ソードアート・オンラインの世界に転生 (錯也)
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プロローグ
『おかえり、待っていたよ、討也』
俺が、はたらく魔王さま!の世界から戻って来ると、この真っ白なだけの世界の主、アドレナクが、急にそんなことを言い出した。
「…………」
今まで、転生した世界から帰ってきて、待っていた等という言葉を言われたことが無いため、俺は思わず黙り込む。
いや、別に照れてるとかじゃあ無いからね?
単純に、嫌な予感がするのだ。
「待っていた、っていうのはどういうことだ?」
仕方なく、いやいや俺が質問をしてやると、アドレナクは、よくぞ聞いてくれました!と言わんばかりの表情をする。
実際には、この神、アドレナクには明確な姿は存在しないので、そういう表情をした気配するだけなのだが。
やっぱ聞きたくないんだけど。
『君が次に転生する世界を決めておいた』
なんだ、そんなことか。てっきり、面倒な無理難題を注文して来るかも、と思っていた。
その無理難題が、俺が楽しめる類の物なら大歓迎なのだがねぇ。
「で?行き先は秘密なのか?」
前回、はたらく魔王さま!の世界に転生したときはそうだった。
もっとも、転生した場所が魔王城だったから、速攻でバレたけど。
『今回行ってもらうのは、ソードアート・オンラインの世界だ』
「ソードアート・オンライン?……ああ、生前、題名だけは聞いた覚えがあるぜ」
内容についてはさっぱりだけど。
『はたらく魔王さま!を読んでいてソードアート・オンラインを読んでいないだと!?』
「はたらく魔王さま!ディスってんのか?作者さんに謝りなさい!」
『はたらく魔王さま!の作者の名前を知らない君に言われたくないね』
確かに知らないけどさ……。
『ちなみに、行き先を教えたのはソードアート・オンラインの世界でやってほしい事があるからだ』
嫌な予感の正体分かったよ。これだ。この、アドレナクからのお願い☆だ。
「で?何をしてくれば良いんだ?」
『ザ・シードを確保してきてくれ』
そう言いながら、アドレナクがどこからともなく出現させ投げて寄越してきたのは、一台のノートパソコンだった。
おそらくそのザ・シードとこのパソコンは何か関係があるのだろうが……。
「ザ・シードがどんな物かは教えてもらえないのかい?」
そういうと、アドレナクはうーむ、と唸りだした。
説明しにくいものなのかな?
『残念ながら、それを教えてあげる事はできないかな。そっちの方が君としても楽しめるだろう?ああ、でもこれだけは言っておこう。ザ・シードは手に入れることができるようになったら、必ず君の耳にも入るだろうし、そのパソコンがあれば入手はたやすいはずだ。重ねて言っておくが、そのパソコン、京以上のスペックがあるんだ。壊してくれるなよ?』
マジか、神様にかかればスパコンもこのサイズかよ。
そう思いながら、俺は受けとったノートパソコンを見るが、良く考えたら俺もこの程度なら作れるんだなと思い直した。
『さて、これから君に行ってもらう世界、ソードアート・オンラインの世界について最低限のことを教えておこうか』
「なるほど、ソードアート・オンラインのゲームの事は、ネットや説明書で確認するとしようかな」
『そうしてくれ、ソードアート・オンラインとナーヴギアの入手については心配する必要は無い。僕が向こうに用意してある』
それはずいぶんと用意の良いことだ。
『さて、特典についてだが……3番目の、魔力を操るための特典は入れ替えておいた。今回入れ替えた特典には名前がある。【超六感】まあ、感を恐ろしく強化するだけの特典だ』
「ゲーム内でも使えるのか?」
『当然だよ。どうせ君のダークマター能力や、ロードラのスキルについては、ソードアート・オンラインに限らず様々なゲームで、再現なんてできないからね。あと、1番目の身体機能強化の特典も入れ替えておいた。そもそも、この特典で引き出せる限界以上のスペックを君の躯は兼ね備えているし、君も手加減のためにしかこの特典を利用していないみたいだからなくても良いだろう?』
確かに、2番目の涼宮ハルヒの憂鬱の世界にいるときから、無駄だなぁとは思っていた。いい機会だろう。
ただ…………。
「どんな特典と入れ替えたんだ?」
それは気になる。
『向こうに着いたら確認してくれ。あ、転生するのはソードアート・オンライン配信の3時間前だ、情報を集めるなら早めにね』
「了解だ、それじゃ…楽しんで来るよ」
『いってらっしゃい』
アドレナクのその言葉と同時に、俺の身体を白い炎のような物が包み、やがて視界が暗転した。
ゆっくりと目開けると、そこはどこかの部屋の中だった。取り合えず、調べるのも面倒なので、ロードラのスキル、「パーフェクトスキャン」を使って、今いる場所の詳細を把握する。
ここはどうやらアドレナクが用意した俺の家のようである。
ちなみに埼玉県のようだ。
「わざわざこんな広い家を用意する必要も無いだろうに……」
スキルを使って得た情報を確認しながら俺は苦笑した。なぜか知らないけど3階建てだ。
場所を確認し終わった俺は、アドレナクから受けとった特典の確認をする。
アドレナクの言葉通り、一番目の特典が変化していた。
「うーんとぉ……病気を削除する特典?…………ゲーム内では当然使えないみたいだなあ……は?何に使えっていうんだコレ?」
取り合えず、考えてもわからなかったので、諦めて俺はアドレナクから受けとったパソコンを取りだしソードアート・オンラインの情報を集めることにした。
「あ、ナーヴギアとSAOどこにあるんだ?探さないと」
アニメを見ただけなので、間違っていたりするところもあるかもしれないので、その時はご指摘いただけるとありがたいです。
ラノベを買うかは……まだわかりません(^-^;
ここでアンケート…というか見てくださっている方に、質問です。
SAO内にユウキを登場させるか、ALOで登場させるかです。
希望を感想に書いていただけるとありがたいです。
次の話を書くとまでに多い方で書いて行きたいと思います。
次の話はそう遠くないうちに書きたいと思います。よろしくお願いします。m(._.)m
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リンク・スタート
前回のユウキをSAOに出すかどうか、回答してくれた方が一人だけなので決め兼ねています。
感想とともに意見待ってます!
ソードアート・オンライン。VR(フルダイブ)ゲームにおける、初のMMORPGのジャンルで、ナーブギアのソフトとして限定10000本が発売されたらしい。
正直、アドレナクの言っていたザ・シードなるものとどういう関係が有るのかはいくら調べても討也には分からなかった。
数時間前、ベッドの上にあるナーヴギアとそのソフト、ソードアート・オンラインを見つけた討也は、取りあえずソードアート・オンライン、略してSAOがどんなゲームなのかを調べ始めた。
「ソード・スキル……アインクラッド……100の層……ふぅん?まぁ面白そうじゃないか」
ゲームの中とはいえども、完璧までに再現されたファンタジーの世界は、なるほど最早異世界と言っても良いほどだろう。もっとも、数時間前まで実際にはたらく魔王さま!の世界にいた討也にとっては、ファンタジーという世界観というところについて特別魅力を感じるわけでは無いのだが。
まあ、詳しいことは実際にソードアート・オンラインにログインしてから確認すればいいだろう、と討也は考えて時間を確認する。
12:57分。SAO配信まで、残り3分。すでにキャリブレーションとかなどの初期設定はすませてある。
パソコンを閉じ、机の上に置く。
SAOをセットし、ナーブギアを被る。
「案外重いなぁ……」
なんてナーブギアを被った感想の独り言を言いながら、ベッドに横になる。
1:00。SAOの配信開始の時間になる。
討也の身体は特殊なので、長い間飲まず食わず、寝たきりでも特に問題はない。取りあえず、ザ・シードの手がかりが掴めるまで潜り続けよう。と考えながら、ソードアート・オンラインに入るための言葉を口にした。
「リンク・スタート」
討也はまだ知らない。これから約2年間ソードアート・オンラインがログアウト不可能のデスゲームになることを。
こうして、チート転生者は剣の世界に降り立った。
ゆっくり目を開けると、そこには中世ヨーロッパのような雰囲気を持つファンタジーの世界が広がっていた。
まあ、こんなもんだろう。正直、俺は実際にファンタジーの世界であるロード・トゥ・ドラゴンや、はたらく魔王さま!の世界に居たので、新鮮味の様なものは感じない。
それにしても、と俺は首を傾げる。
「キャラメイクとか有るはずなのになぁ?」
俺はリンク・スタートと言った瞬間に、特に何もなくすぐにここに来た。
集めた情報では、自分のアバターを好きにカスタマイズ出来るはずだったので違和感を感じる。
とはいえ、これはアドレナクが用意したものだ。もともとそのような設定はすませてあったのかもしれないと勝手に納得して、まずはマップを開き武器の売っている場所を確認する。
俺は、どこの世界でも最初にするのは現在位置の確認、および、ファンタジーの世界なら次の町や村への移動だ。
生前もRPGはそういうプレイスタイルを取っていた。
このSAOの世界では、攻撃には武器がなければ話にならない。
よって、まずは武器の確保だ。
「現実世界なら素手で武器くらい破壊できるんだけどねぇ~」
周りの人が聞いたら首を傾げそうなセリフを吐きつつ、俺は確認したマップに従って、武器やへ向かう。
途中、窓ガラスが有ったので、俺は自分の姿を確認しておくことにした。
「…………誰?」
そこそこイケメンの金髪のアバターがそこには写っていた。
現実世界での俺の姿は、黒い髪に、赤い目をしている。
後ろ髪が伸びていて、これをロード・トゥ・ドラゴン(ロードラ)の世界にいるときに、宝条まゆという少女に貰った白いリボンで纏めている。
ちなみに、纏めていないと大抵性別確認をされる。ロードラの世界に居るときは纏めていても男か女かと確認してくる奴も居た。
色白なところに来て、顔は整っていると、今は居ない相棒からもお墨付きをもらっているほどである。髪を纏めていないと女にも見えるらしい。
「まあ、この見た目なら女に見られることはないな」
一々否定するのは面倒だしこれで良いかと納得しておく。
そういえば、と気になって自分のキャラネームを確認してみると、Touyaとなっていた。
「トウヤって……本名かよぉ」
もっとも神無討也という名前自体、生前のものではないので半分偽名みたいなものではあるのだが。
それよりも武器だと、思い直し、俺は武器屋へと駆けだした。
武器は取りあえず曲刀を選んだ。そもそも、俺はいままで、いろいろな武器を使ったことがあるのでそこまで迷う必要はない。ソードスキルとかいうのは使い続けないと熟練度が上がらないが、俺にはいくらでも時間がある。
まずは曲刀から上げておこうという軽い気持ちで選んだのだ。
そもそも、どんな武器が得意とかは特にない。強いて言うなら弓は苦手だ。
俺の現実世界での身体能力が異常なのも原因の一つなのだが、ダガーを初めとした様々な武器を投擲したほうが遥かに弾速も威力も高いからである。おまけに、現実世界ではダークマター能力などで武器などいくらでも好きな形のものを製造できる。残弾の心配などする必要はない。
そういう意味ではこの世界に弓矢がないのはありがたい。
もっとも投剣というのはあるようだ。
スキルスロットに空きが出来たらコレも取るとしよう。
ちなみに、スキルスロットは最初に2つ、うち一つは《曲刀》で埋まっていて、もう一つは《隠蔽》を取った。
《索敵》というのも有ったのだが、コレはすでに現実世界で使え、この世界でもある程度効果を持っている、そのため後回しだ。ついでに言うと、アドレナクから、この世界に来るときに渡された《超六感》もかなりの索敵能力が期待できるはずだ。
なんせ、こちらは神様の特典である。
明確に敵の位置が分からなくても、狙われている気がするといった、嫌な予感の察知能力は非常に高いようである。
「次にスキルスロットが開いたら先に《投剣》を入れて、その後に《索敵》かな?」
スキルスロットを確認しながら、《始まりの街》の外へと向かっていく。歩きスマホみたいな事をしているわけだが、おそらく超六感の効果もあいまって目を瞑ってても人を躱す程度のことは出来る。
そうこうしてるるちにフィールドへと出たので、スロットの確認を中止し、腰の後ろに取り付けた鞘から先程店で買った曲刀を抜いた。
すぐそこに青いイノシシのようなmobがうろちょろしていた。
事前に仕入れた情報だと、確か《フレンジーボア》とかいう名前で、ドラ○エで言うところのスライム、ロードラで言うところのポイムに相当するエネミーである。
「最初の敵がイノシシのゲームっての、生きてるときにやったことあるなぁ、確かあれは白き魔女ってゲームだったか?」
生前やったゲームのことを思い出しつつ、俺はフレンジーボアへとゆらゆら近づいていった。
ソードスキルの発動には、構え、が重要になるらしい。その、構え、から特定の技を繰り出す。その威力は、通常の攻撃よりもはるかに高く設定されている代わりに、使った直後に技後硬直というものがあるとか。
正直に言うと、この、技、というのは現在の俺の戦闘スタイルとはかなり相性が悪い。
いままで居た、3つの世界…涼宮ハルヒの憂鬱の世界はあまり戦闘がなかったが、ロードラとはたらく魔王さま!の世界で俺が得意としたのが物理攻撃中心の接近戦である。
だが、一言で接近戦と言っても、俺の場合はよほどの事がない限りまず構えというものを取らない。
スキルや魔力、聖法気など様々な攻撃手段を持つ者が多くいるあれらの世界では、まず敵が見かけ通りの攻撃を行う保証などありはしない。
実際、獲物は二丁拳銃なのにそこから放たれる攻撃は当たれば核爆弾クラスのものだったりする相手や、ムキムキの見るからに肉弾戦メインな見た目の相手が、めちゃくちゃ魔法を使ってくる奴だったなどということは結構あった。
相手の手の内はコチラからは読めない、その状況で、相手にこちらの攻撃パターンなどが見切られることがどれほど危険な事かは分かるはずである。
そのために俺が編み出したのがノーモーションからの攻撃である。
戦闘中の癖すら出来うる限り無くし、ダークマター製の武器も攻撃直前に用意することによって、どんな武器で、どんな攻撃を、どのようなタイミングで使うかを悟られないようにするのだ。
普段使う武器を出来る限り携帯せず影の中の空間倉庫にしまっておくのもソレが理由だ。
まあ、俺の場合素手でも相当な戦闘能力を持っては居るのだが。
つまり、ソードスキルごとに設定された構え、そこからの攻撃スキル発動という流れは俺の戦闘スタイルとは程遠い訳である。
そうはいっても、そこは数万年生きている俺だ。時には手加減をするため(構えによって相手に攻撃の仕方などを予想させるため)にわざわざ構えを取って戦うことも出来るようにはしてある。
まあ、相性が悪いとか、戦闘スタイルが違うとか、いろいろ言ったが、結局思うところはただ一つ。
「一々モーション取るのめんどくさいなぁ……」
というわけである。
とは言ってもシステム的にそうしないと、ソードスキルが発動しないというのらば仕方あるまい。と、俺は曲刀を構え、刀身がピンク色に輝くのを見てから、フレンジーボアへ《リーパー》を放つ。
なんでも、このmobこちらから攻撃しない限りは何もして来ないらしい。というわけで、俺が放ったリーパーは一撃でフレンジーボアのHPゲージを削りきり、青いイノシシはもれなく青緑色のポリコン片となって四散した。
「ピンク色に光るとビームサーベルみたいだな」
次の相手を見つけそちらに近づきながら、構え、ソードスキルを叩き込む。
それをだいたい十数回繰り返し、毎度発動するのを確認した。
慣れてきたので、今度は通常攻撃だけで倒して見ることにする。
さすがに一撃で倒すのは、まだレベル的に不可能なようだが、連続で2.3発叩き込むと倒すことができた。
まあ、取り合えずやり方は分かったので、次は実際に攻撃して来る相手と戦闘をしてみよう、と、その前に……。
「さっきから隠れてこっち観察してる奴、ちょっと趣味悪いと思うなぁ、軽蔑するぜ」
草原にある大きな岩の影に隠れているプレイヤーを、超六感で感知したので声をかけてみる。
姿を現したのは、フードを被った小柄な少年だった。
姿などいくらでも偽れるこのゲーム内においては、これがリアルの姿だということは無いだろう。実際俺のアバターも全然違うわけだし。
「イヤあ、スマンスマン。ちょっと声掛け辛かったんだヨ。お前なかなか筋が良いナ?ベータテスターカ?」
ふぅむ、確かベータテスターというのは今の製品版の前…ベータ版をプレイした1000人の事を言うんだっけか?
