インフィニット・ストラトス ~ULTRA~ (サイレント・レイ)
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ウルトラ図鑑 星人

此のページは作品の進捗によって変更や更新していきますので、登場取り消し等が行なわれる可能性があります。


  ~ ツルク星人 ~

 

・原典…ウルトラマンレオ

 

・初登場話…第一話

 

・追加要素…パワードドラコ(ウルトラマンパワード)

 

・登場個体名…ドラコ

 

・使用IS…ラファール・アシュラ

 

・武装及び特殊能力

 

ツルクスラッガー…ツルク星人最大の特長である、頭部と両手に存在する伸縮可能な長爪。

 だがなにより厄介なのは、『ツルクスラッガー』は生え変わる度により強固に、より鋭利になる性質を持ち合わせていて、此の事に加えて栄養分さえ足りていれば何度でも更新可能な事を利用し、自分で『ツルクスラッガー』を引き抜いて更新する事による攻撃力強化を行うだけでなく、抜いた物を投機とする戦術がツルク星人内で出来ている。

 

アンチビット・スキル…ツルク星人はウルトラセブンの様に投機にした『ツルクスラッガー』の弾道を操る能力を持っていて、此の事から自分達に似た能力や兵器を盗聴しているかの様に読み解く事が可能。

 

擬態…元々ザラブ星人やゼットン星人の様に他種族に擬態する能力を持つ星人は多々いるのだが、そんな星人達の中でも郡を抜いているツルク星人のモノは内面以外は完璧に擬態する事が可能。

 更に特殊装置を併用する事で、生態識別装置をすり抜けられるだけでなく、専用機を含めたあらゆるISを纏う事が可能。

 

・補足

 元々ツルク星人は人食星人であるだけでなく、極めて優秀な擬態能力を持ち合わせている為、本来は地球への移住が認められない者達なのだが、本作のドラコの様に違法移住者がいる模様。

 ドラコのIS学園への侵入理由は、資金枯渇からの食料確保に加えて、セシリアと摩り替わってのブルー・ティアーズの強奪と思われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――― 登場予定、或いは登場候補 ―――

 

 

 

 ~ ゼットン星人 ~

 

・原典…ウルトラマン(&漫画版ULTRAMAN)

・追加要素(一様)…ウルトラ怪獣擬人化計画版ゼットン星人

・登場個体名…アル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~ メトロン星人 ~

 

・原典…ウルトラセブン

・追加要素…マーキンド星人(ウルトラセブンX)

・登場個体名(仮)…ジョフク

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~ ロン ~

 

・原典…ウルトラマンレオ

・追加要素…レッド(漫画版ULTRAMAN)

・補足…本来は怪獣だが、本作では星人化

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~ ガッツ星人 ~

 

・原典…大怪獣ラッシュ

・追加要素…スクルーダ星人(漫画版ULTRAMAN)

・登場個体名…ガードナー

・捕捉…下記のダダ投入によって降板したアダトの代打で、中身はほぼアダトそのまんま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~ ユニダンク ~

 

・原典…ウルトラマンエース

・補足…本来は超獣と思われるが、本作では星人化

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~ ガロ&リットル ~

 

・原典…ウルトラマンレオ

・補足…両者共に本来は怪獣だが、本作では星人化

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~ ザムシャー ~

 

・原典…ウルトラマンメビウス

・追加要素…アナベル・ガトー(機動戦士ガンダム0083)

・登場個体名…ガトー(orアナベル)

・捕捉…オリジナル設定付加の別個体も出る予定。ガトー案だと男性、アナベル案だと女性になる。

……核? いえ、知りませんね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~ マグマ星人 ~

 

・原典…ウルトラマンレオ

・追加要素…シーマ・ガラハウ(機動戦士ガンダム0083)

・登場個体名…シーマ

・補足…上記のザムシャーの天敵(?)に近い形の女性個体。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~ ペダン星人 ~

 

・原典…ウルトラセブン

・追加要素…キュルウ星人(平成ウルトラセブン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~ チブル星人 ~

 

・原典…ウルトラマンギンガ

・追加要素…ガロ星人(平成ウルトラセブン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~ ダダ ~

 

・原典…ウルトラマン

・追加要素…パワードダダ(ウルトラマンパワード)

・捕捉…オリジナル・ウルトラマンに倒された個体が何者かの手によって、生体兵器として蘇生させられる模様

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~ ブラコ星人 ~

・原典…ウルトラセブン

・補足…出たら原作と同様にIS学園に悲惨な事が起きる上、セブン(辺りが)土星へ向かう事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~ サイコバルタン星人 ~

 

・原典…ウルトラマンパワード

・補足…本作でのラスボス予定

 




 御意見があれば御願いします。

 変更や丸ごと更新は本編後書きにて、その度お知らせします。


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プロローグ 危機と出会い

 少女が気が付いて最初に入ったのは自分と此の列車に乗り合わせていた乗客達の悲鳴であった。

 続いて無惨な車内の現状下で生き絶えた多くの人々であったが、問題はその中に少女の両親が含まれていた。

 

「…御母様…御父様……っ!?」

 

 世界が変わる前から女だてらにイギリスの名門オルコット家を守っていた誇り高き母とそんな母に媚びへつらっていた為に嫌っていた婿養子の父の死を受け入れられず両親の遺体に近付こうとした直後に不気味な咆哮が響いた。

 直ぐに車両の外に出ていた者達が咆哮した者を目撃して悲鳴を上げながらパニックを起こし、更にそれ等が車内の者達にも感染して騒ぎが起こった。

 

「御母様! 御父様!……っ!!」

 

「逃げるんだ、お嬢ちゃん!」

 

 恐怖を感じた少女は両親の遺体に抱き付こうとしたが、その直前に車掌に抱き上げらて強制的に避難行動をとらされた。

 

「嫌!! 御母様! 御父様!」

 

 少女が両親の遺体に手を伸ばしながら叫ぶのを後ろ髪を引かれながら避難したが、車外に出て直ぐに何かを見付けた。

 立ち止まって硬直して何かを見詰める車掌に少女が疑問を感じた直後、車掌が少女を車内に投げ飛ばした。

 その直後、少女の目の前で車掌と車外に避難していた乗客達が目視不可能な光に包まれ……光が収まるとそこに車掌達は影も形も存在しなかった。

 

「…車掌さん、何所に行ったのですか……っ!?」

 

 少女が現実を受け入れずに再び車外に出た直後に謎の唸り声が響いた。

 少女が聞こえた先……先頭車両が脱線して潰れている先に僅かに透明な巨大生物が変電所に頭を突っ込んでいたが、全身がはっきりとしたら上半身を持ち上げて頭上へ巨大な咆哮を上げた。

 

「……か…怪獣?」

 

 此の巨大生物…透明怪獣ネロンガは電気を吸収して満腹になったのか嬉しそうに身体を揺らしていたが、不意に少女の方に唸り声を上げながら振り向いた。

 両親を死に追いやり此の惨状を生み出したネロンガに睨まれた少女は声すら出せずに硬直していたが、ネロンガは回転させていた後頭部の二本の触角を鼻先の角に合わせると放電しながら光始めた。

 その角と触角から『暴君電撃』が放たれるのとほぼ同時に少女が怯えて悲鳴を上げがら頭を押さえて屈んだ。

 だがネロンガの『暴君電撃』が少女に直撃せずにその手前で何かに防がれてしまった。

 少女も自分が無事である事に不思議に感じて顔を上げると、少女の手前に銀色の人物が屈みながら長方形型の防護膜を展開していた。

 ネロンガが見るからに驚き戸惑っているのを無視してその人物は防護膜を解除して立ち上がって少女の方に振り向いた。

 

「……ウルトラマン?」

 

 自分を助けたその人物が銀色を主体に赤を身体の至る所に散りばめ、頭頂部に小さな鶏冠に心臓部分に青く丸い光が存在していた為、少女は嘗て日本を中心に怪獣や他星人達から地球を守り続けてくれたM78星雲…光の国から来訪した光の巨人ウルトラマンを連想した。

 しかし少女が知っているウルトラマンと比べて全体的にメカメカしく、何より見るからに小さ過ぎた(と言っても人基準では比較的大柄の様だったが…)

 だが人物はしゃがんで少女の頭を撫でると、最初は驚き照れていたが硬く冷たい装甲越しから温もりを感じた事もあって不思議と少女から恐怖と不安が消えた。

 

「……っ!」

 

「待って!」

 

 かつて日本にてウルトラマンに同胞が殺された事を思い出したのか、ネロンガが上半身を起こしながら怒気が篭った特大の咆哮を上げたのに気付いて振り向きながら身構えたが、思わず自分を呼び止めた少女に少しの間振り向いた。

 少女に「安心しろ、もう大丈夫だ」と微笑みながら言った気がしたが人物は直ぐネロンガに飛び掛かっていった。

 

「……頑張れ…頑張ってください!!」

 

 自由自在に飛び回ってネロンガを翻弄している人物に少女を大声で応援していた。

 

 

 

 

 

 ウルトラマンがゼットン及びゼットン星人と戦って地球を去って数十年後に起こった此の出来事は此の少女…後のイギリス代表候補生セシリア・オルコットとウルトラマン型IS…通称タイプUの二号機ネクストとの出会いであった。




 感想・御意見お待ちしています。

 次回から本格始動しますが、主人公が纏うのは四号機パワード(ジャックの代わり)としていますので今回の人物は関係はありますが主人公ではありませんので…

 後、現時点では原作未登場の昭和勢のゾフィ・タロウ・レオも登場させる予定(現時点ではエイティは未定・アストラとグレートは無い)です。
 只、平成勢は………本格には出ないか……出てもゼロ以降が出ない上にメビウス以前が敵になるかもしれません…


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第1話 登校

――― 富士樹海 ―――

 

 

 此の時、一般人立ち入り禁止区画にてIS学園の三年一組が課外授業の一環も兼ねた実戦式の演習が行われている筈だったのだが…

 

「…うんまぁ~い!」

 

…光源が一切無い夜営地で生徒達全員がテントの内外問わずに倒れていたが、1人だけ踞って何かを貪っていた。

 

「…? あら~…まだいたの?」

 

 だが背後で何かが落ちる音がしたのでそちらに振り向くと、そこに担任教員と思われる女性が驚き震えていた。

 どうやら見た処、水を汲みに行っていて戻った処に此の光景を見て思わずタンクを落とした様だった。

 

「貴方一体何を……ひ!!」

 

 女性は相手を威圧しようと自身が纏うISことラファール・リバイヴの突撃銃を向けたが、その銃口の上部のライトで照らした人物の真っ赤な口元を見て悲鳴を上げた。

 勿論、それはどう考えても生徒達の血である事は間違いないのだが、その人物の姿そのものの方が問題であった。

 

「……あ…ああぁぁぁー!!!」

 

 その為、女性は警告無しに悲鳴を上げながら引き金を引いたが…

 

「あらあら…」

 

…その人物は右手首上部から太刀みたいな物を出して銃弾を悉く切り捨ててしまった。

 しかもパニクっている女性は直ぐに弾が切れてしまった銃の弾倉を交換するのを忘れて何度も引き金を引いたが、人物が不適に笑いながら歩み寄って来たのに気付いて銃を抱えて後ろに後ず去った。

 

「……あ…貴方は、一体誰なの?」

 

「…貴女教師なのでしょう?

此の私の姿を見て分からない何て、とんだお馬鹿さんね」

 

「そんな筈はない!!

だって……だって貴方達はウルトラマンに駆逐された筈でしょ!」

 

「ああ、そう言う事!」

 

 女性が怯え混乱している理由が分かって人物はわざとらしく右拳で左掌を叩いた。

 

「…でもざ~ん念!

私達はウルトラマンと戦った事処か、会った事すら無いのよ」

 

「な!?」

 

「…それに“鬼のいぬ間の命の洗濯”って言葉があるじゃない」

 

 人物が不気味に笑うと硬直している女性に飛び掛かった。

 そして本日最後の絶叫が樹海に響いた…

 

「……ほ~ん当、ウルトラマンと同等とか言っていたのに笑っちゃう位無様なんだから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― IS学園 ―――

 

 

 IS…正式には“インフィニット・ストラトス”と呼ばれるそれは稀代の天才女性科学者篠乃之束が生み出した宇宙空間での運用を目的とした女性しか纏えないマルチフォーム・スーツであった。

 だが白騎士事件と呼ばれる一件にてISが究極兵器たる素質があると判明するや、あらゆる従来型兵器を文字通りに駆逐し世界そのものを女性中心の男卑女尊に作り替えてしまったのだ。

 そして関東沖の小島を丸ごと使用して建てられた此所IS学園はISを纏う者達を育成する世界で唯一の教育施設に繋がるモノレールの列車が駅に到着して大量の学生達が降り立って次々に学園へと向かって行った。

 だがISが女性しか動かせない以上IS学園の生徒は女子しかいない筈なのだが、此の人達は全員男性であった上に白を主とした此所の物ではない関東各地の高校の制服を夫々纏っていた。

 

「…ねえ、何か良いのはいる?」

 

「さあ、見た処良さそうなのはいないみたい」

 

「どうやら今年は駄目みたいね」

 

 そんな男子達を彼等を値踏みする様に学棟から見詰める女子生徒達の目線を一部は気付いて……何を勘違いしたのか顔を赤くしながら女子生徒に手を振っていた。

 

「…おい、あの子かなり可愛いよな!」

 

「ああ!! 俺目線合っちゃったよ!」

 

「……何勘違いしてんだよ…」

 

「何良い子ぶってんだよ、剣一!!」

 

 男子生徒達の茶色いブレザーの一団の1人の早田剣一は妙に冷めていたが、調子づいている親友達から首に腕を回されて弄られていたが、そうこうしている間に入口前で案内役の教師が待っている体育館に辿り着いた。

 

「…ようこそ整備科交流生の皆さん、此方に来て下さい」

 

 頭を下げた案内役の教師に先導されて整備科交流生である彼等が体育館へと次々入って行った。

 先述の通りISは女性にしか動かせないのだが、最強の兵器であるISと言えど人が作り出した機械である事に変わりは無く整備や修理を行う人間を必要とした。

 勿論IS学園にも整備科を設立して整備士を育生していたのだが、問題なのは世界中から優秀な入学生が入る花形たる普通科とは違って不人気の整備科は毎年定員割れを起こして人員不足を起こしていた。

 元々女子のみの普通科に反して整備科は男子中心であり、学園創立当初は何とか共存していて現に第一及び第二世代初期のIS乗り達と整備科卒業生の男性整備士は良好な関係を作り、中にはそのまま結婚する者達もいた。

 処が年を重ねる度に女子生徒の潰しやISを動かせない為からの意思疏通に支障が出る事から女性整備士を求める事から女子勢力に駆逐されていき、体面上は男子枠は残されているのだがとうとう誰も入らなくなってしまったのだった。

 しかも女子生徒も上位成績者が普通科に片っ端から引き抜かれた事による悪循環もあって質までもが低下してしまった。

 此の為、何とか人材を確保したかった学園側が取った行為こそが外からの導入…即ち交流生として他の学校の生徒を入れたのだ。

 だが交流生と言いながら事実上は他校からの強奪に近い引き抜きでもあった此れ等の生徒達も根本が解決されていない為に先述の通りの問題でやはり駄目になっていて、現在は女子生徒のため見合いと化し更にIS学園が他校から嫌み嫌われる理由になっていた。

 だが毎年人数が減らされ此数年は一年も経たずに全滅していた交流生が今年はとある理由……男性にも関わらずISを纏えた織斑一夏の入学(やはり此れも他校に入学するのをIS学園が奪った)で大々的に大量に呼ばれていた。

 男性達にては希望の一種になった一夏だが政治的及び外交的配慮、更に彼が最強のIS乗りにして一部の女性から信奉の対象にもなっている織斑千冬の弟である事から女子生徒から貞操が狙われる(実際交流生が女子生徒から性的に襲われたとの報告が多数あり)等から彼等が呼ばれる事となったのだ。

 詰まり彼等の大半は一夏の専属整備士の候補生であったのだ。

 だが学園の肝煎りの割りには彼等交流生の歓迎は教頭の挨拶と幾つかの注意事項の説明のみ

 

「たった此だけかよ!」

 

「寂しいもんだな。

昨日やった入学式が世界中から来賓が来たらしいのにね…」

 

 余りの質素ぶりに剣一が親友とぼやいていた。

 

「だけどよ、確か生徒会長の更識楯無の挨拶もあった筈なのにそれも無しかよ」

 

「いや、それがどうも生徒会長さんは別件で昨日からいないらしいぞ」

 

「本当か、それ?

