muv-luv the ∞ loop  『世界の負』と『狂戦士』の分岐点 (光影陽炎)
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プロローグ

初めての方は始めまして!
久しぶりの方はお久しぶりです!

陽炎、今は名を改めまして光影(こうえい)陽炎と名乗っております!
-the third loop-からお世話になっている方は改めて謝罪が・・・・・・

申し訳ございません!

先ほどあれを見てきたところ・・・・駄作もいいところでした・・・
あのような事は起きないように、以後気をつけます!

さて、こちらの方でも投稿いたしましたが『を応援・支持するhp』さんでも投稿しておりますので
こちらもどうぞ!

では、お待たせしました!




ねぇ、あなたはどんな世界を想像して、どんな世界を作ってくれるの?――――――――――――

 

 

muv-luv the ∞ loop  『世界の負』と『狂戦士』の分岐点

 

御伽噺(フェアリーテール)は今、始まった

 

-------------------------------------------------------------------

 

ある日突然、それは起こった

 

『武器を捨てて投降しなさい!君たちは包囲されている!』

 

住宅街の一角でそれは起こった

いわゆる『立てこもり事件』だった

突如起こった立てこもり事件の犯人グループの要求があると思っていた警察グループは、犯人からの声明を待っていたが

 

パァン!

 

一発の銃声が瞬間、あたりを静寂が包んだ

そして1分か2分たった後、家の中から高校1年生ぐらいの子供が

フラフラと出てきた

 

『突入っ!』

 

家から出てきた子供を確保した後、警察側のリーダー格らしき人物が

犯人グループの確保のため命令を下した、が

 

『と、突入班から警部!犯人グループの死亡を確認!頭をやられています!』

『なんだと・・!?』

 

そう突入班が最初に目にしたのは、頭を包丁で刺された者や銃で撃たれた犯人グループと

 

『警部・・・先ほど確保した少年の一家らしき者を確認しましたが・・・』

『!!・・・・・・そうか』

 

何かを察した警部と呼ばれる男は、背後にいた自分の部下に小声で何かをつぶやいて本部に戻っていった

次の日の朝、朝刊の大見出しに昨日の出来事が載っていた

 

『とある一家で立てこもり事件!

     犯人グループと高校1年を除く一家死亡!?』

 

主人公side

 

目が覚めるとそこは白い天井だった

 

「ここは?」

 

起きて周りを見回してみたら、そこはどこかの個室のようだった

 

「病院?」

 

そう、今自分は病院の個室にいるようだった

だが全く分からない、なぜ自分が病院の個室にいる理由が分からなかった

 

「お!目が覚めたか!」

 

頭の中で昨日の出来事を整理しようとしていた所に、個室のドアから声が聞こえた

見知らぬ人間だが、自分がなぜここにいるのかを知っているような人間だった。

 

「俺は警部の孤霧という者だ」

「警部?警察の人が僕にどんなご用ですか?」

「お前、昨日のことを覚えてないのか!?」

「え?昨日?」

 

昨日といえば、学校帰ってからご飯を食べて家族と談笑をしたあと、妹と

PSPで協力通信をして風呂に入って出た後、自室に戻って寝た後何かものすごい大きな音がして下に行った

 

「あ・・・・」

「お、思い出したか?」

「・・・・はい」

 

そう、下に向かった先には学校の友人達が拳銃を持ってこちらに構えていた

そして言われるがままに従ったそして――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家族を殺してしまった

 

『お前なんかがいるから!』

『あんたが生まれてきたから!』

『やめて!お兄ちゃんは悪くない!』

『お前がいるから!』

『あーあ、自分から死にやがったよ』

『ばっかじゃねぇの?笑えるわww』

『いやぁああああああ!』

 

 

「あは、あはは・・・・」

「だ、大丈夫か!?おい!」

 

警部が何かを言っているようだったが何も聞こえなかった

そう自分は、妹を人質に取られた後両親は友人と思っていた人達に僕を殺せば助けてやると言われたが、渡された包丁を自分の喉を刺して死んでいった

そして、妹は慰み物にされそうだったがそこで自分の中で何かが切れた

 

『ふざけるなぁああああああ!』

 

両親の喉に刺さっていた包丁を引き抜いて元・友人二人の後頭部におもいっきし刃の先から刺した

 

『てめぇ!』

 

3人のうち二人が自分の方に気がついてきたが、すぐそこにあった元々台所にあるべき包丁を拾い小太刀のように持って首の所を目指して振りかぶった

プシューという効果音のあとに何かが倒れる音がした

 

『え?』

 

倒れる音が鳴った後に気がついたのかすぐこちらを向いたが両肩めがけて刃先を振りかぶった

 

グサッ

 

『ぎやあああああ!』

 

激痛が走ったのがすぐ分かるような悲鳴をあげたが、すぐ近くの銃を持って頭を撃ち抜いた

 

『彩音ぇ!』

 

妹の名前を呼んで押さえつけられていたその妹に近寄ってみたが、遅かった

 

『彩音?おい!彩音!』

 

信じたくなかった、信じたくもなかった

妹は、自分の体を汚されることを拒絶して自分から舌を噛んで息絶えていた

そこから先は、何も覚えていない―――――――――

 

「・・・・・率直に聞く。犯人を殺ったのは、お前か?」

「・・・はい。自分です」

「そうか・・・・・今回の事は過剰防衛となるだろうが・・・・・

まだ何も分かっていないからな。情況によっては正当防衛か、誤想過剰防衛になるかもしれん。

まだどうにも判決はでないからな・・・・今は少し心を落ち着かせろ」

「・・・・分かりました」

 

孤霧と言っていた警部は、静かに立って部屋から出て行った

僕は、何かから逃げるようにベッドに横になった

 

(父さん・・・母さん・・・・彩音・・・)

 

死んでいった自分の家族を思い浮かべながら再び眠りに落ちた

できれば次の朝何もなかったかのようにみんなが生きていることを願って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   そして彼は世界から消えた――――――

 




2013年8月17日 一部改訂


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開演

1998年 11月20日

朝鮮半島 

地獄を見せる、という言葉はよく漫画で主人公が味方を傷つけた悪役相手に使う『怒り』という

リミッターを解除するために使われている

だが実際地獄とはどういうものだろうか?

大体の地獄は『死』につながる出来事だろう

幸福だった家庭が一瞬でなくなる時

優勢だったのが一瞬で敗北になった時

そして何より『死』そのものに繋がったとき

 

 

今朝鮮半島では彼の者・・・いや地獄の代名詞といわれる物<BETA>に攻められている所だった

このBETAに関しての情報は、追々説明いたしましょう

え?君は誰だ、と?

自分は何者でもありませんよ、しいて名前を申し上げるならばそうですね―――――――――――――――

 

世界(アンラ)()(マンユ)と、および下さい

 

主人公side in

僕の人生は他人と比べてみたらそれは、最悪以外の何者でもないだろう

幼稚園の頃はいじめばかりだった

小学校に入学して3年には、友達はいなかった

4年生までで親友が1人しかいなくて、遠くに引っ越した

引っ越した先の小学校では、5年生まで校長と担任の先生達と給食を作ってくれていた人達以外は

みんなが僕の敵だった

中学校では、部活に入ってはいたが正直いたくもなかったから、嘘をついてサボってやめた

知っていたから

僕は裏切られる都合のいい存在としか見られていなかった事を

だけど親友だけは違う事が分かっていた

どんな時も味方になってくれた、どんなに拒絶を強いられても拒絶しないでくれた

だけど中学3年生になってから最悪が起きた

そこから僕の本当の地獄が始まった

 

唯一の親友が殺されたと、警察の人から電話越しに聞いた

半月以内に殺しの準備をして、その後に犯人探しをして、卒業式の時に精神的に犯人を殺害した

犯人には躊躇は必要なかった

だって、小学校のときに『友達』と呼ばれる一時期『親友』の一部に入っていた人達を脅して

僕を自殺に追いやって、親友の手を汚した糞以下な奴らだったからだった

高校に入ってからは、『友達』も『親友』も作るのをやめた

死んでほしくなかったから

裏切られた時の絶望をしたくなかったから

だけどどんなに拒絶しても近寄ってくる人達はいた

だけど結局裏切られた

裏切られたのはどうでもよかった、家族を殺された時は腹が煮えくりかえそうだった

そして妹を犯されそうだったときは、リミッターというものがブッチっと音が鳴りそうなぐらい

感情をあらわにした

そしてまた大切な者がいなくなったと分かった時には

珍しい事がない限り流れない涙がとめどなく流れていた

そして僕は、寝て夢であることを願って目を閉じたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・のだったのだが

「なんで、ここにいるのかなぁ?」

目の前には何かを操縦するためのものである事が分かっていた

そして横たわっているはずの自分の体が何かに座っている事が分かった

何に座っているのも分かった・・・・・・・・大きな椅子だった

自分の身長よりも少し大きい椅子だったが、視界は真っ暗だった

だがとても高いのが分かっていた

そう、まるで高層ビルの最上階から見下ろしているかのように

 

ドォォォン!

とても高いところから落ちてきたのか、とても大きい落下音がした

直後視界が明るくなった、が

 

「・・・・・・・・・・・・・・ゑ?」

知り合ってから裏切られるのは分かっていたが

会う前から武器と分かるものを向けられるのは初めてだった

『BETAでは・・・・・・ない!?』

『デュラハン13より!デュラハン1!反応炉は、戦術機そっくりだ!どうすればいい!』

なぜだか分からないが、向こうの通信が丸聞こえである事が理解できた

それを理解したうえで通信をしてみたくなった

「あのう、聴きたいのですがあなた達はどなたでしょうか?」

『BETAが・・・・・・・しゃべった!?』

『で、デュラハン1!BETAから交信を求められている!指示を!』

「それで悪いのですが、先ほどから通信がだだ漏れですけど?」

『『!?』』

通信越しでも呆けた顔が分かる事が想像できた

僕はその顔を想像してくすっと笑ってしまった

「大方敵の本拠地らしきものからそちらの乗っている物とそっくりだったから混乱している、ですかね?」

『そこまで分かっているのならば問おう、貴官は誰だ?』

今まで聞いていたどの声よりも落ち着いていて、威厳のある声だった

そしてなにより、一番信用の出来る声で一番聞き覚えのある声だった。

だから僕は()の方の名前を使った。

「鉄克影という日本人です」

『光に成れなかった』から『影に克つ』意味を持った僕は、別の人生を歩み始めた

 

 

そして僕は、僕達の物語はここから始まった―――――――――――――――――――――――――――




どうも光影陽炎です!

最近ガルムの存在に気が付いて、『円卓の鬼神』と『片羽の妖精』を出そうか迷っています。
でも彼らって超が付くエースパイロットだし・・・・・こっちは最弱の小隊になってるし・・・どしよ;

まぁ検討中ということで、よろしくお願いします!

では


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決意と覚悟

あえて言っておきます・・・・

作者はこの小説を書く事において、とてつもない妄想力を使っています。


2話 別世界

 

鉄克影はいつも以上に冷静で、そしていつも以上に心が躍っていた

 

『人類の敵』『BETA』『戦術機』『ハイヴ』

 

こんな単語を聞いていれば

すぐに分かる事だった

 

―――人類は宇宙人と戦争しているのか―――

 

一体どんな宇宙人かまでは知らないが、だが確かに分かる事が三つほどある

 

いま自分がいる世界は別世界『if』と呼ばれる世界で

 

いま自分が乗っているのは宇宙人と戦うための兵器で

 

自分がこれからすべき事はその宇宙人と戦う事なんだと

 

そして意識が現実に戻されていく

 

『日本人・・・だと・・・?』

 

先ほど通信?を求めてきた目の前にいる兵器を操っている人達の隊長に当たる人だろう

 

僕のことが日本人だという事に驚愕を隠せないらしい。

 

「ええ。なんなら後で調べてみますか?」

『・・・・俺はそういう趣味ではないんでな。他の奴に任せる』

 

まあ確かに人の体、ましてや男と言ったらどこかの科学者か男色家みたいなものだろう

 

それはこちらとしては願い下げだった。

 

『・・・・時間も無いのでな、では最後に聞こう。こちらに敵対する意思はあるか?』

 

この質問で周囲の僕以外の人間が殺気立った。

 

それほどまでに僕の事を危険視しているんだろうか

まあ実際敵の本拠地のような物体で落ちてきた人間に敵視を持つなといわれても無理がある

 

だが現実は予想を常に右斜め上45度に行くものだ

 

 

 

「いや、別に。これから大規模な作戦があるんですよね?手伝いますよ」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?』

 

何だこの沈黙は

質問をしておいて答えに応じないのはどうかと思うが

 

 

 

・・・・・・もしかして答え方を間違えた?

 

 

彩峰中将side in

 

 

「日本人・・・だと・・・?」

 

俺が指揮している部隊―――デュラハン大隊の作戦ルートに突如現れたハイヴのような塊から出てきた戦術機

 

そもそも戦術機がハイヴから出てくるだけでも驚いてるってのに

 

その戦術機に乗っているのは俺達と同じ人間で日本人だと名乗ってきた

 

『ええ。なんなら後で調べてみますか?』

「・・・・俺はそういう趣味ではないんでな。他の奴に任せる」

 

奴が人間で日本人であるかどうかは気にはなるが、どこぞのマッドサイエンティストとか言う輩とは分野が違う

 

ましてや男色家などといわれるのも心外だ、これでも妻と子供を持っている。

 

彼に関してはまだ聞きたいことが山ほどあるのだが今は作戦中だ、時間をかけるわけには行かない

 

つまり最後の質問だ

 

「時間も無いのでな、では最後に聞こう。こちらに敵対する意思はあるか?」

 

敵対するのであれば即時撃破

 

敵対しないのであれば本国にて詳しい事情を聞くかまたは従軍の二択になる

答えは目に見えているのか部下の皆は未確認(アンノウン)に武器を構えている

だが、彼の返答は我々の予想とは別方向に行くものだった

 

『いえ、別に。これから大規模な作戦があるんですよね?手伝いますよ』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

正直、返答に困った。

このまま本国に送ったほうがいいのか。

それともわけの分からん力を信じたほうがいいのか。

確かにこのまま彼を本国に送って我々の戦いとは無関係は所で暮らしてもらいたいと思っている

だが彼には戦術機に搭乗者として我々の目の前に出てきてしまったからには無関係とまでにはいかないだろう

ならば聞かねばならない事がある――――

 

「君は・・・・それでいいのか?この先には血塗られた戦場(セカイ)という一方的殺戮しか存在しないんだぞ?

それでもいいのか?君はすぐに死んでしまうかもしれないのに?」

 

これもまた分岐点(オルタナティブ)だったのかもしれない――――

 

side out―――――

 

 

 

 

『君は・・・・それでいいのか?この先には血塗られた世界(せんじょう)という一方的殺戮しか存在しないんだぞ?

それでもいいのか?君はすぐに死んでしまうかもしれないのに?」

 

・・・・出たくないとは言えば嘘になるかも知れない

この身の性を恨まずして生きていけただろうか

信頼を寄せられたのは家族とごく少数の人達

後の人間は他人《テキ》だった

 

6歳から【我慢】という名目で学校の先生にクラスメイトと遊ぶ事が出来なかった

 

10歳になったら【楽しんだ】だけで学校の教頭に教育と称した体罰をされ

 

 

 

                     週に1度はサンドバックとされていた

 

 

 

中学校に入ってから相手にされなくなり

 

 

 

         中学2年の時に両腕をカッターナイフで20回以上同級生に刺された

 

 

 

中学2年の半ばで親友を小学校のときのクラスメイトに殺されて

 

 

 

                          中学3年の半ばで人を殺した

 

 

 

高校に入ってからは世界が敵になった気がした

 

 

 

              そんな事があっても僕は人を信じる事しか出来なかった

 

 

 

どんな事があっても人を信じるという選択肢意外は出来なかった

 

 

 

             それが僕の定められた逃れなれない答えが一つの二者択一

 

 

 

自己満足でしか生きられなかった拠り所がなかった運命

             

 

 

             自己犠牲しかなかった僕の人生という終わりのないレール

 

 

ゴールなんかなくて

      

 

    ルートは地獄道

 

 

小さな背中に背負うのは大きすぎる【世界】

 

 

 人に怨まれ妬まれ嫉妬される運命の【負】

 

 

故に『人間』としての道を外されて

 

 

『化け物』の道にしか入れなかった僕自身の(人生)

 

 

だから僕はこの世界を歓迎する

 

 

           

             だから俺はあの世界を怨まずにはいられなかった

 

 

 

そのためには自己犠牲は惜しまない

 

             

 

             それでもあの場所が好きだったから留まることしか出来なかった

 

 

 

これほど神という存在に感謝した事は無かった

    

 

 

             これほど世界と運命を呪った事は無かった

 

 

 

ならばこの身に定められた運命を拒絶しよう

 

              

             ならばこの定められた(人生)を受け入れよう

 

 

そのための世界の負であり

 

 

                

             そのための狂戦士なのだから

 

 

 

この背中に背負えるものは少ないけれど

 

 

 

             この狂気で救えるものは少ないけれど

 

 

 

自己犠牲(それ)こそが僕であって

 

 

                

             自己満足(それ)こそが俺である

 

 

 

過程こそが僕の求めた自己満足(みち)であり

 

       

             結果こそが俺の求めた自己犠牲(みち)であるから

 

 

 

 

「それこそが私・・・・・いいや僕であるが事を証明する証」

 

          

             「それが俺の歩いてきた人生である証」

 

 

「世界の負を背負わざる終えなかった僕はそうする事しか救えなかった」

 

 

「救うには俺の路を否定して世界と狂ったかのように相対するしかなかった」

 

 

「それが『世界の負』の呪い」

 

 

「それが『狼の狂戦士』の業」

 

 

「在り方は違うが」

 

 

「目的は同じ」

 

 

「だから俺は求めた、答えが幾万の路を」

 

「だから僕は求めた、最後の二者択一を」

 

 

「「だから俺/僕達は否定した、この敵が存在しないといられない世界を」」

 

「だって僕達は」「だって俺達は」

 

世界(アンラ)()(マンユ)だから。」「狂戦士(ベルセルク)なのだから。」




どうも、光影陽炎です。

先ほどから応援支持するhpの方で投稿をしようと思ったのですが・・・

何かトラぶったのでしょうか?アクセスができなくなってしまいました・・・

何事もなければいいのですが・・・

では、感想返しをしたいと思います!

>SOPさん

感想ありがとうございます!

そうですねw彼ら自体がもはやエースなので近接戦で確かに蹂躙できそうな気もします・・・
そこらへんの再現をこの凡才でがんばってしてみようかと思います。

乞うご期待下さい!



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奇襲


今回の話で違和感がある方は気にしないで下さい。

作者はある矛盾を狙ってますのでw

では、お楽しみください


軽い自己紹介と確認が済んだところで彩峰中将が口を開いた

『本来なら突然我が部隊の前に現れた君を拿捕すべきなのだが

戦況が戦況だ、それで君にやってほしいことがある』

「僕は何をやればいいんですか?」

『司令部の防衛だ』

・・・・・まさかこんな事を言われるとは思わなかった

正直、国に戻ってくれとか言われそうだったんだけどな

だけどいきなり拠点防衛、しかもこちら側の本拠地の司令部と言われてしまったら

何があったのかと思いたいぐらいだ

『いやなに、何も一人でやってくれなんて言わんよ。監視役として一個小隊をつける』

「分かりました」

彩峰中将が話し終えると僕につける小隊の選出をしていた

それまでの間に僕がすべき事を考える事にした

まず現状把握をしておこう

・まず今世界では宇宙人との戦争に巻き込まれている

・戦況が宇宙人の方が圧倒している可能性が大きい

・そして今僕が乗っている巨大なロボット―――戦術機が唯一の対抗戦力である

まぁ元の世界に戻るつもりはないし戻る気もない

だったらこの世界で生きていくしか道はないわけだから

どうやってこの世界で生きていくかなんだけど・・・・・軍人としてかなぁ?

とりあえず細かい事は後にして武器の確認をする事にした

明らかに僕の持っている武器と彩峰中将達が持っている武器は全く違う

装備の確認のためいろいろいじっているとやっと出てきた欄がweaponだった

欄の下を見ていくと同じ銃が二つで剣が一本と刀が一本そして装備かどうか分からない

棒のようなものがあった。使い道は近いうちに考えておこう

『鉄殿!』

「は、はい!」

聞きなれない名前で呼ばれたので少し驚いてしまったが彩峰中将は構わず話を進める

『貴方には沙霧中尉が率いる一個小隊と同行して国連軍司令部の防衛に回ってもらう

すでに作戦時間は過ぎている、至急司令部に向かってくれ!』

「りょ、了解しました!」

『話は以上だ。沙霧中尉後は任せたぞ』

『はっ!中将もお気をつけて!』

そう言って彩峰中将は他の部隊の人達と別方向に向かっていった

沙霧中尉達も僕の方を向いて司令部に向かおうとしていた

操縦は慣れないけど操作方法らしきものとコマンドが出てきた

それほど難しくなかったためすぐに出来たため移動には手間取らなかった

『今回君の監視役を命ぜられた沙霧だ、階級は中尉なので沙霧中尉と呼んでくれれば問題ない』

「よろしくお願いします、沙霧中尉」

『司令部は鉄殿が落ちてきた所から近い所にある、作戦時間も近いため急ぐぞ』

「了解しました!」

僕の返事と同時に各機が噴射跳躍を始め、僕も遅れて噴射跳躍で追いかけた

この時僕には少しだけの異変に気づけなかった

weaponのアイコンのずっと下の方に今乗っている機体からの歓迎の言葉に

<Welcome to the world my master.>

と書いてある事に

 

 

 

 

 

移動を開始して数分たった頃、前方に大きな建造物が見えてきた

その建造物は、辺りの自然とは正反対であまりにもその場には似合わなかった

だがしかしその大きな建造物は希望の塊とも思えた

『こちらデュラハン6。HQ応答願います』

《こちらHQ、何があった》

『大隊長から司令部の防衛に回れとの命令です、許可を願います』

《了解、許可する》

案外あっさりと入れた事に驚いてた、大規模作戦なのに本部防衛に兵を容易く回してもいいんだろうか?

だが基地に到着した瞬間疑問のようなものが晴れた

あまりにも少なすぎた戦術機の数とガラガラの格納庫の数だった

『大隊長は司令部防衛にも兵を裂くべきだと上層部に進言したのだが、救出作戦には前線の兵の数で決まる。

ましてやBETA相手ならなおさらだと跳ね除けてしまってな、司令部側は泣く泣くそれを承諾したらしい』

たしかに戦争は本拠地が落ちれば速攻で白旗ものだ。それでも軍の大半を前線に出す事は

よほどの自信家か、そうでもしなければ負けるという事を意味している。

まぁとりあえず移動中に僕は傭兵ということになったので、傭兵は口出し無用ってことだろう。

ガラガラの倉庫の中を拝見しているうちに【緊急通信】という文字が突然に現れた

≪基地内全衛士に告ぐ!第3防衛ライン後方からBETA出現!至急戦術機に搭乗し、司令部防衛に回れ!≫

『!?』

沙霧中尉は驚いた声を出しているようだったが、何も驚く事はないだろう

歴史上の戦争を見ている内に地中から奇襲をするなんか普通の分類に入る

むしろ、基地の下から出てこなかったのが驚きの範囲だった。

『HQよりデュラハン6に告ぐ、貴官等は司令部の北部に向かってくれ!』

『了解、デュラハン6より全機に告ぐ!これより我々は司令部の北部にてBETAを迎える。

全機装備を確認、後に奴らが来るまで待機だ!』

『了解!』

僕以外の衛士と呼ばれた彼らはディスプレイの端の方から消えていっていった

装備に関しては先ほど確認したばっかりなので問題は無い

それから1分もしない内に沙霧中尉からまた各機に通信が入った

『全機確認したな?では行くぞ!』

沙霧中尉の言葉をきっかけに全機が噴射跳躍を始めた

僕も噴射跳躍をして、沙霧中尉達の後を付いて行った

移動中僕はだんだんいつもの感覚になっていくのを感じていた

そう、(アンラ)ではなく(ウルフ)になっていく事に




どうも~光影陽炎です。

今回は他の話と比べて少ないほうです。

まぁ、作者の凡才じゃあ2万文字も行く事はそうそうないのでw

では!感想返しに行きたいと思います。

>SOPさん

厳密に言うとこの主人公は二重人格ではないです。

ですが・・・この主人公に関しては本編で分からせていこうかと思います。



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彩りの世界

※※ warning!  warning! ※※

彩峰中将に関する設定や、その他もろもろの公式とは異なる設定は
当小説内での設定となります!

ですからそれが苦手、嫌悪する方は本文を見る前にプラウザバックを推奨します!

