ラブライブ! road to idol m@ster (minmin)
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The clock which was stopping has started working now
ではどうぞ~
今日も、昨日と同じ帰り道。もちろん明日も、明後日も。
でも――それは、永遠にじゃない。往復しなれたこの通学路も、いつか通らなくなる日が来る。そんなに遠くない未来に。
はあ、とため息が出た。
「どうしたのですか?穂乃果。最近ため息が多いですよ」
隣を歩く海未ちゃんが心配そうに聞いてくる。
「あはは。そ、そうかな?」
人差し指で軽く頬を掻く。そんなに多かったかな。
「そうだよ穂乃果ちゃん。最初は行き帰りだけだったけど、最近は授業中もだし……皆、心配してるよ?」
反対側からことりちゃんも声を掛けてくる。
「そっかあ……」
皆ってことは、2人だけじゃなくて学校の子皆ってこと。意識してなかったけど、いつの間にか外に漏れちゃってたんだ。私の、心の中。
「後悔、しているのですか?」
海未ちゃんがぽつりという。顔は、少し俯いていた。ことりちゃんも同じだ。2人とも何も言わない。口にしてはいけないことを言ってしまった。そんな空気だ。
「後悔は、してないよ」
私の言葉に、二人が弾かれたように顔を上げた。
「だって、μ'sはスクールアイドルだから。9人揃ってのμ's。絵里ちゃんも、希ちゃんも、ニコちゃんも、スクールアイドルだってことに誇りを持って終わりにしたんだから。だから、後悔なんてしてないよ」
そう、後悔なんてしてない。
けれど――。
「でも、正直未練はあるかな。μ'sは楽しかったから。本当に――楽しかったから」
そう、楽しかったんだ。本当に、楽しかったんだ。
「そう、ですね……私も、そう思います」
「うん、私も」
それきり会話が止まっちゃった。このままじゃいけないって、わかってはいるんだけど。
「えっと。それじゃあ、ため息は別の理由があるの?」
思い出したようにことりちゃんが聞いてくる。そうそう、そういう話だったよね。
「うん。やっぱり、そろそろ進路のことは真剣に考えないといけないなって。
いつかはお店を継ぐとしても、進学するかどうかは決めないといけないし……」
2人もちょっと真面目な顔になった。
「そうですね。私は、特に大学などで学びたいことがあるわけではないですし。それほど進学には惹かれませんが……ことりはどうですか?」
聞かれたことりちゃんは可愛らしくえへへと笑った。
「私は進学するかなあ。将来は、やっぱりお洋服を創る仕事をしたいって思ってるから。大学にするのか、それともそういう専門学校にするのかは、まだちょっと迷ってるの」
「日本一のメイドは目指さないの?」
「もう!穂乃果ちゃん!」
手をわたわたと降ることりちゃん。その必死な顔が可愛くて、なんだか笑ってしまう。いつの間にか、海未ちゃんも笑っていた。
「もう、ひどいよ、2人とも」
今度はぷくっと頬を膨らませることりちゃん。うん、やっぱり可愛い。
「ごめんね、ことりちゃん。
でもすごいなあ。2人とも、やりたいことがきちんと決まってるんだ」
「そう言う穂乃果は――何か、やりたいことはないのですか?お店を継ぐのは、すぐでなくても良い
のでしょう?」
やりたいこと。
私の、やりたいこと。
海未ちゃんにそう言われて私の頭に浮かんだのは、やっぱりあのシンガーさんで――。
「私は、歌いたい」
気づいたら、勝手に口に出ていた。
「もうμ'sじゃないけれど。もうスクールアイドルじゃないけれど――やっぱり私は、歌いたい」
また、皆無言になる。暫くそのまま歩いた。
歌いたいって思ってる自分がいて。アイドルになりたいっていう自分がいて。でも、それはμ'sの皆への裏切りなんじゃないかって思う自分がいて。μ'sを終わらせたのが嘘になるんじゃないかって思って。
でもやっぱり――自分に嘘はつけない。
「私は、アイドルになりたい」
μ'sのリーダーとしてじゃなく、高坂穂乃果として。私は、アイドルになりたい。
「……そっかあ」
「穂乃果らしいです」
2人が私を見てくすくす笑う。私も、つい笑ってしまった。
その時。
「すいません。
高坂穂乃果さん、でしょうか」
突然声を掛けられて振り返る。すると、そこにいたのは。
スーツを着た、ものすごく背が高い、ものすごく目つきの悪い男の人だった。
「ひうっ!」
海未ちゃんとことりちゃんが私の背中に隠れる。私も思わず後ずさりする。正直、怖すぎる。
「ふっ、ふふふ不審者です穂乃果!早く逃げましょう!」
「ほ、穂乃果ちゃん~」
涙目になっている2人。男の人はそれを見て、困ったように首に手を当てている。
「あの、そういうわけでは……。せめて、名刺だけでも……」
そう言いながら、すっと名刺を差し出してくる。恐る恐る受け取って見て見ると――。
「御城プロダクション、シンデレラプロジェクト、プロデューサー……」
御城プロダクション。有名な女優やモデル、アイドルが大勢いる、大手の芸能事務所。
「アイドルに、興味はありませんか?」
この時。
μ'sが解散してからずっと止まっていた私の時間が、動き出した音がした気がした。
如何でしたでしょうか?
