俺とアタシのヒーローアカデミア (BEBE)
しおりを挟む
俺とアタシの出会い
一々熱くて盛り上がります!
と、いうわけで取り合えず書いてみましたので、暇潰し程度にご覧ください( ̄▽ ̄)b
テレビでは連日、ヒーロー達の輝かしい活躍が報道されている。
それだけこの世界において『ヒーロー』という存在が人気であると言うことだ。
現に、大通りのビルに取り付けられている大型の液晶には、数多くのヒーロー達が映し出されていた。
しかし、
(下らねえ。)
その映像を、冷めた目で見ている少年がいた。
阿久津 竜太(あくつ りょうた)、それがこの少年の名前だ。
この少年、どこにでもいる特殊な能力、『個性』を持った中学三年生である。髪の色は黒、髪形は少し癖のある短髪、身長172cm 。
見た目はそれほど個性的ではない。
しかし、彼にはある悩みがあった。勿論、「彼女ができない!」とかいう下らないことではなく、彼の『個性』についての悩みである。
さて、本来ならばこの場で全て説明してしまいたいところなのだが・・・・・・ 彼は開始からまだ四文字しか喋っていない。詳細は追々語るとしよう。
(何が正義の味方だよ。金貰ってるんだから所詮は職業じゃねえか。)
竜太はそのまま大通りのを歩いていった。彼は下校中である。
(ま、俺がヒーローになれねえから妬んでるだけかのかもな。)
と、竜太は自嘲気味に考える。
すると、意識が前に向いていなかったためか、ドン、と誰かと肩をぶつけてしまったようだ。
「ああ、すいません。」
比較的一般常識がある竜太は、取り合えず謝っておく。社会で生活していくためには、こういうモラルは大切だ。
が、
「いてえな、何してくれてんだテメエ。」
「おいおい、人にぶつかっといて謝るだけか?」
「慰謝料くらいもらわねえとなぁ。」
相手にもモラルや一般常識が備わっているとは限らないのだ。(因みに、相手は三人組だったようだ)
竜太はめんどくさそうに溜め息をつき、
「いや、今金無いんで勘弁してもらえないですか。」
と、無一文アピールをしてみるが、
「おいおい、随分と舐めたこと言ってくれるな。」
「ちょっと来てもらおうか?」
「なぁに、運がよけりゃ五体満足で帰れるからよ。」
三人組はゲラゲラと笑いながら竜太を路地裏に連れていった。
「・・・・・・・」
そして、その様子を見ていた一人の少女がいたことに、誰も気づいていなかった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「さてと、金を出すんなら今のうちだぜぇ。」
竜太を路地裏に連れてきた内の一人は、腕をまくり、
「でないと・・・・・こうなるぜ!!」
突如、男の右腕が肥大化し、アスファルトを殴り砕いた。
「どうだ!これが俺の個性、『筋肉倍加』だ!」
「見ろよ!ヒビって声もでねえぜ!」
「ハハハッ、分かったろ?金を出した方が身のためだぜ!」
先程からなぜかキッチリ三人交互に喋っている。おそらくよほど仲が良いのだろう。
そんなことはさておき、肝心な竜太の反応はというと、
「おー、因みに他のお二人の個性は?」
「良いだろう、見せてやろう!」
「これが俺たちの個性だ!」
以外とノリは良いようだ。
「これが俺の個性、『筋肉倍加』だ!」
「そしてこれが俺の個性、『筋肉倍加』だ!」
不良の残り二人も腕を肥大化させた。
まさかの三かぶり!
彼らは兄弟なのではないかと疑いたくなる。
これには、竜太も開いた口が塞がらない。
「さて、痛い目見ない内に金を「下らねえ。」・・・・アア?」
「よくそんな個性でカツアゲなんてできるな。しかも三人同じ個性かよ。」
竜太のこの台詞は、三兄弟(仮)の逆鱗に激しくタッチしたらしい。
「・・・・・OKだ、ならズタズタに引き裂いた後で財布を貰おうかッ!!」
「五体満足で帰れると思うなよッ!!」
三兄弟(仮)は竜太に詰め寄る。
ムキムキ×3に囲まれ、ピンチである。
が、しかし、
「五体満足、か・・・」
竜太はニヤリと怪しい笑みを浮かべる。
・・・・・・まるで悪役のように。
「アンタらが欲しい腕ってのは・・・・・・・・こんなのかな?」
悪役スマイルを浮かべる竜太の右腕が、その形を変えていく。
鎧のような黒い鱗を纏い、鋭い鉤爪が生えたその腕は、人間の腕とはかけ離れた異形の姿・・・・・・まるで竜の腕のようだ。
そして・・・・・・竜太はその右腕で地面を思いっきり叩き、その衝撃で吹き飛ばされた三兄弟(仮)は壁に叩きつけられ、意識を失った。
見事なまでの噛ませ犬である。
「ハッ、筋肉増やすだけならケイン・コ○ギでも出来るんだよ。」
よく分からない捨て台詞を吐き、竜太はその場を去ろうとする。
しかしその時、
「そこまでだッ!!」
突然、一人の少女が路地裏に現れた。
「ハア、ハア、この私が来たからには・・・ゼエ、ゼエ、カツアゲ何て卑劣なマネはさせな・・・い・・・・ぞ・・・・・って、あり?もしかして自己解決しちゃった?」
その少女は急いできたのか肩で息をしており、紫色の髪を束ねたツインテールが揺れていた。
さて、そんな突然の乱入者に対しての竜太の反応はというと、
(何て毒々しい髪の色だ!)
髪の色のセンスが気になっていた。
もっとツッコむところは有るはずなのだが・・・・彼の感性も少し変わっているようだ。
そしてこれが、ヒーローを羨む少年、阿久津 竜太と、ヒーローを目指す少女、広井 斥亜(ひろい せきあ)の出会いである。
ヒロインの個性は次回出てきます。
気が向いたらまた筋肉三兄弟(仮)も再登場するかも知れませんのでお楽しみに。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
アタシのアプローチ
まあ次回を頑張るとしましょう!
では、2話です。
「イヤー、まさか颯爽と助けに来たのに出番がないなんてねー。驚いちゃった。」
「いや、取り合えず名前名乗れよ。」
竜太は冷めた目で紫髪の少女と話している。
因みに、二人の足元には筋肉三兄弟(仮)がピクピクと痙攣して倒れているのだが・・・・・二人が救急車を呼ぶ気配はない。
そんなことよりも、竜太に名前を聞かれた少女の反応は、
「フッフッフッフ、よくぞ聞いてくれました!園辺野(そのへんの)中学三年、広井 斥亜!ヒーロー目指して活動中です、よろしく!」
「そうか、まあ頑張れ。」
竜太は斥亜の派手な自己紹介を鮮やかにスルーし、路地裏を去ろうとする。
がしかし、
「待たんかーいッ!!」
「グエッ!?」
斥亜に襟を掴まれて、首がしまる。
「ちょっとお!自分で言うのもなんだけどさ、こんな変な自己紹介するヤツ見たことないでしよ!?もっと何か聞きなさいよ!」
「何で髪その色にしたの?」
「確かに変な色なのは認めるけど今聞くべきはそこじゃない!因みにこれは地毛です!」
会って数十秒でここまで漫才が成立することも少なかろう。
「くそ、人を振り回すことで定評のあるこのアタシにツッコミをさせるなんて、君かなり変人だね。」
それより、と斥亜は話を続ける。
「人に名乗らせたんだから君も名乗るべきじゃない?」
「・・・・・・はあ、木野當野(このあたりの)中学三年、阿久津 竜太だ。」
流石に彼女の言うことに一理有ると思ったのか、竜太も嫌々自己紹介をする。
「木野當野中学?すごい近くじゃん!」
斥亜は目を輝かして竜太に詰め寄る。
どうやら竜太に興味を持ったようだ。
「ねえ!一体どんな個性でこの人達を倒したの?見たとこ異形系じゃないみたいだけど・・・・・こんな大男三人を倒しちゃうんだから戦闘系だよね!」
「・・・・・・うるせえな。」
キラキラした瞳でぐいぐい質問してくる斥亜に、竜太は冷めた目を向ける。
「・・・・・・もういいだろ?じゃあな。」
そう言い、竜太は路地裏から去っていった。
「・・・・・・行っちゃった。う~ん気難しいなぁ年頃の男子って。」
しかし、斥亜はニヤリと嬉しそうな笑みを浮かべる。
「でも面白そうなヤツ♪」
斥亜は鼻唄混じりに路地裏を去っていった。
因みに、筋肉三兄弟(仮)はこの数分後に発見され、病院送りになったらしい。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「アタシが来た!」
「何故だ!」
さて、取り合えず状況の説明からしていこう。
まず、今日は昨日の一件の翌日、現在は放課後、ここは竜太の中学の正門前、正門から帰ろうとしていた竜太を斥亜が待ち構えていたのだ。
では、何故彼女はこんなことをしているのか?
