ISってなに? (reレスト)
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終わって、オワッテ……

 お久しぶりの方は、待たせすぎてすみません。初見の方は初めまして。にじファンにてレストという名前で投稿していた者です。レストの名前はもう使われている方がいるようで、ちょっと名前が変わりました。以前の作品を改稿しながらなので、内容に変化が出るかもしれませんが、よろしくお願いします(__)
 楽しんで頂けたら幸いです。
 だいぶ遅れましたが、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 


 ───―──い、たい? いたい、いたいいたいいたいイタイイタイイタイイタイ痛い痛い痛い痛い。

 全身を鈍い痛みと鋭い痛みが乱雑に駆け巡る。のた打ちまわりたいのに、体は動かず。喚きたいのに、咽喉(のど)からでるのは低く荒い呼気だけだ。視界の右側は赤く染まり、アタタカイ液体で濡れている。冷たい駅のホームよりも、体の芯が冷えていく。イタイアタタカイツメタイ。

 

「…ォィ、しっか…しろ」

 

「誰……、急…車を」

 

 聞こえる声が煩わしい。辛うじて動く眼を、駅の構内に向ける。顔を真っ青を通り越して土気色の顔がいくつか見える。着ているのは一様に学生服だ。この時期、この時間帯に学生服だということは自分と同じく大学受験を終えたところだろうか。だとしたら、何とも運のないことだ。鬱陶しい試験から解放されて、今から騒ごうかという段階で……いや、早々に騒いだせいで要らぬ面倒を起こしたのだから。ふざけていた為に、階段から他人(おれ)を突き落した。何とも簡単に状況説明が出来てしまった。まぁ、甘んじて現実を受け入れて貰おうか。こっちは頭は血まみれ、足は投げ出された人形の如く訳のわからん方向に向き、全身を痛みに侵されているんだからな。気絶すらしたことのない俺だから、今自分が意識を失ったらどうなるか、まったく分からない。

 ────が。何となく漠然と、終わりなんだ、とも思う。痛みが薄れ、温度も感じなくなってきた。まだ、親にも何も返していないんだけどなあ。

 それからゆっくりとゆっくりと、目蓋(まぶた)が落ちて、ぶつりと、消えた。

 




 パソコンになれません(ToT)


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改稿前
何? こいつら……


 ちょっと改稿が思っていたよりも時間がかかりそうなので、改稿前の物を投稿させていただきます。あー、こんなんだったなぁ、こんなのだったんだ、くらいの気持ちで読んでくださると嬉しいです。やー、勢いで書いていたものをあらためて見たら……悶絶しました。自分の黒歴史を見ているような感じ、というかまんま黒歴史ですね、はい。
 楽しんで頂けたら幸いです。


羞恥プレイに耐えることかれこれ五年が経った。

 

ん?  時間が経ちすぎだって? ……赤ん坊の成長を見て何が面白いんだよ。ひたすら寝る、食う《この場合飲むか?》の繰り返しだしなぁ、まぁ二歳頃から普通に動けるようになったが。

 

 

あの時は感動したなぁ。まぁだいたいこんな感じの生活を送ってきたな。

 

 

今でもあるいは羞恥プレイだがな、大学前まで行った男が幼稚園児に混ざって遊ぶとか羞恥プレイ以外の者物でもねぇよ。

 

 

まぁそれは良い。いや良くはないが、諦めと言うか何と言うか、一年も通ってたらね、慣れたんでな、悲しいことに……

回りくどい? 何が言いたいんだ? ってか?現実逃避だよ、いいじゃねぇかよ。辛いんだよ、今の状況が……

 

 

新しく子供が幼稚園に入って来たんだが…何人か明らかにおかしい奴がいるんだよなぁ。

 

 

先ず一人目だが、この年頃の子供は普通落ち着きなくてそわそわしてるもんなんだが。この子は身じろぎひとつせずに、ジッとこちらを見ている。綺麗な黒髪黒目で将来クールな美人に成りそうだ。

ただ少し目付きが鋭いな。

 

 

二人目は……とりあえず、あれだ。なんでパソコン持ってんだよ………しかもこっちを完全に無視してるな。コイツも将来美人になるだろ。綺麗な桃色? っぽい髪に整った顔付きしてるしな。ただし美人の前に残念な、が付きそうだが。

 

 

 

 

んで、三人目なんだが……正直コイツが1番なんて言うか、気持ち悪い……

生粋の日本人のはずなのに銀髪のオッドアイで、既にイケメンって判別出来る顔立ちしてるしな。

 

 

何がダメなのかって?

よく考えてくれ、幼稚園児なのに既に顔立ちが出来上がってるんだぜ? バランス悪いって、まぁ目に関しては人のこと言えやしねぇけどなぁ。

 

 

今はカラーコンタクトで黒にしてるが……紫なんだよなぁ、どこのマンガだよ。

はぁ……まぁ今はそのイケメン君は別の所で遊んでるが、やたらと睨んで来るんだよなぁ。あ゛ぁ゛ー、鬱陶しい。

しかも宙返りとか普通にしてるし、ほんとに四歳かよ?

 

 

「あの」

 

っと、現実逃避し過ぎたか。とりあえず考えるのは一旦置いて置くか。

 

 

はぁ、園児の数が多いからってガキにガキの相手させるなよ。いや、他は良いかも知れんがこの二人を固めて相手させようとするなよ。いくら俺が普段ガキらしくないからってそりゃねぇぜ、先生。

 

 

じー、スッ。あ、目ぇ逸らされた。押し付けてる自覚は有ったんだな。考えてもしゃーないし、とりあえずテキトーにやるかぁ。

 

 

Side???

 

 

このようちえんにはいってしばらくして、としうえのひとたちとあそんでみよう! とせんせいがいって、なんくみかのぐるーぷになりはじめた。

 

 

わたしはいつもいっしょにいる、たばねちゃんといっしょになった。

けどほかのこたちがこっちにこようとしない。

 

 

いつもとおんなじだ。たばねちゃんはきょーみがわいたひととしかはなそうとしない。

 

 

わたしもみんなにこわがられてるみたいだし、さっきこっちにきたおとこのこは、たばねちゃんが「うるさい。」っていっておいかえした。

 

 

そのままたばねちゃんはじぶんでつくったっていう、ぱそこんをやりはじめた。

 

 

そんなたばねちゃんをひきずりながら、せんせいにいわれたところにいくと、すこしとしうえのおとこのこがいた。

 

 

そのひとはだまってなにか、かんがえてるみたいだったけど、なにかいわなきゃとおもって「あの」

 

ってはなしかけてみた。

 

 

そのひとはすこしおどろいて、またなにかかんがえて、こっちをむいてすこしめんどくさそうに、はなしかけてきてくれた………

 

 

SideOut

 

 

とりあえず、自己紹介からいくとしますかぁ。めんどいけど。

 

 

「あぁ〜とりあえず、初めまして、俺の名前は水無月 悠夜《みなずきゆうや》だ。気が向いたら覚えてやってくれ」

 

 

「はじめまして、おりむらちふゆっていいます。このこはともだちの、しののの たばねちゃんです」

 

 

「ほら、たばねちゃんも」

 

 

「えぇ〜、するひつようがないし、めんどうだよ」

 

 

「そんなこといってると、またおこられるよ」

 

 

 

 

………なんか俺忘れられてる? まぁいいけど

 

 

「あぁ〜いいよ、気にすんな。んなことで怒ったりしねぇよ。」

 

 

あん? なんだ?キョトンとして? って、あぁ、なるほど。こんな対応とったやつが今までいなかったのか。

 

 

そりゃそうか。普通の子供なら怒ったりするし、先生なら注意するだろうしなぁ。

とりあえず、無難に

 

 

「何かしたことあるか?」

 

 

これでいいだろ、さて反応はどうだ?

 

 

「えっと」

 

 

おりむらが(聞いただけじゃ漢字が分からん)何か言おうとしてるが

 

 

「なにもするきないし、したくない」

 

 

 

 

 

とそのまえにしのののがばっさりと話を切ってパソコンを再開した。

 

 

「……わたしはたばねちゃんのをみてます」

 

 

「そうか」

 

 

まぁ、したいことするのが大切だからな。

なんでもいいや、俺は寝るとするか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………はぁ、めんどくせぇなぁ。さっきから、おりむらが向こうの遊びに混ざりたそうにしてるんだが。行きたきゃ行きゃいいのに……一応仕事だしな声かけとくか。

 

 

「どうした? 遊びに行きたいなら行ってきていいぞ?」

 

「……だいじょうぶです」

 

 

いやいや、んな顔して言われてもなぁ。未練たらたらって顔してるぞ。

 

 

「それに……わたしみんなにこわがられるから」

 

なんで? ……あぁ目付きが怖いのか。俺は前世があるから美人になりそうだなぁ、としか思わんが、園児には睨んでるようにしか見えないんだな。

 

 

「んなこと園児が気にすんなよ。ほれ、行ってこい」

 

 

背中を軽く押して行かせてやる。

 

さてどうなるかなっと。

あぁ〜やっぱりちょっとビビられてるなぁ。なんかイケメン君が騒いでるが意味ねぇな。あっ、やべぇ俯いちまった………このままスルーしたら俺が怒られる。

 

 

めんどくせぇけど、行くかぁ。後ろに行って、せぇーの。

むにむに、むに〜っと。

おぉ、めちゃくちゃ柔らかい頬っぺただなぁ。

 

 

「ひゃにふるんへふか」

 

 

「気にすんなよ、ただの暇つぶしだ」

 

「ふふ」

「あはは」「へんなかお〜」「おもしろ〜い」

 

 

「えっ?」

 

 

「ねぇねぇ、おなまえなんていうの?」

 

「えっと、おりむら ちふゆ」

 

 

「ちふゆちゃん!いっしょにあそぼう?」

 

 

 

「っ…うん!」

 

 

これでいいだろ。とりあえず仕事は半分はしたし、戻って寝るかぁ。

よいしょっと、あぁ〜慣れないことはするもんじゃねぇなぁ。イケメン君がまた睨んで来てるし……もう慣れたしどうってことねぇけどウゼェ。

 

 

お〜お〜楽しそうだねぇ、混ざった途端リーダーシップ発揮してるよ。

俺要らなかっただろ、あれは。一種の才能だぞ、あれ。

 

 

将来お姉様とか言われそうだな。

 

んで、問題はこっちのしのののだったか?どうすっかなぁ……

 

 

とりあえず謝らねぇとな。

 

 

「しののの」

 

 

………やっぱ無視か、まぁどっちにしろやることはかわらねぇしな。

 

 

「悪かったな」

 

 

おぉう、何言ってんだこいつって顔してるなぁ。

 

 

「おりむらを連れていってちまって」

 

 

「…………なんで?」

 

 

初めて俺に対して話してきたな。

 

 

「何に対してのなんでだ?」

 

 

「ちーちゃんをつれていったのはちーちゃんがいきたそうにしてたから」

 

 

「それでなんでわたしにあやまるの。わけがわからない」

 

 

あぁ、そのことか。

んなもん。

 

 

「お前楽しそうにしてただろ。それを邪魔したからだな、理由としては」

 

 

「なんで?」

 

 

またなんで? かよ。めんどくせぇな。

 

 

「だから会話に主語を入れてくれ。なんでだけじゃ分からん」

 

 

嫌そうな顔してるなぁ。

 

 

「なんでわたしがたのしそうだった。っていえるの」

 

 

えぇ〜、自覚無しですか?

あんなにわかりやすいのに。

 

 

「いや、だってお前おりむらが見てる間、嬉しそうにパソコンいじってたし」

 

 

「おりむらが居なくなった途端、無表情になったらそらそう思うだろ。普通」

 

 

前世から無駄に得意だった、相手の表情を読むことが役に立ったな。

 

 

「……ちーちゃんしか分からなかったのに」ぼそっ

 

 

 

なんか言ってるが……聞こえなかったしいいか。

 

 

「とりあえず、そういう理由だ。まぁ間違ってたら聞き流しといてくれ」

 

 

もう仕事頑張ったし、後は好きにしていいよな?

 

 

えっと、確かこの辺に……おっ、あったあった。チョップチャップス〜。俺のささやかな癒しだぜ。

 

種類も多いし、安いから好きなんだよな〜。今日は無難にコーラ味で行くか。

 

 

パクッ、カリッ、コロコロ。はぁ〜うまうまだぜぇ。

やっぱり、チョップチャプスが至高だよなぁ。

 

 

じー。あん? なんか視線を感じるな? ここに居るのは俺としのののだけだから……チラッ。サッ………チラッ。サッ………これか? チョップチャプスか?

 

 

……欲しいなら言えばいいのに。おりむらとこいつ似てるなぁ〜。正反対のようで共通点がなにげに多い。

 

 

ごそごそ。ヒョイっと、出したのはいいが、こいつは多分素直に受け取らないだろうしなぁ。めんどくせぇ。

 

 

………よし、これで行こう。

 

 

トン。チョップチャプスを置いて。ゴロッと俺が反対向いて寝ときゃ勝手に取るだろ。

 

 

………カサカサ、カリッ。コロコロ。

 

 

よし食べたな。もうこれでいいだろ。なんでこんなに頑張ってんだろ……

 

 

止めよう。頭が痛くなる。五歳で胃に穴を開けたくねぇしな。はぁ〜、疲れたなぁ。こんなの俺のキャラじゃねぇよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………決めた。俺は平穏で安全な暮らしを目指す!! 俺の夢の邪魔はさせねぇ!

……フラグのような気がするが気のせいだ。きっとそうだ。

 

 

夢の第一歩として!………寝よう。よく考えたら、そんな厄介事に簡単に巻き込まれるなんてそうそうねぇしなぁ。

 

 

……ないよな? ないったらない!! もう寝る!



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いい加減にしてくれ……1

あの、俺にとっては夢が決まった日であり、厄介事の塊のような奴らに、やたら絡まれるようになった日から7年ちょっと経って今から俺の卒業式だぜ☆キラッ

 

 

……オェ、自分でやってて吐き気がしてきた、………ん?

テンションがおかしい?時間が経ち過ぎだってか?

 

テンションに関しては後から分かる、いや、分かってくれ、頼む(泣)

 

時間が経ち過ぎなのは馬鹿な作者のせいだ、俺を責めないでくれ。

 

 

作者?また変な電波が……憑かれてんだな、きっと。……ちょっと待て、今、字がおかしくなかったか?

 

…考えてもしょうがないな、とりあえず今日この素晴らしい日を楽しもう、中学校に入ったら、あの災厄の天災(誤字に非ず)達から離れられる。

 

 

なんでそんなに、嫌がってるのかだって?そんなもん俺と同じ目にあったら誰でもこうなるわ!?

 

 

……スマン、少し取り乱してしまった。フゥー、落ち着け俺、大丈夫これを乗り切ったらとりあえず、向こう一年間は大丈夫だ、

 

もう少し頑張れ。

……よし、大丈夫だ、

さて、何の話しだったか?

あぁ、何でこんなテンションなのかの説明だったな、とりあえず、平穏無事に過ごせた1年の時を除いた間のつらい…つらかった、時の回想をしてみようと思う、どうか付き合ってくれ、それから出来たら慰めてくれ(泣)

 

 

ではどーぞ

 

 

〜以下回想〜

 

くぁ〜あぁ、やっぱ年下(精神的に)とおんなじところでの勉強は面倒だなぁ、というかもはや苦痛でしかねぇ。

 

まぁ、1年の時よりは多少マシになってるがなぁ、それでもツレェもんがある。

 

だが幼稚園に行ってた時よりは何万倍もマシだな、

あんときゃつらかったな〜

 

押し付けられた日に俺にしちゃ珍しく頑張ったのがいけなかったんだなぁ、きっと。

 

織斑は人の輪に入ったら何かやたらとカリスマを発揮してたから、先生がめちゃくちゃ喜んでたな、子供達が言うことを聞いてくれるって……

 

園児に統率力で負ける先生って……

 

本人が気にしてないからよかったが、

 

まぁそれはいいんだよ、それはな、けど、輪の中に入るのを手助け?してやったお礼のつもりかも知れないが、毎回俺を遊びに誘うのは止めて欲しかったなぁ。

篠ノ之はチョップチャプスをやった?取られた?いや、拾ったか。した日からまぁそれなりに話すようになったんだが、

 

……あいつ頭良すぎるだろこっちと同レベルか、それ以上の内容を話してきたぞ

 

………園児以下の中身おっさんって……先生のこと言えたもんじゃねぇなぁ。

 

 

んで、俺は隅のほうでチョップチャプスを舐めながら寝てるんだが……

いつの間にか篠ノ之が隣でパソコンを弄ってるんだよ。

 

んで、普通の園児には訳が分からん内容を話して来て適当に反応してやったら、キラッキラした目で、

 

 

「分かるの!?」

 

 

って聞いて来た……あっ、やばい、対応をミスッたと思った時には後の祭りだ。

せいぜい高校位の内容だったから、つい意識せずに対応しちまったんだよ。

 

んで、ここで嘘をついてもしょうがないし、

 

「多少はな、」

 

って言ったんだよ、そしたらもう喜々として話し掛けてきたな。

 

生体の反射速度とか数学のベクトルなどなど、

……園児じゃねぇなぁと思いつつ聞いてたんだが、

 

織斑が遊びに誘いに来たんだよ、最初は篠ノ之を呼びにきたのかと思って、まだ話し続けてた篠ノ之に、

声を掛けたんだが、篠ノ之だけじゃなくて俺も誘いに来たらしいんだが、

 

俺は園児達のテンションにはついていけないからやんわりと断った。

 

そしたら、篠ノ之は、

 

「ちーちゃんとゆーくんが一緒じゃないなら行かない。」

 

と、言いやがった、俺は、ゆーくんって誰だ?って聞いたら

 

「ゆーくんはゆーくんだよ?」

 

という質問の答えになってない答えを下さった。

 

困った俺は、織斑に聞いたら水無月さんのことですよ、との返答が………

 

何でいきなり愛称?っと思ってたら、篠ノ之は気に入った相手には愛称で呼ぶんだと、

 

 

……何で?気に入られるようなことしたか?と考えてると、織斑が年が近い人で束ちゃんの話についていけたのは水無月さんが初めてだ、っと教えてくれた。

 

 

それなら織斑とかあそこの睨んできてる、イケメン君は?どうなんだ?っと聞いて見たんだが、

 

 

「ちーちゃんは、親友だし話も聞いてくれるけど、流石に内容が分からないみたい。」

 

 

「あれは、うるさいし、自分の自慢ばっかりしてくるし、なんかわたしとちーちゃんを見る目が気持ち悪い。」

 

 

だそうだ、イケメン君、原因はお前にあったぞ、しかもあれ扱いされてるし、

まぁ、理由は分かった、だが俺の勘がこいつらに関わったら平穏無事な生活なんて送れる訳がねぇ!と断言してるんだよなぁ。

 

まぁ、幼稚園の間だけだろうから、多少は大丈夫だろ、

 

 

後々、何であの時自分の勘に従わなかったんだと落ち込むことになるのは、完全な余談だ。

 

 

とりあえず、織斑には俺のことは気にせずに遊んでこいと言っておいた。

 

 

織斑はしばらく考えてから

「わかった。」

 

と言って子供達の方に走って行った。

 

 

 

と、思っていたら、またすぐに戻って来た。

 

どうしたんだ?と思っていたら、自分もこっちで遊ぶ、と言って来た。

 

 

………いやいや、俺は別に遊んでた訳じゃないんだが、それに織斑よぉ、もうちょい自分の影響力を考えて行動してくれよ……

 

 

ほら、イケメン君はいつものことだが、他の子供達まで睨んできてるじゃねぇかよ、

 

 

そりゃ自分達の中心の子を取られた!みたいになるんだろうけどね、俺が言ったんじゃねぇからな!

 

 

しかも、篠ノ之は睨みにくいのか俺だけ睨んで来るし……

 

 

先生何とかしてくれy

……ブルータス、お前もか……なんかネタに走ってしまったが許してくれ、

 

 

先生が1番泣きそうな目で、「何で、連れてっちゃうのよぉ、子供達をどうやってまとめればいいのよぉ。」って目で訴えて来てるんだよ。

 

 

あれか、神様はやっぱり、俺が嫌いか、テメェの評価は俺の中でイケメン君と同列だ。

 

 

 

 

 

 

………分かったよ、行くよ、行くから睨むのを止めてくれ、はぁ、途中でテキトーに抜け出せばいいだろ。

 

 

そんな感じでなし崩し的に遊ぶんだが、

 

 

抜け出そうとするたびに篠ノ之と織斑に見つかって、二人が付いてた来ようとして、

睨まれる、この無限ループだ、

 

 

いくら逃げても隠れても見つかるから、発信機でも仕掛けてんじゃねぇかと、

調べて見たら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………あったよ、しかも大量に……

 

 

深く、考える、のは、止そう。とりあえず、この発信機は篠ノ之に返してそれで大丈夫だろぅ。

 

 

…あれ?

篠ノ之はこの発信機があるからわかるけど、織斑はどうやってんだ?

 

 

聞いて見る、か?なんか怖いけど、俺の平穏の為だ、がんばろぅ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……無理だ、勘で捜されてそれがほぼ百パーセント当たるとか逃げようがねぇ。

 

めんどくせぇなぁ。ハァ〜俺の平穏が遠退く。

 



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いい加減にしてくれ……2

さて、前回の話を読んでくれていたらありがとう。

読んでねぇよ、という奴は気が向いたら読んでやってくれ、

 

 

……分かってる、回りくどいのは分かってるんだが、つらかったことを思い出すのにも心の準備がいるんだよ、毎回毎回申し訳ない。

 

さて、そんな無限ループを過ごして卒園したんだが、これでこいつらに振り回されるのもこれが最後だと思うと嬉し……寂しいもんだなぁ、

 

 

本音が出てた?ナンノコトカナ?

まぁ、いいさこれからやっと、俺の夢である平穏が帰って来る。

 

 

だから、イケメン君が俺が卒園することに狂喜乱舞してようが、篠ノ之がどうやって卒園式を無くそうか考えて実行しようとしてようが、織斑がそれを表面上止めようとしつつ、計画の甘い所を修正して計画を煮詰めてようが関係ねぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

……やっぱ待てコラ、何卒園式潰そうとしてんだよ、却下だ、んなもん、不満そうな顔すんな、

 

 

あっ?寂しくないのかってんなもん決まってんだろ、………めっちゃ嬉しい!

 

 

 

……OK、ちょっと待とうか、その手に持っているものを下ろして、話し合おう、

えっ?HA・NA・SHI・A・I?ちげぇよ、コミュニケーションだよ、肉体言語のほうじゃねぇょ。

 

 

先ず、織斑、何で木刀なんて持ってんだよ、借りた?篠ノ之の道場から?剣道するのは小学校からじゃねぇのかよ、早い内から慣れておきたいから特別に貸して貰った?

 

 

何やってんだよ、普通貸すのって竹刀じゃね?いや、そもそも園児にこんなもん貸すなよ。

 

 

しかも普通に振り回してるし、織斑、お前はまだ常識人の範疇だと思ってたのに……

 

 

んで、篠ノ之、お前もその手に持っているスタンガンを捨てろ、んなもん喰らったら確実に死ぬ。

 

 

あん?大丈夫?これくらいじゃ、死なない?

……いくら俺が家で鍛えてるからって、流石にそれは死ぬわ、俺がやってるのは合気道と剣術だが、あれは両親の趣味だ、人間辞めるような鍛練はしてねぇ。

 

 

おいっ、今スタンガンに当たった虫が塵になったぞ、それは、本当に人間に……いや、生物に当てていいものなのか?

 

 

……オイ目を逸らすな、何?実験はした?何にだ?……あれに?イケメン君が生物の範疇だと思ってるのか?

あれは変態という新しい種族なんだ、生物ではない。

 

つーか何で使ったんだ?

何々?

 

あれと家が近くて織斑と遊んでたらいっつも近づいて来て、混ざろうとするし、揚句の果てに家まで来ようとしたから、つい?

 

 

変態なだけじゃなくてストーカーでもあったのかよ、あれだ、好きな子に構って欲しいんじゃね?

 

 

……どんだけ嫌われてんだよ、イケメン君、篠ノ之だけじゃなくて織斑まで苦虫を丼一杯食わされたみたいな顔してるぞ。

 

とりあえず、それは捨てろ、嫌そうにすんな、早くしろ……よし、捨てたな、んな危険な物、金輪際俺に使おうとするなよ、んで、織斑頷いてるがお前もだ、

 

 

何のこと?って顔してんじゃねぇよ、その木刀片付けて来なさい。

 

 

渋々だが片付けてきたな、でだ、俺もちゃんと寂しいぞ?

 

 

なんか違った?気のせいだまぁ、これからも幼稚園で頑張れ。

 

 

うん?何処の小学校行くのかって?近場の1番頭の悪い学校だが?

 

 

何で頭のいいとこに行かないのかだって?んなもん、めんどくせぇからに決まってんだろうよ。

 

駄目な奴を見る目でこっちみんな、お前らと違って俺は普通なんだよ!

 

 

なんだよ、その今更?って目はよ、

 

 

そういう訳でお前らは進学校に行くだろうから、これでお別れだなぁ、まぁ、元気に暮らせよ、じゃあな〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

此処までは良かったんだよ、だけどなぁ、あのやろう、野郎じゃねぇけど、やりやがった勝手に書類を進学校の所に流しやがった!

 

 

両親もどうせだからと言って乗り気になっちまって、結局、進学校に行かされちまった、

 

 

あいつらとイケメン君が入って来てからもう、平穏と言う字がダッシュで逃げて行くのが幻視出来たね。あるときは校内放送を使って呼び着けられたり、

 

あるときは弁当を持って一緒に食べようと教室に突っ込んできたり、

 

またあるときは剣道の相手をしてくれと言って切り掛かってきたり、

 

またまたあるときは2学年合同オリエンテーションで色々な奴の誘いをすべて無視して俺の方に来て組もうと言ってきたり、

 

などなど、むちゃくちゃだったなぁ………(泣)

 

 

……リア充爆発しろとか思ってる奴、実際はそんなにいいもんじゃねぇからな、毎回怒られるのが俺なんだよ、篠ノ之は先生よりも頭が良いから口だしできねぇし

 

 

織斑はクラスのリーダーみたいな奴で普段から優等生だから、たまに……いや、しょっちゅう授業をサボって、屋上でチョップチャプス舐めながら寝てる俺が、唆してると思ってるみたいだな〜……

 

 

家の両親は放任主義の自由人だからなぁ、先生に何言われても、だいたいスルーだな、

 

 

というか、俺が小5の時に単身赴任で両親共にフランスへ仕事に行ったからな。

 

一人暮らしは楽だからなぁ、着いてくるか聞かれたがめんどくせぇと言って、

残った、金は振り込まれてるし、家事も出来るからな。

 

 

のびのびさせて貰ってるな、話が脱線したな、んで、毎回怒られるのが俺なんだよ、それに、だ、

あいつら中身はともかく見た目は美少女な訳よ、

 

 

あぁ?興味ないふりしてちゃっかり見てんじゃねぇかって?

別に俺は枯れてる訳でも、あっちの趣味がある訳でもねぇよ、だから普通に可愛いもんは可愛いと思うし、綺麗なもんは綺麗だって言うぞ?

 

 

で、そんな美少女二人に邪魔な見た目ぱっとしない、男が一緒にいたら……ねぇ。

 

 

ハブられるんだよねぇ、

たまに実力行使しようとしてくる、馬鹿がいるんだよ、それを返り討ちにしたら人数が増える→返り討ち→人数が増える→返り討ちの無限ループの完成だ、

 

 

途中から面倒になって逃走に切り替えたら休み時間はずっとリアル鬼ごっこだ。

 

どうだ、これでも羨ましいか?羨ましいって言うんだったら代わってくれ。

……マジで。

 

 

恋愛感情有りならまだいいんだが、どっちかってーと親友が近いからなぁ、

これからはどうなるかは知らんが今はそんな感じだからな、追われるのが理不尽に感じんだよ。

 

 

だが、そんな生活ともおさらばだ!やっと、平穏に暮らせる(泣)

 

 

〜回想終了〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、誰か分かってくれたか?分かってくれた奴、

ありがとう(滝泣)

 

 

っと、昔を思い出している内に卒業式が終わったな、

 

さて、帰るとしますK「ゆーくん!」「水無月さん。」

 

 

くそぅ、逃げられなかったか、これで逃げたら、今まで隠し通してきた家まで、来そうだな………

 

 

はぁ、しょうがない、

 

 

「おぅ、どうした?天災コンビ、ちょうど今からおまえらを捜そ「逃げようとしたね。」「逃げようとしましたね。」チッ」

 

 

なんで女って奴はこんなに勘がいいんだよ……

 

 

「舌打ちはひどいよ〜束さん傷ついちゃったよぉ〜」

 

「束はともかく、何故、私まで天災なんですか。」

 

 

「ちーちゃんがひどいよぉ〜ゆーくん、慰めて〜」

 

 

「シャラップ、小学生のくせに中学生の高学年と剣道で打ち合って尚且つ、勝つような、奴は天災で十分だ。」

 

 

「無視された!?」

 

 

「いいもん、いいもん、束さんはこの昨日作った花火、【束さんスペシャル】を打ち上げるから。」

 

 

「よいしょ、よいしょ、よし!それじゃあ発しy」

 

 

「「やめんか!ばか(やろう)(もの)」」

 

 

バシッ×2

 

 

バタッ

 

 

「うぅ〜、痛いよ〜(泣)ちーちゃん、ゆーくん」

 

「たりめーだ、痛くしたんだからな」

 

 

「束、卒業式くらい大人しくしておけ」

 

 

「うぅ〜、わかったよぅ、ごめんなさい。」

 

 

よし、これで卒業して1時間足らずで怒られるのは回避できた。

 

 

「んで、なんか用があったんじゃねぇのか?」

 

 

「そうだ!ゆーくん!ゆーくん!ゆーくん!」

 

 

バッシン、

 

 

「うるせぇ、聞こえてるから、静かにしろ。」

 

 

「さ、さっきより痛い〜」(泣)

 

 

「もう一発行くか?」

 

 

「すみません水無月さん、とりあえず説明するので、一旦、束を叩くのを止めてくれませんか?」

 

 

「ちっ、ちーちゃん、私のために?」キラキラ

 

 

「後から好きなだけ、やって下さって、構いませんので」

 

 

「そうか、まぁ話が進まないからな」

 

 

シクシク、

 

 

なんか泣き始めたけど、静かになったからいいか。

そろそろ回りの視線もうざってぇしなぁ。

 

 

「結局、何の用なんだ?」

 

「その…今まで、学校で散々迷惑を掛けていたので、」

 

 

「そのお詫びとお礼をしようと思ってたんですが、」

 

「迷惑の八割は篠ノ之だがな」

 

 

ずーん|||

 

 

なんか、背景に斜線が見えるが、気のせいだろ。

 

 

「別にそんな事気にするなよ、もう諦めたしなぁ〜」

 

「す、すいません…」

 

 

「とりあえず、理由は分かった、んで?何かくれるのか?」

 

 

「あ、はい、私からはこれを」

 

 

 

 

 

………「髪留め用の紐か?」

 

 

「はい、何を渡せばいいのか分からなかったので、」

 

 

「『後ろ髪が欝陶しいけど切りに行くのはめんどくせぇ』、とおっしゃってたのでこれに決めたのですが…」

 

 

「気に入り…ませんでしたか?」

 

 

「んにゃ、ちょうどよかった、流石に肩甲骨辺りまで伸びて来たから、縛るもんがほしかったんだよ、サンキューな。」

 

 

「そうですか……よかった」

 

はにかんで嬉しそうに言って来た。

 

真剣に考えてくれたんだなぁ、織斑には感謝だな、

 

 

「ほら、束、お前も渡すものがあるんだろ」

 

 

「いいよいいよ、どうせ束さんの渡すものなんて、ちーちゃんのに比べたら今(・・)は実用性がないですよ〜」

 

 

何拗ねてんだよ、めんどくせぇな、

……しゃーない、このままじゃあ帰れねぇしテキトーにおだててごまかすか。

 

 

「何だ、篠ノ之、何もくれないのか……残念だなぁ、期待してたのに」

 

 

ピクッ

 

 

おっ、反応してるな、よし、後一押しだ。「篠ノ之・からのプレゼントが欲しかったんだがなぁ」

 

ピクピク!

 

「しょうがないなぁ!ゆーくんは!ゆーくんがそこまで、そ・こ・ま・で言うのなら」

 

「私こと篠ノ之、束さんがゆーくんにプレゼントをあげちゃおう!!」

 

 

イラッ、

……シバき倒してやろうか、この野郎、くぅっ、織斑が必死に抑えてくれと、目で訴えて来てなかったら、本気でやってたな。

 

 

「そうか、で?何をくれるんだ?」

 

 

「ふっふーん、束さんからのプレゼントはこれだよ!」

 

といって、透明なクリスタルが付いている、シンプルなネックレスのようなものだった。

 

へぇ、これはこれは、

 

「「まとも、だな……」」

 

 

「ひどいっ!ちーちゃんもゆーくんも今日は凄く冷たいぃ」

 

だってなぁ普段が普段だし、

 

 

 

 

 

………って、

 

「織斑も何か知らなかったのか?」

 

 

「はい、お互いに決めて渡そうと言っていたので」

 

 

なるほどな、……うーん、これは、

 

 

「爆発したりしねぇよな」ボソッ

 

 

「ゆーくん!流石にそれはひど過ぎるんじゃないかな!」

 

いや、流石にひどいと思うけど、

 

「お前がまともな物を俺に渡したことが無かったからだろうが」

 

リストバンド型発信機や帽子型発信機などなど、

 

 

……発信機ばっかだな、まさかこれもか?

 

「それは発信機じゃないよぉ〜」

 

 

 

 

 

……「発信機ばっか渡してる、自覚は有ったんだな、一時期マジで嫌がらせかと思ってたからな」

 

 

マジで悩んだからな、あれは、

 

「だって、ゆーくん直ぐに逃げるんだもん」

 

 

うるせぇ、あれは自己防衛のための行動だ。

 

 

けど、発信機じゃねぇってことは……

 

「やっぱ爆発物だろ」

 

 

「違うよぉ〜、もう!とにかく!そのクリスタルをいついかなる時も肌身離さず身につけておいてね!」

 

 

えぇ〜、めんどくせぇな、まぁせっかくのプレゼントだからな付けといてや「束さんだと思って肌身離さずねっ!」ろうと思ったが、やめだ。

 

捨てよう。

 

「あぁ!?冗談だから振りかぶって捨てようとしないでぇ!?」

 

と言って腕にへばり付いて来たので捨てられなかった。

 

「次、ふざけたことを言ったらマジで捨てるからな」

 

「うぅ、はい」(泣)

 

よし、釘を刺しておいたから暫く大丈夫だろ。

 

っと、大分時間を食っちまったな、そろそろ帰るか。

「んじゃ、そろそろ帰るわ、プレゼント、サンキューな、二人とも」

 

「いえ」

 

「どーいたしまして!」

 

 

ホント性格はにてねぇのに仲がいいな、さてと帰りますかな。

 

 

二人に背を向けて暫く歩くと篠ノ之が、

「ぜったい外しちゃダメだからねぇ〜」

と念を押して来た、マジで何なんだ?これ?

 

外した時爆発したりしたら怖いから外せないし

 

ちゃんと付けておくか、織斑に貰った紐は早速使って、あぁ、大分楽になったな。感謝感謝。

 

さてと、とりあえず、獲物を狙う目でこっちに走って来てるイケメン君達から逃げますかぁ〜。

 

そういや、イケメン君って名前何なんだ?篠ノ之からも織斑からも聞いた覚えもねぇしなぁ……興味ねぇしどうでもいいか。

 

とりあえず逃げるのが先だ、はぁ、最後までこんなんかよ、俺の平穏はどこに行ったんだ。

 

さっさと帰ってチョップチャブス食べよ。

 

こんなことを考えながら俺は家に向けて、走って行った、篠ノ之から貰ったネックレスが無機質な音声を流したことにも気付かないで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………マスターを認識。これより最適化、並びに(・・・)最良化、適応化、を開始します。



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世間って狭いなぁ……

水無月 悠夜だ、まず読んでくれてありがとう、読んでくれてるところ申し訳ないんだが、

 

タイミングが悪い、今まさに絶賛逃亡中だ。

 

今までの生活の中で平穏という言葉に1番近づくことが出来た中1が終わり、終わってしまい、2年になって三ヶ月程経ったんだが、ね……

 

察しのいい人ならもうわかるだろ、

……誰でも分かる?マンネリなんだよ?

 

 

 

 

 

俺だって、俺だってこんなんもう嫌だわ!何なんだよ、な〜んな〜んでェすかァ〜!?あれか最近は上げて落とすのが流行ってんですか!なんで俺の平穏は最高で一年しかもたねぇんだよ!上げ幅に対して下がり方が尋常じゃねぇぞ!?

なんで同じ中学に入ってくんだよ、隠せてたと思ってたのになんでばれてんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……落ち着け、俺、よく考えたらあの天災である、ウサ耳にかかれば個人情報なんて無いようなもんだしな、……この前なんて、ペンタゴンに暇つぶしで入ってたからな、どんなハッキング能力してんだよ……

 

 

…まぁ、俺も時間をかけて準備したら出来ないこともないが……違うからな、俺は天災じゃねぇぞ。

 

幼稚園、小学校とあの天災に憑き遭わされてる(誤字に非ず)内に出来るようになっただけだ。

 

それでも十分、変態の域だ?……ヤメロ間違えるな、変態は新しい種族なんだ俺はちゃんと人間をしているぞ。

 

それに、あの天災は天才なだけあってかなり教えるのが上手い、残念なことに、なぁ。

 

話が脱線したな、まぁという訳で同じ中学に入って来たんだが、

 

織斑が新入生代表で挨拶した時は舐めていた飴を飲み込んでしまって危うく死ぬところだった、(流石に入学式でチョップチャプスみたいな棒付き飴は無理だった)

そのせいで俺に近づいてくれていた、平穏という字が脱兎の如くどころかチーター並のスピードで逃げて逝くのが見えたなぁ、(泣)

まぁ、それからはほら、ほとんど何時も通りだよ、違うのはあいつらの追っかけがファンクラブやら親衛隊とかにグレードUpしたことだな。

 

 

最近は連携が尋常じゃない位になってるから逃げるのも軽く本気を出さなきゃいけねぇ、……しかもあの新種族である、変態ストーカー君(イケメン君)がなんか噂を流したみたいでな、

 

普段は猫を被ってるから見た目がいいやつにしか見えねぇから、俺みたいな不良(中学になっても度々授業を抜け出していた)の噂は直ぐに広まっていき学校全体から厄介者扱いされた、

 

ちなみに噂はこんな感じだ、いわく、幼稚園の頃からあの二人に付き纏っていた、いわく、家までストーカーして行こうとした、いわく、二人を脅して振り回している、等

 

………これ、最後くらいじゃね?まともなの、というよりも最初の二つはあの変態ストーカー君だろ?自覚あったのか?まぁ、いいや、だいたいこんな感じの噂が流れたな、

 

 

ファンクラブの奴らや親衛隊の奴らは正面から来るからまだましだが、世の中には陰険な奴がいるんだよなぁ〜、

 

 

集団でリンチしようとするやつとか(全員の鼻の骨を砕いて病院送り)

 

上履きがわりのスリッパに生ゴミをぶちまけている奴とか(次の日にごみ箱の中で気絶している、男子生徒が発見された)

 

学校の裏サイトでの誹謗中傷とか(書き込んだ奴らの個人情報や秘密の趣味(ポエムとか中二病的なノート等)がばらまかれてサイトが閉鎖した)

 

酷い虐めだな、全くこんなことをするやつの気が知れないな。ん?仕返しの方が酷いって?………俺の平穏を潰す奴は誰であろうと許さねぇ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…あの天災達はほら、災害だから、人にはどうすることもできねぇんだよ、分かってくれ。

 

くそぅ、あのウサ耳災害と斬鉄災害を止められる奴はいないのか!

 

 

 

 

 

あん?ウサ耳ってなんだ?斬鉄ってなんだ?ってか?

ウサ耳はあれだ、奪われた。

俺が技術家庭で(技術、家庭ではなく両方がくっついたような奴でうちの学校の不思議授業の一つだ。)

作った、カチューシャとメタリックなウサギ耳のハイブリッドな代物だ、

 

動物を題材になんか作れと言われたので片手間に作ったんだが、

 

持って帰る途中に天災達に遭遇してしまった、

その時、こいつってこんなに早く動けたのか?ってくらいの速度で篠ノ之が動いて、消えたと思ったら手の中からウサ耳を奪われていた。

で、奪った張本人の方を見てみると、

 

めちゃくちゃキラキラした目でウサ耳を掲げて見ていた。

 

とりあえず、俺のだから返して貰おうと声を掛けたら、

 

「おい、それ返s「ゆーくん!ちーちゃん!ウサ耳だよ!かわいいよ!ほしいよ!束さんだよ!ちょうだい!ちょうだい!ちょうだい!?」黙れ。」

 

ガシッ、ギリギリ、ミシ、

 

「あぅ〜、う、ウサ耳パワー!」

 

スルッ、

 

うぉっ!アイアンクローから抜け出しやがった、

何だよ、ウサ耳パワーって、しかも途中自己紹介が入ってたし、意味分からん。

はぁ、もういいや、チョップチャプス食べて帰ろう、

「すみません、水無月さん」

 

カサッ、パクッ、カリコリ、「あぁ、もういいよ、いい加減慣れた、というより諦めてるから、」

 

「……そうでしたね、いつものことになってますから」

 

「まぁ、あれだ、欲しいんならやるよ、課題だったからテキトーに作っただけだしな」

 

「課題?何n「ホント!?後で返してって言っても返さないよ!?」言葉をかぶせるな!」

 

バシッ、

 

「い、いたい〜、けど大丈夫だもん!今の束さんにはウサ耳パワーがあるから!?」

 

あれはしばらくほぉって置こう、相手にするのがめんどくせぇ、

 

「何の課題か?だったな、……ほら、あれだよ、うちの不思議授業の一つ、技術家庭」

 

「……あれですか、なら納得出来ますね、私たちは自分で作ったフライパンで料理をさせられましたから」

 

「…相変わらず意味分からんなぁ、料理の方は何作ったんだ?」

 

「……ほら、束、そろそろ帰るぞ」

 

クルッ、スタスタ、ガシッ

「ちょっと待て、いきなり話をぶった切って帰ろうとするな」

 

「放して下さい、道場に間に合わなくなります」

 

「そりゃ悪かったな、けどんな露骨に話題を変えられたら気になるだろうよ」

 

「何でもありm「ちーちゃんは料理、失敗しちゃったから話したくないんだよ〜」たばねぇぇぇぇーーー!!」

 

「わわっ!そんなに怒らないでよぉ〜」(泣)

 

「だまれ!今日という今日は許さん!」

 

「ゆーくんたすけて〜」

 

「おいっ!こっちにくるな!俺は関係ねぇだろ!」

 

「怒ったちーちゃんを抑えられるのは、ゆーくんだけだよ!」

 

「知るか!ウサ耳パワーとかで何とかするか、大人しく潰されてこいっ!」

 

「ムリだよ!イヤだよ!ウサ耳パワーだけじゃ死んじゃうよぉ!ちーちゃん、真剣出してるしホントに切られちゃう〜」(泣)

 

「はぁっ!何で真剣なんて持ってんだよ!」

 

「うちの道場で修理に出してたのを受け取った帰りだからだよ!」

 

「冷静に説明してんじゃねぇ!クッソ、死ぬマジで死ぬ!」

 

何かないか、盾になるものは!

っこれだ!

 

「フライパン、借りるぞ!」

 

このウサ耳バカのことだただのフライパンじゃねぇだろ、いけるかっ?

 

「ハァッ!」

 

クッ、もってくれよ!フライパン!

 

キィン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………防げた…か?

 

ピッ、スー、ゴトン、ガラガラガラ、

 

 

……嘘だろ?フライパンって言っても、鉱物の塊だぜ?普通切れねぇだろ?

 

「ちーちゃんすごーい!」

凄いどころの話じゃねぇだろ、マジで死ぬところだった。

その後、何とか織斑を説得して帰らせた、……今までで1番本気になって説得した。

 

そういう経緯があって、あいつらをそれぞれ、ウサ耳災害、斬鉄災害と呼んでいる、

篠ノ之はウサ耳が余程気に入ったのか普段から付けている

 

……そのせいで鬼ごっこが更に過激になった。

 

織斑にも何かお返しをしなきゃなぁ、篠ノ之はあれでいいだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

っと、色々と考えてるうちに逃げ切れたな、ふぅ〜、今日はまた一段としつこかったなぁ、

 

………ここ、何処だよ。

 

テキトーに歩いときゃ分かるか、疲れたときのチョップチャプス〜、

 

カサッ、パクッ、カリコリ

スタスタ、

 

はぁ〜久々にゆっくりした時間だなぁ〜、こんな気持ちいい日にはなんかいいことが「おいっ、男女がいたぞ〜」……あるわきゃねぇよなぁ〜、

 

はぁ、出来るならスルーしたいが、ダメだよねぇ〜

 

とりあえず行ってみるかぁ、あっちの方だったかな?

スタスタ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれか、何だ?真ん中にいる女の子が虐められてるのか?よくやるねぇ〜、男が五人がかりかよ、親はどんな教育してんのかねぇ〜、

 

「おい男女、こんなところで何してんだよ」

 

「………」

 

おぉ〜、いっそ清々しいくらいの無視だなぁ、

 

「何か言えよ!」

 

「調子に乗ってんなよ!」

 

「そうだそうだ!」

 

……うーん、止めるのは簡単だけど最近は親がうぜぇ場合が多いからなぁ〜、ケータイで録画しとくか、後々使えんだろ。ジーっと、よし、この辺でならよく録れんだろ。

 

「おい、男女がリボンなんか持ってるぞ」

 

「あはは、似合わねぇ!」

 

「気持ちわりぃ〜!」

 

「………」

 

マジで、性格わりぃな。最近のガキはどうなってんだか。

それに比べてあの子はしっかりしてるな、全部無視してる。

 

「聞いてんのかよ!」

 

ドンッ、ズシャ

 

うわ〜、イラついたからって、手ぇだしたぞ、急に押されたからこけちまったな

 

「変人の妹はやっぱり変人だな!」

 

「ホントホント!」

 

「変人、変人!」

 

「…っ、お姉ちゃんは変人なんかじゃない!優しいお姉ちゃんだもん!」

 

「…っな、何だよ!急に怒りやがって、おい皆、やっちゃおうぜ」

 

「やっちゃおう、やっちゃおう」

 

 

 

……そろそろ止めるか。めんどくさいけどな。

 

 

「オイ、クソガキども。もうお前らとっとと帰れ」

 

「な、何だよ!お前には関係ないだろ!どっか行けよ!」

 

「そ、そうだ!どっか行け!」

 

 

……年上に対して敬語もなしね。

 

「さっさと帰れ!!」

 

「う、うわ〜」

 

「逃げろー」

……やっぱガキだな。ちょっと怒鳴っただけですぐ逃げる。それはさておき、今はこの子だな。

 

「大丈夫?じゃねぇな、あ〜あ〜せっかく綺麗な髪してるのに砂がついちまってる。」

 

「た、助けてくれてありがとうございます」

 

「ん、気にすんな、俺が勝手にやっただけだからな」さてと、とりあえず髪の毛の砂をとって、っと

 

「偉かったな、ちゃんと我慢して」

 

「でも、大きい声を出して怒っちゃった」

 

と言って俯いてしまった、ホントに優しい子だなぁ〜

「いいんだよ、お姉ちゃんのために怒ったんだろ?優しいな、きっとお姉ちゃんも優しくていい人なんだな」

 

と微笑みながら言うとすごい嬉しそうに

 

「うん!お姉ちゃんはとっても優しいんだよ!このリボンもお姉ちゃんがくれたんだ!」

 

と言ってきた。よっぽどお姉ちゃんが好きなんだな、

「そうか、どうする?そのリボン俺がつけようか?慣れてるからすぐにできるぞ」

 

「えと、お願いします」

 

「よし、任せな、礼儀正しい子だからこれをあげよう」

 

と言って、ポケットからチョップチャプスを出して渡す。

 

「ありがとう」

 

笑いながらお礼を言ってきた。

 

ヒョイ、ヒョイっと

 

「できたぞ」

 

「……はやい」

 

ちょっと驚いてるな、自分の髪を括るのを考えたら簡単だしなぁ〜

 

「それ、食べていいぞ」

 

と声をかけてやると直ぐに食べ始めた、

 

「おいしい」

 

うんうん、チョップチャプスはやっぱり最高だな!

 

さて、この子はとりあえず大丈夫だから次だな。

「お〜い、そこにいる坊主そろそろ出てきたらどうだ?」

 

「えっ?」

 

てくてく、

 

出てきたな、まぁ、わりと最初からいたしな、この女の子は気付いてなかった見たいだが、

 

俺が行かなかったら多分この男の子が行ってただろ、実際に行こうとしてたしな。

 

「あっ、」

 

「ん?知り合いか?」

 

「うん、家が近くなんです」

 

へぇ〜そうなんだ。

 

「箒!」

 

「な、なに?」

 

「ごめん!」

 

「えっ?えっ?」

 

おぉう、凄まじくテンパってるなぁ、急に謝られたらそりゃテンパるよな。

 

「俺、最初から見てたのに直ぐに助けに行けなかった、だからごめん!」

 

「ううん、助けようとしてくれたんでしょう?ありがとう」

 

男の子に対して箒?ちゃんは笑顔でお礼を言っていた、ホント、いい子だなぁ〜

「お、おう///」

 

照れてるなぁ、まぁ、同い年くらいの子に笑顔でお礼を言われたら照れてるか、

 

「あっ、後、あいつらの言うことなんて気にすんなよ!」

 

 

「リボンなんか似合わないって言ってたけどそんなことねぇよ!似合ってるぞ」

 

おぉう、すげぇな、恥ずかしげもなくあんなセリフを言えるなんて将来有望だ、顔立ちも整ってるし、

きっとモテるだろう。

 

クイクイッ、

 

ん?なんだ?

 

「どしたよ?なんかあったか?」

 

リボンの結び方が気に入らなかったかな?綺麗なストレートの髪だからポニーテールにしたんだが……

 

「あの、似合ってますか?」

 

あぁ、男の子の言ってることだけじゃ不安なのか?