「いいや、俺は今日外が初めてだぜ?」
「へぇ~、ルーキーなのにそんなに強いのカ。お前すごい奴だナ、オイラの名前はアルゴ。お前ハ?」
「トウヤだよ~」
「トウヤか、なあ、オイラとフレンド登録しておかないカ?」
アルゴという奴から、フレンド申請がきたので俺は少し考える。
超六感と合わせながらの俺の勘だと、コイツはベータテスターだ。フレンド登録をしておいて損は無いだろうと考える。
「まあ、そうだな。その申し出受けておくとしようか。ところでアルゴちゃんザ・シードって知ってるかい?」
俺がフレンド申請ボタンのYesをタッチしながら尋ねると、アルゴは一瞬キョトンとしたあとにこう言った。
「いや、知らないナ。何だそれハ?」
どうやらベータテスターでも知らないらしい。まあ、まだ一人目にしか確認してないから分からないが。
「いや、俺も良く知らないのさ。分かったら教えてくれると助かるよ」
「そうカ、いいゼ、分かったら教えてやるヨ。こっちでの金…コルは取るけどナ」
ちゃっかりしている。
「まあそれでいいや、じゃあ分かったらまたメッセージでも飛ばしてくれ、よろしくなお嬢ちゃん」
俺が楽しげな笑みを浮かべながら言うと、アルゴが目を見開いた。
「ナ!?なんで私が女って分かった!?」
「うん?勘だよ超六感。当たっていたなら御喝采だ」
それからすこしだけ会話をしてから、俺はアルゴと別れmobを狩りつづけていた。
しばらくすると、バンダナをつけた赤い髪の人物と、どこか勇者のような人物が俺に話しかけてきた。
「凄いな!アンタもベータテスターか?あ、俺はクラインってんだよろしくな」
「クライン…ね、よろしく。俺はトウヤだ、ちなみにベータテスターではないぜ」
「そうなのか?その割には動きがかなりよかったけど」
話を聞いていたもう一人も会話に加わって来る。
「ああ、さっきあった奴にもそんなこと言われたぜ」
アルゴの事だ。
「そりゃあそれだけ動ければ言われもするだろうな。あ、俺はキリトだ、よろしくトウヤ?だよな?」
「ああ、それであってる。ところでなんだ?お前らベータテスターなのか?」
こんな最初の方から街の外に出てるのだからその可能性が高いのだが。
「いや、俺は今日始めたばっかだ。キリトがベータテスターなんだ。で、戦い方のコツをレクチャーしてもらおうとこうして、街から出てきたってわけさ。あ、トウヤもどうだ一緒に?」
うーん。特に何か教えて貰うものがあるかは分からないけれど、まあ初日だし焦ることは無いんだしそれも良いか。
「それじゃあ、キリトがよければ俺も一緒に教えて貰うとしようかな?」
「はは、なんかトウヤにはもう教えること残ってなさそうだけどな。それじゃあまずはソードスキルの使い方から…」
そう言いながら背中の片手剣を抜くキリトを見ながら、俺は考える。
「(何となく、この二人は重要人物になりそうな気がするな。それを言ったらさっきのアルゴからも似たような雰囲気を感じたけど)」
ま、いまここで深く考えても仕方あるまい。取り合えずは片手剣のソードスキルも見せてもらおうと、俺はキリトの動きに注目することにした。
前の話で討也が言っている通り、討也は原作を知りません。よってチート転生もので良くあるような展開の先読みなどもあまりしません。
誤字などございましたら御指摘下さいm(._.)m
あと設定とか間違ってるところもあるのかな?間違えてないと思いたい(^-^;
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デスゲーム・スタート
長い……ですかね?(^-^;長かったら言ってください、もう少し区切ります。
あと未だにユウキ出すか(SAOに)決め兼ねてます。意見ありましたらお願いします。
一応投稿前に読み返してはいますが、誤字などあるかも知れないので、見つけましたら知らせてくださいm(._.)m
sideトウヤ
俺はキリトに片手直剣のソードスキル《スラント》を見せてもらった後は、時々ポップしてくるフレンジーボアを狩り続けていた。
キリト曰く、ソードスキルの使い方や動き方も完璧で、アドバイス出来ることは特にないとか。まあ、動き方については、現実世界と特に変わらないので、そこはいままで様々な世界で戦い続けた経験がそのまま生きているのだろう。ソードスキルについては、発動の仕方さえ分かってしまえば特に問題はないだろう。
とはいえ、その発動の仕方がわからない奴が今俺の目の前で四苦八苦している。
「んー!アレ?ぜんぜん出来ねーなぁ……こうか?せぃやぁっ!!」
おう、前見ろよ?クライン君?
ソードスキルが発動しないと騒いでいるうちに、クラインはフレンジーボアに突進され吹っ飛ばされた。
「ぁ…がぁ!股ぐら!!」
「イヤイヤ、このゲーム痛覚は無いはずだろ」
「あ、そうだった」
仕方ねぇなぁ、少しアドバイスしてやるか。
「あのな、クライン。重要なのは構えだよ、そんで後はタイミング良く技を発動させるだけ。発動までやれば後はシステムのアシストに従ってお前の体が勝手に技を使ってくれる」
「へぇ…構えが重要ねぇ…なるほど」
俺の説明を聞いて、再びこちらに向かってくるフレンジーボアに、クラインは向き直る。
「トウヤ、説明するのうまいな」
フレンジーボアに集中しだしたクラインに代わって、キリトが話しかけてきた。
ちなみにキリトも一応クラインに説明したのだが、彼の説明では今のところうまく行っていない。
「うん?まぁ……物わかりの悪い奴と長いこと一緒に居たからね」
まあ、物わかりの悪やつに限らず、色々とキャラの濃い人物達と俺は関わってきたが。
「?……ふぅん、そうなのか?」
お互いにリアルの事など分からないためか、キリトの返事は曖昧だった。
そんな曖昧な返事を聞きつつ、俺は視線をフレンジーボアと対峙するクラインに向け続けている。
さて、今度はうまく行くだろうか?
まっすぐに突撃してくるフレンジーボアに対して、クラインが曲刀を構える。すると、刀身がピンクに光だし、クラインがタイミング良く《リーパー》を放った。
「お疲れさん」
フレンジーボアを倒して子供のようにはしゃぐクラインに労いの言葉をかけてやる。
「まあ、いまの敵スライムクラスだけどな」
隣でキリトがそう言う。あー、それで体の色が青いのかあのイノシシ。関係ないか。
「マジ!?オレァてっきり中ボスくらいかと……」
「フィールドに中ボスがうろついてるとかどんなクソゲーだよ?」
「そうだぜ、そんなわけ無いって」
俺のツッコミにキリトも合わせる。
「で?どうすんだ?もう何回かやってモノにした方がいいんじゃねぇの?」
さっきのまぐれかもしれないしね?
「まぐれじゃねぇって!…ああ…まだ続けたいところなんだが、俺5:30にピザ予約しててよ」
そうクラインが言うので、時間を確認してみると、5:17分。成る程、確かにそろそろログアウトしておいた方が良い時間かもしれない。
「だったらフレンド登録だけでもしておこうぜ?…トウヤも」
「ん?ああ別に構わないよん」
というわけで、この場の三人がそれぞれをフレンドに登録してクラインがログアウトする事になった。
「トウヤはどうする?もう落ちるのか?」
「いや、いまのうちにホルンカとかいう次の村にでも向かおうかねぇ……って思ってるんだが…」
「……そうか、だったらちょうど良いし俺も……」
「アレ?ログアウトボタンがねぇぞ?」
キリトと話していると、クラインのそんな声が聞こえたので、俺もキリトもそちらを向き、ログアウトコマンドの位置を教えてやる。
「あ、いや、そこにも無いんだって」
俺とキリトは一瞬そんなバカなと顔を見合わせ、それからすぐにメインメニューを操作する。
「およ、確かに無いねぇ?」
「だろう?」
「ホントだ……」
事前に説明書を見た場所にはログアウトコマンドのメニューは存在しない。一応と他の場所もくまなく探してみたが、やはり見あたらなかった。
「まあ、サービス初日だかんな、今頃GMコールが殺到して運営は半泣きだろうよ」
ふぅん?と考えつつ、とりあえずクラインにこれだけは言っておいてやることにする。
「余裕ぶっこいてるところ悪いけどよ?お前ピザは良いのかい?」
するとなにやら嘆くように騒ぎ出したクラインを意識の外にやりつつ、俺はふと考える。
ここは、物語の世界の中なのだと。
つまり、ドラマチックで劇的な何かが怒ることは確定しているも同然。ならばコレが何らかの始まりで有る可能性は高い。
他に方法は無いのか?いや無いよ。というような会話を聞きつつ、俺は呟いた。
「こりゃあ、何かイヤな予感がするねぇ…」
「トウヤ?」
その呟きを聞いたのか、キリトが不思議そうな顔で俺を見る。
「それにしても……なんかおかしいなぁ」
少なくとも、これから始まるのはあまり笑えるものでは無い気がする。
「ああ、確かにそうだな」
キリトが俺の言葉に同意する。
「おかしいって……バグなんだから、そりゃそうだろ?」
クラインはよく分からないようでそんな言葉を返してきた。
「そうじゃなくて、おかしいのは対応の仕方だよ、クライン。ログアウト出来ないってのは結構致命的なバグだろう?特にこの手の…VRゲームでは」
「ああ、これからの運営に関わる大問題だ。お前のピザみたいにリアルで金銭的な損害を被った奴だって、お前以外にもいるだろうし」
そう、ログアウト出来なくて困るのはどちらかというと運営よりプレイヤーである俺たちだ。
キリトの言葉に俺はさらに続けた。
「今のこの状況、俺だったらまず全員強制ログアウトさせて、あとは公式サイトにお詫び載せるなり、別のにナウンスをするなり。とにかくそういう対応を取るぜ?」
「ああ、それが妥当だよな。それなのに……俺達がこのバグに気づいて15分は経ってるはずなのに、いまだに運営からアナウンスすら無いのは奇妙すぎる。……もしかしてトウヤのイヤな予感ってソレのこと言ってたのか?」
「……んー……ログアウト出来ない……で済めば良いけどねぇ?」
超六感を信じるならもっと面倒事になりそうなのだが。
「おいおい、この状況で洒落にならねーこと言わないでくれよ。ていうか、ピザどうしよう……」
いや、それは時間過ぎてるし諦めるしか無いだろう?