それは・・・・
「実は君に頼みが有って来たんだ。」
斥亜はニコリと満面の笑みを浮かべ、
「阿久津竜太君、アタシと一緒にヒーロー目指さない?」
「目指さない。」
瞬殺された。
「え~、そんな速攻で断らないでよ~。いいじゃんヒーロー。」
しかし、彼女はまったくめげる様子もなく、帰ろうとしている竜太に着いていく。
「何なんだお前は!?昨日会ったばっかで何故そんなグイグイ来る?」
竜太の当然の疑問に、斥亜は悪戯っぽく笑う。
「イヤー、アタシ雄英を受験しようと思ってるんだけどね、うちの高校から受験するのアタシ一人らしいんだよね~。やっぱ一人だと寂しいし、勉強も仲間がいた方が捗るし、何より、共に切磋琢磨し合うライバル!そして共に頑張るパートナー!それがいないと燃えないわけよ。・・・・・・ということで、君に白羽の矢がぶっ刺さったのだよ。」
「・・・・・・・ で?何故昨日会ったばっかの俺がその白羽の矢で射殺された。」
「・・・・表現が物騒だなぁ。ま、いわゆる直感、シックスセンスみたいなもんかな。こう・・・・君を見たときにビビっと来たんだよね。なんだかアタシに似てる気がするな~って。」
「気のせいだろ。」
竜太のツッコミを無視して、斥亜は額に人差し指を当てるポーズを取る。
「さて、それを踏まえた上で改めて君の答えを「NO!」・・・・・・一応、もう少し考えようよ。」
「無理だ。俺はヒーローに何てなれない。」
竜太の返答に斥亜は呆れたような目を向ける。
「まったく、最近の若者は、そうやって試してもないのにすぐ決めつけて諦める。嘆かわしいぞ少年。」
「どこの年寄りだお前は!」
すると、竜太のツッコミをもらった斥亜は、今までと打って変わり、真面目な顔になり、竜太の目を見る。
「んで?そんだけ力強く否定する根拠は何なのかね?」
「・・・・・・・・・」
竜太は斥亜の真っ直ぐで綺麗な瞳に吸い込まれそうになる。
「・・・・・・俺の個性はヒーローに向いてない・・・・・そんだけだ。」
「不良三人を無傷で倒せるくらいにの力はあるのに?」
斥亜は首を傾げる。
「・・・・・・強い力が、必ずしもヒーローに適してるとは限らねえんだよ。」
竜太は少し遠い目をしていた。
「へぇ、それっぽいこと言うじゃん。そんじゃアタシからもそれっぽいことを・・・・・・誰かを守るのに向いてる向いてないはないんじゃない?」
「・・・・・・・チッ。」
何か思うところもあったのか、竜太は反論することもなく、舌打ちをしただけで、斥亜を置いて足早に去っていった。
「・・・・・・それに、気付いてないのかな?君はヒーローに『なりたくない』じゃなくて、『なれない』、『向いてない』って言った・・・・・・・ヒーローになりたいってのを否定はしなかったんだよ。」
斥亜はもう声が聞こえるはずのない距離まで離れた竜太の背中に向けて呟いた。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
俺とアタシの一歩
なるべくコンパクトに纏めようと思ってたのに・・・・・
そんな少し長めの3話です。
「何なんだお前は!ストーカーか?」
「失礼な!こんな美少女と毎日下校出来るんだから感謝してもらいたいくらいだよ!」
現在、斥亜が竜太に付きまとい始めてから一週間が経過しようとしていた。
「マジでいい加減にしてくんない?クラスで変な噂が立ってきてるんだけど。」
「お、なになに!もしかして『阿久津には超絶美少女の彼女がいる』とか?」
「いや、『阿久津にはヤバイ髪の色の彼女がいる』て噂だ。」
「何で全員髪の色に拘るの!?異形系の人とかもっとインパクトのある見た目してるはずだよね!」
斥亜の言い分も一理あるだろう。
「・・・・・・・もう諦めろよ。俺はヒーローにはなれないって言ってんだろ。」
「やだね!アタシはもう君とヒーローになるって決めたんだ!」
斥亜の諦め知らない性格に、竜太はうんざりとしていた。
「・・・・・・俺のこと何も知らねえだろ・・・・勝手なこと言うな。」
竜太は少し怒気を含んだ言葉を発した。
「うん。知らないから勝手に言えるんだよ。勝手を言ってほしくないなら君のことをもっと教えてほしいな。」
斥亜はそんな竜太に笑顔で返した。
「・・・・・ そうだな。来い、俺の個性を見せてやるよ。」
「お!いいねいいね~!やっと進展だよ。」
そう言い、竜太は斥亜に手招きしながら歩いていく。
そして、二人は人気のない路地裏にたどり着いた。
「ちょっと~、いきなりこんな所に連れ込んで・・・・気が早いんだから~。」
「お前そろそろひっぱたくぞ!」
竜太の堪忍袋の緒が限界のようだ。
「俺の個性を見せる前に、お前の個性を見せてくれないか?」
「ああ、人に尋ねるときは自分から、てやつ?いいよ。ちょっと離れててね。」
そう言い、斥亜は両手を横に広げた。
そして、彼女を中心として球状に半透明の紫色の膜のようなものが現れる。
「アタシの個性は『斥力バリア』。外側から触れたモノを弾き飛ばす斥力の膜を掌から張る個性だよ。形はある程度変えられるけど、表面積に限りがあるんだ。」
説明を終えた斥亜は、斥力のバリアを消した。
そして、斥亜の個性を見て、竜太は嘲笑のような笑みを浮かべた。
「ハッ、流石はヒーローヒーローって言うだけあるな。人を護る盾かよ。正にヒーロー向きの個性じゃねえか。」
「・・・・・・」
竜太の言葉に、斥亜は微妙な表情を浮かべる。
「さて、俺の個性だったな・・・・・・俺のは・・・」
竜太は自分の個性を発動する。
彼の右腕に黒い鱗が現れ、さらに鉤爪が生える。そして今度は顔の右半分にまで鱗が広がり、右側頭部から角が生える。
そしてそのまま、竜太はその爪の切っ先を斥亜の目の前に突きだした。
「これが俺の個性、『竜化』だ。・・・・・・今は抑えてるが全身変化すると尻尾も生える。・・・・・・・人間じゃねえよ、こんなの。」
竜太は自嘲気味に笑った。
「でも!その個性だって使いようによっては人を守れるよ!」
鋭い鉤爪を突き付けられているというのに、斥亜は少しも怯まず竜太を説得する。
しかし、竜太はまたも嘲笑のような・・・しかしどこか悲しみを含んだようなような表情を浮かべた。
「俺は小学生の時、この爪でクラスメイトに一生消えない傷を残したんだよ。」
「え・・・・・?」
予想外の話に、流石の斥亜も目を丸くしている。
「勿論わざとじゃねえ・・・・・・ちょっとした口論だった。先に突き飛ばしてきたのは相手だったよ。・・・・・・俺はそれが頭に来て、そいつをひっぱたこうと思った・・・・そしたらどうだよ・・・・手に残ったのは何かを抉ったような感触、相手の顔に残ったのは血が流れ出す爪痕・・・・・・俺の手は、黒い鱗と鉤爪が生えてた・・・・・・しかも・・・・女の子だったんだよ、その相手は。」
「・・・・・・・・」
斥亜は竜太の話を、悲しげな顔で聞いている。
「分かったろ?俺の個性は・・・・・この力は、誰かを守れるもんじゃねえ・・・・・・誰かを傷付けるもんだ。」
