ウルトラマンゼロ物語(ストーリー) in RED ZONE STAGE (剣音レツ)
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〈前半戦〉第1章「集結する光と影」
第1話「銀色の再来者」


初のオリジナルストーリー。最初なのでおかしな所もあるかもしれませんがよろしくお願いします。


(OP:TAKE ME HIGHER)

 

西暦2015年、場所は、私たちが住んでいる所とはまったく違う別宇宙の地球。ここはかつて49年前、怪獣や侵略者の脅威にさらされていた。人々の笑顔が失われそうになったその時、遥か彼方、光の国からウルトラ戦士たちがやって来た。彼らの活躍により、地球は平和を取り戻してきた。

 

 そして、2012年にウルトラマンゼロが地球を守ったのを最後に、完全なる平和が訪れ、三年の年月が過ぎようとしていた。

 

 そんな地球の中の『日本』と言う国の中に『霞ヶ崎』と言う都内の町がある。ここは高層ビルやマンション、民家など様々な建物がぎっしり並んでいて、そのすぐ横には森林が広がっていて、その奥には自然に恵まれた大きな渓谷『露金(つゆがね)渓谷』が立っている。

 

 この様に都会ながら大自然のおかげで空気も清潔なその町の人々も平和に暮らしており、怪獣頻出期の恐怖すら完全に忘れ去られた様にも見えた。

 

 

 

だが、そんな平和な町『霞ヶ崎』の中心に突如、何の前触れも無く巨大な生物が姿を現した。その生物は、サボテンの如く全身に無数の棘が生えており、赤い花の様な赤くて四つに分かれた不気味な口を持っている。この生物はサボテンとハリネズミが合体した超獣『さぼてん超獣サボテンダー』だ。

 

 サボテンダーは咆哮を上げると、全身の棘をミサイルの如く発射して暴れ始めた。ビルやマンション等が次々と破壊され、人々は突然の怪獣出現にパニックを隠せず我先にと逃げ惑う。

 

 怪獣頻出期が去った後も、僅かながら残っていた地球防衛軍の戦闘機が出動し攻撃を仕掛けるが、相手は怪獣のさらに上を行く超獣。地球の通常兵器は全く効き目が無く、逆にサボテンダーのトゲミサイルにより瞬く間に全機が撃ち落されてしまった。

 

 サボテンダーは戦闘機を全て撃ち落した後、何かに目を付けたのか、ビルを薙ぎ倒しながら一方向へと進んでいった。その先には、町と森林を繋ぐ草原の中を逃げ回る一組の若い男女三人組がいた。彼らは大学生であり、大学へ向かう途中であった。

 

 「うわあぁぁぁぁ‼何でいきなり怪獣が出て来るんだよぉ‼」

 

 情けない叫びを上げながら逃げる彼は『ドン・ドッゴイヤー』で、パーマの金髪な髪型が特徴である。彼は頭脳明晰だが、臆病な所があり、尻込みしやすい。また、学力抜群で、コンピューターにも強く、様々なメカの修理もできる等、「博士っぽい」所がある事から「ハカセ」と言うあだ名を持っている。

 

「そんなのこっちが知りたいわよ‼」

 

 強気に叫びながら逃げる彼女は『ルカ・ミルフィ』で、端正な顔立ちに茶髪のショートヘアをしている。男勝りで活動的な女子大生で、良くも悪くも考えるより先に行動するタイプだが、その性格故に面倒見が良く、ハカセ等の草食系男子の世話焼き役に回ることもしばしばである。また、金目の物に目が無い一面もある。

 

 「違いますよドンさん!あれは『怪獣』の上を行く存在『超獣』ですよ!あれは確か『サボテンダー』と言って…」

 

 「今解説してる場合じゃないだろー‼」

 

 狙われているにも関わらず、逃げながら熱心にそしてどこか嬉しそうに解説をする笑顔が眩しい茶髪の青年にハカセは突っ込みを入れる。彼は『伊狩鎧』。お調子者かつハイテンションな性格で、自称『誰よりもウルトラ戦士を愛する男』。そのため、過去に登場したウルトラ戦士や怪獣たちに非常に詳しいと同時にウルトラ戦士達を尊敬しており、、今の様に時に状況関係無く我を失い、ウルトラマンや怪獣を熱心に語りだす事もしばしばである。因みにルカ達より一つ下の後輩だが、彼らとは同級生の様に仲が良い。

 

 ハカセは無駄に手を振りとにかく一心不乱に逃げ、鎧は現れた本物の超獣を前に興奮しているのか、ちょいちょい振り向いてサボテンダーを見ながら逃げており、ルカはそんなモタモタする鎧を力ずくで引っ張りながら逃げていた。

 

 「あーもう!何で私達を付け狙うのよっ‼」ルカは半ば八つ当たり気味に叫ぶ。

 

 「僕達だけ草原で逃げてるから多分目立っちゃったんだよ~‼」

 

 ハカセはヘタれた声でそれらしい返事をする。

 

 「しかし…どういう事だろう…怪獣も超獣も宇宙人も、ウルトラ戦士の皆さんの活躍で全て倒された筈なのに…」鎧は必至で逃げながらルカ、ハカセに疑問を投げかける。

 

 そうしている間にもサボテンダーは、三人に追い付こうとしている所まで近付いていた。サボテンダーは三人に向けてトゲミサイルを乱射し始めた。トゲミサイルの雨あられにより、自分達の周りをはじめ、草原のあちこちで爆発が起こる中、三人は必死で逃げ続けた。

 

 だが、爆発により捲れた地面にルカは足を挫かせて転倒してしまった。ハカセと鎧は立ち止まり、ルカに駆け寄る。

 

 「大丈夫ですか!?」鎧はルカの腕を自分の肩にかけて起こしながら聞く。

 

 「ええ、これしきの傷…」ルカは強気に答える。

 

 だが、安心するのも束の間、サボテンダーは立ち止まった三人を見てチャンスとばかりに止めの一発を発射しようとしていた!

 

 「もうだめだ~‼」ハカセは既に諦めモードだった。

 

 ハカセを始め、三人は目をつぶり、死ぬことを覚悟した。

 

 

___その時、不思議な事が起こった。

 

 

 突如、空から白い光弾が飛んで来て、サボテンダーの頭部に命中した。いきなりの被爆に怯み少し後ずさりをするサボテンダー。目をつむっていた三人もいつの間にか目を開けてその光景を見つめていた。

 

 「一体……何が起こってるの?」とルカ。

 

 「………さあ。」とハカセ。

 

 すると、鎧が何かに気付いた。

 

 「はっ……あれを見てください‼」

 

 ルカ達も、鎧の指差す方向へ視線を向けた。三人の視線の先には、約2〜3キロ先の場所で赤く光る球体が浮かんでいる。

 

 「…何なの?あの球体は…。」

 「もしかしたら、あいつの仲間の怪獣⁉︎」

 「赤い球体……もしかして!」

 ハカセとルカが不安そうな口調で言う中、鎧は早くも何かに勘付いたようだった。サボテンダーも球体に対し、警戒の体勢に入っていた。

 

すると、赤い球体は青白く輝いた後、次第に人型へと変わって行き、やがて巨人の姿となった。

 「……あれは……!」

 その巨人を見た瞬間、鎧は目を見開いた。そこに立っていたのは、赤と銀で構成された筋肉質のボディにトレードマークと言えよう青い瞳を持つ光の巨人『ウルトラマンパワード』だ!

 

彼は過去にアメリカで防衛チーム『W.I.N.R』の勇敢な青年『ケンイチ・カイ』と一体化し、迫り来る怪獣や侵略者と戦い抜いてきた。最終決戦ではカイの身を案じ、分離してゼットンと対決。倒す事に成功するが、自らも力尽き、迎えに来た仲間の光球と共にカイ達に別れを告げ、M78星雲へと帰還した。だが今回は、地球の新たな危機を感知したのか、再び地球に駆け付けたのだ。

 

(BGM:ウルトラマンパワード)

 

「あーーーーーっ‼︎あれは……ウルトラマンパワードじゃないですか‼︎」

 鎧は、超獣に続き、ウルトラマンも登場した事で、興奮のボルテージがさらに上昇。まるで子供の様に騒ぎ始めた。

 「うそ……マジで?」

 

 ルカは目の前に起きていることが信じられないのか、興奮する鎧をよそにハカセ共々呆然としていた。因みに先ほどサボテンダーが受けた光弾は、パワードの技『エナジーナックル』である。

 

 パワードはゆっくりと構える。そして、行くぞとばかりに地面を蹴ってサボテンダーに勢いよく跳びかかる。そして、その勢いで右の掌で腹部を押さえるように突き飛ばした!

 

 サボテンダーは数十メートル吹っ飛び、ビルに激突した。だが、これぐらいでは勢いが劣らないのが超獣のタフネス。サボテンダーは瓦礫を振るい落としながら立ち上がり、体勢を立て直し、パワードに向かって走り出した。

 

 パワードとサボテンダーが組み合う。そして、互角で激しいパンチの応酬を始めた。あまりにも激しい戦いのため、両者の周りの地面は小さな爆発が連続で起こり、土煙が舞い上がっている。

 

 サボテンダーは右フックを繰り出すがパワードはそれを左手で受け止め、サボテンダーの腹部に連続で右拳を打ち込む。サボテンダーは今度は左フックを放つが、パワードはそれを素早くしゃがんでかわし、サボテンダーの腹部に左アッパーを決める。そして、一回転し左ハイキックを頭部に打ち込んだ!

 

 サボテンダーがよろけた隙に、パワードは胸部に前蹴りを決め、距離を取るためその反動を利用して宙返りをしながら後ろへ跳んだ。流石はアメリカで数々の強敵を倒してきただけあって、パワードの強さは侮れないものだ。

 

 「………強い…!」

 

 「相手は超獣だよね!?」

 

 ハカセもルカも、パワードの強さに呆然としながらも感心している。

 

 「まあ見てくださいって。ここからが見物ですよ。」

 

 鎧は嬉しそうな表情で言った。

 

 サボテンダーはパワードを捕えようと、赤い花の様な口からパワード目掛けて長い舌を勢いよく伸ばし始めた。だが、パワードは全く動じる事無く右手を前に突き出して、丸のこぎり型の光輪『パワードスラッシュ』を発射!サボテンダーの舌を瞬く間に切断した。

 

 さらに怒ったサボテンダーは、全身のトゲミサイルを一斉に発射し始めた。パワードは少し身構えた後、迫り来るトゲミサイルをキック、チョップで次々と撥ね始めた。サボテンダーはなおも発射し続けるが、パワードは慌てる事無く次々と確実に撥ねていく。撥ねられたトゲミサイルは全てパワードの背後の空で爆発した。それはまるで、夏の花火大会のフィナーレのようだ。

 

 だが、トゲミサイルを全て撥ね終えた時、サボテンダーの姿はパワードの眼前から既に消えていた。トゲミサイルを撥ねている間に後ろに回り込んでいたのだ。サボテンダーはチャンスだと思ったのか、身体を球状に変形し、体当たりをしようとパワードに向かって勢いよく飛び始めた。だがどうしたことか、パワードは後ろからサボテンダーが迫って来るにも関わらず、微動だにせずじっと立ち尽くしている。

 

 「ちょっと何やってんの!?危ないよ‼」

 

 「うわ~ぶつかる~~~‼」

 

 ルカ・ハカセは慌てるが、鎧は慌てるどころか嬉しそうな表情を崩さず見続けている。

 

 サボテンダーが10~20メートルぐらいにまで近付いたその時、パワードは地面を蹴り、地面に背を向けるようにジャンプし、オーバーヘッドキックを繰り出す!蹴りは見事、球体のサボテンダーにヒットし、サボテンダーは球体のまま上空に吹っ飛んでいく。そのファインプレーには三人も思わず歓声を上げていた。

 

 「すごい………!」感心するハカセ。

 

 「ジョージ先輩もビックリのナイスシュートですね!」と鎧。

 

 ちなみにジョージとは、彼らと同じ大学の先輩で、サッカー部の部長である。

 

 パワードは跳ね起きで起き上った後、上空の球体サボテンダー目掛けて両腕を十字に組んで『メガスペシウム光線』を放つ!十字のまばゆい青白色の光線は一直線に飛び、球体サボテンダーを貫く!サボテンダーはまるで薬玉が割れる様に四つに分裂し、やがて跡形も無く爆散した。

 

 サボテンダーの爆破を確認した後、パワードは青白い光に包まれ、そして段々と小さくなっていく様に姿を消した。

 

 「行ってみましょう‼」

 

 三人は鎧の言葉を合図にパワードが消えた場所へと急いで駆け出し始めた。その場所に着いた時、そこには見た感じ二十代前後か三十代前半ぐらいの男性が細長いカプセルの様なアイテムを持って立っていた。三人は男性を見てふと立ち止まる。そしてハカセが恐る恐る話しかけた。

 

 「あの……あなたは一体…?」

 すると男性はハカセ達の方を向いて答えた。

 

 「……俺はケンイチ・カイ。またの名を、ウルトラマンパワードだ。」

 

 「じゃあ……さっきの巨人はあなたが変身したもの……?」

 

 「教えて。この町、いや、この地球に何が起こ……」

 

 ドンッ!

 

 鎧は質問するハカセとルカの声を切り裂く様に勢いよく二人を押しのけ、カイに勢いよく駆け寄った。

 

 「光栄ですぅ~~~‼まさか、ほ、本物のケンイチ・カイさんに会えるなんて~~‼」

 

 鎧は強引に握手する様にカイの片手を両手で握り、大げさに上下に振る。鎧はもはや本物のカイに会えたことの興奮で前が見えないようだった。だが、困惑するようなカイの顔や、呆れ気味の二人の顔を見て、少し我を取り戻す。そして、仕切り直すように話し始めた。

 

 「………………おっと、申し遅れました。俺は伊狩鎧。そしてこちらが仲が良い先輩のドンさんにルカさんです!さっきはありがとうございましたぁ~‼……あ、そうだ。よ、良かったらこのノートにさ、サインをお願いしま~す‼」

 

 鎧は、元気良くカイにサインペンとノートを突き出した。落ち着いたとは言え、鎧の嬉しさのボルテージは高いままだった。

 

 「も~鎧ったら…まずは事情を聞き出すのが先だろ。」

 

 ハカセは少々呆れた様な口調で突っ込んだ。カイは変身アイテム『フラッシュプリズム』を胸元にしまい、鎧からサインペンとノートを受け取りながら答え始めた。

 

 「俺は再び宇宙からやって来たパワードと一体化し、この町にやって来た。彼の話によると、謎の声に導かれてこの地球にやって来たのだという。」

 

 「謎の………声?」

 

 カイの言葉を疑問に思うルカ。カイはサインを書きながら落ち着いた口調で話を続けた。何でも、パワードは宇宙をパトロールしていた所、突如どこからか女性の助けを求める声が響いた。そして、ここ『霞ヶ崎』と言うようにと告げられたと言う。

 

 「そんな訳で、俺はパワードと再び一体化し、この町に飛んで来たんだが……その時、さっきの怪獣が暴れてたから撃退した……と言う訳だ。」

 

 カイは話を終えたと同時にペンとノートを鎧に返した。鎧は眩しいほどの嬉しそうな顔で受け取る。

 

 「何か……信じ難いわね。」とルカ。

 

 「どうやらその声の主は君じゃ無いみたいだな。君達、さっきの怪獣以外で最近何か変わった事とかは無かったか?」

 

 「い…いいえ、特に何も。」とハカセ。

 

 「そうか……まあいい。俺はしばらくこの町を探索する。今後もし何か変わった事があったらどんな事でもいいから俺に知らせてくれ。」

 

 「分かった」

 

 カイはハカセとルカが返事したのを確認た後、鎧の方を向く。

 

 「あと、鎧君、そのサイン、大事にするんだぞ。」

 

 「はい!僕たちも、全力であなたをサポートしま~す‼」

 

 鎧は、サインを貰った嬉しさか、上機嫌で返事をする。それを見たカイは少し笑った後、何処へ走り去っていった。

 

 三人は走り去るカイの後姿を見つめながら話す。

 

 「この星に……また侵略者が攻めに来たと言う事かしら。」

 

 「分からない…でも、僕達も今後、用心する必要があるね。またさっきの超獣みたいな奴が攻めて来るかもしれないし。」

 

 「そうですよ!ドンさん、ルカさん。地球は再び狙われている……俺達も、ウルトラ戦士の皆さんのお役に立てるよう、力を合わせましょ~~~‼」

 

 鎧はハイテンションで喋りながら、ルカ達の肩に手を回した。

 

 「そ…そうだね。とりあえず今は大学に行こう。マーベラスとジョーとアイムが待ってるし。」

 

 「おっと…そうでした。じゃ、行きましょう!」

 

 三人は、取り留めないお喋りをしながら歩き去って行った………。

 

 一方、カイと三人が話していた場所の近くで、白いワンピースを着たショートヘアの可憐な少女が憂鬱そうな顔でそのやり取りを見ていた。

 

 「……やっと一人来てくれたのね……でも、まだ足りない。早く来て……勇者達……」

 

 そう言うと少女はその場を立ち去って行った。

 

 (ED:この宇宙のどこかに)




読んでいただき有難うございます。
感想・指摘・アドバイス・リクエスト等お待ちしております。

※本作のウルトラマン達は本作の舞台の地球がある宇宙ではなく元の宇宙から来たウルトラマンという設定です。

※主人公が初登場するのは構成上第3話の予定にしています。

次回はウルトラマンゼロが初登場です。


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第2話「女神の御告げ」

ゼロの初登場回です。
因みに私、ウルトラマンだとゼロが特に気に入っています(笑)


(OP:TAKE ME HIGHER)

 

突然の怪獣騒動が去って翌日の7月20日、霞ヶ崎の人々は昨日の出来事に戸惑いながらも、何気無い平和な生活へと戻っていた。そしてこの日は、『麟慶大学』の一学期の終業の日でもあった。

 

麟慶大学。それは、霞ヶ崎に建つ唯一の有名な私立大学である。基本的に優等生が多く集い、就職率は85%以上、OB・OGは3000人以上輩出などと高い実績を誇り、更には学生の大半が美男美女と言われている等、いろんな面で評価の高い大学である。

 

この日は、休憩時間も放課後も、男子・女子共に昨日のウルトラマンと怪獣についての話題で盛り上がっていた。

 

「昨日は大変だったな……ったく怪獣のヤロー…派手に暴れやがって……」

 

端正な顔立ちにカールがかかったように左右に跳ねた髪型をしている美青年がかったるそうに話す。彼は『キャプテン・マーベラス』。本校の学生であり、ジョー・ルカ・ハカセ・アイム・鎧を入れた仲良し6人組の中でもリーダー的存在。やや尊大で、考えるよりも先に行動するタイプだが、冷静さも持ち合わせており、芯は強い。また、尊大ではあるが基本的に他の学生とは対等な関係で接しており、本心は仲間思いである。

 

「『超獣』ですよマーベラスさん。それにしても、ウルトラマンパワード…格好良かったなぁ〜」

 鎧は僅かながら昨日の興奮がまだ冷めてないようだ。

 

「ったく……お前はさっきからそればかりだな。」

 

クールな顔立ちで長髪を後ろで一つに束ねた美青年が、興奮する鎧に向かって無愛想ながらフッと少し笑って言った。彼は『ジョー・ギブケン』。6人組のサブリーダー的存在である。常に冷静沈着で口数が少ない事から無愛想に見えるが、根は優しく生真面目な努力家。なので、時間があれば腹筋・腕立てなどの筋力トレーニングをしている。また、菓子(特にケーキ)作りが得意と言う一面もある。

 

「しかしどう言う事でしょうか……怪獣頻出期が去ってから今まで、一度もウルトラマンも怪獣も出て来なかったのに……」

 

純白なドレスの様な私服姿に、しなやかなポニーテールをしている可憐な美女が柔らかな物腰で話す。彼女は『アイム・ド・ファミーユ』。優しい性格で、誰にでも柔らかな物腰で接するが、おっとりした性格故か、マイペースで天然な一面もある。また、彼女は『ファミーユ財閥』のお嬢様でもあるため、その出自故に誰に対しても丁寧な口調で話し、先輩・同級生・後輩関係無く「さん」付けで呼ぶ。

 

「とにかく、何かが起ころうとしているのは確かなんだけど……」

 ルカは右側面の髪を指で擦りながら言った。6人の不安は募る一方である。ハカセはそんな雰囲気を変えようと話しかけた。

 「まあ、いつまでも深刻そうにしてても仕方無いし、今は僕達が出来る事、やるべき事をやって行こうよ。」

 「そうですね。そうすればいつかはウルトラ戦士の皆さんのお役に立てるかもしれませんし。」

 アイムも笑顔で答えた。

 「よ〜し、そうと決まったら、早速部室に行きましょ〜!夏休みライブや文化祭で演奏する曲、夏休み中に完成させるのですから〜‼︎」

 鎧は、ハカセとアイムの肩に手を回し、ハイテンションで言った。

 

「フッ…夏休みは始まったばかりだと言うのに、えらいやる満々だな。」とジョー。

 「いいじゃねーか。よし、今日の練習も、派手に行くぜっ‼︎」とマーベラス。

 6人はひとまずいつもの調子に戻り、部室へと向かい始めた。

 

因みにマーベラス達6人は、仲良し6人組であり、麟慶大学の軽音部で結成されたバンド『豪快パイレーツ』のメンバーでもある。この内、鎧以外の5人は海外出身である。

彼らは今、夏休みライブや二学期の文化祭で演奏する曲をマスターしようと日に練習に励んでいる。

 

 

 

場所は変わって、マーベラス達が住んでいる宇宙とは別の宇宙(通称:アナザースペース)では、一人の巨人が謎の大群を相手に激闘を繰り広げていた。その巨人は、赤と青と銀の三色で彩られたボディに、頭にはトサカの様な二つの刃物が並んでおり、目つきが若干鋭い。

 

彼の名は『ウルトラマンゼロ』である。彼はこれまで様々な宇宙で、数々の強敵を打倒して来た歴戦の勇者であり、その戦いの中、ウルトラの星がある宇宙とは別の宇宙で出会った仲間達と一緒に『ウルティメイトフォースゼロ』と言う宇宙警備隊を結成。宇宙の平和を守るために戦う日々を送っている。

 

現在、ゼロが戦っているのは突然襲って来た『無双鉄神インペライザー』と『破滅魔虫カイザードビシ』の大群である。ゼロは一人で数百体を相手すると言う圧倒的に不利な状況に立たされているにも関わらず、その動きからは全く苦痛を感じず、むしろ力を抜いている様にも見えた。

 

既に燃える様な真っ赤なボディが特徴の『ストロングコロナゼロ』になっていたゼロは、ウルティメイトブレス(以降:UB)を右手で叩く様な仕草を取り、右拳に炎のエネルギーを集中させて大群目掛けて突き出した。

 

「ガルネイトバスター‼︎」

 

ゼロは飛行しながら右拳から炎状の破壊光線を放ち、大量のインペライザーを次々と粉砕して行く。全部破壊したかに見えたが、残りの二体がそれぞれ左右からゼロに迫り来る。だがゼロは慌てる様子を見せないどころか肩をすくめる余裕すらあった。

 「…甘いな!」

 

 そう言うとゼロはまず左側の個体に炎を纏った前蹴りを決め、その反動を利用して反対側のインペライザーの方へ飛ぶ。インペライザーは光弾を乱射して迎え撃つが、ゼロはそれらを余裕でかわし、胸部に炎を纏った右拳を打ち込んだ。インペライザーは二体共爆散した。ゼロは爆発するインペライザーを背に、得意げに右上の口元を右親指で擦る。

 

残るはカイザードビシの大群だ。カイザードビシは光弾を発射し、両手の鎌を振り回しながらゼロに襲い掛かる。だがゼロはそれらをまるで動きが読めているかの様に全てかわす。そして、距離を取ろうと後ろへ跳び、宙返りをしながら青い光を発して、澄み渡る空の様な青いボディが特徴の『ルナミラクルゼロ』へとタイプチェンジした。

 

ゼロは全身に光を纏い、高速で飛行しながら炎を纏った跳び蹴り『ルナミラクルゼロキック』を放ち、カイザードビシを次々と撃破していく。そのスピードは余りにも速く、カイザードビシはあっと言う間に残り数十体となった。

 

次にゼロは空中で静止し、右手の指を額に当てて精神を集中させ、念力で分裂させたゼロスラッガーを右手を突き出して放った。

 

「ミラクルゼロスラッガー‼︎」

 

念力で複数に増えたゼロスラッガーは、超高速かつ複雑な軌道を描きながら飛び、カイザードビシを次々と切断して爆散していく。そして、数十体いたカイザードビシは瞬く間に全滅した。

 

インペライザーとカイザードビシを全滅させたゼロは、黄色い光と共に通常の姿に戻り、とある小惑星に着地した。着地したゼロの眼前には、一匹の怪獣が待ち構えていたかの様に立っている。

 「フッ……どうやらお前が、最後の一匹みたいだな!」

 ゼロが指を差した先には、腹部に真っ赤で巨大な吸血植物の花『チグリスフラワー』を付けた怪獣『宇宙大怪獣アストロモンス』が、待ってたぜとばかりに咆哮を上げて立っていた。

 

ゼロはアストロモンスと睨み合いながらゆっくりと構えを取る。そして叫んだ。

 

 「さあ、行くぜッ‼︎」

 アストロモンスはその声に反応したのか、上等だとばかりに吼え、ゼロに向かって走り出した。ゼロもアストロモンスに向かって走り出す。大きい者同士が走り合っている事で地響きも激しく、互いに足が地に着く度に土煙が舞い上がる。

 

ゼロは走りながら組み付く体勢を取る。アストロモンスもそれを真似るかの様に組み付く体勢を取るが、それはゼロがかけたフェイントに過ぎず、ゼロは組み付くと見せ掛けて前向きに一回転して右浴びせ蹴りを繰り出す!蹴りは見事アストロモンスの胸部に命中。

 

アストロモンスは少し怯むが、先ほどの攻撃で逆上し、右手の鞭を振るって襲い掛かる。だがゼロはまるで相手の動きが読めているかの様に華麗にかわす。アストロモンスは今度は左手の鎌を左フックの様に振るうが、ゼロはそれを素早くしゃがんでかわし、腹部の花の中央に鋭いボディブローを決める。引き続きその部分にボクシングの如くパンチを連打する。相当効いているのか、アストロモンスは声を上げて苦しむ。

たまらずアストロモンスは鎌を振るって反撃しようとするが、ゼロはそれをかわしながら後ろ向きに跳び、距離を取る。

 

アストロモンスは両腕を左右に広げ、腹部のチグリスフラワーの中央の口から溶解液を発射しようとする。

 「させるか‼︎」

 

 素早く見切ったゼロは左腕を横に伸ばした後胸に当て、額のランプから『エメリウムスラッシュ』を放ち、アストロモンスのチグリスフラワーの中央に当て、破壊した。

すかさずゼロは頭部にある二つの『ゼロスラッガー』を手に持ち、猛スピードでアストロモンスに駆け寄る。そして、手に持ったゼロスラッガーですれ違い様にアストロモンスの鞭と鎌を切り落とした!

 

全ての武器を失い、怯むアストロモンス。

 「止めだ‼︎」

 ゼロはアストロモンスに背を向けた状態で左腕を横に伸ばす。そして、振り向き様に右腕と左腕をL字に組んで必殺光線『ワイドゼロショット』を放った!ワイドゼロショットはアストロモンスの腹部に命中。アストロモンスは大爆発した。

 

 「 …ヘッ、呆気無かったぜ。」

 ウルトラマンゼロは、様々な苦境を切り抜け強敵を倒して来た強力戦士。怪獣一匹ごときどうと言う事無く、例え雑魚が束になって掛かって来ても、決して遅れを取る事は無い。

 

戦いを終えたゼロは、辺りを見渡しながら呟いた。

 「ダークネスファイブが去り、エタルガーを破った後も、悪がうろ付き回ってやがる……まるでこの俺を、新たな戦場に招待している様だぜ…。」

 ゼロは不吉な予感がしながらも、辺りに敵がいない事を確認し、その場を飛び去ろうとした。

 

………と、その時、

 

「ゼロ………ウルトラマンゼロ……」

 

突如、何処からか謎の女性の声が響いた。

 「‼︎ッ……誰だ。」

 ゼロは驚き、再び辺りを見渡し警戒したが、宇宙に浮かぶ小惑星以外何も見当たらなかった。

 (……幻聴か?)

 だが、謎の声は、静かにゼロを連呼する形でなおも響き続ける。

 

「ははぁ………さてはこの声、別の宇宙から俺を呼んでるのか?」

 ゼロはかつて、バット星人の侵略により危機的状況に追い込まれた別宇宙の地球『フューチャーアース』にいち早く駆け付けていたウルトラマンダイナに呼ばれ、そこを訪れてダイナ、コスモスと共にバット星人を倒した事があった。今響いている声も、ダイナに呼ばれた時と同じ感覚なのでゼロは察しが早かった。

 

「私は今、別宇宙の地球からあなたを呼んでいる……。この星は、かつて怪獣や侵略者の襲撃に苛まれていましたが、あなた達ウルトラ戦士達の活躍により平和を取り戻しました。しかし、再びこの地球に悪魔が舞い降り、侵略を始めようとしている。」

 「何だって⁉︎」

 

 ゼロは驚きを隠せなかった。

 「急いで。……ゼロ、あなたが最後の一人よ。私の地球の『霞ヶ崎』に来て、勇者達と共に、侵略者を倒して………。」

 そう言うと謎の声は、木霊しながらフェードアウトする様に消えて行き、やがて響かなくなった。

 

謎の声を聞いたゼロは、少し俯いた後、決意を固めた。

 「………分かったぜ。どうやらそこが、俺の新たなステージみたいだな!」

 ゼロは左手を上に挙げ、UBから銀色の楯『ウルティメイトイージス』を召喚し、装着した。

 「ヘッ…………久しぶりだな。女の子に頼まれたのは…………よし、行ってみるか、更に別宇宙の『地球』とやらに‼︎」

 ゼロは、イージスの力で作り出した時空と時空を繋ぐワームホールへ飛び込んで行った。

 

(ED:赤く熱い鼓動)




次回は主人公含む、オリジナルキャラが初登場です。

感想・指摘・アドバイス・リクエスト等お待ちしています。


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第3話「謎のウルトラマンと少年少女」

今回、主人公がようやく初登場します(笑)悪の組織の紹介もあります。

あと今回、バトルシーンはほとんどありません。


 (OP:TAKE ME HIGHER)

 

麟慶大学。そこは、「男女平等」をポリシーとしており、合言葉は『Boys and Girls Be Ambitious!』。これは、「男女共に大志を抱き、共に前に進んで行こう」と言う意味が込められている。なので、男性グループ、女性グループなどの同性同士よりも、男女混合で仲良しなケースが多い。授業間の休憩時間、とある男女3人が講義室の黒板前に集い昨日の事件について楽しそうに話をしていた。

 

 「昨日は凄かったな。本物のウルトラマンと怪獣が出たんだろ?いきなり過ぎて、ちょうど朝だったから俺、コーヒー吹き出しちまったけどな、ハハハ」

 

 明るく気さくに話している彼は『竜野櫂』(たつの かい)。工学部所属で、学力・運動神経は学年どころか学園トップと言われるほど高く、シャープなイケメン顔にスリムな体格で長身、髪型は後頭部の左右カールがかかったように跳ねているのが特徴。また、誰に対しても人当たりが良い事から、女子からはもちろん、男子からも人気や信頼を集めている。また、運動神経が高い事から、決まった部活・サークルに入っておらず、様々な運動部の掛け持ちをしている。

 

 「あれは超獣みたいだよ櫂君。でも、一体何が始まろうとしてるのかしら……私、ちょっと怖いわ。」

 

 しっとりした口調で不安そうに話す彼女は『新田真美』(にった まみ)。医学部に所属している。櫂とは幼馴染で仲が良い。艶やかな長髪で彫刻の様な整った可憐な顔つき、モデルの様にほっそりした美脚、くびれが目立つスレンダーな体つきをしている等容姿端麗で、櫂程ではないが成績優秀。それに加えおっとりした心優しい性格である事から、櫂同様多くの学生からの人気・信頼を集めている。

 

 「大丈夫だよ!真美ちゃん。もしまた怪獣が出ても、またウルトラマンが来てやっつけてくれるよ。」

 

 眩しいほどの笑顔で真美を励ましている小柄なさっぱりしたショートヘアの彼女は『眞鍋海羽』(まなべ みわ)。商学部所属で、学力はそこそこだが、心優しい性格で明るさは群を抜いており、子供の様に無邪気で可愛らしい外見や性質で、男子・女子関係無く誰にでも笑顔を振りまく事から、彼女から元気をもらう学生も多い。櫂と真美とは大学入学時に知り合い、友達になった。

 

 「ありがとう海羽ちゃん。パワード以外にも誰か来てくれるのかな?」

 

 「ああ、多分『パスワード』以外にも来てくれると思うぜ。」

 

 「違うよ、パワードだよパワード。『ウルトラマンパスワード』だなんてちょっと可笑しいよ……フフフ……ハハハハ……」

 

 真美は、パワードの名前を間違えた櫂に穏やかに突っ込んだ後、可笑しさの余り、口に手を当てて笑い出す。

 

 「あ、パワードと言うのか、悪い悪い、ハハハ……」

 

 櫂と海羽も可笑しくなったのか、つられる様に笑い出す。櫂は、ウルトラマンに関する知識が少ないため、たまにこうやって名前などを間違えては真美などから突っ込まれる事もしばしばである。ただ、ウルトラ戦士が昔から地球を守って来たと言う事は、三人とも知っている。

 

だが海羽は何かを思い出したのか、フェードアウトする様に笑いが止まる。そして、下を向きながら唇を少し開いて言った。

 

 「……トシ君……今日も来なかったみたいね……。」

 

 櫂と真美もその言葉を聞き、ふと笑いが止まる。

 

 「ああ、桜井君?休み続けて今日で一週間だね……原因も未だに分からないし…櫂君、何か知ってる?」

 

 「いや、それが…何度か携帯にかけても一向につながらないし…たまに家に行くんだが、居ない事が多いんだ。」

 

 彼らにはもう一人、『桜井敏樹』(さくらい としき)と言う友達がいる。彼はイケメンで好青年だが、劣等性故に麟慶大学に入れず、櫂達とは別の低レベルの大学に通っていたが、その大学が理由あって閉校となり、学力向上等のため特別採用で麟慶大学経済学部に入学したが、学力の低さや人見知りの激しさを露骨に馬鹿にされ、酷いいじめに合う毎日を送っていた。

 

 そんな彼が突然、一週間前から全く大学に来なくなったと言う。因みに最近の麟慶大学は、名門校でありながらこの様に劣等性をいじめる屑が増えてきたのが悩みの種でもある。

 

 敏樹と海羽は幼馴染であり、櫂と真美とは大学で知り合って友達になった。櫂は何度か彼を迎えに行ったのだが、家に居ない事が多く、居たとしても「家族の事情」などと言う理由で断り続けて来たと言う。しかもその時の表情は以前の明るい敏樹の面影は無く、何かに憑りつかれた科の様な暗い顔をしていたと言う。

 

 「あいつ……学部違うから助けてやる事も出来なかったし…いじめのせいでついに病んでしまったのだろうか……」櫂も深刻な表情になっていた。

 

 「私も……幼馴染なのに何もしてやれなかった……私の所為だわ………」

 

 海羽は、敏樹の不登校は自分の所為だと不甲斐無さを感じたのか、突然涙を流しすすり泣きを始めた。彼女は底抜け明るい反面、泣き虫なのが玉に瑕でもある。真美は、泣いてる海羽に歩み寄り、背中を優しく摩る。

 

 「海羽ちゃんの所為じゃないよ。桜井君も、そのうち来てくれるはずだから、一緒に頑張ろう。」

 

 「そうだぜ。俺と真美もついてるんだ。あいつを元気付けて楽しい学園生活に戻してやろうぜ。」

 

 櫂は海羽のすくんだ方にポンと手を置いて明るい言葉をかける。櫂と真美の励ましを受けた海羽は涙を拭いて顔を上げ、僅かながら笑顔を取り戻した。

 

 「そうだね……ありがとう。私、頑張るわ。」

 

 「よし、その意気だ!」

 

 「やっぱり海羽ちゃんは笑った方が可愛いよ。」

 

 すると、海羽は突然何か急ぐ様に駆け出した。

 

 「もうすぐ授業だけど、トイレ行ってくるから先生に言っといて。」

 

 海羽はそう言うと、真美達に手を振りながらトイレに駆け込んで行った。

 

 「…急に整理現象か?」

 「それとも、桜井君の事が余っ程ショックだったのかしら……。」

 「まあ、あいつの事だ。すぐ立ち直るさ。先に行っとこうぜ。」

 櫂と真美は、海羽を案じながらも教室の机に座った。

 

一方、海羽は女子トイレで手を洗いながら上を向いて、何やら独り言を呟いていた。

 「……早く来て………私の愛する人の為にも………。」

 そう言うと海羽は女子トイレを出て、教室へと駆けて行った………。はて、さっきの独り言は、誰に向けて言ったのだろうか……?

 

 

 

 場所は変わって、櫂達が住む地球と月の間の宇宙空間に、赤色でトゲトゲしい形状のTの字の形をした異形の宇宙船が停まっていて、その中には複数の宇宙人達が乗船している。その宇宙船は、無数の部屋があるのに加え、左右・中央・後部と4つの大き目の部屋がある。その中でも一際大き目の中央の部屋では、何やら格上らしき宇宙人達が集って話をしていた。

 

「くそっ……宣戦布告として送ったサボテンだーが、早くも敗れてしまうとは……!」

 悔しがっている奴は、赤く、全身棘が生えた身体に鎌のようになっている右手が特徴の『異次元超人巨大ヤプール』だ。奴は過去に超獣等を使ってウルトラマンAと激闘を繰り広げており、最後はAとの一騎打ちの末、遂には撃破されたが、その後も怨念の力で何度も復活し、ウルトラ戦士達にしつこく挑戦し続けている。今回はその怨念に加え、「ある者」によって復活させられたらしい…。

 

「フフッ、どうやら目的達成の為にも邪魔なウルトラマン共を倒すのが先みたいですなぁ。」

 そう言うのは、黒ずくめの姿に片手に水晶を持った怪人物『ブラック指令ガスト』だ。奴は悪魔の惑星『ブラックスター』出身であり、かつて同族が、地球侵略に邪魔なウルトラマンレオを倒す為に円盤生物を送り込んでいた。最終的に諦めなかったウルトラマンレオと地球人の子供達の前に敗れ、ブラックスターも破壊されている。彼はブラックスターが破壊された後も生き延びており、やがてある者の配下に着いたらしい……。

 

「そうと決まれば、とっとと奴らを滅多切りに倒してやろうぜ‼︎」

 乱暴な口調で話す奴は、蜷局間と言う奇妙な形の頭部が特徴で手には切れ味が鋭い刀『テロリストソードワイルダー』を持った宇宙人『緑色宇宙人テロリスト星人バスコ』だ。奴はかつてウルトラマンタロウと戦ったテロリスト星人の同族である。テロ星出身で、宇宙一の暴れん坊と言われる程残虐で横暴な性格のため、様々な惑星で嫌われている。宇宙で抹殺行動をしている最中にある者に誘われ、配下に着いたらしい……。

 

「まあまあ、力ずくだけじゃ勝算は無い。ここは策を巡らせて、奴らを陥れないと…」

 作戦を立てる事を提案する奴は、『悪質宇宙人メフィラス星人キョウ』。誰もが知っているウルトラマンと引き分けた紳士的なメフィラス…………のイメージとは少しかけ離れており、肥満気味で目のふちが赤く、灰色の体色が特徴で、どちらかと言うとウルトラマンタロウと戦った二代目に近い外見をしている。かなりの策士で、目的の為なら手段を選ばないが、テンパりやすい一面も。性格が逆なバスコとは何故か息が会うため、コンビで行動する事が多い。

 

ヤプール・ガスト・バスコ・キョウの四人は、この軍団の中でも特に格上の幹部達で、とある目的のために邪魔なウルトラマン達を倒す為の話し合いをしていた。

 

………と、その時、

 

「ウルトラマンなんて倒しちゃダメだって〜」

 

突如、四人の会話を断ち切る様に声が響いた。四人はその声のする方に振り向く。そこには、赤と青と銀と黒で構成された肉体、頭はウルトラマンレオの如く独特な形に額部には細長い菱形の鉱石が付いており、胸には黄金のプロテクターが付いており、目付きぐ若干鋭い巨人が立っていた。さらに、胸から足にかけて走る白いラインは、まるで高笑いする悪魔の様で不気味である。

 

奴は『ウルトラマンテラ』。奴は、元は光の国のウルトラ戦士だったが、どうした事か悪の道に落ち、宇宙を荒らしまわっていたと言う。そして、見つけた地球を新しい侵略地にしようと決め、複数の宇宙人達で軍団を作り、地球人のから自身のエネルギーである怒り・悲しみ・憎しみなどと言った『マイナスエネルギー』を発生させ、それを取り込んで力を増し、地球を破滅させようと企んでいる。しかし、奴の多くはまだ謎に包まれており、侵略の動機、および何故闇に落ちたのかは、誰も知らない事である。因みに奴は、生まれつき刺激を受ける事が大好きで、その為なら手段を選ばないと言う一面もある。

 

「ウルトラマンこそ生かしておくべきだよ。その方が、面白い感じになりそうじゃん?」

 テラは、厳つい外見に似合わない陽気な口調で話す。

 

 「だ…だがな、現にウルトラマンが数名既に駆けつけて警戒している!放置していたら危険だぞ!」

 「今直ぐに超獣軍団を放って奴らを抹殺します!」

 ヤプール達は、既にウルトラマン達の処分を焦っている。特にヤプールは、これまで何度もウルトラ戦士と戦って敗れているのだから警戒するのも無理は無い。

だがテラは、その要求を呑むどころか、鼻で笑い飛ばす。

 「ウルトラマンがいるからこそ、スリリングで楽しいんじゃねーか。その方がこの俺、ウルトラマンテラは良い感じの刺激を味わえるんだよ。奴らの事は気にせず、君らは俺を完成にさせる為のマイナスエネルギーを集める事に専念すると良い。もし邪魔だと思えば、その時に殺っちまえば良いのさ。」

 ヤプール達は、テラの言葉にしぶしぶ賛成したのか、何か言いたそうな感じながらも黙り込んでしまった。テラは、部屋の奥の黄金の椅子に足を組んで腰をかける。

 

「マイナスエネルギー収集か……ここは思いっきり恐怖を与えた方が手っ取り早く集まるかもね…。」

 キョウが何か考えようとしたその時、部屋のドアが勢い良く開いた。

 「この俺様に任せて下さい‼︎」

 自信満々な口調で入って来たのは、黒い岩石の様な頭で、白い身体中に赤い斑点の様な模様が付いているのが特徴の宇宙人『暗殺宇宙人ナックル星人ゲドー』。奴はかつてウルトラマンジャックと戦った個体の同族であり、彼も格上の幹部の一人である。

「この俺様、ナックル星人ゲドー様が、テラ様に最高の闇を差し上げましょう。」

 ゲドーは、両手の平を擦り合わせながらテラに申し出た。

 「フッ…良いだろう。最高のモノを楽しみにしてるぜ。」

 「ぃよっしゃ〜‼︎楽しみにしてて下さいテラ様、他の奴らなど必要無いぐらい大量にお土産しますぞ!」

 ゲドーは上機嫌である。

 「随分と自信満々だな、自惚れてるとウルトラマンに妨害されるぞ。」

 「フンッ!ウルトラマンなど、俺様だけでも倒せるわ!怪獣の相棒も数体いるからなぁ、ハッハッハッハッハー!」

 ゲドーはガストの忠告を笑い飛ばし、ハイテンションで笑いながら部屋を出た。彼は実力はあるが、それ故に自尊心が高い。その為、ウルトラマンを倒すのに絶対の自信を持っている。

 

「やれやれ…ああ言う策を立てないタイプはすぐやられるのがお約束なのに……ま、せいぜい頑張れってところだな。」

 キョウは、地球に向かうゲドーを見つめながら、冷ややかに独り言を呟く。

 「なーに、ゲドー組がかかれば、一人ぐらいは倒せるさ。さてと、ここはお手並み拝見と行こう。」

 そう言うとテラは、椅子に座った状態で足を組み、くつろぐ体勢に入った。謎のウルトラマン、『テラ』の地球破滅への作業は既に始まっている………………!

 

 

 

場所は地球に戻る。櫂達は授業を終え、放課後を過ごしていた。

 「悪いな真美、今日は流星部長が不在だからゲン先生に空手部の部長代理を頼まれてな。」

 「そう……じゃあ海羽ちゃんと先に帰っとくわ。頑張ってね。」

 「よーし、今日も頑張るぞ〜!」

 櫂は真美と別れを告げ、張り切って空手部の道場に向かい始めた。勿論、平和に暮らしている櫂達は、この地球に危機が迫っている事を、まだ知らずにいた。

 

(ED:赤く熱い鼓動)




次回、あの銀河の覇者がついに登場!

ウルトラマンテラのデザインはいつかpixivに載せようと思います。いつになるか分かりませんのでご了承下さい。

櫂達登場人物の詳細は、今後投稿する『設定』にて書こうと思います。

感想・指摘・アドバイス・リクエスト等をお待ちしています。


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第4話「降り立つ光」

(前回の予告でも言いましたが)今回、あの銀河の覇者が初登場です!

因みにそれぞれの時系列は、ゼロ:「ウルトラ十勇士」の後、ギンガ:「ファイトビクトリー」の後…と言う感じです。


 (OP:TAKE ME HIGHER)

 

7月20日、麟慶大学は授業を終えた。その大学の生徒であるとある男女2人は他愛も無い会話をしながら帰宅途中である。

 

一人は、 赤いTシャツを着ていて、甘いマスクに茶髪の少し跳ねた髪型が特徴の美青年『ライト』。もう一人は、白とピンクのTシャツ姿で、控え目なツインテールが特徴の少し幼びた美少女『カグラ』である。

 

 ライト、トカッチ、ミオ、ヒカリ、カグラ、虹野明の6人は、豪快パイレーツと同じく本大学の仲良し6人組であり、軽音部で結成されたバンド『特急レインボー』のメンバーでもある。基本的には6人で帰宅するのだが、この日、トカッチとミオはバイト、ヒカリは大道芸部、明はボクシング部に行っているため、ライト、カグラの二人で帰宅する事になったのだ。

 因みにライトとかカグラとかはあくまで呼び名であり、明以外の本名は、それぞれ『鈴樹 来斗』『渡嘉敷 晴』『夏目 美緒』『野々村 洸』『泉 神楽』である。

 

「明日から夏休みだな。よーし、たくさん食べて、たくさん遊んで、そしてたくさん練習するぞ~!」

 ライトは、豪華パイレーツの鎧に負けず劣らず、夏休み前から上機嫌である。

 「そうだね。夏休みライブも近いし……曲、明日中に完成出来ないかな?」

 

 「いや、明日は流石に早すぎるよ」

 

 ライトは、天然発言するカグラの背中を笑って突っ込みながら軽く叩いた。

 

「……でも、絶対に出来ない訳でも無い。」

 そう言うとライトは目をつぶり、頭に指を差す。

 「あっ、イマジネーションね!」

 カグラはそれを見て、何やら嬉しそうに反応した。ライトは、前向きな精神と抜群の想像力を持っている。その為、ライトの想像した事は大抵本当になる事が多いのだ。

 

「音合わせもチューニングも順調だし…この勢いで頑張れば、上手く行くかもしれない……。イメージするんだ……俺達が、明日か明後日までに曲を完成させるのを!」

 そう言うとライトは目を開け、勢い良くカグラの方へ指を差した。

 

 ………だがしかし、その先にカグラの姿はいつの間にか消えていた。ライトは驚き辺りを見渡すが、カグラの姿は何処にも見当たらなかった。

 「あっ……あれっ?……カグラ?…カグラー‼︎」

 ライトは名前を叫んで呼ぶが、聞こえるのは木霊するライトの声のみであった。

 

 

 

 一方カグラは、謎の銀のテープに巻かれ、とある密室に監禁されていた。いきなりで混乱しそうになりつつも、落ち着いて辺りを見渡すと、自分の他に四人位の子供達も、銀のテープに巻かれて閉じ込められている。

 カグラはいきなり過ぎて状況が読めず、テープを外そうともがくが、まるで足掻けば足掻く程、そのテープの縛る力が強くなっていくようだった。カグラは一旦止まり耳を澄ませてみると、車のエンジンが聞こえ、さらに密室が揺れ動いている事にも気づいた。

 

カグラ達は、何者かが運転するトラックの倉庫に閉じ込められていたのだ。そのトラックは森林の奥の露金渓谷まで走ると止まって、運転席から何者かが降りた。異形な姿をしているそいつは人間ではなく、宇宙人『ナックル星人ゲドー』だった。

 「フッフッフッ…見ていて下さい。この俺様、ナックル星人ゲドー様が、あなたに最高級のマイナスエネルギーを差し上げましょう。」

 

 ゲドーは、トラックの倉庫の上側の扉を勢い良く開けた。カグラ達もはっと上を向く。

 「良く聞け!地球人。今からあのお方の為に、お前らには生贄になってもらう‼︎」

 その声にカグラも子供達も、息を飲み戦慄する。

 「今からお前らには……俺様の相棒怪獣の一匹、ガモスの溶解液の餌食になってもらう!せいぜい怯えるがいい……溶かされる恐怖で出て来るお前らの闇でマイナスエネルギーを作り、あのお方に捧げるのだ‼︎」

 その言葉を聞いてカグラは驚き、子供達も驚いた後、恐怖の余り一斉に泣き出した。

 「フッフッフッ…それだよ、その調子、良い感じ!そうやって泣き続けてくれ。あと15分後だ、せいぜい楽しみにしてるが良い。フッフッフッ……」

 ゲドーはそう言うと、倉庫のドアを閉めた。

 「……そんな……こんなに小さい子供達まで………」

 泣きじゃくる子供達を見て、カグラは下唇を噛み、拳を強く握った。

 

 

 

 場所は戻り、俺、ライトは突然姿を消したカグラを探し続けていた。しかし、どんなに呼んだり探したりしても、見つかる気配がしない。

 「あれ?何処行っちゃったのかな……もう帰っちゃったのかな?」

 

 

 諦めかけたその時、

 

 

 「彼女の居場所なら知ってるぜ。」

 

いきなり後ろから声がした。振り返ってみると、そこには見た感じ俺と同じ位の、オレンジがメインで胸元に『UPG』と言う文字が刻まれている派手なスーツを着た若い男性が立っていた。俺はその男性に恐る恐る話しかける。

 

「あの……あなたは誰ですか?」

 「俺は『礼堂ヒカル』。何て言うか……ここの世界とは違う世界からとある事情があってやって来たんだ。」

 ヒカルは、初対面のライトに親しげな顔して人懐こく話す。だがライトは、いきなり現れた事もあってか、ヒカルの言っている事が理解出来ず、あどけない表情で首を傾げた。

 「あっ、…いきなりで悪りぃ。単刀直入だが実は俺、ウルトラマンギンガと共に時空を越えて来たんだ。」

 そう言うとヒカルは、胸元から短剣の様なアイテム『ギンガスパーク』を取り出した。それを見たライトははっと驚く。

 「ギンガって……正体も知られていない伝説のウルトラマン⁉︎」

 「へっ?この世界ではあまり知られて無いのか?」

 ヒカルは少し困惑する。ギンガは、未来から来たウルトラマンで、彼の戦いは別次元での出来事。なので、ウルトラマンギンガはこの世界では伝説として語られているのみで、姿や能力を知る者は一人もいないと言う。

 それを知ったヒカルは、ギンガスパークをライトに向ける。するとライトの脳に衝撃が走り、ヒカルとギンガのこれまでの戦いの記憶、何故この世界に来たかの経緯等が、脳に流れて来た。ヒカル及びギンガも、ゼロやパワードと同様、謎の声に導かれてライト達の地球に来たと言う。

 

 「そう言う事ね……。俺は鈴樹来斗。呼び方はライトで良いよ。カグラの場所へと連れて行ってくれ。」

 「おう!…来る途中こいつに襲われたんだが、倒しとって良かったぜ。」

 そう言うとヒカルは、ポケットから『誘拐怪人ケムール人』のスパークドールを取り出し、足の裏の紋章『ライブサイン』にギンガスパークの先端を当てた。

 

《ウルトライブ!ケムール人‼︎》

 

ヒカルは光に包まれ、芋の様な形に不自然な形で目が付いている奇妙な頭が特徴のケムール人(等身大)へと姿を変えた。そして、頭部の触覚から液体を放出した。ライトとケムール人にライブしたヒカルが液に包まれるとその場から姿を消した。ヒカルはケムール人の液で空間転移しながらカグラ達の元へ行こうと考えたのだ。

 

 

一方カグラは、咽び泣く子供達に必死に声をかけていた。

 「みんな、大丈夫だよ。…泣かないで…何処か痛い?」

 すると、一人の子供が少し首を左右に振った後、顔を上げた。

 「ママの待つ家に帰る……ママ〜……」

 子供は再び下を向いて泣き始めた。

 「……そうだよね……帰りたいよね………分かるよ……。」

 カグラは子供達に同調し、優しく話しかけるが、カグラも人間。死ぬのはとても怖い気分。しかも溶かされて死ぬのだから尚更である。

 

そして遂に、カグラも恐怖に耐え切れず、泣き出しそうになった。

 (……ごめんねライト……みんなによろしく………。)

 カグラの目から一筋の涙が頬を伝い、拘束テープの上に落ちた。

 

………だがその時、テープは涙の落ちた部分から徐々に溶け始め、やがてプツンと音を立てて切れてしまった。

 「ヘッ⁉︎」驚きながらもカグラはとりあえずテープを解いた。気が付くと子供達のテープも、涙が落ちたためか、解けていた……。

 「…な…何だがよく分からないけど…今の内に脱出しよう。」

 

その頃、ゲドーは楽しそうに処刑へのカウントダウンを始めていた。

 「あと5分で極上のマイナスエネルギーが出来上がる……クックック、ガキや女は今頃動けば動くほど強く締め付けるテープに苦しみ、泣き叫んでいるであろう…!ハーッハッハッハッハ〜‼︎」

 ゲドーはすっかり勝ち誇った気分で高笑いをしていた。

 

と、その時、

 「あの〜〜…」

 突然、後ろから申し訳なさそうに話しかける女の声が聞こえ、ゲドーはふと後ろを振り向いた。

 するとそこに立っていたのは、拘束から解放され、トラックから脱出していたカグラ及び子供達だった。それを見たゲドーは余りにも予想外だったのか、「ヒャッハー!?!?!!」と間抜けな声と共に跳び上がって驚いた。

 「な……何故だッ……何故ちゃっかり脱出してんだよお前ら‼︎?」

 カグラは少しためらった後答える。

 「それが………あのテープ、涙で濡れた瞬間、溶けてしまって………。」

 カグラは嬉しさと困惑が混ざった様な言い回しで答えた。

 「なぁぁぁにーーー⁉︎あのテープは涙で溶ける程脆い物だったとは………クソ〜!ザラブのヤロー、不良品なんかよこしやがってぇぇぇ〜〜‼︎」

 ゲドーは悔しさや苛立ちのあまり、地団駄を踏みながら子供の様にわめき出した。因みにあのテープはどうやら同僚のザラブ星人から借りた物の様である。カグラも子供達も、その様子を唖然としながら見ていた。

 

「クソッ!……子供や女なんかに逃げられては、この俺様・ナックル星人ゲドー様の面目が……丸潰れなんだよっ‼︎」

 自尊心を傷つけられて怒ったゲドーは、両手を突き出してそこから光の帯を発射し、カグラ・子供達を捕らえた。カグラ達は必死にもがくが、光の帯は解ける事無く徐々にゲドーの所へ引き寄せられて行く……。

 「クックック…これで今度こそ逃げられないぞ!さあ、大人しく俺様のペットの餌食となり、極上の闇を生み出すのだ!」

 

今度こそおしまいか………誰もが思ったその時、

 

突如、上から2人の男性が飛び込んで来て、ゲドーに2人同時の飛び蹴りを放つ!2人の蹴りが胸元に命中し、ゲドーは吹っ飛んで岩壁に激突、それと同時にカグラ達を縛っていた光の帯も消滅した。

 「ぐっ…………誰だ‼︎」

 ゲドーもカグラ達も驚いて2人を見た。その2人は、カグラ達を救出しにやって来たヒカルとライトだった。

 「!ライト〜〜‼︎」

 カグラはライトが来てくれた故か、嬉しそうに反応する。

 「大丈夫か⁉︎カグラ。」

 「私なら大丈夫。ありがとう。………あれ?その人は誰?」

 「俺は礼堂ヒカル。詳しい事は後にしよう。まずはあいつ(ゲドー)を倒すんだ。」

 

「チクショー……どいつもこいつも俺様をイラつかせやがって〜‼︎こうなればヤケだ!ヤケ!出でよ、ガモス‼︎」

 ゲドーの叫びが谷中に響いた時、岩の崖が勢い良く崩れる。中からはコブラの様な顔や首にヤマアラシの如く背中や尻尾に無数の棘が生えた見るからに凶悪そうな怪獣『残酷怪獣ガモス』が現れた!そして、ゲドーも腕をクロスして巨大化した。

 「俺様をコケにしやがった罰だ!全員皆殺しにしてくれる‼︎」

 ゲドーは自信があった作戦が台無しになった事の怒りで我を忘れている様だ。

 「ったく……典型的な脳筋野郎だな…。」

 ヒカルは少し呆れた様にぼやいた。巨大ゲドーはガモスと共に地響きを立てながらヒカル達に迫り来る。

「わ〜!どうするの⁉︎私達、武器なんか持ってないよ!」

 「なら、ありがたく死ねぃっ‼︎」

 慌てるカグラを他所に、ゲドーは問答無用にガモスに指示を出す。ガモスは口から泡の様な溶解液『アトミックリキダール』を吐き出す!