「外の人にナーヴギアを取り外して貰うとかが現実的だけど……こっちからじゃ現実世界に連絡取りようがないもんな」
「その手があったか!……あ、でも俺ぁ一人暮らしなんだよなぁ……」
「俺もだな。キリトはご家族はいるのかい?」
「うん、まあ妹とかいるけど……多分この時間じゃまだナーヴギアを外しに来たりはしないだろうな」
今のところ全員ログアウトは望み薄か。
俺は転生者な上に身体能力なども異常だ。ロードラの世界では17年寝たきりでも身体能力は一切衰えなかったほどだ。数日ログアウト出来ない程度気にすることはない。が、長引けばクラインの方は危ないだろう。人間なんて数日飲まず食わずになれば衰弱するものだ。
そんな事を考えていると、《始まりの街》の方角から鐘の鳴る音が聞こえてくる。
「なんというか、不気味に聞こえるぜ」
そんな俺の言葉に、考えすぎだろ、と苦笑しながら二人が返そうとした瞬間に、俺達全員の身体を青い光が包み込んだ。
「この光……《転移》?」
キリトの呟きと同時に、俺の立つ場所が草原から石造りの地面に変わる。
ここは……。
「《始まりの街》か?」
周りにはかなりの人数が居る、下手をすればこのゲームにログインしている全員が集められているのかもしれない。
そんな中、俺はふと頭上から視線と死線と気配を感じ、ゆらりと空を見上げた。
sideキリト
青い光に包まれて俺達がやってきたのはこのゲーム、ソードアート・オンラインのスタート地《始まりの街》だった。
クラインとトウヤもすぐ近くに転移している。そのことに少し安堵しつつも、俺は周りを見回した。
かなりの人数のプレイヤー、おそらくログインしている全員がこの《始まりの街》の広場に集められているのだろう。
だが……何故?何故自分達はここに集められたのだろうか?
「おい、どうなってんだよ!?」
「早くしてくれよ!」
「GM出てこい!!」
など、様々な怒号が広場を飛び交う。
「運営からなんかアナウンスでも有るのか?」
キョロキョロと辺りを見回しながら、俺に話しかけてきたクラインに、どうだろうな、なんて言葉を返しながら、ふと、先程から一言も喋らないもう一人、トウヤの事が気になって彼が居るはずの後ろを振り返る。
振り向いた先に居たその金髪の少年は、その青黒い瞳で、訝しむような視線をジッと上空に向けていた。
上に何かあるのか?と、俺もトウヤの視線につられ上を見上げる。
見上げた先に浮かんで居たのは、《warning》《System Announcement》の表示がある赤い模様だ。
「へぇ……」
と、トウヤの発した声に俺は彼の方を再び見る。
「これは……面白い事になってきたなぁ」
そう言って、楽しげ、と表現するに相応しい笑みをトウヤは浮かべる。
だが、その口元の楽しげな表情の一方でさらに細められ、鋭くなったその目つきはいささかも笑ってはいなかった。
何故?何故トウヤはこんな表情をしている?
いまだに、この状況を飲み込めていない俺やクライン、ほぼ全員のプレイヤーと違い、トウヤのその目は、眼は、何かを確信したかのように、焔のごとく紅く揺らめく。
これから、運営からのアナウンスがあるだけだろう?そう言ってやりたいのに、言えない。いや、言わせない何かを確かに俺は感じていた。
「あっ…………上を見ろ!」
誰かのその言葉に、ほぼ全員のプレイヤーが上を見上げた気配がし、続いて、トウヤが。
「お出ましか」
と、呟く。
何が?と思いながら、先程の赤い模様がある位置を俺が見上げると、ちょうど赤い模様が第二層の底を染め上げるように広がり、その中央から血液のような何かがドロリと垂れてくるところだった。
その何かは、ぐにゃりと蠢き一つの形を保って上空で静止する。
出現したソレは、全高20メートルは有るであろう、真っ赤なロープを纏った巨人だった。
もっとも、巨人と言っても、フードの中には顔もなくローブの袖から、白い手袋にかけては腕が見あたらない。
つまり中身は空っぽなのだ。
「あれで杖を持ってたら、アルプトラウムにそっくりだな」
誰だよ?アルプトラウム?
トウヤの言葉に内心で疑問を投げかけつつ、俺は出現した赤ローブを見据える。
やがて、低く、落ち着いた、それでいてよく通る声が広場に響く。
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
その言葉に、俺は首を傾げる。「私の世界」、あの赤ローブがGMなら、確かにアレはこのソードアート・オンラインの世界を自由に操作する権限を持つ……言わば神の如き存在であろう。
が、今それを宣言することに何の意味があるというのだろうか?
はっきり言ってユーザーの反感を買うだけだ。
『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』
「なっ…………!?」
続いた赤ローブの言葉に、俺は絶句していた。恐らく周りの全員がそうだろ…「誰だよ?茅場晶彦?」
…………マジですかトウヤさん。まさかこのSAOの開発ディレクター&ナーヴギアの基礎設計者の名前を知らないとは、どんだけ情弱なんだ!?
その割にSAOのゲームシステムはちゃんと下調べしてるのに!!
『プレイヤー諸君は、すでにメイメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしこれはゲームの不具合ではない。繰り返す』
《これは不具合ではなく、ソードアート・オンライン本来の、仕様、である》
その一言がやけに頭に響く。
「し………、仕様…だと?」
クラインが呆然と呟いたのを俺はどこか遠くの事のように聞いていた。
コイツは何を言っている?
疑問に答える事無く滑らかなアナウンスは機械的に続く。
『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない』
城?城なんてどこに?そんな俺の疑問は、後ろで黙って話を聞いていたトウヤの呟きが解決してくれた。
「アインクラッド…?」
「あ…!」
成る程、城というのは、アインクラッド、つまりソードアート・オンラインの舞台そのものということか。
しかし、このアインクラッドは100層もあるのだが……?
俺の戸惑いは、しかし茅場晶彦の続く言葉に吹き飛ばされた。
『…………また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられたれ場合……ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』
俺は思わずクラインと呆けた顔を見合わせた。
脳そのものが、今の言葉の意味の理解を拒んでいるかのようだ。
そういえばトウヤは?と見てみると、案外金髪の少年は落ち着いた風で、顎に手をやり何かを考えているようだった。
なんでこんなに落ち着いてるんだよ?いや、多分トウヤもこの状況を受け止めきれていないのだろう。
だが……赤ローブの言葉を意味通りに取るなら、それはつまり「殺す」と言っているのだと理解し、俺は急に膝が震えるのを感じた。
「はは……何言ってんだよアイツ、おかしいんじゃねぇのか。んなことできるわけねぇ、ナーヴギアはただのゲーム機じゃねぇか。脳を破壊するなんて…そんなことできるわけがねぇんだ!」
「イヤ、出来るよ」
クラインの掠れた叫び声に、後ろからゾッとするほどつめたい声がかかる。
え?と、俺やクラインを含めた数人の周りの人間が、今の声の主……トウヤに視線を向けた。
当の本人、視線を向けられたトウヤは、やはりじっと赤ローブを睨み据えたままで言葉の続きを言う。
「難しい言葉に騙されるな、今奴が言ったのを誰にでも分かるように要約するなら……人間の脳をナーヴギアがチンするって言ったんだよ」
チンする……その言葉を聞いた者が思い浮かべたのは同じだったはずだ。
「チンって……トウヤ、お前……電子レンジじゃねぇんだからよぉ……」
「仕組みは確かに、電子レンジだ……原理的には……出来る?」
でも……。
「でも、ハッタリだ、だっていきなりナーヴギアの電源を引っこ抜けば、とてもそんな高出力の電磁波は発生されないはずだ……」
「…ん?ああ……言われてみればそれもそうか、でも、俺とクラインは一人暮らしだし、どっちにしてもログアウトにはまだ時間が掛かるだろうぜ……」
納得したようなトウヤの口調に、俺が安心したのも束の間、クラインの言葉がその安心を打ち砕く。
「いや、お前ら、電源を引っこ抜いても無理だ……ナーヴギアには内蔵バッテリーがある。ギアの三割はバッテリセルだって聞いた」
「あ……!?」
クラインの言葉に、聞き耳を立てていた数人も絶句する。
「マジかよ……やけに重いと思ったらそういう事か……」
「でも……無茶苦茶だろそんなの!瞬間停電でもあったらどうすんだよ!?」
ほとんど悲鳴に近いクラインの声を聞いていたかのように、上空から茅場の声でアナウンスが再開された。
『より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーヴギア本体のロック解除または破壊の試み……以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通じて告知されている。ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴギアの強制除装を試みた例が少なからずあり、その結果…』
一度、そこで言葉を一瞬区切る赤ローブ。次の瞬間には、どこかのメディアのニュースの映像などがいくつも赤ローブの周りに出現する。
LIVEと表記されたそのニュース映像からは、これが現実にリアルタイムで起きていることを予想するのは容易い。
『残念ながら、すでに213名のプレイヤーが、アインクラッドおよび現実世界からも永久退場している』
永久退場……つまり《死》。
「多すぎるな」
吐き捨てるように、トウヤが言った。
確かに…と思う。すでに200人以上が死んでいると奴は今奴言ったのだ。
「信じねぇ……信じねぇぞオレは」
座りこんだクラインが嗄れた声でそう言う。
「ただの脅しだろ。できるわけねぇそんなこと。くだらねぇことぐだぐだ言ってねぇで、とっとと出しやがれってんだ。いつまでもこんなイベントに付き合ってられるほどヒマじゃねえんだ。そうだよ……イベントだろう全部。オープニングの演出なんだろ。そうだろ」
そう思いたい、そんな願いを込めて俺が見上げた赤ローブはしかし、あくまで実務的なアナウンスを続行する。
『諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ていることを含め、繰り返し報道している。諸君のナーヴギアが強引に除装される棄権はすでに低くなっていると言ってよかろう。今後、諸君の現実の身体は、ナーヴギアを装着したまま二時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他の施設へと搬送され、厳重な介護態勢のもとに置かれるはずだ。諸君には、安心してゲーム攻略に励んでほしい』
「な…………」
信じられない。
「何を言っているんだ!ゲーム攻略だと!?ログアウト不能の状況で、呑気に遊べというのか!?……こんなもの、もうゲームでも何でもないだろうが!!」
またも、まるで俺の声が聞こえていたかのように、赤ローブが告げる。
『しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって、《ソードアート・オンライン》はすでにただのゲームではなく、もう一つの現実とでも言うべき存在だ。今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。』
「ん?」
トウヤが、後ろでまゆを顰める。
『ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に…………諸君等の脳は、ナーヴギアによって破壊される』
シンと、広場全体が静まり返る。全員が息を止めたかのように立ち尽くしていた。
いや、正確には一人だけ違った。
「アバターの残存HP=現実の命の残量…………俺は死ぬのかねぇ?」
茅場の言葉を確かめるように、トウヤが呟く。このとき、後半の言葉は、トウヤが死に恐怖したが故の台詞だと俺は思ったが、実はそれは違っていた。
もっとも、この時俺はそんな事は分からないので、俺はこう言った。
「馬鹿馬鹿しい、そんなことあるはずがない」
今の話を、ゲーム内でHPが無くなったら現実でも死ぬという話を聞いて、フィールドに出る馬鹿など居ないはずだ。
全員安全な街区圏内に引きこもり続けるに決まっている。
が、赤ローブはそんな俺の思考を読んでいるかのように、次なる言葉を発した。
『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。先に述べたとおり、アインクラッド最上部、つまり第百層までたどり着き、そこで待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう』
「クリア…………第百層だとぉ!?んなもん無理に決まってるだろ!!ベータじゃろくに上がれなかったって聞いたぞ!!」
クラインが立ち上がり言ったとおり、千人のベータテスターが参加したベータ版では、二ヶ月の期間中にクリアされたのはわずか六層までたったのだ。
いくらプレイヤーの人数が違うとは言え、デスゲームと化したこの状況では、クリアまでに何年かかるかわかったものでは無い。
が、赤ローブはそんな言葉に構うことなく。
『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え』
と、締めくくりとばかりに言った。
その言葉を聞いて、ほぼ全員が機械的にアイテムストレージを開いた。
所持品リストの一番上に、その《プレゼント》はあった。
手鏡。
そのアイテムを警戒しながらオブジェクト化させ手に取るが、特に何かが起こる気配はない。首を傾げ、クラインとトウヤの方を見ると、クラインとは手鏡を手に呆然としており、トウヤはこちらを見て首を振った。
と、突然広場に居た全員のアバターを白い光が包み込んだ。
例外なく、俺も光に呑まれ視界がホワイトアウトする。
ほんの数秒で晴れた視界の先に映ったのは知らない人物だった。
いや、装備は先程のクラインと同じ、つまり。
「お前、クラインか?」
「ん!?おめぇがキリトか?」
成る程、どうやら俺の顔もリアルのものになっているようだと、手紙を覗き確認して、俺とクラインはほぼ同時にトウヤの方を見た。
そこに居たのは、先ほどまでの金髪の少年とは打って変わって……まるで少女のような人物。
「トウヤ、おめぇ……女の子だったのかよ!?」
クラインの驚く声にうんざりしたようにため息をついた少女は、自分の髪を確認してもう一度ため息をついた。
「なんで髪纏めてるところまで再現してくれないのかねぇ?……ちなみにクライン、こんな見た目でも俺は男だよ」
そう言って、少女……おっと違った。トウヤは一瞬だけ左手で髪を纏めて見せた。
なるほど、そうやって髪を後ろで纏めると確かに少年に見えなくもない。
だが、すぐに纏めるのを止めた、背中の半ばまで伸びた艶やかな黒髪。
色白で、その上整った顔。焔の如く紅い両目。
ハッキリ言って、今の姿だと男だと言ってもあまり説得力は無い。
声が高めなのもトウヤが少女に見える原因に拍車をかけている。
「えぇ……ホントかよぉ?」
まあ、クラインが信じられずに疑うように言うのも無理はない。俺だっていまだに信じられない。
「そんなことよりもお前よぉ……気になることは他にねぇのかよ?」
「なんかその姿と声でそんな風に言われると、口の悪い女の子に罵られてるみたいな気分になるな」
うわぁ、と……クラインの発言に俺は一歩クラインから距離をとる。
トウヤは、おもいきり「うわぁ……気持ち悪いわぁ」と口にしながら、その紅い瞳でクラインに路傍のゴミを見るような視線を向けた。
うん、緊張感の全くないやり取りだ。
「ところで、トウヤ気になることってのは?」
俺の言葉に、クラインから死線をはずしたトウヤは、急に真面目な表情になり、赤ローブを視線で指した。
「アイツが、茅場さんとやらがこんな事をした理由さ」
確かに、目的はなんだ?と、俺たちは上空に浮かぶ赤ローブ。茅場晶彦に視線を投げた。
アルプトラウムとは、ロードラのユニットの一人です。
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アルター・メッセージ
活動報告のアンケート是非見てください!
