夜天の守護者 番外編 (混沌の魔法使い)
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遡る時の振り子・・前編

今回の更新は番外編でも特に自信があったものを幾つか選んで投稿しています。
ですので感想を頂けると自身に直結するので、感想をもらえると嬉しいです!!


遡る時の振り子・・前編

 

 

時の振り子・・というのは時に突然遡る物です・・それは何を意味するのか?・・それは別れであったり・・再会であったり・・様々な姿で姿を現すでしょう・・これはそんな気まぐれな時の振り子が巻き起こした・・小さな奇跡のお話です・・

 

「はやて、なのは、フェイト・・明日一緒に出掛けないか?」

 

その奇跡が始まったのは・・龍也のこの一言からだった・・突然誘われた3人は一瞬驚いた表情を見せたが

 

「うん、良いで・・でもなんでなのはちゃんとフェイトちゃんも一緒なん?」

 

3人ともそこが気に食わないという顔をしていたが、私は

 

「いや・・偶には海鳴でゆっくりはやて達と過ごそうと思ったのだが・・嫌だったか?」

 

そういうと3人は頬を少しだけ赤らめながら

 

「そういうことなら・・しゃあないな・・うん良いで皆で行こう」

 

そう笑うはやて達に

 

「それじゃあ、明日な」

 

そう笑い掛けてから食堂を後にした・・そして次の日・・私達は海鳴の街に居た・・まず最初に向かったのは翠屋だった

 

「いらっしゃいませ・・おや、龍也君じゃないか?どうしたんだい?」

 

笑いながら尋ねて来る士郎さんに

 

「ちょっと休暇が取れまして・・折角だから遊びに来たんですよ」

 

暫く士郎さんと話していると

 

「兄ちゃん、はよ座ったら?」

 

笑いながら言うはやて達に頷き、私はなのは達の座っている席に向かった・・

 

「それで、龍也・・今日は何をするの?」

 

シュークリームを食べながら言うフェイトに

 

「そうだな・・思い出のある所を回ろうか?・・初めてフェイトに会った所や・・なのはに会った所とかを回ろうと思ってるよ」

 

そう言うとはやてが

 

「うーん・・思い出を回る旅って所?」

 

首を傾げるはやてに頷き、私達は翠屋を後にした・・翠屋を出る所でなのはが会計をしようとするので

 

「私が誘ったんだ・・私が会計するから、先に行っててくれ」

 

先に行くように促すと3人とも頷き翠屋を後にした・・私は会計をしながら

 

「士郎さん・・頼んでた件・・お願いしますよ?」

 

そう言うと士郎さんは穏やかに頷き

 

「勿論、任せてくれ」

 

私はその言葉に頷き翠屋を後にした・・それと入れ違いで入ってくるスバル達に

 

「後は任せるぞ?」

 

そう声を掛けるとスバルは自分の胸を叩きながら

 

「大丈夫です!任せてください」

 

そう笑うスバル達に頷き・・私ははやて達の後を追った・・

 

 

 

 

「うわ~懐かしいなぁ・・ここで初めて龍也さんに会ったんだよ?」

 

隣のフェイトちゃんに言うとフェイトちゃんは

 

「へーここで足挫いてた所を龍也が通りがかったんだ・・」

 

2人でそんな話をしていると、後ろの方ではやてちゃんが

 

「この通りって・・翠屋に行く途中・・はっ!?・・私が兄ちゃんにシュークリーム食べたい言うたから、なのはちゃんと兄ちゃんのエンカウントが!・・くう・・私の馬鹿・・」

 

何か後悔しているはやてちゃんの隣で龍也さんは苦笑しながら

 

「いや・・そこまで後悔しなくて良いだろう?」

 

そう言うとはやてちゃんは

 

「後悔するで!・・この出会いさえなければ・・なのはちゃんが兄ちゃんを好きになる事はなかったんや!」

 

そう反論するはやてちゃんに私は

 

「別にここで出会わなくても私は龍也さんを好きになってたと思うよ?」

 

そう・・別にここでの出会わなくても私は龍也さんを好きになってたと思う・・私がジュエルシードを集めている時に龍也さんも同じ様にジュエルシードを集めていたのだから・・唯出会いが早かったか・・遅かったかの違いだと私が言うと

 

「くっ・・でもな!兄ちゃんと一緒に居った時間は私の方が長いんや!・・そこになのはちゃんが入ってくる隙間なんて無いで!」

 

2人でううーと睨み合っていると・・ポンッ・・私とはやてちゃんの頭の上に龍也さんが手を置きながら

 

「折角、遊びに来たのに喧嘩しなくても良いだろう・・」

 

少し寂しそうに言う龍也さんに

 

「違いますよ!私とはやてちゃんは喧嘩してたんじゃないですよ!」

 

「そうそう、私となのはちゃんは仲良しやで!」

 

慌てて言うと龍也さんは

 

「それならなおさら喧嘩しないでくれ・・仲良くしててくれ」

 

そう笑う龍也さんに頷き私達はまた移動し始めた・・

 

「んー懐かしいな~ここで初めて龍也に会ったんだよ?」

 

にこにこと笑いながら言うフェイトちゃんに龍也さんは

 

「そうだな・・そう・・アルフと2人で絡んで来たんだったな」

 

・・そんな出会いだったの!?私とはやてちゃんがその言葉に驚いているとフェイトちゃんは

 

「ち、違うよ!私はやめようって言ったの!でもアルフが!私の言う事、聞いてくれなかったの!!」

 

慌てて訂正に入るフェイトちゃんの話によると・・何でも龍也さんの事は大分前から知ってて、ジュエルシードの暴走体を軽々倒す龍也さんが格好良くて・・気が付いたら好きになってて・・街中で買い物してる龍也さんを見つけて・・後を追ってこの公園に来たそうなうなんだけど・・恥かしくて声掛けれなくて・・困ってたらアルフが実力行使で名前を聞こうとした・・との事らしい・・その話を聞いたはやてちゃんは

 

「・・そんなに純情だったのに・・今は・・積極的過ぎん?」

 

そう言われたフェイトちゃんは頬を押さえながら

 

「だ・・だって・・龍也の事好きな人多いから・・後手に回ってたら・・手が届かなくなっちゃうでしょ?」

 

そう言い返すフェイトちゃんの事を見ながら龍也さんは

 

「私の事を好きな人が多い?・・・どういう事だ?・・私には心覚えが無いのだが・・」

 

真顔で尋ねて来る龍也さんの肩に手を置きながら

 

「龍也さん・・もう少し・・もう少しで良いんで・・鈍感を治してください」

 

そう言われた龍也さんは本当に意味が判らないと言う表情ながらも頷き

 

「・・良く判らないが・・善処しよう・・」

 

・・どうしてこうも鈍感なのだろうか・・でも最近は少しずつ改善されてされて来てるから良いか・・私がそんな事を考えていると

 

「兄ちゃん!次の場所、行こう!」

 

龍也さんの腕を抱き抱えながら言うはやてちゃんに龍也さんは

 

「そうだな・・アリサとすずかにも連絡を入れてるし・・次の場所に行こうか?」

 

何事も無いように歩き始めた龍也さんの姿に

 

(やっぱり・・少しずつ鈍感が治って来てるみたいだね・・)

 

私はフェイトちゃんに念話で

 

(私・・龍也さんの腕抱き抱えるけど・・良い?)

 

そう尋ねるとフェイトちゃんは

 

(良いよ・・でも次移動するときは私だよ?)

 

そう返事を返すフェイトちゃんに頷き、私は龍也さんの腕を抱き抱えた・・龍也さんは一瞬驚いた表情を見せたが何も言わず・・そのまま歩き続けていた・・やっぱり・・龍也さんの鈍感は治って来てるのかな?・・そんな事を考えながら私達はアリサちゃんの家に向かった・・

 

 

 

 

「ふう・・中々楽しい時間だった・・」

 

アリサとすずかと一緒にお茶をしながら、昔話をしたのは・・中々楽しかったと思い呟くと・・フェイトが私の腕を抱き抱えながら

 

「次は龍也の行きたい場所だよね?・・何処に行きたいの?」

 

笑顔で尋ねて来るフェイトに

 

「・・2か所・・行きたい場所があるが良いか?」

 

そう尋ねるとはやてがなのはを押しのけ、私の腕を取りながら

 

「良いで、兄ちゃんの行きたい場所なら、どこでも」

 

笑いながら言うはやての頭を撫でながら

 

「ありがとう・・では行こうか・・」

 

私はそう呟き・・あの場所へ向かった・・

 

「ここは・・」

 

私の後を着いて来ていたなのはが目を見開きながら呟いた・・私が来た場所は

 

「・・なのは達も覚えているだろ・・ここは闇の書の闇と・・戦った場所だ・・」

 

飛行魔法で闇の書と戦った海上に来ていた・・私がそう呟くとフェイトは

 

「どうして、こんな所に来たの・・ここには悲しい思い出しかないよ?・・早く行こうよ・・」

 

私の事を気遣ったのか・・早く別の所へ行こうと言うフェイトに

 

「そうだな・・ここには悲しい思い出しかない・・だが・・私はここに来たかった・・なぁ・・はやて、なのは、フェイト・・もしあの時・・私に今の力の4分の1でも良い・・力があれば・・リインフォースを救えたんじゃないのか?」

 

リインフォースは・・少ない時間だったが・・私の家族だった・・クールそうに見えたが彼女は・・実は凄く甘えん坊で・・1人になるのを異常なほど怖がった・・闇の書の闇の再構築が始まるまで・・彼女は私とはやての傍を離れようとしなかった・・短い時間でも良い・・幸せな思い出が欲しい・・彼女はそう言っていた

 

「今の力が少しでもあの時の私にあれば・・リインフォースは消えなくて良かったんじゃないのか?」

 

私が拳を握りながらそう呟いていると・・はやてが

 

「兄ちゃん・・」

 

私の手を両手で握りながら

 

「兄ちゃんの所為や無いよ・・だから・・そんなに気にしんで・・リインフォースも言ってたやろ・・兄ちゃんの所為じゃ無いって」

 

はやてがそう言うが私は

 

「だが・・思うんだ・・リインフォースが消えなくて済む方法があったんじゃないのかと・・そう思うと・・私は・・悔しいんだ・・」

 

私は・・家族を救えなかった・・最後の最後まで・・彼女は泣かなかった・・涙を見せなかった・・その事が私には辛かった・・出来る事なら救ってやりたかった・・もっともっと・・彼女に幸せな思い出を作ってやりたかった・・

 

「兄ちゃん・・そんなに自分を責めないで・・」

 

私の拳を開きながら言うはやての後ろから

 

「龍也さん・・」

 

「龍也・・」

 

後ろから抱き付いてくるなのはとフェイトに

 

「すまない・・もう行こう・・」

 

これ以上ここに居ると・・どこまでも気分が沈んでしまう・・だからここから移動しようとした瞬間

 

「ッ・・!」

 

頭に激痛が走る・・この感じは・・私が驚きながら振り返ると

 

フォンッ・・・

 

静かに黒い歪みが口を開けていた・・私がその歪みに驚いていると

 

「兄ちゃん・・どうしたんや?」

 

首を傾げながら尋ねて来るはやて・・どうやら・・はやて達には見えないようだ・・私は・・

 

「いや・・何でもない・・早く行こう・・」

 

私はその歪みにまさかと思いながらその場を後にした・・

 

「大分遅くなってしまったな・・」

 

海上から戻った時には既に日が暮れていた・・私がそう呟くとはやてが

 

「後・・兄ちゃんが行きたかった場所って・・リインフォースのお墓?」

 

そう尋ねて来るはやてに頷き

 

「ああ・・墓参りをしたかったんだが・・もう日が暮れてしまった・・墓参りは明日にしよう・・さっ・・翠屋に戻ろう」

 

今日は翠屋に泊まる予定だったので私達は翠屋に向かった・・

 

「さっ・・先に行くと良い」

 

翠屋の前で立ち止まり先に行けと言うとはやて達は首を傾げながら翠屋の扉を開けた・・それと同時に

 

パンッ!!パンッ!!!

 

中からクラッカーの音がする・・その音に驚いているはやて達に

 

「最近・・禄に休めてなかっただろう?・・だからサプライズパーティーを計画してたんだ・・」

 

私の仕事を減らそうとはやて達が頑張っていたのは知っていた・・だが禄に有給も使わず仕事をしているはやて達が心配になり、士郎さんとスバル達に頼んでパーティーの準備をしてたのだ・・本当はもっと楽しい気分で帰ってくる予定だったのに・・あの海上で少し落ち込んだ気分になってしまった事を後悔しながら言うと・・はやてが

 

「兄ちゃん・・私達の事を心配して・・今日遊びに誘ってくれたん?」

 

そう尋ねて来るはやてに

 

「ああ・・だって大切な家族だろう?・・心配するのは当然だ」

 

そう笑いながら言うとはやては・・いやはやてだけではなくなのはとフェイトも

 

「「「ありがとう・・凄く嬉しいよッ!」」」

 

抱き付きながら言ってくるはやて達に内心凄く動揺しながら

 

「・・行こう・・皆待ってる・・」

 

私はそう言って翠屋の中に入って行った・・桃子さんが用意してくれた食事を楽しんでいるとヴィータが

 

「どうした・・兄貴・・何か寂しそうに見えるけど・・」

 

心配そうな声で尋ねて来るヴィータに

 

「何でもないさ・・こんなに楽しいのに寂しい訳が無いだろう?」

 

そう言うと後ろに居たシグナムが

 

「何か悩み事があるのなら・・私達が聞きますよ?」

 

ヴィータと同じで心配そうな声のシグナムに

 

「本当に何でもないんだ・・心配してくれてありがとう」

 

そう言って頭を撫でるとヴィータが

 

「そんなら・・良いけど・・悩み事が有るなら相談してくれよ?」

 

そう言って離れていくヴィータとシグナムを見ながら

 

(あの歪み・・気になる・・あれは平行世界に行く時のゲートに似ている・・まさか・・あの時へ続いているのか・・)

 

平行世界への扉は何も同じ時間だけではない・・過去や未来にも通じている可能性があるのだ・・私は手に持った料理を口に運びながら

 

(試してみる価値はありそうだ・・)

 

私はそんな事を考えながらパーティーに参加していた・・・・途中フェイトが酔い潰れて、私に抱きついて眠ってしまったのには焦ったが・・はやて達だけではなくスバル達も笑顔だったので良かったと思いながら・・私もパーティを楽しんだ・・

 

そして・・その日の夜・・皆が眠りに落ちた頃・・

 

「行くか・・」

 

私を挟むように寝ているはやてとヴィータを起こさぬように布団から抜け出し・・目的の場所に向かう・・

 

「ユナ・・アザレア・・起きてくれ・・」

 

眠っているユナとアザレアを揺すり起こす・・

 

「んん?・・もう朝ですか?」

 

「ま・・まだ・・ね・・眠いです・・」

 

目を擦りながらも起きてくれたユナとアザレアに

 

「すまない・・少し大事な用があるんだ・・少し付き合ってくれ」

 

その頼むと目を擦りながら頷いてくれたユナとアザレアを連れて・・私達が高町家の道場から出ようとすると

 

「何処に行くんだい?」

 

道場の外で腕を組んでいる士郎さんと鉢合わせになった・・私は

 

「大切な家族を助けに行きます・・」

 

嘘を言わず真っ直ぐに士郎さんの眼を見て言うと

 

「そうか・・はやて君達には私が上手く言っておくよ・・気をつけて行っておいで」

 

何も言わず私の前から退いてくれた士郎さんの横を通り過ぎようとすると

 

「君は何も変わってないな・・何時だってどんな時だって誰かを護ろうとするな」

 

穏やかな笑みの士郎さんに

 

「私には・・この生き方しか出来ないんですよ・・ただ愚直に前に進むこの生き方しか・・出来ないんです」

 

私はそう言うと騎士甲冑を展開しユナとアザレアを連れて、あの海上へと向かった・・直ぐに見えなくなった龍也を見ていた士郎は

 

「その生き方しか出来ないか・・本当に龍也君らしい・・だが君は気付いているかな?・・少しずつ自分が変わり始めていることに・・」

 

士郎はそう呟き家の中へと戻って行った・・

 

時の振り子は今・・穏やかに・・しかし確実に動き始めた・・

 

 

 



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遡る時の振り子・・後編

遡る時の振り子・・後編

 

私は目が覚めた時・・過去の闇の書の主の元へ居た・・私は酷い悪夢だと思った・・折角解放されたと思ったのに・・再び長く苦しい時を歩まないとならないと思う時が狂いそうだった・・だが・・私には1つだけ希望があった・・いずれ・・いずれまた主はやてと・・あの方に会える・・そう思うと・・私は耐える事が出来た・・どれほど苦しくても・・どれほど悲しくても・・また会える・・例え短い時間でも・・あの方の傍に入れると思えば・・耐える事が出来た・・しかし・・私の夢見た日は来なかった・・再び主はやての元に行った時・・その場にあの方の姿は無かった・・私は絶望した・・そして・・また終わりの時をただ待つだけだった・・私の運命は決まっている・・闇の書の闇と共に消える・・それだけが・・私の運命だ・・私は再び終わりの時を迎えようとしていた・・

 

「夜天の魔道書、呪われた闇の書と呼ばせたプログラム・・闇の書の・・闇」

 

主はやてが呟きながら、球体が膨らみ破裂しその中から現れたこの世の物とは思えない異形な体をした化け物、闇の書の闇を見ている・・この後の出来事は全て知っている・・

 

「縛れ! 鋼の軛!」

 

盾の守護獣が闇の書の闇の尻尾を刈り取る・・そこに

 

「ちゃんと合わせろよ、高町なのは!」

 

「ヴィータちゃんもね!」

 

高町なのはと鉄槌が・・

 

「鉄槌の騎士ヴィータと鉄の伯爵、グラーフアイゼン!轟天、爆砕!ギガント!シュラァァァク!」

 

鉄槌の一撃で闇の書の闇の複合四層式のバリアが1つ壊され・・

 

「高町なのはとレイジングハート行きます!・・ディバイン・・バスターッ!!!

 

強烈な砲撃を闇の書の闇へと打ち込む・・それはいくつか再生していた尻尾もまとめて吹き飛ばし、2つ目のバリアをも粉々にした・・次は将とフェイトテスタロッサだ・・

 

「剣の騎士シグナムが魂、炎の魔剣レヴァンティン」

 

将が矢を生み出し狙いを定める・・そして矢を放ち・・3つ目のバリアを砕く・・

 

「フェイト・テスタロッサ!バルディッシュ・ザンバー・・行きます!」

 

フェイトテスタロッサが最後のバリアを打ち砕く・・そして

 

「彼方より来たれ、宿り木の枝・・銀月の槍となりて、撃ち貫け!」

 

主はやての呪文詠唱と共に闇の書の闇の上空に魔法陣が浮かび上がり、周りに六つの魔力弾が生成される

 

「石化の槍、ミストルティン!」

 

主はやてが生み出した魔法陣からも放たれ、七つの魔力弾が闇の書に闇に命中する・・そして槍のように細く長い魔力弾から侵食し始める石化が闇の書の闇の体を覆って行く・・主はやてのミストルティンが決まり石化が侵食し石化していた部分が自重に耐え切れず崩壊していく中、闇の書の闇はそれを上回る再生速度で石化していた部分を再生していく・・そして次は・・

 

「行くぞ、デュランダル!」

 

クロノハラオウンが詠唱に入る・・

 

「悠久なる凍土、凍てつく棺の内にて、永遠の眠りを与えよ・・」

 

水色の魔法陣が展開され、周りの温度が一気に下がっていく・・そして

 

「凍てつけ!」

 

その言葉と共に氷結速度が加速し闇の書の闇は完全に氷に包まれ動きを止めた・・この隙に

 

「全力全開! スターライト!!」

 

「雷光一閃、プラズマーザンバー!」

 

高町なのは、フェイトテスタロッサの持つ最強の魔法がそれぞれのデバイスに収束されていく・・

 

「ごめんな、お休みな・・」

 

主はやては悲しげな眼を闇の書の闇に向け、魔力を収束していく・・ああ・・もう終わりか・・私の時は・・私がそんな事を考えている中・・3色の砲撃が放たれ・・全てが終った筈だった・・

 

「響け、終焉の笛、ラグナロク!!」

 

「「「ブレイカーッ!!!」」」

 

・・そして・・この後・・湖が長距離転送を使い・・アルカンシェルで全てを消し飛ばし終わる・・筈だった・・

 

「グオオオオオッ!!!」

 

身の毛もよだつ雄叫びを上げながら闇の書の闇が姿を変える・・髑髏の文様を胴体に持つ異形へ・・異形は迫り来る3色の砲撃を片手で弾き飛ばす・・ば・・馬鹿な・・これで終る筈だったのに・・まさか・・あの方が居ないから・・駄目だったのか?私が慌てていると異形は

 

「グアアアアアッ!!!」

 

咆哮を挙げながら凄まじい砲撃を私達に向かって放つ・・闇の書の変化に驚いていた私達は避ける事も出来ず・・その砲撃の直撃を受ける筈だった・・私は

 

(そうか・・私は今回は少しの安らぎも得る事が出来ずに消えるのか・・もし・・次があるのなら・・今度は・・あの方に会いたい・・)

 

私はユニゾンを解除し、消えるつもりでその異形と主はやて達の前に立ち塞がった・・

 

「リインフォース!!あかん!!」

 

主はやての私を止める声を聞きながら・・私は消えていく覚悟を決めた・・その時・・

 

ヒュウウウ・・・

 

穏やかな風が吹き・・私の前に1人の男が現れる・・白銀に輝く騎士甲冑に4枚の翼を持った男は

 

「プロティオーネッ!!」

 

蒼く輝くプロテクションを発動させ・・その砲撃を弾き飛ばした・・だが私はその男の顔に目を奪われた・・右目に傷がある物の・・見間違える訳が無い・・この人は・・

 

「あ・・兄上・・様・・?」

 

私が再会する事を夢見続けていた・・その人だったのだから・・

 

 

 

 

 

間に合ったか・・私はプロテクションを解除しながら心の中で一息ついていた・・あの歪みは私の予想通り・・過去の・・闇の書の闇との戦いの時へと続いていた・・私は背後を見て

 

(私が居ない・・やはり平行世界か・・)

 

幼いはやて達の近くに私が居ない事に・・やはり過去ではなく並行世界かと思っていると・・クロノが

 

「お前何者だ!」

 

警戒心むき出しのクロノに

 

「邪魔だ・・下がってろ」

 

そう呟きはやて達全員をプロテクションの中に封じ込める・・そうでもしないと巻き込んでしまうからだ・・

 

「貴様!何をしてる!!1人で勝てる筈が無いだろう!!ここから出せ!!」

 

そう怒鳴り続けるクロノに

 

「お前達ではあれをどうこうする事は出来ん・・お前達の最高の一撃でも無傷だっただろう?」

 

そう言うと・・うっ・・と呟き黙り込むクロノ達を見ながら、闇の書の闇を・・いや・・

 

「成る程・・貴様が原因だったのか・・ヴェルガディオス!」

 

私が消し飛ばした筈の負の神・・ヴェルガディオスにそう怒鳴りつけると

 

「グアアアアッ!!!」

 

咆哮を挙げながら飛び掛ってくるヴェルガディオスの拳を剣で弾き飛ばしながら

 

「そうか・・知性の無い・・唯の残骸か・・」

 

そう呟き、即座に胴を穿ち後退させ・・

 

「ユナ、アザレア!!」

 

ユナとアザレアを呼び出す・・そして・・

 

「「「ユニゾンインッ!!」」」

 

ユナとアザレアと同時にユニゾンを行う・・バサァ・・音を立てて8枚の翼・・4枚は天使で残りの4枚は悪魔の羽だ・・それが一瞬私の姿を覆い隠し・・騎士甲冑を作り変える・・銀の装飾と左胸に金の剣十字を持った黒いロングコートに黒いズボン、そしてに純白のマントを羽織る・・それと同時に髪と目が色を変えるのを感じながら、両腰に現れた剣・・ソルとルナを抜き放ちながら

 

「貴様に断罪を下す!!!我が剣の前に消え失せろ!!」

 

ヴェルガディオスの残骸に私は向かって行った・・

 

「グオオオオッ!!!」

 

咆哮を挙げながら殴り掛かってくるヴェルガディオスの攻撃をルナで受け止め・・

 

「リュンヌベルグッ!!」

 

ヴェルガディオスの影から月と同じ輝きを持つ魔力で出来た剣が飛び出し、身体を貫きそれと同時に・・

 

ズガーンッ!!!

 

凄まじい音を立てて爆発する

 

「ギャアアアッ!!」

 

悲鳴を挙げながら後退して行くヴェルガディオスに

 

「逃がさん!プロレミヤッ!!」

 

右手から太陽の輝きを放つ砲撃を放つ・・だがこれは普通の砲撃と違う・・限界まで収束させ面ではなく点で攻撃する砲撃で使いようによっては剣の様にも使える、私は右手を振り抜きヴェルガディオスの腕を切り飛ばす

 

「ッギャアアアアッ!!!」

 

腕を切り落とされた事で更に凄まじい、悲鳴を上げるヴェルガディオスの懐に飛び込み

 

「月牙陽炎斬ッ!!!」

 

三日月を描くかのようにルナを切り上げ、その直後に陽炎のように揺らめきながら姿を消す・・反撃に拳を繰り出していたヴェルガディオスは

 

「グアッ!?」

 

驚き辺りを見回しているヴェルガディオスの背後に回ってソルで一閃する

 

「ギャアアッ!!!」

 

苦痛に悲鳴を上げるヴェルガディオスの八方位から二刀流の高速の連撃で斬り裂き、完全に動きを止めた、ヴェルガディオスの最後に頭上からソルとルナを全力で振り下ろした

 

ズバアアッ!!!

 

凄まじい音を立ててヴェルガディオスの身体を深く切り裂く・・私はヴェルガディオスを見ながら

 

(脆い・・やはり残骸・・この程度か・・)

 

恐らくこいつはこの世界のヴェルガディオスなのだろう・・身体も脆いし・・弱い・・だが・・

 

「容赦はしない!!全力で貴様を消し飛ばす!!」

 

ルナとソルを腰の鞘に戻し両手に魔法陣を展開し、詠唱を始める

 

「万象を表す真実の姿・・世界に刻まれしその記憶・・」

 

右手の光り輝く魔法陣と左手の闇色の魔法陣が私の正面で巨大で複雑な魔法陣を描く・・

 

「我が浄化の光にて・・その存在を無に帰せ!セレスティアル・・ノヴァ!!」

 

放たれた砲撃は真っ直ぐにヴェルガディオスに命中する

 

「ギャアアアッ!!!」

 

悲鳴を上げるヴェルガディオスを2色の砲撃が呑み込み・・次の瞬間ヴェルガディオスの姿は完全に消えていた・・私は背後のリィンフォースを見ながら

 

(さっき・・私の事を兄上様と呼んでいた・・まさか・・)

 

私は翼を羽ばたかせリインフォース達の方に向かった

 

 

 

 

闇の書の闇を消し飛ばした兄上様が私の顔を見ながら

 

「リインフォース・・私が判るか?」

 

そう尋ねて来る・・私はゆっくりと頷き

 

「あ・・兄上様・・」

 

私がそう言うと兄上様は穏やかに微笑む・・私と兄上様が話していると

 

「時空管理局の者だ!お前は一体何者だッ!」

 

そう怒鳴りつけるクロノを無視した兄上様は

 

「見てるのだろう?リンディハラオウン・・クロノでは話にならん・・貴様が出ろ」

 

そう言うと空中にモニターが展開され

 

「私の事を知ってる・・貴方は何者なのかしら?」

 

そう尋ねられた兄上様は

 

「お前だけではない・・ここに居る全ての者の名も・・全て知っている・・私が何者か知りたければ・・私をアースラに連れて行け」

 

そう言う兄上様にリンディは

 

「良いわ・・闇の書の闇を倒してくれた人ですもの・・招待するわ」

 

私達はアースラの中へと転送された・・

 

「騎士甲冑を解除しろ」

 

クロノが睨みながら言うと

 

「規則だからな・・」

 

騎士甲冑を解除した兄上様の肩の上に2人の少女が現れる・・クロノが2人の少女に手を伸ばそうとするが、兄上様がその手を弾き落としながら

 

「悪いが・・この2人には触らないで貰おう・・私の家族だからな」

 

そう言うとクロノは不機嫌そうに

 

「こっちだ・・来い」

 

私達を先導して歩き出した・・私達が歩いていると主はやてが

 

「なぁ・・リインフォース・・あの人の事を兄上様って言ってたけど・・どういう事?」

 

そう尋ねて来る主はやてに

 

「直ぐに判ります・・兄上様が全てを教えてくれます」

 

私がそう言っている内にリンディの部屋の前に辿り着いた・・

 

「ようこそ・・アースラへ・・正体不明の魔道師さん」

 

そう微笑んだリンディは直ぐに

 

「それで貴方は何者?・・私達は貴方ほど強い魔道師を見た事が無いわ」

 

そう言われた兄上様は

 

「私は時空管理局所属し、アサルトフォースという部隊の指揮官をしている」

 

そう役職を名乗る兄上様にクロノが

 

「嘘を言うな!管理局にそんな部隊は存在しない!!」

 

そう怒鳴るクロノに兄上様は

 

「そう今は存在しない・・だがいずれ設立される部隊だ」

 

そう言う兄上様にリンディは

 

「その言い方だと貴方が未来から来た様に聞こえるけど?」

 

そう言われた兄上様は

 

「その通り・・私はこことは違う時間を歩んだ未来から来た・・」

 

そう言うと兄上様は平行世界について語り始めた・・世界とは1つではなく・・無数に枝分かれし・・様々な姿を持つと・・その説明を聞いた主はやてが

 

「それじゃあ・・貴方は平行世界のリインフォースのお兄さんなんですか?」

 

そう尋ねられた兄上様は穏やかに微笑み主はやての頭の上に手を置き

 

「私はリインフォースの兄ではない・・私は君の兄だ・・私の名は八神龍也と言うんだ」

 

そう笑うと主はやては

 

「嘘・・平行世界には私に兄ちゃんが居るんですか?」

 

信じられないと言う風に呟く主はやてに

 

「信じられないかね?・・では証拠を見せよう・・」

 

懐から一枚の写真を取り出す兄上様はそれを手渡す・・それを見た主はやては

 

「私や・・ううん・・私だけや無い・・シグナムもヴィータも居る・・」

 

えっ!?と呟き鉄槌や剣が写真を覗き込み目を見開く・・自分達が写っていれば驚くのは無理も無いだろう・・

 

「それで・・平行世界の魔道師がここに来た、目的は?」

 

そう尋ねるリンディに

 

「私がここに来た目的?・・簡単だよ・・リインフォースを救う為さ・・私の世界では闇の書の闇は完全に消す事が出来ず・・リインフォースが命を引き換えに封じた・・私はその未来を覆す為に来た」

 

そう言う兄上様は足元に魔法陣を展開させながら

 

「私の役目は終った・・明日・・私はここを去る・・もし気が向いたら海鳴にある丘の上に来ると良い・・ではなリインフォース・・お前は今度こそ幸せに生きれるぞ」

 

そう言うと消えていく兄上様に

 

「待って!待ってください!」

 

そう手を伸ばすが・・私の手は兄上様に届かず・・兄上様はここから消えて行った・・その後私達はアースラの一室を与えられ休む事になったが・・私は眠る事が出来なかった・・折角会えたのに・・また会えなくなってしまう・・それがとても悲しくてとても眠る気になれなかったのだ・・

 

「リインフォース・・寝れへんの?」

 

尋ねて来る主はやてに頷くと、主はやては

 

「なぁ・・リインフォースは龍也さんと一緒に行きたいんじゃないの?」

 

そう言われた私は慌ててしまい

 

「そ、そ、そんな事は無いです」

 

そう言うと主はやてはクスリと微笑み

 

「その反応を見れば判るで・・良いよあの人と一緒に行っても」

 

そう笑う主はやてに何かを言おうとすると主はやては

 

「何も言わんで良いよ・・リインフォースが居なくなってまうのは寂しいわ・・でもな家族が幸せになるなら私はそっちの方が良い・・だから私のことは気にしんで・・あの人と一緒に行きよ」

 

そう笑う主はやてに

 

「あ・・ありがとうございます・・せめて・・これを持っていて下さい」

 

自分のデータのバックアップを主はやてに手渡し、深く頭を下げながら

 

「本当に申し訳ありません・・私の我侭で貴方の傍を離れる私を許してください」

 

そう言うと主はやては

 

「良いんよ、私は気にしんで・・その代わり約束や・・絶対に幸せになるんやで」

 

そういって戻って行く主はやての姿が見えなくなるまで私は頭を下げ続けた・・そして次の日

 

「おや?・・見送りに来てくれたのか?」

 

丘の上で寝ている2人の融合騎を背負った兄上様に主はやてが

 

「はい、貴方は嘘言ってるように見えなかったし・・それにリインフォースを助けてくれましたから」

 

そう笑う主はやての背後には鉄槌と湖・・それに将と高町とテスタロッサの姿が見える・・彼女達も兄上様の話を信じたのだ・・兄上様は穏やかに微笑みながら

 

「そうか・・ありがとう・・ではな・・私は元の世界に戻るよ・・」

 

そういって背後の黒い歪みに向かって行く兄上様に

 

「待ってください・・私も・・私も連れてってください!!!」

 

駆け寄りながら言うと兄上様は

 

「どうしてだ?リインフォース・・お前はここで幸せに暮らして良いんだぞ?」

 

そう言う兄上様に

 

「私は!・・貴方の傍に居たいんです!!お願いです!!私も・・一緒に・・連れてって下さい!!」

 

兄上様が困った表情をしていると主はやてが

 

「龍也さん・・お願いします・・リインフォースを連れてってあげて下さい」

 

そう言われた兄上様は

 

「君はそれで良いのか?」

 

そう尋ねられた主はやてはゆっくりと頷き

 

「はい、リインフォースは貴方と一緒に居たいって言ってます・・だから・・私はリインフォースの意思を尊重します」

 

そう言われた兄上様は・・少し考えた素振りを見せたが

 

「判った・・ではリインフォースは連れて行く」

 

そう言って私を招き寄せる・・私は兄上様の隣に立ちながら

 

「主はやて・・すいません・・私の我侭で」

 

もう1度謝ると主はやては笑いながら

 

「良いんよ、リインフォース・・龍也さんと仲良くな?・・それとそっちの世界の私にも宜しく」

 

そう微笑む主はやてに深く頭を下げながら、私は兄上様の世界へと渡った・・

 

「リインフォース・・行くぞ」

 

世界を移動して直ぐ移動するという兄上様に

 

「何処へ行くのですか?」

 

首を傾げながら尋ねると

 

「はやて達が待ってる・・早く戻らないと・・」

 

そう言う兄上様と一緒に私は街の中を歩いた・・兄上様が喫茶店の前で立ち止まる

 

「ここにはやて達が居る・・今呼んでくるから待っててくれ」

 

喫茶店の前で兄上様がまた出てくるのを待つ・・話によれば主はやて達はもう大人になっているそうだ・・私は再会を楽しみにしながら兄上様が出て来るのを待った・・

 

 

 

「うーまだ眠いよ~」

 

目を擦りながら言うはやてとヴィータ・・それにシグナムになのはとフェイトを連れて、翠屋の玄関の前に行く・・

 

「良いか・・はやて・・この先にどうしてもお前に会いたいと言う人が待っている・・」

 

そう言うとはやては

 

「私にどうしても会いたい人?・・誰やろ?」

 

首を傾げるはやて達を連れて私は翠屋の外に出た・・

 

「おひさしぶりです・・主はやて・・」

 

リィンフォースが頭を下げながら言うと・・眠たそうにしていたはやては目を見開き

 

「う・・そ・・リインフォース・・?・・ど・・どうして・・」

 

驚くはやて達に

 

「正真正銘・・本物のリインフォースだ・・平行世界にいた・・私達の世界のリインフォースを連れて来たんだ」

 

そう言うとはやてはゆっくりとリインフォースに近付き

 

「本当なん・・本当に私の知ってる・・リインフォース?」

 

リインフォースは涙を流しながら

 

「はい・・主はやて・・もう1度貴女に会いたいと思っていた・・私の願い・・は今叶いました・・」

 

そう言うリィンフォースにはやては抱きつき

 

「良かった!良かったよぉ・・リインフォース・・お帰り」

 

涙を流すはやてにリインフォースはその背を擦りながら

 

「はい・・私は・・今貴女の元へ帰りました・・」

 

その光景を見ていたなのはとフェイトは同じく涙を流しながら、私に

 

「良かったですね・・龍也さん・・」

 

泣き笑いのなのはに

 

「ああ・・もう1度リインフォースに会えて嬉しいよ・・」

 

私がそう笑うと穏やかな風が私達を包み込んだ・・それは祝福の風が帰ってきたと言う証だった・・

 

時の振り子が巻き起こした小さな奇跡・・消えてしまった筈の祝福の風が再び吹き始めた・・それは何を意味するのか・・それはまだ判りません・・ですがきっと・・これから良い事が起きる証なのでしょう・・彼女が加わる事でこの世界がどうなるか・・楽しみにしていて下さい・・それでは失礼致します

 

 

遡る時の振り子・・後編 終り



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姫と黒き守護者 

姫と黒き守護者

 

「ハーティーン!!明日何処か遊びに行こうよ!」

 

部屋にラグナが入って来ながら言う、俺は

 

「遊びに?・・別に構わない・・」

 

確か明日は用事が無いので構わないと言うとラグナは

 

「約束だからね!それじゃあお休み!ハーティーン!!」

 

笑顔で部屋に戻って行くラグナを見ながら、俺はベッドに横になり眠りに落ちた・・そのやり取りを見ていた

 

「・・くそっ・・ラグナが・・俺の所から離れてくぜ・・」

 

シスコンが唇を噛み締めていた・・その頃ラグナは・・

 

 

 

「えっと・・服どうしよう・・?」

 

私は明日着ていく服を選んでいた・・ハーティーンはあんまり露出の多い服は好きじゃない、理由を聞いてみた所真顔で

 

「俺以外の男がお前の肌を見るのが気に食わない」

 

と言われた・・ハーティーンは八神さんと違い鈍感ではない・・だがその・・普通なら恥かしくて言えない事を真顔で言う・・ストレートに感情を言ってくれるのは嬉しいが・・その恥かしくなってしまう・・私は選んだ服をハンガーに掛け、眠りに落ちた

 

ジリリリリッ!!

 

目覚ましの音で目を覚まし、ベッドを出てパジャマから私服に着替えてから部屋を後にしキッチンに立つ

 

「えっと・・朝は何にしようかな?」

 

冷蔵庫を見ながら献立を考える・・ハーティーンは嫌い物は無い・・だが肉系を好む傾向がある・・やはりそこは男性だからだろう・・そんな事を考えながら冷蔵庫から、ベーコンと卵を取り出し、ベーコンエッグを作りながらトーストを焼いておく・・そろそろ出来るという段階で

 

「おはよう、ラグナ」

 

何時もの黒いライダースーツでハーティーンがキッチンの椅子に腰掛ける、最初こそは通い妻の様になっていたが・・今は完全に同棲状態だ、はやてさんやなのはさんが羨ましいと良く私に言ってくる、八神さんはもの凄く鈍感だ・・様々なアプローチを掛けてもまるで意味がないと嘆いていたのを思い出し、笑みを零しながら作ったベーコンエッグをお皿に移し2人で朝食をとった・・その後

 

「それじゃあ・・行こうかハーティーン」

 

笑いながら出掛けようかと言うと

 

「ああ、行くとしよう・・邪魔者は排除したしな・・」

 

ハーティーンの視線の先には

 

「むーっ!むーっ!!」

 

バインドで全身を縛られご丁寧に口にガムテープを張られたお兄ちゃんが居た・・恐らく尾行しようとしていた所を見つかったのだろうと私は思った・・私は呆れながらも良い気味だと思い、ハーティーンの手を取り出掛けて行った・・

 

「どこに行くんだ?」

 

そう尋ねて来るハーティーンに

 

「うんと・・まずは買い物かな?・・ハーティーン何時もその服だから偶には別の服を着てみようよ」

 

そう言うとハーティーンは

 

「服か・・あまり興味が無いのだがな・・」

 

余り面白く無さそうなハーティーンの手を引き、デパートの中へ入って行った

 

 

 

 

「えっとこれなんかどう?」

 

ラグナに手渡された服を見て

 

「俺が守護者の様な格好をするのか?」

 

手渡されたのは黒のスーツだった・・色こそ違えどそれは管理局の制服に良く似ていた・・俺が面白くないと言っていると思ったのか

 

「ん~やっぱこういうのは趣味じゃないんだね・・やっぱり野性的なのが良いのかな?」

 

首を傾げながら服を選ぶ、ラグナの後ろで待っていると・・ラグナは良いのを見つけたのか、嬉々とした表情で

 

「これだよ!これならハーティーンも気に入るよ!」

 

そう言われて差し出されたのは、白い服だった・・かといってスーツ類の類ではなく、俺が今着ているライダースーツに良く似た雰囲気だった・・

 

「悪くない・・ちょっと着替えてくる」

 

それを受け取り試着室に入り着替え、姿見を覗き込む

 

「似合ってるかどうかは判らんが・・悪くは無いな」

 

中は黒の長袖にその上から白のジャケット・・このジャケットには肩の所から飾りだろうか・・茶色いベルトが縫い付けられており、ズボンにも同じ様な茶色のワンポイントが入っていた・・今まで黒ばかり着ていたが・・白というのも案外良い・・そう思いながら元のライダースーツに着替え、ラグナと合流した

 

「どうだった?気に入った?」

 

心配そうに尋ねて来るラグナに

 

「ああ、気に入った・・礼を言う」

 

そう言うとラグナは嬉しそうに微笑み、俺のを手を握り

 

「それじゃあ・・次は・・あそこに行こうよ」

 

耳元で呟くラグナに

 

「それは構わんが・・その前に食事にしよう・・時間も時間だしな」

 

のんびりと歩きながら来た為、デパートに到着したのは昼少し前、今は丁度昼時だ・・そう思い食事にしようと言うと

 

「そうだね、じゃあご飯を食べてからにしよう」

 

そう微笑むラグナと共にレストランのある階に移動しようとした時

 

(あれは・・)

 

一軒の目に止まる店があった・・これは良いと思った・・後で1人で来ようと俺はそう思った・・

 

 

 

 

「美味しかったね~」

 

私は笑いながらハーティーンに言った、私達が入った店は地球食の専門店だった・・値段も手ごろで味も良かったので大満足だった

 

「そうだな・・だが守護者の方が美味いな」

 

そう呟くハーティーンに、私はそれを言ったらここの料理人が可哀想だと思った・・そもそも地球生まれの人とミッドで生まれた人を比べるのは間違っていると私は思った・・2人でレストランのある階を出た所で

 

「ラグナ・・すまないが・・俺は買う物が有る・・少しここで待っていてくれ」

 

そう言うとハーティーンは1人で別の階に向かってしまった・・最初は着いて行こうと思ったが・・一緒に来いと言われなかった以上着いて行くのは失礼だと思い、素直にここで待っていると

 

「ねぇ、彼女なにやってるの?」

 

はぁ・・と私は心中で溜め息を吐いた・・こうして待っていると必ずと言っていいほどナンパ男が来る・・私はそれが嫌だった

 

「ねぇ・・無視しないでよ~もし暇なら俺とお茶しない?」

 

暫く無視していると大概の男はいなくなるのだが・・この男はしつこかった・・何度も何度もお茶しよう?とうるさく言ってくる・・それでも私が返事をしないでいると

 

「だから~無視しないでって、言ってんじゃんよ~」

 

男の手が私の肩に伸びた・・それが嫌で離れようとした時

 

「貴様・・何をしている」

 

その声と共に男の手が横から伸びた腕に掴まれる・・声で判る・・彼はそうとう不機嫌だと・・何故なら掴んでいる手からみしみしと骨が軋む嫌な音がしていたからだ・・ナンパ男は涙目で振り返り・・ヒッ・・と引き攣った悲鳴を上げながら

 

「・・く・・黒の守護者・・」

 

ハーティーンは黒の守護者と呼ばれている・・理由は八神さんと違い敵対者に容赦をしない所から来ている・・ハーティーンは男の腕を握り締めながら

 

「悪いが・・ラグナは俺の女だ・・薄汚い手で触れないで貰おうか?」

 

ギリギリとその腕を締め上げ・・空いた手で私を抱き寄せ

 

「大丈夫か?嫌な事はされなかったか?」

 

そう言うハーティーンは既に男の手を離しており、しつこいナンパ男は脱兎の様に消え去った

 

「うん、大丈夫何もされてないよ」

 

と返事を返すとハーティーンは軽く頷き

 

「行くぞ・・もうここに用は無い」

 

そう言い私を連れてデパートを後にし、新しい目的にへと足を進めた・・

 

「ここは変わってないね・・」

 

私はその場所を見て、微笑みながら言った・・私達の目的地・・それは私達が始めてあった公園だった・・ハーティーンは

 

「ここには結界が張ってある・・俺達以外誰も入れないし・・認識する事も出来ない」

 

そう言うとハーティーンは切り株に腰掛ける、私は寄り添うそうにハーティーンの隣に腰掛ける・・暫く2人で話していたが・・私は1つどうしても気になる事があった・・それはハーティーンが私の事を本当は好きではないのではないか?という事だった・・ハーティーンが私の事を本当はどう思っているのか聞きたかった・・さっき俺の女と言っていたが・・それがどういう意味なのか?・・彼女としてなのか・・それとも自分の剣を捧げる者と言う意味なのか・・私は勇気を出して聞こうとした時

 

「そうだ・・これを渡さなければ」

 

ハーティーンが懐から何かを取り出し手渡してくる

 

「えっと・・これは?」

 

首を傾げながら尋ねると

 

「開ければ判る・・」

 

そう言うと黙り込んでしまったハーティーンを見ながらその包みを開け・・私は目を見開いた・・それは

 

「指輪・・」

 

美しい銀細工の施された、宝石付きの指輪だった・・私が驚いているとハーティーンは

 

「それを左手の薬指に嵌めてくれ・・」

 

そう呟くハーティーンの顔は真っ赤だった・・幾ら私でもこの意味くらい知っている

 

「えっ・・結婚してくれって意味?」

 

そう言うとハーティーンは完全にそっぽを向き

 

「前から渡そう渡そうと思っていた・・だが夜天が教えてくれた・・行き成り結婚指輪を渡すのは失礼だと・・だから婚約指輪を買ったんだ・・嫌なら良い・・返してくれ・・俺は気にしない」

 

そう言うハーティーンに・・私はなんと馬鹿な事を考えていたのかと思った・・彼は何時だって真っ直ぐだ・・真っ直ぐに自分の気持ちを伝える・・迷う必要も疑う必要も無かったのだ

 

「ありがとう・・大切にするよ・・」

 

指輪を嵌めながら言うとハーティーンは軽く頷き、またそっぽを向いてしまった・・その様子が可愛く見えてその腕を抱え込み、下から覗き込むように

 

「こういう時はキスしてくれると嬉しいだけど・・?」

 

そう言うとハーティーンは

 

「駄目だ・・」

 

そう言い私の腕を外し隣に座らせる・・私は

 

「どうして?キス位してくれたって」

 

私が頬を膨らませながら言うと

 

「俺には位ではない・・俺はお前が大切だから・・そう簡単にはそういうことはしない」

 

そう言ってハーティーンは空を見上げる・・私も空を見上げる・・この日の空は青く澄んでいて・・とても綺麗だった・・

 

その日の夜・・食堂には女性陣が集まっていた・・

 

「ラグナ・・嬉しそうやね・・どうしたん?」

 

はやてさんに言われて私は左手の薬指に光る婚約指輪を見せて

 

「ハーティーンに貰ったんです・・」

 

頬を赤らめて言うとなのはさんが

 

「良いなぁ・・ラグナちゃんは恋が叶って・・私はまだまだ成就しそうにないよ・・ライバルも多いし」

 

本当に羨ましそうに言うなのはさんにはやてさんが

 

「なのはちゃんの恋は絶対に叶わんわ・・この私が絶対に認めんわっ!」

 

そう怒鳴ると

 

「別にはやてちゃんに認められる必要ないもん!!用は龍也さん気持ち次第だもん!」

 

ううーと睨み合うはやてとなのはに挟まれながら、渡された指輪を見て微笑むラグナ・・その頃、食堂の外では

 

「ハーティーン・・てめぇぇっ!!」

 

怒りに震えるヴァイスに

 

「いい加減に妹離れするんだな・・このシスコン」

 

ヴァイスを挑発するハーティーンの姿があったそうです

 

姫と黒き守護者 終り



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姫と黒き守護者 遊園地デート編

姫と黒き守護者 遊園地デート編

 

俺は仕事を終え普段着に着替えようとした時、胸のポケットから2枚の紙が落ちる・・

 

「ん?何だこれは・・これは守護者から貰った・・」

 

それは守護者から貰った遊園地のチケットだった・・(番外編 ヴィヴィオの授業参観参照)

 

「ラグナを誘ってみるか・・」

 

折角だからラグナを誘い行ってみようかと思い、ラグナの部屋に向かった・・

 

コンコン

 

ラグナの部屋の扉をノックする・・ラグナの部屋と言っても3人部屋用の大きな部屋の向かい側なのだが・・ノックしてから暫くすると

 

「何?ハーティーン?」

 

濡れた髪を拭きながら、身体にはバスタオルを巻いただけの目のやり場に困る格好のラグナに俺は

 

「ラグナっ!!そんな格好で出てくるなっ!!」

 

顔を真っ赤にしながら怒鳴るとラグナは

 

「そんな格好・・?・・あっ!・・んふふ~意識しちゃう?」

 

悪戯っぽく微笑むラグナに

 

「良いから着替えてから出て来いっ!!」

 

そう怒鳴り俺はラグナの部屋の扉を閉めた・・それから5分後・・

 

「ん・・着替え終わったよ・・何の用?」

 

パジャマに着替えたラグナが顔を出す、俺はまず・・

 

「良いか?・・ラグナ・・俺は男だ・・もう少しその辺を考えてくれ」

 

そう言うとラグナは左手の指輪を見せながら

 

「私達婚約してるんだよ?・・意識するも何も無いでしょ?」

 

にこやかに笑うラグナに何を言っても無駄と判断し

 

「はぁ・・お前が良いなら・・俺は何も言わないが・・用件はこれだ・・」

 

渡されたチケットをラグナに見せると

 

「あ・・デートの誘い?嬉しいな~ハーティーンから誘ってくれるなんて初めてじゃない?」

 

そう笑うラグナに

 

「そうかもな・・それで・・お前さえ良ければ・・明日出掛けよう」

 

そう言うとラグナは微笑みながら

 

「良いに決まってるよ・・それじゃあね、ハーティーン・・明日楽しみにしてるよ」

 

ウィンクしながら部屋に戻っていくラグナを見ながら俺も部屋に戻った・・

 

次の日・・

 

「それじゃあ・・行こう」

 

白いワンピースに身を包むラグナに

 

「後ろに乗れ・・それと確り掴まれよ」

 

グレイダルファーをビークルモードで起動させそれに跨りながら言うと

 

「言われなくてもそうするよ」

 

ギュッと抱きついてくるラグナを後ろに乗せて、俺は遊園地に向け走り出した・・その姿を見ていたヴィータは

 

「ラグナはまたハーティーンとデートか・・良いな・・ラグナは好きな人に振り向いて貰えて・・私は・・全然だ・・」

 

そう呟くヴィータの後ろに龍也が現れ

 

「ヴィータ、丁度良い所に・・今からヴィヴィオと買い物に行くのだが・・お前も来るか?」

 

そう尋ねられたヴィータは満面の笑みで龍也に駆け寄り

 

「行くっ!絶対行くっ!!」

 

ヴィータにも良い事があった様です・・

 

 

 

 

「着いたぞ」

 

バイクが停まる、私はゆっくりと降り遊園地のゲートを見上げた・・この遊園地はミッドでもかなり有名な所で雑誌にも良くデートスポットとして紹介されている・・まぁ・・ハーティーンは知らないだろうけど・・そんな事を考えているとグレイダルファーを待機状態に戻したハーティーンが

 

「行くぞ・・」

 

そういって歩き出すハーティーンの後を追って、私も遊園地のゲートを潜った・・

 

「どこに行く?」

 

そう尋ねて来るハーティーンの腕を取り抱き抱える

 

「どうした?」

 

どうして腕を抱えられたのか判らないハーティーンに

 

「デートなんだから・・せめて恋人に見えるようしてよ」

 

私とハーティーンの身長差はかなりの物だ・・普通に歩いていてはとても恋人同士には見えない・・だからこういう事でアピールするしかないのだ・・私がしっかりと腕を抱えるとハーティーンは

 

「それで落ち着くなら・・俺は構わんが・・それじゃあ行こうか・・」

 

私とハーティーンはゆっくりと遊園地のアトラクションを見ながら歩き出した・・色々あるアトラクションで私の目に止まったのは

 

「あ・・あれ面白そう・・」

 

それは室内ライド系のシューティングだった、私がやろうと言うとハーティーンに言うと

 

「判った・・行こう」

 

2人でそのアトラクションに向かった・・

 

「あー面白かったね~」

 

私が言うとハーティーンは右手を見ながら

 

「俺にはやはり射撃は向かん・・」

 

面白く無さそうに言うハーティーン・・何故なら彼の撃った弾は殆ど当たらず・・全然スコアが取れなかったのだ・・ちなみに今回のスコアの殆どは私が取った物だ・・面白く無さそうなハーティーンに

 

「ほら、誰でも苦手な物あるじゃない・・そんなに気にしないで・・次はあっちに行こうよ!」

 

私はハーティーンの手を取り、次のアトラクションに向かった・・

 

「ははっ・・これは良い!!気に入ったぞ!!」

 

ハーティーンはジェットコースターが気に入った様で、私の手を掴み

 

「また乗るとしよう!!」

 

「ちょ・・ちょっと待ってぇぇっ!!」

 

私の訴えは決して聞かれる事無く・・結局7回もジェットコースターに乗る羽目になってしまった・・

 

「あうう・・気持ち悪い・・」

 

口を押さえながら言うとハーティーンは

 

「す・・すまない・・あの感じが空を飛んでるようで心地良かったんだ・・」

 

謝ってくるハーティーンに

 

「空を飛ぶのは気持ち良いの?・・」

 

そう尋ねるとハーティーンはキョトンとした顔になったあと

 

「ああ・・気持ち良いぞ・・顔に当たる風・・下の方に見える人や建物・・それを見るのはとても楽しいぞ」

 

そう言うハーティーンの手を借りながら立ち上がり・・

 

「今度私を抱き抱えて空を飛んで・・そうすれば許して上げる」

 

上目遣いで言うとハーティーンは

 

「一緒に空を飛べば良いのか?・・それなら約束する・・絶対に一緒に空を飛ぼう」

 

そう言うハーティーンに

 

「それなら許して上げる・・それじゃあ・・次行こう」

 

そう言うと私達はまた歩き出した・・私が何のアトラクションをやろうか歩き回っていると・・私は1つのアトラクションの前で立ち止まった・・私が立ち止まった事に気付いたハーティーンはそのアトラクションの看板を見て

 

「体験型都市伝説・・?生きて返すつもりはありません・・?・・これが良いのか?」

 

首を傾げながら尋ねて来るハーティーンの顔を見ながら・・

 

(怖いのは嫌いだけど・・こういうのってデートの定番だよね・・それに抱きついても自然だし・・良しっ!!)

 

私は決意を固め・・お化け屋敷に入ったが・・次の瞬間後悔した・・

 

「うっ・・」

 

目の前に広がる・・光景に私は思わず息を呑んだ・・私の目の前に広がる光景は閉塞感で一杯の薄暗い廊下に・・それは廃病院という雰囲気だった・・それに明滅する蛍光灯に照らされた、血の付いた廊下が恐怖心を更に煽る・・私は計画とか関係無しに全力でハーティーンの腕を抱きしめた・・こうでもしないと恐怖心に飲まれてしまいそうだったからだ・・私が怯えながらハーティーンと病院の廊下を歩いていると

 

「がああああっ!!!」

 

ゾンビが飛び出してくる、私はそれで一気に我慢できなくなり

 

「きゃああああああっ!!!!!!」

 

凄まじい悲鳴を上げた・・それと同時に

 

「ぎゃああっ!!!」

 

ゾンビがハーティーンに殴り倒された・・私とハーティーンがアトラクションの外に出ると

 

「お客さん・・困りますよ・・ゾンビを殴り倒しちゃ・・」

 

係員の人がそう文句を言いかけたが

 

「ギロリッ・・」

 

ハーティーンに睨まれ、係員の人は冷や汗を流しながら

 

「今回は許しますから・・次は止めて下さいよ」

 

そう言って係員は消えた・・私が掴んでいたハーティーンの服を見ると・・それはよれよれになってしまっていた・・私が謝ろうとすると、ハーティーンの大きな手が私の頭の上に置かれ、わしゃわしゃと撫でられる・・私が驚いていると

 

「怖かったんだな・・良し良し・・大丈夫だ・・俺が傍にいるからな・・怖い物など何も無いさ」

 

そう微笑むハーティーンに

 

「うん・・大丈夫・・もう怖くないから・・」

 

私はそう呟き時計を見た・・もう1時を過ぎている

 

「そうだ、そろそろお昼にしようよ」

 

私がそう言うと、ハーティーンは

 

「そうだな・・では行くとするか」

 

頷くハーティーンと一緒にレストランへ向かった・・

 

「おれは海老ドリアにするが・・ラグナはどうする?」

 

首を傾げながら尋ねて来るハーティーンに

 

「私は・・ピラフにするよ」

 

2人で昼食を食べる・・食べ終えてから2人でまたアトラクションで遊び・・大分日が傾いてきた所で

 

「最後にあれに乗ろうよ!」

 

私はハーティーンの手を引き観覧車に向かった・・

 

「綺麗だね~」

 

私がのんびりと言うとハーティーンは

 

「確かに・・だがお前の方が綺麗だ」

 

真顔でそんな事を言うハーティーン・・恥かしくなって窓の外を見る・・本当に不意打ちだ・・何の前振りも無く突然そんな事を言う・・本当に卑怯だ・・私がそんな事を考えていると・・ハーティーンは窓の外を見ながら

 

「俺は幸せだ・・お前といると本当にそう思う・・だから・・1回だけ言わせて貰う・・1回しか言わないからちゃんと聞いて置けよ」

 

そう言って1回言葉を切ったハーティーンは私の顔を見て

 

「良いか、絶対に俺の傍にいろ・・お前の居場所は俺の隣で、俺の居場所はお前の隣だ・・それを絶対に忘れるな」

 

その告白めいた言葉に私は返事を返す事が出来なかった・・でも私は確りと頷いた・・するとハーティーンは満足気に頷き私を抱き寄せた・・ハーティーンの体温が心地良くて・・ずっとこのままで居たいと思った・・でもそれは叶わない願いで・・観覧車は一周し・・降りる時が来る・・私とハーティーンはゆっくりと観覧車を降り、そのまま遊園地を後にしようとした・・だがハーティーンはバイクを出さず何処かに連絡を取っていた・・遠くから聞こえてくるハーティーンの声が途切れ途切れに聞こえてくる

 

「・・何?・・出せない・・黙れ・・俺のやる事に・・文句を言うのか・・責任を取れない・・?構わん・・良いな・・俺がやる事に文句を言うな」

 

そう言うとハーティーンはゆっくりと歩いて来て、私を抱き抱える

 

「ちょっ・・急にどうしたの?」

 

私が慌てながら訪ねると、ハーティーンは

 

「セットアップ・・」

 

騎士甲冑を展開し空を舞う・・私は慌てながら

 

「ちょっと飛行には許可が要るんじゃ?」

 

そう尋ねるとハーティーンはにやりと笑い

 

「そんな事は知らん・・俺がやると決めた事に文句は言わせん」

 

そう笑うハーティーンと夜景を楽しみながら六課へと帰った・・私はベッドに横になりながら

 

「今日は楽しかったな・・ハーティーンの気持ちも判ったし・・」

 

指輪を見ながら呟き、私は布団に入りながら

 

「おやすみ・・ハーティーン・・・」

 

ハーティーンと一緒に撮った写真をそう呟き、私は眠りに落ちた・・その頃ハーティーンは

 

「守護者・・俺はただラグナを喜ばせたかった・・それだけなんだ・・それなのにこれは酷くないか?」

 

大量の書類を見ながら、冷や汗を流すハーティーンに龍也は

 

「規則は規則だ・・頑張ってやれ・・」

 

そう言うと龍也は自分の部屋に引き返していく・・龍也の部屋では

 

「パパ!!おかえりっ!!」

 

「・・あ・・兄貴・・お帰り・・」

 

ヴィヴィオと遊んでいるヴィータが居て、龍也は

 

「すまないな・・ヴィータ・・ヴィヴィオの面倒を見させてしまって、・・ヴィータはもう部屋に帰らないといけないんだ・・」

 

龍也に言われたヴィヴィオは両手でヴィータの服を掴み

 

「いやっ!!ヴィヴィオ、ヴィータねねと寝るのっ!!」

 

嫌々と首を振るヴィヴィオに龍也は苦笑しながら

 

「・・ヴィータ・・すまないが・・ヴィヴィオと一緒に寝てくれるか?」

 

そう言うとヴィータは

 

「えっ・・そういう事は兄貴も一緒か?」

 

赤面しながら言うヴィータに龍也は

 

「まぁ・・そうなるが・・嫌か?」

 

龍也がそう尋ねるとヴィータは

 

「い・・嫌じゃねぇよ!!・・その・・うん・・嬉しいかな?」

 

そう言うヴィータは赤面しながら、布団に横になり・・眠りについた・・その顔はとても幸せそうだった事をここに記す

 

姫と黒き守護者 遊園地デート編 終り



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ラグナ争奪戦

ラグナ争奪戦

 

ギリギリ

 

「ちくしょう・・ハーティーンのやろう・・ラグナとベタベタしやがって・・」

 

俺は唇を噛み締めながらハーティーンを睨んでいた・・ハーティーンは基本的にラグナの傍におり、ラグナに近付く不届き者を牽制している・・悔しい事に俺もこの中に含まれている・・またラグナもハーティーンの傍におり、非常に仲睦まじく良いカップルだと俺は思うが・・頭で理解出来ても心で理解出来ないのだ・・

 

「昔は・・昔は良かった・・」

 

お兄ちゃん、お兄ちゃんとラグナが言ってくれた昔が懐かしい・・そんな事を考えていると

「それじゃあね、ハーティーンお休み」

 

ラグナが微笑みながらハーティーンに言って部屋に戻っていく・・部屋と言ってもハーティーンとラグナは同じ部屋・・3人用の大部屋だ・・もう同棲に近い状態だ・・それが俺の不安を掻き立てる・・もしハーティーンがラグナを襲ったら・そう考えると夜も寝れなくなる・・俺は意を決して

 

「ハーティーンッ!!」

 

食堂で酒を飲んでいたハーティーンを怒鳴りつけると

 

「何だ、ヴァイス・・お前も飲むか?」

 

俺に酒を勧めてくるハーティーンに

 

「違う!!俺は・・お前に決闘を申し込む!!」

 

俺がそう言うとハーティーンは

 

「決闘?・・良いぞ・・死にたいのなら何時でも墓場に送ってやるぞ?」

 

獰猛な笑みで笑うハーティーンの気配に呑まれ掛けていると、近くに居たなのはさんが

 

「ヴァイス君、無茶だよ!!殺されるよ」

 

そう俺とハーティーンの戦力差は歴然・・普通に戦えば俺の負けは決まっている・・だが俺が勝負するのは戦いでなく

 

「勝負のテーマは馬鹿の科学者に決めて貰う!良いな明日だぞ!!明日演習場に来いよ」

 

俺は捲くし立てるように言うと

 

「どんな勝負でも俺は負けない・・良いだろう・・明日だな・・楽しみにしているぞ」

 

そう笑うハーティーンに背を向け、俺は食堂を後にした・・

 

 

 

「何だ・・これは・・」

 

俺は演習場を見て眼を見開いた・・演習場が何かの祭りの場の様になっている・・一般局員達が観客席で盛り上がっているし・・審査員席には夜天やエースの姿が見える・・俺が困惑していると

 

「ハーティーン!!こっちだ来いッ!」

 

その声の先には腕を組んだヴァイスが居た、俺はヴァイスの待つ場所に向かった・・

 

「さぁ・・俺とお前の真剣勝負だ・・絶対俺が勝つから覚悟しろよ」

 

そういい笑うヴァイスを見ていると、ジェイルが来て

 

「さー今回はハーティーン対ヴァイスのラグナ争奪戦だぁ!!勝負は簡単、このルーレットに書かれたゲームで勝負して貰う!!」

 

そう言うとジェイルの後ろにルーレットが現れる、ジェイルはそれを見ながら

 

「勝者にはラグナ嬢との豪華ディナーだ!!作るのは・・当然この人だーッ!!」

 

モニターに守護者の姿が映る・・守護者は頭を抱えながら

 

「料理をするのは良いのだが・・何なんだ・・これは?」

 

今一状況を掴めていない守護者にヴァイスが

 

「旦那!!俺とこいつが今から勝負するんッすよ!!、旦那にはその賞品としての食事を作って欲しいっす!!」

 

ヴァイスが事情を説明すると守護者は

 

「まぁ・・別に良いが・・それじゃあ調理を始めさせてもらう・・」

 

そう言うと守護者が調理を始める、ここでモニターの映像が切れる、ジェイルがマイクを片手に

 

「制限時間は龍也が料理を仕上げるまで、つまり龍也が料理を仕上げるまでに相手よりより多くゲームに勝利した方の勝ちだー!!それじゃあ・・早速第一のゲームと行こう・・ルーレット・・スタートッ!!」

 

ジェイルが手を挙げると、ルーレットが音を立てて回る・・そして第一のゲームが決まった・・

 

「第一のゲームは・・龍也に関する5問のクイズだーッ!!」

 

何なんだ・・この突っ込み所満載のゲームは・・俺が呆れている中ジェイルが問題を読み上げる

 

「第一問 龍也の事が好きな女性の数を挙げて下さい」

 

・・・簡単だろう・・俺とヴァイスは同時にマジックで手元のホワイトボードに答えを書く

 

「13人・・正解!!では第二問・・龍也の謎特技の中に服脱がしがある?・・マルかバツか?」

 

守護者が他人の服を脱がす所・・想像できん・・バツだな・・ホワイトボードを出すとヴァイスはマルと書いていた・・

 

「おーとッ!!答えが割れた・・正解は・・マルーッ!!龍也の特技の中には服脱がしがあります!!」

 

!!馬鹿な・・守護者がそんなセクハラをするとは・・俺が困惑しているとジェイルの解説で

 

「ちなみにこの特技は主にヴィヴィオやアギト達が対象の様です、用は汚れた服を着替えさせる為の特技です」

 

しまった・・あいつの回りの子供の事を把握してなかった・・俺が自分の失態を後悔している中、次の問題が読み上げられる

 

「第三問です!!龍也が苦手な人物を2人挙げて下さい!」

 

これは楽勝だな・・カリムとクイント・・2人の名前を書く・・横目でヴァイスの答えを見ると・・リンディとカリムと書かれていた

 

「今回も答えが割れた・・正解はカリムとクイントさん!!、リンディさんも龍也の苦手な人物ですが・・クイントさんの方が上です!!」

 

これでイーブン・・次の問題は・・守護者の義手の職人・・ジェイル・・で2人とも正解・・最後の問題は・・守護者の義手の方の手は?・・左腕・・これも両方正解・・

 

「最初のゲームは引き分け、では次のゲームは・・」

 

再びルーレットが回り止まったのは・・

 

「次のゲームは走り高跳びだぁッ!!」

 

・・・何故?走り高跳びがあるんだ?俺が理解に苦しんでいる間にセットが変形し、走り高跳びが出来るようになる

 

「1本勝負・・それではヴァイスからだ」

 

その声に従ってヴァイスが

 

「おおおりゃああああッ!!」

 

ダンッズシャアアアアッ!!

 

「・・記録は・・5M45!中々の高記録です、それでは次はハーティーンだ、どうぞ」

 

俺は呆れながら走り出し、軽く踏み切りをして跳躍した

 

タンッ・・ズシャア・・

 

軽い音を立てて着地し記録が発表される・・

 

「記録は・・6M15!・・この勝負はハーティーンの勝ちだー・・やはり身体能力的ではヴァイスには勝ち目が無いのかー」

 

妙に盛り上がっているジェイルに呆れていると再びルーレットが回る・・あまりに馬鹿らしい勝負が多いのでハイライトで行こう・・

 

ゲームその3 シルエットクイズ 協力者・・スバル、ティアナ、セッテ、ウェンディ、キャロ、ルーテシア、リィン、アギト

 

内容は極めて簡単、普段と違う格好のスバル達を当てると言う極めて簡単なゲームの筈だったのだが・・

 

「・・アギト」

 

7問目・・俺がキャロとアギトを間違え、ヴァイスの勝ち・・これでイーブンに戻った

 

ゲーム4 ストラックアウト・・

 

9枚の的にボールをぶつけ、その的を弾き飛ばすと言う物だ・・これは言うまでも無く俺の勝ちだ

 

「こんな感じか?」

 

ヒュッ!スパンッ!!

 

軽い音を立てて2枚抜きを繰り返し、この勝負は俺の勝ちだった・・これで2-1・・このまま行けると思ったのだが・・

 

ゲーム5 折り紙

 

・・何で折り紙が?と暫く考え込み・・結果が出た、どうやらあのルーレットには俺の得意な物、苦手な物がバランス良く入っており・・今回は苦手な物が出てしまったようだ・・俺はイライラしながらテーマの鶴を折り、審査員席に持っていたが・・結果は言うまでも無く・・

 

「これが鶴?・・ハーティーンこれ鶴に見えないよ」

 

「ぷっ・・無敵の・・ああ無敵は龍也だね・・最凶の騎士にも苦手な物があるんだね」

 

「あっははっ!!不器用すぎるで~ハーティーン」

 

3者3様に良い様に笑われ、俺はとても傷ついた・・仕方ないではないか・・こういうのは本当に駄目なんだ・・俺は諦めの境地に達し・・笑われると言う苦行に耐えていた・・2-2 

 

ゲーム6 腕相撲

 

ブン、ボキャッ!!

 

「うぎゃああああッ!!腕!!腕がぁぁッ!!!」

 

これで判って貰えただろうか?俺が力加減を間違え、ヴァイスの腕を粉砕・・そして

 

「はいはい、今治しますよ~」

 

「どうして・・私が・・王の命令だからって・・こんな事をしなければ・・」

 

湖と氷によって治療され、骨折が治ったが・・これが次のゲームでの悲劇の引き金となっていた事を俺は知らなかった・・3-2・・これは内容が濃いのでそのまま教えよう

 

「次のゲームは・・ポイズンルーレット」

 

ルーレットも回さずゲームを発表するジェイルに

 

「待て、今回はルーレットを回さないのか?」

 

そう尋ねると湖と氷が

 

「ハーティーンがヴァイスさんの腕を折ったり、意識不明に追い込んだ場合・・特別ゲームになるんです」

 

にこにこと言う湖に

 

「・・私とシャマルが・・アタリの料理を作りました、私の場合業とですけど・・シャマルは素でアタリを作りました・・この場合のアタリの意味が判りますか?」

 

そう尋ねられた俺とヴァイスは同時に

 

「「死亡ゲームかぁっ!?」」

 

そう悲鳴を上げた、湖がオリジナルで料理を作ればそれだけで兵器・・そして氷が不機嫌な状態で料理を作れば・・それはもう核に匹敵する脅威だ・・俺とヴァイスが震えている中、俺とヴァイスの前に5品ずつ料理が置かれる・・見た目は全部普通だが・・この5つの内1つには猛毒が入っている・・いや・・猛毒なんて甘いか・・

 

「それでは2人同時に1品ずつ取って食べてください・・」

 

俺の前に置かれてるのは 唐揚げ、チャーハン、チンジャオロース、八宝菜、シュウマイでヴァイスの前には、刺身、鳥のつくね、味噌汁、玉子焼き、天ぷらの5品・・!1個安全パイがあるぞ!?刺身なんてどうしようが毒にはならないだろう!?・・俺が驚いている中ヴァイスは刺身を取る、俺は手を震わせながら八宝菜を取った・・

 

「それでは2人同時に食べてください」

 

俺は震える右手を左手で押さえ、八宝菜を1口食べた・・モグ・・モグ・・

 

「美味い・・」

 

普通に美味しい・・どうやらこれはセーフの様だった・・ヴァイスも当然セーフ・・俺とヴァイスが胸を撫で下ろしていると審査員席の夜天が

 

「1品目は2人ともセーフやったみたいやね、おめでとさん・・ちなみにアタリを食べたらこうなるで」

 

モニターに医務室が映し出されそこには

 

「「・・・・・・」」

 

青い顔で横たわる、盾とグリフィスの姿があった・・2人とも良い具合に痙攣し・・死ぬ一歩手前に見える・・俺とヴァイスが戦慄しているとジェイルが

 

「それでは2品目を食べてください」

 

俺は慎重に料理を選び・・今度は唐揚げを・・ヴァイスはつくねを取った・・

 

「「美味い・・」」

 

2人ともセーフ・・しかしなんで一々料理を食べる度にこんなに怯えなくてはいけないんだ・・俺はそんな事を考えながら3品目を取った・・俺はチンジャオロース、ヴァイスは玉子焼き・・これもお互いにセーフ・・これで確率は二分の一になった・・チャーハンかシュウマイかだ・・俺は直感でシュウマイを取った・・ヴァイスは天ぷらだ・・

 

「それでは4品目・・どうぞ」

 

2人同時にそれを口に運んだ瞬間・・

 

「「ぐはああッ!?!?」」

 

何だこれは!?口の中の物が飲み込めない・・それどころか身体中が拒否反応を示す・・それでも何とか飲み込み隣のヴァイスを見ると

 

「げぶあ・・」

 

ゆっくりと泡を吹きながら倒れるヴァイスを見ながら俺も意識を失った・・俺が意識を取り戻したのは30分後の事だった・・

 

「うおー俺は生き残ったぞーッ!!!」

 

ガッツポーズのヴァイスをぼんやりとした目で見ていたが・・ヴァイスが何を言っているのか理解した瞬間、ジェイルに詰め寄る

 

「おい!ヴァイスもアタリを引いただろう!!今回は引き分けじゃないのか!?」

 

そう尋ねるとエースが

 

「2人同時だったから先に立った方が勝ちって言う特別ルールにしたの・・それでさっきヴァイス君が「ラグナを・・渡すかあああああッ!!!」って絶叫しながら立ち上がったの、だからヴァイス君の勝ち」

 

これでまた引き分けに戻ってしまった・・なんとしても次のゲームで勝たなければ・・俺がそんな事を考えていると

 

「それではラストゲームのルーレットを回すぞ」

 

音を立ててルーレットが回り・・最後のゲームが決まった

 

「スポーツチャンバラ!・・おおぅ・・ここでヴァイスは完全に天に見放されたーッ!!やはり妹から離れろという神の声なのかー」

 

にこにこと言うジェイルを見ながらチャンバラの棒を取り

 

「・・これでこのくだらない茶番も終わりだッ!!」

 

俺は一瞬でヴァイスを叩きのめした・・俺が馬鹿2人・・もう1人はジェイルだ・・その2人を戦闘不能にしたところで夜天が

 

「ほい、ハーティーンの勝ち・・大方の人の予想を裏切って善戦したヴァイス君に拍手~、それじゃあハーティーンはそのままラグナと夕食ね・・ラグナの部屋に兄ちゃんが食事の準備しとるで・・」

 

俺は夜天の説明を聞き終わる前に演習場を後にした・・

 

 

 

 

「遅いなぁ・・ハーティーン・・」

 

私はジュースを飲みながらハーティーンが来るのを待っていた・・さっき八神さんが夕食の準備をしながら

 

「もう直ぐ来ると思うから待っててやってくれ」

 

そう言って帰ってから既に20分・・何があったんだろう?ちょっと不安になってきた所で

 

「すまん・・遅れた」

 

ハーティーンが部屋に入ってくる・・心なしか少し疲れているような気がしたが、ハーティーンは笑みを浮かべながら椅子に座り

 

「少し面倒事があったんだ・・それで遅れてしまった・・」

 

理由を説明してくるハーティーンに

 

「あらかた予想が付くよ・・お兄ちゃんでしょ?」

 

私がそう言うとハーティーンは頷き

 

「そうだ・・だが最初に言っておくぞ、俺から喧嘩を仕掛けたんじゃないからな」

 

不貞腐れたようにハーティーンに苦笑しながら

 

「判ってるよ・・それじゃあ・・ご飯にしよう?」

 

八神さんが用意してくれた夕食は豪華なフランス料理だった・・魚介をメインにした・・見た目にもお洒落だった・・私はハーティーンのグラスにワインを注ぎ

 

「これからも宜しくね・・私の騎士様」

 

そう言うとハーティーンは赤面しながらそっぽを向き

 

「こちらこそ・・よろしく頼む・・我が姫・・」

 

恥かしそうに言うハーティーンに笑みを零しながら私は食事をはじめた・・それはとても美味しくて・・それと同時に心が暖かくなった・・それはきっとハーティーンと一緒だからだと私は思った・・

 

1度消えてしまった・・私の大切な大切な人・・今貴方と過ごすこの時が・・私にとっての・・宝物です

 

 

ラグナ争奪戦 終り

 



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姫と黒き守護者 結婚式編

姫と黒き守護者 結婚式編

 

「何か落ち着くね・・自分の部屋は」

 

私達は別の魔法使いの世界から帰って来たばかりだ、それで自分の部屋は落ち着くねとハーティーンに言うと

 

「・・・」

 

無言で私を見るハーティーン・・心なしか不機嫌に見える

 

「どうしたの?楽しくなかったの?」

 

何で不機嫌なのかと尋ねるとハーティーンは

 

「あの世界は・・楽しくなどなかった・・ラグナには俺が居るのに・・寄って来る馬鹿どもが居たからな」

 

不機嫌に言うハーティーン・・私は

 

「もしかして・・やきもち焼いてる?」

 

そう尋ねるとハーティーンは頷き、一気に私の前に立ちそのまま痛いくらいの力で抱きしめてくる

 

「そうだ・・俺はお前を誰かに奪われるのではないか?・・そう思った・・怖かった・・お前が俺から離れていくと思うと・・」

 

私を抱きしめながら言うハーティーンは私の眼を見て

 

「もう少し待とうと思っただが・・もう駄目だ・・ラグナ・・お前に頼みがある」

 

真顔で言うハーティーンは顔を紅くしながら

 

「俺と・・同じ時を歩んでくれ・・絶対に俺の隣に居てくれ・・ラグナ・・俺と結婚して欲しい・・」

 

プロポーズをしてくるハーティーンに

 

「えっ・・」

 

突然のプロポーズに私は驚いた・・私達は確かに婚約者だ・・それが突然結婚してくれと言われ・・私は驚いたが・・

 

「良いよ・・ハーティーン・・私は貴方と同じ時を歩みます」

 

そう言うとハーティーンはゆっくりと微笑み・・触れるだけのキスをしてくれた・・次の日ハーティーンは食堂で

 

「守護者・・俺は決めた・・ラグナと結婚する・・だから結婚式の準備をしてくれ」

 

八神さんに頭を下げるハーティーンを始めてみた・・八神さんは驚いた表情を浮かべたが

 

「・・判った・・結婚式の準備だな・・引き受けた」

 

快く八神さんは結婚式の準備を引き受けてくれた・・私がその光景を見ていると

 

「ラ、ラグナ!!結婚するって本当!?」

 

なのはさんが血相を変えて尋ねて来る、私は頬を紅く染めながら

 

「はい・・昨日・・プロポーズされたんです・・俺と・・同じ時を歩んでくれ・・絶対に俺の隣に居てくれって」

 

そう言うとなのはさんは椅子に座り込み

 

「良いなぁ・・私なんかまだまだ結婚出来そうに無いのに・・ってそんな事言ってる場合じゃないよ!!」

 

そう言うとなのはさんは弾かれた様に立ち上がり

 

「私も龍也さんと結婚式の準備をするよ・・じゃあねラグナ」

 

手を振りながら食堂を出て行くなのはさんを見ながら私は左手の指輪を見ながら微笑んでいた・・

 

 

 

 

「凄いな・・」

 

俺はそう呟いた・・結婚すると宣言してから1週間・・急ピッチで守護者は結婚式の準備をしてくれた

 

「初めてカリムに頼み事をしたよ・・結婚式が出来るようにしてくれってな」

 

そう隣で言う守護者は教会を見ながら

 

「良いだろう?お前とラグナの新しい門出を祝うのにこれ以上の物は無いだろう」

 

そう言う守護者に俺は

 

「確かに・・大聖堂を使うとは・・俺も予想してなかった」

 

ベルカ自治区の聖王教会の総本山・・大聖堂をまさか結婚式に使うと思ってなかった・・そもそもよく許可が出たと俺が思っていると

 

「神王の名を初めて使ったからな」

 

・・聖王教会にとって守護者の存在は絶対だ・・彼らが信仰する神その物なのだから・・俺と守護者が話していると大聖堂から夜天が姿を見せて

 

「兄ちゃん!早く準備手伝ってや、私達だけじゃ大変やで」

 

そう笑う夜天に頷き歩いて行く守護者は思い出したように振り返り

 

「そうだ・・ヴァイスには言ったのか?結婚すると」

 

その言葉に俺は首を振った・・俺が結婚すると宣言してからヴァイスの姿は見えなくなってしまった・・俺も探しているのだが・・どこに居るのか判らないのだ・・守護者にそう言うと

 

「複雑なんだろうな・・まぁその内出て来るだろう・・その時はちゃんと言えよ」

 

そう笑う守護者に頷き俺はその場を後にした・・そして結婚式前夜・・俺の部屋の扉に一通の封筒が貼り付けられていた

 

「?・・これは・・」

 

その封筒の差出人は結婚式の準備の1ヵ月の間、行方不明になっていた・・ヴァイスからで内容は

 

『今日の午前零時・・六課の屋上で待つ』

 

と書かれていた・・俺はその手紙の指示に従い・・その日の午前零時・・六課の屋上に向かった・・

 

「来たか・・」

 

屋上ではヴァイスが腕を組んで待っていた・・ヴァイスは俺を見ながら

 

「ハーティーン・・てめぇに聞きてぇ・・お前は・・絶対にラグナを幸せにするって誓えるか?」

 

俺はその言葉に頷き

 

「騎士の誇りと我が剣に懸けて誓う・・必ず・・ラグナ・グランセニックを幸せにすると・・」

 

俺がそう宣言をするとヴァイスは何かを投げて寄越す・・俺はそれを受け取り・・それを見て驚いた

 

「父さんと母さんの形見の指輪だ・・それを結婚指輪にしろとは言わねぇ・・だけど・・父さんと母さんにも・・ラグナの晴れ姿を見せてやってくれ」

 

そう言うとヴァイスは俺の横を通りながら

 

「覚えとけよ・・ラグナを泣かしたら・・俺がお前を殺すからな・・良いか・・絶対にラグナを泣かすんじゃないぞ・・」

 

そう言って歩き去っていくヴァイスの後姿に俺は思わず頭を下げた・・

 

 

 

 

「こんな物か・・」

 

私は自分で作ったウェディングケーキを見ながらそう呟いた・・自分の持てるお菓子作りのスキルを全てつぎ込んで作った最高の1品だ・・材料は全て最高級の1品ばかり・・かなり値は張ったが・・気にするレベルではない・・私がその出来に微笑んでいるとフェイトが

 

「龍也・・タキシード」

 

タキシードを手渡してくれる・・昨日の夜から大聖堂に泊まりこんで作っていたから、私服のままなのだ・・私は

 

「ありがとう、フェイト・・直ぐに着替える・・」

 

早着替えで着替え腕時計を見る、結婚式の1時間前だ・・どうやら時間ギリギリで完成したようだ・・受付ももう始まっているらしく、ウーノとドゥーエが協力してやってくれている、あの2人に任せれば何の心配も無いだろう・・私がそう考えていると

 

「おはようございます、神王様」

 

いつもの軽装と違い、見た目的にも荘厳で重装備なカリム・・司祭役を頼んだので、当然といえばそうなのだが・・今日の式は、聖王教会の関係者や地上本部の関係者が多数来る予定だから、カリムも少し緊張しているのかもしれない・・

 

「おはようカリム・・すまないな・・急な頼み事をして」

 

そう言って頭を下げるとカリムは慌てて

 

「神王様!?・・その頭を上げてください」

 

頭を上げろと言うカリムに

 

「神王と呼ぶのは止めてくれないか?」

 

そう言うとカリムは

 

「駄目です!神王様はれっきとした聖王の王位継承者なのですよ!!」

 

何度言われた事か・・正統王位継承者なのだから!と私は

 

「判った、判った・・もう言わない・・それで予定なんだが」

 

最後の打ち合わせをしてから、その場を後にした

 

「ハーティーン入るぞ」

 

新郎控え室の扉をノックし、中に入る・・ソコにいたのは、白いタキシードを着た、ハーティーンだった・・普段こそ黒い服装だが白も似合うなと私が思っていると

 

「お、おぉぉ!よ、よ、良く来たなぁぁあ!守護者ァッ!!」

 

物凄く緊張しているハーティーン・・肩なんかガッチガチに強張ってるし、何か震えが止まらないようだ・・

 

「緊張しすぎだろう?リラックスしろ・・」

 

私がそう言うとハーティーンは

 

「ししし・・しかし・・こここ・・こんなに緊張したのは騎士団長の襲名式以来なんだ」

 

噛みまくるハーティーンの溜め息を吐きながら

 

「ハーティーン・・お前がそんな様でどうする?お前が不安で一杯なら、きっとラグナも同じだ・・こういう時こそ・・男がリードする物じゃないのか?」

 

そう言うとハーティーンはゆっくりと頷き

 

「悪い・・みっともないところを見せた・・」

 

そう言うハーティーンは既に何時もの堂々とした態度を取り戻していた

 

「もう平気だな?」

 

「ふん、誰に物を言っている?」

 

何時もの強気を取り戻したハーティーンに一安心してから、私はその場を後にした・・良く判らないが・・こういう時は黙って去るのがマナーらしい・・私が席に座って2人の登場を待っていると、隣のはやてが

 

「兄ちゃん・・来たで・・」

 

はやてのその言葉の後に入り口の重厚な両扉が開かれ、腕を組んだ御両人が登場する・・ラグナのドレスの裾を持って居るのはヴァイスだった・・恐らく泣きたいのを堪えているのだろう・・肩が小刻みに震えていた・・私がそんな事を考えていると

 

「綺麗やな・・ラグナ・・私も早くウェディングドレス・・着たいわ・・」

 

ぽそりと呟くはやてに

 

「それなら早く良い人を見つけるんだな」

 

そう言うとはやては私を見て微笑み

 

「良い人なら私の直ぐ隣に居るで?」

 

本当に綺麗な微笑みのはやてに私は黙り込んで、ラグナとハーティーンの方を見た・・その時はやてが

 

「照れないで良いのに・・・」

 

その呟きを無視して私はカリムの方を見た・・

 

「ラグナさん・・あなたはハーティーンさんと結婚し、夫としようとしています・・貴女は、この結婚を神王の導きによる物だと受け取り、その教えに従って、妻としての分を果たし、常に夫を愛し、敬い、慰め、助けて変わることなく、その健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しき時も、死が2人を分かつ時まで・・」

 

カリムがそう言い掛けた時ハーティーンがそれを手で制し

 

「違う・・例え・・死が2人を引き裂いたとしても・・愛し続ける事を誓うかだ・・」

 

そう言われたカリムは言い治し

 

「こほん・・それではその健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しき時も、例え・・死が2人を引き裂いたとしても・・愛し続ける事を誓いますか?」

 

その問いにラグナとハーティーンは2人同時に

 

「「誓います」」

 

カリムは満足気に頷き

 

「続いて指輪の交換を・・」

 

参列者達が見守る中、2人は指輪の交換をする・・そして・・

 

「ここに交換は成りました・・それでは互いに、誓いの口付けを・・」

 

ラグナとハーティーンが口付けを交わす・・ここに誓約は成った・・そしてその瞬間、立ち直った参列客達からも、惜しみない拍手が巻き起こった・・ゆっくりと退場していく2人を見ながら、私達は聖堂の外に出た・・

 

「??・・何かはやて達が殺気立ってるな?」

 

聖堂の外で殺気立っているはやて達に首を傾げていると・・ラグナとハーティーンが出て来る・・本当なら新婚旅行にでも行って貰うのだが・・今は良いらしく、今度の休暇の時にでも旅行に行くと言っていた・・私がそんな事を考えていると

 

「それじゃあ・・行きますッ!!」

 

ラグナが手に持っていたブーケを思いっきり投げ飛ばす・・それと同時にはやて達がそれに向かって行く・・私はその光景を見ながら

 

「・・何であんなに必死なんだろうか?」

 

そう呟くと隣に居たヴァイスが

 

「旦那・・少しは女性の気持ちに敏感になりましょ・・そうしないとその内刺されますよ?」

 

そう言われ私が首を傾げている中・・フェイトが

 

「やった!!取った・・「させるかぁッ!!」・・ああッ!」

 

ブーケを取ったフェイトの手をはやてが蹴り、フェイトの手からブーケが弾け跳ぶ・・それを

 

「オーライ・・「させない!」・・スバルてめぇぇッ!!!」

 

ヴィータが取りかけたブーケをスバルが横っ飛びで強奪するが

 

「ふん!「し・・しまっ・・」

 

セッテが即座に脚払いを掛け、スバルをひっくり返し・・再びブーケが空を舞う・・

 

「やった・・漁夫の利っす・・「そうは行くかぁ!!・・げふうッ・・」

 

ウェンディがブーケを取りかけた所でティアナが正拳を叩き込み、ウェンディを昏倒させる・・

 

「良し・・取った・・「すまんな・・」・・チンクッ!!」

 

シグナムがブーケを取りかけた所でチンクがダガーでブーケを再び弾き飛ばす・・私はその攻防を見ながら

 

「やれやれ・・終るまで待ってられんな・・帰るか・・」

 

私が帰ろうと振り返った瞬間・・後ろから何かが飛んで来て反射的に掴む・・それと同時に

 

「「ああッ!?」」

 

はやて達の絶叫が聞こえる・・私が掴んでいた物・・それはなのは達が奪い合っていたブーケだった・・

 

「いや・・その業とじゃないんだ・・何でにじり寄って来る?」

 

謝ってからブーケを再び投げようとすると、はやて達がにじり寄って来る・・私が嫌な予感を感じていると・・はやてが

 

「兄ちゃんが・・ブーケを取ったんや・・じゃあ次に結婚するのは兄ちゃんやよな・・だから・・」

 

ギュッピーンッ!!!

 

はやて達の目が妖しく光る・・私は冷や汗を流しながら

 

「待て・・何を考えている?」

 

そう尋ねるとなのはが

 

「こうなったら・・押し倒してでも・・龍也さん・・貴方を手に入れます・・」

 

ゴゴゴッ・・・

 

妙な威圧感を放つなのは達から視線を逸らし・・

 

「こういう時は・・全力で逃げる!!」

 

私は全力で走り出した・・後ろから追って来るはやて達の気配を感じながら

 

「どうして私がこんな目に会うんだぁぁッ!!」

 

そう悲鳴を上げた・・その時背後から聞こえた管理局関係者の笑い声が妙に悲しかった・・

 

 

 

その光景を見ていた俺はラグナに

 

「業と守護者の所に行くように投げただろ?」

 

そう尋ねるとラグナは微笑を浮かべ

 

「こうでもしないと八神さんは結婚しないでしょ?・・あの人鈍感だから」

 

そう言うラグナの肩を抱き寄せて

 

「これから・・どんな災いがあろうと俺がお前を護る・・だから・・んむっ!?」

 

そこまで言い掛けた所でラグナの唇で口を塞がれる・・俺が驚いているとラグナはにっこりと微笑み

 

「そんな事言われなくても判ってるよ・・ハーティーン・・」

 

俺はこの瞬間ラグナには一生勝てないと思いながら頷き

 

「そうだな・・態々言うまでも無かったか・・」

 

そう笑いながらラグナの前に腕を差し出す・・するとラグナは微笑みながら腕を絡めてくる・・俺は空を見上げて

 

「良い天気だ・・まるで俺達を祝福してくれてるようだ・・」

 

そう笑いながら言うとラグナは

 

「そうだね・・ハーティーン・・」

 

そう微笑むラグナを抱き抱えて俺は聖堂を後にした・・

 

これから先・・例え・・どんな困難が俺達を待っていようが・・俺はそれに決して負けはしない・・俺の最高の宝物を誰にも・・傷つけさせない・・俺が・・必ずラグナを護る・・そう決めたのだから・・

 

姫と黒き守護者 結婚式編 終り

 



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幸せ?の形

幸せ?の形

 

「私が何をしたあああっ!?」

 

私は凄まじい形相で追ってくる者達の気配を感じながら、そう絶叫した・・元を正せば私が悪いのだろう・・ブーケを受け取ってしまったのだから・・だからと言って、ここまで追いかけて来なくても良いではないか・・私がそんな事を考えていると・・

 

「てやああああっ!」

 

「でやああああっ!」

 

スバルとノーヴェがウィングロードとエアライナーで飛び出してくる

 

「魔法まで使わなくても良いだろう!?」

 

高速で迫ってくるスバルとノーヴェに言うと

 

「魔法でなんでも使いますよ!、こうでもしないと捕まえれないじゃないですか!」

 

「普段はこういうのは嫌だけど・・今回だけは特別だ!」

 

律儀に返事を返すスバルとノーヴェの腕を回避しながら

 

「だから、ブーケを返すと言ってるだろう!!」

 

左手で持っているブーケを返すと言うとティアナがウィングロードの上を走りながら

 

「返してくれなくて良いですよ、でもブーケトスの意味は知ってますよね?」

 

そう言うティアナの横を走りながらなのはが

 

「ブーケを受け取った人が次に結婚出来るんです・・だから次に結婚するのは龍也さんですよね?・・誰と結婚したいのか教えてください!!・・ティアナ邪魔っ!!」

 

ティアナとなのはの攻防に目を取られた一瞬・・

 

「うふふ・・捕まえました・・」

 

背中に重みを感じ振り返ると

 

「あはは・・逞しい背中・・うふふふ・・」

 

単色の瞳で私の背中に頭を擦り付けるセッテが居た

 

「!?!?」

 

その突然の事に驚き若干スピードが落ちる・・すると・・

 

「「「「へっ!?っきゃあああっ!!」」」」

 

高速で走っていたスバル達が私が急に見えなくなった事で一瞬後ろを向いた瞬間

 

ドーンッ!!

 

道路に掛かっていた看板にぶつかり、ひっくり返る・・私は背中にしがみ付いたままのセッテを振り解こうと手を振り回しながら・・

 

(あれは・・痛そうだったな・・冷静になったら回復魔法でも掛けてやろう・・)

 

そんな事を考えながら振りほどこうともがいているとセッテが

 

「うふふ・・そんなに恥かしがらなくても良いではないですかぁ・・龍也様・・ふっ・・」

 

恍惚とした声で呟き、私の耳に息を吹きかけるセッテに

 

(だから・・セッテは苦手なんだ!・・誰か助けてくれ~)

 

この際追いかけてくる面々で良い、誰かセッテを引き離してくれ・・私がそんな事を考えていると

 

「この痴女があっ!!龍也から離れろ!」

 

フェイトが力付くでセッテを引き離しそのまま

 

「ていっ!」

 

ドスッ!!!

 

セッテの鳩尾に拳を叩き込む・・セッテは目を白黒させながら

 

「こ・・の・・女狐が・・」

 

そう言い残しぐったりするセッテを道路の脇に置いたフェイトはゆっくり振り返る・・そして目が合う

 

「・・龍也ぁ・・」

 

単色の眼で獲物を見るような視線のフェイトに

 

「ぞくっ・・」

 

強烈な寒気を感じ私が後ろにゆっくりと移動しようとすると・・

 

「うふふ・・逃げないでよ・・何も痛い事とか酷い事をしたい訳じゃないの・・」

 

黒いオーラを纏いながら近寄ってくるフェイトはうふふ・・と笑いながら

 

「唯ね・・いい加減龍也の気持ちが知りたいの・・」

 

前髪が垂れて表情を窺うことが出来ない・・その凄まじい圧力に私が動けずにいると

 

「私はね・・龍也が好き・・この世界で誰よりも・・だから・・教えてよ・・龍也がどう思ってるのか?」

 

フェイトが私の前に立ち、両手で私の顔を掴もうとした所で・・

 

「!!」

 

フェイトが伸ばしかけた手を戻し、後ろに跳ぶ・・その直後にフェイトが居た場所にレヴァンティンが振り下ろされる・・レヴァンティンの持ち主・・シグナムはフェイトを睨みながら

 

「兄上の気持ちも考えず・・自分の気持ちだけを優先するとは・・愚かだな・・テスタロッサ」

 

そう言い放つシグナムにフェイトは

 

「うるさい!うるさい!待つのはもう疲れたの!!いい加減に龍也の気持ちを知りたいんだよ!!!」

 

首を振りながら言うフェイトになんと声を掛ければ判らず困惑してると、シグナムが

 

「ここでテスタロッサに近付いてはいけません・・あれは・・罠です・・ここは私が食い止めるので、今日一日逃げ切ってください」

 

逃げろと言うシグナムに

 

「味方と考えて良いのか?」

 

そう尋ねるとシグナムは軽く微笑を浮かべながら

 

「そうですね・・本音を言えば・・私も兄上の気持ちを知りたいです・・でも今はその時じゃないんですよ・・だから待ちます・・兄上が自分から話してくれるのを」

 

私はシグナムに礼を言い走り出した・・その直後背後から

 

「シグナム!!邪魔ぁっ!!!」

 

ズドーンッ!!!

 

魔法の炸裂する音と共にフェイトの怒声が聞こえ・・

 

「邪魔とでも何とでも言えっ!!兄上はまだ汚させんぞ!!」

 

応戦するシグナムの声を聞きながら、私はその場所を走り去った・・暫く走ってると

 

「やっと・・見つけたっすよ~」

 

ゴオオッ!!

 

エンジン音が聞こえそっちの方を見ると

 

「龍也兄~」

 

「兄様~」

 

「龍也兄様~」

 

ボードモードのバニシングバードに乗った、ウェンディ達の姿が見える・・デバイスと生身ではデバイスが有利・・あっという間に追い抜かれ、3人が私の前に立つ・・オットーがスカートの裾を握りながら

 

「あのね・・兄様・・ブーケ・・受け取ってたよね?」

 

赤面しながらもじもじと言うオットーの言葉を引き継いで

 

「ブーケを取った人が次に結婚出来るんですよね・・龍也兄様は・・誰と結婚したいんですか?」

 

オットーと同じ様に赤面しながら尋ねて来るディード・・そして

 

「私達は、龍也兄が自分らを選ばなくても気にしないっす・・だから龍也兄の気持ちを教えて欲しいっす」

 

普段と違い真剣な表情で尋ねて来る3人に・・私がどう返答すれば判らず停止してると・・ウェンディはぷるぷると肩を震わせながら

 

「・・や・・やっぱり・・龍也兄が好きなのは私達じゃ無いっすね・・」

 

目に涙を浮かべながら言うウェンディに

 

「いや・・まだ私は・・」

 

正直に言おう・・私はまだ結婚するつもりが無い・・まだ24だし・・慌てて結婚するつもりも無いし・・好きな者も居ない・・だからその事を話そうとするとウェンディは耳を塞ぎながら

 

「聞きたく無いっす・・慰めの言葉なんか欲しく無いっす・・」

 

完全に勘違いしてるウェンディと

 

「やっぱり・・僕じゃ駄目なんだね・・」

 

「くすん・・選んで欲しかったです・・」

 

ぐすぐすと涙を流しているディードとオットーにどうすれば良いか判らず困惑してると

 

「お前達!いい加減しないか!!」

 

後ろの方からチンクの怒声が響き渡る、チンクは私の横を通りながら

 

「八神は何も言っていない!、お前達が嫌いだとも・・誰が好きとも言っていない!全てお前達の勘違いだ」

 

堂々と言い放つチンクは私を見ながら

 

「八神はまだ結婚をするつもりが無いんだ、自分達の我侭で八神を困らせるな」

 

そう言われたオットー達は涙を拭いながら

 

「「「ごめんなさい・・」」」

 

声を揃えて謝ってくる3人に

 

「いや・・私が早くまだ結婚するつもりがないと言えば良かったんだ・・すまない・・」

 

私が謝り返しているとチンクは横目で

 

「謝ってる暇があれば行け、私だって本音を言えばお前の気持ちが知りたいんだからな」

 

そう言うチンクに頭を下げ、私は再び走り出した・・

 

「ふう・・あと少しで六課か・・」

 

もう少しで六課というところで私は気付いた

 

「はやてとヴィータが・・来なかった・・?」

 

おかしいあの2人が動かない筈は・・私は

 

「し・・しまった・・罠・・「ふふ・・時既に遅しやで?」!!」

 

私が罠だと気付き、その場を移動しようとした瞬間、はやての楽しげな声と共に私の手足にバインドが掛けられる

 

「しまった・・嵌められた・・」

 

はやての事だから私が疲労するまで動く筈が無かったのだ・・私が己の失態を恥じていると

 

「兄ちゃん~捕まえたで~」

 

「・・兄貴・・」

 

楽しげなはやてと赤面しながらスカートを握り締めてるヴィータが木の間から姿を見せる・・はやては私がバインドを掛けられると同時に落としたブーケを拾い上げ

 

「うふふ・・折角やからこれ貰っとくで」

 

にこにこと言うはやてに

 

「これ・・外してくれないか?」

 

バインドを外すように頼むと

 

「嫌や」

 

にこやかに嫌だと言うはやてに私がどうにかしてバインドを外すように頼もうとするとヴィータが

 

「兄貴は・・まだ結婚するつもりが無いんだよな・・?」

 

確認するように尋ねて来るヴィータに頷くと、ヴィータはこくこくと頷きながら

 

「そっか・・まだ結婚するつもりが無いなら、無理に迫るのは迷惑だよな」

 

そういうヴィータに私は解放されるのかと思った直後はやてが

 

「うん、だから無理に結婚しろとは言わんよ・・でも・・少し位良い思いがしたいな~」

 

にぱーと笑うはやて・・よく見ると頬が赤くなっている・・はやては赤面しながら私の前に立ち

 

「少し位・・味見しても良いよね?」

 

にこっ!と笑い爪先立ちになるはやてに

 

「何をするつもりだ・・?」

 

判っていたが一応尋ねるとはやては両手で頬を押さえて

 

「いやん・・女の子にそんなん言わせないで・・ちょっとだけ味見するだけや・・もう2回もキスしてるんやで・・兄ちゃんもそんなに気にしないやろ?」

 

そう笑うはやてに

 

「に・・2回ともお前が無理やりしたんだろう!?」

 

そう言うとはやてはにっこりと微笑み

 

「そうや、だから3回目も無理やりさせて貰います」

 

そう微笑むとはやては私の唇に自分の唇を押し付けてきた

 

「!?!?!?」

 

私がジタバタと暴れるがはやては無視・・暫くそのまま時が流れ・・はやてはゆっくりと離れながら

 

「うふふ・・こんで3回目のキスや・・」

 

妖艶な笑みで言うはやてを見ながら

 

「わ・・私は・・妹と3回もキスを・・」

 

私がショックを受けているとヴィータが私の前に立ち、にっこりと微笑む、それに吊られて私が微笑むと

 

「・・頂きます・・」

 

「な・・何を・・むぐぅっ!?!?」

 

ヴィータにはやてと同じ様に無理やり唇を奪われる、はやてより長い時間キスをしていたヴィータは赤面しながら

 

「これで・・私も3回目だ・・なのは達より2回も多い・・私の方がなのは達より近い場所に居るんだ」

 

そう言うとヴィータは私から離れて

 

「えへへ~兄貴大好きだかんな!!」

 

そう言うとヴィータは走り去ってしまった・・私がヴィータにまでキスされた事で放心状態になっているとはやてが

 

「バインドは解除しといたで、立ち直ったら帰って来てや、兄ちゃんの部屋で待ってるで」

 

ブーケを両手で抱きしめながら歩いて行くはやての後姿を見ながら

 

「わ・・私は・・い・・妹と・・3回もキ・・キスを・・だ・・駄目だ・・私は・・人間失格だ・・」

 

私はorzのポーズを取りながら、涙を流した・・今日の事は早く忘れよう・・

 

大勢の女性に好かれ過ごす日々・・これもある意味幸せな日々なのかもしれない・・

 

「こんなに悩む幸せなど私は欲しくない!!!」

 

 

幸せ?の形 終り



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祝福の風の決意 終り

 祝福の風の決意

 

龍也がリインフォースを救ってから1週間・・彼女は六課の一員として受け入れられていた・・私が廊下を歩いていると・・

 

「おう、リインフォース何やってんだ?」

 

後ろから鉄槌に声を掛けられ、私が振り返りながら

 

「鉄槌か」

 

私がそう言うと鉄槌は眉を顰めながら

 

「だから・・私は鉄槌じゃねぇ!!ヴィータだ!」

 

そう怒鳴る鉄槌に

 

「すまない・・て・・いやヴィータ・・」

 

私が謝りながら言うとヴィータは

 

「良い加減によ、私達の事を鉄槌とか呼ぶの止めてくれよ」

 

呆れたように言うヴィータに

 

「判っているのだが・・遂・・な」

 

私がそう言うとヴィータは

 

「まぁ・・直ぐに治せとは言わないけどよ・・所で何処に行くんだ?」

 

笑いながら尋ねて来るヴィータに

 

「その・・兄上様の所に行こうと・・」

 

私がそう言うとヴィータは

 

「兄貴・・?・・聞いてないのか?兄貴は今日居ないぞ?」

 

えっ・・私が停止しているとヴィータは面白く無さそうに

 

「今日はよ・・フェイトと一緒に本局で用事があるんだってよ」

 

不機嫌なヴィータ・・昔からだがヴィータは兄上様に・・その・・多大な好意を持っている様で・・これは勿論妹としての物ではなく・・その・・女としての好意だ・・私がそんな事を考えているとヴィータは

 

「まぁ・・そんな訳でよ、兄貴は今日居ないんだよ・・夜には帰るそうだからよ、それまで待ってろよ、んじゃな・・私は新人の訓練見に行って来るからよ、リィンとかと一緒にいろよ」

 

そう言うヴィータに頷き、私はリィン達の居る食堂へ向かった・・

 

「あっ!お姉様です!」

 

「本当だな、姉だ」

 

にこにこと手を振るリィン・・彼女のフルネームはリィンフォースⅡ・・つまり・・私が残したデータを元に主はやてが作り出した私の生まれ変わりの様な存在なのだが・・彼女は私の事をお姉様と呼ぶ・・最初は困惑したが・・今は少し嬉しいと思う・・そしてその隣に居るのは兄上様が助けた融合騎でアギトと言うらしい、少し勝気な所がヴィータに似ていると私は思っている・・私はリィン達の所に行き椅子に座ると、後ろから

 

「持って来ましたよ・・あれ?お姉ちゃんも一緒ですか?」

 

「!・・わ・・私は・・や・・やっぱり・・か・・帰ります・・は・・放して下さい~」

 

何かの布を持って来たユナと私を見て逃げ帰ろうとするアザレアをユナが掴んで引きとめる、彼女達が兄上様の融合騎で、ユナは私と同じ様に消えてしまった、セレスという融合騎の二代目で、アザレアは詳しくは教えてくれなかったが、元は誰かの融合騎だそうだ・・アザレアは人見知りが激しいらしい・・逃げようとするアザレアにユナが

 

「アザレア、お姉ちゃんはお兄ちゃんの家族です、逃げるのは失礼ですよ」

 

そう言われたアザレアは逃げようとするのを止め、出来るだけ私と距離を取って椅子に座った・・今から何をするのだろうと私が考えていると

 

「今からですね、お兄様の人形を作るんですよ!図面ははやてちゃんが書いてくれました」

 

リィンが笑いながら図面を見せてくるが・・

 

「・・??」

 

意味が判らなくて首を傾げていると、ユナが図面を私に渡しながら

 

「初めてですから判らないですよね?私が教えてあげますからやってみませんか?」

 

私は図面を受け取ってよく見る・・確かにパーツごとに分割されているが、確かに兄上様のデフォルメされた姿が書かれていた・・リィン達のは少し違っていて、騎士甲冑やBJを身に着けている兄上様の姿が書かれていた・・私が図面を見ているのに気付いたアギトが

 

「私達のは兄とユニゾンした時のやつで、姉のは普通の基本のやつだぜ・・完成するとこうなるんだ」

 

アギトがポケットから兄上様の人形を見せてくる、管理局の制服に黒いコートを着ている何時もの兄上様の姿をそのままに・・可愛らしくデフォルメされた人形を見て

 

「・・私も・・作れるのか?」

 

その人形が私でも作れるのか?と尋ねるとユナが

 

「大丈夫ですよ、私がちゃんとお姉ちゃんに教えてあげますから」

 

私はその言葉に頷き、ゆっくりとぎこちない手で配られた布に図面を書き写し始めた・・私が苦戦してると、紅銀の瞳になったアザレア?が

 

「違う、ここはこうだ」

 

私の手からペンを引ったくり図面の間違いを訂正してくれる、さっきまで私と話そうとしなかったアザレア?が話しかけてきた事に驚いていると、アザレア?は私の眼を見ながら

 

「私の名はアリウム・・アザレアのもう1つの人格だ・・今まで自己紹介が遅れて申し訳なかった・・余り私は表に出ないが・・よろしく頼む姉上様」

 

そう言うアリウムに

 

「ああ・・こちらこそよろしく頼む・・」

 

そう返事を返すとアリウムはユナに

 

「ユナ、姉上様は私が見よう」

 

そう言うアリウムは私に丁寧に教えてくれ・・作り始めてから3時間後・・

 

「で・・出来た・・」

 

私の手の中には兄上様の人形があった・・少し不出来な所もあるが・・充分すぎる・・私がその人形を見て1人納得していると

 

「何してるんだ?リインフォース?」

 

突然シグナムに話しかけられ驚いてその人形を落としてしまう・・地面に落ちかける前にシグナムがそれを拾い上げ

 

「兄上の人形か・・よく出来てるな」

 

そう言って私に人形を返してくれたシグナムは

 

「もう直ぐ兄上様が戻る、もし見られて恥かしいなら部屋に戻した方が良いぞ」

 

そう教え、直ぐに何処かに行くシグナムの後姿を見ているとリィンが

 

「シグナムも同じ人形を持ってるんですよ?・・何時も枕元に置いてあるんです」

 

そう教えてくれ私は少し驚いた、シグナムは兄上様に好意を持っていた・・だがそれはあくまで兄妹としての物だった筈なのだが・・私はそんな事を考えながら持っていた人形を抱き抱えながら自分の部屋に戻った・・私が食堂に戻ると兄上様が居た

 

「兄上・・!?」

 

私は声を掛けかけたが、それを呑み込み食堂の柱の陰に隠れた

 

「龍也、美味しいね」

 

兄上様の周りにはフェイトや・・確か・・スバルとティアナと言う名の少女達が居り・・楽しそうに食事をしていた・・兄上様は少し困ったような顔をしながらも食事を楽しんでいるようだった・・私はその光景を見ながら・・

 

「胸が・・苦しい・・」

 

自分でも判らない不快感を感じていた・・どうして私があそこに居れないのか・・どうして私や主はやて達ではなく、フェイト達に笑いかけている・・そう思うと胸が苦しくて仕方なかった・・

 

「・・?」

 

兄上様と一瞬目が合いかけるが、自分から目を逸らし逃げるようにその場を後にした・・兄上様と話したかったがそれ以上にこれ以上あの光景を見たくなかった・・私は逃げるように自分の部屋に戻り、扉に鍵を掛けてベッドに横たわり・・自分で作った兄上様の人形を抱き抱えながら

 

「私はどうしてしまったのだ・・」

 

私はただ兄上様の傍に居たかった・・名を呼んで欲しかった・・ただそれだけの筈なのに・・最近兄上様となのは達が話していると胸が苦しくなる・・・そしてそれと同時になのは達が酷く憎いと思った・・

 

「判らない・・この気持ちは一体何なのだ・・」

 

自分でも訳の判らない感情に困まりながら人形を抱き抱えベッドの上を転がりまわる・・そして私は1つの答えに辿り着いた

 

「わ・・私は兄上様が好きなのか!?」

 

この行動は見た事がある、主はやてやヴィータが良くやっていたからだ・・私は自分の出した答えに・・

 

「駄目だ・・この想いは叶う事はない・・」

 

直ぐに否定的な答えを出す・・私のこの願いは叶う筈が無いのだ・・兄上様の隣は主はやての物だ・・そこに私の入る隙間は無い・・だが・・

 

「せめて・・諦める前に良い思い出が欲しい・・」

 

私のこの気持ちは・・多分本物だ・・だが・・それは願ってはいけない事・・私はそう考え・・最後に良い思い出をと・・思い枕を抱き抱えながら兄上様の部屋に向かった・・

 

(あの時のぬくもりを最後にまた得て・・私は兄上様の事を諦めよう・・)

 

消える前の最後の晩・・私は兄上様と一緒に寝た・・暖かくて・・それで居て心が満たされた・・最後にその温もりを感じて・・兄上様の事を諦めよう・・兄上様の隣は主はやてとヴィータの・・いやシグナムの物だ・・そこに私の居場所は無いのだ・・私はそんな事を考えながら兄上様の部屋の前に行き扉を叩いた

 

「・・誰だ・・なんだリインフォースか・・どうしたんだ?」

 

笑顔で尋ねて来る兄上様は寝る前だったのかパジャマ姿だった・・私は兄上様に

 

「えっと・・ですね・・そのですね・・一緒に寝たいと思ったのですが・・駄目でしょうか?」

 

私がそう尋ねると兄上様は

 

「別に良いぞ、おいで」

 

私はすんなり良いよと言ってくれた兄上様に驚きながら部屋の中に入った・・部屋の中は綺麗に整頓されていた・・兄上様は欠伸をしながら

 

「すまんが・・今日は疲れた・・私はもう寝るが・・リインフォースはどうする?」

 

そう尋ねて来る兄上様に

 

「私も寝ます・・」

 

そう返事を返し私は兄上様と一緒に布団に入った・・

 

(何だ・・この胸の高鳴りは・・)

 

前は感じなかった胸の高鳴りに私が困惑していると・・隣から穏やかな寝息が聞こえてくる・・

 

「もう寝てしまわれたのか・・」

 

よほど疲れていたのだろう・・直ぐに寝てしまった兄上様の寝顔を覗き込み・・顔の前で手を振ってみるが反応が無い・・どうやら完全に眠っているのだろう・・私がそんな事を考えていると、兄上様の手が伸びてきて私を抱き抱える

 

「!?!?」

 

突然の事に私が驚いたが、私は

 

「んっ・・」

 

兄上様の胸に顔を埋め、兄上様の背中に手を回し抱きつきながら・・

 

「暖かい・・」

 

包まれているようなこの感じ・・まるで陽だまりの中に居るような心地良さを感じ・・私は・・

 

(駄目だ・・兄上様を諦める事なんて出来ない・・私はずっと・・傍に居たい・・)

 

この暖かさを知ってしまっては駄目だ・・諦めようと思っていたが・・そんな事は無理だと私は思った・・

 

(明日・・主はやてに言おう・・それで主はやてに嫌われても良い・・私はずっと・・兄上様の・・そ・・ば・・に・・)

 

私はそんな事を考えながらその暖かさに呑まれ・・直ぐに寝入ってしまった・・そして次の日私は兄上様を起こさないように布団から抜け出し・・主はやての部屋に向かった・・

 

「・・・」

 

私は主はやての部屋の前で・・

 

(仮に私が兄上様の事を好きだと言ったらどうなるだろう・・主はやては怒り狂うかもしれない・・)

 

主はやては私から見ても独占欲の強い人だ・・私がそんな事を言えば・・怒り狂った主はやては私の事を嫌いになってしまうかもしれない・・でも・・

 

「私は兄上様が好き・・この気持ちに嘘はつけない・・」

 

私は覚悟を決めて主はやての部屋の扉を叩いた

 

「ん?・・誰やこんな朝早くから・・なんやぁ・・リインフォースかぁ・・そんな所に立ってないで部屋の中に入りよ」

 

笑顔で招き入れてくれる主はやてと暫く紅茶を飲みながら話をしていたが・・私は自分がここに来た目的を主はやてに切り出した・・

 

「主はやて・・大事な話があります」

 

私がそう言うと主はやては椅子に座りなおし

 

「そんなに改まるって事は相当大事な話しやね」

 

そう笑う主はやてに私は頭を下げながら

 

「最初に言っておきます・・申し訳ありません・・私は・・兄上様が好きです・・最初は傍に入れるだけで良かったんです・・でも今はそれだけじゃ嫌で・・私を見て欲しくて・・兄上様に好きになってもらって欲しくて・・すいません・・私はこの自分の気持ちに嘘をつけないんです!!」

 

私が捲くし立てるようにそう言うと主はやては穏やかに微笑みながら

 

「良かったぁ・・リインフォースも兄ちゃんが好きなんやね?嬉しいわぁ・・味方が増えたで」

 

怒られると思っていたのに、予想に反して笑いながら言う主はやてに

 

「怒らないんですか?」

 

そう尋ねると主はやては

 

「何で怒るんよ?・・リインフォースも兄ちゃんを好きなんやろ?・・怒る必要なんか無いわ、私としては味方が増えて嬉しいわぁ」

 

そう笑う主はやては私に兄上様を囲む状況を説明してくれた・・今兄上様を好きな者は13人居り・・その内時分の味方は、シグナムとヴィータで・・後は皆敵で・・自分達から兄上様を奪おうとしていると・・主はやては説明を終えると手を差し出しながら

 

「これでリインフォースも私の味方・・兄ちゃんに私達を好きになって貰って・・ずっと兄ちゃんと一緒に居よう?」

 

そう笑う主はやての手を握り返しながら

 

(そうか・・私達から兄上様を奪おうと言う者達が居るのだな・・そんな事はさせん・・兄上様は・・私達の物だ・・)

 

リインフォースがそんな事を考えている中・・龍也は

 

「リインフォースどこに行ったんだ?」

 

一緒に寝た筈のリインフォースが居なくなっている事に首を傾げていたりする・・

 

祝福の風の決意 終り



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頑張れ!リインフォースさん!!