嫌だったから逃げたんじゃない?」

 

 剣一の近くで楯無不在(音信不通の三年一組とその一組を救助しに行って“ミイラ取りがミイラになった”三年二組の捜索及び救助に行っている)を疑っている者達がいたが、実際問題此所にいる者達は自分達が余り歓迎されていない事を理解して思い思いの反応をしていた。

 でそんな歓迎が終わるとさっさと案内役の教師に従って出ていき、次に行われたのがIS学園の生徒達が授業を受けている間に幾つかのグループに別れての学園案内を受ける事となり、剣一が入っているグループは最初に普通科の最先端の電子機器を併用しての授業が行われている一年の学棟を説明を受けながら移動していた。

 見た処どの組も先ずISとその関連物の説明とクラス代表を誰にするかで話し合いが行われていた。

 だが四から二組までは時折笑い声や雑談が入りながらも世界一高い入学希望率(しかもその枠の殆どは国家推薦者で埋まってしまう)のIS学園入学試験を合格した者達だけあって一様真面目にやっていたが…

 

「…納得出来ませんわ!!」

 

…怒鳴り声が聞こえた一組だけはどうも揉めている様だった。

 此の為、剣一達は足を止めて一組を覗きこむとクラス代表の候補と思われる彼等と同世代の少年と金髪の少女が立っていた。

 

「…おい、あいつが織斑一夏だよな?」

 

「ああ、しかも相手はイギリスの代表候補生のセシリア・オルコットだ」

 

「…セシリア…オルコット……何か綺麗な人だね…」

 

「何見惚れてるんだ!」

 

 剣一が親友に小突かれていたが、セシリアが日本を馬鹿にした発言に一夏が怒って(剣一は苦笑していたが、親友達も当然ながらムッとしていた)喧嘩腰になった為に試合が行われる事となっていた。

 只、女子の大半がセシリア支持(と言うより見た処ポニーテールの少女しか一夏を支持していない)に回っていた。

 

「…どうやら試合をやるみたいだぞ」

 

「て事は織斑一夏のISが見れるんだ!」

 

「……そんなに都合良くいかないと思うぞ…」

 

 実は一夏本人は知っているかどうかは知らないが、ある事で男性達からも注目されていたが、剣一ただ1人は興奮している親友達に呆れていた。

 

「なんだよ、剣一」

 

「お前は興味無いのかよ?

何せウルトラマンの整備士になれるかもしれないんだぞ!」

 

 そう、一夏が同世代の男子に注目される理由とは巷を騒がせる“ウルトラマン擬き(当初は悪口に近い形で“偽ウルトラマン”とも呼ばれていたが、此れはザラブ星人の擬装体の公式呼称と被った為即廃止)”と呼ばれる文字通りにウルトラマンを模したISを彼が装着しているのではないかとの噂が有ったからだ。

 先述の通り世界を変えたISだったが、世界共通のウルトラマンを信じ愛する思いだけは変える事は出来ず、過去に束がアメリカでの講演会にて“ISはウルトラマンと同等の存在”と発言した際に人々は拍手喝采をせず逆に彼女に物を投げながら罵声を浴びせたとの出来事があった。

 勿論、ウルトラマンの加護を最も受けていた日本はアメリカの比ではなかったのだが、それが此最近だけでも“横転炎上したタンクローリーから逃げ遅れた運転手を救出した”とか“人質を取った銀行強盗を一瞬で制圧した”等の活躍をするウルトラマン擬きの出現であった。

 此のウルトラマン擬きに一部の男性…特にウルトラマン活躍時に少年期であった者達は“ウルトラマンへの冒涜だ”と非難していたが、殆どの人間は熱烈に歓喜していた。

 で此で問題になったのは誰が此のウルトラマン擬きを纏っているかであったのだが、不思議な事に超情報社会であるにも関わらず映像が一切存在しない上、目撃者(と主張する)達はどうもウルトラマン擬きは比較的若い男性が纏っているらしいと主張し、全てのIS所有者や関連機関が存在その物を否定していた。

 そして何よりISが女性にしか纏えないのだから都市伝説となりかけていたのだが、そこに来て男性装着者の一夏の登場で彼がウルトラマン擬きの装着者ではないかと注目されたのだった。

 

「そりゃオレだってウルトラマンの整備士になりたいよ!!」

 

 此の剣一の叫びにセシリアが気付いて振り向くと他の一組の生徒達も次々に振り向いて剣一達・交流生の存在に気付いた。

 此の為、生徒達が歓声を上げ、交流生達は照れながら手を振っていたが、セシリアと一夏のみは親友達に絡まれてる剣一を見詰めていた。




 感想・御意見御待ちしています。

 と言う訳でやっと投稿出来た本作から登場した主人公の早田剣一は原作の進次郎にウルトラマンパワードのカイ・ケンイチをぶちこんで作りました。
 ですので進次郎と性格は余り変わらない筈ですが、機械系が少し強くなっています。

剣一
「でもなんで俺こんなややこしい形でIS学園に入ったんだ?」

 そりゃお前の場合は正体が張れると不味いからだ。
 だから相棒をヒントに此の形にしました。

剣一
「それにしても俺の存在で大体分かる筈だけど、原作キャラを基本尊重する作者が今回ULTRAMAN勢を殆ど一掃する事にしたんだろ?」

 ああ、原作ULTRAMANが良い意味で“お前何処行くんだ?”の状態だから原作キャラの投入が凄い怖かったんだよ。
 現に昔愛読していたリリカルマジカルな同人誌の作者が最新シリーズの予想展開を大外しして恥じをかいたのをよく覚えていたから…

剣一
「だから此の際、ゼットン星人エドをタイニーバルタンに代えようかとも検討しているんだろ?」

 うん、最近エドもエドで……後味方になりそうなベムラーも含めて何か最近胡散臭いだよ。
 だからタイニーへの交代が良いか、出来ればエドでいって欲しいのかの意見があれば下さい。


…あ、最後に忘れかけていましたが、諸事情があって千冬は学園にいませんが、いずれ出しますので……ええいずれ…くっくっく…


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第2話 剣一の憂鬱(前編)

――― IS学園 ―――

 

 

 雀の鳴き声しか聞こえない早朝時…

 

「……ふっ チョロいわね…」

 

…警備システムに教員用の身分証を翳し、更に右手と両目をセンサーに着けると何の問題なく学園に入れた事にとある女性がほくそ笑んでいた。

 

「…全く最先端技術が集まっているのにこうも簡単に入れるなんてね。

まっ地球の技術力なんかこんな物か」

 

 自分の右手首のブレスレットを見詰めながらIS学園の警備システムを小馬鹿にしていた女性は学園の辺りを見渡して何かを物色していた。

 

「…うむ、学園自体は悪くないわね………ん!?」

 

 暫くすると向かいの方から女子生徒が歩いてきているのに気付いて唇を舐めた。

 

「…そこの貴女、こんな時間に何をしているの?」

 

「あ、はい! 今日私が園芸の当番なので此れから花壇の水やりに行くのです」

 

 此の女子生徒は女性を教師と疑い無く思って普通に答えてきた。

 

「そう、貴女偉いわね」

 

 そんな女子生徒に女性は笑ったが、当の女子生徒はそれが誉められての事からだと思っていた。

 

「私も手伝ってあげるから何所の花壇に行くのか連れてってくれない?」

 

「いえ、そんな」

 

「遠慮しないの。

頑張っている生徒を助けるのも教師の努めなのよ」

 

 最初は遠慮していた女子生徒だったが、自分の首に手を回した女性から何かを期待したのか笑顔で了承した。

 

「さあ、行きましょ」

 

「はい!!」

 

 此の後、2人が人気の無い茂みに入って暫く経った後、そこから小さな悲鳴が上がり更に経過した後に女性が満面の笑みで出てきて学園の何所かに去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・道場 ―――

 

 

 所変わって主である剣道部が前日に練習試合に行っていた事から休養日となった為に無人の道場にて織斑一夏が幼なじみの篠ノ乃箒とクラス代表を賭けたセシリアとの試合に備えての練習が行われていた。

 

「…何をやっているんだ!!」

 

 だが先程から醜態を晒し続けている為に時折箒の雷が落ちていた。

 

「ほ、箒、もうちょっと手加減してくれても…」

 

「何を言っているんだ!

こんなものまだ練習の内にも入らんぞ!」

 

 元々全国大会での優勝経験もある自分と同等の実力を持っている筈なのにだらけた中学時代を送った一夏(本人曰く帰宅部皆勤者)の無惨な現状…しかもそんなにも関わらずにセシリアに挑戦状を叩き付けた事もあって箒はかなり苛立っていた。

 

「……全くこんなので…ウルトラマンだとは…」

 

 ましてや箒がぼやいた通り、一夏にはウルトラマン擬きの装着者との噂がある以上は尚更であった。

 

「箒、どうした?」

 

「なんでもない!!」

 

 まぁ、それより小学校以来に再会した思い人に出会えた事に照れて素直に喜べない自分の不器用な性格への苛立ちが何よりの理由であったのだが、それが一夏への八つ当たりになりかけている子供じみた行為に生ってなっている事を箒は内心悔やんではいた。

 只、そんな箒の心情を察しれない一夏には彼女の頭に鬼の角が生えている様に見えていた。

 

「…あ、そうだ! 此の学園って女子校なのに何で昨日他校の男子が来ていたんだ?

折角何か話そうと思ったのにアイツ等直ぐ連れていかれたし、あの後何所に行ったのか全然分からなかったしな」

 

「……お前、本当に何も知らないんだな…」

 

 命の危機を感じた一夏は気を反らす為に昨日見た剣一達の事を聞いたが、入学前に予習すべき教材を何所ぞの山羊(x2)みたいに読まずに捨てると言う暴挙を仕出かした彼の無知に改めて箒は呆れていた。

 只、取り敢えず箒を止める事に成功して一夏は彼女に気付かれない様に内心ホッとしていた。

 

「…いいか、彼等は私達ISを扱う事を学んでいる私達と違って、ISの整備技術を学びにやって来た交流生達だ」

 

「何でそんな面倒臭い事をやってるんだよ?」

 

「……整備科は毎年定員割れを起こしている程人気が無い上、その入学者の殆どが私達普通科に転学していて質までが低いんだ。

だから他校の男子生徒を交流生として入れて形だけでも保っているのだ」

 

 一夏に説明しながら箒はまともに整備科を運用出来ていない学園に苦々しく思っていた。

 まあだからこそ彼等の存在があるからこそ男子禁制のIS学園に男子トイレ等の男子用施設が少数ながら存在していたのだから強制入学した一夏の為に新設をせずにすんでいた。

 

「…あ、そうだ。 箒、アイツ等の宿舎が何所にあるのかが知ってるんだったら俺に教えてくれないか?

此れからアイツ等の世話になるかもしれないんだから仲良くしないと」

 

 元々逆紅一点(黒一点?)で肩身の狭い思いをしている一夏は同世代の男子が他にもいる事が分かり、是非とも彼等に近づきたいと思っていた。

 

「…残念だがお前はアイツ等には会えないぞ」

 

 だがそれを箒が否定した。

 

「何でだよ?」

 

「卒業後の就職問題にに繋がるから厳正平等の名の下に整備科と直接交流が出来るのは二年生からで私達一年生は基本会えないんだ。

それに授業時間も休みが重ならないように私達が授業の時にアイツ等が休みと言う風にしているんだ」

 

 一夏が文句を言っていたが、不正が無いよう不出来な生徒を振り落とす為の制度だったのだが実は此がエライ事になっている事を知っている箒は唾が悪そうな表情をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・整備科室 ―――

 

 

 一夏が箒にしごかれて普通科の生徒達が朝食を取っていた頃、剣一達交流生達を含めた整備科の生徒達は早々と一時間目の授業に入っていた。

 

「ぁぁあ~…」

 

「大丈夫か剣一?」

 

 A組での朝礼が終わって直ぐに大欠伸をした剣一に学友の大悟が気にかけてくれていた。

 

「…悪い、大丈夫だ」

 

「…頼むぞ、お前まで潰れたら俺達はアウトなんだ」

 

 だがよく見たら大悟処か、交流生の男子達の目の下に隈が浮かんでおり…中には気持ち窶れている者達までがいた。

 

「…それでは説明した通りに従い、各班は整備作業に入って下さい」

 

 担任に全員が「はい!」と一斉に返事をして普通科一年が使う予定のISの練習機である打鉄の準備を兼ねた初級整備の授業が始まった。

 

「…て、ちょっ!!?」

 

「御免あそばせ」

 

 で開始早々脚立や電動工具を取りに行こうとした剣一達男子達だったが、それ等全てを女子生徒達に自分達の含めて全て持っていかれてしまった。

 更に不味い事に此の間に整備用のコンピューターまでもを押さえられていた。

 

「待てよ、俺等のは!?」

 

「あら、貴方達にはそれ等の工具があるじゃないですか?」

 

「スパナとドライバーだけでやれってのかよ!?」

 

「力が有り余ってるのでしょ?