 

「あぁ、似合ってる似合ってる、可愛いよ。」

 

と言うと顔を赤くして「ありがとう」と言ってきた、照れてるんだな、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オイ、今ロリコンって言った奴後でちょっとこいや、ボコボコにしてやるから、

 

あの場面で似合わないなんていわねぇよ、どんだけ空気読めねぇ奴だよ、

 

前にも言ったが俺は可愛いもんは可愛いと思うし綺麗なもんは綺麗だって言うからな、

なんか考えてる内にあの二人はお互いを名前で呼び合うことにしたらしい、

 

仲が良いのはいいことだな、女の子の方は箒、男の子の方は一夏と言うらしい、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……どこかで聞いたことがあるような、ないような?………まぁ覚えてないってことは、たいしたことじゃないのか忘れたいことかのどっちかだからなぁ〜

 

多分前者だろ、きっとそうだ、

 

さてと、

 

「んじゃ、もう遅いからな送って行ってやるよ」

 

「えっ?いいですよ、そこまでしてもらったら悪いですし…」

 

つってもねぇ、

 

「その足じゃ歩くのつらいだろ?」

 

結構血がでてるしな、押されてこけた時に擦りむいたんだろ。

 

「うぅ〜」

 

「ほら、おんぶしてやるから早く乗りな」

 

「すみません、」

 

「こういう時は謝るんじゃなくてお礼を言いなさい」

「あ、ありがとう」///

 

ふむ、素直で宜しい。

 

「一夏だったか?おまえも来いよ、ついでに送って行ってやる」

 

「ありがとう!」

 

「よしよし、素直な子にはチョップチャプスをあげよう。」

 

「やった!俺、ソーダ味がいい!」

「ほら、どーぞ」

 

チョップチャプスを渡すと直ぐに食べ始めた、元気があって宜しい。

 

「よいしょっと、軽いなぁ〜、家はどっちだ?」

 

「「あっち(です)(だよ)」」

 

 

「分かった、んじゃ、一夏君、手を繋いでいくぞ、逸れたらめんどくせぇし、」

 

「分かった!」

 

よし、それじゃ行くとしますかね。

 

「そういや、箒ちゃんにお姉さんがいるのは聞いたけど、一夏君にも兄弟はいるのか?」

 

「いるよ!姉ちゃんはすっげえ強いんだ!」

 

ふむ、強いってことは何かしらやってるのか?

 

「二人ともどんなお姉さんなんだ?」

 

「優しくて、最近ウサギの耳をつけ始めたおもしろいお姉ちゃんだよ」

 

「強くて、刀で鉄も切れるカッコイイ姉ちゃんだ」

 

 

そうかそうか、ウサ耳を付けたお姉さんと斬鉄ができるお姉さん達か………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………ん?



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俺の日常が……

さて、もうこの子らの家が見えてるんだが……

 

 

待ち構えてるな、天災達が、

 

 

……よし!逃げよう。

幸いあいつらはこっちに気付いてねぇからな、

 

 

今ならまだなんとk「「姉ちゃん!(お姉ちゃん!)」」

 

 

……orz間に合わなかった、ちくせう、しょうがない気が進まないが、逝くかぁ、

 

 

「箒ちゃ〜ん!心配したよ〜、何処行ってたのぉ〜」

半泣きで篠ノ之がそう言い、

 

「何処に行ってたんだ一夏!心配させるんじゃない!」

 

と織斑が怒りつつも安堵した表情を見せて、

 

「「ごめんなさい」」

 

とちびっ子二人が謝っていた、

 

 

いやぁ〜、よかったよかった、じゃあ、俺は帰らして貰うか。

 

 

スタスタ、ガシッ×4

 

 

「「「「どこに行く(の)(んですか)」」」」

 

 

………くそぅ、もう少しだったのに、いや、まだいける!

 

「いや、もう遅いし帰って飯の準備しなきゃいけないんだよ、一人暮しだしな」

 

これなら帰れるだろう!

 

「なら今日は、家に泊まっていくといいよ!!」

 

 

 

……はぁ?何言ってんだよんなもん、嫌に決まってんだろ?

 

 

とうとうウサ耳に脳みそまで侵食されたか?

 

 

「本当?お兄ちゃん、泊まって行くの?」

 

「兄ちゃんが泊まるなら俺も泊まりたい!」

 

 

オイオイ、ちょっとまてやなんだこの流れは?このままだとまずいな、どうにかして逃げねぇとマジで泊まることになっちまう。

 

 

「ほら、急に押しかけたら親御さんに迷惑だろ?」

 

 

「今日はあの人達いないからモーマンタイだよ!」

 

 

……タイミングが悪すぎるだろ、いつか絶対に神をぶちのめす!

 

 

「……そうですね、せっかくなので泊まって行ってはどうですか?」

 

 

なっ、最後の砦の織斑まで裏切りやがった!

 

 

「それじゃあ、けって〜!!」

 

「「やったー!」」

 

 

クッ、もう無理だ、今更嫌だなんて言ったらマジで空気が読めないやつだ。

 

 

「オイ、どういうつもりだ?」ボソボソ

 

 

「箒が怪我をしてるのと一夏を連れて来た理由を聞かないとダメでしょう?」

ボソボソ

 

 

「事と次第によっては束が無茶苦茶してしまうので、なるべく早く話を聞きたかったんですよ。」ボソボソ

 

 

 

 

……チッ、利にかなってやがる、それなら説明だけさっさとして帰るか。

 

 

「それに、」

 

 

あん?

 

 

「普段、私達から逃げる水無月さんへの意趣返しにもなるでしょう?」

 

 

そう言って織斑は楽しそう笑って篠ノ之達のところに歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ふ、

 

「ふざけんじゃねぇ〜!!

 

その場で叫んだ俺は悪くないと思う、篠ノ之だけでも性質が悪いってのに織斑までこんなことしてきたら手に負えねぇよ!

 

 

はぁ、もはや振り回されるのが日常になってきてる、……多くは望みませんので俺に平穏を下さい。

 

 

何?お前に平穏なんか来ねぇよ?

 

 

………ダメだ、幻聴まで聞こえてきやがる、はぁ〜あ、諦めて逝くか。

 

字がおかしいが……もういいや疲れた。

 

 

とぼとぼ、

 

 

〜悠夜移動中〜

 

 

で、篠ノ之の家に着いたので……着いてしまったので、とりあえず、飯をどうするか聞いたんだが、

 

 

「束さんにまかせなさい!私が腕によりをかけてご馳走を創っちゃうよ!!」

 

とか言ってきた、……普通に作れよ、何を創るんだよ、恐怖しか湧いてこねぇよ。

 

 

「わたしも手伝う!」

 

「俺も!」おぉ、いい子達だなぁ、箒ちゃんはホントにあれの妹なのかわからないくらいいい子だなぁ、……あぁなるほど、姉があれだから妹がしっかり者になったのか、世の中バランスが取れてるねぇ〜

 

 

……俺の平穏以外だがな!

 

それよりもだ

 

 

「お前って料理出来たのか?以外過ぎるぞ」

 

 

「ぶぅ〜、ゆーくんひどーい!私だって料理できるよ〜それに篠ノ之家の女は料理上手なんだよ!」

 

 

なんだよ、料理上手な家系なんかあるのか?

もう金は払うから出前じゃダメなのか?

 

 

「それにいっくんも器用だからねっ!きっとおいしいご飯ができるよ!あっ、でもちーちゃんは料理できな」ガシッ、ギリギリギリ

 

「あっ、頭がわれる〜ちーちゃん放して〜」(泣)

 

ジタバタ、ジタバタ

 

「お前はいつも一言多いんだ!」

 

さて、あれは放って置いて案内してくれ、ん?お姉ちゃんが死んじゃうって?

 

大丈夫大丈夫、いつもあんな感じだからな、気にしちゃダメだ、

 

なに?腕がプラーンとなってて何か白いのが口から出てる?あれだ、マジックの練習してんだよ、ほらさっさと行くぞ。

 

 

顔が青ざめてる二人を連れて家の中を案内してもらった、………後ろから何かが潰れる音とウサ耳の悲鳴が聞こえてきたが関係のない事だ。はぁ〜、結局、きちまったよ、なんか蟻地獄に引き込まれたか、魔王の魔窟に放り込まれた気分だなぁ。

 

 

「どうぞ、」

 

コトッ、

 

 

ん、緑茶か、個人的には珈琲が好きなんだが文句は言えねぇな。

 

「サンキュ、」

 

ズズッ、

 

はぁ、落ち着くなぁ、たまには緑茶もありだな。

 

 

「すみません、珈琲を出せたらよかったのですが、あいにく切らしてまして」

 

 

そうだったのか、ならしょーがないか

 

 

 

 

 

……ん?

 

 

「俺、珈琲が好きだって、言ったことあったっけか?」

 

 

んなこと言った覚えないんだが……?

 

 

「……遠い目をして珈琲を飲む園児なんて水無月さんくらいでしたので」

 

 

 

 

 

 

……そんなインパクトの強過ぎる光景を見たらそら忘れられないわな、

 

 

で、だ

 

 

「織斑は手伝いに行かないのか?台所に出入り禁止を喰らった俺からしたら話し相手が居てくれてありがたいっちゃ、ありがたいんだが、」

 

 

 

 

別に俺が凄まじく不器用って訳じゃなくて、手伝おうとしたら、篠ノ之に

「ゆーくんはきちゃだめだよ!」と言われてしまったので、こうして居間で緑茶を啜ってるんだよ。

 

 

……なんか俯いちまったな

 

「………き…ない……」

 

 

あん?

 

 

「……出来ないんです、料理」

 

 

はっ?

 

 

「出来ないって、手伝いすらダメなのか?」

 

 

「……はい」

 

 

おぉう、マジかよ、篠ノ之が何回か言ってたのは知ってたけど、手伝いが出来ないレベルだったとは

 

 

ここまで、暗い織斑は初めて見たなぁ、

 

 

ん〜、

 

 

「また今度教えてやろうか?」卒業した時にプレゼント貰ってお返ししてねぇから、その程度なら軽いもんだ、

 

「いいんですか!」

 

 

うぉっ!……普段の織斑からは考えられないテンションだな、

 

 

「あぁ、それくらいならな」

 

 

「ありがとうございます、……これで束に馬鹿にされないで済む」

 

……あぁ〜なるほど、織斑らしからぬテンションの理由はあのウサ耳か、

 

 

基本、万能型天災の織斑は弱点が極端に少ないからなぁ、自分が出来るから調子にのって弄り倒したんだろ、

 

 

……その後にあるアイアンクローのことを忘れて。

 

 

まぁ、織斑の表情を崩せる奴はあいつと変態ストーカー君とか極少数だからなぁ

 

変態の方は表情を歪ませるって言った方が正しいけどな、基本的に人あたりのいい織斑が唯一露骨に嫌がる相手だからな、

 

 

 

……マジで何したのか気になるな、地雷っぽいから聞かないけどな、

 

 

「ち〜ちゃ〜ん!ゆ〜く〜ん!できたよ〜!束さんの愛がこもっ」スパパン、

 

「「うるさい!」」

 

 

「うぅ、呼びにきただけなのにぃ〜」(泣)

 

 

はぁ、疲れる

 

 

「おら、早くいくぞ、俺はもう疲れた」

 

 

「そうですね、行きましょうか」

 

 

「まって〜!」

 

 

 

うるせぇ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ!ゆーくん!召し上がれ!」

 

 

……いや、旨そう何だけどよ

 

 

「何で、こんなに統一性がないんだよ、」

 

 

マジで和洋中揃い踏みだし、

 

 

「気にしない、気にしない、早く食べて!食べて!」

 

わかったよ、

 

 

ヒョイ、パクッ、

 

 

「…………すっげぇ釈だが、味はいいな」

 

 

凄まじく釈だがな、

 

 

「褒められてるのに嬉しくないよ〜」(泣)

 

 

本当のことを言っただけだ、文句を言われる筋合いはねぇ、

 

 

「あ、あの」

 

 

ん?

 

 

「どうしたよ?箒ちゃん?」

 

「えっと、これ、」

 

そう言って形が不揃いで少し焦げているから揚げを出してきた、

 

 

ふむ、ヒョイ、パクッ

 

 

かなり心配そうにこちらを見てきたので、笑いかけながら

 

 

「美味しいよ」

 

 

と言った、

 

 

そしたら笑顔で喜んでいた、かわいらしいもんだな、

 

「束さんの時と反応が全然ちがうぅ〜!」

 

 

当たり前だ、おまえと一緒にしたら失礼だろうが、

 

 

そんなことをしながら料理を平らげていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさま、味はよかったよ、味は」

 

 

「ぶぅ〜、ゆーくん素直じゃない!」

 

 

うっせ、

 

 

「料理も食べ終わったことですし、何故、箒と一夏と一緒に帰ってきたのか説明して貰えますか?」

 

 

……ごまかしてもしゃーないしそのまんま喋るか。

 

 

「りょ〜かい」

 

 

俺はその時のことをそのまま喋った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと行ってくるよ。」

 

スタスタ、ガシッ×2

 

 

「放して!箒ちゃんを虐めた奴らを社会的に抹殺出来ない!」

 

 

やめろ、そいつらだけの被害じゃ収まらんだろうが!

 

「現場はこれに入ってるから、んなことするな!」

 

 

と言って俺がケータイをだすと織斑と篠ノ之の動きが止まった、

 

 

……なんか嫌な予感がするなぁ、

 

 

「水無月さん」

 

 

「何だよ?」

 

 

「その携帯は何時から持っていたんですか?」

 

 

織斑が静かにそう問い掛けてきた、

 

 

「中1からだが?それがどうかしたか?」

 

「この前、私と束が携帯を持っているか聞いた時にはたしか持っていないと言ってらしたはずですが?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」ダラダラ

 

 

 

まずい、完全に忘れてた、

 

「ゆーくん……」

 

 

「水無月さん……」

 

 

駄目だ、詰んだわこれ、

 

 

「「アドレスを教えて(下さい)」」

 

 

「……ハイ」

 

 

ちきしょう、せめてプライベートでは静かに暮らしたかった………

 

 

「ちょっと待て、何俺のケータイにそのままの名前で登録しようとしてんだよ」

 

何言ってるんだコイツって顔してるな

 

 

「そんなことして誰かにケータイ見られたら俺がめんどくせぇことになんだよ」

 

 

「だからテキトーに名前を変えて登録しとけ、電話とかもそれで対応するから」

 

 

微妙な顔してるな、そりゃそうか、自分の名前を変えろって言われたらそうなるわな、

 

 

しばらく天災達は話しあってたみたいだが、急に篠ノ之がこっちに来て

 

 

「ゆーくんがつけて!」

 

 

とか言ってきやがった、

 

 

「理由は?」

 

 

「言い出したのはゆーくんだよね?」

 

 

チッ、珍しく正論言ってきやがる、めんどくせぇからテキトーでいいか

 

 

「テキ「適当に決めちゃダメだよ!」チッ」

 

 

くそぅ、読まれてたか、ん〜、これでいいか

 

 

「じゃ、雪と桜で」

 

 

割とましだろ?

 

 

「由来は?」

 

 

「千冬→冬→雪と束→たばね→ばね→スプリング→春→桜だ」

 

 

「「安直(だね)(ですね)」」

 

 

うっせぇ、自分でもそう思うよ……

 

 

「異論は認めん、決定だ。」

 

 

それなりに満足そうだからいいだろ。

 

 

「これから毎日電話「したら着信拒否するからな」うぅ、ゆーくんのいじわる〜」(泣)

 

 

当たり前だ、そう簡単に俺の平穏は潰させねぇ、

 

 

「いいなぁ姉ちゃん、コードネームみたいでカッコイイ!」

 

 

なんだ?

 

 

「一夏君も欲しいのか?」

 

「うん!」

「そうか、箒ちゃんもか?」

 

「できるなら欲しいです」

 

そんなにいいもんかねぇ?

 

「海(かい)と紅葉(もみじ)でどうだ?」

 

 

「一夏→夏→海と箒→落ち葉→秋→紅葉って少し苦しいけどな」

 

 

「「ありがとう!」」

 

 

まぁ喜んでるからいいかぁ

 

「そういえば、兄ちゃんの名前って何て言うの?」

 

 

言ってなかったか?

……言ってなかったな、

 

 

「水無月 悠夜だ、呼び方はなんでもいいぞ〜」

 

 

「じゃあ悠兄ちゃんで!」

 

「悠兄さん?」

 

 

「あぁ、よろしくな」

 

 

元気だねぇ〜

 

 

「じゃあ、説明もしたしそろそろ帰るわ。」

 

 

「えぇ〜!泊まっていかないの!」

 

 

「あほ、明日学校があるだろが、俺にも準備があるんだよ」

 

 

不満そうにすんな、飯は食っただろうが、

 

 

あぁ〜また来るから文句言わないでくれよ、ちびっ子達、約束するから、な

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そこのウサ耳がいない時にでも来るわ、

 

 

うるせぇ黙れ、俺はもう帰る、

 

 

じゃーな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、篠ノ之の妹を虐めた奴らの親が顔を真っ青にして謝ってる姿があった。

 



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おいおい、ふざけんなよ……平穏はどこいった?

中3になりました〜、

 

いや〜今まで色々あったね、夏には外に散歩に行ったら天災達に拉致られて気がついたら海に居て

「海」と「紅葉」達を交えて遊んだり(天災達をナンパしようとして返り討ちにされて海にクラゲも斯くやって位屍が浮いていた)

 

夏祭りでは、一人で来た筈なのにいつの間にか回りに四人が居て連れ回された揚句ナンパ目的の奴らに絡まれたり、(花火を背景にリアル犬神家をして猥褻物陳列罪で若者が多数検挙された)

 

 

秋には紅葉狩りに(箒じゃなくて)連れて行かれてナンパして来た奴を天災達に押し付けたり(その近辺で叫び声が聞こえて来て見に行くと朱く染まった銀杏が発見されたらしい)

 

冬には蒲倉を作ってのんびりしてたらいつの間にか蒲倉が要塞になっていたり、

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に、色々あったなぁ…天災達の被害者が多すぎる気がするが……

 

…おまえの方が酷いって?あれだよ、機嫌が悪かったんだよ、のんびりできる筈の長期休暇で俺の平穏が潰されたから加減出来なかったんだよ、

 

 

 

 

 

 

 

さてと、突然で悪いが俺はもう駄目だ、今まで何度も何度ももう駄目だと思ったが全て切り抜けてきた俺だが、今回はどうしようもねぇ、無理だ。

 

 

何の話だ?またあの二人か?

 

残念ながら違うんだよ、あいつらならまだ、よか……よくはねぇな、だが最近では対応にも慣れて来たからまだ何とかなったかもしれねぇ、

 

けど、今回は物理的に無理なんだよ、

 

 

 

……聞いてくれるか?実はな、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本(ここ)に向かって約2000発のミサイルが飛んできてるんだよねぇ〜

 

 

 

……な、無理だろ?なんか世界中から飛んで来てるらしいぜ?ハッキング喰らってて制御不能なんだと、神はとうとう俺を殺しに来たらしい、なぁ神よ、俺が何したよ、ただ人並みの平穏を少し満喫しただけだよ?最近なんか天災達があんまり絡んで来ないからすっげぇのんびり出来てたのに……

 

 

……俺も頑張ったよ?死にたくないからハッキングを喰らったミサイルをハッキング仕返して400発近く落としたんだぜ?

 

 

普段使わないウサ耳のせいで憑いたハッキング技術使って頑張ったよ?相手が凄すぎてすぐに潰されたけどな、

 

 

テレビでもこの話で持ち切りだしな、

 

 

……ん?なんかテレビが騒がしくなってるな、どうしたんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……はっ?

 

 

ミサイルが単身で撃破された?

 

 

何言ってんだ?頭でも沸いたのか?アナウンサー?単身ってなんだよ、単機なら分かるけど、いや、意味が通るってだけで出来る訳ないんだが、

 

 

 

なんだ?あれは?人型の機械、か?……違うな画質が悪くてよくわからんが、あれは人がパワードスーツを着てるって感じだな。

 

 

 

おいおい、ミサイルの次は軍隊かよ……あのパワードスーツを着た奴とパワードスーツの捕獲か破壊が目的か、確かにあんな今の技術を逸脱したもんを野放しにはできねぇしな、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ははっ、マジかよ、全滅したぜ?あんなもんがあと十機あったら世界征服出来るだろ、どうなってるのかねぇこの世界は、

 

 

前世とは完全に違うよなぁ

 

こんなんマンガくらいだろ、

 

 

 

 

 

おっ、あのパワードスーツ……めんどいから機械でいいや、機械が降りてきたな、燃料切れか?

 

 

おぉ、あんな感じなのか、あの機械、ってなんか突っ込んで行ったな、

 

知り合い……じゃなきゃあんなもん見せられた後に近づこうと思わんわな、

 

 

抱き着いてるし、あっ、顔がアップになったな、どれどれ、どんな奴なのかねぇ?

ウサ耳美少女にクール美少女か、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うん、織斑と篠ノ之だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハァァ〜〜〜〜!?!?

 

 

あのミサイルハッキング事件から一週間が経った、織斑と篠ノ之はその間政府への対応やら学会への理論の発表等、色々やってたみたいだ、

 

 

この一週間、学校はあの二人の話で持ち切りだった、……いい意味じゃねぇがな

 

さてと、めんどい授業は自主休業としますかね〜屋上でチョップチャプスでも食べながら寝ますかねぇ。

 

 

悠夜SideOut

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side千冬

 

束が開発していた、ISの性能実験と各国に送ったが誰も信じようとしなかった理論の証明の為に私は日本に飛んで来るミサイルを撃墜した、

 

 

束は手伝わなくてもいいと言っていたが、私はあいつ一人ならまた無茶をすると思い協力した。

 

 

 

……親友の為に何かしてやりたかったのもあるが、

 

 

水無月さんには伝えなかった。

 

 

あの人なら絶対に止めようとするからと私と束だけで行動した、

 

 

ミサイルの数が本来飛んでくる筈の量よりも少なかったのはあの人が原因だと、後から束に聞いた。……あの人は人のことを天災だ何だと言って来るが私からしたらあの人の方が天才だと思う。

 

 

一時的とはいえ束のパソコンにハッキングをしてミサイルの制御を奪い取ったのだ、普通は…いや、この時の為に準備してきた束に対してハッキングを成功させたのはあの人だけだった、様々な国のハッカーが挑み全て潰されたのに…だ。

 

 

 

それだけじゃなくあの人は私とも互角かそれ以上に打ち合うことができるのだ、

 

 

過信する訳ではないが私は同年代はおろか大人を相手にしても勝てる、だがあの人はめんどくさそうにしながらも私に勝ってしまう、

 

束に追随する頭脳に私と互角かそれ以上の戦闘センス、そんな人が天才でなくて何だと言うのだ、

 

 

……あの人は嫌そうに否定するがな。

 

私と束が……言い方は悪いがあの人に付き纏うのはそういった理由もある、私達は他の人達から逸脱している、束はその頭脳で私はこの身体能力で…だ、

 

 

 

私達は他人から好奇や奇異、嫌悪の視線に何時も晒されてきた、自分でも分かっていたが実際にそんな視線に晒されていたらやはり、辛かった、今では慣れてきたが当時幼かった私には耐えられないものだった、

 

 

だがあの人のおかげで私は救われたんだ、

 

 

人の輪の中に入ることを恐れていた私の背中を押してくれた、めんどくさそうにしながら嫌そうにしながらも本当に困った時は手助けしてくれた、

 

 

好奇でも嫌悪でもなくただ普通に、自然体で接してくれた、たった一人の人だった。

 

 

束もあの人の前では本当に嬉しそうにしている、

……うるさくなりすぎてよく叩かれているが、

 

束が作り出した現行のどの機械よりも優れたIS(インフィニット・ストラトス)これは宇宙空間での活用を主としたモノだ、その性能実験から一週間、私は久しぶりに学校に来ていた、

 

束はまだやることがあるからと言って来ていない、

 

 

水無月さんにはこの一週間、会うことはおろか連絡すらしていない。

 

 

……我ながら女々しいモノだと思うが、それでも……怖いんだ、ISの説明をするために色々な人に会った、

 

 

その誰もが私と束をバケモノを見るような目で見てきた、分かってはいたが、

やはり、辛かった、それでも説明を続けていて思った、

 

 

水無月さんもこんな目で私を……私達を見てくるのかと、そんなことはないと束は言っていたし私もそう思うが、もし、そういう態度を取られてしまったら、と考えると連絡が取れなかった。

 

そして一週間が経ち各国への説明が一段落して家に帰ってきた、一夏に心配をかけてしまったなと謝り、心配をこれ以上かけないように、と学校にきたが……

 

 

やはり、私に向けられる目は忌避、嫌悪、軽蔑、など負の感情ばかりだった、

 

 

今まで私を慕ってくれていた友人も後輩も先生ですらバケモノを見る目で見てきて、腫れ物を扱うかのように接してきた。

 

 

露骨に下心を出して擦り寄って来るものもいた、

 

 

そんな空間に耐えられなくなって授業を保健室に行くと言って抜け出し、気分を変える為に屋上に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには、今1番会いたくて、会いたくなかった人がいた、

 

 

その人は屋上の扉が開いたことに気が付いたのか、起き上がってこちらに振り向いた、

 

 

私はその振り向くまでの短い時間が永遠にも感じた、忌避されたり嫌悪の目で見られたらどうすればいい、と様々な考えが頭の中を駆け巡った。

 

 

振り向いてこちらを見る目は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……いつもと変わらないめんどくさそうな目で。

 

 

「ん〜?織斑か、一週間ぶり〜」

 

 

と水無月さんはいつもと変わらない態度で声をかけてくれた、

 

 

「なんで……ですか、」

 

 

私はいつもと変わらない水無月さんに嬉しさよりも先に疑問が湧き、気が付いたら質問していた、

 

 

「あん?何がだよ?篠ノ之だけじゃなくて織斑まで主語無しの会話すんのかよ」

 

「なんで、水無月さんはいつもと変わらないんですか、」

 

 

「はぁ?何だそりゃ?俺になんか奇行でもしろってのか?」

 

 

「ふざけないで下さい!」

 

「えぇ〜、なんで俺怒られてるの?」

 

 

「見てたでしょう!私がミサイルを軍隊を相手に戦って無傷で勝っていたのを!」

 

 

「怖くないんですか!私は……一人で何人もの人間を簡単に殺せるんですよ!」

 

「なのに…なんで、そんなに変わらないんですか…」

 

自分で言っている内に泣きそうになってきた、けれどこれだけは聞いておきたかった、

 

 

水無月さんは少し私の声に驚いていたがいつも道理にだるそうに言ってきた、

 

「いや、知ってるけど……それがなんか俺のお前に対する態度を変えるのに関係あるのか?」

 

 

「えっ?」

 

 

「いや、だって何人も殺せるってだけでお前は誰も殺してないし、俺を殺そうともしてないじゃん」

 

 

「それに今更?って感じだし、いつもより規模がでかいだけのことだしなぁ」

 

 

「あぁ、でも」

 

 

ゴツン!

 

 

「〜〜っ、」

 

 

「わざわざ俺にめんどくさいことをさせた罰だ、これで勘弁してやる」

 

 

そう言って水無月さんは少しすっきりした顔でこっちを見てきた、げんこつは痛かったが嬉しかった、何時もと変わらないこの人が見れて、

 

 

安心したらまた泣きそうになってきた、だから私は、帰ろうとしている、水無月さんの背中にしがみついて、

 

 

「あん?何だy「少しだけ、少しだけ背中を貸して下さい」……りょーかい」

 

 

泣いた、それまで溜め込んでいたものを全て吐き出すかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして泣き止んだ私は、かなり恥ずかしかった、まさかあんなに泣くとは自分でも思わなかった、

今度は違う意味で水無月さんの顔が見れなかった、

 

 

水無月さんはこちらを見ずに、

 

 

「辛いときは人に頼った方が溜め込むよりいいぞ、弟の一夏とか親友の篠ノ之とかその妹の箒とかな」

 

と言ってきたので、

 

 

「水無月さんは?頼ったらダメですか?」

 

 

と聞いてみたら、こっちを振り向いて、

 

 

「めんどくせぇからパス」

 

と本当にめんどくさそうに言ってきた……

 

 

普通、そこは了承するでしょうと不満に思いつつ見つめていたら、また出口に向かった水無月さんが、

 

 

「報酬をくれるなら、考えといてやるよ、じゃーな、『雪』」

 

 

と電話ぐらいでしか呼んでくれない名前で呼んでくれた、敵わないなぁ、

 

 

顔が緩むのを感じながら私はしばらく屋上に立っていた。

 

 

 

千冬SideOut

 

Side悠夜

 

あぁ〜、焦ったぁ、あんなん流石にスルー出来ないからな、にしてもマジどうすっかなぁ、今の状態は俺の目指す平穏には程遠いし、学校までうぜぇしなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……やりたくねぇなぁ、でもこれが1番俺の平穏に近づけられるんだよな。

 

 

俺の平穏は日常も込みで平穏だからな、織斑にもプレゼントのお返ししてねぇしなぁ。

 

 

リスクとリターンが半々かリスクがでかい位なんだよ、

 

 

ん〜、とりあえず出来るかどうかの確認をしとくか、

 

 

はぁ〜、さっきまでの平穏はどこに行ったんだか、

 

 

 

そんなことを考えながら、俺は携帯を取り出し、1番掛けたくないやつに、電話をした。

 



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うわぁ、似合わねぇ……

水無月さんに会ってから三日程経った、今でも学校での私の扱いは変わらないが水無月さんのお陰で大分余裕を持てるようになった。

 

水無月さんは昨日から学校に来ていない、あの人のことだから、眠いからと言って休んでそうだが本当に風邪であるなら見舞いに行った方がいいか、行くなら何か見舞いの品を持って行った方がいいかなどと考えていたら、最近は一人でいろいろやっていた束から電話がかかってきた。

 

 

今まで何をしていたんだと思いつつ電話に出た。

 

 

「もしもし、どうした?束、今まで何をしていた?」

 

「…………」

 

 

……おかしい、いつもの束ならハイテンションでうるさいくらいの反応をしてくるのにそれがない、

「……束、本当にどうした?何かあったのか?」

 

 

「ちーちゃん」

 

 

「なんだ?」

 

 

「ごめん、ISを盗まれちゃった。」

 

 

「なんだと!?どういうことだ!」

 

 

ISが盗まれただって?何の冗談だ、あれは操縦者によって性能は左右されるとはいえ、スペック上ではISが一機あるだけで軍隊と戦え、なおかつ制圧出来るような代物なんだぞ、現に私はミサイルを2000発近くを撃墜してその後やってきた軍隊を相手に圧倒した、

 

そんな代物が盗まれた?まずい何てものじゃないぞ、

 

「……とにかく、状況の説明…いや、束、今どこにいる?今からそっちに向かうから場所を教えろ、そこで説明してもらう」

 

 

「わかった、場所は……」

 

本当にまずいことになった、水無月さんにも知らせるべきか?……いや、状況が分からないのに連絡するべきではないな、

 

 

今はとにかく束のところに行くのが先決だ、

 

 

 

私は束から居場所を聞くと学校から抜け出し、束に合流するために走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、どういうことか説明して貰おうか?」

 

 

「うん、ちーちゃんと別れた後にね、ISのコアを集めて各国にどれだけの数のコアを渡すか考えながら秘密基地に居たんだけど、」

 

「今朝、緊急アラームがなって、急いで調べてみたら家に一つだけ置いておいたISの試作品が盗まれてたの」

 

 

「ISの試作品だと?そんな物、私は聞いていないぞ」

 

 

「試作品って、言ってるけどね、実際はそんなにいいものでもないの」

 

 

「ISを作り始めた時に片手間で作った物だから性能も低いし、コアもちゃんとしたものじゃないから、ちーちゃんの白騎士に比べたら張りぼてみたいなものなんだ、」

 

 

「……話は分かったが、お前がそんなミスをするとは思えないな」

 

 

「ちーちゃん、私だって完璧な訳じゃないんだよ〜?」

 

 

………何か隠してるな、コイツがこんな謙遜をする訳がない、だが試作品とはいえISが盗まれたんだ、そっちの方が先決だ、

 

 

「……それで、盗まれたISの居場所は分かっているのか?」

 

 

「もちろん、束さんにかかれば簡単だったよ、でも相手はモドキでもISを持ってるからね」

 

 

「それで私に連絡したのか」

 

 

「そうだよ〜、ちーちゃんにはそのISモドキを壊してきてほしいんだ」

 

 

「捕獲しなくていいのか?」

 

「うん、束さんとしてはあんな出来損ないに居て欲しくないし、もしちーちゃんがケガでもしたら嫌だしね」

 

 

「分かった、場所は何処だ?直ぐに行く」

 

 

「気をつけてね、相手もモドキとはいえISに乗ってるから、場所は……今は海の上だよ」

 

「分かった、それじゃあ行ってくる」

 

 

さて、モドキだとしても束の作った物だからな、気を引きしめて行くか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜海上〜

 

 

……見つけた、あれだな確かに私の白騎士よりも性能が低いようだな、直ぐに追いつけた、

 

 

「そこの奴、待って貰おうか」

 

 

相手はゆっくりとこちらを振り向いた、専用のISスーツではなく全身を隠すような服をきていて顔はフルフェイスのヘルメットのような物をつけバイザーで顔が分からないようにしている、そのせいで性別もわからなくなっている、

 

 

……束からはISは女しか乗れないと聞いているから女だろうが……

 

 

『もう、見つかってしまいましたか』

 

 

相手は機械か何かを使って声を変えているようだ、

 

 

「さて、無駄話はいいからそのISモドキを返して貰おうか?」

 

 

束からは破壊しろと聞いているが降伏勧告位ならいいだろう、

 

 

『返す?何を馬鹿なことを、こんなに素晴らしいものを返す筈がないでしょう』

 

「それはISではない、それを分かっているのか?」

 

『えぇ、分かっていますよ、篠ノ之博士の論文を私も読ませて頂きましたからね、本物のISには程遠い性能であると』

 

 

「分かっていて何故そんなものを盗んだ?世界中が注目している中でそんなモノに価値はないだろう、既に理論は束が世界中に出したのだからな」

 

話をしている間に戦艦や戦闘機が集まってきた、できるなら戦闘の邪魔になるからどこかへ行って欲しいんだが、

 

 

国のメンツと言うやつか、ISの情報を手に入れる為の行動か……

 

 

どちらにしても邪魔にしかならない、それほどまでにISの性能は圧倒的だ、

 

 

『ギャラリーが集まって来ましたが、まぁいいでしょう、何故この機体を盗んだか、でしたね』

 

 

『決まっているじゃありませんか、世界に対して力を示し私の思うままに世界を混乱させる為ですよ!』

 

 

相手は大仰な仕草で腕を開き、ありえないことを言ってきた、

 

 

『確かにこの機体は貴方が乗っている本物のISに比べて性能で圧倒的に負けています、けれど』

 

 

『現在そのISを除いてこの機体を止めることができる兵器がありますか?』

 

 

……そういうことか、

 

 

『ありませんよね?あるはずがない!まだISがない中でこの機体があるだけで、私は圧倒的なアドバンテージを世界のだれよりも得ているんです!』

 

 

『性能が低くともこの機体だけで軍隊を相手に戦い離脱するくらいはたやすい』

 

『後はISの利用価値を理解出来なかった、無能な政府のトップを人質に取るだけでその国は混乱する!』

 

 

『ISの理論を見た時には鳥肌が立ちましたよ、こんなに素晴らしいものがありえるのだ、と』

 

 

どうやら相手は科学者か何からしいな、政府に送った理論だけでISの可能性を理解していたらしいからな、

 

 

『だが私もその時は半信半疑でしたよ、だから私は、世界中のコンピューターをハッキング(・・)して日本に向けてミサイル2000発余りを発射した!』

 

 

 

……何を言っているんだ?あれは束がしたことだ、わざわざコイツがしたというメリット殆どない筈だ、

世界中のコンピューターにハッキングできるという情報で混乱させる?

 

 

……いやそんなことをしても意味がない、今此処で世界に見られているんだ、あのISモドキの性能では逃げ切れない、

 

考えているうちにも相手は饒舌に喋り続けている、

 

 

『そして、あの成果だ!ミサイルを少し篠ノ之博士にハッキングを喰らい落とされたが、そんなことはどうでもいい、』

 

 

それは水無月さんがしたことだ、何故そんなことを言う?

 

 

相手が何を考えているのか分からない、

 

 

『ミサイル2000発を撃墜しなおかつ軍隊をもほぼ無傷で全滅させた!思った通りの規格外の性能だった、』

 

『そして私はそのうちに篠ノ之博士のコンピューターにハッキングして調べた結果モドキとは言えISがあることが分かった、』

 

 

 

『そして今日、この機体を手に入れた!』

 

『まぁ、貴方に見つかってしまったのでついでにそのISも貰いましょうか』

 

 

『そのあとは、とりあえず回りにいるギャラリーにはご退場願いまして、手始めに日本から潰しましょうかね』

 

 

『ISという最高の兵器でね!』

 

 

「そういった理由があったのか、なるほどな……全く理解出来ないな」

 

 

「それに訂正することがある、」

 

 

「ISは兵器ではない、人が宇宙に飛び立つ為の可能性だ」

 

 

これだけは言っておかなければならない、束は……私の親友は人を傷つける為にこれ(IS)を作ったのではないと

 

 

『これだけの性能を持つものが兵器として使われないとでも?各国は確実に兵器として利用しますよ、絶対にね。』

 

 

「それでも、ISが兵器だと言うことは否定させて貰う」

 

 

「それに、貴様は此処で私に潰されるのだからな、貴様の妄想もここまでだ!」

 

「ハァッ」

 

袈裟掛けに切り掛かるが相手はISモドキの唯一の武装である刀で受け止める、が

 

 

「甘い!」

 

 

そのまま鍔ぜり合いになるが性能で圧倒している白騎士には無駄だった、

 

 

相手の刀を跳ね上げ、がら空きになった胴を斬りに行く、

 

 

『クッ』

 

 

相手は体制を崩しながらぎりぎりで避ける、だがその隙を見逃すほど私は甘くは……ない!

 

 

「ハァァーー!」

 

 

上下左右、360°、空間を全て使い切り掛かる、モドキといえ絶対防御はあるようだ、操縦者の命を守る最後の砦だ、

無ければ操縦者は直ぐに死んでしまう、相手の機体は絶対防御がシールドバリアーを貫通して発動したためにもうエネルギー切れ寸前だ、

 

 

『はぁ、もうこんなもんでいいかな』ボソッ

 

 

相手が何か言っていたが……こんなもんでいい?どういうことだ?

 

 

『グッ、まだだ、まだ戦える!私はこんなところで倒れる訳にはいかないんだ!』

 

 

……よく分からないが、とりあえず相手を倒すか、

 

 

「束からの依頼なのでな、それは破壊させてもらう、これで…終わりだ!」

 

 

ISモドキの胸部に露出しているコアを下からの切り上げで破壊する、

 

 

その時一緒にヘルメットの一部が切れ、顔が見えた、その顔は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私のよく知る、私を救ってくれた、大切な人の顔だった……

 

 

 

「なぜ?あなたが?」

 

 

ISモドキが壊れ海に向かって落ちていくあの人を呆然と見ながら私は聞いていた、その中で聞こえたのは、

 

 

「プレゼントのお返しだ、有り難く受け取りな」

 

 

と言う声だった

 

 

海に落ちた、あの人に向かって艦隊が攻撃を加えていく、ISモドキを他国に取られる位なら破壊した方がいいと言う考えからだ、

 

 

我に返った私は直ぐさま助けに行こうとしたが白騎士が勝手に動き陸のいつの間にか来ていた束の元に戻っていく、

 

「束!何をしている!あれにあの人が乗っているのを知っていたな!何故助けに行かない!白騎士を早く動けるようにしろ!」

 

 

「ちーちゃん、お、落ち着いて〜耳元で怒鳴らないで〜」

 

 

半泣きになりながら束が言って来るが無視して質問を続けた、

 

 

「何故あれに、あの人が……水無月さんが乗っている!いや、そもそもISは女にしか乗れないのではないのか?」

 

「ちゃんと説明するから、ちょっとまって〜」(泣)

 

 

……束の説明によるとこの一連の流れを考えたのは、水無月さんだそうだ、

 

 

 

……言っては悪いが水無月さんがこんなに面倒なことをするとは思えない、

 

 

束もそう思ったのか聞いてみたら、

 

 

「ハッキングをしたのがお前だってばれたら世界中に追われて、お前は逃げるだろ、そしたら姉好きの箒がかわいそうだからな、……お前の行方を聞きに人が俺の所に来たらめんどくせぇし(ボソッ)」

 

 

「織斑にはまだプレゼントのお返ししてなかったしな、世界を救ったヒーローになったら前みたいな状態に戻るだろ?人って単純だし…………織斑が学校で孤立したらあの変態どもが余計突っ掛かって来ていい加減うぜぇし(ボソッ)」

 

 

だそうだ、

 

 

……確実に後の方が本音だろう、相変わらず自分の平穏の為なら手段を選ばない人だな、

 

 

「それで、なんでISに乗れたんだ?やっぱりISモドキだからか?」

 

 

1番疑問に思っていたことを聞いてみたが、

 

 

「ちがうよ〜」

 

 

と言ってきた、なら何故なんだ?と疑問に思いつつも水無月さんはどうやって戻って来るのか、何か脱出するための機械を渡したのか聞いてみたら

 

 

「ん〜ん、な〜んにも、渡さなかったよ?」

 

とふざけた返答をしてきた、

 

 

「じゃあどうやってあの砲弾の雨から逃げて来るんだ!本当に死んでしまうぞ!」

 

 

クソッ、束を信用した私が馬鹿だった、

 

 

直ぐさま白騎士に乗って助けに行こうとした私を束が止めた、

 

 

「ちーちゃんが今助けに行ったら、ゆーくんの作戦がダメになっちゃうよ!」

 

 

「なら水無月さんを見殺しにするのか!」

 

 

今までにないくらいの怒気を出しながら束に詰め寄った、

 

 

「大丈夫だよ〜、今渡さなかっただけでちゃんと渡してるよ〜」

 

 

「時間もかかったけど、もうそろそろじゃないかな」

 

と束は言ってきた、なんのことだと束に聞こうとしたら、水無月さんが海から上がってきた……上半身が裸で

 

 

 

千冬Sideout

 

Side悠夜

 

 

「プレゼントのお返しだ、有り難く受け取りな」

 

 

と言って俺は海に落ちた、我ながらなんでこんなことしてんだ?と思いながら、とりあえずヘルメットを外し上着を全て脱いだ、

 

 

 

これで俺が逃げ切れば終わりの筈だったんだが、甘かった、上から砲弾の雨がふってきてやがる、こりゃ死んだなともはや悟りの境地に立った俺はゆっくりと目を閉じた、カラーコンタクトが取れたがもう死ぬから関係ないか、

 

 

そう言えば、なんで俺はモドキだがISに乗れたんだ?女にしか乗れないんじゃなかったのか?ウサ耳天災バカは嬉しそうに「当然だね!」とか言ってたけど、

 

……まぁ、もうすぐ死ぬ俺には関係ねぇか、平穏平穏言っときながら自分から厄介事に首突っ込んで死んでたら世話ねぇな、

 

 

やっぱがらじゃねぇことはするもんじゃねぇなぁ、………死んだら神の奴ぶちのめしてやる、

 

 

と考えながら沈んでいたら、篠ノ之から貰ったクリスタルの付いたネックレスが光り出した。

 

 

 

『マスターの危機につき装甲の強制展開を開始します、最適化67%、最良化53%、適応化58%を確認、生命維持の為シールドバリアーを優先、成功、他ISコアから現状最短の距離を算出、白騎士に向けて移動します。』

 

と無機質な声が聞こえたと思ったら、何かに引っ張られるように海の中を高速で移動した、

 

 

しばらくしたら陸に着いたのかネックレスは光るのをやめた、

 

 

 

『マスターの安全を確認、強制展開、解除、スリーブモードに移行します。』

 

 

なんかよくわからんが、助かったみたいだ、とりあえず陸に上がるかぁ〜

 

 

と陸に上がった俺の前には織斑と篠ノ之がいた。

 

 

「とりあえず、篠ノ之か織斑なんか服持ってねぇ?このままだと風邪ひいちまう」

 

 

と聞くが反応無し、どうしたんだ?

 

 

「水無月さん……目が」

 

「ゆーくんの目が」

 

 

「紫になって(る)(ますよ)!」

 

 

あ〜、なるほどそれでか、疲れたから、適当に話して帰ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あの後、俺は目が紫なのは元からで目立ちたくないからカラーコンタクトで隠していたことを説明させられた、なんで教えてくれなかったのかと文句を言われたが無視した、

 

 

俺の思惑道理にISモドキの操縦者は死んだことになり、織斑と篠ノ之は日本と世界を救ったとして、大々的に祭上げられた、都合のいいこって……

 

 

世界ではあの一連の事件を『白騎士事件』と名付けてISについて様々な協定がなされた、ISを作った篠ノ之が国家に利用されないように世界各国で自由に動けるように取り決められた、

 

 

さらにISについて1番触れる機会がある日本に学校が建てられることになった『IS学園』と名付けられ世界中の人間が集まり技術のお披露目などを目的とした、その中では外から干渉されない一種の治外法権の場となった。

 

そんな諸々のことが決められた条約をアラスカ条約と呼び、ISを兵器としてではなくスポーツとして扱うようになった。

 

 

あの事件で世界中の人々が兵器としての運用に難色を示したからだ、織斑の熱弁も利いたみたいだった。

 

 

それでも兵器としての側面はなくならなかったが……

 

 

 

こんな感じで様々なことが起きつつも収束に向かって行った。

 

 

頑張った甲斐もあり人の波に飲まれた天災達のお陰で俺はやっと平穏を満喫している、しばらくこのままでまったりしてたいなぁ〜

 

 

誰だ!今ムリっていったやつ、出てきやがれ頑張った俺に謝れ!全く、さてと寝ますかね、屋上はいいねぇ〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういやこのネックレスのこと聞き忘れてたなぁ……何だったんだ? あれは?あれから何にも変化ないしまぁ大丈夫か。



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転生者視点番外編 思い込みって凄ぇのな……

待たせたな、やっと俺の出番がきたぜ!

 

 

俺は俗に言う転生者だ、死んだのは、神の気まぐれだが特典をくれて記憶を引き継いで転生させてくれるというテンプレ展開だ、殺されたのはムカつくが好きな世界に転生させてくれたからな、許してやる。

 

神から貰った特典が聞きたいか?しょうがないから教えてやるよ!

 

 

まず、容姿を銀髪オッドアイのイケメンにしてもらった、やっぱ美男美女の組み合わせがいいだろう、

 

 

次に行く世界をISの世界にしてもらった、あれは原作を読んだが美女と美少女の比率が高かったからな、これはもう行くしかないだろ、

 

 

さらにISに乗れるようにしてもらい(もちろん男として)生まれる場所は織斑千冬と篠ノ之束の家の近くでこの二人と同い年になるようにした、あの大人の魅力溢れる二人にフラグを立ててやるぜ!

 

 

本当は専用機と千冬並の身体能力がほしかったが特典の数が足らなくて断念した、

 

 

まぁ、身体能力はそれなりの物をくれるそうだし専用機に関しては俺の嫁要員である束にフラグを立てて作ってもらえばいいだろ、

 

 

俺の他にも似たような奴がいたがそっちは織斑一夏と同い年に生まれるようにしたそうだから関係ねぇ。さて!準備も出来たしオリ主としてガンガン原作に関わっていくか!

 

 

 

 

 

 

やっと幼稚園に入ったぜ!転生者として生まれた俺の名前は「帯 片時(おびかたとき)」だ!生まれてからしばらくして鏡を見たが……素晴らしい、流石は神だ、見事なイケメンだったぜ!

 

 

 

そして、俺はこの幼稚園で篠ノ之束と織斑千冬を見つけた、ロリな二人も中々……ムフフ、

 

 

おっと、こうしちゃいられないな、未来の嫁達に挨拶をせねば!

 

 

二人はこのころから仲が良いみたいだな、今も二人で束の持ってるパソコンを見ているし、さて行くとするか!

 

 

 

「こんにちは、可愛いお嬢さん達、名前を教えてくれないか?おっと自己紹介がまだだったな、俺の名前は帯 片時だ、気軽に片時か、きーちゃんとでも呼んでくれ」

 

 

フッ、完璧だな、この年頃の子供は可愛いと言われると喜ぶからな、さらに誰も声をかけない中俺みたいなイケメンが声をかけたらフラグが立つだろ!

 

 

「………」

 

 

「………」

 

 

黙ったままだな……きっと照れてるんだな!話したいけど照れて話せない、という子供の心理か、それならこっちがもっと話しかけて話し易いようにするのが、未来の嫁達にたいする礼儀だろ!

 

 

「どうしたんだ、照れてるのかな?大丈夫だ、俺は優しいからな緊張しn」

 

 

「うるさい、じゃま、きえて」

 

 

……これがツンデレか!話すのが恥ずかしくて怒っている風を装っているんだな、可愛い奴め、すぐにデレさせてやる!

 

と俺が何か言う前に先生から集まるように言われた、人数が多いから何人かのグループになって年長の奴らと遊ぶそうだ、そこであの二人と組もうと思ったらもうすでに別れていた、

 

 

ちくしょう、これじゃあフラグを立てられないじゃないか!……焦ることはないか、時間はまだまだ有るんだからな、そして俺の凄さを見せようと、宙返り等をしていたらあの二人はなんか地味そうな特徴のない一つ年上の奴の所に行っていた。

 

 

……あのクソヤロウ、俺の未来の嫁に色目使ってやがる!あの変態が!と睨んでいたら変態の所から逃げて来たのか千冬がこっちに来た、やっぱり俺のことが気になるんだな!きっと俺に助けを求めてきたんだろうフッ、既にフラグを立てていたのか流石は俺だな。

 

 

そんなことを考えながら千冬に話しかけていたら千冬が俯いてしまった……恥ずかしくて顔が赤くなっているのを見られたくないんだろう、だがそんな千冬に声をかけていたらいつの間にか来ていた地味野郎が千冬の頬っぺたを抓りやがった……!

 

 

千冬が拒絶してるのに地味野郎は暇つぶしだとか言ってセクハラしてやがる、変態に俺の未来の嫁を汚されて堪るか!としばらく睨んでいたら俺の眼力にビビったあいつは今度は束にちょっかいをかけに行きやがった、変態ヤローが!

 

それからしばらくしてあの地味野郎は何かにつけてあの二人にちょっかいをかけるようになった、俺達が遊んでいたら束にちょっかいをだし、それを助けようと千冬が束を遊びに誘ったらあいつまで着いてきやがった、

 

 

くんじゃねぇよ!それからしょうがなく地味野郎も含めて遊んでいたら地味野郎から逃げていなくなった千冬達を付け回したりしやがった!

 

 

幼稚園ではあまりあの二人と遊べないからな、家の近くで二人を見つけて声をかけてたら家で遊ぶと言っていたので、これは誘っているんだなとついて行こうとしたら、束が照れてスタンガンを押し付けてきた。

 

 

流石に死にそうになったがこれも愛だと思えば軽いものだったな!

 

それからやっと地味野郎がいなくなって喜んでたら、小学校まで同じだった、

だが地味野郎がいない間にフラグを立てまくったからな、もうあの二人には手を出せないだろうと思っていたら間違いだった。

 

あの二人にわざわざ自分の教室まで来させて一緒に弁当食ったり、オリエンテーションで二人と無理矢理組んだり(じゃなかったら俺と組むはずだ!)と好き勝手やりやがった、それで地味野郎の卒業式で二人から何かを奪ってやがった!

