

 

 

「陽菜乃…」ウルッ

 

 

倉橋の言葉にイリーナが涙ぐむ。

すると今度は烏間がイリーナの前に立ち、1輪の薔薇を差し出す。

 

 

「この花は生徒たちからの借り物じゃない。俺が俺の意志で敵を倒して得たものだ。誕生日は…それならいいか?」

 

 

「…はい」

 

 

クラスをいい雰囲気が包み込む。

こうしてE組の生徒たちと死神たちとの戦いが幕を下ろした。




ついに決着しました!
次回はブラックコーヒー必須回にしますので準備の方をお願いしますね?
それでは!感想など待ってますね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

妹の時間

タイトルから完全に読める様な内容ですよねw
さぁブラックコーヒーの用意は出来ていますか?
出来ていないのならば序盤は真面目な話なのでその間に準備の方を!ww
出来ているのであれば!拙い文ですが読んでいただけると嬉しいですね!(〃・д・) -д-))ペコリン


和生たちが建物を出ていった後、烏間たちは死神とハダルを拘束していた。

 

 

「死神の方は身柄を拘束するだけでいいが…こっちの男はどうしたものか…」

 

 

「では、私が引き取りましょう」

 

 

「貴方は…!」

 

 

ハダルの処遇を決めかねている烏間のもとにレグルスがやって来た。

新しい人物が登場しまくっているため、生徒たちは混乱状態だ。

 

 

「カズキ様のご友人の方々、お初にお目にかかります。カズキ様の眷属のレグルスと申します」

 

 

「レグルスさん、引き取るとは?」

 

 

「その男、ハダルも眷属なのです…カズキ様のではありませんがね」

 

 

「つまりは王族で処遇を下すと?」

 

 

「いえ、全てを決めるのはカズキ様です。ですのでそれまでは私が責任をもって拘束します」

 

 

「そうか、だが簡単には渡せない。防衛省で預からせてもらう、そこで監視を頼めないか?」

 

 

「それでしたら構いません」

 

 

2人が話しているとカルマが首を突っ込んでくる。

 

 

「てかさー?さっきから王族とか眷属とか意味わかんないんだけど」

 

 

「それは私も思うよ。突然出てきて、烏間先生は顔見知りみたいだけどさっきの女の人といいおじさんといい誰なの?」

 

 

中村もカルマに続き疑問を投げかける。

 

 

「確かにそうですね、では明日全てをお話しして頂きましょう。今日はもう遅いですから皆さんゆっくり体を休めてください」

 

 

殺せんせーに宥められ生徒たちは帰宅することにした。

 

 

「では烏間先生、私からも一つお願いがあります」

 

 

「なんだ?」

 

 

「生徒たちが今後、このような危険に巻き込まれないようお願いします。安心して殺し、殺される場所の確保を要求します」

 

 

「ああ、上にかけあってみる」

 

 

そうして死神とハダルを拘束した烏間、ハダルは防衛省へ、殺せんせーは校舎へ、イリーナは自宅へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、カノープスと共に和生の自宅へ向かうことになった速水はカノープスが運転する車の助手席に乗っていた。

後部座席には和生とルウシェが気を失っている。

 

 

「速水様」

 

 

「な、何ですか…?」

 

 

車を運転しながら話しかけてくるカノープスに速水は戸惑いながらも応じる。

 

 

「速水様とカズキ様のご関係はどういったものなのでしょうか?」

 

 

「はい?」

 

 

「お2人のご関係を聞かせて頂きたいのです」

 

 

唐突に聞かれた和生と自分の関係に速水は若干焦ってしまう。

 

 

「え、えっと…恋人同士です…」

 

 

「そうでいらっしゃいましたか。では先に言って置かなければならない事があります」

 

 

「なんですか?」

 

 

「ルウシェ様の事です」

 

 

「和生の妹…でしたっけ?」

 

 

「はい、カズキ様は今日までその事を知りませんでしたが」

 

 

「そうですよね、私もそう聞いてましたから」

 

 

「ですがルウシェ様は幼き頃からずっとカズキ様の話を聞いていました。マユ様、カズキ様たちのお母様が来た時はそれはもう熱心にです。ですから今日は憧れだったカズキ様にお会いすることができてこの上なく喜んでいらっしゃると思います。こちらに来るまでの飛行機の中でも抱きしめて頂きたいと仰っていました。ですからルウシェ様がカズキ様に甘えるのをお許し頂きたいのです」

 

 

カノープスが速水に話したのはルウシェが憧れの兄である和生に甘えることを許して欲しいということ。

 

 

「ずっと和生に…お兄ちゃんに会うことを待ち望んでいたんですよね?なら私のことは気にしなくて大丈夫です、だけど条件が一つあります」

 

 

「なんでしょうか?エルレンシア家のチカラを持ってすれば大体のことは出来ますが」

 

 

「あ、そういうのじゃなくて!和生が本当はどんな人なのか教えて欲しいんです。好きな人のことは…全部知りたいですから」

 

 

「カズキ様は愛されているようで良かったです。ですがそれは家に入ってからに致しましょうか?もう付いたようですしね」

 

 

「え?何でわかるんですか?」

 

 

「私たちカズキ様とルウシェ様の眷属はカズキ様の自宅の場所を存じ上げております。私が案内して欲しいと申し出たのはカズキ様の大切な人とお話がしたかったからですよ」ニコッ

 

 

カノープスはそう言うと和生の家の空いている場所に車を停め、後部座席の2人を担ぎあげると和生の家の扉へと歩いている。

ポカンとしていた速水だが、カノープスの後を追っていった。

 

 

「カズキ様…失礼いたします」

 

 

カノープスは和生の超体育着のポケットから鍵を取り出すとそれを使って中へ入っていった。

 

 

「それでは速水様は扉の外でこちらに着替えておいてください、私はカズキ様をお着替えさますので終わり次第声をおかけします」

 

 

「は、はいっ」

 

 

和生の部屋の前にやって来たカノープスは速水に真っ白なワンピースの様な寝着を手渡した。

速水は超体育着を脱いでそれに着替える。

そして数分後彼女から入るように声をかけられ速水も入室する。

入った彼女が目にしたのはベッドに横になる和生とルウシェの姿。

まだ目覚めていないようだ。

カノープスに促され和生の部屋にある椅子に座る。

 

 

「それではカズキ様についてお話しましょうか」

 

 

「お願いします」

 

 

「最初にカズキ様の本名をお教えします」

 

 

「カズキ・エルレンシア…ですか?和生がそう言っていたので」

 

 

「はい、カズキ様は英国王家、エルレンシア家の皇子です。現在の王子の息子様になります」

 

 

「じゃあ和生は王族…」

 

 

「はい、ですがカズキ様の存在は公にされてはいません。王子には妻がいないとなっていましたから、ルウシェ様は公にされたご氏族です。それについては後日お話しますが、カズキ様は英国王家の血を継いだ列記とした王族です。そしてルウシェ様の兄ですね」

 

 

「じゃあ…」

 

 

速水は話を聞いて自分との身分の違いを感じてしまう。

 

 

「速水様、先に言っておきます。カズキ様のお母様は貴女と同じ日本人の女性です。ですからなにも心配する必要はありませんよ」ニコリ

 

 

カノープスは速水の心情を感じ取ったのか優しく彼女の頭を撫でる。

 

 

「それに…本当に愛する人でなければカズキ様も嫌でしょうしね。カズキ様、あっていますか?」

 

 

カノープスは和生にそう問いかける。

すると先程まで気を失っていた和生が体を起こした。

 

 

「そうだね、凛香以外の人は考えられない、というか考えたくもない」

 

 

「和生っ!///」

 

 

「ふふっ、私は邪魔者のようですから下に行きますね」

 

 

「カノープスさんでしたっけ?下の空いている部屋は自由に使ってください」

 

 

「ありがとうございます。ルウシェ様と同じくお優しいのですね、ではごゆっくり」

 

 

カノープスは和生に一礼すると速水が脱いだ超体育着をもって退室していく。

部屋に残された速水は椅子をベッドに近付けた。

 

 

「凛香ごめんね?あの時は蒼魔凍を使ってて」

 

 

「蒼魔凍…?」

 

 

「えっとそれはね?俺とルウシェが使える能力なんだけど、脳の処理速度が限界を超えるみたいで世界が凍りついたように感じるんだ。音も蒼魔凍使用者が出す音しか聞こえないんだ」

 

 

「だから私の声が届かなかったんだ…」

 

 

「うん、だからごめん」

 

 

和生はそう言って速水の方へ身を乗り出そうとするのだが…

 

 

ギュッ

 

 

ルウシェが腕にしがみついており出来なかった。

 

 

「和生にもちゃんと家族がいて良かった」

 

 

「うん、こんなに可愛い妹がいるなんて母さんは一言も言ってなかったんだけどねw」

 

 

「そうね、確かに可愛い」

 

 

「うん、でも俺はこの子に助けられたんだよなぁ」

 

 

「どういうこと?」

 

 

和生がルウシェの頭を優しく撫でながら速水にあの時のことを説明する。

 

 

「あの時の俺はハダルを…いや、立ちはだかる者を殲滅する事しか考えられなかった。皆を守りたい一心でね、だからハダルにトドメを刺そうとした。だけどその弾をルウシェが弾いたんだよ、そして俺のことをこっち側へ引き戻してくれた」

 

 

「私じゃ無理だったのにちょっと妬けちゃうな…」

 

 

「ごめんごめん!でもほんとにあの時は同じ世界にルウシェがいてくれて良かったって感じたよ。それにルウシェって凄い強いよ?俺の倍はね」

 

 

「こんなに可愛いのに?和生だって相当なのに」

 

 

「だって本気で戦ってるのにルウシェは『初めての兄妹喧嘩』なんて言ってたんだよ?」

 

 

「なによそれ、でも和生は負けちゃったんでしょ?」

 

 

「まぁ、あの敗北はしょうがないと思うよ」

 

 

2人が話しているとルウシェが起き上がった。

 

 

「お兄様…?」

 

 

「うん、こんな時間だけどおはよう、ルウシェ」

 

 

「はいっ♪」ギュ

 

 

「ル、ルウシェ!?」

 

 

目の前には恋人、そして自分に抱きついてくる可愛らしい妹。

また以前のような事になるのではと和生は焦り出した。

しかし…

 

 

「お兄様は勝ったら甘えさせてくださると仰ったのですから離しません♪」ギュ-

 

 

「り、凛香…?」

 

 

和生は恐る恐る速水の方へ振り返る、彼は怒っていると思っていたが…そこにいたのは笑顔の速水だった。

 

 

「いいわよ、ずっとお兄ちゃんに会うことを夢見てたんだから。めいいっぱい甘やかしてあげて」ニコッ

 

 

「う、うん。ありがと?」

 

 

和生が速水と話しているとルウシェが和生に問いかける。

 

 

「お兄様、そちらの方は?」

 

 

「俺の恋人だよ」

 

 

和生はルウシェの頭を撫でながら断言した。

 

 

「お兄様の恋人…じゃあお姉様ですかっ!」キラキラ

 

 

「「お、お姉様!?」」

 

 

「はいっ!お兄様とご結婚されたら私は義妹ですから!」

 

 

「それは話が早いんじゃ…」

 

 

速水がルウシェの発言を否定しようとするのだが

 

 

「あっ、確かに。ルウシェ、凛香のことそう呼んでもいいよ!」

 

 

「ちょっと和生っ!」

 

 

「わかりましたっ!お姉様っ♪」パァッ

 

 

ルウシェが速水に満面の笑みを向ける。

 

 

「か、かわいい…///」

 

 

「お兄様が好意を寄せる人なのですからきっと私もすぐに大好きになります!もちろんお兄様はもう大好きですっ!」

 

 

「あはは、ありがと」

 

 

ルウシェがより一層強く和生に抱きつく。

その様子を見ている速水に和生が声をかける。

 

 

「凛香もくる?」

 

 

「べ、別に羨ましくなんか!」

 

 

「凛香…」

 

 

「な、なによ?」

 

 

「おいで?」ニコッ

 

 

「っ…///」ギュッ

 

 

和生が微笑みながらそう言うと速水は何も言わずに立ち上がるとベッドの上に乗って和生に抱きついた。

和生の左腕にルウシェ、右腕に速水が抱きついている。

 

 

「お姉様もお兄様のことが大好きなのですね♪」

 

 

「うん…大好き」

 

 

「俺も2人のこと大好きだよ」

 

 

「じゃあ今日はこのまま寝たいです!」

 

 

「このまま?でも狭くないかな?」

 

 

「大丈夫ですお兄様!こうすれば!」ギュ-

 

 

和生が狭くないかと言うとルウシェが先程よりも強く抱きつく。

 

 

「凛香、ルウシェとの約束だから…いい?」

 

 

「うん…私も…一緒がいいな…///」

 

 

「可愛いなぁ…///ルウシェ、凛香もいいよだって」

 

 

「嬉しいですっ!じゃあお兄様、お姉様。おやすみなさい」

 

 

そう言うとルウシェは和生の腕を抱いて寝てしまった。

 

 

「俺達も寝よっか、明日も学校あるしね」

 

 

「そうね、じゃあおやすみ…///」チュッ

 

 

「なっ!?///」

 

 

速水はそう言うと自分の方に首だけ向けた和生の唇に自分の唇を重ねた後、顔を和生の肩に埋めてしまった。

すると和生はお返しとばかりに速水の耳もとへ顔をよ寄せて…

 

 

「愛してるよ…俺だけのお姫様」ボソッ

 

 

「…///」

 

 

小さく囁いた。

そして和生も戦いの疲れからか眠ってしまった。

兄妹揃って可愛らしい寝息をたてている姿を見た速水は

 

 

「もう和生は本当の王子様のくせに…いつか2人と本当の家族になれたらいいな…」

 

 

そう呟いて瞳を閉じた。




感想など待ってます!
そして先日、遂に感想が100件を越えました!
ここまでやってこれたのは読者の皆様の声が大きいです!
これからもダメな作者を応援よろしくお願いします(〃・д・) -д-))ペコリン


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

進路の時間

遂に進路の時間ですね。
原作も終わりが近くなり少しさみしい気分になります。
さて!皆さんが気になるのはやはり桜井和生くんの進路でしょう!
彼がどんなに未来を選ぶのかには注目ですよね!
それでは今回も拙い文ですが読んで頂けると嬉しいです!(〃・д・) -д-))ペコリン


「「「えぇーっ!?英国王家の御子!?」」」

 

 

教室に生徒達の叫び声が響き渡る。

現在E組では和生の素性についてレグルスが説明していた。

 

 

「なんかそうみたいなんだよね…あはは」

 

 

「ってことはルウシェちゃんも?」

 

 

中村がそう問うとレグルスは肯定する。

 

 

「はい、ルウシェ様も王家の血を継いでおります。そして私とカノープスはお2人にお仕えする眷族です」

 

 

「だから和生の家はあんなデカイんだね〜」

 

 

「カルマやめてよ。広すぎて困ってるくらいなんだから」

 

 

「それはいいですが、レグルスさん、カノープスさん。王族である2人がこのような場所に居て大丈夫なのですか?」

 

 

殺せんせーが懸念しているのはそこだ。

英国において最高階級である人物が2人も日本の学校の教室にいる。

 

 

「大丈夫ですよ。ルウシェ様のことは私が、カズキ様のことはレグルスが責任をもってお守りします」

 

 

「わかりました。ですが何かあった場合は私もすぐ駆けつけますので」

 

 

レグルス、カノープス、殺せんせーは3人で今後の話し合いを始める。

そんな時、ルウシェが和生の制服の裾を引っ張った。

 

 

「お兄様ぁ…」

 

 

「ん?どうしたの?」

 

 

「あの…先程から皆さんの視線が…」

 

 

「あぁ、ルウシェが可愛いからだよきっと」ナデナデ

 

 

和生に頭を撫でられるとルウシェの顔が綻ぶ。

 

 

「「「(かわいい…)」」」

 

 

生徒全員が同じ気持ちでルウシェを見つめていた。

 

 

「皆、ルウシェが怖がってるからあんまり見つめないであげてよ」

 

 

「それにしても兄妹そろって美形かよ…殺してぇ…」

 

 

「お、岡島!男は顔だけじゃないぞ?」

 

 

「磯貝…お前が言っても逆効果だ…」

 

 

「えぇ!?」

 

 

前原の的確なツッコミが磯貝に入る。

すると前原の言う通り岡島の憎しみはドンドン膨れ上がっていく。

 

 

「お、岡島!落ち着け!」

 

 

「岡島くん!冷静に!」

 

 

三村と渚が岡島を止めようとするのだが、岡島はドンドンヒートアップしていく。

 

 

「お兄様…怖いです…」ウルウル

 

 

岡島の様子に怯えているルウシェ、そんな様子を見た和生が岡島のもとへと行こうとするとその前に女子たちが岡島に立ちはだかっていた。

 

 

「岡島くん!ルウシェちゃんが怖がってるでしょ!」

 

 

「そうだよ!可哀想だよ!」

 

 

片岡と倉橋が容赦なく岡島を注意する。

 

 

「ルウシェちゃん大丈夫?」

 

 

「危ない人はお姉さんたちが追い払ってあげるからね」

 

 

矢田と岡野がルウシェの顔を覗き込んで優しく声をかけるとルウシェは和生の影から顔を出した。

 

 

「は、はいっ!ありがとうございます。えっと…桃花さん、ひなたさん」ニコッ

 

 

「「はぅっ…///」」

 

 

この時横で見ていた茅野は思っていた。

 

 

「(今この2人落ちたよね)」

 

 

そしてその頃岡島は…

 

 

「桜井くんがカッコいいのは今に始まった事じゃないでしょ!それにルウシェちゃんは桜井くんの妹なんだから可愛くて当たり前よ!」

 

 

「岡島くん、分かるわよね?」

 

 

「ヒィィィ!?」ガクブル

 

 

倉橋と片岡に説教されていた。

そして殺せんせーたちも話がまとまったようでこちらに振り返った。

 

 

「今日はこれから進路相談をします!」

 

 

「「「進路相談?」」」

 

 

「はい、もし誰かが先生を殺せて地球が無事なら皆さんは中学卒業後も考えなくてはなりません。ま…殺せないから多分無駄になりますがねぇ」

 

 

殺せんせーの顔には緑の縞模様が浮かび上がっている。

完全にナメきってる顔だ。

 

 

「1人ずつ面談を行うので進路希望が書けた人から職員室に来てください。もちろんその間も暗殺はしていいですよ」

 

 

「ルウシェ様は私たちと来てください。お話がありますので」

 

 

「わかりました。ではカノープス、レグルス、参りましょう」

 

 

殺せんせー、ルウシェ、カノープス、レグルスが相次いで教室を後にする。

残された生徒達は進路希望調査の紙を手に悩んでいた。

 

 

「進路なぁ〜…地球を滅ぼすモンスターに相談したってなぁ?」

 

 

「手厚いんだかナメてるんだかね」

 

 

杉野と茅野が話していると中村がコソコソと動いているのに渚が気付いた。

そして自分の紙を見てみると…

 

 

志望校 女子校

 

職業 第一志望 ナース

 

第二志望 メイド

 

 

「…中村さん。何で人の進路を勝手に歪めなてんの」

 

 

「渚ちゃん。君には漢の仕事は似合わんよ」

 

 

「渚君、卒業したらタイかモロッコに旅行行こうよ。今はタイの方が主流らしいよ」

 

 

カルマが怪しげな書類を片手に話しかけてくる。

 

 

「なんでカルマくんは僕から取ろうとするの!?大事にするよ!!」

 

 

渚が悲痛な叫びを上げているとどうやら他にも被害者がいたらしい。

 

 

「莉桜!なにしてるのよ!」

 

 

「はやみ〜ん♪間違ってないでしょ?」

 

 

「進路相談でしょ!何でこうなるのよ!」

 

 

「なんて書いてあるの?」

 

 

「ちょ、茅野!見ないで!」

 

 

茅野が速水の手から紙をスルリと抜き取る。

そして茅野が目にしたものとは…

 

 

志望校 和生と同じ学校

 

職業 第一志望 和生のお嫁さん

 

第二志望 なし

 

 

「これは流石に酷いんじゃないかな…」

 

 

「そうよ!莉桜は何でいつもそうやって!」

 

 

「じゃあなりたくないの?桜井ちゃんのお嫁さん」ニヤニヤ

 

 

「そ、それは…///」

 

 

「素直じゃないなぁ、はやみんは♪」

 

 

「てか、それは職業じゃないでしょ!」

 

 

「あ、それもそっか。あっ、そろそろ私の順番だから行ってくるね〜」

 

 

「あ、逃げた」

 

 

「はぁ…」

 

 

「速水さんも大変だね」

 

 

「そうね。でも本当にどうしよう…やりたいことなんてあんまり無いし。茅野は?」

 

 

「未定かな。こんな状況じゃ決められない人の方が多いと思うけど」

 

 

「そうだよね。和生はどうするんだろ」

 

 

速水がそう言って和生の方を見ると和生は磯貝と竹林と一緒に話していた。

 

 

「竹林が書いてるとこって国内最難関のとこ!?」

 

 

「桜井は分かるのか、まぁ、医学部に行くならいい所に行っておいて損はないと思うからな」

 

 

「凄いなぁ。悠馬も終わったんでしょ?公立行くんだっけ?」

 

 

「あぁ、家の経済事情が入った時とは違うからな。少しでも学費の負担は減らさないと」

 

 

「悠馬は本当にイケメンだなぁ…」

 

 

「それには同意するよ」

 

 

「そんな事はいいから和生はどうなんだ?ちょっと見せろよ」ヒョイ

 

 

「あぁ!ちょっと待ってよ!」

 

 

磯貝が和生の紙を奪い取ってその紙を見てみると…

 

 

志望校

 

 

職業 第一志望

 

第二志望

 

 

「なんだよ、全部空欄じゃないか。らしくないな?」

 

 

「まぁね…正直自分の正体が何者なのかもまだイマイチ掴めてないからさ」

 

 

「桜井の言いたいことは分かるよ。でも殺せんせーと話せば決まるんじゃないか?」

 

 

「うん…そうかもね。とりあえず行ってくるよ」

 

 

「おう!頑張って暗殺してこいよ!」

 

 

「あはは…精進します」

 

 

和生が教室を出ようとすると速水が近付いてきた。

 

 

「和生も今から?」

 

 

「うん。凛香の後にお願いしようかな」

 

 

「そうなの?」

 

 

「長くなりそうだから先にどうぞ」

 

 

「じゃあ遠慮なく」

 

 

速水は職員室の扉を開けて入室した。

 

 

「やはり速水さんが先に来ましたか」

 

 

「どう言うこと?」

 

 

速水はそう言うと対先生弾の入った時ピストルを構えた。

 

 

「残っていたのは速水さん、和生君、渚君の3人だけでしたから。和生君と渚君は時間がかかりそうですからね」

 

 

「そう…じゃあお願いします」

 

 

「はい、速水さんは特に学校は決めてないようですが。どうするんですか?」

 

 

「まだやりたい事とかよく分かんなくて」

 

 

「そうですか。では良いところを伸ばしてみては?」

 

 

「私の良いところ?」

 

 

「はい、速水さんは手先が器用ですし服もセンスがいいので服飾系の仕事も悪くは無いと思いますよ?」

 

 

「服飾系…」

 

 

「それに料理の腕もなかなかのようですからそれも悪くないかと」

 

 

「なんで殺せんせーが知ってるの?」

 

 

「和生君が嬉しそうに話してくれましたからねぇ」

 

 

「和生のばか…///そっか…でもそう言う勉強するならやっぱりいい所に行った方がいいよね」

 

 

「そうですね。オススメとしては蛍雪大学付属高校などでしょうか?あそこなら入るのは大変ですが、大学受験もエスカレーター式で免除出来るので専門知識の勉強をする時間も増えるはずです」

 

 

「で、でもそこってかなり厳しい所じゃないの?」

 

 

「そうですね…ですが今から勉強すれば狙えないことはありませんよ!公立のいい高校も探しつつ狙ってみてはどうでしょうか?」

 

 

「そうだね、少し調べてみるよ」

 

 

「はい、ではまた後で」

 

 

「うん、ありがと殺せんせー」

 

 

速水は感謝の言葉を贈ると退室する。

 

 

「結構話してたね」

 

 

退室した凛香を待っていた和生は速水に声をかける。

 

 

「うん、ちょっと色々調べてみたい事が出来たよ。殺せんせーってやっぱり凄いね」

 

 

「そうだね。じゃあ俺も行ってくるよ」

 

 

「うん、頑張ってね」

 

 

速水のエールを受け取った和生は職員室の扉を開き、殺せんせーの対面に座った。

 

 

「殺せんせー、率直な気持ちを言うよ」

 

 

「はい、大丈夫ですよ」

 

 

「俺は王子になるべきなのかな?」

 

 

「ヌルフフフ、やはりそう来ましたか」

 

 

「まぁね。桜井和生としての人生を歩むか…それともカズキ・エルレンシアとしての人生を歩むか…どうすればいいかわからないよ」

 

 

「そうですねぇ…和生君。君は一日どのくらい勉強していますか?」

 

 

「一日?んー、だいたい夜中の12時くらいまで?」

 

 

「頑張っていますねぇ。ですが体は壊さないようにしてくださいね?」

 

 

「大丈夫だよ!甘いものと特製スムージーでエネルギー補給は怠ってないから!それに修行してる分時間は少ないよ?最近は4時間くらいだけだから」

 

 

「そうですかそうですか。なら国内なら殆どの学校が狙えますね」

 

 

「だといいんだけどね。この学校のテストが難しいのと殺せんせーのおかげでだいぶ成績が上がったよ。ありがとね」

 

 

「生徒が成長してくれるのが先生は一番嬉しいんですよ。そして次は王子になる場合ですね」

 

 

「うん」

 

 

「和生君はイートン校を知っていますか?」

 

 

「知らないや」

 

 

「先程レグルスさんから聞きました。ルウシェさんが通っている学校だそうです。英国の名門中の名門です編入試験は殆ど受け付けていませんが、王族の和生君なら試験を受けられるでしょう。勉強は今よりもしなければなりませんがね」

 

 

「ルウシェのいる学校か…」

 

 

「英国王家は代々その学校を出ているようです。なので和生君も王子になるのであればそこを目指す必要がありますね」

 

 

「そっか。じゃあ俺はどんな道にでも進めるように勉強しなきゃダメだね」

 

 

「そうですねぇ。ですができますかねぇ?」

 

 

殺せんせーの顔が再び縞模様になる。

 

 

「やってみせるさ。殺せんせーの事も暗殺して、勉強も頑張って、凛香の事も幸せして見せるよ」

 

 

「ヌルフフフ、その意気ですよ!」

 

 

「うん。じゃあまた後でね」

 

 

「はい」

 

 

和生が職員室を後にすると渚が歩いてきた。

 

 

「和生くん…どうだった?」

 

 

「俺はさ?やりたいこともあるけど…家系が家系だからね。なんとも言えないよ」

 

 

「そっか…」

 

 

「でも殺せんせーはどんな質問にも最高の答えを返してくれるから」

 

 

「わかった」

 

 

渚は意を決して職員室に入り…

 

 

「殺せんせー…僕にはたぶん人を殺す才能があります…僕の進む道を教えてください」

 

 

殺せんせーに自分の想いを込めた質問をぶつけた。




今回も拙い文ですが最後まで読んで頂いてありがとうございます!

