Days~Memory of the past~ (彌凛)
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Everyday
『平穏な物語』
今、私は学校に居る。朝は早く投稿するようにして、なるべく皆と話せるようにしたいのだ。特に、六人とは仲がいい。
雑学知識が多く、クイズゲームはほぼ確実に解く「鷹司夏雄」。
推理ゲーム、知恵の輪などを確実に解きあげる「鷹司秀華」。
特殊能力について詳しい「二條佐之佑」。
定期テスト全部満点の「徳大寺眞佐斗」。
口調は男っぽいけど、女の子的な所も多い「高野朱音」。
ちょっとエッチだけど、優しい所もある「九条将兵」。
だけど、私は平凡な高校生徒、「中御門美佳」に過ぎない。
「はぁ、私にも個性があったらいいのにな…」
「ありまくりでしょ!僕は分かるよ!」
「え!?例えば何?」
「え?ああ、生理のときはちょっと色っぽくなったりとか…」
「最低!期待した私が馬鹿だった…」
マジでクズかもしれない。女の子の日のことに触れるとかありえない。エッチじゃなかった。クズ+変態だ。
「美佳、コイツはこんなんだろ。僕からは言える事は、期待すんな」
「うん…眞佐斗、私が馬鹿だったよ…」
「ちょ、そこまで言わなくてもいいじゃん!」
「「うるさい、クズ」」
「…マジでへこむわあ…」
意外と精神的には弱い。朱音が苦笑いしながらこっちを見ている。
「というか、今ピッタリだったよなぁ。俺驚いたよ」
「面白いよなお前等!俺はお前等のこと、お揃いだと思うぜ!」
なんか恥ずかしい。しかも、眞佐斗とお揃いなんて…
「あああああ!ストップ!」
「え?」
「あれ、美佳さん恥ずかしいのかぁ?」
「う、うるさいクズ!」
「というか、俺はお揃いとしか言ってねぇぜ?」
「まあ、俺も聞いてた限りはそうだよな」
「うるさいうるさいうるさい!とにかくストップ!」
━でも、楽しいな。やっぱり、こんな日々がいつまでも続いてくれればいいな。
どうも、彌凛です。いやあ、難しいっす。女の子視点は分からないっすね。でも、とても新鮮で楽しかったです!さて、ではこの辺で!
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I will not forget the day-to-day flow
━俺は、色々な日々を過ごしてきた。辛いとき、嬉しいとき、沢山あった。でも、私は、この色々な日々を
━忘れることはないだろう。
俺等は双子の姉弟だ。姉の秀華、弟の俺、母親、父親と暮らしている。いたって普通の家族に見えるかも知れない。だけど、俺の両親は本当の両親じゃないんだ。
━俺等は児童養護施設で育てられた。だから、親が居ないとかなんやらでいじめを受けた。
俺は小学校5年生のとき、いじめの中心になってた奴を殴ってしまった。それを学校側は100パーセント俺が悪いとしたのだ。きっといじめの事実を隠すためだろう。そのせいで俺は残りの1年間をさらに悪い環境で過ごすことになったのだ。
中学生になると、友達が多くなった。とてもいい生活だった。
━あれが起こるまでは。
いじめの中心になってたあの奴が、俺と仲の良い人を半殺しにしたのだ。これで俺に近寄る人は居なくなった。
このころだったかな。今の両親が俺等を引き取ったのは。
時は少し飛ぶが、受験が終わった帰り道のことだったっけ。人気のない公園で、金を取られる少年を助けたのは。金を奪っていたのは、アイツだった。
その少年は俺と同じ歳で、同じ高校を受験していた。いかにも運動をしていそうな体つきだったけれど、ボクシングを習っているアイツには敵わなかったのだろう。その少年とは今では仲良くなり、一緒に遊んだりしている。今では柔道を習い始めたそうだ。
そして、俺は高校生になった。俺は、さまざまな過去を持つ人と知り合った。今はとても充実していて、楽しい。ただ、またあんな風にはなりたくない。ならないとは思うけど、だけど…