 

 

束から奪った物を投げ棄てようとしたのを束が必死に止めていた

 

 

 

……あの反応はもしかして俺へのプレゼントか!それをあいつが取り上げて束が必死に止めてるんだな!クソヤロウが、今日という今日はゆるさねぇぶちのめしてやる!しかも千冬から奪った髪紐をつけやがって

絶対にゆるさねぇ!

 

 

 

 

 

 

チッ、逃げ足だけだけは速い奴だ、これまでも何回やっても逃げられたからな、まぁいいさこれから一年はあいつは居ないし中学は違うとこに行くだろ、さてと俺の未来の嫁達との思い出作りをするか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あれからしばらくして俺は卒業近くになって未来の嫁達に聞いておかなければならないことができた、それは……

 

 

「なんで、二人ともあんな何にもない中学に行くんだ?進学校に行かないのか?」

 

 

これだ、二人は本当になにもない平凡な中学に行こうとしているんだ、

 

 

「……お前には関係ないだろう」

 

 

「………」

 

 

と言ってきた、束は照れてなにも言って来ないが、

 

 

「いやいや、幼なじみとして気になるんだよ、千冬、束」

 

と笑みを浮かべながら言うと二人は顔をしかめた、きっと俺の笑みに惚れる女子がいるんじゃないかと嫉妬してるんだな!

 

 

「……お前と幼なじみになった覚えはない、それに気安く名前で呼ぶな」

 

 

「何言ってんだよ、幼稚園からの付き合いじゃないか、照れるなよ」

 

 

全く千冬はあまのじゃくだな、本当は嬉しい癖に、

 

 

「……うるさいなぁ、私の幼なじみはちーちゃんとゆーくんだけなんだから、勝手に気持ち悪いこと言わないでくれる?それに中学はゆーくんと同じ所に行くんだ、質問には答えたからさっさっと消えて」

 

「ゆーくん?あの地味野郎のことか?あんな奴と一緒のとこに行く必要ねぇだろ、何にも出来ない落ちこぼれなんだからな、進学校に来たのに授業が分からなくてしょっちゅう授業を抜け出してるし、それに」

 

 

「黙れ、それ以上その口であの人を侮辱するな!虫ずが走る」

 

 

「……本当にうるさいよ、気持ち悪いことを言うだけじゃなくてゆーくんまで馬鹿にするなんて、何様のつもり?」

 

 

「なんであんな奴庇うんだよ?本当のこと言っただけだろ」

 

 

「……チッ、もういい、束行くぞ」

 

 

「……わかった」

 

 

と言って俺を見つめて(実際は睨んで)帰ってしまった、なんでだ?やっぱりあいつに脅されてるのか?

 

 

 

 

 

 

 

その次の日からなぜか俺が覗きをしている、と噂が立ち身に覚えのない俺が覗きをしている動画が学校のインターネット掲示板に張り出されて学校中からハブられた、誰だこんなことをした奴は!これのせいで二人から無視されるじゃないか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小学校を卒業し中学に入った俺は先ず、あの地味野郎の噂を流した、あの二人に幼稚園の頃から付き纏っていたとか家までストーカーしたとか二人を脅して振り回しているなど、真実に基づく噂なのですぐに広まりあいつは学校中から厄介者扱いされた、ざまぁ見ろ、あの二人に手を出すからこんなことになるんだよ、

 

 

それから俺は地味野郎をリンチさせたり、上履きに生ゴミをぶちまけさせたり、学校の裏サイトで悪口を流させたりしたが、あの地味野郎は中々しぶとくて未だに付き纏ってやがる、

 

 

一度あの落ちこぼれに近付くなと千冬に言ったらボコボコにされた、きっとそれを聞いたあの野郎が俺に手を出さないように心配してくれたんだな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原作でもあった白騎士事件が起こったんだが、なぜか白騎士に乗っていたのが千冬だとばれていた、原作のパラレルワールドなのか?

 

そのせいで学校で避けられている千冬に優しくしてフラグが立てられるんだがな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……何なんだ!この世界は!なんで白騎士事件の後にISが盗まれてるんだ!?原作にはなかったぞ!しかもその功績で千冬達は英雄となって原作とは違うせいで俺の、束が逃げる→俺がついて行く→束との仲が深まり専用機ゲット!→原作で千冬と感動の再会!というプランが台なしだ!

 

 

まぁアラスカ条約のお陰でIS学園が出来たからな千冬と束はそこに行くだろうから、世界で初めてISに乗れる男として二人と甘い学園生活を送ってやる!

 

 

あの地味野郎がISに乗れる筈がないしな、もうこれからは俺の時代だ!

 

 

期待しとけよ!



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やっぱりこいつら面倒だわ……

さてさて、いい加減パターンも読めてきたと思うが、時間が飛んで今、本来なら高二の水無月 悠夜だ、

 

 

……分かってる、なんでそんなに時間が飛んでるんだよ、とか本来ならって何だよ、とか言いたいと思うが、ちゃんと説明するから少し待ってくれ、

 

 

まぁ、時間に関してはあれだ、作者の都合だ、話しネタが無くてここまで飛ばしたらしい。

……ダメ作者が、

 

 

 

 

んで、本来ならって言うのは俺が一年ほど両親のいるフランスに行ってたんだよ、中学を卒業したから義務教育もねぇしせっかくだからこっちに来ないか?っていう両親からの誘いに飛び付……コホン、了承してフランスに行くことになった、

 

 

……卒業式の日に高校は何処に行くのか天災達に聞かれてそのことを言ったんだが……まぁ、あれだ色々あったな…色々…あったんだよ、で定期的に連絡を取るように言われたんだが、なんでそんなめんどくせぇことをせにゃならんのだ、と言ったら、

 

 

 

 

……ISに乗ってフランスまで行くぞ、って脅してきやがった!ふざけんなよ!そんなことされたら俺の辞書から平穏という字が辞表を出して出て行っちまう!

 

……海と紅葉には定期的に連絡を取るつもりだったからな、そのついでならいいだろってことで了承した。

 

ちびっ子二人にはあらかじめ言っておいたんだが、懐かれてたのか、かなり駄々をこねられたなぁ、まぁ、連絡を取るのとお土産を買って帰って来るので許して貰ったがな、……あの天災達には俺から言うから言わないでくれと言い含めておいた。

 

 

……事前に教えておいたら卒業と同時に行くつもりの便が、というよりもこの国から出る方法が全て遮断される恐れがあるからなぁ、

 

あのウサ耳ならやりかねん、まぁ、あいつらにそんな余裕はないと思うがなぁ、あいつらの進学先はもう決まってるからな、

 

 

 

どういうことだって?ほらあれだよ、あいつらはIS学園に行くことが決定してるんだよ、なんでかって?……ISを開発した天才と世界を救ったIS操縦者にISに関わる以外の道があると思うか?

 

 

答えはNOだ、あの白騎士事件から本人達は拒否してるが取材やら元々多かった告白やらが馬鹿みたいに増えた、

 

でそれに苛ついたウサ耳があんまり干渉してくるなら全てのISを停止させるっと言って黙らせた、がISを学ぶために作られた学園には通うようにした方が条約もあるから楽だと言ってIS学園に行くことになった。

 

 

……よくよく考えたら、あいつらは行くとこ決まってんのに俺の行く高校を聞く必要あったのか?小学校の時みたいに書類をIS学園に流したとしても俺は、というよりも男はISに乗れないんだから多分入ることすらできねぇし、

 

 

俺はISモドキには乗ったがあれはあのウサ耳バカが作ったモドキだから厳密にはISじゃねぇ、……マジで何をするつもりだったんだ?

 

……まぁそれから俺はフランスまで行って一年ほど滞在してから日本に戻ってきた、という訳だ、フランスでは海と同い年の女の子と色々あって仲良くなったんだが、それはまた機会があったらはなすとしよう。

 

 

さてと、とりあえず土産を渡しに行きますかねぇ、……あいつらにIS学園は全寮制って聞いたからな、初っ端出くわすことはねぇだろ、先ず海と紅葉に会って心の準備に一週間ほど使ってから天災達に遭うか、

 

スタスタ、

 

 

〜悠夜移動中〜

 

 

……っと着いたな、さてさてちびっ子達は元気にしてたかねぇ、一年ぶりだからなぁ電話とかはしてたけどな、それとこれとは別だからな、今日帰って来るのは教えてたしウサ耳バカの家に行くって言っといたしな、多分いるだろ

 

 

インターホンを押し………木の棒はないかな、……あった、これくらいの長さでいいだろ、あらためてインターホンを木の棒で押してっと、

 

 

ピンポー、バサッ、ドッカーン

 

 

「ふっふっふ!ひっかかったね!ゆーくん!インターホンを押したら網が出て来る仕掛けには流石のゆーくん…も……」

 

 

「遺言は?」

 

 

俺は扉を破壊してでてきた一年ぶりに会ったウサ耳バカに最高の笑顔で最後通告をしてやる。

 

 

「や、優しくしてね///」

 

 

ガシッ、ギリギリ、メキャ、バタン

 

 

ふざけたことを抜かしたウサ耳バカに渾身のアイアンクローをかまして撃墜して放置して中に入る、

 

「久しぶり〜元気にしてたか?海、紅葉」

 

 

「悠兄ちゃん!」

 

 

「悠兄さん!」

 

 

笑顔を浮かべて駆け寄って来る二人の頭を撫でてやると気持ち良さそうに目を細める、

 

 

「お久しぶりです、悠夜さん」

 

 

「ん、織斑も久しぶりだな」

 

 

織斑がわからない位だが笑みを浮かべて挨拶をしてくる、

 

 

……織斑の俺に対する呼び方はあの事件の後に変わった、織斑なりの信頼の証らしい、

 

 

「束の奴は…」

 

 

「玄関で死んでる、ふざけたことを抜かした罰だ」

 

 

相変わらずですね、と織斑が苦笑しながら言ってきた、

 

んな簡単に変わるか、で、いつの間にか復活したウサ耳をプラスしてお土産のクッキーと紅茶を食べた、それから色々だべって、ちびっ子二人とウサ耳に夕飯の買い出しに行かせた、

 

 

……流石に帰って来てすぐに自炊するきにはならなかった、んで、人払いもしたし本題だな、

 

 

「織斑」

 

 

「なんですか?」

 

 

「お前の…お前達の両親はどうした、」そうこれが織斑を残した理由だった、フランスにいる間連絡を取っていたが織斑からも海からも両親の話しを聞かなかった、それにいくらウサ耳が脅したとしても報道陣からしたら二人は恰好のネタだ、フランスでもたびたび報道されていたが、海と紅葉は小さいから特には話題にならなかったが両親の話しが出ないのは些かおかしい、

 

 

天才の親として話題になる筈だ、現にウサ耳の親はすぐに報道されなくなったが話題になっていた、(多分政府にウサ耳が何かしたんだろ)だが織斑の両親の話しは最初からなかった、だから聞いた、

 

 

「………」

 

 

「言いたくないならそれでいい、ただ少し気になっただけだ、忘れてくれ」

 

 

「……私の、私の肉親は一夏だけです」

 

 

「そうか」

 

 

「……聞かないんですか」

 

「何をだよ?お前の中で結論が出てるのにわざわざ聞く気にはならんし、聞く必要もねぇ」

 

 

「……ありがとうございます」

 

 

「何に対してかは知らんが一応受け取っておくわ」

 

 

さてと、ちびっ子達+αも帰ってきたし飯にするか。

 

 

 

前にきた時と同じように節操のない多国籍料理を食べて、織斑達の学園生活を聞いたりして過ごした。

 

 

で、そろそろ帰ろうとしたんだが……

 

 

ちびっ子二人が連絡した時に次に来た時には泊まると言っていたことを覚えていて、ウサ耳の家に泊まることと相成った、……くそぅ、忘れてると思ってたのに、

 

俺は空き部屋を使わせて貰うことにした、海と紅葉が一緒に寝ようと言ってきたが流石に狭いので断った、……ふて腐れてたが俺はこっちに帰ってきたばかりなので許してもらった。

 

 

で、ちびっ子二人とその付き添いで織斑が一緒に寝に行ったから今は俺の貸してもらっている空き部屋にはウサ耳しかいない。

 

 

「それでね!ちーちゃんったら……」

 

 

やたらハイテンションで話しまくるウサ耳にそろそろ寝ろと言ったが、拒否しやがった、しばらく話しをしていたらウサ耳が急に俯いた、なんだ?

 

 

「ちーちゃんに聞いた?」

 

「何をだよ?主語を会話に入れろ」

 

 

「ちーちゃんといっくんの親のこと」

 

 

「あぁ、一夏だけが肉親だって言ってたな」

 

 

「……そっか、ねぇ、ゆーくん」

 

 

「なんだよ」

 

 

「私が、私がちーちゃんを巻き込まなかったらちーちゃんといっくんはこんなことにならなかったのかな」

 

 

「ちーちゃんがISのことで手伝うって言ってくれて、すごく嬉しかった、でもこんなことになるんだったら、ちーちゃんにあんな顔をさせるくらいだったら、手伝ってもらh」バッチィ、

 

 

「〜〜〜っ!?!?」

 

 

なんかうざくなっていたウサ耳にデコピンをかました、うむ、我ながらすばらしい威力だ。

 

 

「な、何するの、ゆーくんすごく痛いよ!」

 

 

うっせぇ、痛くしたんだから当然だろう。

 

 

「お前がそれを言ったら織斑に失礼だろうが、あいつはちゃんと自分の中で結論を出してる、それに対してとやかく言うのはやめろ」

 

「それにお前あんまり寝てないだろ、織斑が心配してたぞ、自分のせいで束に迷惑をかけてるって、」

 

 

「ちーちゃんが?」

 

 

「織斑がだ、お前らはなんでわざわざ人を間に挟まなけりゃ会話もできないんだ?いちいち間に挟まれる俺のめんどくささを考えやがれ」

 

 

「一回織斑としっかり話しをしろ、普段から親友だって言ってんだったら悩みくらい言えっての」

 

「……わかった、ありがとうゆーくん」

 

 

よし、いい感じに話しが終わったな、これでやっと寝られる……と思っていたらウサ耳が人のベットにダイブしやがった、

 

 

「オイ、俺はもう寝たいんだ、とっとと帰りやがれ」

 

「束さんは眠くなったからここで寝る〜」

 

 

「自分の部屋で寝ろ」

 

 

「もうムリだよ〜動けない〜」

 

 

この野郎、……はぁ、もういいや疲れた。

 

 

「勝手にしろ、俺はリビングのソファーで寝る」

 

 

と出て行こうとしたら手を掴まれた。

 

 

「……なんだよ?」

 

 

「私が眠るまでここにいてくれないかな?…ゆーくんがいたら気持ちよく眠れそうだからね!」

 

……はぁ〜、普段はめちゃくちゃするくせに自分が気に入った相手に嫌われるのがそんなに不安なのかよ、やっぱ似てるなぁ、こいつら、

 

 

「わかったわかった、寝るまでは居といてやるから、とっとと寝ろよ、『桜』」

 

「ありがとう、ゆーくん」

 

こっちの名前で呼ぶのも久しぶりだな、ま、たまにはいいだろ。

 

ウサ耳が完全に寝たのを確認して部屋を出る、それでだ。

 

 

「という訳だ、分かったら明日にでも話し合えよ、織斑」

 

 

「やはり気付いてましたか」

 

 

織斑が廊下の角からでてきた、

 

 

「たりめぇだ、こっちはお前らのせいでやたら気配に敏感になったからな」

 

 

「ありがとうございます」

 

「褒めてねぇよ、」

 

 

「いえ、そっちではなく束のことです、私ではあそこまでうまくいきませんから」

 

 

「人を緩衝材がわりにもうするなよ、帰って来てそうそうになんでカウンセリングみたいなことをしなけりゃいけねぇんだよ、めんどくせぇ」

 

「分かりました、」

 

 

「そーいえば、なんでニュースに海と紅葉のことが出てなかったんだ?」

 

 

「そのことですか?束が意地になって隠してましたよ、箒ちゃんといっくんには手を出させない!と」

 

 

あ〜、なるほどあのシスコンのせいか、多分ブラコンのこいつと一緒になってやったんだろ、

 

 

「何ですか?」

 

 

「いや、なんでもない」

 

 

あっぶね、こいつはブラコンってわかりやすいのに否定してくるからな……刀付きで、流石に今そんなのを相手する気にはならないからなぁ、

 

 

そこからテキトーに話しをしてリビングに行った、織斑が空き部屋を探すと言ってくれたがもう遅いので断ってソファーで寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

織斑達が家に居たのは一夏を一人にしないように家から通っているらしい、どうしても抜けられない時はウサ耳の家で預かってもらってるんだと、大変だな。

 

 

 

 

 

 

とりあえずもう寝るか、お休み〜………



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何で俺ばっかり……

………ん、くぁ〜背骨がいてぇ、やっぱソファーなんかで寝るんじゃなかったな、体中が軋んでやがる、そろそろ起きるか、

 

 

……で、とりあえず俺の上に乗ってやがるウサ耳を潰すか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ〜、頭がいたい〜、ひどいよ〜ゆーくん、起こしに来ただけなのに〜」

 

 

「起こしに来てなんで人の上にいるんだ?ボケウサギ」

 

 

「だって、ゆーくん普段なら寝てる時でも近づいたらすぐに起きるのに、今日は起きなかったから、つい」テヘッ

 

 

スゥー、ピタ、ヒュオ、ドッパァン、

 

 

「疲れてたんだよ、帰国そうそうお前ら天災にあってな」

 

 

全身の力を乗せた最強のデコピンをウサ耳にかまして文句を言った、

 

 

「いや、悠夜さん束は聞いてませんよ」

 

 

痛みで悶絶してます、という織斑の言葉をスルーして朝食を食べる。朝食は和食だった、というより朝から多国籍料理を食う気にはならなかったので和食を頼んだ、それから少し話をしてから一年ぶりにの家に帰った、

 

 

定期的に業者を雇って掃除してもらってたからそこまで汚れてなかったが一応掃除をして昼と夜用の飯の食材を買いに行く。

 

……さてと、あらかた食材は買ったし後は最近はまってるアクセサリー作り用の材料でも買いに行くかぁ、これとチョップチャプスが俺の天災達に削られる精神力の癒しだな、

 

 

 

スタスタ、

 

 

 

〜悠夜移動中〜

 

 

 

 

……アクセサリーの材料も買って帰ろうとした俺の前にかなり怪しい占い屋が立ち塞がった、頭まですっぽりローブで隠しているため顔はわからないが体つきから女だと分かった、……ただしその頭にはやたら見覚えのあるウサ耳が付いていた……関わらない方がいいだろ。

 

 

「何かようか?」

 

 

「青年よ〜、私の占いを受けてみないかね〜」

 

 

「いらん」

 

 

と言ってそのままスルーしようとすると腰にしがみついてきた、

 

 

「放せ!俺は帰るんだ!これに関わったら人生が決まってしまうと俺の勘が告げてるんだ!」

 

 

「お願いだよ〜ちょっとだけだから〜」(泣)

 

 

「うるせぇ!絶対に嫌だ!てか、お前は何がしたいんだよ!篠ノ之」

 

 

ビクッ、

 

 

「や、やだな〜私のどこがラブリーで天才なウサ耳の似合う篠ノ之束だと言うのかな?」

 

 

「語るに落ちてるぞ、ホントに何がしたいんだよ、お前は?」

 

 

「ふっふっふ、流石はゆーくんだね!天才束さんの完璧な変装を見破るなんて、そんなことがでk」

 

 

スタスt、ガシィ!

 

 

「話してる途中に逃げようとしないで〜、ちゃんと説明するから逃げないで〜」(マジ泣)

 

 

「分かった、分かったから放せ、やたら注目を集めてるから!」

 

 

その後しばらくしてやっと俺を解放したウサ耳について行くと、椅子と布がかけられた机、その上に水晶球が置いてある場所に連れて来られた、

 

「で、何がしたかったんだお前は?」

 

 

「まぁまぁ、ゆーくんとりあえず座って座って」

 

 

とりあえず荷物を横に置いて椅子に座る、ウサ耳バカは対面に座った、

 

 

「でも流石はゆーくんだね!束さんの完璧な変装を見破るなんて!ハッ、まさかこれが愛のちかr」

 

 

ガシッ、グググ、

 

 

「本題は?」

 

 

頭を掴んでゆっくりと締め付けていく

 

 

「ご、ごめんなさい〜話します、話しますからこれ外して〜」

 

 

「チッ、早く話せ、というかなんで朝の内に話さなかったんだよ、わざわざそんな恰好までして此処で話す意味があったのか?」

 

 

「舌打ち!?束さんをいじめてゆーくんは何がしたいの!?もしかしてそういうしゅ」

 

 

「質・問・に・答えろ」

 

 

グググ、グシャ、

 

 

買ってきた林檎を握り潰して極上の笑顔で話しを促す、あ〜あ、林檎が無駄になっちまった、

 

 

「わ、わかったよ、ゆーくん」

 

 

青い顔をしてウサ耳バカが返事をする。

 

 

「で、話しってなんだ?まさかマジで占いをするなんて言うんじゃないだろうな?」

 

 

「ピンポンピンポーン、大せいか〜い、ってごめんなさい、これは本当だから手を近づけないで〜」

 

 

ふざけんなよ、なんでわざわざウサ耳バカの占いなんか受けなきゃならんのだ、

 

「それこそ朝の内にやっときゃいいだろうが、なんでこんな人通りの多いとこでやらなきゃならないんだ」

 

「うん、それはそうなんだけどね、その前に……ありがとう、ゆーくん、ちーちゃんとしっかり向き合わせてくれて」

 

篠ノ之が普段のテンションからの笑顔じゃなくて本当に嬉しそうな笑顔を向けてきた、

 

 

「どーいたしまして、さて、質問に答えてもらおうか」

 

が俺は早く帰りたいのでそうそうに本題に戻る、

あ?空気読めよだって?……普通ならよかったんだが、俺の勘が警鐘を鳴らして早く帰るべきだと言ってるんだ、そんな悠長なこと言ってられるか!

 

 

 

「か、軽いね、もうちょっと雰囲気を出してもいいんじゃないかな」

 

 

「ハッ、そんなもん知るか、お前らが話し合って折り合いがついたならそれでいいだろ」

 

 

「ゆーくんらしいね」

 

「そうかよ、」

 

 

「うん!」

 

 

なんでそんなに嬉しそうなのかねぇ、

 

 

「それで、何回も聞くがなんでこんな所で占いなんかするんだ?」

 

 

「それはね、何時やるかよりもどこで(・・)やるかが大切だからだよ!」

 

 

「どういうことだ?」

 

 

「それより、この水晶球に触ってみて!」

 

 

質問に答えやがらねぇ……めんどくせぇからとっとと言うこと聞いて帰ろう、

 

 

「はいはい、これでいいのか」

 

 

と言って俺は水晶球に触れた、触れてしまった。

 

 

後からこの時に戻れたらこの時の俺を殴ってでも止めたのにと本気で後悔することになるのは余談である。

 

ピカッ!

 

 

「なんだ!?」

 

 

急に水晶球が光って何かが流れ込んで来る感覚と何かが体に付く感じがした、

 

 

目が慣れてきて周りを見てみると通行人がこちらを凝視していた、

 

 

一体何なんだ?というか視線が高くなってる?

 

 

とそこで自分の姿を見てみると、そこには、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………最近テレビでよく写っている、量産型のISを装着している俺の体があった…………

 

 

「ちーちゃんと話し合ってどうせだったらゆーくんも同じ学校にきてほしいなってことになったんだ」

 

 

と勝手なことをほざいているウサ耳天災バカを見る。

 

 

「だからゆーくんにはISを扱えるってことを世界中の人に知って貰うことにしました〜」

 

 

「その為に此処でやったのか?」

 

 

「そうだよ〜、ゆーくんのことだから普通に言っても嫌がるだろうしね!」

 

 

「この状況なら言い逃れはできないし、証人がいっぱいいるから嘘だとも言われないしね!」

 

 

全部仕込まれてたってことかよ、

 

 

はっはははは

 

 

「ざっけんじゃねぇ〜〜!!」

 

 

心の底から叫んだ、俺は悪くない、前にも似たようなことを言ったがそれでもこれはしかたないと思う、俺の平穏は一年続いたと思ったら一生に関わる厄介事を持ってきやがった、

 

 

その場には燃え尽きたようにうなだれる俺と凄まじく嬉しそうなウサ耳が同居する何とも言えない空間が作り出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………翌日、世界で初めての男のIS操縦者が現れたと全世界で報道された。

 

 

 

俺の平穏は天災達に潰される運命なんだとしみじみと感じた、人生で最悪の日になった。



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執念と妄念の違いって……

前回ウサ耳天災と斬軼天災の策略にのせいで平穏という字が絶縁状をたたき付けて去って行くのを幻視した、

 

 

世界で初めての男性IS装着者という全力で遠慮して拒否して突き返したい肩書を押し付けられた男こと、水無月 悠夜だ

 

 

……このくだりも久しぶりのような気がするなぁ、

ん?そんなことどうでもいい?どうせまた現実逃避だろ?いい加減諦めろ?もうそんな平穏なんて夢捨てちまえ(笑)?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……最後の奴ちょっとこいや、体の原型が分からなくなるまでボッコボコにしてやるから、逃げるなよ?

 

 

 

んん!すまんな、少し本音が出たようだ、聞き流してやってくれ、だが!俺は絶対に俺の夢をあきらめねぇからな!

 

 

……分かってるよ、こんな状況で平穏なんて夢のまた夢だってことぐらいな、でもな、これくらいの支えがねぇと俺は多分いろいろと折れちまうんだよ、心とか

 

……あぁ、今回の現実逃避は長いと俺も思うよ?思うけどな、仕方ないんだよ、ISが男なのに動かせたからそのせいで世界中から調査協力……ようするにモルモットになれ!って感じの依頼が多量にきた。

 

 

そんなもん絶対にやる筈がないが正直俺という存在はもはや誘拐や拉致をしてでも手に入れる価値がある、

 

女性しか使えない筈のISを使える男、もしその男を調べてISが何故女性にしか使えないのか……ISとは何なのか?という疑問を他国よりも先に解決したらそれだけでその国は世界のトップに立てるかもしれない、

 

 

そんな鍵を握っている存在だ、人の倫理なんてものはその魅力の前ではゴミ以下のものでしかない、

 

 

だから俺の取れる道は少ない、一つはモルモットとしていつ死ぬか分からない生活をすること、

 

 

一つは逃げること、

 

 

一つはどこかの国に庇護を求めてその見返りに死なない程度の実験に協力すること、

 

 

一つはウサ耳バカに頼んで俺に干渉しないよう世界を脅すこと、

 

 

一つ目は死にたくないから当然却下だ、

 

 

二つ目は世界中の国から逃げるとかあのウサ耳バカをもってしてもムリ……あいつならやりそうだな…まぁ俺にはムリだ、

 

 

三つ目はやっぱり誘拐とかの危険があるから却下、

 

 

四つ目はそれこそ世界中から狙われるわ、ISを作った篠ノ之に言うことを聞かせられる存在としてな……それ以前にあのウサ耳バカに貸しを作るとかありえねぇよ、何言われるか分かったもんじゃねぇ、

 

 

で、普通なら此処で手詰まりなんだが、ここには都合のいいものがある、世界中の国から独立し世界中の国が手を出すことのできない砦にして俺にとっての天災という災厄が待ち構える牢獄、そこは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はじめまして、どこかの天災達のせいで人生の選択肢を奪われてこのIS学園に通うことにされました、水無月 悠夜です、なんで本来高二なのに高一からスタートなのか原因は分かっていますが納得は出来ていませんがどうぞよろしくしなくてもいいのでそっとしておいて下さい。」

 

そう、IS学園だ、此処ならとりあえずの安全は保証されている……安心はかけらも出来ないがなぁ、

 

 

と、一息でまくし立てた俺にポカンとした表情を浮かべている女子達とさっきからずっとこっちに笑顔で手を振っているウサ耳バカ、俺の態度に苦笑している斬鉄ブラコン、そして心底めんどくさそうな顔をしている俺と困惑している教師といった何とも微妙な空間に俺はいた。

 

 

少しして正気に戻った女子達が息を目一杯吸い込んでいる、

 

 

やばい、とりあえず耳を塞いでっと、

 

 

「「「「「きゃ〜〜〜!!」」」」」

 

うるせぇ〜!何だよこのテンションは!男がそんなに珍しいかよ、はぁ〜、マジで帰りたい。

 

 

「男子、ほんとに男子だ!」

 

 

「しかも年上!髪長い!」

 

「でも、ルックスだけなら隣のクラスの男の子の方がいいな」

 

 

「いやいや、こっちのお兄さんの方が落ち着いてるよ!」

 

 

……もうやだ、この学校、入学して一日で辞めたくなったのは初めてだよ、天災達が入って来て辞めたくなったのはよくあったがな……

 

 

その後教師がめちゃくちゃ頑張って生徒を静めていた。

 

 

で、何やかんや騒ぎつつ昼休みになった、

 

 

「やぁやぁ!ゆーくん!また同じがっこ」

 

 

ガッツン!

 

 

「〜〜っ!?!?」

 

 

「ゆ、悠夜さん?急にどうし」

 

 

ガッツン!

 

 

「〜〜っ!?!?」

 

 

ふぅ、これで少し溜飲が下がったな、

 

 

「「な、何する(の!ゆーくん)(んですか!悠夜さん)」」

 

 

ゲンコツが本気で痛かったのか篠ノ之だけでなく織斑まで半泣きで文句を言ってくる、が

 

 

「なんで殴られたか本当に分からないか?」

 

と、俺がとてもイイ笑顔で言うのを見て二人は目を逸らした。

 

 

「なんでだろ〜、束さんにはわから、嘘ですごめんなさい、謝るからその振り上げてる手を下ろして〜」

 

 

相当さっきのが痛かったのか半泣きで真面目に謝ってくる、

 

 

「ちょ、ちょっと待って下さい、実行犯は束なのになんで私まで殴られてるんですか?」

 

 

ウサ耳がちーちゃんひど〜いとか言ってるが無視して質問に答える、

 

 

「まぁ、そうだな、確かに実行犯はこのウサ耳だ、……だが」

 

 

途中まではその通りだと頷いていた織斑だが最後の言葉に首を捻っている。

 

 

「お前、こいつを止めようとしなかっただろ?」

 

 

「暴走した束を止められなかったんです、」

 

 

「ほぉ、そうかそうか、『止められなかった』てことは止めようとしたと、」

 

 

「……はい」

 

 

目を逸らして若干歯切れ悪そうに答える織斑、

 

 

「ところで、そこのウサ耳に聞いたんだが、このバカは最初普通に家で俺にISを触らしてそれを録画して世界中に流すつもりだったらしい」

 

 

「そ、そうなんですか」

 

 

織斑がうっすらと汗をかき始めた、ウサ耳がバカじゃないよ〜とか言ってくるから少し音のおかしいデコピンで沈めた(誤字に非ず)

 

 

 

「だが、それでは効果が薄いし最悪、悪ふざけだと思われるから、人通りの多いところで見せつけた方がいいと、提案した奴がいたそうだ」

 

 

「………」

 

 

「何か言うことは?」

 

 

「すみませんでした」

 

 

「最初からそう言っとけ」

 

観念した織斑を謝らせて周りを見てみると俺の行動にビビったのか女子達が遠巻きにこっちを窺っていた。

 

よしよし、上手くいったなウサ耳バカ達に罰を与えるついでに周りに対する牽制にもなったな、

 

 

満足そうな俺を見て周りを見回し俺の考えに気付いた織斑が聞いてきた。

 

 

「……悠夜さん、もしかしてこの為に叩きましたか?」

 

 

「それもあるが主な理由はさっき言ったやつだ」

 

 

俺の言葉に顔を引き攣らせていた織斑がため息をついた、ため息をつきたいのは俺の方だよ。

 

 

「相変わらず、容赦がありませんね」

 

 

「知るか、そもそもお前らがあんなことしなけりゃこんなことにはならなかったんだよ」

 

 

「とりあえず、これから三年間よろしくお願いします」

 

 

「話しをきけや、こら、何スルーしてんだよ」

 

 

はぁ、もういいや、チョップチャプスでも食べよう。

 

カサッ、パクッ、カリコリ

 

「……それは食べてもいいんですか?」

 

 

「ここに入学する時にいくつか条件を付けたからな、問題ねぇ」

 

 

「それを食べる為にわざわざ?」

 

 

「まぁ、他にも理由があるけどな」

 

 

呆れたような顔をして見てくる織斑と復活したウサ耳に聞きたかったことを聞く

 

「そぉいえば、なんか俺以外にも男の奴がいるんだって?さっき女子が言ってたが」

 

 

そうなのだ、こいつらを叩いて牽制したのもあるが半分くらいの女子は隣のクラスに行っている、俺以外の奴を見に、そのおかげでまだこうしてゆったりしていられるのだ。が聞いた途端二人は顔をこれでもかと言うくらいに歪ませた、どうしたんだ?

 

 

「おい、どうした?」

 

 

聞いても返事をせずに顔を歪ませたままだ、何なんだよ、また厄介事か?もういいよ、せっかく俺以外の犠牲者だから仲良くなれるかと思ったらこいつらが顔を歪ませる程のめんどくせぇ奴かよ、

 

 

あん?なんでもう一人の男でISを使える奴が分かったのか?だって?……あれだよ、一人いたなら他にも居るんじゃないかって世界中で希望した男のIS適正を調べたらしい、普通ならそんなことする筈がないが俺という事例が見つかったためにやることになったらしい、

 

 

で見つからないと思っていた二人目が見つかってこの学園に入ることになったんだと、俺は自分の交渉と準備のせいでろくにテレビも見れてなかったからここに来て初めて知ったってことだ、説明が長くなったな、まぁいいか。

 

 

「……悠夜さんも知っている奴です」

 

 

「はっ?俺の知り合いかよ、誰だ?自慢じゃないが俺の交友関係は特殊だから知り合いだったら分かる筈だぞ」

 

 

「……なんであんなのが私のISに、訳分かんない、気持ち悪い」ぶつぶつ

 

 

おいおい、ウサ耳が此処まで嫌う奴って……コイツは基本他人に無関心だから、此処まで表に出して嫌ってるのは逆に珍しいな、

 

 

「なぁ、結局誰なんだ?」

 

「……髪の色は銀でオッドアイです」

 

 

銀髪でオッドアイの俺が知ってる奴ねぇ、んで女子のさっきの話を信じるならルックスがいい、つまりイケメンと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………よりによってあの変態かよ、いっそ逃げた方がまだ平穏がありそうじゃねぇかよ、どうなってんだよ俺の人生よ。

 

 

 

 

 

 

 

その日の後の授業を凄まじく低いテンションで受けてとりあえず、自分の家に帰った、普通は寮に入らなければいけないが、ウサ耳の知り合いとして交渉して一々許可を取らなくても家に帰れるようにした、まぁなるべく寮にいるように言われているが今日くらいは勘弁してくれ、憑かれたんだいろいろと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……後の学園生活を考えて絶望しながら眠りについた、せめて夢の中くらい平穏に暮らせることを切実に祈りながら。



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悪夢……現実と大差ねぇな……

リンゴーン、リンゴーン

 

 

海の見渡せる場所にある純白の教会で俺はやっと掴んだ平穏とこれから共に歩んで行くパートナーを待っていた、思えばここに来るまでとても長かった、それでも俺は今こうしていられることを考えればそれもいい思い………出とは言えないが、これからは違う、俺はここから始めるんだ、新しい人生を!

 

 

考えている内に式つまり俺の結婚式が進み牧師が神に捧げる言葉を読み上げ、後は誓いのキスだけとなった、神よ、俺は今までおまえのことは黒いGくらいの認識だったが今この時からちゃんと神様として認識してやるよ。

 

 

「では誓いのキスを」

 

 

「「はい」」

 

 

俺はゆっくりと新婦達の方を向く、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………新婦『達』?

 

『さぁ、私と誓いのキスを!!』

 

 

な、なんで何人も相手がいるんだよ!しかも織斑が大人になったみたいな奴とかなんか見覚えある奴に全く見覚えない奴がいるし!

 

 

と、とにかく逃げ、

 

 

『ゆーくーん、結婚なら私としよ〜』

 

 

逃げようとした俺の前にウサ耳が大量に現れた、軽く百人はいるなぁ、

 

 

『さぁ、結婚、結婚』

 

 

そう言って何人もの花嫁と増殖したウサ耳が迫って来る、もうダメだ、誰か

 

 

「~~っっっ!?!?!?!?」

 

ガバッ、

 

 

「はぁ、はぁ、ゆ、夢か?」

 

 

朝からなんでこんな目に……神よ、おまえは今日から黒いG以下だ、もはやこれは履らねぇよ。……朝っぱらから体力をかなり消耗した俺は学校に着いてからソッコーで机に突っ伏した、

 

 

夢の中まで休めねぇとか、俺はどうしたらいいんだよ、と割と真剣に悩んでいるとその悩みの大半を占める奴らが寄ってきた。

 

 

「ゆーくん!おは」

 

 

スッパァン、

 

 

俺はこの時のために持って来ていたハリセンでウサ耳をおもいっきり叩いた、はぁ〜、少しスッキリした。

 

と俺が爽やかな笑顔を浮かべるているとウサ耳が文句を言ってきた、

 

 

「ゆーくん!なんでいきなり叩くの!?束さん今日はまだなにもしてないよ〜!」

 

 

「確かに今日はいきなり過ぎませんか?」

 

 

『まだ』なのかよ……

 

 

「うっせぇ、俺の安眠を悪夢に変えた罰だよ」

 

 

「?、なんのこと?」

 

 

「どういうことです?」

 

 

と聞いてきたので仕方なく俺が朝見た悪夢を話した。

 

「そ、それは……」

 

 

「ゆーくん!いくらなんでもそれはひどいよ!束さん何にもしてないのに叩かれたことになるよ〜!」

 

 

と織斑は若干顔を引き攣らせながら、ウサ耳バカはプリプリ怒りながら言ってきた、

 

 

まぁ、確かにさっきのは理不尽だったかな、

 

 

「あ〜、悪かった、悪かった、さっきのは確かに理不尽すぎたな」

 

 

「ダメだよ!束さん何にもしてないのに叩かれたたんだから、何かお詫びしてもらわないと!」

 

 

怒っていたのが嘘のように今度はニコニコしながらお詫びを求めてきた、めんどくせぇ、

 

 

「お詫びって何だよ?」

 

 

「うーん、今は思いつかないから保留だよ〜」

 

 

なんか更に厄介事の予感がするな、くそぅ、衝動のままに叩くんじゃなかったなぁ、

 

 

「あ、あの」

 

 

「あん?どうした?織斑」

 

さっきまで黙っていた織斑が急に話し掛けてきた、どうしたんだ?

 

 

「ど、どうでしたか?」

 

 

「何がだよ?つかいい加減会話の主語抜くのやめろ、意味分からんから」

 

「その、私のウェディングドレス姿は」

 

 

「あぁそのことね、うん、普通に似合ってたぞ、てか元がいいから基本何でも似合うと思うが?」

 

 

「そ、そうですか、ありがとうございます///」

 

 

顔を赤くして織斑が礼を言ってきた、まぁ身近な異性にそんなん言われたら照れるか、自意識過剰じゃないならある程度好意を持たれてるみたいだしなぁ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うっせぇよ、調子にのるなとか言うな、普通に考えてただ親しいだけの相手をわざわざ世界中巻き込んでまで同じ学校に入れようとするか?ウサ耳バカならしそうだが織斑は一応考え方は常識人だからな、多分そうなんじゃねぇの?違うなら違うでいいしな

 

 

こいつと付き合ったらそれこそ平穏なんて消え去りそうだから今のところ全くそんな考えはねぇが、後々どうなるかは知らん、

 

 

「あ〜!ちーちゃんずるい〜、ゆーくん!ゆーくん!私は!私は!」

 

 

「うるせぇよ、似合ってたが百人規模で来られたらただの悪夢だよ、」

 

 

「わ〜い、ゆーくんに褒められた〜♪」

 

 

後半の言葉は無視かよ……やたら嬉しそうだがコイツのことだからさっきのお詫びは忘れてないんだろうなぁ、

 

 

「ゆーくんには何して貰おうかな〜♪」

 

 

やっぱり、めんどくせぇなぁ、さて、そろそろめんどくせぇ、授業が始まるなぁ、理論とかはこのバカみたいに分厚い参考書を読んどけば分かるんだが………読む気にならんな、よし、寝よう、今朝の悪夢のせいでろくに寝られなかったからなぁ、もう限界だ、おやすみ〜、

 

 

二人を自分の席に戻して俺は机に突っ伏して寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……く…くん……みなづ……水無月君!」

 

 

「はい」

 

 

おぉう、びっくりした〜、急にでかい声だすなよな、ん?全然そんな風に見えないって?……あれだよ、こんなことでビビってたら屋上で寝てたらいきなりダイビングして来るウサ耳バカに対処できねぇからな、要するに慣れだ慣れ、

 

「あの、今までのところで分からないところはありますか?分からないなら言ってくださいね」

 

 

「はい、分かりました、ありがとうございます」

 

 

何だそのことかよ、教師も大変だな、いちいち生徒のことを気にしないとダメ何だから、

 

 

その後の授業を一応真面目に受けて休み時間になった、

 

 

「ゆーくん、ISについての参考書ちゃんと読んだの?」

 

 

「あん?んなもん読む筈ねぇだろ、めんどくさい」

 

 

「え?あんなに自信満々に返事をしていたのに全く分かってなかったんですか?」

 

 

「いや、だって全部分からないなんて言ったら先生かわいそうだろ?」

 

 

「何ですかその微妙な優しさは……」

 

 

織斑が疲れたように言ってきたがそんなもん知るか、俺の勝手だろうが、それよりもだ、

 

「おまえら、休み時間の度にこっち来んの止めろ、目立つだろうが」

 

 

「えぇ〜、嫌だよ〜、だってゆーくんといると誰も寄って来ないし、楽しいもん!」

 

 

「まぁ、そういうことです、騒がれるのはあまり好きではないので」

 

 

諦めて下さいと言ってきやがった、そりゃ入学初日にあんなことをした学園で二人しかいない男の一人とISを開発した天災で人当たり、というよりも他人に興味を全く示さないウサ耳バカにISが広まる原因となった英雄ってことになってる織斑の三人が揃っててここに話しかけて来ようとする猛者はよっぽど度胸があるやつか、

 

「束、千冬また同じ学校だな、とりあえず三年間よろしくな!」

 

 

空気の読めないバカぐらいだろう、こいつみたいな……な、

 

うっわ、織斑と篠ノ之顔が筆舌しがたい表情になってる、関わりたくないなぁ、

 

「片時君って織斑さん達の知り合いなの?」

 

 

変態の後ろにハーメルンの笛吹よろしくついて来ていた女子の一人が変態に質問した……嫌な予感がするなぁ、

 

「まぁな、幼稚園からずっと一緒で家も近いからな、所謂幼なじみってやつかな」

 

 

変態がキザったらしい、態度でそういうと周りは黄色い声をあげた……今のうちにっと、

 

 

「すごーい!美男美女の幼なじみなんて、小説みたい!」

 

 

「じゃあじゃあ、片時君も専用機持ってるの?織斑さんは篠ノ之さんに作ってもらって持ってるんだし」

 

 

「いや、『まだ』持ってないよ」

 

 

「まだってことは持つ予定があるの!」

 

 

「それは、ほら、束次第かな」

 

 

また歓声、そして変態が喋り周りが騒ぐ度に天災達から瘴気のようなものが膨らんでいく、そろそろまずいなぁ、よし後少し!

 

 

「篠ノ之さん!実際のところどうなの?もう作ってたりするのかな?」

 

 

「………」

 

 

「え、えっと、篠ノ之さん?」

 

 

「ははは、相変わらずだな束は、ごめんね、束は興味が沸いた人としか話そうとしないから、なぁ、千冬?」

 

 

「………」

 

 

うわぁ、織斑まで黙ってるよ、周りに人がいるのにあんな態度を取るってことは相当きてるな〜、さてと包囲網からも抜け出せたしやたら遠くにある男子トイレに行ってチャイムがなるまで時間を潰しますかねぇ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トイレから戻って来た俺が見たのは、教室の床で頭にたんこぶを作って気絶している変態と真剣を持ってものすごく怖い顔をしている織斑にとてつもなく冷たい目をしながら、俺から奪っていつも付けていた今は壊れたウサ耳を大事そうに抱えている篠ノ之、呆然とそれを見るギャラリー達だった。

 

 

……一体何があったんだよこれ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、織斑、銃刀法違反だぞ、それ。



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女子の視線は好意であれ嫌悪であれ男には辛いものがあると愚考する……胃が痛い……

……前回、というよりも昨日だな、変態が何をしたのか、言ったのか全く知らんが、まぁ何かしたんだろ、織斑に聞いても何でもないの一点張りだし周りの奴らは今は関わりたくないのか俺を避けるし変態は論外だしウサ耳……は今は付けてない篠ノ之はそもそも学校に来てないっぽいから現状、俺に何があったのか知る術はない……ないのだが、

 

 

何だよ、この空気、俺が教室に入った途端こっちを窺って来る女子の皆様方、で次に視線を移すのが何時もよりも硬い表情をしながら時折、学校に来てない篠ノ之の席の方を心配そうに見る織斑と、

 

 

……俺にどうしろと?

 

 

で、そんな感じの何とかして!というような女子の皆様方からの無言の、言葉よりも重いプレッシャーをかけられながら、お通夜のような授業を耐え切り、やっと昼休みだ、昼休みなんだが、

 

「………」

 

 

暗い、暗すぎる、俺は久しぶりに静かだからいいんだが、周りの視線が痛い……

 

あの変態が何をしたのか知らないが俺に皺寄せが来てるじゃねぇかよ!責任取れよ!……つっても今変態は学校全体からはぶられてるがな、俺以外全員女子だからな、俺の中学時代より酷いかも知れん、憧れの相手とその親友を完全に怒らしたからなぁ、皆さんめちゃくちゃご立腹なんだよ、女子の結束力は半端ないからソッコーで昨日の話が広まってあっという間に孤立したな、全く同情する気が起きないがな、

 

さてさて、どうしますかねぇ、このまま放置したら俺の胃がストレスでマッハだし、かと言って何かしら俺が行動したらなんか注目集めてめんどくせぇことになりそうだしなぁ、どうすっかなぁ、はぁ……

 

 

ピリリ、ピリリ、

 

 

ん?着信か?誰からだ、ってあぁ、なるほどね、っとここじゃなんだから屋上に行くか、

 

 

スタスタ、

 

 

「はい、もしもし、どしたよ?こんな時間にかけて来るなんて珍しい……」

 

 

悠夜Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side千冬

 

 

はぁ、駄目だな私は、親友が落ち込んでいるのに何もしてやれないなんて、自分の力不足にイライラする、そのせいで悠夜さんにも迷惑をかけてしまっている……これはいつものことだな、

 

 

そもそも、何故あんなやつがISに乗れるんだ、あいつがここに居なかったらこんなことには……たらればを言っても仕方ないか、それでもあいつのしたことは許せることではない、馴れ馴れしく話しかけて来て勝手なことを言って……その後のことは思い出したくもないが、結果として束が大切にしてきた物を壊し悪びれもせずに言ってはならないことを言った、私はそれを聞いた瞬間あいつを刀の峰で叩き伏せた、

 

 

咄嗟に峰にしなければ本当に斬っていたかも知れない、それくらい冷静じゃなかった………刀は鍛練に使うために持ち歩いている、たまに剣道部にも参加させてもらっているが物足りないのでな、

 

束が学校に来ていないのは『悠夜さん』に貰った(あの場合奪ったか?)ウサギの耳が付いたカチューシャを壊されたからだ、束は本当にあれを大切にしていたからな、貰った日やその後一週間くらいは皆に、といっても私や一夏、箒くらいだが、見せびらかしていたくらいだ……あまりにうるさいのでアイアンクローで黙らせたが、

 

 

そんな思い入れのある物を壊されたから、特に悠夜さんに貰った、というのが大きいだろう、あの人は食べ物などはたまに、本当にたまにだが、奢ってくれることがあるが形のある物をくれたことはなかった、そんな悠夜さんが形のある物を初めてくれたのだ、表面上はいつもよりテンションが高いだけに見えたが内心は本当に嬉しかったのだろう。

 

 

束にとって世界とは身内とその他で構成されている、自分を自分として扱ってくれる、束自身も大切な者達とどうなってもいい、どうでもいい者達、そんな世界で束は生きている、だから身内には甘いし我が儘も言う、逆に他人にはとことん無関心だ、けれど束は身内に嫌われることを恐れている、それは悠夜さんのおかげで束と真剣に向き合い話をして聞いたことだ、嘘はないだろう。

 

 

悠夜さんには嫌われているのでは?と思うかも知れないがあの人にはめんどくさがられているだけなので嫌われてはいない……と思う、

 

だから今回、あいつのせいだとはいえ悠夜さんに貰ったカチューシャを壊したせいで嫌われてしまったのではないかと落ち込んでいるのだ、あの人はそんなことでどうこう言う人ではないと束自身分かっているのだろうが、それでも最悪の場合を想像してしまいあの状態になっているのだろう、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……数年前の私のようにな、

 

 

束にとって悠夜さんは本当の他人から身内になった人だ、箒のように妹だからではなく、私のようにものごころ付く前からの仲だからでもなく、一夏のように私の弟だからでもない、繋がりの全くなかった、そんな状態から自分を分かってくれて、自分自身を見てくれるそんな束にとって今までに居なかった初めての相手だ、よけいに嫌われるのが怖いのだろうな、

 

 

悠夜さんが私達を似ていると言っていたときがあって、その時は否定したがこの状態を見ると納得せざるおえないな、なんだかんだ言ってよく見ているなあの人は、いつになったら追いつけるのか、

 

 

部屋に篭っている束を引っ張り出すのに1番簡単なのは悠夜さんにどうにかしてもらうことだが、私が言って行動してもらっても束の心にはしこりが残るだろう、私に言われたからやったんだと、かと言って悠夜さんが自分から行動するのは目立ちたくない悠夜さんからしたらなるべくしたくないだろう、

 

 

本当にどうすればいいのか、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを考えていたら一週間ほどがたち、いよいよどうするか、と思っていたら悠夜さんから、今日バカの家に行くから雪も海を連れて来い、というメールが送られてきた……私達に散々主語を入れて話せと言っているのだからもう少しちゃんとしたメールを送って欲しいと思った私は悪くないと思う、

 

 

とりあえず考えていてもしょうがないので一夏を連れて束の家に向かった、

 

 

千冬Sideout

 

Side束

 

 

………ゆーくんから貰ったウサ耳が壊されてから一週間くらいたったと思う、

 

あの日、家に帰ってからずっと部屋から出てないからどれくらい時間が経ったのか正確には分からない、ご飯は箒ちゃんが持ってきてくれるのを食べてるから死ぬことはないと思う。

 

ベットの上で目の前にある壊れたウサ耳をぼーっと見ている、このウサ耳を直すのは簡単だけど問題はそこじゃない、これを壊したこと自体が問題なんだ、

 

 

このウサ耳はゆーくんから初めて貰った形に残る物だった、ほとんど奪うみたいな感じだったけどゆーくんがくれるって言ってくれた、本当に嬉しかった、だからいつも付けて、壊さないようにして、大切にしてきた、なのに壊した、壊されたって言った方が正しいかも知れないけどそれでも、私がもっとしっかりしていたら壊れなかったかも知れない

 

ゆーくんから貰ったのに壊しちゃって、ゆーくんに呆れられたかな、それとも怒ってるかな、………嫌われ…ちゃったかな、ゆーくんは優しいからそんなことはないと思う、それでもゆーくんに嫌われるのは嫌だ、耐えられない、だから怖い、もし本当に嫌われてたらどうしよう、そんな考えが頭から離れなくてずっと部屋に閉じこもっている、

 

 

ゆーくんは私に、私達にとって特別なんだ、天才と言っていいだけの才能と頭脳を持っていた私達、周りは距離をとっていた、私は他人なんてどうでもよかったけどちーちゃんはつらそうだった、そんなちーちゃんを助けてくれた、そのおかげでちーちゃんはすっごく明るくなった、それに私のことを気味悪がらずにいてくれてそのままの私として受け入れてくれた、それからだ、ゆーくんが私の大切な人になったのは。

 

 

面倒だって言いながら世界中から追われるはずだった私と、孤立していたちーちゃんを同時に自分が死ぬかも知れないのに救ってくれた、嬉しかったなぁ、………その後の取材とか告白とかは全く手伝ってくれなかったけど、

 

久しぶりに会ってもゆーくんは何にも変わってなかった、いつも通りめんどくさそうにしながらちーちゃんのことで悩んでた私にちーちゃんと話し合うようにしてくれた、ゆーくんは自分を緩衝材がわりに使われるのがめんどくさいって言ってたけど本当は私達に仲直りして欲しかったんだとおも…………本当にめんどくさかっただけかも知れない、けど、

 

 

ゆーくんに嫌われたくないなぁ、…ゆーくん………

 

 

 

 

コンコン、

 

 

誰だろ、箒ちゃんはノックの後に声かけてくれるから違うし、

 

 

「束、私だここを開けてくれ」

 

 

ちーちゃん?心配して来てくれたのかな、でも今は誰にも会いたくない、だから

 

「ちーちゃん、来てくれてありがと、けど、ごめんね今は誰にも会いたくないんだ、」

 

 

「……はぁ、重症だな、束、悠夜さんが来ているから早く出てこい。」

 

 

何で!ゆーくんが来てるの

 

「ゆーくんにも会いたくないから帰って」

 

 

「何を駄々をこねているんだ、早くしろ」

 

 

「やだ、絶対に出ない」

 

 

「だ、そうですよ、悠夜さん」

 

 

ゆーくんがそこにいるの!

