ひなビタ櫻月戦国記〜姫達の本当の戦国〜 (おさかべ姫)
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第一記 姫君達の治める国

現在の鳥取県西部は、かつて伯耆国という地方でした。室町幕府四職(軍事、警察を主任務とする侍所の長官:所司の4家)のうちの一氏、山名氏によって治められていたとされています。この小説は、その伯耆国の一部(南東のあたり。作者は勝手に岩倉城あたりだと思ってる)を櫻月氏という国人衆が統治下においていた、そんな設定ではじめます。ちなみに今日は台風の影響で学校休みでした。(☆ч★)ウッ ヒョー
今回は3500字超と長いですが、次(?)からは1000字程度ちまちま投稿すると思われます。


では、どうぞ。




時は戦国。応仁の乱収束からはや47年、この国では下剋上の風潮が強まっていた。権力の上に眠るものがいつしか滅びるのは世の常だが、家臣や地方の豪族が領主にとって変わる、まさに激動の時代であった。

 

この地倉野川にはかつて国府が置かれ、今でも伯耆国(ほうきこく)の要地であるため、様々な物資、人、通貨が集まる。長らく山名氏分家の家系により統治されていたこの伯耆国だが、五月余日より、一部を除いて出雲の戦国大名尼子氏の所領となった。

 

残ったその一部…櫻野ヶ原の地は、応仁の乱勃発直後、山名氏の支援のもと国人一揆を形成、守護勢力を廃して以降57年に渡り国人衆「櫻月氏」が統治下に置いていた。そして今、この櫻月氏は存亡の危機にある。

 

 

 

 

彼ら……いや、

 

 

 

 

 

 

 

彼女らは、先祖代々受け継ぎしこの土地を守るため、奮闘するのであった…。

 

 

 

 

 

 

櫻野城。現在の領主和姫の高祖父にあたる、櫻月左馬頭襟親(さまのかみエリチカ)によって築かれ、以降櫻月氏の居城となっている。平城かつ、丸は本丸のみ、天守閣は3階建てと小規模ではあるが、構造に優れ、守りやすく攻め難い城である。

 

その天守のふもと、本丸御殿に、一人の若い姫君の姿があった。

 

朱い小袖を身にまとい、意志の強そうな表情で筆を走らせている。東洋人としては珍しく、眼の色は紅く、しなやかな黒髪は腰まであった。彼女の名前は和姫。櫻月氏17代当主にして、櫻野城5代目城主である。彼女の美しき舞と歌声により、櫻野ヶ原の民衆からは舞御前と呼ばれ、慕われていた。

 

ウオオオオオ!セイヤアアアア!ハリャャャャャ!ヒウィゴォォォォ!

 

本丸では、来る戦に備え、民衆の訓練を行っている様子で、必死に腕を磨き、鍛錬をしている。どうやら模擬戦闘訓練が開始されたようだ。皆この地を守るため、汗を流し、怠ける者など1人としていなかった。

 

模擬戦闘訓練開始から半刻(1時間)後。休むことなく、書簡をしたため、政務をこなしていた和姫のもとへ、2人の姫武将が小さな足音を立てつつ参じた。

 

「姫様、兵士たちの訓練、終了致しました。」

 

寿々姫は片膝を立て、春姫と共にひざまずくと、主君である和姫に職務の完了を告げる。

 

2人は和姫の父、櫻月氏16代当主 櫻月和泉守良親(いずみのかみよしちか)に仕えた家臣の愛娘であり、和姫とは幼少の頃より親交がある。

現在はその父と同じく、和姫に武官として仕えている。

 

「うん、じゃあご飯にしようか!」

 

「はいっ♪」

 

満面の笑みを浮かべる春姫。紫色の髪を肩までのばし、緑色の目をしている。物腰柔らかな物言いが特徴だが、ひとたび愛刀「閻魔刀」そして「漆黒盾」を手に取ると、その人格は豹変し、修羅ともみえる強さを発揮する。残念なことに止められるのは寿々姫をおいて他にいない。

 

和姫が一声呼びかけると、奥の台所から出て来た女中により、食事が運ばれてくる。

 

3人は女中からその食事を受け取ると、いつものようにコの字になって座る。品目は至って質素であった。本来であれば、宴の席以外で主君と食事を共にすることは、あってはならない。しかし、幼馴染みである3人は別であった。

 

「姫様、花はどちらへ?」

 

食事に手を付ける前に、寿々姫が疑問を口にする。

 

