案外、周囲からの評価は悪くなかったりする。 (冴え渡る)
しおりを挟む

記録1『それが初めての出会いだった。』

それでは進めていませう。


千葉県に存在する高校。

 

 

 

県内でも有数の、公立の進学校。

 

その名も『総武高校』

 

生徒の偏差値は進学校ということもあってかそこそこ高く、全体的にハイレベルな場所である。

 

生徒は勉強だけでなく部活動にも力を入れており、特にサッカーとテニス、柔道は何度か新聞にも載るくらいには強い。

 

その為、この高校に進学を希望する生徒も少なくない。

 

 

私は『千葉新聞』に勤める記者で、今回社長の命で、中学生の為の学校特集を任された。

数人で別れ、私はこの高校に対して取材をする事にした。

 

もちろん、既に生徒指導の先生と校長からは許可を得ている。

 

私は校内で数人、記事になるような面白みのある生徒を探す事にした。

 

 

 

近くを通りかかった生徒に聞いてみる。

 

 

 

 

あなたの周りで面白い生徒はいますか?

 

 

 

 

「えっ、面白い生徒?うーん…………あ、2年の葉山先輩はすごいかっこいいですよ!」

 

 

 

葉山。

 

おそらくサッカー部の部長を務めている彼だろう。

何度かうちでも取り上げた事がある。

 

高い知能と鍛えられた肉体、円滑に周りと話ができるコミニュケーション能力、そしてそのルックスからかなりの人気がある。

 

 

私はその生徒に礼を言い、葉山の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

おそらくグラウンドにいると思い、外の生徒に聞いてみようと思う。

 

サッカー部の付近に、女子マネージャーらしき人物がいるので話を聞いてみる。

正直この生徒もかなりレベルが高いが、私が求めているのは面白い生徒。かわいい生徒ではない。

 

 

 

 

葉山、という生徒はいますか?

 

 

 

 

 

「えっ、葉山先輩ですか?それなら向こうにいますよ。あっ、私呼んできますね!」

 

 

 

少しあざとさがある受け答えだが……まぁいい。

女子生徒が葉山を呼んできてくれるようなので待つ事にした。

 

すると向こうから、カリスマ性を持った好青年が向かってくる。

 

私は今回の旨を彼に説明し、取材を引き受けてもらえるように頼んだ。

だが、

 

 

 

 

「…………そういう事なら僕よりも適任な人物を知ってるよ。校舎にある『奉仕部』って言う部活を見てみるといい」

 

 

 

 

 

彼ほどのものが自分よりも取材を受けるのに適任がいる、と言った。

 

隣のあの生徒も、どこか納得したような顔をしていた。

 

私は内心、楽しみで仕方がなかった。

 

ここまで出来上がった『良品』の人間が評価する人物。

一体どんな人なのだろう?

 

抑えきれぬ好奇心を胸に抱き、私は『奉仕部』の扉の前に立つ。

 

ドアの前に立ち、三回ノックをする。

 

 

 

………………………返事がない。

 

 

 

いないのか?それとも無視しているのか?

 

ラチがあかないので、私はその扉を開けてみる。

 

 

すると中には、言葉では言い表せられないくらいの美少女がいた。

 

 

 

 

「先生、ノックをするなんて珍しいですね……………………どなた?」

 

 

 

この少女は私を先生と間違えたようだ。

ていうか先生だと無視するのか。

 

それ以前に先生はノックをしないのか。

教師としてどうなんだ?それ。

 

 

 

「もし?あの………どちら様でしょうか?」

 

 

 

少女は怪しんだ目をしてこちらを見ている。

 

私は誤解されないようにすぐに名刺を出し、取材がしたいと説明した。

 

 

 

 

「なるほど……葉山くんがそう言ったのね……でもその人物はまだ来ていないわ」

 

 

 

?………彼女ではないのか?

 

この少女ならこのまま普通に新聞に載せても全然問題ないんだが……

 

 

 

 

「私の名前は雪ノ下雪乃です。この奉仕部の部長を務めています。そしてあなたが求めている人は私ではなく他の人。…………あの男が取材に値するとは到底思えないのだけれど」

 

 

 

 

あれ、ときたか。

 

なんだかあれだな……その生徒はかなりこの部室でのヒエラルキーが低いようだ。

 

私はその生徒に少し同情した。

 

 

 

 

待つ事5分。

 

部室の扉が大きな音を立てて開く。

 

 

 

 

「やっはろーゆきのん!……ってあれ?ゆきのん、その人は?」

 

 

 

 

………………一言で言うなら『アホの子』って感じの子だ。

 

 

染められた髪、気合の入った化粧、そしてギャルっぽい制服の着崩し。

 

なんでこの高校に入れたのか不思議に思える。

 

……彼女もまたレベルが高い。

だが綺麗、とか美しい、というよりは、可愛い、とか愛らしいという方がしっくりくる。

 

 

わたしは一応、その少女にも挨拶をし、今回の旨を伝える。

 

 

 

 

「ほぇー………新聞の取材なんですかー」

 

 

 

理解してるのか?

