幻想血祭郷 (BroBro)
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第1章 破壊の悪魔が幻想入り
堕ちた悪魔


やっちまった感…


 

体が光に飲まれていく。憎きカカロットが放った青白い光。そして背後の太陽の光に。

 

 

(何故だ!この俺が・・・負けるはずがない!)

 

 

その中でもブロリーは困惑し、怒っていた。

 

 

(俺がカカロットに負けるはずが無いんだ!カカロットなんぞに負けてはならないんだ!)

 

 

視界が光に覆われる。だが意識だけは失わない。手放すものかと必死に好敵手の名を考え続ける。

 

 

(カカロット・・・!カカロット!)

 

 

それでも無残にも意識は消えていく。

 

視界が紅く染まっていく。

 

破壊の悪魔は光に飲み込まれていく。

 

そして最後に悪魔は恨みの対象に向けて吠えた。

 

 

「カァカロットオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 

瞬間、破壊の悪魔『ブロリー』は太陽に消えた。最後に上げた咆哮も宇宙に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『破壊の悪魔が幻想入り』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「卵、砂糖・・・うん、全部あるわね」

 

 

幻想郷内の魔法の森。この魔法の森を進むのは人里で夕食や新たなナイフだのの買い物を済ませ、帰宅中の 十六夜 咲夜 である。普段ならばお得意の『時を操る程度の能力』で瞬時に紅魔館へと帰る所だが、今日は天気が良く、大体の仕事を終えていたので進む時の中で既にゆっくり帰る事にした。

 

今咲夜が進んでいる魔法の森は内部に行けば行くほど息苦しくなると言う特徴を持っている。本当ならば一気に魔法の森を突っ切りたいが仕方なく大回りしている。

 

それは、外側の森を進んでいた時に感じた。焦げ臭い様な妙な臭い、まるで生ゴミを焼いた様な臭いが森の内側からした。

 

誰かが森の中で不燃物でも燃やしているのだろうか?何気なく森の少し深くに入って見る。だが、別のルートから行けば良かったとこの後咲夜は思う事だろう。

 

 

「なに…これ…?」

 

 

何故か、それは人間の死体を見つけてしまったからである。

 

咲夜が最初に見た時は只の赤黒い何らかの塊かと思ってしまうほど無惨な物体だった。辛うじて人形だと認識出来たが、五体に無事な所は一切なく、腕はちぎり取れていて足も有り得ない方向に曲がっている。右胸に大穴が空き、背中にまで貫通していた。正直うつ伏せか仰向けかも分からない。

 

幻想郷住人でも一体何をされたらこうなるのかと不思議な程だ。妖怪に捕食される外来人は良く居るが妖怪は捕食する為に捕らえた人間は残さず食す。人間同士の殺し合いもたまにある事だがそれでもここまで酷くはない。

 

もうグロいを通り越して何も感じなくなってしまう。現実味の無い光景だった。

 

 

「…なんて…」

 

 

言葉が思いつかなかった。ここまで無惨な状態だとどうすればいいか検討もつかない。咲夜は敵対する者を死体に変える術は知り得ているがその死体を処理する術は持ち合わせていなかった。

 

数分考えた後、『自分には関係ない』と無理矢理考えた。こんな死体を見つけて火葬しても咲夜にはなんのメリットも無い。生きていたら話は別だがこんな様子で生きている訳が無い。

 

可哀想だとは思ったが、このまま土に帰って貰うしかないのだ。

 

 

「ごめんなさいね…」

 

 

少し残った罪悪感を払拭する為、返事もしない肉の塊に向けて謝罪の言葉を出し、紅魔館へと帰るため踵を返した。

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カ………カロ……ッ……ト…………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…声がした。有り得ないが、確かに男の声がした。

 

瞬間、咲夜は男に向かって振り返る。確かに聞こえた男の声。

 

この肉塊が喋ったのだろうか?こんな状態で生きていられるのか?もしかしたら聞き間違いか?

 

様々な疑問が頭に飛び交う中、男の生を確信させる声は続いて聞こえてきた。

 

 

「カカロ……ッ…ト…!」

 

 

その声は弱々しくも、様々な感情がこもっていた。

 

 

怒り

 

悲しみ

 

嘆き

 

憎しみ

 

呻き

 

 

その中に微かに聞こえた『悲しみ』の声を、咲夜は聞き逃さなかった。

 

 

「…貴方は、何が悲しいの?」

 

 

その問に男は答えない。ただただ「カカロット」と言う何者かの名の様な者を口にしていた。

 

その者とこの男がどういう関係だったのかは知らない。この男をここまでボロボロにした張本人かもしれないし、親友や恋人なのかもしれない。

 

だが、その名を呼ぶ声に希望が無いのは確かだった。死にかけていながらも誰かの名を呼び続ける姿を、咲夜は見ていられなくなってしまった。

 

微かに口だと分かる部位から発せられるその声は次第に小さくなって行く。それでも尚、男は何者かの名を呼び続けていた。

 

まるでそれが宿命であるかの様に。

 

まるでそれが生きる為であるかの様に。

 

男はカカロットを呼び続けた。

 

 

「カ…カ……ッ……………ト………………」

 

 

何度目であろうか。幾度となく消え入りそうな声で叫び続けた男の声は著しく小さくなっていった。

 

まだ生きている。こんな状態であっても誰かに会いたがっている。そんな男に咲夜はゆっくりと手を差し伸べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カカロットオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

ある館の一室のベッドの上。そこでブロリーは大声を上げながら目を覚ました。息切れが激しい体を何とか落ち着かせ慎重に状況を把握する。

 

 

(ここはどこだ?何故俺はこんな所にいる?確かに俺はカカロット達に殺されたはずだ。体が焼けていく感覚を今でも鮮明に覚えている。ならばここは地獄と言う所か?確かに部屋は全体的に紅いが親父が言っていた様な阿鼻叫喚は微塵も無い。ならばここは天国か?…いや、俺が天国なんぞに行ける訳が無い。ならここは一体どこなんだ?俺は生きているのか?)

 

 

柄にも無く色々と考えて見るがサイヤ人の中でも類を見ないほど頭が悪いと言われているブロリーでは表面だけで深くまで考えられない。つまり、「いやもしかしたら…」などの追求を怠ってしまうのだ。

 

そんな頭悪いブロリーに願ってもいない、いや願う事すら考えていなかったブロリーに助け船がやってきた。

 

 

「イタタタタ…」

 

 

頭がショート仕掛けていた所でベッドの右隣から女の声が聞こえた。敵と感じたブロリーは戦闘態勢のまま女に振り返る。

 

そこには赤いロングヘアの女が倒れていた。全体的に緑色の服を着ていて、ブロリーには怠るものの何処かのクズ王子よりは身長がある。親父のパラガスと似たか寄ったかの身長だ。

 

正直ブロリーはまだ女と言う者を1回しか見たことが無い。その女も出会った瞬間から敵対してくる様な奴だったからブロリーは女と言う生物は好戦的な種族なのかと思っていた為、倒れている女は理由は知らないがブロリーを殺すために部屋に入ってきて何らかの理由で転倒したのだろうと思っていた。

 

倒れている女は自身の尻を摩りながらゆっくりと起き上がる。

 

ブロリーも今すぐにでも消し済みに出来る準備を整えた。

 

だが、起き上がりブロリーを改めて確認した女の反応は好戦的とは言い難いものだった。

 

 

「…あ!ようやくお目覚めですか!」

「…??」

 

 

予想外の反応を示した女は桶に入ったタオルを持ちながら笑顔で近づいて来る。

 

敵対する気は無いのか?と考えたブロリーは女の意思を確認するべく質問を投げかける。

 

 

「誰だお前は?俺をどうする気だ?」

 

 

今ブロリーが出せる限りの殺気を放ちながら問いかける。

 

その様子を見た赤髪の女はあたふたと慌てたて自らの所在を述べた。

 

 

「お、落ち着いて下さい!別に私は貴方の敵じゃありません。私は美鈴と言います。貴方が血塗れでここに運び込まれた時から貴方の介護を任されていました」

 

「介護だと?」

 

 

美鈴と名乗る女が俺を介護した?と言う事は俺はやはり死んでいないのか?

 

まだまだ尽きない疑問を少しでも解消する為に再度問を投げかける。

 

 

「俺はどうなっていたんだ?」

 

 

ブロリーはここに運ばれ来るまでの自身の状況を知りたかった。

 

だが、その問に美鈴は顔を歪める。

 

 

「…酷い状態でした。私だって最初に見た時は何なのかすら分からなかったですし、それが人間だと聞いた時も『何で咲夜さんは死体を持って来たのだろう』と思ってしまうほどのものでした」

 

 

…成程、やはり俺はカカロットに負けた後にここに来たのか。

 

ブロリーの中の一つの疑問が解消された。だがその答えを知った事でブロリーの中からまたふつふつと怒りが込み上げてくる。

 

何時もならここで星ごと破壊してストレスを解消する所だが、今解消すべきは疑問だ。まだ分からない事がブロリーには残っている。

 

 

「ここは何処だ?」

 

「此処は紅魔館と言って私達の家です。貴方は魔法の森で倒れている所を我が館のメイド長の咲夜さんが運んで来て治療したと言う訳です」

 

(家、と言うのは星の名前ではないな。星の中の生活区と言う事か。少なくとも新惑星ベジータよりは環境が良いようだ。それにこの館も色はどうかと思うが俺が住んでいた宮殿よりはだいぶマシだな)

 

「俺をどうするつもりだ?」

 

「どうするも何も、別に何もしませんよ。咲夜さんが運んで来たからここで治療したってだけで他は何も有りません。正直ここに病人や怪我人が運ばれる何て事は今まで無かったのですが、良く分からない内にお嬢様も貴方の治療に同意してしまいまして…。慣れない事をやったので治療と言うか只の出来のいい応急処置みたいになってますがね」

 

(どうもこの星の奴は相当なお人好しのようだな。サイヤ人の俺を介護するとは、自殺をする様なものだと言うのに)

 

 

大体の質問終え、今後の事をブロリーは考えた始める。一先ずこのままここに居ては始まらないのでベッドからゆっくりと腰を上げるが…。

 

 

「グゥッ……!」

 

「あ!無理しちゃ駄目です!まだ傷口が完璧に塞がって無いんですから!」

 

 

体をあげた途端に全身に激痛が走る。思わずベッドにまた倒れ込み悶絶してしまうブロリー。その姿を見て慌てて美鈴が駆け寄ってくる。

 

サイヤ人にとってこの位の痛み位何とも無い。だが、痛いものは痛いのでつい倒れ込んでしまったがサイヤ人としての誇りが情けを受ける事を許さない。

 

ブロリーは痛みに耐え、肩にかけられた手を振り払おうと右手を振るう。だが、その腕払いは空振りに終わった。

 

そこでブロリーは気づいた。

 

 

「……腕が…無い…?」

 

 

そう、ブロリーの右手、いや両腕が綺麗さっぱり無くなっていた。ブロリーは自身の体の見事なビフォーアフターに声が出せなくなった。

 

肩から下が無くなった自分の手があった部分を数秒間見続けた。まるで彼だけ時間が止まったかの様に。

 

それを見ていた美鈴がいたたまれなくなり腕の事について説明した。

 

 

「…咲夜さんが言うには貴方を見つけた時にはもう腕は無かった様です。我々も手は尽くしたのですが何分、傷口が完璧に焦げてしまっていてどうにも出来ませんでした。胸の傷も完全には治せていません。私達では魂をギリギリ使える依代に無理矢理繋ぐだけで精一杯でした…」

 

 

美鈴の説明も上の空でブロリーは自身の体を眺める。体には布団が1枚下半身にかけられて居て、その隙間からでも足の切り傷が数多く見える。左胸には大穴が空いていたのだろう後がしっかりと見えた。整った胸筋に一部だけ見せ付けるようにある溝。皮膚で塞がっているものの左胸の筋肉はもう使い物にならないだろう。それに体力や全体的な筋力も落ちているようだ。そして、腰まで伸びた髪。これを見るだけで、ブロリーが一体どれくらい眠っていたのかがわかった。恐らく、3〜5ヶ月程眠っていたのだろう。それが原因で筋肉が落ちたと簡単に推測できた。

 

そんな自分の姿にブロリーは絶望した。

 

 

(…こんな体では、サイヤ人を名乗れない。こんな力ではカカロットを倒せない。あのクズや虫けらにも劣るかもしれない。

俺は…何故生きているんだ?)

 

 

ブロリーの力の根源はブロリーの筋肉でありその防御力。悟空のかめはめ波をゼロ距離で食らっても傷一つなく平然としていられる位の防御力、そしてサイヤ人の王子すらも一撃で意識を失わせる攻撃力。それがブロリーが誇る力だった。

 

だが、それも『伝説の超サイヤ人』状態での話。通常状態のブロリーではスピードはあるものの決定打と言える攻撃が無かったりと、伝説に比べて殆どが劣っている。

 

ただでさえブロリー自身でも弱いと感じている通常状態が、更に力も何もかもを落としたとなるとブロリーは何も無くなってしまう。伝説では無くても超サイヤ人になる事は出来るが、あれも体力を使う。多分、今のブロリーに変身に使う体力も残されていないだろう。そして、ブロリーのコンプレックスのサイヤ人は戦闘種族として誇って来た。だが、ブロリーの体はまだ人間以上に筋肉質ではあるもののそれでもサイヤ人として誇れるものでは無かった。正直銀河どころか星1つ破壊出来るかもブロリーには分からない。既にブロリーは自分の力に自身が無くなってしまった。

 

ブロリーが唯一知る『破壊』と言う行動が失われてしまったブロリーは最早自分の生きている意味は無いと思ってしまったのだ。

 

自らの体を見て目から光が消え、完全に放心状態のブロリーを見て、美鈴はかける言葉が見つからなかった。

 




いかがだったでしょうか?
出来る限りキャラ崩壊を防ぎたいですが、正直途中でキャラが分からなくなるかもしれませんが、次もお楽しみください!


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立ち上がる悪魔

早く戦闘に行きたいてぇ〜…


 

ブロリーの目が覚めてから数時間がたった。時刻は夜の12時である。

 

美鈴達は目が覚めてまだ日が無いから今日は休ませておこうと言う事でブロリーを部屋に一人にさせている。紅魔館組の判断はブロリーにとっても丁度良かった。

 

幾度と無く自らの体を見て、幾度と無く自分を殺そうと思った。だが、自らを殺す術をブロリーは知らない。ナイフやクリスタル等では幾ら今のブロリーの体が昔より劣っていても傷一つつかない。

 

ブロリーは手からでなくても気弾を撃つ事は出来る。その攻撃方法で自分の気弾を自分に当てて死のうとしても強い気弾を撃つ体力も無い。このまま無様に生きるしか無いのだ。

 

頭の中が空っぽになりながら窓の外を見つめる。何か考えようとするが案の定何も考えられない。元から考えるのが苦手なブロリーが情緒不安定な時に柄にもなく考えられる訳が無かった。

 

何もしない。ただ窓の外の欠けた月を見続ける。暇な時は何かを破壊した。だが今はその破壊の力は残されていない。今のブロリーはただ物事をたまに考え、動くだけの木偶の坊だった。

 

痛む傷を抑える事も出来ないまま、赤いベッドから憎たらしく煌々と光る月を朝が来るまで見続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝。

 

早々と朝食の支度を終えたメイド長の咲夜は紅魔館の無駄に長い廊下をリズム良く歩いていた。咲夜が向かう先はブロリーの部屋だ。美鈴から起きたと言う話だけは聞いていたがその日は忙しかった為、挨拶に行かなかった。その為、今日に挨拶ついでに朝食にに来るように呼びに行くのだ。

 

ブロリーの部屋の前についた。男というのはうるさいものだと考えていた咲夜の考えとは裏腹に、部屋は気味が悪い程静かだった。咲夜が美鈴から聞いた話によると、起きて直ぐは本当に5ヶ月も寝ていたのか?と言う程質問をしてきたのだが、自分の体を見た瞬間に表情が一変し、生気が消えたと言う。

 

この部屋の静けさだと何だか死んでいる様で恐ろしくなる。

 

どちらにしろ部屋に入るしか無い。死んでいたら嫌だが火葬すればいいし、生きていたら朝食を食べて貰うだけだ。それにどうしてもブロリーには紅魔館の主から話を聞いて貰う必要があるのだ。

 

ふぅ、と大きく一息吐きドアノブに手をかける。 キィ‥ と言うドア特有の音を立てゆっくりと扉が開いた。

 

 

「おはようございます」

 

 

何時もの様に何事も無かったかの如く朝の挨拶をする。たが、ブロリーは窓の外を見つめるばかりで挨拶を返すどころか咲夜の方を見向きもしない。まあこんな事だろう、と咲夜は予想していたので、これと言った反応を示さなかったが、美鈴の言う通り後ろ姿だけでも生気の感じられない。だが、伝えなければならない事が山ほどある咲夜はブロリーが反応を示さなくても一方的に話しかける。

 

 

「目が覚めた様で何よりです。私、この館のメイド長をしている十六夜 咲夜と申します」

 

 

咲夜が自分の名を示した時、ブロリーはゆっくりと体を咲夜の方へと向けた。初めてブロリーの目を見た咲夜の率直な感想がこれだ。

 

(何て寂しい目をしているのだろう)と。

 

ブロリーの目にも勿論生気は無く、光が完全に失われていた。どこまても黒く濁った目は一片の希望も何も無かった。あるのはただの闇。世間一般では死んだ魚の様な目と言われるのだろうが、彼の目は既に死んでいた。

 

そんなブロリーが無機質な声で咲夜に問いかける。

 

 

「…お前が俺を…」

 

 

「お前が俺を」とは多分咲夜がブロリーを助けた事を言うのだろうと咲夜は予想した。

 

 

「ええ、私が貴方をここまで運んで来ました」

「…お前が……」

 

 

ブロリーの声がまた途切れる。生きていない目で咲夜を見つめること数秒、ブロリーはゆっくりと口を開き、咲夜にまた問いかけた。

 

 

「…何故‥俺を助けた……?」

 

「…え?」

 

 

ブロリーの口から咲夜にも予想外な言葉が吐き出される。これには流石の咲夜も返答に間が出来る。だが、直ぐに何時もの調子を無理矢理取り戻し、言葉を返す。

 

 

「何故って、それは貴方が生きていたからで「そのまま殺してくれても良かった」……!」

 

 

割り込む様に飛び出したブロリーの言葉。その言葉に驚き、自身の言葉を見失う咲夜に対し、ブロリーは関係ないとばかりに続ける。

 

 

「…俺が生きていても何も生まれない。逆に壊れていくだけだ。…それに…こんな体で生きている位なら……死んだ方がマシだ…!」

 

 

吐き出される様に出た言葉に咲夜は頭が真っ白になった。咲夜にもブロリー自身に対して質問があった。だが、その質問の殆どが吹っ飛んでしまった。だから、咲夜は唯一絞り出した質問をブロリーに投げかけた。

 

 

「…1つ教えて。貴方が寝ている時にも何度も呟いていた『カカロット』って貴方にとってどういう存在なの?」

 

 

つい素に戻ってしまった咲夜の質問を、ブロリーは抑揚なく答える。

 

 

「…俺を殺した奴……俺をこんな体にした俺の宿敵…」

 

「貴方はその人をどうしたいの?」

 

「…俺は奴を殺したい…だが……その力はもう俺には無い…俺にとっての生きる意味も…何もかも失った……」

 

「貴方にとって生きる事ってどういう事なの?」

 

「…俺はただ俺の本能のままに生きてきた…

破壊、破壊、破壊、破壊……。

…俺は破壊以外の術を何を知らない…破壊する事が出来なくなった以上、俺は…生きていても何も出来ない……」

 

 

…なるほどね。彼の素性や今までの人生が大体分かって来たわ。

 

咲夜の質問に機械の様に淡々とブロリーは答える。

 

その答えを聞き、彼の人生を簡単に推測した。きっと物凄く過酷な生活だったのだろう。生きていた中で破壊する事しか教えて来られなかったか、彼の力は何かを破壊する事しか出来ないのか分からない。だから、彼は自分の力に支配され、自分の力で全てを手に入れて来た。いや、手に入れたい物も全て破壊したのだろうか。どちらにしろ彼には何かを壊すことしか人生の中に無かったのかもしれない。

 

その力を駆使してカカロットと言う人物と戦い、そして負けた。どうやって彼は力を手に入れたかは分からないが、多分彼は自分の力に慢心して負けたのだろう。

 

そして、彼は力の戻し方を知らない。何かを失ったら戻せないと錯覚してしまっているのだろう。きっと沢山の戻せない物、つまりは命を奪って来た。彼は自分の腕も、元の力も全てを失い、今の彼には絶望しか残されていない。

 

咲夜は諦めることが嫌いだった。主に無理難題を押し付けられても可能な限り全力でこなして来た。だから咲夜は努力もしないで無理だとほざくこの男が嫌いだ。

 

だから、この男に示さなくてはいけない。人間と言う者はこんなにも簡単だと言う事を。

 

「貴方は何で諦めているの?」

 

 

咲夜の質問にブロリーは少し呆れた様な顔を一瞬だけ見せたが、質問には律儀にも答えてくれた。

 

 

「…無くなった物は戻せない…」

 

「何でそう言いきれるの?貴方は自分の無くなった力を少しでも取り戻そうとした?」

「…そんな事をしても意味が無い」

 

「やって見なくちゃ分からないわ。腕だって、今は確かに治療法は無いけど貴方は未来が見える訳ではないでしょ?だから今諦めて明日にも治療法が見つかったら損だと思わない?」

 

「……………」

 

 

『やって見なきゃ分からない』

 

この言葉は新惑星ベジータでブロリーの手によって窮地に追い込まれた悟空がブロリーに言い放った言葉だ。

 

圧倒的力の差の中、悟空が仲間の力を集め一時的にブロリーの力を上回り、ブロリーを倒した。

 

この例をブロリーはしっかりと覚えていた。ブロリーが雑魚と言った者達、確かに単体で見ればブロリーにとって雑魚そのものだろう。だが、その力が集まった結果がブロリーを超えたのだ。

 

 

「……!!」

 

 

…ここでブロリーは気付いた。あの時カカロットは『やって見なきゃ分からねぇぇ!!』と言い、そして『仲間』の力を集めた。そしてカカロットの『力』が上がった。

 

ここで重要なのは『やって見なきゃ分からねぇぇ!!』『仲間』『力』と言う単語。

 

つまり仲間のとやる気があれば力が上がると単純脳のブロリーは考えたのである。

 

 

「…なるほど、確かにお前の言う通りだ…」

 

「そうでしょ?なら朝食食べて力をつけなくちゃ」

 

「ふん、俺に命令するな」

 

 

ブロリーの瞳に微かな光が現れる。それを確認した咲夜にも、微かに笑顔が戻った。

 

 

「それでは、食堂まで案内致します」

 

「…切り替えが早いな。親父みたいだ」

 

「ブロリーさんのご両親がどのような方かは存じませんが、光栄ですわ」

 

「…なるほど、女と言うのはこういう生き物か」

 

 

自然に出てくる言葉にブロリー自身不思議に思えた。彼は他人と50文字以上の会話をした事がないからだ。新惑星ベジータでカカロットと喋った気がしたが、あれはブロリーが一方的に喋っていただけで会話とは思えないものだったからだ。

 

父親とも話をした事があるが会話と言うか言葉のキャッチボールで大体終わっている。

何故こんなに自分が喋れるのか、ととても不思議に思うのだがそれは多分ブロリーが美鈴や咲夜に毒されたからなのだろう。

 

 

(俺はおかしくなったのか?)

 

 

と考えながら布団から起き出る。確かに体を曲げて布団から出たら傷口が開いて痛いが、ブロリーには舞空術が勝手に身についている。その為、ベッドで寝ている姿勢のままで移動をする様にした。

 

 

「…ちょっとその姿勢はどうかと思いますよ」

 

「何故だ?」

 

「え〜と…不思議と言うか、気持ち悪いと言うか…」

 

 

今の宙に浮いている状態のブロリーは確かに咲夜が言う様に気持ちの悪い飛び方をしていた。腰を曲げない様に背筋を伸ばして飛んでいる為、少し怖い状態になってしまっているのだ。それに加えて黒ブロリーは大体の時間無表情でいる。

 

皆様も想像してみてはいかがだろうか。両手が無い上半身裸で身長約2mの無表情の男が直立不動で浮きながらゆっくりとこちらへ近づいて来る姿を。それが夜中ならば尚更恐ろしいだろう。

 

その姿を見て、咲夜は他のメイド妖精達の地気に関わるのでは無いかと考えた。

 

「歩けないんですか?」

 

「いや、歩ける。だが痛い」

 

「痛い?」

 

「俺が歩くと傷口が広がってしまうからだ。外部からの攻撃なら楽々耐えられるのだが、体の中からダメージが来るとなると流石の俺も耐え難い」

 

 

ブロリーの理由に咲夜は納得する。だが、そこに更なる疑問が生まれた。

 

 

「傷口ならもう完璧に塞がっている様ですが?」

 

「何ぃ?」

 

 

上半身裸のブロリーの傷口は誰が見ても開く事は無い様な傷口だった。サイヤ人は人間より遥かに回復率が早い。それは心身的にサイヤ人を辞めたブロリーも変わることは無い。それに加え戦闘種族の特徴で回復の為に長時間の睡眠をとり復活した場合、体の動かし方を完璧に覚えている。つまり人間で数十日リハビリが必要な程昏睡状態でもサイヤ人ならば起き上がって1分足らずで満足に動く事が出来る。

 

だがそれも傷が完璧に治っていたらの話。

ブロリーの場合は傷口が塞がっておらず、動くと激痛が走ると言うものであった。だが、1000年に1人しか産まれないと言う伝説の超サイヤ人たるブロリーは普通のサイヤ人よりも回復が早い。それ故死の淵からブロリーの意識が戻った事によってブロリーの体が覚醒し、回復速度を早めたのだ。

 

鈍感なブロリーはそれに気付かずまた傷口が広がる事を恐れ、舞空術を直立で使用した。理由としては当然ではあるが、やはりブロリー馬鹿である。

 

 

「…ふむ、確かに傷は塞がったか。なら早く飯食いにいくぞ」

 

「分かりました。それでは朝食が冷めてしまう前に行きましょう」

 

「どれくらいかかるんだ?」

 

「普通に歩いて5〜7分程でしょうか」

 

(…本当にただの屋敷なのか?軍事要塞なんじゃ無いのか?)

 

 

サイヤ人としての自分を消し、新たな力を手に入れる為にブロリーは動き出す。力も自身も何もかもを失った彼は負の運命を変える事が出来るだろうか。

 

全てを取り戻し宿敵を倒す為、悪魔と呼ばれた伝説の破壊者はここに蘇る。




いかがだったでしょうか?
ちょっと終盤ブロリーがキャラ崩壊したかと思いますが、次はちゃんと原作通りのキャラにしたいです。
え?もう遅い?


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過ごす悪魔

ブロリーの外見は黒ブロが超サイヤ人3の髪型になった様な感じです。



ブロリーの自室から出て6分後、紅い廊下の端に一つだけ観音開き式の扉に差し掛かる。今まで見てきた扉と大きさと模様が違い、扉の脇には献立表らしき紙がかかっていた。恐らくここが食堂なのだろう。

 

 

「ここが食堂です」

 

 

咲夜がブロリーに告げる。やはり食堂で間違い無いようだ。

 

「それと、くれぐれも背中に羽の生えた方にだけは粗相の無い様にお願いします」とブロリーに言い、大きく重々しい扉を開いていく咲夜。

 

背中に羽。一体どんな威厳の放つ奴なのだろうか、と内心ワクワクしながら開かれた扉の先へと足を踏み入れる。

 

 

部屋の中はブロリーの部屋と少し大きい位の長方形の部屋だった。部屋の真ん中にも長方形の大きなテーブルが有り、部屋の面積の殆どをテーブルが占めている。後はテーブルに沿って間隔的に並べられた椅子位だろうか。

椅子の一つ一つの隣にメイド服を来た羽の生えた女が立っている。恐らくあれが料理を出したりするのだろう。

 

だが、そのせいで咲夜が言っていた背中に羽の生えた奴が多過ぎて誰を警戒していいか分からず、ブロリーは少し混乱気味になって入口でポカンと立たずんでしまった。

 

何しろ椅子の数が4.5個あるので、5×2で10人の羽の生えた人間がいる訳だ。ブロリーは新惑星ベジータのならず者達以外あまり生きた生物を見ていない。その為、8以上の数の同じ種族の敵がいると全員皆殺しにする。だから気の形も似たかよったかのこの中で誰に警戒をすべきかなんてブロリーには分からない。

 

そんな馬鹿なブロリーがさっき入って来た扉がキィーッと開いた。

 

 

「ようやく来たわね。待ちくたびれたわよ」

 

 

挨拶の言葉も無く突如声をかけられる。背後を取られた事もあり、少々不機嫌になりながらも声をかけてきた人物に振り返る。

 

だが、そこには誰もいない。有るのは紅い廊下と直射日光を遮る加工が施してある窓だけ。再度振り返り、食堂の中を見てもメイド達がいるだけで声の主の姿は確認出来ない。

 

聞き間違いだろうか?と思い、中断した思考の再開をする。

 

 

「おい、無視するな」

 

 

確実に背後から女の声が聞こえた。訳が分からず兎に角廊下を隅々まで見渡す。

 

辺りを隅々まで見渡し、最後に自身の足元に視線を落とす。するとそこにいたのは黒いコウモリの様な羽が生えていて、全体的に白い服を着てブロリーを見上げている小さい子供だった。

 

 

「全く、こうも露骨に存在を感知されない程身長差があるとはね…」

 

 

大きさ的に約140〜60位だろうか。見た目完璧に子供の容姿だが、目つきや言葉の重さ、物腰などは数多の戦場を生き抜いてきた男のそれである。そしてこの子供から出てくる確かな気迫。ブロリーは一目でこの子供が咲夜の言っていた羽の生えた者だと分かった。

 

見た目は子供、覇気は戦士。背の高さは置いといて、この少女の力は今のブロリーには警戒するに値する程だった。

 

 

「…誰だ?お前は」

 

 

今すぐにでも戦いたい所だが両手がなく、力も無いブロリーは自らの勝算が薄いと確信していた為、ひとまず様子見として相手の詳細を聞いてみる事にした。

 

 

「ふむ、助けられた者の礼儀がなっていないが、まあいい。私はこの紅魔館の主、『レミリア・スカーレット』よ」

 

 

紅魔館と言うのは今ブロリーかいる館の事だろう。

 

 

「この館の主が俺に何の用だ?」

 

「ん?別に貴方に用は無いわよ。後で話はあるけどね」

 

「ならば何しに此処に来たんだ?」

 

「…貴方こそなんで此処に来たの?朝食を取る為でしょう。だったら私が何に用があるかは自ずと分かってくるはずよ」

 

 

…そうか、そう言えば俺は飯を食いに来たんだったな。

と完璧にブロリーは主旨を忘れていた。強敵との戦闘しか頭に無かったブロリーは何の為にこの場に居るのかを忘れてしまって居たのだろう。

 

 

「まあとにかく座りなさい。他の皆も直ぐに来るはずよ」

 

「他の皆ぁ?」

 

「ええ、この館に居るのが私と咲夜とメイド達だけだと思っていたの?そこの椅子の数で察しなさい」

 

 

一々言うことが上から目線でイラッとする。ぶん殴ってやろうかと考えて見るが、ブロリーに復讐のチャンスを与えてくれた張本人でしかも両腕の回復を望める仕事をしてくれる様な奴なのでグッと堪えてブロリーはレミリアに従う。用が済んだら殺そうと心の底で思いながら。

 

レミリアに指定された扉に一番近い席に座る事数秒。昨日ブロリーを看病したと言っていた美鈴が眠たげに欠伸をしながら現れた。美鈴の席はブロリーの2つ隣なので自らの席に向かおうとするが、何時も誰もいない席に半裸で両腕が無い男がいたもので驚き目を見開いた。だが、『そう言えばこの人の席ここだった』と思い出し、苦笑いしながらブロリーの席の後ろを通り自らの席に着く。

 

因みにブロリーの美鈴への客観的な感想は『抜けている奴だ』だけだった。

 

次に入って来たのはブロリーを食堂まで連れてきて、知らない内に何処かに消えた咲夜だった。まるで何事も無かったかのように食堂の中に入って来て、レミリアの席の隣に立つ。

ブロリーが今の所1番警戒しているのはこの人間だ。ブロリーは食堂に来るまで咲夜の気を微量ながら感じていた。だが、食堂の扉を開き、ブロリーが食堂内に入った瞬間に咲夜の気が忽然と姿を消した。あの時は羽の強者の事ばかり考えていて全然気にしていていなかったが、今思うととても奇妙な事だ。

 

 

(こいつは1番警戒が必要だ。気配が消える以上、いつ背後から殺られるか分からんからな)

 

 

そして咲夜を最後に食堂に人が来ることは無かった。知らない内に席に人が居ない所にいたはずの妖精メイド達も何処かに消えている。『もう他には居ないのか?ならこの数の椅子は何だ?』と、色々考えていると、部屋の1番奥の席、扉に対局にある席にいるレミリアと咲夜の会話が聞こえて来た。

 

 

「パチェ達はどうしたの?」

 

「何か『面白い魔法書が見つかった』とかで食事は後で食べるとの事です。小悪魔も手伝うと」

 

「ふ〜ん、何時もの事だけど確か昨日も来なかったわよね」

 

「はい、何時もは2日連続で朝食に来ないなんて事は無いはずなんですけど…」

 

 

どうやらこの館の幹部的位置にいる人物はまだいるようだ。ついつい『小悪魔』と言う単語に反応してしまうブロリーはやはり自分の事を悪魔と言っているからだろうか。両腕が治ったら戦って見たいものだ、と心に密かに留めた。

 

そうこうしている内にブロリーのテーブルに朝食が運ばれて来る。皿の数は全部で3つ。1つはロールパン。中くらいの皿に入って乗っているのは丸っこい皿。その中にコーンスープが入っている。少し大きい皿はサラダとスクランブルエッグ。どれも典型的な洋食だ。どれもブロリーは見た事も無い物だったが、食欲をさそる香りに美味いと確信をもっていた。

早く食べよう。そう思い、腕を伸ばす。

が、肝心の腕が無い。それを見かねた咲夜がブロリーに助けを出した。

 

 

「ブロリーさんは腕が無いので食べられないでしょうからメイド達に食べさせてもらって下さい」

 

「いや、必要ない」

 

 

だが、ブロリーはその助けを即答で断る。そんな助けが無くても大丈夫だからだ。

 

 

「俺にはバリアがある」

 

「……は?」

 

 

良かれと思って提案したが即答で断られ、一体どんな風にして食べるのかと待っていたら食事と全く無関係なバリア。これには咲夜も思考が停止する。これに対して会話を聞いていたレミリアは一体何が始まるのか、と興味津々だ。

 

そんな2人にお構いなしにブロリーは自身の半径2.5mのバリアを展開する。その淡い緑色のバリアはテーブルの一角、ブロリーの朝食を巻き込んだ。

 

何が起こるのだろう?と咲夜とレミリアはブロリーを観察する。

 

数秒の沈黙の後、ブロリー、ではなくブロリーの朝食がふわふわと浮き始めた。クルクルと人通り動き回った朝食達はまるで生きているかの様にブロリーの口へと運ばれて行く。まずはスープ、次にスクランブルエッグと、次々にブロリーの口へとに朝食が消えて行く。

 

流石の咲夜達もこの光景には驚いた。今まで食事に夢中で何も気づいていなかった美鈴も食事の手を止め、ブロリーの方を見ているくらいだから相当なものだったのだろう。

 

実はブロリーのバリアは相当万能な作りになっている。バリアとしての機能だけでなく範囲を広げる事で衝撃波を生み出す事も出来る。また、さっきブロリーがデモンストレーションをした様に、バリアとしての機能を果たしている時はバリア内部の物を自由に操る事が可能になっている。それに加え、このバリアは伸縮自在である。実際に新惑星ベジータでカカロットの右ストレートをバリアで伸縮させ、反動で押し返すことによってカウンターを決め込む事に成功していた。

 

勿論、バリア時の機能は凄まじい。少なくともバリア内に熱は通さない。その耐熱度はマグマをも凌ぐ。更に打撃による耐打撃度も相当なものだ。だが、物理的なものでは無く、ブロリーのバリアに使う気を凌ぐ気功波がバリアに直撃した場合、バリアはパリーンと崩れ去る。だが、殆どの者はブロリーの気を超えることは出来ないので敗れる事はまず無いだろう。

 

これ程までに万能なブロリーのバリアだが、1つだけ欠点がある。それはバリア時の防御範囲が狭い事だ。バリアとしての機能を果たせる範囲はせいぜい3m程。それ以上広げた場合、ブロリーの気の集合体であるバリアは主の元を離れ、衝撃波として所かまわずブロリーの周りにダメージを与える。

 

その為、敵をバリアの中で操る事は相当難しいのだ。なんせブロリーの背丈は2mを軽く超えている。正直3mでもブロリー1人が入る位でぎゅうぎゅう詰めになってしまう位だ。

だからブロリーはバリア内で何かを操る行為を需要が無いと決め、惑星ベジータからのパラガスとの脱出以来使って来なかったのだ。

 

まさか両腕が消えた事によって義手代わりになるとは流石のブロリーも思いもよらなかっただろう。

 

 

「…凄いですね」

 

 

そんなブロリーを見て咲夜が感嘆の声を漏らす。咲夜はレミリアの能力により、ブロリーの力の強さを知っている。レミリアから一言、『彼は恐ろしく強い』と言われただけだ。

 

それだけ、いや、それだけで十分なのだ。レミリア・スカーレットという吸血鬼は他から恐れられ、他の命を我が物にする様な者だ。

吸血鬼とは恐怖の象徴でなければならない。

 

その誇り高い吸血鬼、ましてや『夜の女王』とまで呼ばれたレミリアがわざわざ『恐ろしく』と言う単語まで使ってブロリーの力を表現したのだ。

 

咲夜はまだ目の前にいる常に上半身裸の男の強さは見い出せていない。今の所、分かる事と言えば『バリアを張れる事』『常人並の筋力では無い事』位だろうか。

 

幻想郷にもバリア的なものを張る者は居る。バリアは大した事では無い。(バリア内で出来ることを抜かせば)

 

筋肉も鬼と言う種族からすればまだ弱い方だろう。それに、幻想郷特有の戦闘、『弾幕ゲーム』では筋力は関係無い。遠距離から攻撃をすれば良いだけの話だ。だから筋肉なんて何の障害にもならない。

 

となると一体お嬢様は何に恐怖したと言うのか?