 「…!危ないっ‼︎」

 ヒカル達は間一髪避ける事が出来たが、一人女の子がタイミングずれ、右脚に多少の液を浴びてしまった。見た感じ大きな擦り傷に見えるがよく見ると深く、痛みは相当な物なのか、女の子は足を抑え泣き叫び始め、カグラは必死で宥めようとする。

 流石は残酷怪獣と言う肩書きだけあって、子供にも女性にも容赦無いガモス。蛇の様に鋭く冷たい目には、虐殺する事しか見えないのだろうか………。

 

……それを見たヒカルは下ろしたままの拳を強く握り、静かに怒りを見せる。

 

「……ここは俺が行く。ライトとカグラは早く子供達と安全な場所へ!」

 そう言うとヒカルは、ゲドーとガモスの方へ走って行き、二体の前で立ち止まる。

 「……ヒカルさん、一体何をするつもりなの?」

 「まあ、見てなって。」

 ライトは心配するカグラを宥め、子供達と共に安全な場所へと移動した。

 ヒカルは、ゲドー達に鋭い視線を向け、呼吸を整える。

「子供や女性を泣かせやがって……許さねぇ‼︎」

ヒカルは胸元からギンガスパークを取り出した。そしてそれを前に突き出すとスパークの中からウルトラマンギンガのスパークドールが出現。それを掴んで両腕を8の字を描く様に振り、スパークの先端『スパークリーダー』にライブサインを当てる。

 

《ウルトライブ‼︎ウルトラマンギンガ‼︎》

 

「ギンガーーーーーー‼︎」

 

ヒカルはギンガスパークを持った右手を空高く挙げると、ギンガスパークから現れた銀河系の様な光に包まれ、巨大化する。

 「ぬっ⁉︎あれは…」

 「……あの巨人は……」

 「もしかして……」

 ゲドーやライト達が見つめる先には、眩しい程の青白い光に身を包まれた巨人が仁王立ちをしていた。そして巨人を包んでいた光が徐々に消えて行き、赤と銀で構成されたボディに頭、両手足、胸に鮮やかに青いクリスタルが付いているのが特徴の光の戦士『ウルトラマンギンガ』が姿を現した‼︎

 

(BGM:ウルトラマンギンガの歌)

 

 「おお、あれがウルトラマンギンガか!」

 「 カッコイイ………」

 「頑張れーーー‼︎」

 ライトとカグラは感心し、子供達は歓声を上げる。

 「久しぶりの大歓迎だな…よし、行くぜギンガ‼︎」

 ギンガは構えを取る。

 

「ギンガか…フッ、名誉挽回のチャンスだ、やっつけてくれる‼︎」

 ゲドーは目から破壊光線、ガモスも目から破壊光線をギンガ目掛けて同時に発射する。ギンガはそれをジャンプしてかわし、更に急降下キックを放つ。キックはガモスの胸部に当たり、ガモスは吹っ飛んだ。

 

ゲドーは、着地したギンガの後ろに回り込み、右ストレートパンチを放つが、ギンガはまるで後ろが見えてるかのようにかわす。そしてゲドーに背を向けたまま左右の脇腹に交互にエルボーを打ち込み、更に畳み掛ける様に右裏拳を顔面に叩き込む。

 ゲドーは、自分が押されてる事に動揺し始めたのか、自棄糞気味にパンチを連続で放つ。だがギンガはそれらを全て余裕でかわす。そして、ゲドーの左拳を右手で受け止め、そのまましゃがんで右脇腹に左エルボーを打ち込み、更に左拳を腹部に打ち込んで追い討ちをかける。ギンガは、ゲドーがよろけた隙に一回転して右回し蹴りを放つ。ゲドーは、蹴りが顔面の左側面に直撃し、横に吹っ飛んで岩崖に激突した。

 

ガモスは、剛腕を振るいながらギンガに接近する。そして、左右から挟み込む様にパンチを放つがギンガはそれを両手で受け止め、右膝蹴りを腹部に決め、ガモスが怯んだ隙を逃さず一回転して腹部に右拳を打ち込む。怒り故か、ギンガの攻撃がヒットする度にその攻撃が当たる部位に小さな爆発が起こり、両者の周りの地面も小さな爆発が起こり土煙が舞い上がる。

 ギンガの怒りの攻撃はこれだけでは治まらず、更にガモスの腹部にかつての戦友・ウルトラマンタロウの如く連続でパンチを打った後、跳躍して首筋にチョップを叩き込み、更にしゃがんだ顔を蹴り上げる。

 

「ショオラァァァ‼︎」

 

ギンガはガモスの首をつかんで一本背負いで後方へ投げ飛ばした。

 

「くっ……こうなったらもう一度合体攻撃だ!」

 ゲドーとガモスは再び目からの破壊光線を同時に放つ。ギンガは右手を前に突き出し、円を描く様に銀河系の様なバリア『ギンガハイパーバリア』を展開して二体の攻撃を防ぐ。そして、バリアを残したまま浮遊し、両足で急降下キックを放つ。蹴りは左右それぞれゲドーとガモスの頭部に命中し、二体は同時に吹っ飛んで倒れる。

 

ガモスはすぐに起き上がり、尻尾の棘ミサイルをギンガに乱射する。ギンガは前に突き出した右腕から光の刀『ギンガセイバー』を出現させ、迫り来る棘ミサイルを全て弾いたり切り落としたりして行く。そして、ゲドーは運悪くその際の流れ弾がいくつか当たり被爆してしまう。

 

ガモスは今度はギンガ目掛けてアトミックリキダールを吹きかける。ギンガは腕を胸の前でクロスし、左右それぞれ斜め下に下ろした後、右手を上に挙げる。すると、ギンガの全身のクリスタルが黄色に輝き、頭上に雷の渦が現れた。そしてそれを電撃光線に変えて投げつける!

 

「ギンガサンダーボルト‼︎」

 

強烈な電撃光線はガモスの溶解液を消し飛ばし、ガモスにゲドー共々ダメージを与える。ゲドーは全身が麻痺して動けなくなってしまった。

 

ギンガは体制を立て直し、両腕を前方で交差させ、S字を描く様に左右に広げる。クリスタルは青く輝いていた。

 

「ギンガクロスシュート‼︎」

 

ギンガは広げた腕をL字に組んで必殺光線『ギンガクロスシュート』を放つ‼︎青い必殺光線はガモスの腹部に命中して、ガモスは断末魔を上げながら倒れ大爆発した。

 

「ガ……ガモス‼︎」

 ゲドーはガモスがやられた事に動揺する。ギンガはすかさずギンガスパークが変形した槍状の武器『ギンガスパークランス』を手に走って動けないゲドーに接近し、下から思い切りランスを振り上げる!

 

 ガキーーーン‼︎

 「ギャアアアッ………バイバイ◯ーン‼︎」

 

ゲドーはギンガスパークランスの渾身の打撃を腹に喰らい、空高くぶっ飛びやがて星になった。

ギンガはゲドーが飛んで行ったのを確認すると、先ほどのガモスの溶解液で怪我をして泣いている女の子の方を振り向く。そして、クリスタルを緑に輝かせ、右手をそっと女の子の方に突き出す。

 

「ギンガコンフォート。」

 

女の子の頭上から優しい緑色の光が降り注ぐ。すると、見る見る傷が癒えていき、やがて完全に治った。『ギンガコンフォート』は本来、無理矢理怪獣にライブさせられた悪意のない人を解放させる時などに使うが、今回は治療能力を加えて使ったのである。傷が癒えた女の子は笑顔に戻る。

 「ありがとう。」

 ギンガは静かに頷いた後、光と共にヒカルとライブ解除。ヒカルは元の姿に戻った。

 

「どうよ!これがウルトラマンギン…うわっっ‼︎?」

 ヒカルがライブを解いた瞬間、ライトとカグラ、子供達が一斉にヒカルに駆け寄り、口々に質問して来た。

 「お兄ちゃんウルトラマンだったの〜?」

 「かっこいいし強いなー。ウルトラマン何?」

 「ねぇ、もう一度変身ポーズやってやって〜!」

 「あと必殺技も!」

 「流石は伝説だけあって強いな!」

 「あ、あの〜!…あ、あなたは何処から⁉︎」

 「おいおい!みんな落ち着けって、俺は聖徳太子じゃないんだから。じゃあ一つずつ答えるね。」

ヒカルはおどけた口調で全員を静め、全てを話した。自分とギンガの事、この世界に来た理由など……。話し終えた後、カグラはとりあえず理解した様だが子供達は理解し切って無いのか、あどけない顔で首を傾げている人もいた。

 「あー要するに、今この地球が新たな侵略者に狙われ始めたから、俺はギンガと一体化して来た…と言う訳だ。」

 子供達はようやく理解したのか、さっきまでの無邪気な顔から少し深刻な顔へと変わった。

 「またさっきみたいな怪獣や宇宙人が来るって事?」

 「地球、終わっちゃうの?」

 「そんなのイヤ。」

 「私、怖いわ。」

 子供達は、泣き出しそうだった。ヒカル、ライト、カグラはしゃがんで子供達に明るく話しかける。

 「大丈夫だ。俺以外にも複数のウルトラマンが来るみたいだし、きっと侵略者なんてやっつけられるよ」

 「そ、そうだよ。だから安心して。」

 「悪い事は考えてはいけない。イメージするんだ。ウルトラマン達が、侵略者を一瞬でぶっ倒す所を。」

 ヒカル、ライト、カグラの励ましで子供達はひとまず安心し、深刻な顔も少し和らいだ。

 「お兄ちゃん、怪獣やっつけてくれよ。」

 「絶対に負けないでね。」

 「ああ、任せとけって!」

 そう言ってヒカルは立ち上がった。その姿は正に、地球を守る決心を固めたウルトラマンの様で雄々しかった。ライトとカグラも遅れて立ち上がる。

 

 「俺達でも出来る事があったら協力する。」

 「今日から私達、友達だよ。だから一緒に頑張って行こうね。」

 「……ガレット‼︎」

 「………何?それ。」

 「ああ、俺達の合言葉で、『分かりました』と言う意味だ。」

 ヒカルは、彼の世界の地球では『UPG』と言う防衛チームの隊員として地球の平和の為に戦っている。そのチームでの合言葉が『了解』を意味する『ガレット(=Got it!)』なのだ。

 「それ、響きが良くてカッコイイね!」

 カグラはこの言葉が気に入ったみたいだ。

 

 「気に入ってくれたか。サンキュー。よーし、平和の為、今後も頑張ろうぜ!」

 「「ガレット‼︎」」

 ライトとカグラは、ヒカルの言葉を真似る様に元気良く答える。

 「お、いいねー。」

 ヒカル、ライト、カグラ、そして子供達は、笑い合って話しながら霞ヶ崎へと向かい始めた。

 

(ED:Starlight)




今回、いつもより少し長かったかもしれません(笑)
いずれはショウ(ウルトラマンビクトリー)も出そうかと考えております。

感想・指摘・アドバイス・リクエスト等お待ちしています。


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第5話「視界 曇る時……」

最新話です。今回、ギンガの身に悪の魔の手が……!

ヒカルのイメージが少し崩れるかもしれません(笑)


(OP:TAKE ME HIGHER)

 

地球と月の間を浮遊するT字型の宇宙船『テライズグレート』では、ギンガに敗れてボロボロになって帰って来たナックル星人ゲドーが、床でじたばたともがきながら悔しがっている。

 

「うわ〜〜ん‼︎チクショ〜!チクショ、チクショ、チクショ〜〜〜‼︎この俺様、ナックル星人ゲドー様がウルトラマン1人ごときに負けるなんて〜〜〜‼︎」

 その悔しがる様子はまるで駄々をこねる子供の様である。無理も無い。あれほど自信満々で出動し、相棒の怪獣もいながらの敗北なのだから……。

 「まあまあ、落ち着けって。少なくとも人から闇を出すためのお前の考えは見事だったぞ。」

 バスコは何とか鎮めようとするがその勢いは一向に治まる様子は無い。

 「うるへ〜〜〜‼︎失敗した後に褒められても嬉しくねーよ‼︎だいたい元はと言えばあの『タマゴ頭の焼肉ボディ野郎』が不良品なんかよこすからだ‼︎何が『涙で溶ける』だ!…つーか何で涙限定なんだよ‼︎?傍にタマネギでもあったら終わりじゃねーかバ〜〜カ‼︎」

 ゲドーはプライドが傷付いたショックが余っ程大きかったのか、途中から訳の分からない事まで叫び続ける。他の幹部達は、かける言葉を失ったのか、その様子を唖然と見ていた。

 

「いや、ゲドー。お前は十分役立った。」

 ウルトラマンテラがその一言を言った瞬間、さっきまでバタバタ暴れていたゲドーがピタリと止まった。

 

「お前のおかげでギンガが凄く強いウルトラマンだと分かった。ホントにお疲れ様。ゲドー。」

 「…サ……サンキュー。やっぱ俺様って、テラ様に仕えるエリートなんだな〜なんせ俺様はナックル星から選ばれた名門出の戦士だからな〜。」

 テラに褒められた事により、ゲドーは一気に手の平を返す様に機嫌が直った…と言ってもボロボロの状態で「名門出の戦士」と自称するとは余りにも説得力が無いものである。他の幹部達もひとまず安心する。

 

 「ゲドーは負けて来たのですぞ。役に立ったとはどう言う意味ですか?」

 メフィラス星人キョウは、ゲドーに聞こえない様に耳打ちでテラに問いかける。

 「いい事を思い付いたんだよ。フフフ、考えただけでも刺激だぜ〜。」

 テラは不気味に笑いながら答えた………。

 

 

 

 

場所は変わって、ゲドーの奇襲を逃れたライトとカグラ、子供達は、命の恩人・礼堂ヒカルと共に森を抜けた。そして、子供達と別れた後、三人は歩道を歩きながらたわいも無い話をしている。

 

「それにしても、すごかったねギンガ!あ〜私、ファンになっちゃうかも!」

 カグラは、まだギンガへの興奮が収まって無いようだ。ヒカルは照れ笑いをしながら「サンキュー」と返す。

 

「ヒカルは確か別の世界から来たんだろ?寝床はどうするんだ?」

 ライトが重要な事を聞く。ヒカルは理由あって(前話参照)元の世界から別次元のライト達の世界に来た訳だからしばらくこの世界にいなければならない。よって一番困るのは寝床だ。

 「あ、そうだね。野宿させる訳にもいかないし、助けてくれた借りもあるし……良かったら泊まってく?」

 「ヘッ?!……そ、……そうだったな……どうしよっかな〜?」

 ヒカルは、カグラが誘ってくれた事に感謝しつつも、微かに動揺する。誘ってくれるのは嬉しいのだが、青春期の男女が二人っきりで夜を過ごす事に抵抗を感じているのだ。それに彼には元の世界で特別なガールフレンドもいるのだから尚更である。

 

 「そういやあ俺のマンション、一つ空き部屋があるからそこでお泊まり会でもやるか!」

 「はっ!それいいね!やろうやろう!」

 「いいね。俺の旅の話もたっぷり聞かせてやるよ。」

 ライトの提案に、ヒカルとカグラも賛成したが、ヒカルにとってはちょっとした救いでもあった(笑)

 

 「じゃあ、早速買い出しに行くか!」

 「賛成ー‼︎」

 三人は、スーパーへ行くために駆け出そうとした。

 

 

…………と、その時。

 

 

「フフフ、ずいぶん仲良さそうじゃないか。」

 突然、後ろから声がしたので三人が振り向くと、そこには等身大のウルトラマンテラが仁王立ちで立っていた。いきなりの見た事無いウルトラマンの登場に、三人は驚き動揺する。

 

 「……誰だお前、ウルトラマンか?」

 ヒカルは少し警戒しながら睨みつける様に問いかける。

 「僕はウルトラマンテラ。よろしくね。」

 テラは胸に手を当て、親しげに答えた。

 「テラ……強そうだが聞いた事無い名前だな。」

 「見た目はカッコイイんだけど……。」

 

 ライトとカグラも微かに疑う様な顔で話す。

 

 「なあギンガ、お前は知ってるか?」

 ヒカルはギンガスパークの中のギンガに話しかける。

 「いや……私も彼を見た事が無い……。」

 ギンガは冷静な口調で答えた。

 

 「当然さ。……僕は、ギンガの様に未来からでは無く、現代で誕生したばかりのウルトラマンだからね。」

 

「‼︎‼︎?」

 

テラは衝撃的な発言をした。彼はギンガの様に未来から来た訳では無く、他のウルトラマンの様に昔から存在した訳でも無く、現代で誕生した…所謂生まれたてのウルトラマンだと言う。

 三人は驚きを隠せなかった。

 

 「フッ……まあ、驚くのも無理無いか。」

 「だって………新しいウルトラマンだろ⁉︎これって、新たな歴史の始まりって事だよね⁉︎」

 「感激〜‼︎今日はギンガにも会えたし、ツイてるな〜。」

 ライトとカグラは新たな正義のウルトラマンの登場だと思い、嬉しがっているが、ヒカルは何かを感じたのか、警戒の体勢を崩さない。

 

「な〜んだよ、もうっ!そんなに険しい顔すんなって。これから面白いコトしてやっからよ。」

 テラは軽い口調でそう言うと、ヒカルの目の前まで歩み寄り、ヒカルの頭の上に手をかざす。すると、テラの脳内にこれまでのヒカルの戦いなどの記憶が流れ込む。降星町の戦いから雫ヶ丘の戦いまで……。

 「ふふーん、なるほどね…そういう事か…」

テラは明らかに何かを企んでいる様な怪しい言葉を放つと、数十歩歩き、ヒカル達と距離を取る。

 

 「テラさん、どうするつもり?」カグラは問いかける。

 「いまから御前達の出来たての友人(ヒカル)で面白い事をしてやるよ。喜んでくれたら嬉しいな〜。」

 そう言うとテラは、胸の前で左手の平に右拳を当てる。すると上空から突如、黒と黄色の稲妻の様な光線がテラに降り注ぎ、それに包まれたテラは巨大化(57m)した!

 三人は目を見張り、テラを見上げる。カオスな色合いの巨人から何やら不吉な物を感じたのか、ヒカル、ライトは身構え、カグラも中途半端なファイティングポーズを取る。

 

 「怪獣ならさっきギンガが倒してくれたよ!」カグラが言う。

 「ノンノン!そのために巨大化したんじゃない。そこのギンガ……お前さんのために巨大化したのだ!」

 テラはヒカルに指を差す。

 (‼︎……俺がギンガだと知ってたのか……⁉︎)

 ヒカルは指を差された瞬間、胸に何かがチクッと刺さる様な衝撃を感じ動揺する。

 

「まずはショーのスペシャルゲスト、カモ〜ン‼︎」

パチンッ!

 

テラがハイテンションでフィンガースナップを鳴らした瞬間、突然地響きが起こったかと思うと、崖が崩れ、近くの湾は波が荒立つ。それぞれ中からは、全身蛇腹状のボリューム感ある体躯にドクロの様な強面、頭部が特徴の『どくろ怪獣レッドキング』、人間と魚類を合わせた所謂半魚人みたいなフォルムが特徴の『海底原人ラゴン』が現れた!

 「‼︎……怪獣を呼び寄せた⁉︎」驚くライト。

 「フフフ…その通り!まあ、正確には『怪獣墓場』からね。」

 怪獣墓場。それは、ウルトラ戦士達に倒された怪獣、宇宙人達の魂が流れ着き彷徨う場所で、宇宙のどこかに存在する暗黒の不気味な空間である。通常の宇宙空間とは『グレイブゲート』と言う輪っかが繋がった様な門と繋がっている。

 

 「こいつらは俺に任せろ。」

 ヒカルはギンガスパークを取り出し、変身しようとする。

 

 「お〜〜〜っと‼︎その必要はねーぜ!」

 テラはそう言うと、ヒカルに右手を突き出し、紫色の光線を浴びせる。すると、何やら衝撃が走っているのか、ヒカルは頭を抱えて苦しむ。

 

 「お前には特に存分に楽しんでもらうんだからよ〜」

 

テラは光線を浴びせ終えた。だがヒカルには特に何の異常も見られない。ひとまずライトとカグラはホッと安心する。

 「ヒカルさん……良かった…何とも無いみたいだね。」

 「さあ、早くやっつけちゃって!」

 

………だが、どうした事か、ヒカルはギンガスパークを胸元にしまい、ボーッと見つめる様にレッドキングとラゴンを見上げる。その顔は、まるで怪獣を見る様な顔ではない。

そして、二体を見上げながらゆっくりと歩き始める。

 

「………美鈴………千草………?」

 

ヒカルは、二体の方へ歩きながらうわごとの様に呟き始める。(……ヒカルの様子がおかしい?!)ライトとカグラはヒカルの異変に気付く。

 「…?ヒカルさん?どうしたの?早く変身しないと!」

 カグラは呼びかけるが、ヒカルは歩みもうわ言も止めようとしない。

 

「……美鈴……千草……何でここにいるんだよ?……まさか、お前らも時空の歪みに巻き込まれたのか⁉︎」

 

「…ッ!さてはテラ、ヒカルに何かしたな⁉︎」ライトはテラの方へ顔を向ける。

 「当たりーー!早くもここまで幻覚に犯されるとはな〜」

 テラが先ほどヒカルに浴びせた光線は『幻覚光線』だった。これを浴びせられた者は、テラの思う通りの幻覚を見せられ、混乱作用により、あたかもそれが実際にいるかの様に思い込んでしまうと言う恐ろしい光線である。ヒカルもこの光線を浴びた事により、レッドキングが『石動美鈴』、ラゴンが『久野千草』にそれぞれ見えているのだ。

 美鈴、千草は、ヒカルの地元でもある『降星町』出身で、彼の幼なじみである。かつて、降星町を舞台に『ダークルギエル』の侵略と戦った際に、美鈴はレッドキング、千草はラゴンにライブした事があるのだ。

 テラはそんなヒカルの記憶を元に、レッドキングとラゴンと言う二体の怪獣をチョイスして、怪獣墓場の怪獣を即行で蘇らせる能力『テライブ』により蘇らせたのだった。

今に二体の怪獣が目の前で暴れているのだが、ヒカルには幻覚作用により、その二人の幼なじみが目の前にいる様にしか見えない。

 

 「……さ・て・と、そろそろ始めますか!」

 テラは、ヒカルに手をかざし、念動力をかける。ヒカルは、体がカチンカチンに固まり動けなくなってしまった。

 

 「うっ!………動けない……!」

 「さあ、そこで大人しくじっくりと見てるが良い。お前さんの大事な物が………ズタズタにされる所をなあっっっ‼︎」

 

テラはレッドキングに土煙を上げながら勢い良く駆け寄る。レッドキングはすぐさまそれに気づき、岩を投げつけるが、テラは駆け寄りながらそれを右の人差し指を突き出しただけで破壊する。

 テラとレッドキングは互いの手と手を掴んで組み合う。衝撃により両者の周りの地面は土煙を起こす。ここでは怪力が自慢のレッドキングが有利か……?

 しかしよく見ると、レッドキングの腕は力を入れて震えているが、テラの腕はまるで微動だにしていない。テラは余裕な感じでフッと笑うと、掴んだ腕を下にねじ込み、そのまま持ち上げる。

 苦しむレッドキング。しかし、ヒカルにはそれがどう見えてるのか……もうお分りだろう。

 テラはレッドキングを片手で持ち上げ、地面に叩き付ける。

 

ラゴンは隙ありとばかりに白色破壊光線を放つが、テラはそれを左手の手の平を突き出しただけで防ぐ。そして、地面を滑る様にラゴンに接近し、右横蹴りを放つ。ラゴンは蹴りが左の脇腹に当たり、たまらず吹っ飛んで崖に激突した。

 レッドキングは、今度は豪腕を活かしたパンチを連発するが、テラはそれらを僅かに動くだけでかわす。そして、目にも留まらぬ速さで顔面に左右パンチを2発、腹部に右前蹴りを打ち込んで後退させる。

 レッドキングは少し怯むが、今度はテラの右腕をもぎ取ろうと掴んで思い切り力を入れる。…………だが、どんなに引っ張ってもテラの右腕は動かない。

 「……非力だねぇ。」

 テラはレッドキングの足の甲を思い切り踏みつけ、レッドキングが跳び上がって痛がってる隙にヘッドロックで首を締める。見た感じ力を入れて無く見えるがかなり強く締められてるのか、レッドキングは泡を吹いて苦しむ。

 ラゴンはその隙にテラに駆け寄るが、テラはレッドキングの首を締めた状態のまま駆け寄るラゴンにカウンターの如く左ハイキックを打ち込む、蹴りはラゴンの顔の右側面に当たり、ラゴンはまたしても吹っ飛ぶ。

 

テラにいたぶられるレッドキングにラゴン。皆さんご察しの通り、ヒカルにはこの光景が幻覚作用により自分の幼なじみがウルトラマンテラにボコられてる様にしか見えない。ヒカルは狂い出す。

 「やめろーーー!、おいっっ‼︎……やめろっ………やめろーーーーーー‼︎」

 ヒカルは念動力により動けない状態で、必死にもがきながら狂った様に叫び続ける。

 「ヒカルさんっ!気を確かに!」

 「騙されるな!あれは幻覚だ!怪獣なんだぞ!」

 ライトとカグラは必死に呼びかけるが、ヒカルの様子は一向に変わらない。

 「ハハハハハ、無駄だよ。僕の幻覚光線は一度浴びると呪縛から二度と抜け出せないのさ。」

 ライトとカグラは悔しそうな顔でテラを見上げる。テラは尚もレッドキングとラゴンをパンチやキックで容赦無く痛めつけ続ける。一撃一撃が重いのか、打撃攻撃が当たる度に二体は悲痛な叫びを上げる。

 「やめろっ…おいっ……その二人が何したって言うんだ⁉︎…やめろー、やめろーーーー‼︎」

 

 「さ〜て、そろそろいいかな?」

 テラはそう言うと、ヒカルの動きを止めていた念動力をフィンガースナップで解いた。ヒカルは、体が動けるようになった事に気付く。

 「……ッテラ貴様ーーーーー‼︎」

 

 ヒカルは完全に怒りに我を支配されていた。そして、ギンガスパークからスパークドールを出現させ、左足裏のライブサインをスパークの先端に当てる。

 

《ウルトライブ‼︎ウルトラマンギンガ‼︎》

 

ヒカルはテラ目掛けて走りながら光と共にウルトラマンギンガへと姿を変える。

 「……ついに来た、この時が。」 テラは駆け寄るギンガを見て呟く。

 

 「ギンガセイバー‼︎」

ギンガは地響きを立ててテラに駆け寄りながら『ギンガセイバー』を出現させ、上から振り下ろす様に斬りかかる。

 だがテラは、全く動じる事無く、右手の手刀を右斜め上に振り、容易くセイバーをへし折ってしまう!

 「ッッ‼︎」

 「何てパワーだ……。」

 ライトは呆然とし、カグラは口を押さえて驚く。

 

ギンガは怯む事無く、今度はテラに駆け寄りながらヤケクソ気味に右前蹴りを放つ。だがテラはそれをスラリとかわす。ギンガは勢い止まらず、そのままテラの後ろにあったビルを蹴り壊してしまった。

 

 「いけない……ヒカルは完全に怒りに駆られている!」

 

ギンガは一旦立ち止まり、グロッキーとなっていたレッドキングとラゴンを見つめる。くどい様だが幻覚作用により、それが苦しんでいる美鈴、千草にしか見えない。ギンガは更に怒り沸騰し、拳を震えるほど強く握る。

 「そう……それだ。その怒りだ!もっと怒りたまえ!」

 そう言うとテラは、またしてもギンガに念動力をかけて動きを止める。ギンガは必死にもがくが、全く動けない。

 

「さあ……フィニッシュだ‼︎」

 テラは、倒れているレッドキングとラゴンの方を向き、腕を胸の前でクロスする。すると、その腕に段々と赤色のエネルギーが集まっていく。そして、チャージ完了と共に、そのエネルギーは球状に固まった。

 

「テラシウムブレイク‼︎」

 

テラは左手を握り腰に当て右拳を突き出し、赤い球状のエネルギーを破壊光線『テラシウムブレイク』に変えて放つ!真紅の光線は二体を直撃し、やがて二体の断末魔と共に粉々に吹き飛ばした。

 

「………………ッッッ………千草……美鈴ーーーーーー‼︎‼︎」

 幻覚作用により、幼なじみの二人が撃破された様に見えているヒカルは、目の前が僅かながら歪む。それに連動するかの様に、降星町及び雫ヶ丘での戦いで苦しめられた人々の姿がフラッシュバックし始める……。

 

「………………ぅぅぅ…ぅぅぉおああああーーーーーーーーーうぉあああーーーーーー‼︎‼︎‼︎‼︎」

 ヒカルはついに精神崩壊を起こし、広範囲に響くかの様な狂った叫びを上げる。ヒカルの視界は完全に曇り始めていた………。

 

ギンガはやがて絶望からか脱力し、両腕はだらりと下がり、頭は下に傾く。すると、ギンガの体から何やら炎が燃え上がる様に黒いオーラが出始めた。

 「…!何だ⁉︎あの黒い物は……!」

 「ヒカルさん………?どうしちゃったの⁉︎」

 ライト達は途方に暮れながらも声をかけるが、ヒカル及びギンガに一切の反応は無く、黒いオーラを出し続けている。

「おおっ、ついに出たか!これさ、俺が求めていたのは‼︎」

 テラはギンガからの黒いオーラに喜びを見せる。本性が出た故かさっきまで「僕」だった一人称が「俺」に戻っていた。テラは脱力したまま動かないギンガに笑いながら歩み寄る。

 「ヒッ……ヒカルさんをどうする気⁉︎」

 カグラはビクつきながらもテラに問いかける。

 「まあまあ黙って見てなって。これから最後の仕上げだ。」

 

テラはギンガの頭部に手を置き、何やら光の様な物を送り始めた。自分の精神をギンガの中のヒカルの元へ送り込んでいるのだ。送り込まれた精神は、ヒカルの元へ辿り着くとテラの姿ヘと実体化する。ギンガの中のヒカルも、同じ様に両腕をだらりと下ろし、頭は下に傾いていた。

 「フフフフフ…どうだ?愛する者を失った気持ちは………苦しいだろー……悲しいだろ〜……。」

 精神体のテラは、まるでヒカルの憎しみを促すかの様に話しかけ始める。

 「実はこれはなあ……俺以外の全ーーー員が望んだ事なのだよ。俺はただその希望を仕方無く叶えてやっただけさ。」

 テラの口実を聞いたヒカルは少しピクッと動く。

 「………じゃあ………ライトも………カグラも………美鈴や千草が死んで欲しいと願っていたのか…………。」

 ヒカルはもはや絶望の脱力により、棒読みの喋りどころか呂律すら怪しい喋り方になっている。テラは尚も語り続ける。

 

「恨むならなぁ………全員…いや、全人類を恨め。みんなお前の友人を殺そうとしてるし、この俺に、お前の友人を皆殺しにしてくれと頼んで来たんだ……許せねえと思わないか?」

 「………ああ………許せねえ…………!」

 ヒカルは重い口を開け、憎しみこもった声で言った。もはや憎しみのみでいっぱいになっているヒカルは、テラの口車に簡単に乗ってしまっていた。すると、憎しみの力が更に強まったのか、ヒカル自身からも闇のオーラが出始める。

「…今だ‼︎」

 精神体テラはヒカルから溢れた闇を手の平に集め、闇のエネルギーを注ぐ。すると、闇が段々とギンガスパークの様な形になっていき、やがて『テラスパーク』(外見:ギンガスパークを黒と黄色で塗った感じ)となった!

 「ついに出来たぞ……!さあ、これにギンガのスパークドールをライブするのだ!」

 ヒカルはテラの言われるがままに、ギンガのスパークドールを取り出し、ゆっくりとテラスパークの先端のスパークリーダーにライブサインを当てる。

 

《スティミュレイトライブ‼︎ギンガダーク‼︎》

 

陽気なテラの声の音声と共に、ギンガは紫の光に包まれる。一方精神を自分に戻していたテラは、その様子を嬉しそうに眺めていた。

 やがて紫の光は消え去り、中からギンガが現れた……………しかし、その姿は変わり果てており、本来赤の部分が黒に、カラータイマーとクリスタルの輝きは黒みの強い青であり、顔も若干黒っぽくなっていた。目の輝きは紺色となっており、その視線は正義感溢れるヒカルの面影は残っておらず、全人類を恨み睨みつけている様に鋭くなっていた。

 ギンガはもはやテラがヒカルの闇と、それで作られたスパーク『テラスパーク』の力により闇落ちして『ギンガダーク』となってしまっていた!

 

 「ついにやったぞ!ウルトラマンギンガを我が戦力にする事が出来たぜ!フフフ……いい……いい感じの刺激を体に感じるゼェ!」

 テラはウルトラマンギンガを闇落ちさせ、自身の戦力に加えると言う目標が見事に達成できた事に上機嫌だ。

 「……そんな……。」

 「こんな事になるなんて………。」

 ライトとカグラはギンガの変わり果てた姿を見て落胆する。せっかく友達になり、子供達のために共に頑張ろうと誓って早々こうなってしまったのだから無理も無い。

 

「これで目標は達成だ。そこのお二人さん、最後までショーを見てくれてありがとよ。さあ、我が僕ギンガダーク!俺と共にお前の友人を殺そうとしてる奴らを皆殺しにしてやろうではないか!」

 ギンガダークは静かに頷く。テラは右手を前に突き出し、ワームホールを出現させる。

 「…んではお二人さん、また会おうぜ〜」

 テラはそう言うと、ギンガダークと共にワームホールに入っていく。二人が入った後、ワームホールは消滅した。

 

 …………残されたライトとカグラは、ただただその地に立ち尽くす………。

 「……何て事だ………。」

 「…嘘よ………こんなの嘘だわーーー‼︎」

 カグラの行き場のない叫びが、夕暮れのビル街に寂しく木霊した………。

 

(ED:赤く熱い鼓動)




いかがでしたか?ちょっと急展開な気もしますが話の流れ上、最も妥当な展開を考えた結果です。
テラスパークの音声の「スティミュレイト」とは、「刺激する」と言う意味の英単語(stimulate)です。念のため。

次回、ギンガダークがゼロと激突&ニューウルトラマン登場です。

感想・指摘・アドバイス・リクエスト等お待ちしています。

余談ですが最近、私は「進撃の巨人」にハマっております(笑)


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第6話「ギンガ対ゼロ/女性ウルトラマン変身」

 理由あってしばらく投稿できませんでした。すみません。

 今回初めて文字数が8千字を超えた……(笑)

 今回は二つのテーマがあるのでサブタイトルを『仮面ライダーW』っぽくしてみました(笑)

 今回は戦闘シーンが大半の回です。


(OP:TAKE ME HIGHER)

 

ウルトラマンテラは、闇落ちさせて新たな仲間としたウルトラマンギンガ『ギンガダーク』を連れて宇宙船『テライズグレート』へと戻った。幹部怪人達の前で顔を若干下に傾けて右手を腰に当て、凛々しく立つギンガダーク。

 

 「おおっ!……やりましたねテラ様‼︎まさか本当にギンガを仲間にしてしまうとは…流石です!」

 ナックル星人ゲドーは興奮している。そして、仲間になったとはいえかつて自分をボコしたギンガに少しずつ近づく。

 「フフフ、まさかそこまで褒められるとは……良いだろう。ゲドー、お前がギンガダークの主なる指揮者だ」

 「おおっ!本当ですか⁉︎……まあ、こういう形で雪辱を果たすのも悪くないだろう。と言う訳だギンガ…いやギンガダーク!これからは俺様の言う事にしーっかりと従ぇ……」

 

ドゴンッ‼︎

 「‼︎‼︎?ッ…ぐほっ!」

 

どうした事か、ギンガダークは突然ゲドーの腹部に鉄拳を打ち込んだ!驚愕する幹部による一同。

 「…な…何を……俺様はお前の……ご主人様なんだぞ……」

 

バゴンッ‼︎

 「ぐはっ‼︎」

 

ギンガダークはゲドーの声を断ち切る様に更に胸部に右横蹴りを打ち込んで吹っ飛ばした。

 「ふざけるなよ……そう言って…どうせ俺の友人達を殺すつもりだろ……」

 ギンガダークの中の闇ヒカルはドスの効いた声でいう。そして、ギンガダークは地面に横たわるゲドーに拳を振り上げながら静かに歩み寄る。ゲドーは強い殺気を感じたのか、後退しながら怯える。

 「やっ……やめろおっ‼︎……ひいぃぃぃっ‼︎」

 ギンガダークはゲドーに拳を振り落とそうとしたが間一髪、テラがその腕をつかむ事で止めた。ギンガダークは「放せ!コノヤロー」とばかりに振り解こうともがく。

 

「ハッハッハ、良いだろう。ギンガダーク、お前は自由行動にしてあげよう。気にいらない奴を見つけ次第殺すと良い。……良い話だろう?縛られる事なく自由に暴れられるんだぜぇ……」

 テラはギンガダークの耳元で囁く。ギンガダークは力を抜き、静かに頷く。そして、何かに気付いたかの様に紫の光と共にその場から姿を消した。

 

 「……フッ、あの野郎、俺様の言う事を聞かないとは…闇落ちしても感じの悪さに変わりはねーな!」

 ゲドーは立ち上がり、強がりを抜かす。

 「ハハハ…まあ、そう言うな。あの殺気、あの闘志など……奴なら間違い無く殺ってくれるだろう………他のウルトラマン共を。」

 ブラック指令ガストは、ゲドーを宥めながらギンガダークに期待を抱いていた。

 

 

 

 場所は変わって地球では日が沈み、夜になっていた。霞ヶ崎の街全体は街灯、ビルの光などが点いていて、上空から見るとまるで広大でカラフルなイルミネーションの様である。

 そんな夜も賑やかな街のとある歩道を、とある大学生の男女が二人っきりで歩いて帰っている。部活の助っ人が長引き帰りが遅くなった竜野櫂とそれを迎えに来た新田真美である。

 

 「真美、わざわざ迎えに来てもらって、すまねえな。」

 「気にしないで。櫂君、帰りが遅くなるのは珍しくないからね…お疲れ様。」

 「流石に本当に疲れたぜ。空手部だけの予定が、急遽サッカー部と女子ビーチバレー部まで任されたからな。」

 二人は楽しそうに話しながら歩く。幼馴染である二人は、昔からもこう言う風に仲が良かったのだろうか。

 

 「ねえ、今日はどっかで食べてかない?私が奢るから。」

 「おっ、良いなそれ。海羽も誘ってみるか。」

 櫂は海羽にスマホで電話をかける。

 

 「おっ、海羽か?今から真美と一緒にファミレス行くんだが、良かったら一緒に食べに行くか?」

 「……せっかくだけど、ごめん……私、ちょっと用があって………」

 「おお、そうか……分かった。じゃあな、頑張れよ。」

 「……うん。ありがとう……」

 櫂は電話を切った。

 「海羽ちゃん…無理なんだね。」

 「ああ、二人だけで行くか。」

 「そうだね。行こう。」

 櫂と真美は、再び楽しそうに話しながら歩き出す。

 

一方の櫂の誘いを断った眞鍋海羽はと言うと、街と森林の間の草原に立ち、夜空を見上げていた。すると、海羽が見上げていた夜空に、何かを知らせる様に星が光る。海羽は決意を固めた様な視線で頷き、片足開いて体勢を整える。

 

「………よし、行くわ。」

 

そう言うと海羽は、胸のポケットから何やら水色とピンクで彩られたハート形のゴーグルの様な物を取り出す。そして、それを片手に前に突き出した後、目に当てる。

 すると、海羽の体は桃色の光に包まれる。そして、徐々に巨大化していき、やがて体を包んでいた光が消え、中からは赤と水色と銀とピンクで彩られたスレンダーなボディに、頭部には菱形の突起に猫耳の様な飾りを持ち、胸には金の縁の青いプロテクターに加え中央にハート形の模様に菱形のカラータイマーを持ち、微笑んで見つめる様な優しい顔付きをしている光の巨人が現れた。胸から足にかけての白いラインは決意を固めて構えている勇姿の様である。

 

 彼女の名は『ウルトラウーマンSOL(ソル)』(以降:ソル)で、先程変身に用いたアイテムは『ハートフルグラス』である。海羽はいつの間にかウルトラの力を手に入れていたのだ。彼女もテラと同様、未知のウルトラ戦士でもある。果たして海羽はどうやって、何故ウルトラの力を手に入れたのか……それはまだ誰も知らない。

 

 ソルは夜空を見上げた後、両腕を挙げて空高く飛び立った。やがて大気圏を抜け宇宙まで行き、月の近くのとある小惑星に着地する。

 そこに待ち構えていたのは、白い鱗で覆われた様な全身に頭部には赤いトサカの様なヒレが付いている怪獣『巨大星獣ゴルゴザウルス三世』だった。奴はテラにより地球攻撃のために送り込まれている最中だったが、海羽はソルの力でいち早くそれに気づき、先手を打って迎撃しようとしているのだ。

 

ゴルゴザウルスはかつて地球侵略を企てていて『ミラーマン』と戦った『インベーダー』によって送り込まれた怪獣であり、その後もβ、二世などの同族が出現しミラーマン、ウルトラマンタロウなどと戦っている。今回出た三世も、そんなゴルゴザウルスの同族であり、ウルトラマンテラが拾い上げた個体と言えよう。

 

ゴルゴザウルスは豪腕を振り回し猛然と襲い掛かる。ソルは両手を軽く握り構えを取り、走り寄る。

 ソルはゴルゴザウルスと組み合う。互いに押し合いをした後、ゴルゴザウルスは左フックを繰り出すがソルはそれを右腕で受け止める。ゴルゴザウルスは今度は右フックを繰り出すが、ソルは左腕で受け止め右手の平で腹部を突き数歩後退させ、さらに軽く跳躍して右前蹴りを腹部に打ち込んでさらに後退させることで距離を取る。

 

ゴルゴザウルスは怯まず接近し右腕を振るって殴りかかるがソルはそれを両手で受け止め、右脇腹に左横蹴りを決め、引き続き「エイエイエイ……」と無邪気な掛け声を上げながら腹部に右足で連続キックを浴びせる。彼女の細くしなやかな脚は実にキレのある蹴りを炸裂させる。

 少し怒ったゴルゴザウルスは今度は左腕で振り下ろすように殴ろうとするが、ソルは上げた両手をクロスさせて防ぎ、半回転して背を向け腹部にヒップアタックを決め少し怯ませる。

 

ソルは攻撃の手を休めず、振り向きざまに右の手刀をゴルゴザウルスの腹部に決め、回転し右後ろ回し蹴りを胸部に打ち込む。さらに畳み掛けるように左右ハイキックを頭部に決め、跳躍して右の跳び蹴りを胸部に打って後退させる。

 ゴルゴザウルスは今度は口から火炎弾を連射して反撃する。ソルはそれを手刀で撥ねつつ軽快に高くジャンプしながら避ける。

 

ソルは女性ウルトラマンでありながら戦闘スタイルは身軽さを活かしたしなやかでありつつアグレッシブなものである。そのため、両者の戦いは激しく、周りの地面が小さな爆発と土煙が起こる程の物であった。

 

 

 一方、ソルが戦っている所と近い月の近くの宇宙空間では、一人の戦士がワームホールから現れた。ウルティメイトイージスを身に纏ったウルトラマンゼロである。

 「ふうっ…やっと着いたぜ。」

 ゼロはイージスをUBにしまうと、浮いた状態で地球を見つめる。かつて訪れた『フューチャーアース』とは違うまた別の地球だからである。

 「これがその地球か…相変わらず美しい星だが、まるで既に何かが起きてるみたいだぜ…」

 ゼロは普段動ずる事の無いウルトラマンだが、今回ばかりは何かを感じたのか、やる気と同時に不安も少し感じていた。

 「考えるなんて俺らしくないな。じゃ、とりあえず入ってみるか!」

 ゼロは地球向けて飛ぼうとした。

 

その時、

 

 「‼︎ッ、せああっ‼︎」

 

 〝 ズドーン‼︎〟

 

突如、背後から紫色の光弾がゼロ目掛けて飛んで来た。ゼロは見事な反射神経で気付き、振り向きざまの回し蹴りでそれを相殺する。

 「……ッ、誰だ!」

 振り向いた先には何やらウルトラマンらしき一つの影が浮いていた。爆風が消えていくうちに霞んで見えた影がはっきりと見えていく。

 

「‼︎ッ……お前は⁉︎」

 

影の正体がはっきりと見えた瞬間、ゼロは驚く。そこにいたのはゼロを倒しにやって来たギンガダークだった。先ほどゼロ目掛けて飛んで来た光弾はギンガダークの放った『ギンガダークスラッシュ』だ。ゼロはかつて、超時空魔人エタルガーに苦戦するギンガ及びビクトリーを厳しく指導し特訓させ、勝利へと導いた事がある。ゼロは二人がエタルガーを撃破した後、二人の成長を認め宇宙へと旅立って行ったのだ。

 

 「ヒカル……ウルトラマンギンガか?……どうしちまったんだ!?その姿は。」

 

 ゼロはギンガの変わり果てた姿に戸惑いながらも問いかける。だが、闇に染まったギンガは返答する様子無く、殺意に満ちた表情で睨み付けている様だった。

 

 「おいおい、ガン無視かよ。お前も謎の声に導かれたのか?……」

 

 ギンガダークは一向に返答せず、静かにゼロに背を向ける。

 

 「……お前も俺の敵……って事だよな……?」

 

 「!…何言ってんだ?お前。」

 

 ギンガダークの中の闇ヒカルは静かに妙な事を話し、ゼロはそれに動揺する。

 

 「どうせ俺の仲間は殺されるべき……なんだろ?」

 

 闇ヒカルは思いも寄らないやさぐれた口を利く。ゼロは本来の明るいヒカルとは違う発言に困惑を深める一方である。

 

 「お前もどうせ俺の友を殺しに来たんだろ?………許さねえ………殺してやる……!ギンガダークスラッシュ‼」

 

 闇ヒカルが静かに言った後、ギンガダークは振り向き様に頭部のクリスタルからギンガダークスラッシュをゼロ目掛けて発射し奇襲を仕掛ける。ゼロは間一髪それを避けながらギンガダークに向かって飛ぶ。

 

 ゼロはギンガダークに抱き付きそのまま月面に落下する。月面に土煙を立てて着陸する二人。

 

 「おい!」

 

 ゼロはギンガダークの左肩に右手を回すが払いのけられる。

 

 「どうしちまっ…」

 

 今度は両手を肩に回し必死に話しかけるがギンガダークはそれを払いのけ、問答無用で右フックを繰り出すがゼロはそれを反射的に身体を反らせて避ける。ギンガダークはすかさず左ストレートを放つがゼロは間一髪右手でそれを叩き落として防ぎ、その後顔面を狙って放ってきた右回し蹴りを左腕で防ぎ右の手刀で叩き落とす。

 

 両者の戦いの激しさで月の地面が揺らぎ、岩の欠片が跳び散る。ギンガダークは攻撃の手を休めない。その容赦ない戦い様とどこか冷たく鋭い表情からは、まるで普段のヒカルの片鱗は無い様である。脚を叩き落とされた反動を活かして回転で遠心力を付け左横殴りを繰り出す。ゼロはそれを右腕で防ぎそのまま押し返し、次に相手が放った右横蹴りを左肘で弾いて防ぎ、その隙を利用し右肘を顔面の左側面に決め、その威力でギンガダークが回転し背を向けた所にすかさず左横蹴りを背中に打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 「おいどうしたヒカル‼こないだ成長したと思ったら、また根性腐れちまったか!?」

 

 ゼロは少々荒っぽい口調ながら必死で説得しようとするが、ギンガダークは無反応でゆっくりと立ち上がり、再びゼロに駆け寄りながら『ギンガダークファイヤーボール』をゼロ目掛けて放つ。ゼロは『エメリウムスラッシュ』で迫り来る炎のボールを確実に打って破壊するが、その際に生じた爆風から、既に『ギンガダークセイバー』を出現させていたギンガダークが飛び込み、上から振り下ろすように斬りかかる。

 

 ゼロは咄嗟にゼロスラッガーを両手に持ち防ぐが、ギンガダークはその隙に無防備になったゼロの腹部に右前蹴りを打ち込む。ゼロは吹っ飛び、岩山に激突した。

 

 ゼロは岩の欠片や砂を振るい落としながら立ち上がり、「ふぅ~」と一息つきながら左右の肩を軽く払う。ゼロは様々な強敵と戦い強くなっていたため、タフさもかなりのものだ。

 

 「…どうやら本当に腐れちまったようだな………なら、このウルトラマンゼロが、再び叩き直してやるぜッ‼セアァァァッ‼」

 

 ゼロは構えを取って仕切り直し、ギンガダークに駆け寄って行く………。

 

 

 

 一方、ソル対ゴルゴザウルスの戦いは、お互いのテレポート能力で各小惑星を移動しつつの激しい激闘となっていた。そして、両者の戦いの場は知らぬ間に月面のゼロ対ギンガダークの戦いの近くへとなっていた。近くにウルトラマン同士が戦っているとも知らない両者は、ソルのキックをゴルゴザウルスが剛腕で防ぐ、お互いに激しいパンチの応酬を繰り広げるなどの激しい戦いを続けていた。

 

 ゼロとギンガダークの戦いも近くにソル達が戦っているとも知らずに激しさを増していく。ゼロは跳躍して右跳び蹴りを放つ。ギンガダークはそれを腕をクロスさせて受け止める様に防ぐがゼロはすかさず左足でそれを踏みつける様にして勢いをつけ、宙返りをして一旦距離を取る。

 

 ゼロは右ミドルキックを放ち、ギンガダークはそれを素早く軽く後ろに跳んで避け、ゼロに右足で足払いを繰り出すがゼロは横に一回転する様に跳躍してかわすと同時に距離を取る。

 

 ギンガダークとゼロはそれぞれ走りながら、側転からの連続バク転をしながらお互いに接近し、至近距離まで来ると、ゼロとギンガダークは互いに右足で前蹴りを放つがほぼ同時だったため、相打ちとなり両者とも蹴りが胸部に当たり吹っ飛ぶ。

 

ゼロは吹っ飛ぶ勢いを利用して後ろへ飛び、岩山を蹴って勢い良くギンガダークに向かって飛び、そのまま右膝を胸部に打ち込みそのまま踏みつける様に倒れ込ませる。

 

 「ヒカルしっかりしろ!守るべき友がいるなら、そのために戦えばぃ…」

 

 “ドゴンッ‼”

 

 「‼ぐおあッッ‼」

 

 ゼロは仰向けのギンガダークを右膝で抑え込み再び必死に声を掛けるが、問答無用で放った右拳を顔面の左側面に受けてしまいその勢いで宙に浮く。

 

 ギンガダークはすぐさま跳ね起きで立ち上がり、追い打ちとばかりに『ギンガダークサンダーボルト』をゼロに放つ。ゼロは漆黒の電撃光線に押し飛ばされ、岩山をいくつか破壊しながらぶっ飛び地面に落下する。

 

 ゼロが落下した地点は、ソルがゴルゴザウルスと戦っている場所だった。

 

 「!何だ、あのウルトラマンは……」

 

 「!あれは……ウルトラマンゼロ。」

 

 ゼロとソルがそれぞれ反応する。だがソルはその隙を突かれ、ゴルゴザウルスの張り手を胸部に受け吹っ飛ばされる。

 

 「キャッッ‼」

 

 ゴルゴザウルスはさらに畳みかける様に火炎弾を連射しソルにダメージを与える。ソルは若干怯みながらもめげずに両腕を上からダイヤを描くように大きく振り、両手を前に突き出す事で光のバリアー『リフレクションダイヤー』を展開し、止むことない火炎弾の雨あられを必死で防ぐ。

 

 「あいつ……声や体格からして女か?………もしかしたら、あいつが俺を呼んだのかもしれないが、どうだろうか………おっと、考えてる場合じゃねえ、とりあえずあいつを助けるか!」

 

 “ザブシュッッ‼”

 

 「!?………ッッ、ぐはッッッ‼」

 

 ゼロはソルに加勢しようとした時、突然背中に何かが刺さった様な激痛を感じる。ギンガダークが背後から『ギンガダークセイバー』を突き刺したのだ!ソルは火炎弾を防ぎつつもその光景を見て驚愕する。

「………ヤロー…」

 

ゼロは流石に傷と激痛により動きが鈍りながらも振り向いて反撃に転じようとするが、ギンガダークに左手で首根っこを掴まれ締め上げられる。ギンガダークはそのまま右拳でゼロの顔面の左側面にパンチを連発して体力を奪っていく。ゼロは成す術無くパンチを受け続け、さらに追い打ちをかける様にカラータイマーが赤へと変わり点滅を始める。その後ギンガダークはゼロを軽く放り投げ、ギンガダークサンダーボルトをぶち込み月の外の宇宙へ押し飛ばし、その後もギンガダークスラッシュ、ギンガダークファイヤーボールと立て続けに放ちゼロを追い詰めて行く。ゼロの体力はもうほとんどなくなっていた。

 

「……どうしてこんな事に………」

 

ソルはウルトラマン同士の戦いの事でのショックと目の前でゼロがやられていると言うのに何もできない自分の不甲斐無さで気落ちしかける。火炎弾を防ぎ続けているシールドも、少しづつひび割れ始めていた。

 

 ゼロはギンガダークの情け無用の連続攻撃により完全に弱り、カラータイマーの点滅も早さを増していた。

 

「くッ………なって…たまるか………俺が…こんな所で………」

 

ゼロは反撃に出ようとするが、今の彼は手を伸ばすだけでもやっとの程だった。ギンガダークはクリスタルから黒い光を発し、両腕を胸の前でクロスし、S字を描くように広げ、L字に組む!