オリジナルなその後について色々異論がある方もいらっしゃると思いますが、面白いと感じてくれる方がいましたら幸いです。
感想お待ちしております。
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Words of the magic to Cinderella
続くつもりはあんまりなかったので、つじつま合わせのために前回をそのうち修正する予定です。
ではどうぞ~
「欠員……ですか」
うちの1階、テーブル席。私を向かい合って座っている目つきの悪いプロデューサーさんは、小さく、けれどしっかりとうなずいた。
「はい。
私がプロデューサーを務めるプロジェクト――シンデレラプロジェクトに内定していた方々から今回4名の欠員が出ました。その欠員の枠の内の1つとして、貴女をスカウトしたいのです」
シンデレラ。継母に虐められる灰かぶりの少女が、魔法をかけられてお姫様になるお話。その魔法は永遠ではないけれども、最後には王子様と結ばれる。そんなお話。
スクールアイドルをやめたところにスカウト。たまたまの欠員。なんだか出来すぎだ。美城プロダクション自体は大手芸能事務所で、電話で確認もすんでいるけれど――そうじゃなかったら、怪しくてとても信じられないくらい、出来すぎだ。
「事情は、わかりました。
けれど、こういう場合って普通はオーディションを受けてた人の中から選ばれるんじゃないんですか?」
またうなずくプロデューサーさん。なんていうか、すごくきっちりした人だ。
「はい。勿論、これから再びオーディションも行います。ですが、それだけではありません。
以前からアイドル候補生として養成所でレッスンを受けていた方や、貴女と同じように私がスカウトした方もいます。残りの3名は既に決まっていますが、皆さんそれまでの経緯は異なります」
確かにそうだ。全員が全員スカウトされるわけじゃない。アイドルになりたくてそういう所に通ってる人もいるだろうし、自分からオーディションを受けに来た人だっているだろう。
そんなことを考えていると、いつの間にかお母さんがお茶受けを持って隣に立っていた。
「いいじゃない、受けちゃえば。穂乃果のしたいようにすればいいと思うわよ?
あ、これうちの名物の揚げまんじゅうです。よかったらどうぞー♪」
返事をする暇もないまま奥に引っ込んで行くお母さん。本当にもう、軽いんだから……。
「あの……いただきます」
「あ、ど、どうぞ」
また至極真面目にいただきますを言う。一口齧って、一瞬止まった後、大口を開けてというわけではないけれど、明らかに食べ進める速度が上がってびっくりした。あっというまに1つ食べ終わってしまう。
なんだか少し笑ってしまった。私自身はもう食べ飽きてしまった味だけれど、こういう風に美味しそうに食べてもらえるとやっぱり嬉しくなる。
「プロデューサーさんって、甘いものお好きなんですか?」
私がそう言うと、少し困った顔をして首に手をやった。大人の男の人には失礼かもだけど、ちょっとかわいい。
「ああ、いえ、その……。
……食には、関心があります」
困り顔のまま後頭部を掻いている。その顔がおかしくて、また笑ってしまった。実は、そんなに怖い人じゃないのかもしれない。
「……高坂さんのご実家が和菓子屋さんだとは知りませんでした」
ぽつりとそんなことを言う。最近は海外ライブがテレビで放送された影響で、うちの知名度も上がったんだけど。プロデューサーさんは知らなかったみたいだ。でも、それなら――。
「あの、どうして私を?