だったら此れ等はいらない筈よね?」

 

「…っ!?」

 

「よせ!!」

 

「止めろ!!」

 

 早速行われた女子達の嫌がらせに当然ながら男子の一部がキレて殴りかかろうとしたが、そんな者達を剣一達が止めた。

 

「放せよ!

お前等は悔しくないのかよ!?」

 

「やったら西の奴等みたいになるぞ!」

 

 勿論悔しい事は分かるのだが、厄介な事に女子達に下手に手を上げると彼女達の後ろ楯である普通科の上級生達…専用機持ちや国家代表者達がその日の内に仕返しに来る最悪の場合があり、彼等とは他校の交流生達の何人かが既に実際そうなって病院送りにされていた。

 此の為に男子の何人かは教師に抗議の目線を送ったが、残念ながら此処数日間で分かった事だが最低でも代表候補生等の実力者がズラリといる普通科の教師と違って整備科の教師にはそんな力が無く、現に教師は申し訳なさそうに顔するだけであった。

 

「…腰抜け」

 

「…っ!?」

 

「剣一!」

 

 変えようもない地獄の現状に彼等が我慢して引き下がったが、それに面白くない女子達の一人がわざと聞こえるように呟いた独り言に剣一が反応しようとしたが直前大悟が諌めた。

 だが此の事に女子の中でも嫌がらせを行い笑っている者達に不快感を示している者達がいる通り、整備科内や普通科の生徒達にもおかしいと思う者が少なからずいて生徒会を動かして改善を行おうとした事が過去に幾つかあった。

 だが良心派は小数故に孤立そして虐めの対象になる、普通科も改善を行おうとする中心人物のISにわざと整備不良を…最悪の場合墜落事故にも繋がりかねない細工が行われ続けた為に悉く水泡と化していた。

 更に普通科(と教師陣)には整備に精通している者がいない…現生徒会長の更識楯無等いる事はいるがそれ等は極小数、いたとしても代表候補生等実力者ではない事から歴代生徒会長処か教師達や理事会(此れは余りやる気が無い)でさえ頭を抱える問題となっていた。

 更に実力は兎も角、人間性が悪い事を企業に知られている事からの雇用率の悪さからの上位争い(普段科への転入)の悪化する悪循環もあって怪物の園と化している整備科に彼等交流生達は自分達の生徒を駄目にされてもIS学園に抗議出来ない彼等の母校も含めて泣き寝入りするしかなかった。

 

「……やるか…」

 

 とは言え、このまま投げ出せば自分達を選び選って送り出した母校の名誉に関わるし、何より自分の性分ではない以上は実力を見せるしかなかった。

 

「……何やってんの!?」

 

「そんな事言われても分からないのよ!」

 

 で実際の処、元々機械系は女性より男性の方が幼少期から興味を持つ事から基本強い為からか、女子達が悪戦苦闘している中で男子達は道具が無い事からの遅れがあったが比較的順調に進んでいた。

 

「飛鳥、悪い背中借りるぞ」

 

「おお!」

 

「…どうだ、剣一?」

 

「……悪いが電測器取ってくれ」

 

「ああ、武蔵頼む!」

 

「分かった!」

 

 特に剣一達の組は最も早く進めていて、それに他の男子組は負けん気を起こしていたが女子達は取り分けて優秀な剣一に歯軋りをしていた。

 

「……OKです!

良く出来ました!」

 

 そして一番乗りで教師から合格を言い渡されて剣一が親友達とハイタッチをしていたが…

 

「早田さん、此れ等を買ってきてくれませんか?」

 

「……っ!? 

此れ等、昨日買ってきた筈じゃ!?」

 

…喜んだのも束の間、その教師にメモを手渡されて買い出しが言い渡された。

 整備科はその性質上、普段は学園が購入管理していても時々部品が足りなくなる時があり、その場合教師が生徒を選んで欠席免除を行って買い出しに行かせる事があるのだが、やはり此れも外出と経費の手続きが面倒なのもあって上位成績者の男子への女子達の嫌がらせの1つになりかけていた。

 勿論、此れは女子にも要請するが基本的に女子達は拒絶したり無理矢理推す等をして結局男子が行く事になる為、近年では男子から最初に要請する様になっていた。

 

「…そうなんだけど、それが一組の山田先生から近々試合が行われるからイギリス製のを大至急手配して欲しいって言われたの」

 

「それってあの織斑一夏とセシリア・オルコットの決闘のですか?」

 

 教師は頷いたが、部品を隠したり捨てたりする、酷い時は関東を対角線で横切る等ほぼ一日がかりで遠出をして捜索(学園は入手先をちゃんと伝えるがそれを女子がぼかす)しないと手に入らない稀少品を求める、要望品のと規格が違うのとわざと間違えて伝えて交通費も含めて自腹買いをさせる等の嫌がらせが頻発していたが、今回はそれ等が無い(と思いたい……剣一に女子が笑っているが…)から要望品が手に入れやすい物である事もあって今回は比較的気楽になれた。

 

「…分かりました」

 

「外出許可は取ってあるから早く行ってね」

 

 とは言え、溜め息を吐いてしまうも言われた通り直ぐ行こうとした剣一に大悟が呼び止めた。

 

「…剣一、悪いがいつ物をな」

 

「分かってるよ」

 

 大悟達処か、他校の男子達が見つめている中、剣一は了承して出ていき…暫く廊下を走って進むと誰もいないのを確認して携帯を取り出して不在通話があったのでそこに電話をかけた。

 

「…剣一です。 xxさん、どうかしました?」

 

『授業中にすまないね。

悪いが2人共出れなくてね、迎えを用意させたから直ぐ向かってくれ』




 感想・御意見お待ちしています。

剣一
「幾ら何でも此れはあんまりだぁぁー!!!
矢的猛(エイティ)の初期だって此処まで過酷じゃないぞ!!!」

…だからこそ、剣一が交流生として入れたのが此れからきています。

剣一
「てか楯無は何やってんだよ!!?」

 何もやってないし、やる気が無いと思うよ。
 他の人達は違うと思いますが、本作では自分がそう思っている楯無像から本来の職務に不真面目で生徒会長権限を私用で乱用する歴代最悪生徒会長としています。
 只、楯無がそれだけの存在ではないし、勿論後々には整備科の革命に近い改善は行います。

 もしかしたら本作では簪の打鉄弐型は一夏の要望で剣一とその仲間達の協力で作られる事になるかもしれませんが、簪をどうするかは完全に未定ですがね…

 只、ウルトラマンは全ての人間達を守り寄り添う存在であり、特に平成セブンで“人間は過ちを起こすが、それを正して許し求める存在”と書かれているので此の作品を“インフィニット・ストラトス”のアンチ作品にはしません。
 最も因果応報はありますがね…

 とは言え、交流生ですが日本一過酷な環境下のIS学園男子生徒である剣一の受難はまだまだ続きます。

剣一
「早く改善してぇぇー!!!」


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第3話 剣一の憂鬱(後編)

――― A組教室 ―――

 

 

 教師からの買い出しを終えて引き渡しと報告を済ませた剣一が何故かスポーツバッグを2つも抱えて戻ってきたのは昼休みの時であったが、教室には女子達がいない代わりに男子達はぐったりと机に伏せっていた。

 

「…ああ、剣一か」

 

「お~い、大丈夫か?」

 

 どうやら彼等は剣一がいない授業でしごかれた上に女子達の嫌がらせでこうなっている様だったが、もう1つ理由としてあった。

 

「…やっぱり今日も駄目だったのか?」

 

「ああ…アイツ等無駄話してやがった…」

 

 別にそう言う校則が有る訳ではないのだが、困った事に整備科では食堂で食事を取るのは最初は女子からで、男子はその後からじゃないと駄目だとの決まりがあったのだ。

 だが嫌がらせをし続ける女子達が何もしない訳がなく、大抵の場合は終了時間まで居座る、時間内に引き渡しても食事が残っていないか彼等の目の前で食事を床にぶちまける等明らかに行き過ぎた行為をやらかしていた。

 しかもIS学園の購買部は基本的に昼にしか食品を取り扱っておらず、酷い時には此の最後の頼みである購買部の食品までもを女子に押さえられてしまうので、出前も取れない男子達は一日水道水だけで絶食せざるをえない時があり、此の為に体調を崩す男子が少なからずいた。

 

「……やれやれ…」

 

 自分は外で食べてきたとは言え、毎度の女子達の悪行に溜め息を吐いた剣一はスポーツバッグを2つ共机の上に置くと各々のチャックを開いた。

 

「…ほら、買ってきたぞ」

 

 でスポーツバッグの中に目一杯入った菓子パンを一目見た大悟達が急に声を上げて立ち上がり、それを見た他の男子達も次々に続いたので、瞬く間に男子達が群がって菓子パンを取り合っていた。

 但し此の現状下から妙な絆が出来ているので、争奪戦が起こらず取り損ねた者達にもちゃんと分け与えていて、更に買ってきた剣一に全員がお礼を言いながら金を払っていた為に剣一の机には百円玉の山が出来つつあったす。

 最もA組は此れで何とか本日の飢えをしのぐ事が出来たが、他の組の男子達はそうではないのか、他組の男子達が空になったスポーツバッグかA組男子達のどちらかを廊下から恨めしそうに見つめていた。

 

「………」

 

「…諦めろ。 俺だって申し訳ないと思うんだ。

それに俺達だって夜の分にありつけないんだ」

 

 そんな他の組の男子達に申し訳なさそうにしていた剣一に大悟が諭していた。

 

「……何時まで続くんだよ、此の地獄…」

 

 授業自体は辛いと聞かれれば辛い方だが、それはあくまでも乗り越えられる範囲内で、それが逆に楽しさを生む時があるのだが、男卑女尊の世界情勢を具現化したような女子達のやりたい放題の変えようの無い環境に誰もがヘキヘキしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 整備科・男子寮 ―――

 

 

 午後の授業を無事(?)に終えた剣一達男子生徒達は疲労に加えて夕食にありつけなかった事からの空腹を紛らわす為に各々のベッドの上で延びていた。

 因みに整備科と普通科の女子寮は2人1組になっているのだが、男子寮は女子のと同じ面積の部屋で4人1組になっている上、高級ホテル並の豪華な造りになっているのに反して二段ベッド2つ、更に勉強机を4つ置いている為に少し狭さを感じさせる質素な造りとなっていた。

 只、此の事は男子達は女子寮に行かない(連れ込まれない)限り知らない事であったし、何より女子達が基本手出し出来ない所であった事から“住めば都”状態となっていた。

 

「…お~い、出たぞ!」

 

 だがそんな状態であったが、風呂上がりで上半身裸でタオルを首に掛けた他校の男子の伝令に全員が一斉に飛び起きた。

 因みに入浴が唯一の楽しみとなっていて風呂好きになる男子が相次いでいた。

 勿論、1日の楽しみがやって来た以上は行かない訳がなく、現に剣一達は素早く着替えやタオルを取り出して準備を終えようとしていたが…

 

「…あ~言い辛いんだけど……早田は呼び出しを受けているぞ」

 

…剣一だけは悲しい呼び出しが伝えられた。

 

「……悪いが普通科の山田先生が来て欲しいそうだ」

 

「…気にしないで良い。

何時もの事だ」

 

 此れも整備科に良くある事だが普通科の教師達もIS乗りであり、当然彼女達も鍛練の必要があって、それを部活動も終わった後の夜間に行う為に故障に備えて整備科の生徒が呼び出される事が時折あった。

 只、此れに関しては女子達は普通科編入への売り込みとして積極的に行っているのだが、普通科の教師達も整備科女子の悪行を色々聞いているので此れも基本的に男子が行く事になっていた。

 此れには普通科女子に接触する切っ掛けとしようと張り切る男子(稀に普通科の女子生徒ではなく教師を狙う強者がいたが…)が相次いでいたが、此の事での嫉妬から女子達の嫌がらせが益々エスカレートしていたし、呼び出される方も呼び出される方で流石に0時以降の日付けが変わっての終了こそ無いが、教師によっては長時間付き合わされ入浴出来ない処か復習予習(宿題や課題等はお詫びの形で免除になる)の時間が無くなって学業に大打撃を受けてしまう事になった。

 

「……今日もシャワーか…」

 

 しかも剣一は摩耶に気に入られてしまって土日以外毎日指名されていた……少なくとも外部にはそう見えていた…

 別に此の事は良くある事で寧ろ整備科生徒達はそうなろうと基本的に必死で……当然ながら神憑り的に人気の織斑千冬になれば激戦区であり、仮に指名された男子がいたら、その者は女子達に暗殺されるとの噂が有ったが、幸か不幸か呼び出し処か千冬関連のそう言う話や噂は一切聞こえてこなかった。

 

「……はぁ…」

 

「まぁ、頑張ってくれ」

 

 とは言え、受難である事には変わりなく、大きな溜め息を吐いた剣一に親友達は慰めの言葉を掛けながら彼の肩を次々に叩いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 射撃場 ―――

 

 

 一夏が早朝から箒と特訓(と言うより扱き)をしていたのと同様、その一夏の対戦相手であるセシリア・オルコットもまた決闘に向けての自主練を結構な時間まで行っていた。

 

「…ふん!!」

 

 しかも遠くの的を狙撃しているセシリアの周囲には多数のドローンが結構な速さで不規則に飛び回っていて、更にそのドローンに装備されたエアガンが彼女目掛けて放たれていた。

 勿論、セシリアはドローン郡の銃撃を回避するだけでなく逆にドローンの的を狙い撃ち、更に本来の標的である狙撃用の的が不規則な揺れ幅で左右に揺れているにも関わらずに惑わされる事なく次々に撃ち抜いていた。

 しかもセシリアは自機ブルー・ティアーズを纏わずに此の自主練をし続け、1発でも被弾したら的とドローンをより早くして一からやり直し続けていた。

 当然理不尽な感じをさせる特訓で時折自分に悔しそうにしていたが、ほぼ最高速の速さになっていたドローンと狙撃用の的を全て撃ち落としてやっと終わった様であった。

 何せ射撃場にはセシリアの汗の水溜まりが多数あるだけでなく、壊れたドローンが結構転がっていた。

 

「……まだまだ駄目ね…」

 

 だがセシリアは回収した的を確認し、小数であったが中央から離れた場所が撃ち抜かれている的を見て悔しそうにしていた。

 

「……っ!? もうこんな時間でしたか」

 

 どうもセシリアはもう1度やり直そうと思っていたらしいが、時計を見て結構な時間帯になっていた上に緊張が切れた事から疲労感が思い出した様に吹き出たので、今日は此れにて終了とした。

 只、あと1回はやれると言われればやれそうなのだが、入学試験を首席合格しただけあって、セシリアは復習予習に支障が出ると判断した様だった。

 だが帰る前に自分の自主練が気付かれるのが嫌だったのか、的やドローンを片付けると念入りに床を拭いていた。

 最も彼女には壊れたドローンに関してはどうする事も出来ない為に唾が悪そうに見つめた後に一端脇に置いて、最後に念の為にもう1度床を拭いた(そんなにバレるのが嫌なのか?)セシリアは台車に全部乗せて引き上げようとしたが…

 

「……?」

 

「…今夜もお疲れ様です」

 

…射撃場から出ようとした直後に近くの練習場から自分達の担任の摩耶が男子を連れて出てきたのを見つけて思わず戻って潜んでしまった。

 その男子を一夏と思い、自分に勝つ為に教師に師事してもらっていたと思い込んだか、よく見たら男子は一夏ではなかった。

 

「……あの制服は…交流生?