 

 「ギンガダークロスシュート……‼」

 

 ギンガダークのL字に組んだ腕から発射された黒っぽい青の破壊光線はゼロ目掛けて一直線に飛び、胸部に直撃し、大爆発した!

 

 「ぐおおおおああああああぁぁぁぁ‼」

 

 ギンガダークロスシュートを受けたゼロは完全に力が尽き、眼の光を失い、カラータイマーも点滅を止める。そして、光に包まれ地球に落下し始める。ゼロの姿は地球に落ちていくほど小さくなっていき、やがて大気圏を抜けた後完全に見えなくなった。

 

「ゼロオオオォォォォォ‼」

 

ソルの悲痛の叫びが響く。ギンガダークはゼロの敗北を確認すると、黒いオーラの様な物に身を包み、その場から姿を消した。

 

「………そんな………」

 

ソルは俯き、拳を強く握る。バリアーはもう全体的にひびが入り、割れる寸前だ。

 

なおも火炎弾を連射するゴルゴザウルス。ついにバリアーは「バリン!」と音を立てて割れ、ソルは火炎弾の雨あられを受けてしまう………。

 

立ち上る爆風を見て勝ち誇る様に咆哮を上げるゴルゴザウルス。だが次の瞬間、爆風の上からソルが勢いよく跳び上がる。ゴルゴザウルスは驚きふと上空を見上げる。

 

ソルはゴルゴザウルス目掛けて斜めに急降下し、ピンクの光を纏った蹴りを放つ!蹴りはゴルゴザウルスの胸部にヒットし、その部位が爆発を起こしてたまらず吹っ飛ぶ。

 

 ソルは今度は両手をピンクに発光させて光の手刀『ライトニングハンド』に変え、連続チョップを浴びせる。斜めに斬るように左右交互に放ち、さらに一回転して腹部に右水平チョップ、跳躍して首筋に、しゃがんだ所を振り上げる様に顔面にと華麗に光の手刀を決めていき、炸裂する度にその部位に小さな爆発が起こる。最後は両手を交叉し胸部にクロスチョップを決め、爆発させ遠くに吹っ飛ばす。ゴルゴザウルスはもうグロッキーだ。

 

 ソルは呼吸を整え体勢を立て直し、胸の前で広げた両手の先を当て、下からハートを描くように両腕を振り、その後両手を合わせて右腰辺りに持っていき、脚はアキレス腱の様に右膝を曲げ、左脚は後ろに伸ばす。すると、赤とピンクのエネルギーが合わせた両手に集まっていく。

 

 「ミスティックシュート‼」

 

 脚は左右入れ替える様に左脚を前に踏み込み、左拳を左腰に当て、右手の平を前に突き出して赤とピンクの鮮やかな必殺光線『ミスティックシュート』を放つ!

 

光線はゴルゴザウルスの胸部に命中し、ゴルゴザウルスは大爆発した。

 

 ゴルゴザウルスを撃破したソルは、大きな爆風に背を向け地球を見つめる。

 

「ゼロさん…ギンガさん……一体何があったの?………とりあえず今はゼロさんを探さないと。」

 

ソルは先ほどのゼロ達の戦いの事で動揺しながらも、両腕を上げて月面を飛び立ち、地球へと飛んで行った……。

 

 

 

 

一方地球では、櫂と真美が他愛も無い話をしながらレストランで呑気に楽しく食事をしている。

 

「それにしても海羽ちゃん……どうしちゃったのかな?」

 

「さあな、ま、多分何か外せない用事でもあったんだろう。何か買って帰ってやろうぜ。」

 

「そうだね。」

 

この二人は、こうして食事をしている間にも彼らの友人が命を懸けて人知れず戦っていたという事を知るはずも無かった……。

 

(ED:赤く熱い鼓動)




 ウルトラウーマンSOL(ソル)のデザインもいつかpixivに載せようと思います。いつになるか分かりませんのでご了承ください。因みに戦闘スタイルは『ウルトラマンビクトリー』と『仮面ライダーなでしこ』を元にしました。

 次回、衝撃の事実が明らかに‼

 余談ですが先日、『劇場版仮面ライダードライブ サプライズ・フューチャー』を観てきました。しっかりした物語構成でなかなか見応えがあって面白かったです。

 感想・指摘・アドバイス・リクエスト等お待ちしています。

 


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第7話「悪魔と天使の狭間……。~闇を抱える男と女~」

 試験期間だったのでだいぶ遅くなりました。すいません。

 今回、櫂の衝撃の事実が明らかになります。バトルシーンはありません。

 注:今回、一部差別的な表現があるかもしれませんが設定上の事なので私自身に悪意は無いのでご了承ください。

 UAが1000を突破しました。ありがとうございます。


(OP:TAKE ME HIGHER)

 

夜の霞ヶ崎のスクランブル交差点。百数人いるその人混みの中、激しく息を切らし走りながら人混みをかき分ける一人の少女がいた……。

 

先ほど『ウルトラウーマンSOL(ソル)』となって宇宙でゴルゴザウルスを撃破し地球に戻ったばかりの眞鍋海羽である。彼女は先ほどの戦いの最中、ゼロが突如襲って来たギンガダークと戦い敗れ地球に落下した所を目撃しているため、ソルの能力でここ霞ヶ崎に微弱な未知のエネルギー反応がある事を知った海羽は、もしかしたら霞ヶ崎のどこかにゼロがいるのではないかと思い、必死で探しているのだ。

 

 先ほどの戦いでダメージを負い疲れた体を奮い、息を切らしながらも何とかスクランブル交差点の人混みを抜けるが、走る力も無くなったのか、その場に立ち止り、膝に手を置き「ハァ、ハァ、……」と苦しそうな呼吸を続ける。

 

 「ハァ……ダメだわ……ゼロ……私はどうすれば………」

 

 海羽は心が折れかけており、無力を痛感したのか目は涙で潤み始めていた……。

 と、その時、

 

 「あら?……海羽ちゃん?」

 

 突然優しい声が聞こえ顔を上げる。そこにいたのは新田真美だった。彼女は、竜野櫂との食事を終えて別れ、帰り道の最中であった。

 

 「どうしたの?しんどそうだけど…」

 

 真美は海羽の苦しそうな姿を心配して話しかける。だが、海羽は自身がソルである事を友達に話すわけにはいかない。

 

 「ぁぁ……ち、ちょっとランニングをしてて張り切りすぎちゃって……」

 

 海羽はしばらく考えた末、何とか誤魔化し台詞を思いつき、悲しい思いをしているのを押さえ明るく答える。

 

 「そう、健康的で良いけど、無理しないようにね。」

 

 真美は光る様な笑顔で優しく言い、海羽も少し笑顔で頷く。だが、それは今気落ちしている海羽にとっては目が眩むほど眩しいような物だった。

 

 「あ、丁度よかった。これ、海羽ちゃんへのお土産。」

 

 真美は櫂と金を出し合って買ったチーズケーキ(海羽の好物)を差し出す。

 

 「わあ、ありがとう真美ちゃん!」

 

海羽は、少しだけ元気を取り戻しチーズケーキを受け取る。だが、海羽が受け取ろうと手を伸ばした瞬間、真美の目の色が少し変わった。

 

……海羽は白い半そでのTシャツを着ている。だが、右肩の部分だけ直径二cmぐらいの焼け焦げた様な穴が開いていて、何やら生々しい赤いものが露出していた。

 

………先ほどソルとなってゴルゴザウルスと戦った際、いくつか火炎弾を被爆しており、その際に出来た傷である。激しく気落ちしていたのは、この傷の痛みに耐えていたためでもあった。

 

 「…どうしたの海羽ちゃん、肩に怪我してるじゃない…」

 

 真美は穏やかながらも少し慌てて傷を確かめる。

 「…火傷だね、これは。…今すぐ手当てするからね。可哀想に……。」

 

真美は憐れむ様な顔で言った後笑顔に戻り、バッグから救急箱を取り出し手当てを始める。真美は医学部所属と言う事もあり、万が一怪我をした人を見つけた時の為に救急箱は常に持っているのだ。

 

怪我をした理由も聞かず、優しい眼差しでただひたすら手当てをする真美をあどけないじっと見つめている。自分の傷を手当てしてくれているため嬉しいはずなのに、海羽には何か複雑な感情も芽生えていたのだろうか……。

 

 「…これで良し。二、三日もしたら治るからね。」

 

 「あ、……ありがとう。」

 

 真美は笑顔で言い、海羽はぎこちなく返す。

 

 「大丈夫?…一緒に帰ろうか?」

 

 真美はいつもの明るさを感じない冴えない顔している海羽を心配する。

 

 「あ、いや、大丈夫……ありがとう…………じゃあね!これ、家でゆっくりいただくから。」

 

 海羽は気落ちしている自分を無理やり押し殺して明るく答え、真美と別れを告げる。真美は帰る海羽の後ろ姿を心配そうな顔でじっと見つめている。さっきは表面こそ明るく答えていたものの、少し震えている後ろ姿からかすかに泣いているのではないかと感じていた…。

 

真美の察し通り、海羽はすすり泣きをしていた。それは単に泣き虫だからではなく、初めてウルトラ戦士として戦った事による不安でもあった。

 

ウルトラ戦士は大抵人間と一体化する際、どんな理由があっても正体を明かしてはならないと言う条件がほとんどで、ソルもその一人であった。それに加え今回の様に、人知れず孤独な戦いをし傷を負ってしまい、それを友達に治してもらう事…これを今後も繰り返すことで自分の体はボロボロになり、更には友達にも迷惑をかけてしまうのではないか……そう考えると辛くてたまらない物であった。

 

涙をぬぐい、真美からもらったチーズケーキを眺め何とか元気を取り戻しながら、海羽は独り家への夜道をとぼとぼと歩いていった………。

 

 

 

 

 一方、霞ヶ崎のとある歩道。その一角には、色鮮やかで派手なサングラスの様な物が転がっている……。

 

それは、先ほど宇宙空間でギンガダークに敗れてエネルギーをほとんど失い、地球に落下したゼロの姿だった。自分自身の体が『ウルトラゼロアイ』の姿になってしまうほど、あまりにもエネルギーの消費が激しかったのである。

ウルトラゼロアイ本来、ウルトラマンゼロに変身するためのアイテムで、顔の両目に被せる様に当てる事で人間の姿からゼロに変身できる。本来はゼロの左腕のUBに収納されている。

 

ゼロアイの姿のゼロは、自我は一応残っているがエネルギーがほとんどないため、ほとんど動けない状態である。

 

 「………チクショウ…………こんな所で………。しかし、ギンガの身に何が起こったって言うんだ……それに、あの女ウルトラマンは一体………。」

 

 ゼロは敗れた悔しさや身動きが取れない事に苛立ちを感じながらも、黒いギンガと謎のウルトラウーマンの事に疑問を抱き続けている。

 

 「こんな事になるとは思いもしなかったぜ…。誰か拾ってくれると良いのだが………。」

 

ゼロは僅かな希望を願い続けていた。しかし、町は既に夜。歩道は夜中でも遊び呆ける若者達が行き交い、車道は仕事を終えたサラリーマンとOL達が乗った多数の車が走っている。

 

若者のはしゃぐ声や車の走る音などが夜のビル風と共にどこか物寂しく響くような感じだ。誰もゼロに気付く気配が無く、仮に誰か気づいたとしても、一般人だと壊れたオモチャと勘違いしてゴミ箱に捨てられるかもしれない……。今のゼロに出来る事は、動けなく転がっている状態で辺りを見渡す事だけだった。

 

 「くそっ…ウルトラマンである人間さえいれば……。」

 

 ウルトラマンである人間なら、自分を見つけた時に気付いてくれる……ゼロはそう思い始めていた。ウルトラマンである自分がウルトラマンに頼る事になるとは……ゼロは少しながら皮肉に感じていた。

 

 その時、コツン、コツン、と何かとがった物に突かれる感覚がした。(人か!?)そう思ったが、よく見てみたら2羽のカラスがゼロアイの姿の自分を食べ物と勘違いして嘴で突いているのだった。

 

 「うぉあっっ!?……いっ……痛てててて、やめろ!……やめろって‼」

 

 ゼロは必死に叫ぶ。カラス達はゼロアイが食べられないと分かったのか、飛び去って行った。

 

 「フゥ~……エラい目に合った………うぉあっっ!?」

 

 安心したのも束の間、今度は一匹の野良猫が寄って来て、食べ物かどうか確かめるため舌で舐め始めた!

 

「うおっ……く…くすぐったい………や、やめろ!やめろ!本当にやめろって‼」

 

 ゼロは、濡れた生肉の様な物で擦られる様なくすぐったい感覚がして、たまらず声を上げる。

 

ガリンッッ

 

「ゥワオッッ!!?」

 

ゼロは今度は複数の硬い棘をぶつけられる様な感覚がし、思わず裏声に近い声で驚く。猫が、食べ物かどうか確かめる最終手段として、ゼロアイの姿の自分を噛み始めたのだ!

 

猫はなおも数回噛み続け、ゼロは悲鳴を上げる。ゼロアイの姿とは言え地球の動物に良いようにつつかれるとは、ウルトラ戦士として屈辱極まりなかった。

 

 猫は、ゼロアイを数回噛んだ後、食べ物ではないと判断したのか去って行った。

 

 「………………一体これを……何回続けるのだろうか……………。」

 

 ゼロは途方に暮れていた。因みにその後も、夜明けまで何度かカラスや猫につつかれたんだとか………………。

 

 

 

 翌日(7月21日)、夏休みの始まりの日の朝、普段よりもどこか物静かで、朝からウキウキ遊ぶ小・中学生くらいの子供たちもいた。麟慶大学の部活に入っている学生の中には、練習のために大学に行く人もいた。

 

真美も鼻歌を歌いながら大学に向かっていた。

 

 「天気快晴、今日もいい一日でありますように~♪」

 

 上機嫌で歌いながら道を歩く真美。と、その時、何かを思ったのか、スキップから少しゆっくりな歩きになる。

 

 「それにしても…海羽ちゃん、どうしちゃったのかな…」

 

真美はまだ、昨夜の悲しそうだった海羽の事が気になっていた。考え事で顔を下に傾けたその時、何かに気付いたのか、立ち止まる。

 

真美が見つけたのは、道端に落ちているウルトラゼロアイだった。

 

 「何かしら、これ。」

 

 「‼……見つかったか……よりによって地球の女に…」

 

 ゼロはやっと見つけてもらった事で安心感を感じたと同時に、それが女性だと言う事にドキドキしていた。

 

 真美は、見たことない派手なサングラスの様な物を恐る恐る拾い上げる。そしてあどけない顔でじっと見つめ始めた。

 

 「うぅっ……かっ…可愛い……!まるで女神の様だぜ。もしや俺を呼んだのはこいつか………いや、違った。こいつはウルトラマンではない。民間人だ。…変なコトしなければいいが………。」

 

ゼロは目がハートになりかけるが、超能力で真美がウルトラ戦士ではない事に気付き少し不安な気持ちになる。しかし、自分を見つめる純真な瞳からは自然と邪気を感じない感じだった。

 

しばらく見つめた後、真美はゼロアイを鞄にしまう。

 

 「この珍しいメガネのオモチャ、後で櫂君と海羽ちゃんにも見せよーっと。」

 

 真美は無邪気にそう言うと、再び鼻歌を歌いながらルンルンと歩き始める。

 

 「っておいっ‼俺はオモチャじゃねーぞ‼………俺、この先どうなるだろうか………。」

 

 ゼロは再び不安を募らせていた………。

 

 

 その頃、同じく大学に向かっているマーベラスとアイムは他愛も無い話をしている。

 

 「最近はアレですけど……今日は平和だと良いですね。」

 

 アイムはマーベラスににこやかに話を振る。

 

 「そうだな。万が一怪獣が出ても、ウルトラマンが倒すだろ。」

 

 マーベラスは遅寝早起きをしたのか、あくびをしながら答える。そんな話をしていた時、二人は道端でうずくまってすすり泣きをしている小学生ぐらいの少年を見つける。

 

 「どうしたの、僕。何を泣いてるの?」

 

 アイムは少年の元に歩み寄り、優しく話しかけるが、少年は人見知りをしているのか、答えようとしない。

 

 「もしかして、親とはぐれたのか?」

 

 マーベラスは直感で言うが、その言葉を聞いた瞬間、少年は再び声を上げて泣き始める。

 

 「あらまあ……泣かないで。」

 

 アイムは少年を軽く抱き、頭を優しく撫でる。

 

 「わたくし達で、この子の親を探してあげましょう。」

 

 「そうだな。部活までまだ一時間あるし………いっちょ付き合ってやるか。」

 

 かくして、マーベラスとアイムは、迷子の親探しを始めた。

 

 

同じ頃、竜野櫂も大学に向かう道を歩いていた。

 

 「そろそろ真美との待ち合わせだな。」

 

楽しそうに独り言を言っていたその時、櫂は偶然通りかかったコンビニの入り口で、他の客の迷惑を考えずにワイワイ騒ぎ立てている女子高生三人を見つける。

 

櫂は迷わず彼女たちの元へ駆け寄る。彼は正義的行動も積極的に行う。そのため、他人事でも見逃せないのである。

 

 「君たち、人が迷惑しているじゃないか。楽しむのはいいが、別の場所にしてくれないかな?」

 

櫂は紳士的に注意する。彼は誰にでも親身に接する人当たりの良い好青年の様だ………。

 

三人は、いきなり知らない人に話しかけられた事に戸惑いを感じつつも不信者見るような目で櫂を睨み付ける。

 

 「……何この人、関係無いのに…」

 

 「何か、きもい!」

 

 「変質者じゃない?」

 

 三人は、いきなり話しかけてきた櫂の事を不愉快に思ったのか、親切に注意した櫂口々に批判してしまった。予想外の事を言われた櫂は、軽く驚き動揺する。

 

「さあさあ、こんな奴ほっといて、話の続きをしよう。」

 

 一人の女子が櫂に背を向けたその時、櫂はその女子の肩を優しく掴んで振り向かせる。………と、その時!

 

 ガスッッ‼

 

 あろうことか、横振りの右裏拳でその女子の顔の右頬を殴りつけた!

 

 「?!!ッ………」

 

 殴られた女子は少し後ずさり、右頬を押さえて目を見開いて櫂を見つめる。いきなり殴られた事に動揺しているようだ。他の女子二人も驚愕しつつ身構える。

 

その途端、櫂は三人に猛然と襲い掛かり、殴り、蹴りなどで容赦なく痛ぶり始めた!三人は正当防衛として抵抗するが、櫂はあざ笑うかのようにいなし、更に打撃を加える。

 

さっきまで穏やかだった櫂の表情は一転、今まではまるで別人のようで、鬼の様に険しくなっていた。

 

 三人がグロッキーになるまで痛ぶった後、櫂は独りの女子の下あごを親指と人差し指でつかみ、顔を持ち上げる。

 

 「ッたく………人様がせっかく誠意込めて注意してあげたってのに………ま、こんなもんか。」

 

 顎を掴まれている女子は、恐怖で固まっており、他の二人も足がすくんでいた。櫂は殺気を放ちながらも丁寧に話すと言う不気味なしゃべり方で、話を続ける。

 

 「知らないと思うが、俺がこの町でも有名な麟慶大学であらゆる方面でトップの才能を持っているんだ。迷惑かけたり文句しか言えないお前らとは違ってね………つまりだね、男子も女子もみんな俺の事を信頼してるって事だよ。」

 

 櫂は自分と相手の顔を、十センチしか感覚が無いぐらい近づけ、鋭く睨み付ける。女子達は恐怖で震えるしかなかった。

 

 「そもそも男と女では若干力に差があってねえ……その結果がこれなのだよ。それに、大学の女子はエリート故に忙しい俺に優しくしてくれる………だから邪魔なんだよ……分かるか?……俺の事を癒せない女(やつ)は邪魔なんだよ!」

 

 櫂はドスの利いた声で脅すように言い放つ。残りの女子二人は通報しようとしているのか、近くの公衆電話へ向かおうとする。

 

 「おーっと!通報してみろ。ご自由に。こうなっても良いならな!」

 

 櫂は一喝で二人を止めた後、自分の後ろの石堀に軽くパンチを打つ。石堀は、拳の当たった部分から半径二十センチぐらいまで蜘蛛の巣の様なヒビが入り、拳も、二~三センチぐらい食い込んでいた。櫂は石堀から拳を離した後、突き刺すような視線で三人を睨み付ける。

 

 「………リ…リンコ、ユリカ、逃げよう!」

 

 女子の一人は、櫂の強大な力や鋭い視線から強烈な殺意を感じたのか、震えた声で二人に逃げる様に促す。

 

 「そうねナオミ……下手な事したら殺されるわ!」

 

 二人も同意する。三人は一目散に走って逃げて行った。櫂は走り去っていく三人を見届けた後、地面に勢いよく唾を一回吐いた。

 

 「フンッ…人様の親切も聞き入れられない哀れな屑共が…!」

 

 櫂は独り言の様に言った後、さっきまで険しかった表情を戻し、大学への道を歩き始めた。

 

 一方、そんな櫂の一部始終を陰ながら見つめている一つの影があった。

 

 「フフフ…良い事思いつきました。」

 

 影は不気味に笑いながら呟いた後、どこかへと去って行った。

 

 

 

 

皆さんお分かりだろうか?櫂には一つ、恐ろしい所があった………それは、『激しい二面性』である。普段は優等生で、スポーツ万能、誰にでも人当たりが良い好青年だが、本心では自分を不快にさせる、もしくは自分の思い通りにならない者は邪魔だと考えているという非常に恐ろしい本性を隠している。上記のように、気に入らない相手はたとえ女でも容赦なくなぶるなど、かなりの危険人物である。

 

また、それだけではなく、上記の台詞の様に、男女差別的な思考も持っているなど、まるで男女平等をポリシーとしている麟慶大学には相応しくない性格もしている!

 

だが、これらの本性は好青年を演じる事で完全に隠しており、しかも演技が非常に上手いため、彼の二面性を見抜いた者は一人もおらず、幼馴染の真美でさえ知らない………。

 

 

 女子高生を痛めた櫂は、気がすんだのか、何事も無かったかのように大学に向けて歩いていた。しばらく歩くと後ろから誰かが駆けて来るのに気づく。さっきの女子高生の仕返しかと思い振り向くが、それは違い、さらさらとした長髪をなびかせながら笑顔で駆けて来る真美の姿だった。

 

 「おはよう、櫂君。」

 

 「ああ、おはよう、真美。」

 

 櫂は、真美の挨拶に気さくに答える。その顔は、先ほどの表情が信じられないくらい爽やかな表情になっていた。合流した櫂と真美は、歩きながら他愛も無い会話を始める。

 

 「櫂君は部活?」

 

 「ああ。厳密には、今日も部長の代理かな。今日もサッカーと女子ビーチバレーを頼まれてね。」

 

 櫂は少し笑いながら言った。

 

 「そう………大変そうだけど、私、応援してるから、頑張ってね。」

 

 真美は笑顔で櫂を応援する。先ほど彼が、本性ムキ出しで恐ろしい事をしたとも知らずに………。

 

(ED:赤く熱い鼓動)




 竜野櫂のキャラ設定は、平成仮面ライダーのある人物を元にしています。特撮ファンならお分かりでしょうか?

 次回、ゼロ復活なるか⁉

 感想・指摘・アドバイス・リクエスト等をお待ちしています。


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第8話「悪魔と天使の狭間……。~未知なる戦いへ~」

 今回は特に前もって書くことがありません。強いて言うなら私はいつもバトルシーンに力を入れて書いています(笑)

 では、始まります。


 (OP:TAKE ME HIGHER)

 

先ほどコンビニで櫂に痛ぶられた女子高生三人(ナオミ、リンコ、ユリカ)は、悔しさで有り余る怒りを抑え切れずにいた。

 

「ほんっと最低よね!女子を本気で殴るなんて…」

 

 「メイクが乱れちゃったし……正に男の屑だわ!あいつ。」

 

 「あんな奴、怪獣に潰されればいいのよ!」

 

 三人は、愚痴を言い合いながら道を歩く。その時、

 

 

 「フフフ……随分とご立腹ですなぁ、お嬢さん達。」

 

 突然、どこからか紳士的な声がしたので三人はふと後ろを振り向く。するとそこには、鋭い無数の棘が生えた金属製の球体に手足を付けた様な形状の姿をしている宇宙人『光波宇宙人リフレクト星人リバース』が立っていた。ウルトラマンテラが新たに送り込んだ刺客である。

 

女子達は、いきなり現れた異形の者に驚き、少し身震える。リバースは、手に赤くT字の形をしていて、窓の様な物が三つ付いていて、全体に複雑に青・黒の稲妻の様なラインが走っているアイテム『テラバトルナイザー』を持っている。

 

テラが超能力で作ったアイテムで、怪獣を召喚して操るだけでなく、マイナスエネルギーを吸収して怪獣に変えたり、怪獣のエネルギーにしたりすることもできるという恐ろしいアイテムである。

 

 「その邪念、使わせていただきますよ。」

 

 リバースはテラバトルナイザーを三人に向けて突き出す。すると、三人の体から黒雲の様な物が発生し、テラバトルナイザーに吸収されていく。リバースは、女子三人の、櫂にボコられた事に対するマイナスエネルギーを利用しようと考えたのだ。

 

 「ふぅ……これでいいのです。フフフフフフ………。」

 

 マイナスエネルギーを吸収し終えたリバースは、怯える女子三人をよそに笑いながら何処ともなく去って行った。

 

 「………何だったの、今のは……。」

 

 「全く、男にボコられるし、変なのに遭遇するし、今日はツイてないわ~。」

 

 「…まあ、殺されなかっただけまだマシじゃない?さぁさぁ、ショッピングでもして嫌な事忘れましょ。」

 

 三人は、次々と起こる異常な出来事に整理がついてないながらも、再び他愛も無い話をしながら歩き始めた。

 

 

 一方、迷子の親探しをしていたマーベラスとアイムは、無事母親を見つける事が出来た。

 

 「どうもありがとうございます。」

 

 「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとう!」

 

 「いえいえ。もう親から離れないでね。」

 

 礼を言う母と子。アイムはしゃがんで子の頭をなでる。

 

 「んじゃ、俺達もそろそろ行くか、アイム。」

 

 「そうですね。」

 

 マーベラスとアイムは、親子に手を振って別れを告げ、大学への道を歩き始める。

 

 

 同じ頃、アイム達と同じく大学に向かっている竜野櫂と新田真美は、楽しそうに会話をしながら歩道を歩く。

 

 「あ、そう言えば櫂君、見せたい物があるんだ。」

 

 真美はそういうと、鞄からウルトラゼロアイを取り出し、櫂に差し向ける。それが、ウルトラマンゼロそのものであるとも知らずに………。

 

 「これ、道端で拾ったの。」

 

 「へえ、随分と珍しいサングラスじゃん。」

 

 「サ…サングラスって……」

 

 ゼロはサングラス呼ばわりされ少し困惑する。櫂はゼロアイを珍しそうに見つめながら、受取ろうと右手を出す。

 

 櫂がゼロアイを受け取った瞬間、何かに気付いたのか、少し目を見開き「ハッ」と静かに驚く。櫂の右手の甲に、数か所切り傷があるのだ。これは、先ほど女子高生三人を脅すために石の塀を殴った際に出来た傷である。

 

 「どうしたの?ひどい傷……」

 

 「あ………こ、これはだな………さっきひ、ひったくりを捕まえたんだが、その際にナイフで切られてな。」

 

 「そう…それは大変だったね……今手当てするからね。」

 

 櫂は少し困るが、何とか言い訳を絞り出して言う。真美は鞄から救急箱を取り出して手当てを始める。手当てをしながら、真美は何やら考えていた。

 

 (どうしたんだろう…櫂君と言い海羽ちゃんと言い……それにこのサングラスの様な物……何かの前触れに感じるわ……)

 

 昨夜の海羽に続き、櫂までもが謎の傷を負っている事や、未知のアイテムを拾うなど、変わった事が多い事で、何かが起こるのではないかと不吉な予感を感じているのだ。

 

 「ありがとな、真美。いや~今日が空手部の助っ人じゃなくて良かったよ。ハハハ、」

 

 「あんまり無理しないようにね。」

 

 櫂は礼と共に軽く冗談をぬかし、真美は笑顔で返す。その時、後ろから二人組の男女が歩いてきた。マーベラスとアイムである。

 

 「おはよう、櫂君、真美ちゃん。」

 

 「おう、マベ、アイム。お前らも大学か?」

 

 「ああ。奇遇だな。」

 

 「せっかくだから一緒に行きましょう。」

 

 四人は合流すると、そのまま楽しそうに会話をしながら歩き始める。

 

 

 

 一方、二日前から霞ヶ崎の異常探索をしていたケンイチ・カイは、とある空き地でリバースを見つけ、交戦していた。リバースは右腕を上から振り落とし、カイはそれを両腕をクロスさせて防ぐ。

 

 「フフフ、これはこれはウルトラマンパワード、私の邪魔をしに来るとは、だがもう遅い。直にこのテラバトルナイザー内のマイナスエネルギーが怪獣に変わる。」

 

 「お前らの目的は何だ、答えろ!」

 

 「我々はただの尖兵に過ぎない。あるお方の為にも、マイナスエネルギーを集める必要があるのだよ。」

 

 「なにっ⁉」

 

 リバースは左腕を横に振るい殴ろうとするがカイは素早く後ろに軽く跳んでかわす。カイとリバースは左右パンチの打ち合いをした後、カイはリバースの左横殴りを身体を反らせてかわし、右回し蹴りを放つが、リバースはそれを左手の円盤状のシールドで防ぐ。カイはそのまま跳んでもう片方の足でリバースのボディに前蹴りを決め、その反動を利用して宙返りで後ろへ跳び距離を取る。

 

 カイは高く跳んで跳び蹴りを放つがリバースは右手のシールドで受け止める様にそれを防ぎ、そのまま振るい飛ばすが、カイは空中で一回転して体勢を立て直し着地する。

 

 その時、リバースのテラバトルナイザーがピコピコと鳴った。マイナスエネルギーが怪獣に変わった知らせである。

 

 「おっと、ようやく怪獣が完成しました。あるお方にマイナスエネルギーをささげる前に、あなた達ウルトラマンを潰さなければなりませんからね。」

 

 「なにっ⁉」

 

 リバースは、テラバトルナイザーを空高く上げる。

 

 「さあ、出でよ‼」

 

 《テラバトルナイザー、モンスロード!》

 

 テラバトルナイザーは野太い電子音声と共に赤黒く発光し、一つの赤い球状の光を発射する。球状の光は黒雲に変わり、中から怪獣が出現する。

 

 そいつは、赤と青で彩られた恐竜の様なボディに頭部には赤い棘やトサカが生えているのが特徴の『黒雲超獣レッドジャック』だ!

 

 レッドジャックは咆哮を上げると、火炎を放射して暴れ始める。

 

 「……しまった。」

 

 「さ・て・と、私はもっと落ち着く場所で高みの見物といきましょうかな。さらば!」

 

 “シュゥゥン”

 

 リバースはレッドジャックを召喚した後、テレポートで姿を消して去った。レッドジャックは、剛腕や長い尻尾などでビルを叩き潰しながら暴れ続ける。

 

 「まずはあいつを止めないと。」

 

 カイは変身アイテム『フラッシュプリズム』を取り出そうと胸元に手を入れるが、レッドジャックはそれに気づいたのか、カイ目掛けて両手を合わせ、稲妻状の破壊光線を発射する。光線はカイの足元に命中して爆発し、カイは爆風に吹っ飛ばされる。

 

 「うぉあああっっ‼」

 

 カイは地面に落下すると、そのまま気絶してしまった。

 

 

 

 同じ頃、大学に向かっている櫂、真美、マーベラス、アイムの四人。櫂は、先ほど真美から受け取ったウルトラゼロアイをマーベラスとアイムに見せる。

 

 「なあ、これ、何だか知ってる?」

 

 「‼それは………」

 

 マーベラスが何かを言おうとしたその時、

 

 《ドシーン‼》

 

 突然、強烈な地響きが起こり、四人はよろめく。周りをよく見渡すと、逃げ惑う人々の姿が。

 

 「はっ、あれは何⁉」

 

 真美が指差す方向に三人も振り向く。そこには、暴れ回るレッドジャックの姿があった。

 

 「あれは確か、鎧さんが言ってたレッドジャック。」

 

 「マジかよ……」

 

 マーベラスとアイムは、レッドジャックの事を既に鎧から聞いていたようだ。ビルを崩し、火炎を放射して暴れ続けるレッドジャック。櫂達四人も逃げ始める。

 

 「くそ…あの怪獣野郎…出来たら爪を分捕ってやりてえぜ!」

 

 櫂は逃げながら愚痴を言う。だがそれも束の間、レッドジャックの火炎は四人の近くで爆発し、四人は一斉に吹っ飛ぶ。

 

 櫂とマーベラスとアイムは無事だが、真美は少し足を挫いてしまった。

 

 「大丈夫か真美。」

 

 「私にかまわず逃げて。」

 

 「んな事出来る訳ないだろ。」

 

 櫂は真美の腕を自身の肩に回して担ぎ上げようとするが、その隙にレッドジャックはもう目前までに来ており、四人は絶体絶命の状況に追い込まれていた。

 

 その光景を、同じく大学に向かっていた眞鍋海羽が遠くから見ていた。そして、胸のポケットから『ハートフルグラス』を取り出すが、昨夜真美に治療してもらった右肩を見て思いとどまる。

 

 (傷が完治していない……今変身して戦えば、私は死んでしまうかもしれない………でも、友達を救いたい………お願い、誰か助けて………!)

 

 海羽は心の中で必死に叫ぶ。それはフェードアウトするかの様にだれかの心に響く様だった。

 

 助けて……助けて……助けて……

 

 その時、海羽の思いが届いたのか、レッドジャックに吹っ飛ばされて気絶していたカイが目を覚まし起き上る。そして、フラッシュプリズムを右手に持って高く揚げてスイッチを入れる。すると、開放された光エネルギーに包まれて巨大化し、『ウルトラマンパワード』となった。

 パワードの着地と同時に、周囲の地面から勢いよく土煙が舞い上がる。

 

 櫂達を襲う寸前だったレッドジャックはパワードの出現に気付き、注意を向ける。櫂達四人もパワードの登場に見入っていた。

 

 「……あれが、ウルトラマンパワードか。」

 

 櫂は初めて見るパワードの登場に感心する。

 

 「あれが、鎧が言っていたウルトラマン…」

 

 「確かに女性には見えませんね。」

 

 アイムは笑顔で軽く冗談を言う。マーベラスはそれを横目で見て少し笑う。四人はとりあえず安全な場所へと移動し、観戦する。

 

 パワードは構えを取った後、地面を蹴って跳び、レッドジャックに跳び蹴りを放つ。レッドジャックはそれを腕をクロスさせて受け止めそのまま振るい飛ばすが、パワードはその勢いを利用してビルを台にして側転し、更に高層ビルを蹴って勢いをつけレッドジャック目掛けて跳び、そのまま右肘鉄を胸部に打ち込む。

 

 レッドジャックは怯まず右腕を横に振るって殴りかかるがパワードはそれを左回し蹴りで弾き、更に一回転して右後ろ回し蹴りを胸部に決める。

 

 レッドジャックは今度は左フックを繰り出すがパワードはそれを回転しながらしゃがんでかわし、そのまま右拳を右横腹に決め、更に背を向けたまま畳みかける様に腹部に左右交互に肘打ちを打ち込む。

 

 その後パワードは時計回りに振り向きながら跳躍し右回し蹴りを繰り出すがレッドジャックはそれをしゃがんでかわす。

 

 両者体勢を立て直した後再び組み合う。パワードはレッドジャックの右振りのパンチを左腕で受け止め、胸部に左右交互にパンチを打つ。そして、横に回り込んで右ヘッドロックをかけ、そのまま跳躍し、落下スピードを利用して地面に叩きつけた。

 

 戦いは、両者の周りに土埃が次々と勢いよく舞い上がり、攻撃炸裂の際、たまに小さな爆発が起きたりなど激しいもので、四人は見入っていた。

 

「おもしれーじゃねーか、あいつ。」

 

「まあ、何て立派な。」

 

 マーベラスとアイムは、パワードの強さに感心する。

 

 「流石は地球を愛した無敵のヒーローだね。」

 

 「……ああ。」

 

 櫂と真美も、勝利を確信したのか、笑顔で見つめ合う。だが、リバースもまた、パワードの戦いを見ていた。

 

 「フッ、レッドジャックのやつ、手間取ってるみたいだな。ハアアッ‼」

 

 リバースはレッドジャックに加勢しようと身体を発光させて巨大化する。パワードもそれに気づく。

 

 「!お前は。」

 

 「今ここで叩き潰してやりましょう、ウルトラマンパワード。」

 

 リバースは右手のシールドのスリットから剣を出現させ、パワードに斬りかかる。パワードは、跳びかかると同時に上から振り下ろす斬撃を左にそれてかわし、続いて繰り出して来た横振りの斬撃を回転しながら後退してかわすが、その隙を突かれ左足払いを受けてしまうが、その際に宙に浮いたところで右拳を顔面に打ち込む。

 

 リバースが怯んで後退した隙にパワードは跳ね起きで起き上るが、その直後、左肩に激痛を感じる。レッドジャックが後ろから噛み付いてるのだ。さらに体の赤い部分から6千度の熱を発散し、熱の二重攻撃で苦しめる。パワードはレッドジャックを離そうとトサカなどを掴むが、逆に自分の手が焼けてしまうためすぐに手を離してしまう。

 

 リバースは動けないパワードに左右袈裟斬りを決め、更に強烈な横振りで吹っ飛ばす。斬撃が決まるたびに火花が飛び散る。感情が高揚したのか、『パワード・アイ』は青から深紅に変わっていた。

 

 パワードは体勢を立て直し、腕を十字に組んで『メガスペシウム光線』を発射する。だが、光線はリバースを直撃するどころか撥ね帰って来て、自身の胸部に直撃してしまい吹っ飛ぶ。リフレクト星人の体は『光学エネルギー無効装甲』で覆われているため、どのような光線技も弾いてしまうのだ。

 

 「あいつ…光線が効かないのかよ!」

 

 「二対一とは卑怯です!」

 

 (くそっ……俺にエネルギーが残ってれば………)

 

 四人はパワードの苦戦に目を注ぎ、ゼロは目の前でウルトラ戦士が苦戦していると言うのに何もできない自分に悔しがる。

 

 「櫂君……」

 

 真美は不安になり、櫂の袖を軽く掴む。櫂は何かしてやれないのかと必死に考えていた。

 

 (……俺に何か出来る事があれば………はっ、そうだ!)

 

 櫂は直感で何かを思ったのか、ウルトラゼロアイを取り出し見つめ始める。 

 

「やいっ!お前ももしかして大いなる力か何かを持っているのか⁉持ってるなら今すぐくれ‼」

 

 必死に語り掛けるが、持ってるのはエネルギーを失ったゼロ本人。光り輝くことは無かった。

 

 ((くそっっっ‼))

 

 ゼロと櫂の心の声が重なる。パワードはなおも二体に苦戦している。今度はレッドジャック目掛けてメガスペシウム光線を放つが、リバースが瞬時にレッドジャックの前に回り込み盾になることで光線を弾く。弾かれた光線は櫂達目掛けて飛んで行く!

 

 「…まじかよ……!」

 

 「こっちに向かってくる…」

 

 「早く逃げましょう!」

 

 三人は急いで逃げるが、どうしたことか櫂だけはゼロアイを上げたままその場を動こうとしない。

 

 「……!櫂君」

 

 真美は呼びかけるが、櫂は一向にその場を動かない。光線はもうすぐそこまで迫っていた。

 

 (……こうなったら賭けだ!)

 

 櫂はウルトラゼロアイを空高く揚げる。すると、ゼロアイは迫って来るメガスペシウム光線を吸収し始めた!三人は強烈な光で目を隠しながらもその光景に驚愕する。

 光線を吸収し終えたゼロアイは、青白い強烈な光が満ち溢れ輝いている。

 

 「フゥ、こいつやってくれるぜ。まさかこういう形で俺を蘇らせるとはな………」

 

 ゼロはエネルギーを取り戻した事でいつもの調子も取り戻す。

 

 「さ~て、俺もそろそろ加勢に………」

 

 ゼロがいつもの姿に戻ろうとした次の瞬間、櫂は光り輝くゼロアイ(ゼロ本人)を目に当てる!

 

 「⁉えっ……ちょ、おま…」

 

 ゼロが困惑するのを他所に、櫂はまばゆい光に包まれ巨大化していく。そして、全身を包んでいた光が徐々に消えていき、やがて『ウルトラマンゼロ』が姿を現す!ゼロは思わぬ形で復活を遂げたのだ。

 

 (BGM:ウルトラマンゼロのテーマ)

 

 「まじかよ……あいつ、ウルトラマンになりやがった…」

 

 「………櫂君が…ウルトラマンに?」

 

 「あれは確か、鎧さんが言ってたウルトラマンゼロ。」

 

 三人も突然の櫂の変身に唖然とする。櫂もウルトラマンになった自身の姿に驚く。

 

 「…やっと…新たな勇者が来てくれた…」

 

 海羽もゼロの登場に嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 

 「うおっ!マジか!まさかと思ったが本当にウルトラマンになっちまうとはなあ!」

 

 「おいお前!何勝手に俺になってんだよ!」

 

 ゼロはいきなり選んだわけでもない人が勝手に自分に変身した事に少し荒っぽい口調で指摘する。だがこれは関係ない一般人を巻き込みたくないと言うゼロの不器用な優しさではあるが……。

 

 「君は確か…ウルトラマンゼロだね。」

 

 「お前…俺の事を知ってるのか?」

 

 「ああ。知ってる上で俺は変身した。頼む。俺に力を貸してくれ。俺はウルトラの力で、友達のみならず、人々を守りたいんだ!」

 

 ゼロは唐突だが櫂の熱い言葉にわずかながら心を動かされる。ゼロは少し考えた後、ついに決心する。

 

 「……覚悟はいいか?お前。」

 

 「ああ、いつでもいいぜ。あと、俺の名は竜野櫂だ!」

 

 「そうか…じゃあ櫂、いくぜっ‼」

 

 「おうっ!」

 

 ゼロは櫂と一体化し戦うことを決め、櫂も気合を入れる。その一方で、櫂は何やら不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

ゼロは構えを取る。パワード及びリバース、レッドジャックもゼロの存在に気付く。ゼロは跳躍し、超スピードで飛び掛かる。そして、右ドロップキックでレッドジャックを吹っ飛ばす。レッドジャックは約2百メートル吹っ飛び地面に落下する。

 

 「なかなかやりますね。なら、これならどうです!」

 

 リバースは背後からゼロに剣を突き立てるが、ゼロは既に持っていた左手のゼロスラッガーで即座に防ぎ、振り向き様に右手に炎の力を集め振り下ろす。

 

 「ビッグバンゼロ‼」

 

 右の炎の手刀は容易く剣を叩き折る。爆発と共に剣が折れ、リバースが怯んだ隙にゼロは横振りの左肘を顔面に叩き込み、更に身体にパンチを乱射した後、上向きの右回し蹴りでぶっ飛ばす。

 

 リバースは回転しながら吹っ飛び、何とか大勢を立て直し着地するが、気付いたら体の至るところにヒビが入っていた。先ほどゼロから打撃攻撃を受けた影響である。

 

 「馬鹿なっ、こんなにも容易く………」

 

 「うおお、すげえ、凄すぎるぜゼロ!天井知らずにパワーが湧いてくるぜ。」

 

 レッドジャックは全身から黒雲を発生させ姿をくらます。奴は黒雲に化け移動する事も出来るのだ。そしてゼロの背後から黒雲と共に姿を現し襲い掛かるが、既に見切っていたゼロが繰り出した右後ろ蹴りのカウンターを胸部に受けて後退する。

 

 リバースはゼロに襲い掛かろうとするが、突如何かに頭部を踏まれる様な感覚がする。パワードが自身を踏み台にして跳んだのだ。

 

 「おっ、俺を踏み台にっ⁉」

 

 レッドジャックは上空のパワード目掛けて火炎を放射するが、パワードはそれを空中一回転して避け、落下スピードを活かして袈裟懸けに右の手刀を叩き込む。

 

 レッドジャックをダウンさせたパワードはゼロの元に駆け寄る。

 

 「お前が、噂のウルトラマンゼロか。よし、共に奴らを倒すぞ!」

 

 「ああ!いくぜっ‼」

 

(BGM:DREAM FIGHTER)

 

 ゼロとパワードは構えを取った後、それぞれ敵に立ち向かう。ゼロ対レッドジャック、パワード対リバースと、それぞれの戦いが始まった!