μ'sだから、ってわけじゃないのはわかります。それなら、一緒ににた海未ちゃんや小鳥ちゃんも誘うはずですから。他の皆だって。
私たちは、9人揃ってμ'sでした。スクールアイドルのμ'sでした。3年生の皆が卒業して、μ'sでも、スクールアイドルでもなくなった私は、何処にでもいるただの女子高生です。そんな私を、どうして」
疑問は、気がつけば独白に。最後には悲鳴のようになっていた。
――私は、怖かったんだ。
μ'sは、やっぱり特別だった。最初はちっぽけな存在だったけど。仲間が増えて。目標があって、ライバルがいて。ラブライブで、優勝して。
海未ちゃんも、ことりちゃんも。真姫ちゃんも、凛ちゃんも、花陽ちゃんも。絵里ちゃんも、希ちゃんも、にこちゃんも。皆、私にはないものを持っていて。平凡な私が、まるで魔法にかけられたみたいに特別でいられる場所。それが、μ'sだった。それが終わってしまうのが、怖かった。
アイドルになりたいっていう思いも、まだ特別な何かでいたいっていう自分勝手な思いもあるのかもしれない。でも、その道が実際に目の前に現れると――どうしようもなく、怖くなった。私1人では、特別になんかなれないんじゃないかって。
半分涙声で言い終わると、俯いてしまう。情けなくて、恥ずかしくて、顔を上げられない。お互い無言のまま、どれくらいの時間が過ぎたのか。そんな時。
「――笑顔です」
落ち着いた、優しい声がした。
「私を含め、業界の人間はあまりスクールアイドルには詳しくはありません。学生の、部活動の仲間との一体感や信頼感とは特別なものです。それは、学校という環境で、限られた共に過ごすという経験からくるものですから。当時は上手くいっていたとしても、芸能界で成功する方は極少数です。そういった事情から、私も当初はスクールアイドルの方々から候補を選ぶ予定はありませんでした」
それは、私が心のどこかで思っていたことと同じだった。卒業式で嫌でも実感してしまった、いつまでも一緒には居られない、現実。
「――そんな時、貴女たちの海外でのライブの映像を見たんです。貴女の、笑顔も」
私の、笑顔?
恐る恐る顔を上げてみる。本当に、本当に少しだけど――プロデューサーさんは、笑っていた。
「良い、笑顔でした。
仲間と一緒に歌い、踊ることを。それをファンの皆さんに届けることを。アイドルでいることを――心から夢中になって、楽しんでいる笑顔でした。
それが、貴女を選んだ理由です」
そうだ。楽しかったんだ。本当に、楽しかったんだ。
「貴女がまだ、心から夢中になれる何かを見つけていないのなら。私と一緒に、見つけに行きませんか?学園を飛び出して、μ'sを飛び出して、貴女だけの夢を」
この日。私は、アイドルになることを決めた。誰でもない、私のために。
如何でしたでしょうか?
まだまだ武内Pとの2人だけなので穂乃果の独白ばっかりになっちゃいますね。シンデレラガールズたちと絡むようになれば改善されると思います。
短い上に拙作ですが、感想おまちしております。
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I never seen such a beautiful castle
最近のシンデレラガールズのアニメのストーリーが個人的には残念な感じでして、いくら仕事が忙しくても執筆して憂さ晴らししたい!という気持ちで書いた3話目です。
ではどうぞ~
「ここが、346プロダクション……」
渡された資料を見ながらなんとかたどり着いた場所。広大な敷地に立ち並ぶ建物の数々。門の内側に入ったところで、私はなんだか圧倒されて、口を軽く開けたままぼけっとたっていた。
音ノ木坂の校舎も綺麗だったけど、やっぱり学校だし、建てられてからそれなりの年数も過ぎている。それに比べてここは、なんていうか。これだけの会社なんだぞーってことを見せつけらてるみたいで。
「「まるでお城みたい」ですね……」
独り言だったはずが誰かの言葉とハモってしまった。思わずあたりを見回すと――少し後ろ。見るからに人の良さそうな顔立ちの女の子が、きょとんとした感じで私を見ていた。着ているのは、どこかの学校の制服だろうか。
「卯月?」
きょとんとしたまま固まっている女の子に、となりの黒っぽい制服の女の子が声をかける。綺麗な声だった。ネクタイを締めた制服もしっかりきまっていて、なんだかクールでかっこいい。
「は、はい!え、ええと。あの……」
そう言いながらこちらへゆっくり近づいてくる、多分、卯月ちゃん。恐る恐るという言葉がぴったりで、なんだかハムスターとか、そういう小動物みたいだ。
「あの、もしかして!新人アイドルの方……ですか?」
あれ?これって、もしかして。
「うん。シンデレラプロジェクト、っていうのにスカウトされて……もしかして、貴女も?」
そう聞き返すと、さっきまでの怯えが嘘みたいに、満面の笑みになった。
「はい!私は、島村卯月っていいます!
