ウチの真姫がファーザー・コンプレックスを患ってしまった件について (うなぎパイ)
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第0話 出会い  「西木野 宗一郎」視点

ラブライブ!の映画で真姫ちゃんがパパにキスをした

それを見ただけでこの作品を作りました

漫画を見たことが無いので知識が大してありませんが一発ネタとして書いただけなのであまり考えないで見てください


自分には前世の記憶があった

生まれてから死ぬまでの出来事、学んだ事、その他諸々を覚えている

だからと言って自分が前世の自分と同一人物とは思えない

 

昔の「■■ ■■」という名前の人間はもう既に死んでいる

今の自分は「西木野 宗一郎」という人間でしかない

「■■ ■■」と「西木野 宗一郎」という二つの存在は一つの肉体、精神に宿りはしない

一つの肉体、精神に宿れるのは一つの存在のみ

今の自分の状況を説明するとすればとても単純で明快

 

単に「西木野 宗一郎」という男は既に亡くなっている「■■ ■■」という人間の記憶、知識、その他諸々を頭の中に持っているというだけの少し異例な人間というだけだ

 

 

 

 

 

 

 

 

「フンッ!!」

 

相手の脇腹に自分のグローブ越しの右腕が突き刺さる

その一撃は見事に内臓へ衝撃を与え、息継ぎを途絶えさせた

 

「ゴぁ………ッ!」

 

痛みと酸欠に陥った相手は胃液を口から吐き出し体をへの字に曲げて固まる

手を休める事もしない、相手に休憩時間など与えるつもりは無い

右に突き刺さった拳を瞬時に引き戻し構え直す

そして足から腰へ、腰から肩へ、肩から腕へ

四点に順々に力を込めて今度は相手のガラ空きとなった顔面へ思いっきり打ち放つ

 

「ラストォッ!!」

 

「ぶ…ッ!!」

 

その一撃は見事相手の顔面へ突き刺さりそのまま相手の重心を後ろへ持っていく

相手は全身から力が抜けたせいか簡単にもっていける

拳から離れた相手はまるで車に跳ねられたかのような見事な一回転をしてリングの床へと大きい音をたてて倒れた

 

『………………………』

 

周りの人間の静寂が狭い部室を支配する

殆どの表情が唖然としたものだった

そんな皆を無視して相手を地に伏せた「西木野 宗一郎」が手首をダルく動かしながら言った

 

「……レフェリー」

「………ぁ、しょ、勝者!西木野 宗一郎ッ!!!」

 

正気に戻ったレフェリーが勝利宣言を行った

その声を皮切りに周りの部員、そして野次馬達の「ワァァァッ!!」という大声がそこら中に響き渡る

宗一郎はそんな歓声を見てそのままリングから降りた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「■■ ■■」の記憶があったかというもの俺はとても早熟だった

それもそうだ

歳不相応の知識と記憶量があるのだから

唯一足りなかっといえばその知識を使いこなす感性が幼かったままだったということ

それも同い年の子等と比べれば異常とも言えるスピードで成長したが

つまるとこ、俺は『神童』と呼ばれるようになった

 

周りからちやほやとされるのは嫌いではなかった

自分が出来る事をやるだけで褒められるのだからとても楽しかった

一番は両親からの言葉だ

自分のやること一つ一つに喜んで褒めてくれる

 

父はこの付近で一番大きな病院を経営している

母はそれを支えている事に勤めているらしい

その一人息子として俺は病院を継ぐことが決定している

そして俺は医学の知識を殆ど「■■ ■■」のお陰で身につけていた

一応「■■ ■■」は医者の端くれだったらしい

 

よくやった「■■ ■■」

 

そのお陰で継ぐ上で必要な知識は大方揃っているという事だ

医科大学に通っていても勉強することは大して無い

復習する程度でトップを取れる

それもそうだ

寿命を全うする程の年月の医者の知識が数年程度の学生の知識に負ける訳が無い

 

だが困った

そこで待っているのは暇という何とも贅沢なものだった

頭で出来る事はもうあまり無い

科学者の様な知識を身につけたところで就職先はもう決まっている

なら体はどうだ?そうたどり着いたのだ

やはり男という生物は若かろうが年老いていようが相手を圧倒的な力でねじ伏せる強者に憧れる

ヒーローや物語の主人公達の様に

見るだけで圧倒される肉体、敵対すればねじ伏せられる暴力

簡単に思いつくのはヤンキー漫画に出てくる主人公

なるというだけなら学生という身分で実力云々抜きで簡単になれる

 

だが自分は由緒正しき大病院の一人息子

せっかく頭脳で両親にべた褒めされて可愛がって貰っているのにヤンキーなんかになってしまえばこれまでの努力が水の泡になってしまう

圧倒的な力を身につけ、相手を暴力でねじ伏せて褒められる

そんなモノはいくつかに限られている

 

『ボクシング』だ

いくら相手をボコボコに殴ろうと、いくら相手に怖がられようと競技なら褒められる

見た目だって両親のお陰で結構良い線をいっている

観客だってきっとそれなりに生まれる筈だ

 

小学校の頃にボクシングを始めたいと伝えた

最初は両親に反対された

勉強のノルマは全て正解よりも上を行く回答を出しているので問題はまったく無い

だが、自分の蝶よ花よと大切に育ててきた可愛い一人息子がそんな野蛮とも言える競技をやりたいと言ってきたのだから当たり前か

そこは可愛い息子の懸命なお願いの姿

息子に嫌われたくない両親は断腸の思い出でOKを出した

きっと少し痛い目にあえば止めるとでも思ったのだろう

だが、そうはいかない

子供の頃から地道に隠れて鍛えてきた肉体が花開く

 

 

圧勝だ

 

 

自分より少し年上の子供が相手だった

本人は懸命にやっているが傍から見たら随分と可愛らしいものだ

それに打って変わって自分は始めたばかりなのにも関わらず全てが様になっていた

知識があっただけで流石にいきなりプロの様な完璧な技術を披露出来る訳が無い

相手が大振りの所を懐へ潜りボディーに一発

身体能力はこれまでの努力により年齢より相当上に位置づいている

 

ジムからも良い素材だと判断された俺は勧誘されてそのままジムに入ることになった

結果だけ言うならば見事な文武両道の完璧な『神童』が誕生したという訳だ

小、中、高と全ての成績が満点(音楽以外)

高校はボクシング部に入部し大会で優勝を取っていく

暇つぶしに呼ばれれば部活の助っ人を適当にこなした

高校卒業間近になればミドル級でプロデビュー

部活が無くなった大学生の今でも試合をいくつか行い全てを勝利で修めていく

さっきのは練習も兼ねてボクシング部がある大学に出向いてスパーリングをやっていたのだ

次の試合に勝てば日本タイトルマッチを行う予定まできている

将来的には世界まで行くつもりだ

周りからも期待されている

 

女性ファンによく告白されるがあまり乗る気は無い

別に不能という訳ではないが前世で性についてはそれなりに充実していた

それに家の事もあるから性に不純であるのも問題がある

彼女を作ろうと焦る必要も無い

 

着実に上手くいっている

不安要素は何一つとしてない

だが

 

「つまんねぇな………」

 

肉体に関しては「■■ ■■」による有利性はあまりない

故に勝利を重ねるには地道な努力が必要だ

その努力を怠るつもりは無い

試合はとても辛く、負けそうになる事もある

その時のスリルと興奮は堪らない

だが試合以外の生き甲斐が無いのだ

 

それにこのプロボクサーという職業は父親から病院を引き継ぐまでの一時的なものでしかない

後10年もしないうちに引退することだろう

その後は父に教えて貰いながら経営について学ぶだけだ

 

まるでピースが欠けているかのような感覚

それを埋めようと試行錯誤してきたが埋まる気配がまったく無い

日々変わらない過ごすだけ

欠けている日々を

 

「あぁ………何かねぇかなぁ」

 

少し遠くの大学に来ていたので足は電車を使っている

東京の電車はいつも混雑していて面倒だ

だが背に腹は変えられないとギュウギュウの車両に体をねじ込んで乗車を果たす

定位置を手に入れた俺はそのまま動かずじっと固まっている

下手に動いて痴漢とでも間違えられれば最悪だ

そんな事を考えている自分の目にある光景が映った

 

「く………んッ」

 

赤髪の女性が中年の男性に痴漢をされていた

女性は恥ずかしがりながら唇を噛み声を必死に我慢している

危惧していた痴漢をまさか実際にこんな近くで行われるなんて驚いた

こんなご時勢によく痴漢なんていうものを行えるな、と若干尊敬するがその行為は許せるものではない

この先の将来どうしたらいいか分からない、そんな苛々をさっきまで抱えていた俺はその中年を殴る事にした

痴漢相手ならいいだろう

彼女を助ける為にやったとでも言えば良い

それにこのまま無視するというのも男としてどうかしている

 

「おい」

 

中年の肩を一気に掴み此方に顔を向かせる

男は焦りながらも言訳を俺にいうつもりなのか何か声を出そうとする

現行犯だ

聞くつもりは無い

 

「何だ------------」

「ふんッ!!」

「ねぐぺッ!!!」

 

言い終わる前に右ストレートを顔面に放つ

見事に顔の中心を捕らえられたのか綺麗に鼻の先端を触れた

試合では威力が売りをやっているプロボクサーのグローブ無しの右ストレート

鼻はきっと曲がるか折れるかするだろう

まぁ女のケツを触った罰だ

受け入れて貰う他無い

 

「あ、ヤベ」

 

人の合間をぬって中年の顔面を窓ガラスまで持ってきた

そこまでは良かったんだが威力をつけすぎたのか当たった中年の顔面の部分からヒビが入った

流石に窓ガラスを割ってしまっては過剰防衛だと言われかねない

すぐに力を抜いて拳を引き戻す

 

「か……へぁ……」

「意外に脆いな

 窓ガラス……」

 

中年は気を失ったのか窓ガラスにズリズリと顔を擦っていきながら床へと倒れていく

あ、やっぱり鼻折れてる

ご愁傷様です

能天気に考えているとやっと周りに状況にやっと気づいた

俺と中年の周りが渋滞で混んでいる車内にもかかわらず空間ができている

「あ」となんとも情けない声が出てしまった

流石そうなるか

いきなりガタイの良い学生に中年の男性が殴られて窓にヒビ入れてしまったのだから

俺だって目の前でそんな光景があれば思わず身を引いてしまう

 

そんな時にタイミング良く次の駅の名前が放送された

流石に居心地が悪い

窓ガラスを割ったのは痴漢をしたこの中年のせいにして知らんフリで次の電車に乗ろう

監視カメラも無いからきっとバレない筈

 

数秒後にドアが開いた

俺がドアの方向に向こうとしただけでバッと周りの人間が道を作り出す

あまりの綺麗さに驚き半分呆れ半分だ

ここまで露骨に怖がられるのも久しぶりだ

「はぁ……」と小さいため息を付きながら電車を降りた

後ろを向くのも怖いので振り返らずに歩き出す

少し離れた場所に行こと人ごみに紛れようとした瞬間のことだった

 

「ま、待ってください!!」

 

大声で俺を引き止める女性の大声が聞こえた

おい、マジかよ

俺やっぱり責められるの?

窓にヒビは駄目でしたか

そう思った俺はそのまま早足で歩き出す

 

「ま、待って!!待ってくださいッ!!」

 

声が近づいてくる

そこまでして俺を警察にお世話にさせたいか

それなりに有名だからマジで勘弁なんですよ

名前に傷ついたら病院にも傷付くし両親も悲しむ

やっぱり捕まりたくないな

だからと言って露骨にダッシュは怪しさが増してしまう

仕方なく早足を続けていると誰かに右手を掴まれた

 

(マジか……)

 

掴まれてしまったらどうしようもない

女性を強引に振りほどくのも後味が悪い

観念して恐る恐る後ろへ視線を後ろへと向ける

 

「はぁ……はぁ……ッ!」

 

その女性は俺の手首を捕まえながら肩で息をしていた

俺は早歩きだったが彼女は全力疾走だったのだろう

それなら捕まってしまうのは納得だ

 

「な、なんで逃げるんですか……ッ!!」

「いや、お巡りさんにお世話になりたくないもので………」

「だからって話くらいは聞いてください……ッ!!」

 

そう声を荒げながら女性は顔を上げた

 

「ッ!!!!!!」

 

その女性を見て戦慄が走った

 

 

 

 

 

 

同い年くらいの年齢

 

 

 

綺麗な赤色をした髪

 

 

 

痛みがまったく無い流れるような綺麗な髪質

 

 

 

性格を表すかのように少しつり上がった目元

 

 

 

口元の左下にある特徴的な黒子

 

 

 

途轍もなく整った顔

 

 

 

 

息をするのも忘れてしまう程に美しく、可愛く、綺麗な女性だった

これまで見てきた女性の中で群を抜いている

人間という枠にいれてもいいのかと疑うほどに

 

体が勝手に動き出す

彼女の手を取り自分の方に強引に持ってくる

目の前に彼女の顔が一杯に映る

彼女は何が起きているのか分からないのかポカンとした顔をしていた

やはり美しい

 

まるでこれまで欠けていたピースが嵌ったかのような感覚

「西木野 宗一郎」という人間がやっと完成したかのような感覚

 

やっと見つけられた

 

やっと完成した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遺伝子レベルで一目惚れです

 結婚を前提に付き合ってください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ふぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぇ?だと………?

なんだこの天使は

なんだこの女神は

可愛い過ぎる美し過ぎる

結婚してくださいお願いします

 

「あ、え………あのぉ……、それは………」

 

顔を真っ赤にさせながら焦り始める

俺は表情を崩さないまま彼女の返答を待つ

ここで言い訳のようにグダグダ言っても仕方が無い

ドンと構えてこそ男だ

 

 

『--------------現在、車両内で暴力事件が起きた為出発を見合わせております

 申し訳御座いませんが出発はもうしばらくお待ち下さい

 繰り返します、現在------------』

 

 

うるさい車内放送

人が口説いているのだ、静かにしろ

まったく迷惑な

誰か知らんが覚えていろ

 

「その……私、貴方の事をよく知らないですし………

 えっと………それで………」

「………………………」

 

「お友達からで、ということで………良いですか?」

 

ここから「西木野 宗一郎」という男の人生の春が始まった

これまでにないとても幸せで充実にした日々が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからというもの

色々な事があった

あの女性『辰宮 楓』を半年近く掛けて口説き続けた

必死に彼女の前で格好付けようと試合に呼んだり、食事になんども誘ったりした

いつも喜んでくれるがいざ答えを聞いてみると顔を真っ赤にしてはぐらかされてしまう

いや、嫌われてる訳じゃないよ?

ただ照れているだけだよ?

絶対………いや、きっと………その筈

 

だがこのままいってしまってはグダグダのまま自然消滅してしまう

男には時に強引さも必要だとよく聞く

ならやってやろうと行動に移った

その年の12月

出会ってから約8ヶ月程度の日

俺の日本タイトルマッチが始まった

相手が屈強な男だったがそんな事はどうでもいい

眼中にすらない

俺の本当の対戦相手はお前の様なムサい男ではなく、下界に舞い降りた天使の様な女性『辰宮 楓』なのだから

今日この日で己の腰にベルトを巻いて公衆の面前で告白する

この約一年の試合に終わりを告げさせるのだ

 

 

 

 

衝撃的な告白から数年後

俺『西木野 宗一郎』と、彼女『西木野 楓』の2人のもとに小さな天使が舞い降りた

まぁ現実的に言えば子が生まれたのだ

名前は『西木野真姫』という

それがまた美しく、綺麗で可愛いのだ

彼女に瓜二つとも言える程に

真姫の前に一人男子が生まれたが………まぁその話は置いておこう

 

可愛い子は目に入れても痛くない

あれは嘘だった

あんな言葉を信じてはいけない

実際真姫のあまりの可愛さに興奮して彼女の手を自分の目に突っ込んだが失明をしかけた

その時初めて楓にマジギレされた

………反省

 

 

 

そして出会ってから約10年

世界チャンピオンの座を手に入れた俺はそのまま引退

父の病院の跡を継ぐ為に勉強の日々が始まった

色々とキツイこともあったが家に帰ってしまえばそんなものは消し飛んだ

まだ早い話だが長男の息子には俺の跡継ぎになってもらう事になるだろう

だが真姫は違う

彼女には家の事など気にせずのびのびと自由に生きて貰いたい

そう思い甘えに甘えさせた

 

 

 

母親に怒られていたら庇い

 

欲しいものがあったら買ってやり

 

遊びたいと言われたら仕事を即行で終わらせたり投げ出したりして全力で付き合い

 

困ったら事があったら彼女の見えないところで原因へ実力行使

 

 

 

真姫は想像通り美しく、可愛く、綺麗に育ってくれた

本当に母さんに良く似ている

若干日本語が片言なのは何故なのか分からないが………まぁそれも一個の可愛い個性だ

 

 

俺は彼女に愛情を注ぎ込んだ

それはもう全身全霊でだ

 

 

 

 

 

その結果

 

 

 

 

 

 

 

幼児

 

 

 

 

 

「まき~、ぱぱのおよめさんになる~」

 

「そうだね~」

 

 

 

 

 

小学生

 

 

 

 

 

「マキね、しょうらいはパパのおよめさんになりたい!」

 

「嬉しいことを言うじゃないか」

 

 

 

 

 

 

中学生

 

 

 

 

 

 

 

「あのねパパ……大人になったら、私をお嫁さんに………」

 

「ぇ………いや、あの」

 

 

 

 

 

高校生

 

 

 

 

 

 

「パパ、卒業したら私と結婚してくれるのよね?

 そういう約束だったでしょ?」

 

「………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………何故こうなった?

 

この未来は流石に想像できなかった

 

寿命をまっとうした「■■ ■■」もビックリだ

 

 

 

 

こうして幸せでありながら俺と楓は極度のファーザー・コンプレックスとなった真姫に頭を抱える日々が始まったのだ

 

 

 

 

 

 




兄はただ単に真姫を家の跡継ぎとかのしがらみから開放したいだけであって他意はありません

名前すら考えておりません


一発ネタに付き合ってもらってありがとう御座いました


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第0話 出会い  「辰宮 楓」視点

それなりに要望があったのでテキトーに続けていこうかと思います

不定期なので首をキリンの如く伸ばしてお待ち下さい


電車に乗るんじゃなかった

 

「く………んッ」

 

まさか私が痴漢に会うなんて思わなかった

これも友達が態々都心にまで行って買い物しようとか言うからだ

責任転嫁もいいところだが口には出さないので欲しい

そんな私の気も知らずに痴漢をしている男の手はいやらしくお尻を触ってくる

ここで周りに言って被害妄想の酷い女性と思われたくない

ここは我慢して次の駅で降りよう

許されることではないけど兎に角この状況から脱したい

 

「おい」

 

少し怖い声の男の人の声が聞こえた

話を掛けられたのは私なのだろうか

考えてから後ろを向くと痴漢をしていたであろう中年の男性の肩を一人の男性が掴んでいた

大きい

身長が私の頭一個分近く大きい

180以上あるのではないだろうか

 

その男性は拳を自分の顔の横にまで持っていき

 

「何だ------------」

「ふんッ!!」

「ねぐぺッ!!!」

 

中年男性の顔面へ拳を振り下ろした

そして中年男性はそのまま窓ガラスへ---------まって、窓ガラスはそんなに簡単にヒビ割れるものなの?

これは殴った彼が凄いのか、単純に窓ガラスの強度が弱いのか

きっと前者だろう

 

「あ、ヤベ」

 

彼も同じように窓ガラスのヒビに気づいたのかすぐに拳を引き戻した

そして軽く手首をぶらぶらし始めた

 

「意外に脆いな

 窓ガラス……」

 

いやいやいや!

脆くないですよ!

JRはそんな安物使ってませんって!

っていうか殴られた男の人確実に鼻の骨折れてるんですけど

 

「あ」

 

気の抜けた声を出すと男性はキョロキョロと周りの見始める

どうしたのだろうか?

あ、それよりお礼を言わないと

流石にお礼言わないのは非礼過ぎる

倒れてしまった中年男性の鼻を気にしながらも男の人に声を掛けようとする

 

「………ぁの」

「はぁ……」

 

男性は私の声に反応せずに周りの人がどいて出来たドアへの道を歩き出す

あれ聞こえてない?

私そこまで人に、ましてや男の人に話しかけるのなんて得意じゃないから声が小さくなってしまった

若干焦り始めた私を知らずに男性はタイミングよく開いたドアを出ていってしまった

 

「ま、まって……っ」

 

あぁ駄目だ

手を伸ばしても届かない

ここで諦めて礼もせずにおしまいになんてして良いはずが無い

意を決して私は大声を張り上げる

 

「ま、待ってください!!」

 

私の声が届いたのか男性はピタッと立ち止まった

良かった、これでお礼を---------

って何故か早歩きで人ごみの中に紛れようとしてるッ!!

 

「ま、待って!!待ってくださいッ!!」

 

もう一回出したら二回目も三回目も変わらない

必死に声を出して彼に近づこうとする

っていうか早い!

本当に早いッ!!

一歩一歩が大きすぎる!

あっちは早歩きなのだろうがこっちは全力で走っていく

普段しない運動をしたせいか息切れがすぐ起きる

それを我慢してやっと彼の裾を掴むことに成功した

 

「はぁ……はぁ……ッ!」

 

声を出そうにも息切れが酷くてまともに喋れない

膝に手を添えて肩で息をする

なんで私は駅にまで来て息切れなんてをしているのだろうか………

 

「な、なんで逃げるんですか……ッ!!」

「いや、お巡りさんにお世話になりたくないもので………」

「だからって話くらいは聞いてください……ッ!!」

 

あんな堂々と拳を振るっといてそんな臆病な事をいっているのだろうか

まぁ私を助けてくれる為だったから単なる暴力ではないけど………

やっと息を整えることが出来たのですっと立ち上がる

身長の違いで下から見上げることになった

 

「ッ!!!!!!」

 

え、何?

私今なにか変なところでもあった?

メイクは特につけてないから顔が悲惨になっていることは無いと思うんだけど………

服?スカートかな?

安物ではないけど学生の身分で買える位の物だ

都心の人たちにとっては田舎物みたいな扱いになってしまうのだろうか………

あ、やだ

そう考えてしまったことで真実じゃないとしても急に恥ずかしくなってきた!

こんなことならちゃんとしたもの買って着とけば良かった!!

思わずスカートの先を両手でギュッと握る

 

すると男性が肩に手を掛けて来た

そしてそのまま強引に引き寄せていく

え、何?

今度は何?

彼は何がしたいの?