「夏雄、難しい顔してどうした?」
「いや、なんでもない」
ああ、こんな風に会話が出来る。幸せだ。
そう思っていたときだった。
━夢と疑いたいくらいの轟音が鳴った。
「なんだよ今の…」
━そこから、俺の長い一日が始まったのだ。
窓から外を見れば、第一校舎の昇降口が燃えている。さっきの轟音からすれば、爆発が起きたと考えられる。
「なんで燃えてるんだ!?さっきはもの凄い音がしたし、なんなんだ!?」
そう隣で言っているのは、佐之佑だ。彼は相当落ち着きが無く、どうすればいいのか分からない状態だろう。しかしどうであれ、この状況は
━拙い。ここは四階とは言えど、火がやって来るのは時間の問題だ。逃げなければ。
「おい、逃げるぞ」
そう言ったときだ。
「助けてくれ!」
俺等に声を掛けてくる人物がいた。その男は息を切らして、こっちを見ている。
「なんだ?」
「変な野郎が俺を追いかけてくるんだよ!どう考えても俺をぶっ殺そうとしていやがる!」
変な野郎…?一体どんな奴なんだろう。
「一体どんな奴だ?学生か?」
「学生じゃねぇ!背が高いし、大人に決まってる!」
相当焦っているようだ。彼の言ったことと、様子から考えても、いずれこっちに来てもおかしくないだろう。
そう考えていると、またも轟音が耳を劈くように鳴った。今度は音が近い。もしかして…
「おい、そいつは属性をもっているか?」
「多分をもってる!アイツ、昇降口を爆発させやがった!」
やっぱりそうだったか。きっとその野郎はこっちに向かってきてるだろう。拙い。これだと、四階にきてここまで爆発させるだろう。
「クソったれが。遭遇は避けねぇとな…」
「逃げるしかないな!俺は死にたくねぇよ!」
だが、どうしようか…ここから逃げるには、飛び降り…いやいや、死ぬな。
「おい、能力使ったほうがいいか?早く逃げないといけないし」
「いや、大丈…」
もしかしたら、佐之佑の能力を使えば逃げられるかも…!
「…やっぱり頼む。おいお前、ここから飛び降りるぞ」
「はあ!?死ぬに決まってんだろ!狂ってやが…」
「ああ、大丈夫。俺がなんとかするさ」
「無理に決まってんだろ!」
「お前は死にたいのか?」
「んなわけねえだろうが!」
「じゃあ、少しの可能性に賭けてみようぜ?」
「…クソが。死んでも知らねぇ!」
そう言うと、男は飛び降りた。俺等も続いて飛び降りる。飛び降りると、どんどん下へ落ちて行く。
「佐之佑、減速だ」
「わかってる」
佐之佑がそう答えると、俺等の落ちるスピードが落ちた。俺等はゆっくりと地上に降りた。
「…ちょっと待て!いきなりスピードが落ちたのはなんなんだ!?」
「俺がやった。あのスピードのまま落ちたら死ぬぞ?」
「そういうことじゃねぇ!なんでスピードが落ちるんだ!」
「俺の特殊能力の『速遅』だよ。もののスピードを変えられるんだ」
「訳がわかんねぇぞ…」
「まあ、それでいいと思うよ。深く考えても分からないものだし」
佐之佑と男がそんな会話をしている内に、俺は周りを見渡していた。ほかの生徒がグラウンドへと逃げていくのが見える。目の前にある第一校舎の昇降口は激しく燃えたままだ。おそらく、中央廊下を使って第二校舎の昇降口から非難しているのだろう。四階に中央廊下があれば、安全に逃げられたのに…そもそも、四階は通常教室がなく、机などが廊下に置いてある倉庫みたいなものだ。俺等は転校生のために机を持ってくるために四階にいたのだが、まさかこんなことになるなんて…
「おい、夏雄。俺等も早く逃げないと。ここも危ないよ」
「ああ、そうだな…」
しかし、そうはいかなかった。
━さっきの男が血を流して倒れていた。
「おい、しっかりしろ!」
返事がない。そして、出血が止まらない。
「どうしてだ…!?ついさっきまで話してたのに!」
おかしい。声も何も出さず倒れるなんて…しかも、なんで俺等は気付かなかったんだ?