ずっとアイドル候補生としてレッスンは受けてたんですけど、今回初めて声をかけてもらって……よろしくお願いします!」
一点の曇りもない笑顔が、なんだか眩しい。そこで、後ろで私たちの話を聞いていた女の子も近づいてきた。
「私は渋谷凛。アイドルには特別興味はなかったんだけど……スカウトされちゃって。まあ、悪くないかなって。よろしくね」
おおう。今の、『まあ、悪く無いかなって』すっごくクールだ。なんだか、真姫ちゃんを大人っぽくした感じ。
あ、いけないいけない。私も自己紹介しないと。
「私は高坂穂乃果っていいます!
ずっとスクールアイドルとして活動してきたんだけど……今度は、プロのトップアイドル目指して頑張ります!
よろしくね、2人とも!」
私がそう言い終わった時。
「ふふふ……時は来た!」
なんて、漫画みたいなセリフが門の方から聞こえた気がした。
3人揃ってとりあえず門の真正面にある建物の中に入る。広々としたエントランス。中央から真っ直ぐ2階へ、そして左右へと続く大きな階段。見た目もそうだったけど、中身も本当にお城みたいだ。
「き、緊張しますね……」
卯月ちゃんがそういうけれど、顔はちょっとほころんでいるようにも見える。緊張はしているけれども、これからどうなるのかっていう楽しみの方が勝っているみたい。実を言うと、私もそうだ。凛ちゃんは……表情をまったくくずさないで、ふーんって感じで辺りを見回していた。うーん、やっぱりクールだ。
なんてことを思っていたら。
「新人アイドルの本田未央です!
お世話になります!」
凛ちゃんとは真逆の、明るいピンク色の服を着た女の子がエントランスの真ん中で頭を下げていた。2人とも、びっくりした様子でその子――未央ちゃんを見ていた。
新人アイドルってことは、もしかしたら私たちと同じ、シンデレラプロジェクトの子なんだろうか。346プロダクションは業界でもかなり大きなところだから、アイドル部門だけでもかなりの数の部署がある……らしいから、まだわからないけれど。
そんな未央ちゃんを横目で見ながら3人で受付へ。芸能プロダクションだからなのか、受付のお姉さんも2人も美人さんだった。後ろの壁には、Mishiroと書かれたお城のマーク。やっぱり、この敷地にある建物全体がそういうテーマに沿って建てられてるみたい。
「はい、承っております。
新館30階、シンデレラプロジェクトルームでお待ち下さい」
そう言って受付さんから渡されたゲストカード。首にかけると、ちょっぴり特別な人になった気分になる。
「綺麗な所だねえ」
エレベーターへと続く廊下は両面ガラス張りで、そこからは綺麗に整えられた中庭がよく見えた。遠目に見てもきっちりと手入れされていて、手間とお金がかけられているのがわかる。
「わ、私、本当にこんなすごいところに来ちゃっていいんでしょうか……」
受付で渡されたパンフレットをぎゅっと握りしめる卯月ちゃん。今更ながら緊張が復活してきてしまったみたい。
「心配しすぎだよ。私は、ちょっと安心してる」
凛ちゃんはどこまでも自然体だ。全然緊張していないように見える。
「安心って、どういう理由で?」
気になったから聞いてみると、凛ちゃんは少し苦笑いした。
「や、穂乃果も会ったと思うけど……あのプロデューサー、最初は不審者にしか見えなかったし。インターネットで調べてみるまで、実は悪徳とか倒産寸前の零細企業とかなんかじゃないかって、1割くらいは疑ってたから」
「あ、あはは……」
卯月ちゃんと2人で顔を見合わせて苦笑いする。涼しい顔をして結構酷いことを言ってるんだけれど……不審者に見えたっていうのはちょっと否定出来ない。きっと卯月ちゃんも初めてあった時はそう思ったはずだ。……プロデューサーさん、ごめんなさい。
エレベーターの前に着くと、優しそうな顔のおじさんがボタンを押して待っていてくれたところだった。3人で急いで乗り込む。
「何階かね?」