それ以外の方は、どうぞ、続きをお楽しみください。


XXXX年■■月□□日

 

それはあまりにも突然で、そして残酷な現実だった。

 

 

 

 

 

その日はただ、普通の日常と何一つ変わらない日だった。

いつも家族の中で早く起きている俺は朝食の当番だった。

故意に寝ている自分の手が届かないところにある目覚まし時計を止めた後

1階に下りて冷水を飲み、再度自分の部屋に戻って寝巻きから室内着に着替えて

もう一度1階に下りて朝食の準備をする。

朝食の準備が終わった頃には父はすでに食卓に着いていてその日の予定を確認してからテレビを点けていた。

母は俺と一緒に朝食の準備をしていたから、食卓に皿を並べていた。

3歳になる俺の妹は、上の部屋で寝ている。

 

父と母が朝食を食べ終わった頃に俺が朝食を食べ始めていた。

俺が食べ終わった頃には父は玄関を出る頃で、俺もすぐに食器を片して自室に戻り制服に着替えていた。

そして鞄の中を確認して学校に向かうために玄関に下りたら、母が妹を連れて玄関にいるのが分かった。

そして母と妹に「いってきます」といってから家を出る。

 

 

それが俺、彩峰秋鶴の変わらない朝だった。

 

学校に着いてからはクラスメイトと軽い挨拶を交わして教室に入る。

HRが終わった後はいつもどおり読書をしているか、数少ない友人達と会話を交わしている。

それこそ6人ぐらいしかいないが、部活も6人とも同じ部活に入っているのだ。

名前は『世界研究部』通称『世研部』とも言われているのだが、実はいわく付きでもあったりする。

なんでも二重人格の集まりだとか、人間じゃないのがいっぱいいるとか、入部をするとラリるとか

根も葉もない噂が後を立たなかった。

放課後部活動の終わりの時間になると部活をしていた生徒は学校を出ることになる。

俺は親友達とは別の方向になるから、学校を出た後はすぐに分かれるのだった。

自宅から学校までは2駅挟んで向こう側であり、駅まで相当の距離があるからいつも自転車を使っている。

そして自宅の近くの駅に着くと、自転車置き場に向かって自転車を取り自宅に向かう。

その日も変わらない日常だった・・・・・・・・はずだったのに。

自宅のすぐ近くになって人通りの少ない十字路に出た瞬間、それは突然起きた。

 

横から急に2tトラックが飛び出して、俺は跳ねられた。

宙を舞って2、3度地面に叩きつけられてやっと止まったのだった。

 

 

大体引かれた時点でなぜ俺が死ななかったのも不思議だが、理由は二つある。

一つは、俺はある事件を境に体を鍛える事に専念していた事と。

 

もう一つは、俺はそこらじゅうにいる人間とはかけ離れている存在だからだった。

 

 

「あれれれ?なんでこいつは死んでねぇんだ?」

「別にいいジャン。後でしっかり殺すんだからサ」

「それもそうだな、ヒャヒャヒャヒャ」

「こいつのせいであいつを殺れなかったんだからなぁ。相応の死に方をしてもらわねぇとなぁ!」

明らかに殺意がある言葉や、下品じみた笑い声。

聞いた事がある声かもしれないが、心当たりは確実にあった。

現に今はただの中学生ではあるが、小学校の俺の唯一無二の友人の事である事が。

今現在進行形で俺の親友を見事に裏切って、無意味な一方的悪意を持っている奴らが。

抵抗した、反抗もした、訴えもした、だがしかし大人達もあいつを救う事をしなかった。

しかも仮にも教師である立場の人間が生徒を『教育』と称して太鼓のバチで叩くというあるまじき行為をした。

 

 

ここで無意味な死を迎えるのは受け入れたくなかった。だがしかし、何かで刺された感覚がした後

視界は消えて体は動かず俺は――――死んだのだった。

その中で俺は呟いた、まだ死になくない。と

そして俺は――――――この世界から『彩峰秋鶴』という人生を閉じた。

 

 

 

そう、確かに『彩峰秋鶴』という存在はあの世界から消えたのだった。

今思ってみれば、これが始まりだったのかもしれない。

 

そして俺は、【世界渡り】になった。

 

 

 

1997年11月20日

10:50

光州作戦第1前線付近

彩峰萩閣side in

『ちゅ・・・・・あや・・・・彩峰中将!』

「ん、ああ。どうした?」

『まもなく作戦空域に入ります』

「分かった、すまぬな」

HQからの通信で放心状態から目覚めた俺は、操縦桿を握りなおしていた。

随分と懐かしい記憶を掘り返していた気がした

そう、この世界に来る前の俺の記憶だった。

「まさかお前だったとはな・・・・・」

意外だった、まさか落ちてきたのがあいつだったとは思わなかった。

この世界に渡ってもう長くいるが、あいつが落ちてきたのは初めてだった。

思いに耽ってたら、急に秘匿通信で繋いできた女性がモニターに現れた。

『隊長・・・・なぜ彼に沙霧中尉をつけたのですか?』

モニターに現れたのは、沙霧とは別の小隊を率いている駒木少尉だった。

彼女は沙霧中尉の副官としても活躍しているが、戦術機適性は中の上程度でもある。

少々生真面目すぎるところもあるのか、鉄の事はやはり快くも思っていないらしい

「理由はある。一つは戦力の問題だ、前線に兵士をほとんど持っていかれた現状で

後方の兵士が極端に少ないために猫の手だろうがBETAの手だろうが借りたいぐらいだからな。

二つ目は彼の今後についてだ。」

『鉄殿の今後、ですか?』

彼女の質問に対して俺は、自分の考えを伝えていった。

小牧少尉は言葉の意味が理解できていないのか、疑問な表情を浮かべていた。

「作戦行動中の我々の目の前に現れた突然現れて、なおかつハイヴと思われる物体から出現した

・・・・なんて輩がいたら少尉はどうする?」

『・・・・・・その場で処分します』

「だがその輩が我々をはるかに上回る力を持っていたとしたら・・・・・どうなる?」

『ですがそんなことは・・・・・』

「無い。とは断定できぬだろう?」

ハイヴといえば今現在我々人類の敵とも言えるBETA・・・

正式名称『Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human race』

訳すと『人類に敵対的な地球外起源種』の本拠地ないし人類の軍で言うと司令部に値する。

それと同系のような物から出現したら・・・・・現在光州作戦における衛士の大半を死に至らす事になる。

それに落下してきた物がハイヴだったら・・・・・確実にデュラハン大隊は崩壊していた。

大隊の作戦ルートを妨害するように宇そ宙らから落ちてき、大隊を蟻の群れのような化け物が

飲み込み、砕き、踏み潰し、殴り倒し、焼き殺し、捻り切って進んでいくだろう。

もしかしたら、前線にいる大東亜連合を挟撃で全滅――――なんてこともあったのかもしれない。

今回はハイヴよりかなり小さい形ではあったが形状、外見などを見ても

あのおぞましい物とほぼ同じと言ってもよかったかもしれない。

正直に言うとあれが落ちてきたと言われたときには自分の死に様を頭の中でイメージ出来たほどだった。

そして小型ハイヴのようなものから戦術機に似たものが現れて、会話を求めていると報告が来たときには

すでにほとんど何があったのかを悟った。

こんな緊張が詰まった状況で現れて、なおかつもっと乱してきそうな奴とは、俺が知っている中で一人しかいなかった。

何があって名前を変えたのかは知らないが、それでもあいつがこの世界に来たのは、ある意味で正解だったのかもしれない。

あんな腐ったような世界よりもまだ人類の敵が確立している世界の方がまだマシだと考えていた。

「それにな・・・・」

『??』

「あいつがどうかは知らないが、俺はあいつを()()()()()

『中将の知り合い、ですか?』

「知り合いか・・・・・」

あいつを知り合いと言っている奴は、確実に自殺願望者かあるいは、とてつもないサディスティックだろう。

鉄に深く関わっている人は絶対と言っていいほど人間の分類を外れている。

この事は、鉄が話す気になってから他人に話すようにしている。

よく考えてみると・・・・・知り合いではないのかもしれない。

ではなんなのだろうか?

答えは一つしかないだろう。

「友人以上親友未満、というやつかな?」

『なんですかそれは?』

「友人以上の関わりだが、親友の様ではない。という事だよ」

『・・・・・なんとなく、直に会ってみたくなりました。』

「ほう・・・」

彼に興味を持つのは前の世界では、死と同義語と言ってもよかったのだが、この世界ではそうでもないらしい。

彼と俺に関しては本土に帰ってからだな・・・・

「・・・・少なくとも、あいつが死ぬ事はないだろうだからな。」

『なにか言いましたか?中将?』

「いいや、なんでもない。そろそろポイント00に着くぞ、お喋りはここまでだ。」

『了解!』

まずは久しぶりに本気を出す事にするか!

side out

11:27

『光州作戦』前線基地司令部防衛線

『ちくしょう!一体どこから沸いてきやがった!』

『喋っている暇があんだったら手ぇ動かせ!』

どこからともなく聞こえてくる声。

それは確かに俺の周りの兵士達の声である事が分かる。

なぜならここが最後の防衛線だからだった

戦術的や普通に見ても分かるこの戦場は、すでに壊滅状態だった。

元々から防衛の兵にいるべき兵は前線に持っていかれ

突然の敵の行動に基地の兵士も現場の兵士も戸惑っていた。

「なんて思っている俺も、こいつ等にドッキリだけどな!」

と言いながら機体に装備されていた武器の一つを目の前にいるタコのような巨大物体に振り下ろした

袈裟切りにされた白いタコは地面に崩れ落ちたが、同じようなタコが大量に群がってくる。

その後ろからは、盾のようなものを被っているように見えるのがぞろぞろいた。

「こんなに数が多いんじゃあキリがねぇっての!」

先ほど武器で見つけた長い棒の使い道――――歪な形をした剣の刃を棒に取り付けた、ようするに鎌を振り回していた。

盾化け(鉄命名)を切り裂こうとすると刃が駄目になるために、タコだけを切り裂いていた。

だがそのうち、盾化けの比率が増えていき――――ガキィン!という音と共に刃が中間で二つに割れていた。

「!?ちぃ!」

咄嗟に刃の部分を分離して棒だけになった武器を盾化けに思いっきり投げて、その場から退避した。

上に退避――――噴射跳躍でBETA達の行進を避けるが、すぐにロックオンアラートが鳴り出し、もう一度地面に降りなければならなかった。

「さっきから空に逃げた瞬間を狙って来るのはどいつだぁ!?」

イラつきながらも先ほど地面に降りた瞬間に光線が真上を通り過ぎたのは目視していた事で、発射原を特定しながらタコと盾化けを巨大な剣で攻撃していた。

一つの場所に留まりながら攻撃するとすぐに撃破されかねないので、斬ったら移動、斬ったら移動を繰り返し繰り返しをしているうちに疲労が溜まっていき

ついには、剣を振りかぶりすぎて大きな隙を招じ、タコの腕が視界を近づいていき――――

(やべぇ!)

咄嗟に左腕の肘を盾にして軌道を逸らそうとしたが――――――突然視界に迫っていた腕ごとタコが吹き飛んだ。

『鉄!無事か!』

「沙霧中尉!?」

なにがあったのかがすぐに理解できなかったが、突然沙霧中尉から通信が入り無事かを確認してきたのが分かりすべてが理解できた。

他人に『俺が守られた』と、言う事だった。

それならばここでなら使っても良いかも知れない、と頭の中で沙霧中尉に感謝しながら考えていた。

俺が俺であるが故の、俺にしかない絶対力を。

『鉄!いったん下がるんだ!これ以上は戦線が持たん!』

「だからどうした!ここから後ろには下がりようがねぇ!」

『だがしかし「お前らは何を背負って戦ってるんだ!?」・・・!!』

「すぐ考えりゃ分かるだろ!俺たちの後ろには、何があるかぐらい!」

今もなおBETAは後ろに通り過ぎていく。自分達の遥か後方にある、司令部よりもっと後ろにある列島へと。

もし自分の記憶と状況を考えてみたら、この戦闘で後方に下がった場合―――――最悪、日本列島に被害が出る。

それだけは避けなくてはいけなかった。いや、絶対に阻止しなければいけなかった。

今まで得た情報と予想と仮定を立てると間違いなく現地住民の説得に時間を持っていかれて、今回の戦闘に責任を押し付けられるのは――――彩峰中将だった。

この世界で唯一知り合いの可能性が一番高い人間をここで死なせるわけには行かなかったし、何よりも死なれたら気分が悪くなる。

『後方に下がれないなら、ここで叩くしかあるまい!一気に・・・・』

<だったら後先考えずに行動するのは、君の性分じゃないの?>

「・・・・・・・」

『何を黙っているんだ!聞いているのか!?』

<別に問題はないよ。この世界は、あの世界とは明らかに違うから>

「良いんだな?」

『一体何を言ってるんだ!光線級から片付けるぞ!』

沙霧中尉が俺とあいつが話している最中に何かを話しているが、全く聞こえてなかった。

俺の頭の中にあるのは、この現状を一番効率よく打破できる方法しか思い浮かばなかった。

「俺だけが奴らの先頭に出る!あんたは中将の方に向かえ!」

『何を言っている!血迷ったか!』

「俺とお前は一緒じゃねぇんだ!てめぇがここで死ぬ価値はねぇ!」

『貴様ぁ・・・黙って聞いてれば!「軍人が死に場所を求めるな!」!?』

軍人は国の力であり、盾であり、忠を尽くす人間である。

だがそれ以前に――――人である。

人である限り生に足掻かなければならない。と、俺は思う。

国を護ると言って死を見出すのは馬鹿のやる事だ

親がいて、兄弟がいて、自分の身を案じてくれる人がいる。ゆえに生き残らなければならない。

だって何よりも生き残ってほしいと思うのは、その人たちだと思うから。

「てめぇが今すべき事は、中将に起こっているすべてを正確に伝える事だ!俺の予測を伝えるから二度は言わん!よく聞け!今回の奇襲は任意的なものだ!」

 

 

『!?一体どういう事だ!任意的なものとは「とっとと伝えに行け!俺はもう行く!」待て鉄!どういうことだかまだ』

「とりあえずそれだけを伝えろ!すべてが終わったら説明する!いいな!」

『なれば言う事は一つだ!――――――生きて帰れ!』

「了解したぁ!」

BETAの波を掻き分けようとした瞬間に言われたその一言。その一言は、前の世界では絶対に言われる事のない台詞だった。

つい反応して了解、などと言ってしまったが後悔はない。後はすべてを喰らい、斬り、無残に散らすだけだった。

神の加護を受けし悪神の半身は、今自らの願いを叶えるために狂いだす。




どうも、光影陽炎です。

この作品を書いていて、最近思う事があります。

作者の考えている設定で書き続けてると・・・・・・・・・

BETAが確実に勝ってしまう。それも満塁ホームランを9回ほど。

さてどうしましょうか・・・・・・・・でも実はそこら辺の策はちゃんと考えていますw
でもなぁ・・・そしたら10作以上の超多元クロスオーバー化しちゃうんですよねぇ・・・

要検討って事で、乞うご期待ください!


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『善』と『悪』

今回は応援・支持するHPで投稿されているのとは少し異なります。




突然だが狂戦士、と言うのをご存知だろうか?

名は体を表すように狂った戦士である。

大抵はバーサーカーと言われたりベルセルクとも呼ばれたりしているが、

狂戦士と呼ばれる彼らにも、人の名前があった。

それは『ウルフ』と呼ばれてる一族だった。

狂戦士と呼ばれる人は、オーディンと呼ばれる古代の神の加護を受けた戦士である。

だがその加護は、一部の人間にしか与えられず、その加護を受けた一族をウルフと呼ばれている。

神話の世界で彼らは幾度もその名前を出現させているが、大きくとられる事はなかった。

そんな一族に、不幸にも神にされた二人の兄妹がいた。

一族の一つの家系に生まれた二人は、『神のお告げ』という非現実的な一言で裂かれることになる。

妹の方は善の絶対神に

兄の方は絶対悪と言われる神になった。

絶対悪と善なる神となった兄妹は、家族のように話す事もなく、顔を合わせる度に敵対するしかなく、

ただただ、戦う事を運命にされた悲しき兄妹

その兄妹の名は――――――

 

 

11:35

釜山広域市 北方

目の前の暴力を見てふと、自分について考えていた。

ただただ、自分の宿命だと決めながらこの人み生ちを歩いていた。

誰よりも不幸で、誰よりも弱くて、そして誰よりも―――憎まれた道。

だが何よりも俺は、この道を憎み、怨んだ事はなかった。

この道を否定すると言う事は、俺自身の意味も否定する事になるからだった。

「そろそろ、始めるかな・・・」

大体この数を相手にしろと言っている時点であいつの言ってる事は吹っ飛びすぎている。

『お前ならこの数はものとも言わないだろう?』

だからと言って10万相当のこいつ等を相手にするのは無茶振りにも限度と言うものがほしいところだ。

「久しぶりに体を動かしたからな・・・そろそろガチで行くか?」

機体の操作に慣れ始めて、特性が理解できるようになったので、元々の自分のスペックを反映する事が出来るようになった。

突然の初陣になのにも関わらず、なぜ戦術機と呼ばれるこの兵器がすぐに手足のように動かせるかには、ちゃんとした理由がある。

まず自分自身が狂戦士と呼ばれる類にある事と、世間的にアンラと呼ばれる神の一説の理屈から出来ている。

狂戦士は、バーサーカーやベルセルクと呼ばれているが俺の場合は、ベルセルク――――神の加護を受けた尖兵である。

彼等は人間が本来持っている力の30%しか出せないのに対して、80%まで引き出す事が出来るのだがその代償として何かを失う事になる。

代償として失うものはたくさんある。感情、視力、筋力、爪、指、腕、心臓、目そのもの、果てにはこれまでの人生や来世と呼ばれるものまで

文字通り『すべて』が含まれている。非現実的なものから現実的なものまですべてである。

実際それらは本来の80%を出した時に失うものであり鉄自身は最高で65%までしか出してはいない。

そしてベルセルクが人間との区切りがつけられているもう一つの理由は、『武器に分類されるすべての物体を具現化し利用する』事が出来る。

つまりは簡単な例で言ったら『ガラスを剣として使う事が出来る』だが、『空気から火炎放射を作る事が出来る』のもやれないことではない。

 

ベルセルクはいくつかの部族に分かれているのだが、俺は狼の名を冠するウルフの一族になる。

だがベルセルクの中でも神格化されている存在、神狼―――フェンリルと呼ばれるのがある。

フェンリルと言うのは、狂戦士でありながら神に至る存在になったウルフの事を主に言う。

元祖とも言われるフェンリルは北欧神話に出てくるヨムルンガンドの兄と言われるあのフェンリルである。

彼の場合は、とある神がウルフとなった――――つまり神下ろしと言われるらしい。

 

そして一つ注すべき点が一つある。

神下ろしは、元々いる狂戦士に『神を下ろしその御霊を戦士の身体にその力を定着させる』事になることから

神下ろしとなる狂戦士は、二つの人格を持つ『2重人格』になる。

つまり神下ろしの対象となった神が、狂戦士の身体に定着しなければ身体が消滅する事と、お互いの存在を認識しなければ

定着しなかった時同等にその身体が消滅する事になる。

だがしかしその二つの条件が一致した場合、『身体に御霊が定着し』『相互の認識』が完了した時神格化よりも強大な力になる。

つまりはウルフから神格化するより、神から紙卸したほうが力が上と考えてもらえれば速い。

そして俺が神格化して神なった、いや神にされた存在は『絶対悪』や『世界の負』と言われるゾロアスラ教の原典に現れる

アンラ・マンユと呼ばれる神であった。

アヴェスターによるとアンラ・マンユは病や災害などを司る、ようするに『負』を司る神であり、もう一人の神と対の存在なっている。

その対の神は、『善の神』と呼ばれるスプンタ・マンユである。

この二人は原典にもあるとおり元々は兄弟とも言われているが、どちらが兄であり弟であるのかは明らかにされていない。

スプンタ・マンユはアンラ・マンユと違い、幸せや正しい道に導く神と言われている。

 

スプンタやアンラに関しての話は、ここまでにしておこう。

 

つまりベルセルクの特性が二つあり、『すべての兵器を扱える』と『人のリミッターを外せる代わりに感覚を麻痺させる』と言うのがあり、そこに神下ろしの影響により、『肉体の制限がなくなる』と『どんな影響があっても感情と理性を保つ』事ができる。

だが他にも絶対悪としても力があるのだが、それは今使わなくても乗り切る事が出来る。

ウルフの特性で『兵器の最善の使用法』を戦いながら理解して『人のリミッターを外して』反応速度と筋力等の力を本来の50%まで引き出して

神下ろしの影響で、『人のリミットを解除する代わりに感覚を麻痺させる』という特性のデメリット部分の『感覚麻痺』を無くすしてしまう。

それが、神下ろしされたウルフの絶対的な人間の枠を超えた力である。

では、始めようか―――――――

「さぁ、最悪の混沌を見せてやるよ――――」

これは戦争などではない、神罰だ

 

11:30

釜山広域市 西方

彩峰中将side

朝鮮半島司令部から西方約15km先にある沈海区と呼ばれる所に近い『安骨洞』と呼ばれる場所周辺の住民説得を最後に

住民達を司令部のすぐ近くの釜山北湾に停泊中の国連所属の空母に住民を避難させるのが今回の主目標である。

安骨洞以外の平地の場所は高速移動型の8輪鉄鋼車で避難をするのだが、安骨洞には港がある故に海からの避難による

即時撤退作戦に変更された。

理由としては、BETAの侵攻が速過ぎるからだった。

BETAの速過ぎる侵攻速度に上層部は慌てだし、国連軍はすべて司令部の北部に位置する梁山市を中心に軍を展開した。

つまり現在原住民の脱出を優先し動いている軍は、国連軍所属にはなっているが帝国陸軍の第1機甲大隊『デュラハン大隊』と大東亜連合だけである。

本来は我々も前線に向かうべき部隊なのだが、西方よりBETAの接近ありと斥候部隊の報告から司令部は

安骨洞周辺の原住民の脱出補助と西のBETAを食い止めるという作戦に出たのだが・・・・・

「これを見るとどうしても、死んでくれとしか見えんがな・・・」

少数勢力である大東亜連合軍と一個大隊でしかない『デュラハン大隊』だけでも、連隊に届くか届かないの数であった。

「1個連隊以下1個大隊以上、か。それであれを相手にしろと上層部は言っているからな・・・」

目の前に映るBETAの数は、我々の部隊を含む連合軍を余裕で飲み込みそうな数だった。

どう見てもこれは西と北の割合が同等と見ても誰も疑わないであることが分かる

『で?この数を相手にしろと奴らは言っているのか?』

「そうみたいだな」

今俺が話をしている相手――――大東亜連合軍第一大隊長の崔中将と言うのだが、始めてあったときから初対面とは思えないぐらい気さくな奴である

彼になぜ国連の犬と言われている日本人の俺に普通に話しかけるのか?と聞いてみたら

「万国共通で言ったらそうだな・・・・・人類みな兄弟ってやつだな!」

と、にこやかに返されてしまいしばらく腹を押さえながら笑うのを堪えそうになったのはちょっとした余談だ。

『国連も無茶を言ってくれるな、この数は北と変わらないのではないのか?』

「数云々の話をしても仕方あるまい、早く奴らを片付けなければな・・・・・」

機体をBETA群の方に向けて噴射跳躍体制に入ろうとした瞬間――――――

 

『HQより全部隊に告ぐ!第3防衛ラインよりBETA群出現!直ちにデュラハン大隊は防衛ラインに急行せよ!』

『なんだと!?』

「くっ・・・・こんな時に!――――デュラハン01より各機!避難が終了次第07と08はそれぞれの中隊を率いて防衛ラインに向かえ!

他の部隊は原住民の避難を急がせろ!」

『了解!』

突然防衛ラインに現れたBETAに混乱をしていた部隊は萩閣の正確な命令により慌しさが静かになりそれぞれの成すべき事に戻っていった。

しかしこの一時凌ぎの命令ではすぐに司令部はBETAに食い尽くされてしまう事は目に見えている、それをどう回避すべきか思案をしていた時

さらに最悪な事態に急変していった。

『03より01!北部の国連軍が徐々に後退していきます!このままでは前線が持ちません!』

「ここでそうくるか・・・!」

前線の後退によって戦況は徐々に劣勢を極めていき、萩閣自身も選択を迫れていた。

北部の国連軍の救援に向かえば避難に専念している大東亜連合軍は壊滅し

かといってこのまま避難を優先していけば国連軍は壊滅―――日本の国内情勢にも響き、最悪売国奴と己が名は歴史に刻まれていく。

そして司令部の防衛に軍を回せば、最悪司令部は護れていても国連軍内の日本衛士は腰抜けと同郷の者といわれ続けていく。

避難の後に救援を回すのでは遅くなり

司令部の救援と前線に部隊を送れば確実に原住民の避難は遅れて大東亜連合と共に原住民はBETAの餌となる・・・・

 

なればここでヤツの力を使わせてもらうのが一番の打開策だ

答えにたどり着いた俺は、すぐに鉄に秘匿回線をつないだ

「・・・・鉄殿、頼みがある」

『こいつ等を潰してから前線の救援に向かってくれないか、だろ?』

こんな切羽詰った状況だから分かってるのか、頼む前に内容を予想されていた。

だが予想されていたのは想定内だった。問題はこれからの内容だった。

「なら話は早い、やってくれまいか?」

『・・・・・・・条件がある。』

「なにかな?」

『訓練兵からでもいい、俺を兵役に付かせろ。』

「ほう・・・・・」

まさか鉄からそんな条件を提示してくるとは思わなかった。

自分の中では彼の性格は、いつも争い事は好まずに平和的な方法で鎮圧していこうとしていたヤツだと記憶していた。

やはり何年も会っていないとこうも性格は変わる物なのか・・・・つくづく時間の流れは早いものだと自覚して行った。

しかし彼の条件がこれだけとは思えなかった。なにか続きがある、そう頭の片隅で考えていた。

『それと俺の使う機体は俺自身で作らせろ。』

「・・・・・・・・・・・・・!?」

『どうした?条件が飲めないのか?』

「いや・・・・何というか・・・・」

『??』

こんな状況の中で一つだけ言わせてほしい事がある。

場違いでもいい、嘘だろ?と言って笑ってくれてもいい、とりあえず何でもいいが一つだけ言わせてほしい。

 

多分こいつに戦術機を作らせたら、世界の情勢がガラリと砂時計のように改変する。多分、いや絶対に。

これは俺が知っている限りの鉄光成の本人曰く『少しいじった』と言っている、少しじゃない改造なのだが・・・・

普通のワゴン車を『少しいじって』スポーツ車並のスピードを出せるようにしたり・・・・

100円の火薬に『少し何かを足して』サバゲー顔負けの簡単お手軽爆弾を作り出したり・・・・・

俺が知っている中でも古いほうに分類されるゲーム機を『少しだけ部品を取り替えた』だけで近代のゲームが出来るようになったり・・・・

『ちょっといじった』だけでこの有様なのにそれを一から作る?絶対に言えることが一つある。

こいつが物を作ったり、改造したりしただけでも魔改造顔負けの大改造になる事は必須である。

できれば物理の法則は無視した作り方はしないでほしいかな・・・・・・

『で?いいのか?悪いのか?』

「・・・まぁ、なにもデメリットはないからな。いいだろう。」

『なら決まりだ。よろしく頼んだぜ?彩峰中将?』

「ああ、ならば北は任せたぞ?()()()()?」

『・・・・まだはえぇっての!』

そういった瞬間に鉄との回線は途切れた。

これで北の国連軍と司令部の壊滅の可能性は激減された。たった一人の兵士にすらなっていない、たった一人の人間の力で

少し心の片隅でまた救われる人が増えたと思うと、やはり嬉しく思えてきた。

だが同時に悲しくもなった。

「デュラハン01より各機に告ぐ!デュラハン07、08は中隊を率いて司令部の防衛に向かえ!他は原住民の避難を第一優先として、西部より接近するBETAを迎撃せよ!」

『了解!』

彼は人類を生命体と認識しないBETAでも涙を流す、そんなこの世界では誰もしないほど心が脆い人間だった―――

「崔中将は連合軍を率いてBETAの迎撃を優先してください!」

『了解した。』

だがそんな彼の心は誰も理解せず、ただ馬鹿にするだけかもしれないがそれでも彼は涙を流し続けるだろう―――

「成すべきことは成した――――後は機を熟すのを待つのみ、か」

それが彼の唯一の世界に対する、謝罪でもあったから。




どうも!光影陽炎です!

