ハイスクールD×D ~とある三雄の物語~ (無颯)
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プロローグ

始めてしまった。もう一個の作品が亀更新なのに・・。


ですが何とか頑張りたいと思いますので、何卒温かい目で見て下さると幸いです。



という訳で、どうぞ。


ピピッ! ピピッ! ピピッ…!

 

 

「……朝か……」

 

 

時刻は午前6時。1人の少年が自室で目を覚まし、鳴っている目覚まし時計を止めた…。

 

 

「…起きるか…」

 

 

少年はそう言って布団から抜け出し、手早く着替えを済ませる。その格好は、何処かの学校の制服だった。すると、

 

 

コンコンッ!

 

 

「失礼します。“当麻”様、もう起きていらっしゃいますか?」

 

 

「! ああ、今行く…」

 

 

部屋のドアの向こうから誰かの声が聞こえてきたため、少年はそう言って部屋を出る。ちなみに今更ではあるが、この黒髪ツンツン頭の少年……名を“上条当麻”という…。

 

 

ガチャッ!

 

 

「! おはようございます、当麻様…!」

 

 

「ああ、おはよう、───」

 

 

当麻を出迎えたのは、1人の少女だった。栗色の髪をツインテールに纏め、紺を基調としたメイド服を着ているその姿は、紛れもなく“美少女”と表現するに相応しいものである。

 

 

「あいつ等は?」

 

 

「あ、御二人でしたら既に起きていらっしゃいます!」

 

 

「! 分かった。悪いな、いつも遅くなっちまって」

 

 

「い、いえ! お気になさらないで下さい! むしろ、私としては…/////」

 

 

「? どうした、───?」

 

 

「っ////! な、何でもありません! す、既に朝食の仕度も出来てますし、皆さんもお待ちですので…」

 

 

「! ああ、そうだな」

 

 

少女からそう言われ、移動し始める当麻。言うまでもないが、彼女が頬を赤く染めていることなど、一切気付いていない…。ともかく、当麻は少し足早に階段を降りて廊下を歩き、ある部屋のドアを開けた。

 

 

ガチャッ!

 

 

「悪い、遅くなった」

 

 

「気にすんな。そんなに待ってねえよ」

 

 

そこは裕に十数人は座れるであろう長い机が3つ置いてある、あまりにも広々とした食卓だった。この時点で、この家がどの程度の大きさであるかの想像が付くであろう…。すると、

 

 

「おはよう、当麻」

 

 

「ああ、“一護”、“リクオ”」

 

 

その中の真ん中の机に、2人の少年が座っていた。1人はオレンジ色の髪が特徴的で、不良のように見える少年。もう1人は茶色の髪と眼鏡が特徴的で、対照的に優しそうな雰囲気を持つ少年である。それぞれ名を、“黒崎一護”、“奴良リクオ”という…。

 

 

「お待たせしました!」

 

 

コトッ!

 

 

「! 今日は和食か」

 

 

「───の和食の料理の腕も一気に上達したよな」

 

 

「まったくだ。このまま行けば、上条さん達の料理の腕なんか一気に抜いちまうかもな」

 

 

「い、いえ! まだ当麻様達と比べれば、全然…//////」

 

 

当麻達に褒められた少女は、恥ずかしがりながらも嬉しそうな表情を浮かべる。

 

 

「早速食べ始めよっか。もうこんな時間だし」

 

 

「! ああ。今日は遅れるのは流石にまずいしな」

 

 

「そんじゃあ、まあ…」

 

 

「「「「いただきます」」」」

 

 

その後少女を交えて軽く和気藹々(わきあいあい)と話しつつも、手早く朝食を済ませた当麻達。そして、残りの身支度も済ませると…

 

 

「じゃあ、留守は任せる。何かあったら直ぐ知らせてくれ」

 

 

「あ、はい…! お気を付けて!」

 

 

「おう」

 

 

「よろしく頼むよ、───」

 

 

玄関にて、少女の言葉に一護とリクオが答えていると…

 

 

ポスッ

 

 

「あ…/////!」

 

 

「行ってくる」

 

 

「い、いってらっしゃいませ…//////」

 

 

当麻は軽く少女の頭を一撫でした所で、3人は家を出ていった。

 

 

「さて…こっからが問題だな」

 

 

「うん。まさか転校先が“実質的に悪魔が管理してる学校”で、重要な立場にいる悪魔の人達がいる所だなんて…」

 

 

途端に不安や心配の言葉を口にし出す一護とリクオ。すると、

 

 

「つっても、“それをすっかり忘れて決めちまった”っていうのが何とも言えねえけど…。なあ、当麻…?」

 

 

「か、返す言葉もありませんでせう…」

 

 

「まあ、それを当麻に任せた僕達も悪いんだけどね。当麻なら十分やりかねないって想像できたんだし…」

 

 

一護に咎められて当麻が項垂れる中、リクオは苦笑いを浮かべながら呟く。

 

 

「はぁ…まあ、こうなったらとりあえず通ってみるしかねえよな。“あいつ等”が皆居ねえし、本当不安だが…」

 

 

「そうだね。他にも色々気になることはあるし…しばらくは様子見をしながら判断していけばいいんじゃないかな?」

 

 

「と、ともかく行こうぜ…?

 

 

 

 

“駒王学園”に…」

 

 

──こうして、今ここに少年達の物語が始まる……───

 

 

 

ガッ!

 

 

「うおっ!?」

 

 

ドサッ!!

 

 

「…お前が空き缶を踏んで転んでる姿を見るのは、もう何度目だろうな…?」

 

 

「ふ、不幸だ…」

 

 

 

──のか……?──

 

 



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旧校舎のディアボロス
邂逅



連続投稿です。ですが、あまり話は進んでいないかも・・。



またここからOP曲&ED曲を設定したいと思います。



OP → “Trip ―innocent of D-”

     ~Larval Stage Planning~

    (“ハイスクールD×D” OP)


ED → “L.L.L.”

     ~MYTH & ROID~

    (“オーバーロード” ED)



以上で行かせて頂きたいと思います。ちなみにEDは単純に私の好みです・・。



長文失礼致しました。では、どうぞ。


駒王学園──日本の某県にある“駒王町”にある学園。初等部、中等部、高等部に分かれており、日本屈指の大型学校法人と知られている。またもう1つの特徴として、男子生徒に比べて女子生徒の数が割と多いということも挙げられている。

 

 

「デュフフフフッ…」

 

 

そんな学園の高等部にある2年生の教室で、1人気持ちの悪い笑みを浮かべている男子生徒の姿があった。彼の名は兵藤一誠。茶色の短髪と赤のTシャツが特徴で、大半の女子生徒達から“変態三人組”と呼ばれている内の1人である。ちなみに彼が何故笑っているかというと、普段なら一切御近づきになれない女子生徒と登校していたり、それより前の朝の出来事が原因だったりするのだが……その話は概ね省いてもよいだろう…。と、そこへ、

 

 

「オラアッ!!」

 

 

「ぐほあっ!?」

 

 

「イッセー貴様ァッ!! 俺達はモテない同盟の同志だった筈じゃないのかァッ!?」

 

 

座っていたイッセーに、1人の男子生徒が容赦の無い拳をお見舞いしてきた。更に、

 

 

「まあ落ち着け、松田」

 

 

「! 元浜ぁ…!」

 

 

「とりあえず訳を聞かせて貰おうか、イッセー…? 俺達と別れてから、昨日一体何があったァッ!?」

 

 

もう1人の男子生徒も近寄ってきたかと思うと、先程の男子生徒と共に涙を流しながら追求しに来た。この2人の名は“松田”と“元浜”。共にイッセーの親友であり、“変態三人組”の残りの2人である。そして、“ハゲ”と“メガネ”がそれぞれ特徴である。あとは……知らん…。すると、

 

 

「松田、元浜……」

 

 

「! 何だ、イッセー…!?」

 

 

「フッ…」

 

 

そんな2人に対し、イッセーは不敵な笑みを浮かべながら、こう尋ねる…。

 

 

「お前等…“生乳”見たことあるか…?」

 

 

「「(ガーンッ!!!)」」

 

 

その一言を聞いた瞬間、雷に打たれたような衝撃を受ける2人…。ちなみに、それを聞いた周りのクラスメイトの女子達が軽蔑の視線を向けているのは……言うまでもない…。

 

 

「き、貴様~ッ…! くっ、まあその話は後でじっくり聞かせてもらうとしよう…」

 

 

「? どうしたんだよ、急に?」

 

 

元浜が突然追求を止めたことに驚くイッセー…。

 

 

「実は今日、このクラスに転校生が来るらしい」

 

 

「! そうなのか? 知らなかったな…」

 

 

「何でも急な話だったらしいぞ。だが、もしその転校生が美少女なら…!」

 

 

松田がそう言うと、自身を含めた3人は頭の中で何かを想像し始めた。そして…

 

 

「「「デュフフフフッ……!」」」

 

 

この瞬間、女子生徒達からの彼等に対する軽蔑の視線が更に鋭くなったのは……表記するまでもない…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

「じゃあ君達、自己紹介してくれ」

 

 

「あ、ああ、えーと……今日からここに転入することになった上条当麻だ。こっちの2人とはいわゆる親友同士なんで、よろしく頼む」

 

 

「俺は黒崎一護。今当麻が言ったように、コイツ等とは親友同士だ。ちなみにこのオレンジの髪は地毛なんだが……この学校なら問題ねえか。これからよろしくな」

 

 

「はじめまして、奴良リクオといいます。2人が言ったように、僕達は親友同士です。よろしく御願いします」

 

 

時刻は少し進み、HR(ホームルーム)の時間。担任の教師の合図で入ってきたのは、黒髪ツンツン頭の少年──上条当麻と、オレンジ髪の少年──黒崎一護、茶髪にメガネの少年──奴良リクオの3人だった…。

 

 

(((な、何で野郎3人がまとめて転校してくんだよォォォォォォォォォッ!?!?!?)))

 

 

美少女転校生を予想していたイッセー達バカ三人組は、当然の如く血涙を流しながら現実の非情さを呪い出す…。一方で、

 

 

【おい、何であそこにいる奴等は血の涙を流してんだ…?】

 

 

【わ、分からん……】

 

 

【き、気にしない方が良いんじゃないかな…?】

 

 

当麻達3人は頭の中でそんな会話をしていた。いわゆる、“テレパシー”的なものである。某“魔法少女作品”に登場するものを連想してくれても構わない…。すると、

 

 

【! 当麻、一護…】

 

 

【ん…? ッ! あいつは…】

 

 

リクオ達が注目したモノ。それは血涙を流している3人組の内の1人である、茶髪と赤のTシャツが特徴の男子生徒──兵藤一誠だった。そして…

 

 

【おい、当麻…】

 

 

【ああ、間違いねえ。あいつは……

 

 

 

悪魔だ…】

 

 

 

☆☆

 

 

 

何だかんだで放課後となった今、当麻達は以前として教室に残っていた。その理由は…

 

 

【来ねえな…】

 

 

【ああ、誰かを待ってるのは間違いねえんだが…】

 

 

朝の時に注目していた男子生徒──兵藤一誠を観察するためである。と、その時、

 

 

『キャーーーーーッ!!』

 

 

朝と同じような黄色い声が聞こえてきたため、当麻達は思わずその方向へ目を向けた。すると、そこには…

 

 

「やあ、ちょっと失礼」

 

 

「木場くーーんッ!」

 

 

「どうぞどうぞ!」

 

 

「汚いところですけど、どうぞ…!」

 

 

クラスの女子生徒達に囲まれている、金髪の男子生徒の姿があった。その容姿や雰囲気は、明らかに俗に言う“イケメン”そのものである。そんな中、

 

 

【当麻、一護】

 

 

【ああ、間違いねえ。あいつも悪魔だ】

 

 

【ってことは…】

 

 

3人は直ぐ様その男子生徒が“悪魔”であることを見抜いた。そして、男子生徒は女子生徒達を掻き分けつつ、ある人物の下へと向かっていく。その人物とは…“兵藤一誠”だった…。

 

 

「やあ、どうも」

 

 

「! ああ? 何だよ?」

 

 

「“リアス・グレモリー”先輩の使いで来たんだ」

 

 

「っ!? じゃあ、お前が…!?」

 

 

「僕に付いて来てくれない?」

 

 

その男子生徒──木場裕斗にそう言われ、渋々席を立つイッセー。

 

 

「そんな~!? 木場君とエロ兵藤が一緒に歩くなんて~…!!」

 

 

「汚れてしまうわ、木場くん…!」

 

 

「木場君とエロ兵藤のカップリングなんて、許せない…!」

 

 

「くそっ! 訳分かんねえこと言いやがって…」

 

 

こういった女子生徒達からのブーイングが起こるのは……まあ、仕方の無いことである。そして、2人が教室を完全に後にした所で……

 

 

「やっぱりあいつが兵藤の待ち人だったみたいだな…」

 

 

「どうやらこれから色々事情を説明しに行くみたいだね。兵藤君は全く何も知らないみたいだし…」

 

 

「ああ、けどそれよりも気になるのが…」

 

 

「“リアス・グレモリー”…だな…」

 

 

当麻の言わんとしてることに、一護はいち早く気付いてそう言った…。

 

 

「“グレモリー”か…。随分大物が出てきちまったな…」

 

 

「うん。でも確か、まだ年齢的には…」

 

 

「ああ。俺達とそんな変わらねえ筈だ…。んなことより…」

 

 

「? どうしたんだよ、一護?」

 

 

「これからどうすんだよ? ここまで様子見のために残ったんだ。このまま何もしないで帰るつもりはねえんだろ…?」

 

 

一護のそんな問い掛けに対し、当麻は…

 

 

「まあ…俺達も付いていってみるか…」

 

 

苦笑いを浮かべながらそう呟くのだった。

 

 

 

☆☆

 

 

 

「ここか…」

 

 

そんなこんなで、イッセーと木場の後…ではなく、形跡を辿って当麻達が着いたのは、学園の少し外れにある“旧校舎”だった。

 

 

「外は結構廃れた感じになってるな」

 

 

「うん、でも……」

 

 

一護とリクオが話しつつ、3人は旧校舎の中へと入る。すると…

 

 

「中はちゃんと綺麗にされてるね」

 

 

「ああ、普段から使ってる良い証拠だな。でも流石に、何かしら結界みたいなモンが張られてると思ったんだが…」

 

 

内部の綺麗さから推測を述べる一方、部外者である筈の自分達かますんなり内部へ入れてしまったことに驚く一護…。

 

 

「ま、とにかくあいつ等が居る所に行ってみようぜ…? こっちだな…」

 

 

当麻の一言を受け、更に進んでいく3人。階段を登ったり、廊下を歩いたりしていくと、その場所にはあっさりと辿り着いた。

 

 

「“オカルト研究部”…か…」

 

 

「なるほど、これが表向きの看板って訳だね」

 

 

「まあ、確かにこの雰囲気なら十分通用するわな…」

 

 

当麻達の目の前には比較的大きな両扉があり、そこには堂々と“オカルト研究部”という記載がなされている…。

 

 

「どうやら、ここにはちゃんと結界が張られてるみたいだな」

 

 

「中には…丁度5人いるみたいだね。それでどうするの、当麻?」

 

 

「いや、流石にいきなり突っ込む訳にもいかないだろ? とりあえず拠点が分かったんだし、今日のところは一旦帰るのが一番なんじゃねえか?」

 

 

「まあ、それが妥当だろうな」

 

 

「うん、僕も異存ないよ」

 

 

当麻の判断に納得の意を示す一護とリクオ…。

 

 

「よし、そうと決まればさっさと帰って…」

 

 

そして当麻がそう言いながら体を反転させ、一歩を踏み出そうとした、その時…

 

 

ガッ!

 

 

「「あ…」」

 

 

「はい…?」

 

その瞬間、3人の脳内に全く同じことが思い浮かんだ。そう……今朝の当麻の身に起きた出来事の光景が…。いつの間にか落ちていた缶を踏んだ当麻の体は、勢いそのままに後ろへと倒れていく。その後ろには言うまでもなく……結界が張られている、“オカルト研究部”の部室の入口のドアがあった。更に当麻は現在、何とか立て直そうと無意識の内に右手を後ろに伸ばしていた…。

 

さて、ここで問題です。この後一体何が起こるでしょう? 正解は…

 

 

バキィィィィンッ!!

 

 

「うおっ!?」

 

 

バタンッ!!

 

 

何かが壊れる音が響いたと同時に、後ろに倒れる当麻の体重によって入口のドアが思いきり開け放たれた…。

 

 

「イテテテ…ッ! あ……」

 

 

仰向けの状態で倒れた当麻は何かを感じ、ふと見上げるような格好で目を向けた。するとそこには…イッセーと木場に加え、白髪のショートカットで小柄な体型の少女と、黒髪ポニーテールの大和撫子風な少女、そして……赤髪ロングヘアーの妖艶な少女が呆然としていた…。

 

 

「「…はあ…」」

 

 

するとその一部始終を見た一護とリクオは呆れ、当の本人である当麻はただ一言こう呟く…。

 

 

「ふ、不幸だ……」

 

 

その一言が一段と空しく響いたような気がするのは…恐らく気のせいではない…。

 

 

 



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説明



タイトル通り、主人公達の説明会です。特にこれといったものは無いかと・・・。



まだまだ先は長いです・・。



では、本編をどうぞ。


旧校舎にあるオカルト研究部の部室は今、何とも言えない雰囲気に包まれていた。その理由は…後ろ向きに倒れながらドアをぶち破って入ってきた“上条当麻”のせいである…。

 

 

「あー…あははは…。し、失礼しました~…」

 

 

すると当麻は苦し紛れに笑いながらも、何事もなかったように立ち上がり、部室から出ていこうとした。だが…

 

 

「待ちなさい」

 

 

当然そんな行動がスルーされる訳もなく、凛とした声が響き渡る。その声の主は、何処となく威圧感のある笑みを浮かべている、赤髪の少女だった…。

 

 

「何をしてるのかしら、あなた達…?」

 

 

「あー、いや~…」

 

 

引き続き少女に尋ねられ、目を泳がせる当麻。すると、

 

 

「お、お前等は…!!」

 

 

「? イッセー、あなたの知り合い?」

 

 

「し、知り合いというか…今日うちのクラスに来た転入生で…」

 

 

「ど、どうも、俺は上条当麻だ。で、こっちの2人が…」

 

 

「黒崎一護だ。よろしくな」

 

 

「えっと、奴良リクオっていいます。よろしくお願いします…で、いいのかな…?」

 

 

イッセーと赤髪の少女のやり取りを聞いて、一先ず自己紹介をする当麻達3人…。

 

 

「はじめまして。私はリアス・グレモリーよ。ここオカルト研究部の部長をしているわ。それで、改めて聞かせてもらうけど…一体ここへ何をしに来たのかしら…?」

 

 

「い、いや…ちょっと学園の中を色々見て回っててな! その途中でこの旧校舎っぽい所を見掛けて、中を歩いてたらここに来ちまっててさ…!」

 

 

「あら、そうなの? まあ、確かにこの学園は広いから、迷うのも無理もないわね」

 

 

「あ、ああ、そうなんだよ! いや~、まさかこんなに広いとは思わなかったな…。そういう訳なんで、何か色々取り込んでるみたいだし、俺達はこれで…」

 

 

咄嗟に思い付いた言い訳を赤髪の少女──リアス・グレモリーに伝えた当麻は、そう言って彼女やイッセーに背を向け、部室を出ていこうとした…。

 

 

「でも、この部室には普通の人間が入れないように“結界”が張られていたの。それなのに…どうしてそれが壊れてしまったのかしら?」

 

 

「………(ギクッ!)」

 

 

「その辺りのこと、ぜひ聞かせてもらいたいのだけど、上条当麻君?」

 

 

リアスがそう言った瞬間、当麻の両側に立っていた一護とリクオの横に、いつの間にか木場と白髪の少女──塔城小猫の姿があった。しかもどちらも強い警戒心を持って、一護とリクオを見ている…。だが、

 

 

(! この子の魔力の感じ、何処かで…)

 

 

リクオが小猫に対して何かを感じていることに気付いている者は…殆どいなかった…。

 

 

【あー……どうすりゃいいと思う?】

 

 

【はぁ…どうするも何も、このまま黙ってられる訳がねえ…。“ある程度”バラすしかねえだろ?】

 

 

【あー…だよな…。リクオ、お前は…】

 

 

【いいよ。僕も一護と同意見だし…少し気になることもあるから…。あとは当麻に任せるよ】

 

 

【お、おう、分かった…】

 

 

そして、当の3人は頭の中でそんなやり取りをし終えたかと思うと、ここで当麻が口を開く…。

 

 

「ふぅ…分かったよ。じゃあ、ちゃんと話させてもらうぜ、“殲滅姫(ルイン・プリンセス)”」

 

 

『っ!!?』

 

 

当麻の口から出た最後の一言に、イッセー以外のオカルト研究部の面々が大きく反応した。

 

 

「その呼び名を知っているということは、あなた達…」

 

 

「ああ、当然知ってるぜ。アンタ等悪魔のことは勿論、“天使”や“堕天使”のこともな」

 

 

「っ…! あなた達…本当に何者なの…?」

 

 

当麻達について益々疑問を感じ、そう尋ねるリアス…。すると、

 

 

「俺達は…いわゆる“賞金稼ぎ”って奴だ」

 

 

「! 賞金稼ぎ…」

 

 

一護が自分達の素性についてそう答え、それを聞いた小猫が思わず呟く。一方で、

 

 

「あの、賞金稼ぎって…」

 

 

「先程部長が説明した“転生悪魔”には、稀に主となった悪魔を裏切る…あるいは殺して、討伐の対象となる者達がいますの。その者達は“はぐれ悪魔と呼ばれ、その中でも危険度がある者には懸賞金が掛けられるのですが…そういった者達を狩ることで、生計を立てる人達もいらっしゃいます。それが、“賞金稼ぎ”と呼ばれる方々ですわ」

 

 

分かっていない様子のイッセーに対しては、黒髪ポニーテールの少女──姫島朱乃(ひめじまあけの)が説明をしている。と、ここで、

 

 

「そう…。確かにそれなら、私達悪魔や堕天使達のことを知ってるのも納得ね。でも、あなた達はどう見ても人間…。普通の人間が“賞金稼ぎ”なんて出来る筈が無いわ。なら、それを可能にするものはただ1つ…」

 

 

「…ああ、確かに持ってるぜ。いわゆる“神器(セイクリッド・ギア)”って奴を、俺達全員がな」

 

 

『ッ!!?』

 

 

リアスの推測について当麻が先にそう答えると、リアス以外のオカルト研究部の面々が再び驚いた。

 

 

「…あなた達の神器を見せてもらえるかしら?」

 

 

「あー…まあ、ちゃんとした説明は色々難しいから、概要程度になっちまうかもしれねえけど、それでいいか?」

 

 

「ええ、構わないわ」

 

 

「分かった。じゃあ…リクオ」

 

 

「うん…」

 

 

リアスの承諾を聞いた当麻がリクオに声を掛けると、リクオはそれに頷いて右手を前に突き出した。すると、

 

 

チャキッ!

 

 

「うおっ!?」

 

 

『っ!!??』

 

 

「僕は自分の神器を、“妖界統制(スペクトル・コントロール)”と呼んでいます。そしてこの刀が発動時に登場する愛刀、“祢々切丸(ねねきりまる)”です」

 

一瞬にして“あるもの”がリクオの前に姿を見せたのだ。それは…一振りの“長ドス”だった。これにはイッセーを始め、オカルト研究部の面々も驚かざるを得ない。

 

 

「な、何だかその刀から凄く嫌な感じがするんだけど…一体どんな能力が有るんだい?」

 

 

「祢々切丸の能力は、“斬り付けた箇所からあらゆる力を放出させる”というものです」

 

 

「? あらゆる力…?」

 

 

木場の問いに対するリクオの答えを聞いて、首を傾げるリアス。

 

 

「アンタ達みたいな悪魔なら“魔力”を、人間相手なら“生命力”を抜け出させることが出来んだよ。天使や堕天使なんかが相手でも、当然そいつ等が持ってる力が対象になる」

 

 

「っ! つまり全種族を対象に、その能力を発揮できるということ?」

 

 

「ま、まあ、そうなりますね」

 

 

当麻の解説を聞いたリアスが確認するように尋ねると、リクオは少し歯切れが悪そうにしながらも肯定した。これにはイッセー以外のオカルト研究部の面々も絶句する。当然だろう…。何せその能力は、“ある領域”に到達するようなものなのだから…。

 

 

「えっと、僕の神器の説明は一応以上なんですけど…これでいいですか?」

 

 

「! え、ええ、分かったわ。ありがとう」

 

 

「じゃあ、次は一護だな」

 

 

「ああ…」

 

 

当麻にそう言われ、今度は一護が自身の神器の説明をする番となった。そして…

 

 

「宵闇に刻め…“斬月”…」

 

 

ブォォォォォンッ…

 

 

『ッ!!??』

 

 

一言そう呟いたかと思うと、一護の格好が一瞬にして学生服から“黒を基調とした袴”姿へと変わり、“出刃包丁を連想させるような巨大な刀”を右手で持って担いでいたのだ。またしても著しい変化が起きたことに、この日何度目か分からない驚きを見せるオカルト研究部の面々とイッセー…。

 

 

「俺は自分の神器を一応、“死への断罪者(ブレイミング・デスサイズ)”って呼んでる。で、俺が今担いでる刀がリクオと同じように発動時に出てくる“斬月”だ」

 

 

「御姿まで変わりますのね。どのような能力があるのですか?」

 

 

「あー、まあ、色々だな。攻撃なら斬撃を飛ばしたり出来るし、飛ぶことも出来たりするし…割と応用が利く能力なんだよ」

 

 

朱乃の質問にリクオと同様、一護は歯切れの悪そうな様子で答えていると、ここで、

 

 

「そうだな…。じゃあ、俺の神器の能力を紹介するついでに、1つ一護の神器の能力を見せてやるよ…。一護、頼む」

 

 

「! ああ…」

 

 

当麻がそう言うと、一護は少し歩いて当麻と距離を取り、彼に向かって左手を前に突き出して構えた。すると…

 

 

「破道の三十一、“赤火砲(しゃっかほう)”」

 

 

ゴオッ!!

 

 

「なっ…!!?」

 

 

その左手の前に赤い球体が形成され、そのまま当麻に向かって放たれたのだ。それが明らかに“攻撃するためのもの”であると分かったリアスは、当然の如く驚愕する。そして…

 

 

「フッ!!」

 

 

バキィィィィィィィィンッ…!!

 

 

「…え…?」

 

 

目の前の光景に思わずそんな声を漏らしたのは、一番あらゆる事が理解できていないイッセーだった。だが、リアスを始めとするオカルト研究部の面々も言葉を失う。何故なら…先程の赤い球体が、当麻の右拳に触れた瞬間に消滅してしまったのだから…。

 

 

「一護の神器の能力で一番特徴的なのが、今みたいな特殊な術を発動させる“鬼道”だ。術の種類も多彩で、効果も色々ある。難点もいくつかあるけど…まあ、使い勝手はかなり良いと思うぜ…。一護の能力の説明は、こんな感じでいいか?」

 

 

「え、ええ。それより…」

 

 

「ん?」

 

 

 

「あなた…さっき一体、何をしたの?」

 

 

当麻が一護の神器の説明をし終えた所で、リアスが先程起きたことについて尋ねると、それに対し、

 

 

「何って…殴って一護の鬼道を消滅させただけだぞ?」

 

 

「そういうことを聞いてるんじゃないわよ!! ただ殴っただけで攻撃が“消滅”する筈ないじゃない!!」

 

 

当麻はサラッとそう答えたのだ。これには思わずリアスも声を荒げてしまう…。

 

 

「はぁ…当麻、まだ当麻の神器のことを話してないでしょ?」

 

 

「! ああ、悪い悪い、そういえばそうだったな…! 俺の神器の名前は“幻想殺し(イマジンブレイカー)”。この右手に触れたモノが異能の力なら、何であろうと問答無用で打ち消す能力を持つ神器だ」

 

 

「っ!? それはつまり、堕天使や天使の攻撃であったとしても…?」

 

 

「打ち消すだろうな。まあ、そうはいっても色々制限はあるし、問題点はリクオや一護の神器と比べてずっと多いんだけど…」

 

 

「そんな神器、聞いたことも無いわ。三大勢力の全ての攻撃が無効化できるなんて…」

 

 

当麻の能力の概要を聞いて、より驚きを隠しきれない様子のリアス。それは勿論、他のオカルト研究部の面々も同様の反応を見せていた…。分かっていないのは、完全に置いてきぼり状態のイッセーだけであったりする。と、ここで、

 

 

「あー、とりあえず俺達の神器の説明は以上なんだけど…」

 

 

「! 分かったわ。ここまで話してくれたこと、感謝するわね。それで、話は変わるのだけれど…」

 

 

「? 何だ?」

 

 

当麻の発言に対し、リアスが礼を述べながら話題を変えてきたことに反応する一護。そして…

 

 

「あなた達、“眷属”のことは知ってる?」

 

 

「あ、はい、勿論…」

 

 

「そう。なら単刀直入に聞かせてもらうわ…。あなた達、私の眷属にならない?」

 

 

リアスはストレートにそう尋ねてきた…。

 

 

「あなた達の強さは分からないけど、保有している神器がかなり特異なものなのは間違いないわ。上手く行けば、爵位をもらうことも十分可能な筈よ?」

 

 

「? あ、あの、リアス先輩。爵位って、一体…」

 

 

「! ああ、そういえばイッセーにはまだ言っていなかったわね。転生悪魔となった下僕には、その活躍次第で爵位を貰うことが出来るの。爵位が高くなる程多くの眷属を持つ可能性も上がるでしょうし…あなたが目指している“ハーレム”にも、大きく近付けるんじゃない?」

 

 

「マ、マジですかッ!!? よっしゃああああああああッ!!! ハーレム王に、俺はなるッ!!!」

 

 

今まで殆ど話に付いていけずに黙っていたイッセーだったが、リアスの話を聞いた瞬間、拳を高々と突き上げながら言い放つ。ちなみに…

 

 

【あー、何かよく分かんねえけど…】

 

 

【1つだけ、何となく分かったね…】

 

 

【ああ…俺達の目の前にいるコイツは、すげえ“馬鹿”だ】

 

 

それを見て、当麻達3人のイッセーに対する印象が確定したのは…まあ、言うまでもない。

 

 

「それでどうかしら、上条当麻君、黒崎一護君、奴良リクオ君? 決して悪い話では無いと思うのだけど?」

 

 

「あー、そうだなぁ…」

 

 

リアスが眷属についての話を再び尋ねてきたのに対し、当麻は若干目を泳がせながらも、頭の中で一護とリクオに話し掛ける…。

 

 

【どうする、一護、リクオ?】

 

 

【いや、どうするも何も、なれる訳ねえだろ!?】

 

 

【だ、だよな~…】

 

 

【でもキッパリ断ろうにも、理由を話す訳にはいかないし…】

 

 

【…こうするしかないな…】

 

 

そして、当麻が最終的に下した結論は…

 

 

「悪いけど、その話は“保留”にさせてくれないか?」

 

 

最も曖昧な返答だった。すると…

 

 

「…! 理由を説明してもらえるかしら?」

 

 

「いや、眷属にはそれなりの信頼関係が必要になるだろ? けど、俺達は今日転校してきた人間だ。俺達はアンタ等のことを全くと言っていいほど知らないし、アンタも俺達のことを殆ど全く知らない…。そんな状態で眷属になるのは、お互いに良いとは言えないんじゃないか?」

 

 

「…………」

 

 

「それなりに互いを理解してからの方が、色々と納得できると思うんだが……どうだ?」

 

 

当麻の説明を黙って聞いていたリアス。その返答は…

 

 

「そうね。あなたの言うことにも一理あるし、この話は置いておきましょう」

 

 

「! そうか…」

 

 

説明を受け入れるものだった…。

 

 

「ただし、あなた達にはオカルト研究部に入ってもらうわ。勿論、イッセーにもね」

 

 

「! は、はい!! ぜひお願いします!!」

 

 

「? この部活に、ですか?」

 

 

リアスの若干命令に近い提案をイッセーが二つ返事で承諾する一方、リクオは疑問を感じて尋ねた。

 

 

「私はこの町全体の管理を上の方々から任されているの。あなた達のような特異な神器所有者を、ただ放って置くことは出来ない。だから…」

 

 

「監視の意味も込めて、この部活に入って欲しい…って訳か?」

 

 

「その通りよ。理解が早くて助かるわ。それで、どうかしら…?」

 

 

一護の発言を聞いたリアスのそんな問い掛けに対し、当麻達の返答は…

 

 

「まあ、この学園に通う以上、それは避けられないよな…。分かった、オカルト研究部に入部させてもらう」

 

 

「ふふっ、それじゃあ、これからよろしくね。歓迎するわ、上条当麻君、黒崎一護君、奴良リクオ君」

 

 

「ああ」

 

 

「よろしくお願いします」

 

 

“承諾”だった。そして挨拶を軽く行うリアスと当麻達3人…。

 

 

「それと、あなた達も部員となった以上、私のことは“部長”と呼びなさい。いいわね?」

 

 

「! ハハッ、分かったよ、“部長”…」

 

 

リアスのそんな指示に対する当麻の反応を見る限り、上手くやっていける可能性は高いだろう…。

 

 

「そういえば、まだ自己紹介をしてなかったわね。改めて、私はリアス・グレモリー。高等部3年で、ここオカルト研究部の部長よ。そして、この4人が私の眷属で…」

 

 

「副部長の姫島朱乃と申します。どうぞお見知りおきを」

 

 

「僕は木場裕斗。ここの部員で、君達と同じ高等部の2年だよ。よろしくね」

 

 

「…高等部1年の、塔城小猫です。よろしくお願いします…」

 

 

「俺は兵藤一誠! 今日からリアス先輩の下僕兼眷属になった! お前等とは同じクラスだし、これから仲良くしていこうぜ! よろしくな!」

 

 

「じゃあ、こっちも改めて…高等部2年の上条当麻だ。これからよろしく頼む」

 

 

「同じく高等部2年の黒崎一護だ。ま、よろしくな」

 

 

「同じく高等部2年の奴良リクオです。これからよろしくお願いします」

 

 

こうして当麻達3人は、オカルト研究部に所属することになったのだった…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

今日の部活は一先ず終わり、現在当麻達は帰路に着いていた…。

 

 

「まさか初日から悪魔の奴等と遭遇することになるとはな。しかも、殆ど仲間入り状態になっちまったし…」

 

 

「まあ、完全に当麻が原因なんだけどね」

 

 

「か、返す言葉もございませう…」

 

 

一護とリクオの言葉を聞いて、頭が上がらない状態の当麻…。

 

 

「でも、丁度良かったのかもしれない。色々気になることもあるし…」

 

 

「ああ…まずは数日前くらいから町にいる“堕天使”だな。イッセーを殺した奴も、悪魔に転生した後に襲撃してきた奴も堕天使だったみてえだが…」

 

 

「多分、一昨日と昨日感じた気配がそれだったんだな」

 

 

だが話をイッセーの転生に関するものにすると、3人は一気に真剣な雰囲気になった…。

 

 

「でも、態々リアス部長みたいな上級悪魔が管理してる土地で、そんなことをするってことは…」

 

 

「何かしら目的があって来てるのは、間違いないだろうな…」

 

 

リクオの言わんとしていることに気付き、そう言葉を続ける一護。と、ここで、

 

 

「それに、もう1つ気になってることがある」

 

 

「…イッセーの神器か?」

 

 

「ああ」

 

 

今度は当麻が、イッセーの神器を話題として挙げる。

 

 

「オカルト研究部の人達はあんまり気にしてなかったけど…イッセー君のあの神器、ひょっとしたら“とんでもないモノ”かもしれない…」

 

 

「ああ…。実は頭の中で、1つ候補があるんだが…」

 

 

「奇遇だな。俺もだよ、一護…。けどもしそうだとしたら、本当に凄いことになる気がするが…」

 

 

「まあ、それもその内ハッキリすると思うぜ?」

 

 

すると…

 

 

「それよりリクオ、お前にはあと1つ気にしてることがあるんじゃないのか?」

 

 

「! やっぱり気付いてたんだ…」

 

 

「まあ、何となくな…。“小猫”のことだろ?」

 

 

一護と当麻に尋ねられたリクオは、予想していた様子で呟いた…。

 

 

「あの魔力の感じ…多分間違いないと思う」

 

 

「! そうか…。まさかこんな所で会うとはな」

 

 

「で、どうするんだよ、リクオ…?」

 

 

「今は特に何もしないよ。まだ確証がある訳じゃないし…こっちもその内ハッキリすることだと思うしね」

 

 

「…なら、俺達からは何も言わねえよ」

 

 

当麻の問い掛けに対するリクオの返答を聞いて、どうやら一護は納得したようである…。

 

 

「ま、とにかくさっさと帰ろうぜ? “あいつ”も待ってるだろうし…」

 

 

「そうだね。多分夕飯も作ってくれてる頃かな?」

 

 

「賛成だ。上条さんもすっかり腹が減ったぜ…」

 

 

そんなこんなで、当麻達3人の転校初日は終わりを告げた…。

 

 

 



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討伐


今回少しオリジナルな展開にしてみました。多分一瞬で終わりますが…。



主人公達がちょっと戦う……いや、戦ってないに等しいと思います。



では、本編をどうぞ。


 

翌日…

 

 

「ふ、不幸だ…」

 

 

「ったく、何で同じ家の中でお前だけ課題のプリントを失くすんだよ…」

 

 

「しょうがないよ、一護。当麻のこれは、もう日常に近いんだから」

 

 

「いや、尚更“しょうがない”で済ませたらマズいだろ、それ…」

 

 

日も傾き始めた頃、当麻達3人は大分遅れてオカルト研究部の部室に向かっていた。ちなみにその原因は、課題を失くした当麻が補習を受けるハメになったことだったりする…。

 

 

ガチャッ!

 

 

そしてようやく部室に到着した所で、当麻達の目に飛び込んできたのは…

 

 

「二度と教会に近づいちゃダメよ」

 

 

リアスに厳しく注意されているイッセーの姿だった。

 

 

【な、何だ…?】

 

 

【イッセーの奴、何かやらかしたみたいだな…】

 

 

【どうやら教会に近づいたみたいだね。まあ、確かに悪魔が教会に近づくなんて…かなりマズいことだよね】

 

 

頭の中で3人がそんな会話をする間にも、リアスのイッセーに対する注意は続く。そして…

 

 

「ごめんなさい、熱くなり過ぎたわ…。とにかく、今後は気を付けてちょうだい」

 

 

「はい…」

 

 

そのやり取りを以て、リアスの注意は終わった。すると、

 

 

「あらあら、お説教は済みました?」

 

 

「うおっ!?」

 

 

「「っ!」」

 

 

驚きの声を上げる一護の後ろには、いつの間にか来ていた朱乃の姿があった。これには左隣にいた当麻とリクオも驚く。

 

 

「朱乃? もう帰ったのかと思ったわ…」

 

 

「先程“大公”から連絡が…」

 

 

「! 大公から…?」

 

 

それを聞いて反応するリアスに対し、朱乃は更にその内容を報告する…。

 

 

「この町で、“はぐれ悪魔”が見つかったそうですわ」

 

 

『…!』

 

 

その報告に、リアスと当麻達は思わず眉を潜めた…。イッセーを除いて…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

その日の夜。朱乃が受けた連絡は、リアス達グレモリー眷属への“はぐれ悪魔”討伐の依頼だった。場所は町の小高い山の上にある廃屋である。

通常悪魔達は自らの魔方陣を駆使し、目的地へ瞬間的な移動を行う。だが、悪魔以外の者達は当然の如く利用することが出来ないのだ。故に……

 

 

「悪い、遅くなっちまった」

 

 

「仕方無いわ。あなた達は悪魔でない以上、魔方陣を使えない訳だし…」

 

 

「そう言ってくれると、上条さん的には助かるぜ」

 

 

移動の際には当麻達3人のように、自力で移動する以外に無いのである。

 

 

「それじゃあ、行きましょうか」

 

 

リアスの一言を皮切りに、彼女を先頭にして目的地の廃屋へ入っていく一行。ちなみに当麻達3人は最後尾にいる。そして、リアスがその間にもイッセーに悪魔の制度の1つ、“悪魔の駒(イーヴィル・ピース)”の説明をし始め…

 

 

「とにかく今夜は、“悪魔の戦い”というものをよく見ておきなさい」

 

 

「あ、はい…!」

 

 

「それから当麻、一護、リクオ。あなた達も“賞金稼ぎ”をしているなら問題ないでしょうけど、くれぐれも気を付けてちょうだい」

 

 

「ハハッ、分かったよ」

 

 

リアスの指示にイッセーと当麻がそれぞれ返事をした、その時、

 

 

「来た…」

 

 

『!』

 

 

「不味そうな匂いがするわぁ…。でも、美味しそうな匂いもするわぁ…。甘いのかしらぁ…? 苦いのかしらぁ…?」

 

 

小猫の声に全員が反応したかと思うと、何処からともなく不気味な声が聞こえ…その主が姿を現した。女の上半身と、複数の生物が混じったバケモノの下半身を持つそれは、まさに“異形の物体”と呼ぶに相応しいだろう…。

 

 

「はぐれ悪魔“バイザー”…主の下を逃げ、その欲求を満たす不逞の輩。その罪、万死に値するわ…。グレモリー公爵の名において、あなたを吹き飛ばしてあげるッ!!」

 

 

「小賢しい小娘なこと…。その赤い髪のように、あなたの身体を鮮血で染めてあげるわァァァァッ!!」

 

 

両者のそんな一声を合図に、先頭が始まった…。

 

 

「裕斗」

 

 

「はい…!」

 

 

ザシュッ!!×2

 

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!??」

 

 

裕斗がはぐれ悪魔──バイザーの巨大な両腕を切り落としたのを皮切りに、小猫は右拳一発で軽々と巨体を吹き飛ばし、朱乃は雷属性の魔力攻撃で焼き焦がしていく…。特に朱乃に関しては、ここで“究極のS”ということが判明したのだが…。

そしてその間にも、リアスはイッセーに“悪魔の駒”のそれぞれの特性を説明していた。すると…

 

 

【! おい、当麻】

 

 

【ああ、分かってる…】

 

 

一護から頭の中で声を掛けられると、当麻はここで瞬時にある場所へと駆け出す。その先には…バイザーの切り落とされた右腕が迫っていることに気付いていない、リアスがいた…。

 

 

「シッ!!」

 

 

ドゴオオオオオオオオオオオンッ!!!

 

 

「っ…!!」

 

 

当麻がその腕を右拳で吹き飛ばした所で、リアスはようやく気付く。

 

 

「新人への説明に夢中になるのは仕方無いと思うけど、あまり隙があるのは上条さん的には良くないと思うぜ、部長?」

 

 

「! あ、ありがとう…」

 

 

当麻の呆気(あっけ)らかんとした注意を聞いて、少し呆けた様子ながらも礼を言ってくるリアス。ちなみにその間にも、当のバイザーはリアスを不意打ちしようとしたことを知った朱乃によって、より激しく焼かれた。その結果…

 

 

「もういいわ、朱乃」

 

 

「もうお仕舞いなんて…ちょっと残念ですわね。うふふっ/////」

 

 

ドガアアアアアアアアアンッ…!!

 

 

バイザーは見るも無惨な様子で地に伏すこととなった。すると、リアスはゆっくりと近づいていき…

 

 

「最後に言い残すことはあるかしら?」

 

 

「…殺せ…」

 

 

「そう。なら、消し飛びなさい…」

 

 

そして…

 

 

「王手(チェックメイト)」

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!

 

 

リアスの放った赤黒い魔力攻撃によって、バイザーは跡形もなく消滅した…。

 

 

「終わったわ。さあ、帰るわよ♪」

 

 

「「「はい、部長」」」

 

 

年相応の笑みを浮かべながらリアスがそう言うと、朱乃と小猫、裕斗は揃って頷いた。と、ここで、

 

 

「あ、あの、部長!」

 

 

「? 何かしら?」

 

 

「で、俺は? 俺の駒っていうか…下僕としての役割は何なんですか?」

 

 

イッセーが自分にとって最も重要なことを尋ねると、リアスはこう答えた。

 

 

「“兵士(ポーン)”よ」

 

「! 兵士って、まさか…」

 

 

「そう。イッセー、あなたは兵士。頑張ってちょうだい♪」

 

 

それを聞いた瞬間、イッセーは即座に自身が“一番下”であることを認識し、愕然とした。

 

 

「さあ、行きましょう」

 

 

そして、今度こそこの場を後にしようとした…その時だった…。

 

 

「一護、リクオ」

 

 

「「ああ(うん)…」」

 

 

ガキィィィィィィィィィィィィィンッ…!!!×2

 

 

『ッ!!??』

 

 

突如響き渡る甲高い金属音。その理由は…

 

 

「女の子を“背後から不意打ち”するなんて…」

 

 

「感心しねえな…」

 

 

いつの間にか神器を発動していた一護とリクオが、瞬時に朱乃と小猫の背後にそれぞれ移動し、自らの愛刀である“斬月”と“祢々切丸”で何かを受け止めたからだった。すると、

 

 

「馬鹿な…!?」

 

 

「何故気付いた…!?」

 

 

「っ! 誰…!?」

 

 

一護とリクオの目の前から2つの声が聞こえてきたのだ。そしてリアスが思わず声を上げると、その姿が段々と明らかになっていく。その正体は…緑色を貴重とした体が特徴的で、サーベルを持つ2体の人型悪魔だった…。

 

 

「チッ…!」

 

 

ダッ!!×2

 

 

その内の1体が舌打ちをすると、息を合わせたように2体共その場から一旦後退した…。

 

 

「な、何だコイツ等!?」

 

 

「どうやらはぐれ悪魔のようね。でもこの魔力、まさか…!」

 

 

「ああ。多分あんたの予想通り、コイツ等は“Aランク級”のはぐれ悪魔だよ」

 

 

イッセーとリアスが声を上げる中、ここでそう言ったのは…当麻だった…。

 

 

「この前見た手配書リストに居たな。確か…“レーズン兄弟”、だったか?」

 

 

「「“レイス”だッ!!!」」

 

 

「うおっ!?」

 

 

一護の発言に対し、即座にツッコミを入れる2体の悪魔──レイス兄弟。それを見て…

 

 

「なあ、当麻? ひょっとして一護…」

 

 

「あ、ああ。あいつは人の名前を覚えるのが苦手なんだ…」

 

 

イッセーがそう聞くと、当麻は苦笑いを浮かべながら答えた。まあ、どう考えても“苦手”のレベルではないとは思うが…。

 

 

「貴様等、賞金稼ぎか?」

 

 

「ああ、まあな。一応お前等のことも少しは知ってるぜ? 女の悪魔ばかりを標的に殺しまくり、尚且つその行方を一切掴ませない…。たくさんの賞金稼ぎが挙(こぞ)って狙ってるらしいな」

 

 

レイス兄弟の片方の問い掛けに対し、そう答える当麻。すると、

 

 

「なあ、部長」

 

 

「何かしら?」

 

 

「コイツ等は俺達に任せてくれないか?」

 

 

「! どういうこと…?」

 

 

当麻の提案の意図が分からず、リアスはそう尋ねる。

 

 

「昨日言っただろ? 俺達は色々互いのことを知らないって…。今がそれを1つ解決する良い機会だと思わないか?」

 

 

「…!」

 

 

「まあ、俺達は一応部員な訳だし、決めるのは部長だとは思うけどな」

 

 

当麻にそう言われたリアスは、暫しの間何かを考える。そして…

 

 

「大丈夫なのね?」

 

 

「ああ、保証する」

 

 

「…いいわ。お願い」

 

 

その提案は承諾された。すると、それを聞いた当麻は…

 

 

「一護、リクオ…やれ」

 

 

「「ああ(うん)…」」

 

 

今までとは全く違う低い声で、一護とリクオに指示をした。それに対し、

 

 

「どうする…?」

 

 

「やむを得ん…。全員殺して撤退する」

 

 

ブォォォォォォォォォォォンッ…

 

 

「っ!? き、消えた!? さっきの木場みたいに速いのか!?」

 

 

「いや、違うよ、イッセー君。これは…本当に消えたんだ…」

 

 

レイス兄弟の姿が“消えた”のを見て、イッセーはバイザーとの戦闘の時の裕斗のように、“速すぎて見えない”からだと考えた。だが、それを当の本人である裕斗は即座に否定する…。

 

 

「小猫、どう?」

 

 

「…ダメです。匂いも感じません…」

 

 

「それに、相手の魔力も感じられませんわ」

 

 

「っ! 匂いも魔力も利かないなんて…」

 

 

小猫と朱乃の報告を聞いて、リアスは“ある答え”に行き着く。それは…

 

 

「まさか…“神器”を…!?」

 

 

「ああ、恐らくな」

 

 

相手が“神器の能力を行使している”というものだ。そして、その答えに当麻も同意する…。

 

 

「多分、相手の五感と魔力の感知能力を効かなくする効果が発生してるみたいだな。珍しい能力だし、売れば結構な値段に…」

 

 

「何を呑気なこと言ってるのよ!? こうしてる間にも、あの悪魔達が私達を狙って…!?」

 

 

続けて当麻がそんな推測を立て始めたのを見て、リアスが思わず声を荒げていた…その時だった…。

 

 

ザシュッ!!×2

 

 

『っ!!?』

 

 

突如何かが貫かれる音を聞いた瞬間、オカルト研究部の面々は直ぐ様その方向へ向き…驚愕した。何故なら…

 

 

「な……」

 

 

「何…故……?」

 

 

「何で今こんな状況になってるのか、“意味が分からない”って顔をしてるな。そんなもん…」

 

 

「あなた達に答える気はありません…」

 

 

またしても一護が朱乃の右隣に、リクオが小猫の左隣にいつの間にか移動して…消えていた筈のレイス兄弟の身体をそれぞれの愛刀で貫いていたのだから…。そして、

 

 

「オラアッ!!」

 

 

「ふっ…!!」

 

 

ザザァンッ!!×2

 

 

「「ギィヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ…!!!??」」

 

 

2人は一旦自らの得物を引き抜いたかと思うと、容赦無くレイス兄弟の体を素早く十文字に斬り裂き…消滅させた…。

 

 

「うし! 終わり!」

 

 

「お疲れだったな、一護、リクオ」

 

 

「全然戦ったって感じはしないけどね…。あ! 当麻、これ」

 

 

「! ああ…」

 

 

2人に労いの言葉を掛けていると、リクオから何かを投げ渡されて受け取る当麻。それは…少し装飾が施されている2つの銀の腕輪だった…。

 

 

「なあ、部長」

 

 

「! な、何かしら?」

 

 

「この神器、俺達の方で処理してもいいか? 今回の報酬の1つとして、馴染みの所で換金してえんだが…」

 

 

「…ええ。実際倒したのはあなた達なんだし、私が口を挟むのも筋違いだわ。好きにしてちょうだい」

 

 

「悪いな、助かるぜ」

 

 

残された神器の処理に関して、リアスとそんなやり取りをする当麻。その一方で、

 

 

「…あの…」

 

 

「ん?」

 

 

「…ありがとうございました、奴良先輩」

 

 

「! ああ、気にしないで。僕が勝手にやったことだし…。あと、僕のことは普通に“リクオ”でいいよ? あんまり名字で呼ばれるのも慣れてないから」

 

 

「…分かりました、リクオ先輩…。あと、それなら私も“小猫”でいいです…」

 

 

「うん、分かった。そういえば、怪我はない?」

 

 

「…平気です…」

 

 

リクオは小猫とそんな会話をしていると…

 

 

「そっか、よかった…」

 

 

「にゃっ……!?」

 

 

「っ! ご、ごめん! 何か僕、少し撫で癖みたいなのがあって…。嫌だったよね?」

 

 

「…! い、いえ…大丈夫です…」

 

 

あやすような感じで無意識の内に彼女の頭を撫でたことで、そんなやり取りへと発展していた。更に…

 

 

「あんたも無事か?」

 

 

「! え、ええ…。あの、先程はありがとうございます。お蔭で助かりましたわ」

 

 

「気にすんな。俺も勝手にやっただけだ…」

 

 

「…意外と紳士なのですわね…(ボソッ)」

 

 

「? 何か言ったか?」

 

 

「うふふっ、何でもありませんわ♪」

 

 

こちらでは一護と朱乃が似たような雰囲気のやり取りを行っていた…。すると、

 

 

「さて…悪いけど、今日のところは先に帰らせてもらってもいいか? コイツの処理も、さっさとやりたいんだが…」

 

 

「…はあ…あなたって、意外と注文が多いのね」

 

 

「ハハッ! まあ、上条さん達にも色々あるんだよ…」

 

 

「いいわ、あなた達の実力もほんの少しだけ知ることが出来たし…。今日はお疲れ様」

 

 

当麻の本日3度目の提案に対し、リアスは溜め息を吐きながら受け入れる。

 

 

「ああ…。行くぜ、一護、リクオ」

 

 

「おう。じゃあな」

 

 

「失礼します」

 

 

そして、その場を後にしていく当麻達3人…。

 

 

(神器を持つ悪魔をあんなに一瞬で倒すなんて、普通の賞金稼ぎに出来ることじゃないわ…。当麻、一護、リクオ…あなた達は本当に、何者なの…?)

 

 

リアスは疑問をより膨らませながらも、そんな3人の後ろ姿を見送るのだった…。ちなみに…

 

 

「リクオぉぉぉぉぉっ!!! お前何小猫ちゃんに羨ましいことしていやがるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 

「えいっ…」

 

 

「ぐふぉあっ!!??」

 

 

ドサッ…!!

 

 

リクオに凄まじい形相で突っ込もうとしたイッセーが、小猫の軽い(?)一撃で沈んでいたのは…多分気のせいである…。

 

 

 

 



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聖女

今回は最後の方でようやく別作品のキャラクター達が登場します。



一応誰なのかは隠してるつもりですが・・・少なくとも1人以上は正体がバレるかと・・・。



では、本編をどうぞ。





翌日の夜。部活が終わって先に帰宅した当麻達3人は、自宅のだだっ広いリビングで適当に寛(くつろ)いでいた…。

 

 

「イッセーの奴は今頃、また小猫の依頼を代わりにやってんだろうな」

 

 

「だろうね。昨日リアス部長から自分の駒のことを聞いて、凄く気にしてるみたいだし」

 

 

「まあ、あいつはまだ“兵士(ポーン)”の特性を理解してないからな。部長もその内誤解を解くんだろうが…」

 

 

当麻とリクオの話を聞きつつ、そう話す一護。と、ここで、

 

 

「お待たせしました!」

 

 

カチャッ!

 

 

「! ああ、サンキュー、───」

 

 

ツインテールのメイド服少女が、3人分のティーカップをトレイに乗せて持ってくる。その中身はどうやら、コーヒーのようだ…。

 

 

「…美味い」

 

 

「! ありがとうございます…!」

 

 

「相変わらずだな」

 

 

「うん、いつも通りだ」

 

 

一口飲んで当麻が素直に感想を言うと、それに一護とリクオも同意する。そして、3人がもう一口飲もうとした、その時…

 

 

『っ!』

 

 

何かを感じた当麻達3人は、そこでコーヒーを飲もうとした手を止めた。どうやらメイドの少女も同様だったようで、動作を止めて当麻達を見ている。

 

 

「当麻様、今のは…」

 

 

「ああ、間違いないな」

 

 

「しかもイッセーが一緒にいるぞ? 他にももう1人いるみてえだが…」

 

 

「でもマズいよ。今のイッセー君じゃ、とてもじゃないけど…」

 

 

一護とリクオがそう話す中、当麻は暫しの間何かを考え…

 

 

「行くぞ、一護、リクオ。悪い、───。少し出る。外には出るなよ?」

 

 

「! はい…お気を付けて…!」

 

 

そして…

 

 

ポスッ…

 

 

「っ…/////」

 

 

「行ってくる…」

 

 

その場から音もなく姿を消した…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

2分後…

 

 

シュンッ!!×3

 

 

「ここだな…」

 

 

「ああ。けど結界が無いな。さっきの感じは間違いなく結界によるものだったんだが…」

 

 

「中で何かあったのかな…?」

 

 

当麻達3人が瞬時にやってきたのは、とある一軒家だった…。

 

 

「一護」

 

 

「分かってる…」

 

 

ここで当麻に声を掛けられた一護が、目を閉じて何かに集中し始める。すると…

 

 

「…! おい…中で随分悪趣味なことが始まろうとしてるぞ。おまけにイッセー以外の2人は多分、“祓魔師(エクソシスト)”と“修道女(シスター)”だ」

 

 

「っ!? 祓魔師と修道女が…!?」

 

 

「どうする、当麻? ぶっ飛ばすか?」

 

 

その報告にリクオが驚く中、一護は当麻に指示を仰ぐ…。

 

 

「…ああ」

 

 

「分かった…。外す訳にもいかねえし、念のため詠唱しとくか…」

 

 

当麻の承諾を受けた一護はそう言うと、右手を前に突き出して構えた…。

 

 

「君臨者よ…血肉の仮面・万象・羽ばたき・人の名を冠す者よ…真理と節制、罪知らぬ夢の壁に僅かに爪を立てよ…」

 

 

そして…

 

 

「破道ノ三十三、“蒼火墜”」

 

 

ドゴゴゴゴゴゴッ!!!

 

 

「アベシッ!!?」

 

 

トガアアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!!

 

 

その手から蒼白い炎の奔流が発生したのだ。奔流はそのまま一軒家の限られた部分を貫いていき、大爆発を巻き起こした…。途中ふざけた叫び声が聞こえたのは…気のせいではない…。

 

 

「やったか?」

 

 

「いや、気絶した程度みたいだ。めちゃくちゃ加減したとはいえ、意外と頑丈だな」

 

 

「と、とにかく入ろう…!」

 

 

一護が手応えについて話す中、リクオがそう言ったことで3人は空いた壁から家の内部へと入っていく。すると…

 

 

「っ! と、当麻…達か…?」

 

 

「! イッセー!」

 

 

「どうやら無事…って訳じゃなさそうだな…」

 

 

「あ、ああ…イテテッ…!」

 

 

満身創痍の状態で座り込んでいるイッセーの姿があった。どうやら左足と背中の辺りを負傷しているらしい…。

 

 

「さっきの変な炎って、まさかお前等が…?」

 

 

「僕達というより、一護がね」

 

 

「とりあえず上手くいったみたいだな」

 

 

「あ、ああ、お蔭で助かったぜ…」

 

 

一護に対し、何とか礼を言うイッセー。と、ここで、

 

 

「イ、イッセーさん…!」

 

 

「っ!? ア、アーシア…」

 

 

イッセーを呼ぶ声が聞こえてきたため、そちらの方へ目を向けてみると、そこには“金髪のロングヘアー”と“緑の瞳”が特徴の少女がうつ伏せになっていた。年は丁度イッセーや当麻達と同じくらいであり、格好からして一護が存在を感じた修道女のようである…。

 

 

【どうやらイッセーの知り合いみたいだな…】

 

 

【ひょっとして、昨日イッセー君が教会に近付いたのも、この子が関係してたんじゃ…】

 

 

【けどこの雰囲気から考えると、イッセーはこいつに悪魔であることを隠してた…って所か…。にしても“アーシア”って、まさか…】

 

 

一護がそんな推測を立てていた、その時、

 

 

キィィィィィンッ…!!

 

 

当麻やイッセー達の近くに魔方陣が現れる。その紋章は…グレモリーのものだった…。

 

 

「イッセー君、助けに…!」

 

 

「あらあら…」

 

 

「…リクオ先輩、来ていたんですか?」

 

 

「あはは、まあね…」

 

 

魔方陣から出てきた裕斗と朱乃、小猫は、当麻達3人が来ていることに驚く。更にそこへ、

 

 

「! あなた達、どうしてここに?」

 

 

「よぉ、部長。なに、この辺りで結界が張られたような気配を感じてな。ついさっき駆け付けた所だ」

 

 

「ちなみに元凶っぽい祓魔師(エクソシスト)の野郎なら、向こうで気絶してるぜ?」

 

 

「そう…。ありがとう、助かったわ」

 

 

昨日の一件で当麻達の実力を垣間見たからか、リアスは当麻と一護の話を聞いて素直に納得し、礼を言った。そして直ぐ様イッセーの下へ駆け寄り、落ち込む彼を慰め始める…。すると、

 

 

「っ…! 堕天使複数…」

 

 

「! 部長」

 

 

「…今はイッセーの回収が先決ね。朱乃、ジャンプの用意を。小猫、イッセーをお願いね」

 

 

「「はい(…はい)」」

 

 

小猫が自身の嗅覚で堕天使の気配に気付くと、リアスは直ぐ様朱乃と小猫に指示を出す。そして小猫がイッセーを背負い、当麻達3人以外のオカルト研究部の面々が赤い魔方陣の上に立つ…。

 

 

「部長! あの娘も一緒に…!」

 

 

「それは無理よ。この魔方陣は、私の眷属しかジャンプできないの」

 

 

「そ、そんな…!?」

 

 

イッセーが目の前にいる修道女の少女──アーシア・アルジェントを見て頼むが、リアスはそれをキッパリと否定した…。

 

 

「当麻、一護、リクオ…あなた達は大丈夫ね?」

 

 

「! ああ、すぐにそっちに向かう。勿論堕天使の連中には気付かれねえようにな」

 

 

「分かったわ。くれぐれも気を付けてね」

 

 

そして、当麻とリアスがそんなやり取りを終えると…

 

 

「アーシア!」

 

 

「イッセーさん…またいつか、何処かで…」

 

 

互いに涙しているイッセーとアーシアの会話を最後に、オカルト研究部の面々はその場から姿を消したのだった…。

 

 

「じゃあ当麻、僕達も…」

 

 

「ああ…」

 

 

それを見届けた所で、当麻達もその場を後にしようとした。すると、

 

 

「あ、あの…」

 

 

「! 何だ…?」

 

 

「あなた方も、イッセーさんの御友人なのですか?」

 

 

「え? あ、うん。まあ、僕達は人間だけどね」

 

 

アーシアが声を掛けてきたのだ。それに対し、一護とリクオが対応する。

 

 

「イッセーさんを、よろしく御願いします」

 

 

「「「…!」」」

 

 

「私にはもう…どうすることも出来ないので…」

 

 

涙を滲ませながらも、笑みを浮かべて頼んでくるアーシアに3人は驚く。当然だ。彼女の言動は、明らかに通常では考えられないものなのだから…。そして、ここで当麻が動いた…。

 

 

「アーシア…だったよな?」

 

 

「! は、はい…」

 

 

「あんたに1つ、聞きたいことがある」

 

 

「? 何でしょうか…?」

 

 

「…これからどうしたい?」

 

 

「え…?」

 

 

当麻の質問の意味が分からない様子のアーシア。だが、そんな彼女の反応を余所(よそ)に、当麻は話を続ける…。

 

 

「確かにあんたとイッセーは相容れない立場の者同士だ…。けど、そいつを一切抜きにして考えるなら…あんたは一体何を望む?」

 

 

「! 私の…望み…?」

 

 

「あんたの本心で答えてくれ…」

 

 

真っ直ぐな目で問い掛けてくる当麻に対し、アーシアは…こう答えた…。

 

 

「もう一度…イッセーさんにお会いしたいです…」

 

 

そんな彼女の瞳からは、またしても涙が流れていた…。そして、それを見た当麻は笑みを浮かべ、

 

 

「よしっ! 決まりだな」

 

 

「ふぇっ…!?」

 

 

彼女を俗に言う“お姫様抱っこ”の形で抱えた。これにはアーシアも思わずアタフタとしてしまう…。

 

 

「あ、あの! 一体何を…!?」

 

 

「決まってるだろ? あんたの会いたい人の所に行くんだよ。行くぜ、一護、リクオ!」

 

 

「はぁ…どうなっても知らねえぞ?」

 

 

「あはは、でも確かに当麻らしいかな…。アーシアさん、しっかり掴まってた方がいいと思うよ?」

 

 

「あ、は、はい…!」

 

 

そして…

 

 

シュンッ!!×3

 

 

当麻達は自分達の家の時と同様、音もなく姿を消したのだった…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

ガチャッ!

 

 

「! 随分早いわね…」

 

 

「ハハッ、まあ、ちょっと本気を出したんでな」

 

 

「…はぁ、分かったわ」

 

 

部室へと無事に到着した当麻達。だが、当麻のそんな返しにリアスは呆れる。

 

 

「イテテテッ…!」

 

 

「イッセーの治療をしてたのか?」

 

 

「ええ。ですが、完治するには時間が掛かりそうですわ…」

 

 

一護の問い掛けに対し、朱乃はイッセーの足に包帯を巻きながら答えた…。

 

 

「あー…じゃあ、“回復の専門家”を呼ぶか」

 

 

「? “回復の専門家”…?」

 

 

「えっと…入ってきていいよ」

 

 

当麻の口から出た単語の意味が分からず、リアスが疑問を感じる中、リクオが部室の入り口の方に向かってそう言った。すると、入り口のドアが開き、そこから入ってきたのは…

 

 

「っ!? アー…シア…?」

 

 

「ッ!! イッセーさんッ!!!」

 

 

「アーシアッ!!!」

 

 

先程別れた筈の修道女──アーシアだった。そして彼女の姿を見たイッセーは、怪我をしていることも忘れて彼女の下へと駆け寄り、お互い涙を流しながら再会を喜び始める…。普通なら周りの人間もこの光景を見て、何かしらポジティブな反応を見せるだろう。だが、現状はそうはいかなかった…。

 

 

「当麻、どうしてその子が居るのかしら…?」

 

 

「あー、いや~…」

 

 

「こちらのことを理解しているあなた達なら、彼女をここへ連れてくることがどれだけ多大な影響を与えるのか…知らない筈ないわよね?」

 

 

当麻達の視線の先にいるのは、額に青筋を浮かべながら笑みを浮かべているリアスだった。その笑みに言い様の無い凄みがあるのは…言うまでもない。

 

 

「まあ待てよ、部長」

 

 

「何かしら、一護?」

 

 

「別に俺達も考え無しにそのシスターを連れてきた訳じゃねえ。そいつがただ堕天使の連中に与(くみ)してる、一介のシスターとは違うと思ったからだ」

 

 

「? どういうこと…?」

 

 

言葉の真意が分からず尋ねてくるリアスに対し、一護はこう答えた。

 

 

「そのシスター…アーシア・アルジェントは、少し前に異端者として教会から追放された、神器“聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)”の所有者だ」

 

 

『ッ!!??』

 

 

「ま、イッセーは少なくともアーシアが神器所有者だってことは知ってるみてえだが…」

 

 

一護の口から神器所有者であることが明らかになると、オカルト研究部の面々は驚きを露わにした。イッセーに関しては何とも言い難い表情を浮かべているが…。

 

 

「“聖母の微笑”…どんな種族であろうと回復させることが出来る神器…。一護、それは本当なの?」

 

 

「実際に見た方がいいかもな」

 

 

「アーシアさん、イッセー君の怪我を治してみてくれる?」

 

 

「は、はい…! 失礼しますね、イッセーさん!」

 

 

「あ、ああ…!」

 

 

リクオに促されたアーシアは、直ぐ様イッセーの治療をするため、両手を彼の足の部分に翳した。すると、彼女の両手から緑色の優しい光が暫し溢れ…

 

 

「…どうでしょうか、イッセーさん?」

 

 

「! えっと…おおっ! 治ってる!」

 

 

「本当ですか!? よかった…」

 

 

それが終わってイッセーが確認のために体を動かしてみると、先程までとは打って変わり、のびのびと体を動かすことが出来た…。

 

 

「確かに事実のようね。まさかこんなに希少な神器を所有しているなんて…」

 

 

「な? 連れてきて損だったとは言えねえだろ? それに、あの祓魔師や堕天使達の所にいる理由も分かってねえ。あんたもイッセーから聞いてるとは思うが、本当にそいつ等と協力関係にあるんなら、イッセーを身を呈して庇うなんて真似は絶対にしない筈だ。とりあえず事情を聞くくらいは、してもいいんじゃねえか…?」

 

 

続けざまに一護から提案されると、リアスは少しの間考え…

 

 

「シスター・アーシア、あなたが何故教会を追放されたのか…経緯を聞いてもいいかしら?」

 

 

そう問い掛けた。それに対し、アーシアは表情を暗くするものの、経緯を話し始める。

元々孤児院にいた彼女は幼少期に神器の能力を覚醒させた。治癒能力自体が非常に希少であったために、直ぐ様教会側が目を付け、彼女を引き取った。そしてその深い信仰心と強力な治癒の使い手となった彼女は、“聖女”として敬われるようになったのだ。だがそんなある時、彼女は大怪我をした悪魔を見つけてしまった。彼女は当然自身の性格故にその悪魔を治療した。するとそのことは一気に教会側に露見してしまい、彼女は掌を返すように“魔女”と蔑まれ、追放という処罰を受けることになってしまったのだ。

そして路頭に迷っている所で堕天使達に拾われ、真の目的も分からぬまま協力することになってしまったらしい…。

 

 

「御願いします、部長!! 俺達とアーシアは確かに立場上は敵同士かもしれません!! でも、このままアーシアが堕天使達に協力させられるなんて、絶対におかしいですッ!! だから、どうか一緒に堕天使達を…」

 

 

そして、イッセーがアーシアの話を聞いてリアスに頼もうとした、その時、

 

 

チャキッ!!×2

 

 

「なっ…!?」

 

 

イッセーはそれ以上言葉を続けることが出来なかった。何故なら…一護とリクオがそれぞれ神器を発動させ、愛刀である“斬月”と“祢々切丸”の切っ先を両側から突き付けているのだから…。すると、

 

 

「イッセー、さっきリアスが言ってただろ? その行動1つで、この三大勢力の微妙な均衡は大きく崩れるかもしれないんだぜ?」

 

 

「な、何だよ当麻!?そんなこと分かって…!」

 

 

「分かってねえよ。行動1つで情勢は一気に変化する。そうなった時、グレモリー眷属全体に火の粉が降りかかることになる可能性があるんだぞ? お前はそのアーシア1人のために…部長達全員を巻き込む覚悟はあるのか…?」

 

 

「っ! それは…」

 

 

真正面から当麻に問われ、イッセーは思わず言葉を詰まらせる。無理もない。それはすなわち、“1人の敵側の少女”と“同族である仲間達”を天秤に掛けるようなものなのだ…。と、そこへ、

 

 

ガチャッ!

 

 

「部長」

 

 

いつの間にか今まで席を外していた朱乃が戻ってきたかと思うと、リアスの下へと近付き、耳打ちで何かを知らせた…。

 

 

「急用が出来たわ。私と朱乃は少し外出します」

 

 

「っ! 部長! 話はまだ終わって…!!」

 

 

「イッセー、あなたは“兵士の駒”を一番弱いと思っているわね?」

 

 

「ッ……!!」

 

 

思いきり図星を突かれたためか、リアスからの突然の問い掛けに対してもあからさまに反応するイッセー…。

 

 

「それは違うわ。兵士には敵陣に乗り込んだ際、王(キング)以外の他の駒に昇格できる特性…“プロモーション”があるの」

 

 

「! 他の駒に、昇格…?」

 

 

「そしてもう1つ…神器は、所有者の“想い”に反応し、それが強ければ強い程能力を発揮するわ…」

 

 

そう言いながら、朱乃と共に展開された魔方陣の上へと移動するリアス。そして…

 

 

「いいこと? 例えプロモーションできたとしても、兵士1人で勝てるほど堕天使は甘くないわ。それを忘れないでちょうだい…」

 

 

最後にその一言をイッセーに告げ、リアスと朱乃はその場から姿を消した…。

 

 

「さてと…俺達もそろそろ帰るとするかな」

 

 

「ああ…」

 

 

「っ!? おい! お前等まで何言って…!?」

 

 

更にここで、当麻と一護も部室から出ようとし始めたのだ。それを聞いたイッセーは文句を言おうとするが…

 

 

「リクオ、お前はどうする?」

 

 

「…僕はここに残るよ。“監視”の必要もあるみたいだしね」

 

 

「…分かった。なら、俺と一護は先に失礼する」

 

 

「お、おいッ…!!」

 

 

当麻と一護はそんなイッセーを無視して、部室を後にした。結果として、この場に残ったのはイッセーと木場、小猫、そしてリクオの4人である…。すると、

 

 

「くっ…!」

 

 

少し歯噛みしながら、イッセーが部室を出ていこうとしたのだ。それを見て…

 

 

「行くのかい?」

 

 

裕斗がいつもの笑みを崩さずに尋ねてきた…。

 

 

「ああ、止めたって無駄だからな!」

 

 

「…殺されるよ?」

 

 

「だとしても、アーシアに酷いことをしようとした連中を放っておくなんて出来ない…。放っておいたら、またアーシアを狙ってくるに決まってる…」

 

 

「良い覚悟だね…と言いたい所だけど、やっぱり無謀だよ」

 

 

「っ! じゃあ、どうしたらいいって言うんだよッ!?」

 

 

そして、その言葉を聞いたイッセーが怒鳴ってきたのに対し、当の裕斗は…

 

 

「僕も行く」

 

 

「なっ…!?」

 

 

迷いなくイッセーに答えた…。

 

 

「さっき部長は“例えプロモーションできたとしても”って言った…。それはつまり、部長が堕天使達の潜伏先を“敵陣”だと認めたんだよ」

 

 

「! じゃあ…」

 

 

「そしてそれは同時に、“僕達で兵藤君をフォローしろ”って意味も含んでたんだ」

 

 

「じゃあ、小猫ちゃんも…?」

 

 

「…2人だけでは不安です」

 

 

「! こ、小猫ちゃん…!!」

 

 

そんな小猫の一言を聞いて、感動したような表情を浮かべるイッセー…。無表情な彼女の中にある優しさにでも反応したのだろう…。と、そこへ、

 

 

「待って、3人共」

 

 

「! リクオ…」

 

 

壁際でジッと話を聞いていたリクオが間に入ってきたのを見て、イッセーは苦い表情を浮かべる。先程無言で刀の切っ先を向けてきた以上、また反対されると考えているのだろう。しかし…

 

 

「僕も一緒に行くよ」

 

 

「っ! な、何で…!?」

 

 

リクオの口から出たのは、全く正反対のものだった。これには思わず尋ねるイッセー…。

 

 

「反対すると思ってたみたいだけど、僕も当麻も一護も“覚悟”があれば何も言うつもりは無かったんだよ。さっきの“監視”っていうのも、君達に付いていくって意味だったしね。それに…」

 

 

ポスッ

 

 

「……!」

 

 

「小猫が危険なところに行こうとしてるのに、僕が行かないっていうのもおかしいからね…」

 

 

「…リクオ先輩…」

 

 

小猫の頭に手を乗せながらリクオがそう言ってきたのに対し、当の小猫は無表情ながらもその手を振り払おうとはしなかった…。むしろほんの少しだけ、気持ち良さそうにしているようにも見える…。

 

 

「よしっ! じゃあ、早速…!」

 

 

「イッセーさん…」

 

 

「! アーシア…」

 

 

ここで今まで状況を見守っていたアーシアが声を掛けてくると、それに大きく反応するイッセー。だが…

 

 

ポンッ!

 

 

「…!」

 

 

「心配すんな、アーシア。俺は必ず戻ってくるから…。な?」

 

 

「…気を付けて、くださいね?」

 

 

「おう!!」

 

 

イッセーは安心した様子のアーシアからそんな一言を受け取ると、それに力強く頷いた。

 

 

「木場君、ここに彼女を置いていっても大丈夫?」

 

 

「平気だよ。この旧校舎全体には、副部長がより強度の高い結界を張ってくれているから」

 

 

「そっか。なら、安心していけそうだね」

 

 

「よっしゃあ!! 敵の本拠地に殴り込むぜッ!!」

 

 

こうしてイッセーと裕斗、小猫、そしてリクオの4人は、堕天使達のいる場所に向かうのだった…。しかし…

 

 

(やっぱり…“帰ってきた”みたいだね。これは合流することになるかな…?)

 

 

心の中でリクオがそんなことを考えていることなど…到底他の3人が知る筈もなかった…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

ここは駒王町郊外の住宅街。その少し上空に…6人の人物達がいた…。

 

 

「やっと来れた~! ここがボク達の新しく住む街?」

 

 

「ええ。もっとも、何処かの誰かさんのお蔭で平和な所では無いらしいけど…」

 

 

1人は“紫色のロングヘアー”に“片手剣”を手にしているのが特徴で、何処か人懐っこさを感じさせる少女。もう1人は、“水色のショートヘアー”に“大型の狙撃銃”を手にしているのが特徴で、対照的に非常に大人びた印象を持たせる少女であり…

 

 

「そのようですね…。街の複数箇所から、堕天使と多数の神父の気配がします…」

 

 

「ふふっ、じゃあまた遊べるのかな~♪ 楽しみだね、“──お姉ちゃん”♪」

 

 

1人は“長いストレートの金髪”と“黒の戦闘服”が特徴で、感情の起伏が少なそうな少女。もう1人は“長いおさげの赤髪”と“黒に近い紺色の戦闘服”が特徴で、またしても対照的に無邪気さが窺える少女…。

 

 

「しかもその両方から、“あの人達”の気配も感じるんですが…」

 

 

「まったく、“あの男達”は何をしているのよ…」

 

 

1人は“黒髪のセミショート”に“特殊な形状の銀色の槍”を手にしているのが特徴で、真面目かつ礼儀正しそうな感じの少女。そして最後の1人は、“茶髪のポニーテール”に“特殊な形状の銀色の弓”を手にしているのが特徴で、何処となく勇ましさが感じられる少女である…。

 

 

「いつも通り、何か厄介事に巻き込まれたと考えるのが自然です…」

 

 

「ええ。むしろそうとしか考えられませんね…。ですが、これからどうしましょう?」

 

 

金髪の少女が無表情でそう言うと、黒髪の少女は若干呆れ混じりに同意しつつも、他の面々に今後の行動について尋ねた。すると、

 

 

「…そこに行ってみるしかないわね。──と──は向こうを…。私達はあそこに行きましょう」

 

 

「…仕方無いですね…」

 

 

「ふふっ♪ じゃあ行こう、──お姉ちゃん♪」

 

 

水色髪の少女の提案をすぐさま了承し、金髪の少女と赤髪の少女はその場を凄まじいスピードで離れた。そして…

 

 

「じゃあ、ボク達も早く行こー!」

 

 

「ちょ、ちょっと…!?」

 

 

「ま、待ってください、───さん…!」

 

 

紫髪の少女が先に移動し始めたのを見て、慌てて追いかけ始める茶髪の少女と黒髪の少女…。そんな3人の後ろを、水色髪の少女は黙って付いていくのだった…。

 

 



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合流

対堕天使戦の前半です。前回登場した6人の新キャラの内、4人の正体が明らかになります。隠していたという訳でもないですが・・。


何とかこの章だけでも終わらせたい・・。


では、本編をどうぞ。



ここはとある林の中にある廃教会。事前に気配を掴んでいたイッセーやリクオ達は、その近くの茂みに身を潜めていた…。

 

 

「な、何つう殺気だよ…」

 

 

「神父も相当集まってるようだね」

 

 

「マジか…。来てくれて助かったぜ!」

 

 

「だって、仲間じゃないか」

 

 

感謝するイッセーに対し、いつもの爽やかな笑みを浮かべて返す裕斗。しかし…

 

 

「それに…個人的に堕天使や神父は好きじゃないからね…。“憎い”と言ってもいい…」

 

 

「木場…?」

 

 

続けてそう呟く裕斗の表情は…いつもとは全く違うものだった…。と、ここで、

 

 

「…リクオさんが居ません」

 

 

「! そういえば…どこに行ったんだ?」

 

 

「さっきまでそこに居た筈だけど、いつの間に…」

 

 

小猫の指摘を聞いて、辺りを見回すイッセーと裕斗。と、その時だった…。

 

 

「よぉ…」

 

 

『ッ!!?』

 

 

「待たせたな」

 

 

背後からの声を聞いて3人が振り返ると、そこにいたのは…“白と黒の棚引く長い髪”が特徴的な、黒の着物の上に藍色の外套を纏っている男がいた…。

 

 

「ッ! 誰だい、君は…?」

 

 

「堕天使達の仲間か!?」

 

 

突如現れた男に対し、警戒を高めて神器を構える裕斗とイッセー。だが…小猫だけは反応が大きく違った…。

 

 

「…リクオ、先輩…?」

 

 

「え…?」

 

 

「は…?」

 

 

「ああ、よく分かったな小猫。流石に嗅覚は騙せねえか」

 

 

小猫の問い掛けに裕斗とイッセーが呆然とする中、その男──奴良リクオはサラッと肯定した。その結果、

 

 

「はああああああああああああッ!!!??」

 

 

「イ、イッセー君! 声が大き過ぎるよ!」

 

 

「いやいや!? だって見た目とか雰囲気とかも丸っきり違うじゃねえか!? 一体何がどうなってんだよ!?」

 

 

イッセーがそう騒いでしまうのも無理もない。何せ目の前にいる人物が、自身の知っている“奴良リクオ”と外見から性格まで丸っきり違うのだから…。

 

 

「落ち着けよ。こいつは“神器の能力の一環”だ」

 

 

「! 神器の…?」

 

 

「ああ。この前の紹介の時は見せなかったが、この神器のお蔭で俺は“お前等の知ってる普段の姿”と“今の姿”に自由に変わることが出来んだよ」

 

 

「姿を変える…でも、どうしてだい?」

 

 

「あー…戦う時には何かとこっちの姿の方が都合が良いんだよ。まあ、そうはいっても最近じゃ気分で変わったり、感情が昂ったりした時に変わることが多いけどな。ちなみに昔は夜にならねえと今の姿になれなかったから、俺や周りの奴等はこの姿を“夜のリクオ”って呼んでる」

 

 

「…夜の…リクオ先輩…」

 

 

リクオがイッセーと裕斗の質問に答える中、小猫はそう呟きつつ今のリクオの姿をマジマジと見ている…。

 

 

「詳しいことはまた追々説明してやる。とにかく今は、さっさと本拠地に乗り込もうじゃねえか」

 

 

「…! そうですね…向こうも既に気付いてるでしょうから…」

 

 

そして、リクオの言葉に小猫が同意すると、4人は堂々と廃教会の扉の前に立ち…

 

 

バァンッ!!

 

 

小猫が左足の蹴りでドアを思い切りぶち破った…。

 

 

「酷えもんだな…」

 

 

中の廃れ具合を見て、思わず呟くイッセー。すると、

 

 

パチッ、パチッ、パチッ…!

 

 

『ッ…!』

 

 

「やあやあやあッ! 最高だね~! 感動的ですね~!」

 

 

間の空いた拍手をしながら、1人の男が陰から姿を現した。白髪に十字架の記された外套を纏っており、外見上は“年若い神父”を思わせる…。

 

 

「ッ! フリードッ!!」

 

 

「俺としては二度会う悪魔なんていないと思ってたんすよ~。ほら俺、メチャクチャ強いんでぇ…。一度会ったら即“コレ”よ…でしたからね~☆」

 

 

イッセーが思わず声を上げてきたのに対し、その神父──フリード・セルゼンは手を水平にずらすジェスチャーで“首斬り”の意味を示し…

 

 

「だからさぁ…ムカつくんだよ~…。俺に恥かかせたテメエ等クソ悪魔の屑共がよ~ッ…!!」

 

 

ジャキンッ!!

 

 

自らの得物である光剣と銃を抜きながら、狂気に満ちた表情で言ってきた…。すると、

 

 

「なるほどな。てめえが例のはぐれ祓魔師か…」

 

 

ここでリクオが間に入ってきた…。

 

 

「あァ? 何でこんな所にただの人間様が居るんでしょうかね~? まさかそのクソ悪魔共に協力しちゃってんすか? あら残念ですね~! 仕方無いですね~! そうと来れば、あなたもクソ悪魔共と一緒にジ・エン…」

 

 

「今日女を襲おうとして喰らった一撃の傷は、もう癒えたのか?」

 

 

リクオのその一言を聞いた瞬間、フリードの表情が一気に冷めたものへと変わる…。

 

 

「…あの一撃をくれやがったのはテメエか?」

 

 

「やったのは俺の達(ダチ)だけどな。まあ、俺も隣にいた以上、立派な関係者か…」

 

 

「そうですかそうですか~。いや~、あれはマジで痛かったっすよ~? あと少しで天に召される所だったぜ…」

 

 

「一応最大限加減されてたとはいえ、あれは普通だったら即消滅する一撃だ。その害虫並みの生命力だけは、誇っていいんじゃねえか?」

 

 

そして、そんなやり取りを交わしたかと思うと…

 

 

「…オーケー、まずはテメエから滅殺してやるよ、クソ人間ッ!!」

 

 

「っ! 神器(セイクリッド・ギア)!!」

 

 

フリードが怒り心頭の様子で言い放ってきたのだ。それを見て、神器を発動させるイッセーと裕斗。と、ここで、

 

 

「潰れて…」

 

 

ブォンッ!!

 

 

先制攻撃と言わんばかりに、小猫が教会の長椅子をフリードに向かって投げ付けた…。

 

 

ズバンッ!!

 

 

だがそれをフリードは光剣で真っ二つに斬り裂く。そして…

 

 

「しゃらくせえんだよ、この“チビ”がッ!!」

 

 

ドォンッ!!

 

 

そう言いながら小猫に向かって銃を発砲した。と、その時、

 

 

キィンッ!!

 

 

「…! リクオ先輩…」

 

 

「小猫を“チビ”呼ばわりたぁ…面白え…」

 

 

リクオが小猫の前に出たかと思うと、その弾丸を愛刀“祢々切丸”で容易く斬り裂いた。

 

 

「イッセー、裕斗、ここで時間を掛けるのも馬鹿だ。こいつは…俺がやる」

 

 

「! リクオ…!?」

 

 

「ヒャハハハハッ!! ただの人間様がメチャクチャ強い俺を相手にどう対抗しようってんですかい?」

 

 

リクオの発言にイッセーが驚く中、フリードは馬鹿にするかのように声を上げた。すると…

 

 

「“明鏡止水”…」

 

 

ブォォォォォォォォォォォンッ……

 

 

「ッ!? あァッ…!!?」

 

 

「き、消えた!? 昨日の悪魔の兄弟が使ってたのと同じ奴か…!?」

 

 

リクオがそう呟いた瞬間、彼の姿が消えてしまったのだ。これにはフリードも激しく動揺し、イッセーは昨日現れた“レイス兄弟”と同じ能力ではないかと考えた。

 

 

「クソッタレがッ!! テメエも神器持ちかッ!!? 何処だ!? 何処に行きやがったッ!!?」

 

 

「そいつは違うぜ、イッセー」

 

 

『ッ!!??』

 

 

そんな声が聞こえてきたかと思うと…リクオはいつの間にか動揺しするフリードの後ろにいた…。

 

 

「“明鏡止水”は俺の姿を消すんじゃなく、周りの奴等に俺の存在を認識できなくさせる筈だ。つまり…」

 

 

そして…

 

 

「ッ!!? カハッ…!!??」

 

 

「俺を認識できた時には、もう遅えんだよ…」

 

 

ドガッ!!!

 

 

「サイナラッ!!?」

 

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオンッ…!!!!

 

 

フリードが急に両膝を地面に付けたかと思うと、リクオは背後から回し蹴りを繰り出し、容赦なく彼を場外へと吹っ飛ばした…。

 

 

「こんなもんか…」

 

 

「流石だね。こうもあっさりと片付けるなんて」

 

 

「それより、あいつは…?」

 

 

「死んじゃいねえよ。多分その辺でノビてるんじゃねえか? ま、とにかく今は先を急ごうぜ」

 

 

2人とそんなやり取りを交わすリクオ。すると…

 

 

「…リクオ先輩」

 

 

「あぁ? どうした、小猫?」

 

 

「…ありがとうございます。お蔭でスッキリしました…」

 

 

「ああ、気にすんな。少し能力を見せる良い機会だと思ったし、それに俺も勘に障ったんだよ」

 

 

ポスッ

 

 

「…! そうですか…」

 

 

そう言いながら、もう恒例になりつつあるような感じでリクオは小猫の頭に軽く頭を乗せた。

 

 

「それより小猫、そこにある教壇をぶっ壊してくれるか?」

 

 

「…はい」

 

 

リクオの指示を聞いて、小猫はすぐに教壇へ近付くと…

 

 

「えい…」

 

 

トガアアアンッ!!

 

 

軽く殴っただけで教壇をバラバラに破壊した…。

 

 

「! 地下への階段…!?」

 

 

「堕天使や神父達はこの下だね…」

 

 

そこには地下へ通じる階段があった…。

 

 

「行くぞ」

 

 

「「「おう!(ああ!)(…はい)」」」

 

 

そしてリクオの一声に3人は頷き、駆け降りていく…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

所変わって、ここは廃教会から少し離れた森の中。こちらでも現在、一触即発の雰囲気が漂っていた。その理由は…

 

 

「貴様等…まさか最初から…!!」

 

 

“青のロングヘアー”と“黒紫のボディコンスーツ”が特徴的な女堕天使──カラワーナを筆頭に、“紺色のコート”を着た紳士風の男堕天使──ドーナシークと、“ツインテールの金髪”と“メイド服”が特徴の女堕天使──ミッテルトに対し…

 

 

「ええ。あなた方を最初からお掃除するつもりでしたの。ごめん遊ばせぇ♪」

 

 

朱乃とリアスが対峙しているのだから…。ちなみに朱乃はいつもとは違い“巫女服”を纏っており、更に周りには朱乃が結界を張り巡らせている…。

 

 

「ウチ等は鳥かいッ!!」

 

 

「大人しく消えなさい…」

 

 

その状況を見てミッテルトが声を上げると、リアスは堕天使達3人にそう言い放つ…。

 

 

「フンッ、精々余裕ぶってるがいい…!」

 

 

「我等崇高な堕天使に、貴様等が勝つことなどあり得んのだからな…!」

 

 

そして、カラワーナとドーナシークがそう言った、その時、

 

 

「お、やっぱりこういうことだったか」

 

 

「まあ、大体予想は付いてたけどな」

 

 

『ッ!!?』

 

 

突如聞こえてきた声にリアスと朱乃、更に堕天使達全員が驚く中、リアス達の後ろの茂みから2人の人物が姿を現した。それは…

 

 

「! 当麻!? それに一護まで…!」

 

 

「あらあら、どうしてこちらに?」

 

 

この場にいない筈の当麻と一護だった…。

 

 

「簡単な話だ。アーシアの神器は確かに貴重だが、はぐれ神父を協力させているような堕天使達がただ傍に置いているっていうのは少しおかしい。もっと明確な理由がある筈だ。で、考えた結果思い付いたのが…アーシアの神器をアーシア自身から抜き取り、自らの物とするっていう目的だ」

 

 

「けど、そんな命令を今の堕天使の幹部連中が出すとは思えねえ。だから俺達は、“その堕天使達が暴走して勝手に行動している”と考えた…。部室で姫島が部長に耳打ちしてたのは、大方悪魔の御偉いさんからその情報を聞いて報告してたんだろ? で、本拠地の方はイッセー達に任せて、自分達は見張りをしてる面倒な堕天使達を片付けることにした…って所か?」

 

 

「あらあら…」

 

 

「…その通りよ。まさかここまで完璧に言い当てられるなんてね…」

 

 

一護と当麻の推測について、リアスは驚きを隠せない様子ながらも肯定した。と、ここで、

 

 

「何よその人間達? あんた等の知り合い?」

 

 

「どうやらただの人間ではないようだな」

 

 

「だが実に滑稽だ。まさかこんな人間達とまで通じているとは…やはり悪魔は救えん者達よ…」

 

 

ミッテルト、カラワーナ、ドーナシークが当麻達を見てそう言ったかと思うと…

 

 

「まあ、別にどうでもいいじゃん。どうせコイツ等全員、ここで消しちゃうんだからさ…!」

 

 

パチンッ!

 

 

ミッテルトが言葉を続け、指で音を鳴らしたのだ。すると…

 

 

「! 神父か…」

 

 

四方八方から大量の神父達が姿を現したのだ。それを見て、思わず当麻が呟くと…

 

 

「あらあら、こんなにたくさん…」

 

 

「ザッと見ただけでも、200以上は居るな。こいつは本拠地にも相当いるな…」

 

 

「よくこれだけの数を集めたものね…」

 

 

朱乃と一護、リアスもそれに続く…。

 

 

「フッ、流石の貴様等もこの数相手ではどうしようもあるまい…」

 

 

「精々最期まで足掻くがいい。今頃貴様等の下僕達も、見るに耐えない姿へと変わっているだろう」

 

 

「そうそう! 揃って仲良く“サヨウナラ”ってね! アハハハハハッ…!!」

 

 

そして、ドーナシークとカラワーナがそう言い、最後にミッテルトが笑い声を上げていると…

 

 

「はぁ…何も分かってねえなぁ、あんた等…」

 

 

「ああ、全くだな…」

 

 

「はあ…?」

 

 

「! 当麻…一護…?」

 

 

当麻と一護がため息混じりに呟いたのだ。それを聞いて、ミッテルトを始めとした堕天使3人組は一気に笑みを仕舞い、リアスも彼等2人の言葉に反応する…。

 

 

「確かに向こうはイッセー達3人だけじゃ苦しいかもしれねえな。だが、向こうにはリクオが一緒にいる…。こっちに至っては部長と朱乃がいる時点で可能性が殆ど無えのに、俺と当麻がいる…。どっちにしても、お前等が勝てる見込みはゼロだ…」

 

 

「…どうやら貴様等は、心の底から我々の神経を逆撫でしたいようだな…」

 

 

「今すぐその口を閉じろ。さもなくば…」

 

 

「そして何より…」

 

 

「「「ッ…!!?」」」

 

 

一護の物言いにドーナシークとカラワーナが苛立ちを露わにするが、今度は当麻が口を開き始める…。

 

 

「ここと向こうには、“あいつ等”が向かってきてる…。もうあんた等は確実に終わってるんだよ…」

 

 

「っ! それって…」

 

 

「貴様等の仲間か?」

 

 

「だが、所詮貴様等のような人間の仲間など、我等堕天使にとっては取るに足らぬ…」

 

 

当麻の発言を聞いたリアスが再び驚くものの、カラワーナとドーナシークはそれを鼻で笑った。だが…

 

 

「取るに足らないものかどうか…あんた等自身の目で、しっかりと見るんだな…」

 

 

当麻が一言そう発した瞬間…それは起こった…。

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!

 

 

「「「なっ!!!??」」」

 

 

「「ッ…!!?」」

 

 

まず初めに、当麻達から見て東側の森が急激に光ったかと思うと、神父達を巻き込んで大爆発が発生し…

 

 

キィィィィィィィィィィンッ…!!!

 

 

「な、何よあれッ…!!?」

 

 

西側の森には上空に巨大な魔方陣が出現したかと思うと、そこから蒼白い光が降り注ぎ…

 

 

ゴオオオオオオオオオオオオオッ…!!!

 

 

『ウワアアアアアアアアアアアアアアッ…!!!??』

 

 

その一帯が蒼い炎に包まれ、そこにいた神父達を包み込んだ…。更に、

 

 

「な、何…グフッ!?」

 

 

「ぐえっ!?」

 

 

「ハアアアアアアアッ!!」

 

 

ザァンッ!!!

 

 

「「「ギャアアアアアアアアアッ!!!??」」」

 

 

北側の森の方から、叫び声と共に神父達が吹き飛ばされてきたかと思えば…

 

 

「やああああああッ!!!」

 

 

ザァンッ!!!

 

 

「「「ぐああああああああああああッ!!!??」」」

 

 

南側からも少し遅れて神父達が吹き飛ばされてきた…。

 

 

「何だ、これは…!?」

 

 

「一体、何が起きているというのだ…!!??」

 

 

目の前の状況が飲み込めず、激しく動揺した声を出すドーナシークとカラワーナ…。と、その時、

 

 

「当麻ーーーッ!!」

 

 

「っ…!」

 

 

ガバッ!!

 

 

「おっと…!」

 

 

後ろから聞こえてきた声に気付いて当麻が振り返ると、1人の少女が駆け寄って当麻に思い切り抱き付いてきたのだ。そして…

 

 

「おかえりだな、“ユウキ”」

 

 

「うん、ただいま♪」

 

 

当麻がそう言うと、紫色のロングヘアーが特徴の少女──ユウキは明るい笑顔で返した。更に、

 

 

スタッ…!

 

 

「こんな所で何をしているんですか、黒崎先輩」

 

 

「! よぉ、久しぶりだな、“雪菜”」

 

 

「あ、はい、ただいま戻りました…じゃなくて!」

 

 

「ハハッ! まあ、挨拶は後にしてくれ。まだ終わってねえからな」

 

 

続いて跳躍して一気に自分の目の前に降り立ったセミショートの黒髪の少女に一護が話し掛けると、その少女──姫柊雪菜(ひめらぎゆきな)は少しムッとした様子で返す…。すると、

 

 

「もう終わったわよ」

 

 

「…!」

 

 

「また何か厄介事に首を突っ込んでいるようね、黒崎一護」

 

 

「“紗矢華”…」

 

 

そんな声を聞いて一護が目を向けると、西側にある木の幹の上に“ポニーテールにした茶髪”が特徴の少女が立っており、一護はその少女──煌坂紗矢華(きらさかさやか)を見て彼女の名を呟く。更に…

 

 

「予想していなかった訳じゃないのが、何とも言えない所ね」

 

 

「! “シノン”…」

 

 

「でもまさか、堕天使と事を構えてるとは思わなかったわ。まあ、神父達は数が少し多いだけだったから、一瞬で終わったけど…」

 

 

反対側の東側にある木の幹の上にも“水色のショートカット”の少女が立っており、当麻もその少女──シノンの姿を見て声を上げる…。一方、

 

 

「あれだけの数の神父達が、全滅…!!??」

 

 

「先程の有り得ない威力の攻撃は何だ…!? まさか…!?」

 

 

「う、嘘よ…! そんなこと、起こる筈が…!?」

 

 

残されたカラワーナ、ドーナシーク、ミッテルトの3人は、自分達の周りで起きた惨状に茫然としていた。当然であろう。何せ、目の前の者達を葬るための切り札となる筈だった200人以上の神父達が、たった今現れた4人の少女達によって壊滅したというのだから…。と、ここで、

 

 

「と、当麻? その娘達は一体…」

 

 

「! あー、その前に残りを終わらせた方が良いんじゃねえか? まだそこで呑気に飛んでることだしさ」

 

 

「っ…! それもそうね…」

 

 

「ひっ…!!!」

 

 

当麻にそう言われたリアスが冷たい表情を浮かべながら目を向けると、ミッテルトは恐怖に満ちた様子で慌てて逃亡を図り、カラワーナとドーナシークもそれに続こうとした。だが…時既に遅し…。

 

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオンッ…!!!

 

 

堕天使達3人は断末魔を上げることも出来ないまま、リアスの魔法によって跡形もなく消滅した…。

 

 

「お疲れさん」

 

 

「ありがとう、一護…。で、色々説明してくれるわよね? 特に、あなた達の後ろにいる4人の娘達について…」

 

 

一護の労いの言葉を受け取りつつも、真剣な表情で尋ねてくるリアス…。

 

 

「あー…まあ一言で言うと、こいつ等は俺達の仲間だ」

 

 

「あらあら、神器所有者の方を4人も仲間に持っているだなんて、凄いですわ」

 

 

「ええ。それもその娘達全員、相当の使い手ね。もっと詳しい話を聞きたいのだけれど?」

 

 

当麻の返答に対して朱乃がいつもの笑みを崩さずに言う中、リアスは更に深く聞こうとする。その一方で、

 

 

「先輩方、これは一体どういうことですか…?」

 

 

「この2人、間違いなくあの“紅髪の殲滅姫(ルイン・プリンセス)”と“雷の巫女”よね? どうしてあなた達がこの2人と親しくなっているのかしら?」

 

 

「私達にも事細かに説明して欲しいわね…」

 

 

雪菜と紗矢華、更にはシノンからも詰問が始まろうとしていた。すると、

 

 

「と、とりあえずこの話は全部片付いてからにしようぜ? なあユウキ、“あいつ等”はどうした?」

 

 

「! ああ、“あの2人”ならリクオの所に向かったよ! もう合流してるんじゃないかな~?」

 

 

「やっぱりか…」

 

 

「! まだあなた達の仲間がいるの!?」

 

 

「ああ、まあな。ちなみに言うまでもねえけど、そいつ等も雪菜達と同じくらい強いぜ?」

 

 

当麻とユウキのやり取りを聞いたリアスが尋ねると、一護はそんな補足を加えながら答えた。

 

 

「とにかく、今はイッセーやリクオ達の所に向かった方がいい。そうだろ? 部長…」

 

 

「! そうね…。朱乃」

 

 

「はい、部長」

 

 

当麻の発言を受け、リアスは朱乃に移動のための魔方陣を展開させる…。

 

 

「私達は先に行くわ。あなた達は…」

 

 

「ああ、こいつ等と一緒にすぐに向かう」

 

 

「分かったわ。気を付けてちょうだい」

 

 

そして、リアスは当麻と軽くそんな会話をすると、朱乃と共にその場から姿を消した。それを見て…

 

 

「よし…俺達も行くぞ」

 

 

「うん!」

 

 

「先輩、分かっていますよね?」

 

 

「はぁ…概要くらいは移動しながら説明する」

 

 

当麻と一護も、ユウキや雪菜とそんなやり取りを交わしつつ、シノンや紗矢華も連れてリクオ達のいる廃教会へと向かうのだった…。

 

 



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終結

あと少しでこの章も終了です。



では、本編をどうぞ。


 

当麻やリアス達が4人の神器所有者の少女達と邂逅する少し前。本拠地である廃教会では…

 

 

ドガアアアアンッ!!!

 

 

「どうやら目的地はここみたいだな」

 

 

地下の最深部にある扉をリクオが破壊し、イッセー、小猫、木場を含めた4人はその先にある神殿のような空間に突入していた。すると、

 

 

「っ!? あ、悪魔!? それに人間まで…? でも、どうしてここが…!?」

 

 

「ッ! レイナーレ…!!」

 

 

その奥ねか巨大な祭壇の上にいる女堕天使が驚きを露わにした。イッセーの反応からして、どうやらこの堕天使が今回の事態を引き起こした首謀者──レイナーレのようである…。

 

 

「! あら? 誰かと思えば、私の三文(さんもん)芝居に引っ掛かって死んだ人間君じゃない。まさかクソ悪魔になって蘇ってるなんてね…。で、一体何をしに来たのかしら?」

 

 

「決まってんだろ!! これ以上アーシアに付きまとわないように、お前をぶっ飛ばしに来たんだよッ!!」

 

 

「っ! それはどういうことかしら…?」

 

 

イッセーの言葉を聞いて、僅かに動揺を見せるレイナーレ…。

 

 

「その神殿…やっぱ目的は、アーシアの神器の奪取か?」

 

 

「ッ…!!?」

 

 

「動機は大方、上の堕天使幹部の連中に認められるため…って所か? くだらねえ…」

 

 

「…ただの人間が、見え透いたようなことを言ってくれるわね…」

 

 

リクオの非難混じりの推測に、レイナーレは苛立ちを露わにした。と、ここで、

 

 

「なるほど、そういうことか…」

 

 

「お、おい! どういうことだよ!?」

 

 

「あの堕天使の本当の目的は、アーシアさんの神器“聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)”をアーシアさんから抜き取り、自らの物とすることだったんだよ」

 

 

「…所有者の命と引き換えに、ですが…」

 

 

「なっ…!!!??」

 

 

裕斗と小猫の言葉に言葉を失うイッセー。当然であろう。それはすなわち、“アーシアが死ぬ”ということを意味しているのだから…。

 

 

「まあ、そいつはもう無理な話だがな」

 

 

「ッ!? それは一体どういう意味かしら?」

 

 

「決まってんだろ? そのアーシアは今、ここにいるグレモリー眷属の保護下にある」

 

 

「ッ!!? 何ですって!!??」

 

 

「首輪の1つでも付けとくんだったな? 一番の目的の奴をほとんど野放し状態にするなんざ、間抜け過ぎるぜ…」

 

 

リクオの口から明かされた事実を聞いて、絶句するレイナーレ。

 

 

「あとはお前をぶっ飛ばせば全て終わりだ!! 覚悟しやがれッ!! レイナーレッ!!」

 

 

そして、イッセーが気合いたっぷりな様子で言い放った。すると…

 

 

「はぁ…まったく、面倒なものね…。せっかく準備が整ったって言うのに、肝心なモノが盗られてるなんて…。本当に面倒だわ…」

 

 

パチンッ!

 

 

「「「っ…!!??」」」

 

 

レイナーレがそう呟きながら指を鳴らすと、リクオやイッセー達の目の前に大量の魔方陣が出現し、そこから出てきたのは…

 

 

「…! 神父、数は分かりません…」

 

 

「ど、どんだけ居るんだよッ!!??」

 

 

「これは流石に多いね…」

 

 

大量の神父達だった。その数、最低でも200人以上…。

 

 

「アーシアがあなた達の手中にあろうと関係無い。それならただ、あなた達を全員殺してゆっくりと取り戻せばいいだけのことよ…。たかが悪魔3匹と人間1人が、この数相手にどうこう出来る筈がないもの…」

 

 

「くっ…!!」

 

 

「どこまで耐えることが出来るか、高みの見物をさせてもらうわ。まあ、途中で飽きて私が殺しちゃうかもしれないけど、ね…? フフフフフフフッ…!」

 

 

イッセーが圧倒的な数の格差を見て歯噛みする中、余裕綽々といった様子で語るレイナーレ…。

 

 

「じゃあ…出来るだけ早くくたばりなさい、クソ悪魔共…」

 

 

「「「ッ…!!」」」

 

 

そして、レイナーレのそんな一言を聞いたイッセー達3人が、戦闘態勢を整えた、その時、

 

 

「…来たか…(ボソッ)」

 

 

「…! リクオ先輩…?」

 

 

小猫は聞いていた。リクオが実に小さな声で、そう呟いたのを…。と、次の瞬間、

 

 

ドガアアアアアアアアアアアンッ!!!

 

 

『ぐわああああああああああッ!!!??』

 

 

「「「ッ!!??」」」

 

 

「な、何ッ…!!??」

 

 

突如先頭の方にいた神父達が爆発によって吹き飛ばされたのだ。何処からか飛んできた“砲撃”によって…。

 

 

「やっぱりここにいたー♪」

 

 

「こんな所で何をしているのですか、リクオ…?」

 

 

『ッ!!??』

 

 

そんな2つの声が聞こえたため、リクオ以外の全員がその方へ目を向けると、近くにある巨大な柱の上に“2人の人物”が立っていた。1人は“ロングストレート”の金髪と“黒のスカートタイプの戦闘服”が目を引く少女。もう1人は、“長いおさげの赤髪”と“黒に近い紺色で短パンタイプの戦闘服”が目を引く少女である。そして、そんな2人の少女を見て唯一違う反応をしたのは…リクオだった…。

 

 

「よぉ、久しぶりだな、“ヤミ”、“芽亜(メア)”」

 

 

リクオは金髪の少女──ヤミと、赤毛の少女──黒咲芽亜を見てそう言った…。すると、

 

 

ダッ!!

 

 

ヤミと芽亜が柱の上から飛び降りたかと思うと、2人の髪の先端部が急激に変化し始めたのだ。ヤミの方は“大量の小刀のような形状”に、芽亜の方は対照的に“巨大な刀のような形状”に変形している。そして…

 

 

シュインッ…!!!

 

 

『かはっ…』

 

 

ドサドサドサッ…!!

 

 

降り立つ瞬間、ヤミは一瞬にして神父達を十数人ほど斬り伏せ…

 

 

ズバンッ!!!

 

 

『おわああああああああああっ!!!?』

 

 

芽亜は横に一閃し、同様に十数人ほどの神父達を吹っ飛ばした…。

 

 

「どうやら、また厄介事に首を突っ込んだようですね…」

 

 

「ああ、まあな」

 

 

「ふふっ、流石“リクオお兄ちゃん”だね♪ また少し遊べそう♪」

 

 

突如現れた2人の少女と、全く違和感の無い様子で話すリクオ。と、ここで、

 

 

「…リクオ先輩、その2人は誰ですか?」

 

 

「その様子だと、君の知り合いみたいだけど…」

 

 

「! ああ、紹介するわ。こいつ等は…」

 

 

小猫と裕斗がそう問い掛けてきたため、ヤミと芽亜を紹介しようとするリクオ。と、その時だった…。

 

 

ガシッ!!

 

 

「リクオぉぉぉぉぉッ!!! 何だよこの超絶美少女2人は!!?? しかもそっちの娘なんか、お前を“お兄ちゃん”呼ばわりしてるじゃねえかッ!! どういうことか説明しろォッ!!!」

 

 

「おい、目から血が出てんぞ。メチャクチャ怖えからな?」

 

 

「当たり前だァァァッ!!! 俺は今、猛烈にブチ切れてんだよォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!」

 

 

「意味が分からねえ…」

 

 

イッセーがいきなりリクオの肩を掴んだかと思うと、血涙を流しながら怒りを露わにしてきたのだ。それを見て…

 

 

「とりあえず、2つのことが分かりました…。1つは、あなたとこの3人が協力関係にあること。そしてもう1つは…その内の1人が危険人物であること…」

 

 

「…やっぱりイッセー先輩は変態です」

 

 

ヤミと小猫のイッセーに対する印象が急落したのは…言うまでもない…。一方で、

 

 

「今のはまさか、神器……!!?? くっ…!!」

 

 

バサッ!!

 

 

「っ!? お、おい! 何処へ行く気だ!? 待ちやがれッ!!」

 

 

レイナーレはヤミと芽亜を見て何かに気付いたかと思うと、途端に漆黒の翼を生やして飛び始めたのだ。これにはイッセーもリクオへの詰問を止め、彼女に向かって叫んだ。すると…

 

 

「ッ! イッセー君、早くあの堕天使を追うんだ! 彼女は恐らく、アーシアさんを狙う気だ!!」

 

 

「なっ…!!?」

 

 

木場はレイナーレの目的が、この場を神父達に任せてアーシアを探し出すために地上に出ることだと予想した。そして、それを聞いたイッセーが驚いていると…

 

 

「行けよ、イッセー。ここは俺達が片付けておく。お前は宣言通り、あの堕天使をぶっ飛ばしてこい」

 

 

「! リクオ…」

 

 

「諸々借りがあるんだろ? 全部まとめて返してきな…」

 

 

リクオが自信に満ち溢れたような笑みを浮かべつつ、そう言ってきたのだ。その結果…

 

 

「リクオ! 後でその娘達のこと、洗いざらい話してもらうからなッ!! 木場と小猫ちゃんも、よろしく頼む…!!」

 

 

イッセーはそんな一言を残して、レイナーレを追いかけるためにこの場を後にした…。

 

 

「随分あの男に関心を持っているようですね、リクオ…」

 

 

「あ? ハハッ、まあな。色々面白い奴だとは思ってるぜ?」

 

 

「私には、“えっちぃこと”をしてくる危険人物としか思えないのですが…」

 

 

「その時は遠慮なく叩きのめせ。俺が許す」

 

 

「分かりました。ならいいです」

 

 

「え~! じゃあ、あの人バラバラに斬っちゃってもいいの~!?」

 

 

「バラバラは止めろ。ただ何かされそうになったら、半殺し程度なら構わねえ」

 

 

「ホント~!? じゃあそうするね♪」

 

 

「リ、リクオ君? 何だかイッセー君の扱いが凄く厳しい気がするんだけど…」

 

 

「…大丈夫です、裕斗先輩。イッセー先輩の扱いは、むしろそのくらいが良いと思います」

 

 

「小猫ちゃんまで!?」

 

 

本人が居ない間に自分の扱いが確定しつつあるなど…当然イッセーは知らない…。と、ここで、

 

 

「くっ! たかが5人で何が出来る…!!」

 

 

「数で押しきれッ!!」

 

 

「悪魔達を滅しろッ!!」

 

 

神父達が再び攻勢を掛けてきた。それに対し、

 

 

「ヤミ、芽亜、悪いがもう少し暴れてもらっていいか? 後でお前等の好きな物作ってやる」

 

 

「ホント~!? なら思いっきり暴れちゃうね♪」

 

 

「仕方無いですね…やりましょう…」

 

 

「小猫と木場も、行くぜ?」

 

 

「…はい」

 

 

「助っ人が来てくれたみたいだし、これは心強いね」

 

 

リクオ達もそんなやり取りを交わした所で、戦闘が開始された…。

 

 

「ふふっ♪」

 

 

ドガッ!!

 

 

「ぐはっ!?」

 

 

「それ♪」

 

 

ドガアアアアアアアアアアアンッ!!!!

 

 

芽亜は初めに膝蹴りで1人を吹っ飛ばしたかと思うと、両腕を大砲に変化させてビーム状の攻撃を両サイドにぶっ放し…

 

 

「邪魔です…」

 

 

ドガガガガガガガガガガガガガッ…!!!!

 

 

ヤミは大量の髪の先端を全て拳に変化させ、とてつもないラッシュで神父達を蹂躙…。

 

 

「ハアッ!!」

 

 

ザザァンッ!!

 

 

「「かはっ…!?」」

 

 

木場は自らの神器“魔剣創造(ソード・バース)”で生成した魔剣、“光喰剣(ホーリー・イレイザー)”で敵を次々と斬り伏せ…

 

 

「えい…」

 

 

ドゴンッ!!!

 

 

「ぐふぉあッ…!?!?」

 

 

小猫も強力な威力の格闘で続々と薙ぎ倒している…。そんな状況を見て、

 

 

「な、何なんだこいつ等は…!?」

 

 

「ま、まるで歯が立たないッ…!!」

 

 

「ひ、怯(ひる)むな! 態勢を立て直…」

 

 

動揺し始めた仲間達に1人の神父が声を掛けようとするが、それは叶わなかった。何故なら…

 

 

ドサドサドサッ…!!

 

 

「立て直せねえよ。どう足掻いてもな…」

 

 

“明鏡止水”を発動していたリクオによって倒されていたのだ…。

 

 

「こいつはさっさと終わりそうだな…」

 

 

リクオがそう呟くのも当然だった。今の状況はどう見ても“戦闘”ではなく…“蹂躙”に近いのだから…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

キィィィィィィンッ…!!!

 

 

数分後、神殿のある空間に赤い魔方陣が出現する。その紋章は、グレモリー家のものだ…。

 

 

「「…!」」

 

 

そこから登場したのは当然、堕天使3人を始末し終えたリアスと朱乃なのだが、2人は目の前に広がる光景を見て驚いた。何故なら…

 

 

「「部長…!」」

 

 

「! 小猫、裕斗!」

 

 

「どうやら御二人共、無事なようですわね」

 

 

「でも、これは…」

 

 

無傷な小猫と裕斗の周りに、200人以上の神父達が倒れ伏していたのだから…。と、そこへ、

 

 

「遅かったじゃねえか、部長さんよぉ」

 

 

「っ! 誰かしら、あなた達…?」

 

 

そんな声を掛けられると、リアスは朱乃と共に警戒しながら尋ねる。その先には…藍色の外套を来た男と金髪の少女、そして赤髪の少女がいた…。

 

 

「部長、大丈夫です! 彼は…」

 

 

「…リクオ先輩です」

 

 

「っ!? 本当なの…?」

 

 

「ああ。こいつも神器の能力の1つでな」

 

 

「あらあら、凄いですわね…」

 

 

木場と小猫からそう言われて、驚きを隠し切れない様子のリアスと朱乃。やはり姿や雰囲気、口調まで違っていることが信じられないようである…。

 

 

「ということは、その2人が当麻と一護の言っていた“ここに向かっている仲間”かしら?」

 

 

「! どうやら、ユウキや雪菜達も合流できたようですね…」

 

 

「あらあら、また随分と可愛らしい方々ですわね」

 

 

「ふ~ん…この人達がリクオお兄ちゃんの話してた人達なんだ」

 

 

「ああ、コイツ等が小猫と木場、イッセーの王(キング)と女王(クイーン)だ」

 

 

更にリクオの両隣にいたヤミと芽亜も交え、そんなやり取りをする…。

 

 

「当麻と一護達は?」

 

 

「既にこちらへ向かってるわ。それより、イッセーは?」

 

 

「例の堕天使を追ってる。多分今頃、地上で派手に戦ってる筈だ」

 

 

「そう…」

 

 

リアスはリクオからイッセーの話を聞くと、少し頷き…

 

 

「なら、私達ものんびりと向かいましょう」

 

 

「お、いいのか? さっさと加勢に行かねえで」

 

 

「ええ。私はあの子が堕天使を倒すと信じているもの…」

 

 

「…ハッ、そうかい」

 

 

そう言い切ったのだ。それに対しリクオはあっさりと納得し、リアス達と共にゆっくりと上への階段を登っていく。そして登り切ると、そこには…

 

 

「吹っ飛べッ!! クソ堕天使ッ!!!」

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアッ!!!??」

 

 

ガシャアアアアアアアアアアアンッ…!!!

 

 

教会の窓ガラスをぶち破る程、派手に堕天使を殴り飛ばしたイッセーの姿があった…。

 

 

「宣言通りやったか、イッセーの奴…」

 

 

「お~! ヤミお姉ちゃん、あの人堕天使を倒したよ!」

 

 

「驚きです…。相手が非常に弱いとはいえ、内心あの男では勝てないと思っていたのですが…」

 

 

リクオがそう呟く中、芽亜の言葉に対して僅かに驚いた様子で返すヤミ…。

 

 

「ざまあみろ…! うっ…」

 

 

パシッ!

 

 

「驚いたよ。まさか1人で堕天使を倒しちゃうとはね」

 

 

「よぉ、気分はどうだ?」

 

 

「ヘッ、遅えよ…」

 

 

フラつくイッセーを裕斗が支え、リクオと共に声を掛けると、イッセーは皮肉混じりにそう返した。すると…

 

 

「部長から、君なら堕天使に勝つだろうって言われてね。ゆっくりと来させてもらったよ」

 

 

「! 部長が…?」

 

 

「その通りよ。あなたなら勝てると信じていたもの」

 

 

「! 部長…!」

 

 

「よくやったわ、イッセー」

 

 

何処か満足げな表情で、イッセーを素直に誉めるリアス。と、そこへ、

 

 

ギィッ…!

 

 

「…部長、連れてきました。それと…」

 

 

「丁度終わった所だったか」

 

 

「あんまり早く来る意味も無かったな」

 

 

小猫が外に吹っ飛ばされたレイナーレを引き摺ってきたかと思うと、その後ろからは当麻や一護、そしてユウキや雪菜達もやって来ていた…。すると、

 

 

「あー…当麻、一護? 1つ聞きたいことがあるんだけど…」

 

 

「あ?」

 

 

「何だよ、イッセー?」

 

 

「…俺の目が正しければ、お前等の後ろに4人の超絶美少女が見えるんだけど…まさか、その女の子達もお前等2人の知り合いだー…なんて言わないよな…?」

 

 

イッセーが当麻と一護にそう尋ねてきたのだ。それに対し、2人はこう答える…。

 

 

「お前の質問の意図がよく分かんねえけど…」

 

 

「こいつ等は知り合いとかじゃなくて、俺達のれっきとした“仲間”…」

 

 

「………(ツーッ)」

 

 

「っ! お、おい、イッセー? お前の目から血が流れ出てんだけど…」

 

 

イッセーの異変に気付き、思わず問い掛ける当麻…。と、その時、

 

 

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 

「「うおっ!?」」

 

 

「人が命懸けで痛え想いしながら勝ったってのに、お前等はそんなスゲエ可愛い女の子達を引き連れて登場って、そりゃねえだろコンチクショオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

 

「お、落ち着けよ、イッセー…ッ!」

 

 

「くっ!! 何でだ!? 一体俺に何が足りないって言うんだよ!? 一体何があればハーレム王への道が近付くって言うんだ…!?」

 

 

最早“鬼気迫る”といった表現が正しそうな程、イッセーは血涙を流しながら当麻と一護に迫り出したのだ。だが、彼は気付かなかった。当麻の様子が“ある光景”を見た瞬間、一気に変わったことに…。

 

 

ガシッ!!

 

 

「! あ、あれ? と、当麻…さん…?」

 

 

「なぁ、イッセー…。お前が何を騒ごうが、上条さんは特に何も言わねえよ? でもな…お前は今、やってはならねえことをした…」

 

 

「! や、やってはならないこと……? ッ…!!??」

 

 

当麻の言葉の意味が分からなかったイッセーだが、一護が何も言わずに目だけで示した方を見ると…イッセーの表情は一気に硬直した。何故なら…

 

 

「うぅ…ふぇぇっ…(泣)」

 

 

「「「………」」」

 

 

完全に涙目な上に、怯え切った様子でシノンに身を寄せているユウキと…その元凶であるイッセーに対して絶対零度の視線を向けるシノン、雪菜、紗矢華の姿があった…。

 

 

「よくも家(うち)のユウキを泣かしてくれてな…」

 

 

「まま、待ってくれ当麻ッ!! 別にそういうつもりでやったんじゃなくてだな…!」

 

 

「待ってください、上条当麻…。私も参加します…」

 

 

「え…?」

 

 

「ユウキは私の友人です…。泣かすなど万死に値します…」

 

 

「ちょっ…!!??」

 

 

いつもの雰囲気など全く感じさせない、恐怖の笑みを浮かべる当麻がイッセーに迫り始めたかと思えば、そこにヤミも加わってきた。更に…

 

 

「…私もやります」

 

 

「小猫ちゃんまでッ!!??」

 

 

こうしてイッセーは前門に“幻想殺し”、後門に“変態嫌いな無表情少女2人”という挟み撃ちの状況へと追い込まれた。そして…

 

 

「ちょっと待ってェッ!!! 頼むから話を聞い…」

 

 

───しばらくお待ちください────

 

 

「……(チーンッ)」

 

 

「ふぅ、とりあえずこの辺りにしておくか」

 

 

「手伝ってくれて、ありがとうございます…」

 

 

「…いえ…私も変態な人は嫌いですから…」

 

 

「そうですか…。あなたとは気が合いそうな気がします…」

 

 

1分後…。そこにいたのは一息吐く当麻と、何処となく互いの波長の良さを感じているヤミと小猫、そして…物の見事にボコボコにされているイッセーの姿があった…。と、ここで、

 

 

「あなた達、もういいかしら…? まだ色々と終わってないのだけれど…」

 

 

「! ああ、悪いな部長。始めてくれ」

 

 

「はぁ…朱乃」

 

 

「はい、部長」

 

 

何事も無かったかのような雰囲気で当麻がそう言うと、リアスは溜め息を吐きながら朱乃に指示を出した。すると、朱乃は魔力で小さな水の球体を造り出し…

 

 

バシャッ!!

 

 

「ゲホッ、ゲホッ…!」

 

 

倒れ伏しているレイナーレの顔にぶつけたのだ。当然それを受けたレイナーレはすぐさま目を覚まし、水を飲んだことで咳き込む…。

 

 

「ごきげんよう、堕天使レイナーレ」

 

 

「ッ!」

 

 

「私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ」

 

 

「ッ!? グレモリー一族の娘か…!!」

 

 

「どうぞお見知り置きを。短い間でしょうけど…」

 

 

リアスは自身の足元に這いつくばっているレイナーレに対し、そう言ったかと思うと…

 

 

「それから、訪ねてきてくれたお友達も、私が消し飛ばしておいたわ」

 

 

「ッ!!? 馬鹿な!? こちらと同数の大量の神父達が向こうに居た筈…!!」

 

 

「ええ。でもその神父達も一瞬で片付けられてしまったわ…。そこにいる、神器を持った4人の娘達によってね」

 

 

「ちなみに言うまでもねえだろうが、地下にいた神父共も全員始末済みだからな」

 

 

消し飛ばした堕天使3人の黒い羽根を散らしながらリアスが告げたのに続いて、リクオも補足するようにレイナーレへと伝える…。

 

 

「あり得ない…ただの“龍の手(トゥワイス・クリティカル)”持ちの悪魔に負けたばかりか、神器所有者持ちの人間が6人…!? そんなことが…」

 

 

それを聞いたレイナーレは信じられないといった様子で呟く。当然だろう。本来であれば十分すぎる筈だった自身の戦力が、見下していた新人の悪魔と突如現れた6人の神器所有者によって、物の見事に粉砕されてしまったのだから…。と、ここで、

 

 

「! イッセー、その神器…!」

 

 

「? ああ、いつの間にか形が変わってて…」

 

 

「“赤い龍”…そう、そういうことなのね…」

 

 

リアスはイッセー(いつの間にか復活)の神器を見た瞬間、あることに気付いた。それは…

 

 

「堕天使レイナーレ、この子…兵藤一誠の持つ神器は、単なる“龍の手”ではないわ」

 

 

「ッ!? 何…!?」

 

 

「持ち主の力を10秒ごとに倍加させ、魔王や神ですら一時的に超えることが出来る力があると言われている…十三種の“神滅具(ロンギヌス)”の1つ、“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”…」

 

 

「ッ!!?!?」

 

 

リアスの口から告げられたイッセーの神器の正体に、驚愕を隠し切れない様子のレイナーレ。一方、

 

 

【やっぱりそうだったか。まさかとは思ってたんだが…】

 

 

【イッセー君があの“赤龍帝”か…。どういう因果だろうね、当麻】

 

 

【…さあな…】

 

 

一護とリクオ、当麻は頭の中で、特に驚いた様子もなくそんな会話をし…

 

 

「“神滅具”の1つを、この人が…!?」

 

 

「信じられないわね。ユウキを泣かせるような最低な男なのに…」

 

 

雪菜と紗矢華もそんなやり取りをしていた。ちなみに、紗矢華の一言がイッセーの精神にクリティカルヒットしたのは…言うまでもない…。

 

 

「どんなに強力でもパワーアップに時間を要するから、万能ではないわ。相手が油断してくれてたから勝てたようなものよ…。消えてもらうわ、堕天使さん…」

 

 

そして、リアスがそう付け加えながら仕上げに取り掛かろうとした…その時だった…。

 

 

「イッセー君、私を助けて…!」

 

 

『っ!?』

 

 

今までに無かったような、甘ったるい声が響き渡る。その声の主は…人間の少女の姿へと変わったレイナーレだった。これにはリアスやイッセーだけでなく、当麻達も驚く。

 

 

「私、本当はあなたのこと…!」

 

 

ジャキンッ!!!

 

 

「ッ…!!?!?」

 

 

そこから続けざまに何かをイッセーに言おうとするレイナーレだったが、それは叶わなかった。何故なら…

 

 

「今すぐ黙りなさい…」

 

 

彼女の後頭部に、大型狙撃銃の銃口が突き付けられたのだ…。今まで口を閉ざしていたシノンによって…。

 

 

「この状況で相手の心に漬け込もうとするなんて…心底堕ちてるのね、あなた…。本当に反吐(へど)が出るわ…。今すぐその頭を撃ち抜いて…」

 

 

ポンッ…!

 

 

「っ…!」

 

 

そう呟くシノンの目は酷く冷たいもので、彼女はそのまま引き金を引こうとするが…そんな彼女の左肩に右手が置かれる。その右手は…当麻のものだった…。

 

 

「そこまでだ、シノン。そいつはお前の役目じゃねえ…違うか?」

 

 

「…そうね…。ごめんなさい、邪魔したわ…」

 

 

当麻のその一言を聞いたシノンは、短くそう呟き後ろへと下がった…。すると、

 

 

「…すみません、部長…。あと、頼みます…」

 

 

「! ええ…」

 

 

俯いたままのイッセーが背を向けながら頼んできたのだ。それを聞いたリアスは、彼と場所を入れ換わるようにレイナーレの前に立つ。最早この場に、彼女へ同情する者など1人も居なかった…。そして…

 

 

「私の可愛い下僕に言い寄るな…」

 

 

「ヒッ…!!!」

 

 

ドガアアアアアアアアアアンッ…!!!