 

 リバースは左右フックを繰り出し、パワードはそれを左右の拳で弾いて防ぎ、バク転を連続して距離を取る。リバースは今度は両手のシールドから光弾を連射するがパワードはそれを避けながら駆け寄り、走りながら軽く跳躍して右跳び蹴りを打ち込む。リバースの体は既にゼロの攻撃でひび割れていたため、パワードの打撃が炸裂する度に更にヒビが増えていく……。

 

 ゼロは土煙を巻き上げながらレッドジャックに駆け寄る。レッドジャックは両手を合わせて破壊光線をゼロ目掛けて連射するが、ゼロは側転、バク転をしつつ足でそれを弾きながらレッドジャックに近づいていく。

 

 レッドジャックは今度は大きく一回転し尻尾で攻撃しようとするが、ゼロは走りながら跳躍してそれをかわす。レッドジャックの近くまで駆け寄ったゼロは、繰り出して来た右横殴りを左足で弾いて防ぎ、右フックを顔面の左側面に打ち、更に右肘打ちを胸部に決め、左ストレートを腹部に打ち込む。両者の周りに土煙が舞い上がり、攻撃が炸裂する度にその個所に小さな爆発が起こったりするなどの様子が、戦いの激しさを物語る。

 

 ゼロは右ローキックをレッドジャックの足元に打ち、膝を付いたところを畳みかける様に跳躍して左膝蹴りを頭部に決める。

 

 レッドジャックは一度転倒するがすぐに体勢を立て直しゼロに右フックを繰り出すがゼロは素早く左手で受け止め上へ振り上げ、そのまま右拳を腹部に打ち込み、左ミドルキックを右脇腹に決め、更に左右素早くパンチを連打して体力を減らし、怯んだ隙に跳躍して右前蹴りを腹部に打ち込み、その反動を利用して宙返りで跳んで距離を取り、土煙を巻き上げながら着地する。

 

 ゼロは百戦錬磨の戦士で、無敵の強さを誇るが、今回は一体化した人物も、学園最強の身体能力を誇る青年であるため、その力もプラスされた事で、油断も隙も無い、向かう所敵なしの最強戦士となっているのだ。

 

 「空手部のキックや手刀、ボクシング部のパンチ、陸上部の走力や跳躍力、体操部のジャンプ力、弓道部の目力………櫂君の超絶身体能力の全てが、ゼロに反映されているわ。」

 

 真美も櫂とゼロのシンクロ度合いに気付いていた。マーベラスとアイムも、櫂が変身したゼロの強さに見入っている。

 

 パワードは、左右袈裟懸けにチョップを決め、強烈な右前蹴りでリバースを吹っ飛ばす。リバースの体は、もはや光線を弾き返すのが不可能なほどひび割れていた。

 

 「まだまだああああ‼」

 

 リバースは最後の悪あがきとばかりに両手から光弾を発射するが、パワードはそれを上空に跳んで避け、そのまま静止した状態でメガスペシウム光線を放つ!光線はリバースのボディを十字に貫く。

 

 「バカなっ、俺が、こんな所でええええええええ‼」

 

 リバースはガラスが砕け散る様に木端微塵に吹き飛んだ。パワードは十字に組んだ腕を解き、ゼロの戦いを見つめ始める。

 

 レッドジャックは最後の力を振り絞り、ゼロ目掛けて火炎を放射するが、ゼロは避けるどころかボディで受け止める。そしてレッドジャック目掛けて右腕を胸に当て、額のランプから『エメリウムスラッシュ』を発射。細い緑色の光線はレッドジャックの口内に命中し爆発。喉を焼かれたことで火炎が吐けなくなった。

 

 ゼロはレッドジャックが怯んだ隙に左腕を横に伸ばしてエネルギーを溜める。

 

 「地獄への片道切符はお持ちか?なら、いくぜっ‼ワイドゼロショットォォォ‼」

 

 ゼロは腕をL字に組んで必殺光線『ワイドゼロショット』を発射!光線はレッドジャックの腹部に直撃する。光線を撃ったゼロは、レッドジャックに背を向ける。そして、レッドジャックはフィニッシュポーズを決めるゼロの背後で大爆発した。

 

 「……決まったぜっ!」

 

 見守っていたパワードは「やったな」とばかりに頷き、真美達も喜びの歓声を上げる。遠くで見ていた海羽も「やったー」と飛び跳ねて喜ぶ。

 

 

 

 変身を解いた櫂は、真美達と合流し、カイから事情の全てを聞く。櫂の左腕にはゼロと一体化した証のUBが付いていた。

 

 「なるほど…君たちウルトラ戦士は謎の声で地球の危機を知らされて来たわけだな。」

 

 「そうだ。そして君はゼロに選ばれた。これから待ち受けるのは、過酷な戦いだろう。だが、俺達が力を合わせれば、必ず乗り切れられる。共に頑張ろう。」

 

 「おう!よろしくお願いします!」

 

 カイと櫂は固い握手を交わす。そして四人は再び探索に出るカイと別れを告げる。

 

 

 ゼロは櫂達四人にUBから光を発射する。すると四人の脳内にゼロのこれまでの戦いの記憶が流れ込む。それと同時に光を浴びた四人だけゼロと会話が出来るようになった。

 

 「随分と過酷な戦いを乗り切って来られたのですね……」

 

 ゼロの戦いの歴史を知ったアイムは深く感心する。

 

 「そんな百戦錬磨の戦士に櫂君が選ばれた…これって運命かもしれないわ。」

 

 「運命…?」

 

 「櫂君は頭が良くて体力抜群で、優しくて正義感がある……櫂君ならきっとどんな困難も平気で越えられるわ。私も全力でサポートする。だから頑張って、櫂君。」

 

 「……フッ、ありがとな、真美。頑張るぜ、俺。」

 

 櫂と真美は笑顔で見つめ合う。

 

 「俺達も全力でサポートしようぜ、アイム。これ以上俺達の町を破壊されるわけにはいかねーからな。」

 

 「ええ。みんなで力を合わせて頑張りましょう。」

 

 マーベラスとアイムも協力する決心をする。

 

 「と、言う訳で、よろしくな、ゼロ。」

 

 「おう!どうやら今回は、人選が良かったみたいだな!ヘヘヘ。」

 

 かくして、櫂はゼロと共にテラ軍団の脅威に身を投じる事になった。だが、櫂を好青年としか思っておらず、二面性を知らないゼロ及び真美達。櫂は何を考えているか、何を企んでいるのか、それとも純粋な正義感で決心したのか……もはや誰も知らない。

 

 果たしてこの先、どんな戦いが待ち受けているのだろうか………今はそっと見つめていよう………。

 

(ED:赤く熱い鼓動)




 今回でようやくゼロが主人公と一体化しました(笑)

 感想・指摘・アドバイス・リクエスト等をお待ちしています。


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第2章「暴走する本能」
第9話「誓いの共闘!クール&キュートなウルトラ戦士」


 遅くなってすみません。

今回から第2章に入ります。


 (OP:TAKE ME HIGHER)

 

 地球と月の間を浮遊しており、ウルトラマンテラ達が拠点としているT字型の宇宙船『テライズグレート』では、次なる作戦の会議が始まっていた。

 

 「リバースの奴、もうやられやがって…我がテラ連合の恥さらしめ‼」

 

 「その上結果としてウルトラマンゼロを復活させてしまうとは……ほんと、弔う価値すらありませんね。」

 

 テロリスト星人バスコとメフィラス星人キョウは、敗れた上に偶然とは言えゼロの復活を許してしまったリフレクト星人リバースに対し言いたい放題である。彼らは友達の様に仲が良く、コンビで行動することが多いため、意見が合致することが多いのだ。

 

 「まあまあそう言うなって。俺は丁度、ゼロが早くも敗れてつまらないと思ってたのだ。ウルトラマンが増えただけでも刺激だと思わないかい?」

 

 テラは陽気に嬉しそうに言う。何よりも刺激が大好きな彼らしい考えである。

 

 「え~いじれったい!こうなれば俺が直接ぶっ倒して来ますぞ!」

 

 ウルトラマン討伐を焦るバスコは何も考えず直接真っ向から攻めて一気に潰そうと考える。

 

 「待てよバスコ。相手は百戦錬磨のウルトラマンゼロだぜ。ここはよ~く作戦を立てて…」

 

 「ええいっ!俺はゲドーやリバースとは違う!俺様はテロ星のエリート剣士。俺様のこのテロリストソードワイルダーさえあれば、ゼロなんて怖くはないぜ!待ってろキョウ!俺様がゼロの生首をお土産に持って帰って来てやるぜ~!」

 

 バスコは、キョウの忠告を無視して直接攻め込んでウルトラ戦士を倒そうと勝手にテレポートして地球に向かい始める。その様子にはキョウも「やれやれ…」と呟きながら頭を抱えていた。

 

 バスコとキョウには、合致しないところが一つだけあった。それは、作戦の方針である。キョウが策士であるに対し、バスコは力ずくで何とかなるタイプであるため、作戦会議の時だけ意見が合致しないのだ。

 

 「……まあいいでしょう。また新たな刺激を味わせてくれたまえ。」

 

 テラは不気味に静かに笑いながらバスコを見送る。

 

 

 

 一方、ウルトラマンゼロと一体化したばかりの竜野櫂は、その後の部活を無事終えた。一人暮らしのアパートに帰り、12時頃だったか、ベッドに横たわりながらUB越しにゼロと会話している。

 

 ゼロから彼のこれまでの旅の事などの話を聞き、櫂は関心していた。

 

 「なるほどな、つまりこのブレスレットを付けてれば、いつでも変身できるわけか。」

 

 「ああ。俺とお前が一心同体になった証だからな。プライベートの時などは外してても構わないが、その代わり怪獣が現れた時すぐ付けて変身できるようにしててくれ。」

 

 「ああ。よろしくなゼロ。共に愛する者を守るため頑張ろうぜ。」

 

 「おう!………」

 

 櫂の言葉を聞いた瞬間、ゼロは何か思いとどまる。

 

 (愛する者……確かギンガもそう言ってたな………いつかはあいつも元に戻してやるぜ。)

 

 自身を倒したギンガダークも、「愛する者」を守るみたいな事を言ってたからだ。そもそもゼロが櫂と一体化するきっかけを作ったのはある意味ギンガダークでもある。

 

 その時、櫂の部屋のインターホンが鳴る。誰かと思って出てみたら、少し深刻そうな顔をしている眞鍋海羽だった。

 

 「おう海羽。どうした?」

 

 「……櫂君…折り入って話があるの。」

 

 「?」

 

 

 

麟慶大学軽音部で結成されたバンド「豪快パイレーツ」と「特急レインボー」は、朝9時に練習を始め、11時頃に練習を終えた。メンバーが帰っていく中、特急レインボーのメンバーであるカグラだけどこか気落ちした顔で部室の椅子に座っている。

 

 (……ヒカルさん………今…どうしてるのだろう…)

 

 先日、友達になったばかりの礼堂ヒカル(ウルトラマンギンガ)を失った事へのショックが消えてなかったのだ。ライトはあの後何とか立ち直った様だが、カグラはまだ外から見ても分かるほどに気落ちしている。

 

 「……どうしたの?カグラ。」

 

 特急レインボーのメンバーであり、黄色の半そでシャツを着、茶髪のショートヘアのさっぱりした外見の少女『ミオ(本名:夏目美緒)』がカグラに気付き話しかける。

 

 彼女は外見と同じく性格もさっぱりしており、世話を焼くのが好きな所謂特急レインボーのベース担当であり『世話焼きリーダー』でもある(笑)

 

 今回もそんな性格のために気落ちしているカグラに気付く。

 

 「あぁ…ごめんミオちゃん……私、もうちょっといるから先帰ってて……。」

 

 「……そう…部室の鍵、置いとくからね。」

 

 ミオは少し心配そうながらも今はそっとしといてやろうと思ったのか、カグラを置いて部室を出て行った。

 

 私、カグラは、友達のヒカルさんを失ったショックからまだ立ち直れずにいた。何も考えられずしばらく軽音部の部室の椅子に座っていたけど、そのうちそれさえも辛くなり、部室を出て、当ても無く学校中をとぼとぼ歩き回った…。

 

 夏休みの学園は当然ながら人はほとんどいない…しばらく歩くと何となく寂しくなったから、一人暮らしのマンションに帰る事にし、大学を後にしたの…。

 

 「あ、カグちゃん。」

 

 大学を出た直後、一人の女子学生が話しかけるのが聞こえた。振り返ってみると、水泳部を終えて丁度帰ろうとしている(新田)真美ちゃんだった。私が大学を出るタイミングと、真美ちゃんが部活を終えるタイミングが偶々一緒だったみたい。

 

 「夏休み楽しんでる?」

 

 「……まぁ…それなりに…」

 

 真美ちゃんが優しく話しかけてくれたのに、私は無理やり笑顔を作って素っ気ない返事をしてしまった。

 

 「ライブの練習や準備とか大変だと思うけど……」

 

 「はあ……」

 

 「私にできることがあったら言ってね。」

 

 「えぇ…大丈夫です…」

 

 いけないいけない…せっかく優しくしてくれてるのに…これじゃあ心を開いてないのがバレちゃうよ~。でも、ウルトラマンの友達を失ったなんて…よくよく考えたら簡単には言えないよね……それもこの世界では伝説なウルトラマンギンガだもの……。

 

 「……どうしたの?元気無さそうだけど……」

 

 真美ちゃんは、僅かに湿っている長髪を後ろ側へかき集めながら心配そうに私を見つめている…真美ちゃんは普段から察しが良くて、特に気落ちしている人への察しはすごく良いの。早くも私が気落ちしているのに気づいたみたい…。

 

 でも、真美ちゃんはそれ以上聞いてこなかった。多分、これ以上問い詰めたらかえって追い詰めてしまうかもしれないから、今はそっとしとこうと判断したんだと思う。そして、笑顔で明るく違う話題を振り始める。

 

 「そういえば昼だし、お腹空いたね。ねえ、今からカグちゃんとこに食べに行っていい?」

 

 「…え?」

 

 「軽音部の話とかいろいろ聞きたいし、私も聞かせたい話とか色々あるの。……もしかして、迷惑?」

 

 「ううん。いいよ。真美ちゃんと話すの久しぶりかも。」

 

 別の事で気晴らしをさせてくれようとしている真美ちゃんの優しさに気付き、私は少し元気を取り戻した。そして、ヒカルさんの件については、本当に話したくなった時に話す事にしたの。とりあえず少し笑顔に戻った私は、真美ちゃんと他愛も無い話をしながら実家に向かう。

 

 因みに私の実家は『Merope』というレストランを経営してるの…と言っても今の私は霞ヶ崎のマンションで一人暮らししていて、実家は霞ヶ崎から電車で二駅の『昴ヶ浜』(特急レインボーの地元)と言う町にあるんだけど……友達と電車で遊びに行くのも何だか大学生らしくて良いかも……。

 

 

 

 因みに、櫂の家では、

 

 「何ッ⁉……み…海羽もウルトラマンだったのか?」

 

 「ええ。私、女子だから正確には『ウルトラウーマン』だけどね(笑)」

 

 海羽の櫂への折り入っての話とは、自分もウルトラ戦士だと言う事だった。海羽はこれまで自分の事を他の友達に黙っておくようにしていたが、同じウルトラ戦士となった櫂なら、自分がウルトラ戦士である事を話してもいいと思ったのだろう。櫂達は、昼食のカップヌードルをすすりながら話を続ける。

 

 「つまり海羽は、俺が初めてゼロになるところも見てたわけか。」

 

 「ええ。光に選ばれソルとなった私は、侵略者を倒すため、数人のウルトラ戦士をこの地球に呼んだの。」

 

 「やはり、あの時俺を呼んだのも、あんたと言う訳か。」

 

 ゼロ達を呼んだ謎の声の正体は、ウルトラウーマンSOL(ソル)の力を手に入れた海羽の声だった。

 

 「侵略者……今朝現れた、あの反射板野郎(リフレクト星人)も、その一味と言う訳か?」

 

 「ええ。ゼロ達が来る前から、奴らの暗躍は始まっていた。私は一生懸命奮闘したけど…とても一人では敵わない…だから、ゼロ達の協力も必要なの。」

 

 海羽の話にゼロも櫂も耳を疑った。櫂に関しては、自身もそんな強力な悪の連合に立ち向かう事になるのかと言う使命感や責任感を感じ始めていた。

 

 

 「っで、その連合の親玉とやらは一体何なんだ?」

 

 「それが……私がウルトラの力を手に入れた瞬間記憶が飛んじゃったみたいで……」

 

 海羽は必死に思い出そうと考える。その時、微かだが何かが脳裏に浮かんだ。それは、廃墟の町の真ん中で燃える紅蓮の炎の中にうっすら浮かぶ人影……それはまるでウルトラマンの様であると言う。

 

 「黒幕はウルトラマンの様な姿をしてるわけか…」

 

 「………?」

 

 櫂が呟いた瞬間、ゼロは突然電気ショックにかかったかのように何かに引っかかる。

 

 (ウルトラマンの様な悪……そういえばこの前襲って来た黒いギンガから感じた殺気……その前も感じた様な気が……ベリアルか?いや、ベリアルは俺が生涯忘れる事の無い宿敵だ。ベリアルとは違う何かだった気が………)

 

 ゼロは、ギンガダークやベリアル以外にも悪のウルトラマンの殺気を感じたことがある様な気がし始めたが、余りにも記憶が曖昧なため、はっきりした物が浮かばずにいた。

 

 「ま、考えていても意味無いか、今はとりあえず目の前の敵の殲滅に専念するか。」

 

 ゼロは小声でつぶやき、考えるのをやめた。

 

 「とにかく、私が一番言いたいのは………これからは友達としてだけじゃなくて……同じウルトラ戦士として、一緒に戦って欲しいの。」

 

 「……同じ…ウルトラ戦士として?」

 

「私、これまでも櫂君や真美ちゃんと一緒に遊んで来た……でも…ウルトラ戦士として戦う時だけ……何となくどうしようもなく寂しさを感じて………辛くて………グスンッ」

 

 海羽は、やっと櫂に自分の意思を伝える事が出来たことで、溜め込んでいた感情が破裂したのか、すすり泣きを始める。これまで自分がウルトラウーマンである事を誰にも言わずに一人で抱え込みながら孤独に戦って来たためだ。

 

 「……意外と水臭い所あるんだな…海羽は。分かった。これからは一緒に戦おうぜ。俺だけでなくパワードもいるし。だからもう一人で苦しむことは無い。」

 

 櫂は海羽の頭に手を置き、海羽は泣き止み顔を上げる。

 

 「……櫂君、ありがとう。よろしくね。」

 

 「ああ、一緒に協力して、悪の軍団をぶっ潰そうぜ。」

 

 櫂と海羽は互いに誓いに満ちた表情で見つめ合った。これからは、仲間と一緒に戦える……海羽の心はそう言う安心感にも満ちていた。

 

 だが、海羽は当然知らない。今は優しくしている櫂が、恐るべき二面性を持っていることを…。しかし、今回は企むように不敵な笑みを浮かべていない…。恐らく今回は相手が友達故、純粋な良心からだろう。

 

 「はあ~これで安心した。じゃ、私はこの辺でお暇するね。あと、チーズケーキありがとう。」

 

 「おお。じゃあ俺はちょっと昼寝でもするかな。」

 

 さっきまで深刻な表情だった海羽はいつもの明るさに戻り、櫂の部屋を後にした。櫂は、朝の戦闘に部活と身体を動かし続けて疲れてたのか、その場で倒れこむように昼寝を始める。

 

 「フッ、万能で良心な青年……今回は人選が合ってたみたいだ。」

 

 ゼロも、表面の芝居が上手い櫂の、二面性の激しさに気付くはずも無かった。

 

 「よし、俺はこいつや新たな仲間と共に悪をぶっ潰し、ギンガも元に戻してやるぜ。」

 

 ゼロは、程よいいびきをかきながら眠る櫂を見つめながら決意を固めた。

 

 

 

 それから約1時間後の事だった。昴ヶ浜にあるカグラの実家のレストラン『Merope』で食事を終えた真美は、カグラと共に店を後にする。カグラは父、母、そして妹と笑顔で別れる。食事をしながらカグラは真美と部活の事など色んな話をしたことにより、真美との友情関係も深まっていた。

 

 カグラは、学園の女子の中で人気の高い真美と仲良くなった事が嬉しいのか、すっかりいつもの明るさに戻り、真美を褒め始める。

 

 「私、正直真美ちゃんがうらやましいな~。運動も勉強もできるし、美人で優しいし、スタイル良いし、それに……」

 

 カグラは目をつぶり、真美の肩に顔を近づける。

 

 「と~っても良い匂い!」

 

 「カグちゃんったら……ありがとう。」

 

 真美は自分を褒めちぎるカグラに照れながらも笑顔で礼を言う。

 

 「でもね、私にも欠点だってあるのよ。」

 

 「え?真美ちゃんの欠点って……」

 

 カグラは意外そうな顔で聞く。

 

 「私、よくみんなから優しいって言われるんだけど…自分ではそれを通り越してお人好し過ぎるかな~って思ったりするの。」

 

 意外な事を言う真美に困惑するカグラ。真美は話を続ける。

 

 「自分で言うのもあれだけど…私、人を褒めたり励ましたりすることはできるけど……その優しさが裏目に出て相手に気を使い過ぎて無理しちゃう所があるの。だから、自分の気持ちを伝えられない事や、相手の悪い所をビシッと指摘したりすることができない事があるの」

 

 カグラは少し驚き意外そうな顔をする。いつもにこやかに過ごしている真美が意外な悩みを抱えているとは思っても無かったのだろう。

 

「そう…真美ちゃんも悩みを抱えたりするんだ……でもいいじゃない。みんな真美ちゃんと友達になって良かったと言ってたよ。……でも、本当に伝えたいことを今でも黙ってるのなら…伝えた方がいいかもね。」

 

 カグラは自分なりのアドバイスをする。

 

 「……ありがとう。」

 

 真美が笑顔で礼を言ったその時、

 

 

 「よう、随分と楽しそうだな、お嬢さん達。」

 

 突然声がし、二人は振り向く。そこに立っていたのは新たな刺客として攻めにやって来たテロリスト星人バスコだった。真美は少し身構え、カグラは少し真美の後ろに隠れる。

 

 「あなた、何者?」

 

 「俺はテロリスト星人…バスコと呼んでくれ。」

 

バスコは自己紹介をした後、テロリストソードを空に突き立てる。

 

 「あ…あなたの目的は何?」

 

 カグラは怯えながらも問いかける。

 

 「フッ、悪いがお嬢ちゃん達とフリートークをしている場合ではない。さっさと大勢ぶっ殺して、あのお方のためにマイナスエネルギーを集めるのだ!」

 

 空高く突き立てたテロリストソードが眩い光を放って光る。その時、激しい地響きが起こり二か所から爆音と共に土煙の柱が立ち上る。

 

 一方は激しく地面が割れて崩れ、中からは恐竜の様なグレーなボディに頭に一本角を持つ怪獣『凶暴怪獣アーストロン』が現れる。

 

 もう一方からは、地面から勢いよく太く長い蛇の様な物が突き出たかと思うと、その部分から徐々に地面を崩しながら姿を現し、咆哮を上げながら体の土を振るい落とす。『古代怪獣ゴメス(S)』だ。因みにこのゴメスは普段のゴメスよりも大型の種であるため、「S」とは「スペシャル」の「S」である。

 

 「さあ、暴れろ!町を壊滅させ、人は皆殺しだ‼」

 

 バスコの指示と共に、二匹は咆哮を上げ、ビルを崩しながら暴れ始める。ゴメスは剛腕や長い尻尾を振るい、アーストロンは一本角を突き立てた突進や口からの溶岩熱戦で、昴ヶ浜を蹂躙する。昴ヶ浜の人々は、いきなりの怪獣出現に大混乱となり、我先にと逃げ惑う。

 

 カグラも真美と一緒に逃げていたが怪獣が暴れる際の振動で転んでしまい、足がすくんで動けなくなってしまった。起き上れないカグラと、それにより立ち止まる真美。

 

 その時、真美は祈った。

 

 (…お願い……誰か助けて……)

 

 真美は友達の町を、そしてそこに住む友達や人々を消されたくない思いで必死で祈り続けた。

 

 

 その時、普段なら届くはずもない願いが届いた!

 

 

 突然、二人の目の前に眩い金色の光が現れ、二人は眩しさで目を覆う。

 

 「!?何だ!」

 

 バスコも目を覆いながら叫ぶ。光は徐々に消えていき、中からは英雄になり、共に戦う事を誓った男と女が現れる。

 

 『ウルトラマンゼロ』に変身する竜野櫂、そして、『ウルトラウーマンSOL(ソル)』に変身する眞鍋海羽だ。

 

「……櫂君、海羽ちゃん?」

 

 真美は突然現れた二人に驚愕する。しかし、櫂と海羽は真美達に背を向けているため気付いていない。

 

 「突然ゼロに起こされたから何かと思ったら…こういう事か。ったく、昼寝ぐらいゆっくりさせろっての。」

 

 「私だってチーズケーキ食べようとしてた所だからね!」

 

 櫂と海羽は目前のバスコに軽く不満をぶつける。

 

「貴様ら、何者だ!なぜ光と共に…」

 

 バスコは突如現れた二人に驚き問いかける。

 

 「答えは簡単。それは私たちが、ウルトラ戦士だからです!」

 

 「友達の町を荒らすとは、断じて許せねえな!」

 

 櫂の言葉にバスコは引っかかる。友達の町?……て事はこいつらはこの町の住人ではない………と。

 

 「あ、くそっ、やらかした‼焦るあまりに攻める街を間違えてしまった~‼」

 

 バスコはウルトラマン討伐を焦るあまりに霞ヶ崎を攻めるべきが間違えて昴ヶ浜に来てしまったことに気付く。彼は血気盛んで野心家だが、思慮に欠けるのが欠点でもある。

 

 「こいつバカなのか(笑)まあいい。櫂!海羽!今こそ俺達のウルトラ魂を見せてやろうぜ!」

 

 「ああ。」

 

 「オッケー!」

 

 櫂は左腕を横に伸ばし、UBから『ウルトラゼロアイ』を召喚させ、海羽は胸のポケットから『ハートフルグラス』を取り出しながら一回転し、右手に持ったグラスを上に上げた後目に当てる。

 

 櫂はUBの上で浮遊するゼロアイが顔の前に来るように左腕を折り曲げる。

 

 「レッツ、ゼロチェンジ‼」

 

 櫂の掛け声に応えるかのようにゼロアイは櫂の目にくっ付く。

 

 櫂と海羽を包み込むかのように赤、青、黄、ピンクの光の柱が現れ、二人はその中で高くジャンプする。そして、それぞれ徐々にゼロとソルの姿に変わり巨大化する。

 

 まばゆい光が徐々に消え、目をつむってた真美及びカグラが目を開けると、そこに見えたのは雄々しく立つウルトラマンゼロとウルトラウーマンSOL(ソル)の姿だった。

 

 「……やっぱり…海羽ちゃんも…ウルトラマン…」

 

 真美は前から海羽がウルトラ戦士である事に少し感づいていたみたいだ。二人の変身を始めてみるカグラは驚く。

 

 ゼロとソルは構えを取った後、それぞれゴメスとアーストロンに立ち向かう。

 

 ゴメスは向かってくるゼロに大きく一回転して尻尾攻撃を繰り出すが、ゼロは跳んでそれを避け、そのままゴメスの上を飛び越えながら頭部に右足蹴りを決める。そして、振り向き様に左右ミドルキックを左右腹部に打ち込み、更に跳躍して胸部に右跳び蹴りを決める。

 

 ゴメスは怯むが体勢を立て直し、角を突き立てる頭突きを繰り出すがゼロは左手で角を掴んでそれを易々と受け止め、そのまま首筋に二、三発右手刀を打ち込み、更に右腕でヘッドロックを掛け、そのまま地面に叩きつける。

 

 ソルは駆け寄りながらアーストロンが吐いてきた溶岩熱戦を腕をクロスさせながら防ぎ、その腕を左右に勢いよく広げる事で熱戦を弾き飛ばす。駆け寄ったところでアーストロンの右腕で左頬を叩かれるが、その際の回転を活かしてお返しとばかりに右頭部に左ハイキックをお見舞いする。

 

 アーストロンは左右横振りを繰り出しソルはそれを両腕で防ぐが、アーストロンは怪力の持ち主。一撃一撃が重いのか、少し反動を受ける。それでもソルは怯まずに素早くアーストロンの横にそれ、「エイエイエイ…」と無邪気な掛け声を発しながら腹部に右横蹴りを連続で打ち込む。

 

 アーストロンは頭部の一本角を振り下ろすが、ソルはそれを素早くかわし、「それっ!」と言う掛け声とともに顔面にヒップアタックを決める。『凶暴怪獣』とあろう者、まさか女性戦士の尻で攻撃されるとは思っても無かっただろう(笑)

 

 クールに戦うゼロとキュートに戦うソル。両者ともアグレッシブに戦いを繰り広げるため、その衝撃で周りの地面が爆発し、土煙が舞い上がる。

 

 二体が手こずっていることを見かねたバスコは巨大化して暴れ始める。彼が振り回すテロリストソードワイルダーは切れ味抜群でビルを次々と易々と切り崩す。そして、真美とカグラに目を付ける。

 

 「うろうろと目障りだ…こいつらから殺してやる!」

 

 バスコは二人目掛けてソードを振り下ろす。完全に諦め地面にうずくまるカグラとそれを守るように地に伏せる真美。絶体絶命………!

 

 

 が、間一髪、ゼロが右手に持ったゼロスラッガーでそれを防ぐ。二人は安心の笑みでそれを見上げ、バスコはてっきりゼロがゴメスに気を取られていると思っていたので驚く。

 

 「バカなっ…いつの間にっ⁉」

 

 「残念だったな。俺の目は節穴じゃないんでね。」

 

 バゴンッ‼

 

 「ぐおあッ‼」

 

 ゼロは左拳をバスコの顔面に打ち込み吹っ飛ばす。バスコは顔を押さえのたうち回った後、ゴメスの方を見てみると、いつの間にか『ウルトラマンパワード』と交戦を始めていた。

 

 「お前ら…まさかッ」

 

 「そう、そのまさかだ。俺たちは、いざという時の為に、事前にパワードとも打ち合わせしておいたというわけだ。」

 

 「そうそう、作戦大成功って事だね。」

 

 ソルはアーストロンと交戦しながらピースを決める。そう、櫂と海羽は、バスコ達が暴れていると知って、出撃前にパワードの変身者である『ケンイチ・カイ』と打ち合わせしておいたのだ。

 

 「よくもダチを殺ろうとしたな!たっぷりお礼をさせてもらうぜ!」

 

 怒る櫂の意識が前面に出ているゼロは指をポキポキ鳴らせる。

 

 「ゼロ!ゴメスは俺に任せろ。」

 

 「ああ。さあ行くぜ、巻き糞野郎‼」

 

 ゼロはバスコの頭を見て安直なあだ名を付ける(笑)そして、ゼロスラッガーを両手に持ってバスコに挑む。因みに下品なあだ名を付けたのはゼロ自身である。

 

 (BGM:すすめ!ウルトラマンゼロ)

 

 バスコもソードで応戦する。力任せにソードを振り回すがゼロはそれを華麗にことごとくかわし、逆にナイフの様に使うゼロスラッガーで腹部に斬撃を決めていき、バスコの体力を奪っていく。斬撃が決まるたびに火花が飛び散る。

 

 バスコはすっかり自棄になり、思い切りソードを振り下ろすがゼロは右手のゼロスラッガーを振ってそれを難なく弾き、強烈な左前蹴りを胸部に打ち込んで吹っ飛ばす。手も足も出ずにやられるバスコ。櫂を怒らせたのが運の尽きだろう。

 

 パワードはゴメスの左右フックを両手で弾き、腹部に右拳を打ち込み、怯んだ隙に左ローキックでひざまずかせる。そして、尻尾を掴んで力一杯投げ飛ばし、地面に叩きつける。

 

 ソルは小柄かつ身軽さを活かし、アーストロンの攻撃をかわしつつ鋭い蹴り、手刀を決めていく。しかし油断したのかアーストロンの張り手を胸部に喰らい後退する。

 

 アーストロンは隙ありとばかりにソルに溶岩熱戦を放つがソルは咄嗟に「きゃあっ!」と言う声と共に頭を抱えてしゃがんでかわす。しかもその熱戦はゴメスの頭部に命中して角を破壊してしまった。「しまった~」とばかりに頭を抱え慌てるアーストロン。

 

 パワードはゴメスが怯んだ隙に跳躍して左膝蹴りを胸部に打ち込み、しゃがんだところで尻尾を掴みジャイアントスイングで回し始める。

 

 ソルはアーストロンの角を突き立てた突進を跳び箱ならぬ『跳びアーストロン』でかわし、バランスを崩したところで渾身の両足ドロップキックで空高くぶっ飛ばす。

 

 パワードは空中のアーストロン目掛けてゴメスを放り投げる。二体は空中で激突する。

 

 パワードとソルは空中の二体目掛けてそれぞれ腕を十字に組んで『メガスペシウム光線』を、軽くアキレス腱を伸ばして左拳を腰に当て右拳を突き出して『ミスティックシュート』を放つ!

 

 二人の光線は空中のゴメスとアーストロンを直撃。二体は空中で大爆散した。

 

 追い詰められたバスコはゼロ目掛けて左手先から破壊光弾『テロファイヤー』を発射する。ゼロはゼロスラッガーを投げてそれを相殺し、爆風で相手の目を眩ました隙に爆風の中から炎を纏った右跳び蹴りと共に姿を現す。

 

 「ウルトラゼロキック‼」

 

 炎の跳び蹴りはバスコの腹部に直撃。バスコは叫び声を上げながら空の果てまで吹っ飛びやがて星になった。

 

 悪を倒した三人はゼロをセンターに並び立つ。ゼロは「決まったぜ」とばかりに得意げにフィニッシュポーズ(手の甲を向けて親指、人差し指、小指を立てるポーズ)を決める。真美達はそれを笑顔で見上げる。

 

 三人は変身を解き、二人に歩み寄る。

 

 「……真美ちゃんごめん。実は私…」

 

 「いいのよ海羽ちゃん。私、大体わかってたから…。」

 

 「……え?」

 

 ウルトラ戦士である事を黙ってた事を謝る海羽に真美は優しく話し出す。

 

 「海羽ちゃんが昨夜負った傷…あれはどう見てもこけたぐらいじゃ出来ないと思ったの。だから…」

 

 「…察してたんだ…私が戦ってることを…」

 

 「まさかという感覚ではあったけどね。」

 

 真美は両手で海羽の両手を優しく握る。

 

 「もう一人で苦しむことないよ。人に迷惑を掛けたくない気持ちも分かるけど…だからって自分を苦しめないで。これからは私達もいる。だから、一緒に頑張ろう。私は変身できないけど…出来る限りのことはするから。」

 

 真美は独りで無理して戦っていた海羽に自分の思いを伝えることが出来た。海羽は嬉しさの余り、真美に抱き付き嬉し泣きを始める。真美は海羽の頭を優しく撫でる。

 

 櫂は「グッジョブ」とばかりにサムズアップを決め、カグラは自分の思いを伝える事が出来た真美に「やったね」とばかりにウィンクする。

 

 (彼らなら…良いチームとなりそうだ…)

 

 それを見つめていたカイも笑顔で頷く。

 

 「絆がより深まったってやつだな。」

 

 ゼロも安心したように言う。

 

 「真美ちゃんありがとう。これからもよろしくね。」

 

 真美と海羽は笑顔で見つめ合う。

 

 櫂「さて、そろそろ夕暮れだな。みんなで中華店でラーメン食ってこうぜ」

 

 海羽「いいね、行こう行こう!…あ、私昼にカップヌードル食べたから今度はエビチリが食べたいな~」

 

 友情がより深まった四人はカイと別れを告げ、楽しく話をしながら夕暮れの道を歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 [エピローグ]

 櫂達と同じく、霞ヶ崎の夕暮れの道を歩いて帰る買い物帰りの親子。楽しそうに話しながら帰る中、子供は急に立ち止まり空を見上げ始める。

 

 「どうしたの?」

 

 「ママ、あれ。」

 

 子供が指差す先には、まだ夜になってないと言うのに一つの彗星が空を飛んでいた。しかしそれは色は黒く、どちらかと言うと黒い人魂の様だった。

 

 「何かしら?気味悪いわね。」

 

 「ママ、こりゃ何か起こるよ。きっと、怪獣が出るよ。」

 

 「大丈夫よ。怪獣はウルトラマンがきっと倒してくれるから。さ、行こう。」

 

 「うん!」

 

 親子は再び帰り道を歩き始める。何も起こることなく、黒い彗星は霞ヶ崎の空を飛び回る一方であった……。

 

 

 一方、テライズグレートでは、メフィラス星人キョウが個室で何か独り言を呟いていた。

 

 「ったくバスコったら…言わんこっちゃない。ま、せいぜい僕のやり方を見てると良いよ。」

 

(ED:赤く熱い鼓動)




 次回、新たなゲストウルトラ戦士が登場します。

 活動報告内でアンケートを取っております。どうかご協力お願いします。

 ふと思ったのが、最近ギンガを出してませんね(汗)(一応タイトルに載せているけど…)

 感想・指摘・アドバイス・リクエスト等をお待ちしています。


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第10話「慈愛との再会」

 今回、満を持してあのウルトラマンが登場します。

 あと、ウルトラマンAを見ている人じゃないと知らないと思うネタもいくつかあります。

今回、ゼロとソルはほぼギャグ要因です(笑)


 (OP:TAKE ME HIGHER)

 

共に協力し合って戦うと誓い、櫂達の絆がより深まってから三日後の7月24日、この日は日曜日と言う事で、櫂と真美、海羽は『豪快パイレーツ』『特急レインボー』と一緒に動物園に遊びに行くことにした。

 

 櫂と海羽が変身できることは、あの後豪快パイレーツ、特急レインボーの残りのメンバーにも話し、この事は自分たちだけの秘密にし、協力し合って頑張ろうと決めたため、今回の遊びはその同盟が結成できた事への記念でもある。

 

 因みにこの事を聞いた時の豪快パイレーツのメンバーでドラム担当でウルトラオタクの『伊狩鎧』の反応はと言うと……言うまでも無いだろう(笑)

 

 櫂達は朝9時頃、『霞ヶ崎動物園』に到着する。そこは150以上の動物と触れ合うことが出来、様々なイベントやショーなども楽しむことが出来る。

 

 「ふう、天気は快晴!今日は平和になりそうだな。」

 

 「ああ。そうだな。楽しんで来いよ。」

 

 櫂の上機嫌な言葉にゼロは反応する。

 

 絶好のお出かけ日和で天気は快晴……なのはいいが、一つだけ妙な事があった……それは、3日前から不気味に空を飛んでいた『黒い彗星』が、消えて無くなっていたことである………。

 

 「じゃあ、12時頃に一旦集合と言う事で、自由時間と行こう!」

 

 特急レインボーのメンバーの一人でアコギ担当の『トカッチ(本名:渡嘉敷晴)』の仕切りでそれぞれはしゃぎ始める。彼は眼鏡をかけているのが特徴で、真面目で知的だが極度の慎重派でテンポが遅く、ドジな一面もある。頭の回転が速く勉強好き故に頭は良く、時間さえあればアイデア等を考えたりすることもできる。

 

 「おお、これはまたフレッシュなグループが来たものだ。」

 

 全員が散らばろうとしたその時、年配の男性が気さくに親しげに話しかけてくる。彼はここの動物園の園長の『獏田睦三郎』である。

 

 「ここはねえ、見どころがたくさんあるから是非ゆっくり楽しんでくると良いよ。」

 

 「ああ。じゃあ昼になったら各自食事すると言う事で、夕方まで楽しむぞ~!」

 

 「賛成~!」

 

 「え?…ち…ちょ…」

 

 ライトが勝手に提案を変えてしまい、みんなもそれに賛成したためトカッチは少し動揺する。彼はこういう風に、自分の提案を無視されてしまう事もある(注:決してトカッチはいじめられているわけではありません(笑))

 

 「あの、園長のおすすめとかはありますか?」

 

 真美は睦三郎に問いかける。

 

 「お、お嬢ちゃんよく聞いてくれたね。付いて来るかい?見せてやるよ。」

 

 「はい。」

 

 真美は睦三郎について行き始め、その後にトカッチとミオも、更にはジョーも少し遅れてついて行く。後は男子と女子に別れて園内を歩き始める。

 

 

 男子陣はと言うと、櫂とマーベラス、鎧、ライトはどの動物から見ようかとはしゃぎ、ハカセはそんな四人をまとめようと必死である。その一方で、五人とは少し離れた後ろで『ヒカリ(本名:野々村洸)』は一人けん玉をしながら歩いている。彼は特急レインボーのギター担当。特技はけん玉。クールガイで運動神経があり、頭脳もトカッチに引けを取らないが、気分屋でわがままな一面もある。そのため、他のメンバーとは一人離れて行動する事もあるが、仲が悪い事ではない。

 

 「おいヒカリ、ったくこんな時もけん玉かよ。ほら、早く来いよ。」

 

 ヒカリに話しかけながら歩み寄り、背中を押すのは『虹野明』。彼は特急レインボーのドラム担当で、時にはハーモニカも吹くことがある。彼もヒカリと同じく普段はクールだが、動物や銭湯が好きで、動物と接している時、普段以上に笑顔を見せる事がある。今回は動物園に来たと言う事で上機嫌である。あと、何故か『死に場所』にこだわる一面もある。

 

 「俺は今日動物園と言う気分じゃなかったのだが…」

 

 「まあそう言うなって。」

 

 軽く本音を漏らすヒカリに明るく止める明。ヒカリははしゃぐ四人とそれを追うハカセを見つめる。

 

 「ったく、男ってのは子供だな。」

 

 「まあ、確かにな……ってお前も男だろ(笑)」

 

 「あ、そうだった。」

 

 ヒカリと明は無意識に漫才をしてしまっている。だが、それがきっかけでヒカリは少し笑顔になり、気分が変わったのか、五人の元へ歩き始め、明も後に続く。

 

 

 続いて女子陣。彼女たちは主にパンダ、ウサギ、ペンギンなどのかわいい系の動物を見て回っている。特に海羽はヒヨコ、カグラはパンダに夢中になっている。恐らく特にお気に入りの動物なのだろう。

 

 そんな間に、ルカとアイムはベンチに座って休憩している。

 

「ったく、子供っぽいのは男だけかと思ってたけど、女も変わらないわね。」

 

 「まあ良いじゃないですか。夢中になれるのは良い事です。」

 

 

 男子陣がかっこいい系の動物(ライオン、トラ、チーターなど)、女子陣が可愛い系の動物を見て回っている中、睦三郎に付いて行く真美、ジョー、トカッチ、ミオ、の四人は、園長おすすめの動物にたどり着く。『獏』である。中には見るからに立派なアメリカ獏が入っている。

 

 と、その時、

 

 「「獏?かわいい~」」

 

 突然真美とミオがはしゃぎ始める。彼女は獏がお気に入りの動物だからだ。

 

 「でしょでしょ?私が愛情込めて育てて来た『バクちゃん』だ。可愛いだろ~」

 

 睦三郎は自分と同じ獏が好きな人が見つかって嬉しいのか、バクちゃんを気さくに紹介する。

 

 「園長さんも獏が好きなんですね。」

 

 ミオが睦三郎に話しかける。

 

 「……まあ、なんてったって、私の人生を獏一つに入れあげて来たって感じだからね。」

 

 「人生を獏に?」

 

 ジョーは睦三郎の言葉を疑問に思う。

 

 睦三郎は獏好きになる経緯などを話し始める。彼はミオ達ぐらいかそれより歳が低かった頃まで、寝るときに悪夢にうなされる事が多かったらしい。だが、、動物園の獏に「怖い夢を食べてください」と願って以降、怖い夢を全く見なくなったと言う。

 

 それがきっかけで、獏に愛着を抱くようになり、大学生時代から長年獏の研究を続け、最終的には動物園の園長になったと同時に獏の飼育担当にもなったと言う。

 

 「素敵な話ですね。」

 

 「迷信も当たることがあるんだね。なんか運命って感じ。」

 

 真美とミオは素直に感心する。トカッチ達も感心したのか、ジョーは「フッ」と笑い、トカッチは右親指で眼鏡を直しながら頷く。

 

 「獏と出会って三十数年。研究の甲斐あってか、私は獏と会話もできるようになったんですよ。」

 

 睦三郎の言葉に四人は驚く。無理もない。人間と動物が文字通り会話をするなんて普通はあり得ないからだ。

 

 「じゃあ、あの獏ちゃんとも会話が出来るってことですか?」

 

 真美はバクちゃんを指差して問いかける。

 

 「ええ。バクちゃんとは特に長い付き合いなんですよ。本当にかわいい子だからね~」

 

 「いやいや、やっぱり人間が動物と会話何てあり得ないよ。そもそも…」

 

 「まあ、いいじゃないか。夢中になる心は、時に常識以上の能力を発揮させることもあるんだ。」

 

 現実的な発言をするトカッチをジョーは肩に手を置き諭す。

 

 「……ところが最近突然、様子が変わってね…」

 

 睦三郎は突然少し深刻な顔になる。

 

 「最近は元気が無いのだよ…。」

 

 「そうですか?元気そうですけど。」と真美。

 

 「いやいや、基本おとなしいけど普段なら客の前ではもっと元気いっぱいに歩き回り、私が見える位置に来ると真っ先に私の方に駆け寄って来るんだが…」

 

 言われてみると確かに、今のバクちゃんは客の前でもおとなしく、睦三郎が見える位置にいると言うのに駆け寄って来る気配も無い。睦三郎は話を続ける。

 

 「三日前からは私ともあまり話さなくなったんだ。それにその時。妙な事を言っていたんだ。」

 

 ミオ「妙な事?」

 

 

 〈回想〉

 

 いつものように、バクちゃんの世話をする睦三郎。だが、餌をやっている時、バクちゃんが妙な事を言い出した。

 

 「?バクちゃん、どうしたんだね?」

 

 「ボクね、もうボクじゃなくなるの。」

 

 「な、何を言ってるんだね。しっかりおし、おじさんが付いてるよ。」

 

 「ダメなんだよボク!」

 

 「ぼ、ボクがバクじゃなくなるって、一体何になるんだね?おじさんに言ってごらん。」

 

 「う…ううう…!」

 

 バクちゃんが苦しそうな声を上げ、睦三郎がバクちゃんの額を触ってみると、激しい熱を感じる。だが、体温計で測ってみてもちっとも反応を示さないと言う………。                    

  

                                            〈回想終わり〉

 

 真美「熱の無い風邪…何か不気味ですね。」 

 

 「三日前から……ハッ」

 

 ジョーは何かを思い出す。

 

 「あの黒い彗星が現れた日だ……」

 

 黒い彗星が現れた日と、バクちゃんが体調不良を訴えた日が重なっていることに気付く。もしやと空を見上げてみると、昨日まで飛んでいた彗星はすっかり消えている。

 

 「もしかしたら…あの黒い彗星が関係しているのかも…」とミオ。

 

 その時、トカッチが何かに気付く。

 

 「なんか、小屋に穴が開いてますけど…」

 

 三人もトカッチが指差す方を見てみると、バク小屋に大きな穴が開いているのを見つける。まるで何かが何度もぶつかったかのようだ。

 

 「あれはバクちゃんがやったんじゃないと私は信じたいんだがね。それに、三日前から毎日夜が明けると、動物園外の地面に妙なクレーターが数か所に空いているんだ。まるで何かの足跡みたいな……」

 

 睦三郎の言葉に三人の不安は募る一方で、同時に獏への疑惑も募る。

 

 「…おっと、楽しんでる最中に変な話してすまないな。どうぞ、中に入ってバクちゃんと遊んでやってくれ。」

 

 「そうだね。最近大人しいのは疲れているだけかもしれないし、なでなでしてこよ~っと。」

 

 ミオはとりあえず考えるのをやめ、バクの中に入る。因みにこの動物園は、一部の動物は、客が中に入ってたわむれることが出来る。

 

「よしよし、いい子だね~」

 

 ミオはバクちゃんの頭をなでる。と、次の瞬間、あろうことかバクちゃんはミオ股座に顔を突っ込み始める!

 

 「⁉ひゃっ!!」

 

 ミオは当然ながら驚く。睦三郎達も慌ててバクちゃんを止めに入る。

 

 「だめだめ、そんな事しちゃ……すまないね。多分よっぽど疲れてるんだよ。許してやってね。」

 

 「え…ええ。」

 

 ミオは困惑しながらも無理に笑顔を作って許す。四人(ジョーを除いて)は笑顔でバクちゃんの世話をする睦三郎を見つめる。その微笑ましい光景から、何も起こらないかのように思えた………。

 

 と、その時、

 

 “ボワンッ”

 

 突然バクちゃんが煙の様に姿を消す。睦三郎及び四人は突然の出来事に驚愕し、何処に行ったかと辺りを見渡す。

 

 次の瞬間、動物園外の町に異形のモノが現れる。それは、茶色い体毛で覆われた体に丸く大きな頭には吸盤の様な輪が無数に付いていて頭頂部には妙な突起が突き出ている『獏超獣バクタリ』だ。

 

 咆哮を上げるバクタリを見上げ驚愕する四人。動物園の観客たちも突然超獣が出たことにより逃げ惑い始める。

 

 「…もしかして……バクちゃんがあれに……?」とミオ。

 

 「でも、どこにそんな根拠が?」とトカッチ。

 

 「いや…あれがバクちゃんだ……肩を見ろ!私が貼った絆創膏が付いている!」

 

 バクタリの右肩に十字の絆創膏が付いている。実は三日前、体調不良を訴えた後に何かに憑りつかれたかのように激しく暴れており、その際に右肩に傷が出来、睦三郎が手当てをしたと言う。その際に貼った絆創膏が獏と同様巨大化したのである。

 

 「…信じられない………」

 

 可愛いバクちゃんが、信じられないほど奇妙で変わり果てた姿になった事にうろたえる真美。バクタリは頭部の突起からのあらゆる物を風化する霧状の『バクタリ光線』でビルを溶かしたり、一本爪の生えた腕を振るいビルを崩したりしながら暴れ始める。櫂達も全員合流し、真美達と合流する。

 

 「あれは……獏超獣バクタリ!って事は、この動物園の獏が……?」

 

 鎧はバクタリを見て早くも察する。ほかのみんなも、信じられない顔で見つめる。

 

 「どうしよう……元が動物なら下手に攻撃できないよ~」とハカセ。

 

 「一体だれがこんなことを…」とアイム。

 

 「ふふふふふ、この僕さ。」

 

 全員、声がする方にミーアキャットの様に一斉に振り向く。そこには新たな刺客『メフィラス星人キョウ』が立っていた。全員少し身構え、ハカセとカグラはそれぞれ櫂と真美の後ろに隠れる。

 

 「僕はメフィラス星人。キョウと呼んでくれ。よろしく。」

 

 「てめーがあの黒い彗星を飛ばしやがったのか?」

 

 マーベラスは反応する。彼もまたあの黒い彗星を目撃していたのだった。

 

 「そうさ。マイナスエネルギーであの黒い彗星を作った後。動物に憑りつくように僕が設定したのさ。可愛い動物が変身したモノなら、お人好しのお前らの事さ。殺せまいと思ってねえ。」

 

 キョウの作戦。それは可愛い動物を超獣化させることでむやみに攻撃できないようにさせる事だった。彼は目的のためなら手段を選ばないため、卑怯な作戦を考える策士である。

 

 「キョウ、おのれ…わざと罪のない動物を超獣化させるとは卑怯だぞ!」

 

 「ふふふ、卑怯もラッキョウもあるものか!」

 

 キョウは狡猾な作戦を非難する明にお得意の言葉をぶつける。バクタリは動物園に向かい進撃する。

 

 「うわ~こっちに来るよ~」

 

 カグラは慌てる。

 

 「だが俺は信じてる…いや、見えている。ウルトラ戦士がバクを救う所が!」

 

 ライトはポジティブな言葉をかける。

 

 ゼロ「サンキュー。まずはあいつを止めないとな。」

 

 真美「お願い、バクちゃんを助けて。」

 

 「よし、ここは私が行くよ!」

 

 海羽はみんなとは少し離れた所まで行き、『ハートフルグラス』を取り出して目に当てる。海羽は赤とピンクの光に包まれ『ウルトラウーマンSOL(ソル)』の姿に変わり巨大化する。

 

バクタリはソルに気付くや突進する様に駆け寄る。ソルは鼻を掴むことでそれを受け止めるが、元が大人しい動物とはいえ相手は超獣。パワーはすさまじくソルはそのまま押され始める。

 

 ソルは地面を削りながらも踏ん張る。そしてなんとか押し飛ばす事が出来るが、バクタリはすぐに体勢を立て直し、右腕を振って殴りかかる。ソルは咄嗟にバクタリの右側にそれる事でそれをかわし、右手、左手でそれぞれ右腕、突起を掴んで抑え込む。

 

 「お願~い!おとなしくして…キャアッ!」

 

 必死の呼びかけもむなしくソルは振り飛ばされる。大人しくさせるのを第一に行動しているが故にいつもの様に戦えず苦戦する。

 

 「ふははははは!正に僕の思惑通り。戦えてないじゃないか」

 

 キョウは苦戦するソルを見て笑う。真美達はただ戦いを見守るしかなかった。

 

 「このままじゃまずいぜ…やむを得ない。少し攻撃した方がよさそうだ。俺達もいくぞ、櫂。」

 

 「…ああ。」

 

 櫂は少し動揺する様に返事をした後、UBから『ウルトラゼロアイ』を出現させ、左腕を胸に前で折り曲げる。

 

 「レッツ、ゼロチェンジ‼」

 

 ゼロアイは櫂の目にくっ付き、櫂は眩い光に包まれながら跳躍してゼロの姿となる。

 

 土煙を上げながら地面に着地するゼロ。

 

 「待たせたな。さあ、俺達も行くぜっ‼」

 

 ついに真打ち登場かと思われた。

 

 が、真美達は何やら唖然としている様である。それどころか、ゼロになって巨大化したはずなのに真美達がやけに近く感じているのだ。

 

 「あ…あの…変身したのはいいんですが……」

 

 真美の言葉を聞いたゼロ及び櫂はいったん落ち着いて自分を見ている。すると、どうしたことか、いつもなら49メートルまでに巨大化するはずなのに僅か約5メートルしかないのだ!