今回もホルンカに辿り着けなかった_| ̄|○
『諸君は今、なぜ、と思っているだろう。なぜ私は-SAO及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのか?これは大規模なテロなのか?あるいは身代金目的の誘拐事件なのか?と』
トウヤが言ったことに答えるように、赤ローブは話を続けた。
一瞬だけ、俺はその声に感情のような物が乗ったのを感じていた。
『私の目的は、そのどちらでもない。それどころか今の私は、すでに一切の目的も、理由も持たない。なぜなら……この状況こそが、私にとっての最終的な目的だからだ。この世界を創り出し鑑賞するためだけにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた』
「ふぅむ……」
俺の後ろに立つトウヤが、何かを理解したような声を出す。
一体今の発言から何を読み取ったと言うのだろうか?
『以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の-健闘を祈る』
その言葉を最後に、赤ローブはゆっくり崩れて消えて行った。
後ろで、誰かが踵を返した足音を俺は聞いて、振り返る。ちょうどその時、トウヤが広場から奥の道へと歩み出したところで俺はクラインの腕を引っ張って慌ててついて行くことにした。
sideトウヤ
「嘘だろ……なんだよこれ、嘘だろ!」
「ふざけるなよ!出せ!ここから出せよ!」
「嫌あぁ!帰して!帰してよおおぉ!」
様々な声を背に、俺は、神無討也は……ゆったりと《始まりの街》の広場を後にする。
茅場晶彦は、目的など無いと、イヤ、達成されたと言っていたが、きっとそうではない。
奴は鑑賞するために、この世界を創ったのだと言った。
つまり、彼には何か見たいものがあったのだ。イヤ、あるのだ、というべきだろうか。
とはいえ、いくら俺が(その大半が涼宮ハルヒの憂鬱の世界の夏休みループとはいえ)数万年の時を行き長らえてきた人外でも、一度も会ったことの無い人間の全てを理解しろというのは無理がある。
ゆえに、茅場晶彦がこの世界を創り何が見たかったのかは気にしないことにした。
やることはただ一つ、茅場晶彦の言葉通り、100層までをクリアしていけば良いだけだ。そうすれば、この世界からユーザーは解放される。
まず間違いなく、茅場晶彦みたいなタイプは自分で言った事は守るだろうと践んだのだ。
そもそも、この世界で死んだからといって、現実の俺が死ぬとは限らない。イヤ、茅場晶彦の言葉通りなら、ナーヴギアが俺を殺す理屈は、脳を電子レンジにかけるのと同じ行為だが……ハッキリ言ってその程度で、あの肉体がダメージを受けるとは考えられない。その上、何年寝たきりだとしても、あの肉体の身体能力が衰えることはないだろう。なにせあのアドレナクが創ったらしいのだ、あの肉体は。
ならば、気楽にクリア目指して楽しむのが一番だろう。
そうは言っても、本来俺はこの世界には居ないはずの存在だ、あまり自由に行動して、原作(知らないけど)とあまりに異なる展開になって、ザ・シードが回収できなくなっては困る。
「どう立ち回ったものか……」
そんな事を考えていると、後ろから二人ぶんの足音が聞こえ俺はユラリと背後を振り返った。
足音は俺が知る二人の人物の物だった。
振り返った先では、少し距離を置いてやや女顔のプレイヤー、キリトと、それに引きずられるような形で、山賊面のプレイヤークラインが立っていた。
どうやら、キリトは俺の意図を理解して追ってきたようだが、クラインの方はそうではないようだ。
「トウヤ、お前、次の村に向かうつもりなんだろう?だったら俺達と行かないか?俺はベータテスターだから、村までの比較的安全な道のりだって知ってる」
その言葉に、俺は一瞬だけ考えた。もし、俺が居なかったら、つまり、原作通りならどういう行動を取っていたのだろうかと。
それから、そんな物は今自分が実際にこうして存在するこの世界においては何にも関係の無いことだと思い直し、キリトの方申し出を受ける旨を伝える。
俺に限っては、一人より二人の方がいいなんて事は無いだろうが、キリトにとっては二人の方がはるかに楽だろうと考えたのだ。
俺はこの時点で、クラインが俺達についてこない事を予期していた。
「その……悪いが、俺ぁお前達とは一緒には行けねぇ」
予想通り。
その言葉に、キリトが一瞬わずかに顔を歪める。きっと、ここでコイツを置いていったら見捨てた事になるとでも考えているのだろう。
「このゲーム、ダチだった奴らと徹夜で並んで買ったんだ。アイツらももうログインして、さっきの広場に居るはずだ……置いて…行けねぇ」
キリトが唇を噛む。成る程、確かに俺とキリトでも、クラインの友人が何人居るかは知らないが、安全に守りながら次の村へたどり着くのは簡単では無いはずだ。
「…………トウヤ、今お前のレベルは幾つだ?」
ん?とその言葉に俺はHPバーの上にあるレベルを一瞥する。
「今のレベルは4だね」
「…………俺より高いな……その上プレイヤースキルも高い……トウヤ、悪いが頼らせてもらっても良いか?」
ああ、そういうことか、キリトはどちらかというと、俺を「お荷物」ではなく「戦力」と考えているのだろう。
「ああ、構わないぜ」
「い、いや、そこまで世話になるわけにはいかねぇ!俺だって前のゲームじゃアタマ張ってんだしよ、お前達に教わったテクでなんとかしてみせら……だから二人とも、俺のことは気にしないで、次の村へ向かってくれ」
そのクラインの言葉に、キリトはしばらく何かを考えていたようだが、やがてかすれた声で答えた。
「……そっか…………なら、ここで別れよう。何か有ったらメッセージ飛ばしてくれ……」
「ああ!」
俯いて言うキリトにクラインが答えたのを確認してから、俺はメインメニューを操作する。
「大した額じゃ無いけど何の役にも立たない事は無いはずだ。貰っておいてくれ」
そう言って、俺は今持っているコル全額をクラインに送る。
しばらく、唖然としていたクラインだったが、やがて慌てたように。
「いや、トウヤ、こんな貰っちゃったらお前のコルは…すっからかんなんじゃねぇのか?」
「良いんだよ、どうせ次の《ホルンカ》にたどり着くまでに一度も戦闘しないでってのは無理だろうからな。どうしてもヤバくなったらキリトにたかるし」
「オイ」
呆れたようにキリトが突っ込んで来るが、冗談めかして言ったおかげか、先ほどまでの重い空気は消えていた。
「わかった。大切に使わせてもらうぜ、ありがとうよ、トウヤ」
はいよ、と適当に返しながら、俺は《始まりの街》の出口へ歩き出す。
キリトもクラインに一言言って俺を追ってくる。
「お前達!」
もう少しで《始まりの街》をでるというところで、クラインから声が掛けられた。
「本物は案外カワイイ顔してやがんな!結構好みだぜ!」
キリトは苦笑しながら。
「お前もその野武士面の方が10倍似合ってるよ!」
と肩越しに叫び、一方の俺は。
「イヤ、俺そういう趣味は無いんでマジスイマセン。ホントスイマセン」
「な!?おいトウヤ!おりゃそういう意味で言ったわけじゃねぇよ!」
ハイハイと、俺は片手を上げて流しつつ、最期に一言告げる。
「せいぜい、死ぬなよクライン」
その俺の言葉に、困ったように笑ったその野武士面は、グッと親指を立てながら返した。
「どっちかっつぅと、外に出るお前達のが危険だと思うんだがなぁ………まあ、なんとかしてみせら!」
「じゃあ、何かあったらメッセージ飛ばしてくれ、行こうトウヤ」
キリトのその言葉を最後に、俺たちは今度こそ、《始まりの街》の外、圏外へと足を踏み入れた。
俺たちが《ホルンカ》へ出発してから、約30分が経過した頃だった。ノンストップで走り続けていた俺は、メッセージの着信を告げる音を聞いて足を止める。
「どうした?」
俺が足を止めたのに気づいてか、先行していたキリトも俺の方に駆け寄ってきた。
「あー、メッセージが来たみたいなんだ………クラインかな?」
そう言いながら、俺は右手の人差し指と中指を揃えて下に軽く振る。
メインメニューを呼び出した俺は、メッセージボタンをタップしながら考える。
-クラインなら、キリトにメッセージを飛ばすのではないか?と。
クラインの可能性があると告げたためなのか、キリトも心配そうに俺の操作を見ていた。
メッセージボタンをタップすると同時に表れたのは、二つの表示。
が、この二つの表示は最早、表示の時点で異常と言えた。
通常、メッセージ欄に表示のされるのは、メッセージの送り主のキャラネームのはずなのだが……。
「《Aからの贈り物》…と、《Aからのお言葉》?」
俺が目だけで読んでいた文字列を、キリトが口に出す。
「《A》ってまさか……《アーガス》か!?」
驚いたように、キリトが隣で叫ぶのを聞きながら、内心で俺は「いいや、アドレナクだ」と答えた。とりあえず、疑問に思った事を聞いてごまかしでもしておくか。
「アーガス?」
「知らないのか?この《ソードアート・オンライン》の運営会社だよ!どんなメッセージだ?」
ごまかせなかった☆それどころか逆にメッセージの内容に興味を持たれてしまった。
正直、キリトの居ないところで確認したかったが、仕方ない。と、俺は上にある《Aからの贈り物》をタッチしてメッセージを開く。
と、その瞬間、俺がいままで色々な世界で使ってきた真っ黒なコートが今着ていた防具の上から装着された。
それだけではない、俺の髪を纏めるように、白いリボンが出現して、髪を後ろで括る。
この白いリボンも、ロード・トゥ・ドラゴンの世界で、宝条まゆという少女から貰ったものだ。
俺の装備の変化に驚いているキリトを無視して、俺はメッセージを見る。
『斬竜剣がアイテムストレージに送信されました。
ダークマターコートがアイテムストレージに送信されました。
まゆのリボンがアイテムストレージに送信されました。
スキルストレージが拡張されました。
スキル《近接戦》を習得しました。』
と、文字が並ぶ。
「どうなってんだ……コレ!?トウヤお前……」
様々な疑問を込めた視線で、キリトが俺を見てくる。
ええ、まあそうでしょうね。それが普通の反応ですよねぇ~。と、面倒な事になったと思いつつ、《Aからのお言葉》を続いてタッチした。
『どうやら、予定通りデスゲームが開始されたようだね 』
「!?…よ、予定通り?」
「アドレナクの奴……この事知ってやがったのかよ」
メッセージには続きがある、というかなかなか長文のようだ、俺はメッセージ画面をスクロールして続きを確認する。
『ちなみに、このSAOでは僕が回収を支持した《ザ・シード》は手には入らないことを伝えておこう。無駄足だったね☆ザまぁw』
オイ。何がしたいんだよあの駄神(怒)
「SAO行けってナーヴギアとソフト渡したのテメェだろうが!?」
うーん。しかしなぁこの世界の名前って言うなれば《ソードアート・オンライン》なんだよなぁ……。それを考えたら、俺をこのゲームに参加させないって選択肢はあり得ないのかもしれない。
と、勝手に納得し、糞神に対しての不満を抑えメッセージをスクロールする。
『このゲームを君たちが攻略しているあいだに、外ではナーヴギアの後継機《アミュスフィア》が開発されている。それ用に発売されたとあるゲーム内で入手可能だ。覚えておくと良い』
「入手場所を教えてくれるなんて、奴にしては珍しく気前が良いな……」
なんか裏があるんじゃないかと、心配になる。
「俺たちがゲームを攻略してる間に?このメッセージどこから届いてるんだ?運営じゃ無いみたいだけど……」
事情を知らないキリトは、当然横で混乱している。
まあ、当然といえば当然だ。にしても、いささかパニくり過ぎだとは思うが。
「あとで教えてやるから」
そう言って一旦キリトを落ち着かせ、続きを読む。
『ちなみに、君に送ったアイテムやスキルについてはなるべく他人には見せない方が良いと伝えておこう。チーターと間違われるだけならまだしも、最悪茅場晶彦本人だと疑われる可能性があるからね。それから、こんな事を言ったから君は気付いたと思うけれど教えておいてあげよう。茅場晶彦は先ほど《始まりの街》にいたプレイヤーの中に紛れ込んでいる』
「何だと!?」
「そこまで教えるなら、もう少しヒントくれりゃあ100点なんだけどなぁ……アドレナク君よぉ」
「アドレナクさんっていうのか?外人?」
イヤ、そもそも人間じゃないんですよねぇ~。
と、言えたら楽なのだが、今言っても混乱を招くだけなので黙って続きを読む。
『君の戸籍についても、こちらで操作しておいたから今君の身体は病院に運ばれているよ。現実世界に置いてきた肉体のことは気にするな、なにせ僕によって創った特別仕様の肉体だ、ちゃちな高出力マイクロウェーブ如きでダメージを受けるほど柔ではない』
コレについては予想していたから驚きはしない。が、続く文字は俺が全く予想していない言葉だった。
『ただし、この世界で死亡時に行われるプログラムはログアウトではない。アバターの消失だ。死んだからといって現実世界に帰れる訳では無いということを伝えておこう。アバターを失い暇になるのが嫌なら精々死なないでくれ、替えのアバターくらい用意するのは容易いが、面倒だからやらない』
なんでだよ!?容易いんじゃないのかよ!?