 

 

リアスの一撃によって、レイナーレは跡形もなく消滅したのだった…。大量の黒い羽根と、重苦しい雰囲気を残して…。

 

 



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歓迎


今回で“はぐれ悪魔のディアボロス”編は終了です。


何かユウキの日常の様子を書いてると、微妙に切なくなりますね…。すみません、余談でした。


では、本編をどうぞ。



 

旧校舎の部室へと戻ったオカルト研究部一行。すると…

 

 

「イッセーさん! お怪我はありませんか!? もしお怪我があるようでしたら、私が治療します!!」

 

 

1人部室で待機していたアーシアが慌てた様子で駆け寄ってきた。現状この場で怪我をしているのはイッセーだけなので、アーシアはすぐさま自らの神器を使って治療に取り掛かる。

 

 

【回復専門の神器所有者ですか】

 

 

【中々の使い手のようね。“あの娘”には劣るようだけど…】

 

 

【当然です…。その点に関して、“彼女”は別格ですから…】

 

 

その間に雪菜や紗矢華、ヤミが当麻達と同じように頭の中でそんな会話をしていたのは余談である…。

 

 

「どうですか、イッセーさん?」

 

 

「よっと…おーっ! 全然平気だ! ありがとな、アーシア!!」

 

 

「! い、いえ…/////」

 

 

そしてアーシアがイッセーの治療を終え、意味深な反応を見せていると、ここでリアスがあることを尋ねる…。

 

 

「シスター・アーシア」

 

 

「? 何でしょうか?」

 

 

「突然ではあるのだけど…あなた、悪魔として私の眷属にならない?」

 

 

「! ア、アーシアを部長の眷属に!?」

 

 

「ええ…。どうかしら、シスター・アーシア? そうすればこの学園にも通うことが出来るし、生活に関しても私達の方で手を貸せるのだけど…」

 

 

「わ、私が“悪魔”に…? で、ですが…」

 

 

イッセーが驚く中、リアスの勧誘に対して戸惑うアーシア。当然であろう。何せいきなり今とは真反対の存在へと変わることになるのだから…。

 

 

【まあ、誘うのも当然か。回復役がいない眷属の状態を考えれば、アーシアの神器の能力は喉から手が出るほど欲しいだろうしな】

 

 

【ああ。つっても、アーシアがそう簡単に悪魔への転生を受け入れるかどうか…】

 

 

当麻と一護はそれを見ながら、アーシアの返答に注目する。と、ここで、

 

 

「そうね…。じゃあ、こう考えてみてはどうかしら?」

 

 

リアスがそう呟きながらアーシアに近寄ったかと思うと、彼女に耳打ちで話始めたのだ。すると、彼女の表情が次々と変化していき…

 

 

「ぜ、ぜひ悪魔にしてください!!」

 

 

【【【はあ(ええ)ッ!!??】】】

 

 

「ア、アーシア!!?」

 

 

自らそう申し出てきた。これには当麻達3人だけでなく、彼女の隣にいたイッセーも驚かざるを得ない。

 

 

「ふふっ、それなら私達はあなたを歓迎するわ。よろしくね、アーシア♪」

 

 

「はい!」

 

 

【い、一体部長さんは何を言ったんだろう…?】

 

 

そんな周りを他所(よそ)に挨拶をするリアスとアーシアを見て、苦笑いを浮かべながら困惑するリクオ…。

 

 

「それじゃあ、“もう1つの問題”に取り掛かろうかしら」

 

 

「? 部長、何ですか? “もう1つの問題”って…?」

 

 

「決まってるでしょう…。その娘達のことよ」

 

 

イッセーが尋ねてくると、リアスは当麻達3人の隣や後ろにいるユウキ、シノン、雪菜、紗矢華、ヤミ、芽亜に目を向ける…。

 

 

「当麻、一護、リクオ、約束通り話してちょうだい。その娘達は一体何者なの?」

 

 

「! そうだったッ!! お前等、一体この娘達とどういう関係なんだよッ!?」

 

 

「…イッセー、いきなり話の腰を折らないで欲しいのだけど…?」

 

 

「あ、す、すみません、部長…」

 

 

そんなリアスとイッセーの問い掛けに対し…

 

 

「どういう関係って…部長達にも言ったが、こいつ等は全員俺達の仲間だよ」

 

 

「…ひょっとして、その娘達も全員“賞金稼ぎ”なのかしら?」

 

 

「! あ、ああ、まあな…」

 

 

当麻の発言からリアスがそう推測して尋ねると、一護はそれに頷き…

 

 

「まあ、とりあえず自己紹介をしてもらった方が良さそうだな…。お前等、悪いけど軽くでいいから頼む」

 

 

「いいのですか、リクオ?」

 

 

「うん、お願いするよ」

 

 

「はーい♪」

 

 

雪菜達に自己紹介するよう頼んだ。そして、それを聞いたヤミがリクオに確認を取ると、芽亜があっけらかんとした様子で返事をする…。

 

 

「じゃあ、ボクから行くね! 初めまして! ボクは紺野木綿季(こんのゆうき)! “ユウキ”でいいよ! よろしくね!」

 

 

「…朝田詩乃。皆からは“シノン”って呼ばれてるけど、呼び方は任せるわ。よろしく…」

 

 

「あの、初めまして。姫柊雪菜といいます。先輩方がお世話になってるみたいですが、よろしくお願いします」

 

 

「はあ、仕方無いわね…。煌坂紗矢華(きらさかさやか)よ。世話になるかどうかは知らないけど、一応名乗っておくわ。それと私は基本的に男が好きじゃないから、そっちの男2人はあまり近づき過ぎないで。特にそっちのあんたは…雪菜達に変なことしようとしたら、即刻斬り刻むから…」

 

 

「…“ヤミ”と呼んでください。あと、私も“えっちぃこと”は大嫌いなので、その男が該当するような行動を起こした場合は、殺します」

 

 

「じゃあ最後は私だね! 私は黒崎芽亜! 全然似てないとは思うけど、ヤミお姉ちゃんとはちゃんとした姉妹だよ? よろしくねー♪」

 

 

「あのー…何か所々で俺に対する“殺害予告”みたいなものが出てた気がするんだけど…」

 

 

「…ご愁傷様です、イッセー先輩」

 

 

「小猫ちゃああああああああんっ!!! それ全然笑えないから止めてえええええええええええっ!!!!」

 

 

心を抉るような一部の自己紹介とコメントによって、深刻なダメージを受けるイッセー…。しかしそんな男のことなど放っておき、話は続く…。

 

 

「こちらも改めて名乗らせてもらうわ。私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主で、この街の管理を任されている者よ。さて…早速だけど、あなた達はこれからどうするつもり?」

 

 

「? どういう意味ですか…?」

 

 

「当麻達から既に聞いてるかもしれないけど、彼等には私と私の眷属で構成されている“オカルト研究部”に入ってもらってるの。監視の意味合いも込めてね。そしてあなた達が人間とはいえ神器所有者である以上、私もこのまま放置してるって訳にもいかないわ…」

 

 

「…つまり、私達にもこの部に入れ…ということ?」

 

 

「理解が早くて助かるわ。それで…どうかしら?」

 

 

ヤミとシノンの問いに対してリアスがそう答えると、ヤミ達6人は一斉に当麻達3人の方へ目を向けた…。

 

 

【あー…悪ぃ、頼む】

 

 

【そう言うと思ってました。まったく、先輩方はどうしてこうも厄介事に巻き込まれるんですか?】

 

 

【えっと…それは当麻に言って欲しいかな】

 

 

【上条当麻、後で覚悟しておきなさい】

 

 

【ふ、不幸だ……】

 

 

頭の中で一護が歯切れの悪そうな様子で頼むと、雪菜と紗矢華はそれぞれ呆れながら言った。そして……

 

 

「…分かったわ。その話、呑ませてもらう」

 

 

「! あっさりと受け入れるのね? 正直意外だわ…」

 

 

「こっちにも色々事情があるの。それに…残念ながら、この男達3人を放っておく訳にもいかないのよ」

 

 

「そう…。まあ、いいわ。これからよろしくお願いね。アーシアと同様、あなた達を歓迎するわ」

 

 

シノンが代表してリアスに入部の意思を伝えた…。

 

 

「でも部活に入るということは、私達もこの学園の生徒にならないといけませんよね…?」

 

 

「そう簡単に編入できるのかしら?」

 

 

「心配しないで。私の父がこの学園の経営に関わっているから、アーシアと一緒に全員編入させるつもりよ」

 

 

雪菜と紗矢華の疑問に対し、余裕の笑みを浮かべながら答えるリアス…。一方、それを聞いて、

 

 

【“父親”が経営に関わってる、か…。まあ、当然と言えば当然だよな】

 

 

【そう考えると、どうして僕達はこの学園に来ちゃったんだろうって改めて思うよね…。当麻もそう思うでしょ?】

 

 

【ほ、本当に返す言葉もございませう…】

 

 

一護とリクオは、微妙にプレッシャーを掛けながら当麻を責めていた…。だが…

 

 

「じゃあ、ボクもこの学校に通えるの!? やったー!!」

 

 

「よかったね、ユウキちゃん♪」

 

 

「うん!」

 

 

【…ま、でもこうやってユウキが喜んでるなら、悪くなかったのかもな】

 

 

【……ああ】

 

 

【そうだね…】

 

 

ユウキと芽亜のそんなやり取りを見て、一護と当麻とリクオは穏やかな笑みを浮かべながら会話をするのだった…。ちなみに、

 

 

「アーシアと合わせて、美少女7人がこの部活に加入するなんて……俺のハーレム王への道が更に加速するではないかッ!! よっしゃーッ!! 改めてハーレム王に俺はな…」

 

 

シュインッ!

 

 

「黙ってください…」

 

 

「す、すみません…(ガクガクガクッ!!)」

 

 

突然騒ぎ出したイッセーに、ヤミが髪の先端を刃物に変形して後頭部に突き付けている光景が、あったりなかったりしたとか…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

翌日の放課後……

 

 

「あ! 当麻ー!」

 

 

「! おう、ユウキ」

 

 

当麻と一護、シノン、紗矢華が旧校舎の部室に向かっていると、その途中でユウキ、雪菜、小猫の3人に会った。ちなみにシノンと紗矢華、そしてこの場に居ないアーシアは2年の当麻やイッセー達と同じクラスに転入。ユウキと雪菜、更にこの場に居ないヤミと芽亜は1年の小猫と同じクラスに転入している。

 

 

「クラスの方はどうだった?」

 

 

「すっごく楽しいよ!! クラスの皆も良い人達ばっかりだったし、授業も楽しかった!! でも、挨拶の時に男の子達が凄い勢いで迫って来たのは、ちょっと怖かったかな…」

 

 

「? そうなのか? 雪菜」

 

 

「え、ええ…」

 

 

当麻の問い掛けにユウキがそう答えると、一護は雪菜に確認を取った。すると…

 

 

「大丈夫、雪菜!? 男共に何か変なことされなかった!? されたらすぐに言ってね!? 私がすぐにそいつ等を斬り刻むから!!」

 

 

「お、落ち着いてください、紗矢華さん! 塔城さんがすぐに止めてくれたので、大丈夫です…!」

 

 

紗矢華が凄い勢いで尋ねてきたのだ。それに対し、雪菜は少々戸惑いながらも紗矢華を落ち着かせる…。

 

 

「そうか…。ありがとな、塔城。これから色々ユウキ達のこと、よろしく頼む」

 

 

「…いえ、私もユウキさん達と一緒にいると、楽しいですから…。ところで、リクオ先輩とイッセー先輩は一緒じゃないんですか?」

 

 

当麻の言葉に対して小猫がそう返すと、ここでリクオとイッセーがいないことに気付いて尋ねた…。

 

 

「ああ、リクオはヤミと芽亜を連れて先に部室に言ってる筈だ。それで、イッセーは…」

 

 

「外でノビてるわよ。同じクラスにいる変態仲間2人と一緒に、紗矢華の制裁を受けてね…」

 

 

「そうですか…」

 

 

「…やっぱりイッセー先輩は最低です」

 

 

一護より先にシノンがイッセーの状況を伝えると、雪菜と小猫は心底冷めた表情を浮かべながらそう呟いた…。

 

 

「まあ、アーシアが付き添ってるから、そのうち来るだろ。先に行ってようぜ?」

 

 

「うん!」

 

 

「そうですね」

 

 

そして当麻の言葉にユウキと雪菜が同意した所で、当麻達は部室へと向かう…。

 

 

ガチャッ!

 

 

「よっ! 来たぜ、部長」

 

 

「…こんにちは、部長」

 

 

「ええ、ごきげんよう、皆」

 

 

「木場ももう来てたのか」

 

 

「うん、まあね」

 

 

当麻と小猫が部長と挨拶を交わす一方で、一護は木場とそんなやり取りをする。と、そこへ、

 

 

ガチャッ!

 

 

「す、すみません!」

 

 

「お、遅くなりました…」

 

 

「! 大丈夫よ、アーシア。それとイッセー、一体どうしたの?」

 

 

「い、いえ、ちょっと…!」

 

 

アーシアとイッセーが殆ど誤差のタイミングでやってきた。だがイッセーの様相が明らかに“ボロボロ”なのを見て、思わず尋ねるリアス…。すると、

 

 

「ちょっと色々あったのよね、兵藤一誠?」

 

 

「ッ!! は、はい、そうなんですよ~! あははは……!」

 

 

「そ、そう。まあ、いいわ…」

 

 

紗矢華があからさまなプレッシャーを掛けながら声を掛けると、イッセーは顔を盛大に引きつらせながらリアスの問いにそう返した。ここでリアスが話を流したのは或る意味正解だったと思う…。

 

 

「さて、それじゃあ全員揃ったみたいだし、始めましょうか」

 

 

「? 何を“始める”の?」

 

 

「…それに、リクオ先輩達がまだ来ていませんが?」

 

 

「ああ、リクオ達なら…」

 

 

リアスの発言にシノンと小猫が思わず尋ねた、その時、

 

 

ガチャッ!

 

 

「皆来たみたいだね」

 

 

「さぁ、新人さん達の歓迎パーティーですわよ♪」

 

 

別のドアからリクオと朱乃が入ってきたのだ。しかも、朱乃はオシャレな配膳用のカートを押しており、その上には……

 

 

「お菓子だ!! しかもこれ、ひょっとして…!」

 

 

「うん、僕が作った奴だよ」

 

 

「やったー!! リクオの作ったお菓子ー!!」

 

 

大きめのホールショートケーキと、沢山の種類の1ピースのケーキ、そして…山盛りの“たい焼き”があった。それを見たユウキはリクオの作ったものだと分かると、兎の如くピョンピョンと跳ねながら喜びを露わにしている。すると更に、

 

 

「う~ん♪ やっぱりリクオお兄ちゃんの作るお菓子はおいしいね、ヤミお姉ちゃん♪」

 

 

「そうですね…やはりリクオの作ったものでないと…」

 

 

「あーッ!? 2人共なに先に食べてるの!? ずるいよー!!」

 

 

少し遅れて芽亜とヤミがやってきた。それぞれケーキとたい焼きを食べながら…。これにはユウキも慌てて2人の下へ駆け寄りつつ、自分もカートの上のケーキを食べ始める…。と、ここで、

 

 

「…リクオ先輩、お菓子作れたんですね」

 

 

「! ああ、小猫か。まあね、少し前から料理に力を入れるようになって…気が付いたらお菓子作りもしてたって感じかな?」

 

 

「…私も食べていいですか?」

 

 

「え? ああ、うん、いいよ」

 

 

リクオがそう言うと、小猫は駆け寄って1ピースのケーキを食べる…。

 

 

「ッ…!!! 美味しい…です…」

 

 

「だろうな。リクオの作るモノは今じゃ、一流のシェフやパティシエが束になっても勝てないくらいのレベルらしいし…」

 

 

「ああ。こいつがいつ料理スキルを上げたのかは、未だに謎なんだよ」

 

 

「あはははは……」

 

 

大きく反応する小猫を見て、当麻と一護がそう呟くと、それを聞いたリクオは苦笑いを浮かべた。そして、その後も…

 

 

「う、旨ッ!!! 何だよこれッ!?!? 旨過ぎだろ!!??」

 

 

「私も驚きましたわ。これは少し御教授していただかないと…」

 

 

「ほ、頬っぺたが落ちそうですぅ…」

 

 

「まさかリクオ君がこんなに料理上手だなんてね。本当にビックリだよ」

 

 

「相変わらずね…」

 

 

「ええ。或る意味“女を殺しに掛かってる”わ…」

 

 

「さ、紗矢華さん、それは流石に言い過ぎ…でもないかもしれませんね…」

 

 

リクオのお菓子を食べた者達から、それぞれ色々な反応が起こっていた。ちなみに上から、イッセー、朱乃、アーシア、裕斗、シノン、紗矢華、雪菜のものである…。そんな中、

 

 

「悪いな、色々騒がしくなっちまって」

 

 

「! 当麻…。気にしないでちょうだい。むしろ一番騒いでるのはイッセーみたいだし」

 

 

「あー…確かにそうかもな」

 

 

その様子を少し離れた所で見ているリアスに、当麻が話しかけた。

 

 

「にしても、まさか御丁寧に歓迎パーティーを開くとはな」

 

 

「こんなに部員がたくさん増えたんだもの。このくらいのことはするわ。それとも…余計なことだったかしら…?」

 

 

「ハハッ、それこそあり得ねえよ。あそこではしゃぎながら食ってるユウキや塔城達を見れば、いやでもそう思うさ…」

 

 

不安気に尋ねてくるリアスに対し、軽く笑いながら答える当麻…。

 

 

「こういうのもなんだけど、あんたはよくやってると思うぜ? グレモリー家の次期当主としては勿論……“リアス・グレモリー個人”としてもな」

 

 

「……///!!」

 

 

「? どうしたんだ、部長?」

 

 

「! な、何でもないわ…////」

 

 

「そうか? まあ、ならいいけど…」

 

 

こうして、放課後の新入部員歓迎パーティーは大いに盛り上がりを見せるのだった…。

 

 

「……!」

 

 

「? どうしたの、当麻?」

 

 

「……いや、何でもねえ。気にしないでくれ」

 

 

少しばかり、周りに“陰”をチラつかせながらも……。

 

 



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戦闘校舎のフェニックス
不死鳥


今回からフェニックス編に突入します。


当麻達がより“オリ主”っぽい感じになっているかもしれません。ご注意を…。


また、今回からOP曲とED曲を以下のように変えたいと思います。



OP → “アフターダーク”

    ~ASIAN KUNG-FU GENERATION~

    (“BLEACH” OP7)


ED → “Rimless ~フチナシノセカイ~”

    ~IKU~

    (“とある魔術の禁書目録” ED1)



では、本編をどうぞ。


堕天使との一件からしばらくして、オカルト研究部の面々はすっかり平穏を取り戻していた。その中には勿論当麻達も含まれている。そして、ここは当麻達3人が住んでいる家の1室。そこは当麻の部屋だった・・。

 

 

(はぐれ悪魔の出現もないし、この街で他に問題が起きてる訳でもない…)

 

 

ベッドで仰向けになりながら考え事をする当麻。それもその筈である。時刻は既に午前0時、就寝するには良い頃合いの時間だ…。

 

 

(けど…どうも嫌な予感がしてならねえ…)

 

 

思考する当麻の頭の中に浮かんでいるのは、1人の少女の表情。一見するといつも通りのようだが…それは明らかに何か違っていた…。

 

 

(明日辺り、そろそろ聞いてみるか…)

 

 

と、その時だった…。

 

 

キィィィィィィィィンッ…!!

 

 

「ッ…!?」

 

 

ベッドのすぐ横に突如魔方陣が現れたのだ。その魔方陣の色は……“赤”である。

 

 

(グレモリー家の紋章…! でも、誰が……)

 

 

そうこうしている内に、魔方陣から1人の人物が現れる。それは……

 

 

「あー……部長? どうしてあなたが俺の部屋に転移してくるのでせうか…?」

 

 

今自分達が所属しているオカルト研究部の部長――――リアス・グレモリーだった。そして、彼女は開口一番にとんでもない言葉を放つ……。

 

 

「当麻…私を“抱きなさい”…!」

 

 

「…はい…?」

 

 

「私の“処女”をもらってちょうだい…至急頼むわ…!」

 

 

その発言を聞いて完全にフリーズする当麻だったが、何とか彼女に問い掛ける…。

 

 

「ぜ、全然意味が分かんねえんだけど……一から説明してくれないか?」

 

 

「説明してる暇なんて無いわ。もう他に…“方法”が思いつかないの…」

 

 

「ちょっ……///////!!??」

 

 

しかし彼女から事情説明はされず、逆に上着やスカートなどを慣れた手つきで脱ぎ始め…結果として、純白の下着姿のみとなった。そのとんでもない状況に、思わず顔を赤くする当麻…。

 

 

ガバッ!!

 

 

「ッ…//////!?!?!?」

 

 

「私にこれ以上、恥をかかせないでちょうだい。さあ……」

 

 

そしてリアスは当麻を押し倒し、そのまま彼の顔に自分の顔を近づけようとした…その時だった……。

 

 

「そこまでだ、リアス・グレモリー」

 

 

「っ…!?!?」

 

 

今までとは違う、少し低い声が響き渡る。その声の主は……他でもない、押し倒されている当麻だった。一方、それを聞いたリアスは大いに驚いて動きを止める。当然であろう。何せ今まで顔を紅潮させて動揺していた少年が、突如一転して鋭く大人びた表情を浮かべたのだから…。

 

 

「悪いが、そんな間違った“方法”であんたを汚す気は、俺には無い。そして何より……そんな“見えない何かを恐れてる”今のあんたに手を掛けるなんて真似、出来る訳ねえだろ」

 

 

「! 当麻……」

 

 

「話してみろ。一体…何があった…?」

 

 

「…私は……」

 

 

いつもとは違う雰囲気でありながら、真っ直ぐな目で自分を見て尋ねてくる当麻に対し、リアスは何かを伝えようとした。と、その時、

 

 

キィィィィィィィィィィィィンッ…!!

 

 

「! 別の魔方陣……」

 

 

「…もう来たのね……」

 

 

更に別の魔方陣が当麻の部屋に現れたのだ。だが今度の魔方陣の色は白。そして、そこから姿を現したのは……

 

 

「…こんなことで“破談”に持ち込む御つもりですか?」

 

 

「私の貞操は私のものよ。私が認めた者に捧げることの、何処が悪いのかしら?」

 

 

メイド服姿で、銀髪を三つ編み風に結っている1人の女性だった。どうやらリアスの口ぶりからして、彼女の関係者のようである。と、ここで、

 

 

「こんな“下賤な輩”になど、認める訳には参りません。サーゼクス様と旦那様が悲しまれますよ?」

 

 

その女性がそう言った、次の瞬間、

 

 

バンッ!!

 

 

突如部屋の入り口のドアが開け放たれ…

 

 

チャキッ!!×2

 

 

「ッ…!!??」

 

 

銀髪の女性の両サイドに2人の人物が現れたのだ。1人は“紫髪のロングヘアー”と“紫を基調とした戦闘装束”が特徴の少女―――ユウキ、もう1人は“水色のショートヘアー”と“萌黄色(もえぎいろ)の戦闘装束”が特徴の少女―――シノンである。しかし彼女達は、それぞれ直剣と小銃を女性に突き付けていた…。ちなみにシノンの小銃は、“グロック18”だったりする…。

 

 

「ユウキ、シノン!? あなた達がどうしてここに…!?」

 

 

「話は後にして、部長さん。今はこっちが優先だから…」

 

 

2人の登場に驚くリアスに対し、シノンは短く答えながらも目の前の銀髪の女性から目を離さない…。

 

 

「あなた方は…まさか…」

 

 

「さっきの言葉、今すぐ取り消してくれないかな?」

 

 

「いくらあなたでも、当麻を“下賤な輩”呼ばわりするのは許さないわ。撤回しないならすぐに私達と戦うことになるけど……どうするつもり? “グレイフィア・ルキフグス”」

 

 

その女性―――グレイフィア・ルキフグスがユウキとシノンに対して驚きを露わにする中、2人は彼女にそう尋ねた。その雰囲気は明らかに普段の彼女達と違っており、特にユウキに至っては“別人”と表現する方が近い程である…。そして、

 

 

「分かりました…。先程の無礼な物言い、申し訳ありませんでした。心よりお詫び申し上げます…。私はグレモリー家に仕える、グレイフィア・ルキフグスと申します。どうぞ、以後お見知りおきを…」

 

 

「…上条当麻。グレモリー眷属とはちょっとした協力関係にある、しがない“賞金稼ぎ”だ。よろしく頼む…」

 

 

グレイフィアは自己紹介も交えながら、当麻に陳謝したのだ。そして当麻も軽く名を名乗った所で、ユウキとシノンは自らの得物を下げる…。リアスはその目の前で起こったやり取りに、ただただ驚いていた…。

 

 

「ではお嬢様、参りましょう」

 

 

「! 待ちなさいグレイフィア! 話はまだ…!」

 

 

「どうか御自重くださいませ。あなたはグレモリー家の次期当主なのですから…」

 

 

抗議しようとするリアスに対し、脱ぎ捨てた服を彼女に掛けながら抑える様促すグレイフィア。すると、

 

 

「ひとまず今日は帰れ、部長」

 

 

「! 当麻……」

 

 

「そう悲しそうな顔をするなよ。話は明日にでもちゃんと聞くし、そうじゃなくても打ち明けたい時にいつでも伝えに来てくれればいい…。俺はお前の“協力者”なんだからさ…」

 

 

「…ありがとう、当麻… 。今日は私も冷静じゃなかったわ。ごめんなさい…」

 

 

そう言って当麻から離れるリアス…。

 

 

「あなた達にも迷惑を掛けてしまったわね。ごめんなさい」

 

 

「あ、ううん! 気にしないで、部長さん!」

 

 

「ええ、私も平気だから。気を落とさないで」

 

 

「ありがとう…」

 

 

そして、ユウキとシノンにも謝罪したところで…

 

 

「おやすみなさい…」

 

 

「ああ…」

 

 

キィィィィィィィンッ…!!

 

 

リアスはグレイフィアと共に、その場から姿を消した…。

 

 

「ふぅ……」

 

 

「大丈夫、当麻?」

 

 

「ああ…。けど、もう少し早く出てきてもよかったんじゃないのか?」

 

 

「! だって、当麻が部長さんとあんなことしてるから…////」

 

 

「あー……」

 

 

ユウキが顔を赤らめながらモゴモゴと話してきたのに対し、若干目を泳がせながら言葉を詰まらせる当麻。そう、実はユウキとシノンはリアスが転移してきたことにすぐ気付き、当麻の部屋の前に駆け付けていたのだ…。

 

 

「本当に相変わらずね。いつの間にあの〝滅殺姫(ルイン・プリンセス)”と迫られるような関係になったのかしら?」

 

 

「シノンさん!? それとてつもなく誤解を生む発言だと思うのでせうがッ!?」

 

 

「でも事実でしょ?」

 

 

「…はい…」

 

 

シノンの発言に言い返す言葉が無い当麻。まあ、つい先程リアスと行われたやり取りは間違いなくその通りなので、どうしようもない…。すると、

 

 

「シノンも素直じゃないな~! “妬いてる”なら素直に言えばいいのに♪」

 

 

「ッ…//////!!?」

 

 

「? 何の話だ、“やいてる”って…?」

 

 

ユウキが悪戯な笑みを浮かべながら言うと、シノンは顔を一気に赤くし始めた。そして、当麻がそれを聞いて首を傾げていると…

 

 

ガシッ!

 

 

「ふぇ?」

 

 

「ユウキ、そろそろ戻りましょう。色々話したいこともあるし…」

 

 

「! シ、シノン? 顔が怖いよ…?」

 

 

「大丈夫。気のせいだから…。それじゃあ、おやすみなさい、当麻」

 

 

「あ、ああ…おやすみ、ユウキ、シノン…」

 

 

シノンはユウキの肩を掴み、当麻に一言そう告げて部屋を後にしていった。その時のシノンの笑顔が怖かったり、ユウキが引きずられながら『当麻~、助けて~…!!』などと泣きながら言っていたのは……多分気のせいである……。

 

 

「何だったのか凄い気になるけど……やめとこう、うん…」

 

 

苦笑いを浮かべながら今見た光景を頭の中から追いやった当麻。しかし……

 

 

「だが今回の一件でリアスに何が起きてるのか、大体の想像はついた…」

 

 

その表情も赤髪の少女について思考し始めた瞬間、一気に真剣なものへと変わる…。

 

 

「まったく…不幸な予感しかしないな…」

 

 

再びベッドに横になりながら、そう呟く当麻。そして、夜の時間は着々と過ぎていく……。

 

 

 

☆☆

 

 

 

翌日の放課後、当麻は一護やリクオ達と共に旧校舎へと向かっていた…。

 

 

「昨日は悪かったな。夜中に色々騒がしちまって」

 

 

「平気だよ。まあ、突然誰かが転移してきたのは驚いたけど、すぐに部長さんだって分かったし…」

 

 

「後から入ってきた奴にも敵対する気が無いって、すぐに気付いたからな」

 

 

当麻の謝罪に対し、全く気にしていない様子で返すリクオと一護。ちなみに昨日の真夜中の出来事については、既に雪菜やヤミ達にも話している…。

 

 

「でも、それは本当なんですか?」

 

 

「…ああ、十中八九な。しかも、リアスがあそこまで大それた真似をしてきたってことを踏まえると…」

 

 

「相当厄介な問題のようですね…」

 

 

雪菜の問い掛けに当麻がそう答え、ヤミもそれに続いた。どうやら直前に、当麻は何かを全員に話していたようである。すると、

 

 

「シノン、顔色があんまり良くないよ? 大丈夫?」

 

 

「! え、ええ、平気よ…」

 

 

「紗矢華さんもですよ? 体調が優れないなら、休んだ方が…」

 

 

「だ、大丈夫よ雪菜! ちょっと寝不足なだけだから…!」

 

 

ユウキと雪菜がそれぞれシノンと紗矢香を見て、心配そうに尋ね始めたのだ。それに対して、シノンと紗矢華はそう返すが…当麻達3人はその様子をしっかりと見ていた…。

 

 

「ねえ、リクオお兄ちゃん」

 

 

「ん?」

 

 

「さっき部室に“結界”が張られたみたいだけど、急がなくていいの?」

 

 

「…大丈夫だよ。大体何が起きてるのか想像は付くからね…。そうでしょ、当麻、一護?」

 

 

「…ああ」

 

 

「まあな…」

 

 

そして芽亜とリクオのやり取りに当麻と一護が頷く中、彼等はオカルト研究部の部室へと向かっていく…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

ここはオカルト研究部の部室内。今現在、その空間は非常に緊迫した雰囲気に包まれていた…。

 

 

「もう二度と言わないわ、ライザー…。私は、あなたとは結婚しない!!」

 

 

スッ!!

 

 

「っ!?」

 

 

「俺もなぁ、リアス、フェニックス家の看板を背負ってるんだよ…。名前に泥を塗られる訳にはいかないんだ…」

 

 

1人のやさぐれたホスト風の男が、赤髪の少女の顎を右手で軽く持ち上げながら迫っていた。赤髪の少女は言うまでもなく、グレモリー家次期当主―――リアス・グレモリー。そして男の方はフェニックス家の次男にして、“リアスの婚約者”―――ライザー・フェニックスである…。

 

 

「俺は、君の下僕を全部焼き尽くしてでも、君を冥界に連れ帰るぞ…」

 

 

「………」

 

 

窓際で並んでいるイッセーや朱乃、木場、小猫、アーシアの方に目を配らせながらもライザーがそう言うと、リアスはライザーを睨み付け、互いに魔力を高め始めた…。と、その時、

 

 

バキィィィィィィィィィィィィンッ!!!

 

 

『ッ!?!?』

 

 

ガチャッ…!!

 

 

突如何かが割れたような音が響き渡ったかと思うと、部室の入り口のドアが開いた。入ってきたのは勿論……

 

 

「! 当麻……!!」

 

 

「…人間だと? おい貴様等、ここに一体何の用だ?」 

 

 

当麻達だった。それを見たリアスは声を上げる一方で、ライザーは心底不快そうな様子で尋ねてくる。すると、

 

 

「…色々聞きたいことはあるけど、まずは…」

 

 

ヒュンッ!!

 

 

『ッ!?!?』

 

 

当麻の姿が一瞬にして消えたのだ。これにはその場に居た全員が驚くが、次の瞬間、

 

 

トンッ!!

 

 

「なっ…!?!?」

 

 

「少しは紳士的に振る舞ったらどうだ? 嫌がる女に無理矢理触れるなんて真似、上条さんは許しませんですことよ?」

 

 

いつの間にか当麻はライザーとリアスのすぐ傍に居り、左手でライザーを軽く突き放して、リアスを庇うように前に立ちながらそう言った…。

 

 

「何だ貴様は……!! 人間風情が、俺の邪魔をするなッ!! 消し炭にしてくれるッ!!!」

 

 

そしてライザーが当麻に対して怒りを露わにし、周りに炎を纏おうとした、その時、

 

 

「御収めくださいませ、ライザー様」

 

 

「ッ…!!!?」

 

 

「私はサーゼクス様の命を受けてこの場に居ります故、一切の遠慮は致しません。どうか穏便に願います」

 

 

「…チッ…分かりましたよ。“最強の女王(クイーン)”と呼ばれている貴女にそんなことを言われたら、流石の俺も怖いからね」

 

 

ここでグレイフィアがそんなライザーを鎮めたのだが、今度は当麻の方に目を向ける…。

 

 

「この部屋の周囲には結界が張られていた筈ですが…どのようにして入ってきたのですか?」

 

 

「ああ、それならこの右手で壊させてもらったぜ?」

 

 

「! 壊した…?」

 

 

「グレイフィア、当麻は“幻想殺し(イマジンブレイカー)”という神器の所有者なの。この子の手に掛かれば、結界も容易く破壊できるわ」

 

 

「っ! そうでしたか…」

 

 

リアスが当麻について軽く話すと、グレイフィアは一先ず納得したような素振りを見せた…。

 

 

「それで…こいつがリアスの“婚約者”って所か?」

 

 

「! はい、この方はライザー・フェニックス様。フェニックス家の三男にして、リアスお嬢様の婚約者であられます」

 

 

「当麻、どうして…」

 

 

「昨日のあんたの態度を見れば、上条さんにも大体の予想は付くさ…。それより、まだ何か話があるんだろ? 続けたらどうだ?」

 

 

ライザーの素性を知っていることにリアスが驚く中、当麻はそう言って一護達の下へ戻る。

 

 

「旦那様方もこうなることは予想されておられました…。よって決裂した場合の最終手段も、仰せつかっております」

 

 

「最終手段…? どういうこと、グレイフィア…?」

 

 

「お嬢様がそれだけ御意思を貫き通したいということであれば、ライザー様と“レーティングゲーム”にて決着を、と…」

 

 

「っ…!!」

 

 

グレイフィアはリアスにそう告げた。それを聞いたイッセーやアーシアが朱乃と木場から“レーティングゲーム”の説明を軽く受ける一方、当麻達は何とも言い難い表情を浮かべる…。

 

 

「俺はゲームを何度も経験してるし、勝ち星も多い…。君は経験どころか、公式なゲームの資格すら無いんだぜ? それに念のため確認しておきたいんだが、君の下僕はそこにいる“4人”で全員か?」

 

 

「…ええ、そこにいる当麻やユウキ達は眷属じゃないわ…。それが何だって言うの?」

 

 

「ハハハハハハッ…!」

 

 

パチンッ!

 

 

リアスからそう聞いた瞬間、ライザーは馬鹿にしたような笑い声を上げながら、指を鳴らした。すると、部室内にオレンジ色の大きな魔方陣が現れ、そこから姿を現したのは…

 

 

「こちらは15名……つまり駒がフルに揃っているぞ…?」

 

 

15人の異なる種族、あるいは属性を持つ美女や美少女達だった…。と、ここで…

 

 

「お、おい、リアス……そこの下僕君、俺を見て号泣してるんだが……」

 

 

「その子の夢はハーレムなの…」

 

 

イッセーの号泣している姿を見て思わずドン引きするライザーに対し、呆れ混じりにそう呟くリアス…。

 

 

「キモいですわ…」

 

 

「同感ね」

 

 

「本当にどうしようもない変態です…」

 

 

「ちょっ!? 何で紗矢華さんとヤミちゃんまで!? 酷いよ!?」

 

 

ライザーの眷属の1人である金髪をロールに結っている少女の言葉に、紗矢華とヤミも続いてイッセーを罵倒した…。それを見たライザーは…

 

 

「そういうことか…。ユーベルーナ」

 

 

「はい、ライザー様…」

 

 

面白いことを思いついた様子で、近くにいた紫髪の女性悪魔を呼び寄せ始めた。すると、

 

 

【! 一護、リクオ】

 

 

【ああ…】

 

 

【分かってるよ…】

 

 

当麻達は何かに気付いた様子で瞬時に頭の中でやり取りを交わすと、当麻はユウキとシノン、一護は雪菜と紗矢華、リクオはヤミと芽亜の後ろに立ち…

 

 

「ふぇっ!? な、何も見えないよ、当麻!?」

 

 

「悪いな、しばらくそのままでいてくれ」

 

 

「黒崎先輩、これはどういう…!」

 

 

「お前等のためだ、頼む」

 

 

「私とヤミお姉ちゃんも~?」

 

 

「うん。これは…見ない方が良い…」

 

 

それぞれの視界を片手で塞いだのだ。当然ユウキや雪菜、芽亜達は混乱したり抗議したりするが…そう返す当麻達の表情は実に冷え切っていた。何故ならそこから始まったのは……ライザーと女性眷属による“無意味な戯れ”だったのだから…。それを見たリアスは憤りと不快感の入り混じった表情を浮かべるが、その一方で…

 

 

「そういうこと…(ボソッ)」

 

 

「…本当に最低…(ボソッ)」

 

 

シノンと紗矢華も聞こえてくる音で何が起きているのかを察し、小声でそう呟いた。その反応もそれぞれ違い、シノンは僅かに体を震わせ、紗矢華は両拳を握り締めながら不快感を露わにしている…。と、そうこうしている内にライザーはやり取りを終え…

 

 

「お前じゃこんなことは一生出来まい、下級悪魔君?」

 

 

イッセーに向けてそう言い放った。それに対し…

 

 

「う、うるせえッ!! そんな調子じゃあ、部長と結婚した後も他の女の子とイチャイチャするんだろ!? この“種蒔き焼き鳥野郎”ッ!!!」

 

 

「! 貴様…自分の立場を弁(わきま)えて物を言っているのか?」

 

 

「知るかッ!! ゲームなんか必要ねえッ!! 今この場で全員倒してやるッ!!!」

 

 

「イッセーさん!!」

 

 

イッセーは神器を発動させ、アーシアが止める前にライザーへ突っ込むが…

 

 

「ミラ」

 

 

シュンッ!!

 

 

「なっ!?」

 

 

ライザーの指示で現れた小柄な眷属の少女―――ミラの棍で一撃喰らいそうになった、その時、

 

 

ガキィィィィィィィィィィィンッ…!!!

 

 

「っ…!?」

 

 

「! ほぅ……」

 

 

その攻撃は、イッセーに当たる寸での所で止められた。何故なら…雪菜が自身の神器“雪花狼(せっかろう)”でギリギリ受け止めていたのだ。これには攻撃したミラも驚く一方、ライザーは興味深そうに雪菜を見る…。

 

 

「落ち着いてください、兵藤先輩。“1番実力の低い相手”の攻撃を真ともに受けそうになってる時点で、勝ち目は万に一つもありません…」

 

 

「ッ!? そ、それって…」

 

 

「ああ、そうだ。ミラは俺の眷属の中では最も弱い。凶悪にして最強と言われている“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”の所有者が、こんなくだらん男だったとはな。ハッ、笑えるじゃないか」

 

 

「くっ…!!」

 

 

ライザーの言葉にイッセーが拳を強く握り締めて悔しさを露わにする中、雪菜は神器の発動を解きつつユウキ達の下へ戻った。と、ここで、

 

 

「いいわ、ライザー…。レーティングゲームで決着を付けましょう。あなたを、必ず消し飛ばしてあげる…!!」

 

 

『…!!』

 

 

「承知致しました」

 

 

「ハハッ! 楽しみにしてるよ、愛しのリアス…」

 

 

リアスの宣言にグレモリー眷属の面々が驚く一方で、ライザーはグレイフィアの承諾の返事を聞き流しつつ、自身の眷属の下へ向かおうとした。と、その時、

 

 

「いや…それだけではつまらないな。もう1つ、“面白い条件”を設定しないか? リアス」

 

 

「? “面白い条件”…?」

 

 

「なに、簡単な話だよ…」

 

 

ライザーが立ち止まり、あることを提案してきたのだ。それは…

 

 

「今回のゲームに、そこにいる人間の小娘達も賭けてもらおうか」

 

 

「なっ!?!?」

 

 

『ッ!!??』

 

 

ユウキ、シノン、雪菜、紗矢華、ヤミ、芽亜の6人を、レーティングゲームの対象として挙げるというものだった。

 

 

「てめえッ!!! 部長だけじゃなく、ユウキちゃん達までッ…!!!!」

 

 

「ライザー…あなた、本気で言ってるの…?」

 

 

「人間の癖に中々の魔力を持っているとは思っていたが、まさかこいつ等も神器所有者だったとはな。しかも全員かなりの上玉じゃないか…。そこにいる人間の小僧(ガキ)共の傍に置いておくのは、“宝の持ち腐れ”というものだ…」

 

 

憤りを見せるイッセーとリアスを一瞥することなく、ユウキ達の下へ歩んでいくライザー…。それを見たユウキがシノンの後ろに隠れて怯えていたり、芽亜がいつも浮かべている笑みを完全に仕舞い込んでいることなど、当然気付いていない。そして、彼女達の前にいる当麻達3人を完全に無視し…

 

 

「どうだ、お前達? 俺の所へ来ないか? そんな人間の小僧共なんかより、俺の方がずっと可愛がってやれるぞ? 何なら今すぐにでも連れてって…」

 

 

ニヤつきを抑えられない様子で聞こうとした、次の瞬間、

 

 

「黙れ…」

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!

 

 

『ッ!?!?!?』

 

 

突如ライザーの身体が一気に吹っ飛び、部室の壁を突き破って向こう側に消えたのだ。あまりのことに絶句するグレモリー眷属とライザー眷属、そしてグレイフィア。その要因は…当麻の右足による回し蹴りだった…。それを見て、

 

 

「ライザー様ッ!!!」

 

 

「貴様、よくも…ッ!!!」

 

 

ライザーの眷属達は即座に臨戦態勢を整え、当麻に襲い掛かろうとした。だが…

 

 

チャキッ!×2

 

 

『ッ…!?!?』

 

 

「動くなよ? でねえと…」

 

 

「そっちが動く前に、全員叩っ斬る…」

 

 

いつの間にか能力を発動していた一護とリクオが瞬時に接近し、そんな彼女達に“斬月”と“祢々切丸”を突き付けた。ライザーの眷属達はその圧倒的な威圧感に、全く動くことが出来ない…。

 

 

「イッセーの言う通りだな。テメエはただその名前を利用し、何もかも自分の思い通りに動かしたいだけの“焼き鳥野郎”だ。そんな奴が“リアス”だけでなく、ユウキやシノン達まで自分のモノにしてえだと…?」

 

 

そして当麻は、最後にこう言い放つ…。

 

 

「“薄汚え不死鳥の成り損ない”が…俺達の大事な奴等を汚すなッ!!」

 

 

すると…

 

 

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ…!!!!

 

 

「神器を持ってるだけの人間風情が……よくもこの俺にふざけた真似をしてくれたなッ!!! 今ここで跡形も無く焼き尽くしてやるッ!!!」

 

 

「上等だ…掛かってこい…」

 

 

「ッ!? や、やめなさい、当麻…!!!」

 

 

ライザーが炎を纏いながら怒りを露わにしてきたのに対し、低い声で受けて立つ意思を見せる当麻。これにはリアスも思わず当麻を止めようとする。と、その時だった…。

 

 

「そこまでにしてください」

 

 

『ッ…!!!?』

 

 

凛とした声が響いたかと思うと、ライザーを軽く上回る魔力が部室内を制圧する。その声と魔力の主は…グレイフィアだった…。

 

 

「ライザー様、そのような私的な提案は承服しかねます。今回のレーティングゲームは、我々グレモリー家とフェニックス家を大きく左右するもの…。御自重くださいませ」

 

 

「なっ!? だが、俺は今この男にッ…!!!」

 

 

「“サーゼクス様の命を受けてこの場に居る”と申し上げた筈です…」

 

 

「ッ!! クソッ…!!」

 

 

グレイフィアの迫力に気圧され、苛立ちを露わにしながら自身の眷属達の下へと戻っていくライザー。一方で、

 

 

「お前もその辺にしておけ、当麻(ボソッ)」

 

 

「ここで事を大きくするのは、部長さんにとってもマズいよ(ボソッ)」

 

 

「…ああ…(ボソッ)」

 

 

当麻も一護とリクオにそう言われ、ユウキ達の傍へと戻った…。

 

 

「それでは、10日後にゲームを執り行います。お嬢様、ライザー様、よろしいですね?」

 

 

「ええ…」

 

 

「分かりました…。それじゃあリアス、次はゲームで会おう…」

 

 

そしてライザーはそう返答し、眷属達と共に魔方陣に乗って姿を消した…。“恨み”の籠った目で当麻を見ながら…。すると、

 

 

「では、私もこれにて失礼致します。サーゼクス様や旦那様方に、詳細を報告しなければなりませんので」

 

 

「! え、ええ、分かったわ…」

 

 

グレイフィアもリアスに一言伝え、魔方陣を展開してその場を後にしようとする。だが、その際に彼女は当麻達の方に目を向けつつ、ある思考を巡らせていた…。

 

 

(先程の攻撃、全く見ることが出来なかった…。しかもあの威圧感はサーゼクス様と同等か、それ以上のもの…)

 

 

普段から実に冷静沈着な筈の彼女の表情には…ほんの僅かに“動揺”を見ることが出来た…。

 

 

(あの者達は、一体……)

 

 

そう考えつつも、グレイフィアは今度こそ姿を消す。その結果残ったのは…一段と厳しい雰囲気を醸し出すオカルト研究部の面々のみだった…。

 

 



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修行

タイトルとは違い、前半は微妙に主人公がイチャイチャしてます。これが今の私の限界です…。



では、本編をどうぞ。


 

 

ライザーとのレーティングゲームが決定した日の夜。当麻は現在自分の部屋で、“ある状況”に陥っていた。それは…

 

 

「あー…ユウキさん? そろそろ放してくれるとありがたいのでせうが…」

 

 

「やっ…!」

 

 

ベッドで横になっている状態の自分の左腕に、ユウキが抱き着いたまま離れないのである。ちなみにユウキは今“フリルのあしらわれた淡い紫色のキャミソール”に“同じようなタイプのショートパンツ”という、少々大胆な恰好をしている…。どっかの赤龍帝が見たら、恐らく血涙を流しながら当麻に殴りかかってくるのは間違いないだろう…。

 

 

「いやいや、ダメですことよユウキさん? 上条さんもれっきとした男子だからな? 色々と危険が…」

 

 

「…当麻ならいいもん…////」

 

 

「…………」

 

 

何とかユウキに離れてもらおうとする当麻だったが、むしろ逆効果でユウキは更に抱き着く力を強くした。これには当麻も思わず硬直する…。

 

 

(はぁ…仕方ない、か…)

 

 

と、ここで当麻は心の中で溜息混じりに呟いたかと思うと…

 

 

「ライザー・フェニックスか?」

 

 

「………(ビクッ!)」

 

 

何度か見せている大人びた様子になり、ユウキにそう尋ねたのだ。それに対してユウキは言葉こそ発しないものの、少しばかり反応を見せる…。

 

 

「お前はああいう悪意に敏感だからな…。怖くなったか?」

 

 

「…あの人、全然ボク達のこと考えてない目をしてた…。あんな人のモノになるのなんて、絶対にやだよ…」

 

 

「…そうだろうな…」

 

 

そう話すユウキにはいつもの元気さや明るさが無く、より小さくて儚い存在となっていた。俯き気味の表情からも、不安で一杯な心情を窺い知ることが出来る…。すると、

 

 

「ねえ、当麻…」

 

 

「? どうした?」

 

 

「ん……////」

 

 

「…! ハハッ…」

 

 

ユウキは少し顔を赤くしながら、自分の頭を差し出すような形で迫ってきたのだ。それを見た当麻は早速何かに気付き……空いている右手で彼女の頭を撫で始めた…。

 

 

「~~////♪」

 

 

いつもよりも更に丁寧かつ優しく撫でられてるせいか、猫のようにふにゃっとした顔を見せるユウキ…。

 

 

(やっぱり何度見ても違うな、“戦ってる時のユウキ”と比べると…)

 

 

そんな彼女を見て、苦笑いを浮かべながらも撫で続ける当麻…。すると、その結果…

 

 

「すぅ……すぅ……」

 

 

「しまった…寝ちまったか…」

 

 

ユウキはあまりに気持ち良かったせいか、そのまま完全に眠りに就いてしまった。これには当麻も完全に“自分の失策だった”と思い…

 

 

「はぁ……」

 

 

溜息を吐かざるを得なかった…。と、その時、

 

 

「そんな所に居ないで、入ってきたらどうだ? “シノン”…」

 

 

ガチャッ…!

 

 

当麻がほんの少しボリュームを抑えた声でそう言い出したかと思うと、やや間を空けて入り口の扉が開く。やってきたのは……当麻の言った通りの人物―――“シノン”だった…。

 

 

「気付いてたのね…」

 

 

「まあな…。ユウキに気を遣ったのか?」

 

 

「気を遣ったつもりなんて無いわよ。ただちょっと入るタイミングを窺ってただけで…(ボソッ)」

 

 

「? 何だよ、タイミングって…?」

 

 

「! 何でもないわ…」

 

 

シノンはそんなやり取りをしながらも、当麻とユウキの寝ているベッドに近づいていく。ちなみに今のシノンは普段と同様黒髪のショートカットでありながらも眼鏡を外しており、恰好は“墨色のシンプルなノースリーブシャツ”に“同じ色のショートパンツ”という、少々地味なものである。まあ、露出に関してはユウキと遜色ないのだが…。そして、シノンはベッドに腰を掛けたかと思うと…

 

 

ポスッ…!

 

 

「……! シノン…?」

 

 

そのまま横になって当麻の方を向き、やや遠慮がちに当麻の右側に身を寄せたのだ。それに対し、当麻は彼女の行動に少し驚く…。

 

 

「少しだけ…このままで居させて…」

 

 

学園やオカルト研究部の面々と一緒に居る時とは違う、何処か弱弱しい声で呟くシノンの姿を見て、当麻はこう声を掛けた…。

 

 

「思い出しちまったのか? “あの時の事”を…」

 

 

「っ………!」

 

 

その一言に反応を見せるシノン。その身体は、僅かではあるものの確かに震えている…。

 

 

「きっとまた酷い顔をしてるのね、私…。もうとっくに治ったと思ってたのに…まだ残ってたなんて…」

 

 

「…………」

 

 

「ごめんなさい…もう、平気だから…」

 

 

そう言ってシノンが起き上がろうとした、その時、

 

 

スッ……

 

 

「……!」

 

 

当麻は右手でそっと彼女の左頬に触れたかと思うと、こう話し掛ける…。

 

 

「心配すんな…。お前の声はちゃんと届いてるし…“あの約束”も、一度だって忘れたことはねえ…」

 

 

「……!」

 

 

「言っただろ? “お前がどれだけ強くなっても、一生守ってやる”って…」

 

 

「っ…/////!!」

 

 

「? どうした…?」

 

 

「何でもないわよ…////。ホントに、どうしてそういうことを普通に…////(ボソッ)」

 

 

「??」

 

 

シノンが顔を真っ赤にしていたり、小声でそんなことを呟いてることにも気付いていない様子の当麻…。すると、

 

 

「はぁ…今日は何だか変に疲れちゃったから、このまま寝させてもらうわ」

 

 

「っ! シ、シノンさん? それをされると上条さんにとって色々問題なのでせうが?」

 

 

「ユウキがそうやって寝てるんだから、ほとんど変わらないでしょ。初めてって訳でもないんだし…。それに“あの人達”が帰ってきたら、日常茶飯事起こることじゃなかったかしら?」

 

 

「…はい…」

 

 

「じゃあ、慣れるためと思って受け入れなさい」

 

 

シノンはそう言って当麻をあっという間に説き伏せ、再び彼に身を寄せるような形でそのまま眠りに就いた。しかし、その直前…

 

 

「ありがとう…(ボソッ)」

 

 

シノンが小声でそんなことを呟いていることなど、久しぶりに2人の美少女に両側から挟まれて困惑している当麻には、聞こえている筈も無かった…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

同時刻……

 

 

「…おい…」

 

 

一護もベッドに横になった状態で、“ある状況”に陥っていた。それは……

 

 

「いつの間に人のベッドに侵入してんだよ、雪菜、紗矢華…」

 

 

自身の両サイドに雪菜と紗矢華の2人が潜り込んでいたのである。ちなみに雪菜はライトグリーンのパジャマを、紗矢華は水色のパジャマをそれぞれ着ている…。

 

 

「い、いいからそのままジッとしてなさい、黒崎一護! じゃないと斬り刻むから…!!」

 

 

「何で寝てる間に勝手に侵入された挙句、脅されなくちゃなんねえんだよ…」

 

 

「その、私はただ紗矢華さんの付き添いに来ただけで…他意はありませんから…」

 

 

「人のベッドに潜り込むまで付き添うなよ…。はぁ……」

 

 

歯切れの悪い2人のそんな言葉を聞いて、溜息を吐きながら返す一護だったが…

 

 

「今日の不死鳥野郎のせいだろ?」

 

 

「「………(ピクッ!)」」

 

 

彼がそう言った瞬間、雪菜と紗矢華はあからさまな反応を見せる…。

 

 

「別に怒ったりとかしてる訳じゃねえから、そうビクビクするなよ…。お前等だって力を持ってる以外は、普通の女の子なんだ。あんなことを言われれば、普通に不安にもなるさ…」

 

 

「! 先輩…」

 

 

「あの話は一応無くなったはずだけどな…。仮にそれが嘘になっちまった所で、あんな奴にお前等を渡す気なんざ微塵もねえよ……」

 

 

ポスッ…!

 

 

「「ッ……/////!」」

 

 

「どうあってもな…」

 

 

そう呟きながら2人の頭に手を乗せ、軽く撫でる一護。その目には憤りと同時に…覚悟のようなものが見て取ることが出来た…。

 

 

「な、何するのよいきなりッ////!?」

 

 

「! ああ、悪いな」

 

 

「っ! いや、別に嫌とかいう訳じゃなくて…////」

 

 

「?」

 

 

嫌がってるのかそうでないのか分からない紗矢華の反応に、思わず首を傾げる一護…。すると、

 

 

「まあ、とにかくこのまま寝たけりゃ好きにしてくれ。もう慣れた事だしな…」

 

 

「っ///!? せ、先輩、いきなり何を言って…////!」

 

 

一護はそう言って目を閉じ、そのまま寝始めてしまったのだ。雪菜が思わず何かを言おうとするが、時すでに遅し…。

 

 

「ど、どうする、雪菜…?」

 

 

「うっ……もう知りませんッ…////!」

 

 

ガバッ…!

 

 

「ッ…………///////」

 

 

その結果、雪菜は若干自棄になりながら掛布団の中に隠れて寝始め、それを見た紗矢華も顔を真っ赤にしながら同様に隠れて寝る……。

 

 

(ったく…世話の掛かる奴等だな、ホントに…)

 

 

その後しばらくして一護が目を開け、柔らかな笑みを浮かべながらそんなことを思っていたことなど…当然寝てしまった2人には知らないことだった…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

所変わって、そんな当麻達の家の屋根の上に1人の少女が座っている…。金色の長い髪が特徴的で、所々に青い小さなリボンがあしらわれている水色のパジャマを着ているその少女は…やはりヤミだった…。と、その時、

 

 

「まだ起きてたのか、ヤミ」

 

 

「…はい…」

 

 

後ろから何処からともなく現れたのは、この家の家主の1人でもある青年―――奴良リクオだった。その姿は黒い着物に青色の外套を羽織っており、尚且つ白と黒の棚引く髪が印象的な“夜のリクオ”のものである…。

 

 

「ちょっとした餞別だ。食うか?」

 

 

「! いただきます…」

 

 

リクオがそう言って“あるモノ”を見せると、ヤミは彼女なりの即答で答え、髪の先端を手の形にして受け取る。それは…彼女の大好物である“たい焼き”だった…。

 

 

「…冷たいですね…」

 

 

「“冷やしたい焼き”って奴だ。前に実物を見て試しに作ってみたんだよ。食ってみてくれ」

 

 

それを聞いたヤミは素早く袋から取り出し、それを一口食べた。そして一言……

 

 

「中々いけますね…」

 

 

「お前の口からそれが出るってことは、どうやら成功みてえだな。中身の種類も増やしてみるか…」

 

 

「その時は味の確認をしないといけませんから、また私が試食してあげます」

 

 

「ハハッ、そうかよ。なら、よろしく頼むぜ?」

 

 

そんなやり取りを交わしながら、普通にヤミの隣に座るリクオ…。

 

 

「これからどうするつもりですか?」

 

 

「…どういう意味だ?」

 

 

「彼女…“プリンセス・リアス”の一件です」

 

 

ヤミはリクオに対して唐突に尋ねてきた。ちなみにヤミはリアスのことを、普段から“プリンセス・リアス”と呼んでいる…。

 

 

「純血悪魔の婚約問題……多かれ少なかれ、私達はそこに関わらざるを得なくなってしまいました」

 

 

「ああ、そうだな…」

 

 

「…何か、嫌な予感がします」

 

 

「確信は…無しか?」

 

 

「はい。強いて挙げるなら…少しばかり“闇の中にいた者”の、勘です…」

 

 

リクオの問い掛けに対し、淡々とした様子で答えるヤミ…。

 

 

「まあ、多分お前の予感は当たってるんだろうな…。当麻や一護達も、全員が感じてる筈だ…。だが、それでも首を突っ込むしかねえよ。どうにも“気になる奴”も居ることだしな…」

 

 

「…小猫ですか?」

 

 

「! 気付いてたか…」

 

 

「はい…。リクオ、彼女は…」

 

 

「俺にもまだ確証はねえよ。ただ…可能性は高いと思ってる…」

 

 

同じオカルト研究部員である白髪の少女が話題に上がると、リクオとヤミは互いに何かを考え始める…。すると、

 

 

「気に入ったか? あいつのこと…」

 

 

「! そうですね…。話しやすいという点を踏まえれば、そうなのかもしれません…」

 

 

「へぇ…。お前の口からそういう言葉が出てくるとは思わなかったぜ。確かに考えてみると、あいつはお前と結構似てる所があるしな…。イッセーへの対応とか」

 

 

「あの男への“えっちぃこと”をした時の対応はもっと厳しくするつもりです。小猫も同意してくれました」

 

 

「そうか…。まあ、頑張れよ。くれぐれも半殺し程度に留めるようにな?」

 

 

「分かっています…」

 

 

イッセーの対応に関して、リクオは念のためヤミに釘を差した。まあ、それでも十分過ぎる…というか中々酷い対応ではあると思うが…。と、そこへ、

 

 

「あー! こんな所に居たー♪」

 

 

「「…!」」

 

 

そんな声が聞こえて来たかと思うと、新たに1人の人物がやってきた…。

 

 

「芽亜、お前も起きてたのか?」

 

 

「うううん! さっきまで寝てたよ! でも目を覚ましたらヤミお姉ちゃんが居なかったから、ちょっと探しに来ちゃった♪」

 

 

「ハハッ、そうか…」

 

 

そう、やってきたのはヤミの妹である少女―――黒崎芽亜である。ちなみに芽亜の恰好は、シンプルな薄いピンク色のパジャマだったりする…。

 

 

「あれ? ヤミお姉ちゃん、何食べてるの?」

 

 

「! リクオからもらったたい焼きです…」

 

 

「リクオお兄ちゃんのッ!? いいな~! 私にも無いの~!?」

 

 

「おいおい、そんな引っ付くなよ。お前のもちゃんとあるっての……ほらよ」

 

 

「ホントだ!! いっただっきまーすッ…!! う~ん♪ 冷たくて美味しい~♪」

 

 

リクオからもう1つの冷やしたい焼きをもらって、ご満悦な様子の芽亜。すると…

 

 

「芽亜、いつまでリクオに密着しているつもりですか? 離れてください…」

 

 

「え~、何で~?」

 

 

「…何でもです…」

 

 

依然としてリクオに引っ付いている芽亜に、ヤミがそう注意したのだ。だがそれに対し、芽亜は悪戯な笑みを浮かべ……

 

 

「それなら、ヤミお姉ちゃんもお兄ちゃんにくっ付いちゃえばいいんじゃないかな?(ボソッ)」

 

 

「っ……//////!」

 

 

「おい、さっきからお前等何言ってやがんだよ。つーか芽亜、お前はいい加減離れ…」

 

 

リクオに聞こえないよう、小声でそう提案してきたのだ。そしてそれを聞いたヤミが顔を赤くする中、リクオがそう言おうとした、その時、

 

 

ギュッ…!

 

 

「…おい、何でお前まで引っ付いて来るんだよ、ヤミ」

 

 

「…何となく、です…/////」

 

 

「は…?」

 

 

「ふふっ、そうそう♪」

 

 

「…意味が分からねえ…」

 

 

ヤミまで密着してきたことに驚いていると、続けて芽亜に笑顔でそう言われ、疑問の表情を浮かべるしかないリクオ。何はともあれ、こうして彼等の夜は更けていった…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

翌日の朝、当麻達3人はある場所に向けて“登って”いる。“登って”という表現から何となく想像は付くだろうが、現在地は駒王町から大分離れたところにある“山”の途中だ。そもそもの発端は早朝に突然……

 

 

『今日から私の家が持っている別荘で修行を始めるわ。あなた達も一緒に来て』

 

 

という内容の連絡がリアスから来たためである。ちなみに言うまでもなくユウキや雪菜、ヤミ達6人も同行している。そして現在……

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……」

 

 

イッセーが絶賛ダウンし掛かっていた。彼は背中に大量の荷物の入ったリュックを背負っているのである。それを見て、

 

 

「あ、あの、私も少し荷物を持った方が…」

 

 

「いいのよ。イッセーもあれくらい熟(こな)さないとだから」

 

 

アーシアが思わず荷物を持とうとするが、リアスはそれを止めた…。

 

 

「お先に」

 

 

「あんまり遅えと修行時間が減るぞ、イッセー」

 

 

「こういう肉体労働は、上条さん的に久しぶりだなぁ」

 

 

「くそぅッ! 木場の奴、余裕見せやがって…! って、おい、一護、当麻? その荷物は?」

 

 

そんなイッセーの横を裕斗と一護、そして当麻が通過したところで、イッセーは思わず2人の荷物を見て尋ねた…。

 

 

「ユウキや雪菜達の分だ。自分のと一緒に、2人分ずつ持つことにしてな」

 

 

「まあ、女はこういう時の荷物が多いからな」

 

 

「よろしく~、当麻~♪」

 

 

「すみません、先輩。お願いします」

 

 

(な、何だろう、色んな意味で敗北感が……)

 

 

そう答える当麻と一護にユウキと雪菜が声を掛けてる姿を見て、得も言われぬ敗北感を感じ始めるイッセー。ちなみに2人の持ってる荷物は、イッセーのものよりも若干多かったりする…。と、そこへ、

 

 

「失礼…」

 

 

「わぁ~、小猫ちゃんすご~い!」」

 

 

「流石に“戦車(ルーク)”の特性を持っていると違いますね」

 

 

「あはは…えっと、じゃあ先に行くね、イッセー君」

 

 

「……え……?」

 

 

一番小柄な小猫が数倍大きな荷物を背負い、芽亜やヤミ、リクオと共に抜いていく姿を見て呆気にとられるイッセーだった…。

 

 

「どわぁぁッ!?!?」

 

 

ベシャッ…!!

 

 

あ、ひっくり返った……。

 

 

 

☆☆

 

 

 

それからしばらくして、グレモリー家の所有している別荘へと到着したオカルト研究部一行。そこはどう考えても、“中世の貴族の邸宅”といった様相のものだった…。

 

 

「ふえ~…」

 

 

「こっちも流石と言えば流石ね…」

 

 

「さぁ、中に入って着替えたら、すぐ修行を始めるわよ」

 

 

「す、すぐ修行ーーッ!?!?」

 

 

ユウキとシノンがその外観を見て思わず声を漏らす中、リアスの一言に“この世の終わり”のような叫びを挙げるイッセー。

 

 

「や、やっぱり部長は鬼ですーッ!!」

 

 

「悪魔よ♪」

 

 

と、ここで、

 

 

シュインッ!

 

 

「ちなみに着替えを覗こうとした場合は…」

 

 

「即斬り刻むから、そのつもりでいなさい」

 

 

「イ、イエッサーッ…!!!(ガクガクガクッ)」

 

 

「まあ、その前に僕が半殺しにすると思うけどね(ボソッ)」

 

 

「あんたが一番怖いわね…」

 

 

ヤミと紗矢華の宣告にイッセーが震えあがりながら敬礼している中、リクオの小声の一言を聞いてシノンが乾いた笑みを浮かべていたのは……まあ、多分気のせいである……。という訳で、ここからは修行の風景を見ていくことにする…。

 

 

 

――――レッスン1 裕斗による剣術指南――――

 

 

「おりゃああああああああああああッ!!!」

 

 

カンッ、カンッ!!!

 

 

「そうじゃない。剣の動きだけじゃなく、相手と周囲も見るんだ」

 

 

イッセーが力任せに木刀を打ち込んでくるのに対し、裕斗はそう指摘しながら軽く防いでいく…。

 

 

「でりゃああああああああああッ!!!」

 

 

そしてイッセーの大振りな攻撃を最小限の動作で避けた裕斗は…

 

 

「フッ!!」

 

 

バシンッ!!!

 

 

「っ! 流石騎士(ナイト)だな……!」

 

 

その木刀を軽く叩き落とした。これにはイッセーも思わず舌を巻くが…

 

 

「ほら、油断しない!」

 

 

カンッ!!

 

 

「あだっ!?」

 

 

そんなイッセーに裕斗は木刀を片手で軽く振り下ろした。イッセーは咄嗟に白刃取りをしようとするものの、当然上手くいく筈もなく頭にヒットする…。すると、

 

 

「そんなんじゃダメよ。この男には温(ぬる)すぎるわ。どうせやるなら……」

 

 

ジャキンッ!!

 

 

「徹底的に追い込まないと」

 

 

「ちょちょちょちょちょっ!!?!? えっ!? 追い込むってそれ、俺の命が追い込まれそうなんだけどッ!? これ修行だよね!?」

 

 

「何事も本番さながらじゃないと身に付かないでしょ?」

 

 

紗矢華が自らの神器“煌華麟(デア・フライシュッツ)”を剣型にして構えながら、そう言ってきたのだ。それを見たイッセーは慌てて止めようとするが…

 

 

「じゃあ、気合を入れなさい」

 

 

「ま、待ってーーーッ!!??」

 

 

「問答、無用ッ!!!」

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ………!?!?!?」

 

 

荒野にイッセーの断末魔が響く…。

 

 

「えっと…大丈夫かな、イッセー君?」

 

 

「まあ、大丈夫だろ、イッセーだし」

 

 

「ああ、大丈夫だろ、イッセーなら」

 

 

「そうだね、イッセー君だから」

 

 

「どれも根拠が無いよね!?」

 

 

主人公3人の発言に、木場が柄にもなく思い切りツッコんでいたのは…気のせいではない…。

 

 

 

――――レッスン2 朱乃による魔力技能指南――――

 

 

「魔力は体全体を覆うオーラから、流れるように集めるのです。意識を集中させて、魔力の波動を感じるのですよ?」

 

 

「うぎぎぎ……!!」

 

 

朱乃のアドバイスを聞きながら力一杯踏ん張るイッセーだが、特段何も変化はない。と、ここで、

 

 

「出来ました!」

 

 

「えっ!?」

 

 

アーシアのそんな声を聞いてイッセーが思わず振り向くと、彼女の両手の上には淡い緑色の魔力の球体が浮いていた…。

 

 

「あらあら、やっぱりアーシアちゃんは魔力の才能があるのかもしれませんね」

 

 

「そうですね。一番基礎の練習とはいえ、初めてでいきなり成功する人は少ないですから」

 

 

それを見て朱乃と雪菜は純粋にアーシアを評価した。ちなみにこの場には雪菜の他に、一護と紗矢華も一緒にいる…。

 

 

「では、アーシアちゃんは次の段階に進みましょう」

 

 

すると、朱乃はそう言いながら水の入ったペットボトルをテーブルに置き、右手を翳す。と、次の瞬間、

 

 

ザシュッ!!

 

 

「っ!? うおお、凄えッ!!」

 

 

その水が鋭利な棘のように姿を変え、内側からペットボトルを貫いたのだ。これには思わず感嘆の声を上げるイッセー。

 

 

「このように魔力を炎や水、雷に変化させることもできます。勿論イメージするだけでも可能ですが、初心者は実際の火や水を魔力で動かしてみるのが良いでしょう。イッセー君は、先程の練習を御願いしますわ」

 

 

「わ、分かりました…」

 

 

アーシアに先を行かれてしまったことで少々ガッカリしながらも、引き続き練習を続けるイッセー…。

 

 

「そうですわ。もっと意識を集中して…」

 

 

「意識を集中…!」

 

 

「そう、集中ですわ…」

 

 

「集中…!」

 

 

そして朱乃のアドバイスに耳を傾けながら、目を閉じて集中し始める…。ここまでは良かった…。

 

 

「ぬおっ…/////!?」

 

 

途中で朱乃を見ながら、“何か”を想像するまでは…。すると、

 

 

ポンッ!

 

 

「! な、何だよ、一護…?」

 

 

今まで傍観していた一護が急にイッセーに近付き、右肩に自分の左手を乗せたのだ。と、次の瞬間、

 

 

「破道ノ十一、“綴雷電(つづりらいでん)”」

 

 

バリバリバリバリッ!!!

 

 

「あばばばばばばばばばッ!!??」

 

 

突如イッセーの体に電気が流れ、思い切り痺れ出した。その結果、イッセーの髪は見事にチリチリになる…。

 

 

「い、一護、な、何しやがる、いきなり…!?」

 

 

「雪菜と紗矢華がさっきのお前の顔を見た瞬間、灸を据えてくれって言ってきたんだよ。どうせ“しょうもないこと”でも考えてたんだろ?」

 

 

「なっ///!? ち、違うぞッ!! 俺は決して“朱乃さんのおっぱい”のことなど考えてなんか……あ……」

 

 

イッセーは思わず自分の過ちに気付くが、もう遅い…。

 

 

ジャキンッ!!

 

 

「やっぱりそういうことだったのね。じゃあ…」

 

 

「きっちり反省してください、兵藤先輩…」

 

 

「…………(ガタガタガタガタッ!!!)」

 

 

“雪花狼”と“煌華麟”を突き付けられ、ガタガタと震え出すイッセー。そんな中、

 

 

「雷も扱うことが出来たのですね。ビックリしましたわ」

 

 

「ああ、前にも言ったと思うが、俺の使う鬼道には色んな属性があんだよ。別に電撃系に特化してる訳じゃねえし、電撃系の鬼道もそこまで種類はねえからな?」

 

 

「あらあら、ですがしっかりと威力の制御はしているみたいですわね?」

 

 

「まあ、その辺は色々鍛えたからな…」

 

 

一護と朱乃はそんな会話をしていたのだった…。

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ…!!!??」

 

 

イッセー、本日2度目の絶叫……。

 

 

 

───レッスン3 小猫の体術指南───

 

 

ドガアアアアアアンッ!!!

 

 

「ゴフッ!!?」

 

 

ドサッ!!

 

 

吹っ飛ばされたイッセーは、何度目か分からない木への激突をしていた。それを見て…

 

 

「…弱」

 

 

「弱えな」

 

 

「弱いですね…」

 

 

「弱々だね~♪」

 

 

上から小猫、リクオ(夜の姿)、ヤミ、芽亜が全く同じ評価を下した…。

 

 

「…打撃は体の中心線を狙って、的確かつ抉るように打つんです」

 

 

「うおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

 

アドバイスをする小猫に、イッセーは雄叫びを上げながら殴りかかるが…

 

 

ガシッ!!

 

 

「ぐええええッ……!」

 

 

避けた小猫に両足を使って首を絞められ、そのまま地面に倒れ込み…

 

 

「……(チーンッ!!)」

 

 

完全に堕ちた…。と、ここで、

 

 

「そろそろだな…。悪いな、俺は先に戻るわ」

 

 

「…? どうしたんですか、リクオ先輩…?」

 

 

「もう良い時間だからな。飯を作りにいくんだよ」

 

 

「…! リクオ先輩が作るんですか?」

 

 

「ああ、まあな」

 

 

リクオが夕飯の調理を担当すると聞いて、普段とは違う反応を見せる小猫…。

 

 

「ちゃんとたくさん作って待っててやっから、イッセーを徹底的に扱(しご)いてやんな」

 

 

「…! はい…」

 

 

「お前等も適当に小猫を手伝ってやれ。後は任せる」

 

 

「分かりました…」

 

 

「は~い♪」

 

 

リクオは小猫とヤミ、芽亜の3人にそう伝えると、急ぐことなく別荘へと歩いて戻っていった…。と、その時、

 

 

「イテテテッ…何か一瞬川を渡り掛けちまった。危ない危ない…!」

 

 

丁度目を覚ましたイッセー。すると…

 

 

「イッセー先輩、再開です…」

 

 

「あ、あれ? 何か小猫ちゃん、さっきよりやる気に満ちてない…?」

 

 

「じゃあ私達もやろっか、ヤミお姉ちゃん♪」

 

 

「そうですね。少しは腹ごなしにもなるでしょう…」

 

 

「ちょっ!? 何でヤミちゃんと芽亜ちゃんも参加しようとしてんの!? 俺小猫ちゃん1人で手一杯なんだけど!? おいリクオ! ちょっと止め…って、居ねえしッ!?」

 

 

さながら“死刑宣告”のように感じたイッセーは、咄嗟に止めようとするが…当然意味はない…。

 

 

「「…行きます」」

 

 

「死なないようにね、先輩♪」

 

 

「ちょ、待っ……ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!??」

 

 

兵藤一誠、本日3度目の絶叫…。

 

 

 

───レッスン4 リアスの基礎体力向上指南───

 

 

「ほらイッセー! しっかりなさい!」

 

 

「オ、オッス…!!」

 

 

イッセーは現在、リアスの乗っている大きな石を背負って、急な坂を登り下りしている…。

 

 

「足を止めたらダメよ? そしたら最初からやり直しになるわ」

 

 

「なっ!? ぶ、部長はやっぱり鬼ですよ~~!!!」

 

 

「悪魔よ♪」

 

 

容赦ない宣告にイッセーが声を上げると、リアスは来た時と同じように笑みを浮かべながら返した。すると、

 

 

チャキッ!

 

 

「なら、否が応でも走れるようにしてあげる…」

 

 

「シ、シノンさん? 何で拳銃を俺に向けて…」

 

 

ドォンッ…!!

 

 

シノンが“グロック18”を抜いて1発撃った…イッセーの足元に…。

 

 

「歩みが止まったら即風穴が開くけど、どっちが良い?」

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ…!!!!」

 

 

「ちょっとイッセー! あんまり速く走らないで! 後が持たないわよ!?」

 

 

シノンの一声を聞いたイッセーは、こうして一気に活力(?)を取り戻したのだった…。

 

 

「当麻~、もっと~♪」

 

 

「お、おう。こんな感じでいいか?」

 

 

「~~~♪」

 

 

ユウキが当麻の膝の上に座って、猫のように撫でられまくっていることがシノンのイッセーに対するスパルタの原因であることは……まあ、余談である…。

 




何だか当麻のキャラがいまいち定まっていない気が…。すみません…。



では、また次回。


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幻想

大変今更ではありますが、レーティングゲームの描写はすっ飛ばします。



ある意味本番は次回ですね。



では、本編をどうぞ。


 

 

夜を迎え、修行を終えたオカルト研究部の面々は夕食を食べているのだが……

 

 

「う、旨ええええええええええええッ!!!!!」

 

 

イッセーがそう叫びながら、ひたすらに目の前の料理にがっついていた。

 

 

「この前の歓迎会のこともあったから、予想はしていたけど…」

 

 

「あらあら、これは1度本当に指南頂かないと…」

 

 

「じ、自信が無くなってしまいました…」

 

 

「流石としか言いようがないね、リクオ君」

 

 

「…本当に美味しいです」

 

 

リアスや朱乃、アーシア、裕斗、小猫も目の前の料理を食べた瞬間、それぞれ絶賛したり悲観していたりしている。言うまでもないが、料理を作ったのはリクオである。また小猫の前に堆(うずたか)く空の皿が積まれているのは…気のせいではない…。

 

 

「あはは、でも今日は少し量の方に力を入れちゃったから、質はいつもより若干落ちてる気がします。次は改良しないと…」

 

 

「…大丈夫です。十分過ぎるくらい美味しいですから…。あの…おかわりをもらってもいいですか?」

 

 

「あ、うん! ちょっと待ってて…!」

 

 

小猫が遠慮気味に聞くと、リクオ(昼の姿)はすぐに厨房へと向かっていった…。と、ここで、

 

 

「ところでイッセー、今日1日修行してみてどうだったかしら?」

 

 

「! はい…俺が一番弱かったです」

 

 

「そうね。それは確実ね」

 

 

リアスの問い掛けに顔を俯かせながら呟くイッセー…。

 

 

「あと何回か死にかけました…(ガクガクッ!!)」

 

 

「「それはあなたの自業自得よ(です)」」

 

 

「いや違うよね!? 確かに1つはそうだけど、あとのは絶対に違うよね!?」

 

 

「1つ当てはまれば十分じゃねえか…?」

 

 

紗矢華とヤミの返しにイッセーが思わず抗議する中、一護は呆れ混じりにそう口にした。ちなみに当てはまるものは、言うまでもなく朱乃との修行での出来事である…。

 

 

「でもアーシアの回復、イッセーの“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”だって、勿論貴重な戦力よ。相手もそれを理解している筈だから、仲間の足を引っ張らないように最低でも逃げるくらいの力は付けて欲しいの」

 

 

「はい…!」

 

 

「りょ、了解っす…」

 

 

リアスがそう言ったのに対し、イッセーとアーシアはしっかりと返事をした。

 

 

「さて…食事を終えたらお風呂に入りましょうか?」

 

 

「お、お風呂ーッ!?」

 

 

「僕は覗かないよ、イッセー君」

 

 

「バ、バッカ! お、お前な…!!」

 

 

リアスの言葉を聞いてあからさまに反応するイッセーだったが、裕斗に見抜かれ一気に動揺した。すると…

 

 

「あら、私達の入浴を覗きたいの、イッセー? なら、一緒に入る? 私は構わないわよ?」

 

 

「ッ!! マ、マジっすか!?」

 

 

「勿論、当麻達もよ?」

 

 

「「「はあ(ええ)っ!!??」」」

 

 

リアスのとんでもない提案を聞いてイッセーが興奮と期待感のあまり立ち上がる一方、当麻達3人は驚愕と焦りのあまり声を上げる…。

 

 

「朱乃はどう?」

 

 

「うふふ、殿方の御背中も流してみたいですわ♪」

 

 

満面に近い笑みを浮かべながら肯定する朱乃。もっとも、彼女はその中でも“ある1人の男”を特に見ているのだが…。

 

 

「アーシアは? 愛しのイッセーと結構紳士的な当麻達なら大丈夫よね?」

 

 

「っ……/////!」

 

 

アーシアもリアスの問い掛けに対して顔を俯かせるも、僅かに肯定の意思を見せた…。

 

 

「小猫やシノン達は?」

 

 

そして最後に小猫達に尋ねると……

 

 

「嫌です」

 

 

「「「却下よ(です)」」」

 

 

「兵頭一誠…覗いたら即刻殺します」

 

 

小猫とシノン、雪菜、紗矢華、ヤミは即答で返した。特にヤミは、髪を刃物にして一誠を睨んでいる…。

 

 

「じゃあ無しね♪」

 

 

ガタッ!!!

 

 

小猫達の清々しい一刀両断とリアスの一言に、撃沈して倒れるイッセー…。すると、

 

 

「なら、当麻と一護とリクオの3人ならどうかしら?」

 

 

「「……………! ダ、ダメです……////」」

 

 

「…………ダメよ」

 

 

「な、何を言ってるんですかグレモリー先輩ッ/////!?」

 

 

「そ、そうよッ////!! そんなこと絶対に許す訳…////!!」

 

 

その問い掛けに対して、今度はヤミと小猫を始め、シノンや雪菜、紗矢華もあからさまに違う反応を見せた。と、その時、

 

 

「えー! 私は別にリクオお兄ちゃん達ならいいよー♪ ユウキちゃんもそうでしょ?」

 

 

「ふぇっ///!? えっと……う、うん……///」

 

 

芽亜がユウキと共にそんなことを言い出したのだ。更に……

 

 

「それにヤミお姉ちゃん達だって、何回も裸を見られたりしてるよね?」

 

 

「「なっ……!?」」

 

 

「ちょ、め、芽亜…!?」

 

 

続いて芽亜の口から飛び出した爆弾発言に、当麻達3人は思い切り動揺を見せ…

 

 

「「「ッ~~~~//////!!」」」

 

 

「め、芽亜さん////!! あれも、その、不可抗力というもので…/////」

 

 

ヤミ達4人も雪菜以外は完全に硬直していた…。まあ、その雪菜も極限まで動揺しているせいか、“普通どこかの男性主人公が言いそうな典型的理由”を口にしてしまっているが……。

 

 

「何で…何でお前等ばっかりそんな羨ましい体験してんだァァァァッ!!! こんちくしょうがァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

 

ドスッ!!!

 

 

「ぐへっ!?」

 

 

ドサッ……!!

 

 

え? 何が起きたかって? 血涙を流しながら殴りかかって来たイッセーを、リクオ(昼の姿)がサラッと腹部に一撃お見舞いして沈めただけですが?

 

 

「と、とにかく俺達は普通に男湯に入るからな!!」

 

 

「おい、行くぞ、裕斗!」

 

 

「え? あ、そ、そうだね…」

 

 

「えっと…じゃあ、お先に…」

 

 

そして当麻達3人は裕斗と共に、先に風呂へと向かっていった。ちなみにイッセーは気絶した状態のまま、リクオに引きずられている…。それを見て…

 

 

「あらあら♪」

 

 

「あなた達、意外と大胆なのね♪」

 

 

「ち、違います////!! 変な勘違いしないでください、御二人共ッ////!!」

 

 

「う~ん…何でリクオお兄ちゃん達はあんなに慌ててたのかな?」

 

 

「あなたのせいですよ/////ッ!!」

 

 

リアスと朱乃は感心したような笑みを浮かべ、芽亜は不思議そうに首を傾げる。雪菜はそんな彼女達への対応に奔走せざるを得ないのだった……。

 

 

 

☆☆

 

 

 

「ふぇ~…気持ち良い~…♪」

 

 

「うふふ、やっぱり温泉はいいですわね~♪」

 

 

ここは女湯。湯に浸かっているユウキと朱乃がそう言うと…

 

 

「これで皆の修行の疲れが、少しでも癒されれば良いのだけど…」

 

 

「ふふっ、間違いなく癒されますわ♪」

 

 

「ええ、少なくとも私達は満足してるわよ」

 

 

リアスがそう呟いた。それに対して朱乃とシノンが声を掛ける。と、ここで、

 

 

「やっぱり大きい~…!」

 

 

「! あら、どうしたの、芽亜?」

 

 

「2人共、紗矢華先輩と同じくらいか、それ以上に大きいな~と思って♪」

 

 

「あらあら、そういえば紗矢華ちゃんも中々の物をお持ちでしたわね。うふふ、着痩せするタイプなのでしょうか♪」

 

 

芽亜が間に入ってくると、リアスと朱乃の“ある部分”に目を遣りながら言ってきた。すると、

 

 

「ちょ、ちょっと////!? 何よいきなり…////!?」

 

 

「た、確かに部長さん達と同じくらい……うぅ……」

 

 

「しかも心なしか、また大きくなった気がするわね…」

 

 

「ッ……//////!!」

 

 

アーシアとシノンの発言を聞いて、紗矢華は思わず顔を赤くしながら両手で“発達したある部分”を隠そうとする。まあ、言うまでもなくそんなことでは隠せず、むしろ強調することになるのだが…。そんな中、

 

 

「……………」

 

 

「小猫…」

 

 

「…!」

 

 

「見ない方がいいです…」

 

 

「……はい」

 

 

小猫とヤミは自身の“ある部分”に目を向けながら、そんな会話をしていたのだった。ちなみに、実際にその“ある部分”に関して順位をつけると……

 

 

朱乃 > リアス、紗矢華 >>> アーシア、芽亜、シノン > ユウキ、雪菜、ヤミ > 小猫

 

 

このような結果になったりするとか、しないとか……。 

 

 

「でも、少し残念ですわ…」

 

 

「? どうしたの、朱乃?」

 

 

「“殿方の御背中を流してみたい”というのは、本当のことでしたの。特に一護君達はとても良い体をしていると思っていましたから、少し期待していたのですが…」

 

 

「! 確かに気になるわね。戦闘経験もかなりありそうだし、やっぱり鍛えてるのかしら…?」

 

 

朱乃のふとしたそんな呟きを聞いて、興味を持ち始めるリアス。すると…

 

 

「見てみる?」

 

 

「「え……?」」

 

 

芽亜が突如そんなことを言ってきたのだ…。

 

 

「どういうことかしら、芽亜?」

 

 

「ふふっ♪ 実はね~、今丁度こんなもの持ってるんだ~……」

 

 

そう言いながら芽亜は“あるもの”を取り出す。それは…

 

 

「じゃじゃ~んッ!」

 

 

「! それは…」

 

 

「…カメラですね」

 

 

そう、アーシアと小猫の言う通り、カメラだった。見たところ比較的コンパクトなデジタルカメラのようである…。

 

 

「め、芽亜さん! それを持って来ていたんですか!?」

 

 

「うん! もしかしたら役に立つかな~っと思って♪」

 

 

「ちなみにこのカメラは私達の知り合いが作ったもので、余程のことが無い限り壊れません…」

 

 

それを見た雪菜が驚きを露わにする中、ヤミはそのカメラの性能についてリアスや朱乃達に軽く説明した…。

 

 

「でも、一体何を…」

 

 

「ふふっ♪ 勿論、これだよ♪」

 

 

そしてリアスの問い掛けに対し、芽亜がカメラを操作して保存されている“ある画像”を見せた瞬間…

 

 

「「ッ……!!!」」

 

 

リアスと朱乃の表情が一変した。どうやら雷に打たれたのと同じくらいの衝撃を受けているようである。その画像に写っていたのは……上半身裸の当麻と一護、リクオの姿だった……。

 

 

「これは…///」

 

 

「ね? 凄いでしょ♪」

 

 

「あらあら、やはり思っていた通りですわ…/////」

 

 

顔を真っ赤にしながらも興味津々といった様子のリアスと、何処かうっとりとしながらも食い入るように見る朱乃…。ただの一般男子の上半身裸の画像では、こうはならないだろう。だが、彼女達の目にしている当麻達3人は…一切無駄の無い、鍛え上げられた肉体を有していたのだ…。普段の彼等からは、恐らく想像も付かない姿である…。

 

 

「ほ、本当に凄いわね…///」

 

 

「ふふっ、やっぱり♪ グレモリー先輩達なら分かってくれると思ったんだ。これで先輩達も、“私達”の仲間だね♪」

 

 

「! “私達”と言いますと、もしや…」

 

 

朱乃がそう言いながら後ろを振り返ると、そこには…

 

 

「「「「っ…/////!」」」」

 

 

サッ!!

 

 

顔を赤くしながらも、瞬時に目を逸(そ)らすシノン、雪菜、紗矢華、ヤミの4人と…

 

 

「やっぱり凄いな~、当麻////♪」

 

 

対照的に、全く気にすること無く見ているユウキの姿があった。しかも、その後ろには…

 

 

「はぅぅぅぅぅ…/////」

 

 

顔を上気させながら唸っているアーシアと…

 

 

「………///////(ジーーーッ)」

 

 

顔を真っ赤にしながらも、何気にしっかりと見ている小猫の姿もあった…。

 

 

「! アーシア、それに小猫まで…」

 

 

「にゃっ///!? ち、違います、これは、その…////」

 

 

リアスに声を掛けられた小猫は、普段なら絶対に見せないであろう動揺の色を見せていた…。ハッキリ言って、説得力など欠片もない…。

 

 

「ふふっ♪ まだ他にもたくさん写真はあるよ…? どうする…?」

 

 

『…………』

 

 

この後女風呂で“謎の観賞会”が開催されたのは……言うまでもない……。

 

 

 

☆☆

 

 

 

その頃、男湯では…

 

 

「「「……!」」」

 

 

「? どうしたんだい?」

 

 

「いや、何か部長達が“踏み込んじゃいけない領域”に入ったような気がしたんだが…上条さん達の気のせいだな、うん…」

 

 

3人の反応した様子を見た裕斗が思わず尋ねると、代表して当麻が答えた…。

 

 

「それにしても、そんなに体を鍛えてたんだね。全然予想してなかったよ」

 

 

「ん? ああ…まあ、俺達も“賞金稼ぎ”である程度は生計立ててたからな」

 

 

「自然とこうなった…って感じだね。それよりも…」

 

 

一護とリクオが裕斗の問いにそう返す中、ここでリクオはある方向に目を向けた。すると、そこには…

 

 

「ぬおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」

 

 

雄叫びを上げながら、女湯の境になっている分厚い壁を押しているイッセーの姿があった…。

 

 

「イッセーは何してんだ…?」

 

 

「まあ、否が応でも想像が付くな…」

 

 

「イッセー君、そんなことして一体何の意味があるんだい?」

 

 

どう見ても不審過ぎるイッセーの行動に当麻と一護が呆れていると、ここで裕斗がそう尋ねる。それに対し、

 

 

「うるせえッ!! イケメンは黙ってろッ!!」

 

 

「…透視能力でも身に付けようとしてるのかな?」

 

 

「あいつにそんな能力が身に付いたら、堪(たま)ったもんじゃねえな…」

 

 

イッセーの必死な様子を見て裕斗がそう呟くと、一護は苦い表情を浮かべた。そんな中、

 

 

「…はぁ…」

 

 

ここで溜め息を吐きながら動いたのは、リクオだった。近くにあった風呂桶を手に取り…

 

 

「ふっ!」

 

 

カコーンッ!!

 

 

「いでっ!!?」

 

 

イッセーの頭に寸分違わず投げ付けた…。

 

 

「な、何すんだよリクオッ!! せっかく今の修行で何か掴めそうだったってのにッ…!!」

 

 

「端から見れば今のはどう見ても修行じゃなくて、犯罪にしか見えないよ。それとも…」

 

 

チャキッ!

 

 

「僕が修行を付けようか?」

 

 

「すいません、大人しくします!!」

 

 

祢々切丸を突きつけられた瞬間、一気に下手に回るイッセー…。何処となく“小物感”が漂いつつあるのは、気のせいである…。

 

 

「チクショウッ! お前等も男だろ!? 普通女湯だって覗きたがるもんだろ!?」

 

 

「いや思わねえし、仮に思ったとしてもお前みたいに堂々と口にしたりしねえよ、普通」

 

 

イッセーの問い掛けを、一護はバッサリと切り捨てた。と、ここで、

 

 

「というか、僕達の方がむしろ覗かれてる側なんだけどね…」

 

 

「…は…?」

 

 

「あー…」

 

 

「まあ…そうだな…」

 

 

リクオの発言にイッセーが唖然とする中、当麻と一護は何とも言えない表情を浮かべる。

 

 

「どういうことだい?」

 

 

「えっと…僕達が風呂に入ってる時に、必ず誰かが覗きに来るんだよ」

 

 

「つっても、芽亜に至ってはコソコソ覗きに来る所か、堂々と風呂に入ってくるけどな…」

 

 

「何でも、“俺達の体が見たいから”らしいけど…普通逆だと思うのは上条さん達の気のせいでせうか…?」

 

 

裕斗の問い掛けに、そう答えるリクオ達3人。すると…

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ…!!!!」

 

 

「…おい、あいつは何猛スピードで筋トレしてんだ?」

 

 

「さ、さあね。僕にも分からないよ…」

 

 

突如始まったイッセーの高速筋トレを見た一護が聞くと、そう苦笑いを浮かべながら返す裕斗…。

 

 

(当麻達と同じくらい身体を鍛えれば、俺にもそういうチャンスか来るってことじゃねえかッ! よっしゃあああッ!! ハーレム王に、俺はなるぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!!)

 

 

イッセーが相も変わらず平常運転な思考の下で動いているなど、他の4人には当然預かり知らない所である…。ともあれ、こうしてオカルト研究部一同は、休息の一時を過ごしていく…。

 

 

☆☆

 

 

 

その日の夜…

 

 

「スゥ…スゥ…」

 

 

「…何故にまたユウキさんが隣で寝ているのでせうか?」

 

 

ふと目が覚めた当麻は、隣で寝ている少女を見て思わず小声で呟く。いつもとは違い腕には抱き付いていないが…それでも十分驚きの光景だろう…。

 

 

(風にでも当たってくるか…)

 

 

当麻は寝ているユウキを起こさないように起きて部屋を後にし、別荘に隣接しているテラスのような建物へとやって来た。すると、そこには…

 

 

「あなたは今回のゲームの重要な鍵よ。あなたの攻撃力が、状況を大きく左右するわ。だから私達を…そして何より、自分自身を信じなさい。そうすれば、きっと勝てるわ」

 

 

「部長達と、自分を……分かりました! 俺、頑張ります!!」

 

 

「ええ、期待してるわよ、イッセー」

 

 

「はい!!」

 

 

そんなやり取りを交わしているリアスとイッセーの姿があった。そして、イッセーがその場を後にしていった所で…

 

 

「夜更かしは美容の大敵だぜ? 部長」

 

 

「! 当麻…」

 

 

当麻は建物の陰から姿を見せ…

 

 

「聞いていたの?」

 

 

「まあ、最後の方だけな」

 

 

「そう…」

 

 

リアスの下へと歩み寄っていく…。

 

 

「レーティングゲームの戦術書か?」

 

 

「ええ…。といっても、こんな初歩的なものじゃ気休め程度しかならないのだけど…」

 

 

「…こっちはゲーム未経験なのに対して、相手は公式戦じゃ実質負け無し。しかも“フェニックス”、か…」

 

 

リアスの持っているノートらしき物を見ながら、そう話す当麻…。

 

 

「悪魔でありながら、聖獣である不死鳥と同じ名前を持つ、“72柱(ななじゅうふたはしら)”にも数えられた侯爵家。その能力もやはり聖獣と同じ……」

 

 

「“不死身”…」

 

 

「そう…殆ど無敵ね。攻撃してもすぐに再生してしまうのだから…。最初から私が負けることを見越して、お父様達がゲームを仕組んだのよ。チェスで言う所のハメ手…“スフィンドル”かしら…」

 

 

柱に寄りかかって座りながら語るリアス。その表情には笑みが見られるものの、何処か諦めに近い雰囲気を窺うことが出来た。と、ここで…

 

 

「部長…あんたに1つ、聞きたいことがある」

 

 

「? 何かしら…?」

 

 

「…あんたも言ってた通り、今回のゲームはハメ手に近いものだ。正直いくらあんたの力やイッセーの“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”があったとしても、厳しいことには変わりないと思う…。それはあんたも気付いてるよな?」

 

 

「…ええ」

 

 

「でもあんたは、こうして戦う道を選んでる…。一体何がそうまでしてあんたを駆り立ててるんだ…?」

 

 

そう問い掛けてくる当麻を見たリアスは、思わず驚きの表情を一瞬浮かべた。その時の当麻の表情が、時折見せる鋭いものだったからだ…。そしてリアスは、再び笑みを取り戻して話し始める…。

 

 

「私はね、“グレモリー”なの…」

 

 

「……」

 

 

「何処へ行っても私には“グレモリー”の名が付きまとう…。勿論、誇りも感じているわ…。でも今回の婚約は、“グレモリー”の名の下でのもの。ライザーも私のことを、“グレモリー家のリアス”として見ているわ…。それが嫌なのよ…」

 

 

ポツポツと語られるリアスの話を、当麻は何も言わずに聞いていく…。

 

 

「私は“グレモリー家のリアス”としてじゃない…“ただのリアス”として私を愛してくれるヒトと結ばれたいの。それが私の小さな夢…いいえ、“幻想”に近いかもしれないわね…。グレモリー家の誇りも勿論大切だけど、どうしても捨てられない私の幻想…。フフッ、本当に矛盾してるわね…」

 

 

軽く自嘲しながらリアスが話を終えた所で、当麻がようやく口を開く…。

 

 

「良い夢だな」

 

 

「え…?」

 

 

当麻のその言葉に、驚きを隠しきれない様子のリアス…。

 

 

「その夢は“お前”の…リアスの心からの夢なんだろ? それを話してた時のお前は綺麗だったぜ?」

 

 

「ッ////! な、何よ、いきなり…///!?」

 

 

それを聞いた瞬間、リアスは面食らった様子で顔を赤くした。すると、

 

 

「その夢は壊れていいもんじゃねえよ、リアス…」

 

 

「え…?」

 

 

「もし俺がこの右手でその夢を壊さなきゃならなくなったとしたら、俺は多分この右手を迷い無くぶち切ると思うぜ…? その夢が…その幻想がどんだけ大事なモノなのか、俺にも何となく分かる気がするからな…」

 

 

そして、当麻はこう続ける…。

 

 

「だからお前は、お前の仲間達と全力で戦ってこい。それでももし届かなかった時は…」

 

 

ポスッ…!

 

 

「っ…//////!!」

 

 

「上条さん達が何とかしてやるから、な…」

 

 

「! うん…/////」

 

 

そう言いながら当麻が頭を右手で優しく撫でてくると、リアスの顔は更に赤みを増し、普段であれば絶対にしない頷きを見せた。その姿は紛れもなく、年相応の少女のものだった…。

 

 

「! あ、悪い! ついユウキみたいに撫でちまった…!」

 

 

「あ……」

 

 

「? どうした、リアス?」

 

 

「! な、何でもないわ…/////」

 

 

当麻が慌てて謝りながら撫でるのを止めると、リアスは残念そうな表情を見せつつ何とか取り繕う。

 

 

「じゃ、じゃあ、そろそろ私も寝るわね///! お、おやすみなさい///!」

 

 

「! お、おう…」

 

 

「…ありがとう、当麻…(ボソッ)」

 

 

「え…?」

 

 

そしてリアスは当麻に聞こえないよう言うと、少し足早に当麻の下から離れていくが…

 

 

(さ、さっきの撫で心地…ユウキやシノンが夢中になるのも当然ね。それにあの表情で、あんな事をいきなり言ってくるなんて…/////)

 

 

頭の中では、そんな恥ずかしい感情が渦巻いていた…。

 

 

(私の小さな夢と、自分の右手を天秤に掛けるなんて…普通なら絶対に有り得ないのに……あれは、本気だった…)

 

 

リアスの脳裏に過(よぎ)ったのは、先程まで話していた少年の真剣な表情だった…。

 

 

(やっぱり、私…)

 

 

少女は胸に両手を当てながら、改めて確認する。1人の人物の存在が…何処か掴めない雰囲気でありながら、時に大人びた鋭い表情を見せる少年の存在が、自身の中でどんどん大きくなっていくことに…。

 

 

(当麻……)

 

 

そして、修行の時はあっという間に過ぎていく…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

レーティングゲーム当日、オカルト研究部の面々は旧校舎にある部室に集合していた。リアスと朱乃はいつも通りな様子で優雅に紅茶を飲み、小猫は両手に填(は)めたフィンガーグローブの調整を、裕斗は剣の手入れを行っている。そして当麻達はグレモリー眷属の面々と少し離れた所に立っている。この中で緊張した面持ちなのは、イッセーとアーシアだけだったりする…。

 

 

【イッセー君とアーシアさん以外は皆落ち着いてるみたいだね】

 

 

【まあ、あの2人は悪魔としての経験そのものが浅いからな。といっても…】

 

 

【ああ、リアス達も内心じゃかなり緊張してる筈だ…】

 

 

グレモリー眷属の様子を見て、頭の中でそんな会話をするリクオと一護、当麻。もっとも、その間にも当麻とリクオは隣で不安そうなユウキと芽亜の頭を撫でたりしているのだが…。と、ここで、

 

 

キィィィィィィンッ…!

 

 

「皆様、準備はよろしいですか?」

 

 

「ええ、いつでもいいわ…」

 

 

グレイフィアが部室に転移してきて早々尋ねると、リアスはすぐにそう返す。

 

 

「開始時間になりましたら、この魔法陣から戦闘用フィールドへと転送されます」

 

 

「? 戦闘用フィールド?」

 

 

「ゲーム用に作られる異空間ですわ。使い捨ての空間ですから、ど~んな派手なことをしても大丈夫♪」

 

 

「は、派手、ですか…?」

 

 

【な、何だか姫島先輩が楽しそうに見えるんですが…】

 

 

【…気のせいだろ…】

 

 

イッセーへ説明を行っている朱乃を見て、そんなやり取りをする雪菜と一護…。

 

 

「ちなみにこの戦いは、魔王ルシファー様もご覧になられますので」

 

 

「! そう…“お兄様”が…」

 

 

「えっ!? あ、あの今、“お兄様”って……俺の聞き間違い?」

 

 

グレイフィアの報告にリアスが何とも言えない表情を浮かべる中、イッセーがそう言うと…

 

 

「いや、部長の御兄さんは魔王様だよ」

 

 

「えっ!?」

 

 

「ま、魔王ッ!? ぶ、部長のお兄さんって、魔王なんですかッ!?」

 

 

「…ええ…」

 

 

「紅髪の魔王…“クリムゾン・サタン”こと、サーゼクス・ルシファー…それが今の部長のお兄さんさ。サーゼクス様は大戦で亡くなられた前魔王の後を引き継いだんだ」

 

 

裕斗が驚くイッセーとアーシアにリアスの兄―――サーゼクス・ルシファーについて説明した。それを聞いて…

 

 

【サーゼクス・ルシファー…私達は会ったことはありませんね…】

 

 

【魔王が直接見に来てるのね。まあ、妹の将来を賭けたゲームなんだし、当然といえば当然でしょうけど…】

 

 

「…………」

 

 

頭の中でそう呟くヤミとシノン…。その間に、当麻が何かを思考していることに気付いていたのは、ごく僅かしかいなかった…。と、ここで、

 

 

「ゲームの間、僕達はどこに居ればいいですか?」

 

 

「あなた方には中継でゲームの様子をご覧いただけるようにしました。場所はこちらの部屋で結構です」

 

 

「分かりました」

 

 

リクオの質問にそう答えるグレイフィア。そして…

 

 

キィィィィィィィンッ…!!

 

 

「そろそろ時間です」

 

 

「! 行きましょう…!」

 

 

グレイフィアの指示を受け、リアスを筆頭にオカルト研究部の面々は現れた赤い魔法陣の上へと移動する。

 

 

「頑張ってね、小猫」

 

 

「! はい…」

 

 

「お前も派手に暴れて来いよ、朱乃」

 

 

「! ふふっ、分かりましたわ♪」

 

 

リクオと一護の言葉に、笑みを浮かべながら答える小猫と朱乃…。

 

 

「気を付けてくださいね、木場先輩、アルジェント先輩」

 

 

「応援してるわよ」

 

 

「うん、ありがとう、2人共」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

雪菜とシノンの言葉に感謝する裕斗とアーシア…。

 

 

「兵頭一誠、ふざけた真似をしたら即刻殺すから」

 

 

「くれぐれも気を付けてください…私達はしっかりと見ていますから…」

 

 

「それ人を戦いに送り出す時に言うことじゃないよねッ!!??」

 

 

紗矢華とヤミの言葉に思わずツッコむイッセー…。そして…

 

 

「部長」

 

 

「! 何かしら、当麻…?」

 

 

「…思い切りやってこい」

 

 

「…ええ、当然よ」

 

 

当麻とリアスのやり取りが終わった瞬間、グレモリー眷属はその場から姿を消した。

 

 

「では、私も失礼致します」

 

 

更にグレイフィアもその場を離れた結果、この部屋に居るのは当麻やユウキ達のみとなった…。すると、

 

 

「…さて、いい加減教えてちょうだい」

 

 

「…何の話だ? シノン…」

 

 

「惚けないで…アンタ達には大体予想が付いてるんでしょ…? 今回のゲームの結果がどうなるのか…」

 

 

シノンが当麻達3人にそう尋ねてきたのだ。ユウキ達5人もそれを聞いて注目し始める…。

 

 

「うん…そうだね…」

 

 

「まあ、確かに結果は予想できてる…。だろ? 当麻…」

 

 

「…ああ…」

 

 

そして、当麻はこう断言した……。

 

 

 

「このゲーム……リアス達が負ける……」

 

 

―――――それからしばらくして、グレモリー眷属は今回のレーティングゲームにおいて…敗北を喫した―――――

 



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逆鱗

遅くなりました。今回は2話連続投稿でいきます。



まず前半戦ですが、少々オリジナル展開にしました。またライザーを結構悪人に仕立てたので……彼を気に入ってる方が居たら、すみません…。



では、本編をどうぞ。







 

 

―――――――旧校舎内・部室―――――――――

 

 

「負けちゃったね、皆…」

 

 

「やっぱり“不死”の特性は伊達じゃないわね。敗因は他にもあるけど…」

 

 

「…むしろ善戦したと言っていいと思います」

 

 

レーティングゲームが終了したと同時に、ユウキが残念そうに呟くと、紗矢華とヤミがそれに続いた。結果は言うまでもなく…グレモリー眷属の敗北である…。

 

 

「イッセー先輩も頑張ってたね」

 

 

「うん、前半を見た時は“本気で叩き潰そう”と思ってたけど…最後のあれは流石に見直すしかないかな」

 

 

「…ああ…」

 

 

芽亜の言葉にリクオと一護が同意する理由は、終盤で見せたイッセーの姿である。ボロボロになりながらもライザーに向かっていく様子は、“王(キング)”のために戦う“兵士(ポーン)”として十分に評価できるものだった…。もっとも、そんなイッセーの姿によってリアスは戦意を失い、投了(リザイン)してしまったのだが…。

 

 

「あなたが予想していたのは、こういうこと?」

 

 

「ああ。リアスは人一倍眷属を大事にしようとする想いが強かったからな…。目の前で自分の眷属が傷付いていく姿を見れば、あいつの心が折れちまうことくらい、上条さんにも簡単に予想が付いた…」

 

 

「そう…。それで、これからどうする気? あの男はきっと、すぐに行動するわよ?」

 

 

「…まあ、それはこれから考えますことよ…」

 

 

そんなシノンの鋭い問い掛けに対し、当麻は何とも言い難い笑みを浮かべながら返す…。

 

 

「とりあえず、まずはあいつ等を労いに行こうぜ?」

 

 

「ああ…」

 

 

「うん、そうだね…」

 

 

そして、当麻の提案に一護とリクオが同意していた……その時だった…。

 

 

ブォォォォォォォォォォォンッ……

 

 

『っ…!!?』

 

 

突如周りの景色が大きく歪み始めたのだ。それを見て…

 

 

「これって…!!」

 

 

「まさか、“空間操作”…!?」

 

 

紗矢華と雪菜が即座に今起きている現象について推察する。だがその間にも周りの歪みは酷くなっていき、やがて辺りは…黒と紫の入り交じった、実におどろおどろしい空間となった…。

 

 

「何これ? どうなってるの…?」

 

 

「少なくとも、何か良いことが起きる雰囲気ではありませんね…」

 

 

「ええ…」

 

 

「そうだね、ヤミお姉ちゃん…」

 

 

ユウキが不安げな表情を浮かべながら言うと、ヤミやシノン、芽亜がそう呟いた。すると…

 

 

ブォォォォォンッ…

 

 

「! 一護、リクオ…」

 

 

「分かってる…」

 

 

「皆、下がってて…」

 

 

目の前の空間の一部が歪み始めたのを見て、当麻と一護、リクオがシノンや雪菜達の前に出る。そして、その歪みも大きくなったかと思うと、次の瞬間、

 

 

「オゥオゥ、こいつ等か?」

 

 

「あァ、どうやらそうみてえだなァ…」

 

 

「グヒャヒャ! いいねいいね~…!」

 

 

そこから大人数の男達が続々と現し始めたのだ。しかも全員リアス達の対戦相手──ライザー・フェニックスよりも柄の悪い風貌で、どちらかと言うと“ヤクザ”に近い雰囲気の者達ばかりである…。と、そこへ、

 

 

「ようこそ、神器持ちの人間共…」

 

 

最後に現れた黒のサングラスの男が、あからさまに当麻達を見下した様子で声を掛けてきた。どうやらこの男が、目の前にいる男達のリーダーのようだ…。

 

 

「どうやらレーティング・ゲームの関係者…って訳じゃなさそうだな…」

 

 

「お前等、一体何処の誰だ…?」

 

 

「…チッ、話に聞いた通りの奴等だな。確かに何となくムカついてくるが…まあ、いい…。御名答だ、俺達はそんなゲームとは一切関係ねえ。用があるのは…テメエ等だ…」

 

 

「! 僕達に…?」

 

 

男の口から出た言葉を聞いて、警戒心を更に高めながら話すリクオ…。すると、

 

 

「あァ…。テメエ等を“喰らいに来た”んだよ…」

 

 

グググググググッ…!!!

 

 

『ッ…!!!』

 

 

男達の姿がみるみる肥大化しつつ、その様相も大きく変わり始めたのだ。上半身には“灰色や黒の体毛”が生い茂り、その目は“瞳の無い真っ赤な色”へと染まる。更には鋭い牙と爪を生やしたその姿を見れば、大体の者がこう表現するだろう…。

 

 

「…“人狼(ワーウルフ)”…」

 

 

「オイオイ、そんな貧弱な連中と一緒にしないでくれるか? あんなのとは次元が違えんだからなァ…」

 

 

ヤミの発言にそう返す男の姿も、上は狼、下は人間体という歪(いびつ)なモノとなっていた…。それを見て、

 

 

「テメエ等、“ヴォルフガング家”か?」

 

 

「! ホゥ…コイツは驚いたなァ。賞金稼ぎをしているとは聞いてたが、まさか俺達を知ってやがるとは…」

 

 

「聞いたことがあります。かつて七十二柱に数えられていた名門でありながら、現魔王の座を巡る闘争に敗れ、七十二柱からも除外されて没落した一族…」

 

 

「私も少し知ってるよ。確か今は私達みたいに、賞金稼ぎをしてるって話だったかな…?」

 

 

一護の推測を男が肯定する中、雪菜と芽亜が“ヴォルフガング家”についての情報を話す。

 

 

「あァ、全くその通りだ。俺達はそのお蔭で完全に衰退した。その一番の原因は圧倒的に戦力が不足しちまってるせいだ…」

 

 

それを聞いた男は、自分達の一族について話し出した…。

 

 

「戦力なんざ簡単に手に入れられるもんじゃねえ。強くなる見込みのねえ悪魔共を揃えた所で、邪魔になるだけだ。かといって、強くなりそうな奴等は根こそぎ権力のある連中が持っていっちまう…」

 

 

そう呟く男は、明らかな苛立ちの表情を見せている。ところが…

 

 

「なら俺達が取るべき手段は1つだ。悪魔以外に戦力になりそうな奴等を手に入れりゃいい…。テメエ等みてえな“神器持ちの人間共”をなァッ…!!」

 

 

先程とは一転し、そう口にする男はまさに“獲物を前に高揚する猛獣”となった。更に、

 

 

「だがまあ、どうせ手に入れるなら女の方がいいに決まってる。生憎俺達の一族には女がいなくてなァ…。戦力になりつつ、俺達の相手をしてくれる連中を探してたって訳だ…。ここまで言えば、俺達の目的が何なのか分かるよなァ…?」

 

 

「…あなた達の狙いは、ヤミ達ですか」

 

 

「正解。賞金稼ぎもやってる上に、そんだけ上玉な神器持ちの人間の女共なんざ、そう滅多に居るもんじゃねえからなァ…。テメエ等みてえな人間の餓鬼共の代わりに、俺達がたっぷり有効活用してやるよ…」

 

 

リクオの問いに対して男が狼姿でもハッキリ分かる程の下衆(げす)な笑みを浮かべると、仲間の者達も同様の笑みを浮かべて目当てのユウキ達に目を向け始めたのだ。これにはユウキも当麻の背中に隠れて怯え、他の5人も苦い表情を見せる…。特にシノンと紗矢華は、顔を青くしていた…。と、ここで、

 

 

「テメエ等を差し向けたのは、ライザーか?」

 

 

「! ホォ、何でそう思った?」

 

 

「あんたの口から出てきた俺達の情報が、まるで“誰かから聞いたような感じ”だったんでな。思い当たるとすれば…あの焼き鳥野郎しかいねえ…」

 

 

一護が突然そんなことを尋ねてきたのだ。それに対し、男は…

 

 

「ああ、その通りだ」

 

 

「っ! よろしいのですか、ベイガー様? それは内密にするという条件では…」

 

 

「構わねえだろ。どうせコイツ等は全員、殺すか俺達のモノにする算段だ。その辺のことを話した所で、何ら問題ねえ…」

 

 

眷属と思われる別の男がそう言うが、その男──ベイガーは全く気にした様子もなく返し、下がらせる…。

 

 

「あの小僧とは少し前から知り合いでなァ。あのフェニックス家の嫡男…その上あのグレモリー家の次期当主の娘の婚約者だ。パイプを持っといて損は無えから、軽く関係は保ってたんだよ。そしたら先日、向こうから接触してきてなァ…

 

 

『アンタ等の良い獲物になりそうな奴等がいる。全員神器持ちの人間共だ。手筈はこちらで整えておく…。思う存分に好きにしてくれ』

 

 

そう持ち掛けてきたんだよ。あんな小僧の話に乗るのは癪だったが、俺達にとっては確かに旨味のある提案だ…。ありがたく引き受けさせてもらったぜ…」

 

 

「っ…!? 私達もゲームに参加していないとはいえ、グレモリー眷属の関係者…何かしら監視されている筈です。空間操作なんてことが起これば、向こうも気付いて…」

 

 

「ああ、その心配は無えだろうなァ。多分誰も気付いてねえんじゃねえか…?」

 

 

「っ!? どういうことですか…?」

 

 

自身の言葉に対するベイガーの余裕な様子に、怪訝な表情を浮かべて尋ねる雪菜…。

 

 

「言っただろォ? フェニックスの小僧が“手筈を整える”って…。この空間は特殊なモノらしくてなァ。魔力やら何やらを全て引っくるめて、外のモノと完全に断絶することが出来るんだとよ。しかも相当強力だから、例え現魔王様でも認識するのは難しいって話だ。全く、貴族の御坊っちゃまは大層な代物をお持ちだねェ…」

 

 

「…つまり、この空間の中で起こることは誰も気付かないって訳か?」

 

 

「ハハッ、御名答…。にしてもテメエ等、あの小僧に相当恨みを買ったらしいなァ? この話を持ち掛けてきた時の小僧、最高にイライラしてたぜ? そうだなァ…“どうせ手にはいらねえなら、何もかも壊してやる”って感じだったな。多分こいつが終わって報告しに行ったら、満足して心の底から笑うんじゃねえかァ…?」

 

 

当麻が確認するように聞く中、ベイガーはライザーの様子などについて、自分の予想も踏まえて話した。すると、

 

 

「本当にテメエ等はそんな奴に手を貸す気なのか?」

 

 

「“手を貸す”だァ? ハッ、そんな気なんざサラサラ無え…。俺達は互いに利用し合ってるだけだ。自分の利益を得るためになァッ…!!」

 

 

一護の問いに対してベイガーがそう答えたかと思うと、彼を含めてヴォルフガング家の者達全員が飛び掛かる態勢になった…。

 

 

「さァて、無駄話もここまでだァ…。そろそろ頂くとしようかねェ? 邪魔な奴等をさっさと殺して…な…」

 

 

そう呟くベイガーのみならず、その眷属の男達も全員牙を剥き出しにしてきた。大量の唾液に包まれたそれは、普通の者達が見れば間違いなくあまりの恐怖に気絶するだろう…。と、その時だった…。

 

 

「最後に1つだけ聞いてもいいか…?」

 

 

「あァ…?」

 

 

「あんた等は…ここにいるユウキ達を何だと思ってる…?」

 

 

そう尋ねる当麻に対し、ベイガーはこれまでで一番の醜悪な笑みを浮かべ…こう言い放った…。

 

 

「決まってんだろ? 神器を持つ人間は、俺達悪魔にとって“使い勝手の良い道具”に他ならねえ。だが、そいつ等みてえな上玉は用途も幅広えからなァ? まさに…“最高の道具”だァッ!!!!」

 

 

『グルァァァァァァァァァッ!!!』

 

 

その言葉を合図に、一斉に当麻達へと飛び掛かるベイガー達。そして……

 

 

「そうか…」

 

 

ギリッ!!!

 

 

「グオッ!!??」

 

 

当麻がそう呟いたかと思うと、ベイガー達の動きは完全に止まった。何故なら…

 

 

「何だ!? この金色の糸みてえなのはッ!?」

 

 

「び、びくともしねえぞッ…!?」

 

 

彼等の身体の至るところに、無数の“金色の糸状のモノ”が絡み付いていたのだ。仲間の男達は力付くで引きちぎろうとするが、まるで切れる様子はない。すると…

 

 

「纏(まとい)…“襲色・金色空殺懴夜叉(かさねいろ・こんじきからざいくのやしゃ)”…。テメエ等の力じゃ、その縛りからは抜け出せねえよ…」

 

 

そう呟いたのは、いつの間にか能力を発動していたリクオ。だが、普段の彼とは大きく違っていた。トレードマークの棚引く髪の色は“金と白”に変わり、いつもの着物の色も“黒一色”に。更に背中からは…“白い翼”が生えていた。まるで、いつの間にか姿を消しているヤミのように…。

 

 

「どうなってやがる…!? たかが神器持ちの人間ごときの技が、何で…何で“最上級悪魔”の力でも動かねえッ!!??」

 

 

ベイガーが動揺するのも必然だった。何しろ彼は冥界で数える程しかいない、“最上級悪魔”の地位をかつて有していた。抗争に敗れたことで地位は剥奪されたものの、その力は依然健在であると自負していた。だが…その力を以てしても、現在の状況を打開できなかったのだ…。

 

 

「テメエ等、一体どんな手品を使いやがったッ!? テメエ等の持ってる神器の能力かッ!?」

 

 

信じられないといった様子のベイガーが声を上げると、それに対して当麻達は…

 

 

「確かにリクオは神器を発動させてるが、あんた等がそこでそうやってるのは神器のお蔭じゃねえよ…。単純に…あんた等と上条さん達との“差”だ…」

 

 

『ッ!!!!???』

 

 

自分達の持っている魔力を、ベイガー達にぶつけた。その瞬間、ヴォルフガング家の大半は糸が切れた人形のように動かなくなり、ベイガーを含めた残りの者達も…全身から大量の冷や汗を噴き出し、ガチガチと歯を鳴らしながら震え始めてしまった…。

 

 

「な、何だ、その魔力はッ…!!? 何でテメエ等みてえな神器を持ってるだけの人間が…“魔王共が霞む程の魔力”を放ってやがるッ!!!??」

 

 

「「「………」」」

 

 

まるで“この世のモノではない何かを見ているような表情”でベイガーがそう言ったのに対し、当麻達3人は何も答えない…。

 

 

「んなことはどうでもいい…」

 

 

「どうでもいいだとッ!? ふざけ…」

 

 

「ふざけてんのはテメエ等だ」

 

 

「ッ…!?!?!?」

 

 

一護がそう言い放った瞬間、更なる魔力の重圧がベイガーの身体にのしかかり、大きく傾く…。

 

 

「あんた等は、ユウキ達を“道具”呼ばわりした…。その“腐り切った幻想”で、俺達の大事な奴等を汚そうとした…。全く大馬鹿だな、あんた等…。そんな幻想…上条さん達が許すわけねえだろうが…」

 

 

「ッ!!?? 何を…何を言ってやがるッ!!? たかが人間風情がアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

「……一護」

 

 

「ああ…」

 

 

ベイガーが怒りの籠った声を上げる中、当麻の指示を受け、いつもの“死覇装(”しはくしょう)”と呼ばれる黒い袴姿の一護が前に出る…。すると……

 

 

「滲み出す混濁の紋章…不遜なる狂気の器…湧き上がり、否定し、痺れ、瞬き、眠りを妨げる…。爬行(はこう)する鉄の王女…絶えず自壊する泥の人形…結合せよ…反発せよ…。地に満ち、己の無力を知れ……」

 

 

「ッ!?!? 何だ…何を言っている…!? 一体何をする気だッ……!!!??」

 

 

何かを唱え始める一護を見て、激しく狼狽するベイガー。そこには“かつて最上級悪魔だった者”としての威厳も…つい先程まで見せていた狂気もない。あるのは…“己の状況に絶望し始めている一体の悪魔の姿”だけである…。

 

 

「あんた等の幻想はとっくに殺されてたんだよ…。こいつ等を狙った時点でな…」

 

 

「ッ!! やめろッ……」

 

 

そして……

 

 

「一護…やれ…」

 

 

「やめろォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!」

 

 

当麻が命令を出した、次の瞬間…

 

 

「破道ノ九十……“黒棺”……」

 

 

ズオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ…!!!!!

 

 

巨大な黒い直方体状の物体が出現し、ベイガー達全員を完全に覆ったかと思うと、通常では考えられない程の濃密な魔力が発生し、轟音が響き渡る。しばらくして物体が消失した頃には……ベイガー達の姿は微塵も残されていなかった……。

 

 

「最上級悪魔だった奴でも、この程度か…」

 

 

「ああ…くだらねえにも程がある…」

 

 

ブォォォォォォォォンッ……

 

 

それを見た一護とリクオがそう呟いていると、ここでリクオが突如白煙に包まれたのだ。そして白煙が消えると、そこには……

 

 

「悪いな、ヤミ。急に纏っちまって」

 

 

「いえ…別に平気です…悪い気はしないので…////(ボソッ)」

 

 

「むぅ~ッ! ずるいよヤミお姉ちゃんッ!!」

 

 

「…何してんだよ、お前等…?」

 

 

いつもと同じ白と黒の棚引く髪が目を引くリクオと、先程まで姿の無かったヤミがいた。もっともヤミは何故か顔を赤くしており、芽亜がそんな彼女に不満を漏らしているが…。その一方で、

 

 

「当麻ぁ…」

 

 

「よしよし…。シノン、お前も平気か?」

 

 

「…大丈夫…」

 

 

ポスッ…

 

 

「…!」

 

 

「上条さんも気付かない程バカじゃないですことよ…?」

 

 

「………」

 

 

当麻は涙目で抱き着いてくるユウキを慰めつつ、シノンの頭を撫でながらそう声を掛けると、シノンは何も言わずに身を寄せてきた。更にこちらでも……

 

 

「黒崎先輩、よろしかったんですか? 先輩自ら手を下さなくても、私達が……」

 

 

「構わねえよ。ああいう奴の処理は…俺達の役目だ…」

 

 

「! 先輩…」

 

 

「それより紗矢華、お前も大丈夫か?」

 

 

「っ! な、何でそんなこと聞くのよ? 私は別に…」

 

 

ポスッ…

 

 

「…!」

 

 

「本当か…?」

 

 

「…少しだけ貸して…」

 

 

一護が雪菜にそう言いつつ、当麻がシノンにしたように紗矢華の頭を撫でながら声を掛けると、紗矢華は一護の肩に自分の頭を乗せる…。未だに謎の空間にいる中、そんな状況がしばらく続いた…。そして、少し経った所で……

 

 

「それで、これからどうする気だ、当麻?」

 

 

「さっきの奴等がベラベラ喋ってくれたお蔭で色々分かった。こんな馬鹿げた真似を企てたのが、誰なのかも含めてな…。まさか、このまま黙ってるつもりはねえだろ?」

 

 

鋭い口調で問い掛ける一護とリクオ。それに対し、当麻は……

 

 

「ああ、そうだな…。上条さんも、流石に限界だぜ…」

 

 

「…!」

 

 

「ハッ、そうかよ…」

 

 

右拳を強く握り締めながら、あの鋭く真剣な表情で呟いたのだ。それを見た一護とリクオは、思わず不敵な笑みを浮かべる。そして…

 

 

「ユウキ、シノン」

 

 

「「…!」」

 

 

「来るか…?」

 

 

「当然ッ!」

 

 

「行くわ…」

 

 

当麻はユウキとシノンに…

 

 

「雪菜、紗矢華」

 

 

「行かないわけないでしょ?」

 

 

「ええ! これは、私達の“聖戦(ケンカ)”ですッ!!」

 

 

一護は雪菜と紗矢華に…

 

 

「ヤミ、芽亜」

 

 

「愚問ですよ、リクオ…」

 

 

「そうそう♪」

 

 

「ま、それもそうだな…」

 

 

リクオはヤミと芽亜にそれぞれ意思確認を行った。そして…

 

 

「行くぞ……このふざけた幻想を、全て喰らい尽くす……」

 

 

当麻がそう言い放った瞬間、その空間には誰も居なくなったのだった…。

 

 



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介入


連続投稿後半戦ですが、まず初めに言っておきます…。



この小説は、ある意味ここからが本番かもしれません…。



では、本編をどうぞ。



 

 

 

―――――――駒王町・兵藤家――――――――

 

 

ここは兵藤家のとある部屋の中、そのベッドに1人の少年が腰掛けていた。この部屋の主である、兵頭一誠である…。

 

 

(グレイフィアさんと部長のお兄さん…魔王様が、密かに背中を押してくれた…)

 

 

少し前に目を覚ましたイッセーは、『負けたのは全て自分のせいだ』と呟き、泣きながら“あの男がリアスを奪っていく”ことに納得できない気持ちを吐露した。するとそんなイッセーに対し、訪れていたグレイフィアが“ある魔方陣の書かれた紙”を渡しつつ、魔王であるリアスの兄、サーゼクス・ルシファーの伝言を伝えたのだ。『妹を助けたいなら、会場へ殴り込んできなさい』という内容のものを…今まで見せたことの無いような”柔らかな笑み”を浮かべながら…。

 

 

(アーシアとも約束した…)

 

 

その後グレイフィアがすぐに魔方陣で居なくなったかと思うと、今度はアーシアが起きているイッセーの姿を見て泣きながら抱き着いてきた。まあ、“2日”も目を覚まさなかったのなら、それも当然かもしれないが…。そしてその後、イッセーはアーシアとこう約束を交わしたのだ。『必ずリアスと一緒に帰ってくる』と…。

 

 

(当麻やユウキちゃん達のことも心配だけど……部長を助けに行けるのは、もう俺しか居ない…!)

 

 

イッセーの頭に過ぎったのは、グレイフィアからあった報告…。レーティングゲームが終わった直後に当麻やユウキ達の姿が消えていたのだ。念のために悪魔側で捜索をしているらしいのだが、依然として見つかっていないとのこと…。とはいえ、イッセーはすぐにリアスに関しての思考に戻る…。

 

 

(もう、やるしかねえッ…!!)

 

 

アーシアも“ある頼み”を引き受けて居なくなったその部屋で、何かを決意したイッセー…。

 

 

「おい、聞こえてんだろ…? お前に話がある…出て来い、赤龍帝ドライグッ!!」

 

 

そして自身の左腕に向かって声を掛けたかと思うと…

 

 

キィィィィンッ…!

 

 

『何だ小僧? 俺に何の話がある…?』

 

 

その腕が突如として緑色に光り出し、そこから声が聞こえてきたのだ。非現実的な出来事に、少しばかり面食らうイッセー。だが……

 

 

「あんたと…取引したい…」

 

 

それに怯(ひる)むことなく、そう言い放った…。

 

 

 

☆☆

 

 

とある冥界にある宮殿のような大型会場。リアスとライザーの婚約パーティーは、この会場で行われることになっている。そしてここは、その会場内にある待合室には…リアスの姿があった…。

 

 

「はぁ…婚約パーティーなのに、これじゃあウェディングドレスだわ…」

 

 

リアスは鏡の前に立つと、溜息を吐きながら呟いた。確かに今のリアスは純白のドレスを身に纏っており、一般の者が見れば“ウェディングドレス”と言っても一切問題の無いものだった…。と、そこへ、

 

 

「その通りさ」

 

 

ゴオオオオオオオオオオオッ…!!!

 

 

そんな声が聞こえたかと思うと、部屋の中に炎が現れ、そこからリアスの婚約者―――ライザー・フェニックスが姿を見せた…。

 

 

「! ライザー様、いけません! ここは男子禁制です…!」

 

 

「堅いことを言うな。俺は今日の主役なんだぞ?」

 

 

御付きのメイドが止めようとするものの、ライザーは全く聞く様子も無くリアスへと近付いていき…

 

 

「あ~、主役は花嫁だよな~? 失敬失敬…」

 

 

「まだ花嫁になった訳じゃないわ。何なの、この衣装…?」

 

 

「それでいいんだよ。グレモリー家とフェニックス家が繋がるのを、冥界によりアピールできるだろう?」

 

 

そう言いながら、馴れ馴れしくリアスの肩を抱いてくる。リアスの嫌そうな顔についても、まるで気にしていないようだ…。

 

 

「君にだって、それを着ることで諦めが付く…だろう?」

 

 

「っ…!」

 

 

「ハハハハハハッ…!!」

 

 

そして、ライザーがそう一言添え、その場を後にしようとした時だった…。

 

 

「当麻達に何をしたの…?」

 

 

「当麻…? あぁ、あの神器持ちの人間のことか…? そういえば、ゲームが終わった直後に居なくなったらしいなぁ…」

 

 

リアスがそう尋ねてきたのだ。それに対し、興味も無いといった様子のライザー…。

 

 

「あの子達は私の眷属じゃない。今回のこととは一切関係無いのよ? それなのに…」

 

 

「おいおい、何の話をしてるんだよ、リアス~? 俺は何にも知らないさ。まったく…眷属じゃないとはいえ、君に何も言わずに去っていくとは薄情じゃないか。まあ、所詮神器持ちの人間など、その程度の者だろうがなぁ…?」

 

 

「っ………!」

 

 

何処か白々しい口調で話すライザーを見て、リアスは確信した。目の前にいるこの男が…当麻達の失踪に関わっているということを…。しかし、

 

 

「だがまぁ、もしその人間共に何かあったとしたら…それは或る意味、君のせいかもなぁ?」

 

 

「っ!? 私、の…?」

 

 

「だってそうだろう? もし君があの人間共と関わらなければ…こうはならなかったかもしれないんだからなぁ…?(ボソッ)」

 

 

「っ……!!」

 

 

ライザーが耳元でそう言った瞬間、リアスは激しく動揺した。何故なら…それを否定することが出来なかったのだ…。

 

 

「じゃあリアス、会場で待ってるぜ? ハハハハハハハッ…!!」

 

 

ゴオオオオオオオオオオオッ…!!!

 

 

そして、ライザーが再び炎に包まれながら姿を消したかと思うと、その直後…

 

 

ストッ…!

 

 

「ッ!! リアス様!? どうかなさいましたか!?」

 

 

リアスはその場に崩れ落ちた。周りに控えていたメイド達が慌てて声を掛けてくるが、今のリアスにはそんな声など届くはずもない…。

 

 

(私の…せい…?)

 

 

リアスは確信している。あの男が当麻達の失踪に関わっていることを…。

 

 

(私が、あの子達を引き入れなければ…)

 

 

だが、何の証拠も無ければ、手掛かりの1つも持っていない…。

 

 

(こんなことには、ならなかったの…?)

 

 

まして今の彼女には何も出来ない…。グレモリー家に生まれた者としての運命と、あの不死鳥の男によって囚われたリアス・グレモリーには……どうすることも出来なかった……。

 

 

(当麻……)

 

 

そんな彼女の脳裏に浮かぶのは、1人の少年の顔と……

 

 

『上条さん達が何とかしてやるから、な…』

 

 

1人の少女として自分の頭を優し撫でてくれた時に言ってくれた、そんな言葉だった…。そして…

 

 

(当麻………!)

 

 

リアスは堪えきれず…一筋の涙を流した…。

 

 

 

☆☆

 

 

所変わって、ここはその会場からかなり離れたところにある森林地帯。その中に現在、2人の人物の姿があった…。

 

 

「状況はどうだ?」

 

 

1人はツンツンとした黒髪が目を引く少年―――上条当麻…。

 

 

「“彼女達”の召集、及び配置は既に完了しています。いつご命令頂いても、問題ありません」

 

 

そしてもう1人は、“ウェーブの掛かった金髪のロングヘアー”と“紫を基調とした特殊なロングコート”が特徴的な女性である。その容姿は“絶世”と言っても過言ではない程非常に美しく、まるで心を見透かすような澄んだ青い瞳も持っている…。そんな女性が現在背を向ける当麻に対し、跪(ひざまず)きながら報告をしていた…。

 

 

「悪いな、こっちの都合でいきなり呼び出しちまって…」

 

 

「あなたが御決めになった以上、我々が異議を唱えることはありません。何より今回の一件について、彼女達は勿論…私にも思う所がありますので…」

 

 

「そうか…」

 

 

女性の言葉を聞いた当麻は頷き、女性の方へと振り返った…。

 

 

「…明かすつもりなのですね?」

 

 

「ああ、色々限界は感じてたしな。何より…こうしないと、“あいつ”を救えない気がするんだよ…」

 

 

「…彼女にはその価値があると?」

 

 

「間違いなくな…。分かるんだよ。今あいつは泣いてる筈だ。色んなくだらない幻想に身も心もキツく縛り付けられて、な…」

 

 

「………」

 

 

「このまま黙ってる訳にはいかねえんだよ…。“ただのリアスとして見て欲しい”って言ってたあいつが…自分の抱いた小さな幻想ごと壊れるなんて結末、許していい筈がねえ…」

 

 

右拳を強く握り締めながら呟く当麻。そして…

 

 

「そろそろか…。俺は一護やリクオ達と合流する。お前は先に行ってくれ」

 

 

「分かりました」

 

 

「それから“あいつ等”に改めて伝えておいてくれ…。『標的は1つだ。他の奴等は軽くあしらう程度にしろ』…ってな」

 

 

「そのように…。それでは」

 

 

「頼む、─────」

 

 

「はい…仰せのままに…」

 

 

そう言った瞬間、女性は音を立てることなく姿を消し…

 

 

「行くか…」

 

 

当麻も続いて、その場から居なくなるのだった…。

 

 

 

☆☆

 

 

婚約パーティーが行われる大会場は、正装をした上流階級の悪魔達で賑わいを見せていた。その中にはライザーの眷属達は勿論、朱乃や小猫、裕斗の姿もある。まあ、朱乃達に関しては何とも言えない笑みを浮かべているのだが…。と、ここで、

 

 

「冥界に名立たる貴族の皆様! この度はご参集くださり、フェニックス家を代表して御礼申し上げます! 本日皆様に御出で願ったのは、この私、ライザー・フェニックスと! 名門グレモリー家の次期当主、リアス・グレモリーの婚約という、歴史的な瞬間を共有して頂きたく願ったからであります!」

 

 

新郎席に座っていたライザーが立ち上がり、そんな口上を始めたのだ。それを聞いた招待客のの悪魔達は拍手を送る。そんな中…

 

 

(皆…そんな悲しそうな顔をしないで…。私は大丈夫だから…)

 

 

新婦席に座っているリアスは、何処か物悲しそうな表情で自身を見てくる朱乃達に、そう思いながら微笑む。しかし、その笑みは……とても辛そうなものだった…。

 

 

「それでは! ご紹介いたします! こちらが我が妃の……」

 

 

そしてライザーがリアスを紹介しようとした、その時だった……。

 

 

『ぐわあああああああああああああああっ!?!?!?』

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ……!!!!