話を終えた竜太は、変身を解いた。
「だから・・・・・もう俺に関わるな。」
そう言い、彼は斥亜に背を向け、去っていった。
「・・・・・・アタシのバカ・・・・」
斥亜は壁に背をもたれながら、腰をおろした。
「無理矢理迫って・・・・・相手の傷口開くなんて、最低だよ。・・・・・・・何となく分かってたじゃん、“ アタシと似てる ” て・・・・・・・」
斥亜は暫くそこから動くことはなかった。
(・・・・・静かだな。)
斥亜と別れた帰り道、それは一週間ぶりに一人で歩く下校ルートであり、車が行き交い、人は大勢歩いているというのに、彼女のいない帰り道は・・・ 酷く静かで、退屈な気がした。
(何でだ?アイツと会う前はこれが普通だったろ。何で今更違和感があんだよ・・・・・・?)
竜太は分からなかった。今彼の心を支配しているモヤモヤとした感情が一体何なのか。
(クソッ!なんだってんだ!スッキリしねえ・・・・・・・・・ まさか、後悔してんのか?)
彼は知らなかった。たった一週間、しかも付きまとわれていただけの少女が・・・・・・彼の中でどんな存在になっていたのかを・・・
しかし、彼の悩みを吹き飛ばすかのように、突如爆音が鳴り響いた。まるで、何かが壊れたような音だ。
そして、竜太の背後からどんどん人が走ってきて、竜太を追い抜いていく。
「な!?何があったんだよ!?」
「君!早く逃げるんだ!!」
立ち止まっている竜太に、見ず知らずの男性が声をかけてきた。
「何があったんですか!?」
「向こうの交差点でヴィランが暴れてるんだよ!!」
「な!?」
竜太に事態を説明し、男性はそのまま走り去っていった。
しかし、竜太は交差点の方を見据え動かない。
(何してんだよ!俺は民間人だぞ!ヒーローじゃねえんだ、逃げればいいだろ!!)
しかし彼の足は動かない。まるで逃げることを拒否しているように。
(逃げろよ!!さっさと逃げてヒーローをまてば・・・・)
「おい!さっき親子が逃げ遅れてなかったか!?」
「ヒーローはまだ来ないのかよ!!」
すれ違う人込みの中で、そんな話し声が聞こえた。
そして、竜太は人の波に逆らって、交差点へと向かう。
その足に迷いはない。
(バカだな、ヒーローになれないっていったのは俺だってのに・・・・・)
『誰かを守るのに向いてる向いてないはないんじゃない?』
竜太の頭の中で彼女の言葉がリピートされる。
(まあ、たまには他人の言葉を信じてやるよ!)
そして、人込み抜け出た竜太が見たのは・・・・怪物のような姿の二メートル以上の異形系のヴィランが腕を振り上げ、逃げ遅れた母娘に降り下ろそうとしている場面だった。
どうあがいても、たとえ個性を全開で使ったとしても間に合わない。竜太はそう悟った。
だか、それでも彼は足を止めない。
何故なら、彼女なら間に合うと思ったから。自分の向かいの道から走ってきている紫髪の彼女なら間に合うと。
「斥亜あああああ!!」
竜太が出した大声に、一瞬だけヴィランは竜太の方を見た。
その隙に、母娘とヴィランの間に、紫色の髪の少女が・・・・斥亜が割り込んだ。
彼女の乱入に気付いたヴィランは、直ぐにその腕を三人に目掛けて降りおろす。
しかし、その腕は紫色の斥力バリアによって阻まれた。
「いっけええええええええッ!!」
斥亜の掛け声と共に、ヴィランの背後に竜が現れる。
全身に黒い鱗を纏い、鋭い鉤爪を携え、頭から角を生やし、さらに長い尻尾を生やした黒竜が。
「食らえクソヤロおおおおおお!!!」
「クボアアアッ!?」
そして、その強靭な尻尾がヴィランの顔面に叩き込まれ、ヴィランを思い切り吹き飛ばした。
そのまま、ヴィランはピクピクと痙攣し、意識を手放したようだ。
そして、思わぬ再会を果たした二人は互いに、笑い合う。
「『もう俺に関わるな』とか言ってなかったっけ?」
「うるせえ、緊急事態だったんだからノーカンだよ。」
そう言い、竜太は変身を解いた。
「あの!」
二人が軽口叩きあっていると、母親の方が声をかけてきた。
「ありがとうございます!あなたたちがいなかったらどうなっていたか・・・・・」
「イエイエ、アタシたちはヒーローを目指す者として当然のことをしたまでです。」
「おい!俺は目指してねえぞ!」
竜太はまだ渋っているようだ。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、」
そんなやり取りをしていると、母親が抱いていた七歳ぐらいの女の子が口を開いた。
「たすけてくれて、ありがとうございました。」
ペコリと二人にお辞儀をしてきた。
「なんのなんの。困ったときはいつでも呼んでね。今はまだモグリだけど、いつか本物のヒーローになって見せるから!アタシたち!」
「だから俺は目指してねえ!」
そこから、また二人の言い合いが始まった。
「フフ、」
すると、その光景を見て、母親が優しく笑った。
「貴方たち、とってもいいコンビね。」
「ええ!?」
「そうなんですよ!分かります?」
「ええ、とってもお似合いよ。」
「ちょっとまてえええええ!!」
竜太の叫びがビルに反響したとき、救助に来たヒーローたちが駆けつけたのであった。
「はー、やっと事情聴取終わった・・・・・」
「いいじゃん。何か既に卒業後うちに来ないか?て言ってくれる人もいたし。」
二人はヒーローや警察からの事情聴取が終わり、既に日が落ちた夜道を歩いていた。
「どう?アタシの言った通りだったでしょ?」
どや顔の斥亜に、竜太は少し笑う。
「そうだな・・・・案外この力も捨てたもんじゃねえかもな・・・」
竜太の言葉を聞き、斥亜も優しげな笑みを浮かべる。
「さて、では晴れてアタシのパートナー、及びライバルとなった君にとっておきの話をしてあげよう!」
「なってねえよ勝手に決めんな。」
「まあまあ、とりあえず聞きなよ。」
ふざけた言い回しながらも、真剣な顔をした斥亜を見て、竜太は言われるままに聞くことにした。
「アタシはね、この力を中学になるまで使いこなせなかった。少しでもカッとなると、すぐにバリアが発動して、相手を弾き飛ばした。そんなアタシに近寄る子なんていなかった。・・・・・分かる?アタシの個性は人を護る盾じゃなかった。アタシと人とを隔離する、殻だったんだよ。」
「・・・・お前、」
斥亜の話に、今度は竜太が目を丸くした。あんなに明るい彼女に、そんなに暗い過去があったなんて。
「中学に上がる前に何とか個性を制御できるようになってね。アタシは知り合いが一人もいない遠い中学に進学した。中学では友達もいたし、順調だった。そんで、そこからヒーローを目指そうと思ったの。アタシの個性は孤独の殻じゃない、救いの盾だってことを証明するために。・・・・・でも、雄英に入るって決めたとき、アタシはまた一人ぼっちになった。勿論皆受験で忙しいのは分かってる。だけど、アタシはそれに耐えられなかった。また、あの時みたいに一人ぼっちになるんじゃないかって思った・・・・・だからずっと探してた。アタシを支えてくれるパートナーを。アタシと競ってくれるライバルを!」