意味の分からない彼の行動に戸惑いながらも目の前の彼の顔を見る

 

とても整っている顔だ

10人に聞けば10人がそう答えるだろうと思えるほどに

これまではっきりと見たわけではなかったので分からなかったがそう感じた

少し目つきはツリ目の為悪いとも言えるが、それも彼の良さを引き立たせる要因の一つになる

体を鍛えているのか半袖から出ている腕には男らしい浮き上がる血管と見るだけで分かる大きな筋肉が付いていた

まさかの相手にポカンとしてしまった

そして彼は口を開いて言った

 

 

「遺伝子レベルで一目惚れです

 結婚を前提に付き合ってください」

 

 

「………ふぇ?」

 

 

 

 

……………………………………あ、駄目だ。あまりにも想定外の言葉に情けない声と共に一瞬意識がクリアになってしまった

え、ちょ、ちょっと待って

いきなり?

初対面相手にそんな小っ恥ずかしいこと言うの?

顔が整っているだけにあまりの男らしさに思わず顔が赤くなってしまう

駄目だ

何か言わないと

ここで言わないと失礼だ、助けてまで貰ったのに

頭がまだ整理されていない状況でほぼ無意識に言葉を喋る

 

 

「その……私、貴方の事をよく知らないですし………

 えっと………それで………」

「………………………」

 

「お友達からで、ということで………良いですか?」

 

 

これが私、『辰宮 楓』

後の『西木野 楓』と『西木野 宗一郎』の最初の出会いだった

 

 

 




キリ良くしたかったので短くなってしまいました
結婚までは真姫ママ視点でいこうと思います


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第1話 私はとても有名な人に告白されたらしい

高卒の私には大学の事も医大の事も分からないので指摘ありましたら教えて下さい


東京都内にある医科大学

二限終了のチャイムが鳴り響き

私、『辰宮 楓』は女友達3人でいつものように学食で昼食を取り始める

 

「はぁ………」

 

昨日の事を思い出し思わずため息を漏らしてしまう

そんな私を2人の友人

『忍崎紫信』おしざき しのぶ、『大獄和泉』おおたけ いずみが珍しそうな目を向けて声を掛けてくる

紫信ちゃんはいつも笑顔で少し男勝りな女の子。ついでに頭はちょっと残念だ

和泉ちゃんはファッションに詳しくて今時?の女の子。ついでに頭は何故か良い

 

「どったの

 ため息なんて珍しい」

「本当に珍しいね

 楓がため息って」

 

私のため息一つはそれほどにまで珍しいのだろうか

これでも今をときめく華の女子大学生

悩みの一つくらいはある

 

「だって楓がため息なんて吐くの数ヶ月に一回程度でしょ?」

「む、私だって色々あるんだよ?」

「色々あってもため息吐く前に甘いもの食べて機嫌直るからね

 どんだけリセットしやすいなのよ、アンタの頭の中」

「あんまり甘いもの食べてるとまた太るよ~」

「ふ、太らないよ!!」

 

太らない

太らないはず

絶対

いや、きっと

そう自分に言い聞かせながらテーブルに置かれたショートケーキをフォークで切り取り口に運ぶ

あぁ甘い、美味しい

人生もこういう風に甘く、上手くいけばいいのに………

はっ!今の我ながら巧い!

 

「……また下らない事考えてたね、アンタ」

「く、下らなくないよ!」

「つまり何かは考えてたってことでしょ?」

「少し拗ねた顔でケーキ食べてたのに口に食べて少し考え込んで『はッ!?』みたいに閃いたみたいな表情をしたら誰でも分かるよ」

「楓は天然なんだから気をつけなよ?

 変な男に捕まったりとか」

「はぅ…ッ!!」

 

男という発言に思わず昨日の事を思い出して反応してしまう

若干涙目になってしまった

やはり私は変な男に会いやすいのだろうか………

まぁ未だに年齢=彼氏いない暦だから過去の話は何一つ無いのだろうけど

 

告白はされたことは幾らかあるが皆断っている

男性にはどうしても恐怖心を抱いてしまうからだ

こらまで何人もの女友達のそういった話を聞いてきたが羨ましいという感情よりも怖いという感情が勝ってしまう

やれ強引だの、やれ無理矢理だの、やれ苦しいだの

そんな恐ろしい事をしてくる相手をつくろうとは思えない

 

「………あんたのそれ

 天然だから凄いよ」

「現実に居るんだね

 こういう娘」

「これで可愛くなかったら思わずしばき倒してたところだよ」

「………?」

「……それで今までよく騙されて来なかったね」

「それは、その……男の人ってなんか………怖いし」

「どんだけ発想がお嬢様なのさ

 そんな娘、100人に1人いるかどうかも分からないよ」

「だ、だって皆の経験談聞いたら怖くもなるよッ!

 いつも優しくないとか痛いとかいってるしッ!!」

 

あまりの責めに思わず大声で反論してしまう

そして大声を上げてしまった事で周りの何人かが此方を不思議そうな眼で見てきていた

それに気づいた私は顔を真っ赤にしてバッとすぐに椅子に座った

良かった、学食が騒がしくて

これで授業みたいに静かな所だったらとんでもない恥を掻くところだった

って、目の前の2人はニヤニヤと楽しそうにこっちを見て笑ってるし

この2人、私を弄んで楽しんでいるな

いつか私の溢れる知謀で一泡吹かせてみせるんだから

 

「今度はどんな下らないこと考えてるか知らないけど止めときなよ

 天然のアンタがそのドヤ顔で考えた事なんて大抵空回りして終わりになるだけなんだから」

 

なぜバレた

そこまで私は分かりやすいのだろうか

その事に付いて問い詰めたいところだが本題に入ろう

 

「あのさ……相談したい事があるんだけど………」

「相談?」

「お、何々?

 まさか恋愛相談!?」

「遠からず近からず……かな?」

「……え、マジで?

 冗談で言ったつもりだったんだけど」

「ついにこの時が楓にも来たか……」

 

何故か和泉ちゃんは明後日の方向を向いて昔を懐かしむような表情をしている

あまり分かってはいないがその表情は同い年の私の事でつくるものではないという事だけは分かった

彼女がそんな表情をするのは彼女なりの理由があるのだろう

そんな彼女を無視して話を続ける

 

「昨日さ、都心の方にショッピング行ったでしょ?」

「あぁ~行ったね

 いやぁいいもの一杯買えてよかったよ」

「アンタはスポーツ用具買っただけでしょうが

 何で態々都心にまでスポーツ用品店に行くのさ」

「いやぁ流石都心だね

 品揃えはそこらの比じゃないよ」

「だからってワン○ーコアは無いでしょワンダー○アは

 女子大生が買う買い物じゃないよ」

「総長もビックリなワ○ダーコアだからね

 鉄球にぶっ飛ばされても無事だったし」

「宇梶剛○を総長と呼ぶのは止めなさい」

 

何故か私の相談事はワンダ○コアと宇○剛士に消し潰されていた

ちょっとショック

 

「あの……相談は………」

「あぁゴメンゴメン話逸れちゃったね

 ついワン○ーコアと宇梶○士の話を」

「ちょっと脳筋は黙ってな」

「じゃぁ続けるよ……?」

「あぁ」

「うん」

 

今度は身をこちらに乗り出して聞き始める

なんとか修正は出来たらしい

また意を決して話を始める

 

「その……私、電車に乗って最後の一人になったでしょ?」

「なっちゃったね」

「それで、そのすぐ後に……その、痴漢に会っちゃって………」

 

『はぁぁぁぁぁッ!!!??』

 

「ひぅ…ッ!?」

 

私の痴漢発言に2人が大声を上げた

やめて!

ちょっと止めて!

回り見てる!!

さっきより多い人に見られてるから!!

 

「ア、アンタ大丈夫だったの!?

 なななな、何されたの!?

 まさか最後まで……ッ!?」

「最後までって……ッ!?」

「ま、待って待って!!

 されてない!されてないから!!

 ちょっとお尻触られたくらいだから!!」

「尻ぃッ!?

 クッソ誰だ!!

 楓の大きくて柔らかい安産型の尻を撫で回したのは!!」

「楓はお尻は勿論!

 唇すらまだ穢れを知らないって言うのに!!」

「なななな、何言ってるのッ!?

 ちょっとホントに止めて!!

 周りの人見てるから!!!」

 

もう止めてよ!

本当に周りの人がこっち見てるから!!

しかも男の人何人か頬若干赤らめて私のお尻見て『大きいんだ……』みたいな視線を送ってきてるから

 

「安心しろ、楓!」

「な、何を……?」

「楓は着やせするタイプだって知っているからおっぱいも実は大きいことも知っている!」

 

「もうやだぁぁぁぁぁあッ!!!!」

 

皆の視線はお尻と胸の二つに別れてた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう学食でご飯食べられないよぉ……」

「ごめんごめん

 ちょっとノリにノっちゃってさ」

「だって楓ってイジりやすいんだもん」

 

次の3限の授業の為に教室で待機することにした

私は先程の恥ずかしい事を思い出しながら机に顔を伏せて悶えていた

そんな私に申し訳なさそうに謝罪をしてくる

……若干笑っていると感じるのは気のせいだろうか?

後、紫信ちゃんは謝ってないよね?

ねぇ?

 

「それで、痴漢がどうかしたの?」

「今無事にここに居るって事は大丈夫だったてことでしょ?」

「うん……その、触られてる時にね男の人が助けてくれたんだ」

「え、何?

 いきなりドラマ展開?」

「昨日T○UTAYAにDVDでも借りたの?」

「違うよ!本当に起きたの!!」

「どうどうどう、落ち着いて落ち着いて」

「早く本題に入らせてよ!!」

 

もう本題が言い終わるまでツッコミや反応をするのは止めよう

話がまったくと言っていい程に進まない

これじゃぁ痴漢されたという不幸自慢をしているだけだ

 

「それでその男の人にね……その、あの…………をされたの」

「え、何されたって?

 何?ナニ?………え、ナニ?痴漢?」

「痴漢を助けた娘に痴漢するってどんだけ上級者なのよ」

「ち、違う!違う!!

 痴漢じゃなくってその……くをされたの……」

「声小さいよ、聞こえないって」

 

駄目だ

いざ言おうとすると顔が熱くなって紅くなるのが分かる

 

「言うよ……?」

「だから言ってよ」

「ちゃんと聞いてよ……?」

「だったらちゃんと言えって」

 

酷い

救いの手の様なものは差し伸べられないのだろうか

ただ返ってくるのは催促の言葉だけ

もう少し優しさが欲しい

しょうがない、意を決して話そう

 

「こっ、こここここ……ッ!」

 

「……………………」

 

「こく、こくッこくは……ッ!!」

 

「……………………」

 

 

 

 

 

「告白……ッ!」

 

 

 

 

 

やった

言い切った

言い切ったよ、私

今年一番の頑張りだよ

昔マクド○ルドのバイトでお客さんから『スマイルお持ち帰りで』と言われた時の対応並みに頑張ったよ

 

『おおぉぉぉ~っ』

 

私の頑張りが通じたのか2人から拍手喝采が生まれた

思わずドヤ顔を作ってしまた

しかし拍手していた2人だが何故かいきなり固まった

 

「………え?」

 

「………え?」

 

「………………え?」

 

その『………え?』とは何に対しての『………え?』なのだろうか

思わず私も『………………え?』で返してしまった

意味が伝わらなかったのだろうか?

 

「え、告白?

 恋愛の?」

「そ、そうだよ?」

「犯罪を犯した告白じゃなくて?」

「ち、違うよッ!」

 

まったくもうッ!と頬を膨らましていると和泉ちゃんがいきなり頬を両手で押さえて空気を抜いてきた

そしてそのまま頬を両側から引っ張られた

痛い痛い痛い

 

「ふぁにふるの~(何するの~)」

「一々行動が可愛いんだよお前は!

 天然度数が高過ぎるんだよ!!」

「いふぁいよ~(痛いよ~)」

 

 

 

「後ッ!!」

 

 

その言葉の瞬間、手に入れる力の威力が上がった

痛い痛い痛いッ!!!

この威力は遊びのソレじゃないよね!?

 

 

「どこが『遠からず近からず』だ!

 近いどころかまさしくそれそのものじゃないか!!

 辞書で赤線引いて来いッ!!」

 

「いふぁぁぁあいッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛ぁいよ、和泉ちゃぁぁん………」

「自業自得だよ」

「まぁまぁまぁ」

 

痛みが走り続ける頬を両手で擦る

そんな私を見て和泉ちゃんは然も当然かのように言葉を返してくる

解せない

そんな2人を紫信ちゃんが笑いながら宥めてくれる

 

「それで?

 楓の悩みはその返事をどうしたら良いか分からないから一緒に考えて欲しいって事?」

「うん………

 さっき紫信ちゃんが言ったみたいに変な、その……男の人?に当たったらどうしようかなって………

 私、男の人と話すこと自体あんまりないから分からないんだ」

「まぁなぁ~

 痴漢助けてくれるからそれなりに良いところはあるんだろうけど楓を助けたっていうアドバンテージを使って無理に迫ってくるってのも考えられるかな

 それともそれを見越して助けた可能性だってあるし」

「うぅぅ………」

「でも結局の所、その人見てみないと分からないからなぁ~

 本当に厚意でやってくれたのかもしれないし」

「確かに、出来ることなら見てみたい

 欲を言うなら話してみたい、かな?」

「そうだよね………」

 

会わせるかぁ………

でも、それってあの人から見てどうなんだろう

やっぱり疑い掛かってる様であんまり良く思われないんじゃないかな………

 

そんな風に落ち込んでいる私を見ながら二人は何故かニヤニヤとし始めた

何かあるのだろうか?

 

「それで。

 その人カッコよかった?

 イケメン?」

「イ、イケメン………?」

「やっぱり相手を見定めるなら顔からでしょ

 そこから次は内面的な?」

「で、どうなの?

 その答えによっては私達のモチベーションも変わるからさ」

「私はそこまで外見は気にしないけど………」

「まぁまぁまぁ

 客観的にだけで良いからさ」

 

何故か顔の話題に入った途端グイグイ来始めた二人

怖い

怖いよ

目が若干血走ってるから

………顔か、そう思いながら昨日の記憶を思い返す

印象的だったので結構細部まで覚えている

 

「結構カッコ良いと思うよ?

 運動帰りだったらしいから質素な格好だったけど」

「運動………?

 何かやってるの?

 もしかして社会人?」

「ううん

 同い年って言ってたし都心の医大に在籍してるんだって

 ボクシングのグローブ持ってたから多分クラブ活動か何かやってると思うよ」

「うっわ、玉の輿じゃん

 都心の医大にいる人間なんて金持ちしか居ないし」

「別にお金持ちかどうかは問題じゃないんだけど………」

「医大名分かる?」

「うん、教えて貰ったから」

 

携帯を取り出した和泉ちゃんに私は医大の名前を伝えた

その名前は偏差値がとても高いことで有名な所だ

 

「え、マジ?

 ここって全国の医大のほぼトップじゃん」

「これまた凄いね………」

 

そうブツブツ言いながら和泉ちゃんはHPを開きサークルの検索を始める

紫信ちゃんもそれを私の反対側から覗き込むような形になった

しかしサークル一覧表の部分で和泉ちゃんの手が止まった

 

「あれ、ボクシング部って無いじゃん」

「え?本当?」

「………もしかして嘘つかれたんじゃないよね?」

「あ、あの人はそんな事しないと思う………」

「でもここに無いって事はなぁ」

 

手詰まりになってしまった私達

あそこまで堂々と告白してきた人間がそんな嘘をつくとは思えない

何とかして手がかりを手に入れようと考え込む

そこで和泉ちゃんが首を掻きながら聞いてきた

 

「そうだ、楓

 その人の名前とか分かる?

 大会とかで小さくても一つくらい功績残してればネットで引っ掛かるかも」

「はッ!

 そうだね

 ちょっと待ってて

 連絡先交換したから」

 

確かに確立は高い

それに拳一つで窓ガラスにヒビを簡単に入れてしまう程の彼だ

一つや二つ功績をたてていても何ら不思議は無い

和泉ちゃんの言葉を聞いてバックに入れていた携帯を探り始める

 

「これで見つからなかったら直接会うしかないかなぁ」

「一番簡単なのは楓に会わさせて私達は影でこっそりと見てるかだな」

「それはそれで楽しそうだね~」

「………あ、あった!」

 

携帯を開いて電話帳の中から彼の名前を見つけた

いやぁ~、やっぱり私の携帯だとすぐに見つかるね

連絡先に入ってる男の人なんてお父さんと彼だけだし

 

「これ、この人」

「どれどれ」

「この宇梶剛○って人?」

「そんな人、入ってないよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この『西木野 宗一郎』って人ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が彼の名前を言った瞬間2人が固まった

え、何?

どうかした?

私何かマズイこと言ったかな………?

 

「………ぇ?」

 

「にしき、の?」

 

まるで信じられない様な顔をして此方を見てくる

どうしたらいいか分からないので取り合えず頷いてみる

もしかして2人の知り合いだったのかな

それだと簡単で良いなぁ

2人を仲介役として気を楽にして話せるし

そう考えていると和泉ちゃんが私の肩をバッと掴んだ来た

痛いッ

 

「あ、ああアンタ!

 あの『西木野 宗一郎』に告白されたのッッ!!!?」

「あの?ってのは分からないけど……『西木野 宗一郎』さんにその、告白されたよ……?」

 

何故だか和泉ちゃんが情緒不安定になってきた

いつも冷静な彼女にしたら珍しい

何故こんな事になっているかは分からないが

 

「ボクシング………医大………

 確かにあの人の条件的にピッタリ………

 いや、でも………」

 

紫信ちゃんは何故か私の携帯を睨みながらブツブツと言っている

そこまで2人にとって重要人物か何かだったのだろうか?

っていうか和泉ちゃんのあまりの大声に周りの人が凄い見てるんだけど

ちょ、声量下げて!

 

「………もしかして知り合い?」

「バッ!知り合いな訳無いでしょ!?

 本当にこんな有名な人知らないの!?」

「そ、そんなに有名なの……?」

「東京の医大生なら知ってて当たり前!

 聞いたこと無い!?」

 

「な、何を?」

 

 

「東京の医大で『神の子』とまで言われている『西木野 宗一郎』って人の事ッ!!」

 

 

 

 

 

私はとても有名な人に告白されたらしい

 

 

 

 

 

 

 




真姫ママは若干アホの子になりました


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第2話 2つの天才の称号

前回の話を投稿後、皆様から様々な感想や指摘を頂きました

純粋に「面白かったよ!」というとても励みとなり私の原動力となる感想

言葉の使い方の間違い、『暴動』など訂正
『神童』→『天才』→『神の子』に変更
これは本当に申し訳御座いません

主人公を含めキャラの変更に関して
これは我慢してくださいとしかいえません
私の書きやすいキャラであり、一人一人の意見を採用しているともう最新話など書いている暇はありません
アホの子が医大に居ると可笑しいと言われてもそこは流してください
全員インテリキャラで書いても面白みを私は見出すことができません

題名が『ウチの真姫がファーザー・コンプレックスを患ってしまった件について』とか言ってるくせにオリキャラの恋愛物を見せられても困る
そう言われても此方には此方の手順というものがあります
そんないきなり設定だけ書いていきなり父親と母親を出して真姫ちゃんをデレさせても私はなんの楽しみもありません
キャラを固定させる為にはそれに至るまでの話が必要不可欠だと私は思います

後、一番多かったのは暴力によるプロ剥奪
皆さん、これはおふざけの一発ネタを続けているだけでそこまで深く考えないで下さい
そんなリアルな法律を持ってこられても困ります
あくまでギャグネタを主体にした世界です
全てをガチで深く考えたらもうこの小説は矛盾だらけです
ミドル級の世界チャンピオンになるまで全戦全勝の人間なんてそうそう居るわけありません
まぁ竹原慎二さんがいるけど………


まとめると!!
この小説に現実世界を当てはめないで下さい!!
楽しく書いているだけですから!!





東京都に建造されたとある医大

偏差値70中盤という全国の医大の中ではトップというエリートの集まり

70という偏差値を具体的に表してみれば全体の2.275%。

100人に2人という計算となる

とは言ってもそれは適当な人間を集めての100人ではない

平等的な人選をした結果の100人だ

そこ等の100人なら1人いるかどうかも分からない

そんなレベルが偏差値になっている医大がどれだけ入学することすら困難なのかは分かっていただけるだろうか

そしてそれと同時に15000人近い在学生を抱えているマンモス大学でもある

つまりその大人数の頂点に立つ人間は『天才』と言われる

 

 

ミドル級

契約ウェートは、154 - 160ポンド (69.853 - 72.575kg)

全17階級中5番目に重い階級である

世界的に多くの人間、特にボクシングが盛んな欧米出身者がこの階級に適した骨格と身長を持つため、全階級中最も新陳代謝の激しい階級の一つとされる

世界を狙う場合相手となるのは殆どが外国人となる為、生まれ持つバネが他に比べそこまで優秀でない日本人では皆が避ける階級だ

これまで80人近い王者が居たが、日本人はその内のたった一人だ

故にそのたった一人の日本人も、そしてこれから先に王者になった日本人も『天才』と言われる

 

 

 

『天才』と『天才』という同じ言葉でありながら違う分類での称号

もし仮にこの二つの称号を一人の人間が持つとするならばその人間は同じ『天才』という称号の枠に収まりきるだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かった?

 『西木野 宗一郎』って人がどれだけ凄いか」

「有名人だったんだ………本当にネットに載ってる」

 

私の手には紫信ちゃんの携帯が握られていた

画面には昨日であったばかりの彼の姿がいくつも映っていた

上半身裸でボクシングパンツとグローブを身につけて闘っている写真が殆どだった

 

「凄いね……

 学生の内に『神の子』って凄いあだ名貰うだなんて」

「………こういう時は二つ名って言うんだよ」

 

紫信ちゃんの熱説を聞いた私達

そして考えた事をそのまま言ったら呆れられてしまった

これからは少し考えて発言をした方がいいのかもしれない

それにしても『神の子』か………

一瞬、宗教か何かかと思ったけど違うらしい

多分このことも言えば更に呆れられるだろうから口に出しては言わない

 

「え、………まさか聞いたこと無いの?」

「聞いたことあるような無いような………むぅ~」

「本当に時々だけどテレビでも出るし、雑誌にも載ったことあるんだよ?

 まぁ楓はボクシングとか見ないだろうけどね」

「でも医大生なら噂で聞いた事ぐらいあると思うんだけどね」

「私が持ってる噂の知識の大半って和泉ちゃんと紫信ちゃん2人からのやつだから2人が話しに出さないと知らなくても可笑しくないよ?」

「楓ってサークルとかにも入ってないしね

 それに私達以外にここで話しかけたりしないでしょ?」

「むッ」

 

2人とも私のこれまでの人生で学んだコミュニケイション能力を舐めているな

ここは訂正せねばならない

私の威厳に関わる

 

「私だって色々な人と話したりするよ?」

「例えば?」

「例えば?それは………その、えっと………ね?」

「ね?って何

 ね?って何さ」

「一人位考えてから反論しなよ」

「あ!ほら教-----------」

「ドヤ顔のとこ悪いけど教授とか教師関係は無しだよ

 そんな話さないといけない相手なんて入れて良いわけないでしょ」

「じゅぅ………ごめんなさい………」

 

駄目だった

和泉ちゃんには勝てなかったよ…

だって私みたいな暗い女子が話しかけても相手に迷惑だろうし

私だってそれで嫌われたら嫌だし

そしてこっちが「教授」という前に「教授」とピンポイントに言われてしまった

そんなに私の思考は読みやすいのか甚だ疑問だ

私は卒業までの和泉ちゃんに勝てる事が一度でもあるのだろうか?