頑張れ!リインフォースさん!!

 

 

「さてと・・家族会議を始めます」

 

主はやての一言で家族会議・・正確には兄上様をどうやって自分達の物にするかの会議が始まった・・

 

「今回の議題はリインフォースについてや」

 

私!?私が議題と言う事に驚いてると主はやては、私を見て

 

「リインフォース・・兄ちゃんをデートに誘ったりした?」

 

そう尋ねて来る主はやてに

 

「デ・・デ・・デートですか?・・・いえそんな事はしてませんが?」

 

そう言うと主はやては溜め息を吐き

 

「なぁ・・リィンフォースも兄ちゃん好きなんやろ?・・私達は皆デートしたことある・・リィンフォースもデートせな」

 

そう言う主はやてに

 

「で・・でも・・その・・恥ずかしいですし・・」

 

指をちょんちょんとしながら言うとヴィータが

 

「最初は恥かしいのは当たり前だ・・慣れれば気にならなくなるぜ・・そうだ明日休暇だから兄貴をデートに誘えよ」

 

「なななな・・無・・「良いね、決定!リインフォースは明日兄ちゃんをデートに誘うで決まりやね!」・・はう・・」

 

そう言うヴィータに私が無理だと言う前に主はやてが強引に決定し、明日までに私は兄上様をデートに誘うと言う事が決定してしまった・

・私が停止している間に主はやてとヴィータは部屋から出て行ってしまった・・1人残っていたシグナムは私の肩に手を置き

 

「頑張れ・・きっと出来る」

 

そう言って出て行ってしまった・・私はのろのろと立ち上がり

 

「あ・・兄上様をデ・・デートに誘わなければ・・」

 

私はそのまま兄上様を探す為に自分の部屋を後にした

 

ファーストトライ

 

「執行官も兼ねろ?・・それは無茶じゃないか?」

 

そう言う兄上様にフェイトが

 

「大丈夫だよ!最初は私も一緒だし・・龍也なら執行官も出来るよ!!」

 

熱心に執行官もと誘う兄上様は私に気付き

 

「リインフォース?・・どうしたんだ?何か用か?」

 

そう尋ねて来る兄上様の顔を見て

 

「かあああ・・な・・何でも無いです!!」

 

私は赤面して走り去ってしまった・・ファーストトライ・・大失敗

 

 

 

セカンドトライ

 

「今・・兄上様は1人・・今がチャンス・・チャンスなんだ・・」

 

私は自分に言い聞かせるように呟き、勇気を出して話しかけようとした所で

 

「龍也さん、今暇ですか?良かったら訓練に付き合ってくれませんか?」

 

ティアナが来て兄上様に言う、私は再び柱の影に隠れ、兄上様とティアナの会話を見ていた・・

 

「訓練か・・まぁ良いか・・暇だし・・付き合うよ」

 

頷き歩いていってしまった兄上様を見て

 

「はううう・・や・・やっぱり・・無理なのかな・・」

 

私が頭を抱えてると

 

「お姉様?・・どうしたですか?・・そんなに頭を抱えて?」

 

そう尋ねて来るリィンに事情を説明すると

 

「そうですか・・お兄様をデートに・・頑張るです!リィンは応援するです・・では行くですよ!!」

 

「ちょ・・ちょっと待て・・何処に行くつもりだ?」

 

そう尋ねるとリィンは笑いながら

 

「お兄様の所です!!善は急げですぅ!」

 

そう言うリィンに手を引かれ、私は兄上様を探し始めた・・セカンドトライ失敗・・サードトライに向け協力者獲得

 

 

 

サードトライ

 

「ふう・・やれやれ・・ティアナは頑張りすぎだよな・・」

 

紅茶を飲みながら呟いてる兄上様を見つけたリィンは

 

「さぁ!お姉様今がチャンスです!!お兄様をデートに誘うです!!」

 

元気よく言うリィンに

 

「は・・恥かしいんだが・・」

 

恥かしいと言うとリィンは

 

「そんな事を言っていてはお兄様を取られてしまうです!!だから頑張るです!!」

 

そう言って背中を押すリィンに

 

「判った・・誘ってくる・・」

 

私はそう返事を返し兄上様の所に向かって歩き出した

 

「うん?リインフォース?・・どうした」

 

笑いながら尋ねて来る兄上様の顔を見ながら

 

「えっとですね・・その・・明日・・お暇でしょうか?」

 

明日暇かと尋ねると

 

「明日?・・別に予定は無いが・・どうしたんだ急に?」

 

そう尋ねて来る兄上様に

 

「その・・宜しかったらなのですが・・明日・・一緒に街に出掛けませんか?」

 

勇気を出して言うと兄上様は

 

「良いぞ、明日だな・・判った、明日一緒に出かけような」

 

そう笑う兄上様に頷き、私はリィンの居る場所に戻った

 

「やったですね!!お姉様!!明日頑張るですよ!!」

 

私はリィンの頭を撫でてから自分の部屋に戻った・・サードトライ・・成功

 

 

 

「兄上様・・その・・お待たせしました・・」

 

六課の前で待っている兄上様にそう声を掛けると

 

「気にしなくて良い、では行くか」

 

気にしなくて良いと笑う兄上様に頷き、私達は街へと出掛けた・・それを見ていたはやては

 

「うふふ・・成功やね・・リインフォースは奥手やからね~少しは積極的に成って貰わんと兄ちゃんを物になんか出来へんからなぁ~」

 

そう呟くはやて・・策士ここにあり・・

 

「何処に行きたいんだ?」

 

歩きながら尋ねて来る兄上様に、私は

 

(しまった・・何も考えてなかった・・)

 

自分から誘っておいて何一つデートの計画を立ててなかった、私は即座にどうするか考え・・答えを出した

 

「本を買いたいのです」

 

今私には欲しい本がある・・だからそう言うと兄上様は

 

「それでは近くにはやてと良く来る本屋があるから行こう」

 

そう言って歩き出す兄上様の隣を歩きながら

 

(どうだろうか・・私と兄上様は・・その・・恋人同士に見えるだろうか・・?)

 

擦れ違う者が皆一瞬止まるので恋人同士に見えてるのだろうか?と考えながら私は歩いていた

 

「ここだ」

 

兄上様が本屋の中に入っていく、兄上様に気付いた店主が

 

「いらっしゃい・・おやおや・・はやてちゃん以外の女の子を連れて来るのは初めてじゃないかい?」

 

人の良い笑みで言う女の店主に兄上様は

 

「そうですね、私の知り合いはあんまり本好きがあんまり居ないもので」

 

そう笑う兄上様の隣を通って本を探しに行った

 

「えっと・・あった・・」

 

私が探していた本・・それは料理の本だった・・兄上様に料理を作って美味しいと言って欲しくて・・でも私は料理なんてやった事が無いからレシピ本を探していたのだ・・私がその本を持って行くと兄上様が受け取りレジの店主に渡す

 

「会計はしておく、本を包んで貰ったらおいで」

 

そう言って店から出て行く兄上様を見てると

 

「料理の本かい・・好きな男にでも作ってやるのかい?」

 

そう笑う店主に赤面しながら頷くと

 

「そうかいそうかい・・それは喜ぶと思うよ・・あんな上玉な男はそうは居ないよ・・はやてちゃんと協力して頑張りなよ」

 

そう言う店主に頷き店を出て、兄上様と一緒に又街をぶらぶらと歩き出した・・特に大した事はしてないが兄上様と一緒に居るという事が堪らなく楽しかった・・ウィンドウショッピングをしたり・・露天商に声を掛けられたりしていると

 

「そろそろ・・お昼か・・何を食べる?」

 

そう尋ねて来る兄上様に

 

「えっと・・何でも良いです」

 

そう返事を返すと兄上様は

 

「それじゃあ、近くに美味しいパスタ屋があるから行こう」

 

歩き出す兄上様の後を追って歩き出した

 

「いらっしゃいませ」

 

ウェイターに席まで案内され、2人でメニューを選ぶ

 

「私は・・特製シーフードパスタを・・リィンフォースはどうする?」

 

そう尋ねて来る兄上様に

 

「私も同じ物で良いです」

 

私がそう言うと兄上様は

 

「それじゃあ・・特製シーフードパスタを2つ」

 

ウェイターが注文を聞いて厨房に歩いて行く・・料理が来るまでの間2人で話していた・・なんら特別な話ではない・・ただの世間話の様な物だ・・ヴィヴィオがどうとか・・主はやての話とか・・ただの世間話だが兄上様と一緒だからとても楽しかった

 

「お待たせしました」

 

ウェイターが私と兄上様の前にパスタの入った皿を置く・・海老とかイカとかがたっぷりと入った見た目にも美味しそうなパスタだった・・

 

「それじゃあ、食べようか?」

 

そう笑う兄上様に頷きパスタを食べ始めた、見た目通り味も良かった・・だがそれ以上に兄上様と一緒という事で更に美味しく感じた

 

「ありがとうございました・・又のお越しを・・」

 

ウェイターに見送られ、私達は店を後にした・・2人で又何気ない世間話をしながら街中を歩き、日が暮れて来たところで

 

「あ・・アイスクリーム屋だ・・」

 

私は移動式のアイスクリームの屋台を見つけて立ち止まると

 

「食べたいのか?」

 

そう尋ねて来る兄上様に頷くと

 

「そうか・・では行くとしよう」

 

2人で屋台によりアイスを買う、兄上様はチョコで私はストロベリーを選んだ、2人でベンチに腰掛けアイスを食べ

 

「そろそろ・・戻るか?」

 

六課へ帰ろうと言う兄上様に頷き、私達は六課へ戻った

 

「今日は楽しかったな・・」

 

自作の兄上様のぬいぐるみを抱き抱えそう呟いた・・もう2度と逢えないと思っていた兄上様と過ごす時間はとても楽しくて・・あっと言う間に時が過ぎてしまう・・楽しい時間は早く感じるというが本当の事の様だ・・そんな事を考えてると急に眠くなり

 

「兄上様・・おやすみなさい・・」

 

枕元においてある兄上様と一緒に取った写真におやすみなさいと言ってから、ぬいぐるみを抱き抱えて眠りに落ちた・・今日の日のような幸福な時間が長く続きますようにと願いを込めながら・・

 

頑張れ!リインフォースさん!!終り

 



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祝福の風と守護者の密会

祝福の風と守護者の密会

 

「あの・・兄上様・・お願いがあるのです」

 

私はスカートを握り締めながら言うリインフォースに首を傾げながら

 

「お願い?・・私にか?」

 

そう尋ねるとリインフォースはコクコクと頷く

 

「頼みとは何だ?」

 

そう尋ねるとリインフォースはちょこちょこと歩いて来て私に耳打ちする

 

「ふむ・・成る程・・判った付き合おう」

 

私がそう言うとリインフォースは嬉しそうに微笑みながら

 

「それではこの事は主はやてには秘密でお願いします・・」

 

そう言って歩いていこうとしたリインフォースは赤面しながら振り返り

 

「あの・・一緒に寝るのって・・駄目ですか?」

 

小動物の様に言うリインフォースに

 

「別に良いよ・・おいで」

 

そう言うとリインフォースは嬉しそうに微笑み

 

「ありがとうございます!!」

 

笑顔で抱きつき眠りに付こうとするリインフォースの頭を撫でながら

 

(本当にリインフォースは甘えん坊なんだな・・)

 

私はそんな事を考えながら眠りに落ちた・・次の日

 

「それでは手筈通りにお願いします」

 

そう言って部屋を出て行ったリインフォースを見ながら

 

「さてと・・着替えるか・・」

 

私は私服に着替え、はやて達に見つからない様に自分の部屋を後にした

 

 

 

「休日に買い物・・うーん・・良いねぇ・・」

 

私は腕を大きく伸ばしながら呟いた、ティアも誘ったのだが用事があると言って一緒には来てくれなかったのだ・・

 

「うーん・・私どういうのが良いか判んないよ・・困ったなぁ・・龍也さんなら何かアドバイスくれたかもしれないのになぁ・・」

 

私はそんな事を考えながら街中を歩いていた・・

 

「あれ?・・龍也さんとリインフォースさん?・・どうして?・・今日用事とか言って無かったけ?あれ・・もしかして・・デート?」

 

私は龍也さんとリインフォースさんを見ながらそう呟いた

 

「ふむ・・これ等はどうだろうか?」

 

Tシャツを持ちながら言う龍也さんに

 

「そうですね・・良いと思いますよ?」

 

そう笑うリインフォースさんに龍也さんは

 

「違う違う、お前にどうかと聞いてるんだ」

 

「えっと・・私にですか?・・どうでしょうか?」

 

首を傾げるリインフォースさんと龍也さんの雰囲気はとても良いと思った・・って!

 

「じゃなくて!!・・え・・嘘・・龍也さんとリインフォースさんが・・?」

 

龍也さんにとってはリインフォースさんは妹の筈なのだが・・私がそんな事を考えながら龍也さんの後姿を見てると

 

「ん?」

 

龍也さんがこちらを向く私が慌てて隠れると、リインフォースさんが

 

「兄上様?・・どうしたのですか?」

 

そう尋ねると龍也さんは

 

「誰かに見られてる気がしたのだが・・気のせいだった様だな・・」

 

そう呟く龍也さんにリインフォースさんが

 

「申し訳ありません、兄上様・・折角の休みを私なんかと付き合って頂いて・・本当はヴィヴィオと一緒に遊びに行きたかったのではないですか?」

 

リインフォースさんが謝ると龍也さんは笑いながら

 

「いいや・・私は嬉しいな・・リインフォースの方からこういう風に誘ってくれたんだしな・・」

 

「あ・・兄上様・・」

 

真っ赤になるリインフォースさんを見て

 

「不味いって・・嘘嘘・・え・・もしかして・・付き合ってる?」

 

その桃色の雰囲気に私は慌てて

 

「と・・とりあえず・・部隊長に連絡を・・」

 

私は部隊長にこの光景をメールで送った・・

 

 

 

「ん?スバルから・・メール・・これは!!」

 

私はそのメールを見て目を見開いた・・そこにはリインフォースと兄ちゃんがカフェで笑いながら、ジュースを飲んでいた・・私がメールを見てるとスバルから

 

「ぶ・・部隊長!・・わ・・私はどうすれば!?」

 

慌てて言うスバルに私は

 

「とりあえず監視!!2人が必要以上に接近するのを止めるんや!!私も直ぐ行く!!」

 

そう言って電話を切って

 

「積極的になれとは言うたけど・・私に内緒で動くとは・・ええ覚悟しとるな・・リインフォース」

 

私は怒りで目の前が真っ赤になって行くのを感じながら

 

「さーて・・悪い娘にお仕置きしに行こか・・」

 

私はそう呟き六課を後にした

 

 

 

「兄上様・・これなんてどうでしょう?」

 

私がそう言うと兄上様は

 

「ふむ・・ペアルックか・・私も着るのか・・少し恥かしいのだが・・」

 

私と兄上様はそんな話をしてると

 

「すいませーん!!これ買います!!」

 

横から走ってきた者がそれを買ってしまった・・

 

「今のは良いと思ったのにな・・」

 

私がそう呟くと兄上様は私の頭を撫でながら

 

「仕方ない・・次のを買いに行こう・・

 

そう言う兄上様に頷き移動を再開した

 

「このイヤリングはどうでし「これ、これ買います!!!」・・むぅ・・」

 

私が何かを買おうとするたびに割り込んで買ってしまう、者に眉を顰めてると

 

「ふむ・・今日はついてないな・・まぁ・・必要な物は買ってあるし・・良いじゃないか」

 

そう笑う兄上様に頷いていると

 

「ふぅ・・」

 

妙に疲れを感じため息を吐くと兄上様は

 

「疲れたのか?・・少し静かな所で休むか?」

 

そう言う兄上様に頷いた・・慌てたのはそれを見ていたスバルだ

 

 

 

 

「うわわわ・・し・・静かな・・と・・所!?は・・早く部隊長来てください~」

 

私が慌ててる間に龍也さんとリインフォースさんは歩いて行ってしまった・・

 

「今日は・・楽しかったです・・兄上様」

 

ふらつきながら言うリインフォースさんに龍也さんは

 

「疲れたんだな・・少し座って休むと良い」

 

そう言うと龍也さんは石段に座った・・私はそれを見ながらしゃがみ込み

 

「はぁ・・今日は何か疲れたな・・でもデートは妨害したいし・・龍也さんがリインフォースさんと付き合っちゃうのは嫌だしな~あー!!膝枕!!良いなぁ・・」

 

龍也さんがリインフォースさんに膝枕をする・・私が羨ましいと思っていると

 

「ふふ・・こうしてみると子供みたいだな・・」

 

眠っているリインフォースさんの頭を撫でながら

 

「全く・・大人なんだか子供なんだか・・良く判らんな・・だが・・可愛らしい・・」

 

穏やかに微笑む龍也さんを見ていると

 

「見つけたでッ!!!兄ちゃん!!」

 

部隊長が走ってくる、それだけでは無くなのはさんやヴィータさんの姿も見えた・・私がそれを見て茂みから飛び出すと

 

「スバル?それにはやて・・如何してここに?」

 

リインフォースさんの頭を撫でながら言う龍也さんに部隊長は

 

「むー兄ちゃんの膝枕は・・私のなんやー!!!」

 

怒ったように部隊長が言うと

 

「ふぇ・・あ・・主はやて!?・・どうして?」

 

慌てるリインフォースさんに龍也さんが

 

「どうやらバレテたようだ」

 

頭を掻きながら龍也さんが言うとリインフォースさんが

 

「そ・・そうなのですか・・驚かせようと思っていたのに・・しょうがないですね・・」

 

まさか・・告白!?私が慌ててるとリインフォースさんが

 

「主はやて・・随分遅れましたが・・どうぞ・・私からの誕生日プレゼントです」

 

へっ!?皆の目が点になる中龍也さんが

 

「リインフォースがな、今まで誕生日プレゼントを贈れなかった事を気にしててな・・今日選ぶのを付き合ってくれと言われたんだ」

 

そう言われた部隊長は嬉しそうにその箱を抱き抱え

 

「ありがとう・・リインフォース・・兄ちゃん・・私・・凄く嬉しいで・・」

 

にこにこと笑う部隊長を見て良かったと思ってると

 

ガシッ!!!

 

私の肩に手を置かれる・・私は冷や汗を流しながら

 

「スバル・・人騒がせな事して・・覚悟は出来てる?・・お話・・しようか?」

 

ウフフと笑っているなのはさん達に、死んだと思った瞬間

 

「そうだ!折角皆居るんだ、このままどこかに物を食べに行こうか?・・私が奢るぞ」

 

そう言う龍也さんに頷き皆で夕食に行ったが・・その際・・なのはさんとヴィータさんが

 

「明日の訓練は厳しいよ?」

 

「覚悟しとけよ・・」

 

凄まじい怒りの気迫を滾らせる、2人に明日こそ死を覚悟していた・・私が震えてる頃

 

「ごめんな・・私勘違いしてたわ・・」

 

「勘違い?・・何の事ですか?」

 

首を傾げてるリインフォースさんが幸せそうに見えた・・

 

 

 

 

外で夕食を食べ終えた後・・私は自分の机の上に置かれた箱を見ながら

 

「はやてとのペアルックか・・これ・・何時着ようか?」

 

スバルが夕食後、謝罪と共に私とはやてにと返してくれたのだ・・だが何時着れば良いのか私は首を傾げた・・

 

「まぁ・・良いか・・はやてが喜んでるみたいだし・・」

 

私とお揃いという事で酷く喜んでいたので良いかと思いながら本を読んでる居ると

 

コンコン

 

扉を控え目に叩く音が聞こえ私は苦笑しながら

 

「鍵は開いてる・・おいではやて」

 

そう声を掛けるとパジャマを着たはやてが

 

「何で判ったんや?私やって?」

 

驚いたという表情のはやてに

 

「何となくだな・・そんな気がしたんだ」

 

私がそう言うとはやては

 

「超直感って奴?・・やっぱ兄ちゃん凄いわ」

 

楽しそうに笑うはやてに

 

「おいで、寝る前に一緒にお茶でも飲もう」

 

はやてに貰ったティーカップを見せながら言うと、はやては嬉しそうに微笑み

 

「うん!!飲むで」

 

笑顔で言うはやてのカップに紅茶を淹れると

 

「ありがとう兄ちゃん」

 

笑いながらお茶を飲みながらはやては

 

「兄ちゃん、今度の休みにリインフォースに買って貰ったペアルック着て、デートしよ」

 

私はその言葉に頷きながら

 

「良いよ、一緒に好きな所に行こうな」

 

そう言って頭を撫でるとはやては嬉しそうに目を細め

 

「えへへ・・私な・・こうやって兄ちゃんと一緒に話したりするのが私は大好きや」

 

私はその言葉に微笑みながら

 

「そうだな・・私もだよ」

 

暫く2人でお茶を飲みながら話をし

 

「ふぁあああ・・眠くなって来たわ・・」

 

目を擦りながら言うはやてに

 

「一緒に寝るか?」

 

そう尋ねるとはやては

 

「良いの?」

 

首を傾げながら尋ねて来るはやてに

 

「良いも何も、最初からそのつもりだったんだろ?」

 

そう言うとはやては舌を出しながら笑い

 

「バレテた?」

 

私ははやての頭を撫でながら

 

「当たり前だ・・何年一緒に居ると思うんだ?」

 

そう言うとはやては

 

「そうやね・・そりゃバレルか・・うんじゃ・・一緒に寝よ!!」

 

嬉しそうに言うはやてに

 

「はいはい・・何時まで経ってもはやては甘えん坊だな」

 

私はそう言いながらはやてと一緒に寝室に向かった

 

「ん~えへへ・・暖かい・・」

 

私の胸に顔を埋めながら言うはやての頭を撫でながら

 

「そうか・・寝にくくないか?」

 

そう尋ねるとはやては上目目線で

 

「うん・・寝にくくないで・・暖かくて・・安心できる・・兄ちゃんと一緒やと安眠出来るんや」

 

私はその言葉に苦笑しながら

 

「そうか・・それじゃあ・・おやすみ・・はやて」

 

はやての背を撫でながら言うとはやては

 

「うん・・・おやすみなさい・・私の・・大好きな・・大好きな・・兄ちゃん」

 

私の胸に顔埋めて言うはやてに

 

(兄離れさせるのは・・もう無理かもな・・)

 

私ははやてを兄離れさせるのはもう無理だと思いながら眠りに落ちた・・

 

 

祝福の風と守護者の密会 終り

 



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祝福の風と守護者と

祝福の風と守護者と・・

 

「い・・今なんと?仰られましたか?」

 

私はそう尋ねると兄上様は

 

「明日暇だったら私と出掛けないか?と聞いたのだが?」

 

小首を傾げる兄上様は私に

 

「嫌か?・・嫌なら別に・・「いいえ!行きます!!行かせて貰います!!」

 

私は慌てて言うと兄上様は穏やかに微笑み

 

「それじゃあ、明日な」

 

そう言って部屋に戻って行く兄上様を見て、私は

 

「あ・・兄上様から・・誘って貰えた・・」

 

その事が嬉しくてボーッとしているとヴィータが私の肩を叩きながら

 

「リインフォース、ちょっと来い」

 

そう言うヴィータに頷き、私はヴィータの後を追って食堂を後にした・・ヴィータの行き先はシグナムの部屋だった、ヴィータはシグナムの部屋の戸を叩く、暫くすると扉が開きシグナムが姿を見せ、私とヴィータを見ながら

 

「どうした?2人揃って?」

 

訳が判らないと言う表情のシグナムにヴィータは

 

「ちょっとな・・大事な話があるんだよ」

 

そう言ってシグナムの断りも無く、私の手を引いてシグナムの部屋の中に足を踏み入れた

 

「強引だな・・別に良いが・・それで話とは何だ?」

 

私とヴィータの前に紅茶の入ったカップを置きながら言うシグナムにヴィータは

 

「あのよシグナム、リインフォースに服を貸してやって欲しいんだよ」

 

私!?私の事とは思ってなかったので私が驚いていると、シグナムは

 

「別に良いが・・急にどうしたんだ?」

 

首を傾げるシグナムにヴィータは私の肩に手を置いて

 

「明日な、リインフォースと兄貴がデートすんだよ」

 

そう言うヴィータに私は慌てて

 

「で・・デートじゃなくて!!・・ちょっと出掛けないか?と誘われただけだ!!」

 

私が赤面しながら言うと、シグナムとヴィータは口を揃えて

 

「それはデートと言うんだ」

 

「デートだろ」

 

キッパリと言い放つ2人に私が停止してると、シグナムは

 

「判った、デートだから私の服を貸して欲しいと言うんだな?・・だが・・お前の服でも良くないか?」

 

シグナムがそう言うとヴィータは肩を震わせながら俯き

 

「・・私の服だと駄目なんだよ・・」

 

そう言うヴィータに私が首を傾げるとヴィータは握り拳を膝の上で作りながら

 

「ウエストとかは大丈夫だと思うぜ・・でもよ・・胸周りが・・駄目だ・・」

 

ぼそりと言うヴィータに私とシグナムは

 

「「あっ・・・」」

 

口を揃えて呟いた・・ヴィータは大きくなったが・・その・・いい難いが胸はそんなに大きくない・・これは主はやても同じだ・・その点、私とシグナムは・・大きい・・しかもかなりだ・・シグナムの部屋をなんだか居心地の悪い空気が充満し始めた・・私とシグナムが目を合わせて困ってるとヴィータは

 

「・・という訳で、リインフォースに服を貸してやってくれ」

 

シグナムにそう言ったヴィータは俯いて、自分の胸を見ながら

 

「良いもん・・その内大きくなるもん・・」

 

完全いじけてしまっていた・・私とシグナムは今の状態のヴィータには何を言っても駄目だと判断し、2人でクローゼットの方に向かった・・

 

「これなどはどうだ?」

 

シグナムに手渡された服を見て

 

「無理だ!!・・こ・・こんなの・・恥かしい・・」

 

胸元が大きく開いた服で、恥かしくて無理だと言うと

 

「そうか・・ではこれは?」

 

シグナムが差し出して来たのは・・

 

「・・お前・・」

 

私が服の感想を言う前にシグナムは真っ赤になり

 

「・・うるさい・・似合わないのは判ってる・・」

 

真っ赤で俯きながら言うシグナムに手渡された服を見る、フリルつきの白いワンピースで胸元には大きめのリボン・・そして肩やスカートには黒のワンポイントが入っていた・・なんと言うかお嬢様と言う感じの服で、私は気に入ったがシグナムにはイメージが合わないだろう・・私が服を持ちながらそんな事を考えてると、シグナムは

 

「気に入ったならやる、大切にしてくれ」

 

そう言うシグナムに頷き、ヴィータが待ってる部屋に戻り、私とシグナムは停止した・・そこには

 

「くすん・・どうしてだよ・・折角成長出来たのに・・何で胸は小さいままなんだよ」

 

体育座りで落ち込んでいるヴィータの姿があった・・私はなんと声を掛ければ判らなかったがとりあえず

 

「ヴィータ・・服は借りたぞ?」

 

そう声を掛けるとヴィータはゆっくり立ち上がり

 

「そうか・・んじゃあ・・私は寝る・・」

 

ふらふらと歩いて行くヴィータを見ながら、私も自分の部屋に戻った・・

 

 

 

 

「ふむ・・少し早すぎたか・・」

 

私は待ち合わせ場所でそう呟いた・・待ち合わせの場所は遊園地のゲートの前、前に雑誌の取材を受けたときにお礼として貰った、フリーチケットがあるので丁度良いと思ったのだ・・私は時計を見ながらそう呟き、遊園地のゲートの近くのベンチで腰を下ろしてリインフォースが来るのを待った・・待ち始めて数分後

 

「すいません!!お待たせしました!!」

 

リインフォースの声が聞こえ振り返り、私は目を見開いた・・白の上品なワンピースに身を包んだリインフォースは長い銀髪を相まってとても美しかった・・私が驚いているとリインフォースは不安そうに

 

「あの・・もしかして似合ってないですか?」

 

目の前で首を傾げるリインフォースに慌てて

 

「いいや、そんな事は無いぞ・・似合いすぎて驚いてたんだ」

 

私が正直にそう言うとリインフォースは頬を赤らめながら

 

「あ・・ありがとう・・ございます・・兄上様・・」

 

そう言うリインフォースに

 

「それじゃあ、行こうか」

 

「はい!」

 

嬉しそうに言うリインフォースの隣を歩いてゲートを潜った・・

 

「す・・凄いです・・」

 

遊園地の中を見て驚くリインフォースに

 

「何処から行く?」

 

笑いながら尋ねるとリィンフォースは

 

「そ・・その・・あれはどうでしょうか?」

 

リインフォースが指差したのは・・

 

「ホラーハウス?・・本当にあそこで良いのか?」

 

雑誌で紹介されるほど怖いと有名なホラーハウスだった・・私がその事を教えると・・

 

「・・そ・・そ・・そんなにですか・・そ・・それじゃあ・・止めときます・・」

 

止めると言うリインフォースに

 

「代わりにあれで良いだろう?」

 

私が指差したのは

 

「ジェットコースターですか?・・あれなら平気そうですね・・」

 

そう呟くリインフォース、それは当然だろう空戦魔道師がジェットコースターを怖い訳が無いと思ったのだが・・

 

「っきゃああああああああッ!!!!!」

 

隣で大絶叫するリインフォースに驚いた・・模擬戦とかでは物凄い速さで空中戦をする様には見えなかったからだ・・私は驚きながらもリインフォースの手を握り

 

「大丈夫」

 

私がそう言うとリインフォースは叫ぶのを止め、耳まで真っ赤になりながら

 

「・・はい・・」

 

そう呟くリインフォースが可愛くて私は少しだけ笑ってしまった・・ジェットコースターを降りた後・・リインフォースに

 

「空中戦とは感覚が違うのか?」

 

そう尋ねるとリインフォースはゆっくりと頷き

 

「出来れば・・もう2度と乗りたくないです・・」

 

そう呟くリインフォースを連れて私は遊園地の中を移動した・・ゲームセンターや何故かやっていた体験乗馬など色々と遊んだ・・その間リインフォースはとても楽しそうに笑っていて、誘って良かったなと私は思っていた・・リインフォースには楽しい思い出よりも辛くて悲しい記憶の方が多い・・だから少しで多くの楽しい思い出を作ってやりたいと思って、今日誘ったのだ・・勿論訳は他にもあるのだ

が・・私がそんな事を考えてると

 

「兄上様!こっちです!次はあれが良いです」

 

笑顔で私を呼ぶリインフォース・・外見的には大人だが、中身は子供のような彼女に苦笑しながら

 

「ああ・・今行くよ」

 

そう言いながらリインフォースの呼ぶ方に向かって歩き出した・・

 

 

 

 

こんなに楽しいのは初めてだ・・私は兄上様の隣を歩きながらそんな事を考えていた・・

 

「兄上様、最後はあれに乗りませんか?」

 

私は観覧車を指差しながらそう言った、もう直ぐ閉園時間だ・・最後に乗るのはあれが1番良いと思ったのだ

 

「そうだな・・行こうか」

 

笑いながら頷く兄上様と一緒に観覧車に乗った

 

「綺麗だ・・」

 

夕日が沈んでいくのを見ながら私はそう呟いた・・向かい側の兄上様を見ると穏やかに微笑んでいた・・その時私は気になっていた事を尋ねた

 

「兄上様・・どうして私を誘ってくれたのですか?」

 

私が気になっていた事はそれだった・・主はやてやヴィータ、シグナムでも無く私・・それがどうしても気になっていたのだ・・私がそう尋ねると兄上様は

 

「・・前になヴィータに聞いたんだが・・お前達には誕生日が無いだろう?」

 

私が頷くと兄上様は頭を掻きながら

 

「それでな・・ヴィータ達は自分で誕生日を決めたんだ・・何でも自分にとっての記念日にしたそうなんだ・・それでな・・リインフォースにも何か記念日があれば・・それを誕生日に出来ると思ったんだ・・だが・・その私はこういうのを考えるのは苦手で・・それで、前にお前から遊びに誘ってくれただろう?・・だから・・その・・私から誘ったのは初めてだから・・記念日にならないかな?と思ったんだ」

 

不安げにそう言う兄上様が酷く可愛く見えた・・そしてそこまで私を思っていてくれた兄上様がいる事がとても嬉しかった・・

 

「兄上様・・嬉しいです!!」

 

私がそう言って抱きつくと兄上様は私の背を撫でながら

 

「その・・ごめんな・・もっと気の聞いた事が出来れば良かったんだが・・」

 

謝ってくる兄上様を上目目線で見ながら

 

「いいえ・・そんな事は無いです・・とても嬉しいです・・兄上様・・」

 

そう言うと兄上様は空いてる手で頭を掻く、私は兄上様の身体を離さないように確りと抱きしめ・・観覧車から降りる時間までずっとそうしていた・・

 

「兄上様・・今日はとても楽しかったです・・」

 

帰り道で兄上様の腕を抱き抱えながら言うと、兄上様は

 

「そうか・・喜んでもらえて嬉しいよ」

 

そう笑う兄上様を見ながら私は六課へとゆっくりと歩いて行った・・

 

「大丈夫・・何にも問題ないはず・・うん・・兄と寝るのは何も悪い事じゃない・・」

 

その日の夜、私に兄上様の部屋の前で自分に言い聞かせるようにそう言うと

 

「良しッ!」

 

私は気合を入れて兄上様の部屋の扉を叩き、兄上様の部屋に足を踏み入れた

 

「ん?・・リインフォースか?・・どうした」

 

寝る前だったのかパジャマ姿の兄上様に

 

「その・・一緒に寝たくて来たんですけど・・駄目ですか?」

 

枕を抱き抱えながら言うと兄上様は

 

「別に良いぞ」

 

笑いながら言う兄上様に頷き、私は兄上様と一緒に寝室に向かった

 

「はふう・・暖かいです・・」

 

兄上様の胸に顔を埋めながらそう呟くと兄上様は

 

「少し・・近すぎないか?」

 

少し赤面している兄上様に

 

「近くないです・・これくらいが丁度良いです・・」

 

さらに抱きしめる力を強めると

 

「まぁ・・良いか・・ヴィータもこんな感じだしな・・」

 

そう呟く兄上様の胸に顔を埋めながら

 

(私はどんどん欲張りになってしまう・・最初は傍に入れれば良かったのに・・今はそれだけじゃ嫌だ・・兄上様に愛されたいと思ってる・・でも・・これは・・これで心地良い感覚だ・・自分が・・プログラムじゃないと認識できるから・・)

 

プログラムである時の私なら・・こんな感情は持たなかっただろう・・だから今こうして兄上様を愛する気持ちがある以上私はプログラムでは無いのだ・・私はそんな事を考えながら心の中で

 

(兄上様・・私は・・貴方の事を愛しています・・)

 

そう呟き眠りに落ちた・・少しずつ変わり始めた祝福の風・・これから彼女がどうなるのか・・それはきっと誰にも判らないでしょう・

 

おまけ

 

リインフォース ステータス

 

愛情度 150 これが高いほど龍也に対する愛が高い事を示す 

 

狂愛度 0 これが高いほど龍也に対する執着度+嫉妬度が上昇し、常軌を逸した行動に出るようになる セッテは300

 

純愛度 180 これが高いほど純粋に龍也を愛している

 

積極性 70 積極性をもって行動する、この数値だと色仕掛けなどの行動が出来ない

 

恥じらい 200 肌をさらす事への抵抗、この数値では水着などになることも出来ない

 

執着度 10 龍也に対する執着度 これが高いほど病んでいる。はやての数値は400・・危険域の病み度である

 

嫉妬度 5 龍也が誰か他の女性といる時に感じるムカムカ・・この数値ではあんまり気にしない・・フェイトの数値は250

 

 

おまけ2

 

ヴィータ達が自分の誕生日をした記念日

 

ヴィータ 初めて龍也に抱きしめられて寝た日

 

シグナム 龍也に服を送られた日

 

シャマル 初めてまともに料理を作れた日

 

リインフォース 初めて龍也から誘われてデートに行った日

 

 

 

祝福の風と守護者と 終り



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祝福の風と融合騎と

祝福の風と融合騎と

 

ケース1 先生 リインフォース

 

「むにゅううううう・・・頭痛いです・・」

 

「うー・・サボりすぎた・・」

 

「・・・・・」

 

「・・に・・兄さんに聞き・・に行きましょうか?」

 

書類の山の前で頭を抱える、リィン、アギト、ユナ、アザレアの4人の融合騎、皆、龍也と遊ぶのに夢中になりすぎたり、甘えすぎたりで書類が山のように溜まってしまったのだ・・4人が頭を抱えてると

 

「どうしたんだ・・この書類の山は?」

 

手に料理の本や裁縫の本を持ったリインフォースがやって来て尋ねる、リィン達は

 

「お姉様!」

 

「姉!」

 

 

「お姉ちゃん!」

 

「ね・・姉さん・・!!」

 

天の助けという表情の4人は声を揃えて

 

「「「「助けてください!!!」」」」

 

そう言った・・

 

「全く・・ちゃんと仕事はしておくべきだ、アギト・・そこ違う、ユナ・・字が間違ってる、リィン寝るな!・・アザレアは・・言う事は無いか・・」

 

1人で4人分の書類を見ながら、ここはこうだ、間違ってるなどと丁寧に教え始めた、リインフォース、丁度そこに

 

「み・・仕事中か・・」

 

龍也が手にクッキーや紅茶を持ってくるが、リインフォースに教えられながら仕事をしている、リィン達を見てゆっくりと柱の陰に隠れ、微笑ましそうな表情でリインフォース達を見ながら

 

「ふふ・・こうして見ると、本当の姉妹のようだ・・ん?・・姉妹なのか?・・どうなるんだ?」

 

何かを考え始めた龍也だが

 

「まぁ良いだろう・・特に意味の無いものだしな・・こうしている事が姉妹の証明か・・」

 

そう呟いた龍也は持っていたクッキーと紅茶を見て

 

「持ってくるのはもう少し後にするか・・」

 

そう呟いてその場所を後にした・・それから数時間後・・

 

「「「「終わった・・」」」」

 

燃え尽きているリィン達と

 

「全く・・今度からもう少し気をつけるべきだな・・」

 

そう言いながらも笑っているリィンフォースの所に

 

「終わったかね?」

 

龍也が紅茶とクッキーを持ってやって来て、リィン達の前に置き自分も椅子に腰掛け、紅茶とクッキーを食べながらリィン達の話を聞きながら、穏やかな時間を過ごした・・これは兄と妹達の穏やかな一時の話・・

 

 

 

ケース2 お姉ちゃんの修行

 

 

「あっ・・あっ・・」

 

厨房で項垂れるリインフォース・・手に持ったフライパンからはまるで火事のように煙が上がっている

 

「うう・・本を見てるのに・・」

 

本を開いてそれを見ながら料理をしていたようだが・・失敗してしまったようである

 

「えうう・・兄上様に・・食べて欲しいのに・・こんなのじゃ駄目だ・・」

 

るる~と涙を流しながら呟いているリインフォースの元に

 

「お姉様?・・何を落ち込んでいるのですか?」

 

とことことやって来たリィンが尋ねる、リインフォースは泣きそうな声で

 

「あ・・兄上様に料理を食べて欲しいのだが・・こ・・こんなのでは駄目なんだ・・」

 

可哀想な玉子焼き×3+悲劇のチャーハン1・・一応皿の上に載っているが・・殆ど炭化してしまっていて、一目では何か判らない・・それを見たリィンは

 

「少し待ってるです」

 

とてとてと走り出すリィン・・残されたリインフォースは

 

「これ・・どうしよう・・捨てるしかないか・・」

 

炭化してしまった料理を片付けていると

 

「お待たせしましたです!!」

 

リィンが青いエプロンを装着して戻ってきて、厨房に入って

 

「むふふ~リィンは料理が得意なのです!!お姉さまに教えてあげるです!!」

 

にこやかに微笑むリィンにリインフォースは

 

「た・・頼む・・」

 

藁にもすがる思いでリィンに料理を教えて貰い始めた

 

「むー火が強いです、そこは中火です」

 

「むっ・・そ・・そうか・・次は?」

 

リィンに言われた通り火を調整した、リィンフォースにリィンは

 

「次は切ったお野菜とお肉です」

 

「わ・・判った・・」

 

リィンに教わりながら料理を作っているリインフォース、丁度その時食堂にヴィータが来る、料理をしてるリインフォースとリィンを見て

 

「私も昔やったなあ・・はやてに教わりながら・・兄貴に食べさせるんだよな・・しょうがない・・呼んで来てやるか」

 

昔を思い出したのか楽しそうに笑いながらヴィータは龍也の部屋に向かって歩き出した・・それから数分後

 

「うん、美味しいじゃないか」

 

自分が作ったチャーハンと卵スープを食べた龍也からそう言われたリインフォースは

 

「ほ・・本当ですか・・う・・嬉しいです・・」

 

もじもじとしながらも嬉しそうに笑っていた・・これは恋する乙女の幸せな一時・・

 

 

 

ケース3 祝福の風と融合騎達・・

 

六課の外、龍也とヴィヴィオが良く昼寝してる場所

 

「むにゅ・・ほえ?・・姉さん?」

 

「うん?・・起きたか、アザレア」

 

眠りこけていたアザレアの頭を撫でながら微笑むリインフォースにアザレアは

 

「・・えっと・・その・・おはようございます」

 

困惑しながら言うアザレアにリインフォースは

 

「うん、おはよう、こんな所で寝てしまうとは疲れてしまったのか?」

 

そう尋ねられたアザレアは赤面しながら

 

「えっと・・その・・ですね・・何と言えばいいのでしょうか?」

 

しどろもどろのアザレアにリインフォースは

 

「無理に言わなくても良い、では私は行くな」

 

そう言って立ち上がろうとするリインフォースの腕をアザレアが掴み

 

「ちょっと・・ちょっとだけ待っててください」

 

そう言われたリィンフォースは微笑みながらしゃがみ込み

 

「ん、判った」

 

木に背中を預けるリインフォース・・暫くアザレアと話してると

 

「姉!!」

 

「お姉様!!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

とてとてと走ってくる、リィン達

 

「どうしたんだ?そんなに慌てて?」

 

首を傾げるリインフォースにアギト達は

 

「へへ・・はい!!遅れたけど誕生日プレゼント!!!」

 

アギト達がそれぞれ、エプロン、腕時計、ペンダント、ぬいぐるみを差し出す

 

「へ・・わ・・私にか?」

 

困惑するリインフォースにアギト達は

 

「うん!!大好きな姉にプレゼント・・少し遅れちゃったけど・・頑張ったんだぜ」

 

「リィンはペンダント作ったですよ、大切にしてくださいね」

 

「私は・・買って来ました・・で・・でも・・今度はちゃんと手作りのを・・上げますから・・」

 

「私のお気に入りのぬいぐるみです、大切にしてくださいね」

 

渡されたプレゼントを受け取ったリインフォースは

 

「・・ありがとう・・凄く・・嬉しい」

 

そう言って微笑むリインフォースの笑顔はとても美しかった・・それから数時間後

 

「うーん・・おらんね・・皆・・どうしたんやろ?」

 

「そうだな・・」

 

龍也とはやてが姿の見えないリインフォース達を探していた、そして木のある方に行ったとき

 

「はは・・仲がええね」

 

「本当だな」

 

木に背中を預け眠るリィンフォースとそれに寄り添うように眠るアギト達、それを見た龍也とはやては

 

「もう少し後で起こしに来ようか」

 

「そうやね・・」

 

その場を歩き去ろうとする龍也の背にはやてが飛び乗る

 

「ん?どうした?」

 

「んー甘えたい気分」

 

えへへと笑うはやてに

 

「はいはい、判りましたよ」

 

はやてをおんぶしたまま歩いていく龍也・・これは兄妹達の確かな絆の話

 

 

 

最終ケース 結局の所お姉ちゃんも甘えん坊なのです

 

「・・その・・ご迷惑でしたでしょうか?」

 

キャッキャッと遊びまわるリィン達を見ながらそう尋ねるリインフォース、今日はアギト達が楽しみにしている龍也と寝る日であり、そこに無理やり来てしまったリインフォースがそう尋ねると

 

「ん?迷惑じゃないぞ?「に・・・兄さん・・抱っこ・・」はいはい」

 

ぬいぐるみ(ドラゴン)を小脇に抱えたアザレアを抱っこする龍也、それを見たアギト達は

 

「ずるい!!私も!!」

 

「リィンもです!!」

 

「当然、私もです」

 

3人が自分も自分もと言って龍也の背中や肩に抱きついて満足げな表情をする、龍也は

 

「皆甘えん坊だな・・しかし遊ぶのはここまでもう寝るぞ」

 

と穏やかに笑いながらアギト達の頭を撫で、そう言うと

 

「「「「はーいッ!!!」」」」

 

寝る準備を始めるアギト達を見てリインフォースは

 

「えっと・・じゃあ・・私はこっちで・・」

 

隅に行こうとするリインフォースの腕をリィンが掴んで

 

「お姉さまはこっちです」

 

リィンはリインフォースを龍也の隣に座らせ、その隣に自分とユナが、龍也の隣のアギトとアザレアがそれぞれ横になり

 

「んふふ~お兄様とお姉様と一緒です」

 

幸せそうなリィン達にリィンフォースは嫌とは言えずそのまま眠りに落ちた

 

「兄ちゃん、皆そろそろ・・おき・・んーもう少しこのままでええかな?」

 

「そうですね・・もう少しだけ」

 

「んー私も・・」

 

「「ヴィータ」」

 

「んぐっ・・ごめん・・」

 

良く朝、中々起きてこない龍也達を起こしに来たはやて達は楽しげに笑いながら龍也の部屋を後にした、龍也の部屋では

 

「むにゅ・・兄上様・・」

 

「兄」

 

「お兄ちゃん」

 

「兄さん」

 

「お兄様」

 

龍也の腕を掴んで幸せそうに眠るリインフォース、龍也の身体に抱きつき眠るアザレアとアギト、龍也とリインフォースの間で幸せそうな笑みのリィンとユナの姿があった・・

それは幸せな一時の一ページ

 

祝福の風と融合騎と 終わり



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酔い龍也リターンズ 

酔い龍也リターンズ

 

「んしょ!!んしょ!!出来たです~」

 

食堂で何かを作っている妖精コンビ・・リィンとアギトは嬉しそうに出来た物を持ち上げながら

 

「これで兄も元気になるよな!!最近兄は疲れてそうだったからな!!」

 

2人は最近仕事で疲れている龍也の事が心配になり、疲れが取れる物を作っていた様である・・リィンは笑いながら

 

「間違いないです!!これでお兄様も元気になりますよ~さっ!!アギトちゃん早くお兄様に持って行くです!!」

 

「おう!!」

 

2人はエプロンを着けたまま食堂を後にした・・2人が去った食堂の厨房には一冊の本・・そこには

 

「美味しいチョコレートの作り方~ウィスキーボンボン編~」

 

と書かれた雑誌と空っぽになったウィスキーの瓶が大量に落ちていた・・

 

2人が良かれと思って作ったこのチョコレートが大騒動の引き金になるとは、この時誰も予想していなかった・・

 

 

 

「ふぅ・・疲れた・・」

 

私は椅子に深く腰掛けそう呟いた・・大将に昇格した後書類がこれでもか!!と言わんばかりに増えた・・まぁそれは良い・・地位が上がれば忙しくなるのは当然だ・・だがそれより私が参っている物それは・・

 

「カリム・・しつこすぎるだろう・・」

 

カリム・・いや聖王教会から来ている書類だ、ジオガディスとの決戦の際に聖王の魔力を扱えるようになった・・だがそれが原因で聖王教会がうるさい、やれ管理局を辞めろだの、聖王教会に正式に所属しろ等、来る度に断っているがいい加減鬱陶しくなってきた・・

 

「はぁ・・こう疲れが取れるものは無いかな?」

 

私がそう呟くと同時に

 

コンコン!

 

扉がノックされ

 

「お兄様!今良いですか?」

 

「兄!時間あるか?」

 

扉の外からリィンとアギトの声が聞こえる

 

「何のようだろうな・・っと・・2人にだらしない格好は見せられないな・・」

 

服をちゃんと着直してから

 

「入ってきても良いぞ」

 

と声を掛けると、エプロンを着けたリィンとアギトが笑いながら入ってくる

 

「お兄様!!最近疲れてそうでしたから、アギトちゃんと良い物を作って来たです!!」

 

リィンは箱に入ったチョコレートを差し出しながら言う、私はそれを受け取りながら

 

「態々私の為に作ってくれたのか?」

 

2人に尋ねると、2人笑いながら頷いた、

 

「そうか・・ありがとう、食べさせて貰うとするよ」

 

甘いものは苦手だが、態々2人が私の為に作ってくれた物だ・・苦手とか以前にただただ嬉しい・・そう思いながらチョコレートを口に運ぶと同時に私は意識を失った・・

 

 

 

「・・・どうしたんでしょう?何か間違えましたか?」

 

チョコを食べるなり意識を失った、お兄様を見ながら隣のアギトちゃんに尋ねると

 

「判らない・・砂糖と塩間違えたか?」

 

アギトちゃんと、あーでもない、こーでもないと話していると

 

バッ!!

 

お兄様が突然立ち上がり

 

「にゃはははは!!!」

 

普段なら消して出さない笑い方で笑い始めたです・・その姿に

 

「・・・アギトちゃん・・リィン達もしかしてお酒チョコに入れちゃったですか?」

 

間違いなく酔っている・・そう思い隣のアギトちゃんに尋ねると

 

「あーもしかしてウィスキーって酒だったのか?・・私は調味料かと思ってたんだけど・・」

 

リィンもです・・リィンもそう思ってましたでもお兄様の様子を見ると、それは調味料ではなくお酒だったようです・・どうしようかと考えていると

 

「あー!!リィンとアギトだ~!!チョコレート美味しかったよ~」

 

お兄様が一瞬で私とアギトちゃんを抱き抱え、上機嫌で言います・・でもそれで判りました・・お兄様は酔っていると

 

「んふふ~お兄さんはもの凄く嬉しいですよ~」

 

と笑いリィンの頬に頬擦りします・・恥かしくて逃げようとしますが・・無理ですお兄様の力の方が上で脱出は無理でした・・

 

「んっふふ~2人とも良い子良い子」

 

と笑うお兄様はしばらくそのまま上機嫌で笑っていましたが、突然立ち止まり

 

「にゃははは~高速回転スタンバイ~」

 

あっ・・もう終わりですか・・リィンが何をされるか理解した瞬間お兄様は高速回転し、私とアギトちゃんは意識を失ったです・・

 

 

 

「あれ?あれ龍也さんだ」

 

私は目の前をフラフラと歩く龍也さんを見つけた・・

 

ゴン!!

 

良い感じに壁にぶつかる龍也さんに何かあったのかと思い近づく

 

「ん~にゃはははは・・・スバル~みーつけた!!」

 

龍也さんはそう言うと行き成り私を抱きしめて来た・・そして気付く・・龍也さんが酔っていると・・

 

「スバル~お兄さんは今から食堂に行くです~だから一緒に行きましょう~」

 

龍也さんは私を抱き抱えたまま移動を始めた・・龍也さんの背が高い為私の足は地に付かず宙ぶらりんであり・・私は首根っこを掴まれる猫の気持ちを理解していた・・

 

「龍也さん・・放してくれますか?」

 

好きな人に抱きしめられるのは嬉しい・・だがそれ以上に恥かしく放す様に言うと

 

「やーだ!!にゃはははは!スバル~は軽いな~ちゃんとご飯食べてるか~」

 

話が噛み合わない・・酔っ払い状態の龍也さんと会話しようと言うのがそもそもの間違いだ・・そう思っている内に食堂に着いてしまった・・

 

(ああ・・多分皆いる・・私今日が命日かな・・)

 

こんな状態・・龍也さんに抱きしめられた状態で、部隊長達の前に行く=死である・・

 

(ああ・・短い人生だったな・・)

 

と思っている龍也さんは

 

「さ~ご飯を食べましょう~」

 

と笑い食堂に入って行った・・

 

「あ・・た・・つ・・やさん?・・どうしてスバルを抱きしめてるんですか?私に教えてください・・」

 

ヒィィィ・・・・行き成りなのはさん!!死ぬ!!本当に死ぬよ~と思っていると龍也さんは

 

「ん~?スバルを抱きしめてる理由~ん~と~見つけたからだよ~なのは~」

 

にゃはははと笑う龍也さんを見て、食堂にいたメンバーは

 

「・・どう見る?龍也酔ってる?」

 

「酔ってるね・・大体龍也さんはにゃははなんて笑わない・・それは私の昔の笑い方だもん・・」

 

ひそひそよ話すなのはさんとフェイトさんに

 

「酔ってる・・お父さんが酔ってる・・」

 

カタカタと震え始めたキャロを連れて、エリオとルーテシアが食堂から姿を消し

 

「兄貴が酔ってる・・チャンス・・?」

 

「でもスバルを抱き抱えてるのはマイナスやな・・」

 

「兄上の酒乱癖が・・いやそもそもなんで兄上は酔ってるんだ?」

 

ぶつぶつと話している部隊長達・・ああ・・チンクさん達が居なくて良かった・・もしいたら私セッテに殺されてたと思っていると

 

ガチャッ!!ゴリ・・

 

頭に妙な感覚を感じ其方を見ると

 

「抜け駆けね・・良いわ・・私が引導を渡してあげる・・」

 

黒い目のティアが居た・・・殺される!?誰でもないパートナーに殺されると思っていると

 

「んー?あ~ティアナだ~ティアナも捕まえた~」

 

ガバッ!!

 

私を抱き抱えたまま器用にティアも抱きしめる龍也さん・・助かった・・これで私殺されないと一安心し、ティアを見ると

 

「ふにゃ~」

 

とろんとした目で笑っていた・・でもどうすれば解放されるのだろうと考えていると部隊長が

 

「兄ちゃん、スバルとティアナ、放さんといかんで?」

 

と笑いながら話しかけるが・・その目からは光が消えていた・・相当イライラしてるのが判る・・私が部隊長の様子を観察していると龍也さんは

 

「ん~やだ~スバルとティアナ良い匂いがするから~」

 

ギュウウ!!

 

更に抱きしめる力が強まる・・だがそれ以前に

 

(今匂いって言った?・・恥かしい!!早く放して~)

 

物凄く恥かしくなって拘束から逃れようとじたばたしていると

 

「ほら、兄ちゃんスバルも放して欲しいって言ってるで?だから放したほうが良いで?」

 

諭すように部隊長が言うと

 

「んー判った・・嫌なら放すよ~」

 

そう言うと龍也さんが私とティアを降ろし

 

「にゃははは~」

 

再びにゃははと笑い始めた・・一体何がそんなに楽しいのだろう?と思っていると

 

「兄ちゃん・・お酒飲んだ?」

 

と部隊長が尋ねると

 

「ん~お酒~お兄さんはお酒なんか飲んでませんよ~お兄さんはチョコ食べました~」

 

と笑い懐からチョコを取り出し口に運ぶと

 

「ひっきゅ!!・・にゃははは~良い気分です~」

 

更に酔ったようで更に笑い始めた龍也さんに確信した・・このチョコが原因だと・・

 

「兄ちゃん・・私にもそれ頂戴」

 

部隊長もチョコが原因だと判断したのかチョコを頂戴と言うと

 

「ん~はやても欲しいの~良いよ~上げる~パクッ・・ん~」

 

チョコを加え部隊長を見る龍也さん・・って!!酔いすぎでしょう!!と思い部隊長を見ると

 

「・・これはあれや・・チョコを食べるだけやキスやない・・パクッ」

 

部隊長がチョコを銜えると龍也さんはチョコを銜えるの止め

 

「にゃははは~美味しいだろ~リィンとアギトが作ってくれたんだよ~」

 

あの2人の姿が見えないと思ってたけど・・多分もう犠牲者になっているのだろうと私は理解した

 

「もぐ・・もぐ・・何やこれ!!むちゃくちゃアルコールの味がするで!!」

 

部隊長がそのチョコを食べながら言う・・その顔はうっすらと赤みを帯びている・・恐らくチョコのアルコールが原因だろうと思っていると

 

「ん~にゃはは・・おっと・・ビリッ!!・・へっ!?」

 

笑っていた龍也さんがバランスを崩し倒れると同時に布が裂ける音が聞こえる・・恐る恐る聞こえた方を見ると

 

「・・・かあああああ・・・」

 

ティアの上着の一部が破け・・下着が僅かだが見えてしまっている

 

「ひっく・・ごめん・・足滑った・・ひっきゅ・・」

 

しゃっくりをしながら龍也さんはしゃがみ込みティアの右頬に

 

チュッ!

 

「ボン!!」

 

ティアの顔がトマトの様に紅くなる

 

「本当~ごめんな~業とじゃないんだよ~」

 

とティアの頬にキスした、龍也さんは笑いながら立ち上がり破けた制服を広い

 

「ひっく!・・本当・・ごめんな~」

 

それをティアに手渡す、ティアはそれを受け取りキスされた右頬を押さえ

 

「・・・」

 

無言で食堂から歩き去った・・だが怒ってる訳ではなくどこか夢を見ているような表情だった・・私も食欲が無くなりティアの後を追う様に食堂を後にした・・

 

 

 

「・・・・ティアナ・・嬉しそうだったね・・」

 

ぼそりとフェイトちゃんが呟く・・確かにティアナの顔は嬉しそうだった・・そんな事を思いながら龍也さんを見ると

 

「ひっきゅ!!ひっきゅ!!にゃはははは!!!」

 

と笑う龍也の近くには

 

「「ポーッ・・」」

 

夢見心地と言う感じでシグナムとヴィータが頬を押さえていた・・さっき近付いた瞬間抱きしめられキスの嵐を受けていた・・多分それが原因だろう・・2人とも幸せそうにその場にへたり込んでいた・・正直前に龍也さんが酔った時より酷い有様だと思っていると

 

「なぁ・・兄ちゃんは私が好きか?」

 

はやてちゃんが龍也さんの前に座り尋ねると

 

「ん~?はやて~ん~お兄さんははやてが大好きですよ~ひっく!!おいで~ハグしてあげる」

 

と両手を広げる龍也さんにはやてちゃんは

 

「ん~私はハグよりキスの方が・・チュ!・・・・」

 

キスの方がと言った瞬間、龍也さんがはやてちゃんの頬にキスをする・・それにはやてちゃんは何かを気付いたようだ

 

「・・・兄ちゃん・・ギュッ!ってして欲しいな~ギュウウ!!・・ん~ちょっと痛いけど幸せや~」

 

はやてちゃんをしっかりと抱きしめる龍也さんに私も気付いた・・

 

(まさか・・言う事を実行してるの?)

 

酔いすぎて言う事を実行している、と私も判断したフェイトちゃんも同様の様だ、そう思い近付く

 

「んにゃ~幸せ~」

 

夢見心地と言う感じで龍也さんの胸に顔を埋めるはやてちゃんに

 

「ねぇ・・その・・私達もその何か頼みたいだけどな~」

 

と言うとはやてちゃんは

 

「ん~あんまり過激なのは駄目やで?今の兄ちゃん頼めばなんでもしそうやからな?」

 

と私とフェイトちゃんに釘を刺してから、はやてちゃんは龍也さんから離れた

 

「ん~?ひっく!なのはとフェイト~どうした~」

 

虚ろな目で笑う龍也さんの前にしゃがみ

 

「あの私もギュッてして欲しいな~」

 

ガバッ!!ギュウウウウ!!!

 

言い掛けた瞬間龍也さんの腕が伸び私を抱きしめる

 

「ん~?これで良いの~?」

 

子供見たいに笑う龍也さんの胸に顔を埋める・・さっき見たが凄く羨ましかったので顔を埋めてみる

 

(凄い幸せ・・このままでも良いよ)

 

すっぽり包まれているこの感覚はとても心地良い・・ずっとこのままでも良いと思ってしまう・・そのまま10分程そのままで居ると

 

「ほい!もう終わりや!兄ちゃんから離れろ」

 

はやてちゃんに離れる様に言われ名残惜しいが離れる、すると直ぐにフェイトちゃんがしゃがみ込み

 

「龍也、私はキスして欲しいな~チュ!!」

 

というと抱きしめられた上に頬にキスして貰っている・・その光景を見て

 

(私もキスして貰った方が良かったかな?)

 

と感じていた、フェイトちゃんも10分程で離れるように言われ、渋々離れると

 

「ん~むにゃむにゃ~」

 

龍也さんは完全に酔いが回ったのか眠ってしまった

 

「なんや・・もう寝てもうたか・・まだ頼みたい事あったのにな~」

 

残念そうに言いながらはやてちゃんが龍也の頬を突く

 

「本当こうして見ると子供見たいやな・・」

 

穏やかに寝息を立てる龍也さんは子供の様で見ているだけで癒される

 

「さてと・・何時までもこんな所で寝かせられんな・・ほら2人とも肩貸して兄ちゃんを部屋まで連れて行くから」

 

頷き3人で龍也を抱え部屋まで連れて行った・・次の日

 

「頭が痛い・・私は昨日何をしてたんだ?」

 

頭を抱える龍也さんの姿を見ていると・・ティアナが破けた制服を龍也さんの前に置き

 

「龍也さん・・昨日貴方が破いたこの制服治してくれませんか?」

 

と言うと龍也さんは顔を青褪めさせ

 

「破いた?・・私が・・?・・私は昨日何をしたんだ教えてくれ・・何も覚えていないんだ」

 

不味い・・教えない様にしていたのに・・これで龍也さんは知ってしまう昨日何があったのかを・・慌てて止めようとするがそれより早く

 

「昨日、龍也さんは酔って、私の服破いたんです・・それ以外にも色々してましたよ?」

 

若干顔を赤めながらティアナが言う・・多分昨日のキスの事を思い出しているのだろう・・だがそれと半比例して龍也さんは顔を青褪めさせて立ち上がり、ゆっくりと柱の方に歩いて行く・・まさか・・フェイトちゃん達も気付いたのか立ち上がり止めようとするがそれより早く

 

「私は!!何という事を!!!死ね!!!死んでしまえ!!」

 

ガン!!ガン!!ガン!!

 

頭を柱に打ちつけ始めた龍也さんを止めるのにまた1騒動会った・・これは賑やかな機動六課の日常の1ページ

 

 

酔い龍也リターンズ 終り



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ちびちび龍也

ちびちび龍也

 

「うー酷い目に会ったぜ」

 

頭を押さえながら私は呟いた、兄の疲れを取ろうとチョコを作ったが・・不覚にも酒を入れてしまい、酔っ払った兄に振り回され私とリィンは意識を失った・・今は医務室でシャマルと話をしている

 

「うーん・・お兄さんの疲れを取ろうってアイデアは良かったんだけどね~お酒が不味かったわね・・お兄さんはお酒に弱いから」

 

笑いながら言うシャマルにリィンが

 

「でもお兄様が疲れてるのは変わってないです、だから何とか疲れの取れる物を作ってあげたいです」

 

うん、確かにリィンの言うとおりだと思い頷くと

 

「そうねぇ・・そうだ!!お兄さんに夕ご飯を作って上げましょう!!疲れの取れるスタミナ料理を」

 

料理・・そうだそれで行こう!!私達は食堂に行き料理を作り始めた・・だがそれが切っ掛けでまた大事件が起きる事になる・・

 

 

 

「今日龍也さん姿見せなかったね、どうしたのかな?」

 

演習場から戻りながら隣のティアに言うと

 

「疲れてたんじゃないかしら?最近龍也さん疲れてたみたいだから・・」

 

2人でそんな事を話しながらシャワールームに向かっていると

 

「♪~♪~」

 

楽しそうな鼻歌と同時に5歳くらいの銀髪の男の子が歩いて来て、私達と擦れ違う

 

「・・ねぇ・・今の男の子誰かに似てなかった?」

 

ティアに尋ねると

 

「そうよねぇ・・誰かに似てる・・でも誰かしら?」

 

考えても判らないのでシャワー室に向かった・・

 

「あ~さっぱりしたね~」

 

タオルで頭を拭きながら言うと、視界の隅にちょこちょこと動く小柄な影に気付く

 

「あれ・・さっきの男の子かな?」

 

その方を指差しながらティアに尋ねると

 

「多分ね・・誰かの子供かしらね?」

 

と2人で話していると

 

「う?お姉ちゃん誰?」

 

誰かが話しかけたようで話し声が聞こえる、誰かと思い歩いていくと

 

「・・そんな・・まさか・・この子は・・・・」

 

セッテが何かを呟き次の瞬間・・

 

ガバ!!

 

確りと抱きしめその子供を抱き上げるセッテを見て、ティアが

 

「あの病み娘・・龍也さんが振り向いてくれないからって遂に犯罪に走った見たいね・・」

 

かなりきつい事を言うティアを横目に見ながら

 

「ねぇセッテ、その子セッテの知り合い?」

 

子供を抱きしめるセッテに尋ねると

 

「判らないのですか?この子供が誰か?」

 

逆に首を傾げるセッテに

 

「うん・・判らない・・その子誰なの?」

 

子供を指差すと

 

「はぁ・・良いですか良くこの子を見てください」

 

その子供を私とティアナの前に持ってくる

 

「う?」

 

小首を傾げる男の子はとても可愛らしい・・それに珍しい蒼銀の瞳と目に切り傷がある・・?蒼銀?・・目に切り傷?・・あれ?ジーッとその子供の顔を見て

 

「「ああ~ッ!!!!!」」

 

気付いた・・いや気付いてしまった・・この子は

 

「「龍也さん!?」」

 

子供になっているがそれは間違いなく龍也さんだった・・龍也さんと言うと

 

「お姉ちゃんも何で、僕の名前知ってるの?」

 

首を傾げる子供・・もとい龍也さんを見る・・もうとんでもなく可愛いずっと抱きしめていたい・・そんな衝動が襲ってくる・・

 

「ねぇ・・セッテ・・龍也さん貸して」

 

抱きしめたくて言うとセッテは

 

「嫌です、そもそも言われないと気付かなかった貴方達に龍也様を抱きしめる資格はありません」

 

そう言うとセッテは速足で歩き出してしまった・・私とティアは

 

「「ちょっと待って!(待ちなさい!)」」

 

2人でセッテの後を追った・・

 

ズーン・・

 

食堂で頭を抱える、部隊長を除く隊長陣とチンク達・・理由は

 

「あううう・・なんで判らなかったの?」

 

子供化した龍也に気付く事が出来ず、セッテに龍也さんを渡して貰えないのが理由だ・・その子供化した龍也さんは

 

「美味しい~」

 

お子様ランチ(セッテがコックを脅し無理やり作らせた一品)を口の周りを汚しながら笑顔で食べていた

 

「あううう・・可愛いよ~セッテ・・お願いだから・・駄目です!貴女に龍也様を抱きしめる資格はありません!!・・うう・・」

 

何度かトライしているがセッテは消して龍也さんを放そうとしないのだ・・今も膝の上に乗せて放そうとしないのだ

 

「でも何で龍也さんって判ったの?はっきり言って全然判んないよ?」

 

良く見れば判るがはっきり言って見て直ぐは判らない・・どうして判ったのかと尋ねると

 

「私と貴女達は違うんですよ」

 

勝ち誇った笑みを浮かべるセッテに

 

「くぅぅぅ・・何であの時気付かなかったのよ・・私の馬鹿・・」

 

悔しそうに言うティアナを見て

 

「ふん・・所詮はその程度って事ですよ・・姿形が変わったくらいで判らないとはなんと愚かなんでしょうね?」

 

「「がふっ!!」」

 

ティアだけでは無くなのはさん達も血を吐く・・そんなやり取りを繰り返していると

 

「皆~おはようさん~兄ちゃん見なかった?」

 

笑いながら龍也さんを見なかったかと尋ねる部隊長を見て

 

「ふふふ・・狸は気付きますかね?」

 

セッテは黒い笑みを浮かべながら

 

「はやて、この子は誰か判りますか?」

 

小さい龍也さんを抱き抱え部隊長に言うと

 

ヒュン!!

 

「ば・・馬鹿な・・」

 

一瞬でセッテの腕から龍也さんを奪い返し

 

「兄ちゃんやろ?何でそんな簡単な事聞くん?・・ん~兄ちゃん可愛いなぁ~」

 

小さい龍也さんに頬擦りしながらセッテを見る部隊長

 

「ん~?お姉ちゃん誰?」

 

首を傾げる小さい・・言い難いや・・チビ龍也さんに

 

「私はな、はやて言うんや、宜しくな」

 

と笑い部隊長を見てチビ龍也さんは

 

「うん!!」

 

満面の笑みで返事を返した・・

 

 

 

 

「んー可愛いな~でもなんで兄ちゃん小さくなったんや?」

 

膝の上に兄ちゃんを乗せながら皆を見る・・セッテを除き机に伏せて血を吐いている・・一体何が・・そんな事を思いながら机を見回すと

 

コソコソ・・

 

見つからない様に動くシャマルを見つけて

 

「シャマル~まさか兄ちゃんに何かやったのシャマルか~今なら怒らんで教えてなぁ」

 

シャマルを見ながら言うと

 

「はひぃ!今説明します」

 

おどおどと歩いてきたシャマルはゆっくりと説明を始めた・・昨日スタミナ回復料理をオリジナルで作り兄ちゃんに食べさせたそうだ

 

「成る程ねぇ・・シャマルのアレンジ料理の効果か・・んーグッジョブこれは良い仕事やで」

 

兄ちゃんの頭を撫でながら親指を立てると

 

「怒らないですか?お兄さんをそんなにしっちゃたのに?」

 

と言うシャマルに

 

「何で怒るんよ?こんな可愛い兄ちゃんそんなに見えへんで?」

 

膝の上の兄ちゃんを見ると

 

「ん~」

 

すりすりと頭を擦り付けて来る・・可愛すぎる・・もうこれは凶器の域や・・と思い頭を撫でていると

 

「八神兄様~ここにクッキーがありますよ~」

 

クッキーを兄ちゃんに見せ笑うクアットロさん・・馬鹿やな~兄ちゃんは甘い・・

 

ピョン!

 

私の膝の上から飛び降りクアットロさんの前に行き

 

「ちょうだい!」

 

笑いながら両手を差し出す兄ちゃんの姿に

 

(しまった・・兄ちゃん小さくなっとるから甘いのが好きなんや)

 

そう思いクアットロさんを見ると

 

「ほらほら~もう少しで取れますよ~」

 

「えいえい!!」

 

兄ちゃんの手が届かない所にクッキーを持ち上げヒラヒラさせている、兄ちゃんはそれを取ろうとジャンプしてるがギリギリ届かない

 

「う~クアの馬鹿ーッ!!!もう僕クア嫌い!!!」

 

何度やっても取れないので遂には涙目で嫌いと大声で言うと兄ちゃんは、私の所に来て

 

「はやて~お菓子ちょうだい・・」

 

涙目でお菓子が欲しいと言う兄ちゃんの姿を見て

 

「「「「ちょっと待ってて!!」」」」

 

私含め皆が食堂を後にした・・それから数分後

 

「「ほら!お菓子だよ!!」」

 

皆が思い思いのお菓子を持ってきて兄ちゃんに差し出す

 

「う~どれにしようかな~」

 

兄ちゃんは皆が差し出すお菓子を見ながら悩んでいる、その姿も可愛らしくもう今にでも抱きしめたいくらいだ・・だがここは待つ時だ・・だからこうしてお菓子を差し出し待っている

 

「決めた~」

 

ゆっくりとチンクさんの所に歩いて行く・・チンクさんが差し出しているのはチョコバーだ・・しまったやっぱチョコ系で攻めるべきやったかと思っていると

 

「龍也!!お菓子持って来たよ!!」

 

その大声に驚き振り返り、更に驚いた

 

「・・な・・なんて・・量なの・・」

 

ティアナが驚きながら言う、だがそれも無理は無い何故なら、小さな山くらい大量のお菓子の箱があるのだ、それを見て兄ちゃんは

 

「お菓子~」

 

チンクさんの前でUターンしフェイトちゃんの所に向かって歩き、フェイトちゃんの前で

 

「フェイ~お菓子ちょうだい!」

 

と笑い両手を差し出す

 

「うん!!いっぱいあるから好きなの食べて良いよ~」

 

そう言うとフェイトちゃんは兄ちゃんを抱き抱えた・・お菓子勝負はフェイトちゃんの圧勝だった・・

 

 

 

 

「んーーー美味しいーーー」

 

チョコを食べて笑ってる龍也を膝の上に乗せる・・ああ・・なんていう幸せ・・滅多に感じることの無い幸せを噛み締めていると

 

「フェイトちゃん・・そのお菓子どうしたの?まさか買ってきたの?」

 

なのはが尋ねて来るので

 

「これ?前にお中元とかで貰ったやつだよ?私とクロノとリンディ義母さんに来やつ食べきれないからしまっておいたの!」

 

クロノには子供が居るし、リンディ義母さんは甘い物好きだから大量に来るのだ

 

「ああ・・そんな手が合ったのか・・」

 

崩れ落ちるはやてを横目に龍也にお菓子を渡すと

 

「ん~フェイ~大好き~」

 

大好き・・大好き・・大好き・・

 

「私も龍也が大好きだよ~」

 

全力で龍也を抱きしめる・・もう可愛いすぎるよ~ずっとこのままでも良いよ~そう思い抱きしめていると

 

「ん~・・はい!」

 

龍也が食べかけのチョコを私に差し出す

 

「えっ・・どうしたの龍也?」

 

突然の行動に驚くと龍也は

 

「フェイもチョコ食べるの~」

 

笑いチョコを差し出してくる

 

「うん・・ありがとう食べるよ・・」

 

差し出されたチョコを食べる・・

 

(これって間接キスだよね・・小さい龍也だけど嬉しい~)

 

間接キスに感動している隙に龍也が私の膝の上から降り

 

「はい!皆もチョコ食べるの~」

 

皆にチョコを配り始める龍也だったが・・

 

「あう!・・」

 

置いてあったグリフィスの本に引っ掛かり転んでしまう・・グリフィスの本に引っ掛かってだ・・龍也の大きなくりくりとした目に涙が溜まって行き・・

 

「うう・・ひっく・・痛い・・痛いよ・・えぐ・・えぐ・・うええええええんんん!!!!!痛いよ~!!!」

 

大声で龍也が泣き出すと同時に

 

「フェイトちゃん、兄ちゃんは任せる・・私達はちょっとやることが出来たから・・」

 

バインドでぐるぐる巻きになったグリフィスを持ちながら

 

「さて・・私はいまからお話しするけど・・参加希望者は演習場な・・」

 

ズルズルと引きずっていくはやての後を追ってなのは達も姿を消した

 

「痛いよ~!!!」

 

大泣きする龍也を抱き抱えた物のどうすれば判らず困っていると

 

「フェイトは駄目駄目っすね~小さい子の世話が苦手見たいっすね~ここは私に任せるっすよ」

 

自身ありげに笑うウェンディに龍也を手渡すと

 

「良し良し・・痛かったすね~痛いの痛いの飛んでけ~」

 

あやしながら龍也を抱き抱え暫くすると・・

 

「ひっく・・痛かったの・・ぐす・・」

 

徐々に泣き止んでいく龍也に

 

「もう大丈夫すっよ~痛くないっすよね~」

 

笑いながら龍也の頭を撫で笑うウェンディに

 

「ひっく・・ぐす・・うん・・もう大丈夫だよ・・ふぁああ・・」

 

遂には完全に泣き止むと、欠伸をする龍也にウェンディは

 

「泣いたら疲れたっすか?そんならお部屋に連れてってあげるっすよ~」

 

笑いながら龍也の手を握ったウェンディを見て

 

(凄いな・・完全に泣き止ませちゃったよ・・)

 

そのあやしの技に驚いていると

 

「何してるっすか?フェイトも一緒に来るッすよ」

 

笑いながら言うウェンディと共に龍也の部屋に向かい、龍也を寝かせてから部屋を後にし・・演習場に向かいながら

 

「ウェンディは凄いね~あんなに簡単に泣きやますなんて」

 

凄いと褒めているとウェンディは頭を掻きながら

 

「いや・・あれは見よう見真似っすよ・・昔龍也兄がルーテシアをあやしてるのを見て覚えてたんすっよ」

 

恥かしそうに笑うウェンディに

 

「それでも凄いよ、私はおたおたしてるだけだったからね」

 

笑いながら演習場の扉を開くとそこには

 

「・・・・」

 

ぼこぼこにされ逆さに吊られているグリフィスの姿があった

 

「・・・・・これ以上やったら死にそうっすね・・私もお話したかったすけど・・次の機会にするっすか・・」

 

ウェンディに頷き私は自分の部屋に戻って行った・・

 

次の日・・・

 

「なぁ・・フェイト・・昨日私は何してたんだ?・・なにも覚えてないんだ・・はやて達に聞いても教えてくれないんだ」

 

元の姿に戻った龍也が尋ねてくるが・・私は

 

「秘密だよ・・でも変な事はしてないから大丈夫だよ」

 

笑いながら言うと龍也は

 

「そうなのか?・・それなら良いが・・体の疲れも無いし・・気分も良いしな・・」

 

その日から偶にシャマルの特製料理で子供化する龍也の取り合いが機動六課で見られるようになった

 

 

ちびちび龍也終り



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酔い龍也リタ~ンズ改ッ!!!

酔い龍也リタ~ンズ改ッ!!!

 

カツカツッ!!

 

管理局本局を速足で歩く、白衣の男・・ジェイルだ・・私は眉を顰めながら一直線にレジアスの部屋に行き・・そして

 

「レジアスッ!!お前は何を考えてるんだっ!!」

 

そう怒鳴りながらレジアスの部屋の扉を蹴り空けながら入室した・・その怒声に驚いたのはレジアスだろう・・眼を白黒させながら

 

「何をそんなに怒ってるんだ?スカリエッティ?」

 

訳が判らないと言う表情のレジアスの襟を掴み

 

「本当に判らないのか?」

 

睨みながら尋ねると、ゆっくりと頷きレジアスに本気で切れそうになりながら・・冷静に何について怒ってるのか説明し始める

 

「レジアス・・お前は・・いや管理局は何を考えている?・・龍也をあっちこっちに引っ張り出し・・禄に休息も与えない・・このままでは龍也は過労で倒れるぞ?・・そうなる前に私が無理やりにでも休ませるが・・根本的に問題を解決しなければ同じ事の繰り返しだ・・だから・・教えてくれ・・お前が・・管理局が何を考えてるかを」

 

真剣な顔で言うとレジアスは、乱れた襟を直しながら

 

「龍也が疲れている事はワシも把握していた・・「ならば、何故ッ!」・・話しは最後まで聞けスカリエッティ・・だからワシは3提督と協力してある計画を立てていた・・これだ」

 

差し出された書類を見て・・私は・・

 

「レジアス・・私はお前を誤解していたようだ・・お前はちゃんと龍也の体の事を考えていたのだな・・」

 

私がそう言うとレジアスは腕を組みながら

 

「当然だ・・ワシだって龍也のことは心配していた・・それは当然機動六課の魔道師達も同じだろう・・だからこういうのを考えてみた・・」

 

書類の1部分を指差すレジアス・・私はそこに書かれていた一文を見て

 

「完璧だ・・この計画なら龍也を充分に休ませる事が出来る・・」

 

私が書類を返しながら言うとレジアスは

 

「だがこれには1つ問題がある・・恐らく立候補者が続出するだろう・・だが今回は龍也の為の計画だ・・龍也の本心が重要になる・・だから・・これを使え」

 

そう言って差し出されたのは1本の瓶だった・・レジアスはその瓶を指差しながら

 

「それは非常に特殊な酒でな・・アルコールの匂いがしないんだ・・それなら龍也も安心して呑むだろう・・だから龍也の本心を聞いてくれ」

 

そう言うレジアスに頷き、私はその瓶を持って機動六課へと戻った・・

 

 

 

 

その日私達は、スカリエッティさんに呼び出された・・呼び出されたは簡単言えば兄ちゃんに想いを寄せてる面々だ・・なんで呼び出されたのだろうと首を傾げていると、兄ちゃんとスカリエッティさんがやって来て椅子に座る、スカリエッティさんは皆の前に置かれたコップに瓶の中身を淹れて回り、兄ちゃんの真向かいに座り

 

「レジアスが美味しいジュースをくれたんだ・・私も飲んだが実に美味しかった・・だから皆も飲むといい」

 

邪気の無い顔で笑う、スカリエッティさんに頷きそのコップを取ろうとした時、念話で

 

(飲むなっ!!!そのコップの中身は飲むなっ!)

 

と言う警告に驚き手が止まる・・さっき進めておいて飲むな?どういう意味だと私が首を傾げた時

 

ゴトンッ!!

 

兄ちゃんが机に頭をぶつけ停止する・・一体このコップの中身は何だ?と私達が首を傾げた時、スカリエッティさんが

 

「ふぅ・・作戦成功・・皆良く集まってくれた・・今回呼び出したのは全て龍也の為の計画だ」

 

気絶させておいて・・兄ちゃんの為の計画?・・私が首を傾げると同時にスカリエッティさんが

 

「レジアス達が過労気味の龍也を休ませる為にある計画を立てた・・それは管理外の世界で龍也を休ませるという物だ・・だがほっておけば龍也は無茶をするだろう・・だからその監視役として、ドゥーエ、そしてリィン君、アギト君、ユナ君、アザレア君、最後にヴィヴィオがその世界に付き添うことになっている」

 

!!!初耳の事に私達が立ち上がろうとした時、ラグナが手を挙げる

 

「あの・・八神さんの事だからはやてさん達が呼ばれたのは判ります・・では何故私が呼ばれたんですか?」

 

首を傾げながら言うラグナにスカリエッティさんは

 

「君を呼んだのは君にもその世界に行って貰うからだ。勿論行く理由は監視などではない・・君はあの争いの時に管理局員でもないのに・・救護に回ってくれた・・そのお礼としてその世界への旅行とでも思ってくれたまえ・・勿論君の騎士も付き添いだ・・多分外で待ってるから合流するといい、長い事その世界にいる事になる・・準備はちゃんとしておいた方がいいからな」

 

そう笑うスカリエッティさんに頷き、出て行くラグナを見ているとなのはちゃんが

 

「スカリエッティさん・・私達を呼んだ理由は何ですか?」

 

冷静に言うが目は単色に染まり、苛々してるのが判る・・まぁ・・それは私も同じなのだが・・スカリエッティさんは笑いながら

 

「まず君達を呼んだのは龍也と一緒にその世界に行く者を決めるためだ・・勿論決めるのは私でも君達でもない・・決めるのは龍也自身・・」

 

そう笑うとスカリエッティさんは部屋の入り口に行き

 

「酔った龍也はどちらかと言えば本能で動く・・それは酔えば酔うほど強くなる・・まぁ単純に言うと好感度の高い人物を龍也が襲撃するという事だ・・少しばかり恥かしいかもしれんが我慢してくれ・・付き添い出来る人数は8人だ・・それが決まったらここを開ける・・頑張ってくれ」

 

そう言うと扉が閉まる・・えっ・・酔っている兄ちゃんと同じ部屋に閉じ込められた・・その事の事態の大きさに私達が気づいた時

 

「えっ・・兄貴・・?」

 

ジィィィ・・

 

机に伏せてる兄ちゃんが起き出し、ヴィータを穴が開くほど見つめている・・そう思った次の瞬間

 

「ヴィータ~」

 

ガバッ!

 

笑いながらヴィータに抱きつき、ヴィータは突然の事に反応出来ず、押し倒されるように抱きしめられる

 

「ちょっ!兄貴・・やめ・・止めて~」

 

バタバタッ!!!

 

ヴィータが手足をばたつかせ暴れるがそれを無視し

 

「ううん・・ヴィータは可愛いな~私は~ヴィータが大好きだよ~」

 

チュッと言う音が聞こえてくる・・1回どころではなく何回も・・ヴィータは身を捩って抵抗するがそれも無駄な抵抗で終る・・私達の角度からは何が起こっているか見えず・・ヴィータがどうなってしまったのだろうと?考えていると・・兄ちゃんが離れる・・兄ちゃんが離れたことでヴィータの姿が良く見えるようになる・・私達が見たのは

 

「ピクッ・・ピクッ・・」

 

上着の一部がはだけ、手足が良い具合に痙攣しているヴィータの姿があった・・R-18禁な事が起きたのではなく・・唯あちこちキスされすぎて脳の処理が間に合わなくなり気絶してしまったのだろうが・・あれは少し恥かしい所では無い・・皆が見ている前でキスの嵐+気絶した後放置・・恐ろしいと思うのと私はヴィータと同じ様にされるのだろうか?と言う妙な期待感を感じていた・・私達の内・・こういう展開に全く耐性の無いチンクさんが赤面して停止していると・・

 

ユラリッ・・兄ちゃんがチンクさんの後ろに音も無く現れる・・

 

「はっ!?・・あーっ!!!」

 

気付いたがとき既に遅し・・兄ちゃんのコートにチンクさんの姿が消える・・コートの中から

「おおおおお・・落ち着け・・八神・・嬉しいが・・嬉しいのだが・・はっ・・話を聞け~」

 

説得を試みたようだが失敗し、コートの中が別の生き物の様に暴れ回る・・その間中から悲鳴にも似た声が聞こえ・・

 

「止め・・もう・・止め・・あああああ・・・」

 

その声を最後にチンクさんの声は聞こえなくなった・・私達は赤面しながら顔をあわせ

 

「どうする?・・次の犠牲者だれや?」

 

ここに居るのは11人・・後6人犠牲者が居る事になる・・あっ犠牲者というのは正しくない・・今判る兄ちゃんが大好きな人物は後6人という事になる・・私が行っても良いが・・心の準備がまだ・・皆も同じようで赤面しながらお互いの顔を見ていると

 

「にゅふふふ~」

 

その声と共に兄ちゃんがまた活動を再開する・・案の定兄ちゃんが離れた後には・・

 

「ひくっ・・ひくっ・・」

 

ヴィータと同じ様に痙攣しているチンクさんだけが残っていた・・

 

「・・・・」

 

キョロキョロと辺りを見る兄ちゃんは誰かを探しているようだった・・誰を探しているのだろうと思った時・・兄ちゃんの元に歩いて行く1人の人物・・セッテだ・・頬は赤く・・心なしか鼻息が荒いように見える・・キョロキョロと辺りを見回していた兄ちゃんがセッテの姿を見つけると

 

「にぱ~」

 

楽しそうに笑い始める・・それで判った、癪だが3人目はセッテだと・・セッテは無抵抗で兄ちゃんに抱きしめられ押し倒される・・見ているだけでも判る・・相当強い力で抱きしめられるようだがセッテは

 

「はふぅ・・こんな日を夢見てました・・」

 

恍惚とした声で呟いている・・多分セッテの顔はだらしなく緩んでいるだろう・・兄ちゃん至上主義のセッテだ、そんな彼女にとって、兄ちゃんに抱きしめられ、尚且つキスされる・・これ以上にない幸せだろう・・私達がそんな事を思っていると・・兄ちゃんがセッテから離れ始める・・今回セッテは倒れていなかったし・・痙攣もしてなかったが

 

「あは・・幸せ・・ああ・・こんな素晴らしい事が起きるなんて・・私は生きていて良かった・・」

 

とろんとした目でそう呟き、完全に別世界に飛んでしまっているようだった・・私達はある意味戦慄していた・・私達から見えない角度で何が起こっているのか?・・そうしてあんな恍惚とした表情を浮かべるほどの出来事・・何が起こっているのか全く想像できなかった・・私がそんな事を考えていると

 

「「きゃああっ!!」」

 

スバルとティアナが同時に捕まる・・いや捕食される・・もごもごとコートが動き回り、徐々にそれが小さくなる・・明らかに色々吸われている・・やる気とか・・体力とか・・とにかく色々な何かを・・何故そう思うかって?簡単だ・・

 

「「くた~っ・・」」

 

キスの嵐と抱きしめられた、スバルとティアナは明らかに消耗し・・ひくひくと痙攣してる・・その反面兄ちゃんは・・徐々に肌の艶とかが良くなっている・・何が起きてるかは判らないが・・胸を揉まれたりくらいはしているのか知れない・・皆が皆上着の一部がはだけてるからだ・・でも兄ちゃんの事だからそんな事はしてないと思うが・・チラリと横を見る・・ノーヴェ達とシグナムはバリケードを造り防御体制に入っている・・幾ら好きでもあんな状態の兄ちゃんでは嫌なのだろう・・と私が思った時

 

「フェイトちゃん・・ごめん」

 

なのはちゃんがそう呟きフェイトちゃんの背を押す

 

「なのは!?」

 

驚いた声を挙げ倒れかけるフェイトちゃんの手が何かを掴む・・ゆっくりとフェイトちゃんは顔を上げる・・フェイトちゃんが掴んでいた物は・・

 

「フェイト~」

 

にこにこと笑う捕食者と化した兄ちゃんだった・・

 

「あはは・・龍也・・」

 

乾いた笑い声を上げたフェイトちゃんは次の瞬間、コートに包まれ姿が見えなくなってしまった・・コートの中からは

 

「ひゃああああっ!!首っ!首にキスしないで!!ひゃああ耳も噛まないで~」

 

妙に色気の混じった声のフェイトちゃんの声だけが聞こえて来ていた・・

 

(ご愁傷様です・・でも多分私も同じ結末か・・)

 

恐らく、私もなのはちゃんも捕食されて終り・・だが次だけは嫌だ・・なのはちゃんも同じ考えなのか

 

「ジャンケンで決めよう・・どちらが先か・・」

 

そう言うなのはちゃんに頷き

 

「「ジャンケン・・ポンッ!!」」

 

私が出したのはグーでなのはちゃんは

 

「チョ・・チョキ出しちゃった・・・」

 

プルプルと肩を震わしていた・・この瞬間次の犠牲者はなのはちゃんに決定した・・2人でもごもごと動くコートを見る

 

「長いね・・」

 

「うん・・長いわ・・」

 

フェイトちゃんが捕まり、既に7分・・チンクさん達より2分近く多く捕まっている・・ある仮説が思いついた

 

「なぁ・・もしかして私達ってかなり長く兄ちゃんと一緒やったよな?」

 

そう尋ねるとなのはちゃんは何を言ってるんだ?と言う顔で頷く、私はそれを確認してから

 

「つまり私達はその分だけ長く・・なるってことちゃう?」

 

そう言うとなのはちゃんは

 

「かもしれないね・・」

 

そう呟いた瞬間、兄ちゃんがフェイトちゃんから離れる・・フェイトちゃんは

 

「ヒクッ!!ヒクヒクッ!!!!」

 

チンクさん達と比べれないくらい痙攣していた・・その目はセッテの様にとろんしてしていた・・それを見てなのはちゃんは

 

「はやてちゃん・・何でもするから順番変わって・・心の準備するから」

 

そう言うなのはちゃんに

 

「兄ちゃんの事諦めるならいい・・最後の最後で良い思い出を作りたい言うなら良いで?」

 

そう言うとなのはちゃんは

 

「それは嫌っ!!・・判ったよ・・先に逝くよ・・」

 

少し行くよの雰囲気が違ったが気にしない事にした・・私が心の準備をし始めると同時に

 

「ひゃああああっ!!!」

 

なのはちゃんがコートに包まれ見えなくなり、次の瞬間

 

「にゃあああああああっ!!!!」

 

凄まじいまでのなのはちゃんの悲鳴が聞こえる・・かなりの羞恥心で暴れてるのか、コートが凄まじい勢いで暴れるが脱出出来ないようだ

 

「にゃああああ!!!ひゃああああんんっ!!耳!!耳は嫌~」

 

段々声に色気が混じってくる・・それほどまでのスキンシップ・・何が起きてるんや・・私はあのコートの中で何が起きているのか・・物凄く気になった・・それから私は心の準備をしながら、なのはちゃんの姿が再び見えるようになるのを待ちながら、時計を見ていた・・最初の5分くらいは暴れていたが・・8分くらいで抵抗が出来なくなるほど消耗したのだろう・・コートが動かなくなった・・そして

10分後・・

 

「ピクッ!!!ピクピクッ!!」

 

目は虚ろで凄まじく痙攣しているなのはちゃんから離れ、兄ちゃんがふらふら~とこっちに来る・・兄ちゃんの目と合う・・にぱ~と心底楽しそうな顔の兄ちゃんの顔を見ると同時に、私の視界は完全に闇の中に消えた

 

「にゃふふ~は~や~て~」

 

ぐりぐりと頭を擦り付けて来る兄ちゃんは子供の様で、普段と違い格好良いより可愛いと感じた

 

「んーお兄~さんは~はやてが大好きです~ずーとっ一緒に居てくれると嬉しいのです」

 

そう呟きながらキスしてくる兄ちゃんの頭を撫でると、兄ちゃんはぶつぶつと

 

「ん~寂しいのは嫌なんです・・悲しいのも嫌なんです・・1人ぼっちは嫌なんです・・」

 

そう呟く兄ちゃんは痛いほどの力で私を抱きしめている・・暫く兄ちゃんの頭を撫でていると

 

「ん~」

 

兄ちゃんが突然首筋を舐め上げる

 

「ひゃうっ!!」

 

思わず反応して声を上げると兄ちゃんは今度は耳を噛んで来る、勿論甘噛みで痛くは無いがくすぐったい・・そんな事を考えていると兄ちゃんが首筋にキスを連発してくる・・

 

「ひゃう・・首・・首はくすぐったい・・」

 

こんな事をされていては抵抗する気も無くなってしまう・・それ以前に私達は兄ちゃんが好きなのだ・・そんな人にこんな事をされれば・・幸せを感じ・・くったりしてしまうのも理解できた・・10分位だろうか・・兄ちゃんに抱きしめられたり、キスされたりしていると突然、電池が切れたように兄ちゃんが動かなくなる・・何事か?と思い兄ちゃんの顔を覗き込むと

 

「すーすー」

 

穏やかな寝息を立てていた、私は自力でコートから脱出し、辺りを見回す

 

「「「「かああああっ・・・」」」」

 

真っ赤な顔で夢見心地という表情のなのはちゃん達が視界に飛び込んでくる・・どうやら復活したようだ・・私は兄ちゃんの体を支えながら

 

「ちょお、誰でも良いで手伝って!兄ちゃんを椅子に寝かせるで」

 

そう声を掛けるとスバルが反対側から兄ちゃんを支え、なのはちゃん達が椅子を並べて眠れるようにする、そこにスバルと協力して兄ちゃんを寝かせると、スカリエッティさんが戻ってきて

 

「どうやら、別の世界に行く面々は決まったみたいだな」

 

それは一目瞭然だろう、りんごの様に真っ赤になっている面々が私含め8名・・態々尋ねなくても判るだろう、スカリエッティさんは頷きながら

 

「出発は今から半年後、それまで色々と準備しておいてくれ・・それと君達はその世界で中学生として学校に通ってもらう・・二度目の青春といった所かな?」

 

穏やかに笑うスカリエッティさんを見ながら私は、

 

(もう1度中学生か・・まぁ・・それはそれで楽しそうやね)

 

そう笑っているとセッテが

 

「私達が学生をやるのは判りました・・それでは龍也様達は何をしてるんですか?」

 

私も気になって居た事をセッテが尋ねると

 

「龍也の事だからなにかやることが必要だ・・だからこんな物を考えた・・喫茶店だ・・ドゥーエにリィン君達がいれば、龍也にそこまで負担が掛かるわけじゃないし・・丁度いいだろう?」

 

私達が納得していると、今度はフェイトちゃんが

 

「それで私達は何処に住むんですか?」

 

もっともな事を尋ねるフェイトちゃんにスカリエッティさんは

 

「それも考えてある、15部屋あり、尚且つ喫茶店も出来る・・移動型の家型のデバイスを開発中だ・・それの完成に半年掛かるんだ」

 

なるほど準備は万端って事か・・私が頷くと

 

「さて・・今日あった事は龍也には秘密にしておいてくれ・・龍也の事だこんな事を知ったとすると・・失踪するぞ・、だから絶対に言わないでくれ・・判ったら解散してくれ・・皆準備があるだろう?」

 

そう笑うスカリエッティさんに見送られ、私達はその部屋を後にし準備を始めた・・

 



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剣帝VS守護者 

剣帝VS守護者

 

 

それは長かったネクロとの戦いが終ってから数ヶ月後に起きた事だった・・その日はラグナが居らず・・簡単に言えば・・

 

「守護者っ!!俺と戦えっ!!今日こそ決着をつけてやる!!」

 

ルシルファーのストッパーが居ない事を示す・・私は溜め息をつきながら

 

「ルシルファー・・私は疲れている・・出来れば模擬戦はしたくないのだが?」

 

大将に昇格してから書類整理が増え確実に疲労は溜まっている、だから休暇の日はゆっくりしたいというと

 

「黙れっ!!俺はなっ!!ラグナが出掛ける日をずっと待っていたのだっ!!今日しか貴様と本気で戦うことは出来ないっ!!軟弱な事を言わずさっさと演習場に来いっ!!良いなっ!!」

 

答えは聞いていないと言いたげに私の部屋を後にする、ルシルファー・・私はルシルファーの後姿を見ながら

 

(まいったな・・ルシルファーと模擬戦すればどちらかは戦闘不能だしな・・)

 

ルシルファー相手では私も本気に成らざるを得ない・・そうなれば非殺傷でもどちらかは戦闘不能・・出来れば模擬戦を避けたいと思っていると

 

「お兄ちゃん・・どうしましたか?」

 

ユナがどうしたと尋ねて来る・・私がどういう状況になっているか説明すると・・

 

「そうだ!それならユニゾンしてあれを試してみませんか?」

 

・・あれか・・あれはな・・余りやりたくないな・・私の顔の変化に気付かないのかユナは私の手を掴み

 

「さっ速く行きましょうっ!!」

 

私はユナに手を引かれ演習場に向かった・・

 

「・・・・」

 

ルシルファーは既に騎士甲冑を展開し待っていた・・それに

 

「兄ちゃん!!頑張れ~っ!!」

 

「「「龍也さん~っ!!」」」

 

何故かはやて達が観戦している・・私はルシルファーに

 

「なんではやて達が居るんだ?」

 

そう尋ねると

 

「・・知らん・・俺も聞きたい・・」

 

どうやらルシルファーにも判らないようだ・・私は呆れながら

 

「まぁ良いか・・ユナ・・ユニゾンだ・・」

 

「はいっ!!」

 

元気良く頷くユナとユニゾンをする・・

 

「何だ・・それは?」

 

今回試すのは普通のユニゾンとは別のユニゾン・・私が使える2つの禁呪の内1つを使う為のユニゾンだ・・だが本音を言えば使わないで済めば良いと思っている・・私は握り拳を作りながら

 

「ただのユニゾンだよ・・ルシルファー」

 

漆黒のボディアーマーに真紅の外套を羽織っただけ・・騎士甲冑と比べると弱そうに見えるが

 

「・・見た目どおりの能力と言う訳ではないだろう」

 

歴戦の騎士であるルシルファーはこのユニゾンがただのユニゾンではないと直感で感じ取ったようだ・・油断無くグレイダルファーを構えるルシルファーを見ながら・・私はあるキーワードを口にした

 

「投影開始」

 

私の手にルシルファーのデバイスである、グレイダルファーが現れる・・それを見たルシルファーは

 

「召喚ではない・・コピーか・・」

 

確かにこれは天雷の書の能力である召喚ではない・・これは私の魔力で作り上げたコピー

 

「正解だ・・これは唯の贋作さ・・だが贋作が真作に勝てぬということは無い・・行くぞ・・ルシルファー・・」

 

私はそう言うと同時に駆け出した・・

 

 

 

「ほー兄ちゃんのユニゾンはあんな事も出来んのか・・」

 

私は兄ちゃんとルシルファーとの戦いを見ながら呟いた

 

キンッ!!キンッ!!!

 

全く同じデバイス同士で打ち合っている・・その動きは一種の舞いの様な美しさがあった

 

「はあっ!!」

 

ルシルファーが踏み込みグレイダルファーを振るう

 

「くっ・・」

 

バキンッ・・

 

兄ちゃんの苦しげな声と共に、偽グレイダルファーが砕ける・・ルシルファーはそれを見て

 

「成る程・・耐久力は劣るようだな?」

 

確かに全く同じ姿をしているが、耐久力は低いようだ・・耐久力も同じなら今の一撃で砕けぬ筈だ

 

「確かにな・・耐久力は劣るが・・だが・・耐久力は問題ではない・・投影開始・・」

 

兄ちゃんがそう呟くと再び兄ちゃんの手に偽グレイダルファーが現れる

 

「何っ!?」

 

今砕いた筈の物が再び現れる、それは少なからずルシルファーに動揺を与える・・兄ちゃんはその隙を突いて

 

「はあっ!!」

 

風切り音と共に兄ちゃんの双剣がルシルファーに迫る

 

「くっ!!」

 

キンッ!!キンッ!!!