 

ドンドン、

 

 

「オイ、こら、とっとと出てきやがれ、そして学校に来い、おまえが学校に来ないせいで俺がやたら注目されてんだよ、胃がヤベェんだよ、ストレスが溜まってマッハなんだ、」

 

 

「怒ってないの?」

 

 

「何にだよ、いや、ストレスが溜まってることに関してはイラついてるが」

 

 

「……ウサ耳を壊したこと」

 

 

「何だ、おまえが壊したのか?雰囲気的に変態がやったのかと思ってたんだが」

 

「でも、壊したのにはかわりないよ」

 

 

「あぁ〜、もうどっちでもいいから一回出て来いや」

 

「………やだ」

 

 

ブチッ、

 

 

「あぁ、そうかいならいい、おまえは動かなくても」

 

やっと帰ってくれ

 

 

「引きずり出すから」

 

 

え?

 

 

「おらぁ!」

 

 

バッキィ!ガラガラ、

 

 

「おし、開いたな」

 

 

「これは開いたって言わないよ!?壊したって言うんだよ!?」

 

 

「なんだ、元気じゃねぇかよ、つか足いってぇ、ドア硬すぎだろ」

 

人に散々天災だなんだって言ってやってることはあんまり変わらない気がする、

 

「あぁ、ウサ耳マジで壊れてんのな、まぁ壊れたもんはしゃーないだろ」

 

 

「っ!でもゆーくんが初めてくれた物なのに、壊し、ちゃった、」

 

 

壊れた日に一回見られてたけどあらためて言われると泣きそうになる、

 

 

「大切にして、たの、に、壊し、ちゃったぁ、ごめんね、ゆーくん」

 

 

ダメだな、泣きそうなのガマン出来そうにないや、

 

 

「はぁ、お前らマジで似過ぎ、類友ってマジなんだなぁ、まぁいいや、ほれ、これやるからテンションを元に戻せ」

 

 

と言ってゆーくんが持っていた袋の中から何かを取り出し投げてきた

 

 

「っ!これって」

 

 

投げ渡された物を見てみたら、新しいちょっと形の変わったウサ耳だった。

 

 

「ウサ耳だが?他の何に見えるよ?」

 

 

「私、壊しちゃったのにまたくれるの?」

 

 

「自分から破壊したなら流石にやらんが今回は不可抗力だからなぁ、」

 

 

「それに、お前が学校来ないといつまでたっても俺が見られ続けるんだよ、だからそれ付けてとっとと学校に来い」

 

と言って私の頭に新しいウサ耳を付けてぽんぽんと頭を撫でてくれた、

 

ゆーくんはいつもこうだ、普段はめんどくさがって何にもしようとしないのに、本当にしてほしいことには敏感で助けてくれる、

ずるいなぁ、本当に、

 

 

だから私は、

 

 

「ゆーくん」

 

 

「何だよ?」

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この人のことが大好きだ。



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姉妹ねぇ……どっちが姉だよ……

さて、これで視線による圧力からは開放されるな、………別の意味で注目を集めそうだけどなぁ、とりあえず

 

 

「おりむら〜」

 

 

「終わりましたか?」

 

 

「あぁ、とりあえず大丈夫みたいだk「ちーちゃん!ちーちゃん!見て見て!新しいウサ耳だよ〜♪ほらほら!このウサ耳動くんだよ!すごいでしょ!すごいでしょ!」……」

 

 

スパァン!

 

 

テンションが戻った途端うるさくなったからハリセンでシバいた、

 

 

「黙れ」

 

 

「うぅ〜、ゆーくんがひどい〜、さっきはあんなに優しかったのに〜」

 

 

「なんだ、弱ってるところにとどめを刺して欲しかったのか?」

 

 

「ごめんなさい」

 

 

「たくっ、それでだ、織斑、ここの片付けは俺がしとくからそこのウサ耳バカを風呂に入れといてくれ」

 

「あぁなるほど、わかりました」

 

 

「なんで?」

 

 

織斑は分かったようだがウサ耳バカは気付いてないみたいだ、

 

 

ウサ耳バカを見る、よれよれの服、ボサボサの髪、目の下の隈、うん、いろいろと終わってるな

 

 

とウサ耳バカは見られてようやく自分の恰好に気がついたのか直ぐさま織斑を連れて出て行った、……やっぱりしばらく放置して置いた方が良かったかも知れない。

 

 

はぁ、とりあえず片付けを始めるか、ゴミを集めてドアは……めんどいからそのままでっと。

 

 

〜片付け中〜

 

やっと終わった、あぁ疲れた、最近あんま寝てねぇからなぁ、そろそろ限界だ。

 

と、ちょうど上がって来たみたいだなぁ、それじゃとっとと渡すもん渡して帰って寝よう、そうしよう。

 

 

スタスタ、

 

「あ!ゆーくん!」

 

 

「悠兄ちゃん!」

 

 

「悠兄さん」

 

 

「……悠夜さん、とりあえず終わりました」

 

 

無駄にテンションの高いウサ耳バカとかなり疲れた様子の織斑が紅葉と海と一緒にいた。

 

 

やっぱりハイテンションのウサ耳の相手はかなり精神力をもっていかれるみたいだな、………押し付けて正解だったな。

 

織斑が恨めしそうに見ているがスルーだ、

 

 

「……はぁ、それで何故私はともかく一夏まで呼んだのですか?」

 

 

織斑がこれ以上見ていても意味がないと悟ったみたいで諦めて質問してきた。

 

 

「あぁ、それはあれだ、同時に渡した方が楽だからだよ」

 

 

「渡す?何をですか?」

 

 

「これだよ」

 

 

そう言って俺はウサ耳が入っていた袋からそれを取り出して四人に投げ渡す

 

 

「わぁ〜!ちーちゃん!これすごい綺麗だよ!」

 

 

「かっこいい〜!」

 

 

「……綺麗」

 

 

「うるさいぞ束、悠夜さんこれは」

 

 

「お前らの頼みの品と紅葉達の進級祝いだ、気にいらなかったらテキトーに処分してくれていいぞ」織斑姉弟には細かく模様の彫られた銀色のブレスレット、篠ノ之姉妹には同じく細かい模様の彫られた金色のブレスレットをそれぞれ渡した、まぁ、ブレスレットって言っても細いリング状のやつだけど、その分余計に彫るのがめんどくさかった、もうすぐ仕上げってところで新しいウサ耳を平行して作ってたから、睡眠不足でヤバイ、

 

「頼みの品って?」

 

 

「何の話しですか?」

 

 

ビキッ、

 

 

「ほぉ、テメェら自分達が言ってたことすら覚えてねぇのか」

 

 

今のはイラッとしたね、自分達が言っといて人がわざわざ実行してやったのにそれを忘れやがって、

 

 

「え?なにか言ってたっけ?」

 

「えぇと、何でしたっけ?」

 

「『私達が高校に入学したら(ゆーくん)(悠夜さん)の作ったアクセサリーをお祝いとして下さい』って俺がフランスにいるときにやたら言ってきたからわざわざ作ったんだが?俺の気のせいだったか?」

 

こいつらはどこで知ったのか分からんが俺がアクセサリーを作れると知って向こうに行った当初さんざん作ってくれと言ってきてたくせにもう忘れてやがる

 

 

「あぁ!そういえば言ってたね!」

 

 

「……言ってました」

 

 

「何か言うことは?」

 

 

「ごめんなさい、ゆーくん」

 

 

「すみませんでした、悠夜さん」

 

 

はぁ、こいつら言うことがちげぇだろ、

 

 

「お姉ちゃん、千冬さん、違うよ、こういう時はありがとうって言わないとダメだよ」

 

 

……ちょっとびっくりした、よく覚えてたなぁ、紅葉結構前に言ったことなんだがな

 

「箒ちゃん……うん!そうだね、ありがとう、ゆーくん」

 

 

「箒に教えられるとは私もまだまだだな、あらためて、ありがとうございます、悠夜さん」

 

 

「悠兄ちゃんありがとう!」

 

 

「悠兄さんありがとうございます」

 

 

と笑顔で礼を言ってきた、まぁいいだろ、喜んでるみたいだしな、さてと帰って寝ますか〜、っとその前に

 

「篠ノ之」

 

 

「何?ゆーくん」

 

 

はしゃぎまわっていたウサ耳に声をかける、これは言っとかないとなぁ

 

 

「紅葉に礼言っとけよ」

 

 

「箒ちゃんに?」

 

 

「あぁ、紅葉はお前が学校休んだ日に俺に電話をかけてきて、『お姉ちゃんが元気ないんです、すごく落ち込んでて、何かあったんですか』って半泣きで言ってきてたからな、詳しいことは俺には分からんかったから、とりあえず学校でちょっとウサ耳を壊された?からかなって言ったんだが」

 

「『私をお姉ちゃんのカチューシャを壊した人のところに連れて言って下さい、お姉ちゃんに謝って貰うように言います!』って今度は怒りながら言ってきてなぁ、かなり焦った」

 

 

「で、いろいろ説得して落ち着けたんだが、ここ一週間、毎日俺に電話してきてずっとお前の心配してたからな、その分ちゃんと礼を言っておけよ」

 

 

ほんと、優しい子だよ

 

「織斑にも聞いてたみたいだし」

 

 

織斑も似たようなことがあったのか苦笑している

 

 

「ほんとに?箒ちゃんが?」

 

 

あぁ、と頷いてやると篠ノ之はプルプル震えたかと思うと、紅葉に飛び付いた

 

 

「ほうきちゃ〜ん、ありがとう、おね〜ちゃんの心配してくれて、それからごめんね、心配かけて」

 

 

「お姉ちゃんもう元気になった?」

 

 

「なったよ〜、ほうきちゃんのおかげだよ〜」

 

 

「よかったぁ」

 

 

篠ノ之半泣き、つかもう泣きながら紅葉に礼を言って、紅葉はそれを笑顔で受け止めていた………マジでどっちが姉だよ

 

 

としばらく姉妹で抱き合ってたんだが、ウサ耳バカが今度は妹自慢を始めたのでその間に紅葉をこっちに呼んだ

 

 

「紅葉、ちょっときな」

 

 

「悠兄さん、どうしたんですか?」

 

 

紅葉の質問を聞きながらウサ耳やらブレスレットやらが入っていた袋から目当てのものを取り出す

 

 

「ほれ、これやるよ」

 

 

と言って俺は黄緑色の両端に黒いラインの入ったリボンを渡した、

 

「え?わ、私にくれるんですか?」

 

 

「いや、今言っただろうよ」

 

 

嬉しそうだがなんでくれるのか分からなくて困惑してるな

 

 

「な、なんでですか?」

 

 

「お姉ちゃんを心配して自分から行動したご褒美だ、いらないなら別にいいんだが」

 

 

「欲しいけど……私に似合うかな」

 

 

あぁ、そゆことね

 

 

「はぁ、紅葉」

 

 

「はい」

 

 

「お前はもう少し自分に自信を持て」

 

 

「でも、私はお姉ちゃんみたいにかわいくないし」

 

 

だんだんネガティブになってきたな、マジで眠いし多少強引でも説得して帰ろう

 

「紅葉、お前は自分が思っているより十分かわいいぞ?ウサ耳バカも外見だけは確かに整ってるが、紅葉も方向性は違うが将来ウサ耳バカに劣らない美人になると俺は思う」

 

 

「か、かわいいですか///」

 

 

「あぁ、だからこれ貰ってくれ、流石にこれで自分の髪を縛る気にはならん」

 

 

「ありがとう、悠兄さん///」

 

 

顔を赤くして礼を言ってくる紅葉の頭を軽く撫でて俺は帰るためにウサ耳シスコンバカとその演説を聞いて、いや、聞かされている奴らに声をかける

 

 

「じゃ、帰るな」

 

 

「あ、ゆーくん待って!」

 

「……なんだよ、俺は帰って寝たいんだ、邪魔するな」

 

 

「えぇ〜、帰っちゃうの〜ってそれよりもゆーくん!私があげたネックレスをちょっと見せて?」

 

 

「なんだ、とうとう爆発させるのか?」

 

 

「違うよ!?まだそんなこと思ってたの!?」

 

 

「用があるなら早くしろ」

 

「ゆーくんがひどい〜、もう、少し見せてね」

 

 

と言って俺が首にかけていたネックレスを引っ張って何か調べ始めた………外させろよ……

 

 

「最適化は九割で最良化は八割、適応化も九割か、ほとんど終わってるけどゆーくんの望むような形になるのにまだもう少しかかるかな?」ぶつぶつ

 

 

「終ったか?」

 

 

「……うん!終わったよ〜、ゆーくんちゃんとこのネックレス外さないでくれたんだね!」

 

何言ってるんだ?こいつ?

 

「そんなの当たり前だろ」

 

「ゆーくん、そんなに私があげたネックレスを大切に」キラキラ

 

 

なんかやたら目を輝かせてるが

 

 

「だって」

 

 

「だって?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「爆発するんだろ?」

 

 

「しないよ!?なんでそんなに爆発させようとするの!?ゆーくん束さんのこと嫌いなの!?」

 

 

「はぁ、もう爆発物のことはいいだろ、もう帰るぞ、織斑達もまたな」

 

 

「だから爆発しないよ!?それに束さんの質問は無視!?」

 

 

「また明日悠夜さん、ブレスレットありがとうございました、大切にさせてもらいます」

 

 

「悠兄ちゃんありがとう!」

 

 

「悠兄さんありがとう」

 

 

織斑が嬉しそう微笑んで、海と紅葉も笑顔で礼を言ってきた、まぁ気にいったならいいや

 

 

ウサ耳バカが最後まで騒いでいたがスルーして帰る、かなり疲れたなぁ、とっとと帰って寝よう

 

 

そうして俺はやっと家に着いてベッドに入った、やっとまともに寝られるな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、ブレスレットのこと口止めすんの忘れてた………学校休もうかな行くのが怖いし、はぁ〜、平穏ってなんだろ



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ここまで厄介事が続くとは……

ふぁ〜あ、久しぶりにぐっすり寝れたなぁ、時間は……結構ぎりぎりだけど間に合うな

 

 

……なんか忘れてる気がするけどとりあえず牢獄(学校)に行くか〜…………字が違う気がするが、まぁいいか鍵閉めて、っといってきまぁ〜す、誰もいないけどね

 

 

スタスタ、

 

 

〜悠夜移動中〜

 

 

やっと着いたな、そろそろHRの時間なんだが、なんか騒がしい?とりあえず教室に入るか

 

 

ガラガラ

 

 

「「「「………」」」」

 

 

シーン

 

 

俺が入った途端、一斉に人だかりがこっちを向いて騒がしかった教室が一瞬で静まり返った

 

 

俺なにかしたか?

 

 

と疑問に思っていたら人だかりの中から篠ノ之と織斑がこっちに向かって来た………右手に俺がやったブレスレットを付けながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………やべぇ、完全に忘れてた

 

 

俺が冷や汗を大量にかいているのも関係無しにウサ耳と織斑が挨拶してきた

 

 

「ゆーくんおっはよ〜!」

 

「おはようございます、悠夜さん」

 

 

一縷の望みをかけて俺は天災達に話し掛けた

 

 

「よ、よぉ、お前ら、どうしたんだそのブレスレット、お揃いみたいだけどどっかで買ったのか?」

 

 

二人は怪訝そうな顔をしていたが俺の意図に気がついたのか、顔を見合わせていたが、二人同時にニヤッという音がピッタリなあくどい顔をして俺にとっての死刑宣告をしてきやがった

 

 

「やだなぁ〜、ゆーくんなに言ってるの?このブレスレットとウサ耳はゆーくんがわざわざ私たちのために『手作り』でプレゼントしてくれたやつでしょ」

 

 

「そうですよ、私たちが一年ぐらい前に無理矢理お願いしたのを覚えていてくれて、わざわざ『手作り』で渡してくれた物じゃないですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱりこいつら疫病神だ……

 

 

 

やたらと『手作り』を強調したセリフに顔を盛大に引き攣らせた俺としてやったり、というような顔をしている天災達を見ていたギャラリーは一斉に黄色い歓声を上げた

 

 

歓声を聞きながらこれからの学校生活を考えて深い、とても深いため息をついた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガツンガツン!

 

 

とりあえずこんなことになった原因であるバカ二人をおもいっきり叩いておいた、かなり痛かったのか涙目でうずくまっていたが、俺のこれからの心労を考えると全然軽い罰なので放置し席に座って眠り(現実逃避)についた

 

それからは大変だった、休み時間のたびにあのブレスレットはどうやって作ったのか、ウサ耳は壊れたのを修理したのか、血液型は何か、あの二人とどんな関係なのか、付き合っている人はいるのか、などなど、初日に聞けなかったことを含めて様々な質問をされた

 

 

ちくしょう、せっかくうやむやに出来てたのにこれじゃ意味ねぇよ……

 

 

 

俺と天災達とがどういう関係か聞かれたときにウサ耳バカが夫婦だよ!とかほざきやがったからバカをシバいて、加害者と被害者、いや被災者だと言ったら凄まじく微妙な空気になったが、俺はなにも間違ったことは言ってないので平然としていた

 

 

夫婦発言で上がりかけたテンションがぶった切られて困惑していたがしばらくしたら復活してまた質問責めにあった

 

 

関係の辺りの発言が気にくわなかったのか天災達は若干不機嫌そうにしていたが織斑にもどういう関係か?という質問がきて織斑だけでなく篠ノ之も全く同時に

 

「「とても(とっても)大切な人だ(だよ)」」

 

 

とか言ってくれやがったからその日はもはや授業もまともに出来ず、ただただ俺の精神力を削る日になった

 

これからどうなんだろうなぁ、俺、授業が終わり捕まらないように直ぐさま寮の俺の部屋に入りそんなことを考えていた

 

 

しばらくはまともな生活が送れないことに絶望しながら部屋の扉の鍵を強化して寝た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさてあのブレスレット事件から時間が経ち、やっと二年生になって新しいクラスにも慣れてきた

 

 

あん?今回はマジで話しが急に飛びすぎだってか?……俺もそう思うけど駄目作者がここで切ったら話しが短すぎるとか言って無理矢理繋げたんだよ、だから俺に文句ゆ〜な

 

 

一年の時はいろいろあった、臨海学校を筆頭にいろいろと、な、そこはまたいつか語るとしよう、さて前置きが長くなったが今俺の置かれている状況を説明しようか、いや説明させてくれ、俺が自分で状況をおさらいしたいから、付き合ってくれ

 

よし、それじゃ言うぞ、俺は今なぜかISの世界大会であるモンド・グロッソの会場に来ている………

 

ちなみにモンド・グロッソとは21の国が協力して開く公式のIS世界最強決定戦みたいなもんだな

 

 

………マジでなんで俺ここにいんだろ?普通ここに来んのって各国の代表だろ?俺代表じゃねぇのに………

 

 

 

 

……はぁ、いい加減現実から目を逸らすのはやめにするか、そうですよ〜、日本の代表として織斑が選ばれてそのサポーターとして篠ノ之で篠ノ之の頭を叩いた件で罰としてついて来るように言われたんですよ〜

 

 

俺としてはいまさら?って感じの上に余りにもやったことと釣り合わなかったから拒否したんだが……あいつら俺が来ないなら代表を降りるとか言い出しやがった、そのせいで政府のお偉方がでばって来て断れなかった

 

 

目立ちたくねぇのになぁ、あぁ、織斑が日本の代表として出てるのはどこぞのウサ耳バカと違って織斑は一応日本国籍だからだ………まぁ、そのことに異議を唱える国がいくつかあったんだがこの大会の期間だけ貴重なISが動かせる『男』のデータを取らせるってことで納得させたらしい

 

 

ん?俺じゃねぇぞ?そんなもんソッコーで断ったし天災達も一緒に拒否してくれたからな……連れて行かれるのは変わらなかったが……

 

 

で、俺の替わりにっていうか人身御供として変態君が選ばれた、というより俺以外に男のIS操縦者はあいつしかいねぇからなぁ、当たり前っちゃ当たり前だな

 

俺と天災達は一緒の飛行機で来たが変態君は別の便だった、理由は、まぁあれだよ、あいつらが全力で拒否ったからだ、拒否られた本人はVip待遇だとか思ってるみたいだからどうでもいいけどな

 

 

俺も別の便がよかったよ、飛行機なんて逃げ場がないところでハイテンションなウサ耳バカの相手は精神力の消費が半端なかったからなぁ

 

 

そんなこんなで今に至ると……やっぱ俺いる意味なくね?

 

 

……止めようなんか泣きたくなってくるしもう着ちまったんだから言っても仕方ねぇしな

 

はぁ、だっりぃなぁ、めんどくさいなぁ、帰りたいなぁ〜、ってなんだ?あれ

 

 

織斑達が登録やら準備している間に俺は会場をぶらぶらしていた、あの二人が目を離した隙にめっちゃ頑張って逃げてきた、俺もたまには休息が欲しいからな、これくらいは当然だ

 

 

で、ぶらぶらしてたらなんか人が集まってるところがあった、少し興味が湧いたので近寄ってみたら………変態がISスーツを着た各国の代表(・・)っぽい美人な女の人達に囲まれて浮かれていた

 

 

……ふーん、なるほどねぇ、大変だねぇ国ってのも、さてと巻き込まれる前に退散しますか

 

 

「ねぇ、あなた」

 

 

と歩きだそうとしたら後ろから声をかけられた

 

 

……正直関わりたくないんだがなぁ、天災達程ではないけど厄介事の気配がするし、けどわざわざ日本語で声をかけてきたんだから反応しないのはまずい、か

 

「なにか?」

 

 

返事をしながら振り返るとISスーツを着た美人などっかの『代表』がいた、もう一つ視線を感じるが監視や敵意の視線じゃないから放置だ………なんでこんなスキル身につけてんだろうな、天災達のせいですね、そうですね

 

 

「な、なんだかすごく疲れてるみたいね、大丈夫?」

 

声をかけてきた人がちょっと顔を引き攣らせながら心配してきた、いい人っぽいんだがやっぱり俺の勘は警鐘を鳴らしているから、油断は出来ない

 

「あぁ、大丈夫だ、いつものことだから気にしないでくれ」

 

 

「いつものことって、それは大丈夫とは言わないんじゃないかしら?」

 

 

「……それはそうだが、とりあえず何か用か?」

 

 

「まぁ、いいわ、自己紹介がまだだったわね、私の名前はナターシャ・ファイルス、アメリカの代表よ、よろしくね」

 

 

「ご丁寧にどーも、俺に声をかけてきたってことは多分俺のことを知ってると思うが一応名乗っておこう、水無月 悠夜、世界で初めてISを動かせる男っていう邪魔以外なんでもないレッテルを貼られた天災達の被害者だ」

 

 

若干芝居がかった仕種で返した、これで気を悪くして帰ってくれたら儲けものだが

 

 

「へぇ、なんであなたのことを知ってると?」

 

 

チッ、むしろ興味を引いちまったか、対応をミスったな

 

 

「俺は別に目立つような容姿はしていないし、特に目立つようなこともしていない、それに俺を見てすぐに日本語で話しかけてきた、正直ぱっと見でアジア系の顔を見てすぐに日本人だなんて分からないだろ?」

 

 

「なのにあんたは自信を持って話し掛けてきた、おかしいだろ?仮にたまたまだとしてもだ、なんで俺に声をかけた?今は大会の準備中で日本人なんていくらでもいるし俺である必要はねぇ」

 

 

「理由があるとすればあそこにいるイケメン君に自分を紹介してもらうってことだが、あんたは俺があそこに行ってすぐに離れようとしたのを見てただろ?そんな奴がわざわざあそこに行く訳がねぇ、あいつの情報が欲しいならそんな奴から何かを聞き出せるとは思わないだろうしな」

 

「長々と説明したがこれが俺を知ってると思った理由だ、間違ってたら自意識過剰の馬鹿な奴がいたとでも思って帰ってくれ」

 

 

「……いいえ、合ってるわよ、確かに私はあなたのことを知っていて声をかけたわ」

 

 

ハズレてたらよかったのに、はぁ

 

 

「さいですか、で?結局何の用だ?」

 

 

「最初は特に声をかけるつもりはなかったんだけどね、あなたがあそこに向かってすぐに何かに気付いたみたいに離れて行こうとしたでしょ?」

 

 

「それが気になったのと世界で初めてISを男で動かした人っていうのがどんな人か気になってね、声をかけたってわけ」

 

 

「なるほどね」

 

 

「それでよかったらなんであそこにいる美人な人達のところに行かなかったのか教えてくれない?」

 

 

もう話しを切って帰るのは無理か

 

 

「美人なだけだったらよかったんだがなぁ、流石に撮影やら盗聴やらをわざわざされる趣味はないってだけだ」

 

 

ファイルスは少し驚いた顔をしてから今度はおもしろいものを見つけたって顔をしてきた

 

 

やっぱ厄介事か

 

 

「撮影と盗聴ってどういうことかしら?」

 

 

「分かってて聞いてるだろあんた、まぁいいや、あそこにいる美人達の髪に付けてるヘアピンとかイヤリングとかサインを貰うとか言って持ってるボールペンとか全部小型カメラやら通信機だろ」

 

 

「ぱっと見代表に見えるけど全員、重心が安定してねぇし、どう見てもスポーツとか武道、格闘技をやってる動きじゃねぇ」

 

「どっちかてーと、あれは接待とかに慣れてる人達の動き方だ、悪く言えば男に慣れてる人達だろう、国家の代表なんて人達ならわざわざ重心が安定しない振りとか男に媚びるようなことは代表のプライドがあるだろうし、しないだろうからな」

 

 

「ましてや、この女性が優遇される世界でそんなことをするのはそういう仕事の人達だろうしなぁ」

 

 

「ふーん、よく知ってるわね?接待に慣れてる人の動きなんて」

 

 

「ISを動かした当初それこそ腐る程見てきたっていうか相手してきたからな、いい加減見分けもつく」

 

 

「カメラや盗聴器は?」

 

 

「………知り合いにあれよりも高性能な発信機とか盗聴器を作る奴がいてな、見馴れてるんだよ」

 

 

「……どんな知り合いよ」

 

呆れながら聞いて来るが答えるのもめんどくさいのでスルーして、俺の癒しであるチョップチャプスを食べる

 

 

カサ、パク、カリコリ

 

「それで、もういいのか?いいなら帰るぞ」

 

 

いい加減帰りたいしな

 

 

「つれないわね、こんな美人と話してるんだからもう少しいいじゃないの、あなたは私に質問とかないの?たいていのことなら特別に教えてあげるわよ?」

 

 

スリーサイズとか、とやたらしなを作りながら聞いてきたのでとりあえずテキトーに質問する

 

 

「じゃあ、質問な」

 

 

「いいわよ、スリーサイズは上から」

 

 

「なんでそんなに日本語上手いんだ?」

 

 

「え?そんなこと?」

 

 

「あんたが言ったんだろ?たいていのことなら答えるって」

 

 

「そ、そうだけど、うーん、まぁいいわ、日本語が上手いのはISのコアの説明とかが全部日本語表記だからよ、コアを調べても出て来るのは日本語の説明ばかりで下手に触ってコアを壊したら目もあてられないから」

 

 

「ISに関わる人はみんな日本語を覚えているのよ、これで分かった?」

 

 

「あぁ、ちゃんと俺が知ってることと一致したな、流石国家代表だな」

 

 

「ふふん、そうでしょう……ってあなた知ってたの!?」

 

 

「知ってたな」

 

 

「じゃあなんで聞いたのよ!?」

 

 

「なんかテキトーに質問しないと、あんたあのまま俺をおちょくるつもりだっただろ」

 

 

「うっ」

 

 

「はぁ、やっぱりな」

 

 

「うぅ〜、なんか負けた気がする」

 

 

「何にだよ」

 

 

「ねぇ、私ってそんなに魅力ない?」

 

 

と涙目、上目づかいで聞いてきた、が

 

 

「客観的に見たら美人だし魅力もあるだろうが、わざわざボイスレコーダーを使って言質をとろうとする奴は俺は勘弁だな」

 

 

「あはは、ばれてたか」

 

 

と言って後ろ手に隠し持っていたボイスレコーダーをひらひらと目の前でゆらすファイルス

 

 

「バレバレだっつの」

 

 

「あなたっておもしろいわね、たいていの男なら鼻の下伸ばしていやらしい顔で見てくるのにあなたはそんなことないしね」

 

「あそこにいる気持ち悪い銀髪とは正反対ね」

 

 

「なんだ、イケメン君にあったのか?」

 

 

ファイルスは嫌そうな顔をして話してきた

 

 

「えぇ、何か急に声をかけてきて、まるで私のことを分かってるみたいな感じで馴れ馴れしくしてきたのよ」

 

……どっかで聞いたことのある台詞だな

 

 

「それで適当に話しを切り上げてきたところであなたを見かけたのよ、あの気持ち悪い奴と同じような人ならぶっ飛ばしてたけど、あなたみたいなおもしろい人でよかったわ」

 

 

おいおい、俺はもしかしたら変態のとばっちりで殴られたかも知れなかったのかよ、あぶねぇな

 

 

「そうかい、それは重畳」

 

「それで」

 

 

「ナタル〜!どこにいるの!準備サボってんじゃないわよ!?」

 

 

「あちゃ〜、もう時間ぎれか」

 

 

「なんだ、お迎えか?」

 

 

「そうみたいね、もう少し話してたかったけどここでお別れね」

 

 

「そうかじゃあな、とっとと帰れ」

 

 

「冷たいわね〜……そうだ!」

 

 

ファイルスが何か思いついたみたいな顔をしてこっちを向いてきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……嫌な予感がするな

 

「楽しませてくれたお礼をしなきゃね♪」

 

 

「いらんから早く行け」

 

 

「そんなこと言わずに、ね」

 

 

タッ、ヒョイ

 

 

「「………」」

 

 

タッ、ヒョイ、パッ、サッ、バッ、スッ、ダン!ズザッ!

 

 

「もう!なんでよけるのよ!」

 

 

「急に飛び掛かられたら普通は避けるだろうが!」

 

 

「せっかくこんな美人がキスしてあげようとしてるのに避けないでよ!」

 

 

「なんで初対面の奴にキスされなきゃなないんだよ!」

 

 

「挨拶よ、挨拶、アメリカじゃ普通よ?」

 

 

「生憎俺は日本人だ」

 

 

「あっ!もしかして初めてだった?大丈夫よ?私もだから」

 

 

「余計なお世話だ、それにどこに大丈夫な要素があんだよ」

 

 

「隙あり!」

 

 

パッ

 

 

「あ」

 

 

とため息をついた瞬間にくわえていたチョップチャプスを奪われた

 

 

「ふっふーん、やっと一本取れたわね」

 

 

「洒落のつもりか?正直微妙だぞ」

 

 

「違うわよ、ってそろそろホントにマズイわね、それじゃあね悠夜!また会いましょ」

 

 

と不吉なことを言ってファイルスは俺がくわえていたチョップチャプスを口に入れて走り去っていった

 

俺のチョップチャプスが……まぁいいか、間接キスになるけど特に気にするようなことでもねぇし、とりあえず帰ろ

 

 

と俺はもときた道を帰り始めた……

 

 

悠夜Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナターシャSide

 

 

「あっ!やっと見つけた!ナタル、あんたよくも準備を押し付けてって、どうしたの?なんかすごいご機嫌だけど?」

 

 

「ごめんねイーリ、ちょっと気分転換がしたかったのよ」

 

 

「ふーん、気分転換はできたみたいね?」

 

 

「えぇ♪すごくおもしろい人にあったわ」

 

 

「そのアメもその人に貰ったの?」

 

 

「ううん、無理矢理取っちゃった♪」

 

 

「取っちゃったって、その人も災難ね、ナタルに目を付けられるなんて、同性として同情するわ」

 

 

何言ってるんだろ?

 

 

「何言ってるの?イーリ?悠夜は髪は長いけどれっきとした男よ?」

 

 

「えっ?男?ていうか悠夜ってもしかしてあの水無月悠夜?」

 

 

「そうよ」

 

 

「……はぁ、かわいそうにこれから会う度にナタルに迷惑をかけられるなんて」

 

「どういう意味よ」

 

 

「言葉通りの意味よ」

 

 

むぅ、イーリってば準備を押し付けたことまだ怒ってるわね、まぁいいわ、今は気分がいいし許してあげる♪

 

 

「気持ち悪いわね、何ニヤニヤしてるのよ、ナタル」

 

「べっつに〜、また悠夜に会えるかなって思ってるだけよ」

 

 

「どうせ大会が終わるまでここにいるだろうから会えるんじゃない?」

 

 

「そっか、そうよね、うん、そうと分かれば面倒な準備をちゃっちゃっと終わらせましょ♪」

 

「サボってたあんたが言うセリフじゃないわね」

 

 

イーリが何か言ってるけど気にしな〜い、ふふっ、次に会ったら何話そっかな〜

 

私は悠夜が食べていたアメを舐めながら少しだけ頬を赤く染めて自分達の拠点に戻って行った

 

 

ナターシャSideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾクッ

 

 

うぉ、なんか寒気が………風邪かな、風邪だな、うんきっと風邪だ、そうに違いない、だからこの胸騒ぎは気のせいだから早く帰ろう

 

俺は少しだけペースをあげて来た道をショートカットしながら帰ることにした



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ムード? 知ってる知ってる、情緒とか雰囲気のことだろ?……

あぁ〜、疲れた、あの天災達の相手以外でこんなに疲れたの久しぶりじゃね?とりあえずそろそろ準備やら手続きやら終わってる頃だろうし、戻っても大丈夫だろ

 

 

すぐに帰るつもりだったけど近場の露店商にいい感じのアクセサリー用の材料があって思いの外時間がかかったが、いいもん買えたし準備なんか俺なしでも出来るからなぁ〜、別にいいだろ、っとここだったな

 

 

ガチャ、パタン

 

 

……疲れてんのかな?部屋はここだし、間違いないな、よし、入るか

 

 

ガチャ、バタン!

 

……人外魔境?いやいやいや、なんで部屋の中が戦場よろしく、あんなに殺伐としてんだよ、意味わかんねぇよ、しかもなんかファイルスが居たっぽいし………さてと、ちょっと疲れてるみたいだから先にホテルに行って寝るか、うんそうしよう!そうと決まればとっととかえr

 

 

ガシッ×3

 

 

「「「悠夜(さん)(ゆーくん)ちょっと話ましょうか?」」」

 

 

「嫌だ、拒否する」

 

 

「「「ダメ(だよ)(です)(よ)」」」

 

 

ズルズル、ガチャ、バタン

 

そうして俺はいつの間にか部屋から出ていた三人に魔境(部屋)に引きずり込まれた……

 

「それで、ゆーくん、これは何なのかな?」

 

 

と言ってファイルスを指さす篠ノ之、いやいや、これ扱いは………いつものことだな

 

 

「悠夜さん、私も説明して欲しいのですが?」

 

 

説明って言われてもねぇ、厄介事に絡まれたとしか言えねぇしな

 

 

つーか、おまえら怖ぇーよ顔は笑ってるけど目がマジじゃねぇ〜かよ、しかも真剣と前に捨てさせたスタンガンよりも明らかに出力が上がってるやつを持ってるし、殺す気かよ

 

 

「あらあら、悠夜はモテモテね、でも女の嫉妬は見苦しいわよ?篠ノ之さん、織斑さん」

 

 

やめろよ、火にガスボンベ焼べんじゃねぇ〜よ、勝手にやってるならいいが、俺が巻き添え喰らうんだよ、めんどくせぇな

 

 

「なに、ゆーくんのこと馴れ馴れしく呼んでるの?耳障りだから止めて」

 

 

「そちらは私達を知っているようだが生憎と私達は貴様のことを知らんのだが?挨拶という基本的なこともできない愚か者なのか?それとも自分のことは知られていて当然等と考えている自意識過剰なバカなのか?」

 

……なんかしばらく続きそうだし珈琲でも飲むか

 

 

コポコポ、カチャ、ズズッ

 

はぁ〜、落ち着くなぁ、けど珈琲ってあんまり胃に優しくねぇからなぁ、控えないとだめかね?

 

 

「あら、私が悠夜のことをどう呼ぼうと悠夜がなにも言わないなら私の勝手でしょう?」

 

 

「それに他国の代表選手ぐらい全員覚えておくのが常識だと思っていたからつい忘れていたわ、ごめんなさいね、あらためて、私はアメリカ代表のナターシャ・ファイルスよ、よろしくね?」

 

 

「そうだ!悠夜、あのアメ美味しかったわよ『悠夜の』食べかけだったけど気に入ったからまたくれないかしら?」

 

 

ファイルスが色々とはしょって話をした途端、篠ノ之と織斑に睨まれた、こっち見んな

 

 

「ゆーくん?食べかけってどういうことかな?束さん説明して欲しいなぁ〜」

 

 

 

「どういうことですか?悠夜さん?それとこの女とはどういった関係で?」

 

 

………ほらな?結局俺が被害を被るんだよ、だから帰りたかったんだよ、はぁ

 

 

「おまえら」

 

 

「「「(なんですか)(なにかな)(なにかしら)?」」」

 

 

「いい加減にしろや」

 

 

ガン!ガン!ガン!

 

 

「「「〜〜〜っ!?!?」」」

 

 

あぁ〜、イッテェ、強く殴りすぎたな

 

 

「「「なにする(の)(んですか)(のよ)!」」」

 

 

おぉ、復活が早ぇーな、まぁ涙目だけど

 

 

「うるせぇ〜よ、周りと俺に迷惑だろうがTPOを考えろや、俺に迷惑だろうが」

 

「そ、それは結局悠夜さんが面倒になっただけじゃ」

 

「わざわざ二回言ってたしそっちが本音なんじゃ」

 

 

「あ゛ぁ゛?」

 

 

「「ごめんなさい」」

 

 

こいつらはいい加減慣れて来てるからすぐにちゃんと謝るな、問題は

 

 

「ゆ、悠夜?女性の頭を叩くのはどうかと思うんだけど、それに今の女の子にする威力じゃないでしょ、絶対」

 

「そんなもん知るかよ、で?お前はなにをしに来たんだ?ファイルス」

 

 

「知るかって、まぁいいわそれよりファイルスなんて他人行儀じゃなくてナターシャとかナタルとかターシャとか親しみを込めて呼んで欲しいな」

 

 

「ファイルス、何をしに来たんだ?」

 

 

「だからファイルスじゃなくて」

 

 

「ファイルス、なにをしに来たんだ」

 

 

「ゆ、悠夜?聞いて」

 

 

ガシッ、ギリギリ

 

 

「質問に答えろ」

 

 

俺がファイルスの頭を優しく掴みながら心からお願いするとファイルスは顔を青くしながら直ぐさま了承してくれた

 

 

なんか天災二人も若干顔色が悪かったけど風邪でもひいたんだろ

 

 

やっぱり真心って大事だよなぁ、真心って、そう思うだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜色々説明中〜

 

 

 

 

「……つまり、色々な準備が終わって暇になったから日本代表である織斑とISの産みの親である篠ノ之に挨拶しにきた、と」

 

 

「そうよ、もちろん悠夜にも会えるかなぁって思って来たわよ♪」

 

 

「そうか、ならもう目的は果たしただろ?帰れ」

 

 

「つれないわね〜、悠夜は」

 

 

と言ってファイルスは楽しそうに笑う……めんどくせぇから早く帰れよ

 

 

「事情は分かりました、要するにこの人もあいつの被害者なんですね」

 

 

「そして俺はおまえらの被害者だ」

 

 

「大変だったでしょう、あいつの相手は」

 

 

「えぇ、しかも政府の馬鹿どもはあの銀髪と懇意にして情報を引き出せ〜、とか言って来てたから殴ることも出来なかったし、最悪だったわ」

 

 

「オイ、こら、サラっと無視すんじゃねぇよ、なに顔背けてんだよ、こっち見ろや」

 

 

……駄目だ聞こうとしやがらねぇ、しかしなるほどね、行動派っぽいファイルスがなんで殴らなかったのか分からなかったんだが、そういう理由か

 

 

「あらためて、日本代表の織斑 千冬だ、よろしく」

 

「こちらこそ、よろしくね」と言って一見、和やかに握手する二人なんだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

握った手から血管が浮き出てミシミシと音をたてているから色々と台なしだった

 

「ところでファイルスさん、さっきの悠夜さんからあめをもらったと言っていましたが、どういうことですか?」

 

 

と笑顔でさらに強く手に力を入れる織斑

 

 

「ナターシャでいいわよ、そのままの意味だけど?本当はキスしてあげようとしたんだけど悠夜が恥ずかしがって逃げるから、代わりにくわえてたアメをもらったのよ」

 

 

こちらも笑顔で負けじと力を込めるファイルス

 

 

「こちらも名前でいいですよ、単に嫌がられただけでは?」

 

 

「分かったわ千冬、面白い冗談を言うわね?」

 

 

「さぁ?冗談でしょうか?」

 

 

「「ふふふふふ」」

 

……あいつら結構仲いいな、まぁ織斑の方は自分とこんなに対等に話して来る相手がなかなかいなかったから表面上は怒ってるけど、実際はちょっと楽しんでるみたいだし

 

 

………訂正、マジで潰しにいってる、音がミシミシからメキメキッ、にシフトしてるし

 

「さぁ!ゆーくん!今のうちに束さんとチューしよう!チュー!」

 

 

ウサ耳バカがアホみたいなことをほざきながら俺の方に飛び込んできた、が、そろそろ何かしてくると思っていた俺は普通に避けた

 

 

ゴチン!

 

 

「きゅう〜、い、痛いよ〜ゆーくんなんで避けるの〜」ウサ耳バカは顔面から壁に突っ込んで相当痛かったのか半泣き、いや泣きながら文句を言ってきた

 

「アホか、なんでお前とキスせにゃならんのだ、それに普通飛び掛かられたら避けるだろうが」

 

 

「だってゆーくんそれとはキスしたんでしょ、ズルイよ〜」

 

 

「してねぇよ、お前はなにを聞いてたんだよ」

 

 

「え〜と、ゆーくんがお詫びにちーちゃんと束さんにチューするってところまでは聞いてたよ?」

 

 

「何一つあってねぇよ、しかもお詫びってなんだよ」

 

「束さんとちーちゃんというものがありながら浮気しようとしたお詫び?」

 

 

「そもそも付き合ってすらいねぇのに浮気も何もあるか、むしろ俺がもらいたいわ」

 

 

「じゃあお詫びにチューしてあげるね!」

 

 

結局それに戻るのかよ………駄目だそろそろ限界だ、マジでとっととホテルに行こう

 

 

「篠ノ之……」

 

 

目をつむってこちらに唇を向けている篠ノ之の頬にゆっくりと両手をそえる

 

 

「ゆー、くん」

 

 

頬を紅潮させて艶っぽい声を出しながら顔を近づけて来る篠ノ之

 

 

そして俺は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おもいっきり頭突きをかました

 

 

「らぁっ!」

 

 

ゴン!!

 

 

「にゃ!?」

 

 

とさっきのげんこつの比じゃない音と威力の頭突きをくらいウサ耳バカは気絶した

 

 

調子に乗りすぎるからだ

 

 

「ふぅ、これで帰れるな、ってどうした?おまえら?じゃれあいは終わったか?」

 

さっきまでやり合っていた織斑とファイルスが顔を引き攣らせてこちらを見ていた

 

 

「悠夜、今のはさすがに……」

 

 

「悠夜さん、いやよかったんですがちょっと……」

 

 

「何がだよ、あぁ、流れでキスするとでも思ったか?」

 

 

同時に頷く二人

 

 

「んな簡単にキスなんかしねぇよ、別に大切にしてる訳でもないが一応ファーストキスだからな、そう簡単にはやらねぇよ」

 

 

呆れながら俺が答えると二人は顔を寄せ合ってなんか話し出した

 

 

「今の流れでキスしないなんて、焦らしてるのかしら?」

 

 

「いや、悠夜さんに限ってそれはないと思うが……」

 

「どちらにせよ」

 

 

「どっちにしろ」

 

 

『今のは束(篠ノ之博士)がかわいそうだったな(わね)』

 

 

「おい織斑、そろそろ帰るぞ、お前明日から大会だろ?体調を整えるなら早めにホテルに行って寝た方がいいんじゃね?」

 

 

気絶したウサ耳バカを肩に担ぎながら織斑に声をかける

 

 

あん?お姫様抱っこ?………完全に気を失ってる人間をお姫様抱っこなんてしたらめちゃくちゃ疲れるんだぜ?首が据わってないから手で支えなきゃならんし色々と面倒なんだよ

 

「……そうですね、そろそろ行きましょうか」

 

 

「私も戻らないとね、それと悠夜、その持ち方はどうなの?」

 

 

「楽なんだよ、放置しないだけマシだ」

 

 

微妙な目で見られるが無視だ、無視

 

 

「いつもあんな感じなの?」

 

 

「いや、いつもはもう少し優しいんだが、今日は機嫌が悪いみたいだな」

 

 

「聞こえてるぞ」

 

 

ビクッと反応して少し汗をかく二人、機嫌が悪くなったのは誰のせいだ、誰の

 

「はぁ、それじゃあなファイルス」

 

 

「ちょっと待って下さい悠夜さん、ナターシャ、明日トーナメントがどうなるか分からないが当たったら全力でやらせてもらう」

 

 

「そう簡単には負けないわよ?それじゃあね、千冬、悠夜も」

 

 

とお互いに笑いながら拳を当てていた、どこぞの少年マンガかよ

 

 

その後、ホテルに着いた俺は織斑達の部屋までウサ耳バカを運びベッドに捨てておいた

 

 

「あぁ疲れた、さて俺はもう自分の部屋にいくぞ」

 

 

と自分の部屋に行こうとしたら織斑が声をかけてきた

 

「あの、悠夜さん」

 

 

「なんだ?」

 

 

「その、明日の大会で優勝したら賞品というかご褒美みたいなものを頂けませんか?」

 

 

……どうすっかなぁ、正直世界大会つっても織斑なら優勝しそうだし、賭としては三対七くらいで負けそうなんだよな、けどここで断ったら明日の大会に響きそうだし、もしそうなったらめんどくせぇしなぁ

 

「やっぱりダメ、ですか?」

 

 

……はぁ〜、このままダメだって言ったらマジで大会に響きそうだな

 

 

「……ものによるが、何にするつもりだ?」

 

 

「それは、えっと、まだ決めてません」

 

 

「決めてないのに要求してきたのかよ」

 

 

「すみません」

 

 

「はぁ、謝るなよ、まぁあんまり無茶なものじゃなけりゃいいだろ」

 

 

「本当ですか!」

 

 

「あぁ」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

「優勝したらだぞ?分かってるよな?」

 

 

「はい、必ず優勝しますよだから応援して下さいね」

 

と笑顔で言ってきた

 

 

 

すっげえ自信、さて眠いし早く部屋に戻るか

 

 

「そうか、まぁがんばれよ〜、応援は……多分するから」

 

 

「多分って、ありがとうございます、少し緊張してたんですが楽になりました」

 

と苦笑しながらも礼を言ってきた

 

 

「そいつは重畳、じゃあな織斑後そこで寝たフリしてるウサ耳、運んでやったのはサービスだ、感謝しろよ」

 

 

と声をかけて俺は部屋に戻った、やれやれやっと寝られるな〜、明日はもう少し楽できますようにっと

 

 

悠夜Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千冬Side

 

 

パタン、と悠夜さんがドアを閉めて出て行った、相変わらず鋭い人だな、それに優しい人だ

 

私が緊張しているのを見て普段なら絶対にしない悠夜さんにメリットのない賭をしてくれて、いつものように接して緊張を解いてくれた

 

 

「ズルイ人だな、なぁ、束?」

 

 

ベッドに俯せになっている束に声をかけるとモソモソと起き上がりながら返事をしてきた

 

 

「そうだね〜、でもゆーくんだしね!」

 

 

「そうだな、悠夜さんだからな」

 

 

本人が聞いたら嫌な顔をするだろうが『悠夜さんだから』という言葉でだいたい納得してしまうのだから不思議だ

 

 

「でもでも!ちーちゃんズルイよ!束さんもご褒美が欲しい!」

 

 

「お前はここまで運んでもらっただろう?それがご褒美じゃないか」

 

 

笑いながら少し意地悪な問い掛けをする

 

 

「ぶぅ〜、ちーちゃんの意地悪、あんな運び方されてもあんまり嬉しくないよ〜」

 

 

「ふふっ、冗談だからそんなに拗ねるな、それにお前も頼んだらどうだ?上手くいけばお前もご褒美、もらえるんじゃないか?」

 

 

「そうだね!そうしよう!ちーちゃんナイスアイディアだよ!そうと決まれば早く寝なきゃ、ちーちゃんおやすみ!」

 

 

と早口でまくし立てて束は直ぐさま寝てしまった

 

 

やれやれ、悠夜さんが絡むとここまで違うか……………私も束のことは言えない、か

 

さて、私も明日の大会に備えて寝るとするか、ご褒美は何にしようかな?