 

「でもさ紫信、さっきの「天才」って話で大学のトップで「天才」ってのは分かるけど今考えてみればあの人ってボクシングのそのミドル級?とうかいうのでまだ世界取った訳じゃないんでしょ?

 世界取って呼ばれるなら分かるけどなんでもう呼ばれてるの?」

「スポーツはスポーツでもボクシングの事は私もそこまで深くは知らないけど時間の問題ってことらしいよ?

 世界に行くのにも色々と段階を踏まなきゃいけないんだって

 で、『西木野 宗一郎』って人は何年か後には段階を踏み終えて世界を取っても可笑しくないって言われてるの

 それに後2回勝てば日本チャンピオンだって聞いたよ」

「私と同い年でもうそんなに期待されてるんだ、あの人………」

 

後二試合に勝てば日本王座

数年後には世界王座とまで言われる実力

なんだろう、そこまで実感的なものは無いけどあの人が私達みたいな一般人とは違うって事が多少なりとも分かってきた

きっと子供の頃から別世界の様な人生を歩んできたんだろうなぁ

それに比べて私は………

 

「なんでそんな人が私なんかに告白したんだろう………」

「………なんでいきなり落ち込むの

 私なんて告られたら即行でOKだして今頃大学タコって家で歓喜の舞踊ってた所なのに

 もしくは周りの人間に自慢話」

「アンタの筋肉で出来た脳みそと楓の天然でゆるふわな脳みそを一緒にするんじゃないよ

 どうせ分からないことばかりで不安だとか、私と彼じゃ釣り合わないとか考えてるんじゃないの?」

「それは………うん」

 

言わなくても自分の考えている事を分かってくれる事が今回に限って有難い

よくスポーツ選手の人って結婚相手はアナウンサーとかモデルのとかもの凄い美人さんを選ぶ傾向がある

若いうちにそこまで期待されている人ならそれ位の事は出来ても不思議ではない

だが彼はそれをせずに一般人である私なんかを選んだ

私なんて本当にそこ等に居る様な普通の女子学生だ

まぁ医大っていうのは多少珍しいかもしれないけど

この医大に入学する為にそれ相応の努力はしたが………

本当に何故私なのだろう

 

「でも意外だよね

 あの『神の子』が告白するって」

「本当にな

 そういうのは30代に入ってからとばかり思っていた」

「あぁそれ分かる~」

「意外?」

 

告白が意外、とはどういう事だろうか

私位の年代の子はよく恋愛に力を入れ込む子が多い

実際目の前の2人だって何人かの男子と付き合ってきた(現在は居ないらしいが………)

 

「『西木野 宗一郎』って人

 イケメンで頭脳明晰、おまけに学生の内でプロボクサーで成績も凄いからよく女子学生から告白されるんだって

 まぁ身近に居る同い年で途轍もない優良物件だから可笑しくないよ、それは

 実際、追っかけみたいな子も居るくらいだし」

「追っかけって………」

「でもその告白全部断ってるんだって

 モデルみたいな凄い美人な子でも、どんな子でも

 噂によるとテレビにも出てる有名人からも告白された事があるって話だよ?」

「ゆ、有名人からも?

 うわぁ~……何か凄いね」

「噂だよ噂

 実際どうかなんて本人に聞かなきゃ分からないよ」

「一時期ホモじゃないかって話は出たけど

 あまりにも無反応過ぎて」

「そうそう

 それで女子何人かが本気にして帰り道とか後追ったりしたとか有名だよね」

「まぁ一応何も無かったって結果だったらしいけど」

「………楓、アンタどうしたのさ」

「ホ、ホモって………同性でッ」

 

あれだよね

ホモってことは男性同士でその……エッチな事をするんだよね

あの格好良い人が他の人と………

美少年の人とか体の大きい人とかと………

キスとか…もっと色々と………

 

「楓?」

「----------------ッ!!!」

「ど、どうしたの楓

 いきなりビクって驚いたりして………」

「ひゃ、ひゃい!?

 な、何でもないよ!?

 キスとか色々とか何でもないよッ!?」

「………おい、この天然ムッツリ」

「む、ムッツリ?

 いいいい和泉ちゃんが何を言ってるか分からないんだけど!」

「どうせ大方あの人と他の男が組んず解れずズッコンバッコンやってる事を想像してたんでしょ

 想像力豊かだね、ムッツリ楓さんは」

「そ、そこまで深くまで考えてないよ!!」

「墓穴掘りお疲れ様で~す」

「はッ!?ゆ、誘導尋問とは卑怯だよ!!」

「自ら墓穴に突撃かました人間が何言ってんのさ」

 

考えを先読みして私があられもない言葉を言うように仕向けるなんて

流石和泉ちゃん、半端じゃない

さっきの発言は本心じゃなくて誘導尋問にやられて言わされてしまったものだ

決して本心の言葉なんかじゃない

………本当だよ?

 

「そのホモって話も楓に告白したって事で裏取れたじゃん

 これで安心して恋愛出来るよ」

「『遺伝子レベルで一目惚れです

 結婚を前提に付き合ってください』だっけ?

 いやぁやっぱり『神の子』は漢らしいね

 そんな事を初っ端からぶっ放してきたんだから」

「いきなり結婚前提とかどれだけ楓に惚れ込んだのかって話だよ」

「うぅ~………」

 

彼に言われた台詞を聞いただけで昨日の光景が蘇って来る

私を助けてくれた男性が真剣な表情で私なんかに言ってくれた告白

少し強引気味で芯が通った言い方

和泉ちゃんが言った通り、とても漢らしくてカッコいいと感じた

そう考えただけで血液が頭まで上ってきてとても紅く熱く、恥ずかしくなってきた

 

「それで、連絡先貰って何か連絡したの?」

「………まだ、何も」

「はぁぁあ?」

 

紫信ちゃんの問いに少し申し訳ないかのように答えると凄まじく呆れた表情で私を見てくる和泉ちゃん

止めて!いつも優しくしてくれる和泉ちゃんからのその反応は結構傷つくよ!

だってしょうがないよ!!

ただでさえ男性が苦手な私が、その日会って助けてくれて告白してくれた男性にそんな積極的な行動を取れる訳ないじゃん!?

助けてくれた感謝と告白された恥じらいやら何やらが折り重なって凄まじい事になってるんだから!

 

「そこはね楓、『助けてくれてありがとう御座いました!お礼とは言っては何ですけど今度良かったらお食事にでも行きませんか?』みたいな事やっとかないと」

「む、無理無理無理!!

 自分から話題を振るなんて普段から苦手なのに男の人相手なんて無理だよぉ!」

「だからってこのままじゃ礼も言わない暗い女としか思われないよ」

「そんな事ないよ

 お礼くらいちゃんと--------------ぁ」

 

言ったよと言いたかったが固まってしまった

今思い返してみればお礼は何一つ言っていなかった

『なんで逃げるんですか』と言った次の瞬間には告白されてテンパッて顔を真っ赤にしてあたふたして連絡先だけ貰うと事情を聞きに来た駅員さんから彼を逃がすようにするなど慌しい事この上なかった

「ふぇ」とか「あ」とか「え」とかもう会話に成りえない言葉と呼んでいいのかすら分からない事しか喋れなかった

 

「言ってないんだね?」

「…………はい、言えてません」

「痴漢から救って貰ったんだからお礼くらい流石に言いなよ」

「だって私もう告白されたことで手一杯だったんだもん!

 それに駅員さんに言い訳するのも大変だったんだよ!?」

「言い訳?」

「なんか『お巡りさんのお世話になるのはちょっと………』みたいな事言ってたから庇うことになったの

 助けて貰った事は確かだしそのままあの人を差し出すというのも気が引けると思ったから

 あの人が動いたのはそもそも私が痴漢されて何も行動を起こさなかったのが原因だし……」

「更なる元凶はその痴漢した中年なんだけどね」

「確か顔面ぶん殴って気絶させたんだっけ?

 ガラスにヒビまで入れて

 噂に聞く『神の子』ってのはもっと聡明な人間って聞いてたけど随分と手が早いんだね

 まぁ私でも楓がやられてるの見たら襲い掛かるけど」

 

あ、なんか和泉ちゃん優しい

これはあれなのかな、巷で有名なツンデレってやつなのかな

落としてから優しくするとかいう

嬉しさのあまり思わず頬が緩んで笑みがこぼれてしまう

だがその瞬間和泉ちゃんがまた私の両頬を掴んでくる

 

「あにふるのいふみしゃぁん(何するの和泉ちゃん)」

「私が少し優しくしたからっていきなり満面の笑みになってんじゃないよ」

「ふぁっていふみふぁんがへれたふぁら(だって和泉ちゃんがデレたから)」

「私は一度もアンタにデレた覚えは無い………ッ!」

「いふぁぁぁあい!(痛ぁぁぁあいッ!)」

「まぁまぁ、照れ隠しなんてしなくてもいいじゃんよ

 ツンデレ和泉ちゃん」

「誰がツンデレだ!

 脳筋は黙ってなッ!!」

 

少し荒げた息を整えて彼女はまったく、と言いながら呆れて座った

その姿を見る限り彼女の言う通りデレてはいないのだろうか

むぅ……彼女のデレの壁は未だに突破出来ないか

そんな下らない事を考えていると話題を戻し始めた

 

「お礼言ってないって………やっぱり良くないよね?」

「まぁ良くはないだろうね」

「痴漢から助けるって結構な事だしね」

 

確かにそうだ

もし近くで赤の他人が痴漢されているのを発見してすぐ助けに行こうとは思えない

面倒ごとである以上自分にも何か面倒な事が降りかかるのではないかと身を引いてしまう

 

「電話、電話……あぁでも電話なんかで済ませて良い訳無いし……」

 

でもこうしてグダグダとやっていても時間が過ぎていくだけ

必修の授業だったら悩むところだがただ3人で集まりに来ただけだった授業の為、出席をしなくても問題は無い

ならやることは一つ

 

「私ちょっと行って来る!」

「え、ちょ、行くってどこに!?」

「あの人の所!!

 ちゃんとお礼しないと!」

 

授業開始目前で席を立ち上がり出口へと駆け出す

そんな私の2人も驚きと戸惑いのまま付いてきてくれた

やはり運動音痴の私とは違い速力と体力がある2人は先を走っていた私にすぐ並んだ

どうやら私と一緒に彼の所に行ってくれるらしい

 

「でも楓!」

「なにッ!!」

「アンタ彼がどこに居るか分かってるの!?」

「まずはジムに行ってみる!」

「そのジムの名前は!?」

 

 

 

 

 

「………ほにゃららジム」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

 

私の言葉を聞いた瞬間皆が押し黙る

そして2人とも同じようなジト目で此方を見てくる

その視線に耐え切れなくなった私はプイッと顔を逸らした

 

 

「…………あんた等私に付いて来な!」

 

「うん!」

 

「了解!」

 

 

先頭を和泉ちゃんに譲り私は後ろへ引き下がる

うん、やっぱり私が先頭に居るより和泉ちゃんが居た方が絵になるよね!

決して私が行く先が分からないから先導して貰ってるわけじゃないんだよ?

 

 

 

 

 




天才云々の話は次回で色々と説明します


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第3話 踏み出す一歩

後、二三話で結婚させて真姫の幼女時代でもいきたいですね

なんか感想で主人公が碇ゲンドウという設定になってる…
一話の最後修正させて頂きました

主人公は結構明るい人間ですよ!!


「うぅ~、疲れたぁ」

 

足が痛い

流石にもうお腹は痛くは無いが、未だに疲労感が私の体全体を襲ってくる

今年一番の走りを見せた今の私は、前を歩く2人の後をトボトボと重い足取りでついていく

 

「なんで未だに疲れてるの。楓が走ったのって大学の敷地内だけでしょ?しかも、その後電車に乗ってるから十分休憩は出来たし」

「ったく、アンタねぇ。あんな威勢よく走り出したクセに一瞬でくたばってんじゃないよ」

「用の無い私たちを差し置いて、本人がねぇ」

「面目も無いです………」

 

容赦の無い2人の呆れかえった言葉が、私に降りかかってくる

最近の世の中は努力しても他人から、評価して貰えないのか

なんと世知辛いんだ

まったく……私は辛さなんて求めてないよ

辛口の料理が出たら、すぐに甘口への変更を願う程の甘口派だというのに

 

「あの信号の所を曲がったらすぐそこだよ」

「へぇ、意外に近いんだね」

「まぁ歩きでいける距離じゃないけどね」

 

確かに言う通りだ

大学からここまで歩きで来いと言われれば、私の阿鼻叫喚がまったなしだ

電車を禁止されれば、お腹を空かせた財布から諭吉を差し出してしまう事も頭に置いてしまう

 

「気になったんだけどさ」

 

助けてくれた『西木野 宗一郎』さんへお礼をしに彼が通っているジムへ向かっう中、何か思い出したように和泉ちゃんが尋ねてきた

 

「さっき駅員に言い訳とか言ってたけど何言って納得させたのさ」

「確かに。一体どんな事言ったの」

「む、気になる?この智謀溢れる私の完璧な言い訳がそんなに気になる?」

「あ~きになるきになる~(棒)」

「そうかそうか。そんなに気になるかぁ」

 

カッコボウ?カッコボウって(棒)の事だよね?それって文に書くときに使うだけで口頭で言う言葉じゃないよね?

若干心の篭っていない言葉や「今度はどんなドラマ見て影響されてるの?」という質問も含めて色々と気になるところだが構わず続ける

「教えてしんぜようッ!」とビシッと腰に手を当て和泉ちゃん達に指を向けた

 

「私が痴漢された事を伝えると『なんでこの男性は鼻が折れ、気絶しているんですか?』って言い出したの。だから私の智謀あふれる頭でノータイムで答えたんだ」

「ノータイムねぇ………」

「もう既に期待しても無駄って思っても大丈夫だよね」

「何て言ったの?」

 

さぁ恐れおのののくがいい!(←誤字)

私の徹頭徹尾完全完璧な言い訳をッ!!

 

 

 

「私が殴ってしまいましたってッ!!」

 

 

『………………………』

 

 

 

………おかしい

拍手喝采を待ち続けても何も聞こえない

そして何故か2人は哀れんだような様な表情で私を見てくる

私の完璧な言い訳に何か不満点でもあったのだろうか

紫信ちゃんが小声で「………想像より斜め上を突貫していったよ」と言っているが、その意味は分からない

 

「そうかそうか。君の一撃で中年の骨を粉砕か」

「そうだよ。こうシュシュッ!と」

 

よくテレビでボクシング選手がやっている様にワンツーを放つ

おぉ、意外に早く打てて、風を切れて思いのほか気持ちい

私を2人は更に哀れんだ表情で見てくるのは未だに理由が分からない

すると突然、紫信ちゃんが両手の掌を此方に向けてくる

 

「楓、打っておいで」

「え、大丈夫?当たってヒビとか入らない?」

「大丈夫、これでヒビ入ってたら私は歩くだけでヒビ出来まくってるから」

 

そこまで言うならしょうがない

全力をもってその期待に答えよう

 

 

「えい」(ぺち)

 

「やーッ」(ぺち)

 

「とーぉッ!」(ぺちッ)

 

 

………ふぅ

我ながら凄まじいパンチの数々だった

あまりの威力で自分の拳に痛みがジンジンと走っているが、それは攻撃を受けた紫信ちゃんも一緒らしい

痛みに耐えられないのか地面に倒れ伏しながら体は震え、お腹を抱えながらバンバン地面を叩いている

今度は「くッ………はは、腹痛い………ッ!」と嗚咽を洩らし始めた

どうやら私のパンチは受けた掌だけでなくお腹にまで痛みを与えるらしい

なんて末恐ろしいんだ、私のパンチは

 

「もうジムの目の前だよ。茶番は終わりにしな」

「それより見てよ和泉ちゃんッ!紫信ちゃんパンチしたら当たった掌だけじゃなくてお腹まで痛がり始めたの!私のパンチって凄くない!?」

「ふんッ!」

「痛いッ!!??」

 

和泉ちゃんの理不尽な一撃が私の掌を襲う

あまりの痛みに隣で未だに悶え苦しんでいる紫信ちゃんの隣で同じように悶え苦しみ始める

本当にヒビが入ってしまったのではないかと疑う程に痛い

私のパンチにもこれ程の威力を秘めていたのだろうか

 

因みに、後で何故殴ってきたのか尋ねると今度は逆の方の掌に拳を叩き込まれた

解せぬ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

未だに殴られた両掌の痛みを、ふぅふぅし何とか和らげようとしていると突然和泉ちゃんが何かに気づいたのか立ち止まった

先に何かあったのか気になり紫信ちゃんと一緒に後ろから覗き込む

 

「どうしたの、和泉ちゃん?」

「え、何。犬のフンでも踏んだ?」

「今度アンタの脳みそん中に馬糞塗りこんでやるよ」

 

軽い下品なボケに、とても重い下劣なツッコミが紫信ちゃんを襲う

よく街中で「馬糞」なんていう言葉を堂々と言えるな、と関心しつつも和泉ちゃんの目線の先を追う

 

「いや、あの人の所属ジムがあそこにあるんだけど、何か人だかりが出来てるんだよ」

「人だかり?」

「あ、本当だ」

 

和泉ちゃんの言うとおり、視線の先には一つの建物の前に何十人もの人だかりが出来ていた

まるで有名人が、路上ライブでもしているかのような集まりだった

 

「何か行列の出来る飯屋みたいだね」

「普通はボクシングジムにそんな人だかり出来るとは思わないんだけど………」

 

そう言いながら私たちは、その集団地点へと近づいていく

そしてある事に気づいた

 

「なんか異様に女子が多いね」

「確かに」

 

顔を見なくても服装だけで分かる

皆、可愛いかったり大人らしい

男性の服装にはかけ離れたものが殆どだった

 

「でも中はカメラ持った男の人たちが結構居るよ」

「本当だねっと」

「何も見えないぃ~」

 

2人は少しジャンプして建物の中を覗いて共感しあっているが、ジャンプしてもまったく見えない私はその中に混ざることが出来なかった

悔しい、ジャンプ力も先程発揮されたパンチ力並に力があればよかったのに

そんな私を少し呆れた表情で見て、ため息を吐く和泉ちゃん

昼から和泉ちゃんの、呆れる表情しか見てないのは気のせいだろうか?

 

「ちょっと待ってな。あそこにいる男の人に聞いてくる」

「え、で、でも悪いよ。それに何か険しい表情でちょっと怖いし………」

「だからってこんな人だかりで待ってちゃ、どうにもならないでしょ」

 

私に気を利かせてくれたのだろう

そう言って和泉ちゃんは、迷わずドアの出入り口で背中を向けながらも、門番の様に立っている男性の所へ歩いていく

きっと部外者が、入らないようにする役目の人なのだろう

紫信ちゃんと私は、その跡を追う形で歩き出す

 

「すみません」

「ん?」

 

大きい

昨日会った西木野さんと同じくらい

私より頭一個分程大きく、顔を見合わせるなら見上げなければならない程だ

半袖半ズボンの運動着から見える鍛えられた肉体を見るところ、この人もこのジムに通う人だというのが分かる

 

「何か人だかりが出来てますけど、何かあるんですか?」

「あぁ、今から公開スパーなんだよ」

「公開スパー?」

「公開スパ?」

 

このジムには温泉でもあるのだろうか

最近のボクシングジムは、そんな豪勢な設備が普通なのか

自分の常識が覆された事に驚いていると、和泉ちゃんが私の頭をペシッと叩いてきた

凄い、少し呟いただけで彼女は私が何を考えているのか分かるらしい

 

「公開スパーリング。まぁ、今回のは厳密には違うんだけどね。今度ウチの選手がタイトルマッチの権利を掛けて闘う、大事な試合があってね。それでこうやってマスコミがやってきて、取材やらなにやらしに来るんだ」

「厳密にはって?」

「本来公開スパーリングっていうのはタイトルマッチの、あぁ日本王者を決める試合の事ね。そういう大きい試合の前日でやるのが恒例だけど、今回は選手が特殊でさ。その前の試合でも結構注目されてるんだよ。相手側は公開してないのに、こっちだけ公開するってのは何ともあれだけどね。それだけウチの会長も本人も負ける気が一切無いんだろうけど」

「あぁ、それって西木野君の事ですか?」

「え!?」

 

和泉ちゃんのまるで知り合いかの様な口ぶり

そこにも驚いたが一番はそこではない

彼女の言う事が事実なら屋外にいる女性、屋内に居る男性の数々は先日会った西木野さんたった一人の為に集まった事になる

記者の数のも凄まじいが、目の前に居る女性達は彼のファンなのか

先程和泉ちゃんが言っていた通り、彼はモテるのだろうか

 

「あぁそうだよ。『西木野 宗一郎』、もしかして知り合い?」

「はい、実は今日呼ばれて来たんですけど、まさかそんな大事な事やってるなんて思いもしまいませんでした。あ、ちなみにこれ証拠です」

 

私の手に握られていた携帯を和泉ちゃんが、さっと奪うと操作を始めようとする

まったく駄目だよ、私の携帯はロック掛かってるから和泉ちゃんじゃ解けないよ

気を利かせて和泉ちゃんから携帯を貰おうと手を伸ばすと、何故か和泉ちゃんは既に男の人に携帯を見せている

その携帯の画面を見ると男の人は「確かにアイツの電話番号だな………」と呟く

………え?え?ちょ、ちょっと待って、あれだよね?ロック解除しないと画面って切り替わらないよね?

なんであの人の携帯番号が確認取れてるの?見れないはずだよね?

戸惑っている私を他所に和泉ちゃんはもう用が済んだと言う様に私に携帯を返してきた

そして、画面映るのはやはり彼の電話帳

………………え?何で和泉ちゃん私のパスーワード知ってるの?

私、教えた覚えないんだけど?