殺せんせーが示した速水の進路!原作では無かった部分を追加させていただきました。
そして何故あの学校なのかは今後の展開への謎とさせて頂きますね!

感想、お気に入りに追加などお待ちしております!
高評価などが頂けたら泣いて喜びますよw
これからも応援よろしくお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二周目の時間

今回は渚がメインの話となりますが、オリジナル性を高めていきたいと思います!
それでは今回も拙い文ですが最後まで読んで頂けると嬉しいです!


つんと冷えた空気が山の木ノ実の甘い香りを運んでくるこの季節は…毎年何故か切なくなる。

それぞれが自分の進む道を…それぞれの答えを出し始めるそんな時期。

成熟の11月、殺せんせーの暗殺期限まであと4ヶ月。

 

 

「僕の中で何となくのイメージだけど…他人の顔が明るく見えたり暗く見える時があります。明るい時は安全で…暗い時は危険。鷹岡先生とやった時も暗い時は避けて攻撃していた気がします。それは無意識で、何でそうするのか深くは考えてなかったけど…あの時、『死神』に受けた1発の拍手で…全身に電流が走って視界が一気に変わりました。死神が言っていた『意識の波長』僕が明暗で感じていたのはそれだったんだって。呼吸、視線、表情、それらの中から見えてくる…決定的な意識のスキマ。多分僕には…『死神』と同じことが出来ると思う。大した長所も無い僕には…この先これ以上は望めないような才能だと思う」

 

 

渚の言葉を殺せんせーは黙って聞き続ける。

 

 

「…殺せんせー。僕は殺し屋になるべきでしょうか?」

 

 

「…君ほどの聡明な生徒だ。今の質問、殺し屋になるリスクや非常識さも考慮した上での事だと思います。それらを踏まえて先生からアドバイスをあげましょう」

 

 

殺せんせーの言葉に渚は息を呑む。

 

 

「渚君、君に暗殺の才能がある事を疑う余地は全くありません。今言った波長を見抜く観察力に加え君の勇敢さも才能です。たとえ相手が怪物でも、暴力教師でも、天才殺し屋でも。君は臆することなく攻撃に入る事が出来る。優れた殺し屋には欠かせない能力です。でもね渚君?君の『勇気』には『自棄』が含まれている」

 

 

殺せんせーが話す中、渚はそれを不安そうに聞き続ける。

 

 

「『僕ごときどうなってもいい』君自身の安全や尊厳をどこか軽く考えている。だからこそ命を惜しまず笑顔で強敵に突撃出来る。殺し屋というリスキーな職業を進路の選択肢に入れてしまえる。観察と自棄は殺し屋にとって重要な才能ですが…先ずは君がどうやってその才能を身につけたのか見つめ直してみましょう。そうする事で君のその才能を何のために使うべきか、誰のために使いたいかが見えてくるはずです。その後でもう一度話し合いましょう。その時なお君が殺し屋になりたいと言うのなら、先生は全力でサポートします」

 

 

殺せんせーはそう言うと触手で掴んでいたダーツを投げて渚の顔の周りに撃ち込んだ後、渚の頭を触手で撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、渚が1人で下校していると公園から少年達の声が聞こえてくる。

 

 

「えー、お前クリアしたの?裏ボスは倒した?」

 

 

「えー無理だろあいつは。強すぎ」

 

 

「だろーな。あれ2週目じゃないと先ず倒せねーよ」

 

 

「だよなー、早速最初からまたやろーっと」

 

 

初年たちは最近発売されたゲームの話をしている、渚はその会話を自分に置き換えてしまった。

頭の中で悪いイメージがどんどん膨らむ中、渚は家に帰り着いた。

 

 

「…ただいま」

 

 

「おかえり渚、ちょっとそこに座んなさい」

 

 

渚が帰るやいなや母親が渚をリビングに呼び出した。

 

 

「…なに、母さん」

 

 

「アンタの中間テストの成績学年54位…本校舎復帰条件の50位以内に届いていなかったわよね?それで母さん絶望してたんだけど、聞いたのよ。3年前に田中くんのお兄さん60位でも寄付金を持って必死に頼んだら特例で許可をいただけたそうなの。だから私もそうするわ」

 

 

渚の母親、広海はそう言って1通の封筒を取り出した。

 

 

「一刻も早くアンタを…E組から脱出させなきゃ」

 

 

その言葉を聞いた渚の顔が焦りの色に染まる。

 

 

「近いうちにD組の先生にお願いに行くからアンタも一緒に頭下げるのよ?」

 

 

E組という教室に残りたい渚は広海に反論する。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってよ母さん!僕はE組のままがいいよ!楽しいし成績だって上がってるじゃん!大学も就職も母さんが行けってとこでいいからさ!お願い!中学だけはこのままいか…せ…」

 

 

渚はここで気付いた。

母の意識の波長が『暗く』なっていることを。

そしてこの後に起こることを想定して目を瞑った。

 

 

「何よその言い草は!何でそんなに向上心が無い子になっちゃったの!!挫折の傷は人を一生苦しめるの!母さんがソウダッタの!同じ苦しみを味あわせたくないから新たにお金も出費しなきゃいけないのよ!?親がそこまでしてあげてるのにアンタいったい何様のつもりよ!!」

 

 

「…ごめんなさい。僕の理解が足りなかった…母さん…」

 

 

渚は髪を掴まれる痛みに耐えながらそう言った。

『明るい』時に話さなかった自分を恨みながら渚は千切れたヘアゴムを拾った。

 

 

「…いい渚?アンタは子供なんだから人生の上手い渡り方なんてわかるはずないの。私がそういうのは全部知ってるから全部プランを立ててあるから。蛍大に入れって言ってるのはね?蛍大出身者がトップを占める菱丸に就職して…そして世界中を飛び回る仕事をするの!」

 

 

「(その大学も企業も…母さんが入れなかった名門だ…)」

 

 

「あーあ。理想を言えば女の子が欲しかったわ」

 

 

「(…これも口癖だ)」

 

 

「私の親は勉強ばかりでオシャレなんて全然させてくれなかった。だからルックス重視の総合商社にも落ちたのよ。だから自分の子には…思う存分オシャレを教えるつもりだったのに」

 

 

広海はそう言ってクローゼットから1着のワンピースを取り出し、渚を鏡の前に立たせてそれを渚の前にかけた。

 

 

「ほら!長髪にさせてるからやっぱり似合う」

 

 

「(…知りたくもない、女じゃないし)」

 

 

殺気にも似たこの執念、渚は一生逆らえないだろうと覚悟していた。

 

 

「(僕の人生の主人公は僕じゃない…僕は…母さんの2週目だ…)」

 

 

渚が悲しみに包まれていると広海がまた話し始める。

 

 

「そうだわ!先ずは早速明日E組の担任の先生に転級手続きを頼みに行くわ」

 

 

「…え?」

 

 

渚の表情が凍った。

 

 

「ちゃんと話せば協力してくれるはずよ。だって短期間でアンタをこれだけ育てた先生だもの。きっと品行方正で器が大きくて、生徒の未来を何より第一に考える先生なんでしょう?」

 

 

その言葉を聞いて渚は殺せんせーを思い浮かべた。

女性の理想の身体について熱く語る殺せんせーは品行方正とは言い難い。

女子生徒と人生ゲームをやっている時にちゃぶ台返しをして全部メチャクチャにしてしまう殺せんせーは器が大きいとはお世辞にも言えない。

そして…この地球を滅ぼす怪物だ。

 

 

「(母さんにバレたらやばいよ!?)そ、そんな急に!先生だって忙しいよ!」

 

 

「アンタのためよ…渚。ちゃんと明日E組にサヨナラするの」

 

 

「(また『暗く』なった…もう話しても無駄だよ…)」

 

 

渚は諦めて頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃空港では。

 

 

「お兄様、宜しいのですか?」

 

 

「うん、俺も1回ちゃんと自分の父親に会いたいと思ってたから」

 

 

「ではお2人とも、離陸いたします」

 

 

カノープスが操縦するプライペートジェットに和生とルウシェが乗っていた。

 

 

「あ、お兄様!向こうに着いたらヴラドとの契約を完全なものにしましょう!」

 

 

「えっ?もう契約ならしてるじゃん」

 

 

「お兄様?『血属器』に宿る王の霊との契約は、本来王の祭壇にて行うものなのです。ですから私との戦いでも本気で戦えなかったのですよ!」フフッ

 

 

「じゃあルウシェはもう契約してるの?」

 

 

「はい!紅桜には百鬼夜行を従える『妖の王』の霊が宿っていますから」

 

 

「そっか。じゃあ俺もヴラドとちゃんと契約しなくちゃね」

 

 

「お2人とも冷蔵庫に飲み物や食事が用意してありますのでご自由にどうぞ」

 

 

「ありがとうカノープス。お兄様、頂きましょう?」

 

 

「うん、ありがとうございます。カノープスさん」

 

 

「はい」

 

 

和生とルウシェは英国へ向けて海を渡っていた。

そして防衛省では…

 

 

「見ぃつけた。知ってるよ?君の正体」

 

 

シロが拘束され運ばれている『死神』の元へやって来ていた。

そして…

 

 

「ハダル?ちゃんと仕事しなさいよ」

 

 

「も、申し訳ありません…」

 

 

「ガキひとり殺れない眷族なんて要らないわ。死になさい」

 

 

「や、やめ…ぐぼぁ…」

 

 

杖と扇子を持ったオレンジ色の髪をした婦人がハダルの命を摘み取った。




今回も拙い文ですが最後まで読んで頂いてありがとうございます!

そして遅くなりましたが、ここでお気に入りに追加して下さいっている皆様!ありがとうございます!遂にお気に入りが200件を越えましたね!とても嬉しいです!

そしてそして!高評価をしてくださった
ユウキ・ペンドラゴンさん!
ビルトインスタビライザーさん!
ケチャップさん!
パフェ配れさん!
invisibleさん!
Sairiさん!
そして磁中@ししゃもさん!
本当にありがとうございます!この場を借りて御礼申し上げます。
高評価を頂けると自分が書いている文章を好んで頂けると実感出来、とても嬉しいです!
これからも皆さんのご期待に添えるように頑張りたいと思います!


そしてここからは余談なのですが、私は現在ラブライブの二次創作も執筆しています。
もし宜しかったら読んでみて頂けると嬉しいです。
今後ともダメな作者ではありますが、頑張っていきたいと思っていますので応援よろしくお願いします(〃・д・) -д-))ペコリン


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

帰省の時間

今回は和生くんの帰郷を書いていきたいと思います。
それでは今回はカズキくんとルウシェちゃんの微笑ましい兄妹愛をお楽しみください。
拙い文ではありますが最後まで読んでいただけると嬉しいです。


「ここがイギリスかぁ…」

 

 

自分の父親が治める地に足を着いた和生は目を細めた。

 

 

「お兄様は海外に出られるのは初めてですか?」

 

 

「うん、ずっと日本にいたからね」

 

 

「ですがカズキ様がお産まれになったのはこの地ですから、実際はここが故郷なのですよ?」

 

 

和生とルウシェの会話にカノープスが補足した。

 

 

「でもこっちに居た記憶が無いので何とも言えないですよ」

 

 

「ではお兄様がこちらにいる間は私がお兄様にたくさんの思い出を作って差し上げますねっ」ニコッ

 

 

「ありがとうね」

 

 

「ん〜♪」

 

 

和生がルウシェの頭を撫でるとルウシェは嬉しそうに目を細める。

そんな様にカノープスも微笑みながら今後の行動について話し始めた。

 

 

「ふふっ、それはいい事ですが先にやることがありますので忘れないでくださいね?今日はまずデュナミス様との会談の後、ヴラドとの契約をしなければならないのですから」

 

 

「わかっています!ではお兄様、カノープス参りましょう」

 

 

「うん。カノープスさん、車お願いします」

 

 

「かしこまりました」

 

 

空港を後にした和生達はカノープスの運転する車でロンドン街中を走っていく。

日本とは相反する街並みに和生は落ち着かなくなっていたのだが、ルウシェがニコニコと見つめてくるため平静を装っていた。

 

 

「着きましたよ」

 

 

「なっ…お、大きすぎやしません?」

 

 

「何をおっしゃっているのですか?この国を治める一族の住む場所なのですからこれくらいは当然です」

 

 

「あ、あはは…」

 

 

「お兄様ぁ…大丈夫ですか?」

 

 

街外れの一角に聳え立つ豪邸に和生は苦笑するしかなかった。

 

 

「さぁ、参りましょう。私とルウシェ様がいらっしゃいますので何の問題もありませんから」

 

 

「さぁ?お兄様!早く来てください!」

 

 

「わ!ちょっと待ってよ!」

 

 

ルウシェが和生の手を取って走り出す、カノープスも2人を追って歩き出した。

厳重な警備が施された敷地内にはスーツ姿の人々が至るところに配備されている。

 

 

「なんか凄いところに来ちゃったなぁ…」

 

 

和生はルウシェに引っ張られるままに家に入ってしまった。

ルウシェはノンストップで扉を開け家の中を進んでいく。

 

 

「ルウシェ!家に入るんだから靴を脱がないと!」

 

 

「ふふっ、お兄様?それは日本固有の文化ですよ?」

 

 

「そ、そうなの!?」

 

 

「お兄様はやっぱり面白いです!」

 

 

「あ、あはは…」

 

 

和生がルウシェを止めようとしてもすべて失敗に終わる。

ルウシェ…本当に(色々な意味で)恐ろしい子だ。

そして、数分走った所でルウシェが一つの大きな扉の前で止まった。

 

 

「さぁお兄様、いよいよお父様との対面ですよ?」

 

 

「ルウシェ様?お屋敷の中は走ってはイケナイと何度言えばわかるのですか?」

 

 

「か、カノープスさん!?」

 

 

後ろから突如現れたカノープスに和生がビクッとする。

 

 

「カノープス!今日くらいは良いではないですか!早くお兄様をお父様に会わせて差し上げたいのです」

 

 

「仕方ありませんね…今日だけは目を瞑りましょう」

 

 

「ふふっ、ありがとう。ではお兄様入りますよ?」

 

 

ルウシェはそう言って扉を3度ノックする。

 

コンコンコン

 

 

『何用だ?』

 

 

「お父様!ルウシェです。今日はお父様に合わせたい人を日本から連れて帰ってきました!」

 

 

『…入れ』

 

 

「ありがとうございます。では行きましょう、失礼します」ガチャ

 

 

「し、失礼します…」

 

 

「ではお2人とも、ごゆっくり」パタン

 

 

2人が入室したのを確認するとカノープスは扉を閉めた。

ルウシェと共に入室した和生が目にしたのはRPGゲームの城内の様な場所…では無く。

確かにRPGゲームのそれとは似ているがそこまで広くは無く、幾つもの本棚とたった一つだけ机があり、そこには美しいブロンドヘアーの男性が座っていた。

 

 

「ルウシェ…よく帰ったな、私は嬉しいぞ。それで会わせたい人物とは誰だ?まさか日本で見知らぬ男と…」

 

 

「お兄様!私はそんな事は一切していません!会わせたい人はお兄様の事です!」

 

 

「お兄様だと…?まさか…か、カズキか!?」

 

 

「は、初めまして。父…さん…?」

 

 

「あぁ…あぁぁぁっ…!カ、カズキ!」

 

 

「え?えっ!?」

 

 

ブロンドヘアーの男性は和生を見て立ち上がると駆け寄ってきて和生を抱きしめた。

 

 

「良く…良く戻ってきてくれた…!」ポロポロ

 

 

「え、えっと…とりあえずただいま…でいいのかな…?」

 

 

「あぁ!お前を見ればわかる!紛うことなき私とマユの子どもだ!」ダキッ

 

 

「く、苦し…い…」

 

 

「お父様!お兄様の顔色が悪くなっています!離してあげてください!」

 

 

「あ、あぁ…すまなかった。つい自分を抑えることが出来なかった。私は英国王子、デュナミス・エルレンシアだ。おかえり、我が息子よ」

 

 

「な、なんか実感沸かないけど…父さんなんだよね?テレビで見たことはあったけど…実際会ってみると…」

 

 

「な、なんだ?」

 

 

「普通の人だなって。何だか嬉しいや」

 

 

「そ、そうか!そうだカズキ!今日はこの後どうするんだ?する事がないなら私に日本での生活を教えて欲しいのだが…」

 

 

「えっと…今日はヴラドとの契約をするってルウシェと約束してるんだ。だからまた今度にしてくれないかな?」

 

 

「はい、お父様。ですので『王の祭壇』へと向かう許可を頂けませんか?」

 

 

「ふむ、ヴラドとの契約を…。しかしカズキ、お前はいいのか?」

 

 

「何が?」

 

 

「契約を結べばお前はエルレンシア家の人間であるということを認めるのと同じだ」

 

 

「あ…うん。俺は桜井和生であると同時にカズキ・エルレンシアだからさ?大丈夫だよ」

 

 

「そうか…うむ、私とマユの子だ。お前ならやってのけるだろう。ルウシェ、許可する」

 

 

「ありがとうございます!ではお兄様、カノープスを待たせていますからすぐに参りましょう!」

 

 

「うん、じゃあまた後でね父さん」

 

 

「健闘を祈っているぞ」

 

 

和生とルウシェはそう言って部屋を後にする。

そして和生たちは扉の前で待っていたカノープスと合流した。

 

 

「カズキ様、宜しかったのですか?すぐに父親であるとお認めになられていたようですが」

 

 

「はい、ルウシェと初めて会ったときもそうだったんですけど…なんか体の血がざわついたと言うか…この人が父親なんだってわかっちゃいました」

 

 

「それはエルレンシア家の血が感応しているのですよ。それ程までに王家の血を受け継いでいるという事は契約を行っても大丈夫でしょう」

 

 

カノープスに連れられて和生とルウシェは再び車に乗り込む。

そして森の奥深くまで連れていかれた。

そこで待っていたのは見るからにボロボロの小屋。

カノープスは何の躊躇もなくその小屋に入っていく。

和生もルウシェに手を引かれてあとを追った。

 

 

「なんだここ…」

 

 

和生が小屋入ると中には地下へと続く長い階段。

そしてその奥にはまるで古代の遺跡のような建造物が並んでいた。

10体の石像が中心を向いて円の形に並んでいる。

 

 

「お兄様、これを」

 

 

「ヴラド…だね?」

 

 

「はい」

 

 

和生はルウシェからヴラドが納められたホルスターを受け取った。

 

 

「では王族ではない私は外でお待ちしています」

 

 

「はい、いざという場合は私が責任をもって押さえ込みますので」

 

 

「ご武運を」

 

 

カノープスはその言葉を残して去っていった。

彼女を見送った後、ルウシェは和生の方へ振り返り笑顔でこう言った。

 

 

「お兄様、ヴラドを中央にある祭壇置いて来て下さい」

 

 

「うん、わかった」

 

 

和生はルウシェの言う通りに円の中央にある祭壇へと向かい、ヴラドをホルスターから引き抜いてそこに置いた。

 

 

「これでいい?」

 

 

「はい!ではお兄様、目を閉じてヴラドを呼び出してください。契約が始まります」

 

 

「うん…」

 

 

和生は瞼を閉じてヴラドの名を呼んだ。

 

 

「ヴラド…っ!?あがぁ!?」

 

 

次の瞬間、和生の体に激痛が走る。

和生は痛みに顔をしかめながらも倒れまいと必死に踏ん張る。

すると脳内に厳かな声が響いてきた。

 

 

『主よ…我輩との契約を真の物にしようというのか』

 

 

「ぐっ…はぁ…はぁ…そうだよ…!」

 

 

『ならば汝の気高さを再び余に示してみよ』

 

 

「…」バタリ

 

 

和生の視界はその声を最後に血のような真っ赤な色に塗り潰された。

 

 

「お兄様、私は信じていますから…!」

 

 

ルウシェは倒れ込む彼の姿を目を逸らさず、じっと見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここは…』

 

 

和生が意識を取り戻すとそこは真っ白な空間だった。

そして背後から戦いの最中、脳内へと語りかけてきていた厳かな声が聞こえてくる。

 

 

『ふん、血を継ぎし者の前に現れるのは久々の事だ』

 

 

『お前がヴラドか…』

 

 

『如何にも』

 

 

振り返った和生の目に映ったのは2メートルはゆうに超える長身の男。

美しい白髪が逆だっており、漆黒のマントに身を包んでいる。

 

 

『ヴラドⅢ世…吸血鬼の王様って事だね?』

 

 

『余の事を知っていたか、主よ』

 

 

『まぁね。少しくらいは調べさせてもらったよ』

 

 

『そうか。では主よ、契約を始めようぞ』

 

 

『いいよ。それで、具体的に何をやるの?』

 

 

『汝はただ余の問いに答えるだけで良い』

 

 

『わかったよ』

 

 

『第一に、汝の望みは何だ?』

 

 

『それは前にも言ったけど皆を守ることだよ。クラスの皆を、ルウシェを、そして凛香を守ることが俺の望みさ』

 

 

『そうであったな。では第二に、汝は己が命を守るためならば大切なものを捨てることが出来るか?』

 

 

『愚問だね。本当に大切なものなら命なんか惜しくないよ』

 

 

『ふん、では第三に、汝は余を…いや…私を殺せる?』

 

 

『その姿は…!?』

 

 

ヴラドが3つ目の問いを投げ掛けると共に姿を変える。

 

 

『和生、殺せる…?』

 

 

その姿は速水凛香そのモノであった。




今回はここまで!最後まで読んで頂いてありがとうございます!
次回は契約について書いていきます!
契約編終了後、渚の話を、そして和生とルウシェのイギリス旅行を書こうと思います!
今後とも応援よろしくお願いします!


そして、私が執筆している『ラブライブ!皆で輝かせる夢』の方も宜しかったらご覧になってください。
感想などお待ちしています!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

契約の時間

『その姿は…』

 

 

『ふふっ、和生に会えて嬉しいよ』

 

 

『とは言っても本物の凛香では無いけどね』

 

 

『酷いよ…』

 

 

シュンとした様子を見せる速水、しかし和生はそれを見ても全く動じない。

 

 

『でも、和生とは1回本気で戦ってみたかったんだ』

 

 

『そっか』

 

 

『だから…覚悟してね?』

 

 

そう言って速水は両手を前に出す。

そして周囲から光の粒子が収束し、彼女の両手に紛うことなき『ヴラド』が握られていた。

 

 

『へー、やっぱり使うのは自分の武器なんだね。戦うと言っても俺は丸腰だしなぁ…』

 

 

『ふふっ、ここは和生の精神世界。和生のイメージがそのまま起こるのよ?』

 

 

『そうなんだ!じゃあ…俺の武器って言ったらこれだよね?』

 

 

和生はレヴィアタンをイメージする。

すると光の粒子が収束し和生の左手に1本の刺剣が納まった。

 

 

『あれ?』

 

 

しかしその刺剣はレヴィアタンではなく、純白の刀身を携えた刺剣であった。

 

 

『おかしいなぁ…ちゃんとイメージしたのに』

 

 

『空の器…』ボソッ

 

 

『何か言った?』

 

 

『なんでもない。それじゃあ…行くよ!』

 

 

そう言って速水はヴラドのトリガーを3度引き絞る。

銃口から放たれる異形の弾丸は和生へととてつもないスピードで向かってくる。

 

 

『蒼魔凍…!』

 

 

和生は回避するために蒼魔凍を発動しようとするのだが…

 

 

『ぐふっ…な、なんで…』

 

 

蒼魔凍は発動せず3発の弾丸が和生の体を襲った。

 

 

『ふふっ、ここでは能力なんて使えないわよ?それに、体に傷が出来てないでしょ?』

 

 

『そうだね…』

 

 

和生は蹌踉めきながらも視線を逸らすまいと前を見る。

 

 

『ここで受けるダメージは体じゃなくて直接心へと襲いかかるわ』

 

 

『なるほどね…精神世界っていうだけあるよ…!』

 

 

『ふふっ、和生が私を殺すのが先か…それとも和生の心が壊れるのが先か…どっちかしら?』

 

 

『凛香の顔と声で物騒なこと言わないでよ!』

 

 

『あはは、私が全部残らず『喰らい尽くして』あげる』

 

 

『やっと吸血鬼らしいところを見せたね。じゃあこっちも行かせてもらうよ!』

 

 

和生は謎の刺剣を構えながら速水に向かって一直線に走り出す。

 

 

『(射撃線を予想して動かないとね。蒼魔凍が支えないんじゃ『ヴラド』には太刀打ち出来ない)』

 

 

『さぁ!もっと私を楽しませて!』

 

 

速水はヴラドのトリガーを連続で引き絞る。

和生は銃口の向きから弾丸の射撃線を予測し、紙一重で躱しながら速水へと近付いて行く。

 

 

『流石和生ね。だけどこれならどうかしら?』

 

 

速水の持つヴラドがガシャンという音を立てる。

 

 

『セカンドトリガー…』

 

 

『ふふっ、1回撃つだけで25発。両手で50発もある杭を避けきれるかしら?』

 

 

『あはは…捌ききれる自信はないかなぁ…!』

 

 

和生はそう言いつつも弾丸を避け続ける。

躱しきれない時は刺剣で弾くが、徐々に被弾が増えてきた。

 

 

『うっ…ぐぅぅ…がぁっ…』

 

 

『あははははは!もう終わり!?』

 

 

遂に躱しきれなくなった和生に容赦なく弾丸が襲いかかる。

何発の杭が撃ち込まれたのかわからなくなった時、速水は和生のもとへと歩いていく。

 

 

『壊れちゃった?』

 

 

『…』

 

 

速水が問いかけるが和生は返事をせず、地に倒れ伏している。

 

 

『じゃあイタダキマス♪』

 

 

速水は和生の体を起こした後、口を開いて彼の首に狙いを定める。

彼女の口には恐ろしい程に鋭利な牙が生えていた。

 

 

ガブッ!!