確か…早田、剣一って人でしたわよね?」

 

 しかも男子が他校の制服であった上に登校初日に見かけた事もあって剣一であるのを察した。

 因みに普通科の一部の腐った女子の間で摩耶達教師がが男子生徒を連れ込んで夜間限定マッサージをしているとの噂があったが、残念(?)だがセシリアにはそんな趣味を持ち合わせていなかった上、教師が夜間に自主練をしてその為に整備科の者を呼び寄せる事を知っていたからそれだと判断した。

 此の為にセシリアはその剣一に壊れたドローンの修理を頼もうかと一瞬思ったが、汗だくの摩耶が立ち去った後も暫く手を膝に着けながら屈んで息を乱した疲労困憊の汗だく状態であった剣一が立ち去るまで自分でも分からないまま潜んでいた。

 それに何処か違和感を感じさせる剣一が誰かに似ている気がしたセシリアは暫く首を傾げ続けていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 整備場 ―――

 

 

 摩耶と剣一に続いてセシリアが引き上げたのとほぼ同時刻、生徒用のISである打鉄が多数保管されている整備場にて、不気味さを感じさせる程に真っ暗な此の部屋を複数の整備科女子達が懐中電灯を片手に打鉄の1つに近付いて来ていた。

 

「…ねぇ、本当にやるの?」

 

「此処まで来て何言ってるの!」

 

「此のままだと普通科への転入が消えちゃうのよ!」

 

 何処の組のかは分からないが、どうやら昼間の授業で男子に負けた女子の一部が腹いせに打鉄の細工をしに来た様だった。

 

「……さてと、明日のは動力系のだから足にはいかない筈だから…」

 

「やめようよ!

こんなのって危ないよ!」

 

 明らかに装着者に危険が及ぶ細工に元々乗り気ではなかった1人が止めようと叫んでいたが、残念ながら他の者達はそれに不快感をしめすだけであった。

 で1人が打鉄の脚部を開いてペンチで配線の一つを切断しようとしたが…

 

「あらあら、こんな時間に何をやっているのかしらね」

 

…その直前に整備場の灯りが着いた為に慌てて入り口に一斉に振り向くとそこに教師が腕を組ながら壁に凭れていた。

 しかも不味い事に彼女達が行おうとしていた悪行を見抜いていたか何処か不気味に笑っている教師に女子生徒達はギョッとしていた。

 

「…で貴女達は何をしようとしていのかしら?」

 

「……あ、いえ、その…」

 

「わ、私達は、今日の授業で忘れ物をしたので、それを取りに来たのです」

 

「とてもそうだとは思えないんだけど?」

 

 教師に下手すぎる嘘を見抜かれてしまった女子生徒達は“どうしよう?”と目線を合わせていた。

 

「ねえ、先生、私達には国家代表の先輩がいるので、出来れば先輩に確認してもらうと良いのですが?」

 

 だが自分達には国家代表の上級生が背後にいてくれた事を思い出してそれに頼ろうとしていた。

 勿論、それが彼女達整備科女子の教師達にも通用する無敵の免罪符であったのだが、何故か教師は只笑っているだけだった。

 

「まぁ、私にはそんな事どうでも良いんだけど。

只、私は貴女達に用があるのよ」

 

 此の時間帯は教師達は基本的ジャージでいるのに此の教師は不自然な黒い背広姿である事を、そして教師が整備場の全てを閉鎖した事に女子生徒達は気付くべきだった。

 最も例え気付いたとしても彼女達にはどうする事も出来なかったと思われるが…




 感想・ご意見御待ちしています。

剣一
「…いよいよ俺が纏う時なのか?」

 その前に一夏vsセシリアです。


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第4話 一夏vsセシリア

――― アリーナ ―――

 

 

 遂に織斑一夏とセシリア・オルコットによる一組のクラス代表を賭けた決闘を迎える事となり、その決闘の場となるアリーナでは世界で先んじて完成した第三世代機であるブルー・ティアーズを纏ったセシリアが上空で対戦相手の一夏を待っていた。

 

「おお、アレがブルー・ティアーズか!」

 

「典型的な遠距離射撃型だな」

 

 そしてアリーナの屋根付きの観覧席では一組だけでなく、よく共同授業を行う関係でA組の面々も男女別々の場所でいた。

 因みに本日は此の決闘の影響で女子達が早々と引き上げると言う珍しい幸運で朝食にありつけた為に男子達の誰もが機嫌良くブルー・ティアーズの分析をしていた。

 

「…それにしても織斑は遅いよな?」

 

「ああ、そうだな。

織斑は巌流島でも狙っているのか?」

 

「イヤ、どうも専用機の到着が遅れているらしいぞ」

 

 元々自分達が女子達から嫌がらせを散々受けている様に、当然普通科男1人でいる一夏もそうであろうと思って男子達の殆どは一夏の応援をしようとしていた。

 だが悲しい事に一夏本人は迷惑がっていたが、実際は普通科全学年から好意を向けられたハーレム状態であった。

 勿論、そんな事は男子達が知る訳がなかったが、知られていたら多分「リア充爆発しろ」と言わんばかりに大半がセシリアに回っていたも思う。

 でそんな危険性を孕んだ男性応援団がいる事など知る訳が無い一夏はと言うと納品が遅れている事もあって、剣道の練習しかさせずに肝心のISの練習を一切やらなかった箒に文句を言っていた。

 

「…なぁ剣一、織斑はウルトラマン擬きで来ると思うか?」

 

「そんなの俺が知る訳ないだろ」

 

「味気無い事を言わないでよ、剣一ちゃ~ん」

 

 更に一夏登場が遅れている事から男子達(と女子の一部)は噂のウルトラマン擬きが出てくるのではとの期待感が変に高まっていた。

 

「…あ、出てくるぞ!」

 

 此の為、男子の1人がカタパルトの作動したのに気付いて全員が注目し……ピットから勢い良く飛び出してきた一夏がウルトラマンの影も形も無い専用機白式を纏っていた事に一斉に溜め息を吐いていた。

 

「逃げずに出てきた事は褒めてさしあげますわ…」

 

 決闘開始前にセシリアの降伏勧告を一夏が突っぱねていたが、此の間に女子はセシリアと一夏のどちらが勝つかと意見交換を…中には賭けをしている者達がいた。

 

「…おい、武蔵、織斑のISってまさかと思うんだけどアレって初期状態じゃないか?」

 

「ああ、ヤバいぞ。

あのIS、一次移行(ファーストシフト)が行われていないぞ」

 

 だが男子達は剣一と武蔵の会話に見られる通りに白式が最適化(パーソナライズ)が終わっていない事に気付いて、誰もが驚きざわついていた。

 

「確かISの最適化は大体30分掛かる…て事は20分前後はあの状態って事だ」

 

 剣一がスマートフォンの時計で一夏が纏ったであろう大体の時間から予測を立ててゾッとしていた。

 勿論、最適化の最中でも交戦して勝つ者もいた事はいたがそれ等はあくまで玄人の話であり、RPGゲームで言えばレベルが一桁であろうド素人の一夏にはほぼ無理な話であった。

 只、幸いな事にセシリアを含めた女子達(情けない事に整備科の女子達まで…)が此の事に気付いていないらしく、出来れば此のまま口論を続けて時間を稼いでもらいたかったのだが…

 

「…それじゃ始めるか!!」

 

…よりにもよって自分の危険性を自覚していない一夏の方から決闘の開始を要請してしまい、男子達が「馬鹿(野郎)!!!」と悲鳴を交えて一夏に叫んでいた。

 だがそんな事などお構い無しに開始のブザーが鳴り響き…早速セシリアが後方に飛び退いて距離を取るもビーム蘿ライフル・スターライトMkⅢを連射して先制攻撃を仕掛けていた。

 迎え撃つ一夏も近接用の武器…彼の姉である織斑千冬の得物であった雪片の系統たる雪片弐型を何とか取り出して回避行動を取りながらセシリアへ切り込もうとしていた。

 

「ああー! 下手くそ!!」

 

「そら見た事か!」

 

 だが一夏の動きは素人が見ても大きすぎる上にセシリアに読まれていて悉く被弾してはシールドエネルギーを無駄に消耗していて男子達の罵声が飛び交っていた。

 

「……どうやら織斑のは近距離高機動…いや、格闘型みたいだな」

 

「不味いな、此のままだと近付けずに蜂の巣になるぞ」

 

 中学以前の試合勘が戻ってきた一夏は徐々に動きが良くなっていて、避けれなくても雪片で防ぎ始めていた。

 だが相性が悪いのとセシリアが未だに無傷である事には変わりなかった。

 

「さあ、もっと踊って下さいませ!」

 

 更に不味い事に此処にきてセシリアはブルー・ティアーズの背部の一部が分離して一夏の周囲に展開してビーム攻撃を開始した。

 

ビット(BT)兵器か!」

 

「ああ、アレがブルー・ティアーズの切り札なんだ!」

 

 セシリア本人が一夏へ攻撃しながら説明していたが、男子達はブルー・ティアーズの機体名にもなったスラスターにも転用可能な遠隔無線誘導型のビーム兵器に「おお~!」と歓声が上がっていた。

 しかも某アニメでも有名な兵器を連想させた事もあって男子の中で試合そっちのけで興奮していた。

 

「…なぁ、さっきからセシリアに積極性が無いと思わないか?」

 

 だがビットを展開した割には何処か守勢のセシリアに飛鳥が疑問を感じていた。

 

「そりゃ、織斑がウルトラマン擬きの装着者かもしれないから警戒しているんじゃない?」

 

 剣一の推測通り、やはりセシリアも一夏が無駄に下手な動きをしていた事もあって変な警戒心を持っていた。

 

「それにどうもブルー・ティアーズは決定力が欠けているみたいだしな」

 

「ああ、ビットを展開してからセシリアの動きが止まりがちになっている。

あの兵器は運用するには集中しなくちゃいけないんだ」

 

 大悟と武蔵がブルー・ティアーズ(とビット)の弱点を話し合っていて、もしかしたら此の戦いが長期戦になるかもしれないと思う者達が出始めていたが…

 

(……両腰の榴砲が一切動いていない…?

それにビットが一夏の上方にしか展開していない…)

 

…ブルー・ティアーズのミサイル発射機を榴砲と勘違いしていたが、剣一は何となくセシリアが何かを狙っているのではないかと思っていた。

 

「…見ろ!!!」

 

 剣一が考えていたが、誰かが叫びに気付いて振り向くとセシリアのビットに一夏が方位されて…

 

「…此れで終わりです!!」

 

…スターライトMkⅢとビット全機によるセシリアの一斉射が 放たれた!

 此れで誰もが勝負が着いたと思われたが、何時まで経っても試合終了を報せるアナウンスが鳴らず誰もが首を傾げていたが…

 

「……ふぅ…」

 

「…一次移行!?

貴方、今まで初期状態で戦っていたのですか!?」

 

…直撃直前に最適化が終わって一次移行した白式の姿にセシリアや女子達が驚き、男子達は最適化が間に合った事に安堵の息を吐くか「おおー!!!」と歓声の声を上げていた。

 

「良し、此れで勝負は振り出しに戻ったぞ!」

 

 一夏も「千冬の名と名誉を守れる」と言っている様に自信を得た事に加えて真の姿となった白式と雪片弐型が変形してエネルギー刃を展開し、先述の千冬のIS暮桜のと同じ対象のあらゆるエネルギーを消滅させる単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)である『零落白夜』が発動して慌てて後退したセシリアのビーム攻撃を防ぐだけでなくビットの1基を破壊して戦局が逆転したと思わせた。

 此の為に男子達だけでなく女子の何人かが歓声を上げながら一夏を応援していたが、此の事で調子に乗った一夏が悪しき事を招いてしまう左手を開閉する悪い癖をやっていたが、誰も此れに気付いておらず、気付いても意味が分からずにいた。

 それに一夏から何とか距離を取ろうと飛び回っているセシリアが自分達の近くを過ぎた時に彼女が諦めていない事を剣一が察した。

 

(…そう言えば最初っからセシリアは織斑の上半身しか狙っていない)

 

 更にセシリアの行為から何かのピースが次々に繋がって完成しようとしていた。

 

「…行くぞ!!!」

 

 だがその前にセシリアがエネルギー切れを起こしたビットを戻した隙に一夏が瞬間加速(イグニッション・ブースト)で一気に懐に入ろうとした。

 勿論、セシリアもスターライトMkⅢを身構えたがそれを一夏は破壊は出来なかったが雪片で払い、その結果セシリアが無防備な状態となった。

 

「エネルギーは充分だ!!」

 

「角度と間合いドンピシャ!!!」

 

「行けぇぇぇー!!!」

 

 後は振り上げた一夏の右手の雪片がセシリアを切り捨てるだけの状態に誰もが最大限の高まって叫んでいたが…

 

「止せ、罠だ!!!」

 

「け、剣一!?」

 

「お前、何言って…」

 

…剣一が立ち上がって叫んだ直後、一夏の眼前のセシリアが消えて斬撃は虚しく空を切った。

 

「え、消え……っ!?」

 

 消えたセシリアと空振りの一夏が驚き茫然とした直後、顎に何かが接触したと思ったら頭上を向いた。

 そして重力に任せて顔を下ろした視線の先に上下逆さで後ろを向いたセシリアが入った。

 一夏本人はセシリアが何をして自分に何が起こったかを分からないでいたが、硬直している観客席の面々は分かっていた。

 

「……サマーソルトキック…」

 

 ビット内部での箒の呟き通り、セシリアは一夏の斬撃を後ろに反って避けるとその勢いを利用して彼の顎を蹴り上げたのだ。

 

「…有り得ないはなかったさ。

現にボクシングでもジャブを掻い潜って懐にきた相手をアッパーでぶち抜く戦法があるからな」

 

 額を押さえている剣一は、此の為にセシリアは敢えて両腰のミサイルの未使用でビットを下方に展開させずに一夏の上半身を狙い続けたのも、全ては足への注意を反らす為にだと今更ながら気付いた。

 しかも此れには一夏の芯である剣道は基本的に下半身は使わない事(此れは他の格闘技にも言えるが、剣道は場合は更に袴で基本的に足が見えない)も更に悪化させ、現に頭を縦に揺らされて失神した一夏は、そのまま車田落ち(頭から落下)をしてうつ伏せで延びていた。