 

 「「ちっ……ちっちゃっ⁉な、何でこんな中途半端なサイズに……?」」

 

 驚くゼロと櫂の言葉が重なる。別に櫂は変身を拒んでいるわけではない。なのに何故かミニサイズになってしまったからだ。

 

 ゼロは過去に別宇宙の地球『フューチャーアース』で戦った際も5メートルぐらいのミニサイズになってしまったことがあるがあの時は一体化した人物が変身を拒んでいた影響であるが今回は原因が分からずにいた。

 

 5メートルしかないウルトラマンゼロ(以降:ちびゼロ)に唖然とする真美達。しかしどう踏ん張っても巨大化できそうにない。

 

 「……なぜだ?なぜなんだ櫂⁉」

 

 「俺もわかんねーよ!」

 

 ゼロ達が困惑している間にも、ソルはバクタリに苦戦している。

 

 「「…しょーがねーな…だったらこのままいくしかねえなっ!」」

 

 またしてもゼロと櫂のやや投げやりの言葉が重なる。ちびゼロはバクタリ目掛けて飛び始める。

 

 ジョー「……大丈夫なのか?」

 

 ルカ「さあ………」

 

 アイム「しかし、なぜ今回は普段の大きさになれないのでしょう………」

 

 ルカ「…さあ………(汗)」

 

 ちびゼロはバクタリの右手の爪に飛び付き、引っ張ろうとする。

 

 「さあ見てろっ!小さくても、俺の強さは変わらないって事を証明してや………うおっ⁉わっ!うおあっ……」

 

 だが、バクタリはちびゼロが飛び付いたに気付くや振り飛ばそうと右腕をブンブン振り回し始める。流石のゼロも、振り回されながら必死にしがみ付くのが精一杯である。流石の百戦錬磨のゼロも、5メートルの体で62メートルの超獣に挑むのは無謀であった。

 

 「「目が回る~~~‼」」

 

 またしても声が重なる。その光景は真美達はおろか、流石にキョウも呆気に取られていた。

 

 ついに、バクタリが上から振り下ろすように右腕を思い切り振ることでちびゼロは飛ばされ、高層ビルに刺さるように頭から突っ込んでしまう。

 

 「……ッ、まだまだあ~!」

 

 なんとか抜け出たちびゼロは、今度はバクタリの左足にしがみ着く。転ばせようとしているのだ。だが、バクタリはまたしてもそれに気づくや振り落とそうと足踏みを始める。もちろんちびゼロは振り回されながらしがみ付くのに精一杯。

 

 「「目が回る~~~‼」」

 

 おなじみの台詞である(笑)そしてまたしてもちびゼロは振り飛ばされてしまうが、間一髪、ソル(40メートル)がそれをキャッチする。

 

 「大丈夫?ゼロ。」

 

 「フゥ~、サンキューソル。」

 

 「ここは私に任せて。」

 

 ソルはちびゼロを地面に下ろすと再びバクタリに立ち向かう。バクタリは左右パンチを放つがソルはそれを両手で弾いて防ぎ、頭を掴んで押さえ込もうとするが、腹部に左右挟み込む様なパンチを喰らってしまい、よろけて背を向けた所で後ろから首を締め上げられるが、腹部にヒップアタックを打ち込んで後退させる事で何とか締め上げを振り解く。

 

 バクタリは反撃とばかりにバクタリ光線をソル目掛けて吹き付ける。霧の様な光線を浴びたソルは苦しむ。バクタリ光線はちびゼロにも届いており、同じくちびゼロも苦しんでいる。

 

 バクタリはその隙に追い打ちとばかりに爪先から火炎を放射する。ソルは、火炎の直撃はしなかったが、突然迫って来た火炎の熱さに驚きで思わず「きゃあっ!」と声を上げて吹っ飛んでしまう。

 

 「え?ち、ちょ、こっち来んな~!」

 

 “ドシーン”

 

 「グヘッ!」

 

 吹っ飛んだソルは尻餅をつくが、運悪くちびゼロはその下敷きになってしまう。

 

 「ぅぅ……チクショー!なぜこうなっちまうんだー!」

 

 ちびゼロは嘆きの叫びを上げる。無理もない。歴戦の勇者のゼロが思いもしない失態を犯してしまったのだから…正に一生の不覚である。

 

 「一体どうすれば……」

 

 「あ、あの~とりあえずどいて。なあ、頼む。どいてくれよ~」

 

 ソルは困り果てている。どうやら彼女は、ちびゼロが自分の尻の下敷きになっているのに気づいていないみたいだ(笑)

 

バクタリはちびゼロとソルに迫る。もはや打つ手なしか………⁉

 

 「何か、悪いエネルギーだけを取り出せる技があれば……」

 

 ハカセが呟いたその時、

 

 「!あれは誰でしょう⁉」

 

 全員は鎧が指差す高台の方を振り向く。そこには一人の青年が立っていた。遠くなため誰かは分からないが青いスーツを着ていて右手には何やらスティック状のアイテムを持っている。

 

 青年は右手に持ったアイテムを空高く揚げる。するとアイテムの先端から青と金色の光が解放され青年はそれに包まれて巨大化する。

 

 光は徐々に消えていき、中から現れたのは、青いボディが特徴の「月の優しき光のごとき、慈しみの青い巨人」の戦士『ウルトラマンコスモス(ルナモード)』だ!

 

 彼は争いを好まず、相手を傷つけずに友好関係を築くことを望んでいる、ウルトラ戦士の中でも一際優しい心を持つ戦士である。『コスモスペース』にて『TEAM EYES』の隊員『春野ムサシ』と共に、自身と一心同体でもある『カオスヘッダー』と戦いを繰り広げ、その心を救う事で戦いを終えムサシと分離して地球を去った。その後も新たな侵略者などと戦う度にムサシと一体化している。

 

 今回もソルの呼びかけに応え、ムサシと共にコスモスペースからやって来たのだ。即ち、先ほど高台に立っていた青年はムサシである。

 

 「‼あっ…あれは‼ウルトラマンコスモスだ~‼」

 

 鎧は当然ながら興奮する。ソルは「まあ~」と嬉しそうに両手を合わせて立ち上がり、ちびゼロもそれによりようやく解放され、ソルの右肩に飛び乗る。

 

 ゼロ「ソル…お前、コスモスも呼んでいたのか?」

 

 ソル「ええ。良い所で来てくれたわ。」

 

 櫂「ん?あの青い巨人が来たら何か都合がいいのか?」

 

 ゼロ「櫂は知らないのか?まあ、見てなって。」

 

 真美達も少し驚きながらも安心の表情でコスモスを見上げる。

 

 真美「あの巨人はバクちゃんを助けてくれるの?」

 

 鎧「ええ。コスモスさんが来たからには安心ですよ~」

 

 マーベラス「要するにド派手にいかないタイプか……」

 

 アイム「それにしても、青い体が鮮やかでいいですね。」

 

 キョウ「フッ、新たなウルトラマンか…バクタリ!やっつけてしまえ!」

 

 バクタリはコスモスに迫る。コスモスも構えを取った後、土煙を上げながらバクタリに駆け寄る。

 

 コスモスはバクタリの右腕を上から振り落とす殴り込みを素早く右にそれてかわし、続けて振り下ろして来た左腕を左膝で受け止め、その後振り下ろしてきた左殴り込みをかわしながら素早く後ろに回り込む。

 

 バクタリはすぐさま振り向き、左腕、右腕と交互に放ってきたフックをコスモスはそれぞれ右腕、左腕で受け止めて防ぎ、今度は左右から挟み込むようなパンチを素早く両腕で弾き、突進してくるのを側転してすれ違うようにかわす。

 

 その後もバクタリは左右殴り込みを放つがコスモスは左右にそれてそれをかわし、その後打って来た右フックを左腕で受け止め、腹部に右の掌を打って跳ね飛ばす。怯まずバクタリは再び左右挟み込むパンチを繰り出すがコスモスはそれを両腕で防ぎ、腹部に左右掌を打ち込み、続けて両掌を腹部に打って跳ね飛ばす。

 

 ルナモードの、相手を攻撃することなく敵の力を受け流し、拳を握らず平手で対峙する姿に真美達及びソルは感心する。鎧以外のほとんどは、ウルトラマンは怪獣を拳で叩き伏すイメージが強かったのだろうか。

 

 アイム「素敵です。相手を傷つけずに攻撃できるなんて。」

 

 真美「それに動きも、綺麗~。」

 

 鎧「そうなんですよ!あれがコスモスさんのポリシーですから!」

 

 鎧はハイテンションでコスモスを語る。

 

 ゼロ「さすがだなコスモス。」

 

 ソル「ええ。」

 

 ちびゼロとソルも感心しているのか、ちびゼロは腕組み、ソルは軽く拍手しながら戦いを見守る。

 

 ……だがしかし、櫂だけは何やら腑に落ちないような顔で見ていた………。

 

 コスモスはバクタリが頭突きを繰り出して来たのを頭を両手で押さえて防ぎ、そのまま押し飛ばす。バクタリはコスモス目掛けて火炎を噴射するが、コスモスは両腕をそれぞれ上下斜めに広げる事で光の障壁『リバースパイクバリア』を展開してそれを防ぐ。

 

 そして、コスモスは体勢を立て直し、両手を斜め上に上げる。すると、そこに優しい光が集まっていき、その後コスモスは右手の平をゆっくりと前に突き出し、七色の興奮抑制光線『フルムーンレクト』を発射する。これは攻撃技ではなく、相手の感情を静めて大人しくさせる光線である。

 

 フルムーンレクトを浴びたバクタリは動きが止まり、元のバクの様に大人しくなる。さっきまで暴れていた超獣をあっという間に大人しくさせてしまった事にみんな驚き、中には拍手をする人もいた。

 

 ルカ「…ウソ?一瞬で大人しくしちゃった…!」

 

 「……バクちゃん…」

 

 バクちゃんが救われる……睦三郎も一安心である。

 

 「やった~!」

 

 ソルは軽く飛び跳ねて喜ぶ。

 

 ゼロ「コスモス、獏を元に戻してやってくれ。」

 

 ゼロの言葉にコスモスは頷く。コスモスは怪獣や動物などに憑りついたカオスヘッダーなどの悪のエネルギーのみを切り離す光線『ルナエキストラクト』を発射しようと体勢を立て直す。

 

と、その時!

 

突如、上空から青い一直線の光線が飛んで来て、バクタリの頭部に命中して爆発。バクタリはダメージを負って倒れ、コスモスを始め全員驚愕する。

 

 すると、空の彼方から何かが飛んで来て着地する。それは、一見『ウルトラマンエース』の様に見えるが、よく見てみると関節部分にプロテクターを装備している。

 

 カグラ「そんな…どうしてエースが…」

 

 鎧「いや、あれはウルトラマンエースではありません!」

 

 キョウ「ふふふ、そうさ。あれは僕がヤプールからもらったウルトラマンエースのデータを基に造ったロボット兵器、『超人ロボットエースロボット』だ!」

 

 エースロボットはかつて、ヤプールが『異次元超人エースキラー』の強さを実験するためのテスト用として造った事があるが、今回はキョウと共に戦闘用として造っていたのだ。因みに、先ほどバクタリが喰らった光線はエースロボットの『ハンドビーム』である。

 

 ゼロ「あいつ……こんなロボットまで造ってたのか…」

 

 ソル「私…聞いてない。」

 

ちびゼロとソルも思わぬ敵の登場に驚愕する。

 

 キョウ「バクタリはもはや役立たずとなった。エースロボット!ウルトラ戦士共々殺してしまえ!」

 

 キョウはもう一つの作戦を用意していた。それは、いざバクタリが用済みとなった時は、自らが開発したエースロボットでウルトラ戦士をバクタリ共々皆殺しにしようと言う事だ!なんとも卑怯かつ非道な作戦を考えるキョウに、ゼロ達は怒りを感じる。

 

 キョウの指示に応えるかのようにエースロボットは起動し動き始める。エースロボットは、あろうことか仰向けに倒れているバクタリの胸部、腹部を踏み台にして跳び、コスモスに飛び蹴りを繰り出す!コスモスは何とか腕を交叉して防ごうとするが、強力な力により吹っ飛ばされる。

 

 バクタリはよろけながらも立ち上がるが、それに気づいたエースロボットは両手を額のランプ『ウルトラスター』に当てて『パンチレーザー』を発射。バクタリの腹部に命中して爆発し、またしてもダメージで倒れる。

 

 それは目を覆わんばかりの凄惨な光景である。ロボットとはいえウルトラ戦士の力が兵器として使われ、その力で他のウルトラ戦士及び罪のない動物が攻撃されているのである。

 

 獏好きの睦三郎や真美、ミオも再び深刻な顔になる。真美に関しては泣きそうになっている。それを見た櫂は怒りが込みあがり、拳を強く握る。

 

 ソル「どうしよう……私達も加勢した方が……」

 

 ゼロ「いや、どうやらその必要はないみたいだぜ。」

 

 ソルはちびゼロが指差す方を向く。それは、怒りで拳を握るコスモス(ルナモード)の姿だった。コスモスは右手を上に揚げる。すると、周りに太陽のコロナの様な無数の赤い輪が現れ、身体は赤い光に包まれる。そして、左腕も上げた後両手をゆっくり下ろしていく。するとコスモスの体は上から徐々に青から赤に変わっていき、やがて姿が変わった。

 

 それは、赤いボディが特徴で、邪悪な敵と対峙する際にチェンジする、ルナモードの「優しさ」「慈愛」に対し、「強さ」を体現した、「太陽の燃ゆる炎のごとき、戦いの赤き巨人」のモード『ウルトラマンコスモス(コロナモード)』だ!

 

 ルカ「!コスモスが……」

 

 アイム「…変わりました。」

 

 鎧「出ました出ました~コスモスさんの戦闘モード『コロナモード』!」

 

 (BGM:Spirit)

 

 コスモスとエースロボットは、互いに構えを取った後、地響きを立て土煙を上げながら駆け寄る。

 

 二人は組み合うとまずは激しい膝蹴りの応酬を始める。その後エースロボットは右拳を放つがコスモスはそれを左手で受け止め右の手刀で弾いた後、腹部に右拳を決め、更に右脇腹に強烈な左横蹴りを打ち込み、そのまま跳躍して右足蹴りを胸部に決めてその際の反動を利用して宙返りをして一旦距離を取る。

 

 真美「さっきと…まるで違う。」

 

 真美達は、コスモスのさっきまでとは違うアグレッシブな戦いぶりに見入っている。

 

両者の戦いは激しく、周りの地面は小さな爆発を起こし土煙を舞い上げる。エースロボットは駆け寄りながら右前蹴りを放つがコスモスは横に回転しながら跳躍してすれ違うようにかわす。そして一回転しての左ハイキックを後頭部に決める。

 

 エースロボットはすぐさま振り向き左右パンチを放つがコスモスはそれを左右拳で弾き、袈裟懸けに手刀を決め、続けて左右拳を打ち込み、畳みかける様に両手に気を集中させて放つ『サンメラリーパンチ』を叩き込む。その後、跳躍して胸部、顎部にと二段蹴りを決め、落下しながら顔面に右拳の『コロナパンチ』を打ち込み、更に喉元に強力な右前蹴り『コロナキック』を叩き込んで遠くへ吹っ飛ばす。

 

 因みにエースロボットは、エースのデータを基にそっくりに造られただけあって、攻撃を受けて苦しむ時の声も本家と同じである。

 

 コスモスは横たわるバクタリの元に歩み寄る。エースロボットは立ち上がって体勢を立て直すと、両手を斜め上に揚げる。すると、頭部の突起の『エネルギーホール』から両手にエネルギーが集まっていく。エースロボットはノコギル状の光の刀『ウルトラギロチン』でコスモスとバクタリをまとめて斬り殺そうとしているのだ!

 

 コスモスは「させるか!」とばかりに凄まじい速さで地面を滑る様にエースロボットに駆け寄る。そして、すれ違い様に青白く光らせた右の手刀『スウェード・シェイバー』を決める!光の手刀は、エースロボットの右腕を粉々に吹き飛ばした!その光景に、真美達は思わず歓声を上げる。

 

 鎧「よし!これでギロチン技も、メタリウム光線も打てません!」

 

 コスモスは、怯んだエースロボット目掛けて空高くジャンプした後にマッハ9のスピードで急降下しながら『ソーラーブレイブキック』を放つ!蹴りが胸部に命中したエースロボットは、空高く吹っ飛ぶ。

 

 コスモスは着地すると、両腕を回転させて宇宙エネルギーを集結させ、腕をL字型に組んで最強光線『ネイバスター光線』を上空のエースロボット目掛けて放つ!

 

 深紅の光線はエースロボットを直撃。エースロボットはスクラップの様に粉々になりやがて跡形も無く爆散した。

 

 エースロボット撃破を確認したコスモスは、身体を青く光らせてルナモードの姿に戻る。カラータイマーは赤く点滅し始めていた。そして、傷ついて横たわっているバクタリのもとに歩み寄り、右手をかざして相手にエネルギーを与えて蘇生させる光線『コスモフォース』を浴びせる。

 

 回復して元気を取り戻したバクタリは立ち上がる。コスモスは両手を胸元に当ててエネルギーを溜め、右手を前に突き出して『ルナエキストラクト』を放ち、バクタリに浴びせる。バクタリは優しい光に包まれた後、何やら黒いオーラの様なエネルギーを発散しながら小さくなっていき、やがて元のバクちゃんの姿に戻った。

 

真美達はバクちゃんの元に駆け寄る。バクちゃんは元の元気さを取り戻していた。全員は安心し、睦三郎は嬉しさでバクちゃんを抱き寄せる。

 

 だが、それも束の間、キョウは腕をクロスさせて巨大化する。

 

 「やってくれたなコスモス。だがもうエネルギーはあまり無い筈。この僕が止めを刺し……」

 

 “バゴンッ‼”

 

 「⁉グフフォ~!」

 

 キョウは、突如右側から顔面を殴られたまらず吹っ飛ぶ。慌てて見てみると、そこにはちびゼロ…いや、でかゼロ(要するに普通サイズのゼロ)が立っていた!ゼロはいつの間にか普通の大きさになっていたのだ。

 

 「お、おのれゼロ!いつの間に大きくなりやがった~‼」

 

 「そんなの俺も知らねーよ。ま、心置きなく、お前をぶっ飛ばせるって訳かな。」

 

 (BGM:すすめ!ウルトラマンゼロ 一番 サビ)

 

 ゼロは猛スピードでキョウに駆け寄り、左右交互連続でタコ殴りを始める。

 

 「ブサイクな面(づら)して可愛い動物を利用するとは許さねえっっ‼」

 

 キョウは、殴られながらさり気なく自身のコンプレックスである顔の悪さを非難される(笑)

 

 タコ殴りは凄まじく、いつの間にか殴りながら宙を浮いていた。

 

 「これで、終わりだっっ‼」

 

 “バゴンッ”

 

 ゼロは右腕の肘から先を数回回した後、キョウの胸部に渾身の右拳を叩き込む!キョウは「ギャ~」と言う叫びと共にぶっ飛び、やがて星になった。

 

 「フゥ~、スッキリしたぜ。」

 

 ゼロは雄々しく立ちながら星になるキョウを見つめる。

 

 「ごきげんよう……」

 

 ソルも飛んで行くキョウを見つめながら軽く手を振る。

 

 三人のウルトラ戦士は、変身を解いて人間の姿に戻る。変身を解いた櫂と海羽、そして真美達はムサシの元に駆け寄る。無論、鎧は真っ先に駆け寄る。

 

 鎧「あ、あの、あなたはもしかして……!」

 

 「僕は春野ムサシ。」

 

 ゼロ「よお、エタルガーとの闘い以来だな。あんたもソルに呼ばれて来たのか?」

 

 「ソル?…あの声の主だね。」

 

 海羽「あの~…私が呼んだんです。来てくれてありがとうございます。」

 

 櫂「あの、どうして怪獣を攻撃しないのですか?」

 

 「傷つけないためさ。怪獣の中にも罪のないものだっている。コスモスの力はそんな怪獣たちを救うための力なんだ。」

 

 櫂「へえ~…斬新ですね。」

 

 櫂はとりあえず納得したのか、固めに頷く。睦三郎は獏を助けてくれた事でムサシに礼を言う。ムサシはこれまでの経緯を話す。やはり彼もソルの呼びかけを聞いていたのだ。そして、侵略者が動き出していることも知っていた。

 

 「僕はしばらくこの町を散策するよ。何か変わった事とかがあったら僕に伝えてくれ。」

 

 ゼロ「おう。じゃあな。ムサシ。」

 

 ムサシが櫂達と別れようとしたその時、

 

 「あの~…良かったらサインください!」

 

 鎧はサインペンとノートを差し出す。ムサシは少し困惑しながらもそれを受け取りサインを書いて鎧に渡し、櫂達は少し呆れながらもその光景を見つめる。

 

 ムサシはいったん櫂達と別れを告げる。

 

 ルカ「じゃ、閉園までまだ三時間もあるし、引き続き動物園を楽しみますか。」

 

 アイム「しかし、なぜゼロさんはいつもの大きさになれなかったのでしょうか……」

 

 「さあな。ま、最終的には大きくなれたから、良しにしておくか。」

 

 ゼロは未だに小さくなった原因が分からずにいた。

 

 「はあ~、今回私たち、良いところなかったね。」

 

 「そんな事ないわ。櫂君も海羽ちゃんも一生懸命頑張ってくれたと思うよ。」

 

 「え?そう?ありがとう。」

 

 「サンキュー、真美。」

 

 素直に褒める真美に櫂と海羽は笑顔で礼を言う。真美も笑顔を返す。……だがそんな中、櫂はひっそりと不敵な笑みを浮かべていた………。

 

 「さあさあ、引き続き動物園を楽しんで行ってくれ。」

 

 睦三郎の言葉を受けた櫂達は、再び楽しそうに話しながら平和になった動物園散策を再開し始めた。

 

 

 

 

 [エピローグ]

 

場所は変わって、とある宇宙空間の小惑星では、ウルトラマンパワードが『ギンガダーク』と交戦を始めようとしている。今回バクタリとの戦いに参戦しなかったのは、恐らくギンガダークの気配に気づき、迎え撃ちに向かっていたためであろう。

 

 両雄は警戒する様に互いに睨み合う。そして、お互いに土煙を上げながら駆け寄り始める。

 

 今ここに、正義のウルトラ戦士と闇堕ちしたウルトラ戦士の戦いが始まる………!

 

 To Be Continued……

 

(ED:ウルトラマンコスモス~君にできるなにか)




 良い所で終わらせてすいません。

 ウルトラマンコスモスは昔リアルタイムで見ていた、所謂私の思い入れのあるウルトラマンの一人です。

 私は昔(幼稚園ぐらいの頃)、バクタリの外見が怖くてトラウマだった記憶があります。

 ところで、最近思ったのですがバクタリの動きは某梨のゆるキャラに似てると思うのは私だけでしょうか?(笑)(マイナーな超獣の話題ですいません。)
 
 
 因みに、遅くなりましたが主要人物四人の容姿イメージキャラが決まりました。(【】内は登場作品)

 竜野櫂:駆紋戒斗【仮面ライダー鎧武】

 新田真美:楼山早輝【炎神戦隊ゴーオンジャー】

 桜井敏樹:詩島剛【仮面ライダードライブ】

 眞鍋海羽:美咲撫子【仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX、など】


 感想・指摘・アドバイス・リクエスト等をお待ちしています。

 なお、アンケートの締め切りは10月4日までとさせていただきます。


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第11話「妄想の暴走」

 大変長らくお待たせしました。

 今回は、本作のテーマでもある『心の闇』を重点に置き、また、現代社会の事も少し扱った重い内容となっております。

 また、戦闘相手から、戦闘シーンには少しマニアックなネタを入れております(笑)


 (OP:TAKE ME HIGHER)

 

とある宇宙空間の小惑星。そこではウルトラマンパワード対ギンガダークの戦いが始まっていた。

 

 お互い土煙を上げながら駆け寄った後、ギンガダークは先手とばかりに走りながら右前蹴りを放つがパワードは即座に側転してすれ違うようにかわす。その後パワードはすかさず右横蹴りを放ち、ギンガダークは背を向けたまま左肘でそれを防ぎ、振り向き様に横振りの右拳を繰り出すがパワードはそれを身体を反らせてかわす。

 

 パワードは両手でギンガダークの肩を掴むがギンガダークは即座に両手でそれを跳ね除け、左右フックを繰り出すがパワードはそれを左右斜めにしゃがんでかわし、左脇腹に右拳を決める。ギンガダークは少し怯みながらもその拳を掴み上へ上げた後、腹部に右膝蹴りを打とうとし、パワードは即座にそれを左手で受け止めるが、そのまま繰り出して来た跳躍しての左前蹴りを腹部に喰らい吹っ飛ぶ。パワードは吹っ飛びながらも宙返りをして体勢を立て直し着地する。

 

 「ギンガ!目を覚ませ!ウルトラ戦士の心を忘れたのか⁉」

 

 「……つまりそれは俺の仲間を殺す力か……なら、捨てて正解だ……!」

 

 ギンガダーク(闇ヒカル)は、本来のヒカルには考えられない程の低い声で言った後、再びパワードに飛び掛かる。もはやウルトラマンテラの策略で、自身の仲間を守り、それ以外の者は全て抹殺する事にしか頭になくなっているのだろうか………。

 

 ギンガダークは高速で飛び掛かろうとするが、パワードはそのスピードを利用してギンガダークの両肩を掴み、巴投げで投げ飛ばす。ギンガダークは空中で回転して着地する。

 

 ギンガダークは振り向き様に右手を突き出して『ギンガダークサンダーボルト』を放つがパワードは滑り込むように後ろ向きに倒れる事でそれを避け、そのまま『メガスペシウム光線』を放つが、ギンガダークはそれを回転しながら右にそれて避け『ギンガダークファイヤーボール』を放つがパワードは空高く跳んでそれをかわす。

 

 パワードはギンガダークの目前に着地して、両肩を掴んで抑え込もうとする。

 

 「ギンガダークスラッシュ‼」

 

 ギンガダークは、至近距離からパワードにギンガダークスラッシュをぶち込み、パワードは光線に押され、岩山をいくつか破壊しながら吹っ飛ぶ。

 

 パワードは土煙から上空に飛んで現れ、『メガスペシウム光線』を放ち、ギンガダークも即座に『ギンガダークロスシュート』を放つ。だが、お互い光線は直撃せず右肩を掠めるのみで済む。

 

 パワードのカラータイマーは赤く点滅を始める。

 

「時間が無い……これで決める!」

 

 パワードは上空から急降下しながら渾身のキックを放ち、ギンガダークも『ギンガダークスパークランス』を持って飛び掛かり迎え撃とうとする。

 

 両者は空中で相打ちで激突し、大きな爆発が起こる………。

 

 

 

 ギンガダークは爆風の中から現れ着地し、上空を見上げる。だが、そこにパワードの姿は見当たらなかった。ギンガダークはパワードを倒したと判断したのか、その場から何処へ飛び去って行った………。

 

 パワードとギンガダークの戦いを宇宙船『テライズグレート』から見ていた幹部宇宙人たち。その凄まじい光景は、誰もが見入っていた。

 

 「ったく、相変わらずフリーダムな奴だ。」

 

 ギンガダークを目の敵にしているナックル星人ゲドーは、冷たく言う。

 

 「しかし、ウルトラ戦士が味方同士で潰し合うのは見ていて気持ちいい物ですなあ。」

 

 「!ガスト、お前良い事言うじゃねーか!」

 

 ブラック指令ガストの言葉に、(前回ゼロにボコボコにされ絆創膏だらけの)メフィラス星人キョウは何かひらめいたようだ。

 

 「あの小僧と小娘達も、味方同士で争わせれば、絆が途切れ、ウルトラ戦士達も思うように戦えなくなるんじゃないのか?(イテテテテテ………)」

 

 バスコ「なるほど。それは面白い。早速実行するぞ。」

 

 「……と言っても、この作戦にうってつけの奴がいないのですが……」

 

 ガストの言葉に全員「はッ」と何かに気付く。実は、このテラ連合にはもう一人幹部宇宙人がいた。『凶悪宇宙ザラブ星人ブラコ』である。過去に『ウルトラマン』と戦った彼の同族は、ウルトラマンと人類の信頼を崩すために変身能力でウルトラマンに化けて(名:にせウルトラマン)町を破壊したことがある。ブラコもまた、ザラブ族特有の変身能力を得意とする幹部宇宙人である。

 

 幹部宇宙人達は、ブラコがいない事に困る。

 

 バスコ「そういやああいつ、一昨日から「(少し真似する様に)朝の散歩に行ってくるブラ~」って行ってったきり帰って来てねーな…ったく、どこで何をしてんだあいつは…」

 

 「え~い!あんな『タマゴ頭の焼肉ボディ野郎』の事なんか放っておけ!別の作戦だ別の作戦!」

 

 ナックル星人ゲドーはどうやらまだこないだの作戦失敗の事をまだ引きずっているみたいだ(第4話参照)。あれ以来、彼はブラコとは険悪になっている。

 

因みにブラコは、語尾に「ブラ」を付ける喋り方が特徴である。

 

 「ところでさ~…俺今めっちゃ面白そうな人見つけちゃった~」

 

 突然、ブラック指令ガストが陽気な口調で口を挟む。

 

 キョウ「お、面白そうな人と言いますと?」

 

 「ふふふ…今回は俺に任せろ。まあ見てなって。」

 

 ガストは何かを企んでいる様に笑う。一体何が思いついたのか………?

 

 

 キョウの策略を破って翌日、この日の竜野櫂は昼からグラウンドの整理をしていた。そしてP.M.03:00頃、新田真美と眞鍋海羽は櫂を迎えに行っている最中である。

 

 「櫂君って、何でもそつなくこなすから良いよね~。」

 

 「でも、最近それ故に忙しいから、私はサポートしているの。」

 

 海羽は本音を漏らすように櫂を羨ましがる。

 

 「ねえ、櫂君って昔からあんなにパーフェクトでモテモテだったの?」

 

 海羽は、櫂とは幼馴染である真美に櫂の事を聞く。その海羽の質問に真美は少し困惑する。

 

 「……ううん。そうじゃなかったの。」

 

 真美は重い口を開いて言う。海羽は少し顔が変わり「え?」と聞き返す。

 

 「ねえ、今からいう事はあまり広めてほしくないの。約束出来る?」

 

 「…う…うん。」

 

 真美は少しうつむいて話し始めた。

 

 「……実は櫂君、小学生の時はとても気弱で軟弱な男子だったの……」

 

 真美の言い出しに海羽は目を見開いて驚く。真美は話を続ける。

 

 「だから、しょっちゅういじめに遭っててね、その度に泣いてたわ。……私はその度に櫂君を慰めてたんだけどね。」

 

 海羽は、思いもしなかった衝撃的な真実に思わず驚きながら聞き入っている。

 

 更に話を進めていくと、櫂はそんな小学生時代に両親を怪獣災害で亡くしており、中学生時代まで叔母と過ごし、高校時代から一人暮らしを始めていたと言う。また、前記のいじめや両親を亡くしたことから、櫂は「自分や他のモノすべてを守るため、もう二度と何も失わないために強くなる」と強く誓い、小学校時代から想像できない程の努力をしてきた故に、今の様な超絶的な才能を手に入れたという。………最も、同時に性格も変わってしまったわけなのだが………。

 

 櫂に勝手なイメージを持っていた海羽は、櫂の壮絶な過去を知り、少し複雑な気分になる。

 

 「……櫂君、とっても努力してたんだ……何か泣けてきたわ。」

 

 「正直、いつの間にか櫂君が万能になった時は驚いたけどね。でも、今ではとっても頼りになるわ。よしよし…」

 

 思わず涙を流す海羽に真美は優しく頭を撫でながら笑顔で語りかける。

 

 「櫂君、待ってて。今から私と真美ちゃんが手厚く迎えるからね!」

 

 海羽が再び気合を入れたその時、二人は木陰でうずくまってすすり泣きをしている高校生ぐらいの少女を見つけ、歩み寄る。

 

 「どうしたの?何かあったの?」

 

 真美は少女に優しく話しかけ、少女は少し顔を上げる。

 

 「暑いわね……お水飲む?」

 

 真美は鞄から水筒を出して少女に手渡す。水筒を受け取った少女は一口水を飲み、なんとか泣き止む。もっとも、この水筒は櫂のために用意してたものなのだが(笑)

 

 「私は眞鍋海羽。」

 

 「そして私は新田真美。覚えてね。」

 

 「ねえ、お姉ちゃんたちで良かったら言ってごらん。」

 

 「力になるよ。」

 

 海羽と真美の言葉に少女は重い口を開けて話し始める。

 

 「私は早苗………『小野早苗』。」

 

 海羽「へえ~、早苗ちゃんって言うんだ。良い名前だね。」

 

 「大好きな人を……助けたいんです。」

 

 「え?」

 

 真美達は少女の言葉に疑問を感じる………。

 

 

 

 一方、同じ頃櫂は、汗流しグラウンドの整理をしながらゼロに自分の過去を話していた。

 

 「なるほど……お前にそんな過去があったとはな。」

 

 ゼロは驚きを隠せない状態だ。

 

 「俺は今までいろんな青年と一体化してきたが、お前が一番刺激を感じるかもな。」

 

 「まあな。でも、おかげでこんな風に強くなれたから、悔いはないっす!」

 

 「フッ、まあ、これからもよろしくな。苦労して手に入れたその力を、これからも地球のために使っていこうぜ。」

 

 「ああ。一緒に頑張ろうぜゼロ!」

 

 櫂とゼロが再び決意を固めたその時、

 

 「へえ~……お兄さん、とってもすごいんだ………。」

 

 突然話しかける声が聞こえ、櫂は振り向く。そこには高校生ぐらいの一人の少年が少し険しい顔をして立っていた。

 

 「誰だい?僕。」

 

 「僕じゃないです。俺は健二…『稲葉健二』です。」

 

 少年がいきなり話しかけてきたことに困惑しながらも櫂は話す。

 

 「俺に何か様かな?」

 

 「いいえ。何もないです。ただ、俺はあなたみたいな何でもできて信頼される人が羨ましま~と思いまして、思わず話しかけちゃいました。すいません。」

 

 「あ…あははは…いきなりだが、ありがとな。まあ、おかげでこの通りとっても忙しくて参っちゃうけどな。」

 

 櫂は困惑しながらも何とか笑って答える。ひっそり不敵な笑みを浮かべながら………。

 

 「忙しい……ですか……それほど何でもできるって事ですね………実に羨ましいですよ………憎いほど………」

 

 少年は少しドスの利いた声で小声で言う。

 

 「ん?どうした?健二。」

 

 「いや、何でもないです。忙しい中すいません。では、頑張ってください。」

 

 そう言うと少年は手を振って去って行った。いきなりの事だったので櫂もゼロも少し動揺している。

 

 「……何だったんだ?あの少年は……」

 

 「さあな。でも、俺のこと羨ましいって、なんでいきなり言ってくるんだろう?………ま、いいか。そろそろ真美達が迎えに来る頃だろうし、もうひと踏ん張り頑張るぞー」

 

 櫂は再び作業に取り掛かり始める。

 

 

 

 いきなり櫂に話しかけ、別れたばかりの健二はと言うと、一人になった瞬間、表情が一気に険しく変貌する。そして、怒りで右拳を思いっきりビルの壁に叩きつける。

 

 「……あんな奴に、俺の気持ちなんて分かるわけないんだ………!チクショウ‼」

 

 何やら怒り始め、壁を何度も拳で叩き始める。一体彼に何が起こっているのか?

 

 と、その時、

 

 「……いい……いいマイナスエネルギーだねえ。」

 

 突然陽気に話しかける声が聞こえ健二は振り向く。そこには何やらイケメン顔だが表情は何だか恐怖を感じるもので、少し逆立った茶髪にダークなスーツを着た青年が立っている。

 

 「だ……誰だよ?お前。」

 

 「俺はあなたを助けに来たのさ。お前のその気持ち、俺もよ~く分かるからね。刺激だよ刺激。」

 

 「…何言ってんだよ?」

 

 「お前のそのマイナスエネルギー………使わせてもらうぜ!」

 

 そういうと青年は、右手の平から何やら黒いエネルギーを溢れさせている………。

 

 

 

 一方、早苗から訳を聞いている真美と海羽はと言うと、

 

 「………そんな……」

 

 「そう言う事だったなんて……」

 

 二人は何やら驚きを隠せないでいる。

 

 早苗の話によると、彼女は健二とは幼馴染で仲が良く、高校まで同じだったと言う。だが、健二は劣等性で早苗は優等生であるように二人の学力には大きな差があり、更には彼女たちの高校は、女子の方が成績優秀な人が多い事から、男子の立場が段々と弱くなり、やがてその高校は、「女性優勢」の高校となってしまったと言う。(つまり、どんな行事をする際も女子が中心で、男子は女子の言う事を必ず聞かなければいけない。仮に逆らえば単位を落とされる。)正に「男女平等」をポリシーとする麟慶大学からしたら信じられない学園である。

 

 その高校の中でもそこそこ成績が良く、男としてのプライドを持っていた健二は、そんな環境になってしまった事により、勉強が捗らず成績は段々と下がり、ストレスが溜まっていく一方であった。

 

 さらに、そのルールが出来たことと、いじめっ子の女子が増えてきたことで、女子達は調子に乗り、男子の数名が女子からのいじめなどを受けるようにもなったと言う。健二もその一人であった。

 

 女子の中の数少ない良心の早苗はそんな事を知ってはいたが何もしてやれず、やがて健二は高校を辞め、家に引きこもるようになってしまったと言う………。

 

 「私が無力だから……何もしてやれなくて………ケンちゃんは学校に来なくなってしまった………だから、私、彼を助けたいんです。でも、どうすればいいか分からなくて………」

 

 話し終えた早苗は顔を上げる。すると、真美はいつの間にか涙を数筋流していた。健二と早苗の事を聞いて胸を打たれたのだろうか。因みに海羽は、同情の余り木に寄り添って泣いている。

 

 「私、ダメなの………可愛そうな人を見ていると、放っておけないの。力になりたい。」

 

 真美は、涙を拭きながら立ち上がり、少し笑顔で力になりたいことを伝える。

 

 「本当ですか?ありがとうございます。」

 

 「私たちに任せて。早苗ちゃん。」

 

早苗は元気を取り戻し、少し笑顔になる。真美も笑顔を返し、海羽も泣き止み、笑顔でサムズアップをする。

 

 「とりあえず、まずは健二君を見つけないとね。」

 

 真美達は健二を探そうとした。その時、

 

 「探す必要はないし、助ける必要も無いよ。」

 

 突然声がしたので三人は振り向く。そこには健二が立っていた。

 

 「!ケンちゃん?」

 

 早苗は健二の思わぬ言葉に動揺する。

 

 「俺はもう、誰からも助けてもらう必要はない。」

 

 「そんな事言わないで、ほら、このお姉ちゃん達が力になってくれるよ。」

 

 「……力なら、もうすでに手に入れてるよ。」

 

 そう言うと健二はポケットから何かを取り出す。それは、『ウルトラセブン』の人形だった。だが、それは何やら黒いオーラの様な物を放っている。

 

 健二はウルトラセブンが好きで、お守りとして人形を常に持ち歩いており、何か嫌なことがあると、それを見つめてセブンの活躍を思い出し元気を出していたと言う。そんなセブンの人形がいつもと違う事に早苗は気づき動揺する。

 

 「?セブンの人形が何かおかしい……ケンちゃん、一体何があったの?」

 

 「力を貰ったのさ。ある黒い格好の茶髪でイケメンの青年にね。」

 

 真美達も不安な表情で健二と早苗のやり取りを見つめる。

 

 「何言ってるの?もう苦しむことは無いのよ。ここにあなたが苦しみから解放される様に協力してくれる人もいるから。」

 

 「……そんなことをしたところで、変わるのか⁉男が虐げられる環境が!」

 

 早苗は必死に声を掛けるが、健二の言葉に思いとどまる。

 

 「俺はもううんざりなんだよ……男が女に屈する環境が……これまで俺は、どんなに男が軽蔑されても、女子の後に言われても、我慢してきた………死ぬかと思ったんだぞ。だが、環境は一向に変わろうともしない………!俺はただ、仲良くしたいだけなのに………「男子と女子」という順番じゃなきゃ、満たされないのに‼」

 

 健二は少し男としてのプライドとしての本音を吐きながらも自分の苦しみを訴える。早苗は俯き始める。健二は話を続ける。

 

 「……だから俺はこの力で変えるんだよ……まずは男が一方的に軽蔑される学校をぶっ壊し、弱い男が増えつつあるこの世の中を……変えてやるんだーー‼」

 

 「なるほど、そういう事か。」

 

 突然声がした方に健二は振り向く。そこには、グラウンドの整理を終え、後を付けて来た櫂だった。

 

 「!櫂君。」

 

 真美達は驚きながらも少し安心する。

 

 「お…お前は……!」

 

 「お前の気持ちは良く分かる。俺も昔は、酷いいじめられっ子だったからな。」

 

 櫂の言葉に真美達は「はっ」と言い、健二と早苗も少し驚く。

 

 「だがな、俺は努力を続けてこれほどまでに成長した……健二、お前も努力すれば、思いっきり変われるんじゃないのか?」

 

 健二はいらだつような表情で少し俯く。

 

 「世の中男女平等だぞ。」

 

 だが、その言葉を聞いた瞬間、健二は突然顔を上げ、櫂を突き飛ばす!

 

 「平等って何さ⁉だからって、女をひいきしてもいいってのか‼」

 

 櫂は少し動揺し、早苗は口を押えて驚く。

 

 「その平等の所為で、男の立場がどれだけ弱くなりつつあると思うんだ‼………変えてやる……この力で、再び男の強さを見せつけ、世の中を変えてやるーーー‼」

 

 健二は興奮のあまり、号泣しながら叫び、怪しげなオーラを放つセブンの人形を揚げる。

 

 「⁉あれは、親父の人形⁉」

 

 ゼロは、健二が自身の父親(ウルトラセブン)の人形を持っていることに驚く。

 

 セブンの人形からは、黒っぽい青のエネルギーがあふれ、健二はそれに包まれて巨大化する。そして、なんと「ウルトラセブン」の姿となった!

 

 驚愕するゼロと櫂達。

 

 早苗「そんな……」

 

 櫂と真美、海羽は戸惑うようにセブンを見上げ、早苗は膝を付き愕然とする。

 

 「……よりによって親父の姿にかよ……。」

 

 ゼロは偽物とはいえ自身の父親の姿になった健二に動揺する。

 

 「どうだ早苗!俺はこの様に誰にも屈しない力を手に入れた!この力で、俺は自分が満たされる世界を作るんだーーー‼」

 

 セブンの姿になった健二は荒れ狂う野獣が雄たけびを上げる様に上を向いて叫んだ後、暴れようとする。

 

 「あれは……親父の様で親父じゃねえ…あの少年の邪念がマイナスエネルギーの影響でセブンの人形と一体化して変身した……いわばあれは、『妄想ウルトラセブン』だ!」

 

 ゼロは健二が変身したセブンが『妄想ウルトラセブン』だと言う事に気付く。妄想ウルトラセブンはかつて、暴走族によって重傷を負わされたサッカー少年の邪念が、彼が持っていたセブンの人形に乗り移って巨大化する事で出現したことがある。その時は当時地球で活躍していた『ウルトラマン80』と戦っている。

 

 今回は、虐げられた少年の邪念が実体化したものと言えよう。

 

 「させない……苦しい気持ちはわかるけど、そのために他の人を傷つける訳には……」

 

 海羽は何処か悲しげな表情で俯きながら『ハートフルグラス』を取り出しゆっくり静かに前に突き出す。

 

 「だから、今はあなたを止める!」

 

 海羽は一回転してハートフルグラスを目に当て、光に包まれ巨大化し『ウルトラウーマンSOL(ソル)』へと変身した。

 

霞ヶ崎のとある広大な平地で、戦いは始まる。ソルは妄想ウルトラセブンに駆け寄り、腕にしがみ付く。彼を説得しようとしているのか。

 

 だが、妄想ウルトラセブンはそれを振りほどき、容赦なくパンチ、キックなどで攻撃を仕掛け、ソルはそれを必死で受け止め続ける。

 

 櫂は怒り・悲しみ・憎しみの赴くままに攻撃する妄想セブンと防戦一方のソルを見て、変身をためらい、ゼロもまた、偽物とはいえ自身の父親と戦う事に抵抗があるのか、ゼロアイを出す事をためらう………。

 

 早苗は悲しさで膝を付いて泣き始め、真美は泣いている彼女の背中を摩っている………。

 

 戦いは激しく土煙が上がる。ソルは防戦一方から、容赦ない攻撃に徐々に押され始め、やがて顔面、腹部にパンチを喰らう、脇腹に蹴りを喰らうなど一方的に攻撃を受け始める。

 

 苦戦するソルを見て櫂の焦りは募り始める。やはり戦うしかないのだろうか………。

 

 ソルは右前蹴りを胸部に喰らい地面に仰向けに倒れる。ダメージにより横たわり身もだえるソルに妄想セブンは容赦なく右腕を踏みつけ、続けて腹部を踏みつける。

 

 「もうやめて!争ったって何の解決にもならないよ!」

 

 「うるせー‼女であるお前に、虐げられた男の気持ちが分かるのか⁉引っ込んでろ‼」

 

 ソルの必死の呼びかけも空しく、妄想セブンはソルの腹部を踏み続ける。

 

 

 その時、妄想セブンの言葉を聞いた櫂の目つきが変わった……そして、UBの付いた左腕をゆっくりと胸前で折り曲げる。すると、UBから『ウルトラゼロアイ』が現れる。櫂もゼロも、ついに戦う事を決心したのだろうか………。

 

 「レッツ……ゼロチェンジ……!」

 

 櫂はいつもより静かに掛け声を言い、ゼロアイは櫂の目にくっ付く。櫂は光の中でゼロの姿に変わり巨大化する。

 

 妄想セブンもゼロの登場に気付きソルへの攻撃を止める。

 

 「ゼロ……お前も俺の邪魔するのか………なら、倒す‼」

 

 「やってみろよ……!お前なんかに負けねーよ。」

 

 「ほざけえええぇぇぇ‼」

 

 妄想セブンは逆上してゼロに駆け寄り始め、ゼロも駆け寄る。

 

 まずはお互い駆け寄りながら繰り出す右跳び蹴りがすれ違う。そして、ゼロの右回し蹴りを妄想セブンはしゃがんでかわし、一回転して右拳を繰り出すがしゃがんでかわされる。

 

 その隙にゼロは身体を起こしながら右アッパーを顔面に決める。妄想セブンは怯まず右横蹴りを繰り出すがゼロはそれを両腕を胸前で折り曲げて防ぎ、その後ゼロは再び右アッパーを繰り出すが妄想セブンはそれを顔を左に反らせて防ぎ、お返しとばかりに右横振りの右拳を放つがゼロはそれをしゃがんでかわし、その後お互いほぼ同時に右横蹴りを繰り出すが相打ちになりお互い後退する。

 

戦っていくうちに、健二と早苗の心に反応するかのようにさっきまで晴れていた空が一気に雨雲に覆われ雨が降り始める。夏の夕立であろう。

 

 雷雨が降り注ぐ平地で戦う二人は次第に泥まみれになっていく。

 

 二人は駆け寄りながらお互い右拳を繰り出すがまたしても相打ちになる。妄想セブンは抱き付くようにゼロの胴体にしがみ付き、そのまま押し倒す。そして、ゼロを掴んで起き上らせ、胸部に右膝蹴りを打った後、アウトローに右前蹴りを腹部に打ち込んで転倒させる。

 

 妄想セブンは仰向けに横たわるゼロをあざ笑うようにゆっくりと歩み寄り、倒れるゼロの腹部に蹴りを入れ始める。ゼロが苦しむのを楽しむかのように連続で蹴り続ける。三発、四発、五発と蹴りを入れ、右肩を踏みつけグリグリした後、さらに憎しみを込める様に二、三発と乱暴気味に腹部を踏みつける。その姿はまるでヤクザの様だ。

 

 二人の体は既に泥まみれになっており、文字通りの泥試合が続く。妄想セブンはゼロを掴んで起き上らせると、顔面に右膝蹴りを打った後、しがみ付くように前屈みのゼロの胴体を掴み、そのまま後ろに倒れこむように叩きつける。

 

両者の体はもはや原型を留めない程に泥まみれになっており、激しい戦いにより泥が飛び散る。ソルは雨に打たれながら二人の戦いを見つめ、真美達も雨宿りをしながら一方的にボコられていくゼロを見守る………。

 

 はて、歴戦の勇士であるゼロがなぜこうも押されているのか………?

 

 「………なぜだ……なぜ攻撃してこない⁉」

 

 妄想セブン(健二)もさすがに違和感を感じ始める。だがゼロは立って身構えたままである。

 

 「……答えろよ………答えろー‼」

 

 妄想セブンは逆上し、腕をL字に組んで『ワイドショット』を放つ。光線がモロ胸部に命中したゼロは吹っ飛び、仰向けに倒れる。更に妄想セブンはゼロに馬乗りになり、顔面の左側面を殴り始める。

 

 「答えろ‼答えろ‼ お前は俺に同情してんのか⁉ 答えろ‼答えろ‼ ふざけんな‼エリートなんかに俺の気持ちが分かるもんか‼ 答えろ‼……」

 

 ゼロはただ殴られ続ける。妄想セブンはゼロを数回殴った後、倒れるゼロの横腹を右足で蹴り、転がした。

 

一向に攻撃せず、一方的にやられ続けるゼロを見て居ても立っても居られなくなったのか、早苗は雨宿りの場から飛び出し叫び始める。

 

 「櫂さん!どうして反撃しないのですか⁉やられちゃいますよ~‼」

 

 その時、ゼロは泥まみれの身体をゆっくり起き上らせながら櫂の意思で早苗に語り掛ける。

 

 「……早苗、お前に聞きたいことがある。」

 

 「……え?」

 

 「お前には健二と俺、どっちが苦しんでると思うんだ?」

 

 櫂の思わぬ言葉に早苗はふと困惑した後、思い止まる。ゼロはなおも語り掛ける。

 

 「さあどうなんだ?殴られた俺と、殴った健二。傷ついてるのはどっちだ⁉」

 

 そう、竜野櫂は、健二や早苗の気持ちが痛いほど分かるが故に、そして、早苗に本当に傷ついてるのは健二だと気づかせるために、わざとやられ続けてたのだ。

 

ゼロの言葉を受けた早苗は妄想セブンの姿の健二をじっと見つめる。すると、「はっ」と何かに気付く。

 

 「攻撃しながら………泣いてた?」

 

 早苗はようやく気付いた。健二の変身しての暴走は、憎しみだけではなく、悲しみでもあったと言う事を。そして、粗い呼吸をする妄想セブンを見上げながら、彼にに近づくように歩き始める。

 

 「ケンちゃん……ごめんね。……私、何もしてやれなくて……。」

 

 妄想セブンは早苗が語り掛けているのに気づく。

 

 「私はまわりの空気に押されて過ごして来た……。でも、今度こそあなたを救いたいの……。友達として、あなたを助けたい!」

 

 ゼロとソル、そして真美は見守り続ける。

 

 「これからは………あなたのためなら何でもする……。あなたを満たすためにも努力するから……。だからお願い。元に戻って!」

 

 “ドクンッ”

 

 早苗の声が、フェードアウトする様に妄想セブンの中の健二に響く。そして、妄想セブンは葛藤を始めたのか、苦しむように頭を抱え始める。

 

 ゼロ「よし、相手の力が緩み始めた。今なら奴を倒せるぞ!」

 

 櫂「……ああ。」

 

 ゼロはゆっくりと呼吸を整えながら頭部からゼロスラッガーを取り出し構える。

 

 「切り裂いてやるぜ……お前の闇を!」

 

 ゼロは体中の泥を散らしながら苦しむ妄想セブンに駆け寄る。そして、すれ違い様にまずは右手のゼロスラッガーで腹部を切り裂き、その後一回転して左手のゼロスラッガーで腹部を斬りつける。妄想セブンの腹部には「✖字」の傷が出来た。

 

 妄想セブンは数秒苦しんだ後動きが止まり、仰向けに倒れて爆発した。

 

 爆発を背に、ゼロはゼロスラッガーを頭部に収め、泥まみれの体で凛々しくもどこか虚しさを感じさせるかのように立っていた………。

 

 

 

 

 ゼロが変身を解いて櫂に戻ったと同時に夕立が止み、日が差し始める。櫂達は急いで妄想セブンの爆発した方へ駆け寄る。その場には、健二が横たわっていた。

 

 「……!ケンちゃん!」

 

 早苗は真っ先に駆け寄り、必死に何度も呼びかけるが、健二は一向に反応しようとしない……。早苗は、健二が死んでしまったのではないかと泣きそうになる。

 

 櫂「きっと、闇の力で変身した事での負担やその闇から解放された事での衝撃や疲れで眠っているだけじゃないのかな。」

 

 櫂は早苗の肩に手を置き、話しかける。

 

 真美「そうね。病院に連れて行った方がいいかもね。」

 

 真美は、気落ちする早苗にしゃがみ込んで話しかける。

 

 海羽「さあ、行こう。」

 

 海羽は笑顔で早苗に手を差し伸べる。早苗は少し硬めの笑顔で手を握り立ち上がる。

 

 四人は、健二を病院へ運び始めた………。

 

 

 

[エピローグ]

 

『テライズグレート』では、ブラック指令ガストが、妄想セブンが倒されるところを見ていた。

 

 「あーあ、やられちまったよ………。マイナスエネルギーはある程度集まったが、これじゃあ俺の作戦を実行するには少なすぎるなあ……」

 

 ガストは右手の水晶を上に揚げる。すると、水晶が光った瞬間、それに応えるかのように電球の様な丸く透明な体に下部からは無数の赤い触手が無数に生えていて一見クラゲの様にも見える生物『円盤生物シルバーブルーメ』が現れる!