あれ程の傷を受けても生きていた事?

それとも早すぎる回復力?

 

様々な事を頭に巡らすが、結局「これだ!」と言える答えが見つからなかった。主のレミリアに聞けば一発なのだが、従者として烏滸がましい気がするし、もし聞いたとしても「後になれば分かる」とか言われそうで正直に聞くことが出来なかった。

 

改めてブロリーを見る。ブロリーは咲夜の視線にも気づかず、朝食を食べ続ける。その勢いは紅魔館1食い意地がはっている美鈴を超える程だ。最初はゆっくり食べていたが、腕無しで食べる事になれたのか、今や吸い込む勢いで自身の朝食を喰らう。

 

咲夜はこの時、恐ろしいの意味が少し分った様な気がした。

 

(もしかしてお嬢様はこの吸引力の事に恐怖していたのかしら?)

 

あながち間違っていなかったりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂の全員が朝食を食べ終えた。

 

時刻は約午前8時である。

 

既に美鈴は仕事場に移動した。今この食堂内に居るのはブロリーとレミリアと咲夜のみだ。

 

これからの事を考えるべく、席を立ち、自室へと戻ろうと出入り口へと近づく。

 

 

「ブロリー」

 

 

だが、レミリアがブロリーを呼び止める。自分のしようとしている事を止められ、少しイラつきながらレミリアの方に向き直る。

 

 

「…何だ?」

 

「貴方と話があるの。この紅魔館で生活をする為に必要な事よ」

 

「必要無い。俺は1人で生きて行く」

 

「無理ね。貴方には1人で生きる為の知識が不足し過ぎている。このまま外に行っても妖怪に食われるか、餓死するだけよ」

 

「…貴様に何が分かる?」

 

「分かるわ。私は貴方の過去も、生き様も死に様も全て知っている」

 

「世迷言を…」

 

「確かに世迷言に聞こえるでしょうね。でもこれは事実。それにもしここから出て外に行ったとして、一体何をする気なの?」

 

「貴様に教える筋合いは無い」

 

「…まあ、どうせカカロットへの復讐でしょうね」

 

「…当たり前だ。俺は奴を殺す」

 

「今の貴方で出来ると思っているの?貴方は身体の鍛え方も、失った物の戻し方も知らない。そんな奴がカカロットと対峙して勝てると思っているの?」

 

「………」

 

 

レミリアの言葉がブロリーの胸に突き刺さる。そうだ、今のブロリーではカカロットの足元にも及ばない。下手をしたら亀仙人にも劣る。そんな者が1人でカカロットと戦うと言う事は、自殺しにに行くようなものだ。

 

正直、ブロリー自身も分かっていた。このまま行ったら返り討ちにあうと言う事も。だが、修行もせず、生きているだけで自然にパワーが上がって行ったブロリーは自らを高める術を知らない。だからどの道独りで外に行くと言う事は最終的に死に繋がるのだ。

 

黙り込むブロリーをレミリアが更に追い詰める。

 

 

「貴方にも分かっているはずよ。今の身体じゃあどう足掻こうと誰にも勝てない事ぐらいは。ならどうするの?自分が分からない事があったら誰かに助力を求める。それぐらい出来る様にならなきゃ彼には勝てないわよ」

 

 

レミリアが言う事は全て的を射ている。だが、サイヤ人としての本能が助力を許さない。それに加えブロリーは誰かに助けを求めると言う事を知らない。何時ものブロリーだったらここら返で話を切り捨て、外に飛び出す事だろう。

 

 

「だが、俺は助けを求めると言う事を知らない」

 

「だから今回の話でその事も話てやろうとしておるんでしょう。それで、どうするの?このまま外に行くか。それとも紅魔館で生活するか。決めるのは貴方の自由よ」

 

 

だが、本能何かよりもカカロットへの復讐心の方が強かったのだろう。今のブロリーはカカロットを倒せるならば手段は選ばなかった。

 

 

「良いだろう。貴様の言う通りにしてやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブロリーの説得に成功し、ブロリーは自室へと戻って行った。

 

食堂には咲夜とレミリアだけが残っている。レミリアはブロリーが去った扉を見つめたまま、動かずにいた。

数秒の沈黙の後、咲夜の口が開いた。

 

 

「あの、お嬢様?どうして彼をそこまでしてこの館に留めようとしているのですか?」

 

 

咲夜にはどうしても分からなかった。何故、今の所需要の無いあんな男をこの館に生活させるのかが。

 

従者からの質問にレミリアは顔も変えないまま言う。

 

 

「…どうも、他人事とは思えないのよね…」

 

 

結局、咲夜はレミリアの言葉の真意を知る事は出来なかった。




いかがだったでしょうか?
ブロリーのバリア機能は劇中でブロリーのバリアの中に入っていた親父ぃが浮いていた事からそんなの有るのかな?と思い、書かせて頂きました。
今頃思ったのですがあの現象は無重力空間だったからだと思っています…。な、なんとかなるよね?別に大丈夫だよね!?
もうこの時点で原作ブロリーは駄目だな…


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従う悪魔

眠い時に書いて訳わからなくなってしまった箇所が多々ございます。
パ「避難するだぁ!」
ブ「どこへ行くんだぁ?」
パ「シュワット!お、お前と一緒に、文才を手に入れる準備だァ!」
ブ「人利用のPCでかぁ?」
パ「何もかもおしまいだぁ…」



 

紅魔館のとある一室。そこには椅子に座るブロリーと咲夜が丸い机を挟んで睨みあっていた。

 

机の上には数枚の資料が置いてある。その中の1つに雇用書の様な物が混ざっている。その氏名の部分には歪な字で『ブロリー』と書いてあった。

 

咲夜が雇用書の様な紙に一通り目を通し、再度ブロリーに目を向け、口を開く。

 

 

「…貴方の名前は?」

 

「ブロリーです…」

 

「では、貴方の所在地を教えて下さい」

 

「こ、紅魔館だ…です…」

 

「…では、貴方の主、つまりは雇用主は?」

 

「…レミリア・スカ…えと……スカーレットです…」

 

「…では質問の趣旨を変えますが、もし、主が敵対する何者かに襲われ、劣勢にあったとします。その場合、貴方はどういう行動を取りますか?理由も述べて下さい」

 

「レミリアの前に立ち、盾になりながら敵を消し去る。理由はレミリアの命を第一に考なければならないからだ」

 

 

 

一通り全ての質問を終えたであろう咲夜は、今までの回答をメモした紙を舐める様に見つめる。

 

数十秒後、咲夜がゆっくりとブロリーに視線を移す。そして、ブロリーへ重々しい口を開いた。

 

 

「………75点位ですね」

 

 

瞬間、「はぁ…」とため息をつきながらブロリーが机に倒れ込む。どうやら相当疲れが溜まっていたようだ。

 

そんなブロリーに咲夜が調子を崩さぬまま言う。

 

 

「最後に素が出たり、ちょっと思い出すのに時間がかかったりしましたが、まあ最初に比べたらマシなほうでしょう」

 

 

その咲夜の言葉にブロリーはムクっと起き上がり、慎重な面持ちで咲夜に問いかける。

 

 

「じゃあ合格で良いのか?」

 

「そうですね。70点は超えましたし、約束通り、面接合格です」

 

 

合格と言う言葉に安堵のため息をつくブロリー。これで晴れて、紅魔館メンバーの仲間入りである。

 

何故、ブロリーが何も言わずに咲夜の言う事を聞いているのか。それは約12時間前に遡らなければ分からないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メンセツ?」

 

 

聞いたことの無い名前にブロリーは首を傾げる。

 

今ブロリーは紅魔館の主の部屋にいる。勿論部屋の主も一緒にだ。

 

部屋の内装はやはり全体的に紅く、目が痛くなる様な色をしている。部屋の端には大型の屋根付きベッドが置いてあり、やはりベッドも真っ赤だ。

 

そして1番特徴的なのが廊下やブロリーの部屋と違い、窓が一切ない事だ。これは吸血鬼の最大の弱点である太陽光に晒されない為である。吸血鬼は太陽に照らされると只の灰になってしまう。その為、レミリアの部屋には窓が無いのだ。(因みに、廊下等の窓には太陽光が当たらない方角に窓がある事が多い)

 

 

「そう、面接。私が只でこの館に住まわせると思っていたのかしら?」

 

 

部屋の主レミリアは、ブロリーの質問に少し馬鹿にしながら返す。しかも全く答えになっていない。だが、ブロリーは馬鹿にされた事を分かっておらず、また更に首を傾げる。

 

 

「結局面接と言うのはなんなんだ?」

 

「面接と言うのは雇用主に自分の事を伝え、アピールする事を言います。その自己アピールによって雇用主は働かせるに値する者なのかどうかを見極める訳です。つまりは、貴方はレミリアお嬢様と言う雇用主に雇って貰えるかどうかを決める為に面接を行うのです」

 

 

レミリアの後ろに控えていた咲夜が面接について説明する。だが、この説明を聞いたブロリーはますます訳が分からなくなっていった。

 

 

「俺を働かせる?」

 

「はい。働かざる者食うべからずと言いますしね」

 

「働かなければ飯が食えないと言うのなら働くが、何故面接が必要なんだ?そんなもの無くても飯の為なら働く」

 

 

『飯の為に働く』と言うのがブロリーの理念である。散々紅魔館から出て行くとほざいていたブロリーだが、実はこの紅魔館の朝食が気に入っていた。だからブロリーは心の中で密かに(こんな飯が毎日食えたら良いなぁ…)と思っていたのである。

 

ここで心が落ち着いたブロリーの行動理念を見てみよう。今のブロリーは後の事より今の事を最優先に考えている。加えて、カカロットへの復讐より朝食の美味さの方が勝っているようだ。これも復讐と言う『後』の事より『今』出来ると思われる飯の事を優先に考えているのだ。

 

つまり今のブロリーの中での優先順位は、

飯>復讐

になっているのだ。しかもブロリーは朝食にまだ満足していない。たかが一人分の朝食程度ではブロリーの空腹と言う名のブラックホールは満たされないのだ。だから今のブロリーは自らの腹を満たす為なら何でも出来る自信があった。

 

 

「この紅魔館には優秀な人材が必要です。ブロリーさんは荷物運びや用心棒等の力仕事に向いていそうですが、それでも常識は必要不可欠。ですからブロリーさんには面接と言う名の講習を受けて貰います」

 

「講習?」

 

「はい。ブロリーさんは幻想郷に来て間もないですから一先ずは幻想郷の常識を知って貰います。幻想郷の地理から紅魔館でのすべき事の詳細まで全てを覚えて頂きます。その過程を全て行った上で、最終的に面接を受けて頂きます」

 

 

覚えると言うものをブロリーは好きでは無い。むしろ嫌いの類に入る。正直カカロットの次に苦手な物だ。その証拠として、さっきの説明の半分以上をブロリーは覚えていない。

 

 

「ご理解頂けました?」

 

 

だが、例え理解していなくても理解したと言わなければまた長い説明が始まるだろうとブロリーは本能的に感じていた。

 

その為…

 

 

「ああ、全て理解した」

 

 

嘘でも分かったと首を縦に振らなければならないと直感したのだ。

 

そんなブロリーの心の内も知ってか知らずか咲夜が最後の説明をブロリーに伝える。

 

 

「では、30分後に私の部屋まで来てください。そこで講習から最終面接までやりたいと思います。遅れずに来てくださいね」

 

 

こうして今回の冒頭へと話が移る訳である。

 

ついでに言えば、ご存知の通りブロリーは馬鹿なもので、幻想郷の常識を教えるだけで4時間、紅魔館の行動などなどを教えるだけで4時間、面接練習に用いた時間約4時間と、普通では1時間で覚えられる事を何度も聞き返し、何度も同じ事を繰り返しながら覚えて行った為、計12時間と言う新記録を叩き出したのである。

 

ある意味天才なのかもしれない。(それを飽きもせずに教え続けた咲夜の忍耐力も恐ろしい)

 

 

 

 

 

そして冒頭へと話は戻る。

 

既に時刻は夜の8時。まだブロリーと咲夜は夕食も昼食も食べていない。二人共動く気力が無いほど消耗しているようだ。

 

それでも、せめて一口でも食べ物が食べたいのは二人共同じなので、咲夜が時間を止めて食堂からお菓子を持ってきて終始無言で2人で食べる。喋る気力も無いらしい。

 

それでも、やはり紅茶とセットで食べる様な洋菓子程度ではブロリーの腹は満たされない。文句の1つも言いたい所だが、そんな事をしている気力もない。

 

 

「…寝ますか?」

 

 

ここでこの無言の空間が嫌になったのか、咲夜が話を切り出す。流石の咲夜も12時間も馬鹿を相手にするのは相当辛かったようだ。

 

 

「…そうだな。俺も早く明日になって欲しいと思っていた所だぁ…」

 

 

ブロリーも咲夜の提案に賛成のようだ。

 

こうして、ブロリーの多分人生でトップ3に入る程の最悪な1日が幕を閉じたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い闇の中にブロリーは佇んでいた。

 

 

前後左右の正しい感覚も無い。上を見ているのか下を見ているのかすら分からない。

 

 

ただ光も何も存在しない闇の中で、男が1人何も考えず前方を見つめていた。

 

 

暗闇の中を無尽蔵に歩いて見る。

 

 

少し歩いた所で、ブロリーの足元に一輪の紅い花が現れた。この暗黒の空間の中、どんな形であろうと自分以外でも生きているものがいる喜びからか、その紅い花をそっと撫でる。

 

 

そして、生きている花を見つめようと重ねた手を優しく払う。

 

 

 

だが、綺麗に咲き誇っていた花があった場所には、黒く、弱々しく枯れている花がその頭を垂れていた。

 

 

 

(ああ、またこれか…)

 

 

 

 

何回も体験した。

 

 

生きている者に触れるだけで壊れて行く。

その度に周りの者達は恐れ、ブロリーから離れて行く。

 

だが、それでよかった。周りが嫌ってくれれば、何かが壊れる事は無いのだ。

 

それでも心の中に寂しさを感じていた。心の何処かに自分を理解してくれる誰かを求めていた。

 

だから悲しい。自分を認めてくれる誰かがいない事が。

 

だから悔しい。自分と同じ生き物なのに、まるで野獣の様に扱う周りの奴等が。

 

 

ならば全て壊してしまおう。と本能が理性に呟く。

 

その言葉に理性は一瞬気を許す。

 

 

〜ああ、もう全部無くなれば良い〜

 

 

そう、たった一瞬。だが次の瞬間、何もかも無くなっている。

 

 

誰かが焦げている。

 

誰かが溶けている。

 

誰かが切れている。

 

誰かが死んでいる。

 

 

何時もこの繰り返し。何処行こうと、誰に自分と言う存在を示そうと、最終的には何時もこうなる。

 

 

 

 

死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、死んだ。

 

 

 

 

自分には誰もいない。唯一信用していた父親も裏切られた。だが、父親はブロリーを愛してくれた。だが、彼が愛したのは《伝説の超サイヤ人》だった。

 

誰も本心でブロリーと言う存在を、ブロリーの本心を愛してはいなかった。

 

 

『所詮その程度の存在だって事だ。誰もお前を必要としていない』

 

 

本能が理性に語り掛ける。

 

 

「親父は俺を必要としてくれた…」

 

『お前じゃない。俺を必要としたのだ。お前の本性であり本能でもある《伝説の超サイヤ人》と言う存在をな』

 

「…なら、誰が俺を必要としてくれるんだ…。本当は破壊何てしたく無い。本当は誰かと遊んでいたい。普通に友達を作って、普通に飯を食べて、普通に愛されて、普通に生活していたい…」

 

『だが、お前の中に俺がいる限り、お前はそんな生活なんぞ送れない』

 

「…いや、お前がいても俺は俺でいられる。俺の意思で生きれる筈なんだ!もう俺もガキじゃない!貴様を押さえ込む事位できる!」

 

『無理だな。お前は心の何処かで生き物を殺す快楽を求めている。お前はそれを恐れ、自分の内面に閉じ込めているだけだ。そして、お前は何かを破壊しなければ気が済まない』

 

「そんな事は…」

 

『俺はお前自身だ。お前の事はお前以上に分かる。お前は破壊の快楽を恐れている』

 

「違う!俺は破壊何て求めていない!」

 

『ならば何故それを誰かに示さない?お前が破壊を求めていないなら、誰かにその旨を伝えれば済む話ではないか』

 

「…………」

 

『そうだ、誰もお前の話なんてまともに聞いてはくれない。分かっているのだろう?』

 

「……黙れ」

 

『誰にも話さない。破壊を欲する者のままでい続ける。そうやってお前は誰かを求めながらその誰かから逃げているんだ』

 

「黙れ!!」

 

 

ブロリーは《伝説の超サイヤ人》の形をしている本能に殴りかかる。

 

 

『クズがぁ…』

 

「…ッ!!」

 

 

だが、見えない壁の様な物に阻まれ、はじき飛ばされる。

 

 

『満足か?お前の弱さを身を持って知る事が出来たな』

 

「黙れ!!黙れッ!!」

 

 

立ち上がり、また本能へと立ち向かう。また殴り掛かろうと腕を振り上げ、叩きつけるが、叩きつきた瞬間両腕が霧散する。

 

 

「……!」

 

 

そんな事はお構い無しに本能は理性に語る。

 

 

『そろそろ時間のようだ。お前はまたその体で現実を生き続ける。自分の心の内を示せない弱虫としてな』

 

 

少しずつ本能が光に飲まれていく。逃がすまいと必死に理性は手を伸ばす。だが、その手も無ければ体も前に進まない。

 

 

『お前が現実が面白く無いと感じた時、俺はお前になる。少しでも長く奴等といたいと感じたならば、お前の本心を見せてみろ、ブロリー』

 

 

その言葉を残し、《伝説の超サイヤ人》である本能は光の中に消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブロリーさん!」

 

 

真っ赤なベッドの上でブロリーが目覚める。何か夢を見ていた気がするが忘れてしまったようだ。ベッドの隣では膨れっ面の咲夜がブロリーを見ていた。

 

 

「おはようございます。もう既に朝の8時3分です。昨日教えた起床時間を3分も過ぎています。早く食堂へ来てください」

 

 

昨日咲夜はブロリーに毎朝の起床時間を教えていた。毎朝紅魔館メンバーで囲んで食事をする為、8時には全員集まっていないといけないのだ。

 

 

「そうか、済まなかった」

 

「謝ってる暇があったら早く食堂へ向かって下さい!」

 

「だが、自分がミスを犯したら素直に謝ら無くてはならないと昨日教えられた筈なんだが?」

 

「時間によります!時間が無かったら謝る前にまず行動って昨日教えたじゃないですか」

 

「そうだったか?」

 

「そうです!兎に角早く食堂へ向かって下さいね。もう皆さん来ているんですから」

 

 

必要な事を全て言い終え、咲夜はブロリーの部屋から出て行く。だが、何かを思い出したかのように不意にブロリーに振り返り、新たな情報を付け加えた。

 

 

「そう言えばパチュリー様がブロリーさんに用があるとの事なので、食事が済んだらパチュリー様の指示に従って下さい」

 

「パチュリー?」

 

「紫色の人ですから一目で分かると思います」

 

 

それだけ言い残し、咲夜はブロリーの部屋から去った。開いた扉がガチャンと閉まる音と同時にブロリーはベッドに倒れこむ。

 

 

「パチュリー・ノーレッジ…一体どんな奴なんだ?」

 

 

見た事も無い新たな者の事を考えながら、ブロリーはまた浅い眠りについた。

 

 

 

 

 

「何でまた寝てるんですかブロリーさん!」

 

「ヘヤァ!?」

 

 

寝かしてはくれなかった。




今回登場してくれました本能さんは、後々色々とやらかしてくれます。
次回はあの紫色の方がブロリーになんとアレを与えてくれます。
お楽しみに!


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悪魔と悪魔

ト「ハイ!イケメントランクスだ!」
ブ「無視☆」
ト「ハァッ☆」
パ「前置きだけでも出たいパラガスでございます」
カ「カカロットじゃねぇ!おら孫悟空だ!」
ベ「サイヤ人の王子ベジータだぁ!」
ブ「お前らうるさい!」
パカベ\デデーン/
ト「ハァッ☆」
前置きネタ切れ


 

朝8時30分。

 

即座に朝食を終えたブロリーは地下へと向かっていた。紅い絨毯の敷いてある薄暗い階段を静かに降りていく。

 

ブロリーが向かっている先は図書館である。何故図書館を地下に埋めているかは不明だが、それもその図書館の主の趣味なのだろうか。

 

図書館の主、パチュリー・ノーレッジは人見知りである。その度合いは相当なもので、図書館で少しでも騒いだり、勝手に入って来たりするだけで侵入者に攻撃をお見舞いする。それに加え、殆ど図書館から出てこない。彼女の1日の時間の殆どを図書館で過ごしている。現在の言葉の中ではニートと言う言葉が1番似合うだろう。

 

そんな人見知りであり、ニートでもあるパチュリーが、何故ブロリーを呼び寄せたのか。それはパチュリーが手伝って欲しいと言う要望だった。只の手伝いと言うのならばブロリーはわざわざ行かないが、パチュリーはブロリーにも得があるから、手伝って損は無いと言っていた。もしかしたら何か思わぬ収穫があるかもしれないので、仕方なくブロリーは図書館へと向かっている。

 

そうこうしている間に図書館の前に着く。図書館の重々しい巨大な正面扉を体当たりで開いて行く。

 

扉を開いた先の図書館はとても巨大な空間だった。50m以上はあろうかと思うほどの高い天井にこれまた人1人程の大きさがあろうかと思う程の光の玉が幾つもぶら下がっている。

 

そして1番異常なのが本の数。図書館と言うからには数多くの本があるとブロリーも予想していたが、この図書館の本数は余りにも多すぎる。

 

まず本棚の数が凄まじい。図書館の中に所狭しと並べられている本棚は全て天井まで付いている。しかも木製の独立している本棚だけでは飽き足らず、壁すらも本棚にしている。そしてこの本棚の全てにビッシリと本が埋まっていた。本数は約1億程だろうか。どちらにしろ全てを読んでたら寿命が尽きて死んでしまいそうな数である。本棚のジャングルとでも言った所だろうか。

 

その中の本棚の隙間で出来た道をブロリーは真っ直ぐ歩いて行く。どこまでも広い図書館の中をただひたすらに真っ直ぐ歩いている時、急に目の前に本以外の物が出現した。ブロリーの目の前には少し長いテーブルが置いてあり、その両端に本が山積みになっている。そして、その本に囲まれる形で本を読んでいる全体的に紫色の服の女がいた。

 

ブロリーには、咲夜の講習によってその人物の名前が分かっていた。

 

 

「お前がパチュリー・ノーレッジだな?」

 

 

ブロリーの言葉に紫服の女、パチュリーはゆっくりと頭をあげる。

 

 

「ようやく来たわね。少し遅かったんじゃないの?」

 

「俺はまだこの館の中の全てを知っている訳じゃ無い。ここに来るのに時間がかかるのも当然だ」

 

「まさか開き直られるとは思わなかったわ」

 

「俺の事はどうでもいい。俺は何をすれば良いのか教えて貰おうか」

 

 

さっさと本題に入って自分の部屋に戻りたいブロリーは早々に話を切り出す。

 

 

「貴方には新しい魔法のの実験台になって貰いたくて此処に来てもらったわ」

 

「実験台…だと?」

 

「そう、実験台。この魔法によってもしかしたら貴方の腕が元に戻るかもしれない。だから貴方に来てもらったの」

 

「俺の腕が戻るのか!?」

 

 

今までで1番不自由にしていた腕が元に戻ると言う言葉にブロリーは飛びつく。そして、一瞬でテーブルの前まで行き、テーブルに足をドガンと置き、大声で説明を求める。

 

 

「どうすればいいんだ!?」

 

「ム、ムキュ…ちょっと落ち着きなさい。今説明するから…」

 

 

パチュリーの言葉に直ぐに足を地に付け、パチュリーの説明を待つ。

 

 

「ゴホン…まずこれから使う魔法について説明するわ。私が貴方に使う魔法は本当は植物に使う魔法だったの。レミィの要望で中庭の花達を一瞬で咲かせられる様にね。この魔法は大気にある微量な養分を一気に集め、成長を促進させると言う魔法だったの。これに少し改良を加え、生物の回復を急速に早める効果を得たと言うわけ。理論上ではね」

 

「理論上では?」

 

「そう、まだ実際に試していないから理論上としか言えないわ。だから両腕が無く、傷跡も生々しい貴方に実験台になって欲しいのよ」

 

 

なるほど、とブロリーは唸る。(実際は腕が治ると言う事しか分からない)

 

原理はどうだろうと腕が治るのなら何をされても構わない。だから早く腕を直して欲しい。だから早くしてくれとパチュリーを急かす。

 

 

「そう急がないで私の話を最後まで聞きなさい。この魔法にはまだ完全に治るという保証はないの」

 

「…どういう事だ?」

 

「さっきも言ったと思うけどこの魔法は本来生き物に使う魔法じゃない。人間は植物とは違うから空気中から養分を取り込む事は出来ないし、急激な成長も出来ない。貴方の体の中の栄養を傷に回すだけよ。そして魔法で細胞異常を引き起こす。だから貴方の体がどういう変化が起きるか分からない。もしかしたら腕から足が生えるかもしれない。正直腕がしっかりと治る確率は50%ぐらい。私の魔法での技量は心配無いとして、魔法自体がまだ不安定なのよ。だからこれは賭けと言っても良いわ。それでもやるの?」

 

「………」

 

 

ブロリーは50%が何を意味するのかを知らない。だが、賭けと言う事は分かった。でも、ブロリーはそんなこと関係無かった。ただ成功したら腕が生えると言う事が分かったならば、それをしない理由が何処にあろうか。

 

 

「構わない。俺だけでは何をしようとこの体を元に戻す事は出来ない。だからお前に全てを任せる。どんな結果になっても構わない。お前が全力を尽くしてくれるのなら、例え失敗しても、お前を恨みはしない」

 

「…そう。なら準備に取り掛かるわ。ついてらっしゃい」

 

 

パチュリーに従い、図書館の端に移動する。すると本に覆われた開けた場所に着いた。そこの床には丸い円の中に星のマークだったり読み取れない文字だったり様々な物が書いてあった。

 

ブロリーがそれを見て、首を傾げているとパチュリーから床の模様について説明が入る。

 

 

「これは魔法陣と言うの。しかも様々な魔法陣の中でも強力な部類に入るわ。貴方にはこの中心に立ってもらって、私から魔法を受けてもらう」

 

「こんな落書きに立って何の意味があるんだ?」

 

「落書き…この魔法陣は私からの魔法の干渉を受けやすくしてくれるし、魔法陣から補助も受けられる。貴方は体格的に魔法には疎いでしょうからこの魔法陣で効果を早める様にするの」

 

「なるほどな」

 

 

パチュリーに言われた通りにブロリーは魔法陣の真ん中と思われる部分に立つ。パチュリーも定位置に立ったようだ。

 

何が始まるのだろうかとパチュリーを見ている中、パチュリーが両手を前に突き出す。そして両手のひらを内側に向け、意識を集中させる。その時、パチュリーの目の前に分厚い本が出現する。その本はパラパラと風に煽られた様にめくれていき、一部のページを開く。

 

そしてそのページから魔法陣に書いてあった様な模様が空中に飛び出してくる。その文字の様な模様はブロリーの周りを浮遊し、竜巻のような形の風を巻き起こす。

 

パチュリーが何かを詠唱し始め、いよいよこの魔法の最終段階に入った。

 

 

「…準備が出来たわ。覚悟はいいかしら?」

 

「ああ、いつでもいい」

 

「…そう、それじゃあ行くわよ…。

perfect healing magic!!」

 

「…グ…グアァァァァァァァァァ!!」

 

 

パチュリーが魔法の名前を叫んだ瞬間、ブロリーの体に異変が起きる。体中に激痛が走り、体の力が抜けていく。

 

数分前に朝食を食べた筈なのに一気に空腹になっていく。

 

目の前が真っ白になり、意識を保つ事が出来ない。それでも超人的な精神で自分の意識を定着させる。

 

体中の激痛が消えた腕に移って行き、更なる激痛を生む。

 

生まれて何回目かの激痛に顔を歪ませ、地に膝を着く。

 

 

その時、急に激痛が和らぎ、吹き荒れた風が嘘の様に止む。風と共に飛んでいた文字や模様の羅列も全て消え去り、視界も良くなる。

 

 

「グッ…ハァ…ハァ…ハァ……」

 

「大丈夫かしら?」

 

 

痛みによって息が荒くなったブロリーの元にパチュリーが歩み寄る。

 

 

「クゥ…大丈夫だ…」

 

「大丈夫そうには見えないけど…でも安心しなさい。成功したわよ」

 

 

パチュリーの言葉を聞き、自分の両腕を見る。すると、今まで何も無かった肩から先に少し細いながらも筋肉質な腕が生えていた。

 

 

「戻った…俺の腕が…ついに戻ったぞ!!」

 

 

「良かったわね。私もこの魔法が成功した事によって、身内で怪我のした者達も治療が出来ようになったわ。もう少し改良を加える必要があるけど、少なくとも再生治療が出来る事がわかった。感謝するわ、ありがとう」

 

 

新しい両腕でガッツポーズをとり、喜びに浸っている中、パチュリーがブロリーにお礼の言葉を示す。

 

他人に感謝などされた事も無かったブロリーは少しバツが悪そうに頬を掻きながらパチュリーに返した。

 

 

「ああ、俺も念願の腕が元に戻った。その、なんだ…ありがとう…」

 

「…ええ、こちらこそ」

 

 

その慣れていない様な感謝の言葉に、パチュリーは苦笑した。

 

 

こうして、ブロリーの腕は元に戻った。それと同時にこの時、誰かに助けられたと改めて実感したブロリーの心境は、少なからず変わって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両腕を取り戻したブロリーは意気揚々と階段を登って行く。

 

階段を地上まで上がった時、ブロリーは気になる物を発見した。ブロリーが上がってきた大きな階段の左端の壁に、隠してある様に扉が設置してある。この扉は今までの扉と違い、壁の色と同化している様に真っ紅な色になっている。

 

今までの扉が茶色だっただけに、何か特別な物が有るのでは無いのかと気になってしまったブロリーは、先程取り戻した腕で真っ紅なドアノブを握り、扉を開ける。

 

その扉の先は奥が見えない程長い地下への階段になっており、灯りも申し訳程度のロウソクしかなく、まるで地獄に続いている様にも感じた。

 

しかも全体的に狭い。縦幅は大人1人が通れるぐらいの大きさで、横幅も両手を広げる事すら出来ない程の大きさだった。その作りは侵入者を拒んでいる様にブロリーは感じた。

 

それ故、ブロリーはこの階段の奥に興味を持った。

 

 

(ここは一体何処に続いているのか、そしてこの奥に何が有るのか…自由行動が許されている今なら見に行く時間はあるな)

 

 

 

 

薄暗い歩幅の小さい階段をブロリーは進む。

もうかれこれ5分は下った。にも関わらずまだ奥すら見えない。だんだん歩くのにも飽きてきたブロリーは1分くらい前から舞空術を使っていた。

 

その約1分後、無限に続く様に思われた長〜い階段の終わりが見えた。そこには茶色の豪華そうな模様が彫ってある扉があるだけだった。階段が今まで薄暗かったせいか、急には現れた1つの扉が不気味に思えた。そして何より扉の前にも関わらず、中からは物音1つしない。その静けさが妙な雰囲気を醸し出していた。

 

その不気味な雰囲気が一層ブロリーの興味心を掻き立てられる。中には何があるのだろうかとワクワクしながら茶色の扉を開ける。

 

その部屋はシンプルそのものだった。四角形の少し大きめの部屋に紅いベッドと紅いテーブルとイス。床には案の定紅い絨毯がひかれており、何故かズタズタに引き裂かれた跡がある。部屋の内部は階段よりは明るいが、窓が無い事もあり少し薄暗く感じた。

 

だが、その部屋はブロリーの予想と大きくかけ離れていた。

 

 

(予想以上に普通の部屋だな。もっと何かの魔窟の様な所につながっているかと思っていたのだが…。拍子抜けだな。長い時間かけて来たのが全て水の泡だ)

 

 

何も無いと感じ、来た道を戻ろうとドアノブに手を掛ける。だが、何も無いと確定させたブロリーの見解は間違っていた。

 

 

「ねえ、貴方は誰?」

 

 

ドアノブを回そうとしたブロリーの手が止まる。背後からの少女の声。レミリアの時の如く、またもや背後をとられた事もあり、イラつきながら後ろを向く。

 

だが、そこには誰もいない。あるのはさっき見た部屋だけだ。ここでブロリーは(前もこんな事もあったな)と思い出し、今度は自分の下を見る。

 

するとそこにはレミリアと同じ様な格好をした少女が熊のぬいぐるみを抱き抱えた姿でブロリーを見上げていた。レミリアの様な威厳は感じられないが、何か侮れない様な雰囲気をブロリーは感じていた。

 

 

「誰だ?お前は」

 

 

まずこの少女の真意を確かめるべく、少女の詳細を聞いてみる。

 

 

「私?私はフランドール・スカーレット。貴方は?」

 

(スカーレット…と言う事はレミリアの妹か姉かどっちかだな。肉親の可能性がある以上、告げ口をされる事も視野に入れて対応しなければならないな)

 

「…俺はブロリーだ」

 

「ふ〜ん、何か言いづらいね。ブロちゃんで良い?」

 

「ブロちゃん!?何だその変な呼び方は?」

 

「だって言いづらいんだもん!ブロちゃんでもいいじゃん!そんなに変わらないし」

 

「だが…格好悪くないか?」

 

「そんな事ないよ。可愛いよ」

 

「可愛いんじゃないか!」

 

「所でブロちゃんはさ〜…」

 

(このガキがぁ…)

 

 

終始会話の流れを支配しているフランドールに対し、調子が狂い腹が立つブロリー。今すぐにでも殴りかかりたい所だが、後で咲夜に長い説教を喰らうのが面倒臭いブロリーは必死にフランと会話を合わせる。

 

 

「何だ?」

 

「ブロちゃんは私と遊んでくれるの?」

 

「遊ぶ?」

 

「うん!何時も私1人だからつまらなくてさ。誰か来てくれるの待ってたの!」

 

「俺はガキの道楽に付き合っている程暇じゃない。他に遊んでくれる奴はいないのか?咲夜とかパチュリーとかこの館には数多く遊んでくれそうな奴は居そうだが…」

 

「皆は私と遊んでくれないの。だから代わりの人を咲夜がたまに連れてきてくれるの」

 

「じゃあその代わりの奴は今居ないのか?」

 

「もう皆居ないの。皆壊れちゃった…」

 

「何を……ッ!!」

 

 

俯き、壊れた…と言う言葉をフランが言った瞬間、空気が凍った気がした。部屋を押し潰す様な圧迫感にブロリーはたじろぐ。

 

 

(何だこの感じは?こんな潰される様な感覚は初めてだ…!)