と、最後に、という続きのメッセージが目に付いたので、スクロールして残りを確認する。
ソコには……。
『僕は、転生者というのはチートであってこそだと思うんだ。』
と、最後の最後に最高にどうでもいいことが書いてあった。
「知るかよ!」
というか、ゲームっていうのは普通はシステム的にクリア可能なように作られてる物だ。
コンテニュー前提のゲームとかいうのがたまにあるけど(何とは言わない)、そんな物ははっきり言ってクソゲー。
つまり、ゲームでチートとか一番つまらないと俺は思うわけである。
ダメだね、アドレナク君は何も分かってないねぇ~。
まあ、神様にそういうのを理解しろと要求するの方が無理な話なのだろうが。
と、俺は自分が人間で無いことを棚に上げて思うのだった。
「トウヤ、コレ……このメッセージはどういうことなんだ?」
なんて事を考えていると、キリトが若干疑念を込めた目で俺を見てくるので、俺はため息を付いて言った。
「《ホルンカ》についたら詳しく説明するよ」
面倒なタイミングでメッセージを送ってくれたものだと、アドレナクに内心で恨み言をつぶやきつつ、了承し先導するキリトを追って、俺たちは《ホルンカ》へと急ぐのだった。
更新遅くってスイマセンm(._.)m感想など是非送って下さい!
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エクストラ・ゲーム
話がなかなか進まないなぁ(^-^;
もしユウキをSAOから出すとしたら次の話からになるかな、今のところALOからの方が良いという意見の方が多いのですが、回答してくれた方がまだ少ないので悩んでます。
活動報告のアンケートに回答いただけるとありがたいです!
《ホルンカ》について、一番面倒な説明もなんとか終わった。
まあ、終わったんだけどね……。
「なあ、キリト。俺が言うのも変な話だけど、俺が逆にこんな事を説明される立場だったら、この話絶対信じないと思うんだけどねぇ?」
怪しいとかじゃない。転生者とか、異世界から来ましたとか、そもそも有り得ないと思うのがこの世界でなら普通だろう。
それこそ、はたらく魔王さま!の世界とはわけが違うし、今俺は異世界から来た存在である事を証明する手段は何もないのだ。
俺がキリトにしたのは、アドレナクという神にこの世界で、ザ・シードという物を回収するように言われてこの世界に来たという話なのだ。俺の立場から言わせてもらうと、当然嘘は何もいっていない。ほかの世界の事を具体的に説明したりはしていないが、一応いろいろな世界に行ったことがあるということも話しておいた。
……。
や、考えれば考えるほど、この話で先程のメッセージについての件を納得しろと言う方が無理があると思うのだが。
キリトは一応は信じると言ったわけなのである。
「俺だって全部を信じたわけじゃあない。お前の年齢が数万才だとか、実はその外見で男だとか、や、髪纏めてからは男に見えなくもないけど……。とにかく今はお前が異世界人でしかも転生者だって証明する手段は無い。」
「ホントに頼むから男ってのはマジで信じてください。ぶっちゃけ現実の方がもう少し声も低いんだよ?」
「お、おう。……姿については何にも言及しないんだな」
まあ、リアルでもこのルックスだからコレばかりは何とも言えない。
「話を戻すけども、異世界人だと証明する手段も無いけど、異世界人じゃないと証明する手段も無いだろ。ていうか……もしお前が茅場明彦だとしたら、あまりにも間抜けすぎるし、茅場明彦じゃないとしたら、それこそお前が普通の人間なら、あのメッセージをどうやって用意したか想像もつかない、お前の説明を聞いても矛盾は一応無かったからな」
現実味も無かったけどね☆
「それに、異世界でそうとうな戦闘経験を持ってるお前が当面の味方なら、こっちとしてもありがたい事だからな」
なるほど、確かに俺が味方ならキリトにとっては戦力的な実益があるわけか。
「一応、そのアドレナクさんは未来予知紛いのこともしてるからな。現実世界に帰ったら、お前が異世界人かどうかはすぐにわかる」
イヤ、それ言い換えればこの世界では絶対分からないってことじゃあないですか。
まあ、現実世界に帰ればすぐに俺が普通でないと分かるのは保証しよう。
「それなら、お互い死ぬわけにはいかないな」
「ああ、ひたすら自分の強化をしないとこの世界では生き残れない。レベルもそうだし装備もだ」
装備といえば、アドレナクから送られてきた装備もなかなかの物だった。
今俺たちが話しているのは、《ホルンカ》にあるNPCの宿なので先程強制装備させられた黒いコートとまゆのリボンは装備していない。というより、圏内では装備できず、かつ圏外に出ると強制装備させられる。ちなみに圏外ではリボンとコートを外すことは不可能。
イヤ、呪いの装備じゃねぇんだからよぉ……。
ちなみに、装備の効果については、コートの方が獲得経験値、コルが3倍になるというもの。コート自体の防御性能および機敏値への補正が、レベルに応じて上昇していく。
まゆのリボンの方は、スキルの熟練速度が3倍になるというもの。ステータスへの補正は一切なしだ。
そして、《斬竜剣》。これは、今のところは使えない。
なんせ現状では攻撃力補正は皆無である。名前も分からないとあるスキルの熟練度の3倍がそのまま《斬竜剣》の筋力補正値になるようだが、肝心のスキルを今の俺は習得していないようなのだ。とりあえず先程新たに加わった《近接戦》というスキルでないのは確かである。
で、《近接戦》スキルの内容もなかなかなものだった。
何でも、まず両手に違う種類の装備をした状態でもソードスキルが使えるようになるのだ。同じ種類、つまり両手に片手剣とかだと意味がなくなる。
もう一つが《近接戦》で習得できるソードスキル。
それぞれの武器の単発攻撃用のソードスキルを一種類。投げ攻撃用ソードスキルを一種類。連続攻撃用ソードスキルを一種類習得する。
つまりそれぞれの武器で合計3つのソードスキルが追加されるのだ。
正直言うと、このスキル自体は確かに面白いが強いとは俺は思わない。なんせ、連続攻撃用ソードスキルはかなり熟練度をあげないと修得できないからだ。
そのかわり、先程の説明でわかったと思うが、《近接戦》は特定の武器に対応したソードスキルではない。そのため何を使っても熟練度が上がる。
ついでに言うと、ありがたい事に武器を持たずに使える、いわば素手で放つソードスキルという物もあった。
最悪装備が無くても戦える。
あれ?両手同じ種類の武器だと《近接戦》は使えなくなるんだから、両方素手だと素手のソードスキルは使えなくなるのかな?今度試してみるとしよう。
まあ、とにもかくにも、装備、スキルどれをとっても俺専用の物であろう。
わかりやすくいうならチートなのである。
ところでさ?特にまゆのリボン。あれ街中では装備できないってところにそこはかとなくアドレナクの悪意を感じるんだよね?
まあ、文句を言っても仕方ない。と、俺はキリトに説明を終え、キリトの提案で《アニールブレード》という片手剣を取り行くことにした。
後で曲刀が手に入るクエストとかモンスターも教えてもらうとしよう。
と、俺はクリア報酬で《アニールブレード》が手にはいるという《森の秘薬》クエストを受けられるNPCの家に向かいながら、そんなことを考えた。
ちなみに、現在の俺のレベルは《ホルンカ》にたどり着くまでに3上がり、7となっている。
side?
私は、そこに表示されたある数値を見て目を見開いた。
残りプレイヤー総数
9714
死亡プレイヤー総数
287
この二つの表示である。
デスゲーム開始の宣言が行われてから、数時間後の数値だ、これを私が呆然と眺めている今この瞬間にも、死亡プレイヤー総数に1、加算される。
残りプレイヤー総数
9713
死亡プレイヤー総数
288
やはり、おかしい。
何度二つの数値を足しても、合計が10001になるのだ。
にもかかわらず、私が詳細なデータ、受け取ったメッセージから、アイテム、スキルの熟練度に至るまでを確認できるプレイヤーは合計9713。コレには、私自身のデータも含まれているから、プレイヤーの中に1人、私が一切確認を行えないプレイヤーが居るわけであり……。
と、ここでメッセージの受信を知らせる音が鳴り、私は疑問に思いながらメッセージ欄をみる。
このタイミングでのメッセージの受信は有り得ない事ではない。メッセージは、名前さえ知っていれば同じ層にいる相手になら送ることができるからだ。
だが、不自然極まりない。
どう考えても、この以上事態と受信したメッセージが無関係であるようには私は思えなかった。
メッセージの送信者の名前は……Adorenaku……?
……なんだ?勘違いか?生命の碑で私の名前でも確認して適当にメッセージを送りつけてきたのか?全く…いい迷惑だ。
そう思いながら、メッセージを開いて、私は思わずギョッと目を見開いた。
『10001人目のプレイヤーの事を教えてあげようか?茅場明彦君』
たったそれだけ、しかし、十二分にこのメッセージには私を驚かせるだけの衝撃があった。
なぜ、私が茅場明彦だとわかった?このAdorenakuというプレイヤーは何者だ?と、プレイヤーの一覧を出しその名前を探す。
無い。
どこにも見当たらない。
Aのところに無いだけかと、10分かけてたっぷりとその名を探すがやはりどこにも存在しない。
と、探し終わるのを見計らったようなタイミングで再びメッセージが届く。
メッセージの差出人は当然Adorenakuだ。
開いて中身を読む。
『残念だが、僕はプレイヤーではない。それどころか、この世界のどこにも居ない。だからどれだけ探そうとしても見つからないよ?ああ、どうして君が茅場明彦だとわかったか、具体的な理由については面倒だから説明は省かせてもらうが、《僕》にはわかって当然。とだけ答えておこう。
それよりも10001人目について知りたいのか、知らなくても良いのか、どちらなんだい?』
それは勿論、知りたいに決まっている。
が、Adorenakuの名前の部分をタッチしても、相手がプレイヤーではないので返信を送る画面に切り替わらないのだ。これでどうやってこちらの返答をすればいいというのだろうか?理不尽にもほどがある。
と、三度メッセージが届く。もう名前を確認せずとも送信者がAdorenakuなのは明らかなので、即座に開いて文を読む。
『返信はけっこう。僕は君の考えていることなど呼吸をするように読み取れるからね。知りたいというのは了解した。だが、僕としてはタダで教えるのはつまらない』
いや、ここで終わりにしないでほしいのだが?
というかならば何を差し出せというのだろうか?
了解を伝える旨だけを書いたメッセージに不満を感じていると、さらにメッセージが届く。
『せっかく舞台がゲームの中なのだ。ここは一つextragameでも用意しようではないか。
なに、条件は簡単だ。すぐ目の前にいる相手にフレンド申請をするときに、そのプレイヤーの頭の上に表示されるカーソルをタッチして申請するよね?それを使わせてもらおう。君は10001人目を探し出し、そのプレイヤーのカーソルをタッチすればよい。その瞬間、君のプレイヤーの詳細確認のリストに10001人目が追加されることを約束しよう。
どうだい?簡単だろう?』
と、そこでメッセージは終わっている。
いや、どこが簡単なものか。プレイヤー全員の名前を覚え、その上その中に存在しないキャラネームを使うたった一人をこの世界で探し出せというのか?無茶振りにもほどがある。
ここで、メッセージの受信を告げる音。まだ続きがあるのか?と、メッセージの内容を確認すると、そこにはそのプレイヤーの名前と、2時間おきにそのプレイヤーの居場所が送信される旨が書かれている。のだが……。
『念のため忠告だ。彼は《超六感》という現実世界でも、ここでも使える特殊な能力を保持している。この能力は感や、向けられた視線や気配などを感知する力が備わるというものだ。ついでに、茅場明彦、君がプレイヤーの中に紛れ込んでいることも伝えてある。下手な方法で彼に近づくと、場合によっては最悪早い段階で正体を見抜かれるだろうね。まあ気をつけたまえ』
どうやら、このAdorenakuというが無茶苦茶なら10001人目、トウヤというプレイヤーも相当メチャクチャなようである。
『君がどんな風に彼のカーソルに触れるのか……。まあせいぜい面白おかしく眺めさせてもらうとしよう。
さあ、この僕Adorenakuからのextragameだ。
僕も楽しむから君も楽しんでくれ給えよgamestart!』
メッセージを読み終わると、タイミングよくクエストが開始された表示が現れる。
クエスト名
《員数外(イレギュラーナンバー)は異界の人外》
達成条件
・プレイヤー名《トウヤ》のカーソルに触れること
失敗条件
・《トウヤ》が第3層にたどり着く
失敗時ペナルティ
・送信者名Adorenakuからのメッセージの全削除
・クエスト受注者のAdorenaku並びにトウヤに関する一切の記憶の消去
禁止事項
・階層ボスの難易度を含む現在の《ソードアート・オンライン》内のあらゆる、地形、クエスト、mobの改変
・本クエストの破棄
「…………失敗時のペナルティーが有るなんて聞いていないのだが……」
やはりこのAdorenakuという者は理不尽だ。
というか、ペナルティーに記憶の消去とか書かれているが、コレは何の冗談なのだろうか?
それに何よりも……。
「ゲームマスターである私が遊ばれるとはな…」
とにかく、私は《トウヤ》という人物を探すべく、《始まりの街》の宿屋を後にした。
ん?……またメッセージか?