 

 「シルバーブルーメ、ちょっくら行ってこい!」

 

 シルバーブルーメは、ガストの命令に反応し、地球向けて飛び始めた………。

 

 (ED:赤く熱い鼓動)




 今回の戦闘シーン、『ウルトラスーパーファイト』をご覧になった人なら気付いたと思います(笑)

 次回、新たなゲストウルトラマンが登場します!

 感想・指摘・アドバイス・リクエスト等をお待ちしています。


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第12話「闇からの勝利」

 今回、満を持してあのウルトラマンが登場します。

 また、今回はところどころショッキングな描写もありますのでご了承ください。


 (OP:TAKE ME HIGHER)

 

女子優勢の高校生活により生まれた闇で稲葉健二が妄想ウルトラセブンに変身して暴走する事件が解決したほぼ同じ頃、その健二と(小野)早苗が通っている高校では、その日は部活がある日であったため、健二と早苗以外の学生ほぼ全員が学校に来ていた。

 

 因みにこの学校の部活は顧問がおらず、女子学生が指導する様になっている。そのため、部活だけの休日は基本、先生たちはお休みなのだ。

 

とある男子生徒たちが、バレーボールの練習をしながら健二の事について話をしていた。

 

 男子A「健二の奴、今日も来なかったね。」

 

 男子B「ほっとけあんな奴。今に始まった事じゃないだろ。」

 

 男子A「しっかし最近は早苗も来なくなったよな~」

 

女子A「そこ!練習中におしゃべりしない!」

 

 男子B「!……うぃー。ったく、それにしても女子ったら……自分たちが優勢だからって威張りすぎな気がすんだよなー。なあ。」

 

男子Aは話しかけるが、男子Bはどうした事か、上を向いたまま固まっている……。

 

 「っておいおい!一喝されたぐらいで固まんなよ!」

 

 だが、男子Bは一向に反応しようとしない……。男子Aもその方向へ振り向いてみる。

 

 すると、空の向こうから何やら奇妙な物体が急接近してくるのが見える。それも、自分たちの方へとだ!その物体は身体を縮小した円盤形態で飛んでいる『円盤生物シルバーブルーメ』である!

 

 「こ、校舎になにかが接近してくるぞ……わーぶつかるー!」

 

 “ドガーーーン‼”

 

 突如空から襲撃してきたシルバーブルーメは、校舎に勢いよく激突。校舎は崩れていき、中に入っている学生たちも必死に逃げようとするも空しく、校舎の倒壊に巻き込まれ次々と死んでいく………。

 

 突然の出来事に校外で部活をしていた学生たちもパニックを起こし、我先にと逃げ惑い始めるが、即座にシルバーブルーメが放った毒ガスや溶解液により、次々と学生たちが殺られていく………。

 

 男子Aと男子Bも逃げ惑うが、その時、彼らの前にフランス人形を持った幼い少女が立ちふさがる。

 

 男子A「お、おい君!早く逃げないと君も殺されちゃうよ‼」

 

 「逃げる必要はないよ……。」

 

 少女は無邪気な声で話し始める。

 

 男子B「……それは、なぜ?」

 

 「それはね………もうすぐお兄ちゃんたち、全滅だから。」

 

 少女がそう言うと、彼女が持っていたフランス人形の口からガスが噴射される。そのガスは冷凍ガスのようで、それを浴びた男子A及び男子Bは、僅か数秒で全身が凍り付き、凍死した………。

 

 その高校はやがて、シルバーブルーメの攻撃により全壊し、学生たちも、屋内屋外含め、シルバーブルーメの攻撃や謎の少女のフランス人形の冷凍ガスによって全滅してしまった………!

 

 さっきまで大勢の学生で賑わっていた高校があっという間に全壊し、沈黙に変わった……あまりにも早すぎる激変は正に不気味である。

 

 フランス人形を持った少女は廃墟となった校舎を歩きながら何やらフランス人形に紫色のエネルギーを集めていく。恐らくマイナスエネルギーであろう。そして、吸収し終えた後、少女は可憐な顔には似合わない不敵な笑みを浮かべた後。その場から姿を消した………。

 

 シルバーブルーメは、次は町を破壊しようとしている。

 

 と、その時、

 

 シルバーブルーメは町を破壊しようと進もうとした時、何者かに掴まれ抑え込まれる。『ウルトラマンパワード』だ。彼はギンガダークとの闘いの後、無事だったようだ。

 

 だが、どうした事か、カラータイマーは赤く点滅している。ダメージがまだ癒えてないのだろう。

 

 数秒の力勝負の後。パワードは何とかシルバーブルーメを押し飛ばすが、その直後に右膝を付いてしまう。

 

その隙にシルバーブルーメは、触手を伸ばし、パワードの首、両手足に絡めて持ち上げる。そして、締め上げ始める。

 

 「ウルトラマンパワード、これで貴様も最期だ!」

 

 ガストの声と共にシルバーブルーメはパワードに止めを刺そうとする………!

 

 その時、

 

 「ビクトリウムスラッシュ‼」

 

 突如、横から巨人が飛び込んできて、すれ違い様に回し蹴りの如く足の黄色いV字型のクリスタルからV字の光弾を放ち、触手を切断してパワードを開放する。

 

 パワードは「はっ」と巨人の方を向く。その巨人は赤と黒で構成されたスマートなボディに、全身にV字の黄色いクリスタルが備わっているウルトラマン、『ウルトラマンビクトリー』だ。

 

 彼はギンガの世界でウルトラマンギンガと共に戦ったウルトラマンであり、地底の民『ビクトリアン』の守護神でもある。彼もギンガ同様、ウルトラウーマンSOL(ソル)に呼ばれてこの世界にやって来たのだ。

 

 シルバーブルーメは、ビクトリー目掛けて触手を伸ばすが、ビクトリーは軽い身のこなしでそれを避けていく。そして、跳躍して上空のシルバーブルーメに右横蹴りを叩き込んで落とす。

 

 「ビクトリウムバーン‼」

 

 ビクトリーは、頭部のクリスタルから破壊光線『ビクトリウムバーン』を放ち、シルバーブルーメを吹っ飛ばす。シルバーブルーメは既にグロッキーだ。

 

 「くそっ、だが目的は果たせた。シルバーブルーメ、ここは一旦引け!」

 

 シルバーブルーメは、身体を縮小させ、空の彼方へ飛んで去って行った………。

 

 二人のウルトラマンは変身を解く。ダメージで座り込むケンイチ・カイの前には、礼堂ヒカル(ギンガの変身者)と同じく「UPG」のユニフォームに身を包んだ、ビクトリーに変身する青年「ショウ」が立っていた。彼はギンガの世界の地底の民『ビクトリアン』の青年であり、所謂地底人でもある。

 

 「……またしてもお前に助けられたな……。」

 

 「ったく無茶しないでください。まだダメージが残ってるのですから。」

 

 そう、ギンガダークとの闘いからパワードを助けたのはビクトリーでもある。カイは、ギンガダークとの戦いのダメージが癒えてない状態で、シルバーブルーメに戦いを挑んでいたのだ。

 

 「すまねえな。しかし、シルバーブルーメから校舎を守れなかった……。」

 

 「ああ。奴のスピードはあまりにも早く、俺でも間に合いませんでした。申し訳ありません。」

 

 ショウは、廃墟となった校舎を見つめながらカイに謝罪し、怒りからか拳を強く握る。

 

 「次また奴らが攻めて来た時のために、早く傷を治さないとな。」

 

 カイは、傷を病院で診てもらう事にした。二人は最寄りの『日暮第三病院』に向かって歩き始める。

 

 (しかしヒカルの奴……なぜあんな事に……)

 

 ショウは、カイの腕を自身の肩に回しながら、戦友の事を思い続けていた………。

 

 

 

 そして翌日、竜野櫂と新田真美、眞鍋海羽は、早苗と共に日暮第三病院で入院している健二のお見舞いに来た。医師の話によると、彼は特に大きな怪我は無く、僅か三日で退院できるみたいだ。

 

 三人は健二の病室に入る。

 

 海羽「失礼しまーす。やっほー。見舞いに来たよ。」

 

 早苗「具合はどう?ケンちゃん。」

 

 話しかけるが、健二はベッドに座り、どこか憂鬱そうな顔で窓の外をぼーっと見つめている。

 

 櫂「具合自体は悪くなさそうだが……」

 

 真美「あまり元気がないみたいね………。」

 

 ゼロ「そのようだな…ま、結構苦しんでたんだ。そうすぐには立ち直れないだろう…。」

 

 櫂と真美は心配そうな顔で見つめながらひそひそ話を始める。

 

 真美「看護婦も、昨日からあんな感じで、話しかけても素っ気ない返事ばかりだと言ってたし……」

 

 櫂「闇のエネルギーを消し飛ばすだけじゃ、彼の心は救えなかったのだろうか………。」

 

 海羽と早苗が話しかけても軽く頷くだけで口を開こうともしない……。四人は深刻になり始める。

 

 と、その時、

 

 「今はやめた方がいいぞ。相当気落ちしているみたいだしな。」

 

 突然隣のベッドから話しかける声がしたので四人は振り向く。そこには、健二と同じく昨日から入院しているケンイチ・カイだった。

 

 海羽「⁉カイさんも⁉……一体何が?」

 

 「い…いや~…ち、ちょっと色々あってな。大丈夫。翌日には退院できるみたいだから。」

 

 カイは、ギンガダークの事を今は話すまいと何とか苦笑いで誤魔化した。

 

 ゼロ(……あの様子…何かあったに違いない……)

 

 カイ「それよりも、そろそろお見舞いが来るはずだ。」

 

 真美「お見舞い?」

 

 その時、病室の扉が開く。入って来たのは、カイのお見舞いに来たショウだった。

 

 「具合はどうですか?カイさん。」

 

 「ああ、だいぶ良くなっている。」

 

 海羽は恐る恐る近づき話しかける。

 

 「あ…あの~…もしかしてショウさんですか?」

 

 「?そうだが、なぜ俺を知っている?」

 

 ショウはいきなり見知らぬ少女に話しかけられた事に少し困惑する。だが、すぐに察した。

 

 「…もしかして、俺を呼んだのはお前か?」

 

 「はい、そうです!来てくれたのですね!」

 

 ゼロ「よ、エタルガーとの闘い以来だな」

 

 海羽は嬉しそうに返事をする。櫂と真美は少し困惑する。

 

 ショウは櫂達に全てを話した。自信の出自、ギンガとの関係、そして、自身もウルトラウーマンSOL(ソル)に呼ばれて来たと言う事を……。

 

 真美「つまり、この世界では伝説であるギンガも来てくれてるって事なのね。」

 

 櫂「で、そのギンガの変身者ってのはどこなんだ?」

 

 「い…いや、実はその……」

 

 ショウは、少しためらいながらもギンガダークの事を話そうとした、その時。

 

 「続いてニュースです。昨日午後五時ごろ、霞ヶ崎市の高校が謎の倒壊を起こしました……」

 

 突然のつけていたテレビのニュースの声に四人は思わずテレビに見入る。その倒壊した高校とは、昨日シルバーブルーメによって破壊された健二と早苗の高校だった!

 

 ニュースの声によると、余りにもいきなり過ぎたため、目撃者もほとんどおらず、謎の老朽化による倒壊事故として見られているとのこと………。テレビには、全壊して廃墟となった校舎や殺された生徒たちの親族たちの悲しむ様子が映っていた………。

 

 「そんな………高校が…全壊するなんて……」

 

 ほぼ嫌な思い出しかないとはいえ、いきなりの母校倒壊の事実を聞かされ、早苗は驚き、すすり泣きを始め、櫂達も悔しさからか拳を握って下を向き、ショウも再び自身の無力さを痛感したのか、少し俯く。

 

 「くそっ…円盤生物め……。」

 

 カイも悔しさで顔をしかめながら小声で呟く。

 

 「これにはきっと何かがある…。原因を突き止めないとな。」

 

 櫂が言ったその時!

 

 「ふんっ!男を虐げたりするから天罰が当たったのさ!」

 

 突然、健二が立ち上がって思わぬことを言い出す。櫂達と早苗は驚愕する。

 

 「これでいいんだよ!結局は女性優勢事態間違っていたって事だ!男女平等だか女性の社会進出だか知らねーが、だからって男を雑に扱えばいいってもんじゃねーし!世の中まだまだ男性社会なんだよ!」

 

 健二の言葉に早苗は暗い顔になり始める。ゼロも信じられない地球人の発言に言葉を失う。健二はなおも言葉の暴走を続ける。

 

 「ふはははははは、ざ・ま・あ・み・ろ!所詮女の時代はこんなもんなんだよ!はははははは…」

 

 「もうやめて‼」

 

 気が狂ったかのように言いたい放題の健二の声を遮るように早苗が叫ぶ。

 

 「……嫌な事ばかりだったかもしれなかったけど、校舎が壊され、たくさんの犠牲者が出たんだよ?……。そこは悲しもうよ……。」

 

 早苗は健二の右肩に右手を置く。

 

 「…それに、言ったじゃない。もう苦しむことは無いって…。私が、友達として出来る限りサポートするから。」

 

 だがその時!

 

 「だからそれが気に入らねーんだよ‼」

 

 健二はあろうことか、早苗の手を乱暴に振り払い、さらに肩を突き飛ばす!他の五人もその光景に驚愕する。

 

 「女にコケにされ続け、今度は女に助けられるのかよ………!まるで俺が、みじめな男みたいじゃねーか!」

 

 そう。健二の消え切ってない闇とは、自身がいつまでも女に弱い者扱いされているのではないかと言う事からの“男としての”劣等感、情けなさだった……。

 

 看護婦に優しく話しかけられても素っ気ない返事ばかりだったのも、そのことに対する意地からだったのだ。

 

 「そもそも俺に限らず、男は差別され過ぎではないのか⁉ 男女平等だか知らないが、それだからって何をしてもいいってことは無いだろ‼」

 

 「ケンちゃん…」

 

 「そもそも所詮女は昔差別されてた身だろ⁉そのくせに今ではやりたい放題でさ!生意気なんだよ!」

 

 健二の暴言を聞く櫂は、顔をしかめて怒っているように見せかけて、ひっそりと不敵な笑みを浮かべる……。そう、忘れてはならない。彼もまた、ほぼ同じような考えを持っていることを……。

 

 「男は強い……立場も高い……少なくとも女よりは遥かにな!俺だってそれなりの強さを持っている!それなのに、何でいっつも女なんかにコケにされなきゃなんないんだ⁉」

 

 健二の残酷な言葉を聞き続ける早苗は再びすすり泣きを始め、海羽ももらい泣きしようとしている………。

 

 と、その時、ベッドに座っていたショウが立ち上がり、健二の元に歩み寄る。そして、

 

 “バゴンッッ!”

 

 ショウは、あろうことか右拳を健二の顔面の左側面に叩き込む!

 

 驚愕する櫂達六人。健二もベッドに倒れこみ、左頬を押さえながら驚きつつも睨み付けるような顔で見つめる。

 

 海羽「ちょ……何するんですか⁉」

 

 真美「怪我人ですよ?」

 

 健二「な……何だ⁉お前……。」

 

 ショウは健二を数秒睨んだ後話し出した。

 

 ショウ「哀れだな……。」

 

 健二「…何がだよ⁉」

 

 ショウ「お前は何も分かっていない。それが哀れだと言っているんだ!」

 

 健二「そうか…分かったぞ!お前が女どもをまとめ上げているボスだな⁉」

 

 ショウの意味深な発言に健二はまたしても気が狂い逆上する。

 

 「お前は自身を見失っている……。自分が一番不幸で、それを演じる事によって他人の同情を買おうともしている……違うか?」

 

 「…だまれ………エイリアンめ………!」

 

 健二は荒い呼吸をしながらショウを睨み付ける。

 

 「エイリアンか……確かにそれみたいなもんだ。ウルトラマンに変身できるからな。だが、自尊心を傷つけられた事への混乱で暴走しているお前こそ、エイリアンじゃないのか?」

 

 ショウの言葉に健二ははっと思いとどまる。

 

 「俺はお前の全てを知っているわけではないが、お前の気持ちが分からないわけでもない。俺もかつて、強さを持った自分は、一人で十分戦えると思っていたからな。」

 

 ショウは、自尊心で暴走している健二に、かつての自分を重ねる。そして、『キングジョーカスタム』のスパークドールを取り出して見つめ始める。

 

 「だが、協力してくれる仲間たちを見て気付いたんだ。人の助けを借りない事は、強いとは違うと…。強さは、一人で作り上げる物じゃないと言う事を…。」

 

健二はなおもショウの言葉を聞き続ける。

 

 「個人的なプライドを持つのは決して悪い事ではない。だがそのために、邪な考えに負け、他人を傷付けてはならない……自分が一番大切だと思うモノを思え…そして勝つんだ、己の心の闇に。」

 

 ショウは健二に拳を突き付け語った。

 

 ゼロ「ショウ……へッ、お前、良い事言うじゃねーか。」

 

 ゼロはショウの成長を感じていた。更に、カイが横から語り掛ける。

 

 「君は、『レディーファースト』というのを知ってるか?」

 

 健二ははっと顔を上げる。

 

 「欧米風の習慣ではあるんだが…単に女性を優先するのとは違う。女性に親切にすることだ。男の強さにこだわる君は、もしかしたら昔堅気なところがあるのかもしれない…それはそれで良い事だ。だがな、男は女に親切にしてこそ、本当に強くなれるんじゃないのかな。」

 

 カイは、外人らしくレディーファーストを例にアドバイスをする。カイの言葉に健二は何かを考えるかのように俯き始める。ショウたちの言葉に考えを変え始めたのだろうか………?

 

 と、その時、

 

 「あーあ、せっかくその人(健二)からマイナスエネルギーが集まってたのに……」

 

 突然、少女の声がしたので全員振り向く。そこには、フランス人形を持った少女が立っていた。

 

 「どうしたの?君。迷子?」

 

 真美が歩み寄り話しかけたその時、少女はニッと笑い、フランス人形の目が光る。

 

 「ッ!危ない!」

 

 ショウは咄嗟に真美を突き飛ばす。すると、フランス人形の口から冷凍ガスが発射される!ガスは花の入った花瓶に当たり、花瓶はあっという間にカチンカチンに凍り付いた。驚く櫂達。

 

 フランス人形は、今度はショウ目掛けて冷凍ガスを噴射するが、ショウはそれを受け身を取ってかわし、ビクトリーに似たカラーリングの槍状のアイテム『ビクトリーランサー』を取り出し、拳銃型のガンモードに変形させ、フランス人形を打ち抜く!

 

 穴の開いたフランス人形は床に落ち、やがて爆発し砕け散った。

 

 ショウ「お前は何者だ⁉」

 

 「ふふふふふふ……やってくれたなウルトラマンビクトリー。だが、必要なマイナスエネルギーは既に十分集まっている。ついでに皆殺しだ!」

 

 少女はそう言うと、目を光らせて消滅する。すると、空から二つの円盤が飛来する。

 

 一方はシルバーブルーメ、もう一方は、円盤の様な姿から前後両方に顔を持つ二本足を持つイカの様な外見の生物『円盤生物ブリザード』に変形する。

 

 因みに先ほどの少女とフランス人形はブリザードの分身体であり、フランス人形にマイナスエネルギーを集めては本部に戻り、ブラック指令ガストに届けていたのだ。

 

 「シルバーブルーメ、ブリザード!今度はその病院を破壊して皆殺しだ!」

 

 どこからか響いたガストの声を受け、二体の円盤生物は病院を破壊しようとする。

 

 ショウ「……健二、お前に見せてやる。協力する事が、強さを……勝利をもたらす事を。」

 

 海羽「それと、強い女性もいることもね(ウィンク)」

 

 ショウはビクトリーランサーをガンモードから槍状のランサーモードに変形させ構える。櫂と海羽もそれぞれ『ウルトラゼロアイ』と『ハートフルグラス』を取り出し構える。

 

 櫂「てめーらが大勢を殺し、健二たちをさらに苦しめやがったのか……許せねえ……!」

 

 ショウ「行くぞッ‼」

 

 ショウはビクトリーランサーを前に突き出し、ビクトリーのスパークドールを出現させ、それを手に取り、ランサーの柄の中央のスパークリーダーに左足のライブサインを当て、リードする。

 

 《ウルトライブ‼ウルトラマンビクトリー‼》

 

 電子音声と共にランサーの先端の矢尻部分が開きビクトリーの顔を象った彫刻が現れる。そして中から光となったビクトリーが現れ、ショウもそれと同時に飛び、一体化した後、右手を揚げて巨大化する。

 

 「レッツ、ゼロチェンジ‼」

 

 櫂と海羽も、櫂の掛け声でそれぞれゼロアイとハートフルグラスを目に当て、光に包まれ『ウルトラマンゼロ』と『ウルトラウーマンSOL(ソル)』に姿を変え巨大化する。

 

 まばゆい光が円盤生物の前に現れ、中からゼロとソル、そして『ウルトラマンビクトリー』が姿を現した!健二と早苗は驚き顔を揚げる。

 

 健二「……あいつらは一体……?」

 

 真美「あなた達を闇から救ってくれるウルトラ戦士よ。」

 

 真美は優しく健二の肩に手を置く。真美達四人は戦いを見守り始める。

 

 「…!かっこいい~!」

 

 ソルは思わずビクトリーを二度見する。

 

 「言ってる場合じゃないぞ…」

 

 ショウはクールに言う。だが、女の子にかっこいいと言われたためか、どこか嬉しそうだった。

 

 ゼロ「さあ、行くぞ。ブラックホールが吹き荒れるぜッッ‼」

 

 ゼロの掛け声とともに、三人は構えを取る!

 

 (BGM:ウルトラマンビクトリーの歌)

 

 三人は円盤生物目掛けて駆け寄る。ビクトリーVSブリザード、ゼロ&ソルVSシルバーブルーメとそれぞれの戦いが始まった。

 

 ビクトリーは跳びかかるとともに右肘を胸部に叩き込む。ブリザードは両手を振るって反撃するが、ビクトリーはそれを両手で防ぎ右拳を腹部に決める。

 

 ブリザードは怯まず右腕を振るうがビクトリーはそれを左足で回し蹴りの如く弾いて防ぎ、そのまま半回転して右足蹴りを胸部に叩き込み、更に畳みかける様に時計回りに一回転して右回し蹴りを顔面に叩き込む。

 

 ビクトリーの怒りの攻撃は続く。それに応えるかのように両者の戦いは周りの地面は小さな爆発を起こし、石のつぶてや土煙が舞い上がる。ブリザードが両腕を上から振り下ろすのを両手で防ぎ、右脇腹に左横蹴りを決め、更に右膝蹴りを腹部に打ち込んで後退させる。

 

 その後、駆け寄りながら右後ろ回し蹴りを腹部に決め、更に左右ミドルキックを左右腹部に決めた後、跳躍して右跳び蹴りを胸部に打ち込む。そして畳みかける様にもう一度跳躍して、左斜め上に上げるような右横蹴りを叩き込んでダウンさせる。

 

ブリザードは立ち上がり、反撃として腹部の噴射口から冷凍ガスを噴射する。ビクトリーはそれを軽い身のこなしでかわしていく。

 

 《ウルトランス‼ハイパーゼットンシザーズ‼》

 

 ショウは、『宇宙恐竜ハイパーゼットン(イマーゴ)』のスパークドールをビクトリーランサーにリードする。すると、ハイパーゼットンの鳴き声の音声と共にビクトリーの右腕が変化していき、ハイパーゼットンの右腕に変わる!

 

 これは『ウルトランス』と言うビクトリー最大の能力であり、怪獣のスパークドールズをビクトリーランサーでリードする事で、その怪獣の力を身に纏う事が出来る能力である。

 

 ブリザードはビクトリー目掛けて再度、冷凍ガスを噴射する。ビクトリーは正面から突っ込み、ハイパーゼットンの右腕からの熱で冷凍ガスを消し飛ばしながら跳びかかる。そして、ハイパーゼットンの右腕の先端を腹の噴射口に突き刺し、ゼロ距離から暗黒火球を叩き込む!

 

 火球を叩き込まれたブリザードの腹部は爆発し、噴射口は潰れ、冷凍ガスが吹けなくなった。ビクトリーはブリザードの胸部に右前蹴りを打ってその反動を利用して後ろに跳んで距離を取る。

 

 するとブリザードは今度は身体を裏返し、赤い身体をビクトリーに向ける。そして、同じく腹の噴射口から火炎をビクトリー目掛けて噴射する。

 

《ウルトランス‼キングジョーランチャー‼》

 

 ショウは今度は『キングジョーカスタム』のスパークドールをリードする。ビクトリーの右腕はハイパーゼットンの腕から、キングジョーの音声と共にキングジョーカスタムの銃『ペダニウムランチャー』に変形する。

 

 ビクトリーは、火炎を右横に跳んで避け、そのまま光の弾丸を乱射する。

 

弾丸の雨あられはブリザードに命中し、体力を奪っていく。そして、弾丸の一つが火炎の噴射口に見事に当たり、噴射口は爆発して潰れる。

 

 ブリザードが怯んだ隙に、ビクトリーは右腕を元に戻した後、後ろに跳び、ビルを蹴って空高く跳ぶ。そして、右足をVの字に光らせて急降下キック『ビクトリーハイパーキック』を叩き込む!ブリザードは爆発して数十メートル吹っ飛んで地面に落下した。

 

 (BGM:Rising High 二番)

 

ゼロとソルも、シルバーブルーメと激しい戦いを繰り広げていた。シルバーブルーメは、二人目掛けて突き刺すように連続で触手を伸ばし始める。ゼロとソルはお互い背中合わせ、手と手を取ったりしながら、フォークダンスをするかの如く華麗な動きで難無くかわしていく。

 

そして、ゼロは『ゼロスラッガー』を取り出し、ソルは両手をピンクの光で包んで『ライトニングハンド』と言う光の手刀に変え、触手を軽快にかわしつつそれを切り落としていく。

 

 ゼロは、上空のシルバーブルーメ目掛けて飛び始める。シルバーブルーメは叩き落とそうと触手を振るうが、ゼロは接近しつつナイフの様に使うゼロスラッガーでそれを切り落としていく。そして、一回転しての右踵落としを叩き込む!シルバーブルーメは地面に落下し、激突する。

 

 ソルは、地面に落下したシルバーブルーメに駆け寄り、すれ違い様にライトニングハンドを叩き込む。そして、振り向き様に右回し蹴りを打ち込み吹っ飛ばす。

 

 シルバーブルーメは、反撃とばかりに再び二人目掛けて触手を伸ばし始める。

 

 「行くぞ、海羽!」

 

 「オッケー!」

 

 ゼロはゼロスラッガーを投げつけ、ソルは右手を突き出し『ゴッドスラッシュ』を発射する。二本の宇宙ブーメランは高速で複雑な軌道を描きながら飛び、黄金の矢尻型の光弾は高速で一直線に飛ぶ。そして、次々と触手を切断していき、やがて全て切り落とした。

 

 シルバーブルーメは戦意喪失したのか、飛んで逃げようとする。そこへ、

 

 「させるか‼」

 

 “バゴンッ‼”

 

 いつの間にかビクトリーが上空で待ち構えていた!そして、既にウルトランスでEXレッドキングの拳『EXレッドキングナックル』に変形させていた右拳で炎を纏ったパンチを叩き込み、地面に叩きつける。シルバーブルーメは完全にグロッキーだ。

 

 右腕を戻し、着地した後、戦いながら二人の戦いを見ていたビクトリーは、二人の戦いぶりに感心する。

 

 ビクトリー「あんた等も良い蹴り持ってんな。」

 

 ゼロ「ああ!(フィニッシュポーズ)」

 

 ソル「エへッ♡(首をかしげて敬礼ポーズ)」

 

 一方、戦いを見ていた健二も、ある事に気付いたのか、口を開けて見入っていた。

 

 それは、戦いの凄さではなく、ウルトラ戦士のかっこよさでもない。怪獣の力を借りて戦う戦士を、そして、連携して戦う男女2人のウルトラ戦士を見て、彼は気づいたのだ。

 

 そう、『協力する事の大切さ』を。そして、男女が力を合わせる事で、真の強さが発揮できることを……。

 

 同時に思い出す。思えば、女子にこき使われたり、軽蔑され続けていた自分を常に支え続けていたのは、他でもない早苗だと言う事を……そう、健二がいじめを苦に自殺しなかったのも、早苗が常に味方してくれたからだ。

 

 「………俺は、間違っていた……いくら自分が強くても、一人じゃどうしようもない事もある……協力する事で、真の強さが発揮できる……その協力する相手に、男も女もない!」

 

その時、健二は横から早苗に抱きつけられる。早苗は嬉しさからか涙を流していた。

 

「…やっと気づいてくれたのね。」

 

「…ああ。」

 

真美は健二が変わったことでの安心からか、二人の様子を笑顔で見つめた。

 

 

三人のウルトラ戦士は、円盤生物を完全に追い詰めた。三人は、ビクトリーをセンターに並び立つ。

 

ゼロ「よ〜し、そろそろ止めと行くか‼︎」

 

ソル「ええ。」

 

ゼロとソルは二、三歩前に進んだ後、ゼロは両腕を十字に組んで『ワイドゼロショット』を、ソルはアキレス腱の如く左足を後ろに伸ばし、右手を突き出して『ミスティックシュート』をそれぞれ放つ!

 

二人の光線は途中で一つになり、強力な破壊光線となりシルバーブルーメを貫く!破壊光線の威力は凄まじく、シルバーブルーメはあっという間に砕け、大爆発した。

 

ゼロ「決まったぜ!」

 

ソル「イエーイ!」

 

ゼロはフィニッシュポーズを決め、ソルは右手の拳を上げて飛び跳ねる。

 

今度はビクトリーがゼロとソルよりも二、三歩前に進む。

 

「力を貸してくれシェパードン‼」

 

 《ウルトランス‼シェパードンセイバー‼》

 

 ショウは、彼らビクトリアンの守護獣であり、何より彼の戦友でもある怪獣『地底聖獣シェパードン』のスパークドールをランサーにリードする。これは、普通のスパークドールズと違い、ショウのために尽くして死んでいったシェパードンの魂が宿ったものであるため『クリスタルスパークドールズ』と言われている。

 

 すると、ビクトリーが地面から引く抜く形で、シェパードンの上半身を象った鍔に背部のビクトリウムを模した七色に輝く刃が特徴の聖剣『シェパードンセイバー』現れる!

 

 ビクトリーはシェパードンセイバーをVを描くように振るい、相手をV字型に切り裂く『シェパードンセイバーフラッシュ』を繰り出す!ブリザードはV字型に切り裂かれ、その部位に光の帯が走り、動きが止まる。

 

 今こそトドメの時!ビクトリーは両手でVを描くようにエネルギーを発生させ、それを右腕に集めた後両腕をL字に組む。

 

 「ビクトリウムシュート‼」

 

 ビクトリーは、正面に向けた右腕の甲にあるVクリスタルからV字型の必殺光線『ビクトリウムシュート』を放つ!光線はブリザードの胸部に命中し、ブリザードは大きくVの字を浮かべた後大爆発した。

 

 「よしっ!」

 

 「やった~!」

 

 ゼロとソルは、ビクトリーのブリザード撃破を喜ぶ。ビクトリーは徐々に消えていく爆風を背に雄々しく立つ。

 

 

 

 ……だが、喜ぶのも束の間、なんとゼロとソルによって切り落とされたシルバーブルーメの触手が浮かび、それが束となってビクトリー目掛けて飛び始める!不気味にもシルバーブルーメ本体が死んでも、触手はまだ生きていたのだ!

 

 ビクトリーは触手が背後から向かってくるのに気づいておらず、ゼロとソルもハイタッチをしているためそれに気づいていない………危うし!

 

 と、その時、

 

 突如、横から青白い十字型の光線が飛んで来て、ビクトリーに迫っていた触手を一瞬で焼き尽くした!その音にビクトリーは気づいて振り向き、ゼロとソルも気付き、向いてみる。

 

 そこには、腕を十字に組んで『メガスペシウム光線』の構えをしているパワードが立っていた。先ほど触手を焼いたのはパワードのメガスペシウム光線だった。三人のウルトラ戦士は少し驚き、真美も驚きカイのベッドを見てみると、当然ながらカイはいなかった。

 

 パワードはゆっくりと光線の構えを解く。

 

 カイ「…借りは返したぜ。ショウ。」

 

 ショウは「やれやれ…」とばかりに苦笑いをした後、カイ(パワード)にお礼のサムズアップをする。

 

 

 四人のウルトラ戦士は見つめ合った後、変身を解き、病室に戻る。

 

 「………早苗、ごめんな。ひどい事を言ってしまって。俺って最悪だよな。」

 

 健二は冗談交じりに自分を卑下しながら謝罪する。早苗は「ニッ」と笑った後、健二の両手を軽く握る。

 

 早苗「いいんだよ。ありがとう。それより……退院したら、デートしない?」

 

 健二「ああ。それから……学生たちの葬式にも出てやろうな。」

 

 健二と早苗は無事和解し、笑顔で見つめ合う。櫂達は、その様子を見て安心したのか、笑顔で見つめ合う。その後、健二はショウの元へ歩み寄る。

 

 健二「ありがとうございます。俺に、本当の強さを教えてくれて。」

 

 ショウ「フッ、…これからも協力し合って、頑張って行けよ。」

 

 ショウはわざとクールに言って、健二と早苗は「はい!」と元気よく返事をする。

 

 海羽「あれ~?ホントは礼を言われて嬉しいんじゃないの?」

 

 櫂「照れちゃって照れちゃって!」

 

 櫂と海羽は照れ隠しをするショウをからかう。櫂がショウの背中をたたいた時、ショウの懐から一枚の写真が落ちる。健二がそれを拾い見てみると、ショウを含めたUPGの集合写真だった。健二たちはショウの横に立っている女の子『サクヤ』に目が留まる。

 

 彼女はショウと同じビクトリアンかつUPG隊員であり、ショウの幼馴染で、彼を兄の様に慕っているのだ。

 

 健二「なーんだ、ショウさんにも彼女がいるんじゃないですか!」

 

 健二は写真をショウに見せつけからかう。

 

 「!バ…バカッ!彼女とは違う!…」

 

 ショウは、クールだがどこか慌てて言いながら、写真を取り戻そうと焦る。健二は早苗と共にからかいながら写真をパスし合う。真美と海羽は、その光景を笑いながら見ていた。

 

 しかし櫂は、笑いつつもどこか不満そうな顔をして軽く俯いていた。

 

 「?どうした?櫂。」

 

 「え?い、いや、何でもない。」

 

 ゼロの言葉に櫂は少し慌てて笑顔に戻る。

 

 

 

 その後、ショウは病院の屋上で、夕焼けの空を見上げていた。

 

 (……ヒカル……俺は信じている。一度闇に負けても、お前なら立ち直れることを。いつか、お前を絶対救ってやるからな。)

 

 ショウは、ビクトリウムのペンダントを見つめながら、決意を固めた。

 

 

 

 [エピローグ]

 

 『テライズグレート』では、『ブラック指令ガスト』が、何やら水晶を見つめていた。

 

 「あーあ、ブリザードもシルバーブルーメもやられちまったか……。まあいい。十分なマイナスエネルギーは集まった。そろそろ最終段階と行くか。」

 

 果たして、奴は何を企んでいるのだろうか?ゼロを抹殺するための最終段階とは?

 

To Be Continued……

 

(ED:赤く熱い鼓動)




 読んでくださりありがとうございます。私にとって初の重苦しい前後編の話でしたがいかかでしたか?

次回も驚きの展開が待っております。

 感想・指摘・アドバイス・リクエスト等をお待ちしています。


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第13話「激情チェンジ‼」

 お待たせしました。

 今回、驚きの展開&衝撃の真実が発覚します。

 因みに今回、櫂とゼロがアツいです!(笑)

 また、第2章『暴走する本能』に基づいた内容でもあります。


 (OP:TAKE ME HIGHER)

 

稲葉健二と小野早苗の闇を振り払ってから三日後の7月29日、入院していた健二は昨日無事に退院し、竜野櫂達に謝罪とお礼を言って笑顔で別れた。

 

 因みに健二と早苗は、彼らの高校が壊滅したと言う事で、学力向上などの理由もあり、麟慶大学付属の高校に特別採用で入学する事になった。女尊男卑の環境で育ってきた彼ら(特に健二)にとって、男女平等の環境の高校ほど憩いの場は無いだろう。彼らは9月から入学する予定である。

 

 駆け付けて来たショウ(ウルトラマンビクトリー)は、ウルトラマンギンガ救出のためと言う事もあり、主に櫂達と共に行動する事にした。この日、ショウは異変探しで霞ヶ崎を探索している。

 

この日、櫂は一人でデパートに買い出しに出かけていた。そこへ、仲良さそうに手を組んで駆け寄って来る一組の男女を見つける。デートの真っ最中の健二と早苗だ。

 

 櫂「お!お前ら、随分楽しんでるみたいだな。」

 

 健二「はい、櫂さん。先日は本当にありがとうございました。」

 

 櫂「はは、良いって事よ!」

 

 ゼロ「どうやら二人とも、すっかり元気になったみたいだな。」

 

 早苗「はい。今後は、亡くなった生徒たちの葬式とかにも参加したりしたいと思います。」

 

 櫂「それは良い事だな。ま、そいつらとは悪い思い出しかないと思うが、同じ人間だからな。」

 

 櫂は気さくに健二と早苗と話す。二人とも、特に早苗はデートの為か、一際おしゃれな格好をしていた。

 

早苗「櫂さんは今日は一人ですか?」

 

 櫂「ああ。ちょっと、プライベートの買い出しでな。」

 

 健二「たまには二人の彼女さん(新田真美・眞鍋海羽)とも、遊んでやらなきゃだめですよ」

 

 櫂「かっ……そ、そうだな、アハハハハ…」

 

 健二は冗談半部で言い、三人とも笑う。だが、櫂だけ顔を赤らめ、何処か固い笑いだった…。

 

 早苗「ケンちゃん、そろそろ行こう?私、今度はあの店に行きたい!」

 

 健二「ああ。そうだな。……あ、そういえば櫂さん、あなたに言いたいことがります。」

 

 櫂「ん?何だい?」

 

 櫂は健二の言葉に踏みとどまる………。

 

 

 

 一方、眞鍋海羽と新田真美は、二人っきりの、所謂ガールズショッピングをしながら街を歩いていた。今ちょうど、迷子探しを終え、親子と別れた所である。

 

 海羽「真美ちゃんって、とっても優しいんだね。」

 

 真美「いえいえ、他人として当然のことをしてるだけだよ。」

 

 褒める海羽に真美は笑顔で返す。

 

 「それに、私、将来は人を救うため、看護婦を目指してるの。だから、今からでも、多くの人を助けていけば、少しづつ夢に近づける気がしてね。」

 

 真美は、積極的に人助けをしているのは将来の為でもあると言う事を話す。海羽は、真美の話に聞き入っている。

 

 「それに私、満足よりも、安心感があるの。人が苦しみから解放された気がしてね。」

 

 真美はそう言いながら、鞄から『ウルトラセブン』の人形を取り出す。

 

 真美「だから私、セブンも結構好きなの。」

 

 海羽「ああ、セブンも確か、多くのウルトラ戦士を助けて来たからね。」

 

 真美「それに、何よりも『バクちゃん(超獣バクタリになってしまった貘)』を助けてくれたしね(小笑)それに、彼のカプセル怪獣のミクラスちゃんも可愛くて好きだしね。」

 

 真美は、セブンが好きな本当の理由を話ながらも(笑)多くのウルトラ戦士のサポートをしてきたセブンを気に入っている事を話した。

 

 真美「だから、櫂君がセブンの息子であるゼロの変身者になった時は、とっても嬉しかったの。」

 

 海羽「ウルトラマンゼロはカッコいいし強いもんね。まさに櫂君にピッタリだよ!」

 

 真美「意外と似た者同士だよね、あの二人。」

 

 真美・海羽「「ハハハハハハ……」」

 

 

 

 櫂・ゼロ「「ハ…ハクショーン‼」」

 

 同じ頃、櫂とゼロは同時にくしゃみをしてしまっている。

 

 ゼロ「何だ?二人そろって夏風邪か?」

 

 櫂「まさか。誰かが噂してるんだな……?まあいい。とにかく、真美達のところへ急ぐぞ!」

 

 櫂は何を急いでいるのか、走っていた。先ほど健二から、何を聞いたのだろうか………?

 

 

 

 場面を真美達に戻そう。

 

 真美「私は、櫂君や海羽ちゃんみたいに変身はできないけど、これからも全力でサポートするわ。」

 

 海羽「ありがとう。でも私、真美ちゃんならゼロになれる気がするんだな~。頭良いし、運動できるし、優しいし…」

 

 真美「ありがとね。言ってくれるのは嬉しいけど…ゼロは櫂君の方がいいと思うわ。運動も勉強も彼の方が優れてるし…それに私、戦い疲れた戦士を癒す役目の方が向いてるかな~って何となく思ったりしててね。」

 

 真美は、海羽に礼を言いながらも自身の役目について話した。

 

真美「因みに私、こないだ妄想ウルトラセブンが出たでしょう?あの時、正直ショックだったの…。」

 

 真美は、事情が事情とはいえ自身の好きなウルトラセブンが一時的に闇落ちしたことがショックだったみたいだ。

 

 真美「櫂君もあんな風にならなかったらいいけど……まさかね。」

 

 海羽「そうだね。櫂君、文武両道だけじゃなくて性格も良いもんね。」

 

 真美は冗談で話し、海羽もそれに乗る。二人とも、特に真美は幼馴染なだけに櫂に厚い信頼を持っていた。彼の本性を知ることなく…。

 

 同じ頃、

 

 「ハックション、ハックショーン‼」

 

 櫂はまたしてもくしゃみをしてしまっている。しかも今度は二発である(笑)

 

 ゼロ「やはり夏風邪じゃないのか?」

 

 櫂「まさか。俺はここ十年病気になんてなってないんだぜ?最も、真美の方は生まれてから一度も病気になってないが(苦笑) とにかく、さ、急ぐぞ。」

 

 櫂はまたしても真美達と合流しようと走り出す。

 

 

 

 一方、宇宙船『テライズグレート』では、『ブラック指令ガスト』が、水晶を見つめながら地球の様子を伺っていた。まるで何かのチャンスを待ち構えてるかのように…。

 

そして、語り出した。

 

「フフフ、そろそろ、始めるとしますか。『デスゲーム』を。果たしてクリアできるかな~?」

 

ブラック指令ガストは不気味に笑う。いったい何を始める気なのか?彼の言う『デスゲーム』とは一体何なのか………?

 

 

 

場所は戻って、櫂は一旦歩き始め、自身のスマホから真美のスマホに電話をかけていた。

 

 真美「もしもし櫂君?」

 

 櫂「おお、真美。今どこにいるんだ?」

 

 真美「海羽ちゃんと『霞ヶ崎商店街』を出た所だけどどうしたの?急いでるみたいだけど…」

 

 櫂「悪いがすぐ到着するからそこにいてくれ。折り入って話が………」

 

 櫂が話しているその時、

 

 “ゴアッ”

 

 突然、怪獣の様な声が響く。電話をしている櫂と真美、そして海羽は町を見渡す。

 

すると、信じがたい光景に櫂と真美、海羽は驚愕する!

 

 突如、霞ヶ崎の街中に三体の怪獣が現れたのだ。それも、ただの怪獣ではない。

 

 そこにいる三体とは、

 

 金属質のボディに頭部にはトサカの様な突起があるロボットの様な外見の怪獣『カプセル怪獣ウインダム』

 

 マッシブな身体に牛に似た顔をしており、頭部には大小二本ずつ角が生えている怪獣『カプセル怪獣ミクラス』

 

 恐竜プロトケラトプスに似た外見に頭部に生えた一本角が特徴の怪獣『カプセル怪獣アギラ』。

 

 この三体は『カプセル怪獣』と呼ばれ、『モロボシ・ダン(ウルトラセブン)』が変身できない時などに代わりに戦う怪獣たち、所謂セブンの仲間の怪獣である。

 

 そんな彼らが突如街に現れた………櫂達をはじめ街の人々は驚きと共に少し戸惑っている。因みに先ほどの鳴き声はミクラスの物である。

 

 しかし、三体は暴れる様子も無く、まるで何かを待ち構えているかのようにじーっと止まっている。

 

真美「ミクラスちゃん達…?どうしていきなり……?」

 

海羽「悪い怪獣なんていないのに……」

 

真美達の戸惑いは続く。だが真美は、戸惑いながらも自身が好きな怪獣・ミクラスに少し近づいて話しかける。

 

真美「ミクラスちゃーん、どうしたの?いきなり出てきて…」

 

だがミクラスは、真美に気づきはするが興味を示す様子はまるで無い。

 

真美「…なんか変……まるで、何かが出て来るのを…もしくは誰かの命令を待ってるみたい………。」

 

 

 

 因みにゼロが驚きを隠せないのは言うまでもないだろう。何しろ、自身の親父の仲間の怪獣たちが、突然現れたのだから…。しかし、様子がおかしい事にすぐさま気付く。

 

 櫂「……どうなってんだ?……一体………。」

 

 ゼロ「三体そろい踏みってことは…親父の事だ。何かあるに違いない。変身だ!櫂。」

 

 ゼロは動揺の所為か、やや焦り気味に変身を促す。

 

 櫂「どうしたんだゼロ?」

 

 ゼロ「カプセル怪獣が三体も出たんだ。何か強大な敵が出るかもしれないだろ。それに……近くに親父もいるかもしれない…。」

 

 櫂「なるほどな…海羽の奴、セブンも呼んでくるとは粋な事をしてくれるぜ。」

 

 櫂はUBの付いた左腕を顔の前で折り曲げる。

 

 櫂「行くぜ、ファザコンゼロ。」

 

 ゼロ「うっ…うるさいっ!とにかく変身だ!」

 

 櫂「ははは、冗談だ。じゃ、いくぜっ!」

 

 UBから『ウルトラゼロアイ』が現れ、櫂もゼロも呼吸を整える。

 

 櫂「レッツ、ゼロチェンジ‼」

 

 ゼロアイは櫂の掛け声に応えるかのように櫂の目にくっ付き、櫂は光と共に高く跳躍する。櫂は光の中でゼロの姿に変わり巨大化する。

 

 街中のカプセル怪獣の前に降り立つ『ウルトラマンゼロ』。カプセル怪獣達はそれに気づく。

 

 海羽「…!ゼロ?」

 

 真美「櫂君…どうしたのかな?一体。」

 

 真美達もゼロの登場に反応する。

 

 ゼロとカプセル怪獣達は見つめ合う。お互い警戒しているのか?

 

 「フフフフフ…現れたなゼロ。」

 

 テライズグレートからその様子を見ていたブラック指令ガストは何やら不気味に笑う。

 

 ゼロとカプセル怪獣達が見つめ合う中、突如、両者の間に渦の様な紫の光が《ギュィィィィン》というどこか聞き覚えのある変身音と共に現れ、その光が徐々に消えていき、中から一人の巨人が現れる。

 

 その巨人を見て、櫂及びゼロ、更には真美達も驚愕する。

 

 渦の光から現れたのはなんと『ウルトラセブン』なのだ!しかし、よく見てみると身体は黒く、目や白のラインは赤くなっている。かつて『ウルトラマンギンガ』と戦った『セブンダーク』の姿をしているのだ。

 

 ゼロは動揺しながらも恐る恐るセブンダークに近づきながら話しかける。

 

 「……親父?……親父なのか?」

 

 しかし、セブンダークは答えようとしない。

 

 「親父もソルに呼ばれて来たのか?…何だよその姿は?……なあ……答えてくれよ!」

 

 ゼロが肩に手を置いた瞬間、

 

 “バコンッ”

 

 「‼?ぐはっ!」

 

 セブンダークはゼロの手を振り払い、右拳をゼロの顔面の左側面に打ち込んでふっ飛ばした!ゼロは驚きながらも吹っ飛び、真美達もその光景に驚く。

 

 「…ッ、何すんだ親父‼」

 

 ゼロは動揺しつつも叫ぶ。

 

 「櫂君、私、セブンは呼んでないわ。」

 

 「!何だと⁉」

 

 ソル(海羽)のテレパシーがゼロに聞こえる。彼女はセブンを呼んではいないみたいだ。ゼロの動揺は深まる。

 

 その時、セブンダークはカプセル怪獣達のいる背後を一瞬振り向いた後、ゼロの方に指を差す。まるで「やれ!」と命令しているようだ。

 

 するとウインダムは、額の発光部から『レーザーショット』を発射し、それがゼロの右肩に当たり爆発する!

 

 「⁉うぉあっ!」

 

 思わぬ攻撃に怯むゼロに今度はミクラスとアギラが突っ込む!

 

 ゼロはミクラスの突進を角を掴むことで食い止めるが、その隙にアギラの頭突きを腹部に喰らい後退する。さらにウインダムが大の字の格好で跳躍してゼロにのしかかる!

 

 ウインダムはそのままゼロを仰向けに倒して馬乗りになり、チョップを連打して攻撃するが、ゼロは無防備な背中を蹴る事で馬乗りを解く。

 

その後ゼロは跳ね起きで起き上るが、すぐさまミクラスが左右腕を振るって襲い掛かる。ゼロはそれを手足で弾きながらかわしていく。

 

 だが、その隙に後ろで待ち構えていたウインダムの右チョップを背後から喰らってバランスを崩し、ミクラスはその隙にゼロの胸部に右拳を一撃浴びせた後、右腕を掴んで怪力を活かした背負い投げで投げ飛ばす。

 

 ゼロはうつ伏せで何とか立ち上がろうとするが、アギラはダメ押しとばかりにゼロを角でかちあげる!ゼロは上空に吹っ飛んだ後地面に落下した。

 

 ゼロはなおもミクラス達と防戦一方の戦いを続け、セブンダークはあざ笑うように腕を組んでそれを見つめる。自身の親父(セブン)の仲間であり、自身の幼馴染(真美)が好きな怪獣が相手故か、ゼロは思うように戦えない。

 

 真美「ミクラスちゃん達、どうしちゃったのかな?」

 

 海羽「それよりもセブンだよ…。あんなに黒くなっちゃって……」(もしかして、私が知らない間にギンガと同じく闇堕ちに………?)

 

 動揺しつつも戦いを見守る真美達の不安は募る一方である。

 

 

 「フフフフフフ………どうやら何が起こっているのか理解できてないみたいだな。」

 

 ブラック指令ガストは、何処からか戦いを見ながら不気味に笑う………。

 

 

 

 一方、カプセル怪獣とゼロの戦いは麟慶大学からも見えていた。軽音部の『豪快パイレーツ』のアコギ担当であるドン・ドッゴイヤー(通称:ハカセ)は、この日は兼部している理科部の活動をしに来ていた。

 

 理科部のメンバーも逃げる中、ハカセだけ何やら四角いサングラスの様な物が付いた機材を持ちながら戦いを見ている。彼もカプセル怪獣がゼロに襲い掛かる事に違和感を感じているのだ。

 

 「これはきっと、何かあるかもしれない……。よーし、今こそこれが役立つかも。」

 

 ハカセは持っていた四角い機材を置き、サングラスをコードでつないでかけてスイッチを入れる。

 

 すると、ハカセは驚愕する。普通に見ればゼロがカプセル怪獣と戦っているのが見えるのだが、サングラス越しに見てみると、なんとカプセル怪獣達は映っておらず、ゼロが一人で暴れており、セブンダークがそれを見つめている様子しか見えないのだ!

 

 「!分かったぞ。あのカプセル怪獣は幻だ‼」

 

 彼が持っていた機材は、彼が理科部で独自に開発していたもので、サングラス越しに実在するものしか映さない万能な物である。要するに、その機械のサングラス越しではカプセル怪獣達は映らないため、ゼロが戦っているカプセル怪獣達は幻だと判明したのだ!

 

 「大変だ!」

 

 真実を知ったハカセは急いで真美にスマホで電話を掛ける。

 

 真美「もしもしハカセ君?」

 

 ハカセ「真美、今すぐ櫂に戦いを止める様に言って!」

 

 真美「どうしたの?」

 

 ハカセ「今ゼロが戦っているカプセル怪獣達は、幻なんだ!」

 

 真美「!ミクラスちゃん達が……幻………?」

 

 ハカセから真実を聞かされ驚く真美。それを聞いていた海羽も、変身アイテム『ハートフルグラス』を目にかざし『スコープモード』で見てみる。カプセル怪獣達は確かに映っておらず、暴れるゼロとそれを見つめるセブンダークしか映っていなかった。

 

 海羽「本当だわ……。じゃあ、あのセブンは一体……?」

 

 真美「誰かが陰で暗躍してるって事なの………?」

 

 

 

 三体が幻とも知らずに防戦一方で戦い続けるゼロ。突進してくるミクラスとアギラをそれぞれ両手で受け止め抑え込みながらセブンダークに必死に叫ぶ。

 

 「なあ親父!これは一体どういうことだよ⁉なあ‼」

 

 だが、セブンダークは一向に答えない。

 

 「なあ……答えてくれよ………親父……答えろーーー‼」

 

 ゼロの必死の叫びも空しく、二体はゼロがセブンダークに気を取られている隙に突き飛ばす。ゼロは吹っ飛んで地面に落下する。

 

 「櫂君!戦いを止めて!ミクラスちゃん達は幻よ!」

 

 「⁉なんだって⁉」

 

 真美から真実を聞かされ驚愕するゼロ及び櫂。しかし、その隙にミクラスは口から赤い熱戦、ウインダムはレーザーショット、そしてセブンダークは腕をL字に組んで青い『ワイドショット』を同時に放ち、ゼロを攻撃する!