 

「じゃぁ入り口付近で待ってもらっていいかな。流石にこの状況で呼び出す訳にはいかないし」

「ありがとうございます」

「別に良いよ。それとアイツに話しかけるのはスパー終わってもちょっと待ってて。色々と質疑応答とかあるだろうし」

「分かりました」

 

そのまま案内をされると、すんなり屋内に入ることが出来た

………なんか外で窓ガラス越しでしか見ることが出来ないファンの方々に、申し訳ないような感じもするけど

まぁ、知り合いというのは嘘ではないからいいかな

軽く会釈し感謝を告げると、男性は再び出入り口へと戻っていった

和泉ちゃんはこちらにジェスチャーで「どんなもんだ?」と親指を立ててドヤ顔をしてくる

 

「なんか、和泉ってあれだね」

「う、うん………なんか凄いね」

 

やはり彼女の行動力と決断力は凄いな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは非公式ではありますが、これから公開スパーリングを始めさせて頂きます」

 

指導者の様な50歳程度の男性が、リングの中央で部屋全体に響き渡るように堂々と言い放った

するとリング場に2人が同時に入った

一人は30歳程度の男性で半ズボンと長ズボン、ヘッドギアを着用し緊張とやってやるぞという気合が篭った表情

そして反対側には

 

「西木野、さん」

 

先日昨日会った男性

話しているときは、優しそうな表情が殆どだったが今は違った

相手側の男性を、射殺さんとする程の険しい表情で睨んでいる

先程まで外でキャーキャー黄色い声で騒いでいた女性達も、場の雰囲気に呑まれ黙ってしまう

2人は中央で指導者と何か話し、離れていく

試合を見てきたことは無かったが、まるで本当に公式な試合が行われているようだ

 

「始まるよ………」

 

隣に居る紫信ちゃんが、緊張した声で言った

その後すぐにカーンッ!とゴングの金属音が鳴った

瞬間、相手はまるで先手必勝とでも言うかのように西木野さんへと走って距離を縮める

ここで見る人たちが息を呑んだのを感じたが西木野さんは違った

 

「シッ!」

 

凄まじい攻撃を放たれる

特に慌てる事無く、平然とした表情で構えながら放たれる一撃一撃を避けていく

相手側は避けられてもその攻撃を一切緩めない

 

「……凄い」

「全部紙一重で避けてる………」

 

最小限の動きだけで、全てを避けている

 

「でもあの人、なんか攻撃しないね」

「様子見だよ。あの余裕からして2RDはいかない。そろそろ仕掛けてくるよ」

「仕掛ける?」

「見てれば分かるよ」

 

紫信ちゃんの言っていることが分からない私と和泉ちゃん

2人とも頭の上で?を浮かべると指導者の声が聞こえた

 

「1分経過」

 

大声でも、気合が篭った声でもない

ただただ普段とは変わらない声

しかし、その台詞が離れた瞬間に西木野さんの動きが変わった

 

「動いたッ」

 

構えている事は変わりないが、一撃を避けるたびに距離をじりじりと縮めていく

相手は慌てながら、拳を振るうが避けられ距離を縮める事を許してしまう

だが西木野さんは攻撃を仕掛けない

自分の攻撃が当たる距離にまで来ていることにも関わらず

相手は距離を離そうと後ろへ跳ぶ

その瞬間、まるで追いかけるように再び距離を縮める

直に距離を取ろうと後ろへ移動するが、また同じく距離を縮める

それを繰り返している内に相手側の男性は背中にコーナーを背負った

 

「袋小路だ……」

 

逃げ場は無くなった

それは観客だけでなく、当の本人も瞬時に理解できた

すぐに相手はガードの形を作る

相手は多少攻撃を受けてでも、隙をついて逃げ出す算段らしい

しかし、その希望は一撃で砕かれた

 

「ふんッ!」

「つぁッ!」

 

右ストレートが相手のガードを内から打ち抜く

打ち抜かれた相手の右腕が吹き飛ばされる

つまり防御に穴が開き、右半身がガラ空きになったのだ

相手は何とか再び右腕を戻そうとするが、撃ち抜いてきた威力が強かったのか腕の痺れと脱力で動かない

西木野さんは懐に入り込むと左拳を相手の肝臓付近へ、ドスッ!!と重い音をたてて打ち込む

『リバーブロー(肝臓打ち)』だ

 

「が…ぁッ」

 

相手は苦悶の表情を浮かべ固まり、背中のコーナーへもたれ掛かる

そして、何とか固めていた左のガードも解かれる

そこに利き腕である右腕を、反対側へ再び『リバーブロー(肝臓打ち)』を放つ

 

「お゛ぁ……ッ!」

 

今度は空気だけではなく、堪らず胃液を吐き出す

確実にもう相手側はダウン寸前

にも関わらず西木野さんの攻撃は止まらない

右へ、左へ、右へ、左へ

相手をコーナーへ打ち込むかの様に、何度も『リバーブロー(肝臓打ち)』を打ち続ける

 

「……………ぁ」

 

何度もの『リバーブロー(肝臓打ち)』を受けているうちに、到頭声を上げることさえ出来なくなった

だが、西木野さんは攻撃を止める事は無い

同じように何度も何度も何度も同じ『リバーブロー(肝臓打ち)』を打ち続ける

そのあまりに容赦の無い光景に言葉を無くす

 

「ストップだ西木野ッ!」

 

そこで指導者の男性が、割って入り止めに入った

攻撃を続けていた西木野さんは、素直に従い後ろへ下がった

自分の体を支えたに等しい攻撃が、止んだことにより力なくリングへと沈んだ

 

あまりにも圧倒的な実力差に誰も口を開く事が出来なかった

 

 

そして、私はあまりの過激な光景で固まってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は、凄まじかった

記者は写真を撮り、リングから降りた西木野さんに取材を行う

記者が去った後は、外で黄色い声で騒いでいた女性達に挨拶と感謝の言葉を言いに行って帰って貰った

ファンの方も興奮が凄かったが、記者の人たちも取材しながらも興奮は隠せていなかった

やはりあれだけの戦いは、早々見れるものじゃないらしい

 

「ありがとうございました」

 

去っていく女性達に笑顔で会釈をしながらドアを閉める

ドアを閉めた瞬間、肩を落としてダルそうにトボトボと歩き出した

 

「あ゛ぁ~、疲れた~。もうシャワー浴びて帰りた~い。帰って布団に潜りた~い」

「何を情けない事を言ってるんだ」

「でも、やってやりましたよ、あのムカつくオッサン。何が『餓鬼には負けない』だ。『リバーブロー(肝臓打ち)』一、二発喰らっただけで悶絶しやがって」

「そういう事を言うな、下手をしたら問題になるぞ」

「分かってますよ……」

 

先程のスパーで、闘っていた人と同一人物とは思えない程にダラけていた

和泉ちゃん達の話を聞いて描いた、私の中の彼は普段でもビシッ!と、まるで完璧超人の様な人だとい思っていたけど随分とアテが外れたらしい

私としてはこっちの方が大いに有難い

礼儀正しい人が相手だと、タダでさえ困難なコミュニケーションが更なる難関なものになっていってしまう

例えるなら、キリマンジャロとエベレストの違いがある

因みに私はきっと富士登山の2合目で力が尽きるだろう

 

やはり、あれだけの容赦の無い攻撃は何かしらの理由があったらしい

正直言えばあまりの凄まじさに、若干引いてしまったし怖かった

実際途中で隣にいる和泉ちゃんに「ね、ねぇ、あれ大丈夫なの?」って聞いてしまった程だ

ちなみに帰って来た返事は「わ、わ私に聞くんじゃないよ」と言われていた

いつも冷静な和泉ちゃんでさえ、引いていた

やはり、あまりボクシングを見ない人にはキツイ映像らしい

 

「西木野、お前のお客さんだぞ」

「客?」

 

案内してもらった男性が西木野さんに話を掛ける

到頭、私たちの番だと緊張する

変なとこは無いかと髪と服装を慌てて整え直す

 

「これはまた……」

「せ、先日はどうも」

 

予想外だったと驚く彼の表情を見ると、まるで悪戯が成功したかのような嬉しさが生まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、待たせてしまって」

「いえいえ、此方こそ連絡も無しに来てしまってすみません」

 

西木野さんと和泉ちゃんが、頭を下げあって挨拶をする

あの後、話すなら少し待ってくれと言われ、10分外で待つことになった

シャワーを浴びて、普段着に着替えている

その服装は昨日あった時のジャージと違い、今時の男性が着るセンスのいい服装だった

ジムの指導者、会長という人に無理を言って今日はあがりにして貰ったらしい

私はというと、目の前に居る西木野さんを見ながら、似合ってるなぁとボーっと見ている

 

「ん」

 

痛い

突然何かと思ったら、隣に居る和泉ちゃんが私の脇腹を突いてきた

そして、顎を動かして何かを催促してくる

彼女の視線の先には西木野さんがいる

あぁつまり、とっととお前が喋ろとでも言いたいのか

震える喉と体を携えて、勇気を振り絞る

 

「あ、あの、ここここんばんわ」

「こんばんわ、先日はありがとう御座いました。駅員への言い訳、大変だったでしょ?」

「いえいえ!大丈夫です!こちらこそ助けて頂いたのに、お礼もせずにすみません!」

「楓、ちょっとテンパり過ぎだよ」

「うっ……」

 

的確な言葉を言われてしまった

確かにあまりの緊張で心拍数も上がって、顔も血が上ったかのように熱い

でも、ここで再び黙ってはは無言の気まずい雰囲気になってしまう

ワタワタと慌てていると、後ろからバッと影が飛び出してきた

 

「あ、あの!私、忍崎紫信っていいます!さっきのスパー凄かったです!!」

 

凄まじく興奮している紫信ちゃんだった

彼女とはもう数年の付き合いだが、これ程にまで興奮している姿を見るのは初めてだ

 

「ありがとう。楽しんで貰えたなら良かったよ」

「楽しめたなんてモンじゃなかったです!相手をコーナーに誘導させる所とか、もう最高でした!!もう、学生の領域を軽く超えてますよ!!」

 

「……なんか、紫信ちゃんテンション高いね」

「まぁ根っからのスポーツ好きだからね。同い年でもプロで、しかもチャンピオンになる可能性が高い有名なのが相手なら、それはテンションの一つや二つ上がるってもんでしょ」

「……………………」

 

とても楽しそうだ

語っている紫信ちゃんも、尊敬の意を向けられる西木野さんも

素直に羨ましい、そう思ってしまった

私は大体、人の話を聞いて満足するだけで自分から人に話しかけたり、ましてや話題を振る事も早々無い

きっと私は西木野さんと2人っきりになったら、何も喋れないだろう

時事ネタも分からないし、スポーツの事なんてなお更だ

きっと彼は私に話題を振ってくれたり、色々とやってくれるだろう

だけど、私は彼に何かしてあげられるだろうか?

こんなつまらない女子より、同じ話題で盛り上がる紫信ちゃんみたいな子と付き合えばいいのに………

 

「何辛気臭い顔してんの」

「え?」

「前々から言ってるでしょ?アンタは自分を卑下しすぎだって。少しは自信を持ちなよ」

「でも、私は皆と違ってつまらないし……」

「私と紫信は、アンタに同情して友達やってるんじゃないの。アンタと居ると楽しいから一緒にいるの。だから心配なんかしなくても良いんだよ」

「別に私は何かやってる訳じゃないよ……?」

「アンタが自覚してないだけで、周りは皆知ってるよ。それに、私がアンタに嘘をついたことがある?」

「…………無い」

「でしょ?」

 

そう言って私の頭を優しく撫でてくれる和泉ちゃん

とても暖かくて、くすぐったくて、心地が良い

 

「アンタの事だから、付き合う=結婚する相手って考えだろうし、慎重になる気持ちはまぁ分からなくもないよ」

「……………………」

「でもだからって、慎重になるのと先を怖がって何もしないで受身になってるのは違うよ。アンタが自分からグイグイ押していくタイプじゃないのは分かるけど、自分の意見や考え、聞かれたこと位は多少なりとも答えな」

「……うん」

「頑張りなよ。彼の事は多少なりとも気になってるんでしょ?」

「そう、かな」

 

分からない

恋愛感情というものを抱いたことが無いから

私が今に抱いている感情が、恋愛感情というものなのだろうか

 

「初めてだから不安になるのは私等も分かってるから。もし悩んでも分からない事があったら気を使う必要なんて無いからいつでも私らに相談しにきな。出来る限りのことはやらせて貰うよ」

「………ありがとう」

「ったく、アンタは仕様が無い子だよ」

 

まるで子供を見る母親の様な優しい目

だが、頭を撫でてくれていた和泉ちゃんが唐突に私の肩を掴む

 

「そういう事はあっちにやりな」

「うわっ」

 

軽く押されて転びそうになる

「おっとっと」と、声を洩らしながら体制を立て直す

 

「あ」

「?」

 

偶然、西木野さんと眼が合ってしまった

たったそれだけで、私の頭の中は非常事態

私は恥ずかしがる以前にに頭が真っ白になってしまったが、西木野さんがばつの悪そうな表情で誤り始めた

 

「あ、あぁすみません、話し込んでしまってお2人を置いていってしまって」

「だ、大丈夫ですッ!気にしないで下さいッ」

「それなら良かったです」

「ぅ………」

 

今の彼は、先程の本来の姿を隠して礼儀をしっかりしている

言葉使いも綺麗だし、表情の作り方も巧い

なんという社交性、なんというコミュニケーション能力、なんと出来た人間だろうか

せっかく和泉ちゃんが背中を押してくれたのに、また固まってしまう

顔を真っ赤にし、スカートの端を掴んで涙ぐむ

しかし、気を利かせてくれたのか、西木野さんから話題を振ってくれた

 

「それで、今日はどうして態々ジムにまで顔を出してくれたんですか?連絡をくれれば此方から出向いても良かったですけど」

「いえいえッ、今日は先日助けて頂いたお礼を言いに来ただけですので」

「お礼?………あぁ昨日のあれですか。お礼を言うのなら此方ですよ。先程も言いましたけど後始末を貴方にさせてしまって本当にすみません」

「え、ど、どッどうしたしまして?」

 

西木野さんは、頑としてそこは譲れないらしい

客観的に見ても、言い訳をしただけの私と痴漢から救ってくれた彼なら、断然彼のほうが礼を言われるべきだと思うんだけど

でも、ここでしつこく否定してしまっては逆に申し訳ない

一応、お礼は受け取った形にする

 

「そ、それともう一つ」

「はい?」

「その、先日の………返事なんですけど。そ、そのほらッ、あまりしっかり答えられなかったじゃないですか?唐突な事でもありましたし、時間も無かったんで」

 

今日、彼に会いお礼を言った

それで終わりじゃ駄目だ

終わりにしては駄目なんだ

そのままでは、今まで通りの受身だけの人生でしかない

折角、和泉ちゃんが背中を押してくれたんだ

 

正直、どうすれば正解なのか分からない

今から自分がとる行動が正解なのかなんて分からない

もし、空回りして失敗したらと思うと不安で仕方が無い

頭の中がぐちゃぐちゃで、自分で今何を考えているのかも分からなくなってきた

それでも私は一歩、自ら踏み出す

 

「先日も言いましたけど、私はまだ貴方の事をあまり知らなくて………

 それにお恥ずかしい話なんですが、私まだそういう恋愛みたいなものを経験した事が無いんです。だから、その、もし良かったらなんですけど――――

 

 

 

 お食事でも、いきませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

あ、やっぱり駄目だ

意識飛びそう

 

 




先日、皆さんから頂いた感想を見ようとしたら『#運対(他の感想への言及)#』となっていて見ることが出来ませんでした

なんとか見ることが出来たものもあったのですが、中には見る前に消されてしまいました
私も把握はしていませんが、運営のアウトラインを超えると消されるらしいです

書いている時に、励みにしようとしたら『#運対(他の感想への言及)#』
こんな文じゃ励みもクソもねぇじゃねぇか……ッ!


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第4話 持つべきものは、お友達

新年おめでとうございます

とは言っても、これを投稿したのは12月30日午前3時
メリー苦しみましたを見事にぶちかましたアタリですね

今回、グダグダな部分が多々あると思いますが、ご了承下さい


今年も、『ウチの真姫がファーザー・コンプレックスを患ってしまった件について』をよろしくお願いし


私は今、絶賛テンパリ中である

 

「うぅ~……」

 

目の前に並ぶのは、明らかに単品で1000円越え確実の上物

給仕する店員さん達は、礼儀正しく、品性を感じる

店内は、女性が好むようなお洒落な感じだ

 

駄目だ

私はどうすればいいのだ?

確か、まずはナイフとフォークを持って……あれ、どっちがナイフで、どっちがフォークだっけ?

右?左?いや、その前にいただきますを忘れていた

挨拶をしなければ失礼……いや、待つんだ辰宮楓。こんなお洒落なお店で学校給食が如く挨拶をしていいものなのか?こんな所で『おいしいお食事、いただきます!』なんてやってみろ

周りにいるお客さんが、私の食事光景をTwit○erで動画投稿することになるぞ

でで、でも食事の挨拶は大切だから-----------------

 

「辰宮さん?どうかしましたか」

「ひゃひゃい!?あっと、えっと、いい、いいただきます!!」

 

『…………………………』

 

…………………………あ、やってしまった。思っていた事を、あまりの慌てぶりで口から出てしまい、見事な爆心地を作り出してしまった

やっぱり『いただきます』は駄目だったんだ。その証拠に、今の彼は眼をまん丸にしてキョトンとしている

でも、その表情も崩れ、途端に笑いを堪え始める

 

「くくく………ッ!」

「わ、笑わないで下さいよ!!」

「いやいや、あまりに予想外すぎる言葉だったもでつい、はは………ッ」

「しょうがないじゃないですか!こういうお店、友達とだって来たこと無いんですよ!」

「別に、そんな深く考えなくて良いですよ。同年代との食事に、そんな堅苦しい礼儀なんて無用です」

 

若干、涙目になりながら、あまりの恥ずかしさに顔を真っ赤に染める

少し睨むように彼を見ると、申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる

そんな顔されると、怒るに怒れませんよ………

 

「それで、その………大丈夫なんですか?」

「大丈夫………?」

「体の事です。試合が終わったばかりで、痛いとか違和感があるとか無いんですか?」

「その事なら問題はありません。それに、見てたでしょ?その理由」

「まぁ………それは」

 

圧勝だった

相手の実力もネットで知れべたけど、日本王座にいっても不思議ではないと言われるほどの実力だったらしい

なのに、今自分の目の前に居る彼は、そんな相手に1ラウンド中に勝利をした

殆ど被弾せず、自分の攻撃だけを当てて

 

「今回は辰宮さんが見に来てくれましたからね。思いの他、力が入ってしまいましたよ」

「力が入ってしまたって………」

 

そんな言葉で片付けられるのだろうか

確かに弱っている所でしたけど、顔に一発で一回転してましたよ?

まるでダンプカーに引かれる人間みたいでした

もう一種のショッキング映像ですよ

 

「それに、体の事は心配しなくても大丈夫です。これでも医大の主席ですし、スポーツ医学や整体医学も大体理解してますから。大抵の事は自分一人で解決出来ます」

「スポーツ医学に整体医学にまで………」

「まぁ本職の人には負けますが、それなりにね」

 

もう、この人は本当に自分と同じ人間のカテゴリーに入れていいのかすら、不安になってきました

ここで、自分から話を振ろうと前から疑問に思っていた事を伝える

 

「前から疑問に思ってたんですけど、いいですか?」

「自分で答えられる範囲なら」

「その、なんで医者だけでなく、ボクシング選手にまでなろうとしたんですか」

「なんで………」

 

予想外だったのだろうか

一度眼を見開いて、顎に手をやり考え始めた

彼は数秒考えると、まるで呟くように答え始めた

 

「女性の貴方からしたら分からないかも知れませんが、男というのは強さに憧れるんですよ。例え幼児だろうと、大学生だろうと、家庭を築く父親になったとしても。だから、もし自分が行動を起こす事によって、最強という称号が手に入るとしたら、男なら誰もが手に入れようと躍起になるんですよ」

「最強、ですか?」

「言葉に起こすだけなら何とも青臭いですが、世間から認められる程の称号にしてみれば変わります」

 

こちらに自信に満ちた微笑を浮かべながら答えた

 

「世界王者、ですよ」

「世界王者………」

「他のスポーツでも同じ称号がありますが、自分の肉体一つでその称号が欲しいんです。ボクシングが単純に性に合っている、っていうのもありますけどね」

「なんか、壮大なお話ですね」

「我が侭なだけなんですよ。あれも欲しい、これも欲しい。我慢するという考えが出る前に、行動に移してしまうんです」

 

言葉だけ聞けば、確かに子供っぽいように感じるが、やる事のスケールが大き過ぎる

どこの世界に、医大の主席をしながら世界王者を目指す人間がいるだろうか

医大の主席という地位を獲得する事ですら、人生全てを勉強に費やす人間はいるだろう

 

「医者、というのは生まれる前から決まっていたことです。病院の院長の一人息子ですからね、別にそれは嫌じゃありません。父の姿を子供の頃から見ていたから憧れている部分もありましたし、むしろ自分からなろうという気もあります

 ただ同時に、ボクシング選手にもなりたいと思ってしまった、ただそれだけの事です」

「ただそれだけって………」

「両親に納得して貰う為に、自分が学ぶであろう事を先に勉強して、学校では復習する程度で済ませて空いた時間をボクシングに費やしましたよ。いやぁ案外いけるもんですね」

「は、ははは………」

 

もう空笑いしか出てこない

やはりこの人は完璧超人か何かなのだろうか

ここで「実は私、薬で若返っているんです」っていうコナ○君みたいな状況の方がまだ納得できる

だが、直に彼の表情は途端に曇り始めた

思わず、「西木野さん?」と尋ねた

 

「………でも、自分のボクシング選手としての時間は限られてるんですよ」

「限り?」

「大学を卒業したら、病院の跡継ぎとして色々と父から学ばなければならないんです。最初の方は齧る程度なので両立は出来ますけど、本格的になっていけば責任ある立場になりますし、余裕が無くなってしまいます。あくまで、自分本来の将来の仕事というのは医者です。それを自分の我が侭で始めたボクシングで疎かにしてしまうのは、両親に申し訳が立ちません。だから自分がボクシング選手としてやっていけるのは後数年程度、『世界王者』の名を手に入れるにはあまりにも短い」

「たった数年で………」

「手に入れるには『最低条件』であり『絶対条件』である、『最短ルート』と『無敗』を実現させないとなりません。」

 

………その言葉には重みがあると感じた

私はボクシングの知識も無いから、その『条件』というものがどれだけ難しいか実感出来ない

だが、全てのスポーツにおいて『世界王者』という座につくのは至難

ほんの一握り、いや、それ以下の人間しか手に出来ない

それを最速で無敗のまま実現させるなんて、普通の人間に出来るとは、到底思えない

 

「なんで西木野さんはそこまで………。キツイとか、辞めたいとか思わないんですか?そんな実現させる事が難しい事をやっていて」

「止めたい、ですか………」

 

再び考え始める

私には興味があった

これまで私はいくつも諦めた事や、避けてきた事があった

なるべく楽な人生を歩みたかったから

唯一頑張ったといえば、医大へ入学できた事くらいだろう

そんな私とは違う、挑戦を諦めない人の心内を知りたかった

 

「確かに練習はキツイですし、気を失った方が楽なんじゃないかって、思ってしまう事はあります」

「だったら」

「でも、だからこそ、自分はやり遂げる事に意味があると思うんです。今やらなければ手に入らない、今やらないと後悔する。なら、いくらツラくても、いくら辞めたくなったとしても………その先で手に入れたものは、これからこの先手に入れる何よりも価値があると思えるから」

「………………………」

 

そして彼は微笑みながら、答えたのだ

 

 

「男が一度やると決めた。男なら諦めるという選択肢は無く、それを実行するのみ。それだけですよ」

 

 

その彼の表情は、私の頭の中から当分離れる事は無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、和泉ちゃん。こんなんで良いかな?」

「お、出来た?」

 

ジューという音をたてるフライパンから、炒めていた料理を小皿に入れて和泉ちゃんに渡した

彼女はそれを手にして、味見をした

私はどんな評価を下されるか、ドキドキしながら彼女の返答を待つ

 

「ん、味付けも結構良いね。これなら大丈夫だよ」

「良かった~」

 

向けられた微笑みに安堵を覚え、胸を撫で下ろす

これで駄目と言われれば、またやり直しだとこのガラスの如く強固な心が折れるところだった

………あれ、ガラスって堅かったっけ?