 

流石は剣帝と言うべきか、兄ちゃんの猛撃を弾き続けるルシルファー・・だが次の瞬間信じられない事が起きる・・兄ちゃんが偽グレイダルファーを手放し後方に跳び

 

「壊れた幻想 ブロークンファンタズム・・」

 

パチンッ!!

 

兄ちゃんが指を鳴らすと偽グレイダルファーが

 

ドンッ!!

 

凄まじい音と共に炸裂する

 

「ぐうっ・・」

 

ルシルファーはそれに押され後退する・・兄ちゃんはその間に

 

「投影開始・・」

 

再びそう呟く・・また偽グレイダルファーが現れると思ったが・・今回は違った・・

 

「弓?」

 

隣で見ていたシグナムが呟く、兄ちゃんの手には間違いなく弓がある・・赤塗りの弓を持ちながら

 

「投影開始・・」

 

再び呟くと兄ちゃんの手に剣が現れる・・だが剣は剣だ・・矢としては使えない筈・・私達がそんな事を考えていると

 

「我が骨肉は捩れ狂う・・」

 

兄ちゃんが呟くと兄ちゃんの手の中剣が捩れ始め・・矢のような形になる・・兄ちゃんは弓を構え・・

 

「偽・螺旋剣 カラドボルク・・」

 

兄ちゃんの手から剣が放たれる・・それは嵐の様な魔力を纏いルシルファーに迫る・・

 

「くっ・・菊燐っ!!」

 

ルシルファーの手に変わった形の日本刀が現れる、それを即座にクロスさせ

 

「ガイア・・リアクターッ!!」

 

黒い魔力の壁を発生させ、偽螺旋剣を受け止める

 

「ぬううっ・・・」

 

嫌な音を立てて魔力の壁を抉る偽螺旋剣・・だが魔力の壁のほうが強いのか、ある程度抉った所で偽螺旋剣は停止し、消滅した・・だが兄ちゃんは既に別の獲物を手にしていた・・

 

「偽・刺し穿つ死棘の槍 ゲイボルグ・・」

 

赤塗りの禍々しい槍を掴み兄ちゃんが駆け出す

 

「今度は槍かっ!!良いぞ・・やはり貴様との戦いが一番面白いっ!!」

 

獰猛な笑みを浮かべ、ルシルファーが駆け出す

 

「「はああああっ!!!」」

 

赤い閃光と白銀の閃光が走る・・私達には辛うじて見える程度で、多分エリオ達には殆ど見えていないだろう・・

 

「菊燐・・一の型・・燐火斬ッ!!!」

 

菊燐に漆黒の魔力が集まり、振るうと同時に巨大化し兄ちゃんに迫る

 

「ふっ・・」

 

兄ちゃんは槍を回転させその魔力刃を弾き飛ばす・・だがルシルファーは既に別の技の体勢に入っていた

 

「菊燐・・二の型・・燐火撃っ!!」

 

刀から二本の矢が打ち出される

 

「くっ・・」

 

槍を回転させたが、その一撃は槍の耐久力を超えていたのか砕け、兄ちゃんは直撃を喰らい吹っ飛ばされる・・その間にルシルファーは両腕を掲げ魔力を収束させ・・

 

「ガイア・・フォースッ!!」

 

兄ちゃんと同じ技だが色が違う炎の弾を放つ、それはシュミレーションのビルを灰にしながら兄ちゃんに迫る・・やばいな・・幾ら兄ちゃんでもあれの直撃は致命的なダメージの筈・・私がそんな事を考えていると

 

「偽・熾天覆う七つの円環 ローアイアス・・」

 

兄ちゃんの吹っ飛んで行った方向から7枚の花弁に似た魔力の盾が現れ、ガイアフォースを受け止める

 

ピキ・・ピキ・・

 

盾に皹が入り一枚・・また一枚と砕けていくが4枚目で完全にガイアフォースを無力化した・・そして次の瞬間には・・

 

「工程完了・・全投影待機」

 

煙の中から弓を構えた兄ちゃんが姿を見せる、その背後には無数の剣が浮いていた・・

 

「ソードバレル・・フルオープンッ!!」

 

無数の剣が雨霰の様にルシルファーに迫る

 

「ぬ・・おおおおおっ!!!」

 

両手の菊燐を振るいながら走り出し、迫る剣を迎撃していくが・・何発かは体に掠る・・だがそんな事は関係無いと言いたげに接近し、兄ちゃん目掛け菊燐を振るう

 

「!!」

 

まさか突撃しながら剣を迎撃するとは思っていなかったのか、兄ちゃんの反応は一瞬遅れ、ボディアーマーを深く切り裂かれた兄ちゃんは真紅の外套を翻しながら後方に跳ぶ・・ここからでも判る兄ちゃんの目から闘志は消えていない・・戦いはまだまだ続きそうだと私は思った・・

 

 

 

 

(不味いな・・流石はルシルファー・・剣帝と呼ばれた男・・ソードバレルをあんな方法で防ぐとは・・)

 

ソードバレルに加え矢としても放った一撃も全て弾き飛ばされた・・その挙句手傷を負わさせれるとは・・少々不利か・・冷静に戦況を考える・・天雷の書から召喚ではなく、自身の魔力でデバイスを呼び出す利点は1つ・・耐久力は劣る分・・素早く自身の手にデバイスを呼び出せる事・・物量に物を言わせて詰みに持っていくのが・・この戦法の利点だ・・このまま物量戦に持ち込んでも勝てない・・

 

(お兄ちゃん・・やはりあれを使わないと勝てないですよ・・)

 

ユナが言う・・確かにそのとおりだな・・出来れば使いたくなかったがしょうがない・・

 

「どうした・・掛かってこないのか?」

 

菊燐を油断無く構えるルシルファー・・こちらから打って出るしかないか・・

 

「投影開始・・」

 

さっきまで使っていた弓ではない・・シグナムがブラストモードを発動させると同時に左腕に現れるムスペルヘイム・・あれは本来はSSSランクの弓型のデバイスで、それが簡略化された物がシグナムの左腕に装着されている・・私が呼び出すのは簡略化される前の弓・・

 

「偽・星を貫く聖弓 ムスペルヘイム・・」

 

燃え上がる炎の様な形をした弓に魔力を通す・・それを見て

 

「その弓を使った、戦闘スタイルは剣型のデバイスを矢として撃つ事・・そんな事を何回繰り返そうが無駄だ・・」

 

私を見据え言うルシルファーを見ながら弓の弦を引きながら

 

「確かにその通りだがな・・これにはもう1つの使い道がある・・」

 

弦を限界まで引き絞った所で私は更に隠された能力を解放する為のキーワードを口にする・・

 

「星を貫く・・(ムスペル)・・」

 

私の手の中に燃え盛る炎の矢が現れる・・

 

「なっ・・」

 

予想外の攻撃に驚くルシルファーを見ながら

 

「星弓っ!!!(ヘイム)・・」

 

炎の矢を撃つ・・

 

ゴオオッ!!

 

放たれた矢は瞬間的に爆発的に燃え上がり、ルシルファーに迫る

 

「くっ・・回避は無理か・・ならば迎撃するまで!!・・龍鳳天嚇っ!!!」

 

迫り来る業火を迎撃する為にルシルファーは漆黒の剣撃を放つ・・漆黒の刃が炎の矢を砕いていく・・恐らく長くは持たない・・だが・・この少しの時間で充分だ・・私は大きく後ろに跳び詠唱を始めた・・

 

 

「――― No bady lives・・・(生きる物はいない・・)」

 

「There is not saving in the wide world(広い世界に救いはない・・・)」

 

「It's filled,there is adeath where it goes, as for the start,it is not only in Cz it the remainder,and there is not an end either・・・(満ちいく死があり、残りは崩れいくだけ、始まりは無く終わりも無い・・・)」

 

「I'm watching over everyone with tender loving care・・・(私は皆を見守っているよ・・・)」

 

「It's nothing but one thay it is there・・・ "Snow Garden!!"(そこにあるのは唯一・・・"雪の庭園のみ!!" )」

 

その呟きと共に世界が侵食される・・私を中心に凄まじい吹雪が吹く・・そして演習場を瞬く間に白銀に染めていく・・私はその世界の中心に立つ・・この世界には常に吹雪が吹いている・・それは全ての敵に恐怖と絶望を与え・・己の大切な者を護る為の嵐であり、自分に対する無力感を現している・・私は全てを護りたい・・だが何時も伸ばした手は届かない・・そして私の目の前で人が傷つく・・その絶望感と・・自分に対する無力感・・この世界に吹く嵐はその象徴・・私は吹雪をその身に受けながらゆっくりと閉じていた眼を開き・・驚き目を見開いているはやて達と信じられないと言う顔をしているルシルファーを見ながら

 

「馬鹿な・・これは・・」

 

古代の騎士である、ルシルファーはこの世界の事を知っているだろう・・

 

「固有結界・・己の心を世界に映す・・禁忌の魔法・・」

 

ゆっくりと呟く・・すると遠く離れたところで見ていたはやて達の驚いているのが判る・・私はゆっくりと歩き出しながら

 

「この世界を展開した以上・・お前に勝ち目はない・・今の内に降参しろ・・」

 

ルシルファーに言うと

 

「ふざけるなよ・・いかに固有結界とは言え・・武器も何もない・・貴様に負けるとは思わんっ!!」

 

そう言うルシルファーを見ながら

 

(この程度で諦める・・ルシルファーではないか・・仕方ない・・速く戦闘不能にするとしよう・・)

 

私はそう決め・・右手を掲げ・・

 

「行くぞ・・剣帝・・魔力の貯蔵は充分か?」

 

私はそう呟くと同時に駆け出した・・

 

 

 

 

私は信じたくなかった・・目の前に広がる世界が兄ちゃんの心の中だなんて・・・目の前に広がる世界はどこまでも美しく・・そしてどこまでも寂しかった・・隣に居るなのはちゃん達も信じれないと言う顔をしていた・・何時も笑っていた・・その兄ちゃんの心の中だ等とは到底信じられなかった・・私がそんな事を考えている中、兄ちゃんとルシルファーの戦いを見る

 

「菊燐・・二の型・・燐火撃っ!!」

 

ルシルファーが刀から魔力の矢を打ち出す・・だが

 

クンッ・・

 

兄ちゃんが左を軽く右手を動かすと、一瞬でその魔力の矢が凍りつき砕ける

 

「くっ・・・まだだっ!!」

 

ルシルファーが菊燐を兄ちゃんに振り下ろそうとした瞬間

 

ピキッ・・・

 

ルシルファーの左腕が一瞬で凍りつく・・それでも菊燐を振り下ろすが

 

「無駄だっ・・」

 

兄ちゃんが菊燐を素手で受け止め握り締めると

 

パキャンッ・・・

 

乾いた音を立てて菊燐が氷の結晶となる・・そして即座に氷の嵐がルシルファーを襲う

 

「ぐっ・・」

 

ルシルファーは氷の嵐に襲われ後方に下がる・・すると兄ちゃんが

 

「もう諦めたらどうだ?・・お前に勝ち目は無い・・」

 

ルシルファーの体は半分以上凍りつき、もう満足に動く事は出来ないだろう・・だから諦めろというと

 

「まだだ・・まだ・・俺は・・負けていないっ!!!」

 

ルシルファーの手に自分の背丈と同じくらい黄金の剣が現れる・・それに魔力が収束していく・・それを見て兄ちゃんは

 

「仕方ない・・少々眠っていて貰おうか・・」

 

兄ちゃんの手に吹雪が集まり、1本の剣となる・・それは透き通るような美しい剣となった・・

 

「龍 ドラゴン・・」

 

ルシルファーの王龍刀に漆黒の魔力が集まる・・

 

「雹雪・・」

 

兄ちゃんの手の中の剣に魔力が集まり、美しい輝きを放つ・・そして

 

「殺咬(デスバイトッ!!!」

 

「神威ッ!!!」

 

漆黒の龍と凄まじい吹雪が同時に放たれた・・・

 

ゴオオッ!!!

 

龍と吹雪がぶつかる・・勝負は互角に見えたが・・次の瞬間

 

ピキピキッ・・・

 

魔力の龍が凍っていき・・それはルシルファーに迫って行き・・次の瞬間

 

「くそ・・俺の・・負けか・・」

 

ルシルファーがそう呟くと同時にルシルファーは氷の棺に閉じ込められた・・それと同時に雪原は一瞬にして消えた・・私はそれを確認してから演習場へと走り出した・・

 

「くそ・・完全に俺の負けだ・・」

 

蹲り言うルシルファーに

 

「だから降参しろと言ったんだ・・」

 

ユニゾンを解除した兄ちゃんはルシルファーに回復魔法を掛けていた・・それを隣で見ているユナ・・私はそれを見ながら

 

「兄ちゃんっ!!」

 

若干怒鳴りながら言うと

 

「ん?どうした?」

 

何事も無いように尋ね返してくる兄ちゃんに、なのはちゃんが

 

「あの・・さっきの世界が龍也さんの心の中だなんて嘘ですよね?」

 

信じたくないと言う口調でなのはちゃんが言うと

 

「残念だが、嘘ではない・・あの氷に覆われた世界・・それが私の心の中さ・・」

 

自嘲気味に呟く兄ちゃんはルシルファーを肩に担ぎ

 

「悪いがルシルファーをシャマルに診せて来る・・だから質問はまた今度だ・・」

 

私達にそう言うと兄ちゃんは演習場から消えた・・私達はその場から動けなかった・・あんな寂しい世界が兄ちゃんの世界だと信じたくなかったからだ・・・私達がその場で立ち止まっていると・・その横を通り、ユナが兄ちゃんの後を追って行こうとする

 

「待ってくれ、ユナ!!あれが兄貴の心の中だなんて嘘だよな・・」

 

ヴィータがそう尋ねるとユナは

 

「あれは間違いなくお兄ちゃんの心の中ですよ・・何も無い・・世界・・それがお兄ちゃんの心の中です」

 

そう言うユナは硬直している私達を見て

 

「でも・・心の中は変わる・・貴女達はお兄ちゃんの・・王の心の中を変えれますか?」

 

私達を試すようにユナは微笑みながら

 

「王は何度傷つこうが立ち上がります・・大切な者を護る為に・・あの世界は自分がどうなろうと大切な者を護ると言う、王の心を現しています・・でも心は変わる・・貴女達が本当に王の事を想っているなら・・変えれる筈です・・私は王の傍で見てますよ・・貴女達が本当に王の心の中を変えれるのかを・・それでは失礼致します」

 

そう言うとユナは演習場から消えた・・残された私達はある決意をした・・例えどれほど時間が掛かろうと・・自分の大切な人の心を変えて見せると・・

 

 

固有結界  雪の庭園解説

 

「――― No bady lives・・・(生きる物はいない・・)」

 

「There is not saving in the wide world(広い世界に救いはない・・・)」

 

「It's filled,there is adeath where it goes, as for the start,it is not only in Cz it the remainder,and there is not an end either・・・(満ちいく死があり、残りは崩れいくだけ、始まりは無く終わりも無い・・・)」

 

「I'm watching over everyone with tender loving care・・・(私は皆を見守っているよ・・・)」

 

「It's nothing but one thay it is there・・・ "Snow Garden!!"(そこにあるのは唯一・・・"雪の庭園のみ!!" )」

 

無限に広がる雪原と吹きすさぶ吹雪が特徴的な世界、能力は敵対者を全て凍結させる事と自分の大切な者を護る事である。どんな攻撃も凍結させ無効とし、また味方が負傷している場合、その傷を全て自分に移しかえる事が出来る・・それは自分がどれほど傷つこうが大切な者は護ると言う強い決意の証であると同時に、大切な者を護る為なら自分の命さえ捨てても構わないという自己犠牲の心の象徴でもある

 

剣帝VS守護者 終り



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融合騎の生まれた日

融合騎の生まれた日・・

 

「・・・・」

 

ボーッと空を見上げる銀髪の男の姿がある、彼は管理局内で最強と称される魔導師にして神王・・八神龍也だ・・龍也の姿を見ながら複数の女性がひそひそと話をしている

 

「やっぱり、兄ちゃんセレスさんが居なくなって寂しいやろな・・」

 

私は隣のなのはちゃんにそう声を掛けた

 

「多分ね・・私達の前じゃそんな素振りを見せないけど・・やっぱり寂しいんだよ・・」

 

それは間違いないだろう・・襲撃のあった時から傍にいて支えてくれた者が居なくなるのは辛いだろう・・融合騎 セレス・・ジオガディス事件の際の唯一の死亡者だ・・いや正確には少し違う・・セレスさんは死んだ兄ちゃんを生き返らせる為に、兄ちゃんの体に取り込まれる形でユニゾンをした・・その所為でセレスさんの意識は完全に消え・・また二度とユニゾンを解除する事も出来ない・・今の兄ちゃんは半デバイスと言っても言い状態なのだ

 

「何とか出来ないかな?・・ほらリィン見たいにさ・・」

 

フェイトちゃんが言うが私は首を横に振った

 

「私もそれは考えた・・でも無理や・・リィン見たいに情報が残ってる物が無い・・」

 

リィンの時は剣十字に残された情報を元に作ったが、セレスさんの場合それが無いのだ

 

「でも何かあるかもよ?・・ほらセレスさんが良く使ってた物とか・・セレスさんの部屋にあるかも・・」

 

可能性は低い・・でも賭けて見ても良いかもしれない・・

 

「そやな・・今からセレスさんの部屋に行って見よか・・」

 

私はなのはちゃん達と共にセレスさんの部屋に向かった・・

 

「うわ・・凄い・・」

 

なのはちゃんが驚きながら言う、私も同じだ・・セレスさんの部屋の壁を覆い尽くす程の大量のぬいぐるみに驚いていた

 

「セレスって意外とこういうのが好きだったんだね・・」

 

フェイトちゃんが大量のぬいぐるみを見ながら言う・・意外だった・・堅物でクールな印象のあるセレスさんがここまでぬいぐるみを好きだったとは・・私達が呆気に取られていると

 

「何してるんですか?」

 

ビクッ!!

 

驚きながら振り返るとそこには柔らかな金髪の少女が居た・・私は

 

「驚かせんで・・クレア・・」

 

そこにいたのは天雷の騎士の1人のクレアだった

 

「驚かせたつもりは無いんですが・・所で何してるんですか?セレスの部屋で?」

 

尋ねるクレアに事情を説明すると

 

「成る程・・セレスを復活させようと・・それなら・・」

 

クレアは部屋の奥の行き、何かを持ってくるそれは

 

「セレスさんの杖・・」

 

セレスさんのデバイスである杖だった・・

 

「これなら行けると思いますよ」

 

これなら行ける・・私はそれを受け取り

 

「これなら行けるで、ありがとうクレア」

 

クレアに礼を言うと

 

「気にしないで下さい・・私達もセレスが居なくて寂しいですからね・・きっと王も同じだと思うんです・・だから生まれ変わりでも良いセレスにもう一度会わせて上げてください・・お願いします」

 

クレアに礼を言ってから、私はスカリエッティさんの研究室に向かった

 

「ふむ・・リィン君と同じ様にセレスを復活させるか・・出来ない事では無いな・・」

 

杖を分析しながら言うスカリエッティさんに

 

「良かったわ・・私だけじゃ不安やし、やっぱり専門家に手伝って貰うのが一番やからな」

 

私とスカリエッティさんなら融合騎の1人や2人楽勝だろうと思っていたが、スカリエッティさんは違っていた

 

「だが・・私でもかなり難しい・・セレスはユニゾンデバイスの原型・・オリジンに類される・・他のユニゾンデバイスとは構造が違う・・」

 

うっ・・確かにセレスさんは全ての融合騎の原型だ・・最古の融合騎・・構造や能力は現代の科学でも判らない事がある

 

「だがやり遂げて見せよう・・友の為にな!」

 

その日からセレスさんの後継機の制作が始まった・・制作から一ヶ月後・・

 

「で・・出来たぞ・・」

 

スカリエッティさんには酷い隈がある・・何せ仕上げの為に二週間近く徹夜をしているからだ

 

「ほんまや・・やっとや・・」

 

私は目の前の少女を見ながら言った、さらさらの銀髪に蒼い神官服の様なバリアジャケット・・その全てがセレスさんを連想させる

少女がゆっくりと目を開く・・その目は金だった

 

「目の色が・・」

 

目の色が金色に驚いていると

 

「マイスター・・ですね・・私のマスターは何処ですか?」

 

マスターは何処だと?尋ねる少女に

 

「ん?・ああ今連れて来るでちょっと待ってて・・」

 

私は兄ちゃんを探しに行った

 

 

 

 

 

「・・」

 

ぼんやりと空を見上げている・・セレスがいなくなって1月と少し・・居ない筈のセレスの姿を求めて私は空を見上げてる事が多くなった

 

「兄ちゃん!!」

 

はやてが声を掛けてくる

 

「どうした?何か用か?」

 

立ち上がりながら尋ねると

 

「うん!!ちょっと来て!!」

 

はやては私の手を握り歩き出した

 

「ジェイルの研究室?」

 

はやてに連れて来られた場所はジェイルの研究室の前だった

 

「ほら、中に入って!」

 

私ははやてに背を押され研究室に入るなり目を見開いた

 

「貴方が私のマスターですか?」

 

目の色が違うがそれは間違いなくセレスだった・・どういうことだと驚きはやての顔を見ると

 

「兄ちゃんな、セレスさんが居なくなってから寂しいそうやったから・・セレスさんのデバイスにあった情報から・・セレスさんの後継機を作ったんや・・どうかな?」

 

バレていたのか・・妹に心配を掛けさせるは情けない・・そんな事を考えながらはやての頭を撫で

 

「ありがとう・・」

 

礼を言ってからその少女の前に立った

 

「マスターですか?」

 

首を傾げながらマスターか?と尋ねる少女に私は

 

「そうだ、私が君のマスターだ・・君の名前は?」

 

少女に名前を尋ねると少女は

 

「私に名はありません・・だからマスターに名前を付けて欲しいです・・」

 

名前を付けて欲しいと少女に頷き私は名前を考えた

 

セレスは天界の風だった・・ではこの子の名前も風から考えよう・・顎の下に手を置いて名前を考える

・・・

 

「ユナ・・そうだ君の名前はユナだ」

 

希望を抱き風の様に前に進む者・・ユナだと言うと

 

「ユナ・・私の名前はユナ・・ありがとうございます、王様・・」

 

!!さっきまでマスターと呼んでいたユナが王様と呼んだことに驚くとユナは

 

「私のマスターは優しい王様・・だから王様と呼ばせて貰います」

 

笑いながら頭を下げるユナに

 

「そうか・・好きにすれば良いさ」

 

少女の頭を撫でながら私は研究室を後にした・・消えてしまった天界の風の二代目・・希望の風は今穏やかに吹き始めた・・・

 

 

ユナが六課の一員になってから数日後

 

「ユナちゃん!!おはようです!!」

 

食堂で元気良くユナに話しかけるリィンにユナは

 

「朝から元気ですね・・リィン・・あんまり早く大声を出さないで貰えると嬉しいんですが?」

 

冷静に切り返すユナにリィンは

 

「あう・・判ったです・そうだユナちゃんはまだここに慣れてないですよね!!リィンが案内するですよ!!」

 

六課内を案内すると言うリィン・・どうやらお姉ちゃんぶりたいようだ・・案内すると言うリィンにユナは

 

「良いですよ、判らないところは王様に聞くので・・それじゃあ失礼します・・」

 

トレーを片付け歩き去ったユナを見ながらリィンは

 

「あううう・・・うう・・お兄様~」

 

両目に涙を浮かべながら私に抱きついてくる・・どうやらリィンのお姉ちゃん作戦は失敗に終ったようだ・・

 

「良し・・良し・・泣くなよ・・リィン」

 

私はリィンを抱え背中を撫でていた・・ユナが六課の仲間になって4日たったが・・まだユナは馴染めていない・・正確にはユナが馴染もうとしないのだ・・リィンの様に友好的に接しても無視してしまうのだ

 

(どうした物か・・)

 

私はリィンの背を撫でながらどうしようか考え・・私は良いアイデアを思いつき、リィンに耳打ちしたするとリィンは笑いながら飛び出して行った・・

 

 

 

「・・・・・」

 

薄暗い部屋の中で私はぬいぐるみを抱えながら後悔していた・・あの時リィンが案内してくれると言った時、嬉しかった筈なのに素っ気無い対応をしてしまった・・

 

「どうして、ああいう風に言ってしまうのでしょう・・」

 

ぬいぐるみを抱き抱えながら呟く

 

「やはり・・あの2人が融合騎と言うところが気に食わないのでしょうか・・」

 

私はまだユニゾンした事がない・・その点リィンとアギトは王様とユニゾンした事がある・・それが私に妙な苛立ちを与えるのだ

 

「嫉妬とは醜い事です・・」

 

自分でも嫉妬は醜いと理解している・・だがそういう行動にどうしても出てしまうのだ

 

「もう・・案内してくれないでしょうね・・」

 

ギュウ・・ぬいぐるみを抱き抱えながら後悔していると

 

コンコン

 

「入るですよ~」

 

リィンが私の部屋に入ってくる、ぬいぐるみを慌てて隠そうとするがそれより早く

 

「可愛いぬいぐるみですね~それに他のぬいぐるみも可愛いです~」

 

リィンが私の部屋を見ながら言う・・私の部屋には大量のぬいぐるみが置かれている・・元は私の原型になった、セレスという融合騎

の部屋らしい

 

「可愛い?・・本当ですか?」

 

可愛いと言うリィンに本当か?と尋ねると

 

「はいです!!どれも凄く可愛いです・・リィンも1つ欲しいですね~」

 

部屋のぬいぐるみを見ながら言うリィンに

 

「良かったら・・欲しいのをどうぞ・・」

 

欲しいぬいぐるみをあげると言うと

 

「本当ですか!!・・うーん・・どれにしようかな~」

 

リィンは笑いながらぬいぐるみを物色し・・1つのぬいぐるみを抱き上げた

 

「これが良いです!」

 

リィンの選んだぬいぐるみは虎のぬいぐるみだった・暫くリィンとぬいぐるみの事を話していたが・・私はある事が気になり尋ねた

 

「どうして?私の部屋に来てくれたんですか?・・私はリィンに酷い事を言ったのに・・」

 

食堂での事を思い出しながら言うと、リィンは

 

「う~ん・・リィンは別にさっきの食堂の事は気にしてないです!それにリィンはユナちゃんと友達になりたいですよ~」

 

友達・・

 

リィンの言った友達という言葉に私は嬉しいと感じた・・妙に恥かしくてぬいぐるみを抱き抱えていると

 

「それでユナちゃんはリィンと友達になってくれますか?」

 

手を差し出しながら尋ねて来るリィンに私は

 

「はい・・こちらこそ宜しくお願いします・・」

 

私がその手を握り返しながら言うと

 

「はいです!!これでユナちゃんとリィンは友達です!!それじゃあ行くですよ!!」

 

私の手を引き、歩き出したリィンに

 

「どこに行くんです?」

 

何処に行くのか?と尋ねると

 

「さっき話してた、案内ですよ!!リィンがユナちゃんに六課の事を教えてあげるです!!」

 

笑いながら言うリィンと共に六課の中を歩き回り、お昼になると

 

「そろそろですね・・ユナちゃん!!お兄様の部屋に行くですよ!!」

 

王様の部屋に行くと言うリィンに頷き、私達は王様の部屋に向かった

 

「ん?来たか・・丁度良かった・・いまお昼ご飯が出来たところだ」

 

王様は机の上に料理を並べていた

 

「ユナちゃん!早く座るですよ!!」

 

リィンに手を引かれながら椅子に腰掛け、机の上を見るとそこには

 

「オムライス・・ですか・・」

 

美味しそうなオムライスが3つ並べられていた

 

「リィンのリクエストでな・・ユナもきっと気に入ると思う、だから冷めないうちに食べよう」

 

笑いながら言う王様に頷き、私はオムライスを口に運んだ・・

 

「美味しい・・」

 

ふわふわの卵に上に掛けられたデミグラスソースが非常にマッチしていて美味しい

 

「美味しいです~」

 

リィンはぱくぱくと凄い勢いで食べてく・・その気持ちは判る・・凄く美味しいからだ・・私もゆっくりとオムライスを食べ始めた

 

「「ご馳走様でした・・」」

 

お腹が一杯になった所為か眠くなり目を擦っていると

 

「布団を引いてきた、少しお昼寝をすると良い」

 

笑いながら言う王様に頷き、私とリィンは王様の部屋で眠りに落ちた・・

 

次の日からリィンに手を引かれながら歩くユナの姿が良く目撃された・・その姿は見ているだけで気持ちが穏やかになるほど、ほのぼのとした光景だった・・これは平和な毎日の小さな1ページ・・

 

 

融合騎の生まれた日 終り

 

キャラ設定 

 

ユナ

 

外見は10歳前後の少女、長い銀髪に金の瞳を持つ、言動は大人びているが、甘えん坊でぬいぐるみが大好きと子供っぽい所もある

リィンとアギトは仲が良い、同じ融合騎と言う所でシンパシーがあるのかもしれない、魔力ランクはSSS-と融合騎の中では最高の能力を誇り、龍也だけではなくアイギナやはやてともユニゾン出来るが嫌だそうだ、好きなものは甘い物、嫌いな物は怒った龍也の顔である



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恋する乙女の日常

恋する乙女の日常

 

 

ケース1 純情銀髪少女

 

「・・・」

 

私は本を読みながら、八神の事を考えていた・・

 

「どうするべきか・・」

 

私には1つ重大な欠点があった・・それは

 

「この上がり性だ・・」

 

私は八神が好きだが・・いざ話すとなると緊張して話せなくなる・・

 

「うーこんな様では・・八神を物にするのは無理だ・・」

 

どうして私はこうも上がり性なのか・・こんな様では八神に好きになって貰うなど不可能・・せめて普通に話せるようにならなくては・・私がどうすれば良いか考えていると、クアットロが

 

「上がり性のチンクちゃんが八神兄様と普通に話せるようになる良いアイデアがありますよ~少し・・刺激は強いかもしれないですけど~どうします~試してみますか?」

 

にこにこと言うクアットロに頷くと、クアットロは私の頭に手を置いて

 

「それでは行きますよ~」

 

そう言うと同時に私の視界は闇に沈んだ・・

 

「何だここは・・?」

 

私は気が付いたら夜景の綺麗な橋の上に居た・・私が辺りをキョロキョロと見回していると・・

 

「どうだ?・・チンク・・綺麗だろう・・?」

 

!!その声に驚き振り返ると八神が後ろに居た・・私が慌てて離れようとするとその前に八神が私の手を掴んで引き寄せる

 

「だが・・この夜景よりお前の方が綺麗だな」

 

・・うっ・・真顔でこんな事を言われると・・恥かしい・・いや・・待てよ・・八神はこんな事を言う男だったか・・そんな事を考えていると八神が

 

「チンク・・私はお前が好きだ・・ずっと・・私の傍に居て欲しい」

 

!!!

 

「なっ・・なっ・・きゅうっ・・」

 

私は目の前が真っ赤になり意識を失った・・

 

ペシペシ・・

 

「チンクちゃん~起きてくださいよ~もう朝ですよ~」

 

私の頬を叩くクアットロの声で私は目を覚ました、そして判ったさっきの八神はクアットロの幻覚魔法だと・・私が怒って何か言おうとするとクアットロは

 

「う~ん・・1番刺激が弱いのにしたんですけどね~純情なチンクちゃんにはこれでも駄目でしたか~」

 

そう呟くクアットロに

 

「さっきのは何だ?・・お前の幻だとは判ったが・・」

 

そう尋ねるとクアットロは笑いながら

 

「セッテちゃんに頼まれて~作ったんですよ~八神兄様に好きだって言って貰える楽しい幻想が見たいって言われて」

 

セッテか・・私が脱力しているとクアットロは

 

「それで最初はセッテちゃんだけだったんですけど~今はなのはとか~フェイトも偶に来ますよ~」

 

!!・・あの2人まで・・私が驚いているとクアットロは・・後に知るがどうやらこの魔法を掛けて貰いたくて、八神の事を好きな者が時間や日付をずらして頼みに来ることがあるらしい・・

 

「それで~チンクちゃんはどうします?・・偶にこれで八神兄様に好きだと言ってもらって・・八神兄様に慣れますか?」

 

私はクアットロにそう言われ・・紅い顔を隠しながら

 

「も・・もう少し・・柔らかい感じの幻なら良い・・あれは・・私には刺激がありすぎる・・」

 

抱きしめられた感触・・八神の匂い・・その全てがリアルすぎて、私には刺激が強いと言うとクアットロは

 

「そうですね~それじゃあ今度はお茶をしながら八神兄様と会話出来る幻でも作りましょうかね~」

 

そう言って歩いて行くクアットロを見ながら

 

「これで・・もし慣れる事が出来れば・・八神と普通に話が出来るようになるかも・・」

 

私はそんな事を考えながら自分の部屋を後にした・・それとこれは余談だが・・チンクが頼んだ幻は割と直ぐに完成した・・龍也の会話のパターンを組み、デートや外食に行く・・等の要素も組み込んで一種の恋愛シュミレーションの様な物に仕上がった・・だが最初の方はこれでもチンクは慣れる事が出来ず・・幻の龍也と普通に話せるまでに3週間の月日を労した事をここに記す・・追記・・このシュミレーションは思いの他良く出来ており、龍也に内緒でゲームとして発売されていたりする・・

 

 

 

ケース2 スナイパーと売人の場合

 

六課の裏で・・

 

「ヴァイス陸曹・・今日は何か掘り出し物はありますか?」

 

私がそう尋ねるとヴァイス陸曹は

 

「あるよ、凄いのがでも・・それを引き当てれるかはティアナの運次第だな」

 

そう言うとヴァイス陸曹は9つの銀の袋に入った何かを私の前に置いた

 

「1人1個の限定の数量限定販売・・旦那の隠し撮り写真・・どれにする?」

 

そう今回私はこれを買いに来たのだ、ヴァイス陸曹が隠し撮りしている龍也さんの写真・・ランダムに5枚入っていて、必ず一枚は珍しいのが入っている・・2000円・・かなり割高だが・・それでも良い・・

 

「今回のレア物は?」

 

どれくらい希少なのがあるのか?と尋ねるとヴァイス陸曹は

 

「そうだな・・3枚しか焼き増ししてない・・旦那の寝ぼけた顔か・・3枚ある、訓練中の真剣な顔した奴か・・2枚ある、ヴィヴィオとかと昼寝してる奴か・・おっ・・そう言やぁ、今回はまだきわどい奴は出てないぜ・・しかも風呂上りのかなりきわどいやつ・・」

 

リストを見ながら言うヴァイス陸曹に

 

「私は!きわどいのは欲しくないの!・・私は訓練中のが良いのよ!」

 

私はきわどいやつは欲しくない・・確かに少し興味はあるが・・そんなの見てては完全に変態だ・・だからそう言うとヴァイス陸曹は

 

「判った、判った・・まぁそれはともかく金」

 

手を差し出すヴァイス陸曹にお金を渡して、1枚パックを取る

 

「はいありがと、言っとくけど欲しいの出なくても怒るなよ」

 

そう言うヴァイス陸曹に頷き離れようとすると後ろから

 

「・・ヴァイス・・とっととパックを出しなさい」

 

金を投げ渡しながらセッテが言うとヴァイス陸曹は

 

「はいはい、ほれ好きなの取れよ」

 

そういって差し出されたパックの中から無造作に1つ掴み取り

 

「・・!・・こんなの・・要らない・・私はきわどいのが欲しいのに・・」

 

パックを開けて落胆するセッテを見ながら、自分のを開ける・・そして吹いた

 

「なっ・・なっ・・私は・・変態じゃないのよ!こんなの要らないわよ!」

 

私が出したのは1枚しかないきわどいやつ・・言ってた通りかなりきわどい・・見えそで見えない・・という奴だ・・私が落胆していると

 

「!ティアナ・・その写真私に寄越しなさい・・代わりにこれを上げるわ」

 

セッテが私の手の中の写真を覗き込み、自分の写真と変えろと言う・・その写真を見て

 

「!それは・・」

 

私が狙っていた訓練中の写真・・しかも私も一緒に写っている・・私は自分の写真を手渡し、セッテの手から写真を奪い取る

 

「・・これよ・・これが欲しかったの・・」

 

訓練中の鋭い視線の龍也さん・・私が1番集めてるのはこの分類だ・・私が写真を見ながら言うとセッテは

 

「そんな物が良いとは・・貴女の趣味を疑いますよ・・やはり・・この系統が一番です・・」

 

セッテはきわどい系のばかり集めてる・・特例として自分が一緒に写っている物も集めているが・・それ以外は基本的に全て交換してしまう・・そんなセッテに限って訓練系の奴が出るから不公平だ・・だから

 

「煩いわね・・貴女みたいにそんなのばかり集めてる人に言われたくないわ・・」

 

これ以上一緒に居ると掴み合いの喧嘩になりそうなので、その前にそう言ってその場を後にした・・

 

 

 

 

ケース3 鉄槌の場合

 

 

「んーんふふ~」

 

私は兄貴の人形を抱き抱えながらベッドの上にいた・・今日はお昼から兄貴と教導に行く事になっている・・これだけで教導官の資格を取って良かったと思う・・兄貴と2人きり・・と言うのがたまらない魅力だが・・

 

「今日は聖王教会か・・カリムに気をつけないとな・・」

 

カリムは兄貴に聖王教会に来いと繰り返し・・それこそストーカーの様に付きまとう・・兄貴も困っていて絶対1人では聖王教会には行かない・・それほどまでに兄貴はカリムが苦手なのだ・・だから

 

「私が確り兄貴の傍に居ないとな・・」

 

兄貴の人形を全力で抱きしめながら言う・・もし私が兄貴から目を離せば・・その隙にカリムは兄貴を監禁してでも聖王教会に残そうとするだろう・・そんな事はさせない・・

 

「兄貴は私達のなんだ・・カリム達のでも・・なのは達のでも無いんだ・・私の・・私達の兄貴なんだ・・」

 

誰にも・・誰にも渡さない・・私の大切な大切な兄貴を奪おうとするのは許さない・・私は抱き抱えた人形をベッドの上に置きながら

 

「・・なんか・・最近病んでるのか?・・」

 

自分では良く判らないが・・最近病んできてると良く言われる・・

 

「はやてに似て来たのかな?」

 

私はそんな事を考えていた・・私は最初兄貴が好きだった・・最初はそれだけだった・・だがはやてと一緒に居る内に兄貴に近付く女が嫌いに・・そして憎たらしく思えてきた・・はやてに引っ張られる形で私は兄貴を好きな気持ちが大きくなった・・そして今回は

 

「はやてに引っ張られる形で病んで来てるのかな?」

 

自分では判らない・・だがなのはに言わせると病み始めてきてるとの事・・だが

 

「別に良いよな・・それほどまでに兄貴が好きって事だよな・・なら何にも悪い事じゃないよな・・」

 

そう何にも問題ない・・問題無いのだ・・最近リィンフォースも味方になった・・4人なら・・他の誰より私達が有利・・それに自分達には妹と言う絶大なアドバンテージがある

 

「妹って立場は最初嫌だったけど・・今は良いや・・だって色々出来るし・・」

 

妹という立場は考えようによっては最高のアドバンテージだ・・最近兄貴の私達における警戒心が下がって来てる・・私は夜勤の日以外殆ど兄貴と一緒に寝てるし・・休暇になれば一緒の家に帰る・・これはなのは達には出来ない事だ・・私は管理局の制服に着替えながら

 

「絶対・・誰にも兄貴は奪わせない・・兄貴は・・ずっと私達と一緒なんだ・・そこに入れる隙間なんて無い・・」

 

私達と兄貴の間に入れる物なんて何も無い・・一mだって隙間は無いんだ・・私は着替え終え兄貴に貰ったブレスレットを着け

 

「そうさ・・誰にも・・兄貴は渡さない!」

 

私は誰に聞かせるでもなくそう宣言し、待機状態のグラーフアイゼンを拾って部屋を後にした・・

 

 

 

ケース4 超病み娘の場合

 

「うふふ・・新しい写真・・」

 

私はティアナと交換した写真を見ながら笑っていた・・今回も素晴らしい写真だ

 

「素晴らしいです・・ジュル・・おっと・・涎が・・」

 

写真を眺めていたら自然と出てきた涎を拭い・・今日手に入れた写真をアルバムに貼り付ける

 

「・・うふふ、ああ・・なんと素晴らしいのでしょうか・・この部屋は・・」

 

椅子に座りながら私の部屋を見る・・

 

「・・・・」

 

あっちこちに張られた龍也様の写真・・部屋の元の壁が見えないくらいに貼り付けられた写真・・

 

「ウェンディとかは悪趣味だと言いますが・・何処がですか・・こんなにもこの部屋は素晴らしい・・」

 

ここは私だけの空間で私と龍也様に関する物しかない・・つまりここは私と龍也様だけの空間・・何処が悪趣味だというのだ・・私にとって龍也様は

 

「神であり・・光である・・私の世界は龍也様が居てこその物・・」

 

そう私にとって世界とは龍也様が居てこそ色の付く物・・龍也様が居ない世界など必要の無い物・・

 

「あの1年は苦しかったですねぇ・・」

 

龍也様が居ない1年間・・あれは苦しかった・・私にとって絶対の神である龍也様が居ない・・それだけで私の世界は色を失った・・

 

「何度気が狂いそうになった事か・・」

 

自分でも何度気が狂いそうになったか判らない・・全てが憎くて・・全てを破壊したかった・・だが

 

「あの方は戻って来て下さった・・狂わなくて良かった・・破壊しなくて良かった・・」

 

龍也様が命を掛けて救った世界・・破壊しなくて良かった・・もし破壊していたら龍也様に嫌われたかもしれない・・もしそうなったら・・生きる意味を失ってしまう・・

 

「私の生きる意味は龍也様に尽くす事・・それ以外に私が生きる意味は無い・・」

 

狂っていると言われようが・・病んでると言われようが構わない・・他人の評価など取るに足りないもの

 

「誰であろうと蹴落とすだけ・・龍也様の隣は私の物・・誰の物でもない・・私だけの・・私だけの物」

 

邪魔者が居るがそれでも良い・・邪魔者を全て蹴落として龍也様の隣に立てた時の喜びが大きくなるのだから

 

「うふふ・・その時が楽しみで楽しみでしょうがないです・・」

 

全てを蹴落とし・・その時見える光景はどれほど素晴らしいだろう・・

 

「龍也様は私の物・・誰にも渡さない・・」

 

私の世界に色をつけてくれた人・・

 

私を救ってくれた人・・

 

私に力をくれた人・・

 

それは誰でもない龍也様・・私は私の全てを持って貴方を愛します・・それが間違っていると言われても・・私は変わらないし・・変えれない・・これこそが・・私の生き方なのだから・・

 

 

 

ケース5 ヤンデレ魔王の場合

 

「どうすりゃ兄ちゃんを私達の物に出来るかな・・?」

 

仲間も増えた・・ヴィータにシグナム・・それにリィンフォース・・これだけの人数で兄ちゃんに迫れば、何時かは振り向いて貰える・・私達だけを見てくれる様になるだろう・・でもそれは時間を掛ければの話・・だが私は・・

 

「もう待つのは嫌や・・直ぐにでも私の物に・・私達の物になって欲しい・・」

 

9年待った・・兄ちゃんから私達を物にしてくれるのを・・でもそれも疲れた・・、ヴィータには長期戦で行こうと言ったが・・私はもう待ち疲れた・・私が兄ちゃんに恋心を抱いたのは7歳の頃・・それからただ真っ直ぐに他の人を見ずにただあの人だけを見てきた・・なのはちゃん達より遥かに長い時間想い続けてきた・・

 

「自分から迫っても良い・・今すぐにでも兄ちゃんを私の物にしたい・・」

 

自分でも判る・・私は凄まじく独占欲が強い・・私達以外の人が兄ちゃんの傍に居るのが嫌だ・・話すのが嫌だ・・だから今すぐにでも自分の物にしたいでも

 

「今はまだ待たなかん・・今はまだその時や無いんや・・」

 

自分の気持ちだけでは駄目だ・・兄ちゃんにも心の底から愛して貰わなくては意味がない・・

 

「だから待つ・・別の世界に行く時を・・その時が最大の好期や・・」

 

兄ちゃんを狙う人が減る・・その時こそ私の最大の好期・・他の人が2人になる時私達は3人だ・・1人多い私達は有利だ・・だからその時に備えて準備をするのが絶対に必要な事だ・・

 

「ただなぁ・・リィンフォースは常識人やしな~自分から迫るって言うのには乗ってくれんよね・・」

 

リィンフォースはチンクさんに近いタイプだ、純情で自分から捕まえるのではなく捕まえて欲しい派なのだ・・そこが私とヴィータと違う所だ・・私達は自分から捕まえたい・・自分の傍にだけ居て欲しいという気持ちが強い・・

 

「リィンフォースも変わると良いな~私達見たいになってくれんかな・・」

 

自分はヤンデレと言うやつだろう・・病んでてブラコン・・

 

「濃いよな~」

 

普通どっちかだと思うが両方の私はかなり濃いだろう・・だがそれは私だけではない・・

 

「最近・・ヴィータも病んでるよな~」

 

私に引っ張られる形でヴィータが病んで来てる・・これは自分にとってプラスだ・・

 

「私もヴィータも尽くす方やし・・兄ちゃんも嫌にならんよね・・」

 

ヤンデレには好きな人を傷つけたいという欲望を持つタイプもあるそうだが・・私は違う・・兄ちゃんを傷つけたくは無い・・

 

「それにこればっかりは変えようが無いし・・仕方ないもんな」

 

自分のありようだからこれだけは変えれない・・そう思いながら自分で作った兄ちゃん人形を抱きしめる

 

「うふふ・・もうすぐ・・もうすぐや・・」

 

もう少しでスカリエッティさんの準備が出来る・・それまで待つしかないと判っているので待てる・・

 

「楽しみやわ・・別の世界に行くのが・・」

 

私はそう笑いながらベッドに横になった・・私をずっと護り続けたくれたのは誰でもない兄ちゃんや・・それだけじゃない・・私に勉強や料理を教えてくれたのも全部兄ちゃんや・・私はずっと兄ちゃんだけを見て兄ちゃんを愛してきた・・

 

「兄ちゃんは知らんのや・・私がどれくらい兄ちゃんを好きなのか・・」

 

兄ちゃんが思う以上に私は兄ちゃんが好きだ・・兄ちゃんは知らな過ぎるのだ・・自分がどれ程私の心の中を締めているのかを・・

 

「絶対に振り向いて貰う・・ずっと一緒に居てもらう・・もう決めたんや・・これは絶対に変えない・・」

 

私は兄ちゃんの人形を抱きしめながら眠りに落ちた・・その日私は夢を見た・・兄ちゃんと結婚する夢だ・・私はこれが、正夢だと良いなと思った・・私を護り続けてくれた・・私の傍にずっと居てくれた・・誰にも渡さへん・・私はずっと前からそう決めていたのだから・・

 

恋する乙女の日常 終り

 



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惚れ薬パニック 第1話

どうも混沌の魔法使いです

今回は新しく書き下ろした番外編になります・・リハビリの作品なので少し自信がないですがどうかよろしくお願いします

尚今回はシエスタ410様のリクエストの作品で5話構成の少し長い話ですがどうかよろしくお願いします


第1話

 

薄暗い研究所の中で私はある薬を作っていた

 

「ふふふふ・・出来た!!出来たぞ!!くっくっくっ・・これで龍也は・・ははは・・はっはっはっは!!!」

 

この薬が原因で、機動六課に大混乱が起きる

 

「ふっふっふ・・これで龍也は・・はっはっはっは・・くく・・どうなるか見物だな」

 

薬の入った瓶、後はこれを割るだけで効果が出る筈だ、私は声を押し殺して笑いながら瓶を落とした

 

ガシャンッ!!

 

音を立てて瓶が割れ・・ピンク色の煙が発生し直ぐに消えた

 

「くっくっくっ・・龍也お前も年貢の納め時だな・・」

 

私はこの薬ので起きる出来事を想像して笑っていたが、後ろに気配を感じ振り返ると

 

「ド・・ドクター」

 

頬が妙に赤いウーノが居た

 

「ウーノ?どうした?顔が赤いが・・はっ!!まさか・・」

 

私の中に最悪の予想が浮かぶ

 

(馬鹿なっ!!あれは龍也の事が好きな人物に効果が出る筈なのにっ!!・・まさか何か間違えたのか!!)

 

そんな事を考えていると

 

「ドクター・・胸がドキドキするのです・・」

 

ウーノの双眸が私を捕らえる、それはまるで肉食獣の様な目だった、私はこれで確信した・・龍也だけじゃない・・私も危険だと

 

「ドクター・・私は・・私は・・」

 

ウーノが私に歩み寄る、逃げようと思うが体が動かない・・金縛り状態だ

 

「はぁ・・はぁ・・ドクター・・」

 

ウーノの手が私に掛かる・・いかん早く逃げなければ・・そう思うが体が言う事を聞かない・・

 

「ドクター・・私は貴方の事が・・」

 

ウーノの目は正気じゃない・・今すぐにでも逃げたいが体が動く事は無い・・

 

「ドクターッ!!!」

 

ウーノに押し倒される・・いかん・・早く逃げなければ・・私はとんでもない過ちを・・

 

「ウーノ!!頼む!!正気に・・正気に戻ってくれぇぇぇっ!!!あああああああッ!!!!!」

 

機動六課にスカリエッティの悲鳴が木霊した

 

 

 

「んっ!?・・今ジェイルの悲鳴が聞こえたような?・・気の所為か?」

 

私は自室で書類整理をしているなか、ジェイルの悲鳴が聞こえた気がしたが、気の所為かと思いパソコンの電源を切った

 

「しかし・・今日は肩身が狭いな・・」

 

今日は男性局員の健康診断の日で殆どの男性局員は本局に行っている為、いま六課内は女性が大半で私には少々肩身が狭い・・

 

「ふー、しかし今六課に居るのは、私とグリフィスにヴァイスとエリオとジェイルだけ・・肩身が狭い所の話ではないな」

 

そう思いながら自室を後にし食堂に向かった・・しかしこれが間違いだったと私は後に知る事になる

 

「・・なんだ?妙な気配だな?」

 

六課の通路は妙に静まり返っており・・どこか不気味な気がした、そんな事を考えながら通路を歩いていると

 

「・・王・・やっと見つけました・・」

 

通路の影からシャルナが姿を見せる

 

「シャルナ?・・どうしたんだ?私に何か用か?」

 

そう尋ねるとシャルナは

 

「あはは・・はい用があります・・私は貴方の騎士です・・それは判りますか?」

 

不自然に笑いながら尋ねてくるシャルナに

 

「ああ・・判っているがそれがどうかしたか?・・バッ・・・なっ・・何をするっ!!」

 

突然シャルナが拳を振るってくるので反射的に回避すると

 

「あは・・流石王です、今のをかわしますか・・・あははは・・それでこそ私の王です」

 

ここで初めてシャルナの顔を見る・・妙に頬が赤くしかも瞳はどんよりと濁っていた

 

「あははは・・私は貴方の為に存在しています・・この体も髪も血液も・・その全ては貴方の者です・・」

 

何を言っている!?・・しかも体が逃げろ逃げろと告げるが、体が動かない・・

 

「だから・・私は身も心も貴方の物に・・王の所有物になりたい!!!」

 

「なっ・・くそっ!!」

 

突然飛び掛ってきたシャルナに悪いと思いながら、腹部に正拳を叩き込み意識を刈り取る

 

「はぁ・・はぁ・・一体何なんだ・・」

 

突然のシャルナの凶行に驚いた所為か、女性の腹に拳を振るってしまった事を後悔しながら、シャルナを空き部屋に横にしてから私は再び食堂に向かった・・

 

「しかし・・さっきのシャルナは異常だった・・一体何が?」

 

突然のシャルナの凶行の事を考えながら歩いていると

 

「あっ・・王・・見つけました・・」

 

クレアと鉢合わせになるが・・クレアも様子がおかしい・・頬は赤いし・・目も正気じゃない・・・まさか!?

 

「あは・・私は貴方の騎士・・貴方の為だけに存在し・・私の心も体も全ては貴方の者ですぅ・・」

 

どんよりとした目で私を見ながら笑う、クレアに

 

(不味い・・この様子なら・・クレアもシャルナと同じ・・逃げなければいかん・・)

 

本能的に判る・・捕まれば私はとんでもない過ちを・・私はそう理解し、来た道を逆に走り出した

 

「あああっ・・王・・あはは・・追いかけっこですか?・・あはは・・必ず捕まえますよ?・・その後は・・あはははは」

 

私が走り出した事に一瞬動きが止まる、クレアだったが直ぐに再起動し私の後を追ってきた

 

「くそっ!!一体どうなってるんだ!!!」

 

私はクレアから逃げながら悪態を付いた・・クレアはピッタリと私の後を着いて来ており、振り切れる気配は無い

 

「あはは・・焦らすんですね・・あは・・あはは・・・焦らされるのも良いです~ジュルっ!!」

 

後ろからクレアの舌なめずりの音が聞こえる・・・ゾクっ・・捕まってはいけない・・捕まれば私はそこでBADENDだ!!私はそう判断し、更に走る速度を速めた・・急の加速にクレアは反応できず振り切る事に成功した

 

「くそ・・どうなってるんだ?」

 

私は姿を隠しながら、現状を考えていた・・シャルナにクレアだけではない・・他の隊員も様子がおかしい・・そんな事を考えながら

様子を見ていると

 

「ねぇ・・ティア・・龍也さん居た?・・部屋に居なかったんだけど・・」

 

スバルの声が聞こえるが、シャルナ達同様様子が変だ

 

「くす・・いいえ・・見てないわ・・でも・・くす・・私達が必ず捕まえる・・そうでしょう?・・スバル?」

 

ティアナがくすくすと笑いながらスバルと話しながら・・歩いて行った・・

 

「はぁ・・はぁ・・何なんだ一体・・私が何をしたって言うんだ・・」

 

思わずそう呟くと

 

「それは・・龍也様が鈍感なのが全ての原因ですよ?」

 

!!!この声はセッテ!!

 

私は反射的に前に飛ぶと、私が居た場所にソルエッジが振り下ろされる

 

「くす・・流石龍也様・・これだけの不意打ちを回避しますか・・」

 

くすくす笑うセッテはかなり恐ろしい・・

 

「でも・・それで良いです・・簡単に捕まえては楽しみがありませんから・・・」

 

どんよりとした目で私を見るセッテ・・くそっ!!セッテもかっ!!

 

私が逃げる為に走り出そうとすると

 

「あは・・見つけた・・王よ・・」

 

クレア!!しまったクレアにも見付かったが、直ぐにセッテを見ながら

 

「くす・・王は私の物です・・貴方に渡して堪りますか」

 

ユニティをセッテに向けながら言うと

 

「龍也様は誰の物でもない・・一番最初に捕まえた人の物です」

 

セッテもソルエッジを向ける

 

「くす・・まぁ・・敗者の物ではないと言う事は判っていますよね?」

 

「ええ・・判っていますとも・・だから貴方はここで・・消えなさい!!!」

 

セッテとクレアが戦闘を開始した隙を突いて私は逃亡した

 

「はぁ・・一体どういう状況なんだ!!誰か教えてくれ!!」

 

私は走りながらそんな事を言っていると、後ろから笑い声と共に

 

「あはは・・私が教えてやんよ」

 

ノーヴェッの声が聞こえる・・いやノーヴェだけじゃないっ!!!後ろを見るとノーヴェの他にもう一人いる・・その人物は・・

 

「兄上・・見つけました・・」

 

シグナムだと!!!!しかも二人ともバリアジャケット展開してる・・・

 

後ろから走ってくる二人の声を聞きながら私は

 

「どうなってるんだっ!!!ちくしょーッ!!!」

 

私は思わずそう絶叫をしながら全力で走り出した

 

「はっ!!しまったこっちは・・」

 

私は走ってる内に気付いた・・私は上手い様に行き止まりに誘導されている事に

 

「このままだと・・行き止まりに・・くそ・・もう行き止まりか!!」

 

そんな事を考えてる内に私は行き止まりに捕まってしまった・・道は無い・・左は一応倉庫だが・・鍵が掛かっており・・入る事は出来ない・・

 

「龍也・・あははは・・もう直ぐだ・・もう直ぐだぜ・・」

 

「兄上・・もう逃げ道はありません・・じっくり行かせて貰います」

 

ゆっくりと歩いてくる二人の足音が聞こえる・・

 

「くそ・・ここまでか?」

 

私が諦め掛けた所で、左の倉庫から手が伸び私をその中に引きずり込んだ!

 

馬鹿なっ!!伏兵だと!!その拘束から逃れようとすると

 

「旦那!!暴れないでくれ!!!俺です!!ヴァイスですよ!!!」

 

その声は確かにヴァイスの物で、私は暴れるのを止めた

 

「そうっす・・暴れないで気配を殺してください・・」

 

静かに言うヴァイスに頷くと、外から

 

「居ない・・どこから・・ははは・・でも良いぜ・・・楽しみは後の方が良い・・」

 

「居ない・・どこに逃げたのだ・・ここは行き止まりの筈なのに・・」

 

引き返していく二人の声を聞き・・完全に二人の気配が消えた所で

 

「旦那・・良かったっす・・これで二人目ですよ・・保護できたのは」

 

二人目?もう一人は誰だと思い

 

「もう一人は誰だ?」

 

と尋ねるとヴァイスは笑いながら

 

「エリオっすよ・・それより・・こっちですよ・・何時までも入り口の所に居れないですからね?」

 

私はヴァイスに先導されるように倉庫の奥に進んで行った・・

 

 

リザルト

 

龍也・・体力まだ余裕だが以前状況不明・・

 

仲間

 

ヴァイス・・体力余裕 エリオ?・・状況不明

 

リタイヤ

 

シャルナ(龍也によって撃破) クレア(セッテに敗北後壁に張り付け状態)

 

追跡者

 

ノーヴェ、シグナム(倉庫から離れていっている)

 

状況不明者

 

グリフィス ジェイル

 

残り時間・・不明

 

第2話に続く

 



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惚れ薬パニック 第2話

第2話

 

「ヴァイス・・今どういう状況なんだ?」

 

倉庫の奥に向かいながら隣を歩く、ヴァイスに尋ねると

 

「いや・・俺も良く判って無いっす・・判ってるのは・・なのはさん達が旦那を血走った目で探してる、事くらいですかね?」

 

・・なのは達もかっ!!一体何が起こってるんだ・・そう思っていると

 

「ヴァイスさん!!僕を・・僕を一人にしないで下さい!!!・・・・お・・・お父さん!?・・・うう・・怖かったです!!」

 

奥からエリオが走って来て、ヴァイスに怒鳴るが私の姿を見つけると、泣きながら抱きついてきた

 

「エリオ?・・どうしたんだその格好は・・」

 

私はエリオの姿を見て驚きながら尋ねた・・何故なら・・エリオの服は所々引き裂かれていた

 

「・・ううう・・キャロとルーちゃんに・・キャロとルーちゃんに襲われたんです・・怖かったです・・」

 

涙を流しながら怖かったと言うエリオの背を撫でながら

 

「しかし・・キャロとルーテシアまでおかしくなるとは・・・一体何が原因なんだ?・・・ヴァイス?・・もしかしてお前も誰かに襲われたのか?」

 

ヴァイスの頬にガーゼが当てられている事に気付き、尋ねると

 

「・・はは・・旦那・・信じられますか?・・突然ラグナが・・大好き・・私はお兄ちゃんが大好き・・だから・・だから・・とか言い始めたと思ったら・・ナイフでズバっ!・・本気で死ぬと思いましたよ・・俺」

 

そうか・・ヴァイスも被害者か・・と思っていると

 

「旦那は?・・誰かに襲われましたか?」

 

疲れた様子で尋ねて来るヴァイスに

 

「クレアとシャルナ・・それとノーヴェとシグナムにセッテに襲われたな」

 

と言うとエリオが

 

「お父さん・・良く逃げ切れましたね?・・僕は上着脱いでそれに気を取られてる間に二人から逃げましたけど・・」

 

泣き止んだエリオが驚きと言う感じで言う

 

「いや・・危なかった・・・ノーヴェとシグナムに捕まりかけた所でヴァイスに助けられたからな」

 

と笑っていると、ヴァイスが

 

「旦那、こんな物ですが・・食べといたほうが良いですぜ」

 

非常食の乾パンと干し肉を受け取り、それを食べていると

 

ガタッ!!!

 

倉庫の奥から物音が聞こえた

 

「・・まさか・・もう見付かったのか?」

 

ヴァイスが驚きながら呟く

 

「・・ガタガタ・・キャロとルーちゃんじゃないですよね?・・」

 

震えるエリオの頭を撫でてから

 

「とりあえず確認しよう・・・もし・・なのは達だったら・・・全力で逃げよう」

 

コクコクと頷く二人と共に物音の聞こえた方に行くと

 

「ガタガタ・・・くそ・・どうしてこうなってしまったんだ・・・」

 

この声はジェイル?と思い首を傾げると

 

「どうして私にまで効果が・・私の作った惚れ薬は・・龍也を好きな者に効果が出る筈だったのに・・・如何して・・私まで」

 

・・・成る程・・・こいつが原因か・・・そう思い振り返ると

 

「あのお惚け博士が・・・何て物作るんだよ・・・それの所為で俺は・・俺は・・妹に刺され掛けるなんて・・くそ・・殺す・・」

 

ヴァイスは額に青筋を浮かべ、握り拳を作り

 

「・・あの人の所為で・・僕はあんな目に・・あったんですね・・・許しませんよ・・」

 

エリオも怒りの形相を浮かべている

 

「・・・こっそり後ろに回って・・処刑するぞ?」

 

頷く二人と共にジェイルの背後に立ち

 

「殴り倒すぞ?」

 

小声で二人に尋ね、二人が頷くと同時に、私は全力で馬鹿の頭を殴りつけた

 

「グハッ!!!誰だ・・龍也・・・エリオ・・ヴァイス・・」

 

私達に気付き、顔を青褪める馬鹿に

 

「さて・・・話は聞かせてもらった・・全てはお前が原因なんだな?」

 

確認の為に問いかけると

 

「違う・・違うぞ・・私は何もしていない!!」

 

違うと言う馬鹿の背後にエリオが回りこみ、ヘッドロックを仕掛けながら

 

「スカリエッティさん・・・正直に話してください・・じゃないと・・・僕・・・うっかり手が滑っちゃうかもしれません・・」

 

と笑うエリオに

 

「今正直に言え・・それなら9割殺しで勘弁してやる・・10秒以内に答えろ・・10・・0・・時間切れだ・・」

 

ゴキゴキと首を鳴らしながら、時間切れと言い馬鹿に詰め寄る、ヴァイスの目は完全に据わっていた

 

「馬鹿にはお仕置きが必要だな・・エリオ・・うっかりは誰にでもあるぞ?」

 

遠まわしにGOと言うと、エリオは頷き無言で馬鹿の首を捻った

 

ボキャッ!!嫌な音を立てて馬鹿の首が捻り上げられる

 

「ぐがっ・・エリオ・・痛いぞ・・ごふッ!!」

 

痛いと言った瞬間ヴァイスの拳が、馬鹿の顔にめり込む

 

「てめえに判るか・・妹にナイフを向けられたこの俺の気持ちがよぉぉっ!!!」

 

ヴァイスが絶叫しながら、拳を振るう

 

「す・・すまん・・ちょっと失敗・・ごふっ・・は・・話を・げふっ・・聞いて・・がはっ・・くれ・・」

 

馬鹿の言葉に耳を傾けず、暴れるヴァイスとエリオを見ながら私は握り拳を解きながら

 

「・・自業自得だな・・ジェイル・・流石に可哀想だから・・止めてやるか・・」

 

私は親の仇と言わんばかりに馬鹿を殴りつける、二人を止めようとしたが、中々止まってくれず、二人が止まったのはそれから30分後の事だった

 

「で・・馬鹿・・薬の効果は何時切れるんだ・・正直に言えよ・・旦那が止めたから我慢したが・・俺はまだ許してないぞ!!」

 

怒りの形相のヴァイスに

 

「少し・・落ち着きました・・」

 

エリオは少し許せたのか、私の隣に座りヴァイスがジェイルを怒鳴りつける光景を見ていた

 

「薬はあと4時間くらいが効力時間だ・・それが過ぎれば・・皆眠りに落ちる筈だ・・」

 

震えながら答える、ジェイルに思い出した様にヴァイスが

 

「所で・・お前も誰かに襲われて、逃げてきたって所だな?」

 

ジェイルの服は所々破けており、エリオ同様襲われたというのが一目瞭然だ

 

「多分・・ウーノさんって所だな?」

 

身を竦めるジェイルを見て、ヴァイスは

 

「良し・・良い事を思いついた」

 

と笑いジェイルの襟を掴み無理やり立ち上がらせる

 

「な・・何をする気だ?」

 

怯えた様子のジェイルを見て、ヴァイスはニヤリと笑い

 

「お前を追ってる人に、身柄を渡すのさ」

 

サーッ・・顔から血の気の引いていくジェイルと同時に、倉庫の外から

 

「ドクター・・どこですか・・ドクター・・」

 

ウーノの声が聞こえてくる、その声にヴァイスは更に笑みを深め

 

「さぁ・・お迎えだ・・行って来なッ!!!」

 

ジェイルを倉庫の外に出し、一気に鍵を掛けるすると外から

 

「頼む!開けてくれ!!あれは危険だ!!肉食獣だ!!捕食者だ!!」

 

と絶叫するジェイルにヴァイスは

 

「あーあー、俺は何にも聞こえない~、そんじゃあ~大人しく娘に喰われろよ~そして俺を恨むな~恨むなら馬鹿な薬を作った自分を恨め~、さっ!旦那!エリオこっからどうするか考えようぜ~」

 

鼻歌交じりのヴァイスに誘導され、私とエリオは更に倉庫の奥に向かった、その背後から

 

「ウーノ!!落ち着け・・くっ駄目か!!!こうなったら・・パンッ!!・・死に物狂いで逃げてやる!!!・・おおおおおおッ!!!!!」

 

何かが爆発する音と共に、ダダダダダッ!!!!物凄い音で走り去る足音と

 

「くっ・目が・・ですが・・私はドクター貴方を捕まえて見せます!!!」

 

どうやら視界が潰された様だが、直ぐに走るウーノの足音が聞こえた・・・逃げ切れると良いなジェイル・・私はそう思った

 

「さて・・馬鹿が言うにはあと4時間・・丁度日が暮れるまでですね、どうしましょうか?ここに篭ります?」

 

にこやかに笑いながら、倉庫に篭るかと言うヴァイスに

 

「いや・・篭るのは無理だろう・・クレア達はデバイスを使っていた・・下手をすれば閉じ込められ・・・そこで終わりだ」

 

そう篭るのは危険だ、入り口を破壊され、閉じ込められれば逃げ道なしだからな・・

 

「それじゃあ・・別の倉庫に移動しながら、時間を過ごしましょう」

 

エリオの提案・・危険だが・・一番安全かもしれない・・六課には使用してない倉庫が後3つある、見付からず移動し倉庫に到達できれば安全だ

 

「そうだな・・それが一番安全かもな・・良し・・それじゃあ移動と行きましょうか?」

 

使用してない倉庫に向かう為、倉庫から出るとそこには・・

 

「スカリエッティさんの白衣・・・」

 

そこにはボロボロの白衣と目くらましに使われたであろう・・小型閃光弾が落ちていた、それを見てヴァイスは

 

「ちっ・・こんな物まで持ってたのか・・取り上げて置けばよかったぜ・・」

 

どうやら、相当根に持っているようである

 

「とりあえず・・移動しよう・・ここで固まっていたら直ぐに見付かるからな・・」

 

頷く二人と共に別の倉庫に移動する中、ヴァイスが

 

「しかし・・部隊長が動かないのは意外ですよね・・一番動くと思ってたんですがね・・」

 

はやてが動かない事を意外と言うヴァイスに

 

「いや・・はやては慎重に動くだろう・・・こういう時にはやての頭の回転は異常に早い・・多分私が疲れるまでは動かないだろうな」

 

はやての性格からすれば、絶対に私は逃げられない状況になってから動くだろう・・それまでは静観の筈だ

 

「部隊長、やっぱり頭良いんですね・・」

 

しみじみ言うエリオの頭を撫でながら、こっそり倉庫に向かっていると

 

「・・なのはさん・邪魔なんですよ・・私達の邪魔をしないで下さい・・」

 

!!反対側の通路にティアナとスバル・・それに話から推測するになのはも居るはず、そう思い更に気配を殺し移動していると

 

「邪魔か・・・言うね・・二人とも・・でも私からすれば・・二人の方こそ邪魔かな・・龍也さんに近づく嫌な存在だからね・・ここで消えて貰おうかな・・」

 

ピリピリとした殺気が伝わってくる

 

「・・旦那・・見付かったら本当に終わりですね・・幾ら旦那でも、なのはさんとスバルとティアナから逃げるのは・・」

 

そう言うヴァイスに頷き、若干早足でその場から離れると

 

ズドン!!!ギャリギャリッ!!!

 

戦闘音が後ろから聞こえてくる・・その凄まじい音に

 

「見付からなくて良かったですね・・本当」

 

そう呟くエリオに頷き、移動を再開すると、反対の通路から小柄な影が2つ歩いてくる、その小柄の影にエリオがガタガタ震え始め、ヴァイスは神妙な表情で

 

「旦那・・いざとなったら、エリオを担ぎ上げて全力で走りましょう」

 

それに頷き、歩いてくる影に警戒していると

 

「あは・・お兄様・・見つけたですぅ~」

 

「兄・・やっと・・やっと見つけたぜ~」

 

歩いてきた影は、リィンとアギトだった・・二人は私を見つけると私に抱きつき

 

「好き!好き!!大好きです!!」

 

「兄は!兄は私は好きか?私は兄が大好きだ」

 

ぐりぐりと頭を擦り付けて来る、二人を見ながら

 

「どうすれば良い?二人を気絶させるか・・それとも連れて行くか?」

 

抱きつき好き好きと連呼する、二人を指差しながらヴァイスに訪ねると

 

「・・連れてった方が良くないっすか?旦那デバイス持ってないじゃないですか?いざとなったら二人とユニゾンすれば逃げ切れますよ?」

 

確かに・・それに好き好き言うだけで、これと言って危険は無さそうだな・・私はそう判断し

 

「リィン、アギト」

 

二人に声を掛けると、二人はトロンとした目で私を見上げ

 

「お兄様・・お兄様はリィンの事が好きですか~」

 

「兄・・私は兄が大好きだぜ~」

 

笑う二人に私は微笑みかけながら

 

「ああ、私は二人が大好きだよ、だから一緒に行こうか?アウトフレームを解除してくれるかな?」

 

アウトフレームを解除した二人を胸ポケットに入れると

 

「お兄様の匂いがするです・・リィンは幸せですぅ・・お兄様に抱きしめられてる気分ですぅ」

 

「兄に抱きしめられてるみたい・・幸せだ~」

 

胸ポケットからほにゃ~とした顔で笑う、二人を見ながらヴァイスが

 

「良し・・今の内に移動しましょうぜ・・あんだけ派手にドンパチしてたら・・皆集まってきますぜ」

 

後ろから、魔法が炸裂する音が断続的に聞こえてくる、ヴァイスの言う通りだと頷き、私達は倉庫に向かった・・

 

ジーッ・・

 

移動する龍也達の姿を追う、カメラの姿があった・・その映像の映っている先は

 

「うふふ・・兄ちゃん私からは逃げられへんで・・絶対捕まえて私の物に・・うふふふ・・楽しみ・でもまだ早い・・まだ兄ちゃんには余裕がある・・こんな時に追うのは馬鹿のする事や・・でもそれで良え・・それで兄ちゃんの体力は減るからな~」

 

あははと笑うはやての目は龍也達の移動を捉えてる、カメラの映像をしっかりと捉えていた

 

「ん!・・また馬鹿が向かってるみたいやね・・」

 

はやては笑いながら、そう呟いた・・そのカメラにはバリアジャケットを展開し、移動しているフェイトの姿があった・・

 

リザルト

 

龍也・・体力まだ余裕、状況把握完了

 

仲間

 

ヴァイス・・体力余裕、スカリエッティに対する怒りは依然消えず エリオ・・体力余裕、精神的ダメージ特大、リィン、アギト、惚れ薬の効果により龍也にメロメロ状態、現在は龍也の胸ポケット内

 

リタイヤ

 

シャルナ(龍也によって撃破) クレア(セッテに敗北後壁に張り付け状態) ティアナ(スターライトの直撃により、壁にめり込み敗北)

 

追跡者

 

フェイト、龍也達の隠れ先に接近中 はやて、監視カメラの映像を見ながら行動する時期を考案中 ウーノ、ジェイルを追走中

 

状況不明者

 

グリフィス 

 

逃亡者

 

ジェイル、ウーノから全力で逃亡中、体力やや減少、ダメージ中、 スバル、ティアナ戦闘不能と同時に離脱、なのはから逃亡中、ダメージは少で体力は余裕

 

残り時間・・4時間弱

 

第3話に続く

 



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惚れ薬パニック 第3話

第3話

 

「さて、まずは状況の把握だ、ヴァイス今日六課に居る隊員の事は判るか?」

 

漸くたどり着いた倉庫でヴァイスに尋ねると

 

「えーと・・隊長陣とFW陣は全員いるっすね、今日はチンクさんとセッテ・・それにノーヴェいる筈っす、それと関係ないっすけどハーティーンは聖王教会に行ってるし、ヴィヴィオはアイギナさんが連れて遊びに行ってるすね」

 

こうして確認するとかなりの数の敵が居るな

 

「ふーむ・・後4時間どうやって逃げるかね・・3人で纏まった行動するのも危ないし・・かといって1人で行動するのも危険だしな・・」

 

ふと胸ポケットのリィンとアギトを見る

 

「「すーすー」」

 

2人とも眠っている、眠っているリィンとアギトを見ながら

 

「悪いが私は戦闘は無理だな、デバイスも無いし、頼みの綱の2人は熟睡中だ」

 

リィンとアギトが寝ている以上、私は戦闘が無理だと言うと

 

「俺も無理っすね・・狙撃用のデバイスじゃ戦闘は無理、頼みはエリオっすけど・・無理か?」

 

戦闘出来るかとエリオに尋ねると

 

「あの・・ルーちゃんとキャロに取られて無いです」

 

エリオも戦闘は無理か・・そう思った瞬間

 

スパン!!

 

壁が切り裂かれ・・切り裂かれた壁から

 

「龍也・・み~い~つ~け~た~」

 

どんよりと曇った瞳のフェイトが笑いながら姿を見せる

 

(旦那、今壁切り裂きましたね・・殺傷設定っすね・・)

 

ヴァイスが言う、私も感じていた事だフェイトは殺傷設定をONにしている・・危険だ

 

「うふふふ・・やっと見つけた・・ねぇ?・龍也は私が好き?・・私は好きだよ・・殺したい程・・ねぇ龍也切らせてよ・・大丈夫・・痛くしないから・・ねっ?」

 

ブルッ!

 

体が震える、今フェイト切らせろっと言ったな・・チラリとバルディッシュを見る・・駄目だ・・あれで切られたら死ぬ・・

 

(旦那、逃げないと・・殺されるっすよ?)

 

ヴァイスが逃げろと言うが、フェイトは倉庫の出口を塞ぐように立っている・・逃げるのは無理だ

 

「うふふ、大丈夫だよ~痛いのは一瞬だから・・私に任せてよ・・龍也の血で綺麗にして上げるから・・」

 

・・・死ぬ・・本気で殺される・・どうするっ!どうすれば良いんだ!!

 

倉庫の中を見回す、そして見つける・・窓だ!窓がある!!・・だがどうする?窓から飛び降りるのは危険だ・・だが

 

「うふふふ・・さっ行くよ・・」

 

フェイトがバルディッシュを振りかぶる・・それに私は決心した

 

「エリオ、ヴァイス・・ここからは別行動だ・・頑張って逃げろ・・じゃあな!!」

 

私は窓を破り、飛び降りた・・

 

「おおおおおっ!!」

 

落下しながら自分が破った窓を見る、フェイトが出て来ようとしている

 

スタッ!!

 

「足が・・」

 

着地したが足が痺れて、直ぐに走り出せない・・だが意地で走り出す

 

パリーン!!

 

フェイトが壁を破壊して、出てくる

 

「早すぎるだろう!?・・と言うか砲撃!?本気で!!私を殺すつもりか!!」

 

私は直ぐにトップスピードで走り出した

 

「おおおおおっ!!!」

 

フェイトを振り切る為に全力で走る・・だが空を飛んでるフェイトから逃げるのは難しい・・どうする!?どうするか自問自答していると

 

「八神!!こっちだ!!」

 

チンクの声が聞こえる・・どうする!?チンクにも惚れ薬が効いてる可能性が・・だがこのままでは何でか知らないが殺される・・一瞬迷ったがチンクの声の方に向かった

 

「居ない・どこかな?・・まぁ良いや・・龍也居ないなら邪魔者排除しに行こう・・」

 

フェイトが私とチンクが隠れている所を通り過ぎていく

 

「はぁ・・チンク助かった・・こんど礼はする・・」

 

匿ってくれたチンクに礼を言うと

 

「ふむ・・礼は良い・・危ないところだったな?」

 

危ない所だったな言うチンクの目を見る・・少し濁っているがそれだけだ・・あまり薬の効果が出てないようだ・・と思った瞬間

 

ギュッ!!

 

チンクが背中に抱きつく

 

「チンク?」

 

背中のチンクを見ると

 

「偶には甘えたい時もある・・少しで良いからこのままで・・」

 

背中に顔を埋めるチンクに

 

(仕方ない・・助けてくれたんだ・・そう目くじらを立てる事も無いか・・)

 

私はそう判断し、チンクを背負ったまま移動を再開した

 

 

リザルト

 

龍也・・体力まだ余裕、背中にチンクがしがみ付いている

 

仲間

 

リィン、アギト、惚れ薬の効果により龍也にメロメロ状態、現在は龍也の胸ポケット内 チンク 背中にしがみ付いている・・それ以外特に被害なし

 

リタイヤ

 

シャルナ(龍也によって撃破) クレア(セッテに敗北後壁に張り付け状態) ティアナ(スターライトの直撃により、壁にめり込み敗北)

 

追跡者

 

はやて、監視カメラの映像を見ながら行動する時期を考案中 ウーノ、ジェイルを追走中

 

状況不明者

 

グリフィス エリオ、ヴァイス 

 

逃亡者

 

ジェイル、ウーノから全力で逃亡中、体力やや減少、ダメージ中、 スバル、ティアナ戦闘不能と同時に離脱、なのはから逃亡中、ダメージは少で体力は余裕 龍也 自分を殺そうとするフェイトから逃亡成功

 

残り時間・・3時間30分

 

 

第4話に続く



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惚れ薬パニック 第4話

惚れ薬パニック第4話

 

「・・くっ・・思ったより動きにくい」

 

私は小声でそう呟いた、胸ポケットにはリィン、アギト・・背中には

 

「すう・・すう・・」

 

眠りに落ちたチンク、何処かの部屋に置いてこようかと思ったが・・凄まじいまでの力でしがみ付いている為振り解く事すら出来ない・・

 

「こんな状態で誰かに見つかったらアウトだぞ・・!!!」

 

「あっ・・ミツケマシタヨ?・・タツヤサン・・・」

 

廊下の角を曲がった瞬間・・私は振り返り脱兎の如く走り出した・・曲がり角に居たのは・・

 

「アハハハ・・アハハハッ!!!!」

 

狂ったように笑う、戦闘機人モードのスバルだった・・

 

「迎え打つか・・?」

 

猛スピードで走りながら後ろを見る

 

「ウフフフ・・」

 

どんよりとした目のスバルを見て・・

 

「・・無理だな・・」

 

正気ならまだしも今の状態のスバルを組み伏せるのは無理そうだ・・

 

「・・ん?・・急に揺れだしたな?」

 

どうやら今の騒ぎでチンクが目を覚ましたようだ。気配で判るが・・どうやら後ろを見ているようだが・・

 

「・・スバル・・お前も私から八神を取り上げるのか?」

 

凄まじい怒気と殺気を放ち始めたチンクは直ぐに私の背中から飛び降り

 

「許さない・・私から・・八神を取り上げる奴は・・皆・・許さないッ!!!」

 

そう言うが早くチンクはスバルに飛び掛る

 

「ツブシマス」

 

「やってみろッ!!!」

 

ドンッ!!ドンッ!!!

 

凄まじい衝撃音が後ろから響いてくる・・どうなっているのか見たいが

 

「今は逃げる事が先決だ」

 

触らぬ神に祟りなし・・このまま残っていると暴走状態のチンクに襲われる可能性があるので撤退しよう・・そう判断し振り返った直後

 

ゴンッ!!

 

「う・・あ・・」

 

頭に鈍い衝撃を感じ私はその場に崩れ落ちた・・私が意識を失う直後に見えたのは

 

「兄貴ぃ・・」

 

邪悪な笑みを浮かべるヴィータの姿だった・・

 

 

 

 

「やべえな・・旦那捕まっちまったぞ・・」

 

俺は通気孔を通りながらそう呟いた・・俺を追う物好きなんて居ないが、下手になのはさん達に捕まれば、命が惜しければ従えなんて言い出しかねない・・それは嫌なので見つからないように通気孔を選んだが・・とんでも無い物を見てしまった・・

 

「ヴィータさんか・・元から病んでる人だからなぁ・・旦那大丈夫かな・・」

 

通常時でもかなりアレな人が凶化するとどうなるか判らないが・・判るのは旦那の貞操の危機という事だけだ・・

 

「何とかチャンスを見て助けに行かないとな・・」

 

旦那を引き摺っていったヴィータさんは自室に向かっていた・・丁度良い事に俺は今通気孔の中・・チャンスがあれば助けれるはずだ・・

 

「でもその前に何か武器を・・」

 

懐から地図を取り出す・・

 

「えっと・・ここがスターズの部屋の前だから・・!2ブロック先に馬鹿の研究室がある!」

 

今助けに行くよりかは何らかの武器があったほうが良い・・出来れば麻酔系か神経に作用のある物・・それがあれば時間が稼げる

 

「あと・・2時間と45分・・逃げるだけって言うのは無理だからな・・防衛手段は必要だよな・・」

 

俺がそんな事を考えてると

 

「お父さん!!ヴァイスさん!!助けてえええええッ!!!」

 

必死な悲鳴が聞こえ下を見て絶句した

 

「うわ・・悲惨だな・・」

 

フリード飛龍形態+ガリューに追いかけられてるエリオが見えた・・その背後には

 

「「・・・・」」

 

無言だが邪悪な笑みを浮かべたルーテシアとキャロが居た・・その手には破かれたエリオの制服があった・・

 

「やべえ・・旦那だけじゃなくエリオもピンチか・・なんか無いか?」

 

ごそごそと懐を探るが・・何もない・・

 

「すまん・・俺はお前を助けれないかもしれない・・でも何とか逃げてくれよ」

 

俺はそう呟き匍匐全身で移動を開始した

 

ガンッ!!ガンッ!!!ガラランッ!!!

 

「やっと開いたぜ・・」

 

足で格子を蹴り抜き何とか研究室に潜り込む・・

 

「ん・・と・・」

 

棚をごそごそと探り何かないかと探す・・

 

「えっと・・「惚れ薬ハイパー」「性格逆転薬」「弱点克服剤」・・あいつは何処へ行きたいんだ?」

 

棚に入った薬品のラベルを見て俺はそう呟いた・・天才は限界を超えると馬鹿になるのだろうか?・・そんな事を考えながら棚を探していると

 

「おっ!何か良さそうだ」

 

薬ではなく何かの道具らしき物を見つけて、説明書きを見る

 

「・・「強力麻酔薬」・・暴れまくってるはやて君さえ鎮圧できる」

 

・・・まぁ・・暴れてる部隊長はロストロギアより危険か・・

 

「とりあえず・・確保」

 

役に立ちそうなのでとりあえず、置いてあったリュックに仕舞う

 

「後は・・「強制睡眠薬」・・暴れるヴィータ君を鎮圧できる・・吹き矢として使用・・あいつは何を考えてるんだ?」

 

何故、部隊長とヴィータさんを名指ししているのか?・・それが判らなかったが・・とりあえず横においてあった吹き矢と一緒にリュックへ・・

 

「後は・・」

 

リュックには後2つか3つくらいなら入りそうだが・・時間はどうだ?

 

「旦那が連れ去られてから・・30分か・・どうする・・」

 

恐らくヴィータさんは自室に向かったはず・・あそこから自室までは約20分・・旦那が連れ込まれてから10分経過した事になる

「そう早く動くはずはない・・後何か武器を・・これは!?」

 

俺の目に止まった物それは・・対魔道師用のスタンガン×3

 

「こ・・これがあれば・・何とかなるかもしれない・・よっしゃああ!!今助けに行きますよ!!旦那!!」

 

俺はそう雄叫びを上げ研究室を出たが

 

「ギョロッ!!」

 

黒い目のフェイトさんに遭遇してしまった・・

 

「ヴァイスか・・龍也じゃないなら・・死んで?」

 

バルディッシュを構えるフェイトさんに

 

「俺は・・死ぬ訳にはいかないだ・・旦那とエリオを助けるまではぁ!!」

 

ヴァイスVSフェイト 戦闘開始・・

 

 

 

「ここは・・?「私の部屋だ・・兄貴」・・ヴィータッ!?」

 

そうだ・・私はヴィータに殴打されて・・って・・

 

「て・・手錠!?それに足枷!?・・何処から持って来たアアアッ!?」

 

現在の私の状態と言えば、手錠で腕を拘束され、尚且つ足枷まで丁寧に嵌められていた・・逃げる事は愚か立つ事すら出来ない・・

 

「私は考えたんだよ・・どうすれば兄貴を自分だけの物に出来るのか・・」

 

私の驚愕は無視してぽつり、ぽつりを語るヴィータの目はどんよりと曇り明らかに正気ではない

 

「はやてやシグナムは良いや・・私と同じ考えだから・・でも・・なのは達は駄目だ・・私から兄貴を取り上げるから!!!」

 

どんどんヒートアップするヴィータは邪な笑みを浮かべ

 

「私は・・兄貴さえ居れば良い・・兄貴が傍に居てくれればそれで良い・・それ以外は何にも要らない!!兄貴さえ・・兄貴さえ・・居てくれれば・・」

 

・・・なにこれ超怖いんですけど・・?ぶつぶつと兄貴さえ、兄貴さえと繰り返し言うヴィータに恐怖しか感じない・・

 

「それで考えたんだ・・兄貴がずっと私の傍にいてくれるようにするには・・こうするのが一番良いって・・」

 

ゆらりとアイゼンを構えるヴィータはにやーと笑って

 

「兄貴の両足をぶち砕けば良いんだ・・そうすれば兄貴はどこにも行けないよな?」

 

「・・・本気か・・?」

 

「もちろん、出来るだけ痛くしないからよ、ちょっと我慢してくれよ」

 

目が据わってる!?本気だ・・本気でヴィータは私の足を折る気だ!!

 

「いや・・ちょっと・・むぐっ!!」

 

説得しようとするがヴィータに何かの布を口に突っ込まれる

 

「これで喋れないよな?・・大丈夫直ぐ済むから・・ね」

 

ねっ!じゃない!!と叫びたいが

 

「むぐぐっ!!むぐーッ!!」

 

口に物を突っ込まれてるので喋る事すら出来ない・・ゆっくりとアイゼンを振りかぶるヴィータ

 

(やばい・・やばい・・誰か・・助けは・・)

 

思わず助けを求めた瞬間

 

「させるかああああッ!」

 

バチバチッ!!!

 

「あああああああッ!!」

 

突然扉が開き、ヴァイスが飛び込んで来た・・飛び込んできたヴァイスは何かをヴィータノ背中に押し当てた・・それと同時にヴィータが絶叫しがくりと崩れ落ちた・・私が驚いているとヴァイスは私の口の中から詰め物を引き抜きながら

 

「大丈夫っすね。今手錠と足枷を外しますから」

 

そう言うとヴァイスはヴィータの机の上から鍵を2つ取り、私の拘束を外しながら

 

「遅れてすいません、ちょっとフェイトさんとなのはさんと戦ってたんで」

 

「勝てたのか!?」

 

あの状態の2人に!?バーサーカー状態の2人に!?ヴァイスが!?

 

「いや、直接戦ったんじゃないですよ?煙幕投げてスタンガンで意識を刈り取ったんです」

 

スタンガン・・?そんなの何処に?私が困惑してると

 

「いや馬鹿の研究室にありまして。それよりあと1時間30分・・なんとしても逃げましょう」

 

あとそれだけなのか・・どうやら私は1時間近く昏倒していたらしい・・そんな事を考えながら立ち上がると

 

パラっ・・

 

「「・・・・・」」

 

立ち上がると同時に上着の一部がぼろきれと化す・・そのあまりの自体に私が絶句していると

 

「・・・大丈夫です・・上着だけじゃないですか・・下が無事なら最悪の事態にはなってないですよ」

 

「・・そうだよな・・うん・・そうに決まってるよな?」

 

私はヴァイスに慰められながらヴィータの部屋を後にした・・

 

リザルト

 

龍也・・体力イエローゾーン、+上半身半裸

 

仲間

 

ヴァイス、スタンガン及び薬品系で武装

 

リタイヤ

 

シャルナ(龍也によって撃破) クレア(セッテに敗北後壁に張り付け状態) ティアナ(スターライトの直撃により、壁にめり込み敗北)ヴィータ、なのは、フェイト スタンガンにて昏倒中 アギト&リィン・・ヴィータの部屋にて睡眠中 スバル、チンク ダブルノックダウン

 

追跡者

 

はやて、監視カメラの映像を見て行動開始

 

状況不明者

 

グリフィス エリオ

 

逃亡者

 

ジェイル、ウーノから全力で逃亡中、体力レッドゾーン、ダメージ大、 エリオ、召喚獣及びルーテシアとキャロより逃亡中 精神ダメージ特大 体力限界寸前 龍也 両足を折ろうとするヴィータから逃走成功+ヴァイスと合流 体力イエロー 精神ダメージ特大 +上半身半裸 スタンガンで武装

 

残り時間・・1時間30分

 

第5話に続く

 



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惚れ薬パニック 最終話

 

惚れ薬パニック 最終話

 

「さて・・あと1時間20分・・どうします?」

 

「とりあえず・・上着を着たい」

 

「・・・そうっすね・・」

 

逃げるかどうかではなく上半身裸という事が最大の問題だった・・

 

「えっと・・とりあえず・・どうぞ」

 

ヴァイスの上着を借り着込みながら

 

「1番最悪な敵が残ってる・・」

 

「部隊長ですよね・・」

 

「ああ」

 

今この状態で1番危険な相手・・それは間違いなくはやてだ・・何をしでかすか判らないからな

 

「見つかる=結婚ですよね?」

 

「そんなに!?」

 

私って今そんなに貞操の危機なのか?驚いてヴァイスを見ると

 

「えっ!?って顔をするのを止めろ!!」

 

何を言ってるんだこの人は?て顔を見られていた思わずそう叫ぶと

 

「「見つけたぁッ!!!」」

 

シグナム&ノーヴェに発見された

 

「・・・・」

 

「悪かった・・私が全て悪い・・」

 

私の大声のせいで敵2人を呼び寄せてしまった・・なんと言うミスだ・・

 

「旦那・・すいません・・でもこうするしか・・」

 

ヴァイスは謝ってから私の上着に手を掛け、一気に下に降ろした・・つまりさっきの上半身裸に逆戻りになってしまったが・・

 

「「ブシューッ!!」」

 

ドサ・・

 

純真なシグナムとノーヴェは鼻血を出して昏倒した・・だが・・女性が鼻血で昏倒する光景は出来れば見たくなかった・・

 

「・・・凄く複雑な気分だ」

 

「・・耐えましょう・・後1時・・ぐはあああッ!!!」

 

耐えようといったヴァイスが吐血しながら吹っ飛んで行く・・恐る恐る背後を見ると

 

「みーいーつーけーたー」

 

邪な笑みを浮かべ何故か赤色に染まった制服を身に纏った・・大魔王が居た・・その手にはシュベルトクロイツが握られており・・ヴァイスを吹っ飛ばしたのは魔力波だと理解した・・

 

「んふふ~皆が兄ちゃん弱らせてくれたから・・楽にしとめれるわ」

 

にっこりと微笑むはやてを見て・・私は全力で走り出した・・掴まるわけには行かなかったから・・私は兄と妹の禁断のラインを超えるつもりはなかったから・・だが・・

 

「追いかけっこ?・・ええよ・・捕まえちゃう・・それで・・幸せな家庭を築こ?」

 

・・残念な事に我が妹はそのラインを軽々と超えてしまったようだった・・

 

「築くかアアアアアッ!!!」」

 

私は逃亡しながらそう絶叫した・・

 

龍也VSはやて・・戦闘開始・・?

 

 

「はぁーはぁー」

 

「追い詰めたー」

 

現状を言おう・・逃亡を試みたが・・結果は失敗・・理性とか大事な物を捨てたはやてから逃げ切る事は出来ませんでした・・

 

「うふふー2人きりやねー?」

 

楽しそうなはやての目はどんよりと真っ黒・・星のない夜より暗かった・・それを確認した私は思わず腕時計を見る

 

(後20分・・)

 

後20分でこの地獄は終る・・だが・・

 

「うふふ。子供は一杯欲しいなぁ・・家族が多いのは嬉しいから」

 

・・・もう・・言葉では駄目なようだ・・完全にトリップしてしまっている・・

 

「さてと・・デバイスもない・・ついでに言うと上着もない兄ちゃんを捕まえるのは楽勝や。あとは捕まえてから考えよか」

 

騎士甲冑展開・・しかも・・

 

「フォールダウン!?殺す気かっ!?」

 

最狂最悪の形態・・フォールダウンで騎士甲冑を展開するはやて、身の危険を感じそう叫ぶと

 

「大丈夫・殺さへんよ・・ちょっと記憶を私に都合に良い様に作り変えるだけやから・・」

 

・・フォールダウンでそんな事まで出来たんだ・・知らなかったよ・・

 

「とりあえず、私と兄ちゃんが婚約者って言う設定で・・」

 

「私は妹を恋愛対象に見ないぞ?」

 

「大丈夫や・・直ぐに私が妹だったて言う事実はなくなるから」

 

・・・本気だ!私の妹は本気で記憶を作りかえる気だッ!!

 

「大体や、私と兄ちゃんは本当の兄妹やない・・別に結婚したっておかしく無いやろ?」

 

「でも兄妹として育ったから・・「育っただけやん・・血縁関係無いやん」・・く・・」

 

くっ・・反論できない・・

 

「まぁ、とりあえず・・私はこれ以上話し合うつもりは無いし・・逝こうか?」

 

「誰が逝くかああッ!!!」

 

ゼロアームズを構えたと思った直後突っ込んでくるはやてを横っ飛びで回避し、時計を見る

 

(後7分!なんとかなる)

 

答えの出ない言い合いが良かったのか、残り時間は7分・・頑張れば何とか逃げ切れる!!

 

「凍る大地ッ!!!」

 

・・・頑張れば逃げれる?・・何と甘い考えだったんだろう?あたり一面の雪原にされ私の行動範囲は著しく制限された・・

 

「うふふ・・逃がさへんよ?」

 

首を傾けて笑うはやては恐ろしいほどの邪気を放っていた・・

 

(くっ・・どうする!どうすれば・・この魔王を抑えれる!?)

 

スフィアを展開し・・ゼロアームズにはご丁寧に鎌形に変形させた魔力刃を纏わせている。この魔王からどう逃げる・・色々なパターンを考えるが・・

 

(打つ手がないッ!!!)

 

スフィアで中距離、ゼロアームズで近距離、フォールダウン自体で遠距離・・どう考えても逃げ切れるという答えが見つからない!?

 

「ほいっ」

 

「うおおおおっ!?」

 

放たれたスフィアを飛んで回避すると

 

「よいしょっ!!」

 

「ああああっ!?」

 

まるで物を持ち上げる前の掛け声みたいに振り下ろされた、ゼロアームズを白刃取りする

 

「中々思い通りにいかんなぁ・・?」

 

「行かせてたまるか!!」

 

というか今の避けなかったら致命傷だぞ・・また最初の位置に逆戻りになる・・袋小路に私・・そして私の道を塞ぐように宙に浮いてるはやて・・突破口が何処にもない!!

 

(時間は・・あと6分っ!?・・全然進んでない!)

 

時計が進むのが恐ろしく遅く感じる・・どうすればいい・・どうすれば・・逃げれる・・考えろ・・考えるんだ・・必死で対処法を考える・・そして1つだけ思い浮かんだ・・

 

(くううう・・背に腹は変えれん・・ここは・・これしかない!!)

 

このまま掴まってしまうよりかはこれが良い・・私のアイデンティティが少し揺らぐだけ・・そうそれだけだ・・

 

「ええい!」

 

「?」

 

首を傾げるはやての腕を掴んで自分の方に引き寄せ

 

「「んっ!」」

 

はやての唇を己の唇で塞ぐ・・驚きに目を見開いていたはやてだったが・・直ぐに目を閉じ私の腕の中で眠りに落ちた・・どうやら脳の処理を超えたことで意識を失ったようだが・・

 

「・・私は・・妹に・・自分から・・」

 

私は自分からはやてにキスをしたと言う事実に思いのほかダメージを受けその場に崩れ落ちた・・

 

龍也VSはやて ダブルノックダウン

 

翌日・・

「お前のせいで・・お前のせいで・・お前のせいでええええっ!!!」

 

ドゴンドゴンッ!!

 

私は馬鹿を十字架にはり付け、その腹部に容赦のない正拳突きを叩き込んでいた・・

 

「死ぬっ!!死んでしまうっ!!」

 

「くたばれれえええっ!!!」

 

死ぬと喚く馬鹿の息の根を本気で止める為、拳を振りかぶると同時に

 

「ううーなんか頭痛い・・」

 

!!!

 

はやてが頭を抱えながら歩いて来る。私に気付いたはやては

 

「何しとるん?」

 

「い・・いや・・この馬鹿が大変な事をしてくれたのでお話をしてるんだ」

 

「そうなんか・・何したか知らんけど・・あんまり兄ちゃんを怒らせないほうが良いで?」

 

苦笑しながらジェイルを嗜めるはやてに

 

「なぁ・・昨日何があったか覚えてないのか?」

 

「昨日・・?何かあったけ?」

 

訳が判らないと首を傾げるはやてに

 

「いや・・何でもない・・」

 

忘れてる?・・それなら・・それで良い・・下手に刺激して思い出せさせる訳にも行かないし・・

 

「変な兄ちゃん・・まぁええわ・・先に食堂いくでな?」

 

「ああ、私も直ぐ行く」

 

はやてにそう返事を返し、私は最後にやり場のない怒りを込めてジェイルを殴った・・

 

 

 

・・・本当は覚えてるんやけどね・・

 

私は足早に兄ちゃんから離れながら自分の唇を指でさわり・・

 

「忘れたくないからな~ちゃんと魔法掛けてて良かった」

 

兄ちゃんの性格を考慮し発動させておいた、広域魔法は自分の思い通りに発動してくれた・・そのトリガーは兄ちゃんからのキス・・つまり最初からああなる事を予測していたのだ・・

 

「へへ・・皆は何が合ったのか忘れてるけど・・私は忘れてへんからね・・」

 

兄ちゃんからの初めてのキス・・

 

「これだけは・・忘れるもんか・・」

 

そう呟き微笑んだはやての笑みはどこまでも美しかった・・それは長年の恋が叶ったと言いたげなほど自慢げな嬉し恥かしそうな笑みだった・・

 

惚れ薬パニック 終り

 

 

 




えーどうでしたでしょうか?リハビリを兼ねての作品なのでまだ前みたいなキレはないと思いますが・・それなりの出来だったと思います・・出きれば感想を頂けると嬉しいですね・・それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします


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言葉にしないと伝わらない物

さて今回はリクエスト番外編で「マテリアルズと融合騎達」のお話です。タイトルは「言葉にしないと伝わらない物」・・さてさて・・それが意味するのは?・・それでは今回もどうかお楽しみください


 

 

言葉にしないと伝わらない物

 

「パパはパパなのっ!お兄ちゃんじゃないの!!」

 

「違うんです!!お兄様はお兄様で!!お父様ではないんです!!!」

 

ううーと唸りあう雷華とリィンに

 

「お父様は私達のお父様なのです」

 

「違う!!兄は私達の兄だっ!!」

 

冷静な星奈に怒鳴るアギト・・

 

「父上は父上だが、お前達の兄でもあるよな?」

 

「は・・はい・・に・・兄さんは兄さんですけど・・静夜達のお父さんです」

 

冷静に話し合う静夜とアザレアに

 

「如何してこうなってしまったのでしょう?」

 

困った様に呟くユナ・・時間は少し遡る・・

 

「明日はパパがお休みだから遊んで貰えるよね!」

 

「そうですね、お父様はお忙しいので偶の休みは私達と遊んでくれる筈です」

 

食堂で雷華と星奈がそんな話をしていると

 

「?おかしいです。明日はお兄様はリィン達と遊びに行く約束をしてるですよ?」

 

お昼を食べに来ていたリィンがそう言うと

 

「何を言ってるのです、養女である私達のほうが優先のはずです。貴女達は次の休みにすれば良いででしょう」

 

「何言ってんだよ!!兄は一週間前から約束してくれてたんだぞ!!お前たちが待てよ!!」

 

「嫌だ!!明日は僕達なの!!アギト達は待ってれば良いでしょ!!何時でもパパと一緒なんだから!!」

 

きっかけは些細な事だった・・明日は龍也の休みであり。自分達と遊んでくれる筈だと言う雷華達とリィン達が喧嘩になってしまったのだ・・長い時間を生きている雷華達だが精神は子供に近い、そしてはそれはリィン達も同様だ・・子供だから持つ独占欲、それが喧嘩の引き金になってしまったのだ

 

「何時も!?何言ってんだよ!!私達は仕事を手伝ってんだ!!遊んでるんじゃない!!一緒に居るのはお前達の方だ!!!」

 

「何を言ってるのです?私達は学校に行ってるんです、何時も一緒に居るわけじゃないです!」

 

どちらも譲るつもりはなく、何時までも言い合いをしている雷華達についにはやてが怒った・・

 

「いい加減にせい!!喧嘩してたら兄ちゃんはどっちとも遊んでくれんわ!!」

 

その怒声にびくりと身を竦める雷華達に

 

「ええか、兄ちゃんも私は喧嘩する子は嫌いや!!」

 

そう怒鳴られた雷華達は

 

「嫌い・・?パパが・・僕たちを嫌いに?・・」

 

「お兄様が・・リィンを嫌いになる・・?・・」

 

凄くショックを受けた表情のリィン達にはやてが

 

「皆部屋に行ってるんや。喧嘩ばっかして・・少しは仲良うしよとか考え!!」

 

リィン達はしょんぼりと肩を落として部屋へと戻って行った・・

 

 

「それで皆元気がないのか」

 

「うん・・ちょっと怒りすぎたかも・・」

 

帰宅した後、いつもなら真っ先に飛びついてくる。雷華やリィンが来ない事を疑問に感じ、はやてに尋ねるとはやては事情を説明してくれた・・

 

「雷華達はほら自分達が養女やから自分達を優先してくれる思ってて、リィン達は妹だから自分達を優先してくれる筈だと思ってるんや」

 

「私はどっちが優先とかないんだが、子供だからかな・・自分達を優先して欲しいって気持ちがあるんだろうな・・」

 

私はどちらとも惜しみない愛情を注いでるつもりだ。養女である雷華達も大事だし・・妹であるリィン達も大事だ・・どちらがより大切とか・・そういうのはない・・

 

「まぁ・・話をしてみるよ」

 

「うん、そうしたって・・」

 

「はやて、後で良いから雷華達にリィン達の部屋に来るように言っといてくれるか」

 

「ん、判ったで」

 

私ははやてにそう頼んでから、話をする為にリィン達の部屋に向かった・・

 

「・・お兄様は・・お兄様で・・お父さんじゃなくて・・」

 

「リィン、お兄ちゃんはお兄ちゃんですけど。雷華達のお父さんでもあるんですよ」

 

「じゃあ、お兄様はリィン達より。雷華達の方が大事なんですか?」

 

「違います、どちらがとかじゃないのはお兄ちゃんの態度を見てれば判るじゃないですか」

 

「でもでも・・」

 

ユナが上手くリィンを宥めようとしているが・・上手く行ってないようだ・・

 

「入るぞ」

 

軽くノックしてから部屋に入ると

 

「あ・・兄・・」

 

「に・・兄さん」

 

「お兄ちゃん」

 

近寄ってくるユナ達だが、リィンだけはぷいっと目をそらしてしまう

 

「リィン、はやてに聞いたが・・雷華達と喧嘩したんだって?」

 

「・・コクリ」

 

体育座りのまま頷くリィンに

 

「どうして喧嘩になったんだ?」

 

「お兄様・・は明日休みじゃないですか・・だからリィン達と遊んでくれるって約束してたじゃないですか。でも雷華達は自分達と遊ぶんだって言うから・・喧嘩になっちゃって・・」

 

確かにリィン達と遊ぶと約束していた、だけど雷華達も遊んで欲しかった・・それが喧嘩の理由か・・

 

「リィン、リィンは雷華達が嫌いか?」

 

「嫌いじゃないです!・・嫌いじゃないけど・・リィンからお兄様を取っちゃう気がして・・それが嫌だったんです」

 

「私も・・そう思って・・」

 

リィンとアギトは無意識に恐れたのだろう・・私が自分達より雷華達を選ぶんじゃないかと・・だからそれが嫌で意固地になってしまって・・雷華達も恐らくそう思ったのだろう・・自分達から私が離れるんじゃないかと・・それは純粋たる独占欲・・自分達だけを見て欲しいと言う子供じみた独占欲・・

 

「馬鹿だな・・私は何処にも行かない、ちゃんとリィン達のそばにいるよ」

 

リィンを抱っこしながら言うと

 

「本当ですか?・・リィン達の傍にいてくれるですか?」

 

「約束する・・でも、雷華達の傍にもいる。私はリィン達も、雷華達も両方大好きで、どちらも大切なんだ」

 

リィンを抱っこしながら言うと、コンコンと控え目なノックの音と共に雷華達が入ってきた

 

「えと・・はやて姉に言われてきたんだけど・・」

 

「はい・・えーと・・私達も考えたんです・・リィン・・アギト・・ごめんなさい・・その自分勝手すぎました」

 

ぺこりと謝る2人に静夜が

 

「お前達は子供過ぎるんだ、父上の愛は広く大きい・・我達だけではなくリィン達にも注がれるべき物なのだ」

 

「「・・うん・・」」

 

静夜が1番お姉さんらしく。2人を嗜める・・だが・・私の愛が広く大きいって・・そんな事言われたのは初めてなのだが・・・リィンを抱っこしたまま座り

 

「ほら、皆おいで」

 

両手を伸ばし雷華達を呼び寄せ、近寄ってきた雷華全員を確りと抱きしめ

 

「私はリィン達も雷華も両方大好きだ。可愛い養女と妹達・・どちらも大切で大好きだ。どちらか一方だけとかなんて思ったことは一度もない。皆大好きな私の家族だ」

 

きっと今回の喧嘩の原因は私にもあるんだ・・言葉にしなくちゃ伝わらない事もある・・行動しなくちゃ信じられない事もある・・

 

「だから大好きなリィン達が喧嘩すると・・私はとても悲しい・・皆仲良くしててくれるのが1番嬉しい。判るかな」

 

こくりと頷くリィン達をもう1度確り抱きしめ

 

「私は何処にも行かない。ちゃんと皆の傍にいる・・大切な家族の傍にね」

 

はやてに出会うまで私は1人だった・・ずっと寂しかった・・誰かに傍に居て欲しかった・・そんな私の家族になってくれたリィン達の傍から離れる訳がない・・ずっと護り続ける・・私の大切な家族は誰にも傷つけさせない。私はそう誓ったのだから

 

「明日は皆で遊びに行こう。勿論はやて達も一緒に。皆で遊んで、皆でご飯を食べて、皆で笑おう。・・なっ」

 

「「「「はいっ!!」」」」

 

元気よく返事をするリィン達に

 

「良し、皆良い返事だ。さ、今日はもう寝るんだ。明日一杯遊ぶ為にな」

 

「はーい、んじゃあ、僕たちは部屋に戻るね?」

 

部屋に戻ると言う雷華に

 

「あ・・雷華ちゃん?・・今日は皆でリィン達の部屋で寝ないですか?」

 

「ほえ?良いの?」

 

「はい、家族は皆でいる物なんです!だから一緒に」

 

「うん!!ちょっと待っててぬいぐるみと枕取ってくる!」

 

「おお、我も行くぞ」

 

「私もです」

 

パタパタと走っていく雷華達を見ていると

 

「お兄様も一緒に寝てくれますよね?」

 

どこか不安そうに言うリィンに

 

「勿論だ。リィン達が悪い夢を見ないように私もいるよ」

 

花の咲くような笑みで笑うリィンは嬉しそうに私の服を掴み

 

「お兄様・・大好きです」

 

「当然、私も」

 

「私もです」

 

「・・えと・・私もです」

 

すすすっと寄って来て甘えるユナ達の頭を撫でてると

 

「僕も!僕もっ!!」

 

「私もお願いします」

 

「我も・・その・・頭を撫でて欲しい」

 

反対側から同じ様に寄ってくる雷華達の頭も撫でながら

 

「明日は遊園地だ、皆で仲良く遊ぼうな」

 

「「「はーい!!」」」

 

笑顔で返事を返すリィン達に囲まれながら、私も眠りに落ちた・・

 

 

言葉じゃないから伝わってなかったけど・・

 

言ってくれないから判らなかったけど・・

 

パパは・・

 

お兄様は・・

 

ずっと言ってくれたんだね

 

ずっと言っててくれたんですね・・

 

大好きだよ・・って・・

 

大切だよって・・って・・

 

不安に思うことなんてなかったんだ・・

 

怖いと思う必要なんてなかったんです・・

 

だってパパは・・

 

だってお兄様は・・

 

ちゃんと僕達を・・

 

ちゃんとリィン達を・・

 

愛してくれてたんだから・・

 

愛してくれてたんですから・・

 

 

言葉にしないと伝わらない物 終り

 

 

 




・・まだスランプなのかうまく表現出来てるか自信がないですが・・やりたかったのは書けたと思います。今回私が表現したかったのは、不安定な子供心でした。自分達は大好きだけど・・龍也がどう思ってるのか判らなくて・・不安で・・だから自分達と同じ立場のマテリアルズを許容できなかった、リィンの子供じみた独占欲の話でしたがどうでしたか?面白かったでしょうか?それだけが不安です。ですので感想を頂けるととても嬉しいです。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします


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抑え切れない愛・・

どうも混沌の魔法使いです、今回の番外編は「抑え切れない愛」・・えータイトルでは判りにくいかも知れないですが・・はやて様のお話です。どうしても抑え切れない恋心・・純粋すぎて闇に染まってしまったはやて様の心境のお話です。時間軸的には・・無印に入る前だと思います。と言っても自分は原作を知らないのであくまで多分です・・それでは番外編始まります


 

 

抑え切れない愛・・

 

何時の頃からだろう・・兄を見る目が変わったのは・・

 

気がつけば私は兄ちゃんの姿を常に目で追っていた・・

 

お父さんとお母さんが死んで・・私にとってのただ1人の肉親・・

 

優しくて・・強い・・私の兄ちゃん・・

 

何時も傍にいてくれて・・

 

私を見守ってくれる人・・

 

これが恋だと気づくのにそう時間は掛からなかった・・

 

でもそれが叶わない物だと気づくのにも、時間は掛からなかった・・

 

どれだけ私が兄ちゃんを愛そうと・・

 

例え兄ちゃんが私の事を好きだとしても・・

 

血の繋がった兄妹である、私と兄ちゃんが結ばれる事はない・・

 

私はその事を知ってしまったから・・

 

悲しかった・・

 

こんなに大好きなのに・・決して叶う事がないなんて・・

 

こんな事なら・・兄妹になんてなりたくなかった・・

 

普通に兄ちゃんに出会って・・

 

普通に恋をしたかった・・

 

神様なんていない・・

 

だって・・私からお父さんとお母さんを取り上げて・・

 

私の足を動かなくして・・

 

そして今度はこんなに酷い痛みを与える・・

 

神様なんていない・・

 

仮に居たとしても・・それは私にとっての悪魔だ・・

 

私だけから全てを取り上げる・・憎い相手・・

 

そんな事を考えていたからか胸に鋭い痛みが走る・・

 

痛くて・・痛くて・・車椅子から落ちかけてしまう・・

 

すると私に異変に気付いたのか、キッチンにいた兄ちゃんが駆け寄ってくる・・

 

来ないで・・お願いだから・・

 

「大丈夫か!?胸が痛むのか!?」

 

ああ・・そんなに優しくしないで・・

 

「だ・・だいじょう・・ぶ・・」

 

「嘘を言うな!そんなに青い顔をして・・」

 

優しく・・優しく抱きしめてくれる兄ちゃん・・

 

「どうして・・どうして・・私ばかりを苦しめる・・どうして・・私から全てを取り上げる・・」

 

しっかりと私を抱きしめる兄ちゃん・・私の方から兄ちゃんの顔は見えないが・・恐らく泣いているのだろう・・肩が小刻みに震えていた・・ああ・・どうして・・私と兄ちゃんばかりを苦しめるの・・

 

「はやて・・お前だけは・・お前だけは・・奪わせない・・私が何があっても護り続ける・・」

 

何度も何度も聞いた言葉・・その時・・何時も兄ちゃんは辛そうな顔をしていて・・自分を追い詰めてるよう気がして・・でも・・それが嬉しくもあった・・

 

私の足が動かなければ・・兄ちゃんは私の傍に居てくれる・・

 

この胸の痛みがあれば・・兄ちゃんは私を確りと抱きしめてくれる・・

 

これが間違っている事なんてわかりきってる・・だから・・

 

こんなに優しく抱きしめないで・・

 

そんなに・・私に優しくしないで・・

 

その優しさから離れられなくなるから・・

 

私の事ばかり心配しなくても良い・・

 

兄ちゃんは・・兄ちゃんの幸せを考えて・・

 

お願いだから・・そんな顔をして泣かないで・・ずっと笑っていて・・

 

私は・・兄ちゃんの・・そんな顔は見たくない・・

 

兄ちゃんに笑っていて欲しい・・それだけが・・私の望み・・

 

私は胸の痛みに耐え切れず、意識を失った・・最後に見たのは大粒の涙を流す最愛の兄の姿だった・・

 

「ん・・ここは・・」

 

私はゆっくりと身を起こし辺りを見回す・・今は私の部屋となった、母の部屋だ・・ベッドの横にある机にメモが置いてあり。それを見る

 

『少し出掛ける。直ぐに戻るから心配するな 龍也』

 

「兄ちゃんはおらんのか・・」

 

少しだけ・・ううん・・凄く寂しい・・兄ちゃんに傍にいて欲しかったから・・でも何時までも甘えてる訳には行かない・・

 

兄ちゃんには兄ちゃんの人生がある・・何時までも私の傍にいてくれるわけではないのだから・・

 

「本でも読もか・・」

 

車椅子に乗り移り、本棚に手を伸ばそうとして気づいた

 

「ん?なんやあれ?」

 

偶然にも一冊飛び出ていた本の下に便箋が見える。恐らく挟んであったのがずれたのだろう・・私はどうしてもその便箋が気になり。その便箋に手を伸ばした・・漢字が多くて全て読めなかったが・・一部は読むことが出来た・・そしてその内容を見て私は思わず

 

「はは・・はははっ!!なんや・・そうやったんか・・私は何も間違ってなかったんや・・」

 

私がおかしかったのではない・・私が兄ちゃんに恋愛感情を持ったのは正しかったのだ・・

 

『・・龍也は私の本当の息子ではない・・捨てられていた赤子を・・自分達で引き取ったのだ・・』

 

この一文・・私が読めたのはこの一文だけだった・・でも・・それだけで良かった・・

 

私と兄ちゃんが本当の兄妹ではない・・それが判れば後はどうでも良い・・

 

私が兄ちゃんを好きになったのもおかしな事ではない・・

 

それに私と兄ちゃんが結ばれる可能性も出てきた・・

 

それだけで私の心は晴れた・・

 

嬉しくて嬉しくてしかたない・・

 

さっきまで感じていた胸の痛みは綺麗に消えていた・・

 

神はいないと思っていた・・でも本当は居たのかもしれない・・

 

私からお父さんとお母さんを取り上げて・・

 

私の足を動かなくしたが・・

 

私の本当に大切な者は取り上げず、与えてくれたのだから・・

 

「ただいま・・はやてもう動いても大丈夫なのか?」

 

兄ちゃんが帰ってきたのか心配そうに尋ねてくる

 

「うん、大丈夫」

 

後手で手紙を本棚に突っ込み最高の笑みを浮かべる。すると兄ちゃんは嬉しそうに笑い

 

「良かった、そうだはやて。お前の好きなシュークリームを買って来たんだ。一緒に食べよう」

 

「うん!!」

 

笑顔で返事をしてから私は両手を大きく伸ばして

 

「抱っこして!」

 

優しく抱きしめて欲しかった・・

 

兄ちゃんの温もりを感じたかった・・

 

「はいはい、何時までも甘えん坊だな」

 

苦笑しながら私を抱き上げてくれた兄ちゃんにしっかりと抱きつき

 

何時までもこの優しさを私にちょうだい・・

 

何時までも私の腕を放さないで・・

 

ずっと・・私を護って・・

 

もう私は・・この優しさから離れることが出来なくなってしまったから・・

 

「兄ちゃん・・大好き」

 

自分に出せる全力で兄ちゃんに抱きつく・・

 

離れたくない・・

 

一緒に居たい・・

 

誰にも渡したくない・・

 

私の心はそれだけに埋め尽くされた・・

 

たとえこれから先、足が動かなくても良い

 

気絶するほどの胸の痛みが来ても良い・・

 

ただこの人が私の傍に居てくれたら・・それで良い・・

 

優しい兄ちゃん・・

 

格好良い兄ちゃん・・

 

誰にも渡さない・・

 

兄ちゃんは・・私の物や・・

 

これから先、私から兄ちゃんを取ろうとする人間がいるかもしれない・・

 

でもそんな事はさせない・・

 

だって兄ちゃんは私の兄ちゃんだから・・

 

誰にも・・たとえ神様にだって奪わせる物か・・

 

だって・・私はこの人が好きなのだから・・

 

誰よりも・・この世界よりも・・この人が愛しいのだから・・

 

抑え切れない愛・・ 終り

 

 

 

 




えーと・・どうですかね?病んでいくはやて様の心境がテーマの話でした。
リクエストでは究極的に病んだはやて様・・でしたが・・その前にどうしてはやてが病んでしまったのか?というのを入れたほうが良いと思い今回の作品を書きました・・こういうタイプの話は初めてなので、感想をいただけると嬉しいです
それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします


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闇に幸せになる権利はありますか?