 

 

そんなことをつらつらと考えながら私はその日を終えた

 



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ある程度予測出来る未来(さき)って、厄介な事だと目を逸らしたくなるな……

『わぁぁーー!!』

 

 

モンド・グロッソという世界最強のISと操縦者を決める大会の会場は大会が始まる前から異様な熱気と歓声に包まれていた

 

 

ISという既存の兵器を全て過去の遺物に仕立てあげた最強の兵器、表だって兵器としての運用は『白騎士事件』のおかげで(おかげというのもおかしな話しだが)抑えられているが

 

 

どこの国もISの本来の開発理由である宇宙進出を忘れ自国の防衛力向上のためという大義名分の元に兵器としての開発が進められている

 

 

そしてその自国の開発したISを公然と世界に見せ付ける事ができる機会でもあるこの大会を使って、ある国は世界的地位の向上のために、ある国は他国の技術を盗むために、ある企業は自分達の技術を見せつけ売り込むためなど、様々な思惑が絡み合った結果がこの異様な熱気と歓声なのだろう

 

そして大会に出場する各国の代表とその代表が使用するISの整備士達は自身のコンディションと集中力を高め、使用するISの最終調整をそれぞれのピットで行っている

 

 

そこは観客席の熱気とはまた違った熱があった、一分一秒でも惜しいというように動き回る整備士達、その整備士達と話し合い今日、この日のコンディションに合わせた調整をする代表など、戦場のような雰囲気を漂わせていた

 

 

そんな中俺は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あや取りをしていた

 

 

……何だよ、なんか文句あるのかよ?ん?出だしの真面目な雰囲気はどうしたって?そんなもん暇つぶしにパンフレットの記事と地元雑誌の記事を読んでただけだよ、俺が真面目にやるはずがねぇだろ?

 

 

マジな話しだと騙された奴、素直でいい人だ、これからもその心を忘れないでよかったら俺の平穏を一緒に願っててくれ、騙されなかった奴、気をつけろよ?だいぶ毒されて来てるから、今ならまだ間に合うから人を信じていけるようになろう、んで何シリアス気取ってんだよ、そんなことしてもお前の平穏は来ねぇよ(笑)とか思った奴

 

 

……暗い夜道には気をつけろよ?

 

さて、誰に言ってるのかもわからない独り言を考えている内に俺はとうとう完成させた、かの、引き出しから出て来る不法侵入及び未来からのオーバーテクノロジーを現代で未来の法律?なにそれ美味しいの?と言わんばかりに使用しまくる、某青いタヌキが登場するアニメの駄メガネ君の数少ない特技である

 

 

あや取りの奥義と言っても過言ではないあの超大作

 

 

「東京タワ〜完成」

 

 

「何をしてるんですか」

 

ピットで俺のあや取りを見ていた織斑が我慢出来なかったのか呆れながら聞いてきた

 

 

「見て分からないのか?あや取りで東京タワーを作ってんだよ」

 

 

「いえ、そういう意味ではなく何故ここで雑誌を読みながらあや取りをしているのか聞いているんですよ」

 

そんなもん決まってんだろ

 

「暇つぶしだよ?」

 

 

「暇つぶしでパンフレットと雑誌を読みながら無駄に高度なあや取りを完成させないで下さい」

 

 

色々とキャラが崩れてますよ?という織斑の発言に俺は織斑の方を向きながら

 

 

「織斑……ならお前はこの死線(視線)の中どうやって時間を潰す?」

 

 

と言った

 

 

「……その、携帯を使うとか」

 

 

「こんな機密が飛び交うようなところに記録媒体を持ち込めると思うか?」

 

 

「……えぇと、本を読むとか」

 

 

「寝起きに無理矢理連れて来られて本を持ってくる余裕があるか?」

 

 

「……すみませんでした」

 

「そういうことだ」

 

 

そもそもこの雑誌とパンフレットだってそこらに落ちてたやつを勝手に持ってきてるだけだからな、特に面白い訳でもねぇ

 

 

「それになんでこんな所に来させてんだよ、珍しいから見てる奴らもいるが真剣に邪魔だって感じの視線も混ざってるし、明らかに場違いだろ」

 

 

「それは……」

 

 

本来ならこんな所には俺みたいなただの付き添いの類は入れない……いや、入れないってのは語弊があるな、正確には入らない、だな

 

普通ISの整備にはかなりの人数が必要とされるがそんな何人も入れるスペースはここにはない、だから規定の人員以外入ることができない

 

 

そのため此処にいるのは整備士のなかでもその国のえりすぐりの人達となる、だから関係のない家族等は入らないのだが……

 

そこで言葉を切った織斑と俺は微妙な顔で俺が此処に入れる、いや入れられた原因に目を向けた

 

 

 

そこには空中ディスプレイという周りに喧嘩を売っているとしか思えない技術を見せつけつつ尋常じゃない速さで技術提供のために解体された『白騎士』に続く織斑の新しい専用機である『暮桜』の調整を行うウサ耳、もとい篠ノ之がいた

 

ピピピ、ピピピピ、パッ、シュン

 

 

「えっと、ここをこうしてこれは……うん!こうしちゃおう♪」

 

 

「でーきた!ちーちゃん終わったよ〜!さすが私!我ながら完璧だよ!褒めて褒めて〜♪」

 

相変わらずのハイテンションで嬉しそうに織斑に向かって来るウサ耳

 

 

「……早いな」

 

 

「ふっふーん!当然だよ!何たって天才束さんだからね!」

 

天才ねぇ、天災の間違いだろ

 

 

「それよりも、いいのか?空中ディスプレイなんか出して、内容を見られたらいろいろと面倒なことになるんじゃないか?」

 

 

織斑がもっともな質問をするが……このウサ耳天災バカのことだから対策は完璧だろうな

 

 

「ノープログレムだよちーちゃん!遠目からじゃ何をしてるのか分からないだろうし、仮に録画してても全く違うディスプレイが見えるようにしておいたからね」

 

 

無駄にハイスペックだな、おい

 

 

「そうか」

 

 

「そうだよ〜、あっ!ゆーくん見て見て!束さんが頑張って調整したこの暮桜の素晴らしい性能を!」

 

 

 

と言って空中ディスプレイを出して俺に見せてきた、まぁ暇つぶしにはなるかな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………見なきゃよかった

 

「どうどう?すごいでしょ〜♪」

 

 

「……そうだな」

 

 

「わ〜い!ゆーくんに褒められた〜♪」

 

 

俺は痛くなってきた頭を押さえながらウサ耳に返答し、ウサ耳バカはそれを聞いてはしゃぎ回っている

 

 

はぁ、なるべく食べたくなかったんだがなぁ、仕方ないし食べるか

 

 

カサッ、パク、カリコリ

 

 

……やっぱあんまり旨くねぇな

 

 

「どうしたんですか?悠夜さん?ディスプレイを見た途端、頭を押さえてしかも何時も食べている飴もあんまり美味しそうにしてませんし」

 

 

俺の方を見ながら怪訝そうに織斑が尋ねてくる

 

 

……あぁ、織斑はディスプレイ見てねぇのか、ならそういうリアクションするわな

 

「ディスプレイの方は……まぁ試合すればわかるだろ、チョップチャプスは胃薬配合だからマズイんだよ」

 

「……ディスプレイの方は何となく察しがつきますが、そんな物売ってるんですか?」

 

 

「売ってたから今食べてるんだよ」

 

 

「それはそうですが……」

 

織斑がものすごく微妙な表情で見てくるがスルーだ、誰のせいだ、と言いたかったがいらん問答でこれ以上疲れたくなかったから黙っておいた

 

そんなことを言ってる間にコールがあり織斑の試合が入った

 

 

「もう私の番か、それでは行ってきます悠夜さん、束、行ってくる」

 

 

「まぁ、それなりにがんばれ」

 

 

「がんばってね、ちーちゃん♪」

 

織斑は俺達に声をかけ颯爽と会場に向かって行った、さて、このハイテンションウサギをどうするかなぁ

 

 

俺は試合よりもそっちの方に気をさいていた

 

 

 

あん?最低だなおまえ?もっとちゃんと考えてやれ?……普通ならもうちょい気も使うがな、あのディスプレイに載ってたスペック見たらそんな気も起こらんわって、言ってる間に始まったな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……鬼だなあいつ、相手はマシンガンを装備して接近されないように構えてたんだが、開始のブザーが鳴った瞬間、バカみたいな速度で突っ込んで行ってマシンガンを切り捨ててそのまま連続で暮桜唯一の武器である雪片で攻撃して相手のシールドエネルギーが無くなって試合終了〜

 

相手が弱かった訳じゃなくて織斑と暮桜が強すぎんだよなぁ、速度だけでも他のISのだいたい二倍くらいあるからな、想定してた速度よりも速すぎて相手さん反応出来なかったみたいだし、他のスペックも軒並み高かったからな

 

 

 

それにかなり反則臭い能力もついてるしな、そうそう負けんだろあれは

 

 

 

俺がつけたあだ名?の『桜』と『雪』を使ってるから最高性能で規格外にするよ〜!とか言いながら作ってたから嫌な予感はしてたんだよ、初めてスペックを見た時は吹いたな、マジで、自重しろって言わなかった過去の俺を殴りたくなったよ

 

その時のスペックより出力が上がってんだから、つくづくこいつは天災だと思ったな、まぁそんなバカみたいな機体を完璧に操ってる織斑も大概どうかしてると思うがな

 

 

織斑が勝った瞬間に飛び付いてきたウサ耳バカをかわしながら俺はそんなことを考えていた

 

 

試合から帰ってきた織斑は開口一番

 

 

「なんだあの性能は!」

 

 

とウサ耳バカに怒鳴っていた、そりゃそうだよなぁ、自分の機体のスペックが急に上がってて、そのことについてなんの説明もなかったんだから文句も言いたくなるよな

 

 

「うぅ、なんで怒るの?ちーちゃん、せっかく束さんが頑張って調整したのに〜」

 

 

「そういう問題じゃない!出力を上げたならちゃんと説明しておけ!」

 

 

「ちょっとしたサプライズだったのに〜」

 

 

篠ノ之は半泣きになりながら怒られていた、篠ノ之が悪いから弁解の余地はないな、ご愁傷様

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でなんやかんやで決勝戦もクライマックスだ、何?戦闘描写?此処までの試合はどうなったか?

 

 

……作者が何度書いても上手く書けないとかほざいて亡くなったよ、マジで駄目作者だな

 

 

ちなみにファイルスとは三回戦で当たったな、ファイルスは射撃特化型のISだったから一回戦と似たような展開かと思ってたんだが、そんなことはなかった、あいつはこの大会で今やっている決勝戦を含めてただ一人だけ織斑のスピードに完璧についていって尚且つカウンターまで決めてたからなぁ、他の代表も色々対策をとってたけど完璧に捕捉したのはあいつだけだった

 

 

最後は織斑が振り下ろした雪片の刀身にライフルを当てて軌道を逸らしてそのままグレネードに切り替えて撃てば勝ち!ってとこまで行ったんだが

 

 

織斑は雪片の軌道を逸らされた瞬間に瞬時加速(イグニッション・ブースト)スラスターから放出されたエネルギーをもう一度取り込み一気に爆発させることで凄まじい加速をする技術、を使って一気に下降してファイルスの視界から消えて捕捉される前に暮桜の反則的な単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)である

 

『零落白夜』を発動し逆袈裟に斬りつけてファイルスのシールドエネルギーを一瞬でゼロにして勝利した

 

 

『零落白夜』はシールドを貫通して相手に絶対防御を発動させて大量のシールドエネルギー削るっていうかなり卑怯な能力だ、使用している間は自分のシールドエネルギーを消費するっていうデメリットもあるが、任意のタイミングで発動、停止のスイッチができる織斑にはほとんど関係ないしな

 

織斑が直ぐさま反応出来たのは一度、というか何度か同じことをされたことがあるからだ………そうだよ、俺だよ、やりましたよ必死でな!模擬戦をやらされた時に零落白夜を発動しながら正面から斬りつけてきた時に命懸けでやったよ

 

シールドバリアーが意味を成さないのに正面からくるんだぜ?そのまま喰らったら俺は真っ二つだったよ

 

 

まぁそんな感じでファイルスに勝って二言三言話して織斑は楽しそうに帰ってきた、なんでも次の勝負では負けないと言ってきたそうだ、中々対等な勝負ができない織斑からしたらライバルが出来たみたいで嬉しいんだろう

 

 

『ワァアァーーー!!!』

 

ん、考え事してる間に終わったみたいだな、格闘部門優勝は織斑か、これで総合優勝は織斑になるから名実共に世界最強ってわけか、すげぇな

 

 

「ゆーくん!ちーちゃんが勝ったよ!優勝だよ!当然だね!」

 

 

 

当然って言ってる割には嬉しそうだな

 

 

「あぁ、そうだな、ほら織斑のとこに行ってこい、おめでとうって言ってやれ」

 

「うん!ゆーくんも一緒に行こう!」

 

 

「俺はここの片付けをしてから行くし先に行ってこい」

 

 

「うーん、わかった!行ってくるよ!」

 

 

ちーちゃ〜んとドップラー効果を残しながら篠ノ之は織斑の所に突っ込んで行った

 

……さて、巻き込まれる前に帰ろう、片付けなんかもう終わってるしな〜、今日は朝っぱらから連れ出されて苦労したんだからこれ位いいだろ?

 

 

自分に言い訳しながらお祭り騒ぎになっている会場から抜け出してホテルに戻った

 

 

そぉいえば変態君はまだデータ採集(モルモット)やってんのか?まっ、厄介事が居なくてラッキーだったな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はあれからホテルに戻り自室に篭っていた、織斑と篠ノ之は優勝記念パーティーに出席させられてた、本来なら大々的にやるつもりだったようだが織斑が拒否した為俺らが拠点にしているホテルのホールを貸し切っておこなったようだ

 

 

 

……それでも十分大々的だと思う俺は小市民なのか?いや、平穏でいられるなら小市民でいい、寧ろ小市民万歳だ

 

 

で、俺はというとパーティー会場からばれないように食い物と飲み物を拝借してきて部屋のテラスでちびちび夜食がわりに食ってる

 

 

パーティーに混ざれって?馬鹿言うなよ、なんでわざわざ自分からあんな腹黒い奴らの巣窟なんかに行かなきゃならんのだ、確実にめんどくさいだろうが

 

 

俺はグラスにいれた赤紫色の飲み物を飲んだ

 

 

 

「ふぅ、なかなか旨いな」

 

「未成年の飲酒は犯罪ですよ」

 

 

「かたいこと言うなよ、お前もどうだ?優勝記念に」

 

 

「……そうですね、せっかくのお誘いですし少しだけ」

 

と言って俺が新しいグラスに注いだ赤紫色の飲み物を飲む

 

 

 

「……ワインじゃないんですか」

 

 

 

「一応、元ワインだぞ?アルコールはとばしてあるけどな、なんだワインを飲むつもりだったのか?駄目だぞ〜、未成年の飲酒は」

 

 

 

俺がこいつがきた時の台詞をそのまま返してやったらブスッとした顔を向けてきた、別に騙したわけじゃないしな〜、ちゃんと『赤紫色の飲み物』っていう説明しただけで酒とは言ってねぇ、そうだろ?

 

 

 

「はぁ、参りましたよ」

 

 

 

「何に負けたんだ?戦女神(ブリュンヒルデ)」

 

 

 

俺がこの大会で総合優勝を果たした者に与えられる称号で呼ぶと本気で嫌そうな顔をしてきた

 

 

 

「その呼び方はやめて下さい、そう呼ばれるのは嫌いですし壁を作られているようで嫌です」

 

 

 

「だろうな」

 

 

 

「分かっていて言ってたんですか」

 

 

 

質が悪い、と言ってきやがった、おまえらも大概いらんことを言うだろうが

 

 

 

「あぁ、そうそう優勝おめでとう織斑、よし俺の用事は終わったからもう遅いし自分の部屋に戻れ」

 

 

 

「相変わらず軽いですね、もう少し気持ちを篭めて言って下さいよ」

 

 

 

「嫌だめんどい」

 

 

 

「………ストレートな理由ですね」

 

 

「それ以外にないだろ?それとも何か?俺に畏まった態度でいろと?」

 

 

ないない、と首を振っていたらなんか嬉しそうにしていた

 

 

 

「ふふふ、やっぱり悠夜さんは変わりませんね、私が、私達がどんな立場になっても変わらないで居てくれる」

 

 

 

「なんでお前らの立場に合わせなきゃならんのだ」

 

 

 

めんどくさい、前にも似たようなことがあったようななかったような

 

 

 

「それよりもウサ耳バカはどうした?」

 

 

 

「束なら暮桜のデータをまとめています」

 

 

 

よくやるなぁ

 

 

 

「そうかならそろそろ部屋に戻れ、さっきスルーはされたが忘れてないぞ」

 

 

 

頼むから早く帰ってくれ

 

 

 

「そうですね、でもその前に」

 

 

……まずい

 

 

 

「優勝したのでご褒美を伝えます」

 

 

 

ちくしょう、やっぱ覚えてたか、せっかく慣れないしやりたくもないキャラを作ってごまかして帰らそうとしたのに、はぁ

 

 

 

「伝えにってどういうことだ?」

 

 

 

……凄まじく嫌な予感が

 

 

 

「私が望むのは次のモンド・グロッソに出て私と本気で戦って下さい」

 

 

 

「嫌だ断る!」

 

 

 

ふっざけんな!そんなん嫌に決まってんだろが!

 

 

 

「駄目です、それに言ったでしょう?『伝え』にきたと」

 

 

……まさか

 

 

 

「もうこのことは世界各国で知られていますよ?私がパーティー会場で言ったのと束が流した情報で」

 

 

 

またそのパターンかよ!何だよそんなに俺の平穏を崩したいのかおまえら天災は!

 

 

 

「そんなもん俺が拒否したら終わりだろ?」

 

 

 

天災印のハッキング技術を使えば何とか出来るしな………多分

 

 

 

「それでも、お願いします」

 

 

 

織斑がさっきまでの悪戯が成功した子供のような表情から真剣な顔になって頭を下げてきた

 

 

 

「……なんでそこまでする、戦うだけなら学園のアリーナ借りてやったらいいだけじゃねぇか」

 

 

 

「それじゃ意味がないんです、今の世界はISによって緩やかにけれど確実に女尊男卑の形になってきています、今でも女だから偉いと言った考えが根付き始めている」

 

 

 

「そんな考えを払拭するためにもモンド・グロッソという世界中が注目する大会で男である悠夜さんに戦って見せ付けて欲しいんです、男でも十分に強いと言うことを」

 

 

ふーん、確かに筋は通ってるな、けど

 

 

 

「建前はいいから本音を言え本音を」

 

 

 

「……やはり分かりますか?」

 

 

 

「理由が大仰過ぎて理由になってねぇ上に嘘臭い」

 

 

 

「割とまともな理由だったんですが」

 

 

 

「お前ならどっちかというと、嘗められるような行動をするな!自分に自信をもって動け!っていうタイプだろうが」

 

 

 

「ひどくないですか?」

 

 

 

「全然、で本音は?」

 

 

 

「……悠夜さんは私にとって憧れであり越えて行きたい目標でもあるんです」

 

 

 

「いや、意味わからんぞ」

 

 

憧れってどこに憧れるんだよ

 

 

 

「しいて言うならどんな時でも揺るがない生き方などですが、その他にも色々です」

 

 

 

「私は憧れるだけじゃなくて追い付きたい、その為にも戦って欲しい、それが本当の理由です」

 

 

 

「戦って目標を越えるって、戦闘狂かよ」

 

 

 

「そうかも知れませんね、戦女神ですから」

 

 

 

そう言って微笑む織斑は普通の男、いや女でも見惚れるような姿だった、普通ならな、言ってることは最悪だし

 

 

 

「わざわざ大会に出る理由は?」

 

 

 

「せっかくですし悠夜さんの強さを知らしめようかと」

 

 

 

「いらんお世話だ、それに俺が織斑と戦う前に負けたらどうする」

 

 

 

「ないと思いますがその場合は」

 

 

 

ガタガタ、パカ、スタン

 

 

 

「束さんとちーちゃんとキスしてもらうよ!」

 

 

 

織斑が何か言う前にウサ耳バカが通気孔から落ちてきた

 

 

 

「なんでだよ」

 

「それならゆーくんわざと負けたり手を抜いたりしないし、負けてもこんな美人な二人とキスできる!なんのデメリットもないでしょ?」「そうだな、悠夜さんがそれで勝ってくれるなら条件はそれで」

 

 

 

おいおい、誰も了承なんかしてねぇぞ

 

 

 

「おい、ちょっとまt」

 

 

 

「じゃあ決まりだね!そろそろ戻るね〜、ちーちゃんいこっか、ゆーくんまた明日〜♪」

 

 

 

「そうだな、それではおやすみなさい悠夜さん」

 

 

 

………逃げられた、まぁいい、明日会ったら覚悟しておけよあいつら

 

 

 

俺はどうやってあの発言を撤回させるか考えながら眠りについた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海外に来ても結局こんな落ちかよ畜生



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や、やっ、やって……ぐぅ、やってや……やりますよ……

………似合わねぇ

 

 

俺は鏡に写った自分の姿を見てそう素直な感想を抱いた、そもそもなんで執事服なんかきてんだろ?

 

 

 

 

〜少し前〜

 

 

あぁ〜、駄目だ、どうしても撤回しやがらねぇ、篠ノ之の方はウサ耳で釣ったら行けそうだったのに織斑に邪魔されたし、織斑の方は一ヶ月、鍛練に毎日付き合うって言ってもう少しだったのに今度は篠ノ之に邪魔されたし、二人同時に釣れるもんなんかあるはずもねぇ

 

 

 

くそぅ、どうすればいいんだよ

 

「あ!水無月君やっと見つけた〜」ん?なんだ?

 

 

俺が天災達をどうやって説得するか考えているとクラスメートの女子が声をかけてきた

 

 

見つけたってことはなんか用事でもあったか?最近帰ってきたばっかでいろいろと忙しかったから先生の話しもまともに聞けなかったしなぁ

 

「もう時間がないから早く来て下さい!」

 

 

と言って俺の腕を掴み引っ張って行く、何処にだよ

 

 

うん?女子の態度が前言ってたのと違うって?………それはさ、あれだよ、篠ノ之と織斑がいらんことを言ったせいで質問を大量に喰らった時に

 

 

思っていたよりも柔らかい態度だった!めんどくさそうにしてるけどちゃんと答えてくれる!落ち着いてて大人っぽい!とか言われてなんか気さくに話し掛けられるようになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……オイ、今このたらしが!とか思った奴、ならお前は男女比率がだいたい0.1対9.9の中で女子を邪険に扱って敵にまわせるか?無理だろう?女子を敵にまわして学校生活を過ごすことを考えたらある程度柔らかく接してた方がかなりマシだわ、主に胃のためにな

 

 

……それでも結局視線を集めてストレスが溜まるんだが

 

 

話が逸れたな、まぁ女子の態度が違うのはこんな理由だよ……結局どこに向かってんだ?

 

 

 

「着いた〜、じゃあ水無月君、早く入って下さい」

 

 

 

連れて来られたのは教室だった、普通なら気にするような場所じゃないんだが……なんか入りたくない、確実に俺に不利益な何かがある、なので

 

 

 

「悪い、ここに入ったら体調が悪くなるから帰るな」

 

 

「あ、そうなんですか、って普段から使ってる教室に入ったら体調が悪くなるってどういうことですか!?」

 

 

 

「あぁ悪い、訂正だ、今ここに入ったら体調が悪くなるんだ」

 

 

 

「なんで今日だけ体調が悪くなるんですか!?」

 

 

 

「そういう日もあるだろ?どこかの部屋に入ろうとすると急に気分が悪くなる予感がする日とか」

 

 

 

「ありませんよ!?」

 

 

 

「いやいや、絶対あるって、例えば周りはキレイなのにある部屋の周りだけ油でギトギトで確実にその部屋から汚れが広がってるのにその部屋に入らないと駄目な時とか」

 

 

 

「うっ、それは確かにそうですけど、日は関係ないでしょう!」

 

 

 

その場面を想像したのか一瞬顔をしかめた直ぐに切り返して来る……なんかすごくノリがいいというか、ツッコミが上手いな、この子、普段はボケ(ウサ耳)ばっかり相手にしてるからちょっと新鮮だなぁ

 

 

 

……この嫌な予感がなかったらだが

 

 

今は厄介な相手でしかないどうすっかな、いっそ逃げた方がいいかも知れない、そうだ、そうし……遅かったか

 

 

俺が逃げる決意をした瞬間に扉が開いて中に引きずり込まれた

 

 

 

「待ってたよ〜」

 

 

「きたきた!」

 

 

「やっと主役の登場だね!」

 

 

中ではクラスメートの女子達(といっても俺と変態君以外は全て女子なのだが)

が世話しなく動いていたのを一旦止めてこちらに声をかけてきた、ってか主役?

 

 

「なぁ」

 

 

 

「何かな?」

 

 

 

近くにいた女子の一人にどういう状況なのか聞いてみた

 

 

 

「何の準備してんの?それと主役って何なんだ?」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

返ってきたのは疑問の声と驚いたような顔、なんかおかしなこと聞いたか?俺が首を傾げていると急に納得したように手を叩いた

 

 

 

「そっか!水無月君はこの前いなかったんだよね、なら分からないのも仕方ないね」

 

「この前?って、あぁ、大会の時のことか」

 

 

「そうそう、それでね、大会をしている間の期間に今度この学園で初めての学園祭で私たちのクラスがする出し物を決めたんだ」

 

 

 

なんでわざわざ大会の期間中にそんなこと決めんだよ……違うな、大会の期間だったから学園祭の準備ができたのか

 

 

この学園は基本的に日本が金を出して作って他の国とか企業にスポンサーとしてついてもらって成り立ってる、だから普段から企業や国の要請をある程度聞かなきゃならん、視察とかな、たとえ何処の国や団体、組織に縛られない治外法権の場所だとしても、だ、まぁ金がなきゃ成り立たんしな

 

 

それに教師達はそれらの相手だけじゃなく生徒達も見ないといけない、そんな状態で学園祭なんかできる筈もない、だから去年は学園が出来て間もないのも含めて学園祭はなかった、が

 

 

今年は違う、モンド・グロッソという世界各国、というより世界中が注目する、世界的イベントがあった、当然、国や企業の注目も自動的にそちらに集まる、だから国や企業の対応をしていた教師達も余裕ができるで、その余裕を使って学園祭の準備を進めておいて各クラスにも出し物を決定させたと、成る程ねぇ

 

……いらんことしやがって、で、考察というか説明というか色々と考えて嫌な現実から目を逸らしてたんだが、もう無理だな

 

 

「そうか、それで何することになったんだ?」

 

 

「メイド&執事喫茶だよ〜」

 

 

「……執事も女子がするんだよな?」

 

 

「まっさか〜、勿論メインの執事は水無月君だよ、この喫茶店の看板なんだから頑張ってね!」

 

 

 

……終わった、いまさら拒否ってもなんだかんだ言ってやらされる、やっぱついていくんじゃなかった

 

 

はぁ〜、ん?そういえば

 

 

「色々と言いたいことはあるが、それは置いといて、ウサ耳バカと世界最強(凶)は何するんだ?」

 

織斑はともかく篠ノ之がまともに働くとは思えん、つかあいつら何処にいるんだ?

 

 

「……?、あぁ!篠ノ之さんと千冬様のこと?」

 

 

「そうそう」

 

織斑への様づけは前からあったんだがモンド・グロッソの後からめちゃくちゃ増えた、ちなみに同級生には様付け、下級生にはお姉様、上級生にはさん付けで呼ばれている、そのことでなんかつぼに入った俺が爆笑したらキレて追い掛けまわされた……雪片と真剣を装備して

 

 

パワードスーツがわりのISを装着して使う筈の武器を生身で振り回して追い掛けられたときはマジでビビった、あいつホントに俺の一つ下か?

 

 

ついでに言うと一緒に笑ってたウサ耳は瞬時に潰された、あれは俺が助かる為に必要な犠牲だった、だから助けなくても仕方なかったんだ、俺は篠ノ之のことを笑い……もとい案じながら喜色満面……悲痛な表情で駆け出したよ

 

 

……本音?なんのことだよ?よく分からないな、とりあえずその時は逃げ切れたから結果オーライだろ?

 

「千冬様はメイドをしてくれることになって篠ノ之さんは……」

 

 

「あ〜、悪い、聞いた俺がバカだった」

 

 

そうだよな、あの天災に協調性なんかある訳ねぇか……って、それよりも

 

 

「メイド?織斑が?」

 

 

「そうなんです!最初は嫌がってらしたけど皆でお願いしたら聞いてくれたんですよ!」

 

……ビビったな、俺が聞き返したら横から質問していた女子とは違う子が目をキラキラさせて俺の疑問を肯定してきた

 

 

なるほど、こんな感じのテンションでクラスの女子に頼まれて断れなかったと、にしてもメイドねぇ、冥土の間違いじゃね?

 

 

「それで今ちょうど試しに着てもらってるんですけど、もうすぐ来られると思いますよ」

 

 

ふむ、織斑達も引きずり込まれてたのか、もうすぐ来るね、なら日ごろの仕返しでもするかな、織斑なら多分つか絶対にさせないだろうし、油断してるだろ

 

カツカツカツ

 

 

「まったく、なんで私がこんな恰好をしなければならないんだ」

 

 

「ちーちゃんまだ言ってるの〜、似合ってるからいいじゃない♪」

 

 

来たか、角度はこんなもんでいいか

 

 

「うるさい、普段からおかしな恰好をしているおまえとは違うんだ」

 

 

「ちーちゃん私のことそんな風に見てたの!?ひどいよ〜、クスン」

 

 

「下手な嘘泣きはやめろ、それよりもこの恰好を悠夜さんにも見せなければいけないのか」

 

 

「ちーちゃんのいじわる、でも大丈夫だよ!ゆーくんならきっと褒めてくれるよ!」

 

 

どうでもいいけど扉の前で騒いでないでとっとと入れよ

 

 

「いや、悠夜さんのことだから見てもスルーされそうだ」

 

 

「そんなこと……ありそうだね、ゆーくんだし」

 

 

「悠夜さんだからな」

 

 

……馬鹿にされてるのか?これは?

 

「とりあえず入ろっか」

 

 

「そうだな」

 

 

シュン、カシャ

 

 

「「えっ?」」

 

 

俺は教室の入口の自動扉が開いた瞬間に携帯のシャッターをきった、なかなかいい感じに撮れたな

 

 

「あれ?ゆーくんなんで此処にいるの?」

 

 

画像を保存、保護、ロック、コピー、パソコンに送信っと、パチン

 

 

「おまえらっていうか織斑と同じ理由だ」

 

 

俺は携帯の操作を終えて携帯を閉じながらメイド服を着ている篠ノ之の疑問に答えた

 

「そぉなんだ〜、あっ!ゆーくん見て見てカワイイでしょ!」

 

 

といって今着ているメイド服を胸を張りながら見せてくる

 

 

「確かにかわいらしい感じのデザインだな」

 

 

「そうでしょ、って違うよ!服じゃなくて束さん!」

 

「見慣れてるっていうか見飽きてるから特になんとも」

 

 

「ひど過ぎるよ!?ゆーくんは束さんに飽きちゃったの!?そうじゃなくてこの服を着た束さんがカワイイか聞いてるんだよ!」

 

 

「街頭アンケートでもしたら過半数はカワイイって答えると思うが?」

 

 

「そんなのどうでもいいよ!束さんはゆーくんに聞いてるの!」

 

 

ふぅ、これくらいでいいか、まぁ多少仕返しは出来たか、これ以上するとめんどくさいことになりそうだし

 

 

「容姿はいい方だろうし、服もデザインは悪くないからカワイイの部類に入るだろ、というより普段からファンシーな服着てんだからあんまり変わらん」

 

 

「うぅ、褒められた気がしないよ、ゆーく〜ん」

 

 

「十分褒めてるだろ?それより篠ノ之、ちょっとこっち来い」な〜に?と言いながら近づいて来た篠ノ之の頭からすばやくウサ耳を奪い取り振り向きながら前に突き出す

 

ガッキィン!

 

 

今までフリーズしていた織斑が振り下ろしてきた刀をウサ耳で防いだ、あっぶねぇ〜、もう少しで斬られるとこだった

 

 

「……悠夜さん、今すぐさっき撮った写真を消去して下さい」

 

 

「却下だ、せっかくのカードをみすみす捨てられるか」

 

 

俺の返答を聞いてさらに力を込める織斑、鍔ぜり合い?いや耳ぜり合いか?をしながらお互いに一歩も引かない

 

 

「わぁ〜!?束さんのウサ耳が〜!?ちーちゃんストップストップ!!壊れちゃう!束さんのウサ耳が壊れちゃうから!?」

 

 

「放せ、束!私は今すぐにあの写真を消さなければならないんだ!邪魔をするな!!」

 

 

「ダメだよ!今放したらまたウサ耳に被害がいっちゃうよ!」

 

 

 

篠ノ之が必死になって織斑を羽交い締めにして止めていた、よく止めてられるな〜

 

 

俺は奪い取ったウサ耳をくるくる回しながら見物していた

 

 

ちなみにウサ耳で真剣を止められたのは、旧ウサ耳が壊されたのを反省して天災が無駄に高い技術力を使って特殊コーティングを施したからだ、天災が自慢げに説明してたから多分大丈夫だろうと思って使ったが、まさか本当に止められるとはな

 

 

無理だったら逸らすつもりだったからよかったんだが、基本的にこういう技術の話では嘘つかねぇからな、あいつ

 

 

〜回想終了〜

 

 

で織斑達が騒いでる間に渡された執事服を着ることになったと、うん、めんどくせぇ

 

とりあえず教室に逝くか、俺は更衣室を後にして教室に向かった

 

 

さて、入るか

 

 

シュン

 

 

『おぉ〜〜!』

 

 

「だるそうな感じがいいね!」

 

 

「似合ってるよ!」

 

 

「でも何か物足らないね」

 

「うーん、そうだね」

 

 

いや、そんなこと知らんしどうしようもないだろ、特にやる気があるわけでもないしな

 

 

「で、これでテキトーに執事もどきのウェイターをすればいいのか?」

 

 

「そうだよ、でもテキトーにやっちゃダメだよ、真面目にやらなきゃ」

 

 

「つっても、どうせ売上が貰える訳でもないし賞品もないからなぁ、イマイチやる気が出ねぇ」

 

 

「ん?あるよ、賞品」

 

 

「は?あるの?どんな?」

 

「えっとね、まず学園祭では各クラスでやる出し物をいくつかのグループに分けるの、飲食系のグループとかお化け屋敷みたいなアトラクション系みたいに」

 

 

「それで、各グループの最多売上だったクラスの中で1番売上に貢献した人に特別に賞品が貰えるんだって、ちなみに賞品はその売上に1番貢献した人の要望をだいたい叶えるらしいよ?初めての学園祭だからってすごいよね〜」

 

 

……なるほど、ね、なら

 

 

「インパクトが足りないんだったよな?」

 

 

「えっ?う、うんインパクトというか、何か物足りないというか」

 

 

「わかった、ちょっと行ってくる」

 

 

「ど、どこに行くの?」

 

 

「大丈夫、すぐに戻ってくるから」

 

 

俺はトイレにいって直ぐに戻ってきた

 

 

シュン

 

 

「あ、水無月さん、ど……こ…に」

 

 

「これでどうだ?」

 

 

「わっ、すごくキレイ」

 

 

「何かミステリアスだね」

 

「さっきよりも色気みたいなのが出てる」

 

 

俺はトイレにいって今まで付けていたカラーコンタクトを外し元の紫の目にしてきた、インパクトは出たみたいだな

 

 

「その目、どうしたの?」

 

「カラーコンタクトだ」

 

 

その一言で皆さん納得してくれた、ほんとは逆なんだがな

 

 

「じゃあ、少しウェイターの練習をしてみようか」

 

 

「了解」

 

俺は執事服をキッチリと着て練習に望んだ、客の役はじゃんけんで勝った女子一名だ

 

 

シュン

 

 

客の役をしている子が入ってきた、さぁやるか

 

 

「お帰りなさいませ、お嬢様」

 

 

「は、はい」

 

 

俺は心からの笑みを浮かべて対応する、営業スマイルとは違う、本当の笑みだ

 

 

「どうぞこちらに、席へご案内いたします」

 

 

「お、お願いします」

 

 

客の役の子の前を歩き席へ誘導し椅子を下げて座れるようにする

 

 

「どうぞお座り下さい」

 

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

「勿体ないお言葉です、こちらが当店のメニューとなります」

 

 

「えっと、それじゃあ、ダージリンとショコラを」

 

 

「承りました、ダージリンとショコラですね?少々お待ち下さい」

 

 

あらかじめ用意されていた紅茶とショコラをもって音を立てずに移動する、雰囲気を出すために紅茶は熱いやつだ

 

 

「お待たせいたしました、ダージリンは熱いのでお気をつけ下さい」

 

 

「はぃ〜」

 

 

「あ、熱っ!」

 

 

ガチャン、パシャ

 

 

とよっぽど緊張していたのか手が震えて紅茶を客の役の子が零してしまった

 

 

「ご、ごめんなさい」

 

 

泣きそうになりながら謝ってきたがこれくらい許容範囲だ

 

 

「お嬢様お怪我はありませんか?すぐに新しい物をお持ちしますので、気にしなくてもよろしいですよ」

 

 

「………」

 

 

黙っちまったけど、まぁいいや、新しい紅茶を出して、っとよし飲み終わったな

 

「いってらっしゃいませ、お嬢様、またのご来店を心よりお待ちしております」

 

一礼して終了だな

 

 

「こんな感じでいいか?」

 

『す、すごーい!!』

 

 

「水無月さん普段と全然違う」

 

 

「ほとんど完璧だよ!」

 

 

「すごく出来る人みたいだった!紅茶を零してもすぐに対応してたし!」

 

 

「つ、次わたしがお客さんやりたい!」

 

 

「ずるいわよ!わたしもやりたい!」

 

 

 

なんか二回目の練習相手の座を巡ってうるさくなってきたな、二回もやらないがな、後は本番だけで十分だ

 

輪から外れて離れるといつの間にかおとなしくなっていた織斑と篠ノ之が寄ってきた

 

 

「ゆーくん、凄かったね!束さんにもご奉仕して欲しい!」

 

 

「学園祭当日に金払って客として来たらやってやるよ」

 

 

「えぇ〜」

 

 

「急にどうしたんですか?普段なら絶対にあんなことはしないでしょうし、それにわざわざコンタクトまで外して」

 

 

ぶーたれている篠ノ之をスルーして織斑が尋ねてくる

 

「賞品のためだ」

 

 

「何か欲しいんですか?」

 

「あぁ」

 

 

「何が欲しいんですか?」

 

「言わねぇ、それよりも他人事みたいに言ってるけどおまえもするんだぞ?ウェイトレスつかメイド、そのメイド服を着て」

 

 

織斑は思い出したのか顔を赤くしながら落ち込むという器用なことをした

 

 

「に、似合ってますか?」

 

「容姿はいい方だし、服のデザインも悪くないから、カワイイと思うが?」

 

 

「……あんまり褒められた気がしませんね」

 

 

篠ノ之と同じこと言うな

 

 

「そうだ、写真の画像を」

 

「織斑がおれより売上に貢献したら消してやるよ」

 

 

「……分かりました」

 

 

織斑はムスッとした表情で賭にのってきた

 

「悠夜さんはなんであんなに手慣れてるんですか?」

 

「フランスにいたときにちょっとな」

 

 

「ちょっととは?」

 

 

……説明すんのもめんどくせぇし、ここは

 

 

「織斑が次ウェイトレス役するらしいぞ」

 

 

「ちょっ!」

 

 

「本当ですか!」

 

 

「見たいです!千冬様の接客!」

 

 

「わたし!わたしがお客さん!」

 

 

「ゆ、悠夜さん!あっ、ちょっと、待て、こら、やめ」

 

 

織斑は人の波に呑まれて行った、ドンマイ

 

 

さてと、これで客足は確保できんだろ、世界最強の冥土が見れるしな、売上に関しては絶対負けねぇ、賞品は貰う

 

 

俺は今までにないくらいの決意をもって学園祭に臨む、今の平穏が多少崩れてもメリットの方がでかいからな

 

 

……平穏なんかあったかだって?うるさい、多少あった、筈なんだよ黙ってろ

 

 

俺は突っ掛かって来るウサ耳馬鹿をかわしつつ決意を固めた

 



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憂さ晴らし+八つ当たり=災難……あ、割りに合わねぇわ……

「お帰りなさいませ、お嬢様方、どうぞこちらに席へご案内いたします」

 

 

微笑みを浮かべて新しい客を空いている席に案内する、朝から始めてかれこれ4時間程が経つが客足は絶えるどころか増え続けて今はだいたい1時待ちだ

 

 

俺は賞品の為に頑張ってはいるがそろそろヤバイから休憩に入りたいのだが、いかんせん執事&メイド喫茶と銘打っている手前、執事とメイドが抜けるのは厳しいものがある

 

 

それでも今並んでいる客で一旦店を閉じて2時間程の休憩を取れるようにしてもらった、そろそろ限界だしなぁ、ん?あぁ、俺じゃねぇぞ、確かに腹はへってきてはいるがこんなもん賞品のことを考えたら何とかなる、問題は……

 

「いらっしゃいませ、席へご案内します」

 

 

「君カワイイね〜、名前なんて言うの?」

 

 

「どうぞこちらに」

 

 

「冷たいな〜、ねぇ休憩いつ取るの?もしよかったら一緒に学園祭まわらない?」

 

 

「こちらがメニューになります、お決まりになりましたらベルを鳴らして下さい」

 

 

と言って男の質問を全て無視してとっとと次の客のところに向かう織斑、愛想のかけらもねぇな、おい

 

 

そう問題は織斑だ、無表情で無愛想とおよそ接客に大切なものをごっそり抜き取ったような態度で今まで仕事をこなしている、本来なら笑顔を浮かべてお帰りなさいませご主人様、という感じの接客だったんだが

 

 

「そんな気持ちの悪い挨拶など出来るか!それに面白くもないのに笑える筈ないだろう」

 

 

と言って今の主人(客)に冷たいメイドが出来上がったという訳だ……接客?斬客だろ、これ

 

 

まぁそれでも見た目がいいから店に寄ってくるお客様(善意の募金者)が絶えないんだからすげぇよなぁ、織斑を知っていてナンパしに行く猛者は中々いないが気付かずにナンパして撃沈していく奴らは後を絶たない

 

 

よくやるな〜、ちなみに基本、男の対応は織斑が、お嬢様方の対応は俺が受け持っている、百合が咲いていそうなお嬢様は顔を若干しかめながら織斑が対応している

 

 

……まぁ貢献度が上がって賞品に近付くから良いんだが、接客が二人っておかしいだろ?それでも店が廻ってんだから織斑も俺も凄いと思う

 

が、さっきも言ったように織斑がそろそろヤバイ、かなりイライラしてきているからめんどくさいことになる前に休憩に入りたいんだが、っと席が開いたし次の客を入れなきゃならんな

 

 

「お帰りなさいませお嬢様、出口はあちらになっております」

 

 

 

「ゆーくんひどいよ〜、今の束さんはお客様なんだよ!ちゃんと接客してね♪」

 

 

すまん、さっきは大丈夫だとか言ってたが駄目だ、かなりイラついてきた、そもそもなんでこいつが客として来てんだよ、仕事は……ないんだったな、メイド服を着るだけ着て仕事は全くしない、というよりはこいつの接客は接客なり得ない上に厨房に行かしても連携なんか出来ないから自由にさせてたんだったな

 

 

はぁ、やりたくねぇなぁ

 

 

「失礼いたしましたお嬢様、席にご案内いたしますが、その前に、胸元、肩、髪留め、袖についている小型カメラをおとり下さい、当店での写真撮影等は禁止されておりますので」

 

 

「な、なんのことかな〜?束さんには分からないんだよ〜」

 

 

ほう、しらをきるつもりか、ならこちらにも考えがある

 

 

「そうですか、ならすみませんが一応身体検査を受けていただけますか?こちらが間違えていたなら商品は全て無料とさせていただきますので」

 

 

「えっ!身体検査!そんな〜こんなところでなんて、ゆーくんのえっち///」

 

 

顔を赤くしくねくね動きながらふざけたことを宣うウサ耳バカ

 

 

「いえいえ、滅相もございません、ちゃんと控室でいたしますよ」

 

 

「人気のない所に行くの?ゆーくんもしかしてホントに」

 

 

「当店のメイドが」

 

 

「ごめんなさい〜ちゃんと渡すからそれだけは許して〜」

 

 

様々な箇所からカメラを取り外しつつ半泣きになりながら謝ってくるウサ耳バカ、そりゃあ俺の後ろからバンバン殺気を飛ばしている織斑(冥土)の顔を見たらそうなるだろうよ、顔が見れない俺でも今の織斑の状態は想像がつくのに直で見てるウサ耳バカにはキツイだろうな

 

 

……隅の方の席に連れて来て正解だったな、今の織斑の顔を見たら多分客は逃げるだろうし、売り上げが、ねぇ?

 

 

ちなみに写真撮影禁止なのはそんなことをしていたらキリがないし、俺も織斑も撮られのが嫌だったからだ、何が悲しくてこんな恰好の自分を撮られなきゃならんのだ、それに盗撮なんかあったら客足が減るからな

 

 

「……確かに預かりました、ではメニューはこちらになります、お決まりになられましたら備え付けのベルをお鳴らし下さい」

 

 

グイッ、とそこから離れようとしたら服の裾を掴まれた

 

 

「……どうかなさいましたか?服が伸びるので、御用でしたら出来るだけ声を掛けるかベルを鳴らして下さい」

 

 

一瞬、素の表情と声で反応しそうになったがこいつでも一応、一応は客なので笑顔で対応する

 

 

「ふっふっふ、束さんのメニューはもう決まってるんだよ!」

 

 

とニヤニヤしながら宣言してきた……まさか

 

 

「324332*のNo.2852チョコレートケーキで♪」

 

 

……なんでお前がそれ知ってんだよ、それはここに来て一度来る度にもらえる暗号を五個手に入れてそれを解かなきゃ分からない筈だ、回数来ても今まで誰も解けなかったから安心してたのに、つーかこいつ五回も来てねぇだろ

 

 

「……失礼ですがお嬢様は当店に何度来られましたか?」

 

 

「今回が初めてだよ〜、あ!暗号のことならなんか集まって解こうとしてたのを見て解いたんだよ!別に貰えた暗号を持ってこいとか言ってなかったし答えだけで大丈夫でしょ?」

 

 

……おい、俺はちゃんと言った筈だろ、暗号も持って来るように説明しとけって?なんで暗号無しになってんだ

 

 

と厨房(といっても紅茶やケーキが置いてあるだけ)を見たらなんか皆頭を下げてカンペ?を見せてきた、何々、『ごめんなさい、言うの忘れてました』か………殴っていいかな?今の世の中男女平等どころか女性優位なんだから問題ないだろ?ん?それとこれとは違うって?……ならこのやり場のない怒りはどうしろって言うんだよ

 

……はぁ、とりあえず仕事するか

 

 

「そうでしたか、すみませんでした、少々お待ち下さいね、直ぐにお持ちします」

 

 

「うん!お願いね〜」

 

 

ウサ耳バカに声を掛けて厨房に戻りメニューを告げる

 

「特別メニューのチョコレートケーキを一つ」

 

 

「う、うん、あのごめんね水無月君」

 

 

「何に謝ってるのかな、俺には分からないな」

 

 

俺は何故か謝ってきた女子とその後ろの女子達にイイ笑みを浮かべて質問する、なんか顔を青くしてるけどなんでだろうねぇ?

 

固まってしまった女子達は放っておいて普通に出しているケーキとは違う所に置いている特別メニューのチョコレートケーキを持ち出し運ぶ

 

 

「お待たせいたしました、こちらが特別メニューのチョコレートケーキになります」

 

 

「わぁ〜い!待ってたんだよ〜!すっごく久しぶりだね、ゆーくんの手作りのお菓子♪」

 

 

……全く店の手伝いしてなかったくせになんでこいつはこういう事だけは覚えてるんだよ、って当たり前か、特別メニューの手作りのお菓子を作る羽目になったのはこいつと織斑のせいだったな

 

 

 

なんで俺がこんなお菓子作りなんてたまにしかしないことをして特別メニューとして出してるのかと言うとだ、この喫茶店のメインは当然のことながら執事とメイドだ、だけどそれだけじゃインパクトが足りない!とかクラスの女子達が言い出して何か他にないかと考えていたところにこのウサ耳バカが

 

 

「ねぇねぇゆーくん、束さん、久しぶりにゆーくんの手作りお菓子が食べたいなぁ〜」

 

 

といらんことを言いやがった上にさらに追い討ちかけるように

 

「そうだな、悠夜さんの作るお菓子は絶品だったからな、是非ともまた食べたいものだ」

 

 

と織斑が言いやがった、結果、俺が特別メニューのお菓子を作ることと相成った……とりあえずあれだ、執事とメイドが居てどこがインパクトが足りないんだ?まぁ結局作った物は誰にも味見させず、暗号も俺がかなりめんどくさく作ったから数はいらんだろと少しだけ作って置いといたんだが、甘かったか

 

 

あん?なんでお菓子なんか作れるのかだって?………今までの俺の生活知ってるんだったらわかると思うけど、胃がな、やばいんだよだからあんまり市販の甘味ばっか食ってると胃に悪いってんで自分なりに味をあまり落とさず胃に優しい甘味を作ってる内に上達した

 

……やめろよ、その生暖かい目を、死にたくなって来るから

 

 

で、なんで織斑達が知ってるのかというと、少しケーキを作り過ぎたときに紅葉と海に持っていってやったんだよ、ちょうど二人揃ってたから手渡して俺が作ったやつだから日もちしないし直ぐに食べろよ〜と言って帰ったのだが、二人は心優しいことに自分達の分を半分にして姉達にも食べさせたそうだ、俺が作ったことを言って

 

 

 

……あれは怒れないよなぁ心優しく育ってくれててなによりだよちくしょう、そのせいでばれたって訳だよ、四人とも揃いも揃ってシスコンのブラコンってことを考えなかった俺が悪かったんだな、きっと、はぁ

 

「ではどうぞごゆっくり」

 

と言って立ち去ろうとしたのだが、直ぐさまベルを鳴らされて立ち止まるしかなくなった、ちっ

 

 

「どうかなさいましたか?」

 

 

「逃げちゃダメだよゆーくん、ちゃんと特別メニューをしてくれないとね♪」

 

 

満面の笑みでオーダー(拷問)を出してくるウサ耳バカ……覚えてやがったか

 

 

「そうですね、大変失礼いたしました、それでは少し失礼して」

 

 

顔が引き攣るのを必死に我慢してフォークをとり、一口サイズにしたケーキをウサ耳バカの前に運ぶ

 

 

「あ〜ん♪」

 

 

そのまま口を開けたウサ耳バカに食べさせる、とそれを見た周りから黄色い声が上がった……うるせぇ

 

 

 

要するに特別メニューとは俺(執事)が作ったお菓子を俺(執事)に食べさせてもらえるというものだ、こんなこと例え賞品のためでもやりたくなかったから暗号を難しくしたのに意味なかったな、ちなみにメイドバージョンはない、千冬様にはそんなことさせられないんだと、思い出したらまたイラついてきたがとりあえずこの拷問をとっとと終わらせよう

 

 

「うん!すっごく美味しいよ〜♪あのいじわるな暗号をがんばって解いた甲斐があったよ!ゆーくんがこんなにサービスしてくれるなんてこんな時くらいしかないからね!」

 

 

 

私幸せですって感じのオーラ全開で感想を言ってくるウサ耳バカ、余計なお世話だ

 

 

 

「ありがとうございます」

 

 

それでも笑顔を絶やさずに俺は苦行を成し遂げた、頑張った自分を褒めてやりたい

 

 

「おいしかった〜ごちそうさまだよ、ゆーくん」

 

 

「ご満足頂けたようでなによりです、お会計は」

 

 

ダンッ!