 

『…試合終了!! 勝者、セシリア!』

 

「…後半はかなり押しはしたが、終わってみたらビットを1つ失うもセシリア本体は無傷の完全勝利か」

 

「こりゃ~最適化がもっと早く行われていても負けていたかもな」

 

 男卑女尊の世の中を具現化した様なセシリアの勝利にピットから下りて一夏に駆け寄っている箒以外の女子達は歓声を上げ…中には一夏や男子を罵っている者がいたのに反して男子達は失望感が滲み出ていた。

 

「…だが何であの人は何であんな顔をしてるんだ?」

 

 だが剣一の言う通り、箒が必死に呼び掛けている一夏の近くに下り立ったセシリアは勝ったにも関わらず何故か悲しそうにしていた。

 

「……お前の勝ちだ」

 

「いえ、一夏さんの一次移行がもっと早かったら私も負けていたかもしれません…」

 

 ISを解除したセシリアの表情に箒も疑問を感じている様だった。

 

(……彼は…彼は、ウルトラマンじゃない…)

 

 現在男子達が忘れている一夏がウルトラマン擬きの装着者であるかの疑問に手を合わせた事に加えて幼少期のウルトラマン擬きから間違いではないかと思っていた。

 でそのセシリアが引き上げようと思った時に背後から拍手が聞こえて振り向くと、そこに背広姿の女性がいた。

 

「…素晴らしい…実に素晴らしい勝利でしたよ、セシリアさん。

流石はイギリス代表候補生である事はありましたね」

 

 観客席の面々は身なりから教師だとは分かったが、箒の様に“誰だ?”と思ってざわついていた。

 

「…貴女は……確か、3年一組の…鈴木、先生?」

 

 幾らなんでも普通は1年生が3年生の教師と関わりは持たないのだが、セシリアの場合は入学試験の時に彼女と実地試験で戦って勝っていた事から彼女を知っていた。

 だがその時と“口調が違う”なと思うと同時に、彼女の全てに何かの疑問が溢れ始めていた。

 そして何よりアリーナの管制室にいる摩耶が担当の生徒達共々行方不明になっていた彼女にギョッとしていたが、当の本人は只々笑みを浮かべるだけであった…

 




 感想・御意見御待ちしています。

一夏
「~~…!!!」
(“最後のセシリアのって、待ちガイルだ!!、待ちガイルだろ!!、待ちガイルだろ、オイ!!”と顎負傷で喋れないのでプラカードに書いてる、以降は省略)

 はい、“ストリートファイター”…特にIIをやっていた人なら、どんなにえげつない戦法か分かってくれますよね?
 何せ一部のゲームセンターでは禁止令が出ていた噂がありますから。

一夏
「~~…!!?」
(確か最初は避けてスターライトMkⅢの銃尻で腹部を殴って直ぐに零距離射撃で吹き飛ばすんじゃなかったか?)

 偶々ガイルの動画を見て“あっ此れの方が効果的だ”と思って替えました。
 実際アニメ見直した後にサマーソルトキックはいけると判断…と言うより何故セシリアは使わないんだと思いましたしね。

一夏
「~~…!!!」
(鈴は双天牙月でシャルはガン=カタで警戒されるし、ラウラはAICで必用無いからな。
確かにセシリアにサマーソルトキックは鬼に金棒だよな)

 それに本作ではセシリアは幼少期(プロローグ)でネロンガに襲われた影響でオリジナルでの敗因と思われる慢心が消えていますので、尚更です。

一夏
「~~…!!!」
(それにしても波動拳一つ出すのにも苦労するストリートファイター最弱王なのに、よく書けたな)

 その事だけは言わないで…
…さ、さぁ、いよいよ次回は異星人が本格的に出てセシリアに危機が迫ります。
 そしてその直後に剣一のデビュー戦です。


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第5話 怪しい教師

――― 樹海 ―――

 

 

「…何なの、此れ?」

 

 此の時、行方不明となった三年一組(と二組)の捜索隊の1班が、一組の夜営地を見つけ出したのは良いが、その一組の面々がISごと切り捨てられた無惨な斬死体となって至る所に転がっている惨状に、誰もが言葉を失っていた。

 しかも此れだけでも一部の者達が吐き気に襲われている酷いモノだったが、更に蝿が集っている死体全てに骨が剥き出しの状態になっていたのだ。

 

「…幾ら何でも白骨化するには早すぎる。

それに肉がそんなに腐っていない」

 

 どの遺体も不自然さが出ていたのだが、何故そうなったのかが全く分からないでいた。

 

「…此の娘、食べられたのよ」

 

「食べられた?

狼にでも襲われたと言うのですか?」

 

 唯1人、生徒会長である更識楯無は原因をなんとなく察している様だったが、他の者達は楯無の言っている意味を理解出来ずにいた。

 その為、楯無に誰かが何かを訊ねようとしたが、その直前に彼女達の背後から悲鳴が上がった。

 勿論、楯無達は直ぐそこに向かうと何人かが遺体に泣き付いていた。

 

「どうしたの!?」

 

「……先生です。

鈴木先生の遺体です!!」

 

 此の報告に楯無達はギョッとしていたが、確かに遺体は一組の担任の鈴木先生であった。

 だがおかしな事に、鈴木先生の遺体は生徒達のモノと違って首の骨がへし折られていた状態であるだけでなく、食べられたと思われる箇所が無い代わりに、IS処かISスーツすら纏っていない素っ裸であったのだ。

 

「……っ! まさか!!?」

 

「生徒会長、何所へ!?」

 

「先生のテントです!」

 

 此の遺体の状態から何かを察した楯無は、何とか鈴木先生のテントを何とか探し出すと、中の荷物を必死に漁り始めた。

 

「会長、何をやっているのです!?」

 

「…無い」

 

「無いって、何がです?」

 

「鈴木先生の服と教師用のIDカードが無い!!」

 

 楯無の言葉に誰もが驚いていた。

 

「ですけど、IDカードを持っていても、学園には指紋だけでなく、網膜や音声等の認証を行わないと入れないのですよ!」

 

 僅かに抵抗があったがIS学園に危機が迫っているのではと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― IS学園・アリーナ ―――

 

 

「実にお見事でしたよ、セシリアさん。

流石はイギリスの代表候補生にして専用機持ちであるだけの事はありましたね」

 

「え、ええ…」

 

 突然現れて自分に近づいて来た鈴木先生にセシリアは戸惑って僅かに後ろに引いていた。

 

「…っ!?」

 

「ん~…初陣だから、体に変な負荷が掛かってないかは、やっぱり調べようがないわね」

 

 そんなセシリアに鈴木先生は素早く傍に寄ると、セシリアが思わず嫌がっているのを無視して、彼女の体の至る所を触っていた。

 

「そこの貴女、私がセシリアさんを保健室に連れていくから、そこの坊やをお願い出来ない?」

 

「え? あ、はい?」

 

 鈴木先生を同性愛者(レズビアン)かと勘ぐっていた箒は、急に自分に振られて驚き戸惑っていたが、どうも鈴木先生が世界的にニュース沙汰になった一夏(まだ伸びている)を知らない様だった為に箒なりに彼女への疑問を感じていた。

 最もセシリアと箒と違って、観客席の生徒達は鈴木先生をその手の者と思い、男女問わず一部の者達は少し興奮して前列に詰め寄っていた。

 

「……?」

 

 その中で剣一は自分の携帯が鳴った事に気づき、更にディスプレイに表示された通信の相手が摩耶であった事に少し驚いていた。

 だが剣一は直ぐ何かを察して周囲を見渡し……幸いな事に大悟達学友達が離れていった事もあって、然り気無く男子達の後ろへ離れて、入り口へ後退しながら携帯を取った。

 

「…もしもし、山田先生?」

 

『早田君、直ぐ出れるように準備して!』

 

「どうしたんです?」

 

 電話先の摩耶に焦りが感じ取れたが、その間に鈴木先生がセシリアを半ば無理矢理連れて行こうとした為、何かを期待した者達が喚声を上げていた。

 

「…っ!」

 

「どうも、鈴木先生」

 

 だがその直後に打鉄を纏った女子生徒が3人、鈴木先生の前に降り立った。

 セシリアと箒処か、女子達が知らなさそうにしているので彼女達は同級生ではなく、二年生か三年生……大方後者だと思われていた。

 

「あら貴女達、授業はどうしたの?」

 

「いえ、授業より大切な事がありましてね」

 

「へぇ~…」

 

 何か他人事の鈴木先生に、3人のリーダー格と思われる者が……上級生でも粗暴が悪い事で知られている者が近づいた。

 

「先生、私の可愛い~後輩達が先日から行方不明なんですけど、何かご存知ですか?」

 

「あらら~…、それだったら協力は惜しまないけど、私に尋ねるのはお門違いだと思うわよ」

 

「惚けんな!!」

 

 妙に知らを切ろうとした鈴木先生に、リーダー格が怒鳴った。

 

「…監視カメラで確かめたのですが、あの娘達が最後に作業室に入った事が分かったのです。

そしてあの娘達が入った作業室に、貴女が出入りした事もです。

で更に言いますと、貴女が出て以降は整備科の授業が始まる迄、誰も入っていないの」

 

 3人組の指摘に、当の鈴木先生は何処かわざとらしく「あ~…」と言いながら右手で両目を被って頭上を向いていたが、何か嫌な予感を感じた剣一以外の男子達はざわついていた。

 更に女子達は此処数日の間に先輩達や同級生の何人かが行方不明になっている事から、よりざわついていた。

 当然ながら、その事を知っているセシリアは鈴木先生から距離を取ろうとし、箒は一夏の抱く力を強めていた。

 

「…さて先生、国家代表である私に敵対したらどうなるか分かってますよね?」

 

「……さてさて、どうなるのかs、っ!?」

 

 鈴木先生が惚けようとしたが、勘に触った取り巻きの1人が彼女の顔を目掛けて発砲し……直撃して吹き飛ばされた鈴木先生は、そのまま仰向けに倒れた。

 

「駄目じゃない。

暴発なんて不注意じゃないの」

 

「ご免なさぁ~い。

でも不幸中の幸いだけど、模擬弾だから死にはしないわよ」

 

「…なんて事をするのですか!?」

 

 訓練弾でも絶対防御を持つISを纏っていても下手に被弾すれば骨折等の大怪我を負う危険性があるのに、ISを纏っていない人間が被弾すればただ事ではすまない。

 しかも近距離で無防備な顔にやられたら、最悪の場合は死亡の可能性が大であったが、彼女達は全く罪悪感等が微塵も感じられなかった。

 最強の力と絶対的な地位を得た人間は此処まで腐敗するものなのか、同じ代表候補生であるセシリアは軽蔑を籠めて睨んでいた。

 

「…何なのよ」

 

 だがそれが上級生達の気に触り、再びISを纏おうとしたセシリアを上級生達が半包囲した為に一触即発状態となろうとしていたが…

 

「……ちょっと」

 

「…っ!?」

 

…上級生の1人が背後から気配を感じて振り向いた直後、その1人の頭が消えたと思ったら、その頭が女子達がいる観客席の天井の硝子に血を撒き散らしながら音を上げてぶつかった。

 続けて頭の消えた胴体が少し間をおいて崩れ落ちた後、状況を理解出来ずに硬直していた観客席の面々が悲鳴を上がった。

 当然、セシリア達もギョッとして、一斉に同じ所に目線を向けると、そこに此の惨状を作った犯人である鈴木先生が不気味に笑いながらせをむけて屈んでいた。

 

「…何故、動けるのですか?」

 

 セシリアがギョッとしていたが、上級生の二人は怒りを露にして歩み寄っていった。

 

「この糞ババア、何s…」

 

 だがその4人までが鈴木先生に首を切り落とされてしまい、驚くべき事に鈴木先生の手首の甲から刀形の爪が生えていた。

 

「……なんて事をしてくれたのよ…」

 

 鈴木先生が伏せた顔を右手で被って苦笑と思える不気味な笑いを上げた為、最後の上級生が後退さるだけでなく此の光景を見ている全員が硬直していた。

 

「……お陰で…折角のメイクが…」

 

 そして全員が嫌な予感を感じさせながら鈴木先生が顔を上げると…

 

「…台無しじゃないの!!!」

 

…そこに先程までの人間のモノでなく、蜥蜴の様な顔であった。

 

「ば、化け物!!!」

 

「…宇宙人よっ!」

 

 上級生が悲鳴を上げた直後、鈴木先生……否、鈴木先生に擬態していた宇宙人は彼女の元に一瞬で近寄って心臓に爪を突き刺すとそのまま真っ2つに切り裂いてしまった。

 

「…ああ!!!」

「きゃぁー!!!」

 

 当然、観客席では生徒達が一斉に逃げ出そうとしたが、その前に扉がロックされて更に隔壁が落ちた。

 

「みんな、大丈夫か!?」

 

 女子の方は全員閉じ込められてしまったが、男子の方は剣一だけは出る事が出来て、隔壁を叩きながら学友達の身を案じていた。

 

「人の事より自分を案じろ!」

 

「パッキングして出れないのか!?」

 

「駄目だ!

電源が落とされた!」

 

『…お嬢ちゃん達、変な事をしたら毒ガス何かが流されるかもしれないわよ』

 

 観客席に脅しを掛けた宇宙人は、そのままアイフォンでの操作アリーナを完全に隔離するとアイフォンを握り潰した。

 

「…待ってろ、先生達を呼んでくる!!」

 

 携帯が鳴り続け、自分ではどうする事も出来ないと苦々しく分かった剣一は、学友達の呼び止めようとしている叫びと打撃音を後ろ髪を引かれながらも無視して走り出した。

 

「あ~あー…。

折角の良い場所だったのn…っ!?」

 

 その直後にISを展開したセシリアのビットをも使った連続射撃が直撃した。

 

「…楽にしてくれてありがと。

しかし何で人間の女はこんな身の丈に合わないキツい物を着けたがるのかしら?」

 

 だが服こそ消し飛ぶも宇宙人そのは傷らしきモノが確認出来ず、ボロボロのブラジャーを右の人差し指で回していた。

 

「……セシリア」

 

 それに反してセシリアは早くも息を乱し、汗を流していた。

 箒もそれが恐怖心から来て、なんとか勇気を出したのだろうと見ていた。

 

「本当に、宇宙人だと言うのですか?」

 

「ええ、そうよ……ああ、そうそう、申し遅れてたわね。

私、貴女達の言う宇宙人の1種である、ツルク星人のドラコと申します」

 

 何処か余裕を見せる宇宙人ことツルク星人ドラコは、右手を左胸に当てて一礼して名乗った。

 

「馬鹿な!!