 

 

『ッ!?!?!?!?』

 

 

突如入り口の巨大な扉が破壊され、衛兵と思われる複数の悪魔達が吹き飛ばされてきたのだ。あまりのことに会場に居た者達は驚きを隠しきれない。そして、破壊されたことで生じた灰色の煙が薄れてきたかと思うと、そこから姿を見せたのは……

 

 

「まったく…名門同士の婚約の儀と聞いて、さぞ警備が厳重なのだろうと期待してみれば、まさかこんな手薄なものだったとは…。期待外れもいいところだ…」

 

 

“銀色のロングヘアー”と“赤い瞳”、更にはリアス達にも引けを取らない“発達した胸部”を持つ美少女だった。その恰好は濃い青色を基調とした露出の高い衣装であり、片手には西洋風の銀色の長剣を持っている。すると、そんな彼女の姿を見た一部の悪魔達は、驚愕しながら声を上げる…。

 

 

「あ、あの銀髪と銀の装飾剣、まさかッ!?」

 

 

「シ、“銀閃の風姫(シルヴ・フラウ)”…!?!?」

 

 

その銀髪の美少女―――“エレオノーラ・ヴィルターリア”を、悪魔達はそう呼んだ…。と、そこへ、

 

 

「相変わらず粗野で粗暴なやり方ね、エレオノーラ。まあ、今回はその方が効果的なんでしょうけど」

 

 

「やめなさい、“リュミ”。そういう話は終わった後にしましょう?」

 

 

エレオノーラの後ろから、彼女の隣に並び立つように2人の人物が現れた。1人は“青のショートヘア”と“通常よりも少々大きいくらいの胸部”が特徴で、青を基調とした露出の高い服に水色の特殊な槍を手にしている小柄な美少女。もう1人は“緩やかなウェーブの掛かった金色の長い髪”と“朱乃さえも上回る程の発達した胸部”が特徴で、白と薄い緑を基調とした神官風の服に、金の装飾の施された大型な錫状(しじょう)を手にしている長身の美女である。すると、またしても悪魔達がそんな2人の姿を見て騒ぎ出した…。

 

 

「あれはまさか、“凍蓮の雪姫(ミーチェリア)”ッ!?!?」

 

 

「そ、それに“光華の耀姫(ブレスヴェート)”までいるぞッ!!??」

 

 

青髪の美少女――――“リュドミラ・ルリエ”と、淡い金髪の美女――――“ソフィーヤ・オベルタス”のことを、それぞれそう呼ぶ悪魔達。そして……

 

 

「な、何で!? かつて北欧最強と謳われた戦乙女(ヴァルキリー)部隊、“七大戦姫(シエラ・ヴァナディース)”の内の3人がこんな所にッ!?!?」

 

 

その3人の姿を見た誰かが、激しく動揺した様子で声を上げた…。、

 

 

「リム!」

 

 

「ここに」

 

 

エレオノーラがそう言った瞬間、彼女の後ろに1人の女性が片膝を付き、跪いた状態で姿を現した。女性の名は“リムアリーシャ・リュッセル”。サイドテールに結われた長い金髪と、エレオノーラと同じくらい発達した胸部が特徴で、彼女の恰好を連想させるような濃い青色を基調とした服に、西洋風の長剣を携えている長身の美女である…。

 

 

チャキッ!

 

 

「あれが“標的”か?」

 

 

「はい」

 

 

「では、その隣にいるのが…」

 

 

「間違いありません」

 

 

「そうか…。はぁ、まったく“あの男”は…」

 

 

リムが淡々とした様子で質問に答えると、“ある人物”に剣の切っ先を向けたエレオノーラは溜息混じりに呟く。ちなみにその人物とは……ライザーだった…。と、ここで、

 

 

「! な、何をしている!! 侵入者だッ!! 早く取り押さえ…」

 

 

今更我に返った老齢な悪魔が、残っている衛兵にそう指示を出そうとした。だが……

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!!

 

 

『ッ!?!?!?』

 

 

今度はエレオノーラ達から見て左の外壁の一部が突如破壊されたのだ。そして土煙が立ち込める中、そこから出て来たのは……

 

 

「このバカッ!! 少しは加減しろよッ!?」

 

 

「え~! ちゃんと加減したよ~、“クリス”ちゃん」

 

 

「何処がだよ!? 盛大にこの辺一帯が吹き飛んでるじゃねえか!?」

 

 

「落ち着いて、クリス。“響”だからしょうがないよ」

 

 

「ふぇぇっ!? ひ、酷いよ“未来(みく)”~…!」

 

 

3人の少女達だった。1人は“ベージュのショートカット”が最大の特徴で、オレンジを基調としたパワードスーツを連想させる鎧を身に纏った、見るからに明るく闊達そうな美少女―――“立花響”。1人は“何か所か結ってある銀色のロングヘアー”と“小柄な割にかなり発達している胸部”が最大の特徴で、響と同様に赤を基調としたパワードスーツのような鎧を纏っている美少女――――“雪音(ゆきね)クリス”。そして最後の1人は“深緑色のショートカット”が最大の特徴で、響やクリスと同様に紫を基調としたパワードスーツを身に纏っている美少女――――“小日向未来(こひなたみく)”である…。すると、それを見た一部の悪魔達は……

 

 

「っ!? ま、まさか、“黄昏の拳撃者”ッ!?!?」

 

 

「“閃光の神罰者”と“紅蓮の殲滅者”もいるぞッ!?」

 

 

響や未来、クリスのことを、それぞれそんな異名で呼んだ。更に…

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!!

 

 

『ッ!?!?!?!?』

 

 

続いて響達とは反対側の外壁の一部も突如破壊され……

 

 

「まさか、冥界の婚約パーティーに乗り込むことになるとはな」

 

 

「フフッ、いいじゃない? 私、こういうの嫌いじゃないわよ?」

 

 

「ちょ、ちょっと!? これどう考えてもやり過ぎじゃない!?」

 

 

「はわわわわわッ…!!??」

 

 

そこから4人の少女達が姿を現した。1人は“緋色の長髪”と“起伏のある抜群のスタイル”が特徴で、4枚の銀の翼が目を引く露出度の高い鎧を身に纏い、両手に二振りの西洋の長剣を手にしている美女―――“エルザ・スカーレット”。1人は“逆立った銀色の長髪”と“エルザと同等の起伏ある抜群のスタイル”が特徴で、悪魔のような黒い翼と尻尾を生やし、紫を基調とした“レオタード”のような露出の高い恰好をしている美女――――“ミラジェーン・ストラウス”。1人は“金髪のツインテール”と“エルザやミラジェーンにも劣らない抜群のスタイル”が特徴で、青と白の比較的カジュアルな服を着ている美少女――――“ルーシィ・ハートフィリア”。そして最後の1人は、“藍色髪のツインテール”と“華奢で小柄な身体”が特徴で、フリルのあしらわれた白のワンピースドレスを着ている少女――――“ウェンディ・マーベル”である…。

 

 

「っ!? ティ、“妖精の尻尾(ティターニア)”だとッ!?!?」

 

 

「それに隣にいるのは“魔神”じゃないのか!?」

 

 

「ま、待てッ! 後ろにいるのも、あの“星神姫”と“天空の巫女”だぞッ!?」

 

 

そんな彼女達を見て、悪魔達はまたしてもそれぞれの異名を口にし、驚きを露わにした。そして……

 

 

「な、何なんだ…!? 何で“名の知れた異名持ちの神器所有者達”が、こんな所に来てるんだよッ!?!?」

 

 

誰かが今起きている状況に、そう声を上げた……その時だった……。

 

 

「鎮まりなさい…」

 

 

『ッ!?!?!?』

 

 

そんな透き通った声が響き渡ったかと思うと、会場の中央に1人の人物が立っていた。その人物とは……森の中で当麻と会話を交わしていた、あの女性だった…。

 

 

「な、何だ、この女ッ!?」

 

 

「い、いつの間にッ…!?!?」

 

 

「いや、それにしても……」

 

 

まるで“最初から居たかのように”、誰にも気付かれることなく現れた女性の姿に驚く悪魔達だったが、やがてその反応も大きく変わる。何故なら……“紫を基調としたロングコート”という一切露出の無い恰好をしているにもかかわらず、その女性の美しさに見惚れてしまったのだから…。と、そこへ、

 

 

「これはまた随分と予想外な客人だね」

 

 

「ッ!? サ、サーゼクス様ッ!!」

 

 

リアスと同じ紅色の髪を持つ男が、そんな混沌とした状況に包まれている会場へとやってきた。そう、この男こそリアスの兄にして現魔王の1人、サーゼクス・ルシファーである。更にその後ろには、彼の女王(クイーン)である銀髪の女性──グレイフィア・ルキフグスの姿もあった…。

 

 

「お久しぶりですね、サーゼクス・ルシファー」

 

 

「ああ、そうだね…。何故君がここに?」

 

 

「勿論、こちらには“目的”を持って来ました」

 

 

「? “目的”…?」

 

 

「ええ…」

 

 

すると、突如現れた女性はサーゼクスとそんなやり取りを始めたのだ。それを見て……

 

 

「き、貴様!! 魔王様に対して何と無礼なッ!! 今すぐ……」

 

 

上級悪魔と思われる年老いた男が、女性に対して憤慨し出した、その時……

 

 

チャキッ!!×2

 

 

「ッ!?!?!?」

 

 

「今すぐその口を閉じた方がいい。さもなくば……“葬る”…」

 

 

「ダメだよ、“お姉ちゃん”。『他に手を出すな』って、“お兄ちゃん達”に言われてるでしょ?」

 

 

その男の首を挟み込むようにして、二振りの刀の刃が突き付けられる。そしてその刃を突き付けているのは、突如として新たに現れた2人の美少女だった。1人は“黒髪のロングヘアー”と“赤い瞳”が特徴で、黒を基調としたノースリーブの制服風の恰好をしている寡黙そうな少女。もう1人は対照的に“黒髪のショートカット”と“黒い瞳”が特徴で、黒を基調としたセーラー服風の恰好をしている少女である…。

 

 

「っ!? あ、あれはまさか、“黒妖姉妹”ッ!?」

 

 

「“一斬必殺のアカメ”と、“死者行軍のクロメ”かッ!?!?」

 

 

「馬鹿なッ!? あの最悪の暗殺部隊“ナイトレイド”のエースまでッ!?!?」

 

 

それを見た悪魔達は何度目か分からない驚きの表情を浮かべ、黒髪ロングヘアーの少女―――“アカメ”と、黒髪ショートカットの少女―――“クロメ”をそれぞれ呼んだ…。一方、その様子を見ていたサーゼクスは再び目の前の女性に視線を戻し、こう問いかける…。

 

 

「“目的”…。君ほどの力を持つ者が、このような一介の悪魔達の私情の場にどんな目的があるんだい? “時の番人(クロノ・ナンバーズ)”隊長…“セフィリア・アークス”…」

 

 

『ッ……!?!?!?!?!?!?』

 

 

サーゼクスの口から出た女性―――セフィリア・アークスの正体を聞いた悪魔達の反応は、驚愕ではなく……“戦慄だった…。

 

 

「ク、“時の番人(クロノ・ナンバーズ)”…だと…?」

 

 

「わ、僅か“12人”で悪魔・天使・堕天使の三大勢力を全て相手取ることが出来るという、最凶の戦闘集団ッ…!?!?!?」

 

 

「あ、あの女がその頂点に君臨する者だとッ!? あ、あり得んッ!!? そんな馬鹿なことが……!!?」

 

 

会場全てが異様な雰囲気に包まれる中、サーゼクスは更に問い掛ける…。

 

 

「では…今ここに現れた神器所有者達は、全て君の仲間なのかい?」

 

 

「…はい」

 

 

「それなら尚の事、君の…いや、君達の目的が分からないな…。君の力があれば、1人で“この場に居る全ての悪魔を瞬時に消せる”だろう?」

 

 

『ッ…!!!!!』

 

 

サーゼクスのそんな言葉を聞いた瞬間、戦う力のある悪魔達の殆どが臨戦態勢を取るが、その者達を含めた全ての悪魔達がこれまでにない程緊迫した表情を浮かべる…。それは今目の前で彼女と話しているサーゼクスと、そんな彼に付き従っているグレイフィアも例外ではなかった…。すると、

 

 

「私達の目的は、あなた方を滅ぼすことではありません…。これから行われる“制裁”の邪魔をさせないための…露払いといったところでしょうか」

 

 

「! “制裁”…?」

 

 

「そうです…」

 

 

セフィリアはそう言いながら、“ある人物”に目を向ける。それはリアスの隣にいる1人の男性悪魔、そう……

 

 

「その男…“ライザー・フェニックス”に対する制裁を」

 

 

「なッ!?!?!?」

 

 

これまでの混沌とした状況に呆然としていたライザーは、セフィリアからの名指しでようやく我を取り戻し、驚愕を露わにした…。

 

 

「この俺に対して“制裁”だとッ!? “三大勢力全てを相手取れる”など、ただのくだらん噂話ッ!! たかが神器を所有しているだけの女共が、訳の分からないことを抜かしてくれるッ!! まあ、全員大層な上玉なようだからなぁ! 俺が相手してやっても…」

 

 

そして反論だけでなく、明らかに婚約の場での発言とは思えないようなことを言い放った、次の瞬間…

 

 

「黙りなさい」

 

 

「ッ!?!?!?!?!?」

 

 

セフィリアの一言と同時に、ライザーの顔色から血の気が一気に引いていく。何故なら…彼は今とてつもない重圧感(プレッシャー)に襲われているのだ。目の前にいるセフィリアだけでなく、エレオノーラや響、エルザ達の放ったものに…。そんなライザーの様子を見たセフィリアは、まるで“見る価値も無い”といった様子でサーゼクスの方へと目を向ける…。

 

 

「サーゼクス、どうやらあなたはあの“赤龍帝の少年”に役目を託したようですが…彼にその役目を任せる訳にはいきません」

 

 

「…! それはどういうことだい…?」

 

 

「…その男が私達に対して、“重大な罪”を犯したのです」

 

 

「っ! “重大な罪”…?」

 

 

「はい…そしてその男は、最も怒らせてはいけない方々の逆鱗に触れました…。私達全員を束ねる、“あの方々”の逆鱗に…」

 

 

「…まさか…君を従えるような人物がいるというのか?」

 

 

“あの方々”というセフィリアの発言を聞いたサーゼクスは動揺したのか、思わず口調を少し変えながら尋ねた。。すると、それに対し…

 

 

「ええ……」

 

 

セフィリアがそう頷いた……その時だった……。

 

 

「今ここに……」

 

 

ピシッ…!

 

 

『………?』

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!!

 

 

突如天井から妙な亀裂音が聞こえたかと思うと、一気にその一部が崩落したのだ。いきなりのことに困惑し、若干のパニック状態に陥る会場内の悪魔達。しかしそんな中、セフィリアを筆頭にした神器所有者達は一切慌てる様子も無かった。まあ、当然であろう。何せ彼女達は…この事態の原因を既に知っているのだから…。

 

 

スッ…!

 

 

「お待ちしていました。会場内の衛兵達は全て鎮圧しています…。予定通りです」

 

 

ここで行ったセフィリアの行動に、会場内の悪魔達は驚く。“悪魔や天使、堕天使の全てをまとめて相手取れる”と言われている戦闘集団のトップが、土煙が立ち込める中で片膝を付いたのだ。それは紛れも無く……“服従”を意味するものである。すると、その土煙から出て来たのは……

 

 

「ああ…」

 

 

黒いローブを深くまで被ることで姿を隠している、3人の者達だった。見たところ背は190近くあるらしく、体格的から考えると全員“男”のようである。そして、そんな謎の男達はセフィリアと代わり会場内の中央に立つ…。

 

 

「ライザー・フェニックスだな?」

 

 

「! 貴様等か、俺に恨みを持っているという連中はッ! 何処の馬の骨かは知らんが、こんな真似をしてただで済むと…」

 

 

「今すぐ“リアス・グレモリー”をこちらに渡せ」

 

 

「えっ…!?」

 

 

「何だと…!?」

 

 

3人の中で中央にいる男がそう言い放つと、これにはライザーだけでなく、リアスも驚きを露わにする…。

 

 

「もう一度言う。リアス・グレモリーを、こちらに渡せ」

 

 

「フンッ! 渡す訳がないだろう。素性の分からん奴等を相手に、考えるまでもない」

 

 

「…そうか…」

 

 

ここで再度問い掛ける真ん中の男に対し、ライザーがそう答えると…

 

 

「なら、早速正体を明かすとしますかねぇ……」

 

 

「っ! 何……?」

 

 

真ん中の男の口調があからさまに変わったのだ。これにはライザーも思わず訝しむが…全く違う反応をしている者がいた。それは……リアスである…。

 

 

(今のは……)

 

 

彼女は今、大きく驚いていた…。

 

 

(まさか……!)

 

 

そして同時に、“嬉しさ”を込み上げさせていた。それも当然だろう。何せ目の前の姿を隠している男達の中には……“彼女が心から求めている男”も含まれているのだから……。

 

 

バッ!!×3

 

 

3人の男達が一斉にローブを放り捨て、その姿を晒(さら)す…。彼等はいずれも“白のシャツ”に“黒いスーツとネクタイ”という格好をしていた。1人は“白と黒の棚引く髪”が最大の特徴である男。1人は少し伸びたオレンジ色の髪”が最大の特徴である男。そして最後の1人は……“ツンツンとした黒髪を少し伸ばした男”。そう………

 

 

「久しぶりだな、“焼き鳥野郎”……」

 

 

“奴良リクオ”と“黒崎一護”、そして………“上条当麻”の3人だった……。

 

 

 




という訳で、今回から新たに5作品の参加が確定しました。


まあ、殆どの作品が“一部キャラ登場”といった感じですが、これから増えていきます。「こんなに増やして大丈夫なのか?」という不安を抱く方も居るかと思いますが……何とか頑張ります…。


また今回参戦した作品の中で、“戦姫絶唱シンフォギアGX”についてアンケートを少々取りたいのですが…“今は亡き装者達(奏、セレナなど)”も参戦させた方が良いでしょうか? 御意見お待ちしています…。


次回は基本当麻が暴れると思いますので…。では、また次回…。



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決着


タイトル通り、今回で決着です。当麻が少しだけ暴れます…。自分のネーミングセンスを何とかしたい…。



また前回の後書きにも載せましたが、“シンフォギアの亡き装者達(奏やセレナなど)を参戦させるかどうか”や、“リュドミラとミラジェーンの愛称被り(どちらもミラ)に関する件”についての意見もお待ちしておりますので、何かある方はぜひ…。特に後者に関しては結構切実です…。


失礼しました。では本編をどうぞ。




「久しぶりだな、焼き鳥野郎…」

 

 

「き、貴様等はッ!!??」

 

 

そう言い放った男──上条当麻を始め、一護やリクオの姿を見て驚きを露わにするライザー。その一方で、

 

 

「あらあら、これは…」

 

 

「…無事だったんですね、リクオ先輩…。よかったです…」

 

 

「でもまさか、こんな形で戻ってくるとはね…」

 

 

今まで行方知れずだった当麻達の登場に、朱乃や小猫、裕斗は驚きと同時に心から安堵し…

 

 

「当麻……」

 

 

リアスは自身の中に渦巻いていた呵責(かしゃく)から解き放たれたせいか、思わず口元を押さえ…涙を流し始めた…。と、ここで、

 

 

「ば、馬鹿な!? 何故貴様等がここにいるッ!? 貴様等は…」

 

 

「“もう始末された筈”…とでも言いてえのか?」

 

 

「ッ!!??」

 

 

一護の発言を聞いたライザーが更に動揺する中、朱乃達3人は驚愕し、リアスは感動している様子から一転して、ライザーを睨み出す…。

 

 

「まあ、テメエが驚くのも当然か。現魔王にも探知されないような特殊な空間をわざわざ用意し、元最上級悪魔の“ベイガー・ヴォルフガング”にレーティングゲーム当日に俺達を始末するよう頼んだんだからなぁ…。俺達の仲間の神器所有者である…ヤミ達を好きにすることを条件に…」

 

 

「ッ!? ヴォルフガングだと!?」

 

 

「最上級悪魔の地位を剥奪され、現四大魔王に対して恨みを持っている者達と、ライザー殿が通じていたというのかッ!?」

 

 

「馬鹿なッ! そんなことがある筈がないッ! あの者達の世迷い言に決まっている!」

 

 

「いや、しかしそんな噂もあるにはあったぞ? もしそれが事実だとすれば、ライザー殿は事実上“反抗勢力となる可能性のある者達に協力した”ということに…」

 

 

リクオの口から飛び出した話の内容を聞いて、招待客である悪魔達も驚愕して騒ぎ始めた。どうやら“ヴォルフガング家と密かに通じていた”こと自体が問題のようである…。と、ここで、

 

 

「ライザー…彼等の言っていることは本当なのかい?」

 

 

「っ! な、何を仰っているのですか、サーゼクス様!! この人間共の作り話です!!」

 

 

「作り話、ねぇ…」

 

 

「ッ! 何が可笑しい…! ユーベルーナッ! 今すぐこの人間共を始末しろ!!」

 

 

「はっ!」

 

 

意味深な笑みを浮かべながら呟く当麻を見て、ライザーは自らの女王──ユーベルーナにそう命令した。するとユーベルーナは声を出すこともなく、眷属の少女達をほぼ全員召集する…。

 

 

「ライザー様を陥(おとしい)れようとした不届き者達を、排除しなさいッ!!」

 

 

ユーベルーナの指示を受けた12人のライザーの眷属達は、当麻達3人を一気に取り囲む…。しかし、そんな中…

 

 

「良いことを教えてやろうか? ライザー・フェニックス」

 

 

「何…?」

 

 

「あんたは大きな間違いをしてる…。一体何だか分かるか?」

 

 

「! 間違いだと…?」

 

 

「ああ…」

 

 

当麻が突然そう尋ねてきたのだ。とはいえ、ライザーがそんな問いに答える筈もなく…

 

 

「フンッ! 間違いを犯したのは貴様等の方だ…。やれッ!!」

 

 

取り囲んでいる眷属達に攻撃するよう指示を出した。そして、それを聞いた眷属の少女達が一斉に攻撃を開始しようした…その時だった…。

 

 

「間違えてんだよ…。たかが最上級悪魔程度で、“こいつ等”をどうこうしようって思ってる時点でな…」

 

 

ヒュッ!!×5

 

 

当麻がそう言った瞬間、当麻達3人の周りに6人の人物が現れたかと思うと…

 

 

「やあああああああああッ!!!」

 

 

「グッ!!???」

 

 

「ガハッ!!??」

 

 

1人が迫ってきていた騎士2名を“神速の剣戟”で貫き…

 

 

「「ハアアアアアアアアアアアアッ!!!」」

 

 

「「「「キャアアアアアアアアアアアアアアッ!!??」」」」

 

 

2人は戦車(ルーク)2名と兵士(ポーン)2名を、“槍と剣による一閃”で容易く沈める…。

 

 

「遅いです…」

 

 

「うん、全然相手にならないよ~♪」

 

 

2人は兵士(ポーン)4名を既に斬り伏せており…それを見ていた残りの兵士1名と僧侶(ビショップ)1名は…

 

 

「い、一体何が…」

 

 

「あ、あり得ない…」

 

 

目の前で繰り広げられた一瞬の出来事に呆然としていた。そして…

 

 

ドドォンッ…!!

 

 

「「え……」」

 

 

“背後からの銃撃”を受け…2名はその場に倒れ込んだ…。そう、これによってライザーの眷属12名は、僅か数秒で全員戦闘不能に陥ったのである…。

 

 

「なん、だとッ…!?」

 

 

その状況に絶句するライザー。だが、その理由はもう1つあった。それは…

 

 

「無事ですか、グレモリー先輩!?」

 

 

「! あなた達…!」

 

 

「うわぁ~! リアスさん、ウェディングドレス着てる~!」

 

 

「ちょっと、今日は婚約パーティーだったんじゃないの?」

 

 

「多分、あの男の趣向が原因ね…」

 

 

眷属を倒した人物達が、目の前にいる当麻達同様、この場に居ない筈の少女達──ユウキ、シノン、雪菜、紗矢華、ヤミ、芽亜の6人だったのだ。そしてリアスが驚く中、雪菜、ユウキ、紗矢華、シノンがそう言っていると…

 

 

「あの剣技…ま、間違いない! “絶剣使い”だッ!!」

 

 

「“絶剣使い”だと!? 騎士(ナイト)の者達の間で伝説となっている剣聖が、あんな小娘だというのか!?」

 

 

「な、なら、その隣にいる女があの“氷の狙撃手”か!?」

 

 

「ッ! 絶剣と共に行動し、異次元の遠距離攻撃能力を持っていると言われている…向こうも小娘ではないかッ…!!」

 

 

悪魔達が6人の戦闘の様子を見て、再び騒ぎ出したのだ。ユウキとシノンはそれぞれ“絶剣使い”と“氷の狙撃手”…

 

 

「あの銀色の槍と剣…“降魔兵器”かッ!!」

 

 

「ではまさか、あれが“光来の剣巫(こうきのけんなぎ)”と“烈光の舞威媛(まいひめ)”ッ!?」

 

 

「た、対悪魔戦最強の神器所有者じゃねえかッ!!?」

 

 

雪菜と紗矢華は“光来の剣巫”と“烈光の舞威媛”…

 

 

「あの自由自在に動く金色の髪と朱色の髪…ト、“変身(トランス)”ッ!!?」

 

 

「なっ!? こ、“金色の夜叉”と“赤髪の修羅”かッ!!?」

 

 

「か、かつて勢力にかかわらず、数多の悪魔や堕天使、天使を暗殺したとされている伝説の殺し屋姉妹だぞッ!!?」

 

 

そしてヤミと芽亜をそれぞれ“金色の夜叉”、“赤髪の修羅”と呼んだ…。

 

 

「な、何がどうなっているッ!!? こんな連中まで従えてるっていうのかッ!!? 一体…一体何者なんだよ、この人間達はッ!!?」

 

 

何処かの悪魔が目の前で起きている状況を全く信じられず、激しく混乱した様子で叫んだ。と、ここで、

 

 

「スッキリしたか?」

 

 

「少しはね…。本当はあの男もやりたいけど…」

 

 

「悪いな。あいつは上条さんの獲物だ」

 

 

「分かってるわよ。初めからそういう話でしょ…? さっさとあのお姫様を連れ戻してきなさい…」

 

 

「ああ…」

 

 

当麻はいつの間にか自分の背後に立っていたシノンとそんな会話を交わした所で、一護やリクオと共にライザーの下へと近付いていく。すると…

 

 

「くっ…!! 下がりなさいッ!!」

 

 

そんな当麻達3人の行く手を阻んだのは、ライザーの女王──ユーベルーナである。

 

 

「退いてくれないか?」

 

 

「女王が自らの王を前にして、そのような真似をすると思いますか?」

 

 

「…まあ、それもそうか…。なら…」

 

 

ユーベルーナの雰囲気を感じた当麻は、そう言って前に出ようとした。と、その時、

 

 

スッ…

 

 

「…!」

 

 

「悪ぃ、当麻。ここは俺達にやらせてくれ」

 

 

「…手短に頼む」

 

 

「ああ…」

 

 

一護とリクオが当麻を手で制しつつ、そう提案してきたのだ。そして当麻は一言指示を伝えると、2人と入れ替わるように後ろへと下がった…。

 

 

「念のためにもう一度言っておくぜ…? 今すぐそこを退きな…」

 

 

「何度言われようと同じことです。あなた方程度の者達の相手は、私1人で事足りるのですよ!」

 

 

そしてリクオの通告に対し、ユーベルーナは耳を貸すことなく攻撃しようとするが…

 

 

「縛道ノ六十一、“六杖光牢(りくじょうこうろう)”」

 

 

ガキィィィィンッ…!!!

 

 

「っ!!? こ、これはッ…!!?」

 

 

攻撃が行われることは無かった。一護の放った“6つの帯状の光”がユーベルーナに突き刺さり、彼女をその場に拘束したのである…。すると、

 

 

「言っただろ? “今すぐ退け”って…。だがアンタはそこに残った。ってことは…覚悟は出来てるってことでいいんだよなぁ…?」

 

 

「ヒッ…!!!?」

 

 

ユーベルーナはそう問い掛けてくる一護を見た瞬間、今までの女王としての威厳を完全に捨て去り、恐怖に満ちた表情を浮かべる。何故なら…一護の表情があまりにも冷たかったのだ…。

 

 

「この前のレーティングゲームを見て確信した。あんたは端(はな)から敵の不意を突くことしか考えてねえ…。だから小猫を闇討ちで仕留め、“フェニックスの涙”を隠し持ち、朱乃を倒すことができた…。確かにそれなら勝てはするだろうよ。けどな…」

 

 

「俺達にはそんな勝ち方が微塵も通用しねえってことを…今ここで教えてやる…」

 

 

そう言った瞬間、リクオは白煙に包まれ、一護は背中の巨大な愛刀、“斬月”を抜く…。

 

 

「纏(まとい)…“濃紅大申爪(こきくれないだいしんそう)”…」

 

 

「月牙…天衝…」

 

 

「イ…イヤッ……!」

 

 

一護は斬月に膨大なエネルギーを圧縮させて構え、白煙から姿を現したリクオは“斬月を更に上回る大太刀”を手にして構え始めた。それを見たユーベルーナは絶望の表情を浮かべ、何とか光の拘束から抜けだそうするが…言うまでもなく、その拘束はビクともしなかった…。そして……

 

 

「フッ!!!」

 

 

「オラアッ!!!」

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!!

 

 

2人の振り下ろした一閃は、ユーベルーナの“左右数十センチの所”を通過し、彼女に後ろにあった壁を完全に消滅させながら貫通していき……“数百メートル近くを更地”に変えてしまった…。

 

 

ペタンッ…

 

 

「ぁぁ……ぁ…」

 

 

「次からは女王らしい戦い方をしろ…」

 

 

「女王(クイーン)としての誇りをまだ持ってるならな…」

 

 

そんな攻撃を目の当たりにし、まるで魂が抜け出たように座り込むユーベルーナ。そんな彼女に対し、一護とリクオはそう言い放ち、当麻の下へと戻っていく…。

 

 

「終わったか?」

 

 

「まあ、な…」

 

 

「後はお前の役目だ。全部終わらせてこい」

 

 

「ああ…」

 

 

当麻は一護とリクオの言葉を聞くと、再び2人と入れ替わるようにして前に出る…。

 

 

「待たせたな、ライザー・フェニックス…」

 

 

「な、何だ…何なんだ、貴様等はッ!!?」

 

 

「あんたが前に言っただろ? ただの神器持ちの人間だよ…。訳あって“ある組織”を率いることになっただけの、な…」

 

 

動揺を露わにするライザーに対し、当麻は続けて“ある事”を切り出した。

 

 

「1つ、ゲームをしないか?」

 

 

「! ゲームだと…?」

 

 

「ああ…“俺とあんたの一騎討ち”っていう、簡単なゲームだよ」

 

 

「っ!? 当麻…!!?」

 

 

当麻の口から出た提案の内容を聞いて、驚きを隠し切れないリアス…。だが提案の内容は、それだけに留まらなかった…。

 

 

「あんたが勝ったら、俺を煮るなり焼くなり好きにしてくれて構わねえ。だが、俺が勝ったら…リアス・グレモリーを貰い受ける」

 

 

「何だとッ…!!?」

 

 

「っ…//////!!??」

 

 

真剣な表情で当麻がそう言い放つと、リアスはその言葉の内容を聞いて顔を真っ赤に染める。まあ、それも今の彼女には無理もない話なのだが…。一方で、

 

 

「人間風情が、俺を散々コケにした挙げ句、リアスを貰い受けるだとッ…!! 出来もしない戯(ざ)れ事をほざくなッ!!」

 

 

「な、何をしている!! 直ちにこの者達を…!!」

 

 

ライザーは怒りに打ち震えながら殺気を放ち始め、近くにいた親族と思われる悪魔が再び衛兵達に指示を出そうとした…その時だった…。

 

 

「それは実に面白い話だね。やらせてあげてはどうでしょう?」

 

 

「なっ!? サ、サーゼクス様ッ!?」

 

 

サーゼクスがそんな状況の中で口を出してきたのだ。それを聞いた親族の悪魔は、当然驚愕する。

 

 

「初めまして、と言った方がいいかな?」

 

 

「…あんたがリアスの兄か?」

 

 

「そうだよ。それにしても、まさか君が…いや、君達が来るとはね。正直な所、全く予想していなかったよ」

 

 

当麻の問い掛けに対し、何処か面白そうな笑みを浮かべつつ答えるサーゼクス…。

 

 

「さっきの言葉…俺の提案を呑んだと解釈していいんだな?」

 

 

「ああ。思う存分やってくれて構わないよ」

 

 

「ッ!! ほ、本気で仰っているのですか、サーゼクス様!?」

 

 

「彼等は私の妹に協力していた人間達でしてね。神器所有者であることも把握していました。ですが眷属でない以上、先日のレーティングゲームには参加させることが出来なかったのですよ」

 

 

驚きを露わにする親族の悪魔に対し、サーゼクスは当麻達について軽く説明したかと思うと…

 

 

「皆さんも見たくはありませんか? 伝説の不死鳥(フェニックス)と、これだけの二つ名持ちの神器所有者達を束ね、あの“絶対女王(アブソリュート・クイーン)”を従わせている人間との戦いを…!」

 

 

やや高らかな様子で尋ねてきたのだ。これには周りの悪魔達も困惑しつつ、ライザーと当麻の方に目を向ける…。

 

 

「ライザー、君もどうだい? “この場を盛り上げるための計らい”と思ってくれると嬉しいんだが…」

 

 

「…それは、御命令ですか?」

 

 

「そんなつもりは無いよ。僕はただ君と彼との戦いを見たいだけさ。もっとも、君がこの一騎討ちに勝利した時の対価として…“先程彼等が言っていたことに関して、聞かなかったことにする”というものを考えているがね」

 

 

「ッ…!」

 

 

サーゼクスが全く表情を崩さない一方で、ライザーは険しい表情を浮かべた。そして…

 

 

「いいでしょう…! このライザー・フェニックス、身を固める前の最後の炎をお見せしましょう!!」

 

 

「では、戦闘用フィールドについては私が用意致しますので、暫し御待ちを…」

 

 

「君もそれで構わないかい?」

 

 

「…ああ…」

 

 

グレイフィアがそう言って準備に取り掛かり始める中、サーゼクスの問い掛けに当麻は頷いた。すると…

 

 

「やめなさい、当麻!」

 

 

「! よぉ、部長。とりあえず元気そうで何よりだ」

 

 

リアスが当麻に声を掛けてきたのだ。それも…何処か辛そうな表情で…。

 

 

「もういいのよ! こんなことをしたら、あなたは…!」

 

 

そう声を掛けるリアスは、今にも再び泣きそうな顔をしていた。“せっかくこうして無事に戻ってきてくれたのに…”という想いが、彼女の中に渦巻いているのである。だが、そんな彼女に対して当麻は…

 

 

「俺が綺麗サッパリ終わらしてくるから…。もう少しそこで待っててくれ、“リアス”…」

 

 

「…////!」

 

 

柔らかな笑みを浮かべながら、そう言ってきたのだ…。いつもの“部長”という呼び方ではなく、“リアス”とハッキリ呼んで…。そして…

 

 

「準備が整いました。では、参ります」

 

 

 

☆☆

 

 

「“闘技場”って所か…」

 

 

現在当麻とライザーが居るのは、冥界の雰囲気が漂っている闘技場のような空間。どうやら、ここがグレイフィアの用意した戦闘用のフィールドらしい。

 

 

「にしても意外だったな。俺がリアスと会話しようものなら、すぐに遮ってくると思ってたんだが…」

 

 

「フンッ! そんな無意味なことをする気はない。後でたっぷりと可愛がればいい話だ。貴様等のことを思い出せないくらいにな…」

 

 

当麻がそう尋ねると、向かい合うように対峙しているライザーは鼻で笑いながら答える。その表情には…明らかな“賎(いや)しさ”が見てとれた…。

 

 

「ヴォルフガングとの関係…認める気は無いんだな?」

 

 

「認める筈が無いだろう。そもそも俺は、そんな連中と会ったことが無いんだからなぁ」

 

 

「…ユウキ達を狙ったことも、否定するんだな?」

 

 

「同じことを二度も言わせるなよ? 俺は一切知らん。貴様等がただそいつ等に襲われた…それだけのことだろう…?」

 

 

当麻の2度にわたる問い掛けにも、ライザーは馬鹿にしたような笑みを浮かべて一蹴していく…。

 

 

「まあ、貴様と残りの男2人を殺せば、あの女達もリアスと一緒に貰い受けることになるだろう。出来れば残りの女達も手に入れたい所だ。そうすれば、当分女に不自由する必要が無くなるだろうからなぁ…!」

 

 

「…手に入れるだと?」

 

 

「ああ、そうだ! 貴様等を殺して、あの女達を俺の“コレクション”に加えてやるよォォォォォォォォッ!!!」

 

 

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!

 

 

そう言い放ちながら、当麻に極大の炎を浴びせた。当麻は動くこともなく喰らってしまい、巨大な火柱によって姿が見えなくなってしまう…。

 

 

「ハッハッハッ!!! 実にくだらん一騎討ちだったな!! まあ、無理もない。純血悪魔である不死鳥(フェニックス)の俺に、神器を持つだけの人間が勝てる筈が…」

 

 

と、その時だった…。

 

 

「随分早とちりをする焼き鳥悪魔だな」

 

 

「っ!? 何ッ…!!?」

 

 

ビュオオオオッ!!

 

 

そんな声が聞こえたかと思うと、巨大な火柱があっという間に霧散してしまったのだ…。当麻が軽く右手を払っただけで…。だが、ライザーが驚愕した理由は、それだけではなかった。

 

 

「ば、馬鹿な!? あれだけの炎を受けて、全くの無傷だとッ!!??」

 

 

そう、当麻はダメージを塵1つも受けていなかったのだ。それどころか、着ている服にも煤(すす)1つ無い…。

 

 

「あ、あり得ん!! フェニックスの炎をまともに喰らったんだぞ!!? それなのに何故ッ…!!?」

 

 

と、ここで…

 

 

「そういえば、1つ言い忘れてたことがあったな…。俺は別に、あんたと一騎討ちをするつもりなんかねえよ?」

 

 

「っ! 何だと!? なら貴様は、一体何をしに来たというのだ!!?」

 

 

突然当麻が口にした言葉の意味が分からず、動揺を隠し切れない状態のまま尋ねてくるライザー。そして、そんなライザーに対し、当麻はより鋭い表情を浮かべ…こう言い放った…。

 

 

「あんたのくだらない幻想を殺しに来たんだよ…。あんた自身に裁きを与えるついでにな…」

 

 

「っ! 裁きを与える、だと…?」

 

 

「ああ、そうだ。ここは戦うための場所なんかじゃねえ…。あんたの幻想を裁くための…“処刑台”だ…」

 

 

普段の彼であれば絶対に使わない言葉を口にした当麻は、右拳をライザーに向け…更にこう続ける…。

 

 

「終わらせてやるよ、ライザー・フェニックス…。あんたの幻想を…」

 

 

そして…

 

 

「“虹龍王の顎頭(アルカディア・ストライク)”…」

 

 

キィィィィィィィィンッ…!!!

 

 

当麻の右腕が光に包まれたかと思うと、そこには…イッセーの“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”によく似た形をしたモノが着いていたのだ。異なる点は色合いで、全体は“灰色”を基調としており、宝石のような部分は黒く染まっていた…。それを見て、

 

 

「な、何だその神器はッ!!? 何故その神器から、あの小僧の“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”が矮小に思える程のプレッシャーを感じるッ!!??」

 

 

「“赤龍帝の籠手”か…。当然だろうな。こいつは“赤龍帝の籠手”みてえな普通の神滅具(ロンギヌス)とは次元が違う…」

 

 

「ッ!? 普通の神滅具、だと…!!? まさか…それが上位クラスの神滅具だとでも言うつもりかッ!? あり得ん!! 十三種しかない神滅具の中でもレベルが違うと言われたモノが、こんなただの人間に宿る訳がッ…!!」

 

 

その神器から放たれる異常なプレッシャーと当麻の発言に、目に見えて混乱し出すライザー。だが…

 

 

「誰が“十三種の神滅具の1つ”って言った…?」

 

 

「…は…?」

 

 

「悪いが、こいつは十三種の神滅具の中には入ってねえよ」

 

 

「ッ!!? 馬鹿なッ!? その神器から放たれてるプレッシャーは、間違いなく神滅具クラスのもの!! そして神滅具は“現時点で”十三種のみ…っ!!? ま、まさか……!?!?」

 

 

「ああ、そうだ…」

 

 

何かに気付いて驚愕するライザーに対し、当麻は淡々とした様子でこう言い放った…。

 

 

「こいつはまだ誰にも知られていない…“十四番目の神滅具”なんだからな」

 

 

「ッ!!!?? 十四番目の神滅具、だと…!!??」

 

 

これには今ここで戦っているライザーだけでなく、リアスやサーゼクスなどを含めた観戦している全ての悪魔達が絶句した。当然である。“未確認の十四番目の神滅具”が、今ここに姿を現したのだから…。

 

 

「ふ、ふざけるなッ!! そんなモノを貴様が持っている筈がないッ!!!」

 

 

「それがあるんだよ。今こうして、あんたの目の前にな…」

 

 

「そんなものは貴様の戯れ言だッ!! それを今証明してやるッ!! この俺の炎で、貴様を跡形もなく焼き尽くしてなぁぁぁッ!!!!」

 

 

動揺を隠すように激昂したライザーは全身に炎を纏い、当麻に向かって突っ込んでいく。

 

 

ガッ!!!!!

 

 

「死ねえええええええええええッ!!!!」

 

 

そして互いの右拳がぶつかり合ったのを見て、ライザーが自らの炎の勢いを更に高めようとした…その時だった…。

 

 

『break』

 

 

バキィィィィィィィィィィィィィィンッ…!!!!

 

 

「………は………?」

 

 

何かが激しく割れる音が響いた瞬間、ライザーはたった今起きた現象が理解できなかった。まあ、無理もない。ライザーの纏っていた筈の炎が一瞬にして消えてしまったのだ…“ライザーの右腕”と一緒に…。

 

 

「ギ、ギィヤァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!???」

 

 

突如悲鳴を上げるライザー。いつもの彼であれば、腕が吹き飛んだ程度で騒ぐことはしないだろう。何しろ彼には“不死”の特性があるのだから…。しかし現在、吹き飛んだ右腕は再生する様子もなく…尋常ではない激痛が彼を襲っていた…。

 

 

「な、何だこれはッ!!? 何故俺の腕が再生しないッ…!!? き、貴様…一体何をしたァッ!!?」

 

 

「見ての通りだ…。あんたの右腕を消したんだよ。“右腕の再生する力ごと”な…」

 

 

「ッ!!? 再生の力ごと、だとッ…!!?」

 

 

訳が分からないといった様子のライザーに対し、当麻は自身の右腕を示しながら話し始める…。

 

 

「この“虹龍王の顎頭(アルカディア・ストライク)”の能力は、触れた相手の力の消去だ。大抵は能力を打ち消すだけなんだが…あんたは極端に不死鳥(フェニックス)の力に頼りきってる。だからあんたの再生の力だけでなく、右腕もろとも消し飛ばせたんだよ」

 

 

「ば、馬鹿なッ…!?そんなふざけた能力を持つ神器など、ある訳がッ…!!?」

 

 

「だからさっきから言ってるだろ…? こうして存在してるんだよ、あんたの目の前にな…」

 

 

「ヒッ…!!? く、来るなぁぁぁぁッ!!!」

 

 

『break』

 

 

バキィィィィィンッ…!!!

 

 

そう言いながら当麻が歩み寄ろうとしているのを見た瞬間、ライザーは完全に恐怖を覚えたような表情で叫びながら炎を放つ。だがそれは言うまでもなく、当麻の右腕によって容易く打ち消され…

 

 

ガシッ…!!

 

 

「ッ!? や、やめッ…!!」

 

 

『break』

 

 

バキィィィィィィィィィィィンッ!!!

 

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアッ!!!??」

 

 

瞬時に近づいた当麻が右手でライザーの左腕を掴んだかと思うと、割れる音と共に左腕が消し飛んだ。再び襲ってくる激痛に、叫び声を上げてのたうち回るライザー。最早そこに、今まで見せていた憎たらしい程余裕な姿は微塵もなかった…。

 

 

「こいつを発動させた以上、もう長引かせる気はねえ…。さっさと終わらせてもらうぞ…」

 

 

「ッ!! ま、待て!! 貴様は分かっているのかッ!! この婚約がどういう意味を持っているのかを…!!」

 

 

「…意味…?」

 

 

「この婚約は悪魔の未来のために重要なモノだ!! 貴様のような人間がぶち壊していいモノではないんだぞ!!?」

 

 

必死に今回の婚約についての意義を説明するライザーだったが、それを聞いた当麻は…

 

 

「くだらねぇ…」

 

 

「ッ!!? 何…だと…!?」

 

 

一蹴した…。

 

 

「未来のためだと…? そんなモノのために、リアスは女の子としての身体も心も、全て犠牲にしろって言うのか…? そんなモノのために、あんたのような奴に何もかもを汚されなきゃならねえって言うのかよ…」

 

 

当麻はそう口にしながら、右拳を強く握り始める…。

 

 

「そんなモノを振りかざすようなあんたに、ユウキ達は狙われて、怖い想いをさせられたのかよ…」

 

 

そして…

 

 

「あんたは女を何だと思ってやがる…! あんたは女の持つ想いを、一体何だと思ってやがる!! 答えろッ!! ライザー・フェニックスッ!!!」

 

 

今まで見せたことのない、怒気の籠(こも)った力強い声で言い放ったのだ。すると、それに対しライザーが放った言葉は…

 

 

「想い、だと…? ふ、ふざけるなァァァッ!!! 貴様こそ、そんなくだらないモノのために今回の婚約を潰そうというのかッ!! そんなどうでもいいモノを、この重要な場に持ってくるなッ!! 人間風情がァァァァァァァァッ!!!」

 

 

戦闘フィールドだけでなく、会場全てを沈黙させ…一部の者達を深く傷付けた…。恐らくライザーは気付いていないのだろう。自分が一体何を口にしたのかを…。

 

 

ガッ!!!!!

 

 

「グエッ!??!?」

 

 

誰を怒りの頂点へと導いたのかを…。

 

 

「そうかよ…。なら、もうやることは1つだ……」

 

 

『breakbreakbreakbreakbreak』

 

 

「なっ!!? 何をッ…!?!?」

 

 

左手でライザーの首を荒っぽく掴み上げた当麻は、そう言いながら自らの神器、“虹龍王の顎頭(アルカディア・ストライク)”に魔力を収束し始めた。ライザーが動揺を露わにするが…神器の能力で全てを塞がれた今の彼には、当麻を止める手立ては無い…。

 

 

「“テメエ”がこれ以上、ユウキ達を傷付けようとするなら…」

 

 

『break』

 

 

「テメエがこれ以上、リアスの夢とリアス自身を汚そうって言うなら…」

 

 

『break』

 

 

「冥界のふざけた柵(しがらみ)ごと…」

 

 

『break』

 

 

「ま、待っ…!!?!?」

 

 

そして………

 

 

「テメエのその幻想を、この右手でぶち殺すッ!!!!!!!」

 

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ……!!!!!!!

 

 

その一撃は何よりも重いモノだった。当麻の渾身の右拳を受けたライザーは、面白い程水平に吹き飛ばされ、轟音と共に闘技場の壁に激突した。その結果、そこに残ったのは……

 

 

「ァ……ァ………」

 

 

辛うじて息がありながらも、完全に白目を向いてしまっている“哀れな不死鳥の成れの果て”だった。すると、そんな意識の無い人物に対し、当麻は……

 

 

「今ので不死鳥(フェニックス)としての力は完全に消え去った。もう今のテメエは炎も再生の力も使えない……正真正銘の“焼き鳥野郎”だ……」

 

 

そう言い残し、倒れ伏すライザーに背を向けたのだった……。

 

 

『そこまで…。この勝負は君の勝ちだよ…上条当麻君…』

 

 

 

☆☆

 

 

戦闘フィールドが解除され、元の婚約パーティーの会場へと戻ってきた当麻。すると、そこで彼を待っていたのは……

 

 

「当麻ッ!!」

 

 

「うおっ!?」

 

 

リアスだった…。

 

 

「リ、リアスさん!? いきなり何をしてきているのでせうかッ!?」

 

 

「黙って!」

 

 

「は、はい…!」

 

 

突然のことに慌てる当麻だったが、リアスにピシャリと言われた瞬間、一気に硬直する…。

 

 

「うぅ…」

 

 

「! ハハッ、どうやら本当に心配させちまったみたいだな…」

 

 

「ホントよ…! ホントに…心配で…」

 

 

「…そうか…」

 

 

涙を流しながら言葉を紡いでいるリアスを見て、当麻は思わず柔らかな笑みを浮かべながら彼女の頭をポンポンと軽く撫でた。と、そこへ、

 

 

「まさか本当に、あの不死鳥(フェニックス)を打ち破るとはね。それも、こうもアッサリと…」

 

 

「! お兄様!!」

 

 

今回の一騎討ちを了承した人物が、そう言いながら歩み寄ってきた…。

 

 

「約束通り、彼女は君のモノだ。連れていってくれて構わないよ」

 

 

「…いや、リアスは俺のモノじゃねえよ」

 

 

「…では、彼女は誰のモノになるんだい?」

 

 

その人物──サーゼクス・ルシファーの問いに対し、当麻は迷いなくこう答えた…。

 

 

「リアスは“リアス自身”のモノ…。違うか…?」

 

 

「! 当麻…」

 

 

「…なるほど、確かにそうだね…」

 

 

その言葉を聞いたリアスは心から嬉しそうな笑みを浮かべ、サーゼクスも心底納得した…。と、その時、

 

 

「少しいいだろうか…?」

 

 

「! フェニックス卿…」

 

 

1人の男が当麻に声を掛けると、それを見たサーゼクスが少し驚きを見せる。その男は他でもない、先程当麻が倒したライザーの父親である…フェニックス大公だった。すると…

 

 

スッ…!

 

 

「……!」

 

 

「すまなかった…!」

 

 

何と彼は、当麻に対して深々と頭を下げてきたのだ。これには周りの悪魔達も大いに驚き始める。それを見て、

 

 

「お、お父様…!」

 

 

そんな大公に慌てて駆け寄ってきたのは、1人の少女。そう、ライザー・フェニックスの妹であり、眷属でもある“レイヴェル・フェニックス”である…。

 

 

「やめてください、お父様! 相手は兄様を…!」

 

 

「レイヴェル、お前も分かっているのだろう? この一連の事態の非は、紛れもなく私達にある。だからこそ、彼等を止めようとしなかった…。違うか?」

 

 

「! それは…」

 

 

父親にそう言われ、思わず言葉を詰まらせるレイヴェル…。

 

 

「息子は通じてはならない者達と通じ、君達の仲間に危害を加えようとした。そして何より…息子はリアス殿と契りを交わす資格も無かった…。この結果を招いたのは、息子の愚行を見抜けなかった私だ…」

 

 

そして、大公は続けてこう話した…。

 

 

「直系の人間がこれほどの過ちを犯したのだ。恐らくフェニックス家全体に処罰が下されることになるだろう…。これで償えるとは到底思っていない。だが…今はどうか、これで怒りを納めておいて欲しい…!」

 

 

沈痛な面持ちの大公の姿を見て、レイヴェルは俯いた。やはり大公の言っていた通り、自らの兄に非があることは分かっているようである…。すると、それを聞いていた当麻は…

 

 

「な、何を勘違いしているのでせうか?」

 

 

「! 勘違い…?」

 

 

「上条さん達は別に、フェニックス家を恨んでなどいませんことよ?」

 

 

「っ!? し、しかし、…」

 

 

「俺達はただ、“ライザー・フェニックス”っていう焼き鳥野郎を潰すために来ただけだ。フェニックス家なんて関係無いんだよ」

 

 

あっけらかんとした様子で、そう言ってきたのだ。更に…

 

 

「それにあんたは、ただの神器所有者の人間である俺に態々(わざわざ)頭を下げに来た…。それだけ見れば、あんたの人と成りくらい直ぐに分かる…。処罰を求める気も起きねえよ」

 

 

それを聞いた大公は、言葉を失う他無かった。当然である。目の前の少年が、この場にいる誰よりも達観しているように見えたのだから…。と、そこへ、

 

 

「まあ、つってもこのまま何も無しっていうのも示しが付かねえと思わないか?」

 

 

「! リクオ…」

 

 

そんなことを言ってきたのは、一護やユウキ達と共に近づいてきていたリクオだった…。

 

 

「つう訳で、ここは1つ俺達の方から条件を出してやろうじゃねえか」

 

 

「! 条件というのは、一体どのような…?」

 

 

大公は覚悟をしていた。どのような条件でも呑もうと…。そして、リクオが提案してきたのは…

 

 

「そこにいる妹も含め、焼き鳥野郎の眷属になってた奴等を、全員眷属から外せ」

 

 

「なっ!?」

 

 

「何故そのような要求を…?」

 

 

レイヴェル達合計14人を、全てライザーの眷属から解放するというものだった…。

 

 

「な、何ですの、その要求は!? そんな要求をして、一体何の得が…っ!? ま、まさか私達を…」

 

 

「勝手に誤解を招くような解釈をするんじゃねえよ、ったく…。安心しな。お前等を眷属にするつもりはねえよ」

 

 

「っ! それは、私達にはその価値が無いからですの?」

 

 

「いや、だから何でそういう解釈になるんだよ…。はぁ…仕方ねえ…」

 

 

誤った解釈をするレイヴェルに対し、リクオはこう話し始める…。

 

 

「レーティングゲームの話になるが…あの焼き鳥野郎に眷属にされたことで散々愚痴ってたな…? お前、実は本当に心の底からアイツの眷属を辞めたかったんじゃねえのか?」

 

 

「っ…!」

 

 

「やっぱりか…。強いて挙げるなら、そいつが俺の提案の理由だ」

 

 

「なっ!? 益々意味が分かりませんわ!! 一体何がしたい…」

 

 

レイヴェルがそう言おうとすると、それに対してリクオは…

 

 

「妹が本気で嫌がることをするなんざ、兄貴のすることじゃねえ…。そうは思わねえか?」

 

 

「ッ…!」

 

 

その言葉に、レイヴェルは反論を述べることが出来なかった。当然である。それは…彼女がずっと心に締まっていた本音だったのだから…。

 

 

「で、どうなんだ? 俺の要求、受け入れるのか?」

 

 

「! あ、ああ…。元よりそうするつもりだった。恐らく形として、私の妻の眷属になると思うが…」

 

 

「まあ、それが妥当な所か…。悪いな、当麻。色々水を差しちまった」

 

 

「いや、むしろ丁度良かったぜ、リクオ。確かに示しは必要だったからな」

 

 

大公の返答を聞いたリクオは当麻に軽く謝るが、当麻は全く気にした様子もなく、そう返した…。と、ここで、

 

 

「当麻、そろそろ行くぞ。頭の固い連中が騒ぎ出しそうだからな」

 

 

「! そうだな…。失礼するぜ、リアス」

 

 

「え…?」

 

 

一護にそう言われた当麻は、ある行動に出る。それは…

 

 

スッ!

 

 

「キャッ////!」

 

 

リアスを“お姫様抱っこ”の形で抱え上げるというものだった。突然のことにリアスは思わず可愛らしい悲鳴を上げ、更に自分の今の状態が分かると、顔を一気に真っ赤にして俯き出してしまう…。

 

 

「セフィリア」

 

 

「ここに…」

 

 

「撤収する。全員に指示してくれ」

 

 

「分かりました」

 

 

そして、いつの間にか側に控えていたセフィリアにそう伝えると…ここで当麻は動き出す…。

 

 

「リアス・グレモリーは、俺達が預からせてもらう。もしまたこいつの身体や心を傷付けるような幻想が現れるなら、その時は容赦無く壊すことになるだろうな…」

 

 

リアスを抱えながら宣言をし始める当麻。周りの悪魔達はそれをただ呆然と聞いている…。

 

 

「そういえば、まだ名乗ってなかったな…。俺達の組織の名は…“アイエール”…。念のために忠告しておくが、下手に俺達の周りを嗅ぎ回るなよ? もしそれで俺達に……特に俺達の大事なモノに危害を加えようって言うなら…その時は、冥界そのものを壊しかねないんでな…」

 

 

普段の彼からは想像も付かないほど、今の当麻の宣言には確かな覇気が存在していた。『その忠告を破れば、本当に〝冥界”という巨大な世界を破壊してしまうのではないか』という畏れを、当麻はこの場にいる全ての悪魔に放ったのである。そして、そんな宣言を終えた当麻はリアスを抱えて撤収しようとした、その時、

 

 

「当麻君!」

 

 

「一護君…!」

 

 

「リクオ先輩…!」

 

 

裕斗、朱乃、小猫の3人が当麻達と共に駆け寄ってきたのだ。すると、それに対し…

 

 

「悪いな、朱乃。詳しい話は後だ」

 

 

「小猫も向こうで会おうぜ」

 

 

「まあ、そういう訳だ…。行くぞッ!!」

 

 

ヒュッ!!!

 

 

一護、リクオ、そして当麻がそういうと同時に、彼等だけでなくユウキや雪菜達6人と、エレオノーラや響、エルザなどの周囲を固めていた神器所有者の面々、そしてセフィリアの姿が一斉に消える。そんな彼等を追跡しようとする者など……当麻の忠告が焼き付いてしまっている彼らの中にいる筈もなかった…。そんな中、

 

 

「今回の婚約、このような形になってしまい、大変申し訳ない、フェニックス卿」

 

 

「とんでもありません、“グレモリー卿”。今回の縁談を潰したのは、明らかに我々の方だ。多大な御迷惑を与えてしまったこと、深くお詫びします」

 

 

フェニックス大公と1人の男がそんなやり取りを交わしている。言うまでもなく、もう1人の男は“グレモリー卿”。そう、リアスやサーゼクスの父親である…。

 

 

「純潔の悪魔同士、良い縁談だと思ったんだが…どうやらそれ以前の問題だったようだ。まさか息子がこのような愚行を犯していたとは…」

 

 

「あまり自身を責めないで下さい、フェニックス卿。私もあの娘(こ)に自分の欲を重ね過ぎた…。今の私には、娘に掛ける言葉もない」

 

 

そう話す両者に共通しているのは、“反省”の二文字だった…。

 

 

「あの神器所有者の少年達には、礼も述べるべきだった。我々フェニックスの一族は、何かと自身の能力を過信してしまう。特にアレは…息子はあまりにも多くの過信を抱いていた。それが今回の愚行に繋がってしまったのだろう…」

 

 

「! それは…」

 

 

「だが、今回の事で改めて痛感した。フェニックスは“絶対”ではない…。それを深く戒めとして刻めたことだけでも、今回の婚約には大きな意味がありましたよ、グレモリー卿」

 

 

「フェニックス卿…」

 

 

「あなたの娘さんは、恐ろしいほど周りに恵まれている。下僕である“赤き龍を宿す者”は勿論、あれだけの二つ名持ち神器所有者達だけでなく、あの“時の番人”さえも従わせる神器所有者の少年達…。更にその内の1人は“新たな神滅具”を有している…。どうやらあなたの娘さんは、とんでもない者達と関係を持ってしまったようですな」

 

 

「ええ…それについては最早言葉も出ません。三大勢力全てを相手取れる程の新たな勢力、“アイエール”か…。これは冥界だけでなく、三大勢力全体が大騒ぎすることになるでしょう」

 

 

「いやはや、これからの世界は退屈しませんな…」

 

 

そう話す2人の表情は、悪魔の未来を左右する縁談を壊された当事者とは思えない程、非常に晴れやかなものだった…。

 

 

ちなみに…

 

 

「何でだよオオオオオオオオオオオオオオッ!?!?!? アーシアと約束して、左腕までドライグに支払ったのに、当麻達に全部持ってかれたアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!! しかも何だよ、あの超絶美女&美少女達はッ!!?? 全員凄え強そうだった上に、メチャクチャ可愛かったり綺麗な娘達ばっかじゃねえかッ!!! おまけにライザー達全員瞬殺するとか、もう意味分かんねえよッ!!?!? 反則とかそんなレベルじゃねえよッ!!?? もう本当に何なんだよオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!?!?!?!?(泣)」

 

 

『あー……とりあえず左腕はまだ無事だから…安心しろ、相棒。それとまあ、何だ……お疲れ……』

 

 

「ッ! ド、ドライグ~~~……!!(泣)」

 

 

血涙を流しながら、周りの悪魔達にドン引きされる程の勢いで泣き叫んでいる赤龍帝と……それを柄にもなく同情して慰めている赤い龍が居たとか、居ないとか……。

 

 

 

☆☆

 

 

冥界のとある上空を、1体の“巨大な青い龍”が飛んでいる。そしてその龍の背中には……2人の人物が乗っていた……。

 

 

「ふぅ…冥界の婚約式場に乗り込むっていうのは、思った以上にしんどいですな~。上条さんはもうクタクタだぜ…」

 

 

1人はそんな呟きとは裏腹に、悠然とその背中に立っている男―――上条当麻……。

 

 

「当麻……」

 

 

もう1人は、そんな当麻に抱きかかえられている少女―――リアス・グレモリーである……。

 

 

「言っただろ? “もし届かなかった時は、上条さん達が何とかしてやる”って…」

 

 

「ええ。でもまさか、こんなことになるなんて思ってもみなかったわ。あなた達3人が三大勢力全てを相手取れる程の組織を率いていて…その上あなたは存在すら知られていない“神滅具”の所有者だったなんて…」

 

 

「ハハッ、悪いな。“アイエール”のことも俺の神器のことも、元々口外する気は無かったんだ。特に俺の神器は知られると色々ヤバそうだから、適当な嘘で通していこうと思ってたんだが…」

 

 

「! ひょっとして、私の…」

 

 

当麻の言わんとしていることをそう予想したリアスは、申し訳なさそうに顔を俯かせる。そうなってしまったのは、“自分のせいだ”ということに…。

 

 

「それはリアスが気にすることじゃねえよ」

 

 

「! でも、あなたはこれから冥界だけじゃなく、三大勢力やそれ以外の勢力からも狙われることに…!」

 

 

「…まあ、そうなるかもな」

 

 

「なら、どうして…!」

 

 

そう問い掛けてくるリアスは、今にも泣いてしまいそうな表情を浮かべていた。“自分のために目の前の男が火の粉を被ろうとしている”ことが、とても苦しかったのだ。すると、それに対して当麻は…

 

 

「いいんだよ。俺は“自分のために”したんだからな」

 

 

「! 自分のため…?」

 

 

「ああ、俺は自分のために焼き鳥野郎を倒して、今回の縁談を潰した…。ユウキ達を汚そうとする奴にお前を渡したら、俺は多分一生後悔し続けたと思う。約束もしたからな…。まあ、色々言っちまってるけど、要は…」

 

 

そして、当麻は最後にこう言った…。

 

 

「俺が“お前を救いたい”と思ったから、こうしたんだ…。理由なんて、それで十分だろ?」

 

 

「ッ…/////////!」

 

 

リアスは自身の顔が沸騰しそうな程真っ赤になっていることに気付く。言っている事自体は月並みなものだろう。それこそ、何処ぞの小説か何かに出てきそうな言葉である…。

しかし、状況が悪い…。密かに気になっていた男が行方不明になってしまったかと思えば、本当に大人のような姿になって現れ、自分を汚そうとしていた男を圧倒的な力で倒し、こうして自分を“姫”のように救ってくれた挙げ句…飾らない表情での今回の言葉である。故に…

 

 

(こんなの…抑えきれる訳ないじゃない…//////)

 

 

「? どうしたんだ、リアス…?」

 

 

今のリアスには、それで十分だった。そして…

 

 

「んッ……//////」

 

 

「ッ…///////!!??」

 

 

リアスは自らの唇を…当麻のものに重ね合わせた…。頬を真っ赤にしながら目を閉じているその姿は…紛れもなく1人の年相応の少女のものである…。そして、ゆっくりとリアスの唇が離れた所で…

 

 

「リ、リアスさん…? 今のは一体、何でせうか…?」

 

 

「わ、私の“ファーストキス”よ…//////。日本では、女の子が大切にするものよね//////?」

 

 

「…!」

 

 

恥ずかしそうにモジモジとしているリアスの言葉を聞いて、思わず目を見開く当麻…。

 

 

「それは上条さんにあげる物じゃないと思うが…」

 

 

「いいえ、あなたにあげるべきものよ…////。この状況で、他にいるわけないじゃない…/////」

 

 

当麻の発言を聞いて、リアスは更に紅潮させてしまう…。と、ここで、

 

 

「でも、少し意外だったわ」

 

 

「? 何だよ、意外って?」

 

 

「あなたの事だから、何でキスされたかも分からずに慌てると思ってたの。ふふっ、流石に考え過ぎだったわね…」

 

 

「! あー…」

 

 

少し悪戯な笑みを浮かべながらリアスが尋ねると、当麻は少々目を泳がせ、言葉を詰まらせた。しかし…

 

 

「確かに…“あの頃の俺”なら、そうだったかもな…(ボソッ)」

 

 

「? 当麻…?」

 

 

「! いや、何でもねえ…」

 

 

これ以上ない小声での呟きは、抱きかかえられているリアスにも聞こえることはなかった。そして…

 

 

ギュッ…

 

 

「…///////!」

 

 

「そんじゃあ、帰るとしますか…“お前の居場所”に…」

 

 

「…ええ…/////」

 

 

当麻とリアスは青い龍の背に乗って、帰っていく…。学び舎の中にある、“とある部室”へと…。

 

 



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とある組織へのお宅訪問(前編)

お待たせ致しました。タイトル通り、リアス達による当麻達のお宅訪問&諸々の説明回です。


先に言っておきますが、結構たくさんのキャラが出てきます。またオリジナルの設定も微妙にあります。そして何より……最後の最後で、色々台無しになってるかと思います…。


あと色々オリジナルの単語等が出てきますが、ネーミングセンスについては悪しからず…。これが私の限界です。


長文失礼致しました。では、本編をどうぞ。




婚約パーティーでの一件の翌日…。駒王町内のとある場所を、オカルト研究部の面々が歩いていた…。

 

 

「ふふっ♪ まさか一護君達の御住まいに行くことになるなんて、思いもしませんでしたわ」

 

 

「そうね。私も別れる時に突然言われて、正直驚いたわ」

 

 

朱乃の言葉に同意するリアス。そう、彼女達が現在向かっているのは当麻達3人が住んでいる家。一体何故そうなったのかと言えば、昨日当麻がリアスをオカルト研究部の部室へと送り届けた際、去り際にこう伝えたのである…。

 

 

『明日オカルト研究部の皆を連れて、ここに来てくれ。そこが俺達の家であり…“アイエール”の拠点でもある。詳しいことは、そこで粗方話すつもりだ』

 

 

と……。

 

 

「まさか私の管理している地域の中に、未確認だった組織の拠点があるなんて…。いつかそのことで管理者としての責任を問われるんじゃないかしら…」

 

 

「…仕方無いと思います。今もこうして近づいてる筈なのに、全然魔力の反応もありません…」

 

 

「恐らく、何か特殊な方法で気付かれないようにしてるのでしょう。結界が張られている訳でもないようですし…」

 

 

溜め息混じりに呟くリアスに対し、そう声を掛ける小猫と朱乃。と、ここで、

 

 

「ぶ、部長」

 

 

「? どうしたの、イッセー?」

 

 

「こんな時に聞くのはなんですけど…ライザーの野郎は、結局どうなったんですか?」

 

 

後ろでアーシアや裕斗と歩いていたイッセーが、そんなことを尋ねてきたのだ。すると、それに対してリアスは少し間を空けつつ、話し出す…。

 

 

「結論から言うと、ライザーはフェニックス家から勘当されたわ…。まあ、当然ね。危険視されていた者達と通じていたのだから…」

 

 

「じゃあ、あのレーティングゲームの後でユウキちゃん達が狙われたっていうのは…」

 

 

「事実よ。あの後お兄様が調べた結果、明らかになったわ…。まさかこんなに大それた事をしてくるなんて…」

 

 

更に…

 

 

「正式な処分は無いみたいだけど、彼はもう悪魔の世界では大手を振って歩けないだろうね。当麻君との一騎討ちの時に言った“失言”のお蔭で、たくさんの女性悪魔から非難されてるみたいだから」

 

 

「…当然です」

 

 

「何よりライザーはもう、フェニックスとしての力を全て失ったわ。多分今の状態では、下級悪魔にも勝てないでしょうね…」

 

 

裕斗の話を聞いた小猫が僅かに憤りを見せる中、リアスは淡々とした口調でかつての婚約者の末路を述べた…。

 

 

「あなたにも迷惑を掛けたわね。ごめんなさい、イッセー」

 

 

「え…?」

 

 

「腕を代償に力を得ようとするなんて、無茶にも程があるわ。本当に、あなたって子は…」

 

 

「! あー、えっと、あははは…」

 

 

まるで母親のような口調でリアスがそう言うと、イッセーは思わず苦笑いを浮かべた。

 

 

「自分を誇りなさい、イッセー。あなたはもう立派な私の兵士(ポーン)よ」

 

 

「! は、はい!! ありがとうございます、部長!!」

 

 

そしてリアスの言葉に感銘を受けるイッセーだったが…

 

 

「ところで部長? 昨日は当麻君に連れて行かれた後、一体どうなさったのですか?」

 

 

「っ!? あ、朱乃////!? いきなり何を…////!?」

 

 

「あらあら♪ どうやらただ部室に送ってもらっただけではないようですわね♪」

 

 

「っ/////!! そ、それは…////」

 

 

「うふふふっ♪」

 

 

“S状態”の朱乃によるからかいに対して、リアスがあからさまに顔を赤らめているのを見た瞬間…イッセーの様子は一変した…。

 

 

「…………(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!)」

 

 

「ッ!? ど、どうなさったんですか、イッセーさん!?」

 

 

「何でもないよ、アーシア…」

 

 

「で、でも、目から血が…!」

 

 

「心配すんな。これは…ただの汗だ」

 

 

何処ぞのホラー映画に出てきそうな笑みを浮かべてそう言うイッセーだが、どう考えても流れているのは血涙であり、隣にいるアーシアは当然あたふたし始める…。そしてそんなイッセーを見ながら裕斗は苦笑いを浮かべ、小猫は冷めた視線を送っていた…。と、ここで、

 

 

「着いたわ、ここよ」

 

 

ようやく目的地である“当麻達の住まい”に到着したらしく、リアスはある場所の前で立ち止まった。

 

 

「…部長? 本当にここがアイツ等の住んでる所なんですか…?」

 

 

「間違いないわ。指定された場所はここよ」

 

 

「…えええええええええええええええッ!!!???」

 

 

先程まで血涙を流していたイッセーが元に戻るのも当然だった。何故なら…その場所は以前修行のために訪れたリアスの別荘並みに巨大な邸宅だったのだから…。

 

 

「あらあら、これは予想外ですわね~」

 

 

「…私も全然想像してませんでした」

 

 

「いやいや!? 何かの間違いじゃないですか!? アイツ等がこんな所に住んでるなんてとても思えないですよッ!!?」

 

 

目の前の邸宅を見て、思わずそう声を上げる朱乃や小猫、イッセー。その一方で…

 

 

「ここに来るのは2度目ね。前回は直接当麻の部屋に来ちゃったけど…///(ボソッ)」

 

 

「? どうかしましたか、部長?」

 

 

「ッ///! な、何でもないわ! さぁ、早く行きましょう…////!」

 

 

裕斗の問い掛けに若干慌てながらも中へと入っていくリアス。どうやら前回の夜這い(?)の件については話していないようである…。

 

 

「皆分かってるでしょうけど、今回私達が会いに行くのは“オカルト研究部の部員としての当麻達”じゃないわ。あくまでも…“新興組織のトップとしての当麻達”に会いに行くのよ。そこだけは履き違えないでちょうだい」

 

 

「っ! は、はい…」

 

 

リアスが歩きながら忠告すると、それを聞いたイッセーを始めとする眷属の面々は表情を引き締める。そう、ここはもう既にその新興組織“アイエール”の領域内…。例えトップの3人が自分達と同じ学校に通う、よく知る人物であったとしても、保有する戦力を考えれば紛れもなく最大の脅威となるモノなのだ…。故に今回の訪問には、細心の注意を払う必要があるとリアスは考えていた…。

 

 

「それじゃあ、改めて行きましょう…」

 

 

そう言った所で再び邸宅の入り口に向かって、真っ直ぐ歩みを進めるリアス達。そして、ようやく入り口のドアの前に到着した、その時…

 

 

ガチャッ!

 

 

『…!』

 

 

突如中から入り口の扉が開かれたのだ。まるでリアス達が到着するのを、見計らっていたかのように…。すると、そこから出てきたのは…

 

 

「グレモリー眷属の方々ですね?」

 

 

「ええ…」

 

 

「初めまして。私はここで当麻様達に仕えている“ティッタ”と申します」

 

 

栗色の髪をツインテールに結い、紺を基調としたメイド服を着ている少女──ティッタは礼儀正しくリアス達に挨拶した。そんな中、

 

 

「び、美少女メイドがお出迎え…グヘヘヘ…」

 

 

変態が約1名ティッタの姿を見てイヤらしい笑みを浮かべているのは…まあ、無視した方がいいだろう…。

 

 

「当麻様達は既に中で御待ちしていますので、これから御案内致します」

 

 

「分かったわ」

 

 

ティッタがそう言って歩き出すと、リアス達はそんな彼女の後ろに付いていき、邸内へと入った。と、そこへ、

 

 

「あっ! もう来てるデス!」

 

 

「! 切歌さん、調さん、どうしてこちらに?」

 

 

「ちょっと様子を見てこようって、切ちゃんが…その人達が、“お兄ちゃん”達と仲良くしてる人達…?」

 

 

「あ、はい…!」

 

 

2人の人物がティッタに近付いてきたかと思うと、リアス達の方を見ながら話し始めた。1人は“金髪のセミショート”と“奇妙な語尾”が特徴的で、非常に明るく元気そうな少女。もう1人は“黒髪のツインテール”が特徴的で、金髪の少女とは対照的にとても物静かそうな少女である。と、ここで、

 

 

「お、お兄ちゃん…?」

 

 

「? 皆さんは“一兄”達の知り合いじゃないんデスか?」

 

 

「い、一兄? 一兄……あ、もしかして一護のこと? 一護だから“一兄”ね。あー、なるほど……って、はああああああああああああッ!!??」

 

 

「ッ!? な、何デスかッ!?」

 

 

いきなり響き渡るイッセーの大声を聞いて、驚きを露わにする金髪の少女──暁切歌…。

 

 

「あらあら、一護君にこんな可愛らしい妹さん達がいらしたなんて」

 

 

「で、でも、少々一護さんとは似ていらっしゃらないような…」

 

 

「私達とお兄ちゃんは、血が繋がってる訳じゃない…」

 

 

「でも一兄は私達の兄ちゃんデースッ!」

 

 

朱乃とアーシアの発言に対し、黒髪ツインテールの少女──月読調(つくよみしらべ)と切歌はそう返した。ちなみにその間にも…

 

 

「血の繋がってない美少女2人に兄呼ばわりされてるだとッ…! な、何て羨ましい関係を築いてやがんだ、一護ッ…!!」

 

 

「…やっぱりイッセー先輩は最低です」

 

 

妬みの感情を露わにし出すイッセーに対し、小猫が先程のティッタを見た時の反応を含めてそう呟いていたのは…まあ、余談である…。

 

 

「切ちゃん、ティッタ、皆待ってる。そろそろ行かないと…」

 

 

「! そ、そうですね! 失礼しました! では…」

 

 

「私達に付いてくるデース!」

 

 

調に言われたティッタは慌てて案内を再開し、切歌と調も彼女の後ろへ…そしてリアス達はその後ろを付いていく。

 

 

「当麻からは色々な説明をすると言われているのだけど、それで合ってるかしら?」

 

 

「はい、当麻様もそのつもりで皆様を御呼びになったと聞いています」

 

 

リアスの問い掛けに淀みなく答えるティッタ。と、ここで、

 

 

「こちらです」

 

 

ティッタはあるドアの前に立ち止まり…

 

 

コンコンッ!

 

 

「当麻様、グレモリー眷属の皆様をお連れしました」

 

 

『ああ、入れてくれ』

 

 

「はい、失礼します」

 

 

ガチャッ!

 

 

ドアの向こうから当麻がそう言うと、ティッタはドアを開けた。そして先を行く調と切歌に続いて中へと入ると、そこには…

 

 

「わざわざ来てもらって悪かったな、リアス」

 

 

「朱乃やイッセー達も揃ってるみたいだな」

 

 

「まあ、今回は小猫達もいないと困るんだけどね」

 

 

当麻や一護、リクオが立っていた。昨日見せていた“大人の姿”ではないものの、黒のスーツに黒のネクタイという格好は、やはりリアス達のよく知る彼等の姿ではない。そして何より…その広々とした部屋にいるのは当麻達だけではなかった…。

 

 

「いらっしゃい、皆♪」

 

 

「やっと来たわね」

 

 

当麻の両隣にはユウキとシノンが…。

 

 

「久しぶりね」

 

 

「昨日はお騒がせしてすみません」

 

 

一護の両隣には紗矢華と雪菜が…。

 

 

「やっほー♪」

 

 

「歓迎します…1人を除いて…」

 

 

「それ絶対俺のことだよねッ!?」

 

 

リクオの両隣には芽亜とヤミの姿があった。イッセーが何か騒いでいるが、気にしなくていいだろう。更に…

 

 

「お前等、何か余計なことしてねえだろうな?」

 

 

「大丈夫…」

 

 

「ちょっと挨拶してただけデス!」

 

 

「いやー! 先輩姿が様になってるね~、クリスちゃん!」

 

 

「響、言ってることが少しオジサンっぽくなってるよ…?」

 

 

一護の後ろには調と切歌だけでなく、ベージュ髪の少女──立花響と、深緑色の髪の少女──小日向未来、銀髪の少女──雪音クリスの3人が…。

 

 

「その辺にしておけ、お前達」

 

 

「そうね。一応お客さんの前なんだし」

 

 

「お、“お客さん”っていうのは少し違うと思うけど…」

 

 

「そ、そうですね…」

 

 

リクオの後ろには緋色のロングヘアーの女性―――エルザ・スカーレットと、銀色のロングヘアーの女性―――ミラジェーン・ストラウス、金髪ツインテールの少女―――ルーシィ・ハートフィリア、藍色髪のツインテールの少女―――ウェンディ・マーベルの4人が…。

 

 

「この者達がその女の眷属か」

 

 

「神滅具持ちの為り立て悪魔もいるなんて、中々面白いわね」

 

 

「2人もその辺にして。これから色々話さないといけないんだから…」

 

 

当麻の後ろには銀髪ロングヘアーと赤い瞳が特徴の女性―――エレオノーラ・ヴィルターリアと、青色のショートカットが特徴の女性―――リュドミラ・ルリエ、金髪ロングヘアーが特徴の長身の女性―――ソフィーヤ・オベルタスがいた。更にエレオノーラの傍には、彼女の従者である金髪サイドテールの女性―――リムアリーシャ・リュッセルの姿もある…。そして…

 

 

ガチャッ!

 

 

『…!』

 

 

「お待たせして申し訳ありません、当麻様」

 

 

「セフィリアか。大丈夫だ。リアス達も丁度来たところだからな」

 

 

「そうでしたか…」

 

 

ウェーブの掛かった金髪ロングヘアーの女性―――セフィリア・アークスが部屋へと入り、当麻達とリアス達の丁度間を取り持つような位置に立った所で…当麻が切り出した…。

 

 

「さて…色々聞きたいことがあるよな、“部長”?」

 

 

「! ええ…」

 

 

その問い掛けにリアスは頷くと、まず初めにこう尋ねた…。

 

 

「当麻、一護、リクオ…あなた達が本当に、この“アイエール”という組織のトップなの?」

 

 

「…ああ、そうだ。一護とリクオが“副総帥”、そして俺が一応“総帥”…要するにこの組織の一番上ってことになってる」

 

 

「…それなら、ユウキ達があの“絶剣使い”達だっていうのも事実なのね?」

 

 

「ああ…。そっちについても隠さない訳にはいかなかったんでな。色々悪かった…」

 

 

「構わないわ。私だってあなたと同じ立場なら、間違いなくそうしたもの…」

 

 

「そうか…」

 

 

そんなやり取りを交わしながら、お互いに苦笑いを浮かべる当麻とリアス…。と、ここで、

 

 

「な、なあ…」

 

 

「! イッセーか。どうした?」

 

 

「お、お前等、本当に当麻と一護とリクオ、なんだよな?」

 

 

「? ああ…」

 

 

「見ての通り、君のクラスメイトの上条当麻と黒崎一護、それに奴良リクオだけど?」

 

 

当麻に聞かれたイッセーが恐る恐るといった様子で尋ねてきたのに対し、一護とリクオがそう答えた。すると…

 

 

「いやいや! だってお前等全然違うじゃねえかッ!? 何かもう完全に別人っていうか……つーかそれより一番説明してもらいたいのは、お前等の後ろにいる娘達だよッ!! 何だよその美女美少女軍団は!!?? ただでさえユウキちゃん達まで居るっていうのに、羨まし過ぎるわチクショーーーッ…!!!!(泣)」

 

 

「…本当にどうしようもない先輩です」

 

 

イッセーはライザーのハーレム状態を見た時のように、涙を流しながら声を上げ、更には床に伏して拳を叩き付け始めたのだ。それを見た当のエレオノーラ…通称“エレン”や響達はそれぞれ何とも言えない笑みを浮かべたり、怪訝な表情を浮かべたり、若干怯えたり引いたりしている…。小猫が絶対零度の視線を向けるのも当然だろう…。

 

 

「その辺にしておいた方がいいと思うよ、イッセー君」

 

 

「うるせえッ!! こんな状況を見て泣かずに居られる訳…!」

 

 

「今だけはいつものような発言をしないのが身のためだよ。でないと…僕達全員、その人達に“あっという間に消されちゃう”かもしれないからね…」

 

 

「……え……?」

 

 

木場の忠告を聞き、呆気に取られた様子のイッセー…。そして、

 

 

「あなたとアーシアは知らないようだから、一応言っておくわね…? ユウキ達を含め、当麻の周りに控えているのはほぼ全員、“1人でライザーとその眷属達全員を軽く圧倒できる”力を持つ、最高クラスの神器所有者よ」

 

 

「…え…ええええええええええええええええええええええええええええッ!!!??」

 

 

リアスがそう告げた瞬間、イッセーは思わず絶叫した。まあ、明らかに自分よりも年下と思われる少女達を含め、そのほぼ全員が自分達の敗北した相手であるライザー達を単独で倒せるというのだから…。

 

 

「う、嘘ですよね!? ていうか、ユウキちゃん達までそんな強いんですか!?」

 

 

「ええ。ユウキちゃん達は全員それぞれ異名を付けられ、三大勢力全体から恐れられる程の強さを持っていらっしゃいますの」

 

 

「い、異名、ですか…?」

 

 

朱乃の言葉を聞いて、首を傾げるアーシア…。

 

 

「ユウキとシノンの異名は、“絶剣使い”と“氷の狙撃手”。冥界でもトップクラスの実力を持つと言われている、賞金稼ぎのペアよ」

 

 

「特に“絶剣使い”は、僕みたいな騎士(ナイト)の人間にとって“剣聖”と呼ばれている程の伝説的な存在なんだ…。僕もユウキちゃんがその“絶剣使い”だって知った時には、言葉が出なかったよ…」

 

 

まずユウキとシノンについて、リアスと裕斗が話すと…

 

 

「雪菜ちゃんと紗矢華ちゃんの異名は、“光来の剣巫”と“烈光の舞姫”。どちらも“対悪魔戦最強の神器所有者”と言われていますわ」

 

 

「…ヤミさんと芽亜さんの異名は、“金色の夜叉”と“赤髪の修羅”…。三大勢力全体に名を轟かせている、伝説の殺し屋姉妹です…」

 

 

(め、“冥界最強クラスの賞金稼ぎ”に、“対悪魔戦最強の神器所有者”と“伝説の殺し屋姉妹”って、凄えヤバいメンバーじゃんッ!? 俺そんな女の子達と一緒に学園生活送ってたのッ!!?)

 

 

朱乃が雪菜と紗矢華について、小猫がヤミと芽亜についてそれぞれ説明した。イッセーはそれを聞いた瞬間、そんな彼女達とこれまで対等に接してきたことに驚愕する。と、ここで、

 

 

「さっきのあんたの発言からして…俺達の後ろにいるエレン達のことも当然知ってるよな?」

 

 

「! ええ…。今更かもしれないけど、彼女達は本当に…」

 

 

「ああ、多分あんたの予想してる通りだと思うぜ…?」

 

 

リアスの問い掛けに対し、当麻はそう返した。

 

 

「そうだな…イッセーやアーシアも居ることだし、軽く自己紹介させるか…。エレン」

 

 

「! ああ…。エレオノーラ・ヴィルターリアだ。“エレン”で構わん。当麻達も認めているようだからな。それから…」

 

 

当麻に促されたエレンは軽く自身のことを名乗ると、後ろに控えていたリムアリーシャ…通称“リム”に軽く目配せをし…

 

 

「私の部下のリムアリーシャだ。まあ、気軽に“リム”と呼んでやってくれ。いいな、リム?」

 

 

「はい…」

 

 

自身の問い掛けにリムが頷くと、エレンは自身の左隣いるリュドミラに目を遣った…。

 

 

「リュドミラ・ルリエよ。貴女達とは今後関わることになるようね。宜しく御願いするわ。それと、くれぐれも隣にいる“教養の無い女”とは同じように扱わないで頂戴」

 

 

「ほぉ…? 今のは私に対する宣戦布告か、リュドミラ・ルリエ?」

 

 

「さぁ、どうかしらね…?」

 

 

明らかに怒りの笑みを浮かべるエレンと、不敵な笑みを浮かべるリュドミラ。そして両者が対峙し掛けた、その時、

 

 

ガンッ!×2

 

 

「「ッ~~~…!!」」

 

 

「2人共、こんな時にまで喧嘩する必要はないでしょ…?」

 

 

そんな2人の頭を、ソフィーヤ…通称“ソフィー”が大型の錫杖で軽く小突きながら注意した。

 

 

「ごめんなさい、お見苦しい所を見せてしまって…。私はソフィーヤ・オベルタスと言います。話は当麻達から聞いてるわ。宜しくね」

 

 

エレンやリュドミラと違い、ソフィーは物腰の柔らかい口調で挨拶をした…。

 

 

「“七大戦姫(シエラ・ヴァナディース)”…北欧最強の戦乙女(ヴァルキリー)部隊が、まさかあなた達の所に居たなんて…」

 

 

「あー…まあ、色々あってな。俺達に“協力してもらってる”って感じだ」

 

 

「では、残りの4人の御方も勿論いらっしゃるんですのね?」

 

 

「ああ。といってもその内の3人は別件で戻ってきてねえし、あと1人も訳あってここには来れないんだけどな…」

 

 

リアスと朱乃の問い掛けに、苦笑いを浮かべながら返す当麻…。

 

 

「今度はこっちだな…。響」

 

 

「! はい!」

 

 

一護が呼び掛けると、それに反応したのは響だった。

 

 

「初めまして、立花響っていいます! それで、こっちが私の親友の…」

 

 

「小日向未来です。話は一護さん達から聞いてるので、これから宜しくお願いします…。ほら、クリスも」

 

 

「わ、分かってるっての…。雪音クリスだ。一護達が色々世話になってるみてえだな。よ、よろしく頼む…」

 

 

響と未来、クリスが自己紹介しつつ挨拶をすると…

 

 

「そういえば、私達もまだ自己紹介をしてなかったデスね! 私は暁切歌! よろしくデース!! で、こっちが…」

 

 

「月読調です。よろしく…」

 

 

切歌と調がそれに続いた。それを聞いて、

 

 

「あらあら、まさか“七聖の歌姫(プレアデス・ディーヴァ)”がこんなに可愛らしい娘(こ)達だなんて、思ってもいませんでしたわ」

 

 

「? えっと、な、何ですか、朱乃さん? プ、プレ…?」

 

 

「“七聖の歌姫(プレアデス・ディーヴァ)”。三大勢力全てから恐れられている特殊な神器所有者の方々のことですわ。歌いながら相手を一掃する姿から、その呼び名が付けられたと言われていますの」

 

 

「そ、それって、“歌を最後まで歌い終わる頃には終わってる”って奴ですよね。いや、でもやっぱり皆可愛いし…」

 

 

朱乃の話を聞いたイッセーは、顔をひきつらせながら呟く。こんな話を聞いても響達の容姿に目が行くのは、ある意味流石かもしれない…。

 

 

「じゃあ、次はこっちだね。エルザ」

 

 

「ああ」

 

 

続いてリクオがそう言うと、それに頷いたのはエルザだった。

 

 

「エルザ・スカーレットだ。これから宜しく頼む」

 

 

「じゃあ、次は私ね? ミラジェーン・ストラウスよ。皆からは“ミラ”って呼ばれてるから、あなた達もぜひそう呼んで。よろしくね♪ それで、あとの2人が…」

 

 

「初めまして! 私はルーシィ。ルーシィ・ハートフィリアです。よろしくね!」

 

 

「あ、は、初めまして! ウェンディ・マーベルです。よ、よろしくお願いします…!」

 

 

エルザに続き、ミラジェーン、ルーシィ、ウェンディが自己紹介をし終えた。すると、

 

 

「な、なぁ、リクオ?」

 

 

「? どうしたの、イッセー君?」

 

 

「いや、何かその…そこにいるウェンディちゃんから、前に教会の近くに行った時以上に凄え嫌な感じがするんだけど…何でだ…?」

 

 

「! そっか…。まあ、確かにイッセー君にとってウェンディは“最大の天敵”だろうし、当然かな…」

 

 

「さ、最大の天敵…?」

 

 

リクオの意味深な発言を聞き、嫌な予感を倍増させるイッセー。そんな彼の問い掛けに答えたのは、当麻だった…。

 

 

「ウェンディは“天空の滅龍魔法”を扱える、“龍殺し(ドラゴンスレイヤー)”なんだよ」

 

 

「っ!? 龍殺し(ドラゴンスレイヤー)ですってッ…!!?」

 

 

「…(ビクッ!)」

 

 

リアスが驚きを露わにすると、ウェンディはビックリしたのか咄嗟にリクオの後ろに隠れた。その一方で…

 

 

「ド、“龍殺し(ドラゴンスレイヤー)”って、まさか…」

 

 

「その名の通り、龍(ドラゴン)の退治に特化した人のことだよ、イッセー君」

 

 

「なっ!? マ、マジかよ!? しかもあの娘が…!?」

 

 

木場にそう言われたイッセーは、思わずウェンディを見る。確かに今もリクオの後ろに隠れているような少女が、“対龍用に特化した殺し屋”と言われても…全く以て信じられないだろう…。しかし、

 

 

「信じられねえって顔をしてる所悪いが、ウェンディがトップクラスの龍殺しだっていうのは間違いねえ。今のお前じゃ仮に“禁手(バランスブレイカー)”になったとしても、数秒で消されるからな?」

 

 

「……マジで?」

 

 

「大マジだ」

 

 

「い、一護さん! そ、そんなことしませんから…!」

 

 

ウェンディが慌ててそう言う中、イッセーは完全に硬直した。当然だろう。自分が左腕を犠牲にして手に入れる力を持ってしても、目の前にいる華奢で幼い少女に瞬殺されるというのだから…。と、ここで、

 

 

「で、最後にここにいるのが…」

 

 

「初めまして。私はセフィリア・アークス。“総帥補佐官”として、当麻様の側にお仕えしております」

 

 

「! “絶対女王(アブソリュート・クイーン)”…」

 

 

最後に当麻によってセフィリアが紹介されると、リアスはそんな彼女を最大限警戒した様子で見つめる…。それを見て、

 

 

「あ、朱乃さん、何か部長の雰囲気が変わったんですけど、セフィリアさんって一体…」

 

 

「そうですわね…。一言で説明するなら、あの方は“この世界で最も強い女性”…といった所でしょうか」

 

 

「………え………?」

 

 

朱乃の口から出た言葉を聞いて、本日2度目の硬直状態に陥るイッセー…。

 

 

「何しろあの“時の番人(クロノ・ナンバーズ)”を率いているらしいからね…。多分間違いないと思うよ」

 

 

「そ、そんなにヤバイ人なのかよ!? とんでもなく綺麗な人なのに…」

 

 

「そ、想像できないですぅ…」

 

 

そして木場からもそう言われたイッセーは狼狽(うろた)え出し、アーシアも思わず呟く中…

 

 

「とりあえず、今ここにいる全員の紹介はそんな所だ。まだ遅れてくる奴等もいるけど、そいつ等の紹介は来た時だな。じゃあ…そろそろ次の質問といこうぜ、部長?」

 

 

「! そうね…。今度は冥界の悪魔の1人として、単刀直入に聞かせてもらうわ…。あなた達が私達悪魔と敵対する可能性は、あるのかしら…?」

 

 

当麻が質疑応答の時間に戻すと、リアスはいきなりそんなことを尋ねたのだ。これには朱乃達だけでなく、イッセーやアーシアも緊張した面持ちを見せる…。すると、それに対し当麻は…

 

 

「まあ、あるだろうな」

 

 

『…!』

 

 

ハッキリとそう答えた。これにはリアス達グレモリー眷属の面々も驚きを隠せない…。

 

 

「けど、こっちから敵対することは絶対にねえよ。特に冥界側とはな。何しろ“あいつ等”がいる以上、それはこっちとしても絶対に避けてえ……そうだろ、リクオ?」

 

 

「うん、まあね…」

 

 

「? 冥界に誰か知り合いがいるの?」

 

 

「まあ、知り合いっつーか、何つーか…」

 

 

2人のやり取りを見たリアスの問い掛けに対し、当麻がどう答えていいか迷っていると、そこへ…

 

 

ガチャッ!

 

 

「ただいま~!」

 

 

「! お帰りなさい、リサーナ」

 

 

「レビィちゃんもお帰り!」

 

 

「ただいま、ルーちゃん! あ、この人達が例のグレモリー眷属の…」

 

 

「うん、そうだよ」

 

 

2人の人物が新たに部屋へと入ってきた。1人はミラジェーンと銀色の髪をショートカットにしているのが特徴の少女―――リサーナ・ストラウス。もう1人は青髪とカチューシャが特徴的な少女―――レビィ・マクガーデンである。そしてそんな2人にミラジェーンとルーシィが声を掛け、リクオがそう言っていると…

 

 

「じゃあ、とりあえず自己紹介した方が良いよね? 初めまして、私はリサーナ・ストラウス。名字で分かると思うけど、そこにいるミラ姉の妹よ。よろしくね。で、こっちにいるのが…」

 

 

「えっと…初めまして、私はレビィ・マクガーデン。レビィでいいよ。話はリクオからもう色々聞いてるけど、これからよろしくね」

 

 

(こ、ここで更に美少女が2人登場…!?)

 

 

リサーナとレビィがリアス達に軽く自己紹介をした…。イッセーが2人を見て心の中で驚いていたのは…まあ、気にしなくていいことである…。

 

 

「あ、それよりリクオ! お客さんが来てるよ!」

 

 

「? お客さんって、小猫達ならこの通りもう来てるけど…」

 

 

「えっとね、多分“また無理矢理来た”って感じだと思うんだけど…」

 

 

「! おい、まさか…」

 

 

リサーナとレビィの言葉を聞いて、リクオと一護は何かに思い当たった、その時…

 

 

「リクオーー!!」

 

 

「うわっ!?」

 

 

ガバッ!!

 

 

「えへへ~♪」

 

 

1人の人物が素早く部屋に入ってきたかと思うと、真っ先にリクオへと思い切り抱き着いたのだ。その人物とは…“ピンクのロングへアー”と“クリス並みに発達した胸部”、そして……“黒い尻尾”を生やしているのが特徴的な少女だった…。

 

 

「ラ、ララ!?」

 

 

「リクオ~、久しぶり~♪」

 

 

その少女―――ララ・サタリン・デビルークの姿に驚くリクオ。すると、

 

 

「リクオーーッ!!! テメエいきなり何見せつけてくれてんだアアアアアアッ!!!?」

 

 

「ええっ!? いや、そんなこと言われても…!」

 

 

それを見たイッセーが般若の如く怒りを露わにしてきたのだ。彼の頭の中には“この少女は何者なのか?”といった当たり前の疑問は無いらしい。と、ここで、

 

 

「ララ! あなたがどうしてここに!?」

 

 

「あー! リアス~! 久しぶりだね~♪」

 

 

「ッ! ぶ、部長! この娘のこと知ってるんですか!?」

 

 

「え、ええ…。というより、あなたとアーシア以外は皆知ってるわ」

 

 

「えっ…!?」

 

 

リアスにそう言われたイッセーが思わず朱乃や小猫、そして裕斗に目を向けると、3人は少し驚いた様子でありながらも頷いた。と、そこへ更に、

 

 

「あ、いた! って、何してんだよ姉上ッ////!?」

 

 

「これはいつものことでしょ、ナナ…? あ、お久しぶりですね、リクオさん♪ それにリアスさん達も♪」

 

 

「あらあら、これは本当にお久しぶりですわね、ナナさん、モモさん」

 

 

続いてやってきたのも2人の少女だった。1人はララと同じピンク色の髪をツインテールにした、“少々胸部の発育が残念”な少女──ナナ・アスタ・デビルーク。もう1人はララと同じピンクの髪をショートカットにした、アーシア並みに発達した胸部を持つ少女──モモ・べリア・デビルークである。そして、朱乃がそんな2人に挨拶をしていると…

 

 

「な、なあ、木場? この娘達って一体…」

 

 

「! そうだね…。確かにこの人達のことは知らないかもしれないけど…その“お父さん”のことはイッセー君も聞いたことがある筈だよ…。この前の合宿中に…」

 

 

「が、合宿中に!? 合宿中に何で聞いて……ん? “デビルーク”…?」

 

 

裕斗にそう言われたイッセーは、ふとある事を思い出す。それは…冥界に関する基礎知識を学んでいた時のことだった…。

 

 

「ッ!! も、もしかして、もしかしなくても…」

 

 

「気付いたみたいね、イッセー。そう。彼女達は現“大魔王”ギド・ルシオン・デビルーク様の娘よ」

 

 

(ってことは…め、冥界最強の悪魔の娘えええええええええええええッ!!!???)

 

 

そう、冥界を実質的に取り仕切っているのは、ルシファー、レヴィアタン、ベルゼブブ、アスモデウスの“四大魔王”であるが、実は更にその上の地位が存在している。それが冥界最強を意味する“大魔王”…。そしてその地位に君臨しているのが、ララ達の父親である“ギド・ルシオン・デビルーク”なのである…。リアスの口から飛び出したララ達の素性に、イッセーは心の中で絶叫した。すると、

 

 

「ひょっとして、貴方が兵藤一誠さんですか?」

 

 

「えっ!? あ、は、はい! でも、何で…」

 

 

「ふふっ、当然知ってますよ? 何しろ最も有名な“神滅具(ロンギヌス)”の1つを所有している方ですから♪」

 

 

(ッ! こ、これはひょっとして、俺にもチャンスが…!?)

 

 

モモとのそんなやり取りの中で、期待を膨らませ始めるイッセー。完全に鼻の下が伸びているのは…言うまでもないだろう…。

 

 

「こ、こいつがあの赤龍帝? 何か見るからに弱そうっていうか、確実に弱いだろ…? しかも明らかに獣(ケダモノ)っぽいし…」

 

 

(ぐはっ!? な、何て辛辣な発言を…。見た感じ双子っぽいけど、全然違うな。口調とか雰囲気とか…)

 

 

ナナの言葉に精神ダメージを受けつつも、イッセーはナナとモモを見比べ始める。そして、ある部分に注目した。それは…

 

 

(胸とか…)

 

 

ガシッ!!

 

 

「へ?」

 

 

「おい…今物凄く失礼なこと考えてなかったか…?(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!)」

 

 

「なな、何も考えてませんでせう…!!!(ガクガクッ!)」

 

 

阿修羅の如き形相のナナに胸ぐらを掴まれ、生まれたての小鹿のように震えながら言葉を返すイッセー…。と、そこへ更に、

 

 

「…私も加わってもいいでしょうか?」

 

 

(こ、小猫ちゃあああああんッ!! それは本気で死んじゃうから勘弁してええええええええええッ!!!)

 

 

小猫も加わろうとしてきたのを見たイッセーは、思わず心の中でそんな叫び声を上げた。どう見ても“前門の虎、後門の狼”といった状態である…。しかし、

 

 

「やめなさい、ナナ。そんなことをしても、あなたの“ペタンコ”は治らないわよ?」

 

 

「ッ!! ペ、ペタンコって言うなああああああああッ!!!」

 

 

(た、助かった…)

 

 

そんなモモの一言でナナの標的が変更されたため、イッセーは何とか助かった…。ちなみにモモの一言に小猫が密かに大きく反応していたのは、余談である…。

 

 

(や、やっぱりモモちゃんは良い娘っぽいな。よっしゃあ!! ここは是非ともモモちゃんも俺のハーレム候補に…!!)

 

 

何気にとんでもない夢を抱く始めるイッセーだったが…現実は彼にとって非情だった…。

 

 

「そろそろ話を戻させてもらうわね? ララ、ナナ、モモ、あなた達がどうしてここに…?」

 

 

「ふふっ、勿論リクオさん達にお会いしに来たんですよ? 特にリクオさんは、私達の“許嫁”ですから♪」

 

 

「……はい……?」

 

 

リアスの問い掛けにモモがそう答えると、イッセーはしばらく呆然とし…

 

 

「い、許嫁ええええええええええええええええええッ!!??」

 

 

やがて驚愕の叫びを上げた…。

 

 

「あらあら…」

 

 

「ほ、本当なの!? でも、そんなこと今まで一度も…」

 

 

「えへへ、ごめんね~? 周りには秘密にするように言われてたんだ~」

 

 

朱乃も驚きを隠せない中、ララはあっけらかんとした様子でリアスにそう言った。

 

 

「ったく、父上も本当に何考えてんだよ。許嫁なんて、あたしは別に…」

 

 

「そんなこと言って、あなたも満更じゃないでしょ? 今日だって、いつも以上に身だしなみに気を配ってたわよね?」

 

 

「なっ/////!?!? んなことねえよッ////!! つーか、お前だってそうだっただろッ///!?」

 

 

「ふふっ当然でしょ? 何せ許嫁の殿方に会いに行くんだもの♪」

 

 

こちらでもナナとモモがそんなやり取りを交わしている。そんな中、

 

 

「リクオ~~ッ………!」

 

 

「? イ、イッセー君? どうしたの?」

 

 

少し様子のおかしいイッセーの姿を見て、若干戸惑いながらも尋ねるリクオ。すると…

 

 

「いっぺん死ねええええええええええええええッ!!!!(泣)」

 

 

「えええッ!!?!?」

 

 

イッセーが血涙を流しながら飛び掛かってきたのだ。いきなりの事にリクオは当然驚くが…果たしてこの後何が起こるでしょう? 正解は……

 

 

 

ドゴッ!!!

 

 

「…………(チーンッ!)」

 

 

「少し黙っててください、兵藤一誠…」

 

 

ヤミの変身(トランス)した髪の拳によって、イッセーは呆気なく沈んだ…。

 

 

「それとプリンセス・ララ、そろそろ離れてください。リクオが困っています」

 

 

「あ、そっか! ごめんね~、リクオ!」

 

 

そしてヤミはついでといった感じでそう言うと、ララはすぐにリクオに抱き着くのを止め、彼から離れた。実は今まで抱き着いていたララを一部の者達……特にエルザやルーシィなどが、何とも言えない表情を浮かべながら少し羨ましそう見ていたことについては…触れなくてもいいだろう…。と、その時、

 

 

ガチャッ!

 

 

「ハハッ、随分賑やかにしてるね? ボクも混ざってもいいかな?」

 

 

『っ!?』

 

 

ララ達が入ってきたのとは別の入り口から、新たに1人の人物がやってきた。すると、それを見た当麻達“アイエール面々は一様に驚く。その人物とは紺色の髪をショートカットにしている、ソフィーより少し年上の女性だった…。

 

 

「「「サーシャッ!?」」」

 

 

その女性―――アレクサンドラ・アルシャーヴィン、通称“サーシャ”の姿を見た瞬間、エレンとミラ、そしてソフィーが真っ先に彼女へ駆け寄る。

 

 

「何をしているんだ、サーシャ!?」

 

 

「そうよ! あなたはまだ安静に…!」

 

 

「平気だよ。今日は普段よりもずっと気分が優れてるから…」

 

 

「でも、無暗(むやみ)に動いたらまた…」

 

 

エレンとリュドミラに対してサーシャがそう言うが、それを聞いたソフィーは心配そうな表情を浮かべる。と、そこへ、

 

 

「サーシャ」

 

 

「! やあ、当麻。すまない、変な心配を掛けてしまって…」

 

 

「全くだ…。何で無理してこっちに来た?」

 

 

「無理して来たつもりはないよ。ただ…君がエレン達を動かしてまで助けたのがどんな娘(こ)なのか、どうしてもこの目で見たくてね…。いいかい、当麻?」

 

 

サーシャが柔らかく微笑みながらそう言ってくると、それに対し当麻は…

 

 

「…はぁ…。ティッタ、その椅子をちょっと持ってきてくれ」

 

 

「は、はい!」

 

 

「ッ! おい、当麻…!」

 

 

「ここまで来ちまったんだ。もう今更だろ?」

 

 

何か言おうとするエレンに対して当麻がそう返すと、エレン達3人は心配そうな表情を浮かべつつ、持ってきた椅子に座るサーシャの傍に立った…。

 

 

「ああ、君達とも随分久しぶりだね」

 

 

「! ま、まあな」

 

 

「本当に大丈夫ですか、サーシャさん?」

 

 

「問題ないよ。それより、君達の御父上は元気にしてるかい?」

 

 

「うん♪ パパならいつも通り元気だよ、サーシャ♪」

 

 

「ハハッ、それは何よりだ」

 

 

そして、サーシャはララ達3人とも軽くやり取りをしたところで、リアス達の方に目を向ける…。

 

 

「さて…まずは自己紹介をしないだね。初めまして、ボクはアレクサンドラ・アルシャーヴィン。皆からは“サーシャ”と呼ばれてるから、君達もぜひそう呼んでほしい。これからよろしく頼むよ」

 

 

「…グレモリー家次期当主のリアス・グレモリーよ。丁寧な挨拶をしてくれてありがとう。とても光栄だわ。冥界でもその名が知られている“煌炎の朧姫(ファルプラム)”に会えるなんて」

 

 

「止(よ)してくれないか? ボクはそんな大層な人間じゃないよ」

 

 

サーシャとそんな挨拶を交わすリアス。それを見て…

 

 

「あ、朱乃さん? ひょっとして、この女性(ひと)も有名な人なんですか? 何か部長の雰囲気も変わった気がするんですけど…」

 

 

「ええ…。サーシャさんは、エレンさん達のいる“七大戦姫(シエラ・ヴァナディース)”の1人であり、最強の戦乙女(ヴァルキリー)と称されている方ですわ」

 

 

「さ、最強ッ!? マジですかッ!? 今の感じからは全然そう見えないんですけど…」

 

 

「詳しいことは分からないけど、噂で“病に掛かっている”と聞いたことがあるよ。どうやらあの様子だと、その噂は本当みたいだね…。でも、その強さは本物だよ。何せ前に一度ギド様と戦って、互角に渡り合ったと言われてるくらいだから…」

 

 

「…は…? そ、それって要するに……」

 

 

いつの間にか復活していたイッセーは朱乃と木場からそう言われて、思わず椅子に座って柔らかな雰囲気を醸し出しているサーシャの方を見る…。

 

 

(いや嘘だろッ!? 信じらんねえよッ!? あんな御淑やかそうな美人な人が、冥界最強の悪魔と同格ゥゥゥゥゥゥゥッ!?!?)

 

 

本日何度目かも分からない心の中での絶叫をするイッセーだった…。と、ここで、

 

 

「そういえば、もうそろそろ“あの娘達”が帰ってくるんじゃないかい?」

 

 

「! ホントだ! もうこんな時間…!」

 

 

「飛行機の到着時間から考えると、確かに丁度ここに着く頃だね」

 

 

サーシャの言葉を聞いた響と未来が部屋の時計を見ると、何かに気付いた様子でそう言った。

 

 

「…誰か帰ってくるんですか?」

 

 

「あ、うん。ちょっと別件で離れていた仲間が2人ね」

 

 

「多分そろそろの筈だ」

 

 

小猫の問い掛けに答えるリクオと一護。と、そこへ…

 

 

ガチャッ!

 

 

「ただいま」

 

 

「すまない、今戻った」

 

 

今度はララ達の入ってきたドアから、また新たに2人の人物が姿を見せた。1人は桃色のロングヘアーが特徴の少女、もう1人は青色のロングヘアーが特徴の少女である…。

 

 

「“翼”さん、お帰りなさい!」

 

 

「“マリア”もお帰り」

 

 

「お帰りデースッ!」

 

 

「ええ、ただいま」

 

 

「! 一護、この者達が…」

 

 

「ああ、こいつ等が前に電話で話した…」

 

 

そして響と調、切歌の3人に桃色の髪の少女―――マリア・カデンツァヴナ・イヴが声を掛ける中、青髪の少女―――風鳴翼が中にいるリアス達に気付いたため、一護が彼女達の紹介をしようとした…その時だった…。

 

 

「え、ちょ……ええええええええええええええええええええええええええええええええッ!?!?!?!?!?!?」

 

 

イッセーが突如凄まじい驚きの声を上げたのだ。しかもリアス達もかなり驚いた様子で翼とマリアを見ている。その理由は……

 

 

「な、何で日本とアメリカの歌姫がこんな所にッ!?!?!? おい、一護!! 一体どういうことだよッ!!??」

 

 

彼女達が“日米のトップアーティスト”であり、普通ならば絶対に直接会うことの出来ない存在なのだから…。

 

 

「何でって…こいつ等がさっき話してた“これから帰ってくる2人”だからだよ」

 

 

「はあっ!!?? あ、あの“風鳴翼”と“マリア・カデンツァヴナ・イヴ”が仲間って…嘘だろッ!?」

 

 

「いや、ここで嘘ついてどうすんだよ…。マリアと翼も響達と同じ系統の神器所有者で、立派な俺達の仲間だ」

 

 

依然信じられないといった様子のイッセーに対し、そう説明する一護。と、ここで…

 

 

「まさか、この2人があの“蒼天の斬殺者”と“白銀の執行者”なの?」

 

 

「ああ、そうだ。よく分かったな、リアス」

 

 

「想像は何となく付くわ。でも、まさか彼女達がそうだったなんて…」

 

 

当麻が自らの予想をあっさりと肯定すると、リアスはそう言いつつも驚きの表情を浮かべている。その一方で…

 

 

「あの、今部長さんが言っていた“蒼天の斬殺者”と“白銀の執行者”というのは、一体…」

 

 

「先程説明した“七聖の歌姫(プレアデス・ディーヴァ)”の残りの2人の異名ですわ。唯一その姿が分からない方々だったのですが…ふふっ、私も驚かずにはいられませんわね」

 

 

アーシアが朱乃に翼とマリアの異名について聞いていたり…

 

 

(いや、もうおかしいだろ!? 何で世界的トップアーティストまで仲間にしてんのッ!? もうこれライザーのハーレムなんか完全に比べ物にならねえよッ!! 羨ましいとかそんなレベルじゃねえよチクショオオオオオオオオオオオオオオッ…!!!)

 

 

イッセーがこの日一番の血涙を流しながら、嫉妬の念に駆られたりしていた…。それを見ていた翼を始めとするアイエールの女子達は、殆ど引いていたが…。

 

 

「悪いな、帰ってきて早々喧(やかま)しくて…。今日は久々のオフだろ? こっちは特に問題ねえから、部屋に戻ってくれても…」

 

 

「そんな気遣いは無用だ、一護」

 

 

「そうね。それに私達も、そこにいる悪魔達がどんな者達なのか気になるもの。このまま立ち会わせてもらうわ」

 

 

「そうか」

 

 

そして、一護の提案に翼とマリアがそう返していると、そこへ更に……

 

 

ガチャッ!

 

 

「やはり騒がしいな。おちおち部屋で休んでもいられん」

 

 

「ダ、ダメですよ、“キャロル”! そんなことを言っちゃ…」

 

 

2人の人物が翼達に続くように入って来た。1人は小猫よりも更に背の低い、“金色のおさげにした髪”が特徴的な少女。もう1人はその少女と同じくらいの身長で、“少々黒みがかった緑色のショートカット”が特徴的な少女だった。すると…

 

 

「キャロルちゃん! 来てくれたんだね!」

 

 

ガシッ!!

 

 

「っ! な、何故そこでお前が引っ付いてくるッ///!?」

 

 

「いや~、何かこう無性に愛(め)でたくなる衝動が…」

 

 

「ええいッ///!! 暑苦しいから離れろッ////!!」

 

 

響のスキンシップに金髪の少女―――キャロル・マールス・ディーンハイムが困惑し始めたり…

 

 

「あ、もう戻ってきてたんですね! お帰りなさい、マリアさん!」

 

 

「ええ、ただいま、エルフナイン」

 

 

黒みがかった緑髪の少女―――エルフナイン・マールス・ディーンハイムが、マリアとそんなやり取りを交わし始めた…。

 

 

「何だよ、お前等も来たのか…。つーかキャロル、お前“興味ないから自室で待機してる”って言ってただろ? どうしたんだよ?」

 

 

「ああ、確かにこの“グレモリー家の娘共”には特段興味など無いんだが、予想以上にやることが早く終わってしまったのでな。暇潰しくらいにはなるだろうと思ってきただけだ」

 

 

「キャ、キャロル…!」

 

 

「だ、だめだよ、キャロルちゃん…!」

 

 

一護がそう尋ねてきたのに対し、歯に衣着せぬといった様子で発言するキャロル。これには隣にいたエルフナインと響も思わず何か言おうとするが…

 

 

「随分と礼儀知らずな子供ね。少し教育がなっていないんじゃないかしら?」

 

 

「ふんっ、オレはただ素直に思ったことを言っただけだ。それに…たかが一悪魔に後れを取るつもりもない」

 

 

「っ……!」

 

 

その前にリアスといがみ合いを始めてしまったのだ。と、ここで…

 

 

「止せ、リアス。キャロルと一戦交えるのは本気でマズい」

 

 

「! どういうことかしら、当麻…?」

 

 

「まあ、確かに外見的には喧嘩を買いたい気持ちも分かるんだけどな…。けど、キャロルはここに居るメンバーの中でも実力的にはかなり上だ。頼むからやめてくれ」

 

 

(あ、あれ? 今当麻の奴、何かとんでもないこと言わなかった…?)

 

 

リアスと当麻のやり取りを聞いていたイッセーは、思わずそこでふと考え始めた。そう、当麻は確かに言ったのだ。この場に居る者達の中で最も幼い目の前の金髪の少女が、“この場に居る者達の中でもトップクラスの実力者”だと…。

 

 

「“終焉の錬金術師”…その呼び名くらいは聞いたことがあるだろ?」

 

 

「ッ!?!? 歴代最強と言われている伝説の錬金術師……まさか、こんな子供が!?」

 

 

「この身体はただの器に過ぎない…。この場で証明しても構わないが?」

 

 

当麻の口から出た単語を聞いたリアスが驚く中、キャロルは不敵な笑みを浮かべ、そう言い放つ。しかし…

 

 

「お前もそこまでにしろ、キャロル」

 

 

「! チッ……」

 

 

一護のそんな一言を聞くと、キャロルは舌打ちをしながらもアッサリと引いた…。それを見て、

 

 

「相変わらずだな」

 

 

「うん…」

 

 

「相変わらずデース」

 

 

クリスと調、更に切歌が何とも言えない表情で呟いていたのは……余談である……。

 

 

「あらあら、こんなに有名な方々が揃っていらっしゃるなんて、驚きで言葉も出ませんわ」

 

 

「ええ、私達の想像を超え過ぎてるわね…。戦闘能力は言うまでもないけれど、技術力に関しても“終焉の錬金術師”がいる以上、かなりのレベルじゃないかしら…」

 

 

これまでのアイエールのメンバー達の紹介を踏まえて、思わずその“層の厚さ”に感服し始める朱乃とリアス。それに対し…

 

 

「確かにキャロルは勿論、エルフナインも技術面ではキャロルに負けてないからね。それに……何より“あの人”がいるから…」

 

 

「! ああ…まあな……」

 

 

「? お、おい、どうしたんだよ?」

 

 

若干歯切れの悪い様子のリクオと一護を見て、思わずそう尋ねるイッセー。すると…

 

 

「確かにいるにはいるけど、な…」

 

 

「「ああ(ええ)…」」

 

 

「色々と、何とも言えない…」

 

 

「本当デース…」

 

 

「えっと……」

 

 

「あははは……」

 

 

上からクリス、翼、マリア、調、切歌、未来、響が微妙な表情や苦笑いを浮かべながら、そんなことを呟き始めた。しかもよく見ると、他の殆どのアイエールの女子達も同様の表情を浮かべている。と、その時だった……。

 

 

「おやおや、何だか僕の話をしているのが聞こえるねぇ…?」

 

 

『………!!』

 

 

突如そんな声が響き渡る…。

 

 

「初対面の人間…いや、悪魔達もいるようだし、ここは自己紹介も込めて言わせてもらおうか…。そう、僕こそが真実のヒト……!!」

 

 

そして……

 

 

「ドクター! ウェルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!」

 

 

「「オラアッ!!!」」

 

 

「グフォアッ!?」

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ……!!!!

 

 

その男―――ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスに…何故か当麻と一護の渾身のストレートが炸裂したのだった……。

 

 




という訳で、前編を投稿しました。


正直書いてみて、“やっぱり登場キャラ結構いるな~”と今更自覚しました。今後も更にキャラが出てくるので「大丈夫かよ…」と不安に思う方もいるかもしれませんが、引き続き頑張ります。


今回登場したキャラで意外と気に入っているのは、“魔弾の王と戦姫”のサーシャです。アニメしか見てないのですが、原作だと亡くなってしまうんですよね…。個人的にSAOと並んで惜しいキャラだと思ったので、登場させました…。


また最後に出てきたウェル博士ですが…多分この小説において最も色々やらかします。いや、ホントに…。



では、今日はこれにて失礼致します。





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とある組織へのお宅訪問(後編)


という訳で、前回の続きです。


先に言っておきますが、前半は最初の数行だけ変なテンションで書いています。読めば意味が分かるかと…。


そして後半は、“あの娘”が微妙に動き始めます。まあ、せっかくあの作品が参戦していますのでね…。



では、本編をどうぞ。



前回の流れを振り返ろう。当麻達3人の率いる謎の組織“アイエール”の拠点である彼等の家へやってきたグレモリー眷属一行。そこで待っていたのは数多の美女&美少女達であり、イッセーが度々変態となりながらも自己紹介を通じて組織の概要が明かされていく…。そして…

 

 

「「オラアッ!!」」

 

 

「グフォアッ!!??」

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!

 

 

当麻と一護の渾身のストレートが、ある1人の男にクリーンヒットしたのだった…。

 

 

「いや全然意味分かんねえよッ!? 確かに説明は合ってるけど、本当に意味分かんねえよッ!?」

 

 

「ど、どうなさったんですか、イッセーさん!?」

 

 

何かイッセーが地の文にツッコんでいたり、アーシアがそんなイッセーを心配していたりするが…まあ、置いておくとしよう…。そんな中、

 

 

「ぶ、ぶったね…!? “ブラ◯トさん”にもぶたれた事ないのにッ…!!」

 

 

「いや、ブラ◯トにぶたれた奴の方が少ねえよ。つーか色んな意味で作品が違うだろうが。お前のキャラも含めて全てが違えよ」

 

 

何処ぞの“某機動戦士”の話を持ち出してくる男(バカ)──ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス、通称“ウェル”に対し、冷めた表情でツッコむ一護…。

 

 

「フンッ、この英雄たる僕を殴るとは、相変わらず良い度胸をしてるじゃないか…」

 

 

「情緒どころかキャラすら安定してないお前は、英雄どころか一般人以下だと上条さん的に思うのでせうが?」

 

 

更に当麻もウェルにツッコミを入れていると、ここで、

 

 

「と、当麻…?」

 

 

「! ああ、悪いなリアス。変な所を見せちまって…」

 

 

「え、ええ、それは別にいいのだけれど…その男は?」

 

 

「あー、まあ、何だ…こいつがうちのサポート関係を基本的にしてるウェルだ。技術や研究に関してだけなら、キャロルにも負けねえ腕を持ってる」

 

 

「っ! この男が…?」

 

 

当麻の話を聞いたリアスは、信じがたいといった様子でウェルに目を向けた。まあ、初対面の人間なら誰でも不審がるだろうが…。

 

 

「で、何であんたもこっちに来た? あんたも悪魔とかには全く興味無いんじゃなかったか?」

 

 

「確かに、僕は悪魔だの天使だの堕天使だのには一切興味は無い。実際来るつもりもなかった。だが、ふと考え直してね…。そこにいる少年に興味が湧いたのさ」

 

 

「! お、俺…?」

 

 

「二天龍の片割れである赤龍帝の力は、“英雄”を騙(かた)るのに持ってこいの代物だ…。ここは1つ、実物を目にしてみるのも悪くないと思ってねぇ…」

 

 

そう話すウェルを見て、あからさまに表情を強張らせるイッセー…。

 

 

「もっとも、そこにいる英雄殿達を調べるのが一番楽なんだがね。あるいは彼女達を調べるという手も…」

 

 

そしてウェルが当麻達3人だけでなく、響達にも目を向けた、その時…

 

 

チャキッ…!

 

 

「冗談はそこまでにしてもらおうか、ウェル。でねえと…今すぐその首をはね飛ばすぞ…」

 

 

一護がいつの間にか神器を発動させ、ウェルの首元に“斬月”の刃を突き付けたのだ。しかも、その目からは明らかな“本気”が感じ取れた…。

 

 

「ええ、ええ、分かっておりますとも。僕は所詮生かされている身。自分の身の程くらいは弁(わきま)えますよ」

 

 

「弁えてるなら端(はな)からするんじゃねえ…」

 

 

しかしウェルが慌てる様子もなく、むしろおどけた感じでそう言うと、一護は斬月を下ろした上に神器も解除した…。一方それを見て、

 

 

「やっぱり嫌な男デース…」

 

 

「ダメだよ切ちゃん。私達が一番ドクターに御世話になってるんだから…」

 

 

切歌と調はそんなやり取りを交わしていた。そして、ウェルが何事も無かったかのように部屋の隅へと移動した所で…

 

 

「まあ、色々不安はあるだろうけど、今はとりあえず置いといてくれ。さっきも言ったが、こう見えても持ってる技術や知識は本物だからな」

 

 

「…分かったわ」

 

 

「悪いな。なら、後は…」

 

 

リアスが頷くのを見て、当麻が何かを言おうとした、その時、

 

 

ガチャッ!

 

 

「当麻」

 

 

「! おう、良い所で戻ってきたな、アカメ、クロメ」

 

 

入り口から入ってきたのは2人の少女。1人は“黒髪ロングヘアー”と“赤い瞳”が最大の特徴である少女──アカメ。もう1人は“黒髪のショートカット”と“黒い瞳”が最大の特徴で、見た目が何処となくアカメに似ている少女──クロメである…。

 

 

「この人達がそこにいるお姫様の眷属?」

 

 

「ああ、そうだ」

 

 

「ふーん…。まあ、いいや。初めまして、私はクロメ。それでここにいるのが…」

 

 

「アカメだ。よろしく頼む…」

 

 

「あ、見て分かると思うけど、私達はれっきとした姉妹だから…」

 

 

アカメが表情を変えることなく名乗ったのに対し、クロメは少しだけ笑みを浮かべながら軽く自分達のことを話した。

 

 

「“ナイトレイド”もあなた達の仲間なのね…?」

 

 

「まあな。今は別件で、ここにいるのはアカメとクロメだけだ」

 

 

リアスの問い掛けに対し、そう答える当麻。そんな中、

 

 

「お、おい、“ナイトレイド”って何だよ?(ボソッ)」

 

 

「一言で言うと、“神器使いで構成された暗殺者集団”って所かな(ボソッ)」

 

 

「っ!!? あ、暗殺者ッ…!?!?(ボソッ)」

 

 

「うん。三大勢力の間では、ヤミちゃんや芽亜ちゃん達と同じかそれ以上に名が通ってる程のね。しかも僕達の前にいるあの2人は、その中でも特に腕の立つ人達の筈だよ(ボソッ)」

 

 

「ま、まあ、確かにそういう雰囲気は感じるけど…(ボソッ)」

 

 

裕斗の話を聞いて、思わず顔を引きつらせながら呟くイッセー。彼女達がそれぞれ刀を携えているためか、何となく嫌な予感を感じ取っているようである…。

 

 

「にしても遅かったな。何かあったのか?」

 

 

「何かあった訳じゃない。ただそこで少し“合流”した」

 

 

「? “合流”…?」

 

 

一護の問い掛けに対し、アカメはそう答える。そしてリクオがその返答に疑問を感じていると…

 

 

「へぇ~、この娘(こ)があの“紅髪の殲滅姫”かぁ」

 

 

『ッ…!?』

 

 

「噂には聞いてたけど、これは確かに助ける価値があるな。いや~、俺も参加しといた方が良かったかね~…」

 

 

いつの間にかリアスの背後に、ある人物が立っていたのだ。それは薄紫のワイシャツの上に黒のスーツを着こなしている、見るからに軽そうな性格の男だった。すると…

 

 

スッ…

 

 

「……!」

 

 

「どうだい、お姫様? もし時間があるようなら、ぜひ俺とデートでも…」

 

 

「ッ!? テ、テメエッ!! いきなり部長に何しやがるッ!!」

 

 

その男はいきなりリアスの手を静かに取ったかと思うと、そんなことを尋ね出したのだ。言うまでもないだろうが、何処からどう見ても“ナンパ”である。そして、それを見たイッセーが怒りを露わにして神器を発動させようとした、その時…

 

 

ガンッ!!

 

 

「アイダッ!!? 何するんだよ“大将”~!」

 

 

「いや、それはこっちの台詞だ。帰ってきて早々何してやがる、“ジェノス”」

 

 

それよりも先に当麻が拳骨を喰らわせたのだ。しかもその後のやり取りからして、明らかに当麻達の知り合いのようである…。と、そこへ更に、

 

 

「いい加減お前さんのその癖は直してもらいてえもんだな。お前もそう思うだろォ、“ベルーガ”?」

 

 

「…………」

 

 

「チッ、相変わらず無口モードかい」

 

 

新たに2人の人間が部屋へと入ってくる。1人は“スキンヘッド”が最大の特徴である、ガタイの良い厳(いか)つい感じの男。もう1人は“2メートルを軽く越える程の高身長”が最大の特徴である、スキンヘッドの男よりも更にガタイの良い寡黙そうな男だった。そんな2人を見て、

 

 

(ちょ、な、何なんだよコイツ等!? 明らかにこの場に居て欲しくない奴等なんだけど…!?)

 

 

イッセーは即座に臨戦体勢を止め、これまで以上に顔を引きつらせた。まあ、当然であろう。この部屋にはイッセーや当麻達5人以外、全員が女子であり、しかも皆一様に美女&美少女である。そんな空間に突然明らかに年上な男達が現れ、その上2人が見るからに“ヤ◯ザ”的な外見となれば……萎縮するのがむしろ普通の反応だろう…。

 

 

「さっきの“合流”っていうのは、こういうことだったのか」

 

 

「丁度同じタイミングで戻ってきただけだから、特に意味は無いけどね」

 

 

一護の言葉を聞いたクロメは、笑みを崩すことなく返す。

 

 

「あー…悪いな、リアス。コイツ等は…」

 

 

「“時の番人(クロノ・ナンバーズ)”ね…」

 

 

「! まあ、流石に分かるよな…。ああ、コイツ等は番人(ナンバーズ)のジェノスとナイザー、それにベルーガだ」

 

 

リアスがそう呟くと、当麻は新たに現れた3人の男達──ジェノス・ハザード、ナイザー・ブラッカイマー、ベルーガ・J・ハードを軽く紹介した…。と、ここで、

 

 

「おい! そこのイケメン野郎ッ!!」

 

 

「ん…? 俺のことかい、少年I(アイ)君?」

 

 

「何だよ“少年I”って!! そんなことより、いつまで部長の側にいる気だよ!! いい加減離れろッ!!」

 

 

イッセーが再びジェノスに対して怒り始める。確かにジェノスは先程当麻に殴られていたにもかかわらず、未だにリアスのすぐ隣に居たのだ。それに対し、

 

 

「おいおい、こんな所で僻(ひが)むのは良くないと思うぜ? 変な僻みは女性から嫌われるってもんだ」

 

 

「ッ! う、うるせえ!! 僻んでなんかねえよ!! コノヤロオオオオオオオッ…!!!」

 

 

ジェノスの軽い雰囲気と言葉が間に障ったのか、嫉妬全開の様子で神器を発動させて殴り掛かろうとするイッセー。しかし、

 

 

「やめておけ」

 

 

ガンッ!!

 

 

「グフォッ!!?」

 

 

ドサッ!!

 

 

その行動は呆気なく中断された。エルザの拳骨によって…。

 

 

「な、何するんですか、エルザさん…?(涙声)」

 

 

「仕方無いだろう。もし今止めていなければ、お前は完全に“細切れ”になっていたのだからな…」

 

 

「……へ……? あ、あの、それってどういう…」

 

 

エルザの言葉の意味が分からず首を傾げているイッセー。すると、

 

 

「こういうことだ」

 

 

そこでいつの間にか用意していた木刀を持って現れたのは…翼だった。そして、先程までイッセーのいた所とほぼ同じ位置に立った、次の瞬間、

 

 

「はあっ!!」

 

 

シュインッ…!!!

 

 

「なっ…!!??」

 

 

イッセーは目の前で起きた出来事に絶句した。何故なら…翼が木刀を思い切り振った瞬間、木刀が何かで切り裂かれたかのようにバラバラになってしまったのだ…。

 

 

「ここにはその男の得物…“エクセリオン”が張り巡らせてあったのだ。あのまま突っ込んでいれば、お前は間違いなくこの木刀と同じ運命を辿っていただろう…」

 

 

「………(ガクガクガクッ!!)」

 

 

「あらあら…」

 

 

「だ、大丈夫ですか、イッセーさん…!?」

 

 

自身の細切れ姿を想像したであろうイッセーはあからさまに震え始める。それを見た朱乃は思わず苦笑いを浮かべ、アーシアは慌ててイッセーに駆け寄った…。一方で、

 

 

「あなたも程々にしなさい、ジェノス」

 

 

「大丈夫ですよ、セフィ姐。もしあのまま突っ込んできたとしても大丈夫なように、ちゃんと加減するつもりでしたから」

 

 

「いやいや! それでも十分危ないでしょ!?」

 

 

「平気だって、ルーシィちゃん。あ、ところで今度の土曜とか空いてる? 俺と出掛けない?」

 

 

「脈絡もなくナンパしてくんなッ!!」

 

 

バキッ!!