 

 

『やっぱり王族の地は格べ…うっ!?』

 

 

『まだ…負けてないんだけど?』

 

 

和生は首に喰らい付いた速水を無理矢理引き剥がすと、

彼女の体を思い切り抱きしめた。

 

 

『な、何をする!?』

 

 

『あはは、口調がヴラドに戻ってるよ?まぁ、その質問に答えるとしたら…お前が2つ目にした質問が答えだよ。自分の命を守るために大切なものを捨てられるかだったね?俺は言ったよ、本当に大切なものなら失うよりも大切なものを優先するってね。だから例え違う存在だとしても…凛香を傷付けたくはないし、それに契約する存在であるお前も傷付けるつもりは無いよ』

 

 

『何故そこまで拘る!?』

 

 

『好きだからに決まってるだろ?皆も、ルウシェもそして今お前が化けてる凛香もだよ。全部大切で全部守りたい』

 

 

『ふん、強欲な奴よ。だがその心意気も良い気高さだ』

 

 

『ははっ、ありがと』

 

 

『良いだろう、余のチカラを汝に全て預けようぞ。だがその前に早く余を離せ、気色が悪いぞ』

 

 

『あはは、ごめんごめん』

 

 

そう言って和生は速水の姿をしたヴラドを解放した。

するとヴラドは元の姿に戻った。

 

 

『しかし、汝のその手に握られている剣は…』

 

 

『俺もわからないんだよね。これは何なの?』

 

 

和生は左手に握っている真っ白な刺剣を見て首を傾げる。

 

 

『それは『空の器』だ。王の霊が宿っていない血属器と言えばわかるか?』

 

 

『空の器かぁ…でもこんな刺剣現実世界では見たことないよ?』

 

 

『そうか。まぁよい、まずは余との契を交わすとしようぞ』

 

 

『うん』

 

 

『では汝の腕をその剣で切り裂くのだ』

 

 

『えぇ!?でも俺の心にダメージが来るんじゃ?』

 

 

『案ずるな、戦いは既に終わっている』

 

 

『そう…?ならやるけど』

 

 

そう言って和生が右手に刺剣を突き刺すと鮮血が噴き出した。

 

 

『痛くないけど見るだけで辛いよこれ!』

 

 

『ふん、少しくらいは耐えて見せよ。そうやって腑抜けているからあの小娘にもやられるのだ』

 

 

『あの小娘ってルウシェの事でしょ!』

 

 

『ふん、余興はここまでだ。では頂くぞ』

 

 

『はい?ってうわぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 

和生が自分で作り出した傷口にヴラドが咬み付いた。

 

 

『騒々しい…だがこれで契約は完了だ』

 

 

『あぁ…吸血鬼に咬まれたら吸血鬼になるっていうのに…』

 

 

『それならば先程既に咬み付いていたであろう!』

 

 

『あ、そっか』

 

 

『まったく…』

 

 

『あはは…ごめん。それで契約をしたら何か出来ることが増えるの?』

 

 

『余のチカラを最大限に引き出すことが出来ようぞ。余のトリガーは五段階まで存在する』

 

 

『そうなんだ』

 

 

『とは言ってもファイナルトリガーを発動させるには条件があるがな。それについてはおいおい説明するとしよう。そして汝の血の力を最大限に生かす事が出来る。あの小娘の百鬼夜行のようにな』

 

 

『へー!それは楽しみだな!』

 

 

『ふん、せいぜい楽しみにしているがいい』

 

 

和生につられてヴラドも少し笑った。

 

 

『じゃあこれから宜しくね、ヴラド』

 

 

『あぁ、我が主よ』

 

 

その言葉を最後に和生の目の前は再び血のような赤に塗り潰された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ…」

 

 

「お兄様!」

 

 

和生が再び目を覚ますとそこは最初に居た祭壇の中であった。

和生の目覚めを確認したルウシェが駆け寄って来る。

 

 

「ルウシェ、どれくらい時間がかかった?」

 

 

「現在が夜の7時ですから…3時間程でしょうか?」

 

 

「そ、そんなにかかったの?」

 

 

「何を言っているんですか!私の時はお兄様の倍はかかりましたよ?」

 

 

「えぇー…」

 

 

倍という言葉に和生は苦笑する。

 

 

「もう遅いですから帰りましょう?汗も凄いですしお風呂に入って疲れを癒してください」

 

 

「そうだね、そうしようか」

 

 

和生は祭壇に置いてあるヴラドをホルスターに戻すとルウシェの手をとって歩き出す。

 

 

「お兄様から手を握って頂けるなんて嬉しいです♪」

 

 

「こっちにいる間はお兄ちゃんらしい事をしてあげたいからさ」

 

 

「じゃあ沢山ワガママを言ってもいいのですか?」

 

 

「訊いてあげられる範囲ならね」

 

 

「やりました!じゃあ早く帰って日本でのお話を沢山聞かせてくださいね!」

 

 

そう言ってルウシェは走り出した。

 

 

「ま、待ってよ〜!俺は疲れてるんだけど…」

 

 

和生も手を引かれるままにルウシェに付いていった。




契約編終了です!
今回も最後まで読んでくださってありがとうございます。
感想などお待ちしていますね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

渚の時間

お久しぶりですトランサミンです。

暗殺教室がフィナーレを迎えようとしていますね。
私もこの作品をより良いものに!そして読者の皆様の心を動かせるようにがんばりたいです!

拙い文ですが今回も最後まで読んでいただけると嬉しいです。


「渚の母ちゃんかぁー…一回家に遊びに行ったけどわりとキツい反応されたよな」

 

 

杉野がそう言うと渚の顔がどんどん不安色に染まって行く。

 

 

「殺せんせーは任せとけって言ったけど…絶対怪しまれるよね…」

 

 

「じゃあ私が代わりにやってあげる?担任役」

 

 

「おお!ビッチ先生か!」

 

 

「私は先ず人間だしあのタコとカラスマの次にあんた達のこと知ってるわよ」

 

 

自信満々にそう言うイリーナ。

 

 

「じゃあ予行練習してみよーよ」

 

 

片岡が渚の母親役で三者面談の予行練習が始まった。

 

 

「担任として最も大切にしていることは何ですか?」

 

 

「…そうですねぇ…敢えて言うなら『一体感』ですわ」

 

 

「じゃあうちの渚にはどういった指導方針を?」

 

 

「まず渚君にはキスで安易に舌を使わないように指導しています」

 

 

ガタッ

 

 

先程までそれっぽく出来ていたのに明らかにおかしな方向へ向かっている。

思わず片岡も椅子から落ちかけてしまった。

 

 

「まず唇の力を抜いて数度合わせているうちに…相手の唇からも緊張感が消え、柔らかくなります。密着度が上がり…どちらがどちらの唇かもわからなくなってきた頃…『一体感』を崩さぬようにそっと舌を忍び込ませるのです」

 

 

「「「「「痴女担任じゃねーか!!!」」」」」

 

 

生徒たちの言う通りこのままでは訴えられかねない。

そんな時速水が口を開いた。

 

 

「ていうかさ?ここの担任って名目上は烏間先生なんだよね。うちの親も三者面談希望したけど…その時は烏間先生がやってくれたし、統一しなきゃ親同士で話が合わなくなっちゃうよ」

 

 

「…そっかぁ」

 

 

問題が山積みになっている頃、教室に独特な声が聞こえてくる。

 

 

「ヌルフフフ、むしろ簡単です烏間先生に化ければいいんでしょう?」

 

 

「いつものクオリティーの低い変装じゃ誤魔化せねーぞ?すれ違うくらいならまだしも…」

 

 

「今回は面と向かって話さなきゃいけないんだよ?」

 

 

「大丈夫!今回は完璧ですから!」

 

 

そう言って殺せんせーは教室の扉を開けて姿を現した。

 

 

「おう、ワイや。烏間や」

 

 

「「「「「完成度ひっく!?」」」」」

 

 

「にゅや!?」

 

 

「いつも通りの似せる気ゼロのコスプレじゃねーか!」

 

 

「烏間先生はそんなダサいパンタロンはいてないよ!」

 

 

「い、いやでも!眉間のシワとかそっくりやろ?」

 

 

「その前に口!鼻!耳も!」

 

 

「てか何そのソーセージみたいな腕は!」

 

 

「こ、これですか?烏間先生のガチムチ筋肉を再現したんや」

 

 

「無駄なとこばっかり凝るな!!」

 

 

あまりの酷さに生徒たちからの非難殺到だ。

 

 

「今まではノリと作者の誤魔化しで何とかしてきた感が否めないけど…真面目に人間に似せるって難しいね。取り敢えず表情は基本無表情にするしかないか…」

 

 

「後はサイズだね。殺せんせー大きすぎるし」

 

 

不破と岡野の指摘は的確だ。

表情とサイズが人間とは言えない殺せんせーをどうするかが今回のポイントになりそうだ。

 

 

「じゃあ殺せんせーは座りっぱなしにしようよ!余分なところを机の下に詰め込んでさ!」

 

 

「気色悪いがそれしかねーな」

 

 

「ちょっ!?そんな無理矢理!?」

 

 

「黙って詰め込まれとけ!菅谷?眉毛と耳と鼻は任せた」

 

 

「オッケ。烏間先生そっくりに仕上げるぜ」

 

 

「みんな楽しそうで何よりです…」

 

 

渚は不安ではあったが祈るしかなかった。

無事に殺せんせーが母親を説得して自分がE組に留まれるようにと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの人が渚の母さんか…」

 

 

「美人だけど確かにキツそーだ」

 

 

放課後になり渚の母親、広海がやって来た。

生徒たちはその姿を陰から見ている。

 

 

「母さん」

 

 

「言う通りにするのよ渚?必ず母さんが…アンタを挫折から救ってあげるから」

 

 

「…」

 

 

渚は黙って後に付いていく。

そして…面談を行う職員室へとたどり着いた。

 

 

「失礼します」

 

 

広海が扉を開く、渚も意を決して入室した。

 

 

「ようこそ、渚君のお母さん」

 

 

この時渚は殺せんせーを見て思った。

 

 

「(まぁ…良しとしよう)」

 

 

「まぁどうぞ、おかけ下さい。山の中まで大変だったでしょう?冷たい飲み物とお菓子でもどうぞ」

 

 

「まぁ!こんな豪華な!」

 

 

殺せんせーが取り出したのは色とりどりのマカロンとグァバジュース。

渚の母親の好みを考慮したチョイスであった。

 

 

「私これ好きなんですよ」

 

 

「存じております。渚君のこのクラスでの成長ぶり、ここまで利発に育ててくれたお母さんへのお礼です。因みに体操の内脇選手のファンだそうで。この前の選手権では大活躍でしたね?」

 

 

「あら、先生もご覧になっていたんですか?」

 

 

「ええ、彼の頂点を目指す真摯な姿勢は素晴らしいですから!」

 

 

上手く会話を続ける殺せんせー、しっかりとツボを押さえている。

これだけ打ち解けていればいけるのでは?と渚が思ってしまうほどだった。

 

 

「まぁしかし!お母さんもお綺麗でいらっしゃる!渚君も似たのでしょうね」

 

 

殺せんせーがそういった瞬間、広海の雰囲気が暗くなる。

 

 

「この子ねぇ…女でさえいれば私の理想にできたのに」

 

 

「…貴女の理想?」

 

 

「ええこの位の歳の女の子だったら長髪が一番に合うんですよ。私なんか子供の頃短髪しか許されなくて」

 

 

そう言って広海は渚のヘアゴムを引きちぎった。

 

 

「3年に上がって勝手に纏め始めた時は怒りましたが…これはこれで似合うので見逃してやってます。そうそう、進路の話でしたわね?私の経験から申しますに…この子の歳で挫折するわけには行きませんの。椚ヶ丘高校は蛍大合格者も都内有数ですし中学までで放り出されたら大学も就職も悪影響ですわ。ですからどうかこの子がE組をでられるようにお力添えを」

 

 

「…渚君とは話し合いましたか?」

 

 

「この子はまだ何もわかっていないんです。失敗を経験している親が道を作ってやるのは当然でしょう?」

 

 

「母さん…僕は…」

 

 

「渚、少し黙ってましょうね?」

 

 

渚が口を開くと広海が一蹴する。

その姿を見て殺せんせーは納得していた。

 

 

「何故渚君が今の彼になったのかを理解しました」

 

 

そう言って殺せんせーはカツラをとってビリビリに破いた。

 

 

「「ブッ!!」」

 

 

「この烏間惟臣は!ヅラなんです!!お母さん、髪型も学校も大学も親が決めるものじゃない。渚君本人が決めるものです。渚君の人生は渚君のもの以外の何ものでもない。貴女のコンプレックスを隠すための道具じゃない。このクラスには様々な生徒がいます。絵が上手い生徒がいれば校内でも成績トップⅢに入る生徒もいる。そんな彼らもここから抜けたいとは言っていない。この際だから担任としてはっきり言いますが、渚君が望まぬ限り…E組から出ることは認めません」

 

 

殺せんせーの言葉に広海の顔がどんどん歪んでいく。

そして…

 

 

「何様よアンタ!!!教師のくせに保護者にたてつくなんて有り得ないわ!!!人の教育方針にケチつけられる程アンタ偉いの!?言っとくけどアンタより私の方がずっと人生経験豊富よ!!」

 

 

職員室内から広海の絶叫が聞こえてくる。

外で盗み聞していた生徒たちが思わず耳を塞ぐほどだった。

 

 

「お、おっかねー…メチャクチャキレてるぞ…」

 

 

一頻り殺せんせーに文句を言ったところで広海が立ち上がった。

 

 

「渚!!最近妙に逆らうと思ったら!!この烏間ってヅラの担任にいらない事吹き込まれてたのね!!見てなさい!!すぐにアンタの目を覚まさせてやるから!!」

 

 

そう言って広海は乱暴に扉を開くと出ていってしまった。

 

 

「…殺せんせー」

 

 

「うーん…少し強めに言い過ぎてしまいましたか…ですがもっとも大事なのは君自身の意思をちゃんと自分で伝えることですよ」

 

 

「…でも今は一人じゃなんにもできないし。母さんの二週目でいたほうが…」

 

 

「なんにもできないわけがない!殺る気があれば何でもできる!君の人生の一周目はこの教室から始まっているんですから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「許さない…(わたし)の人生を邪魔する奴は…障害物は取り除く!人生観改造(かえ)てあげるわ…渚!」

 

 

そう言って広海が運転する車には…目隠しをされ、拘束された渚が乗っていた。

 

 

「えっ…?何で僕は野外に!?」

 

 

渚は驚いていた。

帰宅した後、母親が不自然な程に上機嫌で…食事を摂ってからここまでの記憶が無いからだ。

 

 

「…母さん!?それにここは学校!?なにを!?」

 

 

広海の手には1本の松明が握られていた。

 

 

「…こんな場所に堕ちてから…アンタは血迷い始めた。私に逆らい始めた…燃やしなさい?アンタ自身でこの校舎を」

 

 

「えっ!?」

 

 

広海はそう言って渚に松明を差し出した。

 

 

「何言ってんだよ母さん!!」

 

 

「アンタの中でも膨らんだ膿を消毒するのよ。自分の手で火をつければ罪の意識でここには顔向けできなくなる。退路を断てば誠心誠意本校舎の先生に頭を下げられるでしょう?」

 

 

「そ、そんなの嫌だよ!」

 

 

「誰が育ててやったと思ってんの!!どれだけアンタに手間とお金使ったかわかってんの!?熟行かせて!私立入らせて!仕事で疲れてんのにご飯作って!!その苦労も知らないでツルッパゲのバカ教師に洗脳されて!!逆らう事ばっか身につけて!アンタっていう人間はね!私が全部造り上げたのよ!」

 

 

「(…違う!!…でも正しい…どう言えば良いんだろう…この気持ち)」

 

 

『もっとも大事なのは君自身の意思をちゃんと自分で伝えることですよ』

 

 

殺せんせーの言葉を思い出した渚はグッと手を握った。

 

 

「…母さん」

 

 

渚が口を開こうとした時、広海の持つ松明を一閃が襲った。

 

 

「…キーキーうるせぇよ…クソババア。ドラマの時間が来ちゃうじゃねぇか」

 

 

現れたのは鋭く尖った刃の付いた鞭を携えた殺し屋だ。

 

 

「だ、誰よアンタ!!邪魔しな…キャッ」

 

 

「邪魔なのはテメーらだ。こちとら何日も下調べしてんだよ。今期の水曜ドラマを奴はここで必ず見てやがる。砲台と一緒に女同士のドロドロした感情を勉強しにな。銃でダメならこいつの出番さ。俺の鞭の先端速度はマッハを超える。どんな武器よりも対先生物質(コイツ)を繰り出せる。一瞬で脳天ぶち抜いて殺してやるぜ」

 

 

「殺すって…何!?何なの!?け、警察…!」

 

 

「うるせーなーババア…本番中に騒がれると厄介だから殺しとくか。ガキ以外は殺すの止められてねぇしな」

 

 

殺し屋は鞭で広海の携帯を弾くとジリジリと詰め寄ってきた。

 

 

「(母さん…怯えてる。殺し屋…油断してる)」

 

 

渚はしっかりと意識の波長を読み取っていた。

現状をしっかりと把握した上で渚は1歩を踏み出すことにした。

 

 

「(母さん…あなたの顔色を窺う生活は僕の意外な才能を伸ばしてくれた。母さんが望むような才能ではないけれど…この才能のおかげで僕はクラスの皆の役に立ててるんだ)」

 

 

『君の人生の一周目はこの教室から始まっているんですから!』

 

 

「…母さん。僕は今このクラスで…全力で挑戦をしています。卒業までに…結果を出します。成功したら…髪を切ります。育ててくれたお金は全部返します。それでも許してもらえなければ…」

 

 

渚は無造作に接近し…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァン

 

 

「母さんからも卒業します」

 

 

クラップスタナーを殺し屋にお見舞した。

 

 

「(産んで育ててくれただけですっごく感謝してる。贅沢かもしれないけど…ただ我が子がこの世に生まれて…そこそこ無事に育っただけで喜んでくれたら全てが丸く収まるのに)」

 

 

渚の一撃で殺し屋は気絶した。

 

 

「な、何なのよこいつ!何したのよ渚!!」

 

 

広海が乱心していると消火器を構えた殺せんせーが現れる。

 

 

「この辺は不良の類が遊び場にしていることがありますので夜間は近づかない事をお勧めしますよ」

 

 

「殺せんせー」

 

 

「それよりも渚君?堂々と3月までに殺す宣言しちゃいましたねぇ?もう後には引けませんねぇ?」

 

 

「うっ…わかってるよ」

 

 

「それと…」

 

 

殺せんせーは速攻で殺し屋を簀巻きにすると渚へと再び向いた。

 

 

「麻痺がまだ甘いですよ?まだその技、完璧とは言えませんね。さてお母さん」

 

 

「…!」ビクッ

 

 

「確かに渚君はまだ未熟です。だけど温かく見守ってあげて下さい。決してあなたを裏切っている訳では無いんです。誰もが通る巣立ちの準備を始めただけです」

 

 

渚が自分から離れていく。

殺せんせーの言葉でそれを自覚した広海は緊張が解けて気を失ってしまった。

 

 

「先生がお母さんの車で送りましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さて渚君。万が一先生を殺せたとしてその後はやっぱり殺し屋になりますか?」

 

 

「多分違うかな?…やっぱり才能って授かり方も…使い方も色々あると思うんだよね。和生くんみたいに生まれ持って天性の才能を持ってる人もいれば…カルマくんみたいに努力して才能を手に入れた人もいる。僕の暗殺に適した才能も…今日母さんを守れたように誰かを助けるために使いたいんだ。それはやっぱり殺し屋じゃないよ。ぶっちゃけ危険だしね、親を心配させない進路を探すよ」

 

 

「ゆっくりでいい、一緒に探していきましょう。ご両親との対話も忘れてはいけませんよ?」

 

 

「…はい!」

 

 

そして翌日の朝。

 

 

「…何なのこれ?」

 

 

「今日から朝ごはんは僕が作るよ!だから出勤前はゆっくりしてて。ゴミ出しとかもちゃんとやるし高校も椚ヶ丘と遜色ないところに行くからさ。だからお願い!クラスだけは!」

 

 

「…好きにしなさい。母さん知らないからね」

 

 

「うん!ありがとう!」

 

 

そう元気よく返事した渚の顔は以前のように曇ったものでは無く、晴れ渡った秋空の様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一方その頃…英国のある家の中にある闘技場では2人の少年少女が激闘を繰り広げていた。

 

 

「お兄様…やりますね!!」

 

 

「ルウシェだって強いよ?」

 

 

「まさかヴラドと真の契約を結んだお兄様がここまでだとは思いませんでした…それに…」

 

 

「なぁに?」

 

 

「その姿は…《串刺し公(ツペシュ)》と呼ぶのに相応しいです…!」

 

 

金髪灼眼の少女、ルウシェ・エルレンシアの視線の先にいた少年…桜井和生の姿は普段とは相いれぬ物であった。




最後まで読んで頂いてありがとうございました!
そして感想などお待ちしています!

これからも作者と読者の皆さん一丸となっていい作品にしていきたいですね!

そして高評価をして下さった。
半熟探偵弟子さん!
本当にありがとうございます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

選ぶ時間

最近ラブライブの方ばかり投稿していてこちらが疎かになってしまい申し訳ありませんでした!

それともう一つ理由がありまして…実はある読者の方から酷な事を言われてしまいまして心が若干折れていました。

運営さんの対応で何とかなり私も立ち直ることが出来たのでこれからも頑張ろうと思います。
それでは今回もどうぞ!


異国の地で修練にルウシェと励んでいた和生はフラフラと覚束無い足取りでエルレンシア家の廊下を歩いていた。

 

 

「サードトリガーであそこまで体力を使うなんて…闘ってる最中は疲労感を感じない分、終わってからの反動がえげつないよ…」

 

 

ヴラドと正式な契約を結んだ和生はこれまで以上の力を出せるようになった反面、慣れない力に振り回されていた。

 

 

「それに…ヴラドが言ってた『空の器』っていうやつも気になるしなぁ…」

 

 

ヴラドと契約を交わした精神世界で自分の手に握られていた純白の刺剣。

それの正体も未だ掴めないままだ。

 

 

「お兄様〜?あっ!そちらにいらしたんですね」

 

 

「ルウシェ?」

 

 

先程まで自分と修練に励んでいた彼の妹、ルウシェが後から走りよってくる。

 

 

「そろそろ昼食の時刻ですので探していました!」

 

 

「あ、ごめんね?まだイマイチ構造を把握出来てなくて」

 

 

「大丈夫です!私がどこにいてもお兄様を探し出してみせますので!では参りましょう!」

 

 

「頼もしい妹だよ」

 

 

和生はルウシェに手を引かれてリビングへと向かう。

 

 

「お父様!お兄様を連れてきました」

 

 

「ルウシェ、偉いぞ」

 

 

「ごめんなさい。遅くなってしまって」

 

 

「気にするな!積もる話は食事を摂りながらにしよう。2人も早く座りなさい」

 

 

「「はい」」

 

 

2人が席に着くと料理が運ばれて来る。

 

 

「肉だ…」

 

 

料理を見て和生が最初に発した言葉は『肉』であった。

それもそのはず、サラダには生ハムが乗っており、他にはローストビーフにステーキなど肉料理がずらりと並んでいる。

 

 

「カズキは肉は嫌いだったか?」

 

 

和生の父親、デュナミスが問いかける。

 

 

「そんなことは無いけど…何でこんなに?」

 

 

「あぁ、それはだな?血属器を使用すると体内の血液が消費されるのは分かっているだろう?」

 

 

「うん、何となくだけどふらつく感じがするから」

 

 

「そうだろう。特にヴラドは血液の使用量が多い、だからこそ肉を食べて血液を作らせる必要があるのだ。エルレンシア家の人間は代々、そういった身体の器官が発達しているからな」

 

 

「なんか便利なんだか…そうじゃないんだか…」

 

 

「まぁ、もう一つの理由はルウシェが好きだからだ」

 

 

「ルウシェが?」

 

 

和生がデュナミスからルウシェに視線を移すと。

 

 

「はむ!幸せですぅ…」

 

 

ローストビーフを口いっぱいに頬張って幸せそうに表情を綻ばせるルウシェの姿。

 

 

「あれを見たら食べさせてやりたくなるだろう?」

 

 

「あはは、父さんの気持ちも分かるかも。ほんと美味しそうに食べるね」

 

 

「だろう?和生も好きなだけ食べなさい。それとも甘い物の方がいいか?」

 

 

「じゃあある程度食べたら甘い物貰おうかな」

 

 

「ははは、マユとそっくりだな。彼女も甘い物を好んで食べていた。だからレグルスに屋台をやらせていたのだ」

 

 

「あっ!レグルスさんのたい焼き本当に美味しいんだよ!あれはもうね!至福の一品だよ!」

 

 

「それはいいな!今度作らせよう」

 

 

「お父様もお兄様も話してばかりいないで食べてください!」

 

 

「あ、ごめんねルウシェ」

 

 

「あぁ、すまなかったな」

 

 

家族で囲む暖かい夕食。

和生は自分たちの家族との再会を心から嬉しく思っていた。

自分は天涯孤独では無いのだという安心感すら覚えていた。

 

 

「そうですお父様!お兄様には恋人がいらっしゃるんですよ!」

 

 

「「なっ!?」」

 

 

食事を終えて紅茶を飲んでいる時にルウシェが爆弾を投下した。

 

 

「カズキ…それは本当か…?」

 

 

「えっ…あ、うん…」

 

 

「その子を1度連れてこい!挨拶をさせろ!」

 

 

「えぇー!?」

 

 

「なんだなんだ!お前は中学生にして恋人がいるとは…!お前が選んだのだからさぞいい子なのだろう!会わせるんだ!」

 

 

この時和生は思っていた。

 

 

「(反対されるのかと思ったら…寧ろ喜ばれてる…?)」

 

 

「お父様!あまり大きな声を出すと血圧があがりますよ!」

 

 

「す、すまん…」

 

 

「(ルウシェにも弱すぎる…父さんって親バカなの?)」

 

 

和生はルウシェとデュナミスのやりとりに思わず笑ってしまった。

 

 