宇宙人はウルトラマンによって悉く地球上から駆逐された筈だ!」

 

 怪獣退治の専門家と言われる程、ウルトラマンは怪獣達と戦い続けたが、少数ではあるも“バルタン星人”“ザラブ星人”“ダダ”“メフィラス星人”等(“ケムリア”や“ケムール人”みたいに微妙な奴もいたが…)、地球侵略を狙った異星人達とも戦っていた。

 だが箒の叫び通り、ウルトラマン最後の敵であるゼットン星人の宇宙恐竜ゼットンを伴った侵略戦を最後に地球上からは異星人は駆逐されたと思われていた……たった今までは…

 

「じゃあ、貴女の目の前にいる私は何なのよ?

全くどの地球人も迷信を信じちゃってんだから…」

 

 ドラコは何処かわざとらしく溜息を吐いた。

 

「…でも残念だけどそのウルトラマンがいない以上、躊躇う必要なんかないじゃない。

現に私が此所にいるのがなによりの現れじゃない」

 

 “鬼のいぬ間の命の洗濯”の言葉通り、恐れるモノなど無いドラコからより強烈な威圧感が発されていた。

 

「……ですが、その人間もウルトラマンがいなくても十分な力を付けましたよ」

 

 顔が引き攣ってはいたが、セシリアが言う通りに彼女が纏い、思わず視線を向けたISに地球最強の力を……嘗て束の問題発言の通りウルトラマンに匹敵する力がある以上、巨大化能力があろうと星人に敗れはしないと期待感があった。

 だが、何処かその期待感を否定するかの様にドラコは不気味に微笑していた…




 感想・御意見お待ちしています。

 さあ、やっと出ました次々回あたりで行われる予定の剣一のデビュー戦の相手は、エイダシク星人に代わって此のツルク星人ドラコが務めます。

ドラコ
「私はバルタン擬きの坊やとは違うわよぉ~」

剣一
「…しょっぱなで“ウルトラマンレオ”のヤバイ奴かよ!」

 まあレオ以外でもウルトラシリーズには碌な敵対星人はいないと思うよ。
 さっさと体温めてこい!

 さてさて剣一のデビュー前に、チョットやばい事があるかもしれないけど、セシリアと一夏頑張ってねぇ~

セシリア&一夏
「………」(少し引いてる)


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第6話 セシリアvsツルク星人

――― IS学園・アリーナ ―――

 

 

「……ですが、その人間もウルトラマンがいなくても、十分な強さを付けましたよ」

 

「それじゃあ、見せてもらおうじゃないの」

 

 ドラコに事実上の宣戦布告をしたセシリアはブルー・ティアーズを展開して身構えると、ドラコが間違って伸びてる一夏と、その一夏を抱えている箒の2人に向かわない様に、2人の前にゆっくり移動した。

 勿論、セシリアに合わせてドラコも身構えたが、ドラコから何処か余裕が感じ取れるのに反して、セシリアはまだ戦ってもいないのに早くも息を乱して冷や汗を流していた。

 そして箒だけでなく、観客席に閉じ込められている生徒達も妙な緊張感でほぼ硬直して5人の動きを凝視していた。

 

「…っ!?」

 

 だがドラコのプレッシャーにやられかけたセシリアは、ドラコの背後に幼少期に両親を奪ったネロンガの幻を見てしまって、小さかったと言え、思わず悲鳴を出してしまった。

 

(…大丈夫です。

ウルトラマンがいなくたってやれます。

自分でそう言ったじゃないですか!)

 

 だが内心不安なセシリアはブルー・ティアーズの腕部に覆われている自分の右腕に一瞬目線を落として、自分に言い聞かせていた。

 

「……ふぅ…」

 

「…?」

 

 不意にドラコが自分から目線を反らして溜め息を吐き、それを見たセシリアが一瞬気を抜いた直後…

 

「……うりゃ!!」

 

…その隙を突こうと、ドラコは右手から爪を展開しながらセシリアに突進した!

 

「ひゃ!?」

 

 だがセシリアの左肩を狙った此の一撃は、そのセシリアが驚きと変な声を出しながらも、殆ど無意識の内に動きでスターライトMkⅢで防がれた為に空振りに終わった。

 

「まだまだ!」

 

 当然と言えば当然だが、ドラコの攻撃が此れで終わる訳がなく、左手からも爪を展開して第二撃を行い………此れもセシリアに防がれてしまったが、此れを切っ掛けにドラコの連続攻撃が始まり、セシリアは必死に防ぐか避け続けていた。

 

「何をやってる、セシリア!!

避けてるだけじゃ、殺られるぞ!」

 

 セシリアは自分を見失いかけていたが、箒の叫びで正気に戻った。

 そしてドラコの隙を突いて、サマーソルトキックを狙おうとしたが、視線からドラコが蹴り技を警戒しているのを察して、カウンター気味にスターライトMkⅢで払ってドラコを退け反らせ…

 

「インターセプト!!!」

 

…更にブルー・ティアーズ唯一の近接武器である短剣インターセプトを展開するや、それでの突きでドラコを引かせると、一夏戦では使わなかった両脇のミサイルビットからミサイル2発を放った。

 

「…うげ!」

 

 ミサイルその物はドラコに2発揃って切られた為、直撃せず近距離での爆発で終わったが……傷らしきモノが全く出来ていないドラコが噎せていたが、セシリアは此の間に上空に避難していた。

 更にビット5機全てを展開させて遠距離(アウトレンジ)からの一斉射撃を開始した。

 

「……ふっ」

 

「ちぃ!!」

 

 ドラコに避け続けられていると言え、上空に逃れた影響でセシリアに僅かに余裕が生まれていた。

 

「ダンスがお好きな様ですね?

だったらもっと舞って下さ……!?」

 

 自分への鼓舞を兼ねて軽口を吐いたセシリアだが、ドラコの動きに何か違和感を感じた。

 だが、ドラコがおふざけともパフォーマンスとも思える妙に激しい動きを始め、そしてドラコがセシリアの方に振り向いてニッと笑って少し屈むと…

 

「ひっ!?」

 

「……良い運動が出来たわ!!」

 

…飛び上がった……否、飛翔したドラコがセシリアの目の前に一瞬の間に近付いた。

 そして驚き怯えたセシリアの隙を突いて、ドラコがミサイルビットの砲身を握って潰すと、そのまま後退して左側のミサイルビットの砲身が根元から千切れ、右側のは本体ごと持ってかれてしまった。

 

「……くっ!!」

 

 ミサイルビットが2機とも破壊された事は兎も角とし、右手の砲身を露骨に捨てて左手のミサイルビットをねじ曲げているドラコが空中に浮いている通り、異星人の一部には飛行能力を持っている事を忘れて油断し、なにより勝利を幻想した自分に歯軋りしていた。

 

「…あ、そうそう。

セシリアさん、ビットは展開しない方がいいわよ」

 

「……っ!?」

 

 ドラコの忠告にセシリアは無意識の内にビットを動かそうとしたが…

 

「一号機を右90度・上下角プラス45度に展開して私の右肩を狙おうとしたわね」

 

…ドラコに攻撃を防がれるだけでなく、ビットの動きを言い当てられてしまった。

 

「…今度は五号機を私の真後ろから後頭部を狙おうとしたわね。

あ、私に言われて、二号機、三号機、六号機を右からプラス0度、120度、240度、3機揃って上下角マイナス60度から私の胴体……と言うより中心点を一斉射撃で狙おうとしたわね」

 

 更にビットの動きを言い当てられてしまい、間違いなくドラコはセシリアのビット五機(四号機は一夏に破壊)全ての動作を完全に読んでいた。

 

(読まれた!?

何か、癖が……視線とか体の動きに癖があるの!?)

 

 観客席の生徒達もそうだが、先程の一斉射撃の事もあって驚き戸惑っているセシリアは体の至る所に視線を落としていた。

 

「答えを教えてあげるわ!」

 

 ドラコは突然左手の爪を引き抜くと、その爪をセシリアに見せつけてニヤつくと、爪を右に投げた。

 

「…ふん!」

 

 そして爪が垂直に近い角度で曲がりながら加速して、硬直していたセシリアを……外れて彼女の近くに展開していたビット一機を破壊した。

 だがドラコは更に右手の爪も引き抜いて投げ、今度は迎撃しようとスターライトMkⅢを身構えだが、その爪がジグザグに有り得ない軌道で飛んできて驚いてしまった間にビットをまた1機破壊されてしまった。

 

「……まさか…」

 

「…そうよ!」

 

「…っ!?」

 

 破壊されてしまったビットがあった空間を顔を青くして見つめていたセシリアが何かを察した直後、またドラコが目の前にいた。

 

「私達ツルク星人は生まれながらに、『ツルクラッガー』と言う生まれながらのビット兵器を持っているの。

だからね、私達はビット兵器の類いの動きが手に取る様に分かるの!」

 

 なんとも驚きの能力を持ち合わせている事だが、最初は驚いたセシリアはドラコの両手に爪が無くなっている事から、直ぐに左の回し蹴りでドラコを下がらせるとインターセプトで斬りかかろうとしたが…

 

「爪が無いから勝てると思った?

それも残念!!」

 

…不敵に笑ったドラコが右手から新しい爪が生えて、逆にインターセプトを折ってしまった!

 更にドラコは左手からも爪を生やし、此れをセシリアはスターライトMkⅢを身構えて、防ぎはしたがスターライトMkⅢの銃身に切り傷が出来た事にギョッとした。

 

「貴女の推測は正解よ。

私達の爪は栄養分の蓄えがあれば瞬時に新しいのを生やせる上に、生え変わる度により強固且つ鋭利になっていくの!」

 

「…鮫の歯と同じ、だと言うのですね」

 

「ついでに言うと、栄養分ならお腹が出ちゃう位蓄えてるわよ」

 

「…くっ!」

 

 元から分かってはいたが、近距離(クロスレンジ)での戦闘は圧倒的に不利だと改めて判断したセシリアは、右の回し蹴りでドラコを牽制して出来た隙を突いて後ろに飛び退いて距離を取ろうとした。

 当然ドラコはセシリアを追撃し、それ等を後退しながら避けたり防いだりしているセシリアの動きが悪くなり始めていて、セシリアが疲労が貯まるだけでなく心が折れ始めている事が誰の目からでも察する事が出来た。

 

「セシリアさん、頑張ってぇー!!」

 

「遠距離戦なら勝機があります!!」

 

「科特隊だって装備が劣った状態で宇宙人を撃退したんです!!

ISなら十分勝てますよ!!」

 

 セシリアとドラコが一旦止まって間を作ったが、にやけているドラコに反してセシリアは汗だくで息を激しく乱している光景から、誰もが否応なくセシリア敗北の可能性が大きくなっている事を察したが、観客席の女子達が不安を拭い去ろうと必死にセシリアを応援していた。

 

「…“言うは易し”って、此処まで腹立たしい事だったなんて知りませんでしたわ」

 

 たが女子達が思っている以上にセシリアはドラコの脅威を感じていて、現にISを纏った状態で生身の異星人に圧倒されている此の現状がなによりであった。

 それでも自分を応援する女子達の4人の“科特隊”の単語はセシリアに僅かな希望を与え、なんとか自分を奮い立たせて身構えたが、突然ドラコが笑い出した。

 

「…素晴らしい……実に素晴らしいですよ、セシリアさん!

流石は世界最新鋭の第三世代機が与えられた代表候補生、見事にその機体を操っています!

ブルーティアーズも私達ツルク星人から見ても素晴らしい物ですよ!」

 

「え、ええ、それは、どうも」

 

 ドラコが拍手をしながら機体共々セシリアを褒め称えた事に、疲労で思考力が低下していた当のセシリアは只驚き戸惑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…だから、私がセシリア・オルコットとなって、その機体を纏ったら、もっと素晴らしい事になると思いませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 だからこそ、此のドラコの発言を理解出来なかったセシリアは暫く硬直した後、何か嫌な予感を感じていていた。

 そんなセシリアにドラコが凶悪な笑みを向けながら右手首のブレスレットみたいな腕輪のボタンを押すと、何処からかロザリオみたいな物を取り出し、セシリアに見せ付けるかの様に前方に突きだした。

 

「……まさか…」

 

「ええ、貴女の思っている通りよ」

 

 セシリア達女子生徒が見慣れている発光をドラコがし……それが収まるとドラコは緑色のISを纏っていた。

 

「きょ、教師用のラファール!?」

 

 ドラコが纏っているのISが、世界的ベストセラー機であるラファールの系統であり、教師達が纏っている機体である事は直ぐに分かったが、背後のイコライザーに銃器か刃物を持った色違いの腕が大多数引っ付いていて、見慣れているラファールとは思えない……異星人が纏うに相応しい不気味さを感じさせていた。

 機体その物は鈴木先生のを奪った物で、イコライザーの腕は殺された(捕食された)生徒達の物々であり、それ等をドラコが改造したのは間違いなかった。

 

「どう、私のラファール・アシュラは…」

 

「……何故…」

 

 否、それよりも問題なのは…

 

「…何故貴方がISを纏えるのですか!?」

 

…セシリアの悲鳴に近い叫び通り、人間(・・)の女性にしか纏えない筈のISを異星人であるドラコが纏っている事であった。

 だが、ドラコがIS学園に入り込んでいる事から答えを察する事が出来たが、顔を青くするセシリアはなんとか否定したがっていた。

 

「なに、こんな代物、擬態能力を使えば簡単に起動出来たわよ。

只、起動後にちょぉぉーと、プログラムを書き換えたけどね」

 

 そんなセシリアの期待を否定したドラコの返事に、セシリアは一歩下がってしまった。

 だが思い起こせば、ウルトラマンがいた当時の世界最先端の科学技術が集っていた科特隊もケムリア、ザラブ星人(コイツだけは少し微妙だが)、ゼットン星人に本部や支部への侵入を簡単に許していた。

 特にウルトラマン最後の対戦相手である宇宙恐竜ゼットンを使役したゼットン星人のは致命的で、結果的に科特隊の支部の殆どが壊滅させられて後日の解散に繋がった。

 

「異星人の擬態能力は、簡単に侵入するだけでなく、ISをも騙して纏える程だと言うのですか!?」

 

 ISを含めて自分達地球はウルトラマンがいた当時より遥かに強大化した、誰もがそう思っていたが、現実は異星人達との差は縮まらずに差が開いたままであった。

 現にISを纏っているドラコの存在自体が強烈な絶望感を感じさせた。

 そして何かが砕けたセシリアが自覚できる程に畏縮して、ドラコが凶悪な笑みを浮かべた。

 

「…何時から地球最強が宇宙最強だと錯覚していたの、劣等種族!!!」

 




 感想・御意見お待ちしています。

 今回の投稿に合わせて“ウルトラ図鑑 星人”を投稿します。

セシリア
「異星人にISって、鬼に金棒じゃなくてミニガン(ターミネーター2で、シュワちゃんがパトカーを片っ端に破壊したアレ)持たせた様な状況じゃないですか!」

 いやぁ~…“ウルトラマンxIS”は殆ど怪獣との戦いだけど、此の作品は基本的に異星人戦がメインだからこう言う絶望が書けんのよねぇ~…


「だからこその、タイプU(ウルトラマン型のIS)か…」

 で、こんな時に少しネタ晴らし、“原作ULTRAMAN”の最近の展開で、箒は紅椿を“原作IS”とは違う形で受領、もしくは紅椿を受領しないか、紅椿の代わりに別の機体を受領する予定です。

 まぁこんなんですが、次回とびきりの恐怖を味わうセシリアと“何してる”感全開の一夏の前に、ウルトラマン型ISがいよいよ登場(の予定)!
 と、言う訳で……剣一、スタンバイ!!!