 

 

「ブフォアッ!!?」

 

 

当のジェノスはルーシィから右ストレートを喰らっていた…。どう見てもバカである…。

 

 

「この嬢ちゃんがあの魔王の妹ねぇ…。総帥さん方、マジでこの悪魔の嬢ちゃん達を含めて、悪魔陣営そのものに手を貸す気かよ? ちと早計過ぎるんじゃねえのかァ?」

 

 

「っ!? “手を貸す”? どういうこと、当麻…?」

 

 

ここでナイザーがリアス達を品定めするかのように見ながら当麻達に尋ねると、それを聞いたリアスは驚いた様子で続けて当麻に問い掛けた。

 

 

「あー…悪魔側と敵対する気はねえって、さっきも言っただろ? けど俺達としてはむしろ、悪魔側とは協力関係を結ぶつもりでいるんだよ」

 

 

「! 本当なの…?」

 

 

「まあな」

 

 

それを聞いたリアスは驚きと同時に、内心かなりの嬉しさを感じていた。明らかに強大な戦力を有している“アイエール”と協力関係を結ぶことが出来るのは冥界側の者としても非常に大きい上、何より“自分が好意を抱いている者”と引き続き協力関係を続けられることが大きかったようである…。すると、

 

 

「ただその条件として、あんたの兄貴に2つ頼みがあることを伝えて欲しい」

 

 

「? 何かしら…?」

 

 

「1つ目は簡単だ。絶対に俺達の怒りに触れるようなことはするな。破った場合は当然それ相応の報復をさせてもらう」

 

 

「…2つ目は…?」

 

 

「ここにいる内の何人かを、新しく駒王学園に編入させて欲しい」

 

 

「! 学園に…?」

 

 

当麻の口から出た2つ目の要求を聞いて、リアスは意外に感じていた。要求の内容にしては、あまりにも平凡に近かったからである。

 

 

「見て分かると思うが、ここにいる奴等の半数が俺達と同じくらいか年下でな。出来るだけ学校に通わせてえんだ」

 

 

「勿論、この街で何か起きた時にはなるべく協力するつもりです。流石に全員でっていうのは厳しいかもしれないけど…。どうですか、部長さん?」

 

 

一護とリクオの問い掛けに対し、リアスの返答は…

 

 

「分かったわ。その件については私からお兄様に手配するよう頼んでおくわ」

 

 

「! いいのか?」

 

 

「ええ、あなた達には本当に大きな借りを作ってしまっているもの。そのくらいのことは当然するわ。それに私達としても、あなた達がいざという時に協力してくれるのは有り難いもの」

 

 

「そうか。なら…」

 

 

スッ…

 

 

リアスが承諾の意を示すと、当麻は右手を差し出した。

 

 

「色々あったけど、これからも宜しく頼むぜ? 部長」

 

 

「! ええ…こちらこそ宜しく頼むわ」

 

 

差し出された右手の意味を理解したリアスは、自身も右手を差し出し…しっかりと握手を交わす。それは言うまでもなく、リアス達“グレモリー眷属”と当麻達“アイエール”との関係締結を表していた…。と、ここで、

 

 

「あ、そうだ! ねえねえ、リクオ! 実は私達も今度からリアス達の学園に通うんだ♪」

 

 

「っ!? そうなの、モモ?」

 

 

「はい♪」

 

 

「本当なの? 私は何も聞いてないのだけど…」

 

 

「姉上とモモが父上に頼んだんだよ。多分その内、お前の兄貴から連絡が来ると思うぞ?」

 

 

ララとモモのカミングアウトを聞いたリアスが疑問を感じていると、ナナがそう補足した。だが…問題は次だった…。

 

 

「あと、私達はこれからこちらに住むつもりなので、宜しくお願いしますね♪」

 

 

「「「……は(え)……?」」」

 

 

『えええええええ(はああああああ)ッ!!??』

 

 

続けてモモがそう言った瞬間、当麻達3人は呆気に取られ、アイエール側の女子達数名は驚きを露わにした。すると…

 

 

「お、おい!? 何だよそれ!? アタシは聞いてねえぞ!?」

 

 

「あら? そうだったかしら?」

 

 

「ッ! お前、絶対わざと黙ってただろ!! 姉上! 姉上からも何か言って…」

 

 

モモの悪戯な笑みを見た瞬間、ナナは即座に彼女の考えに気付き、ララに加勢を求めようとした。しかし、当のララはというと…

 

 

「ね! いいでしょ、リクオ!」

 

 

「えっと…」

 

 

「ちょっ!? あ、姉上…!?」

 

 

彼女もモモの味方だった…。一方、そんな突然の御願いを聞いたリクオ達3人は…

 

 

【ど、どうしようか、当麻、一護…?】

 

 

【いや、どうするって言われても…】

 

 

【まあ、この家なら部屋には全然困らねえし…何より確実にアイツが絡んでるからな…】

 

 

頭の中でそんなやり取りをしていた。ちなみに彼等3人には、ララ達の背後に彼女達の父親の姿が浮かんでいたりする…。そして、その結果、

 

 

「ティッタ、今から3人分の部屋の支度、やってくれるか?」

 

 

「え? あ、はい!」

 

 

「! リクオ、住んでいいの!?」

 

 

「う、うん。特に断る理由もないし、ね…」

 

 

「わーい!! リクオ、ありがとー♪」

 

 

「お、おい! 何でお前等も許してんだよ!?」

 

 

当麻がティッタにそう頼んでいる中、ナナは3人が承諾を出したことに対してツッコんだ。ちなみに、そのやり取りを見て若干数名が何とも言い難い表情を浮かべていたのは…まあ、余談である…。と、その時だった。

 

 

「ねえ、当麻?」

 

 

「? どうした、リアス?」

 

 

当麻がそう尋ねると、リアスは何処か妖艶な笑みを浮かべ、こう言った…。

 

 

「今日から私も、ここに住まわせてもらっていいかしら♪」

 

 

『……はあああああああああああああああああああああああ(えええええええええええええええええええええええ)ッ!!!???』

 

 

響き渡る本日2度目の絶叫。中でも特に絶叫を上げていたのは…イッセーだった…。

 

 

 

☆☆

 

 

その後は軽い談笑なども踏まえつつ、時間も時間であったために今日の所は解散となり、グレモリー眷属の面々は皆帰路に着いた…。ただ“1人”を除いて…。

 

 

「リアスさん」

 

 

「…!」

 

 

邸内を歩いていたリアスに話し掛けたのは、彼女と同じく“この家の新たな住人”となったモモである…。

 

 

「モモ、あなたも邸内の散策かしら?」

 

 

「いえ、私は何度もこちらへ来ていますから」

 

 

「! そうよね。何しろここには貴女の許嫁も暮らしている訳だし」

 

 

「ええ♪」

 

 

ここで先程のやり取りの結末を言っておくと、結局リアスはこの当麻達の暮らす家に住むことになった。ララ達と同じく当麻達3人に断る理由が無かったことに加え、何よりリアスの決意の固さが要因だったようである。もっとも、それを聞いた時のイッセーはこの日一番の大量の血涙を流しながら当麻達3人を睨み付けていたが…。すると…

 

 

「でも驚きました。まさかリアスさんも私達と同じことを考えていたなんて」

 

 

「驚いたのは私の方よ。まさか貴女達3人が当麻達と知り合いで、しかも全員リクオの許嫁だったなんて…」

 

 

「すみません。さっきお姉様も言っていたように、お父様からの指示で秘密にするよう言われてたんです」

 

 

「! じゃあ、やっぱりギド様も…」

 

 

「ええ、リクオさん達のことや“アイエール”という組織のことも当然知っています。というより、私達デビルーク家は前々からリクオさん達と協力関係を結んでいたんですよ?」

 

 

「ッ! そうなの…?」

 

 

「はい♪ 今回アイエールの存在が明らかになったことで、近々お父様もそのことを公表する筈です。まあ、リクオさんと私達の関係はまだ内緒にするつもりみたいですけど…。あ! リアスさん達も、くれぐれも内緒にしてくださいね?」

 

 

「ええ、分かったわ」

 

 

モモのそんな御願いを聞いたリアスは、当然といった様子で頷いた…。と、ここで、

 

 

「ところで、リアスさん?」

 

 

「? 何かしら?」

 

 

「リアスさんは当麻さんのことが御好きなんですよね?」

 

 

「ッ…////!?」

 

 

小悪魔風の笑みを浮かべるモモの突然の問い掛けに、思わず顔を紅潮させるリアス…。

 

 

「随分藪(やぶ)から棒に聞いてくるのね…?」

 

 

「ふふっ、すみません♪ それで、どうなんですか…?」

 

 

「…ええ、そうよ。あんな形で助けられたら、惚れない訳ないじゃない…////」

 

 

「あらあら♪」

 

 

あからさまに恥ずかしそうに答えるリアスに対し、モモは何処となく朱乃のような雰囲気を醸し出し始める。

 

 

「一体何なの? からかうつもりだったなら…」

 

 

「いいえ。ただ、そろそろ“本題”に入りたかったので」

 

 

「? “本題”…?」

 

 

モモの口から出た単語を聞いて、疑問を感じざるを得ないリアス。すると、そんな彼女に対してモモがこう尋ねる…。

 

 

「リアスさんも薄々気付いていますよね? “恋敵(ライバル)”がたくさんいる事に…」

 

 

「……!」

 

 

そう言われたリアスの頭の中には、数人の少女達の姿が思い浮かんだ。それは当麻に思い切り懐いている“絶剣使い”と、色々言いながらも常に傍に居る“氷の狙撃手”、そして……先程リアスがここに住むと言った際、あからさまな文句を述べていた戦姫達2人などである…。

 

 

「多分リアスさんの頭に浮かんでいる人達以外にも、“恋敵(ライバル)”は大勢いると思いますよ? それに…恋敵が大勢いるのは、当麻さんだけじゃありません」

 

 

「…! 一護とリクオにも?」

 

 

「はい。一体誰が御二人のどちらを慕っているのかも、リアスさんなら何となく分かると思いますけど…。いずれにせよ、あの3人を好きな人達はたくさんいます。しかもこれから先のことを考えると、更にその人達の数は増えていくと思いますよ?」

 

 

「…そうね、実際私もその1人な訳だし…。はぁ…何だか先が思いやられるわね…」

 

 

そんなモモの言葉を聞いたリアスは、思わず溜息を吐きながら呟いた。今彼等に好意を抱いているであろう者達は、目の前にモモを含め、彼女から見ても遜色の一切無い美女や美少女ばかり。しかもその殆どがリアスよりも格上の実力者ばかりなのだ。現在自身が想いを寄せている当麻に限定したとしても、やはり現状でも十分厳しい。その上自分の把握していない、あるいは近い内に現れるであろう新たな“恋敵(ライバル)”ことを考えれば…先行きを不安に思うのも無理のない話と言える…。と、ここで、

 

 

「ふふっ♪ 色々不安に思っているみたいですけど、本題はここからですよ?」

 

 

「? どういうこと…?」

 

 

「リアスさんは、“ハーレム”についてどう考えていますか?」

 

 

「……!!」

 

 

モモの口から飛び出した新たな単語を聞いて、大きく反応するリアス…。

 

 

「冥界では“悪魔の駒(イーヴィル・ピース)”やレーティングゲームの関係で定着していますが、この人間界や天界などではあまり良く思われていないみたいですね。でも…それでたくさんの人達が幸せになるのなら、素晴らしいことだと思いませんか?」

 

 

「…モモ、ひょっとしてあなた…」

 

 

リアスが何かに気付いたのを見て、モモは…

 

 

「そう、結ばれるのは1人だけじゃない…全員結ばれればいいんです。リクオさんと一護さん、そして当麻さんの3人をそれぞれ取り囲む、究極のハーレムを作ることによって…」

 

 

こう言い放ったのだ。そしてその際の彼女は、またしても先程のような小悪魔を思い起こさせる笑みを浮かべていた…。

 

 

「…あなたはその計画のために動いているというの?」

 

 

「はい♪」

 

 

「何故そんなことを? あなたが好きなのはリクオでしょ? 百歩譲ってリクオのことはともかく、どうして当麻と一護まで……?」

 

 

「当然ですよ。確かに私が好きなのはリクオさんですが、当麻さんと一護さんも本当にお優しい殿方ですし…。それに、ここにいる女性の方々は私にとって皆さん“良いお友達”や“尊敬する御姉様”達ばかりですから…。まあ、男性陣は少し別ですけどね…」

 

 

「……それには同意するわ」

 

 

当麻達3人以外の男性陣を思い浮かべ、お互いに苦笑するモモとリアス。まあ、確かに何処ぞの“キャラの不安定な変態博士”と“ナンパが趣味のような男”、そして“完全にヤ○ザにしか見えない男2人”となれば……感想に困るのも当然と言えるだろう…。

 

 

「じゃあ、どうしてその計画のことを私に?」

 

 

「ふふっ♪ 勿論リアスさんにこの事を知ってもらって…出来ることなら、協力して欲しかったからです」

 

 

「……私が協力する保証はおろか、黙っている保証も無いと思うのだけれど?」

 

 

「特に何か根拠があって話した訳じゃありません。ただ…何となく今のリアスさんなら、話してもいいと思ったんです。当麻さんに好意を抱いている、今のリアスさんになら…」

 

 

「…………」

 

 

モモの意味深な発言を聞いて、リアスは何かを考え始める…。

 

 

「といっても、今すぐに返答を聞くつもりはありません。色々考えた上で結論を出して頂きたいので、今はせめて周りの人達に黙ってもらえればそれでいいんですけど…いかがですか、リアスさん?」

 

 

そして、その問い掛けに対し、リアスは……

 

 

「…分かったわ。とりあえず、そのことについては秘密にしておくわ」

 

 

「! ふふっ、ありがとうございます♪」

 

 

「じゃあ、もういいわね?」

 

 

「はい」

 

 

モモの妥協案を承諾し、その場を後にしようとした。と、その時、

 

 

「…1つ聞いてもいいかしら?」

 

 

「? はい、何でしょうか?」

 

 

「…あなたはその計画が、本当に実現すると思ってる?」

 

 

「!」

 

 

「正直に答えて頂戴…」

 

 

ここでリアスがそんな事を尋ねてきたのだ。すると、それに対してモモは少し驚きながらも…今度は何処か柔らかな笑みを浮かべながらこう言った…。

 

 

「ええ…。だって先程も言ったように、リクオさん達は強くて優しい殿方ですから。本当に、私達の想像を遙かに超える程……。それはリアスさんも、何となく分かっているんじゃないですか?」

 

 

「……!」

 

 

リアスはモモのそんな言葉に反応を見せながらも、何も言わずに去っていってしまった。だが、そんな彼女の姿を見送ったモモはというと……

 

 

「やっぱり流石としか言いようがないわね、リクオさん達は…。新しい候補の方々も何人かいるし…ふふっ、早速色々練り直さないと♪」

 

 

再び小悪魔のような笑みを浮かべ…何処かこれからの事に期待を膨らませながら、楽しげにそう呟いていた…。

 




前半に登場したウェルですが、別の意味でこの作品のキーパーソンですね。前回も言ったかと思いますが、多分色々な意味で暴走するかと…。もう片鱗が見えていますが…。



後半は完全にモモの独壇場といった感じになりました。こちらについては色々な意味で不安ですが……まあ、頑張りたいと思います。


では、今回はこれにて失礼致します…。



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そうだ、使い魔を探しに行こう!(某京都勧誘CM風に)

久しぶりの投稿になってしまいました。今回はその分、かなり長めの内容です。


前半は比較的原作に沿ってますが、後半は……“ある系統のネタ”のオンパレードになっております。若干キャラ崩壊も起きている気がします…。



とにかく色々ご了承ください…。では、本編をどうぞ。


オカルト研究部とアイエールの面々の邂逅から数日後、オカルト研究部の部室には既に当麻やリアス達が集まっていた。だが、以前とは明らかに違うことがある…。

 

 

「学園にはすっかり馴染めてるようね」

 

 

「「はい(うん)!」」

 

 

リアスの言葉に頷いたのは響とララの2人。そう、言うまでもなく彼女達を始めとしたアイエールの学生組が、駒王学園に転入したのである。転入したのはマリアを除く響達“七聖の歌姫(プレアデス・ディーヴァ)”の面々やキャロルとエルフナインの2人、エルザやミラジェーン、ルーシィ、ウェンディ、リサーナ、レビィ、ララ達デビルーク三姉妹、アカメ・クロメの姉妹、そしてティッタである。

ちなみに高等部の3年には翼とエルザ、ミラの3人が、2年にはクリス、ルーシィ、リサーナ、レビィ、ララ、アカメの6人が、1年には響、未来、ナナ、モモ、クロメ、ティッタの6人が転入。中等部には調と切歌が2年に、そして初等部にはウェンディが6年に、キャロルとエルフナインが4年に転入している。そして多少クラスのバラツキはあるものの、それぞれの所属するクラスに当麻やリアス達オカルト研究部の面々がいるのは…偶然である…。

 

 

「今日は学園全体が喧しかったな」

 

 

「そうだね。皆自己紹介が終わった後、一斉に囲まれて大変だったみたいだし…」

 

 

「まあ、その後上条さん達が大変な目に遭ったんだけどな…」

 

 

最後に当麻がそう言うと、一護は疲れたような表情を、リクオは苦笑いを浮かべた。まあ、騒ぎになるのは当然であろう。10名を軽く超える人間が一斉に学園に転入してきたかと思えば、その転入生全員が美少女であり、その上1人は世界的に有名なトップアーティストなのだから…。しかし騒ぎになるだけならよかったのだが、その後のやり取りで当麻達3人が知り合いであり、尚且つ同じ家に全員一緒に暮らしていることが発覚すると、松田や元浜を始めとした男子生徒達の嫉妬が爆発。一斉に彼等に襲い掛かったのである…。といっても、その者達は何だかんだで見事に返り討ちにあったのだが…。

 

 

「しかも何でお前まで一緒に参加してんだよ、イッセー」

 

 

「うるせえッ!! 松田や元浜達の反応を見てたら、俺の中に眠ってた怒りが爆発したんだよ!!」

 

 

「いや、意味分かんねえよ…」

 

 

イッセーの怒りの理由が分かっていない様子の一護。どうやらイッセーも返り討ちに遭った人間の1人のようである。と、ここで、

 

 

「ところで、あなた達に1つ相談があるのだけど…」

 

 

「? 相談、ですか…?」

 

 

「ええ、実は…」

 

 

首を傾げるウェンディに対し、リアスが本題を切り出そうとすると…

 

 

「この部活に入れって所か?」

 

 

「! よく分かったわね…?」

 

 

「芽亜達からこの部活のことを聞いたんだよ。ちなみにアタシ等全員、元から入るつもりだったんだ。リクオ達からも勧められてたしな」

 

 

「! 本当なの、当麻?」

 

 

「ん? ああ、まあな。この先のことを考えると、アカメ達にもここに所属してもらった方が色々と動きやすそうだったし…」

 

 

クリスとナナの発言を聞いたリアスが尋ねると、当麻はサラッとそう答えた…。

 

 

「それなら話は早いわね…。私達オカルト研究部は、あなた達の入部を歓迎するわ。これから宜しくお願いね」

 

 

「あらあら、一気に大所帯になりましたわね、部長♪」

 

 

こうして、アカメや響、エルザ達はオカルト研究部に所属することとなった…。

 

 

「あの、ところでこの後は一体何をするつもりなんですか…?」

 

 

「話が終わったなら、オレはさっさと帰らせてもらうが…」

 

 

「いいえ、本題はこれからよ。まず1つは……」

 

 

エルフナインとキャロルに対し、リアスが何かを言おうとした、その時だった…。

 

 

コンコンッ!

 

 

『!」

 

 

「どうぞ」

 

 

ガチャッ!

 

 

入り口のドアからノックの音が聞こえ、朱乃が返事をすると、入り口から10人近くの男女が入ってきたのだ。といっても、見たところ男子は1人だけのようであり、尚且つその男子は部室にいる面々…特にアイエール側の女子達の姿を見て驚いているようだが……。

 

 

「失礼します。ごきげんよう、リアス」

 

 

「ええ、ごきげんよう、“ソーナ”」

 

 

そんな男女の集団の中で、先頭に立っていた少女が挨拶すると、リアスはそう挨拶を返した。と、ここで…

 

 

「せ、生徒会長…?」

 

 

イッセーが挨拶をした少女を見て驚きの様子を見せた。彼女の名は支取蒼那。駒王学園高等部の生徒会長であり、黒髪のショートカットと眼鏡が特徴的な、“クールビューティー”という単語が似合いそうな3年の女子生徒である…。すると、

 

 

「リアス先輩、ひょっとして彼に僕達のことを話してなかったんですか? まあ、同じ悪魔なのに気付かないコイツもどうよって感じですけど…」

 

 

「上条さん的には悪魔になって割と日の浅いイッセーが気付かないのは、しょうがないと思うのでせうがね~…」

 

 

「ッ!? か、上条!? それに黒崎と奴良まで!! 何でお前等がここに……!!」

 

 

暗い金髪の男子生徒の偉そうな発言に対して当麻がそう言うと、その男子生徒は経った今当麻と一護とリクオに気付いたらしく、何故か目の敵にするような表情を浮かべて睨み始めたのだ…。しかし、

 

 

「お止めなさい、“匙”。彼の言う通りです。それに私達はお互い干渉しないようにしていたのだから、兵藤君が知らないのはむしろ当然です」

 

 

「…! は、はい…」

 

 

「“悪魔”って、まさか…!」

 

 

「ええ、こちらは……」

 

 

その男子生徒――匙元士郎と蒼那のやり取りを聞いて、ようやく察したイッセー。そして、それを見た朱乃が紹介しようとすると……

 

 

「ソーナ・シトリー、上級悪魔のシトリー家の次期当主…。ってことは、周りは全員その眷属か。生徒会そのものを一眷属でまとめてるとはな…」

 

 

「! どうやら既にご存知だったようですね…。初めまして、私はソーナ・シトリーといいます。この学園では生徒会長として、支取蒼那と名乗っています。これからよろしくお願いしますね、上条君、黒崎君、奴良君……。いえ、それとも新興組織である“アイエール”のトップとして挨拶をした方がよろしいでしょうか…?」

 

 

一護がソーナの正体を口にすると、ソーナは真剣な表情で一護達に礼儀正しい挨拶を交えながら尋ねた…。

 

 

「か、会長!? ア、アイエールって、まさか…!?」

 

 

「ええ、彼等が先日冥界でその存在を公にした“アイエール”のトップ3を務める方達です。特にそちらにいる上条君は、あのフェニックス家の三男をいとも容易く、しかも無傷で倒しています。もっとも、そちらにいる方達を始めとした二つ名持ちの神器所有者を束ねている以上、当然といえば当然なのですが…」

 

 

「フェ、フェニックスを無傷でッ!? あり得ないだろ…」

 

 

ソーナの話を聞き、信じられないといった様子で呟く匙…。と、ここで、

 

 

「お前、確か最近生徒会の書記に任命された、2年C組の……」

 

 

「匙元士郎、兵士(ポーン)です」

 

 

「それならこちらも紹介しないとね。兵士の兵藤一誠、僧侶(ビショップ)のアーシア・アルジェントよ」

 

 

見覚えがある様子のイッセーにソーナが匙を紹介すると、リアスもイッセーとアーシアを紹介した…。

 

 

「へぇ! お前も兵士かー! それも同学年なんて…!」

 

 

「はぁ…俺としては、変態3人組の1人と一緒にされるのは酷くプライドが傷つくんだけどな」

 

 

「「「「「同感ね(です)(だな)」」」」」

 

 

「ゴフッ…!?!?」

 

 

匙の発言を聞いて小猫、ヤミ、シノン、紗矢華、ナナの5人が一様に同意すると、イッセーはもろに精神的ダメージを受けた…。

 

 

「ハッ、どうやらこっちでも変態としての扱いは変わらないらしいな」

 

 

「な、何だとテンメェ…!!」

 

 

「おう、やるか? 俺も悪魔になったばかりだが、こう見えても駒4つ消費の兵士だぜ?」

 

 

そして、精神的ダメージを引きずるイッセーに対し、匙は余裕な態度で挑発するが…

 

 

「お止めなさい、匙。それに、彼は駒を8つ消費しているのよ?」

 

 

「っ!? 8つって、全部じゃないですかッ!? 信じられない…こんな冴えない奴が…」

 

 

「うるせえッ!!」

 

 

「そんなに気にしなくても平気だよ? 私達と戦ったら5秒持たないくらいだから♪」

 

 

「…………(グサッ!!!)」

 

 

芽亜の純粋な発言に、更なる精神的ダメージを被るイッセー…。

 

 

「ごめんなさいね、兵藤君、アルジェントさん。宜しければ、新人悪魔同士、仲良くしてあげてください…。匙」

 

 

「! あ、はい…」

 

 

ソーナにそう言われた匙は、少し微妙な表情を浮かべつつイッセーに手を差し出そうとした、その時、

 

 

パシッ!

 

 

「初めまして、これから宜しくお願いしますね!」

 

 

先にアーシアが匙の手を取り、挨拶をしてきたのだ。すると…

 

 

ガシッ!!

 

 

「ひゃッ!?」

 

 

「アーシアさんなら大歓迎だよ!!」

 

 

匙は素早くアーシアの手を取り直し、緩みきった笑みを浮かべて挨拶を返してきたのだ。しかし…

 

 

ガッ!!

 

 

「ハハハッ! 匙君、俺のこともよろしくね! つーか、アーシアに手を出したらマジ殺すからね、匙君!」

 

 

「うんうん! よろしくね、兵藤君! 金髪美少女を独り占めだなんて、本当にエロエロな鬼畜君なんだねッ! やー、天罰でも起きないものかなー! 下校途中に落雷にでも当たって死んでしまえッ!!」

 

 

イッセーが無理矢理匙の手をアーシアから引き離したことで、お互いに気味の悪い笑みを見せながら暴言と力一杯の握手の応酬を始めてしまう…。それを見て、

 

 

【この人、兵藤先輩の同類ですね…】

 

 

【あー、みたいだな…】

 

 

【また変なのが増えたデース…】

 

 

【ダメだよ、切ちゃん。そんなこと言っちゃ…】

 

 

雪菜と一護、切歌、調がそんなやり取りを頭の中でしていた…。

 

 

「匙、上条君達にも挨拶を」

 

 

「! は、はい…」

 

 

ここでソーナから指示が出ると、匙は何故か複雑な表情を浮かべながら当麻達3人の下へとやってきた…。

 

 

「そっちとも色々協力することがありそうだな。よろしく頼むぜ?」

 

 

「あ、ああ、よろしく…」

 

 

そして、当麻と握手を交わした…その時、

 

 

「「「ユウキ(雪菜)(ヤミ)達に妙な真似しようとしたら…分かるよな(よね)…?」」」

 

 

「……………(ゾクッ!!!!!)」

 

 

サッ…!!!

 

 

「? どうしたのですか、匙?」

 

 

「いいい、いえ! なななな、何でもありませんよ! かかかかか、会長……!!!!(ガクガクガクッ)」

 

 

「??」

 

 

ガクガクと震える匙の様子に首を傾げるソーナだが、当の匙はそれどころではなかった。若干殺気の篭った当麻達3人の言葉は匙には効果絶大だったようで、ユウキや響達への挨拶も忘れて退いてしまう程だった…。と、ここで、

 

 

「それで、例のことについてだけど…本当にいいの、ソーナ?」

 

 

「ええ、今回はあなた達に譲ります。そうですね…先日の騒動の“お祝い”という形で捉えてください」

 

 

「! 気を遣わなくてもいいのに…。でも、そういうことなら有り難く受け取らせてもらうわ」

 

 

「ええ、そうしてください。それでは、生徒会の仕事がありますので、私達はこれで」

 

 

「分かったわ」

 

 

ソーナはリアスにこの場を去る旨を伝えた。すると、

 

 

「あなた達も、これから宜しくお願いしますね、スカーレットさん、ストラウスさん」

 

 

「ああ…。だがその呼び方はやめてくれないか?」

 

 

「そうね。私も妹がいるから、その呼び方だと色々困りそうだし…」

 

 

ソーナがエルザとミラジェーンに目を向け、そんな会話を交わし始めたのだ。そして…

 

 

「分かりました。では、また明日お会いしましょう、エルザさん、ミラジェーンさん」

 

 

「ああ、それで頼む」

 

 

「椿姫も、また明日ね♪」

 

 

「! はい」

 

 

ソーナの隣に控えていた黒のロングヘアーと眼鏡が特徴的な女子生徒──真羅椿姫にもミラジェーンが声を掛けると、ソーナ達生徒会メンバーは部室を後にしていった…。

 

 

「2人共、会長さん達と知り合いだったの?」

 

 

「ああ」

 

 

「私達、あの2人と同じクラスなのよ♪」

 

 

「! そういえばそうだったわね。それじゃあ、ソーナ達のことも…」

 

 

「当然、最初から悪魔だと見抜いていた」

 

 

「そうよね。あなた達ほどの実力者なら、見落とす筈もないし…」

 

 

リクオの問い掛けに対する2人の返答を聞いて、リアスは一応確認を取った。と、ここで、

 

 

「グレモリー」

 

 

「! 何かしら、翼?」

 

 

「“例のこと”というのは、一体何の話だ?」

 

 

「もしかして、これからすることに関係してるんですか?」

 

 

「! ええ」

 

 

翼と未来が尋ねると、リアスはこう答えた…。

 

 

「イッセー、アーシア、今日はあなた達の“使い魔”を探しに行くわよ」

 

 

 

☆☆

 

 

時は少し経過し、その日の夜……

 

 

「着いたわ。ここが使い魔を捕まえる場所、“使い魔の森”よ」

 

 

当麻とリアス達は“使い魔の森”という冥界にある特殊な森林地帯へとやってきていた。え? 当麻はどうやって来たのかって? それはまあ…秘密です…。

 

 

「使い魔の森、ですか…」

 

 

「ハッ、間違いなく何処ぞの“ポケット”な“モンスター”に出てくるフィールドのパクりですね~。いやはや、全く冥界の悪魔共も何を考えているのやら…」

 

 

『……………………』

 

 

暫しの静寂。そして……

 

 

ドゴッ!!×2

 

 

「グフォッ!!?」

 

 

当麻と一護の右ストレートが顔面にめり込まれた。その人物とは…

 

 

「おい、どっから湧いて出やがった、変態博士」

 

 

「あァッ!? 誰が変態博士だゴラアッ!! この僕を一体何だと思ってるんですか!?」

 

 

「だから変態博士だって言ってんだろうが。せめて言葉遣いくらい安定させろ」

 

 

はい、言わなくても分かりますよね? 皆大好き(?)ウェル博士です…。

 

 

「あの、本当にどうしてここに居るんですか、ウェル博士?」

 

 

「なに、実験に必要な個体が少々不足していましてね~。せっかくですから、ここで採集を…」

 

 

(あ、絶対に連れてきちゃいけない人を連れてきてる、僕達…)

 

 

自身の問い掛けに対するウェルの返答を聞き、思わず顔を引きつらせるリクオ…。まあ、実験サンプルの採集を目的に使い魔の森を訪れるというのは…どう考えてもマズい予感しかしない…。

 

 

「あー…悪いな、リアス。本当はマリアだけ連れてくる筈だったんだが…」

 

 

「ごめんなさい、いつの間にか付いてきていたわ…」

 

 

「まあ、確かにちょっと鬱陶しくはあるけど平気よ」

 

 

当麻とマリアの謝罪に対して、リアスはそう返した。ちなみにマリアは今日単独での仕事を終えた所で、この場に合流している。また他のアイエールの面々に関して言うと、セフィリアやジェノス、ナイザー、ベルーガ、エレン、リュドミラ、ソフィーは別件で人間界を離れており、サーシャは言うまでもなく療養中の身。ティッタもそんな彼女の傍に付くため、邸宅に残っている…。

 

 

「それに、これから会う“彼”も中々変わった人だから」

 

 

「? ここに誰か来るのか?」

 

 

「ええ、もうそろそろ現れる頃だと思うけど…」

 

 

自身の発言に対するアカメの問い掛けに、リアスは辺りを見回しながら答えようとした。と、その時、

 

 

「ゲットだぜぃッ!」

 

 

「「ふぇっ!?」」

 

 

突如聞こえてきた声に驚く響とユウキ。その声のした方を向いてみると、ランニングに短パン、そして帽子をズラしての被っている男が木の上に立っていた…。

 

 

スタッ…!

 

 

「俺はマダラタウンのザドゥージ! 世界一の使い魔マスターを目指している男だぜぃ! リアス・グレモリー嬢、ソイツ等が使い魔を捕まえたいって奴等か?」

 

 

「ええ。イッセー、アーシア、この人は使い魔のスペシャリストよ。この人の話を参考にして使い魔を探しなさい」

 

 

(あの、どこからどう見ても信用できない人なんだけど…)

 

 

(色んな意味で間違いなくパクりじゃねえかッ!!)

 

 

その男──ザドゥージの見た目に、思わず心の中でツッコむルーシィとクリス。と、ここで、

 

 

「? グレモリー嬢、後ろの奴等はいいのか?」

 

 

「! ああ、この子達は…」

 

 

ザドゥージが当麻達の方に目を向けたため、軽く紹介をしようとするリアス。すると、

 

 

「なんだ…リアスの言ってた協力者って、お前のことだったのかよ」

 

 

「ッ! ナ、ナナ嬢!? それにララ嬢とモモ嬢も居んのか!?」

 

 

「ヤッホー♪」

 

 

「お久しぶりですね、ザドゥージさん」

 

 

デビルーク三姉妹がザドゥージとそんなやり取りを交わし始めたのだ…。それを見て、

 

 

「彼と知り合いなの、あなた達?」

 

 

「ま、まあな。あたしとモモは使い魔を結構持ってるから、その縁で…」

 

 

「私とナナ、それに御姉様も何度かここを訪れてるんですよ」

 

 

「だからザドゥージともその度に会ってるんだよね~♪」

 

 

リアスの問い掛けに、それぞれそう答えるデビルーク三姉妹。

 

 

「それより、話を進めなくていいのかよ?」

 

 

「! おっと、そうだったぜぃ…! 最近のオススメはコイツだ! 龍王の一角にして伝説級のドラゴン、“天魔の業龍(カオスカルマドラゴン)・ティアマット”! 魔王並みに強いぜ!!」

 

 

「いらねえよ!! 何だよ魔王並みって!? ヤバ過ぎるだろッ!!」

 

 

ナナからそう言われたザドゥージは、懐からカタログらしきものを取り出して薦めるが、イッセーはあまりのレベルの高さに絶叫した。しかし…

 

 

「あ~、ただコイツは住み処にしていた洞窟をフラッと出ていったっきり、戻ってこなくてな~。ひょっとしたら住み処を別のところに移したのかもしれねえなぁ…」

 

 

「いや、残念そうに言ってるけど俺には無理だから!! そんな魔王並みに強いドラゴンを使い魔にするなんて絶対無理だから!!」

 

 

ザドゥージの発言にイッセーがツッコミを入れていた、その時、

 

 

「確かに、お主のような軟弱者には無理じゃな」

 

 

「そうそう! 俺みたいな軟弱者には無理……って、え…?」

 

 

聞き覚えのない声であることに気付いたイッセーは、すぐさまその声の主を見つけた。それは…いつの間にか当麻の隣に立っている、若干露出のある青い着物を着た美女だった…。

 

 

「あー…“ティア”さん? 何故に出てきているのでせうか?」

 

 

「仕方ないであろう。何やら妾(わらわ)の名が出てきているので、少々気になってな」

 

 

「さ、さいですか…」

 

 

「あ、新しい美女の登場…グヘヘ…。って、おい当麻!! お前その美女誰だよ!? またお前の知り合いか!? 何でお前等ばっかりィィィッ…!!」

 

 

当麻と新たに登場した美女──ティアのやり取りを見て、嫌らしい笑みと嫉妬の怒りを交互に見せるイッセー…。

 

 

「部長! 部長からも何か言って……あれ? どうしたんですか、部長? ていうか他の皆も何でそんな驚いて…」

 

 

「…イッセー? あなた、彼女が何者か本当に分からないの?」

 

 

「え……?」

 

 

表情を強張らせたリアスの言葉の意味が分からない様子のイッセーに対し、ザドゥージはこう伝えた…。

 

 

「そ、そいつがさっき話してた、“ティアマット”だぜぃ…」

 

 

「………はい………?」

 

 

沈黙すること数秒、そして………

 

 

「ええええええええええええええええええッ!!!???」

 

 

イッセーの絶叫が木霊した…。

 

 

「いや、ちょ、ええっ!!?? だだ、だって、“ティアマット”ってドラゴンじゃ…!?」

 

 

「今はこうして人の姿になっているだけじゃ。龍の姿では影響が大きいのでな。分かったか、小僧?」

 

 

「はは、はいッ…! いやいやいや! 何で龍王の一角と普通に仲良く出来てんだよ当麻!? これ絶対におかしいだろ!?」

 

 

ティアの正体を聞いて明らかに動揺するイッセーだったが、尚のこと当麻がそんな彼女と普通に接している状況にツッコんだ。すると…

 

 

「念のために聞いておくわね、当麻…? あなたとティアマットの関係は…?」

 

 

「いや、関係も何も……ティアは“俺の使い魔”なのでせうが…?」

 

 

それを聞いた瞬間、グレモリー眷属の面々とザドゥージは完全に硬直した…。それを見て、

 

 

「まあ、当然の反応だよね…」

 

 

「私達も当麻が連れて帰ってきた時には、流石に驚いたし…」

 

 

「お久しぶりです、ティアさん」

 

 

「! ああ、お主も元気そうじゃな、ウェンディ」

 

 

レビィとリサーナが苦笑いを浮かべてそう呟く中、ティアはウェンディと軽く挨拶を交わしていた。

 

 

「あらあら…」

 

 

「何となく予想はしていたのだけど…やっぱり衝撃ね…」

 

 

「…規格外過ぎです」

 

 

「しかもウェンディちゃんとも普通に話してるね…。“龍殺し(ドラゴンスレイヤー)”と“龍王”が何事もなく会話してるなんて…」

 

 

「はわわわわわ…!!?」

 

 

「何なの!? お前本当何なの!?!?」

 

 

「まさか、本当に龍王の一角を使い魔にする奴がいるとはなぁ…。しかも、人間とは益々驚きだぜぃ…」

 

 

復活したリアス達は依然驚きを隠しきれない様子だった。特にアーシアとイッセーに関しては…若干壊れ気味である…。

 

 

「ふむ、確かに当時の妾もまさか人間の使い魔になるとは全く思っておらんかった…。あれほど綺麗に“敗ける”ことはもう一生無いであろうな」

 

 

『………………』

 

 

(何も聞こえなかった何も聞こえなかった何も何も何も……)

 

 

ティアの口から飛び出した発言を聞いて、再び硬直するグレモリー眷属とザドゥージ。イッセーに至っては…最早現実逃避に走っている。余程自身のクラスメイトの規格外さが信じられないようである…。と、ここで、

 

 

「ちょっといいか、リアス?」

 

 

「! え、ええ。何かしら、一護?」

 

 

「俺達はここから別行動させてもらってもいいか?」

 

 

「? 別行動?」

 

 

一護の突然の提案に、首を傾げるリアス。

 

 

「これだけ大所帯だと色々動きづらいだろ? こっちにもナナ達がいるし、お前等はイッセーとアーシアの使い魔を探すのに専念した方がいいんじゃねえか?」

 

 

「! 確かに、その方が良いわね…。分かったわ。じゃあ、後で合流しましょう」

 

 

こうしてイッセーとアーシアの使い魔探しをリアス達に任せた当麻達は、別行動を開始した…。

 

 

 

☆☆

 

 

そして、しばらく森の中を歩いた当麻達は現在…

 

 

「勝手に行かせて本当に大丈夫なのか、リクオ?」

 

 

「ナナやモモ達が問題ないって言ってたからね。それに皆も何人かに固めて行かせたし…」

 

 

「第一、アイツ等の力なら基本何が起こっても大丈夫だろうしな」

 

 

固まって立ち話をしながら、この場にいない少女達を待っていた。ナナ達の先導の下で使い魔の候補を探していたが、彼女達の提案で各自別れてすることになったのだ。ちなみにティアは気分転換に龍の姿へと戻り、少しばかり空中散歩を楽しんでいる…。

 

 

「どういう使い魔を連れてくるかね~、アイツ等?」

 

 

「さあな。まあ何にせよ、これからの事を考えれば使い魔を持ってて損はねえだろ?」

 

 

連れてくる使い魔の候補がどんなものか、想像しながらやり取りを交わす当麻と一護。と、そこへ、

 

 

「当麻ーー!!」

 

 

「一護さーーん!!」

 

 

「! おう、ユウキ」

 

 

「それに響も一緒か。使い魔になりそうな奴は見つかったか?」

 

 

戻ってきたユウキと響に問い掛ける当麻と一護。すると…

 

 

「うん! しかもボクと響は“同じ子”を選んだよ!」

 

 

「? 同じ?」

 

 

「はい! この子です!」

 

 

そう言うと、ユウキと響は確かに全く同じ生物を見せる。それは……

 

 

【【僕と契約して、“魔○少女”になってよ!】】

 

 

「「………………」」

 

 

長い耳が特徴的な、“キ”で始まり“え”で終わる白い生物(?)だった。それを見た当麻と一護は完全に硬直する…。

 

 

「ふ、2人共、コレは一体何処で拾ってきたのかな?」

 

 

「え? えっと…シノンとはぐれて歩いてたら、急にこの子が現れて…」

 

 

「あ! 私も未来やクリスちゃんとはぐれちゃったと思ったら、急にこの子が出てきたんです! 確かその時、“素質”がどうとかって聞こえたような…」

 

 

2人の代わりにリクオが引きつった笑顔を浮かべて尋ねると、ユウキと当麻は出会った時の状況を説明した。

 

 

ガシッ!!×2

 

 

「あー、ユウキ? ちょっとコイツを借りてもいいか…?」

 

 

「悪いな、響。お前のも借りるぞ…?」

 

 

「? うん!」

 

 

「いいですよ!」

 

 

ようやく硬直の解けた当麻と一護が、ユウキと響から2匹の某“キュ○ベえ”を借り、近くの木陰へと持って行ったのだ。そして数秒後……

 

 

「あー…悪い、ユウキ、響」

 

 

「アイツ等が急に暴れたせいで逃がしちまった」

 

 

「ふええッ!!?」

 

 

「ヒ、ヒドいよ~、当麻~、一護~! せっかく2人で御揃いの使い魔にしようと思ってたのに…」

 

 

戻ってきた2人からそう言われ、ショックを受けるユウキと響。だが…

 

 

「わ、悪いな。今度何かしら埋め合わせするから、それで勘弁してくれ」

 

 

「! 本当ですか、一護さん!?」

 

 

「お、おう…」

 

 

「絶対忘れないでね、当麻!!」

 

 

「あ、ああ…」

 

 

一護の口から飛び出した提案を聞くと、2人そんなショックなどあっという間に吹き飛ばし、嬉しそうな表情を浮かべ始めた。この時点で彼女達の中にどんな想いがあるかは…簡単に分かるであろう…。ちなみに彼等が出てきた木陰に、『訳が分からないよ…』と言っている蜂の巣状態の白い生物がいることなど、ユウキと響が知る筈もなかった。また……

 

 

【おい!! 何でこんな所にあんな訳の分からねえ奴が居んだよ!? 最早作品が違えだろうがッ!!】

 

 

【それは上条さんが聞きてえよッ!! しかも何で連れてきたのがこの2人なんでせうかッ!? どう考えても絶望しかもたらされねえよ!? その内“宇宙規模の魔女”が誕生しますことよ!?】

 

 

当麻と一護が頭の中で“彼女達の中の人”に関わる話をしていたことも…当然2人が知る筈もなかった…。と、そこへ、

 

 

「いた! 響~!」

 

 

「このバカ! 今まで何処に行ってたんだよ!?」

 

 

「! 未来! クリスちゃん!」

 

 

「戻ってきてたのね、ユウキ」

 

 

「! シノン!」

 

 

響やユウキと行動を共にしていた筈の未来やクリス、そしてシノンが戻ってきたかと思えば…

 

 

「見つからなかったデース…」

 

 

「仕方無いよ、切ちゃん。また今度探しに来よう?」

 

 

切歌や調も続いて戻ってきた…。

 

 

「使い魔になりそうな奴は見つかったか?」

 

 

「とりあえず調と切歌は見つかんなかったみてえだが…」

 

 

「えっと…私達の中だと、クリスだけかな?」

 

 

「! 本当デスか!?」

 

 

当麻と一護の問い掛けに対して未来がそう言うと、切歌が目を輝かせながらクリスに尋ねた。しかし…

 

 

「いや、確かに見つけたには見つけたけどよ…」

 

 

「? どうしたの、クリス…?」

 

 

当のクリスの歯切れの悪い様子を見て、思わず首を傾げるリクオ。と、その時だった……。

 

 

『テヤンデー! テヤンデー!』

 

 

「「……は……?」」

 

 

突如聞こえてきた音声に、再び硬直する当麻と一護。その主は……バレーボールより一回り程小さい、オレンジ色の球体のロボットらしき物体だった…。

 

 

「何なんだ、こいつ…?」

 

 

((それはこっちの台詞だアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!))

 

 

クリスが首を傾げながらそう言ったのに対し、当麻と一護は心の中でシャウトした…。

 

 

「お~ッ!!」

 

 

「まるでロボットみたい…」

 

 

【いや違うからな!? “ロボットみたい”じゃなくて、完全なるロボットだからな!?】

 

 

【つーか、ここ使い魔になりそうな奴を探すための森だよな!? どう見ても使い魔になるどころか、そもそも生き物ですらねえだろ、そいつ!!】

 

 

現在クリスに抱えられている物体に、目を輝かせる切歌と調。しかし当麻と一護がツッコんでいるように、その物体はこの場に絶対居てはならない、“ハ”で始まり“ロ”で終わる自立行動型ロボットである…。え? 名称が完全に出ている? いやいや…気のせいです、うん…。それと何故このロボットがクリスの下に登場したのかについては……

 

 

雪音クリス = CV:高垣○陽 =フェ○ト・グレイス(“機動○士ガン○ム00”)

 

 

という方程式に沿っている…とだけ言っておこう…。と、そこへ、

 

 

「フンッ…何を騒いでいるかと思えば、どうやら貴様等もマトモな使い魔を見つけられていないようだな」

 

 

「あ、キャロルちゃん! それにエルフナインちゃんも…!」

 

 

「す、すみません、今戻りました…」

 

 

戻ってきたキャロルとエルフナインに声を掛ける響…。

 

 

「随分と上からだが、お前今“も”って言ったよな? ってこたぁ…」

 

 

「そっちも同じじゃないデスか…!!」

 

 

「勘違いするな。お前達と同類なのは、俺の隣にいるコイツだ」

 

 

「! うぅ…」

 

 

小馬鹿にするような口調が感に障ったのか、クリスと切歌がそう指摘するが、それに対してキャロルは隣にいるエルフナインを指しながら返した。すると…

 

 

「えっと…エルフナイン? 一応聞くけど、君が連れてきたのは一体どんな使い魔なの?」

 

 

「は、はい、あの…こ、この子です…」

 

 

エルフナインはおずおずと何かを抱え上げた。それは……

 

 

「おいッ! 俺をどうするつもりだテメエ等ッ!? “丸焼き”にしても美味しくねえぞッ!!」

 

 

「ふぇ~、大きい豚だね~! 丸焼きにしたら絶対に美味しそう~…!!」

 

 

「ひ、響? それよりもっと気にしなくちゃいけない所があるんじゃないかな…?」

 

 

今にも丸焼きにされそうな様子で縛られている、中々の大きさの豚だった…。“人と会話できる”というスキルを持っているが…。

 

 

「俺をただの豚だと思ったら大間違いだ!! 俺は泣く子も黙る“残○処理騎士団”団長のホー○様だぞ!! どうだ! ビビったか!?」

 

 

【【いや何で“残○処理騎士団”がこんな所に居んだよオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!??】】

 

 

その豚(?)が威張り気味に叫ぶ中、当麻と一護はまたしてもシャウトせざるを得なかった…。

 

 

「本当にコイツを使い魔にすんのか? 喋る以外はどう見てもただの豚だぞ…?」

 

 

「分かんないよ、クリスちゃん! もしかしたら火とか吹けるかも!」

 

 

「いや、お前はさっきまでコイツを食う気満々だったろうが…」

 

 

「す、すみません、何だかこの子が自分と重なるような気がして…」

 

 

【そりゃそうだろうな! 何しろ中の人間が一緒なんだから、重なって当然だろうな!!】

 

 

響とクリスがそんなやり取りを交わす中、当麻は相変わらずおっかなびっくりなエルフナインの発言を聞いて、思わずツッコんだ…。ちなみに、響の発言が強ち間違いじゃなかったり…

 

 

「ねえねえ、リクオー」

 

 

「? どうしたの、ユウキ?」

 

 

「何かこの子を初めて見た気がしないんだけど…何でだろう?」

 

 

「! えっと、な、何でだろうね、あははは…」

 

 

「私もだ」

 

 

「うわっ!? ア、アカメ!? いつの間に戻って…!?」

 

 

「たった今だよ。お姉ちゃんが急に“呼ばれてる気がする”って言って、戻ってきたの。それで? 今は何してるの?」

 

 

「え? えっと…僕にも分からない、かな…」

 

 

リクオとユウキ、そしてクロメと共に戻ってきたアカメがそんな会話を交わしていたり…

 

 

「むっ!! な、何だ!? 何だか無性に胸を揉みたい衝動が…!!」

 

 

「…死んでください」

 

 

「ちょっ!? 小猫ちゃん待って!! それは本当に死…アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ…!!?!?!?」

 

 

何処ぞの“某大罪的作品”の団長と同じ声の変態が、無意味な発言をして小猫に殺されかけたりしていたりする…。何故この4人が反応したかについては、“キャスト”という単語から考えれば分かるだろう…。と、ここで、

 

 

「ねぇ…」

 

 

「! 何だ、月読調…?」

 

 

「あなたの使い魔の候補はどんな子なの?」

 

 

「! そうデスよ! いい加減見せるデースッ!!」

 

 

調がキャロルに尋ねると、切歌もそれを聞いて催促し始めた。すると、

 

 

「フッ、なら見せてやろう…。俺がお前達より優れている証を…!」

 

 

「おおっ! キャロルちゃん、いつも以上に自信満々…!」

 

 

「う、うん…でも何となく嫌な予感が…」

 

 

小さな身体で一生懸命威張るキャロルの姿に響が反応する一方、何故か根拠のない不安を覚える未来…。そして、キャロルは満を持して自身の使い魔候補を御披露目した。それは……

 

 

モフッ…!

 

 

『………………』

 

 

「……(キュイッ!)」

 

 

何処ぞの某“兎”的な作品に登場する、真っ白な毛玉のようなアンゴラウサギだった。そして、キャロルはそんなウサギを頭に乗せて一言……

 

 

「どうだ? お前達とは全く次元が違うだろう?」

 

 

「「いや完全に同じ次元じゃねえかアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」」

 

 

これには当麻と一護もついに声を上げてシャウトした…。

 

 

「何だと? 一体この“ティッ○ー”の何処が貴様等の候補と同次元にいる?」

 

 

「全てだよッ!! もう誰がどう見ても間違いなく同じレベルだろうがッ!! つーか今、そいつのこと完全に“ティッ○ー”って呼んだよな!? “ティッ○ー”って認めたよな!?」

 

 

「当然だ。この毛玉に“ティッ○ー”以外の名称があると思っているのか?」

 

 

「何で平然と言ってくんだよ!? とにかく謝れ! 特にエルフナインには入念にな!!」

 

 

「あ、あの、僕は全然気にしてませんから…!」

 

 

トンデモ発言を次々と繰り出すキャロルに対し、一護は思わずツッコミながら謝罪を促す。もっとも、当のエルフナインは相も変わらずオロオロとした様子でそう言っているが…。ちなみに…

 

 

「調」

 

 

「? どうしたの、切ちゃん?」

 

 

「今私の頭の中に“お姉ちゃんに任せなさい!”って声が響いたデース…」

 

 

「…きっと気のせいだと思うよ…」

 

 

切歌の頭の中に何処ぞの“姉オーラ全開のベーカリーの看板娘”のセリフが響いていたり…

 

 

「…!」

 

 

「? どうしたの、雪菜?」

 

 

「あ、いえ…今何となく“この場にいてはいけない毛玉”が登場してしまったような気が…」

 

 

「ゆ、雪菜? 本当に大丈夫…?」

 

 

別行動を取っている雪菜に某“ミリタリー少女”の意識が乗り移りかけていたり……

 

 

「はわわわッ! ま、待ってくださいぃ~…!!」

 

 

「…ねえ、レビィちゃん」

 

 

「? どうしたの、ルーちゃん?」

 

 

「今ウェンディが追っかけてる黒い兎が“この場に居ちゃいけないモノ”な気がするのは……私だけ……?」

 

 

「???」

 

 

何処かでウェンディが某“和風喫茶の看板黒兎”を追っかけていたりしていたのは………余談である……。

 

 

「と、とりあえず落ち着いて、一護。エルフナインも大丈夫って言ってるし」

 

 

「! あ、ああ…」

 

 

「そ、そうだぜ一護! もうこれ以上“更に上を行くようなモノ”は無いだろうし、ここは一旦落ち着いて…」

 

 

リクオの一言で一旦仕切り直そうとした一護と当麻。だが……それはあからさまなフラグだった……。

 

 

「いたいた! リクオ~~ッ!!」

 

 

「あ、ララさん!」

 

 

ララ達デビルーク三姉妹が戻ってきたのを見て、声を上げる響…。

 

 

「おかえり。どう? 使い魔になりそうな候補は見つかった?」

 

 

「え、ええ、まあ…」

 

 

「あ、姉上が一応…な…」

 

 

「? 何よ、一応って…?」

 

 

リクオの問い掛けに対するモモとナナの歯切れの悪い返答を聞いて、シノンが思わず尋ねるが……

 

 

「見て見てリクオ~! こんな子見つけたよ~!!」

 

 

ララが早速自身の使い魔候補となる物体を披露してくる。それは……

 

 

「俺の名は、自分の賠責は自分でニャンとかする“ジ○イセキニャン”!」

 

 

((更に上を行く奴いたアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!??))

 

 

何処ぞの某“妖怪アニメ”のキャラをオマージュ(?)した、某“いちご味的な北○の拳”に登場する猫らしき生物だった……。

 

 

「えへへ! どう? 可愛いでしょ?」

 

 

「いや“可愛い”とかよりもまず“ヤバい”ですよね!? 何とんでもないの連れてきちゃってるんですかララさん!!??」

 

 

「? うーん…凄く見覚えがあったからかな~?」

 

 

「何で見覚えがあんだよ!? お前の中に“どっかの主人公”の意識でも入ってんのか!? つーかそれにしても違えだろ!? 完全にこれただの“パクリキャラ”でしかねえだろうが!!」

 

 

自分の連れて来たモノが何なのか一切分かっていないララに対し、割と全力でツッコむ当麻と一護。ちなみに一護の言う主人公が何かついては…“ララの中の人”を考えれば分かるだろう…。もっとも…

 

 

「生きてるみんニャ、もしもの時のための自賠責保険に入るニャ!」

 

 

「「はーーいッ!!」」

 

 

「テメエも何サラッと勧誘してやがるッ!! さっさと“世紀末のバカ三兄弟”のいる世界に帰れッ!!!」

 

 

「フニャ~~~~~ッ!?!!?!?!?」

 

 

いつの間にかユウキと響に保険の勧誘をして、クリスに絶賛シバかれ中の猫は……特段ララと関係がある訳ではないのだが…。

 

 

「おい、モモ、ナナ? ここは使い魔になりそうな悪魔以外に、いつもこんな“色んな意味で危ねえ連中”までいる所なのか?」

 

 

「い、いえ、そんなことは無い筈ですけど…」

 

 

「ここを管理してる奴も“あんな感じ”だからな…」

 

 

「! 確かに、そこは上条さんも失念していた…」

 

 

モモとナナが何処ぞの使い魔マスターのことを挙げると、妙に納得してしまう当麻。まあ、彼から漂うあからさまな〝別作品の匂い”を思い起こせば、納得するのも当然であろう…。と、そこへ、

 

 

「あ、もう皆戻ってきてたのね」

 

 

「! おかえり、ルーシィ。それにウェンディ達も」

 

 

「その様子だと、皆空振り…?」

 

 

「うん」

 

 

「使い魔になりそうな悪魔なんて、そう簡単に見つけられるもんじゃないしね…」

 

 

戻ってきたのはルーシィとウェンディ、ミラジェーン、レビィ、リサーナの5人だった。そしてリクオが出迎えの言葉を口にする中、クロメの問い掛けにレビィとリサーナが答えていると…

 

 

「? エルザはどうした?」

 

 

「あ、エルザなら今使い魔になりそうな子を連れて向かって来てる筈よ♪」

 

 

「! エルザさんが見つけたんですか?」

 

 

「ええ♪」

 

 

アカメと未来が尋ねたのに対し、いつもの笑顔でそう答えるミラジェーン。それを聞いて…

 

 

「エルザさんが見つけた使い魔候補か~。一体どんなのなんだろう?」

 

 

「ま、あいつの御眼鏡に適(かな)うくらいだからな。まず普通じゃねえだろ…」

 

 

「きっと滅茶苦茶強い奴デースッ!!」

 

 

「うん、期待できる…」

 

 

割と期待を膨らませている方向の響、クリス、切歌、調に対し……

 

 

(な、何故だ…)

 

 

(とてつもなく嫌な予感しかしねえ……)

 

 

当麻と一護は盛大に顔を引きつらせ、あからさまに不安を露わにしていた。何故なら……今までの流れが全てを表していたのだから…。そして……

 

 

「すまない、遅くなった」

 

 

「あ、お帰りなさい、エルザ♪ どう? “あの子”は連れて来れた?」

 

 

「ああ、少々手間取ってしまったが、何とかな…。さて、では早速紹介するとしよう」

 

 

丁度エルザが戻ってきたかと思うと、彼女はミラの問い掛けに応じつつ……いきなり自身の連れてきた候補を披露してきた。すると……

 

 

『……………………………』

 

 

それを見た殆どの者達が……完全に硬直した……。何故なら……

 

 

『………………………』

 

 

それは大きな二つの単眼を持つ……某〝光線(レ○ザー)級”の適性宇宙生物だった…。

 

 

「どうだ? 大きな目が実に愛らしいであろう?」

 

 

「「いや何処がアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?!?」」

 

 

エルザの発言を聞いて、この日一番のシャウトをかます当麻と一護…。

 

 

「…あまり強そうではないな。攻撃力に欠ける気がする」

 

 

(見た目に騙されていけませんですことよアカメさん!? そいつの火力ヤバいから!! 30キロ先の戦闘機も一瞬で蒸発させることが出来るからッ!!)

 

 

(つーか何なんだよ!? 何で最後の最後で色々悪魔以上にヤバいのが出てくんだよ!? しかも、何でよりによってお前がそいつを連れてくんだよエルザッ!?!?)

 

 

見た目によるアカメの予想に関しては、心の中でツッコミを入れる。すると……

 

 

「エ、エルザさん? ど、どうしてその子を使い魔に? や、やっぱり見た目が気に入ったんですか…?」

 

 

ウェンディが明らかに怯え切った様子でエルザに尋ねたのだ。すると、それに対してエルザはこう答えた…。

 

 

「確かにそれもそうだが……何となく見覚えがあってな。愛着が湧いてしまった」

 

 

(何でだアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?!?)

 

 

(あれか!? また意識でも入ったのか!? どっかの〝スウェーデン衛士”の意識でも入ったのか!? つーかそれなら何愛着持ってんだよ!? どう考えてもそいつを駆逐する側だろうが!!)

 

 

当麻と一護が心の中で再びシャウトをするのは必然だった…。一体何の話か分からない場合は、“トー○ルイクリプス”で検索してください……。と、その時、

 

 

「い、一兄…」

 

 

「! どうした、切歌?」

 

 

「あいつの目が両目とも光っているように見えるのは、気のせいデスか?」

 

 

「……………………」

 

 

『……………………』

 

 

その瞬間、その場に居たほぼ全員が一瞬沈黙した……。某〝光線級”を目の前で興味深々な様子で観察しているユウキと響以外……。

 

 

「「き、気のせいじゃねえええええええええええええええッ!!!!??」」

 

 

ガバッ!!×2

 

 

「「ふぇっ////!?」」

 

 

血相を変えて叫んだ当麻と一護は一気にユウキと響の下へ近づくと、瞬時に2人を抱きかかえ、その場から飛び退いた。そして……

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ……!!!!!

 

 

『…………………………』

 

 

先程まで響とユウキが居た場所を熱線が通過したかと思うと、その熱線は遙か彼方まで進んで大爆発を引き起こし………およそ数十キロの直線上の一帯を、全て焼野原へと変えてしまった…。それを見て、

 

 

「ほぉ…中々の威力ではないか」

 

 

「キャ、キャロル! そういう問題じゃないですよ…!」

 

 

純粋にその威力に感心するキャロルに対し、エルフナインが慌ててそう言っていたり……

 

 

「あ、危ねえ~……!」

 

 

「おい、大丈夫か、ユウキ、響……? おい、どうした…?」

 

 

「ふぇっ/////!? あ、えっと……////」

 

 

「あの…そ、そろそろ降ろしてもらってもいいですか…////?」

 

 

「! お、おお、そうだったな…」

 

 

「悪ぃな。すっかり忘れてたぜ…」

 

 

ユウキと響がそれぞれ当麻や一護とそんなやり取りを交わしていたり……

 

 

「おや? これは“ネ○アームストロングサイクロンジェットアームストロング砲”ではないですか。完成度高えな、おい」

 

 

「戻ってきて早々とんでもねえこと言ってんじゃねえよ!? つか“アームストロング”2回言ったよなッ!? どう見ても違えだろッ!!」

 

 

サンプル採集から戻ってきたバカ博士の発言にクリスがツッコんだりしていたのは……まあ、余談である……。と、ここで、

 

 

「! お、おい…!」

 

 

「もう早速2撃目を放とうとしてるわよ…!」

 

 

「このままだとこの森全体が焼野原になりそうだね、お姉ちゃん」

 

 

「ああ、そうだな」

 

 

「お前等はもう少し緊迫感を持てよ!?」

 

 

某“光線級”が次発を撃とうとしていることに気付き、クリスとシノン、アカメ、クロメがそれぞれ言った。もっとも、明らかに後者の姉妹のテンションが違ったためにナナが思わずツッコミを入れているが…。そして、まさに熱線が再び放たれようとした、その時、

 

 

「「ハアアアアアアアッ!!!!」」

 

 

「「「! 翼さん(先輩)!!」」」

 

 

「「マリア!!」」

 

 

そこへ現れたのは、“青と白を基調としたパワードスーツを連想させる戦闘装束”を身に纏った翼と、“銀と白を基調としたパワードスーツを連想させる戦闘装束”を身に纏ったマリアだった。すると2人は某“光線級”の左右から迫っていき……

 

 

「私の仲間に手を出すな!! この、愚か者がアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

ザァァンッ!!!!×3

 

 

((いや何でお前も一緒に参加してんだアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!???))

 

 

エルザと共に某“光線級”をバラバラに斬り刻んだ……。

 

 

「全員無事か!?」

 

 

「! あ、はい…!」

 

 

「お、お前等、何でここに?」

 

 

「何でって…向こうの方で凄い轟音が聞こえたからに決まってるじゃない! 襲撃でもあったのかと思って、慌てて戻ってきたのよ…!」

 

 

翼の安否確認の問い掛けに響が応じる中、一護の問い掛けに対してマリアは若干声を張り上げながら返し始める…。

 

 

「それより何があったのだ? 先程斬り刻んだこの生物は一体……」

 

 

「! えっと……まあ、一言で言うと…」

 

 

「“こちらが蒔いた種”でせう…」

 

 

「…?」

 

 

「全く意味が分からないのだけれど…」

 

 

「悪ぃ、後でちゃんと説明してやるから…勘弁してくれ…」

 

 

「! だ、大丈夫か、一護? 物凄く疲れているようだが……」

 

 

「ああ、そうだな……。色々疲れることがありまくったからかもな……」

 

 

「「??」」

 

 

当麻とリクオ、そして一護の発言の意味が分からず、首を傾げるしかない翼とマリア。その一方で、

 

 

「何でエルザも交ざって一緒に退治しちゃってるのよ!? アレに愛着があったんじゃなかったの!?」

 

 

「? 決まっているだろう。奴が私達の仲間に危害を加えようとしたからだ。これ以上の理由はいらん」

 

 

「いや、まあ、確かにそうなんだけど…」

 

 

「ふふっ、エルザらしいわね♪」

 

 

「ミ、ミラ姉? それは少しズレてるんじゃない…?」

 

 

エルザの行動に対してルーシィが未だに困惑していたり、ミラジェーンの発言にリサーナが少々苦笑いを浮かべていたりもしたが……まあ、気にしないということで…。

 

 

「あと戻ってきていないのは……」

 

 

「えっと~…紗矢華と雪菜ちゃん、それにヤミちゃんと芽亜ちゃんだけだね!」

 

 

「まだ探してるのかな? もうとっくに戻ってきていそうな気もするけど…」

 

 

ここでモモとララが戻ってきていないメンバーを確認し、リクオが少々不思議がっていると……

 

 

『きゃああああああああああッ!!!??』

 

 

『ッ!!?』

 

 

突如、甲高い悲鳴が響き渡った……。

 

 

「今の悲鳴って…」

 

 

「雪菜ちゃんと紗矢華ちゃんだよ!!」

 

 

「もしかして、2人に何かあったんじゃ…!?」

 

 

レビィとララが悲鳴の主を戻ってきていない4人の内の2人だと断定すると、ウェンディはすぐに2人の身に何か起きたのではないかと思い、心配そうな表情を浮かべる…。

 

 

「話は後だ!」

 

 

「急いで向かうぞ!」

 

 

一護と当麻の一声を皮切りに、すぐさま悲鳴の聞こえてきた方へ走って向かう一行…。

 

 

「! この魔力…リアス達も一緒か」

 

 

「じゃあ、部長さん達にも何かあったってこと…!?」

 

 

途中で当麻とユウキがそんなやり取りを交わす中、一行は目指していた場所へと到着した…。

 

 

「雪菜! 紗矢華!」

 

 

「無事か!? リアス………はい………?」

 

 

そして一護と当麻がその場にいる筈の雪菜や紗矢華、リアス達に声を掛けようとして…固まった…。何故ならそこには……

 

 

「退きなさい、イッセー。こんな生き物は焼いてしまうに限るわ…」

 

 

ほぼ“全裸”に近い状態でイッセーに詰め寄っているリアス、朱乃、小猫と……

 

 

「い、嫌です!! このスライムはまさしく俺と出会うため、この世に生を受けたに違いありません!! これぞまさしく運命!! もう他人じゃないんです!!」

 

 

緑色のスライムに纏わりつかれているアーシアに抱き着き、涙を流しているイッセー…

 

 

「こちらの要求に従ってください、兵藤先輩…」

 

 

「どちらにしても、今すぐ殺します…(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!)」

 

 

「ヤミちゃん相変わらず酷い!?」

 

 

殆どリアスと同じ状態に陥り、リアス達以上に怒りに打ち震えている雪菜と紗矢華、ヤミの3人…

 

 

「あ、リクオお兄ちゃん達だ! やっほー…!」

 

 

そして同じほぼ全裸状態にもかかわらず、普段と全く変わらない様子でリクオ達に声を掛ける芽亜の姿があった…。あー……なに、この混沌(カオス)…?

 

 

「っ!? と、当麻ッ//////!?」

 

 

「っ!? せ、先輩ッ//////!?」

 

 

「「「ッ//////!!??」」」

 

 

芽亜の一声で当麻達が来たことに気付いた瞬間、リアスと雪菜、紗矢華、ヤミ、小猫の5人は一気に顔を赤くして恥ずかしそうに身体を隠そうとした。すると…

 

 

「状況が全く飲み込めねえけど、とりあえず…」

 

 

ファサッ……

 

 

「え…?」

 

 

「それでも羽織っててくれ。部長に風邪でも引かれたら大変だからな~」

 

 

「っ////! あ、ありがと…////」

 

 

当麻がリアスに近寄ったかと思うと、自身の羽織っていた制服の上着を彼女に掛けながら、そう言ってきたのだ。これにはリアスも思わず顔を更に赤くし、少女らしい一面を露わにする。しかも、このような状況はこちらだけでなく…

 

 

「お前等もこいつを適当に羽織ってろ」

 

 

「! は、はい…/////」

 

 

「か、借りるわ…/////」

 

 

一護も雪菜と紗矢華に上着とワイシャツを羽織らせたかと思えば…

 

 

「ほらよ」

 

 

「え…?」

 

 

「予備の制服の上着だ。お前も羽織っとけ」

 

 

「! お、お借りしますわ…////」

 

 

朱乃にも何処からともなく取り出した予備の制服の上着を手渡し……

 

 

「小猫とヤミも、これを使って」

 

 

「っ///! ありがとうございます、リクオ先輩…」

 

 

「感謝します、リクオ…/////」

 

 

「芽亜もこれを着て」

 

 

「! はーい♪」

 

 

リクオも小猫とヤミ、芽亜の3人に制服の上着とワイシャツ、予備の上着を羽織らせていた…。と、ここで、

 

 

「さてと…で、一体何があったんだ? イッセーがまた何かやらかしたように見えるが…」

 

 

「! 実はね……」

 

 

当麻が奇怪な行動を取っているイッセーに目を向けつつ尋ねると、リアスは事の経緯を説明し始める。どうやら今アーシアに纏わりついているスライムこそ、リアスや雪菜達を現在の恥ずかしい恰好にした元凶であり、リアス達は早急にその元凶を大部分駆除した。しかしイッセーはこのスライムを自身の使い魔にしようとしており、今もこうしてアーシアに纏わりついている生き残り達を庇っていた所へ…丁度当麻達がやってきたとのことらしい…。すると、その話を聞いて…

 

 

「「今すぐ駆除しろ」」

 

 

「ちょっ…!?」

 

 

クリスとナナはスライムへの対応を即決した…。

 

 

「そういうことよ、イッセー。そのスライムは女の敵…今すぐ滅するわ」

 

 

「ぜ、絶対にダメです部長! おお、“スラ太郎”! 我が相棒よーッ!!」

 

 

「もう名前まで……」

 

 

「森の厄介者をここまで欲しがる悪魔は初めてだぜぃ。まったく、世界って奴は広いぜぃ…」

 

 

実に安直な名前を聞いて裕斗が困惑する中、ザドゥージはやや呆れ混じりにそう呟いた…。

 

 

「普段は良い子なのよ。でも、あまりに欲望に正直過ぎる体質で…!」

 

 

「ぶ、部長! そんな可哀想な子を見る目で俺を見ないでください! コイツを使って、俺は雄々しく羽ばたきます…!!」

 

 

「「「なら羽ばたく前に殺す(殺します)」」」

 

 

「ちょっとォォォォォッ!?!? クリスちゃんもナナちゃんもヤミちゃんもストレート過ぎるんだけど!? マジで殺されそうな感じしかしないんだけど!?」

 

 

クリスとナナとヤミの容赦のない一言に、思わず震え上がるイッセー…。

 

 

「と、とにかく俺は何が何でもコイツを使い魔にします!! 使い魔にして、コイツと共にハーレム王への道を突き……」

 

 

そして、イッセーが拳を突き上げながら何かを宣言しようとした…その時だった…。

 

 

チャキッ…!!×3

 

 

「あー……当麻さんに一護さんにリクオさん? 何故あなた方は俺に剣やら神器やらを突き付けているのでしょうか?」

 

 

当麻達3人がイッセーに、突如自身の神器や剣を突き付けたのだ。それも…とてつもなく良い笑顔で……。

 

 

「なぁ、イッセー…」

 

 

「お前がどんな使い魔を手に入れようと勝手だが…それでコイツ等を怖がらせるのは流石に許容できねえなぁ…」

 

 

「へ…? ッ……!!」

 

 

当麻と一護にそう言われたイッセーは始めこそ理解していなかったが…ある光景を見て理解し、固まった。それは……

 

 

『…………………(スッ!)』

 

 

周りにいる年上の少女達の後ろに隠れるユウキや響、未来、調、切歌、エルフナイン、レビィ、ウェンディと……

 

 

『………………(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!)』

 

 

ララやモモ、アカメ、クロメ、キャロル、芽亜、ミラジェーン、リサーナを除いた、般若の形相を浮かべている残りの少女達の姿だった…。

 

 

「まま、待ってー!! 俺は別にユウキちゃん達を怖がらせようとしてる訳じゃなくてだな…!!」

 

 

「じゃあさっき見たっていう光景は?」

 

 

「勿論しっかり脳内保存してますッ!! あ………」

 

 

リクオの問い掛けに即答したイッセー。その結果は言うまでもなく……

 

 

ジャキンッ!!!×3

 

 

「なら、相応のショックを与えれば忘れますよね、兵藤先輩…?」

 

 

「どれだけの罪を犯したのか、ここで思い知りなさい、兵藤一誠…!」

 

 

「いやいやいやッ!?!? それ絶対ショックじゃ済まないよね!? 確実に俺の命に影響するよね!!?」

 

 

「平気です…。赤龍帝であれば、多少斬り刻まれてもすぐに元通りになります、“きっと”…」

 

 

「ならないからッ!! “きっと”って時点でもう絶対ダメだからッ!! ていうか、何かエルザさん達までやる気満々に見えるんだけどッ!?!?」

 

 

雪菜と紗矢華、ヤミの言葉に慌ててツッコみつつも、イッセーは怒り心頭の様子のエルザ達が臨戦態勢を整えていることに気付いていた…。

 

 

「ぶ、部長!! お願いですから皆を止め…!!」

 

 

「…程々でお願い」

 

 

「ぶ、部長~~~~~~~~~~~ッ…!!!(泣)」

 

 

咄嗟にイッセーはリアスに救いを求めるものの…あえなく撃沈した。そして……

 

 

「「「“O・HA・NA・SHI”の時間だぜ(だよ)、イッセー(君)……」」」

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ……!?!?!?!?!?!?」

 

 

結局“スラ太郎”と共に断罪されたイッセーは当然の如く使い魔を手に入れられず、代わりにアーシアが〝蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)”のラッセーと使い魔契約を結んだ。ザドゥージとナナ曰く、契約を結ぶなど奇跡に近いような希少な魔物らしい…。ちなみに……

 

 

「キャ、キャロル、本当にいいんでしょうか…?(ボソッ)」

 

 

「フッ、構うものか…(ボソッ)」

 

 

実はキャロルとエルフナインが密かに妙な行動を取っていたのだが……その内容が判明するのは、もう少し先のことであるとかないとか……。

 





御無沙汰しております。無颯です。


という訳で、今回は完全に“中の人ネタ”に走りました。自分で言うのもなんですが……乱発しました…。


また若干キャラ崩壊もあったような気が個人的にしています。特にキャロルは完全にボケキャラ感が出てますね…。まあ、このようなことはそこまでないと思います……多分……。今後もこうしたギャグ的展開が時々挟まれますので、ご理解頂けると幸いです。


今後はキャラ紹介を挟みつつ、エクスカリバー編に突入していきたいと思います! ここまで意外と長かった…。では、また次回。


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キャラ紹介(主人公&SAOⅡ&ストブラ&ToLOVEる)

という訳で、ここからは主人公やアイエールメンバーの紹介をしていきます。


1人1人結構な量になってますが、原作と同様な部分も多々あります。また所々雑な部分もあると思うので、何卒ご容赦下さい。特にオリジナルの神器の名称とかは……すみません、これが私の限界です…。


では、まずは主人公達と初期の登場キャラ達から。



☆主人公

 

 

 

◎上条当麻

 

 

年齢  17

 

身長  174

  (大人姿時は188)

 

出演作品  とある魔術の禁書目録

 

CV  阿部敦

(“バクマン。”の真城最高、〝ガンスリンガーストラトス”の風澄徹、〝だがしかし”の鹿田ココノツ etc.)

 

 

 

 本作の主人公の1人である、ツンツンとした短い黒髪が最大の特徴の少年。普段こそ気だるげで憂鬱とした面を見せているが、基本的にはお人好しかつ正義感の強い性格。またそれとは別に、年不相応な非常に大人びた一面を見せることも多々あり、普段とのギャップはかなり激しい。言うまでもなく自他共に認める不幸体質の持ち主だが、昔と比べると遭遇する頻度は遙かに落ちた模様。特に女性関連のトラブルが意外と(?)減少している。とはいえ、不良絡みのトラブルに巻き込まれたり、空き缶を踏んで転んだりといった事は未だに日常茶飯事とのこと。

 駒王学園ではイッセーと同じクラスに所属している他、オカルト研究部の一員でもある。成績は中の上程度で運動もそこそこ出来るが、言うまでもなく不幸体質の影響で課題を紛失するといったこともしばしばあり、放課後の補習にも何故かよく姿を現すのだとか…。

 初めは賞金稼ぎと称していたが、その正体は最上級の神器所有者を数多く有する新興組織〝アイエール”の総帥。トップとしての器は紛れも無く本物で、その際に見せる表情や雰囲気はまさに別人そのもの。そして普段からは一切想像できない程のカリスマ性を発揮するらしい。

 女性の心情に関しては基本的に鈍いものの、不安や怯えといった負の感情については敏感に感じ取ることが出来るようになっている。しかもその際に見せる行動はあっけらかんとしながらも、何処か紳士的な部分が見られるとのこと。また女性のスキンシップにも普段こそ過剰に反応する一方で、真剣な場面においてはあまり動揺を見せないことが多い。実際リアスにキスされた時も動揺の色を全く見せなかったが、何故そうなったかについては不明。

 所有している神器は“虹龍王の顎(アルカディア・ストライク)”で、本人曰く“十四番目の神滅具(ロンギヌス)”とのこと。形状はイッセーの所有する“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”に酷似しているが、色合いは全体的に灰色を基調としている。その能力は“break”という掛け声と共に、あらゆる力を右手で触れることで消去することが出来るというもので、本人はこれを“幻想殺し(イマジンブレイカー)”と呼称している。その力は神器を発動しなくとも行使することが出来る上、場合によっては神器や能力そのものを消滅させることも可能とのこと。本人曰く“打ち消すのにも限界がある”らしいが、どうやら相当数の制限を掛けているため、その限界もどの程度のものなのか一切分かっていない。また禁手(バランスブレイカー)の際にはどうなるかなど依然として不明な点が多いため、あらゆる勢力から最上級の警戒をされている。

 有する戦闘能力に関してはまさに絶対的であり、アイエールの中でも無論トップに君臨している。基本的には素手での格闘戦を行うことが多いが、セフィリア率いる“時の番人(クロノ・ナンバーズ)”全員の武器をそれぞれ使用することも可能。また独自の武器も保有しているらしいが、その詳細は全くを以て不明とのこと…。

 ユウキやエレン、そしてリアスを始めとした身近な女性達を護ることを固く誓っており、彼女達に危害を加えようとする者に対しては全くと言っていい程容赦しない。それ故イッセーの欲求に基づく言動に関しても許容できないようで、基本的にはそれなりの鉄槌を下すとのこと。

 総帥として表に出る際には基本的に黒を基調としたスーツ姿になることが多く、状況によっては大人の姿になることもある。いずれにせよ能力に関してだけでなく、素性や過去についても含めて全体的にかなりの秘密を抱えている模様。

 

 

 

◎黒崎一護

 

 

年齢  17

 

身長  181

  (大人姿時は195)

 

出演作品  BLEACH

 

CV  森田一成

 

(“戦国BASARA”の前田慶次、“TIGER&BUNNY”のバーナビー・ブルックスJr、“ダイヤのA”の丹波光一郎 etc.)

 

 

 

 本作の主人公の1人である、オレンジ色の短髪が最大の特徴の少年。一見すると非常に無愛想で不良のように見えるが、実際は非常に義理堅く心優しい性格の持ち主。当麻とは違い外見の影響で不良から目を付けられることが多いらしいが、言うまでもなくその度に叩き潰している。そのため、駒王町の不良達の間では現在最も恐れられている存在とのこと。

 駒王学園ではイッセーや当麻達と同じクラスに所属している他、オカルト研究部の一員でもある。成績は常にトップ5に入る程優秀で、運動神経も抜群。故に体育会系の部活からは常に助っ人の依頼が舞い込んできており、オカルト研究部の活動が無い日はそういった部活動に手を貸すこともあるらしい。

 当麻と同様に初めこそ賞金稼ぎと称していたが、実はリクオと並んで“アイエール”のナンバー2である副総帥の座に就いている。有するカリスマ性は総帥としての当麻にも一切引けを取らないとのこと。当麻達と同様、雪菜や響を始めとした身近な少女達を護ることを固く誓っている。その想いは3人の中でも最も強いようで、当麻やリクオもそれを認める程。故に彼女達に危害を加えようとする者には最も容赦がない。イッセーの欲求に基づく言動への対応も基本的に厳しく、物理的な制裁を与えるのは確定らしい…。また最近は朱乃のことを時折気に掛けている。

 所有している神器は“死への断罪者(ブレイミング・デスサイズ)”。発動すると“死覇装”と呼ばれる黒を基調とした着物姿になり、同時に出刃包丁のような形状の巨大な刀、“斬月”を手にすることが出来る。また“鬼道”と呼ばれる特殊技能を行使できるが、これは神器を発動させていない時でも行使可能。鬼道には膨大な種類が存在するが、一護はそれをほぼ全て扱うことができる上、“独自のモノ”も開発しているとかいないとか…。とはいえ、それ以外の詳細に関しては一切明らかになっておらず、不明な点が多々ある。

 戦闘能力に関してはアイエールの中でリクオと並ぶナンバー2の実力を有する。基本的には“斬月”による近接戦を得意としているが、鬼道を併用することで中・遠距離戦にも問題無く対応できるらしい。だが実はまだ他にも能力を隠しているため、その本当の実力は当麻達同様、全くを以て未知数とのこと。

 女性の心情に関しては当麻達と同じように基本的には鈍いが、負の感情については敏感に感じ取ることが出来る。そしてその際には少々ぶっきらぼうながらも、ちゃんとフォローをする。また女性のスキンシップに関しても時折動揺を見せはするものの、初心(うぶ)な様子は殆ど無くなっている。勿論その経緯については明らかになっていない。

 意外にも家事スキルをそれなりに身に付けており、料理も時々するがリクオには及ばない。しかし鉄板などを使った豪快な料理に関してはリクオを超えており、中でも“ある少女”のために作るようになったお好み焼きは超絶品なんだとか……。また実は“とんでもない秘密”を抱えているのだが、その詳細は現在も不明。

 

 

 

◎奴良リクオ

 

 

年齢  17

 

身長  178

  (大人姿時は192)

 

登場作品  ぬらりひょんの孫

 

CV  福山潤

 

(“コードギアス”のルルーシュ・ランペルージ、“暗殺教室”の殺せんせー、“WORKING!!”の小鳥遊宗太 etc.)

 

 

 

 本作の主人公の1人である、短い茶髪と丸メガネが最大の特徴の少年。性格は非常に温厚で誰にでも優しく接するが、“夜の姿”になると大胆かつ荒々しいモノになり、口調も大きく変化する。とはいえ、その姿でも本来の優しさはきちんと持ち合わせているとのこと。普段の一人称は“僕”だが、夜の姿では“俺”。

 駒王学園ではイッセーや当麻達と同じクラスに所属している他、オカルト研究部の一員でもある。成績はいきなり学年トップを取れる程超優秀で、運動神経も一護と互角に渡り合える程良い。

 当麻達と同様に初めこそ賞金稼ぎと称していたが、実は一護と並んで“アイエール”のナンバー2である副総帥の座に就いている。有するカリスマ性はやはり一護と同様、総帥としての当麻にも引けを取らない程高い。2人と同じようにヤミやララ、ルーシィ、小猫を始めとした身近な少女達を護ることを固く誓っている。特に小猫に対しては何か想う所があるようで、気に掛けている様子が目立つ。故に彼女達に危害を加えようとする者に対しては決して容赦しない。またイッセーの欲求に基づく言動に関しては、昼・夜どちらの姿の場合でも主人公3人の中で最も厳しく、“半殺し程度なら構わない”というのが最早常套句になっている。ちなみに主人公3人の中で、最もキレたら怖い人物でもあるとのこと…。

 所有している神器は“妖界統制(スペクトル・コントロール)”。発動することで愛刀である長ドス“祢々切丸(ねねきりまる)”を手にすることができる。その最大の特徴は斬り付けたものから様々な力を放出させることが出来るというものであり、悪魔なら魔力、人間であれば生命力といった形で種族ごとに効力が変わるらしい。また発動によるもう1つの能力として“鬼纏(まとい)”という技能が行使可能となる。これは特定の人物を特殊な方法で自身に憑依させることによって、その人物の有する能力を活かした術技が放てるようになるらしい。ちなみにこれは本人単独でも行使可能のようだが、詳細は不明。いずれにせよ、その能力全体については未だに多くの謎に包まれている。

戦闘能力に関しては、アイエールの中でも一護と並んでナンバー2の実力を有する。基本的には“祢々切丸”による近接戦を得意としているが、“鬼纏”を駆使することで中・遠距離戦にも問題なく対応できるらしい。とはいえ他にも何か能力を有しているため、その実力は当麻や一護と同様に全くの未知数とのこと。

 女性の心情に関しては当麻達と同様にどちらの姿でも基本的に鈍いが、負の感情については敏感に感じ取ることが出来る。そしてその際には一護とは違い、さり気なく優しい対応を見せるとのこと。また女性のスキンシップに関しては当麻並みに過剰に反応する一方で、真剣な場面ではあまり動揺を見せないらしいが、何故そうなったのかについては不明。

 実は料理に関して超一流の腕を持っており、その腕前は周囲に『三ツ星レストランを超える』と言わしめる程。中でも得意なのはデザートで、何かと新しいデザートメニューに取り組んでいる。ちなみにその試作品の試食を担当するのは、大体ヤミ、芽亜、エルザ、小猫の内の誰かであるとのこと。また自身の素性に関して、ある“重要な秘密”を持っている。

 

 

 

☆ソードアートオンラインⅡ

 

 

 

◎紺野木綿季(こんのゆうき)

 

 

年齢  15

 

身長  148

 

CV  悠木碧

 

(“魔法少女まどか☆マギカ”の鹿目まどか、“紅”の九鳳院紫、“GOSICK-ゴシック-”のヴィクトリカ・ド・ブロワ etc.)

 

 

 

 “アイエール”のメンバーの1人である少女で、愛称は“ユウキ”。黒みがかった紫色のロングヘアーと赤いヘアバンドが最大の特徴で、一人称は“ボク”。性格は非常に元気で明るく人懐っこいが、同時に少々怖がりな一面も持っているとのこと。

 アーシアを巡る一件の際に帰還した後、すぐに駒王学園高等部の1年生として編入し、クラスは小猫と同じクラス。また同時にオカルト研究部の一員にもなっている。成績は常にトップクラスで、運動神経も抜群。またその人懐っこい性格と明るさ故に学内での人気も高く、特に高等部の男子達の間では“最も妹にしたい娘”の筆頭として挙げられているとかいないとか…。ちなみに本人も学校に通いたい想いが強く、この学園に通えることを心から嬉しく思っている。

 実は“ある理由”で天涯孤独の生活を送っていた際、自身の中に宿っていた神器を狙うはぐれ悪魔の襲撃を受けた過去を持つ。そしてその時偶々放浪していた当麻に助けられ、それをきっかけに当麻の傍に居ることを決意したらしい。当麻のことは実の兄のように慕い甘える一方で、明確な好意を抱いている模様。故に時折大胆な行動を取ることもあるが、何故当麻に対してそういった感情を抱くようになったかは不明。また他人の悪意に関しても非常に敏感なようで、自身にその悪意が向けられた際には極端に怯え、当麻やシノンの後ろに隠れることが多い。

 所有している神器は“眠れる黒騎士(スリーピング・ナイツ)”。発動すると紺色を基調とした戦闘装束を身に纏う他、悪魔と同じような黒い翼を背中から生やして飛行することも出来るようになる。また魔力に近い特殊な力を用いて闇系統の術も行使可能になるなど、遠近両面において高い汎用性があるとのこと。

 外見とは裏腹に、実は“絶剣使い”の異名で呼ばれ、騎士(ナイト)達の間では“剣聖”として畏怖される程の実力者。ここ数年で名のある騎士達を次々と倒しつつ、賞金稼ぎとしてもシノンと共に最上級クラスと言われているとのこと。その剣戟の速さはまさに“神速”と呼ぶに相応しく、セフィリアですら『速さにおいては私と互角以上の領域にいる』と評価している。それ故にアイエールの中でもトップクラスの強さを誇る。基本的には愛刀である細めの黒い直剣、“マクアフィテル”を用いた接近戦が主な戦闘スタイル。前述のように術による遠距離戦もできるが、使う頻度はそこまで無いらしい。

 アイエールの中でもシノンとは特に付き合いが長いようで、行動も基本的には彼女と一緒であることが多い。本人曰く『シノンは相棒のような存在』とのこと。また響やヤミなどの同学年組と一緒にいることも多く、最近ではそこに小猫も交じっているのだとか…。

 年相応に甘い物が大好きなのだが、実は意外にも結構よく食べるらしい。また当麻以外にもう1人“心から甘えられる相手”がいるとのことだが、その詳細は不明…。

 

 

 

 

◎朝田詩乃

 

 

年齢  17

 

身長  157

 

CV  沢城みゆき

 

(“ルパン三世シリーズ”の峰不二子、“ローゼンメイデン”の真紅、“デュラララ!!”のセルティ・ストゥルルソン etc.)

 

 

 

 “アイエール”のメンバーの1人である少女で、愛称は“シノン”。黒のショートカットと眼鏡を掛けているのが最大の特徴で、性格は同世代と比べると非常に大人びている一方、辛辣かつドライな言動が目立つ。

 アーシアを巡る一見の際にユウキ達と共に帰還し、駒王学園高等部の2年生として編入。その後はオカルト研究部にも入部している。クラスは当麻やイッセー達と同じクラス。成績は常にトップクラスで、運動神経の方もかなり良い模様。また学内での人気も高く、生徒会長のソーナや副会長の椿姫に並ぶ“メガネ系美少女”と評されているらしいが…本人はある理由で困惑している。

 実は数年前、“ある出来事”の中で自身に宿る神器を狙われ、その際またしても偶々旅をしていた当麻によって助けれた過去を持つ。当麻に対しては何かとそっけない態度を取っているが、実際は明確な好意を抱いている。そのため何か負の感情に苛(さいな)まれた時には、彼の下へ身を寄せることが多い。だが何故好意を抱くようになったかについては、現在のところ不明。

 恐怖症とまではいかないものの、男性自体に対してやや苦手意識を持っている。オカルト研究部の仲間であるイッセーや裕斗も例外ではなく、平気なのは当麻や一護やリクオなどの一部の男達のみとのこと。またその原因は前述の“ある出来事”が深く関係しているらしい。

 所有している神器は“幻影の射手(ファントム・チェイス)”。神器を発動すると容姿が大きく変化し、髪の色は水色に、瞳はエメラルドを彷彿とさせるような緑色に変わる。2つの異なる戦闘スタイルを有しているのが、神器の最大の特徴。1つは“スナイプフォルム”で、大型の狙撃銃“ウルティマラティオ・ヘカートⅡ”をメインに、小型銃“グロック18”を併用して戦う。超遠距離からの正確かつ高威力の狙撃が可能。もう1つは“アーチャーフォルム”で、長弓“シェキナー”を用いて戦う。こちらは高機動かつ連射性に優れた狙撃を行うことができる。またこのフォルムの際には外見も“ケット・シー”を思わせるような風貌へと変化し、水色の猫の耳や尻尾も生えるとのこと。これにより、驚異的な視力を発揮することが出来るらしい…。

 戦闘能力に関しては言うまでもなく非凡なものがあり、特に遠距離戦においてはトップクラスの実力を誇る。その外見から“氷の狙撃手”の異名を持っており、賞金稼ぎとしてもユウキと共に畏怖されている。超遠距離からの狙撃や後方からの支援攻撃を得意としており、特に“スナイプフォルム”においては数キロ離れた地点からの狙撃でも、本人曰く『ゴミ箱にゴミを放り投げるようなもの』とのこと。

 アイエールの中でもユウキとは特に付き合いが長いようで、行動も基本的には彼女と一緒であることが多い。その様子から相棒的存在と言われる一方で、姉妹のような関係にも見られるらしい。また同学年では紗矢華と気が合うようで、最近では一緒にイッセーへ時折キツイ言葉を浴びせているとかいないとか…。

 

 

 

☆ストライク・ザ・ブラッド

 

 

◎姫柊雪菜(ひめらぎゆきな)

 

 

年齢  16

 

身長  156

 

CV   種田梨沙

 

(“ご注文はうさぎですか?”のリゼ、“GATE~自衛隊 彼の地にて 斯く戦えり~”のロウリィ・マーキュリー、食戟のソーマ”の薙切えりな etc.)

 

 

 

 “アイエール”のメンバーの1人である少女。黒髪のショートヘアーが最大の特徴で、非常に真面目な性格である一方、『マスコットなどの可愛いものには目を輝かせる』といった年相応の少女らしい一面も持っているとのこと。誰に対しても敬語口調で話す他、学園の上級生のことは基本的に「~先輩」と呼ぶ。

 アーシアを巡る一件の際にユウキ達と共に帰還し、駒王学園高等部の1年生として編入。クラスは小猫やユウキ達と同じクラスで、その後すぐにオカルト研究部にも入部している。成績に関しては常にトップを争える程優秀で、運動神経も抜群。更に容姿も優れているため、男子からの人気も相当高い。故に毎日の如く男子からラブレターやら告白やら受けているらしいが、本人は全て断っている。

 実はかつて紗矢華と共に、自身の中に宿る神器を目的に魔術結社から狙われていた過去を持つ。どうやら一護とはその一件を巡って出会っており、その際に救ってもらったことが切っ掛けで彼の傍に居る事を決意した模様。一護に対しては明確な好意を抱いているのだが、彼からは“妹のような存在”として認識されており、その事に若干やきもきしているとかいないとか…。

 所有している神器は“雪霞狼(シュネー・ヴァルツァー)”で、見た目は銀色の特殊な形状の槍。魔力を無効化する術式が施されており、対悪魔戦において絶大な効果を発揮する“降魔兵器”の1つとされている。更に現在では魔力だけにとどまらず、あらゆる特殊な力に対しても働くようになっている。対魔力に比べるとその効力は多少落ちるらしいが、それでも対抗するには十分過ぎる程の威力を有しているとのこと。とはいえ、神器の詳細については明らかにされていない部分も多い。

 神器の特性故に、特に悪魔達からは紗矢華と共に“対悪魔戦最強の神器所有者”の1人として恐れられており、“光来の巫女”の異名を持っている。基本的には雪霞狼による近接戦がメインだが、格闘に関しても非凡な才能を有しており、素手でも上級悪魔程度であれば裕に対抗できるとのこと。その際には“呪力”と呼ばれる特殊な力を込めることで、高い威力を与えることが出来るらしい。戦闘能力に関しては最上級悪魔クラスでも裕に倒すほどの実力を持っており、一護の傍に仕える者として申し分ない実力を有しているとのこと。

 紗矢華とはよく行動を共にしており、彼女からは実の妹のように溺愛されている。また学園では同学年であるユウキやヤミ、響や小猫達とも一緒にいるらしい。ちなみに、イッセーの欲に任せた行動には紗矢華と共に厳しく対処している。

 実は乗り物を含む機械全般を不得手としているようで、特に飛行機が苦手。周囲の人間曰く『窓から景色を見ることさえできない』とのこと。また以前は私物が非常に少なく、私服も殆ど持っていなかったらしいが、ユウキなどの影響で近頃はおしゃれに少し気を遣うようになったのだとか…。

 

 

 

◎煌坂紗矢華(きらさかさやか)

 

 

年齢  17

 

身長  168

 

CV  葉山いくみ

 

(“みつどもえ”の松岡咲子、“白銀の意思 アルジェヴォルン”のテライ・アキノ、“とある科学の超電磁砲S”の布束砥信 etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女。茶色のポニーテールが最大の特徴で、男勝りで勇ましい性格な一方、意外と動揺しやすく揶揄(からか)い甲斐のあるタイプらしい。実はかなり抜群なプロポーションの持ち主で、リアス並みに胸部が発達しており、周囲の人間曰く『かなり着痩せしている』とのこと。また高身長である事を少々気にしている。雪菜を含めた一部の人間以外、周りの人間のことは基本的にフルネームで呼ぶ。

 アーシアを巡る一件の際に雪菜達と共に帰還し、駒王学園高等部の2年生として編入。クラスはイッセーや一護達と同じクラスで、その後すぐにオカルト研究部にも入部している。成績優秀かつ運動神経も抜群で、優れた容姿故に男子から高い人気を集めているようだが、当の本人は“ある事”が理由で当惑している。また同時に男勝りな性格のためか、女子生徒達からも人気があるのだとか…。

 かつて雪菜と共に、自身の中に宿る神器を目的に魔術結社から狙われた過去を持つ。一護と出会ったのもその時であり、雪菜と同様その際に救ってもらったことが切っ掛けで彼の傍に居る事を決意した。一護に対しては明確な好意を抱いているものの、基本的には素っ気ない態度を取ることが多い。だが間違った知識を元に時折大胆な行動を見せることもしばしば。とはいえ、その際に雪菜に見つかると極端に動揺する。

 実はかなりの男嫌いであり、殆どの男子に対して厳しい態度を取りがち。そのためイッセーへの対応の辛辣さもアイエールの女子達の中ではトップクラスで、気を許せるのは一護を始めとしたごく一部の者達に限られる。また男の悪意にはかなり敏感で、場合によっては気分を悪くする程とのこと。ちなみにこれには本人の出自が関係しているようだが、詳細は不明。

 所有している神器は“煌華麟(デア・フライシュッツ)”で、見た目は銀色の特殊な形状の弓。雪菜の雪霞狼と同じく、対悪魔戦において絶大な効果を発揮する“降魔兵器”の1つとされている他、魔力以外のモノに対しても対応することが出来る。最大の特徴は弓以外のもう1つの形態を有していることで、大剣へと変形させることも可能。そのため“攻防一体型の神器”とも呼ばれている。とはいえ、こちらの神器の詳細も明らかになっていない部分が多い。

 神器の特性故に、特に悪魔達からは雪菜と共に“対悪魔戦最強の神器所有者”の1人として恐れられており、“烈光の舞姫”の異名を持っている。戦闘の際には煌華麟を用いた呪術攻撃と近接攻撃を主に行う。しかし実は呪術や暗殺といった裏の一面を得意としており、式神などの技術にも精通しているらしい。戦闘能力に関しても雪菜と同様、その強さは最上級悪魔クラスでも裕に倒す程であり、一護の傍に仕える者として申し分ない実力を持っている。

 雪菜とはよく行動を共にすると同時に、実の妹のように溺愛している。故に雪菜に近付こうとする男子達には常に目を光らせており、場合によってはそれ相応の対処をするとのこと。またシノンとは気が合うようで、クラスでは彼女と共に居ることが多いらしい。

 

 

 

 

☆ToLOVEる

 

 

◎ヤミ

 

 

年齢  不詳

 

身長  153

 

CV  福圓美里

 

(“BLACK CAT”のイヴ、“ストライクウィッチーズ”の宮藤芳佳、“僕は友達が少ない”の志熊理科 etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女。ロングストレートの金髪と赤い瞳が最大の特徴で、性格は非常に冷静沈着だが、感情の起伏がかなり少ない。他人に対しても心を開くことはあまり無いが、反面寂しがりな屋でもあるなど、少女らしい一面も持ち合わせている。誰に対しても敬語口調で話すが、口数は少ない。紗矢華と同様、他者の名前をフルネームで呼ぶ傾向があり、呼ばないのはリクオや同学年組などの親しい者達のみである。

 アーシアを巡る一件の際にユウキ達と共に帰還し、駒王学園高等部の1年生として編入。クラスはユウキや小猫達と同じクラスで、その後すぐにオカルト研究部にも入部している。成績優秀かつ運動神経も抜群な上、容姿も優れているために男子達からの人気は非常に高い。だが当の本人は男性から性的関心を向けられることを嫌っており、特にイッセーなどの欲望剥き出しな男に対しては度々苛烈な制裁を加えている。それ故に、クラスメイトの女子達からはかなり信頼されているのだとか…。

 その正体は或る反抗勢力の研究によって生み出された、神器を所持する人工生命体。リクオとはその反抗勢力との戦いの中で出会い、紆余曲折を経て彼の傍に居ることを決意したらしいが、詳細は不明。口では度々否定しているものの、リクオに対しては明確な好意を抱いている。実際リクオに対しては笑顔を見せることも多く、自身の苦手なモノが現れた際には彼の後ろに隠れるなど、深い信頼を寄せていることが窺える。

 所有している神器は“無形の殺人者(アンマテリアル・マーダー)”。自身の身体のあらゆる器官を自在に変身させることができる“変身(トランス)”が最大の特徴で、そのパターンは刃や銃、大槌など、まさに無制限。更に身に付けている服まで変化させることが出来るが、短時間に頻繁に行使すると大きな負荷をもたらしてしまうらしい。またこの神器には或る重大な秘密があるようなのだが、その詳細は明らかになっていない。

 実は反抗勢力の下に居た際、芽亜と共に殺し屋として勢力に関わらず数多の悪魔や天使達を暗殺している。それ故“金色の夜叉”の異名で芽亜と共に三大勢力全体から恐れられており、殺し屋としても伝説的な存在とのこと。基本的には神器の能力による近中距離戦を得意としているが、素手による体術に関しても相当なレベルに達している。その強さは雪菜達と同様、最上級悪魔クラスでも裕に倒す程であり、リクオの傍に仕える者として申し分ない実力を有している。

 芽亜のことは“自身の妹”として確かな認識を持っているようで、時折からかわれるような事があるものの関係自体は良好。またアイエールのメンバーの中ではユウキやクロメ、シノンの他、デビルーク三姉妹とも特に仲が良い。更に近頃は小猫とも非常に気が合うようで、彼女とは度々リクオの作るお菓子を一緒に食べたり、イッセーに対して同時に制裁を与えるなど、共に行動することが多くなっているらしい。

 リクオの作るお菓子を非常に気に入っており、中でも一番好きなのは彼の作る“鯛焼き”。趣味は読書で、書店や図書館にはかなりの頻度で足を運んでいるとのこと。その一方で粘性のあるものが非常に苦手らしく、その類の特性を持つ物体に対しては極端に戦意を失ってしまうのだとか…。

 

 

 

 

◎黒咲芽亜

 

 

年齢  不詳

 

身長  153

 

CV  井口裕香

 

(“ロウきゅーぶ!”の井沢真帆、“僕は友達が少ない”の高山マリア、“偽物語”の阿良々木月火 etc.)

 

 

 

 “アイエール”のメンバーの1人である少女。おさげにしている赤髪と瑠璃色の瞳が最大の特徴で、非常に無邪気かつ好奇心旺盛な性格の持ち主。ヤミとは対照的に羞恥心があまり無く、他人に裸を見られても殆ど動揺しない。また何かしらスイッチが入ると止まらない気質を持っているようで、時折それが原因でトラブルを起こすこともあるとかないとか…。

 アーシアを巡る一件の際にヤミ達と共に帰還し、駒王学園高等部の1年生として編入。クラスはヤミや小猫達と同じで、その後すぐにオカルト研究部にも入部している。成績は意外にも優秀で常に上位に食い込んでおり、運動神経も抜群。更に優れた容姿と無邪気な性格もあってか、男子達からの人気も高いとのこと。ただ少々過激な言動をするため、生徒会メンバーから時々注意されているらしい。

 その正体はヤミと同様に神器を所有する人工生命体で、ヤミの開発データを下に同じ反抗勢力によって生み出された。リクオとはその反抗勢力との戦いの中で出会っており、やはり紆余曲折を経ながら彼に付いていくことを選んだらしいが、その詳細は不明。リクオに対しては明確な好意を抱いており、彼のことを“リクオお兄ちゃん”と呼んでいる。羞恥心が無い故に大胆な行動を頻繁に起こしているようだが、実は逆に迫られると弱い傾向にあるとのこと。特に相手が夜の姿のリクオの場合には顕著で、頬を赤らめて動揺したり、時には甘えたりすることもあるのだとか…。

 所有している神器は“無形の殺人者・改(アンマテリアル・マーダー・セカンド)”。ヤミの神器の進化版とも言えるモノで、“変身(トランス)”は勿論のこと、“精神侵入(サイコ・ダイブ)”という能力も有している。これは身体の一部を相手と融合させることで精神に入り込むことが出来るものだが、本人はこの能力を応用し、物理的かつ精神的にも相手の支配権を奪取する“肉体支配(ボディ・ジャック)”という能力も身に付けており、その応用性はヤミをも上回る。

 実は反抗勢力の下に居た際、ヤミと共に殺し屋として勢力に関わらず数多の天使や悪魔達を暗殺している。それ故“赤髪の修羅”の異名でヤミと共に三大勢力全体から恐れられており、殺し屋としても伝説的な存在とのこと。基本的にはヤミと同様、神器の能力や体術を活かした近中距離戦を得意としているが、腕や髪の先端をビーム砲にして放つなど遠距離戦にも対応できる。また他人や動物への擬態も得意としているため、偵察などの支援スキルも優れているとのこと。その強さは雪菜達と同様、最上級悪魔クラスが相手でも裕に倒す程であり、リクオの傍に仕える者として申し分無い実力を有している。

 ヤミのことは“ヤミお姉ちゃん”と呼んでおり、からかいながらも実の姉のように慕っている。またナナとは大の親友関係にあり、ヤミと同じくらい一緒にいることが多いらしい。また同学年組の中ではクロメと気が合うようで、度々一緒にお菓子を買いに行っているとのこと。

 大の甘党であり、紅茶には溢れんばかりの砂糖を入れて飲む。リクオの作るお菓子が大好きで、一番好きなのは彼のお手製のキャンディー。また嗅覚がかなり優れているようで、匂いだけでその人間を判別できる程。昔は友達を作るのが苦手だったらしいが、現在ではそれを一切感じさせない程たくさん友達を作っている。だがその一方で堅苦しい団体行動は未だに苦手としており、途中でフラフラと消えようとすることもしばしばなんだとか…。

 

 

 



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キャラ紹介(魔弾の王と戦姫&シンフォギアGX&FAILYTAIL)

御無沙汰しております。キャラ紹介第二弾です。


やっぱり結構登場キャラ多いな~…。恐らく今までで断トツの文字数です。また以前と同様所々雑な部分もあるかもしれませんが、悪しからず…。


では、どうぞ。





☆魔弾の王と戦姫

 

 

 

◎エレオノーラ・ヴィルターリア

 

 

年齢   不詳

 

身長   165

 

CV   戸松遥

 

(“あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない”の安城鳴子、“革命機ヴァルヴレイヴ”の流木野サキ、“あの夏で待ってる”の貴月イチカ etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である、戦乙女(ヴァルキリー)の女性。愛称は“エレン”。銀色のロングヘアーと赤い瞳、そしてリアス並みに発達した胸部が最大の特徴で、非常に勝気で芯の強い性格ながら、何処か妖艶な雰囲気も持ち合わせている。だが同時に人の好き嫌いが激しかったり、若干突撃思考が強い一面もあるとのこと。

 その正体はかつて北欧最強と謳われていた戦乙女(ヴァルキリー)部隊、“七大戦姫(シエラ・ヴァナディース)”の1人であり、現在も“銀閃の風姫(シルヴ・フラウ)”の異名で三大勢力全体にその名が知られている。その実力は相当なもので、冥界の四大魔王達に匹敵するらしい。

 以前は当然の如く北欧側に属していたが、“ある一件”の際に当麻と出会い、紆余曲折を経て彼の傍に居る事を決意した。当麻に対しては明確な好意を抱いているようで、その性格故に大胆な言動に出ることが多い。だが彼の前では女性らしい一面を見せることが多く、同時に押しに弱い部分も見られる。とはいえ、その経緯や詳細については明らかになっていない。

 所有している神器は“降魔の斬輝(アリファール)”。見た目は装飾の施された銀色の剣で、風を自由自在に操る能力を有している。そのため単純な攻撃のみならず、自身に風を纏わせることで空中を移動したり、周囲の物体を浮遊させることが出来るなど、その応用性は高い。

 アイエールの女性メンバーとはほぼ全員仲が良く、中でもソフィーやサーシャ、そして自身の部下であるリムには全幅の信頼を寄せている。だがリュドミラとは犬猿の仲とも言うべき関係で、必ずと言っていい程喧嘩に発展するとのこと。特に当麻を巡る場面では一段と激しくなる。とはいえ性格の面では似ている所も少々あり、戦闘の際などには何やかんやで絶妙な連携を見せるため、周囲からは『相性はむしろ良いのでは?』という声が上がっている。

 あまり口にはしないものの、『誰もが笑顔で暮らせるような世界になればいい』という想いを心の中で抱いている。そのため戦闘に関しては少々楽しみを求めている部分も見られるが、争い事は決して好んでいないとのこと。またこの想いがアイエールに属する理由の1つにもなったらしいが、その詳細は不明。

 

 

 

 

◎リュドミラ・ルリエ

 

 

年齢  不詳

 

身長  153

 

CV  伊瀬茉莉也

 

(“HUNTER×HUNTER”のキルア=ゾルディック、“緋弾のアリア”の峰理子、“ポケットモンスターXY”のユリーカ etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である、戦乙女の女性。青い髪をショートヘアに纏めているのが最大の特徴。性格は非常に真面目で聡明な人物だが、同時に誇り高く高慢な一面も持つ。好きな物はジャムを入れた紅茶(チャイ)で、趣味も紅茶を淹れること。ちなみに小柄な体格と、エレンと比べて発達していない“ある部分”を気にしているとかいないとか…。

 その正体はエレンと同様に“七大戦姫(シエラ・ヴァナディース)”の1人であり、現在も“凍蓮の雪姫(ミーチェリア)”の異名で三大勢力全体にその名が知られている。実力はエレンと同格とも言われ、冥界の四大魔王達に匹敵するらしい。

 以前は当然の如く北欧側に属していたが、エレンとはまた違った形で当麻と出会い、紆余曲折を経て彼の下に居る事を決意した。当麻に対してはやはり明確な好意を抱いているようで、行動の大胆さもエレンに引けを取らない。だが彼の前で女性らしい一面を多く見せたり、若干迫られることに弱い所もエレンと非常に似ている。言うまでもなくその経緯や詳細については明らかになっていない。

 所有している神器は“破邪の尖角(ラヴィアス)”。見た目は水色の装飾が施された特殊な槍で、柄の長さを自由自在に変えることが出来る。氷を自由自在に操る能力を持っており、その威力は“あらゆる氷結系の術技の中でも最強クラス”との呼び声が高い。

 高慢な一面もあるとはいえ、基本的にアイエールの女性メンバーとは仲が良く、特にソフィーには信頼を寄せている模様。その一方でエレンとは犬猿の仲とも言うべき関係で、必ずと言っていい程喧嘩に発展するとのこと。特に当麻を巡る場面では一段と激しくなる。とはいえ性格の面では似ている所も少々あり、戦闘の際には何やかんやで絶妙な連携を見せるため、周囲からは『相性はむしろ良いのでは?』という声が上がっている。

 

 

 

 

◎ソフィーヤ・オベルタス

 

 

年齢  不詳

 

身長  170

 

CV  茅野愛衣

 

(“あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない”の本間芽衣子、“アクエリオンEVOL”のミコノ・スズシロ、“サーバント×サービス”の山神ルーシー<略> etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である、戦乙女の女性。愛称は“ソフィー”。緩やかなウェーブの掛かった金色のロングヘアーと緑柱石色の瞳、そして朱乃と互角かそれ以上に発達した胸部が最大の特徴。“深窓の姫君”という表現が似合いそうな程穏やかでおっとりとした性格の持ち主だが、実は怒らせると非常に怖いらしく、アイエールの中で“怒らせてはならない人物”の1人として名が挙がっているとのこと。また強い好奇心の持ち主でもあり、色々なものに興味を示す一面も有している他、その興味が強い時には意外にもハッキリと公言してしまうのだとか…。また竜に触れることが好きなようで、最近では当麻の使い魔であるティアマットや、アーシアの使い魔であるラッセーがお気に入り。

 その正体はエレン達と同様に“七大戦姫(シエラ・ヴァナディース)”の1人であり、現在も“光華の耀姫(ブレスヴェート)”の異名で三大勢力全体にその名が知られている。また見た目とは裏腹に、情報収集に関しても非凡な才を有している。そのためアイエールにおいても他勢力との関係調整や交渉を担当することが多い。本人は否定しているが、その実力はやはりエレン達と同様に四大魔王達に匹敵するとのこと。

 以前は当然の如く北欧側に属していたが、“ある出来事”の際に当麻と出会い、紆余曲折を経て彼の傍に居る事を決意した。当麻に対しては明確な好意を抱いており、外見とは裏腹に大胆な行動を取る。しかもその行動はエレンやリュドミラよりも一枚上手であったりするとかしないとか…。当麻の前では普段と同じような“年上の女性”としての雰囲気を見せることが多いが、それを崩して感情を露わにしてしまうことも少なくないとのこと。また彼の事を時折“恩人”と表現することがあるが、その詳細については明らかになっていない。

 所有している神器は“退魔の祓甲(ザート)”。見た目は金の装飾の施された大型の錫杖で、光を自由自在に操る能力を有している。その応用性は非常に高く、攻撃は勿論のこと、光の膜を張ることで攻撃を防いだり、光の屈折を利用して自らの姿を消したりするなど、防御面においても優れている。

 その性格や雰囲気故に、アイエールの中では何かと“仲裁役”や“相談役”の立場にいることが多く、メンバー全体からの信頼はかなり厚い。またエレンやリュドミラとは特に仲が良く、2人の喧嘩を仲裁するのも大体彼女の役目。更にサーシャとは年の近い比較的年長者同士、何かとよく話している模様。

 

 

 

 

◎アレクサンドラ・アルシャーヴィン

 

 

年齢  不詳

 

身長  167

 

CV  小松未可子

 

(“モーレツ宇宙海賊”の加藤茉莉香、“K”のネコ、“うしおととら”の中村麻子、etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である、戦乙女の女性。紺色のショートカットが最大の特徴で、愛称は“サーシャ”。基本的にはおおらかで落ち着いた性格の持ち主である一方で、何処かエレンのような勝ち気で芯の強い一面も持ち合わせているとのこと。ちなみに一人称は“ボク”。

 その正体はエレン達と同様に“七大戦姫(シエラ・ヴァナディース)”の1人であり、現在も“煌炎の朧姫(ファルプラム)”の異名で三大勢力全体にその名が知られている。その上かつては“最強の戦乙女”と称されており、全盛期には冥界最強の悪魔である大魔王“ギド・ルシオン・デビルーク”と互角に渡り合ったと言われている。その実力はまさに破格で、以前はエレンとリュドミラの2人を手加減した状態で軽くあしらっていたとのこと。故にアイエールの中でもトップクラスの実力を誇る。

 実はある病に侵されており、前までは寝たきりの生活を余儀なくされていた。しかし現在は着実に快方へと向かっているらしく、少なくとも日常的な生活を送る程度にはもう少しの所まで来ているとのこと。とはいえ、今の段階ではまだ安静に寝ていることが求められている。

 以前は当然の如く北欧側に属していたが、エレン達とはまた別の経緯で当麻と出会い、紆余曲折を経て彼の傍に居る事を決意した。当麻に対しては明確な好意を抱いているようで、ソフィーと同様、外見とは裏腹に大胆な行動を取ることもしばしば。そして、やはりエレンやリュドミラよりも一枚上手だったりするとかしないとか…。当麻の前でも基本的には落ち着いた雰囲気を保っているが、時折言い様の無い儚さを露わにすることがあり、その際には甘えるような所も見られるとのこと。

 所有している神器は“討鬼の双刃(バルグレン)”。見た目は黄色と赤の刀身が特徴的な短い双剣で、炎を自由自在に操る能力を有している。攻撃に特化しているようで、その威力は七大戦姫が所持している神器の中でも最強とのこと。

 アイエールの中では基本的に年長者として、ソフィーと共に仲裁や相談を担うことが多い模様。メンバーからは非常に慕われており、特にエレンやリュドミラ、ソフィーとは仲が良い。またエレンにとっては戦乙女としての師匠であると同時に、姉に近い存在でもある他、ソフィーと共にエレンとリュドミラの喧嘩を即座に仲裁できる人間の1人でもある。

 

 

 

 

◎リムアリーシャ・リュッセル

 

 

年齢  不詳

 

身長  170

 

CV  井口裕香

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である、戦乙女の女性。愛称は“リム”。サイドテールに結われた長い金髪と、エレンと同じくらい発達した胸部が最大の特徴で、性格は非常に厳格かつ生真面目。だが実は熊のぬいぐるみを集めるのが趣味で、その1つ1つに名前を付ける程深く溺愛しているとのこと。またこの点を指摘されると羞恥のあまり一気に顔を真っ赤にし、自らの武器で自害しようとしたり、人目をはばからず泣き出すこともあるのだとか…。ちなみに他人の事は決して愛称で呼ばないらしい。

 エレンの腹心の部下であり、彼女が最も信頼を置いている人物の1人。エレン達“七大戦姫”の面々にこそ及ばないものの、北欧では彼女達に次ぐ実力者だったとのこと。現在でも“青天の賢姫(シュテレーゼ)”の異名で呼ばれ、“銀閃の風姫の右腕”として三大勢力全体にもその名が通っている。その実力はアイエールの中でも雪菜やヤミ達と同格らしい。

 以前は当然の如くエレンと共に北欧側に属していたが、彼女に付き従う形でアイエールの一員となった。当初は当麻を始めとするアイエール全体に対して少々不信感を抱いていたものの、その人間性や行動を見て評価を改めたらしい。当麻に対しては基本的に素っ気ない態度を取っている一方で、その人柄と実力に関しては十分認めている。更に時折顔を赤らめる場面も見られるとのことだが…好意を抱いているかどうかは現在不明。

 所有している神器は“滅悪の裂刀(ヒメルフト)”。見た目はエレンのアリファールに似ているが、比べるとやや刀身が細く短い。能力もアリファールと同じく風を自在に操る能力を有しているが、威力などの攻撃面に関してはアリファールに劣っているとのこと。しかしその一方で、空気の流れを掴むことで相手の位置や身体的特徴を掴むことが出来るなど、支援系統の技能に秀でている。

 エレンには幼い頃から仕えていたようで、並々ならぬ忠誠心を持っている。また教師としての才能もあるようで、エレンの補佐を務める傍ら、勉強の得意ではないアイエールの学生組によく勉強を教えているのだとか…。

 

 

 

 

◎ティッタ・レイティス

 

 

年齢  15

 

身長  150

 

CV  上坂すみれ

 

(“パパの言うことを聞きなさい!”の小鳥遊空、“オーバーロード”のシャルティア・ブラッドフォールン、“艦隊これくしょん―艦これ―”の吹雪 etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女。栗色のツインテールが最大の特徴で、明るく純粋な性格の持ち主である一方、エレンにも負けない芯の強さも持ち合わせているとのこと。

 エレン達の帰還後、当麻達の勧めもあって駒王学園高等部の1年生として編入。響や未来と同じクラスで、後にオカルト研究部にも入部している。元々勉強は自主的に行っていたらしく、成績は常に上位陣に入る程優秀で、運動神経も良い模様。また容姿の良さと明るい性格により、男子からの人気も高い。ちなみに殆ど口にはしないものの、こうして学校生活を送れていることを非常に嬉しく思っている。

 実はかつてはぐれ悪魔によって滅ぼされた、或る村の唯一の生き残り。当麻とはその際に助けられる形で出会い、『恩返しをしたい』という想いを胸に付いていくことを決意した。当麻に対してはその出来事がきっかけで好意を抱いているようだが、行動にはあまり移していない模様。だが彼に好意を抱く女性が次々と現れている状況を受け、動こうとしているとかいないとか…。

 アイエールのメンバーの中でも数少ない、神器を始めとした戦闘能力を一切所有していない人物。しかし実は“ある大きな秘密”を抱えている。その詳細は不明。

 当麻達の暮らす屋敷の“専属侍女”とも言うべき存在で、学園に編入する前は屋敷の家事を一手に担っていた。編入してからは全てを担うということは無くなったものの、やはりその多くを熟(こな)している。その家事スキルは当麻達曰く相当なものとのこと。料理に関してだけはリクオに及ばないらしいが、最近ではその腕もメキメキと上げており、特に彼女の作るパンはリクオも唸る程絶品なんだとか…。

 

 

 

 

☆戦姫絶唱シンフォギアGX

 

 

 

◎立花響

 

 

年齢  16

 

身長  157

 

CV  悠木碧

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女。ベージュのショートカットが最大の特徴で、非常に明るく闊達、そして困った人を放っておけないお人好しな性格の持ち主。ちなみに好きな物は“ごはん&ごはん”と、“一護の作るお好み焼き”。

 リアスを巡る一件の際に帰還した後、駒王学園高等部の1年生として編入。クラスは未来やティッタ達と同じクラスで、オカルト研究部にも入部することになった。運動神経に関しては抜群なのだが、成績については実に芳しくなく、補習を受けることもしばしば。その一方、持ち前の明るさ故にクラスではムードメーカー的な存在になっている他、容姿も優れているために男子からの人気も結構高いらしい。

 実は或る神器に関する非人道実験の被験者として、違法組織に囚われていた過去を持っている。一護とはその組織との抗争の際に出会い、救われたことで彼の傍に居る事を決意したとのこと。一護のことは自身の目標にしていると同時に、明確な好意を抱いている模様。だが闊達な性格とは裏腹に、恋愛に関しては所々不得手な一面が見られるのだとか…。

 所有している神器は“絶唱機甲・撃槍(シンフォギア・ガングニール)”。ある違法組織によって生み出された人工神器、“絶唱機甲(シンフォギア)”シリーズの1つであり、発動するとオレンジを基調としたパワードスーツのような武装を身に纏う。武装の特徴は“拳”で、特に腕部の装甲は単純な直接攻撃は勿論の事、拳を振るうことによってエネルギーの波動を放出や、片腕に装甲を纏めることによる巨大化を可能にしている。また脚部の装甲にも様々な機能があるようで、空中での姿勢制御や驚異的な加速、加えて一時的な飛行まで出来るとのこと。更に同じ絶唱機甲”の所有者達との連携や集約する性能も有しているらしく、その潜在性は計り知れない。他にも様々な秘密があるようだが、現在の所は不明。

 “七聖の歌姫(プレアデス・ディーヴァ)”の1人であると同時に、“黄昏の拳撃者”の異名で三大勢力全体にその名が知られており、魔王クラスとの呼び声も高い程の実力者。アイエールの中でも潜在能力の高さが大いに評価されているようで、特に七聖の歌姫の面々の中では中心的存在と言える。戦闘スタイルは言うまでもなく、専ら徒手空拳による近接格闘型で、格闘そのものに関しても相当な腕の持ち主らしい。

 アイエールの中でもムードメーカーのような存在で基本誰とも仲が良いが、一番仲が良いのは幼馴染の未来とのこと。その仲の良さはアイエール内でも随一で、殆ど同じベッドで寝る程。だがそれが原因で、特にクリスなどから若干呆れられたりしているのだとか……。ちなみに“七聖の歌姫”の面々とは勿論の事、最近ではユウキや雪菜達ともよく一緒にいる。

 実は意外にもアイエールメンバーの中では一番よく食べるらしい。また翼とは先輩兼親友に近い間柄ではあるものの、アーティストとして彼女のファンでもある。そして言うまでもなく歌うことも好きとのこと。

 

 

 

 

◎風鳴翼

 

 

年齢  18

 

身長  167

 

CV  水樹奈々

 

(“魔法少女リリカルなのは”のフェイト・テスタロッサ、“DOGDAYS”のリコッタ・エルマール/ナナミ・タカツキ、“クロスアンジュ 天使と竜の輪舞”のアンジュ etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女。青色のロングヘアーが最大の特徴で、言動の堅い生真面目な性格である一方、実は少々天然だったり、寂しがり屋な一面もあるとのこと。ちなみに好きな事は歌うこと。

 リアスを巡る一件が終結した後に海外から帰還し、駒王学園高等部の3年生として編入。クラスはリアスや朱乃達と同じで、オカルト研究部にも入部している。成績はトップクラスなようで、運動神経も抜群。学園での人気に関しては元々の知名度も相まって、リアスや朱乃と互角以上になっている。男子からの人気については…言うまでもない。

 もう1つの顔として世界的に有名な歌い手でもあり、国内での人気は常にトップを争う程とのこと。またマリアとのツインボーカルも国内外を問わず凄まじい人気を持っているため、時には海外を飛び回ることもある。とはいえ現在は学生生活を極力優先させる方針らしく、学園にもそれなりの頻度で通える他、個人の自由時間も他のアーティスト達と比べると圧倒的に多いらしい。

 実は響達と同様、或る神器に関する非人道実験の被験者として、違法組織に囚われていた過去を持っている。一護とはその組織との抗争の際に出会い、救われたことで彼の傍に居る事を決意した模様。一護に対しては明確な好意を抱いており、“剣として彼の隣に立つ”ことを自身の信念としてしている。普段はその言動故に凛々しさが目立つが、特に一護と二人きりになった際には寂しがり屋な一面が目立つなど、まさに年相応の少女の姿を見せるのだとか…。

 所有している神器は“絶唱機甲・絶刀(シンフォギア・アマノハバキリ)”。人工神器である“絶唱機甲”シリーズの1つで、発動すると青を基調としたパワードスーツのような武装を身に纏う。武装の特徴は“剣”で、日本刀を連想させる剣を筆頭に、武装には大小様々な刀が仕込まれている。総合的な戦闘能力に関しては、シリーズの中で最も優れているとのこと。とはいえ、こちらも様々な秘密があるらしいが、その詳細は現在不明。

 “七聖の歌姫”の1人であると同時に、“蒼天の斬殺者”の異名で三大勢力全体にその名が知られており、魔王クラスとの呼び声も高い実力者。その剣の腕と戦闘技術はまさに一級品で、純粋な戦闘能力であれば“七聖の歌姫”の面々の中でも1、2を争う程らしい。戦闘スタイルはやはり剣を使った近接戦闘だが、斬撃を飛ばすなど中距離戦闘にも十分対応することが出来る。

 アイエールの中では年長者側の立場として頼られることが多いものの、時折妙な言動によってからかわれることもしばしば。また年上の女性に迫られたりすると弱い傾向にあり、特にマリアが相手の時には少々目立つ。とはいえ、特に“七聖の歌姫”の面々の中では最も頼りにされている存在とのこと。

 完璧超人のように思われがちだが、実は歌と戦闘以外に関しては殆ど不得手で、特に片付けは壊滅的に出来ない。そのためティッタやマリアが代わりにやることが多く、マリアや他の同い年以上の女性陣から注意を受けて恥ずかしがる姿もしばしば見られるのだとか…。また自身のバイクを所有しており、オフの日にはツーリングに出かけることも多い。ちなみにどうやら自身の身体の“ある部分”に関して、若干のコンプレックスを抱いている模様。

 

 

 

 

◎雪音クリス

 

 

年齢  16

 

身長  153

 

CV  高垣彩陽

 

(“機動戦士ガンダム00”のフェルト・グレイス、“夏色キセキ”の水越紗季、“八犬伝―東方八犬異聞―”の浜路 etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女。数か所を束ねた銀色のロングヘアーと発達した胸部が最大の特徴で、性格は非常に勝気で荒っぽい一方、結構ツンデレな一面も持っている。また言動も少々乱暴である他、独特な口調で話すとのこと。好きな物は“あんぱん”と“牛乳”。

 リアスを巡る一件の際に帰還した後、駒王学園高等部の2年生として編入。クラスは一護やイッセー達と同じクラスで、オカルト研究部にも入部している。成績は意外にもトップクラスに入る程優秀で、運動神経も抜群。また容姿も優れているため、男子からの人気も非常に高い。

 実は響達と同様、或る神器に関する非人道実験の被験者として、違法組織に囚われていた過去を持っている。一護とはその組織との抗争の際に出会い、救われたことで彼の傍に居る事を決意した模様。一護に対しては明確な好意を抱いているようで、ツンデレがより顕著になるとのこと。また大胆な行動を取ることも時折あるが、逆に迫られた場合には一気に弱気になったりするのだとか…。

 所有している神器は“絶唱機甲・魔弓(シンフォギア・イチイバル)”。人工神器である“絶唱機甲”シリーズの1つで、発動すると赤を基調としたパワードスーツのような武装を身に纏う。武装の特徴は“銃火器”で、特殊なクロスボウを筆頭にガトリング砲やミサイル、レーザーといった広域殲滅系のモノを主体としている。そのため破壊力に関しては恐らくシリーズの中で最も高いらしい。とはいえ、やはり未だ明らかになっていない点も多く存在している。

 “七聖の歌姫”の1人であると同時に、“紅蓮の殲滅者”の異名で三大勢力全体にその名が知られており、魔王クラスとの呼び声も高い実力者。特に破壊力に関してはアイエールの中でも随一とされている。また近距離戦に関しても二丁拳銃を用いて熟(こな)すことが出来るなど、多彩な戦闘スタイルを確立しているとのこと。

 アイエールの中では比較的常識人であるためか、何かとツッコミ役に回っていることが多い。ちなみにその原因を特に作っているのは響であり、年上にもかかわらず未だに“ちゃん”付けで呼ばれていることを含め、彼女にはどうやらかなり手を焼いている模様。また調と切歌の2人のことは何かとよく面倒を見ており、2人を連れて歩いている姿がよく目撃されているらしい。その一方翼のことはかなり慕っているようで、彼女の事はしばしば“先輩”と呼んでいる。

 実は世界的ヴァイオリニストと声楽家を両親に持つ“音楽界のサラブレッド”であり、音楽分野に関して突出した才能を持っているとのこと。また少々食べ方に問題があるようで、そこを指摘されると極端に恥ずかしがるのだとか…。

 

 

 

 

◎小日向未来(こひなたみく)

 

 

年齢  15

 

身長  156

 

CV  井口裕香

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女。深緑色のショートカットと頭の後ろの大きな白いリボンが最大の特徴で、性格は非常に温厚かつ優しい一方、少々引っ込み思案な一面も持っている。

 リアスを巡る一件の際に帰還した後、駒王学園高等部の1年生として編入。クラスは響やティッタ達と同じクラスで、オカルト研究部にも入部している。成績は上位陣に入る程優秀で、運動神経もかなり良い。またその容姿の良さと穏やかで優しい性格により、男子からの人気も高いとのこと。

 実は響達と同様、或る神器に関する非人道実験の被験者として、違法組織に囚われていた過去を持っている。一護とはその組織との抗争の際に出会い、救われたことで響達と共に彼の傍に居る事を決意した模様。一護に対しては明確な好意を抱いているようだが、響も自身と同じであることに気付いており、少々行動を迷っている所がある。そのため行動に移す際には響と共にすることが多く、逆に響も同じようにすることがあるのだとか…。

 所有している神器は“絶唱機甲・歪鏡(シンフォギア・シェンショウジン)”。人工神器である“絶唱機甲”シリーズの1つで、紫と白を基調としたパワードスーツのような武装を身に纏う。武装の特徴は“鏡”で、扇状に纏めたモノを銃の如く使用する一方、強力な光線による攻撃を可能にしている。また脚部には“イオノクラフト”と呼ばれる飛行ユニットが備わっており、シリーズの中で唯一常時飛行が可能とのこと。更に鏡の特性を利用することで分身や不可視化まで出来るらしく、その応用性はシリーズの中で最も高いとされている。とはいえ、詳細については未だ不明な部分が多い。

 七聖の歌姫”の1人であると同時に、“閃光の神罰者”の異名で三大勢力全体にその名が知られている。アイエールの中でも戦闘においては勿論のこと、神器の特性故に偵察などの他の場面でも十二分に活躍することが多いらしい。また戦闘スタイルも近距離から遠距離まで幅広く熟(こな)すとのこと。

 アイエールの中では数少ない穏やかさと良識を兼ね備えている人間の1人で、専ら状況を見てフォロー役に回ることが多い。一番仲が良いのはやはり幼馴染の響で、アイエール内でも随一とも言える程強固な関係を築いている。また他の同学年組では性格が似ているためか、ティッタともかなり仲が良いらしい。

 実はピアノを弾くのが得意で、現在も時間を見つけては練習をしているとのこと。また響に関して嫉妬深い所があるためか、『“友達以上の感情”を抱いているのでは?』と時折噂されている。そして稀に『病んでるのでは?』とも言われることがあるが……決して病んではいない。もう一度言おう……病んではいない……多分……。

 

 

 

 

◎マリア・カデンツァヴナ・イヴ

 

 

年齢  20

 

身長  170

 

CV  日笠陽子

 