「あはは!機会があれば連れてくるよ」

 

 

「そ、そうか!」

 

 

「またお姉さまに会えるんですね!嬉しいです♪」

 

 

楽しい時間はあっという間に過ぎていき、和生は用意され部屋にルウシェの案内で戻った。

 

 

「んー、今日は疲れたなぁ…」

 

 

『まだ昼間であろう』

 

 

「ヴラド…急に話しかけて来られるとビックリするよ!」

 

 

『ふん、それよりも主よ。空の器についてだが』

 

 

「あ、何かわかったの?」

 

 

『さよう。恐らくは汝の中に眠る王の霊が正体であろう』

 

 

「あれ?じゃあヴラドは違うの?」

 

 

『余も勿論汝の血の中に眠る王の霊だ。しかし汝の中には余とは異質な何かを感じる…』

 

 

「異質って…ならそれがあの真っ白な刺剣宿るって事なの?」

 

 

『恐らくはそうなのだろうが…』

 

 

歯切れが悪くなるヴラド、和生が不審に思ってその真意を問う。

 

 

「なに?何か悪い事でもあるの?」

 

 

『汝の身体への負担が計り知れなくなるのだ…ただでさえ身体への負担が大きい血属器を2つも所持することになるのだぞ?』

 

 

「心配してくれてるんだ?でもまずその刺剣のありかも知らないし、その霊の正体だって知らない。だから俺の今の相棒はヴラド、お前だよ」

 

 

『ふん、言うようになったではないか』

 

 

「あはは。ちょっと最近変わった気がしてさ?それに目の色も変わらないし」

 

 

『目の色だと?』

 

 

「うん、その時はまだ正体を知らなかったんだけどさ?蒼魔凍を使った時も多分変わってたよ」

 

 

『不可解だな…その技は血属器を用いなければ発動できないはず…』

 

 

「でもハダルと闘ってた時もなってたらしいよ?」

 

 

『不覚ながら契約が不完全だったために正確な感知が出来なかったのだ』

 

 

「じゃあもう一度あの状態になればわかるんだね」

 

 

『その可能性は高い』

 

 

「ヌルフフフ。和生君?ヴラドさんと話しているのですか?」

 

 

「殺せんせー!?なんでここに!?」

 

 

「心配だったので様子を見に来ました。向こうは今夜ですので学校は終わっていますよ」

 

 

「あぁ…時差ね。それで?」

 

 

「明日から学園祭の準備が始まるので伝えておこうと思いましてねぇ」

 

 

「あっ、そうなんだ!ありがとね殺せんせー」

 

 

「いえいえ!それで何ですが今から帰るなら私が乗せていきますがどうしますか?」

 

 

「あー…じゃあその前に殺せんせーも父さんに挨拶していってよ!」

 

 

「和生くんのお父さんということは英国の王様ですね?では挨拶して帰りましょうか?」

 

 

「うん、ここにいるのも幸せだけど…やっぱり早く凛香に会いたいしね」

 

 

「では案内して貰えますか?」

 

 

「うん、いいよ。じゃあヴラド、話はまた後で」

 

 

『御意』

 

 

和生は殺せんせーをデュナミスの元へと案内するべく廊下に出た。

すると

 

 

「あっ!殺せんせーではないですか!」

 

 

「おや、ルウシェさん。お久しぶりです」

 

 

ルウシェに見つかった。

 

 

「何か御用ですか?」

 

 

「はい、和生くんを日本に連れて帰る前にお父さんに挨拶をと思いまして」

 

 

「お兄様が日本に…わかりました!案内させていただきますね!」

 

 

「ごめんね、学校もあるからさ」

 

 

「いつまでもお休みするわけには行かないですから!私も我慢します!」

 

 

「大丈夫です!」

 

 

「ヌルフフフ、いい妹さんを持ちましたねぇ?」

 

 

「自慢の妹だよ。さっ、行こう?」

 

 

ルウシェの案内で和生と殺せんせーは庭へ、するとデュナミスが花壇の花を眺めていた。

 

 

「お父様!」

 

 

「ん?ルウシェか。それにカズキと…そちらの客人は?」

 

 

「お初にお目にかかります。殺せんせーという者です。僭越ながら和生君の担任をやっています」

 

 

「そうですか…貴方が。それも相当の手練とみえる。警報が鳴りませんでしたからな」

 

 

「ヌルフフフ、なかなかの包囲網でしたが私には簡単でした。それで何ですが…学校で学園祭が行われるので、和生君を連れて帰りたいのですが…」

 

 

「ふむ…では少し息子達と話をさせては頂けないだろうか?」

 

 

「とんでもない!ゆっくりと話し合ってください。私はその間、成層圏でシャカチキを振っています」

 

 

そう言うと殺せんせーは大空へと飛び去っていった。

 

 

「なかなかユニークな先生だな。それでだが…和生、お前は自分の未来を自分で選ぶ権利がある。公にはされていないが…王座を継ぐと言うなら私は構わない。しかし、これまで通り桜井の名を使って平穏な生活を送ることも出来る。お前の好きな方を選びなさい」

 

 

デュナミスの口から自分の未来の選択肢が出される。

カズキ・エルレンシアとして王位を継承するか…それとも桜井和生として普通の暮らしを続けるか…和生が選ぶ選択は…

 

 

「俺は…桜井和生として生きていきたい…母さんからもらった名前と一緒に。それに向こうには沢山大切なものができたから」

 

 

「お前ならそう言うだろうと思っていた。よし!ならお前は向こうで幸せに暮らすのだぞ!」

 

 

「うん。偶には遊びに来るから、その時はまた話そうね」

 

 

「ああ!それと、仕送りは続けるからな!」

 

 

「仕送り?」

 

 

「お前の口座に毎月幾らか振り込んでいるのだ。知らなかったか?」

 

 

「えっ?そうなの?通りで使ってるはずのお金が増えてるわけだよ…」

 

 

「自分の息子に不自由の無い生活をさせるのが親の役目だ!そして最後に…これをお前に」

 

 

「鍵?」

 

 

デュナミスが和生に手渡したのは特殊な形状をした鍵だった。

それはまるで鋭く尖った剣の様な形をしている。

 

 

「マユがお前に遺したもので開かない物は無かったか?」

 

 

「あっ!あるよ!一本だけどうしても抜けない刺剣がある!」

 

 

「なら恐らくその鍵だろう。彼女が息絶える寸前に託されたものだ。お前に渡しておく」

 

 

「うん…ありがとう…」

 

 

「あの…お父様…」

 

 

「ルウシェ?どうした?」

 

 

「お願いが…」

 

 

「なんだ?可能な限りは叶えてやるぞ?」

 

 

「私も日本に行っては行けないでしょうか…?」

 

 

「なに!?日本にか!?…理由を言ってみなさい」

 

 

「私もお兄様と同じ教室に通いたいです」

 

 

「ふむ…しかしなぁ…」

 

 

「ま、待ってよ!ルウシェはまだ13歳でしょ!?」

 

 

「いや、そこは問題ではない。ルウシェは飛び級制度で今は高校2年生だ」

 

 

「えぇーっ!?」

 

 

「学年だけならお兄様の先輩です♪」

 

 

「そういう事だ。しかしなぁ…今いる学校を退学するということになるぞ?」

 

 

「構いません!」

 

 

「しかし世間の風当たりが…」

 

 

「お父様の私への愛は世間の風当たりに負けてしまうのですか?」

 

 

「そ、そんなことはない!良いだろう!手配してやる!殺せんせーさんはいるか?」

 

 

「はい、いますよ」

 

 

デュナミスが呼ぶと殺せんせーがマッハでやって来る。

 

 

「ルウシェをクラスに編入させることはできないだろうか?」

 

 

「編入ですか…理事長に訊いてきましょう!」

 

 

殺せんせーはビュン!とひとっ飛び、15分ほどで戻ってきた。

 

 

「理事長先生は学費を払っていただければ言いそうですよ。ただしE組と言う条件付きではありますがねぇ」

 

 

「E組と言うのは?」

 

 

「お兄様たちのクラスです!」

 

 

「なら寧ろ好都合ではないか!そうだ!謝礼に寄付をさせよう」

 

 

デュナミスはそう言うとメイドに寄付とルウシェの退学、編入手続きをするうまを伝えた。

 

 

「よし、ルウシェよ。我が儘を言ったのだから分かっているな?」

 

 

「はい!今以上に努力することを誓います!」

 

 

「なら良いのだ!殺せんせー、よろしく頼みますぞ」

 

 

「はい、お2人の事は責任をもって育てますので」

 

 

「ありがとう。それでは2人とも、暫くお別れだな。ルウシェ、紅桜は持ったか?」

 

 

「あっ!」

 

 

「ルウシェ様」

 

 

「カノープス!ありがとう!」

 

 

ルウシェが紅桜を忘れていたことに気づくとカノープスが横から差し出した。

いつからそこにいたのかは突っ込んではいけない。

 

 

「ルウシェ様、私も後からそちらに向かいますので」

 

 

「はい、待っていますね♪」

 

 

「では2人とも、行きましょう。先生の服の中にしっかりと入っていて下さいね」

 

 

殺せんせーはそう言うと2人を服の中に入れて触手で包み込んだ。

 

 

「じゃあね、父さん」

 

 

「お父様、お元気で」

 

 

「ああ、また会える時を待っているぞ」

 

 

その言葉を最後に和生たちは大空へと飛び去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヌルフフフ、2人とも軽いですねぇ」

 

 

「殺せんせーからしたらね…」

 

 

「ふふっ、空を飛ぶのは楽しいです♪」

 

 

「あっ、今殺せんせーをナイフで刺せば…俺たちが死んじゃうか…」

 

 

「ヌルフフフ、賢明な判断ですねぇ」

 

 

「蒼魔凍が使えれば殺れると思うんだけどなぁ…血属器の攻撃は殺せんせーには効かないしね」

 

 

「お兄様たちと一緒に暗殺をできるのが楽しみです!あっ!そう言えば学園祭もあるんですよね!」

 

 

「はい、2人とも外見が優れていますからねぇ。お客さんが集まること間違いなしです!」

 

 

「俺達は客寄せパンダか何かなの…?」

 

 

「私は楽しければいいです♪それにお兄様と一緒に進む未来をお父様は選ばせてくれましたから!」

 

 

「うん、俺も…桜井和生としての人生を選ばせてくれたことには感謝だよ。それにしても…今向こうに着く頃には…朝だよね?」

 

 

「そうなりますねぇ」

 

 

「ルウシェと俺は一睡もしないで学校か…」

 

 

「ふぇ〜!?そんなぁ…」

 

 

「授業中の居眠りは厳禁ですからね?」

 

 

「「そんなのあんまりだよ〜(です〜)!!」」

 

 

自らの意思で未来を選んだ少年少女。

いくら王族であっても普通の人間だ、眠らずに彼らは学校を乗り切ることが出来るのか?

そしてルウシェが加わることによって暗殺教室がどう変わるのか…楽しみだと殺せんせーはにゅやりと笑って海の上を渡っていった。




最後まで読んで頂いてありがとうございます!

暗殺教室の原作が終わってしまいましたね。
とても面白い作品だったので寂しくなります。
最終回のカルマの発言が個人的にツボにハマっています(笑)
それはさておき!この作品も次回から暫く原作に沿って進んでいきます。
そして学園祭でもオリジナルを混ぜつつ楽しんでいただけるように頑張りますね!

そして高評価をしてくださった。
リィン・ランザードさん!ありがとうございました!
ここでお礼を言わせていただきます。

そして最後に、私は明日から合宿免許を受けに行くので3月中の投稿はこれが最後になると思います。
私事で投稿出来ない事をここでお詫びしておきます。
それではまた次の話もお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

学園祭の時間

いやー、皆さんお久しぶりです!
車の免許を取るのって大変ですね!特に高速道路なんて怖くて怖くてw
更新出来ない期間が長かかったですが、その間にもお気に入りしてくれた方が増え、とても嬉しかったです。

8日には入学式があり、そこからは更新がスローペースになると思いますが…これからも宜しくお願いします。


「本校舎じゃ、また学園祭でもE組が何かやるんじゃないかって盛り上がっちゃってるみたいでさ?」

 

 

三村が教室で渚たちに本校舎で話題となっている学園祭について話していた。

既に登校完了時刻を過ぎているのだが、殺せんせーが来ていないことをいい事に生徒たちは学園祭の出し物について話し合っていた。

 

 

「うちの学校の学園祭はガチの商売合戦で有名だしね。儲け分は寄付するけど…収益の順位とかは校内にデカデカと張り出されるわけだし…」

 

 

「まぁ…体育祭とか、テストのこともあったし、A組とE組の勝負に気が向いてるんだろ」

 

 

渚と前原が三村に続いて学園祭の話題を広げていく、すると今日に突風が巻き起こり、間の抜けた笑い声が響いた。

 

 

「ヌルフフフ!今回は強力な助っ人もいますのでねぇ、勝ちに行くしかないでしょう?」

 

 

「殺せんせー!」

 

 

「強力な助っ人って誰?」

 

 

「ヌルフフフ、2人とも大丈夫ですか?」

 

 

「眠い…」

 

 

「ふわぁ…」

 

 

「「「「「はぁ!?」」」」」

 

 

突如現れた殺せんせーの服の中から出てきたのは美しい金髪の少年少女。

 

 

「和生!?」

 

 

「ルウシェちゃん!?」

 

 

現れたのは和生とルウシェ。

2人を見て磯貝と矢田が声を上げた。

 

 

「あぁ…皆ただいま…」

 

 

「皆さんお久しぶりですぅ…」

 

 

フラフラと覚束無い足で立つ2人を殺せんせーが支える。

 

 

「和生君は今まで通り今日から戻ってきます。そしてルウシェさんも今日からこのクラスの仲間です」

 

 

「「「「「「えぇーっ!?」」」」」」

 

 

「驚くかも知れませんが、彼女は飛び級で高校生ですからねぇ…学力自体は皆よりも上かも知れませんよ?」

 

 

「で、でも理事長は良く許可してくれたよね」

 

 

「あぁ…父さんがたくさん学校に寄付したらしいから…それでだよ」

 

 

「「「「「賄賂じゃん!!!」」」」」

 

 

「聞きたいことは山ほどあるでしょうが、今は学園祭の事を考えるのが先ですよ」

 

 

殺せんせーの言う通り、今は学園祭の話を進めなければならない。

 

 

「今までもA組をライバルに勝負する事で君たちは成長してきた。この対決は暗殺と勉強以外の一つの集大成になりそうです」

 

 

「集大成?」

 

 

渚が首を傾げると、殺せんせーは彼の頭に触手を乗せてこう言った。

 

 

「そう!君たちがここでやってきた事が正しければ…必ず勝機は見えてきますよ!」

 

 

「とは言ってもよ…?」

 

 

「店系は300円まで、イベント系は600円までが単価の上限って決められてる。材料費300円以下のチープな飯を食べに誰が1kmの山道登ってくるのかしら?」

 

 

「しかも聞いた話じゃ浅野なんかスポンサー契約してるらしいぜ?」

 

 

狭間と杉野から与えられる圧倒的不利であることを示す情報。

そんな中でも殺せんせーは以前笑顔だ。

 

 

「確かに浅野君は正しい。必要なのはお得感です。安い予算でそれ以上の価値を生み出せれば客は来ますから。E組におけるその価値とは…例えばこれ」

 

 

「…どんぐり?」

 

 

殺せんせーが取り出したのは裏山の何処にでも落ちていそうなどんぐりだ。

 

 

「裏山にいくらでも落ちているどんぐりです。種類は色々ありますが…実が大きくアクの少ないこのマテバシイが最適ですね。皆で拾ってきてください、君たちの機動力なら1時間程度で山中から集めてこれるはずですから」

 

 

生徒たちは殺せんせーの指示通り、どんぐりを探すために裏山へと散っていく。

しかし、体力の限界が近い2人の生徒は別であった。

 

 

「和生君とルウシェさんは休んでいてください。疲れも溜まっているでしょうからね。和生君は自分の席で、ルウシェさんは後ろに席を作りましたのでそちらでどうぞ」

 

 

「ありがとうございます、殺せんせー…」

 

 

「おやすみなさい…」

 

 

2人は殺せんせーに指定された場所につくとすぐに意識を失ってしまった。

そして彼らが殺せんせーに起こされたのは生徒たちがマテバシイや自然薯等の山の幸を集め終わった頃だった。

 

 

「2人とも起きてください。今から今後の計画を計画を説明しますね。村松君にはマテバシイと自然薯で作った麺に合うスープを作って貰います」

 

 

「って事は…ならラーメンよりつけ麺がいいな。この野生的な香りの材料には濃いつけ汁の方が相性がいいし、スープが少なくて済む分利益率もたけぇよ」

 

 

村松の的確な考察を聞いた生徒たちに希望が生まれてくる。

更にはイワナやヤマメ、そして松茸等自然豊かなE組ならではの材料を使った料理をどんどん考えていく。

 

 

「これだけの食材を店で買ってフルコースを作れば一人前、三千円は下らない。ですがこれら殆どが山で当たり前に手に入ります。これはハンデどころか最大の強みですよ」

 

 

勝機が見えてきた時、殺せんせーが更なる提案をした。

 

 

「恐らく浅野君はイベント系で攻めて来るはずです。そこでこちらもそれに対抗しようと思います」

 

 

「どうやって?」

 

 

殺せんせーの言葉に茅野が聞き返す。

 

 

「ヌルフフフ…前原君、磯貝君、和生君、千葉君、そして渚君はこちらへ。他の皆はレシピ作りを頑張っていてください。それとルウシェさんが早くクラスに馴染めるようにお願いしますね」

 

 

そう言って殺せんせーは教室から出ていく、殺せんせーに呼ばれた5人はその後について行った。

 

 

「俺達は何すりゃいいんだ?」

 

 

前原は前を歩く殺せんせーに問いかける。

 

 

「倉庫に準備をしておいたので入ってください。今から学園祭までの2週間で完璧に仕上げてもらいますからねぇ」

 

 

「「「「「なっ!?」」」」」

 

 

5人はそこに広がっていた光景を目にして言葉を失った。

 

 

「嘘だろ…」

 

 

「ぼ、僕たちにこれを…?」

 

 

「なんで俺がこんなことを…」

 

 

「悠馬…どうしてこうなったの…?」

 

 

「殺せんせー…なんでですか…」

 

 

「ヌルフフフ!E組きっての男子生徒が集まれば…A組に負けないくらいのチカラが出せますからねぇ」

 

 

「「「「「はぁ…」」」」」

 

 

5人の溜息と1人の笑い声、クラス一丸となって学園祭に向けて準備を進めていく。

そして遂にやってきた11月中旬の土曜日曜…椚ヶ丘中学校学園祭当日。

E組の生徒たちは殺すつもりで商品を売りにかかる。

学園祭戦争の開幕だ!!




今回は合宿免許明けの疲れもあり短めになってしまいました。
申し訳ございません。
感想などお待ちしています。

そして高評価を下さった

まえすとろさん、弁当作り大好きさん、ありがとうございます!

また、この作品の前半の文章構成が非常に見辛いので修正中です!
ご了承お願いしますね!
それではまたいつか!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

縁の時間

皆さんどうもお久しぶりです、トランサミンです。
いやー、一人暮らしを始めて1ヶ月が経ち、生活になれてきた頃に足の指にヒビが入るという不運な人生を送っている私ですが(笑)随分とこちらをサボってしまっていました。本当に申し訳ございません。

専門学校が医療系ということもあり、レポートなどが多くて更新が遅れますがその辺はご了承ください。



「駅前にあるわよ…A・T・M♡」

 

 

「「「「「急いでおろしてきやす!!!」」」」」

 

 

「(貢ぎコース確定した!?)」

 

 

椚ヶ丘中学校学園祭初日。

渚たちのもとに修学旅行で殺せんせーに手入れされた高校生たちがやってきたのだが、イリーナによって貢ぎコースに入らされ事なきを得ていた。

 

 

「あれって渚たちの知り合いだったんだね」

 

 

「あはは…知り合いというか…なんというか」

 

 

和生の言葉に渚は苦笑、お金をおろしに行った高校生たちを哀れみの目で見ていた。

 

 

「和生くん、僕たちの出番って明日だよね?」

 

 

「うん、まだ調整し終わってないからね。今日がリハーサルで明日が本番」

 

 

「そっか。頑張ろうね!」

 

 

「A組には負けらなんないからな!」

 

 

「張り切るのはいいけど。こっちも手伝えよな?」

 

 

「磯貝くん!」

 

 

「どんぐりつけ麺、好評だったって村松に伝えておいてよ」

 

 

「はいはい。それよりも渚、お客さんだ」

 

 

「えっ?」

 

 

「おーい、いるかー渚ー!?」

 

 

「この声って…」

 

 

「来てやったぞー!!」

 

 

「さくらちゃん!松方さんと園の皆も!」

 

 

やってきたのは渚たちがテスト前に手伝いに行っていたわかばパークの皆だ。

 

 

「悠馬、あの子たちは?」

 

 

「和生は知らなくて当然か。和生が入院してる時に俺らが手伝いに行ってたとこの子どもたちだよ」

 

 

「そっかそっか!それで渚はなんでそんなに仲いいの?」

 

 

「実はたまにまだ勉強教えに行ってるんだよ」

 

 

「ま、私専属のカテキョにお願いされたら来てやるしかないよねー」

 

 

そう言って渚にべったりのさくらは嬉しそうな顔をしている。

他の子どもたちも顔見知った生徒達のもとへ走っていく。

 

 

「でかした渚。とりあえず客数は稼げたな!」

 

 

「金持ち客じゃなくて悪かったな」ニカッ

 

 

「いやいや!じーさんたちには世話になってるしサービスするって!」

 

 

「たらしがいいこといってる〜」

 

 

「おんなのてきのくせに〜」

 

 

「てめーらそんな言葉どこで覚えやがった!?」

 

 

いいことを言ったはずの前原も子どもたちの前では無力。

純粋さとは恐ろしいものだ。

 

 

「おおっ!こりゃ絶品じゃ」

 

 

「こんだけおいしけりゃ売れてるでしょ!」

 

 

「…それが苦戦しててね。いいもの作っても…大勢の人に伝えるのが難しくって」

 

 

「ふーん…でも心配ないよ!渚たちは不思議な力をもってるじゃん!」

 

 

「…ああ、日頃の行いが正しければ必ず皆に伝わるわ」

 

 

「あはは、ありがとう!」

 

 

渚はさくらと松方さんにお礼を言うと校舎の中に戻って行った。

渚の言った通り、ここまでの客足の伸びしろは悪い。

やってきた事に自信はあれど、それが伝わらなければ意味が無いのだ。

 

 

「そーいや渚さ。聞いたよ、髪伸ばしてた理由。悪かったね、イヤイヤやってたんなら私がからかう時も傷付けてたでしょ?」

 

 

校舎に戻った渚を待っていたのは中村からの謝罪の言葉だった。

 

 

「あ…ぜ、全然大丈夫だよ!中村さんやカルマくんにいじられる分には」

 

 

「そっか。でももうあんまりいじらないようにするよ」

 

 

「そっか」

 

 

「おーい!」

 

 

「(こ…この軽薄な声は…!?)」ビクッ

 

 

校舎の外から渚を呼ぶ軽薄な声。

それに心当たりがある渚が振り向くとそこには…

 

 

「渚ちゃーん!遊びに来たぜー!!」

 

 

「げ!ユ、ユウジくん!?」

 

 

「…あー…南の島で渚を女と間違えて惚れたっていう」

 

 

そう、この少年は渚に惚れているのだ。

 

 

「ど、どうしてこの学校ってわかったの?」

 

 

「あれから島の宿泊者調べたんだよ!で!HPみたら丁度学園祭やってたからよ!」

 

 

「そっ…そっか!?って中村さん!?」ボソッ

 

 

渚が彼と話している間に中村は渚のズボンと自分のスカートを入れ替えていた。

 

 

「今回で最後。今回で最後」ニヤニヤ

 

 

「し、舌の根も乾かぬうちに!!」

 

 

「あいつ金持ちなんでしょ?この際手段選ばず客単価上げてかなきゃねぇ?行ってこい渚ちゃん!クラスの命運は君の接待に託された!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「学園祭来てよかったなぁ〜。渚ちゃんに接客してもらえるなんて!しかも『見えないところでこっそり食べよう』なんて色々期待しちゃうなぁ〜?」

 

 

「(純粋に知り合いに見られたくないだけなんだけど…)」

 

 

渚がしょぼくれていると中村からのカンペが提示される。

 

 

『私のオススメ全部食べてほしいなっ♡』

 

 

「(うぐぐ…)ワ、ワタシノオススメゼンブタベテホシイナー」

 

 

「おうおう!渚ちゃんのオススメなら全部食べるぜ!」

 

 

2人がいる茂みの側では中村の恐ろしい策略が練られている。

 

 

「クックック。やっぱ金持ってるわあのボンボン。食いっぷりもいいからじゃんじゃん稼いでね〜渚ちゃん?」

 

 

そんな中村の思惑とは裏腹に渚は心配事で潰されてしまいそうだ。

 

 

「(僕の性別はもちろんだし、それ以外にもこの教室には秘密がいっぱいだ。ユウジくんには気が引けるけど…全ての秘密を怪しまれないように騙し通さなきゃ)」

 

 

そんな時2人の横の茂みが大きく揺れた。

 

 

「烏間先生!大きい雉が取れましたよ!」

 

 

「私とお兄様が協力すればこんなのは朝飯前ですっ!」

 

 

「「ブフッ!!」」

 

 

茂みから現れたのは腰にレヴィアタンと紅桜を携えた和生とルウシェであった。

 

 

「わぁ!凄いわね!つけ麺のタレで焼き鳥が作れる!!」

 

 

「レヴィアタンの冷気で鮮度も抜群というわけか…流石だな兄妹」

 

 

「「いやー!それほどでも!」」

 

 

ほのぼのとした雰囲気を漂わせる2人だが、彼らの腰には刺剣と刀が携えられているのだ。

一般人が驚かないわけがない。

 

 

「な、なんなんだよあの2人!物騒なもの持ってるぞ!?ケーサツに連絡したほうが…」

 

 

「わーっ!わーっ!ち、違うの…」チラッ

 

 

渚が助けを求めて中村が隠れている方を見ると再びカンペが。

彼はそれを一言一句変えずに喋った。

 

 

「あれはクラスメイトの桜井兄妹で、最近見たアニメにのめり込んじゃったらしくて持ってるだけなんだ」

 

 