何とか、休みの間にストックをためていけたらいいなと思います。

感想などを待っています!

では感想返しです

>SOPさん

生きて帰れは、伊隅大尉からいただきました。
個人的にも、この台詞は好きです。

では、また会いましょう!


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第一章 終局

それは、たしかに舞にも見えた。

幾多もいる怪物を切り刻み、吹き飛ばし、蹂躙する鋼鉄の巨人。

しかしその力は絶対で、触れる事すらかなわない力でも見えた。

だがその力を振るっている巨人の目にはなぜだろう、一筋の涙が零れているようだった。

12:00

釜山広域市 北方

 

もう、どれほどの数を相手にしたのか分からなくなった。

万を数えたあたりから数えるのをやめているが、半分は削れているだろうと思った。

両手に剣と刀を持って切り落とし、銃を使って吹き飛ばしもした。

だがそれでも津波のような行群は収まらず、2km先の司令部を目指して元10万の大群はその力を暴走に近い状態で出していた。

さすがにこの数が減らない事に苛立ちを覚える。

「あぁ、くそ!数が減りゃしねぇ!」

なんて途方もない事を叫びながらBETAの海に突貫し、そして喰い荒らしていく。

何度繰り返したか分からない所で、急に目の前に中将が現れた。

『鉄!後どのくらい掛かる!』

中将の問の答えのために、向こう側の画面を見る。

二足歩行の一つ目と同じく、目から光線を出してくる二つ目を重点的に撃破していたので、残りわずかと考えてもいいだろう。

タコと盾化けは通る度に大量にいたので、これも撃破。だがしかし数が減る事はなく、今も大量に残っているだろう。

蜂のような蜘蛛はでかく、邪魔な存在だったしこれも撃破。タコや盾化けとは違って目立っていたので半数ほどになる。

以上の予測を計算して

「15分だ!後15分で大型は全滅させる!小型で光線を出してくる奴は全滅させた!その他の小型、中型は任せる!」

『了解した!大型の全滅が済み次第、前線の援護に回ってくれ!』

「了解だ!」

中将との通信が終わり、軽く深呼吸をして心を落ち着かせていた。

難しい事は考えず、今はただ目の前の事に集中して、奴らを全滅させる。

そういえば昔、祖父にこんな事をいわれたことがある。

「お前はその力を、何のために利用するんだ?」

俺の力、つまりはフェンリルの事なのであることはすぐに分かった。

確かにこの力は一歩間違えば世界をも滅ぼす事が出来る。

だがそれを行えば、『世界』に殺されてもおかしくはない。

その時の俺はただ普通に自らの夢のためにこの力を使い、使役すると言った。

誰もが一度は憧れたことがあるかもしれない

「俺はね、()(-)ちゃん」

その夢は、とある英雄のような夢ではないけれど、それでも俺は

「この両手で救える物すべてを、救うんだ。」

俺の象徴を否定するために、この力を使う。

 

 

ほんの40秒程度の事なのに、とても長く感じていた。昔の俺の誓い、今は亡き祖父との誓いだった。

俺の存在をすべて否定する誓い。その誓いを破る事は無く、また成した事は無い。

「まったく、その時の俺の頭を疑うよ。ほんっと。」

まぁ、当時の俺がどれだけ夢物語に憧れていたかが分かってくる。

この力は誰かを救うと信じて疑わなかった俺と、いろんな人間を見てどれだけの人間が欲だらけなのかを見てしまった今の俺。

10年も経つとこんなにも変わるのだなと、つくづく思い知らされる。

でも案外夢なんてものは、叶いやすかったりもする。

そして俺にも夢があった。

俺の夢は『誰かを救える人間になる』ことと『いろんな場所を見て回る』ことである。

俺の終着点ラストターミナルはそろそろなのかもしれない。

「狼化フェンリル発動、5秒後に『神下ろし』を展開。20秒以内に外装パージ」

自身と機体を同調させて、身体影響を機体にも起こす事が出来るシステム―――『クラン』を発動して機体の耐久値を上げていく。

同時に神下ろしの影響によって俺の体に刻印のようなものが浮かび上がって機体の外装パージと同時に刻印が光りだす。

さて、準備は完了した。

「用意はいいか?アンラ」

<こっちはOKだよ、ウルフ>

俺が呼んだアンラと呼ばれる第二人格は俺の事を契約時の名前で呼ぶ。

今となっては二人とも名前を変えているのだが、その名前で呼び合う事は無い。

<さて、僕は君の呼び出しに応じたよ。君は何を対価にするんだい?>

「そうだなぁ・・・・後20年の俺の死因かな。」

<今回は大きいねぇ、そんなに使うのかい?>

「10万が相手だからな、備えあれば憂いなしってやつだよ」

アンラは人の負を糧に存在しているような物。だから俺の負を奴に喰わせる。

そして俺の負というのは――――

<これでまた死が遠のいたね。それじゃあ、後20年一緒になるわけだ。>

「ったく、またテメェといんのが20年増えんのかよ・・・・めんどくせぇな。」

<まぁまぁ、そう言わずに>

『世界』の名を持つ事が許された『邪神』アンラ・マンユと共にいる期間である。

「サポートは任せたぞ、アンラ」

<はいはい、任されましたよ。>

いつもの会話を終えて、死地に突っ込む俺とアンラの顔は、いつに無く笑っていた。

ただこのときまでは、この世界がどれだけ残酷なのかさえも分からずに。

 

 

 

 

 

 

 

この戦闘の後、彼らを見たものはいない。

 

そして世界各地にて、彼らを発見したという報告が上がっていた。

 

ある時には、元ソ連首都モスクワ付近に―――――――

 

またある時はベルリンに―――――――――

 

またある時はギリシャに―――――――

 

そして彼らを見たものは、指をさしてこう言った。

 

『血の巨人』と―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らの矛盾は、今ここから始まった




連続投稿の光影陽炎です!

今回はそれほど長くもないはず・・・・です。

普通がどれくらいだか分からないですからねぇ

ぎゅうぎゅうにつめて書いてるから、短く見えてるだけなのかな・・・?

考えたってもしょうがないですよね!では、一章終了をきっかけにアンケートをしたいと思います!

司会はこちら!

本作ツイン主人公の片割れ!黒鋼克影!

克「読者達よ、よろしく頼む。」

そぉぉぉして!原作主人公こと、白銀武とユウヤ・ブリジッスです!

武「なぁ、なんで俺達まで呼ばれてるんだ?」
ユ「俺に聞くなよ『英雄』」

ユウヤさんは原作より結構丸くなってるほうなので、日本人にも少しはやさしいです

ユ「お前は黙ってろ、ジャップ」

あら?意外と冷たい・・・

克「ま、弱冠15歳のお前が何言ってもしょうがないだろ。」
武「あれ?作者ってまだ15なのか?」

えぇそうですよ!いまだに十五歳のガキですよ!だからなんですか!

武「いやぁ、まだ中学生なんだなぁって思ってな」

誕生日が3月なんだからしょうがないでしょぉおおおおおお!

ユ「3月のいつなんだ?」

三日ですよ!

武「あれ?3月3日ってたしか、ひな祭りだよな?」
克「親父から聞いた事があるんだが、確かひな祭りって女の子の日じゃ・・・・」



ひな祭りが男の誕生日で何が悪いんだぁああああああああああああああああ!

ユ「裏話だが、作者自身もこの誕生日のせいでバイトを49件落ちているらしい。」
武「うん・・・なんていうか・・・ゴメン」

謝ってもいまさら遅いですよ・・・・ううぅ・・・

ユ「・・・日本人って涙脆いのか?」
克「そんな事はないと思うんだけど・・・」
武「っていうか、早くアンケートを始めてくれ。」

そうだった!早くしないと!

克「立ち直りはやっ!」

細かい事はいいんですよ!じゃあとっとと始めますよ!

ユ「じゃあ俺から行こう。
読者の皆さんにアンケートとして、次の中から一つ決めてくれ。」
武「まず一つ目のアンケートは『作者のクロス作品数に限度をつけるか、また限度はいくつまでか』」
克「決まったら感想にて、回答をしてくれ。期限は・・・・作者の誕生日までらしい。」
武「ずいぶんと長いな。」

まぁ、この作品の前の作品の内容はクロスを前提にして書いてましたからね、どれをクロスするかは未定で書いてましたから。

克「なるほど、じゃあ次は何の作品かだな。」
ユ「まず、決まっているのはガンダムシリーズの通称『ポケットの中の戦争』ポケ戦と
08小隊、SEEDとACE COMBATのZEROと5を出すらしい」
克「あれ?ほかのはどうするんだ?」
武「作者が他の作品を知らないのも理由だが、『ガルム』と『ラーズグリーズ』に関連するものがオルタにも出ているかららしい。」

とりあえず受付はしますが・・・実況動画を見て勉強しかないですね。

克「まぁ、しょうがないと言って許してやってくれ。」
武「次にクロス作品だが……これマジで言ってるのか?」

結構作者はマジで言ってます。

武「じゃあ言うぞ……
候補に挙がっているものは

IS-インフィニット・ストラトス-
fate/
.hack
ソード・アート・オンライン
月姫
エヴァ
テイルズ(シンフォニア・レジェンド・リバースに限る)
ハイスクールD×D
リリカルなのは
恋姫無双
戦極姫又は織田信菜の野望
未来日記
school days
ゼロの使い魔
ゾイド
鋼鉄の咆哮

の、以上だ。」
克「ところどころ、戦争ものとは全く関係ないファンタジーな物まで入ってるぞ?」
ユ「しかも確かshcool daysって・・・」
武「あぁ、外道アニメで有名となった作品だ。」

まぁ、詳しい事は聞いておかないでくださいな。

克「本人曰く、『やるからには本気《マジ》だそうだ。」
ユ「他にも出してほしい作品があれば、出すようにしよう。」
武「キャラクターだけ出して、とかも受け付けているらしいからな。どんどん出してくれ。」

そろそろ時間ですよ

克「おぉ、そうか!じゃあ最後に・・・」」




「「「次回に乞うご期待!」」」


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covenanter

とあるアニメの主人公のお話です。超短いです。続きが知りたい方は言ってください。速攻で書きます。


 

この世界にはじめて来た時、すごく悲しかった。

 

友人も、先生も、クラスメイトも、みんないなくなっていた。

 

つい昨日までは、クラスメイトと先生との鬼ごっこをしていたり、友人達と一緒に昼食を食べていたのに。

翌日になると、普通な平穏の日々が地獄に変わっていた。

 

そんな世界を最初は否定した。

夢で終われば何度いいと思ったか。寝て起きればそこにあるのはいつもと変わらない自分の部屋があると信じてた。

 

でも、それでも現実は無常だった。

 

そんな世界の中で、いろんな人に教えてもらった。

 

ただ言えば叶う世界なんか存在しないって。真の平和なんか実現できるわけないって。力を持たないと何も出来ないんだって。

 

だから僕は、自分の力でみんなを護りたいって、そう思った。

 

誰かがその手を振り下ろして、傷つく世界だったら

 

その誰かの変わりに、僕がこの手を振り下ろそう。

 

 

誰かを信じたから、壊れた世界があるなら

 

僕はその誰かを信じて、壊れる世界を護っていこう。

 

 

そして、僕が消えて悲しむ人がいるならば

 

約束しよう―――――――

 

この手に、心に、世界に、力に、夢にかけて

 

「必ず、帰ります。」

 

だって僕は――――――

 

 

 

どうしようもない、馬鹿なんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶望の世界の中で、また一人、漂流者が流れ着いた。

 

幾多の戦いを中を生き残った彼は、その技術と、努力と、数々の功績の中で、彼の事を、人はこう呼んだ。

 

 

 

誓約者(Covenanter )』と――――




どうも!光影陽炎です!

さて……誰の事か、わかりますよね?
彼を出すかどうかは、皆さん次第です。
ちなみに既存するBETAの数は10の37乗と言われてますが、当作では上位存在の数が10の37乗と言ってますので、BETAの数は、後7桁ぐらい増えてます。

簡単に言うと……外道です。

その中で出すか出さないかは、読者の判断にお任せいたします。

では、また会いましょう。


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第2章一話 テスト

ストックが切れたので、一週間に一話投稿になるやもしれません。


2XXX年XX月XX日(X)

 

 

眼帯の学生side

 

中学時代の友人―――彩峰―――がこの世界を去ってから2年が経った。一年前の時は受験だ何だとうるさくなっていた時期だったが、

今となってはもう昔の話だ。

 

俺は今彩峰の友人である鉄と同じ高校に通っている。昔、鉄のことを彩峰から聞いた事がある。

 

「俺さ・・・・・・小学校の時、すっげー嫌われものだったんだよ。」

「ほぅ・・・お前がか?珍しい事もあるのだな。」

 

その時の彼は学校全体の学生、教師から絶大な信頼を置かれていた。

教師には話せない相談に乗ったり、他校との揉め事を解消したり、校内清掃etc・・・・・・

とまあこんな事を繰り返しているうちに、両方から彼は信頼されるようになった。

 

そんな彼が、突然この世を去っていった。

 

犯人はすぐに判明したが、動機はとても単純な物だった。

 

『小学校時代から目の敵にしていた相手の味方をしたから』

 

たったそれだけのために、彼は殺されたのである。

 

もちろん彼等にはそれ相応の罰が下ったが、世界は他の者にその悪意の牙を向けた。

彼が死んだのはその『相手』の味方をしたからだと、だから彼が死んだのだと―――そう言ったのである。

そしてその悪意の矛先が完全に鉄に向いた頃には――――すでに手遅れだった。

 

翌日、テレビでそのことがニュースで流れたが学校に行くとそのニュースをよくやったという奴が多くいた。

なぜ彼等があの内容をよくやったと言えるのかが、俺には理解できなかった。

 

 

だから俺は、世界を否定した。

 

 

 

side out

 

1999年 1月 26日

 

京都衛士養成学校

 

 

あの光州作戦から2ヶ月ぐらい経ってから衛士養成学校に二人の人間がその門を叩こうとしていた。

 

「おお~ここが武家の訓練学校か・・・・・・」

「僕達風に言うと私立学校みたいだね」

 

アンラこと鉄光成はあの作戦の後、あの機体のある機関によりその体を俺と分離する事が出来た。

元々こいつは魂として数えるので、他の身体に無意識の存在として入り込めるのだが、やはり自分の身体は欲しいらしかった。

 

身体精製に成功したこいつは、彩峰の取り計らいで鉄光成という人間として社会的に存在する事になった。

ちなみに俺は黒鋼克影の名前になっている。まぁ、前と変わらない名前だった。

 

「にしても、あいつの変わりようはすごかったな・・・」

「既に結婚もして子供もいるし・・・・・・」

 

俺らが話しているあいつというのは彩峰の事である。

俺達と同じで世界を渡る事になったあいつは・・・俺達より年を取っていた。それも20歳ぐらい。

しかも子供の名前が慧とは・・・・・・実子に妹の名前をつけてやがった!

さすがに俺達もそこにはツッコミを入れたが

 

「そんな事、誰にも分からんだろう?ハッハッハッハ!」

 

なんて事を言ってやがった・・・・・・分からなければいいって問題じゃないだろうと俺は思うよ・・・・

 

そして狭霧中尉―――今はもう大尉だが、下の名前で呼び合う仲になっていた。

あいつ慧の事が気に入ってるらしいが・・・・・・すべてを知っている俺は、あの作戦から昇格して中尉になった駒木さんは1時間もその愚痴を聞いていた。

あの後俺達の心にはある言葉が刻まれた。

 

『恋する乙女ほど、怖いものはない』と。

 

俺達は談笑しながら萩閣と尚哉を待っていたが、5分もしないうちにやって来た。

なぜか慧と駒木さんも一緒に。

 

「・・・・・・なんで、彩ちゃんと駒木さんが来たのか理由を説明してくれないかな?」

「お前らが養成学校になるから見送りに来たそうだ。」

「なるほど・・・・・・さてはお前、何か駒木さんに吹き込んだな?」

 

慧に関しては少し納得する所が俺にもあるのだが、駒木さんに関しては思い当たる節がどこにもない。

つまり結論はコイツがなにが吹き込んだ以外にあり得ないという答えに達した。

 

「鉄達は天涯孤独な奴らだから見送りぐらいしてやってくれ。と言われましたけど・・・別に准将は吹き込んでなんていませんよ」

「・・・・・二人とも自分の事低く見すぎ。」

「「・・・・・・」」

 

別に見送りがいなくてもよかったのだが、まぁここは萩閣の粋な計らいに感謝をしておく事にしよう。

 

俺達に関しては萩閣は何も話していない。

まぁ、俺達も2週間ぐらいはいろんな隠蔽だとかをしていたからな。

 

 

「そろそろ行かねば遅れます、准将。」

 

尚哉が萩閣に時間が押している事を知らせて、時計を確認していたらすでに14時を回っていた。

ちなみに萩閣が中将から准将に降格している理由は、前線維持よりも住民救助を優先した故の処置・・・らしい。

 

 

「おう、では行こうか二人とも。」

「じゃあちょっとばかし行ってくるからな。」

「じゃね~」

 

俺と光成は慧の頭をクシャっと撫でて、門を通っていった。

その頬が少し赤みを持っていたのは、誰も知らない事である。

 

学校の中に入ると、やがて校長室とプレートがある部屋に入ると校長と思われる人と萩閣が話しているのが分かった。

話し終わるのが確認できると、校長と思わしき人がこちらに来て、俺達の目の前に止まった。

 

「・・・・・・君達か、10万のBETAを相手に生き残ったというのは。」

「はい」

 

すでに光州作戦での事実を知っているからにして、この人は帝国陸軍の人である事が予想できた。

まぁ、俺と光成が萩閣と一緒にいる時点ですぐに分かるってもんだ。

 

「彩峰准将のお墨付きとはいえそう簡単に軍に入れてやれるほどこの国は甘くないのでな、ちょっとしたテストをしてもらおうか。」

「テスト・・・ですか?」

 

確かにいきなり部隊の目の前に出現した得体の知れないものをそうホイホイと信じられるわけがない。今回萩閣の目の前に落ちてきたのだって偶然に過ぎないからな。

しかも本人に聞いた話によるとあの部隊は日本の中でもトップクラスの精鋭が集まっている部隊だったらしいから、警戒のレベルが半端なかったらしい。

そりゃ目の前に怪物共の本拠地が落ちてくれば誰だって警戒するだろ・・・。

 

「あぁ、平地での二機編成(エレメント)同士による戦闘だ。」

「分かりました・・・で、機体は何を使えば?」

「そうだな・・・・・・陽炎でよろしいか?」

 

陽炎といえば、アメリカ産のF-15C イーグルと呼ばれる機体をライセンス生産をして近接戦闘に特化させた機体じゃなかったか?

今年で新規生産を終了した機体ともいえるかな。

まぁ近接戦闘に特化した機体と言われるほどの中々の機体だから、今回のテストには十分だろ。

 

「分かりました。」

「ではハンガーにて指示を待ってくれ。」

「了解です。」

 

そう言って俺たちは部屋を後にした。

 

実はこの時まだ知らなかった。

 

俺達が一体何者としてここに存在していたかに・・・・・・

 

萩閣side in

 

光成と克影が部屋を出てから、彼は口を開いた。

 

「まさか彼等が『血の巨人』とは・・・・・・」

「驚いたかね?」

「まぁ、あの外見で推測すると16なのでは?」

「なにも16で戦場出る事は、いまではそう珍しくもなかろう」

 

彼、巌谷栄二中佐も彼等の外見年齢には驚いていた。

実際のところ、尚哉も駒木中尉も戦術機から降りた彼を見たときには驚いていた。

 

「にしても、彼女らを相手に選ばれるとは・・・」

「分が悪いと、思うかな?」

「いえ、そうではないのですが・・・・・・」

 

だが実際の所、陸軍と近衛の中からトップクラスの衛士で二機編成(エレメント)戦最強といえば

彼女らしか思い浮かばない。

俺としても、あいつ等が二人いるのが分かったのがつい最近だからな・・・・・・

 

「准将?どうなされたのですか?顔色が優れないようですが・・・」

「いや、たいしたことではない。気にしないでくれ。」

「は、はぁ・・・」

 

なんで同じ世界に同一人物が存在できる理屈が俺には全く理解できなかった。

 

side out

 

 




今回は、後書きは無しです


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人が歩けば人に当たる

 

俺達二人は、校長に言われて、ハンガーに向かっていた。だがしかし、向かっても向かっても一向にたどり着かない。

ある程度歩いていたら、突然光成が話しかけてきた。

 

「ねぇかっつん」

「どうしたてっつん」

 

かっつんというのは克影の頭文字から取っている。本人曰く、こっちの方が呼びやすいかららしい。

だったら俺もと、鉄《くろがね》を訓読みにして鉄《てつ》と呼んでいる。

さて、話題を戻そう。

 

「ここさ、さっき来たところだよね?」

「そうだな」

「何回目だっけ?」

「4回だな」

「「………迷った」」

 

弱冠15歳二人組みは、年に似合わず、私立高校と思われる校舎にて、迷子と化していた。

校内図を探しても見つからず、それぞれの直感でハンガーに向かっていた。

よくよく考えてみると、迷って当たり前だったのかもしれない。

 

「よし、次あっちに行こう!」

「いや、こっちだな」

 

二人とも左右別々の方向を指差して、意見が分かれてしまった。

そこからは、あっちだこっちだとぎゃあぎゃあ騒ぎあって、一向に意見がまとまらなかった。

 

「あ、あの!」

「ん?」「はい?」

 

二人であっちだこっちだと話しているうちに、後ろに同じぐらいの年の女の子がいる事に気が付かなかった。

服装からして、この学校の生徒なのだろう。と、迷っている二人に名案が浮かんだ。

 

「呼ばれて早々悪いが、ハンガーの場所を知ってるか?」

「は、はい。知ってます」

「出来たら、案内を頼んでもいいかな?恥ずかしながら道に迷ってしまってね。」

 

ハハハと、二人して頭をかきながら、恥ずかしそうにそう言った。

そもそもこんな所で声を掛けられる事自体が、疑問な所だったが、ここは武家の学校である。

一般市民の格好をしている二人組みが、廊下で騒いでいる事に違和感を持っても、普通だと思われる。

まぁ、この学校が武家の学校だという事を知らされたのは、後の話ではあるが。

 

「分かりました!こちらになります」

「こっちの道であってたじゃん!」

「るっせ!」

 

移動中も騒いでいる二人組みであった。

途中光成がはっと何かを思い出して、案内してもらっている子に話しかけた。

 

「そういえば、名前をきいてなかったよね?僕は鉄光成、よろしくね!」

「あ、はい。よろしくお願いします」

「俺は、黒鋼克影だ。苗字の読みは一緒だが、こいつとは兄弟でもなんでもないからな。」

 

慧にも間違えられそうになったが、よく兄弟と勘違いされてしまう事もある。

外見もそうなんだが、苗字の読みが一緒なだけでこうも間違えられやすいとは思わなかった・・・

 

「私は篁唯依と申します。」

「よろしくね、篁さん」

 

篁は、聞いたところ今年で卒業をして、衛士になるらしい。最近は女性も兵士にさせるとはな・・・

なんつーか、現実主義というか、利己的というか、この世界はどんだけやられてるんだよと、つくづく思う。

 

「そういえば、お二人はなぜこのような場所に?」

「ちょっと、志願をしようと思ってな」

「知り合いに頼んでみたら、テストをする事になって、ハンガーに行こうとしてたんだよ~」

 

テスト、というところに少し反応をした彼女は、妙な顔をしてこちらを向いた。

 

「鉄さん達は、戦術機に乗った事があるんですか?」

「あるよ~」

 

質問の解を得た彼女は、何かを決意した顔で、再度こちらを向いて、こう言った。

 

「教えてほしい事があります。」

 

 

篁さんの案内によって、何とかハンガーに付いた僕達は、現場にいた先生の指示に沿って、戦術機に乗った。

 

「操縦法などは分かりますよね?」

「えぇ、大丈夫です。」

「では、御武運を」

 

そして僕と克影はハッチを閉めて、ハンガーのシャッターが開くまで少しの間機器の操作に慣れるため、色々いじってた。

やはり、俺達があの作戦で最初から使っていた機体―――――禍具鎚とは勝手が違うのか、コマンド入力が違っている。

どう違うかと言われても、少し説明に困ってしまうが、簡単に言うと『省略キーはあるのだが、コンボが存在しない』といえば分かるだろう。

 

機体慣れをしているうちに、シャッターが開いて視界がゴツゴツの機械から地面と草のある景色に移り変わった。

 

「これより平地での二機編成(エレメント)戦『case:46』の詳細設定をお伝えします。まず装備は対人類装備、付加要素はcpの壊滅です。」

「テストの相手は?」

「彩峰准将の命により、名を明かす事は許されていません。」

 

詳しい説明を聞き終えて、ちょっとした考えから相手の名前を教えてもらおうかと思ったが、やはり何か考えがあるのか、愁閣が伝えるのを許してない。

また、いつもみたいに何かを考えての案だろーが…今回ばかりは時間が悪かった。

さっき篁からいわれた言葉が頭から離れない。

 

『血の巨人』を知ってますか?――――と、そう言われた。

 

詳しい話を聞いてみると、2週間前ぐらいから世界で噂されているたった一機の戦術機の事らしい。

BETAとの戦闘になると、血のような赤いオイルをメインカメラから流すそうだ。

しかも彼が現れる場所は、世界のどこにでも現れるらしい。

 

たとえばモスクワだったり、ドイツだったり、ギリシャだったり、それはもうハイヴにも現れたらしい。

 

もしそんなのが今回の相手だと想像していると…こちらも本気にならなければいけない。

 

「他にご質問はありますか?」

「いいや、特に何もない。ありがとうございます。」

「いいえ、ではご武運を」

 

オペレーターがそう告げると、テスト開始のアラートが鳴った。

そして目の前に現れたのは、二機の真紅の機体『瑞鶴』だった。

機体の色が赤色、そしてここが日本という事は―――――と、答えに辿り着きそうなところで、それを片方の瑞鶴に阻まれた。

 

「!?チィ!」

 

少し反応が遅れたため、突撃砲が犠牲になったが機体自体に損傷は無かった。

だが、初手で遠・中距離の攻撃手段が無くなってしまったのは痛手であった。

 

『克影!』

「んだよ!」

 

突撃砲を長刀で斬られ、その後瑞鶴の連撃に反撃の隙を窺っていた所に、同じく突撃砲が斬られてないものの、もう片方の瑞鶴によって反撃が出来ないでいる光成から

突然の通信が入ってきた。

 

『片腕でも、戦闘ってできるよね!』

「あぁ!俺をなんだt…って、それかよ!?」

 

光成の質問に、当然と答えた俺が少ししてからその質問の意味に気づくのには、そうそう時間は掛からなかった。

だが戦術機と呼ばれるこいつで、やるとは思わなかったが、まぁ言われたからにはやるしかない。

 

さぁて、今からやるのはちょっとしたマジックだ。

 

まず最初に別々に戦闘している俺と光成が、背中を合わせるようにして集まる。

そしたら瑞鶴は警戒して相対するように俺達の正面に立つ。

隙を見計らって俺の何も持っていない腕で、克影の長刀を抜いて、そのまま前方の瑞鶴に切りかかる。

 

「シッ!」

 

機体を止まらせないようにして動き、そして徐々に力を上げていく。

速さもそうだが、長刀を片腕で振るっているので、そこに重さが掛かる。

つまり、威力が重く普通に切りかかるよりも速い長刀が左右から切りかかってくることになる。

さて、どう出る?