(“けいおん!”の秋山澪、“インフィニット・ストラトス”の條ノ之箒、“ロウきゅーぶ!”の永塚紗季 etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である女性。薄い桃色のロングヘアーとリアス並みに発達した胸部が最大の特徴で、大胆かつ豪気な一面が目立つものの、実際は優しく面倒見の良い性格の持ち主。特に面倒見の良さに関しては相当なもので、周囲から『母親に近い』と言わしめる程。時折独特の芝居がかった口調で話す。

 全米で1、2を争う程の人気を持つトップアーティストで、全世界においても既にその名を轟かせている。また最近では翼とのツインボーカル活動が多いため、彼女と共によく海外を飛び回っているとのこと。ミステリアスかつ力強い歌声が最大の魅力。

 実は響達と同様、或る神器に関する非人道実験の被験者として、違法組織に囚われていた過去を持っている。一護とはその組織との抗争の際に出会い、救われたことで彼の傍に居る事を決意した。一護に対しては明確な好意を抱いているようだが、大胆な性格とは裏腹に行動に移せていない模様。だが彼に対する信頼はこの上なく厚いため、彼の前では自身の精神的な脆さを曝け出し、感情を露わにしてしまうらしい。

 所有している神器は“絶唱機甲・銀腕(シンフォギア・アガートラーム)”。人工神器である“絶唱機甲”シリーズの1つで、発動すると白銀を基調としたパワードスーツのような武装を身に纏う。武装の特徴は“短剣”だが、長さは自在に変化するため長剣にもなる。また刀身を蛇腹状に変形させることで、多角的な斬撃を繰り出すことも可能。更に響の神器と同様、他の“絶唱機甲”の所有者達との連携、あるいは集約の性能も有しているとのこと。とはいえ、未だに明かされていない能力や機能もある模様。

 “七聖の歌姫”の1人であると同時に、“白銀の執行者”の異名で三大勢力全体にその名が知られており、魔王クラスとの呼び声も高い実力者。翼に匹敵する程の卓越した戦闘技術を持っており、純粋な戦闘能力であれば“七聖の歌姫”の中でも1、2を争う程らしい。戦闘スタイルはやはり短剣による近接戦闘だが、斬撃を飛ばすなど中距離戦闘にも十分対応することが出来る。

 アイエールの中では元々年長者側の立場であることに加え、その面倒見の良さ故に“最も母親らしい存在”として認知されている。特に切歌や調、エルフナインの前ではその雰囲気が前面に現れることが多いとのこと。また家事全般を得意としているため、しばしばティッタやミラジェーンの手伝い、更には翼の部屋の整理整頓を代わりにやっている。切歌や調、エルフナインとは姉妹…場合によっては母娘に近い関係を築いており、彼女達の面倒を見るのは最早日課。翼とはツインボーカル活動を行うパートナーとして信頼を寄せる一方、彼女の少々天然な言動に困惑することもある模様。また意外にもセフィリアに対して何か思う所があるらしく、時折“マム”という単語が出たりでなかったりするとのことだが…詳細は不明。

 

 

 

 

◎月読調

 

 

年齢  14

 

身長  152

 

CV  南條愛乃

 

(“ラブライブ!”の絢瀬絵里、“D.C.Ⅱ~ダ・カーポⅡ~”の月島小恋、“バカとテストと召喚獣”の工藤愛子 etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女。黒髪のツインテールが最大の特徴で、性格は基本的に物静かだが、見た目とは裏腹に大胆な行動を取ることもしばしば。また若干一般的な認識とのズレている所があるようで、思いもよらない言動で周りを驚かせることもあるらしい。

 リアスを巡る一件の際に帰還した後、駒王学園中等部の2年生として編入。クラスは切歌と同じで、学年の枠を越えてオカルト研究部にも入部している。運動神経はかなり良く、成績に関しても悪くはない。だが少々勉強を疎かにする傾向にあるようで、度々クリスやマリア、そして一護から偶に注意を受けている模様。また外見と物静かで不思議な印象が受けているらしく、男子から人気があるとのこと。

 実は響達と同様、或る神器に関する非人道実験の被験者として、違法組織に囚われていた過去を持っている。一護とはその組織との抗争の際に出会い、救われたことでマリア達と共に彼の傍に居る事を決意した。一護のことを実の兄のように慕っており、彼の事を“お兄ちゃん”と呼んでいる。一方で明確な好意も抱いているようで、切歌と共に積極的な行動をするとかしないとか…。その根底にあるのは自身に温かな日常を与えてくれた一護に対する感謝の念であり、“少しでも何か役に立ちたい”という想いを常に持っている。

 所有している神器は“絶唱機甲・塵鋸(シンフォギア・シュルシャガナ)”。人工神器である“絶唱機甲”シリーズの1つで、発動するとピンクを基調としたパワードスーツのような武装を身に纏う。武装の特徴は“鋸”で、ツインテールの部分のコンテナから様々な形状の鋸を展開して攻撃する。また脚部には小型のローラーが装備されており、スケートの要領で高速かつ自由自在に移動することも可能。更に切歌の神器との連携を予め想定しており、連携技も存在するのだとか…。だが神器との適合に関して少々問題を抱えているらしく、定期的にウェルとエルフナインにその調整をしてもらっている。その他の詳細については依然不明。

 “七聖の歌姫”の1人であると同時に、“桃華の切削者”の異名で三大勢力全体にその名が知られている。単独でこそ翼達と比べて僅かに劣るものの、切歌との連携によって真価を最大限に発揮することができ、裕に魔王クラスに並ぶとのこと。しかし単独でも最上級悪魔程度であれば裕に倒せるらしい。戦闘スタイルは基本的に鋸を使用した機動力のある近距離戦だが、中・遠距離戦にも対応できる。

 本人は少々不満そうではあるが、アイエールの中ではどちらかというと子供側の立場に居るとのこと。切歌との仲はアイエールの中でも1、2を争う程強固なモノで、必ずと言っていい程一緒に行動している。基本的には突っ走りがちな彼女の手綱を握っているのだが、自身が大胆な行動を取った際には彼女にフォローをしてもらうなど、関係性は状況によって大きく逆転する。マリアのことは実の姉のように慕っており、彼女への想いも非常に強い。クリスのことは先輩として切歌と共に一緒にいることが増えたらしく、特に勉強に関しては彼女に教えてもらうことが多い。また響に対しては別の想いを密かに持っているようで、普段とは違う表情を見せることがある模様。

 ちなみに自身の身体の“ある部分”に関して、僅かにコンプレックスを抱いているとかいないとか…。

 

 

 

 

◎暁切歌

 

 

年齢  14

 

身長  155

 

CV  茅野愛衣

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女。金髪のショートカットが最大の特徴で、性格は明るく協調性が高い一方で、年相応に子供っぽいとのこと。語尾に「~デス」と付けて話すなど、かなり独特な語彙センスの持ち主。度々『常識人』だと自称しているが、調と同様に一般的な認識とは若干ズレているらしい。調からは“切ちゃん”という愛称で呼ばれている。ちなみに苦手(?)なものは“手紙”と“ウェル”。

 リアスを巡る一件の際に帰還した後、駒王学園中等部の2年生として編入。クラスは切歌と同じで、学園の枠を越えてオカルト研究部にも入部している。運動神経はかなり良いが、成績は調と同じくらい。だが調と同様に少々勉強を疎かにする傾向があるようで、度々クリスやマリア、そして一護から注意を受けている模様。また容姿と明るい性格のお蔭で、男子からの人気はかなり高い。

 実は響達と同様、或る神器に関する非人道実験の被験者として、違法組織に囚われていた過去を持っている。一護とはその組織との抗争の際に出会い、救われたことで彼の傍に居る事を決意した。調と同様、一護のことを実の兄のように慕っており、彼のことを“一兄”と呼んでいる。一方で明確な好意も抱いているようで、調と共に積極的な行動をするとかしないとか…。その根底にあるのは調と同じく、自身に温かな日常を与えてくれた一護に対する感謝の念であり、“少しでも何か役に立ちたい”という想いを持っている。

 所有している神器は“絶唱機甲・獄鎌(シンフォギア・イガリマ)”。人工神器である“絶唱機甲”シリーズの1つで、緑を基調としたパワードスーツのような武装を身に纏う。武装の特徴は“鎌”で、サイズを変化させることが出来る一振りの鎌をメインに、場合によっては二刀展開も可能とのこと。また両肩の装甲部分には相手を拘束するアンカーや、短期的な空中戦を可能にするバーニアなども内蔵されている。更に調の神器との連携を予め想定しており、連携技も存在するのだとか…。だが調と同様に神器との適合に関して少々問題を抱えているらしく、定期的にウェルとエルフナインにその調整をしてもらっている。その他の能力の詳細については依然不明。

 “七聖の歌姫”の1人であると同時に、“深緑の断罪者”の異名で三大勢力全体にその名が知られている。単独でこそ翼達に僅かに劣るものの、調との連携によって真価を最大限に発揮することができ、裕に魔王クラスに並ぶとのこと。しかし、やはり単独でも最上級悪魔程度であれば裕に倒せるらしい。戦闘スタイルは鎌による近・中距離戦を得意としている。

 本人は少々不満そうではあるが、アイエールの中では調と同じくどちらかというと子供側の立場に居るとのこと。調との仲はアイエールの中でも1、2を争う程強固なモノで、必ずと言っていい程一緒に行動している。彼女の思わぬ行動を頑張ってフォローしようとする一方で、はしゃごうとした際には彼女に止められるなど、“持ちつ持たれつ”といった関係性を築いている。マリアのことは実の姉のように慕っており、彼女への想いも調と同じくらい強い。クリスのことは先輩として調と共に一緒に居る事が増えたらしく、特に勉強に関しては彼女に教えてもらうことが多い。そしてウェルのことは基本的に苦手としているようで、彼の言動によっては調を守ろうと前に出たり、逆に一護の後ろに隠れたりすることもあるのだとか…。

 

 

 

 

◎キャロル・マールス・ディーンハイム

 

 

年齢  不詳

 

身長  135

 

CV  水瀬いのり

 

(“ご注文はうさぎですか?”のチノ、“ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか”のヘスティア、“がっこうぐらし!”の丈倉由紀 etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女(?)。金髪のおさげ髪と右目の下の泣きボクロが最大の特徴で、幼い外見とは裏腹に辛辣かつ大人びた性格の持ち主。だが少々ツンデレような一面も見られるとのこと。

リアスを巡る一件の際に帰還した後、駒王学園初等部の4年生として編入。クラスはエルフナインと同じで、後にオカルト研究部にも入部している。成績等に関しては非の打ち所が微塵もない程良く、教師陣もどうすべきか日々困惑しているらしい。また本人は鬱陶しがっているものの、同じクラスの面々からかなり慕われている。だがその状況に至った背景には、エルフナインが深く関わっているらしい。

その正体は“終焉の錬金術師”の異名を持ち、錬金術において歴代最強と謳われる程の伝説的人物。しかも実際には数百年の時をホムンクルスと記憶操作技術によって生き続きているため、アイエールの中では最も年長者であるとのこと。一護と出会った経緯については一切不明だが、彼の言うことには大抵従うなど、他のメンバーと比べて態度が大きく軟化している。それ故彼に対しては普段と大きくかけ離れた一面を見せるのだとか…。

 有する能力は当然の如く錬金術であり、火、水、風、土の“四大元素”を始めとした様々なエネルギーを自在に操ることが出来る。そのため戦闘以外のあらゆる状況においても利用することが可能で、“万能”と表現しても決して過言ではらしい。また同時に“万生の戦琴(ジ・ダウルダブラ)”という神器の所有者でもあり、小型の竪琴のような形状を取っている。しかし発動すると濃い紫色を基調としたプロテクターを纏うと同時に、彼女自身の肉体を一気に成人化させる。武装の特徴は“弦”で、鋼線のようにして斬撃を繰り出すといった直接攻撃は勿論の事、弾くことによって錬金術の増幅まで可能とのこと。とはいえ、その他の錬金術や神器の詳細については未だ不明。

 その戦闘能力はアイエールの中でもトップクラスで、『セフィリアやサーシャ達と互角かそれ以上』と言われている。また場合によっては響達“七聖の歌姫”の面々全員を相手にしても圧倒するとのこと。更にあらゆる異端技術にも精通しているため、独自の戦力を創造することも出来る。仮にそれを含めたとすれば、『三大勢力を1人で相手取ることも可能なのではないか?』と言われているとかいないとか…。

 アイエールの中では比較的に“我が道を行くタイプ”として認識されているようで、基本的には自室等で何かの研究や開発をしていることが多い。またメンバーの中に居る際も皮肉屋として、よく辛辣な発言を放っている。しかしその一方で、自身に積極的に構ってくる者達には若干動揺したり鬱陶しく思いながらも、何やかんやで流されてしまいがち。主に響やエルフナインが該当し、特に響に対してはツンデレの一面が露骨に現れるらしい。エルフナインとは厳しい言葉を間々浴びせつつも頻繁に一緒に行動しており、よく研究の際にも助手として扱き使っている。少々奇妙な関係性ではあるが、周囲からは『姉妹関係としては意外と良好に見える』とのこと。

 ちなみに独自の戦力に関して、実例と言ってもいいような存在が既に居るらしいのだが、こちらの詳細も未だ明かされていない。

 

 

 

 

◎エルフナイン

 

 

年齢  不詳

 

身長  135

 

CV  久野美咲

 

(“七つの大罪”のホーク、“世界征服~謀略のズヴィズダー~”の星宮ケイト、“ガリレイドンナ”のグランデロッソ etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女……もう一度言おう、少女である。やや黒みがかった緑色のショートカットが最大の特徴で、一人称は“ボク”。性格は基本的に穏やか…というよりオドオドしているが、芯の強さも持ち合わせており、時として大胆な行動に出ることもあるのだとか…。

 リアスを巡り一件の際に帰還した後、駒王学園初等部の4年生として編入。クラスはキャロルと同じで、後にオカルト研究部にも入部している。勉強に関してはキャロルと同様、非の打ち所がない程優秀なのだが、運動に関してはかなり苦手な模様。一方その素直でおっとりとした性格のためか、同学年内での人気は非常に高く、マスコット的な存在になりつつあるとのこと。ちなみに学内では何かと気難しいキャロルを輪に入れようと日々尽力しており、キャロルが慕われている1つの要因として大きく影響しているのだとか…。

 その正体はキャロルによって生み出されたホムンクルス、すなわち人造人間であり、アイエールに加わる前はずキャロルと共に行動していた。一護と出会った経緯については一切不明だが、彼の事を非常に慕っており、その光景を見た周囲からは『父娘にしか見えない』としばしば言われているとのこと。

 ティッタと同様、戦闘能力を一切有していない人物の1人だが、実はキャロルと同程度の卓越した技術力の持ち主。特に神器関連の技術の研究や開発を得意としており、アイエールでは主に神器の調整や能力の向上に関する提言などを行っている。中でも響達の神器である“絶唱機甲”の知識や技術に関しては、ウェルと共に最上位のスペシャリストなんだとか…。

 アイエール内でもマスコット的存在として女性陣達に可愛がられている。その素直な性格故に誰に対しても心を開いているが、中でもマリアには非常に懐いており、こちらも周囲から『母娘にしか見えない』と言われている。キャロルとは必ずと言っていい程一緒に行動しており、しばしば辛辣な発言を口にする彼女を諫めながら、彼女の研究の手伝いをしている。周囲曰く、その姿は『姉を慕う妹そのもの』らしい。そしてウェルとは神器関連の問題に関して何かとよく協力しており、彼に信頼を寄せることが出来る唯一の存在とのこと。

 

 

 

 

◎ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス

 

 

年齢  32

 

身長  179

 

CV  杉田智和

 

(“銀魂”の坂田銀時、“涼宮ハルヒの憂鬱”のキョン、“ジョジョの奇妙な冒険”のジョセフ・ジョースター etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である男で、主に“ウェル”、あるいは“博士”と呼ばれている。銀髪と眼鏡を掛けているのが最大の特徴で、外見こそ冷静沈着な研究者のように見えるが……実際には自信過剰かつ強引な野心家。また度々情緒が不安定になるらしく、場合によっては“キャラそのもの”が変わるとか変わらないとか…。好きなモノは“英雄”。

 実はキャロルやエルフナインと共にアイエールの技術分野を担っている者の1人で、中でも生化学分野の研究や技術に関しては天才中の天才と呼ぶべき存在。また医学にも精通している他、神器に関する知識も非常に豊富。特に“絶唱機甲”の技術や知識に関してはエルフナインと共に最上位のスペシャリストと言うべき存在のため、彼女達のメディカルチェックなどが現在の主な担当とのこと。更には薬品の開発まで行うなど、アイエール内においては技術と医療の両面で重大な役割を果たしている。

 アイエールの一員となった経緯に関しては一切不明だが、組織内での立ち位置は非常に特殊で、全面的に信頼されている様子は全く無い。また本人も周囲に不信感を抱かせるような言動を度々行っており、特に響達に対しては怖れを抱かせるようなモノが目立つ。そのため当麻達からはよく苦言を呈されているらしく、中でも一護には斬月を突き付けられるなど一触即発な雰囲気になることもしばしば。だがそれに対しても余裕を保っていることが多く、注意や苦言もすんなりと受け入れている所を見ると、険悪な関係とも決して言い切れないらしい。

 戦闘に関しては全くの専門外で、その類のスキルは一切無いとのこと。だが実は或る重大な秘密を持っているとかいないとか…。

 前述の通り、アイエールの中では基本的に邪険に扱われたり、狂気的な発言に対する制裁を受けることが最早日常になりつつある。中でも切歌には最も嫌われているようだが、彼女と調の神器の調整に欠かせない人物でもあり、その関係性は非常に微妙なものとのこと。また響のことを“英雄殿”と呼んで度々接しているが、彼女からも苦手意識を持たれている。その一方、エルフナインとキャロルとは神器の研究に関して時折協力しているらしく、アイエール内でもその技術力と知識については評価を受けている模様。

 狂気的な側面が非常に目立つものの、『英雄とは飽くなき夢を見て、誰かに夢を見せるもの』と語るなど、英雄という概念に対しては確かな熱意を有している。そのため自らの持論に反する者、特にそれが同じ研究者のような人間の場合には厳しく糾弾することもあるらしい。また以前は人命すらも軽んじるような非情さも目立っていたようだが、現在は僅かだが認識を改めており、面倒くさがりながらも多少は考慮するようになった。

 ちなみにかなりの偏食家で、殆ど菓子類しか食べない超不健康な食生活を送っているとかいないとか…。

 

 

 

 

☆FAIRYTAIL

 

 

 

◎エルザ・スカーレット

 

 

年齢  18

 

身長  168

 

CV  大原さやか

 

(“Fate/Zero”のアイリスフィール・フォン・アインツベルン、“監獄学園 プリズンスクール”の万理、“ゴッドイーター”の橘サクヤ etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女。腰近くまで伸びた緋色のロングヘアーと発達した胸部が最大の特徴で、性格は非常に厳格かつ豪胆な上に男勝り。だが生真面目な部分が災いして、少々天然な一面も見られるとのこと。好きなものは“リクオの作るデザート”や“武具・鎧”。嫌いなものは“悪”。

 リアスを巡る一件の際に帰還した後、駒王学園高等部の3年生として編入。クラスはミラジェーンやソーナと同じクラスで、後にオカルト研究部にも入部している。勉強・運動共にトップクラスの成績を持つ超優等生で、同時にその性格と容姿故に、男女両方からリアスや朱乃並みの人気があるらしい。しかし一方で風紀に関しては非常に厳しく、風紀を乱す者達(最たる例はイッセーなど)を見つけた場合には容赦なくボコボコにするのだとか…。

 かつてはトップクラスの神器を持つ少女達で構成された戦闘集団、“妖精の尻尾(フェアリーテイル)”のリーダーを務め、はぐれ悪魔の討伐などの依頼をこなしていたとのこと。しかしある一件の際にリクオと出会い、その時の出来事がきっかけでアイエールに加わることとなった。リクオに対しては明確な好意を抱いているようだが、恋愛事に関してはどちらかというと不得手。だがやはり度胸が非常にあるため、時折大胆な行動を見せるらしい。

 所有している神器は“天妖騎士(ザ・ナイト)”。一瞬で自身が身に纏っている鎧や武器を変えることができ、その種類は裕に100を超える。また鎧や武器にもそれぞれ特性があるため、状況に応じて鎧や武器の組み合わせを変えることも可能。ちなみに鎧や武器だけでなく、普段着やアクセサリーも出来る。

 三大勢力の間では“妖精女王(ティターニア)”の異名で知られており、その実力は『魔王クラスかそれ以上』とも言われる程。剣や槍、斧を始めとしたあらゆる武器を使いこなすことができるようで、特に剣の腕は達人の域を完全に超えている。また右目は特製の精巧な義眼となっており、あらゆる能力における視覚効果を全て無効化させることが出来るため、幻術や幻覚の類は殆ど効かないらしい。

 アイエールの中では生真面目な性格故に、何かとまとめ役に回ることが多い。ルーシィやミラジェーンを始めとした“妖精の尻尾”の面々にとってはやはりリーダー的存在だが、翼やマリア、エレンなどとも度々一緒にいるとのこと。また学園ではソーナや椿姫とも親しくなりつつあり、それがきっかけで生徒会メンバーとも面識を持つようになっている。

 ちなみに芸術センスに少々問題があるらしく、絵や字はとてつもなく下手。しかもそのレベルは『夢に出てきて魘(うな)される』くらいなんだとか…。

 

 

 

◎ミラジェーン・ストラウス

 

 

年齢  18

 

身長  165

 

CV  小野涼子

 

(“IGPX”のエイミー・ステイプルトン、“みなみけ”のアツコ、“ましろ色シンフォニー”の瀬名愛理 etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女。前髪を縛った銀色のロングヘアーとエルザと同じくらい発達した胸部が最大の特徴で、能天気かつ穏やかな性格の持ち主だが、やや天然な一面もあるとのこと。ちなみに好きな事は料理。嫌いなものはゴキブリ。

 リアスを巡る一件の際に帰還した後、駒王学園高等部の3年生として編入。クラスはエルザやソーナと同じクラスで、後にオカルト研究部にも入部している。エルザと同様、勉強・運動共にトップクラスの成績を持つ超優等生で、同時にその性格と容姿故に、男女両方からリアスや朱乃並みの人気があるらしい。

 かつてはエルザ達と共に“妖精の尻尾”の1人として、はぐれ悪魔の討伐などの依頼をこなしていた。だがある一件の際にリクオと出会い、その時の出来事がきっかけでアイエールに加わったとのこと。リクオに対しては明確な好意を抱いているようだが、基本的には周りよりも一歩引いた所で見守っていることが多い。しかし場合によってはかなり大胆な行動に出る模様。

 所有している神器は“接収・魔魂(テイクオーバー・サタンソウル)”。発動させることで翼や尻尾を生やし、自らを悪魔のような姿へと変えることが出来る。しかもそのパターンは複数あるらしく、姿によって戦闘力が大きく異なるとのこと。やはりその見た目から想像が付くように、魔力を用いて攻撃を行う。

 三大勢力の間では“魔人”の異名で知られており、その強さはエルザとほぼ互角らしい。主に近接格闘戦を得意としており、パワーとスピードの両方で相手を圧倒する。特に魔力を用いた一撃の威力は凄まじく、場合によっては一撃で小規模な街が吹っ飛ぶのだとか…。

 アイエールの中では穏やかな性格の持ち主であるため、ソフィーと共に“相談役”や“仲裁役”に回る事が多い。また家事全般が得意であるため、ティッタやマリアと共に屋敷の家事も担っている。中でも料理の腕に関しては評判が高く、総合力で考えればアイエールの中でもリクオに次ぐとのこと。アイエールのメンバーとは全員気兼ねなく話せる模様。無論“妖精の尻尾”の面々とは特に仲が良いが、やはり妹のリサーナとの絆は相当堅い。また学園ではソーナや椿姫とも親しくなりつつあり、それがきっかけで生徒会メンバーとも面識を持つようになっている。特に女性メンバーからはしばしば相談などを受けているのだとか…。

 完璧超人に見られがちだが、実は絵だけは苦手。とはいえ、エルザよりかは大分マシとのこと。

 

 

 

 

◎ルーシィ・ハートフィリア

 

 

年齢  17

 

身長  162

 

CV  平野綾

 

(“涼宮ハルヒの憂鬱”の涼宮ハルヒ、“らき☆すた”の泉こなた、“DEATH NOTE”の弥海砂 etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女。金髪のツインテールと発達した胸部が最大の特徴で、天真爛漫かつ明るい性格の持ち主だが、高飛車な一面や純情な一面も持っているとのこと。好きなものは“本”と“星霊”。ちなみにレビィからは唯一“ルーちゃん”という愛称で呼ばれている。

 リアスを巡る一件の際に帰還した後、駒王学園高等部の2年生として編入。クラスはレビィやリサーナと同じクラスで、後にオカルト研究部にも入部している。成績は学年内でもかなり優秀で、運動神経も抜群。容姿も優れているため、男子からの人気も高い模様。またレビィに負けず劣らずの読書家でもあるため、本好きの女子達の間では中心的存在になりつつある。

 かつてはエルザ達と共に“妖精の尻尾”の1人として、はぐれ悪魔の討伐の依頼などをこなしていた。しかしある一件の際にリクオと出会い、その時の出来事がきっかけでアイエールに加わったとのこと。リクオに対しては明確な好意を抱いているようだが、純情な一面が災いして積極的な行動には出られていない様子。だが時として思わぬ形で大胆な行動を取ることがあるとかないとか…。

 所有している神器は“星天栄姫(アストロ・アナスタシア)”。発動することで非常に希少な存在である“星霊”を呼び出すことができ、その際には常に身に付けている鍵を用いる。中でも金色の鍵を使って呼び出す“黄道十二門”と呼ばれる星霊達は非常に強力な力を有しているとのこと。一見すると使い魔との関係に見えるが、本人は星霊達を自身の“友達”としてハッキリと認識しており、その信頼関係は実に強固。ちなみに昔は呼び出す星霊の数が限定されていたらしいが、今では実質的にその制限も無くなっている。他にも隠された能力があるようだが、その詳細は不明。

 三大勢力の間では“星神姫”の異名で知られており、その実力は最上級悪魔ですら裕に倒してしまう程とのこと。基本的には星霊達を使役することで戦闘を行うのだが、自らも“エリダヌス座の星の大河(エトワール・フルーグ)”という特殊な鞭を用いて戦うことも可能。しかし戦闘においては不憫な目に遭うことも間々あるため、実力を発揮する機会は意外と少ないらしい。

 アイエールの中では良識人として何かとツッコミ役に回ることが多い。だが何かと器用にこなすタイプであり、年下のメンバーには勉強を教えたり、髪を切るといったオシャレ関係のことにも気を回している。やはり“妖精の尻尾”の面々とは特に親しいが、中でもレビィとは本好きという共通点もあるためか、一緒にいることが多い模様。またウェンディのことも何かと気に掛けており、彼女からも非常に慕われている。

 実は或る財閥の一人娘として育った経歴があり、その当時の癖や習慣が時折出てしまうとのこと。また自作の小説を書いているようだが、中身については全くの秘密にしている。

 

 

 

 

◎ウェンディ・マーベル

 

 

年齢  12

 

身長  137

 

CV  佐藤聡美

 

(“けいおん!”の田井中律、“ご注文はうさぎですか?”のチア、“ガールフレンド(仮)”の椎名心実 etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女。藍色のツインテールが最大の特徴で、非常に柔和かつ健気な性格の持ち主だが、同時に少々気弱で引っ込み思案な一面も持っている。嫌いなものは梅干し。

 リアスを巡る一件の際に帰還した後、駒王学園初等部の6年生として編入。後にオカルト研究部にも入部している。成績は学年内でもかなり優秀で、運動神経も抜群。また持ち前の健気な性格と優れた容姿を持っているため、男女両方からかなり人気があるとのこと。ちなみに中高等部においても、“妹にしたい1人”として名が挙がっているとかいないとか…。

 かつてはエルザ達と共に“妖精の尻尾”の1人として、はぐれ悪魔の討伐の依頼などをこなしていた。しかしある一件の際にリクオと出会い、その時の出来事がきっかけでアイエールに加わったとのこと。リクオに対しては明確な好意を抱いているようだが、引っ込み思案な一面を持っている故に積極的な行動には中々出られていない模様。

 所有している神器は“滅竜殲技・天(ドラゴンブレイズ・シエル)”。龍殺しにおいては“最強の神器”と言われているモノの1つで、“空気”を用いて攻撃を行う。また最大の特徴として“回復”や“能力向上”に特化しており、傷の回復は勿論の事、状態異常からの回復や対象の攻撃力を上昇させるといったことも可能。そのため回復系神器としても最高クラスの性能を有しているとのこと。だが空気が汚れている環境では能力の使用に大きな支障を来たすリスクがあるなど、弱点も存在する。他にも隠されている部分があるようだが、現在の所は不明。

 三大勢力の間では“天空の巫女”の異名で知られており、特に龍殺し(ドラゴンスレイヤー)としての実力はトップクラスとの呼び声が高い。本人は何かと否定しているが、その一撃の威力は『龍王ですら喰らえばただでは済まない』らしい。戦闘に関しては基本的に後方から支援を行いつつ、自身も前に出て近接戦を行うのがスタイル。

 アイエールの中ではかなり年少者であり、基本的に妹ポジションとして女性陣から可愛がられている模様。しかしその一方で、唯一の年下であるエルフナインには時折姉のような一面を見せるらしい。やはり“妖精の尻尾”の面々とは特に仲が良いようで、中でもルーシィとは一緒に居る事が多いとのこと。また他のメンバーではヤミや芽亜、更に切歌や調ともかなり親しい。

 実は芽亜と同じくらい優れた嗅覚の持ち主で、匂いだけで相手を判別できるとのこと。また自身の身体の小ささや“ある部位の成長”にコンプレックスを抱いているのだとか…。

 

 

 

 

◎リサーナ・ストラウス

 

 

年齢  17

 

身長  162

 

CV  櫻井浩美

 

(“Angel Beats!”の仲村ゆり、“聖痕のクェイサーⅡ”の瀬田深雪、“白銀の意思 アルジェヴォルン”のシルフィー・アップルトン etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女で、ミラジェーンの妹。銀髪のショートヘアーが最大の特徴で、性格は明るく天真爛漫。ただ少々大人っぽく見せようとする一面もあるとのこと。好きなものは動物(特に猫)で、嫌いな事は勉強。

 リアスを巡る一件の際に帰還した後、駒王学園高等部の2年生として編入。クラスはルーシィやレビィと同じクラスで、後にオカルト研究部にも入部している。運動神経は抜群だが、前述の通り勉強は苦手なため、度々ルーシィやレビィ、ミラジェーン、そしてリクオなどに教えてもらっているとのこと。その一方で持ち前の明るい性格と姉譲りの優れた容姿を持っているために、男女からの人気はかなり高い模様。

 かつてはミラジェーン達と共に“妖精の尻尾”の1人として、はぐれ悪魔の討伐の依頼などをこなしていた。しかしある一件の際にリクオと出会い、その時の出来事がきっかけでアイエールに加わったとのこと。リクオに対しては明確な好意を抱いており、行動もかなり積極的。またしばしば姉のミラジェーンと共に動くこともあるのだとか…。

 所有している神器は“接収・動物魂(テイクオーバー・アニマルソウル)”。自身の姿を様々な生き物に変化させることができ、それぞれの特性を活かして戦う。生き物は動物に限らず、獣人や聖獣までと非常に豊富である他、その動物の大きさに合わせて自身の大きさも自在に変えることが出来るらしい。

 三大勢力の間では“獣神姫”の異名で知られており、その実力は最上級悪魔が相手でも裕に倒してしまう程とのこと。以前はあまり戦闘能力が高くなかったらしいが、現在では鍛錬のお蔭でかなり向上したとのこと。また様々な動物に変化できる故に、偵察や情報収集といった側面においても活躍している。

 アイエールの中では持ち前の明るさで場を盛り上げる一方、意外と良識人でもあるため状況によっては苦笑いを浮かべることもしばしば…。また姉譲りの面倒見の良さも持ち合わせており、年下のメンバーの相談に乗ることもある模様。やはり“妖精の尻尾”の面々とは特に仲が良く、中でも姉のミラジェーンとの絆は相当堅い。他のメンバーでは動物好きという共通点から、ナナや芽亜ともよく動物談義を繰り広げているとのこと。

 

 

 

 

◎レビィ・マクガーデン

 

 

年齢  17

 

身長  151

 

CV  伊瀬茉莉也

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女。青色のショートカットとカチューシャが最大の特徴で、天真爛漫とまではいかないものの明るい性格の持ち主。だが昔はかなり内気で大人しかったとのこと。好きなものは本と鳥。嫌いなものは暗い所。

 リアスを巡る一件の際に帰還した後、駒王学園高等部の2年生として編入。クラスはルーシィやリサーナと同じクラスで、後にオカルト研究部にも入部している。成績に関しては超優秀で、特に語学に関しては既に十数か国の言語を習得している程。運動神経に関しても十分に高い。またルーシィ以上の読書家でもあるため、本好きの女子達の間では彼女と共に中心的な存在になっているとのこと。ちなみにその小柄な体型故に、一部の男子達から人気がある模様。

 かつてはエルザ達と共に“妖精の尻尾”の1人として、はぐれ悪魔の討伐の依頼などをこなしていた。しかしある一件の際にリクオと出会い、その時の出来事がきっかけでアイエールに加わったとのこと。リクオに対しては明確な好意を抱いているようだが、あまり積極的な行動には出られていない。だが時折ルーシィに巻き込まれる形で、思わぬ大胆な行動に出る時があるとか無いとか…。

 所有している神器は“起字天変(ソリッド・スクリプト)”。文字を立体化させて意味に合った事象を引き起こすことが出来る。文字によっては物質を出現させることも可能である他、抽象的な意味についても事象を引き起こせるとのこと。ただし、事象を発生させる文字に関してはそれなりの制限があるらしい。

 三大勢力の間では“万象の才媛”の異名で知られており、その実力は最上級悪魔が相手でも裕に倒してしまう程。リサーナと同様に以前はあまり戦闘能力が高くなかったらしいが、現在では鍛錬のお蔭でかなり向上した模様。また何より最大の武器はその頭脳であり、状況に合わせた支援は勿論の事、時に思わぬ奇策を提案することもある。

 アイエールの中でも一、二を争う程の知識人であり、あらゆる神話体系に関する情報を網羅している。特に古代言語に関しては、最早他の一般的な知識人達とは比べ物にならないらしい。そのため組織における頭脳担当の1人としての役割が大きいとのこと。やはり“妖精の尻尾”の面々とは特に仲が良いが、中でもルーシィとは同じ本好きという共通点もあるためか、一緒に居る事が多い。また同様の理由でヤミともしばしば本を一緒に読んでいる。

 自身の部屋には無数の本があり、その数は最早図書館並み。またウェンディと同様、自身の身体の小ささや“ある部位の成長”に関してコンプレックスを抱いている模様。

 

 



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キャラ紹介(BLACKCAT&ToLOVEる&アカメが斬る)


という訳で、キャラ紹介第三弾です。よ、ようやく終わった…。

次回からいよいよエクスカリバー編に突入です。


では、本編をどうぞ。



☆BLACKCAT

 

 

 

◎セフィリア・アークス

 

 

年齢  27

 

身長  170

 

CV  井上喜久子

 

(“らんま1/2”の天道かすみ、“マクロスF”のグレイス・オコナー、“ああっ女神さまっ”のベルダンディー etc.)

 

 

 

 アイエールにおいて“総帥補佐官”の地位を務めている女性。緩やかなウェーブの掛かった長い金髪と青い瞳、そして額に刻まれた“Ⅰ”の刺青が最大の特徴。謹厳実直かつ落ち着いた性格の持ち主で、場合によっては冷酷な一面も垣間見せる。しかしその一方、和やかな場面においては状況を温かく見守るなど、慈愛に満ちた一面も持ち合わせているとのこと。好きなものは日本食で、趣味は生け花。

 総帥である当麻の補佐役を務める一方、総帥直属の戦闘部隊“時の番人(クロノナンバーズ)”の隊長を任されている。当麻に対しては絶対的な忠誠を誓っている他、副総帥である一護やリクオにも従う。特に当麻に対しては1人の女性として身を案じている節もあり、個人的感情を寄せている素振りすら見られるらしい。だが普段はそれを一切表に出さないなど、非常に謎が多い。

 絶対的な力を持つ名刀“クライスト”の使い手であり、その強さは現世界において“最強の女”と称される程。あまりに異次元の実力を持っているが故に、“絶対女王(アブソリュート・クイーン)”の異名であらゆる勢力から恐れられている。“アークス流剣術”という絶対的な速さを主体とした剣技を用いるらしく、その速さは最早複数の残像を生み出すレベル。魔王級の実力者でさえ、その剣閃を目にすること無く葬られてしまうとのこと。また自己治癒の特性も有しており、仮に大怪我を負ったとしても短時間で回復する。

 アイエールの中では当麻達に次ぐ立場の者であり、彼等が居ない際には全体指揮を取ることが多い。だがその一方、普段においては面倒見の良い一面を垣間見せているらしく、特に切歌や調などの年少メンバー達にはその傾向が強いとのこと。また家事全般をこなせるため、ティッタ達の手伝いをしていることも多々ある模様。

 真の意味で“完璧超人”と称すべき人物であり、当麻達と共にアイエールの中核を成す存在とのこと。

 

 

 

 

◎ジェノス・ハザード

 

 

年齢  25

 

身長  179

 

CV  櫻井孝宏

 

(“コードギアス 反逆のルルーシュ”の枢木スザク、“しろくまカフェ”のシロクマくん、“おそ松さん”の松野おそ松 etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である男。左肩に刻まれた“Ⅶ”の刺青が最大の特徴で、非常にお調子者で軽い性格の持ち主。好きなものは“賑やかな場所”で、嫌いなものは“タバコの煙”。

 “時の番人”の1人であると同時に、その中でも奇襲や暗殺に特化した専門チーム“ケルベロス”の一員でもある。当麻達3人に対する接し方は実に軽いが、当麻のことを“大将”、一護やリクオのことを“旦那”と呼び、与えられた任務は確実に遂行するとのこと。またセフィリアのことも“姐さん”と呼び、彼女の命(めい)には間違いなく従う。

 絶対的な力を持つ鋼線“エクセリオン”の使い手であり、時の番人の1人として魔王以上の実力を有している。鋼線は右手のグローブに仕込まれており、その細さも相当な物で、認識すること自体も非常に困難とのこと。また鋼線の長さや固さも自由自在に変えることが出来るため、どれだけ巨大な相手でも容赦無く輪切りにする。ケルベロスにおいては中距離戦を担当としており、状況によって戦闘スタイルを大きく変化させるらしい。

 かなりのナンパ好きであり、綺麗な女性を見る度に声を掛ける程。成功確率は極めて低いようだが、本人はナンパそのものを楽しんでいる模様。アイエールの中でも事あるごとに女性陣に声を掛けているらしいが、それに対する反応は軽くあしらわれたり殴られたりするのが基本。しかしその一方、女性に対する侮辱や非道に関しては絶対に許さず、該当する相手には一切容赦しないとのこと。その点に関しては女性陣達からも評価されている。

 

 

 

 

◎ナイザー・ブラッカイマー

 

 

年齢  28

 

身長  185

 

CV  江川央生

 

(“銀魂”の西郷特盛、“モモキュンソード”の鉄鬼、“カイバ”のバニラ etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である男。スキンヘッドと額の左側に刻まれた“Ⅴ”の刺青が最大の特徴。飄々とした性格の持ち主だが、意外にも話好きな一面を持っている。趣味はドライブと葉巻集め。好きなものは愛車のヴァイパー。嫌いなものはチーズ。

 “時の番人”の1人であると同時に、ジェノス達と共に“ケルベロス”の一員でもある。当麻達に対してはそれなりの敬意を払っている一方で、接し方は他のナンバーズ達と比較すると、割と柔らかい方とのこと。だがジェノス同様、与えられた任務は確実に遂行する。

 絶対的な力を持つ旋棍“ディオスクロイ”の使い手であり、時の番人の1人として魔王以上の実力を有している。その威力は一撃で巨大な魔物の頭を粉砕してしまう程らしいが、主な戦闘スタイルは素早い動きと手数を駆使したモノとのこと。ケルベロスにおいては近接戦闘を担当としており、先陣を切って相手の懐に迫る事が多い。

 話好きであるためか、意外にもアイエールの女性陣とは比較的によく接している。特に響とはしばしば修行に付き合っている場面が見られるとか…。

 

 

 

 

◎ベルーガ=J=ハード

 

 

年齢  29

 

身長  216

 

CV  石井康嗣

 

(“義風堂々!!兼続と慶次”の本間高統、“アカメが斬る”のオネスト大臣、“BLEACH”のドルドーニ・アレッサンドロ・デル・ソカッチオ etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である男。アイエール1の長身と体格、そして額の右側に刻まれた“Ⅺ”の刺青が最大の特徴。非常に寡黙な性格の持ち主で、必要な時以外は殆ど喋らない。趣味はロッククライミング。好きなことは寝ることで、嫌いなものは海。また常にサングラスを掛けている。

 “時の番人”の1人であると同時に、ジェノスやナイザーと共にケルベロスの一員でもある。性格故に表情や言葉には一切出ないものの、番人としての誇りと覚悟は確か。与えられた任務も確実に遂行する。

 絶対的な力を持つ大砲“ウルスラグナ”の使い手であり、時の番人の1人として魔王以上の実力を有している。その威力は山1つを跡形も無く吹き飛ばす程で、アイエールの中でも随一の火力とのこと。また砲身をハンマーのようにして用いる事も可能。ケルベロスにおいては遠距離戦を担当としており、後方からの火力支援が主な役割。

 寡黙な性格にもかかわらず、アイエールの女性陣との関係は意外にも良好。特にシノンとは何故か少々気が合うようで、一緒に神器の手入れを行っている姿が時折見られるらしい。

 

 

 

 

☆ToLOVEる

 

 

 

◎ララ・サタリン・デビルーク

 

 

年齢  17

 

身長  165

 

CV  戸松遥

 

 

 

 アイエールの協力者の1人である、悪魔の少女。ピンク色のロングヘアーと緑色の瞳、そしてクリス並みに発達した胸部が最大の特徴。性格は非常に天真爛漫かつ前向きな上、かなりのマイペースでもあるとのこと。普通の悪魔とは違い、翼だけでなく尻尾も生やしている。好きなものは“しじみの味噌汁”と“辛い料理”。苦手な事は“尻尾を触られること”。ヤミからは“プリンセス”と呼ばれている。

 リアスを巡る一件の後、リクオ達の家で一緒に住むことになった他、駒王学園にも高等部の2年生として編入。クラスはリクオやイッセー達と同じで、後にオカルト研究部にも所属している。運動神経に関してはセーブしている状態でも抜群に良く、勉強についても超優秀。またその天真爛漫な性格と優れた容姿を持っている故に、男子から絶大な人気を集めているとのこと。更にムードメーカー兼トラブルメーカーの一面も持っており、色々な意味でクラス全体を賑わせているとか…。

 その正体は冥界最強の悪魔である“大魔王”、ギド・ルシオン・デビルークの娘の1人で、デビルーク家の長女。また発明における驚異的な才能の持ち主としても有名で、冥界だけでなく三大勢力全体にその名が轟いている模様。リクオとは“ある出来事”の際に出会い、彼に対する明確な好意を確信。その後は父親であるギドの了承を得て、妹達と共に許嫁の関係を築いている。何も考えずに人前で思い切り抱き着いたりするなど、ある意味天性の積極性を有している。更に他の女性陣に対して嫉妬の感情を抱くことも無い。だがその一方で恋愛に関する知識が一切無いため、時折思わぬ言動で周囲をヤキモキさせることがあるらしい。

 その天真爛漫な性格とは裏腹に、父親譲りの強大な戦闘能力を有している。本人は戦闘そのものを好んでいないようだが、その実力は既に魔王クラスに達しているとのこと。またオリジナルの武具を作り出すこともでき、時として伝説級の力を持つ物まで何となく生み出してしまうのだとか…。基本的には自作の武具を用いて戦うことが多いが、実は体術もかなりの腕前。

 アイエールにおいてもムードメーカーのような存在であるが、面倒見の良い一面もあるため、度々年少組を遠くから見守っているとのこと。また女性陣とは勿論のこと、時の番人の男性陣にもいつも通りの明るい雰囲気で話し掛けている。その一方で妹のナナとモモに対しては姉としての一面を垣間見せており、姉としての2人への想いは非常に強い。リアスとはお互いの家柄上面識もあり、眷属である朱乃達も含めて関係は良好な模様。同様にソーナ達シトリー眷属とも昔からの知り合いらしい。友人に対する思いやりは人一倍深く、悪意を持って傷付けようとする者達のことは決して許さない。

 少々羞恥心が欠けているらしく、人前で裸になることに抵抗が無い。ただし完全にという訳ではなく、状況によっては恥じらいを見せるとのこと。また料理の腕前は壊滅的なようで、生死に関わるような逸品を作ることもしばしば…。

 

 

 

 

◎ナナ・アスタ・デビルーク

 

 

年齢  16

 

身長  151

 

CV  伊藤かな恵

 

(“とある科学の超電磁砲”の佐天涙子、“花咲くいろは”の松前緒花、“僕は友達が少ない”の柏崎星奈 etc.)

 

 

 

 アイエールの協力者の1人である、悪魔の少女。ピンク色のツインテールと紫色のツリ気味な瞳が最大の特徴で、性格は明朗快活だが少々勝気で生意気。発言もやや大言壮語気味である一方、意外にも結構な甘えん坊でもあるらしい。姉のララと同様、翼だけでなく尻尾も生やしている。好きなものは動物とリクオの作るお菓子、絵を描くこと。嫌いなものは勉強とピーマン、尻尾を触られること。

 リアスを巡る一件の後、リクオ達の家で一緒に住むことになった他、駒王学園にも高等部の1年生として編入。クラスは響やティッタ達と同じで、後にオカルト研究部にも入部している。運動神経に関してはかなり高いようだが、勉強についてはあまり良くないようで、特に歴史が大の不得意な模様。また以前は少々人見知りな面が強かったが、現在はクラスの女子達と良好な関係を築けている。一方で男子達への対応は基本的に辛辣だが、容姿が優れているため一部の男子達から人気があるらしい。

 その正体はララと同様、“大魔王”ギド・ルシオン・デビルークの娘の1人で、デビルーク家の次女。モモとは双子の姉妹であり、自身の方が姉。リクオとはララの関わった“ある出来事”の後に初めて出会ったようで、殆ど男性と接したことが無かったためか、当初は良い印象を持っていなかった。しかし彼の人柄や自身への接し方を知っていくにつれて認識を大きく改めた模様。本人は何かと否定しているが、現在では明確な好意を抱いている。ララと同様に彼とは許嫁の関係にあり、これについても口では否定しているが、実は満更でもない様子であるとのこと。恋愛に関してはかなり純情であるため、行動には中々移せていない。しかしモモの挑発を受けた際などには、思わぬ積極的な行動を見せることもある。

 父親譲りの戦闘能力を有しており、その実力は三姉妹の中では最も劣るものの、最上級悪魔クラスには裕に達しているとのこと。また種族にかかわらず様々な動物と意思疎通できる能力も持っており、凶暴な状態であったとしても短時間で手懐けることが出来る。そのため戦闘の際にもララが開発した特殊伝送装置“デダイヤル”を用い、自身と仲の良い特定の動物を呼び出して加勢させるらしい。しかも呼び出せる動物の中には、自身よりも遙かに上の強さを持つモノも居るとかいないとか…。

 アイエールの面々とは基本的に打ち解けているようだが、その中でも特に芽亜とは一番の仲良し。学園においても常に一緒に居る他、お互いに動物好きという共通点もあるため、度々一緒に自身と仲良しの動物達と遊んでいるとのこと。またララやモモとの姉妹の絆も非常に強固で、モモとは事あるごとに言い争いをしながらも、ララが間に入ることによっていつの間にか元通りに戻っているらしい。ちなみに他のアイエールのメンバーの中では、意外にもクリスと仲が良い。

 どうやら機械関係全般を苦手としているようで、その手のことはララやモモに任せる事が多い。また自身の身体の“ある部分のペタンコさ”に劣等感を抱いており、指摘されるとあからさまに怒る。

 

 

 

 

◎モモ・ベリア・デビルーク

 

 

年齢  16

 

身長  151

 

CV  豊崎愛生

 

(“けいおん!”の平沢唯、“とある科学の超電磁砲”の初春飾利、“めだかボックス”の黒神めだか etc.)

 

 

 

 アイエールの協力者の1人である、悪魔の少女。ピンク色のショートヘアーと紫色の瞳、そしてサイドアップのような左右のアホ毛が最大の特徴。性格は普段こそ大人しく清楚な上に優しいが、キレた時には父親並みの凶悪な表情を浮かべる時があるとか無いとか…。また少々腹黒でドSな一面を持つ一方で、年相応に大人っぽく見せたがる一面もあるとのこと。基本的には誰に対しても敬語で話すが、ナナを始めとした一部の者達には敬語無しで話している。焦ったり考え事をしたりする際に、髪の毛をいじる癖がある。好きなものは植物や紅茶、ゲーム、ネットサーフィンで、好きな言葉は『棚からぼた餅』。嫌いなものはニンジンと牛乳。

 リアスを巡る一件の後、リクオ達の家で一緒に住むことになった他、駒王学園にも高等部の1年生として編入。クラスはナナや響達と同じで、後にオカルト研究部にも入部している。ナナと同じく勉強は割と嫌いなようだが、成績に関してはかなり優秀な上、運動神経もかなり良い模様。学園内では普段の清楚な雰囲気と優れた容姿のお蔭で、同学年の男子生徒達からかなり人気があるとのこと。だがナナからは『猫を被っている』としばしば揶揄されているらしい。

 その正体はララやナナ同様、“大魔王”ギド・ルシオン・デビルークの娘の1人で、デビルーク家の三女。ナナとは双子の姉妹であり、自身の方が妹。リクオとはララの関わった“ある出来事”の後に初めて出会ったようだが、ナナとは違い彼に対しては初めから好印象を抱いていたとのこと。そして普段の人柄などを知っていくにつれて、明確な好意を持つようになった模様。ララやナナと同じく彼とは許嫁の関係にあり、普段から大胆なアプローチを取っている。実は『リクオと一護、そして当麻のそれぞれを取り巻く3つのハーレムを形成する』という計画を考えており、事あるごとに密かに行動している。しかもこのことに関して協力してくれる者達もいるらしく、現在ではリアスをその1人にしようと画策している模様。

 父親譲りの戦闘能力を有しており、三姉妹の中ではララに次ぐ実力の持ち主。体術に関してはララに劣らない腕前を持っている。また様々な植物と意思疎通できる能力も有しており、戦闘の際にはナナと同様、“デダイヤル”を用いて自身と仲の良い植物を呼び出し加勢させるらしい。基本的には冥界に生息する植物が多いため、中にはかなり凶悪な性質を持ったモノもいるのだとか…。

 アイエールの面々とは基本的に打ち解けているようで、特にソフィーやミラジェーンなどの大人っぽい女性達には少々憧れているとのこと。ララやナナとの姉妹の絆は非常に強固で、ナナとは事あるごとに言い争いをしながらも、ララが間に入ることによっていつの間にか元通りに戻っているらしい。また家事スキルも高いようで、しばしばティッタ達の家事の手伝いをしている。

 ララと同じくプログラム関係の事を得意としているようで、現在ナナが用いているプログラムの調整も行っている模様。

 

 

 

 

☆アカメが斬る

 

 

 

◎アカメ

 

 

年齢  17

 

身長  164

 

CV  雨宮天

 

(“七つの大罪”のエリザベス、“モンスター娘のいる日常”のミーア、“アルドノア・ゼロ”のアセイラム・ヴァース・アリューシア etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女。ロングストレートの黒髪と赤い瞳が最大の特徴。かなり無表情で寡黙な性格の持ち主だが、実は非常に仲間想いとのこと。好きなものは肉料理で、趣味は食事とペーパークラフト。口癖は“葬る”。

 リアスを巡る一件の際に帰還した後、駒王学園高等部の2年生として編入。クラスは当麻やイッセー達と同じで、後にオカルト研究部にも入部している。運動神経は抜群で、成績も優秀な模様。また優れた容姿とクールな印象があるためか、意外にも男子からの人気が高いとのこと。

 実はアイエールが誇る暗殺者集団“ナイトレイド”のエース的存在。当麻とはナイトレイドがアイエールに加わる前の“或る任務”の最中に出会ったらしく、その時の出来事がきっかけで彼に対して明確な好意を抱くようになった模様。当麻に対する想いは他の好意を寄せる女性陣と比べても特に強いようで、自らが『当麻への敵対行動を取った』と判断した者達には容赦が無い。行動は中々積極的である一方、彼の前では言動によって時折顔を赤らめたりするなど、年相応の少女らしい一面を垣間見せる。また少々言動が若干幼くなる節があるようで、その姿はまさに『飼い主に甘える犬』の様とのこと。

 所有している神器は“村雨”。日本刀のような見た目をしているが、斬り付けた相手の傷口から強力な呪毒を送り即座に死に至らしめるという、非常に凶悪な能力を有している。ただし肉体を直接斬らなければならないため、鎧を身に纏った相手や生物ではない相手に対しては呪毒が効かないとのこと。その他の詳細については一切不明。

 “一斬必殺のアカメ”という異名で各勢力に恐れられている他、クロメと共に“黒妖姉妹”と称されている。剣の腕は超一流で、特にその剣速とスピードはセフィリアやユウキに次ぐ程。また体術にも非常に優れているなど、暗殺者としてのスキルは時の番人の面々も認めている。基本的には圧倒的スピードを活かした剣技であるが、その一撃は華奢な見た目からは想像が付かない程非常に重いとのこと。全体としてその実力は魔王クラスに裕に匹敵する。

 アイエールの面々とは基本的に打ち解けており、中でもシノンとは割と気が合うとのこと。妹のクロメとは当麻を巡って言い争いをすることが多いものの、姉妹としての絆はララやモモ達にも負けない程非常に強固。また時の番人の男性陣には度々修行の相手になってもらっているが、周囲曰く『修行のレベルを若干超えている』のだとか…。最近では意外にもアーシアと仲良くなりつつあるらしい。

 実は小猫と並ぶ程の大飯食らいであるが、料理もかなり得意。しかし基本的には食べることの方が専門なようで、最近はリクオやティッタなどに任せることが多い。また野生児がかった所があり、昔は巨大な動物を普通に丸焼きにして食べていたとのこと。少々天然で、デリカシーに欠ける発言をすることもある。

 

 

 

 

◎クロメ

 

 

年齢  16

 

身長  160

 

CV  大橋彩香

 

(“アイドルマスター シンデレラガールズ”の島村卯月、“アイカツ!”の紫吹蘭、“さばげぶっ!”の園川ももか etc.)

 

 

 

 アイエールのメンバーの1人である少女で、アカメの実妹。ショートの黒髪と黒い瞳が最大の特徴。一見すると柔らかな性格の持ち主のように見えるが、実際の言動は意外とクールかつ辛辣である事が多い。好きなものはお菓子。

 リアスを巡る一件の際に帰還した後、駒王学園高等部の1年生として編入。クラスはユウキや小猫達と同じで、後にオカルト研究部にも入部している。運動・勉強共に優秀である他、その容姿と柔らかな印象のお蔭で男子からの人気も高いとのこと。

 実はアイエールが誇る暗殺者集団“ナイトレイド”の一員であり、アカメと共にエース的存在。当麻とはアカメと同様、ナイトレイドがアイエールに加わる前の“或る任務”の最中に出会ったらしく、その時の出来事がきっかけで彼に対して明確な好意を抱くようになった模様。当麻の事は“お兄ちゃん”と呼んでいる。彼に対する想いは他の好意を寄せる女性陣と比べても特に強いようで、自らが『当麻への敵対行動を取った』と判断した者達には容赦が無い。行動は中々積極的で、彼の前では年相応の明るい少女としての一面を見せるとのこと。だがその一方で少々子供っぽくもなるらしく、当麻が自分を放って他の女性陣と接している時には頬を膨らませて不満を露わにするのだとか…。

 所有している神器は“八房(やつふさ)”。見た目はアカメの“村雨”と同様に日本刀のようだが、斬り捨てた相手を呪いで骸人形にして操ることが出来る。以前は最大で8体までしか自在に操ることが出来なかったらしいが、現在はその数を大幅に増やした模様。更に前までは発動中の使用者への負担が大きかったようだが、それもエルフナイン達の研究によって大きく改善されたとのこと。ちなみに所有している骸人形達の中には、自身を上回る程の凄まじい戦闘能力を持っている者も複数居るらしい。その他の詳細については一切不明。

 “死者行軍のクロメ”という異名で各勢力に恐れられている他、アカメと共に“黒妖姉妹”と称されている。剣の腕は言うまでもなく一流で、暗殺者としてのスキルも非常に高いとのこと。故に神器の能力を総合して考えると、その実力は裕に魔王クラスに匹敵する。

 アイエールの面々とは基本的に打ち解けており、特にユウキとは仲が良い模様。姉のアカメとは当麻を巡って言い争いをすることが多いものの、姉妹としての絆はララやナナ達にも負けない程非常に強固。またお菓子好きという共通点から、ヤミや芽亜とも気が合うとのこと。

 実はアカメと同様にかなりの大飯食らいで、特にお菓子の場合にはとんでもない事になるのだとか…。またアカメと同じく非常に仲間想いで、以前はこの事に関して少々歪んだ部分もあったらしいが、現在では改善された模様。



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月光校庭のエクスカリバー
当てる相手を間違えたら2分で処刑♪




という訳で、今回からエクスカリバー編に突入です。まあ、まだ割と平和な話ですが…。


では、本編をどうぞ。


使い魔探しの翌日、時刻はまもなく朝の6時を迎えようとしていた。そんな中……

 

 

(な、何故にまたこんな状況に…?)

 

 

この部屋の主であるツンツン髪の少年―――上条当麻は今、ベッドの上で仰向けに寝ながら絶賛困惑していた…。

 

 

「くぅ……くぅ……」

 

 

当麻の身体の上に乗りつつ掛布団の中で穏やかに寝ているのは、黒みがかった紫色の長髪が特徴の少女―――ユウキである。格好はいつもと同じく、フリルのあしらわれた淡い紫色のキャミソールとショートパンツの組み合わせ。一般的に見れば十分非日常的な光景だが、当麻自身にとっては割と日常的であるため、特に問題は無い…。

 

 

「スゥ……スゥ……」

 

 

当麻が目線を変えて右隣を見てみると、そこには銀髪のロングヘアーが目を引く戦乙女の女性―――エレオノーラ・ヴィルターリアが寝ていた。格好は所々レースがあしらわれた黒い下着のみである。こちらに関しては某赤龍帝辺りがもし目撃した場合、最大級の嫉妬の念を込めて襲ってくるだろうが、それでも彼女が居る頃には日常茶飯事であったため、当麻にとっては大いに問題ではあるものの何とか耐えることは出来る。最大の問題は…左隣であった…。

 

 

「んん……」

 

 

(何であなたはまた裸で寝てるんですか、リアスさぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!?!?!?)

 

 

そう、左隣で寝ているのは最近この屋敷で暮らすことになった悪魔の少女―――リアス・グレモリーである。その格好は……一糸纏わぬ姿、そのものだった。実はこの光景は当麻にとって初めてではなく、この屋敷で暮らすことになった当日からこのような形で寝ている。しかしいくら初めてではないとはいえ、この光景に関しては当麻も一切慣れることが出来なかった…。と、ここで、

 

 

「ぅん…」

 

 

「……!」

 

 

ここでリアスが目を覚まし、ゆっくりと目を開け始めた…。

 

 

「おはよう、当麻」

 

 

「お、おう…。リ、リアス? ちょっと聞きてえんだが…」

 

 

「? 何かしら?」

 

 

首を傾げるリアスに対し、当麻はこう尋ねる…。

 

 

「何でまた裸で寝てんだ?」

 

 

「あら、前にも言ったでしょ? 私は寝る時は裸なの」

 

 

「いや、この前それで散々ティッタ達から注意を受けただろ? “裸で寝るのはやめろ”って…」

 

 

「そうね。でも、やっぱり私はこうしないと寝れないみたいなの。ごめんなさいね、当麻」

 

 

「いや、別に謝る必要とかはねえんだけど…」

 

 

問い掛けに対するリアスの返答に、少々どうすればいいか戸惑う当麻。すると…

 

 

「代わりに、私の身体を好きにしていいわよ?」

 

 

「は…? いやいや、何でそういう話になるんですかリアスさん!?」

 

 

「あら、何か問題?」

 

 

「大いに問題だろ!? 話が完全に変な方向に向かってるとしか思えねえよ!?」

 

 

リアスが突如とんでもない提案を出してきたのだ。これには当麻もあからさまに驚き、思わず声を少し張り上げてしまった。その結果…

 

 

「んん……ふわぁぁぁぁっ…」

 

 

「何だ、朝から騒々しい……っ!」

 

 

ユウキが布団の中から寝ぼけ眼(まなこ)でモゾモゾと出てきたかと思うと、続いてエレンも若干目を擦(こす)りつつ、ゆっくりと起き上がったのだ。そして、エレンはリアスの姿を見た瞬間…

 

 

チャキッ!

 

 

「何故貴様はまたそんな恰好をしている? リアス・グレモリー」

 

 

「あら、朝からいきなり神器を突き付けてくるなんて、随分物騒ね?」

 

 

「貴様がそうさせているだけの話であろう? もっとも、貴様の態度によっては更に物騒な事態になるかもしれんが…」

 

 

すぐさま自らの神器である“アリファール”を手にし、その切っ先をリアスに向けたのだ。雰囲気的には非常に緊迫しているのだが、如何せん両者がそれぞれ下着姿と全裸状態であるせいで、何とも言えない状況となっている…。と、その時だった…。

 

 

 

バンッ!!

 

 

「「ッ…!?」」

 

 

「フッ!!」

 

 

「ちょっ…!?」

 

 

ガガガガガガッ…!!!

 

 

いきなり部屋のドアが勢い良く開かれたかと思うと、リアスとエレンに向かって何かが飛来してきた。2人は咄嗟にその物体を避けるが、それはそのまま部屋の壁に突き刺さる。その正体は…氷で出来たクナイ状の破片だった。これには言うまでもなく攻撃対象にならなかった当麻でさえ、驚きを隠しきれない…。と、そこへ、

 

 

「朝から随分下品な争いをしていたようね、貴女達…」

 

 

入ってきたのはショートカットの青い髪が特徴の小柄な女性―――リュドミラ・ルリエだった。どうやら先程の攻撃は、彼女が放ったもののようである…。

 

 

「こんな物騒な邪魔をしてくる貴女には言われたくないわね。それに、もし当麻に当たったらどうするのよ?」

 

 

「そんな下らないミスをする程、私は愚かじゃないわ。まあ、そこにいるエレオノーラなら頭に血が上ってやりかねないでしょうけど…」

 

 

「ほぉ…? いきなり随分と大層な戯れ言を言ってくれるではないか。これは今すぐそんな戯れ言が言えぬよう、少し灸を据える必要がありそうだな。そこにいる悪魔の娘と一緒に…」

 

 

「ふふっ、なら貴女にそんな真似が出来ないことを、この場で証明してあげるわ。“殲滅姫(ルイン・プリンセス)”に灸を据えることには同意するけど…」

 

 

「あまり下に見るのは良くないんじゃないかしら…? うっかり滅ぼされないようにして頂戴…」

 

 

そして、部屋全体が3人によって一触即発の雰囲気に包まれた瞬間……

 

 

ガキィィィィィィィンッ…!!!!

 

 

エレンのアリファールとリュドミラのラヴィアスがぶつかり合ったことで、一気に戦闘へと発展した。リュドミラに関しては普段と同じ服装をしているが、エレンとリアスに関しては依然として“そのままの格好”であるため……やはり何とも言い難い光景である。そんな中、

 

 

「相変わらず騒々しい朝ね。まあ、ついこの間までと比べて一気に人数が増えた訳だし、当然でしょうけど…」

 

 

「! シノンか。おはよう」

 

 

「ええ」

 

 

いつの間にか当麻の傍へやってきていたのは、黒のショートカットと眼鏡が特徴の少女―――シノンだった。

 

 

「それで? どうするの、この状況?」

 

 

「…上条さんがこの状況を止められると思いますでせうか?」

 

 

「力で考えれば十分可能でしょうけど、総合的に言えば…無理ね」

 

 

「だよな…。はあ…」

 

 

あっさりとした口調でシノンにそう言われ、思わず溜息を吐く当麻。ちなみに当麻は先程のリュドミラの攻撃もあってか、上半身は既に起こしている。だが未だに完全にベッドから出ることは出来なかった。何故なら…

 

 

「んぅ…とうまぁ…?」

 

 

「? どうした、ユウキ?」

 

 

「もうすこしだけ、寝ててもいい…?」

 

 

「! あ、ああ…」

 

 

「ん…ありがとぉ…」

 

 

寝足りない様子のユウキがガッチリと当麻に抱き着いた状態でいるのだから…。そして当麻からの返事を聞いたユウキはゆっくりと目を閉じ、そのまま再び眠りに就いてしまった…。

 

 

「とりあえず…しばらくはこのままだな」

 

 

「そうね。収まるにはまだ時間が掛かりそうだし…」

 

 

結局その後ソフィーやリム、ティッタなどが駆け付け…主にソフィーの一声で状況は完全に収束した。ちなみにそんな状況の中でも、ユウキは幸せそうに当麻に抱き着いてぐっすりと寝ていたとかいないとか…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

学校に関しては滞りなく終わり、既に放課後となっていた。そして、今回のオカルト研究部の活動は……

 

 

「行くわよ、イッセー!」

 

 

カキーンッ!

 

 

「オーライオーライ…っと!」

 

 

旧校舎裏を使った野球の練習である。ちなみに今はリアスがフライのボールを打ち上げ、それを取る守備の練習をしている…。何故このようなことをしているかというと、もうすぐ球技大会が近づいているらしく、オカルト研究部もそこに出場することになったのだ…。

 

 

「気合入ってるね、部長さん」

 

 

「ああ、まさかやりそうな奴を片っ端から練習しに掛かるとはな。ただのオカルト研究部なら普通出場すらしねえだろ…」

 

 

その様子を少し離れた所で見ながら、そんなやり取りを交わすリクオと一護。どうやら当麻達3人は休憩中のようである。と、そこへ、

 

 

「うふふ、部長はこういった行事が大好きですから」

 

 

同じように休憩へ入った朱乃が、そう言いながらやってきた。

 

 

「今回の球技大会でも優勝する気満々のようですわ」

 

 

「みたいだな。まあ、ウチにも行事や勝負事が好きな奴等がいっぱい居るから、丁度良いと言えば丁度良いか…」

 

 

そう呟きつつ当麻が目を向けた先には……

 

 

「行くぞ先輩ッ! オラアッ!!」

 

 

「! ハアッ!!」

 

 

スパンッ…!!

 

 

「フッ…」

 

 

「いや、“フッ”じゃねえよッ!? 何でボールがバットで真っ二つになるんだよ!? トンデモにも程があるだろッ!?」

 

 

「…流石だな」

 

 

「流石だね」

 

 

「お前等も感心してんじゃねえッ!! そんな要素1つもねえだろうがッ!!」

 

 

アカメとクロメの姉妹が見ている中、翼がクリスの投げたボールをバットで一刀両断していたり…

 

 

「行くデスよッ! ゴッ○・ハーーーンドッ!!!」

 

 

「切ちゃん、それゴールキーパーの人がやる技だよ…?」

 

 

「あんたのポジションは絶対ゴールキーパーじゃないでしょ」

 

 

「あの、技そのものについては何も言わなくていいんでしょうか…?」

 

 

切歌の口から飛び出した明らかに問題のある技名に関して、調と紗矢華、雪菜がそれぞれツッコんでいたり…

 

 

「行くぞ、ルーシィッ! ハアッ!!」

 

 

「ひぃぃぃぃぃっ!?!?」

 

 

「ふふっ、エルザも負けないくらい気合入ってるわね♪」

 

 

「は、はい、でも……」

 

 

「今度やるのって、球技大会だよね? なのに…」

 

 

「何でバドミントンの練習してるの…?」

 

 

エルザとルーシィのバドミントンの練習の様子を見たミラジェーンがそう言う中、ウェンディとリサーナ、レビィは練習している競技自体が間違っていることに思わず苦笑いを浮かべていたりしていた…。

 

 

「あらあら」

 

 

「少なくとも向こうには真面(まとも)な練習をしてる奴等はいねえな」

 

 

「そ、そうみたいだね…」

 

 

その光景を見て朱乃が若干面白そうに笑う一方、一護とリクオは若干顔を引きつらせながら呟く。

 

 

「ま、まぁ、でもこっちは真面な練習をしてるみたいだぞ?」

 

 

ここで当麻が野球の練習をしているリアス達の方に目を向けると…

 

 

「響、行くよー!」

 

 

「うん!」

 

 

パシッ!

 

 

「イッセーさん、行っきまーす!」

 

 

「おう!」

 

 

パァンッ!

 

 

そこではセンター辺りにいた未来がセカンドにいる響に向かってボールを投げ、更に響がそのボールをファーストのイッセーに送っていた。どうやら送球の確認をしているようである。

 

 

「オッケーよ! 次! 行くわよ、ララ!」

 

 

「はーい!」

 

 

カキーンッ!

 

 

それを見たリアスは、レフト辺りに居るララに向かってフライを打ち上げた。ララはそれをあっさりとキャッチし…

 

 

「じゃあイッセー、行っくよー!」

 

 

「あ! 姉上、待っ…!」

 

 

「そーれッ!!」

 

 

ナナが止めようとする中、それを思い切りイッセーに向かって投げたのだ…。さて、問題である。大魔王の能力を最も受け継いでいるララが思い切り投げたら、一体どうなるか? 正解は……

 

 

ビュオッ!!!

 

 

「はい?」

 

 

ドゴッ!!!

 

 

「ゴフッ!?!?」

 

 

ドサッ…!!

 

 

「イ、イッセーッ!?!?」

 

 

異常なスピードで向かっていき、唖然とするイッセーの腹部に直撃。あまりの威力にダウンする結果となり、慌ててリアスが駆け寄る事態となった。

 

 

「ゴ、ゴメンね~! ちょっと加減間違えちゃった~!」

 

 

「あー、完全に気絶してるな、あれ…」

 

 

「え、ええ。お姉様の場合、ボールも加減を間違えただけで凶器になってしまうから…」

 

 

ララがいつもの調子で謝罪の言葉を述べる中、妹のナナとモモはそう話しながら複雑な笑みを浮かべる他ない…。

 

 

「えっと…あっちは練習どころじゃなくなってるみたいだね…」

 

 

「イッセーの奴、大会の前に練習で色々終わるんじゃねえか? あいつも最近当麻並みに不幸な目に遭ってやがるし…」

 

 

「きっと大丈夫ですわ。今みたいにアーシアさんがすぐに回復してくれますから」

 

 

「…あいつが不幸な目に遭うってことは否定しねえんだな…」

 

 

「あー、そこで上条さんの不幸と比較するのは色々悪意を感じるんだが…?」

 

 

リクオと一護と朱乃のやり取りを聞いて、自身が比較対象として挙げられている事にさり気なくツッコむ当麻。

 

 

「ま、つっても全員運動神経に関しては殆ど問題無いからな。何とかなるだろ?」

 

 

「! あ、ああ」

 

 

「ええ♪」

 

 

「そうだね」

 

 

一護の言葉に当麻もひとまず同意し、朱乃やリクオもそれに続く。そしてその後も練習は続いた…。

 

 

(気掛かりなこともあるが、な…)

 

 

もっとも、最初から何処か“心ここに在らず”といった様子の裕斗に、当麻達3人は目を向けていたが…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

迎えた球技大会当日。やはり運動神経の塊が揃いまくっているオカルト研究部は、野球部やサッカー部といった強豪を押さえてトップに立っていた。そして現在行われている競技は“ドッジボール”なのだが……

 

 

「イッセーを、殺せええええええええッ!!!」

 

 

ビュンッ!!

 

 

「どわっ!? な、何で俺こんな集中砲火受けてんのォォォォッ!?!?」

 

 

その男―――兵藤一誠は今、対戦相手である15人の野球部の男子達全員から狙われていた。では一体何故このようなことになっているのか? それは他のオカルト研究部の競技参加メンバーに対する、彼等の心情が大きく反映されていた。簡単に説明すると……

 

 

リアス、朱乃 → “駒王学園の二大御姉様”と呼ばれる存在。当てたくない。

 

アーシア → 2年における随一の癒し系美少女。当てたくない。

 

小猫 → 学園のマスコット的存在の美少女。当てたくない。

 

ユウキ、雪菜、ヤミ、響 → 転入して早々1年において高い人気のある美少女達。当てたくない。

 

アカメ、クロメ → 高等部でも有名な黒髪美少女姉妹。当てたくない。

 

裕斗 → 当てれば女子からの非難殺到。当てたいが、当てられない。

 

当麻、一護、リクオ → 当てる前に返り討ちにされるだろう、特に一護は…。当てたいが、当てられない。

 

 

 

イッセー → よし、殺そう! 今すぐ殺そう!

 

 

『イッセーを始末しろオオオオオオオオオオオオッ!!!』

 

 

「始末ってなんだよ!? 何で俺ドッジボールで殺されそうになってんのッ!?」

 

 

観戦者を含めた生徒達全員からの言葉に、思わず渾身のツッコミを入れるイッセー…。それを見て、

 

 

「だ、大丈夫かな、イッセーさん?」

 

 

「心配しなくても平気です、響。むしろあの男が排除されれば、学園が平和になります」

 

 

「ダメだよ、ヤミ。せめて半殺しくらいに留めないと」

 

 

「お前も本当イッセーには容赦ないよな、リクオ…」

 

 

心配する響に対してヤミがそう言うと、リクオはその発言を咎め、当麻はそんなリクオの言葉に思わず表情を引きつらせる。と、ここで、

 

 

「いいんでしょうか? 先輩…」

 

 

「ま、イッセーのことはこの際放っておいても問題ねえだろ。むしろ本当に問題なのは……」

 

 

一護は雪菜の問い掛けにそう答えつつ、ある方に目を向けた。すると、そこには……

 

 

「やあやあ、青春を謳歌している諸君ッ! リア充は憎いかーーッ!!?」

 

 

『オオオオオオオオオオッ!!!』

 

 

「そこにいる下品な馬鹿を抹殺したいかーッ!!?」

 

 

『オオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

 

 

「ニューヨークに行きたいかーーッ!!?」

 

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

 

 

「では! そんな憎むべき対象に向けて! レッツ・ファキナウェーーーーイッ!!!」

 

 

パシッ!!

 

 

「審判台で意味不明な煽りをしてる馬鹿に向かってスパーキーング」

 

 

ドゴンッ!!!

 

 

「グフォアッ!?!?」

 

 

ガシャアアアアアアアアアアアンッ…!!!

 

 

え? 一体何が起こったかって? トチ狂った馬鹿がいつの間にか持っていたボールを投げたが、それを冷静に一護がキャッチし、それを思い切り投げ返して審判台ごと吹っ飛ばしただけですが?

 

 

「アイタタタタッ…! いきなり何しちゃってくれてるんですかね~? アァッ!?」

 

 

「いや、それはこっちの台詞だ。第一何でテメエがここに居やがる、ウェル」

 

 

そう、そのトチ狂った馬鹿というのは言うまでもなく…ウェルだった…。

 

 

「フッ、見ての通り…情熱(パトス)を感じに来たのですよ」

 

 

「いや、格好良さ気に言ってるつもりかもしれねえけど意味分かんねえからな? つかお前完全に部外者だろうが。どうやって校内に入りやがった?」

 

 

「フッ、僕には神出鬼没がデフォルトで備わってるのですよ」

 

 

「要するに不法侵入だな? 不法侵入して何事も無く審判の格好で審判をしてやがったと……マジで意味が分からねえ…」

 

 

微妙に格好良さ気な仕草をしながら話すウェルに対し、冷ややかな視線を送る他無い一護。無論彼を知っているオカルト研究部やアイエールの面々もまた、アーシアやララなどの一部の者達を除いて皆呆れや苦笑いを浮かべている…。

 

 

「やあやあ、そこの変態少年、調子はどうだい?」

 

 

「何サラッと人のこと変態呼ばわりしてんのッ!? 最悪だよッ!! アンタの変な煽りのせいで何か向こうが更に俺を殺す気満々になって、より最悪になったよッ!! つーか何で部外者の煽りに簡単に乗ってんだよ、テメエ等ッ!!!」

 

 

『決まっているだろうッ!! ニューヨークに行きたいからだァァァァァァッ!!!』

 

 

「いやいやいやッ!! もう俺を殺す理由すら意味分かんなくなってるんだけどッ!!?? それ絶対何処ぞの“ウル○ラクイズ”の話じゃんッ!? もう一切俺関係無くなってるよねッ!?」

 

 

「…でも変態は間違ってない」

 

 

「小猫ちゃぁぁぁぁぁんッ!! お願いだからここで話の腰を折らないでえええええええッ!!!」

 

 

暴走状態の博士とサラッと辛辣な発言をする白猫少女に、精神的大ダメージを負わされるイッセー。すると…

 

 

ガシッ!!×2

 

 

「……はい…?」

 

 

「調、切歌、そのバカをちょっと“解体”してきてくれ。多少のことなら許す」

 

 

「分かった…」

 

 

「任せるデース!」

 

 

「クリス、その馬鹿が2人に妙な事しねえように付いていってくれ。最悪蜂の巣にしても構わねえ」

 

 

「はぁ、しゃあねえな」

 

 

一護のそんな命を受け、調と切歌がウェルの両腕を引っ張って無理矢理引きずっていき、その後ろをクリスが付いていく。そして、4人の姿が見えなくなったかと思うと……

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ…………!!!!!!」

 

 

何処からともなく、そんな断末魔が響き渡った…。途中で鋸やら鎌やら拳銃やらの音が聞こえたような気もするが…まあ、気のせいである…。

 

 

「と、当麻、あの男は…」

 

 

「やめとけ、リアス。気にしたら色々負けだ…」

 

 

「そ、そうね…」

 

 

「と、とりあえず元凶は去ったみたいだし、これで平和に…」

 

 

リアスと当麻がそんなやり取りをする中、イッセーはようやくその場が落ち着くと思っていた。だが…

 

 

「奴を殺して、ニューヨークへ行くぞオオオオオオオオオッ!!!」

 

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!』

 

 

「何でだああああああああああああああああああああああっ!?!?!?」

 

 

状況は悪化したままだった。そして、その後も野球部によるイッセーへの猛攻は続く…。

 

 

「行くぞ!! ネオ・サイ○ロンッ!!!」

 

 

「いやそれサッカーの技だよなッ!? これドッジボールだろ!? つーかお前等野球部だろッ!?」

 

 

「波○拳ッ!!」

 

 

「危なっ!? 手を使えばいいって話じゃねえよッ!? ボール使えよ!! ていうか何でその技撃てんの!?」

 

 

「シャァァ~イニングゥ! フィ○ガァァァァァ~~~~~~~~~~~~ッ!!!!」

 

 

「やめろォォォォォッ!! もう色んな意味で危ないからやめろオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

 

 

え? ボケとツッコミの応酬になってるって? いやいや、そんなことは……ありますね、うん…。と、ここで、

 

 

「こ、こうなったら当たって砕けてやるッ!! イケメン死ねエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」

 

 

イッセーが中々当たらないことに業を煮やしたのか、野球部の1人が裕斗に向かって渾身の一投を繰り出したのだ。いつもの裕斗であれば、何の問題も無くボールを取ったり避けたりしただろう。だが…

 

 

「っ! 木場! 何ボーッとしてんだよッ!!」

 

 

「あ、イッセー君…」

 

 

「チッ! おりゃああああああああああッ!!」

 

 

完全にボーっとしていて動かない様子の裕斗を見て、イッセーは咄嗟に渾身の横っ飛びをしつつボールをキャッチしようとした。そして……

 

 

キーンッ……!!!!!

 

 

「っ!?!??!?!?!?!?!?」

 

 

では、ここで問題。今のは一体何の音か? 正解は………イッセーの…いや、男子にとっての“最大の急所”に直撃した音である…。まあ、ここまでなら正直よくある光景であろう。だが、ボールの勢いはそこで止まることは無く……

 

 

ギュインッ!!

 

 

そこから異様な回転を以て、ある人物の方へと向かっていった。その人物とは……

 

 

「はい…?」

 

 

当麻だった…。超常現象としか考えられないような軌道で向かってきたボールに、彼は思わず完全に呆然としていた。その結果……

 

 

ドゴッ!!

 

 

そのボールは寸分違わず当麻の顔面に直撃し…

 

 

「ふ、不幸…だ……」

 

 

ドサッ…!!!

 

 

「ふぇぇっ!?」

 

 

「と、当麻…!!」

 

 

当麻はそのままお決まりの一言を残し、その場に大の字で撃沈してしまった。いきなりの事態に驚きの声を漏らすユウキと、慌てて駆け寄るリアス…。そんな中、

 

 

「あらあら、これは少々予想外でしたわ…」

 

 

「そ、そうですね。でも、お蔭で…」

 

 

「ああ…終わったな、この試合」

 

 

「? それはどういう…っ!」

 

 

朱乃の言葉に対するリクオと一護の発言を聞いて、ふと尋ねようとした小猫。しかし、彼女はその理由をすぐに察することが出来た。何故なら……

 

 

「当麻をやったのは…貴様だな…?」

 

 

「しかもこれって団体競技だから、皆にも責任があるよね…?」

 

 

『…………………(ガクガクガクガクガクガクッ!!!!)』

 

 

当麻に危害を加えようとする者に対して特に容赦の無い元外野の黒髪姉妹と、全身をこれでもかと震わせている内野の野球部男子達の姿が見えたのだから…。

 

 

「それじゃあ……」

 

 

「葬る…」

 

 

『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ…!!!!!!!!』

 

 

こうして本日二度目の断末魔と共に、その試合は2人の姉妹によって終わりを告げた。ちなみに……

 

 

「あぁ…地獄絵図が見えるなぁ…」

 

 

「し、しっかりしてください! イッセーさん! イッセーさんッ…!!」

 

 

アーシアに急所の治療を受けていたイッセーは、その光景を朧げな意識の中でそう表現したという…。あ、無論治療はズボンの上から行ってますよ、ええ…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

球技大会は無事終了し、オカルト研究部は最終的に優勝することが出来た。しかし放課後、部員達が集合した部室には……

 

 

パァンッ…!!

 

 

誰かの頬が叩かれる乾いた音が響き渡った。叩いたのは部長であるリアス、そして叩かれたのは今日1日…いや、ここ最近ずっと“心ここに在らず”といった様子の裕斗だった…。

 

 

「少しは目が覚めたかしら?」

 

 

「…すみませんでした…。調子が悪かっただけです。今日はこれで失礼します」

 

 

「! 待ちなさい、裕斗…!」

 

 

裕斗は短くそう言い残し、リアスの制止も聞かずに部室を後にしようとした。すると…

 

 

「おい、木場!」

 

 

パシッ!

 

 

「どうしたんだよ!? お前最近マジで変だぞ!?」

 

 

「…君には関係ないよ」

 

 

「関係なくないだろ!? 俺達は仲間じゃねえか!!」

 

 

イッセーがそんな裕斗の肩を掴み、そう言ったのだ。だが、それでも裕斗の態度が変わる様子は無い…。

 

 

「仲間、か…。イッセー君、君は熱いね。でも僕は今、基本的なことを思い出したんだよ」

 

 

「? 基本的なこと…?」

 

 

「生きる意味、つまり…僕が“何の為に戦っているか”ってことさ」

 

 

「? そりゃ、部長のためだろ?」

 

 

「違うよ」

 

 

「…!」

 

 

その返答に衝撃を受けるイッセーだが、裕斗はそのまま話を続ける…。

 

 

「僕は“復讐”のために生きている」

 

 

「! 復讐…?」

 

 

「“聖剣・エクスカリバー”…それを破壊するのが、僕の生きる意味だ」

 

 

『……!』

 

 

最後にイッセー以外の者達をも驚かせるような言葉を残し、裕斗は今度こそ部室を後にしていった…。そして、しばらくした所で…

 

 

「そろそろ話してもいい頃合いなんじゃないのか、リアス」

 

 

「! 当麻…」

 

 

「ここ最近のあいつの様子がおかしいことくらい、俺達だって流石に気付いてる。色々聞きたい事もあるしな。特にあいつと…“聖剣・エクスカリバー”との関係について…」

 

 

当麻だけでなく、周りの一護やリクオ達も皆一様に真剣な表情を浮かべていることに気付いたリアスは、その詳細を話し始めた…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

「あの、そもそも聖剣って一体…」

 

 

「聖剣は悪魔にとって最悪の武器よ。悪魔は触れるだけで身を焦がし、斬られれば即消滅することだってあるわ。つまり…」

 

 

「聖剣は悪魔を根絶やしにすることも可能な、“最大の天敵”とも言うべき代物なんです」

 

 

早速裕斗と聖剣の関係について話そうとしたのだが、そもそも悪魔になり立てのイッセーが聖剣についての詳細を知らないため、初めにそこから説明をすることになった。ちなみに聖剣の存在をそう表現したのは、リアスとモモである。

 

 

「お、恐ろしい武器ですね…」

 

 

「だが、1つ大きな問題がある。使い手が極端に限られるのだ」

 

 

「ええ、実際天界側にいる使い手も本当に僅かよ」

 

 

聖剣の恐ろしさに思わずそう呟くイッセーだが、エルザとミラジェーンがここでその難点を説明する。

 

 

「そうね。だから教会側は、聖剣の一種であるエクスカリバーを扱える者を、人工的に育てようと考えたの。それが……」

 

 

「“聖剣計画”」

 

 

『ッ…!?』

 

 

リアスが言う前にそんな単語を出したのは…一護だった。これにはグレモリー眷属の面々も驚く他ない。

 

 

「やっぱり知ってたのね」

 

 

「まあ、裏の世界じゃかなり有名な話だからな。つっても、かなり昔のことだが…」

 

 

「ええ、計画自体も完全に失敗したと聞いてるわ」

 

 

「! なんだ…」

 

 

一護とリアスのやり取りを聞いて、思わず安堵の声を漏らすイッセー。しかし…

 

 

「でも、ここでその計画の話が出るってことは、ひょっとして…」

 

 

「ええ…裕斗は、その計画の生き残りよ」

 

 

「なっ!?」

 

 

「木場さんが…!?」

 

 

芽亜が即座に察する中、リアスの口から出た裕斗に関する事実に驚愕するイッセーとアーシア。それは勿論、アイエールの面々も例外ではない…。

 

 

「裕斗以外にも、エクスカリバーと適応するために何人もの子供が育成されていたの」

 

 

「「…!」」

 

 

「エクスカリバーは今、7本存在している。だから複数の使い手が必要だった…」

 

 

「? 7本…?」

 

 

「本物のエクスカリバーは前の大戦でバラバラに壊れちゃったらしいよ。でも天界側はそれを拾い集めて、錬金術で今の7本のエクスカリバーに作り替えたみたい」

 

 

リアスの説明にイッセーとアーシアが引き続き驚く中、アカメとクロメが“エクスカリバー”に関して軽く補足を加えた。

 

 

「じゃあ、木場はその剣を使えるってことですか?」

 

 

「いえ、それは違います…」

 

 

「え……?」

 

 

「裕斗だけでなく、同時期に養成された全員が、エクスカリバーに適応できなかったらしいわ…。計画は失敗に終わったのよ」

 

 

「…!」

 

 

「失敗…」

 

 

ヤミがあっさりと否定する中、リアスの口から出た計画の結果にイッセーとアーシアは表情をより一層曇らせる。

 

 

「でも、一番の問題はここからだよ…」

 

 

「? 一番の問題…?」

 

 

「…計画の主導者が下した判断は、その被験者である子供達全員の処分だったんだよ」

 

 

「ッ!? 処分って、まさか…」

 

 

レビィの言葉にアーシアが疑問を感じる中、リクオはその後の顛末についてそう言ったのだ。イッセーもその“処分”という単語が何を表しているのか、簡単に察することが出来た…。

 

 

「既に瀕死の状態だった…。でも1人逃げ延びたあの子は、そんな状態でありながらも…強烈な復讐を誓っていた…。私はその強い想いを、悪魔として有意義に使って欲しいと考えたの…」

 

 

「そして、お前はあいつを自分の眷属悪魔にしたって訳か」

 

 

「! ええ…」

 

 

当麻の言葉にリアスは肯定するものの、その表情には明らかな心配の色が見て取れる。

 

 

「とりあえず、今は様子を見るしかないわ」

 

 

「そうですわね…」

 

 

「…裕斗先輩」

 

 

朱乃と小猫もリアスの判断に同意しつつ、複雑な表情を浮かべていた。だが、そんな中…

 

 

【一護】

 

 

【ああ、分かってる…】

 

 

リクオと頭の中でそんなやり取りを交わしながら、一護は“ある少女達”の方に目を向けていた…。

 

 

「計画の……生き残り……(ボソッ)」

 

 

不安げにそう呟いているベージュの髪の少女―――立花響を始めとした、7人の歌姫達に…。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

その日の夜……

 

 

『以上が、現在判明している一連の事件の詳細です』

 

 

「……事実なのか?」

 

 

『はい、残念ながら…。こちらの不手際と申し上げる他ありません』

 

 

「………………」

 

 

その青年―――黒崎一護は、自室で誰かと話をしていた。相手の姿が無い所を見ると、どうやら通信でやり取りを行っているようだ…。

 

 

『先程の件については…』

 

 

「はぁ……表立ってするつもりはねえが、状況によってはそれとなくしてやる」

 

 

『! ありがとうございます』

 

 

一護のそんな言葉を聞いて、通信相手の人物は感謝の言葉を述べた…。

 

 

『“彼女達”の様子はいかがですか?』

 

 

「元気でやってる。ただ…今回の件で少し心配な部分も出て来たがな」

 

 

『! そうですか。やはり彼女達にも思う所が…」

 

 

「ああ…そう簡単な話じゃねえよ…」

 

 

ここで誰か他の人物達のことを話し始める一護と通信相手…。すると、

 

 

「―――――」

 

 

『何でしょう?』

 

 

「…場合によっては、“あのこと”をバラすかもしれねえ」

 

 

『ッ!! それは、一体どういう…』

 

 

「別に根拠がある訳じゃねえよ。ただ…そういう予感がしてるってだけの話だ…」

 

 

『…分かりました。そうなった場合の事も含め、対応を考えます』

 

 

「頼む…」

 

 

一護の発言に対し、一瞬大きな反応を見せながらも、すぐに元の冷静な口調に戻る通信相手の人物…。

 

 

『では、宜しくお願い致します』

 

 

「ああ、じゃあな…」

 

 

そして通信が切れると、一護はこう呟く…。

 

 

「確かに気掛かりだが……やることは何も変わらねえ……。ただ“護る”だけだ…」

 

 

その言葉には…尋常ではない覚悟が込められていた…。

 

 

 



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厄介事はふとしてやってきたりする


新しい章に入ったので、OP曲とED曲を以下のように変更したいと思います。


OP → ストライク・ザ・ブラッド ~岸田教団&THE明星ロケッツ~

    (“ストライク・ザ・ブラッド” OP1)

ED → Rebirth-day ~高垣彩陽~

    (“戦姫絶唱シンフォギアGX” ED)


では、本編をどうぞ。


球技大会から数日後、突如“オカルト研究部に教会関係者が接触しに来る”という情報がもたらされた。相手はソーナ達生徒会メンバーを通して会談を申し出たらしい。しかもどうやら1人はイッセーの昔の友人で、既に先日兵藤家でアーシアと共に会っているようなのだ。

 

そしてリアスや当麻達オカルト研究部の面々は現在、その教会関係者である白いローブを羽織った2人の少女と部室で相対している…。

 

 

「会談を受けていただき感謝する。私はゼノヴィア…」

 

 

「紫藤イリナよ」

 

 

緑のメッシュが入った青いショートカットの少女──ゼノヴィアと、茶髪のツインテールの少女──紫藤イリナが初めに名乗った。

 

 

「神の信徒が悪魔に会いたいだなんて、どういうことかしら?」

 

 

それに対してリアスが若干皮肉混じりに尋ねると、イリナが単刀直入に話し始めた。

 

 

「元々行方不明だった一本を除く6本は、教会側の3つの派閥が保管していましたが、その内の3本が堕天使によって奪われました」

 

 

『ッ…!!』

 

 

「奪われた…!?」

 

 

それを聞いた瞬間、イッセーを始めとしたグレモリー眷属の面々が驚きを見せる一方、当麻達は深刻そうな表情を浮かべるに留まった。何故なら…

 

 

【本当に聖剣が盗まれるなんて…。まあ、相手が相手だから、しょうがない所はあるけど…】

 

 

【そうですね。でも、この人達が持っているのは…】

 

 

こうして頭の中で会話をしている紗矢華や雪菜のように、全員その事実を知っていた…。

 

 

「私達が持っているのは残ったエクスカリバーの内、この破壊の聖剣、エクスカリバー・デストラクションと…」

 

 

「私の持つこの擬態の聖剣、エクスカリバー・ミミックの2本だけ♪」

 

 

そんな中、ゼノヴィアは自身の傍らにある大剣について、イリナは自身の左腕に結われている紐のようなモノについて、それぞれ説明を加えた。

 

 

「それで? 私達にどうして欲しいというの?」

 

 

「今回の問題は我々と堕天使の問題だ。この町に巣食う悪魔に、要らぬ介入をしてこられるのは面倒なのでな。つまり…」

 

 

「リアス達は今回の一件に関わるな…ってことか?」

 

 

「! ああ、そういうことだ」

 

 

ここで当麻がゼノヴィアの言わんとしていることを口にすると、ゼノヴィアは少し反応を見せつつ肯定した。

 

 

「随分な物言いね。私達が堕天使と手を組んで、聖剣をどうにかするとでも…?」

 

 

「悪魔にとって聖剣は忌むべき存在だろう? 堕天使共と利害は一致しているじゃないか。もしそうなら、我々はあなたを完全に消滅させる。例え魔王の妹であろうと…」

 

 

そしてリアスの問い掛けに対し、ゼノヴィアが聖剣を手にしながら言い放った…その時、

 

 

 

 

「そんなこと、絶対に許さないよ?」

 

 

『ッ…!!?』

 

 

その瞬間、部室内を濃密な魔力が包み込み、オカルト研究部の面々や教会組の2人を驚愕させた。特に教会組の2人は思わず聖剣を手に掛け、戦闘態勢を取っている。その魔力の主は…いつもの天真爛漫な雰囲気を一切感じさせない程怒っているララだった…。

 

 

「あ、姉上!?」

 

 

「やめなさい、ララ!」

 

 

「…! でも…」

 

 

思わずナナが慌てる中、リアスが止めるよう言ってきたことに納得できない様子のララ。しかし、

 

 

「大丈夫だよ、ララ」

 

 

「! リクオ…」

 

 

「リクオさんの言う通りです、お姉様。ですから魔力を抑えてください」

 

 

「モモ……うん…」

 

 

リクオとモモの説得を受け、ララはようやく放出していた自身の魔力を抑えた…。

 

 

(いやいやいや、何だよ今の魔力!? ライザーが完全に霞むくらいヤバいじゃん!? 今の本当にララちゃんが放ってたのかよ!?)

 

 

イッセーが普段とあまりにもかけ離れているララの様子に大量の冷や汗を掻いていると、ここでリアスがこう宣言した…。

 

 

「私が魔王の妹であると知っているということは、貴女達も相当上に通じているようね。なら言わせてもらうわ。私は絶対に堕天使などと手を組んだりしない! グレモリーの名に懸けて、魔王の顔に泥を塗る真似はしないわ!」

 

 

すると、それを聞いたゼノヴィアは構えを解き、こう言い始める。

 

 

「それが聞けただけで十分だ。今のは本部の意向をそのまま伝えただけでね。私達も魔王の妹がそこまで馬鹿だとは思っていない…。まして、そちらにはあの大魔王“ギド・ルシオン・デビルーク”の娘達と、先日存在が確認された“アイエール”も味方に付いている…。教会としても、そこにいる者達との対立はごく一部を除いて是が非でも避けたがってるのさ」

 

 

「最初に聞いた時は半信半疑だったけど、本当に存在していたのね。しかも悪魔側に付いてるなんて…」

 

 

当麻達の方に目を向けながら呟くイリナ。どうやら先程のララを巡る対応を見て、彼等が本当にアイエールのメンバーであることを認識したようである…。

 

 

【おい、あたし等勝手に悪魔の味方扱いされてるぞ? いいのかよ?】

 

 

【…構わねえよ。これといって困ることはねえしな】

 

 

【いや、でもお前は…】

 

 

クリスと一護が頭の中でそんなやり取りを交わしている中、リアスとゼノヴィアは会話を続ける。

 

 

「そこまで理解しているなら、当然私達が神側…すなわち、あなた方に協力しないことも当然承知している訳ね?」

 

 

「無論だ。先程も伝えたように、この町で起こる出来事に対して不介入を約束してくれればいい」

 

 

「…了解したわ」

 

 

リアスから承諾の返事を聞くと、早速席を立つゼノヴィアとイリナ。

 

 

「時間を取らせてすまなかった」

 

 

「せっかくだから、お茶でもどう?」

 

 

「いや、これ以上悪魔と馴れ合う訳にはいかない…。では、失礼する」

 

 

そして、そのまま2人が部室を後にしようとした……その時だった…。

 

 

「!」

 

 

「…?」

 

 

ゼノヴィアが何故かある人物の方に目を向け、ふと歩みを止めたかと思うと……

 

 

「兵藤一誠の家を訪ねた時、もしやとは思ったが…アーシア・アルジェントか?」

 

 

「! あ、はい…」

 

 

「まさかこんな地で、“魔女”に会おうとはな」

 

 

『ッ…!?』

 

 

いきなりそう言い放ったのだ…。

 

 

「あー! あなたが魔女になったという元聖女さん? 堕天使や悪魔をも癒す能力を持っていたために追放されたとは聞いていたけど、悪魔になっていたとはね~…!」

 

 

「っ! あ、あの…私は…」

 

 

「アーシア…」

 

 

更にイリナが畳みかけるように言うと、アーシアは目に見えて動揺を露わにし始め、イッセーもそんな彼女を見て悲しげな表情を浮かべた。だがゼノヴィアはそんな彼女の様子に気を配ることも無く、言葉を続ける…。

 

 

「しかし聖女と呼ばれていた者が悪魔とはな…堕ちれば堕ちるものだ」

 

 

「ッ! テメエッ! いい加減にしろッ!!」

 

 

「イッセー先輩…」

 

 

「くっ…!!」

 

 

ゼノヴィアの発言にイッセーは思わず突っ掛かろうとするが、小猫の制止によって何とか押し留まる。いくら悪魔に転生して間もないとはいえ、ここでの対立によって生じる影響の大きさは流石に理解しているようだ…。

 

 

「まだ我等が神を信じているのか?」

 

 

「ゼノヴィア、彼女は悪魔になったのよ? 主を信仰している筈がないわ」

 

 

「いや、背信行為をする輩でも罪の意識を感じながら、信仰心を忘れられない者がいる。その子にはそういう匂いが感じられる」

 

 

「そうなの? アーシアさん、あなたは主を信じているの? 悪魔の身になってまで」

 

 

「っ…す、捨てきれないだけです…。ずっと、信じてきたのですから…」

 

 

イリナの問い掛けに対し、アーシアはついに涙を流しながら言葉を返した。すると…

 

 

「ならば、今すぐ我等に斬られるといい」

 

 

「ッ…!?!?」

 

 

「君が罪深くとも、我等の神は救いの手を差し伸べてくれる筈だ。せめて私の手で断罪してやろう。神の名の下に…」

 

 

「そのくらいにしてもらえるかしら」

 

 

目に見えて身体を震わせるアーシアにゼノヴィアが歩み寄ろうとした瞬間、ここでリアスが低い声色で話し掛ける…。

 

 

「私の下僕を、これ以上貶(おとし)めるなら…」

 

 

「貶めているつもりはない。これは信徒として当然の情け…」

 

 

「ッ…!!!」

 

 

そして、リアスにゼノヴィアが不敵な笑みを浮かべながら言葉を返そうとした瞬間……ついにイッセーの我慢が限界に達した。

 

 

バッ…!!!

 

 

『ッ…!!』

 

 

「ッ!? イッセー!」

 

 

「いけませんわ!」

 

 

「! イッセーさん…!」

 

 

制止する小猫を振り払ったかと思うと、リアスや朱乃が慌てて止めようとする中、アーシアを庇うようにゼノヴィアの前に立ちはだかったのだ。

 

 

「アーシアを魔女と言ったなッ!?」

 

 

「少なくとも、今は魔女と呼ばれる存在にあると思…」

 

 

「ふざけんなッ!!」

 

 

ゼノヴィアが言い切る前にイッセーは声を上げる…。

 

 

「自分達で勝手に聖女に祀(まつ)り上げといて…! アーシアはな、ずっと独りぼっちだったんぞッ!!」

 

 

「聖女は神からの愛のみで生きていける。愛情や友情を求めるなど、元より聖女の資格など無かったのだ」

 

 

「ッ! 何が信仰だ!! 神様だ!! アーシアの優しさを理解できない連中なんか、みんな馬鹿野郎だッ!!」

 

 

それを聞いて…

 

 

【言ってることが子供みたいだね。でも…】

 

 

【ああ…悪くない…】

 

 

アカメとクロメは珍しくイッセーの行動に感心していた。いや、恐らくこの場にいるアイエールの少女達は皆同じ評価をしているだろう…。

 

 

「…君はアーシア・アルジェントの何だ?」

 

 

「家族だ! 友達だ! 仲間だ! お前等がアーシアに手を出すのなら、俺はお前等全員を敵に回しても戦うぜッ!!!」

 

 

【! 一護…】

 

 

【ああ、分かってる】

 

 

ゼノヴィアに対してイッセーがそう言い放つ中、翼は何かに気付き一護に頭の中で話し掛ける。

 

 

「ほぉ? それは私達教会全てへの挑戦か? 一介の悪魔が大口を叩くね」

 

 

「イッセー、お止めなさい」

 

 

イッセーの宣言染みた発言に対してゼノヴィアが聖剣を構え出すと、ここでリアスが流石に危険と判断したのか、彼を止めに動き出そうとした。しかし…

 

 

 

 

「丁度良い。僕が相手になろう」

 

 

『ッ!?』

 

 

突如そんな声が部室に響き渡ったかと思うと、いつの間にか部室の入り口のドア付近に1人の青年が立っていた。それは…

 

 

「誰だ、キミは?」

 

 

「君達の先輩だよ…」

 

 

「! 裕斗…」

 

 

他でもない、ここ最近姿を見せていない裕斗だった…。そんな状況を見て、

 

 

【これはちょっとマズい雰囲気かな】

 

 

【ああ、多分な…。一護】

 

 

【! 何だ、当麻?】

 

 

【場合によっては……構わねえな?】

 

 

【…程々にしてやってくれ】

 

 

【分かってる…】

 

 

リクオや当麻、そして一護がそんな会話を頭の中でしていた…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

場所は移り、当麻やリアス達は現在旧校舎近くの空き地に来ていた。何故なら…

 

 

「いいんでしょうか? 勝手に教会の者と戦うなんて…」

 

 

「これはあくまで、非公式の手合わせよ」

 

 

「だ、大丈夫でしょうか? 2人共…」

 

 

「向こうも手合わせと分かっている以上、本格的な戦いはしない筈だけど…」

 

 

「むしろ問題は、こちらにあると考えた方が良いだろう…」

 

 

そう、イッセーと裕斗、ゼノヴィア、イリナの4人が手合わせをすることになったのだ。その状況を見て朱乃とリアスがそんなやり取りを交わす一方、ミラジェーンとエルザはウェンディの問い掛けに対して複雑な表情を浮かべている。と、ここで、

 

 

「では、始めようか」

 

 

ゼノヴィアがそう言うと、彼女とイリナは同時に纏っていたローブを脱ぎ去り、どちらもボンデージを連想させるような黒い戦闘服姿となった。

 

 

「じゃあ、上にバレたらお互いにマズいし…!」

 

 

「殺さない程度に、楽しもうか」

 

 

ジャキンッ!!×2

 

 

そしてゼノヴィアは自らの持つ破壊の聖剣を包んでいた布を取っ払い、イリナは自らの左腕に結っていた白い紐を変化させ、自身の持つ擬態の聖剣の本当の姿を露わにした…。すると、

 

 

「ハハハッ…!」

 

 

「っ! 笑っているのか?」

 

 

「ああ…。倒したくて壊したくて仕方の無かったモノが、目の前に現れたんだからね…」

 

 

ガガガガガガガガッ…!!!

 

 

裕斗は何処か冷たさを感じさせる笑みを浮かべながら神器を発動し、自らの周りに大量の魔剣を出現させた。

 

 

【響、あの目…】

 

 

【うん…】

 

 

そんな様子を、響と未来が心配そうに見ているとも知らずに…。

 

 

「魔剣創造(ソード・バース)か…。思い出したよ。聖剣計画の被験者で、処分を免れた者がいたという噂をね…」

 

 

それを見たゼノヴィアは瞬時に裕斗の素性を見抜いた。一方、こちらでは…

 

 

「兵藤一誠君!」

 

 

「っ!? な、何だよ?」

 

 

「再会した懐かしの男の子が悪魔になっていただなんて、何て残酷な運命の悪戯!!」

 

 

「はあっ!?」

 

 

イリナの突拍子もないハイテンションに、イッセーが絶賛困惑していた…。

 

 

「聖剣の適性を認められて遙か海外に渡り、晴れて御役に立てると思ったのに! はぁ~ッ、でもそれも主の試練! でもそれを乗り越えることで、私はまた一歩真の信仰に近付けるんだわ~ッ!」

 

 

【ねぇ、切ちゃん、この人…】

 

 

【完全に自分に酔ってるデース…】

 

 

その酔いっぷりに、思わず内心呆れてしまっている調と切歌。だが…

 

 

「さあ、イッセー君! 私のこのエクスカリバーで、あなたの罪を裁いてあげるわ~ッ! ア~メンッ!!」

 

 

「っ!? 何だかよく分かんねえが…赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)ッ!!」

 

 

『boost』

 

 

イッセーも赤龍帝の籠手を発動させたことで、ついに火蓋が切って落とされた。裕斗はゼノヴィアと対立して斬り合いを始め、イッセーはイリナに対抗するという状況だ。それを見て…

 

 

【アカメ、翼、クリス、念のために聞いておくが、今の戦況をどう見る?】

 

 

【…一言で言えば、勝ち目はほぼ無いに等しい】

 

 

【ああ。木場は完全に冷静を欠いていると言っていいだろう。今回初めて戦闘を見ている以上、正確な実力は分からないが…恐らく本来の実力も半分も出ていない】

 

 

【ま、向こうの連中も大して強くはねえみたいだな。あとは…】

 

 

一護が戦闘の様子に関してアカメや翼、クリスに尋ねた。そしてクリスが物凄く微妙な表情を浮かべつつ、有る人物の方に目を向ける。その人物とは……

 

 

「ドレスー! ブレイクッ!!」

 

 

「ひっ!?」

 

 

ヒュッ!!

 

 

「まだまだァッ!!」

 

 

「な、何なのよ~ッ!!」

 

 

【あのどうしようもねえ変態バカを、どうにかすべきなんじゃねえか?】

 

 

【…全くだな…】

 

 

とてつもなく嫌らしい顔でイリナを追いかけ回している、イッセーのことである。傍から見たらどう見ても戦闘には見えない光景に、呆れるしかないクリスと一護。と、ここで、

 

 

「俺のエロを~ッ! 甘く見るなあああああッ!!!」

 

 

「ひっ!?」

 

 

シュンッ!!

 

 

「うおッ!?」

 

 

ついに追い詰めたイッセーは両手を突き出し、渾身のダイブをイリナに向かって行ったが…イリナはそれを咄嗟に屈むことで避けたのだ。しかも、その先には……

 

 

「……!?」

 

 

「ふぇ?」

 

 

偶々戦いの様子を見ていた小猫と…ウェンディの姿があった。では、ここで問題である。この後一体何が起こるだろうか? 正解は……

 

 

キィィィンッ!×2

 

 

イッセーの両手が2人の肩に触れた瞬間、魔方陣が設置され…

 

 

ドサッ!!

 

 

「いでっ!!」

 

 

パチンッ!!

 

 

「あ……」

 

 

地面に倒れ込んだ際の弾みで魔方陣が発動し……

 

 

ビリビリビリビリビリッ…!!!!!×2

 

 

「あっ……//////!?」

 

 

「ふ、ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ////////!!?!?」

 

 

2人の服を完全に吹き飛ばしてしまった。要するに…彼女達の未成熟な体を全て曝け出す結果となった訳である…。すると、それを完全に見たイッセーは鼻血を吹き出しつつ…

 

 

パンッ!!

 

 

「ありがとうございます! じゃなくて、これは…!!」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

「ぬわああああああああああああああああああああああッ!?!?!?」

 

 

グシャッ…!!!

 

 

「…ドスケベ」

 

 

両手を合わせて拝んだイッセーに待っていたのは、言うまでもなく小猫の渾身のアッパーである…。

 

 

「あのね、これは天罰だと思うの。だからこんな卑猥な技は封印すること。いい?」

 

 

ノックアウト状態のイッセーを近くにあった木の棒切れで突きながら、“ドレスブレイク”の封印を推奨するイリナ。しかし…

 

 

「…だ」

 

 

「え?」

 

 

「嫌…だ…」

 

 

それに対するイッセーの返答は…“No”だった…。

 

 

「魔力の才能を、全て注ぎ込んだんだ…。女子の服が透明に見える技とどっちにするか…真剣に悩んだ上での決断だったんだぞ…。もっと、もっと女の子の服を弾け飛ばすんだ…。そして…そして…そしていつか! 見ただけで服を壊す技に昇華するまで、俺は戦い続けるッ…!!!」

 

 

「…そんな事でここまで戦えるなんて、どうかしてるわ…」

 

 

「エロこそ力ッ!! エロこそ正義だああああッ!!」

 

 

ドン引きするイリナに対し、イッセーはそう言い放ちながら戦いを再開しようとする。しかし…そうは問屋が卸さなかった……。

 

 

ガシッ!!!

 

 

「ちょっといいかな、イッセー君…」

 

 

「……はい……?」

 

 

突如そんな声が聞こえてきたかと思うと、背後からイッセーの肩にある人物の右手が置かれる。その人物とは……リクオだった…。

 

 

「何だか盛り上がってるみたいだけど、君の戦いはここで終わりだよ」

 

 

「あー…それは一体どういう意味でしょうか、リクオさん? しかも何故に刀を持って…」

 

 

「それは君がさっきした事と…向こうの皆を見れば分かるんじゃないかな?」

 

 

「ッ……!!??」

 

 

リクオが指し示した方を見るイッセー。すると、そこには……

 

 

「……(ビクッ!!)」

 

 

スッ…!!

 

 

リクオのワイシャツを羽織り、イッセーが目を向けた瞬間に怯えてルーシィの後ろへ隠れてしまったウェンディと…

 

 

「……………」

 

 

リクオのブレザーを羽織り、無言のままイッセーをジッと睨み付けている小猫…。しかもその周りのアイエールの女性陣も殆どが当麻達や年上の女性の後ろに隠れていたり、凄まじい形相でイッセーに怒りを向けていたりしていた…。イッセーが似たような光景をつい最近見ているような気がするのは…当然である。(『そうだ、使い魔を探しに行こう!』を参照)

 

 

「よくもウェンディと小猫に恥ずかしい思いをさせてくれたね? 特にウェンディはすっかり怖がっちゃってるんだよ? 一体どうしてくれるのかな?」

 

 

「いやいやいやッ!? あ、あれはちょっとした事故って奴で…!!」

 

 

リクオに恐怖を感じさせるような笑みを浮かべながら迫られ、慌てて釈明をしようとするイッセー。しかし…

 

 

ジャキンッ!!×2

 

 

「全ての元凶はあなたのその卑猥な技にあります、兵藤一誠…」

 

 

「先程のアーシアを庇う姿は十分評価に値するものだったのだが、やはり問題はその有り余る欲求にあるようだな…。ここでその性根をキッチリ叩き直してやろう」

 

 

「ちょっ!? ヤミちゃんもエルザさんも叩き直すっていうか、完全に斬り刻もうとしてるよねッ!?」

 

 

両サイドからヤミとエルザにも迫られ、退路を徐々に塞がれ始めた…。

 

 

「えっと…紫藤さん、でいいかな?」

 

 

「! な、何かしら…?」

 

 

「手合わせの最中に申し訳ないけど、ちょっとイッセー君に話があるから、手合わせはここまでってことでいい?」

 

 

「! え、ええ」

 

 

「あれ? 何で戦いも終わる流れになってんの? どうなってんのこれッ!?」

 

 

リクオとイリナがそんなやり取りをする中、最早置いてきぼり状態のイッセー。そして…

 

 

「じゃあ“逝こう”か、イッセー君。部長さん、ちょっと行ってきます」

 

 

「え、ええ…程々にして頂戴ね?」

 

 

「が、頑張ってください、イッセーさん…」

 

 

「ぶ、部長ぉぉぉぉッ!!? それにアーシアも頼むから止めてぇぇぇぇぇぇッ!!?」

 

 

「うるさいですよ、兵藤一誠…」

 

 

「男なら覚悟を決めて…一度死ね」

 

 

「エルザさん今“死ね”って言ったよね!? やっぱりどう見ても殺す気じゃんッ!! な、何でこんなことになってんだあああああああッ!!??」

 

 

「言うまでもなく、あなたの行動が招いた結果です…」

 

 

イッセーは絶叫する中、リクオとエルザ、ヤミの3人によって林の中に引きずり込まれた…。

 

 

「あ、ついでにアタシもちょっと行ってくるわ」

 

 

「アタシも何発かアイツで試し撃ちでもするか」

 

 

更にここでナナとクリスもその後に付いていくと、しばらくして…

 

 

 

ドガッ!! バキッ!! ザシュッ!! ドガアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ…!!!!????」

 

 

あらゆる種類の音と共に、イッセーの断末魔が響き渡った…。

 

 

「だ、大丈夫でしょうか、イッセーさん…?」

 

 

「さあな。興味すら湧かん」

 

 

それを聞いたエルフナインは思わず心配そうに尋ねるが、対して尋ねられたキャロルは心底興味が無い様子で何かの本を読んでいる。その一方で…

 

 

「ふぇぇぇ…(泣)」

 

 

「も、もう大丈夫よ、ウェンディ!」

 

 

「はい…今リクオ先輩達が変態の先輩をしっかり指導していますから…」

 

 

「し、指導で終わってるようには思えないけどね…」

 

 

思わぬ被害を喰らってしまったウェンディをルーシィが慰める中、レビィは小猫の発言に対して苦笑いを浮かべながらコメントしていた…。

 

 

「これであの子も少しは抑えてくれるといいのだけど…」

 

 

「まあ、多分無理だろうな…。と、そうこうしてる間に向こうも終わりそうだな」

 

 

「っ…!」

 

 

当麻の言葉を聞いたリアスは、ある方向に目を向けた。そこには…

 

 

「ハアアアアアアアッ!!!!」

 

 

自身の魔剣にありったけの魔力を込め、巨大化させている裕斗の姿が…。

 

 

「その聖剣の破壊力と、僕の魔剣の破壊力! どちらが上か勝負だッ!!」

 

 

【! あーあ、終わったね、お姉ちゃん】

 

 

【ああ、そうだな…】

 

 

闘志を剥き出しにしながらゼノヴィアに突っ込む裕斗を見た瞬間、クロメとアカメは頭の中で冷ややかな言葉を口にした。何故なら…

 

 

「…残念だ」

 

 

ドゴッ!!

 

 

「カハッ!!?」

 

 

ドサッ…!!

 

 

ゼノヴィアに聖剣の柄の部分で腹部を殴られたことで、裕斗はアッサリと地に倒れ伏した…。

 

 

「君の武器は多彩な魔剣とその俊足だ。巨大な剣を振るうには力不足な上に、自慢の速さを封じることにもなる…。そんなことすら判断できないとはな…」

 

 

「ッ! ま、待て…」

 

 

「次はもう少し冷静になって立ち向かってくるといい…“先輩”」

 

 

「クッ…!!」

 

 

不敵な笑みを浮かべながらゼノヴィアにそう言われ、悔しさを滲ませる裕斗。

 

 

【負けちゃったね、2人共…】

 

 

【そうね。まあ、大体予想は付いてたけど…】

 

 

その様子を見たユウキが残念そうに思う一方、シノンは淡々とした様子のまま頭の中で言った。

 

 

「ここまでだな…。そっちも終わったようだな、イリナ」

 

 

「え、ええ。全然手合わせをしたって感じは無いけど…」

 

 

「終わればそれで十分だ。さて…よろしいか、リアス・グレモリー?」

 

 

「ええ…聖剣がトドメで無かったことは、主として感謝するわ」

 

 

「では、先程の話を宜しく頼む」

 

 

リアスが笑みを浮かべながら感謝の言葉を述べると、ゼノヴィアは放り投げた白いローブを身に纏い、その場を立ち去ろうとした。すると…

 

 

「念のため聞いておきたいのだけれど…」

 

 

「!」

 

 

「聖剣を奪った堕天使は、誰だか判明しているの?」

 

 

ここでリアスが聖剣の強奪に関して最も重要な問い掛けをした。それに対し…

 

 

「直接実行したのは“グリゴリ”の幹部、コカビエルだ」

 

 

「! 幹部クラスに2人きりで…? 死ぬつもりなの?」

 

 

「聖剣を堕天使に利用されるくらいなら、この身と引き換えにしてでも消滅させる」

 

 

「覚悟の上よ。既にこちらも1人殺されてるわ。事前調査に入った神父がね…」

 

 

ゼノヴィアとイリナは真剣な表情でそう言った。と、ここで、

 

 

「やったのは…フリード・セルゼンだ」

 

 

「えっ!?」

 

 

「フリードッ!?」

 

 

辛うじて片膝を立てている裕斗の口から出た人物の名に、驚きを露わにするアーシアとイッセー。その一方、

 

 

【当麻様、その人は確か…】

 

 

【ああ、前に話したアイツだ】

 

 

【? 知っている人間なのか?】

 

 

【まあな。一言で言うと、二度と関わり合いになりたくねえ程のイカレた祓魔師(エクソシスト)だ】

 

 

ティッタと当麻のやり取りを聞いたアカメに対し、当麻は“フリード”という人物の事を簡潔に説明した…。

 

 

「あのはぐれ神父が…!?」

 

 

「偶然、その現場に居合わせてしまってね。確かに奴は、聖剣を持っていた…」

 

 

「はぐれ神父ね…なるほど、そういうことか…。情報提供には感謝する。だが、これ以上この件には関わるな」

 

 

「ッ…!」

 

 

「では、失礼する」

 

 

「ちょ、ちょっとゼノヴィア…! あ、じゃあ、そういうことで。イッセー君、裁いて欲しかったらいつでも言ってね! アーメン♪」

 

 

そしてゼノヴィアは裕斗に忠告を伝え、イリナと共にその場を後にしようとした……その時だった…。

 

 

「ちょっといいか?」

 

 

「! 何だ、アイエール総帥?」

 

 

「あー、その呼び方はやめてくれ。俺は上条当麻。こっちの方で適当に呼んでくれないか?」

 

 

「…では、上条と呼ばせてもらうとしよう。それで、一体何の用だ?」

 

 

「いやー、1つ伝えておきたいことがあってな」

 

 

当麻は頭の後ろを掻きながら、そう苦笑いを浮かべつつ言ったかと思うと…

 

 

 

 

 

「これ以上俺達の機嫌を損ねるような真似はするなよ?」

 

 

『ッ…!!!』

 

 

その雰囲気はガラッと変わり、凄まじい威圧感を放ちながら言い放ったのだ。これにはグレモリー眷属は勿論のこと、特にゼノヴィアとイリナはすぐさま聖剣を構える…。それを見て、

 

 

「や、やめなさい、当…!」

 

 

「待ってください、リアスさん」

 

 

「! モモ…!?」

 

 

「…それは一体どういう意味だ?」

 

 

止めようとするリアスをモモが抑える中、ここでゼノヴィアが冷や汗を流しながら尋ねた。

 

 

「さっき“俺達が悪魔側に付いてる”って話してたが、俺達は悪魔側に付いたつもりは全くねえ。俺達はあくまでオカルト研究部の部員として…グレモリー眷属に力を貸してるだけだ」

 

 

「…あくまで個人的に力を貸しているというのか?」

 

 

「ああ。そして、アーシアもそのグレモリー眷属の1人だ」

 

 

「! まさか、そちらもそこにいる“魔女”に肩入れする気か…?」

 

 

そう厳しく睨み付けながら問い掛けてくるゼノヴィアに対し、当麻は……

 

 

「そんな事どうでもいいんだよなぁ、上条さん達にとっては」

 

 

「っ! 何だと…?」

 

 

若干呆れ混じりに呟いた…。

 

 

「お前等がアーシアをどう呼ぼうが、俺達はイッセーと同じようにアーシアがどういう奴かを知ってる。実際学校では割とよく一緒にいるからな。そして、俺達は基本お人好しの集まりだから…親しい奴に手を出されるのを黙って見てられねえ…」

 

 

「! 当麻さん…」

 

 

「…貴様等も、教会全てを敵に回そうというのか?」

 

 

当麻の言葉にアーシアが驚く中、ゼノヴィアは緊迫した様子で尋ねる。すると…

 

 

「イッセー1人じゃ確かに大口だが…俺達全員となると話が違い過ぎる事くらい、あんた達だって何となく分かるだろ?」

 

 

「「ッ……!!」」

 

 

「上条さん達に剣を取らせるな。でねえと…本当に全てを喰らい尽くすことになるぞ?」

 

 

当麻がそう言い放った瞬間、その場に居た殆どのアイエールのメンバーからプレッシャーが放たれる。そのプレッシャーは紛れも無く…普段の彼等からは想像が付かないような、“強者”としてのモノだった…。

 

 

「…承知した。今後はそちらの機嫌を損なわぬよう、なるべく配慮する」

 

 

「っ!? な、何言ってるのよゼノヴィア!? この人達は今教会を…!!」

 

 

「やめろ、イリナ。さっきも言ったように、彼等との敵対は絶対に避けなければならない。それに…今のプレッシャーを受けて、君も感じた筈だ」

 

 

「ッ! それは……」

 

 

ゼノヴィアにそう言われ、先程までの憤った様子から一変して言葉を詰まらせるイリナ…。

 

 

「少し長居をし過ぎたな…。では、失礼する」

 

 

「…………」

 

 

そしてゼノヴィアは一言そう言い残し、複雑な表情を浮かべるイリナと共にその場を後にしていった…。

 

 

「ふぅ…悪いな、リアス。少し騒がせちまって」

 

 

「本当よ! 教会の聖剣使いを相手に、あんなことを言うなんて…!」

 

 

「あー、まあ今のは少し向こうに釘を差したかっただけだからな。これ以上アーシアが色々言われるのは俺達も嫌だしさ」

 

 

「! あ、ありがとうございます、当麻さん…!」

 

 

先程までの緊迫した雰囲気を捨てた当麻に対し、感謝の言葉を述べるアーシア。と、ここで、

 

 

「…!」

 

 

「! 待ちなさい、裕斗!!」

 

 

裕斗がその場を去ろうとしていることに当麻とリアスが気付くと、リアスがすぐさま彼の下へ駆け寄る…。

 

 

「私の下を勝手に去ろうなんて許さないわ! あなたはグレモリー眷属の騎士(ナイト)なのよ!?」

 

 

「…部長、すみません」

 

 

「っ!? 裕斗…!」

 

 

だが、主である彼女の言葉にも耳を傾けず、裕斗はそのまま林の中へと姿を消してしまった…。

 

 

「木場さん…」

 

 

「裕斗…どうして……」

 

 

そんな彼の後ろ姿を心配そうに見つめるアーシアと、悲しげな表情を浮かべるリアス…。その一方で、

 

 

【どうにもキナ臭いことになってきたな…】

 

 

【ああ…。こっちにも色々“気掛かりな奴等”が居るみたいだからな。そうだろ、一護?】

 

 

【! やっぱり気付いてたか】

 

 

【まあな…。で、どうするんだ?】

 

 

【…とりあえず様子を見るしかねえだろ。それでいざとなったら…俺が動く】

 

 

当麻と一護は頭の中でそんなやり取りを交わしていた。更に……

 

 

【ねえ、切ちゃん…】

 

 

【分かってるデスよ、調。早速行動開始デース!】

 

 

【! うん…!】

 

 

その裏で何か行動を起こそうとしている者達や……

 

 

(フンッ、手間の掛かる連中だ…)

 

 

それに気付く者もいた…。

 

 

 



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それぞれ裏で動いているようですよ?


今回は殆ど原作沿いです。アイエール側でも動くのは数人ですが、メインはやはり“あの2人”ですかね…。


では、本編をどうぞ。


教会側との接触から少し日が経った頃、1人の男が街中を歩いていた。

 

 

「…流石にこんな街中にはいねえか」

 

 

不良にしか見えないオレンジ髪が特徴の青年―――黒崎一護である。だがその場に居るのは彼1人ではなく、彼の隣を或る人物が一緒に歩いている。その人物とは……

 

 

「何故オレがこんな事に付き合わなければならない?」

 

 

「悪ぃな、キャロル。雪菜と紗矢華は他の部活の助っ人に行っちまったし、響達は…今回の事にあまり関わらせたくねえんだよ」

 

 

金色の髪をおさげに結っている少女―――キャロル・マールス・ディーンハイムだ。どうやら2人共学校帰りらしく、一護はカバンを持ち、キャロルはランドセルを背負っている…。

 

 

「あんな者達と再度接触しなければならないとは…難儀だな、貴様も」

 

 

「…ま、頼まれた以上はそれなりにしねえとな」

 

 

そう、現在一護達は昨日接触した聖剣使い―――ゼノヴィアとイリナを探していた。

 

 

「つっても、あんな見るからに不審な連中がこんな所でうろついてる訳……」

 

 

そして一護が何かを言おうとしたのだが…ある光景を見た瞬間に固まった。何故なら…

 

 

「これの何処が聖ペトロの絵なんだ!? 明らかに違うだろう!?」

 

 

「そんなことないわ! これはきっと、『この絵を買いなさい』という主の思し召しよ!!」

 

 

「だがその絵を勝ったお蔭で、こちらの資金が完全に尽きてしまったのだぞ!?」

 

 

まさに自分達が探していた白いローブ姿の2人の少女が、一枚の絵を巡って往来で言い争いをしていたのだから…。心なしか周囲の人間も、彼女達を怪訝そうな表情を浮かべながら見ている。

 

 

「どうやら予想以上の馬鹿共だったようだな…。それで、一体どうするつもりだ?」

 

 

「…はぁ…」

 

 

キャロルが呆れ混じりに尋ねる中、一護は溜め息を吐きながらゼノヴィア達の下へ近寄っていく。

 

 

「こうなったら、どこかの異教徒を脅して調達する?」

 

 

「そうだな。まずは仏門の者達でも…」

 

 

そして物騒な会話を始めた2人に対し、一護はこう話し掛ける。

 

 

「往来で何て話をしてんだよ…」

 

 

「ッ…!?」

 

 

「あなたは…!!」

 

 

「よう」

 

 

2人は会話に夢中だったのか、あからさまに驚きつつもすぐに警戒し始めた。

 

 

「この前は自己紹介してなかったな。俺は黒崎一護。宜しくな。で、こっちにいるのが…」

 

 

「…キャロル・マールス・ディーンハイムだ」

 

 

一護が憮然とした様子のキャロルも含めて軽く挨拶をすると…

 

 

「アイエール副総帥の1人と“終焉の錬金術師”が、我々に何の用だ…?」

 

 

「! 自己紹介するまでも無かったみてえだな…。少し話があんだよ。とりあえずそこら辺のファミレスにでも入って、軽く“飯”でも…」

 

 

「「付き合おう(付き合うわ)ッ!!」」

 

 

「うおっ!?」

 

 

一護の口から“飯”という単語が出た瞬間、警戒心を完全に遠くの彼方へと吹っ飛ばしたゼノヴィアとイリナ…。

 

 

パシッ!!×2

 

 

「何をしている! 早く行くぞッ!!」

 

 

「そうよ! 善は急げって言うでしょッ!!」

 

 

「いや、絶対使う場面が違うだろ!? つーか引っ張んじゃねえ!! 聞いてんのかッ!?」

 

 

そして一護はゼノヴィアとイリナに凄まじい勢いで引っ張られていってしまった。すると、それを見ていたキャロルは…

 

 

「はぁ…本当に馬鹿げている…」

 

 

この日一番の溜め息混じりの呟きをしながら、そんな3人の後をゆっくり追っていった…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

そんなこんなでファミレスにやってきた一護達だが、話が始まる様子は一切無かった。何故なら…

 

 

「旨い! 日本の食事は旨いぞ!!」

 

 

「うんうん! これが故郷の味よ!!」

 

 

ゼノヴィアとイリナが入って早々、凄まじい速さで店のメニューを片っ端から頼んで食べ始めたのだ。そのためテーブルには皿やプレートが堆(うずたか)く積み上げられている。

 

 

(おいおい、お前等教会の人間だよな? 欲求丸出しにも程があるだろ…)

 

 

これには一護も若干顔を引きつらせる他無い…。ちなみにその隣にいるキャロルは我関せずといった様子で本を読んでいる…。

 

 

カチャンッ!