まぁ、あの紫信ちゃんの手だけでなく、お腹まで痛くした私が叩いても割れなかったんだ

きっと堅い。うん、そうに違いない

そんな事を考えるとテーブルの椅子に腰掛けていた紫信ちゃんが声を掛けてきた

 

「………あのさ~」

「何?紫信ちゃん」

「思ったんだけど、これってやる意味あるの?」

 

まるで、意味不明の行動でも見たかのような表情でそう尋ねてくる

私達が今居るのはいつもの大学の中でなく、私の家の台所

そして、私は和泉ちゃんに教わりながら料理をしている所なのだ

紫信ちゃんは、そんな2人を近くのテーブルの椅子に座りながら見ている形だ

作っているのは昼食ではなくお弁当

彼に渡すためのお弁当を作っているのだ

 

「これって………このお弁当の事?」

「そうそう、なんで態々弁当なんて作ってるの?」

 

なんでって………

 

「そりゃぁ、この子があの人にアピールする為でしょ」

「………なんか不味かったかな?」

「いやいやいや、別に悪いとか不味いとかじゃなくてさ。確かにアピールする為に弁当を用意するってのは分かるよ?でもさ、それって意中の相手を射止める為にやる事でしょ?なんで射止め終えてる相手にアピールしようとしてるの。まぁ付き合ってて愛妻弁当みたいなノリだったら分かるけど」

「それは……なんで?」

「え!?そ、それは………その」

 

まるで裏切るかの様に、疑問を投げかけてきた和泉ちゃんに後ずさる

 

「告白して曖昧な答えを言ってきた相手から、しっかり答えを貰える訳でもないのに、まるで好意があるかの様に弁当作って貰ってさ。これじゃぁ生殺しも良い所だよ。相手側はどう楓に接したらいいか分からなくなるよ」

「………まぁ、確かに。好意を持ってくれてると思っても、答えてくれてなきゃ相手が自分をどう思ってくれてるか分からないね」

「楓の恋のキューピットにハートの矢で撃たれた!なら撃ち返そう!と思って、いざ撃ち返したらたらスパーン!って地面に叩き落されて、無言でまた何度も矢を放ってくる感じ。」

「なんだい、そのファンシーな例えは。それに、なんで楓のキューピットはそんな強力そうなの」

「もうゴルゴ○3の様に正確無比な射撃で、あっちの心臓に矢が刺さりまくってるみたいな」

「一種の殺人現場みたいになってるじゃないか。後、ゴルゴ○3は弓じゃなくてスナイパーライフルだよ」

「ゴルゴ○3はゴルゴ○3じゃないんだよ。通称、デューク・東郷って名前があるんだよ。後、スナイパーライフルじゃなくてアサルトライフルね」

「え、何その西洋かぶれみたいな名前。あの顔でハーフなの?」

 

「あ、あの~」

 

「あ、ごめん。話逸れちゃったね」

「まったく、アンタか変な豆知識を披露するから」

「べ、別に大丈夫だけど………」

「それで、ゴルゴ○3になんで弁当作ってるかだっけ?」

「違う、デューク・東郷」

「あぁそっか。じゃぁ改めて、なんで楓はデューク・東郷にお弁当を---------」

「違うよ!相手は西木野 宗一郎さん!!なんで私がデューク・東郷さんにお弁当作らなきゃならないの!?」

 

2人とも、どれだけ言葉の掛け合い巧いの!?

まるで漫才でも見ているかの様だったよ!!

私がツッコミを入れるなんて凄い久しぶりの事だ

 

私は諦めて、話を戻すと同時に言葉を濁し続けた何故弁当を作っているかを答えた

その答えを聞いた途端、2人は意味が分からないと言いたげな表情で此方を見てくる

………まぁ、思った通りだったけど

 

 

 

 

 

「はぁ?OKが言えない?」

「………うん」

「どういうこと?」

「いや、その……返答するっていう事は自分から相手に言うってことでしょ?」

「そりゃぁまぁ」

「だから、ね?」

「いや、ね?って言われても困るんだけど……」

 

流石の2人も、私の言葉に困惑気味らしい

悔しいけど、2人がそんな反応を示すのは当然とも言えるから、反論はしなかった

 

「つまり、アンタ自身の中ではOKだけど、それを言葉に出せないから困ってる。だから、相手からもう一度告白される様にしようと……こういう事?」

 

私は彼を気にし始めてる

昨日の彼のあの微笑みを見てから

彼の目指している夢の実現を近くで見たい

きっとそれは、これまで私が見てきた景色とはまったく違うもの

これが恋というものなのか、それは正直まだ分からない

でも、素直に彼と一緒に時間を共にしたいという気持ちがある

彼と一緒にいる時間は、他の何よりも楽しくドキドキするから

でも、ドキドキの度が過ぎて何も言えない自分が恥ずかしい………ッ!

 

「まぁ概ね………」

「どんだけヘタレなのさ………」

 

無慈悲に放たれる言葉の矢が容赦無く私を襲う

助けてデューク・東郷風の天使さん!矢が心に刺さっていたいよ!!

そう心で念じたけど、幻想として現れた彼は手を横に振りながら「無理無理」と言っていた

今回の矢は彼の守備範囲外らしい

心の内の天使にまで見放された私はどうすればいいのだろうか

 

「だって、楓から告白すれば相手はOKが確実なんでしょ?勝ち戦もいいところだよ」

「勝ち戦に戦いに行かなくてどうすんのさ………」

「で、でも」

「敵前逃亡の死刑だよ」

「うぅ~」

 

死刑を示すかのように、デューク・東郷風の天使さんが今度は此方に矢の狙いを絞っていた

なんということだ。私は心の内の天使に見放されるだけでなく、裏切られて攻撃される程にまで追い詰められているのか

止めて天使さん!心臓は止めて!

 

「いっその事、無理矢理襲われる様にする?」

「ふぇ……ッ!?」

 

不意打ちな紫信ちゃんの発言に、思わず驚いてしまった

あまりに大人な考え過ぎて、心臓がドクンドクンと激しく脈打つ

天使さんにやられる前に、心臓が止まるかと思った

 

「待ちな、脳筋細胞。なんで折角良い感じに青春ラブコメやってんのに、いきなりサイコかましてんのさ」

「いやだって、考えてみなよ?仮に都合よくあっちが告白してくれるとするとして、この子がちゃんとOKって答えられると思う?あの辰宮楓だよ」

「……そこを突かれると痛いね」

 

私の存在自体を突かれると痛いんですか……

元々自信があった訳では無いが、そこまではっきり言われるとショック

台所に手を付いて頭を垂れた

 

「まぁ自分なりに行動を起こそうとしたことには、評価できるけどね」

「和泉ちゃ~ん」

「はいはい」

「この子が独り立ち出来る未来が見えないんだけど……」

 

何だかんだで優しい和泉ちゃん

思わず彼女に抱きつき、顔を豊満な胸に埋める

あぁ暖かい

何か紫信ちゃんが言っているか聞こえないが、きっと私を応援する言葉だったのだろう

 

「だから大学卒業前に、この子を西木野さんに引き取って貰えば安心なんだよ」

「……なんかこの年で子供を世話してる気分だよ」

「ま、無邪気さと精神年齢の低さは子供だね」

「む!今の悪口でしょ?私だってそれ位は分かるんだからね?」

「楓も成長したんだね~」

「えへへ、そうでしょそうでしょ?」

「ちょっろッ」

 

やっぱり持つべきものは頼りになる友人、というのを実感したのだった

 




次回で過去編の学生編が終了

その次は過去編の真姫誕編になる………筈です

感想などの返信は、里帰りから帰ってきてからになります


首を長くして待っていてください
よろしくお願いします


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第5話 スタートライン

お久しぶりです
それはもう超お久しぶりです

あれ、俺こんな小説お気に入りしてたっけ?て思っている方が殆どだと思います
もうね、仕事がね、忙しいのね

台詞は出来上がっていたんですけど、地の文がまったく書けなかったんですよ
正直、クオリティーが下がっているのが否めません

ま、最初からクオリティーなんて無いんだけどな!!


「はぁ……はぁ……」

 

冬の朝は寒い

走りこんで体が温まっても口から白い息は出て、手が悴んで仕方が無い

普段なら面倒な事この上ないが、今回は違う

 

「もう少しか……」

 

そろそろ目的の場所に着ける距離にまで来ている

証拠に、今霧に覆われている道の先に人影が見えた

シルエットにしか見えないが、それはぴょんぴょんと上に飛び跳ねていて見ているだけで可愛らしくて、思わず笑ってしまう

間違いなく、あの人だと

見間違えることが無い、あの人だと

 

「おはようございます」

「おはようございますッ」

 

辰宮楓さん

相も変わらず、その美貌は輝きを失うことは無い

だが美貌だけではない

子供っぽさ、可愛らしさ、美しさ、妖艶さ、まるで女性の望む全てを一つの器に隙間無く詰め込んだような、自分の望んだ女性像を具現化したような女性

挨拶をすると、彼女は未だに緊張した面持ちで返してくる

服装は完全フル装備の防寒具

耳あてまでしていて、全体的にモコモコしたような印象を受ける

羊の様に可愛い

モコモコしたい(意味深)

 

「態々すみません、こんな朝早くにまで来て貰って」

「いえいえッ、気にしないで下さい。私が好きでやってることなんで。此方こそスミマセン、こんな場所まで来て貰って」

「走る道を変えてるだけで、特に苦労する事じゃありませんよ。それに、今は調整する時期ですからね。軽い運動をする位しかしませんから、少し長い位が丁度いいんですよ」

 

頭に掛けたフードを取る

休憩に入るのだと分かった彼女は『ハッ』と気づいたような顔をして、テクテクと芝生の上に敷いてあるビニールシートまで歩いていくと、キラキラした表情でペシペシと叩く

一杯の花柄のシート、そしてこのペシペシという叩き方

子犬の様に可愛い

なでなでしたい(意味深)

 

「こ、こちらにどうぞッ」

「ありがとう御座います」

 

そのまま持ってきてくれた弁当を食べる

こっちの事を考えてくれたササミや玄米などを使ってくれているようだ

その間『美味しく出来てるかな?』という不安そうな表情で見てくる

天使の様に可愛い

抱きしめたい(意味深)

 

「……調整、っていう事はもうそろそろって事ですよね?」

「そうですね」

 

先程と違った不安そうな表情で聞いてくる

少し潤んだ目が綺麗だ

子猫の様に可愛い

サワサワしたい(意味深)

 

「体調はどうですか?」

「特に問題はありません、メンタルの方にも余裕は十分ありますから」

「まぁ目標が『世界王者』って言う位ですからね、これ位じゃ動じていられないって所ですか?」

「そうですね、『日本王者』は自分にとってただの前座でしかありません。こんな所で躓いていてはどうしようもありません」

 

少し驚いた様な表情をするが、すぐにクスクスと笑い始める

カピバラの様に可愛い

トウモロコシをカリカリと食べて欲しい(意味深?)

 

「少し、調子に乗り過ぎですかね……?」

 

若干後悔しながらも尋ねると、彼女は首を横へ振り答えた

 

「大丈夫ですよ、だって私は西木野さんが『世界』のテッペンに行ける人だって信じてますから」

「……それはまた」

「それに、そういう夢を語ってる西木野さん……私、カッコよくて好きですよ?」

「-------------------------------」

 

その笑顔

その笑顔を見た瞬間に、疲れも邪な考えも全てが失っていくかのように感じた

まるで浄化されるような感覚

先程まで邪な考えをしていた自分が恥ずかしくなってくる

 

「弁当、ありがとう御座いました。また気が向いたらお願いします」

「また作らせて貰いますね」

 

恥ずかしい気分を振りほどくように立ち上がる

彼女はそんな俺をキラキラとした様な顔で見続ける

 

「辰宮さん」

「はい?」

「今度の試合、絶対勝ちますよ」

 

自分が出来る今精一杯の言葉

そんな言葉に彼女は満面な笑みで答えるのだ

 

「はい、頑張って下さい!」

 

そして俺は再び走り出す

彼女の期待を裏切るわけには行かない

 

 

 

「シャァッ!!」

 

 

今日の出来事

 

相も代わらず女神は可愛かったです、まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクンッドクンッ

 

あぁ煩い

心臓の鼓動が全身に響き、鼓膜を揺らす

 

「……大丈夫か、西木野」

「えぇ、大丈夫ですよ……」

 

控え室で椅子に座り、俯きながら答える

聞こえるのは鼓動の音だけでない

これから行く会場の声が騒音が届いてくる

 

「日本チャンプが何だってんだ」

 

世界に行くとほざいている人間が何を怯えている

今からやっとスタートラインに立とうとしてる所じゃねぇか

これまで試合、緊張なんて殆どしなかったってのに今回に限って襲ってきやがる

鬱陶しくてたまらない

そんな時に、ノックが掛かった

 

「西木野選手、時間です」

「……分かりました」

 

係りの人に呼ばれて立ち上がり、歩き出す

無言のままの俺に会長は何も言わずについて来てくれる

気を使わせてしまっている事が分かる

そういう所にはいつも感謝している

普段ならこのままリングまで会話をせずに集中するだけだった

だが、今日は、今日だけはどうしても自分の一つの我が侭を聞いて欲しかった

 

「会長」

「……なんだ?」

 

会長もまさか、こっちから話を掛けられるとは思ってなかったのか、驚いた表情をする

だが、真剣な声質から察したのかすぐに引き締めた表情へ戻した

 

「今回の試合の勝者インタビューの事なんですけど、少し私的な事に使っても良いですか?」

「……本来なら、止めるのが正しいんだがな」

 

会長は少し苦笑しながら背中を叩いた

 

「これまで、これと言った我が侭を殆ど言ってこなかったお前がそんな真剣な顔で言うんだ。今回位は大目に見よう」

「……ありがとう御座います」

 

これまでは自己満足でしかなかった試合

ただ自分の力を実感する為だけだった

それ以外のものなんて求めてなかった

だが、今日の試合は違う

 

「……やりますか」

 

これは彼女に捧げる、最初の俺からの贈り物だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワアァァァァぁぁぁあッ!!!!!!!!!!

 

会場に入った瞬間、観客の声援の音量が一気に上がった

皆が俺に対して片手を上げ、声を張り上げて声援を送ってくる

これまでなら、それに笑顔で答えていたが、今回はそれが出来ない

ただただ真剣な眼差しで前を見据えるのみ

 

リングに上がり相手側、つまり現チャンピオンと顔を合わせる

 

『………………』

 

確か年齢は30前半

身長は俺とほぼ同等

体格的にはこっちの方が多少、分がある程度

だが、やはり場慣れをしているのか落ち着きが此方にも感じる

無言のまま互いに10秒程睨むと、弾ける様に離れ自分のコーナーへと戻る

 

「大丈夫か」

「緊張してないかって言われると、首を縦に振れないのが悔しいですよ」

「まさか、お前が緊張するなんてな」

「俺だって緊張の一つや二つしますよ。人の子ですよ、俺。」

「世界戦に行っても、いつも通りへらへらとやるもんだと思っていたよ」

「ま、その予行演習が今回ですよ」

「それだけ減らず口が叩ければ十分だ」

 

「行ってこい」と肩を叩いて、会長はリングを降りていった

俺はそれに「うす」と短い返事をするだけだ

 

そんな時にふと、ある一点に目がいった

 

「………………」

 

此方を不安そうな表情で見てくる辰宮さん

その両隣には忍崎さんと大獄さんも居た

辰宮さんと眼が合う

その瞬間、耳に入ってきていた音が全て止んだように感じた

それと同時に緊張も不安む全てが消えていた

 

やっぱ、アンタは天使かなんかだよ

 

笑いそうなのを堪え、最後に彼女に微笑んで振り返る

相手は既に準備万端と言ったところ

今にでも襲い掛かってきそうな顔をしてやがる

こっちだって準備万端なんだよ

ゴングなった瞬間にそのツラに拳叩き込んでやる

 

辰宮さんとのラブコメも、いいもんだが

やっぱ

 

 

カァンッ!!

 

 

 

 

相手と殴り合うこの瞬間の血の滾りは堪らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

『西木野 宗一郎』は攻撃を防ぎながら敵を追い込み、捕まえた瞬間に仕留めに掛かる

『チャンピオン』は敵の攻撃を受けてもその隙を突いて一撃を叩き込む

互いにタフさと攻撃力に自信がある選手のタイプ

この2人が闘うとどうなるか

どちらかが小手先頼りの戦いに転じる?否

どちらかが防御に徹する?否

 

自らの矛を必殺と誇るなら

 

「オォぉぉぁッ!!」

「フンッ!!」

 

肉を切らせてでも相手の心の臓に矛を突き立てるのだ

 

「ブッ!」

「グッ!」

 

互いの拳が相手の横顔を殴る

体が後ろへ飛ばされ、片足が浮く

だがすぐにその足を地面へ叩きつけるように踏み込み、再び相手の顔面へ拳を叩き込む

 

「ァッ!!」

「カッ!!」

 

同じように繰り返されるやり取り

受け流す事はあっても、防御などしない

防御という後手に回った瞬間、相手に攻められ続けて地に伏せるのが目に見えているから

少しでも多く相手に一撃を喰らわせる

それだけが彼等のやるべき事だった

 

『ッ!!』

 

再び彼等の拳が交わろうとした瞬間

 

「ストップッ!!」

 

間にレフェリーが割り込んできた

互いに呆気を取られた様な表情を浮かべ、ゆっくりと掲示板の方へ向ける

すると時間は0を示していた

 

「もう、そんな時間か……」

 

納得するように自分のコーナーへと歩き出す

用意された椅子へ倒れ込むかのように座る

 

「ハァ……ハァ……」

「大丈夫か、西木野」

「大丈夫っすよ……これ位」

 

とはカッコつけたはいいものの、3RD特攻同然の殴り合いを続けるというのは尋常ではない程にキツい

それも相手は日本一の男だ

やはりこれまでとは格が違う

 

「くそったれが……ッ!」

 

あまりの自分の実力不足に苛立ちが込み上げてくる

こんなレベルで躓いている訳にはいかない

スタートラインにつく前に躓く馬鹿がどこにいる

そんな悠長な事は言ってられない

 

「決めます」

「………いけるのか?」

「えぇ、こんな所で躓いていちゃぁ世界なんて夢のまた夢っすからね。即行で決めます」

 

『セコンドアウト』の合図を聞いた瞬間に勢い良く立ち上がる

マウスピースを噛み締めて構えを取りながら前へ進む

相手は此方の表情を読み取ったのか、真剣な表情で構えをとった

互いにこれが最終RDと決めたのだ

 

ゴングが鳴り響く

 

 

 

 

『………ッ!!』

 

 

 

 

 

その瞬間に駆け出す

一秒もしない内に互いの距離が0になる

先に迎え撃ったのはチャンピオンのストレート

それを左手で強引に受け流すと、相手の顔面へ拳を叩き込む

 

「グッ!!」

 

 

 

まさにクリーンヒットだと思った

 

 

しっかりとした感触が拳に伝わっている

 

 

確実に相手より優位な位置に立ったと確信した

 

 

次で止めだと、追撃の体勢を作ろうとした

 

 

だが

 

 

 

「つァ……ッ!?」

 

先に体勢を崩したのは俺だった

膝がガクッと折れる

唐突に右の脇腹、助骨に強烈な痛みが走った

視線を下げると、自分の脇腹に相手の左拳が突き刺さっていた

 

「がァ……ッ!!」

 

あまりの痛みに後ろへ下がる

呼吸が止まる

思考が止まる

何故今あの一撃を喰らったんだ

あの一撃はいつ撃ってきた

想定外の攻撃に頭が追いつかず、混乱が起きた

だが、ここで相手が黙っている筈が無い

混乱している俺を他所に、相手は体勢を整えて再び拳を振りぬいてくる

 

「フンッ!!」

 

相手の必殺とも言える一撃が襲ってくる

ビデオで何度も見たその一撃

何人もの選手がその一撃に倒れた事か

その一撃が無防備な俺の顔面へと迫ってくる

 

「ブぐッ!!」

 

まさに会心の一撃

相手側からしたら、これ以上に無いほどに気持ちい一発だっただろう

顔面が上へと吹き飛ばされる

 

「------------------」

 

世界が白く染まった

意識が薄まり、脱力感が襲ってくる

先程までの痛みも、苦しさもまるで嘘だったかのように消えていく

ただただ眠い

体は浮遊感に包まれながら、重力に逆らう事無く下へと落ちていく

このまま倒れて寝てしまおう、この脱力感に包まれながら眠ってしまおう

そう考え、視線を横へと向けた

 

そこには一人の観客が必死に声を上げていた

 

『--------------ッ!!!』

 

聞こえない

その観客が何を言っているのか分からない

まるで世界の音が止んだかのように何も聞こえない

 

『-------んッ-------でッ!!』

 

涙をためながらその人が叫んでいる

何かを訴えているかのように

なんとか声を拾おうとするが、巧く聞こえない

 

『に-----きのさんッ!!負----ないでッ!!』

 

彼女・・は誰だ

何故、彼女だけがこの真っ白な世界で見える

分からない、分からないが

 

彼女・・だけは、忘れてはいけないと心が訴えてくる

 

辰宮楓・・・だけは、何よりも大切な存在なのだと心が叫ぶのだ

 

 

 

 

 

 

『西木野さんッ!!!負けないでッ!!!!』

 

 

 

 

 

 

「………ッ!」

 

世界に色が戻る

眠気は無くなり、全身に痛みと疲れが戻ってくる

倒れ落ちそうだった体をなんとか立て直し、その体勢で固まる

 

「なにが…ッ!」

 

姿勢を戻そうと全身に力を入れる

それだけで全身に痛みが走る

 

「なにが眠いだ……ッ!!」

 

彼女は泣いていた

何よりも大切な彼女が泣いていた

俺が不甲斐無い姿を見せたばかりに

 

彼女を泣かすなど断じてあってはならない

痛みが走る、それがなんだ

体が動かない、それがなんだ

痛いなら歯を噛み締めて耐えろ

体が動かないなら自分をぶん殴ってでも動かせ

腕が折れれば、もう片方で敵を殴ればいい

足が折れれば、もう片方で立てばいい

 

この程度で彼女の涙が釣り合う訳が無いッ!!