「いやいや!中学生が雉なんて捕まえられねーよ!」

 

 

「あー見えて武道の達人なんだ」

 

 

「どうみても金髪だけど!?ま、まぁ…それは置いといて…渚ちゃん。し、正直俺の事とかどう想う…?」

 

 

()()()もだ。こんな時まで気配を消すな」

 

 

烏間の声に2人が振り向くと今度は…

 

 

「フッ、あのタコに招かれてな」

 

 

「そうか、生きてて何よりだ」

 

 

「失礼かもしれないが、よく君が『死神』を倒せたものだ。如何に君が手練でも次元が違うと思っていたがな」

 

 

「俺1人じゃ無理だったろうな。あんたの弟子が心配してたぞ。行ってやれ」

 

 

「ああ」

 

 

今度はロヴロが現れた。

強面の外国人が突然現れたことにユウジは驚きを隠せない。

 

 

「な、なんだあの怖いオッサン…どーみても一般人じゃねーよ…」

 

 

「マイルド柳生。浅草演芸場の重鎮なんだ」

 

 

「お笑い芸人!?」

 

 

「さっきの会話もネタ合わせでさ?弟子がここでお笑い辞めて教師になってて…」

 

 

「ふーん…」

 

 

渚の言葉を聞いたユウジの表情が変化する。

先程までのヘラヘラした様子とは打って変わって疑いをかけるような目だ。

渚たちが話している間にE組の席はほぼ埋まっていた。

『殺せんせーを殺せなかった殺し屋たちで』

 

 

「わ、私たちわりとそういう人たちに縁があって…」

 

 

「渚ちゃんさぁ?嘘ついてるよな」

 

 

「…っ」ギク

 

 

「親父が大物芸能人だからさ。擦り寄ってくる奴らの顔はガキの頃から沢山見てきた。わかっちゃうんだよ。うわべとかごまかしの造り笑顔は。島のホテルで会った君は…そういう笑顔する子じゃなかったんだけどな」

 

 

「…凄いね。観察眼」

 

 

「すごくねーよ。イヤらしい環境が育てた望まぬ才能だ」

 

 

「…君の言う通りだよ。うそついてた。()もね?この外見は子どもの頃から仕方なくでさ。ずっと嫌だった」

 

 

「僕?」

 

 

「…けど、望まぬ才能でも。人の役に立てば自信になるって最近わかったんだ。だから今はそこまで嫌じゃない。…ごめんね?僕、男だよ」

 

 

「…………マタマタァ」

 

 

「ほんと」

 

 

「…………ゴジョウダンヲ」

 

 

「ほんとだってば。ウソついてる顔に見える?」

 

 

「…マジかよ」

 

 

「欠点や弱点でも裏返せば武器に出来る。この教室で学んできたのはそういう殺り方で、この出店もその殺り方で作られてる。今日ここにいる人たちは…皆がそれで集まってるんだ。殺意(こころ)が踊ってさ?すごく楽しいんだよ。

あ、で、でも騙してたんだしお金は!」

 

 

「いいよ、なんか…自分がアホらしく思えてきた。帰るわ」

 

 

悪いことをしてしまったな…そう思いながら渚は彼の後ろ姿を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

生徒たちは売上が伸びないことに落ち込みながら登校していた。

 

 

「はー…1日目の売上そこそこだったな」

 

 

「今日で最後か…」

 

 

「このペースじゃA組には勝てねーよ…」

 

 

そんな彼らの横をカメラを持った人たちが駆け抜けていった。

 

 

「テレビ局?」

 

 

「何を撮るつもりなんだろ?凛香かな?可愛いし」

 

 

「ばか!ふざけないの!」

 

 

「あはは、とは言ってもこの先にはE組しかないんだ…し?…って」

 

 

角を曲がり、校舎前の坂を見た彼らはこう叫んだ。

 

 

「「「「「「なんじゃこりゃ!?」」」」」」

 

 

「これ全部うちの出店待ち?」

 

 

「昨日の今日でこの差は一体何なの?」

 

 

「渚…この人たちの前でやるの…?」

 

 

「和生くん…覚悟を決めよう…」

 

 

驚く彼らの元に不破が走ってくる。

 

 

「大変大変!!ネットで口コミが爆発的に広がっててさ!」

 

 

『少し潜って情報の発信源を特定しました。表示します』

 

 

そう言って律が不破の携帯に示したのはユウジのブログであった。

どうやら彼はかなりの食通だったようで、そこから広まったようだ。

彼の心からの言葉に感銘を受けた人たちが、この場所に足を運んだというわけだ。

そして、学園祭はスパートに入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、準備はおっけーだぜ!」

 

 

校舎の上に作られた特設ステージ。

その上には前原、磯貝、和生、千葉、渚の5人とイリーナと殺せんせーがいた。

 

 

「とは言っても1週間ちょっと練習しただけでこれかよ…」

 

 

「千葉くん…」

 

 

「和生…俺達は大丈夫なのか?」

 

 

「晒し者もいいとこだよね…」

 

 

「安心しなさいって!私が直々にねっとり指導してあげたのよ?」

 

 

「そうです!私もこの触手で指導したではありませんか!」

 

 

「「「「「触手でねっとりとか気持ち悪い!!」」」」」

 

 

「まぁまぁ、皆さん。案ずることはありません。いつものように殺す気でやればいいんです」

 

 

「そうそう。好きもんでも考えてなさいよ。なんかあんでしょ?」

 

 

「(女…)」

 

 

「(銃…)」

 

 

「(E組の皆…)」

 

 

「(凛香…今何してるかな…メイド姿もっとじっくり見とけばよかった)」

 

 

「(女装…って人の好きなもの勝手にねじ曲げないでよ!!)」

 

 

それぞれ思い思いのことを胸に秘めて彼らはそれぞれの獲物持って前を向く。

殺せんせーとイリーナはその様子を見ると、ステージを隠している黒幕を勢い良く引き剥がした。

ステージの黒幕が剥がされたことで席に座っている者、そして順番待ちしている者も皆視線をそちらへ向ける。

 

 

「皆さんこんにちは!今日は1日限定で俺たちがライブをやらせてもらいます!」

 

 

磯貝の挨拶で彼らは一列に並んだ。

 

 

「「「「「俺達!E-boysです!」」」」」

 

 

「「「「「「「「モロパクリじゃねーか!!!」」」」」」」」

 

 

「あんたたち、気にしたら負けよ」

 

 

「いやいやいや!girlをboyに変えただけじゃん!」

 

 

「ほらほら、進行が遅れてしまいますから。不破さん、メタイですよ」

 

 

「ぐぬぬぬぬ」

 

 

何か言いたそうな不破を殺せんせーが宥め、磯貝の挨拶が続く。

 

 

「俺たちは急遽やることになったのでまだまだ付け焼き刃ですけど!頑張るので応援おねがいします!まずはメンバーの紹介から!」

 

 

磯貝がそう言うとステージ上の全員が自分の楽器の位置に着く。

 

 

「1人目はドラム担当!E組で1番前髪が長い男!千葉龍之介!」

 

 

「よろしく」

 

 

「へぇ〜千葉くんはドラムなんだ」

 

 

「なんか雰囲気的に似合ってるよね」

 

 

倉橋と矢田が磯貝の紹介を聞いて納得したように頷いている。

 

 

「2人目は俺!ベースを担当する磯貝悠馬です!よろしくおねがいします!3人はE組1の女たらし!ギター担当の前原陽斗!」

 

 

「紹介文は気に入らねーけどな!よろしく!」

 

 

「4人目はE組きっての美少年!甘いものと彼女が大好きなキーボード担当桜井和生!」

 

 

「あはは、別に美少年じゃないんだけどね?よろしくおねがいします!」

 

 

「最後は性別不明!ボーカルの潮田渚!」

 

 

「男だよ!!ちゃんとついてるよ!よろしくね!」

 

 

「じゃあ聴いてください!『Myosotis』」

 

 

磯貝の掛け声と共に和生が伴奏を始め、それに合わせるように他の3人がリズムを刻む。

互いに主張しすぎることもなく、最高のハーモニーを奏でていく。

そんな中、渚が歌い始めた。

 

 

「Per Ardua Ad Astra Altiora Petamus Volente Deo ,Lucete Stellae.……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5人のライブは見事成功。

取材に来ていたテレビ局が撮っていたこともあり、取材やら何やらから逃げるために彼らは校舎へ戻っていた。

そして客足が伸び。

在庫も無くなって来た頃、殺せんせーが口を開いた。

 

 

「ここら辺で打ち切りましょう」

 

 

「なんで?このままじゃな勝てないよ!」

 

 

「いいんですよ。これ以上は山の生態系を崩しかねません。植物も鳥も、魚も菌類も節足動物も哺乳類もあらゆる生物の『縁』が我々の恵みになっている。君たちがどれほど多くの『縁』に恵まれているかこの文化祭でわかりましか?」

 

 

「なーんだ。結局今日も授業が目的だったわけね」

 

 

「くっそ、勝ちたかったけどなー」

 

 

悔しがる彼らのもとに1人客がやってくる。

 

 

「あ、すみません!売り切れちゃって閉店なんです!ごめんなさい!」

 

 

「そうなの…すごい人気だったのね」

 

 

「…母さん」

 

 

やってきたのは渚の母親だ。

 

 

「はい、最後の山葡萄のジュース。美味しいよ」

 

 

「…ありがとう。ケーブルテレビで紹介されてたわ。凄いのねアンタのクラス。残りたがる理由もわかったわ」

 

 

「…うん」

 

 

「…渚。この前の後者のでの出来事ね?ここであんたが私を守って一瞬で不良をやっつけた時。背中を見て思い知ったわ…私の息子は私とは別人だって。私から卒業するって言ったのも虚勢じゃない。それだけの力をいつの間にか身につけてたんだって。でもさ…せめて成人までは一緒にいてよ。そっから先は好きに生きればいいわ。せっかくアンタの親に慣れたんだもん。もうしばらく心配させてよ」

 

 

「…うん!」

 

 

渚と母親が和解する様子を眺めていた殺せんせーはこう思う。

 

 

「(この世で出会った全ての『縁』が人を育てる教師になる。あなたが私にもくれた『縁』を…私は上手く繋げているでしょうか…)」

 

 

「渚くんの母親が謝っていた。火をつけようとしたと」

 

 

「過ぎたことですから」

 

 

「それと…彼女が俺に囁いて帰ったんだが…俺のヅラのことは黙っておくとはどういう事だ!?」

 

 

「にゃやぁ!?」

 

 

烏間はそう言うと対先生ナイフを振り抜いた。

殺せんせーは驚きながらもそれを交わして逃げていく。

山の上の校舎は暗殺教室。

全ての繋がりが生徒たちを育てる教材だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園祭の結果はA組の勝利。

それに貢献した五英傑は理事長室に呼ばれていた。

 

 

「僕たちは勝利に満足しています。努力の全てのを注ぎ込みました」

 

 

「それにしては接戦だったが?」

 

 

「それだけ奴らに戦略があったということ」

 

 

「違うな。相手は飲食店だ。悪い噂を広めるのは簡単だし、食中毒なら命取りに出来る。君は害する努力を怠ったんだ」

 

 

理事長の言葉に浅野以外の4人は驚愕している。

 

 

「理事長、あなたの教育は矛盾している。どうやったか知らないが奴らはこの1年で飛躍的に力を伸ばしている。癪だが、僕自身もいい刺激を受け能力が伸びています。強敵や手し…いや、仲間との縁に恵まれてこそ強くなれている。弱い相手に勝ったところで強者にはなれない。それが僕の結論であり、あなたの教える道とは違う」

 

 

浅野がそういうと理事長は不敵に笑いこう言った。

 

 

「浅野君、少し外してくれ。君の友達と話がしたい」

 

 

「…?」

 

 

「出ていろ浅野君。3分ぐらい別にいいさ」

 

 

榊原に促されて退出した浅野が次に見たのは…

 

 

 

「「「「「E組殺すE組殺すE組殺す……」」」」」ブツブツブツ

 

 

変わり果てた友人達の姿だった。

 

 

「なっ…何を…」

 

 

「ちょっと憎悪を煽ってあげただけだよ。君の言う『縁』なんてこんなものさ。私が教える『強さ』とはそんな脆いものでは無い。期末テストは私が全て取り仕切る」

 

 

遂に理事長が動き出す。

次の戦いの舞台は期末テスト!!この1年の集大成をぶつける時だ。




今回はここまで。
最後まで読んでくださってありがとうございました!

彼らに持たせた楽器はイメージでつけてみました(笑)
そして途中で出てきた好きなものですが、誰がどれを思っているのか簡単ですよね?(笑)
Myosytisは私の個人的に好きな曲なので聴いてみてほしいですね!私がやっている音ゲーの曲です!

久しぶりの投稿で至らぬ点もあるかと思いますがこれからも応援よろしくおねがいします!
感想などお待ちしていますね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

答えの時間

皆さんお久しぶりです、トランサミンです。
暫く更新していなくてすみませんでした。
言い訳になってしまいますが…自分で書いてて面白い文が書けないというか…元々なかった文才が完全に消滅した感じですね。
今回も拙い文となっていますが、最後まで読んで頂けると嬉しいですね。


「え…ちょっと待って、もう1度言って頂けますか?」

 

 

「あと10億必要です」

 

 

期末テストが迫る中、烏間と部下の園川は理事長室へと呼び出されていた。

そこで理事長から伝えられた内容は口止め料の増加であった。

 

 

「これから暗殺は佳境なのでしょう?何が起こるかますますわからない。我が生徒への危険も考えねばならないし…機密の保持にもコストはかかる。この街に長くいるから感じますが…大掛かりな計画何やら進んでいるようですし」

 

 

「…!!だからと言って!!」

 

 

「よせ園川」

 

 

「もう追加の口止め料を要求されるのは何度目ですか!!このままでは3月までには賞金より高くつきますよ!?」

 

 

「忘れるな、我々はこの学校を使わせてもらっている立場だ」

 

 

「では振り込みの方お願いしますよ?当分忙しくなるので失礼します」

 

 

なんとカンの鋭い男だろうか、この街で進んでいる最終暗殺計画まで察知し、たった1人で防衛省を手玉に取るとは…烏間は理事長の恐ろしさを改めて感じながら理事長室を後にした。

一方その頃隔離校舎にいるE組の生徒達はというと、殺せんせーから今回のテストへの意気込みを伝えられていた。

 

 

「一学期の中間の時、先生はクラス全員50位以内という目標を課しましたね。あの時の事を謝ります。先生が成果を焦りすぎたし…敵の強かさも計算外でした。ですが今は違う!君たちは頭脳も精神も成長した。どんな策略や障害にも負けず目標を達成出来るはずです」

 

 

「でもそーも行かなそうだぜ?なんせA組の新しい担任は理事長だぜ?」

 

 

「遂にラスボス降臨か…」

 

 

「とうとう来ましたか…!!」

 

 

この暗殺教室が成り立つのに欠かせない役者が3人いる。

1人はターゲットである殺せんせー、そしてもう1人は烏間、超有能な彼の働き無くして生徒達は暗殺者として機能できなかっただろう。

そして最後の1人、学園の支配者浅野理事長だ。

自分の学校を暗殺の舞台にする懐の深さとそれでも一切揺るがぬ教育への自信。

異様なまでのカリスマ性と人を操る言葉と眼力、授業の腕はマッハ20の殺せんせーとタメを張り、彼の授業を受ければ逆らう事などまず出来はしない。

 

 

「確かに理事長は教育者としてのレベルは最高クラスです。しかし!何も勉強を教えるのは教師だけではない!今回の策戦はこうです!」

 

 

殺せんせーが考えた策戦でE組の反撃への狼煙が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「理事長と殺せんせーってさ?なんかちょっと似てるよね?」

 

 

「どこが?」

 

 

勉強を終えた生徒達は下校しながら理事長と殺せんせーの相似点について話していた。

 

 

「2人とも異常なチカラを持ってんのに普通に先生やってるとことかさ。理事長なんてあれだけの才能があれば総理でも財界のボスでも狙えただろうに…たった一つの学園の教育に専念してる。そりゃ手強くて当然だよね」

 

 

「…」

 

 

「あれ?浅野くんだ」

 

 

下校する彼らを待ち伏せていたのはA組のトップであり彼らと幾度となく戦ってきた好敵手、浅野学秀だった。

 

 

「なんか用かよ?」

 

 

「偵察に来るタマじゃないだろーに」

 

 

「…こんな事は言いたくないが君たちに依頼がある。単刀直入に言う。あの怪物を君たちに殺して欲しい」

 

 

浅野から突然舞い込んだ理事長の暗殺依頼。

戸惑うE組の生徒達に浅野が順を追って説明を始めた。

 

 

「もちろん物理的に殺して欲しいわけじゃない。殺して欲しいのはあいつの教育方針だ」

 

 

「教育方針って…どうやって?」

 

 

「簡単な話だ。次の期末で君達に上位を独占して欲しい。無論1位は僕になるが、優秀な生徒が優秀な成績でも意味が無い。君達のようなゴミクズがA組を上回ってこそ…りじちょの教育をぶち壊せる」

 

 

「どーゆー風の吹き回しだ?なんでA組の頭のお前が…」

 

 

「浅野くん、君と理事長の乾いた関係はよく耳にするけど…ひょっとしてお父さんのやり方を否定して振り向いて欲しいの?」

 

 

「勘違いするな」

 

 

片岡の言葉に浅野が胸を張って言い張る。

 

 

「『父親だろうが蹴落とせる強者であれ』そう教わってきたし、そうなるように実践してきた。人はどうであれそれが僕らの親子の形だ。だが…僕以外の凡人はそうじゃない。今のA組はまるで『地獄』だ。E組への憎悪を唯一の支えとして限界を超えて勉強させる。もしあれで勝ったなら…彼らはこの先その方法しか信じなくなるだろう。敵を憎み、蔑み、陥れることで手にする強さには限界がある。君達程度の敵にすら手こずる程だ。彼らは高校に進んでからも僕の手駒だ、偏った強さの手駒では僕を支えることはできないんだ。…時として敗北は人の目を覚まさせる。正しい敗北を…僕の仲間と父親に教えてやって欲しい」

 

 

浅野はそう言って頭を下げる。

敢えて傲慢な本心を隠さず話すのは本心で話していることの暗示、プライドの塊である浅野がゴミクズとまで貶したE組に頭を下げている。

彼は今…本気で他人のことを気遣っているのだ。

だが…

 

 

「え?他人の心配してる場合?1位取るの君じゃなくて俺なんだけど?」

 

 

カルマが頭を下げている浅野に至近距離で変顔をしながら言い放った。

浅野の額に青筋が立ち、今にもキレてしまいそうな雰囲気の中カルマは言葉を続けた。

 

 

「言ったじゃん、次はE組全員容赦しないって。1位は俺でその下もE組、浅野くんは10番辺りがいいとこだね」

 

 

「おぉ〜、カルマが遂に1位宣言」

 

 

「一学期期末と同じ結果はごめんだけどね」

 

 

「今度は俺にも負けんじゃねーの?なぁなぁ!?ゴフッ…」

 

 

カルマに詰め寄ってニヤニヤしている寺坂にカルマが膝を思いっきり入れた。

変な呻き声を上げながら倒れる寺坂をカルマが更に踏みつけている。

 

 

「浅野、今までだって本気で勝ちに行ってたし、今回だってそれは変わらない。いつも俺らとお前らはそうして来ただろ?勝ったら嬉しくて、負けたら悔しいそんでその後の格付けとかは無し。もうそろそろそれでいいじゃんか」

 

 

「そうそう、今回は俺も本調子だしさ。『こいつらと戦えて良かった』って思わせてみせるし、何より前回の雪辱は晴らさせてもらわないとね」

 

 

「余計な事考えてないでさ?殺す気で来なよ。それが一番楽しいよ」

 

 

磯貝、和生そしてカルマの言葉に浅野のニヤリを悪い顔をするといつもの様に上から目線でこう言った。

 

 

「面白い。ならば僕も本気でやらせてもらおうか」

 

 

E組とA組の生徒同士でぶつかりあっている頃、教師同士でも何やら起きているようだ。

 

 

「おや?あなたからやって来るとは珍しい。何を悪いことはしていませんよ?殺せんせー」

 

 

「知っています。あなたはいつも最後の最後は正攻法を好む。この期に及んで小細工を使う人では無い。我々の教育合戦もおそらくこれで最後、私の存在を拒まずに受けてたって頂けたらお礼をと思いまして」

 

 

理事長室で待っていた殺せんせーは触手を器用に使って製菓店の箱を開けてエクレアを理事長に見せた。

しかし理事長はそんな物を気にすることもなく書類をしまっている。

 

 

「殺せんせー、教師をするのはこの学校が初めてですね?」

 

 

「…なぜわかります?」

 

 

「…何となく素人臭いので。何故教師になったのか頑なに語らないとか、私が勝ったら教えてくれませんかね?」

 

 

「…語るまでもない事ですから。そもそも人に何かを教えたいと欲する時、大きく分ければ理由は2つしかありません。自分の成功を伝えたい時か…自分の失敗を伝えたい時。あなたはどちらですか?浅野理事長」

 

 

「さぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

E組の生徒達はとにかく勉強した。

わからないことは殺せんせーの分身に聞きまくった。

さしもの殺せんせーも忙しすぎて…分身の形が大きく乱れるほどに。

ここで無様な結果を出しては例え暗殺に成功しても胸を張ることは出来ない。

生徒は殺し…先生は教えた暗殺教室。

教え通り第二の刃を身につけた事をターゲットに報告出来ないままではこの教室を卒業できない!!

そして迎えた決戦の日。

 

 

「恐ろしく気合い乗ってるよ、A組。カルマ勝てんの?」

 

 

「さーねー?本気で殺す気ある奴がいたら手強いけどね」

 

 

「和生くんはどう?今回の調子は」

 

 

「任せといてよ渚。ちゃんとチョコレート食べてきたしさ。でもルウシェが受けられないって聞いた時は驚いたなぁ」

 

 

「あはは…向こうで単位は全部取ってるんだもんね」

 

 

「そうそう。お兄様頑張ってくださいって送り出されちゃったよ。今頃紅桜を振ってるんじゃないかな?一緒に戦うってさ」

 

 

「じゃあ頑張らなきゃね」

 

 

「そうだね、よし!行こうか皆!」

 

 

こうして2人の怪物に殺意を教育された生徒達が因縁に決着をつけるべく今…紙の上で殺し合う!

一教科目の英語から恐ろしいほどの難易度。

全ての教科で中学校のテストのレベルを遥かに超えるレベルのモンスターたちが襲いかかる。

A組は憎悪の炎を燃え上がらせてモンスター達を次々薙ぎ払って行く、一方E組は泥臭く確実に出来ることを一つずつの戦法で撃ち破る。

そして彼らにはまだ秘策がある。

そう、殺せんせーが立てた今回の策戦…!

 

 

「なんだこの文!?意味わかんねぇ!?」

 

 

「作者が何を言いたいのかなんてわかんないよ!?」

 

 

国語の時間、生徒達を阻むのは古文の作者の意図を読み取る問題だ。

 

 

「ほら、教えたでしょ?『なかなかなり』中途半端な事はかえってしない方がいい。皆ならわかるよね?」

 

 

そして数学の時間では…

 

 

「クソ!ラス前に漸化式なんてあんのかよ!?」

 

 

「ちょ!弾の準備が!」

 

 

「特殊解に持ってくんだよ。先週やり方教えたじゃん」

 

 

生徒達自ら先生となること!

他人に教えるということは自分が理解していなければ出来ないことだ!生徒同士で得意科目を教え合わせたのだ。

その結果、特にカルマと和生は隙が無くなり完璧に仕上がっている。

数学の最終問題、生徒の半数はここまですら来られず、残り半数も殆どが時間ギリギリ、余力はもう残っていない。

残り時間で満点を出せる可能性を残していたのはこの3人のみであった。

しかし…

 

 

「「やっばい…これ時間足りなくね?」」

 

 

カルマと和生は完全にストップをかけられていた。

しかし浅野はいち早くアプローチの方法を見つけ計算を連ねて行く。

完璧な計算を解き進める浅野でさえ間に合うかどうかの残り時間、そんな時カルマと和生はとあることに気が付いた。

 

 

「待ってよこれ…」

 

 

「難しい計算なんにもいらなくね?」

 

 

それぞれが同じ領域を持っていてそれは自分も皆も同じだ、つまり自分が思い切り主張すれば同じだけ皆も主張する。

自分が主張出来る空間は半分だけ2人とも短時間で答えに辿り着いた。

 

 

「ただ…自分の外にも世界があるって気付けたら…難しい計算なんていらないじゃん」

 

 

カルマは完全正答で試験を終えた。

しかし…

 

 

「…え?」

 

 

和生は上手く行かなかった。

 

 

「なんで手が動かない…いや違う…この感じは…俺の手が止まってるんじゃない…俺の思考に付いていけてない…?」

 

 

彼のペンは全く動かないまま…戦いを終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テストから休日を挟んでテストの返却日がやって来た。

生徒達は緊張した面持ちで殺せんせーと向かい合う。

 

 

「皆さんに集大成の答案を返却します。君たちの二本目の刃はターゲットに届いたでしょうか。細かい点数を四の五の言うのはよしとしましょう。今回の焦点は総合順位で全員トップ50を取れたかどうか!本校舎でも今頃は総合順位が貼り出されていることでしょうし、このE組でも先に発表してしまいます!」

 

 

そう言って殺せんせーはトップ50位が書かれた模造紙を黒板に貼り出した。

 

 

「お!おぉ!」

 

 

「…俺が…」

 

 

「うちでビリって寺坂だよな…?」

 

 

「その寺坂くんが47位…」

 

 

「ってことは!?」

 

 

『全員50位以内達成だ!!!!』

 

 

「上位争いも五英傑を引きずり下ろしてほぼ完勝!!そして1位は初のカルマ!」

 

 

「どうですかカルマ君?高レベルの戦場で狙って1位を取った気分は?」

 

 

「んー、別にって感じ」

 

 

「和生君も浅野君と並んで2位です、よく頑張りましたね。数学の最終問題で勝敗が分かれたそうです」

 

 

「…あれね。なんかよくわかんないけど…皆と1年過ごしてなきゃ解けなかったきがする。そんな問題だったよ」

 

 

「ここまで長かったわー…」

 

 

「暗殺の次に達成したい悲願だったしね」

 

 

「ちなみにA組はテスト前半の教科までは絶好調でしたが後半になると難問に引っかかる生徒が増えたようです」

 

 

「そりゃそーよ。殺意ってそんなに長く続くもんじゃないしね。ドーピングしたいならもっと時間をかけてしなきゃ」

 

 

「ところで和生くんは?」

 

 

「確かにいないな。どこ行ったんだ?」

 

 

渚の指摘通り朝は教室にいた和生がいなくなっていた。

 

 

「わ、私探してくる!」

 

 

「あっ!はやみん!」

 

 

速水は和生を探すために校舎を後にした。

彼女には心当たりがあった、それは以前彼が大敗を喫した時にいた裏山だ。

 

 

「和生!?どこにいるの!?いるなら返事をして!」

 

 

速水は制服のまま裏山を走り抜ける。

最愛の彼が居そうな場所を探しながら彼の名を呼び続けた。

そして紅葉が舞い散る中で彼を見つけ出した。

だが見つけた彼の姿はどこが様子がおかしい。

 

 

「がはっ…おえっ…こんな姿皆には見せられないよね…さっき凛香が呼ぶ声が聞こえたけど…今は会いたくないや」

 

 

「…!?」

 

 

声をかけようとした速水だが、両手で口を塞いでとどまった。

普段の彼ならば自分の気配に気付くはずなのに今の彼は全く気付く気配は無い。

更に口からは大量の血を吐き出し意識は朦朧、今にも何処かへ消えてしまいそうだ。

 

 

「笑っちゃうよね…こうやって立ってるだけで精一杯なんて…はぁ…何なんだろうなぁ…なんというか…常に『蒼魔凍』を発動してるみたいだよ…しかもコントロールが効かないなんて…ね…うっ…」

 

 

『主よ…余の力で血液の生成量を増やしてはいるがその吐血量では危険だ。少し口を閉じるがよい』

 

 

「ヴラド…血属器を持ってなくてもお前と話せるなんて俺ってどうなってるの?」

 

 

『…酷な事を言うぞ?良いのか?』

 

 

「…ある程度察しはついてるし…いいよ」

 

 

『汝は…踏み入れてはならない領域に入ろうとしている』

 

 

「踏み入れてはならない領域か…それで?それと蒼魔凍の何が関係してるの?」

 

 

『…初代エルレンシア王。ライル・エルレンシアは蒼魔凍の奥の扉を開いた。余は王と契約していた故にわかるのだ。主よ…汝は今、王と同じ扉を開きかけているのだ』

 

 

「その扉を開く代償って?」

 

 

『それはな…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『汝の命だ』

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
資格試験がかなり厳しく絶望しかけている私ですがこれからも頑張ろうと思います。
皆さんも勉強は頑張らなきゃダメですよ?二本目の刃ですからね!