 

 三つの光線が胸部に直撃し、倒れるゼロ。ゼロは立て続きに受ける攻撃により既に大きなダメージを受けており、更に追い打ちをかける様にカラータイマーが赤く点滅を始める。

 

 「フフフ、そろそろ終わりにしますかな。」

 

 ガストが呟く。すると、カプセル怪獣達は煙の様に姿を消した。驚くゼロと真美達。

 

 すると、黒いオーラの様な物と共に一匹の怪獣が現れる。そいつは、黒と青を基調とした体色に、地面に届くほどの長い腕に、胸に目の無いイルカの様な頭部、両肩に分裂した犬のような隻眼の頭部と、ケルベロスの如く三つの頭部を持つ『ダークガルベロス(フィンディッシュタイプビースト)』だ!

 

 奴は『ガルベロス』の暗黒強化種であり、催眠波動で死んだ人間を操って人を襲わせたり、幻覚を見せて相手を翻弄することが出来る。そう、奴は後者の能力でカプセル怪獣の幻覚を出現させてゼロを動揺させ、翻弄して追い詰め消耗させたところを一気にやっつけようとしていたのだ。

 

 ゼロ「そうか………カプセル怪獣は全てあいつが作り上げた幻……」

 

 海羽「何て卑怯な奴なの………。」

 

 ゼロと海羽達は、幻覚はダークガルベロスが作り上げたものだと気づく。

 

 ダークガルベロスは、両肩の頭部でそれぞれゼロの首、左腕に噛み付いて持ち上げ、そのまま両腕で腹部に打撃を連打し、ゼロの体力を奪っていく。

 

 そして、左足でゼロの腹部を蹴り上げ吹っ飛ばす。ゼロは攻撃された部位だけではなく、噛み付かれた部位にもダメージが来ていた。ダークガルベロスの噛む力は強力であるのだ。かつて通常のガルベロスが、『ウルトラマンネクサス』の左肩に噛み付いて負傷させた程である。

 

 ダークガルベロスは横たわるゼロに三つの口から火炎弾を連射する。火炎弾の雨あられを成す術なく浴びるゼロ。もうエネルギーは半分以上減り、カラータイマーの点滅も早くなっていく………。

 

 「立って!櫂君!」

 

 真美の必死の呼びかけも空しく、エネルギーの少ないゼロは仰向けに横たわる。

 

 「フハハハハハ‼まさかここまで計画がスッキリ進むとはな!」

 

 突如、何処からか声が響いた瞬間、真美達の前にブラック指令ガストが現れる。驚き身構える真美達。

 

 海羽「あなた……一体何をしたの⁉」

 

 「俺はブラック指令ガスト。ゼロ抹殺計画の実行者だ。」

 

 真美「ゼロ抹殺計画?」

 

 「そうだ。この作戦のために、あの少年を執拗に狙ってマイナスエネルギーを集めたのだ。」

 

 真美「もしかして……健二君の?」

 

 「そうだ。そして、その集めたマイナスエネルギーをガルベロスに与えダークガルベロスへとパワーアップさせた。おかげでガルベロスは格段とパワーアップし、幻影能力も相手が動揺するほどに完璧な物を作れるようになったのだ。」

 

 ガストの言葉に真美達は驚愕する。そう、闇を抱える健二を妄想ウルトラセブンに変身させたのも、健二と早苗の高校を破壊したのも、すべてこの日の作戦のための準備に過ぎなかったのだ!

 

 因みにセブンダークも、集めたマイナスエネルギーで作り上げた物だと考えられる。

 

 「そんな………じゃあ、そのために健二君たちは苦しめられて………」

 

 真美は、健二たちの闇が利用された事、そして、偽物とはいえ自身の好きなセブンやミクラスが利用された事へのショックで膝を付く。

 

 「おっと?俺の作戦が完璧すぎて驚いてるのか?ハハハハハ!では、そろそろ俺自身でゼロを。」

 

そう言うとガストは、セブンダークの額の『ビームランプ』に飛び込む。そして、セブンダークと一体化した。そして、ダメージにより右膝をついて動かないゼロに近づく。

 

「まずは、その厳つい顔面を叩き潰してやっぜ。」

 

セブンダークはゼロに拳を振り下ろそうと右拳を上げる。そして、ゼロ目掛けて拳を振り下ろす!もはやここまでか⁉︎

 

 

だが、大ダメージにより体力が減ってるはずのゼロの右手が、セブンダークの拳を受け止めた!「はっ」と驚くセブンダーク。そして、ゼロは拳を掴んで膝をついて俯いたまま櫂の意思で語り出す。

 

「ほほう…そうか…そういう事だったのか……。ありがとよ。ご丁寧に説明してくれてよ…」

 

ガスト「バカな…貴様の体力はもう限界のはず…!」

 

ガストの動揺は募る。ゼロは尚も語り続ける。

 

「俺はなあ…自分自身がいくら痛めつけられても構わねえ……。だがな、そのためだけに、苦しんでいる少年の闇を利用したり…罪のない人を殺したり……」

 

ゼロは語りながらゆっくり立ち上がり、左拳を後ろに引きながら顔を上げる。

 

「何より、ゼロの親父であり、俺(櫂)の愛する者の好きなものを使って、その子を傷つける事が、一番許せねーんだよっっっ‼︎」

 

〝バゴンッ‼︎〟

 

「‼︎ぐぉあっ‼︎」

 

ゼロは熱い叫びと共に、渾身の左拳をセブンダークの顔面中央に叩き込む!セブンダークはたまらず吹っ飛んで地面に落下する。

 

 「「そこまでして俺を潰してーなら、何人でもいいから真っ向から実力で迫って来やがれ‼」」

 

 互いが同じ怒りを抱いているため、ゼロと櫂の声がシンクロする。例え体力が少なくても、愛する者を想う故の怒り『激情』により、立ち上がったのだ。

 

そう、男は、誰かのために強くなるのである!

 

 ゼロは左腕の『ウルティメイトブレスレット』を右手で叩く仕草を取る。すると、UBからエレキギターのような効果音が鳴り、全身が炎に包まれ、やがて姿が変わった。

 

 ゼロは、金色のゼロスラッガー、カラータイマー、ボディラインを持ち、上半身が赤、下半身が銀色を基調とした燃えるようなボディが特徴の『ストロングコロナゼロ』にモードチェンジ!

 

 ゼロは『フューチャーアース』でダイナ、コスモスと合体して『ウルトラマンサーガ』へ変身した際、彼らの力がUBに宿った事で、彼らの力を開放する事でモードチェンジできるようになったのだ。

 

 ストロングコロナゼロは、ダイナのストロングタイプとコスモスのコロナモードの力を併せ持つ『赤きウルトラマンゼロ(超パワー戦士)』だ。

 

 海羽「うわ~かっこいい~!」

 

 真美「櫂君…」

 

 ガスト「⁉何だあの姿は!」

 

 ゼロの変身に真美達は目を奪われ、セブンダークの中のガストも見たことないゼロの姿に動揺する。

 

 ゼロ「さあ、こっからが俺の…」

 

 櫂「ああ、俺達の…」

 

 ゼロ・櫂「ビッグバンだ‼」

 

(BGM:英雄)

 

 ゼロは土煙を上げながらダークガルベロスに駆け寄る。

 

 ダークガルベロスは迫り来るゼロに一回転して尻尾で迎え撃つが、ゼロは駆けながらそれを跳躍してかわし、そのまま右横蹴りを打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 ダークガルベロスは立ち上がり右腕を振るって攻撃するが、ゼロはそれを左腕で受け止め右拳を二発腹部に、そして中央の顔に強烈なアッパーを叩き込む。

 

 その後ゼロは右肘を左側の頭部に打ち込み、左横振りの左拳を頭部の左側面に打ち込み、更に時計回りに一回転して左拳を腹部に叩き込む。

 

 ストロングコロナ本来の力に加わった激情の力により、打撃が炸裂する度に爆発が起こる。

 

 ダークガルベロスは左横蹴りを打とうとするが、ゼロは即座にそれを左足で弾き、返り討ちとばかりに右足のミドルキックを腹部に叩き込み、更に左足の回転ハイキックを決める。

 

 キックの衝撃でダークガルベロスが半回転して背を向けた所でゼロはダークガルベロスの尻尾を掴む。そして、そのままきりもみ状態で倒れ込んでその回転力で地面に叩きつける投げ技『ドラゴンスクリュー』を決める!

 

その後ゼロは、ダークガルベロスの尻尾を掴んだまま立ち上がり、今度は回転しながら『ジャイアントスイング』で何度も振り回し、遠方へとブン投げる!ダークガルベロスは地面に落下しフラフラに。

 

 ダークガルベロスは何とか体勢を立て直し、ゼロ目掛けて火炎弾を乱射するが、ゼロはそれを側転、バク転をしつつ弾き飛ばしながらダークガルベロスに近づいていく。

 

 そして、ゼロはダークガルベロス目前まで近付くと、炎を纏った打撃技『ストロングコロナアタック』を繰り出す!

 

 まずは炎を纏った横降りの右拳でダークガルベロスの右側の頭部を粉砕し、次に炎を纏った左回し蹴りで左側の頭部を粉砕。そのまま一回転し、炎を纏った右回し蹴りを腹部に打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 ガスト「バカな……あり得ない!」

 

 真美「!…すごい…。」(←あまりの凄さに言葉を失っている)

 

 海羽「ちょ~パワフルだね。」

 

 ガストはうろたえ、真美達はストロングコロナゼロの強さに見入っている。

 

 ゼロ・櫂「「砕け散れ!番犬野郎‼」」

 

 ゼロはダークガルベロスを頭から掴む。

 

 「ウルトラハリケーン‼」

 

 ゼロは叫びと共にダークガルベロスを『ウルトラハリケーン』で放り投げる!ウルトラハリケーンとは、相手を竜巻の様に高速回転させながら上空に放り投げ、空中で磔にする様に拘束する投げ技である。

 

 ダークガルベロスは竜巻に巻き込まれ、回転しながら上空で拘束される。

 

 ゼロはUBを右手で叩くような仕草を取る。そして、炎のエネルギーが集まっていく右拳を後ろに引いていく。

 

 「ガァァァルネイト、バスターーーーー‼」

 

 ゼロは叫びと共に、上空のダークガルベロス目掛けて右拳を突き出し、炎状の強力光線『ガルネイトバスター』を放つ!

 

 光線はダークガルベロスを直撃!ダークガルベロスは空中で大爆発した。

 

 ダークガルベロスを撃破したゼロは、ゆっくりとセブンダークの方へと向きを変える。ガストはその表情から殺意を感じていた。

 

 ガスト「…んなっ…何をする気だゼロ?…ま、まさか偽物とはいえ親父を殴るほど不良じゃないよな?な?」

 

 ガストは言い逃れをしようとする。だが、ゼロは右拳を強く握る。やがて、怒りで力を入れて握っていることで小刻みに震える右拳を上に揚げる。

 

「……ふざけるな……そんな出来損ないの偽物に化けといて、親父を名乗ってんじゃねーーー‼」

 

 “バゴンッッッ‼”

 

 「ぐおあぁぁぁ‼」

 

 ゼロはセブンダークに駆け寄り、握った右拳を思い切り顔面に叩き込んだ‼セブンダークは吹っ飛んで地面に落下する。

 

 ゼロは光に包まれ通常の姿に戻る。そして、構えを取った後、怯むセブンダークに駆け寄り右ヘッドロックで首を締め上げる。

 

 「いい加減にしやがれ……どいつもこいつも……そんなに死にたいか………?」

 

 ゼロは、櫂の意識で憎しみを込めたようなドスの利いた声でセブンダークに囁き始める。

 

 「てめーらみたいな屑はなあ、邪魔なんだよ!」

 

 ゼロはもはや、愛する者を悲しまされたことでの怒り心頭の櫂の意識が前面に出ている。いわば、半分暴走状態なのだ。

 

 ゼロは、セブンダークにヘッドロックをかけたまま左肘を左肩に数発決め、その後前方へ突き飛ばした後、胸部に怒りを込めた右ドロップキックを叩き込み吹っ飛ばす。

 

 セブンダークは立ち上がって『アイスラッガー』を投げつける。だが、ゼロはそれを避ける事無く、それどころかゼロは、迫り来るアイスラッガーを右手刀で叩き折る!

 

 二片に分かれたアイスラッガーは、ゼロの左右後方に飛び爆発する。

 

 櫂の変身するゼロは、ゼロ本来の超絶な力に櫂の身体能力や知能が合わさる事で、本来よりも格段と能力(特に格闘技)が強くなるのだ。しかも、櫂が怒り心頭し、彼の意識が前面に出る事で、更に格闘技の破壊力が上がり、このように素手だけでアイスラッガーを叩き割ることも出来るのである。

 

 だが、この能力にも一つ、最大のリスクがあった。それは、櫂の意識が前面に出る事で普段よりも櫂自身の消耗が激しくなるのだ……。既にカラータイマーが赤く点滅しており、怒りと同時に苦しみも感じるような荒い呼吸をしている。

 

 「親父の出来損ないなんて……跡形も無く消し飛ばしてやる‼」

 

 セブンダークが動揺している間にゼロは、ゼロスラッガーをカラータイマーに装着し、光刀のエネルギーを集中させる。

 

 「ゼロツインシュート‼」

 

 ゼロは、カラータイマーに装着したゼロスラッガーから広域に照射する強力光線『ゼロツインシュート』を放つ!これは、通常のゼロが使う中では最強の光線技である。

 

 ゼロツインシュートを浴びたセブンダークは、消し飛ぶように光線の中で消えていき、やがて大爆発した。

 

 「やった~!」

 

 「櫂君……ありがとう……。」

 

 海羽はゼロの勝利を喜び、真美は櫂の思いが少し通じたのか知らないが、櫂及びゼロに笑顔で静かに礼を言う。

 

 セブンダークを撃破したゼロは、ゼロスラッガーを頭部に戻し雄々しく立つ。

 

 が、それも束の間、体力がほとんど無いのか、ゼロは両膝、そして右手を付いてしまい、カラータイマーの点滅も早くなる。そしてゼロは、光と共に姿を消した………。

 

 

 

 真美達が急いでその場へ行ってみると、そこには仰向けに横たわっている櫂の姿があった。

 

 「櫂君!………大丈夫?」

 

 真美は真っ先に駆け寄り、語り掛ける。すると、櫂は横たわったままVサインをし、目を開けて少し硬い笑顔を見せる。

 

 真美「…良かった~。」

 

 櫂「はははは…悪い悪い、少し無茶しちまってな…」

 

 櫂はやせ我慢にも見えるように気さくに答える。

 

 ゼロ「ったく、ここまで無茶な奴とは知らなかったぜ。」

 

 海羽「(気さくに)でも、無事倒すことが出来て良かったじゃない?」

 

 櫂は流石に自身の意識で戦い続けたため、体力がほとんどなくなっているのか、起き上る気配がない。健二を元に戻すために一方的にやられ続けた妄想セブンとの戦い(第11話参照)に、幻覚により翻弄され怒りで乗り切った今回の戦いと、ハードな戦いが続いたための疲労であろう。

 

 真美「疲れてるの?救急車呼ぼうか?」

 

 櫂「あ、ああ、サンキュー。………あ、そういやあお前らに伝えたいことがあるんだ……。」

 

 真美「伝えたい事?」

 

櫂は、疲れていることで、少しかすれた声で話し始める。

 

 「健二から聞いた話だが……彼に闇を与えた人物は………暗い表情に……逆立った茶髪に……ダークなスーツを着てい……た…………と………………。」

 

 櫂は、伝えたいことを告げた後、疲れによりフェードアウトする様に眠りについた。

 

 ゼロ「フッ……よっぽど疲れてたんだな。ま、無理もないか。」(しかし…俺の意識を一時的に乗っ取った激情……この青年…一体どこにこんな強い精神力が………?)

 

 ゼロは疲れにより眠りについた櫂を見つめながら、一時的に自身の精神を乗っ取った櫂に疑問を感じていた………。櫂に乗っ取られている間、一応ゼロの意識も残っているのだが、どうやら制御できなかったらしい………。

 

 一方、櫂の言葉を聞いた瞬間、真美達の表情は少し深刻になる。健二に闇のエネルギーを与えた人物に心当たりがあるのだろうか………?

 

 海羽「……真美ちゃん……その男って……」

 

 真美「……間違いないわ………」

 

 

 

[エピローグ]

 

 一方、テライズグレートでは、ブラック指令ガストが無事帰還できていた。

 

 ガスト「ふう~危なかった。セブンダーク消滅前に間一髪脱出来て良かったぜ。」

 

 ゲドー「しかし、またしても作戦は失敗してしまったな……。」

 

 キョウ「一体、どうすればウルトラマン共を……」

 

 

 ???「まあ、そう焦るなって…。」

 

 幹部達が途方に暮れる中、後ろから声がして振り向く。

 

 ………そこには、例のダークな表情に逆立った茶髪にダークなスーツを着ている青年が立っていた。青年はなおも話す。

 

 ???「焦らずじっくりと考えなよ……そしてじわじわと痛めつけようぜ。………それこそ、最高の刺激じゃないのかい?」

 

 青年は、暗い表情に似合わない陽気な口調で話す……。

 

 ガスト「……フッ、お前さんも随分と陰湿な奴ですなあ。流石はテラ様が見込んだだけはありますぞ………………………桜井敏樹。」

 

 ‼衝撃な真実が発覚!この青年こそ、消息が立っていた櫂達の友人『桜井敏樹』だったのだ!

 

 敏樹は不敵な笑みを浮かべる。そう、邪な考えをしている櫂のように………。

 

 はて、彼はどのようにしてウルトラマンテラの軍団に入ったのだろうか?そして、なぜ闇のエネルギーを人間に与えているのだろうか………?

 

 To Be Continued……

 

 (ED:赤く熱い鼓動)




 少し急展開な気もしますが(笑)ついに衝撃の真実が暴かれました。

 なぜ桜井敏樹がテラの軍団に入ったのか…それは今後分かって行きます。

 感想・指摘・アドバイス・リクエスト等をお待ちしています。


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第14話「繋がる想い、途切れぬ絆」

 今回は、これまで熱いかつハードな戦いが続いたと言う事で、軽い気持ちで製作するつもりでしたが、結局いつも(もしかしたらいつも以上?)のスケールの戦いになってしまいました(笑)

 登場する敵も、ほぼ私のノリで選んだりと、今回は色々とやりたい放題やってしまいました(笑)

 今回はいつもより長めですので、いくつか読みづらい所もあるかもと思いますが、どうか気軽に読んでくれたら幸いです。

あと今回、ゼロの活躍は少なめです。

 また、オリジナルの新キャラも登場します。


(OP:TAKE ME HIGHER)

 

『ブラック指令ガスト』のゼロ抹殺計画『デスゲーム』を振り切って翌日の7月30日の朝、竜野櫂はアパートのベッドで爆睡していた。

 

櫂がダークガルベロスを倒して疲労で眠りについた後、新田真美と眞鍋海羽が彼を病院まで連れて行った。医師によると「気力と体力を使い果たして疲れ切ってるだけ」とのことで、1〜2日ぐらい、少なくとも一日安静に過ごせば大丈夫と言われた。

 

やがて朝の9時ごろ、櫂は目が覚めた。案の定、皆さんもご存じの通り、普段から活動的に過ごしている彼は、安静に過ごすことを快く思ってなかった。

 

 「今日一日安静かよ……いくらなんでも一日中大人しく過ごすのは、俺にとって退屈の他に何もないぜ。おかしくなっちまいそうだぜ。」

 

 櫂は苦笑いしながらも不満を話す。

 

 「ま、気持ちは分からなくもないが、休めるときに休んでおかないと、肝心な時に肝心なファイトが出来ないぜ。」

 

 ゼロは櫂に同調しながらも休むことを進める。

 

 「そうかもだけど……怪獣はどうするのさ?真美の事だって心配だし……」

 

 「ハハハ、お前は親バカならぬ友バカかよ。真美に危険が来たって、ソルに変身できる海羽がいるじゃないか。それにパワードやコスモス、ビクトリーもいる。怪獣の方は問題ないと思うぜ。」

 

 ゼロは、心配する櫂を気さくに諭す。

 

 「……んま、だと良いけどさ。」

 

 櫂はそう言うと、再びベッドで仰向けで横になり、両手を頭の下に置く。その時、彼は何かを思っているのか、表情が少し暗くなっていた。

 

 櫂は、徐々に何かを思い出している様だった………。

 

 櫂の脳裏には、傷だらけで倒れている男女高校生集団を前に仁王立ちしている自身の姿が浮かんでいた………。一体彼は、何を考えているのだろうか………?

 

 「櫂?………おーい!」

 

 「!んん⁉な、何だいゼロ?」

 

 ゼロに話しかけられ、上の空だった櫂は慌てる様に反応する。

 

 「ぼーっとしちゃって、よっぽど疲れてんだな。真美の事は心配せずに、海羽達に任せてお前は休め。」

 

 「………ああ。」

 

 櫂はどこか腑に落ちないような返事をして眠りについた。しかし、先ほど上の空だったのは疲れの所為ではないようだった。

 

 眠っている櫂を見つめながら、ゼロも何やら考え事をしていた。

 

 (あとはギンガさえいれば百人力なんだが……。どうすれば助け出せるのか……?それにショウの奴、今も彼(ギンガ(礼堂ヒカル))を探しているのだろうか………?)

 

 ゼロの思い通り、同じ頃、ギンガを探している『ウルトラマンビクトリー』に変身する青年『ショウ』は、霞ヶ崎のとあるビルの屋上で空を見上げていた。

 

 (ヒカル……一体どこにいるんだ?……必ず見つけ出して、お前を闇から解放してやる。)

 

 ショウはそう心で言うと、何処へ去って行った。

 

 

 

 一方、眞鍋海羽は、一人河川敷の道をルンルンと歩いていた。

 

 私は眞鍋海羽。今日も天気快晴お出かけ日和、でも櫂君はダウンしてる(実際は違うが…)し、真美ちゃんは歌の練習に行ってるし、だから今日私は当ても無くショッピングしつつ散歩しているの。

 

 でも………最近妙に落ち着かないんだ………。先日櫂君から聞かされた怪しい男の話……私と真美ちゃんは、消息が立っているトシ君(桜井敏樹)だと思うんだけど、どうなんだろう…。そう考えると夜も眠れないの。

 

 トシ君も最後に会った時は、黒めの表情に黒めの格好をしていたから、もしかしてだけどね。でも私は、トシ君が闇落ちしているなんて信じたくないの。どこかで無事にしてると良いけど………。

 

私はそれが気になりつつも、いつもの様に晴れた気分で道を歩いていた……その時、

 

 「ん?」

 

ふと、足が止まる。目線の先には何か探し物をしている少女がいた。それも、見た感じただの少女じゃなさそうなの。

 

顔こそサラサラの長髪に大きい蝶のような髪飾りを付けている幼い可憐な美少女だけど…何やらいくつか黒い反射板を付けたようなスーツに金属製のベルトをしていて、下半身に着ている物もどう見ても地球の物とは思えないの。

 

その娘が何やら草むらを掻き分けながら探し物をしているようだったから、私は恐る恐る近づいて話しかけてみたの。

 

「……あの〜…何か探し物ですか?」

 

不思議な少女は私が話しかけたのに気づいた。その時!

 

少女は少し驚いた後、突然腰から銃を抜いて私に向けてきたの。私は驚きのあまりに思わず「ひゃっ⁉︎」両手を上に挙げてしまったけど、怯まず話しかけ続ける。

 

「…ま、待って!安心して。決してあなたに危害を加えたりしないから……!」

 

私の必死の叫びに分かったのか、少女は表情を和らげ銃を下ろす。そもそも銃を向けられた時から、少女の顔に不思議と殺気は感じなかった。

 

少女は銃を下ろした後、どこか憂鬱そうな顔で俯く。私はそんな彼女に明るく話しかける。

 

「……君、名前は何て言うの?私は眞鍋海羽。」

 

少女は少し顔を上げ、重そうに口を動かす。

 

「……私はバレッタ……『ペダン星人バレッタ』……。」

 

彼女の自己紹介に私は少し驚く。見慣れない格好だなと思ったら、彼女は実は地球人ではなく、あの『宇宙ロボットキングジョー』を送り込んだペダン星人の同族だったの………。

 

『策略宇宙人ペダン星人』。それは、かつて地球防衛軍が打ち上げた観測ロケットを侵略行為と誤解し、報復として地球にキングジョーを送り込んだことがある宇宙人である。

 

 彼らはヒューマノイド型の宇宙人であり、この時は、地球人の科学者・『ドロシー・アンダーソン博士』に化けて地球防衛軍を欺いている。

 

 そんなかつて地球人と敵対したペダン星人が、今目の前にいる事に海羽は戸惑いを隠せなかった。しかも今回は、不思議にもまるで邪気を感じない可憐な美少女である。

 

 私、眞鍋海羽は少し驚きながらもバレッタに語り掛ける。

 

 「君………宇宙人なんだ……正直驚き。しかし、地球に来て一体どうしたの?」

 

 しかしバレッタは俯いたまま話さない。私は折れずに笑顔で歩み寄り、肩に手を置く。

 

 「話してよ~。私にもできることがあるかもしれないじゃない。………ね。」

 

 バレッタは顔を上げる。私と数秒見つめ合った後、ようやく心を開き始めてくれたのか、重い口を開いて話し始める。

 

 「私………この地球に逃げて来たの……。」

 

 「え?」

 

 バレッタの思わぬ発言に私は少し驚く。バレッタはなおも話し続ける。

 

 ペダン星人バレッタは、海羽に自身の境遇などについて話した。なんでも彼女はペダン星人の新たなエリート戦士であり、戦闘能力、キングジョー操縦テクニックなどの腕の良さに目をつけられ、彼女を地球侵略の仲間にしようとする侵略者たちに目を付けられ、追われていたと言う。

 

 そして、必死で逃げ続け、たどり着いたのがこの地球だと言う。

 

 話を聞いた海羽は、驚きを隠せないようだった。

 

 「そう言う事だったなんて……。」

 

 「私はこの地球に着くまでキングジョーで抵抗しつつ逃げ続けた……しかし、奴らは何としてでも私を捕まえようと、所有怪獣達で追いつつ反撃を仕掛けてきた…。その時、私の身に危険が迫ったためか、キングジョーに搭載していた『緊急脱出装置』が作動して、私は地球に飛ばされたの……。」

 

 海羽と座って話していたバレッタは立ち上がる。

 

 「もうじき奴らもこの地球にやって来る……その前に、ウルトラ戦士達にこの事を伝える事が出来て良かった……。」

 

 「そうだね…。女の子を執拗に追い回すストーカー宇宙人なんて、私が許せないわ。」

 

 海羽も立ち上がる。

 

 「それにしても知らなかったわ……ペダン星人にも、友好的な人がいたなんてね(笑顔で)」

 

 「ありがとう……。私もそろそろキングジョーを呼び出して体勢を……」

 

 バレッタは、キングジョーを呼ぶための『遠隔操作器』を取り出そうと懐に手を突っ込んだその時、ある違和感に気付いたのか表情が変わる。

 

 海羽「?どうしたの?」

 

 バレッタ「無い………私の大事なバイオリンが無い!」

 

 海羽「バイオリン……?」

 

 バレッタ「常に懐に離さず持ってたのに……多分地球に飛ばされた際に、同時に無くしてしまったんだわ……!どうしよう…あれは彼氏からもらった大事な物なのに………。」

 

 慌てるバレッタの言葉を聞いて海羽は「はっ」と反応する。なんでも彼氏からもらった大事な物が無くなったと言うのだから……。

 

 「安心して。私も一緒に探すから。」

 

海羽は焦るバレッタを静める様に話しかける。

 

 その時、

 

 “バシュッ、バシュッ”

 

 突如、少し遠くの方に謎の赤・青・黄の三色の光が現れた。

 

 海羽「!何かしら?あれ。」

 

 バレッタ「……!もしかしたら、侵略者と関係あるかも……」

 

 海羽はバレッタと共に光の元に向かう。すると、そこで二人は奇妙な光景を目にする。

 

 街中に赤・黄・青それぞれの光が人々を照らしており、その光に照らされた人たちの様子がおかしいのである。赤に照らされた人々は熱さで苦しみ、青で照らされた人々はしばらく苦しんだ後、力が抜ける様に倒れていき、黄色で照らされた人々はまるで気が狂ったかのように暴れているのだ。

 

 異常な光景に海羽とバレッタは動揺する。

 

 バレッタ「………一体どうなってるの?これは………」

 

 海羽「わ~どうしよう……よく分からないけど、とりあえずこの人たちをどうにかしないと……」

 

 慌てる海羽。バレッタは冷静に辺りをじーっと見つめる………。

 

 すると次の瞬間、腰から素早く銃を抜き出し、弾を三発撃つ!

 

 打ち出された弾は、バレッタ達の周囲にある三つの信号機を直撃。すると、信号は機能を停止し、三色の光は消えた。謎の光は信号機から発せられていたのだ。

 

 「ふぅ~……」

 

 信号を打ち抜いたバレッタは、煙を吹き飛ばすように得意げに銃口に軽く息を吹きかける。

 

 「うわ~、バレッタちゃん凄い!」

 

 「アハハ……まあ、戦士の勘だけどね。」

 

 海羽とバレッタが笑顔で見つめ合ったその時、

 

 「フフフフフ、戦士としての勘は流石だな、バレッタ。」

 

 突如、何処からか声が響き、二人は警戒する様に身構える。

 

 「レボール……レボール……レボール……‼」

 

 不気味な連呼と共に、一人の星人が信号機の三色の光と共に現れた。

 

そいつらは信号の如く三色の色を持つ宇宙人『信号怪人レボール星人』だ。因みに先ほどの信号の混乱は奴の仕業である。

 

信号機からは、赤の高熱光線、青の血液蒸発光線、黄の人を発狂させる光線をそれぞれ発射していたのだ。

 

 レボール星人はかつて、彼らの同族が密かに地球へと侵入し、東京の廃坑となった地下下水道に秘密基地を作り上げ、そこから彼らの守護超獣を操り、信号を操作して東京都の交通網を大混乱に陥れたことがあり、当時活躍していた防衛チーム『TAC』や『ウルトラマンA』の活躍により侵略を阻止されている。

 

 今回現れたのは、その同族がウルトラマンテラの手下となったものである。

 

海羽「何者なの⁉」

 

 「我が名はレボール星人。そこにいる女、そいつを追って来たのだ。」

 

 レボール星人がバレッタを指差して言ったその時、バレッタの目つきが変わる。

 

 「こいつよ。こいつが私を追ってた星人の一人。」

 

 バレッタは凛とした視線で銃を構える。

 

 「おっと、抵抗してみろ。そうしたら、信号の中で待機している我の守護神獣を開放させるぞ。」

 

 レボール星人の言葉に、銃を構えていたバレッタは思いとどまる。

 

 すると、

 

 「とうっ‼」

 

 突如、右斜め上から何者かが掛け声と共に奇襲の跳び蹴りを打ってきた。バレッタは咄嗟に銃を前に出して防ぐが、反動により少し吹っ飛ぶ。

 

飛び蹴りを打ってきた宇宙人も着地する。

 

バレッタ「お前は……ターラ星人!」

 

レボール星人と共に、バレッタを狙っていたもう一人の刺客。それは『空間移動宇宙人ターラ星人』だった。

 

 彼らはもともと、食糧不足の母星のために、食糧の豊かな地球で古代の人類と交流しながら食料を得ていたが、やがて人類の野蛮さ(武器を作り戦争を行う等)を知り、地球を支配する事で戦争を鎮めようとしたが、当時地球を訪れていたM78星雲人(『ウルトラマンマックス』だと思われる)により阻止され、地球に来るための転送ゲートも封印されてしまったため、彼らの星『ターラ星』は飢餓により滅んだ。

 

 奴は、そんな滅んだターラ星の生き残りで、宇宙を漂流していた所をウルトラマンテラの軍の一員になったといったところだろう。

 

ターラ星人「こんな所で生き延びていたとはな。大人しく我々と共に来い。」

 

バレッタ「…嫌だと言ったら?」

 

 ターラ星人「なら、こうだ。」

 

 “バシュッ”

 

 ターラ星人が右手に付いている長剣を上に揚げ、先端を光らせたその時、空から何かが降って来て着地する。

 

 そいつは、ターラ星人が使役する石像のような姿をしている巨大モンスター『戦神ギルファス』だ!

 

 「お、では、此方も行きますか!」

 

 ギルファスを見上げるレボール星人は、先ほどバレッタに打ち抜かれた信号機に向けて手先から赤・青・黄の三色の光線を発射する。

 

 すると、信号機から三色の光線が街に発射され、それが段々と形になっていき、やがて光が消え、一匹の怪物が現れる。

 

それは、太い一本爪が生えた両手に、体中には信号と同じ三色の球体のような物体が付いているレボール星人の守護神獣『信号超獣シグナリオン』だ!

 

 ギルファスは胸からの火炎弾を連射し、頭部の角飾りを剣のように振るいビルを崩しながら暴れ、シグナリオンは赤・青・黄の三色の目を光らせて強力な破壊光線を発射し、一本爪を活かしたパンチでビルを崩しながらそれぞれ暴れ始める。

 

 「……大変。ここは私が…」

 

 海羽は変身しようと胸元から『ハートフルグラス』を取り出す。

 

 「おっと!これ以上抵抗してみろ。次はこうだ!」

 

 レボール星人が叫んだその時、彼らの周りを始め、広範囲に大量の影が現れる。それは、赤紫色のとんがり帽子をかぶった顔の無い人間のような怪人で、その姿は巨大ヤプール合体前のヤプールの様である。その怪人が無数に現れ、逃げ惑う街の人々を襲い始める。

 

 レボール星人「ファハハハハ、こ奴らはヤプール様の異次元エネルギーとマイナスエネルギーを混ぜ合わせて作り上げた戦闘員『ヤプールコマンド』だ!」

 

 ヤプールコマンドは、現れるやすぐに逃げ惑う人間を襲い始める。奴らは襲撃・戦闘用の戦闘員であるため、襲うか暴れるかしか行動が無いのだ。

 

 ターラ星人「これ以上抵抗するなら、人々を次々と殺っていくぞ。嫌ならバレッタ、大人しく我々について来い。」

 

 海羽とバレッタは言葉を失い立ち尽くす。そして、ヤプールコマンドに次々と襲われていく人々を見つめ、何もできない歯痒さに目をつぶり俯く。

 

 ターラ星人「さてと、バレッタちゃんを貰う前に、そこにいる邪魔な小娘を始末するか。」

 

 ターラ星人が海羽を殺そうと剣を振り上げる。もはや絶体絶命‼

 

 

 

 ……と、その時、

 

 “バキューン バキューン バキューン………”

 

 突如、何処からか複数の光弾が飛んで来てターラ星人の長剣とヤプールコマンド数体に命中する。突然の攻撃に少し怯むターラ星人。

 

 「誰だっ‼」

 

 ターラ星人を始め、全員が弾丸の飛んで来た方を振り向く。

 

 そこには、なんと『ウルトラゼロアイ』を銃型の『ガンモード』に変えて構えている竜野櫂、そしてその傍らには新田真美がいた。(櫂はゼロアイを元に戻し、真美は右手でピースして首を傾けウインク)

 

 海羽「‼櫂君。」

 

 バレッタ「彼らは?」

 

 海羽「私の友達よ。」

 

 海羽は嬉しそうに櫂達の元に駆け寄り、バレッタも後に続く。

 

 海羽「体、大丈夫なの?櫂君。」

 

 櫂「(得意げにガッツポーズ)ああ、この通り…」

 

 ゼロ「俺の制止を振り切って「どうしても」って来たんだ。ったく、お前らしいぜ。」

 

 櫂「ちょ…おま、余計なこと言うんじゃねーよ(苦笑い)」

 

 真美「それで、私もここに向かっていたら、偶然櫂君と居合わせたわけ。」

 

 櫂と真美は、自分たちが来た経緯を話す。

 

自身は消耗してると言うのに仲間のピンチに駆けつける…櫂らしいといえば彼らしい。最も、別の事も考えてそうだが……。

 

海羽「それにしても、櫂君、家で寝てたのでしょ?どうして分かったの?」

 

櫂「それが俺も分かんねーんだ。ま、強いて言うなら、俺たちの絆の強さが、ダチのピンチを知らせてくれたのかな。」

 

衝動的に飛び出してきたため、自分でも理由が分からなかった櫂は、それらしい答えを述べる。だが、彼らにはそれが本当の答えのように思えてきた。

 

真美「そうだね。だから、私たちが合流する事も出来たのかも。」

 

実際、彼ら(特に幼なじみ同士の櫂と真美)の絆は強いものである。それ故に、今、侵略者が攻めてきたこの場所から遠くの友に想いが届き、この場所に集う事が出来たのかもしれない。

 

バレッタ「絆…か。海羽ちゃん、いい友達がいるんだね。」

 

海羽「エヘヘ…」

 

櫂たちがいい感じのムードになり始めたその時、

 

 

「「こらー‼︎さっきから何だ‼︎無視すんな‼︎」」(地団駄を踏む)

 

 

すっかり忘れ去られかけたターラ星人とレボール星人が「構ってくれ!」とばかりに叫び、櫂たちは一斉に振り向く。

 

櫂「おーっと、悪い悪い。じゃ、行きますか。こいつら(ターラ星人、レボール星人)は俺と真美に任せろ。」

 

バレッタ「私も戦います。」

 

櫂「お、そうか。君は確かペダン星人だね。」

 

バレッタ「⁉︎どうしてそれを…」

 

櫂「この地球では有名なんでね。」

 

櫂は、ウルトラに関する知識はイマイチだが、何故かペダン星人にだけは詳しいのである(笑)なので、バレッタの装備を見ただけでペダン星人だと分かったのだ。

 

櫂「俺は竜野櫂。一緒にこいつら倒そうぜ!」

 

真美「私は新田真美。よろしくね。」

 

バレッタ「(嬉し涙をこらえて)……はいっ!」

 

海羽「じゃ、怪獣達は任せて。」

 

かくして、櫂と真美、バレッタは宇宙人、海羽は怪獣とそれぞれ戦う事となった。

 

レボール「レボール…レボール…こっから先は行かせないぜ。かかれ‼︎」

 

レボール星人が指示を出し、ヤプールコマンド達は一斉に櫂たちに襲い掛かる。

 

 櫂「よ~し、荒れるぜ、止めてみな‼」

 

 櫂の掛け声と共に、皆一斉にヤプールコマンド目掛け勇ましく駆け始める。

 

 (BGM:ENDLESS PLAY)

 

櫂達とヤプールコマンド軍団の生身の戦闘が始まった!

 

 櫂は、先陣を切っていたヤプールコマンドを駆け寄りながらの跳び蹴りで吹っ飛ばし、続けて後ろに回り込んでいた個体を見切りをつけた右回し蹴りで薙ぎ倒す。

 

さらに櫂は後ろ向きに一回転して跳び、目前の個体を蹴飛ばし、その後左右の個体に左右それぞれ肘打ちを打ち込んで跳ね飛ばし、その後前転するような一回転しての右踵落としを前方の個体の頭部に打ち込んでダウンさせる。

 

その後櫂は、体制を立て直し、駆けながら豪快にジャンプして、遠方にいた個体2〜3体を一気に右跳び蹴りで蹴っ飛ばし、蹴飛ばされた個体は幾つかの他の個体に激突してダウンする。

 

 流石は学園最強と言うだけあり、櫂は圧倒的な身体能力で次々とヤプールコマンドの群れを難なく倒していく。

 

真美は、前方の個体が打ってきた打撃をバレリーナの如く回転して下がりながらかわし、そのまま後ろの個体に水平に右手刀を打ち込んで倒す。

 

続いて前方の個体目掛けて、額に届くのではないかという程に右脚を高く振り上げてからのハイキックで吹っ飛ばし、その後、右側の個体の左腕を掴み、そのまま一回転して腕を捻る事で地面に転倒させる。

 

更に、前後左右から襲って来る個体を、両腕を広げて回転しながら跳躍する事で一斉に跳ね飛ばす。

 

青い水玉模様の薄めのスカートをなびかせながら華麗な動きでヤプールコマンドを蹴散らしていく真美。普段はおっとり優しい彼女だが、櫂同様、昔から鍛えていたため、身体能力は櫂ほどではないが高いのである。

 

ペダン星人バレッタは、打撃や銃撃を使い分けて応戦する。

 

 まずは前方の個体を右手で顔を数発叩き倒し、その直後後ろを向かずに後ろの個体を銃で打ち抜く。

 

 その後、襲って来た個体に左腰・右横腹・頭部左側面と右脚で三段蹴りを決め、その個体がよろけて曲げた膝を踏み台にして跳び、上空で回転しながら下の周りの個体群に銃撃を決め撃破していく。そして、落下しながら右踵落としを真下の個体の頭頂部に決めダウンさせる。

 

今度はヤプールコマンドが前後二体ずつ襲い掛かって来るが、バレッタは時計回りに一回転しながら、まずは前方の二体に銃撃を決め、その後そのまま回転しながら後方の二体を左ハイキックで蹴り倒す。

 

 可憐な美少女でありながら、ペダン星の新手エリート戦士だけあり、バレッタの戦闘能力も侮れないモノである。

 

 海羽は、変身するためにヤプールコマンドを退けながら怪獣達の元へ向かう。

 

 前方から突進してくる個体を跳び箱する様にかわし、そのまま落下しながら直前の個体に右足蹴りを決める。

 

 更に海羽は、右側の個体が打ってきたパンチをしゃがんでかわし、そのまま腹部にヒップアタックを決めて吹っ飛ばす。

 

 その後、前方の個体に時計回りの足払いを決めて転倒させる。

 

 ヤプールコマンド数体が海羽目掛けて手からの光弾を発射するが、海羽は先ほど足払いで転倒させた個体を踏み台にして高く跳んでかわす。最も、海羽が跳んで避けたため、光弾は踏み台にされた個体に命中して爆発。その爆風を下に空高く跳ぶその姿は、正にウルトラ戦士の様である。

 

 海羽はそのまま跳びながら、ハートフルグラスを目に当て、赤とピンクの光に包まれ『ウルトラウーマンSOL(ソル)』の姿に変わり巨大化する。

 

 そして牽制として、赤とピンクの光を纏った急降下キック『フラッシュソリッド』を暴れるギルファスに打ち込む!

 

 無防備だったギルファスは、蹴りを背後から喰らい転倒する。そしてソルは、回転しながら着地する。

 

 「……海羽ちゃん……!」

 

 戦いながらバレッタは、海羽の変身に気付き少し驚く。

 

 ソルの登場に気付いたシグナリオンはソルに襲い掛かる。ソルはシグナリオンの左フックを素早く両手でつかみ、そのまま背部・胸部に右・左交互に横蹴りを決め、その後跳躍しての右前蹴りを胸部に決めて後退させる。

 

 シグナリオンは、反撃として頭部の三色の球体からの怪光を同時に発射することでの破壊光線を発射するが、ソルは右横へ側転する様に回転しながら跳躍してかわす。

 

 避けられた光線は、ヤプールコマンド軍団の一部に命中し爆発。結果として群を減らしてしまった。

 

 ギルファスは胸からの火炎弾で反撃するが、ソルはそれを側転・バク転・跳躍一回転などをしつつ足で弾き飛ばしていく。そして、光弾を弾きながら徐々にギルファスに接近していき、やがて目前まで来ると、跳躍しての右足蹴りを胸部に打ち込んで後退させる。

 

 蹴りを決めた後、「イエイ!」と両手の拳を胸の前で握り、再び二体に立ち向かう。

 

 一方ヤプールコマンド軍団を相手している櫂は、ヤプールコマンド達が乱射してくる光弾を跳躍回転しつつ足で弾きながらかわしていく。

 

 ゼロ「俺達も行くぜっ櫂‼」

 

 櫂「レッツ、ゼロチェンジ‼」

 

 櫂は、宙返りしながら『ウルトラゼロアイ』を取り出し目に当てる。櫂は光に包まれ『ウルトラマンゼロ』(等身大)に変身して着地する。

 

 櫂は前回の戦いで消耗しているため巨大化して戦う事はまだできないが、等身大で戦う体力は残っているのだ。

 

 そして、頭部の二本のゼロスラッガーをブーメランの如く飛ばす。二本の宇宙ブーメランは高速に複雑な軌道を描きながら飛び、ヤプールコマンド達を次々と切り裂いていく。

 

 ゼロスラッガーの斬撃により、ヤプールコマンド軍団は瞬く間に全滅した。

 

 ゼロ「さあ、残りはお前らだぜ!」

 

 ゼロは残ったターラ星人達に指を差す。

 

 だがしかし、ターラ星人達は慌てるどころか、「フフフフフ…」と笑い始める。

 

 ゼロ「何がおかしい⁉」

 

 レボール星人「こういう時の為にもう一つ手は打ってあったのだ。レボール…」

 

 レボール星人が言葉を発したその時、突如黒いオーラのような物と共に一匹の超獣が現れる。それは、文字通りバイオリンがそのまま怪獣になったかのような姿をした『バイオリン超獣ギーゴン』だ!

 

 ギーゴンが登場した瞬間、バレッタは驚愕する。

 

 「‼バ…バイオリン……もしかして……」

 

 レボール星人「流石はバレッタ。戦士としての勘は流石だな。」

 

 ターラ星人「その通り、お前が逃走中に落としたバイオリンを利用させてもらったのさ。」

 

 なんと、バレッタが無くしていた彼氏からもらったバイオリンが超獣ギーゴンに変えられていたのだ!その事実に櫂達も驚愕する。

 

 「いや~これほどまで素晴らしい作戦は無いと思わないかい?」

 

 語りながら黒いオーラと共に巨大化した『メフィラス星人キョウ』も現れた。

 

 ゼロ「‼ラッキョウ野郎……またお前の仕業か⁉」

 

 キョウ「バクタリの時の余ったマイナスエネルギーを浴びせて超獣に変えたのさ。ソルよ!お前は新しい友達の大事な物を壊せるかな~?」

 

 「うっ………バレッタちゃんの大事な物が………どうしよう………。」

 

 キョウの言葉にソルは思いとどまる。

 

 真美「キョウ……何て卑怯な……」

 

 キョウ「フハハハハ、馬鹿め!卑怯もラッキョウもあるものか‼」

 

 卑怯だと非難されるキョウはまたしても得意の言葉をぶつける。

 

 その隙にギーゴンは体を震わせて脳波破壊音『デスサウンド』を発する!

 

奇怪な音はソルの耳に入り、やがて脳細胞に刺激が来たのか、ソルは頭を抱えて苦しみだす。地上で観戦しているゼロや真美達にもデスサウンドが聞こえ、ゼロや真美達も苦しみだす。

 

 因みにターラ星人達宇宙人は特殊な耳栓をしているのか、苦しむ様子は無かった。

 

 ゼロ「くっ……何て酷い音だッ‼」

 

 櫂「みんな!耳をふさぐんだ‼」

 

 櫂の指示で、真美達は急いで耳をふさぐ。

 

(……私の大切なバイオリンが…こんなことになるなんて……)

 

 耳をふさぎながらバレッタは、自身の大事なバイオリンが怪奇音を発する醜い超獣に変えられたことを嘆く。

 

 「うう……何なのこの音は……頭がかち割れちゃう………!」

 

 ソルがデスサウンドで苦しんでいる隙に、ギルファスは頭部の角飾りをブーメランのごとき飛ばし攻撃を仕掛ける。

 

 巨大な角飾りブーメランは何度もソルの体を斬りながら飛び、ソルの体力を奪っていく。ソルがよろけた隙にシグナリオンは三色の破壊光線を浴びせる。

 

 光線が胸部に直撃して大ダメージを受けたソルは、地に膝を付いた後、仰向けに倒れてしまう。

 

 ギルファスは倒れたソルの腹部を巨大な右足で踏みつけ、その後横腹を蹴り転がす。

 

 ソルはよろけながらも立ち上がるが、その直後にギーゴンの熊手のような巨大な両手の打撃を背部・腹部にそれぞれ喰らい、更にシグナリオンの右フックを腹部に、ギーゴンの右フックを背部に同時に喰らい、よろけた所にシグナリオンの左フックとギーゴンの右フックを背中に同時に喰らい吹っ飛ぶ。

 

 ギーゴンは頭部の四本の触覚から緑色の金縛り光線を発射し、ソルの体に巻き付けて動きを止める。

 

「くっ……何これ………⁉」

 

 ソルが身動き取れなくなったところで、ギルファス、シグナリオン、ギーゴンがソルを囲み、そして三体同時にタコ殴りを始める!これぞ文字通りの『集団リンチ』である!

 

 同じ頃、ゼロはターラ星人とレボール星人を相手していた。

 

 キョウ「フハハハハ!前回以上に完璧な作戦!流石は僕は策士だ‼」

 

 自画自賛するキョウ。だがゼロは、二人の攻撃を余裕でかわしながら語り始める。

 

 ゼロ「フッ……考えは流石だが、お前はもう一つ重要な事を忘れている!」

 

 キョウ「何っ!何のことだ⁉」

 

 ゼロ「今に分かるさ。お、ちょうど俺のウルトラサインが届いたところだぜ。」

 

 キョウ「何っ⁉」

 

 キョウが空を見上げた。そこには複雑な形で『SOS』の文字が書かれていた。これはいつの間にかゼロが発していた『ウルトラサイン』である。

 

 ウルトラサイン。それはウルトラ戦士達が通信用に使用する信号であり、地球から300万光年先にあるウルトラの星にすら一瞬で届くほどの性能を誇る。使用目的は警告や戦いのアドバイス、援護を求めるなど様々である。

 

 今回はゼロが、他のウルトラ戦士に援護を求めて発したのだ。

 

 ソルをタコ殴りしていたギルファスは、突然何かに気付いたのか、ある場所へ火炎弾を連射し始める。

 

 その先には、ギルファスの火炎弾による爆風が周りに起こる中、駆けて来る三人がいた。

 

 その三人とは、『ウルトラマンパワード』に変身するケンイチ・カイ、『ウルトラマンコスモス』に変身する春野ムサシ、『ウルトラマンビクトリー』に変身するショウである!三人はゼロのウルトラサインを受け、即駆け付けて来たのだ!