「30階です」
きっと偉い人なんだろうけど、嫌な顔なんて全くせずにボタンを押してくれる。ずっと穏やかに微笑んだまま。卯月ちゃんの笑顔は人を元気にしてくれるけれど、それともまた違う。人を安心させてくれる笑顔だった。
ゆっくりと扉が閉まる、その時。
「うわぁぁぁ」
こっち目掛けて走ってきたのは、さっきの女の子――未央ちゃんだった。そのまま倒れこむように体を捩じ込もうとして。見事に首がドアに挟まってしまった。卯月ちゃんと凛ちゃんは笑いをこらえてるみたいだけど――ちょっと洒落にならないんじゃないかな、これって。
「何階かね?」
少しも取り乱さず冷静に階数を聞くおじさん。この人、やっぱり只者じゃない。
「22階です!」
未央ちゃんも未央ちゃんで、元気よく返事をしている。首、痛くないのかな。
ちょっとドタバタして騒々しいけれども。これが、私たち4人が初めて揃った瞬間だった。ちなみに未央ちゃんは、凛ちゃん曰く『出オチ』な登場をずっとからかわれることになる。
如何でしたでしょうか?
まずは出会い編ですが、今回も短めになっちゃいました。次を書いたら、1と2,3と4で合体させるかもしれません。穂乃果のユニットがどうなるかは、まだ秘密です。楽しみにお待ちいただければ。(待ってる人いるかな?)
感想お待ちしております。
追記 今回のおまけ 作者の妄想色々をたまに垂れ流したりします。
「あまり驚かないんだな?」
「かはは。なんとなくはわかってたからよ。
初めて会った時から今まで、一度もあんたを殺そうって気にならねえんだ。つまりは、あんたは人間じゃねえってことだろ?」
――とある街で。蒼崎と零崎の会話。
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his Awkward smile
最近仕事が忙しくて執筆時間が思うように取れませんが、エタったりはしない予定です。とりあえず1期は絶対終わらせますので。
今回は初めて穂乃果とは別の視点です。ではどうぞ~
――私にとって。渋谷凛という人間にとって、芸能界っていうのはまさしく『別の世界』だった。
だからなのか、こうして実際に芸能事務所の中を歩いていてもどことなく現実感がない。一企業のものとは思えない広大な敷地も相まって、なんだか夢の中にいるみたいだ。
両側が全面ガラスになっている廊下を、3人連れ立って歩く。ちらりと横目に見える中庭は、まるでどこかの公園かっていうくらいだった。
「すごいねー。これ、全部346プロのものなのかな?」
連れの1人、穂乃果がのほほんとした声を上げる。
「きっとそうです!映画とかも作ってる大きい会社だってパパが言ってました!」
もう1人の連れ、卯月が元気よく言う。敷地内なんだから当然企業の私有地だろうだとかは言わない。
映画を作る会社と、アイドルやタレントを抱える芸能事務所って完全に別の分野だと思うんだけど……346グループっていうのがあって、その系列の別会社なんだろうか。一体どれだけ大きな企業なんだろう。ますます現実味がなくなってきた。
『いい?世界っていうのは、自分を中心とした価値観のことなのよ。つまり自分と全く関わりがなければ、そこは自分の世界には含まれないわ。
私にとっては、今テレビで流れてるような芸能界よりも、平行世界の方がよっぽど『私の世界』ね』
喫茶店で偶然出会った同じ名前の女の子の言葉を思い出す。あの時は妙なことを言う子だと思ったけれど、なるほど確かに。本当の私は平凡な女子高生のままで、実は夢だとか、別の世界線に迷い込んでしまっただとかのほうがまだ現実感があるかもしれない。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか目的の場所に着いていた。cinderella project room.部屋の名前が英語で書いてある。そういうところにもなんだかちょっと気後れしてしまう。