瑞鶴01side in

 

でたらめだった。

 

とにかく、動きがでたらめ過ぎた。

 

まるで戦術機を自分の体のような機動で、左右からものすごい速さで長刀が襲い掛かる。

 

片方を防ぐものの、すぐにもう片方から襲い掛かってきて、徐々に押されかかっている。

いや、徐々にというのはおかしい。すでに押されている状況だ。

 

圧倒的過ぎるその力の前に、長刀は持たなくなり、ついには砕け散った。

 

「!?クッ!」

 

後ろに下がり、柄を投げ捨て、武装を突撃砲に換装し、次の攻撃の嵐に備え、銃口を敵に構えた瞬間―――陽炎の片腕が飛来した。

 

「チィ!」

 

飛んできた腕を上に上がって回避し、片腕だけの目標(ターゲット)を撃ち落すため接近したのだが、突然右側の跳躍ユニットが切り落とされた。

 

「なんだと!?」

 

推力の均衡を失った機体は、そのまま地面に機体を擦り付けるように墜落した。

 

「ウッ」

 

当たり所が悪かったのか、頭を強打した私は、視界がぼやけて見えた。

そして戦闘中に最後に見た光景は、片腕を失った陽炎が私の前に立っている姿だった。

 

瑞鶴01side out

 

 

紅い瑞鶴との戦闘に勝利した俺だが、正直危なかった。

機体が俺の速度に追いつけなくなり、両腕の耐久が持たなくなって、片腕どころか両腕吹き飛ぶ所だった。

もし突撃砲で投げ飛ばした腕を撃ち落したら、早めに終わっていただろうが、上に逃げられた時はもう片腕を捨てる事になると思ってヒヤヒヤした。

まぁ腕がなくても、戦闘は続けられるんだけどねぇ・・・

 

ちょっとした芸当をしたけど、多分武士道精神の人にはめちゃくちゃに怒られるんだろうな~

だって、ほらねぇ・・・()()()()()()代わりに使ったからね。多分怒られるですまないんだろうな。

光成の方も何とか勝ったみたいだし。判決でももらいに行こうかな。

 

 

・・・・・・多分落ちるけど。




どうも~光影陽炎です~

いや~最近すごく忙しくなってきました。

バイト、生徒会、市民劇、部活etc・・・

まぁ、がんばって生きたいと思います(誤字にあらず!)

感想や疑問に思った事、または要望などありましたら感想板にてお待ちしております!

では、また会いましょう!


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邪神か、鬼神か

長らくお待たせしました


俺と光成の戦闘が終わったのが、確認できたのか、HQから通信が入った。

 

「黒鋼克影様、鉄光成様、戦闘の終了が確認できました。指示に従い、ハンガーにお戻りください。瑞鶴はこちらで回収いたします。」

「了解だ。」

『了解~』

「では指示いたします。まず・・・・座ひょ・・・」

「ん?」

 

突如、HQからの通信状況が悪くなり、オペレーターの声が徐々に聞こえなくなってきた。そして、オペレーターの声が完全に途絶えた時、突然地鳴りが始まった。

 

『何々!?まだテストは終わってないの!?』

「いや、これぁテストっつーか・・・実践だろ」

 

俺の言葉をきっかけに前方約3㎞先に現れたのは、光州作戦にも現れた、(ゲート)級と呼ばれる、一言で表す『ドリルのような形をした怪物』だった。

一匹が地上に出たらまた一匹、一匹と数を増やしていき、最終的には5匹になるまで地面からクジラのように頭を出してきた。

そして5匹目が地中から出た後、最初に出てきた門級がその口を徐々に開いた。中から蟻のごとく現れたのは、BETAご一行だった。

 

「なんだこりゃあ・・・」

『パッと見て、5千はいるねぇ・・・』

 

門級が腹に入れられるBETAの数は、5百が限度だと聞いた。だが実際に見てみると、一匹に当たり千は入れるだろうと思うぐらいの大きさだった。

だがこんなに揃っても所詮は俺達にとっては烏合の衆、ただの蟻同然にしかならない。

 

「光成!俺が前に出んから、お前は瑞鶴を一か所に集めて漏れた奴を仕留めてくれ!」

『わかったよ!気をつけてね!』

「心配すんだったらてめぇの心配でもしな!」

『はいはい!』

 

光成に先ほど沈めた紅い瑞鶴を任せて、ブーメランのようにひん曲がった長刀を持って、俺は跳躍ユニットを吹かして、地面すれすれに飛行して、6千の蟻に突っ込んだ。

勇気と蛮勇は意味が違うとよく言うが、これは勇気でも、蛮勇でもない。

これは、殺戮だ。

 

そして蟻の大群に突入する3秒前に、叫んだ。

 

「一方的に殺ってやるよ!この無感情の炭素系生物どもがぁ!」

 

そして、克影とBETAが接触した瞬間、赤い風が吹き荒れた。

血は風に乗り、肉は四散し、巨人が通った道は、赤く染まっていた。

ただ、彼らからは分からないかもしれないが、その巨人の目には、確かに赤い『血の涙』が流れていた。

 

その涙は、一人の『英雄』と呼ばれた、因果に唯一逆らった男の運命を変え、この世界そのものの運命を、変えていくことになろうとは、この時誰も想像することのできない事である。

 

_____________________________________________

 

 

血の風を起こす克影は、メインカメラから血を流しているように見え、『血の巨人』の正体が彼であることを、表していた。

その絶対的な力は、自分を殺す運命に抗っているようにも見え、同時にこの世界の人間を救うことができる、必要不可欠な力でもあるように見える。

そして彼の姿は、彼と出会うまでの時の自分と、重ねてしまった。

 

彼と出会うまでの僕の『罪』は、未だに消えることはなく、僕の心を蝕んでいる。

 

〈おまえが殺したんだ!私の父を!あなたの妹を!そしてこの世界を!後悔しろ、そして一生を持って償え!それが、おまえが数多の世界に対する、唯一の『罪滅ぼし』だ!〉

 

彼女達の父を幾度もこの手で殺し、僕の妹でさえ自らの手で殺め、そして彼女ら自身もその血塗られた手で殺してきた。

そんな自分を赦されようと思っていない、いや赦そうとも思わない。

このドス黒くなってしまった手を、何度も赤く赤く染まってしまったこの手を、僕は何度も振るうだろう。

それが僕、それこそが僕が僕であるための、誰にも赦させやしない、僕自身の罪だから。

 

アンラ・マンユ、アヴェスターの絶対悪。世界のすべての悪を代弁する『神』。そして僕の罪の名前と、僕自身の本当の名前。

鉄光成という名は、偽名でもあるけど、僕が生前父さんと母さんから世界に命あるものとして名付けられた、『人間』としての名前。

 

神と人間、支配するものと支配されるもの、赦すものと赦されざる者。

 

相対する、というのも可笑しいけどアンラ・マンユは、人の罪を神に対して表す存在だ。

言うなれば、国の王に対して国全体の心を伝える革命の指導者とでも言おうか。

 

その存在は、善き心を持つ者たちにとっては、確かに悪なのかもしれないが、その悪とは一体なんなのか?

その答えは、未だに見つかってもいない。

 

今はまだいい。まだこの罪は赦されるものではないから。でも、この罪が赦されるようなことが起きてしまい、君が自らの存在と、その罪に気付いたその時、その答えは見つかるのかもしれない。

 

「その時は、君が僕を止めるか、僕が君を殺すまで、世界に平和の二文字は降りてくることは無いだろうね・・・。強くなるんだ、黒鋼の名を冠する我が友にして、僕とは異なる選択を選んだ影を持つ光よ。」

 

僕を、倒せるほどに・・・・・

 

_____________________________________________

 

 

落ちかけた意識の中、私は巨人が怪物を殺していく、『お伽噺』のようなものを見ていました。

 

そして、意識がはっきりと覚めた時、私は目の前の光景に、ただ目を奪われるばかりでした。

 

「なんなの・・・これは」

 

右へ左へと、時には上に上がり雷の如きその速さで下に飛来するその姿は、目には見えないほどの速さでした。

ただ、あの巨人に赤い涙が流れている事に気づくのは、少々時間が掛ってしまいましたが。

でもその眼に、涙が流れていることに気付いた時、私は部下の言葉を思い出しました。

 

血の巨人――――世界各国に現れ、今や民衆の希望ともなっており、軍部が目の敵にしている存在。

実際にその姿を目に捉えた者はおらず、神出鬼没なその存在は、今の世界の軍人の中では、もはや神話に出てくる英雄のような存在になっているもの。

そんな巨人を相手に、今回戦いを挑むような結果になったのは、『光州の英雄』と呼ばれている、彩峰萩閣准将のお願いから始まったことでした。

 

突然、元瑞鶴のテストパロットをしていた巌谷中佐から、彩峰准将よりとある志願者2名の試験官をしてほしいと依頼が届き、私と私の双子の月読真耶がその試験官に選ばれた。

最初は、楽な仕事だと、すぐに終わらして守護に戻らねばと、そう思っておりました。

しかし・・・それは、彼らによっていとも簡単に覆されました。

黒鋼克影と鉄光成、城内省のデータベースに存在しない二人。

彩峰准将に取り入り、この日ノ本を堕落させようとする工作員の者かと思っていたのですが、実際に剣を交えて戦うと、工作員の可能性はいつの間にか、無くなっていました。

 

彼らの振るう一つ一つの刀には、迷いがなかったのです。

 

幾度なく、冥夜様と殿下のお守りをしてきた私達二人には、御二人の命を奪おうとする輩を、排除していった私達には、分かりました。

彼らは、他国の工作員とは違い、その心に真に嘘を付くことができない。あくまでも、自分自身の心に偽ることができないということです。

そして私たちは、彼らに倒されていました。

 

「お目覚めですか?」

 

機体から降ろされて、複座式の陽炎の管制ユニットの前部座席に座っていた少年が、私が目覚めたことに気が付いたのか、突然声を掛けてきました。

あんまりにも突然だったので、少し驚きましたが、後ろも見てみると、15ほどの少年が目の前におりました。

 

「・・・子供?」

「失敬な、僕はこれでもさっきの戦闘であなたに勝った人間ですよ?」

「え?」

 

彼の言葉に少し呆けてしまいましたが、彼が言っていた、さっきの戦闘というのは、明らかに私たちのテストである事はすぐに分かりましたが、やはり気になるところがいくつもあります。

 

「少し確認を、あなたが黒鋼克影ですか?」

「違います、僕は鉄光成です。まぁ、日本人ではありますが、この国のデータベースには存在しない者となってはおりますがね。」

 

彼ら自身が、この国のデータベースに存在しないことと、なおかつそれを偽装しようとしない事に、少し違和感を覚えましたが、現状それは関係の無い事なので、殿下に命ぜられた事を、優先させていただきましょう。

 

「では次の確認を、あなたたちはいったい何者ですか?」

 

工作員であればこの場で死を、純粋にBETAと戦い国を、人々を守るような者であれば、連れて行くことも可能ではありますが、この場の返答次第によりますね。

そして、彼の次の一言が出るのに、そう時間は必要ありませんでした。

 

「普通に生活をしていたい、ただの人間ですよ。」

 

その言葉で、私は確信しました。

この二人は、信用に値する人であるということに。

 

「・・・分かりました、貴方達を信用します。」

「そんな簡単に信用してもいいんですか?裏切る可能性も、はずれじゃないかもしれないですよ?」

「・・・私が言うのはおかしいですけど、そんなことができる人は、相当な芸当を持つ工作員ですね。」

 

確かに私は見ました。彼の瞳の奥にある、確固たる意志があることに。

そして私は知っています、彼と同じ眼をした人達を。

 

まず煌武院殿下、次に冥夜様。そして、彩峰准将。最後が・・・名前を知らない、あの人。

私達二人と、ある契りを結んだ名前を知らない人。

契りを結んだ相手の名前を知らないなんて、不謹慎などいろいろ言われますが、でもあの眼と、契りだけは覚えております。

 

「さて、と。僕はもう一人の方を守らなきゃいけないから、あっちの方に行ってもらってもいい?」

「この現状は、テストなのですか?」

 

目を覚ましたら、目の前で陽炎と6千ものBETAがいきなり戦闘していたので、現状把握が出来ていなかったのですが、これがテストにしても現実にしてもあの数を相手にするのは至難の業であることは確かであることには変わりません。

 

「さぁ?でも、テストだろうが現実だろうがやることは一緒でしょ?」

「・・・・ええ、分かりました。」

 

彼の言葉に私は同意を示し、ペイント弾で桃色に一部染まっている瑞鶴に戻り、突撃法を捨てて重量を軽くし、長刀を手に持って切っ先をBETAの群の中に向けて、跳躍ユニットを起動した。

 

機体は徐々に加速していき、BETAの群と衝突寸前でユニットを下に向け、上に上昇した。

現状、長刀でこの数を相手にしていると補給がないのを想定すると、せいぜい千を切れる程度であることは確かである。ならばとるべき手段はこの場からあの陽炎、もしくは陽炎のパイロットである黒鋼克影なるものを救出し、この戦場から撤退するのが常套手段だが、なにしろ相手はBETAである。後ろに下がればこれより被害は増し、京都は火の海と化すであることも無いとは言い切れない。

だがこの場からBETAが動かないのは事実である。理由は分からないが、陽炎を中心にほとんどのBETAがあの陽炎を目指している。それに加え、光線級は上空からも発見されていない。まぐれとは言いにくいがめったに無い絶好の機会というのは確かである。

ならば私が今やるべきことは、陽炎と共に6千のBETAを相手にすることだろう。

私は、攻撃の中心になっている陽炎をすぐさま見つけ、陽炎の背中を守るように上から降りた。

陽炎から通信が入る前に、こちらから通信回線を開いた。

 

「瑞鶴《レッド》02です!援護に参りました!」

『援護感謝する!が、それよりもこの現状を司令部に伝えてくれ!テストの続きとは思うが、司令部との通信が途絶えている状況だ!』

「!?」

 

彼が言うとおりに、司令部にこの現状を報告しなければならないのは確かである。そして同時に司令部との通信も途絶えているのも確かである。故に動ける者が司令部に早急に向かい、援護と増援の要請をするのがこの場にとって、最も有効的な策ではある。だがしかしこれには致命的な欠点がある。

 

「何をいっているのですか!この数を相手に一人でできるわけがないでしょう!?」

 

ただでさえ2対6千の状況なのに、私が向かえば1対6千になってしまう。つまり彼は私に自分を見殺しにしろと言っているのである。

 

『だがしかし、陽炎《フレイム》02は脚部の駆動部をやられている!そして瑞鶴《レッド》01は跳躍ユニットを破壊されている!だったら司令部に向かえることができるのは瑞鶴《レッド》02!あんただけだ!』

「し、しかし!」

『早く行ってくれ!俺もあんたを庇いながらじゃこれ以上は持たない!』

 

通信中もBETAを二人とも倒してはいたが、明らかに陽炎《フレイム》01が瑞鶴《レッド》02を中心にぐるぐる回りながらBETAを相手にしていたのである。彼が標的にされているというのに、この状況下で私を守りながら戦闘している、ならば早急に司令部に向かうべきなのであろう。

 

「っ!すみません!長刀は置いていきます!」

『ありがたい!よろしく頼んだぞ!』

「はい!それまでに生きていてください!」

『15で死にたくはないからな!』

 

そして持っていた長刀を地面に突き刺し、噴射跳躍で司令部に向かい、道中陽炎《フレイム》01が死なないようにと自分でも知らないうちに願っていた。

 

___________________________________

 

 

「行ったな・・・」

 

瑞鶴《レッド》02が司令部の方に向かったのを確認すると、すぐさまBETAの撃破に戻った。

肘より下が無くなった腕に無理やり要撃級の腕を刺し、奴らの頭を重点的に攻撃していた。

その時、刺した腕が硬いなと思ったのはちょっとした余談である。

そして瑞鶴《レッド》02が置いて行った長刀を無事な腕で持ち、両手を2刀持ちの型にして、できる限り腕を振りやすくした。

終わらない要撃級の腕と、切った要撃級の後ろから突撃をかましてくる突撃級の攻撃をかわしながら、よけるのと同時に反撃を繰り返していた。

右へ、左へと要撃級は頭を狙い、突撃級は後ろを狙って長刀で切り落としていった。

そして、その終わらない攻撃を10分も繰り返しているうちに、長刀がとうとう使い物にならなくなっていた。

 

「チィ!もう駄目か!」

 

使い物にならなくなった長刀を放り投げ、またもや空いてしまった片手で要撃級の頭を捩じ切るようにして、突撃級は要撃級の腕で正面からアッパーを食らわして何とか行けたが、もはやそれも持たない状況になっていた。

 

「後千は無いってのに…!」

 

装甲はところどころ剥がれてしまい、機体は黒と赤が混じった色になってしまっている。

正直、その程度の数だったらクランを使ってこの状況でも勝てるのだが、今あれを使うとどんな奴に目をつけられるか分かったもんじゃない。

跳躍ユニットを鈍器の代わりにでも使おうかとは一度は躊躇ったのだが、もはやそれをしている暇はないらしい。

跳躍ユニットを無理やり外して、警戒警報が鳴り響いているのを無視し片方の跳躍ユニットを鈍器に使って、要撃級の頭を殴り続けた。

9百・・・8百・・・7百・・・6百・・・5百・・・徐々にその数を減らしていくBETAではあったが、こちらの武器ももはやもう片方の跳躍ユニットしかない。

だが克影の顔には疲労が見えても、その眼には確固たる意志があった。

 

「生きてやる・・・・生き残ってやる・・・・」

 

―――――こんなところで死んでたまるかよ!

 

その生にしがみ付く姿は、ある者には鬼神に見え、またある者は希望に見え、またある者は孤独な少年にも見えたのだろう。

だが少年は知らない。彼は未だに自らの存在が何者なのかに。

 

だが少年は知っている。自分が何のためにあることに。

 

「俺は・・・俺の物語は・・・まだ始まってすらもないんだぁあああああ!」

 

克影は叫びながら、終わりを迎えてきた戦いに自らの体を削って再度死地に向かう。

また減るBETAの数。4百、3百、2百と減っていく。

 

「おぉおおおおおおおおおお!」

 

振り回し、潰していく克影。だがその後ろから要撃級が腕を振りかぶっていることに彼は、気が付かなかった。

その振り下ろされた腕は、彼のメインカメラを捉えた。

頭に命中した腕は、そのまま振り下ろされたまま上がることは無かった。克影がその要撃級の頭を潰したからだった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・もう、無理か」

 

少し頭が混乱していたのもあるのか、その攻撃に気が付かなかった自分の浅はかさに、悔やんではいるが、自分にできうることはすべてやった。

何度も来る強い衝撃。その衝撃は、死神の足音にも聞こえた。だがその足音の中でも彼は未だに諦めというのをしていなかった。

先ほどまで鬼神の如き戦闘をしていた彼が、急に腕を組んで何かを待っている彼に死神は近寄れなくなったのか、衝撃が来なくなった。

そして機械の手が画面越しにではなく、直に見えたことによって克影は、やっと安堵の息が出た。

 

『陽炎《フレイム》01!無事ですか!?』

「なんとか、無事ですよ。」

『よかったぁ・・・・』

 

そして管制ユニットが引きずりだされた目の前には、瑞鶴《レッド》02が他の随伴機と共にいた。

そして克影の無事を確認すると、彼女もホッと一息を付いていた。

だが、克影にはまた別のことが頭にあった。

 

「すまん、せっかく救出してもらったんだが」

『え?』

「疲れたから、寝させてもらうわ」

『え!?』

 

そう言って彼は、夢の海へと身をゆだねた。

 




どうも、光影陽炎です。

まず3週間ほど待たせてしまって申し訳ないです。

市民劇の本番間直というのと、学校の予選会の司会進行役や生徒会の会計などなど
言い訳は見苦しいですが、忙しすぎて本を書く暇もなかったのです・・・
申し訳ないです。

ついでですが、今日は僕にとってはひな祭り兼誕生日兼アンケート終了日です。
現在の集計結果だと、控えめな多重クロスになりそうです。
まぁ、クロスと本編はまた別枠にしますが
とりあえず、アンケートにも参加していただけると、うれしいです。
今日の23時59分59秒99999999999・・・・まで受け付けていますので、待ってます!
では、また会いましょう!


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誓った相手は・・・

夢を、見ていた。

 

とても懐かしい夢だった。

 

小さい頃の俺と、名前の知らない双子の年上の女の子だった。

その時から俺は、世間では『異常』のレッテルを張られていた。

5歳ぐらいの時には、すでに中学生ぐらいの頭脳を持っていた故に迫害をされていたのだろう。

 

我慢という名目により、小学校で遊ぶことを赦されなかった俺は、家の近くの公園でしか遊べなかった。

それでも、その公園に遊びに来る子供たちとはよく遊んでいた記憶はある。

まぁ、高校生になった俺にとってはその子達のことは忘れていたが。

でも、絶対に覚えておかなきゃと思っていたのだろうか、その双子と遊んだことだけは覚えている。

 

『いつも一人で遊んでいるの?』

 

それが、最初の言葉だった。

その時の俺は、ただ頷くことしかできなかった。

 

『じゃあ、一緒に遊ぼうよ!』

 

そしてその女の子は、自分とそっくりな女の子を連れてきて、一緒に遊んだ。

 

鬼ごっこ、かくれんぼ、おままごと、砂遊び・・・数え上げればいくらでも出るようなものだった気がした。

 

そして、夕方になって家に帰る時間になったとき、後から来た女の子が唐突にこう言ってきた。

 

『明日も、ここで遊べるのか?』

 

その質問に、その時の俺はただ黙って頷いた。

その答えに満足したのか、二人とも俺に別れの言葉を告げて公園から出て行った。

それからしばらくは一緒に遊んだ。

あぁ、確か雨の日にはあの子等の家にも行ったっけな。家がめちゃめちゃデカくて驚いたが。

晴れている日には、いつも公園で遊んだな。おもちゃとかは3人して別々なのを持ってきては、また次の日には会えるんだからと約束を破らないようにそれぞれのおもちゃを交換して家に持ち帰りもしたな。

 

そして2か月も過ぎたある日に、双子が唐突にこう言った。

 

『私達ね、遠くに行かなくちゃいけなくなったの。だから、もう会えないかもね。』

 

いつも通りというか、なんとなく分かっていた結果だった。

それが引っ越しというものであるのも分かっていた当時の俺だったが、やはり悲しいものは悲しいのか、その場で無言に泣いたな。

 

『なんで、嫌だって言わないの?』

 

言いたかった、でも言っちゃいけないって分かっていたから、言ってしまったらもっと悲しくなるから、自然とそう感じていた。

 

「だって・・・もっとかなしくなるから・・・」

『・・・大人なんだね、キミは』

 

・・・大人なんかじゃないと、思っていた。

ただ俺は、他人が泣いているのが見たくないだけだったのだけかもしれない。

だから、涙が出なかったのかもしれない。

よくよく考えてみれば、泣いたのは両手で数える程度しかなかったな。

そして口を閉ざしていた女の子は、唐突に口を開いてこう言った。

 

『約束しよう、またいつか絶対に3人で会えるって!』

「・・・やく、そく?」

『そう!約束だ!』

 

この3人で、何度約束を交わしたのか覚えてないけど、その約束は今まで以上に難しくて、今まで以上に大事な約束になることは、感づいていた。

でも、それでも、また3人で笑っていたいから、手に入れることができない数少ない幸せだったから、そんな事を言ってくれる人がどこにもいなかったから、その時だけは泣いた。

 

「・・・ぐずっ・・・うぇ・・・」

『泣いてるの?』

「だって・・・だってぇ・・・」

『いいんだよ、泣いても。泣きたくなったら、泣いてもいいんだよ?』

「うぇ、うぇぇぇえええええん!」

 

その優しさに初めて触れたから。その時はただ、ひたすらに泣いた。

その優しさは、初めてにしては大きすぎたから。何気ないその一言が、俺にとって唯一の救いでもあったから。

 

そして彼女達は、次の日から公園に来ることは無かった。

中学に上がっても彼女等の行方を捜したが、当然見つかることは無く、高校に上がってからも、一年で見つかることは無かった。

未だに俺はしがみ付いているのだろうか、その約束に。

 

その答えは、まだ分からない。

 

_______________________________________

 

 

あの戦闘から、もう1日が過ぎていた。

克影は目を覚ますことは無く、テストの合否も聞ける状態ではなかった。

 

結局あの戦闘は実践だったらしい。司令部の方でも急に通信が落ちたから混乱していたという事を、真那さんから聞いた。

ちなみに僕の相手をしていた瑞鶴が真那さんで、克影の相手をしていた瑞鶴は真耶さんと言うらしい。ちなみに二人は武家の出身で、代々武家の要人護衛についている武家らしい。

彼女等の戦績は日本の衛士の中でもトップクラスに入るらしく、二機編成《エレメント》戦では負け知らずらしかった。そしてその二人を倒した謎の人物が、いるという事で訓練校内ではその話題で持ちきりだった。

その僕たちがいつまでも訓練校にいるのはまずいって事で、今は月詠さんの家にいるんだけど・・・

さすがに代々要人護衛についている伝統ある武家だからなのか、家がデカかった。

いや、デカいのは構わないけど、構わないんだけどね、外見と室内の広さが一致しないってどういうことなの!?