メッセージ送信者Adorenaku
『《トウヤ》の現在位置
《ホルンカ》』
「…………………………………………」
さりげなくクエスト名で討也の正体が明かされているという(*’▽’)
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モンスター・パニック
アンケート結果次第ではまた別のタイミングでの登場考えます。
デスゲーム開始から今日で4日が過ぎた。初日のうちにアニール・ブレードを手に入れた俺とキリトは、三日目には《トールバーナ》へと移動していた。
もっとも、俺はすぐに《ホルンカ》へ引き返して来たのだが。
俺がキリトと共に《トールバーナ》へと移動したのは、あくまで道順の確認の為だったのだ。
実を言うと、多分超六感頼りでテキトーに進んでも、俺は《ホルンカ》から《トールバーナ》へ移動することは難しく無かったと思う。
一応そのことはキリトにも説明したのだが、それでもということでついて行ったのだ。
さて、ここで何故俺だけが《ホルンカ》へ引き返したのか疑問に思う者がほとんどだろうから説明しておくと、俺はアニール・ブレードの予備を取りに来たのである。
とりあえず10本くらい有ればいいかなと思っている。
今の俺のレベルは11。キリト曰わく、この層でレベルが上げ辛くなるのがこのあたりのレベルからだという。
ちなみに昨日の時点でキリトの方は7だ。
何故こんなに違いがあるのかと言えば、アンチクリミナルコード有効圏外。一般的に「圏外」という呼ばれ方をする場所に出ると、強制的に装備される、アドレナクから送られてきた現在装備中の黒いコートのおかげだ。
これは俺がこれまでの世界で使ってきた物と全く同じ形状なのだが、この世界では獲得経験値、コル(SAO内での通貨)がそれぞれ三倍になるという効果が付けられているのだ。
そのせいで、キリトと同じ位の戦闘量どころか、それよりも少なくてもレベルが自然と上がっていくのである。
ついでに金もたまるが。
現在、五日目の昼をまわったところである。一昨日の午後から今日の現在までの間に、アニール・ブレードは全部で9本手には入った。
とりあえず同じNPCと同じ会話するのがめんどくさかったです!
「あと一本手に入ったら撤収するかねぇ」
そろそろ飽きてきたし。
昼飯をとにかくビミョーな味のやたら堅いパンで済ませた俺は、残り一本のアニール・ブレードを手に入れるべく、NPCの家へと訪れた。
ねぇ、ところであの病気の女の子のNPCを直すためにリトル・ペネントの胚珠集めてんだよね?もう9回は持って行ってるのになんで直らないのかなん?
今回もNPCの話を聞き流してクエストだけ受けた俺は、とっととリトル・ペネントが出現する森へと移動した。
と、進む先に何人かの人影が見えてきた。
簡素な防具と初期の片手剣やら、曲刀やら、短槍やらを持っている。
まあ、間違いなくプレイヤーである。
数は全部で6人。うーん。面倒だなぁ。このクエストで持って行かなくてはいけないリトル・ペネントの胚珠は、中でも花付きのレアモンスターからしかドロップしないのだ。
まあ、同じところでやらなければ特に問題は無いだろうと、いつもより奥でやろうかなぁとか考えていると、こちらを見つけた一人が俺に声を掛けてきた。
「おい、アンタも《森の秘薬》を受けに来たのかい?」
声を掛けてきた男は、6人の中では唯一黒いフードをかぶっていた。顔には刺繍がある。
超六感が危険性を知らせたのを感じ取りつつ、俺は頷く。
さて、先程の危険性のお知らせはコイツ本人か?それともこれから厄介なことになるのかな?などと楽しい想像を働かせながら、俺は続けて尋ねた。
「そっちはこのクエスト6人でやるのかい?あんまオススメはしないけどねぇ」
その言葉に、黒フードは一瞬キョトンとした顔になった。
や、おそらく言葉にじゃなくて声にだね。どうせ女みたいな声だとか思ってるんだろう?これでも現実世界ではもう少し声低いんだけどね。コレが最適化というものか!?うん。違うね?
「あぁそうか。6人でやるのはオススメしないかい?アンタも一緒にどうか誘いに来たんだがなぁ」
その黒フードの言葉に俺は少しだけ考える。
他のやつと狩りをするなら、《近接戦》スキルで武器両手持ちとか、素手攻撃とかが出来なくなるんだよなぁ。
キリトからもなるべく見せない方が良いって言われたし。
でもまぁ別に良いか。正直必要ないけど装備一つだけで戦うことにも慣れておこう。
というかぶっちゃけ慣れてるけど。
「いいぜ?一緒にこのクエストやってもさ。ただし、俺が胚珠を手に入れたら《ホルンカ》に俺は帰るけどな?」
すると黒フードは嬉しげに頷いて残りの5人のところへと俺を案内した。
スタタタンッと三体のリトル・ペネントを連続で切り倒して、俺は武器を持つ手をダラリと下げた。
周りの奴らから、歓声が上がったが無視しておく。
うん。失敗した。まさかコイツ等がここまで弱いとは思わなかった。
唯一まともに戦えるのが黒フードくらいなものである。
コイツ等のレベル……だいたい3と見た。
黒フードはその倍くらいあるだろう。まあ、どちらにせよ俺が突出して強いのは間違いない。ホント一人でやった方が早く終わってただろう。
今更言っても始まらないけど。
とはいえ、ここまでで結構な数を倒している。なんせあれから3時間はたっている。先程レベルが上がったくらいだから、かなりの数を俺が倒しているのだろう。
6人とはパーティー登録はしていない。というより、パーティーは6人までなのだ。
パーティー登録していないので、俺が倒した分は全部俺に入ってくるのだ。
アレ?そういえばパーティー登録してるメンバーの獲得経験値も3倍になるのかなん?今度キリトに試してもらおう。
さて、そろそろ花付きが出てもおかしく無さそうだが……。と、レベル10になったときに加えた《索敵》スキルで辺りを探ると、居た、全部で7体のリトル・ペネント。うち2体が花付きで、2体が実付き。残りはノーマルだ。
ちなみに、実付きというのは、文字通り花付きと違い、実を付けているのだが、この実に対して攻撃を行い割ってしまうと、一気にリトル・ペネントが集まってくるのだ。
キリト曰わく、ベータ版の時にはこれにやられるプレイヤーが続出したとか。
多分製品版でも結構な被害が出ると言っていた。
その話を聞いていたので、俺は6人にはこの実付きについてのことを説明している。
こちらに気付いたリトル・ペネントたちが、それぞれ近づいてくるのを確認した俺は、すぐに前方から来る3体に突撃する。
他の4体とも、後ろで戦いが始まったのを気配で感じ取りつつ、まずは実付きを実ではなく本体に攻撃してポリゴンに変えた。横合いから、体を膨らませる様に身を引いたノーマルの背後に素早く回り込み、通常攻撃を二発ほど叩き込んで相手のHPを削りきる。
確かあの動作は、こちらの防御だったかを低下させる酸を吐き出すのだ。
もっとも、ダメージは無いのだが。
残りは一体。
運のいいことに花付きだ、楽しげに笑みを浮かべ、距離を詰めたところで、背後で何かが破裂する音が響いた。
というか聞き覚えがある。俺が昨日このクエストを受けているときに、リトル・ペネントを探し歩くのが面倒になって、実付きを見つけたときにわざと実を割ったのだが、その時の音だ。
あ、ちなみに昨日集まったのは難なく蹴散らせた。
おそらく誰かが実を割ったのだろう。と判断しつつ、俺は花付きとの距離を詰め、そのままソードスキル《リーパー》で斬り伏せる。
ドロップでリトル・ペネントの胚珠が手に入ったのを一瞬で確認して、振り返った。
黒フードはなんとか戦っているが、他の奴がとにかくひどい。というか数えたら黒フードと合わせて5人しか居なかった。
逃げ出したのか……或いは死んだか。
もし死んでいるのなら運が無かったなと欠けた一人に対して思いつつ、こちらをみていないリトル・ペネントを2体同時に斬り伏せた。
視界の端で、さらに一人がポリゴンに変わるが、特に気にすることなくそのままもう一体に襲いかかる。
異世界で培ってきた気配把握能力と、《索敵》スキルで残りの数を数えると、17。
もしかしたら、実を割ってしまったが故に呼び寄せられたリトル・ペネントの中にさらに実付きが居てそれが連鎖しているのかもしれない。
一体を通常攻撃で倒してから、一瞬だけ俺は考える。
俺一人ならリトル・ペネントくらい問題ないが、他の残り四人はそうではない。
このままのペースだと、レベルの割に善戦してる黒フードを除いて全員死ぬ。
しょうがないなぁ。少しやる気出しますか。といっても、やることは武器の両手持ちだけである。俺は素早い動作でメニュー画面を開くと、アイテムストレージから今右手に持っているのと同じ初期の曲刀をオブジェクト化させ左手で持つ。
この状態だと、《近接戦》スキルを持っている俺でもソードスキルは一切使えなくなってしまうのだが、そもそも俺のレベルならソードスキル無しでもリトル・ペネントくらい一撃で倒せるのだから、別に使えなくても問題はない。
前方のリトル・ペネントが、のけぞって酸を発射してくる動作をしたが、無視して横から近づいてきたのを切り払う。酸を食らったが、気にせずにさらにもう一体。それから、前方のソイツを叩き斬った。
何故、浴びせられる酸をよけなかったのかというと、この攻撃には、ダメージが伴わないからである。
かといって、これを受けると、防具の耐久値が減ってしまうのだが、それについては、俺の装備しているコートにはそもそも耐久値が設定されていない。
つまり、何があっても壊れることが無いのだ。
だから、俺はこの攻撃を気にする必要は無いのである。
ついでに言うと、俺がレベル10になったときに、このコートに新しい効果が加えられている。
それが、装備者が一切の状態異常に陥らないというものである。
アドレナクさん。これはチート過ぎだよん?
誰にしているのかわからない俺の装備についての説明をしている最中、さらに5体のリトル・ペネントを切り倒すと、最初に買った曲刀の耐久値が無くなったのか、武器破壊エフェクトを出して砕け散ってしまう。
誰かがそれを見て声を上げたが、俺は慌てずに《クイックチェンジ》というスキルを使って《アニールブレード》を砕けた曲刀の代わりに一瞬で装備した。
3分後、全てのペネントが、俺(と少し黒フード)によって倒される。
「さっきのなんだったんだ?」
「ン?」
「ほら、曲刀が壊れたとき代わりにすぐにそれを装備したのだ」
息を整えながらも、アニールブレードを指して聞いてくる黒フードに、クイックチェンジの事を少し教えてやり、それから俺は先ほどの戦闘で手に入れたらリトル・ペネントの胚珠2個を渡してやる。当然、俺の分の一個はとってある。
「二人死んだところでいきなり悪いが、俺は胚珠を手に入れたから抜けるぜ。その2個は好きに分けてくれ」
そう言って、俺は《ホルンカ》のある方へと元来た道を引き返そうとする。
「おっと、ちょっとstopだ。アンタの名前を聞いても良いか?」
黒フードが、俺を引き止めてそう聞いてきたので、俺はふと考えた。
コイツとは、またどこかで関わり合いになりそうな気がするのだ。
「トウヤだよ」
そう答えると、黒フードは若干納得したような顔をした。
「おう、やっぱり男か?」
やっぱり女かもしれないとか思われてたか。
「男だよ、リアルでもな。で、お前名前は?」
「ああ、俺の名前は…Pohだ」
あれか?赤い服着た黄色い熊の、確か蜂蜜だかオリゴ糖だかの入ったツボ年中なめてるイメージあるけど。まあ違うな。
「Pohね、一応覚えておくぜ」
そう言って、俺は今度こそ《ホルンカ》へと歩き出した。
どうだったでしょうか。
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パーティー・イン
side?
まさか、10001人目が女の子だったとは。
この距離だとカーソルが出ない。困ったものだな。ここはもう少しレベルを上げて《索敵》スキルの範囲を拡張するしかないだろうか。
せめてもう少し近づければ……。
sideトウヤ
なんかこっちの様子見てる奴がいる気がするんだよなぁ。そう言えばキリトがSAOは女性の比率が少ないって言ってたな……そのせいか?いや、でもごめんよ?悲しいけど俺、男なのよね!
別に悲しくはないか。
俺は《アニール・ブレード》をとりあえず10本集め終わったので、《トールバーナ》に移動してきていた。
移動した翌日から迷宮区の探索にのりだし、つい昨日ボス部屋を発見したところである。
ちなみに一人で挑んでみたのだが、フロアボスの《イルファング・ザ・コボルトロード》のHPバーを半分削ったところで俺のHPがイエローになったので引き上げてきた。
あれから《近接戦》スキルの使い方にも慣れてきたし、レベル結構上がっていた。
ちなみに、コートの経験値上昇効果はパーティーメンバーにも発動する事がわかった。そのおかげでキリトのレベルもかなり上がっている。
現在の俺のレベルは18。
キリトが16だ。
「久しぶりだナ、トウヤ」
今日はとりあえずダラダラ過ごそうと決め、《トールバーナ》の街中をうろついていると、顔にネズミの髭のようなペイントをした、フードを被った少女に話しかけられた。
もちろん知らない子である。
「誰?」
とはいえ、コイツは今俺のことをトウヤと呼んだ。つまり少なくとも向こうは俺のことを知っているようだ。
「オイラはアルゴだよアルゴ」
アルゴ……ああ!デスゲームが始まる前にそう言えば会っていたなぁ。
「お前なんで外見変わってるのに俺がトウヤってわかったんだよ?」
「キリトに聞いた」
ああ、成る程ね。今アイツ迷宮区かな?昨日俺にも来るように頼んできたけど。まあ俺がついてけば獲得経験値3倍だからなぁ。
「ふぅん。で?何か用かな?」
「一層のボス部屋が発見されたのは知ってるカ?」
「まあ、発見したの俺だしね?」
「え?ディアベルって奴だったはずだけどド」
ふぅん?知らないなぁ。つまりそいつも見つけたという事だろうか。
「それで明日ボス攻略会議をこの町で開くらしいゾ」
ボス攻略会議かぁ……。開く意味あるの?というか何人で挑む気なの?あれ取り巻き4体居たけど俺一人でもボスのHP四本中二本削れたしなぁ。ちゃんと作戦立てれば俺とキリトとあと一人くらいいればなんとかなる気がするけどなぁ。
「お、オイトウヤ。お前あれに一人で挑んだのかヨ!?」
「ゴメンなアルゴ、その説明については冒頭で終わってるからさ?」
「唐突にメタ発言!?」
それにしても……デスゲーム開始から今日でだいたい2ヶ月かぁ……このままだとあと何年かかるんだろうねぇ?
「それで、トウヤは攻略会議出るのカ?」
出ておいた方がいいのだろうか?