 

 

俯いた顔をフランドールはゆっくりと顔をあげる。フランの目は真っ紅に輝いていた。

 

 

「…ねぇ、ブロちゃんは私と遊んでくれる?」

 

 

張り付くような緊張感。ブロリーはこの感覚を懐かしく思えた。そして、この感覚が殺し合う時に感じる感覚だという事も、ブロリーは覚えていた。

 

戦闘狂のブロリーはこの時、極度の緊張感と共に、強者と渡り合えると言う気持ちにより、心が高ぶり、歓喜していた。

 

だから、ブロリーの対応は《戦闘》の一択しか無かった。そして今その戦闘に直結する言葉はフランの言う《遊び》なのだろうとブロリーは感覚でわかっていた。

 

 

「……あぁ、良いだろう。お前と遊んでやる!」

 

「なら…簡単に壊れないでね!!」

 

 

ブロリーが戦闘体制に入り、フランドールが空中を舞う。

 

 

 

今此処に

 

幻想郷の悪魔と

 

宇宙の悪魔が

 

対峙する。




はい、皆様幻想入りシリーズでお馴染みのフランドールさんが登場です。
次回はいよいよ戦闘に入りますよ!キツそうですね〜(汗)
パチュリーが使った魔法の名前については触れないで下さい…


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黄金の悪魔

他の皆さんのブロリーがフランと一戦交える中、こっちのブロリーもフランと戦います。
やっぱ戦闘って難しいですねぇ。


 

「アハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

「チッ!!何なんだコイツは!」

 

「ほらほら!早く避けないと死んじゃうよ!」

 

「クソッ…!俺以外にこんな奴がいたとはな!」

 

 

地下のフランドールの部屋で響く爆発音。フランが弾幕を放ち、ブロリーが躱す。今のブロリーは反撃出来ずにいた。

 

 

(気弾の数が多すぎる!いくら俺でもこの数は捌き切れない!)

 

 

フランドールの弾幕は手数が多い。それに対してブロリーの弾幕は一撃必殺を重視している。数多くの弾幕を撃たれ、攻撃の出来る隙がないこの状況では、ブロリーは圧倒的に不利だった。

 

細やかなステップでフランの弾幕を躱していく。それでも限界がある。しかも部屋が狭いため、ブロリーの巨体では自由に動く範囲がない。対してフランドールは体が小さいため、部屋の中を縦横無尽に飛び回り、ブロリーに攻撃を繰り出す。場所的にもブロリーには不利なのだ。

 

必死に弾幕を避けるが遂にブロリーが弾幕に当たってしまう。

 

 

「グォッ!」

 

 

勿論一発ではない。弾幕が当たったのを見たフランドールはスペルカードを出し、新たな攻撃を仕掛ける。

 

 

「禁弾『スターボウブレイク』!!」

 

 

瞬間、数多くの弾幕がブロリーに襲う。絶え間なく続く攻撃に、ブロリーは防御も出来ない。ただされるがまま攻撃を喰らう。

 

やがてフランが弾幕を止め、モウモウと立ち込める煙の中にいると思われるブロリーに飽きれたように話しかける。

 

 

「何だ…もう壊れちゃったんだ。やっぱり物足りないなぁ…」

 

 

そう言い、立ち込める土煙から背を向け、ベッドに向かってつまらなそうに歩き出す。

 

だが、フランはこの後、自分のとった行動が過ちだった事に気づく。

 

 

「何処へ行くんだぁ?」

 

「……!?」

 

 

確かに聞こえたブロリーの声にフランはバッと振り返る。そこにあったのは立ち込める土煙では無く、硬く握られた大きな拳だった。

 

ズガンッ!と言う鈍い音を立て、フランは反対側の壁に吹き飛ぶ。

 

 

「勝った等とその気になっていたお前の姿は笑えたぞ」

 

 

散々弾幕を食らったにも関わらずブロリーの体には傷一つついていない。そんなブロリーに壁から這い出たフランは更に笑う。

 

 

「アハハハハ!そう来なきゃ面白くないよ!」

 

「さあ、来い!ここがお前の死に場所だぁ!」

 

 

弾幕ごっこで人は死にません。

 

ここで今更ながら弾幕ごっこについて簡単に説明する。弾幕ごっことは相手を傷付けない撃ち合い。チャンバラやサバゲーに等しい物と見ても良いだろう。この弾幕ごっこは幻想郷特有の戦闘方法で、攻撃をする前に技名《スペルカード》を宣言しなければならない。(このルールを既にブロリーは講習の時に咲夜に教えてもらっている)

 

だが既に、安全な弾幕ごっことはかけ離れた戦いをこの2人は繰り広げていた。

 

 

「デヤァ!」

 

 

掛け声と共にブロリーは全力の右拳をフランに突き出す。だが、フランはこれを体を捻るようにして躱し、ブロリーの脇の下から後方へと飛び出し、飛行する事によって一気にブロリーから距離をとる。

 

そしてフランが1つのカードを取り出し、スペルカードを宣言する。

 

 

「禁忌『フォーオブアカインド』!」

 

 

フランがスペルカードを宣言すると同時に、フランの周りが紅く光り出す。その光の明るさにブロリーは一瞬フランから目を逸らす。そしてブロリーが再度フランを見ると、フランが4人に増えていた。

 

 

「…面白い事をしてくれるな」

 

 

だがブロリーは驚く事もせず、素直に感心する。ブロリーは4対1の戦いを何度も体験している。例え4人に増えたとしても、ブロリーには関係ない。

 

 

「「「「さあ、私達と遊びましょ!」」」」

 

「例え4人に増えたとて、この俺を超える事は出来ぬぅ!!」

 

 

4人のフランが動き出す。2人は弾幕を張り、2人はブロリーに近接戦闘を挑む。

 

 

「邪魔だぁ!」

 

 

近接戦闘を仕掛けてきた2人をブロリーはバリアを衝撃波に変える事で吹き飛ばす。そして2人のフランが吹き飛んだ隙にブロリーはスペルカードを宣言した。

 

 

「緑弾『トラップシューター』!」

 

 

ブロリーは右手に気を集中させ、4体のフランに向かって放つ。最初に右手にあった1つの気弾はブロリーの手の平から離れた瞬間、幾つもの緑色の弾幕となってそれぞれのフランに向かって行く。

 

4人のフランに吸い込まれるように飛んで行くブロリーの弾幕は、最初に弾幕を後方から撃っていた2人のフランに少し集中していた。

 

この弾幕を躱そうと2人のフランは右側に旋回していく。これでブロリーのトラップシューターは躱した。

 

だが、ブロリーは元々トラップシューターをフランに当てるつもりは無かった。

 

 

「緑拳『イレイザーブロウ』!」

 

 

ブロリーが新たなスペルカードを宣言した瞬間、右に旋回し、トラップシューターを躱した2人のフランが消えた。

 

ブロリーは最初からフランが右側に避ける所を狙っていたのだ。その為に少し左側に弾幕を集中させ、右に行くようにさりげなく仕向けていた。そこにブロリーが緑色の気弾を殴る形で2人のフランに爆発させた。

 

 

「後2人!」

 

 

弾幕を放っていた2人を片付けたブロリーは、トラップシューターを躱し終えた残りの2人に突進する。それに釣られるように2人のフランもブロリーに突進してくる。

 

ブロリーは2人に正面から殴りかかる、事はなく、右にいるフランにステップし、ラリアットで壁に叩きつける。

 

そして攻撃してくる左側にいたフランに回し蹴りを食らわせ、ラリアットで壁に埋まったフランに渾身の左ストレートを食らわす。

 

ズガァァァンン!!と言う巨大な音を立て、更にフランが壁に埋まって行き、霧散していった。

 

そして回し蹴りを食らわせ、むせ返るフランに向き直り言い放つ。

 

 

「フランドール、分身が可愛いか?フフフッ!」

 

 

その言葉にフランドールは狂気の目を開き、より一層楽しそうにブロリーに返した。

 

 

「ゴホッ…ガホッ!フフフ、楽しい!楽しいよブロちゃん!今までの中でも1番楽しい!」

 

 

その瞳と言動にブロリーは何故か昔の自分を思い出してしまう。だが、今はそんなことどうでも良い。今はただこの戦いを楽しみたかった。それは、フランも同じ事である。

 

 

「次は私の反撃ね!禁忌『レーヴァティン』!」

 

 

フランが新たなスペルカードを宣言する。するとフランの手から炎の柱が出てくる。その炎の柱は次第に大きくなり、形を形成する。

その炎のは最終的に剣の形になった。

 

その炎の剣をフランは大きく振り上げ、ブロリーの真上に振り下ろす。

 

 

「そんなもの……何!?」

 

 

ブロリーの真上に振り下ろされた炎の剣は振り下ろすと同時に次第に大きくなっていた。

ブロリーは元の大きさの攻撃を予想していたため、躱すのに一瞬の間が生まれてしまう。この一瞬により、ブロリーのスピードでは避けられない距離まで炎の剣は接近して来ていた。

 

完璧に躱すタイミングを失ったブロリーはバリアを発動させる。だが、急いで発動したため、バリアの強度が甘かった。

 

 

「グオァァァッ!!」

 

 

パリーンッ!と言う音と共にブロリーは吹き飛び、反対の壁に激突する。ブロリーが激突した事によって真っ紅な壁はガラガラと崩れ去った。

 

そんな状態のブロリーにフランが言い放つ。

 

 

「これでおあいこだね。バリアが使えるとは思わなかったけど、ダメージを受けちゃったら意味無いよね〜」

 

 

そのフランの言葉にブロリーは耳を貸す暇が無かった。ブロリーの体の節々が悲鳴を上げていたからだ。ブロリーは今筋力が昔と比べて著しく低下している。それなのに昔の様に過激な動きをしたせいで、体にブロリーの反応がついて来れなくなっていた。

つまり言えば筋肉痛である。

 

だがそれでも痛みを堪え立ち上がる。

 

 

(俺はもう負けない。カカロットにも、目の前の女にも。もう、誰にも負けない!)

 

 

立ち上がるブロリーを見て、フランはまた歓喜する。

 

 

「まだ遊んでくれるんだ!じゃあ今度は何も残さない様にしてあげましょ!禁忌『そして誰もいなくなるか?』!」

 

 

フランが新たなスペルカードを出す。フランの周りにこれまでとは比べ物にならない程の数の弾幕が浮遊する。

 

もうブロリーに避けると言う術は無い。どこからどう見ても絶対絶命のピンチのはず。にも関わらずブロリーは笑っていた。

 

 

「…ふ、フハハハハハハッ!!」

 

「…おかしくなっちゃったの?」

 

「フフ…いや、違う。この戦い、俺が勝つ」

 

「今の貴方でどうやって勝つの?」

 

「今の俺では無理だ。だから、ここからは違う俺にやって貰おう…」

 

「違う貴方?……!」

 

 

地下の空気が震えた。それに伴い、ブロリーの周りから黄金の炎が立ち上がる。髪が徐々に逆立ち初め、その髪も黄金に少しずつ染まって行く。

 

 

「…これで俺の勝ちだ!うおぉおおおおぉぉぉぉぉォォォォォォオ!!」

 

 

地下にブロリーの雄叫びが響く。これを危険と判断したフランは速攻で攻撃を仕掛ける。

 

だが、全ては無駄に終わる。

 

 

弾幕がブロリーに当たる瞬間、ブロリーの周りの黄金の炎のが弾けた。

 

炎のは周囲に突風を巻き起こす。それに伴い、フランが放った弾幕も炎と共に吹き飛び、消えていく。

 

吹き飛ばされまいと踏んばったフランは、突風で飛んでくる破片から両眼を守ろうと、腕を顔の前でクロスさせる。

 

そして風が止んだ時、フランはゆっくりと部屋の真ん中に立つブロリーを見た。

 

 

するとそこにはさっきまでと別人では無いかと言うほど変わったブロリーの姿があった。

 

黄金の髪。

 

グリーンの瞳。

 

盛り上がった筋肉。

 

そして何より遠くからでも感じる覇気。触れれば蒸発してしまいそうな程攻撃的な覇気に、フランは目を見開き、苦笑した。

 

 

「…これは卑怯でしょ…」

 

 

フランの言葉をよそに、ブロリーはグリーンの瞳を光らせ、フランにゆっくりと指を指しながら言い放った。

 

 

「まず、お前から血祭りに上げてやる…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄金の炎を纏ったブロリーが、一歩ずつフランに向けて歩を進める。

 

一歩進むごとに部屋の内装は崩壊し、一歩進むごとにブロリーの体から電撃が迸る。

 

黒髪だったブロリーとは思えないほど様変わりしたその顔は、不気味に笑っていた。

 

 

「それが貴方の本気なの?」

 

「ふん、こんなものまだマシな方だ。俺はまだ全力では無い」

 

そう、じゃあ…全力を出させてあげる!」

 

 

フランが炎の剣を強く握り、ブロリーに向けて飛翔する。そして剣の届く範囲に達し、剣を横に薙ぎ払う。

 

先程ブロリーを苦しませた攻撃。普通だったら躱すだろう。

 

だが黄金のブロリーは、その場に立ったままだった。フランの放ったレーヴァティンがブロリーに直撃する。バリア無しでモロに攻撃を受けたのだ。ただでは済まないだろう。と、思っていた時がフランにはあった。

 

 

「何なんだぁ、今のは?」

 

 

案の定、ブロリーの姿はそこにあった。しかも体制を崩す事もなく、立ったまま腹で攻撃を受けている。にも関わらずブロリーには傷1つついていなかった。

 

そして、ブロリーが動き出す。

 

 

「デェヤァ!」

 

 

掛け声らしき声と共に一歩踏み込み、足払いを繰り出す。その攻撃をフランは上へと飛ぶ事で躱す。

 

だがブロリーも1回攻撃しただけでは終わらない。避けられたのを確認したブロリーは気を溜め、飛び上がる。そしてフランの所まで一瞬で追いつき、フランの足を掴み、地面へと振り落とす。

 

投げ飛ばされたフランが叫ぶ間もなく床へと落下し、小さなクレーターを作る。そのクレーターの中心で倒れているフランを更に上空から両手で押し潰そうと迫る。

 

その追撃してくるブロリーを見たフランは横に回転し、その攻撃を間一髪で躱す。そのままの勢いで後転で起き上がり、更にクレーターを深くしたブロリーに向かって反撃しようとスペルカードを取り出す。

 

 

「まだ終わらないよ!禁忌『恋の迷「やらせると思っていたのか?」…!」

 

 

だがフランがスペルカードを言い終わる前に、ブロリーが気弾を放つ。

 

 

「喰らうがいい!爆破『スローイングブラスター』!」

 

 

自分の技に集中していたフランは、スローイングブラスターを避ける事が出来なかった。慌てて両手を体の前でクロスさせ、攻撃を防ごうとする。

 

結果的にスローイングブラスターはフランの腕にあたり、ダメージを軽くする事はは出来た。だが、それは第一段階の攻撃を防いだに過ぎなかった。

 

フランの腕にスローイングブラスターが当たった瞬間、スローイングブラスターが轟音を立て爆発する。爆発はフランを飲み込み、爆風は部屋を木っ端微塵に破壊した。

 

後に残ったのは、1つの部屋があったとは思えないほどの巨大な地下空間と、うつ伏せに倒れ、ボロボロになったフラン、そしてそれを空中から見下ろすブロリーだけだった。

 

 

「もう終わりか?」

 

「うぅ…ブロちゃんちょっと手加減してよ!」

 

「手加減ってなんだ?」

 

「知らないの!?」

 

「俺が手加減すると思っていたのか?」

 

「意味知ってんじゃん!」

 

 

噛み合わない会話を繰り広げるブロリーとフラン。さっきまで殺し合っていた2人とは思えない風景である。

 

 

「手加減など今はどうでもいい。次の攻撃で終わらせてやる!」

 

 

ブロリーがスペルカードを握り潰し、右手に翠の気を集中させる。

 

 

「残念だけど、次に終わるのは貴方よ!」

 

 

最後の力を振り絞り、フランがスペルカードを手の中で爆発させ、狂気の目を表す。

 

 

「消え失せろ!破滅『プラネットゲイザー』!」

 

「消えて無くなれ!QED『495年の波紋』!」

 

 

フランが自分の周りに幾重にも重ねた弾幕を囲む様に出し、ブロリーが更に上に上がり、強く握り込んだ気弾を構える。

 

2人のスペルカードの域を超えた力がぶつかり合い、大爆発が起きた!

 

 

…と思っていたのか?

 

 

「グ…ァ……」

 

「え?なに?」

 

急に溜め込んでいた力が開放され、ブロリーは頭から床に落ちて行く。

 

その姿を見たフランは、丁度ブロリーの落下地点がフランの真上と言う事もあり、落てきたブロリーを受け止める。

 

何が起きたか今だに理解出来ないフランはブロリーの顔を覗きこむ。するとブロリーは力を使い果たした様に眠っていた。

 

フランが3倍くらいの大きさのブロリーをお姫様だっこする体制で数秒考える。

 

 

「…どういう事なの?」

 

 

だが、結局何故ブロリーが急に眠ったのかをフランは理解出来なかった。




紅魔館「助かった…」
紅魔館は今回地下以外は無事でした。多分、この戦いが1番被害が少なくなると思います。

紅魔館「ゑゑ!?」


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似ている悪魔

今回は少し短いですし、1部以外あまり進展しません。
そして話の構築が少しおかしくなっている所があります。何もかもおしまいだぁ…


 

 

 

真っ赤なベッドでブロリーは目を覚ました。窓の外を見ると空がオレンジ色に染まっている。恐らく午後6時位だろうか。寝る前は確か、フランドールと言う子供と戦っていた記憶はある。

 

朝、フランドールと戦闘をしていた所までは覚えているのだが、その戦闘の内容の途中が思い出せない。フランドールからレーヴァティンを食らった後からの記憶がスッポリと抜けてしまっていた。

 

そんな自分の記憶を引っ張りだそうと奮闘するブロリーの部屋にノックが鳴り響く。

 

 

「誰だ?」

 

「レミリアよ。ちょっといいかしら?」

 

「…あぁ、構わない」

 

 

起きているのが分かっていたかの様なタイミングで、ブロリーの部屋に訪れて来たのはレミリアだった。ブロリーの部屋に入って来たレミリアはブロリーがいるベッドの前にある椅子に腰掛ける。

 

落ち着いて話せる体制に入ったレミリアを見て、ブロリーがレミリアに話しかける。

 

 

「一体どういう事か説明して貰おう」

 

「それはこっちのセリフよ。一体どういう理由でフランの部屋に入ったのかしら?急にあの子が地下から出て来たかと思ったら貴方を抱き抱えて来た時は驚いたのよ?わざわざここまで運んで来るのも大変だったし…」

 

「そんな事はどうでもいい。あの地下の部屋はなんだ?まるで牢屋の様に強固な作りだった。そしてフランドール。奴は何者だ?お前と深い関係がありそうだが?」

 

 

ブロリーの言葉にレミリアは真剣な表情で聞き返す。

 

 

「なんでそう思うの?」

 

「奴の名前、フランドール・スカーレットと言ったな。あのスカーレットと言うのはお前の名前にも付いていただろ。確か苗字と言ったか?あれは親子等の肉親に付けるものだと咲夜から聞いた。スカーレットがお前の苗字ならば、フランとは少なくとも肉親と言う事になる。違うか?」

 

 

ブロリーの答えにレミリアは強ばった表情をフッと和らげた。

 

 

「…随分と知性がついたじゃない。咲夜がどれだけ頑張ったかが伺えるわね」

 

「余計な事は良い。質問に答えて貰おう」

 

「ええ、確かにフランは私の妹よ。肉親と言う事で間違いないわ」

 

「ならば何故奴はあんな所にいる?何故お前みたいに地上で暮らさない?」

 

「…話してもいいけど、貴方の心に影響を及ぼす可能性があるかもしれないから、心して聞いて頂戴」

 

「…いいだろう。だがその変わり、包み隠さず話してもらうぞ。奴の強さと、奴の待遇を」

 

 

ブロリーがここまで誰かに興味を持つ事なんて今まで無かった。何故ここまでフランに感心を示すのか。それはブロリーの過去に重なるものがあったからだろう。

 

だからどうしても、レミリアにフランの現在の状況について聞いて置きたかった。その答えによって、レミリアを殺すかもしれないから…。

 

 

「貴方が戦ったフラン。あの子は産まれた時から強い力を持っていてね。まだ理性がしっかりとしていない内に、ありとあらゆるものを破壊して来た。だから、これ以上犠牲を増やさない為にも、これ以上あの子を狂わさない為にも、破壊する物の無い地下へと幽閉したの。かれこれ495年くらいね」

 

 

その答えを聞き、ブロリーは体の内側から怒りがこみ上げて来た。その所業は、ブロリーの父親と全くと言っていい程、同じ事をしていたからだ。

 

 

「…貴様は、それでも良いと思っていたのか?」

 

「そんな訳無いじゃない。私だってあの子に普通の生活をさせてあげたいと思ったわ。でも、世間がそれを許さない。普通に日常を過ごしている者がフランを否定する。あの子が地上に出ても仲間は出来ない。むしろ敵を多く作るだけよ。だからどれだけ考えても、あの子が傷つかない為にはあそこにいてもらうしかないのよ」

 

「奴の為だと言うのか?」

 

「ええ、あの子のためよ」

 

 

レミリアは確かに間違っていない。だが、全く同じ体験をしていると言えるブロリーは、レミリアに異を唱える。

 

 

「…違うな。お前は奴を恐れているだけだ。奴の力に恐れ、奴の本心と向き合おうとしない。だから地下へ閉じ込める事でお前はアイツから逃げている。それを妹の為と言い、自分を正当化しようとしているだけだ」

 

「お前に何がわかる!」

 

「………」

 

 

ブロリーの言葉が的を射ていたのか、大声を出し、勢い良く立ち上がる。その顔は吸血鬼と言うに相応しい恐ろしい顔だった。

 

 

「貴方には私の気持ちは分からないわよ!分かるのはフランの気持ちだけ!保護者側の気持ちも知らないで、分った様な事を言わないで!」

 

「…………」

 

「貴方はパラガスの気持ちを考えた事があるの?貴方を制御していた時の自分の親の気持ちを少しでも考えた事があるの?無いでしょう。何故なら貴方は自分の事しか考えていなかったから!不幸なのが自分だけと考えて、他人の事なんて考えもしない!自分が1番悲劇だと思わないでちょうだい!」

 

 

まるで今まで心の内に溜め込んでいた物を全て吐き出す様に次々と発せられるレミリアの言葉。確かにブロリーはパラガスの事を全く考えていなかった。一体どういう気持ちで実の息子を制御していたのか分からない。もしかしたらブロリーの為を思って制御装置をつけたのかもしれない。その真意を確かめたくても、ブロリーの父親のパラガスは今はこの世にいない。だから、パラガスの考えなんて今は分からない。つまりレミリアの考えも気持ちも知るよしもない。

 

 

「…お前はフランと話し合ったか?」

 

「…なに?」

 

「フランは確かに破壊の衝動に駆られ、本能的に破壊を求め動いている。だが、それがアイツの本心なのか?」

 

「何を言って…」

 

「アイツは変わろうとしているんじゃないのか?」

 

「…何故、そう思うの?」

 

「アイツの力だったらあんな所から早々と脱出する事も可能だったはずだ。俺と戦った時も、本気では無かったようだしな。遊びたいのならあの部屋の扉を壊し、外に出て誰かと遊ぶ事だって出来た。なのにアイツはそれをしなかった。勝手な想像にもなってしまうが、アイツはお前らに迷惑をかけたく無かったのではないか?」

 

「……」

 

「これは俺の考えに過ぎない。だが、俺にはどうしても自分であの籠の中に入っているとしか思えない。だから、話し合う余地はあると思う」

 

「でも、それでもしフランが外に出たとして、出た瞬間に外を破壊する様な事があったらどうするの?」

 

「その時は俺がアイツを止める。もしかしたら殺す結果になるかもしれないが、お前、少しは自分の妹の事を信じてやったらどうだ?」

 

 

ブロリーは確かにレミリアの気持ちなんて分からない。だが、何故レミリアやパラガスが巨大な力を持つブロリーやフランの自由を奪うかだけは分かる。確かにブロリー達が持つ力は他人からは認められず、蔑まれるものである。だが、ブロリー達は本当に本心で破壊したいと思っていない。ただ、産まれた時から力を持っていたと言うだけなのだ。それはフランもブロリーも望んで力を持って産まれたのではない。

 

だからブロリーは良くこう思う。

(こんな力無ければよかった)と。

 

それはもしかしたらフランも一緒なのかもしれない。ブロリーがそうである様に、フランもブロリーと同じ気持ちなのかもしれない。

 

それをブロリーとの会話で覚ったレミリアは、最後にブロリーに問いかける。

 

 

「…もしあの子に何かあったら、その時は貴方を殺す。それでも良いのね?」

 

「いい。俺は死なないし、そんなもしもの事なんて起きない」

 

 

そう言ったブロリーの目は、今までのような絶望に溢れた目ではなく、何かを決意した様な男の目だった。

 

 

「…全く、そこまで言われたら仕方が無いわよね。まぁ多分貴方ならフランを止める事は出来るかもしれないし、そんな目をされたらどうしようもないわ」

 

 

レミリアの微笑と同時にフッと重苦しかった空気が軽くなり、ブロリーの険しかった顔を普通に戻る。

 

こうして2人の意見が合致した。

 

 

「でも1つ質問いいかしら?」

 

「俺も1つ聞きたい事がある」

 

「そう、なら貴方からどうぞ?」

 

「前から気になっていたのだが、何故お前は俺の過去をしっているんだ?俺が滅ぼした星の住人だったのか?」

 

「いいえ違うわ。私には『運命を操る程度の能力』がある。この能力を使って貴方が眠っている時に運命を辿り、過去を見せて貰ったの」

 

「そんな事が出来るのか」

 

 

ブロリーはこの幻想郷の程度の能力と言うものの幅広さに素直に感心した。咲夜は『時を操る程度の能力』を持っていて、レミリアは『運命を操る程度の能力』を持っている。しかもこの幻想郷のどこかには外の世界と言う所と、この幻想郷を行き来できると言う妖怪までいると言うのだ。まだ何がいるのか分からないのが、それでも戦闘民族としての本能か、どんな敵かと考えるだけでワクワクが止まらなかった。

 

ちょっと現実から遠のいて自分の世界へと入ろうとしているブロリーに、レミリアはわざとらしく咳払いして、ブロリーを現実に引き戻す。

 

 

「そろそろ私の質問に答えて貰ってもいいかしら?」

 

「あぁ、構わない」

 

「なんで貴方はそこまでフランの事を思うの?血と殺戮を楽しむ貴方なら、絶対誰かを庇ったりしないと思ったのだけど…」

 

 

そのレミリアの問に、ブロリーはまた険しい顔になる。そして窓から外を眺め、その答えをレミリアに話した。

 

 

「…全てを破壊しながら生きる本当の悪魔は俺だけで十分だ。これ以上、この負の運命を背負いながら生きて行く奴を出す訳にはいかない。フランドールはまだ若い。まだ普通に暮らせる可能性がある。だから、第2の俺を作らない為にも、フランドールは俺と同じ運命を辿って欲しくないのだ…」

 

「それじゃあなんで私を殺そうとしない?私は貴方の父親と同じ事をしているのよ?あの子を変えるより、私を亡き者にした方がよっぽど効率がいいはず。ここで殺されてもおかしくはない」

 

「お前は親父と違う。お前はフランドールを裏切らない。それが分った。それに…」

 

 

言葉を遮り、レミリアに向き直る。

 

 

「お前の傍にいると、妙に落ち着く。根拠は無いが何故か、安心出来る」

 

 

その顔は初めてブロリーを見た人には分からない様な、でも確かにブロリーは顔を綻ばせ、にこやかに微笑んでいた。

 

ブロリーの過去を見たレミリアでも、1回も見れなかったブロリーの笑みに一瞬目を見開き保おけてしまう。

 

だが直ぐに何時もの凛々しい顔に戻し、ブロリーに微笑み返す。

 

 

「ここが気に入ったかしら?」

 

「どうだろうか…親父といる時よりはここにいる奴等といた方が落ち着く気がする…」

 

「それを気に入ったって言うんじゃないの?」

 

「そうなのだろうか…分からん…」

 

 

まるで大人が子供に常識を教えているかの様な会話に、レミリアはまるで弟が出来た様な気持ちになった。

 

この気持ちを、レミリアは前にも体験していた。

 

 

(そうだ、この感じは彼の過去を見た時も感じた。何か、放っては置けない感じ…運命がフランと同じだからか?)