そう考えていたときだ。
「知りたいかい?」
そんな声が後ろから聞こえた。
後ろを見ようとしたが、ナイフを突きつけられてるため、むやみに動けない。
とりあえず、コイツの行動で、これからどう動くかは決めようか。
「ねぇ、お兄さん」
声からすると、女の子のようだ。ナイフの位置から考えれば、身長はやや高めかな。このくらいの身長と考えると、自分と同じくらいの歳だろう。声質もそれっぽい。
「知りたいでしょ?」
「何を?」
「わかってるでしょ?」
クソ、ムカつく。でも、むやみに動けない。困った。この状況じゃ携帯なんて使えるわけがない。
「おい、夏雄に何して…」
「そこのお兄さん、動いたらこのお兄さんをぶっ殺すよ?」
冷静な口調で、そんなことを言うと、俺にナイフを強く突きつけ始めた。刺さらないように手加減はしているようだが、痛みを感じる。佐之佑、じっとしててくれよ…
…ん?そういえば、さっきの男は身長が高い大人だろうと言っていた。
しかし、俺と同じ歳くらいだということが分かった。
なんでさっきの男は大人と判断した?見間違えだろうか。いや、あり得ない。
待て、この子がさっきの男の言ってた奴ではないかもしれない。しかし、普通いきなりナイフを突きつけて来る生徒なんているか?
大人の姿…女の子…この二つを結びつけるものなんてあるわけ…
いや、ある…『化身』だ!この能力を使えば、自分の姿を変えられる!
「なあ」
「なに?」
「アンタ、『化身』を持ってるよな」
「…なんでわかるのよ」
「今が本当の姿だろ?さっきから考えていたけど、アンタ、男性に化けていたみたいだし、怪しすぎるんだよ」
すべて勘付かれたかのように、彼女は舌打ちをした。
「アンタ、いい加減…」
「喋るな。殺すよ?」
仕方ないかな。
そろそろ、属性使ってもいいだろ。そして、彼女はナイフを完全に刺そうとしている。
拙いな。早く動かないと。
「殺す」
「じゃあ、俺も」
そう言うと、俺は彼女に固体化させた光をぶつけた。彼女が痛みと衝撃で離れる。
「…ッ!痛い…」
「随分と痛がってるね。佐之佑、警察呼んで。救急車もね。」
「クソ…」
そう言った瞬間、彼女は逃げようとした。しかし、体が痛みで動かないようだ。
「テメェ…どうなるかわかってんだろうな…」
「こっちの台詞だ。残念だねぇ。君は結構な重罪かなぁ。放火に傷害に…面白いね、なかなか」
佐之佑が彼女の感情を煽るように口を開いた。彼女も腹が立っているのか、唇を嚙んで睨み付けている。しかし、何も出来ない。
「くっ…」
「おやおや、可愛い顔が台無しだなぁ。ま、出直してきな」
まったく、佐之佑の言う通りだ。意外と可愛い顔立ちで、結構スタイルも良いのに。
もったいないなぁ。頭が悪いんだな、きっと。
「そういえば、止血はしてあるんだよな?」
「まあな。固体化させた光で止血してる」
まあ、男は死にはしないだろう。きっと無事なはずだ。
燃えている昇降口を見つつ、少し笑って見せた。そんなことをしていると、警察がやって来ていたのだった。
ああ、もうこんなに日が経つのか。早いものでもう二年が経つ。振り返ると、意外と短いが、あのときは凄く長く感じたなあ。今頃、あの女の子は何をしているんだろう。まだ警察にお世話になってるかね。ちなみに、彼女があの男を殺そうとしたのは逆恨みが原因だとか。逆恨みって怖いねぇ。
時計を見れば、六月九日の午後十一時を指していた。
暇だ。寝てもいいのだが、寝てもどうせ一時間で起きてしまう。今日は午後二時に起きたんだ。まだ寝るのには早い。早すぎる。
…はあ。もう寝よう。めんどくさい、色々と。
さて、
明日は何が起こるかな
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Fireworks of blood
━飛び散っていく彼を、私はただ呆然と見ていた。
いつも通り、六時に携帯のアラームが鳴った。寝惚けながらもアラームを止めた。
携帯は八月九日の六時ちょうどを表示していた。
上を見れば、幼い頃からの賞状が気持ち悪くなるくらいに飾ってある。
少し黙って座っていると、眠気が少し飛んだ。
洗面所で顔を洗うと、母の「いってきます」が聞こえ来て、私も「いってらっしゃい」と返事をする。
リビングに行けば、朝飯がレストランかと思うくらいに綺麗に並べられていた。
朝飯を食べ終ると、そのままゴロゴロして過ごすのが普通なのだが、今日は友達の幸也と買い物に行く予定なのだ。
すると幸也から電話が掛かってきた。確認だそうだ。
いつもはジャージを着ているのだが、今日は特別だ。ワンピースなんて、何時から着ていなかったのだろう。
(変じゃないよな…?)