ちなみに、彼女らの幼馴染みはもう2人いる。1人は春姫、寿々姫と同じく良親の家来の娘で、もう一人は酒屋の娘であった。

 

寿々姫の言う花とは、家来の娘のほうで、もっぱら対外政策を担当する。

 

「ああ、花なら、おめうの所に行ったよ。」

 

「そうですか…。この忙しい時に、全く何をしているのかしら…。」

 

「ホントだしー。まあ、あの2人は気が合うみたいだしね。あーーあ、嫉妬しちゃうなーー。」

 

「ということは花さん、今日は兎月で食事を?」

 

兎月というのは、めうの祖父が営む酒屋の名前である。ちなみに、めうの祖父は同時に土倉(金融業)も営んでおり、京都の貴族相手に金貸しをしていた。

 

「いや、午の刻(だいたい12時くらい)には帰ってくるって言ってたんだけどなぁ…。」

 

「もういいわ。姫様、先に食べてしまいましょう。」

 

再び女中に声をかけ、花姫のご飯を処理するように命じた。

 

「じゃ、いただきm「ひーめーさーまーーー!!!!」

 

ダッダッダッダッっと、御殿内を駆ける音。手を合わせていた和姫の前に花姫が姿を表し、滑り込むようにひざまずく。

 

「只今戻りました!」

 

「花遅刻ー。もう少しでご飯抜きになるとこだったし。」

 

「じゃあ滑り込みセーフだね!」

 

戦国時代にセーフとかいうのやめてくんない

 

「はなな、ホントにすべりこんだめう」

 

「あ、おめうちゃん!」

 

「やほほ!」

 

花姫と共にやって来たのはもう1人の幼馴染みであるおめう。町人の階級であるため、和姫の前に平服するが、すぐに和姫によって顔を上げされられる。

 

「久しぶりね。おめう。」

 

寿々姫が優しく声をかける。

 

「ホント久しぶり。でもさー、おめう呼ぶんだったちゃんとそう言ってよねー。」

 

「えへへ…。申し訳ありません…。」

 

和姫は女中を呼び、花姫の料理と新しく配膳したおめうの料理を用意させる。

 

寿々姫と春姫の二人は、少し移動して花姫とおめうの入る場所を作る。

 

「では改めて、」

 

「いただきまーーす!」

 

和姫が料理を口に運ぶのを確認し、春姫、寿々姫、花姫は食事に箸を付ける。

 

そしてそれを見たおめうが箸をとる。

 

親しい中でもやはり礼儀は忘れない。皆1人娘であるためか、この5人その若さにして随分としっかりしている。

 

前主君良親その他家臣達亡きあとも、こうして領地が一定の安寧を保っているのは、主にこの5人、そして和姫を慕う民衆の力添えによるものであろう。

 

「そういえばおめう、」

 

「むっきゅん?」

 

「最近花と何してんの?」

 

「むひゅひゅん♪それはごはんのあとに説明するめう!」

 

「もう、おめうちゃんったら。ほっぺにごはんつぶついてますよっ。」

 

「お米美味しいめう。ビタミンミネラル食☆物☆繊☆維っ!めうの必殺ツーバスめうぅ!」

 

やめてください。この時代にドラムマニアはありません。

 

 

 

 

「ごちそうさまでしたー!」

 

「じゃあめうめう、例のものを!」

 

「了解なり!」

 

 

てれれれってれー

 

おめうがどこからともなく、何かを取り出す。幅がおめうの身長の半分ほどある薄手の紙と、何やら武器と思われるもの、そして数本の矢。

 

「これは…。」

 

「弩(ボウガン、クロスボウのような武器。)…ですか?」

 

「そのとぉーりめう!でもそんじょそこらの弩とは一線を画するチョーヘイキなのだ!」

 

確かに見た目のそれは弩に似るが、今までのそれとはいくつかの相違点が見られる。

 

「ハァ?いまさら弩?」

 

弩は古くから多くの国々で使われていたが、矢をつがえるのに力が必要なことに加え、矢の装填に多くの手順を踏まなければならず、弓と比べて発射回数が圧倒的に劣る。今や弓の優位性は確定しており、弩は使われなくなっていた。

 

「甘いめう…。はるるの得意料理竹輪の甘煮より甘いめう!」

 

なんだそれ。

 

「姫様、この弩すごいんですよ!見ててくださいね!」

 

言うが早いか、花姫はその弩を手に取る。

 

数本ある矢のうちの1本を手にとり、そのまま弩につがえる。

 

「はい準備完了!あとは引き金を引くだけだよ!」

 