そして、斥亜は竜太の目を真っ直ぐに見つめる。
「改めてお願い事します。阿久津竜太君。アタシを支えてくれるパートナーになってください!アタシと競ってくれるライバルになってください!アタシと・・・ヒーローを目指してください!!」
頭を下げた彼女を見て、竜太は思った。彼女と自分は確かに似ている。お互い、自分の個性に苦しんだ。
言うなれば、同類だろう。
そして彼は考えた、彼女との一週間を。たかが下校の時間だけの付き合い、しかもしつこいストーカーのような少女。そんな彼女が、彼の中でどんな存在であるのかを。
そして、答えを出す。
「ヒーローを目指す、か。・・・・ダメだな。」
「・・・・・・そっか、ごめんね。」
斥亜の声が震え、その頬を涙が伝う。
勝手だと言うのは斥亜も分かっていた。分かっていたけど泣かずにはいられなかったのだ。
「ごめんね。色々迷惑かけたね、それじゃ。」
そう言い、斥亜は竜太に背を向けた。
「目指すだけなんて中途半端なことは出来ねえよ。」
「・・・・・え?」
振り返った斥亜に、竜太はニヤリと笑って見せる。
「ヒーローに “ なる ” 。そう言い切って貰わねえとな。パートナーとしては不安だし、ライバルとしては張り合いがねえよ。」
「この・・・・・・意地悪!!カッコつけた言い方して!アタシの泣き損だよ!!」
「知らねえよ。お前が勝手に泣き出したんだろ?」
「ぐぬうううううムカつく!!絶対君よりすごいヒーローになってやる!!」
「望むところだな。それまで頼むぜ、斥亜。」
「目にもの見せてやるからね!それまでよろしく、竜ちゃん。」
「待ってそのあだ名はやめて。」
こうして、二人のヒーローへの一歩が踏み出された!
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
俺とアタシの勉強会
良ければ読んでください。
あと、今回から原作に入る予定だったんですが、次回からにしようと思います。
では4話です。
キャラ個性設定
名前 阿久津 竜太
個性『竜化』
全身に黒い鱗が生え、手には鉤爪、頭には角、さらに尻尾まで生えることでその姿が竜のようになる個性。
圧倒的なパワーと強固な鱗による高い防御力をほこり、さらに鋭い鉤爪による斬撃、尻尾による中距離攻撃を可能とし、戦闘に特化している。
ただし、連続使用時間に限りがある。それを過ぎるととてつもない睡魔に襲われる。目安は20分程。断続的に使用することでこのリスクをある程度回避できる。
また、完全に竜化するには5秒程かかり、それも欠点と言えるだろう。
ちなみに、竜太のズボンとパンツには後ろにも前と同じような穴が空いており、尻尾を生やす際に破らないようになっている。(普通にしていれば穴は見えないように作られているため、公共のマナーには反していないのでご安心を)
名前 広井 斥亜
個性『斥力バリア』
掌から斥力を発するバリアを発生させる個性。
斥力の強さ、バリアの形は自在に変えられるが、バリアの面積は限られており、さらにバリアをずっと出しっぱなしにしていると頭痛に襲われる。目安は3分程。一度バリアを消してしまえば問題はない。
防御寄りの個性に思えるが、実は相手を弾き飛ばすことで攻撃にも使え、バリアの形を変えられることでかなりの応用力を発揮するため、非常に器用な個性だと言える。
それでは本編です。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
竜太と斥亜がヴィランを退治してから数日後の昼前、竜太はある人物の家の前に来ていた。
まあ大体察しはつくと思うが、その家の表札には『広井』と書かれてある。
もちろん斥亜の家だ。
彼らは今日初めて二人で集まっての勉強会を行うのだ。
(そういや女子の家に入るのは初めてだな。)
そんなことを考えながら、竜太は家のインターホンを押した。
『アイアイ、ちょっと待ってねー』
インターホンから斥亜の声が聞こえ、ドアが開かれ、そこから私服姿の斥亜が出てきた。
さて、では彼女の私服チェックといこう。
彼女はピンクのノースリーブを着ており、その丈はへそが出るように短くなっている。
そして下には黒のホットパンツをはいており、結果としては活発な彼女のイメージ通りの格好とも言えるが、かなり肌の露出度はたかい。
今までお互い制服でしか会ったことがなかったため新鮮だったのだろう。竜太は斥亜の私服姿に見入っていた。
そんな竜太の視線を感じ取ったのか、斥亜ニヤリと笑い、両腕で胸を覆う。
「ちょっと~ジロジロ見ないでよ~、エッチ~。」
「何で胸を隠してんだ?ねえだろお前。」
「あるわ!!ギリッギリBあるわ!!」
今回は斥亜が一本取られたようだ。
しかも自分で胸のサイズを公言してしまった。
「下らないこと言ってないで家に入れてくれ。暑い・・・・・」
今は7月の上旬、ピークではないがそれなりの気温に達しており、外はかなり暑かった。
「それもそうだね。」
そうして、二人はようやく家のなかに入っていった。
「あらいらっしゃい。」
家に入ってすぐ、スタイルのいい白髪の女性が出迎えてきた。
「へぇ、斥亜が気に入ったって言うからどんな子かと思ったけど・・・・・案外地味で特徴のない面白くない子ね。」
「無個性な見た目ですいませんねえ・・・・・」
竜太は少し怒気を含ませてその女性に返した。
「自己紹介まだだったわね。斥亜の母の広井 飛鳥です。」
「ご丁寧にどうも阿久津竜太です。先程の暴言を謝るつもりはないんですね。」
竜太は笑顔を浮かべつつも、その額に青筋を立てていた。
「まあまあ母さん、その辺にしときなよ。」
今にも竜太が飛鳥に殴りかりそうなのを察知し、斥亜が二人の間に入った。
「んじゃ、アタシらは部屋で勉強するからね~。」
そう言い、斥亜は竜太の背中を押して自分の部屋に案内する。
「さあさあ、ここがアタシの部屋だよ。」
(女子の部屋か・・・・ちょっと緊張してきたな。)
竜太は少し落ち着かない様子だったが、斥亜は構わず部屋のドアを開けた。
そして、まず目に飛び込んできたのは等身大のオールマイトのポスターであった。
「・・・・・・・・・」
突然の平和の象徴の登場に、竜太は言葉を失う。
さらに部屋の中には他のヒーローのポスターも貼ってあり、その上ヒーローのフィギュア、ヒーローの雑誌、ヒーローのニュースを録画したDVD、ジャンプ等々・・・・・その部屋はまるでヒーローマニアの部屋だ。
「何固まってんの?」
「部屋開けて即オールマイトだぞ・・・・固まるだろそりゃ。てかこの部屋どんだけ女っ気がゼロなんだよ・・・・」
「気にしない気にしない♪さ、勉強を始めようじゃないか。」
おどけた口調で斥亜は部屋に入っていく。竜太も色々と言いたいことがありげだったが、何も言わず斥亜の部屋に入っていった。
さあ!勉強会スタートだ!