 

 

レミリアがブロリーに興味を持ち、そして紅魔館に留める選択をした理由はこの感情があったからだ。昔懐かしい、産まれたてのフランに吸血鬼として様々な事を教えていた頃の感じ。ブロリーの過去を覗いた瞬間、何故かその感覚が蘇った。

 

レミリアの運命を操る程度の能力は言うほど万能では無い。だが、レミリアは初めてブロリーを覗いた時、これは運命なのではないか。と思ってしまったのだ。

 

フランと同じ運命を辿る者。その第2のフランとも言える人物を、レミリアはフランを変えるキッカケの人物となってくれればと考えていたのだ。

 

これはフランを2人相手にするのと同じ事である。それは分かっていた。だから強い者しか関心を示さないフランと同等に、ブロリーも簡単にフランと接してはくれないと考えていたのである。

 

だが、ブロリーは偶然とは言えフランと接し、フランの気持ちを考えていた。自分と同じ運命を辿ることの無いようにと、自らフランを変えようとしてくれていた。

 

だから、レミリアはフランに普通に過ごせる可能性を見出したのである。フランとブロリーが同じならば、フランもブロリーと同じ考えを持っているのでは無いか、そう考えたのだ。

 

 

(やっぱり、彼を此処に居させて置いて正解だった。似た者同士でしか分からない事もあると言うし…)

 

 

だから今はこの男に賭ける。フランを変える為には、この男は必要不可欠なのだ。

 

 

とここで、今までうーん…と首を捻っていたブロリーが吹っ切れたかの様に動き出す。

 

 

「色々考えるのは面倒くさいな。俺はこのままフランの所に行く。お前は来るか?」

 

「いいえ、私は後で良いわ。一先ず貴方が先にあの子の心を開いてきてちょうだい。その後に私が外について話すわ」

 

「分った。すぐ連れて来よう」

 

 

そう言い、ブロリーは扉を開ける事無く体当たりでぶっ壊して部屋の外に出ていった。その新しい腕は何の為にあるのかと、レミリアは呆れながら思ってしまう。

 

 

(そういう不器用な所も、あの子に似ているのよねぇ…憎めないと言うか何と言うか…)

 

 

ブロリーがぶっ壊した扉を見ながらフッと苦笑し、元扉からレミリアは出ていった。

 




ブロリーが他人の事を思うなんて絶対に無いと思っていたのか?
てか、こういう回も一体何番煎じなのだろうか…。
自分の文章力の無さを痛感させられる回でした(泣)


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破壊の悪魔

ちょっと長くなりました。
続きです、何なりとご覧下さい。


 

 

 

 

「それは俺の物だぁ!」

 

 

ブロリーがレミリアを説得してから既に1週間が経っていた。

 

レミリアと話し合った後、フランを地下から出しす事が凄く簡単に出来た。殆ど二つ返事だったと言う。

 

そしてレミリアの外への説明を受け、何か暇になったらブロリーと遊べば良いと言う事でフランのストレス解消も出来る様にもなった。その為、フランは周りを破壊してストレスを消すのではなく、ブロリーと戦ってストレスを解消しているので、フランが破壊した所は今の所全く無い。(少しブロリーが破壊されて来ている)

 

今となっては朝昼晩とフランは紅魔館の皆と食事をする様になっていた。

 

 

「だからそれは私の机にあったんだから私のでしょ!」

 

「この机はお前の机じゃ無い!俺の机でもあるんだ!」

 

「でも私の前にあったんだから私のだよ!」

 

「俺の前でもあった!と言うか俺とお前の中間地点にあったんだから俺のでもお前のでもない!」

 

「ならこれは今から私のにする!」

 

「どうしてそうなるんだ!」

 

「「プリンは俺『私』のだ『だよ』!!」」

 

 

先程からこの2人がうるさい理由を説明した方がいいだろうか。

 

今日のデザートはプリンである。プリンはブロリーの大好物であり、フランの大好物でもなる。そしてフランとブロリーの席は隣り合わせであり、少し2人のどちらかに近いとどっちの飯か分からない。そして、今メイドの手違いでブロリーとフランの丁度真ん中にプリンを置いてしまった。

 

それにより何が始まるか。プリン争奪戦である。

 

 

「咲夜!あの2人なんとかしなさい!」

 

「何とかしたいのですが、生憎2つ目のプリンがまだ出来て居ないので…」

 

「何で2つ目を作らないで持って来たのよ!」

 

「妹様が早く食べたいと仰ってましたし」

 

「従って良い状況と悪い状況があるでしょ!何で毎朝こんな事言わなきゃいけないのよ!」

 

 

こんな様な会話が毎朝の様に繰り広げられている。フランのストレスは解消出来てはいるが、レミリアのストレスは増えるばかりだ。

 

 

「レミィ、もう少し静かに食べられないの?」

 

「それを普通は向こうの2人に言うべきじゃないかしら?」

 

「あの2人はもう諦めてるわよ。慣れたし、最近じゃこの2人の大声が無きゃ朝食を食べてる気分になれないわ」

 

「…パチェ、貴女少し休んだら?」

 

「休んでるわよ」

 

 

こういう時に順応出来るパチュリーは流石と言った所か。

 

そんなこんなで、ここ最近毎朝騒がしい朝を過ごしている訳である。そして毎朝のタイミングからするとそろそろあの2人の喧嘩も終結するだろう。

 

 

「お嬢様。プリンが出来たようです」

 

「報告は良いから早くあの獣共に渡して来なさいよ」

 

 

食堂の端にある部屋から咲夜がプリンを持って出てくる。このプリンはチョコレートをベースにしており、甘い物好きには堪らない一品と言えるだろう。

 

 

「良し、じゃあそれはお前にやる」

 

「じゃあ咲夜が持っているプリンはブロちゃんのね」

 

 

こうして2人の物凄い切り替えの早さで、騒がしい朝食は終了するのである。

 

 

 

 

朝食終了後、ブロリーの部屋にフランとブロリーはいた。2人はフフフっと邪悪に笑いながら話し合っている。

 

 

「今回も成功だったね〜」

 

「そうだな」

 

 

実はあの毎朝の喧嘩は2人の芝居である。フランとブロリーはデザートが大好きで、2人共朝食を食べた後の口直しに食べたいと思っていた。その旨を咲夜に伝えた所、咲夜は毎朝ブロリーとフランの要望にそったデザートを出してくれた。

 

それがプリンである。

 

プリンと言うのは手間のかかるもので、それなりに時間がかかる。そして咲夜の凝り性によって更に時間がかかる。

 

にも関わらず早く食べたい気持ちが強いブロリーとフランは咲夜にもっと早く作ってくれと急かした。だが、自分が仕えている人物の妹がいるからだろうか、どうしてもプリン作りに手を抜かなかった。

 

だから強行手段として2人で喧嘩を始めたのである。2人だけでなく、うるさくする事でレミリアや周りに迷惑を掛け、仕方なく早く作ると言う状況を作ったのだ。

 

周りから見たら駄々を捏ねる子供に見えるだろう。だからこそタチが悪い。何せ周りの人の気持ちを考えないからだ。兎に角自分のやりたい事を最大限に表現し、他人の視線を自分に向ようとする。もし無視する様な事であれば、もっと暴れ回ればいいだけなのだ。

 

保護者側からしたら迷惑の極みだろう。それをフラン達は逆手にとったのである。

 

そんな気の合う2人が今日の予定を話し合う。

 

 

「じゃあ今日は何するの?また紅魔館の中で鬼ごっこする?」

 

「いや、俺は少しパチュリーに用がある。フランはレミリアの所へでも行っていてくれ」

 

「えー!つまんない〜…」

 

「少しは我慢しろ。俺も今日は紅魔館の仕事があるから暇じゃ無いしな」

 

「う〜。じゃあお姉様に遊んでもらおー」

 

「ああ、そうしてくれ」

 

 

この1週間の内にフランは相当大人しくなっただろう。今まではそれはもう子供の様に自分勝手で自分のやりたい事が出来ないと周りの物を破壊しようとするほどだった。

 

ここまで言う事を聞く様になったのは、ブロリーの力技とレミリアの説教の賜物だ。

 

 

「それじゃあお姉様の部屋に行ってくるね!ブロちゃんまた後でね〜」

 

「ああ、次は夕食の時になると思うがな」

 

 

ドーンと扉を勢い良く開きフランは廊下を駆けていく。ブロリーはそんな様な光景を毎回見て思うのだがレミリアの妹とはとてもじゃないが思えない。落ち着きもなければレミリアの様に言葉で誰かを動かせる様なカリスマも備えている訳ではない。ブロリーは正直姉妹の関係では無いのでは無いのか?と常常思ってしまう。

 

そんな事をレミリアに話した所、「貴方とパラガスの様なものでしょ」と言われてしまった。その言葉を聞いて、ブロリーは大いに納得した。

 

簡単に言えば育ち方の差で例え兄弟であっても別人の様な者になると言う事だ。本当だったら、レミリアとフランで接し方を変えなければいけないのだが、ブロリーは面倒くさがり屋な為、そんな事情を聞いても普段通りに接する。

 

まぁ、本人が居ない今となっては関係の無い話なのだが…。

 

そんな事を考えながら、ブロリーは毎日紅魔館の仕事を始めるのだ。

 

 

 

 

ブロリーの紅魔館の仕事はとても簡単である。

 

7時〜8:30の間に2階の廊下の掃除を行い、9時〜11時には咲夜やパチュリーに頼まれた依頼をこなして行き、12:30〜4:30の間に美鈴と共に門番をする。そして5時からは自由行動。土日祝日は休み。給料は咲夜が働き次第で割り振りする。ブロリーはまだ給料と言う物を貰っていないが、お金と言う事は知っているので、好きな食物を買えると言う欲求からとても丁寧に仕事をしていた。

 

今ブロリーは朝の掃除を終え、パチュリーの図書館の中にいる。今回の依頼はパチュリーからで、『これから図書館に来るであろう曲者を対処して欲しい』と言う依頼だった。

 

その曲者と言うのは、決まった日に図書館へと不法侵入し、本を借りると言う名目で盗むと言う悪質なものだ。

 

何時もやって来る時刻は大体決まっており、朝の10時〜10:15の間にやって来る。人物像は黒と白の服を着ていて、大きいトンガリ帽子に箒に乗ってやって来ると言う、想像するだけでは変人の様な人物のようだ。

 

只今の時刻は10時ピッタリ。そろそろ来てもおかしく無いと、ブロリーは巨大な本棚の上から出入口を監視する。

 

約10分後。ギイと言う音と共にゆっくりと扉が開く。どんな奴だろうかとワクワクしながらターゲットが図書館の中に入ってくるのを待つ。

 

だが、図書館に入って来たのはブロリーが期待していた人物とはかけ離れていた。

 

 

「おーい、パチュリー!今日も本を借りに来たぞー!」

 

 

まるで当たり前の様にズカズカと図書館の中へと入って来て、いきなり図書館の主の名を叫ぶ。そんな光景にブロリーは驚き硬直してしまった。

 

入って来た人物はブロリーが探している人物に間違い無いだろう。全体的に黒と白の服で固められていて、手には箒を持っている。いわゆる魔法使いと言う者の服装にそっくりな服を着ていた。

 

その人物に図書館の奥にいたパチュリーは迷惑そうな顔をして対応する。

 

 

「貸すならいいわよ。でも貴女の場合は帰って来ないじゃないの」

 

「いいんだよ、私が死んだら返すから」

 

「それが迷惑なのよ。貴女いつ死ぬの?」

 

「私は出来るだけ長生きするつもりだぜ?だからあと私が死ぬのは80年位先になるな〜」

 

「80年も待てないわよ…」

 

 

普通に会話する光景は盗む者と盗まれる者には到底思えない。と言うか入って来て早々に自分の場所を明かす様に大声を出す盗人が何処にいるのだろうか。

 

正気を取り戻したブロリーも、これにはあの2人の前に出ていくタイミングが分からなかった。

 

混乱しているブロリーをチラ見したパチュリーは、会話の話題を強引に変える。

 

 

「残念だけど、今回は渡さないわよ」

 

「お、今日はやる気なのか?パチュリーが私に勝つにはまだまだパワーが足りないと思うぜ?」

 

「ええ、私では貴女に勝てない。だから今回は頼りになる助っ人を用意しているわ」

 

「助っ人?」

 

 

混乱しながらも会話を聞いていたブロリーは「ここだ!」と直感し、パチュリーと盗人の前に降り立つ。

 

急に空から上半身裸の筋肉質な人間が降ってきた事に驚いたのか、盗人はビクッと飛び上がり、尻餅をつく。

 

 

「紹介するわ。紅魔館の新しいメンバー、ブロリーよ」

 

 

パチュリーの紹介に合わせて、ブロリーは立ち上がり体の周りに気を纏わせる。

 

 

「ブロリー、彼女が今回のターゲット、『霧雨 魔理沙』よ。彼女の弾幕は高威力の物が多く、手数も多いわ。貴方と相性が良さそうだけど、気を抜いたら負けるわよ」

 

「了解した。だが、少し遊ばせて貰おう」

 

 

ここで盗人魔理沙が「いててて…」と尻を摩りながら起き上がり、ブロリーに目を向ける。

 

 

「急に空から降ってきやがって、お前がパチュリーの言った助っ人か?ブロリーだっけ?」

 

「そうだ、霧雨 魔理沙」

 

「魔理沙でいいぜ。それで、どうするんだ?弾幕勝負するのか?私は大歓迎だが」

 

「当たり前だ。ここでお前を退かなければ俺は美味い肉が食えん」

 

「私に勝ったら肉が食えるのか?」

 

「給料が多くなるんだ。それにより間接的だが、自分で選んだ美味い肉が手に入る」

 

「なるほど、飼われてるんだな?」

 

「違う、これは仕事だ。やらなければ俺は生きていけない可能性もある」

 

「何か、大変なんだな」

 

「そうでも無い。とりあえず戦うぞ。俺も早く戦いたくてウズウズしてるんだ」

 

「良し、ならとっとと終わらせてササッと本を借りて帰るぜ!」

 

 

2人が臨戦体制に入る。

 

ブロリーが更に気を溜め、魔理沙が懐から何らかの六角形の道具を取り出した。それと同時に図書館内に緊張感が張りめぐる。

 

 

「戦うのなら図書館の外でやってちょうだい。ここだと煩いし図書館がめちゃくちゃになるから」

 

 

だがその緊張の糸はパチュリーの手によってバッサリと切り落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪がしんしんと降り積もり、辺りを純白に染める今日この頃。季節は冬、気温は10度を下回り、様々な動物は活動を休止し冬眠に入っている。身も心も震えるこんな時期に、まるで真夏の様な熱気を出している者が2人。勿論ブロリーと魔理沙である。

 

魔理沙とブロリーが戦うと聞いて、レミリアや咲夜もフラン達も2人の戦闘を見に来ていた。

 

 

「咲夜、貴方はこの戦闘どうなると思う?」

 

「まだブロリーさんの実力が分からないですから今の所魔理沙が有利だと思っています。どちらも妹様を退いていますしね」

 

「そう…」

 

「お嬢様はどうお考えなのですか?」

 

 

咲夜の問にレミリアは口の端を少し釣り上げ不敵に笑った。

 

 

「私は彼が勝つと思うわ」

 

「何故です?」

 

「彼はここに来てからまだ一回も本気を出していないわ。それに対して魔理沙はフランと戦った時は本気だったはず」

 

「ですが魔理沙のパワーは並大抵の人間では勝てませんよ」

 

「いいえ、多分彼女のパワーではブロリーには勝てない。この幻想郷の住人をかき集めてもパワー勝負だったら瞬殺でしょうね」

 

 

レミリアの言葉に咲夜は絶句する。それもそうだろう。魔理沙のパワーは咲夜達が1番知っている。魔理沙の必殺技とも言えるマスタースパークはこの幻想郷でも最強と言っていい程の威力を誇る。そんな化け物の様な力を誇る魔理沙にパワーで勝てると言うのだ。正直言葉だけで言われても現実味が無い。それ程までに魔理沙のパワーは強大なのだ。

 

そんな事を考えてる咲夜にフランが付け加える様に話す。

 

 

「ブロちゃんはね〜、あの状態だったら弱かったけどもう一つの形態になると凄い強くなるんだよ!」

 

「もう一つの形態?」

 

「うん!何か髪の毛が金色になってね、何も燃やしていないのにブロちゃんの周りから火が出てね、威力とかスピードが格段に上がるの」

 

「何ですかその力…」

 

「よく分からないけど全体的にパワーアップしてた!凄い強かったの!」

 

 

悪魔の妹と言われたフランがここまで他人の強さを強調すると言うのはなかなか無い。彼女にそれ程まで言わしめたブロリーと言う男の本当の力は、一体どれほどの物だろうか。咲夜は大きな期待と、少しの恐怖感を感じながらこの試合をの行く末を見守る事にした。

 

 

紅魔館のベランダや、門の前等で屯している数多くの人影を見て、魔理沙は少し呆れながらもブロリーを見る。

 

どうやらブロリーは既にやる気満々のようだ。

 

「何か色々とうるさくなってきちゃったけど、そろそろ始めようぜ?」

 

「いつでもいいぞ」

 

「じゃあこっちから行かせてもらうぜ!魔符『ミルキーウェイ』!」

 

 

魔理沙がスペルカードを宣言した。すると魔理沙の周りに5つの赤い玉が浮遊し、更に四方八方へ赤や青等の色とりどりの魔弾を飛ばしてきた。

 

 

「そんなものが俺に当たると思っていたのか?」

 

 

その弾幕をブロリーは華麗な身のこなしで躱して行く。魔理沙の周りに回っている5つの玉のせいで近づけないが、ならば魔理沙が疲れるまで避け続ければいい話しだ。

 

ここ最近の重労働でブロリーの体力は少なくとも上がっていた。だからブロリーは躱し続けるのは自身があった。

 

 

「これぐらいじゃ当たらないか。なら次の新作だぜ!魔空『アステロイドベルト』!」

 

 

次に放って来たスペルは目が痛くなる程の数の魔弾が飛んできた。その数は隙間が無いんじゃないかと言う程の数で、とてもじゃないが避けられる物では無い。

 

 

「いいだろう。防御『バリア』を宣言する!」

 

 

その弾幕に対して、ブロリーはバリアを張る事で防御する。バリアの強度はフランと戦った時より強固になっており、魔理沙が放った全ての弾幕を防いだ。

 

 

「今、何かしたか?」

 

「バリア何て張れるのか…でもこの威力ならそのバリアを破壊出来るぜ!恋符『マスタースパーク』!」

 

 

魔理沙が先程取り出していた六角形の道具を取り出し、ブロリーに向けて構える。瞬間、その道具のサイズとは釣り合わないくらい特大のビームがブロリーに向けて放出された。

 

これを見たブロリーは、バリアでは防御出来ないと考えて、新たなスペルカードを取り出す。

 

 

「その程度のパワーで、この俺を倒せると思っていたのか?破壊『イレイザーキャノン』!」

 

 

左手に力を溜め、手の平サイズの気弾を作る。それを魔理沙が放ったマスタースパークに向けておおきく振りかぶり投げつける。

 

すると今まで手の平サイズだった気弾がブロリーの手を離れた瞬間巨大化し、マスタースパークを押し返す。だが、ただで押し返される魔理沙では無かった。

 

 

「まさか押し返してくるとは…でもまだだぜ!魔砲『ファイナルスパーク』!」

 

「グッ、オオオオオ!!」

 

 

魔理沙が放った2つ目の弾幕はマスタースパークに似て非なる物だった。大きさや威力も2倍以上に上昇し、今度はブロリーの弾幕を押し返す。

 

未だに頭が良くないブロリーはこの状況に有効な手段が見つからなかった。

 

 

「グオオオオァァァァァァァァ!!」

 

 

雄叫びを上げながら吹き飛ばされ、上空に消えて行くブロリー。その光景を見て、魔理沙は勝利を確信した。

 

 

「ちょ、ちょっとやり過ぎた気もするけど、でもこれで私の勝ちだぜ!」

 

 

魔理沙は箒に乗った姿勢でガッツポーズを取る。そして、図書館の本を頂こうとゆっくりと紅魔館に近づくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界が白に染まって行く。

 

魔理沙が放った光はブロリーを飲み込んでいた。

 

背後には遠いながらもあの時自分を殺した太陽が見える。

 

 

(…またこれか)

 

 

あの時と同じ、カカロットに吹き飛ばされ、太陽に叩き込まれた時と同じだった。

 

 

(また俺は負けるのか…また俺は『奴』に負けるのか…!)

 

 

薄れ行く意識の中、ブロリーは今の現実と、過去の記憶を重ねてしまった。

 

 

(カカロット…カカロットォ…‥!)

 

 

まだ負けない!俺はまだ負けて無い!

 

俺はまだ死なない!!

 

 

『さあ、俺の敵を、この世界を消しさってやろう』

 

 

ブロリーの心が死への恐怖と悲しみ、そして復讐心へと支配された時、ブロリーの本能が目覚めた。

 

 

「カカロットオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

 

消失『伝説は今ここに』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空が翠に染る。世界には絶望をそのまま表した様な叫び声が響き、空に上がって行ったファイナルスパークが爆発を起こす。

 

紅魔館にいる全ての人物が緑の爆発がおこった場所を凝視する。

 

 

「な、何なんだぜ!?」

 

「分からないわ!何が始まるの!?」

 

 

魔理沙や咲夜が混乱する中、レミリアだけがその正体を知っていた。

 

 

「…まずい…何とかし無ければ、この幻想郷は……消えて無くなる!」

 

 

ゆっくりと降下して来るブロリーと思わしき者。

 

それは、今まで見てきたブロリーとは全くの別物と化していた。

 

肥大化した筋肉。更に巨大になった体。そして恐怖の象徴と言うべき顔。

 

それは、ブロリーの本当の姿だった。

 

ブロリーと思わしき者は、まるでこの世界の全ての住人に言う様に、紅魔館にいる全ての人物に向かって宣言する。

 

 

「貴様ら全員…血祭りにあげてやる……」

 

 

神をも恐る伝説の超サイヤ人が、今ここに目覚める。

 

壮絶な殺戮ショーが始まろうとしていた。




魔理沙さんやってしまいましたね。
実は次回の事を何も考えずに衝動に任せて書いていたため、次回が辛くなりそうです。やっちまった…(泣)


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消えた悪魔

…タグを増やした方がいいだろうか…と言う回です。なんとか6000文字以内に収めようとしたため、ちょっと訳わかんなくなったかもしれませんが、まぁ、そこら辺は見て見れば分かるでしょう。はい。


地面が大爆発をおこす。これで何度目の爆発だろうか。爆心地は地面が大きく抉れ、降り積もっていた雪を瞬時に蒸発させる。

 

 

「フッハハハハハハハハハ!」

 

 

爆発を起こしている張本人は、その光景を見てとても嬉しそうに高笑いする。

 

 

「ブロリー!」

 

 

その破壊魔と化したブロリーにレミリアが声をかける。だがそれに気付かないのか、ブロリーは周囲の破壊活動をやめない。

 

 

「こっちに向きなさい!紅符『スカーレットシュート』!」

 

 

無理矢理気づかせようとブロリーに弾幕をぶつける。その弾幕は見事ブロリーに着弾し、暴煙を巻き上げる。

 

少しはの手応えがあると踏んでいたレミリアは一瞬気を許す。だが、煙の中から出て来たブロリーは全くの無傷だった。

 

 

「チィッ!!」

 

 

ブロリーの微動打にしない姿に、レミリアは壮大に舌打ちを鳴らす。だが一々悔やんでもいられない。

 

レミリアは気持ちを瞬時に切り替え、更なるスペルカードを繰り出す。

 

 

「神罰『幼きデーモンロード』!!」

 

 

レミリアはブロリーの手の届かない安全な距離まで下がり、紅く長い道の様な弾幕でブロリーを攻撃する。

 

その弾幕をブロリーは巨体とは思えない軽快な動きでレミリアの弾幕を躱して行く。そして躱すと同時にジワジワとレミリアに迫って行った。

 

そして、遂にレミリアに手の届く距離まで迫った時、ブロリーは弾幕を大きく半円を描く形で躱しながらレミリアに腕を伸ばす。この攻撃をレミリアは弾幕に集中していたため、躱す事が出来なかった。

 

 

「日符『ロイヤルフレア』!」

 

 

だが、ブロリーの攻撃は黄色い一直線の光線によって防がれる。光線はブロリーの顎に見事に直撃し、爆発した。

 

その弾幕を、レミリアは知っていた。

 

 

「パチェ!」

 

 

その人物はレミリアの1番の友であり、図書館の主てあるパチュリーだ。パチュリーは魔法陣の小型版の様な物と茶色い本を浮かせている。これが彼女の戦闘スタイルだ。

 

その何時もの姿にレミリアは妙な安心感に包まれた。

 

だが、その安心はパチュリーの警告で終わった。

 

 

「レミィ!気を抜かないの!彼はまだ…!」

 

 

そう、レミリアがパチュリーに気を許しているせいで、暴煙の中からブロリーの巨大な手が出て来る事をレミリアは気付けなかった。

 

 

「ガァッ…!」

 

 

暴煙の中から伸びてきた手は、真っ直ぐレミリアの首を掴む。圧迫された喉でなんとか息を吐き出そうと咳き込むような声が出る。

 

ゆっくりと煙が風と共に消えて行く。そこには傷1つ付いていないブロリー笑っていた。

 

ミシミシとレミリアの首にブロリーの指がくい込んで行く。このまま骨を折るつもりなのか、それとも締め付けて窒息死させようとしているのか分からないが、少なくともレミリアを苦しませなから殺そうと言うのは確かだ。

 

更にブロリーの腕に力が入る。解放されようと必死にブロリーの腕を掴んで力を込めるが、少しずつレミリアから力が抜けていく。

 

 

「お嬢様を…」

 

 

後少しでレミリアの首が直角に曲がろうとした時、咲夜の声と共に数多のナイフが一瞬でブロリーの周りを囲んでいた。

 

 

「離しなさい!!時符『パーフェクトスクエア』!」

 

 

咲夜の更なる声と共にブロリーの周りに浮遊していたナイフはブロリーに向かって飛翔する。全てのナイフは一寸の狂いもなくブロリーの体に突撃した。

 

 

「何なんだぁ?今のはぁ…」

 

 

だがしかし、数多のナイフは全て重力に任せ地に落ちる結果に終わった。ブロリーの異常なまでに肥大化した筋肉が、鎧の役目を果たしたのだ。

 

 

「まだ気を抜かない事自体ですね!彩符『彩光乱舞』!!」

 

 

ブロリーが咲夜に気弾を放とうとした瞬間、美鈴が更に追撃を食らわす。美鈴の弾幕混じりの見事な膝蹴りは、ブロリーの後頭部に突き刺さる様に激突する。

 

 

「クズがぁ…!」

 

ブロリーを前傾によろけさせる形で体制を崩したものの、それでもブロリーにダメージを与えられなかった。そしてすぐ手の届く距離にいる美鈴に殴りかかろうと拳を振るう。

 

だが、その美鈴達の行動はブロリーの気を逸らすには十分な効果を発揮した。

 

 

「グッ…神槍『スピア・ザ・グングニル』!」

 

 

咲夜と美鈴の攻撃にレミリアを掴む腕の力が緩む。その隙を突き、レミリアは右手にレミリアの倍はあろうかと思う程の紅い槍が出現する。

 

その槍をゼロ距離でブロリーの腹に突き刺した。

 

 

「グゥッ…」

 

 

流石にダメージを受けたのか、レミリアを地面に向かって勢い良く放り投げる。

 

その放り投げられたレミリアを魔理沙が空中でキャッチする。

 

 

「ガハッ、ゴホッ…グゥ……ッ…」

 

「おい大丈夫か!?」

 

「クッ、大丈夫よ…それよりブロリーは?」

 

「あいつ、まだピンピンしてるぜ」

 

 

魔理沙の言う通り、レミリアの放ったグングニルも、ブロリーの皮を少し抉る形で終わってしまった。

 

だが、ブロリーにとってはダメージが入ると言う事自体が珍しい。その為、ブロリーの目に写ったレミリアはただの危険な存在にしか見えなくなった。

 

 

「ウオオオオオオオオォォォォォ!」

 

 

劈く様な雄叫びを上げ、ブロリーの気が膨れ上がって行った。

 

瞬間、世界が緑色に染る。まるで別の世界に来た様な、気持ちの悪い感覚だった。

 

 

「おいおい、次は何が起こるんだぜ!?」

 

 

緑色に染まった世界は、徐々に元の色を取り戻して行き、緑色の世界を追い込む様に中心に押し込んでいく。

 

その光景に魔理沙達はまだ自分達は幻想郷にいる、と安堵する。だが、それも一瞬の事。

 

元の世界の色に追い込まれた緑は一体どこへ行ったのか、それはブロリーの右手の中だった。緑を自分の手中に収めたブロリーは新たなスペルカードを宣言した。

 

 

「これでくたばるがいい。最終『ギガンティックミーティア』!」

 

 

ブロリーが右手にある緑の気弾を、レミリアを抱えた魔理沙に向かって放り投げる。

 

その弾幕は手の平サイズで小さいながらも、禍々しい気を放っていた。それを持ち前の勘で危険と判断した魔理沙は急旋回し、それを間一髪で躱す。

 

対象を逃がした気弾は真っ直ぐ山に向かって飛んで行った。

 

その気弾が名もない山に当たった瞬間、緑のエフェクトと壮大な爆発音が響き渡る。爆発によって発生した爆風と土埃が、数十キロも離れている紅魔館を襲う。それにより魔理沙達は少しの間視界を奪われた。

 

爆風による風の音と混じってブロリーの笑い声が聞こえる。そして、爆風が収まり、視界が良くなった時、魔理沙達は現実味のない光景を目の当たりにした。

 

 

気弾が当たった山が、跡形もなく消失していたのだ。

 

 

「な……何が……」

 

 

魔理沙の思考がフリーズする。当たり前だろう。目の前で日常的に見ていた景色の一部が、たかが一発の気弾だけで消えて無くなったのだ。驚かない方がおかしい。

 

 

「フフフ、フハァハッハッハッハッハッハッハッハ!!」

 

 

目標の撃破に失敗したブロリーは、その光景に満足したのか、悪魔の様に笑い出す。

 

その姿に、魔理沙達の戦意は失いかけていた。

 

 

「あ、悪魔だ…」

 

「私達では…彼に勝てない…!」

 

 

極限状態の魔理沙達に、ブロリーは止めを刺そうとブロリーは右手に力を貯める。

 

 

「今楽にしてやる…これで終わりだぁ…!」

 

 

スペルカードの詠唱なし。つまりは素での攻撃と言う事になる。今までスペルカードルールによってなんとか生き延びられていたが、スペルカード無しでの攻撃では何が起きるか分からない。スペルカードルールに縛られている時でも、山を1つ吹き飛ばしたのだ。今度は幻想郷が吹き飛ぶ可能性もある。

 

誰もが諦めかけた。

 

誰もが諦めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、フランドールだけは違った。

 

 

「ブロちゃん!」

 

 

フランがブロリーのあだ名を叫ぶ。その声にブロリーは貯めた気を消し、ゆっくりとフランの方を向く。

 

ブロリーは楽しそうな声で、フランに話かけた。

 

 

「フランドールかぁ…わざわざ俺に殺されに来たかぁ?」

 

「…ブロちゃん、前に言ってたよね?何も生まれない破壊をするなって。なんで今のブロちゃんはお姉様達にに怪我をさせてまで皆を壊そうとするの?」

 

 

予想もしていなかったフランの言葉。その言葉に、ブロリーの顔は楽しそうな笑みから真剣な顔になっていく。

 

 

「貴様如きに話す気はない」

 

「…ブロちゃんは前にこんな事も教えてくれたんだよ?自分の本能に従ってもいい事なんてない、その時は楽しいかもしれないけど、その後が悲しい。結局悲しくなるのは自分だって。私はその意味がちゃんと分かったよ?何時も私が思っていた事だから…」

 

少しずつ紡ぐ様に出される言葉に、ブロリーは今までとは有り得ない程静かにフランの話を聞いていた。

 

フランの告白は続く。

 

「だから、ブロちゃんもきっと同じ思いをしてきたんだろうなって思った。私の気持ちと同じ人がいて、その人が壊したい本能を抑えるって言う気持ちだけで、今まで私の本能を抑える事が出来た…」

 

「でも、私の事を思ってくれて、私に色々な事を教えてくれたブロちゃんが、本能のままに皆を壊そうとするなんてダメだよ!」

 

 

吐き出される様に出た言葉に、ブロリーの表情が固まる。

 

そして、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「貴様と俺は違う。俺の心は既に、血を求め、殺戮と破壊を楽しむ本能に染まっている。それが俺だ。この俺の姿が、本当の俺と言う存在だ」

 

「違う!ブロちゃんは何時も私に優しくしてくれて、皆と友達になろうと頑張ってた!」

 

「それは俺の理性に過ぎない。ただの昔の俺が他の者と親睦を深めたいとと願った形だ。今の俺がそんな事出来る訳が無い」

 

「…なんで諦めるの?」

 

 

フランが思った疑問。それは前にブロリーがレミリアに投げかけた言葉だった。

 

 

「ブロちゃんは今まで皆と一緒に過ごしていたよ?と言う事は少なくともブロちゃんの心の中にまだ皆と一緒に仲良くなれるって言う希望があるんじゃないの?」

 

「………」

 

 

フランの言葉は的を射ていた。ブロリーは今本能が語っているに過ぎない。

 

本能と言うのは誰しもが無意識に曝け出し、体が何者かに乗っ取られた様に行動してしまう。例えれば、廃墟やお化け屋敷に行った時、怖いのが好きな筈なのに足が前に進まない。そんな感じだろう。危機察知、破壊衝動、これらの殆どは本能の赴くままに行っている。

 

だが、この本能は自分の心中を察知出来ない。本能が体を支配している時、何も考えずに本能のままに行動してしまう。どんなにブレーキをかけようとも、どんなに心で止めたいと願っても、自分ではなかなか止められない物、それが本能と言うものだ。

 

だから、ブロリーの本能はブロリーの本当の気持ちを分かっていない。本能のブロリーが喋っている理性とは、紛れもないブロリーの1部なのだ。理性は本能を制御する最後のリミッターであり、心の中にあるものを素直に取り出せるモノでないといけない。

 

希望を絶望に変える本能を制御するには、絶望を希望へと変えられる理性が必要だった。

 

だから、ブロリーは希望を求めた。これ以上自分も、自分が愛そうとしているモノを壊さない為に、ブロリーの理性は希望を探し求めたのだ。

 

 

「この事はブロちゃんが教えてくれたのよ?私みたいな誰にも愛されない、愛してもらえない様な化け物でも、破壊者の本能を押さえ込む事は出来る。私自身がそれを望めば、ただの破壊者ではなく、ただのお姉様の妹として生きて行ける」

 

「…だが、俺は誰にも愛されない。俺自身を愛してくれた奴なんて今までどこにもいなかった…!」

 

「私達がいるよ。私達が何時も笑って貴方と一緒にいてあげる」

 

「…そうね」

 

 

いつの間にか、レミリアがフランの後ろに立っていた。その後ろにはパチュリーも、咲夜も、美鈴も、魔理沙もいる。

 

 

「私は貴方を憎んだりしない。折角フランの遊び相手が出来たのに、私が勝手に憎んだりして何処かに行っちゃったら最悪だしね」

 

「一応紅魔館は人員不足です。最近の働きも見せてもらっていましたが、貴方はとてもよく動いてくれましたし、既に今の貴方は居なくなって貰っては困る人材なんですよ」

 

「まあ、また魔法の実験台を何処かから連れて来るのは大変だし、図書館で働いている小悪魔が貴方に会いたがっていたし、今居なくなったら困るのは確かね」

 

「ブロリーさんには毎回門番手伝って貰って助かってますし、ここで私が怨む必要が全くありませんよね。私だけで無く、皆ブロリーさんを必要としているんですよ?」

 

「この状況が良く分からないが、ここは全てを受け入れる幻想郷だぜ!だからブロリーも受け入れられるべきだと思うけど、山吹っ飛ばすのはやり過ぎだな…まぁどうせ紫の奴がどうにかするからいいけどな!」

 

 

皆の言葉に、ブロリーは顔を俯かせる。その瞳には涙が溜まっていた。

 

結局は悲しかったのだ。《伝説の超サイヤ人》は、悲しみによって生まれ、血と殺戮を楽しむ。《伝説の超サイヤ人》と言う本能は、必ずブロリーに悲しみが生まれた時に覚醒していた。それは、自分をこんなに悲しませた奴を殺す事で、悲しみを無理矢理払拭させたかったからなのかもしれない。

 

ブロリーはゆっくりと顔を上げる。その涙の貯まった瞳は、既破壊者たる者のただ白い瞳ではなく、黒く、必死に泣くものかと堪えるいつものブロリーの瞳だった。

 

 

「俺は…ここにいてもいいのか?もう誰も…俺の事をいら無いと言わないのか…?誰も…俺を裏切らないのか…?」

 

 

誰かにいら無いと言われるのが怖かった。誰かに怖がられるのが悲しかった。その悲しさを隠す為に生まれた《伝説の超サイヤ人》は、様々な者から裏切られ、様々な者から嫌悪された時の事を思い出したのか、ボロボロと涙をこぼしながらフランに問う。

 

その顔は既に、血と殺戮を求む悪魔等では無く、親に助けを求める子供のようだった。

 

そんなブロリーに、フランがゆっくりと近づき、優しくブロリーを抱きとめる。そして、まるで子供を慰める母親の様に、ブロリーにその答えを言った。

 

 

「うん、《貴方》はここにいていいの。ここには《貴方》を裏切る人も、ブロちゃんを嫌悪する人も、もう誰もいないから…」

 

「グゥ………ヴアアアァァァ……ウアアァァァァァァ……!!」

 

 

フランの言葉を聞いた瞬間、溜まっていた何かが弾け飛んだ様に、ブロリーの白い瞳から涙が流れた。様々な物を吹き飛ばす様に大声で泣き喚く。

 

 

今まで誰にも抱いてもらえなかった。

 

赤ん坊の頃から泣かなかった。

 

昔から泣けなかった。

 

悲しさと怒りで涙すら忘れ、全てを破壊し尽くしていた。

 

子供の頃も誰かに要ら無いと言われ、散々暴れて来た。

 

誰かが普通に過ごす子供時代を、ブロリーは同族や周りの手によって奪い取られて来た。

 

 

だからこそ、子供の頃に目一杯泣けなかったからこそ、信じる者が出来た、愛せる者が出来た此処で、今まで泣けなかった分を本気で泣いていいのだ。

 

ブロリーは、初めて本当に安心出来る場所を、生きていてもいい場所を見つける事が出来たのだ。

 

 

 

 

散々泣き喚きながら、ブロリーはフランドールの胸の中で眠りについていった。

 

しんしんと降る雪の冷たさと、フランの暖かい体温が妙に心地よく、ブロリーは生まれて初めてと言える安眠についたのだった。




〜end〜


嘘でーす!ハァッ☆
とても最終回臭くなってしまいましたがまだまだ終わりませんよ。
てか、ちゃんとシリアスになってたかな?同期が不順で怖いですが、まぁ意味だけ分かって頂ければ嬉しいです。今回の半分以上が深夜のノリで書いてますし…


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生きる男

とあるD「ここをキャンプ地とする!」(この話を章の最後とする!)