 

「な………ッ!?」

 

チャンピオンは俺が、体勢を立て直した事に驚く

殴りかかってくる俺に対応しきれないと分かったチャンピオンは前をガードで固める

ガラ空きなんだよ!!脇腹がッ!!!

 

「っらッ!!」

「くァ……ッ!」

 

ガードで覆い切れなかった脇腹に、仕返しと言わんばからに全力の一撃を放つ

相手は堪らず体勢を崩し、ガードが落ちる

 

もう一発ッ!!

 

「ぁッ!!」

「ッ、オぉッ!!!」

 

相打ち

2人の顔面に拳が突き刺さる

 

「が…ッ!」

 

再び膝が折れる

すぐに体勢を立て直し、攻撃をしかける

だが、そこに待っていたのは視界一杯に広がるグローブ

 

「ぁ゛……!!」

 

相手の右ストレートが刺さった

再び脱力感に襲われそうになるが、なんとか踏み止まる

衝撃を後に逃がさなかった事で、首がビキビキと嫌な音をたてる

そんな事はお構い無しに、顔面に拳が刺さっている状態で前へ、、前へと動き出す

 

「ッ、ア゛ぁぁァァあッ!!!」

 

その体勢のまま右拳を相手の顔面へと叩き込む

 

「かは………ッ!!」

 

相手が体勢を崩した

残りの体力なんて知らない

次のラウンドなんて知らない

このラウンドで相手を沈める事だけを考えろッ!

 

右拳で相手の側頭部を殴り、左へ吹き飛ばす

それを掬い上げるように、今度は左拳で右へ吹き飛ばす

何度も、何度も、例え途中でガードが入ってきても、構わずそれごと吹き飛ばす

相手に手を出させる隙を与えない

この体力が持ち続けるまで、何度も何度も

 

とうとう腕と足に力が入らなくなったのを確認した

仕上げだ

左拳で右へ吹き飛ばす、そして相手は倒れ込むかのように足から下へと落ちていく

相手の顔面は右拳の直線状の下

左足を前に出し、右を下げて右腕を引く

体を斜めにし、右拳をリングの床の上を走るかのように下から放つ

その拳は見事に相手の顔面を捉えた

 

「ラストァ゛ッ!!」

 

相手は顔面を上へ持って行く

まるで首から上が吹き飛ぶかの様に首を伸ばし、体をロープへと預けた

もう手は出さない

もう手を出す必要は無い

 

「ニュートラルコーナーへ!」

 

ロープに寄りかかりながら、相手はズルズルと下へと降りていく

そして、尻からリングの床へと着いた

相手はもう下を向いたまま動かなくなった

 

 

 

会場にゴングと歓声が鳴り響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「西木野選手、勝利おめでとう御座います」

「ありがとう御座います」

 

勝者インタビューを受ける

その腰には今手に入れたばかりのチャンピオンベルトが巻かれていた

いつもと変わらず、聞かれたことを愛想良く答えていく

 

「何か一言、いただけますか?」

「はい」

 

待っていたと言わんばかりにマイクを強く握に前へ歩み出る

 

「会場の皆さん、応援ありがとう御座いました。皆さんのお陰でこうして日本王座で勝つことが出来ました」

 

その言葉に多くの観客が歓声を送ってくる

これを聞くと、自分は勝ったのだと改めて実感できる

だが、ここからは完全に私的な事をしようとしているので、少し申し訳なく感じる

 

「勝ったから、と言う訳では無いんですが、この場で私的な事を喋ることを許してください」

 

周りの人間がザワつく

それはそうだ、この事は会長と数人にしか言っていない

スタッフ辺りは予想外の行動で驚いている

マスコミの人間は何だ何だと慌てて準備を始める

 

「すぅ……」

 

深呼吸をし、俺は叫んだ

 

「辰宮楓さんッ!!」

 

会場のザワつきが尋常ではなくなってきた

特にマスコミとスタッフが慌て始めた

明らかに女性の名前だったから無理もないか

だが一番慌てているのは呼ばれた本人

実際口を両手で塞ぎ、オロオロとし始めている

そんな彼女を両隣に居る忍崎さんと大獄さんが客席から連れ出し始める

マスコミも彼女等が何かしら関係あるのか察したのか、カメラを向け回しはじめた

途中でスタッフからマイクを貰い、リングの上へと上がってくる

少し苦戦したものの、なんとかリングに入れた彼女は俺を見たまま固まっていた

震えるマイクをしっかりと握り、言葉を続ける

 

「私は貴方が……、いや、俺はアンタが好きだッ!!」

 

その言葉を聞いて、彼女が驚いた表情を浮かべる

これが嫌々な気持ちでの表情なら、悲しくなってくるな

これまで丁寧だった口調を崩して、いつも通りの雑な言葉遣いを使う

俺は覚悟を決めて言葉を続けた

 

「アンタに会ったあの日から、その気持ちは変わらない。短い期間だとしても、俺はこれから先でアンタ以上に好きになれる女性には出会えないと断言できる。例え断られようと俺はアンタを好きでい続ける。」

 

近くにいるスタッフから、用意して貰っていた小さい箱を受け取り、彼女の元へ歩き出す

 

「俺はこの手で世界の座を手に入れる。この手で『最強』の座を手に入れてみせる。アンタにはその時も、そしてその先もずっと俺の傍に居ていて欲しい」

 

手を取り、開かせる

 

「難しい言葉なんて言う気は無いし、そんなまどろっこしい事をするつもりは無い」

 

彼女の手に、そっと箱を乗せる

そして箱を開ける

 

 

「俺と結婚してください」

 

 

箱の中に納まっていた指輪を見て、彼女の体が揺れた

彼女は箱を両手で包むと、自分の胸元まで持っていき、大事そうにしてくれる

だが、彼女の顔を下に向けてしまって表情が見えなくなってしまった

 

「えっと、あの……」

 

第一声は、とても不安そうで震えた、か細い声

すぐにでも消えてしまうのではないのかと、思ってしまう程に

 

「な、なんで私なんですか……?」

 

顔を少し上げてくれたが、浮かぶ表情は今にでも泣きそうだった

 

「だ、だって私何も出来ないんですよ?料理だって一人でまともに作れませんし、何をしたって鈍臭いんです」

 

とうとう目尻から涙がツーと流れる

 

「貴方の事が好きです…私もあの会った日から、日に日に貴方に好意を抱き始めました。でも……」

 

バッ!と顔を上げて此方を苦しそうな表情で見てくる

その表情を見るだけで俺の胸が締め付けられる様な感覚が襲った

 

「西木野さんは知らないかもしれませんけど、嫉妬とかいっぱいしますし!我が侭だって言ってしまうかもしれません!貴方に好かれようと隠していた部分もあります!めんどくさいって思われる所なんていくらでもあります!!」

 

大声を上げ、髪が振り解こうとしているかの様に激しく揺れる

涙もそれに付き添うかのように宙を舞う

これが彼女の本心

これが自分の知らなかった彼女の部分

俺はそんな彼女の本心に、自らの本心で答える

 

「関係ありませんよ、そんなことは。隠している部分?そんなものは、誰だってある。俺だってアンタに必死に好かれようと隠していた部分なんていっぱいある。」

 

彼女は呆気に取られたかの様な表情で見てくる

 

「だったら辰宮さん、その隠している部分をこれから先を共に生きて、教えてくれ。アンタの全てを教えてくれ。それだけで、俺は幸せになれる」

 

彼女に握られている箱を受け取り、中から指輪を取り出す

そして彼女の前で膝をつく

 

 

「私の人生を貴方に捧げます。代わりに、貴方の人生を私に下さい」

「……ッ!」

 

 

その言葉と共に、彼女の左手を此方へゆっくりと引き左薬指へ嵌める

彼女の涙が溢れんばかりに流れ出す

 

「ほんとうに……?本当に私なんかでいいんですか……?」

「貴方がいいんです」

「これを私が貰ってもいいんですか?」

「貴方だけに貰って欲しいんです」

 

彼女は流れる涙を拭くと、此方の胸元にそっと抱きついてくる

これまでにない程に、彼女の顔を近くに見れて彼女の温もりを感じる

 

 

「キス……して下さい」

「喜んで……」

 

 

『西木野 宗一郎』に生を受けて初めてのキスは涙の味がした

ここで断言できる、俺はこれからの一生は世界の誰よりも幸福な世界であると

誰よりも幸せな人生を、誰よりも愛する女性と一緒に歩むのだ

 

 

 

会場の歓声を背に、俺の人生で最初で最後のプロポーズは成功で幕を閉じた




どうだったでしょうか

眠い中書いてるもんで色々と変な所があったと思います
何か見つけたらご報告お願いします

批判は辞めて~
僕は褒められて伸びるタイプなのですよ



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第6話 録音は大事

超お久しぶりです

最近小説書きを再開したので、こうやってまた皆様に私の妄想を届けようかと

まぁ私は勝ち組ですかね(唐突)
何がですって?
出身は静岡生まれ、出勤時には伊豆箱根鉄道を使っているという勝ち組ですよ
もうね、乗りまくりですよNEWラッピング電車「HAPPY PARTY TRAIN」
きっと態々遠くから来たファン達が必死になって写真を撮っているのを自分は上から目線で見ているのが最近の日課です(下種野朗)

後、今回の話は後半部分、マニアックというかフェチというか、そういう部分で女性に不快な思いをさせるかもしれない描写があるかもしれません
女性の方は戻るのボタン押して下さい

ま、こんな小説に女性層があるとは思いませんけどね!!

あとがきに今後の小説について書かせて貰っています
見ていってください

もう眠気の中書いたもんだから変な所があったら送ってください!


あれから色々あった。

 

インタビューをお願いしますと数多くのマスコミが殺到してきた。まぁ、有名人のプロポーズなんてネタはなるべくすぐにでも記事にしたいのだろう。

だが、俺はそんな彼らを押し切り『彼女の両親に挨拶に行かせて貰います』と押し切って試合の後すぐに車で彼女を連れてご両親の元へと向かっていった。その時に、腕の中で楓を抱きながら移動していたのだが、彼女は終始顔を真っ赤に染めながら抱きついていた。

もうね、あれですよ。抱きつかれると彼女の豊満な胸がもうね、押し付けられる訳ですよ。最高だね。

家に着きチャイムを鳴らすと凄い位に慌ててご両親がドアを開けた。なんだこの慌てようは?と驚いたが、リビングに行くと、俺の試合が生中継で放送されているチャンネルが流れていた。おそらく、お二人は生中継の俺のプロポーズをリアルタイムで見て、ご両親に挨拶に行くというのを見て慌てだしたのだろう。

 

後で聞いた話なのだが、楓はお二人に自分が俺に告白された事を言っていたらしい。最初は彼女の妄想だと決め付けていたらしいが、一応気に掛けて見た最初の俺の試合が丁度今回の試合だったらしい。

まぁ、驚くか。妄想だと思っていたら、あれよこれよと話が流れて娘がプロポーズされて、挨拶に向かうシーンを見せられるのだから。

『娘さんを私に下さい』と、無駄に着飾る事無く常套句を頭を下げて言い、ご両親に懇願する。

てっきり義父さんに殴られるかと思っていたが、顔を上げてみれば逆に頭を下げられていた。

 

一番の難関だと思われた楓のご両親の挨拶は無事済み、後は俺の両親の説得か……

俺は自分の両親を適当に考えていたのだが、楓は途轍もなく緊張していた。やはり、病院の跡継ぎに嫁ぐというのは色々と思うところがあるのだろう。

俺は断られないだろうと思っていたし、仮に断られたとしても父親に喧嘩を挑めば良い位だと思っていた。

結果から言うと、案外呆気無くOKを貰った。家の両親は昔から親馬鹿な部分もあったからだろうか、その流れで俺の連れてきた女性なら特に拒もうとはしないようにと前から話し合っていたらしい。

ちなみに、家の両親も中継の映像は見ていたらしいのでプロポーズのシーンも見たし、録画までしていたらしい。いないんじゃないかな?両方の両親がリアルタイムで子供のプロポーズシーンを見るのって。

 

結婚式はその数日後に行われた。もうありとあらゆる伝手という伝手を使って、楓に似合うウエディングドレスを探した。自分で言うのもなんだが、有名人ともあって知人が多く居るので、最初は身内だけで済まそうかと思っていたが、楓が『宗一郎さんとの結婚式……、私にとって最初で最後の結婚式だから、記憶に残るような盛大なモノにしたいな』なんて可愛い事を言われたもんだから、思い切って1000人近くまで利用が出来るホテルの結婚式場を選んだ。

カメラも多かったし、最初は式の邪魔になってしまったかと思ったが、楓に聞くと『綺麗な写真を撮って貰いたい』『宗一郎さんはその……私のモノだって、ね?勿論、私も……』なんて言うから思わず抱きしめてしまった。

式は盛大に開かれ、様々な所でも取り上げられる程だった。ネットでも、来賓客が豪華過ぎると話題になったものだ。

そして一番重要だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初夜は最高でした まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

それから長い歳月が経った。俺も楓も互いに歳を取ったが、楓の見るからに異常とも言える若々しさは素晴らしいの一言。

色々と最高。もう色々と(意味深)

息子も産まれて、色々と経験してきたが人生最大の衝撃を目の当たりにした。

 

1998年4月19日 天使降臨日

 

天使から天使が産み落とされた素晴らしき祝福されるべき日。

連絡を貰い、仕事を無理矢理抜け出して処置室に行くと、なんと中には天使の様な天使が、天使の様な小さい天使を、天使の様な笑顔を浮かべながら腕に抱いていたのだ天使(混乱)

 

天使の名前は『西木野真姫』

まだ、ぽっちゃりとしていて、目もまともに開けられていないが可愛い顔。

髪は産毛の様に薄くしか生えていないが、楓譲りの美しい赤髪がしっかりと生えている。

この時に確信した。この天使は将来とんでもない美人になるのだと。

あぁ、それはきっとまるで楓の様に美しく可愛く綺麗な女性に。

 

俺は出産を終えた楓と生まれたばかりの真姫が病室で寝たことを確認すると、興奮のあまり、全力猛ダッシュで奇声をあげながら家へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

産まれてからそれなりの歳月が経ち、真姫がウチで揺り篭の中で眠る日々が続く。

毎日が最高の日々だ。朝から晩まで可愛い彼女の声が聞けたり寝顔が見れる。仕事から家に帰って来ると、揺り籠の中で眠っていた真姫が俺に向かって声を出しながら手を伸ばしてくるのだ。

壊れ物を扱うように慎重に彼女を抱きかかえる。

首がすわる程度には成長したが、それでも雑な扱いをすれば大惨事だ。

抱きかかえながら優しく話し掛けると、彼女はキャッキャッと笑いながら手足をバタつかせる。可愛いが何処で笑いのツボに入ったのだろうか疑問だ。

彼女の小さな手に指を持っていくと、弱々しくもその指をしっかりと握っていき、「あ〜、ぅ〜」と俺を萌殺しにきているのではないかと疑いたくなる程に可愛い声を出してくる。

思わず満面の笑み浮かべてしまう。

えぇい、息子よ。邪魔をするんじゃない。この子はお前の妹じゃない、私の娘だ(錯乱)

 

少しの間、真姫で遊ぶと流石に長い間持ったままだと疲れてしまうだろうと思い、ゆっくりと揺り篭へと戻す。その時、「もっと、もっと」とでも言うかのように俺に手を伸ばし続ける真姫を見ると、再び抱きたくなる衝動に駆られるが、自分に拳を叩き込んで何とか耐えた。

仕事疲れを真姫で癒したところで、楓とのスキンシップでもしようと、冷蔵庫から取ったキンキンな缶ビール片手にリビングへ戻ると、そこには少し悔しそうな顔を向けてくる楓が居た。

 

「ホント、真姫ちゃんは宗一郎さんの事が好きなんだから」

「楓の事も負けず劣らず好きだよ、きっと」

「でもあの子、私と居る時は落ち着いているのに、宗一郎さんが近くに居ることが分かるといきなりはしゃぎ始めるのよ?」

「同性と異性の親じゃ、違うモンなのかね」

「この子はそんなこと無いのに、ね~?」

 

膝に乗せて掴んだ息子の両手で遊びながら同意を求める。

息子の方はもう2歳近くになるので、多少言葉を喋れるようになってきた。

とは言っても、喋れるのは「おとー」「おかー」といった限定的なモノでしかないが。

そんな息子は、彼女に問われた意味が分からず、首を傾げる。

 

「この子は懐いてくれてるのに、真姫ちゃんはパパにしか懐かないなんて。ママはちょっとじぇらしーです」

「確かに懐いてるには懐いているけど、その子だって俺より楓の方に懐いているだろ。やっぱり異性の親の方が懐きやすいんだろ」

「ありがとね~」

 

そう言って息子の頬にキスをする。

その瞬間、俺は固まり嫉妬の視線を息子に向けながら、もう一度じぇらしーと舌足らずな感じで言って欲しいと考えた。

そんな俺を見て、楓がまるで勝ったかのような余裕な表情を浮かべる。

 

「ふふふ、宗一郎さんったら。自分の子供相手に嫉妬してるの?」

「当たり前だ。今は物心がついていないから許すが、物心がついたらもう一人の男と見る。だから楓がキスする事も、楓にキスすることも許さん」

「まったく……宗一郎さんはかっこいいんだか、可愛いんだか」

 

少しの間の後に、よしっ!と謎の意気込みの声を出すと楓は「ちょっと寝かせてきます」と、息子を抱き上げて寝室の方へと戻っていった。

そして、数分後に再び戻ってくる。晩酌でもしてくれるのかと思い、ソファーに座っている位置をずらすと楓は横には座らず、俺の膝の上に乗っかってきた。

目線は彼女に向けたままだが、気づかれない様に膝に彼女の感触を味わおうと全神経を集中させる。柔らかい感触と、程よい重みが膝の上に感じる。段々と息子じゃない方のムスコの自己主張が激しくなってきそうなので、事前にポジションを考えて動く。

 

「おいおい、子供が近くに居るのに良いのか?」

「もうっ。意地悪は言わないで下さい。確かに母親に変わりはありませんが、私だって女です。……子供達が寝てる時くらいは、一人の女に戻らせてください」

 

撓垂れ掛かりながら、体を密着させながら艶っぽい声が耳元で囁かれる。

昔の子供っぽい『辰宮 楓』はそこにはおらず、居るのは女性の色気を纏わせた『西木野 楓』だった。

こんな美しい女性が俺の妻か……。そう感慨深くしながら彼女の頬を撫でるかのように触れる。

 

「ん、ぁ……。宗一郎さんの手、ひんやりとしてて気持ちいい」

 

そう言いながら、撫でていた俺の手をそっと取り頬ずりをして、とろんとした目で此方を見てくる。

 

「良いのか?」

「今更確認をとる必要なんてありません。……それとも、私の口から言わせたいんですか?」

「そうだな……」

 

もう言葉は要らない。もう何年もの間、数えられない程も彼女を抱いてきた。これからする事を理解し、無言の顔の距離を縮めて互いの唇と唇が触れようとする――――

 

「――――馬鹿」

「あだっ」

 

寸前で彼女の額に軽い頭突きを喰らわせる

彼女は身を後ろへもっていき、まるで壊れかけの玩具の様に固まった。

先程の大人な女性の姿は何処へ。

次の瞬間。頭突きを喰らった位置を擦りながら、子供の様な表情を浮かべながら涙目で此方を睨み全身を震わせながら掴みかかってきた。

 

「なんで!?なんでよ『そーさん』!!今のヤッちゃう流れでしょッ!?そういう雰囲気だったでしょッ!?せっかく私が大人な女の魅力を出して誘ったんだよ!?抱いてよ!襲ってよ!!こう、ガバッてっ!!」

「女性がヤッちゃうとか言わない言わない」

「据え膳なんだよ?なんで据えられてるのに膳を食べないの?それでも『そーさん』は男なのッ!?結婚初夜のあの頃の『そーさん』はどこ行ったのッ!?あの積極的な『そーさん』はどこ!?」

 

とうとう化けの皮が剥がれた楓。

先程まで纏っていた女性の色気も、使い慣れたような敬語も何処か遠い彼方へ消えた様だ。だが、これには訳があるのだ。

結婚するにあたって、彼女なりに考えて自分は『西木野 宗一郎』という人物の嫁には相応しくないという結果に思い至ったらしい。『西木野 宗一郎』は病院の跡取りであり、プロボクサーとしても全国的に有名だ。そんな人物の嫁が、ただの「子供っぽい女性」というのは俺には申し訳ないと言い出したのだ。

だから、彼女は俺に相応しい女性になろうと花嫁修業をしたり敬語を普段でも使うようにしているのだ。

その甲斐あってか、世間では『西木野 宗一郎』の嫁は「しっかり者の若々しい女性」という事になっているらしい。

 

だが、蓋を開けてみればこの通り。敬語は使わないし、泣き虫だし、行動の約9割は子供と同じレベルだし、俺のことを『そーさん』なんて何とも気の抜けるあだ名で呼ぶ始末。

最初は「子供が大人の真似事をするのには限度があるからやらなくていい」と言ったのだが、逆にぷんすか怒り出して、自分が納得できないと意固地になって実行したのだ。

まぁ、時々ボロが出て慌てた様子を必死に取り繕うとする楓の面白い姿を見ると言うのも最高なので、俺からどうこう言うのは辞めた。

 

そんな可愛らしくも子供の様に純粋な楓の様子に、はぁとため息をつきながら彼女の目元を触れる。

その瞬間、楓がビクッ!と身を震わせる。

 

「……っ」

「目にクマが出来てるぞ。真姫の夜泣きでまともに睡眠取ってないだろ?」

「そっそれは……」

「楓は子供達と自分の事だけを考えていればいい。俺や仕事の事はこっちでやっておくから」

 

子供の夜泣きというのは母親に尋常ではない程の負荷が掛かる。勿論それで真姫を攻める気など毛頭無い。誰もが通る道だし、赤ん坊は泣くのがお仕事と言っても過言では無いからだ。

今は、こうやって家で一緒に居るが、普段は俺が仕事で家を出ると息子と真姫を連れて、俺か楓の家を一日ずつローテーションで回っている。

流石に二人目を産んだ楓と言えど、夜泣きを一人でどうにかするというのは無理があるのだ。

そんな疲れ果てている彼女が、今から抱かれようなどと、心は良いとしても体に良くないのは明らかだ。

俺に拒絶されたのが予想外だったのか、楓は涙目で俺に訴えてくる。

 

「でも…でもでもッ」

「今ここで楓を抱いて、明日倒れでもされたら後味悪すぎだろ」

「だって…最近ご無沙汰だし……」

「……ったく」

 

それを言われると、まるで不仲な夫婦の様で少し嫌な感じがするが、俺が楓を大切にしすぎているというのもまた事実。

頭を搔きながら彼女に一つの提案をする。

 

「真姫の夜泣きが終わるのは後1、2ヶ月と言ったところか?」

「た、多分そうだと思う」

「なら、夜泣きが落ち着いて少し余裕が出来たら、今度一日だけ二人っきりで何処かに行くか。日帰りの旅行でもドライブでも。」

「それだと子供達が」

「俺の両親か楓の両親に任せればいい。子育ては大切だが、母親にも少しは息抜きが必要だろ?それに、一日預けるのをどっちの両親に任せるにしても、逆にやらせてくれと願い出てくるんじゃないのか。あの人たち、孫大好きだし」

 

ウチの両親は俺に対しても親馬鹿な部分が多々あったが、そんな親馬鹿になる息子の子供となると可愛がり方が尋常ではない。楓の両親は、子供が一人娘だけだったので、息子が生まれたと聞いた途端、凄まじくはしゃいでいたし、可愛がっていた。

どちらとも、子供に負担が掛からなければ一日二日ぶっ続けで可愛がるんじゃないかと思うほどだ。

 

「うん…うん、良いね。そういうの」

 

俺の提案に納得したのか、楓は先程のテンションは落ち着いて俺に体を預けるように寄り添ってきた。

そんな彼女を抱きしめながら、話を続ける。

 

「ここで俺からの提案」

「提案?」

「確かに旅行やドライブも良いが、久々に夫婦の愛を深める為に一日中『ご休憩』するってのもある。そういうのはどうだ?」

 

我ながら、下心丸出しと思うがご無沙汰だったから仕方がないと勝手に納得する。

うん。ご無沙汰だったから仕方が無いな。

俺の言葉を聞いて、彼女の頬が紅く染まる。

 

「『ご休憩』って……」

「捉え方は楓に任せる。一日中寝るもよし、俺と一緒に談笑してもよし。それとも……な?」

「……そーさんのえっち」

 

え?なに今の『えっち』て言い方?可愛すぎて一瞬真顔になっちゃったんだけど。

くっそ!今抱きしめてるから楓の顔が肩に乗っかってて、どんな照れた表情で言ってたか分からねぇじゃねぇかよ!!