「何・・・・・・だと・・・」
斥亜は目の前で起こった出来事を信じることが出来なかった。勿論、天地が引っくり返っても起こり得ないということではなかった。しかしそれでも、それでも斥亜は信じれなかった。信じたくなかった・・・・・・この目の前に広がる光景を・・・・・80代~90代の数字が赤ペンで書かれた数枚のプリントを・・・・・
「あり得ない・・・・竜ちゃんが頭いいだなんてええええッ!!」
「過去問の点数でどんだけ騒いでんだよ・・・・・てか俺の呼び名はそれで決まったのか?」
斥亜が頭を抱えて悶絶している理由は、竜太にやらせた雄英高校の過去問の結果が想像の数倍良かったことである。
「チクショーッ!!ここは惨敗した竜ちゃんにアタシが解き方を教えることによってアタシの隠れた頭の良さが発覚して、『フ、竜ちゃんもまだまだだね。』てどや顔する場面のはずだったのに~ッ!!」
「計画が細けえ上に器がちっせえ!!」
なおも悔しがっている斥亜に、竜太は溜め息をついた。
「それより、俺はお前が頭いいって方が意外だよ。いつものクレイジーな感じからは想像できねえ。」
「クレイジー!?何!?竜ちゃんアタシのことをそんな風に見てたの!?」
「錯乱ヒーロー『THEクレイジー』・・・・・」
「やだよそんなヒーローネーム!!だったら竜ちゃんは魔王ヒーロー『りゅうお○』だよ!!」
「てめえ!!何で俺が世界の半分やるなんて気前の良いこと言わなきゃならねえんだよ!!しかも何で平仮名のほうだ!!」
二人はしょうもない言い争いを始めた。
しかし、何の生産性もないこんな下らないやり取りを、二人はどこか楽しそうにしていた。
こんな下らない話を本気で言い合える友達、斥亜の見立て通り、二人の相性は良いようだ。
しかし、その言い争いにも終止符が打たれる。
「あら?おかしいわね・・・・・勉強会をしているはずの部屋から大声が聞こえてくるんだけど・・・・・・」
斥亜の部屋の外から、飛鳥の声が聞こえた。
そして、ドアのぶが回り、暗い笑顔を浮かべた飛鳥が部屋に入ってきた瞬間、
「ここの角度が30度だからこっちはThis is a pen になって同位角でここがいとをかしになりける。」
「成る程よくわかった!さっすが斥亜さん!頭の出来が違うな~!」
「どこの国の教科かしらそれは。」
めっさテンパっていた。
どうにか真面目に勉強してましたアピールをしようとした結果がこのカオスな状況だ。
「まあ、勉強していたならいいわ。」
((乗り切れた!?))
竜太と斥亜は思わず目を見合わせた。
「ただ、次からはもう少し静かに勉強なさい。THEクレイジーとりゅうお○さん。」
そう言い、飛鳥は部屋を出ていった。
「・・・・・・・竜ちゃん、勉強しよう。」
「ああ。」
こうして、二人は静かに勉強をしたのだった。
「ん~、今日はこのくらいで終わろうか。もう遅いし。」
「そうだな。」
辺りはもう日が落ち、暗くなり始めていた。
「あら、帰るの?」
二人が玄関まで行くと、飛鳥も見送りに出てきた。
「はい、お邪魔しました。」
「外まで送るわ。斥亜は部屋を片付けなさい。」
「ええ?なんで?」
納得していない斥亜だったが、飛鳥に半ば強引に部屋に押し込まれる。
「ちょ、ちょっと分かったから!竜ちゃん、またね。」
そのまま、斥亜は部屋に入っていった。
そして、飛鳥が竜太に続いて家の外に出る。
「別に態々斥亜を部屋に戻さなくても良かったんじゃ・・・・・」
「貴方に聞きたいことがあってね。あの子がいると話しづらいでしょ?」
家のドアを閉め、飛鳥は竜太の目を見て口をひらく。
「阿久津君。私が貴方に聞きたいのは、貴方が本当に望んで斥亜と一緒に居てくれているのか、ていうことよ。」
「・・・・・」
飛鳥の真剣な眼差しに、竜太も押し黙る。
「親の私が言うのも何だけど、あの子は自分勝手で自由奔放。一度決めたら絶対に折れない。そうやって人を振り回すくせに本当は寂しがり屋っていうめんどくさい性格よ。もしかしたら君もそれに巻き込まれたクチじゃないかって思ったんだけど・・・・・・・」
飛鳥の言葉に、竜太は苦笑いを浮かべた。
正に彼女いう通り、斥亜の身勝手に振り回され、成り行きでここにいるのが竜太である。
そして、飛鳥は何かを決意したような顔をして、口を開いた。
「もしも、斥亜と一緒にいることが君が望んだことじゃない、無理強いされたことなら、もしあの子に気を使っているのなら・・・・・あの子が君の枷になっているのなら、君のためにも、あの子のためにも・・・・・・その縁を切ってくれてもいいわ。」
「・・・・・・・・・・」
飛鳥の言葉に、竜太は沈黙したままだった。
彼自信も考えているのだ。何故自分は斥亜に着いていったのか。彼女は自分にとってどんな存在なのか。
そして、彼は苦笑と共に答えを出す。
「・・・・・・そうですね、確かに俺はこの一週間大変でした。いつも主導権はアイツにある。こっちはアイツに振り回されっぱなしで・・・・正直、迷惑でした。」
竜太の告白に、飛鳥はほんの少しだけ悲しげな顔を浮かべたように見えた。
これでまた、娘が独りぼっちになる。そう思ったのだろう。
「そう・・・・・じゃあこれで「でも・・・・」・・・?」
話を終わらそうとした飛鳥の言葉を、竜太は遮り、話を続ける。
「いざアイツを遠ざけてみると・・・・・とんでもなく世界が退屈に感じました。一週間前まではアイツがいない世界が普通だったはずなのに・・・・・・。
俺にとってアイツは、斥亜は、いなくちゃいけない存在になってた。たった一週間の付き合い、しかもほぼストーカーの、身勝手で、自由で、寂しがり屋な・・・・強くて弱いアイツは・・・・・・・・・・・
俺の、かけがえのない大切なひとになってたんです。」
「・・・・・・・・・・・」
飛鳥は、今度は微かに笑ったように見えた。
「だから、俺は強いアイツと競うライバルに、弱いアイツを支えるパートナーになるって決めたんです。ですから、変な気遣いは要りませんよ。」
竜太の言葉に、飛鳥は今度こそはっきりと笑みを浮かべた。
「そう。なら、あの子のことを、どうかよろしくお願いします。」
飛鳥は竜太に頭を下げた。
「はい!任せてください!」
力強く返事をし、竜太はそのまま帰っていった。
「・・・・・良い男じゃない。今時いないわよ~あんなのは。・・・・・大切にしなさいよ。」
飛鳥は一見独り言のように、ドアの向こうで話を聞いていた娘に向かって声をかけた。
「・・・・・ほんと・・・・・格好つけた言い方して・・・・・・・・」
ドアにもたれた斥亜は、満面の笑顔で笑いながら、その頬に涙を伝わしていた。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
俺とアタシの入学試験
暫く更新サボってました( ̄▽ ̄)b
やっと原作キャラが出てきます。
「アタシが来たin雄英!!」
「連れがお騒がせしてます。」
堂々と胸(ギリギリBカップ)を張る斥亜と、周囲に頭を下げている竜太の二人は決戦の日を迎え、雄英高校に来ていた。
そう、二人は半年間の受験勉強を終え、ついに入学試験を受けるのだ。