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第7話 轟く叫びを耳にして…

 何故、ISは女性にしか纏えないのか?

 此のIS最大の謎は、生みの親である篠乃之束でさえ分かっていないさえ言われており、更に男性装着者第一号と呼ばれる織斑一夏の登場で益々解明出来ない状況と化していた。

 だが此の欠点は裏を返すと、少なくとも人間(・・)の女性しか纏えない……即ち、地球人の女性以外は纏えないと言う、強力な防犯機能となると認知されていた。

 地球人でも出来ないのだから、異星人でも問題解決は出来ない、確証の無い推測は何時の間にかに確定事実として認知、誰もが疑いを持つ事なく盲信していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そして、それが地球人の甘い幻想であった事が、遂に判明する時がきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― IS学園 ―――

 

 

「…何時から地球最強が宇宙最強だと錯覚していたの、劣等種族!!!」

 

 自らISを纏う事で、全ての希望や幻想を粉砕したツルク星人ドラコの威圧感に、セシリアは気後れして何歩か後ずさっていた。

 

「良いわねぇ~、その顔。

ぞくぞくするわぁ~」

 

「…っ!」

 

「だけどその顔、もっとデコらせて貰うわよ!!」

 

 只でさえ自分を奮い立たせようとしているので精一杯なセシリアに、ドラコはヨダレを垂らした笑みを浮かべて右手を真横に突き出した。

 ドラコはそのまま指を鳴らしてセシリアを少し驚かせると、ラファール・アシュラの背部に接続されていた多数の腕が一斉に飛び出してセシリアを包囲しようとした。

 

「ビ、ビット兵器!!?」

 

 “そんなまさか”を顔に出したセシリアは、ほぼ無意識の内に自分もビットを展開しようとした。

 

「悪いわね…」

 

「ひや!!?」

 

「…貴女の専売特許を奪っちゃって!」

 

 前々からドラコが言っていたが、自分だけの物と思っていたビット兵器を実際にドラコが……それもブルーティアーズの倍を遥かに超える数を展開した事に、パニック状態のセシリアの心の中の何かが砕け、更に粒子化を始めていた。

 

「セシリア、来るぞ!!!」

 

「…ひっ!?」

 

「ひゃっはぁぁぁー!!!」

 

 此の為に、箒が叫んで報せるまで、セシリアの意識が現実から離脱していたので、ドラコが一瞬の内に自分の目の前に接近に、全く何も出来なかった彼女の右脇腹にドラコの左手の爪の峰が食い込んだ。

 

「素晴らしい!!

なんて言う、極上品!!!」

 

 此の一撃で、セシリアに強烈な痛みと吐き気が襲っていたが、ドラコは爪越しに感じるセシリアの肉の感触……鍛えあげられるも恐怖による気の緩みからの柔らかさに悶絶していた。

 思わずアヘ顔になっているドラコは、セシリアの顔目掛けて右の爪を振り上げたが、此れはセシリアが本能的に後退しながら顔を逸らしたので、彼女の左頬を浅く切って出血して、左頬が血で染まるだけに終わった。

 

「…っ、あああぁぁー!!!

美味しいぃぃぃー!!!」

 

 右手の爪の殆どを収納したドラコが、爪先のセシリアの血を舐めて体全体を震わせながら絶叫したが、当のセシリアは遮二無二に後退した事でアリーナの壁に背中から激突していた。

 

「もう我慢出来なぁぁーい!!!

今すぐ、食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい、食べたぁぁぁーい!!!」

 

 明らかに自分を見失っているドラコは、セシリアのがむらしゃらな押し退けを力任せに無視して彼女の首元を狙っての噛み付きを仕掛けたが、当のセシリアは首を捻って避けた。

 尤も、セシリアは数回は回避出来たが、ドラコに確実に首に食い付かれそうになり、無意識の内にドラコの口にスターライトMkⅢを横向きに捩じ込んだが、当のドラコはスターライトMkⅢの銃身をへし折りそうにしながらゆっくりとセシリアの首に迫っていた。

 

「ぅどりぁぁー!!!」

 

「おご!!?」

 

 此の為、ドラコはセシリア以外の注意が完全に失われて、右からの一夏のショルダータックルをまともに被弾して、セシリアから引き剥がされてしまった。

 更に一夏はそのまま右斬り上げを仕掛けたが、此れはドラコが右手の爪に防ぎつつ跳び退いて大きく距離を取った為に空振りとなったが、ドラコはほんの少しの間噎せていた。

 

「何なんだよ、アイツは!?」

 

「見て分からないんですか!!?

異星人ですよ!」

 

 どうやら一夏は目を覚ますと、状況を理解出来ないまでも、取り敢えずはセシリアの危機を察して突撃した様で、無意識の内に不安等を払拭しようとして、セシリアは怒鳴って返していた。

 因みに此の時の箒はと言うと、本能的に自分がいると足手まといになると思い、一夏が覚醒して直ぐに退避して現在は射出口への梯子を登っていた。

 

「異星人って、アイツ等はウルトラマンに…」

 

「現実を見なさい!!!

そこにいるんですし、言っている暇なんて無いんです!!!」

 

 人によっては図太いと思えるかもしれないが、数テンポ遅い反応をしている変なマイペースな一夏に、セシリアの勘に触っていたが、本人は気付いていないが、セシリアは本来の調子を取り戻していた………尤も後にして思えば、此れは一時的なモノに過ぎなかったが…

 

「…邪魔だ、退けぇぇぇー!!!」

 

 此の間にドラコは体勢を整え、正気に戻ってるかが疑わしかったが、取り敢えずは邪魔きた一夏に激怒して、ビットアームの半分近くを銃から短剣に展開変更すると前方を円錐形に展開しながら時計回りに高速回転を始め……号令一過、銃携帯のは一斉射撃を、短剣携帯のは一夏(とセシリア)目掛けて飛ばしてきた。

 

「援護します!

突撃を!」

 

「おう!!」

 

 だがセシリアと一夏は直ぐに即応して即席コンビを結成、セシリアがビット3基を展開しながら軽く上昇しての射撃でビットアームを迎撃を開始、それに合わせて一夏は自分に迫るビットアームを避けるか破壊しながらイグニッションブーストで突進した。

 全てシールドで弾かれてはいるも、かなりの数で被弾していた為、元から少なかった白式のエネルギーが激減していたが、一夏は短時間の内にドラコに接近して自分の間合いに入る事に成功した。

 

「ちっ!!!」

 

 一夏は直ぐに逆袈裟斬りを仕掛け、ドラコも舌打ちをしながら右手に短剣を展開して斬撃を止めようとしたが、どうやら一夏は先程KOされたセシリアのサマーソルトキックの反省から、わざと軽めにしてドラコに受け止められるとそのままいなして短剣を右腕ごと撥ね飛ばした。

 一夏は直ぐに左に大きく仰け反ったドラコの隙を突こうと、両手持ちでの袈裟斬りを仕掛けた。

 

「…ふっ」

 

「ぃ!?」

 

 だがドラコは此の一夏の動きに感心したかの様に微笑すると、左手の爪を展開して受け止めた。

 止められた事はそうでもなさそうだったが、一夏は両手での渾身の一撃に対して、ドラコは(多分、非利き腕の)左手で押し返されていた事に、射出口にいて彼の一撃の重さを知っている箒共々ギョッとした。

 だが此の為に一夏は隙を作ってしまい、ドラコはそこを狙って彼の左脇腹に膝蹴りを放って、一夏を悶絶させた。

 

「一夏さん!!!、っ!!?」

 

 セシリアはそんな一夏に思わず叫んでしまったが、ドラコはその間に一夏の顔を右手で掴んで後頭部から地面に砂煙を派手に上げる程に叩き付けて、一夏共々姿が見えなくなると、クラウチング・スタートの要領でロケットスタートして一瞬にしてセシリアの右脇に移動した。

 セシリアはドラコに驚いた表情で振り向いた中、ドラコは彼女の背後に素早く回ると、背中合わせで両手の爪を展開しながらセシリアの背中に深々と突き刺した。

 ドラコの絶妙さでセシリア本人は無傷だったが、此の一(?)撃でビットのコントロール装置が壊れてしまったらしく、ビット3基が糸が切れたかの様に一斉に落下した。

 精神的ダメージも深刻だっが、セシリアはブルー・ティアーズが嫌な断裂音を出しながら引き裂かれるのを気に出来ないまま絶叫しながら振り向いて、そのままスターライトMkⅢの銃尻でドラコを殴ろうとしたが、そのドラコはそれを避けるだけでなく右手の爪でスターライトMkⅢを横一文字に切断した。

 

「あんまり壊すと、後での修理が大変なんだけど仕方がないわね」

 

 既に真っ二つとなったスターライトMkⅢでセシリアの目から光が消えかけていたが、ドラコはドドメとして後方に置いてけぼりのビットアーム群からの銃撃でブルーティアーズのイコライザー(後付武装)を蜂の巣にし、更に落ちてくるビット3基の内の2つをも切断した。

 最後のビットが切られた2つと共に地面に突き刺さり、続けてイコライザーまでが2つ揃って落下………ブルー・ティアーズの武装が全て破壊されると同時にセシリアは右膝から崩れ落ちて、そのまま家鴨(アヒル)座り(女の子座り)の形で状座り込んでしまった。

 短時間の内に一夏とセシリアが各々の形で戦闘不能となったの冷酷な現実に、観覧席に閉じ込められた女子生徒達は絶望するだげなく、全く差が埋まってない異星人の強大さに悲鳴を上げて騒いでいるしかなかった。

 そんな中で、ドラコはビットアームを収納し終えると、完全に諦めていたセシリアの顔を見つめながら軽く笑い出し、少し間をおいてから右手で額を押さえながら爆笑しだした。

 

「良いわよ、セシリアさん!!!

その顔、最高よぉぉぉー!!!」

 

 セシリアは絶望と無力感の2つの極みを感じ………否、彼女の場合は思い出して硬直していて、ドラコに全く反応していなかった。

 

「……強くなろうと思ったのに………あの人の様に…」

 

 どうやら、此の時のセシリアは幼少期のネロンガに襲われた時と場所に戻っていて、目の前で見上げているドラコがネロンガの顔に見えていた。

 だからと言ってセシリアは悲鳴を上げたり、泣いたりしていないが、此れは彼女がそれすら出来ない程の深みにいたからだ。

 

「貴女は強くならなくて良いわよ…」

 

 そんなセシリアの意を知ってか知らずか、ドラコは馬鹿にするかの様にした後、右手で自分の顔を覆った。

 

「…貴女を食べた後、私がセシリア・オルコットとなって強者として名を知らしめて上げるから!!!」

 

 右手が退かれると、ドラコは顔だけをセシリアに擬態していて、御丁寧に声までもが同じであった。

 自分の顔をしているドラコの狂笑にセシリアは流石に反応して、上半身を後ろに反らしながら微かに悲鳴を上げた。

 

「まぁ、“悪”の字が着いちゃうけどね」

 

 ドラコは文字通りに化けの皮を顔から引き剥がすと、セシリアの両肩を掴んで首元に噛み付こうとしたが、当のセシリアは抵抗処か、全く動ことしなかった。

 更に言うと、観覧席の女子生徒達もセシリアが食べられる光景を頭に思い浮かべながら硬直していた。

 

「諦めるなぁぁぁー!!!」

 

…が、そんな中でまた覚醒した一夏がセシリアに檄を飛ばしながら、雪片弐型を振り上げてドラコに飛び掛かった。

 まぁ“人が良い”の表れであったが、黙っていれば奇襲となっただろうに、それが折斑一夏と言う人間性なのだろう…

 更に言うと、ドラコも先程と違って一夏の存在を予想していたのか、溜息を吐きながら彼の振り下ろしを避けながら下を潜り抜けた………一見、そう見えた…

 

「…私、勇敢な子は好きよ。

だけど、実力が伴っていないと、唯の自爆になるのよ」

 

 一夏が滑りながら振り向いた時、ドラコはいつの間にかに展開していた右手の爪の刀身を左手で下から拭うと、一夏の胴体が右肩から左脇の対角線上から血が大量に吹き出した。

 一夏はドラコに抜刀術でのカウンターで切られたのを呆然としながら分かりながら、俯せに倒れた。

 ドラコは爪に付いた一夏の血を左人差し指の先を舐めると、特大の溜息を吐いた。

 

「……私、人間の男って淡白だからあんまり好きじゃないのよねぇ~………ま、そう言うのが好きって子はそれなりにいるし、ダイエット志望で敢えて食べるのも聞いているけど…」

 

 衝撃的な事を言ってきた気がしたが、ドラコは先ずは邪魔してきた一夏を排除も兼ねて食べようと、彼に歩み寄り始めた。

 不味い事に、一夏が逃げれないのは誰の目でも確実であった。

 

「セシリア、一夏を助けてくれぇぇー!!!」

 

 だから箒は僅かな希望からセシリアに助けを求めたが、当のセシリアは一夏の方に振り向くも相変わらず硬直したままであった。

 

「……御母様………御父様…」

 

 今のセシリアは、“両親達の死体”や“自分に目掛けて咆哮するネロンガ”が何度も脳裏を過っていた。

 だが不意にネロンガが自分に『暴君電撃』を放った時、幼い自分を守った存在が頭に浮かんだ。

 

「……ウルトラマン…」

 

 セシリアはその存在が誰に似てたのか、更にその存在に憧れからISのパイラーになろうと決意したのを思い出し、無意識にその名を口走っていた。

 

「…ウルトラマァァーン!!!」

 

 最後にセシリアは助けを求めて叫んだ。

 それにドラコは少し驚きながらセシリアに振り向いたが、直ぐに馬鹿にしながら笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…だが此の直後、アリーナの消化装置が地面から多数突き出て、消火用の白煙が吹き出した。

 

「下手な悪足掻きを………っ!!?」

 

 セシリア(達)から見えない先にいるドラコと一夏の方で、何かの物音が多々聞えだし………暫くして白煙が薄れだした時、何かがセシリアの直ぐ右脇を高速で通り過ぎた。

 セシリアがギョッとしながら、通り過ぎたモノの方に振り向と、ドラコが壁にめり込んでいた。

 更に前方から足音が微かに聞こえた為、またそっちに振り向くと、まだ濃い目に漂っている白煙の中から誰かが歩いてきていた。

 

「……一夏、さん?」

 

「…くぅ~……可愛さ余って憎さ百倍って事…」

 

 まぁドラコと共にそこにいたの一夏しかいなかったので彼だろうと、壁から這い出たドラコを含めた全員思っていたが、セシリアは強烈な違和感を感じて、箒もセシリアと同じ様であった。

 そしてそれは白煙から赤い足先………白式のとは全く違う2つが順に出た事で決定的となった。

 更に足先の上方に小さな光が青く輝いていて、薄れる白煙の中から浮かび上がる、見覚えがなんとなくあるシルエットから“まさか”が頭に思い浮かんだ。

 

「……ぁああ!!!」

 

 そして完全に姿を現したのは白式の面影が全く無い、赤と白に彩られたISであった。

 そのISの“模様”“胸の中央に青い光球を輝かせる姿と形”“頭頂部の鶏冠”等からセシリアが思わず嬉し泣きをしている通り、弱き人々には生きる希望を与え…

 

「お、お前は!!?」

 

…ドラコが顔面蒼白になってる通り、悪しき異星人達には十死零生の絶望を与える、異星人を模していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウルトラマン!!!』

 

 “身体が若干多面体”“目の形が卵形でなく細目”等オリジナルとの違いが有ったが、その姿はまさしく光の国からの来訪した宇宙人・ウルトラマンのISであった。

 “ウルトラマン擬き”と(悪い形で)称され、空想上の存在とも噂されていたISは、事実として存在していた。




 感想か御意見、両方でもどちらかでもお願いします。

…遂に、来たぞ、我等のウルトラマァァーン!!!
 此れをどんなけ待ち焦がれた事か!!!