「ここ……みたいですね!」
「他の子たちもいるのかな?」
声の調子を整えたり、自己紹介の練習をしたりする2人。まだ出会ってすぐだけれど、大体の性格は掴めた気がする。この2人、兎に角素直だ。それと、ちょっと天然かな?誰とでもうちとけられて、きっとクラスでも愛されているんだと思う。ほんの少し、羨ましい。
「失礼しまーす……」
卯月がそう言いながら静かに扉を開ける。
「誰もいない……ね」
呟きながら部屋の中を見渡す。ソファーも、テーブルも、棚も黒で統一されていて、なんていうか大人な雰囲気の部屋だ。詳しくはないけど、シックな部屋っていうのはこういうのを言うんだろうか。床は白と黒の四角が交互に並んでいて、ピシっとした感じ。プロデューサーと同じで、なんだか――。
「へえー。なんだかクールな感じだねえ」
突然の声。ちょっとびっくりしながら振り返る。
「あ……」
「さっきの……」
エレベーターで首を挟まれていた子だ。つかつかとこっちに向かって歩いてきて、私と卯月の間に入る。おでこに手を当てて、おー、いい眺めなんて言っている。……この子も人見知りしなさそうだなあ。
「おはようございます」
また後ろからの声。この、老けてはないのにやたらと渋くていい声は――やっぱり、プロデューサーだ。隣には書類を抱えた女の人。事務員さんとか、ひょっとしたら秘書さんだろうか。
「「「「おはようございます」」」」
とりあえずは、きちんと挨拶。卯月によると、こういう業界ではいつでも『おはようございます』らしい。そのままつかつかと近寄ってくるプロデューサー。
「ご紹介します。こちら、島村――」
「卯月ちゃん!?」
「はい!」
くるりと回って私の方に向き直る。
「渋谷凛ちゃん!?」
「そうだけど」
「むむむ。ぶっきらぼうながら溢れ出るオーラ……只者ではないと見た!」
口をへの字に曲げてそんなことを言う。や、自覚はしてるつもりだけど。初対面の子にまでぶっきらぼうなんて言われると、ちょっと傷つく。まあ、目の前の子の興味は既に私から穂乃果に移ってるみたいだった。
「それで!高坂穂乃果ちゃん、だよね!?ミューズの!」
「うん!」
元気いっぱいに返事する穂乃果。私たちのことは、事前にプロデューサーから聞いてたのかもしれないけれど――ミューズ?……石鹸?
「皆さんにもご紹介します。こちら、当プロジェクト最後のメンバー……」
「本田未央!高校一年、よろしくね!」
ビシっと敬礼。卯月や穂乃果とは違ったタイプの明るい子だ。2人はどちらかというと受け身の明るさ。この子は自分からぐいぐいと行く積極的な明るさだ。ムードメーカー、なのかな。
「本田さんは、一次選考では落選してしまいましたが、欠員の補充のための二次選考で合格した、とても運の良い方なんですよ♪」
にっこり笑顔で説明する秘書さん(仮)。でもそれって、本当は実力はないのに運だけで合格したとも取れるんだけど……。
「いや~。私がオーディション受かったのってやっぱり……スポーツ万能の学園のアイドルだからかな?かなぁ~?」
照れながら頭を掻いてる。脳天気なのか、ポジティブなのか。
「……笑顔です」
真顔のまま答えるプロデューサー。再びへの字になる未央の口。それを見た穂乃果がクスクスと笑い出して、つられて卯月も笑い出す。私も口だけで笑ってしまった。秘書さん(仮)も、口に手を当てて上品に笑っている。大人の色気、ってやつなのかな。女同士なのに、ちょっと見とれてしまった。
「あのー……プロデューサーさん。こちらの方は?」
穂乃果がおずおずと言うと、大人2人が一瞬目を合わせて頷く。そして秘書さん(仮)が一歩前に進み出た。……ちょっともやっとしたのは内緒だ。
「申し遅れました。
皆さんのアシスタントを努めます、千川ちひろと申します。色々な面からサポートしますので、よろしくお願いしますね♪」