「出るんだったら時間と場所教えてやろうカ?」
「ん?ああ、知ってるのか?」
まあ、どうせキリトは出ると言い出すんだろうから俺も出ておきますかねぇ~その会議。
というわけで、俺はアルゴに明日の攻略会議の場所と時間を教えてもらい、またしばらく《トールバーナ》の街中を散策した。
「トウヤ、明日一層の攻略会議が開かれるって話聞いたか?」
やはり、攻略会議の事はキリトも知っていたようで、当然俺も行くことになった。
そう言えばキリトが、俺が攻略会議の情報アルゴに教えて貰ったってきいたら、「いくら取られた?」って聞いてきたけどなんの話だ?
翌日の昼過ぎ、俺とキリトは早めにフィールドでの戦闘を切り上げ、攻略会議の会場へと来ていた。
会場の広場にはすでにかなりの人が揃っている。ざっと数えたところ40人位である。
俺とキリトは適当に中央から遠い席についた。
少しすると、青い髪の人物が中央に立って話始めた。
恐らく、あれがディアベルだろう。
「40人くらいか……少し少ないな」
案の定ディアベルだった人物の話を聞いていると、キリトがそんなことを呟いた。
その言葉に、むしろ多すぎだろと感じていた俺は適当に返しておく。
「昨日俺たちのパーティーが一層のボス部屋を発見した!」
ディアベルの言葉に会場全体がざわざわとするが、俺は内心で、「見つけただけかよ」とツッコんでいた。
「トウヤは半分まで一人で削ったよな?」
似たような事を思ったのか、キリトがそんな事を言ってきた。
まぁ、俺はある意味チート使ってるようなものだからねぇ~。
それから、ディアベルが6人一組でパーティーを汲めと言ってきた。
「俺とトウヤは決定だよな?」
実はパーティー組むのに心配してたのか、不安そうに聞いてくるキリトに俺は苦笑しながら頷く。
というか俺もキリト以外に知り合い居ないし。
「あそこにいる赤いフードのも誘って良いか?」
キリトの指す方を見ると、一人でぽつりと座った赤いフードの人物が居た。
「一応知り合いだから」とキリトが言うので、いつ知り合ったのか疑問に思いながらも了承した。
俺から離れ赤フードに話しかけに行くキリトを見送っていると、不意に俺の肩がトントンと叩かれる。
「ん?」
そちらを向くと、赤いバンダナをつけた黒い髪の小柄な少女が居た。
「どうかしたのかい?」
「あ、僕まだ誰とも組んでなくて、もし邪魔じゃなければパーティーに入れてほしいんだけど…」
そう言って、チラリとキリトの方を見る少女。
「ああ、俺はかまわないよ、後はアイツがなんて言うかだけど…まぁ大丈夫だろうな」
一度赤いフードの人物に話しかけているキリトを一瞥してから少女に視線を戻すと、少女はキョトンとした顔をしていた。
「ん、何かな?」
「あえ、や、お姉さんが自分のこと俺って言ったから…」
あ、また女の子だと勘違いされてるパターンか。白とか赤系の服止めようかなぁ。
まあ、原因は服よりもここが圏内であるために、まゆのリボンが装備出来ず纏められていない髪のせいなんだけどね~。
「いや、こんな見た目だけど俺、男だぜ?」
そう告げると、しばらく少女は目を点にしていた。
それから、ハッと我に帰って。
「またまたご冗談を…………え?ホントに?」
と、全く信じられません。というかのようなリアクションである。
「ホントに」
そう答えながら手で髪を纏めるのだが、少女は「う~ん?まぁ男の子にも見えなくは無いかなぁ」と微妙な反応を示す。
女だという先入観が強すぎたんだろうね。第一印象大事!
そんなやりとりをしていると、キリトが赤いフードの人物を連れて帰ってくる。
それから黒い髪の少女もパーティーに入れて良いか確認を取った。
赤フードの方がアスナ。黒髪の少女はユウキというらしい。
とりあえずこの4人で決定かな?と考えていると、二十代半ばくらいの鉄灰色の髪の男がこちらに歩いてきた。
盾持ちの片手剣使いのようだ。
その人物は俺の前で立ち止まると。
「すまないが、まだ組んでいなくてね、空きが有るなら入れてもらえないだろうか?」
俺たちのパーティーは今4人なので、別に人数的には問題ない。
構わないかと視線で問うと、アスナ以外は頷いてくれた。
雰囲気的に俺が相手しなくてはならないようなので、頷いてパーティー申請を送る。
「ヒースクリフ……ね」
相手に聞こえないように名前を呟いていると、ディアベルがそろそろ良いかな、と中央で声を上げた。
まとめにさしかかったところで、「ちょー待ってんか!」と声がかかる。
あー、なんて言うんだっけコレ?関西弁?ヤバい涼宮ハルヒの憂鬱の世界以来使う奴なんてほとんど知らないから新鮮に感じる。
と、どうでも良いことを考えていると、声を上げた人物が中央の台の上に上がる。
「「モヤットボール!?」」
何故か、俺とヒースクリフが声を上げ、キリトが「オイ、聞こえたらどうすんだよ!」と小声でそれを窘める。
大丈夫。聞こえてても何ら問題はない。あんな髪型してるあいつが悪い。『僕は悪くない』。
「わいはキバオウって者や」
キバオウと名乗ったモヤットボールは、この攻略会議に参加している者の中に、死んでいった2000人に詫びを入れる必要があるものが居るはずだと言った。
言うまでもなく、SAOのベータ版テストプレイヤー。ベータテスターと呼ばれる者達だ。
その言葉に、キリトが少し顔を歪めた。まぁ、俺に言わせれば全ての元凶はかや…………かやなんとかさんであって、ベータテスターだって被害者だと思うのだが、どうやらキバオウはそうは思っていないらしい。
まあ、要するにこのキバオウという男、ベータテスターに八つ当たりしているも同然なのである。
とはいえ、俺がベータテスターを擁護する必要はない。全てのベータテスターがビギナーを見捨てた訳では無いにせよ、見捨てたテスターだって居たからだ。
「ベータテスターという言葉一つで1000人を一纏めにして、個々の差異には目も向けない。いやぁ……単純極まりない」
「トウヤ君?」
「ああ、何でもねーよ、どの世にもああいう奴は居るんだなって事さ」
不思議そうに俺を見てくるヒースクリフに適当に返し、俺は続く言葉を聞く。
どうやら、ベータテスター達は金やアイテムを差し出せと言いたいようである。
「トウヤ…」
「わかってる」
俺とキリトのレベルははっきり言って異常だ。その上、アイテムの確認などした日には、俺のアイテムストレージにあるチート装備がバレてしまう。
ここは一つあのキバオウが表立って発言できないように叩き潰して(立場的)おくべきだろう。
「そういうアンタ自身はどうなんだい?」
立ち上がって、俺が発言すると、周りから注目が集まる。
コレが、他の奴らだったりしたら、何言ってんだアイツ?という視線が目立つのだろうが、ここは俺の容姿がプラスに働いた。中には、「おっ、可愛いじゃん」とかいう発言をする奴までいる。
おいおい男だって言いだし辛くなったじゃねぇか。
「そりゃあ、普通皆考えつかないよね?表立ってベータテスターを糾弾する張本人がベータテスターだなんてさ?……流石ですねキバオウさん?アイテムやコルを他のベータテスターから巻き上げるために、随分と悪知恵を働かせたみたいだ」
俺のその発言に、ざわざわと会場が騒がしくなる。
つーか、女言葉を避けつつも分かりやすく男っぽい口調を使わないのって疲れるよぉ。
「なっ!?何いうとんねんねーちゃん!!わいはベータテスターとちゃうわ!!」
真っ赤になってキバオウが言うも、周りからは「嘘付け!」「証拠はあんのかよ」などという発言が目立つ。
「ベータテスターじゃないってあなたが口で言うのは簡単さ。けど今の状況だとあなたがベータテスターでその上アイテム巻き上げようとしたってほうが説得力あるよ?」
まあ、そうは言っている俺自身の超六感によるとコイツは100%ベータテスターじゃあ無いのだが。
「ぐっ!」
呻いて、周りを見回しているキバオウを放置して、俺はディアベルに視線を向けた。
「ディアベルさん!」
「え?俺?な、何かな?」
急に話を振られて驚いている所悪いが、これから先ベータテスター云々の会話が出ないようにしてもらいたいので役に立ってもらうとしよう。
「これから先の層でも言えることだけど……ボス戦に参加するのにベータテスターであるかどうかは関係あるのかな?」
その言葉に、ディアベルがハッとした顔になる。この顔はまるでチャンス!と言わんばかりの顔だが……?まさかディアベルもベータテスターなのか?
「いや、ボス戦参加にあたってベータテスターであるかは全く関係ない。ベータテスターは貴重な戦力だし、ベータテスターもビギナーもこのゲームに捕らわれた同じ被害者だと思うんだ。皆はどうだ?」
うん、ディアベルぐっじょぶ!
ディアベルの発言に、同意する意見が目立ち、キバオウの立場は完全になくなる。
さらに、ディアベルがそれでもどうしてもベータテスターと協戦出来ないという者は抜けてくれという発言に加え、エギルとかいう人物がベータテスターが無料で配った攻略本の事を持ち出し、完封した。
え?キリト……お前有料で買ったの?アルゴから?
コルは自動均等割り、アイテムはゲットした人の物となり、俺達は5人だったこともあり取り巻きの相手をする事に決まり会議はお開きとなった。
「トウヤ君」
俺達のパーティーは、一応明日のことを打ち合わせしておこうと話が纏まり、適当な店に全員で向かうことになった。
その途中、ヒースクリフが話しかけてきたのである。
「あ、ハイ?なんすか?」
返事をすると、神妙な顔で、俺の肩に手を置いてヒースクリフは言った。
「君、もう少し女の子らしく話した方が他の人から印象が良くなるぞ?」
…………パーティーメンバーの誤解くらいは解いておいた方が良いだろうか?
「いや、ヒースクリフさん。俺は男ですよ?」
「ハッハッハッ面白い冗談を……え?ホントに?」
うわぁ、このやりとりデジャヴ…。これから何度このやりとりをする事になるんだか。
と、視線を感じてそちらを見ると、赤いフードの…アスナがポカーンと口を開けてこちらを見ていた。
「オイ、アンタもかよぉ…」
「あ、ごめんなさい。えっと…人は見かけによらないんだね」
「いや、トウヤって名前からわかってもらえるかなぁって思ったんだけど?」
「…名前なんてわかる訳ないじゃない」
「パーティーメンバーの分は自分のHPバーの下に出てるよ、確認してみ?」
それから、店について話す内に、アスナとユウキがスイッチというものについても知らなかった事が判明し、俺がユウキにキリトがアスナにそれぞれレクチャーする事になった。
明日の14時からは、いよいよ第一層のボス戦が始まる。
sideヒースクリフ
ふう、なんとか自然にトウヤ君のカーソルに触れられたよ。しかしまさか男の子だったとは。キバオウ君が「ねーちゃん」と言ったとき否定しなかったからてっきり女の子で間違いないと思ったのだが、まあ、あのタイミングで男だとカミングアウトしたらややこしい事になっていただろうな。
それにしても…ボス戦に参加する事になってしまうとは。不死属性がついている上に、今は《神聖剣》も無いから明日は気をつけないといけないな。
とは言え…これでエクストラゲームは終わり、トウヤ君の実力をこの目で確かめるチャンスでもある。
ん?メッセージ?adolenakuからだと!?
なになに…?「新しいエクストラクエスト用意したけどやる?」
や る わ け 無 い だ ろ う ?
いやいや、別に一層でヒースクリフさんの正体が割れるフラグとかじゃあ断じてありませんよ?(^-^;
しかし、一層のボス戦にヒースクリフが参加する展開はSAOの小説では初だと思う!だから何ってわけでも無いですが…
キャラの口調とか変だったらご指摘下さい。感想お待ちしています!
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ファースト・ボス
ちょっと時間空いたけど(^-^;
プログレッシブ2巻無いしどうしよ…
「で、キリト。お前結局アニールブレードは売ったの?」
「いや、売ってないけど…というか今俺が装備してるのアニールブレードなんだけど……?…………や、よく考えたら昨日お前もその話聞いてなかった?」
「いや、買い取りたいって言ってきたのがモヤットボールだって話聞いた直後に自室に戻ったろ?」
「……あ、そういえば確かに。まぁ売ってないよ?予備があるとはいえここまで強化してるのこれだけだし」
「そりゃ所詮予備だからね」
そんな会話をしながら、俺とキリトは第一層ボス攻略の集合場所に向かっていた。
昨日の夜、アルゴがキリトのところに訪ねてきて、キリトのアニールブレードを買い取りたいというやつがいる、と言い出したのだ。その買い取りたいやつというのがモヤットボール(俺とヒースクリフ命名)ことキバオウだったらしい。
ところでキバオウって誰?あ、モヤットボールさんは知ってます。
そんな会話をしながら、集合場所につくと、先に到着していた3人がこちらに向かってきた。
一人は赤いフードを被ったアスナというプレイヤー(素顔は知らない)。もう一人はアスナよりも年下であろう、黒い髪のユウキというプレイヤー。最後が、鉄灰色の髪をしたヒースクリフという盾持ちの片手剣使いである。年はたぶん二十代後半位。
集合した俺達は適当に話(アスナ除く)をしながら時間を潰し、全員が集合したということで、ボス部屋の前まで移動する集団の最後についていくことにした。
道中は、比較的問題なく進んだ。比較的と言っても、問題があったのは俺たちのパーティーではない。なんというか、他のパーティーの緊張感が全然無い。まぁ、変にありすぎても困るのだろうが。
「あれ?」
途中に出てきたMOBを素早く曲刀で倒して、ふと前を行く人物の背を見て俺はあることに気付いた。
「なぁキリト、あいつ装備変わってなくね?」
「え?…………本当だな昨日と同じだ」
前を行く人物とはモヤットボールである。
「んー?どうかしたの、二人共?」
後ろを歩いていたユウキに、なんでもないと答えてから、俺は少し考えてみる。
キリトの持っているアニールブレードを一体いくらで買い取ろうとしたのかはわからないが、少なくとも交渉するくらいの金額は持っていたハズなのだ。にもかかわらず、モヤットボールが装備を買い換えていないということは……。
「その金は他人の金だった、かな?」
「つまり、キバオウはあくまでも買い取り役で、実際に金を出して買い取ろうとしたやつは別にいるってことか……」
「……うーん…俺の超六感によると……」
怪しいのはディアベルだな。あいつ昨日の会議での様子からしてほぼ間違いなくβテスターだし。
となると、キリトがβテスターであることに気づいてってことかな?なんでだ?