 

 

 

 

「あ。私、由比ヶ浜結衣っていいます!よろしくお願いします!」

 

 

 

 

挨拶ができる、という事は少なくとも不良ではないようだ。

それに先程部室に入ってきた時、すぐに私に気づき誰かを尋ねた事から空気を読む事に長けている事がわかる。

 

 

 

「それと、ヒッキーはまだ来てません。多分もうちょっとでくると思うけど……」

 

 

 

 

 

ヒッキー。

 

それが私が待つ生徒の名前だろうか?

いや多分この子がつけた渾名だろう、外人とも考えにくいし、第1外人でもあんまいないだろ。

そんな変な名前は。

 

彼女が言い終えた後、部室の扉が音を立てて開く。

 

すると、目が特徴的な中肉中背の男子生徒が気怠そうに部室に入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

「うーっす。………誰?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが私と『比企谷八幡』との最初の出会いだった。




俺ガイルのキャラは真似るのむずいね。


ゆきのんとかまじ無理のん。


なんなのん?まじなんなのん?
知的な女子高生とか無理ゲーすぎるのん。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

記録2『それならこちらにも考えがある。』

記者の年齢は40くらいのそこそこ経験豊富な男性記者、という事で。


外見は加持さんで。でもあそこまでジゴロじゃないです。
八幡がもうちょい色々と達観して大人になった感じで。


つか俺ガイル二期終わっちまった。悲しくて哀しくて歟しくて。


 

「…………雪ノ下、俺ちょっと帰」

 

「却下」

 

「いやほらあれだから。小町が家で待ってるから」

 

「小町ちゃん今日は友達とカラオケだって」

 

「……なんで小町の行動知ってんだよ」

 

 

 

 

…………なんだこのコント。

 

以外と面白いじゃねぇかよ。

というよりも彼。

 

知らない人がいたら帰るのね……

なんだか昔の自分を彷彿とさせてこそばゆい感じがする。

 

昔を思い出すなぁ………ってそうじゃねぇ。

 

 

 

私、……俺はすぐに彼の近くに行き取材の許可を取る。

 

だが、彼は嫌そうな顔をして全然許可してくれない。

 

人間不信なのだろうか?いや、さっきは雪ノ下に向かって喋っていたな……。

て事は普通に面倒だからとか、嫌だからって事か。

 

 

 

 

だがここで食いさがる俺ではない。

 

新聞記者20年

 

取材をうざがられて『ひっつき虫』とまで呼ばれたこの俺を見くびってもらっちゃ困る。

 

なんとか突破口はないものか……

 

 

 

そういえばここはどんな部活だ?

 

 

 

確か名前は『奉仕部』

 

つまりはボランティアのようなもの。

だがそれなら、名前は『ボランティア部』でいい筈だ。

 

奉仕部である理由…………部長は明らかに一癖も二癖もある。

なかなかに捻った理由があるに違いない。

そして筋の通った話し方。

 

つまりこの部活は『助けるのではなく、助かる方法を教える』といった方式なのだろう。

 

にも関わらず彼はここにいる。

 

明らかに合わなそうな目をしているのに……

雪ノ下は先ほど、俺が部室に入る時『先生』と言った。

 

校長を呼んでいるとは思えない。

ならばもう一人のあの女性の先生が来たのだと思ったのだろう。

 

ここから導き出される答えは……

 

 

おそらく彼は、あの先生か雪ノ下にここに来る事を強要されている。

 

 

 

それならばこの方法で行くか……

 

 

 

 

 

僕は『清水和泉(しみずいずみ)』と言います、どうぞよろしく。

よろしければお名前をお聞きしても?

 

 

 

 

 

「不用意に名前を教えるな、って母ちゃんから言いつけられてるんで」

 

「この方はれっきとした我が奉仕部の客人よ。名前を名乗られたらちゃんと名乗りなさい。こんなの基本中の基本よ?コミュ障君」

 

「いや名前間違えてるから。カスってもねぇから。つかなんで俺の昔の渾名知ってんだよ……」

 

「あら、ではちゃんと名前を名乗って貰えるかしら?みんなに聞こえるように」

 

「あはは………ヒッキー、自己紹介はちゃんとしなきゃダメだよ?」

 

 

 

 

 

その後、盛大に吹き出してしまった俺は悪くない。

 

 

 

だが結果として、彼は名乗るとすぐに帰ってしまった。

 

うーん……彼女を焚きつけて彼に取材を受けざるを得ない状況にしたかったんだが……最後にしくじったか。

 

うん、やはり読めない子はいい。

記事に書くだけの魅力がある。

 

先の展開や行動が読めるなんてつまらない人間、書く必要もない。

 

 

とりあえず取材対象は葉山と彼だけにしよう。

……まずは周りの印象からだな。

 

俺は最初に雪ノ下に聞いてみる。

 

 

 

 

 

彼、どう思います?

 

 

 

 

 

「どう、とはどういう意味かしら?具体的な質問の意図を説明して貰わないと答えようがないわ。下手に受け答えをして間違った捉え方をされても困るし」

 

 

 

 

 

では………貴女から見た彼の印象をお聞かせください。

 

 

 

 

 

「そうね………捻くれた人間、かしら。普通では考えられないような斜め下の回答を出すのだもの。」

 

 

 

 

 

 

なるほど………では由比ヶ浜?さん。

貴女から見た彼の印象をお聞かせ下さい。

 

 

 

 

 

「えぇ、私⁉︎えっーと……優しい、かな」

 

 

 

 

ほう?具体的な事をお聞きしても?