やはり恥ずかしい。止めようか悩んだが、結局着ていくことにした。
気づけば、もう起きてから一時間が経っていた。待ち合わせの時間は八時半なので、あと三十分ある。少し休めそうだ。
「ふう…」
なんだか、もう疲れてしまった。少し休んでいると、幸也と私が写った写真があった。なんだか恥ずかしい気持ちになった。
気がつくと、時刻は八時十九分になっていた。
(そろそろ行こうかな)
私は戸締りを確認すると、鍵を掛けて家を出た。待ち合わせ場所は昔からある古い公園だ。木が多く、噴水がある公園だ。
それにしても、ワンピースとは露出が多くないか?恥ずかしくて溜まらん。しかし、待ち合わせ場所が近くて助かった。あまり人に見られずに…
「あれ?朱音ちゃんだ!ワンピース着てるなんて珍しいね!」
しまった。面倒な奴に会った。とにかく、この状況から早く抜け出さねば。
「ま、まあな。私だって、ワンピースぐらいなら着るさ。ごめん人と待ち合わせしているんだ。じゃあな」
「あ、ごめんね!待ち合わせしてたんだ!じゃあね!」
よし、逃げられた。しかし、美佳に見られるとは…拙いかな、これは。
なんだかんだ考えていると、幸也の姿が見えた。
「やあ。随分と早いな」
「おはよう!僕も来たばっかりだよ」
コイツは昔から時間は凄く守る。私は破ることも多いけど…
「早速デパートへ行くか」
「そうだね」
ちなみに、一緒に行こうと誘ったのは幸也だ。なにも、父親の誕生日プレゼントを買いたいのだとか。歩くのには遠いので、電車で行くそうだ。
そういえば、駅への抜け道が在るって聞いたことがある。
「そういえば、抜け道があるらしいけど、そっちのほうが早くいけるらしいぞ」
「そっち行ってみようか!朱音、分かる?」
「え?あ、ああ」
実はよく分からない。聞いたことがあるだけで、道の詳しい場所はよく分からない。
私は適当に道を選んで抜けていく。
「あ、あれだ!」
「え!?マジか!?」
一瞬疑ったが、本当に駅の姿が見えていた。
私達は細い道から一気に大通りに出た。そのときだった。
━上から轟音が聞こえたのだった。
私は驚いて上を見上げるが、すでに遅かった。幸也に向かって鉄骨が落ちてきた。そして、彼の頭へ直撃し、血飛沫が起こり、周りからは悲鳴が聞こえる。
(噓だろ…?夢だろ?夢なんだよ…きっと…!)