 

「それは俺の物だぁ!」

 

 

何時もの変わらない朝。今日もブロリーの声は食堂中に小玉する。

 

 

「だから私のだって言ってるじゃん!」

 

「今回だけは譲れん!このチョコプリンは絶対になぁ!」

 

 

何時もと少し変わった光景を見て、またレミリアの怒号が響く。

 

 

「咲夜!チョコプリンから先に持って来ても変わらないわよ!逆にややこしくなったわ!」

 

「う〜ん、やっぱり妹様とブロリーさんって相性が良いと言いますか、本当に兄妹みたいですね」

 

「何露骨に話を逸らしてるのよ!」

 

「咲夜さん、おかわりってありますか?」

 

「あるわよ美鈴。プリンの次に持って来るからもう少し待っててね」

 

「咲夜、ついでで良いから私のもお願い。ちょっと悪夢見たからいっぱい食べて忘れるわ」

 

「パチュリー様も大変ですね。今持って来ますから少々お待ち下さい」

 

「あんた達私を無視するなー!」

 

 

何時もと何も変わらない。毎朝の様に続いていた1日が今日も当たり前の様に過ごせる。それは当たり前の事であり、ブロリーにとって有り得ない事だった。

 

そして何時もの様に2つ目のプリンが運ばれる。だが、今回は何時もと違い、ブロリーの好きなチョコプリンが最初に出てきた為、今日は本気のプリン争奪戦が繰り広げられていた。

 

 

「ブロちゃんあのプリン食べればいいよ!」

 

「俺はチョコプリン出ないと嫌だぁ!お前があのプリン貰え!」

 

「嫌だよ!私も偶には違うプリンも食べたい!」

 

「我がまま言うな!」

 

 

このままではこの戦争は終わらないだろう。そう直感したフランは、元々考えていた最終兵器を使用する事にした。

 

 

「…少しくらい…少しくらい違うの食べてもいいじゃない…」

 

「へぇあ!?」

 

 

そう、子供の親に強請る時の最終兵器、『泣き落とし』を使ったのだ。

 

突然フランがボロボロと泣き始めた為、ブロリーもあたふたしながらどうしたら良いか迷っている。だが、何か決心したのか、ハァ…と大きなため息を付き、泣きながらプリンをくれと懇願しているフランに言った。

 

 

「…分かった、今日だけはそのプリンはお前にやろう」

 

「ふぇ…いいの?」

 

「今日だけだ。俺も偶には違うの食べてみたいしな…」

 

「やったー!ありがとブロちゃん!」

 

「やめろ!抱きつくな!プリンが食えないだろうが!」

 

「えへへ〜」

 

 

フランに抱き着かれ、迷惑そうに腕を振るブロリー。

 

他所から見たらなんとも微笑ましい光景だが、フランを知っていて、尚且つこよなく愛している人から見たらぶっ殺したくなる様な光景でもあるはずだ。気を静めろ、視聴者の皆さん…。

 

こんな形で、何時もと少し違った朝は終了したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に帰り、紅い腰布から青い腰布へと着替える。この腰布は、咲夜が紅い腰布を洗う時の為に拵えた、咲夜手作りの腰布だ。

 

着心地が紅い腰布よりも良く、同じ形なのにも関わらず、腰布の中部分がふわふわしていてとても気持ちがいい。何気なく職人芸を見せてくれた咲夜には後で礼をするとして、昨日の仕事の事をブロリーは考え始める。

 

 

(昨日は確か廊下を掃除して、魔理沙とか言う奴と戦ったな……一応レミリアには昨日謝ったが、奴にはまだだったな。謝る何て俺のしょうに合わないが、謝らなかったらレミリアに怒られそうな気がするし…もうあの長い話は聞きたく無いな…)

 

 

 

 

昨日ブロリーが眠りに付いたその後、紅魔館の中で目を覚ましたブロリーは咲夜やレミリアにずっと説教をくらっていた。

 

それをブロリーは俯きながら黙って話を聞く。寝てんじゃね?と思うような格好だったが、偶に「ああ」「分かった」等の言葉を言っていたので、恐らく反省していると言う事なのだろう。

 

そして1時間位で説教が終わり、ブロリーは最後に紅魔館の皆に向かって約束をした。

 

 

「俺はもう、お前らを裏切る様な行動は取らない。この館の一員として、この館で生涯を共にする」

 

 

その言葉を聞いたレミリア達は、満足気にうんうんと頷き、ブロリーの部屋から出て行った。

 

 

 

 

それから今日に至る。正直、説教だけでは済まないと思って身構えていたのだが、あれ程の事をしても何故説教だけなのか、と今でも疑問に思ってしまう。

 

 

(面倒臭いからか?いや、でもレミリアなら叩いてきたり引っ掻いて来たりそうなものだが、咲夜もいるしな…今度は俺が幽閉されてもおかしく無いのにな…)

 

 

数秒の静寂の時が流れる。ここまで一生懸命悩んでいるブロリーもなかなか見ない。ここはそっとしておいた方が良いと誰しもが思う様な姿だろう。

 

だが、1人だけ空気を読まない奴が、この紅魔館にはいた。

 

 

「ブロちゃーん!」

 

「へぇあ!?」

 

 

ドガーンと吹き飛ぶ扉に、ブロリーは今日何度目かのおかしな叫び声をあげる。

 

扉を開けずに吹っ飛ばした犯人は、皆様ご察しの通りフランちゃんである。

 

 

「ブロちゃんあーそーぼー!」

 

「扉をぶっ壊した事については何も言わないのか?」

 

「え?だってブロちゃん何時もお姉様の部屋に入る時は扉壊して行くって話を聞いたから、ブロちゃんの部屋に入る時も壊しちゃっていいのかなって思って…」

 

「レミリアの部屋はいいんだ。俺の部屋は駄目だ」

 

「なんで?」

 

「俺の部屋だからだ」

 

 

発想が子供である。本当にただの背が違いすぎる兄妹としか思えない光景だ。

 

 

「そんなことより遊ぼうよ~」

 

「後でな。俺は今日も仕事がある」

 

「ああ、仕事は今日は無いって咲夜が言ってたよ」

 

「なに?」

 

「ブロちゃんの今日の仕事は私と遊ぶ事になりました~!」

 

「何故だ!?」

 

「咲夜に頼んだの。ブロちゃんと遊びたいから今日は仕事休みにさせて?って言ったら凄い勢いで頷いてたよ」

 

「あいつ、誘惑に負けたのか…」

 

 

実際の光景がとても良く想像出来る。咲夜はとても優秀なメイド長だが、その忠誠心は鼻から出るとメイドの間で話題になっている。

 

フランやレミリアが少しでも可愛いと言える様な格好や言動をすると、何故か鼻血が出るのだ。

 

今回は恐らく、フランの上目遣いの申し出に負けたのだろう。

 

そんな光景を想像して、フッとブロリーから笑みが溢れる。

 

 

「ブロちゃん、何か楽しい事でもあったの?」

 

 

それを見られていたのか、不思議そうな顔でブロリーの顔をのぞき込むフラン。

 

相変わらず子供の様な仕草をするフランを、ブロリーは笑みを崩さぬまま、フランの綺麗な金色の髪を撫でた。

 

 

「そうだな…お前といると楽しいからな」

 

「ブロちゃん、もしかして口説いてるの?」

 

「そう聞こえるか?」

 

「うん、何か何時もと違うし、ブロちゃん変わったね」

 

「…そうか、俺は変わったんだな…」

 

 

今まで一生変わらないと思っていた自分が、この数十日でこうも簡単に変われるのか、と妙に嬉しい気分になる。今なら冗談の1つも言える気がした。

 

と言う事で、実行に移して見た。

 

 

「ならフラン、お前に告白と言うものをしてやろうか?」

 

「うん!…て、え!?」

 

 

かなり驚いたのか、目を見開きバッとブロリーに顔を上げる。何故か顔を少し赤らめながらあたふたしているフランを見て、これは面白いな、とブロリーはクスクス笑う。

 

 

「あ、いや、でも…そんな突然…いや、でも……」

 

 

言葉にならない言葉を色々と言っているフランをもう少し見ていたい所だが、後で色々言われるのが大嫌いなブロリーは、その場で直ぐに真実を明かした。

 

 

「冗談だ。俺はまだ告白と言うのが何たるかを知らない」

 

「え…えぇ!?」

 

 

まさかブロリーから冗談が出てくるとは思いもよらなかったフランは、更に驚きながらもプクっと頬を膨らませながらブロリーに怒鳴りつける。

 

 

「ブロちゃんひどい!」

 

「悪かった、1回やって見たかったんだ」

 

「それでもやって良い事と悪い事があるでしょ!」

 

「そうか?」

 

「そうだよ!」(全く、こっちの気も知らないで…)ボソッ

 

「何か言ったか?」

 

「何でも無い!大体ブロちゃんはね……」

 

 

とても微笑ましい様な、何処か腹の立つ会話をする。このままではまた長い話が来る可能性がある、と直感したブロリーは一生懸命話を切り替える。

 

 

「それより遊ぶんじゃないのか?」

 

「え?…あ、そっか。そう言えば遊びに来たんだっけ」

 

「俺は何でもいいぞ」

 

「そう?じゃあ隠れんぼしましょ!」

 

 

上手いこと話を隠れんぼに逸らしたブロリー。どうやらフランの扱いにも慣れてきたようだ。馬鹿は馬鹿を制するとは誰の言葉か。何処か憎めない2人だ。

 

 

「じゃあ私が鬼ね。何秒数えればいい?」

 

「何秒でも構わない。俺は負けないからな」

 

「お、言うね〜。じゃあ30秒でどう?」

 

「良いだろう」

 

「決まりね!じゃあ行くよ〜、いーち…にー……」

 

 

カウントが始まり、破壊された扉からブロリーは飛び出す。紅魔館の廊下の中を縦横無尽に走り回り、隠れ場所を探す。紅魔館は何百坪か分からない様な広さであり、更に内部も複雑である。それだけで、2人だけで隠れんぼをする事がどれほど大変な事か分かって頂けるだろう。

 

その中を、ブロリーはフランの探しづらいと思われる場所をこの1週間の内にピックアップし、30秒の間にその場に移動する。たかがお遊びにも関わらずブロリーは負ける気は毛頭ない。何時も準備万端の状態でフランと遊んでいるのだ。

 

その館の移動中は当然紅魔館で働いているメイド達にも出会う。ブロリーにとって、メイド達は貴重な情報源だ。紅魔館内部の事から紅魔館の外の事まであらゆる事を教えてくれる。だから紅魔館のメイド達の大体の者達は知り合いと言う事になる。その為、度々ブロリーはメイド達に声をかけられる。

 

 

「あ、ブロリーさん。お疲れ様です」

 

「ああ、お疲れだな」

 

「また妹様のお相手をしてるんですか?」

 

「ああそうだ。そろそろ俺以外の奴と遊んで貰いたいものだな」

 

「ふふふ、そうですね。所で今回は何秒で開始何ですか?」

 

「30秒だ」

 

「30秒!?だったら早くしませんと!」

 

「いや、そこまで急ぐ程の時間でもない。何故そこまで急ぐんだ?」

 

「いえ、前にブロリーさんと話していたメイドの子いたじゃ無いですか。あの所を妹様に見られたらしくて、妹様に色々と怒られたらしいんですよ…」

 

「怒られた?何故だ?」

 

「何か、ブロリーさんと遊んじゃ駄目、とか涙目で色々言われたらしいですよ」

 

「…あいつの考えは偶に分からなくなるな。その話、もう少し詳しく教えてくれないか?」

 

 

その時、ブロリーの部屋から結構遠くにいるにも関わらず、「さーんじゅー!行くよー!」と言う馬鹿でかい声が聞こえた。

 

 

「マズイな、完璧に遅れた」

 

「あ、あの、すいません!」

 

「いや、別に構わない。それじゃあな」

 

「はい、頑張って下さいね」

 

 

結局、フランがメイドに言った事の真意は分からず、こうしてメイド達と別れをつげる。

 

背後からフランの足音はまだ聞こえて来ない。今だ我に勝機ありと見たブロリーは、全速力で階段を駆け下り、はたまた駆け上がり、1番近いピックアップポイントまで急ぐ。

 

そしてレミリアの部屋の付近まで来た時、レミリアの部屋の扉が開き、中からレミリアが出てくる。挨拶が必要かと思ったが、今はフランとのバトルの最中。挨拶なんぞにブロリーが時間を裂くはずもない。

 

だが、1つ聞きたい事を思い出し、ブロリーはレミリアの真後ろで急停止する。

 

ブロリーの後を追う様についてきた風がブロリーを抜き去り、レミリアの服をたなびかせた。

 

その風を受け、ブロリーの存在に気づいたレミリアはブロリーの方に体を向ける。

 

 

「あら、ブロリー。そんなに急いで私に何の用かしら?」

 

「先に訂正しておくが、俺はお前に用があってここまで急いでいたのではない。今俺がお前の後ろで止まったのはついでに過ぎない」

 

「ほう、ならばそのついでの用を教えてもらいましょうか?」

 

 

終始余裕の笑みを絶やさないレミリア。既になれたが、どうしても心のどこかで腹が立っているのが分かった。その旨をレミリアに言ってもいいのだが、今は時間が惜しい為、その事はブロリーの胸にいつもの様に留めておく事にした。

 

 

「俺が暴走してしまい、お前達に叱られた時、何故俺への制裁があの程度なのだ?俺はお前の首を締め、お前らの心に俺という恐怖を刻み込んだ。にも関わらず俺への制裁はただ俺を叱り、嘘かもしれない約束をしただけ。普通だったら俺が幽閉されてもいいものだが、一体何故こんなにも罰が軽いのだ?」

 

 

その妙に長ったらしい話を聞き、レミリアはしばらくブロリーの目を見る。そしてハァ…と溜息を付き、ブロリーに答えを示す。

 

 

「ブロリー貴方、私に何を言ったか覚えて無いのかしら?」

 

「…なに?」

 

「貴方、私に話し合う事が大事とか言ってたじゃない」

 

「…まあ似たような事は言った覚えはあるが…」

 

 

フランを地下から出す際にブロリーがレミリアに言った「お前はフランと話し合ったか?」と言う言葉がレミリアにはかなり心に残ったらしい。

 

 

「それに、貴方を幽閉しても何も変わらない。フランがブロリーになり、ブロリーがフランになっただけよ。私は同じ誤ちは繰り返さない。だから、私達は貴方と同じ生活を過ごす事で、貴方と貴方の本能と少しずつ距離を縮めて行く事にしたの」

 

「…そうか…」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、ブロリーは心が暖かくなるのを感じた。とても妙な気分だったが、親父のパラガスと過ごした30年間で築いた刺の生えた心の殻が、一気に崩れさって行く様な……そんな気分になった。

 

この気分が一体何を意味するのかは知らない。この気持ちを解析するのに結構な時間をブロリーは要するだろう。だが、少なからずブロリーはこの気持ちにとても良い印象を持っていた。

 

その気持ちに新鮮さを感じ、またブロリーの口が綻ぶ。それを見たレミリアがまるで本物のツチノコを見たかの様な驚愕の目でブロリーを見る。

 

 

「あ、貴方何か変な物でも食べた?」

 

「何故だ?」

 

「いえ、貴方が素で笑うなんてこの世の終わり位な物だと思っていたのに…」

 

「馬鹿にしているのか?それともコケにしているのか?…この2つは何の違いがあるんだ?」

 

「……やっぱり私の気のせいね。いつもと変わらない馬鹿っぷりを見せてくれてありがとう」

 

「…何なんだこの惨めな感じは……」

 

 

そんなとても和ましい雰囲気の中、レミリアの背後から負のオーラが迫っていた。

 

その吐き気のしそうなオーラにブロリーは身じろいだ。

 

 

「な、何だこの気は…!」

 

「え?なに?気?」

 

 

そしてレミリアがブロリーが見ている方向、つまりはレミリアが背後に振り返った。そこには般若の形相をしたフランがいたのである。まあ、実際般若の面を被っているだけなのだが。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

それを本物の鬼と思い込んだレミリアが情けない悲鳴を上げ、しゃがみ込み体を丸くする。そして頭を腕で包み込む様にして、即座に防御体制を取った。

 

とてもさっきまで余裕そうにしていた者の光景では無い。

 

そしてブロリーはその光景を尻目に、負のオーラを背負ったフランと対話を始めた。

 

 

「フラン、一体どうしたんだ?」

 

「ブロちゃん…ちゃんと隠れてないじゃん」

 

「いや…何だ…ちょっと聞きたい事があったと言うか…」

 

「…へぇ?………それで……?その言い訳が何の役に立つのかなぁ?…」

 

「………悪かった…」

 

 

どこまで言っても通じ無さそうなので、ブロリーは諦めて自ら謝る事にした。なかなか無い光景だ。ビデオに記録しておくのも良いだろう。そしてブロリーの弱みをがっちり握って私の言う事しか聞けぬ様にしてy(デデーン

 

と言う事になるので録画は止めておこうと、影から見ていた咲夜は思ったりした。

 

 

「それで、どうするの?」

 

「な、何が?」

 

「まだ私と遊ぶ?」

 

「…遊ぶ」

 

「よし!じゃあ最初からやり直しね。今度はブロちゃんが鬼って事で!」

 

「ああ、分かった」

 

 

そうして、鼻歌交じりのスキップをしながら無駄に長い廊下の奥にフランは消えて行った。

 

その姿を、復活したレミリアとブロリーはボーッと見送った。

 

 

「…貴方、大丈夫?」

 

「ああ、精神的に死にそうだ…」

 

「そう…何か、ごめんなさいね…」

 

「まあ、こちらとしても全力で争う事が面白いからな」

 

「案外順応出来るのね」

 

「この状態で順応出来ない方がおかしいだろ」

 

「そうね、まあ頑張ってね」

 

「ああ、お前もな」

 

 

こうして、ブロリーの1日は少しずつ終わりに向かう。その1日の楽しさと、満足さを噛み締めながらブロリーは今日と言う1日を過ごす。

 

 

「確か30秒だったな…」

 

 

廊下の妙な暖かさと、紅魔館の騒がしさに、ブロリーはこれまた妙な安心感に包まれながら、数を30数えるのだった。

 

時は冬。

 

ブロリーの生活も、新しい年も、まだまだ始まったばかりだ。




リア充爆発しr(デデーン!
今回はほのぼのにしようと言う事で、引っ筆もほのぼの系にしてみました。ちょっと失敗してた?…気にしない

今回で第1章終了です!感想などなどをならず者がお待ちしております…腐☆腐
気軽にいいぞぉ!


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第2章 盗まれた春 〜妖々夢異変〜
終わらぬ冬


今回は二章の始まりと言う事もあり結構短いです。
でもその分次回を早くしますからお許し下さい!


 

 

 

 

3月、季節は春。

 

街道の並木には桜が蕾を付け、冬の寒い日々を乗り切った様々な動物達がまた生き生きと活動を始める。

 

そして身も凍る様に寒かった日々は少しずつ気温を下げ、暖かくなってきた。

 

そんな中、ここ紅魔館の主も春の訪れを感じる為、ベランダから外に出ていた。

 

 

「ハクシュン!!…うぅ〜……」

 

 

だが、外はまだ春の暖かさは全く感じず、まだ冬の寒さが続いていた。外は今だ一面雪景色であり、しかも雪まで降っている。春のはの字も感じられない程の見事な冬である。

 

確かに時期は3月。まだ完全に春と言える程では無いが、少なくとも雪は溶け始め、気温も少しは高くなって行っている筈なのだが、何故か今年は全くその気配がない。寧ろ雪はより降り積もり、気温は更に低くなって行っている。

 

そんな異常な状態の幻想郷に、レミリアは怒りを募らせていた。

 

 

「なんで春なのに暖かくならないのよ!」

 

 

ドガンとレミリアは咆哮を放つ。その声は真っ白な景色へと消えて行った。

 

 

「お姉様どうしたのー?」

 

「何か腹が立っているようだな。あいつの場合は無視するに限る」

 

「ほうほう、お嬢様が腹を立てている時は無視した方が良いんですか。勉強になりますね〜」

 

 

ベランダの下から聞こえる声。その声の正体をレミリアは勿論知っている。

 

 

「貴方達はなんでそんなに元気なのよ…」

 

 

その声の正体はご存知の通り、ブロリー達である。今回は何をしているかと言うと、ただの雪だるま作りだ。

 

 

「あ、ブロちゃんそこに置いてある木の棒取って」

 

「ん?…ああこれか、ほら」

 

「ありがと〜」

 

「妹様、この真ん丸の石はどうするんです?」

 

「それは今から付けるよ〜」

 

「分かりました」

 

 

プラスして、今回は美鈴が一緒に遊んでいる。美鈴は普段門番の仕事をしているのだが、何やら敷地内から楽しそうな声が聞こえたと言う事でブロリーとフランとの遊びに介入してきた。

 

ブロリーはまだいい。だが、美鈴は遊ぶ事を認められていない。と言う事で、レミリアは今後の美鈴の為に警告をするのだった。

 

 

「美鈴貴女仕事しなさいよ」

 

「ほうほう、それはそこに付くんですか…」

 

「……はぁ…」

 

 

レミリアの警告が聞こえていないのか、美鈴はフランと会話を続けている。

 

その反応を見たレミリアは深く溜息を付き、知らんとばかりにブロリー達に話し掛ける。

 

 

「貴方達寒く無いの?特にブロリー、貴方上半身裸じゃない。絶対寒いわよね?」

 

「いや、寒くない」

 

「なんで?」

 

「理由は知らんが寒くない。手は冷たいがな」

 

「まあそりゃそんな巨大な雪だるま作ってたら手も冷たくなるでしょうね。何その雪だるま?人形決戦兵器か何かなの?」

 

 

今ブロリー達が作っている雪だるまはとても巨大であった。

 

普通、雪だるまと言うのは丸い雪玉を2つくっつけ、上に顔を書いたりとするものだが、これは何故か二足歩行型でとても筋肉質な雪だるまさんなのだ。

 

フランとブロリーは今その雪だるまヘッドを製作中なのだが、フランは地上から数十m程の距離を浮遊しながら顔のパーツをドッキングしていく。その為、地上3階のベランダにいるレミリアとフラン達の距離は結構近かった。

 

 

「いや、どうせなら大きい物を作ってやろうと言う話になってな。紅魔館の敷地内にある雪を片っ端から掻き集めて作り出した。確か名前があったな…フラン、こいつの名前は何だった?」

 

「ブロフラ1号!」

 

「…だそうだ。ネーミングセンスの欠片もないな」

 

「因みに、貴方ならどんな名前にしようと思っていたの?」

 

「デストロイヤーだ」

 

「…似たような物ね。いや、まだフランの方がマシかも…」

 

「なに!?破壊者だぞ!ブロフラとか言うどういう意味か分からない名前よりは数倍マシなはずだ!」

 

「ブロちゃん、ブロフラって言うのは私とブロちゃんが作ったから、フランの『フラ』とブロちゃんの『ブロ』でブロフラにしてるんだよ。それでこの子は最初に作ったから『1号』で、ブロフラ1号って言う名前にしたんだよ〜」

 

「…案外しっかりとした意味があるじゃないか」

 

「気付かなかったのね…」

 

 

毎度お馴染みになっている様な会話を繰り広げる中、ブロリーはある事に気付いた。

 

 

「…そう言えば美鈴の奴は何処に行った?」

 

「美鈴はさっき咲夜に連れて行かれたわよ。ほら、そこに赤い所があるでしょ?」

 

 

レミリアが指を指した方向にブロリーは目を向ける。そこには真っ白な雪面のに、1部だけ真っ赤になっている箇所があった。血を見慣れたブロリーはそれが一瞬で美鈴の血痕だと分かった。

 

 

「…血痕がある…と言うか何故血痕があるんだ?」

 

「貴方も知っていると思うけど美鈴は大体門番をサボって寝ているでしょ?その度に美鈴は咲夜に額を一突きにされて起こされるのよ。今回は逆に眠ったようだけどね」

 

「なるほどな」

 

 

ブロリーは殆ど毎日を同じ様な日程で過ごしている。朝から夕方まで仕事をしてその他は自由時間。その仕事の中に美鈴と門番と言う仕事がある。だからブロリーは仕事をしている美鈴をよく知っていた。

 

美鈴は殆どの時間を立ったまま寝ており、最強のサボり魔と化していた。その度にブロリーは美鈴を叩き起してきた。どうやらブロリーのいる時はブロリーが叩き起こし、ブロリーのいない時は咲夜が刺し起こしていたようだ。

 

そんな事を考えていた時、今まで目の部分に巨石をドッキングさせていたフランが大声をあげた。

 

 

「出来たー!」

 

「お、出来たのか?」

 

「うん!なかなか良い出来だと思うよ!」

 

「ほう、期待せずに見てやろう」

 

 

その言葉と共に、今まで紅魔館の本館側に背を向けていた雪だるまがフランの腕力によってグルンと180度回った。

 

その雪だるまの顔はブロリーのしょんぼりした顔に激似であった。劇中で言う「ブロリーです…」のシーンの顔である。

 

その似すぎとも思える顔は輪郭は違えど、表情やパーツの位置なども完璧であり、そのあまりの完成度レミリアはついつい吹き出してしまった。

 

 

「くっ…クックック…すごい、似てるじゃない…フフフッ!」

 

「ね!似てるでしょ!」

 

「似てるでしょじゃない!」

 

 

それに業を煮やしたのはブロリーである。普通の顔ならともかく、何故かここまでショボンとした顔をこうも似せて作られた為、腹が立って来てしまったのだ。

 

 

「何故よりによってこの顔だ!」

 

「いや、雪だるまなんだし可愛い方がいいかな?って思って」

 

「だからって俺にする必要ないだろ!」

 

「いいじゃんいいじゃん!お姉様も喜んでいるみたいだし!」

 

「良くないわ!」

 

「まぁまぁ〜、そう言う困った顔も私は好きだよ?」

 

 

この時、プツンッと言う何かが弾けた音が空気中に響く。大体この音の正体を気付いたレミリアは、避難する準備をするのだった。

 

 

「フランドールウウウウウウ!!」

 

 

大きな叫び声を上げながら全身に気を溜め、爆発させる。そしてブロリーはフランに向かって飛翔した。

 

 

「あはははは!」

 

「うおおおおおおおおお!!」

 

 

こうしてブロリーとフランの鬼ごっこが始まるのだった。

 

 

「鬼さんこちらー、手ーの鳴ーるほーうへ!」

 

「俺は悪魔だぁ!!」

 

 

少しずつ小さくなって行くブロリーとフランの声を聞きながら、レミリアは今日何度目かの溜息をついた。

 

ベランダから覗いているように突き出た雪だるまを見ながら、レミリアは誰も喋る相手が居なくなったベランダを後にした。

 

 

 

さて、この後どうするか…と考え始めた瞬間、目の前に時間を止めて移動してきた咲夜が現れる。

 

そしてレミリアの前で肩膝を付き、剣士が王に忠誠を誓う様な姿勢になり、レミリアに言った。

 

 

「お嬢様に申し上げます。博麗の巫女が動き始めました」

 

「…そう、やっぱりね…」

 

 

3月からの寒さに耐えかねていたレミリア。

 

レミリアはこの寒さに何らかの陰謀があるのではと思い、何時も厄介事に首を突っ込む博麗の巫女と言う者の元に、咲夜を監視役として送らせていた。その判断はどうやら正しかったようである。

 

さっきまでと違う、真剣な表情になってレミリアは更に咲夜の話を聞く。

 

 

「はい、博麗の巫女が動いたと言う事は、間違い無いでしょう」

 

「霊夢…彼女が動く理由は1つしかない…」

 

 

博麗の巫女、霊夢、と知らない単語ばかりが飛び出す中、レミリアは邪悪に微笑み、狂気の瞳を開き、咲夜が持ってきた情報の結論を下した。

 

 

「これは…異変だと言う事よ」

 

 

新たな物語が始まろうとしていた。

 

 

 




東方妖々夢のスタートです!
これからブロリーが異変を解決する為に武力介入する
と思っていたのかぁ?







ハァッ☆


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異変へ向けて

ブロリーが異変を解決する と思っていたのかぁ?
後書きではアンケートがありますので、最後まで見ていく意思を見せなければ、今後の展開に響くだけだぁ!
あと、眠かった時に書いたので少しおかしくなっている箇所が多々あると思うので、心して見てくださいな


 

「異変?」

 

 

紅魔館のとある一室でブロリーは疑問の声を上げる。部屋のど真ん中に縦長のテーブルが置いてあり、その両端にブロリーとレミリア、そして咲夜がレミリアの斜め後ろに控えていた。想像して大体分かると思うが、この部屋は会議室である。

 

そして先ほどのブロリーの質問に、咲夜が律儀に答えた。

 

「異変と言うのは、何らかの私的理由による幻想郷の支配、又は嫌がらせをして幻想郷を狂わせる事を言います。因みに、この異変と言う事を私達は行った事もあります」

 

「どういう理由があって異変とやらを起こしたんだ?」

 

 

その質問に、今度はレミリアが答えた。

 

 

「私達吸血鬼は太陽の光に当たると死ぬと言うのは貴方も知っているわよね?」

 

「ああ、確か灰になるんだったか?」

 

「そうよ、今日みたいに雪や雨の日は太陽が雲に隠れて外に出れるけど、晴れている日の朝や昼間には日傘無しでは外に出歩けない。だから私が起こした異変は紅い霧を作り、日光を遮断する事で外にいつでも出歩けるようにしたの」

 

「なら何故今霧が出ていないんだ?お前が異変を起こしたのなら既に霧が立ち込めているはずだ」

 

「そうなんだけどね、この幻想郷に昔からいる人間に惜しくも負けてしまってね…。霧を消したのよ」

 

「お前達が負ける?少なくともそこらにいる雑魚共よりはお前達は統制が取れていて攻撃力もそれなりに高い。そんなお前らが人間に負けたと言うのか?」

 

「そうよ。私もまさか人間に負けるとは思わなかったわよ。彼女はとても強い。人間とは思えない程にね」

 

「その彼女と言う奴は誰なんだ?さっき咲夜が言っていた博麗の巫女と言う者か?」

 

 

この会話の前、ブロリーをこの会議室に呼ぶ時に、咲夜はブロリーに「博麗の巫女が動いたので至急会議室に来て欲しい」と言った。最初は訳が解らなかったが、どうも『動き出す博麗の巫女』と言う事は分かっていたので、博麗の巫女が生き物である事は解っていた。

 

 

「博麗の巫女、通称《楽園の素敵な巫女》。本名は博麗霊夢と言って、人里の近くの山の神社に住んでいるわ。普段は神社から出ないせいか、どうも最近景気不良のようで貧乏らしいわね。でも異変と呼べるような事が起きると直ぐにそこに駆け付け、異変を即座に解決しているらしいわ。能力は《空を飛ぶ程度の能力》で、主な攻撃方法は呪符型の弾幕を相手に飛ばして攻撃するわ。攻撃力や手数も去る事ながら、驚異的な身体能力と危機察知能力、空間認識力、判断力は最早人間とは呼べないわね」

 

 

 

ここまでの長い説明、何時ものブロリーだったら半分も聞き終わらない内に思考停止してしまうが、今回はブロリーの大好きな戦闘についての話だった為、ブロリーは最後までレミリアの話を理解出来た。

 

 

「…お前がそこまで言うのだったら相当な腕前のようだな…楽しみが1つ増えた」

 

「彼女と戦うと言うのなら止めといた方が良いわ」

 

 

見透かしたように言うレミリアの言葉に、ブロリーは真剣な表情になる。ブロリーの力はここにいる中でレミリアが1番知っているはずだ。にも関わらずまるでブロリーが負けるような口ぶりでブロリーを静止させようとする。

 

 

「何故だ?俺は強いぞ」

 

「確かに破壊や全滅に関しては貴方はこの幻想郷では最強よ。右に出る者はいない。でも、この幻想郷の弾幕ルールの中ではその力も弱くなる」

 

「俺の弾幕が弱い?どういう事だ?」

 

「貴方の弾幕は主に爆破や一点破壊を重視しているわね。知っていると思うけど、弾幕ルールと言うのは弾幕の手数が多い方が有効なの。一撃で結構なダメージが入るしね。だからこの幻想郷の住民は数多く発射される弾幕を躱すことに力を入れている。それに対して貴方の攻撃は主に一発のみ。何故か爆発時に巻起こる緑のエフェクトも判定に入っているようだけど避けられたらお終いよね」

 

「つまり俺は手数が少ないからそいつに勝てないと…そう言っているのか?」

 

「そうよ、貴方が弾幕ルールに従って動くなら、手数の多い弾幕を増やすべきね」

 

「ぬぅ…面倒だな」

 

 

実際ブロリーの弾幕は緑弾『トラップシューター』ぐらいしか発射数の多い弾幕は無い。

トラップシューター以外の殆どは一発だけ相手に向けて放ち、当たれば大抵の者は粉砕できると言う破壊力重視のものばかりだ。確かに幾らスペルカードルールに従っているとはいえ、当たれば一撃で相手を戦闘不能にさせる事は可能だろう。

 

だが、幻想郷の者は一発しか無い弾幕は必ずと言っていいほど当たらない。全ての者は数多く放たれる事を想定し、弾幕を躱す術に長けている。たかが一発の弾幕は、幻想郷住人にとってはコロコロと直線に転がって来るボールをピョンと避けるくらい楽なものなのだ。

 

 

「それと貴方には霊夢に勝てない最大の欠点がある」

 

「なに?」

 

「貴方は避けると言う事をあまりしないでしょう。弾幕ルールでは一発が命取りよ。弾幕は妖怪も人間も平等になる様に作られたルール。つまり人間の攻撃が妖怪にダメージを喰らわせられるような攻撃力を持つために、このルールは生まれたようなものなの。だから妖怪として見られている貴方は、普通の人間の撃った弾幕でもダメージは入るわ。勿論妖怪からは更に強烈な一撃が入るでしょうね」

 

「…どうすればいいんだ?」

 

「そうね…実戦で積極的に避けるようにしたら自然と身に付くんじゃないの?貴方案外物覚え良いし」

 

 

このレミリアの言葉はブロリーにとっては衝撃的な言葉だった。今までろくに躱すと言う事を知らず、自分の肉体のみで敵を倒して来たブロリーは、37年間培って来た戦闘スタイルを変えなければならないのだ。そう簡単には行かないだろう。

 

 

「…その弾幕ルールを作った奴に会いたい所だな…」

 

「それが霊夢なのよ。あともう1人いるけどね」

 

「霊夢…会う時が待ちどうしいなァ…」

 

 

ブロリーの思考に狂気が浮かび上がって来た事をいち早く感ずいたレミリアは、早々に話を切り替える。慣れたものだ。

 

 

「それはいいとして、今回の異変には咲夜に行ってもらうわ」

 

「…は?」

 

 

その言葉にブロリーは素っ頓狂な声を出す。ブロリーはレミリアの後ろで立っている咲夜と、レミリアを何度も見ながらレミリアに聞き直した。

 

 

「何故だ!?俺は!?」

 

「貴方はまだ実戦経験が少なすぎるわ。もっと避ける練習をしたら考えて見るけど、そんなに負けたい?」

 

「俺は負けない!」

 

「どうかしら?まだろくに攻撃も躱せないような者が、霊夢と言う猛者と肩を並べて戦うんて事はまず無理だと思うけど?」

 

「なっ……チィッ!……」

 

 

ブロリー自身も解っている事だ。弾幕ルールに完璧に縛られている今は、ブロリーはそこらにいる妖怪並に弱い。例え一撃で敵を屠る事が出来る攻撃も、避ければ何もなさない。

ある人の言葉を借りば、「当たらなければどうということはない!」と言う奴だ。

 

自分の事は自分が1番よく知っている。そうして観念したブロリーは、咲夜に話を聞く。

 

 

「大丈夫なんだろうな?」

 

「私は幻想郷でも強い方なんですよ?簡単には負けません」

 

「…早く帰って来いよ。まだ終わっていないんだからな」

 

「分かっています。帰って来たらお手伝いしますよ」

 

「ん?咲夜、なんの話なの?」

 

「いえ、実はブロリーさんが…」

 

「おい、まだ言わない約束だ」

 

「お嬢様も対象なんですか?」

 

「当たり前だ。そいつに話したらどんどんと外部にまで情報が漏れそうだからな」

 

「何か馬鹿にされてるの?私が口が軽いって馬鹿にしてるの?本当に何の話なのよ」

 

「そんな事よりレミリア、俺は咲夜がいない間は何をやってればいいんだ?」

 

「行動?ああ、仕事ね」

 

 

ノンストップの咲夜とブロリーの何か深いような会話をブロリーはレミリアから見事にはぐらかし、ブロリーは咲夜がいない時の自分の行動について聞いてみた。

 