どうも混沌の魔法使いです!!今回は新規書下ろしの番外編です。タイトルは「闇に幸せになる権利はありますか?」です!私が知らないキャラクターを使っての作品なので、自信はないですが…あっ、これは何時もの事ですね、まぁそれなりには楽しめると思います。それでは今回もどうか宜しくお願いします


 

闇に幸せになる権利はありますか?

 

闇…それは負であり、マイナスの存在…忌み嫌われ孤独な存在…だから…私に幸せになる権利はないのでしょう…

 

龍也の休日、自宅で

 

「さて、ご飯だよー!!」

 

ホットケーキを焼き終え、遊んでいる雷華達を呼ぶと

 

「「「「はーい」」」」

 

返事が4つ?リィン達は今日居ない筈だけど?首を傾げていると

 

「わーい!ホットケーキだ!!僕大好き!!」

 

「うむ、我もだ」

 

「私はお父様が作ってくれればなんでも良いです」

 

「……い、頂きます」

 

うん、やっぱり。4人居る…でも雷華達が何も言わないのは何でだろう?

 

(まぁ、聞けば判るか)

 

もふもふとホットケーキを食べる雷華達に

 

「なぁ、その子だれだ?」

 

指差しながら尋ねると、雷華達もゆっくりそちらの方を見て

 

「おお!?」

 

「むっ!?」

 

「あれ!?」

 

3人ともビックリしてる…気付いてなかったのか…驚かれた少女はおどおどしながら

 

「えっと…その…食べちゃ駄目でした?」

 

「良いや、全然良いよ。まだ食べるかい?」

 

「は、はい!」

 

笑顔で言う少女の皿にホットケーキを入れてやると

 

「わあ、ありがとうございます!お父さん」

 

お父さんと呼ぶという事は雷華達の側かな?感じる気配も雷華達と一緒だし。私がそんな事を考えていると

 

「くう!名前が出てこない!!僕はこの子を知ってるのに!!」

 

「我もだ、我も知ってる!だが名前が出てこない!」

 

知っているのに名前が出てこない?どういうことだ?思い出そうと苦労している雷華と静夜を尻目に星奈が

 

「お久しぶりです、ユーリ」

 

「はい、お久しぶりです、お元気そうですね星光の殲滅者」

 

にっこりとユーリと呼ばれた少女と握手をしていた。それを見た雷華と静夜は

 

「「そうだ!!ユーリだ!!!」」

 

と叫ぶとユーリに抱きつき

 

「うわー僕嬉しい!ユーリに会えて!」

 

「我もだ!!我も嬉しいぞ!」

 

笑顔の雷華達を見ながら、

 

(また養女が増えたか…まぁ良いか)

 

雷華達が落ち着くのを待ってから

 

「君も闇の書の欠片なのか?」

 

曲がりくねった言い方は嫌いだからそう尋ねると

 

「闇の書の欠片と言いますか…私は闇の書その物です」

 

闇の書その物…欠片の静夜達とは違うのか?私がそんな事を考えてるとユーリが

 

「私は永遠結晶「エグザミア」を内蔵し「アンブレイカブルダーク」と言う存在で…何時暴走するかもしれない…危険な存在です」

 

永遠結晶?…私は専門じゃないから判らないけど…ジェイルなら判るかも。私がそんな事を考えてると静夜が

 

「でもな、我が居れば抑えれるんだ!そうすればユーリも父上と暮らせるんだ!」

 

嬉しそうな静夜と対照的にユーリは悲しそうに

 

「でもそうすれば、感情や記憶が制限されてしまいます…私は…そんなのは嫌です」

 

「じゃあ、何で出て来たの?」

 

雷華が尋ねるとユーリは私の顔を見て

 

「お願いがあります、私の存在を消し去ってくれませんか?」

 

と告げた…

 

 

 

「お願いがあります、私の存在を消し去ってくれませんか?」

 

それが私の望み、何時世界を滅ぼすかもしれない私はお父さんと暮らせない…だから今日だけでも一緒に居たいと思い具現したのだ…

 

「消し去る?何故?」

 

「そうだよ!ユーリも僕達と暮らそうよ」

 

「ああ、そうだ!!折角出来てたのに消えるなんて言うな!」

 

反対する王と雷刃に

 

「私は…闇その物です…何時暴走するかもしれない、私は消えたほうが…パンッ!…えっ?」

 

消えたほうがと言い掛けた瞬間、お父さんの平手打ちが私の頬を捉えた

 

「消えたほうが良い命なんてない。こうして出てきた以上そんな事はさせん」

 

「で…でも…私は危険な存在でいつ暴走するか判らないんですよ!」

 

「暴走するというなら私が止める。何度だって何十回だって止めてやる。だからそんな悲しいことは言うな」

 

私の前でしゃがみ込んだお父さんは私をそのまま抱きあげ

 

「私はお前を護る。お前がなんと言おうと、だから消えれば良いなんて悲しいことは言うな」

 

「そうだ!父上が居れば暴走の心配なんてない!父上がお前の闇を抑えてくれる!」

 

「そうだよ!折角また会えたのに…もうバイバイなんて嫌だ!!」

 

「その通りです、私達は4人で一組です、1人だけ消えるなんて許しません!」

 

駄目だというお父さん達に

 

「私だって嫌です!!!皆と一緒に居たいです!!でも…でも…何時暴走してしまうか判らないんです!!!もし暴走したら、私は私の好きな物を全部消しちゃうんです!!私はそんなの嫌なんです!」

 

好きな人を自分で殺すなんて嫌だ!だから幸せな思い出を抱いて消えたいのだ

 

「決め付けるな!!我は本来お前を抑える存在だ!!我だけで抑えれないなら父上の力を借りれば良い!」

 

「そうだよ!!パパならユーリの闇を抑えてくれるよ!!!」

 

「そうです、お父様は神王です!神の力なら抑えれますよ」

 

神の力…世界を創造し滅ぼすことも出来る。そんな絶対の力なら…

 

「お父さん…出来るか判りません…でも私に力を貸してくれませんか?私が皆と共に居る為に」

 

上手く行く保障はない、でも可能性はある…私はその僅かな可能性に賭けたい

 

「勿論だ、どうすれば良い?」

 

笑顔で手伝ってくれると言うお父さんに

 

「まず静夜から私を抑えているプログラムを抜きます、それをお父さんの魔力で強化して私の中に入れます。そうすれば…私は皆と居る事が出来ます」

 

静夜単体では私は抑さえれない、でもお父さんの力があれば…感情や記憶に障害を与えず存在できるはず

 

「判った。やろう」

 

「うむ」

 

頷く静夜とお父さん…そしてそれから直ぐ私の考えは実行された

 

「まずは…これを分離して父上のデバイスに」

 

「よし受け取った」

 

お父さんのデバイスに私を抑えるプログラムを移動する…その直後

 

「くっうううう!!!」

 

一時的に拘束が緩まり私の中の闇が暴れ始める

 

「直ぐに作り変える。少し待て!!」

 

「は…はい」

 

胸を押さえ痛みに耐えてると

 

「これで良いはず…行くぞ!」

 

再び私を抑えるプログラムがインストールされる…すると胸の痛みは嘘の様に消え去り、頭の中も凄くすっきりし晴れ晴れとした気分になった

 

「凄く…嬉しいです。嬉しいって気持ちはこんなに幸せなものなんですね」

 

今まで抑制されていた感情が解放され凄く幸せな気持ちになった

 

「これでお前は自由だ…だから今までのユーリと言う名は捨てて…新しい名前をあげよう」

 

私の頭を撫でてくれるお父さん…さっきまでと違い、一撫でごとに幸福を感じる…これが雷華達が感じていた物なのか…なんて嬉しくて幸せなんだろう…

 

「お前は今日から陽華だ、太陽の様に朗らかで、花の様に凛とした美しさを持つ者だ」

 

陽華…私は闇だ…そんな私に似合わない名かもしれない…でもお父さんが考えてくれた名は私だけの物で。私はその名に恥じないように生きよう…

 

「お前は今日から私の大切な娘…何があっても私が護るよ」

 

優しく抱きしめてくれるお父さんの胸に顔を埋めながら

 

「はい…」

 

闇は負の存在だ…

 

でも光があれば闇は消える…

 

そして私は光を見つけた…

 

優しくて大きな光を…

 

私は確かに闇かもしれない…でも…闇にも幸せになる権利は…あるんです…

 

それを…お父さんが教えてくれました…

 

 

闇に幸せになる権利はありますか? 終り

 




えーとリクエストでユーリと言うPSPのキャラを出して欲しいといわれたのですが。自分はユーリを知りませんですのでウィキ等を見て
この話を書きましたが…恐らく性格、喋り方、設定に幾つか間違いがあると思います。ですのでユーリについて教えていただければ直ぐに書き直そうと思いますのでどうか宜しくお願いします。なおアンケートも同時に実地したいと思います

ユーリさん改め陽華さんについてのアンケートです

1 陽華の六課1日体験

2 もう1人の闇との出会い

3 陽華の1日

のどれが良いでしょうか?皆様の意見をお待ちしています!それでは失礼致します


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抱いてはいけない想い

どうも混沌の魔法使いです、今回の話は前に投稿した。「抑えきれない愛」に対なす「抱いてはいけない想い」と龍也さんサイドの話になります。はやての想いに気付いている龍也さんの葛藤という感じです。少々短いですがよろしくお願いします


 

 

抱いてはいけない想い

 

 

本当は気付いていた…

 

はやての私の見る目が変わっているのに…

 

なぜなら、私も同じだったから…

 

でもそれを認めたくはなかった…

 

何よりも愛しく…

 

どんな物より大切な存在…

 

だからこそ…

 

私はそれを認めたくなかった…

 

はやては知らない…

 

私が本当の兄で無いと言う事を…

 

私ははやての父親の兄の息子…

 

両親が死んだので引き取られた存在…

 

だが…引き取られるまでの時間が長すぎた…

 

親の遺産を狙ってくる有象無象の数々…

 

まだ幼かった私は両親の遺産を守る事はできなかった…

 

そして金のなくなった私は捨てられるように孤児院に預けられた…

 

その時間は私の心を砕くには充分すぎた…

 

私は誰も信じる事ができず…

 

笑う事さえ出来なくなった…

 

そんな私を救ってくれたのは…

 

誰でもない…はやて…お前なんだ…

 

だから私は私の全てを使ってお前を護ろう…

 

壊れた心を持つ私が唯一つ願う事…

 

私はどうなってもいい…

 

だから…

 

だから…

 

はやてにだけは幸福を与えて欲しい…

 

だがその願いは叶わなかった…

 

おじさんとおばさんが死んで…

 

はやてから足の自由は失われた…

 

世界に絶望した…どうして?

 

どうして?はやてを苦しめる…?

 

私はどうなっても良い…だから…だから…

 

はやてだけは苦しめないで…

 

はやてだけなんだ…私に残ったのは…

 

もう私から大切な者を取り上げないで…

 

だが…願いは叶わない…

 

世界は…神は…私に更なる絶望を与える…

 

はやての為にお菓子を作っている時…

 

ガタン!!

 

今の方から大きな音が聞こえる…

 

慌ててキッチンから飛び出した私が見たのは…

 

胸を押さえるはやての姿…

 

「大丈夫か!?胸が痛むのか!?」

 

慌てて駆け寄り声を掛けるが…

 

「だ・・だいじょう・・ぶ・・」

 

私を心配させないためか青い顔で言うはやて…

 

「嘘を言うな!そんなに青い顔をして・・」

 

苦しそうなはやてをしっかりと抱きしめる…

 

私から離れないように…

 

誰にも奪われないように…

 

「どうして・・どうして・・私ばかりを苦しめる・・どうして・・私から全てを取り上げる・・」

 

私はどうなっても良いのに…どうしてはやてを苦しめる…

 

どうして私から大切な者を取り上げる?

 

何よりも…自分の命より大切なんだ…

 

「はやて・・お前だけは・・お前だけは・・奪わせない・・私が何があっても護り続ける・・」

 

腕を切り落とされても良い…

 

足をもがれても良い…

 

だから…はやてだけは奪わないで…

 

だが腕の中のはやては力なく項垂れる…

 

心臓が止まったと思った…

 

「はやて…?」

 

声を掛けるが反応が無い…

 

慌ててはやての胸に手を置く

 

「生きてる…」

 

弱弱しいが心臓は動いていた…

 

全身の力が抜けた…

 

私はその場にへたり込みながら

 

「良かった…生きてる…」

 

はやてが生きてる事に安心し涙を流す…

 

まだ…はやては私の傍にいてくれる…

 

まだ…はやては私から離れていかない…

 

それに安堵すると同時に激しい嫌悪が襲ってきた…

 

はやては私を兄と慕ってくれている…

 

だから私を信用し頼ってくれる…

 

なのに…私ははやての足が動かない事を…

 

はやてが苦しんでいる事を…

 

心のどこかで喜んでいた…

 

はやての足が動かなければ…

 

はやての胸の痛みがあれば…

 

私の傍にいてくれる…

 

決して離れていく事はない…

 

でも…それは望んではいけない事…

 

私は最後まではやてにとって良い兄でなければならない…

 

はやての足が動くようになり…

 

私の変わりに護ってくれる者が現れたなら…

 

私は…はやての傍から離れよう…

 

認めてしまいそうになるから…

 

偽る事が出来なくなってしまうから…

 

お前が好きだと言ってしまいそうになるから…

 

私は消えるべきなんだ…

 

「お前は歩けるようになる…その痛みからも解放される…」

 

はやてを寝かしながら呟く

 

「だから…それまでで良い…私の傍にいてくれ」

 

孤独はつらい…

 

だが…もし…もし…

 

私がはやてを傷つけてしまう事になってしまったら…

 

私は耐えれない…だから…

 

「私は消える…それが相応しいんだ…」

 

自分の幸せを幸福と思えない…

 

死ぬ事も…痛みも怖れない…

 

そんな壊れた心を持つ私がお前の傍にいる資格はない…

 

「でも…お前が歩けるようになるまでは…傍にいることを許して欲しい…」

 

その時まで私がお前を護る…

 

それだけが私が生きる意味なのだから…

 

「さてと…はやてが起きる前に出かけるか…」

 

はやての為に作っていたお菓子は焦げてしまった…代わりを用意しないと…メモを枕もとの机に置き

 

はやての好きな翠屋のシュークリームでも買って来よう…私はそう考え出掛けていった…

 

「ただいま・・はやてもう動いても大丈夫なのか?」

 

私が戻るとはやては起きていた…

 

「うん、大丈夫」

 

にっこりと微笑むはやてに安堵しながら…手に持ったシュークリームを見せながら

 

「良かった、そうだはやて。お前の好きなシュークリームを買って来たんだ。一緒に食べよう」

 

「うん!!」

 

笑顔で返事をするはやてを大きく両手を広げ

 

「抱っこして!」

 

「はいはい、何時までも甘えん坊だな」

 

苦笑しながらはやてをしっかり抱き上げる…

 

何時までこうやって触れ合う事ができるだろう…

 

何時まではやてはこの笑みを私に向けてくれるだろう…

 

だが何時かは離れなければならない…

 

それが何時かになるかはわからない…

 

でもその時までだけで良い…

 

その笑顔を私に見せて欲しい…

 

それだけで…

 

私は救われるのだから…

 

抱いてはいけない想い… 終り

 

 

 




今回のコンセプトは龍也さんの心情をメインにして見ましたが…どうでしたか?面白かったですか?もしそうならいいのですが…私の考える最有力ENDははやてENDもしくは八神家ENDなので…それでは今度の更新もどうかよろしくお願いします

PS 次回の更新は未定ですが予定では陽華の話にするつもりです


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後悔は後からするもの…

どうも混沌の魔法使いです、今回は完全新作の番外編を投稿したいと思います。タイトルでは判らないと思うますがギャグの予定です。それと少し長いですがどうか宜しくお願いします


後悔は後からするもの…

 

 

…私はいまだかつて無い危機に直面していた…ヴェルガディオスとの戦いですら遊びであったと思うほどの危機だ…回りをはやて達に囲まれ逃げる事も出来ず…ただその時を待つことしか出来なかった…

 

「それじゃあ…兄ちゃんにはこれを着てもらおうか?」

 

はやてに渡された物…それは…俗にいう執事服と言う物だった…

 

「どうしても着なければ駄目か?私は心の底から反省している…それで許しては貰えないだろうか?」

 

駄目元で無罪放免にして貰えないだろうかと交渉するが…

 

「駄目です。私達は何回も言ったはずです。固有結界を使ってはいけないと、それなのに固有結界を使った、龍也さんにはお仕置きが必要なんです」

 

なのはにそう断言された…私は前のネクロとの戦闘で「雪の庭園」を使った…それによりネクロの撃退には成功したが、その代わりはやて達のダメージを全て自分が受けた為、瀕死に近い状態に陥ってしまった…なんとか回復したが心配を掛けた罰として。今日1日はやて達全員の執事として過ごせと言われた…だがただ執事として過ごせる訳が無い…絶対何かを仕掛けてくる…それが判っているから。何とかならないかと交渉したが無理だった…

 

「それじゃあ、着替えて貰おか?」

 

「嫌だ」

 

着替えろというはやてに嫌だと言うとはやては

 

「これ以上駄々こねるなら、私は兄ちゃんの服を引き裂いて、無理やり着替えさせてもええと思ってるんやけど?」

 

「今すぐ着替えます!ですから1人にしてください」

 

はやてはやる。やるといったら私が暴れようが叫ぼうが絶対にやる。それは嫌なので着替えると言うと

 

「チッ…もう少し駄々捏ねたら。無理やりにでも、着替えさせるつもりやったのに…」

 

違う、お前の目的は私の服を破く事だろう…何が合ってもそれだけはさせるつもりは無い。妹に服を破かれるなんて下手すれば、私の心に一生消えない外傷が残る事になる…だからそれだけは防がなければならない…

 

「判りました。それじゃあ外で待ってるんで。着替えたら呼んでくださいね」

 

そう言って出て行くなのは達を見送り、机の上に置かれた執事服を見て

 

「…無理な要求されなければいいけど…」

 

そう呟いてから着替え始めた…だが私の願いは叶わず、私は今日1日はやて達の我侭に振り回される事となる

 

 

 

「おー似合っとるね」

 

私は部屋から出てきた兄ちゃんにそう声を掛けると兄ちゃんは

 

「そうか…?」

 

自身の格好を見ながら首を傾げた…白のYシャツに白のズボン、そしてその上に左肩に金のワンポイントが入ったジャケットを纏い、首には黒のネクタイ…兄ちゃんの銀髪と合っていてとても格好良かった

 

「普通は黒じゃないのか?」

 

執事といえば黒服だが。それでは何時もと変わらないと思い白の執事服を用意したのだ

 

「まぁ、普通は黒やけど、それだと何時もと変わらへんか白くしてみたんよ。んじゃ今日1日執事として頑張ってね。ほら2人とも行くで」

 

兄ちゃんに見惚れて動かない2人の頭を叩くと、2人とも無事再起動を果たし

 

「た、たたた龍也!写真!写真撮ろう!」

 

「うん!これは記録に残すべきだよ!!」

 

カメラを構えるなのはちゃんとフェイトちゃんに兄ちゃんは

 

「断る、写真になんかされて堪るか」

 

力強く拒絶する兄ちゃん…だが私もこの兄ちゃんの写真は欲しい

 

「んじゃ、1番最初の仕事や。私達と2ショットの写真を撮って」

 

私がそう言うと兄ちゃんは肩を少し落としながら

 

「かしこまりました…お嬢様」

 

と呟いた…私は少し兄ちゃんから顔を逸らしながら

 

「ん、それじゃあお願いね。執事さん?」

 

私達はそれぞれ赤面しながら兄ちゃんとの写真を撮ってから

 

「じゃ、仕事場を少しずつ回ってな」

 

皆もこの兄ちゃんを見たいだろうから、スターズ、アサルト、ライトニング、ロングアーチの順番に回ってと頼み。私達はそれぞれの仕事場へと向かった…

 

 

 

現場1 スターズにて… 

 

「兄貴の執事姿…どうだった?」

 

えへへと笑っているなのはに尋ねると…

 

「あれはもう芸術だよ!もう!あんな龍也さん見たの初めて!」

 

頬がかなり紅いなのはは嬉しそうに言う。それを見たスバルとティアナは

 

「そ、そんなになんですか…?それはかなり楽しみですね。ティアもそう思う…で…何してるの?」

 

スバルが呆れ顔で尋ねるとティアナは

 

「カメラの準備…そんなに素晴らしいなら、記録に残すべきだわ」

 

カメラを組み立てながら言うティアナ…最近ティアナもやばくなってきたような気がする…

 

「失礼致します」

 

そんな事を考えていると兄貴が部屋に入ってくる…それと同時にスターズ内の時が止まった…白い執事服に身を包んだ兄貴は何時も以上に格好よく見えた…

 

「お嬢様、お茶の準備が出来ております。1度休まれたら如何でしょう?」

 

敬語を使う兄貴がそう尋ねてくるが…私は凍りついたまま動けなかった…完璧なる美を前に完全に心を奪われていたからだ…ちなみになのはだけは

 

「はーい」

 

前に見たからか、耐性を得ているなのはは、嬉々として兄貴のほうに近付いていく…させるか!?私は即座に再起動を果たしなのはより先に兄貴のほうに行き

 

「兄貴、凄い似合ってるぜ」

 

そう言いながら椅子に座る、勿論なのはが狙っていた兄貴に最も近い席だ。面白くないという表情でなのはは私の真向かいに座り

 

「はっ!?やばい完全に心を奪われてた」

 

スバルが次に再起動を果たし移動してくる。そして最後に再起動したティアナは

 

「た、たたたた龍也さん!?しゃ、しゃしゃしゃ…」

 

噛みながらカメラを構えるティアナにスバルが

 

「ちょっと落ち着こうよ。ティア」

 

呆れた様に言われティアナは冷静さを取り戻したのか

 

「写真を撮らせてください!!!」

 

カメラを兄貴に向ける、兄貴は

 

「それは構いませんが。先に休憩なされたら如何ですか?折角用意した紅茶が冷めてしまいますので」

 

やんわりと席に座るように促す兄貴にティアナは

 

「あ、あははは…そ、そうですよね!?それじゃあ、休憩してから写真を撮らせてくださいね」

 

耳まで真っ赤になりながら椅子に座るティアナ…それでもその目は兄貴を完全にロックオンしていた…

 

「それではどうぞ」

 

兄貴が私達1人ずつの前に丁寧に紅茶の入ったカップを置いてから

 

「砂糖とミルクの方はお入れになりますか?もしそうなら私が入れますが?」

 

笑顔を共に尋ねてくる兄貴に私達は

 

「「「「ぜひお願いします!!!」」」」

 

と力強く返事をした。兄貴は畏まりました、と丁寧に返事をしてから私達の紅茶のカップに砂糖とミルクを入れ、丁寧にかき混ぜる…その手並みはまるで本職の執事のようだと思った…

 

「それでは他のご用件があれば、なんなりと言って下さい」

 

にこりと笑い壁際に立つ兄貴…だが他にご用件を言えと言われてもそれを言えず。私達は兄貴を見ながら紅茶を飲むだけで兄貴が居てくれる時間を過ごしてしまった…

 

「それでは失礼致します」

 

丁寧に頭を下げ出て行く兄貴を全員で見送りながら

 

「なんか…凄く色々言いたかったんですけど…なにも言えなかったです」

 

「ああ、あの兄貴を見てるだけで良かった…何も頼もうって思わなかったよな」

 

スバルとしみじみと話していると

 

「やった…写真も撮らせてくれた」

 

ティアナは夢見心地という表情でカメラを胸の中に抱え込んでいた…私達がそんな話をしてるとなのはが

 

「ほら、早く仕事に復帰しないと駄目だよ」

 

そう注意され私達はデスクワークに戻ったが…

 

(駄目だ、集中できねえ…)

 

兄貴のさっきの執事姿が脳裏に焼きつき、私達は仕事に全然集中できなかった…

 

 

 

現場2 アサルトにて…

 

私はそわそわとしながらアサルトの執務室の戸が開くのを待っていた…今日は龍也様が色々とお世話をしてくれるという…それが楽しみで楽しみでじっとする事なんて出来なかった…本当は昼食の世話をしてもらえる3番目が良かったのだが…仕事の手伝いをしてもらえるだけでも楽しみだ…

 

「お待たせしました」

 

そんな事を考えていると龍也様が入ってくる。

 

「●■△▼◆◇◎ッ!!(全然待ってないですよ)」

 

「セッテ!我々にも理解できる言語で喋ろ!」

 

チンク姉様に言われ私はこほんと咳払いしてから

 

「いえ、全然待ってない…(ブバッ!!)」

 

「セッテ!?凄まじい勢いで鼻血が出てるっすよ!?」

 

ウェンディに一々言われなくても判ってる。だがそれほどまでに執事服姿の龍也様の威力は凄まじかったのだ

 

「…申し訳ないですが、少し待っていただけますか?」

 

鼻血を拭きながら言うと龍也様は若干引いた素振りを見せながらも

 

「はい、かしこまりました」

 

恭しく頭を上げてくれた…これはなんと言う威力。龍也様の喋り方が敬語になっただけでここまでダメージを受けるとは、流石は龍也様です。

 

「まァ、落ち着ケ、ヤガミが手伝ってくれるんだから。ショルイセイリはスグ終るだろう」

 

「チンク姉!?喋りかたがおかしいっすよ!?」

 

どうやらチンク姉様には刺激が強すぎたらしい。まともに喋れなくなってる。ウェンディが普通なのが気になるが…ちらりとウェンディをみると

 

「…見たい…龍也兄がどんな格好してるのか見たい…でも見たら…能の処理がオーバーしそうっすから見えないっす」

 

どうやら龍也様を見ないようにする事で防衛してるようだが、見たくてしょうがないのだろう、ちらりちらりと龍也様の方を見ようとしてるが踏み止まり続けている…ウェンディもおかしくなるのは時間の問題だろう

 

「それではお嬢様がた、仕事を始めましょうか」

 

にこりと微笑み龍也様が眼鏡を掛ける…

 

「くっ?コレハナントイウハカイリョク」

 

「どうなってるんすか?龍也兄はどんな格好してるんっすか?」

 

チンク姉様の言語能力が完全に崩壊し、ウェンディは見たいけど見れないジレンマに囚われ。私は

 

「私の専属の執事になっていただけないしょうか(それでは仕事を始めましょう)」

 

建前と本音が逆転していたりする…執事服姿の龍也様…格好良すぎです…

 

「お嬢様、そこは間違っていますよ?」

 

「え!?ご、ごめんっす…」

 

眼鏡を掛けた龍也様にやんわりと言われたウェンディは遂に龍也様の顔を見てしまい。真っ赤になり思考停止に陥ってしまう

 

「ヤガミ、ココはドウスレバイイトオモウ?」

 

チンク姉様は今だに言語能力が回復せず、訓練を終えて戻ってきたノーヴェは

 

「……えっと…龍也…ううん!いや何でもないんだ!?」

 

話しかけようとして逃亡。やはり龍也様の執事姿は破壊力がありすぎた。基本的に純情な私達には刺激が強すぎたようだ…

 

「龍也様これに是非サインを…」

 

「お断りします、お嬢様」

 

どさくさ紛れに龍也様に専属執事になるという誓約書を書かせようと思ったが失敗した…やはりそう簡単には行かないという事を改めて認識した…

 

「それではお嬢様方、この後もお仕事を頑張ってくださいね」

 

にこりと最後にもう1度微笑んで出て行った龍也様を見送りながら

 

「素晴らしかったです、写真も撮らせていただきましたし」

 

記念という事で写真も撮らせてもらったし、龍也様に仕事を手伝って貰って凄く嬉しかったし、言う事無しの大満足だ

 

「ワタシハ…何モ…出来なかった…」

 

「あうあう…」

 

チンク姉様の言語能力も回復したようだ。ウェンディは今更オーバーヒートしてるが対して問題は無い

 

「さーて、残りの書類整理もがんばりますか!!」

 

私はやる気満々で残りの書類整理を再開した…

 

 

 

現場3 ライトニングにて…

 

「早く…早く来ないかな…」

 

私は両手を握り締め龍也が来るのを待っていた。順番で3番目…それは決して早いとは言えないが3番目にはボーナスがある。それは龍也が作ってくれた昼食が付くのだ…それに龍也が食事の世話をしてくれる…それがなにより楽しみで仕方ないのだ

 

「少しは落ち着いたらどうだ?テスタロッサ」

 

シグナムが呆れたように落ち着けというが私は

 

「それは執事姿の龍也を見てないから言えるんだよ。あの龍也を見たらそんな事言えなくなるよ」

 

「そんなになのか?兄上の執事姿は?」

 

不思議そうに尋ねてくるシグナム…そんなシグナムに執事姿の龍也の素晴らしさを語ろうとした時

 

「失礼致します。お食事の用意が出来ました」

 

龍也がカートに昼食を持ってくる。心なしか時間が経つにつれ格好良さが増してる気がする…服に慣れてきたのだろうか?

 

「あ、兄上!!よく似合っています!」

 

何故か敬礼しながら言うシグナムに

 

「ありがとうございます、お嬢様」

 

にこりと龍也に微笑みかけられたシグナムはそのまま椅子に座り、目で言っていた…お前の言うとおりだと…

 

「それでは、昼食の用意をさせていただきます」

 

龍也が私とシグナムの前にパスタの入った皿を置く

 

「今日は昼食はカニクリームスパゲッティです」

 

これをみるとやはり龍也が料理が上手なのを嫌でも再認識させられる。丁寧にほぐされたカニの身とキノコを混ぜたホワイトソース…ハーブも乗せてあり見た目にも美しい…

 

「失礼致します」

 

龍也が後ろに回りナプキンを首に巻いてくれる。

 

「ありがとう、龍也」

 

「どういたしましてお嬢様」

 

にこりと微笑む龍也はそのままシグナムの首にもナプキンを巻き

 

「それでは、食前のアイスハーブティーをどうぞ」

 

音を立てないように置かれたカップからはハーブのいい匂いだ…更にはそれだけは無く安心感も感じる…龍也はハーブティーを置くと、あまり目の付かない壁際に立ち私達を見ていた。食事の気にならないようにという気遣いだろう…

 

「頂きます」

 

「頂きます」

 

シグナムと手を合わせパスタを口に運ぶ…見た目通り味も最高でとても美味しい。ゆっくりと昼食を味わっていると

 

「お嬢様、失礼致します」

 

そう声を掛けてからナプキンで私の口を拭く

 

「な、ななな!何を!?」

 

突然の事に驚きながら尋ねると

 

「口にクリームが付いておりましたので」

 

む、むむ…そこまで完璧に執事にならなくても良いのに…もう本職の執事ですと言っても、通るような立ち振る舞いの龍也にそんな事を感じながら私は食事を進めた…

 

「ご馳走様でした」

 

「ご馳走様でした」

 

2人で手を合わせそう言うと龍也は音を立てないように皿を片付ける。私は皿を片付けている龍也の後背を見ながら

 

(何か頼もうかな?えーと…何して貰おう?)

 

時間はまだある…変なことでなければ頼めばやってくれるだろう…私は暫く考え

 

「龍也ちょっといい?」

 

「どうかなさいましたか?お嬢様」

 

近くにやってきて尋ねてくる龍也の顔を下から覗き込むようにして

 

「あのね…膝枕して欲しいの…駄目?」

 

はやてやヴィータがよくして貰っている膝枕がして欲しくて言うと

 

「……かしこまりました。失礼します」

 

龍也は少し考え込んでからそう言うと座り込み

 

「どうぞ」

 

「う、うん…失礼します」

 

赤面しながら龍也の膝枕に頭を預ける…やはり男性だから膝はかたい…だが…

 

スッ…スッ…

 

優しい手付きで私の頭を撫でてくれる。それはとても暖かく心の底から安心できた…

 

(いけない…眠くなってきた…)

 

いけないと思いながら私はやってきた睡魔に勝てず、眠りへと落ちてしまった…

 

 

 

現場4 執事さんの誤算 

 

フェイトに膝枕を頼まれ、してやっていたら完全に眠ってしまった…しかもしっかり私の膝を掴んでいるので動くに動けない…

 

「…眠ってしまった…どうしよう?」

 

シグナムに助けを求めるが、シグナムは若干頬を膨らませながら

 

「…知りません。兄上が悪いんです」

 

そう言うとそっぽを向いてしまった…どうやらシグナムの機嫌を損ねてしまったようだ…

 

「…お嬢様もお休みになりませんか?」

 

「…兄上の膝枕はテスタロッサが使ってるではないですか」

 

どうやらシグナムも膝枕がして欲しかったようだ。面白く無さそうに言うシグナムに

 

「膝枕は出来ませんが。頭を撫でるくらいなら出来ますが…それでは嫌ですか?」

 

そう尋ねるとシグナムは無言で近付いてきて、フェイトと反対側に寝転がり私の服を確りと掴み

 

「兄上は私達の兄上なんですからね。あんまり高町とか、テスタロッサに優しくしてはいけませんよ」

 

少し拗ねた様に言うシグナムの頭を撫でながら

 

「畏まりました、これからは気をつけさせていただきます」

 

「判ればいいんです…判れば…」

 

シグナムはそう言うと眠りに落ちてしまった…私は溜め息を吐きながら携帯を取り出しはやてに電話を掛ける

 

『もしもし?兄ちゃんどうして来てくれへんの?もう私の時間やで?』

 

少し不機嫌な様子のはやてに

 

『フェイトとシグナムが私の膝で眠ってしまった…動くに動けない状況なんだ…悪いがもう少し待ってて欲しい』

 

返事のないはやてに

 

『はやて…?駄目か?』

 

『………ええよ…待つよ…その代わり…一杯甘えさせてもらうから』

 

明らかに怒っているはやてはそう言うと電話を切った…私は携帯をしまいながら

 

「…無理な要求されないと良いが…」

 

私はそう呟きフェイトとシグナムが起きるのを待った…

 

 

 

現場5 魔王様の策略

 

「いや、悪かったって。まさか寝てしまうとは思わなかったんだ」

 

兄ちゃんが頭を下げて謝ってくれるが…

 

「良いもん。怒ってないもん…」

 

兄ちゃんが来てくれたのは夜7時…約束の時間から3時間も過ぎていた…頬を膨らませながら言うと

 

「本当ごめん。どうしたら機嫌を直してくれるんだ?」

 

本当に申し訳なそうな顔をして尋ねてくる兄ちゃんに

 

「…言う事聞いてくれる?」

 

上目目線で尋ねると兄ちゃんは

 

「何をすれば良い?」

 

そう尋ねてくる兄ちゃんに私は

 

「一緒にお風呂」

 

「…いや、流石にそれは…」

 

兄ちゃんは絶対に良いとは言わないだろう…更に追加条件をして

 

「…水着着るから…」

 

「………」

 

顎の下に手を置いて考え込んでいる…もう一押し兄ちゃんに上目目線で覗き込むように

 

「駄目?」

 

兄ちゃんは少し動揺した素振りを見せてから

 

「判った。ちゃんと水着を着ろよ?」

 

溜め息を吐きながら言う兄ちゃんに抱きつき

 

「えへへ…兄ちゃん大好き!」

 

「…私は…騙されたのか?」

 

当たり前やん…全部私の計画通りや…兄ちゃんの性格全てを考慮した計画…勿論これは最初から計画していた物ではない、本当はごろごろと甘えながら仕事をするつもりだったが…フェイトちゃんとシグナムが兄ちゃんの膝の上で寝てしまったと聞いて、即座に考えた計画だったが思い通りに行って良かったと微笑みながら

 

「これも水着やよね?」

 

「殆ど下着と一緒じゃないか!?」

 

兄ちゃんは耳まで真っ赤になりながら慌てる。普段私の水着と言えばワンピースタイプの露出の少ない物だが。私の手にある水着はセクシーなビキニタイプ、慌てるのは無理もないが…

 

「約束したんやから、今更駄目とか聞かんで?」

 

「いや、待て話し合おう。千歩譲って、風呂に入るのは良い…だがその水着は駄目だ」

 

渋る兄ちゃんの服を掴んで

 

「んじゃ、お風呂入ろ♪」

 

「いや、待て本当それは勘弁して…」

 

まだ私を説得しようとする兄ちゃんに

 

「これ以上駄々こねるなら。水着すら着ないで?」

 

「…ごめんなさい。勘弁してください、その水着で良いです」

 

赤面してる兄ちゃんに

 

「うふふ、兄ちゃんは本当初心やね?」

 

からかう為に顔を覗き込みながら言うと、兄ちゃんは天井の隅を見て

 

「はやては…妹…妹だ…ドキドキするな…平常心だ…何も考えるな…」

 

自分に言い聞かせるように呟く兄ちゃんに笑みを零し、私は脱衣所に向かった…

 

次の日

 

「ごめんね、はやて私が寝ちゃったから…」

 

謝ってくれるフェイトちゃんに

 

「ううん、全然気にしてへんよ、だってそのおかげで…」

 

少し離れた所で朝食を食べてる兄ちゃんの方を見て

 

「兄ちゃんとお風呂入れたから♪」

 

ガタン!!

 

兄ちゃんが全力で食堂から走り去る…それを

 

「「「話を聞かせてください!!!!」」」

 

BJを展開したなのはちゃん達が追いかける。兄ちゃんは走りながら

 

「私はやましい事は何もしてない!!」

 

「だったら逃げないでお話しましょう!!」

 

「まず、そのデバイスを降ろせ!!」

 

「駄目です!!」

 

「私は無実だああああッ!!!!」

 

悲鳴が遠ざかるのを聞きながら食後の紅茶を飲んでいると

 

「チンクさんは追いかけへんの?」

 

しれっとしているチンクさんに尋ねると

 

「どうせ水着着てとかだろう?」

 

「正解♪水着無しで兄ちゃんが一緒にお風呂入ってくれるわけないやん♪」

 

「やれやれ、はやてが八神を困らせるとは思わなかった」

 

溜め息を吐くチンクさんに

 

「んー本当はそんなことしないんやけどね、固有結界使ったお仕置きって事で」

 

「ふん、まぁ偶には八神も苦労すれば良いさ。私達をあんなに心配させたんだからな」

 

固有結界の反動で血を噴出し倒れた兄ちゃん…あんな光景は2度と見たくない。だからこそのお仕置きだ

 

「2度と固有結界なんて使う物かー!!!」

 

追いかけられながら絶叫する兄ちゃんの叫び声の後から、ドン!ドンッ!!と炸裂音が聞こえてくる。恐らく誰かが痺れを切らし魔法を使い始めたのだろう…

 

「もうちょっとしたら助けたらんと」

 

「そうだな」

 

私とチンクさんはそう笑いながら、助けに行くタイミングを考えていた…ちなみに兄ちゃんは私達に助けられる前になのはちゃん達に捕獲され、洗いざらい話した後

 

「水着着てたら一緒にお風呂入ってくれるんですね!?」

 

と問い詰められていたりするが…その時兄ちゃんは…

 

「どうしてそうなるッ!?」

 

「だってはやてちゃんが良いなら私達も良い筈ですね?」

 

「待って…はっ!離せッ!!」

 

「拒否します」

 

「お断りします」

 

「待ってお願い!!引きずらないで!!そっちは嫌だああああッ!!!」

 

と絶叫していた…その後はどうなったかは…読者の皆様の想像にお任せします…唯一つ言える事は…龍也さんの心に消えない傷が残ったという事だけです…

 

本日の教訓  人を余り心配させると後で酷い目にあうで? by八神はやて

 

後悔は後からするもの… 終り

 

 

 




どうでしたか?ドタバタにしたつもりだったんですけど…面白かったでしょうか?もしそうなら良いのですが…次回は予告通り「ユーリ」改め「陽華」さんのお話です。それでは次回の更新も宜しくお願い致します


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現れたる闇…

どうも混沌の魔法使いです。今回は性懲りも無く新キャラ登場の番外編です。タイトルからして勘のいい人なら判ると思いますが。あのキャラです、初の擬人化なので自信は無いですがどうか宜しくお願いします


 

現れたる闇…

 

「身体が重い…」

 

朝目覚め1番最初に感じたのは、胸部に感じる圧迫感だった。どうせはやてとかヴィータが潜り込んだんだろうと考えながら布団を捲った

 

「すーすー」

 

長い髪で左目を隠した、見知らぬ美女が居た…

 

「!?!?!?!?」

 

声にならない悲鳴を挙げながら布団を戻した…誰だ?誰なんだ?私は寝るとき1人だった…それは間違いない、ではこの美女は誰だ?私が必死にこの美女が誰なのか考えていると…もぞもぞと美女が動く気配がし、彼女は布団から顔を出しながら

 

「どうも…突然ですが貴方が欲しいです。なので貰って良いですか?」

 

「突然何を言うんだ、というかお前は誰だアアァッ!?」

 

真紅の目に一瞬心を奪われた物の、すぐに我に返りそう叫んだ、かなり整った顔をしているが、鎖とか身体に巻きつけてるし…危ない趣味の人なのかもしれない

 

「少し…静かにしてください。すぐ済みますから…」

 

「なっ?」

 

布団から上半身を起こした美女がそう言うと、美女の髪が私に巻きつき魔力を吸い取り始める…この感覚は…あの時の!?闇の書に魔力を吸われるあの時の感覚に近いものを感じる…振り解こうとすると力が抜け思うように動けない。

 

「大丈夫です…殺すつもりはありません、すこし魔力を分けて頂ければ…」

 

少しなんて物じゃない、凄まじい勢いで減っていく魔力…このままでは騎士甲冑すら展開できなくなる。本気で不味い…願うのはさっきの絶叫をはやて達が聞いてくれている事を願うしかない

 

バンッ!!

 

そんな事を考えていると扉が勢いよく開かれ

 

「兄上様を離せッ!!!」

 

リインフォースが飛び込んできて、女の髪を断ち切り私の前に立つ。リインフォースは女を威嚇しながら

 

「何故お前がここに居る!?ナハトヴァールッ!!!」

 

ナハトヴァールと呼ばれた女は

 

「私とお前は…運命共同体…お前が居るから私も居る…闇の書の闇は、お前を逃がさない」

 

闇の書の闇!?リインフォースを狂わせた根源、それが彼女だというのか

 

「ならば、私がお前を倒す!」

 

「無理だよ…私はお前、お前は私…私が死ねばお前も死ぬよ?」

 

くすくすと笑う女は私を指差して

 

「魔力が欲しいの…大丈夫…具現化してるのに必要な分だけで良いの…だから…魔力頂戴。にーさま」

 

邪気の無い笑みを浮かべながら言うナハトヴァールに

 

「お前が兄上様を兄と呼ぶな!!お前が!お前が兄上様の胸に風穴を開けたんだぞ!どうして平然とそう呼べる!!」

 

そう、私の胸を貫いたのはこいつだ、それを知ってるリインフォースが怒鳴ると

 

「あの時は…理性がなかったから…でも悪い事をしたって思ってる…ごめんなさい。にーさま」

 

ペコリと頭を下げるナハトヴァールにリインフォースは

 

「何を企んでいる?」

 

そう尋ねられたナハトヴァールは

 

「何も…ただ…私も…にーさまの傍に居たいだけ…駄目?」

 

見た目こそ大人だが、どこと無く子供っぽい口調のナハトヴァールに悪意とか邪気は感じられなかった

 

「魔力だけか?絞め殺したりしないか?」

 

「魔力くれるの!?にーさま」

 

嬉しそうなナハトヴァールが両手を広げて近付こうとするが

 

「兄上様!信用するのは危険です」

 

リインフォースが私とナハトヴァールに間に立つ、それ以上近づかせる物かと言いたげな表情で

 

「最初から危険と決め付けるのはよくない。話だけでも聞いたほうがいい」

 

「ですが…」

 

心配そうなリインフォースに

 

「大丈夫だよ…にーさまにはなんにもしないから…」

 

ナハトヴァールがそう微笑む、リインフォースは少し迷ったようだったが、私とナハトヴァールの間から退き

 

「変なことするなよ」

 

と釘を刺した、ナハトヴァールは嬉しそうに笑いながら

 

「大丈夫♪…さっきみたいに髪を巻きつけるなんてしないから♪」

 

私の前に立ち子供の様ににっこり微笑み

 

「頂きますッ♪」

 

ナハトヴァールがそういったと思った瞬間、私の唇はナハトヴァールの唇で塞がれていた

 

「むぐーッ!!むぐぐーッ!!」

 

突然の事に一瞬我を失ったが、すぐに正気にもどりナハトヴァールを引き離そうとするが

 

「♪♪」

 

ナハトヴァールの髪が自分自身と私に巻きつき、離れるに離れれない

 

「は、離れろ!!兄上様が穢れるっ!!」

 

リインフォースが引き離そうとするが、髪の力は相当強いらしく引き離せない

 

「♪♪♪」

 

「むぐーッ!!むぐぐーッ!!!」

 

貪る様にキスをするナハトヴァール…その間も凄まじい勢いで魔力が吸い取られていく…

 

「ぷはっ!ご馳走様でした♪」

 

私の魔力が全快時の4分の1くらいになったところで、ナハトヴァールはキスを止め。口を拭い上機嫌に告げた…だが私は急速に魔力を奪われた事と唇を奪われた事によるショックで意識を失った…意識を失う直後に聞いたのは

 

「私のファーストキス…どうだった…美味しかった?」

 

とかのたまう危険人物の声だった…

 

 

 

 

突然リインフォースが駆け出してから数分後、兄ちゃんの部屋に辿り着いた私が見たのは

 

「は、はなせ、リインフォース!!私はもう生きていく自信が無い!!」

 

「お、落ち着いてください!!兄上様!!」

 

首を吊ろうとする兄ちゃんの腰に必死にしがみ付くリインフォースの姿と

 

「んー美味しかった…にーさまの魔力は…絶品だね」

 

鎖とかが巻きついた服を身に纏った、危ない趣味をしてそうな見た事も無い女の姿だった…

 

「あ、主はやて!?兄上様を止めてください!」

 

私に気付いたリインフォースがそう叫ぶ

 

「判ってる!」

 

女の正体は気になるが、今は兄ちゃんの自殺を止める方が先決だ。

 

「兄ちゃん!死んでもなんにもならんで!?」

 

「はなせ!死なせてくれ!!」

 

「死んでは駄目です!!」

 

錯乱する兄ちゃんが落ち着きを取り戻したのは、私が兄ちゃんの部屋に到着してから20分後のことだった…

 

「それで?あんたは誰や?」

 

傷心している兄ちゃんはリインフォースに任せて、黒髪の女に尋ねる

 

「私…?私を覚えてない…?私は闇の書の闇でね…名前はナハトヴァールだよ?」

 

にこにこと言うナハトヴァールだが、その中に聞き捨てなら無い台詞があった…闇の書の闇?…あの私達が消し飛ばしたあれ?…なんでここに、というかなんで女の姿?…私が混乱してると

 

「…信じられない…これが証拠だよ?」

 

ナハトヴァールがそう言うと長い髪が変化する、それは忘れもしない闇の書の闇の姿だった

 

「何が目的や?また世界を滅ぼすとかか?」

 

警戒しながら尋ねるとナハトヴァールは髪を元に戻しながら

 

「そんな事しない…私はにーさまの傍にいて、リインフォースとか…シグナム達や…はやてみたいににーさまの家族になりたいの…」

 

にこにこというナハトヴァールには悪意とか邪気は全く感じなかった。純粋に傍にいたい、それだけみたいやけど…

 

「兄上様を穢したお前が何を言う!?見ろ!こんなに傷付いているじゃないか!?」

 

リインフォースが私とナハトヴァールに兄ちゃんを見えるようにする、そこには

 

「無理やりキスされた…もうやだ…」

 

体育座りで項垂れている兄ちゃんが居た…って言うかどうしても許容できない単語があったような…

 

「ナハト?兄ちゃんにキスしたん?」

 

「うん♪美味しかったよ?」

 

笑顔で言うナハト…うんうん…私は今あんたをどうすれば良いか判ったで

 

「あんた、死にたいんやな?OK!1発で消し飛ばしたる」

 

フォールダウンモードを起動させ、ゼロアームズを向けるとナハトは慌てて

 

「だって…魔力貰わないといけなかったから…今度からはしないから…許して」

 

必死でそう訴えるナハト…むう…どうする?消し飛ばしておいたほうがええとおもうんやけど…

 

「そ、それに!私は…はやて達の目的に…協力する!なのはとかに、にーさま…渡さないようにするから…」

 

むっそれなら許せるかも…でもな…むかつくし…どうしよ?ナハトをどうするか考えてると

 

「あっ…魔力…足りなくなってきた…」

 

ナハトがそう言うと

 

ポンッ!

 

可愛らしい音を立ててナハトの姿が変わる…

 

「省エネモードに…なっちゃった…」

 

リィン達くらいの背丈になった、ナハトはえへへと笑いながらお腹を押さえて

 

「お腹…空いた…ご飯、ちょーだい」

 

と邪気の無い顔で笑った。その笑顔のせいか私は力が抜けてしまった

 

「まぁ、良いか。私に協力してくれるんならそう目くじら立てんでもええし。普通のご飯で良いん?」

 

私がそう尋ねるとナハトは

 

「んーん、今は魔力の方が…良い」

 

兄ちゃんの方を見て言う、それに気付いたリインフォースが慌てて自分で兄ちゃんを隠して

 

「だ、駄目だぞ!兄上にはもうキスさせないぞ!?」

 

「んーキスじゃなくても良いんだよ…?この姿なら…余剰魔力で充分だから…」

 

とてとてと兄ちゃんの隣に座ったナハトは、そのままこてんと兄ちゃんにもたれかかり

 

「これで…じゅーぶん!…お腹一杯になるよ~」

 

にこにこと笑っていた…それを見たリインフォースが

 

「では。何故さっきはキスをしたんだ?」

 

「んー私の気持ち…にーさまに好きだよって…伝えたかったんだよ…」

 

ナハトは神妙な顔になり

 

「私は闇だよ…でもね…闇でも幸せになりたいの…にーさまに良い子って言われたいし…頭も撫でて欲しい…でも…闇に幸せになる権利は無い?」

 

不安そうな顔で尋ねてくるナハトはそのまま兄ちゃんの服を掴んで

 

「私…見てた…リインフォースがにーさまに頭撫でて貰うの…それにシグナムが褒められてるのも…ヴィータとにーさまが遊びに行くのも…ずっと羨ましいって思ってた…それでなんでか判んないけど、具現化できた…これでにーさまと一緒に入れるって凄く…嬉しかったの…」

 

寂しそうに言うナハト…そうやよね…ナハトだって好きであんなふうになったんじゃない。ナハト自身も被害者なんや…あの時は意思疎通は出来なかった、でも今こうして話し合って分かり合えるなら…それが良いに決まってる

 

「でもやっぱり…闇は幸せになっちゃ…いけないかな…?」

 

ナハトがぽそりと呟いた時、体育座りだった兄ちゃんがナハトを抱き寄せ

 

「馬鹿、何を言ってる。闇だろうがプログラムだろうが、幸せになる権利はあるに決まってるだろう」

 

私が言うより、兄ちゃんが言った方が良いに決まってる…ここから先は兄ちゃんに任せよう…私は兄ちゃんの言葉に耳を傾けた…

 

 

 

ナハトの言葉は聞いていた、震える手で私の服を掴んでいたナハト…きっと彼女は寂しくて悲しくて…家族の温もりを欲してるんだ…私はそう思いナハトの小柄な体を抱きしめた…

 

「お前が私を兄と呼ぶなら、私はお前を受け入れる。さっきみたいのはもうごめんだがな…」

 

さっきみたいなキスはもうやめて欲しいのでそう言うとナハトは

 

「うん…しない…こうやって…抱きしめてくれるなら…それでいい…」

 

嬉しそうな顔をしてるナハト…何時までも夜という名はおかしい…夜は必ず明けるもの…そしてきっと今がナハトが変われる時なんだ…

 

「明けない夜はない…お前はもうナハトヴァールじゃない…」

 

「?」

 

首を傾げるナハトを自分の方に向け

 

「お前は今日からターゲスアンブルッフ・リヒト…ドイツ語で夜明けの光という意味だ。お前はもうナハトじゃない、お前はリヒトだ」

 

お前を包んでいた闇の呪いは今解けたんだ

 

「リヒト…にーさまがくれた…名前…嬉しい…」

 

ポロ…ポロと涙を流すリヒトは

 

「う…嬉しいのに…涙が出る…」

 

嬉しいはずなのに涙が零れる事に困惑してるリヒトに

 

「人は嬉しい時も泣くものだ」

 

私はその涙を拭ってやりながら

 

「さ、おいで。家族に紹介しないと」

 

シグナム達にユナ達…皆に紹介しないといけない…新しく増えた家族を…

 

「うん…手…繋いでもいい?」

 

そろそろと手を伸ばしてくるリヒトの左手をしっかり握り締め

 

「勿論だよ、行こう。皆でな」

 

リインフォースとはやてに目配せをすると、はやては頷きリヒトの右手を握り

 

「んじゃ、今日から私はお姉ちゃんやね?」

 

「う…うん…はやてねーさま」

 

少し頬を赤らめながら言うリヒトはリインフォースの顔を見て

 

「それとリインねーさまだよね?」

 

「あ、ああ。そうなるな…」

 

少し困惑しながらも頷くリインフォースにリヒトは

 

「家族が居るって…こんなに嬉しいんだね…」

 

泣き笑いの笑みを浮かべ幸せそうに微笑んだ…それは夜が明けた瞬間だった…

 

現れた闇 終り

 




どうも混沌の魔法使いです、初擬人化は劇場版の「ナハトヴァール」でした。どうでしょう?気に入っていただけたでしょうか?もしそうなら良いのですが。それとリヒトはバカテスの方でも出そうと思ってるんですけど…どうでしょうか?一応皆様の意見を聞きたいです。それとこの話では「マテリアルズ」は出現してません。両方出すのは無理かなと思い「マテリアルズ」は出ていないと言う設定です。それでは最後にリヒトさんの設定でお別れしたいと思います

ナハトヴァール→ターゲスアンブルッフ・リヒト 愛称リヒト

闇の書の闇が具現化し人の姿を取った者。雪のような白い肌と真紅の瞳に長い紫色の髪が特徴の美女。

大人形態と子供形態の2つの姿を持つが、元が闇の書の闇であるせいか、魔力も通常の食事も大変な大食らいである(その凄まじさは某ハラペコ王の数十倍以上)。それでも魔力の消費は桁違いに大きく。大人形態ではすぐ魔力枯渇を起こしてしまう。大人形態の主な充電方法としては髪を対象にからめ吸収するか、口から吸収するかの2通りあるが。子供形態では龍也にひっついているだけでも充電できる。また大人形態では髪で左目を隠し、子供形態では右目を隠している。特に意味は無いらしいが気分の問題との事。大人形態は身体にフィットするチャイナドレスなような服を好む、ただ腰元や肩の所に鎖を巻きつけている…どうやら貧乳を隠す為のアイデアらしい。子供形態は黒のワンピースを着ている。両形態共通の特徴として髪を動かす事ができる。リインフォースとは一心同体の存在でどちらかが死ぬと残されたほうも死ぬ。一応融合騎らしく、リインフォースかはやてとならユニゾン出来るが…はやて達曰く、あれはユニゾンではなく憑依されてる感覚に近いらしい、ただリヒトはユニゾンだと主張している。子供形態では純粋に兄として龍也が好きで、大人形態では異性として好きらしい。大人形態と子供形態では考え方が違うとの事、龍也の事はにーさまと呼ぶ。性格は良いも悪いも子供っぽく天然


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番外編 陽華とマテリアルの1日

どうも混沌の魔法使いです、今回は前に書いた番外編「闇に幸せになる権利はありますか?」の続編で「陽華の1日」です。小話系を複数組み合わせての作品です。1話1話は短いですがそれなりには面白いと思うのでどうか宜しくお願いします



 

番外編 陽華とマテリアルの1日

 

 

暖かい場所 陽華視点

 

チュン…チュン…窓の外から聞こえてくる雀の鳴き声で私は目を覚ました。

 

「朝…起きないと…」

 

もそもそと布団から抜け出し、真っ先に見たのは…

 

「う、ううーん…重い…」

 

「ご飯~えへへ~」

 

静夜の上で涎を垂らしながら熟睡している雷華の姿だった…星奈はちゃっかり雷華の移動範囲外で布団に包まり眠っていた…

 

「…起こすかどうか迷います…」

 

あまりに熟睡してるので暫く考え込むが…

 

「まぁ良いでしょう。後で起こせば」

 

私はそう判断し自分達の部屋を後にした…リビングに向かっていると緑の髪の女性が視界に入る…女性の方も私に気付いたのか微笑みながら

 

「おはようございます、陽華様。よく眠れましたか?」

 

「はい、よく眠れました。シャルナ」

 

私も笑いながら返事を返すとシャルナは

 

「そうですか。それは良かったです。そうそう、昨日遅くに王が帰ってましたよ?」

 

「えっ!?本当ですか?」

 

お父さんは忙しいので滅多に帰ってこない…それが家にいる…そう思うと嬉しかった…

 

「はい、本当ですよ。リビングに居ると…っともう居ませんか…陽華様も王がお好きなんですね」

 

返事を聞く前にパタパタと走り去った陽華を見ながらシャルナはそう呟いた…

 

リビングにはもう起きていたのか、お父さんが居て新聞を見ていた…私の気配に気付いたのかお父さんは読んでいた新聞を脇に置き

 

「おはよう、陽華」

 

笑いながら言うお父さんに

 

「おはようございます!!お父さん!!」

 

私はそう言いながらお父さんに飛びついた

 

「っとと…陽華は甘えん坊だな」

 

お父さんはそう言いながら背中を撫でてくれます…その優しい手付きに目を細めながら

 

「駄目…ですか?」

 

「いいや…そんな事は無いよ」

 

優しく抱きしめてくれた、お父さんの胸に顔を埋めていると

 

「パパッ!おはよーッ!!!あー陽華良いなあッ!僕も僕もッ!!!」

 

「おはよう父上…むっ陽華だけ居ないと思えば…ずるいではないか…父上…我も…その…抱っこして欲しい」

 

「…おはようございます、お父様…そして抱っこしてください」

 

口々にずるいと雷華達にお父さんは

 

「はいはい、皆おいで」

 

私を抱っこしたまま手を広げる、お父さんに飛び込むように雷華達が抱きつくと

 

「良し良し、皆甘えん坊だな」

 

苦笑しながらも優しく抱きしめてくれる、お父さん…この温もりが…私は大好きです…

 

 

 

 

パパと一緒 雷華視点

 

 

「…パパ…ごめんなさい」

 

「突然どうした?」

 

仕事しているパパに謝りながら

 

「0点…取っちゃった…」

 

学校のテストで0点を取ってしまい、怒られると思いながらそれを渡すとパパは

 

「うーん…まぁ良いんじゃないか?勉強だけが全てじゃないんだし」

 

と笑うパパに

 

「…怒らないの?」

 

そう尋ねると逆にパパは首を傾げながら

 

「何について?」

 

「0点取っちゃったから…」

 

俯きながら言うとパパはくしゃくしゃと僕の頭を撫でてて

 

「そんな事で怒る物か。誰だって苦手な物はあるさ、そんなに気にしなくていいよ」

 

にこにこと笑いながら言うパパは

 

「でも0点は不味いな…うん!丁度良い宿題はあるか?」

 

そう尋ねてくるパパに頷くと

 

「良し、じゃあ持っておいで、教えてあげるから」

 

「良いの?」

 

パパは今書類整理の仕事中のはず…だから良いのか?と尋ねると

 

「良いに決まっている。さっ持っておいで」

 

「うん!!」

 

僕はそう返事を返しパパの部屋から飛び出し、自分の部屋に戻り宿題を胸に抱えてパパの部屋に戻ると、パパは書類を片付けながら

 

「ほら、ここにおいで、今片付けたから」

 

僕の座る場所を用意してくれたようだった、僕はその場所にノートを広げて

 

「えっと…判らないところ…教えてくれる?」

 

「良いよ、判らない所があったら言うんだよ」

 

僕の頭を撫でながら言うパパに

 

「うん!今度はもう少しいい点取れるように頑張るね!」

 

僕がそう言うとパパは

 

「はは、それは楽しみだよ」

 

「うん、楽しみにしててよ!僕が本気を出したら凄いんだから」

 

胸を張りながら言うとパパは嬉しそうに笑い

 

「あはは。雷華らしいな」

 

?僕らしいってどういうこと?僕が首を傾げてると

 

「雷華はいつでも明るくて元気だろ?だから私はそういう雷華が好きだよ」

 

「僕もね!優しいパパが大、大、大好き!!」

 

僕はそう言ってから勉強を始めた…今度はもうちょっと良い点取ってパパに褒めてもらえたらな。と思いながら

 

 

 

 

傍に居ても良いですか? 星奈視点

 

カタカタ

 

お父様の部屋からはキーボードを叩く音が断続的に聞こえてくる…きっと今は仕事中なのだろう…だから邪魔しないようにしなくては…

 

「ジー…」

 

扉を少しだけ開けてお父様の部屋を覗き込んでいると

 

「?」

 

お父様が私の視線に気付いたのか振り返る、私は即座に部屋を覗き込むのを止める

 

「??」

 

気のせいと思ったのか、首を傾げながら仕事を再開するお父様をまた見始める…しばらくすると部屋の中から

 

「星奈…お前何がしたいんだ?」

 

後を見ずに言うお父様、流石はお父様です気配だけで私だと断定するとは…私はゆっくり扉を開き

 

「えっと…お父様に遊んで欲しかったのですが。仕事中の様なので邪魔をしてはいけないと思い見てました」

 

「……邪魔じゃないからこっちにおいで」

 

おいで、おいでと手招きするお父様に

 

「いえ、邪魔をしてはいけないのでこのままここに居ます」

 

仕事の邪魔をせずにお父様を見る、これが今出来る最大の良策のはず。

 

「…多分、凄く良い事だと思ってると思うんだけど。気になって集中できないから入っておいで」

 

「…良いんですか?」

 

部屋に入らず扉の隙間から部屋の中を覗き込みながら言うと

 

「良いよ、どうせ雷華も居るし」

 

「失礼します」

 

雷華が居ないと思ったらまさかお父様の部屋に居るとは…私は即座に扉を開け中に入った、すると

 

「むにゅ…むにゅ…もうお腹一杯…」

 

お父様の膝をまくら代わりにして眠っている雷華を見つけました…

 

「勉強を教えていたんだが眠ってしまったんだ」

 

「…お父様に教えてもらっててもそうですか…」

 

私は呆れながら呟いた…雷華は授業中殆ど寝てる…雷華いわく勉強すると眠くなるそうだ…そんなんだからテストで0点を取ってしまうんです…

 

「まぁ、こんな状況だから星奈が居ても邪魔じゃないよ」

 

「そうですか…それでは失礼します」

 

お父様から少し離れた所で見ていると

 

「星奈、おいで」

 

「…私はここで…」

 

「嘘付け、そんなにそわそわして…迷惑じゃないし怒らないからおいで」

 

置いてあった鏡に自分の姿が映る…目はきょときょとと動き、身体も小刻みに動いてる…そんな自分の姿を見て

 

(ま、まるで子供じゃないですか…恥かしい…)

 

軽い自己嫌悪に陥りながら、お父様の真横に座ると

 

「星奈は我慢しちゃうからな。遊んで欲しいなら遊んで欲しい、かまって欲しいならそういえば良い。私はお前の父親だ、傍に居る時ならどんな我侭でも聞くよ」

 

キーボードを叩きながら言うお父様に

 

「…その…本当に迷惑じゃないんですか?」

 

「ああ、迷惑じゃないよ」

 

即答してくれたお父様にもたれかかりながら

 

「私は…お父様の傍に居ても良いですか?」

 

「良いに決まってる、お前は私の大切な娘なんだから」

 

笑顔でそう言ってくれるお父様の服を握り締めながら、上手く甘えられなくてごめんなさい…本当はもっと甘えたい、もっと遊んで欲しい…でも…今は…こうして傍に入れるだけで…私は幸せです…

 

 

 

王は実はおねえちゃんなんです 静夜視点

 

「ふん、相変わらず甘え下手だな。星奈は」

 

我はそう呟き父上の部屋の前から歩き去る。本当は我もかまって欲しいが、今は星奈の番なので素直に待つ

 

「静夜、王の部屋に向かったのではないのか?」

 

我達の部屋の掃除をしていたアイギナにそう言われ、我は肩を竦めながら

 

「今は雷華と星奈が父上の部屋に居る。あんまり押し掛けては迷惑だと思い戻ってきたのだ」

 

「そうか、静夜はやはりお姉さんなのだな」

 

アイギナがしみじみ言うので我は

 

「ち、違うぞ!我は王だ、断じてお姉ちゃんなのではない!」

 

慌てて違うと言うとアイギナはくすくす笑いながら

 

「そうか?何だかんだ言って、星奈と雷華の面倒を見てるじゃないか」

 

た、確かに…今までの我自身の行動を思い返す…

 

『雷華!まったくお前というやつは、自分の脱いだ服すら片付けれんのか!』

 

『ご、ごめん!今片付けてくるから』

 

『もう我が片付けておいてやった、感謝しろよ』

 

『あ、ありがとー静夜!』

 

『星奈、何をしてる?』

 

『……何でもないです』

 

『目を逸らすな。お前は何をしてるんだ?』

 

『…に、人形を…作ってたんです』

 

『人形?…ああ、父上のか…何だこれは!?』

 

『うう、言わないで下さい…私不器用なんです』

 

『下手にも程があるだろうが…仕方ない、我が教えてやろう』

 

『ふえ?出来るんですか?』

 

『お前馬鹿にしてるだろ?我は王だぞ?この程度の人形、ちょちょいのちょいだ』

 

『なんか、おばさんのようです』

 

『知らん。不器用なお前で憐れな物でも作っていろ』

 

『ご、ごめんなさい!助けてください、静夜』

 

『最初からそう言っていれば良いのだ』

 

……た、確かに…アイギナの言うとおりだ…

 

「な、何故項垂れるんだ!?どうしたんだ静夜」

 

「わ、我は王なのに…なぜあいつらの世話をしてるんだ?」

 

我は本来王だから、指示する側なのに…なんで雷華達の面倒を見てるんだ?我が困惑してると

 

「静夜」

 

「父上?どうしたのだ?」

 

仕事中の筈の父上が我の部屋に来る、どうしたのか?と尋ねると父上は

 

「いつも雷華達の面倒を見てる静夜にご褒美を持って来たんだ」

 

笑いながら差し出されたのはチョコレートだった、我がそれを受け取ると父上は我の隣に座り

 

「仕事が忙しくてあんまり遊んでやれなくてごめんな」

 

「良いのだ、我達のためだと判ってるから」

 

父上が忙しいのは我達のため、それが判ってるから我侭は言わない

 

「それでもあんまり父親らしい事をしてやれないから、悪いと思ってるんだ」

 

肩を竦める父上に

 

「違う、違うぞ。父上はちゃんと我達の事を考えてくれてるではないか。なぁ皆」

 

扉の影から様子を見ていた、星奈達に声を掛けると星奈達も部屋に入って来て。父上の周りに座り

 

「僕達はちゃんと知ってるよ。パパが僕達のこと考えてくれてる事を」

 

少ない暇な時間に我達の破けた服を縫ってくれたり…休みの日はゆっくり寝たい筈なのに早く起きて我達のご飯を作ってくれる…忙しくてあんまりかまえないことを気にしてるかもしれないが…そんな事を気にする必要はないんだ…ちゃんと判ってるから…父上が我達を愛してくれてる事は…

 

「だから良いんだ、父上が傍に居てくれるだけで嬉しいから」

 

ギュッと抱き付きながら言うと、雷華達も同じ様に抱きついている…

 

「我達は父上が父上でよかった…我達は父上が傍に居てくれるだけで幸せなんだ…」

 

闇の書の欠片…人並みの幸せは得れないと思っていた…でも今…我達は幸せだ…優しい父上が傍に居てくれる…ただそれだけで…幸せなんだ…だから…

 

「遊んでくれなくても良い、授業参観に来てくれなくても良い…ずっと我達の父上で居てくれればそれで良い」

 

今我の手の中にある、この小さな幸せだけで良い。高望みはしない…ただ傍に入れるだけで幸せなのだから…

 

陽華とマテリアルの1日 終り

 

 

 




陽華→雷華→星奈→静夜視点で回してみましたがどうでしたか?面白かったでしょうか?最近あんまり静夜達メインの話をしてないので若干スランプ気味です、今度書くときはもうちょっと確りした物を書きたいと思います。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします


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完結記念番外編 夢は願望の現われ

どうも混沌の魔法使いです。今回は完結記念番外編です「仮面の思い様」のリクエストでは「ヒロイン達に既成事実を迫られる」でした、恐らく初のR-15か、かなりギリギリなラインの作品だと思います。自分ではかなりギリだと思っているので、タグをつけませんが…もしアウトだと思いましたら、一言お願いします。すぐにタグをつけるので。それでは今回もどうかよろしくお願いします


 

 

「完結記念番外編 夢は願望の現われ」

 

その日珍しく私はクロノ達に誘われ酒を呑んでいた。と言っても、私はあんまりアルコールに強い方ではないので。最初に頼んだソーダ割りをちびちびと飲んでるだけだが…他の面々はアルコールに強いので大分呑んでいた…

 

「龍也、お前は何時結婚するつもりなんだ?」

 

大分酔いが回っているクロノがそんな話を切り出す

 

「はやてが、私以外の誰かを好きになったらかな?」

 

「それは~ありえねぇっすよ!!旦那!部隊長は~旦那以外の男なんか、ゴミ位にしか思ってないっすよ~」

 

「呑みすぎだヴァイス、それくらいにしておけ」

 

へべれけのヴァイスの手からグラスを取り上げると

 

「それとも、お前は今のこのハーレム状態で、一生過ごす気か?」

 

「あ~それ判るッス!レジアス中将!あんなハーレム手放すくらいなら、結婚する気しないっすよね~」

 

酔ってレジアスの肩をバンバン叩くヴァイス、さっきまでとは偉い違いだ。素面の時は借りてきた猫状態だったのに

 

「それともあれかい?龍也?ミッドチルダは重婚OKだから、全員身篭らせる気かい?それはそれで尊敬するし、応援するけど?」

 

真っ赤でとんでもない事を言い始めるヴェロッサに

 

「はい、ヴェロッサ!アウト!それアウトだからっ!!!」

 

全員身篭らせるとか私はどんだけ鬼畜だと思われてるんだ。慌てて怒鳴ると

 

「それなら、第一婦人は間違いなく部隊長ですよね~」

 

「グリフィス!?お前は何を言ってるか理解してるのか!?」

 

黙り込んで、酒を煽っていたグリフィスがヴェロッサの発言に反応する

 

「ん~そんなら~第二婦人はなのはさんかフェイトさんですよね~」

 

「ヴァーイスッ!!!頭蓋骨ぶち砕くぞッ!!」

 

握り拳を作り怒鳴るとクロノが

 

「いや、僕はスバルかティアナだと思うね。若くて可愛いし、素直だし、2人ともMそうだし」

 

「アウトだッ!クロノ!!家庭を持ってるやつが、言っていい台詞じゃないぞ!?」

 

今のは妻と子供が居る奴の言って良い台詞ではない。

 

「龍也は、ノーヴェとかシグナムとか、Sっぽいのを屈服させるのが好きそうだと思うけどね~」

 

「ヴェロッサッ!!本気でその頭蓋骨ぶち抜いてやるッ!!」

 

とんでもない事を言い始める、ヴェロッサを殴って止めようとすると

 

「…僕は、セッテとかヴィータさんの病み具合を利用して、調…ぐはぁッ!?」

 

「くたばれっ!!グリフィースッ!!」

 

最後まで言い切る前に、全力で拳を叩き込み、グリフィスの意識を刈り取る

 

「でもやっぱ屈服させるより、最初から従順そうな。リインフォースさんとか、ディードを…あぐっ!?」

 

「貴様も冥界に叩き込んでやるッ!!」

 

ヴェロッサの首筋に全力で手刀を叩き込み、意識を刈り取り。次の相手を見極める、死者が2人も出てるんだ。これ以上馬鹿な事を言うやつは…

 

「旦那はSだと思うっす」

 

「僕はロリだと思うね、同年代が少なすぎる」

 

「ワシはあれだな、龍也は焦らしてるんだと思うぞ。自分から頼みに来るように」

 

「「あー判る」」

 

どうやら、全員死にたいらしい。だが流石に、長い付き合いの友人達をこの手で殺めるのは…

 

「きっと龍也は今の状況を楽しんでるんだ」

 

「ハーレムキングですもんね~」

 

「女同士の争いを見て、優越感に浸ってるに…」

 

一切の罪悪感を感じなかった。全員皆殺しにしてやる!

 

「ぎゃああッ!?腕はそっちには曲がらッ!?」

 

「本当の事を言ったから、怒って…うあああああッ!?!?」

 

「すまん!!ちょ、調子に乗り…いだだだだだッ!!!!」

 

~暫くおまちください~

 

「マスター、後で救護班でも呼んでやってくれ。後、これは騒がした侘びだ」

 

「は、はい!判りました!八神大将」

 

店主にお詫びとして、多めに料金を払い。ついでにサインを渡して

 

「お前らはとは、もう2度と呑みになど来ないぞ」

 

店の床に突き刺さっている馬鹿どもを一瞥し、私は六課へ戻った

 

「全く、あいつらは私を何だと思ってるんだ」

 

ぶつぶつと愚痴りながら、制服からパジャマに着替える

 

「人がロリだとか、Sだとか、焦らしてるとか…そんな訳、あるわけ無いだろうが」

 

確かにはやて達は嫌いではないが、そう言う邪な目で見た事は1度だって無い。可愛い妹に、慕ってくれる部下を、そんな目で見てるわけが無いだろうに。とんだ誤解だ

 

「はー、こんな日は早く寝るに限る」

 

そう呟き布団に潜り込んだのだが…その日、私は信じられない悪夢を見た、今まで見た中で最高の悪夢を

 

「龍也さん、何でもするんで…近くにいさせてください」

 

「Hなのでも頑張ってしますから…」

 

薄着のスバルとティアナにそう言い寄られたり…

 

「も、もう止めて、言う事聞きますから…」

 

「ご主人様、何でもします…だから優しくしてください…」

 

頬が異常なほど上気してる、涙目のシグナムとノーヴェを見たり…

 

「もっと、もっと虐めて…欲しいです」

 

「私も、もっと悪い子に躾けて兄貴」

 

単色の目で首に首輪を巻いてる、セッテとヴィータに上目目線で言われたり

 

「どうすれば兄上様はもっと喜んでくれるんですか?何でもします、教えてください」

 

「私は龍也兄様が好きなんです、だから、どんな事でも出来ます。言ってください」

 

恥じらいに頬を染める、リインフォースとディードの姿を見た所で

 

「ちっがーうッ!!!私はそんな目で皆を見ていないッ!!!」

 

絶叫と共に目を覚ます、何と言う悪夢だ。凄まじいまでの罪悪感を感じる

 

「馬鹿どものせいだ、あいつらがあんな話をするから…」

 

絶対にそうだ、あいつらの言葉が耳に残ってたせいだ。私はそんな邪な目で皆を見た事は無いんだから…

 

「TVでも見るか…」

 

気を紛らわす為にTVの電源をいれた…だがこの行動さえ間違いだった。夢に関する特集で学者がこう言ったのだ

 

『夢というのは、本能的に自分が抱く願望である事が多いんですね。つまり夢で見た事の大半は、自分が心の奥底で願った事や、こうしたいと思っている現われなんですよ』

 

その言葉を聞いた瞬間、私は手紙を書き六課を後にした。暫くなのは達に会うのは止めよう、座禅や滝にうたれよう、なんなら恭也と士郎さんに本気で『薙旋』を放って貰おう。もし今日の夢が本当に、私の願望だと言うなら、その願望を忘れるまで自分を追い詰めよう。そうだ、それがいい…私はそんな事を考えながらミッドチルダを後にした…

 

龍也の自室に残された、手紙は震える手で書いたのか、字は統一感が無く、所々に濡れた後があり、途中読めない部分がある物の、一応読む事は出来た

 

『私はもう駄目だ、私のアイデンティティが崩壊しそうな夢を見た。自分自身が嫌になってしまったので、暫く頭を冷やしたいと思う。だから探さないで下さい 八神龍也』

 

と書かれた手紙をはやて達が発見し、六課全員で慌てて捜索に乗り出したが。約2週間の龍也の間、龍也を発見する事は出来なかった。2週間後、龍也は何事も無い様に戻っていたが、何故かスバル、ティアナ、ノーヴェ、シグナム、セッテ、ヴィータ、リインフォース、ディードに話しかけられると。逃げ出すようになっていたそうです。

 

「完結記念番外編 夢は願望の現われ 終り」

 

 




…どうですかね?Rには引っ掛かってないと思うんですけど、大丈夫ですかね?もしこれを見てRに引っ掛かってると思いましたら、前書きでも書いたとおり、タグをつけようと思いますので一言お願いします。かなり自信の無い作品なので感想を貰えると嬉しいです。それでは次の更新もよろしくお願いします


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『完結記念番外編 運命を切り開く者』

さて、今回も完結記念番外編です。リクエストしてくれたのは「シエスタ410様」で、「平行世界のプレシア」の話です。それでは今回もよろしくお願いします


 

 

『完結記念番外編 運命を切り開く者』

 

 

「ユーノ、悪いがまたあの事故の資料を出して欲しい」

 

私は数日前から無限書庫に入り浸ってた。どうしても調べたい事があったのだ

 

「…またかい?一体何度調べれば気がすむんだい?全てのきっかけの事故を…」

 

私となのは、それにフェイトが出会った。全てのきっかけとPT事件、しかしそれこそが全ての間違い

 

「私の考えが正しければ…あれは、ヒュードラの暴走は…事故じゃない」

 

平行世界無限に広がるその世界には、様々な可能性がある。私がリインフォースを救ったように、ほんの少しの行動で歴史は変わる。それは良い結果にも悪い結果にも繋がる…

 

「龍也、まさか君が考えてるのは…」

 

私の考えに気付いた、ユーノに

 

「あの事故は…ネクロが引き起こした物だ…証拠も見つかった」

 

キメイラから現れたネクロ、ズィード。あれはヴェルガディオスの化身の1つ、その能力は様々な平行世界への扉を開く事。それは言い換えれば過去や未来にも繋がるという事…

 

「ヒュードラの事故があった時、謎の魔道師失踪事件が多発してる。それに…異形を見たという目撃情報もだ…」

 

「ば、馬鹿な!あれはネクロが活動を再開するより遥か前の事件だ。ネクロが関係してるとは」

 

「私は平行世界の闇の書事件の時にヴェルガディオスの遭遇してる、今回もその可能性が高い、ユーノ。ヒュードラが設置されてた場所はどうなってる?」

 

闇の書と戦った海上で過去に繋がるゲートがあった。今回も同じ筈だ、だからユーノに尋ねると

 

「…立ち入り禁止になってるけど…まだある。地図はこれだ」

 

「感謝する」

 

渡された地図を受け取り立ち上がり、私は無限書庫を後にした…

 

「ここか…酷い物だ」

 

「ヒュードラ」が開発されていた場所は、酷い有様だった…有害な魔力が充満してる可能性がある為、今も立ち入り禁止になり続けている。私はそれを眼下に見ながら

 

「何時まで着いてくる気だ。フェイト」

 

「バレてた?」

 

背後に声を掛けると、木の陰からフェイトが姿を見せる

 

「仕事は?」

 

「抜けてきた、無限書庫での話は聞いたよ…私も連れてって」

 

「良いのか?あの時代のプレシアはお前を知らないぞ?」

 

プロジェクトFをプレシアが知ったのは、ヒュードラの事件後…だから今のプレシアにはアリシアという娘しか居ない、態々来る必要はないと遠回しに言うと

 

「私にとっては何時の時代でも、大切な母さんで。その母さんを苦しめるネクロを私は許せない」

 

「良いだろう、来い。今度こそプレシアを救うぞ」

 

「うん」

 

私はフェイトを連れ、過去への門を潜った…全てを救うために…そして全てのすれ違いを正す為に

 

 

 

 

これが終れば…もっとアリシアと一緒に居てやれる。ヒュードラさえ完成すれば、莫大な報酬と研究者として未来が約束される。そうすればアリシアのそばに入れる、今まで仕事仕事で遊んでやれなかった。だがそれも終り、ここからは幸せな未来が待ってるはず、最終調整を始めたところで気付く

 

(!?なに?プログラムが全然違う!?これでは暴走が起きてしまう!)

 

私の管轄していた場所ではないが、わざと暴走するように仕組まれているプログラムに気付く

 

(と、止めないと!)

 

このままではヒュードラは暴走し、大惨事が起きてしまう。それはなんとしても防がないと。緊急停止レバーに手を伸ばそうとした瞬間

 

「おっと、困りますね。今止められては」

 

私の腕を掴む異形の手、それに驚きその手の持ち主を見て

 

「!?!?」

 

声に鳴らない悲鳴を上げる。顔がボロボロと崩れそこから獣の顔が姿を見せる。それに伴い身体も崩れ異形の身体が姿を見せる

 

「良い顔です、絶望と恐怖。最高の顔ですね」

 

にやにやと笑う異形は左手を掲げ、まるで指揮者の様に指を動かしながら

 

「ここで貴女の娘に死んでいただければ。全てが始まるのですよ、滅びへの美しい葬送曲がっ!!そして貴女の狂気を利用し、まだ幼い守護者を滅する。そうすれば我が理想郷が誕生するのです!」

 

「た、助け!?ッキャアアアアッ!?」

 

周りに居た研究者、管理局の上役が目の前の異形と同じく姿を変える、何!?何が起こってるの!?そこで唐突に思い出した、最近多発してる魔道師失踪事件と異形の目撃情報。それらは全てこの異形たちが原因だったのだ

 

「さぁ、よく見なさい。貴女の娘が死ぬ瞬間を」

 

パチン

 

異形が指を鳴らすと、鎧を身に纏った異形が隣の部屋から

 

「い、痛い!痛いよぉッ!!!」

 

「あ、アリシアっ!!」

 

アリシアの腕を掴んで無理やり引き摺ってくる。思わず駆け寄ろうとするが

 

「おーと、駄目ですよ?あれは奏者ですからね、触れてはいけませんよ?最高の悲鳴を聞こうではありませんか」

 

「は、放しなさいッ!!あんな所に連れてったら…」

 

異形がアリシアを引き摺っていく先は、魔力を溜める部屋がある。そんなところに生身のアリシアを連れて行けば、死んでしまうのは目に見えている。

 

「あんなところ?何を言うんですか?安楽死が出来る最高の場所ではないですか?それとも目の前で、バラバラに引き裂かれるのがご希望で?それならそうしますが?」

 

にやにやと笑い続ける異形に

 

「な、何がしたいのよッ!!貴方達はッ!!」

 

「私達の目的ですか?忌々しい守護者を殺し、未来を変える。それだけですよ…おっ。どうやら最高のアリアが聴けそうですね?実に楽しみだ」

 

異形の視線の先を見る、そこには今正に、アリシアが魔力増幅炉の中に投げ入れられそうになっていた

 

「や、止めてッ!!アリシアを奪わないでッ!!!」

 

「んー。良いですねその絶望に満ちた悲鳴…それこそが私「魔楽師アステル」を楽しませる。最高の楽曲ですよ」

 

私は絶望した。もう無理だ…誰も助けてくれない…私のただ1つの生き甲斐はもう手の届かないところへ…その時初めて気付いた…閉鎖されてる研究所に吹き込む

 

「風?」

 

優しく包み込むような、そんな風…それが何処かから吹き込んでいた…それに気付いた瞬間

 

「エルンストンウェルッ!!!」

 

雷を纏った剣撃がアリシアを掴んでいた、異形を切り裂き消滅させる。それと同時に金色の閃光が走りアリシアを空中で抱きとめる

 

「もう大丈夫、助けに来たよ」

 

「お、お姉ちゃんは誰?」

 

「正義の…味方だよ」

 

赤いマントに蒼い鎧を身に纏った、美しい美女が腕の中のアリシアに優しく話しかけてるのが見える

 

「ば、馬鹿なッ!!なぜ金色の戦乙女がここにッ!!」

 

異形が驚愕を伴った声をあげると

 

「貴様を滅する為に決まっているだろう?」

 

背後から男の声が聞こえる、驚いて振り返るとそこには。黄金色の鎧に炎の翼…そして美しい蒼と朱の瞳を持った男が立っていた

 

「ば、馬鹿な…何故貴様がここに居るッ!!!夜天の守護者アアアッ!!!」

 

守護者?…ではあの男がこいつらの敵?それに気付いた私は

 

「た、助けてッ!!早くッ!!!このままじゃヒュードラが暴走を!!」

 

「判ってる、プレシア・テスタロッサ。今助ける」

 

男が腰の鞘から抜刀する、それと同時に黄金色の魔力が吹きあがる…文献で見た事があった…あの魔力は

 

「せ、聖王の魔力?」

 

古代ベルカの王の証の魔力。ではこの男は何者なのだ、もう居ないはずのベルカの王族だというのか?

 

「くっ!!掛かれッ!!ここで守護者を殺せば、我らの願いは叶うぞッ!!!」

 

「「はっ!」」

 

周りに居た、鎧を身に纏った異形が動き出そうとするが

 

「ぐっ!?」

 

「な、何がッ!?」

 

「グギャアアアアッ!!!」

 

何が起こっているのか全く判らなかった、異形たちが動こうとした瞬間。黄金の閃光が放たれ、次の瞬間にはバラバラに切り裂かれ消滅していた

 

「弱いな、所詮はLV2、弱すぎて話にならん…そして貴様もだ、アステル」

私の腕を掴んでいる異形に男が言った瞬間

 

「ぐっグギャアアアアッ!!腕が!私の腕がッ!!!」

 

異形の腕が肩から切り飛ばされる、それと同時に

 

「プレシア!いまだッ!!ヒュードラを停止させろッ!!」

 

「!!判ったわッ!!」

 

男の怒声に頷き、ヒュードラを緊急停止させる。これで最悪の事態は回避できた

 

「お母さんッ!!」

 

「アリシアッ!」

 

後の扉が開きアリシアが飛びついてくる、それをしっかりと抱きとめ

 

「良かった、アリシアが無事で…」

 

思わず涙が出る、もう生きて会えないかもしれないと思ったから。アリシアは私の腕の中で

 

「お姉ちゃんが助けてくれたんだよ?」

 

アリシアが指差す方には先ほどの美女が居た。その美女はアステルに左手をむけ

 

「許さない、お前だけは…私の手で殺すッ!!」

 

凄まじいまでの殺気を叩き付ける

 

「ひ、ヒィィィッ!!!」

 

アステルが壁をけり破り逃げ出すが

 

「手伝うか?」

 

「必要ない、私だけで充分」

 

美女が掲げた左手から凄まじいまでの魔力と放出され始める

 

「一発だけなら、撃てるんだから。罪人に雷神の裁きをッ!!ユピトールスマッシャーッ!!」

 

ズドンッ!!バチバチッ!!!

 

一瞬だけ女の手が光ったと思うと、外からまるで雷が落ちたような音と

 

「ギャアアアアアアッ!!」

 

異形の悲鳴が聞こえてくる、どうやら先ほどの魔法が命中したようだ

 

「はぁ…はぁ…これきつい」

 

「当たり前だ、私専用の魔法を使おうって言うのがまず無茶だ」

 

へたり込む女に呆れたように男が呟く。私はその男に

 

「さっきのは一体?…それに貴方達は何者?」

 

アリシアを抱き抱えながら尋ねると、男は

 

「人は知らない方が良い事も沢山ある。プレシア・テスタロッサ。貴方は気絶し何も見なかった。それが今ここでおきた出来事です」

 

「…誰にも言うなと?」

 

「その通りですよ、異形とそれを倒した者、人に言っても信じないでしょうからね」

 

からからと笑う男に

 

「それは…そうね。でもせめて名前だけでも教えてくれないかしら?命の恩人の名前も知らないなんて嫌だから」

 

「そんな必要は無いですよ、だって貴方はここで誰にもあっていないし、誰とも話してないのですから」

 

何の事…?と私は尋ねる事は出来なかった、急速に遠のいていく意識の中で

 

「また会えて嬉しかったよ…母さん」

 

悲しげな、それでもとても嬉しそうな女の声を聞いた気がした…

 

 

 

「新型魔力炉を命懸けで止めた、天才魔道師。だとさフェイト」

 

ネクロを倒した翌日の新聞にでかでかと書かれている、見出しと写真を見ながら言うと

 

「…えっ?何?聞いてなかったよ」

 

「…やっぱり記憶を消さない方が良かったか」

 

フェイトの願いで、アリシアとプレシアの記憶を消したが。それで良かったのか?と尋ねると

 

「うん、これでいいんだ。あの出来事でこの世界は変わった。私は最初から居ない事になる、だから私の記憶は必要ないんだよ」

 

少しだけ寂しそうなフェイトの頭を撫でながら

 

「そうはならないと思うがね」

 

「えっ?どういうこと」

 

困惑してるフェイトに

 

「確かにヒュードラの暴走はなくなった。しかし、世界には絶対に変わらないものがある…例えば、お前となのはの出会いの様に」

 

どの世界でも必ずなのはとフェイトは出会っている。アリシアが居ても居なくても

 

「だから、必ずお前はこの世界に生まれるのさ、今度はプレシアの本当の娘として」

 

「そ、そうかな?そうとは言い切れないんじゃ?」

 

首を傾げるフェイトに

 

「あれを見てみろ」

 

「あっ!」

 

プレシアと話す男性の姿に気付いたフェイトに

 

「雰囲気からすると、あれがプレシアの夫なんだろうな。あの調子だとよりを戻しそうじゃないか」

 

「そ、そうだね…じゃあ、私も生まれてくるのかな?」

 

「そうだと思うよ。フェイト、それじゃあ帰るか。私達の世界へ」

 

「うん!」

 

私はフェイトを連れ、この世界を後にした…ヒュードラの暴走はなくなり、アリシアの生きてる世界。これがプレシアが望み、フェイトが護った世界…皆が幸せになれる世界なのだから…そして数年後のこの世界の海鳴で

 

「何をしてるの?」

 

「空を見てるんだ、どこまでも広い空を…君は?」

 

公園のベンチに腰掛けながら呟く、黒髪の男の子に話しかける、金髪の女の子は

 

「わ、私は、君じゃないよ!私はフェイト。フェイト・テスタロッサだよ。貴方は?」

 

「僕?僕は…誰だろう?名前は判らないよ、ずっと1人だから」

 

「1人?…お父さんや、お母さんは?」

 

「判らない、僕は1人だから」

 

悲しそうに呟く男の子の手を掴んだ、フェイトは

 

「行こッ!私のお母さんの所に」

 

「何で?」

 

「お母さん、男の子が欲しいって言ってた!だから連れてくのッ!!」

 

「言ってる意味がよく判らないよ」

 

「判らなくてもいーのッ!一緒に来れば!!あれ?そのペンダントは?」

 

龍を模したペンダントを指差すフェイトに男の子は

 

「ずっと持ってた。何か意味があるのかな?って」

 

「ふーん。んじゃ、行こッ!近くに私の家があるんだ」

 

「結局僕を連れてくんだね。君は」

 

「そうだよ、1人じゃ寂しいでしょ?」

 

「…うん、寂しい」

 

ぽつりと呟く男の子にフェイトは

 

「それじゃあ、私が妹になってあげる。そしたら寂しくないよね?」

 

「…寂しくないと思う」

 

「うん、私もそう思うよ!それじゃあ行こう!龍斗」

 

「龍斗?なんで?」

 

「そのペンダント龍の形をしてるから、龍斗で良いよね?」

 

「龍斗、うん…龍斗でいい」

 

笑いあう龍斗とフェイトはそのまま公園を後にした…そして。彼はテスタロッサ家の一員となる。そして彼は後の世界でこう呼ばれることとなる「閃光の剣神」と比類なき最強の魔道師として、ミッドチルダでは知らぬ者の無い英雄となるが…それはまだずっと先のお話です

 

『完結記念番外編 運命を切り開く者  終り』

 

 

 




どうも混沌の魔法使いです、自分は原作を知らないもので、あんまり深くプレシアとアリシアに触れる事は出来ませんでしたが。どうでしたか?面白かったですか?もしそうなら良いのですが…あと判っていると思いますが、最後に登場した男の子は「八神家」に拾われなかった場合の龍也さんです。名前も龍也ではなく龍斗となっています、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

PS かなり自信のない作品なので感想をもらえると嬉しいです


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完結記念番外編 守護者と黄泉路へ導く者

どうも混沌の魔法使いです!!今回は「楽一様」のリクエストで「コラボ小説」になります、私の作品「夜天の守護者」と楽一様の「黄泉路への案内人」とのコラボです、なおこれはIFストーリーなので「黄泉路への案内人」の第25話からの分岐ですので、先に黄泉路への案内人を見てくれると判り易いと思います、それではハーメルン初のコラボ小説始まります


 

 

完結記念番外編 守護者と黄泉路へ導く者

 

何故、我が敗れた…我は神、絶対なる者のはず…それなのに我は人形ごときに敗れた、何故だ?何故なんだ?どれ程の時間考えただろう?我にとって時間とは無限、決して終る事無く続く物。だが肉体の消滅した今。意識のみの存在と化している。我には何も出来ない、復讐もなにも…深い闇の中を漂っていると、我に似た波動を感じ取った…

 

(異なる世界の闇…我が生み出した者の模造品…それでも充分だ。我を再構築するには…)

 

我は僅かに残りし魔力を使い。その闇を我が身へと取り込んだ。その時僅かに見た世界は、図らずとも守護者に深い関わりを持つ者たちの過去だった…

 

 

 

私はアースラのモニタールームに映る、プレシアに特殊な魔法を掛けた…相手の心の中に住む本当の心を引き出す特殊な魔法

 

「我、汝に問う」

 

「ッ!?」

 

すると、プレシアが頭を抱え始めた。どうやら通じたみたいだ。

 

「汝の思う心の声は真実か」

 

「う、くっ……」

 

「汝の心の声真実にあらず」

 

「あ、あぁ、あぁあ!」

 

プレシアは何かに抵抗するように頭を抱える。

 

「心を開き、汝の真の声をこの者に聞かせろ!」

 

「アァアアアアアアアアア!!??!?!?!?」

 

すると、プレシアの瞳の色が、赤色から紫色に戻り、

 

「ふぇ、フェイト、逃げなさい。こ、こに、来ては、ダメ!?」

 

「え・・・」 

 

フェイトも動揺するだろう。いきなりわけのわからないことを聞かせられたのだ。動揺するのも無理はない、だが次の瞬間私も想像してない事態が起きた

 

「驚きだ、我を引きずり出すとはな、貴様何者だ?」

 

プレシアの影から白い身体を持つ異形が姿を見せたのだ

 

(な、何だあれは?不の者ではないッ!?)

 

私が動揺しているとその異形は

 

「何だ。我が何者かも判らずに引きずり出したというのか?愚か、実に愚かだ」

 

くっくと喉を鳴らす異形は、大きくその翼を広げ

 

「我はヴェルガディオス!!絶対なる神ッ!!全ての世界に破滅と死を与える者だッ!!この女を助けるつもりだったろうが、そうはいかん。我の身体を再構築する為に漸く手に入れた。苗床をそう簡単に渡すものかッ!!どうしても助けたいというのなら、ここまで来るがいい!

 

!しかし幼き「星光の女神」と「雷光の戦乙女」の力で我を倒せるか?くっくっく…楽しみだ、実に楽しみだ。ここまで来るがいい。待っているぞ」

 

異形はそう言うと再びプレシアの身体の中へと消え。それと同時にモニターからの映像も途絶えた

 

「あ、葵、あれ、なに…」

 

「判らない、あれは私の知るものではない…しかし…行くしかないだろう」

 

あれが何者かは判らない。しかしプレシアを助ける為には行くしかない、だが敵が何か判らない。どうするべきか迷っていると、リンディ提督が決断を下した。

 

「私も現場に出て次元震を抑えます。クロノは時の庭園へ突入しプレシア・テスタロッサの救出並びにヴェルガディオスを倒してください!」

 

「了解」

 

「神無月君もクロノと一緒に出て貰えますか?武装局員の壊滅の影響で人手が不足しているので」

 

「言われなくても」

 

「なのはさん、ユーノさん、リニスさんもお願いします!」

 

「「「はい(分かりました)」」」

 

するとフェイトが、

 

「私も、行きます!」

 

「フェイト。あたしも行くよ!」

 

「いいのですか?」

 

「はい。母さんを、助けます!」

 

その目に揺らぎはなくまっすぐ前を向いていた。

 

「気持ちをくんでやれ。彼女の眼は本物だ」

 

「…そうね。では、フェイトさんとアルフさんもお願い」

 

「「はい!」」

 

さて参るとしよう。あいつが何者かは判らない、しかし不の者に准ずる何かとは判っている。ならば私が導こう、彼の者たちが辿り着くべき黄泉にへと…神無月達が時の庭園に乗り込んだのと同時刻

 

「…やれやれ。どうやら私はよほどプレシアと縁があるようだよ」

 

呆れたように肩を竦める、銀髪の男が時の庭園を眺めていた…

 

 

 

懐かしいね。あの時のままだよ、虚数空間を避けながら進む、所々四肢が破壊された傀儡兵を避けながら先に進む。予想が正しければこの先に私の敵が居る、それを倒し、この世界のプレシアを救う、それが私の目的だ、プレシアの居る部屋から

 

「母さん」

 

まだ幼い、フェイトの声と

 

「…ふぇ、いと?」

 

苦しそうなプレシアの声が聞こえてくる。どうやら目的地は近い

 

「お願い!母さんを!私の大切な母さんを返して!」

 

「う、に、・・・げ・・・・・・・て」

 

「私にとってどんなに酷いことをされても、母さんは、わたしにとって大切な人なの!だから返して!!」

 

フェイトの悲鳴にも似た声と同時に

 

「うぁああああああああああああああ!?!!!」

 

プレシアの悲鳴と共に、どす黒い魔力の波長を感じる

 

「間違いない、やつだ」

 

この魔力を忘れるわけがない。ジオガディスを狂わせた闇その物の魔力だ。私はそれを確信してから走り出した…

 

「邪悪なる影よ! 聖なる矢を持って彼者から離れよ! ホーリーアロー!!」

 

少年がヴェルガディオス目掛け何らかの魔法を放つが、弾かれる。

 

「これが攻撃のつもりか?なら我がお手本を見せてやろう」

 

反撃と言わんばかりに放たれる、魔力弾を弾き飛ばしながら、少年達の前に降り立ち

 

「久しいな、ヴェルガディオス、まだ生きていたのか、完全に消し飛ばしたと思っていたんだがね」

 

 

 

 

「久しいな、ヴェルガディオス、まだ生きていたのか、完全に消し飛ばしたと思っていたんだがね」

 

突然、私の前に降り立った銀髪の男はそう言うと同時に、自分の目の前に魔法陣を展開し

 

「罪人に聖なる星の断罪を…スターライト…ブレイカーッ!!!」

 

なのはの数十倍の魔力を込めた。スターライトブレイカーをプレシア目掛けて打ち込んだ

 

「く、くうううッ!!!貴様マアアアアアッ!!!まだ我の邪魔をするかッ!!」

 

プレシアの影からヴェルガディオスが姿を見せ、それを防ぐ

 

「当然だよ。貴様は害悪そのもの、故に私が滅する。そしてその上で」

 

ここで言葉を切り、フェイトを少し見てから

 

「フェイトの母親を救う。それだけの力が私にはある」

 

パチンッ!!