 

 

 

 

 

「んと………私、料理が苦手で……この部活に入る前にゆきのんにクッキーの作り方を教えて貰ったんです」

 

 

 

 

それで?

 

 

 

 

 

「結局、あんま上手くいかなくて……最後にヒッキーがあたしとゆきのんに調理室から出ろ、って。それでヒッキーが作ったクッキーを食べたんです。でもそれはあたしのクッキーで、ヒッキーは『手作りってだけで男は喜ぶもんだ』って」

 

 

 

 

 

………有難うございました。

 

 

 

 

 

「えっ、あ、はい」

 

 

 

 

 

ではまた来ますので……その時はよろしくお願いします。

 

 

 

 

 

「こちらこそ。うちの備h……部員数が使えなくてごめんなさい。今度来る時は次前に連絡して貰えると助かるわ。お茶の準備が出来るから」

 

 

 

 

いえいえお気遣いなく、ではまた。

 

 

そう言って俺は部室を後にする。

 

 

 

 

比企谷八幡……取材の価値はあるな。

 

全国でもそうそうお目にかかれない人種だ。

あいつを取材できたらきっと面白い記事ができる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つかあいつ絶対に「備品」って言われてたよな…………

 

 

 

 

 

 




こういう感じで行こうかと。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

記録3『その女はとても歪で。』

久しぶりの投稿。

それにしても八幡の周りを誰にしようか…………。


 

 

 

部員達と話し終わった後

 

 

 

俺は近くのサイゼリアで、今日の記録を編集しながら食事をとる。

 

 

 

 

…………やっぱり彼だけじゃダメか。

 

 

 

本当なら『比企谷八幡』のみを取材対象にしたいが、それでは総武高校の取材にはならない。

 

他にも、面白みのある生徒を何人か取材しなければならない。

 

 

何がいいか…………やっぱ『葉山隼人』か?

 

それに卒業生ってのもいいな。

 

一年坊も回ってみるか………?

 

あの先生は止めとこう。

なんか危ない気がする……何故かは分からないが。

 

 

 

 

 

取材して内容を纏めて計画を立てていると、サイゼリアに一人の女性が入ってくる。

 

 

 

一目見ただけで分けるほどの美人。

 

 

 

嫌味な美しさは無い。

 

知性的な目、水をよく弾きそうな肌、柔らかそうな唇、着こなされた派手すぎない服。

 

寧ろ近づきたくなるような、人を惹きつける何かがある。

顔はもちろん、プロポーションもかなりの物を持っている。

馬鹿な男子がいれば、十中八九遊ばれるだろう。

 

肌に触れることは叶わないだろうが。

 

 

 

 

 

 

 

だが、危険だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

これほどまでに危険な匂いのする女には出会ったことが無い。

 

別に、殺し屋とかの雰囲気があるというわけじゃ無い。

 

そう、それなのに危険と分かる事がおかしいのだ。

 

 

あれほどの美人。

 

 

近寄りがたい雰囲気を出していないのに誰も近づかない。

 

いや、近づけない。

 

話しかけたいが話しかけられない。

近づきたいが近づけない。

 

イカロスの話に似ている。というかそのままだ。

 

 

蝋でできた羽で空を飛んだイカロスは、太陽に近づこうとする。

だが蝋が溶けてしまい、羽が崩れ地に落ちて死んでしまう。

 

 

人の深層心理を熟知しているのだろう。

誰も近づかない事を知っている。

 

 

 

 

こういうタイプは将来、かなりの大物になる。

 

例えば政治家だ。

あいつらは大衆の心を掴む話し方を得意とする。

この女は話してもいないのにこの店の人間、全員を虜にしている。

 

俺を除いて。

 

 

だが近づくのは得策ではないな。

何かしらの問題が起きてしまったら面倒だ。

何か起きなくても、ああいう輝いた人間には近づきたくない。

何十年も生きてると、ああいう『良品』に出会う機会が多い。

連中と話すと、必ず腹の探り合いをしなければならない。

 

だから俺は目線を机から離さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例えその女が隣のテーブルに座っていて、雪ノ下の名前の資料を見ていても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………勘弁しろよ。

 

もうかれこれ5分は見てるぞこの女。

普通ここまで露骨に見られると、咳払いの一つや二つしたくなるものだ。

 

 

だがそれをやったらおしまいだ。

 

 

何かしらのアクションを起こす時、それは話しかけるチャンスになってしまう。

 

今ここで、俺がゴホン!とでも言ってみろ。

その時におそらくこいつは『あっ、すいません』から始まって、そのまま資料を見せなければならない事になる。

 

ふっ!このまま史料を纏めたらすぐに帰って寝るん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのー、ちょっといいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………咳払いすらしてないんだが?

 

 

 




魔王降臨。



記者涙目。



作者望眠。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。