実はブロリーは咲夜に言われるがままに仕事をしていた為、咲夜が居なくなるとブロリーは何の仕事をしていいか分からない。

 

 

「貴方には掃除をしてもらおうと思ったけど、変更して貴方には弾幕を避ける練習をしてもらうわ」

 

「練習?」

 

「貴方には美鈴に門番ついでに弾幕を躱す練習させてもらいなさい。そうすれば貴方は避ける練習が出来るし、美鈴は寝ることは無い。それに門の前でドンパチしてたら誰も近づいて来ないだろうし、結果的に門番の役割を果たすから一石二鳥なのよ」

 

「なるほど、いいだろう」

 

 

対して断る理由も無いし、しっかりとした理由があった為、今回はレミリアの命令を了承する事にした。

 

余談だが、レミリアの言う事の殆どは遊び半分である。前にレミリアがブロリーに「ちょっと私の部屋を掃除しなさいよ」と言われた時、ブロリーはその理由を聞いてみた所、「何となく」と言う答えが帰って来た事がある。

 

何となくで誰かにこき使われたく無かったブロリーは勿論その命令を断った。根本的にブロリーは理由の無い行動はしたくない。まだ体力が完全に回復してないブロリーは、少しでも体力を温存しておきたいからだ。だから、例え雇用主と呼べる存在であるレミリアの命令でも、意味の無い仕事はしない。

 

今回は自分を鍛えるのと、門番と言う仕事の2つの意味を持っていた為、ブロリーは大人しく従うことにした。

 

 

「じゃあ今日の話はこれで終わり。明日から咲夜が居なくなるから色々不憫になると思うけど頑張ってね」

 

「了解した。それじゃあな」

 

 

これ以上話す事は無いと判断し、ブロリーは早々に部屋の扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲夜side

 

ブロリーと話し合った翌日、咲夜は早朝から自室で弾幕に使うナイフの支度を済ませ、既にいつでも出発出来るようになっていた。

 

咲夜の攻撃方法はナイフを相手に投げる事によって敵を仕留める。だが、ただナイフを放つだけでは敵に安安と躱される。その為、咲夜は自分の能力《時を操る程度の能力》を使う事によって、敵を囲む形で無数のナイフで攻撃出来している。時間を止め、無防備の敵に向かって反発ものナイフを敵の前に定着させ、準備が整った瞬間に時間を元に戻す。すると、敵は知らない内に自分の近くにナイフが出てくる訳だから避けれるはずもない。これにより、戦闘経験の少ない敵は大体一撃で斃ると言う状態になる。

 

この攻撃によって、咲夜は幻想郷の中でも上位にに位置づいているのだ。

 

その攻撃に必要なナイフを自室にて装備する。胴回り、両足、二の腕、腰と、装備出来る所に所狭しとナイフを収めていく。

 

 

「この位でいいかしらね」

 

 

ナイフの所持数が約30を超えた時点で、咲夜が手を止めた。見た目はいつも通りの姿だが、スカートの中や服の中等に鞘の様な物に入った数多くのナイフが装備されていた。

 

準備は整った。後は味方と共に敵地へと赴くのみ。どんな敵がいるかは知らないが、紅魔館として戦果を上げると言う重要な任務だ。敵に、そして味方の霊夢達に負ける訳にはいかない。

 

覚悟を決め、咲夜が自室の扉に手を掛ける。

 

だがその時、咲夜が手を掛けた扉がトントンッと音を鳴らした。

 

 

「咲夜、いるの?」

 

 

ノック音の正体はフランだったようだ。フランと言う事を気づいた咲夜は、急いで服を整え、扉を開ける。

 

そこに居たフランは、は少し不安そうな顔をしていた。そんなフランに、咲夜はフランの顔がしっかり見える位置までしゃがみ、フランに話しかけた。

 

 

「妹様、なんのご用ですか?」

 

「昨日ブロちゃんが言ってたんだけど、咲夜どこかに行っちゃうんでしょ?だから挨拶しておこうと思ったの…」

 

「そうですか…ありがとうございます」

 

「咲夜…早く帰って来てね?」

 

「…はい、お土産を持って帰って来ます」

 

「うん、頑張ってね」

 

「はい、必ず帰って来ますから、安心して待っていて下さいね」

 

「…うん!」

 

 

ニコッと笑いながらそれだけ言い残し、フランは廊下の奥にトコトコと消えて行った。

 

フランが完全に消えた事を確認した咲夜は、ふぅっと息を吐き、背後にいる人物に話しかける。

 

 

「妹様に言わなくてもよかったんですよ?」

 

「どうしたのか?と聞かれたから言った。それだけだ」

 

 

 

いつの間に居たのか、咲夜の背後にはブロリーが窓に腰掛けながら一部始終を見ていたようだ。

 

 

「どういう風に妹様に言ったんですか?」

 

「咲夜が明日戦場に出掛ける。それだけ言った。お前の腕が分かっているのか、俺が話した時はフランはさほど心配はしていないようだがな。話したらまずかったか?」

 

「…そうですね、ちょっと…決心が鈍りました…」

 

「……フッ、お前なら何が何でも帰って来るだろう。俺もそれを見越して今回は身を引いたのだ。帰って来てもらわねば困る」

 

「それ、料理の話ですか?」

 

「それもある。だから早く帰って来い。お前にはまだ教えて貰わねばならない事が山程ある」

 

「ええ、分かってますよ。出来るだけ早く帰って来れるように努力します」

 

「…ああ、それだけ聞ければ十分安心出来る。それじゃあ、斃るんじゃないぞ」

 

「はい、今度は晴れた日に会いましょう」

 

 

約束を交わし、2人は別々の方向へと歩く。

 

消えた春を取り戻すため、咲夜は紅魔館の門から天へと飛ぶのだった。




ここで!アンケートをとって見たいと思います!
今後にドラゴンボールの敵キャラクターを出してもいいかな?と思っているのですが、出してもいいですかね?
気軽に答えて頂けると嬉しいです!
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美女と魔獣と3人の少女

サボってた訳じゃねぇぞ!ネタの具合が悪くて・・・

某動画で《ブロリーが〇〇〇を歌ってくれたYO》シリーズが涙腺崩壊ものでした(涙)

それを見ていたらついつい投稿が遅れてしまいました。(ネタが思い浮かばなかった事もある)すみませんでしたぁ!


 

 

 

咲夜と別れたブロリーは朝食を食べ終え、美鈴と紅魔館の門の前にいた。躱す修行と言う事は聞いているのだが、具体的に何をするかは全く分からない。

 

そんなブロリーに、美鈴がこれから行う修行について説明する。

 

 

「では手始めに私が撃つ弾幕を躱してもらいます。これはブロリーさんが今の所どこまで避ける事が出来るかを試すためです。それと、弾幕ルールについても色々と説明させていただきます」

 

「了解した。弾幕は躱しきればいいのだな?」

 

「そうです。一応言っておきますが、私の弾幕は少し特殊で格闘術が混ざっています。ブロリーさんは格闘は得意そうなので相性はいいと思いますが、少しずつ弾幕の形状を変えて行くので抜かりなくお願いしますね」

 

「ああ、油断する気はない」

 

「そうですか…では、始めます!」

 

 

美鈴の合図と共に修行が開始される。

 

瞬間、美鈴の体に気が纏い始める。その光景にブロリーは目を疑った。

 

 

「貴様…気を操作出来るのか?」

 

「そう言えばまだ言っていませんでしたね。私の能力は『気を使う程度の能力』です。その為ブロリーさんと似たような事は一応出来ます」

 

「何と言う僥倖…こんな近場にカカロットを倒す練習場があったとはな…!」

 

 

ブロリーも体に気を纏い、完全な臨戦体制に入る。この幻想郷に来てからブロリーは悟空達が放つ気弾を対処する方法を模索していたが、気を操れる者が今まで居なかったため対処方を探す事が出来なかった。

 

だが、美鈴は気を操る事が出来る。つまり、美鈴を負かすと言う事はカカロットを倒す事に一歩近づくとブロリーは考えたのだ。

 

最速、ブロリーは美鈴に手加減する気はなかった。

 

 

「ここで沈めてやるぞ!紅 美鈴!!」

 

「あれ?何か変なスイッチ入っちゃった?まあでも、本気で来て貰わなければ修行とは呼べないんですがね!」

 

 

美鈴が色鮮やかな虹色の気弾を周囲に展開させる。その光景にブロリーは疑問を持つ。弾幕を展開する際にスペルカードの宣言がなかったからだ。

 

 

「これはスペルカードの詠唱なしに撃つ《通常弾》です。この攻撃は弱い変わりにスペルカード無しでも撃てる様になっています。弾幕と言うのは必殺技の様なものですから、ずっと必殺技を撃つわけにも行きませんしね」

 

 

簡単に言えば前座、息抜きの様なものだ。弾幕ルールと言うのは敵を撃破する事も勝利条件でもあるが、敵のスペルカードを全て使い切らせると言う事も勝利条件に入る。その為、常にスペルカードを使った弾幕を放っていると自ら自滅を早めている様なものなので、通常弾と言う形でスペルカード無しの弾幕を放つ事が可能なのだ。

 

美鈴が展開した通常弾の事を理解したブロリーはなるほど、と唸る。その姿を見た美鈴は満足そうに頷き、展開していた弾幕をブロリーの方に向けた。

 

 

「簡単な説明も終わったところで、そろそろ撃たせてもらいます!」

 

 

美鈴から放たれた弾幕は四方八方に飛んでいく。もちろんブロリーの方にも弾幕は向かっていた。

 

 

「その程度!」

 

 

ブロリーは重心を一定にし、瞬時に数多放の弾幕を見極める。そして自身に当たると確信した弾幕だけを厳選し、無駄の無い動きで全ての弾幕を躱していく。

 

結果、ブロリーはその場から一歩も動く事無く美鈴が放った弾幕を躱す事ができた。

 

そんなブロリーに、美鈴は素直に感心する。

 

 

「華麗な程に無駄の無い動き…見事としか言いようがありませんね。なぜ今までわざわざ攻撃に当たってたのかが不思議な程です…」

 

「俺はそこら辺にいる連中より頑丈だ。避ける等で無駄な体力を使うより攻撃をくらった方がマシだ」

 

「…ブロリーさんと私達では色々と基準が違うようですね……まあそれは置いといて、続けていいですか?」

 

「いいぞ、早くこい」

 

「それじゃあ、スペルカードの弾幕を躱してもらいます!虹符『彩虹の風鈴』!」

 

 

美鈴がスペルカードを宣言した。すると美鈴の周りに虹色の美しい弾幕が数多く繰り出された。その弾幕を美鈴は空中で静止させながらブロリーに話す。

 

 

「もう知ってるでしょうが一応説明させてもらいます。先程も言いましたがこのスペルカードと言うのは必殺技の様な攻撃です。弾幕ルールに則って決闘を行う際にはこのスペルカードは必要不可欠になります。弾幕ルールの勝利方法は、《体力が残っているまでに相手のスペルカードを全て使わせる》と、《相手に降参と言わせる》の2つです。これを素早く行うために通常弾とスペルカードを使い分ける必要があります。スペルカードでの攻撃は連射力が高かったり範囲が広かったりと様々なものがあります。少なくとも通常弾よりは危険視した方が良いです。と言うことで、実際に躱してもらいますよ!」

 

 

美鈴の声と共に静止していた弾幕が放たれる。一直線の線になって飛んで来た弾幕の集合体は、ブロリーに接触出来る位置まで届くと扇風機の様に周り始めた。それに加え、一本の線だった弾幕に厚みが増し、ジャンプやホールドなどの簡単な動作では躱せない仕様になっている。

 

この弾幕をブロリーは正面から躱していく。

 

小型の弾幕が重なった攻撃は少しの隙間が空いていた。その隙間をブロリーは体を捻りながら縫うようにして通り抜ける。

 

弾幕を作業の様に躱していくブロリーを見て、美鈴は顎に手を当ててブロリーに語る。

 

 

「その巨体にしてはなかなか運動性能が高いですね。どうやらただ手数の多い弾幕は簡単に躱せるようですが、今度は少し難しいですよ!彩符『彩光乱舞』!」

 

 

美鈴の声と共に放たれていた弾幕は瞬時に消え去る。そして次に美鈴が繰り出した弾幕は手数が多く、ランダムに美鈴の周りに浮遊していく。最初にブロリーが見た時はまるで敵意がないかの様にただ美鈴の周りに小型の弾幕が浮遊するだけだったが、数秒が経つと美鈴の周りを浮遊していた数多の弾幕がゆっくりと周囲に飛行を開始する。

 

その弾幕は先が読めなく、ブロリーを目標に動いているのでは無いため、どこに動いても弾幕に当たる可能性がある。

 

そのため、ブロリーは身動きが取れない状況になってしまった。

 

 

(この弾幕は1つも俺を狙っていない…全て周りにランダムに飛ばしているだけ。だからこそ厄介……下手に動いたらわざわざ当たりに行く様なものだ。だがランダムに飛んでいるだけの事はあり、俺に向かって飛んできている弾幕も少なく無い…。動かなければ当たる…だが動いても当たる……どうするか…)

 

 

いつもならバリアを張るところだが、今回は避ける事を重視されている為、全てを躱しきる必要がある。だが、どう考えても逃げ場の無いこの状況に流石のブロリーもまいってしまう。

 

 

(……チッ!もう知るか!)

 

 

ここでブロリーは考える事をやめた。

 

ブロリーの戦闘本能の赴くままに弾幕を躱していく。頭で考えるのではなく、取り敢えず隙間が空いている所に行ってみてそこから更なる隙間を探すと言うゴリ押しに出たのだ。

 

 

(それが正解ですね。こういう類の弾幕は頭を使うより本能で動いた方が早い。ブロリーさんは案外物覚えがいいですね…)

 

 

美鈴がブロリーの考察を終える頃、ブロリーは美鈴の放った全ての弾幕を躱しきっていた。

 

 

「全て躱してやったぞ」

 

「いやお見事ですね。これで弾幕勝負と言うのは頭だけで無いと言う事が分かって頂けました?」

 

「十分理解した。次にいくぞ!」

 

「そんなに急かさないで下さいよ…ちゃんと次のパターンも用意してますから」

 

「なら早くしてくれ」

 

「分かりましたって…次は私の新作であり試作の弾幕です。これは今までの弾幕と攻撃形態が違います。では行きますよ…気符『地龍天龍脚』!」

 

 

新たなスペルカードを宣言し、上空へと飛び上がる。そして弾幕が美鈴の周りから放たれる……事はなく、美鈴は弾幕を一切出さない。

 

まるでやる気が無いかの様な光景に、身構えていたブロリーも気を抜いてしまった。

 

それが命取りだった。

 

 

「油断しましたね。それが貴方の敗因です!」

 

 

瞬間、美鈴の右足が虹色に光る。そして重量に任せてブロリーに高速の飛び蹴りを繰り出してきた。

 

 

「なにっ!?」

 

 

ブロリーは完璧に油断していたため、反応が一瞬だけ遅れてしまった。だがただ美鈴が飛び蹴りをしてきただけなので、体を軽く捻る事で簡単に躱した。

 

ブロリーに躱された美鈴はブロリーの背後で地面を割りながら勢いにブレーキをかける。そこから発生した砂埃は、虹色に輝いていた。美鈴の周囲に虹がかかる。その光景はどこか神秘的にも見えた。

 

 

「それだけか?」

 

 

美的センスが全くないブロリーは、そんなことお構いなしに美鈴を挑発しながら体制を整える。

 

だが、ブロリーが危惧きた事は起きなかった。

 

 

「はい、これだけです」

 

「……は?」

 

「このスペルカードは格闘に特化して、更に美しさを重視した弾幕です。それにまだ試作段階のスペルカードですからあまり強くはありません」

 

「つまり何を言いたいんだ?」

 

「まあ簡単に言えば、私の新しいスペルカードを試し撃ちするためのと、ブロリーさんにこんな弾幕もありますよと言う事を教えたかったんですね〜」

 

「ああそう…十分理解したから次は何やるんだ?」

 

「…え?まだやるんですか?」

 

「は?」

 

 

地面にどかっと胡座をかいた美鈴の言葉にブロリーは素っ頓狂な声を出した。

 

 

「やめるのか?」

 

「いえ止めるって事じゃ無くてですね、一先ず休憩しましょうよって言う事でして…」

 

「俺はまだ疲れて無い」

 

「ブロリーさんは疲れて無いかもしれませんけど私は疲れてるんですよ〜。人間よりも早く疲れるなんて今までなかったんですが…やっぱりブロリーさんは変身出来るだけ特別ですねぇ…」

 

「俺が人間?俺がどういう存在かレミリアに聞いてないのか?」

 

「え?人間じゃないんですか?」

 

「俺は人間なんぞではじゃない。俺は人間よりも高見に位置する種族だ」

 

「結局なんなんですか?」

 

「…面倒だから言わん」

 

「ゑゑ!?」

 

「聞きたいのならレミリアに直接聞けばいい。俺の種族はお前らの様な連中に誇れる様なものではないとだけ言っておこう」

 

 

何か深い意味がありそうなブロリーの言葉に美鈴はそれ以上追求出来なかった。門前に数秒の沈黙が訪れる。

 

 

「そうですか……休憩、します?」

 

「…するか」

 

 

話を切り直せた美鈴はブロリーを連れて紅魔館の中へと入る。時刻は11時。昼飯時である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。異変解決へと向かっていた咲夜は既に邪魔者に阻まれていた。

 

「くっ……!」

 

「もう諦めなさい。そろそろ体力も限界でしょう」

 

 

幻想郷の中心に位置する《魔法の森》の上空。そこで咲夜はとある人物と対戦している。いや、もう既に勝負は付いているので『している』では無く『していた』と言った方が適切だろう。

 

咲夜の目の前には全体的に白い和服の様な服装で、服に釣り合う様に純白な髪を持つ少女がボロボロの状態で浮遊している。それに対して咲夜の損傷は0と言っていい程何もない。どうやら圧勝だったようだ。

 

だがそれでも、少女は咲夜に闘志の宿った目で睨み付ける。

 

 

「まだ…まだ負けてないわ!まだ私はスペルカードを全て使ってないし降参もしていない!」

 

「まだやる気なの?諦めが悪いと言うか往生際が悪いと言うか…そんなに負けたいのなら今度は足腰が立たなくなるくらいボロボロにしてあげる…」

 

 

咲夜が両手の5本の指の間にナイフを挟む。ピリピリとした空気がその場を支配した。

 

 

「あ、おーい咲夜ー!」

 

 

だがその空気をぶち壊す気楽な声が咲夜を呼ぶ。

 

 

「魔理沙……」

 

 

その声の正体はいつもの様に黒と白の服に身を包む魔法少女、《霧雨 魔理沙》だった。魔理沙は咲夜と少女の前に割って入り、戦闘中と言う事をお構いなしに咲夜に話しかける。

 

 

「何時までも来ないから心配してたんだぜ?」

 

「ええ、悪かったわね。霊夢はもう来ているの?」

 

「霊夢ならもうとっくに来てるぜ。今私の家のソファで寝てる」

 

「…毎度の事だけど緊張感無いわね」

 

「あいつに緊張感出せって言う方が無理な話だぜ〜!」

 

「そうね、急に真面目になられても気持ち悪いし…」

 

「そう言う事だぜ!」

 

 

魔理沙と咲夜の和気藹々な会話が繰り広げられる。この幻想郷の連中は危機感と言う物が無いのか、と不安になる様な光景だが、それでもこの2人の実力は相当なものなので誰も口出し出来ないのだろう。

 

だがその2人に苛立ちながら大声を出す人物が1人いた。

 

 

「おい!私を無視するな!私は冬の妖精、《レティホワイトロック》なんだぞぉ!」

 

「アイツなんだぜ?」

 

「無視しとけばいいでしょ」

 

「ハァッ☆ オーーイ!」

 

 

新手のトランクスルー……もとい、《レティスルー》を見事に繰り出す咲夜と魔理沙。

 

 

「ふぁ〜…あれ?咲夜来たの?」

 

 

そこに更に場を乱す者が現れる。

 

その者は赤と白の巫女服の様な服を纏い、右手にお払い棒みたいな物を持った少女だった。

 

その者の正体を知っている咲夜は疲れた様にジトッとした目でその者に話しかける。

 

 

「おはよう、サボり魔の博麗の巫女さん?」

 

「は!?私がいつサボったってのよ!」

 

「山が1つ吹き飛ぶ様な危険度MAXの異変に駆けつけなかったのによくそんな口が叩けるわね」

 

「あれは突然だったし、近くに魔理沙がいる様だったから大丈夫だと思ったのよ!それにその日の前は完徹を3連続でやったせいであの爆音じゃなきゃ起きられないぐらいだったし!」

 

「いつでも行動出来る様にしなさいよ。様々な事を予想して対応出来る様にしてこそでしょう?」

 

「山が消し飛ぶなんて誰が予想するのよ!」

 

「それをお得意の勘で予想するのが貴女の役目でしょう!」

 

「いくら私の勘でも予測なんて出来るかい!」

 

「まぁまぁ2人共今はその話は置いといてこの異変を解決しに行こうぜ!」

 

 

ヒートアップしてきた2人の会話に終止符を打とうと魔理沙が2人に割って入る。魔理沙の言葉に2人は「全く!」と一言発し、異変の元凶を探しに行く。あれだけ争っても二人仲良く同じ方向に飛んでいく。その2人に溜め息を吐きながらついて行く魔理沙。ここまで良いコンビがあるだろうか。

 

 

「それじゃあ、頑張って異変を解決するとしますか」

 

「咲夜に言われなくても分かってるわよ」

 

「また火種を生む様な言動をするなよ…さっさと異変解決してかえるぜ!」

 

 

再び意気込み、3人は一先ず南東へと向かう。

 

この3人にレティはまだ構って欲しかったのだろう、両手を力を溜める様な形を作り、3人に叫ぶ。

 

 

「オーーイ!!私に見つかったぞ!」

 

「「「無☆視」」」

 

「オーーイ!………ハァッ☆」

 

 

そして台本でもあるかの様に息を合わせ、涙目のレティに《レティスルー》をするのだった。

 

 

「オーーイ!!」




作者はレティに怨みはありません。そして嫌いでもありません。ネタが無かったのでトランクスルーさせて頂けました。

パンツ
「レティさーん!僕と同じですね!」
レティ
「無☆視」

「ハァッ☆」

スルースキルならレティの方があると思います(笑)


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冥府へ続く天の道

アンゴル「申し上げます!血祭郷の最新話が現れましたぁ!」

Bro「今回は少し短いですが許して下サイヤ」

アンゴル「申し上げます!作者シネ!」

Brold「ゑゑゑゑゑゑゑ!?」


いや本当、全然アイディアが思いつかなくて…すいませんでしたぁ!


 

 

レティスルーをした咲夜達は異変の首謀者を探し回っていた。幻想郷中を行ったり来たりしながら探し回る。

 

だが、既に東西南北全てを探し回ったが首謀者らしき人物は見つからない。

 

流石に疲れたのか、霊夢が空中でホバリングしながらガクッと肩を落とす。

 

 

「一体どこにいるのよ…」

 

 

かれこれ2時間は空中を飛行している。霊夢だけでなく咲夜と魔理沙も相当疲労が溜まっている様だ。

 

未だ降り止まぬ雪の下、疲れてるわ寒いわでドンドンと怒りも出てきた。それと同時に異変の首謀者を絶対に懲らしめてやろうと言う決心も湧いてくる。

 

そんな負のオーラが漂う霊夢に、咲夜が霊夢と魔理沙にとある提案を出す。

 

 

「気分転換に雲の上に出てみる?このまま雲の下にいてもまた邪魔して来る人が出てくるかも知れないし」

 

 

この2時間の間に3人は約10回の襲撃を受けている。とある人形使い、化け猫に鬼神が憑依した妖怪、その他の雑魚共など休む間もなく攻撃して来る敵にこの3人はうんざりしていた。

 

雲の上に出ると言う咲夜の提案は、地上よりも敵が出てくる確率が少ない上に、寒い地上よりも雲の上のお天道様で暖まれると言う事も出来る。

 

この提案は3人にとっては最高の提案だった。

 

 

「それ賛成!」

 

「私も賛成だぜ。もう寒いし妙に湿っぽいしうんざりしていた所だったんだぜ!」

 

「じゃあとっとと上に上がりましょう。私も何時敵が出てくるかも分からない地上近くにいたくないわ」

 

 

3人の意見が一致し、高速で雲の上に上がる。寒くぶ厚い雲を今までに無い速度で抜けていく。

 

3人はものの3秒で雲を抜けた。雲の上は見事に晴れていて、綺麗な雲海が3人の下に広がっている。

 

太陽に近くなったためかとても暖かい。そんなとても気持ちの良い環境に3人は落ちた気分から一転、とてもほんわかした気分になっていた。

 

 

「「「気持ちいい〜…」」」

 

 

3人揃えて同じ声を上げる。暖い空気と、とても綺麗な楽器の音色が3人の眠気を誘った。

 

 

「ん?音色?」

 

 

この時、ようやく違和感に気づいた魔理沙は音色の正体を探る。誰もいない筈の天上で、楽器の音が聴こえる訳が無い。気持ち良さで思考が飛んでいた咲夜や霊夢もようやくその事に気付き周囲を確認する。

 

霊夢が更に上空を確認した時、音の正体とは関係ない、だが今の霊夢達には大いに重要なある物を確認した。

 

 

「……なるほど、あれが異変の入口ね」

 

 

天に穴が空いていた。いや、穴と言うのは見た目の問題であり、この正体は恐らく空中に出現した別世界への扉の様な物だろう。

 

霊夢達は長くこの幻想郷に住んでいるが、こんな物は見た事が無い。つまり雲が出ていた冬の間に出現したと言う事になる。

 

雲は冬の間一日中消えずにいた。そしてそのまま春になり、異変と呼べるものになった。簡単に言えばこの雲が異変の首謀者への入口を隠していたのだろう。

 

思わぬ発見に霊夢達は喜びの声を漏らす。

 

 

「まさかこんな所にこんな物があったなんてね。ちょっと不本意だけど咲夜の手柄ね」

 

「いや、まさかこんな物見つけるとは思わなかったけど…まあ、結果オーライって奴かしらね」

 

「そう謙遜すんなって!」

 

「………ん?」

 

 

ここで、咲夜がとある事を思い出す。

 

 

「どうしたの?」

 

「いや、そう言えばまだ音の正体が分かってなって…」

 

「………あっ」

 

 

ここで魔理沙と霊夢も思い出す。寧ろものの数分でどうやって忘れられるのかが不思議だが、これは言っては行けない事ではある。

 

 

「何か私達露骨に無視された?」

 

「やっぱりこの入口の前にいたから分かりずらかったんじゃない?リリカの提案は失敗と言う事で」

 

「お姉さん達がここで演奏しようって言ったんじゃない。私のミスじゃないわ」

 

 

霊夢達の頭上、つまりは天の穴の様な部分から聴こえてくる3人の少女の声。穴の様な物に夢中で気付かなかったが、その穴に被る形で3人の少女が浮かんでいた。

 

1人はクリーム色にショートヘアー。服装は主に赤色が中心の服を着ている。手に持っているのはどうやらキーボードの様だ。

 

もう1人は淡い水色の髪に、薄い桃色が中心的な服を着ている。手にはトランペットを持っている要だ。

 

最後の1人は金色の髪に黒色が中心的な服を着ている。この少女も手に楽器を持っており、今度はヴァイオリンの様だ。

 

それぞれ違った楽器を持っている。恐らく彼女達が美しい音色の正体だろう。

 

 

「何か揉めてるわね…」

 

「これほっといて通り過ぎられるんじゃないの?」

 

「1回やってみる?」

 

「そうね…無駄に体力を消耗したくないし」

 

 

3人で揉めている横を霊夢達はゆっくりと通り過ぎる。

 

 

「させる訳ないでしょう」

 

「作者が私達のキャラが分からなくなっているからってスルーだけはさせないわよ」

 

 

その件に関してはしっかりとこの場で謝罪します。すいませんでしたぁ!!

 

3人に道を阻まれた霊夢達は面倒臭げに話しかける。

 

 

「勝手に揉めたり行く手を阻んだり、貴方たち何が目的なの?」

 

「私達はあの扉の中にいる人に呼ばれているのよ」

 

「扉にいる人?あの穴の中には一体誰がいるの?」

 

「貴方たちに教える義務はないわ。それより貴方たち演奏の練習に付き合ってくれない?」

 

「やだぜ。私達は早く異変を終わらせて帰りたいんだ。だからそんな事に付き合ってる暇は私達にはないぜ」

 

「まあそう言われるとは思ったわよ。なら無理矢理でも付き合って貰おうかしら?」

 

 

金色の少女が楽器を奏でる。すると少女の周囲に弾幕が発生した。

 

その姿を見た他の2人はハァっと溜息を付きながら弾幕を発生させる。

 

 

「そう…引く気はないと言うことね。じゃあ少し面倒だけど、さっさと倒させてもらうわよ!」

 

 

昨夜の声と共に霊夢達もそれぞれの武器を出す。

 

少女達、《プリズムリバー三姉妹》との戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方ブロリーは廊下の掃除をしていた。

 

頭に白い頭巾を被り、腰布を埃の目立たない白色に変更し、掃除用のエプロンを着用している。

 

………いや、ここは言わせて貰おう。お前は掃除員のおばちゃんか?

 

そんなよくサービスエリアにいる業務員のおばちゃんの様な格好をしているブロリーは、着々と廊下の端から端へと箒を進めていく。

 

 

「………ん?ここは誰の部屋だ?」

 

 

廊下の中間地点に差し掛かった時、ブロリーは扉が少し開いた部屋を見つける。

 

その部屋は咲夜の部屋であり、今朝出て行った主のいない無人の部屋であった。

 

 

「…掃除……しておくか」

 

 

最近自分が進むと綺麗に消えていく埃を見て掃除が楽しくなっていたブロリーは、埃があるのではないかと咲夜の部屋に入る。

 

だが、咲夜の部屋はブロリーが期待していた様な状態の部屋では無く、とても綺麗に整理整頓されている。

 

その埃が1つもない状態の部屋にウキウキとしていたブロリーはズンっと暗くなる。

 

 

「綺麗だ…面白くないほど綺麗すぎる…」

 

 

畜生、と声を吐きながらブロリーは部屋を出る。

 

だがブロリーは部屋を出る際、とある物を見つけた。

 

 

「あれは…咲夜が攻撃する時に使うナイフ?」

 

 

咲夜の部屋の中のテーブルには、ナイフを収納していたであろう箱があり、その箱には30個のナイフ型の窪みが空いている。

 

その窪みからズレる様に1本のナイフが飛び出ていた。

 

 

「………届けに行ってやるかな…」

 

 

この行動はレミリアに逆らう事になる事はブロリーは知っている。それでも、今回の美鈴との修行で避けるコツを覚えたブロリーは、1回実戦で自分の実力を試して見たかった。

 

それに、1番の原因はブロリーが戦闘狂と言うことだろう。どうしても最近本気の戦闘の空気を味わいたかった。

 

 

「すまんなレミリア…」

 

 

頭巾とエプロンを脱ぎ捨て、ガラッと咲夜の部屋の窓を開ける。

 

そして、ブロリーは白い景色の中を猛スピードで飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

「全くあの子は……何時まで経っても子供なんだから」

 

 

その光景を見ていた永遠に幼き紅い月のレミリアは深い溜息を付く。

 

 

「行かせていいんですか?」

 

 

その姿を背後から見ていた美鈴がレミリアに問いかける。

 

その問に、レミリアは苦笑しながら答えた。

 

 

「どうせどう足掻いても彼はこの異変に介入する気だったでしょう。一々私達に報告してくるよりもさっさと行ってもらった方がいいわよ」

 

「…大丈夫ですかね?」

 

「ブロリーなら大丈夫でしょう。頑丈だし霊夢と魔理沙もいるからもしもの時も対処してくれるだろうし」

 

「いえ、私が言心配しているのは異変を起こした方々なんですけど……」

 

「…………それは保証しかねるわ…」

 

 

こうして、おかしな形でブロリーの異変への介入が始まったのである。

 




なんとビックリ3000文字!すくねぇ!

Bro「サボってた訳じゃねぇぞ!頭の具合が悪くて…」

ブロリー「最初からだろ?」

Bro「ゑ!?酷い!」

ブロリー「こんな馬鹿な作者だから次回は見なくていいぞ」

Bro「ちょっ、おまっ!」

次回からは物好きな方だけ見てくださいね…


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道中

久しぶりの投稿です。
では、続きです。なんなりとご覧ください。


 

 

 

オレは幻想郷と呼ばれる世界の上空に浮かんでいた。

 

オレが奴から離れてからもう何日たっただろうか。

 

そろそろ我慢の限界だ。

 

戦闘の事を考えると体が疼いて仕方ない。この衝動を抑えるには何かを壊さなければならないだろう。

 

長らく戦いに身を置いていたからだろうか。どうやらたった少しの日常ではこの感情は治せない様だ。

 

戦いたい……

 

いや、蹂躙したい。

 

最近になって満足に戦える現場も少ない。だからオレと本気でやり合える奴と戦いたい。

 

オレより弱い奴を立ち上がれるなるまで破壊する。

 

そうだ。たった少しの仮初とも言える平和の日々に惑わされていた。

 

オレは伝説の破壊者。

 

宇宙で恐れられ、全てを破壊し尽くす悪魔。

 

 

それがオレ、伝説の超サイヤ人だ。

 

オレは上空で、緑じみた黄金の長い髪をたなびかせる。

 

体から気が溢れる。高まる。

 

あの体より、伝説の超サイヤ人よりも凶悪になった俺の力。

 

早くこの力を存分に扱いたい。

 

そして奴に……平和に没頭し、この世界への復讐心を忘れ、戦いの世すらも忘れた"俺"を破壊する。

 

だが、まだだ。まだ時期では無い。

 

俺を存分に破壊するには、俺自身にもっと力を付けて貰わなければな。

 

その後にじっくりと痛ぶる。直ぐには殺さん。奴の仲間と、奴が大切にしている全てを破壊してから奴を殺す。

 

絶望に苦しみながらも、何も出来ない自分自身に絶望しながら死んで行く。こんな辛い事があるか?