 

男が指を鳴らすと一瞬で騎士甲冑が展開される。日の明かりの様な黄金色の甲冑に、炎の翼…そして眩いばかりの光を放つ剣。

 

「プレシア。これで何度目になるかは判らん。しかし何度でも私は、お前を縛る呪われし鎖を断ち切ってやるッ!!!」

 

男が腰を深く落すと同時に、鞘を覆うように魔力が収束し、剣型となる

 

「はああああああッ!!!!」

 

裂帛の気合と共に鞘に展開された、魔力刃をふるう

 

「ちぃッ!!!」

 

ヴェルガディオスが、その翼で魔力刃を防いだが…

 

「天断彩光刃(てんだんさいこうは)ッ!!!」

 

鞘から放たれた神速の抜刀はヴェルガディスの身体を切り裂く

 

「ぐうううッ!!まだだ!!この体を失う訳にはッ!!」

 

ヴェルガディオスは腕を伸ばし、プレシアの身体をつかみ、離れまいとする。それを見た男は

 

「悪いんだが、少年。力を貸してくれないか?少しばかり力が足りん」

 

私を見てそう言ってくる、私はそれに頷き

 

「エクス、ルミル。あの男に協力するぞ。Wシンクロ!」

 

《《Wシンクロ。起動を確認!》》

 

「我が体は大切な者を護るための盾、我が剣は我が大切な者に牙を剥いた者を討つために在り。故に我に敗走も敗北も許されない! 蒼騎士!!」

 

詠唱を行い、自身の最強の状態となり、剣を振るった…その一撃でヴェルガディオスはプレシアから分離する。

 

「いいタイミングだよ、少年。これでプレシアを救える」

 

バシュッ!!!

 

男の姿が掻き消え、プレシアを抱き抱え遥か後方のなのは達のほうへ移動する。私はあの男が、なのは達に危害を加えるのではないかと気になり。男の方へ向かった

 

 

 

「お前は何者だ!?」

 

敵意むき出しのクロノに

 

「若いな。とても懐かしい気分だ」

 

思わずそう呟くとクロノが

 

「何を言ってるんだお前は!」

 

まぁ、見知らぬ男に言われれば怒鳴るのは当然か、だが…

 

「残念だが、説明してる時間は無い!自分で考えろッ!!」

 

「喰らえッ!!パラドックス・ブレイカーッ!!!」

 

後方から放たれた、ヴェルガディオスの砲撃をそのまま反射する

 

「その用だな、お前らがここにいると危険だ。アースラに戻ってもらおうか」

 

先ほどの少年が変化したであろう、青年が来て言う。まぁ見知らぬ男に言われるかは従うだろう…そう思っていたのだが

 

「で、でも!?」

 

粘るフェイトに業を煮やしたのか、男がアルフ達に強い口調で

 

「アルフ、リニス、ユーノ!こいつらを連れて行け。後、プレシア」

 

「な、なに? 時の庭園を壊すことになるが許せ。後で弁償もする」

 

「壊しても別にかまわないわよ」

 

「そうか。では遠慮なくいかせてもらおうか。エイミィ。転送を頼む」

 

『りょ、了解!』

 

これまた懐かしいエイミィの声と共になのは達が姿を消す

 

「それで、お前は何者だ?」

 

警戒の色を示す男に

 

「私?私は龍也、八神龍也だ…そして夜天の守護者と呼ばれる者だ。で君は?」

 

私がそう尋ねると男は

 

「神無月葵、黄泉路への案内人と言われていた」

 

お互い名乗りあった所で

 

「貴様アアアアッ!!!」

 

ヴェルガディオスが姿を見せる、だがその下半身はなく再生途中なのは一目で判る

 

「さてと、黄泉路への案内人君?着いて来れるかな?」

 

「抜かせ、お前こそ着いて来れるのか?夜天の守護者?」

 

くっく、気の強いことだ。だがこういうやつは嫌いじゃない、ふと横を見ると葵も笑っていた。お互いに剣をヴェルガディオスに向け

 

「「それでは、共同戦線といくかッ!!」」

 

私と葵は同時に飛び出した、神を名乗る化け物を滅する為に

 

 

 

 

なのは達がアースラに戻ると、リンディさんが、

 

「ねぇ、彼ら誰?」

 

と、尋ねてくる。モニターに映っている葵(20歳Ver.)とその隣もう一人の男が戦っている姿が映し出されていた。

 

「あ、あれは葵君です、もう1人は判りませんッ!!!」

 

「えぇ!あれ、葵君なの!?」

 

エイミィがかなり驚いた様子でこちらを見た。

 

「そうですけど。どうかしたんですか?」

 

「こ、今後のことも考えてヴェルガディオスと彼らの魔力値を測っていたんですが、ヴェルガディオスはSSS+」

 

「まて、そんなにあるのか!?」

 

「クロノ君。驚くのはこの後だよ。それで、次に彼らの方を測ったんですが・・・・」

 

言いにくそうに言うエイミィさんに

 

「どうなったの?」

 

首を傾げながらリンディさんが尋ねると

 

「計測器が…粉微塵に爆発しました」

 

「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」

 

皆で黙り込み、再びモニターを見ると、黒と水色に黄金の光がいまだにぶつかっていた。

 

『貴様さえ!いなければ、この人形がッ!』

 

『人形か…言いえて妙だが、事実だな。私には何も無いからなッ!!』

 

黄金の光から衝撃波が放たれる、ヴェルガディオスは翼でそれを弾き

 

『では何故生きるッ!!理想も想いも仮初の名も無き人形が何を成すと言うッ!!』

 

葵君はなんだが置いてけぼりになっていた…ヴェルガディオスは完全にもう一人の男の人を狙っていたから

 

『何もだよ、私は私自身は成したい願いなどない…ただ、私が護りたいと思った者は全て護るッ!!それだけだッ!!!』

 

黄金の男が放った一撃がヴェルガディオスを吹き飛ばす

 

『葵、協力してもらえるかね?私は今全力を出せないんでね」

 

『それで全力ではないのかッ!?…まぁ良い、で何をすれば良い?』

 

葵君がそう尋ねると男は

 

『全力で砲撃を撃ってくれれば良い、上空目掛けてな』

 

『上空に?まぁ良い。言う通りにしてやる』

 

葵君が翼を広げ、詠唱に入る、それは何処までも冷たく、突き放すような響きがあった

 

『汝、愚かな存在であり最大の罪人』

 

怒りを込め、

 

『殺めし者は幾万にもなりこれからも続く』

 

憎しみをこめ、

 

『汝に価値はなく意味もない』

 

まるで、ゴミを見るように

 

『故、我汝を許すこと無し』

 

生きる価値を否定する。

 

『滅び去れ』

 

そして裁きの一言を告げた

 

『オールブレイク・ファンタムゥゥゥゥ―――――!!!』

 

青黒いまるで、魔の焔のような色をした砲撃が上空に向かって放たれる

 

『良いぞ、中々の魔力だ』

 

バサアッ!!

 

男の翼が力強く羽ばたきその砲撃を追い越し

 

『一瞬だけなら行けるな、フルリミットブレイクッ!!』

 

オールブレイク・ファンタムが男に当たった直後、眩い光が放たれるまるで太陽のような光が…

 

『翼は…4枚までか。展開装甲もなし…だがグランドホープが現れればそれでいい』

 

確認しながら呟く男の背には先ほどまでと違う、青黒い翼が展開され。その手には巨大な両刃剣が握られていた

 

『今度こそ…貴様を滅するッ!!!これで本当に終わりだッ!!!天羽々斬(あまのはばきり)ぃぃぃッ!!!!』

 

天を突くような魔力刃を構え、降下していく男…それは速過ぎて全く見る事ができなかった…ただ1つ判ったのは

 

『ギャアアアアアアッ!!!』

 

ヴェルガディオスの断末魔の悲鳴と凄まじいまでの衝撃音、全てが終ったと言うことだけ…そしてその直後、アースラは激しく揺れ、モニターの画像が途切れた…

 

 

 

 

「凄まじいまでの威力だな」

 

時の庭園を跡形もなく消し飛ばした、威力に私が驚きながら呟くと、龍也は

 

「本来の半分も出ていない。やはりなのは達でないと駄目か」

 

ぼそりと呟く龍也に

 

「何故お前はなのは達を知っている?そしてお前は何者だ?」

 

敵ではないと判っているので、武装を解除しながら尋ねると

 

「世界は無限に姿を持つ、私はその可能性世界の住人。ありとあらゆる者を繋ぐ者、神王…八神龍也。まぁその名は余り好きではないのだがね。私はやはり守護者と呼ばれる方が好きだよ」

 

からからと笑う龍也に

 

「何者かは判った、だが最初の質問はまだ答えてもらってない」

 

なぜなのは達を知ってるのか?という質問に答えて貰ってないと言うと

 

「答えはもう出るよ、ほらな」

 

「なっ!?」

 

龍也の指差した方向を見て絶句した。

 

「なに考えてるんですかッ!!1人で行くって!!無茶も良い加減にしてくださいッ!!!」

 

「大丈夫、完全に復活してないって判ってたから」

 

「そう言う問題じゃないの!!心配になるじゃないッ!!怪我してたらとかッ!!」

 

大人のなのはとフェイトが現れ、龍也を怒鳴りつける…それを見た私は

 

「未来から…来たのか?」

 

「察しがいいね葵、そう私は今から10年後の人間さ、ではね葵。また会えると良いな」

 

そう言うと龍也は逃げるように飛んでいってしまった

 

「こらーッ!!話は終わって無いですよ!!!」

 

「追いかけるよ、なのは」

 

「判ってるよ、フェイトちゃんッ!!」

 

それを追っていく大人のなのはとフェイトを見ながら

 

「なんて説明すれば良いんだ?未来から来たとでも言うのか?」

 

恐らくアースラに戻ったら質問責めにあうだろう…私はその事に頭を悩ましながら

 

「せめて説明してから、帰ってくれれば良い物を…」

 

私は大きく溜め息を吐いてから、アースラへと帰還した…そして案の定リンディ提督とクロノの質問責めに会い。私は気絶していたのでわからないと、適当に応えることしか出来なかった…

 

完結記念番外編 守護者と黄泉路へ導く者

 

 




えーと、コラボ小説は久しぶりなので、上手く出来たか自信がありません。ですので感想をもらえると嬉しいです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします


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完結記念番外編お姉さまは頑張っているのです!

どうも混沌の魔法使いです、今回は「リインフォース」さんのお話です、小さな話を何個か組み合わせた短編集のような物です。面白いかどうかはじしんがありませんがどうか今回もよろしくお願いします



 

 

 

…行動開始… リィンとの相談

 

「リィン、バレンタインに兄上様にチョコを渡すのはどう思う?」

 

そう尋ねられたリィンは

 

「止めておいた方が良いです、お兄様は3月14日生まれです。バレンタインにチョコを渡すのはよくないとおもうです」

 

リィンがそう言うとお姉さまは

 

「では何を送ればいいと思う?」

 

「…マフラーとかはどうですか?」

 

3月はまだ少しばかり寒い時もあるし、お兄様は色んな平行世界に出かけるので寒い世界もある。だからマフラーが良いと提案すると

 

「マフラー…判ったやってみる」

 

「頑張るです!お姉さま!リィン達も全力で協力するです」

 

お姉さまは結構不器用なので、皆で協力しないととてもマフラーは出来ないと思い、そう言うとお姉さまは嬉しそうに笑いながら

 

「ありがとう、リィン。お前達がいて本当に助かるよ」

 

優しく頭を撫でてくれるお姉さまに

 

「リィンはお姉さまの妹ですから。お姉さまのために頑張るのは当然なんです!それじゃあ明日材料を買いに行きましょう」

 

「ああ、そうだな」

 

 

 

…材料調達…アギトとの買い物

 

「姉、どんなのが作りたいんだ?」

 

姉と街中を歩きながら尋ねると

 

「?」

 

「何にも考えてないんだな。判った」

 

不思議そうに首を傾げる姉。仕事は出来るのにこういう所は完全に抜けている。私は溜め息を吐き

 

「何故溜め息を吐く?」

 

「いや、どんなのを作りたいか、位は考えてると思ったから」

 

私がそう言うと姉は赤面しながら

 

「か、考えてはいるんだ。ただ私に出来るかどうか…」

 

「何だ、考えてるなら教えてくれよ。それを聞かないと毛糸が選べないだろう?」

 

デザインに沿った毛糸を買う必要がある。だから教えてくれというと姉は

 

「こんな風にしたいんだ…」

 

恥かしいのか、ぼそぼそと耳打ちしてくる姉の話を聞く

 

「ふんふん…なるほど、それじゃあ毛糸は青と白…後は…赤かな…?」

 

デザインを頭の中に浮かべながら言うと

 

「本当に出来るだろうか?不器用な私に」

 

不安そうな姉に

 

「大丈夫♪大丈夫♪アザレアって凄い手先が器用なんだぜ?自分で兄のデフォルメしたタオルとか縫うくらい」

 

アザレアは意外と手先が器用で、色んな兄貴グッズを作ってる。だから大丈夫だと言うと

 

「そ、そうか…では毛糸を買って帰ろう」

 

「おう、兄を驚かせる凄いのを作ろうぜ」

 

 

 

…設計図作り…妥協しないユナ

 

「ですから、ここはこうするべきだと思うのです」

 

「いや、私も出来たらいいなとは思うが。私は不器用だから…」

 

そのお姉ちゃんの消極的な発言に

 

「不器用だからって逃げちゃいけません!頑張って作るから意味があるんです!」

 

少し強い口調で言うとお姉ちゃんは

 

「そ、そうだな!ユナの言うとおりだ!逃げちゃいけない頑張るんだ!」

 

「そうです!その息です」

 

2人で再びマフラーの設計図を書き始める

 

「…ここに白の毛糸で月を入れたいんだが…三日月か満月…どっちが良いと思う?」

 

「うーん…三日月じゃないですか?満月だと全体的なバランスが崩れますし…」

 

紙に書きながら言うとお姉ちゃんは

 

「そうだな…やっぱりバランスを取ると三日月だな…それじゃあ…イニシャルとは、ハートマークは?何処に?」

 

赤面しながら言うお姉ちゃんに

 

「やっぱりそれは巻いた時に、見える位置にですよ!「Y・T」「R・F」を崩して入れて…周りをこうして…どうですか?」

 

自分の書いたやつをお姉ちゃんに見せると

 

「こ、これで良い!ありがとうユナ」

 

嬉しそうに言うお姉ちゃんを見て私は

 

(こういうところを見ると年下に見えるから不思議です)

 

私はそんな事を考えながら、設計図をお姉ちゃんに渡して

 

「頑張ってくださいね、お姉ちゃん♪」

 

「うん、頑張ってくる」

 

自分の部屋からお姉ちゃんを送り出した

 

 

 

…マフラー作り…匠の技を放つアザレア

 

「あ、あの!そ、そそそそそこで縫い棒をクロスして、引くんです」

 

「こ、こうか?」

 

「ちち、違いますもうちょっと、クロスして…ゆっくり引いてください」

 

私は姉さんにマフラーの作り方を言いながら

 

(自分で作る方がずっと楽です…)

 

私はかなり口下手だし、喋るのも苦手だ…でも姉さんの頑張って作りたいという気持ちも判るので、私が代わりに作るという選択肢はない

 

(んーどうすれば良いのかな?どうすれば上手に説明できるかな?)

 

口下手の自分でも説明できて、編み物初心者の姉さんに理解させる方法…

 

(♪♪これだ!)

 

いいアイデアを思いつき、私は自分用の編み棒を取りに行った

 

「こ、ここからは、難しいので…私の…て、手の動きをよく見てください」

 

「判った」

 

イニシャルとハートマークを入れる所なので、よく見てくれと言ってから編み棒を動かしたのだが…

 

「…アザレア…速過ぎて見えない。どうやったらそうなるんだ?」

 

「あ、ご、ごめんなさい!つい自分がやるときと同じ風にやってしまいました」

 

ぺこりと頭を下げながら言うと姉さんは

 

「そうか、では今度はもう少しゆっくり目に頼む」

 

「は、はい!よく見てくださいね。ここを…こうして…こうです」

 

「な、なるほど…こうだな?」

 

「あ、ちょっと違います。ここをこうして。こうです!」

 

「あ、出来た!出来たぞアザレア!」

 

「良かったですね!後半分です!が、頑張りましょう!」

 

「ああ!」

 

その日、私と姉さんは遅くまで縫い物を続けた…

 

 

 

 

…真心を貴方へ…贈り物と嬉し恥かしのハプニング

 

「あの、兄上様?お時間宜しいでしょうか?」

 

「うん?少し待ってくれ」

 

マフラーを作った次の日、兄上様の尋ねると

 

(書類が一杯。やっぱり兄上様は忙しいんだ)

 

小山のような書類の束が7つ、管理局大将はやはり忙しいんだなと思っていると

 

「全く毎度毎度しつこいだよ。カリムは…ウィンド・カッター」

 

そうぼやいてから魔法で書類の山を粉みじんにする、兄上様に

 

「い、良いんですか!?そんな事して!?」

 

慌てて尋ねると兄上様は疲れた表情をして、無事だった一枚を拾い上げ

 

「神王 八神龍也様。聖王教会は貴方のお越しをお待ちしております。仕事などせずに一生暮らせるだけの給金と素敵な庭付きの豪邸を用意いたします。ですので管理局をお辞めになり、聖王教会へ…勧誘文書だ。最近は無視するから量を増やして送りつけてくるんだ」

 

溜め息を吐きその紙をビリビリに破り捨て、ソファーに座り

 

「それで何のようだ、リインフォース」

 

にこやかに尋ねてくる兄上様に

 

「えっと…その…ですね。ぷ、プレゼントを作ったので、受け取ってもらおうと思いまして…ッきゃあッ!?」

 

箱に収めたマフラーを手渡そうと一歩踏み出した瞬間。床に落ちていた書類を踏み大きくバランスを崩す

 

「だ、だいじょ…!?」

 

私を支えようとした、兄上様の手をすり抜け私と兄上様の距離が0になった…

 

「「!?!?!?」」

 

お互いに顔を真っ赤にし大きく距離をとる。私は震える手で自分の唇を指でなで

 

「い、今…その…キ、キキ…」

 

「言うなぁ!あれは事故だったし、一瞬だったから、ノーカウントだ!」

 

顔を真っ赤にし怒鳴る兄上様に

 

「じ事故でも良いです…兄上様とキス…きゅううう」

 

「お、おい!リインフォース!?」

 

キスした事を認識した、瞬間私は恥かしさの余り意識を失った…

 

「ん…」

 

「起きたか?リインフォース」

 

私が目を覚ました時、真っ先に視界に飛び込んできたのは兄上様の心配そうな顔だった

 

「ふえ…?…あああああ!?すすすいません!!」

 

慌てて身を起こそうとして気付いた。兄上様の首に巻かれたマフラーに

 

「あ、その…巻いてくれたんですね」

 

マフラーを指差しながら言うと

 

「ん、ああ…どんなものかと思って巻いてみたんだが…似合うか?」

 

そう尋ねてくる兄上様に

 

「はい♪とても似合っています」

 

笑顔でそう言うと兄上様は、少し私から目を逸らし

 

「大切に使わせてもらう。ありがとう」

 

顔を合わさずにお礼を言ってくる、兄上様がとても可愛らしく見えて。私は兄上様に抱き付きながら

 

「兄上様…大好きです。ずっとそばにいさせてくださいね」

 

「…私の傍なんかにいても良い事なんか無いと思うがね…」

 

呆れたように言う兄上様にしっかりと抱きつきながら

 

貴方は判って居ないです…自分がどれ程人に救いを与えているのか…私も貴方にすくわれた一人…そして心を奪われた者…今はまだ妹でかまわない…でもいずれ。私はそれ以上になりたいです…でもまだ今はその時ではないのですね…なら私は待ちます。貴方が私の思いに気付いてくれるその時まで…

 

完結記念番外編お姉さまは頑張っているのです! 終り

 

 




リインフォースさんと融合騎軍団のお話でした。ほのぼのメインのつもりでしたが。どうでしたか?面白かったですか?もしそうなら良いのですが…それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします


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番外編 龍と虎を従える者と守護者

どうも混沌の魔法使いです、今回はコラボ小説です。にじファンの時に仲良くして貰っていた「ATK様」の小説「四神伝奇 ~現代封魔戦記~」とのコラボです
この小説で出てくるキャラは「小説家になろう」の「ATK様」の小説で登場します。面白い小説なので、1度見に行く事をオススメします。それでは今回もどうかよろしくお願いします


 

 

番外編 龍と虎を従える者と守護者

 

「ほえ?教導の依頼ですか?」

 

モニターに映る強面の男に尋ね返す、1人の女性にモニターに映る男性は

 

「そうだ、六課に嘱託魔道師の指導を依頼したい」

 

強面の男性レジアス・ゲイズ中将がそう言うと

 

「んーでも明日は皆予定あるし…兄ちゃんしか空いてへんよ?そんでもええ?」

 

そう返答する女性、本来上司には敬語で話すのが当然だが、彼女にそんな事をいえる存在はそうは居ない、「漆黒の女神」の異名をとる「八神はやて」に上官や上の役職だからと言う常識は通用しない、彼女が管理局に居る理由…それは最愛の兄が居るから、それ以外の理由など無いのだから…

 

「構わない…それでは頼む…」

 

モニターが切れると同時にはやては立ち上がり

 

「んー教導の事は明日兄ちゃんに伝えれば良いか…ところで…なんでおるん?リヒト」

 

ベットでころころしている少女にはやてがそう尋ねると

 

「んー落ち着くからかな?にーさまのとこも好きだけど。はやてねーさまの所も落ち着くから好きだよ」

 

邪気の無い顔で笑うこの少女を見ながら、はやては

 

「これは…とりつかれてるということやろか…?」

 

「私はそんなつもり無いよー?」

 

はやてはその返答に

 

「複雑な心境や…」

 

妹としては可愛いが。彼女は過去にはやてを苦しめていた原因でもある…それは複雑な気分にもなるだろう…だが

 

「えへへ。はやてねーさま♪」

 

「邪見にも出来んよな…」

 

結局のところ。はやてもまた妹に甘いのであった…次の日…

 

 

 

「教導?…良いのか?」

 

銀髪の男…「八神龍也」がはやてに尋ねると、はやては

 

「そうや、私達は朝は本局に行かなかんし、教導出来るのは兄ちゃんだけやろ?、だからお願いな、何でも2人来るらしいでな…そうそうちゃんと手加減したってや?」

 

そう言って歩いていくはやてを見ながら、龍也は

 

「久しぶりの教導の仕事だ、うんうん…楽しみだ」

 

本当に嬉しそうにそう言っていた、龍也は教導官の免許を持っているが…滅多に依頼が来る事は無い。何故か?…簡単だ龍也の訓練は超が付くほど厳しいのだ。耐えれれば間違いなく強くなれる、だが耐えれる者が少ないので必然的に仕事が来ないのだ、そんな鬼教官の指導を受ける事になる嘱託魔道師の運命はいかに…?

 

 

 

機動六課の前に立つ茶髪の少年と美しい黒髪をポニーテールにしている少女、彼らの名は「東郷龍清」と「秋西麗」で今日龍也の訓練を受ける、嘱託魔道師だ

 

「ここが機動六課…」

 

僕は目の前の建物を見上げながら呟いた…ここは最強の魔道師が居る場所で、僕と僕の相棒である西麗は

 

「ねぇ…私達、死なないかな?」

 

不安げに呟く西麗に

 

「だ…大丈夫だと思う…というかそう思いたいよ」

 

今日、僕達の教導をしてくれるのは、最強の男「八神龍也大将」だ。その訓練は厳しい事で有名で、はっきり言って緊張しているし、怖い…僕が不安がっていると

 

「きゅう?」

 

心配そうに僕のズボンを噛む龍…名は「春清」僕のユニゾンデバイスで「四聖獣」の1匹、青龍である、反対側を見ると

 

「不安がってもしょうがないけどね~」

 

「ガウ」

 

虎の姿をしたユニゾンデバイス「小風」を抱き抱えながら言う、白秋も四聖獣の1匹で、白虎である…僕はそのやり取りを見て

 

(まあ、その通りかな…心配しててもしょうがないし。占いの結果も悪くなかったし)

 

自慢できる特技ではないが。僕は占い得意だ…そしてその占いは結構当たる…結果はそんなに悪くなかったし、そんなに不安がる必要は無いか…と思っていると

 

「お待たせしました」

 

「…しょ…しょ…嘱託魔道師…の方ですね。お…お待ちしてました」

 

黒と白と言えばいいのだろうか?黒髪と銀髪の10歳前後の少女が僕達の前で頭を下げる、銀髪の少女は

 

「お兄ちゃんが待っています。こちらへ…アザレア…私達の体格では、私の後ろに隠れるのは不可能ですよ?」

 

アザレアと呼ばれた少女は銀髪の少女の影に隠れようとしているが、ほぼ同じ背なので彼女の言うとおり不可能だろう…そう言われたアザレアさんは

 

「や…や…やっぱり…戻ります~」

 

パタパタと走り去るアザレアさんに驚いていると

 

「すいません、アザレアは少し人見知りが激しいんです。でも良い子なんですよ、とっ…自己紹介が遅れましたね。私はユナです」

 

そう穏やかに微笑むユナさんに

 

「僕は東郷龍清です、こっちは春清」

 

足元の春清を抱き抱え挨拶すると、ユナさんは

 

「可愛いですね、よろしくです春清」

 

「きゅう!」

 

春清の頭を撫で微笑んでいた、それを見ながら西麗は

 

「よろしく!ユナ、私は秋西麗ね!こっちは小風だよ」

 

「ガウッ!」

 

挨拶する西麗にユナさんは

 

「はい、よろしくお願いします、西麗さん、龍清さん、着いてきてください」

 

僕達はユナの後を着いて行った…案内された場所では既に八神大将が待っていた

 

「君達か、私は八神龍也だ、よろしく」

 

微笑みながら手を差し伸べてくる八神大将に

 

「はははい!!東郷龍清です」

 

「わ…私は、秋西麗です!!」

 

僕だけではなく西麗も少し噛んでいた…生き伝説になりつつある人物なのだから、当たり前かなと思った、八神大将は柔和な笑みを浮かべ

 

「そんなに緊張しなくて良いよ、役職など飾りだ、普通に龍也で良いよ」

 

そう笑う八神大将に驚いていると

 

「今、大将って付けたろ?龍也で良い」

 

僕の考えを読まれた!?西麗も驚いた表情を浮かべると

 

「伊達に歳は取ってないぞ?君達の考える事など手に取るように判るよ」

 

にこりと微笑む…龍也さんに驚いた、纏う空気や雰囲気が常人とは違う、目の前居るのに本当に居るのかどうかよく判らないのだ…圧倒的な存在感とオーラに僕は圧倒されていた…

 

(最強って言うのは伊達じゃないんだ…)

 

魔道師としても騎士としても最強と呼ばれる、理由が少しだけ判った気がする…僕がそんな事を考えてると

 

「それでは始めようか、まずは君達の実力が知りたいから模擬戦をしよう、ルールは私は左手と右足だけ、君達は2人で、勝敗は私に一撃入れたらか、2人とも気絶したら終わり、準備が出来たら掛かって来たまえ」

 

離れた所で右手をポケットにいれ構えを取る龍也さんに

 

「騎士甲冑は?」

 

ユニゾンを行い鎧を展開した西麗が尋ねると

 

「ん?大丈夫大丈夫、危ないと思ったらすぐ展開するから、心配ないよ」

 

そう笑う龍也さんに頷き僕は破山剣を西麗は虎王神速槍を握り、間合いを計っていたのだが…

 

(うっ…なんて覇気だ…)

 

空気がビリビリと歪んでいるのがわかる…圧倒的なまでの覇気と闘気…僕は完全に飲み込まれていた…

 

「っく…」

 

西麗も間合いを計りながら、若干の怯みを見せる…僕と西麗が動けずに居ると

 

「まずは実力を知りたいだけだ。そこまで気負いせずに楽な気持ちで来ると良い」

 

にこりと微笑む龍也さん…そうだ…今の僕達では勝てるわけが無いんだ…楽な気持ちで行けば良い…僕は大きく深呼吸してから

 

「行きます…!!」

 

そう声を掛けてから。龍也さんの方へと駆けて行った…

 

 

 

「はっ!!」

 

間合いを詰め、全力で槍を繰り出すが

 

「ふむ、筋は良いが…脇が甘い。それと踏み込みも」

 

片手で槍を弾き飛ばし、指摘する龍也さんの背後から龍清が突っ込むが…

 

「甘いよ」

 

ぶんっ!!

 

「うわあ!?」

 

回し蹴りが叩き込まれ吹き飛ばされる、龍清…まるで後ろに目があるかのような動きだ

 

「驚いてる暇は無いよ?」

 

そう言われた直後、私は宙を舞っていた…

 

「へっ?…うわあああッ!?」

 

片手で私は龍清の方に投げ飛ばされていた…

 

「きゃあ!?」

 

「うわあ!?」

 

私と龍清はもつれ合うように、倒れてしまう…

 

「あいたた…大丈夫?西麗」

 

そう尋ねてくる龍清に

 

「大丈夫。でもやっぱり1人ずつじゃ駄目だね…2人同時に行こうか?」

 

龍清は頷き、2人同時に駆け出した…数分後…

 

「「ぜえ…ぜえ…」」

 

2人の同時攻撃も、龍清の札攻撃も駄目…それどころか、それ面白いな、とか言って次の瞬間には龍清と同じ技を使う…噂通りの化け物じみた強さだった、しかし攻撃はかなり手加減されてるのか。ダメージは思ったより少なかったが…疲労で私達がしゃがみ込むと龍也さんは

 

「5分か…うん、中々体力もあるし根性も良い、大概の奴は1分くらいで諦めるんだが…」

 

そう呟きながら、歩いてくる龍也さんは、私達の頭に手を置いて

 

「よく頑張った、合格だ…10分休憩、その後基礎をやるからな」

 

そう笑う龍也さんに頷き、ユニゾンを解除すると

 

「きゅうううう!!!」

 

「がう~」

 

小風と春清が楽しそうに龍也さんにじゃれつく、龍也さんは楽しそうに笑いながら、小風を抱き抱える、驚いたことに小風は抵抗せずにされるままだった…それどころかごろごろと喉を鳴らしご機嫌だった。あんな小風初めて見る…よく見ると春清は龍也さんの頭にべたと乗りご満悦そう…それを見てた龍清は

 

「うーん、なに感じるものがあるのかな?」

 

と笑う龍清に

 

「そうかもね…でも。なんか見てて楽しい光景かも…」

 

龍也さんの周りを駆ける小風とその頭上を飛ぶ春清…上手く表現できないが、心の底から安心できる光景だった。その後、基礎の体術や魔法の扱い方や、大多数戦での心得など、色々教えてもらった、その全てが判りやすくすぐに理解できた、本当に強い人間というのは教えるのも上手なんだと思った…そして2時間後

 

「うん、今日の教導は終わりだ、また来週な、そうそうシャワーを浴びたら食堂においで、昼食を作っておくから」

 

そう笑う龍也さんに頷き、私達はシャワールームに向かった…シャワーを浴び終えた私達は食堂に向かって歩きながら

 

「思ったより怖い人じゃなかったね」

 

「そうだね、優しいし良い人そうだよね」

 

噂では機動六課は魔窟だとか、危険だとか聞いていた…多分龍也さんの風貌のせいでそんな噂が出たんだろうなと話していた…だが機動六課で危険なのは龍也さんではないと知る事になる…

 

 

どうしてこんな事に…僕はダラダラと冷や汗を流しながらそんな事を考えていた、隣を見ると青清と小風は完全に丸くなり防御体勢、西麗はぼそぼそと「ああ…これが危険って言われる理由なんだ、はは…知りたく無かったよ…」と遠い目をしている、少し離れたところでは龍也さんが、逃げないように動きを封じられていた…そして目の前には

 

「「「「「さぁ!!早く教えて!!!兄ちゃんと「龍也さん」「龍也様」と1番相性が良いのは誰や!「誰なの!」「早く言いなさい」」」」

 

黒い目の美しい女性の数々に急かされながら、僕はどうしてこうなったのか、思い返していた…

 

食堂に行くとそこには、僕よりも少し小柄な男の子と女の子が2人。それに僕よりも大きな青い髪とツインテールの女の人と…

 

(うわ…「高町なのは」さんに「フェイト・T・ハラオウン」さんだ…)

 

雑誌で見たことのある、今管理局で最も有名な魔道師の方達が居た…

 

「丁度出来た所だ、こっちにおいで」

 

おいで、おいでと手招きする龍也さんに頷き。其方の方へ向かう

 

「中華は好きかな?」

 

そう尋ねてくる龍也さんに

 

「はい!大好きです」

 

ホイコーローや春巻きが湯気を立てていて、とても美味しそうだった…訓練でお腹が空いていたので早速座り、

 

「「頂きます!!」」

 

手を合わせてから食べ始める

 

「美味しいです!」

 

「本当、凄く美味しいですよ」

 

今まで食べたことが無いくらい美味しい。その料理に舌鼓を打っていると…

 

「そう言えばさ。龍清君は占いが得意なんだって?」

 

「…別に得意というほどの事では…」

 

ジェイル・スカリエッティ博士にそう尋ねられ。僕がそう言うと

 

「これは面白い事が出来そうだねぇ…はやて君が来たら提案してみようかな…噂をすればなんとやら…」

 

「?私の顔になんか付いてる?」

 

「いやいや、そんな事じゃないよ。実は面白い事を考えてね?」

 

ごにょごにょとはやてさんに言う、スカリエッティ博士

 

「へー…面白そうやね…えっと龍清君やったよね?ちょっとこっち来てくれるかな?」

 

嫌な予感を感じつつ、はやてさんの方に行くと

 

「…はい…はい…判りました」

 

「ん、おおきに、さーておもしろいことになりそうやね~」

 

断ることも出来ず、了承したのが全ての間違いだったのだろう…

 

「第1回!占い大会~」

 

「「「イエーッ!!!」」」

 

スカリエッティ博士の掛け声に、六課の皆さんがそう合いの手を入れる…エリート部隊と聞いていたが…案外ノリが軽いのかもしれない…

 

「さて!今回は嘱託魔道師「東郷龍清」君をお招きして。色んな事を占ってもらいましょー!!!」

 

「「「イエーッ!!!」」」

 

…ノリが軽すぎる…ここはエリート部隊じゃなかったのか?僕が思わずそう頭を抱えていると

 

「んじゃま、まずは私だな、兄貴が私のために作ってくれたケーキが無くなってんだよ…誰が食べたか教えてくれ、お話(処刑)するから」

 

目が完全に据わっているヴィータさんに頷き、占いを開始する…そして答えはすぐに出た。占うまでも無く…僕は…

 

「えっと、そこで逃げようとしている人です」

 

食堂の入り口に向かう。スカリエッティ博士がぎくりと立ち止まり、ヴィータさんを見て

 

「すすすす…すまなかったああああ!!!知らなかったんだああああああッ!!!」

 

「知らなかったで、すむかあああああッ!!!くたばりやがれれえええッ!!!」

 

逃げ出すスカリエッティ博士とデバイスを振りかざし追いかけていく。ヴィータさん…数分後、外から

 

「ギガントシュラークッ!!!」

 

「みっぎゃあああああああッ!!!」

 

凄まじい轟音と悲鳴が響き渡った…それからすぐヴィータさんは戻って来て。

 

「全く…あのお惚け博士め…折角兄貴が作ってくれた私のケーキを…」

 

ぶつぶつ文句を言うヴィータさん…しかしケーキを勝手に食べたくらいで。大威力の魔法を放つとは…なんと恐ろしい…

 

「し…死ぬかと思った…」

 

よろよろと戻ってくる。スカリエッティ博士…なんて打たれ強さだ…信じられない…僕が博士の打たれ強さに驚愕してると

 

「んじゃ、次私ー!ずばり、にーさまは「S」か「M」か?」

 

ざわざわ…食堂内がざわめく…なか

 

「?SとかMとかどういう意味だ?」

 

「兄貴は知らなくても良い事だ」

 

首を傾げている龍也さんを見ながら占う…結果は…

 

「えっと…龍也さんは…いじめるのが好きみたいです…」

 

あまりストレートに言えないので、歯に衣を着せて言うと

 

「…龍也にいじめられる…」

 

「…龍也様に…いじめられる…」

 

頬を赤らめてる人が何名か居るが…あまり気にしないでおこう…

 

「いじめるのは好きじゃないけどな?」

 

「兄上が考えてる事と、龍清がいった事に関係性は無いので、そこまでお気になさらずに」

 

「??」

 

不思議そうな顔をしている龍也さんを見ていると、ヴァイスさんは

 

「次俺!ずばり旦那が実は嫌いな人!」

 

「「「!?」」」

 

この人は一体何を考えているんだ?そんな事占えるものか…

 

「龍清君?ちゃんと占ってね?」

 

…ああ。こんな事占いたくない…でも占わないと命が無い…僕はびくびくしながら占い、その結果を告げた…

 

「えっと…「セッテ・スカリエッティ」さんと「高町なのは」さんです」

 

「!!…私は生きる意味を失いました…」

 

「…ちょっと遺書を…」

 

どんよりとしたオーラを背負い、食堂を出て行こうとする2人に僕は慌てて

 

「いえ!嫌いというのはそう言う意味ではなくてですね!!セッテさんは視界が狭い事を治して欲しいと言う事と。なのはさんは仕事漬けなのでもう少し休んで欲しいな?という意味でして!別に嫌いというか…心配してるという事ですからね!!」

 

慌ててフォローを入れる、このままでは明日の新聞に「管理局のエース 自殺…一体何が原因か?」みたいな見出しが出てしまう。それはなんとしても阻止しなければ!慌ててフォローすると

 

「あ…なんだそうなんだ…」

 

「良かった…本当に良かった…」

 

心底安堵の表情を浮かべるなのはさんとセッテさん…ほッ…良かった…と安心したのも束の間…

 

「最後に私を占ってや、ずばり…兄ちゃんと1番相性が良いのは誰かや!!」

 

ざわざわ!!と席の周りの女の人達がざわめく・・龍也さんが逃げようとするがその前に捕獲されていた…そしてここで冒頭に戻る

 

「「「さあ!!早く!!!」」」

 

周りの黒い目の人達の女の人達に促され占いを開始する、えっと…見えるのは…黒いのに光り輝いてる?星空?狂気に似た愛情…?…多分これは、僕には誰を指しているのか判った、僕は結果を言おうとして硬直した、なのはさんとかが凄まじい眼光で僕を見ているのだ…正直凄まじいプレッシャーだ…それでも言おうとするが…

 

「う…占いの…け…結果…は…」

 

僕はここまで言った所で意識を失った…

 

「あれ?ここは「私の部屋だ」龍也さんと…西麗にユナさんとアザレアさんにリヒトさん?…あれ僕は…」

 

身体を起こしながら、何があったのか思い出そうとしていると、西麗が

 

「はやてさんとかの眼光に負けて気絶したのよ…それで龍也さんがここまで運んでくれたのよ」

 

ああ…なるほど…あの殺気に負けて気絶したのか…無理も無い…あの殺気は心臓の弱い人なら死んでもおかしくないレベルだったから…西麗に教えられて1人納得していると

 

「今、何か食べれるものを作ってこよう…もう夜だからお腹空いたろ?」

 

そう笑う、龍也さんに頷くと龍也さんはコートを翻し部屋を後にした…僕がソファーで

 

(結果がまさか…あれとは…予想外だった…)

 

予想もしない結果に僕が驚いていると、アザレアさん達が

 

「それで…結果は?教えてよ」

 

「私も知りたいです、お兄ちゃんと相性のいい人は誰なんですか?」

 

「に…兄さんが…帰って…来る前に教えて」

 

「私も気になる♪にーさまは誰と結婚すると幸せになれるの♪」

 

そう言う西麗達に頷き耳打ちすると、みんなやっぱりと言う顔をしていた…暫くして龍也さんが戻ってくるとユナさんが

 

「お兄ちゃん!!黒き夜とそれを守護する者が結ばれると幸せになるんだって!!」

 

そう言われた龍也さんは首を傾げながら

 

「?どういう意味だ」

 

そう尋ねる龍也さんにアザレアは

 

「そ…それは…自分で考えてください~」

 

「んふふ♪私としては予想とおりの結果で大満足♪」

 

小首をかしげる龍也さんは本当に訳の判らないという表情をしながら

 

「まぁ、そのうち判るかな?…はい、龍清と西麗、晩御飯な」

 

差し出されたトレーには美味しそうな中華粥が置かれていた…龍也さんは

 

「気をつけて帰れよ、これから頑張れよ!」

 

そうやって激励され僕と西麗は六課を後にした…これはまったくの余談だが、度々龍也の講習を受けることになった、龍清と西麗だが、その度に龍清は相性占いをさせられる事になる。だがその度にプレッシャーに負け気絶するのであった…

 

番外編 龍と虎を従える者と守護者 終り

 

 

 

 




えーと今回は「にじふぁん」時代のものに加筆修正を加えてみました。ですがあんまり大差ないかもしれないですね…それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします


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IS 番外編 忘れえぬ記憶

どうも混沌の魔法使いです。今回は久しぶりの番外編の投稿です。テーマ「月影夜葬」様のリクエストで千冬がドイツに居る時代の話です。
今作ではラウラさんが癒し系となっていますが。その理由や千冬がブラコンの理由をメインにやって行こうと思います。それでは今回もどうか宜しくお願いします



IS 番外編 忘れえぬ記憶

 

「ブリュンヒルデ。態々ご足労頂どうもありがとうございます」

 

「別に苦労したわけではない」

 

私は頭を下げるドイツ人を一瞥し、思考の海へと浸っていた。本来なら一夏が心配で日本を離れる気など無かったが一夏を見つけるのに、ドイツ軍の力を借りたので断るわけにも行かず私は嫌々ドイツにまで来ていた

 

「それではご案内いたしましょう」

 

「ああ、頼む」

 

グダグダと長い前振りが終ったのかそう言う男に頷き、私はドイツのIS部隊。通称黒兎隊が駐屯する基地へと向かった

 

「それではこれが隊員のリストとスキルの表です」

 

基地で早速渡されたリストをざっと流し見する

 

「このラウラ・ボーデヴィッヒのスキルが全て?になっているのは何故だ?」

 

「ああ。彼女は出来損ないでして。ヴォーダンオージェの暴走でまともにISを動かせないのですよ。まったく幾ら掛かったと……」

 

その言いぶりで理解したこの少女は唯の少女ではなく、ドイツ軍お得意の遺伝子操作の類で生まれた人間だと

 

(歳は……一夏と同じか……)

 

一夏と同じ……それがこの場所で出来損ないの烙印を押され蔑まれている。

 

「何処に居る?」

 

「はっ?」

 

「このラウラが何処に居るか聞いている」

 

「あの出来……「もう一度言う。ラウラは何処に居る?」

 

まだラウラの事を悪く言う軍人を一睨みし再度尋ねる

 

「A棟に居ると思いますが」

 

「そうか」

 

何処に居るか聞いて私はそのままA棟に向かって歩き出した。ただ一夏と同じ歳と言うだけで非常に頭に来た。一夏ではないだが放っておく事も出来ない私はそんな事を考えながらA棟に足を踏み入れた。目的の少女は直ぐに見つかった。同年代と比べると大分小柄で目に眼帯をつけた銀髪の少女だった

 

「貴女は?」

 

「私は今日から1年間お前達の指導をする事になった者だ」

 

生気の無い瞳で私を見返すラウラ。性別も背格好も違うがその姿が一夏にダブった。何よりも大切な弟の姿と……

 

「ここ最近の成績を見せてもらった。多少不信のようだが心配するな、一ヶ月で部隊最強の地位に戻れるだろう。何せこの私が教えるのだからな」

 

ほっておいてはいけない、この子の手を掴むものが必要だ。私はそう思ったもし一夏が同じ目をしていたら。私は即座にその手を掴んだろう。そんな確信があった……

 

「あのお名前は?……教官」

 

「織斑、織斑千冬だ。ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

これが私とラウラの初めての出会いだった。だが後に私は少しばかり後悔する事になる。私から一夏を取ろうとする者に態々戦闘技法を教えたのだ後悔するなと言うのが無理な話だ、だがその話は今はまだ語る事は無いだろう

 

 

 

~一ヵ月後~

 

「あなた、ここ?」

 

「ああ、そうだ。今回の教導場所は」

 

ふーんと言いながら頷くツバキを見ながら、その影に居る

 

「エリス寒くないか?」

 

「うん。大丈夫だよ、お父さん」

 

もこもことしたコート姿でにこっと笑う愛娘の頭を撫でながら

 

「ツバキ、ここには前回と前々回のモンドグロッソの優勝者、織斑千冬が今教導に来ているが喧嘩とか勝負をしないように」

 

「判ってるわ、まあどれくらいの技量を持つかは気になるけどね。今は教導に来てるんだものそんな事しないわ」

 

「それと話し方も気をつけてくれ」

 

夫婦だが今はプライベートでは無く、任務の一環としてここに来ているだからちゃんとしてくれと言うと

 

「判ってる。ヴァンティルグ中佐」

 

さっと敬礼するツバキに

 

「ああ、それで頼む……では行こうか」

 

「ええ」

 

ここの最高責任者の元へと向かった

 

「お久しぶりです。ヴァンティルグ中佐。いえこうお呼びしたほうが良いですかな?内部査察官どの?」

 

「冗談でもその地位のことは言わないでくれ。クラーク」

 

旧知の仲の人間だけが知っている私の本来の地位を言うクラークにそう言うと

 

「はは、冗談だよ。それでこちらのご婦人が?」

 

「ああ、私の妻のツバキだ」

 

「短い間ですが。宜しくお願いします」

 

「宜しくお願いします」

 

ツバキの影で顔だけ出し挨拶するエリスを見てクラークは

 

「あの子と同じくらいの歳か」

 

「あの子とはラウラの事か?」

 

この基地でエリスと同じ歳と言うとラウラしか居らずそう尋ねると

 

「ああ。同じ歳の子ならあの子も心を開くかもしれんからな」

 

そう笑ったクラークは

 

「今日は外の演習場でISの訓練をしている。早い内に合流しておくといい、それと査察のほうも頼む」

 

「判ってる。どうもこの基地にはアドヴァンスドの事を人間としてみない者が大勢居るらしいな。そいつらのピックアップをしながら訓練をさせて貰う」

 

遺伝子強化人間といえど、人間には違いないそれを軽視する人間を放っておくことは出来ない

 

「お前のような人間が上層部が居てくれるのは現場の人間として嬉しいよ」

 

「褒めても何もでないぞ?ではな」

 

私はツバキとエリスを連れ演習場に向かった

 

「初めまして。オクト・V・アマノミヤ中佐 ツバキ・V・アマノミヤ大尉」

 

演習場で挨拶をしてくる日本人に

 

「こちらこそ初めまして。前々回・前回のモンドグロッソの優勝者。織斑千冬さん」

 

「もう殆ど退役の手続きしてるから、ツバキで良いわよ。私も千冬って呼ぶし」

 

からからと笑うツバキにはぁと返事を返す千冬に

 

「今日は私とツバキが訓練を見させてもらうが、良いかね?」

 

「ええ。ちゃんとクラーク少佐に話は聞かせてもらっています、男性でありながら現場で活躍し続ける貴方の力と研究者としてもIS操縦者としても高名なツバキさんの力を見せて頂きます」

 

ぺこりと頭を下げ下がる千冬を見送り私は演習場に居る面々の前に立ち

 

「今日から半年。織斑千冬と共にお前たちの訓練を見せてもらう。オクト・V・アマノミヤだ、男に訓練なんてと思う者は前に出ろ」

 

この時代。男に訓練を見られると聞いて良い顔をする者は居ない。だから最初に私の実力を見てもらったほうが良い、私がそう言うと案の定。数人の隊員が前に出た

 

「なるほど……結構だ。だがしかし男だからと言う理由で上官を軽視するのは納得できんな。仮にも訓練を任せられたと言うことは私はお前たちより優秀と言うことだ。それを教えてやろう。ISだけが力じゃないと言う事を教えてやる。成績が良いのは……ラウラ前に出ろ」

 

無言で前に出たラウラに

 

「好きに打ち込んで来い。勿論ISを使っても構わん」

 

「……怪我をしても知らんぞ?」

 

「はっ!お前のような小娘に心配されるほど耄碌しとらん。とっとと掛かって来い」

 

無言でISを展開し切り込んでくるその速さは常人では反応しきれないだろうが

 

「直線かつ無軌道だ。そんな物に当りはしない」

 

突き出された手刀を掴みそのまま受け流す

 

「!!」

 

「生身の相手に避けられると思わなかったか?それが慢心だ。判るか?」

 

「さっきのはまぐれだ!」

 

PICで浮遊し蹴りを放つラウラだが

 

「甘いと言っている」

 

拾い上げた訓練用のISのブレードでその蹴りを受け流し、ラウラの喉元に刃を突きつける

 

「ISは確かに比類なき最強の力だ。しかしそれを扱うものが未熟では最弱にさえなる。それを良く覚えておけ。さて?まだ私に訓練をつけられることに不満のある者はいるか?」

 

その問いかけに頷くものは居なかった。今のやり取りで私の実力を見たからだろう

 

「では本日の訓練を始める。まずは2人1組で基礎訓練をしてもらう。どちらかが遅れれば連帯責任で最初からやり直しだ。では始めろ!」

 

即座に2人1組に分かれ始める隊員たちだが案の定と言うかラウラだけが孤立している

 

「エリス。ラウラと組め」

 

「はい、中佐」

 

そう言って歩いて行くエリス。二言三言話しペアを組んだラウラとエリスを見ながら。私は訓練の様子を見始めた

 

 

 

 

 

「お前はオクト中佐の娘か」

 

「うん、そうだけど?」

 

ペアを組むことになったエリスにそう尋ねるとエリスは頷きながら

 

「お父さんもお母さんも生身でも強い。ISを使えるからって絶対に有利とは限らない」

 

「それは私も実感した」

 

さっきの一連のやり取りで理解した、もしオクト中佐がISを使えれば私は完全に負けていた。それだけの力量差をまざまざと見せ付けられた

 

「あの人に師事していれば強くなれるか?」

 

「慣れるよ。私も訓練をつけてもらってるしね」

 

同じ歳だが筋力や敏捷性や私より上のエリスが言うと説得力がある。

 

「そうか。では教官と中佐に訓練を見てもらえば更に強くなれるか」

 

「そう思うよ。それじゃあ先に行く」

 

タタタッ!!!

 

私より前を走るエリス

 

「むっ、待て!」

 

追い抜かれたことが気に食わず走るスピードを速めるが私はエリスに追いつけなかった。

 

(同じ歳の人間に負けるとは……もっと、もっと強くならねば)

 

私はそんな事を考えながら課せられた訓練に意識を集中した

 

~1週間後~

 

「来る日も来る日も基礎ばかり。何時になったら応用を教えてもらえるのだ?」

 

ツバキさんとオクト中佐の訓練は基礎ばかりだ、何時になっても応用を教えて貰えない事に若干苛立ちを覚えながら。エリスに尋ねると

 

「まだまだだと思うよ。基礎が出来ない人間に応用は出来ないってお父さんが何時も言ってる」

 

同じ歳と言う事で同じ部屋になったエリスにそう尋ねると。エリスは事も無げにそういった

 

「おかしい。私の訓練生席は上位の筈だ。何故基礎のままだ?他のものは徐々に応用に入り始めていると言うのに?」

 

私より劣る者がツバキさんに剣術を習い。オクト中佐に射撃を習い始めている。まぁ私は私で教官に訓練を付けて貰っているが、どうも納得行かない

 

「それはラウラの考えが間違ってるから」

 

本を読みながら言うエリスに

 

「間違っているとはどういうことだ?説明しろ」

 

「簡単だよ。強さは攻撃力の事じゃない。強さと攻撃力を同一に考えてる内はお父さんもお母さんも応用なんて教えてくれないよ」

 

本から視線を外さすそう言うエリスに

 

「強さは攻撃力じゃない?では強さとは何だ?」

 

「さぁ?それは人それぞれだと思うし、私自身も強さなんて判らない。それは自分で見つけるものだと思うよ」

 

そう言ってエリスは本を閉じ

 

「明日も早いし私はもう寝るよ」

 

「むっ?そうか、では電気を消そう」

 

「ありがと」

 

そう言って布団に潜り込むエリスを見ながら私も布団に潜り込んだが

 

(眠れん……)

 

何時もなら直ぐに眠れるのだが今日に限って中々寝付けず。私は布団から抜け出し

 

「少し汗を流せば眠くなるか……」

 

服を着て私は演習場に向かった

 

「299……300……ふう……こんなものか」

 

一通り筋力トレーニングを終え隊舎に戻ろうとしていると

 

「そう。本当に居たんだ黒い亡霊」

 

「そうです、モンドグロッソの決勝の前に弟が攫われて。ドイツ軍の情報部に頼んで知った基地で私はそれに遭遇しました」

 

酔っているのかたどたどしい口調の教官の声がする。うっすらと聞こえた黒い亡霊の単語が気になり私は気配を殺し、教官とツバキさんの話に耳を傾けた

 

「都市伝説だと思ってました……そんな物居るはずないと……でも本当に居たんですよ。黒い亡霊は……私は手も足も出ずに弟共々殺される寸前でした」

 

カランと氷の溶ける音がする。静まり返った隊舎の食堂で話す教官の言葉をしっかりと聞く

 

「じゃあどうやって助かったの?」

 

「よく覚えてないんですけど……黄金の鎧を身に纏った男に助けられたんです」

 

「もう1つの都市伝説。黄金の騎士も本当に居たんだ」

 

「ええ。信じられないですけどね……今でも思い出すと身体が震えますそれほどまでに恐ろしい経験でした。一夏が居なかったら私は多分2度と剣を持とうなんて思わなかったでしょう。それにこう一夏を見ているとですね……判るんですよ、強さとは何かと……」

 

声が震えている。教官がここまで恐れるとは、黒い亡霊とは一体どんな存在なのだ?私が首を傾げていると

 

「盗み聞きは感心しないな。ラウラ」

 

「お、オクト中佐!?すいません直ぐに戻ります!」

 

部屋に戻ろうとしたが猫の様に掴み上げられる

 

「丁度良い。お前も少し付き合え。ジュースくらいなら出してやる」

 

「ちょっ!お、降ろしてください」

 

バタバタと暴れるが完全に捕まっているため逃げる事が出来ず。私は教官達の元へと連れて行かれた

 

「あら。ラウラを連れて来たの?」

 

「そこの影で盗み聞きしていたのでな。連れて来た」

 

ストンと椅子に降ろされ私は小さくなりながら教官に

 

「教官もわからないのですか?強さとは何か?」

 

「ん?ああ……判らんな。強さとは何か?それは武を修めるもの全員が1度は直面する謎だと思うぞ」

 

酔ってるせいか饒舌な教官はとても優しい顔をして

 

「強さとは心のあり方だと思う……そして私の弟はその強さを持っていると思う」

 

「貴方の弟ですか?」

 

「そうだ、丁度お前と同じ歳だラウラ。まだ幼く力は弱い。だが奴は強さを持っていると思う」

 

ウィスキーを煽る教官に

 

「私は弱いですか?」

 

「ん?ああ……お前は弱いなラウラ。攻撃力を強さと同一だと思っているうちはお前は弱いままだ。強さはそんな簡単な物じゃない。ね?ツバキさん」

 

「そうねぇ。確かに今のままじゃラウラ。貴女は弱いままね」

 

ツバキさんにも弱いと言われたが、強さの意味が判らない私は首を傾げることしか出来なかった

 

「その迷いは捨てずに持っておけ。何時の日か強さの意味が判った時。その謎が判る」

 

ぐぐーとビールを飲み干したオクト中佐は懐かしい者を見るような目で私を見て

 

「強さについて迷う事は良い事だ。私もかつてはその答えを捜し求めた。私の場合はツバキと出会う事でその答えを見つけられたが……きっとツバキに会わなかったら私は何時までも強さとは何か?と迷い続けていただろうなあ」

 

「あらやだ♪そんな事言われる照れるわ」

 

そう笑うツバキさんとオクト中佐はとても幸せそうな顔をしている。オクト中佐が得た強さの答えとは何か?と聞くことが出来ない甘酸っぱい雰囲気に押され。買って貰ったジュースを飲んでいると

 

「ラウラ……私の弟はな~世界一なんだよ~」

 

「きょ。教官?」

 

何時の間にか教官の周りに5~6本のウィスキーの空き瓶が転がっている、教官の目は完全に据わり私の肩を掴んで。以下に自分の弟が素晴らしいかを語り始めた

 

「まずな。一夏は料理が上手だ、次に家事も出来るしマッサージも上手い。それになにより可愛い。これが一番重要だ」

 

「は、はぁ?」

 

「何だ!その気のない返事は!ちゃんと人の話は聞け!!」

 

「す、すいません!!!」

 

怒鳴られ反射的に謝るそれを見た教官はうんうんと頷き

 

「私の弟はもうあれだ天使だ。愛らしく可愛い……こうふと偶に襲いたくなる時がある」

 

「お、襲うですか?」

 

「そうだ。襲いたくなる。他の女に渡すくらいなら無理やりにでも襲ってしまえば良いと思うときがある。まぁ真理だよな?それは」

 

真理?弟を襲いたくなるのが真理?どういう事だ

 

「これを見ろ!かわいーだろ?」

 

「あ。はい。確かに可愛いですね」

 

きょとんとした表情の私と同じ歳くらいの少年の写真を見せてくる教官はにへらとだらしない笑い方をしながら

 

「一夏~お姉ちゃんはーお前に逢いたいぞ~」

 

椅子に座ったままくねくねし始めた。えーとこの人は教官だよな?おかしい訓練時の吊り上がった目が下りただけでこんなに印象が変わるのか

 

「あら?千冬は歳の割にはしっかりしてると思ったけど。結構子供っぽいのね?」

 

「弟を異性としてみるのはアウトだと私は思うが?」

 

「シャーラップッ!!!良いんです!!愛さえあれば弟だろうが関係ないんですよ!!判りますか!?オクト中佐!!!」

 

凄い剣幕でオクト中佐に詰め寄る教官は

 

「大体ですねー私から一夏を取ろうとする女は皆死んでしまえば良いと思うんですよ。どうですかー?」

 

「い。いや?それは駄目だろう?千冬?」

 

「うるさーい!!弟は姉の物なんです!!特にあの化け猫とポニーテールは死ねば良いんです!!いっそ私が殺してやろうかと思うんですよ!!」

 

グラスにウィスキーを注ぐのが面倒になったのかついにはラッパ飲みし始めた教官は

 

「あー忌々しい!あの化け猫!交通事故とかで死なないかなー判るんですよ、あれは私から一夏を取ろうとする憎い奴だと」

 

「ツバキ。千冬が壊れたぞ?」

 

「ストレスが溜まってたんでしょうね。丁度良い機会だから発散させて上げましょう?」

 

「あー一夏に会いたい、こうギューと抱きしめて抱き枕にしたい~一夏枕じゃもう満足できない」

 

ぶつぶつと呟く教官はさっきから一夏に会いたい一夏に会いたいとしか言っていない

 

「えーとじゃあそろそろ私は部屋に……」

 

これ以上教官のイメージが壊れる前に部屋に戻ろうと思い立ち上がろうとすると

 

「誰が帰って良いって言った!!ちゃんと私の話を聞け!ラウラ!」

 

「は、はい!すいません!!」

 

そう怒鳴られ動くに動けない。オクト中佐達に助けを求めよう反対側を見ると

 

「い。いない!?」

 

何時の前か2人の姿は無くなっており。変わりに1枚のメモが

 

『頑張れ オクト・ツバキ』

 

酔っ払いに絡まれる前に逃げると言うのは良い判断だと思うが。未成年を残していくのはどうかと思う

 

「あー私の弟はなー本当に天使なんだよ。判るかラウラ」

 

「えっ?あっはい!そうですね」

 

「むっ!いいや判るわけがない!だってお前は一夏に会った事が無いんだ。あいつの愛くるしさが判るわけが無い!!!」

 

えーなんで私が怒られてるんだ?

 

「そうだ!今度日本に来い。一夏に会わせてやる。そうすればあいつの良さが良く判るだろうよ」

 

うんうんと頷く教官ははっと気付いたように

 

「だがしかし、私から一夏を取る気なら……おまえはあの世行きだと事を忘れるなよ?」

 

本気だ!この人は本気で人を殺めかねない!その殺気から言ってる事が嘘ではないと判った私は何度も頷いた

 

「よしよし、あふ……そろそろ寝るか。ではなラウラ、不満はあるが一夏枕で我慢するとしよう」

 

ふらふらと歩いて行く教官を見ながら

 

「教官のイメージが完全に壊れた」

 

真面目で他人にも自分にも厳しいと言うのが私の持つ教官のイメージだったが。そのイメージは完全に崩れさった……だがそれ以上に

 

(教官があそこまで言う教官の弟とはどんな人間なのだろうか?)

 

それに教官は言った。教官の弟に会えば強さが何か判ると……

 

(会ってみたい。話をしてみたい)

 

私の中で教官の弟に対する興味が芽生えた。強さとは何か?それを教えてくれる者。私が捜し求める答えを示してくれる者。今はまだ会うことは出来ないだろうが、いつか会ってみたい。話をしてみたいと私は思っただが

 

「まぁ教官から取ろうとするのは止めておいた方がいいだろうな」

 

あの目は本気だった。教官から奪おうとすれば私の命が奪われる。そんな確信があった

 

「まぁ話をする位なら教官もそんなに怒ることは無いだろうな」

 

何時の日か、教官の弟と会って話をする。それが私の中で1つの目的となった、強さとは何か?それを答えを得る為にこの夜の出来事は決して忘れること無く覚え続けていた。そして実際にあった時、私の中で世界観が変わるほどの衝撃が訪れる事となるが……それはまた別の機会に語るとしよう

 

IS 番外編 忘れえぬ記憶 終り




リクエストは千冬さんのドイツ時代でした。ただ上手く書けたかはあんまり自信が無いので感想を楽しみに待ちたいと思います。
千冬さんのイメージを完全に破壊してみたら、新しい境地を開けそうな気がしますね。これは今度の本編や番外編に行かしたいと思います
それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします


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マテリアルとヴィヴィオの小さな嘘

マテリアルとヴィヴィオの小さな嘘・・

 

この騒動の始まりは静夜の一言から始まった・・

 

「父上は最近・・我達と遊んでくれない・・父上は本当に我達の事を大切に思ってくれてるのか?」

 

その呟きに雷華が

 

「・・それは僕も感じてたかな・・パパ最近仕事行くのも早いし帰ってくるのも遅いもんね・・」

 

1回不安になるとそれはそう簡単には消えてくれない・・それは幼いマテリアルズとヴィヴィオも同じで

 

「・・本当はパパ・・ヴィヴィオ達の事嫌いなのかも・・」

 

その呟きに星奈が

 

「しかしこんな事は直接お父様には聞けないです・・でもお父様の気持ちが判らないと不安で不安でしょうがないです・・」

 

ヴィヴィオとマテリアルズ達には1つ不安な点がある・・それは自分達が本当の娘達ではないという事だ・・片や人造魔道師・・片や闇の書の闇の欠片・・その事が自分達の不安を加速させる・・それは捨てられるのではないか?と言う不安だ・・星奈達がそんな事を考えていると

 

「どうしたの?こんな暗いのに明かりも点けないで?」

 

スバルとティアナが4人の顔を見ながら尋ねると、静夜が

 

「そうだ!塵芥・・いや・・ティアナ・・お前に頼みがある!」

 

この静夜の頼みが全ての騒動の引き金となった・・

 

 

 

「兄ちゃん・・最近忙しそうやね・・どうしたん?」

 

そう尋ねて来るはやてに私は書類を見せながら

 

「静夜達がヴィヴィオと同じヒルデ魔法学院に通えるように準備をしてるんだ・・」

 

私がそう言うとはやては

 

「もう・・兄ちゃんは本当に静夜達が大切なんやね」

 

笑いながら言うはやてに

 

「当然だ、私には静夜達が人間じゃないとか・・どうとかには興味は無い・・ただ大切な私の娘・・それだけで充分だ」

 

もう直ぐ書類が全部揃う・・カリムやシャッハにも頼んだ・・どうにかして静夜達を学校に通わせる事は出来ないか?と・・何度も何度も頼み、遂にはカリム達が折れ、条件付だが入学が許可されたのだ・・その条件とは

 

「強力なりミッターで魔力の制限・・それにデバイスの弱体化・・ねぇ・・」

 

書類を見ながら言うはやてに

 

「仕方ないんだ、静夜達の魔力はSS+・・リミッターでC-まで能力を下げるのが絶対条件だったんだ」

 

私とはやてがそんな話をしていると、なのはが部屋に駆け込んで来て

 

「龍也さん!大変です!!ヴィヴィオ達が誘拐されました!!!」

 

その言葉に私は一瞬で座っていた椅子から立ち上がり、なのはの服の襟を掴み

 

「どういう事だ・・説明しろ」

 

私が睨みながら言うとなのはは私の腕を叩きながら

 

「た・・龍也さん!く・・苦しいですっ・・」

 

涙目で言うなのはに冷静になり

 

「す・・すまない・・頭に血が上ってしまった・・大丈夫か・・?」

 

苦しそうに咳き込んでいたなのはに謝ると・・

 

「だ・・大丈夫です・・それよりヴィヴィオ達の部屋にこれが・・」

 

私はなのはに渡された手紙を見た・・そこには

 

『蒼天の守護者・・いや・・神王・・八神龍也・・お前の娘は預かった・・返して欲しければ、今日の17時までに5億円を用意して1人で、ベルカ自治区の外れの教会に来い・・もし来なければ・・お前の娘の・・いや・・この造られた命の身の安全は保障しない・・それが嫌なら1人で教会へ来い』

 

そう書かれていた・・私はその手紙を握り潰していると、なのはが

 

「た・・龍也さん・・落ち着いて・・」

 

落ち着くように言うなのはに

 

「私は落ち着いている・・落ち着いてるさ・・」

 

私がそう言うとなのはは・・

 

「キレてる・・龍也さんが・・完全にキレてる・・」

 

そう言うなのはに私は・・

 

「ここで時間を潰してるつもりは無い・・私は行くぞ・・」

 

部屋から出て行こうとするとはやてが

 

「お金は、お金はどうするんや?」

 

慌てて尋ねて来るはやてに

 

「金はある・・殆ど給料なぞ使ってない・・5億くらいある」

 

大将という地位で金はある・・私達の生活日を差し引いても・・余る位なのだ・・私がそう言って出て行こうとするとなのはが

 

「私も一緒に行きましょうか!・・1人より2人の方が・・」

 

一緒に行こうか?と尋ねて来るなのはに

 

「必要ない・・1人で充分だ・・金なぞの為に、ヴィヴィオ達を攫った奴らに生まれて来た事を後悔させてやる・・」

 

私がそう言うとなのはは

 

「怒らせちゃいけない人を怒らせちゃったね・・私知らないよ・・あの場所・・灰になるよ・・」

 

そう呟くなのはの言葉を聞きながら、私はその場所を後にした・・

 

 

 

 

「パパ・・来るかな?」

 

目の前で呟く雷華を見ながら私は

 

「本当に良いの?・・こんな事して・・龍也さんが心配するよ?」

 

そう尋ねると静夜がジュースを飲みながら

 

「判らないだろう、スバル・・父上がここに来るとは限らない・・我達は必要とされて無いかも知れないだろう・・」

 

そう呟く静夜を見ながらティアが

 

「はぁ・・私こんな事してて良いのかな・・幾ら頼まれたからって狂言誘拐なんて・・したくなかったな・・」

 

そう今回の事態は全て・静夜達が計画した狂言誘拐なのだ・・龍也さんがここに来てくれるかどうか・・自分達は本当に龍也さんに大切に思われているのか知りたいと言う静夜達が計画した物なのだ・・その為にティアが幻覚魔法を用いて、この狂言誘拐の犯人を作ったのだ・・横目で犯人役のロボットを見る・・スカリエッティさんが造った模擬戦用のロボットに幻覚魔法を重ねて犯人役に仕立て上げているのだ

 

「強さは最高にしてあるけど・・あれでも役不足だと思うけど・・大丈夫かな?」

 

私は不安を感じていた・・私達は見た事が無いが・・本気で怒った龍也さんは超が付くほど怖いたらしい・・しかもトラウマになるほどの物らしいのだ・・今回私の予想通りなら・・龍也さんはここに怒りながら登場するはず・・私がそれを恐れていると・・ヴィヴィオが

 

「パパ・・来てくれるかな・・来て欲しいな・・ヴィヴィオはパパが大好きだもん・・パパもきっとヴィヴィオの事好きだよね・・スバル?」

 

不安げに尋ねて来るヴィヴィオの頭を撫でながら

 

「大丈夫だよ・・龍也さんはここに来るよ・・絶対に・・私が保証するよ」

 

そう言うと雷華が

 

「そうかな・・パパは本当に来てくれるかな・・スバル・・」

 

不安げな雷華に

 

「間違いないよ・・龍也さんはここに絶対来る・・雷華が思う以上に龍也さんは雷華達の事を好きなんだよ・・」

 

私がそう言うと、ティアが顔を青くさせながら

 

「スバル・・来たわよ・・超怖い・・私ここから逃げたい・・逃げて良い?まだ死にたくないし・・嫌われたくないし・・」

 

ティアがそう呟いた瞬間・・教会の壁を蹴り破りながら・・

 

「来たぞ・・とっとと出て来い・・屑が・・」

 

アタッシュケースを持ちながら言う龍也さんの纏うオーラは普段と全然違う・・燃え上がる炎の様なオーラを感じる・・その前にプログラムされたロボットが移動し

 

「金は持って来たか?・・それとも造られた命に出す金は惜しいか?」

 

そう言うと龍也さんの纏うオーラが更に凄まじくなる・・龍也さんはアタッシュケースを持ち上げ

 

「金はここだ・・ヴィヴィオ達を返せ」

 

龍也さんがそう言うとロボットが

 

「くく・・確かに・・金は受け取った・・だが・・造られた命は返すつもりは無いな・・お前だって本当は要らないのだろう?・・人間では無い物に・・父親等と・・メキャッ!「黙れ・・それ以上・・ヴィヴィオ達の事を造られた命と呼ぶなぁッ!!!」・・グギャ・・ガガ・・ピピッ・・」

 

騎士甲冑も展開してないのに、龍也さんは凄まじい速さでロボットの懐に飛び込み、無造作に拳をロボットの胴体に叩き込み簡単に破壊した・・破壊された事でロボットに掛けられた幻覚魔法が解除された・・無残な残骸になったロボットを見ながら・・龍也さんは

 

「スバル・・ティアナ・・5秒以内にヴィヴィオ達を私の前に連れて来い・・さもなくば・・私は2度とお前達と口を利かない・・」

 

そう言う龍也さんの言葉を聞くか聞かない内に私達はヴィヴィオ達を抱き抱え・・龍也さんの前に行った・・

 

「・・どういう・・つもりだ・・この茶番は・・お前達は・・何をしたかったんだ・・答えろ・・今すぐに・・」

 

振り返らずに背中を向けたままに呟く龍也さんは正直・・超怖い・・出来る事なら今すぐ逃げ出したい・・私がそんな事を考えていると・・・

 

ドゴンッ!!!

 

教会の壁に大穴が空く・・龍也さんは壁から腕を引き抜きながら

 

「・・言わないか・・なら・・お前達に直接聞こうか?・・私は女子供に手を挙げるのは嫌いだ・・だが・・今回は違うぞ・・笑って許せる・・レベルじゃない・・」

 

ゆっくりと振り返る龍也さんと目が合う・・怖い・・怖くて・・動けない・・

 

「ひっ・・ひっ・・」

 

隣でティアが大粒の汗を流しながら、へたり込む・・だがそれは私も同じだ・・足に力が入らずその場に倒れるようにへたり込んだ・・龍也さんがゆっくりと歩きながら

 

「私は・・今まで一度だって・・ヴィヴィオ達の事を造られた命などと思った事は無い・・ヴィヴィオ達は・・私の・・大切な・・大切な娘達だ・・」

 

ゆっくりと近付いてくる龍也さん・・その怒気に当てられ・・私達は呼吸する事が出来なかった・・

 

「だから・・そんな娘達を作られた命などと呼ばれるのは不快なのだよ・・いい加減説明してくれないか?・・この茶番の意味を・・」

 

言うならこれが最後のチャンスだと思った・・だが私達が口を開く事は出来なかった・・その様子を見て龍也さんは

 

「そうか・・教えるつもりが無いなら良い・・・だが・・もう2度と・・」

 

この後に続く言葉は判った・・2度と話しかけるな・・だ・・私達は・・2人揃って完全に龍也さんに嫌われた・・そう思った瞬間・・静夜達が龍也さんに抱き付きながら

 

「ごめんなさい!!ごめんなさい!!スバルとティアナは悪くないの!!ヴィヴィオ達が悪いの!!」

 

大粒の涙を流しながら言うヴィヴィオに龍也さんは

 

「ヴィヴィオ達が悪い?・・どういう意味だ・・」

 

少し冷静になったのか、怒気が和らぐ・・それで私達は漸く呼吸を再開できた・・私達が呼吸を整えていると・・静夜が泣きながら

 

「さ・・最近・・父上・・が・・遊んでくれなくて・・寂しく・・て・・ヒックッ!・・父上が本当に我達を好きなのか・・気になって・・スバルと・・ティアナに手伝って貰って・・父上の・・気持ちが知りたかったのだ・・うう・・うわああああんんッ!!!」

 

堪えられなくなったのか大声で泣き始めた静夜達を龍也さんは抱き抱えながら

 

「そうか・・そんなにも静夜達は寂しかったのか・・すまない・・私は静夜達が喜ぶと思って・・学校に行けるように・・手筈を整えていたんだ・・だが・・そんなにも寂しい思いをさせていたんだな・・すまない・・」

 

そう謝る龍也さんは何時もと同じ優しい龍也さんに戻っていた・・

 

「スバル、ティアナ・・すまない・・私の勘違いで怖い思いをさせてしまった・・」

 

廃教会を出て直ぐ謝ってくる龍也さんに

 

「い・・良いんですよ!!私達が悪かったんですから、ねッティア!」

 

手を振りながら隣に居るティアに話しかけるとティアは

 

「はい、今回は私達が悪かったんです・・すいませんでした・・龍也さん」

 

頭を下げながら言うティアに龍也さんは

 

「いや・・悪かったのは・・私だ・・静夜達の為だと思いやっていたのに、悲しませていては意味が無いだろう・・だから今回は私が悪かったんだ・・」

 

お互いに謝り合っていると、ヴィヴィオが

 

「パパ・・ヴィヴィオ・・お腹減った・・」

 

お腹を擦りながら言うヴィヴィオを抱き抱え龍也さんは

 

「そうか・・それじゃあご飯でも食べに行こうか・・そうだ・・スバルとティアナも来ると良い・・お詫びになるか判らんが・・夕食を奢ろう・・」

 

そう言う龍也さんと一緒に外食をした、私達は部屋に戻った後・・

 

「龍也さん・・怒らせると怖かったね・・」

 

前に龍也さんが怒った所を見た事があったがそれ以上に今回の龍也さんは怖かった・・だからそう言うとティアは

 

「そうね・・怖かった・・私は決めたわ・・2度と龍也さんを怒らせないって・・」

 

2人でそんな事を話していると頃・・龍也は・・

 

「ごめんな・・皆・・もう寂しい思いはさせないからな・・」

 

静夜達の頭を撫でながら寝る準備をしていた・・ヴィヴィオ達は頭を撫でて貰うのが気持ち良い様で目を細めながら

 

「うん・・約束だよ・・パパ・・お休み、それと大好きだよ・・」

 

「約束だよ・・パパ・・もう寂しいのは嫌なんだ・・」

 

「はい・・私は寂しいのも悲しいのも嫌です・・だから・・傍に居てくださいね・・」

 

「我もだ・・父上・・我も寂しいのは嫌だぞ・・」

 

眠いのを我慢しながら、口を揃えて寂しいのは嫌だ・・そう言うヴィヴィオたちに龍也は

 

「もちろんだ・・もう寂しい思いはさせないからな・・安心してお休み」

 

そう言いながら龍也達は一緒の布団で眠りに落ちて行った・・

 

 

マテリアルとヴィヴィオの小さな嘘・・ 終り

 



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天雷の騎士達の日常

 

天雷の騎士達の日常・・

 

「朝ですか・・起きるとしましょうか・・」

 

私はそう呟きベッドから上半身を起こした・・時間は4時30分・・王が起きるまでジャスト30分・・何時も通りの時間に起きれた事に1人納得していると・・もぞもぞと布団が動き、アイギナとシャルナも起きだす・・2人の目が合う・・それと同時に

 

「「はあっ!!」」

 

2人同時に拳を繰り出す・・お互いに力比べをしながら

 

「今日は私が王を起こしに行くッ!!」

 

「黙りなさい・・アイギナ・・王を起こすのは私です!!」

 

お互いに自分が起こしに行く!と言っている2人を見ながら

 

(やれやれ・・あの2人は何時も通りですね・・では私は朝食の準備でもしに行きましょうか・・)

 

喧嘩している2人を見ながら私は部屋を抜け出した

 

トン!トン!!

 

野菜を切り鍋の中に入れ、暫く煮た所で味噌を加える・・それから蓋をして煮詰める

 

「さてと・・次は玉子焼きでもしますか・・」

 

卵を割りボウルに入れる・・味付けの段階で

 

「ふーむ・・甘めか出汁を効かせるか・・迷いますね・・」

 

王はどちらも食べるが今日の好みはどちらだろうか?

 

「そう言えば・・昨晩はヴィータが泊まりに来てましたね・・では甘い方にしましょうか・・」

 

ヴィータが居るなら甘い方が良いだろう・・そう思いボウルに砂糖を入れた甘い玉子焼きを作る・・6人分焼いた所で・・

 

「クレア、おはよう・・ヴィータいい加減離れろ」

 

「やーだッ!」

 

「クレアーッ!!おはよう!」

 

王の心なしか少し疲れた声と楽しそうなヴィータの声がする・・私が振り返ると、私の予想通りヴィータが王の背中にしがみつきながら笑っており、ヴィヴィオが王の手を握りながら手を振る

 

「ほら・・もう朝ご飯だから離れろ」

 

王が繰り返し言うとヴィータは渋々といった表情で離れる・・うん・・何時も通りの朝だ・・私が微笑んでいると

 

「くうう・・お前の所為で王の目覚めに間に合わなかったではないか・・」

 

「・・それはこっちの台詞です・・」

 

酷く疲れた様子のアイギナとシャルナが入ってくる・・どうやら結局決着つかずで王が起きるまで争っていたようだ・・私は2人に呆れながら朝食を机の上に並べた・・

 

 

 

 

ううー順番なのに・・どうしてああ・・シャルナは強情なんだ・・私は玉子焼きを食べながらそんな事を考えていた・・私達は基本ローテションでその日の行動を決めている・・のだが・・シャルナはそれを護ろうとしない・・だから毎朝こんな攻防をしなければならない・・速く決着が付けば良いが、中々決着が付かず王が起きてしまう事の方が多いのだ・・そんな事を考えながら正面を見ると

 

「あーん」

 

にこにこと笑うヴィヴィオ様の口に微笑みながら玉子焼きを運ぶ王を見る・・何時もの光景でとても心が和む・・私がそんな事を考えていると王が

 

「どうしたアイギナ?食事が進んでないようだが?・・調子でも悪いのか?」

 

しまった・・王の事を見ていて食事の手が完全に止まっていた・・私は

 

「だ・・大丈夫です!私は元気ですから!」

 

慌てながら言うと王は

 

「そうか?・・調子が悪いなら悪いと言ってくれよ?」

 

そう言いながら食事を進める王に一安心し

 

(ふー・・焦った・・しかしやはり王はお優しい・・私の事もちゃんと心配してくれている・・)

 

プログラムである、私達の事も普通の人間の様に扱ってくれる王の優しさを感じながら、私は食事を進めた・・

 

朝食後・・

 

「・・掃除でもするか・・」

 

王達が仕事に行く準備をしている間に家の周りの掃除を始める

 

「中々・・楽しいな・・」

 

自分が掃いた所が綺麗になっていくのを見て楽しいと考えていると

 

「あ、アイギナさんおはようございます」

 

穏やかに笑いながら頭を下げる、なのはの姿が見える・・私は箒を1度壁に立てかけて

 

「なのはか・・どうした?まだ王の出掛ける時間ではないはずだが?」

 

時計を見ながら尋ねるとなのはは笑いながら

 

「そうなんですけどね・・ちょっと用事でこの近くまで来たんで・・龍也さんと一緒に六課に行こうと思って・・」

 

そう笑うなのはに私は

 

(嘘だな・・用事と言うがこんな朝早くからある訳も無い・・夜勤空けにも見えない・・王と一緒に居たいから来たんだな・・)

 

王は非常に良くモテる・・私が知る限り14人の女性に想われている、それも全て王の優しさと人徳からだろう・・私がそんな事を考えていると

 

「・・その細い目は何ですか・・?」

 

そう尋ねて来るなのはに

 

「別に・・だが・・朝早くから押し掛けるのは良い印象では無いと思うが?」

 

ゴミを掃きながら言うとなのはは

 

「・・そう・・思います?」

 

涙目で尋ねて来るなのはに

 

「そう思うな・・私としては仕事先で出迎えた方が好印象だと思うぞ?」

 

落ち葉などを掃きながら言うとなのはは

 

「私がここに来た事言わないでくれます?」

 

そう尋ねて来るなのはに

 

「さて・・何の事かな?・・ここには誰も来なかったし、私は誰とも話してないぞ?」

 

そう言うとなのはは頭を下げて走り去った・・私は走り去るなのはの後姿を見ながら

 

「王を支えれるのは・・案外ああいうタイプなのかもな・・」

 

無茶をする王を支えれるのはなのはの様な芯の強い女なのかもな・・天雷の騎士達はそれぞれ龍也に相応しいのは?と言うのを考えている、アイギナはなのはとフェイトで、クレアはヴィータというか八神家全体、シャルナは・・何だかんだ言ってるがナンバーズを押していたりする・・私が掃除を続けていると

 

「アイギナ・・私達はそろそろ出掛ける・・後は任せるぞ?」

 

制服に身を包んだ、王とヴィータにシャルナが玄関から出てくる、私は掃除の手を休め

 

「はい、お任せください・・お気をつけて」

 

そう見送り、私は掃除を再開したが・・

 

(どうして今日に限ってシャルナの番なんだ・・納得いかん・・)

 

今日は私が王を起こしに行き、シャルナが付き添い、クレアが食事の準備の筈なのに・・私は王を起こしに行けなかった・・その事が納得できず・・

 

(シャルナめ・・1度決着を付けてくれる・・)

 

どうやらもう1組の炎と氷の相性は良くないようです・・

 

 

 

 

「!・・」

 

私は王の後ろを歩いていて感じた妙な気配に立ち止まる・・これは

 

(アイギナですか・・まったく・・しつこいですね・・)

 

この感じはアイギナがまた決着を付けてくれるとか・・考えてる時の物に良く似ている・・私達は同じ目的、同じ人を護る為に一緒に居るが・・正直仲はそれほど良くない・・クレアは私の邪魔をしないから仲が良いが・・アイギナとはどうしても馬が合わないのだ・・だが

 

(こんな事は王には言えませんし・・自分で解決するしかないですね・・)

 

王は私達の事を仲良しだと思っている・・それは単純な理由で王の前で喧嘩するほど私達は馬鹿ではない・・だから仲の良い振りをしているのだ・・私がそんな事を考えていると

 

「シャルナ?どうした行くぞ?」

 

エスカレータの上から声を掛けてくる王に

 

「すいません、少し考え事をしてました・・今行きますね・・」

 

私はそう返事を返しエスカレータに乗った・・私は王の元へ行きながら

 

(・・決着を付けるのはこっちの言い分ですよ・・アイギナ・・)

 

自分と相性が悪い炎の事を考えていた・・

 

「今日の予定は?」

 

執務室で尋ねて来る王に私は手元のスケジュール表を見ながら

 

「午前中は、FW陣の訓練と書類仕事・・午後からは本局でレジアス中将とこれからの事についての話し合い・・それが終ったら今日の報告書に目を通してください」

 

今日の予定を読み上げると、王は天雷の書を手に取り

 

「判った・・では先に訓練を見てくる・・暫く待っててくれ」

 

そういって執務室を出て行く王の後姿を見ながら

 

(今日はツイてないですね・・殆ど付き添い出来ないではないですか・・)

 

本局に行く時は私は付き添い出来ないし・・訓練を見る事も出来ないので・・その間は執務室に待機となる・・

 

「アイギナの邪魔をしたからでしょうか?・・因果応報とも言いますし・・今度は邪魔をしないでおきましょうか・・」

 

今日アイギナの邪魔をしたからそのしっぺ返しが来たのだと思い、暫く本を読んで暇を潰してると・・

 

「何だ、シャルナ居たのか?」

 

チンクが入って来て、驚いたという表情で尋ねて来る私は読んでいた本を閉じながら

 

「そう言うチンクはどうしたのです?・・王はここには居ませんよ?」

 

この時間なら本局に居る筈だと思いそう言うとチンクは

 

「判ってる、八神に提出した報告書で間違いがあったからそれを訂正しておこうと思ったんだ・・」

 

王の机の上を探して、目当ての書類を見つけたチンクは胸ポケットからボールペンを取り出し、すぐに訂正をし

 

「さてと・・やる事は済んだ・・私は戻る・・」

 

戻るというチンクに

 

「そうですか・・王には来た事を黙って置きますから」

 

そう言うとチンクは頭を下げ

 

「ありがとう、シャルナ・・」

 

戻っていくチンクを見ながら、私は王の部屋に置いてあった料理の本を開きながら

 

「明日の朝食はどうしましょうかね・・」

 

私は明日食事当番だ・・だから何にするか考えながらページを捲り

 

「ふむ・・これで行きましょうかね?」

 

私はオムレツを作ると決め、チンクが来るまで読んでいた本を再び読み始めた・・そして日が暮れかけた時間帯に王が戻ってくる・・王は肩に手を置きながら

 

「レジアスめ・・騙したな・・雑誌の記者が居るなんて聞いてないぞ・・」

 

恨めしそうに言う王に

 

「肩を揉みましょうか?」

 

お茶を置きながら尋ねると、王は

 

「すまん・・頼む・・」

 

王の肩を揉みながら

 

「記者が居たのですか?」

 

そう尋ねると王は

 

「ああ・・何でもこれからの復興についての私とレジアスの対談を取材したかったそうだ・・」

 

クラナガンの一部は現在立ち入り禁止となっている、ネクロの生き残りが居る可能性が有るからだ・・だからその復興の目処を取材したかったのだろう・・そんな事を考えながら肩を揉んでいると王が

 

「・・もう良い・・ありがとう・・大分楽になった」

 

そう笑う王に

 

「お気になさらず、それでは戻りましょうか?」

 

仕事はもう終ったはずだから戻りましょうか?と尋ねると王は

 

「・・そうだな・・今から帰れば・・ヴィヴィオと夕食が出来るな・・よし戻るか・・」

 

そう言って立ち上がる王の後ろを歩いていると

 

「お兄様~リィンも一緒に帰るです~」

 

肩に飛び乗る小さな妖精・・王の家族の1人・・融合騎のリィンだ・・王の事をお兄様と呼び慕っている・・可愛らしく見ていて和むので嫌いではない・・他の融合騎達も同様だ・・愛らしく純粋な彼女達は嫌いではない・・

 

「リィンも上がりか?・・では一緒に帰ろうか・・」

 

そう笑う王と一緒に私達は家に戻った・・

 

「パパー!!お帰り~」

 

突進してくるヴィヴィオを抱き抱え

 

「ただいま、ヴィヴィオ」

 

にこにこと笑うヴィヴィオの頭を撫でながら笑っている王の前にクレアが来て

 

「お帰りなさい、王・・お風呂にお湯が入っているのでどうぞ、その間に夕食の準備をしてますから」

 

そう笑うクレアに頷き、お風呂場に歩いて行く王の後姿を見ながら、私は夕食の準備を手伝う為にキッチンに向かった・・

 

「シャルナ、これを机の上においてください」

 

チーズと野菜のサラダの入ったボウルを受け取っていると、

 

「んふふ~お風呂気持ちよかった~」

 

「リィンもです~」

 

にこにこと笑いながら戻ってくるヴィヴィオとリィンの後ろから

 

「ふう~、仕事の後の風呂は良いな」

 

髪を拭きながら歩いてくる王にアイギナが

 

「夕食の準備が出来ましたので、どうぞ」

 

椅子に座るように促す、私は王達にジュースを注ぎ

 

「どうぞ」

 

笑いながら手渡すと

 

「ありがとう!」

 

「ありがとうございますです!」

 

笑いながら受け取るヴィヴィオとリィンに

 

「すまないな・・」

 

謝ってから受け取る王に頭を下げてからキッチンに並べられた料理を取りに行く、本来なら王と一緒に食事を摂る等恐れ多いのだが・・王の意向で一緒に食事を摂る様にしている・・食事を終え部屋に戻って行った王を見送ってから、私は風呂に入り汗を流しパジャマに着替え

3人の部屋に戻る・・ベッドに座りながら瞑想しているアイギナに

 

「アイギナ・・今日はすいませんでした」

 

向かい合う様に座り謝ると瞑想していたアイギナは目を開き

 

「お前としては珍しい・・どういうつもりだ?」

 

そう尋ねて来るアイギナに

 

「いえ・・やはり順番を決めてるのですから・・その通りに動いたほうが良いと思うんです・・ですから、すいませんでした・・」

 

今日の事を謝るとアイギナは布団を被りながら

 

「お前がそういう事を反省するだけ救いがあるな・・今度から気をつけろ」

 

そう言って眠りに付くアイギナを見ながら

 

「私も寝ますか・・」

 

そう呟き私も眠りに落ちた・・また明日・・王の為に力を使うことが出来る、幸福を感じながら・・

 

 

天雷の騎士達の日常・・ 終り

 



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リクエスト番外編 懐かしい君へ

どうも混沌の魔法使いです。今回はリクエスト番外編です、ほのぼので行きたいと思うので今回もどうか宜しくお願いします
それとリクエストしてくれた方とリクエストテーマはあとがきで書かせて頂きます。ここで書くと楽しみが無くなりそうなのでそれではどうぞ



 

リクエスト番外編 懐かしい君へ

 

「……朝か」

 

ううーんと背伸びをしベッドから降りようとして

 

「……足がつかへん?」

 

おかしい足がつかないなんて……驚きながら自分の手を見る。小さく柔らかいリィン達のような手

 

「……鏡はどこやったけ?」

 

ベッドの横のサイドテーブルに入れてあるコンパクトを取り出し、深呼吸してから覗き込む。10歳前後の少女が私を見返していた……

 

「なんでやーッ!!!!」

 

朝から何でこんな大絶叫をしなければならないのだ……

 

「どうしました? 主……はやてですよね?」

 

「うん。そうや」

 

きょとんとするシグナムにそう返事を返すとシグナムは

 

「ちょっとシャマル連れて来ます、前に兄上が小さくなったときと同じ物が原因だと思うので」

 

くるりと踵を返すシグナムに

 

「いや、別に良いで? 怒らんでも」

 

「はい?」

 

訳が判らないと言う表情で振り返るシグナムに

 

「だって子供の姿やったら兄ちゃんが構ってくれるやろ? 私にとっては最高の状態や♪」

 

「そうでしたね。貴女はそう言う人でしたね」

 

はあと溜め息を吐くシグナムに

 

「あ、悪いけど静夜の服借りて来てくれる? サイズ一緒やと思うで」

 

「はい。判りました」

 

部屋を出て行くシグナムを見ながら

 

「最高の休日になりそうやー」

 

これ以上幸せな事は無いと思う。私はそんな事を考えながらベッドの上で足をパタパタと揺らしていた……

 

 

 

 

 

 

食堂で朝食後の紅茶を飲んでいると

 

「おはよ、兄ちゃん♪」

 

「……シグナム、これはどういうことだ?」

 

私が思う1番可愛い時のはやてがそこにいた

 

「はぁ。朝主はやての部屋に行きましたら。子供状態の主はやてがいまして」

 

「ジェイルか? それともシャマルの料理のせいか?」

 

「多分シャマルが原因かと」

 

はぁ、シャマルだったら怒れないじゃないか。ジェイルなら手足を縛って火あぶりにしてから管理局地上本部の頂上から突き落とすのに

 

「へくし!? なんだ? 九死に一生を得たような?」

 

地下研究室でくしゃみをしている天災科学者がしきりに首を傾げていた

 

「抱っこ~♪」

 

両手をがばっと広げにこりと微笑むはやてを見ながら

 

「中身も子供か?」

 

「??」

 

訳が判らないと言う表情のはやて、どうやら中身も子供のようだ

 

「おいで」

 

「ぎゅー♪」

 

ひょいと抱き上げはやてを抱きしめてやる

 

(ああ、なんか癒される……魔王化してないこの時のはやてが1番可愛かった)

 

弱い力でぎゅーと抱き返してくるはやての背中を撫でていると

 

「兄ちゃん、お腹減った……ご飯食べたい」

 

可愛らしく小首を傾げるはやてに

 

(ああ、やっぱ昔のはやてだ)

 

思わずほろりと来る。魔王になる前のとても可愛い時のはやてだ

 

「直ぐ作ってくるよ」

 

「うん♪」

 

コートからエプロンに着替え私は食堂の厨房に向かった……

 

 

 

 

 

 

「凄いですね、主はやて」

 

「なにが?」

 

兄上がいなくなったらさっきまでの天真爛漫の表情は消え、計算通りとでも言いたげな黒い笑みを浮かべる主はやて

 

「はやて。何食べたい?」

 

「オムライス♪」

 

一瞬で黒い笑みを消しにこりと天使の笑みで答える主はやて。二面性があるのは知っていたがこれは凄い、私にはとても無理だ。兄上が厨房に戻るとまたにやりという笑みを浮かべる

 

「ふっふー、兄ちゃんにとってはこの時期の私が1番心配で。1番大切に思ってれくれた時やから。思い出補正含めて騙されやすいんや」

 

「騙してると言う自覚はあるんですね?」

 

私がそう尋ねると主はやては

 

「うん、あるよ? でもばれなきゃいいんや」

 

にこにこと笑う主はやては、私達が召喚された時よりも幼く、兄上にとっては1番大事で1番心配だった時の姿なのだろう。だから兄上は主はやてを疑う事が出来ず素直に受

け入れている

 

(だがそれを知ってこのように動くとは。やはり恐ろしい人だ主はやては)

 

「出来たぞ~」

 

「わーい♪」

 

さっきまでの黒い気配を消しにこにこと笑う主はやてとその前に座り優しい笑みを浮かべている兄上。きっと懐かしい思い出が絶え間なく思い出されているのだろう

 

「あ~ん♪」

 

「はい」

 

はむはむと可愛らしく口を動かす主はやての口の周りのケチャップを拭き。飲み物を用意する兄上

 

「美味しい♪」

 

「そっか、良かった良かった」

 

にこにこと笑い主はやての頭を撫でて笑う兄上に

 

(い、言えない。兄上の幸福を奪う事も出来ず、また主はやての静かな殺気も恐ろしくとても私には事実を言うことが出来ない)

 

ぎらりと暗い光を放つ主はやての目と優しい笑みを浮かべる兄上。とてもではないが私は事実を言うことが出来なかった……

 

 

 

 

 

 

「あの八神大将。本当に部隊長が溜め込んでる書類も処理するんですか?」

 

「ああ、どうせ私も書類溜めてるし一緒に処理しよう。悪いが運んできてくれグリフィス」

 

八神大将の執務室に部隊長の分の書類も運び込む。八神大将のデスクの隅で足をぶらぶらと揺らしている小さい部隊長を見る。

 

(見た目は完全に子供だけど……中身は? 違うん……!!!)

 

八神大将が目を離した瞬間、にいっと三日月形の笑みを浮かべる部隊長

 

(違う!? 中身は天使じゃない!? 中身は何時もの大魔王の何時もの部隊長だ!?)

 

「ん? どうした? はやて」

 

「んーん。何でもないで」

 

可愛らしく笑いぎゅーと八神大将に抱きつく部隊長だが、視線だけで僕を見て

 

(余計な事言えば殺すで?)

 

口だけを動かしそう言う部隊長の目は一切の光が無く心臓が止まりそうになる位の威圧感を感じる

 

「よいしょ、よいしょ」

 

ひょこっと八神大将の膝に座り込み。抱きしめられているような格好で僕を見る部隊長の頭を撫でながら

 

「とりあえず、はやてにお菓子とジュースを」

 

気付いてない!? 魔王の気配に敏感な八神大将が気付いてない!? きっと八神大将にとって1番可愛い時の部隊長だから、思い出とかの補正で気付かないんだ

 

「好き♪ 大好き♪」

 

ぎゅーと抱きつき頭をこすり付ける部隊長に

 

 

「よしよし、良い子、良い子」

 

とても優しい笑みで部隊長の背中を撫でる八神大将、だが部隊長は視線だけで僕にこう言っている

 

(何時まで居る気や、とっとと失せい)

 

凄まじいまで眼光に射抜かれ僕はがくがくと震える足を押さえゆっくりと八神大将の執務室を後にした。中から

 

『兄ちゃん♪ 兄ちゃん♪ 大好き♪』

 

『うん、私も大好きだよ』

 

きっと明日八神大将は明日今日の事で部隊長に迫られる事間違いなし

 

(哀れすぎる、血が繋がってないとはいえあそこまで妹に迫られるなんて。なんて不便なんだ)

 

そう思う反面。八神大将が一番幸せなのは部隊長と結婚することだと思う僕が居る

 

(八神大将も今年で25歳だし。そろそろ結婚を考える時期だし、それに部隊長達も適齢期が)

 

「死ねッ!」

 

「ふぐおうっ!?」

 

強烈な脛蹴りを喰らい思わずその場で蹲る

 

「おうこら。今何考えた? 乙女の歳を考えたな? 死ぬか戯け」

 

「す、すいません。部隊長。踵でぐりぐり頭を踏まないで下さい。お願いします」

 

頭蓋骨が軋む、って言うかこれ危ない図柄だ、幼女に頭踏まれる大人……完全に変態だ

 

「はやてー? どうした? 迷ったのか?」

 

ひょこっと八神大将が顔を見せると

 

「んーん。この人が転んでたから大丈夫?って聞いてたんよ?」

 

凄い天使の笑みのままさらりと嘘言った

 

(死ね)

 

(ぐわあああ!? 掌を踏み砕かれた!?)

 

八神大将から見えない角度で踵を上げ魔力込めた一撃で僕の掌を容赦なく踏み砕く部隊長。あまりの激痛に声も出せずに居ると

 

「そっか、はやては良い子だね」

 

「うん! 私良い子やよ?」

 

相変わらず天使の笑みを浮かべつつ足は僕の掌を踏み続けている

 

(ぐうう……やっぱ部隊長が1番怖い)

 

六課に居る魔王の中で1番恐ろしいのはやっぱり部隊長だと思った

 

「よしよし、おいで」

 

「はーい」

 

とととッと足音を立てて八神大将に抱きつく部隊長を見て

 

(ぐぐぐ……シャルナさんか。シャマルさんに治療してもらおう)

 

六課内で最高の治癒魔法の使い手の2人の顔を思い出し医療室に向かったのだが

 

「は? 何故私が貴方の怪我を直す道理が? 私の全ては王のためだけにある。王の頼みが無ければ指1本動かすことさえ拒否します」

 

シャマルさんが居らず、シャルナさんの絶対零度の笑みで追い返され。僕は痛む手を押さえながら

 

(シャマルさんはいずこ……)

 

良いですよと二つ返事で治療してくれるシャマルさんを探して、僕は六課内を歩き回った……

 

 

結果論的に言えばシャマルさんを見つけ直ぐに治療してもらったのだが。やはり直ぐには痛みが引かず。そしてさっきの絶対零度のシャルナさんの笑みと部隊長の魔王の笑みを思い出し。その日はまるで寝ることが出来なかった……

 

 

 

はやての髪をドライヤーで乾かしながら

 

「すまんな。ヴィータ」

 

「ん? いや私は別にいいけどな」

 

リィンやアギトとお風呂に入れるメンバーが多かったので。ヴィータに頼んで皆を見てもらっていたことに礼を言うと、ヴィータは別に気にしなくて良いと言いながらはやてを見て何かを言い掛けたが。口を閉じてリィン達の髪を拭いて布団の用意をし始めた

 

「はい、終り」

 

「おおきに♪」

 

ぺこりと頭を下げて笑うはやてはそのままリィン布団の方に歩いて行った。さっきからしきりに目を擦っていたからきっと眠いのかも知れない

 

「凄い懐かしそうな顔してるぞ兄貴」

 

「ん? そうかもな」

 

リィン達が遊ぼうと言ってるのだが眠いといって布団にもそもそと潜り込んだはやてを見ながら

 

「まぁ。あの時のはやてが1番心配だったからな」

 

「どうしてだ?」

 

「あの頃のはやては徐々に足に麻痺が出始めててな。 ふらついたり立ち上がる事が出来ない事も多かったし。その分心配だったんだよ」

 

「やっぱあれか? 兄貴は……はやてが1番大事か?」

 

少し顔を伏せて尋ねてくるヴィータに

 

 

「誰が1番とかは無い。はやてもヴィータも、リィンやアギトも私にとって大事な家族で妹だ、だから誰が1番とかそう言うのは無い」

 

ヴィータの頭を撫でながら言うと

 

「そっか……へへ。変なこと聞いてごめんな兄貴。じゃ、おやすみ」

 

部屋に戻ろうとするヴィータに

 

「ああ、おやすみヴィータ」

 

軽く額に触れるだけのキスをすると

 

「ふえ? いいいい、今何を!?」

 

トマトの様に真っ赤になり目を白黒させるヴィータにくすりと微笑み

 

「おやすみヴィータ。良い夢を」

 

「う、うん……」

 

額を押さえニヤニヤしながら自分の部屋に戻っていくヴィータを見送り。既に寝入っているはやての髪を撫で

 

「明日には元に戻ってるかな?」

 

明日には元のはやてに戻っているだろう。それで記憶が残っているかは5分5分と言った所か……私はそんな事を考えながら自分のベッドに戻り眠りに落ちた

 

 

 

 

 

翌朝案の定私は元の姿に戻っていた。もうちょっと子供のままでもいいかなと思っていたが我侭は言わない。昨日一日にで十分楽しめたし

 

「ふふ♪ ふふふふ♪」

 

「はやてちゃん、凄いご機嫌だね」

 

本局に演習に行っていたなのはちゃんにそう尋ねられた私は

 

「昨日な実はこういうことが……」

 

もしょもしょと昨日の出来事を耳打ちするとなのはちゃんたちは無言で立ち上がり

 

「あ、あのシャマル!!」

 

「シャマル先生!!」

 

「ふえ? なんですか?」

 

パンを齧っていたシャマルが小首を傾げながら尋ねると。なのはちゃん達は土下座でもし兼ねない勢いで

 

「「「お願いします!! 私達にも子供化できる料理を作ってください!!!」」」

 

「え、ええ? でもあれはランダムで……」

 

「「「お願いします!!!」」」

 

もうシャマルの言葉なんて何一つ耳に届いて居ないと言う感じのなのはちゃん達を見ながら

 

「おはよう。はやて」

 

「うん、おはよう兄ちゃん♪」

 

自分の欲に正直なのは良いが、それで本当に欲しいものを見逃すのはどうかと思う

 

「なぁ。なぁ。兄ちゃん今日お休みやろ。遊びに行こうよ」

 

「仕事は?」

 

「グリフィス君が代わってくれるって♪」

 

誠心誠意込めた交渉(周囲にブラッデイダガーを展開)でグリフィス君が今日の仕事を変わってくれた。だから大丈夫

 

「あんまり苛めてやるなよ?」

 

「何の事?」

 

くすくすと笑う兄ちゃんの腕にしっかり抱き抱え

 

「今日は兄ちゃんに似合う服一杯選ばんと」

 

「お手柔らかにな」

 

「OKや♪」

 

皆が気付く前にと腕を引いて六課を出て私達は街へと出掛けて行った

 

 

 

~翌日~

 

「「「う?」」」

 

「六課は何時から保育園になった?」

 

「さぁ?」

 

見た目4~6歳前後のなのはちゃん達にあのピンクのポニーテールは間違いなくシグナム……あんたまでもか……

 

「おはよう……ってなんだこれ!?」

 

ヴィータが子供状態のなのはちゃんやシグナムとかを見て絶叫する中。ちびっこ軍団は

 

「うー!」

 

「私のー」

 

ぬいぐるみの引っ張り合いに

 

「あう?」

 

「きゃっきゃっ♪」

 

私達には理解不能の言語で会話をしていたりする……

 

「今日も仕事にならへんね」

 

「そうだな」

 

この状態ではとても仕事なんて出来ない。私達はちびっこ軍団の世話をする事になるのだが……その話はまたいずれ……

 

 

 

リクエスト番外編 懐かしい君へ 終り

 

 





今回のリクエストテーマは「子供化してるけど中身は魔王なはやてさん」で「ユウーTKTM様」からのリクエストでした
外見天使。中身は大魔王なはやてさんの話でしたが面白かったでしょうか? 最後の子供かなのは達は見たいと言う意見がありましたら書こうと思います
それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします


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リクエスト番外編 変化は突然に

どうも混沌の魔法使いです。 今回もリクエスト番外編です。ドタバタコメディで行きたいと思うのでどうか宜しくお願いします

尚今回は「IS」「バカテス」「お姫様」「EXS」「番外編2つ」の計6個の更新です。時間があれば他のもみていただけると嬉しいです


 

 

リクエスト番外編 変化は突然に

 

「……殺す」

 

朝起きたら何かが起きていたと言うのは何回もあった、だが今回のは極めつけに酷い。もう溢れる殺意を抑えることが出来なくなるほどに……

 

溜め息を吐きながら上半身を起こし

 

「お、重い……」

 

身体を起こすだけでずっしりとした重みが肩に掛かる

 

「すごい邪魔だな」

 

自分の胸を見る。そこには本来ある筈の無い物が2つ……そのまま立ち上がり姿見を見る

 

「……こう来るか……」

 

身長こそそのままだが、柔らかいラインを描く身体にどこかおっとりとした目付き。そしてシグナムと同じくらいの大きさの胸

 

「どうして朝起きたら女になってるんだ!!!」

 

恐らく地下研究室で爆笑しているであろう、ジェイルを如何に殺すかを考えていると

 

「朝からどうした……兄ちゃん?……いや。姉ちゃん?」

 

「言いなおさなくていいから。とりあえず着替えるから出て行ってくれ」

 

私がそう言うとはやてはニヤリと笑い、出入り口を閉める

 

「なぜ閉める?」

 

「だってほら兄ちゃん今女やし♪ 着替え方とか判らんと思うし手伝おう思ってな♪」

 

ハイライトのない目。そしてワキワキと動く指

 

「え……ま。待て来る……アーッ!!!!」

 

楽しそうなはやてに強制的に女子の管理局の制服にへと着替えさせられた……鬱だった……死にたくなった

 

PS ブラジャーだけは断固拒否し、さらしという代替え策を認めさせるのに15分間。半裸の状態ではやてと交渉をすることになったのだが……それはどうしても思い出したくない事として、私の黒歴史に刻まれた……

 

 

 

ザワザワ……

 

「なんか食堂が騒がしいですね」

 

「何かあったのか?」

 

セッテと食堂に行くとそこには

 

「くそ……鬱だ、死のう」

 

どんよりとしたオーラを纏い、魂裂さえ抜け落ちそう勢いで溜め息を吐くリインフォース……じゃないよな? 私が困惑しているとセッテが

 

「龍也様ーッ!!!」

 

「ぬあああ!?」

 

食堂の中央で魂さえ抜け落ちそうな勢いで溜め息を吐いていた女性に飛び掛りマウントを取り

 

「ああ、女性となってもお美しい!! 龍也様、愛しています」

 

「やめ。止めろセッテ! いやあああああッ!!!」

 

マウントを取られ胸を揉まれて絶叫する八神(?)と目が合う助けてと叫ぶその目に

 

「止めないか!!」

 

私は全力でセッテの頭を叩き、八神(?)の上から退かしたのだが

 

「力が弱かったですね、私を振り解けないほどに……チャンスッ!!!」

 

獣のような眼光で八神(?)に飛び掛ろうとするセッテに慌ててバインドを掛け拘束し、一息ついて食堂を見ると

 

『猛獣につき拘束中』

 

セッテと同じ様にバインドで拘束され首から看板を下げたはやてとフェイトと目が合う

 

「「にこッ」」

 

「何が如何してこうなったんだ?」

 

ぶるぶると震える八神(?)にそう尋ねると

 

「朝起きたら女になってて、理性がログアウトしたはやて達に襲われて。なのは達が可愛い格好した方が良いと物凄く楽しそうに買い物に出かけて。リィン達が凄く気を使った表情で「お兄様 綺麗です」と言ってきて、死にたくなった」

 

「もう良い。私はこれ以上何も聞かないさ」

 

やばいところまで追い詰められた表情をしている八神の肩を叩く。これ以上聞くと八神の精神衛生上良くないだろう

 

「でもジェイルは処刑した」

 

八神の視線の先を見るとそこには

 

「がふ……何時も以上に容赦がない……」

 

父さんが顔の面積が倍になるくらい殴られたのか元の原形をとどめてない顔で十字架にブラッデイダガーで磔にされ。その十字架はバインドで天井から吊るされその下には炎があり、良い感じに炙られている。そしてその周りをキープアウトのテープで囲み、看板に「大馬鹿者を処刑中 助けようとした者も同罪とする by 八神龍也」

 

「そうか、まぁまずはお茶でも飲もう」

 

「ああ」

 

八神の正面に腰掛ける

 

(男なのに……)

 

私より少なくとも2サイズは大きい胸にばっちりくびれた腰元に目の傷がある物のおっとりとした目付きの八神は、同性(?)と見ても美人だろう。だが

 

「くそ……今日1日部屋に閉じ篭る気が。無理やりはやてに引き摺られてさらし者になるとは不覚だ」

 

喋り方は八神のままなので私は大して違和感を感じなかった。だが倒産を処刑したという事は腕力や魔力は元のままのはずだがなんでセッテをどけることが出来なかったのだろうか?