「おい、キリト。βテスターが他のβテスターの武器をボス戦前に買い取ろうとする理由何か心当たりあるかい?」
このゲームについてはキリトの方が詳しいので、詳しいやつに聞くことにした。
「…………」
しばらく考えていたキリトは、俺が聞いたことのない単語を口にした。
「ボスのラストアタック(LA)ボーナスをとりにくくするため……とか?」
LAボーナスってなんだよ?
「ボスに最後に攻撃した者が手にいれることができる特別なドロップアイテムのことだ」
話を聞いていたのか、ヒースクリフが会話に加わってLAボーナスのことを教えてくれた。
なるほど、それを同じβテスターであるキリトがなるべくとりにくくなるように、ディアベルがキリトのアニールブレードを買い取ろうとしたって可能性は確かにあり得るかもしれない。
とはいえ、俺はディアベルのことについては黙っておくことにした。キリトだけなら、超六感のことを知っているので教えてもいいのだが、ヒースクリフも会話に加わってきているから超六感が根拠の推測を伝えるわけにもいかない。
「ん?LAボーナスの事知ってるってことは……ヒースクリフさんもβテスターなの?」
「あ、ああ…………実はね」
「……ふぅん」
βテスターがパーティーに二人か。これは思ったより楽になりそうだ。
そんなことを考えながら迷宮区を進む先に、ようやく第一層のボス部屋の扉が見えてきた。
あ、話に出てこない(話しかけてこない)だけで、アスナさんもちゃんとついてきてますよ?
「みんな、俺から言えることはただ一つだ。…勝とうぜ!」
そのディアベルの言葉に、他の者も呼応するように盛り上がり、ディアベルが扉を開け合図をすると同時にボス部屋の中央付近まで駆け込んでいった。
俺たちのパーティーはそのあとを遅れてボス部屋に入る。
「うわぁっ……広いねぇ…」
「体育館位の広さか?なかなか良くできてるねぇ…」
まぁ一回来たことあるけど。
入って早々ボス部屋についての感想を言うユウキに調子を合わせつつ、俺は部屋の奥へと視線を向ける。
丁度、ボスの取り巻きである《ルイン・コボルト・センチネル》が6体ポップして向かってくるところだった。
内2体はモヤットボールのパーティーが交戦しだしたので、残り4体を相手にすることになる。
「1体任せた」
ヒースクリフにそういうと、頷いて前に出る。キリトとアスナも1体と交戦を開始した。といってもすぐに決着がつくだろうが。
「ユウキちゃん、スイッチのしかた覚えてるね?」
「うん!」
「よし、行くぜ」
残り2体は俺とユウキが担当する。
先に接近してきた方に、《近接戦》スキルの曲刀用基本技《クレッセントファング》を放つ。
これだけでは、ある程度の防御力を持つ取り巻きのHPバーは削り切れなかったので、後ろのユウキとスイッチして入れ替わり、ユウキに止めを任せる。その間に、こちらに近づいてきた最後の1体の斧の攻撃を、ソードスキル《リーパー》で弾き、ソードスキルの技後硬直を解除するべく、《近接戦》スキルの素手技《フィンガーバレット》を放ち、さらに曲刀スキルで止めを指した。
……。あ、思わずいつも通りにソードスキル連発しちゃった。
一応回りを見ておくが、誰かに見られていたなんて事は無かったようで、一応安心しておく。
まぁ、誰かに見られて何か聞かれたら全力ですっとぼけとけばいいと思うけど。
そんなことを考えている間に、ボスである《イルファング・ザ・コボルトロード》の四本あるうちのHPバーの一本を、ボスと戦っているパーティーが削りきったようで、新たに6体の取り巻きがポップしてきた。
「まだあっち終わってないみたいだよ」
ユウキにそう言われて指す方に視線を向けると、キバオウの隊はまだ取り巻き2体を倒し終えていなかった。
使えないなぁあいつら。などと思いながら、俺はキリトたちに2体を任せる。一体はヒースクリフが、残り3体をほぼ先ほどと同じ手順でユウキと倒すのだった。
ボスのHPバージョンは、残り一本と少しに差し掛かっていた。
既に取り巻きを倒し終えて、俺達はボスと戦っているパーティーの様子を見ている。
今のところは特に問題はない。が、ディアベルがβテスターで、LAボーナスを狙っているなら、かつ、それを確実に狙おうとするなら必ず何かするはすなのだ。
そんなことを思いながら、様子を見ていると、ボスのHPバーが残り一本になった。
思った通り、ディアベルはLAボーナスをとるための行動を始める。
「みんな下がれ!俺がやる!」
なんとディアベルは、味方を下がらせ、単独で自分が前に出たのだ。
……って言っておきながら、おれ自身もこの前誰も見てないのをいいことにソードスキル連発して一人であれの相手をしたのだが……。
言うまでもなく、ディアベルが一人でボスと戦うのと、俺が一人でボスと戦うのはわけが違う。
しかも。
「おいおい、あれ、曲刀じゃあないんじゃねーのか?」
タルワールといえば、インドやパキスタンなどでで見られる刀身が大きく湾曲した細身の片刃刀である。
が、コボルトロードが新たに手にした武器は、片刃ではあるものの反りは少ない。
つまり…………刀。
「ダメだ!全力で後ろにとべ!!」
同じく気付いたキリトがディアベルに大声で警告を発したが、ディアベルは聞いていなかった。
「ここ、任せるぞ」
ボスのHPバーが最後の一本になると同時に出現した取り巻きを、パーティーメンバーに任せ、俺はすぐさまボスとの距離を殺す。
今からいったところで、ディアベルはおそらく助からない。
既にディアベルのHPバーはボスのソードスキルを受けてレッドゾーンに入っている。その上、まだボスの攻撃は繰り出されようとしているのだ。
だから、ディアベルのことは走り出した瞬間から見捨てていた。
自分一人でボスに、それもLAボーナスをとるために突っ込んでいってそれで死ぬのなんて、そんなものは自業自得だからだ。
攻撃受けて吹き飛ばされたディアベルにキリトが駆け寄るのにちらりと視線をやりつつ、俺はボスへのファースト・アタックを繰り出した。
お馴染みの《曲刀》ソードスキル《リーパー》だ。
攻撃を受けた俺にボスからのヘイトが向けられる。
こちらを向き反撃の斬撃を放ってくるが、既に技後硬直からは離脱している。
ギリギリで攻撃を交わしながら、ボスの左側から攻撃を叩き込み、背後に抜け、振り向き様に背中を斬りつけボス部屋の奥側へと後退する。
これで、他のパーティーのやつらが逃げ出すならそれでよし、そうなったらあとは《近接戦》スキルも合わせたエンドレスアタックで一人でもボスを倒せるはずだ。
そうならなかったとしたって、キリトなら確実に加勢に来るはずだ。
ボスの背中側から、青いガラス片のような物が見えた。おそらく、ディアベルが死んだのだろう。
「さてさて……少しは楽しませてくれよ、ファースト・ボス?」
楽しげに笑いながら、俺はボスとの距離を詰める。
端から見たら、自分の命がかかっているデスゲームにもかかわらず、さも楽しそうにボスに挑んでいく俺の姿は、まさしく異常な人間の姿のように映っただろう。
が、俺にとっては戦いに本物の命がかかっているなんて事は、当たり前の事である。
これまでも、きっとこれからも。
俺にとってSAOとは、単に戦いの舞台がバーチャル世界になったというそれだけの物でしかない。
これまで数万年もの間生きてきたなかで、今よりも酷い状況など幾らでもあったのだから。
「くハハハッ!」
トップスピードで迫り、正面からボスの体を切り裂く。これで、ボスのHPバーは最後の一本のうちの残り2/3。
先程、ディアベルを空中に打ち上げたソードスキルを、力任せに受け止める。もっとも、それだけでは力が足りなかったのか、ダメージは食らわなかったものの、ディアベル同様空中に打ち上げられた。
が、焦ることなく俺はクイックチェンジで曲刀をアニールブレードに変えると、先程ディアベルのHPバーを全損させたソードスキルの連撃、その初撃を《片手剣》スキルの《ホリゾンタル》で強引に弾き飛ばす。
ソードスキルは、攻撃終了時以外にも、あまりにも規定から外れた動きになったときも強制停止後に技後硬直が発生する。
プレイヤーだけでなく、ソードスキルを扱うエネミーにだって。
剣線を反らされ、スキルを強制解除されたボスの動きがフリーズする。
視界の端で、ヒースクリフが唖然としているのが見えた。
キリトとユウキ、さらにアスナも加えた3人が加勢に来る。
動きの止まったままのボスに、それぞれソードスキルを叩き込み、それに続くように、《ホリゾンタル》の技後硬直が解けた俺も再度ソードスキルでダメージを与えた。
が、ボスのHPバーはほんの少しだけ残ってしまっている。
俺は、普通に技後硬直が解けてからもう一撃ソードスキルを叩き込み撃破すればいいと考えたのだが、キリトの一言で考えを変えた。
「スタン攻撃が来る!」
どうやら、先程ディアベルが斬撃を立て続けに受けた原因は、ボスの放った攻撃が関係しているらしい。さて、ここで問題なのは、俺には状態異常……デバフが、身につけたコートのおかげで一切発生しないということだ。
技後硬直が解ける前に連続してソードスキルを繰り出すのと、他の3人がスタンしているなか一人だけ平然としているのと、どちらがチートっぽく見えるだろうか?
「ま、どっちもどっちって感じだな」
ならば、俺たち4人のうち誰に放たれるかわからない追撃にひやひやするより、この場で早めに倒してしまった方が良いだろう。
《近接戦》の素手技《フィンガーバレット》を放とうとして、俺はふと思う。
今使ったのは、《片手剣》スキルの中の《ホリゾンタル》というソードスキルだ。では、《近接戦》スキルの片手剣用ソードスキルはこの状態で使えるのか?と。
わからなければ、殺ってみるのが早い。
《近接戦》スキルの片手剣用単発ソードスキル《ファストストライク》を放つ。
突くように放たれたそのソードスキルが、ボスのHPを削りきりポリゴンへと変えた。
しばらく静まりかえったボス部屋は、勝利を喜ぶ声に満たされる。
その中で、俺は「なるほど、そういうことか」と呟いた。
《近接戦》スキルは、それ単体で強いというスキルではないのだ。他のスキルを放ったあとに、ノーモーション……どんな体制からでも放てるソードスキルで次のスキルに繋ぎ連発ができるところに強みがあるのだ。
確かにチートである。
同じ武器を使って、異なるスキルのソードスキルを連発する……。
「名付けるなら……スキルチェインってところかな」
まぁ、あんまり人前で使わないように気を付けないといけないけれど。
と、そんなことを考えていると、キバオウの「なんでや!?」という声が聞こえてきたので、なんだ?と思いながらそちらに視線を向けた。
「なんでディアベルはんを見殺しにしたんや!?」
「見殺し…?」
キリトが、わけがわからないという風に呟く。
「そうや!自分はボスが使うスキル知っとったやんけ!わしは聞いたぞ!ディアベルはんに下がれ言うたのお前やろ!?」
「それは……!」
俺たちの会話を聞いていたのか、アスナが何かいいかけたが、キバオウはすぐに次の矛先を俺に向けてきた。
「そっちのねぇちゃんもや!!あんた、さっきボスの攻撃に対処できたやんけ!?」
「武道をやってれば出来なくはないと思うよ?」
ユウキが反論し、何故かヒースクリフも「同感だな」と、それに頷く。
なんだ?こいつら二人共リアルで剣道でもやってんのか?というか、キバオウ……お前まだ俺が女の子だと思ってんの?
とか、色々と突っ込みどころはあったが、俺が言うべきはただひとつ。
「ま、ボスのスキルに対処出来たのはそれが理由だな…………それよりも……」
βテスターに対し、普通以上の敵意を持っているキバオウ。
恐らく、βテスターに良くない感情を持っているのは、何も彼だけでは無いだろう。が、彼らは気付いているのだろうか?βテスターに対して敵意を持っているとかそんなのは、はっきり言って八つ当たりと変わらないのだ。
俺に言わせれば、そもそもの原因は、この状況を、デスゲームを産み出した張本人(名前忘れた)なのだから。
だから、まずはその辺りの認識からどうにかするしかない。βテスターだろうと、そうでなかろうと、死ぬもんは死ぬのだ。同じデスゲームに巻き込まれた囚人なのだということを、教えてやるしかない。
だから。
「ディアベルを見捨てたのは、直接ボスを相手したお前らだろう?何故ディアベルに下がれと言われておとなしく下がった?一人でボスに挑んでいく危険性を理解できなかった訳じゃないだろう?」
「……それは、ディアベルさんが、下がれって言うから……」
周りから視線を向けられたディアベルのパーティーメンバーが、居心地悪そうにそう答える。
「何も考えずにただ下がれって言われたから下がったのか?…………ま、それならそれでも良いが……じゃあなんでディアベルはそんなことを、ボスに自分一人で挑むと言ったんだと思う?」
まずは知れ、ディアベルの死は本人の自業自得だった事を。
討也が居たってディアベルは助からんのです( ・∇・)
第二層やらなきゃダメっすかね?(^-^;
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