しかも、休んでいてくれと言われた部屋が20畳以上はあると思われる部屋だった。

逆に部屋が大きすぎて夜は寝るのに一苦労したのは、ちょっとした余談だけど。

 

風呂も風呂で大変だったな。侍中の人が来て入ろうとしてきたから、大丈夫ですよって言って済んだけど、今度は真那さんが入ろうとしてきたから、速攻で出ました、はい。

真耶さんも克影も一日経った今でも、起きることは無い。

真耶さんは軽い脳震盪だから、一日も経てば起きるだろうと言われているけど、克影は疲労によるもので、こっちも一日経てば起きる。と、軍医から診断が出ていた・・・らしい。

多分、他にも色々と検査をされていたのだろう。真那さんが引き取るって言ったら、すぐに惜しそうな顔をしていたから。

 

昨日の事を色々考えている内に、襖を軽く叩く音がした。

 

「鉄様、食事の用意が出来ました。」

「あ、はい。ありがとうございます。」

 

侍中の人が部屋を去っていくのを音で確認すると、僕は立ち上がって部屋の襖を開けた。

外は既に日が昇っていて、太陽の光が顔に当たり、少し眩しい日差しが顔に当たる。

今はもう1月。いつもは初詣やら今年の一文字だとかで騒いでいた世界は、もうない。

宇宙人なんて言う、それこそいると思わなかった存在とこれまでも、これからも戦う事になる。

ここに御都合主義上等な人生を過ごした人間がいたら、夢なら覚めろと思うだろう。

でもこれは現実だ、夢と思うが思わなかろうが覚めないものは覚めない。これは変わらない。

いくら願っても、いくら想っても、帰ってくるものは夢じゃない。現実だ。

 

それが、この世界の法則である。

 

そういえばこの世界の法則だけど、歪んでいるって萩閣から聞いた。

 

『この世界は異常に不安定らしい。いるはずのない人間がいるし、死んだ人間が生き返っている。だがそれも、別の世界から運ばれた人間でしかない。そして、この世界に運ばれる人間は限られている。ある因子を持っている人間か、克影に深く関わっている人間という事だ。現状、俺以外には確認されていないが、その内現れるだろう。それだけ、この世界は安定を求めているのか、不安定になっているかのどちらかだがな。』

 

もし萩閣の言う通り『世界は安定を求めているのか、不安定になっている』のであれば、現れる人間は多いであろう。

 

まず世界研究部、そして因子所持者、後は存在するかもしれない曖昧な者創造者《クリエイター》と、この世界にも存在しなおかつ、克影とも深く関わっている――――白銀武

 

彼と克影の関係は、彼らの父親たちの仲が良かったからである。

 

克影の父の名は黒鋼武司。白銀の父の名は白銀影行。

 

実際に彼等の仲が良かったのかと言えば、高校時代まではそうでもなかった。

中学校に入るまでは兄弟のように仲が良かったのだが、中学校では犬猿の仲だったらしい。

原因は知らないが、中学に入った途端仲が悪くなったと聞かされている。

高校は二人して同じ高校に通い、大学では二人でサークルを立ち上げていたと聞くところ、

高校で仲が戻ったと見ても別段おかしくはないだろう。事実は知らないが。

 

なんでも、高校時代の3年生最後の球技大会でハンドボールに出場して『黒の弁慶』『白の与一』と言われていたらしい。

 

大学卒業後白銀影行は、アフガンやイランなど紛争地域に渡って傭兵を。黒鋼武司はヨーロッパで生活を始め、10年後二人とも日本に戻りそのまま定住した。

それから2年、白銀影行の妻である白銀静は白銀武を生み、黒鋼武司の妻である黒鋼琴乃は黒鋼克影を生んだ。

武司は影行に、影行は武司に『名付け親になってほしい』と言うところ、お互いに信頼をしていたんだと思う。

そしてその証として影の一文字を克影に、武の一文字を武に与えた。

 

それが、彼らが出生する前の僕が聞いた話である。

 

「まぁ、こっちの白銀は黒鋼を知っているかどうかは、分からないけどね」

 

ここの世界に白銀がいたとしても、その白銀は黒鋼克影という不特定な存在を知らないはずだ。黒鋼克影は元々この世界に来るはずのない人間なんだから。

・・・ここまで知っているのに何もできないのは、確かにじれったいのを身を持って痛感したよ。

 

・・・知っていることが多いと、時間が惜しくなるっていうのは本当だね。

 

「何を知っているというのだ?」

「・・・え?」

 

一人で深い考え事をしているときに、音も無く近寄ってきたのは、月詠真耶さんだった。

・・・人が考え事をしているときに、心を読むなんて不謹慎だと思うのは僕だけなんだろうか?

 

「そういえば、傷は・・・」

「気にするな、大したことは無い。それより独り言を聞き流せというのは、少々無理があるんじゃないか?」

「あれ?口に出していました?」

 

確かに、自分が考えていることを口に出しちゃったら、聞いていた人に無視をしろと言うのは、奇妙な話である。聞こえてなかったのは無視しても構わないのだが。

 

「はっきりとな。それで、何を知っているんだ?」

 

真耶さんの問いに答えようかどうしようかと迷ったのだけど、ここまで来てやっぱり無視をしてくれと言うのは無理があるだろう。彼女にここで意見を聞くのも、またいいかもしれない。

僕は問いに答えるべく頭の中で解を捜して、いらぬ事をしゃべらない様にして答えた。

 

「近いうちに日本本土にBETAが侵攻してくるという事ですよ」

「なぜだ?鉄原(チョルチュン)ハイヴから侵攻してきたBETAは光州作戦に突如現れた『巨人』に全滅させられたと聞いているが?」

 

巨人ねぇ・・・最近その言葉を聞く回数が多い気がする。まぁ、誰を指しているかはわかるんだけどね。

 

「確かに、巨人のおかげでBETAはその侵攻を阻まれました。が、一番厄介なのはその後方にある巨大な建築物」

 

そう、この戦争で一番厄介なのはBETA側の地球の本拠地がアジアの中心にあることと、それらの支部の出現の仕方。つまりは――――

 

「―――ハイヴか」

「そう、一番厄介なのは奴等の本拠地であるハイヴが宇宙から降ってくることです。月ないし火星から航行してくるハイヴは、地上に降りるのと同時にBETAを上陸させ、その周囲の自然、人工物、そして人を根絶やしにする・・・大量なBETAが出現するせいで、中に製造機でもあるんじゃないかと思われるぐらいのその数に、勝てるはずもなく撤退。今は日本本土にハイヴの落下は確認されていないものの、絶対落ちてこないなんて言う保証もない。むしろ、落ちてきてもおかしくはないっていうのが現実です。」

「つまり、近いうちに本土にハイヴが落下してくるかもしれないと・・・?」

「まぁ、そういう事です。」

「ほぅ・・・・・・」

 

僕の解に納得しているのか、それともまた別の事を考えているのかは分からないが、深く考え込んでいるようだった。

人類側のBETAの情報は限りなく少ない。目的不明、交信不能、理念も不明。分かることと言えば、その種類と炭素系生命であることと、人類を生物と認識していない事。つまり路傍の石と同じく見ている事だけ。

それ以外の事はハイヴを攻略しないと分からないってところだからね・・・

 

「見込みでいい、いつ落ちてくると思う?」

「え?そうですねぇ・・・2月下旬から3月中旬の間じゃないですか?」

「根拠は?」

「まず、昨日の戦闘でBETAが地中から攻めて来たことです。偵察か、もしくは着陸時の防衛あたりが目的ではないかと思われました。それと、朝鮮半島での戦闘で日本に危機感を持たれたと思ってもなんの違和感もないでしょう。僕が聞いた話によると、朝鮮半島での戦闘の後日本に向かうBETAが存在していたらしいです。」

「しかし、BETAには感情と言うものがないと聞いているが?」

「ですが絶対無いとは言い切れません。そもそもBETAに感情がないというのは、彼等がためらいを持っていないというところから来ています。もしも彼等に学習するという思考があるとすれば・・・」

「確かに、ありうるな」

 

僕の話が分かってくれたのか、納得したような真耶さんだったけど、事実は彼らの指揮官級のBETAを発見しないと分からないものだった。とりあえず、ハイヴを攻略しないと進まない話である。

 

「とりあえず気難しい話は、朝食を済ませてからにいたしましょう。つい先ほど、朝食の支度が出来たと聞き及んでいますから。」

「そうか、では参ろうか」

 

だけど、本土戦は近いうちに起きるだろう。戦場は日本本土にも及べば、九州と四国はほとんどの確率で落ちるし、まず西日本が戦場になる。それをさせない為に僕等が動くことになるかもしれない。

たとえ、わが身を犠牲にしても・・・

 

 

____________________________________

 

 

夢から覚めると、和式の天井が目に入った。

 

「・・・ここは?」

 

周囲を見渡すと、小さな和式の部屋だというのが分かった。

花瓶や色々なものが見られるところ、誰かの部屋であることも分かった。

 

「よいしょっ!?いてててててて!」

 

 

布団を自分で剥いで、起き上がろうとすると突然体中に激痛が走る。

あまりの痛さで、また横になってしまったが、徐々に痛みが引いていくのが分かった。

 

「ふぅ・・・・・重い、体中が重い・・・」

 

全身を鎖で縛りつけられたような感覚に違和感を感じるが、起き上がれないのは事実である。

と、そこに襖を開けて中に入ってくる人がいた。

 

「あら?目が覚めましたか」

「え、えぇおかげさまで・・・」

 

緑の髪を流し、軍の制服のような真紅の服装で現れた女性が、俺の事を見下ろしていた。

心配そうな目で俺を見ていたその人は、無事を確認できたのか微笑んだ

 

「よかった・・・・起き上がれますか?」

「体中が痛いんで、起きるのはできますけど・・・」

「分かりました、朝食を運ばせるよう手配します」

「ありがとうございます・・・・・・すいません」

「はい?」

 

彼女が立ち上がって部屋から去ろうとするときに、その後ろ姿に見覚えがあると思い呼び止めた。

確か、記憶にあるのはつい最近の出来事で聞いたことがある声にも聞こえた。

自分の頭の中で探し回っても思いつかない。仕方がないので、聞くことにした。

 

「礼をしていませんよね?自分は黒鋼克影と言います。今回は、看病をしていただいてありがとうございます」

「いえ、とんでもないですよ。名乗ってもらいましたのに、私が名乗らないのはおかしな話ですよね・・・・・私は、月詠真那と申します。今回あなた方の試験官をやらせていただきました。

コールサインはレッド02です。・・・・・あの時は本当にありがとうございました。」

 

この時、俺は驚きのあまり少し意識を飛ばしていた事は、俺にしかわからない事である。

 




どうも、光影陽炎です!

EX版のルートを全部終わらして、アンリミに移ってテンションが上がってます。

今更ですけど、オルタと無印って声優違うんですよね・・・

意見、感想、その他もろもろ受け付けていますので待ってます!

では!


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その心に

月詠さん――――紛らわしいから真那さんと呼ぶが、彼女から朝食があるので持ってきますねと言われて最初は遠慮をしたのだが、遠慮したら何かめちゃくちゃキツイ威圧感が体中を襲い、再度真那さんに食べますよね・・・?と聞かれたときは、ただ上下に首を振ることしかできなかった。

 

そして部屋に取り残された俺は、新たなる来訪者を迎えることになった。しかも二人。

 

「おぉ、体は無事なのかね?」

「あまり無理はするなよ?」

 

巌谷中佐と萩閣の二人だった。

巌谷中佐は分からないが、帝国陸軍の准将はそう気軽に動ける身ではないと思うんだが。

その事を質問してみると。

 

「ん?心配ない。殺してはいないさ。」

「・・・・・サラッと物騒な事をよく簡単に言えるな。」

「照れるな~」

「褒めてねぇよ!」

 

毎度のテンションで返された。まぁ、実際付けられているのは()()だけじゃなく米国とかもいそうだからな。あそこは上が汚いだけあって、道徳的な人間が幹部になっても不都合起こしそうだから殺しましょうみたいな国家みたいで怖いし。実際訓練と称して洗脳していると聞くし・・・・・最近なんか失敗したみたいだけどな。

 

「・・・・・准将、そろそろ本題に。」

 

巌谷中佐の言葉で萩閣の顔が少しだけ険しくなる。これから何が始まるっていうんだ?

 

「そうだったな。克影、二期編成戦でのテストの後のBETA戦だが・・・・・あれは実践だ。」

「・・・・・はい?」

 

多少の覚悟をしてはいたけど、まさかこの前のテストの事で少しがっくりと来たが、すぐに今の言葉を再度思い出してよく考えてみると、おかしい点が一つある。

それは、あの戦闘が実践であるという事である。

BETAは大陸に現れる時は、海から陸に上がってくる時と地中から現れる二つのパターンが確かあったはずだ。

しかも地中からの侵攻だった場合は、音によって発見されやすく、レーダーにも移るはずである。

 

「これがどういう意味か、分かるか?」

「・・・・・・・・」

 

アクティヴソナーと同じ要領で設置された探査機は、地下3千mまでの敵の場所を的確に発見できる。前の世界では航空技術が発展していたが、この世界では地上と地中に関して地上は戦闘、地下は探査の面でまた別のベクトルに発展している。

そのぐらい性能があっても発見されなかった。なぜか?

 

「BETAが学習しつつある?」

「学習、というか進化しているのだよ、BETAは」

「進化・・・?」

「・・・・・・巌谷中佐、少し席を外してくれ。」

「・・・・はっ」

 

中佐が部屋から出ていくと、萩閣は鞄から大きめの封筒を取り出して封筒の中から3枚の写真と書類を取り出した。書類には『因果導体によるBETAの突然変異』と、書いてあった。3枚の写真には前回の戦闘に現れた空母級の最大の特徴ともいえる気持ち悪い口のような何かが、その大きい壁というか、これはBETAの体の側面に4つあった。

もう一枚には、戦術機より巨大な2足歩行の化け物がニタァと笑ってこちらを見ているものだった。

最後の一枚は伏せられていて、何が移っているのかが分からない。

 

「最初の一枚は、昨日の戦闘と同時に宇宙から降ってきたハイヴから出現したと思われるBETAの一部だ」

「ハイヴが降ってきた!?」

 

昨日の戦闘の時にハイヴは落ちてきたようには見えなかったが。

 

「まぁ落ち着け、とりあえずこの新型BETAを今後国連は()()認大()()()01と呼称している。特徴はBETAの中でも抜きんでいるその大きさだ。今までの中でも全長が最大級のBETA、先の光州作戦にて新たに発見された母艦(キャリアー)と呼ばれるBETAの全長を10倍以上のデカさを誇る。」

「・・・・なんだよ、それ?」

 

写真を見る限り確かに大きいのは分かる。母艦(キャリアー)級の胴体直径170mの口が4つあるだけで、700mは優に超えていることはすぐに分かる。だが、あれの10倍――つまり18㎞はあるわけだ。搭載数と言うか、体内保存数は一体で1万を想定すればバケモン中のバケモンと言うものなのか。いや、それ以上だろう。こんなのが世界にいることを考えただけで生きる希望が一瞬にして削がれそうな気がする。

 

「そして二枚目に映っているBETAは、地球に存在するすべてのBETAの原点と言うべきなのか分からないが、あえて言うならば完全な戦闘型BETAだ。」

「完全な戦闘型?」

「ああ、こいつを撮った奴の証言を聞いただけでも鳥肌が止まらんよ・・・今までのBETAがただの採掘員にしか思えなくなった。」

()()()()()()だって?」

 

採掘員といえば、俗に言う炭鉱マンというやつなのだろう。坑道などを掘っている人たちの事を指しているのであれば、奴らはただつるはしで掘っているのと同じ原理で地球を開拓しているだけなのであれば・・・?

 

「・・・そいつの特徴は?」

「・・・・・手の指は要塞級の尾、足の指は要撃級の腕、全身は突撃級の殻で覆われていて、両肩には少し飛び出たドーム型の光線級のような目、片目は重光線級の目を肥大化させた目、もう片目はあるかどうかも分からないほど小さく、歯は母艦級と同じような物。このつぎはぎだらけのBETAを、俺は合成獣(キメラ)と呼んでいる。どうだ?想像するだけでも鳥肌が立ってくるだろ?」

「・・・・・」

 

やはり、と克影は自分の求めたくない答えにたどり着いてしまった事に焦り始めた。

なぜ?今になって現れて来たのか、未だにわからないことだらけだ。

だが現れてしまった事に関してはどうしようもない事である。これの出現をおそらくこの国の上の人間は、所詮BETAだと侮る可能性も無いわけでは無い。早急に手を打つべきであると、克影は心の中で決意をした。

 

「どうした?鳥肌が立ちすぎて声も出ないのか?」

「・・・萩閣、もし俺の立てた仮説が正しければ今まで現れたBETAの正体が分かったかもしれない。」

「BETAの正体が分かっただと!?」

「あぁ・・・だが、現時点では確信があるわけじゃない。それに、そっちの話を最後まで聞いてからでもいいだろ?」

「・・・・・分かった。では、最後の一枚を伏せた理由は今までのBETAの存在を根本から崩していくものであるのと同時に、俺がたどり着いた答えの要因と言ってもいいぐらいのふざけたものだ。」

 

そう言って、萩閣は最後の一枚の写真を表に反した。

そこに映っていたのは、BETAのような不気味な肉体。鎧のようなものを装着している人間のようなものだった。いや、これは人間のようなものではない。二つの足で地面に立ち、両の手をブラリとたらし、その両の瞳でこちらを見据える姿はまさしく

 

TSF(戦術機)・・・F-4(ファントム)だと!?」

「この写真を見た瞬間、BETAはただの採掘員か工作員でしかないと、な」

 

人類最初の戦術機とも言える、F-4ファントムが己の生命は確かにここにあると言わんばかりに、写真でもその存在をありありと示していた。

 

「この写真に写っているのはBETAじゃない。人類と同じく生きる、生命なのかもしれないな」

「生きる、命・・・・」

 

・・・人類は、BETAに対して何か勘違いをしていたのかもしれない。

BETAは尖兵、写真に写る彼らは人類が同じ土俵に立つのを待っていたのかもしれない。

だが、それでもなぜ?可能性の低い道をなぜ彼等は取ったのだろうか?答えは分からない。

 

「なぁ、萩閣。」

「なんだ?」

「世界で突然現れた人間や、死亡と登録されている人間、行方不明になっている人間が現れた事を細かく知っている人間を知らないか?」

「・・・・・当てはある。来られるかは聞いておこう。」

「悪いな。」

 

 

では、探すとしようか。

 

同じく答えを探す者と、答えに辿り着き力無き事を悔やんだ者と、時に流され世界に犠牲にされた者達を。

 

「・・・・どうする気だ?」

「決まっているだろ?」

 

俺は、何度も繰り返す。

そう、定められた人間なのだから。

 

「人類の反撃を始めるんだよ。」

 




どうも、光影陽炎です!
また遅れました・・・申し訳ないです。
vitaでPSO2をやってたり、ほかの作品を書いてたり
台本を書いてたり、バイトしたり、ゲーム作ったり
生徒会の仕事をしたりで大変でした・・・

今日中にもう一話出せるように頑張ります!
では、次回出てくる人達を想像してお待ちください!


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与えるのは

__________________________________________

 

「まったく、巨人殿は人使いが荒いな・・・」

 

鎧衣左近は目的地に歩きながらそう呟いた。

 

彼は数日前のある事件の背後事情を探っていた。

対BETA用地中ソナーに掛らず、突如京都訓練学校に現れた新型BETA母艦(キャリアー)級メガワームと呼ばれている地中を潜る巨大な蟲と言っても過言ではないほど、その姿を見た者に恐怖を与える異物。

母艦(キャリアー)級は単体であれば出現前に警戒を怠らなければそうそうやられることは無いだろう。だが奴等には単体で地中からの奇襲以外に、もう一つの役割を持っている。

それは母艦としての役割、航空母艦なら艦載機を搭載して海上からの発艦、着艦の効果を持つのと同じく母艦(キャリアー)級にもBETAを搭載し、そのBETAによる奇襲、地中からの強襲を可能とすることができる。

母艦(キャリアー)級一体につき搭載できるBETAの数は、確認できただけで約千体。ちなみにこの千と言う数は要塞級も込みのこの数字であって、実際は百から二百の誤差がある。

彼が探っていた事件に現れた母艦(キャリアー)級の数は5体。単純な計算をしてでも、5千はいるはずなのだ。それらのBETAが3時間で全滅したというのだ。

5千のBETAを3時間で全滅、この記録に日本帝国城内省の大臣達は躍起になって全滅させた陽炎のパイロットを探し始めた。

だが鎧衣は知っていた。それを行った者の名前と、その者がどんな名前で呼ばれているのかを。

2~3ヶ月前に奇跡的な成功を収めた朝鮮半島撤退作戦『光州作戦』に参加した者は、その名を知らない者はおらず、そして彼に感謝している衛士も少なくはなかった。

名を『鉄光成』と名乗った彼は、BETAの奇襲により全滅したかと思えた大東亜連合と国連軍指揮下に入っていた日本帝国陸軍の彩峰中将率いる帝国陸軍第六独立大隊『デュラハン』大隊の遥か前方で接近してきたBETAを撃破。撃破と同時に北方の本隊の救出の為、戦闘中のBETAを撤退まで追い込んだ。そしてBETAの撤退を司令部にて確認した後、彼はどこかに去って行った。

それから彼はいたるところにその姿を現した。

モスクワに、ギリシャに、ベルリンに、イギリスに、中国にその姿を現した。

そしてその姿を見たものは口をそろえてこう言った。

『血の巨人』と

残念ながらその姿は、一ヶ月前を境に見ることは無くなってしまったが、個人的なルートから彼は日本にいることが分かっていた。

だが彼がいると判明した場所が、彩峰中将の元であったため押しも引きもできなかった。

そんな彼から、ある一通の手紙が届いた。

鎧衣は、数日前に届いた手紙を上着のポケットの中から取り出した。

 

『調べてほしいことがある。受けるか受けないかは自由だ。受けるのであれば、指定の時間に下記の住所に来てほしい。』

 

行く必要もないと最初は思っていたのだが、住所を見た瞬間驚いた。なんと書いてあるのは代々五摂家の守護を任された月詠姉妹の屋敷の住所だった。

とりあえず確認を取ってみた所、確かに鉄光成らしき人物がいることが分かった。

 

「なぜ五摂家の守護を任されている者の家に、光州の英雄がいるのか・・・」

 

彼はこの国を、この世界を救うことができるかもしれないと思わせる力がある。

故に五摂家の守護を任される月詠家にいるのだろう。つまりこれはある意味での挑戦状なのかもしれない。

 

『期待を、裏切ってくれるなよ?』

 

手紙越しにそういわれているのかもと、そう思った。

ならば乗ってやろうと、英雄の期待に応えてやろうと、そう思った。

 

「さて、吉が出るか凶が出るか・・・突いてみなければ分からん、か」

 

そして、彼は静かに歩みを速めた。

 

_______________________________________

 

 

萩閣のツテから人を呼んでもらったのだが、唐突に手紙を書けと言われた時には驚いた。

そもそも俺は、手紙を書くような人間じゃなかったから、文章が無駄に挑戦状形式になっていた。

別の文章を書いても同じ、また書き直しても同じ、また同じ・・・と、まぁ5回は書き直しに挑戦をしたのだが、あっけなく敗北して中でもマシだったものを送ることになった。

月詠さん達に文章を見られた後、それで笑われる羽目になっていたのは、結構恥かしかった・・・・一緒になって笑っていた光成はシメたが。

これで来てくれればいいが・・・・もしもの事を考えて国連と城内省のデータベースには忍びこめるようにはしておいたが、正直見つかる可能性は限りなく低いと思っている。

廊下を行ったり来たりしながら、気を紛らわしたりはしているが・・・

 

「これで本当にこなかったらなぁ・・・」

「誰が、と聞いておこうか」

「!?」

 

突然後ろから聞きなれない声を聞き取り、後ろを振り向くとそこには張り込み捜査官のような服装をした男性がいた。

普通なら気配、と言うか空気が変わるのだが今目の前にいる男が背後に立っても何も感じなかった。

つまり相当な手練れ、随分なキレ者であることはたしかである。

 

「鎧衣殿!勝手に歩かれては困ります!」

「はっはっは、いやぁ申し訳無い。見た事の無い者を見かけたもので」

 

と、男性の後ろから現れたのは軍服姿の真那さんだった。

いつも思うのだが、あの人プライベートでもあれなのか?さすがに無いと思うが・・・

真那さんも真耶さんも、いつも見かける時はあの軍服姿だからあれしかないのかと考えたりしてしまったり、なかったり・・・

 

「君が、鉄光成かな?」

「え?あ、いや光成なら別の所にいると思いますよ?」

 

月詠さん達の服装について考えつつ、目の前の男性に警戒をしていたら唐突に光成の所在を聞かれてしまい少しだけ何を考えているんだ?と、思ってしまったが先ほどシメた光成は、屋敷内の何処かにいると思い軽く適当に答えてしまったが、あながちはずれではないはずだ。

 

「ふむ・・・では、君が『巨人』かな?」

「・・・・鎧衣左近さん、ですね?」

 

鉄光成というワードから、急に巨人に変わったという事は萩閣が言っていたツテの事だろう。

名は鎧衣左近、娘や自宅の近隣の住民には自分の仕事を『世界を飛び回る貿易会社の課長』と言っているが、実際は帝国情報省外務二課の課長をしているらしい。

彼が持っている情報は公私共に有益な物ばかりである。故にその収集力と実力を買われて征夷大将軍の護衛なども務めているらしい。なのに、月詠さんとはそれほど仲が悪いわけでは無いというが、近衛の大半には嫌われているという。まぁ、自分の信念を横取りされれば嫌われんのもわかるが。