 

いや、無い。

 

だからこそ、奴には極上の絶望を感じながら死んでもらおう。

 

ブロリーと言う破壊者は、オレ1人で十分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん……あ……?」

 

 

広大な魔法の森の中。

 

ブロリーはとある木製の民家の中で目を覚ました。洋風な作りのその家は、森の中でひっそりと佇んでいる。

 

窓際やサイドテーブル等には人形が数多く置いてあり、少し不気味な空間になっていた。

 

ブロリーが眠っていたと思われるテーブルの横にも人形が数体置いてある。まるでブロリーを見ている様だ。

 

 

「お目覚めかしら?」

 

 

背後から女性の声が聞こえた。その声に、ブロリーは聞き覚えがあった。

 

 

「ああ、知らない内に寝ていたのか…済まなかったな、アリス」

 

「気にしないで。私も久しぶりにゆっくり話が出来て良かったわ」

 

 

その者、『アリス・マーガトロイド』はブロリーと少し長い付き合いだ。

 

人形使いであるアリスは、人里と呼ばれる人間が住んでいる里の子供達に人形劇を披露しているアリスを、咲夜に頼まれて買い物をしていたブロリーが見つけ、子供と混じってその人形劇を楽しんでいた。

 

それを見ていたアリスが人形劇の後、ブロリーの存在を珍しがり、様々な事を話す様になった。

 

幸い、ブロリーとアリスは咲夜と言う存在を知っているが故、話に困る事はあまり無かった。

 

二人共咲夜には苦労させられたのだ。

 

 

「それで、もう行くの?」

 

「ああ、咲夜にこのナイフを届けなければならない」

 

「…まぁ、貴方の事だから咲夜に得物を届けるだけじゃあ無いんでしょ?」

 

「……いや……届けるだけだ………」

 

「……貴方って本当に嘘が下手よね」

 

「うるさい!もう俺は行くからな!」

 

 

なかなか話のペースを自分に持っていけないブロリーは、痺れを切らしアリス亭の扉を開ける。

 

アリスとブロリーの会話は毎度この様な感じで終を告げる。アリスの言葉にブロリーが折れ、アリスが勝ち誇る様にニヤッと笑みを浮かべる。これが2人の間では普通になっていた。

 

 

「世話になった。また何時か寄るかもしれないが、その時も頼む」

 

「分かってるわよ、紅茶とプリンを用意して待ってるわ」

 

「…悪いな」

 

 

そう呟き、ブロリーは魔法の森上空に飛び立つ。

 

その姿を、アリスはブロリーが雲の上に消えるまで見送った。

 

 

 

 

「恐らくあれだろうな」

 

 

ブロリーは雲海の上に大きく存在する空間の歪みを睨む。

 

アリスの情報によれば咲夜と魔理沙、そしてレミリアが言っていた霊夢と呼ばれる奴が雲の上に上がって行ったと言う。

 

その言葉からブロリーは雲の上に何かがあると推測した。

 

その推測は間違っていなかった様だ。

 

 

「行って見るか」

 

 

ブロリーはその歪みの中に間髪入れずに突入する。

 

歪みの中に入る。

 

瞬間ブロリーの視界から光が消え、闇が辺り一帯を支配する。それも気にせずにブロリーは闇の中を突き進む。

 

次に何が起きるか分からない。そんな状況の中で、ブロリーは周囲の警戒を怠らない。

 

だが、ブロリーの予想にも無かった現象が起こった。

 

 

「おう!?」

 

 

今までブロリーの腹側にあった地面が、知らない内にブロリーの背に来ていた。

 

何が起こったか訳が分からない。重力のある土が背後に密着していると言う事は、自分は仰向けに倒れている状態になっているのだろうとブロリーは寝転がった体制のまま考えた。

 

背後の地に手を付けてみる。どうやら地盤も問題なく、起き上がっても落ちたり壊れたりする事は無いようだ。

 

足元を確認しながらブロリーは起き上がる。

 

そして、ブロリーは目の前の光景に絶望した。

 

 

「なんだこれは……」

 

 

ブロリーの目の前には、何千段あるか分からないほどの長さの階段が真っ暗な上空に続いていた。

 

奥には大きなピンク色の花を咲かせた気が見える。

 

 

「登る気は無いが……飛ぶにしても距離がなぁ………」

 

 

あの木までの距離が相当長い。舞空術で飛行しながらあの場まで行くことも可能だが、それで行ってもそれなりに時間はかかるだろう。

 

木の下で爆発が起こる。どうやら既に戦闘が始まっている様だ。

 

 

「面倒だが、行くしか無いか……」

 

 

肩を落としながら、ブロリーは踏んでいた地を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって長距離階段の踊り場の部分。

 

そこで数々の斬撃やナイフが宙を舞い、撃ち落とされていた。

 

 

「しつこいっ……!!」

 

「まだまだ!」

 

 

斬撃を飛ばしている銀髪で黒いリボンを着けた少女と、その斬撃を躱している咲夜。

 

銀髪の少女が持つ1つの剣から放たれる斬撃。その数は本当に1本の剣で放ってるとは思えない程の数だ。

 

突きの斬撃、切り崩し、かち上げ、なぎ払い等などと様々な数の攻撃を多彩に使いこなしている。

 

その攻撃は先が読めなく、そこから繰り出されるスペルカードに咲夜は苦戦していた。

 

 

(このままだったら負ける…!なんとか相手の油断を誘わなければ……!)

 

 

この状況を打開せんがため、咲夜は残り少ししかないナイフを投げる。

 

スペルカードは残り1つ、『殺人ドール』だけだ。これを使い、もし避けられたらその時点で咲夜の敗北が決定する。

 

それに対して銀髪の剣士、《魂魄妖夢》はまだスペルカードに余裕を残している。この状態で戦い続けたら咲夜の体力が尽き、弾幕を食らうだろう。

 

それは咲夜も十分理解していた。

 

 

(私が持ってきたナイフは全部で30…28ものナイフが折られてしまったけど、まだチャンスはある!)

 

「気を抜かない事ですね!天上剣『天人の五衰』!」

 

 

妖夢がスペルカードを詠唱する。

 

すると、妖夢の持っている剣に光が集まっていった。更に咲夜と妖夢を囲むように弾幕が出現する。

 

これで咲夜の移動に制限が出来てしまった。さしずめ、弾幕の闘技場と行った所だろう。

 

そして、妖夢が剣を構え直す。

 

 

「行きますっ!」

 

 

妖夢がかける。そのスピードは先程より格段に上がっていた。

 

咲夜は妖夢がまだ力を残していた事に畏怖する。

 

 

「クッ…!」

 

 

妖夢の繰り出した横なぎの斬撃を咲夜は後方に大きく飛ぶことで躱す。

 

そして後部に存在する弾幕のギリギリで着地し、妖夢を更に警戒する。斬られた咲夜のメイド服の一部が妖夢と咲夜の間を舞った。

 

宙に舞った服の一部が咲夜と妖夢の視線の間に割って入る。そしてその服片が咲夜の視界から消えた時には、既に妖夢は咲夜の足元まで来ていた。

 

妖夢が右手に持った剣を振るう。

 

 

ギィィンン!!

 

 

その攻撃を咲夜は29本目のナイフを犠牲にする事で受け止める。辺りに甲高い鉄と鉄が擦れ合う音が響く。

 

咲夜のナイフと妖夢の剣との鍔迫り合い。

 

 

「そんな鉄ではっ!!」

 

 

妖夢が自身が持つ剣に更に力を込める。

 

瞬間、咲夜のナイフが綺麗な断面を作りながら2つに別れた。

 

自身の得物が破壊された咲夜は、時を止めながら距離を取る。

 

妖夢は目の前から消えた咲夜に一瞬だけ驚くも、素早い切り替えにより咲夜の位置をすぐさま特定する。

 

 

「なかなか面倒な能力ですね。ですが、これであなたの武器は無くなったはずです」

 

「……どうして、そう言い切れるのかしら?」

 

「あなたの動きに繊細さが増したからです。体にあんなにも多くの危険物を所持していては、あそこまで早く行動は出来なかったでしょうから」

 

「なるほどね……」

 

 

勝った、とこの時咲夜は確信した。

 

咲夜にはもう1本ナイフがある。今日持ってきたナイフは30本。さっき消費したナイフが29本目だ。

 

咲夜はこの最後のナイフに全てをかける。

 

狙うは妖夢が油断して接近して来る瞬間。

 

背後から来られても正面から堂々と来ても咲夜は対処出来る自身があった。

 

 

(これで勝負を決める!)

 

 

咲夜は最後の1本があると思わしき足に手を回す。

 

 

「これで終わりです!」

 

 

妖夢が叫ぶ。

 

先程よりも早い突進。恐らく突きの攻撃だろう。

 

咲夜のナイフの有効距離は約60cm。そこまで妖夢を引き寄せる。

 

そして、妖夢が咲夜から約2mの位置に到達した。

 

その瞬間、妖夢の姿が消えた。

 

 

「もらったぁぁ!!」

 

 

背後からの叫び声。

 

首を回し背後を見ると、そこには妖夢が鞘に入れた刀を抜刀しようとしていた。

 

居合切り。それは鞘からの抜刀の瞬間に敵に攻撃する事で、通常の斬りの数倍は早く横切りが放てると言う、昔侍がやっていた剣術の1つである。

 

スピードが増している斬撃。だが、その斬撃よりも早く咲夜が反応した。

 

 

(勝った!!)

 

 

咲夜が足のナイフを取り、妖夢の腹に突き刺した。

 

かに見えた。

 

 

(……あれ…?)

 

手にナイフの感覚がない。ナイフを仕舞っていた筈の足を見ると、そこにはナイフは一つも無かった。

 

 

(…忘れた……?)

 

 

あの時、フランが咲夜の部屋の戸を叩いた時だ。取ろうとしたナイフを、咲夜は取ることも無くフランを部屋に招き入れた。

 

あの時に忘れたのだ。

 

妖夢のナイフが咲夜の眼前に迫る。

 

 

(終わった…申し訳ありません、お嬢様……)

 

 

咲夜は、死を覚悟した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どいて貰おうか?」

 

 

聞き慣れたあの声が聞こえるまでは。

 




今回も短い。

でも次回は長くさせます!アイディアが浮かべばですが……


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俺が半霊?……違う、俺は悪魔だぁ!

悪魔だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

うわはははははははははははははははははははははははは!!


 

 

 

 

「退いて貰おうか?」

 

 

咲夜と妖夢の間で突如響いた声。

 

 

ドゴォォオ!!

 

 

その声が咲夜の耳に届いた瞬間、爆音と共に咲夜に斬りかかっていた妖夢が咲夜の視界から消える。

 

そしてその後に再度聞こえてくる轟音。その音は、妖夢が道端の桜の木に吹き飛んで発生した衝撃音だと咲夜は直ぐにわかった。

 

 

「どうした?」

 

 

咲夜が妖夢が飛んで行った場所を見ていると突如咲夜に声がかかった。

 

 

「ブロリーさん……?」

 

「ああ、ブロリーです…」

 

 

いつもの様な無表情のブロリー。いつも少し心配なその姿は、今の咲夜には頼もしく思えた。

 

だが1つ、咲夜には気になる事があった。

 

 

「それで、どうしてブロリーさんがここにいるんですか?」

 

 

ビクッと肩を震わせるブロリー。掃除をしろと言うレミリアの言いつけを破り、更には異変解決にこんな所までやってきているのだ。

 

咲夜の長時間説教攻撃がトラウマになりつつあるブロリーは、顔を少し引くつかせながら咲夜にはとある物を手渡した。

 

 

「それなんだがな…お前、コレを忘れていただろう」

 

「これは……私のナイフ?」

 

「お前の部屋を掃除しに行ったら見つけたのでな。態々届けに来たと言う訳だ」

 

 

ブロリーは念のため用意しておいた口実を使う。実際、咲夜にナイフを渡すために来たような物なのだ。間違ってはいないだろう。

 

このナイフは先程咲夜が使おうとしていたナイフで、咲夜の手持ちの30本目のナイフだ。29本のナイフを折られた今の咲夜には、このナイフしか武器は残されていない。

 

ブロリーが持ってきたこのナイフが、咲夜にとっては唯一の武器になった。

 

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

咲夜は素直に感謝の気持ちを述べる。

 

 

「は………?」

 

 

だが咲夜の反応を聞いたブロリーは、素っ頓狂な声を上げながら首を傾げた。

 

何をそんなに驚く事があるのだろうと咲夜も首を傾げる。

 

 

「いや、他に何か言う事は無いのか?」

 

「何かとは?」

 

「何で俺がこんな所にいるのかとか、掃除はどうしたとか…」

 

「ああ、その事ですか。安心して下さい。お嬢様も私もブロリーさんが異変に介入してくる事は大体予想してましたから」

 

「は?」

 

 

咲夜の答えに声が裏返るブロリー。その反応に愉快になった咲夜は、少し笑いながらブロリーに理由を話す。

 

 

「戦闘狂のブロリーさんの事だから黙って外に行く事は分かっていましたよ」

 

「……もしや、俺の行動は全てお見通しだったのか?」

 

「ええ。伊達に半年も一緒に過ごした訳では無いですよ」

 

「………はぁ」

 

 

全ての行動を把握されていた事、そして知っていながらレミリアに独りで謝った自分の滑稽な姿に、ブロリーはただ大きな溜息を出すしかなかった。

 

そんな稀に見るブロリーの落胆姿を見て咲夜は口を手で抑えてクスクスと笑う。だが、ハッと何かを思い出した咲夜は意識を吹き飛んだ妖夢の方に向ける。

 

だが、そこには妖夢はいなかった。

 

 

「はあぁぁ!!」

 

「うおぉあぁぁ!!」

 

 

瞬間、ブロリーと妖夢が激突した。

 

妖夢の剣がブロリーの腕に接触し、鉄と鉄がぶつかる様な音が響く。

 

 

「でりゃァ!」

 

 

ブロリーが腕を払う。それに合わせて妖夢は後方へと大きく飛び上がった。

 

 

「私の剣を腕で止めるとは……」

 

「そんな武器で、この俺を斬ることはできぬぅ!」

 

 

この間僅か2秒。ブロリーと妖夢の攻防が咲夜には見えなかった。

 

驚いている咲夜に構わず、ブロリーは気を高める。

 

 

さっきは油断しましたが、今度はそうは行きませんよ」

 

「フフフ、そう来なくちゃ面白くない!一騎打ちと行こうか!」

 

「良いでしょう。この白桜剣に、斬れぬ物など、あんまり無い!」

 

 

2人が更に激突する。

 

黒いブロリーの主な攻撃方法は手刀。対して妖夢の武器は白桜剣と言う日本刀。聞いただけでは妖夢が圧倒的に有利だが、サイヤ人に刃物の類は一切効かない。

 

ブロリーは自分の腕だけで妖夢の剣を受け止め、更にカウンターを喰らわせようと迫る。

 

 

「甘い!」

 

 

それを妖夢はバックステップで躱し、ブロリーに斬撃を飛ばす。

 

 

「フハハハハ!!」

 

 

ブロリーは斬撃すらも自らの体1つで受け止め、妖夢に向けて更なる突撃を敢行する。

 

妖夢とブロリーの距離は一気に縮まった。

 

 

「でぇや!!」

 

 

ブロリーが拳を振るう。

 

それを妖夢は剣で受け止め、受け流してダメージを喰らわない様にする。何度目かの激突。

 

それを妖夢が剣を薙ぎ払うと同時に後方に飛ぶ。その際に妖夢は常人では見えない速度でブロリーの顔面を数発斬りつけるが、それをブロリーは左手だけで受け止めた。

 

更に妖夢は上段から斬り掛かる。

 

重力と遠心力を味方につけた妖夢の突きの一撃は、ブロリーの左腕の皮を一枚傷つけた。

 

 

「……フハハッ!!」

 

 

その光景を見て、ブロリーは不敵に笑い、妖夢の剣を掴む。

 

そして妖夢を自分の後方に投げた。

 

 

「うわあ!!」

 

 

まさか真剣を掴んで投げられるとは思ってもいなかった妖夢は、驚きに声を上げながら吹き飛ばされた。

 

だがただやられている訳もなく、空中で体を捻り、妖夢は見事に地に着地し、ブロリーに体を向ける。

 

だが

 

 

「翠拳……」

 

 

既にブロリーは自らの右手を緑色に光らせ、妖夢の目の前にいた。

 

右手を妖夢の腹に当てる。

 

 

「イレイザーブロウ!!」

 

 

ブロリーの右手が爆発した。

 

 

 

ズドォォォオオオォオオンン!!

 

 

 

爆発音と共に妖夢は吹き飛び、桜の木に叩き付けられた。

 

その瞬間、妖夢は意識を手放した。

 

 

「ふん、俺を相手取るにはまだまだ未熟だったようだな」

 

 

捨てゼリフをはき、ブロリーは妖夢に背を向け、咲夜の元へと歩き出した。

 

 

(す……凄い………)

 

 

今までの光景にただただ咲夜は圧倒されていた。

 

ブロリーと妖夢が対峙し始めてからまだ2分しかたっていない。

 

動き回る妖夢を見ることはできた。だが、ブロリーの動きだけは見る事が出来なかった。最初の攻防から、最後の一手に至るまで全てを。

 

聞こえるのは風の切る音とブロリーの笑い声。見えるのは吹き飛ばされる妖夢と妖夢の斬撃。

 

妖夢は確かに強い。咲夜の時間停止能力を一発で見破り、即座に対処してきた位の実力者だ。にも関わらず、ブロリーには適わなかった。

 

ブロリーの硬さもあるのだろうが、その力強さと高速のスピードも、ブロリーを勝利に導いた要因だろう。まさに化け物と呼ぶにふさわしい動きだ。

 

そんなブロリーが、今爆発の黒煙を背に咲夜に向かって来ている。

 

 

(……恐ろしい)

 

 

この時、咲夜は初めて、ブロリーに恐怖を抱いた。

 

それと同時に安堵する。この男が味方で良かったと。この男が道を誤らなくて良かったと。

 

そんな事を思いながら、咲夜は静かに胸をなで下ろした。

 

 

「どうした?」

 

 

その姿が気になったのか、ブロリーが咲夜に訪ねる。

 

 

「……いいえ、何でもありませんよ」

 

「そうか。てっきり俺の強さに恐れ戦いたと思ったのだが…」

 

「間違ってはいませんね…」

 

「フフ、咲夜、俺は悪魔だぁ!」

 

「はいはい、分かりましたよ。別に強調しなくても最初から分かってます」

 

「そうなんだぁ……」

 

「それは良いとして、恐らくこの先に異変の首謀者がいると思われますが、どうします?」

 

「俺は異変を血祭りに上げるだけだぁ!!」

 

「異変を血祭りに上げるんですか?日本語として間違っている気がしますが……まぁいいでしょう。早く行きましょう」

 

「流石PADちょ……メイド長と褒めてやりたいところだぁ!」

 

「今なにか言いました?」

 

「ゑゑ!?な、何でも無いです……」

 

「そうですか?ならいいんですが……」

 

「はい……(助かった……)」

 

 

こうして、ブロリーと咲夜は何の緊張感も無く異変首謀者の場所へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆発音と共に地響きが伝わる。美しい桜の花弁がそれと当時にヒラヒラと舞い落ちる。

 

花吹雪の中で舞い踊る様に動く2つの赤と黒の人影。霊夢と魔理沙だ。2人は異変の首謀者からの攻撃を回避し続ける。

 

 

「ひらひら〜」

 

 

桜の花を纏った扇子を扇ぎ、周囲に色鮮やかな蝶を自在に操る女、名を『西行寺幽々子』。彼女がこの異変を起こした張本人であり、春を盗んだ首謀者である。

 

幽々子は自らの周りに蝶の形をした弾幕を回るように移動させ、霊夢と魔理沙の攻撃を許さない。自分の防御と合わせ、範囲を広げれば相手にも攻撃できる万能なスペルカードの様だ。

 

霊夢達が手間取るのにも無理は無い。

 

だが、それでも少しづつ霊夢と魔理沙は幽々子へと距離をつめ、スペルカードを放って行く。

 

 

「行くぜ!マスタースパーク!!」

 

 

魔理沙が小型のマスタースパークを連続で放つ。

 

魔理沙のマスタースパークを幽々子は左に旋回する事で躱す。

 

全てのマスタースパークを躱しきった幽々子は、再度自分の背後に弾幕を出現させ、魔理沙に向けて直線状の一発を放とうとした。

 

だが、

 

 

「霊符………」

 

 

幽々子の上空から霊夢の声がした。

 

瞬間、幽々子の周りに連なった呪符の様な物が飛び回り、幽々子を囲んだ。

 

上空の霊夢が、スペルカードを宣言した。

 

 

「夢想封印!」

 

 

霊夢から巨大な光が飛び出た。

 

 

「これは、無理ね」

 

 

諦めた様な笑みを、幽々子は浮かべた。

 

 

 

 

''甘いですよ''

 

 

 

一筋の光線が飛来した。

 

霊夢の放った弾幕が爆発する。

 

 

「全く、貴方達のせいで私達の計画が潰れてしまう所でしたよ」

 

 

霊夢の上から更に声が聞こえた。

 

その声の正体を探すべく、霊夢と魔理沙は上を向く。

 

 

「ですが快進撃もこれまでです。貴方達では、私の足元にも及びませんからねぇ」

 

 

ピンク色の肌。所々に見られる白い骨格の様な部分。

 

それだけで、既に人間とは呼べないものだ。

 

 

「私にも用事がありましてね。ここに来るであろうサイヤ人を捕まえなくてはなりませんから……」

 

 

その者が、ゆっくりと上空から飛来してくる。

 

腕を組み、仁王立ちで立つその姿は正しく。

 

 

「ここで消えて頂きましょう」

 

 

宇宙の帝王だった。

 

 




最近忙しくなってまいりました。
それに加えて寒いし……自転車通勤の私にとっては地獄になって来ましてもう……休みたいよぉぉ!!


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宇宙の帝王、勧誘します

申し上げます!血祭郷の最新話が現れましたァ!
はい、と言う事で久方ぶりの投稿です!待たれた方(いるか分からないけど)お待たせしました!今回も内容は薄いですが、何なりとご覧下さい。
では、続きです。


「誰だ、お前は?」

 

 

全身が白色の生き物、『フリーザ』へとブロリーが問いかけた。恐らくサイヤ人の中でも一番の世間知らず、ブロリーは自らの母星である惑星ベジータを破壊したフリーザの容姿を知らないのだ。

 

その問を聞いたフリーザ、勿論一時期は宇宙の帝王とまで呼ばれた存在の自分に対しての問とはとても思えない発言に青筋を浮かべた。

 

 

「ほほほ、イヤ人にもジョークを言える者が居るとは思えませんでしたよ」

 

「いや、本気で知らない。誰だおまえ?」

 

 

勿論、ブロリーの問は本気の問。フリーザも嘲笑う目的で言った言葉も、ブロリーは何とも思わず問い返す。

 

その答えが更にフリーザの心を燃やした。

 

 

「まさか、まさか本当にこの私を知らない者が居るとは……余程の世間知らずか、それともただの馬鹿なのか……」

 

「恐らく世間知らずで合っている。すまないが俺は周りのサイヤ人と育ちが違うもんでな。教えてもらえると助かる」

 

 

この反応と素の言葉に流石のフリーザも呆れて怒りも忘れてしまった。今までこんな無知なサイヤ人は見たことない。一体何故こんなにも無知なのかと、冷静になってしまったのだ。

 

 

「はあ、良いでしょう。流石の馬鹿猿でも名前位は耳にした事があるでしょう。私の名はフリーザ。宇宙の帝王ですよ!」

 

「フリーザ……フリーザだと!?」

 

 

その名を聞き、ハッとブロリーは自分が誰と対峙しているか理解した。目の前に居る敵は宇宙の帝王。惑星ベジータを指先の気弾で吹き飛ばせ、サイヤ人を絶滅の危機に追い込んだ人物その人なのだ。

 

驚いたブロリーの表情を見て、フリーザは不気味に微笑んだ。

 

 

「ブロリーさん、フリーザって誰なんですか?」

 

 

隣に居た咲夜がフリーザについて問う。とても自信家の様なので、フリーザに聞こえない様に呟いた。

 

 

「俺の故郷を破壊した、宇宙の帝王だ」

 

「宇宙の……帝王?」

 

 

"宇宙の帝王"

 

それは星達の集いし場所であり、無限に広がる大海原。帝王とは王の更に上に立つもの。つまり、宇宙を支配し、管理して来た人物と言う事だ。

 

レミリアは吸血鬼の女王であり夜の女王。だが、目の前の白いのはそんなもの鼻で笑える程の権力と力を有しているのだ。

 

常人には規模が違い過ぎてよく理解出来ないが。

 

フリーザは咲夜の事など全く気にせずに高く笑った。

 

 

「ホホホホホッ、ようやく私の恐ろしさを理解したようですね。ですが……」

 

 

フリーザがブロリーを見据える。

 

 

「あなた、随分と冷静ですね。仲間の死を悲しむ事も無いと?感情まで無知と言う事ですか?」

 

 

フリーザが嘲笑う様に言った。

 

そう、それは咲夜も不思議に思っていた事だ。

 

自分の故郷を破壊した張本人。そんな人物が目の前にいるにも関わらず、ブロリーが何時も以上に冷静に見えた。

 

 

「………」

 

 

ブロリーの顔が少し歪んだ。

 

両手をゆっくりと胸の上まで上げる。

 

フリーザが攻撃に備えて瞬時に体を動かせる体勢に入った。

 

その場に居たもの、霊夢や魔理沙や幽々子等の面々も、戦いを忘れブロリーの行動を見守った。

 

 

ブロリーがニヤリと笑う。そして、

 

 

大きく拍手をした。

 

 

 

 

 

暗い空間に響く乾いた拍手の音。その調べにブロリー以外の全員が唖然とした。

 

 

「良くやってくれた」

 

 

ブロリーから放たれた言葉は全ての者の予想からかけ離れていた。

 

その言葉は怨みや憎しみから来る罵声罵倒などではなく、適度な喜びと優越から来る賞賛の言葉だった。

 

勿論その言葉には何処にも怒気は含まれていない。それを分かりやすく現している表現が拍手である。

 

それが故に、周囲の人間も、フリーザでさえも困惑していた。

 

 

「あの、ブロリーさん。自分の故郷を破壊されたんですよね?怒りとかは無いんですか?」

 

 

その場の全ての者を代表するように、咲夜が恐る恐るとブロリーに問うた。

 

 

「怒りなんぞ全くと言っていいほど無いな。寧ろ憎たらしかった奴等を滅した事を褒めてやりたい所だ」

 

 

唖然。

 

更に機嫌が良くなったブロリーに反比例する様に周囲の空気は静かになって行った。

 

 

「ふふふ、なるほど。まさか同族を怨むサイヤ人がいるとは……滑稽ですよ」

 

 

今まで黙っていたフリーザが静かに笑う。ブロリーもそれに合わせる様に笑った。

 

 

「それでいて興味深い。実に面白いですよ。あなた、名前はあるのでしょう?仰ってご覧なさい」

 

「ブロリーだ。まさかカカロットに殺られた筈の宇宙の帝王がこんな所にいるとは思わなかったな」

 

「なに?」

 

 

瞬間、空気が割れた。

 

ブロリーの何気ない言葉、それはフリーザの怒りへのスイッチを押したからだ。

 

緩和しかけていた空気が、更に冷たく、黒くなって行く。ブロリーとフリーザ以外の者達は、言葉を発することが出来なかった。

 

ただの殺気。されどこの殺気は帝王の殺気。

 

これが宇宙を支配した者の実力なのだと、彼女らは身をもって知る事になった。

 

咲夜と魔理沙以外は。

 

 

(なんか、思っていたよりも恐ろしくないぜ)

 

(こんなもの、あの時のブロリーさんに比べれば蟻も同然ね……)

 

 

そう、2人の生存者はフリーザの半端は殺気では無く、ブロリーと言う真っ黒は殺意を体感したのだ。

 

 

逃さないと、彼(ブロリー)は目で語っていた。全て壊すと、彼は行動で示していた。

 

 

体で感じた絶望の味。心が発したこれまでに無い危険信号。ブロリーの時に感じたそれらは、今のフリーザよりも格段に濃かったのだ。

 

だがそれでも強者の威圧。フリーザの殺気はその場を凍りつかせるには十分な威力を誇っていた。

 

そんな空気を読みもしないブロリーは、フフッと笑みを作りながらフリーザに語る。

 

 

「そう怒るな。俺は別にお前を苛立たせる気で言った訳じゃない」

 

「ほう、ならばどんな理由でそんな憎たらしい名を上げたのですかねぇ?」

 

「お前が奴を憎む気持ちは十分に理解できる。俺だってそうだ。カカロット、ベジータ、全て破壊し尽くさなければ俺のこの滾りは治まらん」

 

「おや、貴方も奴に殺られたクチでしたか。殺るべき目標は同じと言う事ですかね?」

 

「そう言う事になるな」

 

 

咲夜達を置いてどんどんと先へ進んで行くブロリーとフリーザの会話。戸惑いも有りながらも、咲夜達は話に食いつこうと耳を傾ける。

 

 

「そこでだ。同じカカロットを憎む者として、お前に話がある。いや、交渉と言うべきか」

 

「ほう、サイヤ人との公平な交渉とは尺な物ですが、一応話だけは聞いておきましょうか」

 

「俺と手を組まないか?」

 

「ほう………」

 

 

手を組む。つまり、ブロリーとフリーザが共に戦うと言う事だ。だが、フリーザがサイヤ人であるブロリーと同盟を組むなど有り得ないだろう。

 

サイヤ人の母星ごとサイヤ人を滅ぼそうとした人物、それに加えて生き残ったサイヤ人に殺されたフリーザを、サイヤ人であるブロリーに仲間になる訳がなかった。

 

だが、それを分かっていないブロリーでは無かった。

 

 

「一言で言おう。今の俺ではカカロットには勝てん。そしてフリーザ、お前もだ」

 

「…………」

 

「だがカカロット1人にそれほど力は無い。問題はその周り、仲間と言う存在だ」

 

「仲間……ですか?」

 

「そうだ。奴は必ず仲間に何かしらの影響を受けて力を得ていた。俺は仲間と言う物がどんな物なのか知らない。だから、それはこれからは見つけて行かなければならない。その為に、フリーザ。お前の力を借りたいのだ」

 

 

顎に手を当て、フリーザはブロリーを睨む。

 

数秒、静寂の時が流れた。

 

 

「良いでしょう。あの憎きサイヤ人を殺すためなら、ブロリーさん、貴方と手を組むとしましょうか」

 

 

静寂を破ったその言葉。だがそれだけでは終わらず、フリーザはもう一言、言葉を継ぎ足した。

 

右手の人差し指を上げる。

 

 

「但し、貴方が私に勝てたら、対等な関係を約束しましょう」

 

「ほう……良いだろう」

 

「もし私に負けたら、私の配下として働いて頂きますよ」

 

「ああ、負けないから安心しろ」

 

「そうですか」

 

 

フリーザがニヤリと笑みを作ると同時に、ブロリーも笑みを浮かべた。

 

 

「例えあなたがスーパーサイヤ人になったとしても、私に勝てる見込みはありませんよ」

 

「どうかな?やって見なくては分からん」

 

「……全く、奴といい貴方と言い、サイヤ人は腹の立つ猿ですねぇ……ですが、貴方は何か違う気配を感じますよ。私と似たような気配をね」

 

「奇遇だな。俺も無駄に話が長いお前にイライラしていた所だが、妙に俺と似たような気配を感じていた所だ」

 

 

ゆっくりと、紫色の炎と緑色の炎が揺らぐ。

 

微風が巻き起こり、大木に咲く桜を散らす。

 

地面に薄く張った水鏡が、2人の姿を映した。

 

薄暗い、白い雲と星が疎らに見える空のした。桜と水鏡が栄えるその地で、2人の"悪"が対峙した。

 

 

 

 

ドゴオォォォォォンン!!

 

 

 

 

 

水が大きな波紋を作った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これなかなか美味しいわね」

 

「ね?妖夢の作るお菓子は格別よね〜」

 

「幽々子様、何か色々とおかしい気がするんですけど?」

 

「いいのよ。フリーザさんも、私達の介入は望まないでしょうしね。そう言う人って事は妖夢も分かっているでしょ?」

 

「まぁ分かってますけど……」

 

「よく分かんないけど、山を軽々と吹っ飛ばす連中は方って置いて、私達は屋敷の中でお茶菓子食べてましょ」

 

 

ボリボリと煎餅を食す霊夢であった。




とあるアプリでブロリーと入力したら関連のエリアに『血祭りに上げてやる』『一人用のPODでかぁ?』と言う単語が出てきて久しぶりに腹を抱えて笑いました。バカミテェ……


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オチとは

戦闘だけだからね。文字数少なくても仕方ないね(白目)


ブロリーss

 

 

 

 

俺は、この世界に送られた意味が分からない。今も、恐らくこれから長い間そうなのだろう。

 

神とやらのイタズラか、それとも破壊の限りを尽くした俺への戒めなのか。破壊の無い世界は俺にとって苦痛にも等しいものだ。

 

一体誰が俺をこの世界に送ったのだろうか。ソイツが何故この俺をこんな平和の象徴の様な世界に送ったのか、全て謎のまま。

 

俺がフリーザを倒す事は、神とやらに許される事なのだろうか。

 

俺がフリーザと共にカカロットを倒す事は、神とやらが求めた行為なのだろうか。

 

 

いや、神なぞに俺の自由を縛られてたまるか。

 

俺に無かった自由を、俺はここで手に入れる。神とやらがどんな奴か知らんが、姿も見せん臆病野郎に俺の運命を決めらるものか。

 

俺は運命を変えてやる。

 

俺は力を手に入れる。

 

その為に、フリーザを"仲間"にする。

 

 

この戦いに勝つ!

 

 

 

力を、仲間とやらの力を!カカロットにも勝る、仲間の力を!!

 

 

 

 

運命を変えるぞ、レミリア!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でえりゃぁ!!」

 

 

巨大な拳がフリーザの顔面を捉える。だが秒速を超えるその拳は目標に当たる事の無く宙を切った。

 

 

「はあぁ!!」

 

 

更にブロリーが追撃を加えて行く。全ての拳をフリーザの顔面に向けて放つ。

 

だがしかし、フリーザ手を後ろで組みながら余裕の表情で交わしていく。一秒15発と言うスピードの攻撃を、フリーザは全て首を軽く傾げるだけで躱す。

 

 

 

ズドンッ!!

 

 

 

鈍い音が空間に響き、ブロリーが後方へと吹き飛んだ。空中にいたブロリーは一瞬で地面に叩き付けられ、土煙を上げる。

 

 

「おやおや、見た目通りの筋力馬鹿の様ですね。腹へのカウンターすら見抜けないで、私に勝とうなど片腹痛いですよ」

 

 

余裕の表情を崩さず、フリーザはブロリーを煽り続ける。噴煙の中に居るはずのブロリーは、その煽りに何の反応も示さない。

 

その様子に、フリーザはブロリーの行動に気が付いた。

 

 

 

ポーヒー!!

 

 

 

気弾を放つ音と共に、フリーザの真横を何かが通過した。

 

 

「後ろか!」

 

 

フリーザが振り返る。フリーザはこの様な土煙が敵を覆い隠す時、敵は背後に現れると言う事を悟空の戦闘で分かっていた。

 

だが、そこに居たのはブロリーではなく、緑色の気弾だった。

 

 

「チィッ!」

 

 

気弾を弾く。それに続く様に数多くの気弾がフリーザへと向かった。

 

 

「この程度の攻撃で!」

 

 

1発や2発の気弾ならどうという事はないが、ブロリーの様なパワータイプのサイヤ人の場合何発も喰らったら只では済まない。だが自分のプライドが許さないのか、フリーザは躱そうともせずに全ての気弾を弾き、爆発していく。

 

嵐に飲まれ、舞い踊る木の葉の如く飛んでくるブロリーの気弾。それらをとにかく捌き、破壊していく。一つ一つの気弾がフリーザの視界を埋る。

 

フリーザが幾つかの気弾を弾く。終わりの無く続くように見えた攻防。その中でこの攻撃の意味をフリーザは考える。

 

 

(恐らく目的は私の体力を奪うこと。猿にしてはなかなか考えましたが、私には無駄ですよ!)