 

 

「おいおい何だよこの店は!客にこんなもん食わせるつもりか!」

 

 

やっと拷問から開放されたと思って会計をとろうとしたら耳障りな怒鳴り声が聞こえてきた

 

 

「どうかなさいましたか」

 

近くにいた織斑が怒鳴り声をあげた客とその連れの席に向かい対応した

 

 

「どうしたもこうしたもねぇよ!俺が頼んだ紅茶の中に髪の毛が入ってたんだよどうしてくれんだ?あぁ!」

 

 

どうやら紅茶の中に髪の毛が入っていたとクレームをつけているらしい、この女性優位の世界でそんなことができるとは素晴らしいバカだな、が、ちょうどいい

 

「すみません、直ぐに取り替えます」

 

 

「取り替えたらいいってもんじゃねぇだろ!」

 

 

「代金の方も結構ですので」

 

「それじゃ足りねぇな、そうだあんたメイドなんだろ、メイドなら俺達にご奉仕してくれよ」

 

 

「そうだな、客にこんなもんを出したんだから当然だろ?」

 

 

「なっ!」

 

 

ニヤニヤしながら頭の悪いことを抜かす勇者(バカ)二人、織斑の顔が怒りで歪みそのままだったら織斑があいつらを叩きのめして終わりだろうがそれはダメだ、店のイメージが壊れるし、なにより

 

 

「オラ、早くしろよ」

 

 

「お客様、どうなさいましたか?」

 

 

「あぁ?何だテメェ」

 

 

「当店の執事ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺のウサ晴らしができねぇだろ?

 

その時チンピラもどきを見た俺の顔は魔王すら裸足で逃げ出すほどの愉悦と歓喜が滲み出た狩る者の表情だったと後にウサ耳が語ったらしい

 

 

「テメェなんか呼んでねぇからとっとと失せろ」

 

 

俺の突然の登場に少しチンピラもどきは身構えたがすぐに自分達が有利だと勘違いも甚だしい態度に戻る、観察してみたら何かスポーツでもやっていたのかなかなかのガタイだった

 

 

「いえいえ、そうはいきません、当店が粗相をしたなら直ぐさま対応するのがわたくしめの役目ですから」

 

俺は笑顔を絶やさずに対応する

 

 

「チッ!うるせぇ奴だな、テメェらが出した紅茶の中に髪の毛が入ってたんだよ!」

 

 

カップの中を見てみると確かに髪の毛が入っていた、が

 

 

「おや?確かに髪の毛が入っていますが随分短いようですね?」

 

 

というとさっきまでニヤニヤ笑っていた勇者(バカ)二人があからさまに動揺した、アホだなこいつら

 

 

「そ、それがどうしたってんだよ!」

 

 

「いえ、当店の従業員は私以外は全て女性ですのでこのように短い髪をした者は居ないんですよ、それに私もこのような長さの髪ですし、少し気になったんですよ」

 

 

「な、何だよ!テメェは俺らがこの髪の毛を紅茶に入れたとでも言うのか!あぁ!」

 

 

不利になったら怒鳴ってごまかす、単純だねぇ

 

 

「滅相もございません、お客様がそのようなことをするはずがありませんでしょう?」

 

と助け船をだすとホッとするバカ達、助け船っつっても爆薬が満載の船だけどな

 

「あ、当たり前だろうが」

 

「そうでしょうね、ですので今からこの髪の毛のDNAを調べます」

 

 

「はっ?」

 

 

アホずらを並べるチンピラもどき、愉しくなってきたな

 

 

「ご安心下さい、当学園には最新の機材が揃っていますのでお客様に粗相をした者を直ぐに見つけだしてしかるべき対応をさせます」

 

「あぁ、もちろんそのようなことは有り得ないとは思いますがもし仮に髪の毛の持ち主がお客様だった場合は、おっとすみません、わざわざ有り得ないことの末路を言っても仕方ありませんね」

 

 

今まで浮かべていた笑顔を嘲笑に変える、もちろんチンピラもどき達だけに見えるように

 

 

今まで有利だったのに一転して追い詰められて顔を青くしていたチンピラもどき達は俺の顔を見て真っ赤になる

 

 

「ふ、ふざけんじゃねぇ!」

 

 

ガシャン!と髪の毛が入っているカップを俺目掛けて弾き飛ばしてくる、へぇ証拠隠滅に俺への攻撃か、割りと頭回るねぇ、けど

 

 

飛んでくるカップの取っ手をを直ぐさま掴み、カップの中身を零さないようにその場でカップの推進力に逆らわずに受け流し回る、そしてそのまんま360°回転し紅茶の中身をチンピラもどき達にぶちまけて優雅にカップを皿の上に戻す、我ながら完璧だな

 

 

ん?何かおかしいか?完璧だっただろ?カップも割れてないし周りの客にも被害は無しでこいつらには紅茶を味あわせてやったんだからな

 

 

「「ギャアアア!!アッチィ!!」」

 

 

顔を押さえて転げ回るアホども、そりゃあ熱いだろうよ、紅茶は冷えないように特殊な皿の上に置いてあったんだから

 

 

「おや、これは失礼しました、私もまだまだ未熟ですね」

 

 

「テメェ!ぶっ殺してやる!」

 

俺の慇懃なもの言いにキレたガタイがいいほうのバカが起き上がり突っ込んできて拳を振り上げ殴りかかってくる、周りから悲鳴が上がるがこんなもんあのブラコン(斬鉄)の攻撃に比べたら遅すぎる

 

 

俺は殴りかかってくる手を掴み軽く手首を拈ると突っ込んできたバカは華麗に宙を舞った、本来ならここで綺麗に背中から落として引き上げてやったらそこまでのダメージにはならないが残念、これは俺のウサ晴らしなのでそこまで優しくねぇ、空中で手を離しバカの落下地点のしたに執事服とセットの革靴を履いた足の爪先を立てて置いておく、すると

 

 

メキッ

 

 

「カハッ」

 

 

自分の体重+速度が爪先一点にかかり、ちょっといやーな音とともにバカその1は気絶した、ちなみに足は周りに見えないようにやった

 

 

さて次は

 

 

「ひっ!」

 

 

もう一人のバカを見るとあからさまにビビられた、まぁ見るからに肉体派の相方が瞬殺されたからな、そらビビるわな、まぁ手は抜かないけど

 

「う、うわぁー!!」

 

 

自棄になったのか突っ込んできたバカその2をさっきのリプレイの如く同じように気絶させる、そしてその場で一礼、すると周りは歓声を上げた

 

 

はぁ−スッキリした、俺が清々しい顔をしていると織斑が近づいてきた

 

 

「悠夜さん、ありがとうございます助かりました」

 

 

「ストレス溜まってたからちょうどよかったな」

 

 

「……だからあのまま落とさずに足を入れてたんですね」

 

 

「さぁ?何のことだ?」

 

 

「はぁ、それよりもどうするんですか?紅茶の中身を全部こいつらにかけたからカップの中にはもう髪の毛はありませんし、下手をしたら悠夜さんまで怒られますよ」

 

 

「何言ってんだよ?ちゃんとカップ見てみ」

 

 

とカップを覗いた織斑がびっくりしたような顔でこちらを見てきた

 

 

「ちゃんと入ってるだろ?」

 

 

「どうやって」

 

 

「ガタイがいいって便利だよなぁ、そっちの方に目が行くし影になる部分も多いからな」

 

 

俺の返答を聞いて顔を引き攣らせる織斑

 

 

「……空中を飛ばしてる間に、ですか」

 

 

「何言ってんだよ、カップには最初から入ってただろ?髪の毛」

 

 

俺が笑顔で言うと織斑はこめかみを押さえた、ばれなきゃいいんだよ、ばれなきゃな

 

 

「とりあえずこいつらを警備員に引き渡すか」

 

 

「そうですね」

 

警備員を呼んでチンピラもどきを引き渡し残りの客をはけて、ウサ耳バカをテキトーにあしらってやっと休憩時間だ、来年にあるかは知らんが今度やるときは招待状みたいなのを使わないと来れないようにしろよな、じゃないとあいつらみたいなチンピラもどきがどんどん来るし面倒だ、制限設けないからこんなことになんだよ

 

 

そんなことを考えつつどう休憩時間を使うかなぁ、と考えていると着替えた織斑が来た

 

 

「どーかしたか?」

 

 

「いえ、その、悠夜さん」

 

「何だよ?」

 

 

顔を若干赤くし、もじもじしながら何か言おうとしている織斑

 

 

「き、休憩時間の間に少しだけ一緒に学園祭を廻りませんか?」

 

 

「いやだ」

 

 

俺は即答した、いくら文句を言われようとさっきので目立ってしまった上に織斑と学園祭を廻ったりしたらまたあのバカどもみたいなのに確実に絡まれるだろうしもう手遅れな気もするが今後の学園生活がめんどくさくなる……自分で言ってて泣けてきた

 

「……そういうと思ってましたよ、でもいいんですか?これ、ばらまきますよ?」

 

 

と言って織斑は数字とNo.が書かれた紙を見せてきた、それを見た俺は盛大に顔を引き攣らせた

 

 

「なんでそれが、ってあのボケウサギか」

 

頭を抱える俺を見ながら話しを織斑は話しを続ける

 

 

「正解です、束が全ての暗号を解いていたので貰って来ました」

 

 

嘘だな、確実に勝手にパクってきただろ

 

 

俺は今の苦痛と後の苦痛を天秤にかけた結果

 

 

「……ぐっ、分かった、要求を飲もう」

 

 

「そうですか、それじゃあ早く着替えてくださいね」

 

「そういえば篠ノ之は一緒なのか?」

 

 

「いえ、束は一緒じゃないですよ二人で廻りたかったので……ダメでしたか?」

 

 

「はぁ、聞いてだけだから気にすんなよ、それに交渉してきたのはおまえだろが、文句は言わねぇよ」

 

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

嬉しそうに頬を染めながら先に行く織斑、傍から見たらかわいらしいかも知れんがやってることは脅しなんだよな、はぁ

 

 

とりあえず着替え始める俺

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これからまた面倒になるのかとへこみながら織斑のところに向かった



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あぁ、面倒ごとの予感がひしひしと……

むぅ、悠夜さんを誘ったのはいいがどこへ行くか考えてなかったな、早く決めなければ休憩時間が終わってしまうんだが、どこに行けばいいのか分からんな、あらかじめ決めておけば良かったのだが悠夜さんを普通に誘ったとしても断られるだろうと思って今日までなにも考えてなかったからな

 

 

現にさっき断られたから、私の考えは正しかった訳だ、そもそも悠夜さんは基本的にめんどくさいからと言って行動したがらない、だから悠夜さんを誘ったり行動させるのは至難の技だ

 

 

 

逃げ道を徹底的に潰し、条件を提示し、行動するリスクとしないリスクを考えさせて行動した場合のリスクを優位に立ててやっと五分五分の確率にもちこめるのだ、今回、悠夜さんを誘えたのは運が良かったとしか言いようがない

 

 

束が解いた暗号を『借りて』きてそれを交渉に使ったから悠夜さんも断れなかったんだ、正直あの暗号は解かせる気が全く感じられなかった、あの束でさえてこずったと言っていたからな………よっぽどやりたくなかったんだろう

 

 

 

いや、こんなことを考えている場合ではなかった、早く決めなければ悠夜さんが来てしま

 

 

 

「はぁ〜、休憩終わったらまたあれを着なきゃならんのか、めんどいな、まぁ考えるのは後でいいか、で織斑どこに行くんだ?」

 

 

 

……遅かったか、どうする、まだなにも決めていない

 

 

「決めてなかったのか?」

 

 

「うっ、すみません、決めていませんでした」

 

 

「いや別にいいけどな、とりあえず腹減ったからなんか食べに行かないか?」

 

 

 

「……そうですね、それではパンフレットに載っている料理部の料理店に行ってみませんか?」

 

 

 

「なんの捻りもない出し物だな、まぁそのほうが安心出来るからいいけど、それじゃそこ行くか」

 

 

 

「はい」

 

スタスタ

 

 

〜千冬&悠夜移動中〜

 

 

「着いたな」

 

 

「えぇ、とりあえず入りましょう」

 

「いらっしゃいませ〜、何名様ですか?」

 

 

「二人だ」

 

 

「二名様ですね、こちらへどうぞ」

 

 

空いている席へ案内されてメニューを渡された

 

 

「ご注文がお決まりになりましたら、従業員にお申し付け下さい」

 

 

丁寧にお辞儀して料理部の部員は厨房に戻って行った

 

さて、何にするかな

 

 

「決まった」

 

 

悠夜さんは決まったのか、私も決めなければ……って

 

 

「早過ぎませんか」

 

 

メニューをもらってから一分も経っていないんだが

 

 

「こんなもんだろ、悩んでてもしょうがないしな」

 

 

「そういうものですか?」

 

「少なくとも俺はな」

 

 

私の質問に適当に答えて悠夜さんはどこともなく視線を漂わしていた、悠夜さんらしいな、さて私もメニューを決めようか

 

 

 

その後、私と悠夜さんはそれぞれ頼んだ料理を雑談しながら食べて店を後にした

 

 

「学食とは違っていておいしかったですね」

 

 

「そうだな、それに店全体の従業員も良かったし」

 

 

む、それは

 

 

「好みの女子でもいましたか?いやらしいですね」

 

 

 

悠夜さんの言葉につい皮肉を言ってしまう、今は私といるのに他の女の話しをされるのは聞いていて面白いものじゃない

 

 

「アホか、そういう意味じゃねぇよ、俺が言ってんのは従業員の接客態度のことだよ」

 

「どういうことですか?」

 

「あそこの従業員、つか店員だな、店員はお前や俺を見ても全く態度を変えないでいただろ、それでだよ」

 

悠夜さんがめんどくさそうに説明してくれて理解できた、私や悠夜さんに束はこの学園では知らぬ者はいないと言っていいぐらいの自分で言うのもあれだが、有名人だ、私は世界一のIS操縦者として、悠夜さんは世界初の男のIS操縦者として、束はそのISを造りだした科学者としてだ

 

 

 

その事もあって普段からミーハーとでも言うのか、私達を見ると黄色い声をあげたり近づいてきたりする生徒がかなりの人数存在する、そういう態度でなくてもある程度距離というか壁のようなものがある

 

 

それは仕方のないことだとは思うが疲れるのも事実だ、けれどさっきの店の店員はそんな気配を微塵も出さずに接客をしていた

 

 

 

束も外からの干渉を嫌うがあいつは普通の感性をしていないからいいが、悠夜さんはある程度普通の感性を持っていてめんどくさがる人だからある意味束よりもそういう態度を取られるのが嫌なのだろう

 

 

 

だからあの店を評価していたのだ、普段なら気付けただろうにどうしたのか……いや、原因は分かっている、悠夜さんとこうしていられることに浮かれているのだろう、我ながらどうなのかと思うが不快ではない、寧ろ心地よく感じる

 

 

肩肘を張らずにありのままの自分でいられる、勝手な理想や期待を押し付けたりせずに私を私として扱ってくれる人が近くに居てくれていることが嬉しい、だから柄にもなく浮かれてしまっているのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……何を考えているんだ私は!

 

「……大丈夫か?」

 

 

自分の考えに赤面していると私から少し距離をとり可哀相なものを見る目をした悠夜さんが声をかけてきた……そこまで酷かったのか、自己嫌悪に陥りそうになったが大丈夫だと言って、歩き始めた、今は余計なことを考えずに楽しむことにしよう

 

 

次に私達が行ったのはパソコン部の出し物である、『君にこのセキュリティが抜けるか?ハッキングチャレンジ!』という所だった………いろいろと言いたいことがあるがとりあえず、学園としてはいいのか?この出し物は、なぜかそれなりに人が入っているが一般人には無理だろう

 

 

 

かくいう私にも無理なんだが珍しいことに悠夜さんが自分から入ろうと言ってきた

 

 

「よし織斑、これやるぞ」

 

「いいですけど、珍しいですね、悠夜さんが自分からこういう見世物というか目立ちそうなことをするなんて」

 

 

「景品があれだからな、多少はやる気が出る」

 

 

と言って景品の一覧表を指差す、【防壁を抜いた枚数により景品が変わります】

 

一枚以下、参加賞の飴

 

 

二枚、一世代前のパソコンのパーツ

 

 

三枚、最新のパソコンのパーツ

 

 

四枚、IS学園食堂の食事三ヶ月間無料券or執事&メイド喫茶の優先入場券

 

 

五枚、限定版第一回IS世界大会モンド・グロッソ時の出場者写真集

 

 

 

「なんですかあれは」

 

 

「執事&メイド喫茶の優先入場券は大概の出し物の上位景品として渡したらしい、宣伝にもなるしただの入場券だから俺も許可した」

 

「そっちではなくて!最後の景品です!」

 

 

「俺が知るかよ」

 

 

私が思わず怒鳴ってしまったので周りが何事かと見てきて悠夜さんは顔をしかめながら答えてくる、私の声が耳に響いたみたいだが今はそんな場合ではない

 

確かに写真は撮られたがその企画はなくした筈だ!なのに何故それがある!

 

 

「あ〜、なんか報道関係の知り合いがいてそこから数冊しか作られなかった写真集を手に入れたらしいな、数冊しか作られなかった写真集なら高値で売れるだろうな、しかも第一回のやつだしプレミアもんじゃね?」

 

 

悠夜さんが近くにいた女子に聞いたことを伝えてくれた、くそ、どうすればいいんだ、あんな物恥以外の何物でもない、まだ誰も二枚以上の防壁を抜いていないようだからいいが何時まで持つか、私はそこまでパソコンに強くないからあれを手に入れられるとは思えない

 

 

「さて、学食無料券を取りに行くか、こういう時だけはあのウサ耳に感謝だな、これで食費が浮いて他のもんに回せる」

 

 

ガシィ!

 

 

「……なんだ織斑」

 

 

私は出し物に挑戦しに行こうとしていた悠夜さんの腕を反射的に掴んだ、そうだ悠夜さんならあれを手に入れられるだろう、何せ束に追随出来るのだから

 

 

「悠夜さん、五枚抜いて下さい」

 

 

「なんでだよ、俺は学食無料券が欲しいんだよ」

 

 

「五枚抜いて下さい」

 

 

「駄目だ、無料券だ、っていうか放せ、腕が痛いから力を強めるな!」

 

思わず力が入ってしまったようだが仕方ない、しかしどうやって悠夜さんにやって貰うか、暗号を解いた紙は悠夜さんに渡したし使えない、どうする

 

 

「……ん〜、でも、いやしょうがないか、そろそろだしなぁ、はぁ無料券が」

 

 

私が悩んでいると悠夜さんは何かを考えるそぶりをしてからため息をついた

 

 

「わかった、五枚抜いてくる」

 

 

「え?いいんですか」

 

 

思わず聞き返してしまったが本当にどうしたんだろう、悠夜さんが何も無しでこちらの頼みを引き受けるなんてめずらしいなんてものじゃない

 

 

「お前が頼んできたんだろうが、とりあえず取ってくるからな」

 

 

「あ、はい、お願いします」

 

 

めんどくせぇと言って悠夜さんはいってしまった、よく分からないがこれで大丈夫……なのか?悠夜さんが出来ることを前提で話しを進めてしまっていたがもし失敗したら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………私の杞憂だったようだ、悠夜さんは制限時間ぎりぎりでクリアしていたが明らかに手を抜いていた、やっぱり悠夜さんが1番無茶苦茶なんじゃないだろうか

 

 

「取ってきたぞ」

 

 

「ありがとうございます、でも頼んでおいてなんですが、何故聞いてくれたんですか?」

 

 

いつものように怠そうにめんどくさそうな顔をしながら帰ってきた悠夜さんに頼みを聞いてくれた理由を尋ねた

 

 

 

「なんていうか、詫び?みたいなもんだな」

 

 

 

詫び?よく分からないから詳しく聞こうとしたら何か声が聞こえてきた

 

 

 

「ち〜ちゃ〜〜ん!ゆ〜く〜〜ん!とう!」

 

 

声がだんだん近づいて来たかと思うと人込みの中から束が飛び掛かってきた、とりあえず頭をわしづかみにして拘束する

 

 

「ずるい、ずるいよ!ちーちゃん!ゆーくんと二人っきりでデートなんて!」

 

 

デートか、確かに客観的に見れば男女二人で学園祭を廻っていたらデートに見えるかも知れないな

 

 

「ちーちゃん、顔赤いよ」

 

「う、うるさい!それよりもなんで此処にいる」

 

 

指摘されてさらに顔が熱くなるがそれよりもなんで束が此処にいるのかが問題だ

 

「それはねぇ〜、ちーちゃんが持ってっちゃった紙に発信機と盗聴機がついてたからだよ!」

 

 

束が頭を掴まれながら得意げな顔をしてくる、そんな物にまで付けていたのか、でも悠夜さんがそういう物に気付かない筈がない、つまり

 

 

 

「悠夜さんは知ってたんですか?」

 

「知ってたぞ、割りとちゃちいやつだったしな」

 

 

飄々と答える悠夜さん……そんなに私と居るのがいやだったのか、当然か、あんな脅迫紛いなことをしたんだから、しょうがないんだ

 

どんどんマイナスな考えが浮かんで暗くなってきた私に束が話し掛けてきた

 

 

「ちーちゃんもしかして勘違いしてる?」

 

 

「なんのことだ」

 

 

「ゆーくんがちーちゃんと居たくないから発信機を外さなかったって」

 

 

「………」

 

 

図星だったので何も言えない私を見て束がおかしそうに笑いながら続きを言ってきた

 

 

「図星だね〜?でも残念、ホントは違うんだよ〜」

 

 

「どういうことだ?」

 

 

「実はね、ちーちゃんが暗号を書いた紙を持っていって直ぐについて行こうとしたんだけどね、盗聴機からゆーくんの声が聞こえてきたんだ」

 

 

「『今から織斑と学園祭を廻るがついてくんなよ、1時間半くらいたったら来てもいいがそれまでは合流すんな、分かったな』って、そのあと直ぐに盗聴機の方は壊されちゃったけどね」

 

「ちーちゃんが二人で廻りたいって言ってたから、ゆーくんはわざわざ二人で廻れるようにあんなこと言ったんだと思うよ」

 

そうだったのか、悠夜さんが私のわがままを聞いてくれて……駄目だ、頬が緩むのを止められない、ちゃんと考えてくれていたんだ

 

 

「そうか」

 

 

「ゆーくんにお礼言わないとダメだよ?」

 

 

「あぁ、分かっている」

 

 

私は近くの店を覗いている悠夜さんの元に向かった

 

 

「悠夜さん」

 

 

「ん?どうした?」

 

 

「ありがとうございます、私のわがままを聞いて下さって」

 

 

「あぁあれか、いや織斑のわがままを聞いたっていうか、おまえら二人を同時に相手したくなかっただけだ」

 

 

手をひらひらさせながら答える悠夜さん、確かにそれが本心なんだろう、けど悠夜さんはやって欲しいことをやって欲しいタイミングでしてくれる、それは中々狙って出来ることではない、だが悠夜さんは簡単にそれをしてしまう、ごくごく自然にだ、本当に優しいな

 

 

 

「そうですか」

 

 

「そうだよ、って何笑ってんだ?怪しいから止めろ」

 

「笑ってますか?」

 

 

「笑ってるから言ってんだろうがよ」

 

ふむ、笑っているのか私は、悪い気分ではないな

 

 

 

「そういえば、盗聴機は壊したそうですがなんで発信機は壊さなかったんですか?」

 

 

 

「……場所を教えておいておとなしくさせておくか、場所を教えずにあちこち名前を叫びながら捜されたり、学園中のカメラとかセキュリティを使って捜されて騒ぎになるの、どっちがいい?」

 

 

「……発信機をそのままにしてくれてありがとうございます」

 

 

 

「だろ?さてと、そろそろ時間だし戻るか」

 

 

「そうですね」

 

 

悠夜さんと私はごねる束を連れて戻ろうとした時今までの気分をぶち壊す声が聞こえてきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ〜!捜したぜ千冬、束!」

 

 

……本当に刀の錆にしてやろうか



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初めてなんだが、異常に疲れるな……

……はぁ、やっと一段落したと思ったら、まためんどくさいのがきたなぁ、おいさて、どうするか……よく考えたら俺は呼ばれなかったし帰ってよくね?

 

 

「そういえば悠夜さん、さっき言っていた詫びとはどういうことですか?」

 

 

俺が素晴らしい事実に気付いてそれを実行しようとしたら織斑に質問されて止められた……織斑の中ではあいつは居なかったことになったらしい

 

 

「あぁ、あれな、休憩時間いっぱいまで廻るつもりみたいだったけど、途中でそこのウサ耳が来れるようにしただろ?だからだよ」

 

 

というかその一時間半以上だったらマジで乱入しかねなかったし、それで契約違反だって言って違うこと要求されんのも面倒だったしな、はぁ、欲しかったんだけどなぁ無料券

 

「そうだったんですか」

 

 

「他に俺が詫びる理由があるかよ」

 

 

俺が呆れた表情で織斑に問い掛けると少々むっ、とした顔をして言い返してきた

 

「ありますよ」

 

 

「例えば?」

 

 

「普段の学園生活で私達から逃げようとします」

 

 

「おまえらの後ろから他の生徒が着いて来る上に厄介事を持ってくるからだろうが、しかも極論を言ったら俺が此処に居るのもおまえらのせいだろ」

 

 

「け、剣道の鍛練にもなかなか付き合ってくれません」

 

 

「俺がやってんのは剣術だ、それにお前と模擬戦したら疲れるし限界まで付き合わせようとするだろ、こっちの予定無視して」

 

 

「その、暮桜のデータ取りの手伝いも滅多にやってくれません」

 

 

 

「そっちは現世界最強のISとその操縦者でこっちはただの訓練機、データ取りの模擬戦の後は集めたデータをまとめるのをそこのウサ耳にずっと付き合わされるな」

 

 

「……そう!メイドをやらされました!」

 

 

「そうだな、俺もISの世界大会なんて行かなくてもよかったのに無理矢理行かされて、行かなかったら回避出来たかもしれない執事をやってるな」

 

 

執事をやっているのは賞品の為だがな

 

「………」

 

 

ずーん、と背景に縦線が入りそうなくらい落ち込む織斑、あんだけやり込めたら流石にあぁなるか。つか基本的に俺が被害者なんだから俺に勝てる筈ないだろ

 

 

「後は任せてちーちゃん!束さんがちーちゃんの仇を取るよ!」

 

 

と言って今度は篠ノ之が出てきた、別に勝負でもなんでもないんだが……

 

 

「ゆーくん!」

 

 

「なんだよ」

 

 

「ゆーくんはもっと束さんに優しくするべきだよ!」

 

 

「いきなり会話の流れをぶった切りやがったな、おい」

 

 

「束さんが朝おはようって挨拶しても邪険に扱うし」

 

 

「挨拶と一緒に突撃してきてなおかつ、発信機の類いを付けられそうになったら誰でもそうなるだろうよ」

 

 

「お昼ご飯を一緒に食べようとしても逃げるし」

 

 

「お前が作った料理を無理矢理食わせようとする上にその料理にたまによく分からん薬混ぜてるからだろうが」

 

 

一回だけ食っちまった時は急に眠気がして寝そうになったが自分の頭を壁に打ち付けてその痛みで無理矢理意識を保った、無茶苦茶痛かった

 

 

その後俺と織斑に話しを聞いた紅葉を加えて説教をしたんだがやめる気配がない、それから食い物になにか混ぜられていたら気付けるようにと耐えられるよう訓練した、ちなみに協力してくれたのは織斑だ、ある程度教えたら簡単な物くらいなら作れるようになった、最初の頃は食えたもんじゃなかったがなぁ

 

 

なんで料理が痛いんだよ、料理に攻撃力持たせるとかどんな調理方法だ

 

 

……薬物入りの料理を出すことにすごく微妙な顔をしていたが俺の身の安全のために我慢してもらった、まぁ何回も作ってたおかげで今ではそれなりの出来の料理が作れるようになったんだから別にいいだろ

 

 

 

……なんでこんなことしてんだとは考えないようにしておいた、一々考えてたら胃がもたねぇしなぁ、あの訓練が今までで1番努力したかもしれない

 

 

俺が少し遠い目をしている間にもウサ耳は抗議?をしている

 

 

「ゆーくんの部屋にも入れてくれないし〜」

 

 

「入れたらその日、一日中居座るだろ」

 

 

「それに!まだゆーくんのお家にご招待してもらってないよ!」

 

「当たり前だ、俺の最後の砦を教えてたまるか、教えたら何されるか分かったもんじゃねぇ」

 

 

 

「うぅ〜、ゆーくんのいぢわる!」

 

 

 

「日頃のおこないのせいだ」

 

 

ウサ耳バカがしくしくと自分で言いながら泣きまねをし始めた。さて、帰るか

 

 

「まちやがれ!」

 

 

そのまま仕事に戻ろうとしたが俺の進行方向にイケメン君が出てきたのでしょうがなく、本当にしょうがなく止まった、居たの忘れてた……

 

 

「………はぁ、何かようか、俺は仕事に行かなきゃならんのだが」

 

 

思わずため息をついてしまったがしょうがないだろ、めんどくさいことになりそうな予感がするんだから

 

 

「何かようか?じゃねぇよ!てめぇ、なに俺と千冬達との会話を邪魔した上に千冬達を泣かせてそのまま逃げようとしてんだ!」

 

 

 

……えぇ〜、今の会話を聞いててどこをどう捉えたらそういう解釈になんだよ、周りで聞き耳立ててた野次馬達もなんで?って顔になってるし、それに織斑は言い合いに負けてテンションが下がってるだけだ、ウサ耳バカにいたってはただの泣きまねだ

 

 

 

「なんとか言ったらどうなんだよ!」

 

 

俺がイケメン君の訳の分からん言い掛かりと思考回路に驚いて喋らずにいたら痺れを切らしたのかまた怒鳴ってきた、マジで帰っていいか?

 

 

「………あ〜、仕事あるから帰っていいか?」

 

 

「チッ、適当な理由で逃げるのかよ、腰抜けが。まぁいいとっとと消えろ」

 

 

イケメン君に再度事情を説明したら、舌打ちしてやたら上から目線で命令してきた、俺はめんどくさいことに巻き込まれなかったら別にどう言われようがどうでもいいんだが

 

 

 

………後ろから聞こえる刀を抜こうとする音とかバチバチと普通のスタンガン程度じゃ聞こえないかなり大きなスパーク音とか周りの野次馬達のすごい速さで変わる顔色とか見たり聞いたりしてるとそっちの方で頭が痛くなってくる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁいいか、後はほっといたらなんとかなるだろ、帰ってまためんどい接客だぁ〜と……なんだよ?この場面でスルーすんのかよ!って?当たり前だろ?だってほっといても何とかなるのにわざわざ関わって俺の負担を増やしたくねぇんだよ

 

 

それにものすごいめんどくさいことになりそうな予感がするし、頭のなかで警鐘と警報と警笛がガンガン鳴ってんだよ、そんな状態で誰が率先して関わろうとする?俺は絶対に嫌だ

 

 

 

イケメン君の横を抜けてさぁ帰ろうとしたら

 

 

 

「ちょっと待て!」

 

 

とまた声をかけられた……無視して行って喚きながら着いて来られるよりは止まってテキトーに相手した方が楽、か?

 

「……なんだ?」

 

 

「なんでお前がそれを持ってんだよ!」

 

 

それ?俺がイケメン君の視線をたどって目線を下げてみると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一回IS世界大会の写真集があった……渡すの忘れてたな

 

「……そこの出し物の景品だが」

 

 

「そんなことは知ってるんだよ!」

 

 

「じゃあ何が言いたいんだ」

 

 

うんざりしながらイケメン君に問い掛ける。めんどくさい

 

 

「どうやって手に入れた!」

 

 

はぁ?

 

 

「普通にそこの出し物の条件をクリアしてだよ」

 

 

 

何を当たり前のことを言ってんだ?こいつ

 

 

 

「嘘をつくな!俺が20回以上挑戦して一枚も抜けなかったのにお前ごときがクリアできる筈ないだろ!」

 

 

……イケメン君どんだけ挑戦してんだよ、三枚以上の景品を獲得したらもう挑戦出来ないからそれ以下だとは思ったが一枚も抜けなかったのか。つか、どんだけ迷惑なんだよ20回もやるって、普通一回挑戦して無理だったら諦めるだろ

 

 

 

でもこのルールがなかったら無料券も取れたんだがなぁ、まぁこのルールがないと下手したら一人が景品独占って可能性もあるから妥当っちゃ妥当だな

 

 

 

それにイケメン君が出来ない=俺に出来る筈がないって方程式はどこから出て来たんだ?自分に自信ありすぎだろ

 

「そうか!分かったぞ、てめぇ!」

 

 

「はぁ〜、何が?」

 

 

「お前が束の取った景品を奪ったんだな!束ならあの出し物をクリア出来るからな、きっと写真集を誰かに取られるのを千冬が嫌がって束に取るよう頼んだんだろう、それをお前が!」

 

 

 

微妙に当たってるな

 

 

 

「……そこの担当してる子にでも聞けば分かるだろ」

 

 

「フンッ!どうせその子も脅してるんだろ!」

 

 

 

……駄目だな、そもそもコミュニケーションが成立してない、というよりとりあえず俺が悪者じゃないと気が済まないのか

 

 

 

「……結局何が言いたいんだよ」

 

 

 

「それをこっちに渡せ!」

 

 

……別にいいけどな、どうせ持って帰ってもそこら辺に放置されるか捨てるかだろうし

 

 

 

と思いながらチラッと後ろを見てみると織斑が首を振って駄目だと伝えてきた

 

 

 

「じゃあ織斑か篠ノ之に渡したらいいのか?」

 

 

 

「ダメだ!ここで渡したとしても後から無理矢理奪いそうだからな、俺が責任を持って管理する。だから俺に渡しな」

 

 

 

前髪をサラっと手で払いながら無茶苦茶な理由で写真集を要求してきた。見た目は良いから普通は似合いそうな仕種なんだが

 

 

 

……言ってることが結局自分が欲しいからよこせって言ってるだけの上に、何て言うか、小物臭?みたいなもんが出てるから色々台なしだ。周りも呆れてるし

 

 

 

渡したら後からなんか言われそうだしなぁ、ていうか言うだろな、絶対

 

 

「はぁ、めんどいなぁ、嫌だ」

 

 

「なんだと?」

 

 

「渡すのを拒否する」

 

 

「てめぇ、ふざけんなよ!俺が優しく言ってる内にとっとと渡した方がいいぜ」

 

 

あれで優しかったらバファ○ンの十割が優しさで出来てることになるな

 

 

 

「渡すのを拒否する」

 

 

 

さっきの言葉をリピートする、もう考えるのも面倒だ

 

 

「言ったな、今からてめぇをボコボコにしてや……いや、そんなことよりいいもんがあった」

 

 

 

一瞬、こちらに飛び掛かってきそうになったが何かを見つけたのか急に止まってニヤニヤしだした……やっぱ変態だろ。今気付いたけど、こいつとまともに話したの初めてだな、できればずっと話したくなかったが

 

 

「今ここでお前をたたきのめすのは簡単だが、それだと周りに迷惑がかかる」

 

 

 

ボコボコじゃなかったのかよ、しかも今更だな、おい

 

 

「それでだ、慈悲深い俺がお前にもチャンスがある方法に変えてやろう」

 

 

 

いつの間に勝負するのが決定事項になったんだ?

 

 

 

「あれで勝負だ!」

 

 

俺の疑問をよそにイケメン君……もう変態君でいいか、変態君が壁に貼ってあるポスターを指した、えぇと何々、学園の生徒を対象にしたISを使ったクレー射撃?

 

「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるって言うからな、これなら可能性はゼロじゃないだろう」

 

 

 

余裕しゃくしゃくといった感じで聞いてくる変態君、マジでなんでこんなに自信あるんだ?

 

 

 

「俺が勝ったらその写真集をもらい、さらに!千冬達のクラスの出し物のメイド喫茶で千冬と束にご奉仕してもらう!」

 

 

 

………さりげなく自分の願望も入れてるってか本人に許可を取ってから言えよ、後ろの方から瘴気みたいなのが流れてきたじゃねぇか。ついでに店の名前も違う

 

 

「めんどいから断r『いいよ(だろう)ゆーくん(悠夜さん)が負けるはずないし(からな)』おい、勝手に決めんな」

 

 

 

こいつら、厄介事を押し付けてきやがったな

 

 

 

「フッ、負けた時の言い訳でも考えておきな」

 

 

 

と言ってISが使えるアリーナに向かって歩いていった、この出し物は学園が出してんのかよ、じゃなかったらISを使えるはずないか。おおかたどっかのお偉方と一般人への見世物がわりだろ

 

 

 

さて、とりあえずだ

 

 

ガシッ×2

 

 

メキメキメキ!

 

 

「「いたたたたたたた!!」」

 

 

 

俺に面倒なことを押し付けた天災達をアイアンクローで締め上げる

 

 

 

「なに面倒事を押し付けてんだ、おい」

 

 

「ゆーくん!ギブ、ギブだよ!これ以上やられたら何かでちゃう!」

 

 

 

「悠夜さん!本当にマズイですから離して下さい!」

 

 

ちっ、仕方ないとりあえずこれくらいにしておくか

 

 

 

俺が手を離すとバカ達は頭を抱えてしゃがみ込んだ、自業自得だな

 

 

「ひどいよゆーくん!束さんの頭が潰れちゃったらどうするの!」

 

 

「潰してやろうか?」

 

 

「ごめんなさい!」

 

 

俺が手を近づけたら涙目でぷるぷると頭を抱えながら謝ってきた

 

 

「はぁ、このまま帰っていいか?」

 

 

いや割りとマジで、なんかめちゃくちゃ疲れたし

 

 

 

「駄目ですよ、それだと不戦勝だなんだと言ってきますよ」

 

 

 

まだ痛いのか頭を押さえながらも織斑が嫌なことを言ってきた、が

 

 

「別に俺に実害はほとんどないしな」

 

 

 

ダメージを受けるのはこいつらだ、写真集は別にいらないしご奉仕も俺がするわけじゃないから今回は本当にどうでもいいのだ

 

 

「ゆーくんは束さん達があれにお嫁さんに行けない身体にされてもいいの!」

 

 

 

ウサ耳バカが飛び掛からんばかりの勢いで詰め寄ってきたが、あの変態君の評価はひど………妥当か

 

 

 

「何を想像したのかしらんが自業自得だろ」

 

 

 

「うぅ〜……そうだ!」

 

 

ウサ耳バカが何か思いついたのかニコニコしながら空中ディスプレイを出して何かを打ち込み始めた。なんだ?ハッキング、って!

 

 

ガシッ!

 

 

俺は直ぐさまウサ耳バカの手を掴んで操作を中断させた

 

 

「むむむ、ゆーくん手を離して〜、まだ途中なんだよ〜」

 

 

「ふざけんな、こんなもんをやらせてたまるか!」

 

 

ウサ耳バカは必死に打ち込むのを続けようとするが、させるか!

 

 

「おい、このバカを抑えるのを織斑も手伝え」

 

 

「手伝えって、どうしたんですか?」

 

 

織斑が訳が分からないといった表情で近づいてきたので周りに聞こえない程度の声量で説明する

 

 

「このバカが世界中のパソコンにハッキングを仕掛けてバカみたいなことを送ろうとしてやがんだよ」

 

 

「バカみたいなこと?なんですかそれ?」

 

「簡単に言うと結婚するっていう情報だ」

 

 

「結婚?誰がですか?」

 

 

「俺と織斑とこのウサ耳バカのだ」

 

 

ググッとさらに力を込めて抑える、なんでこんな時だけ馬鹿力を発揮するんだよ!

 

 

「……どういうことだ束」

 

「ゆーくんがこのまま行かなかったらあれがまた付きまとってきそうだから、先にゆーくんのお嫁さんになっておいたら大丈夫だと思って♪」

 

 

「話しが飛びすぎだろが!」

 

 

なんでそうなるんだよ!

 

 

「……悠夜さん、いつまでもそうしているわけにもいきませんし、行ってもらえませんか?」

 

 

……結局そうなんのかよ

 

 

「束も、次からはそういうことは辞めておけ」

 

 

 

「え〜」

 

 

「束」

 

 

「うぅ〜、分かったよちーちゃん」

 

 

抵抗しなくなったので手を離した、篠ノ之は渋々とディスプレイを消した。はぁ、やっとかよ

 

 

 

「すみません、悠夜さん」

 

織斑が苦笑しながら謝ってきた、謝るなら巻き込むな

 

 

「はいはい、といより以外だな、てっきり織斑も一緒になって脅してくると思ってたんだが」

 

 

結果は同じだが

 

 

 

「前科があるので否定はできませんね、けど結婚というのはお互いの同意が大切ですし無理矢理しても意味がありませんから」

 

 

 

「好きな人に振り向いてもらえるように自分でがんばりますよ」

 

 

 

織斑は柔らかな微笑みを浮かべてそう言ってきた

 

 

 

「ほらいくぞ束、悠夜さん先に行ってますね」

 

 

 

「あ〜!ちーちゃん待って〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ、色々とめんどくせぇ、帰って寝たい

 

 

 

……文句言われる前に行くか

 

 

俺はのろのろとアリーナに向かって歩いて行った

 



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いい加減疲れたよ……犬でも飼って絵の前で寝るべきか……

はぁ、来ちまったよ。めんどくさいなぁ、マジで帰りてぇ

 

 

………なんか変態君はもうISを装着してやる気満々だな。機体は……ラファールね、まぁ特出したもんがない代わりに扱い易くて戦況に合わせた行動が取れる、使い勝手が良い機体だ。それにこの見せ物みたいな出し物の為に、わざわざ機体のデータをいじって、理想的な射撃体勢の維持と、ある程度の自動補正がついてて命中率の向上がされてるみたいだし。わりと楽な出し物だな

 

 

ん〜?アリーナの中心からスタートで、四方からランダムに出てくる、計30個のターゲットを何個撃ち落とせるかを競うのか。

 

 

スコアの上のやつはほとんどどパーフェクトか、下位のやつでも平均15個ねぇ。簡単過ぎな気もするが、お偉いさんが見てるからなぁ。デモンストレーションとして無様なもんは見せられないだろうから、妥当っちゃ妥当か、

 

 

「よく逃げずに来たな」

 

 

変態君が腕を組みながら声をかけてきた、ISスーツまで着てるとか。どんだけやる気なんだよ、てかへそだしって………まぁ、人の趣味にケチつけるつもりはないが、趣味悪くないか?

 

 

ISスーツを着なくても操縦出来んのに、わざわざヘソ出して露出する意味が分からん

 

 

ん?俺か?俺は普段は普通に制服だけど?

 

 

 

 

 

いやさ、授業の度に着替えんのもめんどいし、ISスーツ着なくても多少、反応が鈍くなる程度だしなぁ。で、色々考えた結果、めんどいから着ないという結論に達した

 

 

……それにどっかの会社のISスーツだけ着たりしたら色々めんどくさいことになるしな

 

 

 

まぁ、変態君は毎回違う種類のスーツを着ては、文句を言ってるらしいけどな。このスーツは俺の動きに合ってないとか、見た目が地味だとか……見た目地味でも性能が良かったらいいと思うんだが

 

 

あぁ、ちなみに。今の格好は執事服だ、これも賞品の為だ。つか、これくらいのメリットがなかったらマジで帰ってるわ

 

 

「フッ、今更ながら怖じ気づいて何も言い返せないか」

 

 

……?あぁ、まだ喋ってたのか。全く気付かなかったな。うーん、この考え事をしてたら周りの話を聞けなくなる癖?は治した方がいいか、攻撃とかだったら反応出来るんだけどねぇ

 

 

「しかも何だよ、その格好。あぁ、お前みたいに企業からISスーツすら貰えないやつにはそんな似合わない服しかないのか」

 

 

変態君がやたらと人を見下した顔をして、微妙にピンポイントなタイミングで皮肉を言ってきた

 

 

似合わないってのは同意出来るな、俺の見た目って普通だし

 

 

けど、ここまで自分の都合良く物事を考えられるのは一種の才能な気がしてきたな。俺もあれぐらい能天気だったら……気持ち悪いことこの上ないな、却下だ

 

 

「なぁ」

 

 

 

「なんだ、降参か?」

 

 

「この勝負って、俺が勝ったら何があるんだ?」

 

 

とりあえず、これを聞いておかないと。俺のモチベーションがもしかしたら上がるかもしれないしな〜……果てしなくろくでもないことのような気もするが

 

 

「は?……プッ、アハハハ!何だよお前、俺に勝てるとでも思ってんのか?あり得ねぇだろ?」

 

 

俺の質問に対して、きょとんとしていた変態君は急に笑いだし。自分が負ける分けがないと、断言した

 

 

自信満々ってかこのパターンばっかりだな、まぁどうでもいいか

 

 

「で、勝てるかどうかは別にして。俺が勝った場合は何があるんだ?」

 

 

「そうだな、まぁあり得ねぇけど。俺にもしも勝ったら、俺が今受けてやってる。企業のテストパイロットの役を譲ってやるよ。」

 

 

………い、いらねぇーー!!

何だよそれ。そんなもん大分前に断った。てか、拒否した役じゃねぇか!何が悲しくて、そんなもんの為にこんなくそめんどくさいことをしなきゃなんねぇんだよ

 

 

ヤバい、やる気が全く起きねぇ。あ〜、他の景品でも変態君から貰える物とか全くないしなぁ。勝っても負けてもデメリットしかないとか、どんな嫌がらせだよ

 

 

「あぁ、じゃあルールに追加で文句なしの一発勝負にしてくれ」

 

 

「はぁ?なんでだよ」

 

 

 

 

 

「今まで、そっちが一方的に色々決めたんだ。それくらいいだろ?それとも一回で勝つ自信がないのか?」

 

 

変態君が俺が出した条件に質問してくるが、説明したら意味がないのでかなりテキトーな挑発をする。普通のやつだったら乗らないだ「調子に乗るなよ!いいだろう、その条件でやってやるよ!」

 

 

………まぁ、普通じゃないとは思ってたけどさ。これはさすがに、ねぇ?なんとなく、変態君の扱い方が分かったわ

 

 

「格の違いを見せてやるよ!」

 

 

と言って、変態君はアリーナの中央に向かって行った

 

 

さて、実際のところ、どんだけ出来んのかねぇ?見たことないからなんとも言えんしな

 

 

「お前らは知ってるか?」

 

 

 

「……見てもいないのになんで気づけるんですか」

 

 

「すごいね〜流石ゆーくん!これも束さんとゆーくんの愛の力だね!」

 

 

後ろから近づいてきた天災達に質問したら、一人には質問で返されて、もう一匹は完全に話を無視してアホなことを言ってきた

 

 

「……質問に答えろよ」

 

 

「悠夜さんも主語を入れて話してくださいよ」

 

 

「だいたい分かってんだろうが、変態君の実力だよ。気づいたのはあれだ、小動物とかの危機察知能力みたいなやつ?だよ」

 

 

「……実力は見たら分かりますよ。悠夜さんが小動物?笑えない冗談ですね、そんなこと言ったら世の中の8割の生物が小動物ですよ」

 

 

「あれぇ?二人共〜束さんを無視しないで〜」

 

 

「さいですか。お前らという災害に怯えて察知する、っていう点では同じだろが。つか機嫌悪いからって八つ当たりしてくんな」

 

 

「束はともかく、私まで災害呼ばわりはひどいですね。……ここまで来る間に『三角関係?それとも四角関係?』等と外部からの客に噂され、学園の生徒には同情の視線を送られたら八つ当たりもしたくなりますよ」

 

 

「お〜い、なんで二人共、束さんから視線を逸らすの?泣いちゃうよ?束さん泣いちゃうよ〜?」

 

 

「方向性が多少違うだけで、お前らは俺からしたら大差ねぇんだよ。だからって俺に当たるな。

 

 

 

ただでさえこれからめんどくさいことをやらなきゃならんのに、これ以上疲れさせんな」

 

 

こうなった原因はこいつらなのに、なんで八つ当たりまでされなきゃなんねぇんだよ。めんどくさい

 

って、喋ってる間に始まったな。まずは正面から飛んで来る的を……は?なんで撃たずにスルーしてんの?

 

 

「フッ」バン!

 

 

変態君は飛んできた的を撃たずにスルーしたかと思ったら、後ろに飛んで行った的を振り向かずに手だけを後ろに向けて片手で撃った。

 

 

 

 

 

が弾は的には当たらずに見当違いの方向に飛んで行った

 

 

ISにはハイパーセンサーっていう視覚外のことまで知覚できる便利な物もついてる

 

 

そのハイパーセンサーのおかげで360°全ての方向を目で見てるのと同じように認識できる。けど、そんな便利な物があっても主体になるのは自分の目だ

 

 

なのにわざわざ格好をつける為に見ないで撃つとか……バカだろ

 

 

しかもあんなテキトーな構えかた(構えですらないが)で撃つなよ。この出し物で使われてるISには理想的な射撃姿勢の維持と、ある程度の自動補正がついてる。理想的な射撃姿勢ってのはつまりだいたいの型があるっていうことだ。

 

まぁ、慣れてきたら構えとか気にしなくても当てられるけどなぁその型をなぞって、自動補正に任せて撃ったらある程度は当たるように調整されてるんだが……

 

 

 

その補助を全部無視して、無理やりあんな動きしたらIS自体に負荷がかかるぞ。今日は朝から整備なしでずっと使ってたみたいだし、そろそろヤバいんじゃねぇの?

 

あのISって変態君の後は俺が使うんだが………壊れてたりしないよな?IS自体は頑丈なんだが、色々繊細なデータを入れてるみたいだし、あんな動きを想定してデータを入れてないだろうしなぁ。データがイカれて変な動きをしそうでかなり心配だ



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あ、やっぱり?……

「これでラストだ!」

 

 

バンバンバンバン!