 

「なんかな、胸を揉まれると力が出ないらしい」

 

「なんでお前が答えるんだ? ヴィータ」

 

気にすんなよといって八神の隣に腰掛けたヴィータは

 

「ん、お茶だ」

 

「ありがとう」

 

ミルクティーを飲み漸く落ち着きを取りも出した八神に

 

「しかし、このままここに居るとまた襲われる可能性があるな。やはり部屋に戻ったほうが良いんじゃないか?」

 

私がそう言うと八神はそれもそうだなと言って部屋に戻ろうと思ったのか立ち上がったその瞬間

 

「「服買ってきました!!!」」

 

姿の見えなかったなのは達が大きな買い物袋を持って現れる。それを見た八神は目の幅と同じ涙を流しながら

 

「2度とこんな薬をジェイルに作らせないでくれ。チンク」

 

「ああ、父さんが変な薬を作っていたら監視する様にする」

 

そのあまりに悲壮な表情の八神に私はそう言うことしか出来なかった

 

 

 

 

 

 

「さて唐突ながら始まりました! 第1回「女の子になった 八神大将コーディネイトコンテスト!!」本人は物凄く嫌がっているのですがこれをやればもう誰もちょっかいをかけないと約束したので嫌々ながら開催する事になりました!! 審査員は「クイントさん」「メガーヌさん」「リンディさん」そして「ちびっこ連合軍」でお贈りします

なお優勝賞品は等はありませんが! 参加者と八神大将の記念写真が贈呈されます。ではコーディネイト中の控え室の声を聞いてみましょう」

 

『いやああああ!? やめてええええ!?』

 

『フェイトちゃん回りこんで!』

 

『OK』

 

『はーい、龍也さん、綺麗にしましょうね~』

 

『や、止め……いやああああああッ!?!?』

 

「はい、どうにも精神的にガリガリ削られているみたいですね。 しかし元が超イケメンだけに物凄い美女だった八神大将がどうなるのか非常に楽しみなところです。それでは登場です」

 

 

 

 

 

 

「し、死にたい」

 

私は絶対女体化が終ったらもう1度ジェイルを血祭りにあげてノリノリでこの企画を考案したヴァイスを殺すと心に決めて。ステージに向かった

 

「「「おおおおおッ!?」」」

 

「「「八神大将綺麗ですよーッ!!!」」」

 

興奮した声を上げる男性局員全員1度病院送りにしよう。 記憶が失うくらい頭を殴ってから。あと女性局員全員に言う私は男だ。いや今は身体は女だが、男なので綺麗と言われても全く嬉しくない。

 

「ではコーディネイトをした、なのはさんとフェイトさんに聞いて見ましょう。 着付ける上で気を付けたポイントは?」

 

「やっぱりですね。目の傷が目立つのでそれを隠すためのメガネと龍也さんの髪は凄く綺麗なんで三つ編みにしたことですね」

 

「あと目の色に合わせて濃いブルーのワンピースで胸元と背の高さを強調してみたんだよ」

 

楽しそうに言うなのはとフェイトのコメントを聞きながら

 

(本当に死にたい)

 

恥かしさで真っ赤になりワンピースの裾を握り締め採点が終るのを待った

 

「では審査員の判定を発表します。 7点。6点。9点。3点、合計25点! 結構辛口な評価を下したちびっこ連合の皆様低得点の理由は?」

 

「お兄様が嫌がる格好をさせたからです」

 

「兄が可哀相だから」

 

「アギトに賛同します」

 

「わ、私は……なのはとフェイトがあんなことするなんて思ってなかったです……」

 

流石はリィン達だ私を助けてくれている……のか? まぁ良いが

 

「では続きまして。 エントリーNO.2 セッテさんと愉快仲間達です、では八神大将を連れてってください」

 

背後から抱きしめられ振り返るとハイライトのないセッテと目があう

 

「龍也さまぁ……私が綺麗にしてあげますからねえ?」

 

「こ、怖い!? セッテの目が怖いィィッ!!!」

 

万力のような力で抱きしめられたまま、私はセッテ達が用意した着替え部屋にへと連行された……

 

「じゃあ、えっとこれな」

 

「……ノーヴェだけはこんなイベントに参加しないと信じてたのに」

 

気まずそうに服を手渡してくるノーヴェにそう言うと

 

「あの……ほら私は記念写真が欲しいだけで」

 

「女装の?」

 

「ち、違うって!? 薬の効果が切れた後に1枚撮ってくれるだけでいいから。それに私が参加したのはセッテの暴走を止めるつもりでだぜ?」

 

ノーヴェの視線の先を見ると

 

「ふふ……ふふふふふッ!!!」

 

不気味な笑い声を上げるセッテがにやにやとこっちをみている

 

「なんかセッテは龍也が男でも女でも……「いい!! 聞きたくない!? そんな痛いこと聞きたくない!!」

 

耳を塞ぎノーヴェノ言葉を遮る。なんかあの続きを聞いたら私が駄目になる気がしたのだ

 

「判ったじゃあ、着替えような?」

 

「これ……どう脱ぐんだ?」

 

ワンピースの脱ぎ方が判らず困惑していると

 

「龍也様。私が教えてあげます」

 

「……わきわきと手を動かすな。そしてはぁ、はぁ言うな」

 

荒い息遣いで近付いてきたセッテは

 

「すぐに終りますんで、私に全部任せてください」

 

「ちょっ。まて……いいやああああああッ!?」

 

今日1日だけでトラウマが倍ぐらいに増えそうな気がする……

 

 

 

 

 

 

「これはまた綺麗な感じですね」

 

「ヴァイス、絶対後で殺す」

 

殺し屋の目で睨む八神大将から視線を逸らしながら

 

「ではコーディネイトをしたセッテさんに聞いてみましょう。着付けのポイントは」

 

「やはり龍也様といえば凛とした雰囲気です、ですからその雰囲気を崩さぬようにカジュアルスーツでしょう、しかしそれだけでは何時もと変わらないので胸元を大きく開いた物とタイトなミニスカート。凛としつつ美しい龍也様!! ああ、なんと美しいのでしょうか」

 

セッテさんって多分ヤンデレだけじゃなくて百合の毛もあると思ったのは俺だけじゃないだろう。嘗め回すように八神大将を見るセッテさんとスカートが落ち着かないのかもじもじしてる八神大将と、セッテさんが暴走したら止めれるようにとバットを持ってるノーヴェ。これはこのままにしておくとセッテが暴走するかもしれないと思い

 

「では審査員の皆様、得点をどうぞ」

 

審査員が点数のプラカードを上げる

 

「6点、4点、1点。10点。合計21点。1点と厳しい点をつけたリンディさん、その理由は」

 

俺がそう尋ねるとリンディさんはきっぱりと

 

「何時もと変わらないし、折角龍也君が女の子になったんだから冒険すべきだわ。メイド服とかチャイナ服とかバニーガールゴシックロリータとか」

 

「着ませんよ!? 私絶対そんなの着ませんからね!!」

 

それは当然だ。姿は女でも中身は男だからそんな格好させられたら色々と終ってしまうだろう。だけど

 

(最終エントリーの部隊長とシャマルさんが凄い顔で見てるって行った方が良いのかな?)

 

リンディさんのコメントを聞いてそれだ!! と言いたげな顔をしている部隊長の事を行った方が良いのだろうか? 俺が真剣に悩んでいるうちに

 

「んじゃ、兄ちゃん行こう」

 

「まてはやて、なぜ私の手を後ろ手で掴む」

 

「あははは。気絶してな?」

 

「はぐっ!?」

 

強烈な一撃を首筋に暗い昏倒した八神大将を小脇に抱えて歩いて行く部隊長

 

(ああ、ご愁傷様としか言いようがないです、せめて強く生きてください。八神大将)

 

きっと気絶している間に色々とされるであろう八神大将の事を考え俺はこんな馬鹿な企画を考えた自分の末路を考えた

 

(直火焼きか落雷100連発……もしくはマッ○○スパ○クか? とにかく致死率100%のお返しをされる事は間違いない)

 

遺書を書いておこう、八神大将が本気で怒れば俺達の命は風前の灯なのだから……俺はそんな事を考えながら部隊長の着付けの終るのを待つ事にした

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

「あっ。起きてまったわ」

 

アチャーと言う感じのはやての手の中の服を見る

 

「メイド服だと!? 何を考えているんだ!?」

 

正気とは思わずそう尋ねるとはやては

 

「兄ちゃん、自分の格好見てみい」

 

は? そういわれ自分の着ている服を見る

 

「ゴ、ゴシックロリータ!?」

 

黒と白のフリフリドレス、もう死にたい、今ここで舌を噛み切って死んでも良いと思えるほど恥かしい

 

「なぁ? シャマル。兄ちゃんにゴスロリは似合わんやろ? やっぱここはメイド服やて」

 

「そうですね。良い線行くと思ったんですけど。やっぱりお兄さんの背の高さがネックですね」

 

やれやれと言う感じのシャマルとはやてに

 

「メイド服なんて嫌だからな!!」

 

「じゃあそのままいく?」

 

メイド服かゴスロリ服。究極の二択を迫られた私は5分ほど考えた後

 

「……ゴスロリ着るくらいなら、メイド服のほうが良い」

 

「やろ? じゃあ着替えようなー」

 

手渡されたメイド服を見て

 

「あのさ、はやてこれ以上なほど丈短いんだけど?」

 

かなり丈の短いそのメイド服を身体に当てながら言うと

 

「うん、可愛いやろ? 折角やからそれに合わせて髪は三つ編みにしよ思うんや」

 

結局の所今日ははやて達の着せ替え人形にされて遊ばれるわけか……私は諦めの境地に達し嫌々メイド服に着替えようとして

 

「これどうやって脱げばいいんだ?」

 

全く脱ぎ方が判らない、私が困惑しながら尋ねるとはやては

 

「そうやよね? んふふ~私が脱がせたるわ」

 

手をワキワキと動かし怪しい笑みを浮かべるはやてから逃げるが直ぐ後ろは壁で逃げる事は出来ず直ぐに捕まり

 

「むふー着替えさせるためやからちょっと位胸もんでもええよね?」

 

「いやああああああッ!?!?」

 

なんか今日だけで心に消えない傷が大量に生産されたと思う……

 

 

 

 

 

「ほーすっげえ」

 

超ミニスカートに少しフリルのついたメイド服、そしてリボンと三つ編みの銀髪が凄くいいワンポイントになっている。中身が八神大将じゃなくて本当に女の子だったら引く手多数の超美人だ……

 

「これよ! これ!! やっぱりはやてちゃんは一歩先を行くわね!」

 

「涙目でプルプル震えてるのもポイント高いわね」

 

「あのそれくらいにしてあげたらどうかしら? 龍也君マジ泣きしそうよ?」

 

これ以上可愛いとか綺麗とか言われると本気で泣いて部屋に閉じ篭り出てこなくなる可能性がある。八神大将はとても強いがメンタルは多少脆いところがあるから。俺はそんな事を考えながら

 

「ではコーディネイトをした部隊長に聞いてみましょう。着付けのポイントは」

 

「やっぱ兄ちゃんが絶対着そうにない服をコンセプトにしてな考えると結論がメイド服になったんよ。胸も大きいし足も長いから良く映えるやろ?」

 

ええ、確かに良く映えていると思いますよ。ただ涙目で今にも逃げ出しそうな感じですけどね

 

「死にたい、本当に死にたい」

 

ぶつぶつと死にたいと繰り返す八神大将を見ながら

 

「では審査員の皆様、得点をどうぞ」

 

審査員が点数のプラカードを上げる

 

「10点、10点。10点。10点。合計40点。やはり安定の部隊長がパーフェクトで優勝です!!」

 

点数の発表と共に辺りから

 

「八神大将は女の子になっても凄く綺麗で格好良いわね」

 

「くう……はやてに負けるなんて」

 

「綺麗ですよ! 龍也様」

 

次々に可愛いとか綺麗とか言われた八神大将は顔を真っ赤にし

 

「もう嫌だ!! 私は部屋に帰る!!!」

 

そう叫んで凄まじい勢いで走り出す。走り難いと言うのはないのか滑るように消えていく八神大将。羞恥心が限界を超えたのか尋常じゃない速度だ

 

「てい!!」

 

「うっぎゃあああああッ!?!?」

 

途中でスカリエッティを拘束していたバインドを破壊し炎の上に落すあたり本気で怒っているのが良く判る

 

(明日無事に一日を過ごせるといいなあ)

 

俺はそんな事を考えながらステージ等の後片付けを始めた

 

~翌朝~

 

ゴキリ、ベキリ

 

朝寮を出るなり目の前に現れる漆黒の鬼神。手の骨をボキボキ鳴らしながら俺を見下ろすその目に一切の光は無く、感じるのは必殺の殺意と憎悪

 

「八神大将。言い訳は聞いていただけますか?」

 

「一応聞いてやろう」

 

そう言う八神大将の背後には蓋の閉められた棺桶が6個、そして蓋のあいた棺桶が14個。昨日の男性局員を全員あの中に閉じ込めるつもりだと直ぐに判る

 

「調子に乗りすぎたことは謝ります。ですが、反省はしてますが! 後悔はしていません!!!」

 

「良くぞ言い切った。その思い切りを買って」

 

お? まさか減罪か?

 

「正拳突き100発と直火焼きで勘弁してやろう」

 

「限りなく死刑判決だと思います」

 

「いやいや、大分温情判決だ。他の奴は100発に直火焼きに加え落雷・凍結と続いて棺桶にいれた後逆さづりで1日放置するつもりだからな」

 

「温情感謝いたします、そしてやるなら一思いにお願いします」

 

うむと頷いた後腹部に感じる強烈な激痛に俺は意識を吹っ飛ばされた

 

「あちい……」

 

炎から3メートル離れたところで十字架に拘束され良い感じで炙られながら俺は2度と八神大将を馬鹿にしない事を心に誓った

 

リクエスト番外編 変化は突然に 終り

 

 

 




今回のリクエスト番外編は「アキ様」「からすそ様」から頂いたものです。龍也さんをTSし(中身は元のまま)そしてはやて達の着せ替え人形にされるというリクエストでした、結構面白いと思いますがどうでしょうか? 面白かったのなら良いのですが。 それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします


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番外編 運命と言う波の中で

どうも混沌の魔法使いです。今回はEXS8で登場したリーエさんの話になります。彼女がもし好評ならこれからもちょこちょこ出して行こうかなと思います
それでは今回もどうか宜しくお願いします


 

 

番外編 運命と言う波の中で

 

「また違う……」

 

ここではない。私が探している世界はここじゃない……切られた傷を押さえながら闇の中を連続で転移し人里はなれた遺跡の壁に背中を預け、傷が癒えるのを待つ

 

「あの人が居ないだけで……こんなにも世界は残酷で冷たい」

 

首から下げたペンダントを握り締め、自分の周りに結界を張り眠りに落ちる……この世界でネクロは完全な悪。私の話なんて誰も聞いてくれない。切られた傷が痛む、いくら不死に近い再生能力があっても痛いものは痛い

 

「……帰りたい、あの場所に……」

 

あの場所に帰りたい、それだけが今の私の支え……気が付いたらまた私は別の世界の遺跡に居た、ネクロとしての本能が逃げる為に転移したのだろう。

 

「……貴女も私を殺すの?」

 

気配を殺し私の背後に居る人物に振り返りながら尋ねると

 

「なんでさ?」

 

呆れたように笑う銀髪の青年、ネクロにとっては天敵ともいえる筈の彼は

 

「怪我か? どれ」

 

 

「……触らないで」

伸ばされた手を弾き、再生が始まっている傷跡を見せると

 

「……ネクロ化? いやその割には安定してる。 君は一体?」

 

不思議そうな顔をする彼に

 

「……適正が高ければ、ネクロ化せずに人としての人格を保てる」

 

「なるほど、長い年数ネクロと戦ってきたがそういう事例を見たの初めてだ」

 

やっぱり違う、姿は似てるけど……

 

「どこへ行くんだ?」

 

「……ここは私の場所じゃない、じゃあね……」

 

翼を展開しそのまま転移する。

 

「居場所がないよ……」

 

誰もいない闇の中で蹲り声を押し殺し泣き叫ぶ……

 

 

誰もいない……

 

それで良いとネクロが叫ぶ

 

それでは駄目だと心が叫ぶ

 

 

 

寒い、凍えそうだ……

 

そうだ、心を失えとネクロが叫ぶ

 

駄目だ、闇に沈むなと心が叫ぶ

 

 

思い出が消えていく……

 

そうだ、奴のことなど忘れてしまえとネクロが叫ぶ

 

忘れるな、何があってもそれだけは忘れてはいけないと心が叫ぶ

 

 

「……痛い、苦しい……」

 

相反する2つの意思が私を壊す、ただひたすらに……心と身体が砕けて行く……

 

時空の狭間、誰も足を踏み入れる事のない世界で私の意識は闇に飲まれ消えて行った……

 

 

「あ……あああああッ!!!!」

 

痛い痛い痛い!! 身体が千切れて消えまた別の何かに変わる、魂も記憶も磨り減って自分が何者なのかさえわからない

 

「…だ……ぶか?……ネク……になり……今ならまだ……助け……る」

 

どこか遠くから聞こえる声、そして柔らかな蒼い光、それが私がまだ人間だった頃に最後に見たのは

 

「ごめんな……助けるのが遅くなって」

 

泣きそうな顔でそう謝る蒼銀の瞳の青年の姿だった。

 

「目が覚めたかね?」

 

「……?……??」

 

身体を起こしたところで声を掛けられ喋ろうとするが声が出ない、それに目に包帯を巻かれているのか何も見えない

 

「……喋れないのか、念話の心得は?」

 

念話くらいならと頷くと

 

『何処まで覚えているかね?』

 

『ネクロに攫われて……ネクロ化を……』

 

そうだ私はネクロ化をさせられて……じゃあ、今の私は

 

『非常に言いにくいが。君は人間じゃない。と言ってもネクロでもない、人間とネクロの中間の存在になってしまっている。全ては私が遅れたからだ、申し訳ない……私が君の未来を壊してしまった』

 

『……いいえ。そんなことない……です。 助けてくれてどうもありがとうございました』

 

記憶を失う瞬間にみたあの顔、それを見てこの人を責めれるほど私は残酷じゃない。きっとこの人は私以上に傷つき涙を流したに違いないから

 

『そういってもらえると多少は気が楽だ。 ではまた来るよ、暫くはここで養生するといい……所で君の名は?』

 

『……リーエです』

 

『そうか、ではまた来るよ、リーエ』

 

 

そういって遠ざかっていく気配を感じながら

 

『あ……名前聞いてなかった』

 

私は名乗ったのに……相手の名前を聞くのを忘れていた。でもまあいっか、また来るって言っていたし。私はそう考えまた眠りの中に落ちていった……

 

『リンゴは好きかね?』

 

『……はい』

 

翌朝またきてくれてそう尋ねてくれた人にそう言うと

 

『ほら、あーん』

 

口元に何かが近付いてくるのを感じ口を開く、甘い果物の味

 

『……お、美味しいです』

 

『それは何より。まだ食べれるかね?』

 

『……は、はい』

 

また口元に運ばれるリンゴを食べ終え

 

『……あの、あなたのお名前は?』

 

私がそう尋ねると

 

『……名乗るほどたいした名前じゃないから気にしないでくれ』

 

『……名前を聞かないとお礼を言えないじゃないですか』

 

『ではフェイカーでも呼んでくれ』

 

『……100%偽名じゃないですか』

 

どう考えてもフェイカーなんて名前はありえないと思う

 

『うん、偽名だからな』

 

認めちゃったよこの人

 

『リーエの目が見えるようになったら、名前を教えてあげよう』

 

『何でですか?』

 

別に今教えてくれてもいいのにと思いながら尋ねると

 

『まぁ色々と訳ありでね、ではまた今度』

 

そういって遠ざかる気配と入れ替わりで別の人の気配がすぐ近くに来る

 

『こんにちわ、リーエさん』

 

『ど、どうも』

 

同年代か少し年上の女性の声にそう返事を返すと

 

『私はクレアと申します、あの方の指示で貴女の世話をすることになりました。宜しくお願いしますね』

 

『……えと、宜しくお願いします』

 

それから私はクレアさんと一緒に過ごす時間が始まった。顔が見えないのでどんな人か判らないが優しい人なのは良く判った

 

~1ヵ月後~

 

『…今日は来てくれないんですね。フェイカーさん』

 

『あら、寂しいのですか?』

 

からかうような口調のクレアさんに

 

『……そ、そんなことは』

 

『無いと言えますか?』

 

楽しそうな口調のクレアさんに

 

 

『……言えません』

 

『正直なリーエさんに良い事を教えてあげましょう。あの方はとてもお忙しい方なのです、ですから偶にしかここに来れないのです』

 

『忙しい? どんな仕事を?』

 

『それは、ふふ、秘密です♪ 目が見えるようになってから直接聞いて見てはどうですか?』

 

どうも今はこれ以上教えてくれそうにない、私はそう判断し

 

『そうですね。そうします』

 

物分りのいい子は好きですよ、と言うクレアさんは

 

『ではそんな良い子にはご褒美がつき物ですよね?』

 

『クレア、お前最近おかしくないか?』

 

第3者の声に驚きながら

 

『……ふぇ、フェイカーさん? 何時から?』

 

『来てくれないからの所から』

 

最初からいたーッ!! 恥ずかしいにも程がある

 

『まぁ今日は嫌々ながら聖王教会に行かんとならんのでついでに来た』

 

聖王教会? 私が住んでる自治区の……

 

『あの、正体を暴露しそうになってますよ?』

 

『つい口が滑ったな。まぁ問題ないさ、そうそう主治医の天災が言うには近いうちに目の包帯を取るそうだ。それからはリハビリを頑張ろうな』

 

『……はい』

 

『じゃあな。また』

 

ぐりぐりと私の頭を撫でて遠ざかる気配、その気配の移動先を見ていると

 

『名残惜しいですか?』

 

『……はい』

 

思わずそう返事を返してしまい

 

『……あ』

 

『聞かなかった事にしておきましょう。では今日のリハビリを始めましょうか』

 

『……ぐす……はい』

 

声を出せるようになるためのリハビリ、まだ目が見えないので歩く事のリハビリは包帯が取れてからになる。

 

「ではあ・い・う・え・お どうぞ」

 

「……ッ……あ……い……ッ……う……え……お」

 

「結構です、ではつぎはかきくけこ」

 

この声のリハビリは辛い、出し方が良く判らないのだ……暫くそれを繰り返し

 

「では声のリハビリはここまで、次は握力ですね」

 

頷き。パズルやルービックキューブ等の指先を使う物を使ってのリハビリを始めるのだが

 

バキャン

 

「またですね、ではこれを」

 

『すいません』

 

全体的に力が強くなりすぎている、力加減のリハビリなのだ

 

「半ネクロ化の力を上手く使えるようにならないといけないですね」

 

『はい』

 

また手渡されたルービックキューブをさわり、数分で粉砕する

 

「では次を」

 

どんどん壊れたルービックキューブが量産される。

 

「今日はこれくらいにしましょうか」

 

『……本当にすいません』

 

僅か一時間で150個の残骸の山が出来ているだろう、力加減が難しい

 

「がんばりましょうね」

 

『はい』

 

~2週間後~

 

「はい、これで良いよ」

 

先生に目の包帯を外される、ぼんやりと見える視界の中で

 

「見えるようになったな。では約束通り。私の名は八神。八神龍也だ。リーエ」

 

え? 八神龍也って……神王陛下様?

 

「う……うえええええッ!?」

 

「おお、声も出るようになったか。良かったよかった」

 

驚きすぎて悲鳴が出ただけだ。慌てて何か書くものを探す

 

「どうぞ」

 

クレアさんに差し出されたペンと紙に

 

『い、今まですいませんでした!!!』

 

書き終わると同時に崩壊するペンと摩擦でこげた匂いのするスケッチブックを見せると

 

「気にしないでいいさ。今度からの歩くリハビリとかは私も付き合うから、頑張れよ」

 

私の頭を撫でて

 

「では、後は任せる」

 

「お任せを」

 

恭しく頭を下げるクレアさんに

 

「どうして教えてくれなかったんですか」

 

「驚いたでしょう?」

 

ベルカ自治区に暮らす私にとって神王陛下様はその名の通り神にも等しい人、驚きを通り越して怖くなってしまう

 

「では明日からのリハビリ頑張ってくださいね、私はこれからは偶にしか来ませんから」

 

はい?

 

「ですから歩行や物の持ち運びあと魔法戦闘の訓練は全部、我が王が見てくれますよ?」

 

「……う……そ……ですよね?」

 

「いいえ? 本当ですよ」

 

無慈悲な宣告に私は思わず頭を抱えた

 

翌日

 

「……ふむ、義手が砕けた」

 

「……すいません」

 

握り締めた義手を粉砕してしまい、真っ青になりながら謝る

 

「腕変えるか」

 

何事もないように腕を替えて、うっすらと魔力を通す

 

「ん。もう1回歩く練習な」

 

「は……はい、し、神王様」

 

私がそう言うと

 

「それは好きじゃないんだ。龍也とでも呼んでくれ」

 

「……うー。あの……じゃあ、龍也様で」

 

最大でもこれが限界だ、私が俯きながら言うと

 

「様付けか……まぁ良いか、じゃあはい、手を持って歩こうな」

 

また手を握られ、ゆっくりと引かれる

 

「……う、っく」

 

進みたいのに進めない、かすかに痙攣を繰り返す足を見て

 

「ゆっくり行こう、な?」

 

「はい」

 

仕事の合間、合間に来てリハビリを手伝ってくれる龍也様、少しずつ惹かれ始めるのを自覚しながら半年後、漸く歩けるようになり声も普通に出せるようになった。今思えばこのときが1番楽しかったのかもしれない。

 

半ネクロの私を受け入れてくれた六課の皆と龍也様と過ごす毎日はとても楽しかった、お父さんもお母さんも死んでいなかった、でもそれに代わる仲間がいてくれて、それがとても楽しかった。でもそれはいつまでも続かない

 

「……え……あっ? あああああああッ!!!!」

 

身体がバラバラになる……

 

ただひたすらに痛い……

 

腕を漆黒の装甲が覆い服が破ける音と共に視界の隅に蝙蝠の様な翼が映りこむ。そして魔力が暴走を繰り返し、世界に皹が入っていく

 

「リーエ!!」

 

「ああ……た、龍也様」

 

世界が砕けその中に吸い込まれていく、嫌だ……消えたくない

 

翼で必死にそれに耐えるが、時間の問題だ……龍也様が近付こうとするのが見えるが暴走を繰り返す、魔力で近付く事さえできない

 

「うっ……」

 

翼が折れる嫌な音と共に身体が宙に浮いて、狭間の中に引き込まれていく

 

「リーエ!!」

 

投げ渡される剣十字のペンダント

 

「絶対また会えるから!! 絶対に手放すな!!」

 

その言葉を最後に私は世界から弾き飛ばされた……

 

 

 

「……夢ですか……これで1478回目のあの時の夢ですね」

 

懐のメモにまた線を注ぎ足し、身体をチェックする。痛みはない、魔力も回復してる

 

「……まぁ2478回みた皆と再開する夢を見るよりかはマシですね」

 

あの夢を見ると未だに現実を認識した瞬間に泣いてしまう、それを考えると私の心に残る一番楽しかったとき夢の方が良い。頑張ろうって気になれるから

 

「……90年経って漸く16歳前後ですか、一体普通に成人するのに何年かかるやら」

 

苦笑しながら立ち上がり翼を変化させてローブとフードにする

 

「……また会えて、龍也様がおじいさんになって居たらどうしましょう?」

 

半ネクロの私は歳を取るのが遅い。 どれくらいのスピードなのかは判らないが、とりあえず90年で6才から8才くらいだと思う、胸とか身長での判断だが、とりあえず成人してないのだけは判る

 

「……まぁそれはそれでありとしましょう。では行くとしますか」

 

次の世界は一体どんな物だろうか? 今度こそ元の世界が良い、いや贅沢は言わない、せめて龍也様が居る世界が良い

 

「……まぁ過度な期待は止めておきますか」

 

90年もこんな事を繰り返していれば精神的にも強くなる、最初の方なんて龍也様が居ないだけで何度泣き崩れた事か。確か20年経つくらいまではそんな感じだったと思う。そんなことを考えながら新しい世界に足を踏みいれた

 

「……どうも、こんにちわ」

 

街でばったり出会わせた銀髪の青年に挨拶をする

 

「ネクロなのか?」

 

私という存在を前に不思議そうな顔をする青年に

 

「……私はネクロでも人間でもない者。貴方は私を悪と見なしますか?」

 

1700回目の問い掛けに

 

「そうだな。違うんじゃないかな? 私は君という人間を知らないから。 それで君の名は?」

 

「……リーエ」

 

この世界も私の求めるものと違う、でも……少しだけここにいるとしましょう……だって407回目の伸ばされた手を掴みたいと思ってしまったから

 

 

 

 

 

街の中で黒いコートの青年とローブの少女が描き出されていた本が独りでに閉じる。それと同時に現れた黒い帽子の男が淡々と語り始める

 

「運命と言うのは時に残酷です。 不死に近い身体を得たリーエ嬢。 彼女が望む世界は一体何時彼女の前に姿を見せるのでしょうか?」

 

無数の本が浮かび上がりページを開く

 

「運命という鎖に繋がれた彼女はこれからも旅を続けるでしょう。 そしてそのたびに出会いと別れを繰り返しながら。 何時の日か心から休める場所を探して」

 

最後に浮かんだ本のページに黒いコートの青年によりそうように眠る、ローブの少女の姿が描き出される

 

「それではまたいずれ、彼女の物語を語るとしましょう。ではその時までしばしの別れを」

 

 

 

番外編 運命と言う波の中で 終わり

 

 

 




何か思いついてしまったので感じるままに書いてみましたがどうでしたでしょうか?
もし面白かったのならまたリーエさんの話を番外編で書いてみようと思います

それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします


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クリスマス番外編 聖夜祭に向けて

どうも混沌の魔法使いです。今回は初めてのクリスマスとかのイベントネタをやろうと思います。こういうのは初めてなので不安は残りますがどうか宜しくお願いします

この後は

「初めてのメリークリスマス」

「サンタクロース大作戦」

「戦闘よりも輝いている八神龍也」

「ちびっ子軍団出陣」

「真面目だけどちょっとずれた2人組み」

「クリスマスパーティ」

「サンタ大作戦」

「クリスマスを終えて」

と続いて行きます、一つ一つは短いですが、どうか宜しくお願いします

PS 面倒だとは思いますが一つ一つに感想をもらえたりすると非常に嬉しいです




 

クリスマス番外編 聖夜祭に向けて

 

 

 

「ジングルベール♪ ジングルベール♪ 鈴が鳴るー♪」

 

その日の機動六課ではリィンの楽しそうに歌声が響いていた。 エンドレスで歌っているので皆がそのフレーズを覚え始めた頃アギトが

 

「リィン、その歌何だ?」

 

「クリスマスの歌ですよ? 知らないんですか?」

 

首をかしげながら尋ねるリィンに皆知らないと首を振り返す。 龍也やはやてと言った地球生まれの者がおらず、ミッドチルダ生まればかりが今六課に残っていた。なのでリィンが何故こんなに楽しそうにしているのか誰も判らなかったのだ

 

「クリスマスはサンタさんが来るのです」

 

「サンタ? 来てどうなるの?」

 

スバルがそう尋ねるとリィンは

 

「良い子にプレゼントをくれるのです! あとは家族とかで美味しい物を食べたり。プレゼント交換会をしたり。遊んだりする日がクリスマスです!」

 

リィンもまたずれた思考をしていた、クリスマス=サンタがプレゼントをくれ。 更に家族や仲間と遊ぶ日と認識していた。 正しくはイエス・キリストの生まれた日であり

宗教的な祝日の日なのだが、残念ながら今ここにそれを指摘できる人間はいなかった

 

「良い子にしているとサンタなる人物がプレゼントをくれると。 そして家族で集まり遊ぶ日と言う訳ですね」

 

「はいですう♪ だからこうして準備してるのですよ」

 

飾りつけを見せながら言うリィンは自信満々だが。いつもお騒がせのリィンの言葉だから話半分で聞いていた六課メンバーだったが

 

「リ、リィンは……だ、誰にその話を聞いたんですか?」

 

「お兄様ですよ♪」

 

情報源が龍也であることを知り皆は納得してしまった。 多少の間違いは在るだろうが、家族や仲間で集まり親睦を深め。プレゼントを交換会をする日であり。クリスマスがそういう日だと、そしてこの誤解がクリスマスに悲劇を齎すことになる

 

 

 

 

 

その日の深夜。食堂に集まる4人の男女の姿があった。 八神龍也・八神はやて・高町なのは・フェイト・Tハラオウンは深刻そうな顔をして

 

「さて、重大な問題が発生している事はお前達も気付いているな?」

 

「なんか、クリスマスが間違って皆に伝わってるみたい」

 

「まぁ概ね間違っては無いんだけど。宗教的な祝日何だけどね」

 

そう苦笑するなのはとフェイトに

 

「違う、クリスマスにサンタが来ると勘違いしてることだ」

 

サンタ、子供に夢を与える物だが……

 

「まさかなースバルとかも乗ってくるとは……」

 

予想外の自体としてミッドチルダ育ちのスバルやチンクとかまでもがサンタなる人物を信じ。クリスマスを楽しみにしているのは問題なのだ

予定では皆にクリスマスを説明して。クリスマスパーティとプレゼント交換会を予定していたが。その予定が根底から覆されてしまった

 

「どうする?」

 

「サンタに手紙とか書かせる?」

 

「そこまで子供かな?」

 

うーんと唸る。幾らなんでも手紙を書くなんて……

 

「それでサンタさんには手紙を書かないといけないんですよ」

 

「「「へー。じゃあ書かないと駄目なんだ。書いたらどうすればいいのかな?」」」

 

食堂でリィンの話を聞いて真面目に手紙を書いてる平均年齢16歳を見て

 

「頭痛が……」

 

激しい頭痛に襲われたが、その楽しそうな表情を見て悪い気はしない……だが

 

(はやて、どうする? サンタクロースを皆信じている)

 

サンタクロースは子供向けの童話だ。実在するわけではない

 

「で……でも、リィン……サンタさんがいるって……どうして判るんですか?」

 

アザレアがそう尋ねるとリィンはえへんと胸を張って

 

「前にお兄様がサンタさんへのポストを持ってきてくれて、そこに入れたんです。そしたらクリスマスの朝の枕元にプレゼントがありました! だからサンタさんはいるんです♪」

 

(……兄ちゃん)

 

(判ってる。 だが子供の夢を壊すわけにはいかなかったんだ)

 

リィンがサンタを信じきってるのは私の責任だ。 今さらサンタがいないなんて言えない

 

「あ、お兄様ー♪ ずーと前にサンタさんに手紙を送るポストってどこにありますか♪」

 

「……ど、どこですか? に、兄さん……私いい子だと……思うから。プレゼント貰えるよね?」

 

「私もちゃんと兄の言うこと聞いてお留守番とかしてるから貰えるよな?」

 

「私は常にいい子ですから、貰えますよね」

 

楽しそうに近寄ってくるリィン達の後ろで

 

「私は駄目かなー。悪い子だもん」

 

しょんぼりしてるリヒトに

 

「大丈夫。リヒトも良い子だからちゃんともらえるさ」

 

「本当?」

 

不安げなリヒトを抱っこして

 

「勿論さ。だから何にも心配は要らないさ」

 

そう言いながら私は決意していた。自分がサンタクロースになるしかないと

 

「お兄様。サンタさんのポストってどこですか?」

 

きらきらした目で尋ねてくるリィンに

 

「直ぐ持ってくるからちょっと待っててくれ」

 

前のクリスマスに使ったサンタへのポストなる物はちゃんと家に保管してある。それに少し細工をして中に入れた手紙が転移すように細工しよう。後はそれを食堂に設置すれば完璧。協力者としてジェイルとゼストに声を掛けて

 

(サンタクロースの衣装はどうするか……)

 

クリスマスまだの時間は短いが何とかするしかない。私はそんな事を考えながら六課を後にした……

 

 

六課メンバーのクリスマス準備 初めてのメリークリスマスに続く

 



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クリスマス番外編 六課メンバーのクリスマス準備 初めてのメリークリスマス

 

 

クリスマス番外編 六課メンバーのクリスマス準備 初めてのメリークリスマス

 

 

 

「これがサンタのポストか」

 

八神が持って来たポストを見る。普通のポストに似ているが、正面には緑のリングの絵とベルが描かれている

 

「これですう♪ 懐かしいですね」

 

リィンがちょこちょこと歩いて来てポストに手紙を入れる

 

「おいおい、リィン皆が見ちゃうんじゃないのか?」

 

私が感じた事をアギトが言うとリィンはふふんと小さな胸を張って

 

「これをみるです」

 

リィンがポストの反対側を開けるとそこに手紙の姿はない

 

「あれ? 手紙が無いよ?」

 

「そういうものだそうですよ。入れるとサンタさんのお家に届くそうです」

 

へーと頷きあうアギト達も次々手紙を入れ

 

「じゃあ、次は何をするんだ?」

 

「クリスマスツリーと飾り付けを作るです! 折り紙とか買いに行きましょう」

 

おーッ! と小さな拳を振り上げそれぞれポーチや首から鞄を下げて出て行く

 

「ふーむ。では私も入れてみるか」

 

きょろきょろと辺りに誰もいないのを確認してから私はポストに手紙を入れて

 

「これで良しっと。さてとリィン達で出かけさせるのは不安だ。着いて行くとしよう」

 

子供達の歩幅なら走っていけば追いつける、私はそう判断して六課を後にした

 

 

 

「サンタって言うのは一種の妖精とかの仲間なのかしら?」

 

ミッドチルダにはクリスマスと言う季節のイベントが無いのでよく判らないが

 

「うーん。そうかもね。前に龍也さんが見せてくれた妖精とかの本にも載ってるよね」

 

前に龍也さんが貸してくれた妖精や幻獣と言った物を載せている図鑑にもサンタクロースの絵が書いてある

 

「ほう、これがサンタクロースですか。 トナカイに橇を引かせているのですか」

 

「あれ? セッテ? 買い物に行くんじゃなかったの?」

 

クリスマスパーティー用の食材を買いに行くと言っていたセッテが居ることに驚きながら尋ねると

 

「ええ、そのつもりですが。これだけの面子の食べる物を買いに行くのを一人で出来るとお思いですか?」

 

「あ」

 

確かにセッテ1人で買いにいける量ではない

 

「メガーヌさんが車を出してくれるそうです。一緒に行きませんか? スバルとオレンジ頭」

 

「なに、あんた喧嘩売ってるの?」

 

睨みつけながらティアが立ち上がる。本当にティアとセッテは仲が悪いなあ……

 

「別にそんなわけではないですよ? 多少私の言葉を意識しすぎではないですか? クリスマスを間近に喧嘩を売るほど私は馬鹿では無いですよ」

 

からからと笑うセッテにぐっと顔を顰めるティア。

 

「それで何を買いに行くの? セッテ」

 

「はいリィンが言うには七面鳥と言うのを丸焼きにして食べるそうなんですが。流石にこの面子では足りないので。ノンチ? とか言う腿肉を照り焼きにして全員に回すそうなのでそれを10キロと鳥腿肉のブロックも同じく10キロ。後は龍也様がピザとかを作るそうなので小麦粉とトマトピューレ、それにクリスマスケーキを色々と作るそうなので卵や果物も大量にかって来てくれと頼まれています」

 

なるほどその量を確かに1人で買いに行くのは無理だろう

 

「あとは材料さえ買ってくればリクエストの料理を作ってくれるそうなので、色々と買いに行こうと思っています。私だけの食べたい物だけでは不公平なのでお誘いしたわけです」

 

なら喧嘩腰で言わなければ良いのに……私はそんな事を考えながらティアとセッテの間に立ち

 

「じゃあ、行こっか。何時までもメガーヌさんを待たせるのも悪いし」

 

2人を先導して六課の外へと向かった……

 

「これ? 結構大きいわね」

 

「そうですね」

 

4人で買い物に来たが買って来てくれと言われた鶏肉が意外と大きい事に驚き

 

「やっぱあれね、普通のショートケーキにチョコケーキがいいわね」

 

「め、メガーヌさん。何個作ってもらう気ですか?」

 

これでもかとケーキの材料を買い漁るメガーヌさんに

 

「そう言えば前に食べたご飯の上に魚の切り身を乗せるって何て料理でしたっけ?」

 

「お寿司よ、お寿司……確かマグロとサーモンとかだっけ?」

 

「あとはハマチにイカに貝類と……海老にビンチョウマグロ!」

 

私がそう言うと2人は

 

「本当にスバルは食い意地が張ってるわね」

 

「ええ、乙女としてその食欲はどうかと」

 

「ちょっと! その言い方は酷く無い!?」

 

くすくすと笑うセッテとティアにそう言うとメガーヌさんが

 

「こうして見ると仲良しね。何時もそうしてれば龍也も安心してくれるのにね? あ。これ大きい海老ね。何匹か買って行きましょうか?」

 

メガーヌさんの微笑につられて笑いながら

 

「メガーヌさん。それ海老じゃなくてロブスターですよ」

 

「あれ? そうなの?」

 

「そうですよ、色々と買うのは良いですか食材の名前は理解しましょうよ」

 

皆で笑いながら食料を買い集めるのは中々に楽しくて。何時もこんな感じだといいのになぁと私は思った

 

 

 

 

 

折り紙で作った星やリングを六課の通路とかに飾りつけ終え、今度はメインのツリーの飾り付けをする為に食堂に向かうと

 

「クリスマスツリーに飾りつけです!!」

 

「一杯あるな、兄が買ってきてのか?」

 

食堂に置かれた6個のクリスマスツリーを見ながら言うと

 

「は、はい……に、兄さんが買って来て、置いてってくれました。飾りつけの……道具も置いてってくれました」

 

よいしょと私達の前に飾り付けの道具を置くアザレアは

 

「お星様……も……6個。ツリーも6個……皆でそれぞれの……飾り付けをしましょう」

 

「それは良いけど……私達じゃツリーの上には背が届きませんよ」

 

ツリーの天辺は到底私達の背じゃ届かない

 

「私が大人モードになろっか?」

 

「「「「却下」」」」」

 

リヒトの大人モードは危険なので却下する。持ち上げられたらそこから魔力を吸い取られると判っているので全員で却下する

 

「じゃあ。梯子でも持ってきますか?」

 

「危ないでしょうね。椅子の上や机の上に立つのも同じだと思います。ここはお姉様達のお願いするとしましょう」

 

それが1番無難かと頷きあい。私達はツリーの飾り付けを始めた……

 

「出来たー♪」

 

「むっ!? 大人モードは卑怯ですよ!」

 

「卑怯じゃないもん~あ……つ、疲れた」

 

星をつけ終えぱたりと倒れこむリヒトをヴィヴィオが突く

 

「だいじょうぶ?」

 

「お、お腹減った……」

 

ぐうううっとお腹を鳴らすリヒトを見てヴィヴィオは

 

「大丈夫そうだね♪ じゃあ飾り付けを頑張ろう!!」

 

「ひ、酷いよ~」

 

お腹が空いたのかぴくりとも動かないリヒトに

 

「机の上に兄が用意してくれたクッキーがあるぞ?」

 

「く、クッキー!?」

 

机によじ登りクッキーを貪るように食べ始めるリヒト

 

「なんだ? もう出来たのか?」

 

「あっ! 姉抱っこしてくれ! 抱っこ! 星をつけるんだ!」

 

「つぎ。お、お願いします。ね、姉さん」

 

様子を見に来てくれた姉にそう頼むと

 

「ああ、よし、行くぞ」

 

ひょいっと抱っこされツリーの天辺に星をつける

 

「おお。良い出来だ!」

 

自分で飾りつけたツリーの完成度に満足しながら

 

(早くクリスマスが来ないかなー)

 

丸をつけたカレンダーを見ていた……

 

 

大人達のクリスマス準備 サンタクロース大作戦

 



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クリスマス番外編 大人達のクリスマス準備 サンタクロース大作戦

 

 

クリスマス番外編 大人達のクリスマス準備 サンタクロース大作戦

 

「さて、ではプレゼントをどうするかだな」

 

転移装置になっているポストから来た手紙の山を見ながらそう言うとジェイルは

 

「うむ、そうだな。ちびっ子たちはどうせぬいぐるみとか……龍也、行き成り難題が来ているぞ?」

 

ジェイルが差し出してきた手紙を見る。差出人はアザレアか……欲しい物は……

 

【ドラゴンの赤ちゃんが欲しいです】

 

「……ドラゴン?」

 

「そうみたいだね。どうする?」

 

ぬいぐるみとかかと思っていたらアザレアの要求は生き物でしかもドラゴンだった

 

「どうする? ドラゴンなんてそう簡単につれてこれんぞ」

 

「そうだよな。犬とかなら判るがまさかまさかのドラゴンか」

 

アザレアはドラゴンが好きだか、まさかこれを要求してくるとは……

 

「……密猟者が捕まえてきたドラゴンの幼生が本局に預けられてたよな?」

 

「ま、まぁ何匹かそう言うドラゴンがいたと思うが……」

 

ドラゴンの密猟者と言うのは結構居る。そういう犯罪者から取り上げたドラゴンの幼生が居るはずだ

 

「ジェイル。ゼスト。掴まえに行くぞ」

 

「引き取るのか?」

 

「仕方あるまい。希望されているんだ引き取りに行こう。属性龍なら餌代とかもかからんだろ?」

 

属性龍と言う魔力で生きるドラゴンなら基本的に魔力で生きているので、餌代とかはそんなに掛からない筈

 

「よし、じゃあ行こう」

 

「そうだな」

 

そうして私達は3人でドラゴンを保護している管理世界に向かった

 

「「「キュウウウウウッ!!!!!」」」

 

可愛らしい鳴声を上げて走り回るちびドラゴンの群れを見る

 

「……意外と素早いな」

 

「だな」

 

少し大きめの犬と言う感じの陸生のドラゴンを見る。鋭い爪と牙は子供でも流石は龍種と言う感じだ

 

「何を掴まえるんだ?」

 

「出来れば地属性のドラゴンだ。炎とか氷だと危ないから」

 

比較的大人しい龍種のドラゴンを探す。

 

「キュウ!」

 

「ガウガウ!」

 

「あいたたたた!!」

 

飛んできた飛行種のドラゴンに肩を突かれたり噛まれたりする

 

「お前の動物に好かれるのは異常だな」

 

「う、うるさい!! あいたたた!!! 頭、頭噛まれてる!!!」

 

がじがじと小さい牙を頭に突き立ててくるドラゴンを何とか振り払い、目的のドラゴンを探す

 

「……すぴー。すぴー」

 

「いたぞ」

 

木の幹の下で丸くなり眠っている黒い身体をしたドラゴンを見つける

 

「よし掴まえ……」

 

「きゅ? キュウウウうッ!!!!」

 

ジェイルの気配に気付き尻尾を立てて威嚇するドラゴン

 

「お前馬鹿か?」

 

「すまん」

 

完全警戒態勢のドラゴンの前にしゃがみ込み

 

「おいで。おいで」

 

「クウ……キュウキュ」

 

立てていた尻尾を下ろし私の手の近くに寄って来ては離れるを繰り返していたが

 

「キュ!」

 

「よし! GET」

 

ちょこんと私の前に座り込んだドラゴンを抱き抱える

 

「キュウ! キュウ!!」

 

ふんふんと匂いを嗅ぐドラゴンは前足と後ろ足をピコピコと動かしている。ドラゴンを抱えミッドチルダに戻る

 

「キュ? キュキュー!!」

 

尻尾をふりふりと振り辺りを見ながらトコトコと歩いているドラゴンに首輪をつけ。柱に繋ぐ

 

「さて。これでアザレアのリクエストは完了だ。でこのドラゴンの種類は?」

 

薄い灰色の身体にくりくりとした紅い目。短く先に成るにつれ丸くなっていく2本の角を持つドラゴンの種類を調べる

 

「えーとアースドラゴンの幼生だ、比較的小型のドラゴンで大人になっても良くてミニバン程度の大きさだ。性格は温厚で牙も爪にも毒は無いし。躾ければ乗り物とかもにもなるそうだ」

 

データベースを調べながら言うジェイルを見ながら手元のボールを投げてみる

 

「く? クウ!! キュッ! キュッ!」

 

ボールを口で突いたり、爪で転がして遊んでいるドラゴン

 

「ちょっと大きめの犬と思えば良いか?」

 

「ま、まぁそうだな」

 

ころころと転がるボールで遊んでいるその姿は犬にしか見えない。それに大人しそうだし皆のペットとして飼えば良いか

 

「で、アギト達の欲しい物は?」

 

「えーと、ああ。今度は普通だな」

 

アギト 【グローブとボール】

 

リィン 【ぬいぐるみ】

 

ユナ 【小説】

 

アリウム 【子供用調理具セット】

 

リヒト 【食べ……ゲーム機】

 

ヴィヴィオ 【パパ……初めてのシルバーアクセサリー】

 

これなら近くのデパートとかに売ってるか……

 

「それじゃあ。エリオとかキャロとかルーテシアのプレゼントも見に行こう」

 

エリオ 【釣竿セット】

 

ルーテシア 【あみぐるみ入門セット】

 

キャロ 【丈夫なおもちゃとビーズアクサセリーセット】

 

「このキャロの丈夫なおもちゃって」

 

「間違いなくフリードの物だな」

 

自分のパートナーの分だと判る

 

「よし、では行くとしよう」

 

「ドラゴンおいといて大丈夫か」

 

ジェイルの言葉にふとドラゴンの居るほうを見ると

 

「すぴーすぴー」

 

丸くなり眠っている……子供なのと遊びつかれたのの両方だろう

 

「寝てるから大丈夫だろ? 念のためにケージバインドをかけておこう」

 

眠っているドラゴンの周りにケージバインドを仕掛け。私達は街にと出掛けていった

 

 

 

 

 

外で帰るものを買い集め戻ってきて。それをラッピングしながら大人組みのプレゼントのリクエストを見ていた

 

シグナム 【よく判る料理のレシピ1000】

 

シャマル 【馬鹿でも判る料理のレシピ100選】

 

チンク 【女性らしい服装】

 

ウェンディ 【年上の異性の落し方】

 

セイン 【セクシーな服】

 

多少突っ込み所のある物の普通のプレゼントを希望している面子が続き、セッテのリクエストを見た龍也とスカリエッティは

 

「クリスマスまで気絶していろ!!」

 

「黙れ。大馬鹿者が!!!」

 

ガチで殴り合いを繰り広げられている。セッテのリクエストは

 

セッテ 【可能ならば龍也様 無理ならば写真集】

 

もはや崇拝と言うレベルでは無いセッテの希望にスカリエッティが悪乗りし龍也を気絶させようとし始めたのだ

 

「「くたばれ……がふっ!?」」

 

クロスカウンターで互いの顎を打ち抜き昏倒する龍也とスカリエッティ

 

「あいつらは何をやっているんだ」

 

そのあまりの馬鹿さに頭痛を覚えながら全員のリクエストの手紙を開ける。大半が服や鞄と言った女性らしい物を希望している

 

「ふむ。メガーヌとクイントに相談するか」

 

どうせこの手のリクエストは俺や龍也達では到底理解できない難題だしな。さて……じゃあ今俺が出来るのは

 

「気絶している龍也の写真でも取るか」

 

セッテのリクエストの龍也本人は倫理的・人権的に問題がありすぎる

 

「あとはヴァイスが隠し取りしてる写真を何枚か選んで写真集にすればいいだろう」

 

ヴァイスがひっそりと印刷会社に持ち込みブロマイドとかにしてる写真を貰えばいいだろう

 

「流石にそれをダイレクトに入れていると不味いからな。服の下にでも入れておくか」

 

気絶してる龍也とスカリエッティに布団を被せ。俺はメガーヌとクイントに電話を掛け出掛けて行った……

 

~2時間後~

 

クイントとメガーヌに選んでもらったワンピースや鞄にシルバーアクセサリーや指輪をラッピングしていると

 

「う……うう?」

 

「むっ……ぐぐぐ」

 

ダブルKOだった龍也とスカリエッティが目を覚ましのっそりと身を起こす

 

「起きたなら手伝ってくれ、人数が多いんだぞ?」

 

服を見せながら言うと

 

「すまん……ゼスト今手伝う」

 

そう言って立ち上がった龍也はふと思い出したように

 

「セッテのプレゼントは?」

 

「無難に服と鞄にした。安心しろ」

 

そうかと頷きラッピングを始める龍也を見ていると。スカリエッティが近付いてきて

 

(ゼスト……なんて面白みの無い事を)

 

落胆しているスカリエッティにこっそりヴァイスに頼んで作った写真集をチラリと見せる。物凄く珍しい寝ぼけた龍也や何時も険しい顔をしている龍也がのんびりと昼寝してる写真が映っているのを見せるとスカリエッティは良い笑顔で

 

(さすがゼストだ。実に良い仕事をしてくれたGJだ)

 

サムズアップするスカリエッティに

 

「それは良いから手伝ってくれ。早く用意しておかないと時間が無いぞ」

 

クリスマスに作るご馳走の準備や、サンタクロースの衣装の準備に……

 

「そこのドラゴンを入れる箱とか」

 

鎖の伸びるギリギリの範囲を言ったり来たりしているドラゴンをどうするかとか問題は多数ある

 

「催眠術でも使うか?」

 

「龍種って魔法抵抗高くなかったっけ?」

 

「確かそのはずだ」

 

どうするか。考え込んでいると……

 

「そう言えばこの子良く寝てるよな?」

 

「キュウ?」

 

下から覗き込んでくるドラゴンの頭を撫でながら

 

「暫く観察して生態を調べてみるか?」

 

「それしかないな」

 

この子が寝てるうちに箱詰めすれば良いかと笑う龍也が頭を撫でようとすると

 

パクッ!!!

 

龍也の手がドラゴンの口の中に消えた

 

「……ウキュ?」

 

もごもごと口を動かすドラゴン、愛らしいが……

 

「龍也ー!! 手ぇ喰われてるぞ!!!」

 

「早く引き抜け!!!」

 

慌ててそう叫ぶが龍也はのほほんとした顔で

 

「甘噛だから痛く無いぞ。甘えてるんだろう? よしよし良い子」

 

「ウキュ!」

 

ブンブンと尻尾を振るドラゴン。どうも甘えているのは間違いでは無いらしい

 

「よし。ハウス」

 

大きな箱を指差す龍也。するとドラゴンは進んで箱に収まった

 

「これでいける!」

 

「キュッキュッ!!」

 

狭いところが好きなのかブンブンと尻尾を振り続けている。 とりあえずこれで問題は1つ解決したわけだ

 

 

 

 

クリスマス番外編 クリスマス準備 戦闘よりも輝いている八神龍也に続く

 

 

 




今回登場したドラゴンは遊戯王の子征龍のリアクタンをもっと可愛らしくした感じだと思ってください。それでは次の話もどうか宜しくお願いします


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クリスマス番外編 クリスマス準備 戦闘よりも輝いている八神龍也

 

クリスマス番外編 クリスマス準備 戦闘よりも輝いている八神龍也

 

 

海鳴にて八神龍也は戦闘を繰り広げていた……

 

「なに? これで1万だと? ふざけているのか?」

 

「おう、兄ちゃんなに言ってくれてんだよ。良い天然ヒラメだろうが」

 

海鳴の市場にて魚屋の兄ちゃんと激しい交渉合戦を繰り広げていた

 

「良いかね? これを見たまえ」

 

ヒラメを引っ繰り返し腹を指差しながら

 

「これは確か養殖物の特徴だった筈だが?」

 

「うっぐ……」

 

しまったという声を出す店主に畳み掛けるように

 

「ふー全く良い魚屋だからと聞いてきたのにまさかまさか養殖物を天然物と言って売ろうとするとは……信じられんよ」

 

「ぐっ……判った! 俺が悪かった!! 6000! 6000でどうだ!?」

 

「5000」

 

「5800!」

 

「5200!」

 

「ぐっぐぐぐ……5500! これ以上はまけられないぞ!」

 

「よし買った! それを5尾貰おうか」

 

ヒラメの5尾購入し、それを箱詰めされてるのを見ながら

 

「あと、ヒラマサは無いか? あればで良いのだが鮑とかの貝類も欲しい」

 

そう言うと店主は

 

「あるけど……少々割高だぜ? ヒラマサはキロで万はするぞ?」

 

「判ってる、それを……2キロ頼む」

 

「おいおい。マジでか?」

 

「大マジだ、貝類も2キロ頼む」

 

注文表を書きながら店主は

 

「クリスマス前にパーティー準備か?」

 

「そうだ。仲間で集まってな」

 

こういう世間話こそ市場での情報源となる。店主もそれを理解しているのか

 

「で? 後何を買うんだ?」

 

「マグロだな。 何か良いのは無いか?」

 

サーモンはジェイルとゼストがアラスカに釣りに行っている。やつらの腕を信じるとしよう

 

 

 

~その頃 アラスカでは~

 

 

「ぐおっ!? な、何をするか!?」

 

「す、すまん!!」

 

ジェイルの投げたルアーは見事にゼストの帽子に引っ掛かっていた

 

「なぁ。スカリエッティ」

 

「なんだい? ゼスト」

 

ルアーを帽子を外しながらジェイルがそう返事を返すとゼストは

 

「……釣れるのか? サーモン」

 

「……さぁな」

 

釣り初心者2人にサーモン4匹と言うノルマは非常に重く圧し掛かっていたりする……

 

 

 

「マグロねぇ……うちにはマグロはねえな。その代わりと言っちゃあ何だが。マグロやビンチョウを専門で扱ってる店に口引きしてやっても良いぜ?」

 

にやりと笑いながら言う店主に

 

「何を買えと言うんだね?」

 

「さすが大将! 話が早い!」

 

手を叩きながら店主は店の奥から

 

「これよ! これ! 正月用の天然マダイ! 本来なら9000円の所7500でどうよ!」

 

ふーむ。確かに良い鯛だが……

 

「脂の乗りはどうだ?」

 

「勿論、最高さ! 何だったら味見してくれよ」

 

味見皿に乗せられた鯛の切り身を見る

 

(確かに……良い白身だ。味は……)

 

絞めたばかりなのかこりこりとした触感が実に良い

 

「貰おう、6尾頼む」

 

「まいど!! それと約束通りこれ持って奥の魚屋に行ってくれよな」

 

差し出された紙を受け取り。代わりに魚の代金を払い、言われた店に向かう

 

「銀髪の兄ちゃん、あいつの言ったとおりだな。マグロだろ? これでどうだ?」

 

その店の店主は70代の男の店だった。こじんまりとし店先には何の魚も置かれてなかったが、私が行くと赤身を奥から持ってきた

 

「こ、これは……」

 

「いいマグロだろ?」

 

料理をする人間や魚に関わる人間なら、この赤身は素晴らしい

 

「脂のノリもいい……いい赤だ」

 

「キロ8000円だ。 何キロ買うね?」

 

「……5……いや……10キロ買う」

 

これだけの赤身料理人としては見逃せない(※龍也は魔導師であり生粋の料理人ではありません)

 

「太っ腹だな! おまけもつけといてやるよ」

 

 

 

そして場所は戻り機動六課

 

「……しかし。本当に良いマグロだ」

 

買って来た赤身を早速柵に切り分けた所でそう呟く。脂のノリも血抜きも完璧で非のつけようが無い

 

「握りだけじゃなく巻物にしてもいいな」

 

それに布巾を被せて冷蔵庫に入れ、他の魚も柵にしていると

 

「お、お魚ですか?」

 

「そうだよ。アザレア。買い物に行ってたんじゃないのか?」

 

「お、お買い物が終ったので……何をしてるのかな? ってみ。見に来たんです」

 

アザレアがにこりと笑いながら、私の手元を見て興味深そうに尋ねてくる

 

「な。何を作るんですか?」

 

「寿司だ、寿司……そう言えば、アザレアは食べた事無いよな?」

 

こくんと頷くアザレア。確かアザレアとリヒトそれにユナは寿司を食べた事が無いはず

 

「ちょっと待ってろ」

 

今日の昼に使う予定の炊き立ての米を少しばかり拝借し。作って置いた合わせ酢をいれ酢飯を作る

 

「……まぁこんなものか」

 

子供が多いので若干甘めの味付けの酢飯の上に切り落とした赤身や白身を乗せ。錦糸玉子を振り掛け最後に醤油を掛ける

 

「ほら、食べてごらん」

 

「……これがお寿司ですか?」

 

「これは海鮮丼だ。寿司は当日まで楽しみにしているといい。寿司に使う酢飯の味を見てもらおうと思ってな」

 

「じゃ、じゃあ。頂きます」

 

初めて食べるのでおっかなびっくりと言う感じで食べ始めたアザレアだったが

 

「お、美味しいです!」

 

「そっか、それは良かった。でも皆には言うなよ? ネタにも数があるからな」

 

合わせ酢の調整は良かったみたいだな。寿司ネタを冷蔵庫に戻し、今度はトマトと牛乳を取り出す

 

「な。何を作るんですか?」

 

ゆっくり食べていたアザレアの問い掛けに

 

「トマトソースとホワイトソースだ。ピザとグラタンを作るからな。っととこっちはもう良いな」

煮鮑の火を弱め、タレヲ舐めてみる

 

「よし、OKだ。後は冷ましてからタッパーに詰めればいいな」

 

今回の鮑は煮鮑にする事にした。季節的に生で食べるのは不安なので

 

「それと……肉をタレニつけて」

 

メインの鳥腿を付けダレにつけてと大忙しでやっていると

 

「お、お手伝いします!」

 

「ん? そうか。じゃあ手を洗ってエプロンとバンダナをつけておいて」

 

「は、はい♪」

 

とととっと走っていくアザレアを見ながら

 

「アザレアには何をさせるかね」

 

包丁とかは危ないし……何をさせるか考えながら私はトマトを切り始めた……

 

 

 

 

~その頃アラスカでは~

 

「当たりすらないぞ」

 

「参ったね。サーモン釣りってこんなに難しい物とは知らなかったよ」

 

アラスカに来て4時間、何の当たりも無い……

 

「どうする? ゼスト」

 

「カヌーでも借りるか、それとも現地ガイドを雇うか?」

 

やはり何の知識もなくサーモンを釣ろうと考えたのが間違いだったと思う

 

「少し情報を集めよう」

 

「そうだな」

 

何時までも独学では駄目だと判断したジェイルとゼストは、1度竿を畳もうとしたのだが

 

バチャバチャッ!!!!!

 

「おお!? 跳ねてる! 跳ねてるぞ!!」

 

「今なら釣れるかもしれん!!!」

 

ライズしてる方向目掛け。2人はルアーを投げ始めた……

 

 

 

 

 

「……どうするゼスト」

 

「どうするって言われてもな」

 

30分のライズ中釣れたのは2匹だけだった……

 

「大きいのがせめてもの救いか」

 

「そうだな、戻ろう」

 

それぞれ1匹ずつ釣れたサーモンを肩に担ぎ2人はアラスカを後にした……

 

 

 

 

 

「お、お帰り。どうだった?」

 

「お、お帰りなさい」

 

アザレアとピザソースとピザ生地を作っているとジェイルとゼストが帰ってきた

 

「なんとか2匹だけ」

 

「4匹はきついぞ?」

 

肩に担がれたサーモンを受け取り

 

「上等上等♪ 大きさも丁度良いぞ。ご苦労様。 アザレアそこで塩胡椒で味を整えるんだ」

 

「こ、こうですか?」

 

ゆっくりピザソースに塩胡椒を入れている。アザレアを見ながら

 

「まぁ取り合えず。風呂でも入って来いよ。何か夕食でも作っておいてやるから」

 

「おっ! じゃあお言葉に甘えて」

 

「川にずっと入ってたから身体も冷えてるしな」

 

並んで食堂を後にするぜストとジェイルを見ながら、私とアザレアはパーティー料理の準備を再開した……

 

 

クリスマス番外編 プレゼント準備 ちびっ子軍団出陣に続く 

 



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クリスマス番外編 プレゼント準備 ちびっ子軍団出陣

 

クリスマス番外編 プレゼント準備 ちびっ子軍団出陣

 

「クリスマスにお兄様にプレゼントをあげるんです!」

 

「でもさ。兄って何が欲しいんだ?」

 

「「「「「……なんだろう?」」」」」

 

皆で考えてもなにも思いつかなくてうーんと考え込んでいると

 

「にーさまに聞きに行こう!」

 

「「「「それだ!」」」」

 

私達で判らないのなら本人に聞きに行けばいい。私達はそう思って兄さんの部屋に向かいました

 

「お兄様は何か欲しい物はありますか?」

 

「何だ突然」

 

本を読みながら紅茶を飲んでいた兄さんは苦笑しながらそう尋ねてきます

 

「い、いえ。に、兄さんは何か……欲しい物は無いかなって?」

 

「そうそう、兄は何時も頑張ってるからさ」

 

アギトと一緒に言うと兄さんは

 

「そうだなー。私の欲しい物か……魔王化しない皆かな?」

 

「………」

 

へヴィーすぎる注文でした。六課の皆は魔王が大半だから……私達が真剣にどうすれば良いか考えていると

 

「ははは。 冗談だよ」

 

くすくすと兄さんは笑いながら

 

「私はね、皆が笑ってくれるだけで良いんだ。だから欲しい物とかは無いかな」

 

やんわりとそういわれ無理に何が欲しい何が欲しいと尋ねる事も出来ず。私達はそうですかと返事を返して兄さんの部屋を出て行きました

 

 

 

 

「どうしましょう?」

 

「どうしようか?」

 

これでまた振り出しに戻りうーんと頭を抱えているとヴィヴィオが

 

「絵を書いたり。皆でいつももありがとうってクッキーとか作るのはどうかな」

 

「高価な物より気持ちの篭った物という事ですか?」

 

「うん♪ ヴィヴィオパパに絵を描くのー♪」

 

にこにこと笑うヴィヴィオ、確かに良いアイデアかもしれません

 

「どう思いますか? アギト」

 

「いーんじゃないかな? 兄はそういうの貰うの好きだしさ」

 

うんうんと頷きあい。全員の財布からお金を取り出します

 

「全員で2500円ですか。リヒトは?」

 

お小遣いを出さないリヒトにそう尋ねると

 

「全部お菓子に使っちゃった♪ 「笑いながら言うことですか!」へも!?」

 

にまっと笑ったリヒトの顔面にぬいぐるみを投げつけながら

 

「クッキーの材料は姉さんが持っているとして、ただの紙に絵を書くだけと言うの味気ないですよね」

 

「そうですね、紙とか色鉛筆とか工夫して見ましょうか?」

 

特に出来る事も無いの私とリィンがそう言っているとアザレアが

 

「こ、これ」

 

ちょこんとさしだされたあみぐるみは

 

「お? アザレアそっくりだ」

 

こくこく、何度も頷いたアザレアは編み棒と毛糸を差し出し

 

「み、皆で……自分の……人形を作る……」

 

それは良い考えかもしれません。こういう時に裁縫や編み物が得意なアザレアがいるのは助かります

 

「じゃあ……毛糸を……買いに」

 

ぼそぼそというアザレアに頷きみんなで買い物に行くと

 

「龍也兄ってなに上げれば喜ぶと思うっすか?」

 

「平和」

 

「オットーボケるの止めようよ」

 

「?」

 

「ああ、本気だったんすね……」

 

買い物に来ているウェンディ達や

 

「紅茶の茶葉ってこんなに高いの!?」

 

「龍也さんのお気に入りの茶葉は高いからね。その手は何?」

 

「ティア……お金貸して」

 

「嫌よ。私は私でシルバークレイと宝石買うんだから」

 

「何作るの?」

 

「前と同じで芸は無いけど、宝石とかを入れた懐中時計にするつもり」

 

お金を貸してよー、嫌よ! といつも仲良しのスバルとティアナとかを見ながら。自分達の髪の色と同じ毛糸やフェルトを買って六課に戻り、編み物が始まりました

 

 

 

「あれ? あれれ?」

 

「うがーッ!! 丸になんなんぞ!」

 

「……ここをこうだね」

 

「むむむ……」

 

アザレアはゆっくり縫いこんでいるが私たちと比べると数段はやい

 

~4時間後~

 

「いやああああ!? リィンの首がーッ!?」

 

ごとんと落ちるあみぐるみの首を見て泣きそうな顔をするリィン

 

「腕もげたー!?」

 

千切れる腕を見て絶叫するアギト

 

「すぴー」

 

もう作るのを諦め眠りに落ちるリヒト

 

「で。出来た……」

 

「上手ですね……ユナ」

 

少々不恰好だが私に見えなくもないあみぐるみの完成度に納得していると。アザレアがにこりと笑いながらフェルトを差し出してくる

 

「今度は……服。裁縫は得意だよね……ユナ」

 

「ええ。裁縫は大丈夫ですので。リィン達をお願いします」

 

ぐすんぐすんと泣きながらあみぐるみを修復しようとしているリィンとアギト

 

「り、リヒトは?」

 

「本の角で殴ってください、融合騎だからダメージは無い筈です」

 

すぴーと寝息を立てるリヒトに制裁が必要だと思う

 

「ま、まあ……起きるまで待ってあげましょうよ」

 

「アザレアがそう言うのなら」

 

私はそう返事を返し買ってきたフェルトと生地を使って服を縫い始めた

 

「あ、アザレア~リィンの首がー」

 

「だ、大丈夫……直せるから」

 

「腕が~腕が~」

 

「そっちも直せるから、待ってて」

 

いつもはビクビクしているアザレアが皆に頼られてることに笑いながら。辞書を振りかぶり

 

「いい加減におきなさい!!」

 

「へもっ!? ひ、ひどい~」

 

本の角で強打され涙目のリヒトに

 

「あそこでアザレアがあみぐるみを作っています。見てきて自分のも作りなさい」

 

腕と胴体だけのあみぐるみを見ながら言うと

 

「向いてないと……「もう一発行きますか?」……頑張ってきます」

 

とぼとぼと歩いていくリヒトを見ているとヴィヴィオが

 

「見てみて! 書けたよ!!」

 

書いた絵を見て見てと言うヴィヴィオ、その絵は私達とお兄ちゃんが書かれた明るい色彩の絵だった

 

「上手ですね。ヴィヴィオは」

 

「でしょ♪ ヴィヴィオ皆好き♪」

 

にこにこと笑うヴィヴィオはそれをくるくると丸め、リボンで結んで

 

「出来たー♪」

 

にぱっと笑いヴィヴィオはそれを机の上において。部屋を出て行った……恐らくお兄ちゃんの所に行ったのだろうと思いながら

 

(さて、私も頑張りますか)

 

私は気合を入れて作業を再開した……

 

 

 

そしてそれから2時間後。アザレアの部屋の机の上には可愛らしくデフォルメされたアザレア達のあみぐるみと、全員が書いた龍也への手紙が置かれていた……

 

「はーやっとここまで来ましたね」

 

リィンがそういうと

 

「そーだな。後は箱とリボンだな」

 

あみぐるみの入る箱は今リヒトちゃんが取りに行っている。後はそれにあみぐるみを入れて。包装してリボンを巻けば完成だ

 

「お兄様は喜んでくれますかね」

 

「不安に思うことは無いですよ。リィン」

 

にこりと笑うユナはあみぐるみを抱きかかえて

 

「一生懸命作りました。お兄ちゃんはきっと喜んでくれますよ」

 

「そ、そうですよね?」

 

「ええ」

 

「持ってきたよ……あっ」

 

リヒトちゃんが転んで箱がユナちゃんの上に降り注ぐ。角とかが頭とかにボコボコ当たってます

 

「ふ……ふふふふふふ。 リーヒートーッ!!!」

 

「わ、わざとじゃない! わざとじゃないんだよーッ!!!」

 

「今日という今日は許しませんよ!! 待ちなさい! 本の角で殴って上げます!!」

 

「嫌だーッ!!!」

 

追いかけっこを始めるリヒトちゃんとユナちゃんを見ながら

 

「じゃあ箱に入れましょうか」

 

「そーだな、何時もの事だしな」

 

リヒトちゃんとユナちゃんの追いかけっこはいつものことなので誰も動揺しない。リィン達はのんびりと箱にあみぐるみを入れていると

 

「成敗!」

 

「ぎゃーッ!! 角が! 角が額に!!!」

 

そんなリヒトちゃんの絶叫を聞きながら

 

「平和ですねー」

 

「だなー」

 

騒がしいのは平和の証です。リィンはそんな事を考えながら梱包を進めていった……

 

「あれ? アザレアちゃんは?」

 

「休憩中だ さっき部屋出て行っただろ?」

 

丁度この頃アザレアは龍也と一緒にトマトソースを作っていたりする……

 

「明日のクリスマスパーティーが楽しみですねー」

 

「そうだなー」

 

 

クリスマス番外編 衣装準備 真面目だけどちょっとずれた2人組みに続く

 

 



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クリスマス番外編 衣装準備 真面目だけどちょっとずれた2人組み

 

クリスマス番外編 衣装準備 真面目だけどちょっとずれた2人組み

 

「良いですか? リインフォース。これがサンタの衣装の型紙です。準備は出来ていますね」

 

「ああ、布は買ってきた」

 

ウーノの言葉に頷きながら買ってきた布を机の上におき

 

「しかし、相変わらず凄い部屋だな」

 

「何かおかしいですか?」

 

ウーノの部屋は色んな布に縫い糸、更にはファッション雑誌が大量に置かれている

 

「いや、おかしいという意味で言ったんじゃない。ただ感心しただけだ」

 

色んな服や髪留めを見ながら言うとウーノは

 

「偶にはどうですか? こういうの着てみません?」

 

「断固断る」

 

「残念ですね。折角仕立てたのに」

 

 

「ちょっと待て」

 

「何か?」

 

今聞き捨てられない言葉があったので話を止めて

 

「お前、まさか六課全員の3サイズを知ってるのか?」

 

ジト目で尋ねるとウーノはくすくすと笑いながら

 

「何を言うのやらと思ったら」

 

「違ったか? すまない勘違いだった」

 

「知らなければ服を作れるわけが無いじゃないですか?」

 

「おい! 個人情報だぞ!?」

 

「ばれなきゃ犯罪じゃないんですし。それに……」

 

「それに?」

 

「はやてが別に見てもいいと」

 

「主はやてー!!!」

 

思わず自分の主の名を叫ぶほどのショックだった……

 

「それに六課の女性陣の大半は私に服の制作を依頼してくれますよ?」

 

「……え?」

 

驚きながら尋ねるとウーノは買ってきた布を下書き無しで切りながら

 

「私が作るほうが安いですし、自分の好きなデザインになるので良いとか言って、ヴィータとかもよく頼みに来ますよ」

 

からからと笑うウーノに

 

「お前仕事は?」

 

「してますよ? まぁメインは服の制作ですけどね?」

 

「いいのか? それで?」

 

仕事中に服を縫っているウーノにそう尋ねると

 

「はやての指示ですから。私はどうも思いませんよ?」

 

大丈夫なのか、機動六課……ネクロが居ないとどうも全員がはじけていると思う

 

「まぁ平和の証って事じゃないかしら。はい、一着目完成」

 

「速いな」

 

話しながらなのにノンストップで作業を終えたウーノは完成したサンタの衣装をハンガーにかける

 

「随分と小さいな?」

 

「ええ、アギト達のだからね」

 

ああ……アギト達に着せるのか。それはきっと愛らしいこと間違い無しだ。

 

「ん? その奥にかけてあるのは……」

 

部屋の奥のクローゼットの中にちらりと見える赤い服が気になり近付こうとしたら

 

「見るな」

 

「いや気になる」

 

「見るな」

 

「い……いやさ」

 

「もう1度言う見るな。そして座って手伝え」

 

目が座っている上に口調が違うウーノの迫力は凄まじかった

 

「判った。座る! 座るから」

 

「そう、じゃあこれ型紙を当てて切ってくれる?」

 

にこりと笑うウーノに頷き布を切り始めた

 

 

 

 

危ないところだった……あの奥の赤い衣装は龍也様のクリスマス用衣装だ。 布を魔法の加工を施しステルス性能を加え、方から下げた袋はドクターが待機している場所に通じそこからプレゼントを取り出せるようになっているし。

帽子には帽子で認識阻害の術式が刻まれ。決して龍也さまだとばれないように工夫に工夫を重ねたものだ。リインフォースは少し抜けているので自爆しかねないので教える事が出来ない

 

「しかしアギト達になんでサンタの衣装を着せるんだ?」

 

帽子や私が縫い上げたコートにファーをつけながら尋ねてくるリインフォースに

 

「可愛いじゃないですか。それに良い思い出になると思いますよ」

 

ドクターの意見だが。可愛らしいアギト達には相応しい衣装と言える

 

「……私が着たらおかしいだろうか?」

 

「はい?」

 

最初何を言われたのか判らなくてそう尋ね返すとリインフォースは赤面しながら

 

「私が着たらおかしいか?」

 

「着たいんですか?」

 

縫い上げていた作業を1度やめて尋ねるとリインフォースはこくんと頷いた

 

(これは珍しいこともありますね)

 

恥ずかしがりやで目立つのが嫌いなリインフォースにしては珍しい

 

「無理か?」

 

「いえ、望むなら仕立てますよ? アギト達のはあと2着で終わりですしね」

 

魔法と並行作業で加速しているので縫い上げるまであと1時間と言った所だ

 

「ならその後に頼めるか?」

 

「構いませんよ。スカートはミニで良いですか?」

 

そう尋ねるとリインフォースは

 

「み。ミニなんて恥ずかしい!」

 

「サンタの衣装で既に恥ずかしいのでは?」

 

アギトの衣装を縫い終え。リインフォースの方に回しながら言うと

 

「そ、それでもだ! 越えれない一線というのはある!」

 

変なところで線引きしてるなと苦笑しながら

 

「判りましたでは普通の丈で仕立てましょう。そうと決まれば急いでください。アギト達のはサイズが小さいのですぐに出来ますが。大人用となると色々と勝手が代わりますから」

 

私がそういうとリインフォースは不思議そうな顔をしながら

 

「どういうことだ?」

 

服を作った事のないリインフォースに

 

「あのですね? アギト達は体の凹凸が無いので作るのは非常に楽です」

 

良く走り回るのでズボンとかの縫い合わせをしっかりしておけば、後は丈とかを合わせるだけで簡単に作れる。だが

 

「リインフォースとかになれば胸も出てくるし。腰回りとかもあるでしょう? しっかりしないと胸が揺れて服破けますよ?」

 

呆けていたリインフォースは

 

「え? 破けるのか?」

 

「そうですよ?」

 

巨乳というのは言われるほど嬉しいものではないとシグナムがぼやいていた(後にこの事をセッテ・なのは・オットー・ヴィータに聞かれずりずりと暗がりに連行されていた)服のサイズが少なく。どうしても胸を強調してしまうのが嫌だとぼやいていた

 

「それは絶対に嫌だ」

 

「なら喋るより手を動かしてください」

 

サンタの衣装のもこもこをつける作業を完全にやめているリインフォースにそう言うと

 

「そ、そうだな!」

 

慌てて作業を再開するリインフォースを見ながら

 

(スカートの丈は普通にして胸元を強調するデザインにしておきましょう。そのほうが面白いから……)

 

そう、龍也様が動揺するデザインにしよう

 

「ああ、言い忘れてた。 胸元も普通のデザインにしてくれ」

 

「っち」

 

「舌打ちしなかったか?」

 

「気のせいですよ。さ、速く仕上げましょう」

 

「? ああ」

 

不思議そうな顔をするリインフォースを見ながら

 

(天然の感と言う奴ですか。ならばそれを超えるまで!)

 

ウーノ。真面目な女性職員かと思いきや、ジェイルと同じく動揺し慌てふためく龍也を見るのが好きな。S属性のファザコンだったりする……そんな彼女がたくらむ悪巧みとは……それはクリスマス当日に判明することになる

 

 

クリスマス番外編 クリスマスパーティーに続く

 



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クリスマス番外編 クリスマスパーティー

 

 

 

クリスマス番外編 クリスマスパーティー

 

「良し! スポンジケーキ出来たぞ! 生クリームとデコレーションを頼む!」

 

「はい。判りました八神大将!」

 

食堂の料理人に焼きあがったケーキと生クリームにデコレーションを渡しながら

 

「はやて 焼く準備は出来たか!」

 

昨日からタレに漬け込んでいた肉を冷蔵庫から取り出しながら尋ねる

 

「OKや! 後は下味をつけた鶏肉を入れればOKや」

 

「よし! じゃあそっちは任せる! セッテから揚げのほうは!?」

 

「今揚げてます!」

 

朝から機動六課の食堂は戦場状態だった。それはパーティーの2時間前でも同じことだった……何せ人数が人数だ。そう簡単に準備は終わらない

 

私は全部の作業を少しずつ手伝いながら大量の酢飯の準備をしていた……

 

(昆布だしで炊き込んだ……水も天然水だ)

 

今日は電子ジャーではなく。釜で炊いている……今丁度蒸らしの時間。底が焦げ付かない絶妙のタイミングで蒸らしを止めなければならない

 

「今だ!」

 

大きな寿司桶に炊き上がった。4つ分の釜のご飯を取り出す。蒸らしに加え底が焦げ付いていない絶妙のタイミングだ。

 

「良し、寿司飯の準備に入る。後は頼むぞ」

 

「OKや。私もレンジに入れたらピザの準備するわ!」

 

「こちらは任せてください!」

 

セッテとはやてにそのほかの料理を任せ寿司飯の準備を進める

 

「良し! OKだ」

 

昨日の合わせ酢と混ぜ合わせ味を確認してから握りの準備をしていると

 

「………」

 

「どうした? アザレア」

 

じっとこっちを見ているアザレアにそう尋ねると

 

「て、手伝い……たいです」

 

「そうか。じゃあ準備して入っておいで」

 

こくこくと何度も頷くアザレアを見ながら。早速握りを作り始める

 

「は、速い!? 何であんなに速いんですか?」

 

「あれは小手返しって言う握り方や。兄ちゃんは手大きいからな。一発でできるんやよ」

 

得意な小手返しでどんどん寿司を握っていると

 

「き、来ました」

 

自分用の台を持ってきて笑うアザレアに

 

「アザレアはこれを作ってもらおうか」

 

小さめに切った魚の切り身をトレーに載せてアザレアの前に置きながら

 

「こうやって。ラップを切って」

 

ラップを切り目の前に置き。

 

「切り身を乗せてから、小さく酢飯を取って」

 

ピンポン球大の酢飯を切り身の上に載せて

 

「ラップで包んで形を整える」

 

「き、綺麗です」

 

「手毬寿司と言うんだ。これならアザレアでも出来るだろう? やってごらん」

 

「は、はい!」

 

ちまちまと作り始めるアザレアを見ながらどんどん寿司を仕上げていく

 

(あと2時間……間に合う!)

 

今の六課には食欲魔人が多数居る(スバル・リヒト・ウェンディ等)時間との勝負だ。何とか間に合わせる!! 食堂班はフル回転で料理の準備をしていた

 

~3時間後~

 

食堂には六課のメンバーに加え。レジアスやクロノも来ていた。あれから2時間丁度で料理の仕込を終え、1時間休憩することにしたのだ

 

「クリスマスパーティーを始めたいと思います!!」

 

イエーッ!!!

 

料理の山を凝視しているスバルとかを見ながら苦笑し。ジュースを手に

 

「乾杯ーッ!!」

 

「「「「乾杯ーッ!!!」」」

 

はやての合図でクリスマスパーティーが始まった

 

「美味しーッ!!!」

 

凄まじい勢いで消えていくピザに寿司、スバルの食欲は相変わらず底知らずだ。そんな事を考えながら自分用にとピザを2切れ取っていると

 

「「「「「メリークリスマス♪」」」」」

 

居ないと思っていたりィン達が声をそろえて言う。着ている服は可愛らしいサンタの衣装だ

 

「あはは、可愛いじゃないか」

 

可愛らしい格好のリィン達の頭を撫でているとアギトが

 

「兄全然食べてないじゃないか!」

 

「ピザは2枚食べたぞ?」

 

「駄目だ! 駄目だ! もっとちゃんと食べないと!!」

 

アギトは口は悪いが世話焼きだ。私が全然食べてないと怒りながら

 

「取ってくる! ちゃんと待ってろよ!!

 

皿を持って歩いていくアギトを見ていると後ろから

 

「め、メリークリスマス。兄上様」

 

「そうだな。リイン……ごぶっ!? げほ!? ごほっ!!!」

 

振り返った瞬間咳き込み蹲る

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「にーさま、大丈夫?」

 

アザレアとユナに背中を撫でて貰いながら

 

「な。なんて格好してるんだ……」

 

「そ、そのウーノに作ってもらったんですが……」

 

もじもじしているリインフォースの格好は膝より少し長いスカートに胸元に大胆な切れ込みの入ったノースリーブの赤い服の上から半袖の赤いジャケットに帽子のサンタ風の姿だったが。その余りに大胆な切れ込みと俯き赤面している、リインフォースは

 

「に、似合いませんか?」

 

「そ、そういうわけでは無いんだが……」

 

長い銀髪と赤い目と神秘的な容姿のリインフォースがサンタの衣装を着ていると余計にその神秘的な雰囲気が強調されて。一言で言うのなら綺麗の一言しかない

 

「綺麗だし。良く似合っていると……っておーい!!!」

 

ふらっと倒れかけるリインフォースを抱きとめる。トマトの様に顔が真っ赤だ……

 

「お姉様恥ずかしいって随分と長い事悩んでましたから」

 

「お兄ちゃんに綺麗って言われてオーバーヒートしたんですね」

 

おいおい。じゃあ着るなよ……呆れながらリインフォースを抱えていると

 

「おろ? 姉どうしたんだ?」

 

「恥ずかしくてオーバーヒートしたようだ」

 

アギトにそういうとアギトは

 

「じゃあ。あれだなちょっと休ませたほうがいいな。椅子の所で待っててくれよ、姉の分料理持ってくからさ」

 

「じゃあ、頼むよ」

 

リインフォースに肩を貸して食堂の隅の椅子が置いてる所に向かっていると……

 

「「ッ!!!」」

 

涙目で暴れているスバルとリヒトの姿を見て

 

(大人用を食べたな。あの2人)

 

恐らく自分達用の食べたいネタを食べきってしまってこっそり大人の用の食べたようだが。大人用にはワサビを塗ってある、予想外の刺激に悶絶しているようだ

 

「あの……龍也さん。大人用と子供用って何か違うんですか?」

 

ティアナが私に気付いてそう尋ねてくる。私は

 

「ワサビと言う地球の薬味が塗ってある。深呼吸して熱いお茶を飲ませてやれ。落ち着くから、あとキッチンにまだ追加があるからちゃんと話を聞いて子供用を貰って来い、後あんまり食うと太るといってやれ」

 

「……スバル号泣しますよ?」

 

「何故だ?」

 

「……すいません。忘れてください」

 

はぁっと溜息を吐き歩いていくティアナ……はて? 何か選択を間違えたかな?

 

私はそんな事を考えながらリインフォースを抱え椅子の置いてるところに向かったのだが……

 

「……」

 

「!?!?」

 

ティアナに何事か耳打ちされ絶望したという顔をしたスバルががっくりと項垂れているのがやけに目に残った……

 

 

 

 

 

「龍也さんは?」

 

「んー気絶したリインフォースの看病中」

 

珍しくコスプレをしたリインフォースは色々と脳内のブレーカーが落ちてしまったのか、気絶してしまったらしい

 

「何をやったの?」

 

「サンタのコスプレ」

 

「ひ、卑怯な!? そんな手で繰るなんて!」

 

「まぁまぁ落ち着きいや……」

 

いつもは恥ずかしいとかで甘えることのないリインフォースなのだから、多めに見ても……

 

バキャン!?

 

「はやてちゃん!? グラス! グラス!!」

 

「おお、ちょっと力入れすぎたな」

 

私の手の中のグラスがはじけ飛ぶ、その理由は

 

「ふみー」

 

「動けなくなってしまった」

 

兄ちゃんの膝枕で眠っているリインフォースを見たからだ。兄ちゃんの膝枕は私の物なのに!!! 

 

ビクッ!?

 

その殺気に気付いたのか飛び起きるリインフォースと目が合うと、リインフォースは

 

「も、もう大丈夫ですから!」

 

「お、おい?」

 

ぴゅーと走り出し職員の中に紛れ込む。兄ちゃんは暫くそのままだったが。立ち上がり私となのはちゃんの所に来て

 

「楽しんでるか?」

 

「ぼちぼちな」

 

砕いたガラスは魔力で焼き尽くし返事を返す

 

「こういうのもいいな。皆でワイワイやるのも」

 

「そうですねー平和ってかんじで」

 

なのはちゃんがそう言うと

 

「そうだな。 さてとじゃあ皆にちらほらと声でもかけてくるよ」

 

そう言って今度はスバルとかの方に歩いていく兄ちゃん。ちらほらと声を掛け勧められた料理を取り皿に取り、それを食べながら歩いていく兄ちゃんは一切アルコールをとろうとしない。それは酒豪である筈のゼストさんにスカリエッティさんも同じだ。それを見て

 

「やっぱサンタクロースを……」

 

「言ったらアカン。子供の夢を壊す気か」

 

兄ちゃんは子供の夢を護ろうとしている。それを大人が壊すのは酷いだろう……

 

「そうだね。黙っておこうか……」

 

うんうんと頷き色々と料理を食べ歩きながら。ちょこちょことワインを飲んでいるとあっという間に時間が過ぎて

 

「さてと……そろそろプレゼント交換会だな」

 

「ん? そういえばそうやね」

 

料理も酒も少なくなったところで兄ちゃんがそう言う。皆が用意したプレゼントをくじ引きで交換会をするのだ

 

「よっしゃ! じゃあ皆ちゅうもーく!!」

 

手を叩き皆の視線を集める

 

「今からプレゼント交換会するでー!! 最初に渡した番号札と一緒のプレゼントがその人のもんやで。視界は兄ちゃんな、お願いするで」

 

「ああ、判った」

 

マイクを手に歩いていく兄ちゃんはさっそく舞台の上に置かれていたプレゼントの番号読もうとした所でセッテが

 

「龍也様! 質問があります!!」

 

「ん? なんだ?」

 

「龍也様の用意したプレゼントはなんですか!」

 

これはちゃんと聞かないと不味いな……私も聞き逃さないように注目すると兄ちゃんは

 

「剣十字のペンダントだ。手作りの物だからそんな大層なものじゃないがな」

 

そうは言うがそれは是非とも欲しいものだ

 

(ペンダントというと小さい小箱……どれや)

 

小箱は全部で40個くらいある。どれが兄ちゃんの用意したものやろうか……

 

「じゃあ始めるぞー、まずは38番!」

 

「私だ」

 

ヴィータが前に行くと大きめの箱が渡される。まずペンダントでは無いだろう

 

「なんだろな……おお!?」

 

「あははは。なんだそれ」

 

ヴィータの箱の中からは兄ちゃんをデフォルメした大き目のぬいぐるみが。そんなのを作れるのは

 

「わ、私のです」

 

「あーやっぱ。アザレアか。ありがとな」

 

「……これしか……出来ないですから、こ、今度ヴィータ姉さんのも作りますね」

 

「?」

 

「それ……同じ人形と……手が組めるようになってるんです……だから当たった人の……人形もつくろうって……」

 

「マジで? 嬉しいな」

 

「本当ですか?」

 

「ああ、楽しみにしてる」

 

きっと自分の人形も出来たら兄ちゃんの人形と一緒にヴィータの部屋に飾られることになるだろう。これはある意味当りの品だ

 

そんなので順調にプレゼント交換が進み……

 

「19番」

 

「私だ。これは……時計?」

 

「それ私です。 シグナム副隊長」

 

ティアナの時計はシグナムに渡り

 

「27番」

 

「はーいっす。これは……髪留め?」

 

「私。無難かなって?」

 

ウェンディにはスバルのプレゼントである、青の髪留めが……

 

そして残り僅かになった小箱のプレゼント……否が応でも緊張感が高まる中……

 

「47番」

 

「僕だ……これは……」

 

クロノ君が面白いくらい顔を青褪める。その手にはシルバーの剣十字のペンダント。そして一斉に降り注ぐナイフ

 

「「「「「殺す!!」」」」

 

「来るなーッ!!!」

 

魔王に追いかけられているクロノ……この騒動でクリスマスパーティはなし崩し的に終了となった……

 

 

コンコン

 

「はい。なんだ? ユナ達かどうした?」

 

部屋で皆が寝るのを待っているとユナ達が部屋に来て

 

「これ。お兄ちゃんに」

 

差し出された5個の箱と画用紙を受け取る

 

「これは?」

 

「お兄様へのプレゼントです」

 

「下手くそだけど一生懸命作ったから」

 

「リヒトもね! 頑張ったから」

 

「だ、大事にしてくれると、う、嬉しいです!」

 

「お休みパパ! ヴィヴィオパパ大好きーッ!!」

 

言うだけ言って走って部屋を出て行くユナ達に渡された箱を開けてみる

 

「はは。これはまた」

 

小さなあみぐるみで作られた自分の人形と私への手紙がそこには収められていた……

 

「ありがとう。皆」

 

渡されたプレゼントの箱から人形を取り出し。皆と撮った写真の近くに並べヴィヴィオのプレゼントの絵は大事に机の中にしまい

 

「よし! 気合入った! サンタの役頑張るか!」

 

そして、深夜龍也達のもう1つの戦闘が幕を開ける

 

クリスマス番外編 サンタ大作戦に続く

 



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クリスマス番外編 サンタ大作戦

 

クリスマス番外編 サンタ大作戦

 

「準備OKだ」

 

サンタクロースの衣装に身を包む龍也に

 

「死ぬほど似合っていない」

 

「言うな」

 

龍也の長身にサンタの衣装は正直微妙だった……

 

「キュ?」

 

ぴこぴこと尻尾を振るアースドラゴンの幼生

 

「枕元には置けんな」

 

「だな、食堂のツリーの下にでもおくか」

 

枕元におけるサイズではない。ここはやはり食堂のツリーの下が無難だろう

 

「キュウッ!! キュウキュウ!!」

 

足元で遊んで遊んでと鳴くドラゴン

 

「ハウス」

 

「キュッ!!」

 

ぴこぴこと歩いていき自ら箱に納まるドラゴン。結構頭がいいらしい

 

「良し。では行ってくる」

 

龍也はゆっくりと各々の部屋にと向かっていった

 

 

ケース1 ちびっ子

 

 

「ジェイル。今ユナたちの部屋にいるんだが。問題発生だ」

 

「どうした」

 

「起きているぞ」

 

時刻は既に深夜1時。もう寝ていると思ったのだが……

 

「よし、龍也睡眠爆弾を送る。それを部屋の中にこっそり入れろ」

 

「人体に影響は?」

 

「ない。安心しろ」

 

その言葉に一安心しプレゼントの袋に送られてきた。丸いボールの様なものを取り出し、こっそり部屋の中に入れる。数秒後部屋の中からの気配は完全に消えた

 

「良し。行くか」

 

こっそりと部屋の扉を開け中に入る

 

「「「「すーすー」」」」」

 

椅子に座り眠っているユナ達。机の真ん中にはクッキーと牛乳が置かれていた

 

「ふふふ。可愛らしいことだ」

 

起こさないようにユナ達をそれぞれの布団に寝かせ。枕元にプレゼントをおく、アザレアだけは手紙で

 

【ツリーの下に置いておくよ。 ハッピーメリークリスマス】

 

と書いた手紙を置いておく。流石にここにドラゴンを置いてはおけないしな

 

「……さてと。後は」

 

置かれたクッキーを食べ牛乳を飲み干し、近くの紙とペンを取り

 

【クッキーと牛乳どうもありがとう】

 

「よし、OKだ」

 

子供の夢を護る為サンタの手紙を書き。部屋を後にした

 

 

 

ケース2 病み娘

 

通信機からある声が聞こえてきた

 

「ジェイル、この部屋怖い」

 

心底怯えた声に

 

「誰の部屋にいるんだ? 龍也」

 

「セッテ……」

 

あちゃーよりによってセッテの部屋

 

「へ。部屋の壁全部に私の写真が……」

 

声がむちゃくちゃ震えている。ミッドチルダ最強の騎士の龍也もストーカーは怖ろしいらしい

 

「これから、どうやって私はセッテと接すればいいんだ? 教えてくれ」

 

真剣に悩んでる声だ。私は近く居るゼストとウーノに

 

「どうする?」

 

「どうするって全てお前の育て方が問題だろう? あんなストーカー属性のヤンデレはそうは居ないぞ? 何を驚いている」

 

「ぜ。ゼストがヤンデレを知っているだと!?」

 

「驚くのはそこか!?」

 

私とゼストがそんなコントをしているとウーノが

 

「1人で寝るのが怖いんですよ」

 

「え?」

 

「ですから暗いところが怖いんですって」

 

「そ、そうなのか? これは何か違うと」

 

「龍也様! セッテ! は暗がりが怖いんです! 判りましたね!」

 

脅すような強い口調で言うウーノそして通信機からは

 

「そ、そうか……人それぞれ個性だもんな。うん……そうだ、ストーカーとかじゃない! そうに決まってる。プレゼント置いたらすぐに出るよ」

 

無理矢理自分に言い聞かせてる!?

 

「良し、後は頭を強打すれば。記憶を失うでしょう」

 

「う、ウーノ? 何を言ってるんだ?」

 

「このままではセッテが龍也様の嫁になる可能性が減少します。それは面白く……こほん。姉としては妹の恋を応援したいので都合の悪い記憶を排除します」

 

ウーノ……お前はどこへ行ってしまうんだろうな 私は養女の行く末が激しく不安になった……なお後日龍也が背後からウーノに頭を強打されこの日の記憶。しかもピンポイントでセッテの部屋の記憶のみを失ったそうだ……

 

 

 

 

ケース3 最優コンビ

 

 

 

「次はスバルとティアナか……」

 

チンクたちの部屋はクリアした、残りはスバル達とシグナム達だ。

 

「スバルは不味いよなー」

 

あの独特の感性と野生を持つスバルだ。仮に寝ていたとしても飛び起きかねない

 

「何かないか?」

 

「マジックアームとかどうだ?」

 

強力マジックアームが出てくる。これでやればいいかと思い、部屋の中に入って絶句した

 

「部屋中に魔力糸と警報機が吊るしてある」

 

何が何でもサンタが来たら捕まえてやるという意思が見て取れる

 

「……マジックアームを上手く使え」

 

「それでも難しいぞこれ」

 

少しでも触れたらアウトだ。致し方ない

 

「魔力を放射して感覚を麻痺させて一気にプレゼントを置く」

 

警報機が感知できる魔力量を上回る放出あとはフラッシュムーブで行って戻ればいい。そう思い行動に出る

 

「すーすー」

 

ティアナは寝てる大丈夫だ。プレゼント置き。そしてそのままスバルのベットに向かいプレゼントを置こうとすると

 

ガシッ!!

 

「!?!?」

 

急に手を掴まれる まさか起きたか

 

「ぐー」

 

「本能って怖ろしい」

 

スバルの野性の本能って怖いなあと思いながらその手を振りほどき。枕元にプレゼントを置いて。部屋を後にする……

 

「ふー最大の難関は突破したな」

 

エリオとかは無問題だし、後やばいのは剣士として勘が鋭いシグナムと言ったところか……

 

「よし、行くか」

 

 

 

 

 

ケース4 幼馴染

 

「いやー楽しかったね」

 

「そうだね」

 

「ちょいのみ足りんかったしな」

 

3人であつまりパーティーの残り物とワインを飲みながら談話していると

 

「よう。不良ども何してる」

 

「「「!?!?」」」

 

そう声をかけられ驚きながら振り返ると

 

「た、龍也?」

 

「そうだが? なにか?」

 

サンタクロースの格好が死ぬほど似合っていない龍也さんがそこにはいた

 

「似合ってないのは判っている。一々言うな」

 

「あ。はい」

 

どうも自覚していたようだ。言わなくて良かった

 

「で? お前達はこんな時間まで酒盛りか?」

 

ジト目の龍也さんに

 

「ちょっと飲み足りなかったもので」

 

あはははと乾いた笑い声を上げながら言うと

 

「まぁ構わんがな。 二日酔いにならないように気をつけろよ」

 

そう笑いながら龍也さんは肩から下げていた袋から

 

「ほい、プレゼント」

 

「え?」

 

差し出された箱を思わず見てしまう。

 

「あの、兄ちゃん?」

 

「なんだ?」

 

「私とかサンタ信じてないよ?」

 

「知ってる。それがどうした?」

 

駄目だ話が噛み合わない。龍也さんの天然は計算できない!?

 

「まぁ黙って受け取っておけ。じゃあな、また明日からよろしく頼む」

 

そう言って出て行く龍也さん、残されたのは3つの小箱

 

「開けてみる?」

 

「そやな」

 

フェイトちゃんに声をかけられ箱を開ける。するとそこには

 

「あ……綺麗」

 

「本当だ」

 

「……高かったやろに」

 

3人ともペンダント、しかも唯のペンダントではなく星や太陽をモチーフにし。それぞれ宝石が真ん中に埋め込まれていて、一目で高価な品だと判る

 

「……おひらきにしよか」

 

「うん」

 

もう駄目だ、これ以上にないくらいニヤニヤしてるのが判る。幾ら幼馴染とはいえ見せたい顔ではない……はやてちゃんの一言でおひらきとなり自室に戻った……

 

なおこの後、なのは・フェイト・はやての3名は絶対部下には見せられないようなにやけた顔でペンダントを抱きかかえ、ベッドで悶えていたりする……

 

 

 

ケース5 月夜の贈り物

 

「来たぞ。セレス」

 

全員へのプレゼントを贈った後。着替えて私は街外れのセレスの墓の前に来ていた

 

「悪かったな……随分と遅れてしまって」

 

何時だったかセレスに話してやったクリスマスの話。いつか私もと言っていたセレスだったが結局、セレスはクリスマスが来る前に逝ってしまった……

 

「残り物だが勘弁してくれ」

 

作ったケーキにカバーを被せ。形だけの墓の前に置く……融合騎のセレスはここには眠っていない。だが形だけでも墓を作ってやりたかった

 

「お前って酒飲めたっけ? まぁ置いとくぞ」

 

ケーキの横に買って来て置いた白ワインを置く

 

「まだ答えなど判らんし。私の様な男が幸せになって良いのかなんて判らんが……お前に譲り受けた命だ。 迷いながら傷つきながら進んでも見るよ……いつか罪深い私も許される日が来ると信じて」

 

正義だなんだと言って。ネクロになりかけた部下を殺した、人々が笑い合っていた街を壊した……

 

「私の様な壊れた男に平和なんて似合わんな。なぁ?」

 

固有結界……あの何もない剣と廃墟の世界。 それを見るたびに思う。きっと私は何時までたっても壊れたままだ……得れるぬくもりも幸福さえも許されない。 何時の日か本当に平和になった時、この世界に私の居場所は無い

 

「ヴェルガディオスの言うとおりだ。 私は人形だ……どう足掻こうが人にはなれん」

 

何処まで行っても私が望むのは人として生ではない。誰かの……私にとって大事な者達の剣であり盾でありたいと願う。ならば私は人では無いのだろう……人とは己が幸福を望むものだから……

 

「やれやれ……すまん、愚痴った」

 

どうにもここに来ると自虐的になって行かんな……そう思って立ち上がりべヒーモスの所に戻ろうとして

 

『王よ……』

 

「え?」

 

ぼんやりと脳裏に響く声に驚き振り返ると、雲に隠れていた月が姿を見せセレスの墓を照らす。その光の中でぼんやりと浮かび上がるセレスの姿

 

『貴方は……許されて良い。ずっと1人で悲しみにも絶望にも耐えてきた……だから許されて良いんです』

 

「駄目だ……私は罪人だ。この罪はどうやっても償えない……私はお前の命も奪ってしまった」

 

『追い詰めないで……貴方は誰よりも優しい人。それに私は後悔はしていません……私は偽りの生の中で本物の時を生きましたから』

 

半透明のセレスの手が頬を撫でる

 

「ごめんな……私なんかじゃなくて……お前が生きればよかったんだ……ごめん……ごめんな……」

 

こんな幸福が判らない私なんかじゃなくて。お前が生きれば良かった……

 

「ずっと謝りたかったんだ……私は……私は!」

 

『良いんです……私が望んでやったことですから』

 

「だが! 私は……どうすれば良いのか判らないんだよ……この後悔はどうすれば良い!? どうすれば私はお前に償うことが出来る!?」

 

それは誰も見たことのない龍也の姿だった。自分が犯した罪と向き合い、その重さに耐えることができない。余りに弱い姿だった……

 

『なら生きて、生きて、生き抜いてください……私は貴方の話が好きだった。私が見る事が出来なかった世界その全てを見て……何時かまた出会えた時に聞かせてください。だから……それまで死ぬなんて言ったらだめですよ?』

 

「セレス……すまなかった。 らしくない、らしくないところを見せたな」

 

夢か幻か……顔を上げたときもう私の目の前にセレスの姿は無い。

 

「そうだったな……約束したもんな」

 

そうだ、まだ私は立ち止まってはいけない……やるべき事はまだ残っているのだから

 

「……足掻いて。足掻いて……進んで行くさ……何時かまた、会える様にな」

 

セレスの墓の前から背を向ける……揺らいでいた、悩んでいた、迷っていた……その全てを振り切れたわけではない。だが進むべき道は思い出せた……

 

「またな……セレス」

 

私が進む道はまだずっと続いている。こんな所で立ち止まってはいけない……生かされた分まで生きる責任がある。

 

「この先がどこに通じるか判らんが……歩いていくさ……どこまでもな」

 

迷うな、止まるな、進み続ける……何時か全てが終わるその時まで……私は立ち止まってはいけないのだから……

 

 

 

クリスマスを終えてに続く

 



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クリスマス番外編 クリスマスを終えて

 

クリスマス番外編 クリスマスを終えて

 

「わーいプレゼントですー」

 

貰ったくまのぬいぐるみを抱きかかえているリィンをみながら。自分の枕元の箱を開ける

 

「グローブ。ちゃんと2個入ってる」

 

兄や皆と遊ぼうって思って頼んだグローブはちゃんと入っていた。真向かいではユナが

 

「欲しかったんですこれ」

 

分厚い本を抱きかかえ笑っている

 

「ゲームだー!! 後でみんなであそぼーよ」

 

と皆自分のプレゼントがあり、大満足で喜んでいると

 

「ぷ、プレゼントがないですぅ……」

 

くすんくすんと泣くアザレアに気がつく

 

「え!? ちゃんと探したのか!?」

 

「そんな馬鹿な!?」

 

「アザレアちゃんはいい子ですよ!?」

 

皆で慌ててベッドを見るがプレゼントの箱は1つだけ。そんな馬鹿な……

 

「ぐすっ! ぐすっ……」

 

ついに泣きじゃくり始めたアザレアをどうやって泣き止ませようかと考えていると

 

「あれ? これは」

 

枕の横に置かれていた赤い便箋に気が付きそれを開けると

 

「アザレア! 食堂だ、食堂のツリーの所に行くぞ」

 

「な。何でですか?」

 

グスグスと泣くアザレアに手紙を見せる

 

【ツリーの下に置いておくよ。 ハッピーメリークリスマス】

 

「!? 食堂のツリーの下! 行きましょう」

 

 

 

「なぁ。あれなんや?」

 

「さぁ?」

 

ツリーの下の馬鹿でかい箱を見て私はそう呟いた。一抱えはありそうなその箱には

 

【メリークリスマス アザレア】

 

と書かれておりアザレアへのプレゼントだというのは判るのだが

 

ごそごそ!! がりがり!! ずりずり!!

 

「なんか動いとる」

 

「ですよね」

 

キュウー! キュウー!!

 

「しかも何か鳴いてる」

 

「生き物?」

 

私達が首を傾げているとアザレア達が走って来て

 

「ありましたー!」

 

「お、大きい!? な、何を頼んだんですか? アザレア」

 

ユナ達も驚いている中アザレアが

 

「も、もしかして!」

 

 

嬉々とした表情でリボンを解き蓋を開けると

 

ヒョコ

 

何らかの生き物の爪が箱の縁にかかると

 

「クキュー! クキュッ!?」

 

ごろんと箱がひっくり返り中から何かが転がり出てくる

 

「!? ど、ドラゴン!?」

 

箱から出てきたのは、少々大きめの犬と言った大きさの灰色の体のドラゴンだった

 

「欲しかったんです! ドラゴン!」

 

 えっドラゴンだよ!? 龍が好きなのは知ってたけど……

 

六課全員の心がシンクロした。幾らなんでも生き物のドラゴンは無い

 

「おいで、おいで」

 

「キュウ?」

 

辺りをピコピコと歩きふんふんと匂いを嗅いでいたドラゴンがアザレアの方を向き

 

「キュ!」

 

「か、可愛いれすぅ」

 

ぎゅーとアザレアがドラゴンを抱かかえる。ピコピコと動く尻尾が実に愛らしいが

 

(肉食ちゃうんかあれ!?)

 

(わ、判んねぇよ!)

 

見た目は抜群に愛らしいが龍種は龍種。肉食かもしれない

 

「おっ! 凄いな、ドラゴンか」

 

買って来た、もしくは拾ってきた張本人である、兄ちゃんがのほほんと笑いながらドラゴンの頭を撫でようとして

 

パクッ!!!

 

「「「「「喰われたーッ!?!?」

 

兄ちゃんの腕がドラゴンの口の中に消える。近くのアザレアとかむちゃくちゃビックリしてる

 

「良し良し。良い子、良い子」

 

「キャウ」

 

ピコピコピコ!!! 