 

 

フリーザの速度が増す。捌くスピードに拍車がかかり、周囲に気弾を撒き散らす。フリーザは改めてこの攻防の為に体制を整えた。

 

しかし

 

 

「ハアァ!!」

 

「なに!?」

 

 

一つの気弾を弾いた瞬間、目の前に現れたのは拳を振り上げたブロリーだった。

 

ズガンッと強烈な音を立ててフリーザの顔面にブロリーの拳がめり込み、何100キロと言う速度でフリーザを後方へと吹き飛ばし、石畳の地面に大きな穴を開けた。

 

 

「ふははははは!!」

 

 

高笑いし、フリーザが落ちた所にトラップシューターで追撃していく。されるがままのその光景が滑稽で、ブロリーは大きく笑った。

 

だが、直ぐにその声は止むことになる。

 

巻き上がる噴煙の中で、無傷のフリーザがブロリーを見上げ、笑っていたからだ。

 

 

「・・・あのサイヤ人以来だよ。私を、見上げさせた奴は!」

 

 

頬を釣り上げていた笑みは少しずつ憤怒に口を曲げ、ブロリーへと飛びかかる。

 

繰り出される幾重にも折り重なった攻撃は、ブロリーの顔面や胸の傷等の急所を正確に狙っている。

 

だが、所詮は数で戦う物量戦。1発1発のダメージは弱く、通常状態のブロリーでも耐えられる威力だった。だがそれでも数打たれればそれ相応のダメージを食らう。この攻撃を早く終わらせてやろうと、ブロリーは右手に力を込め、その強大な力をもってフリーザの顔面へと拳を振るう。

 

だが、それを待っていたと言わんばかりにフリーザは大きく体を捻り、ブロリーの背後へと回り込む。余りのスピードに、ブロリーは反応することすら出来なかった。それ程までに速い動きだったのだ。

 

フリーザはニヤリと笑う。

 

瞬間、ブロリーの大きな背中に両手のひらを押し当て、己の気を両手に集中させ、一気に解き放つ。

 

 

「ぐぅ!?」

 

 

背後に回られた事にすら気付いていないブロリーが背後からの衝撃に対応出来る訳が無かった。

 

空中にいたブロリーはブロリー自身が認知出来ないスピードで地へと落ち、爆音と共に土煙を巻き上げる。

 

 

「おやおや、立場が逆転してしまいましたねぇ」

 

 

更にフリーザは笑い、土煙に向かって1発の気弾を放つ。

 

気弾は吸い込まれるようにブロリーが落下した場所に向かい、着弾。それによって起きた大爆発による爆風は、美しい桜吹雪を生み出した。

 

勝った。そう確信するのに、時間はかからなかった。

 

今そこに居るであろうブロリーだったものは、既に無駄口が叩けない程に粉みじんになっているだろう。

 

あのベジータよりは頑張ったが、それまでの話。所詮猿は猿。どこまで減らず口を叩こうが、この宇宙最強のフリーザに勝てるわけが無かった。

 

勝利に更に酔いしれようと、フリーザは砕け散ったブロリーを探す。

 

だが、何処にもそれらしき肉片はない。あるのは降り注いだ桜の花びらが数多く。そう、それだけだったのだ。

 

それもその筈である。

 

なんせブロリーは

 

 

 

《ギガンティックイレイザー!》

 

 

 

フリーザの背後から、既に特大の気弾を打ち出していたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如聞こえた声は、フリーザの脳を刺激した。

 

後方、まさに背中の後ろからの声は、何故かフリーザの心をも震わせた。

 

瞬間、ブロリーへと目を向ける。

 

そこにいたのはブロリーではなく、特大の禍々しい光だった。

 

 

例えようのない音がフリーザを襲う。

 

 

ブロリーが放った気弾はフリーザを飲み込み、何者にも染まらぬように思えた白を、緑色に塗り替えていく。

 

 

 

 

 

 

有り得ない。と、フリーザは思考した。

 

 

 

たった1人のサイヤ人に、それも何でもない只のサイヤ人に。

 

 

 

伝説の超サイヤ人でもない者に、自分は押されている。

 

 

 

そんな理解しようもない現実が、フリーザを襲っていた。

 

 

 

だが、その思考は緑の無効に見えた一つの光によって全てかき消される。

 

 

伝説の超サイヤ人は1人だけ。その筈なのだ。

 

 

 

なのに、目の前に見えるあの忌々しい炎の光は、間違いなく。

 

 

 

あのサイヤ人と同じ、黄金の光だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デデーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てを終わりに繋げる終焉の鐘がなった。

 

 

オチとは、正にこの事である。



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▷ブロリー は 仲間を 手に入れた !

ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!(若本風)

正邪とブロリーのカップリングが先を越されたぁ!しかも出来が良いと来てんだもんなあ!まあでも○○リーじゃなかっただけ幸いか……。
そんな事より、最新話出来ました!愚痴から始まって、ごめんY(ハァ☆


 

 

 

「ブロリーさん!何をしてるのです、早く!捕まえなさい!!」

 

「ぐぅぅぬぅぅ!!」

 

「何時までやってるのですか!間に合わなくなっても知りませんよ!」

 

「ならお前も手伝え!!」

 

 

魔法の森、その深く。2つの白と赤が河原で騒いでいた。

 

赤、ブロリーは大きな水しぶきを上げながら川に手を突っ込み、高速ですくい上げを繰り返す。

 

 

「全然捕れぬぅ!」

 

「気を探るんですよ。全く・・・これだから脳筋は・・・」

 

「お前デスビームで無理やり殺して捕まえただけだろ!」

 

「頭を使っただけじゃないですか!私は貴方とは違って頭がいいんですよ。それも宇宙一ね!」

 

「本能で動く事の何が悪い!頭で考えても分からない事があるだろ!」

 

 

もう1人の白い方、フリーザが大きな棒に突き刺した多数の川魚を担ぎながらブロリーに大声を上げる。

 

それに対して1歩も引こうとしないブロリー。このままでは話は平行線へと移行し、川と周囲の木々が蒸発すると言う結末が待っているだろう。

 

そんな2人の為に有難い制裁が下る。

 

 

「ごちゃごちゃ言っていると晩御飯抜きですよ?」

 

 

 

脇で見ていた咲夜が2人に言い放つ。その言葉に2人はビクッと肩を震わせ、静かに魚取りを再開する。昼飯を取っていなかった2人にとっては、咲夜の言葉は死刑宣告に近い力を持っていた。

 

終始最終形態のフリーザが水面に現れる魚の光を睨み、指先から紫のデスビームを放つ。抵抗する間もなく脳天を貫かれた魚がゆっくりと水面に浮上し、川の一部を短時間だけ赤く染め、流れと共に消えていく。それを小さく笑みを作りながら見つめた後、水面に上がった魚を手を使わずに持ち上げる。浮き上がった魚が『ふりーざ』と書かれた籠にボトっと落ちた。

 

 

「うおおおおおおお!!」

 

 

一方、ブロリーは雄叫びを上げながら見える獲物を全てに拳を御見舞していた。頭が弾け飛ぶ魚や体の一部が吹っ飛ぶ魚等が『ぶろりー』と書かれた籠にベチャっと落ちる。ブロリーに近づく魚と川の水はことごとく消え去り、ゴツゴツとした川のそこが見える。魚の状態を考えず、力技で兎に角捕まえると言う荒技にでたブロリーは籠にどんどんと魚をためていった。食べられなくなった魚も同様である。

 

2名は兎に角急いで魚を捕まえまくる。あのフリーザすらも急がせるには、相応の理由があった。

 

 

「早くしなさいブロリーさん!夕食に間に合わなくなりますよ!」

 

「分かってる!!」

 

 

そう、飯のためである。

 

とある女に地獄から幻想郷へと連れてこられたフリーザの唯一の楽しみは食事であった。

 

特に幻想入り初日に食べた鍋は絶品だったと言う。それからと言うもの、過酷な修行をしながらもフリーザは幻想郷の生活になれていった。妖夢が作る飯を楽しみにしながら。

 

 

「ブロリーさん、本当に紅魔館の夕食と言うのは美味しいのでしょうね?」

 

「少なくとも俺が今まで食べた物の何よりも美味かった。特にプリンが絶品だったな」

 

「なるほど、ならばこの作業を早急に終わらせる必要がありますね・・・!」

 

「その通りだ。とっとと終わらせるぞ!」

 

 

こうして2人は夕食の材料を籠いっぱいに詰めて紅魔館へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブロリーとフリーザ、そして咲夜が紅魔館に付いたのは午後5時の事だった。

 

紅魔館の中に入った瞬間に2人を数人の妖精メイドが取り囲み、籠を下ろす手伝いをする。腰布がびしょびしょになったブロリーに新しい腰布を運んで来て、タオルと共にブロリーに渡す。

 

フリーザは全裸のような物なので籠を下ろす事以外は殆ど何もしてなかった。

 

フリーザはプライドが高く、自分が至高と思っている。今回ブロリーの仲間として居るのも、ブロリーを超える為である。それと紅魔館の食事に興味を持ったからでもある。

 

 

「食事は1時間後を予定しております。それまでどうぞご自由にお過ごし下さい」

 

 

丁寧な口調で1人のメイドがフリーザに話す。これはフリーザと同時にブロリーに聞こえるように放たれた言葉であり、ブロリーも1時間後に飯が食えると心得た。

 

 

「1時間後ですか。ふむ・・・この館には何か娯楽設備は無いんですか?」

 

「体育館のような運動場もありますし、図書館もございます。詳しくはブロリーさんが一番よく知っているかと」

 

「では、ブロリーさんに案内をお願いしましょうかね」

 

「眠いです・・・」

 

「アホ抜かしていると貴方の分の食事も私がいただきますよ?」

 

「貴様ッ・・・・・・よかろう、付いてこい」

 

 

渋々了承したブロリーがフリーザを連れて館を歩く。そんなブロリーにフリーザは満足そうに笑顔を作った。

 

手を後ろに組んで、フリーザはブロリーの後ろを付いて歩く。少し経つと広い階段にを下り、大きな扉をブロリーは開ける。

 

扉を開けるとそこはとても巨大な空間と、それを埋め尽くす本の数々だった。

 

 

「パチュリー!いるかぁ?」

 

 

ブロリーが大きな声を上げ、パチュリーノーレッジを呼ぶ。こうでもしないと魔理沙と間違われ、奇襲を食らうからである。

 

待つこと数秒、巨大な本棚の隙間からひょっこりと紫の帽子が現れた。

 

 

「いるから大きな声を上げないで。頭が痛くなるから」

 

 

頭を押さえながらパチュリーが本棚から顔を出す。パチュリーの顔は青ざめ、血が足りていない様に思えた。

 

尚、パチュリーをこうしたのはブロリーである事を、ブロリー本人は記憶から抹消していた。

 

 

「そんな事よりパチュリー、この幻想郷に付いて書いてある書物か何か無いのか?」

 

「幻想郷について?それならB26区画の本棚に沢山あるわよ」

 

「ああ、了解した」

 

 

パチュリーの言葉を聞いてブロリーは入口から見て左方向に歩き出す。

 

この図書館には余りにも本がある事から本の種類を区画分けしていた。図書館の区画は全部でX50まであり、その1つの区画だけでも数え切れない程の本が揃えられている。1区画の本棚の数は150。1つの本棚にも1万を超えるのでは無いかと言うほどの数の本が所狭しと挟まっている事から、フリーザは文字を読む意欲が消え去って行った。

 

 

「それじゃあ、俺は用事があるから行く」

 

 

そんなフリーザを放って、ブロリーは図書館から出ていった。

 

 

「・・・面白くありませんねえ」

 

 

ボソッと独り呟き、フリーザは20mはあろうかと言う本棚の中から適当な本を1冊選び、表紙を開く。『異変万様冊』と書かれた良く分からない本を、フリーザは興味深そうにペラペラとめくった。

 

 

 

 

 

〜1時間後〜

 

 

 

「なるほど、肉は豚より牛の方が香りが言い訳ですか……」

 

 

空中で胡坐をかく形で本を読んでいたフリーザに、1人のメイドがやってきた。

 

 

「フリーザ様、お食事の用意が出来ました」

 

「む?もうそんな時間ですか。時間という物は早く感じるものですね」

 

 

フリーザはパタンと読んでいた本を閉じる。既にフリーザの横には本によってビルが建築されており、どれほど本に意識が行っていたかが伺える。フリーザは特に熱中し出したら止められない様で、時間が経つのが速く感じた様だ。

 

 

「こちらへ」

 

 

妖精メイドが小さく礼をし、食堂へと案内する。フリーザは背中に手を回し、その背中を追った。既にパチュリーと小悪魔は食堂に向かったらしく、パチュリーがいつも居る椅子にはその姿が無かった。

 

廊下を歩いていると妖精達が慌ただしく動き回り、一つの扉に出たり入ったりしている部屋があった。部屋に入るメイドは手に何も持っていなく、出てくるメイドは両手に余るほどの量の皿を抱えて出てくる。

 

あの部屋が食堂なのだろうとフリーザは予想した。そして、この騒動を引き起こしている人間も、フリーザは簡単に想像した。

 

扉を開ける。

 

 

「お、来たかフリーザ」

 

 

そこに居たのは様々な食べ物を手づかみで口に運び、口を汚しながら更に食べる。大量に料理が盛ってあった皿は瞬く間に空の皿に積み上げられ、その皿がメイド達によって運ばれて行く。そして次のメイドが来る頃には、既に皿のタワーは元取りになる。

 

この姿を見て、サイヤ人の暴食具合を知っているフリーザは呆れ果てたが、ここで1つの発見があった。

 

 

「ブロちゃん!それちょうだい!」

 

「んぐんぐ……かっへ、にもっへへ(勝手に持ってけ)」

 

「やったー!」

 

 

ブロリーの元にあった肉に手を伸ばし、ガツガツと食す。それが終わったら更に別の肉を食す。ブロリーに負けず劣らずの食欲を見せているのは、フランドール・スカーレットだった。

 

少食だった彼女だが、いつからかブロリーと早食い競争をしたり、ブロリーから料理を奪ったりしていた為、早食いが日常になっていたのだ。

 

食べる数は変わってない。だが、その勢いは昔のフランと比にならない程である。

 

食べる。食べる。兎に角食べる。

 

料理作りに約30分。消えるのに約2秒。合わない……余りにも割に合わない。

 

必死に努力の亡骸を運ぶメイド達、それを嘲笑うかのように亡骸は増えていき、その亡骸をメイド達が運ぶ。

 

繰り返し、繰り返し、繰り返す。

 

その余りにも残酷な光景に、フリーザは頭痛に顔を顰めた。

 

 

「全くサイヤ人と言うのは……質量の法則と言う概念が無いようですね」

 

 

既にブロリーとフリーザがとってきた魚は底を尽きた。これでもブロリーが食事をし出したのはほんの5分前なのだから驚きである。

 

 

「あの人の隣で食事だけはしたくないものですが……」

 

 

フリーザがいつの間にか隣にいたメイド長に聞こえる様に呟く。

 

その声に、メイド長の咲夜はクスッと笑いながら答えた。

 

 

「慣れると面白いものですよ?ブロリーさんも一生懸命にフリーザ様の料理を作ってたのですから」

 

「ブロリーさんが料理を?それも私に?殺す気ですか?」

 

「味は私が見ましたから大丈夫です。それに、もしお口に合わないとしても私達の料理も用意してます」

 

「そうですか……なら、頂くとしますかね」

 

 

フランを怒鳴りつけているレミリア、1人黙々と食べているパチュリー、そのパチュリーの皿を片付ける小悪魔、ブロリーとフランには及ばないが、ガツガツと料理を食らっている美鈴。それらの間にフリーザが座り、運ばれる料理を食う。

 

 

「これはなかなか美味しいですね」

 

 

素っ気なく言うフリーザだが、心の中ではとても驚いていた。

 

白玉楼で食べた料理も美味かったが、ここの料理はまた違った味でとても美味い。和食と洋食の差だろうが、寂れた星ばかりを行き来していたフリーザには珍しい食べ物ばかりだったのだ。

 

白玉楼で箸の使い方を習ったので、箸を器用に使ってゆっくりと食事をする。

 

しかし

 

 

「俺のプリンだぁ!!」

 

「私のーッ!」

 

 

目の前でプリンの奪い合いがおこり、辺りがまた一段と騒がしくなる。

 

 

「何をしてるのですか御二方、喧嘩をする様ならそのデザートだけ置いて食堂から消え失せなさい!」

 

「「お前も食べるのか!?」」

 

 

フランとブロリーの声が合わさり、フリーザにぶつかる。

 

その光景が新鮮で妙に面白くて、レミリアが小さく笑ったのは、別の話になるのでは無いだろうか。




オチェ……


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番外編 もしもシリーズのブロリー達が幻想入り

章の合間という事と気分転換に書いてみました。正直、書いてて楽しかったです(笑)


小ネタ集

 

 

 

 

1.『ならばこっちも増やしてやろう!』

 

 

 

「フハハハハハハ!!」

 

「あはははははははは!!」

 

 

何度目かの火花が室内で弾けた。同時に動き回る二つの影。ブロリーとフランドールである。

 

 

「うりゃあぁ!」

 

 

ぶんっと腕を振るい、つきまとう様にぐるぐるとブロリーの周りを回るフランを振り払う。その腕を上へと上昇する事で躱したフランは、ブロリーを見下ろす形で静止する。

 

ブロリーもフランを見上げるように立っていた。

 

 

「ふふふ、少し弱くなったんじゃいの?」

 

「少し強くなったようだが、その程度のパワーでいきがれると思っていたのか?」

 

 

口元を釣り上げて2人が笑う。ブロリーは既に超サイヤ人形態であるが、この数十分に渡り決着を付けられずにいた。間違いなく、フランの実力が上がってきている。

 

 

「そろそろ決着をつけさせてもらうよ!禁忌『フォーオブアカインド!』」

 

 

スペルカードを取り出したフランは高らかに叫んだ。瞬間、フランが4人に増える。

 

 

「「「「さあ、私達を倒せるかな?」」」」

 

 

声を揃えて、ブロリーに向けて言い放つ。ビシッと指を指すところあたり、とても自信たっぷりの様だ。

 

この状態のままのブロリーだったら、間違いなく負ける。だが、そう簡単にやられるほどブロリーは甘くはない。

 

 

「お前の技、盗ませて貰ったぞ!ブ符『フォーブロアカインド!』」

 

 

ブロリーの周囲が光を放つ。その光に、フランはついつい目を細めてしまった。それが故に、何が起こったか分からなかった。

 

それが故に、理解ができなかった。

 

 

彼女の目の前に、ドロドロの人型を模した泥の塊の様な物が4体並んでいる事を。

 

 

「はい、どろりーです…」

 

 

ドロが名乗った。

 

 

「ぶ、ブロちゃん……?」

 

 

4人のフランのうちの誰かが、代表して声を上げた。

 

分身した者はバイオブロリーと呼ばれた映画3作目に出てくるブロリーっぽい者で、どういう訳かブロリーがちょっと意識したら召喚出来るようになってしまった者達である。

 

 

「「「ヴァァァァァァァ……」」」

 

 

3体が鳴き声を上げる。いや、本体以外が喋れないんじゃ直ぐに本体を特定されちゃうじゃん……と言う言葉を飲み込んだフランは、戦慄した。

 

なんせ今まで見てきたブロリーが原型もなくどろどろに溶けてしまっているのだ。正直泣きたかったが、意思疎通が出来るところを見るとブロリーは何かしらの対策は持っているようだ。

 

 

「あ、これは後で洗えば元に戻るから気にしなくていいYO☆」

 

 

なんとも気さくな返事が帰ってきた。

 

ならいっか、とフランは割り切る。本人が言っているなら大丈夫だろうと思った故の行動だが、ブロリーにも確証が持てていない答えをフランに言ったとは、フラン自身も気付かなかった。

 

 

「「「「それじゃあ、始めましょうか!」」」」

 

「さあ来い!ここがお前のドロ塗れの場所だァ!」

 

「ヴァァァァァ!!」

 

 

この後、泥をぶん投げてくるなどの嫌味全開な攻撃を食らったフランは激昂しドロリーの3体を破壊。それを見ていたブロリーが激昂してフラン3体を破壊。その勢いは止まらず、ブロリーとフランの全力の一撃が重なり合い、紅魔館が地下ごと大爆発を起こした事は、恐らく今話す話ではないだろう。

 

その結果を見ていたレミリアがコメントを残している。

 

 

「フランとブロリーこそ悪魔その物だった。生まれついての桁外れの強さは、一番歳上の私が恐怖を感じるほど、増大し凶暴化していき、紅魔館を破壊して行った……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.『パラガスの受難』

 

 

 

 

 

 

 

 

パラガスでございます。息子と共に幻想郷にやってきて3週間、ついに俺達は、宇宙の中で一番環境が整った美しい星の大人のお姉ぇさん☆と絡みあ〜う(^pメ)事が出来ると言う訳だァ!腐☆腐

 

だが、肝心のブロリーがロリーの所に行ってしまって何処にもおらん!このままでは、ブロリーのイケメンパワーのおこぼれを貰おうとしていた俺の計画も、何もかもおしまいだぁ……。

 

なんとしてでもブロリーを連れてこなければ、私の計画は破壊し尽くされてしまう!そうなる前にブロリーを連れてくる準備だぁ!

 

 

「おや、パラガスさん、何処に行くのだ?」

 

「うん?」

 

 

おや?この声は、まさか……けーね先生だと言うのか?もしそうだとしたら……腐☆腐、いいぞぉ!最早ブロリーなぞ連れてくる必要は無い!けーね先生は既に俺にメロメロと言う訳だぁ!今の俺の強大で極悪な息子♂の手で、けーね先生を私色に作り上げるのです!

 

 

「腐☆腐、けーね先生は私に興味があるのかな?」

 

「いや、ただあまりにも不審なナリだから災いでも持ち込もうとしているんじゃないのかな、とな」

 

「ふぁ〜は〜は〜はぁ〜はぁ〜(泣)」

 

 

撃沈でございました(過去形)

 

 

 

 

 

 

『サイヤ人の憂鬱』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイヤ人の集会場と化した博麗神社。そこには幻想郷にやって来たサイヤ人達がワラワラと集まって話し合いをしていた。

 

 

「はい……今日は奴隷夢と魔理沙が異変解決してきたから宴会やるYO☆」

 

「そういやオラ腹減っちまったぁ。ハハハハ!」

 

「腐☆腐、いいぞぉ!今日の夕食は私の息☆子でもいかがかな?」

 

「そんな物誰が食うか!それより、さっさと夕食の材料を買いに出かける!あとに続け!」

 

「闇雲に食材を探すのは危険です!もっと調理方法を調べて」

 

「砂漠と化していく宴会の飯のど真ん中に、空っぽの皿を積み立ててやる。同じサイヤ人からのせめてもの贈り物だ」

 

「ハァ☆」

 

「宴会の食事を直ちに胃袋へと抹殺しろ!」

 

「ゑゑ!?お待ち下さい!まだサイヤ人分の食料があると決まったわけではありませんぞ!」

 

「はい、ゆかリーに頼めばすむと思っていたのか?」

 

「ダニィ!?」

 

 

食料を買いに出かけようとしていた王子が戻ってくる。サイヤ人の食欲は未だに底が知れない。故に数多くの食料を確保する必要があるのだが、その為にはそれ相応の食費が必要である。この中の大半はニートなサイヤ人達は、そこまで資金を所持していなかった。

 

 

「もうだめだぁ……おしまいだぁ……」

 

「ベジータの奴またきもちわりぃ顔になったなぁ」

 

「だが、心配する事はない。既に対策は打ってあるのだからなぁ!」

 

「ダニィ!?それを早く言えぇぇ!!」

 

「何も食えないだなどと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ」

 

 

罵声に苛付き、ベジータがパラガスを殴り障子の向こうへと吹き飛ばす。その直後、縁側からゴトッと何かを置く音と、何かをセットする音が聞こえた。

 

 

「よ〜し……」

 

 

後を追うように聞こえてきた声。その声は全員が聞いたことのある人物の声だった。

 

 

 

デ〜ン ポコピー♪

 

 

直後流れるお決まりのBGM。その音楽が終盤に差し掛かると、障子がぶち破られ、外の景色が部屋から望める様になった。

 

その景色の中央、一本背の高い松の木のてっぺんに、白いマントがヒラヒラと揺れ、彼が姿を現した。

 

 

「また1匹虫けらが死にに来たか?」

 

「ふん、化け物め。好きに言っているがいい」

 

 

クソマァ!とブロリーの蹴りによって綺麗に吹き飛ばされるその緑の者、ピッコロ。華麗に登場した彼はカセットテープと共に上空へと舞い上がり、博麗神社の屋根にびたんと落下し、ゴロゴロと落ちて来た。

 

 

「くっ……仙豆を舐めるなよ!」

 

 

緑の仙豆を噛んで瞬時に回復するピッコロ。そんなピッコロを見て舌打ちをかましたブロリーは、機嫌悪そうに言葉を放った。

 

 

「それで、何しに来たんだぁ?」

 

「お前らは今日飯の前に仙豆を食ってもらう。そうすれば、飯代は浮くだろう」

 

「なるほど、その手があったか……ナメック星人にも少しは頭のいい奴がいるということか」

 

「10円!(突撃料)」

 

「ふおぉ!?」キーン……ドゴォォォォンン……。

 

「クズを岩盤に吹き飛ばしたとて、この俺を超える事はできぬぅ!」

 

「止めろブロリー!落ち着けぇ!!」

 

「ニャメロン!止めてっ!」

 

「できぬぅ!」

 

「おしまいだぁ……!」

 

 

その後、博麗神社の一画に巨大なクレーターを作ったブロリー、そしてそれを止めなかったベジータ、パラガス、カカロット、ピッコロは、宴会の主催者である霊夢に仙豆を10個全て食べると言う課題を課せられた。

 

勿論、全て食べ終えた頃には腹も膨れ上がり、宴会の食事には誰も手を付けなかったと言う。

 

 

 

 

 

 

「ハァ☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『パラガスの受難2』

 

 

 

 

 

 

 

轟沈して終わりだなどと、その気になっていたお前達の姿はお笑いだったぜ。私の息☆子はまだまだ元気と言う訳だぁ!

 

だが、ブロリーは未だ見つかっておらん!このままでは……などと、その気になっていた俺の姿は最高にお笑いだったぜ。やっと脳天気な俺でも呑み込めたよ。私は、既にダンディな親父ぃなのだからなぁ。ふぁ〜☆

 

という訳で、私の南☆無☆三をお迎えに上がるべく、この妙蓮寺に来たのだよ。

 

さて、どのような計画で南☆無☆三をお迎えしようかな?

 

 

「怨めしやー!」

 

「DOOR!?」

 

「アハハハハハ!大成功ー!」

 

「だぁれだ!?」

 

 

37の息子を持つ親父にやることでは無い!一体誰が……

 

 

「アハハハハ!あ〜、久しぶりに人間驚かせたー!」

 

「おお、おぉ!まさか……ロリだと言うのか?もしそうだとしたら……」

 

 

私を驚かしたのはオッドアイで傘を差した小さな女の子でございました。←何故か過去形

 

しかし、私はロリーに興味はない!私が興味あるのは大人のお姉ぇさん☆だけなのだからなぁ。

 

 

「残念だが幼女、お前は、私の足でまといになるだけだ……」

 

「へ?急に何言ってるの?」

 

「もはや幼女など必要ない!消え去ってしまえ〜!」

 

「……やっぱり……わたしいらない子だよね……」

 

「ゑゑ!?」

 

 

まさか急に泣き出してしまうとは……計算外でございます。私は……一体どうすればいいのだ?ブロリーは泣いたことがないから分からないぞぉ!

 

 

「何なんですかぁ?この状況は?」

 

「シュワット!?この声はまさか、ヒジリーだというのか?」

 

 

知らぬ間に私の後ろには鬼の形相のヒジリー(聖)がおられました。

 

 

「避難するだぁ!」

 

 

最早この様な場所にいる必要は無い!一人用のPODで避難する準備だあ!

 

 

「何処へ行くんですかあ?」

 

「おお、ぉお!?お助け下さい!私が幼女を虐めているだなどと、その気になっていたお前の姿はお笑いでございましたからお助け下さい!明日まで、明日までお待ち下さい!」

 

「……私は一言も虐めていたなんて言ってないんですが?」

 

「……ハッ!?」

 

「懺悔はあの世でしましょうか。はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「のおぉぉぉ!自分の発言に殺されるとは!これも馬鹿親父の定めか……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁぁぁぁう(^qメ)

 

 

 

 

 

 

 

「へっ、汚ぇ花火だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『各々の生活』

 

 

 

 

 

 

「おーい、霊夢ぅ〜!飯くれぇぇぇぇ!!」

 

「やかましい!まだ昼にもなって無いでしょう!」

 

「おら腹減っちまった〜」

 

「そこら辺の草でも食べてなさい!」

 

 

腐☆腐。全員の紹介役として任されたパラガスでございます☆我が息子、ブロリーの手によってPODオチから解放された私は、ブロリーに各々の生活を偵察してくるように頼まれたのだよ。

 

カカロットは博麗神社に生活しており、昼夜問わずにハラヘリーな状態でございます。全く動く気配もなく、毎日霊夢に怒鳴られている二児の親だとは……サイヤ人の面汚しでございます。

 

全く進展が無さそうだから次に行くぞぉ!

 

 

 

 

 

 

魔法の森を歩いていたらブロリーと魔理沙を見つけたぞぉ!良いぞ、その調子だ。ドンドン近づけ。ブロリーと魔理沙よ。

 

ブロリーが魔理沙と同居しだしてから数週間、魔理沙がブロリーに向ける視線がおかしいことに気付いた私は、魔理沙とブロリーの距離が縮まっている事が本能的に察知できた。孫の顔を見る事こそが、俺が息子と幻想郷に来た本来の計画なのだよ。

 

その為に、科学者に土下座してこの世界に来れる様にしたのだからな。無傷でブロリーに嫁ぇ!を持たせる為に、多額の費用を用いてもしもボックスを作らせたのだ。

 

さあ、伴侶ができる幸せを味わいながら、この世界でゑゑゑんに暮らすがいい。腐☆腐

 

 

「親父ぃ、何してるんだぁい?」

 

「シュワット!?」

 

 

ふ、ブロリー!まさか、バレてしまったと言うのか?

 

 

「お、ブロリーのお父さんじゃないか。なんでこんな所にいるんだ?」

 

「どうせ女を探しているに決まってる。そんなクズな大人は大人しくPODオチの刑だぁ!」

 

「お助け下さい!宇宙の中で一番環境が整った美しい魔理沙王〜!明日まで、明日までお庇い下さい!明日になれば、ブロリーのカワイイ一面を私の手によって知ることが出来る筈です!」

 

「ひでぇ大人だぜ……ブロリー、虫けらの様に岩場に叩きつけるのだ!」

 

「はい……」

 

「何もかもおしまいだぁ……」

 

 

 

 

 

ポーヒー……デデーン

 

 

 

 

 

 

 

 

へぇ、へぇ……なんとか生き残ったパラガスでございます。科学者にギャグ補正を自由に操れる装置を作らせた私を殺せるなどと、そのような事あろう筈が御座いません!

 

にしてもだいぶ山奥まで飛ばされたぞぉ!妖怪の山の山頂かな?

 

 

「くっ……やはり諏訪子に将棋で勝つことなぞ今の私では出来ない……!」

 

「はははは!まだまだだねぇ」

 

「遊んで無いで神社の中の掃除を手伝ってください!」

 

「ハーーーイ!!早苗さん!僕は何をすればいいですか?」

 

「それから諏訪子様、将棋道具一式はちゃんと片付けて下さいね!」

 

「うっ、くそう……分かったよ!」

 

「ハァ☆」

 

 

 

ここには諏訪子様と神奈子様の2人の神様と早苗殿しかいないようだなぁ。ならば、別のところにいくぞぉ!

 

 

 

 

「オーーーイ!!」

 

 

 

 

 

探しましたぞベジータ王子。新惑星、パラガスの生け贄になって頂きたく、お迎えに上がりました☆

 

 

「でぇや!!」

 

 

door!?

 

 

「パラガス、わざわざ俺に殺されに来たのか?」

 

「そのような事あろう筈が御座いません!紅魔館で雑用をやっている貴方なら、私より力の劣るピッコロの居場所を知ってるかと思い、わざわざ来てやったのだよ。有り難く思え☆」

 

「はぁ!」

 

「おぉう!?」

 

何故俺がピッコロの居場所なんぞ知らなければならん!あんな気持ちの悪い顔色の奴なんぞ知らん!」

 

「ふん、ならばベジータなぞ必要は無い!消え去ってしまえ〜!」

 

「ここは今の俺の家だぁ!!」

 

 

紅魔館がお前の家などと、その気になっていた(ry

 

あ……(察し

 

 

「残念だがベジータ、お前はもう死ぬのだ」

 

「何をおかしな事を言っている!証拠は何処にあるんだ!証拠---」

 

「仕事をサボって何してるのかしら?」

 

「ハッ!?」

 

「サボるんじゃない!」

 

「申し上げます!もう死ね!」

 

 

仕事をサボるごとに、極悪さと凶暴さを増していった咲夜とならず者達によって無念のうちに亡くなられるベジータ王でございます。よく見ろ、地獄に行ってもこんな面白いナイフショーは見られんぞ。腐☆腐

 

 

「殺される……俺殺される……」

 

「さあ、どうぞ?ベジータです、何なりと八つ裂きにして下さい」

 

「ふおぉ!ニャメロン!」

 

 

私は殺されたくはない!咲夜に味方すれば、私の命は助かるのだよ。

 

 

「アータタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!!」

 

 

……どうやら、咲夜の出番は無かった様だなぁ。本能的に咲夜の怒りをキャッチしたアンゴルが、アンゴロウとなってベジータを抹殺しているのだよ。

 

さぁ、私は避難だァ!

 

 

「あ!おじさんだ!」

 

「シュワット!?」

 

 

フランが走ってくるではありませんか!これは……私も死の恐怖を味わいながらフランに八つ裂きにされると言う事かな?

 

 

「だが、心配することは無い!科学者に作らせた優秀な装置によって、私にギャグ補正がつくのだよ。スイッチオン!!」ピロロロロ- ガッガッ!!

 

 

あれ?まさか、壊れたのかお?

 

 

『パラガス様、気をお鎮め下しゃい。コンピューターが弾き出したデータによりますと、装置は壊れておりますじゃぁ……』

 

「ゑゑ!?」

 

『パラガスざまぁwwww』

 

 

くそぅ、こんな所にこんなギミックを仕込んでおく暇があったら壊れないようにしてぇぇ!!

 

だが、もう遅い……。

 

 

「おじさ〜ん!」

 

「dooooooooooorrrrrrrrrrrr!?」

 

 

何度目かの吹き飛びパラガスでございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、ブロリーでは

 

 

 

 

 

 

「魔理沙、きのこ大体取れたYO☆」

 

「ナイスだぜブロリー!毒キノコか見るのは私に任せて、ブロリーは休んでいるといいぜ」

 

「いや、お前に全部任せる訳には行かない。俺も手伝う」

 

「いいのか?じゃあ、お言葉に甘えさせて貰うぜ!」

 

 

 

 

ヒューーーーー………

 

 

 

 

「ん?」

 

「何か落ちて来てる音がするな」

 

「一人用のPODかぁ?」

 

 

 

 

 

 

dooooooooooorrrrrrrrrrrr!!

 

 

 

 

 

「……やるぜブロリー」

 

「フフフ!そう来なくちゃ面白くない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか、まだ生きているのか?なら、私はギャグ補正無しでも生きられると言う訳だぁ!ならば最後まで吹き飛ばされて余韻を楽しもうではありませんか!

 

おや?あそこに見えるのは……

 

 

 

 

 

 

 

行くぜ!ブロリー!

 

 

はい……うおおおおおおお!!

 

 

 

 

 

ま、まさか……?

 

 

 

 

 

 

イレイザースパーク!!

 

 

 

 

 

 

 

よく見ろ。地獄に行ってもこんな不幸なパラガスは見られんぞ?ふぁ〜はーは〜は〜は〜はぁはぁはぁハァァハァハァ----

 

 

 

 

 

 

あ〜う(^pメ)

 

 

 

 

 

 

馬鹿ばかりでこの始末☆

はてさてこの先、どうなりますことやら……

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ☆」

 

 

 

 



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