 

 

30個中、26個のクレーが出し終わり、残りの4個のクレーが同時に撃ち出された。それを変態君はその場で飛び上がり、体を上下逆さまにしつつ体を捻りながら(空中一回転捻りだな)残弾を撃ちきった。で、着地。と

 

 

……まぁ、円の中から出てはいないし、ルール違反ではないけどさ。ものすごい無駄な動きだな、しかも一発も当たってないし。ISの基本機構のPIC≪パッシブ・イナーシャル・キャンセラー≫がなかったらそのまま頭から着地してズドン、だったな。や、見せ物としては楽しいのかも知れないけどね

 

 

 

……で、俺はこの微妙な空気の中でやらなきゃならんのか? 何の嫌がらせだよ。はぁ、めんどくさい

 

 

「フゥ、やっぱり量産機じゃ俺の動きについてこれないな」

 

 

 

えぇ〜。あれをISのせいにするのか? それは駄目だろ、色々な意味で。ほら、観客席にいるフランスのお偉いさんっぽい人が青筋立ててるし。あ〜ぁ、先生めちゃくちゃ焦ってるなぁ。まぁ、自分の国のISを低性能だ、って言われたようなもんだしな。そりゃ怒るわ

 

 

普通だったら外交問題になってもおかしくないんだが。ここ(IS学園)はトクベツ(・・)だからな、機体のデータを優先的に回すとかして何とかするだろ

 

 

いい機体だと思うけどな、あのIS。入れられてたデータを逸脱、てか脱線?した動きだったのにちゃんと補正かけようとしてたしなぁ

 

「確かに見たら分かったな」

 

 

「でしょう?」

 

 

「しかも今の一人言、設置してある集音マイクに聞こえるように言ったよな? チラチラ確認してたし」

 

 

「そのようですね」

 

 

「……よくやるなぁ」

 

 

「次は悠夜さんの番ですよ」

 

 

織斑の情け容赦のない宣告に、俺は顔をしかめた

 

 

「なぁ、マジで帰っていいか」

 

 

「駄目ですよ」

 

 

「こんな雰囲気の中でやりたくねぇんだよ。おい、目線を逸らすな、こっち向け」

 

 

こいつ、他人事だと思って………まぁいい。ちゃんと仕返しは用意してあるしな

 

 

俺と織斑が喋ってる間に、変態君は長々と一人言を喋り。満足したのか戻って行った。『俺の専用機があれば』とか『ハンデはこれくらいでいいだろう』等々、変態君が色々言ったせいで、更に空気が微妙になった。……あれはわざとやってんのか? わざとだったら確かに効果的だ。主に俺の胃に対して

 

 

「はぁ、そろそろ行くかぁ」

 

 

「頑張って下さい。というか絶対に勝って下さい」

 

 

勝つ、ね

 

 

「ほどほどに頑張るわ」

 

 

織斑の声援(脅迫?)に対して適当に返事を返しながら、いじけているウサ耳バカの所に向かう

 

 

「篠ノ之」

 

 

「くすん、どうせ束さんなんて要らない子なんですよ〜」

 

 

うん、いい感じにウザいな。お前は何歳だ、っていいたい

 

 

「あっちで織斑がお前と話したそうにしてたぞ」

 

 

「……ほんとう?」

 

 

「本人に聞いてくれば分かる」

 

 

「じゃあ、俺は出番だから行ってくる」

 

 

「うん!頑張ってね、ゆーくん♪束さんは寂しがりやな、ちーちゃんの所に行ってくるね!」

 

 

そう言って篠ノ之は織斑の所に突っ込んで行った

 

 

「ち〜〜ちゃ〜〜〜ん!」

 

 

「うわっ!何なんだ束!」

 

 

「えへへ〜、束さんが居なくて寂しかったんだよね!」

 

 

「何の話だ!」

 

「もう♪照れちゃって、ちーちゃんかわいい〜!ゆーくんから聞いたよ。束さんと話したかったんだよね?」

 

 

「悠夜さんが?……まさか」

 

 

織斑がへばりついている篠ノ之を抑えながらこちらを見てきたので、俺は織斑に向け笑顔で『がんばれ』と口パクで伝え、俺にとっての処刑台に歩き始めた。

 

 

多少スッキリしたな〜。あん? 嘘つきだって? どこがだよ? ちゃんと言っただろ? 織斑が話したそうに(・・)してるって。誰も織斑が話したいと言っていた、とは言ってないしな。それに聞いてくれば分かる、とも言ったからなぁ。聞いた結果は違ってたってだけだろ? 結局俺の主観だから事実かどうかは分からないからな〜。嘘なんてついてねぇだろ?

 

 

あんだけスルーされてたし、かなりめんどくさくなってんだろ、あのウサ耳。

 

 

 

相手すんのがめんどかった、ていうのもあったが……むしろそれが本音だったが、まぁいい感じに仕返しなっただろ。あの天災達には。織斑も便乗してスルーしてたし効果覿面だっただろうしな。まぁあのウサ耳も気づいてたみたいだけどな〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……このまま帰りたいんだが、ダメかね?

 

悠夜sideout

 

 

side千冬

 

 

急にこちらに突っ込んできた束に全く見に覚えがないことを言われた。しかも悠夜さんに聞いたと言っていた。さっきまでの束に対する、悠夜さんの行動を考えてみたら嫌な予想ができてしまい。悠夜さんを見たんだが……私の予想を肯定するように笑顔を浮かべながら口パクで『頑張れ』、と伝えて行ってしまった

 

 

……こうなると分かっていて、束にあんな態度をとっていたのか。いや、悠夜さんのことだから、8割くらいはめんどうだったからだろうな。

 

 

「むふふ〜ちーちゃ〜ん♪」

 

 

「えぇい!離れろ束!」

 

 

「や〜ん、ちーちゃんのい・け・ず♪」

 

 

悠夜さん、仕返しだとしてもこれは酷すぎますよ。束が普段の3割増しで鬱陶しいです

 

 

「そもそも私はそんなことは言っていない!」

 

 

「え〜、じゃあゆーくんは嘘ついたの?」

 

 

「……束、悠夜さんがなんて言っていたか、完璧に答えろ」

 

 

束から悠夜さんが言っていたかを聞いたが……悠夜さんは確かに嘘は言っていないが、誤解しても、というよりは誤解させるための会話だった。

 

 

「あぁなるほど!さっすがゆーくん!あったまいい〜」

 

 

「……束」

 

 

「なぁに? ちーちゃん」

 

 

「お前、気づいていただろ」

 

 

「そ、そんなことない……よ?」

 

私が睨みつけながら束に質問すると、さっきまでのテンションはどこにいったのか。目をあちこちにさ迷わせながら疑問形で返事をしてきた

 

 

「私が少し考えて分かることを、お前が分からないわけないだろう」

 

 

かなり癪だが、束は私よりも格段に頭がいい。勉強にしても私は出来る方だが(自慢でも何でもなく実際のテストでの結果だ)束には勝ったためしがない。

 

 

そもそも意味がないと言ってテスト自体を受けようとしないんだが、一度だけ受けさせたことがあった。結果は人物名を答える問題以外は全問正解だった。数学にいたっては計算問題をすべて答えだけで、一切の途中式がなかった程だ

 

 

改めてこいつはデタラメだと思ったな。そんな奴が気づかないわけがない。つまり、ただじゃれつく口実が欲しかっただけなんだろう

 

 

ちなみに悠夜さんは毎回得点が違う。良かったり悪かったりを適当に繰り返している。

 

 

 

ちゃんとやれば全問正解くらいは容易い筈なのに、なぜそんなことをしているのか聞いてみたら『目立ちたくないんだよ……』と言っていた

 

 

……そのセリフにかなりの哀愁が篭っていたので。もう手遅れでは、という言葉は飲み込んでおいた

 

 

。ちなみに毎回点数が違うのは、似たような点数を取り続けて怪しまれないためだそうだ

 

 

 

……話が脱線したが、まぁいい。とりあえずこのバカをどうにかし「あ!ゆーくんが出てきたよ!ほらよそ見してないで、ちゃんと応援しなきゃダメだよ〜ちーちゃん!」……

 

 

バシッ!

 

 

「いたっ!ちーちゃん何するの!?」

 

 

自業自得だ、馬鹿者が

 

 

 

騒いでいる束を無視してアリーナを見ると、悠夜さんが中央にあるISに近づいているところだった。

 

 

「うぅ、ちーちゃんがひどい〜」

 

 

「うるさい」

 

 

 

静かに観戦もできんのか、こいつは

 

 

 

「ほら、始まるぞ」

 

 

 

悠夜さんがISを装着した、が……少しバランスを崩した? ただ動こうとしただけで?

 

 

「ちーちゃんちーちゃん。今ゆーくんの動きおかしくなかった?」

 

「お前にもそう見えたか」

 

 

束にもそう見えたということは、見間違いではなさそうだな

 

 

悠夜さんはその場で二、三度手を振ってからライフルを構えた。そして一つ目のクレーに向けて撃った。が、その弾は大きく外れて飛んでいった……IS自体に何かあるのか? 悠夜さんならあの程度、外す筈がない。

 

「う〜ん、ちゃんと調べてみないと分からないけど、反応し過ぎてるみたいだね」

 

 

 

「反応し過ぎている?」

 

 

 

「うん。まぁ簡単に言っちゃうと、手を1センチ動かすつもりでやったら30センチ動いちゃう〜って感じかな? まぁあのISは全身がそんな感じになってるんじゃないかな?」

 

 

「それでもあそこまで外れるものなのか? ライフルはしっかりと的に向いていたみたいだが?」

 

 

「それだけじゃなくて、照準もズレるみたいだね。多分、打ち込んであるデータがおかしくなってるんじゃないかな?」

 

 

「……さっきのあれのせいか」

 

 

「だろうね」

 

私たちが会話をしていると、悠夜さんがライフルを正面に構え

 

 

ダダダダダダダダダタダダダダダダダダン!!

 

 

18発の弾丸を正面に連続して撃った。最初に撃った1発をあわせて残弾数は11発

 

 

バン!パキィ、バン!パキィ

 

 

連射した後に悠夜さんは確実に弾を当てていく。はぁ

 

 

 

「悠夜さんは最初から勝つ気も負ける気もなかったみたいだな」

 

 

「そうみたいだね〜」

 

 

確かにあのやり方が最善だが。普通、何の躊躇いもなくあんなことはできないだろうな。照準を合わせる為だけに無駄弾を撃つなんて

 

 

「というか、悠夜さんならあんなことをしなくても、ISのデータを直すくらい簡単だったんじゃないか?」

 

 

 

「ゆーくんなら出来るだろうね♪なんてったってゆーくんだからね!」

 

 

 

束が嬉しそうに宣言する。理由になっていないが納得は出来たな

 

 

「だったら何でしなかったんだ?」

 

 

「面倒だったんじゃないかな?ゆーくんだし」

 

 

「確かに、悠夜さんだしな」

 

 

そして次々とクレーは破壊され、悠夜さんは弾切れの為、クレーを8個残して終了した。勿論、残りの11発全て命中させて、だ

 

 

つまり、結果は引き分けだ

 

 

悠夜さんの事だから、多分もう2回目はないだろう。周りの観客のほとんどは、なぜ悠夜さんが連射したのか分かってないみたいだな。当然と言えば当然だな。そもそもあんな状態のISを装着し、少しバランスを崩しただけで、すぐさま対応するのがおかしいんだ

 

 

私たちから見てもほとんど違和感がなかったからな、素人にわかる筈もない

 

 

「ちーちゃんちーちゃん!終わったんだし、ゆーくんのとこに行こ♪」

 

 

「そうだな」

 

 

束が私の制服を引っ張りながら声を掛けてくる。この後、またあの格好をするのかと思うと気が滅入るが、とりあえず束の提案に乗って悠夜さんの所に行くことにした。

 

 

ISをめんどくさそうに運んでいる悠夜さんを見ながら、私と束は歩きはじめた



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不吉で嫌な予感で胸騒ぎで悪い予感……他に何か言い方あったかねぇ……

あぁ〜、マジで面倒だった。多少の覚悟はしてたけどさ。本当に壊れて、つうか故障してるとは思わなかったよ。ISを装着した瞬間に転けそうになるわ、照準がズレてるわで最悪だった

 

 

 

まぁとりあえず、ノルマをクリアしたからいいだろ。あのISも整備員に引き渡したしな。出し物のために入れてたデータをクリアして、ちょっと整備すりゃ直るだろ

 

 

はぁ、これからまた執事をしなきゃならんのか。正直、欠片も休んだ気がしないんだが……やめよ、空しくなってくる

 

 

……で、だ。あの出口の横の壁にもたれ掛かって、腕組みしてる変態君の相手はしなきゃダメか?

 

 

……テキトーに相手して帰るか

 

 

「フッ、まぐれと機体に助けられたな」

 

 

壁に背を預けたまま。変態君はニヤつきながら、相変わらず訳のわからんセリフを言ってきた。多分、本人は不適な笑みで話しているつもりなんだろうが……どう見てもニヤついているようにしかみえない

 

 

「あの機体が量産機だったせいで、俺の動きについてこれなかったのと。まぐれ当たりが重なったおかげで、たまたま引き分けになったな」

 

 

しかも聞いてないのに勝手に説明? いや、捏造し始めた。とりあえずチョップチャプスでも舐めよう。じゃないとやってられん

 

 

カサ、パクっ、カリコリ

 

 

うむ、うまい。やっぱチョップチャプスは至高だな。たまに地雷があるが、基本的にうまいしな

 

 

「俺のマネをしたつもりで失敗して無駄弾も撃っていたな」

 

 

あ〜、うん。それは一部あってるな、無駄弾っていう点では。正直あんなに撃たなくても1・2発で照準のズレは直せたんだよな。けど、テキトーに外すのもあれだし、弾を残して終わるのもおかしいからな。まぁ頑張りました感を出すためだったし、しょうがないだろう

 

 

……照準のズレなんてのは、織斑とISでの模擬戦の相手してたらしょっちゅうあるからな。こっちがライフル構えて射撃してんのに、ほとんど回避して突っ込んで来て、容赦なく雪片で斬りかかって来るからな。かわせなさそう斬撃は手に持ってるライフルで雪片を受け流したりぶっ叩いたりして逸らすからな。ライフルがいかれて照準がズレることなんかざらにある

 

 

 

だから今回も簡単に修正出来たんだよなぁ〜。全く感謝はしないけど。考えてもみろ。そもそもあいつらが要らんことを言わなかったら、こんなめんどくさいことをしなくて良かったんだろ? そう思わないか?

 

 

「まぁ次の勝負でケリをつけてやるよ!」

 

 

………頭が悪いんだな、きっと

 

 

「いや、2回目はないぞ」

 

 

「は? なんだ、逃げるのか!」

 

「ちゃんと言っただろ? 『文句なしの一発勝負』って、だから2回目はない」

 

 

「ふざけるな!そんなの認められるわけねぇだろ!」

 

 

はぁ、決めたことくらい守れよな。めんどくさい、ってこの音は……10秒ってところか

 

 

「お前さんが認めなくても、一発勝負の事はアリーナにいる人たちは知ってるからな」

 

 

9・8・7・6……

 

 

「どういう事だ!」

 

 

いちいち叫ぶなよ、うっさいな

 

 

「周りに何人かいたからな、口コミで広がったんだろ」

 

 

5・4……

 

 

 

 

「……なら、さっきの勝負は俺の勝ちだ!俺の動きの方が命中させるのは難しいからな、どう見ても俺の方が凄かった!」

 

 

 

「いや、命中した数の勝負だから動きは関係ねぇよ」

 

 

 

思わずツッコミを入れてしまったが、仕方ないと思う。って、言ってるうちに、後3・2……

 

 

「なんだと!」

 

 

と怒鳴りながら変態君が掴みかかろうと一歩踏み出したが、残念。タイミングが悪過ぎたな。1……

 

 

ドッバーン!!バキィ!!「ヘブッ!?」ゴン!!

 

 

「ゆ〜く〜〜ん!!束さんが来たよ〜♪」

 

 

「待てと言ってるだろう束!というか今変な音がしなかったか?」

 

 

……当たるかなぁ〜、とは思ってたが。ここまでキレイに当たるとは思わなかったな。

 

 

 

あぁちなみにさっきの音は、変態君が一歩前に出る→おそらくダッシュで突っ込んで来たであろう篠ノ之がドアを力一杯、蹴り開ける→変態君の顔面にジャストミート→さらにその勢いで変態君は後頭部を壁に強打→篠ノ之と織斑が入って来る。ていう流れだ、基本的に自動ドアなのに何でたまに普通のドアがあるのかは知らん。用務員室とかもそうだな。学長の趣味か?

 

 

 

 

「……とりあえず、何しに来た?」

 

 

「ゆーくんに会いに来たんだよ〜♪」

 

 

「やることもなくなったので悠夜さんと合流しようかと。どうせこの後クラスに戻らなければなりませんし」

 

 

「はぁ、分かっちゃいたがめんどいな」

 

 

「ねぇねぇゆーくん」

 

 

「なんだよ」

 

 

「わざと引き分けにしたでしょ?」

 

 

流石にばれるか

 

 

「勝っても負けてもめんどくさいことになるからな」

 

 

勝っても? と織斑と篠ノ之は疑問に思ったみたいなので、変態君とのやり取りを説明したら納得したみたいだった

 

 

「そういえばさっきの音は何だったんですか? 蛙を踏み潰したような声も聞こえましたし」

 

 

「あぁ、それはあれだ」

 

 

と言って。俺は気絶して白目をむいている変態君を指でさす

 

 

「……どういう状況ですか?」

 

 

「そこのウサ耳のおかげ? だ」

 

「ほぇ? 束さん?」

 

 

「よくわかりませんが……束、よくやった」

 

 

「おぉ!ちーちゃんにほめられた〜♪」

 

 

状況を理解できていないみたいだが、変態君を見てとりあえず篠ノ之をほめる織斑。織斑にほめられてテンションのあがる篠ノ之。よっぽどイラついてたんだな、織斑

 

 

「教室に戻るか」

 

 

「そうですね」

 

 

「えぇ〜!束さん、また暇になっちゃうよ〜」

 

 

「知らん」

 

 

ぶーぶーと文句を言う篠ノ之を適当に相手しながら教室に向かう。一応、変態君を撃退したのでさすがにスルーはしない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……誰も変態君を気にしなかったが、別にいいだろ

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

ザブン、サーー

 

 

「はぁ〜〜、最高だ」

 

 

あの凄まじくめんどくさかった学園祭から2週間あまりがたった。……なんだよ、時間が跳んだ? そんなもん知らん。あの後はさらに増えた客の対応くらいしかしてないからな、特に語ることでもないだろ

 

 

そんなことより今はこのゆったりとした時間を堪能したい……まだなにかあんのか? どういう状況かって? まぁ簡単に説明するとだな、俺賞品を頼む権利をゲット→賞品を頼む→若干渋い顔をされたが割りと真面目な願いだったので許可→賞品を堪能中、て感じだ

 

 

賞品が何かって? それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラッ

 

 

「おぉ〜!すごいね!檜風呂だよ!しかも海が見えるし、広いn」

 

バシャア!!

 

 

「どうやって入ってきた? ボケうさぎ」

 

 

「冷た!ひどいよゆーくん。束さん風邪引いちゃうよ〜」

 

 

俺はすぐさま冷水を不法侵入者(ボケうさぎ)にぶっかけた。……まぁさっきのボケうさぎの言動で分かると思うが、俺が頼んだのは風呂だ。この風呂のために俺は元の部屋から風呂のつけられた新しい部屋に引っ越した。流石に元の部屋にさらに風呂をつけるのは無理だったみたいだ、サイズとか諸々で

 

 

ちなみに正面がガラス張り。しかもマジックミラーのように外から中は見れないが中からは外が見えて、さらに特殊強化ガラスのため狙撃も大丈夫な特別製だ。

 

 

 

 

 

さらに浴槽は高級な檜で出来ていて、いい香りがしている

 

別に檜風呂とかを頼んだ覚えはないが、せっかくの第一回学園祭でショボいのにしたりしたらIS学園としてのメンツとか……ねぇ?

 

 

風呂にした理由はあれだ。入る時間が縛られんのと変態君といちいち遭遇するめんどくささ、それに覗き対策だ……男の裸が珍しいのか知らんが、結構な数が来てたそうだ。教師陣に追い返されてたらしい。ボケうさぎも来ようとしたらしいが織斑が潰したらしい

 

 

 

まぁだいたいそんな理由だ。あぁあと、移動がめんどかった。ちなみに、俺が風呂を頼んだから男子用浴場の建設は中止になった。変態君が何か言ってたそうだが、他国のお偉いさんを怒らせた罰として浴場の使用を禁止された。まぁやったことを考えたらまだ軽い罰だろ

 

「で、何でお前がいる」

 

 

「ゆーくんとお風呂に入りたかったから♪」

 

 

「帰れ」

 

 

「ゆーくんは束さんのタオルの下、見たくないの〜?」

 

 

ほらほらと言って体に巻きつけているタオルを揺らす、が

 

 

「下に水着着てるだろ」

 

 

そういって斬って捨てる。この程度でいちいち反応してたら身がもたん。……誰だ、枯れてるとか言ったやつ。似たようなことを何回もやられたら誰でも耐性がつくわ。だから俺は枯れてない!

 

 

「ちぇ〜何で分かったの?」

 

 

「肩紐が見えてるんだよ」

 

あ、ほんとだといって湯船に入って来るボケうさぎ

 

 

「……出てけ」

 

 

「水着着てるから大丈夫だよ♪」

 

「織斑は?」

 

 

「浴場に行ってるよ〜」

 

はぁ〜もういいや、めんどい。と、色々諦めて湯船に肩まで浸かる。しばらく沈黙が続いたあと、篠ノ之が話しかけてきた

 

 

「ねぇ、ゆーくん」

 

 

「なんだよ」

 

 

「いなくならないでね」

 

 

「……意味が分からんのだが」

 

 

何を不吉なことを言い出すんだ、こいつは

 

 

「う〜ん、束さんにもわかんないや」

 

 

といって、篠ノ之は哀しそうで泣きだしそうで笑い出しそうな、色々な感情がごちゃ混ぜになったような表情を向けてきた

 

 

「居なくならないなんて、

未來のことを保証出来るわけないだろ」

 

「そうだよ、ね」

 

 

「何が言いたいのか知らんが未來≪さき≫のことを不安がっててもしょうがないだろうが。そんなもんなった時に考えたらいいんだよ」

 

 

「ふふっ、ゆーくんらしいね」

 

 

「どっかの誰かさん達のせいで色々あったからな」

 

 

「……束さん達に会ったこと、後悔してる?」

 

 

曖昧な笑みを浮かべながら聞いてくる篠ノ之の目は、怯えてるように見えた

 

 

「誰かに会ったことくらいで後悔なんかしねぇよ」

 

 

 

慰めるでもなく、励ましたりもしない。いつもと変わらない調子で俺は答えた。慰めるのも励ますのもめんどくさいし、他人にどうこう言われて変わるなら、世の中善人か悪人で溢れてるっての。だから普通に答えた

 

 

「そっか」

 

 

篠ノ之は少しスッキリした顔で今度は純粋な笑みを向けてきた。風呂に入ってるだけで、異様に疲れたな

 

 

「まぁどっかに行くときは手紙くらい残してやるよ、多分。だからもういちいち風呂に入って来んなよ『桜』」

 

 

ぽんぽんとウサ耳を外した頭を軽く叩いて湯銭から出て脱衣場に向かう

 

 

「うん、ありがとうゆーくん」

 

 

後ろから篠ノ之が聞こえないくらいの声で礼を言ってきたが、まぁ気にしなくてもいいだろ。あ〜、俺の休める所は自宅だけかよ。めんどくせぇ。人生相談なら他でやれっての

 

 

 

 

 

ちゃんと腰にタオルを巻いてたからな? 変な勘繰りはやめろよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーはっはっは〜!気持ち良かった〜!!さぁゆーくん!お風呂で身を清めたんだからこのあとは」

 

風呂から出てきた篠ノ之はやたらとファンシーなフワフワしたパジャマを来て高笑いしながらアホなことを言ってきたが

 

 

「折檻だな」

 

 

ビタァッ!と篠ノ之の動きが止まりギギギ、とドアの方に視線を向ける。そこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……鬼が立っていた

 

 

 

「ちー、ちゃん?」

 

 

思わず発言が疑問系になるほど、今の織斑の殺気はヤバいみたいだな。俺? 織斑との模擬戦で慣れてるから別に?

 

 

「浴場に来るのが遅いから何があったのかと思ってみれば、これか」

 

 

「な、なんでここだって分かったの?」

 

 

「悠夜さんから連絡があった」

 

 

「ゆーくん!?」

 

 

なんだよその裏切られた!!って顔は。当然だろ、人の部屋に不法侵入しやがって

 

 

「とりあえず、話は部屋に戻ってからだ。悠夜さん、失礼しました」

 

 

「いたたたたたっ!? ちーちゃん!指!指がめり込んでるよ!?」

 

 

アイアンクローをしながら織斑は篠ノ之を引きずっていった

 

 

「なんでそんなに怒ってるの!? あっ分かった!ちーちゃん、束さんがうらやま」

 

 

メキッ

 

 

「にゃあぁぁぁあああぁ!?」

 

 

パタン

 

 

断末魔をあげながら天災は帰って行った

 

 

「……寝るか」

 

 

疲れを癒すはずの所でよけいに疲れた俺はとっとと寝ることにした。それにしてもあのウサ耳バカめ、不吉なことを言いやがって。本当になったらどうするんだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……嫌な予感しかしねぇ

 

 

俺は嫌な予感をひしひしと感じながら眠りについた。平穏っていつになったら来るんだろうな、はぁ



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馬鹿は風邪引かないと言うが、こいつはかからんだろうっていう奴が引けば、それはそれで吃驚だ……

 あの物凄くめんどくさかった学園祭から少したった。 ウサ耳バカが不吉なことを言っていたが、今のところは大丈夫だ。

 

 

 ……どのタイミングで来るのか、もしくは来ないのかが分からんから対処のしようがねぇ。まぁ考えても無駄か。めんどいし、あれは忘れよう、うん。じゃねぇと、こっちの身がもたん。

 

 

 

 今日1日授業受けたら休みだからな〜。家に帰って週末はまったり過ごそう。帰る前にデパート行って、食材やらアクセサリーの材料やらを買っておくか。最近はまとまった時間が取れなかったしなぁ、学園祭の片付けやら色々で。

 

で、それはいいんだが。

 

 

「織斑、保健室に行くか寮の部屋に帰れ」

 

 

「……大丈夫です」

 

 

どこがだよ。明らかに顔色悪いし、しんどそうじゃねぇか。

 

 

「はぁ〜、家に帰るくらい来週でいいだろ」

 

 

「……一夏、と日曜に、出かける、約束が、あるので」

 

 

「……そうかよ。おまえが大丈夫って言うならいいが、倒れるなら自分の家か保健室にしろよ」

 

 

じゃないと俺が運べとか言われそうだしなぁ。てかどんだけブラコンなんだよ……

 

 

今の会話で分かると思うが、このブラコンが風邪をひいてるのに授業を受けようとしてるんだよ。……確かに今日の授業を受けずに休んだりしたら、外出届なんか受理されるわけない。大切な日本代表かつ世界一のIS操縦者だ、万一があったら洒落になんねぇしなぁ。

 

 

だからこいつは表面上は平静を装って今日の授業を乗りきろうとしてる。

 

 

「分かり、ました。悠夜さん、このこと、は」

 

 

「はいはい、言わねぇからとっとと飯片付けろ」

 

 

食堂に入ってきて、こっちに来たと思ったらこれだしなぁ。何でわざわざ口止めにくんだよ。報告とかめんどくさいことを俺がするわけねぇだろ。あぁちなみに、ウサ耳バカは寝てたから放置してきたらしい。

 

 

織斑はモソモソとやたらスローペースで食事を再開した。こりゃ重症だな。言葉が途切れ途切れになってるし、呼吸も乱れてる。普段の織斑ならありえねぇな。

 

 

 

頼むから教室で倒れるとかやめてくれよ。運んで変な噂が立つとか勘弁だし、変態君が突っかかってきそうだ。

 

 

 

そんなことを考えながら、食事を終えた織斑と教室に向かった。あん? 結局いっしょに行くのかよって? ……置いて先に行ったりしたら、ケンカしたの? とか言われんだよ、何人も聞いてきて、ものすごいめんどかったなぁ。あのときは。

 

 

 

……まためんどくさいことになりそうな気が……大丈夫、だよな?

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

……最近、さ。俺って予知能力でもあるのか? って思うようになってきた。

 

 

朝食を食べたあと、織斑は結局、最後まで倒れたりすることなく授業を受けきった。表面上はいつも通りで、誰も織斑の体調不良には気づかなかった。唯一、篠ノ之だけが「ちーちゃん調子悪い?」と言っていたが、織斑の大丈夫だ、という言葉で一応、納得してた。

 

……あの時に誰か気づけば良かったのになぁ、はぁ。

 

 

で、帰るときに篠ノ之が

 

 

「ゆーくんゆーくん! 今日ね、いっくんが束さんの家に泊まりに来るんだよ!」

 

 

と言ってきたので、俺は

 

 

「そうか、俺は行かないからな」

 

と先にこのウサ耳が言いそうな事に対して拒否しておいたら、案の定、ウサ耳バカは誘うつもりだったようで文句を言ってきたが、しばらくスルーしていたら諦めた。

 

 

そこでふと、織斑は泊まりに行かないのか気になったので聞いてみたら、今日は銀行から金をおろしたり、いろいろとあるので泊まりに行かないと言っていた。

 

 

……まぁ十中八九、嘘だろうな。金をおろすのなんてすぐにできるし、いろいろなんて言って言葉を濁してたからなぁ。多分、一夏こと海に心配をかけたくないのと、風邪を移したくなかったんだろうな、ブラコンだし。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

それから俺は、一旦家に帰って荷物を置いて財布を持ち、近くのデパートに行った。ちなみに、学園から出る時点で私服に着替えている。

 

んで、デパートで色々と調達して、ホクホク気分で家に向かってたら前方にめんどくさいものを発見してしまった。

 

 

3人組の男達と見覚えのある制服と髪型をした女子が1人、というかぶっちゃけ織斑だった。織斑は壁を背にして、取り囲むようにして、段々と近寄っている男達に対峙している。

 

 

対して人通りの多い道ではないため、周りに人影はなし。本来なら織斑のような立場の人間だったら、護衛の1人や2人いてもおかしくないのだが。誰を、というよりもどこの国の護衛を付けるかで揉めまくった結果、護衛は無しになった。

 

 

……まぁ普通なら日本代表なんだから日本人の護衛を付ければいいのだが、それだと織斑と仲のいい篠ノ之と会っている時も近くで見張る事になる。そのことを他国が、日本は護衛という名目で篠ノ之博士に近づき、ISについて我々を出し抜く気だ! とか言い出してそれならば我が国が護衛を〜ていう流れになって結局、護衛なし。

 

 

……言っちゃ悪いけどさ、バカだろ言い出した奴ら。まぁ篠ノ之の性格を知らなかったら、そういうことも考えるか。実際に織斑と会ってる時にそんなけとしたら逆に、国のISデータを片っ端から破壊するくらいはやるだろうけどな、あのウサ耳バカは。

 

 

さて、話が脱線したが結局なにが言いたいのかと言うとだ、あんな状況になっても織斑を助ける奴がいないってことだ。

 

 

 

 

普段の織斑なら、訓練も受けて無さそうな男3人くらい瞬殺できるだろうが、今は風邪が悪化したのかフラフラだ。そんな状態でも攻撃したのか男達は多少、顔が腫れていた。

 

 

……格好と動き方、手際から考えて織斑を狙った誘拐ではないようだ。大方、IS学園の制服を着た美人がフラフラとしていたからナンパでもしようとしたんだろ。抵抗されても相手は女で、しかもフラフラだから力づくでいけると考えたが、思いがけない反撃を食らって意地になったんだろうよ。

 

 

 

女尊男卑が広まる中でも、あぁいうアホは絶えないらしい。むしろ根性が座ってるのか? IS学園の生徒に手を出したら国際問題になりかねないのにな。

 

 

……まぁ何も考えてないんだろ。この状況を放置して帰って織斑になんかあったら、絶対にめんどくさい事になるよな〜。ウサ耳があいつら殺すよりも酷い目に合わせるのは確実だな……すぐに潰して、即帰ったら何とかなるか?

 

 

とりあえず、それが1番楽そうだな。はぁ〜、めんどくさい。なんで休日前にこんなことしなきゃならんのだ。

 

「手こずらせやがって」

 

 

「いい加減大人しくしな」

 

 

「そうd」グシャ!グシャ!

 

 

ドサドサ!

 

 

3人組の後ろまで近づいて、声すらかけずに真ん中のデカイ奴と織斑から向かって左側の奴の急所。まぁ簡単に言うと股間を順番に思いきり蹴りあげたら泡を吹きながら気絶した。男として再起動できるかはしらん、結構エグい音がしたしな。

 

 

「な、なにすn」

 

 

「うっさい」

 

 

ヒュ、ドゴ!ドカ、ドサ

 

 

調達した物資で両手はふさがっているので、顔面にハイキックを放つ。急な攻撃に反応できず、もろに蹴りを食らった最後の1人は壁にぶつかり気絶した。

 

「悠夜…さん?」

 

 

「だから寝とけって言っただろうが」

 

 

ボーッとした眼でこっちを見て、質問してくる織斑に文句を言う。

 

「すみ、ません、助かり…ました」

 

 

「何してんのかは知らんが、早く帰って寝ろよ」

 

 

はぁ、とため息をついてそのまま帰ろうと背をむけたら、ポスッと背中に織斑が倒れてきた。

 

 

……両手に持っていた荷物を片手に持ちかえて、織斑を片手で支えながら振り向く。織斑はかなりの高熱で意識がなかった。

 

 

……救急車を呼ぶ。却下、学園への事情説明がめんどうだし、受け入れ先の病院で揉めそうだ。篠ノ之達に連絡。却下、やたらと騒いで逆効果だし、織斑が後から文句を言いそうだ。

 

 

……嫌だなぁ、俺の最後の砦なんだよなぁ。はぁ、マジで予知能力とかあるかも知れん。篠ノ之が言った不吉な事とは関係なさそうだが……めんどい。

 

 

……もういいや、俺の家に運んで寝かせよう。織斑だし、1日寝れば治るだろ。んで、口止めしとけばなんとか……なればいいなぁ

 

 

っ、と。かっるいなぁ〜、とりあえず行くか。

 

 

織斑を肩に担いで俺は家に走って向かった。あん? 病人になんてことをするんだって? ……今は片手に荷物があるし、倒れたのは自己責任だから知らん。俺はちゃんと注意したからな。それに歩いて5分くらいの距離ならこの運びかたが1番速い。だから文句言うな。

 

 

 

■□■□■□■□■□

 

……ん、ここは? ……たしか私は銀行に行って、その帰りに男達に絡まれて、それから……

 

 

「やっと起きたか」

 

 

私はいつの間にか眠っていたようだ。目が覚めて、眠る前にあったことを思い出そうとしたら声をかけられた。

 

 

「……悠夜さん?」

 

 

熱でボーッとしている頭を、声がしたほうに向けると、悠夜さんが読んでいた本を閉じてこちらを見ていた。

 

 

「ここは俺の家。で、お前が倒れたから連れてきた。ちなみにここは俺の部屋じゃねぇ、以上」

 

 

私が質問する前にすべて簡潔に説明された。……悠夜さんの家には初めて来たな。

 

 

「すみません、すぐに帰ります」

 

そう言って体を起こそうとしたが

 

「アホか」ヒョイ、ピシャッ

 

 

「ひゃう!?」ポスッ

 

 

起きようと上体を起こそうとした瞬間に、濡れたタオルを額に投げられて倒れてしまった……そのせいで変な声をだしてしまった。

 

 

 

「そんな状態で帰してなんかあったらどーすんだ、絶対に俺にめんどくさい事がおこるだろうが」

 

 

 

ため息をつきながら、怠そうにそう言われた……これが照れ隠しでもなんでもなく、本心からめんどくさいと思っているのだから、何とも言えない。

 

 

「それに今何時だと思ってんだよ」

 

そう言って見せられた携帯に映る時間は……夜中の10時過ぎだった。

 

 

「分かったか? で、食欲は?」

 

「……あまりないです」

 

 

「ふぅん、んじゃ、これ飲んどけ」

 

 

といって、市販の薬とスポーツ飲料水を渡された。

 

 

「……さっき起きようとしたときに渡してくれれば」

 

 

「飲むだけ飲んで、無理にでも帰ろうとしたな」

 

 

……実際にそうしただろうから何も言えない。

 

 

「あぁ、熱は計っておいたからな」

 

 

ピタッ、と自分の動きが止まったのが分かった。今の私の服装は学園の制服の上を脱いでカッターシャツとスカートといった格好だ。つまり……

 

 

「誤解がないように言っておくが、耳温計だからな」

 

 

……言われてからしっかりと確認し直したが、カッターシャツのボタンは外された形跡はなく第1ボタンまで留まっていて、服装の乱れもなかった。

 

 

……女として何とも言えない気持ちになった。

 

 

「で? 何か申し開きはあるか?」

 

 

薬を飲んでベッドに横になった私に、悠夜さんはめんどくさそうに聞いてきた。

 

 

「………」

 

 

「別に、風邪引くな、とか、倒れるな、とか言うつもりはない。けどな、自分の体調くらい分かってんのに何でわざわざ倒れるまで外を出歩いてんだよ」

 

「銀行に行ってました」

 

 

「あぁ、それは本当だったのか。けど、聞いてんのは何をしてたかじゃなくて、何でそんなことをしたか、だ」

 

 

「……私は、なにもできません」

 

「はぁ?」

 

 

「束のように、情報を操作して一夏達を守ることも。悠夜さんのように、交渉をして周りを守ることも」

 

 

「私に出来ることは、せいぜいISを扱って目の前の敵を倒すことだけ」

 

 

 

 

「だからせめて、普通の姉としてでも一夏に不自由なく過ごさせたかったんです。私にも守ることができる、と」

 

 

風邪で弱ってるからだろうか、言わなくていいことも喋ってしまった。けれど、これが紛れもない本心だった。束にも悠夜さんにも抱いていた、ある種の劣等感。一緒にいても、ある時ふっ、と感じる黒い感情。なぜ、私にはできない。なぜなぜなぜナゼ? と。

 

 

「まぁ、あのボケウサギと比べるのはおかしいが、理由は分かった」

 

 

「けど、それでお前が倒れたら本末転倒だろ」

 

 

「何がですか」

 

 

「守る云々はまぁ、織斑が考えたんだからそれでいいだろ。ただ、それなら言ってることが矛盾してるだろ」

 

 

「お前が無理して倒れたら、誰が一夏を守るんだ?」

 

 

「それは……」

 

 

「自分のことを守れない奴には他人は守れない。とか聞いたことがあるけどな、あれは違うと思うぞ。別にその場で守って死ぬくらいは出来るからな〜」

 

 

「けど織斑の場合、死んだあと他人に丸投げとかできる性格じゃねぇだろ。ブラコンだし」

 

 

「それが出来ないなら、体調くらい調えとけ。んで、俺に迷惑かけんな」

 

 

はぁ〜、だる。と言って悠夜さんは椅子の背もたれに体を預けた。……悠夜さんの言ってることは正しい。けれど、私にできるのは……

 

 

「自分で出来ないならボケウサギでも、世界最強って肩書きでも利用しとけ。ボケウサギなら喜んで手伝うだろうしな」

 

 

「しかし、それは……」

 

 

「お前が持ってるコネを使って何が悪い? 自分1人で出来ることなんかたかが知れてんだからな」

 

 

 

「……ふふ」

 

 

「……熱で頭がやられたか?」

 

 

「違います」

 

 

悠夜さんの言う通りだ。出来ないなら頼ればいい、あの時も言われたことを忘れていたな。そう考えると今まで悩んでいたことがバカらしくなって、思わず笑ってしまった。

 

 

「つうか、病人はとっとと寝ろ」

 

「悠夜さんはどうするんですか?」

 

 

「ここで本を読んどく」

 

 

「寝ないんですか?」

 

 

「寝てて夜中に家の中を徘徊されてもめんどくさいからな」

 

 

「徘徊って……しませんよ」

 

 

「トイレに行って倒れた音で起こされるのはごめんだ」

 

 

「今日は優しいですね」

 

 

「お前のなかの俺は病人をどんな扱いしてるんだよ」

 

 

若干、顔をひきつらせながら悠夜さんが聞いてきたが答えなかった。

 

 

「優しい悠夜さんにお願いがあります」

 

 

「優しくないから却下だ」

 

 

「手を握ってもらっていてもいいですか」

 

 

「無視かよ、つかなんで?」

 

 

「風邪のときは人恋しいんですよ」

 

 

冗談めかして言ったが、恥ずかしいことにかわりはなかった。熱以外の理由で顔の温度が上がった気がする。けど、風邪の時くらいこんな役得があってもいいだろう?

 

「はぁ〜、お前ら実は1人だったのが分かれたとかじゃないよな? 言うことが同じだ」

 

 

束も似たようなことを言ったのか? ちょっとした疑問を感じている間に悠夜さんは手を握ってくれた。自分の手よりも大きく、熱とは違う暖かさがあった。

 

 

「さっさと寝ろよ」

 

 

そう言って、悠夜さんはさっきまで読んでいた本を、椅子の上に片足をのせて、片手で器用に読みはじめた。

 

 

「お休みなさい、悠夜さん」

 

 

「はいはい、お休み『雪』」

 

 

悠夜さんの声を聞きながら、私はゆっくりと眠りに落ちた。

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……さっきの流れで終わればよかったんだけどさ。わざわざ若干キャラを変えて、説教紛いのことを言って、織斑を丸め込んだまではよかったんだよ。多分、これでもうこんなことはないだろうしな。めんどくさいことにならなくてすむだろ。

 

 

……問題は織斑が寝た後だ。手を握ってんのは別にいいんだよ、しばらくしたら放すつもりだったしな。が、織斑は寝ながらどんな夢を見てるのか知らねぇけどな、全力で握ってくるんだよ……

 

 

めちゃくちゃ痛い、普段から剣道をやってるからか知れないが、握力がありえないくらい強い。

 

 

……明日まで俺の手はもつのだろうか? はぁ〜、めんどくさい

 



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一難去らずにまた一難。え? 終わりは……

 ……やっと朝になった。

 織斑はまだ眠っているが、そろそろ起きてもらおうか。ダルいしな。

 あん? 寝かせておいてやれ? ……無理だな。もう俺の手がもたねぇし、完全に感覚がなくなってやがる。

 

 というわけで、

 

 

「起きろ、織斑。朝だ」

 

 

「んぅ」

 

 

 声をかけたが、織斑は少しみじろぎしただけで起きる気配がない。

 ……めんどい。1回は声をかけたしいいか。

 俺は織斑の額に乗せていたタオルを取り、洗面器に入れていた水を含ませる。

 で、そのままタオルを搾らず、水気を大量に含んだタオルを織斑の顔にぶつけた。

 

 

「きゃっ! 何をす……悠夜さん?」

 

 

 

 

 

 織斑はタオルが顔に当たった瞬間に素早く起きあがった。寝起きで、すぐには状況を把握できなかったようだが、こちらを見て動きを止めた。

 

 

「おはよ〜ございます」

 

「えっ? あっ、おはよう、ございます?」

 

 ふむ、見た感じでは熱は引いたみたいだな。……たしか40度近い熱があったはずなんだが、気にしたら負けか。

 

 

「食欲は?」

 

 

「あ、はい、ありま」クゥ〜

 

 

 俺の質問に答え終える前に、織斑の腹が自己主張してきた。

 

 

「……あるな」

 

 

「……はぃ」

 

 

 また熱がぶり返したんじゃないかというくらい、織斑は顔を紅くしていた。まぁ今のタイミングじゃ、ねぇ。

 

 

「んじゃ、飯つくってくるから手ぇ放せ」

 

 

 いまだに握られっぱなしの左手をぷらぷらと揺らして放すように促す。

 

 

「……ありがとうございました」

 

「どーいたしましてー」

 

 

 少し名残惜しそうにしながらも、俺の手は解放された。

 織斑が礼を言ってきたがそれよりも、全く感覚がない左手の方が大切なのでテキトーに返事をしておく。

 うわぁ、痣ってほどじゃねぇけど真っ赤になってるな。なのに感覚がないし、大丈夫か? 俺の手。

 

「特になにもないが、歩きまわったり、探ったりすんなよ。俺の部屋じゃねぇし」

 

 

「しませんよ。そういえば、この部屋は客間ですか?」

 

「んにゃ、親の部屋だ。さすがに布団は来客用のに変えたけどな」

 

 

 親の使ってた布団で寝かせるのは、さすがにちょっとあれだしなぁ。

 

 

「じゃ、めんどいけど作ってくるわ」

 

 

 ぽいっ、と乾いたタオルを織斑に投げ渡し、洗面器と織斑が手に持ってる濡れタオルを回収してから部屋を出る。あ〜、やっと左手の感覚が戻ってきた。

 メニューは……めんどいし、卵粥でいいだろ。お粥作って卵入れるだけの簡単料理だし、病人にはちょうどいいしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……はぁ、出来た。さて、持ってくか。

 あん? 作ってるときの様子? ……男がお粥をかき混ぜるだけの様子なんざ、誰に需要があんだよ? どう考えてもいらないだろ?

 

 

 卵粥とスポーツ飲料水、茶と薬を持って親の部屋に向かう。

 はぁ、ダルい。

 

 

「入っても大丈夫か?」

 

 

 部屋に入る前に一応、ノックをして声をかける。

 なんかあったらめんどいしな。

 

「はい、大丈夫です」

 

 

 許可がでたので、色々と載っているトレーを片手に持ちかえて扉を開け、部屋に入る。

 トレーを机に置き、土鍋に入っている卵粥をお椀にうつして、レンゲと共にわたす。

 

 

「どーぞ」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

それなりに腹が減っていたようで、卵粥をがっつかない程度にだが、素早く食べ始めた。

 

 

 他人の食事を凝視する趣味もないので、読みかけの本を読むことにする。

 

 

「あぁ、おかわりはセルフな」

 

 

 カチャカチャという音が止まったので、お椀に入っていた分はなくなったのだろうと思い。先に言っておく。

 

 

「……昨日と違って冷たくないですか?」

 

 

 本から目をはずして織斑の方を向くと、織斑はお椀をこちらに渡そうとする途中の格好で動きを止めてこちらを見ていた。

 微妙に不満そうだな、おい。

 

 

「へぇ〜、わざわざ朝食を作ってやったのに冷たいと」

 

 

「それは、そうですけど。一応、病人ですし」

 

 

 

 

「お預けをくらってた犬みたいに、勢いよく飯を食う元気があるなら大丈夫だ」

 

 

「そ、そこまで勢いよく食べてませんよ!」

 

 

 ふぅ、とため息をつきながら、かなり誇張した事実を言うと。

 織斑は顔を朱に染め、叫ぶようにして訂正を求めてきた。

 

 

「叫べるくらい体力回復してんだから、大丈夫だろ」

 

 

 と、それを聞き流しながら言い返すと織斑は、

 

 

「もういいです」

 

 

 と言って、自分でおかわりをしながら拗ねたように食事を再開した。

 

 

 はぁ、俺だって疲れてんだからしゃーないだろ? それにダルいしなぁ。

 

「それ、何を読んでるんですか?」

 

 

 食事を完食した織斑が薬を開けながら質問してきたので、俺は正直に答える。

 

 

「本」

 

 

「……怒りますよ?」

 

 

 織斑は俺の簡潔で分かりやすい答えが気にくわなかったのか、顔をひくつかせながら脅してきた。 ……駄目だな、テンションがおかしくなってきた。

 

 

「ん」

 

 

 説明すんのもめんどくさいので、本の表紙を見せる。

 表紙には、

 

 

『スローライフ のんびり暮らす生活方法〜上級編〜』

 

 

 と、書いてある。

 

 

「……他の本も同じですか?」

 

 

 机に積んである本を見ながら聞いてきたので、全部見せることにした。

 

 

『胃に優しい料理・お菓子大全集』

 

 

『アクセサリーの作り方〜達人編〜』

 

 

『ネゴシエーション(交渉)〜上げて落として騙り尽くせ〜』

 

 

 

『至高のコーヒーを求めて〜ぶらり諸国密入国の旅〜』

 

 

 

『人間心理〜思考の死角〜』

 

 

『チョップチャプス〜新・旧そろい踏み〜』

 

 

『平穏』

 

 

「………悠夜さん、シャワーを借りてもいいですか? 寝汗で服がべとついて気持ち悪いので」

 

 

 見なかったことにしやがった。 まぁ別にいいけどな。

 ん? 何だよ? 1つ犯罪行為が書かれてる? ……出版されてんだし大丈夫だろ。

 なんか発禁になったとか聞いた気がするが、まぁ気のせいだ。

 

 

 

「別にいいけどさ。普通、男の家でシャワー借りるか?」

 

 

 恥じらいとかないのか?

 

 

「赤の他人でもないですし、悠夜さんなら大丈夫でしょう?」

 

 それとも覗きますか? と艶やかな笑みを浮かべて聞いてくる。 さっきの意趣返しのつもりかよ。はぁめんどくさい。

 

 

「何で覗きなんかのために労力を使わなきゃなんねぇんだよ。めんどくさい」

 

 

「……私が言うのもなんですが、それは男としてどうなんですか?」

 

 

「知らん。俺が納得してるからいいんだよ。それよりシャワー使うのはいいとしてだ、服くらいは貸せるが、さすがに下着はない……いや、もういい分かった」

 

 

 服を貸す。と言った辺りで、織斑は視線をそらしやがった。

 つまり──

 

 

「ボケウサギを呼んだな」

 

 

「すみません」

 

 

 はぁ〜、と頭痛のする頭を手でおさえながら確認すると、織斑は苦笑しながら謝ってきた。

 

 

「まぁ、覚悟はしてたけどさ。もしかしたらって夢くらいもってもいいじゃねぇか」

 

 

 最後の砦がお亡くなりになることを思い、ちょっと泣きそうになる。

 

 

「そろそろ来るころだと」

 

 

 ピーンポーン

 

 

「……スルーは」

 

 

 ピンポーン、ピンポーン、ピンポー、ピポピポピポピポピポピポピンポーン!