「まあ俺らの場合筆記でいつも通り取れりゃ実技は余裕だろ。」
余裕の態度で試験に挑まんとしている竜太に、斥亜はため息をついた。
「ヒーローたる者、油断や慢心はもってのほかだよ。」
「分かってるっての。」
そして、竜太はニヤリと笑みを浮かべ、斥亜に向き合った。
「んじゃ行こうぜ!」
「決戦じゃあああああッ!!」
斥亜の溢れんばかりの気迫に周りがビビっていたのは言うまでもない。
そして、
『~~~~~~~俺からは以上だ!!最後に我が校 “校訓” をプレゼントしよう!かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!!『 “Plus Ultra ” 』!!それでは皆よい受難を!!」
ボイスヒーロー『プレゼント・マイク』に送り出された受験生たちはそれぞれの実技会場へ移動し、実技試験が始まろうとしていた。
「皆気張ってるね~。」
紫色のジャージに着替えた斥亜は、殺気立つ他の受験生を眺めながら呑気に伸びをしている。
「入り口で『決戦じゃああああ!!』て叫んでたやつが何でそんなリラックスしてんだよ・・・・・・」
黒いジャージに着替えた竜太は柔軟体操をしている。
「大事な局面程リラックスして挑まなきゃね。」
「お前は気張ったことなんてねえだろ。」
「失礼な!アタシだって気合い入れるときはあるよ!便秘のときのトイレとか!」
「女の子が大声で便秘なんて言うんじゃありません!」
この緊迫感のなかで何時ものようにアホなやり取りが出来る辺り、この二人はかなり肝がすわっていると言えるであろう。
そしてそんな言い合いを続けていると、
「あ!『決戦じゃああああ』の人だよね?」
ピンク色の肌に触覚を生やした少女が話しかけてきた。
「ほらもう有名人になってんじゃねえか!!恥ずかしい!」
「目立ってなんぼの世界だからね。」
手で顔を覆う竜太に対し、斥亜はどや顔で胸を張る。
「アッハッハッハッハ!面白いね君達!」
そして触覚の少女は腹を抱えて笑っている。
「は~笑った笑った。あ、アタシ芦戸三奈。よろしく。」
「阿久津竜太だ。よろしく。」
「アタシは広井斥亜。お互い頑張ろうね三奈ちゃん!」
芦戸と斥亜のフランクな性格のお陰か、初対面でありながらも会話が弾む。
「アタシ頭悪いからここで点取らないとヤバイんだよね~。」
「大丈夫だよ。雄英は実技に重点を置いてるからね。」
「そうだな、筆記一桁とかじゃなきゃどうとでも『ハイ、スタート。』ッ!!」
『ん?』
ふと聞こえたプレゼント・マイクの声に、受験生達は首をかしげている。
『どうしたあ!?実戦じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞ!!?』
た
『えええええええ!?』
余りに唐突なスタートに、殆どの受験生は出遅れてしまった。
そのなかでたった三人、最初の合図で飛び出した者が・・・・・
「良いんだよね!?あれでスタートして良かったんだよね!?」
「多分合ってる!反射で出ちまったけど!」
「あっぶな!二人が反応しなかったらアタシも遅れてたよ!」
斥亜と竜太の二人だけが最初の合図に反応し、それにつられた芦戸の三人が先行していた。
ちなみに全受験生の中で最初の合図でスタート出来たのは、この二人と爆発的に目付きの悪い少年だけだったそうだ。
そして三人の目の前に大量の仮想敵が現れる。
「さてと・・・・・竜ちゃん、三奈ちゃん、どうする?共闘?それとも・・・・」
斥亜の問いに、竜太はニヤリと笑う。
「決まってんだろ・・・・・・。こっからはライバル!点の取り合いだ!!」
「フフン、そう来なくちゃ!」
そしてニヤリと笑い返した斥亜は手のひらサイズのバリアを展開し、それに合わせるように竜太も右腕を竜化させ・・・・・
「「ウオラアアアアアッ!!」」
次々にロボの集団を蹴散らしていく。
斥亜のバリアに触れたロボは吹き飛び、竜太の爪はロボの装甲を簡単に引き裂いていく。
「ヤバイ!全部取られる!」
芦戸も負けじと酸でロボを溶かしていくが、竜太と斥亜の猛進に少し遅れを取っている。
「ホラホラどうした竜ちゃん?大分アタシがリードしてるよ!」
「ほざけ!こっからだってのッ!!」
そして竜太の身体全身に鱗が生えていき、完全に竜化した。
「グルオラアアアアアッ!!」
爪で八つ裂き尾で粉砕、さらに圧倒的なパワーでロボを投げ飛ばす。
その光景は正に怪獣の行進だ。
「うへ~、相変わらずエグいな~・・・・・・・・・。そんじゃ、アタシも本気で行こうか!!」
そして斥亜の手のひらのバリアが形を変えていき、長い鞭のような形状となる。
「吹っ飛べおんどりゃアアアアアアッ!!」
大きく振るわれたバリアの鞭は、触れただけで周囲のロボを弾き飛ばしていく。
「えええええ!?ヤバすぎるよあの二人!!」
芦戸は二人の驚異的な殲滅力に驚愕しか出来ない。
「「勝つのは(俺)(アタシ)だアアアアッ!!」
そのまま、二人は次々とロボをスクラップへと変えていく。
・・・・・・・と言うか、
――――クソ!全然ロボがいねえじゃねえか!――――
――――何だよこのスクラップの山は!?――――
――――チクショオオオ!1Pも取れてねえぞ!――――
完全にこの二人の無双状態であり、芦戸以外の他の受験生には殆どロボが回ってこない。
そしてその光景をモニターで見ている教師人は、
「おー、とんでもないのがいるねえ。」
「戦闘力だけなら受験生でトップレベルだな。」
「あの二人とそっちの爆発の子はほぼ決まりでしょう。」
「まあそうだとしても、真価が問われるのは・・・・・・・・」
そして教師の一人が手元のボタンを押した。
「ここからさ!!」
そして各実技会場の仮想ビル街を派手に破壊しながら、超巨大な0Pロボが投入された。
勿論その圧倒的脅威は竜太達がいる会場にもぶちこまれ・・・・・・
「「アアアアアアッ!!」」
二人は猛ダッシュで0Pから逃げている。
実は他の受験生よりもかなり先行していた二人の目の前に0Pが現れ、今二人のすぐ後ろにいるのだ。
「邪魔過ぎんだろあれ!斥亜お前あれ倒してこいよ!」
「ヒーロー足る者勝てない相手からは逃げるべしッ!!」
「情けない名言産み出してんじゃねえよ!!!」
「ベラベラ喋ってないでアイツから距離を取らないと!皆逃げてるよ!」
斥亜の言う通り、0Pロボの出現により試験会場は逃げ惑う受験生でパニック状態に陥っていた。
「どう考えても死人出るだろこの試験!」
「まあでもアタシ達の点数ならもうあとは逃げてるだけでも大丈夫・・・・・・ッ!!」
不意に言葉を詰まらせた斥亜の先には、うつ伏せに倒れたピンク色の肌に触覚の生えた少女がいた。
「三奈ちゃん!?」
「アイツ何してんだ!?」
二人の進行方向で倒れている彼女は、よく見ると足を仮想敵の残骸に挟まれており、身動きが取れなくなっていた。
懸命に自信の酸で残骸を溶かそうとしているが、体力がもうないのか中々抜け出せない。
(芦戸を挟んでる残骸を俺の爪で解体すれば・・・・・・でも加減してる時間がない!下手すると芦戸も切り裂きかねねえ!)