「えぇ!?」

 

一同は驚愕した。装填の速さもさることながら、知略に長ける分非力な花姫が、いとも簡単に矢をつがえてしまったのだ。

 

そして、御殿の外に用意された的に向けて---

 

「えいや!」

 

花姫の撃った矢は見事、的の中心に命中。3人は驚きをあらわにしていた。

 

「なにこれ、ちょーすごいしっ!」

 

「とってもとってもびっくりです。どうなってるんですか?」

 

「ムフフ…カラクリは内部構造にあるめう。」

 

おめうが紙を広げると、それは[超弩(ちょうど)]と名づけられた弩の設計図であった。

 

「ここめう。この滑車で、引っ張る時の力を軽減するめう。1つあたり半分、両側に1つずつついてるから元の4分の1で引けるのだ。ちなみにこれははななの意見めう。」

 

「えへへ〜。姫様達を驚かせようと思って、前から2人で頑張ってたんだよ。」

 

「確かにこれはすごいわね…。」

 

「これなら女子でも扱えるめう!」

 

「うん、でもそうならないのが一番なんだけどね。」

 

花姫が視線を落とす。声調は明らかに下がっていた。

 

花姫につられ、あとの4人もうつむく。

 

 

 

本当は戦なんてしたくない。

 

天下統一なんてどうでもいい。先代のように統治下の繁栄、ただそれだけに尽力したい。

 

ましてや女子までが戦に参加するなどということは。

 

 

しかし他国の領主達は、自分の勢力の拡大を目論み、侵略戦争を始めている。

 

時代は変わったのだ。今や自分達は群雄割拠という前例のない、新しい時代を生きている。そのためこれからの道は自分達で切り開いて行かなければならない。

 

皆が押黙る中、自然と、五人は同じことを考えていた。

 

(父上だったら、どうするのだろうか…。)

 

続く(?)

 




お分かりかと思いますが一応説明。

和姫(かずひめ)→イブ

春姫(はるひめ)→咲子
※橘姫の「橘」は姓なので、他3人と合わせるために「春姫」としました。

寿々姫(すずひめ)→凛

花姫(はなひめ)→まり花

おめう→めう


ちなみにエリチカは確信犯です。

分からないこと、時代的にこれはおかしい(自虐しているとこ以外で)等々ありましたら感想欄にお願いします。


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第二記 大永の5月崩れのその日

はい、1話の時点で公式と食い違っています。だってあとから出すんですもん、ひどいです(´・ω・`) なので少し時間をあけ、情報を待ちました。(決してモチベうんぬんの話ではない)そういうことでよろしくです。


「ん……。」

 

重い瞼をこすり、春姫は体を起こす。時刻は分からないが、まだ日は昇っていない。感覚的には丑の刻(午前2時頃)といったところか。

 

何か変わった夢を見ていたような気がする。自分の全く知らない世界のようで、どこか近しいような夢だった。

 

少し気分が晴れないのはやはり父上のことであろう。春姫は行灯(あんどん)の光を頼りに上着を手に取り、御殿の外へと向かった。

 

 

 

襖を開けると、冷たい風が頬を撫でる。夏といえどやはり夜の空気はしんとしており、少しばかり寒く感じる。だがそれが気持ちよく、良い気晴らしになる。ふと、視線を横へ流すと、そこには見知った少女が縁側に佇んでいた。

 

「イ……」

 

「あれ、春じゃん。どうしたの?」

 

自分を春と呼び振り返った少女は、この地の領主の娘、和姫だった。

 

「……いえ、少し父上のことが心配で。」

 

「……私も。」

 

春姫はそっと、和姫の隣に腰を下ろす。

 

和姫たちの父親は今朝方、伯耆国守護の山名澄之の要請で山名氏の居城である八幡城へと発った。なんでも、内密な相談事だという。

 

近頃、伯耆国の情勢は平穏とほど遠く、不穏な空気が漂っている。尼子氏の力を借りて後継者争いを制した澄之だが、それが尼子氏の、伯耆国での台頭を招いた。事実澄之の守護職は名ばかりで、彼がそのことに不満を持っていることは既に周知の事となっている。「内密な相談事」と称しても、それがなにであるのかは皆分かりきっているはずだ。

 

「…変わった夢を見ました。」

 

夜の冷えた静寂の中、春姫が口を開く。

 

「ふーん。どんな?」

 

「よくは覚えていないのですが……。私達5人が一緒に音楽を奏でているんです。」

 

「…それっていつもと変わんなくない?」

 