多分この人は最初から俺の事を『巨人』と踏んでいたのだろう。

だからふらりと歩くふりをして俺の背後に立ったのだろう、その実力を試すためというか、依頼を受けるに値するかだろう。

 

「ふむ・・・・若いな、だがその若さでどれほど戦ってきた?」

 

月詠さんに聞こえないように小さい声で話しかけてくる。

戦い、この呪いを認めてもう何年だろうか。信じては裏切られ、信じては裏切られの繰り返しだったような気がする。誰かに認めてもらいたくて、誰かと一緒にいたかった、そんな時も確かにあった。

 

「ざっと10年、世界のほぼすべてを相手にした」

「・・・・なるほど、強さ以外はすべてを捨てたか」

 

強さ以外すべてを捨てた・・・的を射ているかもしれないが、すべてを捨ててはない。

捨てたというならば、己を捨てた。だが己がここに存在する意味は捨てていない。

 

「この手で救える者を護る為に、捨てられる荷物は捨てただけですよ。」

「己の心は捨ててはいない、か・・・・君の手は大きそうだな」

「小さいですよこの手は、ね・・・」

 

まだ小さい、萩閣にこの世界に来た時の話を聞かせてもらったときそう思った。

萩閣の家に着いてからすぐに、その話が持ち上がった。

その時、俺と光成に残ったものは後悔に満ちていた。

自分のせいで友人が死んだ、いや正確に言うには両親と妹を置いて行かざるを負えなかったと、そう思った。

(ベルセルク)あいつ(アンラ)も元を辿れば人間だ。感情だってちゃんとある。それでも、自分達のやっていることに意味はあるのかと、ここにいる価値はあるのかと、ふと思ってしまう。

好きな人も、家族もいない世界で俺が護るべき存在は俺に関わったすべての人達以外いない。

今はそれを護るだけでいい。そう、思うしかなかった。

 

「・・・・ところで、依頼したいと伺ったのだが?」

「あ、はい。月詠さんちょっと下がってもらってもいいですか?」

「・・・・分かりました、昼食が出来たらお呼びいたします」

 

不服そうに下がる真那さんを横目で見つつ、声が聞こえない範囲に入ったのを確認したら、鎧衣さんに依頼の話を始めた。

 

「探してほしい人達がいます。範囲は出来る限りで世界、少しでもその情報に掠ったりしたら教えてください。連れてきてくれるのも可とします。」

「ふむ・・・で、兎はなんだね?」

「行方不明者だったが突然現れた人、死亡とされたが発見された人、国のデータベースにすら乗ってない人達。これでお願いします。」

「・・・・興味本位で聞くのだが、何をする気だね?」

 

その質問には、何が込められていたのだろう。

確かに探してほしい人間の範囲が広すぎるのも確かだ。それに内容も危険極まりない。つまり他国のデータベースに侵入しろとも言っているのだから。

でも今回はそれほどまでに重要な事である。もしも因子所持者がこの世界に多数存在するのであれば、それなりの人が必要になる。この戦争に終わりが来たときは、彼等の世界に俺が行かなくてはいけない可能性だってある。だがそれほどまでに人が必要なのだ、新たなBETAが発見されてから数日たっているが政府は未だに俺達の捜索をしている。だから力が必要なのだ、人類もBETAも相手にするぐらいの力が。

 

「いつか来る平和を築くために、彼等にも来てもらわなければならないんです。この世界の為に、そして何より彼らの為に」

「・・・・」

 

何も感じず死んだ人だっていた、戦いに飲まれて死んだ人もいた、何も守れなかったと、何も救えなかったと、何も取り戻せなかったと、欲望に飲まれて死んだ人だっていた、世界の理不尽を赦せなかった人もいた。

ここは、そんな人が集まる世界だ。

だから俺達が術を教える。何かを残し、世界に立ち向かう術を。欲望や、戦いに飲まれない心を。護り、救い、取戻すための力を。後悔しないための知恵を。

それが、俺の今やるべきことだ。

 

「・・・・5人なら今連れて来られるかもしれん」

「本当ですか!?」

「ああ、御用とあらば連れてくるが?」

「ではお願いします!今日の夜にでも!」

 

今は時間がない。もしも萩閣の話が本当ならば、すでにハイヴが落ちているはずだ。

1ヶ月でどこまでできるかは分からないが、基礎ぐらいだったらできるはずだ!

 

「ちなみに、名前は?彼等自身でここに足を踏み込まなければ意味がないので」

「ああ、たしか・・・・

 

 

 

 

五反田

御手洗

松田

元浜

須川

 

だと言っていたな」

「(聞いたことのない名前ばかりだな・・・・まぁ、いいか)」

 

そう思いつつ、彼等に伝言を伝えるよう頼んだ。

狂った歯車に乗せられし世界に飲まれた彼らに、力を与えるために。

 

今、世界は分岐した。

 

__________________________________________

 




すいません、光影陽炎です
すぐに投下しようと思ったのですが、登場キャラに悩んでしまって
まぁ、最初の5人はこれでいきたいと思います。

その内意外なメンバーも出したりしたいんで。

後この5人・・・・原作から外れています。
彼らはどんな道を取ったのでしょうか?
では!また次回に


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extra story HSDD 戦争屋とテロリスト

ただのクロスオーバーだと思っていたのか?
こいつは、転生型記憶喪失多重クロスオーバーだよ


変態の代名詞こと俺、松田誠二と元浜正也(まさや)はある日同じ変態仲である兵藤一誠に彼女ができたことに嫉妬を感じた。

あの野郎彼女ができたことをわざわざ自慢してきやがったし・・・・

『パパラッチ』とか言われたりしている俺には彼女が出来なくて、ルックスのいい一誠にはできるとは・・・もはや主人公補正だろ。なんて思っていた。

ある日、俺と正也はレンタル屋にてAVを借りに行った後俺の家で鑑賞会を二人で行う予定だった。

だが俺の家に行く途中で、一誠が彼女とデートをしているではないか!

ちょうど一誠のデートがどんな物か、お手並みを拝見しようと思っていたころだったし、明日の学校で定番すぎると笑ってやろうとも考えた。

買い物、食事、などなど・・・結構定番ものだった為、笑う気も無くなってしまった。

あいつなりに考えたデートだったんだろう、俺と正也はそう思って明日は何食わない顔であいつに会おうと思った。

公園について、そろそろお開きになると思われたデートだったが一誠の彼女、夕麻ちゃんの一言で世界が変わった。

 

「死んでくれないかな?」

 

黒い羽根が生えて、露出が多い服装のような何かに変わった夕麻ちゃんは、一誠に向けて赤く光った槍を一誠に放とうとした。

俺の体は、無意識に動いていた。一誠を押して、放たれた槍は俺の腹にめがけて飛んできた。

 

「がはっ!」

「誠二!?」

「なんだ・・・ただの羊か」

 

腹を貫通した槍は、その形を粒子のように崩して消えて行った。だがそれでも、俺の腹には穴が開いていた。

痛い、痛い、痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイいたいイタイいタいイたいイタい

 

気絶するぐらいの痛さが体中を巡る。それでも生きているのは奇跡に近いだろう。

夕麻ちゃんは次の槍を生み出して、再度一誠に投擲しようとしているのが見えた。

 

「正也ぁ!」

「・・・・!」

 

後ろにいた、放心状態だった正也の名前を呼び俺達特有のアイコンタクトをした。

一誠にも教えたことがないこれは、ガキの頃から一緒だった俺達だけにしか分からない。

昔から頭は正也、力は非力だけど俺と言う構造だった。

幼稚園、小中高と一緒だった俺達は毎回いじめられる対象になっていた。

それでも俺達にも意地があった。やられっぱなしは趣味じゃない、マゾピストでも何でもなんでも、無いんだって。ずっとそう考えていた。

確かに俺と進は性欲、肉欲に忠実だ。だがそれだけだ、性犯罪を起こしてまで自分の人生をフイにしたくなかった。せっかく女子高と合併したばっかの高校に入ってまだ一年。学校生活を満喫させたかった。彼女が欲しかった。部活でも作って目標が欲しかった。モノホンの乳が揉みたかった。

やり残したことはたくさんあった。今でも死にたくない、そう思っている。

俺の言いたいことが分かったのだろう。正也はうなずいて放たれそうになっている槍と一誠の間に立ちはだかる為に、走り出した。

そろそろ出血多量で死んでしまうだろう。意識が朦朧としてきたのが証拠だろう。

何を思ったのか、俺は神様なんているわけの無い存在に祈っていた。

 

(俺の命はもうこの際どうだっていい。もしこの世界に神なんて奴がまだいるんだったら、頼む!兵藤一誠だけでも生かしてくれ!死にたくはねぇけど、でも・・・)

 

俺の立った二人しかいないダチなんだ!

 

正也の背に槍が刺さったのを見て、逃げる一誠を確認したら俺は、自分の意識を放した。

ああ、たった16年の人生だったなぁ・・・

やりてぇ事、本っ当にたくさんあったんだけどな・・・

 

 

死にたか、ねぇ・・・な・・ぁ・・・・

 

 

「ほほぅ、この年で英雄とはなかなかの人材じゃの。錬鉄殿といい勝負じゃな。」

「「は?」」

 

意識を手放して死んだはずの俺と正也の目の前にいたのは、髭を生やした爺さんだった。

あれ?俺は確かに死んだはずなんだ。なのに、地面に両足はついているし、傷は塞がっている。正也にしてもそうだった。背中から貫通した槍の傷跡は無く、ピンピンした状態で俺の隣にいた。

少し混乱してあたりを見渡すと真っ白な空間だった。果ての無いような、そんな空間に

俺と爺さんと正也の三人しかいなかった。

 

「・・・ここは?」

無の世界(ゼロワールド)、人が生まれる前の世界。まぁ、死んだ後に来る場所とでも思ってくれればいいわい」

「死んだ後に来る世界?つまり天国とか地獄ってことか?」

「それとはまた別じゃ。ここはただの乗換駅、別の世界に行く為の空間じゃよ」

 

訳の分からない話だ。乗換駅?別世界に行く空間?厨二病もほどほどにしてくれよ、本当にそうなら俺たちが生きてる理由も教えろってんだ。

高校を3人で満喫している時に内一人は恋愛リア充になってるし、その後なんだか知らないけどそいつが自分の彼女に殺されかけるし、しかもその彼女がジョブチェンして黒い羽生やした天使になってるし・・・いや、あれは堕天使っていうのか。それで庇ったら死んだし!死んだと思ったら今度は白い空間にいて、ゼロワールドとか厨二病満載のネーミングだし、ほんっと夢なら覚めやがれってんだ!

 

「夢ならとっくに覚めているじゃろ」

「人の心を勝手に読み取るんじゃない!プライバシーの侵害だぞ!」

「自分の口から出た独り言なのに、プライバシーもありゃせんじゃろ・・・」

「んで?爺さん俺達になんのようなんだ?」

「おぉ!そうじゃった!お主らに頼みたい事があるんじゃよ。」

 

俺をよそに厨二爺さんと正也は話を進めていて、爺さんが指をパチン、と鳴らした瞬間目の前にイスが現れた。

 

「おおぉ!?」

「いきなり何しやがった!」

「そこまで驚くことも無かろうて、さて少し長くなる故に立ち話もなんじゃろう。座ってくれ」

 

爺さんに促されてイスに座った俺達の後、爺さんもイスに座った。

こういう展開は決まっている事がある。

この展開にはまった主人公達は強くてニューゲームを繰り返すことになる。まぁ、その後には地獄と絶望の根源しか見えてこないけどな。

 

「・・・・ある世界が、神々の示した歴史通りに進まなかったため、滅ぼされようとしていた。しかし人類を生み出した神々はその行いに強く反対をした、それゆえ滅ぼそうとした神は強硬手段に出て、その世界に兵を送り込んだ。」

「・・・・・・・」

 

正也は黙って聞き始めた。まぁ、深刻な話だからな、黙って聞く必要があるだろ。

爺さんは話を進めた。

 

「その世界の星は徐々に破壊に蝕まれてしまった、お主らが知っている火星も、もはや同じ世界の星とは思えないほどの地獄と化してしまった。そこに住んでいたやも知れぬ者も、生まれ故郷を追放されてしまった・・・・」

「・・・・・・」

「そして滅びの舞台が地球になった時、人類を生み出した神々はこう考えたのじゃ。『己の宿命に逆らいし神と、己が力に飲まれぬ人間に運命を覆してもらおう』とな、そして送り込まれた神の名を『アンラ・マンユ』、送り込まれし人の名は『黒鋼克影』と言った。

彼らは自ら戦いに委ねて行った・・・・歴史を何度繰り返しているかも知らずに、の」

「「・・・・・」」

 

なんていうか・・・・運命と言う不条理に飲まれた人間の行く末みたいだな。

確かマンユっていう名前には聞き覚えがある。昔神話が大好きでよく宗教の本を読み漁っていた時があった。善悪の両極端の神のうち、邪神の名前がアンラ・マンユと言っていたな。善の神はスプンタだったかな?この二神は兄弟関係にあったというが、本当は兄と妹かもしれないし、姉と弟かもしれない。本当の所は分からないが。

だが己の運命に逆らいしって・・・つまりあれか?邪神が人を救ったりしたから運命に抗った事になったのか?ただの人間と同じじゃねぇかよ。何にも変わらない、神になったことすら分からない人間だよ、それじゃあ。でも、人間の方は?

 

「なあ爺さん、『己が力に飲まれぬ人間』の黒鋼って奴はなんで送り込まれたんだ?神の方だけでも十分じゃないか?そもそも邪神が送り込まれる理由が分からん。ただ世界に悪影響を与えるばかりじゃねぇかよ。」

 

俺の質問に爺さんは顔を下げた。その下げた顔がどんな表情なのかは分からなかった。

後悔か、あるいは笑みか。だが下げた顔が上を向きこちらを見た時の顔は、覚悟を決めた顔だった。

 

「・・・・そやつはな、狂った戦士と言われつつもその力を、護る為だけに使うことを自分の意志で決めたのじゃよ。故に邪神と共におっても、自らを失うことは無い。世界を滅ぼす力を持っても、な。」

「ちょっと待ってくれ!じゃああんたの名前は・・・」

 

正也は爺さんの名前に覚えがあるのだろうか、その名前を口に出そうとしていた。

だが俺には分からなかった。狂った戦士という事は『狂戦士』という事だろう。だが世界を滅ぼす力を持つほどの狂戦士なんぞ聞いたことがない。

そしてとうとう、正也がその名前を言った。

 

「―――――闘神オーディンじゃないのか?」

 

オーディン、北欧神話に出てくる神の名前だ。鴉を2羽、狼を2匹連れていると言われている。彼はグングニルと呼ばれる槍を持っていて、投げれば必中を誇ると言われている。

だが、なぜこの爺さんがオーディンなんだ?訳が分からん。

 

「なぁ、正也。なんでこの爺さんがオーディンなんだ?どうもそうは見えないが・・・・」

「狂戦士の最初の出所は北欧神話なんだよ。世界を滅ぼすぐらいの力を持った狂戦士なんか聞いたことは無いが、狂戦士は闘神オーディンからその力を少しだけ譲られたらしい。狂戦士の名は決まってウルフと名前が付いている。もしかしたら、この爺さんはある狼を捕えたが殺すことはできなかった、だから自分の力を渡し、そいつを試すことにしたんだ。記憶を改ざんして、人間として生きることを運命づけた・・・そしてそれは成功した。」

「・・・・・・」

 

爺さんは黙ったままだった

 

「あんたはそれからそいつに邪神と共に過ごさせるように仕組んだ、他人を思いやるか、ずっと復讐を考えるようになるかの賭けに出たんだ。そしてその賭けは成功したんだろう、後はそいつに過酷な人生を過ごす事になり、最後は神に見捨てられた世界に飛ばされた・・・違うか?」

「・・・・多少誤差はあるが、90点じゃな。お主の言う通り、儂はあ奴を殺すことは出来なんだ・・・故に人として過ごしてみることを進めたのじゃ。ヘルの力を借りて、な。」

「ヘル・・・じゃあそいつの名は「それは言うてはならん」どうしてだ!?」

「それはあ奴が、あ奴自身を見つけるための答えじゃ。その答えをお主が見つけては意味がなかろう?」

「・・・なるほど、そういう事かい」

 

なんとなく、話の筋が見えてきた。

おそらくこの爺さんは、そいつの手助けを頼みたいんだろう。だから俺達をあそこで殺したんだ。

赦せねぇが、俺はこの爺さんを赦してしまうだろうな、子を想う親と同じなんだ、この爺さんは。

だから同じ世界の俺達に話を持ち込んだんだろう、俺達も()()だったから・・・

 

「そこでお主らに頼みたい事なんじゃが・・・・あ奴らが答えを出すまで助力をしてくれまいかの?その後の報酬は儂が出そう」

「報酬ってなんだよ?」

「世界の真実」

「「!?」」

 

なぜこの爺さんはそれを知っているんだ!?

世界の真実を知っているのはあの世界の住人だけなはずだ!

だいだい・・・・あ

 

「爺さん、()()()()てるな?」

 

俺達もそうだった。一誠がオカ研に入ってから数か月、あいつの体つきが日に日に強靭になっていく事に気付いた。

そしてある日になると、一誠が夕麻ちゃんを紹介するところから始まっていた。

最初はなんだかわからなくて、正也とかに聞いても病院に行ってきた方がいいの一点張りだった。

その内正也も繰り返す事になり、俺達は何度も繰り返した。一度や二度なんかじゃない、何度も、そう何度も同じ人生を繰り返した、正解の道に辿り着けるまで。その道の中でも、俺達は別の俺達を見つけた。

戦争屋とテロリスト。俺たちの中にいる俺達には話したことは無いけど、向こうに行くんだったらこっちにもケリをつけなくてはいけない。

それが、俺たちの真実だった。

 

「・・・・儂も、気付いた時には繰り返しておったよ。そしてある日気づいたんじゃよ、儂が自ら犯した罪にの、それがあ奴じゃった。そして同じく繰り返しておる者を探した、それがお主ら二人じゃよ。それからこの空間に連れ込むのにも何度もミスを犯してしまったりの・・・・何年かかったのじゃろうかのぉ」

「オーディンの爺さん・・・」

「じゃからここでケリを付けるんじゃ。赦されるとはおもっとらんが、いつか犠牲は増え続けるばかりになってしまうじゃろう。だから儂らで終わらせるんじゃ、神々の勝手な判断に反乱するんじゃよ。それが、儂の辿り着いた正解じゃ」

 

・・・・この爺さんは闘神と呼ばれたオーディンなんかじゃない。

ただ自分のせいで世界に飲まれたたった一人の人間、いや・・・・孫を救いたいだけなんだ。俺達人間と、そう大差ないんだ。

だったらやることは一つしかねぇじゃねぇかよ。

 

「・・・・・面白そうじゃねぇかよ、俺達も混ぜろよ」

「・・・・よいのか?この世界には戻れぬのかもしれぬぞ?」

「大体、そっちの世界は戦争中なんだろ?だったら俺達の出番だろ。」

「・・・・お主ら、もしや「答えはもう出てんだ。わざわざ言う必要もねぇだろ」・・・そうか、では頼むぞ。元()()()

「「りょ~かい!」」

 

そして俺達は、消えゆく視界に爺さんが笑っているのを見ながら消えて行った。

 

 

 

松田誠二、元の名を「アリー・アル・サーシェス」

元浜進、元の名を「九龍(ガウルン)

命の重さを知った戦争屋と、生の意味を理解した化け物に恐怖は存在しない。

 

さて、戦争を始めるとしようか。

敵は神、味方になる者は邪神と狂った戦士

 

怖いものは、何もない。

 




はい、光影陽炎です

まず彼らについて軽い説明を
誠二はハイスクDDの主人公、兵藤一誠の親友です。
原作では変態でとおってますが、この作品ではあるスイッチをきっかけにサーチェスの性格を出します。
スッペクはサーシェスと同等、性格は衛宮に近いと考えてもらっていいです。
まぁ、超兵と同じようなもんです。
元浜も同じような感じです。
ただ、戦闘になると壊れます。感覚が

では、詳しくしりたい方は活動報告あたりに乗っけておきます!

初期設定が混じって正也の名前が所々進になってました、申し訳ないです


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extra story IS 覇龍と崩龍 前編

二つに分ける事になりました


誠二と正也がオーディンの手によって世界を渡るのと同じ頃、ほかの世界から克影のいる世界に飛ばされた人間は数多くいる。

彼、彼女等は1人で来るものもいれば2人、3人と来る者もいる。だが、彼らに共通している事が一つだけある。

それは、この世界において『因子』と呼ばれる物を所持する者達すべての根本的思想、『己の護るものに害を犯したすべてを排除する』というものである。

獣も、人間も、宇宙人も己が護る者を汚すのであれば排除する。それが神だろうが、天変地異だろうが、時の流れと同じくして現れる運命だろうとも、徹底的に。

 

さて、彼等が来た時得られる情報は数多くある。

『駒王』『文月』『外史』『ウィルキア』『使徒』など、彼等の世界で起きている出来事やある特定の場所が存在しない、また同じ年号なのに別の歴史を歩んでいることも分かる。

つまり彼らは無限に存在する世界、『パラレルワールド』から至った者たちである。

そして、二人と同じくして世界に降りようとしている運命から外れた人間が三人、また世界を渡ろうとしていた。

___________________________________

 

 

子供の頃、俺には二人の妹がいた。

一人は俺の母親から生まれた子供、そしてもう一人は俺の親父と一緒に旅に連れていかれた時、俺の親父に無理を言って家族になった奴隷にされていた子供だった。とは言っても、連れてきた方の妹は俺と同い年だが。

 

なぜ親父に言って連れていく事になったかには理由があった。

 

それは、親とはぐれた俺が視線を右往左往していた時ふと路地裏を見たら、その子が強猥されようとしている所を目撃してしまったからだった。

少しだけの不幸だったのかもしれない。そのまま無視を決めてそこから立ち去ればよかったのかもしれない。

 

でも、10にも満たない俺にはあまりにも異常な精神があった。

 

『俺に関わったすべてを護る』

 

なぜだか分からないが妹が生まれて2年ほど経った頃、すでにアニメの英雄のような考えを持っていた。

俺はその決意に従い、卑猥な想像に浸っている大人達に声を掛けた、『おじさんたち何やってるの?』と。

俺の問いに帰ってきた答えは『とても楽しいことだよ。ボクも混ざる?』という、ぎこちない日本語だった。

だがその言葉によって俺の殻は破られてしまった。言わなければいいのに、言えば目の前の少女に恐怖を抱かれてしまうというのに、だが俺はその嘘に俺自身にかけた自制を解いてしまった。恐怖を抱いてしまうその彼女を

 

 

「じゃあ・・・・・なぜその女の子は泣いている?」

 

 

この呪われた運命から、救いたいと思ったからだった。

 

 

 

俺を取り囲んでいた5人の男たちは、俺が持っていた力によって恐怖し、気絶をしていた。

そして、魂が抜けたような眼をしていた彼女に話しかけた。

 

「君はまだ生きていたい?自由になりたい?」

「・・・・・私は人形。だから生きる価値も、自由になる価値も存在しない、ただの人形。」

 

瞳の奥に光を失った彼女は、さも当然の如くそう言った。

彼女の口から出た人形と言う言葉。確かに彼女の身体の泥を落とせば、人形のような美しさになるのだろう。しかし彼女は、自分の心を人形と言った。

だが彼女の心を人形と言うならば、俺は彼女に10歳とは思えない約束をする事しか思いつかなかった。

なぜなら、本来の俺は馬鹿なのだから。これは続きでしかないのならば―――――

 

「じゃあ証明しよう。生きる価値も、自由になる価値も、君のすべてに意味があることを俺が証明して見せよう」

「・・・・・どうやって?」

 

俺は俺らしく生きよう―――――――

 

「単純な話だ、君が俺と共に生きればいい。俺の価値は君の価値で、君の価値は俺の価値になる。俺は君のすべてを肯定し、君は俺のすべてを肯定すればいい」

「・・・・・なぜ、あなたは私にそこまでするの?」

 

我は俺とは別人なのだから―――――

 

「決まってるだろ?俺が君に惚れちまったからだよ」

 

五反田弾(オレ)人間(おれ)らしく生きるんだ。

 

彼女との問答は、俺を探していた親父が市警を連れてきた事によって一度終わった。

そして俺は、地元の警察に少し事情徴収をされたが、あの現状を子供ができるわけがないという事ですぐに終わった。

俺は彼女にも事情徴収があると思ったのだが、事情徴収をしようとした警察の人間が彼女の腕にある黄色い二本線を見て、ここらにいた金持ちの元奴隷だと言っていた。もっとも、その金持ちもろくな扱いをされなかった奴隷によって殺されたらしいがな、因果応報だろう。

俺は親父に初めてわがままを言った。それが、俺の救った女の子を家族に迎えたいと、10歳にもなっての初めてのわがままだった。

「子供一人、こんな物騒な所に放置していくのは最低だからな。」

親父が俺のわがままを聞いてくれた事にほっとした俺は、俺に手を引かれて歩いていた彼女が、俺に聞いた。

 

「・・・なぜ、貴方は私を好きになったの?」

 

彼女が聞いてきたことに対してすぐに返すことができなかった俺は、思考の海に一度沈んだ。

なぜなのだろう?心が空っぽの少女を、なぜおれは好きになってしまったのだろう?