 

 

「ふぅ…まさか新興組織の副総帥に食事を恵んでもらうことになるとはな」

 

 

「俺もまさか聖剣使いに飯を奢ることになるなんて思ってもみねえよ。しかも万札が飛ぶ程食いやがって…」

 

 

「ごちそうさまでした。心優しき人々へ慈悲を、アーメン♪」

 

 

最後の料理を食べ終えたゼノヴィアと、十字を切りながら御決まりの言葉を口にするイリナ。すると…

 

 

「さて、そろそろ本題に入ろうか…。我々に接触してきた理由は何だ?」

 

 

ここでゼノヴィアが真剣な表情で尋ねてきたのだ。それに対し、

 

 

「伝えておきたい事があってな…。多分その内、お前等の所にイッセーが訪ねてくる」

 

 

「? イッセー君が?」

 

 

「何故赤龍帝が接触してくる? まさか再度手合わせでもするつもりか?」

 

 

2人が話の内容に疑問を感じていると、そこへ今まで関わろうとしてこなかったキャロルが入ってきた。

 

 

「恐らく協力を申し出るつもりだろう」

 

 

「? 協力?」

 

 

「どうやら奴は心底あの魔剣使いの力になりたいらしい」

 

 

「! なるほど、そういうことか…。で、そちらは我々にどんな対応を望んでいる?」

 

 

キャロルの話を聞き、若干皮肉げに尋ねるゼノヴィア。だが、それに対して一護は…

 

 

「特にねえよ。どうするかはお前等に任せる」

 

 

「! 何…?」

 

 

思わぬ返答にゼノヴィアが訝しむ中、一護は話を続ける。

 

 

「確かに俺もあいつのことは仲間だと思ってる。けど余程の事が起きねえ限り、今回の件に首を突っ込むことはねえよ」

 

 

「堕天使が暴れ回ろうと、オレの知ったことではない…。もっとも、鬱陶しいと感じれば消しに行くがな」

 

 

「ッ! け、消すって、相手は堕天使の幹部なんだけど…」

 

 

「知らん。そんなもの、そこら辺にいる鴉(カラス)共と変わらんだろう」

 

 

「………」

 

 

キャロルの発言に顔を引きつらせるイリナ。正体を多少知っているとはいえ、10歳程の見た目に似つかわしくない内容である以上、ある意味当然の反応と言えるだろう…。すると、

 

 

「それなら何故先程の情報を私達に伝えた? 態々そんなことをする必要はそちらに無いと思うが…」

 

 

「! あー…実は俺達の方にもイッセーと同じことを考えてる奴等がいてな。そいつを一番伝えたかったんだよ」

 

 

「…今回の件には介入しないんじゃなかったのか?」

 

 

「俺達全体としてはな。けど、そいつ等はどうしても黙ってられねえみたいなんだよ。だからさっきも言ったように、どうするかはお前等に任せる。断りたければキッパリ断ってくれ」

 

 

「? あなたは組織のナンバー2なんでしょ? あなたが止めればいいんじゃ…」

 

 

イリナの問い掛けに対し、一護はこう言葉を返した…。

 

 

「俺達は確かに色々あって“アイエール”っつう組織を語ってるが…実際俺や当麻やリクオと響達の間には、上下関係みてえなモンなんて何1つ無え。むしろ俺達は響達に力を貸してもらってるくらいだ…。あいつ等の意思を曲げる権限なんざ、俺には端(はな)から無えよ」

 

 

「…実際には上下関係の存在しない組織か。夢物語のようにしか聞こえないな」

 

 

「ま、そりゃそうだろうな…。実際に中に居ねえと、そいつは絶対に分かんねえよ」

 

 

「……………」

 

 

その言葉を聞いて、何処か複雑な表情を浮かべるゼノヴィア。と、ここで、

 

 

「とにかく話は以上だ。手間を取らせて悪かったな。こいつはその迷惑料として…」

 

 

「改めてこの心優しき人に慈悲を、アーメン!」

 

 

「いくら何でも早過ぎだろ…」

 

 

テーブルに置かれた一万円札を凄まじい速さで受け取るイリナに対し、再び顔を引きつらせる一護。やはり目の前の少女の身分と行動のズレに困惑するしかないようである…。

 

 

「それとイッセー達には今回の事を伏せといてくれ。色々と面倒なことになっちまうだろうからな」

 

 

「承知した。資金提供には感謝する。ありがとう」

 

 

「気にしなくて構わねえよ。こっちから頼んだことだしな」

 

 

そして一護はキャロルと共に席を外し、そのまま店を後にすると、その道中…

 

 

「やはり甘いな。奴等を止める事など、貴様の力を以てすれば実に容易いというのに…」

 

 

「…甘いことは否定しねえよ。けどあいつ等が動きたがる気持ちも分かるし、本当は動きたい連中が他にも居るからな…」

 

 

キャロルの言葉に対し、何とも言い難い表情を浮かべながら返す一護…。

 

 

「この前の頼みはやってくれたか?」

 

 

「…ああ。もっとも、どうするかは“あいつ等”の気分次第だが…」

 

 

「それでも構わねえ。引き続き頼むよう伝えといてくれ」

 

 

「…何をそこまで不安視している? あの程度の堕天使であれば、奴等でも十分事足りるだろう?」

 

 

すると、それに対して一護は……

 

 

「予感がしてるだけだ…。どうにも気味の悪い予感がな…」

 

 

厳しい表情と口調で、そう呟くのだった…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

それからしばらくして……

 

 

「なぁ…俺は居なくたっていいだろ? 無敵の戦車(ルーク)が加わったんだしさぁ…」

 

 

「戦力は多い方がいいんだよ。本当は当麻やユウキちゃん達にも加わってもらいたかったけど…」

 

 

「…私達の勝手な行動に、眷属じゃないリクオ先輩達を巻き込むのは気が引けます」

 

 

「いや、俺なんかオカ研の人間ですらないんだけど!?」

 

 

先程一護とキャロルが通っていた街中を、3人の人物が歩いていた。1人はグレモリー眷属の兵士(ポーン)の少年──兵藤一誠。1人は同じグレモリー眷属の戦車の少女──塔城小猫。そして最後の1人は駒王学園生徒会メンバーの1人で、シトリー眷属の兵士である少年──匙元士郎である。3人は一護達の予想通り、裕斗のためにゼノヴィアとイリナの2人を探していた…。もっとも、匙に関しては全く乗り気では無いようだが…。

 

 

「つっても、そう簡単には見つからないよな」

 

 

「…そうですね。やはりもう少し協力者がいれば…」

 

 

と、その時だった…。

 

 

 

 

「そんなことだろうと思ったデース…!」

 

 

「考えてた通りだったね、“切ちゃん”」

 

 

『ッ…!?』

 

 

そんな声を聞いて一誠達が振り返ると、そこにいたのは…

 

 

「し、調ちゃん!? それに切歌ちゃん!?」

 

 

「そうデース!」

 

 

「ブイ…」

 

 

金髪ショートカットの少女──暁切歌と、黒髪ツインテールの少女──月読調の2人だった。切歌は相変わらずの快活さで、調は表情こそ変えないもののVサインで挨拶をする。

 

 

「…どうしてあなた達がここに?」

 

 

「勿論、皆さんを“尾けてた”からデス!」

 

 

「! つ、尾けてた…!?」

 

 

切歌の発言にイッセーが驚いていると、調が話し始める。

 

 

「あなたがあの魔剣使いの人のために動くのは、何となく想像が付いてた。だから…」

 

 

「ずっと行動を監視していたデスよ!」

 

 

「ぜ、全然気付かなかった…」

 

 

「…私もです」

 

 

と、ここで、

 

 

「ところで、そこにいるのは誰デスか?」

 

 

「この前会ったばかりだよ、切ちゃん。名前は確か……“サギ”さんだっけ?」

 

 

「誰が“サギ”だッ!! 匙だよ! 匙元士郎!! “会ったばかり”って言ったのは何だったんだよ!?」

 

 

若干置いてきぼり状態だった匙は、調の天然気味な間違いに思わずツッコミを入れる…。

 

 

「…私達の行動を監視していたと言ってましたよね? ということは、これから私達がやろうとしている事も当然…」

 

 

「知ってる…」

 

 

「! も、もしかして、俺達を止めにきたとか…?」

 

 

小猫の問い掛けに対する調の言葉を聞いて、イッセーは表情を引きつらせた。年齢的には自身よりも2つ下の華奢な少女達だが、彼女達が格上の実力者であることはイッセーの頭にもある程度入っている。本当に止めに来たのであれば、ここで確実にイッセーの行動は終わりを迎えたであろう。だが…

 

 

「止めるのが目的なら、あなたが行動しようとした時点ですぐに止めてる…」

 

 

「私達の目的は、むしろその逆デース!」

 

 

「っ! ってことは、協力しに来てくれたのか!?」

 

 

「はぁッ!!?」

 

 

イッセーが期待の混じった表情を浮かべる一方、匙は驚愕を露わにし始めた。どうやらこちらは、止めに来ることを期待していたようである…。

 

 

「先に言っておくけど、これはお兄ちゃん達の命令じゃない。あくまで私達の意思でやってること…」

 

 

「というより、本当はどちらかというと関わっちゃいけないらしいんデスけどね」

 

 

「…では、何故私達に協力を?」

 

 

小猫がそう尋ねてきたのに対して、調と切歌は今までと違う表情を浮かべつつ…こう答える…。

 

 

「私達にとって、他人事ではないからデスよ…」

 

 

「だから放っておくことなんて出来ない。だって、私達も…」

 

 

「? 調ちゃん? 切歌ちゃん?」

 

 

そんな2人の様子に違和感のようなものを感じるイッセー。しかし…

 

 

「と、とにかく、あの聖剣を持ってる2人を探してるんデスよね!? それなら早速再開デース!」

 

 

「! お、おうッ!!」

 

 

「おい、これ絶対俺必要ないだろ!? 十分過ぎる戦力だろ!?」

 

 

「レッツゴー、デース!」

 

 

「おー…」

 

 

「何でだァァァァァァァッ…!!??」

 

 

切歌が瞬時にテンションを切り替えたことで、その違和感も自然と消え、再びゼノヴィア達を探し始めた。匙の空しい叫び声が木霊しているのは…多分気のせいではない。そして…

 

 

「………」

 

 

小猫はそんな様子に違和感を感じながらも、彼等の後を付いていくのだった…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

結論から言うと、イッセーや調達はゼノヴィアとイリナをあっさりと発見した。2人はまだファミレスに残っていたらしく、それを偶然見つけたのである。そして現在、イッセー達はボックス席でゼノヴィアやイリナと向かい合って座っている…。

 

 

「それで、話というのは何だ?」

 

 

「あんた等、エクスカリバーを破壊するためにこの国へ来たんだよな?」

 

 

「ええ。それはこの前説明した通りよ」

 

 

すると、イッセーは早速ゼノヴィアとイリナに本題を告げた…。

 

 

「エクスカリバーの破壊に協力したい」

 

 

「…彼等の言った通りか(ボソッ)」

 

 

「…? 何か言いましたか?」

 

 

「いや、こちらの話だ。気にしないでくれ」

 

 

イッセーの発言に対するゼノヴィアの反応を見て、ふと尋ねる小猫。しかし、ゼノヴィアはそう返し…

 

 

「それより、具体的な内容を聞かせて欲しい」

 

 

「! あ、ああ、実は…」

 

 

イッセーに詳細の説明を求めた。それを受けたイッセーは、協力するに当たっての意思などを説明した上で、小猫や匙と共に頭を下げる。その結果…

 

 

「そうだな。1本くらいならいいだろう」

 

 

「! 本当か!?」

 

 

「ちょっと、ゼノヴィア! いいの!? 相手はイッセー君とはいえ、悪魔なのよ!?」

 

 

ゼノヴィアの出した返答は、まさかの承諾だった。これには思わずイリナも慌てて問い掛ける。

 

 

「相手は堕天使の幹部の1人、コカビエルだ。正直言って、奴との戦闘と聖剣3本の回収を両方こなすのは辛い。奥の手を使ったとしても、任務を終え無事に帰って来れる確率は3割程度だろう」

 

 

「それでも高い確率だと、私達は覚悟を決めてこの国へ来た筈よ?」

 

 

「そうだな…。上にも“任務を遂行してこい”と送り出された。自己犠牲にも等しい…」

 

 

「それこそ、私達信徒の本懐じゃない」

 

 

「私の信仰は柔軟でね。私あっての信仰…。いつでも最善の結果を求めたいのさ」

 

 

「! あなたね! 前から思っていたけど、信仰心が微妙におかしいわ!!」

 

 

「変わっていることは否定しないよ。だが、任務を遂行して無事帰ることこそが、本当の信仰だと私は信じている。生きなければ信仰できないし、主のために戦えないだろう…。違うか?」

 

 

「…違わないわ。でも…!」

 

 

「それに、この協力を受け入れるメリットは十分にある筈だ。何しろ赤龍帝である君の幼馴染みよりも重要の存在が、そこにいるからな」

 

 

ここでゼノヴィアがそう言いながら目を向けたのは…イッセーとゼノヴィア達の間を取るように座っている、調と切歌の2人だった。

 

 

「こうして一緒にやってきたということは、君達も同じ目的で来たと解釈していいだろうか?」

 

 

「構わない…」

 

 

「ここにはそのつもりで来たデス!」

 

 

ゼノヴィアの問い掛けに対し、調と切歌はハッキリと答える。すると、

 

 

「どうしてあなた達が関わろうとするの? やっぱりそこにいるイッセー君達みたいに、あの木場君のため?」

 

 

「別にそういう訳じゃない。でも…」

 

 

「私達にも私達なりの理由があるってだけの話デス。具体的には言えないデスけど…」

 

 

続くイリナの問い掛けに対しては、やや言いにくそうな様子でそう返した。

 

 

「理由に関しては特に詮索するつもりはない。いずれにせよ赤龍帝に加え、あの“七星の歌姫(プレアデス・ディーヴァ)”の内の2人が協力してくれるなら、こちらとしては予想を遥かに越えた戦力強化になる…。実際、上は“ドラゴンの力を借りるな”とも、“アイエールの者達と協力するな”とも言わなかっただろう?」

 

 

「た、確かにそうだけど…いくらなんでも屁理屈過ぎるわよ! やっぱり貴女の信仰心は変だわ!!」

 

 

「変で結構。しかしイリナ、君も彼等との協力が得策なことくらい理解している筈だ。しかも、彼は君の幼馴染みだろう? ならここは1つ、彼等を信じてみようじゃないか」

 

 

ゼノヴィアからそう言われたイリナは、少々複雑な表情を浮かべながらも反論してこなかった。それはすなわち、暗に了承の意を示しているということになる…。

 

 

「…交渉成立のようですね」

 

 

「オーケー。俺はドラゴンの力を貸す。それじゃあ、今回の俺達のパートナーを呼んでいいか?」

 

 

そしてイッセーはすぐさま携帯を取り出し、誰かに連絡を取り始めた。それを見て…

 

 

「調、今の“パートナー”って…(ボソッ)」

 

 

「うん…どう考えても“あの人”のことだよ(ボソッ)」

 

 

調と切歌はその相手に関して、大体の予想を付けていた…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

それからしばらくして、場所を近くの公園へと移したイッセーと調達は、そこで“ある人物”と会っていた。それは…

 

 

「…話は分かったよ」

 

 

先日から姿を見せなくなっていた裕斗である。どうやらイッセーからの呼び出しに対して、素直に応じたらしい。

 

 

「正直言って、エクスカリバーの使い手に聖剣の破壊を承認されるのは遺憾だけどね」

 

 

「随分な言い様だな? そちらが“はぐれ”だったら、問答無用で斬り捨てている所だ」

 

 

「お、おいおい!」

 

 

「こんな所で喧嘩しないで欲しいデス!」

 

 

いきなり裕斗とゼノヴィアが一触即発な雰囲気を醸し出しているのを見て、慌てて止めに入るイッセーと切歌。すると、

 

 

「やっぱり、“聖剣計画”のことで恨みを持っているのね? エクスカリバーと…教会に…」

 

 

「当然だよ」

 

 

イリナの問い掛けに対し、裕斗は冷たい声色で即答した…。

 

 

「でもね、木場君。あの計画のお蔭で聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。だからこそ、私やゼノヴィアみたいに聖剣と呼応できる使い手が誕生したの」

 

 

「だが計画失敗と断じて、被験者のほぼ全員を始末することが許されると思っているのか?」

 

 

裕斗は憎悪の籠った眼差しを、イリナに向けながら尋ねた。だがその際、調と切歌が厳しい表情を浮かべていたことには誰も気付いていない…。と、ここで、

 

 

「その件については、我々教会側でも最大級に嫌悪されている。処分を決定した当時の責任者は、信仰に問題があるとして異端の烙印を押された。今では堕天使側の住人だ」

 

 

「堕天使側に…? その者の名は?」

 

 

「バルパー・ガリレイ…“皆殺しの大司教”と呼ばれた男だ」

 

 

ゼノヴィアから出た人物の名を聞いて、何かを考え始める裕斗…。

 

 

「…堕天使を追えば、その男に辿り着くのか」

 

 

「恐らくな。そしてあちらには君の情報通り、あの男…フリード・セルゼンも付いている」

 

 

「フリード・セルゼン。元ヴァチカン法王庁直属の秡魔師(エクソシスト)。13歳で秡魔師になった天才…。悪魔や魔獣を次々と滅していく功績は大きかったわ」

 

 

「だが、奴はあまりにもやり過ぎた。同胞すら手に掛けたのだからね。フリードには信仰心なんてモノは最初から無かった。あったのはバケモノへの敵対意識と殺意、そして異常なまでの戦闘執着。異端に掛けられるのも時間の問題だった…。まさか処理班の始末し損ねたツケが、ここで我々に回ってくるとはね」

 

 

更に再びあの狂気染みた秡魔師──フリード・セルゼンについても話が及ぶと、ゼノヴィアは忌々しげにそう言った。

 

 

「まあ、いい。とにかく共同戦線については承諾させてもらう。具体的な行動に関しては、こちらから改めて伝えよう」

 

 

その後互いの連絡方法に関して軽く確認を取ると、ゼノヴィアとイリナは去っていった。イッセーや切歌達はその2人を見送った所で、思わず大きく息を吐く。すると…

 

 

「イッセー君、どうしてこんなことを…?」

 

 

裕斗が複雑な表情を浮かべながら尋ねてきた。それに対し、イッセーは…

 

 

「ま、仲間だし、眷属だしさ。それにお前には助けられたこともあったからな。借りを返すって訳じゃないけど、今回はお前の力になろうと思ったんだよ」

 

 

「…部長に迷惑が掛かるから…それもあるんだよね?」

 

 

「勿論。あのまま暴走されたら部長が悲しむ。まあ、俺が今回独断で決めたことも部長に迷惑掛けてるんだろうけど…お前が“はぐれ”になるよりマシだろ? 結果オーライになっちまったが、教会の関係者との協力態勢も取れたし…」

 

 

若干ぎこちなさがあるものの、自身の行動の理由について答えた。

 

 

「それに、眷属じゃないのに協力しに来てくれた娘達もいるしな」

 

 

「…!」

 

 

続けてイッセーがそう言うと、裕斗はすぐに或る少女達に目を向ける。それは…言うまでもなく調と切歌の2人だった。

 

 

「調ちゃん、切歌ちゃん…どうして君達まで?」

 

 

「! べ、別にそっちのためって訳じゃないデスよ? ただ…」

 

 

「あなたの気持ちも、少しだけ分かるような気がするから…」

 

 

「え…?」

 

 

調の口から出た言葉に、思わず反応を見せる裕斗。だが…

 

 

「と、とにかく私達はただそうしたいからしてるだけデース…!!」

 

 

またしても切歌がはぐらかすように声を上げたことで、再び有耶無耶となってしまった。と、そこへ…

 

 

「…裕斗先輩。私は、先輩がいなくなるのは……寂しいです…」

 

 

そんな言葉を口にしたのは小猫だった。その表情には僅かではあるものの、確かな寂しさが現れている…。そして小猫は裕斗の下へ近寄っていき…

 

 

ギュッ…

 

 

「…お手伝いします…。だから…いなくならないで……」

 

 

「……!」

 

 

自分の服を小さく掴みながら訴えてくる小猫の姿に、裕斗もついに今までの険しい雰囲気を霧散させた…。

 

 

「ははは、まいったね。無関係な筈の調ちゃんや切歌ちゃんに心配されて、小猫ちゃんにもそんなことを言われたら、僕も無茶できないよ…。分かった。今回は皆の好意に甘えさせてもらおうかな。イッセー君のお蔭で真の敵も分かったからね。でも、やるからには絶対にエクスカリバーを倒す」

 

 

「よし!! 俺らエクスカリバー破壊団結成だッ!! 頑張って奪われたエクスカリバーと、フリードのクソ野郎をぶっ飛ばそうぜ!!」

 

 

そして裕斗の言葉に小猫が小さく微笑む中、イッセーは拳を突き上げながら宣言した。すると…

 

 

「あの…俺も?」

 

 

今まで完全に置いてきぼり状態だった匙が、かなり気まずそうな様子で尋ねてきた。

 

 

「つーか、結構俺って蚊帳の外なんだけどさ…。結局、木場とエクスカリバーにどんな関係があるんだ?」

 

 

そう、言うまでもなくこの男は一番重要な部分についての情報を持っていないのである。そのため…

 

 

「…少し、話そうか」

 

 

木場は自らの過去を匙に話し始めた…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

それから数分後…

 

 

「き、木場ぁッ!! 俺はなぁ! 今非常にお前に同情しているッ! ああ、酷い話さ!! その施設の指導者やエクスカリバーに恨みを持つ理由も分かる!! 分かるぞッ!!」

 

 

裕斗の話を聞いた匙は現在、この上なく号泣しながら声を上げていた…。

 

 

「俺はイケメンのお前が正直イケすかなかったが、そういう理由なら別だ! 俺も協力するぞ!! ああ、やってやるさ!! 会長の扱(しご)きも敢えて受けよう!! それよりもまずは俺達でエクスカリバーの撃破だ!! 俺も頑張るからさ! お前も頑張って生きろよ!? 絶対に救ってくれたリアス部長を裏切るな!!」

 

 

個人的な感情が所々に入っているものの、そこには裕斗に対する確かな同情の念が含まれている。一言で表現するならば、“非常に思いやりと情熱の籠った言葉”だった…。

 

 

「よし、良い機会だ!! ちょっと俺の話も聞いてくれッ! 共同戦線を張るなら俺のことも知っておいてくれよ!!」

 

 

次の発言が飛び出すまでは……。

 

 

「俺の目標は、ソーナ会長と“できちゃった結婚”をすることだ!!」

 

 

その瞬間、場の空気が一気に微妙な…というより、冷たい雰囲気へと変わる。しかし、そんな中で逆らうように違う反応を見せる者がいた…。

 

 

パシッ!

 

 

「聞け、匙! 俺の目標は部長の乳を揉み…そして吸うことだッ!!」

 

 

同じ兵士(ポーン)の少年──兵藤一誠である…。

 

 

「兵藤ッ! お前、分かっているのか? それが一体どれほどの難易度なのかを…!」

 

 

「分かってるさ。けど、無理じゃねえッ!! 匙、俺達は上級悪魔のおっぱいに…ご主人様のおっぱいに触れられるんだよッ!!」

 

 

そしてそこから始まったのは、兵士同士の2人の少年による互いの野望の話だった。と言っても、その内容はどうしようもない程下品なものだが…。

 

 

「あははは…」

 

 

「な、何をいきなり話し出してるデスか、この人達は…?」

 

 

「…最低です」

 

 

その光景に裕斗が苦笑いを浮かべ、切歌と小猫はそれぞれドン引きしていたり、いつも通りの辛辣な言葉を口にしていた。と、その時…

 

 

「ねぇ、切ちゃん」

 

 

「! どうしたデスか、調?」

 

 

「…“できちゃった結婚”って、何?」

 

 

「ッ!!? な、何デス、と…!?」

 

 

調の口から出た爆弾級の問い掛けに、思わず硬直する切歌。そう、調は基本的には常識を兼ね備えた少女なのだが、その一方で恋愛等に関する知識については極端に知らないのである。故に“何が”出来ちゃうのかに関しても、彼女は一切理解していない…。

 

 

「……(ジーッ)」

 

 

「ッ! え、えっと、それはデスねー…/////」

 

 

「…それって、私とお兄ちゃんも出来る?」

 

 

「ふぇっ//////!!??」

 

 

何とかはぐらかそうとする切歌だったが、調から更に巨大な爆弾を投下されたことで一気に顔を真っ赤にしてしまう。

 

 

「ししし、調ッ///!? いきなり何を言い出すデスかッ////!!?? そ、そんなことしたら…///」

 

 

「? どうなるの…?」

 

 

「ッ////!!! デ、デーーーーーースッ//////!!!!!」

 

 

そして切歌は、調の純粋過ぎる質問と自らの想像により限界を迎え、渾身の叫び声を上げながら走り去ってしまった…。

 

 

「? どうしたんだろう、切ちゃん…?」

 

 

「えっと…」

 

 

「…とりあえず、あなたのせいなのは間違いないと思います」

 

 

裕斗が困惑の笑みを浮かべる中、首を傾げる調に対して呆れ混じりにそう伝える小猫。一方…

 

 

「匙! 俺達は“1人”じゃダメな兵士なのかもしれない!! だが、2人なら違うッ! 2人なら飛べる!! 2人なら戦える!! 2人ならやれる!! 2人ならいつか“できちゃった結婚”も出来るかもしれない!! ご主人様とエッチしようぜッ!!!」

 

 

「うん…うんッ…!!」

 

 

こちらでは兵士2人が互いに目を輝かせながら、更に意気投合している…。

 

 

「ねぇ、小猫ちゃん」

 

 

「…何ですか、裕斗先輩?」

 

 

「…これで本当に大丈夫なのかな…?」

 

 

「……さぁ…?」

 

 

こうして、エクスカリバー破壊軍団(命名=イッセー)がここに結成(?)されたのだった…。

 

 

 

 



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“物”と“人”は区別すべし



こっちの小説の方が割と執筆している今日この頃…。


今回から少しオリジナル展開にしてみました。ですが…あまり期待しないでくださいね?


また新たに“あの集団”から2人(?)が初登場します。


では、本編をどうぞ。


“エクスカリバー破壊軍団”(命名=イッセー)の結成から数日の間。イッセーや調達は放課後に“或る行動”をしていた。それは…

 

 

「ふぅ…今日も収穫無しか」

 

 

「…そうですね」

 

 

「もうこれで何日目デスか? そろそろ現れて欲しいデスよ…」

 

 

“イカレ神父”こと、フリード・セルゼンの捜索である。どうやら黒いフードを目深に羽織ることで教会関係者に成り済まし、フリードを誘きだすという作戦を取っているようだ。しかしイッセーと小猫、そして切歌の会話からも分かるように、その成果は出ていない。と、ここで、

 

 

「…! 大丈夫みたいだよ、切ちゃん」

 

 

「ふぇ…? ッ…!」

 

 

「上だッ!!」

 

 

調の言葉を聞いた切歌が気付く中、匙が上を見ながら声を上げた。すると…

 

 

シュンッ!!

 

 

「神父の一団に御加護あれってねッ!」

 

 

上空から聖剣を携えた目的の男──フリード・セルゼンが奇襲を駆けてきたのだ。イッセーや調達は当然の如くそれを避け、羽織っていたフードを脱ぎ去る…。

 

 

「ようやく出やがったな、フリード!!」

 

 

「あらら? これはこれは、何時ぞやのクソ悪魔君ではあーりませんか~。ってことは、ひょっとして俺っちは誘い出されたってことっすかね~?」

 

 

「そういうこと…」

 

 

「大人しく観念するデス!!」

 

 

「ハッ! 黙ってなさいな、このクソチビビッチ共ッ!!」

 

 

イッセーと調、切歌がそう言ってきたことに対し、あかさまな暴言を吐きながら斬りかかろうとするフリード。しかし、

 

 

「ここからは僕がやる!!」

 

 

「行け、ラインよッ!!」

 

 

ここで動いたのは裕斗と匙だった。中でも匙は自らの右手の甲に“カメレオン”を連想させるような神器を発動させたかと思うと、そこから出現した縄状の物体がフリードの右足に絡み付いた…。

 

 

「うぜえっす!!」

 

 

フリードはすぐに斬り捨てようとするが、あっさりとすり抜けてしまう。どうやら実体が無い特殊なモノのようである。

 

 

「木場! これでそいつは逃げられないぜ!!」

 

 

「ありがたい…!!」

 

 

裕斗は匙の支援を有り難く受け取りつつ、二振りの魔剣で斬りかかる。

 

 

「チッ、面倒臭えっす! でも俺様のエクスカリバーちゃんは、イケメン君の魔剣じゃ…」

 

 

バキィィィィンッ…!!!

 

 

「相手になりませんぜ!!」

 

 

だが、エクスカリバーの一振りの前に呆気なく砕け散った…。

 

 

「木場、譲渡するか!?」

 

 

「まだいけるよッ!!」

 

 

そして裕斗が再び魔剣を創造し、フリードへ迫ろうとした……次の瞬間、

 

 

『グルァァァッ!!!』

 

 

「ッ…!?」

 

 

ガキィィィィィン…!!

 

 

突如横から現れた“何か”が裕斗に襲い掛かってきたのだ。裕斗は間一髪その攻撃を防ぐが…

 

 

「なっ!?」

 

 

「何だよ、あれ…!?」

 

 

匙とイッセーは襲ってきた相手の姿に驚愕する。何しろそれは…“人ではなかった”のだ…。

 

 

「…“合成獣(キメラ)”」

 

 

「っ!? キ、キメラって、あの合成獣(キメラ)ッ!?」

 

 

「何でそんなのがここに居るんだよ…!!?」

 

 

小猫の口から飛び出した相手の正体。悪魔のような黒い翼と、蛇で出来た尻尾を持つライオンのような生き物は…紛れもなく“合成獣(キメラ)”と呼ばれる存在だった。更に…

 

 

『ガルルルルルッ…』

 

 

『グオオオオオッ…』

 

 

「ッ!? お、おい、周りを見ろ…!!」

 

 

「ッ! か、囲まれてるじゃねえか!?」

 

 

匙にそう言われたイッセーは、周囲を見渡した瞬間に動揺を露わにする。そう…いつの間にか周りの林の中には、大量の合成獣達の姿があったのだ。

 

 

「おーおー、これはこれは有り難い助っ人ちゃん達ですね~! 俺っち思わず感謝感激雨嵐って奴ですぜぃッ!!」

 

 

「っ! これもお前の差し金か、フリード・セルゼンッ!!」

 

 

「ノンノン! これは俺っちの支援者(パトロン)様からのプレゼントさッ! 有り難く受け取って、殺されてくれちゃいな☆」

 

 

声を荒らげる裕斗に対し、相も変わらず狂気に満ちた口調で返すフリード。

 

 

「くそっ! いくらなんでも数が多過ぎるだろ!?」

 

 

「…ぼやいてても仕方ありません。ここは…」

 

 

裕に数十体はいるであろう合成獣の軍団を前に、イッセーと小猫が応戦の構えを取ろうとした…その時、

 

 

「狼狽えるなデスッ!!」

 

 

『ッ!!?』

 

 

ここで動いたのは……切歌と調の2人だった…。

 

 

「合成獣の相手は私と切ちゃんがするから、先輩達はあの神父の相手に専念して…」

 

 

「ッ!? な、何言ってんだよ2人共!? こんな大量の奴等を任せるなんて、出来る訳…ッ!?」

 

 

調の発言を聞いたイッセーは思わず声を上げるが…最後まで言い切ることは出来なかった。何故なら…普段の彼女達からは想像も付かないようなプレッシャーを、調と切歌が放っていたのだから…。

 

 

「確かに私達はまだ半人前だけど、子供だと思ってたら痛い目に遭うと思う…」

 

 

「行くデスよ、調!!」

 

 

調と切歌はそれぞれ首に付けていたピンク色の小型ペンダントを手に取ったかと思うと、自身の胸の前にかざし…

 

 

《Various shul shagana tron》

 

 

《Zeios igalima raizen tron》

 

 

一小節分ほどの短い歌を口ずさんだのだ。すると2人は突如光に包まれ、数秒後に収まったかと思うと…

 

 

「キリッ…」

 

 

「デスデスデースッ…!」

 

 

2人はそれぞれピンクと黒、緑と黒を基調とした戦闘装束を身に纏っていた。しかも調は両手に2つの特殊なヨーヨーを、切歌は一振りの大鎌を手にしている。

 

 

「こ、これが神器を発動させた調ちゃんと切歌ちゃんの姿…」

 

 

「お、俺も会長から話を聞いて、どんなもんかと思ってたんだが…」

 

 

「け、結構素晴らしいな、ぐへへ…」

 

 

「ッ///! な、何いやらしい目で見てるデスかッ///!」

 

 

「…最低です」

 

 

イッセーのあからさまな変態リアクションを見た切歌は、思わず片手で自身の身体を隠そうとしながらも、後ろにいる調の盾になるように立つ。ちなみに声には出ていないものの、匙もあからさまに厭らしい表情を浮かべていたのは…言うまでもないだろう…。そして、小猫がいつものように冷たい視線をイッセー達に向ける中、

 

 

『グラアアアアアッ!!』

 

 

「! 切ちゃん…!」

 

 

「とにかくそっちは任せたデスよ!!」

 

 

合成獣達が痺れを切らして向かってきたのを見て、調と切歌は動き出した。

 

 

ガガガガガガガガガッ…!!!

 

 

『グオオオオオオオオオッ!!??』

 

 

まず調が“α式 百輪廻”を放ち、無数の円形の小型鋸で数体の合成獣を容赦なく切り刻んだかと思えば…

 

 

「これでも喰らってろデースッ!」

 

 

ズババババババババッ…!!!

 

 

切歌は3枚の刃をブーメランのように放つ“切・呪リeッTぉ(キル・ジュリエット)”で、こちらも合成獣達を次々と真っ二つにする…。更に、

 

 

『ガアアアアアアアアアッ!!!』

 

 

「…邪魔をするなら、切り刻むだけ」

 

 

シュイイイイイインッ…!!!

 

 

調は自ら大型の丸い鋸に乗る“非常Σ(シグマ)式 禁月輪”で、縦横無尽に駆け巡りながら眼前の合成獣達を絶命させる一方…

 

 

「ハアアアアアアアアッ!!!」

 

 

切歌は肩部プロテクターに装備されたバーニアの勢いを利用した“災輪・TぃN禍ぁBぇル(さいりん・ティンカーベル)”で、周囲の合成獣達を両断する。

 

 

「相手にならない…」

 

 

「一昨日来やがれデースッ!!」

 

 

そして合流した2人はそれぞれ“裏γ(ガンマ)式 滅多卍切(めったまんじぎり)”と“封伐 PィNo奇ぉ(ふうばつ・ピノキオ)”で、合成獣達の数を一気に減らした。ここまで聞けば、彼女達はただ戦っているように思われるかもしれない。だが、その戦い方には明らかな特徴があった。それは……

 

 

「…本当に“歌いながら”戦ってますね…。それに、凄く上手です…」

 

 

「いや、ていうか完全にプロのレベルじゃん!? 2人共こんな歌上手かったの!?」

 

 

そう…小猫とイッセーの言う通り、調と切歌は歌いながら戦っているのだ。互いに激しく、折り重なるように歌うその曲の名は……“Edge Works of Goddess ZABABA”…。と、ここで、

 

 

「お、おい! そろそろあのイカレ野郎を何とかしてくれ! これじゃジリ貧だ!」

 

 

「…! そうですね、では…」

 

 

ガバッ…!!

 

 

「えっ!? 何で俺持ち上げられてんの!?」

 

 

匙の一言を聞いた小猫は、何故かイッセーを持ち上げ…

 

 

「…ゴー」

 

 

「うおおおおおおおおおおッ!!???」

 

 

戦車(ルーク)の力を存分に使って投げ飛ばしたのだ。その先にいるのは…裕斗である。

 

 

「木場ああああッ!! 譲渡するからなぁぁぁぁッ!!」

 

 

「うわっ!? イ、イッセー君!?」

 

 

『Transfar!』

 

 

ドサッ!!

 

 

「イデッ!?」

 

 

イッセーは倒れ込みながらも何とか“赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)”を発動させ、事前に増幅させていた力を裕斗に譲渡した。

 

 

「…もらった以上使うしかない。“魔剣創造(ソード・バース)”!!」

 

 

裕斗が剣を突き立てた瞬間、地面から無数の魔剣が現れ、その奔流はフリードへ向かっていく。

 

 

「うはッ! これは面白いサーカス芸だねェ!! この腐れ悪魔がアアアアアッ!!!」

 

 

バキィィンッ! バキィィィィンッ…!!!

 

 

「ッ! ダメか…!」

 

 

しかしそれでも聖剣を持つフリードには効かず、破壊されるだけだった。これには裕斗も思わず厳しい表情を浮かべる…。

 

 

「ハッ! じゃあ死ねェ!!」

 

 

「やらせるかよ!」

 

 

「うおっ!?」

 

 

ドサッ!!

 

 

フリードはその勢いで裕斗に迫ろうとするが、ここで匙が右足に巻き付いたままの触手…“ライン”を引っ張ることで彼の体勢を崩した。更に、

 

 

「っ! 何か吸われるっす!」

 

 

「へっ! 俺の黒い龍脈は、お前の力をぶっ倒れるまで吸い続けるんだよ!!」

 

 

違和感を感じ始めたフリードに対し、匙は不敵な笑みを浮かべながら言い放った。

 

 

「木場! とりあえず先にフリードを倒せ! エクスカリバーの方は後にした方がいい!」

 

 

「不本意だけど、そうするよ!!」

 

 

そして裕斗が匙の助言を受け取り、再び攻撃を仕掛けようとした…その時、

 

 

 

 

「ほう、魔剣創造(ソード・バース)か。使い手の技量次第では、無類の力を発揮する神器だな」

 

 

「ッ! 誰だ!?」

 

 

突如そんな声が聞こえてきたかと思うと、戦場と化していた廃墟の陰から、神父の格好をした1人の男が姿を現す…。

 

 

「“バルパー”の爺さん!」

 

 

「ッ! ってことは、こいつが…」

 

 

「…バルパー・ガリレイッ!!!」

 

 

その男──バルパー・ガリレイの姿を見たフリードがそう言うと、イッセーは思わず声を上げ、裕斗は射殺すような憎悪の視線を彼に向けた。すると、

 

 

「お前が例の“ワイパー”って奴デスか!!」

 

 

「“バルパー”だよ、切ちゃん…」

 

 

「! 切歌ちゃん! 調ちゃん!」

 

 

そこへ調と切歌の2人もやってきた。どうやら全ての合成獣を片付けたようである…。

 

 

「あれだけの合成獣(キメラ)を、この短時間で全て倒すか。なるほど、確かに実力は本物のようだな、“桃華の切削者”、そして“深緑の断罪者”…」

 

 

「…! 私達のことを知ってるなら、大人しくしてた方が身のため…」

 

 

「じゃないと即切り刻むデスよ!」

 

 

自らの得物を構えながら言い放つ調と切歌。だが、それに対してバルパーは…

 

 

「お前達の相手は私ではない。お前達の相手は…“あの男”にしてもらう」

 

 

「…? どういうこと…?」

 

 

意味深な笑みを浮かべつつ、そう返したのだ。それを聞いた調は当然疑問を抱くが、バルパーはここでフリードの方に目を向ける…。

 

 

「まだ聖剣の扱いに慣れていないのか、フリード? そんなラインなど、聖剣の因子を使えば簡単に切れるだろう?」

 

 

「へいへい…ホイサと!」

 

 

ズバンッ!!

 

 

「どわっ!?」

 

 

「! 匙!!」

 

 

ラインをあっさり切られた匙が倒れたのを見て、思わず声を上げるイッセー。

 

 

「ヒャッハーッ!!」

 

 

「っ!?」

 

 

そして自由の身となったフリードが早速裕斗に斬り掛かるが……

 

 

「ふっ!!」

 

 

ガキィィンッ!!

 

 

そこへ何者かが乱入し、その凶刃を受け止める。その人物とは…先日協力関係を結んだ聖剣使いの少女──ゼノヴィアだった。その上、

 

 

「はーい♪」

 

 

「! 紫藤イリナさん! 何で…!?」

 

 

続いてもう1人の聖剣使いの少女──紫藤イリナも現れたのだ。これには匙も驚き、咄嗟に尋ねる。

 

 

「連絡をもらったから、駆け付けたわよ♪」

 

 

「…そういう手筈でしたから」

 

 

小猫が自身の携帯を見せながら答える。どうやらイッセーを投げた後に連絡を入れたらしい…。

 

 

「反逆の徒、フリード・セルゼン! バルパ―・ガリレイ! 神の名の下、断罪してくれるッ!!」

 

 

「ハッ! 俺様の前で、その憎ったらしい名前を出してんじゃねえよ! このビッチがッ!!!」

 

 

「はあああああああッ!!」

 

 

「! ホッホーイッ!!」

 

 

フリードとゼノヴィアが鍔(つば)迫り合いを起こす中、裕斗はそこを狙って斬り掛かる。だがフリードはそれをあっさりと跳躍で避け、バルパーのすぐ近くに着地した…。

 

 

「フリード、お前の任務は潜入してきた教会の者を消すことだ。まして、聖剣を持った者が2人も現れては分が悪い。ここは退くぞ」

 

 

「合点承知の助!!」

 

 

「「ッ……!!」」

 

 

すると、バルパーの言葉を聞いたフリードは何かを取り出し……

 

 

「はい! ちゃらばッ!!」

 

 

「「くっ…!!」」

 

 

カッ!!!

 

 

裕斗とゼノヴィアが咄嗟に攻撃を仕掛けるも、その前に閃光弾を駆使して逃走していった…。

 

 

「追うぞ、イリナ!」

 

 

「ええ!」

 

 

「僕も追わせてもらう!」

 

 

「! お、おい、木場ッ!!」

 

 

ゼノヴィアやイリナと共に後を追おうとする裕斗を見て、すぐさま止めようとするイッセー。だが、裕斗はその制止も聞かず、その場から姿を消してしまった…。更に、

 

 

「私達も追うデスよ、調!」

 

 

「うん…」

 

 

「ちょっ!? 切歌ちゃんと調ちゃんまで…!?」

 

 

「…止めましょう、イッセー先輩」

 

 

切歌と調まで動こうとし始めていたのだ。これにはイッセーと小猫もすぐに止めようとする…。と、その時だった…。

 

 

 

 

ガガガガガガガガッ!!!!

 

 

「「っ!!??」」

 

 

「な、何だッ!?」

 

 

突然調と切歌の周りの地面から、十数本の紫色の鎖が出現したのだ。そしてイッセーが驚きの声を上げる中、

 

 

シュルルルルルッ…!!

 

 

「あぅッ…!?」

 

 

「調!! ぐッ…!?」

 

 

その鎖は調と切歌の身体にあっという間に絡み付き、2人を完全に拘束してしまった。

 

 

「何、これ…!?」

 

 

「身体の力が、抜ける、デス…!」

 

 

「調ちゃん!! 切歌ちゃん!! ッ…!!?」

 

 

2人の様子を見たイッセー達は慌てて駆け寄ろうとするが、異変はイッセー達にも起こった…。

 

 

シュウウウウウウッ…!!!

 

 

何処からともなく上空から謎の粘液がイッセー達3人に降り注ぎ…

 

 

「こ、今度は何だよ!?」

 

 

「…動けません…」

 

 

「ッ!? “アイツ”がやったのか!? あんなの見たことないぞ!?」

 

 

イッセー達の身動きも完全に封じてしまった。そして匙が相手の正体を見て驚きを露わにするが…最も反応していたのは彼ではなかった…。

 

 

「どう…して……!?」

 

 

「う、嘘デスよ…。何で…」

 

 

“液晶ディスプレイ”のような光り輝く部位が最大の特徴である2体の姿に、あからさまな動揺を見せる調と切歌。当然であろう。何せそれは…この場に居てはならない存在なのだから…。

 

 

『キュオオオオッ!!』

 

 

「何で“ノイズ”がこんな所にいるデスか!!?」

 

 

「? ノ、“ノイズ”…?」

 

 

切歌の口から飛び出した異形の存在の名称に、全くピンと来ていない様子のイッセー達。と、その時……

 

 

 

 

「ククッ、ついにこの時が来ました…」

 

 

『ッ!!?』

 

 

調と切歌が倒した合成獣達の残骸を踏み越えつつ、1人の男が林の暗闇の中から姿を現した。年はおおよそ30代前半。金色の長い髪とは裏腹に“白衣”を纏っていることから、何処かの研究員のように見える…。

 

 

「すみませんが、ここからは私も参加させてもらいますよ? もっとも、今のあなた方に拒否権はありませんが…」

 

 

「…誰?」

 

 

「しがない“元”研究員ですよ。元、ね…」

 

 

調がやや苦しそうに問い掛けたのに対し、その男は何処か狂気染みた笑みを浮かべながら答えた…。背後に大量の異形の存在──ノイズを率いながら…。と、ここで、

 

 

「お、おい!」

 

 

「…何でしょう?」

 

 

「“何でしょう”じゃねえ!! 誰だあんたは!? フリード達の仲間か!?」

 

 

「先程も言った筈ですよ? 私は“しがない元研究員”です。後者の問いについては…そうですね。確かに協力関係は結んでいますから、あなた方の定義で言えば“仲間”ということになるのでしょう」

 

 

匙とイッセーが敵意を剥き出しにしながら尋ねているにもかかわらず、男は不気味な余裕を崩さずに答え続ける…。すると、

 

 

「ああ、ご心配なく。あなた方には一切用はありません」

 

 

「は…?」

 

 

「…それはどういう意味ですか?」

 

 

「そのままの意味ですよ。あなた方“3人”には用はありません。用があるのは…」

 

 

男はイッセーと小猫の問い掛けに答えつつ、ある人物達の下へ歩み寄っていく。それは…

 

 

「「…!!」」

 

 

「こちらの御二人です」

 

 

鎖で縛られて動けない状態の、調と切歌だった。2人の顔色は男が近付いてくるにつれて、段々と悪くなっていく…。

 

 

「わ、私達に用って、一体どういうことデスかッ!!?」

 

 

「おや、こうして“ノイズ”と共に現れた時点で、私がどのような研究員だったのかは予想できると思うのですが…。まあ、いいでしょう。では、確認の意味を込めて…」

 

 

「…! ダメッ…!」

 

 

そして調がこの上なく焦りの色を見せる中、男はこう口にした…。

 

 

 

 

 

「お久しぶりですね、“被験体836番”、“被験体837番”」

 

 

「「ッ……!!!」」

 

 

「ひ、被験体…?」

 

 

男の口から出た“被験体”という言葉に調と切歌が大きく反応する中、イッセーは意味を全く理解していない様子で呟く。

 

 

「その呼び名を使うなデス…」

 

 

「おや? 何か言いましたか?」

 

 

「ッ! その呼び名を使うなって言ってるデスッ!!!」

 

 

普段からは想像も付かない程の怒りを見せながら、声を荒らげる切歌。これにはイッセー達3人も驚くが、男はそれでも余裕の狂気染みた笑みを崩さない…。

 

 

「いやはや、怖い怖い。やはり環境が変わったとしても、その本質は“あの頃”と何も変わらないという訳ですか」

 

 

「っ…! あなたが本当に“あそこ”の人間だったとしても…私達にはもう関係無い…!」

 

 

「関係無い? いいえ、大いに関係あります。何せ貴女方は…我々が生み出した“究極の存在”なのですから…」

 

 

調が感情を露わにしながら声を上げると、男は意味深な言葉を口にした。

 

 

「おい!! 調ちゃんと切歌ちゃんをどうする気だ!?」

 

 

「? どうする? そんなもの決まっているでしょう? “持ち帰る”んですよ」

 

 

「ッ!!? も、“持ち帰る”…!?」

 

 

「当然でしょう? この御二人は元々、我々の“所有物”なのですから」

 

 

イッセーの問い掛けに対し、男は平然と言い放つ。本当に調と切歌の2人を…“物”として扱うかのように…。すると、

 

 

キィィィィィィィンッ…!!!

 

 

「ッ!? 何デスか、これ…!?」

 

 

「体が…消えて…!?」

 

 

「では、私はこれで。言葉通り、この御二人は持ち帰らせてもらいますよ…?」

 

 

調と切歌の足下に紫色の魔方陣らしきモノが現れたかと思うと、突如として2人の身体が粒子化し始めたのだ。

 

 

「ああ、その拘束は時間が経てば解けますので、御安心を」

 

 

「ふ、ふざけんなッ…!! クソッ!! 何で“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”が反応しねえんだよ!?」

 

 

「無駄ですよ。この子達は私の生み出した特別製でしてね。神器や魔力の発動を無効化します。実際、残りの御二人も身動きが取れていないでしょう?」

 

 

男の言ったように、イッセーや小猫、匙の3人は全く身動きが取れる様子ではなかった。特に小猫に関しては持ち前のパワーで無理矢理解けそうなものだが、その様子も一切無い…。

 

 

「き、切ちゃん…!」

 

 

「! 調…!」

 

 

「ククッ…さあ、帰りますよ? 我々が帰るべき場所へ…」

 

 

そして、調と切歌の身体の粒子化が上半身の所まで達した……その時、

 

 

 

 

 

 

 

「そいつ等の帰る場所は、テメエの所じゃねえ…」

 

 

『ッ…!!!』

 

 

突如として男の背後から、そんな声が聞こえてくる。声の主は“オレンジ色の髪”が最大の特徴の青年…。そう…黒崎一護である…。

 

 

ズバンッ!!!

 

 

「「お兄ちゃん(一兄)…!!」」

 

 

一護は躊躇なく“斬月”で男を真っ二つにすると、すぐさま切歌と調の下へ向かい…

 

 

「ふっ!!」

 

 

ザザァンッ!!

 

 

縛っていた鎖のみを斬り捨て、2人を解放した。そして…

 

 

バッ!!×2

 

 

「ッ…///!?」

 

 

「い、いきなり何してるデスか、一兄ッ////!?」

 

 

「やれ! “ガリィ”!! “ミカ”!!」

 

 

両手でそれぞれ抱き留め、2人が顔を赤くする中でその場を離れながら声を上げたのだ。すると…

 

 

「はいはい、分かってますよ」

 

 

「やっとミカ達の出番だゾ☆」

 

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガッ…!!!!

 

 

周りを取り囲むように待機していたノイズ達が、大量の鋭い氷塊とカーボンロッドによって次々と倒されていく。それを放ったのは…青を基調としたゴスロリ風の容姿をした少女(?)と、赤を基調とした大きな縦ロールの髪型が特徴的な少女(?)だった…。

 

 

「っ! あなた達…」

 

 

「な、何でここに居るデスか…!?」

 

 

「そこにいる男と“マスター”の命令に決まってるでしょう? 好きで“御子様の監視”をする趣味はありませんもの」

 

 

「でも、何だかんだで目を放した隙にこんなことになってたんだゾ☆ これは完全に“失態”って奴だゾ☆」

 

 

「うっせえッ!! 大体誰のせいで監視が中断したと思ってんだ! この“駄燃費人形”ッ!!」

 

 

切歌と調が驚く一方、青を基調とした少女(?)──ガリィ・トゥーマーンと、赤を基調とした少女(?)──ミカ・ジャウカーンはそんなやり取りを交わし始める。と、そこへ、

 

 

「動くなよ! イッセー!! 匙!!」

 

 

「小猫! お前もじっとしてろ!!」

 

 

ザザザザァンッ…!!

 

 

「! 当麻!!」

 

 

「…リクオ先輩…!」

 

 

イッセー達3人の下にはツンツンとした黒髪の青年―――上条当麻と、黒と白の棚引く髪が特徴の青年―――奴良リクオ(夜の姿)が現れ、彼等を拘束していた糸状の物体を一気に斬り裂いた。その手にはそれぞれ愛刀である〝祢々切丸”と…サーベル型の長剣が握られている…。更に、

 

 

「調!! 切歌!!」

 

 

「無事か、お前等!?」

 

 

「! マリア…!!」

 

 

「先輩、それに響さん達も…!」

 

 

「よかった、2人共大丈夫…」

 

 

「という訳ではないようだな…」

 

 

「ああ。響、未来、2人を頼む」

 

 

「「! はい!」」

 

 

そこへマリアやクリス、響、翼、未来も駆け付けてくると、一護は調と切歌を響と未来に託した。もっとも…

 

 

「随分遅い到着ですね~、“ハズレ装者”」

 

 

「! 後で色々聞かせてもらうわよ?」

 

 

「あら~、それは私よりマスターやそこにいる男に聞いた方が良いんじゃないですか~?」

 

 

その間にマリアとガリィが微妙な空気を醸し出したりしていたが…。

 

 

「い、一兄! 私達はまだ…!!」

 

 

「何言ってるのよ。どっちもフラフラじゃない」

 

 

「! 紗矢華さん…皆…!」

 

 

立ち上がろうとする切歌にそう言ったのは、たった今やって来た紗矢華だった。しかもその後ろには、エルザやアカメ達アイエールの学生組もいることに調が気付く…。と、ここで、

 

 

「これはこれは。初めまして、“アイエール”の皆さん」

 

 

『ッ…!!??』

 

 

「もっとも、“皆さん御揃いで”…という訳ではないようですが」

 

 

先程の男が“五体満足の状態”で再び姿を現した…。

 

 

「っ! 嘘ッ!?」

 

 

「どうなってんだよ!? さっき一護が真っ二つにした筈だろ!?」

 

 

「そんな訳ないでしょ? もし本当に生身の体だったら、今頃あの辺りに“真っ赤な血溜り”が出来てる筈だし」

 

 

「い、言ってることが怖いですよ、クロメさん…!(ブルブルブルッ)」

 

 

ルーシィとナナに対するクロメの発言を聞いて、思わずガクガクと身体を震わせるウェンディ。そんな中、

 

 

「分身……その能力(ちから)、やっぱり“神獣鏡(シェンショウジン)”か?」

 

 

「ククッ…ええ、御明察です」

 

 

「っ!? そんな!?」

 

 

「お、おい、何言ってんだよ!? そんな筈ねえだろ!? だってそいつは…!!」

 

 

一護と男のやり取りを聞いた瞬間、響とクリスは驚きを露わにした。当然である。何しろその神獣鏡は……

 

 

「私の神器の能力を…? どうして……」

 

 

他でもない、未来が現在所有している神器のことなのだから…。

 

 

「対“絶唱機甲(シンフォギア)”戦において絶大な効力を発揮し、“絶唱機甲殺し”と称される最凶の存在…“神獣鏡”…。やはり異名に違わぬ素晴らしい力ですね~」

 

 

「気を付けて…この人は…」

 

 

「“あそこ”の元研究員、デス…!」

 

 

「ッ! まさか…!?」

 

 

「“あの組織”の関係者ということかッ…!!」

 

 

調と切歌から男の素性を聞いた瞬間、マリアはあからさまに驚愕し、翼は強い憤りを露わにしながら剣の切っ先を向ける。

 

 

「お、おい、本当に何がどうなってんだ?」

 

 

「俺にもさっぱり分かんねえよ…。なあ、当麻、リクオ」

 

 

「悪い、イッセー。話は後だ」

 

 

「今はそれどころじゃねえからな…」

 

 

「…リクオ先輩?」

 

 

いつになく真剣な口調で当麻とリクオがそう言うと、小猫は普段とは明らかに違う様子を見て、心なしか不安げな表情を浮かべる…。

 

 

「しかし、これは実にありがたい。こうして“装者”の方々全員を連れてきてくださるとは、まさに鴨が葱を背負ってきてくださったようなもの…」

 

 

「ッ! 何意味分からねえこと言ってやがんだ、テメエッ…!!」

 

 

「おや、そのままの意味だと思いますがねぇ…?」

 

 

今にも攻撃を仕掛けそうなクリスに対し、意味深な発言を続ける男。すると…

 

 

「…狙いは響達“装者全員”か?」

 

 

「ええ。むしろ、それ以外に何があるというんですか…?」

 

 

「っ!? 私達、全員…?」

 

 

当麻の問いに対する男の発言に、動揺を見せる響。そこには…普段の彼女からは決して想像できない、“怯え”の色が見て取れた…。

 

 

「何をそんなに驚いているんですか? 私はただ、“自分の物を取り返しに来た”…と言っているだけの話ですよ?」

 

 

「ッ! “自分の物”って…あんたは響達を一体何だと思ってるのよッ!!?」

 

 

ルーシィが激昂しながら尋ねると、男は笑みを崩すことなく答えた…。

 

 

「何度も言ってるじゃありませんか…。その方々は“我々が生み出した作品”であり…今は“私の所有物”に他なりません」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、この場に居た殆どの者達が戦慄する。男は一切ふざけてなどいない……本心でそう述べていたのだ。それ故に…男はあまりにも危険だった…。

 

 

「では、この場でまとめて持ち帰らせていただきましょう…。やりたいことが沢山ありますから…」

 

 

『キュオオオオオッ!!』

 

 

『ッ…!!!!』

 

 

そして男が再びノイズを出現させ、それを見た響やイッセー達も警戒感を露わにしながら構えようとした…その時だった……。

 

 

 

 

 

 

「黙れ…」

 

 

『…(ゾクッ!!!!)』

 

 

突如その一言が響き渡った瞬間、一触即発だった雰囲気は一気に変化する。今まで反応を見せなかったガリィやミカでさえ、思わず眉を潜ませる程の“殺気”を放ったのは……一護だった…。

 

 

「響達がお前等の作品だと…? ふざけるなよ…〝あの計画”がどれだけ血を流させたと思ってやがる…。あの腐り切った場所で、コイツ等がどれだけ苦しんだと思ってやがる…」

 

 

一護がそう言いながら一歩ずつ前へ出ていくと、それに合わせて周囲の地面が細かく罅(ひび)割れる…。

 

 

「俺は何がなんでもコイツ等を護らなきゃなんねえんだ。テメエには渡せねえよ…死んでもな…」

 

 

「一護さん…」

 

 

一護のそんな言葉を聞き、何故か表情に陰りを見せる響。それは翼やマリアなど、他の“七星の歌姫”達も同様だった。すると、それに対し…

 

 

「クククククッ、勇ましいですね~! 流石は計画を潰した中心人物という訳ですか。いやはや、まったく…」

 

 

男は今まで浮かべていた笑みを捨て……

 

 

 

 

 

「ふざけたこと抜かしてんじゃねえよ、糞餓鬼(クソガキ)が…」

 

 

冷徹な形相を浮かべながら、そう口にしたのだ。口調もこれまでの敬語口調から一転して、非常に粗野なモノへと変化している…。

 

 

スッ…!

 

 

「今この場で言っておく…。コイツ等には指1本触れさせねえ…。テメエは俺が、確実に“潰す”…」

 

 

「ハッ、やれるもんならやってみろ。その小娘共は、必ず俺が手に入れる…。テメエをぶち殺した後でな…」

 

 

そして一護が右手を突き出して構える中…それが最後の掛け合いとなった…。

 

 

「破道ノ八十八、“飛竜撃賊震天雷砲”…」

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!!!!!

 

 

一護の右手から放たれた巨大な光線は、男と周囲にいたノイズ達をあっという間に飲み込み、大爆発を起こす。土煙が消えると、その場は最早……ただの更地と化していた…。

 

 

「や、やったのか…?」

 

 

「やってねえよ。あれもさっき一護がぶった斬った奴と同じ、“分身”だ。本物はどっかで今頃、高みの見物を決め込んでるだろうな」

 

 

「お、おい、目の前の景色には誰も触れないのかよ…?」

 

 

「…同じような景色を前にも見ていますから」

 

 

イッセーの問い掛けにリクオが答える中、匙は小猫の発言を聞いて完全に言葉を失った。ちなみに小猫の言う“景色”が、先日のライザー・フェニックスの婚約パーティーの際のモノである事は……言うまでもない…。と、そこへ、

 

 

「どうやら既に終わったようだな…」

 

 

「み、皆さん大丈夫ですか!?」

 

 

「あら、マスター? こんな時間にようやく来るなんて、横綱出勤もいい所ですわね♪」

 

 

「ガリィ、お前には後で話がある」

 

 

「あら、校舎裏で愛の告白ですか~?」

 

 

「ただの説教だ。それ以上でもそれ以下でもない」

 

 

遅れて3人の人物がやって来た。ガリィとミカにとっての“主人”というべき存在の少女──キャロル・マールス・ディーンハイムと、彼女によく似た少女──エルフナイン、そして……

 

 

「お前も一緒に来たのカ、変態博士?」

 

 

「おや、久しぶりに会って早々“変態博士”とは、酷い言われ様ですねぇ」

 

 

「事実なんだからどうしようもないゾ☆」

 

 

言わずと知れた変態博士──ドクター・ウェルである…。

 

 

「多少派手に暴れたようだな」

 

 

「ああ、一護が少しキレてな…。説明した方がいいか?」

 

 

「必要ない。おおよその見当は付くからな」

 

 

当麻が事の詳細を説明しようとするが、キャロルはそう返しつつ一護や響達の方に目を向ける。

 

 

キィィィィンッ…!!

 

 

「! お兄ちゃん」

 

 

「ああ…」

 

 

ここで突如現れた魔方陣に気付く芽亜とリクオ。しかし警戒をする様子は全く無かった。何しろそれは…彼等のよく知る人物達のモノだったからである…。

 

 

「! 当麻、イッセー…!!」

 

 

「よぉ、遅かったな、リアス」

 

 

「あらあら、どうやら終わってしまったようですわね」

 

 

まず最初に姿を現したのは、オカルト研究部の部長であるリアスと、副部長の朱乃…。

 

 

「これは…」

 

 

「! ソーナ、椿姫」

 

 

「あなた達も来たのね?」

 

 

「ええ、今回は私達にも関係があるようですから…」

 

 

次に姿を現したのは、生徒会副会長である少女──神羅椿姫と、生徒会長を務める少女──ソーナ・シトリーである。ちなみにソーナがエルザとミラジェーンにそう言いながら“或る人物”に目を向けると、その人物は“蛇に睨まれた蛙”のようになってしまったのだが…まあ、気にしなくてもいいだろう…。

 

 

「裕斗君の姿が見えませんが、やはり…」

 

 

「はぐれ神父を追っていったと考えた方がよさそうね、あの聖剣使いの2人と一緒に…。彼女達と一緒なら簡単に遅れも取らないでしょう。問題は…むしろこっちね…」

 

 

朱乃の言わんとしている事を先に言ったリアスは……

 

 

「何があったのか話してもらうわよ? 当麻、イッセー」

 

 

「! は、はい…」

 

 

その問い掛けに対し、やや緊張した様子のイッセー。しかし、当麻達は…

 

 

【当麻】

 

 

【ああ…ここまで来たら話すしかねえだろ。響達には辛いだろうが…な…】

 

 

【…話は俺がする】

 

 

【その方が良いだろうな。何しろお前は…“あの一件”の一番の当事者なんだからよ…】

 

 

何か覚悟を決めた表情を浮かべつつ、頭の中でそんな会話をしている。そして、そんな彼等の目は……今までとは様子が違う、響達7人の方に向けられていた…。



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光ある所に陰もあり


丁度1ヶ月ぶりの投稿になります。


前半は完全に説明回っぽいですが、後半は“あの2人”が登場します。


では、本編をどうぞ。


駆け付けてきたリアスやソーナ達の提案で、ひとまず戦闘の舞台となった廃墟の中へ入った当麻達…。そして現在…

 

 

「このくらいやれば十分ね…。ソーナ、そちらはもう終わったかしら?」

 

 

「ええ、見ての通りです」

 

 

いつもと変わり無く凛とした佇(たたず)まいのリアスとソーナ。しかし、その足元には…

 

 

「ぐぉぉぉ……お、俺の尻は死ん、だ……(ガクガクッ!)」

 

 

「……(チーーンッ)」

 

 

腰砕けの状態で突っ伏しているイッセーと…最早魂が抜け出ている状態の匙の姿があった。実は先程のような戦闘の状況に至った経緯をイッセーや匙、小猫が話すと、勝手な行動をした罰として、イッセーと匙が“尻叩き千回の刑”に服することになったのである。ちなみに小猫に関しては、リクオやヤミの説得もあり、説教のみになった…。と、そこへ、

 

 

「悪い、遅くなった」

 

 

「! 平気よ。それより、調と切歌は?」

 

 

「大丈夫だ。身体に変な負荷を掛けられただけで、怪我は一切してねえ。すぐに良くなる筈だ…。そうだろ、ウェル?」

 

 

「ええ。“絶唱機甲(シンフォギア)”の発動にも、何ら影響はありませんよ」

 

 

調や切歌、ウェンディ、エルフナインと共に戻ってきた一護とウェルは、尋ねてきたリアスに2人の状態を話した。

 

 

「ありがとう、ウェンディ、エルフナイン…」

 

 

「お蔭で大分良くなったデース…」

 

 

「い、いえ、ボクは何も…」

 

 

「御二人共、まだ安静にしてた方がいいんじゃ…」

 

 

「ううん、もう平気…」

 

 

「おちおち寝てる訳にもいかないデスよ…」

 

 

心配そうな様子のエルフナインとウェンディに対し、そう返す調と切歌。しかしその表情からは、肉体的にも精神的にも疲労していることが窺える…。

 

 

「さて…大まかな事はイッセー達から聞いたわ。思わぬ乱入者が来たのも含めてね。それで当麻達に話を聞こうとしたら、“一護が話した方がいい”って言われたのよ」

 

 

「…そうか」

 

 

リアスがそう言うと、一護は静かに頷きながら…響達の方に目を向けた。すると、

 

 

「大丈夫です、一護さん。私達は、大丈夫ですから…」

 

 

7人を代表するように、笑みを浮かべながら答える響。だがその笑みにいつもの明るさはなく…むしろ何処か儚いモノだった。更に…

 

 

「どうやら私達が聞くべき話ではないようですね…。でしたら、私達はこれで…」

 

 

「いや、あんた達も聞いていってくれ。俺達も駒王学園に通ってる以上、話した方が筋も通ってるだろうしな」

 

 

「…分かりました」

 

 

一護の発言を聞き、椿姫と共にやや端の方で立つことにしたソーナ。いつの間にか尻の心配をしていたイッセーや匙も若干回復しており、何処か緊迫した面持ちで一護が話し始めるのを待っている…。もっとも、相変わらず擦(さす)ったりはしているが…。

 

 

「あんた等も何となく想像できてると思うが、その乱入してきた奴の狙いは調と切歌…いや、響や翼、クリス、未来、マリアも含めた7人だ」

 

 

「…! どうして響達が狙われているの? その乱入してきた男は一体何者?」

 

 

「その男は自らを“元研究員”と名乗ったそうですわね? それに…御二人のことを“被験体”と…」

 

 

リアスが一護の話を聞いて問い掛ける中、朱乃の口から出た“被験体”という言葉に響達7人は大きく反応する。中でも男から直接その単語を聞いた調と切歌は、反応が特に顕著だった…。すると、

 

 

「“絶唱計画”…こいつに聞き覚えは?」

 

 

「? いいえ…あなたは、ソーナ?」

 

 

「いえ、私も初めて聞きました。ですが…先程の“被験体”という言葉と合わせて考えると、聞き心地の良いモノでは無いようですね…」

 

 

ソーナが先程の単語と組み合わせて推測すると、それを聞いた一護はより一層険しい表情を浮かべつつ…こう言い放った…。

 

 

「先に言っておく。響達はその計画の…数少ない“生き残り”だ」

 

 

『ッ!!?』

 

 

「い、生き残りって…どういうことだよ!?」

 

 

“生き残り”という単語にオカルト研究部と生徒会の面々が驚きを露わにする中、最もその反応が大きかったのはやはりイッセーだった。何しろその事実は…現在行方の分からない同じ眷属の少年と酷似しているのだから…。

 

 

「神器を利用したがるのは、何も三大勢力みたいな神話体系に属する連中だけじゃねえ…。そいつを宿す人間の中にも、その力を欲する奴等はいる。そして、そんな連中が仕出かした中でも最悪だったのが…“絶唱計画”だ…」

 

 

「部長さん達が知らないのも当然だと思います。この計画のことを知ってるのは、僕達を含めても本当に僅かですから…」

 

 

「…! 一体どのような計画だったのですか?」

 

 

一護とリクオの話を聞いた朱乃が問い掛けると、それに答えたのは当麻だった…。

 

 

「一言で言うなら、“歌”を使った神器の開発だ」

 

 

「…“歌”を使った神器…?」

 

 

「歌は何も、ただ声に乗せて伝えるだけのモノじゃねえ。“詠唱”みたいに力の発動の鍵の役割を果たすことだってある…。教会の“聖歌”なんかも、多分似たような効果を持ってる筈だ」

 

 

「確かに、冥界でも歌には魔術的な要素があると考えられているわ。実際に研究も行われているし、人間界でもその発想が起きるのは自然な話ね…」

 

 

小猫が疑問を感じている中、一護の話に納得した様子のリアス。すると、

 

 

「っ! じゃあ、響達の神器は…」

 

 

「ああ…響達の神器は、その計画で産み出された人工的なモノだ…。ふざけた実験によって、な…」

 

 

リアスが気付いた瞬間、一護は憤りの籠った表情を浮かべながら口にした。彼の口から飛び出した“実験”という単語に、再び大きく反応する響達。何かを思い出したのか、普段から凛としている翼やマリア、更には強気でいるクリスでさえ、僅かに体を震わせているように見える…。

 

 

「響達の“絶唱機甲(シンフォギア)”は、歌の力を極限まで利用した神器です。魔王や神が相手でも裕に渡り合えるでしょうし、“神滅具(ロンギヌス)”クラスと言っても過言じゃないと思います」

 

 

「っ!!? 神滅具クラスの人工神器…」

 

 

「ですが、それだけ強力な神器であれば当然…」

 

 

当麻の言葉を聞いた椿姫と朱乃は、驚きながらも直ぐに察した。それは…

 

 

「ああ、その分代償も半端なモノじゃなかった。適合する可能性が聖剣と同等かそれ以下なのに加えて、その代償の内容があまりにも酷えからな」

 

 

「ッ…! 一体何が起こるっていうの…?」

 

 

リアスがそう尋ねると、当麻は続けて答える…。

 

 

「“炭と化して消滅する”…。それが適合しなかった人間に待ってる末路だ」

 

 

『ッ!!!???』

 

 

それを聞いた瞬間、オカルト研究部と生徒会の面々は一様に言葉を失った…。

 

 

「す、炭になって消滅する? そんなことが有り得るのかよ…?」

 

 

「…肉体に掛かる負担が尋常じゃねえんだ。適合しなかった時は神器自体が肉体を蝕んじまう。最終的にはその負担が耐久限界を完全にオーバーして…身体が炭化し始めちまうんだよ」

 

 

ここで匙が信じられないといった様子で尋ねてきたのに対し、厳しい表情のまま答える一護。

 

 

「実験のために無理矢理連れて来られたのは、響達を含め全員未成年の女子だ。人数は…およそ1000人」

 

 

「ッ!!? せ、千人ッ!!??」

 

 

「…では、その内適合した人数は…? 」

 

 

当麻の口から出た被験者の数にイッセーが驚く中、ソーナは肝心な部分を尋ねる。その問いに答えたのは…やはり一護だった…。

 

 

「響達を含めて…“9人”だけだ」

 

 

『ッ…!!』

 

 

「しかもそいつは、あくまで“適合した人数”だ。この世界の絶唱機甲の所有者は…響達7人以外、もう誰1人いない筈だ」

 

 

絶句する他無いリアスとソーナ達。当然である。すなわちそれは、9人以外の全ての少女達が“炭と化して消滅”し、更に適合した筈の2人も何らかの理由で“この世にいない”という事になるのだから…。もっとも、

 

 

「「…………」」

 

 

その話の最中、“2人の歌姫”がとりわけ辛そうな表情を浮かべていることに気付いていたのは…当麻達を始めとする殆どのアイエールの面々だけだった…。

 

 

「半端な気持ちで聞いたつもりはなかったのだけど…足りてなかったわね。ごめんなさい…」

 

 

「別に構わねえよ。こいつ等が襲われた以上、話さなきゃなんねえことくらいアタシにも分かるからな…」

 

 

「いつかは話す時が来ると思ってました。でも、私達もこんな事が起こるなんて、思ってもみなかったから…」

 

 

謝るリアスに対し、何処か自嘲気味に返すクリスと、僅かに怯えたような様子の未来…。と、ここで、

 

 

「…1つ聞いてもいいですか?」

 

 

「! どうしたの、小猫?」

 

 

「…先輩逹は、どうやってその計画の事を知ったんですか?」

 

 

「そうね。よく考えてみたら、あなた逹が出会った経緯も一切聞いてないわ…。仮に“アイエール”として既に活動していたとしても、何かしら切っ掛けがあったんじゃないかしら?」

 

 

リクオが応答する中、小猫は気になっていた疑問をぶつけ始め、リアスも補足するように尋ねた。すると、

 

 

「切っ掛けも何もねえよ。何しろその計画を潰したのは……ここにいる一護とキャロル逹だったんだからな」

 

 

「…はあああああっ!!??」

 

 

当麻の一言を聞いた瞬間、一番の驚きを見せたイッセーを含め、オカルト研究部と生徒会の面々は一様に驚愕した…。

 

 

「本当なの、一護…?」

 

 

「…偶然だったんだよ。“ちょっとした依頼”を受けて或る場所に来ていた俺は、そこで研究していた連中に追われてる響を見つけ…計画の存在と、未来逹6人がまだ囚われてる事を知った…。だから響やその頃から知り合いだったキャロル逹と一緒に、研究が行われてた場所を潰して…何とか未来逹のことも救い出すことが出来たんだ」

 

 

リアスの問い掛けに対し、厳しい表情と複雑な笑みを織り混ぜながら話す一護…。

 

 

「あの時は冗談抜きで大変だったゾ」

 

 

「ええ。どっかの“ハズレ装者”も含めて、全員あんな面倒な状態になってましたし」

 

 

「…そうね…否定はしないわ」

 

 

「色々言い返したいデスけど…」

 

 

「ダメだよ、切ちゃん。ミカ逹に助けてもらったのは事実なんだから…」

 

 

ミカとガリィの発言に対し、マリアと切歌、調の3人は複雑な表情を浮かべる…。すると、それを聞いて…

 

 

「まぁ、助けられたのは響やキャロル逹のお蔭だ。俺は大したことはして…」

 

 

「違うッ!!!」

 

 

『ッ…!!?』

 

 

一護の言葉を遮ったのは…まさに今名前の挙がった響だった。声を荒げながら言い放つ彼女の様子に、リアスやソーナ達は思わず目を向ける…。

 

 

「私や皆を助けたのは、一護さんとキャロルちゃん逹だよ!! もし一護さんが居なかったら、私達はあのまま…」

 

 

「立花」

 

 

「! 翼さん…」

 

 

「響…」

 

 

「っ! 未来…」

 

 

響が今にも感情を溢れ出しそうな勢いで何か言おうとするが、それを翼は肩に手を乗せることで…未来は声を掛けるだけで留まらせた。その際、一護は視線で翼と未来に感謝の意を伝える…。

 

 

「とにかくだ。それで響達は回復するまで俺と一緒に居るって話になったんだが…その後すぐにアイエールに入って協力するって言い出してな。それで気が付けば…もう4年近く経っちまった…」

 

 

「…それがあなた逹の過去、という訳ね。ありがとう、話してくれて…」

 

 

そして一護が話を終えた所で、リアスはそんな言葉を掛けると…

 

 

「響達を狙っている男は、その計画の関係者…と考えていいのね?」

 

 

「ああ、間違いないだろうな。何せ…」

 

 

「その人は…私の神器の能力を使ってました…」

 

 

「っ! 神器の能力を…?」

 

 

当麻と未来の話を聞いて、思わず耳を疑う朱乃。先程の絶唱機甲の話を踏まえれば、その反応も当然と言えるだろう…。

 

 

「“分身”…そいつが未来の神器、“神獣鏡(シェンショウジン)”の能力の1つだ。俺がやったのは能力で作られた幻…。本物はどっかで今も響達を手に入れる方法を考えてるだろうな」

 

 

「っ!? じゃあ、ずっと本物が出てこないかもしれないじゃねえか!! そんなのどうしようも…!」

 

 

一護の発言を受け、イッセーは最悪の可能性を考えた。しかし…

 

 

「それは無いと思うよ。あの人の一護に対する敵対心は本物だった…。多分今度は直接来るだろうね」

 

 

「ああ。それにもし向こうが姿を現さねえつもりなら…その時は、俺が探し出して直接叩き潰す…。何処に居ようともな…」

 

 

リクオの後に続いて一護がそう言うと、イッセーを始めとするアイエール以外の面々は息を呑んだ。その言葉に含まれた…明確な覇気を感じて…。

 

 

「とにかくリアス逹は、はぐれ神父と堕天使逹の相手に専念してくれ。あのイカれた元研究員の相手は俺達がする。“ノイズ”っていう面倒な奴等の相手もしないとだからな」

 

 

「! そうだよ! あいつ等は一体何なんだよ!? あんなの見たことねえぞ!?」

 

 

ここで当麻の発言の中に出てきた“ノイズ”という存在に関して、匙が説明を求めた。

 

 

「あれは絶唱計画の最中に生まれた“副産物”だ」

 

 

「? 計画の副産物?」

 

 

「…その男が話した通り、絶唱機甲(シンフォギア)に適合しなかった人間は炭化して消滅する。だが計画に参加していた者達は、この代償を逆に利用しようと考えた。その結果生まれたのが…」

 

 

「皆さんが遭遇した、“ノイズ”という存在です」

 

 

一護の口から出た単語にリアスが疑問を感じていると、キャロルとエルフナインが説明に加わってきた。

 

 

「利用ということは、まさか…」

 

 

「ああ、奴等の能力は“炭化による対消滅”…。つまり、触れたモノを自ら諸共消滅させるというものだ」

 

 

「え……ええええええええっ!!??」

 

 

何かを予想していたソーナに対してキャロルが言うと、それを聞いたイッセーは驚愕した。もっとも、それは共に遭遇していた小猫と匙も同じなのだが…。

 

 

「いやいやいや!? じゃあ、俺達も炭になって消えてたかもしれないのかよ!?」

 

 

「うん…。ノイズは特殊な力…悪魔の持つ魔力や、神側に仕える人達の持つ聖なる力も削ぎ落とすことが出来るんだよ」

 

 

「つっても、削ぎ落とせる力の量にも限界がある。要するに、持ってる力の量が多ければ多い程、ノイズに触れられても炭化しねえって訳だ。まあ、普通の人間なら一瞬触れただけで消滅するんだけどな」

 

 

「あー…限りなく魔力の無い悪魔がここに居んだけど、その場合は…?」

 

 

匙に対してリクオと当麻がそう説明すると、ここでイッセーは恐る恐る尋ねた。その結果、彼に掛けられたのは…

 

 

「…よかったな、触れられなくて」

 

 

「ッ……(ブルブルブルブルッ!!!)」

 

 

目を反らした当麻の意味深な言葉だった。これにはイッセーも尋常ではない悪寒を感じたのか、これでもかと体をガクガク震わせている…。

 

 

「ノイズの方も僕達が片付けます…。いいですよね、部長さん?」

 

 

「ええ、お願いするわ。ごめんなさい、あなた逹にばかり任せることになってしまって…」

 

 

「気にする必要なんて無えよ。俺達だってオカルト研究部の一員だ。それにそいつ等は…俺達が倒さなきゃいけねえ敵だからな…。そうだろ、一護?」

 

 

「…ああ」

 

 

当麻が確めるように尋ねると、一護は真剣な表情を崩すことなく頷いた…。と、ここで、

 

 

「ですが、それだけの者達が向こうに付いているとなると、やはり裕斗君逹だけでは…」

 

 

「! そ、そうですよ部長!! ここは俺達も捜しに…!!」

 

 

朱乃の心配そうな言葉を聞いて、イッセーが裕斗逹3人の捜索を提案しようとした。確かに聖剣を複数所持しているはぐれ神父と堕天使幹部にだけでなく、“ノイズ”という奇怪な敵を操る者まで加わっているのだ。状況が厳しいことは、悪魔としての経験の浅いイッセーでも十分想像が付く…。すると、

 

 

「キャロル」

 

 

「分かっている…。ガリィ、ミカ、お前逹も“向こう”に合流して、一緒に奴等を捜索しろ」

 

 

「あら、私達もですかぁ?」

 

 

「探すのは“あの2人”だけで十分だと思うゾ?」

 

 

一護の言わんとしていることを察したキャロルが、少々面倒臭がりながらもガリィとミカに命令を下したのだ。

 

 

「魔剣使いはともかく、あの祓魔師(エクソシスト)の聖剣が向こうの手に渡ると後が面倒だ。全員探し出す必要はない。最悪1人連れ帰るだけでも構わん」

 

 

「はいはい、分かりましたよ。まったく、人使いの荒いマスターなこと…」

 

 

「違うゾ、ガリィ。マスターは単に一護の言うことなら何でも聞いてあげちゃうタイプなだけだゾ☆」

 

 

キャロルの愛想の無い命令にガリィが愚痴を溢す中、ミカはノー天気な口調でそんな事を口にしたのだ。それを聞いて…

 

 

「ッ////! いいからさっさと行けッ///!!」

 

 

「あ、マスターが怒ったゾ」

 

 

「あんたが怒らせたんでしょうが…。とにかく行くわよ」

 

 

キャロルが憤りと羞恥心で顔を真っ赤にしながら怒鳴ると、ミカとガリィは懐から赤い水晶のようなモノを取り出し、自らの足元に落とす。そして…

 

 

キィィィンッ…!!

 

 

「っ!? き、消えた!?」

 

 

赤い魔方陣のようなモノが現れた瞬間、2人はその場から姿を消した。一瞬の出来事に、驚きを露わにする匙…。

 

 

「つー訳だ。あいつ等の捜索はガリィ逹がやる。下手に動くのは色々とマズいからな…。ここは“自動人形(オートスコアラー)”の出番だ」

 

 

「っ! やはりそうでしたか。彼女達が…」

 

 

当麻の言葉を聞いた椿姫が思わずそう呟くと、ここで…

 

 

「お、おい、何だよ、“自動人形(オートスコアラー)”って?」

 

 

「! そういえば、イッセー君にはまだガリィ達のことを説明してなかったね…」

 

 

「? ガリィちゃん達のこと?」

 

 

イッセーが“自動人形”という単語に関して、そんな問い掛けをしてきたのだ。するとリクオがそう口にする中、説明をかって出たのは朱乃だった…。

 

 

「“自動人形”というのは、“終焉の錬金術師”…つまりキャロルちゃんの造り出した、究極の“自立型戦闘機械人形”のことですわ」

 

 

「……は……?」

 

 

朱乃の口から飛び出した事実に、思考を停止させてしまうイッセー。その要因は言うまでもなく…

 

 

「はあっ!? に、人形ッ!!??」

 

 

“ガリィ逹が人形である”という事実である。

 

 

「いやいやいや!? どう考えても人形じゃないっすよ!? だって…」

 

 

「どう見ても人にしか見えなかったか? ま、そりゃそうだろうな。何しろあいつ等は“人格”を持ってんだから」

 

 

「ッ!? じ、人格を持ってる!?」

 

 

信じられないといった様子のイッセーに対し、そう言い放つ当麻…。

 

 

「オ、自動人形(オートスコアラー)には、キャロルの精神構造の一部をベースとした性格が組み込まれているんです…」

 

 

「もっとも何処ぞの製作した張本人は、起動前のキメキメなポーズを取る彼女達を見て凹んでたようですがね~。いやいや、キャロルちゃんカワウィウィ…」

 

 

「殺すぞ?」

 

 

「はい、自重しまーす」

 

 

更にエルフナインが補足を加えていると、ここでウェルは神経を逆撫でするような発言を放った。キャロルが殺気を込めた言葉を向けても、何処吹く風といった様子である…。

 

 

「け、けどよ、探してる最中にフリードやコカビエルと鉢合わせしたらどうすんだよ? 相手は聖剣を何本も持ってる奴と、堕天使の幹部だぞ? いくらなんでもヤバいんじゃ…」

 

 

「それなら心配しなくてもいいと思うよ? だよね、お姉ちゃん」

 

 

「ああ…ガリィ逹であれば、コカビエル“程度”に遅れは取らない」

 

 

匙の問い掛けに対するクロメとアカメの一言を聞いた瞬間…オカルト研究部と生徒会の面々は硬直した…。

 

 

「あ、あのー…ちなみにガリィちゃん達の強さって、ぶっちゃけどのくらい…?」

 

 

「…あいつ等は響逹と互角か、それ以上の力を持ってる。分かりやすく言えば、“魔王クラス”だな」

 

 

「っ!!?? そそ、そうか! ハハッ…!」

 

 

自身の質問に対する一護の返答を聞いて、若干壊れた様子のイッセー…。

 

 

(…一体何人魔王様クラスの強い人達がいるんですか…)

 

 

(これは本当に冥界を滅ぼせますわね…)

 

 

小猫と朱乃も思わず心の中でそう呟く。まあ、何しろ魔王以上の実力者の数が、ここにいるメンバーだけで既に二桁に達しているのだ。魔王の存在が霞むのも、仕方の無いことである…。

 

 

「それにあのイカレ神父が相手なら、尚更問題無えよ。むしろ“あいつ”と当たったら、あのイカレ神父にとっては最悪だろうしな」

 

 

「? どういうこと…?」

 

 

その意味深な発言にリアスが疑問を感じていると、当麻は続けて口にした…。

 

 

「いるんだよ。聖剣…いや、剣を使う奴にとって“最悪の天敵”がな…」

 

 

 

☆☆

 

 

 

時を少し遡り、駒王町内の外れにある森林地帯の一帯に、巨大な結界が張られていた…。

 

 

ドガガガガガガガアアアアアアアンッ…!!!

 

 

その上、結界内では巨大な光の槍が次々と降り注ぎ、あちこちで轟音が響き渡っている。そんな中…

 

 

ズガアアアアアアアアアアアアアンッ!!!

 

 

「きゃああああああああッ!!!」

 

 

1人の少女が巨大な光の槍の攻撃に晒され、傷を負いながら吹き飛ばされていた。その少女とは…フリードとバルパーを追っていた聖剣使いの1人――紫藤イリナである…。と、その時、

 

 

「ヒャハッ! 見ぃつけたってか☆」

 

 

「ッ!! はあッ!!」

 

 

シュンッ!!

 

 

背後から聞こえてきた声に咄嗟に反応し、イリナは手刀を繰り出すが、あっさりと避けられる。その声の主は…

 

 

「ハッハ~ン…逃げたはいいが、御仲間さんと逸(はぐ)れちまったっつー訳~? 可愛い娘ちゃ~ん…」

 

 

彼女が追っていた人物の1人であるはぐれ神父―――フリード・セルゼンだった…。

 

 

「はあああッ!!」

 

 

ビュオッ!!

 

 

イリナはすぐさま左腕に紐のように結わえられていた“擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)”を、鞭のようにして攻撃するが…

 

 

「ヒヒッ!」

 

 

シュンッ!!

 

 

「っ!?」

 

 

またしてもフリードはその攻撃を目にも止まらぬ速さで避け……

 

 

ズバンッ!!

 

 

「きゃああああっ!!?」

 

 

そのままの勢いで瞬時にイリナの身体を斬り裂いた。

 

 

「“擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)”ちゃ~ん…! そいつも欲しかったんすよね~…!!」

 

 

シュンッ!!

 

 

「ッ!?!?」

 

 

ザザザザザザザザザザザザザァンッ…!!!

 

 

「きゃああああああああああああああああッ!?!?!?」

 

 

フリードはそのまま容赦無くイリナの身体を斬り裂き続ける。ボンテージのような教会の戦闘服は見る見るうちに破かれていき、彼女の肌が次第に露わになっていく…。そして…

 

 

「うぅ…!」

 

 

シュンッ!!

 

 

「ヒャハッ!!」

 

 

ドガッ!!

 

 

「かはっ…!?!?」

 

 

完全に怯んで動けなくなったイリナを見たフリードは、彼女の首を思い切り掴み、そのまま近くの木の幹に叩き付けた…。

 

 

「は、放してよ…! この背信者ッ…!!」

 

 

「さぁて…どうしやすかねぇ…?」

 

 

苦しげに言い放つイリナに対し、顔をこれでもかと近付けながら口にするフリード。と、その時だった…。

 

 

「その辺にしておけ」

 

 

「……!」

 

 

上空からの声を聞いたフリードが即座に振り向くと、そこには十枚の黒い翼を広げて悠然と佇む、1人の男の姿があった…。

 

 

「雑魚でも使い道はあるからな…クククッ…」

 

 

「おぉ~、この上なく恐ろしいっすね~。流石は“コカビエル”の旦那~」

 

 

そう、この男こそ聖剣を巡る一件の首謀者──コカビエルである。と、ここで、

 

 

「ッ! コ、コカビエ、ル…!!」

 

 

「…! 鬱陶しい…。黙らせろ、フリード」

 

 

「はいはいさ~! つー訳で、さっさと御寝んねしちまいな。可愛い娘、ちゃんッ!」

 

 

ドゴッ…!!

 

 

「うっ…!!」

 

 

忌々しげに睨み付けてくるイリナを見たコカビエルは、うんざりとした様子でフリードに命令を下す。そしてフリードはそんな一言と共にイリナの腹部に拳を叩き込み、彼女の意識を奪った…。

 

 

「ほぉほぉ、こいつが“擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)”ちゃんですか~。これで俺っちの持つ聖剣は全部で4本! この世で一番聖剣を持ってるのは、確実に俺っちですな~…」

 

 

フリードは気を失っているイリナから“擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)”を奪い取り、元の剣の状態にして眺め始める。

 

 

「で、このクソビッチちゃんは一体どうすんですかい、コカビエルの旦那~?」

 

 

「悪魔共を誘き出す餌にする。それくらいの価値はあるだろう…。もっとも、そのためにはもう少し“派手な演出”をする必要があるな…」

 

 

「! オォ~、やっぱ旦那は最高だわ。その鬼畜っぷりには俺っちもゾクゾクしちまうぜ…。そんじゃあ…」

 

 

フリードはコカビエルの言葉の意味を理解すると、手に入れたばかりの擬態の聖剣を鞭のような形に変化させた。その目的は…

 

 

「御寝んね中のクソビッチちゃんに、お仕置きといきましょうかね~…」

 

 

気絶しているイリナを更に痛め付けるというものだった。この日一番の狂気に満ちた笑みを浮かべつつ、イリナの前に立つフリード。そして…

 

 

「さぁさぁ、御目覚めの甲高い悲鳴をぜひとも聞かせてちょ…」

 

 

イリナに向かって擬態の聖剣が振り下ろそうとした…次の瞬間、

 

 

「ッ!!」

 

 

ズガガガガガガガッ…!!!!

 

 

フリードは自身に向かって何かが飛来してくると感じ、直感的にその場を跳躍で離れると…そこへ無数の“銭”が降り注いだ…。

 

 

「アァ?」

 

 

思わぬ飛来物の正体に、間抜けな声を出すフリード。すると…

 

 

「“派手”という概念を履き違えているな…。お前逹には“地味”の方が似合いだ…」

 

 

「貴女は相変わらずその2つに拘(こだわ)りますわね? そんなことより、早く目的を達しましょう…」

 

 

そんなやり取りと共に、2人の女性(?)が姿を現した。1人は黄色を基調とした格好の、ディーラー風の女性(?)。もう1人は緑を基調とした格好の、何処か執事を連想させるような女性(?)である…。

 

 

「おいおいおい、こんな時に新たなクソビッチ共の登場ですか~? こっちは折角お楽しみのお仕置タイムをエンジョイしようとしてたっつうのに……マジでうぜえっす」

 

 

「あら、随分言葉遣いに問題がありますわね? これは少し“教育”の必要があるかしら…」

 

 

チャキッ…!

 

 

「…アァ?」

 

 

苛立ちを露わにするフリードに対し、執事風の女性(?)──ファラ・スユーフは何処からともなく1本の大型の西洋剣を取り出し、悠然と構え始めた。そんな中、

 

 

「あぁ~、おたくマジでうぜえわ…。こいつはもう確定っすね。このエクスカリバーちゃんで即行首チョンパしてやんねえと、俺っちの気が収まんねえよ、ホント。つー訳で…」

 

 

僅か数秒の会話でフリードの苛立ちは頂点に達し、現在所有している聖剣の内の1本──“夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)”を手にしたかと思うと…

 

 

シュンッ!!

 

 

「「「「死ねやクソビッチィィィィィィッ!!!!」」」」

 

 

自らの姿を“4人”へと増やし、一斉に斬り掛かってきたのだ。そして…

 

 

バキィィィィィィィィィンッ…!!!

 

 

「…あらあら~? これは夢ですかね~…?」

 

 

異変はすぐに起きた。それは……

 

 

「何で俺のエクスカリバーが、根元からポッキリ“折れて”んですかい…?」

 

 

フリードの手にしていた“夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)”の刀身が折れ、足元に落ちていたのである…。

 

 

「あら、もう折れてしまったの? 最強と言われていた聖剣が、ここまで取るに足らないモノだったなんて…。これでは完全な姿であったとしても、たかが知れますわね」

 

 

「折れ方も実に地味だったな…つまらん」

 

 

「折れ方にまで派手さを求めますのね、貴女は…」

 

 

ディーラー風の女性──レイア・ダラーヒムがそう言うと、ファラは思わず呆れ混じりに呟いた。と、ここで…

 

 

「な、何じゃこりゃあああああああッ!!!???」

 

 

「む…?」

 

 

「あら…?」

 

 

フリードはようやく現状を自覚し、叫び声を上げる…。

 

 

「そこのスーパークソビッチ!! テメエ、一体どんなイカサマ使いやがった!? 何で俺の“夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)”ちゃんがサヨナラしてんだよ!?」

 

 

「…はぁ、想像以上に耳障りな声ですわね。後で“剣ちゃん”の歌を聞かないと、今にも気が滅入りそうですわ」

 

 

捲し立てるように問い掛けてくるフリードに対し、ファラは心底憂鬱な様子ながらも、こう口にした…。

 

 

「“剣殺し(ソードブレイカー)”…剣(つるぎ)と定義されたモノを硬度や強度を問わず破壊する哲学兵装…。それが貴方の御自慢の聖剣を破壊した最たる要因ですわ」

 

 

「ッ! 剣なら問答無用でジ・エンドってか? ンだよそのクソチートな能力は!? マジで何なんだよ、テメエは…!!??」

 

 

「あら、そういえば名乗っていませんでしたわね? 私は…」

 

 

ファラは怒りを露わにするフリードに、自身のことを話そうとした。すると…

 

 

「“自動人形(オートスコアラー)”」

 

 

「「「!」」」

 

 

「あの“終焉の錬金術師”が造り出した、最高傑作の自立型戦闘人形…。これはまた面白い連中が出てきたな」

 

 

「あら、ようやく口を開きましたわね? 一切手を出す気が無いようでしたから、このまま干渉してこないのかと思いましたわ」

 

 

「フッ、正直な所を言えば、貴様と聖剣とのやり取りをもう少し見ていたかったんだがな…。聖剣全てを破壊されては困る」

 

 

ここでついにコカビエルが口を開き、ファラとそんなやり取りを交わし始めた。

 

 

「下がれ、フリード。お前では分が悪過ぎる。折角手に入れた聖剣を、全て破壊されたくはないだろう?」

 

 

「っ! た、確かにそいつは俺も真っ平御免っすわ…。仕方無いっすねぇ。なら、ここは大人しく旦那にお任せして、このスーパークソビッチ共の成れの果てを…」

 

 

コカビエルの提案に大人しく従い、ファラ逹と距離を取るフリード。どうやら“聖剣を全て失う”という末路を想像したようである…。しかし、

 

 

「水を差すようですけど、貴方と戦う気はありませんわ

 

 

「…何?」

 

 

当のファラはコカビエルに対し、淡々とした口調で拒否の意を示した。コカビエルはその返答を予想していなかったのか、若干眉を顰(ひそ)める…。

 

 

「興味が湧きませんの。少しは楽しみにしていた聖剣も期待外れでしたし…ここで失礼致しますわ」

 

 

「…人形風情が、大層な事を言ってくれるな…。逃げられると思っているのか?」

 

 

そう言いながら、巨大な光の槍を形成し始めるコカビエル。だが、それに対してファラは…

 

 

「貴方“程度”であれば、それも容易いですわ」

 

 

「…!!!」

 

 

その瞬間、コカビエルは光の槍をファラやレイア、そして気絶しているイリナに向けて投擲した。と、ここで…

 

 

「派手に行かせてもらう…」

 

 

ゴオオオオオッ…!!!!

 

 

今まで黙っていたレイアが瞬時に動き、手にしていたコインを指弾のように放つ。すると、そのコインは瞬く間に巨大化し…

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!!!

 

 

空中で大爆発を引き起こした…。

 

 

「…チッ…本当に逃げ仰せるとはな…」

 

 

土煙が晴れた所で、コカビエルは思わず舌打ちをしながら呟く。確かにそこには…先程までいたファラとレイア、そして気絶していたイリナの姿も無かった。

 

 

「…まあ、いい。行くぞ、フリード」

 

 

「! いいんでござんすか、旦那~?」

 

 

「放っておけ。奴等と一戦交えるのも悪くはなかったが、そろそろ頃合いだ…。始めるとしようじゃないか、楽しい宴を…」

 

 

釈然としない様子のフリードに対し、そう言いながら移動を開始するコカビエル…。

 

 

(聖剣を1本失ったのは流石に予想外だが、“例の儀式”を行うことは十分可能…。その上、今回のことでより一層期待を膨らませることが出来た…)

 

 

その顔は、狂気の笑みで満ちていた…。

 

 

(“アイエール”…魔王クラスの神器所有者をゴロゴロ集めていると聞いた時は、単なる眉唾物だと思っていたが…強ち間違いではないようだ。一部の連中は“あの男”に任せることになるが…残りは全てこちらで相手をしてやろう…)

 

 

そして、その狂気は彼の思考と共に高まっていく…。

 

 

(ようやくだ…ようやく俺の悲願を達成することができる…! 中途半端に止まっていた、あの“戦争”をなぁ…!!)

 

 

火蓋が切って落とされるまで…あと残り僅か…。

 

 

 





どうも。無颯です。


そんな訳で、今回は説明+ファラとレイアの登場回でした。ファラとレイアの口調や言い回しが凄く迷走してますね。すいません、割とうろ覚えです…。というか、ファラがいる時点で、「聖剣? 何それ?」な感じがしますね。“剣殺し”は本当にチートだな、うん…。


またシンフォギアの方は、オリジナルでシリアスな過去を追加しました。いずれ一護とシンフォギアのメンバーサイドの過去編を書きたいな~…。ぶっちゃけ参戦作品の中で一番気に入ってるんですよ、シンフォギア…。


以上、長ったらしい後書きでした。次回もよろしくお願いします。では、また。


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女は意外と引き下がれない生き物



お待たせしました。約2ヶ月ぶりの投稿になってしまいましたね…。

一昨日発売したシンフォギアライブのDVDを見たテンションのまま、バッと書き上げてます。戦闘には入ってませんが…。


では、本編をどうぞ。


オカルト研究部と生徒会メンバーへの説明を終えた当麻逹は、屋敷へと帰ってきていた。結局裕斗逹の捜索に向かった“自動人形(オートスコアラー)”4人からの連絡を待つ方向で一致したのである。またリアスは今後の動きについて朱乃やソーナ達と話し合うため、この場には居ない…。そして現在、屋敷の大広間では…

 

 

「で、では、響さん達が狙われてるんですか!?」

 

 

「ああ、最悪なことにな…」

 

 

当麻が屋敷で待機していた2人の内の1人──ティッタに、事の次第を説明している…。

 

 

「計画に加担していた人間のことは前に一度聞いたけど…」

 

 

「私達の想像を遥かに越えていたわ。“狂ってる”の一言じゃ足りないわね…」

 

 

「しかも狂った教会の奴等と堕天使幹部が手を結んでるんだろ? 余計に面倒じゃねえか…」

 

 

シノンと紗矢華が心底嫌そうな表情を浮かべる一方、ナナはそこへフリードやコカビエルといった面々も加わることを想像し、げんなりとした様子で呟いた。と、ここで…

 

 

「今度はボクも行くよ、当麻」

 

 

「っ! サーシャ…」

 

 

そう声を上げたのは、屋敷で待機していたもう1人の人物──サーシャだった。これに対し、思わず厳しい表情を浮かべる当麻…。

 

 

「ダ、ダメだよ、サーシャ! 折角ここまで回復したのに…!」

 

 

「そうですよ! まして戦ったりなんてしたら、どれだけ体に負担が掛かるか…!」

 

 

「響達が狙われてるのに、ボクだけのんびり寝てる訳にはいかないよ。それにエレンやセフィリア達も居ない以上、尚更ね…」

 

 

ユウキと雪菜が慌てて止めようとするものの、サーシャは真剣な表情でそう言った。そう、エレン逹3人は今も所用で北欧へ行っており、セフィリアを始めとする“時の番人(クロノ・ナンバーズ)”も全員任務中…。すなわち、この屋敷内にいるメンバーが現在のアイエールの全戦力なのだ…。

 

 

「力だけなら絶対こちらの方が上さ。当麻達がいるからね…。でも、これから起こるのが“戦争”である以上、何が起こるか誰にも分からないだろう? 万が一があったら手遅れだと思わないかい?」

 

 

「…! それはそうですけど…」

 

 

「やっぱりダメだよ、サーシャ! もし何かあったら…」

 

 

サーシャの的を射た言葉にモモが若干困る一方で、ララは心配そうな表情を浮かべながら、彼女を止めようとした。と、その時、

 

 

「サーシャ」

 

 

「…! 何だい、当麻…?」

 

 

サーシャが少し意味深な笑みを浮かべる中、当麻は彼女に対し、こんな言葉を掛け始める…。

 

 

「確かにお前の言う通り、これから始まるのは“戦争”だ。何が起こるか分からねえ…。けど、何が起きようが俺達でそれをぶち壊す。少なくとも、お前が家族同然に思ってるコイツ等には指1本手出しさせるつもりはねえよ…。お前もそうだろ、リクオ?」

 

 

「答えるまでもないよ。そんな巫山戯(ふざけ)たこと、絶対にさせない…」

 

 

確かな覚悟を感じさせるように、真剣な表情で言葉を発する当麻とリクオ…。それを聞いて、

 

 

「…何故この2人はこんなことを平気で口にするのでしょうか…?(ボソッ)」

 

 

「ふふっ、そういう所に貴女も惹かれたんじゃないですか? ヤミさん♪(ボソッ)」

 

 

「そうそう♪ ヤミ御姉ちゃんも素直に認めちゃえばいいのに♪(ボソッ)」

 

 

「っ…///////」

 

 

いつもの無表情な様子を貫いていたヤミだったが、モモと芽亜から続けて攻められると、顔をほんのりと紅潮させた。すると、

 

 

「ふふっ、やっぱり君達には敵わないね…。分かった。その言葉を信じて、ここで待ってることにするよ」

 

 

「! そうか…」

 

 

穏やかな笑みを浮かべながらサーシャがそう言うと、当麻はその一言を聞いて安堵した。しかし…

 

 

「でもその代わり、今度僕の頼みを何か1つ聞いて欲しいんだ。無理にとは言わないけど…」

 

 

「? ああ、いいぜ。何でも聞いてやるよ」

 

 

「! 本当かい!?」

 

 

「お、おう…」

 

 

「そっか…。うん! ありがとう、当麻♪」

 

 

続けて2人がそんなやり取りを交わすと、当麻を取り巻く状況が変わった…。

 

 

「サーシャだけ、ずるい…」

 

 

「! ア、アカメ…?」

 

 

まず初めに、アカメがジッと当麻を見つめながら迫ってきたかと思うと…

 

 

「そうだよ! サーシャだけなんて不平等だよ、お兄ちゃん!」

 

 

「ク、クロメさん!?」

 

 

クロメに至っては完全に妹キャラ全開な口調で、当麻の腕を取りながら詰め寄ってきた。2人から突然迫られ、困惑を隠し切れない様子の当麻…。その一方で、

 

 

「あんなことになってるけど、行かなくていいの、ユウキ?」

 

 

「うん♪ ボクも少しは大人になったんだよ~♪」

 

 

「…もう当麻と約束してるから?」

 

 

「そうそう♪ もう当麻と約束してるから……ふぇっ!? な、何でシノンが知ってるの!?」

 

 

「見れば分かるわよ…」

 

 

こちらでは自身の余裕な態度の理由を見破られて動揺しているユウキと、そんな彼女の様子を見て呆れているシノンの姿があった。もっとも、その際のシノンは何処か複雑な表情を浮かべていたが…。そしてそんな中、

 

 

「ふふっ…」

 

 

この状況を作り出した張本人であるサーシャは、その様子を温かく見守っている…。

 

 

「楽しそうだね、サーシャ逹♪」

 

 

「そ、そうね。これから戦争になるって言ってたのに…」

 

 

「でも、これでいいんじゃない? 暗いことばっかり話してても、しょうがないし…」

 

 

「だね。少しはこっちも明るくいないと」

 

 

その光景を見たララの言葉に、ルーシィが思わず苦笑いを浮かべる一方、リサーナとレビィは何処か安堵した様子で呟く。と、ここで、

 

 

「あとは、あの娘(こ)逹ね…」

 

 

「ああ…」

 

 

「皆さん、大丈夫でしょうか…?」

 

 

ミラとエルザ、そしてウェンディが表情を曇らせつつ、そんなやり取りを交わし始めた。すると…

 

 

「心配ないよ」

 

 

「「! リクオ(さん)」」

 

 

そこへ迷いなく言い切ったのは…リクオだった。

 

 

「絶対大丈夫。だって響逹には…“一度護ると決めたら絶対に護る男”が付いてるから、ね…」

 

 

 

☆☆

 

 

 

当麻逹の住む屋敷は所謂“豪邸”である。以前も述べたように、その広さは修行の際に利用したリアスの別荘並みだ。敷地内にはちょっとした林もあれば、人工の池もあったりする。そして現在、そんな人工の池の畔に…7人の少女と、1人の青年の姿があった…。

 

 

「え…?」

 

 

「おい、どういうことだよッ!?」

 

 

7人の少女逹の内の2人──立花響と雪音クリスが動揺を隠し切れない様子で、思わずそんな言葉を口にした。その原因は……

 

 

「聞こえなかったんなら、もう一度言う。お前等は今回の戦いに出るな…」

 

 

一護の口から繰り返し飛び出している、その一言である…。

 

 

「あいつは未来の持つ“歪鏡(シェンショウジン)”の…絶唱機甲(シンフォギア)殺しの力を使える。そんな奴の前に、のこのこ装者のお前等を連れていく訳にはいかねえ…。狙われてんのは、お前等なんだぞ?」

 

 

「っ…でも、もう同じ手は食わない」

 

 

「そうデスよ! 何をしてくるか分かってれば…!」

 

 

「同じ手で来る訳ねえだろうが。アイツはあの計画に関わってた人間だ。次はもっと確実な手を打ってくる…。お前等を手に入れるためにな…」

 

 

調と切歌がそう言っても、一護は突き放すような口調を崩そうとしなかった。普段とは明らかに異なる雰囲気に加え、何処か脅迫染みた言葉を口にする一護に、調と切歌は思わず怯えてしまう…。

 

 

「あいつは俺が必ずぶっ倒す…。お前等には一切手出しさせねえよ…」

 

 

ガッ…!!

 

 

そして一護がそう言った瞬間、1人の少女がいきなり彼の胸ぐらに掴みかかった。その人物とは…

 

 

「ふざけんなよ…そんなんでアタシ等が納得すると思ってんのか、テメエはッ!!」

 

 

「ク、クリス…!!」

 

 

「ダ、ダメだよ、クリスちゃん!!」

 

 

クリスだった。未来と響が慌てて止めようとするが、クリスは胸倉を掴んでいる手を離そうとしない…。

 

 

「1人で何もかも片付ければ、全部解決するとでも思ってんのかッ!? 自分だけ血を流すくらいなら構わねえって…まだ考えてんのかよッ!!?」

 

 

『………!!』

 

 

クリスのそんな言葉に大きく反応する響逹6人…。それを見て、

 

 

「まだ“あの時の事”を気にしてんのか…?」

 

 

「っ……!」

 

 

「ずっと言ってんだろうが。あれは俺が自分で選んだことだ。お前等が思い悩む必要なんかねえ…。強いて言うなら、あんなやり方でしかお前等を救えなかった俺に責任があるくらいだろうな…」

 

 

一護が自嘲の笑みを浮かべながら、そう呟いた。すると…

 

 

「どうして、自分を悪者みたいに言うデスか…?」

 

 

「! 切歌…」

 

 

「お兄ちゃんはあの時、ちゃんと私達を助けてくれた。そうじゃなかったら、私達はずっとあそこに居て…誰かを傷付けるための道具になってた…」

 

 

そんな一護に対し、切歌は何処か悲しそうに、調は何処か辛そうな様子でそう言った。更に…

 

 

「私も、あの時一護さんの言葉が無かったら、一番大事なモノを自分で壊してた…。だから、そんなこと言わないでください…」

 

 

「未来…」

 

 

続いて未来も一護にそんな言葉を掛ける。その表情にはやはり、辛さと怯えが入り雑じっていた…。

 

 

「…ずっと言ってるだろ? 俺達はお前等を戦わせるために、ここに置いてる訳じゃねえ…。それでも戦うのか?」

 

 

一護が依然として厳しい声色で尋ねると、それに答えたのは…

 

 

「私もあの時言った筈だ。剣としての此の身を、お前に捧げると…」

 

 

「それに、退く訳にはいかないわ。ここで退いてしまったら…囚われの身だったあの頃の私達に、きっと戻ってしまう…」

 

 

翼とマリアの2人だった。しかし普段の凛とした姿はそこにはなく…

 

 

「降りかかるモノを斬り払う…そのための剣だ…。何を言われようと私は…いや、私達は付いていく」

 

 

「少しくらい役に立たせて頂戴…。私達の力は、そのためのモノよ…」

 

 

固い決意を抱きつつも、慈愛に満ちた柔らかな笑みを浮かべる女性の姿だった…。

 

 

「…本当に行くんだな…?」

 

 

そして、一護の最後に問い掛けに答えたのは…

 

 

「はい!!」

 

 

響だった…。

 

 

「怖くないって言ったら嘘になるけど…向き合わないとダメなんです。向き合わなかったら…いつまで経っても一護さんの隣に立てない…」

 

 

「………」

 

 

その言葉に黙って耳を傾ける一護…。

 

 

「大丈夫ですよ、一護さん! 皆一緒ですから…“へいき、へっちゃら”です!!」

 

 

そう口にする響の笑顔は、自身の過去が語られた時のものと比べてずっと明るい。だがそれでも…何処か言い様の無い儚さが確かにあった。すると、それを見た一護は…

 

 

「…はぁ…」

 

 

ポスッ

 

 

「ふぇっ////?」

 

 

一番前にやってきていた響の頭に右手を乗せ、ワシャワシャと軽く撫で始めたのだ。いきなりのことに響は少し顔を赤くするが、一護はそれに気付くことなく周りの少女逹に目を向ける…。

 

 

「そこまで覚悟があるなら何も言わねえよ。止めても無駄みてえだからな…」

 

 

そう話す一護の表情は呆れ混じりではあるものの…普段の彼からは想像も付かない、とても穏やかな笑みを浮かべている。そして…

 

 

「やれる所までやってこい。それでもダメだった時は…俺が必ず護ってやるからよ」

 

 

『っ…/////!!』

 

 

それを聞いた瞬間、響逹は一気に顔を赤くした…。

 

 

「? どうした?」

 

 

「ッ///! な、何でもないです///!」

 

 

「そうか? やたら顔が赤い気がするんだが…」

 

 

「だ、大丈夫…///」

 

 

「ゆ、夕日で真っ赤に見えてるだけデスッ///!!」

 

 

「いや、今完全に真夜中だろ…」

 

 

その様子を見た一護の問い掛けに対し、響、調、切歌は何とかはぐらかす…。切歌の返答は完全に的外れなモノになっているが…。その一方で、

 

 

(あ、相変わらず小っ恥ずかしいこと言いやがって…///!)

 

 

(自覚が無い分、余計に質(たち)が悪いわよ////)

 

 

クリスとマリアは顔を赤くしたままそっぽを向き…

 

 

(こういう時の一護さんの顔、真っ直ぐ見れない…////)

 

 

未来は顔を赤くした状態で俯いているかと思えば…

 

 

(やはり敵わないな…一護には…///)

 

 

翼は頬を染めながらも、先程とは違った穏やかな笑みを浮かべている。このように少女逹はそれぞれ異なる反応を見せてはいるものの、明らかに共通しているモノもあった。それは自分達を“護る”と言い切った青年に対する、明確な感情である…。と、そこへ、

 

 

「話は済んだようだな」

 

 

「ッ!? キャ、キャロルちゃん…!?」

 

 

「まったく、何処ぞの映画みたいなシチュエーションに浸ってんじゃないわよ。ハズレ装者の分際で」

 

 

「ッ…!?」

 

 

狙い済ましたかのように現れたのは、キャロルとガリィ、そしてミカである。

 

 

「いつから居たの…?」

 

 

「そこの“ヤッサイモッサイ女”が『おい、どういうことだよッ!?』って言った辺りからだゾ☆」

 

 

「完全に最初からじゃないデスかッ!!」

 

 

「おい、テメエ。今すぐこっち来い。鉛玉ぶち込んでやる」

 

 

「お、落ち着いて、クリス…!」

 

 

調の問い掛けに対するミカの発言を聞いて、切歌は思わず声を上げる。何処ぞの“ヤッサイモッサイ女”がシンフォギアを発動しようとして未来に止められているのは…まあ、気にしなくてもいいだろう…。

 

 

「っ! 貴女逹が戻ってきたということは…」

 

 

「木場やあの聖剣使いの者逹を見つけたのか!?」

 

 

「ええ。といっても、見つかったのは“1人”みたいですけど」

 

 

「え?」

 

 

マリアと翼の問い掛けに対し、ガリィは淡々とした口調でそう話した。そして“1人”という単語を聞いた響が詳細を聞こうとした、その時、

 

 

「連れてきましたわ、マスター」

 

 

「ああ、御苦労だっ……ッ!?」

 

 

遅れてやってきた残りの自動人形──ファラとレイアに気付いたキャロルだったが…2人に目を遣った瞬間、言葉を失った。その理由は現在ファラが抱き抱えている少女──紫藤イリナの格好にある。何故なら、彼女の身に纏っている黒い戦闘装束はボロボロに引き裂かれ…“女性的な部位”までもが露わになっていたのだから…。と、次の瞬間、

 

 

ガバッ!!

 

 

「うおっ!!」

 

 

「男は見るなッ////!!」

 

 

「ぜ、絶対に目を開けないでください、一護さん///!!」

 

 

「お、おう…(いや、手で覆われてる時点で見えねえだろ…)」

 

 

咄嗟にマリアが一護の視界を両手で奪い、響が鬼気迫る様子で言ってきたのだ。2人の語気に圧された一護は思わず頷くが、心の中で冷静にツッコんでいたことは…まあ、些細なことである。

 

 

「なな、何つう格好のまま持ってきてんだよッ////!?」

 

 

「あら? このままじゃまずかったかしら?」

 

 

「マズいに決まってんだろッ///!! せめてそこらのデパートの広告でも巻いてから連れてきやがれッ///!!」

 

 

「そ、そんなに珍しいモノにする必要はないんじゃないかな、クリス…?」

 

 

若干首を傾げるファラに対するクリスの発言を聞いて、思わず控えめにツッコむ未来。ちなみに何故クリスがそんなモノを挙げたのかについては……シンフォギアGX第3話から御想像下さい…。

 

 

「それより、その人って…」

 

 

「聖剣使いの狂信者の人じゃないデスか!」

 

 

「ええ。何だか“頭のおかしそうな男”に襲われてたから、連れて来たんですの。それと、例の鴉(からす)さんにも会ってきましたわよ?」

 

 

「! あの狂った祓魔師(エクソシスト)か。それに…」

 

 

「鴉というのは、まさかコカビエルのことか?」

 

 

「そうだ。もっとも、予想よりずっと地味で弱そうな者だったが…」

 

 

気を失っているイリナについて調と切歌、ファラが話す一方、一護と翼、レイアはコカビエルに関してそんなやり取りを交わす。と、ここで、

 

 

「と、とにかく早く治療しないと…!」

 

 

「無論そのつもりだ。ファラ、その女を天竜の娘の所に連れていけ」

 

 

「承知しましたわ」

 

 

未来が慌てた様子で言うと、キャロルはファラに対して命令を下し、イリナをウェンディの所へ向かわせた…。

 

 

「おいマリア、もういいだろ? この覆ってる手を退(ど)かしてくれ」

 

 

「! そ、そうね。ごめんなさい////」

 

 

一護の一言を聞いたマリアは、何故か若干頬を赤らめながら両手を彼の顔から離した。しかし…

 

 

「でも、見つかったのはイリナさんだけなんて…」

 

 

「裕斗さんとゼノヴィアさんは居なかったの?」

 

 

「聞くまでもないでしょ? まぁ、そこら辺に死体が転がってる訳でも無かったし…」

 

 

「逃げ延びたと考えるのが妥当だゾ☆」

 

 

「縁起の悪い言葉を平気で言わないでちょうだい…」

 

 

未来と響の問い掛けに対するガリィの発言を聞いて、瞬時に呆れ顔になった…。

 

 

「だが、あれだけ派手に痛め付けられていたということは…」

 

 

「ああ。奴の持っていた“擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)”も、例の狂人祓魔師に奪われたらしい」

 

 

「…これで向こうが持ってる聖剣は4本…」

 

 

「いや、奴等が持っている聖剣は3本のままだ」

 

 

「? 3本のままって、一体どういうことデスか?」

 

 

翼と調に対するキャロルの言葉を聞いて、思わず首を傾げながら尋ねる切歌。すると…

 

 

「…おい、まさか…」

 

 

その言葉の意味に真っ先に気付いたのは…一護だった…。

 

 

「ファラが“剣殺し(ソードブレイカー)”を駆使して、1本を無きモノにしたようだ」

 

 

「「えっ!!??」」

 

 

「マ、マジかよ…」

 

 

キャロルが淡々とした口調で言葉の意味を伝えると、響と未来は驚愕し、一護は思わず頭を抱えた。

 

 

「やっぱ聖剣でもアイツの前じゃ棒切れみたいなもんか…」

 

 

「剣と定義されたモノを全て破壊する…それが奴の真価だ。敵であれば末恐ろしいが、味方であれば心強い」

 

 

更にクリスが続いてそう呟くと、翼は純粋にその力を評価する。まるで彼女の能力の怖さを最も理解しているかのように…。と、ここで、

 

 

「でも、聖剣を1本でも破壊できたなら…」

 

 

「向こうのやりたい事も出来なくなったんじゃないデスか!?」

 

 

「いや、恐らく奴等が目的を達するには3本もあれば十分だろう」

 

 

「っ! 向こうの目的の検討が付いているの?」

 

 

「おおよそだがな。恐らく奴等は…」

 

 

調と切歌、そしてマリアの問い掛けにキャロルが答えようとした…その時、

 

 

『……!!!』

 

 

尋常ではエネルギーの発生を、この場にいた全員が感じ取った…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

それからしばらく経った頃、真夜中の駒王学園の前には複数の人影があった。皆この学園の制服を身に纏っていることから、学園の生徒であることが窺える。その人物逹とは…

 

 

「リアス先輩、学園を大きな結界で覆いました。これで余程のことが無い限り、外に被害は出ません」

 

 

「ですが、これはあくまでも被害を最小限に抑えるためのモノです。コカビエルが本気を出せば、この学園だけではなく、駒王町全体が崩壊します。私達は攻撃を少しでも抑えるため、それぞれ配置に着いて結界を張り続けます。学園が傷付くのは耐え難いですが…堕天使の幹部が動いた以上、堪えなければなりませんね…」

 

 

匙やソーナを始めとする、シトリー眷属。そして…

 

 

「ありがとう、ソーナ。あとは私達で何とかするわ」

 

 

リアスを始めとするグレモリー眷属である。もっとも、その中に裕斗の姿はないが…。

 

 

「よろしいのですか、リアス? 相手は桁違いの力を持つ化け物ですよ?」

 

 

「そうね。でも、こちらにも頼り甲斐のあり過ぎる子達がいるから…」

 

 

と、そこへ、

 

 

「リアス!!」

 

 

「小猫!!」

 

 

「! 当麻!」

 

 

「…リクオ先輩!」

 

 

駆け付けてきたのは当麻とリクオだった。しかもその後ろにはユウキやアカメ、ヤミ、ララ、エルザなど、2人をそれぞれ慕っている少女達の姿もある。

 

 

「! あなた逹も来てたのね、ソーナ。この結界は…」

 

 

「私達が張ったモノです。気休め程度かもしれませんが…」

 

 

「それでも十分だ。どうやら既に何かを始めているようだからな。余計な影響が周囲に出ることを防いでくれている」

 

 

早々にソーナと会話をするミラジェーンとエルザ…。と、ここで、

 

 

「コカビエルか?」

 

 

「! ええ。少し前に学園内に現れたの。バルパーやフリードも一緒よ」

 

 

「…奴等は中で何をしている?」

 

 

「分かりません。ですが先程感じた凄まじいエネルギーを考えると…非常に嫌な予感がします…」

 

 

当麻とアカメの問い掛けに対し、リアスとソーナは険しい表情を浮かべながら答える。やはりリアス逹も、当麻逹と同じ理由で駆け付けたようである…。すると、

 

 

「あ、あのー…」

 

 

「? どうしたの、イッセー君?」

 

 

「いや、こんな時に聞くのもどうかと思うんだけどさ…」

 

 

おずおずと口にするイッセーにリクオが気付くと、イッセーは“ある少女”に目を向ける。それは…

 

 

「シ、シノンさん、あの、その格好は一体…?」

 

 

「! そういえば、この姿をあなた逹に見せるのは初めてね…」

 

 

水色のショートカットが特徴のクールな少女──シノンである。ちなみに、そう尋ねたのはアーシアだ。しかし、何故イッセーやアーシアがシノンの姿に驚いているのかというと、それは彼女の姿があまりにも普段と異なっていたからである。手にしているのは自らの愛銃“ウルティマラティオ・ヘカートⅡ”ではなく、特殊な形状の長弓。格好もレザージャケットが特徴的なモノではなく、軽めのアーマーを身に付けつつも動きやすさを重視したモノへと変わっている。そして、何よりも目を引くのは…

 

 

「ね、猫耳と…尻尾ッ!?」

 

 

そう、何処からどう見ても生えている猫耳と尻尾である。その色は彼女の髪の色と同じ水色で…何故か思い切り似合っていた。これには近くで結界を張っていた匙も、そんなシノンの姿を見て驚きの声を上げる…。

 

 

「こいつはシノンが神器を発動した時に出来る姿の1つだ」

 

 

「! つまり、状況に応じて神器の発動パターンを変えられる、ということ?」

 

 

「ああ。リアス逹の知ってるシノンの姿は、本来遠距離戦に特化した奴だ。けど今回はどっちかっていうと中近距離戦になりそうだから、シノンは今この姿になってんだよ。並みの近距離タイプの奴じゃ、シノンの動きに付いてくのはまず無理だからな」

 

 

リアスの予想を肯定しつつ、シノンの姿に関して軽く解説する当麻。すると、

 

 

「…その耳と尻尾は本物ですか?」

 

 

「うん、そうだよ。ほら!」

 

 

ギュッ!

 

 

「ッ~~/////!!」

 

 

バシンッ!!

 

 

「イタッ!?」

 

 

小猫の問い掛けを受けたユウキが、何とシノンの尻尾を軽く握ったのだ。するとシノンはビクッと反応しつつも、咄嗟にユウキの頭を引っ叩(ぱた)いた。

 

 

「い、いきなり何するのよユウキッ////!!」

 

 

「こ、こうした方が1番分かりやすいと思って…」

 

 

「そういう問題じゃないでしょッ///!!」

 

 

顔を真っ赤にしながらユウキを叱るシノン。言うまでもないが、尻尾は神経の集中している部位の1つであるため、非常に敏感な部分となっている。故に、少し触られただけでも過剰に反応してしまうのだ…。そしてそんなシノンの様子を見て、ある意味過剰な反応を見せている人間が約1名いた。それは勿論…

 

 

「し、尻尾にメチャクチャ反応する猫耳の女の子…ぐへへ…」

 

 

「(ビクッ!)」

 

 

“変態の権化”と称すべき男──兵藤一誠である。すると、明らかにイヤらしい視線を自身に向けていると感じたシノンは、瞬時に思わず“ある人物”の後ろに隠れた。その人物とは…

 

 

ガッ!!!

 

 

「イデデデデデデッ…!!??」

 

 

「何ウチのシノンさんを怖がらせているのでせうか、イッセーさん? あんまり変態染みた行動を取りまくってると…そのふざけたピンク色の妄想ごと、この右手でぶち殺すぞ?」

 

 

「わわ、分かった! 分かりました!! だからアイアンクローは勘弁してッ!! マジでそっちの指が頭にめり込みそうだからァァァァァッ…!!!」

 

 

時にバイオレンスになる幻想殺し──上条当麻のことである。とてつもなく凄みのある笑顔を浮かべながらアイアンクローをする当麻に対し、その右手を必死に剥がそうとしつつ反省するイッセー…。しかし…

 

 

「大丈夫、小猫?」

 

 

「…へ、平気です…。すみません、リクオ先輩…」

 

 

「いいよ、気にしないで…。後で小猫を怖がらせた分もやらないとかな…(ボソッ)」

 

 

自身の後ろに隠れる小猫を見たリクオによって、後のイッセーに2度目のアイアンクローが襲い掛かるのは…余談である…。と、ここで、

 

 

「それより当麻、一護と響達は一緒じゃないの?」

 

 

「! ああ、アイツ等ならそろそろ…」

 

 

リアスがこの場にいないアイエールのメンバーについて、当麻に尋ねた…その時だった…。

 

 

「悪ぃ、遅くなった」

 

 

『……!』

 

 

そんな声と同時に当麻逹の下へやってきたのは…今まさに話題に上がっていた、一護と響逹だった。先頭にいるのは勿論一護であり、その脇を雪菜と紗矢華が“雪霞狼”、“煌華麟”を手にしつつ固めている。そしてその後ろには響逹“七星の歌姫”の7人が神器を発動させた状態で立っており、各々オレンジ、青、赤、紫、白、ピンク、緑という色合いの機械染みた戦闘装束を身に纏っていた…。

 

 

「別に待ってないよ、一護。僕達もついさっき来た所だから」

 

 

「そうか…」

 

 

リクオの言葉に短く返す一護。と、ここで、

 

 

「な、なぁ、一護?」

 

 

「…! 何だ、イッセー?」

 

 

「いや、お前が今羽織ってるの、一体何なんだ…?」

 

 

イッセーがいつもと違う雰囲気の一護に尋ねたのは、今彼が着ている“白い羽織”のことだった。その羽織は“地面に届くのではないか”と思ってしまう程長い上、背中の部分には…“零(ゼロ)”の一文字が記されている…。

 

 

「こいつか。そうだな…強いて言うなら、俺の“覚悟の表れ”みてえなもんだ」

 

 

「お前がそいつを着てきたってことは…多少本気を出すと考えていいんだな?」

 

 

「…ああ、まあな」

 

 

当麻の問い掛けに対しても、一護は短くそう答えるのみだった。すると、それを聞いて…

 

 

「っ!? た、多少本気って、さっき調ちゃんと切歌ちゃんを狙ってきた奴に使ったのがそうじゃねえのかよッ!?」

 

 

「あれは一護が牽制の意味も含めて放ったモノだから、全然本気じゃないよ。勿論、部長さんを助けるために乗り込んだ時もね」

 

 

「…はあああっ!!?」

 

 

イッセーが驚きを露わにしながら尋ねるが、リクオの補足を聞いたことで驚愕に変わる。まあ、当然と言えば当然である。何しろその本気ではない一撃によって、周囲の森林を跡形もなく吹き飛ばしたり、直線上数百メートル先を更地に変えたりしてしまったというのだから…。その一方で、

 

 

「当麻」

 

 

「! 何だ、リアス?」

 

 

「本当に響逹を戦わせる気なの? 勿論あの娘逹の強さは私も理解してるつもりだけど、もしものことがあったら…」

 

 

リアスは心配そうな様子で響逹に目を向けながら尋ねる。やはり狙われているにもかかわらず最前線に出てくるというのは、あまりにもリスクがあるように感じるのだろう。しかし、その問い掛けに対して当麻は…

 

 

「大丈夫だよ、響逹なら。俺達が思ってる以上にアイツ等は強えよ。それに何より、アイツ等には一護が付いてるからな…。あいつが必ず護り通すさ」

 

 

「…! 本当に信頼してるのね」

 

 

「…ま、伊達に長く付き合ってねえからな。一護やリクオとは…」

 

 

いつもの不幸を嘆く雰囲気とは違う、何処か達観した様子で呟いた…。と、そこへ、

 

 

「リアス」

 

 

「? 何、ソーナ?」

 

 

先程まで生徒会メンバーに指示を出していたソーナが再び戻ってきたかと思うと、リアスにこう尋ねる…。

 

 

「あなたの御兄様には連絡を取らなくていいのですか?」

 

 

「! そういう貴女だって、“御姉様”を呼ばなかったじゃない」

 

 

「私のところは……。あなたの御兄様は、貴女を愛しているわ。サーゼクス様にも知らせた方が…」

 

 

お互いに何故か複雑な笑みを浮かべるリアスとソーナ。すると…

 

 

「既にサーゼクス様には打診しましたわ」

 

 

「ッ! 朱乃ッ!!」

 

 

ここまで姿の無かった朱乃が、そう言いながらやってきたのだ。リアスは彼女の勝手な行動に非難の声を上げようとするが…

 

 

「“リアス”、貴女がサーゼクス様に御迷惑を御掛けしたくないのは分かるわ。でも、相手が堕天使の幹部となれば話は別よ。それに向こうには、一護君逹でさえ危険視する者もいる…。この件は貴女個人で全てを判断するレベルを越えているわ。ここはサーゼクス様の…魔王様の力を借りましょう」

 

 

朱乃はオカルト研究部の副部長としてではなく、“リアスの女王”として意見を口にしたのだ。その表情はいつにも増して真剣であり、有無を言わせない覇気のようなモノすら感じさせる程だった…。と、そこへ更に、

 

 

「朱乃の言う通りだよ、リアス!」

 

 

「! ララ…」

 

 

「私も朱乃さんや御姉様の意見に賛成です。相手は大戦を生き抜いた歴戦の猛者…備えは多いに越したことはありません」

 

 

「何か起こってからじゃ遅いだろ? 全員無事に帰ることの方が大切なんじゃねえのか?」

 

 

デビルーク三姉妹も揃って朱乃の判断を支持したのだ。これには流石のリアスも反論しようとはせず…

 

 

「はぁ…」

 

 

「ふふっ、御話を理解してくれてありがとうございます、部長♪」

 

 

深い溜息を吐きながら、暗に承諾の意を示した。それを見て、元の御淑やかな笑みを浮かべる朱乃…。

 

 

「サーゼクス様の加勢が到着するのは1時間後だそうですわ。それともう1つ…実は連絡を入れた際、丁度サーゼクス様の所へ“ギド様”が顔を出されていまして…」

 

 

「! パパが!?」

 

 

「はい。それでギド様もこちらへ“応援”を向かわせたとのことですわ」

 

 

朱乃の更なる報告にララは驚きを見せるが、一方で、

 

 

「ね、ねぇ、小猫ちゃん。ギド様って、やっぱりあの…」

 

 

「…冥界最強の悪魔、“大魔王”様です」

 

 

「で、ですよねぇ…(魔王様に加えて、大魔王様からも加勢が来んの!? 俺達一体どんだけヤバい奴等と戦おうとしてんだよ!?)」

 

 

小猫からの確認を聞いたイッセーは、改めて自分達がしようとしている事の大きさを実感していた…。ちなみに、

 

 

「なぁ、父上が送ってくる応援って、どう考えても…」

 

 

「ええ…絶対“あの人”よ」

 

 

「だよな…」

 

 

ナナとモモが密かにそんな会話をしていたのは…余談である…。と、ここで、

 

 

「1時間ね…。さて、私の可愛い下僕悪魔逹。私逹はオフェンスよ。結界内の学園に突入して、コカビエルの注意を引くわ。これはフェニックスとの戦いとは違い、死戦よ! それでも死ぬことは許さない! 生きて帰って、この学園に通うわよ!!」

 

 

「「「「はい!」」」」

 

 

リアスの毅然とした口上に対し、イッセーを始めとするグレモリー眷属全員がしっかりと返事をした。すると、

 

 

「後は頼むぜ、兵藤!」

 

 

「わーってるよ、匙。お前は尻のダメージでも気にしてろ」

 

 

「言うな! 言われると余計に痛みを感じる…! お前こそ、尻は?」

 

 

「フフフッ、部長の愛が痛い。まあ、今の状況はまさに“火が点いた”って感じだな」

 

 

「いや、笑えねえよ……。それで、木場はまだか?」

 

 

「ああ…けど、無事だと信じてるさ」

 

 

「! ああ、俺もだ」

 

 

そこへ匙が一旦イッセーの下に近寄り、拳を軽く合わせるなどして再び結界の維持作業へと戻っていったのだ。グレモリーとシトリーの両兵士の間に、確かな友情が存在していることの表れである…。そんな中、

 

 

「さてと…そんじゃあ、俺達も行きますかねぇ」

 

 

「ああ…」

 

 

「そうだね…」

 

 

当麻、一護、リクオの3人も、リアス逹の様子を見て気持ちを切り替える…。

 

 

「エレンやセフィリア逹はいねえけど、お前等があんな堕天使逹なんかに負けないことは上条さんが一番よく知ってる…。思う存分暴れてこい」

 

 

「「うん!!(ええ…)」」

 

 

「久しぶりに思い切り戦えそうだね、お姉ちゃん」

 

 

「ああ…当麻を阻もうとするなら、誰であろうと葬る…」

 

 

当麻はユウキ、シノン、アカメ、クロメの4人にそう声を掛けたかと思えば…

 

 

「皆、準備はいい?」

 

 

「当然!」

 

 

「むしろこの場に立っている時点で、出来ていない者がここにいると思うか?」

 

 

「ははっ、それもそうだね。じゃあ…行こうか」

 

 

「ええ♪」

 

 

「頑張ります!」

 

 

「…行きますよ、芽亜」

 

 

「うん♪」

 

 

リクオもルーシィ、エルザ、ミラジェーン、ウェンディ、ヤミ、芽亜の6人を率いて歩み出す。そして…

 

 

「悪いな、雪菜、紗矢華。お前等には多分色々フォローに回ってもらうことになりそうだ」

 

 

「平気です、先輩。今回は響さん達のためですから…」

 

 

「全員無事に帰ってこないと、許さないわよ?」

 

 

一護は雪菜と紗矢華にそう言うと、すぐに響達7人と向き合う…。

 

 

「覚悟はいいな?」

 

 

「ハッ、覚悟がいる程のことかよ。これからすんのは、ただ堕天使共とツルんでる奴をぶっ飛ばすこと…それだけのことじゃねえか」

 

 

「雪音の言う通りだ。目の前に立ち塞がる者がいるのであれば、斬り伏せるのみ…」

 

 

「私達がどういう想いで今ここに立っているのかは…貴方もさっき聞いたでしょ?」

 

 

一護の問い掛けに対し、クリス、翼、マリアの年長者組がそう答えたかと思えば…

 

 

「絶対に負けない…」

 

 

「リベンジマッチと行くデスよ!」

 

 

続いて調と切歌が闘志を高めた様子で意気込みを露わにし…

 

 

「響…」

 

 

「…!」

 

 

ギュッ…

 

 

「!」

 

 

「行こう、未来…。大丈夫、皆も…一護さんも一緒だから」

 

 

「…うん…!」

 

 

響は不安そうな未来に笑みを向け、彼女に笑顔を取り戻させた…。すると、そんな彼女達の様子を見届けた一護は安心したような笑みを浮かべ…

 

 

「行くぞ…」

 

 

『はい(ええ)(おう)(うん)(はいデス)!!』

 

 

戦場となる駒王学園内へと、歩みを進めるのだった…。

 

 

 






ご無沙汰しております、無颯です。


という訳で、今回は戦闘無しのシリアス回となりました。一護と響逹シンフォギアキャラが中心の筈だったのですが…全体的には案外そうでもなかったですね。いやはや、やはり一護と響逹とのやり取りを書くのが結構難しかったです…。

あとちょっとした注目点を挙げるとすれば、後半で登場した一護の羽織でしょうか。何で一護がそんなものを持っているのかは…いずれ明かされるかもしれません。

次回もよろしくお願い致します。それでは!