春姫の拍子抜けした答えに思わず苦笑する。

 

「そうですね、でもなんかこう……えっと…」

 

「なになに?」

 

和姫は、ずいと体を寄せ、顔を近づける。夢の話に興味津々のようだ。春姫は人差し指を顎にあて、遠くの上の方を眺める。

 

「……忘れちゃいました。」

 

先程のそれと同じように苦笑し、視線を合わせる。澄んだ赤い瞳に整った顔立ち。この和姫という少女は、もしかしたら世界一美しい女の子なのかもしれない。そういえば、彼女の父親もまた、容姿には定評があった。

 

「あはは、残念。じゃあ思い出したら教えてよ。」

 

はい、と応じると、2人はまた闇夜へと視線を戻す。穏やかな光を放つ月と星々、そして目も慣れてきたせいか遠くの山が見える。父上たちはあの山の先で、今もこの地を守らんがために奮闘しているであろう。

 

「姫様、もし私達が…」

 

――普通の町娘として出会っていたら――

 

しかし、その言葉は和姫の手のひらによって遮られる。

 

そして和姫は視線を前に向けたままゆっくりと立ち上がる。その横顔は恐怖とも驚愕ともとれない。春姫でさえこんな表情は見たことがなかった。

 

いったい何が――その視線の先をたどると、先程眺めていた山の頂上から、闇の中かすかに一筋の黒煙が立ち上っているのが見える。

 

春姫は自らの目を疑った。

 

山火事などではない。間違いなくあれは――――

 

「狼煙……!」

 

程なくして、櫻野城は緊急事態を告げる鐘の音につつまれた。

 

 




グリモア始めましたもちろんコラボゆえです。ガチャに関しては14720円課金します。(これでイブが一枚以上当たる確率80%前後です)絶対当てます٩( 'ω' )و ゴゴゴゴ


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第三記 櫻月氏の行く末は

明日イブの新曲発表ですね。楽しみです(´∀`*)


敵襲の報が民衆に至るまで伝えられた櫻野城一帯には、先程までの静けさが嘘のように、あちらこちらからの騒音で満たされていた。本丸には多数の篝火(かがりび)が焚かれ、兵たちが隊列を整える。父親達は今朝から山名澄之の居城で、城に残っているのはその姫君達のみ。その姫達は櫻野城周辺の地図を広げ、花姫を中心に五人で策を練るとともに、敵軍の情報を待っていた。

 

「めうめう、矢はどのくらい用意できた?」

 

「ざっと五千本といったところめう。」

 

兎月は貴族への金貸し、酒屋の他櫻月氏の金庫役を担っている。有事の際は兵糧や武器などの消耗品、これらには多額の金が必要となるため、その調達及び武器の製造開発を一任されていた。町人であるおめうが姫達と親しいのはそのためである。

 

「あと三千本お願い。寿々ちゃん、春ちゃん、兵士さんの中で足が速い人、把握してる?」

 

「ええ、顔までしっかり覚えているわ。」

 

「大丈夫です。」

 

そこへ、一人の男が五人の前に踊り()で、声を張り上げる。

 

「報告します!敵軍兵力、およそ三千!」

 

「さんぜ……!」

 

和姫は思わず絶句する。いや、武術の腕に覚えのある寿々姫も、春姫も、そしておめうもまでが言葉を失った。戦力差は圧倒的。加えて、彼女らは初陣である。今の自分達には覆し難い、あまりにも大きすぎる差。皮肉にもこの絶望的な状況が、一瞬にして櫻野城の、先程までの静けさを取り戻した。それはさながら時間が止まったようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァァン!

 

「みんな揃って葬儀の時みたいな顔しちゃって。いい?諦めたらそこで戦終了よ?」

 

両手を打ち合わせ、皆の時を再び進めたのは、領主の娘、和姫であった。

 

(いやそれスラムd……)

 

おめうちゃん、今大事なとこだから静かにしてて。あとその時を超越した知識はどこからくるのかな?