 

本当はすでに答えは出ていた、だがそれを自分が肯定することができなかった。

確かではないが、俺の生前は護ることを己としていたのだった。

故に混ざっていた心が、真っ白になってしまっているのを見て、なおさら護りたくなったのだろう。

 

いや、俺は護ることを己としていたんじゃない。

 

真っ白だった俺に、護ることを教えてくれたやつがいたから、俺はそいつみたいになりたくて、護ることにしたんだろう。

相反する存在なのに、交わることのない水と油なのに、そんな事は関係なくなるぐらいそいつは、カッコいいと思えてしまったのだった。

 

「君が俺と同じような眼をしてるから・・・・それに、君の心が綺麗だからじゃあ、答えになってないか?」

「・・・・・ええ、答えになってないわ」

「そうかぁ・・・「でも」ん?」

「私は、その答えは好きよ」

 

彼女にそう言われてしまい、なんだか恥ずかしくなった俺は、黙って彼女の手を引いて親父と共に家に帰ろうとした。

 

「あ、名前を聞くのを忘れてた」

「??」

「いつまでも君っていうのはおかしいだろ?だから、名前」

「・・・・・スコール」

「え?」

「スコール・ミューゼル」

「よし。じゃあスコール、家に帰ろうぜ!」

「・・・ええ!」

 

彼女―――スコールを共に、俺は日本に戻った。

 

それが俺とスコールの、始まりだった。

 

________________________________

 

 

中学入って間もない頃、馬鹿を演じている奴と殴り合いをした。

 

俺もそいつも、生まれた時から異質な存在だった。

 

子供とは思えない精神力、大人よりも強大な力、そして生前のような記憶。

俺達は明らかに異常な人間だった。

 

そして俺達は己の力の限界を知るために、()()をした。

どの世界の地図にも載っていない孤島で、この世の戦いとは思えないぐらいの戦いだった。

そして俺達は、相打ちになった。

 

俺は不思議でしょうがなかった、こいつの一発一発の拳には心が籠っていた。俺にはただ無心に、無常に拳を振るっているだけなのに、こいつは戦いを楽しんでいた。

 

「なぜ、お前は戦いを楽しんでいるんだ?」

 

戦いが終わった後、俺はそいつに聞いてみた。

俺には心が無かった。戦う時も、会話をする時も、何をするにしても機械のように答える、それが俺だった。

だが俺の疑問は、簡単に解かれた。

 

「俺と同じように戦える奴がいたから・・・・だな」

 

異常なほどの力を持つ者は退屈を覚える。だから対等に戦える奴がいれば、戦う事が楽しくなってくる。

戦う事自体に愉しむ戦闘狂とは違い、対等であることに意味がある。

だがそれでも分からない。同じように戦えるのであれば、なぜお前には心がある?そいつにそう聞いてしまった。

 

「俺は心が無かったんだ、でもある時カッコいいと思えるぐらいのやつに会っちまったんだよ。そいつと俺は交わる事のないのに、それでも同じだと思えるぐらいだった。それでそいつと戦いが終わった後、俺は俺の領域に住んでいる奴等すべてを護ることにした・・・結果は護れなかったけどな、後悔もしたよ、俺が今までやってきたことはなんだったろうって。で、ここに来てから10年後になって、昔の俺みたいな奴・・・・スコールに会った。それであいつがだんだん心を取り戻しているのが分かった時、俺が今までやってきた事は無駄じゃないんだって考えるようになった。」

「・・・・・・」

「だからさ、俺は俺に関わる全てを護り通すことにしたんだ。他人とは違う俺が、ここにいる責任として、過ちを知っている人間として、俺は護ることにしたんだ。」

「・・・・それが、お前の心か?」

「ああ、『すべてを護る』。それが俺の心だ」

 

それを聞いたとき、正直すごい奴だと、改めて思った。

護ることを曲げることは無く、自分の信念を曇らせる事のないそいつを、カッコいいと思ってしまった。

生前の俺も、こんな風な奴だったのだろうか。

 

「お前は、何か護りたい者はないのか?」

「・・・・俺か?」

「ああ、いないのか?」

 

唐突にそう聞かれて、思い浮かぶのは家の近くの武家屋敷に住んでいる4人の顔だった。

のほほんとしている危ない奴、天才のような姉に勝つために努力を重ねる奴、見た目は厳しそうなやつだが内心は寂しがり屋な奴、妹が無茶な努力をするかどうか心配している奴、そんな奴らがいる所だった。

うちの家自体はそこの家と縁があり、昔はよく遊んでいた。

もし日本で戦争が起きたりなどしたら、俺は命に代えてでもそいつ等を護ろうとするだろう。

・・・あれ?俺には心は無いはずじゃあないのか?

 

「・・・・心ってのはな、いつ間にあるもんなんだよ」

「嗚呼、そうか・・・」

 

俺は心が無かったんじゃない。俺の中にある心に気が付けなかっただけなんだ。

何も感じないと、勘違いをしていたから、自分の心に気が付けなかっただけなんだ。

・・・なんだ、まるで俺がバカみたいじゃないか。

 

「さて、と。俺もそろそろ帰らないとスコールにまた怒られちまう」

「・・・・そうだな、俺も帰らなくてはな」

「送ろうか?」

「馬鹿言え、一人で帰れるわ」

 

 

俺は、俺の限界をここで知った。

だが俺は、俺の心も知ることができた。

だから俺は俺を見失わない。そうすれば、俺はあいつらを護ることができるのだから。

 

これが俺達、のちに『崩龍』の異名を持つことになる御手洗数馬こと17代目更識楯無を襲名して以後は更識楯無と、『覇龍』の異名を持つことになる五反田弾の、最初の物語(オトギバナシ)である

 




どうも、最近睡眠時間が2時間の光影陽炎です
中々これは辛い物がありますね・・・・身体がギシギシ言っております・・・
寿司屋のバイトも楽じゃあねぇなぁ・・・・
さて、今回はISから登場してもらう事になりました、通称『ワンサマの将来の義兄様(笑)』こと
五反田弾とその友人の御手洗数馬です!
え?原作はどうなってんの?と思っている方も多いと思いますので・・・・・
書きます、もう一作
実際二度ネタだろうと思いますが、書きます。作者は面倒なのは嫌いなので。
ですが書くことになったら、意外とハーレムになるかもしれない・・・
あ、後クロスオーバーは安定です。この作品からの派生にしようと思ってるので。
では、次回に会いましょう


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extra story 『馬鹿な奴らと愉快な仲間』

ハーメルンよ、私は(ry

大変お待たせしました。謝罪は後書きでします。


 

 

立ち並ぶビル、大きな交差点、それを渡る人々。

 

今では当たり前の景色だが、何十年も前では見ることもできなかったであろう風景でもある。

今から十数年前、地球は未知の生物によって侵攻されていた。

その生物に感情はなく、人間としての機能が備わっているわけでもない、ただの生身の機械のようなものだった。

 

後々になって、ある人物たちによりその生物の存在意義と誕生の歴史の解明がされていくのだが、今ここで明かすようなことではない。

私が今いる場所、『日本』の第二都市「東京」にわざわざアメリカから飛んできたのには、理由がある。

それは、私の職業が新聞記者であることと、その取材対象が日本にいるからである。

 

その取材対象というのは、地球を救った救世主達の一員である、とある人物だ。

 

先ほど出てきた生物・・・・『BETA』と呼ばれる怪物と、地球人との壮絶な戦いに決着をつけたある国連所属の部隊・・・・名を『EW大隊』と呼ばれている部隊の一員だった当時19歳だった『リョウ スガワ』という名前の日本人が、今回の取材対象である。

我々があの戦争について取材したいと言ったところ、条件付きでOKサインを出してくれた。仕事に支障をきたさない日曜日を取材日とすることと、取材内容は一切捻じ曲げないことを条件にOKを出してくれた。

 

場所の指定はされていなかったので、彼の自宅で取材をとることになり、現在我々は彼の家へと向かっている。

 

彼の家は駅からそう遠くない場所に位置している。だが、マンションであるため高い場所にあるが。

歩いて十五分、彼のいるマンションに到着できた。一階の入り口で、部屋番号を入力し、ベルを鳴らす。

 

『はーい、須川ですー』

 

スピーカーから声が聞こえる、どうやら彼の家内のようだ。

 

「こちら―――新聞です。取材の件について参りました。」

『あ、記者の方ですね?今からそちらに迎えに行きます~』

 

と言って、ガチャという音を最後に何も聞こえなくなった。どうやら本当に迎えに来るようだ。

数分もしないうちにロビーの奥のエレベーターから一人の女性が現れた。どうやらスガワ氏の奥さんのようだ。

 

「すいません、お待たせしてしまって」

「いえ、こちらは大丈夫ですよ」

「どうぞ、部屋まで案内します」

 

彼女は片手を横に出し、こちら側に来るように合図した。幸い、スタッフの中に日本人が多かったのと、私自身日本語を嗜んでいたので日本語を聞き取る事には不幸はなかった。

彼女の案内によって部屋にたどり着いた我々を短髪の男性、スガワ氏本人が玄関で出迎えてくれた。

 

「こんにちは、今日はわざわざありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ。よろしくお願いします」

 

簡単な挨拶を交わし室内に案内される我々は、普通の家庭と変わらないリビングに入った。

横がイス二つ分ぐらいの長さの机と、両側にイスが二つずつ。どこにでもあるような机とイスだった。

右側に我々、左側にスガワ氏が座り、取材を始める。

 

「さて、今回取材に応じていただきありがとうございます。これより先はオンレコになりますが、よろしいですか?」

「ええ、構いませんよ。」

 

彼の了承を得て、ボイスレコーダーのスイッチをONにする・・・・・

 

 

「スガワ氏、今回取材に応じていただいてありがとうございます。」

「いや、こちらも取材される身としてはなにぶん初めてですので、お手柔らかにお願いします。」

「そうでしたか!・・・・・失礼しました。では始めます。

あの大戦の中心にいたスガワ氏、とある武家の方からの紹介により軍に入隊したらしい、と言われていますが、本当ですか?」

「ええ、ただ武家の方、というのは間違っていますがね。」

「と、言われますと?」

「俺t・・・すいません。あの時の話になると、つい言葉が。」

「大丈夫ですよ。そのままお願いします」

「ありがとうございます・・・。俺達は武家の中でも上位、つまり斯衛の方から突然呼ばれました。」

「斯衛と言いますと、当時日本最強と言われていた?」

「はい。まぁ、斯衛とは言っても、本当は帝国陸軍の方に呼ばれたんですよ。」

「ちなみに、名前を伺っても?」

「本土防衛軍の、彩峰萩閣准将です。」

「確か、国連軍の『光州作戦』に部隊を率いて参加した隊長ですよね?」

「はい、その通りです。」

「なぜ、そんな方に呼ばれたか心当たりは有りましたか?」

「いえ、当時はまったく名は知られていなかったのですが・・・・あぁ、一つありましたね。」

「どんな話ですか?」

「あの時、俺は13の時でした・・・・・」

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

1997年3月3日

国連軍ALP直属衛士訓練学校

 

 

 

「はぁ・・・・」

軽いため息をついて、俺はこれまでの事を考えていた。

 

俺がこの世界に流されて早4年半、時間というのは流れるのが速いものだ。

最初の頃ついて行くのがやっとだった俺も、今では中隊長という任に就いている。

 

『オーディン連隊』というオルタネイティヴ第四計画(ANP4)の主任、香月博士直属の部隊に配置されている俺は、当時は地獄の訓練を受けていた。

 

まったく、世界というのはとことん理不尽を突き付けるのがお好きならしい・・・・。4年前、学校から帰宅して【戦争】の疲れがドンとあった俺は、玄関でぶっ倒れそのまま睡眠に入っていたのだが、いつの間にか桜の木の下で熟睡なんていうシチュエーションに突入しており、たまたま通りかったお姉さまもとい女帝に捕まって、そのまま軍に入隊・・・・まさに誰得状態に陥っていた。

そこからは訓練、訓練、訓練の毎日だった。

 

娯楽と言ってもお手玉、将棋、おはじきなんていう旧式なお遊び。PCPやSOMY社の電子ゲームは存在せず、漫画もアニメも発展していない時代・・・・まさか20年以上のタイムスリップに合うとは

夢にも思わなかった。

 

だが、ロマンがそこにはあった。

 

どの時代を捜しても存在しない兵器、二足歩行型の戦闘ロボット・・・・戦術機だ。

分かるか?画面の向こう側の世界と思っていたロマンが、男の夢が、この世界には詰まっていた。

だが世界ってのは、本当に理不尽で、あくまでも現実主義(リアリスト)だった。

宇宙人・・・・生ける機械ともいえるBETAの襲来によって、地上は負に染まっていた。

絶望、この一言に尽きるだろう。ただ蹂躙を尽くし、立ち向かっていけば殺戮され、死人の数は多く、もはや世界の半分は奴らに殺されただろう。

 

当時格闘技術戦と、戦術機適正検査でトップを誇っていた俺は、慢心をしていた。

ある戦場で安易な決断を下し、部隊の仲間を危険な目に合わせ、数限られている兵器を減らしてしまった。だが結果は仲間を生き残らせる事に成功し、数限られている兵器も最小限に抑え切れていた。

結果だけ見れば十分と言えるほどだが、それでも俺は軍人として失格である。でも俺は、その選択を間違ったなんて、言わなかった。

 

それ以降、俺は世界に対して戦争をすることにした。不可能と言われていた救出戦を単独でこなし、危険な囮役もやって見せた。世界が【不可能】と判断した作戦を俺は【可能】にしていった。だが、それらの行動全ても無駄だった。

 

俺の心は磨り減って、体は限界をきたし、感覚は麻痺していた。もはや、ポンコツと化した精密機械となっていた。

ある日、そんな俺にも転機が訪れた。

そう、それは夏の日差しが強い日の夜の事だった・・・・・・

 

______________________________

 

 

1993年 9月3日

ユーラシア大陸 帝国大陸派遣軍

作戦名「九―六作戦」

 

 

 

 

夏の終盤の季節になった時、俺は突然の出撃を命ぜられた。しかもよくわからない奴と二機編成をさせられ、大陸に渡った。

何故、と言っても俺の飼い主様は何も答えちゃくれなかった。ただ一言、らしくもない事を言っていた。

 

『妹のためよ。』と

 

 

あんな冷酷極まりない悪の頂点とも言うべき人間のどこに情があったのか、俺の予想がとんでもない方向に行った。いつもはBETAに囲まれた兵の救出だとか、機体のテストパイロットだとか、素質がいいからって法律までガン無視してやがる。

 

ちなみに俺は13歳で、大体中学2年生あたりの歳だが、こっちに飛ばされた時の実年齢は17歳であって、今は18歳である。

全く、頭が覚えている動きが足りないせいで入りたての頃はめちゃめちゃ大変だったわ・・・まぁ今となっては既に過去の話だがな。

 

さて、現状どうなっているのかを確認してみよう。

乗っている機体は赤のメインカラーに黒と黄色のラインが入った俺専用の陽炎である。

この機体、実は既に生産数を絞られており、乗り手も徐々に減っている機体だが、現段階で日本帝国軍の中では一番格闘に特化している機体である。

 

とある理由から跳躍ユニットを外しているが、脚部間接ユニットと腕部間接ユニットを格段に強化した。もちろんフレームも改造済みだが、装甲は通常の陽炎よりも薄くなっている。

 

さて、臨時の相方さんは撃震に乗っておられるのだが、武装は近距離にかなり徹している。

跳躍ユニットは付けているものの、装甲を薄くして各駆動部を強化したらしい。

お互いにブレードマウントにしてはいるが、俺は片腕に米軍機のA-10『サンダーボルトⅡ』が装備している『GAU-8 Avenger』を元に携帯性を目的とした新たなガトリングモーターキャノン、『GAU-9 bastard』を両腕に一基ずつ搭載している。実はこれが装甲を薄くしている一つの理由だったりもする。

 

Avengerは一基につき1万の弾数を誇っているが、それはA-10での話だ。今回は試運転ということで装備したが、マガジンを2つに分けることによって携帯性を上げることに成功した。だがしかし、マガジンの装填に時間がかかるというのと、反動も少なくはないのが難点だった。

 

だが、なんとか作戦までに問題を解決させる事ができ、マガジンをスライド開閉型にする事によって従来の装填速度を上回る事が出来たが、それでもリロードに5秒弱はかかってしまう。

 

反動は、連射速度を毎分500発から300発に変える事で反動を減らす事が実現できたが、弾幕が薄くなってしまうために二基装備することになって、結果的には装甲を予定よりもっと薄くする事になってしまった。

 

だが、GAU-9をパージする事によって、本来到達不可能と考えられていた速度に到達する事が出来るようになった。まぁ、装甲が薄いせいで逆に近接戦闘の幅が狭まったので、結果的にはマイナスだ。

とまぁ、俺の機体はこんなもんなんだが・・・・向こうさんは普通の撃震と外見に大差はない。胴体の装甲をペラッペラにしたおかげで、素早い対応ができるようになったぐらいだろう。装備に関しては、長刀がマウントしている以外にも手持ちで更に2本追加されている・・・・・なんとも異質な姿こと。

作戦開始は予測で明け方、それまで親睦でも深めようかと思って個人通信を開いたのはいいんだが・・・・なんとまぁ、ご丁寧に誰かも分からないようにヘルメットまでしているが、俺は気にせず話しかけた。

 

「よう、あんたもうちのあれに捕まったのか?」

『・・・・・・・・』

「あんた、もしかしてなんかの流派とかに入っていたのか?」

『・・・・・・・・・』

「お~い、聞いてんのか?」

『・・・・・・・・・』

 

あ、あるぇ?会話が一向に成り立たないんだが?こういう場合ってどうすりゃいいんだ?

 

『・・・・・・・私は』

 

あ、やっと口を開きやがったな。さて、なにを・・・

 

『作戦前には無駄な体力を使わないようにしているの。だから話しかけないでくれるかしら?』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

開口一番がそれかよ・・・!

まぁいい、そういうことには慣れている方なんでな、だったらこっちもやらせてもらうぜ!

 

「はーん、そこまで体力に自信がねえのか・・・・だったら後ろにでも隠れていれば?」

『言葉を間違えたわね、私はあなたみたいな人と話す気はないの。だから黙って頂戴』

 

・・・・・ここまで言われてくるとなんか腹が立ってくるな。

言い返そうとした瞬間―――――地鳴りが唐突に響いた。

 

『これはいったい何!?』

 

通信先で驚いている相方。だが俺にとっては、慣れ親しんだような感覚だ。

 

「2時の方向、奴らが来るぞ!とっとと構えろ!」

『!?』

 

視覚で奴らを捉えた俺は、迷わず二基のGAU-9のトリガーを引いた。

BETAは体中に穴を空けていき、そして倒れていったが、後ろからどんどん湧いてきて来る始末で、もはや津波を連想できるくらいだった。

もはやこうなってしまっては相方を出すわけにはいかない。近接戦闘に特化しているのでは、この場では邪魔にしかならない。情況的に考えて、本部はすでに陥落していると予測した方が妥当だろう。

 

「サンダー02!今すぐ4時の方向に向かえ!」

『!?何を言っているの!ここをあなた一人で残せるわけがないわ!』

「こっちは試運転に集中していんだからフレンドリーファイヤー(FF)する可能性が高い!こっち側は何とかすっから、お前は後方の新兵共の救援に向かえ!」

 

そう、今回の作戦には比較的に初実践の新米兵士が多い。死の8分を乗り越えることすら無理だろう。だがそうなってしまう前に、彼らが死んでしまう前に彼女を向かわせなければならない。

 

『・・・・分かったわ、後から追い付いてきなさいよ!』

「合点承知!そうと決まれば早く行けぇ!」

 

通信が切れて、相方が飛び立ったのを目視した俺は、再びBETAの大群と対峙することになった。

重光線級は見当たらないものの、光線級や戦車級、要撃級と突撃級、それと要塞級までお出ましとなれば、それはそれで大変な数になる。

 

しかも今回は大群、数的にも考えて全体で1万から2万と考えていいだろう。突撃級が突進してくるのを踏み台にして水平に飛んでGAU-9を撃ちまくる。マシンガン独特の射撃音、同時に肉の裂ける音が入り乱れる。

 

「畜生、どんだけこっちに溜まってんだコラ・・・!」

 

目視しただけでも2千は軽く居てもおかしくはない。大体6千がこちら側に偏っていると言ってもいいだろう。

 

俺がいるのは本部から大体10時半の方向であるから、本部から2時か3時の方向にも湧いていると考えるのが現状況での判断だが、後方に下がらせた相方はもしかしたら既についていて、戦闘を開始しているのかもしれなかった。

 

(間違えねぇ、今度こそ誰も死なせやしねぇ・・・・!)

 

俺は一人の戦場で、そんな事を考えていた・・・・・・

毎晩、夢のように現れる彼女の顔を思い浮かべながら――――――

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「・・・・それでその時に付いたあだ名が『殲滅隊長』っていうのでして。BETAを試験武装でなぎ払ったことから付いたんですよ。」

「そうだったのですか・・・」

 

私はその話を聞いて、驚きを隠せずにいた。

 

彼の話からすれば13の時からBETAとの戦争に参加しているという。だがそれは初の戦闘ではなく、時間外れるものの前から戦争に参加しているのだ。推測しただけでも11から12の時から戦争をしている。子供なのになぜ戦争に参加したのか?

 

復讐、当時の世界の情勢の影響での好奇心から、はたまた別の理由からなのか・・・・。

私はそれを聞かずには居られなかった。

 

「・・・・・・なぜ、そんな歳からあの戦争に参加しているのですか?あの時期は一番激戦を極めていたはずで、生きて帰れるかどうかも分からなかったんですよ?」

「そうですね・・・」

 

彼は少し考えるそぶりを見せたが、実際は既に答えがあるのだろう。だがどの答えを出そうか迷っている、そのように見えた。

 

そして彼は、口を開いてこう言った。

 

 

「あえて言えば、知ってしまったから・・・・でしょうか。」

「知ってしまった、とはいったい何を知ってしまったのですか?」

「世界の真実・・・・・ですかね。」

「真実?真実とは一体・・・」

 

私がその言葉の意味について問い詰めようとした瞬間、彼は続けざまにこう言った。

 

「っと、それに関しては何も話せません。」

 

鋭い視線、私はその視線に怯えてしまい何も言えなくなった。

 

そして彼は、テープの録音停止ボタンを押してこう言った。

 

 

「オフレコで申し上げるとすればあの部隊にいた誰しもが皆、世界一のどーしようもない馬鹿軍団だった・・・・そういう事です。」

 

・・・・・私には、まだ真実を知ることは出来ないようだ。

 




さて・・・・大変お久しぶりです、光影陽炎です。
現実の方がルナティックな忙しさを極めており、執筆作業が困難でした。
これからは2週に1回、行けて1週に1話投稿していきます。

そして最後に・・・・・
ハーメルンよ、私は帰って来たぁぁぁあああああああああ!


以上です。謝罪は活動報告でします。


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会合

 

 

京都にある、とある武家屋敷の一室にある人物達が集まっていた。

人数は5人、顔立ちからして日本人ばかりだが年齢層は低い。平均的に言って15歳ぐらいだろう。

服装もそれぞれ違い、黒い軍の制服―――国連軍の軍服を着ているのが一人。

それ以外は現代には合わない私服、どこかの高校の制服などなど人によってそれぞれだったが、明らかに()()の服装ではないのは確かだ。

 

「・・・・・こねぇな」

「だな」

 

唐突にそうつぶやいたのは左から数えて1番と2番目で胡坐をかいている二人だった。

1番目の方の名前は松田誠二と言い、その隣は元浜正也という。

去年、ちょうど光州作戦の開始から突如現れた日本のデータベースに乗っていない人間の内の2人だった。

鉄とは違い戦術機ごと現れたわけではなく、皇居の門の前に倒れていたのを発見された。

不審者という事で留置所に入れられていたが、データベースに乗っていない事が判明された瞬間すぐに刑務所に異動させられた。

その後、城内省の鎧衣課長からの口添えによって特例だが鎧衣の保護下という名目で釈放を許された。

・・・・・実際はもっと別の人物による恩赦らしいのだが、本人達はその事を知らない。

 

「なぁ、俺達出されたはいいけどよ。これから何をすりゃいいんだ?」

「それを言われる為にここに来たんだろうが・・・・・」

 

相方の馬鹿さ加減に呆れている正也だったが、正也の肩をツンツンと叩く人物が隣にいた。

 

「なぁ、おたくらもなにも言われないでここに呼び出された口か?」

「・・・・ここにいる全員はそんなもんだろ。ま、あっちの軍服さんは知らんがな」

 

長髪の男に答えるのと同時に、一番右側にいる黒い国連軍の軍服を着た男にも聞こえるように声を高めた。

 

「俺も何故ここに呼ばれたなんか知らないよ・・・・こっちはいきなり上司にここに行けって命令された人間なんだからさ」

 

軍服の男も最初は腕を組んで胡坐をかいていたが、組んでいた腕を解いて正也の言葉に反応した。

反応からして、彼もほぼ強制的にここに行くように指示された人間なんだろう。

 

「こっちとら連戦で疲れてんだからよぉ・・・・とっとと帰してほしいもんだぜ」

 

肩をすくめながら彼はそう言った。どうやらここにいるほとんどの人間はさっさと帰りたい気分らしい。

 

「ところでよ、紹介がまだだったな。

俺は五反田弾。んで、隣にいるムスッとしているのは更識楯無って言うんだ。よろしくな!えっと・・・」

 

今まで忘れていたのか、長髪の男――――弾は自己紹介を始めた。

先ほどまで一言も喋っていない隣の男―――楯無は少しだけ上半身を少しだけ傾けて、すぐに姿勢を戻した。

 

「俺は元浜正也、隣にいる馬鹿は松田誠二と言う。」

「よろしくな!正也と誠二。

そこの軍服さんもどうだい?」

 

弾はさりげなく軍服の男にも自己紹介を促した。

彼は、ため息を吐きつつ弾の誘いに乗った。

 

「軍服さんはよしてくれ・・・これでも16なんだ。」

「「16!?」」

 

弾と誠二は二人して驚いた。楯無と正也も少しほど動揺をしていた。

なぜならば、彼の体格は16にしてはもはや軍人寄りだ。細身ではあるが筋肉はしっかりと付いており、身長は170を優に超えている。

外見だけで言ってしまえば20歳は超えているだろうと勘違いさせられる。

彼が口を開こうとした時、上段の襖が開いて二人の男が現れた。

入って来た二人は上段中央に座り、正也や弾達とは正面から向き合う形になった。

 

「今回集まってくれて感謝する。俺は黒鋼(くろがね)克影(かつかげ)、今はわけあって帝国陸軍に所属している。隣にいるのは・・・・」

(くろがね)光成(こうせい)です。よろしくお願いします」

 

二人・・・・克影と光成と名乗る二人は、弾達4人には聞き覚えのない名前だった。

だが軍服の男は名前を聞いた途端、険しい顔になりなにやらただならぬ気配になった。

 

「・・・・どうかしたのか?」

 

克影は、軍服の男の険しい気配に気づいたのか、突然男に声をかけた。

 

「・・・いえ、何も」

 

軍服の男はすぐに気配を四散して、普段通りの状態に戻った。

他4人はその状況をジッと見ていたが、さほど気にすることはなく黙っていた。

 