(アタシのバリアで残骸を吹き飛ばす・・・・・・いやそんなことしたら三奈ちゃんまで吹っ飛んじゃう!)
一瞬のうちに芦戸を助け出す方法を考え、そして却下した二人は・・・・・・芦戸の目の前で急ブレーキをかけ、0Pに相対する。
「斥亜ちゃん!?阿久津君!?何してるの!早く逃げなきゃ!!」
芦戸がかけた声を、二人はまるで聞こえないかのように無視した。
「何してるの!?無理に強い相手と戦わなきゃいけない訳じゃないじゃん!!勝てないなら逃げた方がいいじゃん!!」
奇しくも、それはさっき斥亜が言ったのと同じだことであった。
しかし、
「竜ちゃん、」
斥亜は芦戸ではなく、竜太に話始めた。
「さっき言ったのには続きがあるの。・・・・・ヒーロー足る者勝てない相手からは逃げるべし・・・・・・・・だけど、“後ろに守るべきものがあるのなら” 一歩たりとも引いてはいけない!!それがヒーローってモンだぁッ!!」
「ッ・・・・・・!」
斥亜の言葉に、芦戸は目を潤ませた。
「パートナーがそう言ってるんで、悪いけど勝手に助けさせてもらうぜ!」
竜太も斥亜の言葉通り、退くつもりはない。
この二人に、誰かを見捨てると言う選択肢は皆無なのだ。
「行くぞ斥亜!転倒させちまえば逃げる時間は稼げる!!」
「合点だッ!!」
0Pに向かって走り出した竜太の背中に斥亜が飛び乗り、竜太が地面を全力で蹴りとんでもない程の跳躍を見せた。
その高さは0Pの胴体に達する程だ。
そして竜太の背を蹴って飛び出した斥亜は特大のバリアを手のひらの上で球体状(超大玉螺旋丸みたいな感じ)に発生させ、
「うおりゃああああッ!!」
思いっきり0Pに叩きつけた。
その一撃は大きく0Pの巨体を揺らし、体勢を崩した。
が、その巨体を倒すまでには至らず直ぐに体勢を建て直し始める。
しかし、体勢を直そうとしていた0Pの目の前に、再度竜太が現れた。
そして身体を大きく回転させ、強靭な尾を振るい、
「そのまま寝てろクソ野郎ッ!!」
放たれた渾身の一撃は、今度こそ0Pを転倒させた。
「「ヨッシャアアアッ!!」」
そして斥亜と竜太が、着地したそのとき、
『終ッ了~!!!!』
雄英高校入学試験が終了した。
何かデク君と全く同じことしてた気がしますがまあよしとしましょう( ̄▽ ̄;)
次回もよろしくお願いいたします。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
俺とアタシの次なる1歩
ホント更新遅くてごめんなさい。
今回ようやく入学です。
さて、雄英入試試験から少し時間が経ち春がやって来た。
始まりの季節であるこの四月、阿久津家にも新たなスタートを踏み出す少年がいた。
「まさかアンタが雄英に行くことになるなんてねぇ・・・・・」
「本当に。母さんもビックリよ。」
玄関先で竜太の見送りをしているのは、彼の姉の千治〈ちはる〉と、母の鱗子〈りんこ〉である。
「合格してからずっとそれだな。俺だってやるときゃやるんだよ。姉さんと違ってな。」
「言うようになったじゃないこの愚弟が~。」
そう言い千治は竜太に歩み寄り・・・・・・ガッチリとヘッドロックを決めた。
「ああそうよ!!こちとら留年してるわよ!!クソこのやろうこのまま首いったろか!!」
千治は大学を留年し、二周目の二回生ライフをこの春からエンジョイすることになっている。
「ギブギブギブギブ!!ちょ、姉さん!未来ある弟の命が・・・・・・」
「姉より優秀な弟など要らん。」
「最低だこの人!!・・・・・あああ、マジで・・・落ちる・・・・・・」
そして竜太が本気で意識を手放しそうになったその時、千治はヘッドロックを解き・・・・・・今度は、しっかりと竜太を抱き締めた。
「ふえ?姉さん!?」
いきなり姉に抱き締められ、竜太は顔を赤くした。
「ホント生意気なこと言うようになって・・・・・・・安心したよ。・・・・・・・“あれ”以来アンタさ、随分卑屈になっちゃったじゃん?あんなに好きだったヒーローも毛嫌いしちゃって・・・・・・自分の個性にもトラウマ抱えてさ。私らともあんまり話さなくなって・・・・・・姉さんこれでも心配してたんだよ?」
「・・・・・・」
竜太はただ黙って姉の話に聞き入る。
「それがいきなりヴィラン倒して雄英受験するって言うじゃん?正直応援すべきなのかどうなのか最初は分かんなかった。・・・・・・・・・でもね、アンタ凄い一生懸命だったじゃん。勉強もそうだけど、あんなに嫌ってた個性にもちゃんと向き合えるようになってて・・・・・・だからさ、姉さんアンタを全力で応援するって決めたの。こんなダメな姉貴だけど・・・・・弟の背中押すぐらいさせてちょうだい。」
そうして、千治は竜太に背中を向けさせ・・・・・・・・思いっきり竜太の背中を叩いた。
「イッッッッテエ!!!何すんだ姉さん!!」
「そいつが私からの餞別だ。胸張って行ってきな!」
一言文句を言おうとした竜太であったが、千治の快活な笑顔を見てその気は失せた。
「たまには姉らしいことするじゃない。」
そして二人を見守っていた鱗子も竜太に歩み寄ってきた。
「竜太、言いたいことはほとんど千治に取られちゃったけど、とにかくその斥亜ちゃんって子は一度連れてきなさい。息子に発破かけてくれたお礼を言いたいから。」
「了解、今度連れてくるよ。」
「よろしい。それじゃ、父さんからの伝言・・・・・・『健闘を祈る』・・・・だって。」
父親、直治からの伝言を聞いた竜太は思わず吹き出した。
「クク・・・・ハハハハ!10文字以内に納めるとか!父さんらしいな。」
そしてひとしきり笑い終えた竜太は鞄を背負い直し、今日から着ていく制服の襟を正した。
「それじゃあ、行ってきます!」
「「行ってらっしゃい。」」
今日、阿久津竜太は新たな一歩を踏み出したのであった。
「だあああああああヤバイヤバイヤバイヤバイ遅刻遅刻遅刻遅刻ううううう!!」
「入学初日に寝坊するとかどういう神経してんのかしらね?」
ところかわってここは広井家。ここにも今日新たな一歩を踏み出す少女がいるのだが・・・・・・まあ見てわかる通り、斥亜が寝坊し慌てて準備をしている。
「ってか普通起こさない!?娘の入学式だよ!?」
「親のモーニングコール当てするようなやつがヒーロー目指すなんて・・・・片腹痛いわね。」
「クッソ!スパルタだけど正論なだけに反論できん!!」
猛スピードで着替えを終えた斥亜を背負い、そのまま玄関に向かう。