 感想欄で書いてますが、最後のウルトラマン擬きを纏っているのは、斑村一夏ではなく早田剣一です。
 ドラコ倒した後の本編で書きましたが、まどろっこく一夏とスリ代わる形にしたのはちゃんと理由が有ります。


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第8話 疑問だらけのウルトラマン擬き

――― IS学園 ―――

 

 

 ウルトラマン擬き……一部の人間から(オリジナル)ウルトラマンへの冒涜と言われる、文字通りにウルトラマンを模したISの登場に、此のアリーナにいる者達全員が反応しない訳がなかった。

 現にドラコはウルトラマン擬きに気後れしての後退をしていて、観客席では助かったと思っての歓声が起きていたが、男女に別れている観客席では決定的な違いがあった。

 

「おっしゃぁぁー!!!

此れで勝ったぞ!!!」

 

「行けぇぇぇー!!!

ウルトラマァァーン!!!」

 

「あんな異星人なんかヤっちまえ!!!」

 

 ご覧の通り、男性陣は純粋にウルトラマンとして歓声を上げていた。

 

「一夏くぅぅーん()、信じてたわよ!!!」

 

「早く私達を助けてぇぇぇー!!!」

 

「一夏君なら出来るわよ!!!」

 

 それに反して女性陣は、ウルトラマン擬きを纏っているのは織斑一夏だと、極限状態からの自己暗示でそう思っていて一夏の名を叫んでいた。

 

「……一夏、本当にお前がウルトラマンだったのか?」

 

 まぁウルトラマン擬きがいる場所に加えて、一夏が見当たらないので、普通に考えたら“織斑一夏=ウルトラマン擬き”と思わざるをえず、現に一夏の幼馴染である箒もまたそう思っていた。

 だが当のウルトラマン擬きはと言うと、ドラコに向かって前のめりに身構えたきり、硬直したっきりであった。

 更に箒はセシリアと共々ウルトラマン擬きをよく見ていたら、息の乱れでと思われる上半身を上下の小刻みに揺らしていた。

 箒は此れは疲労によるモノだと思っていたが、妙な違和感を感じだしていた。

 

「…きぃやあぁぁー!!!」

 

 だが、ドラコは過度の不安感から軽度の錯乱を起こした事から、ウルトラマン擬きに右手を爪を展開しながら振り上げて飛び掛かった。

 

「ああぁぁー!!」

 

 此の一撃はウルトラマン擬きに右手首を両手で掴まれた事で防がれたが、ウルトラマン擬きから軽めの呻き声が発された。

 更にドラコが左手でもう一撃を放ったが、ウルトラマン擬きは今度は右腕でなんとか弾いたが、よろめいて後ろに下がってしまった。

 ウルトラマン擬きは何歩か下がって姿勢を正したが、少しの間だけ下げてしまうも戻した視線の先からドラコが消えていた事に驚いていた。

 

「馬鹿!!!

飛んでるぞ!」

 

 ウルトラマン擬きは箒の怒鳴っての注意で慌てて視線を上げて周囲を見渡したら、ドラコは飛行で背後に回り込んでウルトラマン擬きの胸裏を蹴飛ばし、不意討ちを許したウルトラマン擬きは前に数歩よろめいた後に倒れてそのまま滑っていった。

 

「やっぱり、おかしい…」

 

 ウルトラマン擬きはなんとか立ち上がってドラコの連続攻撃をいなしながら下がり続けていて、観客席の面々は気付いていなかったが、箒とセシリアはウルトラマン擬きへの疑問を深めていた。

 不味い事に、ウルトラマン擬きに攻撃し続けるドラコもまた2人と同じ様に疑問を深め、同時に冷静さを取り戻し始めていた。

 だからドラコはわざと隙だらけの突きを繰り出し、ウルトラマン擬きが狙い通りにいなすと、隙だらけの左足目掛けて足払いを仕掛け、無防備にやられたウルトラマン擬きは見事に左から倒れた。

 ドラコは仰向けに倒れたウルトラマン擬きに追撃しようとしたが、今回はウルトラマン擬きが少しパニクりながらもカウンターに近い形でドラコの腹部を蹴り上げやれる結果となった。

 

「あ、しまった!!!」

 

 だがウルトラマン擬きの蹴りで真上に吹き飛ばされたドラコはそのままアリーナのシールドを突き破ってしまい、そのまま逃げてしまった。

 勿論、ウルトラマンは直ぐに自分のミスに気付きながら慌てて飛び起きると、ドラコの後を追い掛けて飛び上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あの馬鹿、糞宇宙人を逃がしたのか!!?

そら見た事か!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・学棟群 ―――

 

 

「何、あの爆発!!?」

 

「アリーナの方からだよ!!!」

 

 此の時のIS学園の状況はと言うと、整備科は授業中で全員が各々の教室にいたのだが、普通科は休憩中だったので、学園内の広範囲に広がっていたのだが、アリーナから不自然な爆発音が響いたので、全員がアリーナの方へ振り向いていた。

 

「アリーナから何か出てきたよ!!」

 

「此方に向かってる!!」

 

 その内の1年棟の4組ではアリーナから飛び出してきた人型に気付いて全員が窓に詰め寄って凝視していたが、向かって来ているのがISを纏った蜥蜴人間(ツルク星人ドラコ)だったので一斉に悲鳴が上がって、次々に逃げ出していた。

 当のドラコはと言うと、どうやら食欲を優先にしていたらしく、逃げ遅れる処か、逃げようともせずに机に座ったまま顔を青くしている更識簪を狙いを定め、彼女に向かいながら口を大きく開けて(ヨダレ)を大量に流していた。

 

「…畜生!!!」

 

 だがドラコが4組の教室に突入する前にウルトラマン擬きがからくも追い付いて、ドラコの背中に飛び付いた。

 そのままウルトラマン擬きとドラコは4組の教室に頭から窓を突き破って突入したが、ウルトラマン擬きがなんとか軌道を変えたので、2人は簪を直ぐ背部から避けて、机と椅子を幾つか蹴散らしながら滑っていって両足を垂直に立てた後に停止した。

 

「…え………ウルトラマン?」

 

 簪は一瞬の内に現実離れをした出来事を理解出来ずにウルトラマン擬きの所に向かおうとしたが、その直後にドラコが奇声を上げながら立ち上がって簪に飛び掛かろうとした。

 

「早く逃げろ!!!」

 

 だが、直ぐにウルトラマン擬きも立ち上がってドラコの首元を掴んで壁に押し付ける事で阻止しようとした。

 

「邪魔、するなぁぁー!!!」

 

 だが、簪がドラコで足がスクんだ為に逃げ出そうとしなかっただけでなく、ドラコは直ぐにウルトラマン擬きを振り払って簪に飛び掛かろうとしたが、ウルトラマン擬きは偶々近くにあった机の足を掴むと大振りでドラコの頭に机を叩き付けた。

 此の一撃で机が木端微塵になるも、ドラコはふらついた隙を突いて、ウルトラマン擬きはドラコの脇下を掴んでの前屈みでまた壁に押し付けた。

 ドラコもまた振り払おうとしていたが、偶然の形であったが、脇が絞まらない事で上手く力が込められない為、そのままの組み合いの押し合いとなった。

 

「……早く!!!」

 

 だがウルトラマン擬きは逃げないでいる簪に苛立って思わず怒鳴ったが、当の簪は軽く悲鳴を上げたのみで硬直したままであった。

 ウルトラマン擬きにとって質が悪かったのは、他の4組の者達や他の組の者達は教室外から覗くだけで、誰も簪を連れ出そうとする気配がなかった。

 

「そこを動くな!!!」

 

「じっとしてなさい!!!」

 

 そんな時に騒ぎに気付いた教員達が、場所と状況的にISを纏っていないが、代わりに鉄兜(ヘルメット)と防弾チョッキを着けた状態で4組に駆け込み、ウルトラマン擬きとドラコに小銃を突き付けた。

 ウルトラマン擬きは教員達の登場に驚いてそちらに振り向いて隙を見せてしまったら、ドラコは右の膝蹴りでウルトラマン擬きの顎を跳ね上げ、直ぐに怯んだウルトラマン擬きを振り払って教員達目掛けて突進、驚きながら自分目掛けて飛んでくる教員達の銃弾を意に止めずに、教員の1人を右手の爪で袈裟斬りで真っ二つにした。

 ドラコはそのまま教員達を跳ね飛ばして視線に入った女子生徒に飛び掛かろうとしたが、ウルトラマンが飛び掛かりながら右手に持ってた椅子を頭に叩き付けながら前に立ち塞がった。

 ウルトラマン擬きは壊れた右手の椅子を捨てて、左手の椅子を叩き付けようとしたが、ドラコの右手の爪の突きで椅子を壊されていまい、そのままドラコの右肩のショルダータックルを腹部に受けてしまった。

 ウルトラマン擬きは不安定な姿勢で被弾した為、ドラコにいいように押されて、女子生徒達が逃げ回る廊下を突っ切っていて、右手で押すドラコの顔へ左フックで数度殴ったが、突き当たりの壁に激突して突き破り、そのままドラコに押さえ込まれながら背中から歩道に墜落した。

 ドラコは腹部を押さえながら背中の激痛に悶絶しているウルトラマン擬きを確認しながら立ち上がってトドメの一撃として顔目掛けて右手の爪を突き刺そうとしたが、ウルトラマン擬きは偶然に近い形で右に転がって爪で此の一撃を避け、そのままカウンターとして右ストレートでドラコの顔を殴り、怯んだドラコの腹部を蹴って引き剥がした後に立ち上がった。

 

「……とに、もう!!!」

 

 ドラコは少し怒りながら左手から展開した爪を抜いてウルトラマン擬きに投げようとしたが、此の間にウルトラマン擬きはドラコ目掛けて突進し、エルボーも含んだ右のショルダータックルをドラコの腹部に叩き込み、軽く吹き飛んだドラコを追撃して左のアッパーを顎に叩き込んだ。

 ウルトラマン擬きは更に右ストレートを叩き付けようとしたが、此れはドラコに受け止められてしまい、逆にドラコの左ストレートを顔面に被弾して後ろに吹き飛んで、その先の外灯に胸裏から激突して“く”の字に曲げながら尻餅を着いた。

 

「お・死・にぃぃぃー!!!」

 

 ドラコはウルトラマン擬きが踞った事から此処で決めようとして、爪を各々に展開した両手を振り上げながらウルトラマン擬き目掛けて急降下をしたが、ウルトラマン擬きはクラウチングスタートの要領で急に飛び上がって、ドラコの両手を押さえながら胸元に頭突きをしてそのまま上昇………頂点に達したらドラコと組み合ったまま落下していって、IS学園の食堂の天井を突き破って2人揃って墜落した。

 当然、食堂にいた女子生徒達はウルトラマン擬きとドラコが墜落した直後から悲鳴を上げながら逃げ出していき、後の食堂には墜落でのだけでなく天井や窓一帯の壁が崩壊した事で生じた砂煙が充満した。

 

「…いい加減にしなさいよ、アンタ!!!」

 

 逃げて物陰に潜んでいる女子生徒達に加えて、文字通りに張り付いてきた箒と共に食堂近くに降り立ったセシリアが見詰める中で砂煙が晴れた後、俯せに倒れていたウルトラマン擬きが呻き声を上げながらゆっくり立ち上がると、瓦礫に埋もれていたドラコが、瓦礫を吹き飛ばしながら立ち上がってウルトラマン擬きに怒鳴った。

 

「しつこいにも程があるわよ!!!」

 

「お前が逃げ回っているからだろ!!!」

 

「そんなに言うなら、逃げるのを止めてあげるわ!!!」

 

「……へぇ?」

 

「もう逃げる必要が無いって分かったしね」

 

 ドラコの一方的な怒鳴りにウルトラマン擬きも身構えながら怒鳴り返したが、ドラコの返しにキョトンとした。

 

「最初っから妙だったのよね。

今の今まで私達の存在を巧妙に隠してきたから、私もこっそり食べていたってわけ!

なのに貴方ときたら、変に後手後手だった上にド派手に追い掛け回してきたのだから、おかしいと思ってたのよ。

まぁ何かの作戦ってのも考えたけど、全て分かっちゃったの!」

 

「…何が言いたい?」

 

「坊や、貴方は此れ等の手に素人な上に、今回が初陣って処でしょう?」

 

「っ!?」

 

「私、こう見えて人を見る目は確かなの♪

あ~…変に錯乱して損だったわ~…」

 

 ウインクしながらのドラコの指摘に、ウルトラマン擬きが図星であった為に見て分かる程にギョッとした。




 感想または御意見、或いは両方でもいいので宜しくお願いします。

 本編にはあまり関係ないけど、“ハイスクール・フリート ルパン三世暗殺指令”を考える為に“トワイライト・ジェミニの秘密”を見た事でドラコが故・野沢那智の声で喋ってる風に感じてるんだよねぇ~…
 だけど、あの人は既に亡くなっているので、他の人をお薦めしても気にしませんよ。


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