 

凄まじい勢いで振られる尻尾。しばらくすると噛むのをやめてちょこんと座る

 

「い、痛くないんですか?」

 

「甘噛みだから大丈夫、甘えてるだけさ」

 

そう笑う兄ちゃんは

 

「良かったなアザレア」

 

「は、はい!!」

 

にこにこと笑うアザレアに箱から取り出した首輪を取り出した兄ちゃんは

 

「これで良し」

 

ドラゴンの首に首輪を巻きながら

 

「名前どうする? アザレア」

 

「ドラきち」

 

「もうちょっと可愛い名前がいいと思うんですけど?」

 

「じゃあキバゴン」

 

「適当すぎますよ!?」

 

アザレアの感性は独特だった。皆でうんうん唸りながら結局

 

「おいで、ドラきち」

 

「キュウ!!!」

 

あのドラゴンの名前はドラきちに決定し、皆ともう遊んでいる

 

「あれ種類はなんなんや?」

 

「アースドラゴン。魔力で生命を維持して大人しい性格のドラゴンだ。可愛いだろ?」

 

まぁ可愛いのは認めるけど……薄い灰色の身体にくりくりとした紅い目。短く先に成るにつれ丸くなっていく2本の角に短い尻尾にちょこちょこと走り回るその姿は愛らしいの一言に尽きる

 

「進めー! ドラきち!」

 

「キュウ!!」

 

小さくても龍種、背中にリィンとアギトを乗せて辺りを駆け回っている。パワーも体力もある

 

「ドラゴンはあかんのじゃ?」

 

「大丈夫許可は貰った。それにアザレアのリハビリにも良いかとおもってな」

 

「良い子、良い子」

 

「キュウーン♪」

 

アザレアが率先してドラきちの世話をしてる。確かに良い傾向だ

 

「お、お散歩に行きましょう! ドラきち」

 

「キュウ♪」

 

首輪に鎖を付けてトコトコ歩いていくドラきちとアザレア達。こうして今日機動六課に新しい仲間が増えました

 

 

 

クリスマス番外編 終わり

 






クリスマス番外編という事でがんばって見ました! 面白かったのなら良いのですが。今年ももう少しで終わり、来年もどうか混沌の魔法使いを宜しくお願いします


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正月記念番外編 ロリケモぱにっくぅ?

どうも混沌の魔法使いです。内容はタイトル通りの少し馬鹿馬鹿しい? 話になると思います
普段魔王な面子の愛らしい一面をどうぞ



 

 

正月記念特別編 ロリケモぱにっくぅ? 

 

 

「「「「きゃっきゃっ♪」」」」

 

走り回る5~7歳くらいの幼女と

 

「ふにゃ? にゃーお♪」

 

「わふ? わん?」

 

「がうがう!!」

 

猫耳・犬耳・狼耳? 幼女の姿+ケモミミ姿のちびっ子軍団

 

「頭痛が……」

 

「バ○ァリ○ン飲むか? 兄貴」

 

「半分が優しさの錠剤でもこの頭痛は駄目だろうよ?」

 

差し出された半分が優しさの錠剤は良いと断っていると

 

「……にゃう?」

 

何時の間にかセッテ(猫耳&尻尾)がこっちを見ている。これでもかと凝視したセッテは

 

「にゃう♪ にゃうにゃう♪」

 

構って・構ってと足にじゃれ付くセッテを見たはやては

 

「セッテニャン?」

 

そう言って頭を撫でようとして

 

「ふーっ!!!!!」

 

耳を逆立て尻尾を立てて全力で威嚇。近付いたら引っかくと言いたげに爪も構えている

 

「……どうやら本能的に相容れないようやな」

 

「ふーっ!!! ふしゃああああああっ!!!!」

 

威嚇をするセッテの声に気付いたのか、ケモミミ勢が振り返る

 

「……ス……ススス……ピト」

 

「ディード?」

 

「こく……こくこく♪」

 

ウサミミが嬉しそうにゆらゆら揺れている。何故ウサミミ? なのだろうか……

 

「あいたたたっ!!!」

 

「ガブーッ♪」

 

左手に強烈な痛みがし思考の海から引き戻れ左手を見ると

 

「ガウ♪ ガウガウ♪」

 

「ノーヴェ……」

 

狼耳のノーヴェが左手に噛み付いている。マジ噛みなので超痛い

 

「なんか回りまわって肉食に?」

 

「上手い事言えてないからな! ヴィータ!」

 

「ガウ?」

 

ヴィータにそう怒鳴りながら左手に喰らいついてるノーヴェを引き離していると

 

「あーたーやしゃんだー!」

 

「ほんとだー!」

 

ロリ軍団襲来先頭のなのはがトトトッ! と勢い良く走ってきたが

 

コケッ!

 

「へぷ……えう……ぐしゅ……ぐす」

 

全力でこけた。その目に涙が溜まって行く。やばい……今泣かれたら皆連鎖的に泣く。宥めようにも

 

「ガウー♪」

 

「にゃっ! にゃっ♪」

 

「ピトー」

 

「わん」

 

「動けないーっ!?」

 

左手はノーヴェががっちりホールド。背中にはディード。足元にはセッテ&犬耳のオットーとチンクが纏わりついていて動けない。蹴散らしていくわけにも行かない、かといって泣きかけているなのはも無視できない

 

「にゃーう♪ にゃうにゃう♪」

 

「ふぇいとにゃん……」

 

ぺちぺちとなのはの頬を叩く猫耳フェイトが慰めている。何とかその目にたまっていた涙は何とか戻った

 

「「たーやーしゃーん!!!」」

 

「ほぐうっ!?」

 

ちびスバル・ティアナの突撃を喰らい蹲ると

 

「「「あそぼー♪」」」

 

「お、おもい……」

 

いくら10歳未満の子供とは言え7人の一斉に圧し掛かられると重い

 

(あれ? 7人?)

 

7人と言う事に気が付きふと前を見ると

 

「えぐえぐ……にーしゃまはシグのにーしゃまなのに……」

 

シグナムがぽろぽろと泣いている

 

「はやてー! シグナム! シグナムを見てやってくれ」

 

「わかってる」

 

このままのマジ泣きに移行されたら困る。慌ててはやてがシグナムを抱き上げるが

 

「にーしゃま……にーしゃま……えぐえぐ……」

 

「あかん! 私じゃ駄目や!」

 

はやてが慌ててシグナムをこっちに連れて来る。背中にしがみ付いてるケモミミ娘とロリっ子を落さないように身体を起こし

 

「おいで」

 

「にーしゃま」

 

はやての手からこっちに来たシグナムを抱っこすると

 

「ガウーッ!!」

 

「にゃーッ!!」

 

ノーヴェの噛み付きとセッテの爪が私を襲う。痛い、尋常じゃ無く痛い

 

「わふ?」

 

「にゃー♪ にゃー♪」

 

抱っこして構ってと服を引っ張るチンクとフェイト更には

 

「だっこー」

 

「あい♪」

 

自分も抱っこしてくれと手を上げる、なのはとスバルだったが

 

「だーめ! にーしゃまはシグのー!!」

 

シグナムがその手を弾く。どうしようロリ化して我侭になってる

 

「ずるいー!!」

 

「いじわるー!!」

 

きゃいきゃいと騒ぐスバル達に遊んで・構ってと騒ぐケモミミ達も大変だ

 

「はい! はい!! ご飯出来たぞー!!」

 

かんかんとフライパンを叩くヴィータの声に

 

「「「「ごはんー♪」」」」

 

「「にゃー」」

 

「「わんわん!!」」

 

「にぱっ♪」

 

「ガウガウ♪」

 

ごはんと聞いて走っていくちびっ子&ケモミミ軍団を見ながら

 

「どうする。あれ?」

 

「どないしよか? シャマルおらんし」

 

どうも元凶であるシャマルは逃亡していない。とここでふと気付いた

 

「なぁ……今日リインフォース見てないし。アイギナ達も見てないし。ウェンデイとかは?」

 

そう言った時廊下から走る音が聞こえてくる

 

「……嫌な予感がするんやけど?」

 

「奇遇だな。私もだ」

 

「にーしゃまーっ!!!」

 

「おう? おうみつけたー♪」

 

「やるなーシャルナー」

 

「きゅうん♪」

 

突撃してくるロリリインフォースとちびっ子モードのアイギナとシャルナは仲良く手を繋いでいる。その後ろでクレアも同じくちびっ子になっているが狐耳が生えている

 

「……シャマル、処刑しないといけないかな?」

 

「これはちょっと度が過ぎてるな……お・し・お・きやね☆」

 

「にゃーッ!!!」

 

「……ぐ?」

 

ネコミミウェンデイと何の動物だか訳の判らない耳を生やしたトーレまでいる。シャマルは極刑を逃れる事は出来ないだろう

 

「かなしいな……家族が減るのは」

 

「そうやね……でも仕方ないね」

 

私とはやてはシャマルを処刑する事を心に決めていた。その頃シャマルは

 

「……遺書用意しておかないと」

 

自分に迫る死の脅威を敏感に感じ取っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ本当どうしよう?」

 

兄ちゃんがそう尋ねてくる頭の上には

 

「ぐ?」

 

トーレさんが陣取り、髪を引っ張ったり頬を叩いたりしているし

 

「おーう? あたまいたいの?」

 

「たいへん。くすりを……はわ!?」

 

アイギナが転んで涙目になっていたり……

 

「にゃーう!」

 

「にゃーっ!!」

 

「にゃ。にゃ」

 

喧嘩をするセッテとフェイトちゃんの仲裁をしているウェンディ

 

「わふ?」

 

「わんわん!」

 

「ガウガウー」

 

私達には理解できない単語で会話をする。チンクさんにオットーにノーヴェはころころと転がり。子犬の様な様相を呈している

 

「そー」

 

「うー!!」

 

なのはちゃんが兄ちゃんに近付こうとするとシグナムがうーと唸り警戒態勢は決して解く事無くしがみ付いている。

 

「にゅむー」

 

リインフォースは兄ちゃんの膝の上にちょこんと座り。ぐりぐりと頭をこすり付けている、こういう所を見るとリィンとの共通点が見れる

 

「あそんで♪」

 

「ボーリュ♪」

 

「あん? 私で良いのか?」

 

「「こくこく」」

 

スバルとティアナがヴィータに遊んでとじゃれついているのを見ながら

 

(これで何とか1日乗り切れればええんやけどなー)

 

今のところは平和に過ごせているが、元々私含め我が強い人間が多い。このまま無事に済めば良いのだが……

 

「「「たーやしゃーん♪」」」

 

「「「がうー♪」」」

 

「ぬおーーーー!?」

 

「ああ!? 兄ちゃんがちびっ子とケモミミーズに埋もれて消えた!?」

 

さっきからひそひそ話していた。ちびっ子達はどうやらこれを狙っていたようで一斉突撃で兄ちゃんの姿が消えた……

 

「がうがう♪」

 

「にゃーにゃーッ♪」

 

「たーやーしゃーん♪」

 

「ぐー♪ ぐー♪」

 

「にぱっ♪」

 

「にーしゃまー♪」

 

「おーう♪」

 

「あいたたッ!!!」

 

流石の兄ちゃんもあれだけのちびっ子&ケモミミーズに髪を引っ張られたり噛まれたりすると痛いらしい

 

「って見とる場合ちゃうな」

 

慌てて兄ちゃんを救出し。ボールや紙にクレヨンを渡しそちらに興味を向けさせながら

 

(まぁ将来に向けての勉強とでも思えばいいか♪)

 

私はそんな事を考えながら。チビシグナムとリインフォースに紙とクレヨンを手渡した

 

 

 

 

 

 

「「いきおくれー」」

 

「なんやて!!! 殺すぞ!!! がきども!!!」

 

私を指差してそう言うなのはとティアナに手を伸ばしたところで

 

「おちつけ! 子供の! 子供のいう事だから!!」

 

兄ちゃんに羽交い絞めされ動きを拘束される

 

「まぁまぁはやて、子供の……「「いきおくれー」」……ああ?」

 

ヴィータも指差しされそう言われ顔に青筋が浮かんでいる。そこでふときづいた

 

(何でいきおくれなんて言葉を知ってるんや?)

 

私達の事は知っているが知識は外見通りとうていいきおくれなんて言葉を知ってるとは……

 

「くすくす……面白いね」

 

そんな声がしヴィータと一緒にその声がした方を見ると。忍び笑いをしているスカリエッティがいた、どうもやつが入れ知恵したようだ

 

「「スカリエッティーッ!!!!!」」

 

「しまった? 見つかったー!!!」

 

逃げる白衣のド馬鹿を私とヴィータは全力で追いかけ始めた……

 

 

 

「ふみゅ?」

 

「よしよし。良い子、良い子」

 

鬼神の表情でジェイルを追いかけて行った、あと少しで外から地響きと共に奴の悲鳴が響き渡るだろう

 

「ギガントシュラークッ!!!」

 

「ラグナロクブレイカーッ!!!」

 

「ぎゃああああああああッ!!!!」

 

断末魔のその雄叫びにビクンと肩を竦める、ちびっ子の頭を撫でていると

 

「むにゅむにゅ……」

 

しきりに目を擦り始める。そろそろ元に戻る兆候が出始めている者の姿もある。そろそろ眠りに落ちるだろう

 

「うお!?」

 

「ふみゅー」

 

セッテがごそごそとコートの中に潜り込んで来て。ひしっと抱きつき動かなくなった。耳を澄ますと寝息も聞こえてくる、これでセッテは脱落だろう

 

「ねみゅい……」

 

「はふ……」

 

欠伸を繰り返すなのは達は睡魔に負けたのかコロンと寝転がり。すーすーと寝息を立て始めているのを見ていると

 

「か……かしんある……にゃたしがー」

 

「ねみゅきない……ねみゅきにゃい……」

 

「すぴー」

 

睡魔と格闘しているアイギナとシャルナの足元でクレアは既に寝転がり眠りに落ちている。その気持ち良さそうな寝息につられたのか既に睡魔に徐々に負け始めているのが判る。もう時間の問題だろう

 

「がーう……がーう」

 

「わふう……」

 

大きく欠伸をするノーヴェとチンク、その足元では丸くなっているオットーに寄り添うように眠るディードの姿がある。このまま睡魔と格闘しているのも見るのも何なので私はゆっくりと子守唄を歌い始めた……

 

「む? にゅう……」

 

最初はその子守唄に抗う素振りを見せたがすぐに丸くなり眠りに落ちる、穏やかな寝息を立てるちびっ子とケモミミを見ていると

 

「ぐー」

 

「!? ぬお!? ま、前が!?」

 

頭の上に居たトーレが顔にしがみ付いて眠ってしまい、前が見えなくなる。しかも外見は非常に可愛らしいがパワーは間違いなく戦闘機人、引き離す事も出来ない

 

「兄ちゃん? なにしとるん?」

 

「はやて、引き離せないんだよ!!」

 

「あっ。そっか……パワーは元と同じなんだ」

 

気付いたヴィータが後ろに回りトーレを引き離してくれる。その事に安堵しながらコートの中のセッテを引きずりだし

 

「よし、皆寝てるし部屋の運んでやろうか」

 

「そうやね」

 

そう言って眠っているシグナムを抱っこするはやてとそれぞれの部屋に運んでやりながら

 

「これ、明日になったらみんな覚えてるかな?」

 

「どうやろなー。案外忘れとったりして」

 

「覚えてたら、覚えたらで大変な事になりそうだけどなー」

 

と3人で笑いながら全員をベッドに寝かせ

 

「さてと……夕食だが、どこかに食べに行くか?」

 

「それもええねー」

 

「偶にはいいよな」

 

そう笑うはやてとヴィータをつれて私達は六課を後にした……

 

 

 

翌朝

 

私とはやての机の上に手紙があり。中を開けると

 

「「暫く探さないで下さい」」

 

「……家出してしまったぞ?」

 

「覚えてたんやね。まぁその内帰ってくるって」

 

 

 

 

 

なのは&フェイト

 

「ねぇ。フェイトちゃん……私死にたいくらい恥かしいよ」

 

「うん。私もだよ。なのは……」

 

なのはとフェイトは海鳴のアリサの家で黄昏ていた

 

「どうしたのよ? なのは、フェイト」

 

その様子が気になりたずねて来たアリサに事の顛末を話した、2人は

 

「ぶはっ!! はっはははは!! げほっ! ごほっ!!」

 

噎せ返るまで笑われた2人は

 

「「笑わないで!!!」」

 

涙目でそう叫び、気持ちの整理がつくまでの2日間。アリサの家の一室を占拠していた

 

 

ナンバーズ

 

 

「なートーレ姉。いい加減でて来いよー」

 

「拒否する。ほっておいてくれ」

 

元家である。洞穴の奥の研究室に閉じこもってしまったトーレを何とかそこから出そうと、姉妹全員で説得を試みていたのだが、全く効果なし

 

「どうするよ? チンク姉」

 

「どうと言われてもな」

 

私たちも随分と恥ずかしい事をしてしまったが。まぁそう言うのも偶には良いかと割り切っていたのだが。トーレはそうもいかなかったらしい。恥ずかしいとか言って部屋に篭って出て来なくなってしまった

 

「まぁもう少し様子を見ましょうか」

 

「そうだな」

 

こうなれば根競べだ、全員で毎日毎日話しかけトーレが折れるのを待つことにした……

 

 

 

 

夜天の守護騎士

 

 

「死にたい……」

 

「私もだ……」

 

体育座りでリビングの一角を占拠している。シグナムとリインフォースに

 

「まぁ良いではないか。龍也殿は気にしていないぞ?」

 

ヴェロッサと共に八神家を護る、影の薄いザフィーラはそう笑うが

 

「……うるさい……あんなことをして、どんな顔をして兄上に会えというのだ」

 

「全くだ……」

 

はぁぁぁっと深い溜息を吐く2人にザフィーラは

 

「まぁ、落ち着くまで居れば良いが。あんまり深く溜息を吐かないでくれ。こっちまで気落ちしてしまう」

 

ザフィーらはそう言いながら、いつもの様に家の掃除と草刈を始めていた。

 

あまりやる事のない盾の守護獣は立派な家政夫にへと進化していた……

 

 

 

スバルとティアナ

 

「ねーまだやけ食いするのー」

 

「うっさい!! 奢って上げてるんだからありがたく食べなさい!」

 

ティアナは自分が子供化した時の余りの醜態に耐え切れずスイーツバイキングの食べ歩きを繰り返していた、付き添いにパートナーのスバルを連れて

 

「体重増えるよー? 良いのー?」

 

スバルはきっちりと出されたトレーニングをこなしているが、ティアナは食べてないときは落ち込んでおり、暫く碌にトレーニングをしていない

 

「良いの。カロリーを蓄えて暫く山の中でトレーニングするつもりだから」

 

「へー、それは凄いねー」

 

「何言ってるのよ。あんたもよスバル」

 

「へっ?」

 

突然の指名に驚くスバルにティアナは

 

「山の中で新魔法を作るのよ、そうでもしないと……あの醜態は忘れられないわ」

 

「そっか……じゃあ私も何か新しい戦い方でも考えようかなー」

 

そしてこの店を最後に2人は、ベルカ自治区の森林で暫く自主トレーニングだけの毎日を繰り返し。3日後には六課の寮に戻ってきたそうです……

 

 

天雷の騎士

 

「何と無様で愚かしいことを……」

 

「流石の私も……こればかりは」

 

王と顔を見合わせるのが気まずいと暫く部屋に篭りきりのアイギナとシャルナにクレアは

 

「この場合、獣化で良かったですね」

 

ただ甘えただけのクレアと舌足らずの言葉と本能的に甘えてしまった。アイギナとシャルナの心理的ダメージは深刻だった。それも暫く再起不能になるレベルの

 

「まだ2人は部屋の中か?」

 

「はい。どうも随分と参っているようで」

 

龍也にそう尋ねられたクレアは困ったようにそう言った、同じ使命を持つ同僚が何時までも引き篭もりというのはクレアにとっても良い物ではない

 

「今度の夕食の時にこの手紙を一緒に渡してやってくれ」

 

「これは?」

 

「また騎士として頑張ってくれ。期待していると書いてある」

 

その言葉を聞いたクレアは

 

「それはいいですね。2人もまたきっと元気を取り戻すでしょうね」

 

「迷惑をかけるが頼む。クレア」

 

「お任せ下さい♪ ちゃんと届けておきますから」

 

そして翌朝からアイギナとシャルナは何時にもまして。張り切って仕事をしたそうです

 

 

正月記念特別編 ロリケモぱにっくぅ?

 

 

 




久しぶりにかなり悪乗りした番外編を作りましたが。実に良かったです、やはりこういうのを書いてるときの方が楽しいと思います
またネタが集まり次第こういう番外編を書こうと思います。それではこれからもどうか宜しくお願いします


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正月記念番外編 黒衣を好むのは何故ですか?

どうも混沌の魔法使いです。今回の番外編は続編の「宵闇の使者」に繋がる話となっています。

少々短いですが、どうか宜しくお願いします


 

 

正月記念番外編 黒衣を好むのは何故ですか?

 

「にーさまは何でいつも真っ黒の服なの?」

 

すべての始まりはリヒトのこの一言だった。

 

「どうしたんだ? 急に?」

 

突然の事に困惑する私にリヒトは

 

「にーさまは黒い服も似合ってるけど何でいつも黒しか着ないのかな? って気になったの♪」

 

「気にするようなことか?「「「「気にするようなことだよ!!!」」」」うお!? なんだ、どうした?」

 

突然声を揃えてそういうはやて達に驚いていると

 

「にーさまが黒い服が好きなのって何で?」

 

リヒトがにこにこと笑いながら尋ねてくる

 

「まぁ別にどうでも良いことじゃ……「「「「ないです!!」」」」……なんでさ? 別にいいだろうよ? 私が黒一色でもさ」

 

服なんて着れればいいだろう? と言うとリヒトは

 

「じゃあ、黒じゃなくても良いんじゃないの?」

 

「むっ……まぁそうなんだが……黒い服には個人的な思い入れもあるし……」

 

思わずそう言ってしまった。するとはやてが

 

「思い入れって何?」

 

「気になりますねー。教えてくださいよ」

 

どうも今の一言ではやて達の興味を惹いてしまったようだ。

 

「いや、別に対した事じゃないし。気にするようなことでもないぞ?」

 

この話は出来ればしたくない、だからそう言うと

 

「じゃあ、話してくれてもいいじゃないですか。私達も気になってたんですよ、どうしていつも龍也さんは黒い服ばっかなのかなー?って」

 

気がつけば、両サイドは抑えられてるし。逃げるのも難しい場所に追いやられている

 

「あー判った、判った。話せばいいんだろ? 話せば」

 

こうなれば、私に退路は無い。はやて達やリヒトが知りたいという。私が黒衣を好む理由を話すまで拘束され続ける、それが判ったから私は観念し話し始めた。

 

 

 

「あんまり言いたくは無いんだが、私が魔導師になったばかりの時。1度ネクロに殺されかけている」

 

その余りに信じがたい。言葉に思わず目が点になる

 

「ハーティーンが戦ったネクロ。ズィードが原因で並行世界の扉が開いた事があったろ? その時にどうも過去に移動したネクロが、何体かいたみたいだな。」

 

龍也さんは思い出すように、どこか遠くを見ながら

 

「突然幼い神王だの。怨敵だの言われたときは酷く困惑した……今思えばあのネクロ達は歴史を変えるために私を探していたんだろうな」

 

龍也さんの推測は正しいだろう。ネクロ事変の中心人物であり、もっとも多くのネクロを倒した。龍也さんがいなければここにいる何人かは既に故人か、ネクロ化させられているだろう。

 

「LV1とLV2は何とか、相打ち同然に倒したんだが……LV3にばっさり右肩から斬られてな。あの時は死んだと思ったよ」

 

確か龍也さんが魔導師になったのって……12歳くらいだった筈。

 

「あの? その時の龍也さんって碌に魔法使えませんでしたよね?」

 

思い出しながら私が訪ねると龍也さんは

 

「ああ、使えたのはプロテクションと簡単な治癒に……身体強化くらいだな」

 

「そ、それでどうやって、ネクロ倒したんですか!? 砲撃も射撃もなしに倒せるものんですか!?」

 

そう尋ねられた龍也さんは、凄く言いにくそうに

 

「あー、いや言ったろ? 相打ちって? こう噛み付いてきたネクロの口に腕突っ込んで……魔力を暴発とかさせてな? 確か倒した時。腕が「「「聞きたくない! 聞きたくないです!!!」」」

 

龍也さんの声を遮ってそう叫ぶ。暴発って簡単に言うけど……下手したら腕が捻れ切れてもおかしくない。

 

「それでLV3に切り裂かれて。意識を失いかけた時……誰かに助けられたんだ」

 

「誰かって? 誰ですか?」

 

「さぁな? 覚えているのは……火の様な紅い髪をした。黒い服の何者かだったと言うことだけだ」

 

龍也さんは会えるなら礼を言いたいんだがね? とにこやかに笑いながら

 

「そういう時に見た物と言うのは、酷く印象に残る物だ。だから私は黒い服が好きなんだ、銀髪にもよく映えるしな」

 

からからと笑う龍也さん。どうもその命の恩人が酷く印象に残ったのだろう

 

「でも、ネクロを倒すなんて……よっぽど屈強な男性だったんですね」

 

「? 何を言ってるんだ? 私を助けてくれたのは女性だったぞ?」

 

はい? 女性? 龍也さんの話を聞いていた全員がまさかと言う顔になる

 

「今思っても綺麗な人だったな。一瞬しか顔は見なかったが……とても綺麗な人だったよ」

 

え? まさかのその人が龍也さんの初恋の……? 聞きたいが聞けない。全員が口を開きかけて閉じるを繰り返している。気を落ち着けようと紅茶を飲もうとして

 

「その人が、にーさまの初恋の人なの~?」

 

「「「ばふう!?」」」

 

リヒトがにこにこと笑いながらそう尋ねる。そのあまりの発言に思わず噎せ返る

 

「だ、大丈夫か?」

 

激しく咳き込んでいると龍也さんが心配になったのか、そう尋ねてくる。私達は

 

「だ、だい……じょう……ぶです」

 

何回か深呼吸を繰り返していると、リヒトが

 

「やっぱり、その人が初恋の人なの?」

 

どうも、それが気になっているようで。ねっねっ? と尋ねるリヒトを龍也さんは抱っこしながら

 

「ははは、残念ながら。それは違うな、私の初恋はもっと別の人だよ」

 

笑いながらリヒトの頭を撫でている。微笑ましい光景だが、私達の興味はもっと別の所にあった

 

((((じゃあ、龍也さんの初恋って誰なの?))))

 

想い人との初恋の人が誰なのか……それが、凄く気になって

 

「じゃあ……龍也さんの……「龍也! 郊外の閉鎖になっている。研究所にネクロの反応があった。それにその地区の民間人が100人、その研究所に連れ込まれた。急がないと不味い事になる」

 

スカリエッティさんが走って来ながら、慌ててそう告げる。

 

「そうか、出動だな」

 

もう今までの優しい龍也さんの笑みでは無く。魔導師としての鋭い眼光の龍也さんは抱っこしていた、リヒトを下に降ろして

 

「チームを2班に分けるで、同時に街中に転移してくる場合もあるから」

 

はやてちゃんも思考を切り替えて、素早く指示を飛ばす

 

「兄ちゃんとスターズは研究所に。チンクさん達とライトニングは周囲の警戒、ネクロの同時襲撃に気をつけてな」

 

「「「「了解!」」」」

 

そして私達は六課を後にした……

 

 

 

六課メンバーがクラナガンの各地に散っている頃……

 

 

クラナガンの裏路地を歩く、1人の男の姿……黒のタキシードと紅いマント……そして美しい金髪と目立つ格好に関わらず。誰も彼を呼び止めるものはない、ある一角で立ち止まったその男は闇を見つめながら

 

「何の御用ですか? フリスト?」

 

闇が弾け中から非常に巨大な異形が姿を見せた。その異形の肩には獣型のネクロの姿があった

 

「決起の時は近い……使命を果たせ……ランドグリーズ」

 

「やれやれ、態々呼び出してそれですか? 折角友人との食事を楽しんでいたと言うのに」

 

肩を竦めるランドグリーズと呼ばれた男は

 

「きっちりとネクロの素体は送っていますし、私達の正体に気付いた者もきっちり処分をしています。態々言いに来ないで下さい」

 

「わかって……いるなら良い。 ではな……」

 

現れたときと同じ様に消える異形を見ながら、ランドグリーズと呼ばれた男は。振り返りに背後の闇に向かって

 

「シャドウ、ガイル、スペクター。良い機会です 六課の魔導師と戦ってみてください。ただし……危険を感じたら撤退する事。いいですね?」

 

臣下の礼を取ったネクロ達の姿は、全てバラバラで統一性がない。そんなネクロ達に友を見送るような優しい目付きで見ながら、ランドグリーズは指示を出した

 

「「「はっ!」」」

 

その指示を聞いて散会する3体のネクロを見ていた。ランドグリーズだったが

 

「ヴァーん! ヴァン! どこー!?」

 

「ヴァン! どこだ! 早く避難するぞ!!」

 

「ヴァンの兄貴! どこだ! どこにいるんだよ!!」

 

慌てた声が裏路地に響いてくる声を聞いた、ランドグリーズはマントで自身の体を覆い隠すと次の瞬間には、高価ではないが洒落たスーツに姿に黒髪をオールバックにした青年の姿になり

 

「おーい! ここだーここだー! 今行くぜー!」

 

手を振りながら声がした方に走り出す

 

「よかったー、ヴァン。 はい帽子」

 

「おう、大丈夫だぜ。サンキュー! レオ。 やーやっぱ俺にはこの帽子だ」

 

黒い帽子を被ったランドグリーズに駆け寄った、3人は

 

「ったく。エセ紳士なんだからちゃんと帽子くらい持ってろよ。フォーゲル」

 

「なははー♪ 悪戯な風に言ってくれ。毎回飛ばしてくれるなってさ♪」

 

2人の肩に腕を回して笑いかけながら

 

「さーこのままだと、危ねえ。とっとと管理局の人間に保護してもらおうぜー」

 

そう笑う、ランドグリーズ……いや、ヴァン・フォーゲルは3人を先導し歩き出し。

 

「あっ! 八神大将だー」

 

「おっ、ついてるなー。レオ、お前八神大将のファンだもんな」

 

べヒーモスに乗って郊外に向かう龍也を見て、笑うヴァンと龍也の目が一瞬合うが。そのまますれ違う、その様子にヴァンはにやりと笑い

 

「いやー今日はついてるなー、さーこの運の良さを生かして。今回もネクロにみつからねえ内に逃げようぜー♪」

 

にゃにやと笑い。ヴァン達は近くの管理局員の車に乗り込み。

 

(ふふふ……いずれまたお会いしましょう……神王陛下)

 

 

 

誰も知らない所で闇はゆっくりとクラナガンにと忍び寄っていた……

 

 

正月記念番外編 黒衣を好むのは何故ですか? 終り

 

 

 




黒い服を龍也さんが好む理由とクラナガンに潜むネクロの存在と言うのが、今回の話のテーマでした。
面白かったなら良いのですが、それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします


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【超☆融☆合 ~世界を超えた出会い~】 プロローグ

どうも混沌の魔法使いです

今回はGMS様を始め。遊戯王の小説を書いている皆様に誘われて
遊戯王のコラボ企画に参加しました。 私自身はあんまり書いていませんが
また遊戯王をやりたいと思うだけの経験が出来ました。

それでは今回もどうか宜しくお願いします


「つまらないなぁ。何か面白いことはないかなぁ。」

 

 一人の女性が何処までも何処までも続く本棚が立ち並ぶ場所に一人の女性がいた。その女性は黒髪のロングでルビーのような真紅の瞳に黒いメガネをかけている。彼女の名前は愛菜、またの名をナイアーラトテップ、ニャルラトホテプ、ニャルラトテッ

 

プ等と呼ばれる邪神だ。

 

 彼女は今、本当に暇であった。今、一番興味を持っている人物であるデュエリストの観察もそれなりには楽しい。だが、本来は滅びを求めるのを改心して耐えている彼女を満足させるのにはそれだけでは足りないのだ。そんな彼女は椅子に深く腰掛けな

 

がら考え込んでいた。

 

「僕は暇はすきじゃないんだよねぇ。どうやって暇をつぶすとするか……」

 

 そんな彼女は暇をつぶす為の事を考えていた。そこで、自身の各世界の化身の様子を見てみることにした。

 

「ふむ、こうやって見てみるとデュエリストっていうのは本当に面白い人物が多いね。」

 

 彼女が見ていっている世界は彼女が今、一番興味を持っている人物がいる世界は当然として8つの世界を見ていった。

 

 1つ目は繰り返し言うことになるが彼女が一番興味を持っている人物である九十九 遊馬こと光導 遊夜の世界だ。

 

 2つ目はその光導 遊夜の仲間の存在する幻想郷のある世界。

 

 3つ目は同じく幻想郷は存在するが光導 遊夜の妻の一人であるルーミアがかつて行った魔法少女リリカルなのはの世界の人物が混じっている遊戯王GXの世界。

 

 4つ目は【サイバー・ダーク】と【炎王】というデッキを使う人物が中心となっている遊戯王GXの世界。

 

 5つ目は《地縛神》と呼ばれる神を仲間にしたダークシグナーである人物、それに取り憑いているもう一人の人物を中心としている遊戯王GXの世界

 

 6つ目は光導 遊夜とその妻のルーミアとフランドール・スカーレットが訪れたことのある剣崎 侑斗という人物が中心となっている遊戯王ZEXALの世界。

 

 7つ目はISと呼ばれる女性にしか乗れない兵器を何故か乗れる男性が中心となっているインフィニット・ストラトスの世界だ。ただし、普通のインフィニット・ストラトスの世界ではなく4つ目の世界の住人がこの世界に訪れ、デュエルモンスターズ絡みの事

 

件を解決したという過去が存在する。

 

 そして、8つ目は自身さえ圧倒しかねない実力者である八神龍也と呼ばれる人物と魔法少女リリカルなのはの世界の人物が存在するインフィニット・ストラトスの世界だ。

 

「あはは、いい事を思いついた!これだよ、僕の求めていた愉悦は!!」

 

 その8つの世界を見た愛菜は本当に愉快そうに笑うと2枚のカードを取り出す。

 

「これだけ興味深い人物がいるんだ。それを一箇所に集めたらどんな事に最高におもしろいいじゃないか。」

 

 そうして邪悪な笑みを浮かべた愛菜はまず1枚のカードを掲げると宣言した。

 

「フィールド魔法発動!決闘世界―ご都合主義空間―!!」

 

 それと同時にひとつの世界が作られる。それは彼女の言った通りご都合主義の塊である世界だ。本来の時間軸とは切り離され、どんなご都合主義さえ起こせる。例えばZEXALは皇の鍵や異空間の中でしか出来ないがこの空間ではそんなことは必要

 

ないというご都合主義が展開される。例えばどんな異能力者であろうとデュエル以外で敵を傷つけることが出来ない。元の世界とは影響しあうことも影響しあわないことも出来る。まさしくご都合主義の世界だ。

 

「更に続けて超融合を発動!8つの世界のデュエリスト達をこの世界へと部分的に超融合!!

 そして、そのデュエリスト達を呼び出す!」

 

 そう、愛菜が行った瞬間にそれぞれの世界のデュエリストの一部がその世界より姿を消し、そしてその分身がその世界へと現した。

 

 

 

「……不思議な経験だな。全く」

 

ネクロとの戦いを終えて六課に帰ろうとした矢先の事だった。突然何かを感じたと思った瞬間、私はここに居た。見覚えの無い人間に紛れ見知った顔もたまに見るが、気配が違うので別人だと判る。どうした物かと考え込んでいると

 

その背後に巨大な愛菜の幻影がその姿を現す。

 

『やあやあ、お集まりの8つの世界のデュエリスト諸君。僕は愛菜と言う。この舞台を用意したいつもニコニコ君たちの隣に這い寄る混沌だ』

 

ニコニコ這い寄る混沌? ニャラルトホテプか? 一瞬ネクロかと思ったが、気配が違ったので愛菜と名乗った人物(?)の話に耳を傾ける

 

『ようこそ、僕の創った世界で。此処には8つの世界、7つの物語の人物を集結させた。

 此処で君たちに存分にデュエルを楽しんでもらいたい』

 

「………つ、創った世界?8つの、7つの……?そして、デュエルっていうと……」

 

 ほとんど何を言っているのかという疑問しか浮かばない。それはそうだ。しかしそんなのは知ったことはないとばかりに、そのまま話を続ける。

 

『何、元の世界とこの世界の君たちはリンクはしているが此処はご都合主義空間だ。元の世界に戻れば元の時間軸に戻るし、本来は特別な空間で無いと出来ないことも出来る。

善も悪も光も闇も聖も邪も関係ない。楽しんでデュエルをしてくれるといいよ。僕はそれだけで満足できるからね。それではアディオス!』

 

 

「善も悪も? ネクロとかいないよな?」

 

念のために気配を探るが、ネクロの気配は無い。その事を確認してから

 

「デュエル……遊戯王か」

 

コートの中からカードの束を取り出す。最近ミッドで流行り始めているカードでエリオとかリヒトが遊んでくれ。遊んでくれと言うので買ってみたのだが、意外と面白く今では色々とカードを買い漁るようになっている

 

「まぁ偶には……いや。いかんいかん……」

 

一時的にとは言え気を緩めるのは良くない。私の世界で気の緩みはそのまま死を意味する、一瞬緩みかけた気持ちを締めなおそうとはしたが……

 

「息抜きも必要か」

 

張り詰めていつかは破裂してしまう。気分転換は必要だなと思い。私はあちこちでデュエルを開始した者達を見ながら、対戦相手を探して移動を始めた

 



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【超☆融☆合 ~世界を超えた出会い~】 第1話

第1回目はGMS様との小説とのコラボです!

龍也さんがインフェル二ティを使っていますが、突っ込みはなしでお願いします
それではどうか宜しくお願いします


「ふむ、見た事のある顔や同じ顔が幾つか存在するな。」

 

 遊馬は歩いている中で見たことのある人物や並行世界の同じ人物を見つけたりしていた。例えば、平行世界の自身らしき人物やヴィヴィオらしき人物と言った顔は同じだが全く違うオーラを放つ人物、顔も雰囲気も全く似ている知り合いの平行世界の人

 

物、それに侑斗などといったかつて出会ったことのある平行世界の人物にも出くわした。

 

「愛菜も派手にやるじゃないか。ま、巻き込まれた人達は残念としか言えないが俺としては面白いな。」

 

 同じ顔でも世界によっては違うデッキを使ったりする。その中には遊馬も見たことのないカードや同名異効果のカードなどが存在している。それにいろんな世界の人物が来ているせいか自身の時代では禁止カードである強欲な壺などを使っている光景

 

も見れたりしてる。

 

「ふむふむ、平行世界のルーミアとかも存在するが俺の世界とはちょっと変わってたしな。

 本当にいろんな世界のデュエリストがいるだけあって本当に面白いな。」

 

 遊馬は自身の嫁であるルーミアとフランの並行世界の存在を先程、見たことも思い出したりしていた。ルーミアは遊馬の知っているルーミアとは決定的に違って大人状態になることが存在しないルーミアだったり、フランは狂気が遊馬の知っているフラン

 

とは別方向のものだったりしている。

 

「ま、一番驚いたのは俺の故郷の幻想郷のメンバーも来ていたことか。」

 

 そう、何よりも遊馬が驚いたのは自身の世界の幻想郷メンバーが来ていたことだ。幻想郷のメンバーはOCG効果やアニメ効果の両方を混ぜたデッキであるために強力なデッキを持ち、その上でデッキを使いこなしているためにかなり強いデュエリスト

 

が殆どだ。フランやルーミアは当然とし、一部では⑨と馬鹿にされているチルノや霊烏路 空もかなりの実力者だ。

 

「本当に楽しみだ。そうは思わないか、そこの魔法使いさん?」

 

 遊馬は後ろを振り向きながら目の前の相手に声をかけた。その人物はこの愛菜の創った世界の中に存在する気配の中で最上級の力を持つのは間違いないと肌で感じさせる程の力を持っている人物であった。完全に気配を消していた、だがそれでも気

 

配が消えすぎているからこそ分かる違和感を感じた遊馬は後ろ振り向きながら声をかけたのだ。

 

「私の気配遮断を見抜くとは……」

 

「気配遮断は完璧だった。いや、完璧すぎてそこに無を感じたからわかったんだ。」

 

「成程、それが分かるまでの実力者だったか。」

 

 そこにいたのは黒いコートに銀髪、右目に傷と目立つ容姿の青年だ。だが、遊馬が注目しているのはその容姿ではなく中身だ。その体の中で渦巻く魔力、それは遊馬の右目の《背徳の瞳》が宿す魔力に匹敵、いやそれ以上かもしれないと遊馬は感じて

 

いた。

 

「ああ、これくらい分からなきゃもうすでに死んでるしな。」

 

「ほぅ、随分な環境で生きてきたみたいだな。」

 

「ああ、何度も死にかけているし死にそうな戦いに慣れるくらいにはな。」

 

 そう言葉を掛け合う二人の間には無の空間が生まれる。それは鋭い力と力がぶつかり合う直前の静けさそのものだ。互いのその気迫の激しさに世界が侵食されているかのような雰囲気さえ感じられる。

 

「本来は嗜む程度なのだが……やろうか。」

 

「ああ、やろう。此処で話をするならデュエルでするべきだ。」

 

「俺は九十九 遊馬、お前は?」

 

「私は八神 龍也だ、行くぞ!」

 

 互いが何を考えているか、強者同士である二人は察し、互いのデュエルディスクを構える。遊馬は相手に合わせてソリッドヴィジョンモードに変更してだ。

 

「「デュエル!!」」

 

4000vs4000

 

【推奨BGM:ナンバーズをかけたデュエル】

 

「先行は貰う、俺のターン!俺は手札から手札断殺を発動!

 互いに手札を2枚墓地に送り、デッキからカードを2枚ドローする!」

 

 遊馬は先手必勝とばかりにカードを動かすためにまずは墓地肥やしを行う。その墓地に落としたカード、それを礎として遊馬は一体のモンスターを召喚する。

 

「俺は墓地のダークストーム・ドラゴンを除外し輝白竜ワイバースターを特殊召喚!」

 

「(ダークストーム・ドラゴンにワイバースター、相手のデッキは【カオスドラゴン】か?)」

 

「【カオスドラゴン】か、良い読みと言いたい所だが違うな。」

 

「ッ!……成程、心を読めるのか。」

 

「安心しろ、手札もデッキの内容も読んではいない。ただ、警戒してくる相手に素直にデュエルする程俺はもう甘くはないんだよ。」

 

 遊馬は《心を読む程度の能力》で読んだ思考を口にすることで動揺を誘う。だが、その程度では動揺しなく驚きこそするものの龍也はすぐに冷静になる。それを見た遊馬は念のためとばかりに言葉を付け加えるとプレイングを続ける。

 

「(手札断殺のドロー……まだ、どのドローも使う必要はないか。)ドロー!

 更に終末の騎士を召喚!その効果によりデッキから堕天使スペルビアを墓地へ。」

 

「(堕天使スペルビア……成程、【闇属性】か【ダーク】にカオス要素を入れたといったところか。)」

 

 遊馬が行った行動で龍也は自身のデッキ分析を改め、遊馬のデッキを性格に見抜く。遊馬は内心で流石だとその読みを感心しながらも此処まで情報を漏らせばそれも当然かという考えも抱く。

 

「まずはコイツだ!俺はレベル4のワイバースターと終末の騎士でオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

                    39

 

「エクシーズ召喚!現れろ、№39 希望皇ホープ!!」

 

「ホープ……成程、確かに初手にはぴったりなモンスターだ。」

 

「まあ、初手にはだがな。俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

 遊馬は希望皇ホープの召喚に続けてカードを2枚伏せるとターンを終える。それに続くように龍也がデッキに手をかけるとカードを引き抜く。

 

「私のターン、ドロー!礼を言わせてもらおう、私の手札も手札断殺のお陰で潤ったぞ。

 まずはマジックカード バレット&カートリッジを発動!

 このカードはデッキの上から4枚のカードを墓地に送ってからカードを1枚ドローする!」

 

【カートリッジ、ロード!!】

 

 カシャンカシャンという音と共に龍也のデッキトップのカード4枚が吹き飛ぶと墓地へと流れこむ。その後、デッキトップのカードを龍也がドローすると空となった薬莢がデッキトップへと放置される。

 

「その後、このカードはデッキトップへと置かれるがこの効果でデッキトップに置かれたこのカードをドローした場合はこのカードは墓地に送られる。」

 

「クールタイムを挟まないと発動できないってわけか。」

 

「その通り、そのためにデッキに戻して時間を置かせてもらおうか?

 私は終末の騎士を召喚!効果の説明は不要だな、私はデッキからヘルウェイ・パトロールを墓地に送る!」

 

 遊馬も召喚した終末の騎士、それによって墓地に送られたのは地獄の警察であるヘルウェイ・パトロールだ。ヘルウェイ・パトロールは地獄の警察であるが故、墓地でこそその真価を発動させる。

 

「更に墓地のヘルウェイ・パトロールの効果を発動!

 ヘルウェイ・パトロールを除外し手札から攻撃力2000以下の悪魔族モンスターを特殊召喚する。

 来い、インフェルニティ・ネクロマンサー!!」

 

「【インフェルニティ】!しかもネクロマンサーということはその手札!」

 

「当然だ、私は4枚のカードを伏せる。これにより……ハンドレスの完成だ。」

 

「ハンドレスコンボ……インフェルニティの真骨頂を1ターンで完成させてくるとはやはり強敵、そうでないと面白くない!」

 

 ハンドレス、それは手札0という本来ならば危機的状況だ。だが、それは【インフェルニティ】に限っては話が違う。【インフェルニティ】にはハンドレスコンボや無手札必殺・零式(ハンドレスコンボ・ゼロ)というとある世界の伝説のデュエリストが行ったコンボ

 

があるようにハンドレスでこそ活躍するのだ。

 

「シグナム達と同じ戦闘狂か、はやてみたいな魔王体質よりはマシだろうが……

 まあいい、私はインフェルニティ・ネクロマンサーの効果発動!

 ハンドレスの場合、墓地よりインフェルニティを蘇生する!

 私が蘇生するのはインフェルニティ・デーモンだ!」

 

 煉獄の死霊術師によって墓地より呼び出されたのは煉獄の悪魔 インフェルニティ・デーモンだ。インフェルニティ・デーモンはその悪魔の力により煉獄のカードをデッキより呼び出す。

 

「更にハンドレスの時、インフェルニティ・デーモンの特殊召喚に成功したことによりデッキからインフェルニティと名のついたカード、インフェルニティ・ブレイクを手札に!

 更にインフェルニティ・ブレイクを伏せる。」

 

 カードを更に伏せ、魔法・罠ゾーンを埋め尽くすと龍也は2体のモンスターに手を出し、それをエクシーズ素材としてエクシーズ召喚を行う。

 

「私はレベル4の終末の騎士とインフェルニティ・デーモンでオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 満たされぬ魂を乗せた方舟よ。光届かぬ深淵より浮上せよ!」

 

                    101

 

「エクシーズ召喚!現れろ、№101 S・H・Ark Knight!!」

 

 中心部に赤い人型のコアのようなものが存在している白と青の巨大戦艦がその姿を現す。その巨大戦艦の前方には刺のようになっている部分がコアを囲むように左右に2つ、下に1つ存在している。そして、その後方にはヒトデか何かをイメージするよう

 

な形で棘が存在している。

 

【BGM変更:バリアンズ・フォース】

 

「№101!?」

 

「私はS・H・Ark KnightのORUを2つ使い効果発動!

 相手フィールド上に存在する特殊召喚された表側攻撃表示モンスター1体を選択し、そのモンスターをORUとして吸収する!エターナル・ソウル・アサイラム!!」

 

 S・H・Ark Knightの右の方の尖っている部分の下の箇所が開くとその中から鎖がホープに向けて放たれるそ。その鎖は目の前に存在していた2つのORUを破壊し、ホープにたどり着きそうになった所で聖なる光を放つ衣が現れると希望皇ホープはその

 

衣を使ってヒラリと鎖をいなす。

 

「それを通すか!俺は速攻魔法 禁じられた聖衣を発動!

 希望皇ホープの攻撃力を600ポイント下げ、効果の対象にさせなくする!」

 

№39 希望皇ホープ 攻撃力2500→1900

 

「躱されたか。(伏せてあるバリアンズ・フォースもまだ発動するべきでは無いだろうな。)

 ならば、ホープのORUだけでも削らせてもらう!バトルだ!!

 私はS・H・Ark Knightで希望皇ホープを攻撃!ミリオン・ファントム・フラッド!!」

 

 それを見てすぐに行動を攻撃へと移した龍也の命令でS・H・Ark Knightは何発ものエネルギー弾をホープに向けて放つ。龍也はホープがその効果であるムーンバリアを使うことでその攻撃から身を守ると判断した。だが……

 

4000-(2100-1900)=3800

 

「何!?効果を使わないだと!!」

 

「ああ、効果は使わない!だが、トラップ発動!カオス・トライアル!!

 このカードは№が戦闘によって判断した破壊される時に発動できる!

 デッキの上から破壊される№のランクと同じ枚数だけカードを墓地に送る事でその破壊を無効にし、デッキからカードを1枚ドローする!」

 

 希望皇ホープのランクは4、よってバレット&カートリッジと同じく4枚のカードが墓地へと送られる。それだけではない、遊馬はドローを行う前に更なる効果説明を行う。

 

「更にドローしたカードがRUMと名のついたカードだった場合、そのカードを墓地に送ることでその効果を発動させる事が出来る!」

 

「何!?」

 

「見せてやる、これがカオスの力だ!バリアンズ・カオス・ドロー!!」

 

 赤い光、バリアンの力を手元に集めると遊馬はデッキのカードをドロ-する。この力は本編ではまだ手にしていないが後にとある人物と絆を結ぶことで手にした力だ。遊馬はドローしたカードを見る事無く、龍也へと見せつける。

 

「俺がドローしたカードはRUM-バリアンズ・フォースだ!

 よってカオス・トライアルの効果により墓地に送ることで効果発動!

 ……と、言いたい所だが禁じられた聖衣の効果で発動しても意味は無いので大人しく手札に加えさせてもらう。」

 

 遊馬はドローしたカードを見せるがそのカードは発動させない。龍也もドローしたカードを見て驚きながらも冷静にこれからどう動くべきかの考えをまとめる。

 

「(今の希望皇ホープには手出しを行うことは出来ない。だからこの伏せてあるバリアンズ・フォースでArk Knightを今ランクアップさせるのは間違いだ。私が伏せたのはインフェルニティ・バリア、フォース、ブレイクの3枚であるし次のターンに本格的に動き

 

に行くべきか。)

 私はこれでターンエンドだ!」

 

バレット&カートリッジ

通常魔法

自分のデッキからカードを4枚墓地へ送り、1枚ドローする。

その後、このカードをデッキの一番上に置く。

このカードの効果でデッキの上に置かれたこのカードをドローした場合、

このカードを墓地へ送る。

 

ヘルウェイ・パトロール

効果モンスター

星4/闇属性/悪魔族/攻1600/守1200

このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、

破壊したモンスターのレベル×100ポイントダメージを相手ライフに与える。

自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、

手札から攻撃力2000以下の悪魔族モンスター1体を特殊召喚する。

 

インフェルニティ・デーモン

効果モンスター

星4/闇属性/悪魔族/攻1800/守1200

自分の手札が0枚の場合にこのカードをドローした時、

このカードを相手に見せて発動できる。

このカードを手札から特殊召喚する。

また、このカードが特殊召喚に成功した時、自分の手札が0枚の場合、

デッキから「インフェルニティ」と名のついたカード1枚を

手札に加える事ができる。

 

インフェルニティ・ネクロマンサー

効果モンスター

星3/闇属性/悪魔族/攻 0/守2000

このカードは召喚に成功した時、守備表示になる。

また、自分の手札が0枚の場合、このカードは以下の効果を得る。

1ターンに1度、自分の墓地から「インフェルニティ・ネクロマンサー」以外の

「インフェルニティ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚できる。

 

№101 S・H・Ark Knight(サイレント・オナーズ・アーク・ナイト)

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/水属性/水族/ATK 2100/DEF 1000

レベル4モンスター×2

このカードのエクシーズ素材を2つ取り除き、

相手フィールド上に表側攻撃表示で存在する

特殊召喚されたモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターをこのカードの下に重ねてエクシーズ素材とする。

「No.101 S・H・Ark Knight」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。

また、フィールド上のこのカードが破壊される場合、

代わりにこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事ができる。

 

禁じられた聖衣

速攻魔法

フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。

エンドフェイズ時まで、

選択したモンスターは攻撃力が600ポイントダウンし、

カードの効果の対象にならず、カードの効果では破壊されない。

 

カオス・トライアル(オリカ)

通常罠

自分フィールド上の「№」と名のつくエクシーズモンスターが

戦闘によって破壊される時発動できる。

破壊されるモンスターのランクの数と同じ枚数、

デッキの上からカードを墓地に送ることでその破壊を無効にする。

その後、デッキからカードを1枚ドローし、

ドローしたカードが「RUM」と名のつくカードだった場合、

そのカードを墓地に送る事で効果を発動させる。

 

九十九 遊馬

モンスター

・№39 希望皇ホープ ORU×2

魔法・罠

・無し

手札2枚 LP3800

 

八神 龍也

モンスター

・№101 S・H・Ark Knight

・インフェルニティ・ネクロマンサー

魔法・罠

・伏せ5枚

手札0枚 LP4000

 

「俺のターン、ドロー!俺は手札から大嵐を発動する!」

 

「なっ!?」

 

 遊馬はドローしたカードを、大嵐を発動させるとそれが龍也のフィールドへと向かっていく。だが、それを通す龍也ではない。龍也は一瞬は驚きの声を上げるが即座に冷静に対処し、1枚のカードを発動させる。

 

「それを通す訳にはいかない!私はカウンタートラップ インフェルニティ・バリアを発動!

 このカードはハンドレスの時、私のフィールドにインフェルニティモンスターが表側攻撃表示で存在する場合、カードの発動を無効にして破壊する!」

 

 大嵐が龍也のフィールドを蹂躙しようとするがインフェルニティ・ネクロマンサーが創り上げられたバリアによって防がれてしまう。だというのに遊馬は狙い通りだという顔をしている。

 

「そうだ、1枚くらいはそう言うカードが有ると思っていた!

 俺は今度はRUM―バリアンズ・フォースを発動!

 このカードはエクシーズモンスターをランクアップさせ、カオスエクシーズを特殊召喚する!

 俺はランク4の希望皇ホープでオーバーレイ!」

 

「させん!私はトラップカード インフェルニティ・ブレイクを発動!

 ハンドレスの時、墓地のインフェルニティと名のつくカードを除外することで相手フィールド上のカード1枚を破壊する!

 私は墓地のインフェルニティ・バリアを除外して希望皇ホープを破壊!」

 

 赤い光となってオーバーレイネットワークを再構築しようとした希望皇ホープは脇から魔法弾を放つインフェルニティ・ネクロマンサーによって破壊されてしまう。これでバリアンズ・フォースの効果も不発に終わり、遊馬の手札は1枚だけとなってしまう。だ

 

が……

 

「だが!俺はこの瞬間を待っていた!手札から埋葬呪文の宝札を発動!

 墓地の3枚のマジックカードを除外して2枚ドローする。」

 

除外するカード

・手札断殺

・禁じられた聖衣

・大嵐

 

「更に手札からダーク・クリエイターを特殊召喚!」

 

-----創符『ボチヤミゴタイイジョウ』-----

 

「此処でダーク・クリエイター!?(どんなドロー力だ!一流どころのレベルではないドロー力ではないか!)」

 

 余りのドロー力の強さに龍也は今まで以上に驚きの感情を覚える。RUMを引き当て、大嵐を引き当て、次はダーク・クリエイターだ。幾ら何でもドロー力が強すぎるだろうと龍也は感じたのだ。

 

「俺はダーク・クリエイターの効果発動!墓地の終末の騎士を除外して堕天使スペルビアを特殊召喚!

 更に堕天使スペルビアの効果により墓地より堕天使ゼラートを特殊召喚!」

 

「レベル8を揃えてきたか……」

 

「ああ、だがエクシーズ召喚の前にバトルだ!(あの№101には№の破壊耐性がない。ならば!)

 堕天使ゼラートでS・H・Ark Knightを攻撃!邪なる暗流!!」 

 

 S・H・Ark Knightのテキストをデュエルディスクの機能で確認し、№の破壊耐性が無いことを確認した遊馬はエクシーズ召喚せずにバトルフェイズへと入る。そうして最初に堕天使ゼラートによる闇の攻撃を放つとS・H・Ark Knightを破壊される。

 

「グッ!!」

 

4000-(2800-2100)=3300

 

「まだだ!俺は堕天使スペルビアでインフェルニティ・ネクロマンサーを攻撃!」

 

「通すか!私はトラップカード インフェルニティ・フォースを発動!

 ハンドレスの時、インフェルニティモンスターへの攻撃を無効にし破壊する!

 よって堕天使スペルビアは破壊だ!」

 

 続くように攻撃を仕掛けた堕天使スペルビアであったがそれはインフェルニティ・ネクロマンサーの前に現れた煉獄の火炎によって無効化され、その火炎によって堕天使スペルビアも破壊されてしまう。それだけではない、煉獄の火炎の中から煉獄の悪

 

魔が飛び出してくる。

 

「更に墓地からインフェルニティモンスター1体を特殊召喚する!

 来い、インフェルニティ・デーモン!!」

 

「インフェルニティ・デーモン!!ハンドレスで特殊召喚に成功したということは!!」

 

「そうだ、私はインフェルニティ・デーモンの効果を発動!

 デッキからインフェルニティガンを手札に加える!」

 

 遊馬はその事実に歯噛みをしながらも最後の攻撃を行う。

 

「だが、これは痛手になるぞ!俺はダーク・クリエイターでネクロマンサーに攻撃!」

 

 ダーク・クリエイターの起こす暗黒の雷はインフェルニティ・ネクロマンサーを飲み込む。それにより龍也は大きなダメージを受ける。

 

「グ、これは効くな!」

 

3300-2300=1000

 

「メインフェイズ2!俺はレベル8のダーク・クリエイターと堕天使ゼラートでオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 来たれ銀河よ!遥かなる時を遡りこの世界に終焉をもたらせ!」

 

                    107

 

「エクシーズ召喚!顕現せよ、№107 銀河眼の時空竜!!」

 

『ぎぃアアアアアアアァァァァァオオオオォォォォォォッッッ!!』

 

 メイン2に入った遊馬は残っていた2体のモンスターを礎として相棒たる銀河眼の時空竜を特殊召喚する。その後、手札を1枚伏せるとターンを終了した。

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

【BGM変更:牙をむく紋章獣】

 

「私のターン、ドロー!私はカードを伏せてからインフェルニティ・ビートルを召喚!」

 

 カブトムシをイメージするような煉獄の虫、インフェルニティ・ビートルが龍也のフィールドに姿を現す。そのインフェルニティ・ビートルはその姿を炸裂させると2体へと分身する。

 

「インフェルニティ・ビートルの効果発動!

 このカードをリリースする事でデッキから2体のインフェルニティ・ビートルを特殊召喚する。」

 

「レベル2が2体……いや、インフェルニティガンか!!」

 

 遊馬は2体のインフェルニティ・ビートルを一度見た後に龍也が伏せたカードを思い出す。龍也はその言葉に正解だと笑い、そのカードを発動させる。

 

「永続魔法 インフェルニティガンを発動!

 このカードは 手札からインフェルニティモンスターを墓地に送る効果があるがそれは使わない!

 今、私が発動させるのはハンドレスの時に発動できる効果だ!

 インフェルニティガンを墓地に送り墓地から2体のインフェルニティモンスターを特殊召喚する!

 来い、インフェルニティ・ビートル!ネクロマンサー!!」

 

 インフェルニティガンのカードが姿を消すと変わるようにインフェルニティ・ビートルとインフェルニティ・ネクロマンサーがその姿を現す。そして、続くように3体のインフェルニティ・ビートルは紫色の球体にその身を変えるとオーバーレイネットワークを構築

 

する。

 

「私はレベル2のインフェルニティ・ビートル3体でオーバーレイ!

 3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

                    96

 

「エクシーズ召喚!現れろ、№96 ブラック・ミスト!!」

 

 そうしてエクシーズ召喚されたのはブラック・ミスト、遊馬の妻の一人であるルーミアの相棒であるダークアストラルの宿る№と同一のものだ。とはいえ、これも№の破壊耐性は存在しないカードである。

 

「ブラック・ミスト……良いカードだが無意味だ!

 俺は永続トラップ 時空陽炎翼を発動!」

 

 銀河眼の時空竜に黄色とオレンジ色の光によって構成された光の翼が現れる。

 

「このカードは相手がエクシーズ召喚に成功した時、ギャラクシーアイズ専用装備カードとして発動できる!このカードが存在する限り、相手のエクシーズモンスターの効果は無効にされる!

 如何に強力なブラック・ミストとはいえ効果が無効にされればただのカカシだ!」

 

「それはどうかな?如何にエクシーズモンスターの効果を無効にできるとはいえ私のデッキが【インフェルニティ】だということを忘れたか!

 私はインフェルニティ・ネクロマンサーの効果を発動!

 私は墓地からチューナーモンスター インフェルニティ・リベンジャーを特殊召喚!」

 

 二丁拳銃でガンマンを思わせる姿の復讐者、インフェルニティ・リベンジャーがその姿を現す。インフェルニティ・リベンジャーはその銃を放つと緑色のチューニングリングへとその身を変化させ、インフェルニティ・デーモンとインフェルニティ・ネクロマンサ

 

ーは7つの星へとその身を変化させる。

 

「私はレベル4のインフェルニティ・デーモンとレベル3のインフェルニティ・ネクロマンサーにレベル1のインフェルニティ・リベンジャーをチューニング!

 死者と生者、ゼロにて交わりし時、永劫の檻より魔の竜は放たれる!」

 

 ☆4 + ☆3 + ☆1 → ☆8

 

「シンクロ召喚!いでよ、インフェルニティ・デス・ドラゴン!!」

 

 その3体のモンスターによって召喚されたのは黒煙に身を包んだ少々ブサイクな見た目のドラゴンだ。そのドラゴンは銀河眼の時空竜の方向を振り向くと黒煙のブレスを放つ。

 

「インフェルニティ・デス・ドラゴンの効果発動!インフェルニティ・デス・ブラスト!!

 ハンドレスの時、相手フィールド上のモンスター1体を破壊してその攻撃力分のダメージを与える!」

 

「っく、ならば時空陽炎翼の更なる効果を発動!

 装備モンスターが破壊される時、このカードを墓地に送ることでその破壊を無効にする!

 これにより、銀河眼の時空竜は破壊を免れ効果ダメージも無効だ!」

 

 そのブレスは限界を超えた性能を発揮した時空陽炎翼の発生させたバリアによって防がれる。だが、限界を超えた力を使ったことによって時空陽炎翼は砕け散り、ブラック・ミストは効果を取り戻した。

 

「これでブラック・ミストは効果を取り戻した。だが、これで終わりではない!

 私もこのカードを使わせて貰おうか、RUM―バリアンズ・フォースを発動!」

 

「バリアンズ・フォース!?」

 

「説明は不要だな、私はランク2のブラック・ミストでオーバーレイ!

 1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築!」

 

                    96

 

「カオスエクシーズチェンジ!現れろ、C№96!

     混沌なる嵐を巻き起こし、今此処に舞い降りよ!ブラック・ストーム!!」

 

 ブラック・ミストは龍也の発動したバリアンズ・フォースの力によりブラック・ストームへとその姿を変化させる。更にブラック・ストームは銀河眼の時空竜から一つのORUを奪い取る。

 

「更にバリアンズ・フォースの効果により銀河眼の時空竜からORU1つを奪い取る!カオス・ドレイン!!」

 

「(OCG効果……まあ、当然か。)」

 

「バトルだ!私はブラック・ストームで銀河眼の時空竜に攻撃!

 その瞬間、ブラック・ストームのCORUを1つ使い効果発動!

 銀河眼の時空竜の攻撃力を0にし、その攻撃力を吸収する!」

 

№107 銀河眼の時空竜 攻撃力3000→0

 

C№96 ブラック・ストーム 攻撃力1000→4000

 

「これで終わりだ!カオス・ミラージュ・ウィップ!!」

 

 ブラック・ストームの攻撃が銀河眼の時空竜を貫こうとしたその瞬間、銀河眼の時空竜の目の前に幽霊の戦士が現れるとその攻撃を防ぐ。龍也はやはりという表情を浮かべながら遊馬の言葉を聞く。

 

「俺は墓地からネクロ・ガードナーの効果を発動させてもらった。」

 

「やはり、その手のカードが落ちていたか。」

 

「当然だ、それでどうする?インフェルニティ・デス・ドラゴンは効果を発動したターンは攻撃できないぞ。」

 

「ああ、分かっている。(インフェルニティ・ジェネラルで蘇生するのは……無駄だな。

 次のターンの展開に残すか。)私はこれでターンエンドだ!」

 

インフェルニティ・バリア

カウンター罠

自分フィールド上に「インフェルニティ」と名のついた

モンスターが表側攻撃表示で存在し、

自分の手札が0枚の場合に発動する事ができる。

相手が発動した効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。

 

インフェルニティ・ブレイク

通常罠

自分の手札が0枚の場合に発動できる。

自分の墓地の「インフェルニティ」と名のついた

カード1枚を選択してゲームから除外し、

相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。

 

インフェルニティ・フォース

通常罠

自分の手札が0枚の場合、

「インフェルニティ」と名のついたモンスターが

攻撃対象に選択された時に発動する事ができる。

攻撃モンスター1体を破壊し、

自分の墓地に存在する「インフェルニティ」と

名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。

 

インフェルニティ・ビートル

チューナー(効果モンスター)

星2/闇属性/昆虫族/攻1200/守 0

自分の手札が0枚の場合、このカードをリリースする事で、

デッキから「インフェルニティ・ビートル」を2体まで特殊召喚する。

 

インフェルニティガン

永続魔法(制限カード)

1ターンに1度、手札から「インフェルニティ」と名のついた

モンスター1体を墓地へ送る事ができる。

また、自分の手札が0枚の場合、

フィールド上のこのカードを墓地へ送る事で、

自分の墓地の「インフェルニティ」と名のついた

モンスターを2体まで選択して特殊召喚する。

 

時空陽炎翼(タキオン・フレア・ウィング) (アニメZEXALオリカ)

永続罠

相手フィールド上にエクシーズモンスターが特殊召喚された時に

自分フィールド上の「銀河眼」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。

発動後このカードは装備カードとなり、選択したモンスターに装備する。

このカードがフィールド上に存在する限り、

相手フィールド上のエクシーズモンスターの効果は無効化される。

このカードを装備したモンスターが破壊される場合、代わりにこのカードを墓地へ送る事ができる。

 

インフェルニティ・デス・ドラゴン

シンクロ・効果モンスター

星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2400

闇属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

自分の手札が0枚の場合、1ターンに1度、相手フィールド上の

モンスター1体を選択して発動できる。

選択した相手モンスターを破壊し、

破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える。

この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。

 

RUM―バリアンズ・フォース

通常魔法

自分フィールド上のエクシーズモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターと同じ種族でランクが1つ高い

「CNo.」または「CX」と名のついたモンスター1体を、

選択したモンスターの上に重ねて

エクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

その後、相手フィールド上にエクシーズ素材が存在する場合、

相手フィールド上のエクシーズ素材1つを、

この効果で特殊召喚したエクシーズモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする。

 

九十九 遊馬

モンスター

・№107 銀河眼の時空竜 ORU×1 攻撃力0

魔法・罠

・無し

手札0枚 LP3800

 

八神 龍也

モンスター

・C№96 ブラック・ストーム ORU×4 攻撃力4000

・インフェルニティ・デス・ドラゴン

魔法・罠

・伏せ1枚

手札0枚 LP1000

 

「俺のターン、ドロー!俺は銀河眼の時空竜をガイアエクシーズチェンジ!!」

 

「ガイアエクシーズチェンジだと!?」

 

 銀河眼の時空竜はその身を緑色の光で包み込むとその身体を縮小させていく。すると、銀河眼の時空竜はどんどんと小さくなっていき銀色のUSBメモリへと変化させる。そのメモリには《T》と銀河眼の時空竜の待機形態である宝玉のような色合いで書

 

かれている。

 

「このカードは銀河眼の時空竜をエクシーズ素材とすることでも特殊召喚出来る!

 俺は銀河眼の時空竜でオーバーレイネットワークを再構築!

 時を統べし銀河よ、地球(ほし)の記憶をその身に宿し、森羅万象を網羅せよ!」

 

【Tachyon!!】

 

                    T

 

「ガイアエクシーズチェンジ!№T2!目覚めよ、銀河眼の時空竜帝!!」

 

 遊馬はそのUSBメモリのボタンを押すと銀河の中へと投げ込む。すると、緑色の光が銀河の中から溢れだすとその光を纏いながら銀河眼の時空竜がフィールドへと現れる。するとその足が、その腕が、その翼が、その頭が、そして胴体が緑色の光を吸

 

収して時空竜を進化させる。

 

「まるでヴォドゥンの腐敗の教義だな、これは。」

 

「そちらの世界にもガイアメモリは存在するのか……まあいい、今はデュエルだ。

 俺は時空竜帝の効果発動!フィールド上のモンスター全てのランクを1つ上げる!」

 

№T2 銀河眼の時空竜帝 ランク8→9

 

C№96 ブラック・ストーム ランク3→4

 

インフェルニティ・デス・ドラゴン ランク8→9

 

「何!?インフェルニティ・デス・ドラゴンまでもがランクを!?」

 

「時空竜帝はフィールド上のモンスター全てにランクをもたせる効果を有している!

 フィールド上のモンスターはレベルと同じランクを持つ事になる。

 そして、そのランクは時空竜帝への供物となる!」

 

 龍也はその供物という言葉に疑問を抱く。そして、ある一枚のカードの存在を思い出してまさかという表情になる。そんな、龍也の表情を見た遊馬はそれが正解とばかりに効果を発動させるため、バトルフェイズへと入る。

 

「バトルだ!時空竜帝でインフェルニティ・デス・ドラゴンに攻撃!

 この瞬間、時空竜帝の効果発動!タキオン・ディバイディング!!

 フィールド上のモンスター全てのランクの合計×200ポイントの数値をこのカードと戦闘を行うモンスターの攻撃力から消し去る!!」

 

 お互いのフィールド上に存在するのはランク9の銀河眼の時空竜帝、ランク4のブラック・ストーム、ランク9のインフェルニティ・デス・ドラゴンだ。合計ランクは22となり、4400の攻撃力がインフェルニティ・デス・ドラゴンの攻撃力から消滅する。それは神ク

 

ラスのモンスターだろうと攻撃力を抹殺されるレベルの攻撃力低下効果だ。

 

インフェルニティ・デス・ドラゴン 攻撃力3000→0

 

「インフェルニティ・デス・ドラゴンの攻撃力が0に!」

 

「これで今度こそ終わりだ!エタニティ・タキオン・スパイラル!!」

 

【Tachyon MAXIMUM DRIVE!!】

 

 銀河眼の時空竜帝は緑色のエネルギー、地球のエネルギーをその身にためて口元で集めるとそれをブレスとしてインフェルニティ・デス・ドラゴンに放った。それは一切抗うことを許さずにインフェルニティ・デス・ドラゴンの身体を消し飛ばした。

 

1000-4000=0

 

「これで終わりか。俺に時空竜帝を使わせたのは大した腕だったがまさかこれだけ……」

 

「たわけが!そんなわけがあると思っているのか!

 私はトラップカード 虚無からの再生を発動!」

 

【BGM変更:鬼柳京介】

 

 何処か土偶を思わせる姿をしたインフェルニティに属するモンスターがその姿を現す。このモンスターこそ、煉獄と無を司るインフェルニティを代表し、インフェルニティそのものと言っても過言ではない異端なモンスター……インフェルニティ・ゼロだ。

 

「このカードはライフが0になった時に発動できる!

 墓地からインフェルニティ・ゼロを召喚条件を無視して特殊召喚しデスカウンターを1つ置く!」

 

 インフェルニティ・ゼロの前に一つ、紫色の霧のような姿の髑髏が現れる。それはインフェルニティ・ゼロに刻まれた死までのカウントダウンだ。

 

「インフェルニティ・ゼロ……」

 

「インフェルニティ・ゼロはデスカウンターが3つ乗った時に破壊される。

 そして、インフェルニティ・ゼロが存在する限りライフが0になっても敗北しない。」

 

「……やはり、面倒な効果だな。3つ乗る前にライフを回復すれば破壊されても負けないんだからな。」

 

 遊馬の言葉でインフェルニティ・ゼロの効果を知っているとはと龍也は感心しながらも言葉を続ける。

 

「成程、効果を知っていたか。ならば、あえて言わせてもらおう。

 今の一撃で私の心臓にはデスカウンターが一つ撃ち込まれた。

 だが、その程度でこの私は!夜天の守護者はやられはしない!!」

 

「そのようだな、俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

「私のターン!私はバレット&カートリッジを発動!」

 

【カートリッジ、ロード!!】

 

「此処で引き当ててきたか!」

 

 遊馬は最初のターンに龍也が発動させたバレット&カートリッジを再び引き当ててきたことに対して声を上げる。デッキにて弾丸を補給したバレット&カートリッジは再び放たれ、4枚のカードを墓地へと送る。それと同時に1枚のドローを龍也へと与える。

 

「デッキトップから4枚のカードを墓地へと送り、ドロー!」

 

 龍也はドローしたカードを見ると笑い、プレイングを開始させた。

 

「私は手札からファントム・オブ・カオスを召喚!」

 

 それは一切の形を持たない混沌としたモンスターだ。そのモンスターはシャーマンのような姿をした煉獄のモンスターだ。

 

「このカードはネクロの如く効果モンスターに寄生し、その姿を形取る。

 私は墓地のインフェルニティ・ミラージュを除外してその姿を形取らせる!」

 

 インフェルニティ・ミラージュへとその姿を変貌させたファントム・オブ・カオスはその姿を消すとフィールドに2体のモンスターが現れる。それはインフェルニティ・デーモンとインフェルニティ・ネクロマンサーの姿だ。

 

「更に写し取ったインフェルニティ・ミラージュの効果を発動!

 自身をリリースすることで墓地から2体のインフェルニティモンスターを特殊召喚する!

 来い、インフェルニティ・デーモン!インフェルニティ・ネクロマンサー!!」

 

「此処に来て更に回すか!」

 

「当然だ!私はインフェルニティ・デーモンの効果を発動!

 デッキからインフェルニティ・フォースを手札に加え、フィールドにセット!

 続けてインフェルニティ・ネクロマンサーの効果発動!

 墓地からインフェルニティ・ビーストを特殊召喚!」

 

 煉獄の魔犬 インフェルニティ・ビーストがその姿を現すとインフェルニティ・ネクロマンサーと共に光の球体となりオーバーレイ・ネットワークを構築する。

 

「私はレベル3のインフェルニティ・ネクロマンサーとビーストでオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!

 エクシーズ召喚!来い、虚空海竜リヴァイエール!!」

 

 水色の身体とオレンジ色の皮膜を持つ海竜が姿を現す。その海竜は次元に穴を開けると1体のモンスターを呼び出す。それは遊馬が最初に召喚したモンスターである終末の騎士だ。

 

「更にリヴァイエールのORUを1つ使い効果発動!

 除外されているレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する!来い、終末の騎士!

 更にレベル4のインフェルニティ・デーモンと終末の騎士でオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

                    101

 

「エクシーズ召喚!再び現れろ、№101 S・H・Ark Knight!!」

 

「2枚目のS・H・Ark Knight!?」

 

 続けて召喚されたのは最初に龍也がエクシーズ召喚したS・H・Ark Knightだ。流石の遊馬もそれにはまずいという表情をする。

 

「S・H・Ark KnightのORUを2つ使い効果発動!

 時空竜帝をORUとして吸収する!エターナル・ソウル・アサイラム!!」

 

「そうはさせない!俺はトラップカード デストラクト・ポーションを発動!

 時空竜帝を破壊して4000のライフを回復する!」

 

 S・H・Ark Knightの効果により鎖を突き刺された時空竜帝は吸い込まれる直前に爆発すると光となって遊馬へと溶けこむ。それにより遊馬のライフは初期ライフの約二倍である7800まで回復する。

 

3800+4000=7800

 

「ならば、がら空きになったフィールドに攻撃させてもらう!

 まずはリヴァイエールでダイレクトアタックだ!」

 

「グゥっ!」

 

7800-1800=6000

 

「続けてS・H・Ark Knightでダイレクトアタック!ミリオン・ファントム・フラッド!!」

 

「グ、ガハッ!!」

 

6000-2100=3900

 

 2体のモンスターの連続攻撃は遊馬を大きく吹き飛ばす。遊馬はそれによって大きなダメージを受け、血こそ出さないものの咳き込んでしまう。その遊馬へ最後の一撃がブラック・ストームより放たれる。

 

「そして、これで最後だ!ブラック・ストームでダイレクトアタック!カオス・ミラージュ・ウィップ!!」

 

 最後の一撃は遊馬の目の前まで迫り虹色の光によってそれは防がれる。それに続くように1体のモンスターが、虹色の角を持つクリボーがそれを防ぐ。

 

『クリクリー!!』

 

「……グゥッ、アストラル世界に●●師匠との修行中に行くはめになったお陰で助かったな。

 俺は墓地の虹クリボーの効果発動!相手モンスターの直接攻撃宣言時、墓地からこのカードを特殊召喚する!

 よってその攻撃は俺ではなく虹クリボーへと届く!!」

 

 ブラック・ストームの攻撃は虹クリボーに突き刺さり、虹クリボーは破壊される。だが、これにより遊馬のライフが消し飛ばされるという展開は回避された。

 

「助かったぞ、虹クリボー!」

 

「倒しきれなかったか、私はこれでターンエンドだ!!」

 

№T2 銀河眼の時空竜帝(ギャラクシーアイズ・プライム・タキオン・ドラゴン)(オリカ)

エクシーズ・効果モンスター

ランク8/光属性/ドラゴン族/ATK 4000/DEF 3000

レベル8モンスター×2

自分フィールド上に存在する「№107 銀河眼の時空竜」1体をこのカードのエクシーズ素材として、

このカードはエクストラデッキから特殊召喚する事ができる。

この時、「№107 銀河眼の時空竜」のエクシーズ素材をこのカードのエクシーズ素材とする事ができる。

このカードは「No.」と名のつくモンスター以外との戦闘では破壊されない。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する場合、

フィールド上に存在するモンスターエクシーズ以外の全てのモンスターは、

そのレベルと同じ数値のランクを持つ。

1ターンに1度、フィールド上に存在する全てのモンスターのランクを1つ上げる事ができる。

このカードが戦闘を行う場合、このカードと戦闘を行うモンスターの攻撃力は

フィールド上に存在するモンスターのランクの合計×200ポイントアップする。

フィールド上に存在するこのカードがフィールド上から離れる時、以下の効果を発動できる。

発動後α回目の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

この効果でこのカードを特殊召喚したターン、

このカードが攻撃するモンスターの攻撃力はα分の1になる。

(α=このカードがフィールド上から離れた時の、このカードのエクシーズ素材の数)

 

虚無からの再生(オリカ)

通常罠

自分のライフが相手モンスターの攻撃によって0になった時に発動できる。

墓地から「インフェルニティ・ゼロ」1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。

そのご、この効果で特殊召喚したモンスターにデスカウンターを1つ置く。

 

インフェルニティ・ゼロ(タッグフォース5オリカ)

効果モンスター

星1/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0

このカードは通常召喚できない。

自分のライフポイントが2000以下の場合に相手が

ダメージを与える魔法・罠・効果モンスターの効果を発動した時、

このカード以外の手札をすべて捨てる事でのみ、

このカードを手札から特殊召喚する事ができる。

このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、

自分はライフポイントが0でも敗北しない。

自分の手札が0枚の場合、このカードは戦闘では破壊されない。

自分がダメージを受ける度に、このカードにデスカウンターを1つ置く。

このカードにデスカウンターが3つ以上乗っている場合、このカードを破壊する。

 

ファントム・オブ・カオス

効果モンスター

星4/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0

自分の墓地に存在する効果モンスター1体を選択し、ゲームから除外する事ができる。

このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、

このカードはエンドフェイズ時まで選択したモンスターと同名カードとして扱い、

選択したモンスターと同じ攻撃力とモンスター効果を得る。

この効果は1ターンに1度しか使用できない。

このモンスターの戦闘によって発生する相手プレイヤーへの戦闘ダメージは0になる。

 

インフェルニティ・ミラージュ

効果モンスター

星1/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0

このカードは墓地からの特殊召喚はできない。

自分の手札が0枚の場合、このカードをリリースし、

自分の墓地の「インフェルニティ」と名のついた

モンスター2体を選択して発動できる。

選択したモンスターを特殊召喚する。

 

虚空海竜リヴァイエール

エクシーズ・効果モンスター

ランク3/風属性/水族/攻1800/守1600

レベル3モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、

ゲームから除外されている自分または相手の

レベル4以下のモンスター1体を選択して自分フィールド上に特殊召喚する。

 

虹クリボー(アニメZEXAL効果)

効果モンスター

星1/光属性/悪魔族/攻 100/守 100

相手モンスターエクシーズの攻撃宣言時、

手札のこのカードを装備カード扱いとしてその相手モンスター1体に装備できる。

この効果によってこのカードを装備したモンスターは攻撃できない。

相手モンスターの直接攻撃宣言時、このカードは墓地から自分フィールド上に特殊召喚できる。

この効果で特殊召喚したこのカードが破壊された時、このカードはゲームから除外される。

 

九十九 遊馬

モンスター

・無し

魔法・罠

・無し

手札0枚 LP3900

 

八神 龍也

モンスター

・C№96 ブラック・ストーム ORU×4 攻撃力4000 ランク4

・インフェルニティ・ゼロ 守備 デスカウンター×1

・虚空海竜リヴァイエール ORU×1

・№101 S・H・Ark Knight

魔法・罠

・伏せ1枚

手札0枚 LP0000

 

【BGM変更:冷酷なデュエル】

 

「俺のターン……ドローの前に確か此処はご都合主義空間だったよな?」

 

「確かにそう言っていたな。」

 

 遊馬はいいことを思いついたとばかりに一冊の本を取り出す。

 

「アストラルは今の俺ではZEXALになる事は拙いから頼むぞ、恵流!!」

 

 その本からページが離れていき、そのページが一つの人型を作り上げる。それは一人の少女だ。その少女はとある世界でアル・アジフと呼ばれている魔導書の精霊と同じ髪の色をしているが容姿はその世界でエセルドレーダと呼ばれている魔導書の

 

精霊と同じものだ。

 

「遊馬様、マギウススタイルですか?」

 

「ああ、頼むぞ恵流!マギウススタイル!!」

 

 遊馬と恵流(える)と呼ばれた少女は一体化すると遊馬の姿が変貌する。その遊馬の姿は長い金髪に黄金に輝く瞳、愛菜の手下の一人であるマスターテリオンと呼ばれる人物に酷似していた。それだけではなく遊馬の頭上にはデフォルメされた恵流が

 

乗っている。

 

「これは……ユニゾンか!?」

 

「ユニゾンじゃない、マギウススタイルだ!そして、此処からが本当の勝負だ!

 最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえもデュエリストが創造する!

 シャイニングドロー!!」

 

 遊馬はその手に光を纏わせるとデッキの上からカードをドローする。

 

「俺は手札から絆の宝札を発動!墓地の№を除外してその№のランク4つにつき2枚ドローする!

 俺は墓地の希望皇ホープを除外しデッキから更に2枚ドロー!!」

 

「銀河眼の時空竜を除外して効果は発動しない……やはり、狙いは復活効果だ!」

 

「光子竜皇を知っていて予想が付いているようだな。だが、このターンをお前が耐えられたらの話だ!

 俺は手札から命の水を発動!墓地から堕天使スペルビアを蘇生しゼラート!

 そのままレベル8の堕天使スペルビアと堕天使ゼラートでオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

 

 

「うん、これは?」

 

 離れた場所で遊馬の妻の一人であるフランのエクストラデッキが輝く。フランはそれを確認するとエクストラデッキから一枚のカードを取り出すと門を作り出し、その中へとカードを投げ込む。

 

「行ってらっしゃい。お兄様を助けてきてね。」

 

 

 

「壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ! 運命の糸を操り、破滅の運命へ導け!」

 

                    15

 

「エクシーズ召喚!№15!破壊の申し子、ギミック・パペット―ジャイアントキラー!!」

 

 何処からともなく遊馬の手に紅い光が現れるとそれは一枚のカードへと姿を変える。遊馬はそのカードを、ジャイアント・キラーをエクシーズ召喚する。ジャイアント・キラーの出現には流石に龍也も焦った様子を見せる。

 

「ジャイアント・キラーだと!?」

 

「安心しろ、オリジナルだからコイツはインフェルニティ・ゼロは破壊できない。

 だが、それ以外のエクシーズモンスターはぶっ壊させてもらうぞ!

 ジャイアント・キラーの効果発動!ORUを1つ使い、相手フィールド上のエクシーズモンスター全てをぶっ壊す!」

 

 ジャイアント・キラーはブラック・ストーム、リヴァイエール、S・H・Ark Knightへと糸を伸ばすとその3体を胸の中へと取り込んでいく。3体のモンスターは悲鳴や破砕音を出しながらローラーで潰され、ジャイアント・キラーのエネルギーに変換される。

 

「そして、ぶっ壊したモンスターの攻撃力の合計分のダメージを与える!……とは言っても今のお前にダメージは無意味だがな。

 ジャイアント・キラー、第二のデスカウンターを撃ちこめ!デストラクション・カノン!!」

 

 そのエネルギーはインフェルニティ・ゼロへと照射され、インフェルニティ・ゼロを大きく吹き飛ばす。だが、本来はプレイヤーにダメージを与える効果であるためにインフェルニティ・ゼロは破壊されず、2つめのデスカウンターを生み出すにとどまる。

 

「更にランクアップと行きたい所だがカードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

「流石遊馬様、見事な逆転です!!」

 

 本来ならば遊馬はシリアルキラーにランクアップし迫撃と行きたいところだったが手札にはRUMは存在しなく、墓地にレインボー・カオス・フォースも落ちていない。そのため遊馬はランクアップを諦めてカードを伏せると龍也へとターンを渡した。

 

【BGM変更:運命の決勝戦】

 

「っく、私のターン!(一流を超えた超一流、それは間違いない。だが……)

 私も簡単には負けはしない!ドロー!バレット&カートリッジは自身の効果で墓地に送られる!

 だが、墓地のインフェルニティ・ジェネラルの効果発動!」

 

 赤いマントを身に着け、巨大な剣を持った黒い鎧の騎士 インフェルニティ・ジェネラルの幻影が現れるとその身体を2つの紫色の魔法陣に変える。その魔法陣からは2体のモンスターが姿を現す。

 

「ハンドレスの時、墓地から除外することでレベル3以下のインフェルニティモンスター2体を蘇生する!

 来い、インフェルニティ・ネクロマンサー!リベンジャー!!」

 

 ネクロマンサーとリベンジャーが姿を現すと続くように一体のモンスターがその姿を現す。それはインフェルニティ・デーモンだ。遊馬はその組み合わせを見て少し前のターンの事を思い出す。

 

「更に墓地のインフェルニティ・リターンを発動!

 ハンドレスの時、墓地からこのカードを除外することでインフェルニティモンスター1体を蘇生する!来い、インフェルニティ・デーモン!!

 その効果によりデッキからインフェルニティ・ブロックを手札に加えてセット!

 

「レベル8のシンクロ召喚か!」

 

「いや、違うな。私が召喚するのは希望、最後の希望だ!

 私はレベル3のインフェルニティ・ネクロマンサーにレベル1のインフェルニティ・リベンジャーをチューニング!

 集いし絆が希望へ導く力となる!光指す道となれ!」

 

 ☆3 + ☆1 → ☆4

 

「シンクロ召喚!来い、アームズ・エイド!!

 更にレベル4のアームズ・エイドとインフェルニティ・デーモンをオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 これが私の希望、これが私の勝利への最後の希望だ!」

 

                    39

 

「エクシーズ召喚!来い、№39 希望皇ホープ!!」

 

 召喚されたカード、それは遊馬にとってもこのデュエルにとっても始まりのカードである希望皇ホープだ。遊馬はそれに対して思わず笑みを浮かべてしまう。

 

「面白い、本当に面白いことをしてくれる!実に楽しいデュエルだ!!」

 

「笑っている遊馬様……素晴らしいです!」

 

 興奮した様子の遊馬を頭の上から見ながら顔を赤くする恵流、完全にホの字の様子である。龍也はそれを見て風邪でも引いたのだろうか等と思いながらも遊馬の言葉に自身も楽しくなっていき、デュエルを進めさせる。

 

「ああ、私もこのデュエルは楽しい!だからこそ、簡単には負けはしない!

 私は希望皇ホープでジャイアント・キラーを攻撃だ!ホープ剣・スラッシュ!!」

 

 希望皇ホープはその手に持った剣でジャイアント・キラーを一刀両断する。それによりジャイアント・キラーは真っ二つに切り裂かれ、爆散する。

 

3900-(2500-1500)=2900

 

「私はこれでターンエンドだ!」

 

「俺のターン……恵流、力を合わせてくれ!」

 

「はい、遊馬様のお心のままに!」

 

 遊馬は自身のターンが来ると恵流と心を一つにし始める。そして、一体のドラゴンを帰還させる。

 

「戻ってこい、銀河眼の時空竜帝!!」

 

『ギィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォッッッ!!!』

 

 遊馬のフィールドに銀河眼の時空竜帝が帰還する。それと同時に銀河眼の時空竜帝の姿が更に変化する。その身に纏っていた緑色の光が更に力を増したのだ。

 

「時空竜帝は光子竜皇と同じくフィールドを離れた時のORUの数と同じだけ俺のターンのスタンバイフェイズを迎えることでフィールドへと帰還する!

 そして、この効果で帰還した時空竜帝はバトルを行う時、相手モンスターの攻撃力を戻るまでにかかったターンの数で割る!」

 

「つまり、私のモンスターの攻撃力を半分にするのか!」

 

「そうだ!だが、それだけではない!最高の力で倒しに行かせてもらうぞ!!

 我が世界のヌメロンコードよ、銀河の力を此処に!」

 

 今度は遊馬の手が銀河眼の瞳をイメージする銀河色に輝き始める。遊馬はその手で持ってデッキの上に手を置くと一気に引き抜く。

 

「ギャラクシー・ドロー!俺が引いたカードはRUM―銀河の剣だ!

 このカードは銀河眼と名のつく№をエクストラデッキからでも墓地からでも効果を無効にして特殊召喚しランクアップさせるカード!」

 

「なっ!?エクストラデッキからでも墓地からでもだと!?」

 

「俺は墓地のランク8の銀河眼の時空竜でオーバーレイ!

 1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築!

 時の生ずる前より生きし銀河よ!龍の姿を借りて今此処に顕現せよ!」

 

                    107

 

「ギャラクシーエクシーズチェンジ!我が魂、C№107 超銀河眼の時空龍!!」

 

『『『ギィアアアアアアアァァァァァオオオオォォォォォォッッッ!!!』』』

 

 フィールドには2体の時空竜の進化系が立ち並ぶ。遊馬はその中で超時空龍の効果を発動させる。それはMの持つ超時空龍とはまた別の効果だ。

 

「超銀河眼の時空龍の効果発動!ORUを1つ使い、このカード以外の全てのカード効果を無効にし、相手はフィールド上のカードの効果を発動できなくなる!」

 

「なっ!?ならば私はこのタイミングでインフェルニティ・ブロックを発動!

 このカードはハンドレスの時、エンドフェイズまで自分のモンスターに相手のカード効果を受けさせなくする!」

 

「ふん、躱されたか!だったらバトルだ!!

 俺は時空竜帝と超時空龍で希望皇ホープを攻撃!エタニティ・タキオン・スパイラル!アルティメット・タキオン・スパイラル!!」

 

 時空竜帝と超時空龍はそれぞれブレスを希望皇ホープへと放つ。だが、それは希望皇ホープの2枚の翼によって防がれる。

 

「希望皇ホープのORUを2つ使いその両方を無効にする!ツイン・ムーン・バリア!!」

 

「だが、これで希望皇ホープのORUは無くなった。俺はターンエンドだ!」

 

「私のターン、ドロー!私は貪欲な壺を発動!

 この5枚をデッキに戻して2枚ドローする!」

 

貪欲な壺デッキに戻すカード

・№101 S・H・Ark Knight×2

・インフェルニティ・デス・ドラゴン

・№96 ブラック・ミスト

・C№96 ブラック・ストーム

 

「行くぞ、私はRUM―バリアンズ・フォースを再び発動!

 ランク4の希望皇ホープでオーバーレイ!

 1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築!

 希望に輝く魂よ!森羅万象を網羅し、未来を導く力となれ! 」

 

                    39

 

「カオスエクシーズチェンジ!来い、C№39 希望皇ホープレイ・ヴィクトリー!!」

 

 赤と白の装甲を装備した希望皇ホープの進化形態が姿を現す。それはまさしく勝利へ導く有志を感じさせる姿だ。

 

「ホープレイ・ヴィクトリー!?(拙い、ライフはギリギリ残るから助かるもののギャラクシー・ショックによる引き分けへの持ち込みができなくなった!)」

 

「バトルだ!私は希望皇ホープレイ・ヴィクトリーで時空竜帝を攻撃!

 その瞬間、ホープレイ・ヴィクトリーのORUを1つ使い効果発動!ヴィクトリー・チャージ!!」

 

 希望皇ホープレイ・ヴィクトリーはその力を更に高める。それは銀河眼の時空竜帝から放たれているエネルギーさえも奪ってだ。

 

「ORUを1つ使うことでホープレイ・ヴィクトリーは戦闘を行う相手モンスターの効果を無効にし、その攻撃力分だけ自身の攻撃力をアップさせる!」

 

C№39 希望皇ホープレイ・ヴィクトリー 攻撃力2800→6800

 

「ホープ剣・ダブルビクトリースラッシュ!!」

 

「ガハッ!!」

 

 希望皇ホープレイ・ヴィクトリーはその手に持つ剣で時空竜帝を一刀両断する。それにより遊馬のライフは大きく削り取られ、残りライフをたったの100にする。

 

2900-(6800-4000)=100

 

「そして、私はカードを伏せてターンエンドだ!

 私が伏せたのは2枚目のインフェルニティ・フォースだ……だが恐らく、)」

 

 龍也は一応カードは伏せていた。だが長い事色んな世界で戦ってきた龍也は感じ取っていた。

 

「(流れは向こう……1度逃したつきは大きいな。)」

 

 戦闘において流れとは絶対の物。そしてそれはカードであっても代わりは無い。ある意味確信とも言える、気配を感じ取っている龍也の視線の先では。遊馬は笑顔でデッキトップへと手を掛ける。本当に、本当にこのデュエルを楽しんでいるとしか思えな

 

い笑みだ。

 

「俺のターン、シャイニングドロー!!このデュエル、貰った!!

 俺は手札からマジックカード タキオン・M・ドライブを発動!

 このカードはこのターン、時空龍と名のついたカードへ効果を受けさせなくする!」

 

「……私の負けか。良いデュエルだった、楽しませてもらったぞ!」

 

「それはこっちもだ!止めは派手に行こうじゃないか!!

 バトル!超時空龍でホープレイ・ヴィクトリーに攻撃!アルティメット・タキオン・スパイラル!!」

 

 超銀河眼の時空龍は希望皇ホープレイ・ヴィクトリーに光の本流を放つ。それは希望皇ホープレイ・ヴィクトリーを飲み込み最後のデスカウンターを龍也へと打ち込んだ。

 

インフェルニティ・ジェネラル

効果モンスター

星7/闇属性/悪魔族/攻2700/守1500

自分の手札が0枚の場合、自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外し、

自分の墓地に存在するレベル3以下の

「インフェルニティ」と名のついたモンスター2体を選択して発動できる。

選択したモンスターを墓地から特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

インフェルニティ・リターン(オリカ)

通常罠

自分の手札が0枚の場合、自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外し、

自分の墓地に存在する「インフェルニティ」と名のついたモンスター1体を選択して発動する。

選択したモンスターを墓地から特殊召喚する。

 

RUM―銀河の剣(ザ・ギャラクシー・ワン) (オリカ)

通常魔法

自分のエクストラデッキ・フィールド上・墓地の「銀河眼」及び「№」と名のついた

モンスターエクシーズ1体を選択して発動できる。

選択したモンスターがエクストラデッキ・墓地に存在する場合、

選択したモンスターを召喚条件を無視して自分フィールド上に特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

その後、選択したモンスターよりランクが1つ高い「C」と名のついたモンスターエクシーズ1体を、

自分のエクストラデッキから、選択モンスターの上に重ねてエクシーズ召喚できる。

 

C№107 超銀河眼の時空龍 (OCG効果+破壊耐性)

エクシーズ・効果モンスター

ランク9/光属性/ドラゴン族/攻4500/守3000

レベル9モンスター×3

このカードは「№」と名のつくモンスター以外との戦闘では破壊されない。

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

このカード以外のフィールド上に表側表示で存在する

全てのカードの効果はターン終了時まで無効になり、

このターン、相手はフィールド上のカードの効果を発動できない。

また、このカードが「No.107 銀河眼の時空竜」を

エクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。

●自分フィールド上のモンスター2体をリリースして発動できる。

このターンこのカードは1度のバトルフェイズ中に3回までモンスターに攻撃できる。

 

インフェルニティ・ブロック(オリカ)

通常罠

自分の手札が0枚の場合のみ発動できる。

このターン、自分フィールド上のモンスターは

相手のコントロールするカードの効果を受けない。

 

C№39 希望皇ホープレイ・ヴィクトリー

エクシーズ・効果モンスター

ランク5/光属性/戦士族/攻2800/守2500

レベル5モンスター×3

このカードが攻撃する場合、

相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

また、このカードが「希望皇ホープ」と名のついたモンスターを

エクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。

●このカードが相手の表側表示モンスターに攻撃宣言した時、

このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

ターン終了時まで、その相手モンスターの効果は無効化され、

このカードの攻撃力はその相手モンスターの攻撃力分アップする。

 

タキオン・M(マキシマム)・ドライブ (オリカ)

速攻魔法

自分フィールド上の「時空龍」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。

このターン、選択したモンスターは魔法・罠の効果を受けない。

 

 

 

「ありがとう、楽しいデュエルだった。」

 

 遊馬は超銀河眼の時空龍の攻撃によって吹き飛ばされた龍也の近づくと手を伸ばす。龍也はその手を取りながら立ち上がる。

 

「こちらこそだ。それと謝らなくてはいけないな。

 すまない、君からあの愛菜という存在と同じ気配を感じたもので警戒していたんだ。」

 

「ああ、アイツと俺は同じ存在みたいなもんだししょうがない。」

 

 遊馬は頭を掻きながら龍也の言葉に答える。龍也はその言葉に疑問を抱き、遊馬に質問を投げかける。

 

「同じ存在?」

 

「ああ、元々は人間だったんだけどアイツの呪いで種族がニャルラトホテプに変わってな。」

 

「ああ、だから同じ気配に感じたのか。」

 

 龍也はどうして遊馬が愛菜と同じ気配だったのかという表情になる。それから二人は意気投合したかのように話を始めた。話を始めたのだが遊馬と龍也は不穏な気配に気づく。

 

「な、何だこの瘴気は?」

 

「拙い、これは……」

 

 遊馬は得体のしれない瘴気を感じ、龍也はある嫌な想像を思い巡らせる。そして、その瘴気を感じた方向を見るとピンク色・黄色・白色の巨大な魔法陣が存在しているのが見える。

 

「あ、あれは……?」

 

「私の知り合いと妹の創る魔法陣だ、恐らく私が倒されたことに怒って……」

 

「マジか。」

 

 遊馬と龍也がそう話している間にも魔法陣に魔力が集まっているのが見える。やばい、遊馬は沿う感じて恵流へと指令を出す。

 

「恵流、フォー・オブ・ア・カインドだ!」

 

「分かりました、遊馬様!」

 

-----禁忌『フォー・オブ・ア・カインド』-----

 

 遊馬と恵流はその姿を4つに分ける。分身たる遊馬と恵流はそれぞれ飛んでくる魔砲へと対処をするために行動を起こし、本物の遊馬と恵流は龍也を連れてその場を後にした。

 

「「アイオーン!!」」

 

「「デモンベイン!!」」

 

「「リベル・レギス!!」

 

 三組の分身の声に合わせて巨大な立体魔法陣が3つ現れ、その中から機械で出来た神の模倣品――鬼械神をそれぞれ召喚すると魔砲を防ぐために立ち塞がる。その一方、本物の遊馬はというと……

 

「さ、逃げるぞ。」

 

「目玉がうようよと気持ちが悪いな。」

 

「言うな。」

 

 スキマを開き、その中へと逃げこんで遠く離れた場所へと移動した。その後、二人はのんびりと話し合った後に別れ、次のデュエル相手を探し始めた。

 

 



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【超☆融☆合 ~世界を超えた出会い~】 第2話

第2回目はナタタク様との小説とのコラボです!

ティアナさんがガスタを使っていますが、突っ込みはなしでお願いします
それではどうか宜しくお願いしま


「またとんでもない事になったわね。」

 

さっきの愛菜と名乗る人物の作り出した。世界で私は大きく溜息を吐いた。

 

(龍也さんと一緒にいるようになってから色々あったけど。これは極め付けだわ)

 

なに!? ご都合世界って!? あの人何がしたいの!? スカリエッティ並に理解不能だわ。

 

(まぁ。デュエルなんかしないでのんびりと……)

 

そんな事を考えながら歩き出したところで

 

「……ってあれ?」

 

見覚えのある黒コートの青年……ってあれ龍也さんじゃん。

 

「普通に遊んでる……」

 

え? なんで? 龍也さんも遊戯王やってたの? それを見た瞬間私はポケットの中からカードの束を取り出して

 

(子供っぽいって笑われると思ってた。)

 

たかがカードゲームとは言え。あの戦略性と凄まじい枚数のカード同士の連携というのは、中々に面白く。私もやっていた……そのカードの束を見ながら。

 

(ま! 偶にはこう言うのもいっか!)

 

いっつも騒動にしかならない。六課から離れて遊ぶのも悪くない。

 

「誰かと勝負しようかなー」

 

デッキの束を片手にぶらぶらと歩いていると。

 

「へーこんなのあるんだー」

 

ご自由にお使い下さい

 

と書かれた看板の下にある。機械を手にし辺りを見る。

 

「これを目に嵌めるのね」

 

Dゲイザーと言う機械を身に付け。ディスクを腕にセットしデッキを嵌め。辺りを見回すと……

 

(幽霊? じゃあないわよね?)

 

緑の髪の少女を背後に歩く少年の姿が目に止まる。

 

(面白そうね)

 

あの姿はどうみてもガスタシリーズのウィンダ。そして私のデッキもまたガスタ。同じテーマ同士のデッキというの面白いと思い。

 

「ねえ? 私とデュエルしない?。」

 

私はその少年にそう声を掛けた……

 

 

 

 

「ねぇ? 私とデュエルしない?」

 

ウィンダと辺りを見回しながら歩いていると。突然そう声を掛けられ顔を上げると。オレンジ色の髪をツインテールにして、勝気そうな目をした女の人がいた。見たところ年上だろうか?

 

「どう? デュエルしない?」

 

「え? あ。はい!」

 

折角誘われたんだし、断るのも悪いと思い頷くと。

 

(ユウ……女の人だからってデレデレしない。)

 

そういうわけじゃないんだけどなー。

 

「じゃあよろしくね。私はティアナ。ティアナ・ランスター。君は?」

 

「侑斗です。剣崎侑斗」

 

自己紹介されたのに自分が名乗らないというのはおかしい。慌ててそう言うと

 

「そう。じゃあよろしくね。」

 

にこりと微笑むティアナさんに少し見惚れてしまうと

 

(ユウ……集中しようね?)

 

ウィンダの声が異様なほど冷たく少しだけ怖かった……ジトーと僕を見るウィンダの視線から逃れるように

 

「「デュエル!!」」

 

剣崎侑斗 LP4000

 

VS

 

ティアナ・ランスター LP4000

 

「先行は私みたいね。ドロー、モンスターをセット。更にカードを2枚セットしてターンエンド。」

 

ティアナ LP4000

手札3枚

フィールド セットモンスター

伏せ2枚

 

(モンスターをセット……どういう手で来るんだろうか……)

 

まだ最初のターンだ。何をしてくるのか読めないな……

 

「僕のターン。ドロー。手札から《ガスタの武器職人 セイ》を召喚。」

 

ガスタの武器職人 セイ

ATK1900 DEF1200

 

(とりあえず……様子見かな)

 

伏せが気になるが。攻めなければ何も判らない

 

「《ガスタの武器職人》 セイでセットモンスターを攻撃!!」

 

セイの攻撃宣言でセットされていたモンスターの姿が現れる。そのモンスターは緑色の姿をしたリスの様なモンスターが消滅していく。僕はそのモンスターを知っていた

 

(ガスタスクレイル!? あの人もガスタ使いだよ!)

 

そう僕も使っているデッキ。ガスタのリクルーターの1体だ。

 

ガスタスクレイル DEF1800

 

ガスタの武器職人 セイ ATK1900

 

同じガスタ使いって知ってたら。いきなり攻撃なんかしなかったのに……僕は少しだけ後悔しながら

 

「カードを2枚セットして……「じゃあ。私はこのタイミングでリバースカードオープン《リミットリバース》チェーンは?」 出来ません、ターンエンドです。」

 

墓地から再びスクレイルが姿を見せて。尻尾を振っているのをみながら。エンド宣言をした。

 

侑斗 LP4000

手札3枚

フィールド ガスタの武器職人 セイ ATK1900

伏せ2枚

 

「じゃあ。私のターンね。ドロー。」

 

ゆっくりとカードをドローした。ティアナさんはすぐに仕掛けてきた

 

「まずは《ガスタスクレイル》を守備表示に、この瞬間《リミットリバース》の効果で《スクレイル》は自壊するわ。そして効果発動、デッキから《ガスタの賢者 ウィンダール》を特殊召喚。」

 

ローブを身に纏い。槍の様なものを構えた男性がティアナさんの前に現れる

 

ガスタの賢者 ウィンダール ATK2000

 

(お父様……なんか複雑な気分。)

 

「じゃあバトルフェイズね。《ガスタの賢者 ウィンダール》で《ガスタの武器職人 セイ》を攻撃!」

 

ガスタの賢者 ウィンダール ATK2000

 

ガスタの武器職人 セイ ATK1900

 

「くっ……」

 

侑斗 LP4000→3900

 

(救命劇をこのタイミングで使うのは勿体無い)

 

《救命劇》は2体のモンスターを蘇生する。1体を蘇生するのに使うには余りにもったいない

 

「そして《ウィンダール》の効果で墓地から《ガスタスクレイル》を特殊召喚。 本当なら追撃と行きたいんだけど攻撃力0だから、バトルフェイズは終了するわ。メインフェイズに移行するわね。レベル6の《ガスタの賢者 ウィンダール》にレベル2の《ガスタスクレイル》をチューニング!」

 

(レベル8シンクロ!? ガスタにレベル8のシンクロモンスターはいないはずだけど……)

 

ガスタには豊富なシンクロモンスターがいるが。そのレベルは4・5・6・7で、レベル8のシンクロモンスターはいないはずだけど……

 

僕がそんな事を考えていると。スクレイルがくるんと一回転しその姿を2つのチューニングリングに変化させ。ウィンダールはその姿を6つの星にと変化させる

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ!!魂を震わし世界に轟け!!シンクロ召喚!!《閃こう竜 スターダスト》!!」

 

光り輝く閃光と共に白銀の身体をした。ドラゴンがティアナさんの背後に舞い降りる

 

閃こう竜 スターダスト ATK2500

 

「私はモンスターをセット。そしてカードを1枚セットしてターンエンド。」

 

ティアナ LP4000

手札2枚

フィールド

閃こう竜 スターダスト ATK2500

セットモンスター

伏せ2枚

 

 

侑斗 LP3900

手札3枚

フィールド 

伏せ2枚

 

 

 

 

(これは不味い流れかも……)

 

効果は知らないがATK2500のモンスターにセットモンスター。しかも伏せは2枚……

 

(恐らくセットモンスターは……カムイ)

 

リバースすることでレベル2モンスターをリクルートする。ガスタ専用のリクルーター、それによる更なる展開狙いだろう。同じガスタ使い、考える事はある程度予測できるはず……

 

(だけど。それは相手も同じ……ここからは読み合いになる)

 

相手のセット・伏せの読み合いになる……だけど。こういうのは初めてで面白いと僕は感じていた

 

 

 

(さーて、どうでてくるかな?)

 

すぐに《閃こう竜スターダスト》を出せたのはありがたい。相手ターンでも使える戦闘およびカード破壊耐性付加の効果は、今後の展開に役立つ

 

(セットしたのはカムイ リバースはブレイクスルースキルと念のための保険)

 

強力なモンスターを出せれても取りあえずは大丈夫だし。カムイで後続も用意できる……ブレイクスルースキルで効果を無効にしつつ何とか自分の流れに持って行きたい

 

(同じデッキ使いだから何をしてくるか読まれてるわよね?)