マジで今の永久保存版だろ!仕事で疲れたときに今の言葉を携帯から流して癒されてぇ!!

 

「そのえっちな男の嫁に来たんだ。楓をどうしようが俺の自由。イジめようが、辱めようが、嫌がる楓を抱こうがな。恨むならならあの時、指輪を受け取ったあの頃の自分を恨みな」

「そうだね、えっちな人と結婚しちゃったんだから仕方ないね……」

 

まるで諦めたかのように言いながらも、楓は俺の体を強くギュッと抱きしめてくる。

 

「なら、1、2ヶ月後……そーさんが私にどんな事してくれるか楽しみにしてる」

「途中で音をあげて、止めてと泣いて叫んでも止めないからな。鬼畜の所業って奴を見せてやる」

「きちくなそーさんだっ」

 

ヤバイ、鼻から愛が溢れる五秒前。

俺から体を少し離したと思ったら、額と額をくっつけてきてド至近距離で照れた顔を見せながら「きちくなそーさんだっ」なんて言ってきやがった。

やっばい、今の狙ってやったとしても尋常じゃないし、狙ってない素でやったとしたらこの嫁はどれだけ萌度高いんだよ。

舌足らずな言い方が、また可愛い。

 

「今はもう寝ろ。その一日を楽しみたいなら、万全な体調でいないとな」

「うん、ありがとね」

 

荒ぶる心をなんとか落ち着かせながら、軽いキスをして冷静な言い方で彼女を部屋へと送る。

移動している間も、楓は腕にしがみ付いてくる。もうそれは満面な笑みで。

部屋の前に着くと、楓はバッと勢い良く離れてドアを開けて俺へ向き直る。

 

「じゃぁそーさん。私からも一つ、お兄ちゃんを生んだ時にやらせてあげなかった事やらせてあげる」

「ん?」

 

満面の笑みながらも、少し悪戯心を込めた様な表情で彼女は言った。

 

 

 

 

 

 

「母乳、飲んでみたい?」

 

 

 

 

 

 

そう言って、「じゃぁね」と俺の返事を聞かずに部屋へ入り、ドアを閉じた。

俺はあまりにも衝撃的な発言に固まった。

数分間が過ぎ、やっと動けるようになると、ポケットに入れておいた携帯を手に取ると操作をし、録音ボタンを止め、再生を押した。

 

 

『母乳、飲んでみたい?』

 

 

 

 

鼻から愛が溢れた。

 

 

 

それから数日間、俺は寝不足な日々を過ごしたのであった。




真姫ママァにバブみを感じオギャる…最高に尊い

いいね、人妻って
今回は大変でしたよ。赤ちゃんの知識ないから独身の身で赤ちゃんの育て方とか調べまくって、自分に嫌気が差したり
どうしても分からないから両親に聞いたら教えてくれるけどメッサ不審に思われるし

それでは今後の『ウチの真姫がファーザー・コンプレックスを患ってしまった件について』について
現在うなぎパイはオリジナル小説『強者共の夢の跡』というのに必死になっていまして
その息抜きで書いている今現在
あっちはそれなりに文を気にして書いてるけど、こっちはもう思うが侭のぐちゃぐちゃですね
これからは『強者共の夢の跡』を主に頑張っていきたいと思っています
こっちを書くのはそっちが5話位書いたら投稿するかな、位の考えでいます
もし、時間がありましたらそちらも見てください

お願いします

『強者共の夢の跡』
https://novel.syosetu.org/113878/

名前はこんなんですが、内容は下らないです


誤字脱字、そして真姫ちゃん(赤ん坊、幼稚園、小中高)それぞれ書いて欲しいシチュエーションがあったら送ってください
もしかしたら、書くかも知れません

では、また私の息抜きの時にお会いしましょう


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第7話 どうせ みんな まっきになる

真姫が幼稚園生となった。

もう真姫の可愛さが止まることを知らなくて、ビデオを取る手も止まることを知らない。

真姫と過ごす時間は基本ビデオを回して、撮った映像はどんな何気ないものでも一切消さないで自分の10Tの真姫専用のHD『どうせ真っ姫になる』略して『MHD(Maki Horeru Destiny)』に入れている。だが、その『MHD』の一個目も満タンになってしまい、新たに二号機を買ってしまった。

撮っている自分がいうのもなんだが、本当にほとんど真姫だけを映している映像が何千もの数があるので、これがストーカーだったら逮捕されたら牢屋じゃなくて精神病棟につれていかれると思ってしまうほどに多いきがする。

まぁ親は子供の事でやり過ぎてしまう部分があると言われているから、これ位ならその範疇だろう、うん。(真顔)

 

これから、その中でも真姫の可愛い場面の話をしよう

 

 

『親子遠足』

 

晴天の空の下。東京のある大きい公園に親子遠足で来ている。

普通は子供と母親が参加というものなのだが、父親が来てはいけないというルールは書いていないので、当然来させて貰った。

ネットで調べたら親子遠足なるものはママ友達の大事な交流会でもあると書いてあったので、拒否される関係無しに行くつもりだが、一応楓の許可を貰おうと相談しに行ったが、拒否されるどころか逆に喜んでくれたし、真姫も俺が行くことを知った途端、大はしゃぎだった。

 

「少し日差しがキツいですね」

「確かに。でも風は涼しいし、これくらいの方が子供達も喜ぶだろ」

 

頭に被っている麦藁帽子が吹いてきた風に飛ばされないように抑える楓。

我妻ながら非常に絵になる光景だ。何年も彼女の顔を見ているが、未だにその美しさに見惚れることが多々有る。

そんな事を考えていると、先ほどまで子供達の輪に入っていた真姫が此方へ、たったったと両手を伸ばして走ってくる。

 

「ぱぱぁ~!」

「あんまり走ると危ないぞ」

 

そう忠告するも、真姫は聞く耳持たずと言う様に止まらず俺の足元まで来た。

 

「だっこ!だっこして!だっこ!!」

「もうお友達と遊ぶのはいいのか?」

「うん!だから早くぱぱだっこ!!」

 

そう言いながら待ちきれなかったのか、俺のズボンを握って「ん~しょ、ん~しょ」と声を出しながら上へ攀じ登ろうとする真姫。

流石に真姫の握力じゃ上までは来れないと思い、直に彼女の脇の下から掴んで持ち上げる。

 

「ほら、おいで」

 

俺の胸のところまで持ってくると、いつもの様にすぐに首へ抱いてきて俺はそこで持ちやすいように彼女のお尻の下へ右腕を持って行き、座らせるような形を作る。

俺に抱き着いて満足しているのか、真姫は笑みを浮かべながら「ぎゅ~っ!」と声に出しながら首に回した腕に力を込めて抱きついてくる。精一杯の力を出しているんだろうが大人の俺にとってはとても非力で痛みも感じないほどに弱い。その弱さに思わず可愛いと思い笑みを浮かべていると隣に居た楓が俺、というか真姫に両手を広げている。

 

「ママは?」

「やっ!ぱぱじゃないとやぁ!」

 

そう言って更に抱きつく力を強くする真姫に、頬を膨らませぶぅたれる楓。

30を過ぎてもその可愛らしい行動に俺は膨らんだ頬を指で押す。

 

「ぷひゅ~----------って、何をするのそーさんッ!」

「猫被らなくていいのか?」

 

「はっ!」と声を出して、すぐに周りを見渡し先ほどの言葉を聞かれていないか確認すると、ほっと胸を撫で下ろして今度はおっほんと言って姿勢を正す楓。

なんとも忙しい限りだと思いながら

 

「まったく、宗一郎さんは子供なんだから。しっかりしないとメッですよ」

「ぐほぁっ!」

 

まさかの鋭い反撃に堪らず左手で心臓を抑える。キャラを作っての発言なのは分かる。だが、今の『メッ』は威力が強すぎる。もうドキドキが堪らない。もしこれが深夜ならすぐにベットインして女教師の様に俺をリードして欲しい位だ。

俺が何とかドキドキを抑えようとしていると、抱きついていた真姫が「むぅ~~!!」といかにも私怒ってますと言いたいかの様に頬をぷくぅ~と膨らませていた。

 

「ぱぱはままと遊んでばっか!ぱぱはまきと遊ぶのぉ~!!」

 

そう言って顔を小さい両手で掴んで自分の方へ向かせる真姫。ぷにぷにの手が俺の顔を掴んでいると思うだけで思わず頬が緩んでしまう。

 

「ぱぱあっち!!あっちで遊ぼっ!!」

 

兎に角俺を独り占めしたいのか、今居る所からそれなりに離れている特に何も無い場所を指差している。余程俺と楓を引き離して二人だけで遊びたいらしい。随分と可愛らしい嫉妬だと思いながら「分かった分かった」と言いながら真姫を宥めるように頭を撫でると、まだ少し怒っているのか頬を膨らましている。

俺が歩き出し、それに付いて来る様に楓が歩き出すと

 

「ままはだめなのッ!ぱぱとまきだけなのっ!!ままはお留守番~っ!!」

 

そう言って必死に訴える真姫。その真姫に拒否されたことにショックだったのか、ガーンとSEが流れる様な表情を浮かべながら固まる楓。その後すぐに俺に何とかしてくれとアイコンタクトを送ってくるが、俺は苦笑しながら答える。

 

「ちょっと遊んで戻ってくるから。少し待っててくれ」

「え~!?」

「真姫の気が済めばすぐに戻ってくるから。少しの間だけママ友とかと話しててくれ」

「むぅ~!!そーさんは真姫ちゃんにかまってばっか!!私にもかまってよぉ!!」

「これは真姫の遠足だから、今回は真姫に譲ってやってくれよ」

「そーさんの馬鹿っ!もう知らない!!」

 

そう言って頬を膨らませてママ友たちの輪へと向けて歩いていった。

俺は子供二人の面倒をみているのかと思ったのは可笑しくない筈だ。俺がそんな風に呆れていると俺に抱き着いていた真姫は楓が居なくなって満足なのか、「むっふぅ~!」とまるで勝ち誇ったような笑みを浮かべている。まぁ真姫の機嫌より楓の機嫌を直す方が楽だからいいやと思ってその場を離れる。

 

「それで。真姫はパパと何で遊びたいんだ?」

「ん~とね、お花つんだりとか……、あ!どんぐりとか松ぼっくりとか拾いたいッ!」

「お~。どんぐりと松ぼっくりかぁ。懐かしいなぁ。パパも良く拾ってたよ、子供の頃」

「じゃぁまきとぱぱとで、どっちが多く取れるかしょうぶしよ!!」

「よぉし、いいぞ~。あ、知ってるか真姫?」

「ん?」

「どんぐりは焼いたら食べれるし、松ぼっくりは火を着けるとよく燃えるんだよ」

「へぇ!ぱぱは物知りさんなんだね!!」

 

そう言って二人でどんぐりと松ぼっくりを一杯拾って家へ持って帰った。

家でどんぐりを焼いて食べようとしていた所を楓に見つかって「変なもの食べて病気になったらどうするの!」と正座させられながら怒られ、その後に真姫の前で松ぼっくりを勢い良く燃やして満足して寝たら、次の日真姫がおねしょをしてしまった。

 

 

 

 

 

 

『運動会』

 

 

『保護者対抗綱引き』それは父親が子供へ自分の雄姿をを見せられる数少ない場の一つだ。よく「いや…、子供の運動会で親が本気になるとか……ねぇ?」みたいな玉の小さい父親がいるが、俺にとってはそんな事は関係ない。馬鹿にするならするがいい、ドン引きするならとっとと失せろ。俺のこの胸の奥で燃え続ける魂の火は、そんな事で消せやしない。何故なら

 

 

 

「宗一郎さ~ん!頑張って~!!」

「ぱぱ~!がんばって~!!」

 

 

「パパは頑張っちゃうぞぉぉお!!」

 

 

 

俺の二人の天使が俺の後ろで応援してくれるのだから。

もう俺のボルテージは120%突破。もし味方内で「面倒臭い」だの「負けてもいい」だのと弱音を吐いた奴が居ようものなら撲殺することすら厭わない。

 

「いやぁ、西木野さんが居てくれたら百人力ですよ」

「これは優勝は貰ったも同然ですな、ははは!!」

 

プロボクサーとして知名度がそれなり高い俺に期待をして多くの父親達が話を掛けてくる。

 

「任せて下さい。たとえこの腕引き千切れ様とも勝利を勝ち取って見せます」

「す、凄いやる気ですね」

「ま、まぁ私達も頑張りますが、やはりここまでこれたのも西木野さんの力あってのものでしょう」

 

そう、今は決勝戦の準備時間中。これまで3組近くを何とか倒して来たところだ。

そして先ほどこの男性が言った言葉から察せるように、正直俺以外の保護者はあまり体格的には綱引きに向いていない方が多い。正直もう少しでも体格のいい方が居てくれたら、もっと余裕で勝って来れただろう。

だが、そんな事を言い訳にして天使達の応援があるのに負けてしまっていい訳では無い。何が何でも勝たなければならない。一瞬敵チームの保護者の飲み物に下剤でも入れてやろうかと思ったのは内緒だ。

 

「体格差は戦い方で補いましょう。兎に角重心を後ろに、そして体を斜め、掛け声を重視していきましょう」

「はい!」

「よし、次も勝って優勝を-----」

 

その瞬間、敵の白組の方から大きな歓声が上がった。

 

「な、なんだ……?」

「おいおい、あの後ろの二人……」

 

視線を白組の方へ向けると、敵チームの保護者達が縄を掴む準備を始めていた。今見ただけで、俺と同じくらいの体格の男性が数人いる。そして歓声を集めたのは、あの一番後ろの光景だろう。

縄を腹に巻き、そして肩へ回しているやる気満々の渋いダンディな男性。そして、その前にもう一人前にはキリッとした体格の良い男性がいた。その姿はとても貫禄があり、見ているだけで此方を威圧してくる

 

「『アナコンダ巻きの穂むら』に『園田道場の家元』だ……」

「『園田道場の家元』は大体分かりますけど……『アナコンダ巻きの穂むら』って?」

 

一人の保護者が恐れ慄いて呟いた聞いたことも無い言葉を聞き返す。

 

「あ、あぁ、西木野さんは今年が初めての参加だから知らないか。実はあの後ろの男性2人。確か2年生の保護者だったかな。あの人達が去年の保護者対抗綱引きで優勝した立役者でね。それに一番後ろの人のあの巻き方。体に巻きつけて強そうな姿から保護者の中で『アナコンダ巻き』って言われていて、あの人のやっているお店が『穂むら』って名前だから、そんな呼び名がついたんだ」

「『穂むら』?『穂むら』って確か近くにある……」

「あぁ、和菓子屋の『穂むら』さ」

「ったく、百歩譲って家元の方はまだ分かるにしても、和菓子作る何処の工程であんな筋肉使うって言うんだよ」

 

隣にいた男性が毒づくように言う。

言われてみればあの男性、見たことがあった様な気がすると思ったらあの和菓子屋の『穂むら』の人だったのか。それに何故か服装は私服ではなく、仕事着である白い板前の格好をし、家元の方も真っ白い胴着を着て参戦している。そんな白い服の上に縄を巻いて大丈夫かよと思ってしまったのは俺だけではない筈。

二人とも袖を肩まで捲った所から見えるのは一般の中年の男性のとは思えない盛り上がった上腕二頭筋などの腕の筋肉が見える。

 

「やっぱり今年も来たかぁ。それに同じチームっていうのは運が悪かったなぁ」

「去年、あの人達のチームに負けちゃったんですよねぇ。」

 

段々とやる気を失っていくチームメイト達。だが、ここで怒鳴ってしまってはせっかくの楽しい運動会が冷めてしまう。なら、どうすればいいか。自分に何が出来るか。

その答えが出るのは、そう掛からなかった。俺は笑みを浮かべて歩き出す。

 

「はっ、上等ですよ」

「西木野さん?」

 

隣の保護者の声に答えず、俺は歩き続けポケットに入れていたゴムを取り出し、前髪を含めて全て後ろに持っていきオールバックをポニーテールの要領で髪を纏める。

そして楓達の目の前にまで歩いていき、自分の着ている服に手をかける。

 

「楓」

「え?どうしたの宗一郎さ------わぷっ!」

 

着ていた長袖の上着を脱いで楓にふわっと投げて、下着で着ていたタンクトップ一枚になる。

その瞬間、周りの観客から声が上がり拍手が巻き起こり始める。次第にその声が会場全体に広がり、さらに歓声と拍手が上がった。

 

現役次代に比べて多少見劣りしてはいるが、今でも維持し続けている一般人とはかけ離れたほどの筋肉。露出した上腕ニ頭筋、タンクトップを下から押し上げ形がはっきり分かる胸筋に腹筋(一つ下のサイズを着ているのは秘密)。

まだそれなりに男として魅力があるのか、歓声の中には黄色い声が大半を占めていた。それを聞いて俺は心の中で喜びながらも、楓に見られたら拗ねられると思い顔には出さない。

元の場所に戻る前に楓の隣にいる真姫に

 

「真姫。パパの背中、ちゃんと見とけよ?」

「うん!ずっと見てるからがんばって!!パパ!!」

 

もう一度貰った天使の応援に俺は振り向かずに片腕を突き上げて答える。

 

 

シャッター音が幾つも鳴り続けていて、もしかしたらメディアも来ているのかもしれないと思いサービスでもしよう思った。俺は残った片腕もバッと上へ突き上げ、そして叫ぶ。

 

「ヨッシャぁァッ!!」

 

更に盛り上がる観客達とチームメイト達。これでこの会場は同等、いや此方の赤組に傾いたと思っていいだろう。俺はそう思いながら綱を握って体に巻きつける。あっちがあんな派手な事をしているのに、こっちだけなにもしていないというのも、絵面が寂しいものだろう。モノマネしているようで少し気が引けるが『目には目を、歯には歯を、アナコンダにはアナコンダを』という事で許して貰おう。

 

「あの西木野さんがアナコンダ巻きをやっている……!」

「俺達もガチでやらねぇと……ッ!!」

「なんだろう、そこはかとなく感じるランボー感」

「野朗ぶっ殺してやる!!」

「星空さん、そりゃランボーやない、コマンドーや」

 

子供達に聞こえないことをいい事に物騒な事や、元ネタが子供達には分からない事を好き勝手に言い始める。まぁ真姫に聞こえなければいい。

これでもし勝って真姫の元に戻って『やろう、ぶっころしてやる~』なんて言われた日には、もう一度言って貰った映像を録画した後で、もう笑いが止まらなくなって可笑しくなってしまって、綱引きに参加していた味方父兄の中から犯人が見つかるまで一人づつ殴りに行くところだ。

 

気を取り直して縄を体にキツく絞めつけ、縄を握った手に力を込めて腰を落としておき、試合開始の合図を待つ。周りの保護者達もそろそろ時間なのだと分かったのか、静かに自分の配置の場所のつく。

 

「ふぅ……」

 

息を吐いて、落ち着いて視線を前へ向けると白組の一番後ろの『アナコンダ巻きの穂むら』と『園田道場の家元』と視線がぶつかった。

子供の運動会だから皆笑顔……ではない、少なくともこの三人に遊び心など一切無い。背負っているもの子供の応援があって負けていいと思う自分が許せないのだ。

睨んで威嚇する訳では無い。ただ、真剣な視線がぶつかり合うのみ。まだか、まだかと、頭と体が必死に叫び続ける。

 

縄の中心に審判である体育の先生がピストルを持って上に立つ。この小学校の体育の先生のパフォーマンスで引っ張られると同時に上に上がった縄と一緒に飛び上がって華麗に着地するという伝統があるのだ。

 

その先生がピストルを持った片手を上に突き上げ

 

『……………………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァンッ!!!!

 

 

『フンッ!!!!!!!!!!!』

 

 

全身の筋肉がこの一瞬でフルスロットルで働く。

 

「くッ!!」

 

少しではあるが、白組の方に縄が持っていかれる。なんとか踏み止まるが、すぐに取り戻せるわけも無く早くも拮抗状態となる。クソッと悪態を吐きながら顔を顰める。

 

俺達が必死にやっていると、縄の中心の所で少し人が集まったり放送で何かを言っている。

コンマ何秒の瞬間に縄が上に上がり、体育の先生が異常な高さまで打ち上げられたから、それで何かがあったのかもしれない。だが、先生が着地で失敗して死んでしまおうが知ったことではない(真顔)。俺達の戦いは勝敗が着くまで終わらない。

 

『声出せえぇェぇェッ!!!!!!』

 

両チーム共同時に同じ台詞が怒声の様な声で響く。

綱を握った全員が『オーエス!オーエス!!』とリズムを刻みながら体を上に向けて倒れるように引き合う。

 

「……ッッ!!!」

 

自分の歯を砕くつもりで噛み締め、ケツの穴を閉め脹脛と腹筋と腕、手に全身全霊で力をこめ続ける。

全体的に体格の良い親と変な二つ名がついている親が二人も居るだけあって、相手の力は尋常ではない。だが、負けはしない。負ける訳にはいかない。

 

拮抗が崩れ、徐々にだが赤組が優勢へと傾いてくる。

今度は白組の面々が顔を顰め始めた。

 

 

『オーエスッ!!オーエスッ!!』

 

 

両チームとも熱を帯び次第に大きくなっていく声に更に観客達の声が重なっていく。

 

アンタ達も家族の応援を背負っているから負けられないのは分かる。その気持ちはここに居る親達の殆どが理解出来る筈だ。でも、こっちはその家族の応援とは別に元世界チャンピオンの肩書きを背負っているんだ。別にそっちを貶す気持ちは欠片もないが、これだけは言わせて欲しい。

 

 

背負ってる重みが違うんだよ…ッッ!!