「ちょっと、パン忘れてるわよ。」
「食べてる時間ない!」
「いや、遅刻と言えばパンくわえて登校しないと。」
「マジかこの親!?この窮地で遊んでやがる!!」
結局、斥亜はパンをくわえさせられた。
「いっふぇふぃふぁふ(行ってきます)!」
「あ、父さんからの伝言・・・・・・・・って行っちゃったか。」
飛鳥が夫からの伝言を思い出した時には既に斥亜は出ていってしまっていた。
「ホント慌ただしい子ねぇ。」
そう言いながらも、飛鳥は優しげに笑っていた。
「1-A ・・・・・この先か。」
竜太は一年間自身が身を置くクラスを探し廊下を歩いていた。そこに、
「モゴモガモグモゴ!!(竜ちゃーん!お早う!)」
口にパンパンにパンを詰め込んだ斥亜が合流した。
「・・・・・・いや何食ってんのお前?」
「モゴ!(パン!)」
「取り合えず食ってから喋れ。」
竜太にそう言われ、斥亜は口に詰めていたパンを急いで飲み込む。
「ふ~。さて改めて、お早う竜太ちゃん♪」
「おう。」
そうして、二人はいつものように並んで歩く。
「こっちってことはお前もA組か?」
「お、竜ちゃんも?よろしくね♪」
斥亜はニカッと笑顔を輝かせ、
「ハイハイよろしく。」
「アタシの悩殺スマイルをあしらった!?」
竜太に軽く流された。
「ああそうだ、斥亜お前入試何位だった?」
竜太の質問に、斥亜はニヤリと笑み浮かべ、大袈裟にポーズを取る。
「フッフッフッフ、よくぞ聞いてくれました・・・・・聞いて驚きな!アタシの入試成績は・・・・・何と1位だぁぁぁああ!!」
「ああやっぱりか。」
「あれアッサリ!?」
斥亜は自分の順位を聞いたら竜太が目を丸くして驚く様を嘲笑う予定だったのだが、竜太の淡々とした返しに逆に面食らった。
「何!?まさか知ってたの!?」
「まあ予想はついたよ。だって・・・・・・・・・・・・・・
俺1位タイだからな。」
竜太が発した衝撃の事実に斥亜は、
「えぇぇえぇぇぇええええ!!??」
「うるせぇ廊下で叫ぶな。」
「いやいやいやいや!え!?じゃあ何!?1位って二人いたの!?」
「いや、あと一人いるから合計三人だ。」
「三人!?前代未聞だよそれ!?」
「まあ確かにな・・・・・てか何で知らねえんだよお前。」
竜太の呆れたような視線に、斥亜はばつが悪そうに目を反らした。
「あ、アハハハ、アタシ自分が1位だっての知って舞い上がってたからさ、人数とか気にしてなかった・・・・・」
「成る程、お前らしいな。」
「てかもう一人の一位って誰かね?」
「それは知らん。それよかさっさと行かねぇと、初日に遅刻とか洒落になんね・・・・・」
竜太が言い切る前に、彼の横から斥亜の姿が消えていた。
「マジかアイツ!?見捨てて行きやがった!!」
薄情なパートナーに驚愕しつつ、竜太も全速力で教室へと走り去って行った。
「ギリ・・・・・ギリ・・・・・セーフ・・・・・」
何とか遅刻ギリギリで教室に辿り着いた竜太は、1ーAとかかれた巨大なドアの前に立っていた。個性により身体が大きくなってしまう生徒もいるため、バリアフリーな構造をしているのだ。
そしてそのドアを開けた竜太が目にしたのは・・・・・・ピンク色の肌の少女と抱き合う彼のパートナーの姿だった。
「やったー!三奈ちゃんもA組だったんだね!」
「私も嬉しいよ!ちゃんとお礼も言えてなかったし!」
竜太は再開を喜ぶ二人の少女を微笑ましく見守ったあと、
「『やったー!』じゃねえだろこの紫野郎。」
斥亜の頭にアイアンクローをかました。
「あだだだだだだだだだだ!!ちょ、待っ、竜ちゃん!これダメなやつ!!」
「あ、阿久津もA組だったんだ!」
「おー、よろしくな。」
「私も竜ちゃんって呼んでいい?私のことも三奈でいいから。」
「俺のあだ名はそれしかねぇのか・・・・・ま、いいよ。よろしくな三奈。」
「ウン!よろしくね竜ちゃん。」
「人の頭握りながらのほほんと挨拶するなああああ!!」
そうして、ようやく斥亜は竜太のアイアンクローから開放された。
「ああ・・・・・多分頭の形変わった・・・・・・」
「自業自得だ。」
頭を押さえる斥亜を竜太はクズを見るような冷たい目で見下す。
「ヒーロー足る者、時には仲間を犠牲にしてでも自身が生き残らねばならんのだよ・・・・・・」
「お前の名言レパートリーに“仲間見捨てた時点でヒーローじゃない”って加えとけ。」
「綺麗事だけで世界は収まらないのさ。」
「ヒーローがそれ言ったら終いだな。」
相も変わらず下らない論争に耽る二人であったが、
「イチャイチャしたいなら他所へ行け。」
「「!?」」
突如か後ろから声をかけられた。
そして二人が振り替えるとそこには・・・・・・
「ここは・・・・・・・・ヒーロー科だぞ。」
そう言いながらウォーターオンゼリー(10秒飯)を一瞬で飲みほすくたびれた男が寝袋の中で倒れていた。
・・・・・・書いていてよく分からない説明だが事実なので仕方ない。
((((((なんか!!!いるぅぅ!!))))))
「ハイ静かになるまでに8秒かかりました。時間は有限、君たちはこう理性に欠くね。」
「いたね~、黙るまでの時間計る先生。」
「なんか勝手にタイムアタックしてるよな。」
教室の全員が唖然とするなか、斥亜と竜太は平常運転であった。
「流石入試1位の二人だ。図太い神経だな。」
「「「「「入試1位!?」」」」」
「いや~、そんなに誉められても・・・・・・」
「いや今の皮肉だろ気づけ。」
そして照れ笑いを浮かべる斥亜に竜太かまツッコミを入れたその時、
「テメェェらかぁぁぁあ1位被りぃぃい!!!」
爆発的に目付きの悪い少年が鬼の形相で二人に歩み寄ってきた。
「デクの野郎のせいで狂った俺の将来がさらに狂っちまったじゃねぇか!!!俺が唯一の1位じゃなきゃ「おお!!君が残りの一人!?凄いよ竜ちゃん!このクラスに入試1位3人が終結してた!!」
「おいコラ話聞「どういうクラス分けだよ・・・・・あ、俺は阿久津竜太だ。よろしくな。」
「テメェらいい加減に「アタシは広井斥亜!よろしくね!」
「俺の話を聞けぇぇえええええ!!!!」
キレる少年はお構いなしに話しかけてくる竜太と斥亜に翻弄され、
「いや俺の話を聞けよ。」
寝袋の男は寂しげに呟いた。
というわけで個性把握テストは次回となります。
たぶんまたしばらくかかるとは思いますが、気長にお待ちください(  ̄▽ ̄)
目次 感想へのリンク しおりを挟む