涙が流れ落ち、血と混ざり合う。
吐き気が襲い、私は膝を付いてしまった。
私に「大丈夫かい!?」と声を掛ける男性が居たが、答えられる筈がなかった。
目の前の彼の姿は、とても見られたものではなくなっていた。
気がつくと、警察や救急車が来ていたが、もう助からないだろう。私の父や母も来ていた。
私は父に抱かれ、その場を去ったのだった。
車の中で私はずっと泣いていた。私が殺したんだ。私が、あんな道から行かなければ。
「…私が殺したんだ…私が…」
「何言っているんだ。朱音は何も悪いことはしていない」
「ゆっくり休みなさい。自分を責めちゃいけないわよ」
父と母が励ますが、私は自分を責め続けた。車の中でも、家に帰っても。
(私が殺したんだ…私が悪いんだ…私が死ねばよかった…)
死ねばよかったとも感じていた。
「朱音、そろそろ寝なさい。体に毒よ」
「…ああ…わかったよ…」
そういって電気を消すが、なかなか寝付けなかった。二時間くらい経った頃でようやく眠りにつけたのだった。
私は早起きしていた。
昨日のことが頭から離れない。
夢の中で、彼が私を責め立ててくる。
━もう嫌だ。
私はなんて馬鹿なんだろう。
なんであの時点で、鉄骨が落ちてくると予測出来なかったのだろう?
私が、未来を予知できたら…
私が
━未来を、予知できたら
私はそれから、未来予知が出来るようになった。
でも、辛い。
人の未来なんて、見たくもない。
自分だけ未来が見えるのが辛くて、
私は引き籠った。
そして私は、
━人と関わるのを辞めた。
「ふう…」
とりあえず、椅子は見つけた。こんな蒸し暑さ、耐えられない。
「眞佐斗、僕は飲み物買って来るけど、何かいるかい?」
「ああ…お茶…」
「了解!いってくるよ」
死ぬ。
本当に死ぬ。
こんな暑い日に出かけるとかふざけてる。
僕はなんで断らなかったんだ…マジで死にそう。
僕、「徳大寺眞佐斗」は死にそうだ。本当に。
イヤホンを外して、携帯を見ると、八月九日を指していた。
なんでデパートなんかに行こうなんて考えたし。
僕が暑さに弱いのは知ってるだろ。しかしなぁ…人の頼みは断れんし。
「お待たせ!いやぁ、暑いねぇ。美佳ちゃんも秀華ちゃんも夏雄も、よく耐えられるねぇ。僕は無理だよ」
「そのわりには余裕そうじゃないか…僕は死にそうだぜ…」
「いや、とりあえず飲みなよ!死ぬ前に!」
そう言って、僕はペットボトルのお茶を渡された。蓋を開け、お茶を流し込む。ああ…生き返る…!
「ふう…生き返ったわぁ…」
「まあ、気温三十五度、湿度七十パーセントだからね。蒸し暑いのはしょうがないよ」
「そんなにあるのか…あれ、そういえば三人は?」
「ああ、あっちで遊んでるよ」
指差す方向を見ると、まるで小学生のように水鉄砲で遊ぶ三人が見えた。
「そっか…お前も暇人だな。彼女とか居ないのか?」
「え?いらないよ、そんなの。親友と遊べれば十分だよ」
コイツは気付いてないのか…自分が相当女子に人気があることを。
背が小さくて、童顔で、抱きつきたくなるような奴だ。そりゃあ、人気になるはずだ。
ただ、変態であることはあまり知られてない。一応、自覚もしているらしい。
「僕はとにかく、彼女とかいう存在に邪魔されたくないんだよ。佐之佑も同じだよ」
佐之佑が言っている姿が安易に想像できる。
「へえ、人それぞれだなぁ」
そう言ったとき、地面に何かが叩きつけられるような音がした。その後に、悲鳴が聞こえた。しかも、かなり大人数の声だ。
「僕、見てくる!将兵は待ってろ!」
「おい、いきなり何言って…」
将兵の声はそこで途絶えた。何が起きたんだ。細い道をいくつも通り抜け、大通りに出る。
すると、人混みができているのが分かった。
「すみません!」
そう言いながら、人混みを避けていく。
人混みを抜けた先には、
━鉄柱に潰されている少年と、泣き喚く少女が居た。
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