 

 

綱を引きちぎる気持ちで全身全霊の力を込める。体中の血管が浮かび上がり、頭に血が上り顔が赤く痺れる感覚を感じた。もう少しで血管が千切れて血でも吹き出るんじゃないかと思うほどのものだったが、そんなものでこの一戦を勝てるのならば俺は喜んで血でも噴出させてやる。

 

「オォぉぉぉッ!!!!」

 

掛け声を出すのをやめ、まるで獣の様に吼える。その声に触発され、チームの面々が同じように叫び始める。白組が必死に喰らいつくが、もう止められやしない。次第に縄の中心に張られたテープが此方に近づいていき赤組の白線の上を通過した。

 

 

 

 

パァンッ!!!!

 

 

 

 

一瞬の静寂

 

だが、すぐに観客達と選手達の声が会場に溢れ出す。

俺は終わった後の事を考えてなかったから、縄が緩んだことによって俺は後ろに受身もとれずに勢い良く倒れた。久々に全身の筋肉を動かして疲れ果て動くのもダルく感じ少しの間だけでも休ませて貰おうかと倒れていると、上から影が覆ってきた。

 

「――――――――」

 

太陽を背にしていて全体像しか見えないが見えないが、それだけでも今目の前に居るのが誰かは十分分かった。

 

「…アンタ、本当に和菓子屋の人間かよ。まだ武道家の方が頷けるぜ」

「――――――――」

「ったく、そんな体格した人間が言っても説得力無いっての」

 

彼は手を差し伸べてくる。

 

「――――――――」

「はっ」

 

彼の言葉に思わず笑ってしまった。

 

「次は敵としてじゃなくて仲間としてアンタとやってみたいよ」

 

そう言って彼の手を取り、立ち上がった。

 

 




『アナコンダ巻きの穂むら』というのが生まれたのは数日前の深夜の事

この文字を特に深く考えずにスラスラとパソコンに打ち込んで数分後、読み返したら俺は自分で『俺、頭イッてんじゃねぇかな』って思ってしまいました。

『アナコンダ巻き』というのは、実際ウチの高校の学年主任のグルメリポーターの石ちゃんの体格の様な人が体に巻きつけてやって、何年もそう呼ばれていた所から出てきました。

後は体育教官が縄の上に乗っかって飛ぶやつとか

高校時代、今となっては感謝の気持ちで一杯です。小中で水泳5Mしか泳げなかった僕が100M泳げるようになったのですから

あぁ今でも思い出せる。「この25M泳げなかったら、夏休み俺と仲良く泳ごう」と言われあまりの恐怖に見よう見まねのクロールを息継ぎ出来ないから無しで一心不乱に視界真っ白になりながら泳ぎきり

プールサイドを体育教官全員が囲み、「今から30分間1レーンから6レーンを泳ぎ続け上がったら最初の1レーンからの繰り返しを続けろ。休憩は無しだ。もし止まったとしても歩くな。すぐに泳ぎだせ」そういわれてやった遠泳の初日にクロールの息継ぎ下手で水ばっか飲んでたけど「あ、止まったら死ぬやつだ」と思ったら初日でいつの間にか息継ぎが完璧になってたり


ほんと、いいおもいでだっだ




オリジナルの小説を書いていたら遅れてしまいました。申し訳ありません。

『親子遠足』は自分の妄想と思いつきで書いて「ゆるキャン△」見てたらまつぼっくり燃やして真姫ちゃんにおねしょさせたくなって、『運動会』は非ログインユーザーの「Sammy」さんに「幼稚園とかの運動会でよくあるお父さんいらっしゃいみたいなやつで大人気なく本気出して真姫ちゃん(小)に喝采をあげてほしい。」と言われたら、あの汗臭い文章と『アナコンダ巻きの穂むら』とかいう意味の分からないのが生まれました。
自分でいうのもあれですけど、ラブライブの二次創作の中で一番フリーダムで下らない小説書いてるなって思いました。

最初は『アナコンダ巻きの穂むら』出た瞬間、もうこの小説書くの止めようかなって思ったんですけど、最近感想で是非書いて欲しいと何名か送ってくれたので投稿させてもらいました。

これからも不定期で更新させて貰います。もしかしたらすぐかもしれません。そうじゃないかもしれません。

要望されたシチュはなるべく書いていきたいと思います。




疑問なんですが、非ログインユーザーの人に返信送っても、届くんですかね?


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第8話 ここに林檎があるじゃろ?

それは毒凛語です。




―――WARNING!!―――

―――WARNING!!―――

ここから先は真姫をキャラ崩壊させたことによって道連れのようにキャラ崩壊をしてしまった凛が登場してしまいます。

凛ファンは見たら思わず「え、この子誰?」って思われる可能性大なので、凛ファンはブラウザーバック推奨です。

もし見てしまってイラッときて感想に罵詈雑言を書かれてもメンタル紙な作者はその全てを無視します。

言質書きましたからね?

それでも良いというモノ好きがいましたら、続きをどうぞ


同学年の中で『西木野真姫』とい存在は高嶺の花の様な存在だ。

西木野総合病院のご令嬢であり、様々な習い事をしていてその中でもピアノの才能は突出したものがあるという完璧な存在感に近寄りがたく感じるのは仕方がないだろう。

 

そんな彼女と中学二年生への進級によるクラス替えで同じクラスになることになった。クラス替え初日、教室に入ると多くのクラスメイトは様々な形でグループを作っていた。趣味が一緒の者、部活が一緒の者、旧知の者、各々が今後このクラスで生活していく上で楽しく過ごしていく為に積極的に動いている。そんな中で『西木野真姫』はポツンと一人机に肘つきながら窓の外を見ていた。

 

その姿に多くのクラスメイトが見惚れたことだろう。彼女の美貌で儚そうな表情で外を見ている姿はまるで絵画を見ているかのような神秘的なものを感じる。

彼女が一人でいるのはクラスメイトからの嫌悪感からでも虐めでもなく、ただそんな状態の彼女に近づくのはまるでその一枚の絵画を壊してしまうのではないかという申し訳なさを無意識に抱いてしまうからだ。

 

そんな彼女に私は今から話をかけに行く。

彼女は特に親しい友人は居ないとの事を聞いた。本人はそれに負い目を感じてないだろうし、もしかしたら自分から一人になっているのかもしれない。でも残り2年しかない中学校生活を友人を特に作ることなく終わらせるというのは他人事だとしても、もったいないと感じてしまったのだ。ただの自己満足だし、西木野さんからしたらただの迷惑かもしれないけど一度思いついたらやらないと気が済まない自分の性なのだ。

 

「あ、あのっ……西木野さん!」

 

緊張から若干声が裏返ってしまったが過ぎた事を言っても仕方がない。変な相手を見るような目で見られていないだろうかと心配して西木野さんを見ると彼女は変わらず外を見ている。私の声が聞こえなかったのだろうか思ったが、普通ならあんな裏返って大きい声が聞こえなかったなんてない筈だから、イヤホンか何かを耳にしているのかもしれない。もう一度やり直せると分かると緊張は解け、息を整えてから気付いてもらう為に彼女の肩にそっと触れる。

 

「あの……」

「ひゃぁっ!?」

 

脅かすつもりはなかったのだが意識外のところから突然触れられた事に驚き体をビクッ!!とさせ少し飛び上がり、その拍子に机の上に置いてあった西木野さんの携帯が床へと落下していく。

 

「あ、ちょっ……!」

「よっ!」

 

持ち前の反射神経でなんとか床に落ちる前にてでなんとかキャッチすることが出来た。床に落ちることはなんとか防いだが、彼女を脅かしてしまって尚且つ携帯まで落としそうになり迷惑を掛けたということには変わりはない。

 

「ご、ごめんね西木野さ―――」

 

姿勢を戻そうとして何気なく手に持っている西木野さんの携帯の画面を見た。いや見てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画面一杯に映るパンツ一丁の男性を壁紙にしたロック中の画面を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――――」

 

 

 

声にならないという事はこういう事なのかと齢十数歳でこうも体験できるとは思わなかった。今自分の視界に納めている光景を処理できないというか、したくはない。

多くの知人の中で自分の好きの俳優の写真を壁紙にするのは何人か見た事があるが、パンツ一丁の男性などという第二次性徴で芽生えた微かな性欲を爆発させて思い立った様な写真を壁紙にする女子中学生は初めてだ。しかもロック画面なんて誰でも見れる画面の壁紙にするだなんてどんな神経をしているのだ。

 

「ありがと」

「ぇ?」

 

自然な流れであっさりと私の手から携帯を受け取る西木野さん。

 

おかしい。パンツ一丁の男性を壁紙にしている時点で彼女の神経が多少おかしいのは分かるのだが、彼女はあのロック画面を同級生の私に見られているのにも関わらず彼女は私の顔を見て「なにか用?」とでも言うかの様に首を傾げているではないか。まだここで隠そうとするか慌てるか恥じていれば、同級生を部屋に招いて片付け忘れたエロ本を皆に見られて慌てる男子学生位の可愛げを感じることが出来たが、あの画像を見られてこの平然さは余程の神経の図太さか、自分の壁紙が中学二年生女子の正常の枠に入っているという、もはや私の常識の枠から外れた非常識の持ち主なのかもしれない。

いや、もしかしたら誰かの悪戯で壁紙を変えられている可能性だってある。最近の女子中学生は陰湿な虐めが流行っているというのをニュースで見た事がある。私は虐めというモノが許せない。もしそんな虐めがあったら私が止めて見せる!

 

「そのロック画面って……?」

「あ、これ?ふふん、カッコいいでしょう」

「ふぁっ」

 

陰湿な虐めの方がまだ納得できる現実というのはなんて恐ろしいものなのだろうか。否定するどころか、感想を求めてくるなんて100人中100人が想定できなかっただろう。

すると突然慌てるように携帯から手を離した。もしかしてやっと自分のやってしまったことに気づいたのか?もしそうなら持ち前のコミニュケーション能力で今までの事は忘れてしまったという事にしてやるというのも吝かではない。

 

「危ない危ない。ロック解除するところだったわ。ホーム画面は人様にあまり見せられない壁紙になっているから」

 

まるでロック画面は人様に見せられるとでも言う言い方に思わず身が震える。

いやいやいや、もうここまで来たら引けない。正直心の中で「もうこの子から離れたほうが良いのでは?」なんて考えも浮かんできたがせっかく一年間同じクラスの一員となる相手に初手で恐れおののいたらその一年間を気まずいものとしてしまうこと間違えなし。ここで西木野真姫の攻略本を作る勢いで攻め立てなければ!!

 

「そ、それにしても写真の人カッコ良いね。どこかの俳優さんなの?凛、有名人とかそういうの疎いから教えてくれたら嬉しいなぁなんて―――」

「パパよ」

「―――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

……これは無理にゃぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな感じでドン引きする様な最低な出会いをした彼女『西木野真姫』と私『星空凛』、それと後で合流した私の幼馴染『小泉花陽』の三人は高校一年現在でも変わらず一緒に行動している。

かよちんとは幼馴染だから変わらずだが、真姫ちゃんとはよく言う腐れ縁のように特に何かを言う訳でもなく流れでここ数年を共に過ごしている。彼女の異常性『ファザーコンプレックス』は半年も一緒に過ごせば嫌でも慣れてきて今では彼女の異常な発言、行動をいなす位は出来るようになってきた。

 

 

「それで。今日真姫ちゃん遅れてきたけど何かあったの?」

「そ、そうだよね。いつもなら誰よりも早く校門前で待ってるのに……」

「……ピアノ弾いてたらいきなり知らない先輩に絡まれただけよ」

「え!?先輩に絡まれたって大丈夫なの!?」

 

慌てて真姫ちゃんを心配して尋ねるかよちん。きっと彼女の中ではカツアゲか何かをされたのではないか考えで頭が一杯なのだろうが、ここは音ノ木坂学院。女子高である上に、ただでさえ最近廃校だなんだと言われている状況で新入生を速攻カツアゲだなんてどんな世紀末的な学園なのだろう。

 

「かよちんな心配しすぎにゃ~。凛は逆に真姫ちゃんに絡んじゃったその先輩の方が心配だよ。ファザコン拗らして変な事しなかった?」

「ファザコン拗らせるってどういう事よ!!」

 

貴方の現状の事を指します。なんて言いたいところだが、彼女は頭は良いくせにファザコンに関する事になるとその時だけ頭の螺子を吹き飛ばし思考が幼稚園児レベルに低下して話が通じなくなる。これならまだ日本語が分からない外国人にボディーランゲージで会話をした方がまだ楽だ。時々ボディーランゲージでなく、イラッときて張り手が飛んでいきそうになるがそこは理性で耐えてきている。

 

「別に何かされた訳でもした訳でもないわよ失礼ね。ただいきなりスクールアイドルになってみないかって言われたから逃げてきただけよ」

「スクールアイドルッ!!!!???」

「う゛ぇえ!?」

 

凄い。まるで弾丸のようだ。

かよちんがいつものアイドルオタクの発作を起こして真姫ちゃんへと詰め寄る。

 

「真姫ちゃんスクールアイドルに誘われたのっ!!??」

「ちょっ。いきなり大声で迫ってこないでよ!!ビックリするじゃない!!」

「グループ名は!?メンバー!?曲とかもうでてるの!?」

「知らないわよっ!すぐに教室出たんだから!!ちょっと凛、花陽をどうにかしなさいよ!!」

「はいはい、かよちんどうどう」

 

流石の真姫ちゃんもこの状態のかよちんには勝てないのか助けを求めてくる。この状態なら真姫ちゃんはかよちんにやられるしかないから、ツッコミ役の私が楽になれる唯一の展開なのだが話が進まないのでかよちんを羽交い締めにして大人しくさせて話を再開させる。

 

「それで、真姫ちゃんはどうするの?」

「どうするってなにが?」

「スクールアイドルになるって話。真姫ちゃんファザコンさえ隠せば見て呉れは可愛い女子高生で通るんだからなっても良いんじゃないの?」

「嫌よスクールアイドルだなんて。あれって朝練とか放課後練習とかあるんでしょ?放課後練習なんてしたらパパと一緒にお風呂に入れなくなるじゃない。なんで自分からパパとの時間を潰さなきゃいけないのよ。正気の沙汰とは思えないわ」

「この年でパパと一緒に入っているのを同級生に堂々と告白する事が正気の沙汰と思えないにゃ」

 

なんでそんな西木野家の闇を聞かされなきゃいけないのだ。私の耳は懺悔室ではないのだぞ。

 

「それにファザコンファザコンって言わないで!ただアタシは純粋にパパが好きなだけよ!!」

「それがファザコンにゃ」

「ファザコンって言うと私が悪いことしてるみたいじゃない。私は純粋な恋心でパパと結婚して子供を産みたいだけよ。そこに淀みも悪意もないわ」

「淀みも悪意もないって真姫ちゃんが自分で誤認識してるからここ数年凛が苦労してるって分かってる?」

「だからアタシは誰に言われても自信をもって『ファザコンじゃなくて純粋にパパが好きなだけ』って言うだけよ」

「それ、凛とかよちんなら何と苦笑いで済むけどまだ慣れてないクラスメイトに言ったらTwiitter案件待ったなしだからね?大人に言ったものなら3者面談待ったなしだからね?それで実際中学の頃に真姫ちゃんのパパとママが学校に呼ばれたの忘れたの?」

 

あの時はもう真姫ちゃんは勿論、呼び出されたご両親も見るに堪えなかった。どこの学校で娘がファザコン拗らせて呼び出される両親が居るのだ。二人とも終始顔を真っ赤にしながら謝っていたのは子供の身でありながらも痛々しさを感じた。

 

「あれはアタシの恋心を抑え付けようとする先生と校則が悪いのよ」

「ファザコンを抑え付けるのは国と法律にゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

かよちんが行きたがっていた先輩達『μ's』のファーストライブが終了。生徒会長とのやり取りを見て「大変だなぁ」なんて呑気に思いながら過ごしたその数日後のことだ。

いつも通り放課後3人で下校しそれぞれの帰路で別れ、私が家に着いた30分もしない時に突然真姫ちゃんから電話が掛かってきた。

 

「はいは~い、なんにゃ真姫ちゃん。パパの凄い自慢はTwiitterに挙げてくれれば皆反応してくれるよ~」

『アンタにそれ言われて実際やったら炎上しちゃったじゃない!危うく心へし折れるかと思ったわよ!!なんで自慢一つで絶え間なく批判ツイートが送られてくるのよ!』

「それがファザコンに対する世論にゃ」

 

皆が批判しまくる言葉を毎日聞かせられるこちらの身にもなってほしい。

 

『って今回は別の事よ!なんか前言ってた先輩がウチの家に上がり込んで来てるんだけど!!』

「え、前言ってたってあの『μ's』の?」ボリボリボリ

『そうなのよ!なんか私の生徒手帳が落ちてたから拾って届けるのを口実に勧誘してきてるの!!3人で来られたら私一人じゃ対処しきれないのよ!!』

「別に追い出すの凛じゃなくて真姫ちゃんのお母さんにお願いしたらいいじゃん。凛一人行った処で力になれるか分からないし」ボリボリボリ

『ママは追い出すどころか逆に先輩達の後押しをしてて助けるどころか敵側に回ってるのよ!』

「真姫ちゃんがお父さん離れ出来るいい機会とでも思ってるんじゃないの?良いお母さんだと凛は思うけど」ボリボリボリ

『ママは敵よ!いつもいつもパパとイチャイチャするの邪魔するし。この前だってパパとお風呂に入ろうとしたら『そろそろ一人でお風呂に入りなさい!』って言ってきたのよ?パパと一緒にお風呂に入ることの何が悪いのよ!?』

「世間体が悪いにゃ」ボリボリボリ

『ってか、アンタいつまでお菓子食べてるのよ!』

 

アンタはいつまでファザコン拗らせるつもりだよ。と思いながら、これ以上お菓子を食べると彼女が五月蠅いと諦めて手に持ったポテチを袋に戻し、嫌々ではあるがさっさと終わらせる為に会話に本腰を入れる。

 

「凛もどっちかって言うとまきちゃんにスクールアイドルやらした方が、まだまともな人間になる機会になるんじゃないかと思ってるからお母さん側だよ?」

『もう!なんでアタシの周りにはパパしか味方がいないのよ!』

「それは真姫ちゃんがファザコン拗らせてるからだにゃ」

『アタシの恋路を応援してくれる人はいないの!?』

「居たら居たで、その人の神経を疑うにゃ」

 

正確には真姫ちゃんのお父さんも真姫ちゃんのファザコンをどうしたらいいか分からずに対処に困っていると聞いたから真姫ちゃんの味方は実質誰もいない四面楚歌状態。好かれている本人は嫌われたくないから強くは言えないし、だからといってこのまま現状のままいったら不味いとも分かっているからお手上げ状態だそうだ。私からしたらさっさと本人に法律のなんたるかを叩きつけてしまえと思っているのだが、そこは嫌われたくないという親心というモノで私たち子供には分からない。

 

「はぁ~」

 

思わずため息が漏れる。

なんで私がこんなに人の世話をしなければならないのだろうか。どっちかっていうと私のキャラ的には元気いっぱいに暴れまわって周りに迷惑を掛けるマスコット的な立ち位置が、何故こんな同級生の特殊性癖に振り回され胃を痛める苦労人の役を務めなければならないのだ。

 

「分かった分かったにゃ。お菓子食べ終えたら寄り道しながら渋々向かうにゃ」

『お菓子食べずに速攻向かってきなさいよ!』

「じゃぁ終わったらアイス奢ってよ?」

『分かったわよ。来てくれたら後でハーゲンダッシ奢ってあげるから』

「凛はハーゲンダッシ程度で動く安い女じゃないにゃ。よくスーパーで売ってるファミリーの箱をもってこなきゃ駄目だにゃ」

『くっ、分かったわよ』

 

よくアイスを奢らせるなら一番高いハーゲンダッシを、なんて言っているがスーパーで一番高いのは箱にぎっしり詰まったあのファミリーのアイスだ。確か値段は1500円近くして、女子高生に奢らせるにはあまりにも法外な値段だが、法外な性癖をした相手なら別に良いだろう。

これがかよちん相手だったらゴリゴリ君程度に済ませるが。

 

「んじゃぁ今から向かうから待っててね」

『高いアイス奢らせるんだから猛ダッシュで来なさいよ』

「んもう、分かってるよ」

 

まぁ食後の運動には丁度良いだろう。

 

 




お久しぶりです。待たせてしまって申し訳ありません。

ネタが思いつかなく、どうしようかと雑に考えて2年が過ぎて、なんかいつの間にか『原作:ラブライブ! お気に入り数 多い順』で2位になってるんでやっぱエタるのは読者の皆様に申し訳ないなと思い、急遽幼少期は諦め原作突入の高校生にしました。

原作の細部は忘れてしまったのでU-NEXTに今日契約して見ながら完成させました。プロット無しの適当感丸出しの酷い文でしたが許してください。
ギャグを書くのが久々だったんで面白く思っていただけるか分からないのですが、一つでもウける部分があれば嬉しい限りです。

これからも適当に思いついたら適当に書かせて戴きますのでよろしくお願いします。時間系列なんてあったもんじゃないので、ツッコミ満載だとしても温かい目で見てください。温かい目で見れなかったら目を逸らしてください。

なんかハーメルンで『ここすきボタン』なんて機能が搭載されたらしいので良かったら「ここ面白い!!」と思ったらやってみてください。
笑いの壺というのは十人十色ですからやってくださったら参考にさせていただきます。

PCはダブルクリック
スマホはスワイプだそうです

なんか分からなかったらガイドラインを見ていただくか、諦めて下さい。

ほぼ酔ったテンション並みの頭で書かせていただいたので、癇に障る部分がありましたら申し訳ありません。

感想と一緒になにかご要望の展開がありましたら参考にさせていただきます。作者の腕でその要望を叶わせる事が出来るかはわかりませんが・・・

感想一杯くれたらやる気出るからよろしくお願いします!






(たぶん)次回予告!!


西木野家で見たある光景に凛は思わず言葉を漏らす

「oh...」

話数を重ねるごとに進んでいくキャラ崩壊!
正直真姫より凛のキャラ崩壊の度合いはダンチだ!!

そして何話先で結成されるかもわからないμ'sで凛は呟く!!

「グループに異常性癖二人は多すぎにゃ」

凛の次の(キャラ崩壊)被害者は誰だ!!




「あ、希ちゃんってなんか幸薄で未亡人っぽいよね」
「凛ちゃん!!??」





※↑のやつ、苦情来たら消しますんで気に障ったら連絡してください。


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