 

 

「ち〜ちゃ〜ん! 愛しの束さんが来たよ〜!」

 

 

「……早く出た方が」

 

 

「分かってるよ」

 

 

 重い、処刑台に上がる罪人のように重い足取りで玄関に向かう。 ダルいなぁ、おい。

 

 

「……どうやって入った」

 

「ふっふっふ〜あの程度の鍵、束さんの前ではなきにしもあらずなんだよ!」

 

 

 俺が玄関に着くと、すでにウサ耳バカは侵入していた。

 言葉の使い方が間違ってる上に犯罪だ。

 しかも、いつもよりテンションが高くてうるさい。

 

 

 

「はぁ〜、とりあえずついてこい」

 

 

「は〜い♪」

 

 

 ウサ耳を伴い部屋まで連れていく。

 

 

「ここだ」

 

 

「りょ〜か〜い! ちーちゃ〜ん、大丈夫? しんどくない? 束さん特製のお薬飲む? あっ! ちゃんとちーちゃんに頼まれてたブラジャーとパンt」

 

 

「うるさいぞ束! あと大声でなにを口走っている!」

 

 

 部屋に案内して先にウサ耳を入らせると、すぐさま騒ぎはじめた。俺は部屋に入らずに中が落ちつくまで待機している。めんどいし。

 

 

 しばらくして、ウサ耳の悲鳴が途絶えたので部屋に入る。

 部屋の中には、肩で息をする織斑と床の上に倒れてピクリともしない篠ノ之がいた。

 床には『ちーちゃ』と途中まで書かれた文字がある。

 床汚すんじゃねぇよ。誰が掃除すると思ってんだ。



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やっかいな……

 はぁ〜ダルいなぁ、おい。

 俺は今、椅子の背もたれに体を預けて休憩中している。

 織斑はシャワーでボケウサギは床を掃除中だ。

 なに?  お前が掃除するんじゃないのかって? そんなもん当たり前だろう。

 何で自分で汚したわけでもないのに掃除すんだよ。めんどくさい。

 

 

 それに、このウサ耳バカを放置して織斑を風呂に案内してから部屋に戻ったら、このボケウサギは何事もなかったように復活して、ベッドの下に手を突っ込んでやがったしな。

 掃除させて当然だ。まぁそんなことしてなくても、掃除はさせたが。

 

 

 前回のセリフ? 『誰が掃除すると思ってんだ。

ボケウサギだぞ? 余計なことしそうだろうが』だけど? 聞いてない? 知らん。言うのがめんどくさかったんだろ。多分。

 

 

「ゆーくん、おわったよ〜!」

 

 

「そうか、よし帰れ」

 

 

 一仕事おえたぜ! みたいな顔をして報告してくる篠ノ之に、俺は清々しい笑顔で帰ることを勧めた。

 

 

「ひどいよゆーくん! ちーちゃんはゆーくんのお家に泊めたのに束さんにはこの仕打ち。はっ! もしかしてそういうプレ」

 

 

「黙れボケウサギ。こっちは寝不足なんだよ。頭にひびくからデカイ声だすな。それにそのネタは前に聞いた気がするし」

 

 

「寝不足? ま、まさかゆーくん。ちーちゃんが風邪で動けないのをいいこきゅう!?」

 

 

 ボケウサギがふざけたことを言い出したので、積んであった本のなかで1番分厚いやつをぶつけて黙らした。

 

「だからうるさいって、言ってるだろうが。何でそんなにテンション高ぇんだよ」

 

 

「それはもちろん、ゆーくんのお家に初めて来たからだよ!」

 

 

 本が直撃したダメージなど、なかったかのように、ウサ耳バカは満面の笑みで答えてきた。……めんどくさい。

 

 

「俺としては、一生来ないことを祈ってたんだがな」

 

 

「ゆーくんが冷たいよ〜」

 

 

 俺はため息まじりに本音を告げたんだが、セリフとは裏腹に、ウサ耳バカはなにがそんなに嬉しいのか、ニコニコと笑ったままだった。

 

「悠夜さん、ドライヤーを貸してもらえますか?」

 

 

 ボケウサギの相手をしながら、テキトーに時間を潰していたら、織斑がシャワーから戻ってきた。 俺が貸した白のジャージ上下とゆったりとしたデザインのTシャツを着て、タオルで髪を拭きながら、部屋に入ってきてすぐに質問してきた。

 頬がほんのり紅く色づいているが、それは熱のせいではなく、シャワーを浴びてきたからだろう。 ……化物みたいな回復力だな。

 

「洗面所になかったか?」

 

 

「私が見た限りでは、ありませんでしたよ」

 

 

 一応。確認したが、返ってきた答えはNOだった。

 ドライヤーねぇ……あぁ、俺の部屋か。確か前に帰ってきたときに、部屋で使ってそのままだったな。

 

 

「俺の部屋だな」

 

 

 ──ミスった。

 ポツリと言葉を発した瞬間、俺の頭の中は、ただその一言に埋めつくされた。

 織斑には説明したが、ボケウサギには、この部屋が俺の部屋ではないと言っていなかった。

 言えば確実に、俺の部屋の場所を聞いてくるだろうと思ったからだ。

 さっきまでその手の話題が出ても、のらりくらりとかわしていたのに、墓穴を掘ってしまった。

 

 

 織斑が戻ってきたから、もうすぐ解放されると思って油断した。 普段だったらしないミスだ。

 

 

「ここ、ゆーくん部屋じゃないの?」

 

 

「ご両親の部屋らしい」

 

 

「そうなんだ〜。だからゆーくんの匂いが薄かったんだね!」

 

 

 ウサ耳バカの疑問に、織斑は俺の方を向いて、少し首をかしげながらも答えた。

 織斑は、自分から教える気はなかったようだが、バレたことを誤魔化そうとは思わなかったみたいだ。

 それに関しては別に文句はない。どうせ誤魔化しても無駄だからな。

 俺は、普段なら絶対にツッコミをいれているようなボケウサギの発言にすら、反応する気力を失っていた。

 

 

 ……本格的にダメっぽいな。マジでとっとと帰らせよう。

 

 

 

「ねぇねぇゆーくん! ゆーくんのお部屋に行ってもいい?」

 

 

 

「おい、束。あまり無茶を言うな」

 

 

「だってちーちゃんばっかりずるいよ〜」

 

 

「……荒らすなよ」

 

 

「悠夜さんだってこう…言っ、て?」

 

 

「いいの?」

 

 

 織斑は驚いたようにこちらを向き、篠ノ之は自分から聞いてきたくせに、確認を取ってきたが、俺は気にせずに自分の部屋に向かった。

 

 

 ドアを開けて部屋に入り、机の上に置きっぱなしになっていたドライヤーを取り、織斑に渡す。

 

 

「早く乾かせよ。風邪がぶり返すぞ」

 

 

「はい、ありがとうございます」

 

「おぉ〜すご〜い! ベッドがおっきいね〜♪」

 

 

 ウサ耳バカは部屋に入ってソッコーで、俺の癒しであるベッドにダイブして、ゴロゴロと転がり始めた。

 

 

 クローゼットに本棚、机にカーペットの上のガラステーブル、これだけならどこにでもある普通の部屋だが、1人部屋にしてはあり得ないくらいのサイズのベッドがあるせいで、俺の部屋は普通、とは言いづらくなっている。

 

 

 なんでベッドだけそんなにデカイのか? んなもん、俺の癒しのためだよ。それ以外なんかあるか? 疲れた体を柔らかく包んでくれて、寝返りをうっても、落ちる心配がまったくない優れものだ。

 

 

 なかなかの値段だったが、頑張って金を貯めて買った。とてもいい買い物だったと思ってる。

 

「で、何やってんだ。ボケウサギ」

 

 

 しばらく転がり続けていたが、急にベッドから降りて、ベッドの下に手を入れはじめた。……なんとなく予想はつくが、念のため聞いておく。

 

 

「もちろん、えっちぃ本がないか調べてるんだよ!」

 

 

 ……予想通り過ぎて、なんとも言えん。ダルさが増したな。

 

 

「ねぇよ、そんなもん」

 

 

「うんうん、そうだよね〜。ゆーくんには束さんとちーちゃんがいるかいたたたたた! ちーちゃんストップ! 束さん、つぶれちゃうから〜!」

 

 

「お・ま・え・は、どうしてそういうことばかり言うんだ!」

 

 

 嘘を言ってもしょうがないので、普通に答えたら、ボケウサギが何度も頷きながら世迷い言を言って、髪を乾かし終わった織斑のアイアンクローの餌食になった。

 

 

 

 あん? そういう本を何で持ってないかって? 金がもったいない、めんどくさい、下手したら

それに出てる人物が直接、研究に協力してくれとかいうアホな交渉に来るかも知れない、めんどくさい、以上。

 

 

 

「うぅいたいよ〜。ちーちゃんってホント、こういう話が苦手だよね」

 

 

「そ、そんなことはない」

 

 

「ちーちゃん、顔赤いよ?」

 

 

「………」

 

 

「きゅ!?」

 

 

 織斑のアイアンクローが緩み、調子に乗ったボケウサギが、いらんことを言い、無言のまま全力で繰り出されたアイアンクローによって、行動を停止した。……死んだか?

 

 

「そろそろ帰らねぇと出かける時間がなくなるぞ」

 

 

 

「……そうですね、そろそろ帰ります。あ、服は」

 

 

 

「めんどくさいからやるよ。いらなかったら捨てといてくれ」

 

 

 

 学園で渡されるのは論外、家に持ってこられるのもめんどくさいからなぁ、いろいろと。主に俺の平穏関係で。

 

 

 

「わかりました、ありがたく貰います」

 

 

 ちょっと嬉しそうにしながら、篠ノ之を担ぐ織斑。……シュールだな。

 

 

 一応、玄関まで織斑達を見送ることにする。戻ってきたらめんどうだし。

 

 

「悠夜さん、ありがとうございました」

 

 

 そう言って、織斑は深々と頭を下げてきた。……下げた拍子に篠ノ之が頭を床に強打していた。かなり鈍い音がしたが、まぁ大丈夫だろ。それよりも、頭がぶつかる瞬間にくいっと、ウサ耳が(あぁカチューシャの方な。)床を避けたことの方が気になる。

 ……作ったのは俺なんだが、あんな機能あったか? まぁ天災だからな、気にしたら負けだ。

 

 

 

「はいはい、お大事に」

 

 

 手をひらひらと振って、見送る。織斑はスタスタと歩いて行った。……ボケウサギを担ぎながら。

 

「さてと」

 

 

 メールメールっと。よし、これでいいだろ。

 過保護なブラコンが持たせたケータイに、メールを送っておいたから、これでもう確実にあんなことはしないだろ。

 

 

 メールの内容? 『お前の姉が無理して倒れそうになった。もう大丈夫だが、叱っておいてくれ』だ。だいぶアバウトな説明だが、細かいことは織斑に聞くだろ。ボケウサギを呼んだ罰だ。

 

 

 さて、うるさい奴らも帰ったし、これで心置きなく──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──倒れられる。

 

 

 気合いで自分の部屋まで戻り、ボスっと、ベッドにたおれこむ。 熱は……39度、後半か。そりゃ、ミスもするわな。

 

 

 さすが、織斑を倒れさせた風邪だな。一晩、同じ部屋にいただけで移るとは。

 

 

 あいつらにバレたら看病だなんだって言って、絶対にめんどうになるからなぁ。

 そんな素振りなかったって? ちゃんと言ってたぞ? 『ダルい』って。めんどくさいより多かっただろ?

 

 

 今日はもう寝て、日曜だが明日学園に行って、寮の部屋で寝よう。あそこが1番安全だしな。セキュリティとか諸々が。

 

 

 寝る、か。

 

 俺は明日のことを考えながら、熱でボーッとするなか、意識を手放した。



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お祓いって効くのかねぇ……

「ガッ!?」

 

 ガタイのいい、黒スーツにサングラスといった、いかにもな服装をした男の頭に、俺は見事な踵落としを炸裂させた。

 上からという確実に予想外な所からの強襲に、男は抵抗を一切できず地面に叩きつけられ意識を飛ばしたようだ。

 

 

 倒れ伏す男にその仲間とおぼしき、同じ服装をした男その2とスーツを着ているが男たち(仮称SPとしておこう)とは違うひょろっとした体つきに髪型をオールバックにしていて、神経質そうな顔を今は驚きに染めている男。

 

 

 そして、ちょうど俺が庇っているような位置にいるIS学園の制服を着ている、小動物を思わせるような雰囲気と身長をした女の子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……いやいやいや、ちょっと待て。

何でいきなりこんな修羅場ってる状況なんだよ、色々とおかしいだろ。

 ていうかここどこだよ。記憶喪失とかじゃなくて普通に見覚えがない所なんだが……

 とりあえず落ちついて、今までの行動を思い出してみようか。

 

 

 確か織斑たちを帰らせてからベッドにぶっ倒れてそのまま寝て、目が覚めたら朝で、熱はあんまり下がってなかったから、家でまったり過ごすのは諦めて、いざこざが多少ましな学園に行ってから寝ようと思って家を出て……それからの記憶が曖昧だな。

 

 とりあえず上を見てみると結構な大きさの木があった。

 ……もしかして木の上で寝てたのか? 熱で意識が朦朧としてたとはいえ、我ながら意味不明な行動をとったな、おい。

 

 

 いや、あながち意味不明でもないか。中学までは天災達の自称親衛隊とかを撒くために屋根の上やら木の上やらに登ってたからなぁ。

 人を捜す時に上を見るのはなかなかないからな。結構安全だった。

 

 

 熱は……ましにはなってるな。 さて、木の上で寝てて落ちたら仮称SPの上でそのまま踵落としを炸裂させた場合の対処ってどうやるんだ?

 

 

「おい、誰だお前は」

 

 

 ハッと気を取り直したオールバックが警戒しながら問いかけてきた。いや、誰って言われても、

 

 

「木の上で寝てた一般人(希望)の高校生です」

 

 

 普通に答えたが、まぁ嘘は言ってない。

 

 

「一般人だと? こんな人気のない場所にいるような奴が一般人な訳ないだろう」

 

 

「じゃあ、あんたらは変質者か犯罪者だな」

 

 

 オールバックが周りを見渡してから嘲るように言ってきたので、さらっと言い返した。自覚ある変質者ってたち悪いよな。

 

 

「どういう意味だ」

 

 

「人気のない場所にSPっぽい奴らを連れて、高校生の女子を追い詰めてたら誰でもそう思うだろ」

 

 

 

 こめかみをピクピクと震わせながらも冷静を装って聞いてきたので、はぁ、と相手を馬鹿にした感じのため息を吐きながら、客観的事実を鎌をかけつつ述べてやる。情報は大事だからな。

 

「チッ、お前には関係ないだろう」

 

 

「確かに関係ないな。だから後は警察でも呼んで職務をまっとうしてもらうわ」

 

 

「ハッ、脅しのつもりか? ガキが調子に乗るなよ。名誉毀損で訴えてやろうか?」

 

 

「どーぞご自由に。判断するのは警察だし、仮に間違ってても判断能力の低い未成年の高校生がやったことだからな。大したことにはならねぇよ」

 

 反応を見る限り、向こうは警察沙汰にはしたくないようだ。 バレたら不味いことをやってるんだろうな。まぁ、IS学園の生徒になんかしようとしてんだから当たり前か。

 よっぽど強力なバックがいるか、ただのバカか、もしくはこの小動物チックな女子がなんかしたか。

 

 

 ……ないな。チラッと見てみたけど、今の展開についてこれなくてアワアワしてるし、どう考えても、たいそれたことを出来るようには見えない。これが全部演技だったら化け物だな、ハリウッドで主役張れるわ。

 

「もういい、そこのガキを適当に痛めつけてやれ」

 

 

 自分の不利を悟ったのか、オールバックは気絶していないSPその2をけしかけてきた。めんどくさ、熱のせいでイライラしてるからってやり過ぎたか。

 

 

「あ、あぶな」

 

 

 SPその2が突っ込んで来たのを見て、小動物チックな女子は声をあげようとしたが、

 

 

「残念」

 

 

 SPその2の踏み出した左足を地面につく寸前に、半円を描くように右足で払い、左半身の体制になりながら、ポーンと宙に浮かせる。宙に浮いているSPその2に向かって、左足で踏み込み、腰を捻りながら右の掌底を相手の鳩尾に放つ。

 

 

「グフッ!?」

 

 

「なにっ! がっ!」

 

 

 突っ込んで来た勢いも利用した一撃なので、ガタイのいいSPその2でも簡単に吹っ飛ぶ。ちょーーーっと呼吸が止まるかも知れないが、多分大丈夫だろ。オールバックも巻き込まれて転けたな、ラッキー。

 

 

 さてと。

 

 

「逃げるか」

 

 

「えっ?」

 

 

 これ以上ここにいても意味がないし、めんどくさいから逃げることにしよう。

 小動物──もう小動物でいいや──がぽかんとして間の抜けた声を出していたが放っておこう。

 

 

 俺はこの林? を抜けるために軽く走り出した。

 

 

「え、えぇ〜! ま、待ってください〜」

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「ふぅ、この辺りでいいか」

 

 

「はぁはぁ、はぁ、んっ、けほけほ、はぁはぁ」

 

 

 林? を抜けて走ってたら、公園を見つけたので小休止することにした。病み上がり、というか現在進行形で風邪なので、無理は禁物だしな。

 

 

 まぁとりあえず、それよりもだ。

 

 

「何でついてきてんだ?」

 

 

「はぁはぁはぁ」

 

 

「はぁはぁ言ってるけど、もしかして変質者か?」

 

 

「ちがいます! 息切れしてるんですよ!? はぁ、ごほごほ」

 

 

 

 涙目で呼吸を荒げて顔を真っ赤にしながらも必死に反論してくる小動物。

 

 

 だって、ねぇ。大した距離走った訳でもないし、ダッシュした訳でもないのに、俺の後ろではぁはぁ言われてたらそう思うだろ?

 どんだけ体力ないんだよ。

 

 

「で、何でついてきたんだ」

 

 

「も、もう、少し、待って、ください」

 

 

 ……えっ? もしかして事情とか聞かなきゃ駄目なのか? ついてきた理由だけでいいっていうか、もうとっとと学園に行きたいんだけど。

 とりあえずジュースでも飲むか。

 

 

 俺は近くにあった自販機に向かい、無糖コーヒーを買った。で、ベンチに座り込んでいる小動物の所に歩いて行った。まだ息が整えられないのか、荒い呼吸を繰り返している。

 

 

「それで、何でついてきた?」

 

 

 カシュッと無糖コーヒーのプルタブを開けて、コーヒーを飲みながら聞く。小動物は何とも形容しがたい表情でこちらを見てきた。

 

「なんだよ?」

 

 

「あの、普通こういう場面だったら私の分も買ってきてくれたり……しませんよね」

 

 

「あいにく普通とは言いづらい人間なんでな」

 

 

「うぅ、私もジュース買ってきます」

 

 

 小動物はしょぼーんとしながら自販機に向かった。俺に何を期待してんだか。

 

 

 ……もしかしてヒロインのピンチに颯爽と登場したヒーローみたいに思ってたのか?

 登場したヒーローは悪役を倒したがヒロインを放って逃走、必死についていったヒロインだが、ヒーローは自分だけ体力回復してヒロインの体調は完全無視

 ……ある意味斬新な展開だな。ヒロインが不憫過ぎて逆に人気が出るかも知れないな。

 

 

 そんなしょーもないことを考えながら小動物を見てたんだが……あれは狙ってんのか?

 

 

 自販機に向かうだけで小石に躓く、自販機に着いてかわいらしいデザインの財布を開けたら小銭をぶちまける、小銭を集めて上の方の飲み物を買おうとしたら、何処とは言わないが、体の一部がボタンに触れて違う商品を買ってしまった。

 ……ボケにしても体を張りすぎだろ。

 

 

 とぼとぼと帰ってきた小動物の手に握られていたのは『飲めるものなら飲んでみろ! 濃縮還元スーパー青汁DXシグマ+α』という、よく商品化したなと言いたくなるような物だった。飲み物なのに何で飲まれることにケンカ売ってんだよ、しかも強化しまくってるし。

 見るからに危なそうなそれをヒョイと取って裏を見てみると、自殺の虚しさや芸人根性の限界についてびっしりと書き込まれていた。……俺は何も見なかった。

 

 

 

「はぁ、ちょっと待ってろ」

 

 

「ふぇ?」

 

 

 俺に飲み物を取り上げられた小動物はおろおろしていたが、俺が声をかけると動きを止めた。

 それをスルーしてもう一度自販機に向かい、スポーツ飲料水を購入して戻ってくる。

 

 

「悪いことは言わないからこっちにしとけ」

 

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

 ほにゃっとした笑みを向けてくる。……さすがにあれは痛々し過ぎた。というか放っておいたらマジで飲みそうだったしな、これ。

 

 

 こくこくとスポーツ飲料水を飲んでいる小動物を改めて見るが、どうしてこの世界はこんな遺伝子にケンカを売るような髪色をしてるやつが結構な割合でいるんだ?

 

 

 緑色の髪の毛に緑色の瞳、しかもおそらく地毛。日本人だよな、こいつ。……まぁいいや。

 

 

 

「あ、すみません! 自己紹介もせずにくつろいでしまって」

 

 

 

 自己紹介とかいいから、もう帰っていいか? 完全に帰るタイミングをミスったなぁ。はぁ、やっぱ調子悪ぃ。

 

 

「IS学園1年生の山田 真耶です。さっきはありがとうございました」

 

 ニコニコと笑顔を向けながらこちらを見てくる小動物改め山田。 バリバリの日本人だった。遺伝子って不思議だな。

 IS学園の山田……まさか。

 

 

「日本代表候補生候補の?」

 

 

「え? え? どうして知ってんるんですか?」

 

 

 ……最悪だ。また厄介事だ、もういっそお祓いでもするかな。

 

 

 

 俺はわちゃわちゃと騒いでる山田をスルーして天を仰いだ。

 

 

 あまり寝ていなかったようで、まだまだ空は青かった。

 

 

 めんどくせぇ。



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本って役に立つよなー、読んで良し、叩いて良し、投げて良しの三拍子だ!……

「で、何でついてきたんだ?」

 

 

 しばらくの間大いなる青空を見上げた後、本題に入った。何で俺が日本代表候補生候補の事を知っていたかは、めんどいから話してない。騒ぎだしそうだったしな。

 

 

「えっと、何で追われてたかじゃなくて何でついてきたかの方が大切なんですか?」

 

 

「当たり前だろ? ついて来られたせいで、多分俺まであいつらに目ぇつけられただろうしな。それについての事情説明くらいはあってしかるべきだろ」

 

 

「うぅ、す、すみません」

 

 

「まぁ、どうせ俺が急に走り出したから反射的についてきたんだろ」

 

 

「わ、分かってたなら聞かなくてもいいじゃないですかぁ!」

 

 

 ため息混じりに推論を言うと、どうやら図星だったようで山田は顔を赤くしながら怒鳴ってきた。 怒鳴ると言っても子犬の威嚇程度の迫力すらなかったが。

 

 

「デカイ声出すなよ。頭に響くから」

 

 

 俺が片耳を塞ぎ、半目になりながら文句をいうと今度はシュンとなった。……反応がいちいち子犬とかそういう小動物を彷彿とさせる奴だな。

 

 

「何で追われてんのかは知らんが、とりあえずIS学園に戻れば大丈夫だろ。あそこは特別だしな」

 

 

 まぁ、何となく予想はつくけどな。

 俺は携帯を取り出してGPSを使い、現在地を確認してからメールを打つ。めんどいからとっとと終わらせよう。

 

 

「何度もそうしようと思ったんですけど、行く先々であの人たちに見つかってしまって」

 

 

「学園に連絡しろよ」

 

 

「……連絡したら家族が酷い目に遭うって言われて、私、もうどうしたらいいか」

 

 

 山田は、目に涙をいっぱいにして話してくる。……こういうのを見て言うのもなんだが、……この子は馬鹿なんだろうか。

 日本代表候補生候補と言ったら、エリートコースを行ける切符を半ば手に入れてるような奴らだ。そのまま行けば、日本代表候補生、日本代表と国の重要人物になるかもしれない。

 

 

 そんな逸材達に何かあったら国自体の評価が危ぶまれる。

特に日本なんざIS学園なんて物を運営して、各国の代表やら代表候補生やらを預かってる。なのに自国の代表候補生候補やその家族すら守れませんでしたーじゃ、いいバッシングの的になるだけだ。 だから警護っていう面では日本はかなりのレベルなんだけどな。

 

 ……こいつの性格だったらテンパってそこまで頭が回らないか。 てか、それにしても動きが遅い気がするんだが……。

 

 

「まぁ先回りされてた理由は、さっきまで付いてた発信器のせいだろうな」

 

 

「えっ! ど、どこに付いてるんですか!?」

 

 

「さっきまでって言っただろうが、青汁を取った時に外してそこら辺の鳥に投げ付けたから、もうどっか遠くに行った」

 

 

 バタバタと制服をいじり始めた山田に呆れながら教える。あんなちゃちな発信器なら簡単に見つけられるからな。あいつら自体は大したことないんだろ。

 ……いや、そもそもあのボケウサギと比べるのが間違いか。

 

 

「そ、そうなんですか。なにかすごいですね、さっきもあんなに大きな人を倒しちゃいましたし」

 

 

「慣れたら誰でもできる」

 

 

 小学生からずっと、実践経験だけはバカみたいに積んでたからなぁ。天災達のせいで。

 

 

「……無理だと思います。あれって何なんですか? 柔道じゃないですし」

 

 

 コロコロと表情を変えながら、山田は質問してくる。目先の恐怖よりも身近な疑問の方が先に来るのか。案外図太いんじゃないだろうか、この子。

 

 

「合気道だよ」

 

 

「え? でも」

 

 

 

「合気道ってのは元々、日本の古流武術の1つで、投げ技だけじゃなくて関節技とか当て身技みたいなのもあるんだよ。合気道=投げ技オンリーじゃないからな」

 

 

 

 色々と聞かれる前に一気に説明した。いちいち聞かれて説明すんのもめんどいし。細かいところになると『崩し』『入身』『転換』とかが入ってくるんだが。まぁ、あの程度の説明で十分だろ。

 

 

 

「はー、そうなんですか。勉強になります」

 

 

 

 そんなしょーもない会話をしながら時間を潰す。途中で帰ってきたメールの内容を見て、思わず顔をしかめたが、仕方ないだろう。めんどくさい内容だったしな。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「はぁ、やっと来たな。こっちは風邪引いてんだから、少しは気ぃ使えよな。」

 

 え? と山田が俺の声に反応してからすぐに、オールバックとそのSPがぞろぞろと現れた。途中から公園に入ってくる人が不自然に少なくなっていったから、おそらく人払いでもしてたんだろ。ご苦労なこった。

 

 

「また会いましたね、変質者さん。SPまで増やして、そこまでこいつにご執心ですか? このロリコン」

 

 

 SPを10人に増やして現れたので、何となくバカにしてみた。他意はない。

 

 

「自分の立場が分かってないようだな、クソガキ。私達の邪魔をしなければよかったものを」

 

 

「いやいや、俺は一般人だって言ってたのに突っかかってきたのはそっちだろ? その年でもう痴呆か? オッサン」

 

 

「グッ、こちらの事情も知らんくせに何を」

 

 

「事情、ねぇ。どうせ日本代表候補生候補のこいつと何かしら契約を結んでおいて、プロパガンダにでもするつもりだったんだろ。契約内容によっちゃ色々できるし、もしこいつが日本代表になったら専属のスポンサーとしての宣伝にもなるしな。凄まじい青田買いだな、おい」

 

 

 先ほどまで余裕だったオールバックの表情がどんどんと険しくなる。ダルいから八つ当たりさせてもらおうか。

 

「普通の奴だったらIS学園に言われてアウトなんだけどな、こいつの性格だったら大丈夫と考えて接触した。が、逃げられて追いかけまわしてやっと追いついたと思ったら一般人に邪魔されたあげく発信器まで見抜かれて、それにも気づかずに発信器を取り付けられた空を飛んでる鳥を追っかけ回して、途中で違うことに気づいてやっとこさこいつを見つけたと。間抜けだねぇ」

 

 

 やれやれと言うような表情でオールバックに騙りかける。息継ぎなしで言い切ったから多少疲れたが、まぁしょうがない。オールバックの顔が真っ赤になり始めたし、そろそろいけるだろ。

 

 

 

「図星でしたか? それにしても、あんた程度の実力でよく日本代表候補生候補の情報が入りましたね?」

 

 

 日本代表候補生ならまだしも、そのさらに候補となると本人を含めて少ししか知ってるやつはいない。今回みたいに青田買いでもされたら色々と面倒になるからだ。 さてさて、獲物は釣れるかなっと。

 

 

「……ふん。そこまで知ってしまっているならお前には消えてもらうしかないな」

 

 

「おいおい物騒だな。いいのか? そんなことをしたらすぐに足がつくけど?」

 

 

「ハッ! ガキ1人が消えたぐらいならどうとでもなるんだよ。こっちにはそれだけの力がある」

 

 

 ニタニタと笑いながら、自分の優位を確信したオールバックが言う。

 

 

「たかが一企業にそんなことが出来るわけ」

 

 

「出来るんだよ。私達の後ろにはそれだけの力があるバックがいるからな」

 

 

「……政府の人間か」

 

 

「その通りだよ、クソガキ」

 

 

 俺が苦い顔をするとオールバックはさらに醜悪な笑顔を向けてくる。

 

 

「日本代表候補生候補の情報もそこからか」

 

 

「あぁそうだ。今回のことが成功したらその利益をいくらか渡すことになっていてね。その人の力を使えば何とかなるんだよ。ま、ギブアンドテイクってやつだよ」

 

 

 ……もう十分だろ。これ以上はめんどいし、こいつがアホで助かったな。携帯を取り出し、合図を送る。

 

 

「ふーん」

 

「ようやく諦めたか。おい、早くそいつを」

 

 

 オールバックの言葉を遮り、ブォン!! と轟音をたてながら、簡素だがなかなか広い公園に黒塗りの車が数台現れた。 車の中からぞろぞろと屈強そうな方々が出てきて、オールバックとその周りの奴等を制圧した。その間10秒の早業だ。やっぱ本物は違うね。

 

 

「な、なんなんだお前らは!?」

 

 

「IS学園が事情を話して動いた、あんたのバックの人間以外の政府の方々の部隊だよ」

 

 屈強な男に押さえつけられているオールバックがうるさいので説明する。

 

 

「そんな馬鹿な!? 私達の行動がなぜ!?」

 

 

「あんたIS学園舐めてない? とっくにバレてんだよ」

 

 

 まぁ、そのバックの人間のせいで多少手間取ったらしいけどな。つーか証拠集めに学生使うなよな、ホントに学園長かよあのオッサン。

 

 

「嘘だ、そんなそんな」

 

 

「おかしいと思わなかったのか? たかが高校生のガキがそれなりに鍛えてるSPを投げ飛ばしたり、発信器に気づいたり、大人数に囲まれたのに普通にしてたり、政府の人間とか言ったりとかさ。そこまで考える高校生なんざ、ほとんどあり得ないだろ」

 

 

 オールバックの顔がだんだんと青くなっていく。もうちょいだな。

 

 

「あぁそうだ。あんたのさっきの発言のおかげで、しぶとく言い逃れしようとしてた政府にいるバックの人間とやらも捕まったらしいぞ。調査協力ありがとーございます」

 

 

 携帯を開き、メールを見ながら笑顔で伝えると、オールバックは絶望という言葉がぴったりの表情で項垂れた。やっぱ騙り合いって大切だよなー。

 

 

 オールバック達は車に乗せられて連れていかれた。はぁ、やっと終わった。さて、学園長には何貰おっかなー。

 

 

「あの!」

 

「ん?」

 

 さっきまで空気を読んだのか展開について行けなかったのか知らないが、終始黙っていた山田が話しかけてきた。……多分後者だろうな。てか、熱のせいでちょっとテンションがおかしかったな、俺。

 

 

「どうした山田? もう終わったから帰っても大丈夫だぞ」

 

 

「あなたは……」

 

 

 山田は聞きたいことがあるが何を聞けばいいか分からないといった感じで言い淀む。

 

 

「まぁ、特徴とかないから仕方ないよな。」

 

 

 しっかりと山田の方に体を向けて、そういえばしてなかった自己紹介をする。もう帰るだけだし、いいだろ。

 

 

「IS学園2年の水無月 悠夜。以後よろしくしなくてもいいから厄介事を持ってくんなよ」

 

 

 山田は目を限界まで見開き──かけてる眼鏡がずれた──息を飲んで、吐いて、思いっきり息を吸い込み──

 

 

「えぇぇぇぇぇぇぇえぇぇーーーーー!?!?!?」

 

 

 ──もはや衝撃波といってもいいような大絶叫を放った。

 

 

 そこまで驚くことかね?



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今さら……?

「インタビューさせてくれないかな?」

 

 

 鬱陶しい風邪もだいたい回復し、平日の授業も終わり、夕食をまったりと食べていたら。『新聞部』という腕章を付けた女子に急にそんなことを言われた。インタビューって……えっ、今さら? ていう感じなんだが。

 

 

「なん」

 

 

「何なんだよ、今は束さんがちーちゃんとゆーくんと晩ごはんを楽しんでるのに。邪魔だから消え──むぎゅ!?」

 

 

「言葉を被せるな。話がややこしくなるから大人しくしてろ。つーか、俺は部屋で食うつもりだったのに、部屋の前でお前が騒ぐから来ただけだ。」

 

 

 篠ノ之が話の腰を叩き折るようなことを言おうとしたので、病み上がりでいまいち食欲が無かった。という理由で注文したサンドイッチを、ため息を吐きながら篠ノ之の口に捩じ込んだ。ちなみに手付かずのやつだ。話を聞かなくてもいいんだが、後々めんどくさいことになるかもしれないので、今のうちに聞いておく。

 

 

「私が聞くのもなんだが、なぜ今さらインタビューをするんだ?」

 

 俺が聞こうとしたことを、織斑が先に言った。……どうでもいいが、俺への頼みなのに何でこいつらが先に会話(篠ノ之のは会話じゃなかったが)しようとしてんだよ。

 

 

「よくぞ聞いてくれました! って、言いたいんだけどね。そんなに大した理由じゃないんだ」

 

 

 新聞部女子は苦笑しながら言う。

 

 

「ほら、水無月君って2年生でしょ?」

 

 

 本来なら3年なんだがな、年齢的に。

 

 

「だから、今の2年と3年はある程度、水無月君のことを知ってるんだけどさ。1年生はそうじゃないでしょ? 先輩達から話は聞くけど、やっぱり上級生だから直接会いに来るのは尻込みしちゃう。って子が多くてね。簡単なインタビューでもいいから記事にして欲しい!! ていう要望がたくさん新聞部に寄せられたから、こうしてお願いに来ました」

 

 

「理由は分かったが、それこそ何で今さら? 1年が入学してから大分経つんだが」

 

 

 いや、本当に。何で今さら? タイミングがおかしいだろ。

 

 

「それがね、1年生の子の1人が水無月君に助けてもらった。ていう噂が流れて」

 

 

 あくまで噂なんだけどね。と新聞部女子は続けたが、俺はその発言を聞いてすぐ、頭痛がし始めたこめかみを抑えた。……どっから洩れた。一応口外禁止の内容なんだが……。人の口には戸は立てられぬ、か。めんどくさい。

 

 

「それが引き金になって。学園祭で執事をしてた、篠ノ之博士に口移しで食べさせてた、学園祭でもう1人のIS男性操縦者と織斑さん達を賭けた決闘をしてた、学園祭でコンピューター部の出し物を10秒でクリアしてた、学園祭で織斑さんとデートしてた、等々。いろんな話が出てきて収集がつかなくなってさ。去年インタビュー出来なかったし。ちょうどいいかなー、と」

 

 

 小首をかしげながら聞いてくる。……かなりひどい捏造が所々にあるな、おい。一部真実だから否定もしにくいし。はぁ、やっぱ面倒なことになった。つーか、最後のが本音だろ。せっかく去年はうやむやに出来てたのに。

 

 

「……もう1人の方は」

 

 

 とりあえず、無理だろうけど、変態君を推してみる。新聞部女子は苦い顔をしながら、

 

 

「雑誌記者を目指す身としては、ダメなんだけどさ。もう1人の方は苦手なんだよね。嘘ばっかり吐くし、聞いてないことを言ってくるし、何だか世界は自分中心に動いてる、って感じだから記事にしにくくて。それに、名前を言った途端に態度を変えるし。気味が悪くて」

 

 

 ……嘘の辺りは、やぶ蛇っぽいから聞かないでおこう。インタビューねぇ。サンドイッチをなんとか飲み込んで、復活しようとした篠ノ之に2つ目のサンドイッチを捩じ込みながら、考える。

 受けても受けなくても、あまり差はないんだけどな。去年とは状況が違うし。

 

 

「簡単な質問くらいなら、受けたらどうですか?」

 

 

 たらたらと考えていたら、織斑がそう言ってきた。

 

 

「んー……。今ここだけで簡単な質問のみ。答えられないことはノーコメント。捏造なしで」

 

 

「ホントに! 条件もそれで大丈夫だよ」

 

 

 喜色満面といった様子でいそいそと準備する新聞部女子。ふむ、これで大丈夫だな。

 

 

「ちゃっちゃと終わらしてくれよ。新聞部女子さん」

 

 

「あっ、名前言ってなかったっけ? ごめんなさい。私は『黛(まゆずみ) 渚子』水無月君たちと同じ2年生。よろしくね」

 

 

 よろしくしなくていいから、厄介事を持ってこないでくれ。

 

 

「じゃあ最初の質問。女子ばっかりのハーレム学園に入った感想は?」

 

 

 簡単な質問、ね。インタビューになったら急にテンション変わったな、おい。

 

 

「色々とめんどくさい」

 

 

「あはは、男の子だもんね。しょうがないよ」

 

 

「じゃあ次。何で髪を伸ばしてるの?」

 

 

「切りに行くのがめんどくさい。後、切りに行ってIS男性操縦者ってバレたら面倒だから」

 

 

 1回行っただけで『IS男性操縦者御用達』とか書かれたらめんどいしな。それに、俺の髪を集めて、研究所に売られるとかになったら気持ち悪いから。IS動かした当初、サンプルとして髪を売ってくれ!! って言われてかなり引いたし。かなり必死だったな……嫌な思い出だ。

 

 

「なるほどなるほど。じゃあ戦場での心構えは?」

 

 

「不意討ち、闇討ち、騙し討ち、何でもいいから面倒にならないように勝つ。最高なのは戦わずして勝つ、というより戦わない。めんどくさいから」

 

 

 3個目のサンドイッチを捩じ込みながら答える。織斑と黛の顔が若干引き攣っているが、気にしない。

 

 

「な、なかなかシビアだね。じ、じゃあ、何かスポーツとかしてる?」

 

 

「合気道と剣術」

 

 

「IS学園はどこかの部活に入らなきゃダメなんだけど、入ってないよね?」

 

 

「学園長に許可はもらってる。女子ばっかりの部活に男子が入っても集中を乱すだけだから。後、めんどい」

 

 建前は重要だよな、建前は。事実でもあるから大丈夫だ。

 

 

「……実はものぐさな性格?」

 

 

「見たまんまだ」

 

 

 黛の笑顔が固まってきたな。

 

 

「そ、そっか。次は、専用機は欲しい?」

 

 

「特に欲しいとは思わないな」

 

 

「どうして?」

 

「どっかの所属になるとどっかに恨まれるし、あんまりメリットがないから」

 

 

「よくかんがえてるんだね」

 

 

「めんどくさいのは嫌いだしな」

 

 サンドイッチ4個目。数がなくなってきたな。むーむー言ってるけど知らん。

 

「篠ノ之さん、大丈夫なの?」

 

 

「大丈夫だ。多分」

 

 

「大丈夫だ」

 

 

 黛はちょっと見過ごすのが辛くなってきたのか、篠ノ之のことを心配するが。俺と織斑はすっぱりと言い切る。この程度でこいつは死にやしない。それよりも周りの奴等がめっちゃ聞き耳立ててるな。どうせ記事になんのに、よく分からんな。

 

 

「そうなの? ……よし! じゃあ、ここら辺で1番リクエストが多かった質問です! ズバリ! 今、付き合ってる人は?」

 

 

「いない」

 

 

 周りが固唾を飲み込む暇すらなく、即答する。いないもんはいないしな。

 

 

「ホントに?」

 

 

「本当に」

 

 

「……実は?」

 

 

「いない」

 

 やたらと食い下がってくるが、答えは変わらん。

 

 

「ゆーくんは束さんとちーちゃんと婚約してるからそんなものいな──にゃっ!?」

 

 

 スッパァン!! と、残っていたサンドイッチは俺が食べてしまったので、仕方なくハリセンで横凪ぎに篠ノ之の目を叩く。食堂のソファーの上でゴロゴロと転がる。 痛そうだな。

 

 

「えっと、いないでいいの?」

 

 

「イエス」

 

 

「おーけーおーけー。それなら数少ないIS男性操縦者として」

 

 

「ノーコメント」

 

 

「え?」

 

 

「ノーコメント、だ」

 

 

 坦々と、声の調子を変えずに答える。そんなもんどう答えてもどっかに恨みを買う。

 数少ない男性IS操縦者としてがんばる? 自分は特別だってか。なりたくなかった? なりたいのになれない奴に対する最悪の言葉だ。かなり穿った物の見方だが、言葉の感じ方なんか千差万別だ。逆恨み何て腐るほどある。

 

 

「んー……よし、ありがとう。いい記事が書けそうよ。次があったら、またよろしくね?」

 

 

「ないぞ」

 

 

「えっ?」

 

 

「『今ここだけで』って言っただろ? だから2回目はない」

 

 

「……ず、ずるい」

 

 

 少し泣きそうになってるが、関係ないな。約束は約束だ。

 

 

「オーケーしたのはそっちだしな」

 

 肩をすくめながら答える。

 

 

「うぅ、分かりました。協力ありがとうございました」

 

 

 とぼとぼと黛は哀愁を漂わせながら歩いて行った。

 

 

「さて、帰って寝るか」

 

 背骨をパキパキとならしながら立ち上がる。疲っかれたー。

 

 

「容赦なしですね」

 

 

「人の話はちゃんと聞きましょー」

 

 

「はぁ。ほら、束。帰るぞ」

 

 

「グスッ、ゆーくんがひどいよ〜。ち〜ちゃぁあああん」

 

 

「こらっ、ちょっ、へばりつくな束!!」

 

 最近かなり回数が増えてきた、ため息を吐きながら、部屋に向かい歩き始めた。

 厄介事が厄介事を呼ぶな。

 ……もういい、寝る。



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親しき仲にも礼儀あり、親しくないなら尚更だ……

「ではこれより、水無月 悠夜vs帯 片時の試合を始めます。両者、用意はいいですか?」

 

 

「ハッ、瞬殺してやるよ!!」

 

 

「あーもーいいですよー。……めんどくさ」

 

 

 空中で、俺と変態君は向かい合う。変態君の乗るISは、『打鉄試作式』という、日本の第2世代量産型ISの試作機だ。対して、俺の乗る機体はフランス製のIS『ラファール』である。……皮肉なのかそうじゃないのか悩む所だな。各自乗る機体は様々な国のISの中から抽選で決められた物だ。

 

 

 第2回IS世界大会モンド・グロッソ『男性』代表決定戦。

 これが、今回俺が変態君と戦うはめになった理由の建前だ。

 前回のモンド・グロッソの後に告知された、第2回モンド・グロッソではIS男性操縦者が参加する。という迷惑かつ面倒な内容に捏造された事により、2人いるIS男性操縦者のうちから代表決定戦の後、その勝者が代表になる。 本来なら『俺』が、出るはず

だったのだが、IS男性操縦者同士の戦闘という、各国《自分たちに》『おいしい』話にすり替えられた。

 とてもめんどくさい。

 ……俺は出たくもなかったのだが。

 

 

 まぁ、IS学園を卒業するまでに、モンド・グロッソに出場する方を決めておいたほうが都合がいい。卒業してからでは他国の干渉が酷くなり。試合場所、時間、機材、金、どこのISを使うか等、様々な問題が沸き起こり、いつまでたっても代表なんざ決まらんだろう。

 下手をすれば、適当な理由をこじつけて何度も何度も試合《データ収集》をさせられる可能性もある。

 ……それもかなりの高確率で、だ。

 

 

 そういったメリットもあるにはあるんだが……なんでこうなった。

 朝普通に起きて教室に行ったら、「1時間後に試合開始ですよ」と、担任にいきなり言われ。試合? 誰のですか? と聞き返したら、きょとんとした顔をされた。 その後、事情を聞き、理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天災どもが俺に隠した上で根回ししやがった──と。

 

 

 今日の日付は月曜日。

 諸々の準備は土日に終わらせておけば、俺は気付かない、気付けない。

 各国へのデータ提供は、後でまとめた物を出せばいい。生徒には教えず、当日に告知する。当日に告知されるのだから、噂にもならない。

 土日は自宅に帰っていた、俺には天災どもの動きを知る術はなく、 機体の抽選は試合直前にしたので、不正のしようもない。

 

 

 変態君も同様に知らなかったようだが、やたら張り切っている……ポジティブなのか、馬鹿なのか──馬鹿だな、うん。

 

 ISの【ハイパーセンサー】により、観客席にいる。今回の騒動の元凶を捉える。ハイテンションでこちらに向かって手を振るボケウサギに、それに苦笑しつつ、ボケウサギ同様にこちらを見上げるブラコン。

 ……鉛弾でもぶちこんでやろうか。俺が自分の提案を実行するかどうか、わりと本気で検討し始めたら、元凶どもはビクリ、と身を震わせた。良い勘してんじゃねぇか。後で覚えてろよ?

 

 

 とりあえず、戦わないと駄目なので、武器を確認する。

 100%勝てるとは思わないが、多分勝てる。わざと負けても、変態君は五月蝿そうなので、ちゃんと戦う。マシンガンが2丁にグレネードが3発だけ、と。

 第2世代のISなら『後付武装(イコライザ)』により、武器を量子化して、機体にインストールしておけば、わざわざ最初から武器を腰に提げたりしなくても、取り出したり仕舞ったり出来るんだが、ラファールは第1世代。つまり、仕舞えない。……邪魔だな、これ。

 

 ところで、俺制服のままなんだが……良いのか? まぁ何時ものことなんだけどな。

 

 

 変態君の武装はIS用ブレード1本、他にはなし。『後付武装』で仕舞っている訳でもなく、本当にIS用ブレード1本。

 曰く「お前ごとき、これ1本で十分だ!!」だとさ。

 

 

 楽で良いんだけどさ、何時までたっても変わらないな、変態君。 ある意味すごいな、本当に。

 

 

 

 そこまで考えた所で、試合開始のブザーが、アリーナに鳴り響く。

 

 

「死ねぇぇえええええええええええ!!!!」

 

 

「やる気というか、殺る気満々だな」

 

 

 開始と同時に、構えも何もなく突っ込んできた変態君と同じスピードでバックし、マシンガンを構え、連射する。

 変態君のシールドエネルギーがどんどん減っていく。変態君の攻撃が届かず、かといって離れすぎる訳でもない距離で、発砲を続ける。

 

 

「その程度の攻撃なんか効かねぇよ!!」

 

 変態君が声を荒げながら怒鳴ってくる。

 いや、ガッツリ効いてます。ガンガンお前のシールドエネルギーを削ってるよ。

 

 

 しばらくバックしたまま連射を続けていたが、だんだんとアリーナの壁が近づいて来た。

 

 1丁目のマシンガンはそろそろ弾切れになのだが、流石防御能力をコンセプトに置き、開発を進めている『打鉄』の試作機だ。結構削ったんだが、まだエネルギーに余裕があるな。

 

 

「もう逃げられねぇぞ!!」

 

 

 違和感がないくらいに、ゆっくりと減速し、変態君との距離を縮める。もうちょい、かな。

 

 

 壁にぶつかるギリギリで、『PIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)』をフルに使い、急停止する。

 

 

「墜ちろぉぉおおおお!!」

 

 

 型も何もなく、ブレードを滅茶苦茶に降り下ろす変態君。観客席で声が上がるが、特に気にせず、置き土産を残し『瞬時加速(イグニッションブースト)』で一気に下降する。

 

「ん?」

 

 

 変態君は疑問の声を漏らす。

 目前にあるグレネードに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴッッッッッッッ!!!! という激しい爆発が生じ、爆煙が変態君がいた辺りに立ち込める。 ふむ、上手くいったな。『瞬時加速』の直前にマシンガンを捨て、グレネード2個を置いていく。たったそれだけだが、これでなかなかタイミングが難しい。高速で飛んでる途中は避けられやすい、だから壁ギリギリで急降下することで、変態君の攻撃を誘い、動きを止める。で、目前で爆発と。

 

 

 織斑相手にもやったことがある戦法だが、多少ダメージを与えただけで、ほっとんど無駄だったからなぁ。なんで初見でかわせんだよ。理不尽な奴だ。

 

 

 煙が消え始め、変態君の姿が露になる。マジで頑丈だな、あのIS。

 

「くっ、壁に爆弾を仕込むとは、この、卑怯ものが!!」

 

 

 アリーナにいる全て人々が沈黙する。俺も例外ではなかった。

 

 

 ……………………あぁ、そういう結論になるのか。ほんと、めんどくさいな。思考を切り替え、残りの武器を確認。グレネード1個に弾丸MAXのマシンガン1丁、まぁ大丈夫だろ。

 

 

「お遊びはここまでだ、次の一撃で終わらせてやるよ。」

 

 

 変態君が自信満々で一撃必殺を言ってるが、織斑のISである『暮桜』位しか、エネルギーがほぼフルな機体を一撃で倒すなんか無理だろ。

 

 

 変態君はサッカーのスローインのように、ブレードを頭の後ろに反らす。……反らしたからって威力が上がる訳じゃないんだが。

 

 

「行くぞ! 『瞬時加速』!!」

 

 

 変態君が叫びながら『瞬時加速』をし、

 

 

「アホだろ、おまえ」

 

 

 同時に『瞬時加速』した俺の飛び蹴りが、顔面に突き刺さる。あ、絶対防御が発動した。

 

 

「ブゲャ!?」

 

 

 変態君が壁に叩きつけられ、落下する。両手を挙げて、まったく無防備な状態の顔面に飛び蹴りだからな、ダメージもデカイだろ。 ただでさえ使い所の難しい『瞬時加速』を、叫びながら使う奴がいるとは思わなかった。自分から教えてどーすんだよ。

 

 

 重さ×速さの2乗だったかな? 力の大きさは。速度×質量だったっけ? ……どうでもいいか。

 

 蹴り飛ばした時にブレードを落としたようで、変態君は丸腰だ。 地面に倒れている変態君の所まで飛んで行き、背中を足で押さえつける。

 

 

「テメェ! 何しやが」

 

 

 言い切る前に、後頭部に向けてマシンガンを乱射する。大丈夫、死にゃしない。ビジュアル的にはアウトな絵だが、敵には情けも容赦もないと思わせられたら行幸だ。

 

 

 扱いにくい奴と、扱いやすい奴なら、後者を選ぶに決まっている。各国にどう思われるか分からんが、甘いと思う奴は少ないだろう。

 

 

 シールドエネルギーがギリギリのラインでマシンガンの乱射を止める。

 

 

「そういえば、どうでもいいことなんだけどな」

 

 

 グレネードのピンを引き抜きながら、話しかける。ほとんど気絶してるから、聞こえてるか分からないが。

 

 

「親しくない年上には敬語を使えよ」

 

 

 ポイッとグレネードを投げ捨て、距離を置く。先ほどよりは小規模ながら、止めには十分な威力の爆発が起き、変態君のシールドエネルギーがゼロとなり、試合終了の合図がだされた。

 

 

 だらだらとピットに戻る途中で、ふと気付いた。

 

 

「ボケどもの罰を考えてねーや」

 

 ……適当に思いついたらでいいか。



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