そして高評価を下さった
KJKさん、絶剣と黒の剣士さん!この場を借りてお礼を言わせてもらいます!ありがとうございます!

感想などお待ちしておりますね♪


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

作る時間

「俺の命…か…それはまた物騒だね」

 

 

『何故そこまで冷静でいられる?死ぬやもしれんのだぞ?良いのか?』

 

 

「自分の体の事は自分が一番よくわかってる。このまま蒼魔凍を使い続ければ死に至る。逆に使わなければ暫くは安全ってことじゃない?」

 

 

『吐血しておいて安全も何も無いがな。余のチカラで普段通りの生活を送れるよう最低限のストッパーはかけておく。主は周囲に悟られぬよう心がけよ』

 

 

厳かな声が伝える警鐘に和生は静かに頷くと裏山の更に奥へと歩みを進めていく。

そんな彼の様子を陰で見ていた速水はというと、彼に言葉をかけることも出来ずにその場に立ち尽くしていた。

 

 

「和生が死ぬ…?嘘だよね…?だってまだ15歳よ?そんなのってあんまりよ…だけど…和生の様子は普通じゃなかったし…私の存在にも気付いてなかったし…あの血の量は…と、取り敢えず和生には見てたことをバレないようにしなきゃ!」

 

 

ドカァーン!!

速水が踵を返すと校舎の方から爆発音が聞こえて来る。

嫌な予感を感じ取った彼女は急いで校舎へと走って戻る。

そんな彼女に気付かずに裏山の奥へと進んでいる和生。

彼の足取りは重く、とてもゆっくりだ。

 

 

「取り敢えず体をある程度動けるまでは戻さないと…何があるかわからないし…でも校舎の方で大きな音もしたし…フリーランニングで戻れば良いトレーニングになるか」

 

 

彼は普段の感覚を取り戻すべくフリーランニングの基礎である木を軸にした移動を繰り返したのだが…

 

 

「はぁ…何でこんなに早く着いちゃうかなぁ…普通に普通に…いつも通りのスピードで…」

 

 

自然と蒼魔凍が発動してしまいあっと言う間に校舎まで辿り着いてしまった。

そんな彼のすぐ後ろから名前を呼ぶ声が聞こえる。

 

 

「和生!何処行ってたの!」

 

 

「凛香…?あはは、ごめんね?ちょっと頭を冷やしててさ」

 

 

和生と速水、お互いに相手に悟られぬよう笑顔を作る。

速水は和生の笑顔が引き攣っているのに気が付いているが和生は速水の作り笑いに気付かない。

戻った2人を待っていたのは荒れ果てた校舎を修理するクラスメイト達の姿であった。

 

 

「あれ?皆何してるの?」

 

 

「あ、桜井!お前どこいってたんだよ!理事長が来てこっちは大変だったんだぞ!?」

 

 

「理事長が?何があったのかはわからないけど、大変そうだね」

 

 

「だからお前も早く手伝えよ!」

 

 

「はいは〜い♪」

 

 

和生は飄々とした様子で校舎の修復に参加する。

時間をかけて修理を続ける中、倉橋が殺せんせーに問いかけた。

 

 

「そういえば殺せんせー!テストの褒美に弱点教えてくれるんでしょ?」

 

 

「ヌルフフ、そうでした。頑張ったから決定的弱点を教えてあげます。実は先生意外とパワーが無いんです。スピードに特化しすぎていますので…特に静止状態だと触手1本なら人間1人でも押さえられます」

 

 

「なるほど!つまり皆でそっと近寄って押さえれば動きが止まる!」

 

 

「よし!」

 

 

「えいっ!」

 

 

生徒達全員が殺せんせーの触手を掴もうと忍び寄るが殺せんせーはことごとく躱してしまう。

 

 

「それが出来たら最初から苦労してねーよ!」

 

 

「不可能なのわかってて教えただろ!」

 

 

「ふーむ、ダメですかねぇ?」

 

 

殺せんせーはキョトンと首をかしげながら生徒達の攻撃を回避し続ける。

A組との校内抗争には決着が着いても暗殺にはまだまだ着かなそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「演劇発表会かぁ〜…よりによって二学期期末のこの時期になぁ」

 

 

「冬休みの暗殺の準備したいのにね」

 

 

期末テストから1週間、椚ヶ丘中学校名物のクラス対抗演劇発表会。

生徒達はその準備に取り掛かろうとしていた。

 

 

「例によって俺らだけ予算は少ないし、セットもここから運ばなきゃいけないわ…おまけに昼飯食ってる時にやるとか…酒の肴じゃねーんだぞ?」

 

 

「まぁまぁ、俺も委員会で浅野に文句言ったけどさ?『お前らなら何とかするだろう』って言われちゃったよ」

 

 

「言うじゃんあいつ」

 

 

「じゃあお望みどーり何とかしてやっか!劇なんてパパっと終わらそーぜ!」

 

 

「とっとと役と台本決めちゃおう!!」

 

 

「取り敢えず監督は三村で…脚本は狭間だな。…で?主役はどうする?」

 

 

生徒達が話し合っていると殺せんせーが触手で頬を撫でながら照れ臭そうにこう言った。

 

 

「先生…主役やりたい」

 

 

「やれるわけねーだろ!国家機密が!!」

 

 

「そもそも大の大人が出しゃばってんじゃねーよ!」

 

 

「だ、だって先生劇の主役とか、一度やってみたかったし!皆さんと同じステージに立ちたいし!」

 

 

「いーわよ?書いたげる。殺せんせー主役にした脚本をね。桜井兄妹と速水で脇を固めてもらうわ。まぁ、この2人なら変に恥ずかしがる事も無いでしょ」

 

 

「あ、うん」

 

 

「しょうがないか…」

 

 

「ふふっ!楽しみです♪」

 

 

3人も渋々ながら了承している。

生徒達はまさか狭間が了承するとは思っていなかったので驚いている。

 

 

「標的やら暗殺仲間の望みを叶える。それ位なら国語力だけの暗殺者にも出来ることよ」

 

 

「よっしやるか!本校舎の奴等を興奮の渦に叩き込んでやろう!」

 

 

「「「「「「おぉー!!」」」」」」

 

 

気合の入る生徒達、彼らはどんな演劇を作り上げたのだろうか…とうとうやって来た発表会当日。

本校舎の生徒達が昼食をとる中彼らの発表が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ある所に早くに両親を無くして親戚に引き取られた少女、シンデレラ(速水)がいました。彼女は働き者でとても良い娘だったのですが、引き取られた先の叔母(中村)、長女(矢田)、次女(倉橋)に腫れ物の様に扱われ雑用ばかりされていた。そして今夜は国の王子の婚約者を探すパーティーがあるのだが、彼女は1人家で留守番をしていたのでした』

 

 

「シンデレラ?あなたは今日はここに残り掃除をしていなさい」

 

 

「私たちが代わりに王子様にあってきてあげるわ♪」

 

 

「貴方のように穢れた女は王子様のお目汚しよ?」

 

 

「「「おーっほっほっほ!」」」

 

 

「はぁ…どうして私は連れて行ってもらえなかったのでしょう…人目でいい…王子様にお会いしてみたい…」

 

 

『顔を伏せながら悲しそうに床を拭いている彼女の元になんと魔女(ルウシェ)が現れました』

 

 

「あぁ…可哀想なシンデレラ…そんなに可憐なのに不遇です…そんな貴方には幸せをプレゼントしてあげましょう!」

 

 

「あ、貴方は?」

 

 

「私はしがない魔女!貴方の姉妹と叔母をこの世から葬り去って差し上げます!」

 

 

ぶふっ!!会場の生徒達が一気に口に運んでいた食べ物を吹き出した。

そんな様子を無視して物語は進む。

 

 

「そ、そんな…そこまでは…私は王子様に会えればそれで…」

 

 

「ではここにあるカボチャ(殺せんせー)に魔法をかけて王子様に会わせてみせましょう!ボビデボビデバー!」

 

 

『魔女が杖を振るうと…なんと…美しい金髪の王子様が現れました』

 

 

「「「「「カボチャに何の変化も起きてねぇじゃねーか!!」」」」」

 

 

会場から避難の声がステージに飛び交う。

しかしそんなことはお構い無し、魔法使いの独壇場が続く。

 

 

「王子様!この少女を婚約者にしてどうでしょう!?顔も可愛らしく家事もこなせる!こんな優良物件は出会い系では会えませんよ!?」

 

 

『この魔女、可愛い顔をしてえぐい事を平気で口にしている。すると何という事だろうか、王子様は跪いてシンデレラの手を取った』

 

 

「君は…なんて美しいんだ…僕の物にならないかい?」

 

 

「そ、そんな…私なんて釣合いません…」

 

 

「身分なんか捨ててもいい!僕は君が欲しいんだ!」

 

 

『熱烈な告白をする王子様、しかしその後で魔女は悪い笑みを浮かべている。どうかしたのだろうか?』

 

 

「アーッハッハッハッハッハッ!お前達の愛がこのジャックランタンを育てるのだ!お前達の愛が尽きた時!このカボチャが貴様らを喰らい尽くすだろう!!」

 

 

「なっ!?やはり出会い系はダメなのか…」

 

 

『出会い系…そこには魔女が潜んでいる…皆さんもその魔女に捕まらぬよう気をつける事だ…めでたしめでたし』

 

 

「「「「全然めでたくねーよ!!食事中の中学生になんつー話してくれてんだ!?」」」」

 

 

「ふふっ、こう言うのは爪痕残してナンボなのよ」

 

 

E組の生徒達はそそくさとセットをバラシ始めて退散した。

会場から飛んでくるペットボトルや空き缶を躱しながら舞台袖へと隠れ、荷物をまとめて自分たちの校舎へと戻っていった。

 

 

「桜井とはやみんがキャスティングされたから普通に恋愛かと思いきや…やっぱり狭間ちゃんは狭間ちゃんだったなぁ…」

 

 

「もう…何でこんなことに…」

 

 

「俺達は楽しかったよね?」

 

 

「はい!お兄様♪」

 

 

「…はぁ」

 

 

速水は微笑み合う桜井兄妹を見てため息をついた。

あの日以来和生は普段通り、辛そうな様子は全く見せていない。

 

 

「渚?ちょっといい?」

 

 

「茅野?別にいいけどどうかした?」

 

 

「ルウシェちゃんの魔法で使ったビーズ零しちゃって…かたすの手伝ってくれない?」

 

 

「あ、うん!いいよ」

 

 

茅野に呼ばれた渚は彼女の後について物置へと歩いていった。

そして教室に残った生徒達はというと…

 

 

「冬休みにやりたいことは山ほどあるんだ!皆!暗殺頑張ろうぜ!」

 

 

「「「「「おぉー!」」」」」

 

 

冬休みの暗殺に向けて意気込んでいた。

しかしそんな中で2人俯いている人物が…

 

 

「和生…」

 

 

「お兄様…」

 

 

このクラスで一番に和生のことを愛している人物、速水とルウシェだけは彼の方を心配そうに見つめていた。

そして渚たちのいる物置では…

 

 

「最期まで気付かなかったね殺せんせー、大好きだったよ。死んで?」

 

 

一人の少女が超生物に忌まわしい武器で襲いかかろうとしていた。




感想等お待ちしています。

そして高評価してくださった
神崎刹那さん!ありがとうございます!
この場を借りて御礼申し上げます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

仇の時間

皆さんお久しぶりです、トランサミンです。
いやー、執筆活動って難しいですね。
私の作品がつまらない事は分かっていても、いざ酷評されると心に来るものです。
なんと言うか、自分の文才の無さに呆れるしかないですよ。
まぁ、当の本人が楽しければそれでいいんですけどね(笑)

そしてここからが本題。
酷評されたと言いましたが、ある1人の方がとても的確なアドバイスを下さったのでそれを参考に今回から文章の構成内容を変更しております。
戸惑う読者の方々もいらっしゃると思いますが、ご了承ください。


 

「かや…の?」

 

 

僕は驚いて彼女の名前を呼ぶ事しか出来なかった。

だってさっきまで隣で一緒にビーズを拾っていたのに、いつもと全く変わらない表情だったのに、彼女の首筋から伸びる2本の触手が倉庫の床を突き破り、殺せんせーが落とし穴に落ちるまでのその過程があまりにもスムーズで思考が真っ白になってしまった。

 

茅野は僕達がこれまでの暗殺で殺せんせーに一番有効だと感じていた環境の変化と2本の触手を巧みに使って殺せんせーを追い詰める。

落とし穴の底には対先生BB弾、流石の殺せんせーも茅野の激しい攻撃に触手が反応しきれていない。

だけど流石は僕達のターゲット、イトナ君との戦いで見せたエネルギー砲を壁に撃って退避した。

僕も倉庫の外へ出ていく殺せんせーと茅野を追いかけて外に出ると、音に驚いた皆もやって来る。

 

 

「エネルギー砲で壁壊して地中からだっしゅか…しくったよ。思わず防御っちゃった。殺せんせーが生徒を殺すわけないのにね」

 

「か…茅野さん?…何?その触手?」

 

「…あーあ。渾身の一撃だったのに、逃がすなんて甘過ぎだね私」

 

「…茅野さん、君は一体…」

 

「ごめんね?茅野カエデは本名じゃないの。雪村あぐりの妹。そう言ったらわかるでしょ?『人殺し』」

 

「雪…!?えっ!?」

 

 

演技をやめた茅野の顔は…別人のように険しくなっていた。

翌日に必ず殺すと宣言した彼女は木の枝に触手を絡ませて飛び去っていってしまった。

雪村あぐり…殺せんせーが来る前の僕達の担任の先生の名前だ。

茅野の正体は雪村先生の妹で天才子役…一体どれが彼女の本当の顔なのか僕達はわからなくなっていた。

ただ一つだけ僕が言えることは、僕の近くにいつも彼女がいたのは…僕の殺気の陰に自分の殺気を隠していたんだろうって事。

 

 

「茅野まで触手を持ってたなんて偶然にも程があるよね?前にイトナに聞いたけど触手を植え付けられている状態って頭の中に直接イバラムチを打たれるようらしいじゃん。それを隠し通すだけの何かが茅野にはあったって事だよね?」

 

 

うん…僕も和生くんと同じ意見だ。

茅野は殺せんせーの事を『人殺し』と言った。

それが今回の一件に関わっていることは間違いない。

だけど僕にはもう一つ違和感があった、それは和生くんの表情が夏の暗殺旅行の前のように凍り付いているように見えた事。

だけど今はそんな事を聞ける状況じゃないのは分かってる、まずは茅野の事だよね。

 

 

「殺せんせー…茅野は先生の事を人殺しって言ってた。過去に何があったんだ…?」

 

「今だけ長く信頼関係築いてきたから…もう先生をハナっから疑ったりはしないよ」

 

「でももう話してもらわなきゃ、殺せんせーの過去の事。でなきゃ誰も今の状況に納得できない。そういう段階に来ちゃってんだ」

 

 

翌日教室で行われた緊急のHR、烏間先生とビッチ先生も、茅野以外のE組に関係する人物が勢揃いしている。

そんな状況で殺せんせーは口を開いた。

 

 

「…わかりました。先生の…過去の全てを話します。ですがその前に、茅野さんはE組の大事な生徒です。話すのは…クラス皆が揃ってからですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜7時、僕達は茅野に指定された椚ヶ丘公園奥のすすき野原までやって来た。

そこで待っていたのは…

 

 

「来たね、じゃ終わらそ!!殺せんせーの名付け親は私だよ?ママが「滅ッ!!」してあげる」

 

 

狂気のような殺気を殺せんせーに向ける笑顔の茅野。

殺せんせーは触手をしならせる彼女に向けて語りかけた。

 

 

「茅野さん、その触手をこれ以上使うのは危険過ぎます。今すぐ抜いて治療しないと命にかかわる」

 

「え、何が?すこぶる快調だよ。ハッタリで動揺を狙うのやめてくれる?」

 

「…茅野。全部演技だったの?楽しい事も、色々したのも、苦しい事みんなで乗り越えたのも」

 

「『演技』だよ。これでも私の役者でさ?渚が鷹岡先生にやられてるときも、不良に攫われたり、死神に蹴られた時なんかはムカついて殺したくなったよ。でも耐えてひ弱な女子を演じ続けた。殺る前に感づかれたらお姉ちゃんの仇が打てないからね。この怪物に殺されてさぞ無念だったろうな。教師の仕事が大好きだった。皆の話も聞いてたよ」

 

「知ってるよ茅野、2年の3月。2週間ぽっちの付き合いでも凄くいい先生だってわかる」

 

「そんな雪村先生を殺せんせーはいきなり殺すかな?そんな酷いこと俺らの前でやった事ないだろ?」

 

「…ね。話だけでも聞いてあげてよカエデちゃん」

 

「停学中の俺ん家まで訪ねるような先生だったよ。…けどさ?本当にこれでいいの?今、茅野ちゃんがやってる事が殺し屋として最適解だとは俺には思えない」

 

 

皆が茅野に言葉をかけても彼女の表情が晴れることは無い。

だけど一つ、イトナくんの言葉にだけは反応した。

だけど…それが彼女の暗殺の合図だったんだ。

 

 

「体が熱くて首元だけ寒いはずだ。触手の移植者特有の代謝異常、その状態で戦うのは本気でヤバい。熱と激痛でコントロールを失い、触手に生命力を吸い取られて死…」

 

「…うるさいね。部外者は黙ってて!!」

 

 

そう茅野が言葉を発すると同時に彼女の首から伸びる触手が炎を纏った。

 

 

「どんな弱点も欠点も磨き上げれば武器になる。そう教えてくれたのは先生だよ?体が熱くて仕方が無いなら…もっともっと熱くして触手に集めてあげればいい!!」

 

「…だめだ…それ以上は!!」

 

「最っ高のコンディションだよ!!」

 

 

茅野が触手を振るうとすすきに炎が燃え移りリングが形成される。

先生の苦手な環境な変化、そして炎を纏った触手がその恐ろしさを表している。

だけど気になるのは茅野の表情、苦しそうで…意識の波長が見える僕だからわかるけど…かなり乱れて興奮状態だ。

 

 

「やめろ茅野!こんなの違う!!僕も学習したんだよ!自分の身を犠牲にして殺したって後には何も残らない!!」

 

「自分を犠牲にするつもりなんてないよ渚。ただコイツを殺すだけ、そうと決めたら一直線。それが私でしょ?」

 

その言葉と同時に茅野が殺せんせーに襲い掛かった。

一撃一撃は火山弾の如く、灼熱の炎が殺せんせーの触手を苦しめる。

これが演技じゃない茅野の本心…イトナくんが使っていた時の触手とは比べ物にならない破壊力。

だけどその分触手による精神侵食の速度も早いらしい。

 

 

「あはは!どーしよ殺せんせー!!もう頭が痛くないの!痛いのが気持ちイイの!!」

 

 

もはや普段の彼女からは考えられない言葉が飛び交っている。

イトナくんが言うには既に手遅れの所まで侵食されているらしい。

このままじゃ復讐を遂げても遂げられなくても茅野が死んじゃうよ!

でも…僕にはわかる。

ずっと彼女の隣にいて、クラスの中で一番彼女との付き合いが長かった僕だからわかること、殺せんせーを殺したいと願うその中に…助けて欲しいと嘆く彼女の姿が浮かんだ。

 

 

「死んで!死んで!死んでよ殺せんせー!!」

 

「なんとかならねーのかよ…言ってる方が今にも死にそうだぜ…」

 

「ここは俺達が時間を稼いだ方が良さそうかな?」

 

「皆さんは茅野さんを救う方法を考えていて下さい」

 

「和生…やれるのか?」

 

「悠馬、蒼魔凍を使えば殺せんせーから注意を逸らすことくらいはできるはずだよ」

 

「私とお兄様にお任せ下さい」

 

 

和生くんとルウシェちゃん、2人ならもしかしたら茅野の攻撃を止める事が出来るかもしれない…だけど…それだけじゃ…

 

 

「「蒼魔凍!!」」

 

 

2人がそう言った瞬間、2人の姿が僕達の視界から消え去った。

王族に継承され続ける秘技、脳の処理速度のリミッターを外す事で限界を超えた速度で移動が可能になるという技。

和生くん曰く原理は達人が敵の攻撃を見切る際に止まって見えるのと同じらしい。

 

 

「邪魔するなら容赦はしないから!2人も消し炭にしてあげる!!」

 

「咲き誇れ…紅桜!」

 

「ヴラド!トリガーをセカンドに移行!!」

 

『『御意』』

 

 

和生くんがヴラドで銃撃とルウシェちゃんの残留する斬撃で殺せんせーへの攻撃は弱まって入るけれど…2人の超スピードでさえ茅野の攻撃を全て凌ぎきる事は難しいはず、ましてやフィールドは炎に覆われていて普通の人間なら立つことすら難しいはずなのに…

 

 

「熱を感じる前にその場を離れているとは言っても流石に厳しいか…」

 

「茅野さんを傷付けないように戦うのだけでも難しいのに地の利も相手にありますから…」

 

 

防戦を強いられる2人を僕達が眺めていると茅野の攻撃を必死に躱していた殺せんせーの顔が僕達の目の前に現れた。

 

 

「き、器用に顔だけ!?」

 

「先生の分身です!茅野さんの攻撃を和生君たちが防いでくれてはいますが、それでも余裕が無いんです!手伝って下さい!一刻も早く茅野さんの触手を抜かなければ!彼女の触手の異常な火力は自分の生存を考えていないから出せるものです!持ってあと1分!ですが彼女の殺意と触手の殺意が一致している間は触手の根は神経に癒着して離れません!」

 

 

じゃあどうすればいいって言うんだよ殺せんせー…イトナくんの時みたいに時間を掛けることは無理だし…

 

 

「手段はひとつ、戦いながら引き抜きます。和生君とルウシェさんはおそらく既に限界が近い。これ以上は彼らの命に関わります。ですから先生のネクタイの下の心臓を上手く致死点をズラして貫かせます。『殺った』という手応えを感じさせた瞬間、少なくとも触手の殺意は弱まります。その瞬間に誰かが茅野さんの殺意を忘れさせてください。方法は何でもいい、思わず暗殺から注意が削がれる何かです」

 

「でも!茅野ちゃんの触手を抜く前に殺せんせーが死んじゃうんじゃ!」

 

「恐らく先生の生死は五分五分です。でもね?クラス全員が無事に卒業できない事は先生にとって死ぬよりも嫌なんです。うっ…分身が保てなくなってきました…ここからは攻撃の対処に専念します。30秒後に飛びっきりのヤツお願いしますね!」

 

 

殺せんせーの顔の分身が僕達の前から消えていく。

そして代わりに桜井兄妹が戻ってきた。

2人は息を荒らげていて体力消費は想像以上。

この2人にはもう茅野と戦うことはできないだろう。

茅野の殺意を殺す技…そんな技があるのだろうか…

 

 

「三村、エアギターやれ。お前の超絶技を見せてやれや」

 

「この局面で!?むしろ俺に殺意が向くよ!」

 

 

エアギター…確かに意外性があって…意外性…クラップスタナー…?ダメだ…あれだけ意識の波長が乱れてたらベストなタイミングで撃てないこの技は得策じゃない…ナイフ…狙撃…和生くんもルウシェちゃんも触手だけを狙って茅野を傷付ける事はしなかった…それに武器を使ったって茅野の神経を逆撫でするだけ…何かないのか!?この教室で身に付けた技術!!優れた殺し屋に成るために…何でも学んできたじゃんか!!少ないお金で贅沢な料理を作る方法…第二の刃…あとは…超実践的な外国語の会話術とか………ある!!教わった殺し技が!!

 

 

「グフッ!!」

 

「殺ッ…タ…!?」

 

茅野が殺せんせーの死を確信した瞬間、殺せんせーは触手を巧みに使って茅野を抱きとめた。

ネクタイの下の心臓には依然として触手が刺さっている。

 

 

「君のお姉さんに誓ったんです!君達からこの触手を離さないと!!」

 

 

殺せんせーの言葉を聞いて僕は決心し、茅野の前に立った。

茅野…そんな悲しいこと…言わせないよ

僕はそう彼女に伝えるように口付けた。

E組で学んだ殺し技…ビッチ先生直伝のキスだ。

これなら…茅野の体を傷付けずに殺意だけを殺せるはず!