これ以上ないくらいの優しい笑顔。なんだけど。なんだか寒気がするのは私の気のせいなんだろうか。
「では、お近づきの印に。私からささやかながら」
肩に掛けたかばんから出てきたのは、赤い星柄のパッケージの缶ジュース。黄色い文字で、エナジードリンクって書いてある。コン、コン、と小気味良いリズムで缶が置かれていく。
「わぁ!ありがとうございます!」
「いえいえ。頑張ってくださいね♪」
「はい!島村卯月、頑張ります!」
「高坂穂乃果も、頑張ります!」
無邪気に返事をする卯月と穂乃果。少し後ろからそれを眺めていると、未央と目が合う。同時に、ふふっと笑ってしまった。
千川さんが部屋をでて、プロデューサーは奥の自分の部屋で書類をさばいている。次の指示が出るまで、エナドリを囲んで雑談タイムだ。
「私はさっきいった通り高1だけど……皆は何年生?」
口火を切ったのはやっぱり未央だ。こういう積極性は、ちょっと見習いたいかな。
「私は2年生になりました」
へえ。卯月は2年生なんだ。
「そうなんだ。同級生かと……」
子どもっぽい、とは言えないなあ。
「お姉さんなんだし、リードよろしくね」
「はい!お姉さんですもんね!」
満面の笑みの卯月。
「じゃあ、3年生の私が一番上のお姉ちゃんだね!
3人とも、どんどん頼ってくれていいよー♪」
「「「えっ?」」」
私、卯月、未央の声が重なる。穂乃果が……3年生?
「その『えっ?』ってどういうことかなあ……?
私、そんなに子どもっぽいかな?」
「え、えーと……」
あはは、と笑いながら目を逸らす。卯月も未央もだ。まさか同い年だと思っていた、なんてことは言えない。話題、話題を変えよう。
視界の端で、未央がすすすっと奥の部屋に向かって移動するのが見えた。そのままさっと中を覗き込む。
「プロデューサー!他の子はいないのー!?」
未央、ナイス。私も無言のまますっと後に続いておく。
「あ、こら!ちょっと、ねえ!皆は私のこと、いくつだと思ってたの!?」
「まってください未央ちゃんー!」
「こらー!待ちなさーい!」
だだだっと流れこむようにプロデューサーの部屋の入口に4人が集まる。ちょっと息を荒くしてる穂乃果の様子を見て、一度ゆっくり目をぱちくりさせるプロデューサー。ちょっとかわいい。
「シンデレラプロジェクトの他のメンバーは、後ほどご紹介します。皆さんは、その前に――」
あ、穂乃果はスルーするんだ。
「その前に?何々?」
代表して聞くのは、やっぱり未央だ。
「この4人で、基礎的なレッスンを受けていただきます」
「レッスン、ですか」
「はい」
淡々と話しを進めるプロデューサー。後ろの穂乃果が、頬を膨らませてむくれていた。そういうところが子どもっぽいんだけど。
「皆さんは、これからプロのアイドルとなります。プロであるからには、本番で最高のパフォーマンスができるよう、常日頃からしっかり練習しておくのも、大事な仕事の1つです。
これが、あなた達の初仕事ですよ。……頑張って、ください」
そういって、口角をちょっとだけあげるプロデューサー。笑顔のつもりなんだろうか。正直、ちょっと怖い。けれど、暖かかった。きっと私は、この瞬間を一生忘れないだろう。
今まで、流されるように生きてきた。なんとなく高校に行って、なんとなく店を継ぐんだろうなって思ってた。夢中になれる何かなんて、なかった。
冷めている。よくそう言われるし、自分でもそう思う。今だって、まだ半分は流される形でここいる。だけど。
――この不器用な笑顔がまた見れるなら。アイドル、頑張ってみてもいいかなって思ったんだ。
如何でしたでしょうか?
相変わらず短めで申し訳ありません。今回は凛ちゃん視点ですね。
気づいた方もおられると思いますが、実はプロデューサーの性格はちょっとかわってます。原因はまたのちほどのお話で。
感想お待ちしております。
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