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開戦は大体派手



オリジナルキャラが複数登場します。ですが、出番は非常に短いかと…。何故かは察して頂けると幸いです。あと分量が多い割に、話はあまり進んでないかもしれません…。


では、本編をどうぞ。



学園の内部へ入ったリアスや当麻達は、現在校舎内の昇降口付近へとやってきていた…。

 

 

「イッセー、あなたにはサポートに徹してもらうわ」

 

 

「? サポート?」

 

 

「高めた力を、ギフトの能力で皆に譲渡して欲しいの」

 

 

「なるほど、了解です!」

 

 

「私達はイッセーの力を譲渡できるようになるまで、時間を稼ぐわ」

 

 

「了解しましたわ♪」

 

 

「…はい、部長」

 

 

イッセーと朱乃、小猫に対して歩きながら作戦を指示するリアス…。と、ここで、

 

 

「なぁ、一護?」

 

 

「…! 何だ、イッセー」

 

 

「あー、いや、そういえばキャロルちゃんやリサーナちゃん達の姿が無いけど、どうしたんだ?」

 

 

イッセーが若干恐る恐るといった様子で一護にそう尋ねた。どうやら今までと明らかに違う一護の雰囲気に、少々戸惑っているようである…。

 

 

「キャロルと自動人形(オートスコアラー)は家に残ってる」

 

 

「リサーナとレビィも同じだよ。あそこにはティッタとサーシャ、エルフナインと博士も居るし…何よりイリナさんが居るからね。怪我人がいる以上、守りもそれなりに固めないと…」

 

 

「…!」

 

 

一護とリクオの返答を聞いたイッセーは、少し前のイリナに関する話を頭に浮かべる。ファラとレイアの2人がイリナを保護した件について、グレモリー眷属の面々はおおよその経緯も含めて既に聞いていた。無論、ゼノヴィアや裕斗の姿が無かったことも周知済みである…。もっとも、

 

 

「それに、嫌な予感もすることだしな…(ボソッ)」

 

 

「? 何か言った、当麻?」

 

 

「! いや、何でもない。気にしないでくれ、リアス」

 

 

当麻が小さくそう呟いていたのだが、これは近くにいたリアスにも聞こえなかったようである…。そして、そんな話をしている内に校庭へとやってくると、そこでは…

 

 

「あれは、一体…」

 

 

「魔方陣…」

 

 

「それにあの聖剣から溢れるオーラ…少し前に感じたエネルギーの正体は、これですね」

 

 

校庭全体に奇怪な魔方陣が展開され、しかもその中心には奪取された3本の聖剣が宙に浮いていたのだ。それを見たアーシアとシノン、モモは思わずそう呟く。と、その時、

 

 

 

「3本のエクスカリバーを1つにするのさ。あの男の念願らしくてな…」

 

 

『っ……!!』

 

 

その声が聞こえた瞬間、リアスと当麻達は上方へと顔を向ける。もっとも、当麻達アイエールの面々の大半は驚いていなかったが…。

 

 

「コカビエルッ!!」

 

 

その声の主――コカビエルは、空中に浮く玉座のようなモノに腰を下ろしつつ、こう問い掛ける。

 

 

「サーゼクスは来るのか? それともセラフォルーか…?」

 

 

「お兄様とレヴィアタン様の代わりに、私達が…」

 

 

キィィィンッ…!!

 

 

「ッ! 部長!!」

 

 

その問いにリアスが返そうとすると、コカビエルは座ったまま右手に光を収束し始めたのだ。それを見たイッセー達グレモリー眷属はすぐさま彼女の前に立つが…

 

 

ビュオッ!!

 

 

『ッ…!?』

 

 

形成された巨大な光の槍はリアス達の方へ向かうことなく…離れた所にある体育館へと放たれたのだ。そして、凄まじい速さで向かった光の槍は……

 

 

バキィィィィィィンッ…!!!

 

 

体育館へ着弾する直前に、突如空中で粉々に砕け散った…。何故なら…

 

 

「ボク達の通ってる場所を勝手に壊さないで欲しいんだけど…?」

 

 

先程まで当麻逹と一緒にいた筈の少女──ユウキが、自らの剣で破壊したのだから…。

 

 

「ユ、ユウキちゃん!? いつの間にあんな所まで移動したんだよッ!?」

 

 

「魔方陣で移動した様子はありませんわ。つまり…」

 

 

「純粋に身体能力だけで移動した、ということになるわね。しかも、幹部クラスの一撃をあれほど簡単に払いのけるなんて…」

 

 

その一部始終を見たイッセーと朱乃、リアスは驚愕を露わにする他無かった。ユウキの普段とかけ離れた圧倒的な速さと強さを実際に見て、レベルの違いを痛感せざるを得なかったのである。しかし、その一方で…

 

 

「フ、フハハハハハハッ!! そうか! その次元の違う速さ! お前があの“絶剣使い”かッ! これほどの奴を仲間に引き入れているとは…やはり貴様等は楽しませてくれるようだな、“アイエール”ッ!!」

 

 

「…! こうも戦場で易々と高笑いを上げられるとは…」

 

 

「噂通りの戦闘狂ね…」

 

 

コカビエルは興奮した様子で高らかな笑い声を上げ、当麻逹アイエールの面々に視線を向ける。その様子は翼やマリアの言うように、“戦闘狂”と呼ぶに相応しい程狂いに狂ったモノだった…。

 

 

「だが、もう少し貴様等の力を見たいのでな。地獄から“ペット”を連れてきた。コイツ等とも遊んでもらおうか!」

 

 

「? ぺ、ペット…?」

 

 

パチンッ!

 

 

戦闘狂の口から出たとは思えない単語にルーシィが困惑する中、コカビエルが指を鳴らす。すると大型の魔方陣が一瞬展開され、そこから巨大な炎の渦が巻き上がる。そして、そこから姿を現したのは…

 

 

『グルルルルルッ…!!!』

 

 

「っ!? “ケルベロス”ッ!!」

 

 

「えっ!?」

 

 

「冥界の門に生息すると言われている、地獄の番犬ですわ!」

 

 

「地獄の、番犬…!」

 

 

「こんなモノまで…それも“8体”も人間界に持ち込むなんて…!」

 

 

裕に数メートルは超えるであろう巨体と〝三つ首”が目を引く猛獣――ケルベロスである。しかもリアスの言う通り、その数は計8体。その獰猛と呼ぶには恐ろし過ぎる姿に、イッセーや朱乃、アーシアと共に思わずやや圧倒されてしまう…。だが、

 

 

「これだけでは足りんな。やはり、コイツ等も使うべきか」

 

 

キィィィィィィンッ…!!

 

 

それだけでは戦力不足と考えたコカビエルは、そう言って新たな戦力を投入した。先程とは異なる赤い魔方陣から出現した、おびただしい数の存在。それは…

 

 

「ッ! “ノイズ”…!!」

 

 

そう、液晶ディスプレイのような部位が特徴の異形の存在―――ノイズだった。それを見た瞬間、響を始めとした〝七聖の歌姫”の面々は真っ先に反応し、それぞれの得物や拳を構える…。

 

 

「あの“イカれ研究者”はまだ来てねえみたいだな…。とにかく先にコイツ等を片付けるぞ。リアス、何体までならイッセー逹眷属だけで相手取れる?」

 

 

「…! 2体が限度だと思うわ」

 

 

「そうか…。なら、残りの6体は俺達の方で片付ける。ノイズも前に言った通り、こっちに任せてくれ」

 

 

ここで組織のトップとしての雰囲気を醸し始めた当麻は、リアスへ戦闘における相手の配分を伝える…。

 

 

「本当にごめんなさい。あなた逹にばかり負担を押し付けることになってしまって…」

 

 

ポスッ…!

 

 

「ッ////!」

 

 

「あんたが気にすることじゃねえよ、リアス。それにアカメやユウキ逹がこの学園で楽しく過ごせているのも、あんたや朱乃逹眷属のお蔭なんだ。こういう時くらい頼ってくれた方が、上条さん逹的にもありがてえ…。だから安心して俺達に任せろ。な?」

 

 

「! ええ…////」

 

 

右手を頭にそっと乗せながら当麻が語り掛けるように言うと、リアスは頬を赤く染めながら短く言葉を返した。その反応は先程まで厳しい表情を浮かべていたとは思えない程、少女としての一面を表に出している…。もっとも、

 

 

「あー…クロメさん、シノンさん? 何故に俺の脇腹をつねってくるのでしょうか? っていうか、割と結構痛いんですが!?」

 

 

「…自分で考えて」

 

 

「ふんっ…!」

 

 

それを見たシノンとクロメには脇腹をつねられた挙げ句、素っ気ない態度を取られたり…

 

 

「当麻アアアアアアアッ!! 部長に何て羨ましいことしてんだアアアアアアッ!!!」

 

 

イッセーから血涙混じりの嫉妬の視線を浴びたのは、余談である…。と、ここで、

 

 

「犬共の相手は俺達がやる」

 

 

「! リクオ…」

 

 

そんな提案を当麻に出してきたのは、瞬時に神器を発動して“夜の姿”になっているリクオだった。

 

 

「この程度の奴等なら俺達だけで十分だ。お前等はノイズに専念した方がいいだろ? 特に一護」

 

 

「!」

 

 

「お前には一番デケえ仕事が待ってんだ…。少しは温存しておけ」

 

 

「…ああ」

 

 

リクオにそう言われ、意味深な表情で頷く一護…。

 

 

「そんじゃあ…行くぞ」

 

 

『ああ(ええ)(うん)(はい)(おう)!』

 

 

そしてリクオがヤミやエルザ、ララ達を従えるように前に出てきた所で…

 

 

「…やれ」

 

 

『グオオオオオッ!!!』

 

 

「! やるわよ! 朱乃! 小猫!」

 

 

「はい、部長♪」

 

 

「…はい」

 

 

コカビエルの命令と共に、ケルベロスとノイズ逹が一斉に侵攻を開始した。それを見たリアスはすぐさま朱乃と小猫に指示を出し、ノルマである2体のケルベロスを相手取る。その一方で、

 

 

「俺達はノイズを蹴散らす。いいな?」

 

 

「オッケーだよ、当麻!」

 

 

「問題ない…」

 

 

当麻もいつの間にか戻ってきていたユウキとアカメ逹に声を掛け、行動を開始する。

 

 

「行っくよー!」

 

 

「…葬る」

 

 

最も早く動いたのはユウキとアカメだった。2人は一瞬にしてノイズの群れに迫り、目にも止まらぬ速さで目の前のノイズ達を斬り刻んでいったかと思うと…

 

 

「おいで、“ナタラ”、“ドーヤ”」

 

 

シュンッ!×2

 

 

クロメは何処からともなく2人の人物を呼び寄せた。1人は薄い金髪が目を引く背の高い青年、もう1人は“長い金髪”が目を引くウエスタン風の少女である。その目はまるで死人のように光が灯っていないが、それも当然である。何しろこの2人は……“本当に死人”なのだから…。

 

 

「行って」

 

 

クロメの一声を聞いた瞬間、2人は頷く素振りすら見せずにノイズの大群へと突っ込んでいった。背の高い死人の青年――“ナタラ”は薙刀状の神器“トリシュラ”を振るい、ウエスタン風の死人の少女―――“ドーヤ”は2丁拳銃型の神器“シュリーフ”で放つことでノイズを次々と塵へ変えていく。その後クロメも戦線に加わり、自らの日本刀型神器“八房”でノイズを斬り伏せていく…。

 

 

「シノン」

 

 

「分かってるわよ。援護するから、早く行って」

 

 

「頼む」

 

 

最後に動いたのは当麻とシノンである。当麻が駆け出した瞬間、シノンは右手に3本の光の矢を形成し、既に左手に携えていた長弓“シェキナー”を使って放つ。3本の矢はそれぞれ進行方向にいたノイズ逹を直線上に葬り去る…。

 

 

「槍(ランス)…」

 

 

そこへ当麻が左手に長大な槍を手にしつつ接近し、凄まじい槍裁きでノイズ達を消滅させていく。しかもそれは…ユウキやアカメ達を凌駕する程のスピードだった…。一方、こちらでも…

 

 

「はあッ!!」

 

 

ザシュッ!!

 

 

雪菜が“雪霞狼(シュネー・ヴァルツァー)”による鮮やかな槍裁きでノイズを斬り刻み…

 

 

「ふっ!!」

 

 

ザァンッ!!

 

 

紗矢華も“煌華麟(デア・フライシュッツ)”を大剣型に変形させ、ノイズ達を一刀両断している…。と、ここで、

 

 

『キュオオオオオオオッ!!!』

 

 

「! あれは…」

 

 

「大型が来たわね…」

 

 

奇声のような咆哮が聞こえたかと思うと、ノイズの大群の後ろに複数の大型ノイズが出現していることに雪菜とシノンが気付く。

 

 

『キュオオオオオオオオオッ……!!』

 

 

「空からも来た…」

 

 

「確かあれって、普通のノイズを一杯落としてくるタイプだよね?」

 

 

「ええ。これ以上増えると面倒だし、さっさと倒した方がいいわね…!」

 

 

更に空中にも飛行艇を連想させるような巨大ノイズが現れたのだ。それを見た紗矢華は反応の薄いクロメやユウキとは対照的に、すぐさま倒そうと煌華麟を変型させようとした。だが、

 

 

「平気よ、紗矢華」

 

 

「ああ、俺達は普通のノイズを倒すのに専念してればいい。向こうは…」

 

 

ドガアアアアアアアアアンッ!!!

 

 

「…!」

 

 

「“あいつ等”が片付ける…」

 

 

シノンと当麻が紗矢華を制止したかと思うと、1体の空中にいた大型ノイズが突如爆散した。その理由は…

 

 

「たかがノイズが、アタシ等の居場所を奪いに来んじゃねえええッ!!」

 

 

クリスが2基の大型ミサイルを放つ“MEGA DEATH FUGA”で撃墜したのである。そして彼女がそう叫んでいる間にも、もう1発のミサイルが2体目の大型ノイズを撃ち落としていく…。

 

 

「切ちゃん」

 

 

「分かってるデスよ、調!」

 

 

こちらでは調と切歌が地上にいる大型ノイズへ迫っていた。調が自らの持つ2つのヨーヨーを合体、巨大化させたかと思えば、切歌は肩口のアンカーを射出して大型ノイズの頭部に巻き付け…

 

 

ザァンッ!!!×2

 

 

それぞれ“β式 巨円断”、“断殺 邪刃ウォttkkk(だんさつ・ジャバウォック)”で大型ノイズを一体ずつ縦、あるいは横一閃に両断する…。

 

 

「ハアッ!!」

 

 

「ふっ!!」

 

 

ズバンッ!!×2

 

 

翼とマリアも大型化させた刀で巨大な青いエネルギー刃を繰り出す“蒼ノ一閃”、刀身を蛇腹剣にして攻撃する“EMPRESS✙REBELLION”で、大型ノイズを容赦無く真っ二つにしたかと思えば…

 

 

『キュオオオオオオオッ……!!?』

 

 

ズガアアアアアアアアアン…!!!

 

 

「…………」

 

 

未来は扇型の得物を鏡のように展開して複数のビーム砲を繰り出す“閃光”で、眼前の大型ノイズを蜂の巣状に貫き消滅させる。そして…

 

 

「はああああああああああッ!!!!!」

 

 

ドゴオオオオオオオオンッ…!!!

 

 

響は腕部のバーニアによって一気に急加速し、そのまま右拳で最後の大型ノイズの土手っ腹に大穴を開ける。その結果、全ての大型ノイズが塵となって消え失せた…。そんな彼女逹の様子を見て…

 

 

「向こうは問題なさそうね」

 

 

「ああ。あの程度のノイズにアイツ等が苦戦する筈ねえからな」

 

 

「フッ、そうだな。さて…こちらも手早く片付けるぞ」

 

 

一切心配している様子もなく話しているのは、ミラジェーンとリクオ、エルザの3人である。その眼前には…

 

 

『グルルルルルルッ…!!!』

 

 

6体のケルベロスが獰猛な唸り声を上げつつ身構えていた…。すると、

 

 

「…気絶させる程度にしろ。絶対に殺すな…。それでいいな、ナナ?」

 

 

「! リクオ…」

 

 

リクオの口から出た思わぬ指示に、目を見開いて反応するナナ…。

 

 

「こんなのを手加減しながら倒せって、結構難易度が高い気がするんだけど…」

 

 

「でも、賛成です!」

 

 

「ふふっ、ナナちゃんのためだからね♪ ヤミお姉ちゃんはどう?」

 

 

「…丁度良いハンデです」

 

 

更にその指示にはルーシィやウェンディ、芽亜、ヤミも同意を示す。

 

 

「小猫逹の方は諦めろ。流石にアイツ等にはそんな余裕はねえ。だが…俺達ならお前の我が儘にも付き合える。つっても、最後はお前次第だ…。行けるか?」

 

 

リクオの問い掛けに対し、ナナは…

 

 

「…当たり前だろ! 絶対成功させてやる!!」

 

 

「…ハッ、そうかよ」

 

 

「あなたの動物好きも筋金入りね、ナナ。まぁ、私も人のこと言えないんでしょうけど…」

 

 

「私もモモも手伝うよ、ナナ♪」

 

 

「! おう!」

 

 

しっかりと決意の込もった眼差しで答えたのだ。そんな彼女の様子を見て、リクオは不敵な笑みを浮かべ、姉妹であるモモとララもそれぞれ言葉を掛ける…。

 

 

「来るぞ!」

 

 

『グルアアアアアアッ!!』

 

 

そして6体全てのケルベロスが襲い掛かってきた瞬間、エルザの掛け声と共に“殆どの者達”が行動を開始する。

 

 

「換装ッ!」

 

 

まず初めに動いたのはエルザだった。彼女の全体が光に包まれたかと思うと、先程までの銀の鎧姿ではなく、“豹柄”と“獣耳”が特徴の露出の高い戦闘装束を身に纏っていた…。

 

 

「“飛翔の鎧”!!」

 

 

『グルアアアアアアアッ!!!』

 

 

ドガアアアアアアアアアンッ…!!!

 

 

目の前にいたケルベロスはすぐさま右前足を振り下ろし、強靭な爪で切り裂こうとした。しかし、振り下ろした所にエルザは居らず…

 

 

「ふっ!!」

 

 

ドゴンッ!!!!

 

 

『グゴオッ!!??』

 

 

圧倒的なスピードを以て、いつの間にかケルベロスの胴体の真下に移動していた。そして右手による掌抵を繰り出し、その巨体を真上へ吹き飛ばすと…

 

 

シュンッ!!

 

 

「ハアアアアッ!!」

 

 

ザァンッ!!!

 

 

『グルオオオオオッ!!??』

 

 

ドガアアアアアアアアアンッ…!!!

 

 

瞬時にケルベロスよりも更に上方へ姿を現し、急降下と同時に2本の刀で素早く斬り伏せたのだ。無論ケルベロスはそのまま地面に叩き付けられ、起き上がる様子もない。といっても…

 

 

「安心しろ、峰打ちだ…」

 

 

エルザの一言から分かるように、ちゃんと生きているが…。一方、こちらでは…

 

 

『グルルルルルルッ…!!』

 

 

「フフッ、どうしたの? 全然動いていないわよ…?」

 

 

ミラジェーンがケルベロスの巨大な右足を、右手一本で受け止めていた。だがその姿はいつもの穏やかで優しいモノではなく、“悪魔のような翼”と“紫を基調としたレオタード風の装束”が目を惹(ひ)く恐ろしいモノだった…。

 

 

ガシッ!!

 

 

『グオッ!!??』

 

 

「ハアアアアアアアッ!!!」

 

 

ズガアアアアアアアアアンッ…!!!

 

 

『グルアッ…アッ…』

 

 

彼女のしたことは実に単純で、ただケルベロスの右前足を両手で掴み、半円状に振り回すような形で頭から地面に叩き落とす…それだけである。しかしその一撃をモロに受けたケルベロスは、呻き声を上げながら完全に昏倒していた…。それを見て、

 

 

「ねぇ、ウェンディ? あれ、本当に生きてる?」

 

 

「えっと…早く治しに行った方が良さそうですね…」

 

 

ルーシィとウェンディは苦笑いを浮かべながら呟く。まあ、確かに今目の前で倒された2体のケルベロスは、端から見ると完全に瀕死状態にしか見えないのだ。『本当に手加減した?』という問い掛けを2人が呑み込んだのは、ある意味必然である…。と、そうこうしている間に、

 

 

『グルアアアアアアッ!!!』

 

 

「っ! ウェンディ!」

 

 

2体のケルベロスが再び襲い掛かってきたことにルーシィが気付くと、2人はすぐさま放たれた炎を回避する。

 

 

「ウェンディ! 足止めをするから、まとめて御願い!」

 

 

「! はい!!」

 

 

するとルーシィはそんな指示を出しつつ、腰の右側に装着していたホルダーから“1本の金色の鍵”を取り出し…

 

 

「開け、処女宮の扉! “バルゴ”!!」

 

 

キンコーンッ!

 

 

その掛け声と同時に、目の前に何かを呼び寄せた。それは…

 

 

「御呼びでしょうか、姫?」

 

 

“メイド服”と“両手首の枷”が目を引く、ピンクのショートカットの女性(?)だった。

 

 

「バルゴ、あの2体の足止めを御願い!」

 

 

「畏まりました、姫。終わったら、お仕置きですね?」

 

 

「するかァッ!!」

 

 

淡々とした口調で爆弾を落とす女性(?)──バルゴにルーシィが突っ込むが、当のバルゴは凄まじい速さでその場に穴を掘り、姿を消していたのだ。と、次の瞬間、

 

 

『グオオオオッ!!?』

 

 

ドゴオオオオオオンッ!!×2

 

 

突然2体を完全に収める程の大穴が地面に空いたかと思うと、目の前のケルベロス逹は穴の中へと落ちていき…

 

 

ズボッ!!

 

 

「これで宜しいでしょうか、姫?」

 

 

「! うん、バッチリよ、バルゴ!」

 

 

そこから5秒も経たない内にバルゴが地面から再び姿を現した。どうやら目の前で起きた出来事は、バルゴの手によるモノのようである…。

 

 

「ウェンディ!」

 

 

「はい!!」

 

 

するとルーシィはすぐさま上方に向かって声を掛ける。そこには、既に大穴の丁度真上に当たる空中で構えているウェンディの姿が…。

 

 

「天竜の、咆哮ォォォォォッ!!!」

 

 

『グルアアアアアアアアアアアアッ…!!!??』

 

 

彼女から放たれたのは巨大な竜巻のようなブレス。その一撃は大穴の周りを大きく抉りつつ、中にいる2体のケルベロスに直撃する。その結果…2体が穴の中から出てくる様子は一切見られなかった…。それを見て、

 

 

「皆終わっちゃったみたいだね。どうする、ヤミお姉ちゃん?」

 

 

「…こちらも終わらせます」

 

 

『グルルルルルルッ…!!??』

 

 

芽亜とヤミはそんなやり取りをしながらも、相手となっている2体のケルベロスを自らの髪で雁字搦めに拘束していた。すると、

 

 

「…プリンセス・ララ」

 

 

「モモちゃん、こっちは御願いするね♪」

 

 

「うん! 行くよ、モモ!」

 

 

「はい!!」

 

 

2人が声を掛けた瞬間に動いたのは、ララとモモである。その行動はまたしても実に単純で、一気に空高く跳躍し…

 

 

「「えい(はあ)っ!!」」

 

 

ボゴオオオオオオオオンッ…!!!!

 

 

頭部に踵落としをお見舞いした。その一撃の威力はケルベロス達を地面に叩き付けるだけでなく、その衝撃でクレーターを形成してしまう程のものだった…。そして、

 

 

「これで全部だな…。やれ、ナナ!」

 

 

「言われなくても、そのつもりだ!!」

 

 

キィィィィィィンッ…!!

 

 

6体全てのケルベロスの沈黙を確認したリクオが合図を出すと、それを聞いたナナは巨大な魔方陣を6体のいる場所にそれぞれ展開する。

 

 

「今日からお前等もアタシの“友達”だ…。もう地獄なんかで番をする必要なんかない…。だから、アタシと一緒に来い…!!」

 

 

その瞬間、展開されていた魔方陣が眩い光を放ったかと思うと、6体のケルベロス達は一斉に目を覚ましてゆっくりとナナの下へ歩み寄っていく…。すると、

 

 

「よろしくな、お前等♪」

 

 

『…グルルルルッ…』

 

 

ナナが笑顔を浮かべながら一言そう言っただけで、ケルベロス達は一斉に彼女に頭(こうべ)を垂れたのだ。まるで彼女に対して服従…いや、気を許したかのように…。

 

 

「よくやったな、ナナ」

 

 

「流石だね、ナナちゃん♪」

 

 

「! べ、別に大したことじゃねえよ、このくらい…/////」

 

 

「相変わらずのツンデレですね」

 

 

「! だ、誰がツンデレだあああああッ/////!!?」

 

 

「ちょっとぉぉぉッ!? 何変なタイミングでとんでもないこと口走ってんの!?」

 

 

「? いけませんでしたか、姫?」

 

 

「むしろいけなくない部分が何処にも無いでしょうがッ!!」

 

 

リクオと芽亜の誉め言葉にナナは思わず照れ隠しをするが、一転バルゴの天然発言を聞いた瞬間にキレ始めてしまった。ルーシィが慌ててツッコむものの、当の本人には一切自覚している様子もない…。と、その時、

 

 

「小猫ちゃんッ!!」

 

 

『ッ…!?』

 

 

突如そんなイッセーの声を聞いた瞬間、ララやルーシィ達は咄嗟にグレモリー眷属の方へ目を向けると、そこには……いつの間にか増えていたケルベロスの鋭利な牙を受けて吹き飛ばされている、小猫の姿があった…。

 

 

「ッ! 小猫さん…!!」

 

 

「…芽亜!」

 

 

「うん!!」

 

 

それを見たモモが声を上げる中、ヤミと芽亜はすぐさま小猫の下へ向かおうとした。しかし…

 

 

シュンッ!!

 

 

「「…!!」」

 

 

そんな2人を遥かに凌ぐ速さで小猫の下へ向かう者がいた。その人物はあっという間に空中へ投げ出された小猫に辿り着き…

 

 

「オラアッ!!」

 

 

『グルオオオオオッ!!??』

 

 

ドゴオオオオオオンッ…!!

 

 

空中回し蹴りでケルベロスを吹っ飛ばしながら、落下している小猫を受け止めた。その人物とは言うまでもなく…

 

 

「…リクオ、先輩?」

 

 

「大丈夫か、小猫?」

 

 

「…! はい…ありがとうございます…」

 

 

ルーシィやララ達をまとめる少年──奴良リクオであった。そしてリクオが地上に降り立った所で…

 

 

「ッ……/////!」

 

 

小猫はようやく自身の状況に気付き、咄嗟に両手で体を隠すような動作を見せる。何しろ彼女の制服はケルベロスの攻撃によって大きく引き裂かれており、所々素肌が見えてしまっている状態なのだ。しかもそんな格好で男子に俗に言う“お姫様抱っこ”をされているとなれば…顔を赤面させてしまうのも仕方のない話であった…。それに対し、

 

 

「っ! あー…すまねえ、小猫。ちょっと待ってろ」

 

 

リクオもそんな彼女の格好に気付いたのか、若干気まずそうにしながらも彼女をそっと下ろし、自らが羽織っている外套に手を掛ける…。

 

 

ファサッ…!

 

 

「…!」

 

 

「もう何度目になるか分かんねえが、とりあえずそいつを羽織ってろ」

 

 

「…ありがとうございます…////」

 

 

体を隠すように掛けられた外套を羽織りつつ、再び感謝の言葉を呟く小猫…。と、そこへ、

 

 

「小猫ちゃん!!」

 

 

「! アーシアか。丁度良い。小猫の怪我を見てやってくれ」

 

 

「はい!」

 

 

「私も手伝います!!」

 

 

「! ああ。頼む、ウェンディ」

 

 

駆け付けてきたアーシアとウェンディに小猫を任せるリクオだったが…実は先程からずっと無視し続けていることがある。それは…

 

 

「ちょっとおおおおおっ!!!? 頼むからいい加減こっちにも目を向けてエエエエエッ!!!」

 

 

『グルオオオオオオオオオオオオッ!!!』

 

 

ケルベロスに絶賛追い掛けられ中のイッセーのことである…。

 

 

「…何を遊んでいるんですか、兵藤一誠」

 

 

「いや遊んでないからッ!! 今にも喰われそうになってる所だからッ!! 何処をどう見たら遊んでるように見えんのヤミちゃんッ!?」

 

 

「そんなことないと思うよ、イッセー先輩♪ だって、ほら…」

 

 

『グルアアアアアアアアアアアアッ!!!』

 

 

「その子も凄く楽しそうだし♪」

 

 

「絶対違うよねッ!? どう見ても鬼の形相が3つ並んでるようにしか見えないんだけどッ!?」

 

 

ヤミと芽亜の発言に対し、ケルベロスの追撃を間一髪避けながらツッコミを入れるイッセー…。

 

 

「つべこべ言ってる暇があったら避けるのに集中しろ。食われるぞ?」

 

 

「いやコイツ怒らせたのお前のだろ!? 責任持って何とかしてくんない!?」

 

 

「知るか」

 

 

「まさかの即答!?」

 

 

リクオの辛辣な対応にもすかさずツッコむ。しかし…

 

 

「ッ! ギャアアアアアアアアアアアアアッ!!??」

 

 

ついに追い付かれ、三つ首の1つに喰われそうになった…次の瞬間、

 

 

シュインッ…!!!

 

 

『グルオオオオオオオオオッ…!!???』

 

 

「! やっと来たか…(ボソッ)」

 

 

突如その巨大な胴体が真っ二つに斬られ、断末魔を上げながら姿を消したのだ。そしてリクオは目の前の光景を“ある人物”によるものと瞬間的に気付き、そう呟く…。

 

 

「加勢に来たぞ、兵藤一誠。もっとも、そちらには一切必要はなさそうだな」

 

 

「! ゼノヴィア!!」

 

 

イッセーはケルベロスを両断した人物──ゼノヴィアを見て、思わず声を上げた。その一方、

 

 

「流石は7本の中で最も破壊力のある聖剣だな。ケルベロスを一太刀か」

 

 

「あなたがそれを言っても嫌味にしか聞こえないわよ、エルザ。あなたなら普通の剣でも簡単に斬れるでしょ…?」

 

 

ゼノヴィアの持つ“破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)”に対するエルザの発言を聞いて、ミラジェーンは思わず苦笑いを浮かべた…。

 

 

「よう」

 

 

「!」

 

 

「遅かったじゃねえか、聖剣使いさんよ」

 

 

「もう1人の副総帥…。そうか、それが噂にもあったお前のもう1つの姿か」

 

 

「ああ。それとその副総帥ってのはやめてくれ。リクオで構わねえよ」

 

 

ここでリクオはゼノヴィアに声を掛ける。

 

 

「あそこでふんぞり返ってる鴉からのダメージの回復に、時間が掛かったからか?」

 

 

「! 流石に気付いているか…。ああ、奴の強さは予想を遥かに超えていた。お蔭でイリナともはぐれてしまってね。恐らく彼女はもう…」

 

 

ゼノヴィアはそう話しながら、僅かに悲痛な表情で顔を俯き始めた。どうやらイリナが最悪の状況に陥っていると考えているようである…。それを見て、

 

 

「あの女なら無事だ」

 

 

「っ! 何…?」

 

 

「俺達の仲間が保護してる。今は俺達が暮らしてる家の中だ。派手に痛め付けられてたが、そこにいるウェンディが治したお蔭で命に別状はねえよ。そうだろ、ウェンディ?」

 

 

「あ、はい! 安静にしていれば、すぐに回復すると思います!」

 

 

ゼノヴィアが驚きを露わにする中、リクオはすぐ近くにいたウェンディに確認を取った。すると、

 

 

「…イリナを助けてくれたこと、心から感謝する」

 

 

「俺は何もしてねえよ。今礼をするならウェンディにしてやれ」

 

 

「! き、気にしないで下さい。私はただ当たり前のことをしただけですから…」

 

 

リクオの言葉にウェンディは謙遜するような態度を見せるが、その間にもゼノヴィアが彼女の方へ向き直り、控えめに頭を下げながら感謝の言葉を述べる…。そんな中、

 

 

『…! グルアアアアアアッ!!!』

 

 

仲間の殺られる姿を見た1体のケルベロスが、狙いを変更して“或る人物”の方へ迫っていく。その人物とは…

 

 

「アーシアッ!!」

 

 

「ッ! キャアアアアアッ!!?」

 

 

「バルゴ!!」

 

 

「畏まりました、姫」

 

 

丁度完全に無防備になってしまっているアーシアである。それを見たイッセーが思わず叫ぶ中、ルーシィは咄嗟にバルゴへ指示を出した。だが…

 

 

「ったく、お前も来んのが遅えよ…(ボソッ)」

 

 

その様子を見ていたリクオは少し呆れた口調で呟いた。と、次の瞬間、

 

 

ズガガガガガガガッ…!!!!

 

 

『…!!』

 

 

アーシアの目の前まで迫っていたケルベロスの胴体に、地面から突如無数の魔剣が現れて突き刺さったのだ。そして、すぐさまアーシアの隣に1人の少年が姿を見せる。それは…

 

 

「木場!!」

 

 

「! 裕斗…!!」

 

 

ゼノヴィアと共に行方の分からなかった人物──木場裕斗だった…。

 

 

「朱乃!!」

 

 

「はい、部長♪」

 

 

彼の登場を受けて士気がより高まったのか、リアスは先程よりも大きな声で指示を飛ばし、朱乃もそれに応えるように雷の威力を高め始める。どうやらイッセーが既に“赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)”で力を譲渡しているせいか、2人の力はいつもの数倍くらいに高まっていた。更にその間にも、

 

 

「…えい」

 

 

ズゴオオオオオオンッ!!

 

 

戦線に復帰した小猫がケルベロスの巨体を軽々と持ち上げ、仰向けになるよう地面に叩き付ける。これで朱乃とリアスの一撃を避ける手立ては…ケルベロスには無い…。

 

 

「はあっ!!」

 

 

「ふっ!!」

 

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオンッ…!!!!

 

 

最大限に高められた雷と滅びの魔力を同時に受けたケルベロスは、その場から跡形も無く消滅した…。

 

 

「赤龍帝の力を譲渡したことによる威力の底上げか…。なるほど、確かにあれならコカビエルにも届く可能性が…」

 

 

「いや、そいつはどうだろうな…。んなことより、お前もまた随分と遅い到着じゃねえか、裕斗」

 

 

「…! ゴメン、コカビエルと戦った時に少しダメージを負ってね。それよりリクオ君、この状況は一体…」

 

 

「ああ、アイツ等のことか。アレの説明は後で…」

 

 

それを見たゼノヴィアが期待を込めた評価を下す中、遅れてやってきた裕斗とそんなやり取りを交わすリクオ。ちなみにリクオの言う“アイツ等”とは、現在響達が中心となって対抗しているノイズ達に他ならない…。と、その時、

 

 

「中々見応えのある余興だったぞ」

 

 

『…!!』

 

 

そんな戦闘の様子をのんびりと見ていたコカビエルが、一言そう呟いたのだ。すると、それを見たリアスは…

 

 

「喰らいなさいッ!!!」

 

 

ゴオオオオオオオオッ…!!!

 

 

「! でかい…!!」

 

 

コカビエルに向けて滅びの魔力の奔流を放った。その大きさを見たイッセーが思わず声を上げる中、その奔流は真っ直ぐコカビエルへと向かっていき…

 

 

「フッ…」

 

 

「ッ…!!??」

 

 

「リアスッ!!」

 

 

軽い片手の一振りで跳ね返されてしまった。その一撃が真っ直ぐリアスの方へ進んでいくのを見て、思わず彼女の名前を叫ぶ朱乃。そして…

 

 

『break』

 

 

バキィィィィィィンッ…!!!

 

 

リアスを呑み込む一歩手前で、粉々に砕け散った。何故なら…

 

 

「大丈夫か、リアス?」

 

 

「! ええ…ありがとう、当麻」

 

 

瞬時にリアスの前に現れた当麻が自らの神器──“虹龍王の顎(アルカディア・ストライク)”で打ち消したのだ…。

 

 

「ほぉ、それが噂の“十四番目の神滅具”か? 見た目は赤龍帝の神器に似ているが…感じるぞ! 心地良い程の禍禍しい圧力(プレッシャー)をッ!!」

 

 

「…どうやら俺達の情報は、この前表に出たお蔭ですっかり出回ってるみたいだな…。まぁ、とりあえず俺の力を買ってくれてることには礼を言っとくぜ? 堕天使の幹部さんよ」

 

 

「! 俺を前にしてもその余裕か…。やはり貴様等は俺が相手をするのに相応しい者達のようだな。だが…」

 

 

当麻の様子を見たコカビエルはそう言ったかと思うと、ここで口角を更に吊り上げ…

 

 

「周りが見えていない時点で、高が知れるぞ?」

 

 

「! 一体何を言って…」

 

 

続けて意味深な呟きを口にしたのだ。それを見たリアスは疑問を抱きつつコカビエルに尋ねようとした…その時、

 

 

「! 響ッ!!」

 

 

「え?」

 

 

『ッ…!!』

 

 

未来の突然の叫びを聞き、グレモリー眷属と殆どのアイエールの面々が咄嗟にそちらへ目を向けると、そこには…紫色の鎖が響の頭上から迫っていたのだ。しかも響はそれに気付いていないのか、少々間の抜けた声を出してしまっている。

 

 

「立花ッ!!」

 

 

「あのバカッ…!!」

 

 

翼とクリスがすぐさまその鎖を破壊しようと動くが、どう見ても間に合う様子はない。恐らく此処にいる殆どの者達が“ダメだ”と直感的に感じてしまっているだろう…。しかし、

 

 

「周りが見えてないのは…テメエの方だ」

 

 

当麻はいつにも増して鋭い視線を向けながら、コカビエルにそう言い放ったのだ。と、次の瞬間、

 

 

バキィィィィィィィィィィンッ!!!

 

 

響に迫っていた紫色の鎖は、彼女を捉える寸前で突如斬り裂かれる。それを行ったのは、彼女の目の前に現れた1人の青年だった…。

 

 

「! 一護さん…!」

 

 

「少し下がってろ、響」

 

 

自身に駆け寄って来ようとする響に対し、その青年──黒崎一護は左手でそれを制する…。

 

 

「いつまで隠れてるつもりだ? いい加減さっさと出てきやがれ」

 

 

「…チッ、相変わらずムカつく態度だな、糞餓鬼」

 

 

『っ…!!』

 

 

そう言った瞬間、1人の男の声が響き渡ると同時に、その姿を現す。金色のロン毛に白衣を羽織った男…そう、響達を手に入れると宣言した元研究員である…。

 

 

「まあ、んなことはどうでもいい。どうやら俺の“所有物共”をノコノコ持ってきてくれたみてえだからなぁ…。今度こそ返してもらおうじゃねえか…」

 

 

パチンッ!

 

 

白衣の男が下卑な笑みを浮かべながら指を鳴らすと、男の周囲に7つの魔方陣が展開される。そこから現れたのは…

 

 

「ハッ、ようやくかよ! 待ちくたびれたぜッ!!」

 

 

「暑苦しい…落ち着くという行為を覚えたらどうだ、小僧」

 

 

「そういう貴公も静粛に願いますか? 主は無用な争いを望まないものです」

 

 

「うわ、出たよ。その意味分かんない神様崇拝、何とかなんないの?」

 

 

「ダメよ、そんなこと言っちゃ。同じ穴の狢(ムジナ)同士、少しは仲良くしないと」

 

 

「………」

 

 

7人の男達だった。しかもその容姿や言動から、それぞれ大きく特色の異なる人物達であることが窺える…。

 

 

「あの女達が、俺達の“獲物”か?」

 

 

「ええ、そうですとも。どうぞ思う存分暴れてきて下さい。ですが、目的は理解していますね?」

 

 

「“研究に支障の無い状態で捕らえる”…それで構わないな?」

 

 

「分かっているのであれば結構。何しろそのために私は、あなた方をこの世界へ解き放ったのですから…」

 

 

7人の中でもリーダー格と思われる男と、何故か敬語口調でそんなやり取りを交わす元研究員…。と、ここで、

 

 

「そいつ等が響達を捕まえるために集めた、テメエの仲間か?」

 

 

「! 仲間っていうのは正しい表現じゃねえなぁ…。俺達はあくまで依頼を土台にして信頼を関係を築いている“ビジネスパートナー”…。テメエ等餓鬼共のつまらねえ絆ごっことは違うんだよ」

 

 

「ッ…!」

 

 

一護の問い掛けに対する元研究員の男の言葉を聞いて、後ろにいた響が思わず前に出ようとするが、それを一護は再び左手で制する…。

 

 

「“絆ごっこ”か…。まあ、確かにテメエならそう考えるんだろうな…。なら、証明するしかねえよな? 俺達のしてることが、テメエの言う“ごっこ遊び”じゃねえってことを…」

 

 

一護はそう言ったかと思うと、後ろにいる響を始め、七星の歌姫の面々全員に目を向ける。そして真剣な表情を浮かべたまま、僅かに頷く素振りを見せると…

 

 

『! はい(おう)(ああ)(ええ)(うん)(はいデス)!』

 

 

響達7人は力強く答え、一護よりも前に躍り出たのだ。それを見て…

 

 

「…一体何の真似だ?」

 

 

「見ての通りだ。そいつ等の相手は響達がする…。テメエは俺とサシでけりを着けようじゃねえか」

 

 

『ッ!!?』

 

 

一護が元研究員の男にそう宣言すると、元研究員達とグレモリー眷属の面々は驚きを露わにした。

 

 

「な、何言ってんだよ一護!? そいつ等が狙ってんのは、響ちゃん達なんだろ!? だったら皆で…!!」

 

 

グレモリー眷属を代表するように、一護に対して慌てて詰め寄ろうとするイッセー。だが…

 

 

ガシッ!!

 

 

「っ!?」

 

 

「止めるなよ、イッセー」

 

 

それを近くにいたリクオが肩を掴んで止めた…。

 

 

「これはアイツ等で片を着けなきゃなんねえことなんだよ。俺達が下手に手を貸しても、何一つ解決しねえ…」

 

 

「っ! “解決”って…そんなこと言ってられる話じゃないだろ!?」

 

 

「いや、そういう話なんだよ。お前には分かんねえことだろうけどな…。それにお前には相手をしなきゃならねえ奴が、あそこにいるだろ?」

 

 

「…! け、けどよ…!!」

 

 

リクオに上空のコカビエルのことを指摘されても尚、イッセーは食い下がろうとした。と、その時、

 

 

「イッセーさん!」

 

 

「…!」

 

 

そんなイッセーに声を掛けたのは…響だった。

 

 

「ありがとうございます、心配してくれて…。でも、大丈夫です!」

 

 

ガッ!!

 

 

「私も皆も、絶対に勝ちますからッ!!」

 

 

右拳を自らの左手で受け止めることで、闘う意志を明確に表現する響。それを見たイッセーは口を出すことを止めると同時に、ハッキリと感じていた。現在の響達は紛れもなく…“戦士”だということを…。

 

 

「クククククッ…! “絶対に勝つ”、ねえ…。くだらねえこと言ってんじゃねえぞ、クソ小娘(ガキ)共が…」

 

 

パチンッ!

 

 

元研究員の男は笑みと苛立ちを交互に見せたかと思うと、再び指を弾いて音を鳴らした。すると…

 

 

キィィィィィィンッ…!!

 

 

周囲にいた7人の男達が、足元に現れた魔方陣によって姿を消したのだ。そして彼等が消えた場所には、七色に色分けされた魔方陣が姿を見せている…。

 

 

「なら、テメエ等の要望に答えてやるよ…。この7つの魔方陣の先には、さっきまでここにいた連中が首を長くして待ってる。1人ずつ立ち向かう気が本気であるなら、コイツを潜れ…。怖じ気付くなら勝手にしろ。まあ、つっても何処に逃げようと、確実に捕まえてやるんだがなぁ…」

 

 

“醜悪”と表現するしかないような笑みを浮かべながら、そう話す元研究員の男…。

 

 

「前に話した通り、コイツ等は俺達の獲物だ。あんたは残りの連中を相手する…。それで構わねえな?」

 

 

「フッ、勝手にしろ…」

 

 

「オーケー、契約は完全に成立だ。クククッ、楽しみだねぇ…何しろ、テメエ等を絶望させた状態で手に入れられるんだからなぁ…」

 

 

元研究員の男はコカビエルとそんなやり取りを交わした後、その言葉と共に魔方陣を用いて姿を消した…。

 

 

「当麻、リクオ」

 

 

「言うまでもねえだろ、一護?」

 

 

「さっさとケリを着けてこい…。そいつ等と一緒にな…」

 

 

それを見た一護達は、既に男の挑発に乗る気満々だった。一護が当麻とリクオからそんな言葉を受け取っているかと思えば…

 

 

「皆さん、気を付けてください。あの人達は…」

 

 

「大丈夫。誰が相手でも絶対に負けない…」

 

 

「ここは任せるデスよ!」

 

 

調と切歌は雪菜の注意を促すような言葉に対し、自信を持った様子で答え…

 

 

「んじゃあ、さっさと片してくるわ」

 

 

「あなた達も気を付けなさい。一瞬現れたあの男達からも、かなり嫌な感じがしたわ…。油断しない方がいいわよ」

 

 

「! ありがとうございます、紗矢華さん」

 

 

クリスと未来の2人も紗矢華とそんなやり取りを交わした…。

 

 

「準備はいいな?」

 

 

「ああ(ええ)!」

 

 

「勿論ですッ!」

 

 

最後の確認といった雰囲気の一護の問い掛けに対し、力強く頷く翼とマリア、響の3人…。と、そこへ、

 

 

「黒崎一護」

 

 

「! よう、ゼノヴィア」

 

 

ゼノヴィアがフルネームで一護を呼び止める。

 

 

「あまり事情を把握できていないが、貴様には施しを受けた借りがある。こう見えても私は、借りを返さないと気が済まない性分でね…。必ず戻ってこい」

 

 

「! お前に激励されるとはな…。ああ、分かった」

 

 

更に…

 

 

「一護君」

 

 

「! 今度は朱乃か。どうした?」

 

 

続いて朱乃も一護に声を掛けてきた…。

 

 

「あなたの強さは私も実際にこの目で見ていますから、あまり心配はしていないのですが…」

 

 

いつもの御淑やかな笑みを浮かべていたかと思うと、一転してその笑みを少し不安げなモノに変え…

 

 

「ちゃんと帰ってきて下さいね…?」

 

 

「! ああ…必ず戻る…」

 

 

その問いに短くも力強い声色で答える一護。そして…

 

 

「…行くぞ」

 

 

ダッ!!×8

 

 

その一声を合図に、一護と響達は一斉に地面を力強く蹴り…それぞれ色の異なる8つの魔方陣の中へ飛び込んでいった…。

 

 

 



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バカは遅れてやってくる


大変ご無沙汰しております。およそ5ヶ月ぶりの投稿です。


今回は後半が滅茶苦茶混沌としているので、御了承ください…。主に“中の人ネタ”だったりしたりしなかったり…。


では、本編をどうぞ。




当麻達の暮らしている屋敷の敷地内。以前も述べたように、ここにはちょっとした林もあれば、人工の池もある。そして現在、その林の中で複数の怪しい影が蠢(うごめ)いていた…。

 

 

「ここで間違いないな?」

 

 

「ああ…ここがあの“アイエール”のアジトだ」

 

 

十数ほどの影の内の2つから、そんな会話のやり取りが聞こえてくる。見た目は人間の男性だが…その雰囲気は明らかに“人外”のものだった…。

 

 

「情報通り、奴等はコカビエルの下へ向かったか」

 

 

「ああ。しかし、こうも易々と侵入できるとはな。魔王クラスの神器所有者がゾロゾロ居ると聞いていたが、所詮は出来たばかりの組織…あの程度の結界しか張れないようでは、高が知れるな…」

 

 

アイエールという組織そのものに対し、小馬鹿にするような評価を口にする2人の男達。彼等がここへ侵入してきた目的は…

 

 

「魔力を持たない雑魚達の気配もするが…やはり居るぞ、あの“煌炎の朧姫(ファルプラム)”が…」

 

 

「“大魔王”と互角に渡り合ったと言われている、北欧最強の戦乙女(ヴァルキリー)…。しかし、どうやら病に伏せているというのは事実らしい」

 

 

「病に倒れているのであれば、恐るるに足りん。“最強の戦乙女を捕らえる”絶好の機会だ。その上…女としても相当な上物という話だからなぁ…」

 

 

屋敷の中で床に伏せているサーシャである。しかも片方の男の発言からも分かるように、この男達は俗に言う“下衆”と評価されるような性質の持ち主だった…。

 

 

「そろそろ行くぞ。あちらへ向かった連中が戻ってくる前に、目標を達成しなくては…」

 

 

「分かっている。では…」

 

 

そして、2人の人外の男達が背後にいる仲間と共に屋敷へと突入しようとした…その時、

 

 

 

 

 

「随分と薄汚い蝙蝠(コウモリ)共だな」

 

 

「「ッ!!??」」

 

 

そんな声が何処からともなく響き渡ったかと思うと…そこから蹂躙は始まった…。

 

 

「悪魔の丸焼きショーの始まりだゾ☆」

 

 

ゴオオオオオオオオオオオオッ…!!!

 

 

『ギイャアアアアアアアアアアアアアアッ…!!?!?』

 

 

背後にいた人外の仲間達の内、ある者達は横から突如放たれた業火に焼かれ…

 

 

「うっさい! いいから黙って始末しろっつーの!!」

 

 

ドシュッ!!×4

 

 

ある者達は水で構成された鋭利な槍で心臓を貫かれる…。

 

 

「地味な連中だ。精々派手に死ね」

 

 

ドガアアアアアアアアアンッ!!!

 

 

ある者達は上から降ってきたコイン状の物体に押し潰され…

 

 

「本当につまらない相手ですわね。あの堕天使さんの方がまだ愉しく踊れそうな気がしますわ」

 

 

ザァンッ!!×4

 

 

ある者達は西洋剣による一振りで胴を真っ二つに斬り裂かれる。その結果…この場に残ったのは、件(くだん)の2人の男達のみとなった。そして…

 

 

「な、何だこれは…!? 一体どうなっているッ!!?」

 

 

「こうも誘いに容易く引っ掛かるとはな。所詮は自己顕示欲の高い蝙蝠という訳か」

 

 

「ッ! き、貴様は…!!?」

 

 

男達が数秒で全滅した仲間達の姿に驚く中、そこへ1人の人物が姿を現す。それは…

 

 

「キャロル・マールス・ディーンハイムッ…!!?」

 

 

魔法使いを連想させるような格好をした金髪の少女──キャロルだった。しかも彼女の後ろには、先程の蹂躙劇を繰り広げた4体の自動人形達の姿もある。

 

 

「ば、馬鹿な!? 何故…」

 

 

「何故一切力の気配を感じなかったオレ達がここにいるのか…とでも聞くつもりか?」

 

 

「ッ…!!」

 

 

自身がまさに口にしようとしたことを先に言われ、あからさまに驚愕する片割れの男…。

 

 

「存在を感知させないようにすることなど、オレにとっては造作も無い。あとはノコノコ現れた貴様等を狩ればいい話だ。ここが“もぬけの殻”だと思い込んだ貴様等をな」

 

 

「…我々を誘い込んだというのか?」

 

 

「そう言っている筈だがな。それとも貴様等悪魔は、この程度の内容も理解できない“無能”なのか?」

 

 

ボゴオオオオオオオオオオンッ…!!!!

 

 

キャロルの見下すような発言を聞いた瞬間、人外の…“悪魔”の男2人の内の1人が目の前の地面に拳を叩き付けた。その威力は尋常ではなく、数メートル程の深さのあるクレーターが出来ている…。

 

 

「言葉を慎んだらどうだ? いくら“歴代最強”と言われようが、所詮は人間の域を出ない“錬金術師”…」

 

 

そう言いながら、悪魔の男は両手に魔力を集束し始める。それはもう1人の悪魔も同様だった…。

 

 

「人間に悪魔が劣るなど…断じてあり得んッ!!」

 

 

ズガアアアアアアアアアンッ!!!!

 

 

悪魔の男達の放った魔力砲は真っ直ぐキャロル達へと向かい、大爆発を引き起こした。前方は一瞬で火の海となり、彼女達の姿は一向に見えてこない…。と、次の瞬間、

 

 

「グエッ!!?」

 

 

「なっ!!?」

 

 

悪魔の男達に異変が襲い掛かった。突如彼等の身体に鋼線が巻き付き、身動きを封じてしまったのだ。すると…

 

 

「醜い誇りだな。醜過ぎて反吐が出る…」

 

 

「「ッ!!??」」

 

 

燃え盛る炎の中からガリィ達自動人形(オートスコアラー)引き連れて、1人の人物が姿を現す。その人物は…露出の高い紫色のプロテクターを身に纏った、見た目20代半ばくらいの女性だった。

 

 

「だ、誰だ貴様はッ!!?」

 

 

「誰だと? 自分が攻撃した相手を忘れたのか?」

 

 

「ッ!? まさか…!!?」

 

 

「本来であれば、貴様等のような蝙蝠共に使う必要など無いのだがな。調整の足しくらいにはなるだろう…」

 

 

悪魔達の目の前にいる女性…それは言うまでもなく、先程悪魔達が攻撃した相手───キャロル・マールス・ディーンハイムである。しかしその変貌ぶりに、悪魔達は信じられない様子で思わず声を上げた。

 

 

「グギギッ…!!??」

 

 

「っ!? ま、待て!! 今すぐに引き上げるし、今後一切お前達に危害を加えるような真似はしない!! だから…!!」

 

 

「…そうか。では…」

 

 

キャロルがそう口にし始めた瞬間、悪魔の男は心の中でほくそ笑む。自身の上辺だけの命乞いが成功したと思ったのだ。そして…

 

 

ザシュッ…!!!

 

 

「失せろ…」

 

 

悪魔達は鋼線によって、物言わぬ無惨なバラバラ死体へと成り下がった…。

 

 

「血の海に沈む悪魔か…。中々派手だな」

 

 

「ふふっ、そうですわね。こちらの姿の方がお似合いですわ」

 

 

「出来ればもう少し焼きたかったゾ☆」

 

 

目の前に広がる凄惨な光景を前にしても、呑気にそんなやり取りを交わすレイア、ファラ、ミカの3人。その一方で、

 

 

「マスターも結構えげつないですねぇ? 1回油断させてから瞬殺するなんて♪」

 

 

「お前だけには確実に言われる筋合いがない。むしろこれはお前の方がよく使う手だろう」

 

 

「あらあら、心外ですよマスタ~? 私がそんなに性根の腐った人形に見えますか~?」

 

 

「むしろ何処に性根の腐っていない要素がある…! まったく、やはりお前の性格が一番堪(こた)えるな…」

 

 

ガリィは相も変わらず性根の腐った性格を前面に出していた。これにはキャロルもそう溜め息混じりに呟かざるを得ない…。と、その時、

 

 

「立体文字(ソリッド・スクリプト)! 爆発(エクスプロード)ッ!!」

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!

 

 

「はあああああああっ!!!」

 

 

ザシュッ!!!×3

 

 

『グアアアアアアアアアアアッ!!!??』

 

 

そんなキャロル達の近くで爆発が起きたかと思うと、黒煙の中から断末魔が聞こえてきたのだ。そして、暫くしてそこから姿を現したのは……

 

 

「! キャロル!」

 

 

「そっちも終わったみたいだね?」

 

 

銀髪ショートカットが特徴の少女―――リサーナと、青髪が特徴の少女―――レビィだった。尚、リサーナの格好は白黒の縞柄の猫を連想させるような露出の高いものとなっており、頭には猫耳も生えている…。

 

 

「お前達か」

 

 

「おー、こっちの悪魔達もちゃんとこんがり焼けてるゾ☆」

 

 

「敷地内に悪魔の反応無し…。侵入した悪魔達の排除は、これで完了だな」

 

 

2人の姿を見たキャロルが素っ気なく呟く一方、ミカとレイアはそれぞれ悪魔の残骸を木の枝で軽くつついたり、悪魔の気配が無いことを確認したりしていた。

 

 

「でも、まさかこんな時に悪魔が侵入してくるなんて…。それに狙いは…」

 

 

「サーシャ…だよね?」

 

 

悪魔が侵入してきたことに加え、その狙いがサーシャであったことに対して表情を曇らせるリサーナとレビィ。それに対し、

 

 

「彼女が病に侵されてるという噂は既に広まっていますわ。恐らくその状態なら物に出来ると踏んで、今回の愚行に及んだのでしょう」

 

 

「ええ、全く御馬鹿にも程があるって話ですよぉ。何しろ、“その噂自体、実は大外れ”なんですからねぇ…」

 

 

ファラとガリィは気にした様子も無く淡々とそう口にした。特にガリィは何処か愉快気に意味深な言葉を口にしていたが…。と、その時、

 

 

<ズガアアアアアアンッ………!>

 

 

『……!』

 

 

遠くの方から聞こえて来た轟音を耳にして、思わずそちらに目を向けるキャロルやレビィ達。その方角にあるのは…

 

 

「学園の方から…。戦いが始まったみたいだね」

 

 

「ミラ姉達のことだから、心配する必要なんて微塵も無いんだけど…」

 

 

「いや、むしろ敵の心配をした方が良いと思うゾ?」

 

 

「ていうか、あんたは行かなくてよかった訳? 3本の聖剣が合体すんでしょ? 御自慢の“剣殺し(ソードブレイカー)”でバラバラにしたいと思わなかったの?」

 

 

「ええ、完全に興味を失くしましたわ。あの程度のモノが3本合わさった所で高が知れますし……

それに、何となく私が出る幕ではないような気もしましたから」

 

 

ガリィの問い掛けに対し、心底どうでもいいといった様子で答えるファラ。そして…

 

 

「用は済んだ。戻るぞ」

 

 

「また部屋に籠って研究? 程々にした方が良いんじゃない?」

 

 

「それはお前の隣にいる本の虫に言ったらどうだ?」

 

 

「っ!? えっと……」

 

 

キャロルとリサーナ、レビィがそんなやり取りを交わす中、全員その場を後にして屋敷へと戻っていく。そんな彼女達の後ろには悪魔の残骸は勿論のこと、戦闘の形跡そのものが全て無くなっていた…。と、その時、

 

 

「た、大変です~…!!」

 

 

「! あら? あれはエルフナインではありませんの?」

 

 

「どこからどう見てもそうだな」

 

 

前方からやってくる小さな人影を見た瞬間、ファラとレイアはその人影の正体がアイエールの技術担当の1人――エルフナインであることに気付いた。

 

 

「はぁ…はぁ…や、やっと見つけました…!」

 

 

「何でお前がここに居るんだゾ?」

 

 

「あのメイドと一緒に聖剣遣いの見張りをしてた筈よね~? ひょっとしてサボりですかぁ?」

 

 

「! ち、違いますよ、ガリィ…!」

 

 

ミカとガリィの問い掛けを聞いて、慌ててそう答えるエルフナインだったが…

 

 

「さっさと本題に入れ。何があった?」

 

 

「! た、大変なんです! 実は……」

 

 

キャロルにそう尋ねられると、慌ててやってきた経緯を話し始めるのだった…。

 

 

☆☆

 

 

 

 

場所は再び戻り、駒王学園での戦いは大きな戦況の変化が起きていた。何故なら…

 

 

『大丈夫──』

 

 

『皆が集まれば──』

 

 

『受け入れて──』

 

 

『僕達を――』

 

 

響き渡るのは魂の声…。かつて聖剣計画によって無慈悲にその命を奪われた、少年少女達の声である…。

 

 

『怖くない──』

 

 

『たとえ、神がいなくても──』

 

 

『神が見ていなくても──』

 

 

『僕達の心は、いつだって──』

 

 

そしてその声を涙を流しながら受け止めていた、今を生きている青年――木場裕斗は…

 

 

「――――1つだ」

 

 

その瞬間、少年少女達の魂は蒼白い光りの奔流となり、裕斗を包み込んだ。すると、そんな光景を見て…

 

 

「ねぇ、シノン」

 

 

「…! 何?」

 

 

「“生きてる”って、大切な事だよね。やっぱり…」

 

 

「…ええ…」

 

 

ユウキが周囲にいるノイズ達を斬り払った所で、近くにいたシノンにそう言ったのだ。しかもそんな彼女の左手には…いつの間にか、紫色の宝石があしらわれた“銀のロザリオ”があった…。

 

 

「同志達は、僕に復讐を願ってなんていなかった…望んでなかったんだ…。でも、僕は目の前の邪悪を打ち倒さなければならない。第二、第三の僕達を生み出さないために…!!」

 

 

「フンッ、愚か者めが…素直に廃棄されていれば良いものを…!」

 

 

覚悟の籠った視線を向ける裕斗の言葉に対し、依然として余裕を崩さない聖剣計画の首謀者──バルパー・ガリレイ…。と、その時、

 

 

「木場ァァァァッ!!! フリードの野郎とエクスカリバーをぶっ叩けッ!!!」

 

 

「! イッセー君…」

 

 

「あいつ等の想いと魂を、無駄にすんなァァァァァァッ!!!」

 

 

イッセーが腹の底から声を出し、裕斗へ激励の言葉を掛けたのだ。更に、

 

 

「やりなさい、裕斗! 貴方はこのリアス・グレモリーの眷属…私の“騎士(ナイト)”は、エクスカリバー如きに負けはしないわ!!」

 

 

「裕斗君、信じてますわよ!」

 

 

「…裕斗先輩!」

 

 

「木場さん…!」

 

 

リアスや朱乃、小猫、アーシアも続けて裕斗にそう声を掛ける。すると、それを見て、

 

 

「俺の前で余所見をする余裕があるのか、リアス・グレモリー!」

 

 

「ッ…!?」

 

 

裕斗に目を向けているリアスに向かって、コカビエルが光の槍を手にしながら迫る。両者の力量差を考えれば、リアスは即座に墜ちていただろう。だが、そうはならなかった。何故なら…

 

 

「余所見をしてるのはテメエの方だ」

 

 

「ッ!!?」

 

 

ザシュッ…!!

 

 

「グオッ!?」

 

 

上空から飛んできた斬撃がコカビエルを阻んだのだ。コカビエルは咄嗟に後退したものの、動きが甘かったのか肩口を軽く斬り裂かれている…。そんな斬撃を放ったのは…

 

 

「当麻…!」

 

 

左手にサーベル型の長剣を手にしている青年──上条当麻だった。そしてリアスが思わず声を上げる中、当麻も裕斗に対して声を掛ける…。

 

 

「復讐なんて下らない幻想に囚われるな、木場! そいつ等の願いが分かったんなら、その下らない幻想ごとぶった斬ってこい!!」

 

 

「! 当麻君…」

 

 

「ま、そういうこった」

 

 

「…!」

 

 

当麻の言葉に続けて、最後にリクオがこう言い放つ…。

 

 

「お前の力が何のための物か、これで理解できたんじゃねえのか…? お前の本当の力、ここで見せてもらうぜ? “木場裕斗…」

 

 

「リクオ君…」

 

 

裕斗はその言葉を聞き終えると、より一層覚悟の籠った真剣な表情を見せた。すると、

 

 

「フリード!」

 

 

「はいなっ!」

 

 

スタッ…!!

 

 

「あーあー、なぁに感動シーンなんて作ってんですかねぇ~? あ~、もう聞くだけで御肌がガサついちゃう! もう限界ッ! とっととテメエ等を斬り刻んで、気分爽快になりましょうかね~ッ!?」

 

 

バルパーの呼び声を聞いて駆け付けた“はぐれ祓魔師(エクソシスト)”──フリード・セルゼンは、狂気に満ちた笑みを浮かべながら歪な聖剣を構える。だがその剣を目の前にしても、裕斗は一切動じることなく自らの魔剣を高々と掲げた。そして…

 

 

「僕は剣になる…! 僕の魂と融合した同志達よ、一緒に越えよう! あの時果たせなかった想いを、願いを! 今部長と、仲間達のための剣になる…“魔剣創造(ソード・バース)”ッ!!」

 

 

その瞬間、裕斗の手にしている魔剣が正反対の“黒と白のオーラ”を纏い始め、やがてその姿を変えた。そして裕斗は、こう口にする…。

 

 

「禁手(バランス・ブレイク)、“双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)”…聖と魔を有する剣の力、受け取るといいッ!!」

 

 

「ッ!!? せ、聖魔剣だと!? あり得ない!! 反発する二つの要素が混じり合うなど、ある筈がッ…!?」

 

 

裕斗の持つ剣の正体を理解し、驚愕を隠せないバルパー。一方、こちらでも…

 

 

「へぇ~、ここでその状態に至ったんだ」

 

 

「恐らくあの男の奥底にある復讐心が、それを妨げていたんだと思う。そこから解き放たれたのなら、“禁手”に至るのはむしろ当然だ…」

 

 

クロメとアカメが珍しく感心した様子で裕斗を見ながら話している。と、ここで、

 

 

「リアス・グレモリーの騎士、まだ共同戦線は生きているか?」

 

 

「…だと思いたいね」

 

 

「ならば共に破壊しよう、あのエクスカリバーを」

 

 

「っ! いいのかい?」

 

 

「最早あれは聖剣であって聖剣ではない…“異形の剣”だ」

 

 

「…分かった」

 

 

ゼノヴィアが裕斗の隣に立ち、フリードの持つエクスカリバーの破壊を申し出たのだ。少し驚きながらも、その提案に頷く裕斗。するとそれを聞いたゼノヴィアは、

 

 

ガッ…!

 

 

自らの持っていた破壊の聖剣を地面に突き刺し、右手を真横に向かって突き出したかと思うと…

 

 

「ペトロ、バシリオス、デュオニシウス、そして聖母マリアよ…我が声に耳を傾けてくれ…」

 

 

そんな詠唱を呟いた途端、神々しい光の魔方陣が出現し、そこから一振りの剣が登場したのだ。次元空間から取り出されたその剣は、あちこちを鎖で厳重に繋がれている…。

 

 

「この刃に宿りし聖闘士(セイント)の御名において、我は解放する…!!」

 

 

パキィィィィィンッ…!!

 

 

続いての詠唱によって鎖から完全に解き放たれた剣を手にしたゼノヴィアは、構えながらその剣の名を言い放つ…。

 

 

「聖剣、“デュランダル”ッ!!」

 

 

『ッ…!!』

 

 

“デュランダル”という名を聞いた瞬間、その場に居た殆どの者達が驚きを露わにした。グレモリー眷属は勿論の事……

 

 

「デュ、デュランダルって…!?」

 

 

「エクスカリバーに並ぶ強力な聖剣だ。しかし…」

 

 

「まさかあの娘(こ)が持っているなんてね。ということは、つまりあの娘(こ)は…」

 

 

ルーシィやエルザ、ミラジェーンを始めとするアイエールの面々も同様であった。そしてミラジェーンの言わんとしていることは、すなわち…

 

 

「馬鹿なッ!? 私の研究では、デュランダルを扱える領域まで達してないぞッ!?」

 

 

「私はそいつやイリナとは違う…数少ない“天然物”だ」

 

 

「ッ!! 完全な適性者…“真の聖剣使い”だというのかッ!?」

 

 

バルパーに対するゼノヴィアの発言と全く同じものである。一方、それを見た当麻とリクオはというと…

 

 

【まさかデュランダルの使い手だったとはな…】

 

 

【天界の連中が選抜したのも多少納得だな。だが…】

 

 

【ああ、分かってる…】

 

 

デュランダルを手にしているゼノヴィアを見ながら、久々に頭の中での会話を行っていた…。

 

 

「こいつは触れた物は何でも斬り刻む暴君でね。私の言う事も碌に聞かない…それ故異空間に閉じ込めておかないと、危険極まりないんだ」

 

 

「ッ! そんなのありですかァァァァッ!!!」

 

 

ガキィィィィンッ!!

 

 

ゼノヴィアがデュランダルについて軽く話していると、苛立ちを露わにしたフリードが斬り掛かったことで戦闘開始となった。フリードは一旦斬りかかった所で後退し、エクスカリバーの能力を駆使して攻撃するが…

 

 

「はあッ!!」

 

 

ザァンッ!!!

 

 

「ここに来ての超展開ッ!!?」

 

 

デュランダルの一閃によって、容易く切り裂かれた。あまりのデュランダルの強さに思わず意味不明な言葉を口にするフリード。

 

 

「所詮は折れた聖剣ッ! このデュランダルの相手にはならないッ!!」

 

 

「ッ! クソッタレがァァァァァァッ!!!」

 

 

シュンッ!!

 

 

「そんな設定、いらねえんだよッ!!」

 

 

今度はゼノヴィアが斬り掛かるが、フリードは再びエクスカリバーの能力を使って素早く回避する。と、そこへ、

 

 

シュンッ!!

 

 

「ッ!?!?」

 

 

「そんな剣でッ!!」

 

 

キィィンッ!! キィィンッ…!!

 

 

今度は裕斗が斬り掛かり、空中で素早い剣戟の応酬となった。だが、それも殆ど一瞬の事であった。何故なら…

 

 

「僕達の想いは断てないッ!!!」

 

 

バキィィィィィンッ…!!!!

 

 

「お、折れたァァァァァァァッ!!??」

 

 

フリードの持っていたエクスカリバーが破壊されたのだから…。受けた攻撃の反動で、堪らず地面に膝を着くフリード…。そして…

 

 

「マ、マジ、ですか…? この俺様が、クソ悪魔如きにッ…!!」

 

 

ザシュッ…!!!

 

 

「ガハッ…!?」

 

 

ドサッ…!!

 

 

「見ていてくれたかい? 僕達の力は、エクスカリバーを超えたよ…」

 

 

遅れてやってきたダメージによってフリードが倒れ伏すと、裕斗は万感の想いを込めながら呟いた…。一方、その光景を見ていたバルパーはというと、

 

 

「何ということだ! 聖と魔の融合など、理論上…!」

 

 

ジャキッ!!

 

 

「ヒィッ!?」

 

 

「バルパー・ガリレイ! 覚悟を決めてもらおうッ!!」

 

 

依然裕斗の手にしている聖魔剣についての考えに浸っていた。フリードを倒し終えた裕斗が自身に切っ先を向けて来たことに気付いて怯えつつも、考えることを止めようとしない。すると、

 

 

「! そうか、分かったぞッ!! 聖と魔、それらを司るバランスが大きく崩れているのであれば説明が付く!! つまり魔王だけでなく、“神”もッ…!!」

 

 

バキィィィィィィンッ!!!

 

 

それは一瞬の出来事だった。上からバルパーに迫ってきた光の槍が、瞬時に移動してきた“或る人物”によって破壊されたのだ。その人物とは…“煌華麟(デア・フライシュッツ)”を手にしている少女――煌坂紗矢華だった。

 

 

「な、何故私を…」

 

 

自身への凶刃を防いでくれたことが理解できないのか、バルパーは思わず呆然としていた…。と、次の瞬間、

 

 

シュンッ!!

 

 

「はあッ!!」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

「グボァッ!?!?」

 

 

突如目の前に現れた少女―――姫柊雪菜の掌底を諸に受け、バルパーは地面を無様に転げ回った。そこには丁度、驚きで少し固まってしまっている裕斗の姿が…。

 

 

「貴方の手でケリを着けてください、木場先輩!」

 

 

「ボーッとしてんじゃないわよ…。あの子達の想いに応えるんでしょ?」

 

 

「…! ありがとう、2人共…」

 

 

雪菜と紗矢華の言葉を聞いて、驚きつつも柔らかな笑みを浮かべる裕斗。そして自身の持つ聖魔剣で…

 

 

「同志達の無念、ここで果たさせてもらう」

 

 

ザシュッ!!

 

 

「ガフッ…!?」

 

 

バルパーを叩き斬り…自らを長年苦しめていた復讐を終えた…。

 

 

「悪ぃな、雪菜、紗矢華。お蔭で助かった」

 

 

「! いえ…」

 

 

「礼を言われる程のことはしてないわよ…。少し思う所もあったし、ね…」

 

 

当麻が一旦降り立って感謝の言葉を口にしたのに対し、何処か複雑な表情を浮かべつつそう返す雪菜と紗矢華。と、ここで、

 

 

「ハハハッ! 今の動きも残像程度でしか認識できなかったぞ!! やはり貴様等との戦いは心弾むモノになりそうだな、アイエールッ!!」

 

 

「! コカビエル、今のは一体何の真似?」

 

 

「フッ、俺はそいつ等やエクスカリバーが居なくても別にいいんだ。エクスカリバーなど、所詮“ちょっとした余興”に過ぎんのでな…」

 

 

「ッ! 余興だと…!?」

 

 

先程の光の槍を放った張本人―――コカビエルがリアスの問い掛けに対して答えると、ゼノヴィアはその答えに不快感を露わにした。まあ、当然であろう。その言葉をそのまま受け取れば、教会の誇る伝説の聖剣を“余興の道具”程度にしか思っていないということになるのだから…。

 

 

「ああ、そうだ。エクスカリバーでは貴様等はともかく、そこにいるアイエールには太刀打ちできる筈が無い。何しろ魔王クラスの連中を裕に2桁も有しているという話だからな…。ならば、こちらもそれ相応の用意をしなくてはならないだろう?」

 

 

「ッ!? まさか、エクスカリバーを超える程の何かを手にしているとでも言うの!?」

 

 

「なッ!? エ、エクスカリバーを超えるモノ…!?」

 

 

続けてコカビエルがそう口にすると、リアスは驚きを隠せない様子で声を上げ、イッセーもまたそんな彼女の言葉に驚きを露わにした。すると、

 

 

キィィィィィィィンッ…!!!

 

 

「さあ、刮目しろ!! これが貴様等のために用意したとっておきの代物だッ!!」

 

 

「ッ! 来るぞッ!!」

 

 

「皆、気を付けてッ!!」

 

 

コカビエルの背後に巨大な魔方陣が展開し始めたのだ。それを見たエルザとミラジェーンはすぐさま警戒するよう促す。そして…

 

 

「これが貴様等のために用意した究極の兵器…!!」

 

 

その代物の全貌がついに明らかとなったのだが…それを見たリアス達の反応はというと…

 

 

『………………』

 

 

何故か一様に“呆然”としていた。何故なら、その代物とは……

 

 

「“ネ○アームストロングサイクロンジェットアームストロング砲”d」

 

 

「「オラアアアアアッ!!!!」」

 

 

「グフォアッ!?!?!?」

 

 

ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!!」

 

 

え? 何が起こったかって? 当麻とリクオが登場した兵器の紹介をしているコカビエルに瞬時に接近して、渾身の回し蹴りで吹っ飛ばしただけですが?

 

 

バサッ…!!

 

 

「グフッ! い、いきなり随分な挨拶をするではないか? やはりコイツの持つ力に恐怖して…」

 

 

「いや、恐怖してんのは今までのシリアスをブチ壊すような代物を持ってきたテメエにだよ、アホ堕天使。どっから引っ張り出してきた、この“卑猥を体現したようなクソ建造物”?」

 

 

「フッ、教える訳ないだろう。あの全身ワインレッドのタイツを着た、『ホッホホーッ!』などと叫ぶ謎の集団から購入したことなどッ!!」

 

 

「いや何完全にバラしてんの? 何怪しさ以外の何も感じないような組織から購入してんの? 何かいつの間にか“超絶アホ”に成り下がってんだけどッ!? もうツッコミ所多過ぎて上条さんじゃ対処できねえよッ!!」

 

 

「ちなみに決済はクレジットカードの分割払いだ。24回払いでなッ!!」

 

 

「「本当に今までのキャラは何処行きやがったアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」」

 

 

“ネオアーム(以下略)”の登場と共にアホキャラに成り下がったコカビエルに対し、今までのシリアス感を捨ててツッコミに専念するリクオと当麻。一方、こちらでは…

 

 

「ネ、ネ○アームストロングサイクロンジェットアームストロング砲だとッ!? しかも何て完成度の高さだ…!!」

 

 

「ゼ、ゼノヴィア? あれってそんな驚くようなモノなのか? どう見ても…俺でも『色々とヤバくね?』って思うようなモノにしか見えないんだけど…」

 

 

「ネ○アームストロングサイクロンジェットアームストロング砲…かつての三大勢力の戦争の際、終結の切っ掛けを生み出したと言われている、伝説の兵器!」

 

 

「え、何!? 大昔の三つ巴の戦争って、あんな“超卑猥な感じしかない大砲”のせいで終わったの!? しかもそんな伝説の兵器がクレジットカードで売り買いされてんのッ!?」

 

 

「くっ! しかもあの翼! よりによって第2形態まで進化しているとはッ…!!」

 

 

「いやいやいや、第2形態って何!? どう考えても翼いらないだろ!? あの翼が何のために付いてるのか全然理解できないんだけど!? ていうか、それよりもお前の言ってることが本当かどうかも疑ってるんだけどッ!?」

 

 

“ネ○アーム(以下略)”について力説するゼノヴィアに対し、イッセーが“ツッコミが特徴の某地味メガネ”の如く必死にツッコんでいた…。

 

 

「フハハハハッ!! さあ、見せてもらうぞッ!! 時を超えて復活した、伝説の兵器の威力をッ!!」

 

 

「いや飛び越えてるのは時じゃなくて“作品”でしょうがッ!! いい加減原作通りのキャラに戻んなさいよッ!?」

 

 

「死ねエエエエエエエエエエエッ!!!」

 

 

「いや人の話を聞けえええええええええええええええッ!!!」

 

 

そして、加わってきたルーシィとナナのツッコミも空しく、“ネ○アーム(以下略)”が放たれようとした…その時、

 

 

パキィィィィィィンッ…!!!

 

 

「ッ!? 何ッ…!?」

 

 

「こ、凍った…?」

 

 

突如“ネ○アーム(以下略)”の砲身が凍り付き、発射を止めたのだ。突然の出来事にコカビエルは勿論、ウェンディを始めとするアイエールの面々も驚きを隠せない。すると…

 

 

「これはこれは、随分騒がしい状況ですね」

 

 

『…!!』

 

 

そんな声が聞こえてきたかと思うと、1人の人物が戦場と化している学園の校庭へ足を踏み入れてきたのだ。

 

 

「まさに“無秩序”と言うべきでしょうか? 実に不快極まりない…。やむを得ませんね。ここは実力行使をさせて頂きましょう」

 

 

「ッ! お、お前はッ…!!」

 

 

その人物を見て驚きの声を上げたのは、当麻だった。だがそれも無理の無い話である。纏っている“青を基調とした制服”、腰に差している“サーベル”、“眼鏡のズレを右手で直す仕草”、そして…“慇懃無礼な口調”…。そう、その男の名は…

 

 

「剣を以て剣を制す。我等が大義に、曇り無s」

 

 

「「「「何してんだテメエは(何してんのよあんたは)アアアアアアアアアアアアッ!!!!??」」」」

 

 

「グフッ!!??」

 

 

ズガアアアアアアアアアアアアンッ…!!!!

 

 

え? 何が起きたかって? 某“セ○ター4の室長”に成りきっている“変態科学者”が、当麻とリクオ、ナナ、ルーシィの右ストレート&ドロップキックで吹き飛ばされただけですが…。

 

 

「グッ…随分な御挨拶ですね? 色々と曇っているのではありませんか?」

 

 

「いや、曇ってんのはテメエの脳味噌とキャラだろ。マジで何しに来たんだよ、バ科学者?」

 

 

「そのような短絡的な暴言を吐くようでは、程度が知れるというモノですよ? “ホ○ラ”のヤタガラs」

 

 

「サラッと中の人間と結び付けて、テメエの世界観に引きずり込もうとしてくんじゃねぇッ!!」

 

 

依然として某“室長”キャラを保ったままメタ発言をしようとする変態科学者──ウェルに対し、思わず声を荒らげるリクオ。ちなみに、そのメタ発言の内容は…

 

 

奴良リクオ = CV 福○潤 = 八○美咲(某“アルファベット一文字のアニメ”より)

 

 

上記の方程式を見れば明らかだろう…。

 

 

「おや、そこにいるのは“淡○君”ではありませんか。ですが何かが違うようですね? 主に身体の発達具合g」

 

 

ドスッ!!×3

 

 

「何か言いましたか、“室長”?」

 

 

「いえ、何も…(ダラダラダラッ!)」

 

 

え? 今度は何が起きてるかって? シノンの放った矢を諸に受けて血を流しながらも、ウェルが何事もなく眼鏡のズレを直しているだけですが…。ちなみに今度の方程式は…

 

 

朝田詩乃 = CV 沢城み○き = 淡○世理(某“アルファベット一文字のアニメ”より)

 

 

上のモノであることは言うまでもない。そんな中、その光景を見て…

 

 

「…あの、部長?」

 

 

「…何かしら、イッセー?」

 

 

「…ウェル博士って、何なんですかね?」

 

 

「…私が聞きたいわよ」

 

 

訳が分からないといった様子で尋ねてくるイッセーに対し、疲れ切った表情を浮かべながら返すリアス。だが…

 

 

「! おや、死人が生き返っているとは、実に興味深い。ですが私の知る限り、君はそのような“変態”を体現したような人間では無かったように思うのですがねぇ、“十束多○良君”?」

 

 

「いや誰だよそれ!? 誰か知らないけど、絶対出しちゃいけない名前だよなッ!? しかもサラッと貶しただろッ!?」

 

 

「イッセー、あなたまで…」

 

 

何やかんやでイッセーも巻き込まれ、混沌とした状況を形成する一員となってしまった。これにはリアスも疲れ切った表情をより鮮明にする他無い…。

 

 

※兵藤一誠 = CV 梶○貴 = 十束多○良(某“アルファベット一文字のアニメ”より)

 

 

と、ここで、

 

 

「貴様…誰だか知らんが、よくもこの“ネ○アームストロングサイクロンジェットアームストロング砲”の盛大な一発を邪魔してくれたな…!」

 

 

「! ああ、これは失礼。すっかり貴方とその後ろの物体…“ルイ・アー○ストロング”サイクロンジェット筋肉少佐砲の存在を忘れていました」

 

 

「おい、絶対ワザとだろ? 何とんでもねえ間違え方してやがる? 何処の“剛腕の錬金術師”だよッ!?」

 

 

苛立ちを露わにしたコカビエルに対する宗k…ではなくウェルの発言に、青筋を立てながらツッコむリクオ。だが両者はそんなツッコミに触れることなく……

 

 

「だがこの程度の凍結など、この“ネオアーム(以下略)”には大した時間稼ぎにもならんッ!!」

 

 

キィィィィィィンッ…!!

 

 

「止まる気は無しですか。致し方ありませんね…。宗○、抜刀…」

 

 

「ダメです、リクオ。一切聞いている様子がありません」

 

 

「(ピキッ!)コイツ等まとめてぶった切るか」

 

 

「お、落ち着いて下さい、リクオさん…!」

 

 

勝手に戦いの雰囲気を作り始めていた。それを見たリクオはついに“祢々切丸”を構え始めるが、慌ててやってきたウェンディに止められる…。と、そうこうしている間に、

 

 

ダッ!!

 

 

「! 死ねェッ!!」

 

 

宗○…ではなく、ウェルが空中にいるコカビエルに向かって駆け出し始めた。それに気付いたコカビエルはすぐさま光の槍を形成し放つが…

 

 

「フッ!」

 

 

バキィィィィンッ!!!

 

 

「嘘ッ!?」

 

 

「あのコカビエルの光の槍を防いだだとッ…!?」

 

 

ウェルはそれを横一閃で容易く破壊したのだ。自分達よりも遙かに格上の相手の攻撃をウェルがあっさり防いだことに、リアスとゼノヴィアは驚きを隠せない。

 

 

「“堕天使”という種族に相応しい、実に粗野な光ですね。これでは貴方の程度も知れるというもの…」

 

 

「ッ!! 舐めるなよ、下等な人間風情がアアアアアアアアアッ!!!」

 

 

(いや何サラッと“王”の力使ってんの!? 何かアンタの頭上に見覚えのある“超巨大な青い剣”が見える気がするんですけど!? 何強さまでキャラに引っ張られてんのッ!?)

 

 

コカビエルが怒りを露わにしながら次々と光の槍を降らせても、ウェルは的確に攻撃を捌いていく。その様子を見た当麻が加勢することも忘れて心の中で突っ込んでいるのは…仕方の無い事だろう…。そして、

 

 

ダッ!!

 

 

「ッ!?」

 

 

「剣を以て剣を制す。我等が大義に…」

 

 

ついにウェルが地面を強く蹴り上げ、空中にいるコカビエルに向かって剣を振り下ろそうとした…その時、

 

 

「曇り無s」

 

 

「はああああああああああああッ!!!」

 

 

ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!!

 

 

『…………………』

 

 

突如キャラの壊れた堕天使と科学者、更には“ネオアーム(以下略)”に巨大な閃光が直撃したのだ。本日2度目の予想外な出来事に、再び呆然とする当麻やリアス達一同…。すると、

 

 

「な、何よこの武器…こんなに強力だったなんて…」

 

 

「ッ! イリナッ!?」

 

 

「! ゼノヴィア!!」

 

 

閃光が飛んできた方向に目を向けると、そこには1人の少女が驚きを露わにしながら立ち尽くしていたのだ。その姿を見たゼノヴィアが即座に自身の相棒の聖剣遣い――紫藤イリナであることに気付くと、イリナもまたゼノヴィアの姿を見て一目散に駆け寄っていく。その一方で、イリナを保護していた筈のアイエールの面々はというと…

 

 

「ど、どうしてイリナさんがここに!? ティッタさん達が傍に付いている筈じゃ…」

 

 

「目を離した隙に逃げられちゃったみたいだね。あの2人にはお仕置きが必要かな…?」

 

 

「め、目が怖いですよ、芽亜さん…!?」

 

 

雪菜と芽亜、ウェンディが見張り役を任されていたティッタとエルフナインについて、そんなやり取りを交わしていたり…

 

 

「あー! あれ、私が作った“バンバンバズーカくん”だ~♪」

 

 

「や、やっぱり姉上の作った発明品か…。つーか、何で姉上の発明品をあいつが持ってるだよ!?」

 

 

「えっと…そういえばお姉様、今日の夜にあれを完成させて、御自分の机の上に置いていたような…」

 

 

「ってことは、アイツが姉上の部屋に入って勝手に持ち出したってことじゃねえか!? 姉上もあんな危ねえ物を机の上に置きっぱにしないでくれよ!?」

 

 

「えへへ~、ゴメンゴメン♪」

 

 

デビルーク三姉妹の面々がイリナの持っている小型ランチャー砲に関して、色々と話をしたりしていた…。ララがちゃんと反省をしているかどうかは、正直微妙な所であるが…。ちなみに、

 

 

「…………(プスプスッ)」

 

 

「シノン、あそこで1人黒焦げになっちゃってるけど、放っておいていいの?」

 

 

「大丈夫よ、ユウキ。あれの生命力は何処かの“黒光りする生き物”と同じくらいだから…」

 

 

「うっ…そんな例え方しないでよ。何か気持ち悪くなってきちゃうから…」

 

 

少し先で真っ黒焦げになったまま倒れているウェルの姿を見て、ユウキとシノンがそんなやり取りを交わしていたのは…余談である…。と、ここで、

 

 

バサッ…!!

 

 

「死に損ないの小娘が…よくもこの“ネオアーム(以下略)”を破壊してくれたなァッ!!」

 

 

「…何? そのセンスの欠片も感じない名前…」

 

 

「あー、悪いけど、そいつのことには一切触れないでくれ。あとこの場を代表して上条さんから言わせた貰うわ…。本当に助かった、ありがとな…」

 

 

「?? ど、どういたしまして…で、いいのかしら…?」

 

 

当麻からの突然の感謝の言葉に困惑しつつも、とりあえず受け取るイリナ…。え? 何に対する感謝の言葉かって? 言うまでもなく、先程までの混沌とした状況に終止符を打ってくれたことに対してである…。

 

 

「全く以て反吐が出る…“仕えるべき主を失っている”にもかかわらず、あれだけ痛め付けても尚この戦場に戻ってくるとはな…」

 

 

「「……!」」

 

 

「“主を失っている”…?」

 

 

「それはどういう意味だ、コカビエルッ!!?」

 

 

ここで突如コカビエルの口からそんな言葉が飛び出すと、当麻とリクオが真っ先に反応する中、イリナとゼノヴィアが咄嗟に尋ねる。それに対し、当のコカビエルは…

 

 

「ククククッ…クハハハハハハッ!! そうだな! これから戦争を起こそうというのに、今更隠す必要など無かったな…!!」

 

 

狂ったような高笑いを始め……そして……

 

 

「先の三つ巴の戦争で、四大魔王と共に“神も死んだ”のさッ!!!」

 

 

こう言い放ったのだった…。

 

 

 

 

 



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女を怒らせるのは愚の骨頂


大変御無沙汰しております。無颯です。

約1年半ぶりの投稿になってしまい、申し訳ありません。

シンフォギアメンバーの戦闘回です。では、どうぞ。




コカビエルのカミングアウトから少し遡り…とある異空間に、1人の少女が足を踏み入れていた…と言いたい所だったが…

 

 

「えっと…」

 

 

その少女──立花響は大いに混乱していた。何故なら…

 

 

「何で一緒にいるんだろうね、私達?」

 

 

「それはこっちの台詞だ! 別々に別れたんじゃなかったのかよ!? 」

 

 

雪音クリスを始め、先程覚悟を決めて別れた筈の少女6人が、自分の周りにいたのだ。

 

 

「ど、どうなってるデスか? 一兄は一緒じゃないみたいデスけど…」

 

 

「私達がバラバラになった方が、向こうにとって都合が良い筈…。向こうのミス…?」

 

 

「だとしたら、あいつ等見かけによらず凄い間抜けデース…!」

 

 

調の推測を聞いた切歌は若干小馬鹿にしたような口調でそう言った。しかし、そこへ待ったを掛ける者達がいた…。

 

 

「構えなさい、二人共」

 

 

「立花、雪音、お前達も集中しろ。これは恐らく…」

 

 

「ッ! 皆、離れてッ!!」

 

 

ここにいる7人の中での年上組である、マリアと翼の2人である。すると、未来が何かに気付いて声を上げた、次の瞬間、

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!

 

 

響達の居た場所で突如爆発が発生したのだ。言うまでもなくその場は一瞬にして土煙に覆われ、響達の姿を確認することが出来なくなってしまった…。と、そこへ、

 

 

「ヒャッハーッ! 中々派手な狼煙じゃねえか!!」

 

 

「でもちょっと強過ぎじゃないかしら? あんなの普通の人間なら間違いなく木端微塵になるレベルよ? 特に私の狙ってる娘(こ)は一番脆そうだったし…」

 

 

「そんな馬鹿なことしないよ。ちゃんと程良くボロボロになるような威力にしたからな。じゃないと…“楽しみ”が無くなっちゃうじゃん?」

 

 

「“楽しみ”という表現はいけませんよ? これから我等が行うのは、“主の救いの代行”です…。ああッ! やはり『 幼気(いたいけ)な少女達に救いを与えよ』という主の御声が聞こえてきます…!!」

 

 

いきなり出現した魔方陣から姿を見せたのは、件の元研究員の“ビジネスパートナー”である7人の男達だった。会話をしているのは無駄にテンションの高いヤンキー風の男―――ヴェイガー、女性的な口調が特徴の男―――ボブ、子供っぽい口調で話す少年―――アステル、神父を思わせる風貌の小太りな男―――ヴィストの4人である…。

 

 

「…………」

 

 

「“この程度で死ぬようであれば、それまでの者達ということ”…それだけの話だ」

 

 

「…いや、どうやらそれはないようだ」

 

 

依然として言葉を発しない痩躯の男―――グリーズがいる中、燕尾服を纏った冷静な男―――ヨキに対してそう言うリーダー格の屈強な男―――ゲイズ…。すると、

 

 

『…!!』

 

 

ゲイズ達に向かって“千ノ落涙”と“α式 百輪廻”による剣と鋸の雨が殺到し始めたのだ。ゲイズ達はそれに気付き、すぐさま回避行動を取るが…

 

 

「こいつもくれてやるよッ!!」

 

 

そんな声と共に、今度は“MEGA DEATH PARTY”による大量の小型ミサイルの雨が上空から降り注いできた。それに対し、

 

 

「ハッ! 無駄無駄無駄ァァァッ!!!」

 

 

ヴェイガーが真っ先に反応し、“或るモノ”を使ってそのミサイル群を全て破壊した。その“或るモノ”とは……ヴェイガーの周りを浮遊している、20機のビットらしき物体である…。と、ここで、

 

 

「私達を動揺させて、不意打ちで一気に倒そうとするなんて…随分と汚い真似をしてくれるわね?」

 

 

「フッ、ここは戦場だぞ? 立ち上げれば勝者であり、倒れるのであれば敗者…それだけの話ではないか?」

 

 

憤りを垣間見せるマリアに対し、気にする様子もなく僅かに笑みを浮かべるゲイズ…。すると、

 

 

「どうして…」

 

 

「あァ?」

 

 

「どうして、そんなに楽しそうなんですか…? どうしてこんな時に、笑っていられるんですかッ!!?」

 

 

「…ハッ…」

 

 

響が悲しみと怒りの混ざった様子で、そう問い掛けたのだ。そしてその問い掛けに対し、ヴェイガーが鼻で笑いながら、代表するかのように言い放つ…。

 

 

「楽しいに決まってんだろ? 特にテメエ等みてえな…苦しめがいのある小娘(ガキ)共を痛めつけるのはなァッ!!!!」

 

 

『ッ!!?』

 

 

ヴェイガーが複数のビットを束ねてレーザー砲を放つと、それが開戦の合図となった。

 

 

「あの英雄紛いの女は私の獲物だ。貴様は…」

 

 

「ハッ、好きにしろッ! 俺が狙ってんのはテメエだ、ミサイル女ァァァァァァァァッ!!!」

 

 

「ッ! 勝手に変な仇名で呼ぶんじゃねえ、このヤンキー野郎がッ!!」

 

 

「クリスちゃん…ッ!?」

 

 

「貴様の相手は私だと言っている…」

 

 

ドゴッ!!

 

 

ヴェイガーに向かっていくクリスを見て、咄嗟に声を上げようとする響。だがその前にリーダー格の男――ゲイズが現れ、上段蹴りで吹き飛ばした…。

 

 

「立花ッ!!」

 

 

「クリス先輩ッ!!」

 

 

「余所見してる暇があるなら、今度こそ吹き飛んじゃいなよッ!!」

 

 

『ッ…!!』

 

 

翼と切歌が声を上げる中、子供っぽい口調が特徴の少年――アステルが手榴弾を投げ込んだことで、完全に“乱戦”の様相を呈し始める。土煙の中から響とクリス以外の5人が姿を見せると、そんな彼女達へ残りの5人の男達がそれぞれ迫って来た。

 

 

「殺ッ!!」

 

 

「! はあッ!!」

 

 

翼には燕尾服を身に纏った男―――ヨキが…

 

 

「哀れな少女に救いをッ!!」

 

 

「ッ! くっ…!!」

 

 

マリアには神父風の小太りな男―――ヴィストが…

 

 

「ッ…!」

 

 

「フフッ、さあ、楽しみましょう?」

 

 

調には女性的な口調が特徴の男―――ボブが…

 

 

「調ッ…! ッ!?」

 

 

「余所見するなって言ってるだろッ!! お前の遊び相手は僕だよッ!!」

 

 

「! お前と遊んでる暇なんて無いデスよッ!! さっさと倒すデスッ!!」

 

 

「ハッ、やれるもんならやってみなッ!!」

 

 

切歌には子供っぽい口調の少年―――アステルが…

 

 

「……………」

 

 

(ッ…! 何なの、この人…?)

 

 

そして未来には一切言葉を発さない陰鬱そうな男―――グリーズが、それぞれ相対する形となった…。

 

 

──翼side──

 

 

「その腕…やはり拙僧の相手にはお前が適任のようだ」

 

 

「…防人として、貴様のような下郎(げろう)を放っておく訳にはいかない。貴様はあまりにも…“血に飢え過ぎている”…」

 

 

「…! フフッ、そうか。そこまで見抜いているか。いやはや、全く…」

 

 

燕尾服を纏った男―――ヨキの放つ異様な雰囲気を感じ取り、真剣な表情で自らの剣を構える翼。すると、それに対してヨキは…

 

 

「傷の付けがいがあるなぁ…」

 

 

「ッ……!!」

 

 

「キエエエエエエエエエイッ!!!」

 

 

寒気を感じさせるような笑みを浮かべ、奇声と共に翼と得物による激しい応酬を始めた。ヨキの持っている得物は所々錆付いている細長い錫杖。その切っ先は鋭く尖っている上に……何故か赤黒く変色していた…。

 

 

「ッ…!! はあッ!!」

 

 

「ヌッ…!! キエエイッ!!!」

 

 

先端の異様な変色に気付いた翼は咄嗟に跳躍をして距離を取り、“蒼ノ一閃”を放つが、ヨキは渾身の一突きでその攻撃を霧散させた…。

 

 

「どうやら気付いたようだな…。そうだ、拙僧はこの切っ先を以て数多の命を断ってきた…。“女の命”をな”…」

 

 

「ッ…!」

 

 

「その瞬間はまさに“快感”の一言に尽きる程、極上のモノだった…。いやはや全く、甲高い女の悲鳴と共に命が潰(つい)える瞬間というのは、何故にあれほど極上なのだろうか…!」

 

 

「“極上”、”だと…? そんな歪み切った感覚の為に命を奪ってきたというのかッ!! 貴様はどこまで狂っているッ!!!」

 

 

「フッ、お前の理解を得ようなどとは端から思っていない。何故なら…お前もその感覚を味わうための生贄に過ぎないのだからなぁッ!!」

 

 

そしてヨキは再び翼と激しく得物の打ち合いを始めた…。

 

 

──調&切歌side──

 

 

一方、こちらでは…

 

 

「チッ!! ちょこまか動き回ってないで、いい加減当たれよ!! このデス女ッ!!」

 

 

「当たれと言われて当たる奴が何処にいるデスかッ!! あと勝手に変な仇名を付けるなデスッ!!」

 

 

「切ちゃん!」

 

 

「あら、余所見してる暇があるのかしら?」

 

 

「ッ…!!」

 

 

切歌と調が子供っぽい口調で話す少年―――アステルと、女性的な口調が特徴的な男―――ボブの2人とそれぞれ戦闘を繰り広げていた。

 

 

「おい何してんだよ、“オカマ親爺”!! いい加減あの鋸女を倒せよッ!!」

 

 

「あら、別に少しくらい遊んだっていいじゃない。私の好みにドンピシャなのよ、あの娘。だからもうちょっと遊ばしてくれないかしら? そうね…せめてこの鞭の一発で、可愛い悲鳴の1つでも聞かないと、ね…」

 

 

「……(ビクッ!!)」

 

 

“オカマ親爺”と呼ばれたボブの発言を聞いた瞬間、言葉では言い表せない危機感を感じて思わず切歌の後ろに隠れる調…。

 

 

「お前は絶対に調に近付くなデス…!」

 

 

「あら、すっかり嫌われちゃったみたい。ま、別に嫌われようと関係ないのよねぇ…。こっちが捕まえちゃえばいい話だし…ねぇッ!!」

 

 

自身のパートナーの様子を見た切歌が憤りを露わにしても尚、気味の悪い笑みを浮かべながら再び迫るボブ…。一方更に別の場所では…

 

 

──マリア&クリスside──

 

 

「はあああッ!!」

 

 

マリアが神父風の男―――ヴィストを短剣状態の自らの神器“アガートラーム”を使って攻め立てるが、ヴィストはモーニングスターという特殊な得物を駆使しながらマリアの攻撃をいなしていた…。

 

 

「フフフッ、実に素晴らしい! その勇ましくも華麗な立ち居振る舞いはまさに“聖女”そのもの…! ああっ、やはり私の目に狂いは無かった! 貴女は間違いなく真っ先に救わなければならない存在…!!」

 

 

(っ…! どうやら随分面倒な相手に目を付けられたみたいね…)

 

 

何処からどう見ても狂った様子のヴィストを見て、心底嫌そうな表情を浮かべるマリア。と、そこへ、

 

 

「さっさとくたばれや、このミサイル女アアアアアアアッ!!!」

 

 

マリアの近くで轟音と共に土煙が上がったかと思うと…

 

 

「チッ! しつけえんだよ、あのヤンキー野郎ッ…!」

 

 

その土煙の中から銀髪が目を引く少女──雪音クリスが姿を現した…。

 

 

「! つってる間に、合流しちまったみたいだな」

 

 

「ええ。それにしても、貴女も随分面倒な男を相手にしてるみたいね。私の相手とはタイプが大分違うようだけど…」

 

 

「ハッ、何なら相手を交換するか?」

 

 

「遠慮しておくわ。面倒の度合いは差が無いようだし、何より…ッ!」

 

 

「救済執行ッ!!」

 

 

マリアはクリスと軽口を言い合っていた所で、神父風の男の攻撃に気付き、アガートラームで受け止める。そしてクリスも…

 

 

「! オラアアアアッ!!!」

 

 

「っ! チッ…!!」

 

 

自らの背後から複数のビットが忍び寄っていることに気付き、振り向き様に“BILLION MAIDEN”を放った。これにはビットを操っていたヤンキー風の男―――ヴェイガーも思わず舌打ちをし、すぐさまビットを一度後退させる。

 

 

「戦いの相性で考えれば、今の組み合わせが恐らく最善よ」

 

 

「…みたいだな。そうと決まったら…さっさとぶっ潰す!!」

 

 

マリアの言葉に同意し、引き続きヴェイガーと相対することを決断するクリス…。

 

 

「おい、何だよ似非(えせ)神父!! さっさとあの高飛車そうな女に“救い”って奴を与えるんじゃなかったのか!? あァッ!?」

 

 

「ええ、勿論ですとも。ですが焦りは禁物です。“救い”は慎重かつ確実に行わなければなりませんからねぇ…」

 

 

「チッ、そうかよ…。まあ、そっちはそっちで勝手に救いでもなんでもやってろ。こっちはこっちで、絶望させてやっからよォッ!!」

 

 

そしてヴェイガーが全てのビットによる一斉掃射を行ったことにより、大爆発が起こった…。

 

 

──響&未来side──

 

 

「オンナアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 

「くぅぅッ…!!!」

 

 

裕に30センチはあるであろう長く鋭い鉤爪の一撃を何とか受け止める未来。彼女が相手をしているのは、先程まで一切言葉を話さなかった陰鬱そうな男―――グリーズ。だがその様子は一変し、現在は狂気に満ちた奇声を上げている…。

 

 

「ッ! やああッ!!」

 

 

未来は力を込めて攻撃をいなし、扇型の自らの神器“神獣鏡(シェンショウジン)”の先端からビームを複数放つが、グリーズは素早い動きで躱していく。

 

 

「シャアアアアアアアアッ…!!!」

 

 

そしてグリーズが蛇を連想させる奇声を上げながら再び未来に迫ろうとした、その時、

 

 

「おおりゃああああああああッ!!!」

 

 

何かが凄まじい勢いでグリーズと衝突し、まとめて吹き飛ばしたのだ。彼と衝突したモノの正体は…

 

 

「…クククッ、面白い…!」

 

 

7人の男達のリーダー的存在の男──―ゲイズである。そして先程雄叫びと共にゲイズを吹き飛ばしたのは…

 

 

「未来ッ!!」

 

 

「! 響!!」

 

 

ベージュのショートカットが目を引く少女―――立花響だった。響はすぐさま未来の下へ駆け寄ると同時に、彼女の前に立って拳を構える。

 

 

「ジャマヲ…スルナッ…!」

 

 

「それはすまなかったな…。安心しろ。もう邪魔をするつもりはない」

 

 

苛立ちを露わにするグリーズに対し、淡々とした口調で返すゲイズ…。

 

 

「貴様には失望したぞ、英雄紛いの女。貴様の拳は…実に軽い」

 

 

「…!」

 

 

何事も無く立ち上がりつつゲイズがそう言うと、響は僅かに反応を見せる。そして、

 

 

「“嬲り甲斐のある女がいる”というあの男の話に乗ってみれば、この程度とは…。どうやらさっさと終わらせて、“あの男”と殺(や)り合った方が良さそうだな」

 

 

「! “あの男”…?」

 

 

「貴様等が心底慕っている、あの“オレンジ髪の男”に決まっているだろう」

 

 

「「……!!」」

 

 

ゲイズの口から出た“オレンジ髪の男”という言葉に、響だけでなく未来も大きく反応する。それは言うまでもなく…一護のことを指していた…。

 

 

 

―――各side 終了―――

 

 

 

「素晴らしいッ! 拙僧とここまで打ち合うことができるとは…さぞかし命を断った瞬間は極上であろうなぁッ!!」

 

 

「黙れッ!! 貴様のような外道に命を差し出す気など、毛頭無いッ!!」

 

 

「フッ、外道か! 拙僧が外道というなら、お前達は何故“拙僧以上の外道”に付き従っているッ!?」

 

 

「ッ!? 貴様以上の外道だと…? 一体誰のことを言っているッ!!」

 

 

「決まっているだろう。あの“黒崎一護”という小僧のことだッ!!」

 

 

「ッ…!!」

 

 

自身の相手―――ヨキの放った言葉に反応する翼。すると、

 

 

「一兄が“外道”って、どういうことデスかッ!!」

 

 

「ハッ! そのままの意味だよッ!! デス女ッ!!」

 

 

「…許さない…!」

 

 

「あら、その怒った顔も中々魅力的ねぇ…」

 

 

翼の近くで戦っていた切歌と調が、アステルとボブに対してそれぞれ怒りを露にしていた。まるで、アステルとボブがヨキと同じような発言をしたかのように…。更に、

 

 

「何も知らねえ奴が、好き勝手なこと言ってんじゃねえッ!!」

 

 

「おうおう、怒り心頭ってかッ!? 大層あの小僧(ガキ)にご執心みてえじゃねえか! だが判るんだよ! あの小僧(ガキ)に媚びり付いた血の匂いがなァッ!!」

 

 

「っ! その口を、今すぐ閉じなさいッ!!」

 

 

「いやはや、これは実に哀しい! 貴女の心は完全にあのような“薄汚れた存在”に囚われてしまっているのですねぇッ! ですが! 何を言おうと、これだけは確信を持って貴女にお伝えすることができますッ!」

 

 

クリスとマリアもヴェイガーとヴィストに激昂していた。しかし、ヴェイガーとヴィストも含め、男達6人はクリス達7人が慕う青年―――黒崎一護への罵倒をやめることはなかった。そして……奇(く)しくもここで、男達は全く同じ主旨の発言を言い放つ…。

 

 

『あの男(あいつ)(彼)は、善人面した“ただの人殺し”だ(よ)(なんだよッ!!)(なんですよッ!!)』

 

 

その一言を聞いた瞬間、響達の頭の中に“或る記憶”がフラッシュバックする…。

 

 

【汚すんじゃねえ…。その腐った欲のために、コイツ等の歌をこれ以上汚すんじゃねえッ…!!】

 

 

それは1人の少年の姿…。

 

 

【誓ったんだよ…。この手をどんだけ血で汚そうが“護る”って”、俺の魂に誓ったんだッ!!!】

 

 

響達の歌と…響達自身を護るために戦う、強くて優しい少年の姿だった…。そして、

 

 

「キケケケケケケッ!! シネエエエエエエエエエエエッ!!」

 

 

グリーズがその一言を言い放つと同時に、男達はそれぞれ渾身の一撃を繰り出した。ゲイズは右拳から極大の衝撃波を響に叩き込み、ヨキは最大限のエネルギーを込めた錫杖を翼に打ち込む。ヴェイガーは20機のビットのビームを収束させた極大のビームをクリスに放ち、ヴィストは巨大化させたモーニングスターをマリアに叩き込む。ボブは鞭を素早く振るうことによる無数の衝撃波を調に放ち、アステルは最大級の威力を持つ爆弾を切歌に向かって放り投げる。そしてグリーズは鉤爪から十字型の斬撃を未来に向かって放つ。その結果…

 

 

ズガアアアアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!!

 

 

空間内の7か所から凄まじい轟音がそれぞれ響き渡り、一帯が土煙に覆われた…。

 

 

「あら、これは本当にやり過ぎちゃったわね…」

 

 

「ハッ! 五体満足なら良いんだろ? 最悪死んでても使い道の一つや二つはあるだろ」

 

 

「別に死んでてもいいけどね。あのデス女、何かウザかったし…」

 

 

「これで命を落としたというのであれば、それが主の望む彼女への救いということ…。ああ! どうかあの哀れな少女に最大の救いを与えたまえ…!」

 

 

「手応えあり。くくっ! これだから女を殺すのはやめられん…」

 

 

「オンナッ! オンナァッ…!」

 

 

それぞれが放った一撃による手応えを感じて、思い思いの言葉を口にするボブ、ヴェイガー、アステル、ヴィスト、グリーズ、ヨキの6人…。

 

 

「話は後にしろ。生死の判別を先にするぞ。場合によっては…適当に楽しめそうだからな…」

 

 

そんな6人をゲイズは軽く注意しつつ…実に醜悪な笑みを浮かべながら、自分達が“倒したであろう”少女達の下へ”向かおうとした…と、その時、

 

 

「ガフッ!?!?」

 

 

『ッ!?!?』

 

 

ゲイズの腹部に強烈な右拳の一撃が突き刺さり、思い切り吹き飛ばしたのだ。突然のことに驚きを露わにしつつも、咄嗟にその一撃を放った拳の持ち主へ攻撃しようとするヨキ達6人。しかし…

 

 

「ぐおっ…!?」

 

 

ヨキは隣を瞬時に通り過ぎた“或る人物”に、右の肩口を斬られ…

 

 

「ギッ…!?!?」

 

 

アステルも背後から迫ってきた“或る人物”に、左腹部を深く斬られた…。

 

 

「ゴホッ!?!?」

 

 

ヴィストは“或る人物”から頭部に回し蹴りを喰らい…

 

 

「ギィィィィッ…!?」

 

 

グリーズは前方から飛んできた細い紫色の光線に腹部を貫かれた。そして…

 

 

「なっ!?」

 

 

ヴェイガーは反撃用に展開した5基のビットを、赤いエネルギー矢によって全て破壊され…

 

 

「ギィヤアアアアアアアアアッ!?!?!?」

 

 

ボブは“或る人物”よって…通り過ぎ様に左腕を二の腕の辺りからバッサリと斬り落とされた…。言うまでもなく、彼等をこのような目に合わせることが出来るのは、この空間内でたった7人しかいない。それは…

 

 

『………………』

 

 

立花響、風鳴翼、雪音クリス、小日向未来、マリア・カデンツァヴナ・イヴ、月読調、暁切歌の7人である…。

 

 

「イデェ…イデェッ…!!」

 

 

「チッ、どうやら見かけによらず、結構しぶといみてえだなぁッ…!」

 

 

「イテテッ、これはちょっと油断しちゃったかな? よし、確実に殺そう…」

 

 

「救済を拒まれるとは、実に宜しくない…。これは少々罰が必要なようですねぇ…!」

 

 

「手応えはあったのだが…まあ、いい。殺し損ねたのであれば、再び殺すだけのこと…」

 

 

「くくっ、どうやら過小評価をしてしまっていたようだな。確かにこれは嬲り甲斐がある…。素晴らしい! 素晴らしいぞ、“英雄紛いの女”ぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 

自分達が倒したと思っていた少女達の姿を見て、怒りや苛立ち、狂喜など、それぞれ反応を見せるボブ以外の6人の男達…と、次の瞬間、

 

 

 

 

「黙ってください」

 

 

『ッ…!?!?!?』

 

 

響のそんな一言が響き渡ると、ゲイズ達の各々の反応は一気に消え去った。その理由は普段の彼女達からは一切想像することが出来ない…冷徹なオーラを響達が纏っていたからである。そのオーラの正体は……紛れもない“殺気”であった…。そして、

 

 

「翼さん」

 

 

「…ええ」

 

 

「クリスちゃん」

 

 

「…おう」

 

 

「マリアさん」

 

 

「…ええ」

 

 

「調ちゃん」

 

 

「…はい」

 

 

「切歌ちゃん」

 

 

「…はいデス」

 

 

「未来」

 

 

「…うん」

 

 

響は恐ろしい程落ち着いた様子で翼達に1人1人声を掛け…こう口にした…。

 

 

 

 

 

「終わらせよう」

 

 

『…ええ(うん)(ああ)(はい)(はいデス)』

 

 

その言葉に対し、響と同じように酷く冷たい様子で頷く翼達6人…。と、ここで、

 

 

「ふざけんじゃないわよ…。よくもこの私の腕を……」

 

 

呪詛のような言葉を呟いたのは、調の鋸によって左腕を斬り落とされた男―――ボブ…。

 

 

「この、小娘共がアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

つい先程までの余裕のある女口調から一転して、怒りを前面に押し出しながら響達へと突っ込み始めたのだ。その速さはこれまでとは比べ物にならない程で、彼の本気を表していた。しかし…ボブの本気が響達に届くことはなかった。何故なら…

 

 

「絶対に許さない…」

 

 

「ア……」

 

 

ボブは調のヨーヨー型に変形させた神器によって張り巡らされた“高エネルギー線の網”に触れていたのだから…。その技の名は、“終β式・縛戒斬鋼”…。

 

 

「消えて…」

 

 

調が小さく呟いた瞬間、ボブの全身から夥しい量の鮮血が噴出する。その場に倒れ伏し、ピクリとも動かない…。彼の命が絶たれた証拠だった…。

 

 

「ッ…! おいおい、一体どういう風の吹き回しだよ、テメエ等…」

 

 

「ハッ、今更本気モードって奴? どうやら“アイツ”を馬鹿にしたのが結構効いたみたい…」

 

 

その一部始終を見て、動揺を見せながらそんな言葉を口にするヴェイガーとアステル…。と、次の瞬間、

 

 

「……へ……?」

 

 

「もう黙るデスよ、お前…」

 

 

アステルは自らの身に起きた出来事が分からなかったが、いつの間にか自身の後ろに居る切歌の一言を聞いて理解した…。切歌の放った技、“対鎌・螺Pぅn痛ェる”によって…自らの胴体が真横に真っ二つに斬られていることに…。

 

 

ブシュウウウウウウウウウウウウッ…!!!

 

 

『ッ…!?!?!?』

 

 

「!! 散れッ…!!!」

 

 

至近距離で起きた2人目の仲間の死を真に当たりにし、ゲイズの一声を聞いて咄嗟にその場を散り散りに離れるヴェイガー達4人。すると、それを見た響、翼、クリス、マリア、未来の5人は一瞬でその場から姿を消し、各々の相手へと迫る…。

 

 

 

――――ヨキ VS 翼 side――――

 

 

「先程は仕損じたが…今度こそ、已(い)ねやアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 

自身に迫ってきた翼を見て、得物である錫杖を片手に突っ込むヨキ。それに対し…

 

 

「散る覚悟は…出来ているな…?」

 

 

翼はヨキに聞こえない程の小さな声で呟くと、どこからともなく双剣を取り出し、柄を繋ぎ合わせて“双刃刀”へと変形させる。加えて灼熱の炎を刀に纏わせるその技の名は……“風輪火山”…。

 

 

「クククッ! さあ、早く極上の悲鳴を上げ…」

 

 

すれ違い様に翼を仕留めたと思ったヨキは、狂気に満ちた笑みを浮かべてそう言おうとした…。と、次の瞬間、

 

 

ゴオオオオオオオオオオオオオオオッ…!!!!

 

 

「キエエエエエエエエエエエエエエエエイッ…!?!?!?」

 

 

ヨキの身体に斜め一文字の切り口が現れ、そこから発生した炎はあっという間に彼の身体を覆い尽くす。そして…

 

 

「防人の剣…その身で味わいながら消え失せよ…」

 

 

翼の一言と共に、ヨキの身体は業火に焼かれて消失した……。

 

 

 

――――勝者 風鳴翼――――

 

 

 

――――雪音クリス vs ヴェイガー―――――

 

 

「チッ…! 何なんだよ…どうなってんだよコイツはッ!?」

 

 

ヴェイガーは先程までの余裕をかなぐり捨て、必死に或る人物から距離を捨てようとしていた。その人物とは…

 

 

「いつまで逃げてるつもりだよ?」

 

 

「ッ! オラァッ!!」

 

 

一切表情を変えずにヴェイガーの後を追う少女――――雪音クリスである。背後から聞こえてきた彼女の声に反応し、咄嗟に数基のビットを操って攻撃を繰り出すヴェイガー。それに対し、クリスはビットから放たれたビームの雨をいとも簡単に避け、弓型に変形させた神器から複数の赤いエネルギー矢を放つ。ヴェイガーはすぐさまビットを破壊されないように操作するのだが、蛇のように不規則な動きを見せるエネルギー矢は回避しようとするビットを追跡し…破壊する。この光景は決して初めてのモノではない。何しろ20基ほど有ったはずのヴェイガーのビットの数は、既に半分以下になっていた…。

 

 

「どうだ? 散々ナメて掛かってた女に追い詰められてく気分は?」

 

 

「ッ!! っざけんじゃねえぞッ!! このクソアマがああああああああああッ!!」

 

 

クリスの冷え切った声での一言を聞いて、怒りが頂点に達したヴェイガー。残りのビットの発射口を全てクリスに向け、一気に照射する。

 

 

「ッ!!?」

 

 

「外さねえ…」

 

 

しかしヴェイガーの目に入ってきたのは、既に迎撃態勢を整えているクリスの姿だった。スナイパーライフル型に変形させた神器から放たれたレーザーは途中で一気に拡散する。その技の名は…“SPREAD ZEPPELIN”…。

 

 

「ギヤアアアアアアアアアアアッ!!??」

 

 

放たれたレーザーはヴェイガーの放ったビットを全て破壊するだけでなく、彼の足や腕にも命中し、そこから大量の血が噴き出した。あまりの痛みに思わず絶叫するヴェイガー…。

 

 

「ガ…ガァッ…こ、この、クソ小娘(ガキ)ガアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

それでも痛みを無理矢理堪え、クリスへの怒りを露わにしながら前方へ視線を向けた。すると、そんなヴェイガーの目に入ってきたのは…

 

 

「………」

 

 

「ッ…!!??」

 

 

自身の目の前に立ち、自身の額に小型拳銃型に変形させた神器を突き付けている、クリスの姿だった。そして…

 

 

「閻魔様によろしくな…」

 

 

「ク、クソッタレ…が…」

 

 

そのやり取りの直後、一発の銃声が響き渡り、ヴェイガーは仰向けに倒れる…。そこからヴェイガーが動くことは無かった…。

 

 

「…助太刀に行く必要は…無さそうだな…」

 

 

そう呟きながら、永遠に動かなくなったヴェイガーに背を向けて歩き出すクリス…。その姿は、すぐに壊れてしまいそうな程、儚いモノだった…。

 

 

───勝者 雪音クリス───

 

 

───マリア・カデンツァヴナ・イヴ vs ヴィスト───

 

 

「ハァッ…ハァッ…ハァッ…」

 

 

「どう? さっきまで“救済”なんて言葉の下に殺そうとした女に追い詰められてる気分は…?」

 

 

片膝を着きながら満身創痍の様子のヴィストに対し、まるで見下すような冷たい視線を向けるマリア。この光景を見て、どちらが圧倒的優位に立っているか分からない者はいないだろう…。

 

 

「ふざけるな…救済を受ける、分際でエエエエエエエエエエエエッ!!!」

 

 

マリアの冷たい視線に怒りを露わにしたヴィストは、これまでの敬語口調をかなぐり捨てて激昂した。モーニングスターのような得物を振り回しながら、猛烈なラッシュを見せる。しかし…マリアはそれを最小限度の動きで悠々と躱していく…。

 

 

「それが貴方の本性ね…。“救済”なんて大層な言葉を口にしながら、本当は自分より弱い女を見下して痛め付け、支配する…。貴方が救いたいのは、自分なのよね?」

 

 

「黙れ黙れ黙れッ!! 全てを見透かしたような目で、私を見るなアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

ヴィストはマリアの言葉を聞いて更に冷静さを失い、得物を怒りのままに振り回す。そこにいるのは神父の皮を被った凶悪な存在などではなく…ただの腐った感情を露わにする、哀れな1人の男だった…。

 

 

「貴方の方こそ黙りなさい…。何も知らずにあの子を“善人面した人殺し”と吐き捨てる“外道”と…これ以上話す気は無いわ…」

 

 

「ッ!!? この…クソ女アアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

怒りの頂点を迎えたヴィストは得物を再び巨大化させて振り下ろした。辺りに響き渡る轟音と立ち込める土煙。しかし…

 

 

「悪を切り裂く聖剣…受けてみよ…!」

 

 

「ッ!!??」

 

 

そんな言葉が聞こえてきた方にヴィストが目を向けてみると、そこには…空中に飛び上がっているマリアの姿があった。そしてその頭上には、まるで巨大な発射口のように円状に展開する複数の短剣型の神器があり…その中心には超高密度のエネルギーが蓄積されている。その技の名は…“NEMESIS HAMMER”…。

 

 

「しゅ、主よオオオオオオオオオオオオオオオオッ…!!???」

 

 

ヴィストの絶望の叫び声の直後に発射される、極大の純白のレーザー光線。それはヴィストを丸ごと飲み込み…その姿を跡形も無く消し飛ばした…。

 

 

「貴方が救われることは永遠に無いでしょうね…。地獄の奥底で、悔い続けなさい…」

 

 

先程までヴィストが立っていた場所を一瞥したマリアは、冷え切った声で呟きながらその場所に背を向ける。その姿は清らかで美しいものの…何処か小さかった…。

 

 

───勝者 マリア・カデンツァヴナ・イヴ───

 

 

───小日向未来 vs グリーズ───

 

 

「オンナッ! オンナアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

グリーズは何度目か分からない突貫を行う。しかし…

 

 

「ギィヤアアアアアアアアアアアアッ!???」

 

 

それは再び無駄に終わり、吹き飛ばされた場所でのたうち回った。その理由は…

 

 

「…………」

 

 

大量のミラーデバイスを駆使した未来の全方位をカバーする攻撃の前に、為す術が無いのである。にもかかわらず、

 

 

「オンナアアッ…オンナアアッ…」

 

 

グリーズは怨念のように同じ単語を呟きながら、夥(おびただ)しい血を流す身体に鞭を打って再び立ち上がる。その姿は…最早人間という存在から大きくかけ離れていた…。すると、

 

 

「どうして…? どうしてそんなに、女の人を傷付けようとするの? どうしてそんなに、女の人にこだわるの?」

 

 

未来はグリーズにそう問い掛ける…。感情を一切感じさせない表情を浮かべながら…。

 

 

「オンナノチ、キレイ…オトコノチ、キタナイ…ダカラ、オンナコロス。キレイナノヲミタイ…ダカラ、オンナガ、イイイイイイイイイイッ!!!」

 

 

その姿は、紛れもなく“化け物”そのものであった。普通の少女であれば、恐怖のあまり発狂なり失神なりしてしまうレベルであった。しかし、そんな姿でまたしても突貫してくるグリーズに対し、未来は…

 

 

「そっか…あなた、壊れてるんだね」

 

 

「ッ!!!???(ピタッ!!)」

 

 

その瞬間、猛スピードで突貫していた筈のグリーズの動きは止まった。いや、本能的に止まらざるを得なかったのだ…。ハイライトの消えた瞳で笑みを見せる未来の姿を見た瞬間に…。

 

 

「嫌いだよね? そんな壊れた自分…本当は、消えて無くなりたいよね…?」

 

 

「ア…アアッ…」

 

 

「大丈夫…私が、“消してあげる”から…」

 

 

「ッ!!?? ア…アアアアアアアアアアアアッ!?!?」

 

 

その一言を耳にした直後、グリーズは180度転回して未来から逃げ出した。そう、逃げ出したのだ。先程まで未来を殺そうと躍起になっていた筈のグリーズが…。

 

 

「もう遅いよ…」

 

 

「ッ!!?? ギィッ!!??」

 

 

それを見た未来は逃げ出したグリーズに向かい、大量のミラーデバイスを一気に飛ばすと、ミラーデバイスから放たれた複数のビーム光線が幾つかグリーズに命中し、動きを止める。その瞬間、彼の運命が決定した…。

 

 

「じゃあね…」

 

 

「ッ!!? イ、イヤダ…シニタクナイイイイイイイイイイイッ!!!!」

 

 

それがグリーズの最後の言葉だった。いつの間にか円状に展開したミラーデバイスから一斉に中心に向かってビームを放つ“煉獄”が発動し…グリーズは跡形も無く消滅した…。

 

 

「皆を…響や一護さんを傷付けようとする存在なんていらない。そんなもの…全部私が消してあげる…」

 

 

そう呟く未来に、いつもの“陽だまり”のような穏やかで優しい雰囲気は微塵も無い。そこに居たのは…自分の大切なモノを護るためであれば全てを消し飛ばす…“最恐の少女”だった…。

 

 

───勝者 小日向未来───

 

 

───立花響 vs ゲイズ───

 

 

「ハハハハハッ、素晴らしい…素晴らしいぞ!! もっとだ! もっと私を楽しませろオオオオッ!!」

 

 

「…………」

 

 

1人の男と1人の少女が、凄まじいスピードで格闘戦を繰り広げる。大きく違うのは、男の方が高揚しているにもかかわらず、少女の方は全く口を開かないこと。そして…男は明らかに大量のダメージを負っているにもかかわらず、少女は殆どダメージを受けていない点である。

 

 

「オオオオッ!!!」

 

 

パシッ!!