全部演技だったなんて言わせない…E組での思い出、皆で楽しく過ごした事、復讐しか無かった何て僕が言わせない!!

 

 

「これでどうかな?殺せんせー」

 

「満点です渚君!今なら抜ける!!」




どうでしたかね?今回は終始渚視点で書いてみました。
今後のストーリーは各話特定のキャラクターの視点で書いていくことにします。

感想や高評価が貰えたら嬉しいです。
今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

苦悩の時間

皆さん(」・ω・)オッス(」・ω・)オッス
トランサミンです!いやー、解剖学って難しいこと限りないですよw
勉強が忙しくて遊ぶ暇が全然ありません…。
それに暗殺教室のアニメももう終わりですし…単行本もあと一つだけ…寂しいですね。
ですが暗殺教室を途切れさせないためにも!私はこの作品を書き続け、暗殺教室ファンとしてずっと物語を届けていこうと思います!
それでは皆さん!今回は主人公である彼の視点や第三者視点を織り交ぜてお届けします!


頭が痛い…激しい吐き気と飛び出そうなくらいに眼球が痛む。世界が可笑しかった。さっきまで俺はルウシェと一緒に炎の触手を操る茅野と戦い、殺せんせーへの攻撃を防いでいた筈なのに、気付けば茅野は倒れており殺せんせーが茅野に何かを施している。

 

世界が凍り付いていた、音、空気、光さえも緩慢に感じ、見ているだけで気が狂いそうな光景が視界に広がっている。この状況を俺は知っている…『蒼魔凍』だ。戦いの場に置いて最強と言える能力、しかし俺は戦いの最中確かに蒼魔凍を解除したはず…。

何故今も世界が凍り付いているのだろうか…意識が遠のき…身体中の内蔵を吐き出してしまいそうな衝動に駆られる中…

 

「和生っ!和生っ!」

 

彼がこの世で最も愛している女性、速水凛香の声が彼を呼び戻した。

 

「へっ?あ、何?」

「もう!渚が茅野の動きを止めて殺せんせーが触手を抜いてくれたのよ」

「…ああ。じゃあ全部終わったんだね?」

「うん、後は殺せんせーの話を聞くだけ」

「ゲホッ!!」

「殺せんせー!?」

「平気です…ただ流石に心臓の修復に時間がかかる。先生から聞きたいことがあるでしょうがもう少しだけ待って下さい」

「…先生」

 

殺せんせーが口から血を吐いて蹲っている。茅野が戻ったなら殺せんせーの過去を知る権利が俺達にはある。

そんな時、殺せんせーを1発の弾丸が襲い、先生がそれを躱した。

 

「瀕死アピールも大概にしろ。まだ躱す余裕があるじゃないか。使えない娘だ、自分の命と引き換えの復讐劇ならもう少し良いところまで観れるかと思ったがね」

「…シロ!!」

「大した怪物だよ、いったい1年で何人の暗殺者を退けて来ただろうか。だがここまで、ここにまだ3人ほど残っている。最後は俺だ、全てを奪ったお前に対し…命を持って償わせよう」

 

突然現れたシロと真っ黒なローブを纏う人物、そしてオレンジ色の髪をした英国婦人。シロのローブから覗くのは1人の男の顔、殺せんせーにはどうやら心当たりがあるようで表情が堅い。そして俺の横に立っているルウシェの表情もだ。

 

「3月には…呪われた命に完璧な死を」

「行こうか『2代目』、『マザー・グース』」

「待て!!」

「ルウシェ?」

 

歩き去るシロ達3人。しかしマザー・グースという名を聞いたルウシェが紅桜を抜刀して切っ先を婦人の背中へ向けた。婦人が振り返り笑ってルウシェに語りかけた。

 

「久しぶりね?ルウシェ。いつ以来かしら?」

「…忘れたとは言わせません!!お前が母さんを殺した時だ!!」

 

…母さんを殺した?ルウシェは何を言っている。

だけど俺もあの婦人の顔には見覚えがある…あれは俺が入院していた時の…!!

 

「ふふっ、桜井和生くんも久しぶりね?肩の調子はどうかしら?折角私が治してあげたんだから感謝してよね?」

「…何故貴様がそこに居る!!吐け!!」

「ルウシェ、せっかちな女性は嫌われるわよ?シロ、行きましょう?」

「あぁ。絶望は来るべき時に訪れる」

「くっ…」

 

去っていくシロ達を女の子とは思えない目で睨みつけている。あの時病院で俺を診ていた先生が母さんを殺した…?

 

「おい!茅野が目を覚ましたぞ!」

「ホントか!?」

「茅野さん…良かった」

「最初は純粋な殺意だったの…お姉ちゃんの仇って…けど殺せんせーと過ごすうちに殺意に確信がもてなくなった。この先生には私の知らない別の事情があるんじゃないか?殺す前に確かめるべきじゃないか?って。でもその頃には触手の殺意が止まることを許さなかった…バカだよね…皆が純粋に暗殺を楽しんでたのに私だけただの復讐に1年を費やしちゃった」

「茅野、僕は君にこの髪型を教えて貰ってからさ?自分の長い髪を気にしなくて済むようになった。殺せんせーって名前も皆気に入って使ってるだろ?目的がどうとか気にしなくていい。茅野はこのクラスを作り上げてきた仲間なんだから。どんなに1人で苦しんでたとしても全部演技だったなんて言わせないよ。皆と笑った沢山の日が」

「…渚」

「殺せんせーは皆揃ったら全部話すって約束してくれた。先生だって聖人じゃない、良い事ばかりじゃないのは皆知ってる。でも一緒に聞こうよ。殺せんせーの話を」

「…うん。ありがと…もう…演技やめていいんだ…」

 

涙を流す茅野にクラスメイトたちが寄り添っている、そして…遂に殺せんせーの過去に触れる時がやって来た。

 

「茅野はここまでして先生の命を狙いました。並大抵の覚悟じゃできない暗殺だった。そしてこの暗殺は先生の過去とも雪村先生とも…つまり俺らとも繋がってる。話して下さい、どんな過去でも…真実なら俺らは受け入れます」

「ふー…」

 

磯貝の言葉を聞いた殺せんせーは長く息を吹いてから話し始めた。

 

「できれば過去の話は最後までしたくなかった。けれどしなければなりませんね…君たちとの信頼と絆を失いたくないですから。夏休みの南の島で烏間先生がイリーナ先生をこう評しましたね?『優れた殺し屋ほど万に通ずる』非常に的を得ていました。先生はね?教師をするのはこのE組が初めてです。にも関わらずほぼ全教科を滞りなく皆さんに教えることができた。それは何故だと思いますか?」

「…まさか?」

「そう。2年前まで先生は…『死神』と呼ばれた殺し屋でした。それともう一つ放っておいても来年の3月には先生は死にます。1人で死ぬか、地球ごと死ぬか。暗殺で変わるのはそれだけです」

 

 

語られた殺せんせーの過去、それは俺達に衝撃を与えた。殺せんせーは本物の『死神』だった事、シロの正体、柳沢に改造を施されこうなってしまい、最愛の人であった雪村先生を助けることができなかった事、そして…この先生を殺さなくちゃいけないのか…という事だ。俺達の頭を巡る殺せんせーとの思い出、殺せんせーの言葉を疑う余地など俺達には無い…爆発の期限は3月13日、俺達の…苦悩の冬休みが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

年が明けて2日、世間の人々が正月ムードの中、俺は独り校舎裏の山に篭っていた。

理由は簡単、俺の身体に起きた異変と…あの時のルウシェの言葉の意味を冷静に考えるためだ。

 

「あの時ルウシェは『お前が母さんを殺した時』と言っていた…皆は殺せんせーの過去だけで頭がいっぱいだったから何も言わなかったんだろうけど…俺にはルウシェの言葉の方が衝撃だったよ」

『主よ、汝の妹の話から察するに、汝らの母親を殺したのは奴と見て良いだろう』

「ヴラドもそう思うよね…うっ…」

『また頭痛か…触手を抑えるために蒼魔凍を用いた故に更に症状が進行したのであろう』

 

ヴラドの言う通り、茅野の攻撃を止めるために蒼魔凍を使ったのが原因なのは明白、表情には出さないけど本当はかなり厳しい状況だ。何せこの冬休みの間凛香と1度もデートして無いからね…誘えるような状況じゃなかったし、気を抜いたら倒れそうっていうのが大きいかな。

 

『時に主よ、ライルの話を聞きたくはないか?』

「あぁ…俺と同じ状況になった初代王様だっけ?うん、聞きたいね。どんな人だったの?」

『この世には表には出ることがないが魔なるもの、異端が存在する。例を挙げるとするならば『魔女』近代でも魔女狩りが行われているであろう?奴はそ奴らを狩る者、『魔女狩り』だった』

 

魔女狩り…西洋で行われた虐殺と同じだ…魔法の力を持つと恐れられた女性が殺された事件…

 

『余ら血属器はもともと異端を狩る者たちに宿る霊が武器に宿りし物。余はライルに宿る霊だった。奴は賢い男で強さも魔女狩り1だった。だが…奴には他人の気持ちという物がわからなかった。心が冷たかったのだ。冷血という言葉が良く似合い、その冷たさ故の強さであった。他人を殺す事を厭わない、何の躊躇もなく仲間を見捨てる。そんな男に宿ったチカラ』

「それが蒼魔凍…」

『如何にも。奴はあらゆる物を捨てて強さを求めた。魔女を狩り、立ち塞がる者を排除し、遂には一つの国を手に入れた。しかし奴にも転機が訪れる。女との出会いだ』

 

…女との出会いで変わるとか自分の事を言われてるようで何か心にくるなぁ…凛香のおかげで俺は心を開けたわけだしね。

 

『女は魔女であった。しかしライルは奴を殺す事はできなかった。何故ならば女は抵抗ひとつしなかったのだ。

余の杭を体に受けて尚、ライルの心を溶かそうと試みた。魔女の狙いは何だったのかはわからん、しかしライルはその女の想いに触れ変わったのだ。しかしどう思う?魔女狩りの男が魔女と愛し合う?仲間が許す筈がない。ライルは自分に襲い掛かる同胞たちをひたすらに倒し続けた。一国を治める者としてであり、女とその間に生まれた子を守るためにだ。蒼魔凍を持つライルは敗北する事は無かったが…蒼魔凍の過剰使用で倒れた。凍り付いた世界の中では女の声も届かず、絶対零度の回廊を歩き続け…死に至った』

 

絶対零度の回廊…蒼魔凍で凍り付いた世界では愛する人の声さえも届かない…どうすれば…

 

『ライルの魂が消える瞬間、余に奴が言った言葉が…蒼魔凍の次の扉を開いた…だ。絶対零度の回廊の最奥部にある何かを奴は開いたのだろう。主よ、汝は奴の血を色濃く受け継いでいる』

「わかるよ…凛香に心を溶かされて…俺は変わる事ができた。だけどこの前蒼魔凍を使ってわかった。絶対零度の回廊、あれは並大抵の精神力じゃ歩けないよ」

 

まるで身体の全ての血液が逆流するような感覚だったしね…ヴラドの話から察するに俺は恐らく近い内に命を落とす事になる。凛香に伝えるか否か…それとも助かる方法を探すか…蒼魔凍を使わなければあの世界に入り込む事はまず無い。吐き気や頭痛と戦い続けながら生きる事はできる…だけど恐らくそれは叶わない、ルウシェがマザー・グースに向けた殺意。本当にマザーが母さんを殺したんだとすれば俺は戦わなきゃいけない。つまり…死は必然…あぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ずっと一緒って約束…果たせそうにないや…凛香…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が思い悩んでいる頃、ルウシェは兄の恋人である速水の元を訪れていた。

 

「お姉様…今、大丈夫ですか?」

「…ごめん千葉。少し抜ける」

「あぁ、気にするな」

 

速水は千葉と共に狙撃訓練を行っていた。この冬休みに計画されていた暗殺は全て中止、和生とも会えず時間を持て余していた彼女は腕を磨くことしかすることが無かったのである。

 

「他の男性と2人限りなんてお兄様が嫉妬してしまいますよ?」

「そう…かな?今の和生…私の事見えてないもの…」

「…やはり気付いているみたいですね。私もここ数日のお兄様の様子は可笑しいと思っています。大好きな甘いものを食べても顔は晴れず、お姉様の話をしても表情は暗いまま。夜遅くに家を抜け出しては早朝に帰宅する。不自然だと思いませんか?」

 

…私だってわかってるよ…和生が可笑しい事ぐらい…期末テストの日から『好き』って言葉を1度も聞いてない…血を吐く和生の姿を見ても何もできない私…1番近くで支えるって決めたのに…!好き…大好き…なのに!どうして私に何も言ってくれないの…?ねぇ…どうして…?

 

「うん…私もわかってる。和生が可笑しいことくらい…」

「ですからお姉様にお願いがあるのです」

「…何?」

「暫くの間、私をお姉様の家に泊めて下さい」

「…えっ?」

 

 

 

 

 

 




今回も超展開、初代王様と和生くんの類似点。
読み直すと沢山出てくるかもですよ!

それと余談ですが、この前のアニメ暗殺教室の『ラスボスの時間』。柳沢がやられる時の描写が端折られすぎていて私は爆笑してしまいました(笑)
原作で言っていた雑魚キャラみたいなやられ方でしたねw

それでは感想や高評価お待ちしています!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

姉妹の時間

皆さんこんにちはトランサミンです。
今回はタイトル通りこの作品が誇る最カワ姉妹のお話となりますね。

主人公とはいったい…って感じの話になってます(笑)


 

「な、なんでルウシェを泊めるの?」

「そんなの決まってます。お兄様をどうにかするためですよ」

 

千葉と射撃訓練をしていた私のもとにやって来たルウシェが私に頼んで来たのは、暫くの間泊めて欲しいとの事だった。確かに最近の和生が可笑しいのは明白、その対策を練るというのもわかる…だけどそれが泊まることも関係してるの?

 

「別に泊まらなくても対策は練られると思うけど…」

「何言ってるんですか?泊まるのはお姉様とお話がしたいからですよ?ここ最近のお姉様は笑顔ではありませんでしたから、私が笑顔にして見せますので♪」

「ルウシェ…」

 

和生と同じ陽だまりのような笑顔、自然と心が温まるような…そんな笑顔。ルウシェのそんな表情を見てしまった私は…無意識の内に肯いていた。

 

「じゃあ、決まりです♪千葉さんには悪いですが今日は帰りましょうか?」

「…うん」

 

知らなかったこんなに私が弱くなっていたなんて…ルウシェに手を引かれて練習場から家に帰る。自分の家に帰るはずなのに…ルウシェに手を引かれているなんて…不思議だね。歩いている間、ルウシェは何も言わずに唯々微笑んでいて…敢えて私の心に踏み込んで来ないようだった…

 

「…ただいま」

「お邪魔します!」

「今日は親は2人とも居ないから、気にしなくていいよ」

「そうなのですか?それでは早速ですが!お風呂に入りたいです!お姉様と一緒に!!」

「な、なんで?」

「日本では裸の付き合いなる物があると聞きました!」

 

…ルウシェって日本の文化について偏った知識を持ってるのよね。和生もちゃんと教えてあげればいいのに…でも、汗もかいてるしルウシェが目を輝かせてるし、仕方ないか。

 

「はぁ…いいよ。じゃあお湯張りに行こっか?」

「はいっ!」

 

私達は軽くお風呂掃除をしてお湯を張り、少し早い入浴をする事にした。幸いルウシェも私も体型が似ているから着替えには困らないしね。服を脱いでタオルを巻いて浴室に入るとルウシェがまた目を輝かせて言ってきた。

 

「お背中流させて下さいっ♪」

「嫌って言ってもするんでしょ?」

「もちろんです!」

 

ルウシェは元気良く返事をするとスポンジにボディソープを付けて泡立てて私の肌を洗い出した。丁度良い力加減で凄く気持ちが良い、桜井兄妹は何でも卒無くこなすなんて磯貝が言ってたけどまさにその通りね。私が関心していると洗い終わったのかルウシェの手が止まった。

シャワーで泡を流した後、今度は私がルウシェの背中を流す。洗おうとルウシェのタオルを取ると、ルウシェの身体に傷が無数にある事に気が付いた。

 

「…これは?」

「あ、傷の事ですか?それは紅桜を用いての修練で付いた物です。血属器の治癒能力でも治せない傷が稀に出来てしまうので。まぁ…私の紅桜の治癒能力が元々低いというのもありますけどね」

「女の子なんだから体は大切にしないとダメだよ?」

「…ですがお母様の仇は如何しても討ち取りたかったのです。目の前で…私の家族を奪ったあの女に…」

 

そう話すルウシェの表情はまるで夏の旅行の時の和生のようで…寂しそうで…苦しそうで…今にも泣き出してしまいそうだった。私は無性に抱き締めたくなり、彼女をそっとだきよせた。

 

「…お姉様?」

「よく頑張ったね、目の前でお母さんを殺されるなんて私じゃ耐えられない。ルウシェは偉いよ」

「ふふっ、私がお姉様を元気付けるために来たのに…お兄様がお姉様を愛している理由が何となくわかった気がします。お姉様に抱きしめられると…心がぽかぽかするです♪」

「そうなのかな?」

「はい!あ、そろそろ体が冷えてしまうので湯船に入りましょうか?」

「うん、そうだね」

 

私達は急いで髪を洗い、湯船に入った。私の足の間にルウシェが入って私が後ろから抱きしめる形になっている。ルウシェ曰く、いつもは和生に私を独占されているから今日は甘え放題で嬉しいんだそう。ふふっ、ホント可愛いんだから。

 

「そう言えばお姉様?お兄様とはどこまで行かれたんですか?」

「えっ?」

「渚さんと茅野さんのように熱いキスなどもされたことがあるのでしょうか?」

「し、した事無いわよ!」

 

した事あるわけないじゃない!そ、そりゃ…和生にキスマーク付けちゃったり…その…喧嘩の仲直りにたくさんキスしちゃったりした事はあるけど…深い方はしたこと無いから!

 

「意外ですね、お兄様の事ですから手が早いと思っていたのですが…」

「和生は私の事を大切にしてくれてるの!だからそんな事して無いわよ!」

「ふふっ、やっといつものお姉様らしくなりました♪そうだ!お兄様のどこが好きなのか教えて下さいっ!」

「えっ!?す、好きな所か…」

 

和生の好きな所…改めて考えてみると難しいかも…和生は優しいし…カッコイイし…でも…可愛いところもあって…気付けばいつも傍で私を支えてくれる。蒼魔凍を使っている時は少し怖い時もあるけど…いつもちゃんと帰ってきてくれる。私を撫でてくれるマメの出来た手も…射抜くような赤い瞳も…宝石みたいに綺麗なブロンドの髪も…私は大好き。

 

「ふふっ…全部かな。私には和生が居ないとダメみたい」

「…そうですか。では…お兄様を引き止める最後の砦であるお姉様に大事な話をします。先に私は上がっていますので…お姉様はゆっくり休んでください」

 

そう言うとルウシェは浴室から出ていってしまった。

大事な話…和生を引き止めるってどういう事なんだろ…私もルウシェを追いかけて湯船から立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お風呂を出た私達は夜ご飯を簡単に作って食べ、冬休みの宿題を少しやってベッドの中へ。ルウシェはいつも早めに寝ているらしく、すぐ眠くなってしまうらしい。

だけど今日は大事な話があると言っていた。だから一つのベッドに2人で寝ながら見つめ合っている。

 

「少しだけ…エルレンシア家に伝わる昔話をさせて下さい。代々エルレンシア家を継ぐ物には蒼魔凍が受け継がれます。ですがその蒼魔凍にはリスクもあるのです。例えば意識が遠のいたり、頭痛や吐き気に悩まされたりと言った物ですね。私達の祖先である初代エルレンシアは蒼魔凍の過度な仕様によって生命を落としました。今のお兄様…その状況に酷似しているんです」

「っ!?」

「わかりますか?言っている意味が」

「和生が…死ぬ?」

「まだ決まった訳ではありません。ですが、お兄様の蒼魔凍の会得速度は異常ですから…昔話の続きですが…王を呼び覚ますのは『愛する者の声』。代々伝えられる言葉です。つまりお兄様を助ける事が出来るとするならば…お姉様の他考えられません」

 

和生が死ぬ…嫌…そんなの嫌!で、でも…私なんかが和生の事を止める事なんて…出来るはずないよ。だって…私はいつも守られてばかりで…

 

「お姉様はお兄様が好きですか?」

「それは…うん…」

「ならその想いをお兄様に伝えればいいのです!好きなら好きと抱きしめればいいのです!お兄様にとって…お姉様は何よりも掛け替え内人になっているんですから」

「ごめん!私ちょっと出掛ける!」

「…そうですか。ではお姉様、お休みなさい」

「うん!ごめんね!」

 

私はパジャマの上にジャージを羽織って外に出た。向かうのはもちろん大好きな彼の場所。ルウシェが教えてくれた事、好きなら好きと伝えなきゃいけない。もしも私の声が和生を死なせないための鍵になるんだとしたら…私は…私は…!

 

静かに寝静まった椚ヶ丘の街に…一人の少女が駆け出した。




敢えて今回は後書きでは次回の内容については触れません。
感想、高評価、お待ちしていますね。

余談ですが、うっちーこと内田彩さんの日本武道館ライブに参戦する事になりました。他に行く方がいたら、会えるかも知れませんね♪


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

呼び声の時間

前回予告した通り更新させてもらいました。

今回も駄文ではありますが、どうぞ!


 

 

ここは何処だろうか、真っ白な空間が永遠と続いているように見える。

 

俺は何をしていたんだろうか?そして何故こんな場所に居るのだろうか?

今日は蒼魔凍の事を考えず、家で体を休めていたはずなんだけど…

 

もしかして夢?でもそれにしては生々しい夢だ。肌に感じる風は凍てつくようで、背筋をゾッとさせるような殺気が漂っている。

 

だけど…何故か嫌悪感はそれほど感じなかった。

何処か懐かしいような、それでいて初めて感じるような感覚。俺の体は自然と前へと進み始めていた。

 

一歩一歩先に進む足、自分の足音以外は何も聞こえない。延々と同じ景色が続いているためにどれほど進んだのかもわからなくなっていた。

 

そんな時だ。

 

「グォォォォォォォォォォォォォォ!!」

「…なんだこいつは!?」

 

突如俺の周囲を取り囲んだ数十体の獣。

体型は狼に近いが突出した牙がまるで氷柱のように見える。その形状を具体的に言うならば…

 

「…レヴィアタン」

「ガウッ!!」

 

俺の呟きに呼応する様に襲いかかってくる獣達。

全方向から時間差で迫り来る凶暴な牙、尋常ではない速度と数の為、普通に戦ったら負けてしまう。

 

そう、使うしかないのだ

 

「…蒼魔凍!!」

 

発動と同時に獣達の動きが鈍る、普段なら止まって見えるけど今回は相手のスピードが異常なためにあくまで遅くなる程度にしかならない。

 

完全に防戦一方、鋭い牙を避けることしか出来ない。

せめて武器があればと感じると、光の粒子が集まって俺の左手に一本の刺剣が携えられた。

純白の刺剣、ヴラドとの契約時に俺が用いた剣。何故この武器なのか、そんな事を考える暇もなく俺はその刃を突き立てた。

 

「くらえっ!!」

「ギャァァァァァァァァ!?」

「遅いっ!その牙は俺の物だ!」

 

不思議な事は、蒼魔凍を使っても頭痛が全くしないことだった。だが現状それは俺に有利な事、俺は襲いかかる獣達をひたすら撃退し続けた。1体倒す度に俺が握る刺剣に粒子が集まっていく。全ての獣を倒し終わった時、俺が握っていた空の器はヒンヤリとした冷たい冷気を纏っていた。

 

「はぁ…はぁ…さっきのは何だったんだ…」

 

蒼魔凍を解除すると手にしていた空の器が消失した。

そして何も無かった空間に罅が入って氷の扉が現れる。

 

「…なんだこれがヴラドが言ってた『絶対零度の回廊』ってやつか…いいよ。征こう、歩き抜いてみせようか」

 

俺が足を踏み出すとゆっくりと開いていく扉。

そこをくぐり抜けた先に何があるのかはわからない。

だけど歩き続けなければいけないと思った。だから進もう。初代エルレンシア王が開いた最後の扉を開きに行くために。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「…誰もいないのかな?」

 

ルウシェを1人家に残して和生の家にやって来た私だけど、インターホンを押しても誰も応答しない。

 

今の時間なら和生はまだ寝ていないはずなんだけど…律も最近は莉桜の携帯に遊びに行っちゃってるから反応無しなのも仕方ないのかな?

 

じゃあ仕方ないから…あ、合鍵使おうかな…か、勘違いしないでよね?ちゃんと和生から渡されてるんだから!って…誰に言い訳してるんだろ私…

 

「…お邪魔します。あれ?」

 

電気がついてる。リビングの明かりもついたまま、それなのに家の中は物音一つしない。

私は靴を脱いで明かりのついたままのリビングの扉を開いた。

 

「なんだ…いるんじゃない」

「…」

「…和生?」

 

和生は家にいた、ソファに座って眠ってるのかな?私が声をかけても反応が無いし…べ、別にいつもは私の声にはすぐ反応するわけじゃないわよ?それでも名前を呼んで反応しないなんて事は無かったもの。

 

私は歩いて和生のそばに向かった。ソファの隣に腰掛けて和生の方を見る。目を閉じてピクリとも動かない和生。そんなになるまで毎日修行してるのかな?

 

「…もう。私が来てるんだから起きてくれてもいいじゃない…」

 

私は少しいじける振りをして眠っている和生の頬をつついた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つもりだった。

 

 

 

 

 

 

「…えっ?つめ…たい?」

 

私が触れた和生の頬はまるで氷のようで…冷た過ぎていた。体温がほとんど感じられず、尚且つ意識も無い状態。まさか…という考えが私の脳裏に浮かんでしまう。

 

「嘘…だよね?ねぇ!起きてよ!和生!」

 

夜だというのも気にせず大きな声で彼の名前を呼ぶ。

それでも彼は全く反応しない。

 

ルウシェが言ってた蒼魔凍の副作用…?代償が和生の命…?そんなのはどうでもいいの!!