 

読み合いになるのは必須だし……それに

 

(さっきのモンスター……《ガスタの武器職人 セイ》だっけ? あんなカード私は知らない)

 

どうもあの子のデッキには私の知らないカードが何枚かありそうだ。その面では私が不利だが……

 

(いつも相手の出方が判るわけじゃない。臨機応変な対応ってね)

 

「僕のターン。ドロー、手札から《ガスタの毒払い》を発動。墓地からガスタと名のついたレベル4以下のモンスターを特殊召喚します。僕は墓地の《ガスタの武器職人 セイ》を特殊召喚! そして手札から《ガスタサンボルト》を召喚!」

 

《ガスタの毒払い》

通常魔法カード

自分の墓地からレベル4以下の「ガスタ」と名のつくモンスター1体を特殊召喚する。

 

《ガスタの武器職人セイ》

レベル4 攻撃1900 守備1200 効果 風属性 サイキック族

このカードは自分フィールド上に「ガスタ」と名のつくモンスターが2体以上表側表示で存在するとき、手札から特殊召喚できる。

 

ガスタの武器職人 セイ ATK1900

 

ガスタサンボルト ATK1500

 

「そしてレベル4の《ガスタの武器職人 セイ》と《ガスタサンボルト》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、《No.00ガスタの魔剣士ユウ》!!」

 

No.00ガスタの魔剣士ユウ ランク4 攻撃2500 ORU2

 

《No(ナンバーズ).00ガスタの魔剣士ユウ》

ランク4 攻撃2500 守備2100 エクシーズ 風属性 サイキック族

「ガスタ」と名のつくレベル4モンスター×2

このカードは「NO(ナンバーズ)」と名のつくエクシーズモンスター以外との戦闘では破壊されない。

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を一つ取り除き、相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して発動できる。

選択したカードの効果を無効にする。

更に選択したカードがモンスターカードの場合、攻撃力が500ポイントダウンする。

 

 

侑斗と同じ顔立ちをし、2本の剣を装備した剣士が現れる。また知らないカードだったのでテキストを確認すると

 

(NO.でしか破壊できない上にステータスダウンと効果無効!?  不味いわね)

 

私のデッキのNO.と付いたモンスターはホープのみ。だがそのホープはあんな効果持ってないが……

 

(並行世界のカード効果ってことね!)

 

「私はこの瞬間。閃こう竜スターダストの効果を自分自身を対象にして発動するわ!  1度だけ《スターダスト》は戦闘及びカード効果で破壊されない。」

 

攻撃力低下をされたとしてもスターダストは残せる……

 

「では僕は《No.00ガスタの魔剣士ユウ》の効果!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手フィールド上のカード1枚を選択して発動する! 選択したカードの効果を無効にし、更にそのカードがモンスターカードの場合、攻撃力を500ポイントダウンさせる!ウィンド・バインド。」

 

「え!?」

 

No.00ガスタの魔剣士ユウが呪文を唱えると、閃こう竜スターダストの周囲を呪縛の風が覆い、能力を封じ込めた。

 

「もう発動してる効果は無効か出来ませんが。攻撃力はダウンさせてもらいます」

 

閃こう竜 スターダスト ATK2500→ATK2000

 

「そして手札から《NoWスパーク・クナイ》をガスタの魔剣士ユウに装備! このカードを装備されたナンバーズの効果は特有の破壊耐性効果以外の効果は無効となり、攻撃力は600ポイントアップする!」

 

No.00ガスタの魔剣士ユウ ATK2500→3100

 

No.00ガスタの魔剣士ユウは上空から落下してきた稲妻が宿る2本のクナイを装備する

 

(装備カードかー。それはちょっと予想外ね)

 

シンクロデッキに装備カードとは……珍しい戦法だと思う。

 

「そして

 

「そして装備モンスターは装備モンスターは1ターンに2度攻撃することができる! その厄介なモンスターには退場してもらいます! 行け!《ガスタの魔剣士ユウ》で《閃こう竜スターダスト》を攻撃!ウィンディ・カッティング!」

 

(いけー!)

 

侑斗の攻撃宣言と同時にその隣のウィンダが手をぶんぶんと振ってるのが見える、何か微笑ましい気もするが……その攻撃は強烈としか言えなかった。

 

スターダストに高速で接近し連激を叩き込む。ユウ1度目の斬撃を耐えたスターダストだが、2回目の斬撃を受ける事は出来ず。両断され爆発する

 

「くっ……」

 

ティアナ LP4000→2900→1800

 

スターダストを1ターンで破壊された上にLPをごっそり持っていかれた……

 

「カードを1枚セットして。ターンエンドです」

 

侑斗 LP3900

手札1枚

フィールド No.00 ガスタの魔剣士ユウ ATK3100 ORU1

NOWスパーク・クナイ

伏せ3枚

 

 

ティアナ LP1800

手札2枚

フィールド

セットモンスター

伏せ2枚

墓地

 

 

 

 

「私のターンね、ドロー」

 

(このままいけるね! ユウ!)

 

「そこ! うるさい!!」

 

楽勝ムードでにこにこ笑ってる。ウィンダに怒鳴ると

 

「え? も、もしかして見えてます?」

 

「見えてるわよ。精霊か幽霊かは知らないけど。ちょっと静かにさせなさい。」

 

色々と考えてるときに騒がれると集中が途切れるからと付け加え。手札を見る

 

(ウィンダが騒ぐから怒られたじゃないか!)

 

(普通は見えてるなんて思わないよ!)

 

さて。どうするかな……

 

(何か怒ってるから謝ってよ!)

 

(怖いからヤダ!!)

 

「静かになさい。殴るわよ」

 

「「はひっ!?!?」」

 

ぎろりと睨むと大人しくなった2人を見ながら

 

「手札から《死者蘇生》を発動! 貴方の墓地の《ガスタの武器職人 セイ》を攻撃表示で特殊召喚するわ。そして《ガスタの希望 カムイ》を反転召喚。効果でデッキから《ガスタファルコ》を特殊召喚」

 

侑斗の墓地からガスタの武器職人 セイを特殊召喚し。更に反転召喚でカムイとファルコを呼び出す

 

「私はレベル4《ガスタの武器職人 セイ》にレベル2の《ガスタファルコ》をチューニング」

 

倒すだけが脳じゃない。こういう戦い方も1つの戦術。そして同じガスタ使いなら

 

(レベル6って……不味いんじゃ)

 

「僕もそう思うよ……」

 

侑斗とウィンダの声を聞きながらエクストラデッキからカードを1枚取り出し。ディスクにセットする

 

「シンクロ召喚 《ダイガスタスフィアード》!」

 

ダイガスタスフィアード ATK2000

 

白銀の軽鎧と槍を構えた少女。ガスタシリーズの切り札。 ダイガスタスフィアードがフィールドにと舞い降りた……

 

 

 

 

(ダイガスタスフィアード!? 不味い)

 

ダイガスタスフィアード。 ガスタのシンクロモンスターの中で最も厄介な効果を持ったモンスター

 

「効果は……使わないわ。でも代わりに手札から魔法カード《ガルドスの羽根ペン》を発動するわ。墓地の《ガスタの賢者 ウィンダール》と《ガスタファルコ》をデッキに戻して。貴方のフィールドの《NO.00 ガスタの魔剣士ユウ》をエクストラデッキに戻してもらうわ」

 

(くっ反射ダメージじゃなくて直接LPを削りに来た!)

 

リクルーターが手札に無いのか。直接攻撃に切り替えてきた

 

「それじゃあ。《ダイガスタスフィアード》と《ガスタの希望 カムイ》でプレイヤーにダイレクトアタック」

 

ダイガスタスフィアード ATK2000

 

ガスタの希望 カムイ ATK200

 

これを喰らえば一気にLPが並ぶ……スフィアードが相手フィールドにいる以上。ここでLPが削られるのは不味い

 

「リバースカードオープン! 《攻撃の無力化》! このターンのバトルフェイズを終了「速攻魔法発動 《風の束縛術》 バトルフェイズに相手が魔法・罠を発動した場合。 自分フィールドの風属性モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える」

 

《風の束縛術 速攻魔法》

 

相手プレイヤーがバトルフェイズに魔法・罠カードを発動した場合。自分フィールドに風属性のシンクロモンスターが存在する場合。このカードは手札から発動できる

自分フィールドの風属性モンスターの攻撃力の合計分のダメージを相手プレイヤーに与える。

 

このカードが墓地に存在する場合。このカードとガスタと名の付いたモンスターをゲームから除外して発動する。 相手の手札をランダムに1枚墓地に送る、そして相手プレイヤーはデッキからカードを1枚ドローする。ドローしたカードがモンスターカードだった場合。自分フィールドの風属性モンスター1体につき、1枚相手プレイヤーは手札を墓地に送る。このカード効果を発動したプレイヤーは次のドローフェイズにデッキからカードをドローできない

 

 

「そ、それじゃあ!?」

 

ダメージを受けない為に無力化を発動したが……

 

「そ、《スフィアード》の攻撃力2000と《カムイ》の攻撃力200。 合計2200ポイントのダメージを受けてもらうわ」

 

スフィアードの槍に風が集まり。それが振るわれると同時に無数のカマイタチが放たれた

 

「うわああああッ!」

 

LP3900→1900→1700

 

ぼ、僕の知らないカード!? こんなのがあるんだったら無力化を使わなかったのに……でも!

 

「リバースカードオープン! 《ショックドロー》! このターン、受けたダメージ1000ごとに1枚カードをドローする!」

 

デッキからカードを2枚ドローするが……

 

(くっカームとガスタイグル!?)

 

逆転のドローには後一手足りない!

 

「ふーん。次の一手を用意か。中々考えてるわね。じゃ、私はカードを1枚セットしてこれでターンエンド」

 

ティアナ LP1800

 

手札0枚

フィールド ダイガスタスフィアードATK2000 ガスタの希望 カムイ ATK200

伏せ3枚 リミットリバース ガスタのつむじ風 ブレイクスルースキル

 

 

侑斗 LP1700

手札3枚

フィールド 

伏せ2枚

 

 

 

(この人強い!? 大丈夫ユウ逆転出来る!?)

 

ウィンダの言葉は正しい。同じガスタ使いだが、墓地利用型の高レベルシンクロ軸。ぼくのとはまるでタイプが違うデッキだ

 

「僕のターン……」

 

あと1枚。 あのカードが引ければ勝てるとまでは行かないが。勝負を判らなくする事は出来る!

 

「ドロー!! ! 来た! 「甘いわね。私は墓地の《風の束縛術》の効果発動! このカードと墓地のガスタと名のついたモンスターを除外して。相手の手札をランダムに1枚。墓地に送る! そして相手はデッキからカードを1枚ドローし。それがモンスターカードだった場合。私のフィールドの風属性モンスター1体に付き1枚追加で墓地に送って貰うわ!」

 

このタイミングでハンデスカード!? 不味い! 今引いたカードが墓地に送られたら勝ち目が無くなる!? それに引いたカードがモンスターだったら完全に勝機は無くなる

 

僕の手札は ガスタの静寂 カーム ガスタファランクス ガスタイグル サイクロン 

 

「じゃあ。右から2番目のカードを墓地に送って頂戴」

 

右から2番めのカード 何とか首の皮一枚で繋がった

 

「貴方が選択したカードは《ガスタイグル》です」

 

カードを公開してから。墓地に送る、それを見たティアナさんは

 

「じゃあ。ドローして。それがモンスターだったら……貴女の負けよ?」

 

そうその言葉の通りだ。これでモンスターを引いてしまったら。2枚追加で墓地へ送らねばならない……

 

(大丈夫だよ! ユウならモンスターを引かないよ!)

 

慰められてるのか微妙な感じだ……僕はそんな事を考えながらデッキからカードをドローした

 

「引いたカードは魔法カードです!」

 

ドローしたカードを見せると

 

「ガスタデッキだからモンスターを引くと思ったけど……当てが外れたわね」

 

やれやれと肩を竦めるティアナさんを見ながら

 

「僕は手札から《ガスタファランクス》を召喚! そして《ファランクス》の効果で手札から《ガスタの静寂 カーム》を特殊召喚!」

 

《ガスタ・ファランクス》

レベル2 攻撃500 守備1100 チューナー 風属性 ドラゴン族

このカードの召喚に成功した時、手札からレベル4以下の風属性モンスター1体を特殊召喚することができる。

この効果で特殊召喚されたモンスターは攻撃できず、エンドフェイズ時に手札に戻る。

 

 

僕のフィールドに2体のモンスターが現れる。それを見たティアナさんは

 

「いい引き運ね。驚かされるわ。でも甘いわね 

 

と口の端を軽くあげて微笑んできた。思わず頬を赤らめると

 

(ユウーッ!!!!)

 

「わわ!? お、落ち着いて! ウィンダ!」

 

物凄く怒り始めたウィンダに謝っていると

 

「くすくす。仲が良いのね、良い事だわ」

 

微笑ましいと言いたげにくすくすと笑っている。ティアナさんを見ながら

 

「そして僕はレベル4の《ガスタの静寂 カーム》にレベル2の《ガスタファランクス》をチューニング!」

 

同じガスタ使いなら。判るはずだ……僕が何をしようとしているのか

 

「まっ。同じガスタ使いだから。そう来るとは思ってたわ」

 

そうは言いつつもティアナさんはまぁこのタイミングでそんなカードを引いてくるとは思わなかったけどね。と呟きながら肩を竦めている

 

「シンクロ召喚 《ダイガスタスフィアード》!」

 

ティアナさんのフィールドにもいる。ダイガスタスフィアードが僕のフィールドにも現れた

 

「そして効果で墓地の《ガスタの武器職人 セイ》を手札に加え! リバースカード発動!  《リビングデッドの呼び声》で墓地の《ガスタイグル》を特殊召喚! そして手札の《ガスタの武器職人 セイ》はフィールドにガスタと付いたモンスターが2体いる場合。手札から特殊召喚できる!」

 

スフィアードの隣にガスタの武器職人 セイとガスタイグルが現れる

 

(わ、私の出番だね!? ユウ!!)

 

「僕はレベル4の《ガスタの武器職人 セイ》に、レベル1の《ガスタイグル》をチューニング。族長の意思を代行する少女よ、友たる鳥獣の背に乗り、今こそ飛翔せよ!シンクロ召喚! 《ダイガスタ・ガルドス》」

 

「やったーーー!!私の登場だよ!」

 

ウィンダは先ほどの怒りはどこにやら。にこにこと笑いながらガルドに飛び乗り。飛翔した

 

ダイガスタ・ガルドス レベル5 ATK2200

 

「そして《ガルドス》の効果……「甘いわよ。リバースカードオープン《ブレイクスルースキル》!」 くっ!? ここで《ブレイクスルースキル》!?」

 

ブレイクスルースキル。相手モンスターの効果を2回まで封じるトラップカード……

 

「そういうこと。これでスフィアードは破壊できないわね?」

 

ガルドスでスフィアードを破壊して。ガルドスでカムイを戦闘破壊しての勝利は無くなった……

 

「くっ! 僕はカードを1枚セットしてターンエンドです!」

 

さっき引いたカードをディスクにセットして。エンド宣言をした

 

侑斗 LP1700

手札0枚

フィールド ダイガスタスフィアード ダイガスタ・ガルドス

伏せ2枚 リビングデッドの呼び声

 

ティアナ LP1800

手札0枚 

フィールド ダイガスタスフィアード ガスタの希望 カムイ

伏せ2枚

 

「私のターンドローって。言いたいんだけど……《風の束縛術》を使った次のターン。このカードを発動したプレイヤーはデッキからカードをドロー出来ないのよね」

 

束縛術とはよく言ったものだ。相手そして自分の首をも絞めるカードだ……

 

「だから。私は何もせずにターンエンドよ」

 

ドロー出来なければ。スフィアードは突破できない。ティアナさんはそのままエンド宣言をした

 

 

 

 

 

 

(手札破壊をするつもりがあてが外れたわね)

 

しかもガルドスとスフィアードと厄介なシンクロモンスターをフィールドに残された。

 

「僕のターンドロー! 僕は手札から《ガスタブラックスピア》を召喚します!」

 

《ガスタ・ブラックスピア》

レベル3 攻撃1000 守備1000 チューナー 風属性 ドラゴン族

自分フィールド上の「ガスタ」と名のつくモンスター1体が相手の魔法・罠・効果モンスターの効果の対象となったときに発動できる。

そのモンスターを手札に戻し、このカードを手札から特殊召喚する。

「ガスタ・ブラックスピア」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

 

 

 

リクルーターじゃないだけましか。リクルーターだったら私の負けだもんね。カードゲームだからといって負けるのはいやだ。やるからには勝ちに行きたい

 

「そして《ガルドス》の効果を……「リバースカードオープン 2枚目の《ブレイクスルースキル》!」 2枚もセットしてたんですか?」

 

呆れたという顔の侑斗に

 

「相手の邪魔は戦術の基本よ。文句を言われることじゃないわ」

 

実の所。ウィンダが後ろにいるのを見て。ミラーマッチになると思ってサイドデッキからメインに入れたんだけどね。

 

「じゃあ僕は《ブラックスピア》で《ダイガスタスフィアード》を攻撃!」

 

ダイガスタスフィアード ATK2000

ガスタブラックスピア ATK1000

 

本来なら自爆特攻だが。侑斗のフィールドにはスフィアードがいる。 スフィアードがブラックスピアを破壊し発生した爆風は侑斗では無く私にと襲い掛かり

 

ティアナ

LP1800→800

 

「くうう……自分で使うのはいいけど。使われるのは厄介ね!」

 

これでもう後が無くなった。次にどんなモンスターを引かれても、私の負けだ

 

「僕はこれでターンエンドです」

 

侑斗 LP1700

手札0枚

フィールド ダイガスタスフィアード ダイガスタ・ガルドス

伏せ2枚 リビングデッドの呼び声

 

ティアナ LP800

手札0枚 

フィールド ダイガスタスフィアード ガスタの希望 カムイ

伏せ1枚

 

「私のターンドロー」

 

ドローしたカードを見る。これでリクルータだったなら勝てるけど

 

(ガスタの巫女 ウィンダ……)

 

リクルーターだが。相手の攻撃でなければ効果が発動しない。この状況では完全に死に札だ

 

(カムイの攻撃が通れば勝てるけど……そうすんなりいくとは思えないのよね)

 

あの2枚の伏せカードが気になってしょうがない。私のフィールドに《スフィアード》がいるから、攻撃しなかったのは判るが何か引っ掛かるのだ

 

(まぁ考えても仕方ないか)

 

「私は《ガスタの希望 カムイ》で《ダイガスタガルドス》を攻撃!」

 

ダイガスタガルドス ATK2200

ガスタの希望 カムイ ATK200

 

これが決まれば2000の反射ダメージで勝ちだが……

 

「リバースカードオープン! 《禁じられた聖杯》を2枚発動します! 効果でカムイの攻撃力を800ポイントアップします!」

 

攻撃力が1000になったカムイがガルドスに飛びかかろうとして

 

「えいっ!」

 

ウィンダが杖を頭目掛けて振り下ろし。カムイは頭を押さえて消滅した……なんかお姉さんにしかられた悪戯坊主って感じね

 

侑斗 

LP1700→500

 

見ていて若干微笑ましいとも思えたが。状況は非常に悪い、次のターンモンスターを引かれると負ける

 

「メインフェイズ2で リバースカード《風霊神の宝札》を発動するわ。 自分フィールドの攻撃力2000以上の風属性シンクロモンスターまたはエクシーズモンスター1体をリリースしてデッキからカードを2枚ドローする」

 

《風霊神の宝札 通常罠カード》

 

自分フィールド上の攻撃力2000以上の風属性シンクロモンスターまたはエクシーズモンスター1体をリリースすることで発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

「風霊神の宝札」は1ターンに1度しか発動できない。

 

このドローに全部賭けるしかない。《スフィアード》を失ってまでドローするんだ。勝てる一手でなければ意味がない

 

「ドロー」

 

引いたカードを見て。私は

 

(……よりによってこのカードですか……)

 

いざという時のカードであんまり使いたいカードでは無い。だがこのタイミングでこのカードを引いたこと、そして手札にある《ガスタの巫女 ウィンダ》。状況が告げているこのカードを使えと

 

(なんかあの子に恨まれそうね)

 

ちらりと向かい側を見る

 

「ユウ。このまま行けば勝てるね!」

 

「そうだけど、まだなにかあるかも」

 

楽しそうに会話する2人を見て少し心が痛んだが

 

「私はカードをセットしてターンエンド」

 

 

侑斗 LP500

手札0枚

フィールド ダイガスタスフィアード ダイガスタ・ガルドス

伏せ2枚 リビングデッドの呼び声

 

ティアナ LP800

手札2枚 

フィールド 

伏せ1枚

 

 

 

 

「僕のターンドロー!」

 

同じガスタ使いと勝負するのは楽しかったし、勉強になったけど。これで終わりだ、引いたカードは死者蘇生。我ながら良い引きだと思い思わず微笑むと

 

「あのね。私って負けるの凄く嫌いなのよ」

 

「はい?」

 

突然そんな事を言い出したティアナさんは

 

「だからね。負けるの嫌いなのよ。すっごくね」

 

「はぁ……?」

 

突然なんだと困惑しているとティアナさんは

 

「リバースカードオープン。《ボレアスの逆鱗》」

 

《ボレアスの逆鱗 通常トラップ》

 

フィールドにこのカード以外のカードが存在しない場合のみ発動できる。手札の風属性モンスターと手札1枚を除外し。除外した風属性モンスターの攻撃力分のダメージをお互いに受ける

 

このタイミングで何のカードだろう? と僕が首を傾げていると

 

「このカードは自分フィールドにこのカード以外のカードが存在しない場合のみ発動できる。手札の風属性モンスターと手札1枚をゲームから除外して発動する。除外した風属性モンスターの攻撃力分のダメージをお互いに受ける」

 

「え? じ、自爆!?」

 

ウィンダが目を見開いている。僕だって驚いてる

 

「私は手札の《ウィンダ》と《大嵐》を除外するわ」

 

しかもよりによってウィンダのカードって……

 

「ちょっとーッ!! 私のカードで自爆しないでー!!!」

 

ガルドスの上でウィンダが叫ぶがもう遅い。効果は発動してしまった。僕とティアナさんの間に凄まじい風圧を放つ風の球体が現れる

 

「まぁその色々といいたいことあると思うけど……ごめんね?」

 

「ごめんねじゃないよーッ!!!!」

 

ウィンダが怒鳴った瞬間。目の前の球体が炸裂し。僕とティアナさんは互いに1000ポイントのダメージを受け同時にLPが0になった

 

 

 

侑斗 LP500→0

 

ティアナ LP800→0

 

「あ。あははは……ごめんね?」

 

(酷い! 酷すぎる! よりによって私のカードで自爆するなんて!!)

 

ウィンダに謝ってるティアナさんに

 

「随分と思い切ったことしましたね?」

 

「まぁどうせ負けるならって思えば案外使える物よ? 欲しいなら上げよっか?」

 

(そんな自爆のカード。ユウにあげないで!!!)

 

ウィンダが両手でバツを作り、いやいやと首を振ってる

 

「そう? 意外と便利なんだけどね」

 

自爆系のカードなんて普通はデッキに入れない。余程負けず嫌いだと言うのが良く判る1枚だ

 

「いま。私のこと凄い負けず嫌いって思ったでしょ?」

 

「あ、あはは。すいません」

 

その余りに強い眼光に思わず謝ってしまった

 

「まぁ実際に負けず嫌いだから良いんだけどね。さてと同じガスタ使いと勝負というのは中々楽しかったわね。今度やるときは私が勝つから」

 

そう笑ってまた別の対戦相手を探すためにか、歩き出したティアナさんを見ていると

 

(出来ればあの人とはもう勝負したくないね)

 

「まぁ。僕もそう思うよ」

 

なんか。同じガスタ使いだったけど。全然違う構築だった。あんな構築もあるんだと中々に勉強になった

 

「よし。じゃあ次の……」

 

次の相手を探そうと思いながら立ち上がろうとして、手元を見ると3枚のカードが

 

《ボレアスの逆鱗》

 

《風の束縛術》

 

《風霊神の宝札》

 

「……これ。どうする? ウィンダ?」

 

(絶対デッキに入れちゃだめ!!)

 

だよね。こんなカードいれて回す自信ないよ。でも

 

「折角だから拾って置こうっと」

 

何時か使うかもしれないし。《ボレアス》と《束縛術》は使えないが。《宝札》は素直に嬉しいし……僕はそう思って3枚のカードを拾い。サイドデッキに入れて

 

「じゃあ。次の相手を探しに行こうか?」

 

(そうだね。さっきのは何か納得行かないし!)

 

だね。と返事を返し僕とウィンダは次の対戦相手を探す為に移動することにした……

 



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【超☆融☆合 ~世界を超えた出会い~】 第3話

どうも混沌の魔法使いです

今回は狂戦士様のとのクロスでフェイトさんはフォトンを使っています
加速言うイメージで選びました、それでは今回もどうか宜しくお願いします


「…静かだな。まあ、さすがに虫や鳥はおらず、生物は呼び出されたのしかいないんだろう」

 

 だが、木々は生きている。仭は生い茂る木々のうち、1本に手を付けることでそれに生命があることを何となく感じていた。

 

「さて、ここがデュエルモンスターズのためだけに存在するのであれば、もしやと思ってきてみたが……さすがに周囲の環境等がデュエル時に影響されるというのは、考えすぎだったかな」

 

 そう呟きながらさらに奥へと進む。仭は現在街から離れ、近くの森にへといた。

 わざわざ来た目的は2つ。1つは街以外にもデュエリストがいるかもしれないと推測して。もう1つは漫画版決闘者の王国(デュエリストキングダム)のように、周囲の環境がデュエルに影響してフィールド魔法になっているのではないかと推測して。

 ただ、さすがに後者はないかなとやはり思っていたりする。だが、それならそれでも構わない。自分のように考えてこの場所に来た者もいるかもしれないし、興味本心で来ている者もいるかもしれないのだ。

 

「しかしやはりというか、ここに呼ばれた者は強い。此方の世界のデュエルモンスターズは娯楽となっているが故に、デュエリストとしての差はできてしまうのは仕方ないとはいえるが…」

 

 デュエル的な意味もあってだが、その者の持つ実力の類でも自分より強いだろう。皆何かしら”持っていた”のを、仭はまだ数戦しかデュエルを行っていないとはいえ、何となく感じていたからだ。才能の意味でも、超能力の意味でも、一言では表わせられないナニカという意味でも。

 後はまあ、久しぶりにデュエルを行ったために、初戦から少々調子が鈍っていたのもあるが。それもやっていくうちにやっと本調子に戻ってきたところである。

 しかし本気で自分以外(超能力等的な意味で)普通の人間はいそうにないなと思いながら生い茂る木々の間を抜けていくと、1本の大木がある所に出た。それは他の生い茂る木々とは比べ物にならないほど巨大で、圧倒的な存在感を出している。

 

 

「へぇ…まんまガイアパワーじゃないのかこれは?」

 

ガイアパワー

フィールド魔法

フィールド上に表側表示で存在する地属性モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、守備力は400ポイントダウンする。

 

 思わずそう口にしながら、その大木へ近づいていく。そして大木の表面に手を付け、上を見上げた。

 

「…………」

 

 そのまましばし無言でいると、目的を思い出したのか振り返って立ち止まった辺りまで戻る。

 

「…さて、誰かいるんだろう!」

 

 地面に落ちている落ち葉や木の枝を踏みながら歩いてきたので、もしこの森の中に誰かいるのならば、自分に気付いて後を追ってくるのだろうと思っていたのだが、音もなく誰かがいる気配もない。しかしそれでもこの世界に呼ばれている者のことから、一応尋ねてみる。

 

「あれ?バレた?」

 

 すると木々の間から金髪のストレートヘヤーの女性が顔を見せ、此方に歩き出した。

 

「うーん。最近あんまり現場出てないからなー。何か鈍ってるのかも」

 

「…いいや、いるかどうかなんて分からなかったよ。だが、この世界にはどうも常識外の力を持っている人物が多数いるようなのでね。カマをかけたってこと」

 

「あ、そうなの?じゃあ、君にまんまと乗せられちゃったわけだね」

 

 からからと笑い、人の良い笑みを浮かべながら軽い口調で話す。が、仭は思いっきり警戒していた。

 

(何だこの女は…)

 

 得体の知れなさを感じる。いや、それは今までのデュエリストからも感じていたが、これは何かヤバい。何がヤバいというのは判らないが、何かヤバい気配がする。思わず内心ヤバイを連発するほど、得体の知れない何かを彼女から感じていた。

 ただひとまずいるかどうか、半信半疑ではあったが尋ねたら出てきてくれたので、一応1つ聞いておく。

 

「デュエリスト…か?」

 

「デュエリスト?ああ、あれね。エリオとかティアナがやってるカードゲームをやる人でしょ?私も持ってるけど……勝負するの?」

 

 カードを取り出す金髪の女を見て仭はデュエリストかと理解すると同時に、尋ねたことを間違えたなと若干後悔する。

 

「自己紹介しておくよ。俺は黒崎仭。何ら力を持たないながらも、誰かの気まぐれで呼び出されたデュエリストだ」

 

「私はフェイト・T・ハラオウン。じゃ、やろう?」

 

 相手はもう既にデュエルディスクにデッキをセットし、此方を見ている。それを見て仭はデュエルディスクを左腕に展開。さらにデッキを取り出してセットする。

 

「「デュエル!」」

 

仭:LP4000

フェイト:LP4000

 

「先行は…俺か。ドロー」

 

 デュエルディスクの機能により、先行となった仭はカードを引く。

 

「自分フィールド上にモンスターが存在しないことにより、手札から攻守を半分にして太陽風帆船(ソーラー・ウィンドジャマー)を特殊召喚」

 

 仭のフィールドに、帆船の帆が上下に付いた宇宙船が現れる。

 

太陽風帆船

ATK:800→400

 

(と、フィールド魔法効果は…発動されてないな。ということは環境で左右されはしないというわけか)

 

 フィールド魔法が勝手に発動されているだろうかと思い、デュエルディスクで確かめるがそれはなかった。これによって仭の目的は1つ達成されたわけだが、今はデュエル。そっちの方に集中する。

 

「太陽風帆船をリリースして、モンスターをセット。

 さらに永続魔法カイザーコロシアムを発動。このカードのコントローラー――つまるところ俺のフィールド上にモンスターが1体以上存在する場合、そっちがフィールド上に出す事ができるモンスターの数は、俺のフィールド上のモンスターの数を越える事はできない」

 

 仭がカードを発動すると、コロシアムが立ち始めて2人の周囲を囲む。さらに周囲の多くの観客?の歓声が響き渡る。

 今の状況を例えるならバトルシティ準決勝の闇遊戯(アテム)と海馬のデュエルの際の舞台であった。永続魔法だがこれはもうフィールド魔法だろうと仭が内心突っ込んでいると、フェイトが声をかけてくる。

 

「つまり今の君のフィールドにはモンスターが1体いるから、私は1体しかモンスターを出せないわけだね」

 

「そうなる。ただし、このカードが発動する前にフィールド上に存在しているカードは、この効果の影響を受けない。と言っても関係ないか。カードを1枚伏せてターンエンド」

 

 ターンが変わり、フェイトはデッキトップに手を添える。

 

「私のターン、ドロー!フィールド魔法、光子圧力界(フォトン・プレッシャー・ワールド)を発動するよ!」

 

「げっ」

 

 フィールド魔法が発動され、周囲が宇宙へと変わる。これにより背景が宇宙で周囲がコロシアム。なかなかにシュールな光景である。

 

「私のフィールドにモンスターがいないから、フォトン・スラッシャーを特殊召喚!」

 

フォトン・スラッシャー

ATK:2100

 

 モンスターが現れたことに、仭は顔を僅かにしかめる。もっとも、それはフォトン・スラッシャーの攻撃力からではない。

 

「フィールド魔法の効果で召喚されたフォトンモンスターのレベル×100のダメージを、フォトンモンスターをコントロールしていないプレイヤーに与えるよ。フォトン・スラッシャーのレベルは4。だから君に400ポイントのダメージ!」

 

「ちっ、トラップ発動、ダメージ・ダイエット!このターン受けるすべてのダメージを半分にする!」

 

 フィールド魔法効果により、宇宙空間から隕石が飛来して落下。仭はその衝撃でダメージを受ける。たかだが400だが、この後も展開することを予想してのことだ。

 

仭:LP4000→3800

 

「セットモンスターが怪しいけど、ここはバトル!フォトン・スラッシャーで、セットモンスターを攻撃!」

 

「セットモンスターは、ダブル・クロス・アーマー」

 

ダブル・クロス・アーマー

DEF:0

 

「守備力0?」

 

「1体のモンスターを使ってセットしたのだから、当然意味はある。ダブル・クロス・アーマーの効果。このカードが相手モンスターの攻撃対象になった時、ダメージ計算後に相手の攻撃モンスターを破壊する」

 

「む!」

 

 剣を引きずりつつも突撃して切り上げを繰り出してくるフォトン・スラッシャーの攻撃を、身軽そうな全身鎧が見た目のダブル・クロス・アーマーは、自身を軸に回転。そのまま回し蹴りで迎え撃つ。勢いのある脚は剣を折り、その勢いの状態でフォトン・スラッシャーにも回し蹴りを食らわして吹っ飛ばした。

 

「その後、破壊した相手モンスターの攻撃力の数値分のダメージを相手に与える」

 

「きゃっ!」

 

 ダブル・クロス・アーマーの反撃の勢いは止まらず、回転しながらフェイトの方にも近づき、回し蹴りを食らわす。そして破壊された。

 

フェイト:LP4000→1900

 

「いきなり結構貰っちゃったけど、このままじゃ終わらないよ!フォトン・サーベルタイガーを召喚!レベルは3だから300。その半分の150ダメージ!」

 

 全身に光を帯びたサーベルタイガーが現れ、それによって隕石が仭へ飛来する。

 

仭:LP3800→3650

 

「召喚時効果で、デッキからサーベルタイガー1体を手札に。それとサーベルタイガーは同名モンスターがいないと、攻撃力が800ポイント下がるよ」

 

フォトン・サーベルタイガー

ATK:2000→1200

 

「でも、そんなのは関係ない。手札から融合を発動!場と手札のフォトン・サーベルタイガーを融合して、ツイン・フォトン・リザードを融合召喚!ツイン・フォトン・リザードのレベルは6だから、300ポイントののダメージ!」

 

「…………」

 

ツイン・フォトン・リザード

ATK:2400

 

仭:LP3650→3350

 

「融合召喚してすぐであれだけど。ツイン・フォトン・リザードをリリース。そして融合素材に使用したフォトン・サーベルタイガー2体を墓地から特殊召喚!」

 

(同時召喚だから光子圧力界の効果は、1体のみにだが…)

 

 2体のサーベルタイガーが現れ、さらに上空から隕石が仭に向かって落下していく。

 

フォトン・サーベルタイガー×2

ATK:2000

 

仭:LP3350→3200

 

「さらに2体のサーベルタイガーをリリース!」

 

「…おい、まさか今度はあれが来るのか!」

 

 2体のモンスターが合わさって、赤い十字架の様な物体がフェイトの手元に現れる。それを見て仭は何が来るのか分かってしまった。

 

「闇に輝く銀河よ、希望の光になりて我が僕に宿れ!」

 

 そして十字架が投げられると、その十字架のもとに光が集まっていく。

 

「光の化身、ここに降臨!現れろ、銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトンドラゴン)!!」

 

 集まった光は、青い光を放つ巨大な竜となった。

 

「そして光子竜も当然フォトンと名の付くモンスター、フィールド魔法の効果が発動するよ。レベル8だから800だけど、ダメージを半分にされてるから400のダメージ!」

 

銀河眼の光子竜

ATK:3000

 

仭:LP3200→2800

 

「もう何回隕石が降ってきてるんだっての」

 

「えっと、5回だよ?」

 

「回数とかを言ってるんじゃなく…」

 

「あっ、そうなの。それと私はこれでターンエンドだよ」

 

光子圧力界(フォトン・プレッシャー・ワールド)(アニメZEXALオリカ)

フィールド魔法

『フォトン』または『光子』と名のついたモンスターが召喚・特殊召喚された時、そのモンスターのレベル×100ポイントダメージを、『フォトン』または『光子』と名のついたモンスターをコントロールしていないプレイヤーに与える。

 

ダブル・クロス・アーマー(アニメDMオリカ)

効果モンスター・アーマー

レベル6/地属性/機械族/攻撃力0/守備力0

自分フィールド上に表側表示で存在するアーマーモンスターは自分のターンに1体のみでしか攻撃できない。自分がコントロールするアーマーモンスターが攻撃対象になった時、攻撃対象を他のアーマーモンスターに変更する事ができる。

このカードは攻撃を行う事ができない。

このカードが相手モンスターの攻撃対象になった時、ダメージ計算後に相手の攻撃モンスターを破壊する。その後、破壊した相手モンスターの攻撃力の数値分のダメージを相手に与える。

 

仭 LP2800

手札2

・モンスター

なし

・魔法・罠

カイザーコロシアム

 

フェイト LP1900

手札1

・モンスター

銀河眼の光子竜

・魔法・罠

光子圧力界

 

「俺のターン、ドロー…カードを1枚伏せて、カードカー・Dを召喚。効果で自身をリリースして、カードを2枚ドロー。ターンエンドだ」

 

カードカー・D

ATK:800

 

 カードカー・Dの効果で、強制的にエンドフェイズに入って仭のターンが終わる。

 

「私のターン、ドロー!手札からフォトン・サブライメーションを発動!このカードは墓地のフォトンモンスター2体を除外することで2枚ドローする。私は墓地のフォトン・サーベルタイガーとフォトン・スラッシャーを除外して2枚ドロー!」

 

「手札増強、か。モンスターを召喚されるも困るし、トラップ発動、マグネット・アーマー。自分の墓地に存在するアーマーモンスター1体を選択して発動し、選択したモンスターを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。墓地のダブル・クロス・アーマーを蘇生!」

 

 ダブル・クロス・アーマーが復活し、ギャラクシーアイズの前に仁王立ちする。

 

ダブル・クロス・アーマー

ATK:0

 

「また来たかぁ。とりあえずドラゴニック・ディバインを発動!私のフィールド上にレベル8以上のドラゴン族モンスターが存在する場合、1000ライフポイントを払って発動。このターン発動した、私の墓地の一番上の魔法カード、フォトン・サブライメーションを手札に。

 そして発動!墓地のツイン・フォトン・リザードとフォトン・サーベルタイガーを除外して、2枚ドロー!」

 

フェイト:LP1900→900

 

「うーん…カードを3枚伏せて、ターンエンドだよ」

 

「マグネット・アーマーの効果で召喚されたモンスターは、エンドフェイズ時に破壊される」

 

フォトン・サブライメーション(アニメZEXALオリカ)

通常魔法

自分の墓地に存在する『フォトン』と名のついたモンスター2体をゲームから除外する事で発動する。自分のデッキからカードを2枚ドローする。

 

マグネット・アーマー(アニメDM・未OCGwikiオリカ)

通常罠

自分の墓地に存在するアーマーモンスター1体を選択して発動する。

選択したモンスターを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。

発動ターンのエンドフェイズ時に選択したモンスターを破壊する。

 

ドラゴニック・ディバイン(アニメZEXALオリカ)

通常魔法

自分フィールド上にレベル8以上のドラゴン族モンスターが存在する場合、1000ライフポイントを払って発動できる。

このターン発動した、自分の墓地の一番上の魔法カード1枚を手札に加える。

 

仭 LP2800

手札3

・モンスター

なし

・魔法・罠

カイザーコロシアム

 

フェイト LP900

手札1

・モンスター

銀河眼の光子竜

・魔法・罠

光子圧力界

伏せ3

 

「俺のターン、ドロー。アーマード・グラビテーションを発動!自分のデッキからアーマーモンスター4体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚する」

 

「アーマーモンスター?」

 

 フェイトは聞き慣れない単語に、首を傾げる。それを見て仭はどうやらそっちの世界ではアーマーモンスターはいないようだなと思いながらプレイングを続ける。

 

「俺はデッキからサイキック・アーマー・ヘッド、バスター・パイル・アーマー、トラップ・バスター・アーマー、オーバー・ブースト・アーマーを特殊召喚!」

 

 仭のフィールドにヘルメット、右腕(ライトアーム)左腕(レフトアーム)両脚(レング)がそれぞれ出現した。

 

サイキック・アーマー・ヘッド

ATK:0

 

バスター・パイル・アーマー

ATK:0

 

トラップ・バスター・アーマー

ATK:0

 

オーバー・ブースト・アーマー

ATK:0

 

「部分的の装甲モンスター…。もしかして君が装備するの?」

 

「概ねそのような認識でいいと思う」

 

「へぇ、やってみせて!」

 

「まあ…構わないが」

 

 そう言うとそれぞれのアーマーモンスターが仭へ向かって行き、頭、右腕、左腕、両脚にそれぞれ装着された。

 

「胴体もあるんだが、今はそれ以外の4体しかいないからここまでだな」

 

「へぇー…胴体の方を守ってないから、まるでISみたいだなぁ」

 

「IS?……もしやインフィニット・ストラトスの略か?」

 

「えっ、何で君知ってるの?」

 

 もしやと思い言ってみたが、どうやら当たりだったらしい。確認のため、さらに続けてみる。

 

「…それで基本女しか乗れない兵器?」

 

「正解だよ。ってことはもしかして君…」

 

「…俺は兵器――『インフィニット・ストラトス』が主と化している世界出身だ。まさか同じような世界の住人に出会うとは…」

 

「そうなんだ。まあ、私はちょっと違うんだけどね」

 

「?……とりあえず続けさせてもらう。レベル4のサイキック・アーマーとバスター・パイルで、オーバーレイ!」

 

「え?」

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。

 エクシーズ召喚!現れろ、ギアギガント X(クロス)!」

 

 全身が歯車で構成され、一際目立つ白と水色の巨大な歯車を背負った機械戦士が現れる。

 

「さらにレベル4のトラップ・バスター、オーバー・ブーストの2体で、オーバーレイ!(以下略)ギアギガント X!」

 

ギアギガント X×2(それぞれORY2)

DEF:1500

 

 2体の機械戦士が並んだのを見て、フェイトは若干不満そうな声を出す。

 

「えー、そこはさっきのモンスター達の効果を使うところじゃない?」

 

「いや、だから装着しなかったんだけどな。戦闘で効果を発揮するわけだし」

 

 フェイトの言うことももっともな気もするが、すぐにエクシーズに使われるのに、わざわざ装着なんてしたら手間がかかるだけだし、ただの格好付けである。

 

「まあいいや。トラップ発動、デモンズ・チェーン!一方のギアギガント Xの攻撃を封じて、効果も無効にするよ」

 

「そう来たか。が、もう1体いる。ギアギガント Xの効果発動。エクシーズ…いや、ORUを1つ使い、デッキか墓地からレベル4以下の機械族モンスターを手札に加える。デッキからビックバン・ブロー・アーマーを手札に」

 

ギアギガント X(2)→(1)

 

「モンスターをセット、さらにカード2枚伏せてターンエンドだ」

 

 仭は場を整えてターンを終えた。フェイトは愚痴っていたが、攻撃が通りさえするのならば、仭もエクシーズに使うようなことはせず、組み合わせももっと別のようにしていた。ただ、攻撃が通りそうにもないと考えた。それだけである。

 

「私のターン、ドロー。トライアングル・イヴォルブを発動!私のフィールド上のレベル5以上のモンスター1体を選択して発動。選択したモンスターをエクシーズ素材とするなら、1体で3体分の素材とする事ができる。ただし、召喚したエクシーズモンスターの攻撃力は1000下がるけど」

 

「何!?まさか…」

 

 レベル8で3体の素材で召喚されるエクシーズモンスター。それに素材が光子竜ということから、あるエクシーズモンスターが頭に浮かぶ。

 するとフェイトの手元に槍のような物体が現れ、それをエクシーズ召喚時に発生する渦に突き刺すように放り投げる。

 

「レベル8の銀河眼の光子竜でオーバーレイ!

 1体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!

 エクシーズ召喚!逆巻く銀河よ、今こそ、怒涛の光となりてその姿を現すがいい!降臨せよ、我が魂!|超銀河眼の光子龍《ネオ・ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン》!!」

 

 そして現れたのは赤い光の肉体を持った三頭龍。その輝きと圧倒的存在感に仭は思わず身を退きそうになる。

 

超銀河眼の光子龍(ORY1)

ATK:4500→3500

 

「光子竜を素材としてエクシーズ召喚に成功した超銀河眼の効果で、このカード以外のフィールド上に表側表示で存在するカードの効果を無効にする。フォトンハウリング!」

 

「くっ」

 

 超銀河眼の光子龍の咆哮に、世界やモンスターらがその能力(ちから)を失う。

 

「さらにエクシーズ・トレジャーを発動!フィールド上に表側表示で存在するモンスターエクシーズの数だけ、自分のデッキからカードをドローできる。全部で3体、だから3枚ドロー!

 続いて装備魔法フォトン・ストライクを超銀河眼に装備。フォトン・ストライクを装備したモンスターは貫通効果を持ち、このカードの効果でダメージが発生した時、相手に1000ポイントのダメージを与えるよ」

 

「何だと!?」

 

「そして超銀河眼の効果発動!ORUを1つ取り除いて、相手フィールド上のORUを全て取り除く。そしてこのターン超銀河眼の攻撃力は、取り除いた数×500ポイントアップして、その数だけ攻撃できるよ。君のフィールドに存在する3つのORUを取り除いて、攻撃力1500アップ!さらに3回攻撃!」

 

超銀河眼の光子龍(1)→(0)

ATK:3500→5000

 

「光子竜持ちの超銀河眼に、貫通効果とバーンとか凶悪この上ない!!」

 

「行くよー♪」

 

 叫ぶ仭に対して笑顔のフェイト。それはさながら死刑宣告を告げる天使のように仭は視えた。

 

「超銀河眼で、ギアギガント Xに攻撃!アルティメット・フォトン・ストリーム!」

 

「くそっ、いい笑顔でやりやがって。俺より性質(たち)が悪いんじゃないか?トラップ発動、ホーリージャベリン!超銀河眼の攻撃力分ライフを回復。

 続いてトラップ発動、シフトチェンジ!その1撃目の攻撃対象をセットモンスターに変更!」

 

仭:LP2800→7800

 

 3つの口から発射される強力な光線は、攻撃対象の機械戦士の前に躍り出た正体不明のモンスターへと変わり、光線が直撃する前にセットモンスターの姿が現れる。

 

ビックバン・ブロー・アーマー

DEF:0

 

 そのアーマーモンスターは、前に出た仭の右腕へと装着される。仭は笑みを浮かべながら、勢いよく右拳を振りかぶって光線へぶつけた。

 

「攻撃対象を変えたところで、フォトン・ストライクの効果でダメージが通るよ!」

 

「残念だが、ビックバン・ブローとの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる!」

 

 そう喋ってる間に光線とぶつかりあっている拳が、徐々に押し始めていく。

 

「さらにこのカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、フィールド上に存在する全てのモンスターを破壊する。その後、破壊したモンスターの攻撃力の合計値分のダメージをお互いのプレイヤーは受ける」

 

「嘘!?」

 

「当然9600(5000+2300×2)のダメージはライフを回復した俺も耐えられない。故に墓地のダメージ・ダイエットを除外してダメージを半減!」

 

「マズイ!トラップ発動、ファイナル・ライフガードナー!このカードは私のライフが0になるダメージを受けるとき、ライフを100だけ残してバトルを終了させる!」

 

「―――ジ・エンド・オブ・クラッシャー!!」

 

 光線を突き破っていき、超銀河眼にビックバン・ブロー・アーマーの拳が突き刺さる。そしてすべてを巻き込む大爆発を起こした。

 

「ぐおおおおおっ!!」

 

「きゃああああっ!!」

 

仭:LP7800→3000

 

フェイト:LP900→100

 

 お互い爆発の衝撃で吹っ飛ばされるが、それぞれうまく体勢を立て直して着地する。

 

「っと、さすがに決まったと思ったが…」

 

「結構衝撃来るなぁ。私はこのままターンエンドだよ」

 

アーマード・グラビテーション(アニメDM・未OCGwikiオリカ)

通常魔法

自分のデッキからアーマーモンスター4体を選択する。

選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。

発動ターンのエンドフェイズ時に、この効果で特殊召喚したモンスターを全て墓地へ送る。

 

サイキック・アーマー・ヘッド(アニメDMオリカ)

効果モンスター・アーマー

レベル4/地属性/機械族/攻撃力0/守備力500

自分フィールド上に表側表示で存在するアーマーモンスターは 自分のターンに1体のみでしか攻撃できない。

自分がコントロールするアーマーモンスターが攻撃対象になった時、攻撃対象を他のアーマーモンスターに変更する事ができる。

このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分のドローフェイズ時に通常のドローする代わりに、自分のデッキからアーマーモンスター1体を手札に加える事ができる。

また、自分ターンのスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在する場合、このカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。

 

バスター・パイル・アーマー(アニメDMオリカ)

効果モンスター・アーマー

レベル4/地属性/機械族/攻撃力0/守備力0

自分フィールド上に表側表示で存在するアーマーモンスターは 自分のターンに1体のみでしか攻撃できない。

自分がコントロールするアーマーモンスターが攻撃対象になった時、攻撃対象を他のアーマーモンスターに変更する事ができる。

このカードが攻撃を行う場合、自分が受ける戦闘ダメージは0になり、このカードと戦闘を行った相手モンスターはダメージステップ終了時に破壊する。

その後、相手に500ポイントのダメージを与える。

 

トラップ・バスター・アーマー(アニメDMオリカ)

効果モンスター・アーマー

レベル4/地属性/機械族/攻撃力0/守備力0

自分フィールド上に表側表示で存在するアーマーモンスターは 自分のターンに1体のみでしか攻撃できない。

自分がコントロールするアーマーモンスターが攻撃対象になった時、攻撃対象を他のアーマーモンスターに変更する事ができる。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分がコントロールする全てのアーマーモンスターは罠カードの効果を受けない。

 

オーバー・ブースト・アーマー(アニメDM・未OCGwikiオリカ)

効果モンスター・アーマ-

レベル4/地属性/機械族/攻撃力0/守備力500

自分フィールド上に表側表示で存在するアーマーモンスターは 自分のターンに1体のみでしか攻撃できない。

自分がコントロールするアーマーモンスターが攻撃対象になった時、攻撃対象を他のアーマーモンスターに変更できる。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分がコントロールする全てのアーマーモンスターは対象を指定しないモンスターカードの効果では破壊されない。

 

トライアングル・イヴォルブ(アニメZEXALオリカ)

通常魔法

自分フィールド上のレベル5以上のモンスター1体を選択して発動できる。

このターン、選択したモンスターをエクシーズ素材とする場合、1体で3体分の素材とする事ができる。

また、選択したモンスターをエクシーズ素材としたモンスターエクシーズの攻撃力は1000ポイントダウンする。

 

エクシーズ・トレジャー(アニメZEXALオリカ)

通常魔法

フィールド上に表側表示で存在するモンスターエクシーズの数だけ、自分のデッキからカードをドローできる

 

フォトン・ストライク(漫画ZEXALオリカ)

装備魔法

装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

この効果でダメージが発生した時、さらに、相手ライフに1000ポイントダメージを与える。

 

ビックバン・ブロー・アーマー(アニメDMオリカ)

効果モンスター・アーマー

レベル4/地属性/機械族/攻撃力0/守備力0

自分フィールド上に表側表示で存在するアーマーモンスターは 自分のターンに1体のみでしか攻撃できない。

自分がコントロールするアーマーモンスターが攻撃対象になった時、攻撃対象を他のアーマーモンスターに変更する事ができる。

このカードの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、フィールド上に存在する全てのモンスターを破壊する。

その後、お互いのプレイヤーはこの効果で破壊したモンスターの攻撃力の合計分のダメージを受ける。

 

ファイナル・ライフガードナー(漫画ZEXALオリカ)

通常罠

自分のライフが0になるダメージを受ける時に発動できる。

自分のライフポイントを100にしてバトルフェイズを終了する。

 

仭 LP3000

手札1

・モンスター

なし

・魔法・罠

カイザーコロシアム(効果無効)

 

フェイト LP100

手札2

・モンスター

なし

・魔法・罠

光子圧力界(効果無効)

デモンズ・チェーン(効果無効)

伏せ1

 

「俺のターン、ドロー。墓地のサイキック・アーマーの効果。自分スタンバイフェイズ時、このカードが墓地に存在する場合、自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。蘇れ、サイキック・アーマー!」

 

 仭のフィールドに1体のアーマーモンスターが現れ、プレイヤーの頭に装着される。

 

サイキック・アーマー・ヘッド

ATK:0

 

「これだけだと寂しいな。手札からフルアーマー・グラビテーションを発動!自分のデッキの上からカードを10枚めくり、その中からアーマーモンスターを可能な限り特殊召喚する」

 

「デッキから10枚!?」

 

 フェイトはデッキをめくる枚数に思わず驚く。それを視界に収めながら、仭はデッキをめくり始める。

 

めくられたカード

・死者蘇生

・アクティブ・ガード・アーマー

・速攻のかかし

・ブラックホールシールド・アーマー

・ブレイクスルー・スキル

・バスター・ナックル・アーマー

・アドバンスド・シールド・アーマー

・一族の結束

・スクラップ・リサイクラー

・カース・ガントレット・アーマー

 

「アクティブ・ガード・アーマー、ブラックホールシールド・アーマー、バスター・ナックル・アーマー、アドバンスド・シールド・アーマーを特殊召喚!」

 

アクティブ・ガード・アーマー

DEF:1500

 

ブラックホールシールド・アーマー

DEF:0

 

バスター・ナックル・アーマー

ATK:0

 

アドバンスド・シールド・アーマー

DEF:0

 

「残りのカードは全て墓地に送る(落ちたら痛いカードばかりで、墓地アドバンテージ系が全然ないな)」

 

 頭に加え、胴体、左腕、右腕、(デュエルディスクのすぐ横辺りに)楯が装着された。

 

(今度は使ってくるのかな?)

 

「バスター・ナックルの攻撃力は、フィールド上に表側表示で存在するアーマーモンスターの数×200ポイントアップする」

 

バスター・ナックル・アーマー

ATK:0→1000

 

「バトル。バスター・ナックルで、ダイレクトアタック!」

 

「トラップ発動、リビングデッドの呼び声!墓地から銀河眼の光子竜を特殊召喚!」

 

 フェイトへ自身が動いて殴りかかろうとした時、その間に銀河眼の光子竜が復活したことで急停止する仭。

 

銀河眼の光子竜

ATK:3000

 

「おっと、危ない危ない。バトルを終了して、ターンエンド」

 

 攻撃を中止すると自分のフィールドの方へ戻り、そのままターンを終える。

 

「私のターン、ドロー!銀河の魔導師(ギャラクシー・ウィザード)を召喚!」

 

 大きめなローブを着た白い魔術師が現れる。

 

銀河の魔導師

ATK:0

 

「効果を発動して、魔導士のレベルをエンドフェイズ時まで4つ上げるよ」

 

銀河の魔導師

レベル4→8

 

(レべル8が2体。アーマーモンスターの厄介さを完全には知られてないが、来るとするなら…やはりあれだろうな)

 

 レベル8のモンスター2体並んだことに、ある竜が脳裏に浮かぶ。そしてそれはすぐに現実となる。

 

「私はレベル8の光子竜と、銀河の魔導師でオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!

 宇宙を貫く雄叫びよ、遥かなる時をさかのぼり銀河の源よりよみがえれ!

 エクシーズ召喚!顕現せよ、そして我を勝利へと導け!No.107 銀河眼の時空竜!!」

 

「やはりこいつか。くそっ、面倒な…」

 

 現れたのは赤と青の宝石が付いた黒い四角錐の姿。それは展開していくと、機械的なフィルムをした竜へ変化した。それを見て苦い表情を浮かべる仭。

 

No.107 銀河眼の時空竜(ORY2)

ATK:3000

 

「バトルフェイズ開始!この瞬間ORUを1つ取り除いて効果発動!時空竜以外の全てのモンスター効果を無効にして、その攻守を元々の数値に戻す!タキオン・トランスミグレイション!」

 

「チェーンして、ブラックホールシールドの効果発動!このカードをリリースして、このターンのバトルフェイズを終了する!」

 

 仭がそう言いながら構えた左肘に穴が開き、黒い四角錐に姿を変えた銀河眼の時空竜に向けて吸引を始める。

 

No.107 銀河眼の時空竜(2)→(1)

 

「タキオンとは超光速で動き、時間を逆行するとされる仮想の粒子。だが、ブラックホールは光さえも抜け出せない重力を持つ。今回そっちに軍配が上がるとはいえ、思い通りに逆行なんてさせない」

 

「むぅ、また攻撃ができなかった」

 

 ブラックホールシールド・アーマーの効果を受けながらも、黒い四角錐状態の時空竜は光を放つ。するとアーマーモンスターらが錆びた状態になっており、それによってブラックホールシールド・アーマーの吸引も止まり、消滅した。

 

バスター・ナックル・アーマー

ATK:1000→0

 

「危ない危ない」

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンドだよ」

 

フルアーマー・グラビテーション(アニメDMオリカ)

通常魔法

自分のデッキの上からカードを10枚めくり、その中からアーマーモンスターを可能な限り特殊召喚する。

それ以外のカードは墓地へ送る。

 

アクティブ・ガード・アーマー(アニメDMオリカ)

効果モンスター・アーマー

レベル4/地属性/機械族/攻撃力0/守備力1500

自分フィールド上に表側表示で存在するアーマーモンスターは 自分のターンに1体のみでしか攻撃できない。

自分がコントロールするアーマーモンスターが攻撃対象になった時、攻撃対象を他のアーマーモンスターに変更できる。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカードのコントローラーが受けるカードの効果によるダメージは0になる。

 

ブラックホールシールド・アーマー(アニメDM・未OCGwikiオリカ)

効果モンスター・アーマー

レベル4/地属性/機械族/攻撃力0/守備力0

自分フィールド上に表側表示で存在するアーマーモンスターは 自分のターンに1体のみでしか攻撃できない。

自分がコントロールするアーマーモンスターが攻撃対象になった時、攻撃対象を他のアーマーモンスターに変更する事ができる。

自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードをリリースして発動する。

このターンのバトルフェイズを終了する。

この効果は相手ターンでも発動する事ができる。

 

バスター・ナックル・アーマー(アニメDMオリカ)

効果モンスター・アーマー

レベル3/地属性/機械族/攻撃力0/守備力0

自分フィールド上に表側表示で存在するアーマーモンスターは 自分のターンに1体のみでしか攻撃できない。

自分がコントロールするアーマーモンスターが攻撃対象になった時、攻撃対象を他のアーマーモンスターに変更する事ができる。

このカードの攻撃力は、フィールド上に表側表示で存在するアーマーモンスターの数×200ポイントアップする。

 

アドバンスド・シールド・アーマ-(アニメDM・未OCGwikiオリカ+α)

効果モンスター・アーマー

レベル4/地属性/機械族/攻撃力500/守備力0

自分フィールド上に表側表示で存在するアーマーモンスターは 自分のターンに1体のみでしか攻撃できない。

自分がコントロールするアーマーモンスターが攻撃対象になった時、攻撃対象を他のアーマーモンスターに変更できる。

1ターン1度、このカードが攻撃対象になった時、このカードの守備力は相手モンスターと戦闘を行う攻撃力の数値分アップする。

バトルフェイズ終了後、このカードの守備力は元に戻る。

 

仭 LP3000

手札1

・モンスター

サイキック・アーマー・ヘッド

アクティブ・ガード・アーマー

バスター・ナックル・アーマー

アドバンスド・シールド・アーマー

・魔法・罠

カイザーコロシアム(効果無効)

 

フェイト LP100

手札0

・モンスター

No.107 銀河眼の時空竜(ORY1)

・魔法・罠

光子圧力界(効果無効)

デモンズ・チェーン(効果無効)

リビングデッドの呼び声(対象なし)

伏せ2

 

「俺のターン、ドロー。貪欲な壺を発動。墓地のバスター・パイル・アーマー、ビックバン・ブロー・アーマー、オーバー・ブースト・アーマー、カース・ガントレット・アーマー、速攻のかかしをデッキに戻す。そして2枚ドロー!」

 

 ドローしたカードを見て、笑みを浮かべる仭。

 

「手札から屑鉄再生工場を発動。自分の墓地に存在する機械族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。俺は墓地のトラップ・バスターを蘇生」

 

 4体のアーマーモンスターを装着している仭に、さらに左腕が装着される。

 

トラップ・バスター・アーマー

ATK:0

 

「そしてこの効果で特殊召喚に成功した場合、手札・フィールド上から、融合モンスターによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、機械族の融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚扱いとして特殊召喚する」

 

「まさか…アーマーモンスターの融合モンスター!?」

 

「俺は場の5体のアーマーモンスターを融合!出でよ、アルティメイト・フルスキン・アーマー!!」

 

 仭は装着しているアーマーモンスターと共に、光に呑みこまれる。そして全身の所々の蒼い装甲に、元々装着されていたアーマーモンスターを加えた姿の仭が現れた。

 

アルティメイト・フルスキン・アーマー

ATK:0

 

「…あれ?」

 

「…拍子抜け?一応言っておくが、このアーマーモンスターはヴァルバロイドやF・G・Dみたいに攻撃力があるわけではない。アルティメイト・フルスキンは、融合素材にしたモンスターのすべての効果を得る」

 

「!?つ、つまりそのモンスター1体で5体分のアーマーモンスターってこと?」

 

「その通り」

 

 つまるところ、サイキック・アーマー・ヘッド、アクティブ・ガード・アーマー、バスター・ナックル・アーマー、アドバンスド・シールド・アーマー、トラップ・バスター・アーマーの効果を備えていることになる。

 

「そしてアルティメイト・フルスキン自身の効果発動。1ターンに1度、このカードの効果で得たモンスターの効果の1つを無効、または自分フィールド上のアーマーモンスター1体をリリースすることで2つある効果の内1つを選択して発動する。

 俺はアドバンスド・シールドの効果を無効にして、自分のデッキ・墓地から『アーマー』と名の付くカードを1枚手札に加える効果を使用。墓地のアーマード・グラビテーションを手札に」

 

 すると仭に装着されている楯の部分が消滅し、その光が1枚のカードを手札へ持っていく。

 

「アーマード・グラビテーションを発動。デッキからバスター・パイル、ビックバン・ブロー、オーバー・ブースト、カース・ガントレットを特殊召喚!」

 

 右腕×3、それと両脚が重なって装着される。

 

バスター・パイル・アーマー

ATK:0

 

ビックバン・ブロー・アーマー

ATK:0

 

オーバー・ブースト・アーマー

DEF:0

 

カース・ガントレット・アーマー

ATK:0

 

「ちょっと危なそうだなぁ。マジック発動、非常食!光子圧力界、デモンズ・チェーン、リビングデッドの呼び声を墓地に送ってライフを3000回復するよ!」

 

フェイト:LP100→3100

 

「くっ、ライフを回復されたか。バトル!カース・ガントレットで時空竜を攻撃!

 (せめて止めを刺せなくとも、ライフと時空竜だけでも持っていかせてもらうぞ。カース・ガントレットは、戦闘ダメージを相手に押し付け、さらに戦闘後道連れを行う。もう1枚の伏せカードが不安だが、基本的にフィールドにいるアーマーモンスターで対応はできるし…大丈夫だろう)」

 

 呪いの札が所々に付いている右腕で殴り掛かりにいく仭。

 

「さっきのは念のため―――とでも思った?」

 

 その時仭が見たのは、どこまでも真っ直ぐで……でも冷たさと狂気さえ感じさせる冷笑だった。

 

「!?」

 

 思わず立ち止まりかけるがもう遅い。彼は既に攻撃宣言をしてしまっている。

 

「甘い。甘いね……詰めを誤ると痛い目を見るよ?」

 

 くすくすと笑いながらフェイトはディスクのボタンを押す。

 

「トラップ発動、オーバー・タキオン・ユニット!500ライフポイントを払って、私のフィールド上の『タキオン』と名のついたモンスター1体を選択。私は銀河眼の時空竜を選択するよ。

 そして選択したモンスターの『ORUを取り除いて発動する効果』を発動する」

 

「なっ!?ということは――」

 

「時空竜のORUを1つ取り除いて効果発動!時空竜以外の全てのモンスター効果を無効にして、その攻守を元々の数値に戻す!タキオン・トランスミグレイション!」

 

(…油断誘うためにブラックホールをデッキに戻し、召喚させなかったの失敗したなぁ)

 

 黒い四角錐に姿を変えた銀河眼の時空竜は、光を放つ。すると仭のフィールドのすべてのアーマーモンスターは、その能力を失っていく。

 

フェイト:LP3100→2600

 

No.107 銀河眼の時空竜(1)→(0)

 

 その際に僅かなプレイングミスを後悔しているとフェイトは

 

「油断を誘うというのは良い戦略だけど……もう何年も人智を超えた化け物と戦ってる人間を騙すにはまだまだ経験不足だよ」

 

 諭すように笑うフェイトはそのままタキオンドラゴンに手を翳し

 

「迎撃だよ!殲滅のタキオン・スパイラル!!」

 

(てか、さっきのフラグか)

 

 動きが鈍くなった仭に対し、無情の光線を時空竜は放った。

 

仭:LP3000→0

 

屑鉄再生工場(アニメDMオリカ)

通常魔法

自分の墓地に存在する機械族モンスター1体選択して発動する。

選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。

この効果で特殊召喚に成功した場合、以下の効果を使う事ができる。

●手札・フィールド上から、融合モンスターによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、

機械族の融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚扱いとして特殊召喚する。

 

アルティメイト・フルスキン・アーマー(オリカ)

融合・効果モンスター・アーマー

レベル12/地属性/機械族/攻撃力0/守備力0

アーマーモンスター×5

このカードは融合素材にしたモンスターすべての効果を得る。

1ターンに1度、このカードの効果で得たモンスターの効果の1つを無効、または自分フィールド上のアーマーモンスター1体をリリースすることで、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●自分のデッキ・墓地から『アーマー』と名の付くカードを1枚手札に加える。

●このカードがカード効果によってフィールドを離れる時に発動。その効果を受けない。

また、このカードの効果で得たモンスターの効果で、このカードがリリースされるとき、それを無視して発動できる。その後、発動した効果を無効にする。

自分のエンドフェイズ毎に1000ライフポイントを払う。または、1000ライフポイント払わずにこのカードを破壊する。この時このカードの効果を発動できない。

 

カース・ガントレット・アーマー(オリカ)

効果モンスター・アーマー

レベル6/地属性/機械族/攻撃力0/守備力0

自分フィールド上に表側表示で存在するアーマーモンスターは自分のターンに1体のみでしか攻撃できない。

自分がコントロールするアーマーモンスターが攻撃対象になった時、攻撃対象を他のアーマーモンスターに変更する事ができる。

このカードの戦闘によって発生する戦闘ダメージはかわりに相手が受ける。

戦闘後、このカードと、このカードと戦闘を行ったモンスターを墓地に送る。

 

オーバー・タキオン・ユニット

通常罠

500ライフポイントを払って、自分フィールド上の『タキオン』と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターの『エクシーズ素材を取り除いて発動する効果』を発動する。

 

 

 

(…今回で改めてわかった。時空竜はマジ警戒。そして直前に何か考えるべきではない)

 

 デュエルが終わり、仭がそう反省しているとフェイトが近づいてくる。

 

「楽しかったよ」

 

「ああ、此方こそ。しかしあのプレイミスを俺の油断ではなく、わざとだと見破ってるとは。いや、結果的にプレイミスは油断となってはいるけれど」

 

 これでも人を騙すのにはそれなりに自信があったのだが、そう呟きながら肩を竦める。

 

「まあね。けど、経験不足ってだけで君が下手なわけじゃないよ」

 

「それはどうも。…しかし、ただ者ではないと感じてはいたが、あんたはどうも俺の認識以上の存在だったようだ。先の威圧は並の人間が出せるものじゃない。少なからず、修羅場を何度も越えている者のレベルだ」

 

「…まあ、こっちでは色々とあるから、ね」

 

「…できたらで構わない。話してくれないか?」

 

 仭の言葉に、少し悩んだ末にフェイトは話す。

 自分達が現在活動してる世界で、出没しているネクロという存在の事を話す。

 

「…なるほど。その死霊魔術(ネクロマンシー)によって、魂や死体、果てには生きた人間すらも媒介にして死霊(ネクロ)とさせるわけか。生物災害(バイオハザード)だな」

 

 話を聴いて、溜め息を吐きながら仭はそう呟いた。複雑そうな表情を浮かべている。

 

「それにISは所詮人によって造られた兵器(モノ)。それに乗る生きた人間を媒介にするのであれば、あちらにとって勝手が良すぎる手駒と言っても過言じゃない、か」

 

「…そうなるね」

 

 そう呟くフェイトには多少影が視える。それに気づいた仭はさりげなく話を逸らす。

 

「しかしそのような存在と戦っているのであれば、言うまでもなく実力はまずそんじょそこらの者よりはるかにあるはず。だというのに、この世界に連れ去られるとは…主催者のあの腹黒そうな眼鏡は、どうも予想をはるかに超える存在らしいな」

 

「主催者の腹黒そうな眼鏡?…あの愛菜という存在のこと?」

 

「ああ、あの腹黒そう…いや、もう腹黒眼鏡でいいか」

 

 自分達をこの世界に呼び寄せた得体の知れない存在の呼び方に、フェイトは少し心配そうな表情を浮かべる。

 

「…あの、君は彼女と知り合いというわけじゃあないんだよね?」

 

「知り合いではない」

 

「…言って何かされるとか思わなかったの?」

 

 当の本人はそれに普通に答える。

 

「これに反応してるのであれば、俺はもうとっくに何かされてるか、死んでる。それに有象無象の人間の暴言に、あれが気にするとは思えないしな」

 

 どうやら既にそのようなことは口走っていたらしい。しかも彼女が聞いていると前提にしてだ。

 

「そう割り触れられるの凄いね」

 

「抗ったところでどうしようもないし、それに呼び出したのはあれだからな。あれからしたら数少ない、何ら能力を持たぬも一応は思惑通りに動いてくれる人間(オモチャ)だし」

 

 そう微笑を浮かべながら、自分が彼女にとってどういう存在かも何とでもないように語る仭に、フェイトは多少呆れを抱いていた。

 

「年齢不相応にかなり冷静だね君」

 

「いや、驚きを通り越してるだけだって。それに頼れる者もいないからな」

 

「えっ、君しか来てないの?」

 

「おそらく。俺がこの世界に来た時には周囲に誰もいなかったし。まあ、デュエルが主流ではない俺の世界から、呼び出して説明したところで、あれの思うように動いてくれるか、かなり怪しい所もあるだろうしな。俺だってどうするか悩んでたが、返してくれそうにないと判断してデュエル始めたわけだし(デュエルの実力より精神的な意味でもと考えられるがな)」

 

「まあ、そうだよねぇ」

 

 仭の言うことはもっともであるのだが、その辺はこの世界に呼ばれた者のほとんどがデュエル脳故にか、あまり気にしないというだけ?なので悪しからず。

 

「そういえば、そっちの世界ではどんな感じなの?」

 

「別段、IS以外に目立つモノは多分ない。女尊男卑くらいだな。そちらの世界に比べたら明らかにましだろうが、それでも平和とは言えない」

 

 仭の言葉にフェイトはすぐに否定する。

 

「違うよ。日々の中に少しでも平和はあるんだよ、でもねそれに気付かないのが人間なんだ。世界には悲劇が満ちている。でも人はそれに気付かない。だから破壊を繰り返し、僅かな平和でさえ壊してしまう……だから仭、君も気付いてないだけなんだよ。君が手にしている平和にね」

 

「…………」

 

 その重い言葉に仭が黙り込んでいると、フェイトは空を見て

 

「そうだね~若いから判らないよね?でもね。気付いたときにはもう遅い事もあるんだ。だからちゃんと掴んでないと駄目なんだ。見つけた平和と幸福は手放しちゃ駄目なんだよ」

 

 からからと笑うフェイトに仭が

 

「強いんだな。貴女は……」

 

「んー違うよ。私は強くないよ、私は唯知ってるだけ……絶望しても傷ついても進み続ける人の背中を……私はあの人の隣に立てるようになりたいだけなんだ」

 

 少しだけはにかんだ表情のフェイトは、そうだっと手を打つ、

 

「この世界に来てるから、興味があったら探してみて。黒いコートに銀髪が特徴の男の人だから、きっとすぐ判るよ」

 

「まぁ時間があったら」

 

「話してみるだけでも良いかも知れないよ?」

 

 そう笑うフェイトは地面に寝転がり、目を閉じた。

 その言葉はきっと少しでも争いや死がない世界を大事にしたいということなのだろうと思いながら、仭は邪魔にならないようにその場を後にする。

 

「日々の中に少しでも平和はある、か。なるほど。…馬鹿だな俺は。それを既に分かっていたくせに、気付かないなんて」



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【超☆融☆合 ~世界を超えた出会い~】 第4話

どうも混沌の魔法使いです

今回で遊戯王のクロスは終わりです、アポリア様とのクロスです
今回の龍也さんのデッキは「紋章獣」です

それでは今回もどうか宜しくお願いします


「…」

 

このデュエル時間軸の中でデュエルをしていない人物がいた。

その名はシン。罪を意味する名を持つその男は目を閉じ、落ち着いていた。

 

「…」

 

シンの格好はある意味特殊だ。

漆黒の服装に漆黒の仮面。その鋭い紅い目は言いようのない警戒心を抱かせる殺意と狂気を感じさせるものだ。

故に声を掛けても断られることを考慮し、じっとしていた。先ほどまで彼の娘であるヴィヴィッドは側に居たのだが平行世界の自分を見つけたらしくイラついたので辻斬りを仕掛けてくるそうだ。

こういう所は親子と言うべきだろうか。

 

「失礼だが」

 

「…確か…」

 

そんな彼に声を掛けてくる一人の男性。

彼の名は【八神 龍也】。夜天の守護者と呼ばれた男であり、ヤンデレに好かれるヤンデレキラーである。

彼がシンに声を掛けたのは理由があった。

 

「(…似ている…ジオガディスに…)」

 

ジオガディス……ネクロを総べた魔王にして愛する者を失い、国を失い、友を失い、世界を憎悪し、何十万の魔道師の命を対価に失われた時を取り戻すことを目的とした男……だがそれすらも与えられた目的だった。ジオガディスにとり憑いていた【ヴェルガディオス】の復活の贄とされ。不当な伝承と罪を背負わされ狂気の檻に囚われた。その姿にシンの姿は何処か重なる物があった……それが気になった彼はシンにそう声をかけたのだった

 

「もしよかったらデュエルをしてもらえないか?。」

 

「…良いだろう。」

 

「「デュエル!!!」」

 

正直シンにやる気など無かったがこの時空では挑まれれば断ることなどできはしない。

そう考えているため、冷静に了承するとデュエルディスクを互いの展開する。

そして【夜天の守護者】と【罪深き存在しないもの】による唐突にデュエルは始まった。

 

「先行は私だ。ドロー!。全力で行かせてもらう!私は手札の【紋章獣アンフィスバエナ】の効果を発動!手札の【紋章獣レオ】を墓地に送り特殊召喚する!!」

 

「…【紋章獣】か」

 

龍也のフィールドに尾に竜の頭部を持つ竜が現れた。

【紋章獣】というカテゴリはシンはよく知っていた。

エクシーズキラーのゲノムヘリターを筆頭にランク4のエクシーズモンスターを出しやすい強力なデッキだ。

 

攻1800

 

「さらにレオの効果発動!!墓地に送られた時【紋章獣】を一体手札に加える!私は【紋章獣アバコーンウェイ】を手札に加え、そのまま通常召喚する!」

 

そして龍也の場に鎧を纏う龍が現れた。

 

攻1800

 

「さらに手札の【カゲトカゲ】の効果を発動!レベル4のモンスターを通常召喚した時、特殊召喚できる!!そして【紋章獣エアレー】の効果を発動!場に二体以上の【紋章獣】がいる時、特殊召喚できる!!」

 

アバコーンウェイの影の中から紅い目を持つ影で出来たトカゲが現れた。

そして続くように鎧を纏う二本角のヤギが現れた。

 

攻1100

 

守1800

 

「私は【カゲトカゲ】とアンフィスバエナ、エアレーとアバコーンウェイでオーバーレイ!二体のモンスターで二つのオーバーレイ・ネットワークを構築、ダブルエクシーズ召喚!!現れろ!【№18 紋章祖プレイン・コート】!【№39 希望皇ホープ】!!」

 

そして龍也の場に希望の戦士と紋章の祖が舞い降りた。

 

攻2200

 

攻2500

 

「私はこれでターンを終了する」

 

エンド宣言をした

手札2枚

 

「ドロー!(【紋章獣】・・・エクシーズに強いデッキだが相手にとって不足はない)私は罪深き世界【Sin World】発動!!」

 

「むっ…」

 

そして世界が砕け散る。そこは周りがビルの様な壁で囲まれ、物体の縁取り線を残して透かした様に赤紫の宇宙が広がっていた。

シンがの十八番であるこのカード…

 

「私はデッキから【真紅眼の黒竜】を除外し【Sin 真紅眼の黒竜】を特殊召喚する」

 

闇が溢れ出すとその闇の中から白と黒の罪の鎧を纏いし、真紅の眼を持つ黒竜が舞い降りた。

 

攻2400

 

「いきなり攻撃力2400か…」

 

「まだだ!私は【可変機獣 ガンナードラゴン】を妥協召喚!このモンスターは攻撃力を半分にして妥協召喚できる!」

 

今度は機械の体を持つ竜が現れた。

 

攻2800→攻1400

 

「私はレベル7のガンナードラゴンとSin 真紅眼でオーバーレイ!二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!発進せよ、【幻獣機ドラゴサック】!!」

 

そして現れたのは巨大な飛行機。

その先頭部には竜の頭の様な部分が存在している。

 

攻2600

 

「ドラゴサックの効果を発動!エクシーズ素材を取り除いて二体の【幻獣機トークン】を特殊召喚する!!」

 

ドラゴサックの後部ハッチに光球が吸い込まれるとそこから二体の戦闘機が飛び出してきた。

 

守0×2

 

「さらにドラゴサックの効果発動!【幻獣機】をリリースする事で相手の場のカードを一枚破壊する!私はホープを選択!《ソニック・ショット》!!」

 

そしてドラゴサックから現れた二機の内一機がホープに突撃し爆散するとその爆発に巻き込まれホープも破壊される。

 

「くっ!」

 

「さらにデッキの【青眼の白龍】を除外して【Sin 青眼の白龍】を特殊召喚する!」

 

闇の中から今度は罪の鎧を纏う青い瞳の気高き白龍が舞い降りた。

 

攻3000

 

「【Sin 青眼の白龍】でプレイン・コートを攻撃!《滅びのバースト・ストリーム》!!」

 

そして気高き白龍の砲撃が紋章祖を塵も無く消し飛ばす。

まさに滅び。まさに無敵。まさに最強と言わんばかりの一撃は龍也にも飛び火する

 

「ぬおぉっ…!!だが破壊されたプレイン・コートの効果を発動!デッキから【紋章獣】を二体墓地に送る!私はアバコーンウェイを二体選択し、墓地に送る!!」

 

LP4000→3200

 

「ターンエンドだ。」

 

エンド宣言をした

手札2枚

 

「(【Sin】…ハイパワーだがその実癖の強いカード群だったはず…だが)私のターン!ドロー!!私は手札から【高等紋章術】を発動!!墓地の【紋章獣レオ】と【紋章獣エアレー】でオーバーレイ!二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ!No.101!満たされぬ魂を乗せた方舟よ。光届かぬ深淵より浮上せよ!S・H・Ark Knight!」

 

二体のモンスターが光となって渦へ飛び込み、光の渦が爆発すると其処から現れたのは満たされぬ魂の守護者を乗せた白き箱舟。

 

攻2100

 

「Ark Knight…!!」

 

オーバーハンドレッド・ナンバーズ…平行世界や異世界では価値が違うとはいえ自分たちにとっては魂であり死した自分たちの存在を世界につなぎとめている楔そのものである。

故に同胞が使うそのカードの効果とカオス化したナンバーズの恐ろしさを良く知っている。

 

「Ark Knightの効果発動!エクシーズ素材を二つ取り除くことで相手の場に存在する特殊召喚されたモンスターをエクシーズ素材にする!私は【幻獣機ドラゴサック】を選択し、吸収する!《エターナル・ソウル・アサイラム》!!」

 

「っく!!」

 

Ark Knightが二つの光球を吸収すると右側の先端部から碇のような物を発射し、ドラゴサックを貫くとそのままドラゴサックを貫いた碇ごと格納し、ドラゴサックを光球へと変化させてしまった。

 

「Ark Knightのエクシーズ素材だったレオの効果発動!デッキから【紋章獣ツインヘッド・イーグル】を手札に加え、さらに私は【RUM-リミテッド・バリアンズ・フォース】を発動!このカードは私の場のエクシーズモンスターをランクアップさせ、カオス化する!私はArk Knightでオーバーレイ!!一体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!」

 

「くっ!!!」

 

シンはArk Knightが邪悪な力が渦巻く渦へ飛び込む姿を見て、思わず憤る。

Ark Knightの進化形態がこの【Sin】デッキとの相性の悪さをひどく自覚しているからだ。

そして邪悪な力渦巻く渦は黒と暗い緑の爆発を引き起こした。

 

「現れろ、C№101!満たされぬ魂の守護者よ、暗黒の騎士となって光を砕け! S・H・Dark Knight!」

 

そして再び現れた白き箱舟から飛び出し装備を装着していくように現れたのは朽ちる事を知らぬ漆黒の槍術師。

その槍の切っ先はシンへと向けられている。

 

攻2800

 

「私はDark Knightの効果発動!相手フィールド上の特殊召喚されたモンスター1体を選択し、選択したモンスターをこのカードの下に重ねてエクシーズ素材とする!私は【Sin 青眼の白龍】を選択!《ダーク・ソウル・ローバー》!!」

 

そしてDark Knightが槍からエネルギーを放つとそのエネルギーは【Sin 青眼の白龍】を貫き、その命を赤い結晶体へと変え、Dark Knightの側に滞空する。

 

「ちぃっ!!」

 

「私はDark Knightで【幻獣機トークン】を攻撃!!」

 

Dark Knightがその槍を振りかぶって戦闘機に目がけて投擲する。

そして戦闘機は槍に討ちぬかれるとそのまま爆散する。

 

「私はこれでターンを終了する」

 

エンド宣言をした

手札1枚

 

「俺のターン、ドロー!!俺は【防覇龍ヘリオスフィア】を召喚!」

 

シンの場に大きな翼膜を壁の様に広げる下半身に持つ竜が現れた。

 

攻0

 

「私はこれでターンを終了する」

 

エンド宣言をした

手札2枚

 

「(ヘリオスフィア…私の手札が4枚以下の時、攻撃対象に出来ないモンスター…おまけに通常召喚だ。Dark Knightで吸収できない…今の手札ではどうにもならんか)私はこれでターンを終了する」

 

エンド宣言をした

手札2枚

 

「俺のターン!ドロー!!俺は二枚目の青眼を除外して二枚目のSin 青眼を特殊召喚する!」

 

再び闇の中から【Sin 青眼の白龍】が現れる。

どうやら二枚目も入っていた様だ。

 

攻3000

 

「ヘリオスフィアの効果発動!私の場にレベル8のドラゴン族がいる時レベルを8へと変更できる!」

 

星4→星8

 

「私はレベル8の【Sin 青眼の白龍】とヘリオスフィアでオーバーレイ!!」

 

二体が光の玉になってブラックホールに吸い込まれる

 

「二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

そのブラックホールは爆発し赤と青の宝石が付いた黒い四角錐が飛び出してきた

 

「現れろ№107!逆巻く銀河を貫いて、破滅の未来の果てより蘇れ!!顕現せよ!我が魂!!銀河眼の時空竜!!!」

 

赤と青の宝石が付いた黒い四角錐が変形し黒に近い紫の体を持ち紅い瞳の機械竜が現れた。

その頭部には107の数字が刻まれている。

 

攻3000

 

「見せてやろう!我が魂の力を!!バトルフェイズ!!《タキオン・トランスミグレイション》!!!」

 

時空竜は赤と青の宝石が付いた黒い四角錐に変形し輝きだした。

その美しい虹色の輝きは時間を遡るかの様な錯覚を受ける。

 

「この効果を使った時、すべてのモンスターの効果を無効にし、相手が効果を発動した時タキオンは2回攻撃の権限と攻撃力1000アップを得る…タキオンでDark Knightを攻撃!《殲滅のタキオン・スパイラル》!!」

 

タキオンは口にエネルギーの渦を作り出すとその渦を放ち、Dark Knightを飲み込んでいった。

 

「くっ!だがDark Knightの効果発動!エクシーズ素材を持ち、墓地にArk Knightがいる限り復活し、私のLPを元々の攻撃力分回復する!!《リターン・フロム・リンボ》!!」

 

だがDark Knightは地面に空いた穴から再び姿を現すと槍を掲げ、その槍は龍也を癒す。

 

LP3200→3000→5800

 

「だがこの瞬間、タキオンの効果が発動する!相手が効果を発動した時2回攻撃と攻撃力1000アップを得る!!」

 

攻3000→攻4000

 

「再びタキオンでDark Knightを攻撃!《殲滅のセカンド・タキオン・スパイラル》!!!」

 

再び放たれたエネルギーの渦は容赦なくDark Knightを飲み込んでいった。

エクシーズ素材を持たぬDark Knightは蘇らない。

 

「くっ!!」

 

LP5800→4600

 

「私はモンスターをセットし、ターンを終了する」

 

エンド宣言をした

手札1枚

 

「…一つ聞きたい」

 

「…何だ」

 

カードをドローする前に龍也がシンに声をかけた

 

「どうしてそこまで世界を憎む?」

 

「…」

 

「その程度の殺意でどうこうなるほど……甘い世界を生きて来てはいないぞ」

 

龍也の問いかけにシンは答えず。代わりに殺意に満ちた視線を向ける。その殺気は並の人間ならばそれだけで発狂しかねないほどの殺気と憎悪を持っていたが何年、何十年もネクロと戦ってきた龍也にとってその程度の殺気は日常茶飯事の物だった。

全く意に介した素振りを見せず。全てを見通さんとする蒼銀の目でシンを見ている

 

「…良いだろう…そんなにも知りたいのなら教えてやる…俺は…俺達は生前を憎悪され、死後すら貶められしものが転生者の一人」

 

「転生者だと…?」

 

「俺が背負う転生者としての業、【罪深き罪悪】【悪を背負う者】…【罪悪のシン】として俺は全てを零へと帰し、やり直す」

 

神ミザエルの手で転生し、その目的のための人形。

例え無辜なる者が犠牲になっても自分たちにとっては仕方がない事でしかない。

我々は自分たちが受けた事と同じことをしてきているだけなのだから

 

「っ違う!!!残された者は死んだ者の分も生きなくてはならない!!!どれ程悲しくても、どれ程辛くても!!前を向いて生きなくてはいけない!!!」

 

そう、私は両親に生かされ、セレスに生かされ、こうして生きている・・また私の手から護りたい者が滑り落ちていった・・それでも私は生きなくてはいけない、生かされたのだから・・その者の分まで生きなくてはいけない・・

 

「黙れ。許さぬ、滅びろ、何もかも朽ち果てろ。我らの様な存在が生贄となる世界等犠牲(我ら)が認めない。己が罪は己が自身で清算させる。己が穢し貶めた者達の重みを叩き付けてやる…!!」

 

だがそんな言葉すらもシンにとって激情の炎に更なる燃料を投下するのと同じであった。

不平等に罪を課せられ、償わされ、その死後すらも貶められ、生きる事すらできなくなった。

愛する者も守るべき友もその全てを失い、前を向く目も首も無くした動く死体(リビングデット)。その胸に宿る憎悪と復讐心が燃え尽きるまでこの憎悪を世界に叩き付けるのだ。

理不尽な犠牲で回る世界等壊してやる。それこそが彼の…やっとつかめた幸せさえも失った男の末路の果てである。

 

「では聞こうッ!!!そんな血に濡れた手でお前は何を掴めると言うんだ!!」

 

「掴めないさ!!だからこそ全てをやり直す!!取り戻すのでは意味がないんだ!また理不尽な犠牲を強いる!ならば破壊してでも変えてやる!!」

 

やはりジオガディスと似ている。奇しくも違うのは「亡くした物を取り戻す」のではなく「何もかもやり直す」という事だけだ。

取り戻すのではまた剣を向けられ再び失うかもしれない、なら何もかもやり直して奪おうとするものを奪う前に葬ってしまえばいい。

 

「貴様を縛る呪われし鎖・・この私が断ち切る!!!私のターン!ドロー!!私は二枚目の【高等紋章術】を発動!私は墓地の【紋章獣レオ】と【紋章獣アンフィスバエナ】でオーバーレイ!!二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ希望の勇者!【№39 希望皇ホープ】!!!」

 

二体のモンスターが光となって渦へ飛び込み、光の渦が爆発すると其処から現れたのは白と黄色の体を持つ水色の結晶体を核とした希望の勇者。

 

攻2500

 

「さらに私は【RUM-リミテッド・バリアンズ・フォース】を発動!このカードは私の場のエクシーズモンスターをランクアップさせ、カオス化する!私は希望皇ホープでオーバーレイ!!一体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!」

 

希望皇が変形し光となって邪悪な渦へ飛び込むと黒と暗い緑を基調とした爆発を引き起こす。

 

「出でよ、C№39!混沌を統べる赤き覇王。悠久の戒め解き放ち赫焉となりて闇を打ち払え!降臨せよ、希望皇ホープレイV!」

 

そして現れたのは黒みの強い濃紺を基調に、深紅と銀色の配色が混じった暗黒的なカラーリングの体と赤い発光体を体に持つ邪悪なる希望皇。

 

攻2600

 

「ホープレイVの効果発動!!エクシーズ素材を取り除いて、相手モンスターを破壊し、さらにその攻撃力分のダメージを与える!銀河眼の時空竜を切り裂け!!《Vブレードシュート》!!!」

 

ホープレイVが赤い結晶体を吸収すると両腰の剣を連結しダブルセイバーへと変化させ、ブーメランの如く投擲した。

その剣は銀河眼の時空竜を切り裂くとシンを襲う。

 

「ぐああぁぁぁぁ!!!」

 

LP4000→1000

 

「ホープレイVでセットモンスターを攻撃!!《ホープ剣・Vの字切り》!!!」

 

そしてホープレイVが再び双剣を装備すると羽を広げVの字にセットモンスターに斬撃を叩き付けた。

セットモンスターは壺の様なモンスター。

 

「なっ!?【メタモルポット】だと!?」

 

「貴重な手札補給カードだ。【メタモルポット】の効果発動!リバースした時、手札を全て捨てて5枚ドローする。俺は手札の【時空混沌渦】を墓地に送り、ドローする」

 

「…私は手札の【エクシーズ・シフト】を墓地に送り、ドローする」

 

そして龍也とシンに新たな手札が補充される。

【Sin】デッキに【メタモルポット】…確かに手札使いの荒いデッキなので相性はそう悪くない。

 

「私はカードを三枚伏せてターンエンドだ!」

 

エンド宣言をした

手札2枚

 

「(私が伏せたのは【デモンズ・チェーン】と【奈落の落とし穴】と【紋章変換】…これで防ぎきれるといいんだが…)」

 

「俺のターン。墓地の【時空混沌渦】の効果発動。ドローをスキップし墓地のこのカードを除外して、墓地からギャラクシーと名のつくエクシーズモンスターを蘇生させる。蘇れ銀河眼の時空竜!!!」

 

「なっ!?墓地から蘇生カード!?」

 

「そう言う事だ。蘇れ!!銀河眼の時空竜!!!」

 

時空を切り裂く混沌の渦から時空竜が咆哮と共に飛び出してきた。

 

攻3000

 

「その召喚を許すわけにはいかん!私は伏せカード【奈落の落とし穴】を発動!!時空竜の召喚を無効にする!!」

 

何もかも飲み込む漆黒の大穴が現れるが……

 

「フ、フハハハハ!!私は手札からカウンター罠【タキオン・トランスミグレイション】を発動!!」

 

「手札からカウンター罠だと!?」

 

「このカードは私の場にタキオンドラゴンがいる時手札から発動できるカウンター罠!発動時に積まれていたチェーン上の相手の効果モンスター・罠・魔法カードを全て無効にし、全てをデッキに戻す!《タキオン・トランスミグレイション》!!!!」

 

銀河眼の時空竜が変形し赤と青の宝石が付いた黒い四角錐の姿へと変化した。

そして七色の光を放つと竜也が発動した【奈落の落とし穴】がデッキへと巻戻って行く。

 

「っく!!」

 

「そして私は【RUM-アウトキャスト・フォース】を発動!!!」

 

【RUM-アウトキャスト・フォース】オリカ

 

通常魔法

自分フィールド上のエクシーズモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターと同じ種族でランクが1つ高い

【C】と名のついたモンスター1体を、選択した自分のモンスターの上に重ねて

エクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

この効果でエクシーズ召喚したモンスターは以下の効果を得る。

●このカードは相手の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

 

「このカードは私の場に存在しているエクシーズモンスターをカオス化させ、ランクアップする!!私は【№107 銀河眼の時空竜】一体でオーバーレイネットワークを再構築する!!」

 

時空竜が再び赤と青の宝石が付いた黒い四角錐に変形すると空に空いた黒い穴に光となって飛び込んだ。

 

「カオスエクシーズチェンジ!!!」

 

そして黒と暗い緑を基調とした邪悪な爆発を引き起こす。

 

「再誕せよC№107!!!世界を貫く雄叫びよ!遥かなる時の生ずる前より蘇れ!!顕現せよ!絶対なる破滅をこの世に示せ!!超銀河眼の時空龍!!!」

 

『ギギャァァァァァァァァァァァ◆◆◆◆◆◆◆◆◆!!!!』

 

黒い穴から降りてきたのは赤い発光体を埋め込んだ細長い金色の四角錐…それが音を立てて変形していく。

そして姿を現したのは赤い発光体を胴体に持ちながら機械の様な黄金の体と細長い三つ首を持つ魔龍。

その魔龍が咆哮を上げると世界の時が止まったような錯覚を受ける。

 

攻4500

 

「(ネオタキオンだと!?だがこの邪気…ネクロ以上に邪悪で異質…まずい!?)私は最後の伏せカード【デモンズ・チェーン】を発動!!ネオタキオンの効果と攻撃を封印する!!!」

 

地面から神すら縛る魔の鎖がネオタキオンを締め上げ、拘束する。

だがネオタキオンが咆哮を上げるとその鎖はネオタキオンをすり抜けてしまった。

 

「アウトキャスト・フォースで召喚されたモンスターは文字通り永劫の輪廻から外れたモンスター…この効果で召喚されたモンスターは魔法と罠の効果を一切受け付けない!!」

 

「なにィっ!?」

 

「さらにネオタキオンの効果発動!!エクシーズ素材を一つ取り除くことでこのカード以外のフィールド上に表側表示で存在する全てのカードの効果はターン終了時まで無効になり、このターン、相手はフィールド上のカードの効果を発動できない!!!《タイム・タイラント》!!!」

 

「なん…だと…!?」

 

ネオタキオンが赤い結晶体を吸収し、背後から虹色の光が周囲を灰色へと変化し、まるですべての時が止まってしまったかのような錯覚を受ける。

 

「(相手からの魔法・罠を完全に受け付けず、さらには相手のフィールドの時を止める効果…カウンター罠による無効化すらも受け付けないこの火力…対処しきれない!?)」

 

「さらに俺はネオタキオンに【巨大化】を装備する!!俺のLPが相手より低い場合攻撃力を倍にする!!」

 

攻4500→攻9000

 

「消え失せろ敗者は!!ホープレイVを攻撃!!!《アルティメット・タキオン・スパイラル》ッ!!!!」

 

ネオタキオンが三つ首からブレスを放つとそれが収束していき黄金色のエネルギーとして龍也に襲い掛かった。

 

「ぬぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

LP2600→-3800

 

 

 

「誰にも止められはしないのさ。この復讐はな…ククク…フハハハハハハハハハハッ!!!」

 

-キィンッ‐

 

「クッ…!!」

 

膝をついている龍也を見下すように高笑いしているシンが黒い霧に包まれ、姿を消した。

転移でもしたのかあるいはこの空間からはじき出されたのか…定かではないが分かる事は一つ。あの狂気は数多の人を傷つける。罪なき人々も……だがそれが判っても

 

「私にシンを止める術は無い」

 

並行世界に移動する能力を持つ。龍也だったが、それはネクロの持つ波動を道標にして跳ぶ者であり……シンを追おうと思えばそれはシンが、超銀河眼の時空龍を召喚した時にしか、チャンスはなかった

 

「くッ……」

 

シンは止めなければならない、だがその為の力が無い。龍也は拳を地面に打ちつけ。己の力の無さに唇を噛み締めた……

 



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愛を込めて花束を

どうも混沌の魔法使いです。今回はかなり久しぶりの番外編の投稿です。タイトルを見るとおり「愛を込めて花束を」はやてさんとかが龍也さんに花を贈ると言う物ですが、地の分だけの構成なので今までの投稿と少し違う趣があると思います。あと花はいい花言葉で選んでいるので季節感とはぐちゃぐちゃです。それに花の色の場合ではネガティブな意味になる花もありますが、そこのところは突っ込み無しでお願いします。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします



 

 

愛を込めて花束を

 

 

その日機動六課のメンバーは臨時の休暇を貰い。のんびりと街を散策していた……そしてふと立ち寄った花屋で花を買うのだった……普段伝えたいと想っている事を口にするのは恥ずかしい。だから想いを乗せた花を贈ろうと想ったのだった……

 

 

 

ふと立ち寄った花屋で私の視線は1つの花に釘付けになった。

 

茎にまるで穂のように花が咲いたとても目を引いた。思わずその花を買ってその花束を抱えながら、店員に聞いた花言葉を考える。この花に目が止まってしまった理由はその花言葉を聞いて妙に納得してしまった

 

あの人はずっと私の目標だった

 

どこまでもどこまでも追いかけて

 

やっとはるか遠くに見えていた背中が少しだけ近くに見えた

 

そして判った。あの時空港火災の時にみたあの背中が

 

あの優しい笑みが私は大好きなんだと……

 

私がもう少し早く生まれていたら

 

妹みたいじゃなくて、もう少し異性としてみてもらえたのかな?

 

ううん。たぶん今とそんなに変わらないと思う。

 

それに今の弟子みたいな居場所もそんなに悪くないと思う

 

だけどきっといつまでもそんな感じじゃ嫌だと思う。だから貴方にこの花を贈ります

 

リナリアの花を貴方へ……

 

その花言葉は「この恋に気付いて」です。いつかはきっと私の気持ちに気付いてください、龍也さん

 

 

 

 

 

らしくない。私はそう思いながら花屋に足を向けてしまった。それはその花屋の周りのいい香りが原因だったのか

 

それとも私だって花の1つや2つを買うんだというのを知って欲しいと思ったのかもしれない

 

歪と言うのはおかしいがどれも違う花弁をし、薄い桃色と濃い赤のコントラストが美しく、そして少しずつ花弁に現れている白い色がとても私の目を引いた……

 

私の髪の色にも似ていて、そしてその花の色のグラデーションはどこか私の騎士甲冑に似ていて、どうしても気になってしまったのだ

 

店員に花を包んでもらっていると店員が得意げな顔をして私にその花言葉を教えてくれて買った後に私は頭を抱えた

 

様々な花言葉あるが、それはどう考えても愛を囁く言葉ばかりだった

 

買ってしまった花の花言葉を考えるとどうしても思う

 

私は最初は兄上を疑い敵対した事もあった

 

だけど兄上はそんな私を家族として迎え入れて

 

いつだって暖かく迎え入れてくれた

 

最初の出会いからやり直すことが出来たのならと思うときもある

 

ヴィータのように上手く甘えることが出来たのならと思うときもある

 

だけど私はきっとこれで良いのだと思う

 

私と貴方の始まりは疑いから始まってしまった

 

だけど今は違います。だから兄上にこの花を贈らせてください

 

そしてこの花に込められた言葉が今の私の貴方への思いです

 

ベゴニアの花を貴方へ……

 

この花の花言葉は「片思い」「愛の告白」だけど私が貴方に送りたいのはこの言葉

 

「幸福なる毎日」私に幸せな日々を与えてくれてありがとうございます。兄上

 

 

 

 

 

 

私はいつかあの人に贈ろうと思っていた花があった

 

渡そう渡そうといつも思っていたのにいざ花を買うとなると気恥ずかしくなって買うことが出来なかったけど

 

今日はすんなりと買えそうな気がする。そんなことを考えながら店内に入ると店長さんがくすりと笑い

 

視線で1つの花を見る。それは私がいつも買おうと思っていた花。だけどいつもレジでやっぱりと断ってしまう花

 

私がこくりと頷くと店長さんは馴れた手付きで木の枝を切って纏めてくれる

 

紙に包まれるその花は海鳴の町でも何回も見たし

 

お母さんが良くお店にも飾っていたから馴染みの深い花でもあった

 

だから私のとても好きな花。でもその花言葉を知っていつかは渡したいと思った

 

そんな思い入れのある花。薄いピンクの花びらを見ながら店長から差し出された花を受け取る

 

たぶんこの花を渡すときっと驚かれるだろう

 

あの人は博識だからきっとこの花の意味も知っている

 

口にして言うのは恥ずかしくていえない

 

だから花で伝えます。返事は直ぐじゃなくてもいいですけど

 

いつかは私に返事を返してください

 

そのいつかを夢見ながら貴方にこの花を贈ります

 

ハナミズキの花を貴方に……

 

この花の花言葉は「私の想いを受け止めて」です♪

 

私はいつだって貴方を想っています、だからいつかは私の想いを受け止めてくださいね。龍也さん

 

 

 

 

 

 

 

普通に考えて男の人に花を贈るのはおかしいのでは?と想う自分がいるが……

 

それでも私はあの人に渡すことを考えてその花を買った

 

そして私がこの花を贈るのは身分違いも良い所だと思い苦笑していると

 

私と同じ花を抱えて歩いていた仲間に会った

 

互いの手の中の花を見て笑い合い

 

分違いの想いを抱いてしまったなと言うと

 

それでも私はこの花を贈る。それが私と言う存在を示すと自信に満ちた表情で言い返された

 

たぶん私が言われてもきっとそう返事を返したと思う

 

手の中の鮮やかな赤の花を見つめる

 

そして記憶の中に写るその気高く大きな背中

 

いや、出会った当時は小さかった。それでもその背中ははるか未来を想像させるほどの力強さを持っていた

 

一癖も二癖もある私達を纏め上げた貴方

 

心を閉ざしてしまった仲間の心を解放してくれた貴方

 

貴方こそ私の剣を

 

私の全てを捧げるのにふさわしい方だ

 

貴方はそんなことはないと喧騒なされるがそんなことは無い

 

だから私達は貴方にこの花を贈ります

 

口にすれば謙遜なされるし

 

自分は弱いと仰られるだろうから

 

口ではなく、花と心で貴方に伝えます

 

心からの忠誠を再び誓いながら貴方に花を贈ります

 

ゼラニウムの花を私達が贈ります

 

この花の花言葉は「真なる友情」……だけど私達が贈るのはこの言葉です

 

私達は貴方「尊敬」し、全てを賭けて貴方を「信頼」します

 

だからいつかこの身が朽ちるその時まで貴方の傍にいさせてください、我が君よ……

 

 

 

 

 

 

花なんて私は買ったことが無かった……

 

いつも言葉と行動で想うがままに私は自分の思いを伝え続けたがどうも空回りしている気がする

 

そう姉に相談すると姉はやさしく頭を撫でながら、お姉さまは背が低いから少し背伸びしてだけど

 

想いを口にし行動できるのはお前の良い所だと思うが

 

あまりに真っ直ぐに思いを告げて行動するのもどうかと姉は想う

 

たまには別のアプローチはどうだろう?

 

そう言われた私は花屋へと足を向けたのだが

 

何の花がいいのだろう?

 

それに見た目が良くても花言葉と言うのがあるというのは知っている

 

悪い意味の花を選んでしまってそれを渡してしまうのは嫌だ

 

そんなことを考えながら花を選んでいると

 

1つの花が目に止まった

 

6枚花びらが茎の方に向かって伸びた変わった形の花で、美しいまでの青い色がとても気に入り。この花を買うと店員に言うと店員は上機嫌で花を数本カットして紙で包んでいる。私はその店員に花言葉を尋ねてみた

 

ありがとうございましたー。笑顔で手を振る店員に背を向け買った花を見る

 

直感で選んだが、私の想いをこれほど現している花は他にないのではと思う

 

ずっと私は貴方を愛している

 

何をしても貴方に愛して貰いたいと想っている

 

貴方が他の女を見て笑いかけているのを見ていると心が痛む

 

だから私は貴方に私だけを見て欲しくて迷惑をかけてしまうのかもしれません

 

だけどこの気持ちだけは迷惑と思わないでください

 

だから私の気持ちを込めてこの花を貴方へ贈ります

 

貴方の目のように青いヒヤンシスの花を

 

きっと貴方なら説明しなくても判ってくれるでしょう、この花の花言葉を

 

この花の花言葉は「変わらぬ愛」そして

 

「constancy(不変)」「sincerity(誠実)」

 

私が貴方を想う気持ちは不変であり、誠実です。いつかは私だけをその目に写してくださいね……龍也様

 

 

 

 

 

 

花言葉と言うので想いを伝えるというのはどうだろう?

 

私は臨時の休暇を使って色々と花言葉を調べてそう想った

 

口で伝えるよりも

 

行動で示すよりも

 

偶にはこういう変化球と言うのあの人は良いのではないのだろうか?

 

あの人は知識が豊富だ、きっと私の贈ったこの花の意味を考えてくれるに違いない

 

良い香りのする紫の花の香り。初めて買って見たけどこんなに良い香りなんだ……

 

そう言えば管理局のアンケートで女性局員につけて欲しい香水NO.1になっているのは

 

この花を使った香水だったような気がする

 

ふわりとした優しい香りそれなのに甘い甘いといった普通の香水にはない清涼感のある香りがする

 

今まで香水なんて買ったこと無かったけど、こんなにいい香りがするのなら買って見ると良いかも知れない

 

香水であの人の気が惹けるのならそれはそれで素晴らしい物のような気がする

 

最初からこの花の花言葉は私に相応しいと思った

 

これほど見事に私の想いを告げてくれる花は他にはないと思う

 

私は貴方みたいになりたいと思いました

 

兄さんが死んで1人で無茶をしていた私を嗜めて

 

頑張ろうと思える言葉を貴方はくれた

 

その言葉があったから私はここまでこれた

 

あのときの言葉はずっと私の胸で輝いています

 

今はまだ貴方に守られるだけの存在だけど

 

いつかは貴方の隣に立って見せます

 

だからその時まで待っていてください。今はまだ私は自分の気持ちを告げることが出来ないと判っています

だから想いを告げる代わりにこの花を貴方に贈ります

 

紫のフリージアの花を貴方へ

 

この花の花言葉は「あこがれ」私は貴方にあこがれてここまで来ました

 

そしてそれはいつまでも変わりません。だからいつまでも私が憧れたままの貴方でいてください。龍也さん

 

 

 

 

 

今年も良い華が咲いたなあ……

 

家の庭で育てている花の咲き方に満足し園芸用の鋏を取り咲いた花を摘む

 

本当ならもう少しこのままでと思うけど

 

この花は直ぐに枯れてしまう花だから、早めに摘んでおかないと気がついたら枯れているなんて事になったら目も当てられない

 

毎年育てているので来年も綺麗な花を咲かせてやと声を掛けてから根元で切って花の茎を見る

 

うん。今年も虫とかはおらへんし、花の色も最高やな♪

 

鼻歌を歌いながら買って来ておいた紙に包みリボンで仕上げる

 

毎年贈るこの花。昔は買ってきたのを渡していたけど最近は自分で育てて贈る準備をする

 

こんなめんどくさいことをするのは兄ちゃんの為だけ

 

兄ちゃんが好きで私も大好きな花だから出来る

 

仕上げて終わった花束の仕上がりに満足し

 

紫の花と会うように選んだ紙とリボンも良くあっていて完璧な仕上がりだ

 

兄ちゃんは当然知ってるよな?この花の花言葉を

 

桔梗の花が捧げるは愛の言葉

 

毎年私は兄ちゃんだけに愛を捧げているんやで?

 

私は兄ちゃんだけに「永遠の愛」を捧げて

 

兄ちゃんの前だけは「誠実」で

 

兄ちゃんが好きならば「清楚」にだって振舞う

 

本当に大好きやで兄ちゃん♪

 

毎年通り愛を込めて花束を贈るな?

 

私の大好きな桔梗の花を愛を込めて贈ります

 

桔梗の花の花言葉は「永遠の愛」「誠実」「清楚」

 

私はいつだって貴方を想っています……

 

 

 

 

【愛を込めて花束を】

 

 

 

 




今回は投稿できるものをと考えて番外編を考えて見ました。私が良く聞く「愛を込めて花束を」を聞いていて思いついたのですが
どうでしょうか?地の文オンリーと言う普段とは違う感じの話となりましたが偶にはこういう話もいいのでは?とか思っていたりします。本当は全員でやりたいと思っていたのですが、流石にそこまで花言葉も知らないし全員分は無理だったので「スバル」「シグナム」「なのは」「アイギナ&シャルナ」「セッテ」「ティアナ」「はやて」でお送りしました

花を貰った龍也さんがどんな顔をしたかは、読者の皆様の想像にお任せします。喜んだのか?悩んだのか?それともデッドエンドになったのかは皆様の中で補完して貰えると嬉しいです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします


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