 

 

「グホアッ!!?」

 

 

その男──ゲイズは右拳を放つが、対する少女──立花響は左手でそれをあっさりと受け止め、逆に自身の右拳をゲイズの顔面に叩き込んで吹き飛ばす。そう、先程からこのような状況が何度も繰り返されているのだ。

 

 

「クククッ、いいぞ! まだだ! まだ力を残しているであろう!? さぁ、全てを見せろッ!! 今度はその全てをねじ伏せてやる!! さぁッ!?」

 

 

「………」

 

 

「どうした!? 何故来ない!? こんなにも愉しい闘いを、何故愉しまない!? 貴様も同類であろう!? なぁ、英雄紛いの女アアアアアアアアアッ!!!」

 

 

そんな苛立ちを露わにしながら問い掛けるゲイズに対し、響は…

 

 

「何が愉しいの…? こんな意味もなく傷付け合うだけの闘いの、一体何が良いの…? 分からないよ、私…分かりたくないよ…」

 

 

今にも泣いてしまいそうな程の悲しげな表情で、そう問い返したのだ。それは響の口から思わず出た言葉である。だが、それを聞いたゲイズは…

 

 

「何が良い、だと…? 何故理解できない? この愉しみが理会できない? そこまで貴様の“戦士としての誇り”は腐っているというのかッ!? “あの男”が貴様を堕落させたというのかッ!? ならばもういい!! 貴様を殺した後、あの“善人面の人殺し”も一緒に地獄へ叩き落として…ッ!!??」

 

 

ゲイズは最後まで言葉を口にすることが出来なかった。何故なら彼の前には…一切感情を読み取らせない表情の響が、目の前に迫っていたのだから…。

 

 

「もう、黙って…」

 

 

そこから始まったのは、圧倒的な“蹂躙”だった。今までとは比べ物にならない速さで響は攻撃を繰り出す。ゲイズの防御は意味を為さず、彼から一切の光を奪っていく。その技の名は……“無明連天殺”…。

 

 

「ゴフッ!!??!」

 

 

背後からパイルバンカーのような渾身の一撃を受けたゲイズは、隕石を思わせるようなスピードで一直線に吹き飛ばされ、途中にある巨大な岩に突き刺さる形で止まる。その腹部には…直径50センチはあるであろう穴があった…。

 

 

「………」

 

 

「ア…アガ…アッ…」

 

 

ゆっくりと近づいてくる響を見るゲイズの表情に、先程までの闘いを愉しむ様子は微塵も無い。彼の表情は今、絶望と恐怖に満ち溢れていた。逆鱗に触れてはならない存在を怒らせたことに対する、圧倒的な恐怖と絶望に…。そして…

 

 

「さようなら…」

 

 

この日一番の速さで放たれた響の右拳がゲイズの顔面を直撃した瞬間、凄まじい轟音と同時に土煙が巻き起こる。暫くすると土煙は晴れるが、そこには…数十メートル先まで深々と抉られた地面があるだけで、ゲイズの肉体や血の一滴も存在しなかった…。

 

 

「…………」

 

 

そんな場所を前にして、暫しその場を動かない響。と、そこへ、

 

 

「響…」

 

 

「! 未来…皆…」

 

 

未来を始め、翼やクリス達も全員響の下へ来ていた…。

 

 

「大丈夫か、立花…?」

 

 

「…はい、“へいきへっちゃら”ですよ」

 

 

「…そんな顔を見て、あたし等が信じると思ってんのか?」

 

 

「…そういうクリスちゃん“も”、大丈夫そうに見えないよ?」

 

 

「…気付いてる? あなた今、自分が大丈夫じゃないって認めちゃったのよ?」

 

 

「え…? あ…」

 

 

「「響さん…」」

 

 

マリアの指摘を聞いた響は、クリスに言ったことを思い出して気付く。そんな彼女の様子を心配そうに見つめる調と切歌…。すると、

 

 

「やっぱり…ダメなのかな…?」

 

 

『っ……!』

 

 

「もう私達…普通に笑って過ごしていくことなんて、出来ないのかな…?」

 

 

『……』

 

 

今にも壊れてしまいそうな響の言葉に、翼やクリス達も言葉を詰まらせて俯いてしまった。そこに戦いに勝利した者達の姿はない。そこにいるのは…不安や恐怖で押し潰されそうになっている少女達だけであった。そして、そんな不安や恐怖が少女達の心を蝕もうとした…その時、

 

 

「出来るに決まってんだろ」

 

 

『……!』

 

 

「お前等がどんなに深い闇の中にいようが、必ず救い出す。どんな連中がお前等の存在を否定しようが、俺はお前等の存在を肯定し続けてやる…。言っただろ? “ダメだったら俺が必ず護る”ってな…」

 

 

その言葉は、何よりも明るく彼女達の心を明るく照らし出した。その声は、誰よりも彼女達が今聞きたい声だった…。そしてその姿は、誰よりも彼女達が今会いたい者の姿だった…。

 

 

「帰るぜ? 皆の所に、な…」

 

 

『…はい!(ああ)(おう!)(ええ)(はいデス!)(うん)』

 

 

その問い掛けに、響達は笑顔で頷き、“その男”の下へ駆け寄るのだった…。

 

 



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戦いは大体事後処理の方が大変


お久しぶりです、無颯です。

というわけで、月光校庭のエクスカリバー編、ようやくラストです。グダついてる気もしますが、ご了承ください…。

で、どうぞ。


響達の戦いが終わる少し前、一護もまた自身の相手である研究者風の男と戦っていた…。いや、“戦い”という表現は相応しくないだろう。何故なら…

 

「な、何なんだ…何なんだテメエはああああああああああッ!!??」

 

その研究者風の男──ギース・ヘイドは片膝を着いて屈服しているような状態であるのに対し、一護は掠り傷1つ負うことなく立っているのだから…。

 

「何なんだじゃねえよ。見ての通り、俺は“ただのしがない神器所有者”で…お前の敵だ」

 

「ふざけんじゃねえッ!! “ただの神器所有者”だと!? なら何で…俺の持つ7つの神滅具(ロンギヌス)クラスの神器の攻撃が、何1つ通用しねえんだよおおおおおおおッ!?!?」

 

一切表情を変えない一護に対し、怒りを露わにしながら叫ぶギース。そんな彼の持っているという“7つの魔王クラスの神滅具クラスの神器”、それは……

 

「ガングニール、天羽々斬、イチイバル、アガートラーム、シュルシャガナ、イガリマ、神獣鏡……それが響達を手に入れるために用意した力か?」

 

「ああ、そうだッ!! “あの施設”に残っていたデータを死に物狂いで手に入れて、死に物狂いで研究して完成させたんだよッ!! あの小娘(ガキ)共の持つ力と質は同じだが、余裕で殺せる程の出力を持つ全く同じ絶唱機甲(シンフォギア)をなぁッ!!」

 

「…響達を簡単に殺せる…?」

 

「そうだよッ!! 自分が持ってるのと同じ力で完膚なきまで潰される…これ程あの小娘(ガキ)共を絶望させる手は無えだろッ!! 適当な人工神器で力を手にしたあの“イカレ犯罪者共”じゃ、返り討ちに遭う可能性があるが、それなりに深手の1つは負わせられる。そこで俺が潰せば問題無え…筋書きは完全に見えてた筈だッ!! それが何で…テメエみてえなクソ小僧(ガキ)に膝を着く羽目になってんだよッ!?!?」

 

「…響達を手に入れるために、そんな連中まで利用したって言うのか…?」

 

そしてその問い掛けに対し、ギースはこう言い放つ…。

 

「ハッ! “目には目を、歯には歯を”って言うだろうがッ!! だからその犯罪者共を雇ったんだよッ!! “薄汚れた歌を歌うような人殺しの小娘(ガキ)共”には、丁度良い相手だからなァッ!!!」

 

「ッ………」

 

「無駄話は終わりだァッ!! どういう理屈で一切攻撃を喰らわなかったのかは知らねえが、こっからはテメエを本気で殺してやるよォッ!!」

 

するとギースの身体から尋常ではない量の禍々しいオーラのようなモノが溢れ始める…。

 

「………」

 

「恐怖に戦(おのの)いて声も出ねえか!? テメエも知ってんだろッ!? コイツは所謂制限解除の状態だが、あの小娘(ガキ)共とは格が違えッ!! 冥界の魔王共だろうと即殺せるレベルの状態なんだよッ!! だからさっさと…死ねやアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

そこから始まったのは圧倒的な攻撃の嵐だった。ギースは自身の持つ7つの神器、“絶唱機甲(シンフォギア)”による技を入れ替わり立ち替わり一護に向かって放つ。刀や蛇腹剣、鋸、鎌などによる斬撃、ミサイルやレーザーなどによる砲撃、そして拳による衝撃波が容赦なく一護を襲う…。

 

「ヒャハハハハハハハッ!!! すぐ死ねッ!! 今すぐ死ねッ!! あんな小娘(ガキ)共を庇うような小僧(ガキ)は一緒にぶっ殺してやるよッ!! あんな小娘(ガキ)共に価値なんざ無えんだからよオオオオッ!!!」

 

そしてギースのテンションが最高潮になっていた…その時だった…。

 

「誰に価値が無いって?」

 

「あ……? ッ!?!?!?」

 

その声を聞いた瞬間、間髪入れずに攻撃を放ったギースに異変が起こった…。

 

「な、なん、だ、コイツ、はッ……!?!?」

 

ギースの頭上にいつの間にか五芒星のような紋章が現れたかと思うと、そこから光が放たれ、異常なまでの虚脱感に襲われ始めたのだ。そんな異変を起こすことが出来る者は…この空間において1人しか居ない…。

 

「誰の歌が薄汚れてるって言った?」

 

「っ!? テメエ、一体、何をしやがっ……」

 

黒煙から現れたその男―――――黒崎一護が自身の今陥っている状況の原因だと即座に理解し、怒りを露わにしながら一護に目を向けるギース。しかし…その問い掛けが最後まで紡がれることは無かった…。

 

「な、なん、だよ、その、姿は…!? 何でテメエみたいな小僧(ガキ)が…ただの神器持ちの筈のテメエが、“そんな姿”をしてやがるッ!?!?」

 

ギースが混乱に陥った要因は、一護の今の姿だった。それは恐らく、その姿の存在を知らない者であれば誰でも言葉を失う姿だったのだ…。

 

「そう聞かれて答えると思うか?」

 

「ッ!! クソッタレがッ…!!」

 

そう言いながら近づこうとする一護を見て、応戦しようとするギース。しかし…

 

「ッ!?!? どうなってやがる…何で神器の力が使えねえッ!? 何を…何をしやがったッ!?!?」

 

「…テメエはもう何も出来ねえよ。テメエの自慢の神器の力は全部…“封印”させてもらった」

 

「ッ!?!? “封印”だとッ…!?!?」

 

一護の口から出た“封印”という単語に絶句するギース。当然である。神器の力を封印するというのは並大抵のことではない。まして魔王クラスでさえ裕に殺せる神滅具クラスの神器を容易く封印するなど…通常では考えられない事象なのだ…。

 

「長引かせるつもりは無え…覚悟はいいな…?」

 

「ッ!? 何なんだよ…何で、あんな小娘(ガキ)共を、そうまでして守護しやがるッ…!? 血の繋がりでも、あんのかッ!? それとも、女としての利用価値かッ!? あんな小娘(ガキ)共の何処にそこまでの価値を持ってんだよ、テメエはああああッ!?!?」

 

自身にこれから訪れる結末を想像し、一転して恐怖と混乱を露わにしながら問い掛けるギース。それに対し、一護は…

 

「くだらねえ…」

 

「…は…?」

 

「“価値”だと…? そんな概念で響達を計るんじゃねえ…。くだらねえ欲のために地獄を見せたテメエ等が、響達を語るんじゃねえ…」

 

無表情でありながらも怒りに満ちた瞳でギースを睨み付ける。制限解除をした状態のギースとは比べ物にならないエネルギーを静かに放出しながら…。

 

「あいつ等は何1つ汚れてねえよ…。あんな地獄みてえな場所で手に入れたあの力を、いつも誰かのために使ってる。あいつ等の歌はどんな奴の歌よりも人の心に届く…。だから“あの日”に誓ったんだよ。あいつ等の歌も、身体も、心も全て護り抜く…この手をどんだけ血で汚そうともな…」

 

「ッ! ま、待てッ…!?」

 

「じゃねえと示しが付かねえんだよ…“あの世界”で響達を命懸けで護り抜いた“アイツ等”と、“俺自身”になぁッ!!」

 

「お、俺はこんな所で死ぬ人間じゃねえッ!! お、俺はァッ…!?」

 

「…じゃあな…」

 

ギースが慌てて背を向けるが、それが彼の最後の行動だった。何故なら…いつの間にか一護が持っていた“光の剣のようなモノ”によって、胴体を真っ二つに斬り裂かれていたのだから…。そして、

 

「…さてと…迎えに行くとするか…」

 

一護はそんな“ギースの成れの果て”を見ることもなく背を向け……その場から姿を瞬時に消すのだった…。

 

 

☆☆

 

 

時を同じくして、駒王学園の校庭ではコカビエルの放った一言によって“一部に”大きな衝撃が走っていた…。

 

「う、嘘だ…」

 

「な、何を…何を言ってるのよ……?」

 

「神が、死んでいた…? 馬鹿なことを…そんな話聞いたこともないわッ!!」

 

ゼノヴィアとイリナがショックのあまり呆然とする中、語気を強めてその話を否定しようとするリアス。しかし、そんなリアス達を嘲(あざ)笑うようにコカビエルは話し出す。

 

「あの戦争で悪魔は魔王全員と上級悪魔の多くを失い、天使も堕天使も幹部以外の殆どを失った。最早純粋な天使は増えることすらできず、悪魔とて純血種は貴重な筈だ」

 

「そんな…そんなこと…!」

 

「どの勢力も人間に頼らなければ、存続が出来ない程落ちぶれた、天使も、堕天使も、悪魔も。三大勢力のトップ共は神を信じる人間を存続させるために、この事実を封印したのさ」

 

「嘘だ…嘘だッ…!」

 

「や、やめて……イヤッ…!」

 

コカビエルの話にゼノヴィアとイリナはショックを更に増大させ、アーシアもイリナと同じくらい震え出している。すると、

 

「フッ、嘘だと思うなら、そこにいるアイエールの者達に聞いてみればいい」

 

『ッ!?』

 

「その様子だと、貴様等は既に神の死を知っていたようだな、アイエール」

 

「…本当なの、当麻…?」

 

コカビエルが目を向けたのは、当麻やリクオを始めとするアイエールの面々だった。それに気付いたリアスは当麻に尋ねる…。

 

「…ああ、事実だ」

 

「っ! そん、な…」

 

「あ…ああ……!」

 

コカビエルの話を当麻が肯定したことで、その事実を認めざるを得ない状況となってしまったゼノヴィアとイリナ。当然ショックはより大きくなり、自らの武器であるデュランダルから手を放し、膝を着いてしまう…。

 

「そんなことはどうでもいい。問題は神が死んだ以上、戦争の継続は無意味だと判断したことだ。耐え難い…耐え難いんだよッ! 一度振り上げた拳を収めろだと!? あの戦いが続いていたら、俺達が勝てた筈だッ! “アザゼル”の野郎、二度目の戦争は無いと宣言する始末だ! ふざけるなッ!!」

 

「っ! 救いようのないくらいの戦闘狂だな」

 

「ええ、そうね。ここまで凄い人は初めてだわ…」

 

怒りと興奮に満ちた様子で叫ぶコカビエルを見て、表情をいつになく険しくするエルザとミラジェーン…。と、ここで、

 

「主はもういらっしゃらないの…? では、私達に与えられる愛は……!」

 

「…フッ、“ミカエル”もよくやっているよ。神の代わりとして天使と人間を纏めているのだからな」

 

「ッ! 大天使ミカエル様が神の代行だと…? では、我らは……」

 

「システムさえ機能していれば、神への祝福も悪魔払いもある程度動作はするだろうしな」

 

「ッ…!?!?」

 

「ッ! アーシア…」

 

「イヤ……イヤアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

「っ!? ちょっと!?」

 

「ダメ、完全にパニックになってるわ! 抑えるわよ!」

 

「無理もない…。私だって、理性を保っていられるのが不思議なくらいだ…」

 

コカビエルの言葉を聞き、ショックのあまりアーシアは完全に気を失ったため、近くにいた小猫が咄嗟に受け止める。更にイリナに至っては錯乱状態に陥ったため、ルーシィとシノンはその様子を見てマズいと判断し、雪菜や紗矢華などと一緒に抑えに掛かる。

 

「とはいえ、神を信じる者は格段に減った。聖と魔のバランスを司る者が居なくなったとはいえ、その聖魔剣のような特異な現象が起こる訳だ…。本来聖と魔が交わることはあり得ないからな。こうなれば俺だけでも、あの時の続きをしてやるッ!!!」

 

「…また…」

 

「! リアス…」

 

「またつまらない意地を張って…私のせいで…」

 

「ふざけんなッ!! お前の勝手な言い分で、俺達の街を、仲間を消されてたまる……」

 

そしてリアスが悔しさを滲ませ、イッセーがコカビエルに対する怒りを露わにし始めた…その時、

 

「「黙れ…」」

 

「グフォアッ!!??」

 

『ッ!?』

 

コカビエルは突如2人の人物に顔面を殴られ、思い切り吹き飛ばされたのだ。その2人とは…当麻とリクオの2人である。

 

「珍しいな。お前が素手で殴りかかるなんて」

 

「お前に合わせたんだよ」

 

「! そうか。その気遣いは上条さん的に有難いぜ」

 

「! と、当麻…?」

 

「…リクオ先輩…?」

 

狂った堕天使幹部を殴り飛ばした直後に平然と会話をする当麻とリクオに、驚きを隠し切れないリアスと小猫。

 

「くっ…話の途中で不意打ちとは、舐めた真似をしてくれるじゃないか」

 

「…何でわざわざ神の死を伝えた? この場で言う必要は無かっただろ?」

 

「フンッ、隠していてどうなる? さっきも言った通り、どの道これから戦争を始めるんだ。それに…良い“余興”になった訳ではないか?」

 

「…“余興”だと?」

 

「ああ。何しろ、神を信じる愚かな人間共の絶望する姿を見れたのだからなぁッ!」

 

「ッ!! テンメエッ…!!!」

 

当麻とリクオの問いに対し、コカビエルは高らかにそう言い放った。これにはイッセーを始め、リアスやエルザ達も憤りを感じざるを得ない。だが、それを聞いた当麻とリクオは…

 

「はぁ…やっぱりテメエは馬鹿だな、コカビエル」

 

「…何?」

 

「やめとけ、当麻。無理もねえだろ? どうせこいつも知らねえんだからよ」

 

呆れ返った様子でそう呟いたかと思うと、続けてこんな事を言い始めたのだ。

 

「確かに聖書の神は、大戦によって死んだ。こいつは紛れもなく真実だ。だが…“今の天界側に神がいない”なんて、誰が言った…?」

 

「ッ!? 何を言っている…?」

 

「言ってる意味が分かんねえか? 要するに、“天界側に神はいる”って言ってんだよ…」

 

『ッ!?!?』

 

「……は……?」

 

「! 主は、生きている…?」

 

「…本当、なの…?」

 

当麻とリクオの口から飛び出した一言に、リアス達だけでなく“神の死”を告げたコカビエル、そして生気を失っていたゼノヴィアとイリナも驚愕する他無かった。もっとも、コカビエルが言葉を失っているのに対し、ゼノヴィアとイリナは希望を見い出したような表情を見せているが…。

 

「フンッ、何を世迷い言を…。神の死は大戦の生き残りである三大勢力の各幹部達が、全員この目でしかと見ている。そんなハッタリを口にするとは、どうやら貴様等も大したことのない…」

 

「なら、その“神の魂を完全に受け継いだ存在”がいたらどうだ?」

 

「ッ!? 何ッ…!?」

 

「しかも、そいつがここにいる全員の知ってる奴だとしたら…テメエはどうする?」

 

「ッ!? ここにいる全員ということは…」

 

「お、俺達も知ってる奴って事かよッ!? でも、そんな奴と会った事なんて…」

 

立て続けに当麻とリクオの口から出たカミングアウトに、朱乃とイッセーは思わず呟き、声を上げる。それもそうであろう。そんな存在と出会っているのであれば、忘れる筈もない。何しろそれは、悪魔である自分達と最も対になる存在なのだから…。すると、

 

「まぁ、そんなに信じられないんなら、今ここで“直に会って”みろ…」

 

「そうだな。どうやら、そろそろ来るみたいだからな…」

 

「ッ! “直に”、だと…!?」

 

「ララ! モモ! ナナ! リアス達もまとめて結界を張れ!!」

 

「「「! うん(はい)(おう)ッ!!」」」

 

コカビエルが再び驚愕する中、リクオはデビル――ク三姉妹に指示を飛ばし、リアスとイッセーを始めとするグレモリー眷属、そしてゼノヴィアとイリナを取り囲むような結界を展開させる。そのメンバーの共通点はゼノヴィアとイリナこそ当てはまらないものの、他の全員が全て悪魔だという点である…。と、次の瞬間、

 

『ッ!?!?!?』

 

上空の空間のある一箇所に“罅(ひび)”が入った瞬間、コカビエルとララ達の結界内にいるリアス達は尋常ではない“圧”を感じた。コカビエルの放つモノが、一瞬で霞んでしまうような程の圧を…。しかしその間にも現われた罅はどんどん広がっていき、ついに空間が割れる。そして、そこから姿を現したのは……

 

「一護、君……?」

 

その名を口にしたのは朱乃だった。通常であれば、戦いに勝利してここに戻ってきたであろう青年の姿に、嬉しさを感じるであろう。だが今の朱乃は、その人物――――黒崎一護の姿を見て…言葉を失う他無かった。何故なら…

 

「“十二枚”の、天使の、翼……!?」

 

「う、嘘、じゃあ……」

 

今まで見たことのない白を基調とした何処かの部隊の制服のようなモノと白い外套を身に纏い、背中には“六対十二枚”の翼を生やしているのだ。これにはゼノヴィアとイリナもその姿に呆然とするが、同時に或る結論に行き着く他なかった…。

 

「やっぱりその姿になったか、一護…。いや、今は“ユーハバッハ”って呼んだ方が良いか?」

 

「…勘弁してくれ。その名で呼ばれるのは御免だ…」

 

「…あいつ等は?」

 

「…大丈夫だ」

 

当麻とリクオがそれぞれ問い掛けると、空中で静止したままの一護は右手を軽く振るう。すると、横一線に並ぶような形で地上に白い魔方陣が展開され…

 

「! 響さん!」

 

「…! うん、ただいま、雪菜ちゃん…」

 

「…全員無事ってことで良さそうね」

 

「ああ…」

 

「見ての通りよ…」

 

そこから姿を現したのは、一護と共に戦いのために姿を消していた響達7人だった。その姿を確認した雪菜や紗矢華達を始めとするアイエールのメンバー達が近駆け寄ってくると、響や翼、マリアもそう返す。もっとも、その表情は晴れやかとは言い難いものだったが…。と、ここで、

 

「ハハッ…フハハハハハハッ!!!!!」

 

『……!!』

 

1人の男の狂ったような高笑いの声が響き渡る。その声の主は…言うまでもなくコカビエルであった…。

 

「素晴らしいッ!! 素晴らしいぞアイエールッ!!! その姿!! この圧倒的威圧感!! 間違いない!! これは認めざるを得ない!! まさに貴様が、“天界の神”そのものであることをッ!!」

 

「……神の死を、バラしたらしいな?」

 

「そうだ!! 戦争を起こす以上隠す必要も無く、尚且つそこにいる教会の信者共にとっては丁度良いネタだったからな!! だが、結果は予想以上だ!! こうしてあの時この手で殺すことの出来なかった神が、再び俺の前に現われたのだからなぁッ!!」

 

「…………」

 

コカビエルとそんなやり取りを交わしながら、一護はふとララ達の張った結界の中にいるリアス達…特に神のことを信じているであろうアーシア、ゼノヴィア、イリナに目を向ける。その目に映ったのは気を失っているアーシアと…無意識に祈りを捧げるような姿で膝を付き、呆然と自分を見ているゼノヴィアとイリナの姿だった…。すると、

 

「威眠(いねむり)…(ボソッ)」

 

「「っ……!」」

 

「ッ!? お、おい、どうしたんだよ!?」

 

「! 大丈夫だよ、イッセー君。どうやら2人共、気を失っただけみたいだから…」

 

一護が誰にも聞こえないようにそう呟いた瞬間、ゼノヴィアとイリナは急に意識を失って倒れたのだ。これには近くにいたイッセーと裕斗も驚きつつ、咄嗟に受け止める…。

 

「当麻、リクオ」

 

「…何だ?」

 

「俺が終わらせる…。全員下がらせてくれ…」

 

「…そうかよ。じゃ、さっさと終わらせな…」

 

一護からの頼みをあっさりと受け入れる当麻とリクオ。そんな3人のやり取りを聞いた他のアイエールのメンバーも、暗黙の了解といった形で離れていく…。

 

「「お兄ちゃん(一兄)…」」

 

「…お前等も下がってくれ…。心配すんな、“一瞬”だからよ…」

 

「! 一護さん…」

 

「…さっさと下がるぞ。ここにいても、邪魔になるだけだからな…」

 

心配そうに声を掛けてくる調と切歌にそう返すと、未来とクリスはそう言って調と切歌を連れ、響や翼、マリアとと共に距離を取っていく…。

 

「“一瞬”、だと? フンッ、大した自信ではないか…?」

 

「…宣言しただけだ。長引かせた所で…何にもならねえからな…」

 

「ッ…! ふざけるなよ…これは待ちに待った戦争だ! 今まさに天界のトップと呼ぶべき存在が、こうして目の前に姿を現した!! これはまさに、恰好の機会ッ!!」

 

何処か冷淡な雰囲気を見せる一護の言葉に、苛立ちと興奮を織り交ぜて声を上げるコカビエル…。

 

「さぁッ!! 戦争の…始まりといこうかッ!! “神”ィィィィィィィィィィィィッ!!!!」

 

コカビエルは極大の光の槍を手にしながら、凄まじい速度で一護に向かって飛び立つ。その速度は明らかに違い、スピードに自信のある裕斗が霞む程のモノだった。全身から放っている力も、堕天使の幹部として相応しいモノだった。そして……

 

 

 

 

「聖唱(キルヒエンリート)…」

 

「ッ!!!!?!?」

 

「“聖域礼賛(ザンクト・ツヴィンガー)”…」

 

それは一瞬の出来事だった…。一護の右腕の袖口からアルファベットの書かれた4本の小さな柱が現われたかと思うと、空中に魔方陣にも似た極大の光の領域が一護を中心に瞬時に展開され……その領域内に入ったコカビエルは無数の光の刃を受けて“消滅”した…。そう、“消滅”したのである…。

 

「な…何が起こったの…?」

 

「た、倒した、のか…?」

 

「あの堕天使の幹部を…あの一瞬で…?」

 

その光景を見ていたリアス達グレモリー眷属の面々は、思わずそう呟くリアスとイッセー、裕斗を含めて呆然とする他無かった。当然であろう。自分達の力では全く歯が立たず、むしろ手加減すらしていたであろう強者が、何も出来ずに一瞬で消されたのだから…。するとそんな中、一護の姿が瞬時にいつもの“死覇装(しはくしょう)”に戻り、背中の十二枚の翼も消して…

 

「終わったぞ、当麻、リクオ…」

 

「…ああ」

 

「…ありがとよ、ララ、モモ、ナナ。もう終わりだ。結界を解いていいぞ」

 

「! う、うん…」

 

当麻とリクオに抑揚の無い声で一言報告した。それを聞いた当麻はただ頷き、リクオはララ達に結界を解くよう伝える。と、ここで、

 

「当麻…!」

 

「! リアス…」

 

「どういうことか説明してちょうだい。勿論、一護についてよ…」

 

「そ、そうだぞ一護!? 本当なのかよ!? お前、マジであの神様なのかよ!?!?」

 

「…………」

 

結界が解除された途端、リアスとイッセーがすぐさま当麻や一護に問い掛けた。無論、朱乃や小猫、裕斗も口にはしないものの、当麻達3人を複雑な表情を浮かべながら見ている。だが、イッセーの問い掛けに一護が口を開かずにいると、ここで、

 

「そろそろ出てこいよ! そんな所にいてもしょうがねえだろ?」

 

「! リクオ先輩…?」

 

リクオが何故かある一点を見上げるようにしつつ、少し大きな声でそう言ったのだ。そして突然のリクオの行動に小猫が思わず疑問を感じていると…

 

「フッ、やはり気付かれていたか」

 

『ッ…!!』

 

リクオの見つめていた方向から、そんな声が聞こえてきたのだ。突然のことに驚き、咄嗟に見上げるリアス達。するとそこには…“青い光の翼”が目を引く、白い鎧のようなモノを身に纏った人物がいた…。

 

「ッ! 身体が、震え上がる…! 何だあいつはッ!?」

 

「お前のライバルになる奴だよ、イッセー…。にしても、高みの見物ってのは少し虫が良すぎるんじゃないか、“白龍皇”?」

 

「ッ!? 白龍皇ですって!!?」

 

イッセーが地上へゆっくり降下してくる鎧の人物に何かを感じる中、当麻の口から出た鎧の人物の正体に驚愕するリアス。もっとも、それは他のグレモリー眷属の面々も同様なのだが…。

 

「出ていくまでもないと判断したんだ。まあ、コカビエルが消されるのは予想外だったが…」

 

「…目的は奴の回収って所か?」

 

「ご明察だ。“アザゼル”に頼まれてね。だがこの羽一つでも持って行けば、事の顛末の説明はできるだろう…。それと、そこにいるはぐれ神父の身柄を引き取りたいんだが……構わないか?」

 

「…堕天使サイドから正式に何かあるって解釈していいか?」

 

「ああ、そう捉えてくれて構わない」

 

「そうか…。リアス!」

 

「…!」

 

「ここは管理者であるお前の判断を尊重するが…どうする?」

 

一切動じることなく白龍皇と会話していた当麻から判断を求められ、一瞬たじろぐリアス。しかしすぐに管理者としての顔に戻ると…

 

「構わないわ」

 

「! 分かった…」

 

「決まりみてえだな…。ミラ!」

 

「ええ…」

 

当麻とリアスのやり取りを聞いていたリクオが指示を出すと、ミラジェーンは倒れ伏しているはぐれ神父――――フリード・セルゼンの首根っこを掴み、白龍皇に投げ渡した…。

 

「“魔神”、ミラジェーン・ストラウスか…。話は聞いていたが、これ程強い神器所有者が集まっているの光景は壮観だな。全員集結すれば、三大勢力など一瞬で滅ぼされそうだ…」

 

「…上条さん達に喧嘩を売りに来たのか?」

 

「いや、そんなつもりは毛頭無い。今の俺では、そちらの娘(こ)達の誰にも勝てないだろうからな…。それに今日は、とても面白い事も知れた。十分に満足させてもらったよ」

 

視線を鋭くする当麻に対し、白龍皇は意味深な笑みを見せつつ一護に目を向ける。と、ここで、

 

≪無視か。白いの…≫

 

『……!!』

 

「籠手が喋った…!?」

 

「つまりあれが、伝説の赤き龍って訳だね」

 

「ああ…」

 

辺りに響く聞き慣れない声。その声は…イッセーの右手に備わっている神器――――“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”から聞こえてくる。突然の会話の乱入者にリアスが驚く一方、クロメとアカメは冷静にその声の主の正体を推測する。

 

≪生きていたか。赤いの≫

 

≪折角出会っても、この状況ではなぁ…≫

 

≪いいさ、いずれ戦う運命だ。こういうこともある…。また会おう、“ドライグ”≫

 

≪ああ、またな、“アルビオン”≫

 

“赤龍帝の籠手”の声の主である“ドライグ”と、白龍皇の持つ神器――――“白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)”の声の主である“アルビオン”の会話が終わった所で、その場を離れようとする白龍皇。すると、

 

「おい! どういうことだ!? お前は一体何なんだッ!?」

 

「…全てを理解するには力が必要だ。強くなれよ、いずれ戦う俺の宿敵君。そして…」

 

荒々しく尋ねてくるイッセーに対し、淡々とそう返す白龍皇だったが、当麻と一護、リクオの3人に目を向けると…

 

「上条当麻、黒崎一護、奴良リクオ。君達とはいずれ“手合わせ”をさせて頂きたいんだが、その時は受けてくれるか?」

 

「…俺達の機嫌を損ねるような事をしなければ、考えてやる」

 

「! それを聞ければ十分だ。では、失礼する…」

 

そう言って、瞬時に飛び立ち姿を消した…。と、ここで、

 

「リアス!」

 

「! ソーナ!」

 

「まさか、白龍皇が乱入してくるとは…」

 

「ええ。でも今回はある意味助かった…っ!」

 

周囲の結界を解いて生徒会メンバーと共にやってきたソーナがそう言う中、リアスは或る事に気付いた。それは…

 

「待ちなさい、当麻!!」

 

そう、当麻を筆頭にしたアイエールのメンバーが全員撤収準備を始めていたのだ。その中には先程コカビエルを圧倒した一護の姿もあり、しかもその両肩には…気を失っているゼノヴィアとイリナを担いでいた。すると、

 

「悪いな、リアス。訳あってコイツ等は連れていかせてもらう。事情はあんたが帰ってきた時に説明するから、後は宜しく頼む」

 

「っ!?」

 

「お、おい! どういう事だよ!? おいッ!!」

 

リアスとイッセーの制止も聞くことなく、当麻がそう言った所でアイエールのメンバーの姿は一斉に消えた。その速さは白龍皇よりも更に上で、騎士である裕斗の目ですら追えない程だった…。

 

「ララ様ー!! ナナ様ー!! モモ様ー!! ご無事でございますか………あれ?」

 

その僅か数秒後に“聞き慣れない声”が空しく響いたのは…余談である…。

 

 

☆☆ 

 

 

「…ん……ここは……?」

 

ゼノヴィアが目を覚ますと、そこは何処かの部屋の中だった。しかも服装は教会の戦闘服のまま、その部屋にあるベッドに寝かされていることに気付くゼノヴィア。と、ここで、

 

「…! イリナ!」

 

「…ん……ゼノ、ヴィア…?」

 

自身の隣に寝かされているイリナに気付き、ゼノヴィアは咄嗟に揺する。するとイリナもすぐに目を覚まし、ゼノヴィアの姿を確認して上半身を起こした。

 

「ここは…?」

 

「分からない。気が付いたら私も寝かされていた…」

 

「そう…どうしてこんな所にいるのかしら? コカビエルと戦っていて、それで……っ!!」

 

「っ…!!」

 

イリナがそこまで呟いたところで、2人は思い出した。そう、自分達のこれまでの考えが全て吹き飛ぶような、“2つの衝撃的な事実”を…。と、その時だった…。

 

ガチャッ!

 

「気が付いたみたいだな?」

 

「「…!!」」

 

「大丈夫か? 一応怪我の手当はしてもらったんだが…」

 

部屋の入り口が開いたかと思うと、1人の人物が入ってきた。その人物とは…衝撃的な事実の張本人とも言うべき存在である、黒崎一護だった。そして、そんな一護の姿を見たゼノヴィアとイリナは…

 

「「お、お許し下さい!!」」

 

「は…?」

 

瞬時にベッドから降りたかと思うと、目にも止まらぬ早さで土下座してきたのだ。

 

「主だとは知らずに数々の無礼、本当に申し訳ありませんでした!!」

 

「教会に属する者として、心より謝罪致します。何卒お許しを…!」

 

「いやいやちょっと待て! そもそも怒ってねえし、土下座するなんざ微塵も無えから顔を上げろって…!」

 

頭が床にめり込みそうな勢いで土下座を続ける2人の様子に、慌ててやめるよう言う一護。しかし自身の行動を振り返ったゼノヴィアとイリナは止める様子を見せない…。すると、

 

「はぁ…しゃあねえ…」

 

一護が溜め息混じりに呟きながら右手を軽く振るうと、空中にディスプレイのようなモノが出現したのだ。しかも、そこに映し出されていたのは…金色の長髪が目を引く中性的な顔立ちの男の姿だった。

 

『お待ちしていました』

 

「なっ!?」

 

「ミ、“ミカエル”様!?」

 

その男――――天使長“ミカエル”の姿にゼノヴィアとイリナは驚愕するが、当の一護はそんなミカエルに対し、

 

「状況は分かってるな?」

 

『はい…まずは今回の一件に対する御協力、心より感謝致します、“主”よ」

 

「…その呼び方はやめろって言ってんだろ? それに今回の件はこっちにも関係のある連中が関わってたからな。話が無くても自然と協力する形になってたと思うぜ…?」

 

『…彼女達は、大丈夫ですか?』

 

「…多分な。まあ、そこはこっちで気に掛けるから、心配すんな」

 

『…分かりました…』

 

ここで一護とやり取りを交わしていたミカエルは、跪いているゼノヴィアとイリナに目を向ける。

 

『ゼノヴィア、イリナ、まずは今回の任務について感謝すると共に、あなた達を無謀な戦へ送るような形になってしまったことを、天界を統括する者として謝罪致します。本当に申し訳ありませんでした』

 

「っ!? あ、頭を御上げください、ミカエル様!!

 

「私達は命懸けの任務であることを覚悟の上で引き受けた…ミカエル様が頭を下げる必要などありません」

 

『…あなた達の寛大な心に感謝致します。では、早速本題に入りましょう…。あなた達も気付いている通り、そこにいる青年――――黒崎一護君は、我等が信仰する“主”に等しい存在です』

 

「ッ! やはり…」

 

「まさか主がこんなに近くにいらっしゃったなんて…ああ! 神を信じる身なのに神の存在に気付けないなんて、私達は何て罪深いのかしら…!」

 

ミカエルの口から一護が“神に等しい存在”であると証言されると、ゼノヴィアは改めて一護に目を向け、イリナはその事に気付けなかった自らを責めようとした。しかし…

 

『自らを責める必要はありません、イリナ。我々四大天使でさえ、彼が神としての姿になるまで気付く事が出来なかったのですから』

 

「なっ!?」

 

「ミ、ミカエル様達ですら気付けなかったのですか!?」

 

『はい』

 

更にミカエルの口から飛び出した内容に驚くゼノヴィアとイリナ。と、ここで、

 

「し、しかし、何故この事を黙っているのですか!? 主が亡くなっていたとしても、新たな主が誕生していたのであれば、私達は…」

 

「っ…」

 

ゼノヴィアは最後まで言葉を口にすることはできなかったが、イリナも彼女の言わんとしている事に気付き表情を曇らせる。彼女達の脳裏に浮かんだのは、コカビエルから“神の死”を暴露された時の絶望感だった。それは信者である2人にとってこれ以上無い程辛いモノであり、だからこそゼノヴィアは思ったのだ。もし新たな主の誕生が周知されていれば、このような絶望を自分達が味わうことは無かったのではないかと…。

 

『貴方達の気持ちは、私にもよく分かります。ですが、それはできないのです。彼が“神に等しい存在”であるが故に…』

 

「? どういうことですか…?」

 

『“システム”のことは、知っていますね?』

 

「! 主が使うことのできる、私達信者に加護を与えるもの…」

 

『そうです』

 

ミカエルの口から飛び出した“システム”という単語を聞いて、ゼノヴィアとイリナはすぐにどういったものかを思い浮かべる。

 

『主が亡くなった際、私達上級の天使はシステムの一部を引き継ぎ、あなた方信者への加護を維持し続けています。ですがシステムは私達でも扱いが難しく、これまで大きな不都合を生じさせてしまっています。神器の“禁手(バランスブレイク)”も、その不都合の1つに他なりません…。そして、そこにいる新たな主と呼ぶべき存在──黒崎一護君が天界へやってきた際にも、不都合と呼ぶべき大きな事象が発生しました。それが…人間界における“新たなる神器の大量発生”です』

 

「っ!? 神器の、大量発生…!?」

 

その話を聞いた瞬間、ゼノヴィアは思わず或る方向に目を向ける。そこには険しい表情を浮かべる一護がいた…。

 

『言うまでもありませんが、このようなことは前代未聞。亡くなった我等が主ですら、ここまでの影響を及ぼすことは無いでしょう。つまり…貴女たちの目の前に居る方は、亡くなった主をも凌ぐ力を持つ存在なのです。そしてその力は神でありながら、天界そのものを根本から大きく変えてしまう程危ういもの…。だからこそ、彼は天界の頂点に…いや、天界そのものに属することはできず、その存在も最大級に秘匿されなければならないものなのです』

 

「ッ!? 天界そのものを、根本から変えてしまう…」

 

「…そこまで話したってことは、お前のコイツ等に対する本題はここからだな?」

 

『…はい』

 

「? 本題…?」

 

イリナが一護に対して益々畏怖の念を強く抱き始めている中、一護はミカエルに険しい表情のまま問いかける。すると…

 

『結論から申し上げます…。今回の一件を以て、ゼノヴィアとイリナの両名を“破門”することが正式に決まりました』

 

「……え……?」

 

「は、破門……?」

 

突然の宣告に、暫し言葉を失うイリナとゼノヴィア…。

 

「う…嘘、ですよね、ミカエル様…?」

 

『…神の死を、ひいては新たな神の存在を一介の信徒が認識しているだけで、システムに影響が生じ、信徒全体の信仰に多大な影響が及ぶ可能性がある…。それ故に、大きな不安要素は取り除かなくてはならないのです。例えそれが、貴重な聖剣使いであったとしても…。本当に、申し訳ありません…』

 

「ッ!! そん、な…」

 

神妙な面持ちで謝罪するミカエルを見て、神の死を知った時と同じくらいの絶望を受けるイリナとゼノヴィア。特にイリナは、今にも倒れてしまいそうな程のショックをモロに受け、涙を流し始めてしまった…。しかし、ここで、

 

『一護君…いえ、我等が主よ。大変恐縮ですが、1つ私からお願いをさせて頂いても宜しいでしょうか?』

 

「…何だ?」

 

『…この2人を、貴方の直属の部下として側に置かせていただく事はできませんか?』

 

「「えっ!?」」

 

ミカエルの口から飛び出した頼みに、ゼノヴィアとイリナは先程までの絶望から一転して驚愕を露わにした。

 

『支離滅裂な願いであることは承知しております。私がこのような頼みをする立場に無いことも…。ですが、それでも願わせていただきたいのです。この2人にどうか、大いなる主の祝福をお与えください…』

 

「…俺はそんな祭り上げられるような存在じゃねえ。祝福なんて大層なものを与えられるような存在でもねえ…。それでも頼むのか?」

 

『…私は確信しているのです。貴方はかつての主でさえも為し得なかった救いを与えられる存在だと…。少なくとも貴方の前にいる2人は、貴方の下にいる方が天界に残るよりもずっと救われると私は思っているのです。それは貴方の側に居る“彼女達”を見れば分かります…。ですから…この2人をどうか、宜しく御願いします…』

 

「……」

 

ミカエルの言葉を聞いた一護は、何処か困惑した様子のゼノヴィアとイリナに目を向ける。2人を見た瞬間、彼女達の姿が“或る少女達”と重なった。自身が救い、自身の側にいる“9人の少女達”の姿と…。そして、

 

「悪いが、部下なんて存在を持つ気は更々無え…」

 

「「っ…!」」

 

「けどまあ…仲間としてなら受け入れてやるよ」

 

「「えっ…?」」

 

『! ありがとうございます…!』

 

一護の言葉にゼノヴィアとイリナが驚く中、ミカエルは心からの感謝の言葉を伝える。しかし、

 

「その代わり、約束しろ。教会の連中がコイツ等を裏切り者として侮辱したり、実力行使に出るような真似をしねえようにしてくれ…。今回の件で、アーシアがまさにその被害者になっちまったからな」

 

「「っ……」」

 

「もしそいつを破るようなことがあったら、その時は…それ相応の対応を取らせて貰う。いいな…?」

 

『…分かりました。天使長として、その約束を違えぬ事を誓います、我等が主よ」

 

「だからさっきも言っただろうが。その呼び方は止めろ。俺は黒崎一護だ。それで十分なんだよ…」

 

『…分かりました。改めて、ありがとうございます、一護君』

 

これまでで最も鋭い視線を送りながら問い掛ける一護に対し、ミカエルは動揺することなく返した。と、ここで、

 

『…! すみません、私はここで失礼します。回収した聖剣は…』

 

「こっちの技術担当が保管してるが、どうする?」

 

『聖剣についてはこちらから至急回収のための人員を送りますので、宜しくお願いします』

 

「分かった。まあ、どうせまた“すぐに会うことになる”だろ? コイツ等には、その時にまたちゃんと謝罪してくれ」

 

『はい…。ゼノヴィア、イリナ、何度謝罪してもし切れませんが、あなた方を放り出す形になってしまったこと、心よりお詫びします。ですが、貴女方の隣にいる方は十分に信頼のできる存在です。何しろ彼は異なる所もあるとはいえ、間違いなく我等が主に他なりませんから…』

 

「あっ…」

 

「ミ、ミカエル様…」

 

ミカエルは少々気まずそうに通信を切る旨を伝えつつ、ゼノヴィアとイリナにそう語り掛ける。そして、

 

『では、我等が主…いえ、一護君、ゼノヴィアとイリナのこと、宜しく御願いします』

 

「…ああ」

 

ミカエルの姿を写していたディスプレイが消え…この場には一護とゼノヴィア、イリナの3人だけとなった…。

 

「ふぅ…つう訳で、お前等のことは俺が預かることになったんだが…まあ、そう簡単に理解できねえよな?」

 

「! えっと…」

 

一護の問い掛けに困惑を隠し切れない様子のイリナ。すると、代わりにゼノヴィアが意を決して尋ねる。

 

「何故、私達の身を引き取ったのですか?」

 

「? どういうことだ?」

 

「っ…私達の身を引き取った所で、貴方に利があるとは思えない。今回の件で嫌という程実感させられた…。私達は貴方は勿論、アイエールという組織にとって足下にも及ばない存在だと…」

 

「……」

 

「その上、私達からは聖剣も無くなる…。そんな私達に、何故貴方は慈悲を与えるのですか? 今の私には分からない。ミカエル様からの言葉を以てしても、一体何を信じるべきなのか…私には、分からないんだ…」

 

その言葉を聞いたイリナもまた、動揺を露わにしながら顔を俯かせる。“神の死”と、“神と同質と言っていい存在”を同時に知ったことは、ゼノヴィアとイリナにとってあまりにも大きすぎる事だったのだ。しかし、それに対して一護は…

 

「はぁ…理由は1つしか無えよ。“ただ俺がそうしたかったから”…それ以上もそれ以下も無いっての」

 

「「…は(え)…?」」

 

「それに“慈悲”とかそういうのも止めてくれ。俺はお前等に敬われるような奴でも無いし、畏まって話されるような存在でも無えしな」

 

溜め息混じりにそう言い切ったのだ。それを聞いたゼノヴィアとイリナは呆気に取られるが、一護は話を続ける…。

 

「前にも言っただろ? アイエールに上下関係なんざ無えって。そりゃそうだ。ここにいる連中は基本、自分のやりたいことを自由にやってるんだからな。まあ、明らかに危ねえことをしようとした時は流石に止めるし、色々あって自制してもらってる奴もいるが…」

 

「! じ、自由にやってるって、そんなの組織じゃ…」

 

「あー…そもそも組織だなんて思ってねえんだよ。ここにいる連中は大体、皆を仲間として…場合によっては家族としていつも接してる。俺や当麻やリクオも“総帥”やら“副総帥”やらと名乗ってるけど、そいつは形でしかねえ…。それがこのアイエールの…いや、俺達の本質なんだよ」

 

「…私達の身を引き取ることが、貴方のやりたいことだと?」

 

「だから、そう言ってんだろ…? お前等が追放されることになった原因は、俺にもある…。神と同質って言われながら、システムに俺は一切介入する事ができねえんだからな。ったく、力がかえって悪影響を及ぼすっていうのは、何とも言えねえな…」

 

ゼノヴィアの問いに対し、一護は自嘲気味に呟きながらも、こんな言葉を掛ける…。

 

「別に罪滅ぼしなんてつもりも無え。さっきから言ってる通り、俺はただ俺のやりたいことをやろうとしてるだけだ…。お前等は確かに教会から追放された。けど、だからってこれから生きてく理由が無い訳じゃねえだろ? お前等には、何か“やりたいこと”は無えのか?」

 

「っ…!」

 

「私達の、やりたいこと…?」

 

一護の口から飛び出した“やりたいこと”という単語に、大きく反応するゼノヴィアとイリナ…。

 

「“神を信じる”のも構わねえ。お前等が今までずっと信じてきたものだ。簡単に捨てきれるはずも無え…。けどまあ、それ以外にもやりたいことの一つや二つはあるんじゃねえか? それが無いっていうなら、探してみればいい。その間はここで暮らせばいいしな。ここにいる連中も、何やかんやで大体お人好しになっちまったし…」

 

「! やりたいことを、探す…」

 

「ああ…意外とすんなり見つかるかもしれないぜ? お前等は今まで自分の事に気を回せてなかった気がするからな…。まあ、それに安心しろ。お前等もここで暮らす以上、誰が何と言おうと仲間だ。危ねえ目に遭いそうになった時は…」

 

その瞬間、一護はいきなり自らの姿を変える。それは“背中の十二枚の白翼”と“純白の装束”が目を引く姿…そう、ゼノヴィアとイリナも目にした、神としての一護の姿だった…。そして…

 

「確実に護るからよ。どんな奴が相手だろうと、な…」

 

「「っ…////!」」

 

「? どうした?」

 

「あ、えっと…///」

 

「い、いきなりその姿になって、驚いただけです…///」

 

「? そうか。つーかさっきから言ってる通り、敬語も止めろ…って、まあ、それは後でいいか…」

 

何故か顔を紅潮させるゼノヴィアとイリナに対し、その理由についてとりあえずゼノヴィアの言った内容で納得する一護…。

 

「とにかく、これから宜しく頼むぜ?」

 

こうして、アイエールに新しいメンバーが加わることになった…。

 

 

END

 

 

 



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停止教室のヴァンパイア
プールと修羅場はセットが基本



大変ご無沙汰しております、無颯です。更新遅くなってしまい、申し訳ありません!

今回から新章突入、そして例の水着回です。

無駄に水着に描写を細かく書いているのは…何となくのこだわりです。といっても、私自身は女性のファッションなど全く詳しくないので、色々ご容赦下さい…。

では、本編をどうぞ。



コカビエルとの戦いから数日後。オカルト研究部の部室に来たイッセーとアーシアは、いつものメンバー以外に“或る人物達”が居ることに驚きを露わにしていた。その人物達とは…

 

「やぁ、赤龍帝」

 

「ひ、久しぶり、イッセー君…」

 

「なっ!? 何でお前等がここにッ!?」

 

青いショートカットが特徴の少女──ゼノヴィア・クァルタと、オレンジのツインテールが特徴の少女──紫藤イリナの2人である。

 

「私達もつい先程部長や一護君達から聞いて、ビックリしていた所ですの」

 

「説明はあなた達にもこれからするわ。そうよね? 当麻」

 

「ああ」

 

「あの、御二人共学園の制服を着ているということは、ひょっとして…」

 

「そうだ。この学園に編入することになった。ちなみに私もイリナも高等部の2年生で、同時にオカルト研究部にも所属させてもらうことになっている。よろしくね、イッセー君♪」

 

「真顔で可愛い声を出すな!」

 

「ふむ、イリナの真似をしたのだが、上手くいかないものだな…」

 

「ちょ、ちょっとゼノヴィア! 私はそんなんじゃないわよ///!」

 

アーシアの問いに対し、何故か真顔で可愛い挨拶をするゼノヴィア。これには思わずイリナも恥ずかしそうに声を上げるしかない。

 

「お、おい、どういうことだよ、当麻!?」

 

「あー、俺から説明するより、そいつ等の事を決めた張本人から聞いた方が良いと思うぜ? という訳で、説明は任せるぞ、一護」

 

「…おう」

 

説明を求めるイッセーに当麻はそう言うと、説明をバトンタッチされた一護が話を切り出す。

 

「実はコイツ等はこの前の学園での戦いの後、すぐに教会から追放されてな。最終的に、俺達アイエールが身柄を引き受けることになった」

 

「…はあああッ!!??」

 

一護の口から端的に話の内容を聞いて、驚愕を露わにするイッセー。

 

「きょ、教会から追放されたって、どういうことだよ!? しかも、お前等の仲間になったって…」

 

「! あの、もしかして主の事で…」

 

「…ええ、主の不在を知った私達は教会にとって異端以外の何者でもなくなったわ」

 

「教会は異端を酷く嫌う。聖剣の使い手であっても、デュランダルの使い手であったとしても容赦なく捨てる…。もっとも、その事を伝えた天界のトップである“あの方”は、誠心誠意私達に謝罪してくれたからね。それに、結果として“神に等しいと言える存在”に仕える形になったんだ。私もイリナも確かに大きなショックを受けたが…とりあえずは大丈夫だ」

 

イリナとゼノヴィアの話を聞いたイッセーとアーシアは、咄嗟に一護の方へ目を向ける。

 

「な、なあ、一護? お前、本当に“神”なのか…?」

 

「…はぁ…この前あれだけ説明しただろ。色々伏せなきゃならねえことはあるが、一応形式的には天界のトップである“神”と思ってもらって構わねえよ。まあ、実際はミカエルが全権を握ってるようなもんだがな」

 

「あ、あの、や、やはり“主”とお呼びした方が…」

 

「勘弁してくれ、アーシア。俺はあくまでその“主”って奴と同質ってだけの話だ。俺はお前に敬われるような存在なんかじゃねえよ」

 

「いやいや!? そんなこと言っても簡単に信じられる訳ないだろ!? クラスメイトが“天界の神”だとかさ!?」

 

そう、一護が“形式的な天界のトップ”であるという事については、戦いの翌日にオカルト研究部の面々に既に話していた。もっとも、この話を聞いた時のイッセーはこれまでで一番の絶叫を上げ、アーシアはゼノヴィアとイリナと同じように跪いて不敬を謝罪。更にリアスを始めとする他のオカルト研究部員も絶句するという状況に陥ったのだが…。

 

「落ち着きなさい、イッセー。一護が聖書の神に等しい存在であることは、紛れもない事実よ…。はぁ…まさか眷属に誘おうとした子の1人が天界のトップだったなんて、あの時の自分を引っぱたきたい気分だわ…」

 

「あー…悪いな、リアス」

 

「…いえ、大丈夫よ、当麻。あなた達がやましい事を考えていないのは、今までのあなた達を見れば分かるわ。現に私も、あなた達に助けられた身だし…。それに、何より“そちらの方”が証人として話してくれた以上、私も信じるしかないじゃない」

 

「…! まあ、そうだよな。あんたも悪いな。お蔭で助かったぜ、“ザスティン”」

 

「いえ、ララ様達の許嫁である殿方の友人の人と成りを証明することなど、私には造作もありませんよ、当麻殿!」

 

「へ…? うおっ!? ザ、“ザスティン”さん!? いつの間に!?」

 

「ハハッ、たった今来た所ですよ、赤龍帝殿!」

 

驚くイッセーにそう話しかけてきたのは、1人の男だった。銀髪のロングヘアーに“美青年”と呼べる容姿を持つこの男の名は“ザスティン”。先日のコカビエルとの戦いが終わり、当麻達がゼノヴィアやイリナを連れて姿を消した直後に遅れて現れた男であり…

 

(やっぱり信じらんねえんだよなぁ。この人があの大魔王様の“騎士”で、冥界最強の剣士だなんて…)

 

イッセーが頭の中で考えている通り、冥界トップクラスの実力者である。だが同時にイッセーが彼に対して評価に困っているのは、先日の間の抜けた登場にあるのだろう…(“戦いは大体事後処理の大変”を参照)。

 

「しかしリクオ殿達が認めたとしても、お前達がララ様達に危害を加えるような真似をした場合には即刻処断させてもらうぞ?」

 

「…勿論、そんな事をするつもりは天地がひっくり返ってもないさ。この数日だけで十分な恩を受けてしまった上に、どういう訳か歓迎までされてしまったからね…。君もそうだろう、イリナ?」

 

「! え、ええ…神と同等の存在の御方の仲間に手を出すなんて、出来るはず無いわ。第一、今の私達じゃアイエールの人達には逆立ちしたって勝てない訳だし…衣食住までお世話になってるんだから、頭が上がらないくらいよ…」

 

「もー、ダメだよザスティン! 2人を苛めちゃ!」

 

「そうですよ! 2人共もう私達の仲間なんですから!」

 

「はぁ…お前等はあっさりと認め過ぎなんだよ。コイツ等はほんの少し前まで、殆ど敵対してたようなモノなんだからな?」

 

「ふふっ、いいじゃないですか、クリスさん♪ こういう所がお姉様や響さんの美徳なのは、クリスさんもよくご存知ですよね?」

 

「っ///! そ、そりゃあ、そうなんだけど…///」

 

響とララの言葉を聞いたクリスは呆れ混じりに呟くが、モモにそう言われると若干困惑しながらも素直に認め始めた。そんな中、

 

【とりあえず、2人が何とかやっていけそうでよかったね、一護】

 

【ああ。まあ、イッセーは言うまでも無えけど、リアスも何やかんやでお人好しな所があるからな…。けど今回は悪かったな、色々先に決めて動いちまって】

 

【ハハッ、別に気にしてねえよ。お前ならそうするだろうなって、何となく分かってたしな…。ま、こっからが大変っちゃ大変だが…】

 

【それこそ気にする必要は無いんじゃない? どうせ僕達の目的は“一つ”しか無いんだし…そのために動くだけ、でしょ?】

 

【…そうだな。それが俺達の…いや、“あの世界での俺達”が決めた事だからな…。どうせ近々、この事についても話す機会があるだろ?】

 

【ああ…俺達3人のやることは変わらねえ…。って、すっかり暗い話になっちまったな。でも今はこういう話は無しにしようぜ? 今はとりあえず、色々落ち着いた事を有難く思わないとな…】

 

当麻、一護、リクオの3人は頭の中でそんな会話をしつつ、目の前の様子に目を向ける。そこではゼノヴィアとイリナがアーシアに謝罪して和解し、それを見たリアス達グレモリー眷属の面々や、アイエールの女子達が温かく見守っている姿があった。これには当麻達3人の表情も自然と綻ぶ。そして…

 

「さて…それじゃあ、今日の部活を始めるわよ!」

 

『はい、部長!』

 

「では、私もそろそろ冥界に戻ります。リクオ殿、それに他の皆様も、引き続きララ様達のことを宜しく御願いします」

 

「ハハッ、分かってるよ、ザスティン」

 

「あの“とっつぁん坊や”にも、宜しく言っといてくれ」

 

「あと…“例の件”についてもな(ボソッ)」

 

「! はい、その件についてはお任せを(ボソッ)」

 

そんなやり取りが密かに行われつつも、久しぶりにオカルト研究部としての活動が始まったのだった…。

 

 

☆☆

 

 

それから数日後、リアスや当麻達オカルト研究部の面々は或る場所に来ていた。その場所とは…

 

「うわぁ…」

 

「これは、スゴいですね…」

 

「うふふ、去年使ったきりですから」

 

「これを綺麗にすんのかよ…」

 

駒王学園にあるプールである。そこは1年間丸々放置されたことによって濁った水が溜まり、大量の枯れ葉も浮いているような状態だった。これには朱乃から説明を聞いたユウキと雪菜、そしてイッセーも思わずそう呟かざるを得ない。

 

「何故オカルト研究部が、プールの掃除などをするんだ?」

 

「本来は生徒会の仕事なのだけど、コカビエルの一件で壊れた校庭の修理の御礼に、ウチが担当してあげることにしたの。その代わり掃除が終わったら、オカルト研究部だけのプール開きよ♪」

 

「なっ!? プール開きッ!!?」

 

ゼノヴィアの質問にそう答えたリアス。そう、今回の目的はこのプールの掃除…だけでなく、一足早いプール開きのためである。特に詳細も聞かされずに水着を持ってきていたイッセーは、それを聞いて驚くと同時に…

 

「オオオオッ!! ビバ! プール掃除ッ!! プール掃除万々歳だぜーッ!!!

 

何かを想像して喜びを露わにしていた。だが…

 

「…イッセー先輩、顔が厭らしいです」

 

「妙な事を考えているようなら殺しますよ、兵藤一誠」

 

「いえ、今すぐ殺しましょう? もう考えてる顔をしてるわ」

 

「そうだな。この前仲間になったアイツ等の餌にでも…」

 

「いやいやいやッ!? 何でもう殺すこと前提なのッ!? ていうかナナちゃんが言ってんのって、まさかケルベロスじゃないよね!?」

 

小猫、ヤミ、紗矢華、ナナから立て続けに辛辣な言葉をもらい…

 

「本当に懲りないみたいだね、イッセー君? でも、分かってるよね?(ゴゴゴゴゴッ!!)」

 

「コイツ等を怖がらせるような真似をするようなら、マジで潰すぞ…?(ゴゴゴゴゴッ!!)」

 

「はははは、はいッ!! ぜぜ、絶対にしませんッ!!!(ガクガクガクッ!!)」

 

修羅のようなプレッシャーを放ちながらリクオと一護にそう言われると、イッセーは生まれたての子鹿のように震えながら返事をせざるを得なかった。

 

「そういえば当麻、“あの娘達”は?」

 

「ああ、“アイツ等”なら後から来る筈だ。でも悪いな。“アイツ等”まで入れるようにしてもらって」

 

「大丈夫よ。ソーナからもすんなり許可は貰った訳だしね…。さて、オカルト研究部の名に賭けて、生徒会が驚くくらいピカピカにするのよ!!」

 

『はい!(おーッ!!)』

 

そして、当麻とリアスの間でそんなやり取りが交わされつつも、プール掃除の開始が宣言された。

 

 

 

☆☆

 

 

といっても制服姿のまま掃除を始めるわけもなく、各々体操服に着替えるために更衣室に向かった。男子更衣室では…

 

「グフフ~ッ! 水着だ水着~!!」

 

イッセーが厭らしい笑みを浮かべながら着替えていた。すると…

 

「イッセー君」

 

「ん?」

 

イッセーに裕斗が話しかけてきたかと思うと…

 

「僕は誓うよ。例え何者かが君を狙っていたとしても、僕は君を守るから」

 

「うおっ!? な、何だよ急に!?」

 

「こういうことって、2人きりじゃないと中々言いづらいだろう?」

 

「っ! い、いや、あんがとな…(そ、そういうのは男の俺とかじゃなく、普通ヒロインとかに向けるモノでは…?)」

 

突然の宣言に若干困りつつも返すイッセーだったが、裕斗は更に言葉を続ける。

 

「君は僕を助けてくれた…。君の危機を救わないで、グレモリー眷属の騎士は名乗れないさ」

 

(ましてや、こんな場所で…)

 

その言葉に思わず一歩後ずさりすらしてしまうイッセー。と、ここで、

 

「よかったじゃねえか、イッセー。お前は危なっかしいにも程があるから、騎士様の力は必要だぜ?」

 

「ッ! よ、余計な御世話だよ、一護!!」

 

そんなイッセーに対し、一護がやや茶化すようにそう言った。すると、

 

「それと一護君…今回は本当にごめん」

 

「! おいおい、どうしたんだよ、急に?」

 

「…調ちゃんと切歌ちゃんのことだよ。2人から協力を申し出てくれたとはいえ…今回の件に関わらせたせいで、2人を敵の手に堕としてしまうところだった…。それに、“七聖の歌姫”の皆の過去についても部長から聞いたよ」

 

「…そうか」

 

「どうして2人が僕に協力を申し出てくれたのか、よく分かったよ。僕のような過去を背負っている人間は周りに居ないと思ってた。でも、実際にはすぐ近くにいて…“七星の歌姫”の皆には、僕のせいで辛い事を思い出させてしまったみたいだから…」

 

「! 木場…」

 

「だから、ごめん。結果として、君の大切な人達を危険な目に遭わせてしまって…」

 

イッセーがその様子を見て驚く中、頭を下げながら謝罪する裕斗。それに対し、一護は…

 

「はぁ、別に謝る必要なんかねえよ。お前の言った通り、調と切歌は自分から協力したんだ。危ない目に遭う可能性があることだって当然認識してた訳だしな」

 

「! でも…「だがな」ッ…!」

 

「どんな理由があろうが、もしアイツ等に…俺達の大事なモノに切っ先を一度でも向けるもんなら…俺達は容赦なくお前をぶった斬るぞ? 例えお前がリアスの騎士(ナイト)だとしてもな」

 

「ッ!? お、おい一護!! いくら何でも言い過ぎだ「言い過ぎじゃねえよ」ッ! 何でだよ、当麻!?」

 

何処か威圧するような雰囲気で言う一護を見て、思わずイッセーが止めようとするが、当麻はそれを遮る。

 

「それだけの覚悟が無いといけねえんだよ。じゃねえと、取り返しのつかないことになる」

 

「君もそろそろそういう覚悟を持たないと、何かを失うよ? イッセー君…」

 

「ッ!? リ、リクオ、お前まで何言って…」

 

当麻とリクオからそう言われ、動揺を隠しきれないよう様子のイッセー。そんな中、

 

「…ここに誓うよ。どんな事があったとしても、僕は君達の大事な人達に決して刃を向けない。グレモリー眷属の騎士として…」

 

「…そうか。それを聞ければ何も言う気はねえよ。変な事言って悪かったな」

 

「ん、終わったか? じゃ、俺達は先に行ってるか」

 

「そうだね。じゃあ2人共、早く着替えてこないと部長さん達に怒られるよ?」

 

「っ!? い、いつの間に着替えて…ていうか、さっきのどういう意味だよ!? おいッ!!」

 

裕斗からの宣言を聞いた一護は一気に威圧感を霧散させ、当麻やリクオと共に先に更衣室を出て行く。イッセーが先程の当麻とリクオの言葉の意味を尋ねるが…2人はその問いに答えなかった…。

 

 

☆☆

 

 

その頃、女子更衣室では…

 

「皆より早くプールに入れるって、すごくラッキーだね! 響!」

 

「うん! 何か“祝われてる~!”って感じがするよ!」

 

「気が早いわよ、ユウキ。掃除しないとプールに入れないでしょ?」

 

「響も楽しみにするのはいいけど、掃除もちゃんとしてよ?」

 

「「はーい」」

 

テンション高めに話しながら着替えるユウキと響に対し、何処か親目線でそう言うシノンと未来。

 

「そういえば、ルーシィさん達は少し前に新しい水着を買ったんですよね♪ どうですか? リクオさんを悩殺できそうなモノは手に入りましたか?」

 

「ちょっ///!? な、何でそんなこと知ってるのよ///!?」

 

「ふふっ♪ そうね、多分皆買えたんじゃないかしら♪」

 

「っ! ミ、ミラ姉//!?」

 

「お、お前が話したのか、ミラ///!」

 

モモとミラジェーンのやり取りを聞いたルーシィやリサーナ、エルザはやや恥ずかしそうにそう言う。しかし、そんなやり取りをしている5人に全く違う視線を送っている者達がいた…。

 

「………(ジーッ)」

 

「し、調? 何だかすごい目をしてるデスよ…?」

 

「………」

 

「うぅ…私も大きくなったらあんな風になれるのかな…?」

 

「…小猫、前にも言った通り、気にしない方がいいです」

 

「ウェンディもね…。はぁ…」

 

「ふふっ♪ そういうヤミお姉ちゃんも結構気にしてるんでしょ?」

 

「ちょっ…!?」

 

「…切り刻みますよ、芽亜?」

 

それは調や小猫、ウェンディ、レビィであったり…

 

「くッ…何のつもりの当てこすりッ…!」

 

「まったくだ、イライラがマジで溜まってきやがる…!」

 

「いや、いきなり何言い出してんだよ、先輩…」

 

「ナナもどうしたの~?」

 

翼やナナであったりする。もっとも何故そんな視線を送るかは、6人の“身体的共通点”を考えれば分かるだろう…。その一方で、

 

「例の宿題は済ませたか、アーシア?」

 

「はい、ゼノヴィアさんとイリナさんは?」

 

「あー、私は大丈夫なんだけど、ゼノヴィアがね…」

 

「ああ、日本語で分からないことが多くてな。イリナやアカメ達に教えてもらいながらやってはいるが…」

 

「分かります。私も漢字がまだ苦手で…」

 

アーシアとゼノヴィア、イリナの3人が学校生活に関する会話をしていた。

 

「確かに、日本の文字は複雑すぎる。今夜は徹夜で漢字の勉強でもするか…」

 

「頑張って下さい! 主も見守って下さる筈です!」

 

「! ああ、そうだな」

 

「じゃあ、そんな主に祈りを捧げましょう…!」

 

「「「アーメン…!」」」

 

すると、そう言って祈りを捧げ始まる3人だったが…

 

「あうッ…!!」

 

「「っ!? だ、大丈夫(か)、アーシア(さん)!?」

 

「…この光景にも慣れたな」

 

「そもそも、その“主”って隣の男子更衣室かプールサイドにいるけどね」

 

アーシアのみ祈りによるダメージを受けてしゃがみ込む結果となり、その様子を見ていたアカメとクロメはそう冷静にコメントした。

 

「うふふっ♪」

 

「早く着替えなさいね」

 

そして朱乃がそんな賑やかな更衣室の様子に笑みを見せる中、リアスは全員にそう促すのだった…。

 

 

☆☆

 

 

その後、人数もそれなりにいたこともあってプール掃除は滞りなく終わり、いよいよプール開きの時間となったのだが…

 

「ノオオオオオオオッ…!!?!?!?」

 

「だ、大丈夫ですか、イッセーさん!?」

 

そこにはイッセーがプールサイドでゴロゴロとのたうち回り、その様子にアーシアがオロオロしているという状況が広がっていた。その理由は…

 

「言ったよね? ヤミやウェンディ達を怖がらせるような事をしたら怒るって」

 

「いい加減その“エロさ剥き出しの状態”を抑えろって言ってんだろ? その内マジで捕まるぞ、お前?」

 

「だ、だからって目潰しすることねえだろォッ!?」

 

イッセーが水着に着替えてきた女性陣を見て、性懲りも無くあからさまに厭らしい視線を送り、それを危険と判断したリクオと一護によって制裁を加えられた結果である…。

 

「感謝します、リクオ…」

 

「本当に変わらないわね、この男…」

 

「良いことを言う時もありますし、根が悪い人ではないのは分かってますから、余計に…」

 

「な、何か凄く冷たい視線を感じるんだけど!? 目が潰されてるのに分かるくらい冷たい感じがするんだけど!?」

 

ヤミがリクオにお礼を言う中、紗矢華や雪菜を始めとする一部のアイエール女性陣の冷たい視線を感じ取るイッセー。ちなみに、アイエールの女性陣の水着はというと…

 

ユウキ → 白と紺のボーダー柄のビキニ(紺のフリルスカート付き)

シノン → 薄い黒のスポーツタイプのビキニ

 

アカメ → フリル付きの赤いビキニ

クロメ → 黒のシンプルビキニ

 

響   → オレンジと白のビキニ(フリルとリボン付き)

翼   → 水色と白のビキニ(水色のフリルスカート付き)

クリス → 赤のビキニ(赤のフリルスカート付き)

未来  → 紫と白のビキニ(紫のロングフリルスカート付き)

調   → 黒白のセーラー服調のモノキニ(ピンクのフリル付き)

切歌  → 黒と緑のタンクトップ+白のショートパンツ

 

雪菜  → 青と白のスポーツタイプのビキニ

紗矢華 → 紫のホルターネックビキニ(薄紫のパレオ付き)

 

ルーシィ→ 黄色の星柄入りのピンクのビキニ

エルザ → 赤のシンプルビキニ

ミラジェーン → 濃紺のチューブトップビキニ(パレオ付き)

ウェンディ  →緑と白のバイアスチェック柄のビキニ

レビィ  → 赤と白のボーダー柄のビキニ

リサーナ → ライトブルーのリボンビキニ

 

ララ  → 白の水玉入りのピンクのビキニ(フリル付き)  

ナナ  → 赤・黄・緑のボーダー柄のビキニ(フリル付き)

モモ  → ピンクの水玉入りの白のビキニ

ヤミ  → 胸元が十字にカットされた黒のビキニ

芽亜  → 紫のフレアビキニ

 

という感じである。もっとも…

 

「! お前等のその格好、“心象変化”か?」

 

「その通りデースッ!」

 

「響さんの思いつきで皆でやってみたら、成功して…」

 

「しかしこれが思いのほか良くてな。グレモリーにも話を通して、こうなったのだが…」

 

「えっと…ど、どうですか///? 一護さんの感想を聞いてみたいかなと思ったんですけど…///」

 

「ん? ああ、勿論似合ってるぞ。そこで目を潰されて悶えてる奴に見せたくないくらいにな」

 

「! あ、ありがとうございます…///」

 

「そこの変態バカが話題に上がったのは微妙だけど…まあ、褒め言葉として受け取ってやるよ…///」

 

響達はただの水着ではなく、自らの神器を変化させたものだったりする。一護も響の問い掛けに淀みなく感想を告げると、未来とクリスを始め、装者一同顔を赤らめた…。

 

「? ゼノヴィアとイリナはどうした? まだ来てねえのか?」

 

「あ、はい。ゼノヴィアさんが水着を着るのに慣れてないらしくて…」

 

「紫藤イリナがそのフォローに回ってるわ。まあ、その内来る筈よ」

 

「あー、そういやゼノヴィアはずっと教会暮らしだったな。水着を着る機会なんざある訳ないか…」

 

そして一護と雪菜、紗矢華がそんなやり取りをしていると、そこへ…

 

「ほぅ、学校のプールとはこういうものなのか」

 

「随分簡素な作りね。もう少し何かあると思っていたのだけど」

 

「ふふっ、でも嬉しいわ。泳ぐのは今年に入ってからは初めてですし♪」

 

「当麻様、エレオノーラ様達をお連れしました」

 

「ああ、案内ありがとな、ティッタ」

 

続けざまに姿を見せたのは、既に水着姿になっているエレン達アイエールの戦乙女(ヴァルキリー)の3人とティッタだった。更にその隣にはマリアの姿もある…。

 

「あれ!? 何でマリアさん達もここに!?」

 

「あ、そういえばイッセー君には話してなかったね。実は僕達が部長さんに頼んだんだよ。留守番させるのも悪いと思ってね」

 

「勿論生徒会からも許可は得ているわ。この前の聖剣やコカビエルの一件も、当麻達の御蔭で学校への被害が最小限になったんだもの」

 

「ハハッ、そう言ってくれると、上条さん達も頑張った甲斐があったよ」

 

イッセーがエレン達の参加に驚く中、そんなやり取りを交わすリアスと当麻、リクオの3人。

 

「しかしもっと早く来ると思っていたのだが、遅かったな? 何かあったのか?」

 

「! ええ、ちょっと“説得するのに時間が掛かる子”がいたのよ」

 

「? 説得? 誰のことだよ?」

 

「ふふっ、それは勿論…」

 

ここで翼とナナの問い掛けに対し、マリアとソフィーが答えようとしていると…

 

「何故こんな所まで来て水浴びなどしなければならない。家で研究の続きをした方が有意義だろう?」

 

「キャ、キャロル、そんなこと言わないでください! 折角マリアさん達が誘って下さったんですから…!」

 

そんなマリアやソフィー達の後ろからゆっくりとやってきたのは、キャロルとエルフナインの2人だった。無論、2人とも水着姿である。

 

「あ、キャロルちゃん! 来てくれたんだね!!」

 

「ふん、エルフナインとそこの装者の誘いが鬱陶しかっただけだ。退屈だと感じたら即座に帰らせてもらう」

 

「え~っ!? キャロルちゃんも一緒に遊ぼうよ! そしたら絶対退屈なんてしないよ!」

 

「そっちのデビルーク長女はともかく、お前と遊ぶと馬鹿が移る気がしてならん。却下だ」

 

「酷いよキャロルちゃん!?」

 

響とララが誘おうとするが、キャロルは即座に切り捨てた。しかし…

 

「ふふっ、でもすぐに帰るのは勿体ないですよ? その水着もとってもお似合いですし…一護さんもそう思いますよね?」

 

「ん? ああ、そうだな。そういやお前が水着着てる所なんざ初めて見たけど、よく似合ってると思うぜ?」

 

「…///! そ、そんな戯言を聞いても嬉しくないわ…///!」

 

(チョロい…)

 

(クリス先輩並みのチョロさデース…)

 

「おい、今なんか失礼なことを考えてねえか?」

 

「っ!? そ、そんなこと考えてないデースッ…!」

 

モモの誘導に対して一護が淀みなくそう言うと、キャロルはあからさまに異なる反応を見せた。調と切歌が心の中で一言そう呟いてしまうのも、無理の無いレベルである…。と、ここで更に、

 

「それと、お前達にも少々サプライズのメンバーを連れてきていてな」

 

「? サプライズのメンバー?」

 

エレンの口から出た意味深な言葉に首を傾げる当麻。すると…

 

「まさか水着を着られる日が来るなんてね。昔のボクには考えられないことだな…」

 

「あまり御無理はなさらないようにお願いします。エレオノーラ様も心配されていますので」

 

「ハハッ、大丈夫だよ、リム。ボクもそこまで馬鹿じゃないさ」

 

「ッ! サーシャ!?」

 

続けてやってきた人物達の姿を見て、当麻を始めとしたアイエールの学生組も驚きを露わにする。その人物とはエレンの部下であるリムアリーシャと共にやってきた戦乙女の女性――――サーシャと…

 

「セフィリアさん!?」

 

「貴女も来たのね。もしかして、貴女もサーシャの付き添い?」

 

「ええ。念のため同行することにしました」

 

ルーシィが驚く中、ミラジェーンの問い掛けに答えるアイエールの総帥補佐官を務める女性――――セフィリアである。尚、言うまでも無く3人とも水着姿だが、サーシャは水色のパーカーを、セフィリアは白のラッシュガードをそれぞれ羽織っている…。

 

「サーシャ、お前身体は…」

 

「何ともないよ、当麻。この前キャロルやウェンディにも診てもらって、“大体の事はしても平気”と言われたのは君も覚えてるだろう?」

 

「いや、確かにそうだが、いきなりこいつは…」

 

「勿論今日の所は水に浸かるようなことはしないさ。プールサイドで大人しく皆の様子を見ているとするよ。それだけでボクは満足だからね」

 

心配そうに尋ねる当麻にそう話すサーシャ。と、そこへ、

 

「ご安心下さい、総帥。サーシャの様子は私の方でも様子を見ますので」

 

「! セフィリア、お前…」

 

「屋敷で大人しくしているよりも、ここで我々と時間を共有する方が彼女にとっては良いと思います。今更帰るというのも、今のサーシャには酷だと思いますが…?」

 

「…まあ、確かにな」

 

セフィリアの予期せぬ援護に、当麻もやや面食らいながら頷き…

 

「それに、“この前の約束”のこと、忘れてないだろう?」

 

「…! ここでそれを持ち出すのかよ…?」

 

「ふふっ、使えるものは使わないとだからね」

 

「…はあ…分かったよ。ただし、さっき自分で言ったことはちゃんと守れよ?」

 

「! ああ♪」

 

サーシャの口から飛び出した“約束”という単語を聞くと、当麻は溜息を吐きながらも納得した(“この前の約束”については、“女は意外と引き下がれない生物”を参照)。ちなみに、エレンやマリア、セフィリア達の水着については…

 

エレン    → 水色のレースアップタイプのビキニ

リュドミラ  → 赤と白のボーダー柄のワイヤービキニ(赤のフリル付き)

ソフィー   → 白のホルターネックビキニ

サーシャ   → 金の柄入りの赤のリボンビキニ

リム     → 黄緑色の三角ビキニ

ティッタ   → 水色の水玉柄入りの黄色のバンドゥビキニ(水色と白のボーダー柄のパレオ付き)

 

マリア    → 赤と紺の柄入りの白のビキニ

キャロル   → ワインレッドのタンキニ

エルフナイン → ピンクのライン入りの水色のタンキニ

 

セフィリア  → 黒の三角ビキニ

 

という装いである。もっとも…

 

(ま、前から思ってたけど、“七大戦姫”の人達はデカい人多いな//! つーか、ソフィーさんとかリムさんとか部長や朱乃さん以上じゃね…///!? デュフフフ…! あ、やべ、鼻血が…)

 

「ヒーロースティンガー(棒)」

 

「ギャアアアアアアアアアアアアッ!!!?!?」

 

イッセーがあからさまに余計な事を考えていたために、当麻の棒読み混じりの目潰しを再び喰らったのは……まあ、余談である…。

 

 

☆☆

 

 

その後、オカルト研究部及びアイエールの面々は早速プールに入ったりして、各々楽しい、または優雅な時間を過ごし始めた…。

 

「気持ちいい~! シノンもこっちおいでよ~!」

 

「はいはい、あんまりはしゃぎ過ぎるとバテちゃうわよ?」

 

シノンは元気に泳ぎ回るユウキの様子を見ながら、姉のような目線で付いていったり…

 

「そーれっ!!」

 

「まだまだ! デースッ!」

 

「ハッ! しゃらくせえッ!!」

 

「ぐふぉあっ!?」

 

「あ、イッセー先輩に当たった…」

 

「イ、イッセーさん!!」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

響と切歌、クリス、調、エルフナインがプールの中で“異次元のバレー”をする中、クリスの放った渾身のスパイクがイッセーの顔面に直撃してアーシアとエルフナインに駆け寄られたり…

 

「はあッ!!」

 

「せいッ!!」

 

「…何でプールサイドで木刀の打ち合いしてるの、この2人?」

 

「ふふっ、いいんじゃない? こういうのも♪」

 

「そうね。2人にとっては会話みたいなものなのよ、きっと♪」

 

「か、会話にしては物騒な気がするんですけど…」

 

「やっぱり野蛮な人間の考えることは分からないわね、ホントに」

 

木刀による試合を始めたエレンとエルザを見て、ルーシィ、ミラジェーン、ソフィー、ウェンディ、リュドミラがそんなやり取りを交わしていたりしている。そんな中、当麻や一護はというと…

 

「楽しんでるな、全員」

 

「ああ、デカい事件が終わった直後だからな。まあ、特に響達はプールってだけで十分はしゃぐ理由になってるだろうが…」

 

プールサイドにいつの間にか立てられた大きなパラソルの下で、楽しんでいるオカルト研究部やアイエールの面々を見ながらのんびりと座っていた。その上…

 

「やっぱりあの娘達は笑っているのが一番だね。君もそう思うだろう、セフィリア?」

 

「…ええ、そうですね」

 

「ねえ翼? あの子達、神器の力を使っているせいでかなり凄い試合になっている気がするのだけど…」

 

「そうだな…。それにしても、この形状のギアは本当に水中での動作を大きく上げるようだな? 未だに泳げない筈の雪音が水中であそこまで縦横無尽に動けるようになるとは…」

 

「皆さん、お飲み物をお持ちしました♪」

 

当麻の両隣にはサーシャとセフィリアが、一護の両隣にはマリアと翼が座っており、しかもそこへティッタが事前に用意していたコールドドリンクを持ってくるという、どう考えても世の男共が羨むような空間を形成している…。

 

「ああ、悪いな、ティッタ。つーか、お前も泳ぎに行って良いんだぞ?」

 

「いえ、これは私が好きでしていることですから…! ところで、リクオ様はどちらに? 先程までいたのですが…」

 

「! ああ、リクオならあそこだ」

 

当麻の勧めに対してそう言いつつ、リクオの分の飲み物を持ってきたからか、その場に居ないリクオの所在を尋ねるティッタ。すると、一護はプールのある場所を指し示した。そこには…

 

「…ぷはっ…すみません、リクオ先輩。付き合わせてしまって…」

 

「ははっ、いいよ全然。でも小猫が泳げないっていうのは、ちょっとビックリかな。君は運動全般が得意だと思ってたんだけど」

 

「…自分でもよく分からないです」

 

リクオが小猫の両手を握り、彼女の泳ぎの練習を手伝っていた。実は先程、リクオはリアスから小猫の泳ぎを教えるように頼まれたのである。

 

「まあ、でも大丈夫だよ。小猫はやれば出来る子だからね。きっとすぐに上手くなるよ」

 

「…! あ、ありがとうございます…//」

 

リクオに微笑みながらそう言われ、やや頬を赤く染める小猫…。そんな2人の様子を見て、

 

「2人共、すっかり仲良くなったね~♪」

 

「…そうですね」

 

「でも泳げないって聞くと、小猫ちゃんってホントに猫みたいだよね~。あ、そういえばナナちゃんも昔は泳げなくて、よくリクオお兄ちゃんと泳ぎの練習をしてたよね?」

 

「ッ///!? む、昔の話だろ、昔の話///!!」

 

「ふふっ、そういえばあの頃のナナもあんな感じだったわ。必死にリクオさんの手を掴んでて、それから…」

 

「ななな、何言おうとしてんだお前はッ///!? 必死にもなってねえし、何もしてねえッ///!!」

 

ララとヤミがその光景を微笑ましく見守る一方、ナナは芽亜の一言をきっかけにモモから昔の事で弄られる羽目になった。そして視点は戻り…

 

「見ての通り、リクオは小猫に付きっきりみたいだから、そいつは後でリクオに渡してやってくれ」

 

「分かりました♪」

 

状況を把握したティッタは当麻の言葉に頷き、コールドドリンクを近くの冷蔵ボックスにしまった。と、そこへ、

 

「当麻」

 

「! どうした?」

 

「お兄ちゃんも一緒に泳ごう? 折角のプールなのに、来た意味なくなっちゃうよ?」

 

「一兄達もデスよ! いつまでのんびり寛いでるデスか!」

 

「マリアと翼さんも、響さん達が呼んでるよ…?」

 

「! そうだな。じゃあ、行くとするか」

 

「「ああ(ええ)」」

 

「俺も行ってくる。サーシャはゆっくりしててくれ。セフィリア、ティッタ、お前等もそろそろ入ったらどうだ?」

 

「…そうですね。ティッタと交代で行くことにします。ティッタ、先に行ってきたらどうですか?」

 

「! そ、それじゃあ、お供します、当麻様…!」

 

「お供っていうのは何か違う気がするが…まあ、いいか…」

 

アカメとクロメ、切歌、調の4人が当麻や一護を呼びに来たため、当麻達もプールに入ることにした。尚…

 

「キャロル、お前は…」

 

「パスだ。気が向いた時に行く」

 

「お、おう…」

 

キャロルは一護の問い掛けに一瞥することもなくそう答え、あきらかに常人には読めない難解な研究所に目を通し続けている…。その後、当麻はユウキやエレン達と、一護は響や雪菜達と合流し、泳ぎでの勝負や大人数でのバレーなどに暫し時間を費やす。そして、再び当麻と一護がプールから上がって休憩を取り始めていると…

 

「当麻~」

 

「? リアスか…って、何してんだ?」

 

声を掛けられた当麻が目を向けると、そこにはいつの間にかマットの上でうつ伏せで寝ているリアスの姿があった。それも、ビキニの紐を解いた状態で…。

 

「オイルを塗って欲しいの。お願いしてもいいかしら?」

 

「は…? いやいや、上条さんとしてはそういう際どいお願いはご遠慮願いたいのでせうが…」

 

「…ダメなの…?」

 

「……はぁ…手早く済ませるからな」

 

「…! ええ、ありがとう♪」

 

若干寂しげな目を見せるリアスを見た当麻が溜息混じりにそう言うと、リアスは一転して嬉しそうに御礼の言葉を口にした。

 

「そんじゃあ、始めるぞ」

 

早速既に用意されていたオイルを手に取って軽く温め、リアスの背中に塗り始める当麻…。

 

「…こういうのもなんだけど、凄く手慣れてるように感じるのは気のせいかしら?」

 

「! あー…まあ、エレンやリュドミラ達から頼まれてやってるからな。“慣れちまった”っていうのが正しい表現かもしれねえ…」

 

「ふーん、そうなの…」

 

すると、そんな当麻の言葉を聞いたリアスは…

 

「じゃあ、胸にもオイルを塗ってくれないかしら?」

 

「…あー、リアスさん? 何でいきなりそういう話が出てくるのでせうか?」

 

「あら、嫌なの?」

 

「嫌とか以前に常識的にダメな事言ってる自覚は無いのでせうか!?」

 

突拍子の無いトンデモ発言に思わずツッコむ当麻。一方、そんな2人の様子を見ていた一護は…

 

「相変わらず厄介ごとには困らねえな、当麻の奴…」

 

若干他人事のように感じながら、思わずそう呟いていた。しかし…

 

「うふふ、部長はすっかり当麻君の虜になってますわねぇ」

 

「…! 朱乃か…。何のつもりだ?」

 

「あらあら、つれないですわ」

 

そんな一護に背後から朱乃が抱きついてきたのだ。しかも…

 

「おい、俺の気のせいか? 水着じゃねえ感触を感じるんだが?」

 

「うふふ、気のせいではありませんわ。私も部長と同じお願いを一護君にしてもらおうと思いまして、ね…」

 

「…“寝言は寝て言え”って言葉、知ってるか?」

 

「あらあら、寝言なんかじゃありませんわ。どうせだったら、“もっと凄いこと”を頼んでも…」

 

一護は背中に感じる感触から、否応なしに朱乃が“リアスと同じような格好”をしていることに気付いた。そして朱乃はいつにも増して妖艶な雰囲気を纏いながら、一護にそんな誘惑の言葉を掛けていく…。と、その時だった…。

 

「はあッ!!」

 

「ッ…!?」

 

「おわっ!?」

 

何かを感じたリアスは咄嗟に身体を起こして飛び上がり…

 

「何してんだテメエはぁッ///!!」

 

「ッ…!?」

 

「うおっ!?」

 

同時に朱乃も横から何かを感じて咄嗟に一護の下から離れた。その理由は…

 

「人が目を離している間に、随分と大胆な真似をしているな、リアス・グレモリー?」

 

「一体どういう了見でやっているのか、説明してもらえるかしら?」

 

当麻の前には、水着姿のまま自身の神器である“アリファール”や“ラヴィアス”を手にしているエレンとリュドミラが…

 

「うちの調や切歌の悪影響になるような事を堂々としないでもらえるかしら? 大体、この子にそういう方法で近づかれるのも困るのだけど?」

 

「つつ、つーかそういうことは家でやれッ////!! 家でッ///!!」

 

「…はぁ…あなたはまず落ち着きなさい…」

 

一護の前には、動揺に水着姿のまま“アガートラーム”や“イチイバル”を発動しているマリアとクリスが立ちはだかったからである。それもリアスにはエレンが斬りかかり、朱乃にはクリスが水弾を放ちながら…。

 

「あら、貴女達こそ相変わらず荒っぽいことをしてくるわね? 当麻に当たったらどうする気だったのかしら?」

 

「ふんっ、そんな愚かなことをするつもりはない。私はただ“淫猥な蝙蝠”を追い払っただけのことだ」

 

「まあ、私も実はエレオノーラが斬りかかった時、正直ヒヤッとしたのだけれど」

 

「…リュドミラ、貴様は一体どっちの味方だ?」

 

「決まってるでしょ? 私はそこにいる蝙蝠娘の敵であり…貴女とも敵よ、エレオノーラ」

 

リアスとエレン、リュドミラが完全にバトルロワイヤルな状況になる一方で…

 

「いつからそんな真似をするようになったのかしら? 貴女はもう少し節度のある人間だと思っていたのだけど」

 

「あらあら、いいではありませんか。後輩の男の子と少し戯れるくらい」

 

「ハッ、ならあたし等が相手してやるよ…。少し荒っぽくなるだろうけどな…!」

 

朱乃はクリスとマリアの2人と対峙する状況になってしまっている。その頃、当の当麻や一護はというと…

 

「と、当麻//! 絶対目を開けちゃダメだからね////!?」

 

「あー、ユウキさん? あなたが上条さんの視界を手で塞いでるから、どの道見えないんですが?」

 

「いいから閉じてなさい。でないと…撃つわよ?」

 

「何故頭に“へカート”突き付けてるんでせうかシノンさん!?」

 

当麻はユウキに視界を塞がれながら、シノンから頭に大型スナイパーライフルの銃口を突き付けられ、

 

「黒崎先輩も絶対に目を開けないで下さい///!! 絶対ですよ///!!」

 

「いや、当麻と同じ事言うが、手で塞がれてる時点で意味ねえだろ?」

 

「い、いいから雪菜の言う通りにしなさい///!! 叩き斬るわよッ///!!」

 

「理不尽極まりねえな、おい…」

 

一護も雪菜に視界を塞がれつつ、紗矢華に“煌華麟”を突き付けられていた…。そして、暫しの沈黙があった後…

 

ドガアアアアアアアアアアンッ!!!!

 

二つのちょっとした(?)喧嘩の火蓋が切って落とされた。リアスは神器で斬りかかるエレンやリュドミラに滅びの魔力で応戦。一方の朱乃はクリスの放つ水弾を避けつつ、マリアの短剣による攻撃に電撃で応戦している…。そんな中、

 

「はぁ…大分メチャクチャになってきてるっぽいな。後で生徒会の人達に怒られないといいけど…」

 

「…ありがとうございます、リクオ先輩」

 

「ああ、気にしないで。僕が好きでやってることだから…。あとウェンディ、僕も目を瞑ってるから手で覆わなくても…」

 

「ダ、ダメです…///!」

 

「…まあ、しょうがないか」

 

リクオはウェンディに視界を塞がれつつも、ララやモモ、ナナと一緒に周囲にいる女性陣を覆うように結界を展開していた。そんなリクオの行動に小猫は素直に感謝を述べた…。

 

「め、目がッ!? 目がああああああああああッ!?!?」

 

「…自業自得です」

 

「ホントに懲りないわね…」

 

まあ、約一名この日三度目の目潰しを喰らって転げ回り、ヤミやルーシィに呆れられているが…。と、ここで、

 

「少し外すか…。雪菜、一旦離れてもらっていいか?」

 

「…! 絶対にグレモリー先輩達の方を見ないで下さいね?」

 

「見ねえよ。第一、そんな余裕のある状況でもねえだろ…」

 

一護は雪菜に釘を差されつつも、繰り広げられている喧嘩に巻き込まれないように更衣室の方へ向かっていく…。

 

「マリア達もちゃんと“手加減”してるみてえだな。とりあえず、この辺りで大人しくしてるか…」

 

そして更衣室のある建物の前で腰を下ろした。と、そこへ、

 

「何をしているんだ?」

 

「! おう、ゼノヴィア。それにイリナも一緒か…って、もしかして今来たのか?」

 

「え、ええ。ゼノヴィアったら、初めて着る筈なのにこんな難易度の高そうなモノを選んでて…」

 

水着姿のゼノヴィアとイリナがやってきた。ちなみにゼノヴィアの水着は原作と同様だが、イリナの水着はオレンジのシンプルなビキニである。

 

「ふむ、よく分からなかったから直感で選んだんだ。似合うかな…?」

 

「あー、やっぱり教会だとこういう格好は無縁なのか?」

 

「それに加えて、私自身こういう娯楽的な事に興味が無くてね」

 

「なるほどな…。いや、けどイリナもサポートしてたんだろ? もっと早く来れたんじゃねえか?」

 

「! そ、それは…///」

 

一護の問い掛けに対し、何故か若干顔を赤くしながら動揺するイリナ。すると、ここで口を開いたのはゼノヴィアだった…。

 

「実は着替えた後、イリナも交えて少し考え事をしていたんだ」

 

「? 考え事?」

 

「一護、実は折り入って君に話があるんだが…」

 

「! おいおい、“折り入って”って随分固いな…。で、何だよ?」

 

そして、ゼノヴィアはこんな“爆弾”を投下した…。

 

「私と子供を作らないか?」

 

「…ああ、すまん。もう一回言ってもらっていいか?」

 

「? ああ…私と子供を作らないか?」

 

「…おい、イリナ。どういう事か説明してくれ。全く意味が分かんねえぞ?」

 

「っ///! ゼ、ゼノヴィア//! だからやめなさいって言ったでしょ///!? い、一護さんも困ってるじゃない///!!」

 

一護に説明を頼まれたイリナは、何故かより一層顔を赤くしながらゼノヴィアに注意をし始めた。だが…

 

「そうだな…。とりあえず説明をするから、ちょっとこっちに来てくれ」

 

「うおっ!?」

 

「ちょ、ちょっと//!? 無視しないでよ///!?」

 

ゼノヴィアはイリナの言葉に反応することもなく、何故か一護を用具室の中に連れ込んだ。

 

「つい先日まで、私達は神に仕えて奉仕するために教会に所属していた。しかし今は神そのものと言える君の直属の部下…いや、仲間としてアイエールに受け入れられている。そしてあの時、君は私達に言った。“やりたいことが無ければ探してみろ”と…」

 

「あ、ああ、確かに言ったが…何でそこから子供を作るって話になる?」

 

「私もそれから色々考えてみたんだが、中々思いつかなくてね。だがそんな時に、モモ・ベリアル・デビルーク…いや、モモと呼べと言われていたな…。彼女からこんな事を言われたんだ。

 

『でしたら、女性らしい夢を持つのは如何ですか? “素敵な殿方と結ばれて家族を作る”…それも立派な夢だと思いませんか?』

 

とね。そしてその言葉に私は大きな感銘を受け、そのまま私の“やりたいこと”としたのさ」

 

(いや何言ってくれてんだよあいつはッ!?!?)

 

ゼノヴィアの口から出たとんでもない助言の内容に、思わず心の中でその張本人に対してシャウトする一護…。

 

「コカビエルを一瞬で消滅させたあの瞬間は、まさに君の圧倒的な強さを物語っていた。しかも君はさっきも言った通り、天使長であるミカエル様も認める“神そのもの”と言える存在…。神に仕えるために生きてきた私にとって、これほど強く遺伝子を欲する存在は他に居るはずがない…。というわけで、宜しく頼む」

 

「いや頼むじゃねえよ!? 段階すっ飛ばし過ぎにも程があるだろ!?」

 

「そ、そうよゼノヴィア///!! いきなり、こここ、子供を作るとか、そ、そんな卑猥なことッ…///!!」

 

「しかしイリナ、君も神に仕える者であれば、その光栄さは分かるだろう? それに君も最近一人で一護に関して何かを妄想をしてい「わあああああああああッ/////!?!? ななな、何であなたがそんな事してるのよッ////!?」…む? モモから聞いたんだ。近い内に指摘しておいた方がいいと言われていてな」

 

(いや、あいつマジで何してんくれてんだよ? とんでもなくややこしい状況になっちまったじゃねえか!?)

 

ゼノヴィアとイリナのやり取りを見て、一護は再び心の中で大魔王の三女にツッコむ。だがその間にもゼノヴィアの大胆な言動は進んでいく…。

 

「残念なことに、私には男性経験が無い。だが君は“七星の歌姫”を始めとする美女達と共に暮らしている所を見ると、“そういった経験”もあると見た。だからここから先は君に任せよう…」

 

「いや勝手に話進めてんじゃねえッ!? おい、イリナ!  お前からも何とか言って…」

 

「わ、私が主の子供を…///? で、でも、相手は主と同質の存在とはいえ、私と同い年の男の子…それもまだ知り合って数日しか経ってない人と、そそそ、そんな事をするなんて…///! けど確かに相手としてこれ程の人は…//! ああ、主よッ//! どうか迷える私に救いの言葉を…///!!」

 

(何1人でトリップしてんだお前はアアアアアアアアッ!?!?)

 

真顔のまま身体を擦り寄せて迫ってくるゼノヴィアに、ある意味“最大級の危機”を感じてイリナに応援を頼む一護。しかし、当のイリナは1人で“全く違う世界”に浸っており、一護の言葉など全く耳に入っていない…。

 

「さあ、抱いてくれ。子作りの過程をちゃんとしてくれれば、好きにしてくれて構わない…」

 

そして、ゼノヴィアが一切淀みなく言い切った…その時、

 

「これは一体どういうことですか、黒崎先輩…?」

 

「ッ!? ゆ、雪菜…!? って、お前等も…いつからそこに…?」

 

「たった今よ…。で、どういうことか、説明してくれるわよね、一護…?」

 

入り口の方からそんな声が聞こえてきたかと思うと、そこには仁王立ちをしている雪菜を始め、外にいた筈のメンバーがほぼ全員集まっていた。もっとも…

 

「あらあら、ずるいわゼノヴィアちゃん。一護君とは私が遊んであげようと思ってましたのに」

 

「あわわわわッ///!?!?」

 

「お、落ち着いて、響…///!」

 

「ななな、何をしてやがんだテメエ等はあああッ///!!?」

 

「い、一護! これはどういうことなのだ///!?」

 

「ジーッ……///」

 

「デ、デースッ…///」

 

最前列にいるのは朱乃や響達といった一護と特に親しい面々であったり…

 

(こ、これはちょっと予想外でしたね…//。一応誘導したとはいえ、ゼノヴィアさんがいきなりこんな行動を取るなんて…///)

 

ゼノヴィアの予想を遙かに超えた大胆さに、大魔王の三女が頭の中で驚愕していたりしているが…。

 

「あ、あんたも説明しなさい、紫藤イリナ///!! ここ、ここで一体何しようとしてたのよッ////!?」

 

「ふぇっ///!? あああ、あの、えっと、そそ、それはッ…////!!」

 

紗矢華の問い掛けに対し、先程まで“違う世界に行っていた”イリナは即座に帰還。その上先程まで自分が悶々と考えていた内容を思い出し、完全にしどろもどろな状態になってしまっていた。そしてそんな状況の中、ゼノヴィアが再び爆弾を落とす…。

 

「どうした一護? さあ、“子供”を作ろう」

 

「っ!? ば、馬鹿ッ…!?」

 

『こ…!?』

 

『ど…!?』

 

『も…!?』

 

ゼノヴィアの口から発せられた単語に、驚愕を隠し切れない一同…。

 

「ここ、子供って、ええッ…///!?!?」

 

「な、何、だとッ…///!?」

 

「しっかりして、エルザ。でも、これは私も予想外ね~…///」

 

「そうね。しかも、まさかこの男がそんな節操なしだったことも予想外だったわ」

 

ユウキやエルザはあからさまに動揺し、ミラジェーンもエルザを落ち着かせようとしながらも驚いている。その一方で、リュドミラは一護をバッサリと切り捨てる始末。そして、本来この場を仲裁しそうなオカルト研究部部長とアイエール総帥、もう1人の副総帥は…

 

「…私には止められそうに無いわね」

 

「「………(合掌中)」」

 

諦めの言葉を口にしたり、手を合わせて一護に冥福を祈ったりしていた…。

 

ジャキンッ!!×8

 

「「一護さん…」」

 

「「きっちり聞かせてもらいますよ(もらうわよ)…?」」

 

「「覚悟はいいな…?」」」

 

「逃げるのは…」

 

「「許さないよ(デスよ)…?」」

 

響、未来、雪菜、紗矢華、翼、クリス、マリア、調、切歌の9人が得物を手にし始めた。しかも表情こそ笑っているものの…その目には明らかに光が無い…。それを見た一護は一言…

 

(はぁ…不幸だ…)

 

心の中で不幸な総帥の口癖を呟くしかなかった…。その後、響や雪菜達の猛攻付きの尋問(?)を夕方まで必死に避け続けることになった一護。しかし、その途中で…

 

「今度なんか適当に一つ言うことを聞くから、それで勘弁してくれ…」

 

と口にすると…

 

「「「本当…?(本当ですか!?)(本当デスか!?)」」」

 

 

調と響、切歌が途端に一護側に寝返り、翼や雪菜達を諫めてあっという間に収束。結果として一護は肉体的にも精神的にも物凄く疲労したものの、基本的には事なき得た。こうして、色々な意味で波乱なプール掃除と遊びの時間は終わりを告げたのだった…。

 

 

END

 

 

 





という訳で、例の水着回を御送りしました。

ちなみにアイエールの女性陣やイリナの水着は、基本的に各作品の公式画像やカードから適当に選んだものなので、画像検索すればそれらしいものが見つかるかと…。

改めて更新が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。

もう少し投稿頻度を上げていきたいと思います。

それでは、また次話をお楽しみに。


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偉い奴と話す時はナメられないのが大事



大変ご無沙汰しております。結局久々の投稿になってしまいました。

そんなに展開は進みませんが、原作キャラも少しずつ変化の予感…?

あと新章に入ったにもかかわらず、OP&EDの曲を変更していなかったので、
ここから先は以下の曲でいきたいと思います。

OP → 激情論 ~ZAQ~

   (“ハイスクールD×D NEW” 第2OP)

ED → 竜星鎮魂歌 ~鈴木このみ~

   (“魔弾の王と戦姫” 第10話ED)

では、どうぞ。




既に時刻は夕暮れ時。プールでの一悶着(?)も終わり、オカルト研究部とアイエールの面々は全員オカルト研究部の部室に集まっていた…。

 

「はぁ…マジで疲れた…」

 

「ったく、そういう事ならさっさと言えよ?」

 

「お前等が話す余地も与えずに襲い掛かってきたんだろ…」

 

クリスの言葉に対し、やや呆れ混じりにそう返す一護。その傍では…

 

「い、いいですかゼノヴィアさんッ///! 子供というのは本来結婚してから作るものなんです//! い、いきなりそういう事をしようとするなんて非常識にも程があります///!! だから絶対しないでください///! いいですね///!?」

 

「ふむ、そういうものなのか…。普段からあれだけ性に関する言動をしているイッセーを見ていると、子作りも普通だと思っていたのだが…」

 

「そこにいる“最悪の変態”を見本にするのは死んでもやめなさい。本来なら刑務所にいても可笑しくないレベルの男よ」

 

「いやいやいやいやッ!? いくら何でも酷くない紗矢華ちゃん!? そこまで言われる程じゃ…!」

 

「「「その通りでしょう(だろ)?」」」

 

「喰い気味で否定しなくてもよくない!?」

 

雪菜がゼノヴィアに常識を教え込んでいる中、紗矢華の一言に慌てて反論しようとするイッセー。しかし小猫、ヤミ、ナナの3人に即座に否定されたことで撃沈した…。まあ、本来なら通報されるレベルであることは間違いないだろう…。と、その時だった…。

 

キィィィンッ…!

 

「随分と賑やかだね?」

 

『……!!』

 

突然部室内に白い魔方陣が出現したかと思うと、そんな声が聞こえてきたのだ。そして、そこから姿を見せたのは…

 

「何かのイベントかい?」

 

「お、お兄様!?」

 

「っ!? ま、魔王様ッ!?」

 

(この方が魔王、サーゼクス・ルシファー様…部長さんのお兄様…!)

 

リアスの実兄で、四大魔王の1人である男――――サーゼクス・ルシファーと、妻であり、彼の女王(クイーン)である女性――――グレイフィア・ルキフグスだった。思わぬ人物達の登場にリアスは驚きを露わにし、イッセーを始めとするグレモリー眷属の面々はすぐに膝を付いて頭を下げる。もっとも、当麻達を始めとするアイエールの面々は勿論のこと、アーシアも初めて見る魔王の姿に感動して立ったままであるが…。すると、

 

「アーシア・アルジェントだね?」

 

「…! は、はい…!」

 

「リアスが世話になっている。優秀な僧侶(ビショップ)だと聞いてるよ?」

 

「っ! そ、そんな!」

 

「寛いでくれたまえ。今日はプライベートで来ているのだから」

 

「は、はい…」

 

穏やかな口調で話しかけてくるサーゼクスに対し、アーシアは恐縮しながらもそう返した。

 

「そして久しぶりだね、上条当麻君、黒崎一護君、奴良リクオ君。こうしてちゃんと挨拶をするのは初めてだと記憶しているんだが…」

 

「ああ、そうだな。あの時は色々派手に暴れて悪かったと思ってる」

 

「ハハッ、気にする必要はないよ。むしろ私達としては感謝しているんだ。妹を助けてくれたのは勿論、冥界にとっても“膿”を一つ取り除けたのだからね」

 

ここでサーゼクスが当麻達3人に目を向けつつ、当麻とそんなやり取りを交わす。ちなみに“膿”という言葉が指すモノについては…何処ぞの“愚かな三男坊”を思い浮かべて欲しい…。

 

「他のアイエールの皆さんも、多くは私と初対面だと記憶しているので、改めて名乗らせてもらいたい。私はサーゼクス・ルシファー。そこにいるリアスの兄であり、魔王としての地位を仰せつかっている。そして隣にいるのは私の女王であると同時に、妻でもあるグレイフィアだ」

 

「初めまして、どうぞお見知り置きを…と言いたい所ですが、“絶剣使い”と“氷の狙撃手”の御二人とはお久しぶりですね。あの時は組織の存在を知らなかったとはいえ、無礼な真似を致しました」

 

「! あー、そういえばそうだったね…。いいよ! 全然気にしてないし!」

 

「まあ、事の発端は“誰かさんが勝手に忍び込んできた”ことだった訳だしね」

 

「ッ…///!」

 

頭を下げるグレイフィアに対してユウキとシノンがそう言うと、当事者であるリアスは当時を思い出したのか顔を赤くしてしまった…。と、そこへ、

 

「ご無沙汰しております、サーゼクス卿」

 

「やぁ、久しぶりだね、サーゼクス」

 

「! ああ、本当に久しぶりだね、ソフィーヤ・オベルタス、アレクサンドラ・アルシャーヴィン。特に君とは…ギド様との手合わせの時以来だろうか?」

 

「ああ、その筈だよ。それより、その呼び方は止してくれないか? どうにもむず痒くてね。普通にサーシャと呼んで欲しい」

 

「なるほど…では“サーシャ殿”と呼ばせてもらうよ。ソフィーヤ殿とは、君が北欧にいた頃に特使として冥界へ来た時以来かな?」

 

「ええ。あの時は色々ありがとうございました。グレイフィアさんも、お元気そうで何よりですわ」

 

「! 御心遣い感謝致します、ソフィーヤ様」

 

ソフィーとサーシャがサーゼクスやグレイフィアに話しかけた。既に面識があるのか、それぞれ過去の話を踏まえながら会話をする4人…。

 

「でも驚いたよ。まさか君達“七大戦姫”が全員北欧を抜けていたとはね」

 

「…その様子だと、そちらの大魔王様から話は聞いたようね?」

 

「ああ。リアスの一件の後、すぐにギド様から話があってね。こちらとしては驚きの連続だったよ。ギド様が以前から秘密裏に交流していたのは勿論だが、まさか自分の娘達を全員許嫁として紹介しているとはね…」

 

「…! すみません、サーゼクス様。ですが…」

 

「ああ、気にしないでくれ、モモ。私はその事について反対する気など一切無いよ。何しろ、あのギド様が認めた事だからね。それにさっきも言ったように、彼等は私にとっても恩人と呼ぶべき存在。だからそんな彼等が率いるアイエールという組織についても、私は好意的に捉えているつもりだよ」

 

リュドミラの問い掛けにサーゼクスが答えていると、それを聞いていたモモは謝罪を口にしながらも何かを説明しようとする。しかし、サーゼクスは彼女の言わんとしている事に気付いてそう言った。すると、

 

「お、お兄様、いい加減説明してください! 一体どうしてこちらに…!?」

 

「ん? 勿論決まっているだろう? “リーアたん”の学校での様子を直に見る前に、事前に色々話をしておこうと思っていてね。もうすぐ“公開授業”があるんだろう?」

 

「っ!? ど、どうしてそれを…!グレイフィアね…!!」

 

“公開授業”という単語を聞いて、リアスはあからさまに動揺した。

 

「公開授業のこと言ってなかったのか、リアス?」

 

「っ! え、ええ…」

 

「安心しなさい。父上もちゃんと来る」

 

「お兄様は魔王なのですよ!? 仕事を放り出してくるなんて…」

 

当麻の問い掛けに頷きつつも、サーゼクスの言葉にやや呆れた様子でそう言うリアス。すると、

 

「いやいや、これは仕事でもあるんだよ」

 

「え?」

 

「三大勢力のトップ会談を、この学園で執り行おうと思っていてね。今度の公開授業は、会場の下見も兼ねているんだよ」

 

『…!!』

 

「こ、この駒王学園で!?」

 

リアスとサーゼクスのやり取りを聞いて、それぞれ反応を見せるグレモリー眷属の面々。しかし、サーゼクスの話はこれで終わりではなかった…。

 

「そしてその会談には、アイエールの方からも出席してもらいたいという話になっていてね。今日私がここへ来たのは、その話をするためでもあるんだよ」

 

『…!!』

 

続いてサーゼクスの口から飛び出した話の内容に、アイエールの面々も大半が驚きの反応を見せた…。

 

「“アイエールはどの勢力よりも強大な戦力を保有している”というのが、三大勢力の各上層部の共通認識でね。君達が一体何を考えていて、何をしようとしているのか、一様に警戒しているんだよ。だから今回の会談を通じて、君達の考えを直接聞きたいんだ。特に…トップである君達3人の考えを、ね…」

 

「「「………」」」

 

サーゼクスはそう言いながら、当麻達3人に目を向ける。それに対し、当麻達の回答は…

 

「分かった。その誘い、遠慮なく受けさせてもらう…。つーか、話は大体“ギド”から聞いてるんだろ?」

 

「! なるほど、どうやら今までの問い掛けは愚問だったようだね。では、そのつもりでこちらも調整を進めさせてもらうよ。詳細については近々伝えさせてもらうが、それで構わないかい?」

 

「ああ…。ただこっちも色々話したいことがあってな。こっちはこっちで、先に他の陣営にも顔合わせはしておくつもりだから、そのつもりでいてくれ」

 

「! これは驚いたな…。天界についてはともかく、堕天使サイドとも接触できる伝手(つて)があるのかい?」

 

「ええ、まあ…。どうやらその上層部の1人が接触しやすい所にいるらしいので、直接会いに行ってみるつもりです。その方が会談もスムーズに行くでしょうから…」

 

そうして当麻だけでなく、一護やリクオも加わってサーゼクスと話を進めていく…。

 

「そうか…了解した。事前に知らせてくれたこと、感謝するよ」

 

「気にしないでくれ。こっちも何だかんだで外見上、あんたの妹の身柄を預かってる訳だしな。でもいいのか、このままで?」

 

「構わないよ。そのことについても父上や母上も容認しているし、あの時君達が大胆な宣言をしてくれたお蔭で、周囲からの反発もそこまで無いからね…。まあ、“何かあったら遠慮なく”相談してくれて構わないよ。さっきも言った通り、私個人としては君達と友好的に付き合っていくべきだと考えているんだ。その方がリーアたんにとっても…“冥界にとっても”良いと思っているからね」

 

「ッ///!? お、お兄様ッ…///!!」

 

「…ああ、分かった。その時は、宜しく頼むぜ…?」

 

そして最後のサーゼクスの言葉にリアスが再び恥ずかしがる中、当麻は何処か意味ありげにそう返したのだった…。

 

 

 

☆☆

 

 

翌日、すっかり日も暮れた時刻にもかかわらず、当麻達は夜の街を歩いていた。といっても、そんな当麻達の周りには…

 

「接触しやすい所って聞いてたけど、この町にいるっていうのは予想外だったね、お姉ちゃん」

 

「関係ない。今の私達は当麻の護衛役…当麻に刃を向けるのなら葬るだけ…」

 

「あー、アカメさん? 今回はただの話し合いだからな? そんな物騒な展開にはならないと思うのでせうが…」

 

アカメ、クロメの2人と…

 

「堕天使の幹部…どんな人なんだろうね、切ちゃん?」

 

「きっといかにも悪そうな感じの奴デスよ! いざという時は、アタシが調を守るデス!」

 

「はぁ、落ち着けっての。話し合いに行くだけだって言ってんだろ…。なぁ、コイツ等を連れてきてよかったのかよ?」

 

「あー…まあ、調も切歌もやたら気にしてるみたいだったし、この前の一件で特に深く関わったのがこの2人だからな。何かあった時のフォローは頼む、クリス」

 

「! あ、ああ…」

 

調、切歌、クリスの3人、そして…

 

「ごめんね、ルーシィ、ウェンディ。こういう話し合いの場なんて、2人共あんまり好きじゃないと思うけど…」

 

「あ、いえ! 私こそあんまりお役に立てないかもしれないですけど、頑張ります!」

 

「いや、多分話すのはリクオ達3人だから、私達が頑張る事は無い気が…。あー、でも、私達も何かあった時はちゃんとフォローするから、安心して!」

 

ルーシィとウェンディの2人である。そんな当麻達が目指しているのは、話の内容から分かる通り、堕天使の幹部が居るという場所…駒王町内にあるマンションの一室。会談の前の顔合わせとして、“ある人物の仲介の下”、これから向かうことになったのだが…

 

『…!!』

 

突然何かを感じ、全員その場に立ち止まった…。

 

「おい、今のって…」

 

「間違いない、堕天使の気配。それもかなり強い奴の…」

 

「それに今気付いたけど、何かすぐ近くに“よーく知ってる悪魔”の気配を感じるね。どうする、お兄ちゃん?」

 

クリスとアカメがそう言う中、クロメが当麻に対して尋ねると…

 

「…急ぐぞ。面倒なことになる前にな」

 

「「ああ(うん)…」」

 

その瞬間、当麻達の姿はその場から消えた…。

 

 

☆☆

 

 

その頃、とあるマンションの一室では、緊迫した空気が張り詰めていた。中には2人の人物の姿があり、1人は赤龍帝兼駒王学園の変態三人組の一人―――兵藤一誠。そして、もう1人は…

 

「俺はアザゼルだ。堕天使共の頭をやってる…」

 

(ア、アザゼルって、堕天使の総督じゃねえかッ…!!?)

 

男物の和服を着こなし、背中から12枚の黒い翼を生やしている男—――アザゼルである。イッセーはあくまでも契約相手としてこの男の下に何度か来ていたのだが…突然のカミングアウトに驚きを隠せないでいた…。

 

「な、何で…!?」

 

「コカビエルの企みを察知してな。町に潜入していたんだ。ついでに、君の“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”にも興味があったしねぇ…」

 

「ッ…!!」

 

アザゼルの口から自身の神器の名が飛び出したことで、咄嗟に警戒心を高めるイッセー。すると、

 

「“アルビオン”はうまくやってくれてたようだな…」

 

「ッ! アルビオン…白い龍…!」

 

「俺が直接手を下すのは不味いんで、事の収拾を頼んだんだ。といっても、その前に“あいつ等”が片を付けたんだが…」

 

アザゼルの口から出た“あいつ等”が誰のことかは…流石の一誠もすぐに見当がついた…。と、ここで、

 

「っと…そうこうしてる間に、来たみたいだな…」

 

「? お、おい、一体どういう…」

 

アザゼルの言葉の意味が分からず、イッセーが尋ねようとした、その時、

 

ガチャッ…!

 

「取り込み中の所悪いが、邪魔するぞ」

 

「ッ!? と、当麻!? それに一護とリクオも!? な、何でここに!?」

 

「あー!! イッセー先輩がいるデスよ!?」

 

「ちょ、何であんたがここにいるのよ!?」

 

「って、切歌ちゃん達まで!? お、おい、どういうことだよ!?」

 

部屋の入り口から入ってきたのは、当麻や一護、リクオや切歌、ルーシィ達だった。思わぬ人物達の登場に、より一層驚きながら尋ねるイッセー…。

 

「昨日リアスの兄貴に話してただろ? “堕天使の上層部の1人が近くにいるから、直接会いに行く”ってよ…。それはこのオッサンのことだ」

 

「! ってことは、お前等はこのオッサンのことを知ってたのかよ!?」

 

「まあ、少し前からね。といっても、まさかイッセー君がここにいるとは思ってなかったんだけど…」

 

イッセーがアザゼルのことを知らずにこの場にいることに、若干頭を抱えたくなりそうな様子で話す一護とリクオ…。

 

「初めまして、と言うべきかな、“アイエール”御一行さん」

 

「…! あなたが堕天使の総督、アザゼル?」

 

「ああ、そうだ。しかしまあ、これだけの二つ名持ちの神器所有者がいると壮観だな。“紅蓮の殲滅者”に“桃華の切削者”に“深緑の断罪者”、“一斬必殺のアカメ”に“死者行軍のクロメ”、それにそっちは“星神姫”と“天空の巫女”か…」

 

「…こっちの情報はある程度調査済みって訳か」

 

「これでも頭をやってるからな。情報収集もそれなりにするさ。もっとも、俺の潜伏が気付かれてるとは思わなかったがな…」

 

調の問い掛けや一護の言葉にそう返すアザゼルだったが、イッセーに対した時とは違い、明らかに警戒心を持って当麻達と相対していた…。

 

「で、そのアイエール御一行様が、俺に何の用だ?」

 

「…あんたの耳にも既に入っているだろうけど、今度の三大勢力の会談には俺達も参加させてもらう。ただそのトップの中で唯一面識が無いのは堕天使陣営…要するにあんただけだったからな。事前に顔合わせの意味も含めて、直接挨拶に来たって訳だ」

 

「…! こいつは驚いたな。今話題の組織のトップが3人まとめて出向いてくれるとは思わなかったぜ…。それなら、少しばかりゆっくりしていくか? この人数だとやや手狭だが…」

 

「いえ、本当はそのつもりでしたけど、今日はもうこれで失礼します。イッセー君がいるとなると、少し話しづらいですし…顔合わせという点では、これで十分だと思います。そうでしょ、当麻…?」

 

「…ああ…」

 

アザゼルからの提案に対し、リクオは当麻に確認を取りながらそう言った。

 

「色々邪魔して悪かったな。行くぞ、アカメ、クロメ」

 

「「ああ/はーい」」

 

「ごめんね、ルーシィ、ウェンディ。殆ど来た意味が無い感じになっちゃって…」

 

「! い、いえ…」

 

「確かに着いてから3分もいなかった気がするけど、余計な騒ぎが起こるよりは全然マシね」

 

当麻やリクオの一言を受けて、彼らについていくアカメやウェンディ達…。

 

「ほ、本当にもう帰っちゃうデスか?」

 

「ああ、目的は達したからな」

 

「ったく、本当に来た意味無かったんじゃねえか、これ…」

 

「でも、堕天使の総督がどんな人か分かっただけでも、来た意味があったと思います…」

 

「! そうデスね! “ただの胡散臭そうなオジさん”だったことが分かっただけで、収穫デース!」

 

「…おい、副総帥の兄ちゃん…確か、黒崎一護だったよな? そこの嬢ちゃんに、初対面の大人との接し方を教えてやった方がいいと思うぜ?」

 

「いや、案外切歌の言ってることも当たってるぞ。あんたは見た目堅気の人間に見えねえからな」

 

「お前も初対面の相手に大分失礼だな、おいっ!!」

 

そして、一護もクリスや調、切歌を連れてその場を後にしようとした…その時、

 

「ああ、そういや最後に一つ、あんたに確認しておきたいことがあるんだが…」

 

「? ああ? 何だよ、一体…?」

 

一護が突然立ち止まったかと思うと、振り返りながらアザゼルに対してこう尋ねた…。

 

 

 

「コカビエルと協力関係にあった連中と、お前等堕天使陣営全体は通じてねえだろうな…?」

 

「ッ…!?!?!?!?」

 

その瞬間、アザゼルは言葉では言い表せない程の覇気と威圧感を感じた。“堕天使の総督”という、一陣営のトップである男が…。

 

「あんたもコカビエルの動きに気付いて、この町に潜伏していたんだろ? 当然コカビエルと一緒にいた連中の存在も知ってる筈だ…。あいつ等は俺達にとって、絶対に許せねえ存在でな。あいつ等と通じてる存在がいるなら、俺達も黙ってる訳にはいかねえんだよ…。それが一つのデカい勢力だったとしてもな…」

 

一護の言葉を聞いたアザゼルは、“あの連中”が誰のことなのか当然気付いていた。この場にいるクリスや切歌、調達“七星の歌姫”の面々と大きな因縁を持つ研究者風の男――ギース・ヘイドと、その仲間である7人の男達であることを…。

 

「俺達は連中と接触したことは無え。コカビエル個人が密かに接触し、お前等と一戦交えるために協力関係を持った…そんな所だろうよ。アルビオンにもコカビエルと同時に、連中の片付けも頼んでいてな。まあ、その前にそっちで全部を片を付けちまった訳なんだが…。とにかく、俺達堕天使全体が奴等と関わっていないことは俺が保証してやる。堕天使の総督としてな…」

 

「…………」

 

先程までとは違う真剣なアザゼルの回答を聞いて、一護は暫し沈黙したかと思うと…

 

「そうか…。悪かったな、つまらねえこと聞いて」

 

「ッ…なら、もう少し穏やかに聞いてくれねえか? 今のはかなり心臓に悪いんだが…」

 

「生憎、今のはかなり重要な話だったからな。勘弁してくれ…。そんじゃあ、会談の時はよろしく頼むぜ? 堕天使の総督さんよ…」

 

「あ、それとイッセー君もついでに連れていきますね? ほら、用件も大体終わったんだよね? もう行くよ」

 

「ッ!? お、おい、待てよお前等…!!」

 

今までの張り詰めた空気は一瞬で霧散し、一護はイッセーに声を掛けるリクオ達と共に、その場を去っていった。その結果、当然部屋にはアザゼル1人だけになったのだが…

 

(あのプレッシャー…大戦の時ですら感じたことの無いレベルの奴だったな…。間違いねえ、あいつ等と敵対しようもんなら、“どんな勢力だろうが確実に殲滅”される。奴等の目的が全く分からねえ以上、今度の会談はとんでもなく重要な場になりそうだな…)

 

アザゼルは先程のやり取りを思い出しながら、対峙した相手の強大さを実感していた…。

 

「こいつは一度、何か“布石”を置いた方が良さそうだな…」

 

 

☆☆

 

 

翌日の朝、当麻達3人はアイエールの学生組やリアスと共に、駒王学園へと向かっていた…。

 

「やっぱり不満か? 他勢力のトップに勝手に侵入されてたのは…」

 

「当然よ! こちらの営業妨害をしていた上に、私の眷属に手を出そうとしていたなんて…!」

 

「まあ、つっても主な目的はコカビエルの動きに対処するためだったらしいからな。イッセーの事はあくまでも“ついで”だろうけどな」

 

「“ついで”というなら尚悪いわよ。堕天使の総督という立場でなかったら、直接抗議してやりたいくらいだわ…!」

 

当麻や一護がそう言う中、憤りを露わにするリアス。実は昨日、当麻達はアザゼルの潜伏先から帰った後、アイエールの屋敷にいたリアスに事の詳細を説明したのだ。その結果、リアスは断りもなく勝手に潜伏していたアザゼルに激怒。今日になっても不満が収まらず、こうして愚痴を漏らす状態になっている…。

 

「いや、“ついで”という事でも無いだろう。アザゼルという男の素性は、私も聞いたことがある」

 

「? 素性って?」

 

「奴は神器の研究に相当のめり込んでいるらしい。神器の知識の量は確かで、人工の神器も作っているとか…」

 

「ああ、神器の研究に関しては、悪魔陣営にいる四大魔王の1人に並ぶレベルだろう」

 

「! キャロルちゃんもその人の事を知ってるの!?」

 

「研究に携わる者として、そう認識しているだけだ。オレも直接会ったことはない。まあ、機会があれば話くらいはしてやってもいいと思っているがな…」

 

アザゼルに関するリサーナや響の問い掛けに、エルザやキャロルがそう答えた。と、その時、

 

『…!!』

 

「? どうしたの、当麻?」

 

突然自分以外の面々が立ち止まったことに気付き、咄嗟に隣にいた当麻に尋ねるリアス…。

 

「イッセーに面倒な奴が接触してきてるな。相手は多分、あいつの“ライバル”か…」

 

「ッ!? ライバルってまさか、“白龍皇”のこと!?」

 

「ああ、この感じは恐らくな…」

 

当麻の言わんとしていることに気付き、リアスはすぐに学園へと向かおうとした。すると、

 

「「一護(さん)」」

 

「! 何だ、ゼノヴィア、イリナ?」

 

「私達が先行して収拾に向かってもいいだろうか?」

 

「今のイッセー君じゃ、色々と不味いでしょ? ここは助太刀に行かないとね♪」

 

「…分かった。頼むぞ」

 

「「ああ(任せて♪)」」

 

ゼノヴィアとイリナがそう言って、展開された魔方陣と共に姿を消したのだ。それを見て…

 

「大丈夫なの、あの子達を先に行かせて? 相手はあの白龍皇よ?」

 

「心配いらねえよ、“今のあいつ等”なら…。だろ? 翼、マリア」

 

「フッ、そうだな」

 

「ええ、“今のあの子達”なら大丈夫でしょう」

 

心配するリアスに対して答えたのは、一護と翼、そしてマリアの3人だった…。

 

「とにかく、俺達も向かうぞ」

 

「! え、ええ…」

 

 

☆☆

 

 

時は少し遡り、駒王学園の前にある橋では2人の人物が対峙していた…。

 

「ここで会うのは二度目だな」

 

「! 何…?」

 

1人は毎度お馴染みの赤龍帝こと、イッセー。そしてもう1人は銀色の髪が目を引く、私服姿の青年…

 

「“赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)”、“赤龍帝”、兵藤一誠…」

 

「っ…!」

 

「俺は“ヴァーリ”。“ヴァニシング・ドラゴン”、“白龍皇”だ」

 

「ッ!? お前が…ッ!」

 

その青年――ヴァーリが橋の欄干に持たれながらそう言うと、イッセーの左手の疼きが一層増した…。すると、

 

シュッ!!

 

「なっ!?」

 

「無防備だな…。例えば俺がここで、君に魔術的なものを掛けても…」

 

「っ!! ブーステッドッ…!」

 

瞬時に目の前に迫り、人差し指を額に突き付けながらそう言ってきたヴァーリ。これを見たイッセーは即座に神器を発動しようとした、その時、

 

チャキッ…!!

 

「冗談が過ぎるんじゃないかい…?」

 

「! 木場…!!」

 

裕斗が突然現れ、ヴァーリの喉元に自らの神器である聖魔剣を突き付け…

 

「イッセーさん!」

 

「っ! アーシア、下がってろ!」

 

自身の後ろからアーシアも駆け付けてきたが、イッセーは危険と考え、彼女を自身の背後に留めた…。

 

「“彼等”ならともかく、コカビエルごときに勝てなかった君達では、俺に勝てないよ。人目を気にしながらそうしてもらっても構わないが…」

 

切っ先を向けている裕斗に対して、余裕の笑みを見せながらそう言うヴァーリ。しかし、そんなヴァーリにも予想していなかったことが起こる。それは…

 

チャキッ!!×2

 

『ッ…!?』

 

「あまり私達の通う場所の前で、物騒なことをしないでくれる?」

 

「今の時期に問題を起こすのは得策でないと、貴様も理解しているだろう? “白龍皇”」

 

「ゼ、ゼノヴィア!?」

 

「イリナさん…!」

 

突如ヴァーリの背後にゼノヴィアが自らの神器“デュランダル”を、裕斗とは反対の側面にイリナが“西洋剣型の神器”を突き付けるようにして現れたのだから…。

 

「驚いたな…。コカビエルの時に見た君達とは、まるで別人のようだ…。一体何をした?」

 

「ふふっ、“とある2人”に修行を付けてもらっていてね。その賜物、といった所かな」

 

「白龍皇の貴方にそう言ってもらってえるってことは、それだけ修行の成果が出てるってことね…。この剣のことも含めて、改めて主…じゃなくて、一護さんや“あの人達”に感謝しないと…」

 

「…なるほど、そういうことか。これは一層、楽しみになってきたな…」

 

ゼノヴィアとイリナとやり取りをするヴァーリは依然として笑みを見せているが、その笑みは余裕によるものではなく、“好戦的”な感情によるものだった…。

 

「さて…何か勘違いしているようだが、俺は別に戦いに来た訳じゃない。そのつもりなら、最初から手を出している…」

 

「…分かった。イリナ」

 

「! いいの?」

 

「この男の言うことも一理ある。人目があることも確かだからな」

 

「…そうね。ほら、あなたも神器を収めて」

 

「…! あ、ああ…」

 

ゼノヴィアとイリナ、裕斗は神器を収め、イッセーやアーシアの下へ移動する…。

 

「兵藤一誠、君はこの世界で何番目に強いと思う?」

 

「何…?」

 

「君の禁手(バランスブレイカー)…まあ、未完成の状態だが、上から数えると四桁。千から千五百の間くらいだ…。いや、宿主のスペック的にはもっと下かな…?」

 

「っ…何が言いたい…!?」

 

「兵藤一誠は貴重な存在だ。十分に育てた方がいい…リアス・グレモリー」

 

「ッ!? 部長…! それに当麻達も…!」

 

ヴァーリの発言を聞いたイッセーが振り返ると、そこにはリアスや当麻達アイエールの学生組、そして朱乃や小猫がいた。そして、その中からリアスや朱乃、小猫、当麻達3人がイッセー達の所へ歩み寄っていく…。

 

「白龍皇…何のつもりかしら? 貴方が堕天使と繋がりを持っているなら、必要以上の接触は―――」

 

「フッ、二天龍と称された“ウェルシュ・ドラゴン”と“ヴァニシング・ドラゴン”…“赤い龍”と“白い龍”に関わった者は、過去碌な生き方をしていない…。貴女はどうなるんだろうなぁ…?」

 

「っ…」

 

自身の言葉を遮ったヴァーリの問い掛けに、言葉を詰まらせるリアス…。

 

「さっきも彼等には言ったが、今日は戦いに来た訳じゃない。俺もやることが多いんでね…。それに、今の君には興味が無い…」

 

ヴァーリはイッセーに対してそう言うと、ある人物達の前に歩み寄っていく。その人物達とは…

 

「アザゼルから聞いたよ。昨日あいつと会ったそうだな」

 

「ああ。といっても顔合わせのつもりだったからな。大したことは話してねえよ」

 

「らしいな。だがそれでも、あいつにとっては十分に意味があるものだったようだ…。今度の会談に、君達も参加するそうだね?」

 

「まあな。俺達も色々派手に動き回った以上、大人しくしてるつもりはねえよ」

 

「そうか…。この前話した手合わせの件、覚えてるかい?」

 

「! 覚えてるけど…それはもう少し落ち着いてからにして欲しい、っていうのが本音かな」

 

「…なるほど。頭に入れておくよ。では、俺はこれで失礼させてもらう…」

 

ヴァーリは当麻、一護、リクオとそれぞれ一言やり取りし、頭を下げて去っていく。そして後ろに控えていたアイエールの学生組にも会釈をし、街中へと消えていった…。

 

「何しに来たの、一体…?」

 

「挨拶ってところでしょうね。少し荒っぽさはあるけど…」

 

「面倒なのに目を付けられたって感じね…」

 

「そう? ボクは一回戦ってあげてもいいかな~って思ってるけど?」

 

「ダ、ダメですよ、ユウキさん!」

 

「ええ、あれは碌でもない事をしでかすタイプよ…。やっぱり男は信用ならないわね、ホント…」

 

リサーナやミラジェーンがそう話す中、シノンの一言に反応したユウキの発言を聞いて、雪菜と紗矢華が軽く注意する。その一方で、

 

「どう? 白龍皇と対峙してみた結果は?」

 

「ああ、自分でも驚く程、動じることが無かった。直接戦っていないとはいえ、コカビエル以上の実力を持つ男と対等に近い形で対するようになれるとは…」

 

「そうか。それならば、私達も手を貸した意味があったというものだ」

 

「はい! 引き続き、よろしくお願いします!」

 

ゼノヴィアとイリナは翼とマリアとそんな会話をしていた。これが何を指すかは…言うまでもなかった…。そんな中、

 

「……」

 

「大丈夫か、リアス?」

 

「! え、ええ、平気よ…。ねえ、それよりあの2人…」

 

「ん? ああ、ゼノヴィアとイリナのことか。実は少し前から、あいつ等の希望で翼とマリアが修行を付け始めたんだよ。それにイリナの方は、聖剣を天界に返しちまったからな。あの剣はキャロルとエルフナイン、それにウェルやララが共同で作った人工の聖剣だ」

 

「っ!? 人工の聖剣ですって!? そんなもの…」

 

「まあ、あいつ等がうちの技術力の全てだからな。もうあいつ等にとっては趣味みたいなモノだろうが…」

 

リアスは当麻の話を聞いて驚きを露わにするが、同時にここで何かを考え始め…

 

「ねえ、当麻…」

 

「? 何だ?」

 

「…一つ、“お願い”があるのだけど…」

 

何かを相談し始めたのだった…。

 

 

END

 

 



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