 

「やだ…やだよ!起きて!起きてよ!」

 

私は彼に抱き着くことしか出来ない、手を握りしめて名前を呼ぶことしか出来ない。不甲斐ない自分が嫌になって涙が出てくる。

 

まだ伝えたい事が沢山あるのに、2人で行きたい場所も沢山あるのに、こんな所でお別れなんて…そんな…

 

こんなに大好きなのに、愛しているのに、私の声は届かないの…?王を呼び覚ますのは愛する者の声じゃなかったの…?

 

「…っ」

「うぅっ…やだ…よぉ…」

「…あれ?り、凛香?」

「…おき…たの?」

「う、うん。さっきまでの夢の中にいたけど…」

「もうばかぁ…心配させないでよ…」

「な、何を?落ち着いてからでいいから話して?」

「うん…」

 

私は和生に何が起きていたのかを話した。

死んでしまったかのように肌が冷たかったこと。

いくら呼んでも反応しなかったこと。

ルウシェから全て教えてもらったことを。

 

「…そっか。ルウシェはちゃんと気付いてたんだね…俺が蒼魔凍の使用で体に異変が起きてること」

「うん。あとさ…本当にその…死んじゃうの…?」

「まぁ、そうならない様に助かる方法を探すなり、蒼魔凍を使わないように心がけるなり、方法はまだ沢山あるから大丈夫だよ」

 

私を安心させるように頭を優しくなでながら笑っている和生。だけどその笑顔は何処か寂しそうで…遠くに行ってしまいそうに感じるほど儚かった。

 

「でもほら?王を呼び覚ますのは愛する者の声って話もルウシェから訊いてたんでしょ?なら大丈夫、凛香がいれば俺は戻ってこられるさ」

「…本気でそう思ってる?」

「うん、凛香のいる場所が俺の帰る場所なんだから」

 

いつもならすぐに信じられる彼の言葉も…さっきまでの状態を見た後では信じられない。

 

私の心境を悟ったのか、和生は不意に立ち上がると私の事を軽々と抱き上げた。その…所謂お姫様抱っこってやつかな…///

 

「もう良い子は寝る時間かな?ベッドまで運んであげるからゆっくり休んで?」

 

私はそう笑う彼に頷くことしか出来なかった。

だってほら!恥ずかしいじゃない…顔も凄く近いわけだし…少し顔を動かせばその…キスできそうなくらい…

 

「ん?物欲しそうな顔してどうしたの?」

「べ、別にキスして欲しかったわけじゃないから!」

「あはは、凛香は可愛いなぁ…大丈夫。後で…ね?」

「…っ///」

 

階段を上がりながら耳元でそんなことを囁かれ、顔に熱が集まっていくのがわかる。

 

和生は自室の扉を器用に肘で開けると私の事をベッドに下ろす。そして羽織っていた上着をハンガーに掛けると自分もベッドに上がってきた。

 

「最近は随分寂しい思いさせてたみたいだから、今日は何でもしてあげるよ?」

「…何でもって言った?」

「うん、俺に出来ることなら何でも」

 

何でも…でもそれは私には1番難しいお題だと思う。

だって和生がしてくれる事なら私は何でも嬉しくて、幸せな気持ちが胸いっぱいに広がるんだから。

 

「じゃあ…ぎゅってして?」

「姫の仰せのままに…なんてね?」

 

少しおどけてみせながら彼は私の肩をそっと抱き寄せた。さっきよりは温かくなっているけれど、冷たい体が私にぴったりくっ付いた。

 

「冷たいね…私が温めてあげないと」

「あはは、そんなに冷えてるかな?でも…ありがとね」

「うん…あとは…わかるでしょ?」

「うん、何度でも。凛香が求めてくれるなら」

 

そう言って和生は私の顎をクイっと上にあげて…そっと唇を合わせてくれた。

 

久しぶりに感じる彼の愛情表現。

体が冷たい分余計に感じる唇の熱さ。

嬉しさと…愛しさと…安心する気持ちが溢れてくる。

 

あぁ…どうしてこんなに好きなんだろう…さっきまでの不安は簡単に消え去ってしまった。私の1番の特効薬は和生なんだろうな…

 

「足りない…」

「奇偶だね、俺もそう思ってたんだ」

 

何度も何度も、啄むように互いを求めあった。

互いの存在を確認するかのように、自分に繋ぎとめておくかのように…

 

私はそんな気持ちのままに、大好きな彼の腕の中で意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…凛香は寝ちゃったか。おやすみ、今日はありがとうね」

 

俺は眠ってしまった凛香の髪を優しく撫でながらおでこにそっと起こさないように口づけた。

 

凛香の話によれば俺は死んだように眠っていたらしい。それも体温は極限まで下がっていたという。

 

でも実際は眠っていたわけじゃない。絶対零度の回廊をひたすら歩いていたんだ。狼を倒した後に現れたのは巨大な蛇、その次は鎧騎士だった。三つ目の扉をくぐり抜けた時、俺はこちら側の世界に戻ってきたことになる。

 

「…バレちゃったんだし、ちゃんと生き抜かなきゃね」

 

窓の外に目を向ければ三日月が優しく街を照らしている。

俺はこの街で凛香と共に生きていけるのだろうか…いや、生き抜いて行かなければならない。

 

「未来も大切だけど、今はこの可愛い寝顔を守れればそれでいいかな」

 

腕の中にいる可愛い恋人、凛香が安心して暮らせる世界を作ること、俺みたいに悲しい運命をたどる人がいなくなること、そして俺みたいに寂しい人間がいなくなることが俺の夢なのかもしれない…こんな事を殺せんせーに言ったらどうなるかな?明後日には三学期が始まる。進路相談もしっかりしなきゃな…

 

凛香の旦那さんってなら簡単に答えられるんだけど、人生そうも上手く行かないからさ。

 

「…和生っ」

「寝言でまで呼んでもらえるなんて嬉しい限りだよ。おやすみ」

 

俺は最後にもう1度凛香にキスをして眠りについた。

 

だけど俺はこの時まだ知らなかったんだ。

 

やっぱり俺達は兄妹で、血は繋がってるんだってね。




感想などお待ちしています。

そして高評価を下さった。

邪眼椿さん☆8
はるぴーさん☆8

ありがとうございます。今後もご期待に添えるよう頑張っていこうと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

終冬の時間

久しぶり過ぎて忘れられているかも知れませんが!失踪はしてませんよ!


「んー!良く寝ました!お姉様はお兄様を上手く引き戻す事が出来たでしょうか…それよりも今日は冬休み最終日ですからね!楽しまなきゃ損です!」

 

お姉様のお家の鍵は借りてあるので、外出しても大丈夫ですよね?お洋服もお姉様のをお借りしちゃいましょう♪

 

「日本に来てからどうしても行ってみたい場所があったんですよね♪いつもはカノープスと一緒ですけど、今日は一人旅ですね!」

 

椚ヶ丘の街はとても人が多いですね!英国の大通りも凄いですけど、街並みは全然違いますし…電車も手軽に乗ることができますしね。

 

さてさて!今日私が向かっている場所はですね!大好きなアレを探しているんです!大好きと言ってもお兄様の事ではありませんよ?それはずばり!刀です!

 

「ほわぁ〜♪この滑らかな刀身…艶のある光沢…なんて素晴らしいんでしょうか!是非とも斬れ味を試してみたいものです!この脇差…買いですね!」

 

はうぅ…なんて素晴らしい触り心地なんでしょうか…この鞘なら…護身用としても申し分ないです!銃刀法違反じゃないか?ふっふっふ!抜かりはありませんよ!お父様に教えて頂いたお店なので大丈夫らしいです!裏ルート?って呼ばれるらしいんですけど、この真っ黒なカードを使えば基本的になんでも買えちゃうのでよく分からないですね♪

 

「らんらんら〜ん♪今日は気分が良いです♪」

「ねぇねぇお嬢さん?俺達と遊んでかない?」

「はい?」

 

なんでしょうかこの方達は?お買い物を終えて街を歩いていたら男の人に声をかけられました。3人ほどです。

 

制服を着ているので学生さんだと思うのですが…何か私に用があるのでしょうか?

 

「なにか御用ですか?」

「うんうん!俺達とさカラオケとか行かない?奢ってあげるからさ!」

「いえ、お金には困っていませんので」

「イイじゃんイイじゃん!お兄さん達とイイことしようぜ?」

 

イイこととはなんなのでしょうか?お断りしても執拗いですし、どうしましょうかね?流石にこの通りで大声を上げるのは周囲の方に迷惑ですし…紅桜が無いので蒼魔凍で逃げる事も難しいですね…全力で走ろうにも囲まれてしまっていますのでなんとも…はっ!?いっそこの脇差で!なんてのは冗談です♪

 

「はぁ…?私はまだ中学生ですからそういうのはちょっと…後、お兄様が待っていますので」

「あはは!お兄様だってよ!」

「なら俺達がなってあげようか?」

「くっ…」

 

子ども扱いやしつこいだけならまだしも…お兄様の事を愚弄するとは…もはや語る事はありません。刀背打ちで黙らせてしまいましょう。

 

私は買い物袋からさっき買ったばかりの脇差を取り出そうと手を伸ばしました。ですが次の瞬間です

 

「「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」

「へっ?」

「こっちだ」

 

先程まで五月蝿かった方々が更に五月蝿くなりました。

目元をおさえているのでどうしたのかと思っていれば、誰かに手を引かれました。

 

路地裏や細い通りを駆け抜けて行き、見慣れない場所に連れていかれてる様です。

 

「あ、あの?」

「あぁ、急に走り出して悪かったな」

「千葉さん?」

「変な奴らに絡まれてたからな。これで撃退したってわけだ」

「これ?」

「催涙弾。奥田が試作したものを貰っててな」

「なるほど!」

 

変な声を上げて目をおさえていたのは催涙弾を受けていたからなのですね!納得です!

 

それにしても…

 

「あんな場所にいるなんて珍しいですね?」

「俺もちょっと買い物をしててな」

「モデルガンですか?」

「と言うよりは電動銃だな。少し値は張るけど、練習用にはもってこいだ。さっきの奴らもいい的だった」

「おぉー!頼もしいですね!これなら殺せんせーの事を暗殺するのも夢じゃないかもです!」

「暗殺か…」

「あっ…ごめんさない…」

 

そうでした…殺せんせーの過去を聞いて皆さんは複雑な心情なんですよね…無神経な発言をしてしまいました…

 

「あ、あの!私は…殺せんせーとの関わりが短いので…皆さんのように悩むことができなくて…その…無神経でしたよね…?」

「ふっ、気にするな。俺達が悩むのは当たり前なんだよ。殺せんせーがいなかったら、俺達はただの落ちこぼれだったんだよ。だから殺せんせーには感謝してるし、勿論暗殺したいって気持ちもある。だけどあの話を聞いたら、俺達の殺意も揺らぐよ」

「殺せんせーはそんなに偉大な方なのですか?」

「そりゃあ勿論さ。まぁ、ケチだしエロいし抜けてるとこあるし、ん?意外とそうでも無かったりするのか?」

「ふふっ、そう考えるとちっぽけな存在にも思えてしまいますね。本当にそんな人が世界を滅ぼす超生物なんて信じられません」

「俺からしたら同じクラスに王族が2人いるのも考えられないけどな」

 

そういうものなのでしょうか?私はあくまでも留学生という事になっていますし…王族だからといっても普通の人と何も変わりませんけど…

 

「それより、この手はいつまで繋いでいるんですか?」

「わ、悪い!忘れてた」

「別に気にしなくて結構ですよ?千葉さんは悪い人ではありませんから」

「そういう事じゃないだろ…」

「そうなんですか?学校に行く以外では家でずっとお稽古をしていましたので…あまり世間一般の常識を知らないのです…」

「そうなのか?」

「はい。私はお母様の仇を取るために毎日鍛錬に励んでいました。私は…目の前でお母様の命を奪われましたので…目の前に忌まわしいあの女がいると思いながら…ひたすら紅桜を振っていました。千葉さんも気付いたでしょう?私の手は女の子の物とは思えないですよね…掌はマメが潰れて硬くなってしまって…」

 

お兄様やE組の皆さんは私の事を可愛いと仰って下さいますが…そんな事は全くありません…体は傷だらけでとても他人には見せられないですから、恐らく結婚は愚か恋人もできないでしょう。

お父様には申し訳ないですがお兄様が継いでくださらなければエルレンシア王家は英国王室から血族を途絶えさせる事になってしまいますね…

 

「そうか?あんまり気にならないけどな?」

「へっ?」

 

千葉さんはそう言いながら離したはずの私の手をもう一度握り直しました。

 

「俺の手の方がゴツゴツしてて硬いだろ?それに目の前で母親の命を奪われて正気でいられるやつの方がおかしいだろ?それに普通の教室の常識と、俺達E組の暗殺教室の常識は違う。ルウシェはルウシェの常識を貫けば良いんじゃないか?もし世間一般の常識って奴が知りたいならいくらでも教えてやる。俺にでもクラスの奴にでも訊けば良いさ」

「…良いのでしょうか?」

「誰も嫌なんて言わないさ。ただ、お前の兄には訊かない方が良いぞ。アイツは少しズレてるからな」

「ふふっ、確かにお兄様はお姉様の事になると人が変わってしまいますからね♪」

「あぁ。そうやって笑ってるお前は女の子以外の何者でもないさ」

「えへへ…」

「っと、悪い悪い…手、離すぞ」

「えと…離さなくて…良いですよ?」

「は?」

「えへへ、訊いていいと言ったのは千葉さんですから!今日はこのまま常識を教えて下さい♪」

「おいおい、それにしたって手は別に…」

「嫌ですか…?」

「お前ら兄妹って…本当にずるい見た目してるよな。で?何を教えて欲しいんだ?」

「そうですねぇ…まずはゲームセンターという場所に行ってみたいです!」

「了解」

 

ふふっ、お兄様のお友達の方々は本当に優しいですね。

なんだか少し救われた気がします。

 

「手、離すなよ?」

「あっ…はい!」

 

なんでしょう…今少し…紅桜を握っている時と同じような安心感がありました。お兄様と同じ教室にいたらこの安心感の正体もわかるのでしょうか?楽しみですね♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?メール…中村さんから?」

『お宅の妹ちゃんがE組のスナイパーとお手手繋いで歩いてたよ?お兄様はどう思うのかなぁ〜?』

「えぇっ!?」

「和生?どうかしたの?」

「ううん!なんでもない!」

 

スナイパー…俺は携帯の画面と現在、家のキッチンに立っているエプロン姿の可愛い恋人を見比べる。

 

「狙撃手…烏間先生に聞いた話だと母さんも狙撃の名手だったらしいけど…」

 

もしかしてエルレンシア家の血筋って…スナイパーに惚れる運命にある…?

 

いやいや!まだルウシェがそうと決まったわけじゃない!俺が焦るにはまだ早いよね!?そうだよね!?

 

「もう…本当にどうしたの?百面相してたけど」

「その…凛香を好きになったのは多分運命なんだろうなぁって考えてたんだけど」

「なっ…そういう事言う人にはご飯作ってあげないわよ!?」

「そ、それは困るんだけど…」

「今度ばかりは許さないから!」

「…俺の意識が携帯に行ってたから嫉妬しちゃってたんだよね?」

「あーもう!知らない!」

 

あはは、顔を真っ赤にしちゃって可愛いなぁホントに♪

こうしてると明日から学校なんてちょっと忘れちゃうかも。

 

「凛香」

「なにかよ…んっ…」

「んっ…そんなに寂しかったならその分の埋め合わせしてあげなきゃね?」

「料理中なんだけど…」

「桜井家のキッチンはIHだから火の元の危険はないし、気にしない気にしない」

「昨日はあんなに冷たかったのに、今日は情熱的なのね?」

「反動だと思ってれていいよ?でも…これからもっと熱くしてあげるけどね」

「…ばか」

 

林檎みたいに真っ赤になったお姫様を抱えてソファへ。

ルウシェも幸せになってくれると嬉しいな…俺もルウシェもきっと…愛に飢えているから。これからのルウシェの人生に愛と幸せがある事を願ってるよ…

 

だから俺は、今の内にこの幸せと愛を噛みしめて…全身前例で目の前の彼女に愛を捧げよう。

 

明日からはきっと目まぐるしい日々が始まって、こうやってゆっくりできるような時間も無くなってしまうかも知れない。ましてや俺が明日にはこの世にいないかも知れないしね…

 

「また変な顔して…こっち見てよ」

「…うん」

「心配しなくても私がちゃんと引き戻してあげるから、それが王が愛する者の役目でしょ?」

「あはは!その通りだね。頼もしいや」

 

暗殺期限まであと2ヶ月。殺せんせーの過去を聞いて皆がどんな結論を出してくるのかわからない。だけど、それをしっかりと見極めて悔いのない選択をしよう。

 

俺達の暗殺教室は生徒と先生全員で成り立ってるんだから




感想などお待ちしています。

実は25日にケチャップさんとinvisibleさんとハーメルンの暗殺教室作家オフ会なるものを行ってきました!
カラオケで『バイバイyesterday』を歌ったり、お互いの作品について語り合ったり素晴らしい時間でした。
この場を借りて再度お礼を言わせていただきます。
お2人ともありがとうございました!

そして、オフ会にて何か企画をしようという話になり、3人で前中後三編構成のコラボをする事が決定致しましたのでここで報告させていただきます。

今後ともこの作品をよろしくお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

分立の時間

書き方を少しずつ工夫していこうかと思います。


 

 

 

 

「殺せんせーの命を……助ける方法を探したいんだ」

 

冬休み明け最初の放課後、渚がクラス全員を集めて放った言葉はクラスを震撼させた。

 

殺せんせーを救う方法を探す、これまでは暗殺する対象だった人物を救いたいと言っているのだから。

 

「助ける……ってつまり3月までに爆発しないで済む方法を探すってことか?」

「アテはあるの?」

「もちろん今は無い。無いけど……あの話を聞いちゃったら……もう今までと同じ暗殺対象とは見られない。皆もそうなんじゃないかな? 3月に地球を爆破してしまうのだって先生の意志じゃない。もともとは僕等と同じ、失敗して……悔いて……生まれ変わって僕等の前に来た。僕等が同じ失敗をしないように色々な事を教えてくれた。何より一緒にいて楽しかったから! 助けたいと思うのが自然だと思う」

「私は賛成!殺せんせーとまだまだ沢山生き物探したいんだ!」

「渚が言わなかったら私が言おうと思ってたんだ。恩返ししたいもんね」

 

渚の言葉に倉橋や片岡を始めとしたクラスメイト達が賛同していく。渚も自分と同じ気持ちの仲間がいた事に安堵していた。しかし、それを否とする者もいた。

 

「こんな空気の中で言い難いけど、私は反対」

「えっ?」

「暗殺者と標的が私達の絆。そう言ったのは先生だよ。だからこそ……殺さなくちゃいけないと思う」

「……中……村さん」

 

殺せんせーの命を助ける事に反対派の人物達。

中村を始め、寺坂組もそちらの意見のようだ。渚の前に立ち塞がり、話し始める。

 

「具体的にはどーすんだ? あのタコを一から作れるレベルの知識があるならともかくよ? 奥田や竹林の科学知識でさえせいぜい大学生レベルだ」

「で、でも!」

「渚よ。テメーの言ってること、俺らも考えなかった訳じゃねぇ」

「けどな?もし見つからずに時間切れなんてしたらどーなるよ?暗殺の力を一番つけた今の時期にそれを使わずにタイムリミットを迎えることになるんだぜ?」

「そんな中途半端な結果で、中途半端な生徒で、あのタコが喜ぶと思うか?」

 

寺坂達の言っている事には筋が通っている。渚の提案は殺せんせー暗殺のために腕を磨いてきたこの一年を棒に振ると言っているのと同じ事なのだ。クラスの雰囲気が再び沈む時、ずっと黙っていたカルマが口を開いた。

 

「才能のある奴ってさ、何でも自分の思い通りになるって勘違いするよね。ねぇ渚君? ずいぶん調子に乗ってない?」

「……えっ?」

「このクラスで一番暗殺のスキルがあるのは渚君だよ? その自分が暗殺やめようとか言い出すの? 才能が無いなりに頑張って来た奴らの事も考えず。それって例えるならモテる女がブス達に向かって『たかが男探しに必死になるのやめようよ〜♡』……とか言ってるカンジ?」

「そ、そんなつもりじゃ! 第一、暗殺スキルなら僕なんかよりもカルマ君の方がずっと……」

「そういう事言うからなおさらイラつくんだよ。実は自分が一番……力が弱い人間の感情を理解してないんじゃないの?」

「違うよ!! そーいうんじゃなくてもっと正直な気持ち!! カルマ君は殺せんせーの事嫌いなの?」

「嫌いなわけないじゃん!そのタコが頑張って……渚君みたいなヘタレ出さないために楽しい教室にして来たんだろ!! 殺意が鈍ったらこの教室は成り立たないんだからさぁ!! その努力もわかんねーのかよ!! 体だけじゃなく頭まで小動物か!?」

「……っ」

「え、なにその目?小動物のメスの分際で人間様に逆らうの?」

 

カルマの挑発的な態度に普段温厚な渚の表情が険しくなり、カルマを睨みつけるような鋭い眼光になっている。

 

「僕は……ただ……」

「文句があるなら一度でもケンカに勝ってから言えば?ほら、受けやるから来いって。ほら、ほら、ほら!」

 

カルマは反抗的な態度を見せる渚を何度も突き飛ばす。

体の小さい渚を上から見下しながら、どちらが上なのかを示すように。しかし、カルマが渚のネクタイを掴んだ瞬間、渚が脚をカルマの首に絡ませて関節技を決めた。

その技のキレはまるで獲物に絡み付く毒蛇の様であった。カルマも応戦し腕を振りあげようとした時……

 

「「……っ!?」」

「不毛な争いはやめなよ。そんな事して何か得する事が一つでもあるのかな?」

 

取っ組み合っていたカルマと渚の体が吹き飛び、木に叩き付けられた。2人を吹き飛ばしたのは和生、クラスの誰一人としてその姿を視界で捉えられなかった事から、彼が蒼魔凍を利用して2人を離れさせたのは明白だ。

 

「殺せんせーに約束したよね。磨いた力は守るために使うんだって、ここで傷つけあうことに使う必要は無いよね。何の為に言葉があるんだよ。時間を掛けてでも話し合って納得のいく結論を出せばいいじゃないか」

「……なんだよ。こっちは守るために戦ってんだよ自分の『信念』をさぁ!!」

「和生君は良いよね。英国の王子様で、勉強も出来て、蒼魔凍なんて力もあって。弱い人の気持ちなんて一番わかってないよ」

「和生はいつもみたいに速水さんにデレデレしてればいいんだよ。邪魔しないでくれる?こっちは死ぬ気でやってんだからさ。向こうで遊んでてよ」

「……そういう事言うんだ? 死ぬ気で? 笑わせないでよ」

 

『死』という単語に反応した和生。それもそのはず。クラスのほとんどが知らないが、彼は殺せんせーの次にこのクラスで死に直面している人物。蒼魔凍の副作用で絶対零度の回廊を歩いている彼が遊んでいるはずなど無いのだ。

 

クラスの劇的な変化に感覚が過敏になってしまっているのは否めない、しかし3人は一触即発のムード。今にも殴りかかりそうな雰囲気だ。そこに…

 

「ヌルフフフ! 中学生のケンカ! 大いに結構!! でも暗殺で始まったクラスです。コレで決めてはどうでしょうか?」

 

渚、カルマ、和生の3人が作る三角形の真ん中に……今回のケンカの元凶である殺せんせーがやって来た。

 

「「「「「事の張本人が仲裁案を出してきた!!」」」」」

「なんで最高司令官のコスプレなのよ」

「ヌルフフフ。これに似合うと思いまして」

 

騒ぎを嗅ぎ付けたのか、烏間とイリーナも駆け付けてきた。

 

殺せんせーが取り出したのは赤、青、黄色のBB弾。など、様々な武器が詰め込まれた大きな三つの箱。

 

「三色に分けたペイント弾と、インクを仕込んだ対先生ナイフ。チーム分けの旗と腕章を用意しました。『カルマ君と同じ意見の人は赤』、『渚君と同じ意見の人は青』、『和生君と同じ意見の人は黄色』。まずしっかりと自分の意志を述べてから、どれかの武器を取ってください。この裏山を舞台に三チームのサバイバルマッチを行い、敵陣営のインクを付けられた人は死亡退場。敵陣営を全滅か降伏、旗を全て奪い取ったチームの意見をクラスの総意とする。勝敗に恨みは無し!どうです?」

「楽しそうだな殺せんせー。自分の命に関わる問題なのに」

「ここに来て力技で決めるのかよ……」

「多数決でも良いですが、それも一種の力技。ましてや今回のケースでは票数が割れて死票が多くなってしまいますからねぇ……この方式でも多人数有利は変わりませんが……この教室での一年の経験を最大限に活かせば人数や戦力の不利を跳ね返せる。先生はね?大事な生徒達が全力で決めた意見であればそれを尊重したい。一番嫌なのはクラスがバラバラになったままで終わってしまうことなんですよ。先生の事を思ってくれているなら、それだけはしないと約束しないで下さい」

「どうする?」

 

殺せんせーの言葉を聞いた磯貝が全員に問いかける。

苦い表情をしながらも、全員一致で殺せんせーの提案に賛成の意を示した。

 

「よし戦争(これ)で決めよう。クラスの意見を」

「では30分後にここに再度集合。それぞれ1人で自分の意見を決めてきて下さい。それでは一時解散!」

 

殺せんせーの号令を合図に生徒達が裏山に散っていく。

 

「これでいいのか?」

「えぇ、良いんですよ烏間先生。このクラスはある意味では一つの国家なんです。渚君はいつもクラスに新しいものを提案してくれる。カルマ君はそれを行動に移せるだけの実力がある。そして和生君はそれが正しいか否かを見極める力に秀でている。ヌルフフフまるで『国会』、『行政』、『司法』の様ではありませんか。今回の彼ら3人が衝突したのは、暗殺教室(クニ)の三権分立の均衡が崩れたと言うことでしょう。思い切りぶつからせてあげたいんです」

「ふっ、一つの国か。わからんでもないな」

「さぁ、生徒達がどんな答えを持って帰ってくるのか……非常に楽しみですね!」

 

開戦まで後僅か……己の誇りと信念をぶつけ合う戦いが今始まろうとしている。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 25~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。