 

和姫は本丸の兵士達から、花姫へと視線を移す。

 

「花、あんたなんか考えがあるんでしょ?」

 

「えへへっ、やっぱし姫様にはわかっちゃいますか〜。」

 

「あったり前田のクラッカーよ。あんたいつもすぐ顔に出すし。」

 

ああああお前まで何言ってんだ

 

「これはわざとですよ〜。」

 

花姫はそういい放つと、ゆらりと立ち上がり、袖から扇を取り出す。彼女は中国古来からの兵法書で有名な「孫子の兵法」そして「六韜三略(りくとうさんりゃく)」を諳んじ、その他多くの兵法書を愛読している。彼女の父、山形上野介忠公(やまがたこうずけのすけただきみ)からは古代中国、三国時代の名軍師諸葛孔明の生まれ変わりと称された。この花姫は、皆にとってとても頼りになる存在である。

 

「おまかせください。櫻月氏軍師の力、お見せいたしましょう。」




グリモアで予告通り14720円ドブりました。そしたら2100ゴールドでイブ当たりました。残りどおすんのおぉぉぉぉぅぃぇ


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第四記 迫る敵軍、そして

ボルテにめう曲追加だそうですね。ヤッター(*゚∀゚*)


「五十人?」

 

「ああ。わしの間者(かんじゃ)(スパイ)が言うのだから間違いない。」

 

山頂より狼煙が上がってから一刻ほど後。既に夜は明け、朝日が顔を出していた。櫻野城を目指して馬を並走させるのは、尼子軍およそ三千を率いる園田重長と、その娘の海。彼女もまた姫武将として名高く、今回は父重長の副将を務めている。

 

「にわかには信じ難いですね‥‥どういうことですか?」

 

「うむ、昨日城を発った櫻月軍は、総戦力五百のうち四百五十を連れて八幡城へと入った。しかもそれに家臣全員が従ったともきいておる。」

 

「なるほど。つまり今、櫻野城はもぬけの殻だと。」

 

「正確にいえばその姫さん達がおるがの。ろくに指揮もとれんじゃろうて。」

 

「徴兵を行った可能性は?」

 

重長は首を横に振る。

 

「彼らはまず民を重んじる。徴兵なぞありえんわい。全くげに阿呆な君主じゃ。」

 

もっとも、その五百の兵士達は全て志願兵であり、櫻野の地では櫻月氏の統治が始まって以降、徴兵が行われていなかった。領地が狭いということもあるが、どちらかといえば歴代櫻月氏当主にはそれだけの兵数でこと足りるという自信があったためである。

 

出来れば無血開城と行けばよいがの、と言い捨て、重長は顎で海に視線を前へと促す。出発前に確認した地図によれば、前方に見えるあの山の先に、櫻野城があるはずだ。

 

「‥‥!父上!」

 

「ほう‥城から出てきたか。」

 

見ると、櫻月軍と思われる兵士達がだだっ広いこの櫻野ケ原のど真ん中に布陣している。後方で鎧を身にまとい、白馬にまたがっているのは敵の大将だろうか。間者からの情報どおり、その兵士達の数は五十ほど、多くとも百人はいないだろう。

 

「皆のもの聞けぃ!これより、前方に見えるあの櫻月軍との戦闘を行う!敵は少数、我らの敵ではない。数で押し潰す。進めぇぇぇ!」

 

重長が右手に持つ槍を振り下ろすと同時に、三千の尼子軍は鬨の声(ときのこえ)を上げ、一つの塊となって速度を増す。

 

前方から迫る尼子の大軍勢。それは、戦経験のない櫻月軍にとってあまりにも強大な相手であった。恐れおののいた櫻月軍の兵士達は、一人、また一人と、武器を捨て櫻野城へと一目散に逃げる。

 

そしてついに、その場に留まるものは一人として居なくなってしまった。敵将も慌てて馬首を返す。

 

「なんと‥‥」

 

「おおかた領主逃走までの時間稼ぎのつもりか。」

 

「どうしますか?」

 

「どうするもこうするも、生け捕りにせよとの命令じゃ。逃がすつもりは毛頭ない。海、ついてこい!」

 

「はっ!」

 

重長が馬を鞭打ち、兵士をかき分け前へ出でつつ、再び怒号をあげる。

 

「皆のもの、追え!追えぇぇ!」

 

尼子軍はさらに加速し、櫻月軍との距離をぐんぐんと詰める。もはや追いつくのは時間の問題だった。




喋ることないんで問題出しマース。

織田信長に関する逸話です。京を支配下に置いた信長は、貴族たちの舌を満足させている、京の料理人を召し抱えることにしました。呼び出された一人の料理人は自慢の腕を奮って信長に出します。すると、信長は料理を口にするなり、「こんなもん食えるかぁぁぁ!」とブチギレ、料理人を殺そうとします。小学生並の情緒ですね、光秀の気持ちわかります。では問題です。料理人がその時にとった行動によって一転信長に腕を絶賛され召し抱えることになります。その時行動とは、いったいなんでしょうか!テレン!!


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