「さて、今回集まってもらったのは分かっているとは思うが、本題に入ってもいいか?」

「本題?」

「俺たちは何も聞いていないぜ?」

「なに?・・・・分かった、じゃあまず集まってもらった理由から話そう。」

 

克影はそう言い、正座の状態から胡坐になった。少しの静寂・・・・そして彼は言葉を紡いだ。

 

「俺は君達・・・いや、アンタ達はこの時代の人間じゃないのは知っている」

「「「「「!?」」」」」

 

弾達は驚愕した。まだ誰にも言ってない事だ、この時代に来てからも言わないだろうと思っていた事だが、その秘密を彼によって暴かれた。

 

 

「・・・・なんでそんな事が分かる?確証はあるのか?」

「まぁ俺もこの時代の人間ではないからこそ分かるのだが・・・・まぁいい。この世界の歴史はもちろん知らないよな?」

「歴史?()()()()()()()()()とかか?」

 

何故知っているのかは問題ではないと言わんばかりにこの世界について説明しだす克影、それに反応を示したのは意外にも誠二だった。

 

「そんなものだが・・・ちょうどいい例が出たからここで答えよう。

第2次世界大戦時、原爆はドイツのベルリンに落とされている。」

「・・・・は?」

 

軍服の男を含まない4人は首をかしげた。

第2次世界大戦では、日本の広島と長崎に原爆が落とされている。そんなことは中学生でも知っている事だ。

 

「第2次大戦中、ドイツがアフガンの石油を抑えた事によってアメリカに原爆を落とされ、ドイツの降伏宣言・・・それがこの世界の歴史。」

「なん・・・だと!?」

「そしてドイツの降伏によって後ろの守りを失った日本も全面降伏にはならなかったものの、戦線が孤立するのを予想して降伏。ただ、天皇の人間宣言など当時の日本の象徴たるものは失われず今も続いている・・・これで理解したか?」

「・・・突然説明が始まってしまい少し水を指すところで悪いのだが。」

 

彼らの時代とこの世界の違いを簡易的に説明が終わった頃、楯無が突然しゃべりだした。

今まで何も語らなかった彼の顔は・・・・・笑っていた。

 

「それがどうした?俺はBETAとやらを全滅させるために呼ばれたとばかり思っていたのだが。」

「おい楯無、お前何を・・・」

「白銀の話を聞いていなかったのか?『巨人殿がお前達に話があるそうだ』と言っていただろう?」

「・・・あ、確かに」

 

弾は手をポンと叩き、納得したようだった。

一方誠二と正也は

 

「日本は全面降伏せずにいたのか・・・・」

「だからまだ帝国なのか。まぁ俺たちは狙って飛ばされたわけだからあまり関係ないけどな。」

 

二人してケラケラと笑っていた。

克影と光成は戸惑うと思っていたのだが、どうやら予想は外れたようだ。

 

「えーと、じゃあ本題に入るけど・・・いいか?」

「いいぜ、んでなんだよ?」

「日本軍・・・いや、帝国陸軍に入ってはくれないか?」

「軍?なんでまた。」

 

この情況的に言ったら帝国軍に入ってくれと言われるのが普通だったのだろう。そもそも彼らは戦争の経験がない、はずなのである。

だが、この場にいる全員が普通では無かった。

 

「現状で人類はBETAという怪物共に攻められていおり、既に確認されているだけで50%の人類は奴らの餌食になっている・・・・そこでだ、俺はあんた達のような人間を捜して軍に入ってもらう事にしてもらっている。」

「ちょっと待てよ、それが何で俺たちなんだよ?」

「だから俺はあんた達を知っているからだって言っているだろ?元テロリストに元戦争屋、神話の存在とされている龍、12歳から戦争に参加している子供・・・」

 

彼の言葉から紡がれた言葉はこの場の人間でしか分からない言葉。

異常であるからこそ、その異常な力を使ってほしい、というわけなのだろう。

 

「・・・元テロリストを軍に誘うか?普通」

「そんな事を言ったら戦争屋だって同じだろ?」

「そっちはいいよな~こっちなんかファンタジーなバケモンだぜ?」

「「・・・・」」

 

思い思いに一言言っている3人、そして黙っている2人。そして、軍服の男が喋り始めた。

 

「俺は既に国連軍に所属している。軍部が違うから俺は帝国軍に入れないはずだが?」

「いや何、後々国連軍に異動する事になるのが決まっている。まぁ、今回は本土防衛のための人員補充ってところだからな。」

「本土防衛?近いうちに戦場になるのか?」

 

楯無が防衛という言葉に反応する、どうやら日本が戦場になる事を察したらしい。

 

「ああ、今年の八月あたりだ、それまでに4人には戦術機の扱い方を学んでもらう。」

「戦術機?なんだそりゃ?」

「ああ、簡単に言ってしまえばロボットだよ。」

 

弾と楯無は驚き、誠二と正也はまるで玩具を見つけた子供のように笑う。

どうやら誠二と正也は経験があるらしい。

 

「それで4人には戦術機の扱い方を教える学校に入ってもらう事になるからな。」

「は?学校?」

「ああ、その方が手っ取り早いしそっちの方が楽だ。俺はこの前試験をやって来たからついでってことで口添えはしておくが、あんまり意味はないからな。」

 

克影と光成は元々試験が必要なかったのだが、巌谷中佐が実力を見極めたいという事で戦術機の戦闘試験が入った。

そこでの成績が期待をはるかに上回るものだったため、文句なしの入学を認められた。

 

「・・・では俺はそっちが国連に来る時のパイプになってくれってことか?」

「そういう事『殲滅隊長』」

 

殲滅隊長、それが軍服の男―――須川の異名である。

5千のBETA群をたった一機で殲滅したことから付けられた名前である。本人はまんざらではないようすだった。

 

「はぁ・・・分かった、上司にはそう伝えておく。」

「頼んだ。では今日はこれで終わりだ、4人には追って通達する。」

「はいはい」「りょ~かい」「また戦争か・・」「・・・」

 

彼らはそれぞれ立ち上がって部屋を出た。だが、須川だけはまだ残っていた。

それに気づいていた克影は話しかけた。

 

「まだ何か質問があるのか?」

「いや、少し聞きたい事があってな・・・『誓約者』と『紫の戦士』殿は元気か?」

「!?・・・・・最近は会っていないが、元気だと思うぞ?」

 

須川の言葉に驚いた後、何かを察したのか返答する。

その返答に満足したのか、彼は微笑を浮かべていた。

 

「・・・知り合いなのか?」

「知り合い・・・そうだな、ちょっとした腐れ縁だ。」

 

まるで昔を思い出すように彼はそう言った。

 




感想、意見、誤字待ってます!


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番外編 とても大きくて、とても小さくて、とても大切なお伽噺の『日常』 その壱

今回は光州作戦と二機編成実践試験の間の期間のお話です。


1998年12月31日

 

月日の流れは予想以上に早い物である。

 

春が訪れたと思えばいつの間にか夏になり、夏の暑さが過ぎれば秋になり、風が冷たくなってきた頃には冬になる。

 

そう、今日は1年の終わりの日である。

 

「・・・・・・・・・」

 

縁側でのんびりとしている私、彩峰慧は今日から家に住む事になっている新しい人を待っている。

父さん、彩峰萩閣は軍の将校でそれなりの高い地位にいる。

父さんが言うには軍に入ればそれなりの汚い所も見えてくるらしいけど、この前きた家に来た人はまさにそんな人だった。

自分の保身のために動いて、危機的状況な人類は自分は知った事じゃないと言わんばかりの人。

父さんは小声で一言言ってその人を追い返した。帰る時のその人の顔は青ざめていたけど、私からしてみればお気の毒さまだった。

そんな父さんが今朝朝食の場でこんな事を言っていた。

 

「ああ、昨日言い忘れていたが今日この家に新しく来る子供がいる。慧、お前と同い年だから仲良くしてやってくれ。」

「・・・・・・・・・・・・うん。」

 

その新しく来る子供、詳しくは聞いていないけど仲良くしてやってくれと言われたからには仲良くするしかない。私は品定めも兼ねて出向かいをすることにした。

縁側でボーっとしてから約1時間、未だに来るようすもなく昼時になっても来ない様子なので私は近くの本屋に行くことにした。

 

 

母さんからお弁当―――とは言っても焼きそばがたっぷり入った弁当―――を渡されて本を一冊買える程度の小金を持って私は出掛けた。

 

外を歩いているとやはり目につくのは買い物かごを手に持っている大人達、子供は家でおとなしくしているみたいだ。

京都とは言っても大晦日はやはり買い物の特売日でもあって、一年の終わりの日だ。家族そろって年明けの食事をするのが日常的なんだろう。

 

さて、目的の本屋『月影』に辿りついた私を待っていたのは、店主とその息子だった。

 

「おっ!彩峰の嬢ちゃんじゃないか、らっしゃい!」

「姉ちゃんらっしゃい!」

「・・・・・・うん。」

「今日はどんな本を探しに来たんだい?」

「・・・・・え~と。」

 

店主に聞かれて買おうと思っていた本を思い出そうとしたのだが、今回買いに来たのは母さんが読んでいた本を買おうと思っていたため、あまり思い出せない。

とりあえず断片的に思い出してみる。

 

「・・・・・・語られざるおとぎばなし?」

「ああ、『歴史に消えた語られざるお伽噺』ね。それなら左から2番目の棚の右奥にあるよ。」

「・・・・・・ありがとう。」

「いえいえ、どういたしまして。」

 

店長に場所を教えてもらい、私はその場所に捜しに向かう。

ちなみにこの本屋、京都の中でも1番大きい本屋なのだが種類が多いのと本屋自体が大きすぎるためにあまり利用されていない。でも客が少ない時に店長に聞くとすぐに教えてもらえる。

教えられた場所で探す事数分、すぐに求めていた私は中身を開いて目次を見た。

覇龍と崩龍、贋作者、天の御使い、赤龍帝と白龍皇、虚無の使い魔・・・・・・

 

他にもたくさんあったが中々面白そうな噺ばかりだったので、これを買っていく事にした。

パラパラ中をめくっていると題名が擦り切れていて読めないのがあった。

 

「・・・・・・・?」

 

疑問に私は思い、そこから先のページをめくって見るがそこから先は白紙のままだった。

どうやら擦り切れた題名が最後の噺らしく、そこから先のページには何も書いていなかった。だが、裏表紙を見てみると言葉が書いてある、たった数行の言葉だがなんだか分からないけどふいに読み上げてしまった。

 

「『あなたはこの噺を知ってしまったからには知らなかった時間には戻れない。でも、知らなかった時間のまま過ごす事も出来ます・・・』!?」

 

私の口調に合わせるように紡がれたその言葉は、カウンター側の出口とは逆の方から聞こえてきた。

咄嗟に私は声が聞こえてきた方を向くと、一人の男の子がいた。外見的に年齢は私と同じぐらいだろう、でも普通の子供とは違う。そう、なにか気配ともいえる物が異質に感じた。

 

「その本、どうよ?」

「・・・・・・え?」

 

突然少年から聞かれる感想、買う予定の物だったのだろうか、私はあまりにも突然だったためすぐに答えを出すことはできなかった。でもこの本を読んでいて思った事はある。

 

「・・・・・・現実味があるお話だった。」

「・・・そか、それならいいや、じゃあまたな。」

 

私の答えに満足したのか、彼は私の横を通ってカウンターの方へ向かう。

その後ろ姿にボーっとしていたが、その姿が見えなくなった頃にハッとなって後を追いかける。

カウンターから見える位置に行くと彼の姿は見えなくなっており、私は本を片手に佇んでいた。

 

 

 

既に昼を過ぎて近くの喫茶店でご飯を食べてお茶を飲み終わり、私は帰路についていた。

家に着いてから私は、母さんに擦り切れたページの事を聞こうと思っていて、珍しくほんの虫になっていた。

そもそも私は本を読むよりも体を動かすほうが好きなのだが、珍しく夢中になる本が見つかった。

今までに夢中になった本と言えば『世界の麺類の調理方法!』だったかな?

家の玄関について、私は鍵を開けて玄関ドアを開ける。

 

「・・・・・ただいま。」

「あら、おかえりなさい。今日は早かったのね?」

「・・・・・・母さん、この本、知ってる?」

 

肩掛け型のカバンから取り出したあの本を母さんに見せたら、意外そうな顔をしていた。

実際、私もこの本が見つかって買う事になるとは思ってもいなかったのだ。

 

「この本ね!もちろん知っているわよ?」

「・・・・・・最後のお話が、擦り切れていて読めない。」

「あぁ、そのことね。

実はこの本、出版社に聞いてみたんだけどね、最後のお話は擦り切れていて読めないようになっているらしいのよ。」

「・・・・・・なんで?」

 

擦り切れていて読めないという事はよく読まれている証らしいのだが、わざわざそんな状態にしておく意図が掴めなかった。

 

「なんでもね、作者さんが行方不明になっちゃったらしいのよ。それで、出版が決まっていたこの本の最後のお話だけ擦り切れた状態で出すことになった・・・というわけらしいわよ?」

「・・・・・・そうなんだ。」

「でもこの本、ちょっと擦り切れすぎているわね・・・確かここら辺に一行だけ言葉が書かれているはずなんだけど・・・」

 

母さんはちょっと待っててね?と言って二階に上がった。

1分もしないうちに戻ってきて母さんは全く同じ本を持ってきた、表紙は母さんの方が綺麗だが。

 

「ええっと・・・あった、ここよ。」

「・・・『それはとてもおおきくて、とてもちいさくて、とてもたいせつな、あいとゆうきのおとぎばなし』?」

「うん、どうやらこれが題名なんじゃないかっていう話が読者側から言われ続けているんだけど・・・」

 

母さんの持っていた本を読んでいると、そう言えば自分が買ってきた本にも書いてあった言葉があったこと思い出し、パラパラとめくる。

そして・・・見つけた。

 

「何を捜しているの?」

「・・・・・こっちにも一言書いてあった。」

「なんて書いてあった?」

「えっと・・・『あなたの護りたいものは何ですか?

あなたは何処から来て、何処へ行くのですか?

あなたはいつまで顔を背け続けるのですか?』・・・って書いてある。」

「何かの詩かしら?・・・母さん、後で探してみるわ。」

 

母さんが再度上に本を置きに行ってから戻ってくると、突然玄関ベルが鳴り響く。

 

「慧―、ちょっと出てくれないかしら~!」

「・・・・・・」

 

やっと来たのかなと思いつつ、私がドアを開けると・・・目の前には先ほど本屋であった少年と、同い年ぐらいの男の子がいた。

 

「今日からお世話になります、鉄光成と言います。よろしくお願いします。」

「同じく黒鋼克影と言います。今日からよろしくお願いします。」

 

 

それが私と二人・・・光成と克影のあまり予想をしていなかった出会いだった。

 

 

 

 

 

余談だが、あの本をその日の夜に詳しく読んでみると『萌えは死にますか?』と意味不明な言葉が書いてあった。

 




どうも、光影陽炎です。
なんとか2話投稿にこぎ着けた・・・
さて、前回は因子持ちと言う事で全員集めましたが
オリ展開かつ原作のモブキャラを使うとなると中々扱いにくい・・・
・・・gdらないように頑張ります!
感想意見、誤字脱字、ありましたらよろしくお願いします!


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恋人

 

1998年 2月21日

 

冬が過ぎ、桜が少しずつ散り始めている頃、とある男子二人が学生寮で目覚めた。

二人が通っている学校に寮はなかったのだが、帝国陸軍将校の推薦というのもあったので昔作った5階建ての一階ごとの部屋数12部屋の学生寮を急遽再開したのだが・・・・未だに入居人は四人だけである。もちろん、学生だけだが。

 

「おい、陽が昇ったぞ弾。そろそろ起きねば朝食がとれん。」

「ん~?もう朝かぁ・・・」

 

弾と呼ばれた少年は、面倒くせぇ・・・と呟きながらベッドから降りる。

弾を起こした少年、楯無はコーヒーをカップに注いでベッドの近くの丸机に二つ置く。すでに楯無は制服に着替えた状態だった。

 

「おい楯無・・・お前着替えるのが早すぎはしないか?」

「む、俺はお前が昨晩起きると言った時間に起き、室内でお前の言う筋トレなるものをやっていたのだが?」

「あー・・・すまん、誘っておいて起きなくて。」

「まぁ別にかまわんさ、二時間程度の睡眠でお前が起きるとは思ってなかったからな。」

「ウッ!?・・・悪ぃ。」

 

彼らは昨日の夜、全国の戦術機がどの戦闘を想定して作られているのかを自室で自習していた。その自習が午前四時まで掛ってしまったのだ、弾が誘った時間は六時、楯無は出来る限り弾を寝かそうと考え、八時まで起こさなかったのである。ちなみに2人が通っている学校、京都衛士訓練学校は学部が二つあり帝国軍衛士養成学部、いわゆる一般と斯衛軍衛士養成学校、つまり斯衛がある。

 

違いと言っても大きな違いはなく、その名の通り一般は卒業後に陸軍や海軍に回される学生であり、斯衛は卒業後が斯衛軍になる事が確定されている、いわゆる武家たちの集まりである。

斯衛から帝国軍に行けることはあっても一般が斯衛に行けるはとても稀である。

斯衛というのは、征夷大将軍の護衛を任されたり、その勅命を受けたりするため、それなりの地位が必要になる。つまり、武家でなくてはならない。

 

「今日は戦術機訓練ってあったか?」

「ちょっと待っていろ・・・・午前の座学の後にあるみたいだな。」

「よっしゃ!やっと乗れるぜ!」

 

戦術機訓練、その名の通り戦術機に乗ってBETAとの戦闘を前提とした訓練だ。

彼ら、弾と楯無を含めた四人はそれを待ち望んでいた事であり、この学校に入った理由でもある。

 

「弾、早く着替えろ。俺は先に行くぞ。」

「おう~先行ってくれ。」

 

楯無はカップに入っているコーヒーを飲みほして、玄関に向かい先に部屋を出た。

弾は楯無が部屋を出た後、近くに掛けてあった衛士訓練学校の制服を取り、ワイシャツの袖に腕を通し、ズボンを穿いて上着を着る。

そして楯無が飲みほしたコーヒーが入っていたカップと今自分が飲みほしたコーヒーが入っていたカップを台所に持っていき水に浸ける。

そして玄関においてある学生用のカバンを持って玄関を開けようとするが、胸ポケットに入っている写真を唐突に取りだす。

写真には五人の男女、うち一人は弾である事が分かる。他には両親と思われる男女に、万延の笑みを浮かべている二人の女の子だった。

 

「スコール・・・」

 

スコール・ミューゼル

 

弾と楯無がいた世界で、弾が強姦されそうになったところを助けた少女。

その後、弾の父親が家族として迎え入れ、以後五反田家の一員になっている。

時を経て、彼女は弾に告白をするのだが、その後弾はこの世界に飛ばされてしまった。

 

「・・・今気にしていてもしかたない、か。」

 

胸の中のモヤモヤとした感情を振り払って、玄関のドアを開け、寮の食堂で待っているであろう楯無の元へ向かう。

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

食堂で楯無と合流して、6人席に座る。

ちなみに寮にいるのは弾と数馬、そして誠二と正也、寮長兼厨房長とその娘さんだけであり、朝食や夕食は主にこの6人で取っている。

 

「おや、今日は随分と遅いじゃないか。」

「ええ、弾が遅くまで勉学に励んでいたもので。」

 

机にやって来たのは寮長兼厨房長である京塚さん。

元々は横浜の方で店を開いていたのだが、彩峰准将がいない寮長の代わりとして呼んだのだった。

 

「あら、そうかい。勤勉なことだね。」

「まぁ京塚さんの調理には適いませんよ。あの食材でどうやったらあそこまで美味しく作れるのかが分かりません。」

 

世界的に食料難な世界では、合成食料という科学性の物を料理に使用している。

つまり、遺伝子を組み合わせたりして作られたものだから、とにかく不味い。

そのとにかく不味い物を限界まで美味しくして見せたのが、京塚さんだ。

 

「知りたかったら、いつでも教えてあげるよ。まぁ、生半可の気持ちじゃあ付いて来られないからね!」

「ええ、承知しております・・・。が、その前にそろそろ食事を取らねば学校に遅れます。朝食の方は?」

「ああ、今持ってくるよ。」

 

京塚さんは調理場へ行き、皿に盛られた食事を持ってくる。どうやら、今日は鯖煮定食らしい。まぁ、もちろん合成が頭につくが。

京塚さんの手伝いをしているうちに、食堂入り口から二人やって来た。

 

「うい~っす、おはよーさん。」

「あぁ、クソねみぃ・・・」

 

片手を上げて挨拶してきたのは松田誠二だ、ちなみにもう片方の若干あくびをしながらやって来たのは元浜正也だった。

 

「よう、相変わらずの時間だな。」

「まぁな。ランニングから帰ってきてからここに来るのはこんぐらいになるからな。」

「ランニングって・・・お前ら4時起きだろ?どこまで走っているんだよ。」

「「軽く西の湖あたりまで。」」

 

ちなみにここから西の湖までは30キロ以上ある。往復でも60キロは上回る計算になる。

それをこの二人は3時間から4時間で帰ってくるのだ、オリンピックでも出れば優勝できるんじゃないか?

そして今日の授業の中に戦術機訓練がある事を伝えようとしたら、奥の厨房から皿を両手に大量に持って楯無がやって来て、2人が来た事に気がついた。

 

「また走りに行っていたのか?なんともご苦労な事だな。」

「まぁな。今んところこれぐらいしかできないからな。戦術機に乗るんだったら体を鍛えておかないと不味いだろ?」

「といいつつ、座学の成績がまずいから実技で挽回しようとしているんだろ?」

「座学じゃねぇ、この国の歴史についてだ。」

 

ちなみにこの二人、座学では戦術などの分野ではそれなりの成績なんだが、歴史や現在の世界の情勢などはからっきし駄目で、それ以外の近接戦闘訓練などはほぼ1位と2位を守護している。ちなみにこの近接戦闘訓練は、時々教師も一緒になってやる事がたまにある。

だが訓練する相手は成績が5位から上位の生徒としか出来ない。理由はあるのだろうが、多分他人からの評価で浮かれているいずれ兵士になっていく子供に慢心をさせない事だろう。

戦場での慢心などは死に直結する事もある。それをさせないのが元軍人達の彼ら教師の役割でもある。だが、それでも慢心や油断は起きるものだが。

 

「それよりも飯だ、飯!まだなら手伝うぞ。」

「ああ、なら奥の厨房から持ってきてくれ。今日は鯖煮定食だ。」

「鯖煮か、おばちゃんのはかなり美味いからな、これは期待大だ。」

 

ちなみに彼らは京塚さんの事を『おばちゃん』と呼んでいる。まぁ京塚さんの雰囲気からして間違いではないが。ちなみに京塚さんの娘さんの事は『お嬢』と呼んでいるらしい。

俺はお嬢を呼んでくると言って、食堂から出て行った誠二を横目に、俺達は机の上に手早く載せていく。

 

食卓の上にたくさんの鯖煮定食が並んだところで、京塚さんはエプロンを付けたまま椅子に座っていた。

俺達も両側に空いている椅子に座っているうちに、誠二が肩車をしながらお嬢、雅美ちゃんを連れてきた。ちなみに手を繋ぎしながら。

 

「「手を繋いで・・・だと!?」」

「2人ともどうした?」

「「そして肩車、だと!?」」

「あんた達何にそんな驚いているんだい?ほら、アンタ達も早くしないと冷めちまうよ?」

 

俺達が驚いている事を放置して、京塚さんは雅美ちゃんと誠二を急かす、まぁ俺達も時間がないから早くしたい所だ。

 

「・・・・・・さっきの。」

「おう、分かっている。」

「ん?何の話だ?」

「気にすんな。つーか早くしねぇと教官に怒られるぜ?」

 

雅美ちゃんが誠二に何か言っていた気がするが・・・まぁいいか。

ちなみにうちの学校のほとんどの教師は帝国軍から出向してきた軍人がほとんどで、中には帝国大からやってくるのもいる。

んで、俺達は斯衛と違って甘く指導されるわけじゃない。どちらかというと、もはや軍の訓練学校に近しい所だ。つまり、教師は全員教官と言い換えられている。

ま、自宅から徒歩で来るあたりは学生だがな。

 

「さて、俺は先に行かせてもらうぞ?」

「げ、楯無の奴早すぎるだろ!」

「はいはい、食っちゃべってないでとっととしな!」

「「「うい~っす」」」

 

食べ終わって食器を片づけている楯無を横目に、俺達は食事を掻っ込む勢いで飯を食べる。

食い終わったと同時に、食器を洗い場に持って行って即座に洗い、布巾で皿を拭いて食器棚に戻す。

そして机に戻りカバンを手にして楯無の後を追う。

 

「行ってきます~」

「行ってくる」

「おばちゃん、夕飯多めに頼む!」

 

各々出かけの言葉を送る。一名ほど別の事を言っていたが。

 

「行ってらっしゃい!車には気をつけるんだよ!」

「・・・・行ってらっしゃい。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

同居人達が出かけて行ったのを確認した少女は、スタスタと母の元へ戻る。

 

「ほら、雅美も学校だろ?早くしな。」

 

少女と自分の分を片づけている母は、学生の娘を学校へ行く準備を急がせた。

既に少女は支度を整えているのだが、自分を余所に掃除をしている母に聞きたい事があった。

 

「・・・・・・母さん。」

「ん?なんだい?」

 

12歳になった少女だが、知らぬ事もあるものだ。つまり知らない事は聞かなくてはいけない、だが誰に?

そう、自分の母親以外に誰がいるだろうか。母であるが故に分かる内容、つまり・・・

 

「ケッコンって、何歳で出来るの?」

「・・・・・・・・・は?」

 

夫婦になる条件、だった。

 

京都府某中学校 1年3組

京塚雅美 12歳

 

15歳の元戦争屋に、恋をした。

 




どうも、光影陽炎です。
え~っと、まず京塚雅美ちゃんですが、オルタ漫画版で出てきましたので出しました!
なぜ12歳なのか、それはまりもちゃんが学生時代の時のみしか絵が無かったのでそこから推測しました。
何故出したか?それはあれです、戦争屋にもしも早い段階で妻が出来てしまったら?って事で正妻候補(?)を出しました。
内緒の約束については、近いうちに本編で。
では


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