 

 ショウは駆けながら、ビクトリーランサー(ガンモード)にEXレッドキングのスパークドールズをリードする。

 

 《ウルトライブ GO! EXレッドキング‼》

 

 ショウは、EXレッドキングの力を宿した光弾『モンスシューター』を発射する。ソルをタコ殴りしていた三体は、EXレッドキングの光弾の直撃を受け吹っ飛び、同時にソルを拘束していた光線も消滅した。

 

 三人はカイをセンターに横一列に止まる。

 

 ショウ「遅くなったな。加勢に来たぞ。」

 

 ムサシ「心の絆があるから僕たちはここに集えた。」

 

 カイ「その力、今に見せてやる。行くぞっ‼」

 

 ショウはビクトリーランサーをランサーモードに戻し、カイは変身アイテム『フラッシュプリズム』を、ムサシは変身アイテム『コスモプラック』を取り出す。

 

 ショウはビクトリーランサーを前に突き出し、現れたビクトリーのスパークドールズをリードする。

 

 《ウルトライブ‼ウルトラマンビクトリー‼》

 

 ムサシはコスモプラックを揚げ「コスモース!」と叫ぶ。

 

 カイはフラッシュプリズムを高く揚げてスイッチを押す。

 

 ショウは光となったビクトリーと一体化し、コスモプラックは花の蕾が花開くように先端が三方向に開き内部にある輝石が埋まった細い棒状のパーツが伸張し、フラッシュプリズムは三つの発光部が同時に輝く。

 

 そして、各変身アイテムから解放された光に包まれた三人は巨大化し、各ウルトラマンの姿に変わる。

 

 光の中からパワード、コスモス、ビクトリーが現れ、土煙を上げながら着地する。

 

 キョウ「んなっ⁉こんなの卑怯だぞ!」

 

 櫂「卑怯好きなお前が言うんじゃねー。それに、それに、そちらが四でこちらも四だから公平だ!」

 

 ターラ星人「くそっ、こうなったらこいつらだけでも……!」

 

 ターラ星人とレボール星人は、真美とバレッタ目掛けて光弾を発射する。バレッタは間一髪跳躍して避けるが、真美は爆風により「きゃあ‼」と叫びながら吹っ飛ばされ、地面に転がる。

 

 バレッタ「大丈夫ですか⁉」

 

 バレッタは真美の元に歩み寄る。真美の右膝にはかすり傷が出来ていた。

 

 それを見たゼロは拳を振るえるほど強く握り始める。櫂の真美を攻撃されたことによる怒りによるものだ。

 

 櫂「バレッタ……真美を頼む。」

 

 ゼロは櫂の意識で言った後、ゆっくりと二人の星人向けて歩き始める。その表情はどこか殺意に満ちていた。

 

 「おーいどうした?勢いが足りねーぜ!」

 

 ターラ星人とレボール星人がゼロに駆け寄ったその時、ゼロは両手でそれぞれ二人の首根っこを掴み、そのまま勢いよく走り壁に叩き付け、締め上げ始める。

 

 レボール星人「あ……あれ?ゼ……ゼロちゃん?どうしちゃったの?」

 

 ゼロ「て~め~ら~……許さねえ!」

 

 ゼロは二体の頭をぶつけふらつかせた後、乱暴気味に腹部・顔面にパンチ、キック、膝蹴りなどを連打し始める。どこかヤクザの様に見えるその戦いぶりはいつものゼロらしくなく、恐らくこれも櫂の怒りがゼロの意識に勝っているが故であろう。

 

 櫂の逆鱗に触れた二人が哀れである。

 

 

 一方、三人のウルトラマンは膝まづくソルに歩み寄り、手を取り立ち上がらせる。

 

 カイ「加勢しに来たぞ。大丈夫か?ソル。」

 

 海羽「ええ。来てくれたのね。(瞳を輝かせる)」

 

 ムサシ「僕達は離れていても、途切れぬ絆がある。だから駆け付けれるんだ。」

 

 ショウ「俺達ウルトラマンは助け合う。そして勝利を手にする。さあ、反撃開始だ。行くぞ。」

 

 海羽「うん!」

 

 四人のウルトラマンは構えを取る。そして、パワード・ビクトリーVSギルファス、コスモスVSギーゴン、ソルVSシグナリオンと、それぞれの戦いが始まった!

 

 一方の、怒り心頭のゼロVSターラ星人・レボール星人はと言うと……ゼロの怒りの猛攻は続いており、ゼロは仰向けに横たわる二人に馬乗りになり、パンチ・踏みつけ(ケンカキック?)をめちゃくちゃに連打すると言うカオスな状況であった。

 

 (……あの人だけは怒らせちゃいけないかも………。)

 

 戦いを見ているバレッタは若干引き気味である……当然か(笑)

 

 「ホラ立てよぉ‼」

 

 ゼロは両手で二人を掴んで起き上らせた後、腹部に膝蹴りを数回打った後、力一杯二人を上空に放り投げる。

 

 次に、ゼロスラッガーを合体させて三日月状の剣『ゼロツインソード』に変形させ、殺意に満ちた表情で落下する二人を見上げながら、刃先にプラズマスパークの光エネルギーを集中させる。

 

そして、エネルギーを溜めたゼロツインソードを大きく横一文字に振り、斬撃中最大の必殺技『プラズマスパークフラッシュ』を繰り出す‼

 

 櫂「お前ら全員、地獄へ行けえええぇぇぇ‼」

 

 “ザシュッッッ”

 

 ターラ星人「ギャアアア‼……お、俺達、」

 

 レボール星人「こんな終わり方って……」

 

 二人「「ありかよーーー~‼」」

 

 “ズドーン”

 

 強力な光の斬撃を受けた二人は大爆発した。ゼロの勝利である。

 

 だが、怒りの暴走の反動か、ゼロの変身が解け、櫂は崩れ落ちる様に仰向けに倒れ、眠りにつく。

 

 ゼロ「ったく、消耗してんのに無理するからだ……」

 

 真美の傷の手当てを終えたバレッタは、眠っている櫂と真美を見つめる。

 

 バレッタ「(苦笑いしながら)……海羽ちゃんの友達って………刺激的ね。」

 

(BGM:ULTRA STEEL)

 

 場面はウルトラ戦士達の戦いに変わる。

 

 ギルファスは火炎弾を連射するが、パワードとビクトリーは左右それぞれの方向でギルファスの周りを走り、それを避ける。

 

 そしてパワードは駆けながら腕を十字に組んで『メガスペシウム光線』を発射する。だがギルファスは、手に持った盾でそれを難なく防ぐ。

 

 この盾は、『ウルトラマンマックス』の必殺技『マクシウムカノン』を防いだことがある非常に丈夫な盾である。

 

 だが、ギルファスがメガスペシウム光線を防いでいる隙に、背後から既に『シェパードンセイバー』を構えていたビクトリーが駆け寄り、背後から袈裟懸けに斬撃を決める!

 

 無防備な背中を攻撃されたギルファスはバランスが崩れ。メガスペシウム光線の直撃を受けて吹っ飛ぶ。

 

 ギルファスが怯んだ隙に、パワードと、シェパードンセイバーを構えたビクトリーは駆け寄る。まずはビクトリーがシェパードンセイバーで左右袈裟懸け、横一文字と斬撃を決め、その後パワードがしゃがんだビクトリーの背に手をついて跳び、右足蹴りを胸部に打ち込む。

 

 ビクトリーはシェパードンセイバーをVを書くように振り、V字型の光の光弾『シェパードンセイバーフラッシュ』を放つ!ギルファスはそれを盾で防ぐが、その隙にビクトリーは光弾を防いでいる盾に駆け込みジャンプキックを打ち込む!

 

 流石に光弾からの跳び蹴りの二重攻撃には耐えきれず、ギルファスの盾は吹っ飛ぶ。

 

 ショウ「この剣(シェパードンセイバー)は…俺とあいつ(シェパードン)の絆の証……その力は、どんな強靭な盾も破る‼」

 

 パワードとビクトリーは盾を失ったギルファスに駆け寄り始める……。

 

 ソルはシグナリオンの左右フックを両手で防ぎ、「エイ、エイ、エイ、……」と掛け声を上げながら胸部に左右連続パンチを浴びせる。

 

 その後ソルは、左脇腹に右横蹴りを二発撃ちこみ、腹部に左膝蹴りを決め、更に跳躍して胸部に二段蹴りを打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 ソルはシグナリオンを蹴りで吹っ飛ばして着地した後、「イエイ」とガッツポーズを決めた。

 

 コスモス(ルナモード)はギーゴンの左右打撃を受け流し、腹部に両掌を打って撥ね飛ばす。

 

 その後コスモスは、体勢を立て直し、右手を揚げて赤い光に包まれた後、両手を下ろして『コロナモード』となる。更に両手を上げ、周りに黄金の光の輪が現れた後、右腕を一回転に回す。すると体色が赤・青、更に金が加わったものへと変わっていき、やがて姿が変わった。

 

 それは、コスモス第三の姿であり、ルナの「優しさ」とコロナの「強さ」に「勇気」を体現した「太陽と月が重なる金環日食の溢れるフレアーのごとき、神秘の巨人」のモード『ウルトラマンコスモス(エクリプスモード)』だ!

 

 コスモスはモードチェンジ終了後、構えを取る。ギーゴンはデスサウンドで反撃しようとするが、コスモスはすかさず両拳を突き出し、電撃状の停止光線『サスペンドショット』を放つ!

 

 光線はギーゴンの弦や頭部の触覚に当たる。これでデスサウンド及び金縛り光線が打てなくなってしまった。

 

 ギーゴンが怯んだ隙にコスモスは駆け寄り。腹部に左右拳を打った後、跳躍して強力な右跳び蹴り『フライングスパーキー』を胸部に打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 コスモスは体勢を立て直し、両腕をクロスして右腕にエネルギーを溜めた後、右拳を突き出して黄金の必殺光線『コズミューム光線』を発射する!これはエクリプスモードの必殺技であり、「優しさ」と「強さ」を併せ持った、破壊光線にも浄化光線にもなる万能光線である。

 

 コズミューム光線を浴びたギーゴンは光に包まれ、黒いオーラの様な物を放ちながら縮小していき、やがて元のバイオリンに戻った。

 

 バレッタは即座にギーゴンが消滅した方へ駆けて行き、バイオリンを拾い上げ、抱きしめる様に抱える。

 

 「………良かった……本当に良かった………。(少し嬉し泣き)」

 

 パワードとビクトリーは、同時に右跳び蹴りを放ちギルファスを吹っ飛ばす。ビクトリーは両手でV字型のエネルギーを描き、右腕にエネルギーを溜めた後両腕をL字に組み、パワードも両腕を十字に組む。

 

 「メガスペシウム光線‼」

 

 「ビクトリウムシュート‼」

 

 二人の合体光線はギルファスの腹部を直撃して風穴を開ける。そしてギルファスは崩れる様に大爆発した。

 

 ソルは跳躍してシグナリオンの頭部を両足で挟み、バック宙の要領で回転しつつ『フランケンシュタイナー』で叩き付ける。

 

 そして体勢を立て直した後、シグナリオンが反撃で放った破壊光線を上空に跳躍してかわし、そのまま右拳を突き出して必殺光線『ミスティックシュート』を放つ!

 

 光線はシグナリオンの頭部に命中し、シグナリオンは大爆発した。ソルは着地した後、顎下に右ガッツポーズを決める。

 

 怪獣達を倒したウルトラ戦士は、キョウを目前に並び立つ。

 

 「くう~やってくれたなウルトラ戦士共‼こうなったらバスコ達に援護を頼ん………」

 

 “ズドーン”

 

 「グフフォ~⁉」

 

 突如、上空からの赤い稲妻状の光線がキョウを直撃し、キョウは吹っ飛ぶ。四人は驚き見上げると、空から一体のロボットが着地する。

 

 それは、黄金の金属製の重量感のあるボディが特徴のペダン星のスーパーロボット『宇宙ロボットキングジョー』だ!

 

 先ほどキョウが受けた光線は、キングジョーの両目のようなパーツから発射する破壊光線『デスト・レイ』である。

 

 四人は目を見張るが、よく見てみるとコックピットにはバレッタが座っている。

 

 バレッタ「みんなありがとう。ここからは私に任せて。」

 

 キョウ「上等だ!女子(おなご)共々スクラップにしてくれる‼」

 

 キョウは自信満々に駆け寄る。

 

 「よくも大事なバイオリン利用してくれたわね~」

 

 バレッタの瞳が炎を放つ。どうやら彼女は怒り心頭みたいだ。

 

 「喰らえィ‼」

 

 キョウは駆け寄りながら右前蹴りを放つ。だが、キングジョーはそれを即座に左足で弾き、追い打ちとばかりに左右殴り込みを顔面に決め、更に右横蹴りを左脇腹に二発打ち込み、その後強烈な右アッパーでぶっ飛ばす。

 

 キョウをボコボコにするキングジョーを見ている四人のウルトラ戦士は唖然としていた。何を唖然としているかと言うと、キングジョーはロボットらしくゆっくりと重量感のある動きをするのだが、このキングジョーは、まるでウルトラ戦士の如く素早くパンチ・キックを繰り出している………そう、バレッタの操縦するキングジョーは非常に“機敏”なのである!

 

 海羽「……キングジョーって、あんなに機敏だったっけ?」

 

 ショウ「多分、あの女の操縦テクが高い影響だろうな。」

 

 海羽「(軽く拍手をしながら)流石はペダン星の新人エリート……」

 

 ムサシ「それに、女って色々と恐ろしいからね。(苦笑)」

 

 カイ「ああ……どうやら俺達は出る必要なさそうだ。」

 

 パワード達は変身を解いた。

 

 一方、いつの間にか目を覚ましていた櫂と真美も、その光景を見つめていた。

 

 ゼロ「なかなかやるな。あのペダン星人。」

 

 キングジョーの猛攻は続く。キングジョーは自慢の怪力でキョウを担ぎ上げた後、空高く放り投げる。そしてその後、上空のキョウ目掛けてジャンプする。

 

 キョウ「ちょ……ちょっとタンマ……く、来るな~‼」

 

 バレッタ「ちぇいさっ‼」

 

 上空でキングジョーは、キョウに強烈な右横蹴りを決める!蹴りをモロ腹部に喰らったキョウは、「ギャ~!これってデジャヴ~⁉」と叫びながら空の彼方へ吹っ飛び、やがて星になった。

 

 キョウをぶっ飛ばしたキングジョーは着地する。

 

 バレッタ「(余韻に浸るように)………快感………。」

 

 

 

 

 櫂達は、キングジョーの手に乗るバレッタを見上げる。

 

 バレッタ「ありがとうございます。助けてくれた上に、バイオリンを取り戻させてくれて。」

 

 バレッタは、風の中踊る髪を手で押さえながら礼を言う。

 

 海羽「バレッタちゃん、この後どうするの?」

 

 バレッタ「私はこの後、逃亡の際にはぐれた彼氏と再会します。平気です。もう襲ってくる侵略者はいないのだから……。」

 

 ゼロ「元気でやれよ!」

 

 櫂「困ったらいつでも駆け付けるぜ。」

 

 真美「また気が向いたら、地球に遊びに来てね。」

 

 バレッタ「……ありがとうございます。では、そろそろお別れです。さようなら。」

 

 海羽「約束だよ。いつかまた会おうね。」

 

 海羽とバレッタは笑顔で手を振り合う。バレッタはヘルメットを装着し、コックピットに乗り込む。

 

 バレッタは手を振りながら、キングジョーと共に宇宙へと旅立って行った……。

 

 櫂「……行っちゃったな。海羽、新しい友達が出来て良かったな。」

 

 海羽「(笑顔で)うん!」

 

 真美「でも…無事に会えるかな?彼氏に。」

 

 海羽「大丈夫だよ!今日私たちが絆の力で会えた様に、バレッタちゃんもきっと彼氏と再会できるよ。それに、互いに恋する男と女の絆は一際強いんだから!」

 

 櫂「ハハッ……そうだな」

 

 櫂は苦笑いで相槌を打った後、横目で右にいる真美を見つめ始める………。

 

 海羽「しかし……バレッタちゃんの彼氏ってどんな人なのかな?」

 

 真美「きっと櫂君みたいに超イケメンな良い男かもしれないよ。」

 

 櫂「ハハハ。照れるじゃねーか真美。」

 

 櫂達は笑顔で笑い合う。その時、何処からか美しいバイオリンの音色が聞こえ始めた。

 

 真美「何だろうこれ……きれいな音ね~。」

 

 櫂「もしかしてバレッタが、お礼としてバイオリンを弾いてるのかもな。」

 

 海羽はバイオリンの音色を聴きながら、笑顔で空を見上げ始める。

 

 海羽「………………バレッタちゃん……。」

 

 

 

 そう、このバイオリンの音色は、バレッタが成層圏辺りのところで、キングジョーの手に乗って弾いているものだった。

 

 因みにバレッタが付けているペダン星のスーツ及びヘルメットは、宇宙でも対応できるものである。

 

 バレッタはどこか嬉しそうに弾いている。これは恐らく、海羽達への感謝の演奏であろう。美しい音色は、まるで地球全体に響き渡るようだった………。

 

 

 

 [エピローグ]

 

 戦いを終え、カイ達と別れたショウは、歩きながらビクトリウムのペンダントを見つめていた。

 

 ショウ「心の絆………か。今でも俺は、“あいつ”と絆で繋がっているのだろうか……。」

 

 ショウは空を見上げる。

 

 同じ頃、地球目前の宇宙空間空間で浮遊しているギンガダークも、何を考えているのか、じーっと地球を見つめていたが、しばらくするとどこかへ飛び去って行った………。

 

 闇落ちしたヒカルと、彼を想い続けるショウは、今でも僅かながら絆で繋がっているのかもしれない………。

 

 To Be Continued………

 

 (ED:心の絆)




 読んでいただきありがとうございます。いかがでしたか?

 今回はたまにはと言う事で、私のやりたい放題にやってしまいました(笑) 

自分で言うのもアレですが、戦闘員が出たりと若干戦隊っぽい所もありましたね(笑)ヤプールコマンドは今後も出していく予定です。

ペダン星のバレッタは今後も登場させるかは検討中です。

 因みに生身戦闘シーンについてですが、当初は『豪快パイレーツ』や『特急レインボー』も参戦する予定でしたが、流石にそれだと長くなってゴテゴテしてしまうと思ったのでカットしました。

 また、バレッタの外見イメージについては『列車戦隊トッキュウジャー THE MOVIE ギャラクシーラインSOS』に登場した『レディ』に大きな蝶の髪飾りを付け、ペダン星人のスーツを着せた感じです。

また、今更ですが、メフィラス星人キョウの外見は、初代ではなく、タロウと戦った二代目と同じものです。

 感想・指摘・アドバイス・リクエスト等をお待ちしています。


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第15話「命は美しい」

 くどうようですか、前回は私のやりたい放題にやってしまったので、今回は原点回帰を目指した王道のストーリーを意識して作成しました。

 登場怪獣も王道なものです。

 因みに、今回はバトルシーンが多めなので文字数が前回より多くなってしまいました(笑)

 あと、最後に驚きのサプライズが待っています!


 (OP:TAKE ME HIGHER)

 

 それは、ウルトラマンゼロと竜野櫂たちが、メフィラス星人キョウとターラ星人、レボール星人の総攻撃を破った後の夜、深夜2:00頃の事だった。

 

 静かに寝静まっていたとある山中の田舎町。そこの二ヶ所に突如、地面が大爆発して大きな土煙の柱と共に、二体の怪獣が現れた。

 

一匹は、全身が蛇腹のような凹凸に覆われたマッシブな身体に、体形は頭頂部にかけて細くなっていく様な巨大感のある容姿が特徴の『どくろ怪獣レッドキング』。

 

 もう一匹は、レッドキングと同じくマッシブな身体に頭の二本の巨大角、全身の鱗に包まれたような銀色の皮膚、背中から尻尾にかけて生えている棘、瞳の無い眼などが特徴の『剛力怪獣シルバゴン』だ。

 

 二体は現れるや咆哮を上げ、民家を踏み潰したり、剛腕で岩山を崩したりなどして暴れ始める。

 

 二体の怪獣の力は凄まじく、民家や建物が次々と破壊され、崩された岩山からは雪崩のように岩が崩れ落ちる。

 

 のどかだった田舎町が一気に怪獣達の地獄に変わり、人々は逃げ惑う。怪獣達はそんな人々をあざ笑うかのように我が物顔に暴れ続ける。

 

 そしてシルバゴンが逃げる人々の一部に追い付き、踏みつぶそうとした。

 

 その時、

 

 「ビクトリーハイパーキック‼」

 

 “ズゴーン”

 

 シルバゴンは突如、上空から現れた『ウルトラマンビクトリー』のV字型の光を纏った右急降下キックを胸部に喰らい転倒する。

 

 シルバゴンを吹っ飛ばしたビクトリーは顔前で両腕をクロスして土煙を上げながら着地する。そしてゆっくり立ち上がりながら構えを取る。

 

 レッドキングは現れたビクトリー向かい地響き立てて走り始め、ビクトリーも駆け寄り始める。

 

 ビクトリーはレッドキングと左右互角なパンチの応酬を始める。だが、レッドキングのパワーは凄まじく、ビクトリーはやや押され気味である。

 

 ビクトリーはレッドキングの大振りの右フックをしゃがんでかわし、腹部に右拳を打ち込み、続けて左アッパーを下顎に決める。

 

 その後レッドキングが怯んだ隙に左右交互に横蹴りを腹部に決め、続けて一回転しての右後ろ回し蹴りを胸部に打ち込んで後退させる。

 

 ビクトリーはレッドキングに右ヘッドロックを掛けるが、レッドキングはそのままビクトリーを持ち上げ、バックドロップの如く後ろに投げるが、ビクトリーは上空で回転して体勢を立て直し着地する。そしてその直後にレッドキングの背部に右横蹴りを叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 レッドキングは近くにあった岩を持ち上げ、ビクトリー目掛けて投げつけるが、ビクトリーは避けるどころか、V字型の光を纏った華麗な左回し蹴りで飛んで来た岩を叩き砕いた!

 

 この蹴りはビクトリーの技『ビクトリウムスラッシュ』の応用であり、本来足のクリスタルから発射する黄色の光弾を足に纏ったまま蹴りを放つものである。

 

 砕かれた岩の飛び散る破片の一部がレッドキングの頭部に当たった。これにより逆上したレッドキングはもう一度近くの岩を、投げつけようと持ち上げる。

 

 「ビクトリウムスラッシュ‼」

 

 ビクトリーは即座に右足から回し蹴りの様にビクトリウムスラッシュを発射する。V字型の光弾はレッドキングが投げようとしている岩に命中して爆発。驚いたレッドキングは思わず岩を手放してしまい、自分の足に落としてしまう。

 

 岩を足に落としてしまったレッドキングは大げさなポーズで痛がり始める。レッドキングは怪力自慢で力勝負だと負けないのだが、頭が悪いのが玉に瑕。そのためこのように頭脳的な戦いを挑まれるのに弱いのである。

 

 ビクトリーはレッドキングが痛がっている隙に駆け寄り、スライディングしながらの右足払いをレッドキングの左足元に決めて仰向けに転倒させ、更に畳みかける様に跳躍して前方に一回転しての右踵落としを叩き込む。

 

 「よし、一気にトドメを……」

 

 “バゴンッ”

 

 「‼ぐっ……」

 

 ビクトリーはレッドキングに止めを刺そうとした時、油断したためかシルバゴンの尻尾の一撃を頭部に喰らい吹っ飛ぶ。

 

ビクトリーは立ち上がるが、そこで寄って来たレッドキングの右フックを顔面の左側面に受け吹っ飛び、その後背後からシルバゴンに締め上げられる。

 

 シルバゴンは怪力で首を締め上げるが、ビクトリーは腹部に右肘を数発打ち込み、更に右裏拳を顔面に決めて怯ませる事で何とか脱する。

 

ビクトリーは受け身を取って距離を取った後、膝を付いて止まり、寄って来る二体を見つめ始める。怪力怪獣コンビにどう対処しようか考えているのだろう。カラータイマーは赤く点滅を始める。

 

 「時間が無い、このままでは………」

 

 ……だが、シルバゴンは止まっているビクトリー目前まで近付いた時、突然様子が変わる。

 

 それも、ビクトリーを攻撃する様子は無く、むしろどこにいるのか探しているような感じだ。シルバゴンの様子の変化にレッドキングも動揺する。

 

 シルバゴンは怪力だけでなく体皮も頑丈と、攻守共に優れた強力な怪獣だが、唯一の弱点は視力の悪さであり、動いていないものを確認することが出来ないのだ。ビクトリーはたまたま膝を付いて動きを止めていたため、シルバゴンに攻撃されずに済んだのである。

 

 《ウルトランス! EXレッドキングナックル‼》

 

 ショウは二体が動きを止めた隙に、EXレッドキングのスパークドールズをビクトリーランサーにリードし、右腕をEXレッドキングの拳『EXレッドキングナックル』に変える。

 

 そして、まずは目前のシルバゴンを炎を纏ったパンチで殴り飛ばし、続けてレッドキングに駆け寄りながら一回転しての打撃を腹部に決めて吹っ飛ばす。

 

 ビクトリーは右腕を元に戻しビクトリウムシュートの体勢に入ろうとするが、レッドキングは近くの岩をがむしゃらに投げ始める。

 

 ビクトリーは即座にそれを避けたりパンチ、キックで砕いたりしていく。すべての岩を砕いた後、再びビクトリウムシュートを打とうとするが、気が付いたら二体は既に姿を消していた。ビクトリーが岩を避けている間に地中に逃げたのだろう。

 

 ビクトリーは光と共に姿を消し、『ショウ』の姿に戻る。

 

 「………こんな時にヒカル(ギンガ)がいれば、今の時点で勝てていたかもしれない」

 

 ショウは夜空を見上げながら呟いた。

 

 「ヒカル……今どこにいるんだ?………必ず助け出してやるからな。」

 

 ショウはそう言うと、何処かへ駆け出す。

 

 (あの二体は、恐らく次は霞ヶ崎に現れる……早く櫂達のところへ行かなければ………。)

 

 

 

 そして、夜が明けて7月31日の霞ヶ崎。いつもの様に、朝焼けの日差しが照り、蝉の声が響き、ウキウキと遊ぶ子供たちの声が聞こえる爽やかな夏の朝が来た……。

 

 

 

 が、それも束の間、そんな平和な朝を迎えていた霞ヶ崎の街に突如、一匹の巨大怪獣が現れ、大暴れを始める!

 

 そいつは、背中にこぶを持ち、頭に一本角を持った比較的シンプルな外見が特徴の怪獣『不死身怪獣リンドン』だ!

 

 何の前触れも無く突如現れたリンドンは、怪力で腕や足、尻尾などを使い、ビルや高速道路、マンションなどを次々と破壊し、口からの火炎『フェニックサンディ』を吹きながら傍若無人に暴れ続ける。その姿はまるで暴れる事を生き甲斐としているようだ。

 

 リンドンはこの様に怪獣らしく、怪力や火炎が最大の武器なのだが、別名が示す様に、もう一つ恐るべき能力を隠し持っているようにも思える………。

 

 怪獣頻出期が去った後も僅かながら残っていた自衛隊の戦闘機が出撃してリンドンに攻撃するが、全く効き目が無く、リンドンの暴れるペースは劣る様子も無い………。

 

 リンドンは尚もビルを崩しながら暴れ、人々は突然の怪獣出現による大パニックで我先にと逃げ惑う。

 

 そして、リンドンの頭突きで砕いたビルの破片が、逃げ遅れた親子に襲い掛かろうとしている!しゃがんで泣き叫ぶ女の子に、それを庇うようにしゃがむ母親。絶体絶命の状況に………!

 

 「レッツ、ゼロチェンジ‼」

 

 “ピシャン ギュイイィィィィン”

 

 逃げ惑う人混みとは反対方向に走っていた竜野櫂は、跳躍してウルトラゼロアイを目に当て、光を身に纏い巨大化する。

 

 そして、逃げ遅れて瓦礫に潰されそうになっていた親子を掴み、安全な場所へ降ろす。

 

 親子は自分たちを助けてくれた光の巨人を見上げる。すると、巨人を包んでいた光は徐々に消えていき、『ウルトラマンゼロ』が姿を現す!

 

 (BGM:ウルトラマンゼロのテーマ)

 

 ゼロ「よお、もう大丈夫だぜ。(フィニッシュポーズ)」

 

 女の子「うん、ありがとう!」

 

 女の子はゼロに礼を言った後、母親と共に安全な場所へ移動を始める。

 

 ゼロはゆっくりと立ち上がる。そして、振り向き様に跳躍し、牽制とばかりにリンドンに右足跳び蹴りを打ち込み吹っ飛ばす。

 

 リンドンは瓦礫や土を振るい落としながら立ち上がり、警戒体勢を取る。ゼロは着地してポーズを取った後、リンドン向かって駆け寄る。

 

 二体は組み付き、その衝撃で激しい土煙の柱が上がる。ゼロは腹部に右膝蹴りを決めて一旦引き離す。

 

 続けてゼロはリンドンの右振りを左腕で、左振りを右腕で防いだ後、腹部に右拳を打ち込み、少し後退した所で右前蹴りを腹部に打って追い打ちをかける。

 

 リンドンは角を突き立てた頭突きを繰り出すがゼロはそれを跳躍でかわして、一回転しながらリンドンを跳び越え着地する。

 

 リンドンはゼロの方を振り向き、反撃として火炎・フェニックサンディを噴射する。

 

 ゼロは巨大な光のバリアー『ウルトラゼロディフェンサー』で迫り来る火炎を防ぐ。だが、バリアを消滅させた時、いつの間にか近づいていたリンドンの右振りの殴り込みを胸部に喰らい、左腕を掴まれ、怪力で遠方へと投げ飛ばされる。

 

 地面に落下したゼロは即座に跳ね起きで起き上り、右手で口元を擦る仕草を取る。彼が余裕である証拠だ。

 

 「へッ……やってくれるぜ。」

 

 ゼロは突進して来るリンドンに側転・バク転しながら近づき、目前まで近付くと右手で顔を抑え込んで難なく突進を止め、その後左拳を顔面に打ち込み、続けて跳躍して右拳を胸部に打って後退させる。

 

 リンドンは反撃として左振りの殴り込みを繰り出すが、ゼロはそれを右手で受け止め防ぎ、そのまま腹部に左拳を二発打ち込み、右横蹴りを左横腹に打った後、更に右拳を胸部に打って吹っ飛ばす。

 

 圧倒的な力でリンドンを圧倒していくゼロ。何しろ彼はベリアルやハイパーゼットン等様々な強敵と戦ってきて強くなった歴戦の勇士であるため、怪獣一体ぐらいならほぼ苦戦することなく戦えるのだ。それに加え、現在一体化している人物も超絶な身体能力を有しているため、それにゼロの力が加わった、所謂向かうとこ敵無しのウルトラマンゼロとなっているのである。

 

 二体の激しい戦いに周りの地面は小さな爆発土煙を巻き上げる。ゼロは渾身の右跳び蹴りでリンドンを遠方へぶっ飛ばした。

 

 リンドンはゼロの攻撃で弱りながらも立ち上がり、再びゼロに火炎を噴射するが、ゼロは右横側に跳んでかわし、そのまま右腕を胸の前で曲げて額のビームランプから『エメリウムスラッシュ』を発射!緑色の光線はリンドンの胸部に命中、奴はもうグロッキーだ。

 

 ゼロは受け身を取って立ち上がりながら左手で左側のゼロスラッガーを投げ飛ばす!一つの宇宙ブーメランは凄まじい速さで一直線に飛び、リンドンの首を貫く!ゼロスラッガーで貫かれたリンドンの首元は爆発を起こした。

 

 ゼロは帰って来るゼロスラッガーを頭部に戻す。すると、リンドンの首は時間差で切れ、頭が地面に落ち、体も力尽きたのか、崩れ落ちる様に倒れ込んだ。………恐らく絶命したのだろう。

 

 リンドンが絶命したのを確認したゼロは両手を握り、両腕をそれぞれ顔の横で折り曲げる。すると、ゼロは光に包まれ小さくなっていき、櫂の姿に戻った。

 

 変身を解除した櫂は、駆け付けて来た新田真美と合流する。

 

 真美「大丈夫?櫂君。」

 

 櫂「ああ。楽勝だったぜ。」

 

 櫂は得意げに話す。

 

 ゼロ「ナイスファイトだったぜ。昨日休んだ甲斐があったな、櫂。」

 

 真美「やっぱり凄いわ、櫂君。」

 

 櫂「い…いや、それほどでも…」

 

 ゼロと真美に褒められた櫂は右手を頭の後ろに、照れ笑いをするが、その最中ひっそりと不敵な笑みを浮かべる………。一体今度は何を考えているのだろうか………?

 

真美「私、この後災害地の医療ボランティアに行って来るから、櫂君はゆっくり休んでて。お疲れ様。」

 

真美は櫂にチョコレートを手渡す。因みにチョコレートは彼女の好物でもあり、常に所持しているのだ。

 

櫂「………サンキュー。」

 

櫂は意味深な笑顔で受け取る。

 

真美は、麟慶大学医学部所属で、将来は看護婦を目指している。そのため、高校生辺りの頃からこのように、毎年災害地の医療ボランティアにも積極的に参加しているのだ。

 

櫂「じゃ、頑張れよ、真美。」

 

真美「(笑顔で)うん。」

 

櫂は真美と別れ、貰ったチョコレートを懐に大事そうにしまいながら帰り道を歩く………。

 

 

 

一方、地球目前の宇宙空間に静止しているう宇宙船『テライズグレート』では。

 

バスコ「ど〜だ、俺様の作戦は。」

 

テロリスト星人バスコが自慢気に話す。どうやら昨夜の怪獣や今朝のリンドンは彼が放った怪獣みたいだ。

 

敏樹「ただ怪獣を暴れさせるのが作戦?」

 

櫂達の友人だが、何故か『ウルトラマンテラ』の軍に就いていた青年『桜井敏樹』がバスコに話しかける。

 

バスコ「ん?今日は敏樹か?じゃあテラ様はいないのか。」

 

バスコは意味深な言葉を言いながら敏樹に気付く。

 

バスコ「どうよ?理屈よりもとにかく怪獣を暴れさせて人々の恐怖・苦しみからマイナスエネルギーを集める。…手っ取り早くて素晴らしい作戦だとは思わないかい⁉︎現に今でも、マイナスエネルギーが集まりつつある!」

 

バスコは自画自賛するかの様に作戦を話す。するとその言葉に反応してナックル星人ゲドーがやって来る。

 

ゲドー「良いじゃないか、バスコ。これで良いんだよ!キョウみたいにチマチマ作戦立てるよりも手っ取り早くて良いぜ!」

 

バスコ「うおっ?分かってくれるじゃねーか、お前とも良いダチとなりそうだぜ」

 

ゲドー「いやーそうかそうか。」

 

バスコ・ゲドー「「ハハハハハハ!」」

 

バスコとゲドーは、まるで酒を飲んだ酔っ払い同士の様に話が弾み、笑い合う。だが敏樹はその様子を、どこか冷やかな眼差しで見つめていた。

 

敏樹「でも、一体(リンドン)はもう倒されてしまったじゃないか。」

 

バスコ「ま〜だまだ!お楽しみはこっからだぜ。じっくり見てくれよ。俺がすぐに必要なマイナスエネルギーを集めて差し上げますからね!」

 

バスコは上機嫌で敏樹に言った後、ゲドーと共に笑いながら歩き去って行った………。

 

敏樹「ったく……これだから野蛮な連中は………。」

 

敏樹は何処か意味深な事を言いながら、冷やかな視線で歩き去るバスコ達を見つめていた………。

 

 

 

場所は地球に戻る。ゼロがリンドンを倒して約二時間後のP.M.13:00頃、櫂は『豪快パイレーツ』の伊狩鎧、『特急レインボー』のライトとミオ、カグラの手伝いとして、楽器を、預けていた楽器屋さんに取りに行く最中だった。

 鎧「いや~すいませんね。手伝ってもらって。」

 

櫂「まあ、良いってことよ。ライブも明日だし、俺も歌うしな。」

 

 豪快パイレーツ、特急レインボーは、翌日の8月1日、麟慶大学の恒例行事『夏休みライブ』を控えていた。これは、麟慶大学軽音部のバンドが勢ぞろいし、盛り上がるライブを展開する、売店付きの、大学以外からも客が集まるほど人気のイベントである。

 

 一番の目玉は、櫂と真美がゲストボーカルとして参加する事であり、櫂は豪快パイレーツの演奏で『青い果実』、真美は特急レインボーの演奏で『飛び立てない私にあなたが翼をくれた』を歌うのだ。

 

 因みに豪快パイレーツの代表曲は『英雄』、特急レインボーの代表曲は『ウルトラ6兄弟』である。

 

 櫂はこのライブの手伝いをしているのだ。

 

 鎧「頑張りましょうね櫂さん!」

 

 ライト「俺には見えている。明日素晴らしいライブが展開されるのを!」

 

 ミオ「二人とも、気を付けないと楽器落っこちちゃうよ。」

 

 ミオは楽器を持ちながらはしゃぐ鎧、ライトを注意する。

 

 櫂「きっと良いライブになると思うぜ。俺と真美も頑張るよ。」

 

 カグラ「うん、そうだね。きっと良いライブになるよね。(できたらヒカルさんにも聞かせたいな………)」

 

 カグラは今でも、闇落ちしているヒカルが気掛かりだった。

 

 その時、櫂達の反対側から真美が歩いてきた。

 

 櫂「お、真美。ボランティアお疲れ。」

 

 真美「ええ………。」

 

 櫂の言葉に真美は反応するが、何処か笑顔が固かった。それどころかよく見てみると、一人の子供を連れて来ていた。見た感じ九歳ぐらいの男の子だった。

 

 櫂「?何かあったのか?」

 

 真美「それが………一応全員の治療は完了したの…。でもほら、怪獣、いきなり出て来たでしょう………?だから、逃げ切れなかった死傷者も結構いたの………。それに、昨夜の怪獣災害の負傷者も結構来ていて………」

 

 真美は子供の方に視線を向ける。

 

 真美「この子のお母さんも、さっきの怪獣によって重傷を負って………今、病院で診てもらってるんだけど、まだ意識が戻ってないの。」

 

 真美の言葉に、子供は泣き始め、真美は子供目線でしゃがんで優しく頭を撫でる。

 

 その言葉を聞いた櫂達も深刻な顔になり、櫂は密かに拳を強く握る。

 

 櫂「………俺…いや、ウルトラマンがもっと早く来てくれれば……。」

 

 真美「櫂く……ウルトラマンは何も悪くないよ。」

 

 「いや、ウルトラマンのせいだ!」

 

 突然子供が涙声で叫び、櫂達は驚く。

 

 「ウルトラマンは何のんびりしてんだよ‼あの時もっと早く来てくれれば、母さんも怪我せずに済んだじゃないか‼」

 

 子供は悲しみと共に半ばやり場のない怒りでウルトラマンを責める。

 

 櫂は密かに舌打ちしながらも、いつもの『良人モード』で子供に駆け寄り、子供目線でしゃがみ込む。

 

 櫂「ウルトラマンだって、一生懸命やってるさ。」

 

 櫂の言葉を子供は聞き始める。

 

 櫂「だが、この世界あちこちに悪がうろついてやがる。だからウルトラマンも、ここだけじゃなく、そいつらを倒すのにも精一杯なんだ。何故だか分かるか?」

 

 子供は櫂の言葉を聞き始める。

 

 櫂「この世界に存在する、すべての命が美しいからだ。例えそれが悪い人でも、良い人でも…命はこの世に生まれた……それだけで美しい物なんだ。それらを守るため、彼らは命がけで…いろんな所の悪と戦う…ここだって、そんな命を守るため、他方で悪がうろつく中、急いで駆けつけてくれた。だから君のお母さんも死なずに済んだんだ。」

 

「……ウルトラマンは、僕たちの為に戦ってくれてるの?」

 

櫂の言葉に子供は納得し始める。

 

櫂「ああ。全ては、君みたいな境遇の子を、これ以上増やさない為なんだ。」

 

櫂は子供の肩に手を置く。

 

櫂「ウルトラマンは全ての怪獣を必ず倒し、君のお母さんも必ず元気になる……マイナスに考えずに信じるんだ。そうすれば、希望は訪れる。」

 

「うん!」

 

子供は涙を拭いて少し笑顔で頷く。櫂の言葉を納得してくれたみたいだ。真美は櫂を笑顔で見つめる。

 

櫂も安心の笑みをみせるが、その一方で密かに不敵な笑みを浮かべていた………。

 

 真美「お母さんのところは、私も一緒にいてあげるから、元気出してね。」

 

 真美は再びしゃがみ、子供に語り掛け、子供は笑顔で頷く。

 

 その後、櫂は立ち上がる。

 

櫂「ゼロ……これ以上こうならない為にも、」

 

ゼロ「ああ、早く悪を殲滅しないとな。」

 

櫂はゼロと、左腕のウルティメイトブレス(以降:UB)を通じてひっそり決意の話をする。

 

そして、櫂と真美は見つめ合う。まるで、言葉を話さなくても意思が一致してるかのように。最も、一致してない物もあるのだが……。

 

鎧「あの〜、ところで、今朝倒した怪獣は何ですか?」

 

鎧が問いかける。彼はあの時、たまたまリンドンの現場にいなかったのだ。

 

櫂「ああ、確か〜…リンドンとかいう奴だったな。安心しろ。首チョンパしてやっつけてやったぜ。」

 

その時、鎧の顔色が変わる。

 

鎧「…リンドン…首チョンパ…!櫂さん、その死体は⁉︎」

 

櫂「死体?…あー…たぶん死体処理班が間に合ってなくて、今頃まだ街の真ん中で転がってるかもな。」

 

鎧「大変です‼︎今すぐ死体を跡形もなく焼いてください‼︎」

 

鎧は突然騒ぎ始める。

 

櫂「⁉︎、どうしたんだよ一体………?」

 

 

 

一方、霞ヶ崎と森林をつなぐ草原に立っているショウは、懐からビクトリーランサーを取り出す。そして、前に突き出して念を入れ始めた。

 

そして、ビクトリーランサーから放たれた光に包まれた後、目を開けると、ショウは闇の空間のような所に立っていた。

 

そして目前には……闇を放つ一人の人間が立っていた……その人はショウと同じ『UPG』と刻まれたオレンジのスーツを着ている……。

 

そう、なんとショウの前に闇落ちした礼堂ヒカル(以降:闇ヒカル)が立っているのだ!ショウはビクトリーランサーの力により、ギンガダークにライブしている闇ヒカルの精神世界に来ているのだ。

 

ショウは精神世界に来てまで、ヒカルを説得しようとしているのだろうか……?

 

闇ヒカル「!お前は……ショウなのか?」

 

ショウ「ヒカル……随分と荒れてるみたいだな。」

 

闇ヒカル「何しに来た?俺は少しでも早く、ダチを殺す奴らを倒さなければならないんだ!」

 

ショウ「お前は騙されてるだけだ。」

 

ショウは闇ヒカルに語りかけるが、闇ヒカルは聞く耳を持とうとしない。

 

闇ヒカル「邪魔するなら…容赦しない‼︎」

 

闇ヒカルはショウに襲いかかる。闇ヒカルは右フックを繰り出してショウはそれをしゃがんでかわし、右アッパーを繰り出すが闇ヒカルはそれを体を反らしてかわす。

 

その後ショウは右横蹴りを繰り出し闇ヒカルはそれを左腕で弾いて防いだ後右横蹴りを繰り出し、ショウはそれを左腕で防ぐが、その直後打ってきた左前蹴りを胸部に食らってしまう。

 

スピーディーに格闘する二人。だがショウは、あくまでヒカルを説得するために来たため、やや控えめだった。

 

ショウはヒカルの両肩を掴み抑え込むが振り払われ、ヒカルは左手でショウの胸ぐらを掴み、殴ろうと右拳を振り上げる‼︎………

 

が、その時、突然闇ヒカルの動きが止まる。そう、かつてヒカルとショウが出会ったばかりでまだ考えの違いで対立していた頃、ショウがヒカルの胸ぐらを掴んで殴ろうとして思いとどまった時の様に………。

 

 ショウ「やはりな………」

 

 ショウの思わぬ言葉に闇ヒカルは少し目を見開いて驚く。

 

 闇ヒカル「……どういう事だっ⁉」

 

 ショウ「お前の心はまだ完全に闇に染まっていない。」

 

 ……ショウは気づいていた。ヒカルの心は僅かながら完全に闇に染まってなかったと言う事を。正のヒカルが闇のヒカルと戦い続けている証だ。ショウの言葉を聞いた闇ヒカルは少しためらった後、掴んでいた胸ぐらを放し胸を突き飛ばす。

 

 ショウ「…完全に闇に染まってない間に教えてやろう。」

 

 ショウはついに本題を放し始める。闇ヒカルは一旦ストップして聞き始める。

 

 ショウ「お前は確かテラとかいう奴に、この世に存在する全ての者はお前の友人を殺そうとしていると言われたな。」

 

 闇ヒカル「…何が言いたい⁉」

 

 ショウ「……実はな、この世に存在する者全てにお前の友人を殺す様に命じている張本人を見つけたのだ。そいつを倒せば、お前の友人は殺されずに済む。」

 

 ショウの言葉に闇ヒカルは「はっ!」と反応する。

 

 ショウ「どうやらそいつは死ねない体の様でな、完全に撃破しないと倒せない相手なんだ……。できればお前と一緒に倒したいのだがな。」

 

 ショウの言葉に闇ヒカルは何かを考え始めたのか、俯き始める。

 

 ショウ「お前にこれが伝えたくて来たんだ。ま、どうするかはお前が決めるがいい………。」

 

 そう言うとショウは、光と共に姿を消し、現実世界へ戻って行った。

 

 残された闇ヒカルは、尚も俯き続ける。ショウが闇ヒカルに言った言葉は、一体何を意味しているのだろうか………?

 

 

 

 場面を櫂達に戻す。

 

 真美「じゃあ櫂君、頑張ってね。」

 

 櫂「おう。真美はその子のお母さんを、見守っててくれ。」

 

 子供は真美と共に、母親が入院している病院へと向かい歩いて行った。

 

 ライト「……勝ちに行くんだね?櫂。」

 

 櫂「おう。分かってくれるじゃねーかライト。俺にはもう、怪獣に勝っているイマジネーションが浮かんでるぜ。」

 

 ライト「ヘヘッ、言ってくれるじゃん。」

 

 カグラ「……どうか気を付けて。」

 

 ミオ「無理しないようにね。」

 

 櫂「ハハハ、心配すんなって。俺を誰だと思ってんだ?」

 

 そして櫂は鎧の方を向く。

 

 櫂「ありがとな、鎧。まさかリンドンが再生する怪獣だったとは。」

 

 鎧「いえいえ、では櫂さん、頑張ってきてください!」

 

 櫂「おう!」

 

 櫂は鎧からリンドンの能力を教えてもらったのだ。リンドンは『不死身怪獣』と肩書が示す通り、驚異的な生命力を持ち、背中のこぶに詰まった再生細胞と強靭な心臓を持っているため、例え首を切断されてもしばらくすると首がくっ付いて再生してしまうのだ。

 

 櫂「さ~て、まずはリンドンの死体を念入りに焼いてきますか。」

 

 櫂はリンドンの死体処理に向かおうとゼロアイを出そうとする。

 

 と、その時、

 

“ズドーン”

 

突如、少し遠くの霞ヶ崎のビル街の二ヶ所の地面が爆発と共に土柱を起こし、中から二体の怪獣が現れる。櫂達は驚き振り向く。

 

そいつらは、昨夜山中の田舎町で暴れたシルバゴンとレッドキングだ!

 

二体は現れるや剛腕でビルを崩しながら暴れ始める。

 

ビルが並び立つ街で怪獣がビルを発泡スチロールの様に容易く崩し暴れる光景は、正に怪力自慢の怪獣が現れる所を際立たせる。

 

暴れる二大怪獣を見つめながら、櫂は何かを決意したかのような表現になる。

 

櫂「………行ってくる。(サムズアップ)」

 

ライト「ああ。」

 

ミオ「櫂君…」

 

カグラ「気をつけてね。」

 

鎧「やっちゃってください櫂さん! でも、レッドキングとシルバゴンは強力な怪力怪獣です。気をつけてくださいね。」

 

櫂「ああ。誰が相手だろうと、俺は負けないぜ!」

 

鎧達に見送られる櫂が向かおうとしたその時、

 

ショウ「俺も行くぜ。」

 

何処からかショウも歩み寄ってくる。

 

櫂「ショウ…!」

 

ショウ「俺は昨夜こいつらを逃してしまった…だから、それによって出来てしまった災害のためにも、俺はあいつらを倒さなければならない。」

 

櫂「……そうか…そうだな。これ以上、誰かの涙を見ないためにも(やや本心:これ以上、自分様がディスられないためにも)奴らを倒そうぜ!」

 

櫂はショウと見つめ合いながら二体を倒すことを誓う。半ば本心である自分がディスられず讃えてもらうため、半ば人々(特に真美)の笑顔のためという複雑な心境で……。櫂はまたしてもひっそりと何か企んでるような顔になる………。

 

ショウ「行こう、櫂。」(ビクトリーランサーを取り出す)

 

櫂「ああ、こっからは、男と男の戦いだ!」(左腕を胸の前で折り曲げる)

 

櫂のUBからウルトラゼロアイが現れる。櫂とショウは、鎧達を後ろに横に並び立つ。

 

そして、二人のW変身が始まった!ショウはビクトリーランサーから現れたビクトリーのスパークドールズをビクトリーランサーにリードする。

 

《ウルトライブ‼︎ウルトラマンビクトリー‼︎》

 

ビクトリーランサーの先端の矢尻の部分が開き、ビクトリーの顔を象った彫刻が現れる。

 

櫂は左腕を胸の前で折り曲げ、UBから現れたウルトラゼロアイを浮遊させた状態で呼吸を整える。

 

櫂「レッツ、ゼロチェンジ‼︎」

 

櫂は掛け声を上げ、ゼロアイはそれに応えるかのように櫂の目にくっ付く。

 

そして、二人は眩い光に包まれて巨大化する。そして、徐々に消えていく光の中からウルトラマンビクトリー、そして、ウルトラマンゼロが現れた!

 

その様子は、遠くの病院にいる真美達も病院の窓から見ていた。因みに子供の母親のお見舞いに眞鍋海羽も来ていた。

 

海羽「来たわ!櫂君達。」

 

真美「(子供を見ながら)安心して……あのウルトラマン二人が、絶対怪獣を倒してくれるから。」

 

子供「……うん。」

 

海羽「あの威厳ある立ち姿……私は変身しなくてもいいみたいね……。」

 

海羽は、雄々しく立つゼロとビクトリーの姿に何かを察したのか、戦闘を止めて見守る事にする。

 

子供「え?変身って?」

 

先ほどの言葉が子供に聞こえてしまった。

 

海羽「へっ⁉︎(←裏声で)……え、え〜と、あれだよ!私、チアガールに変身して応援しようかな〜と思ってたけどその必要無いかな〜……ってな感じ〜」

 

海羽は、自身がウルトラ戦士である事を真美達以外に知られる訳にはいかないため、何とか苦し紛れの誤魔化しを披露する。

 

子供「……ぷっ、何だそれ、ハハハハハ…」

 

子供は、海羽が苦し紛れで言った誤魔化しを、可笑しな冗談だと思い笑い始め、つられて真美も笑い、そして、海羽も笑い始める。

 

病室はもはや、安心の色で染まっていた。

 

 

 

(BGM:ウルトラマンゼロのテーマ)

 

ゼロ「(横向きに二体に指を差して)よお……覚悟は出来てんだろうな…?」

 

ショウ「今度こそ、お前らをぶっ倒す!」

 

二人は気合いを入れる。だが二大は、暴れるのに夢中なのか、二人にまだ気づいていない。これは怪力怪獣であり、脳筋コンビの表れなのだろうか?(笑)

 

しばらくすると、シルバゴンがゼロ達に気づく。

 

ゼロ「…っておい!ようやく一体気づいたのかよ、遅せーんだよ‼︎」

 

ゼロは軽口と共に飛び上がる。そして、太陽までに届くかのように高く飛んだ後、そこから急降下してレッドキングに背後から右脚蹴りを浴びせる!

 

 背後から蹴りを入れられたレッドキングは吹っ飛び、近くのビルに激突する。レッドキングは驚きながらもすぐさまゼロの方を振り向く。

 

 レッドキングはゼロ向けて突進するが、ゼロは跳躍して背中にチョップしながらそれを難なく受け流す。レッドキングは勢いが止まらず、ビルとビルの間に頭を突っ込み挟んでしまう。ゼロは早くもレッドキングの脳筋さに気づき、それを活かしたのだろう。

 

 レッドキングが抜け出そうともがいてる間に、シルバゴンがゼロに突っ込む。

 

 ゼロは突進してくるシルバゴンの頭部の角を掴んで食い止め、そのまま跳躍して顎に左膝蹴りを入れ、その後腹部に右前蹴りを打ち込む。

 

 ゼロがシルバゴンと組み合ってる最中、ようやく抜け出たレッドキングはゼロ目掛けて突っ込む。だがゼロは既に見切っていたのか、組み合ったまま跳躍して、後ろから寄って来るレッドキングに後ろ両足蹴りを胸部に打ち込む。

 

 そしてレッドキングが怯んだ隙に、角を掴んで抑えていたシルバゴンをレッドキング目掛けて押し飛ばす。二体は激突した後、転倒した。

 

 何かを考えながら、ゼロの強さを改めて見つめるビクトリー。自身及びギンガも戦いを重ねればあれほど強くなれるのだろうか……そして強くなれば闇に負ないのだろうか……恐らくそう考えているのだろう。

 

 ゼロは二体の攻撃を難なくかわしながら、側転してビクトリーの元へ。

 

 ゼロ「おーい、何ボサっとしてんだ?一緒にこいつら倒そうぜ!」

 

 ショウ「……おう!」

 

ゼロ「……さあ、お前ら、罪のない者を恐怖に陥れた罪、重いぜ‼︎」

 

 二人のウルトラマンは構えを取った後に地面を蹴り、二体目掛けて勢いよく飛び込む。

 

ウルトラマンゼロVSシルバゴン、ウルトラマンビクトリーVSレッドキングと、それぞれの戦いが始まった!

 

ゼロは飛び掛かると、その落下スピードを活かして右肘打ちを胸部に打ち込む。

 

(BGM:DREAM FIGHTER)

 

シルバゴンは怯みながらもそのゼロの右腕を掴み、怪力の一本背負いでゼロを投げるが、ゼロは体制を立て直し、シルバゴン目前で着地する。

 

そして、逆にシルバゴンの右腕を左手で掴み上へ上げた後、腹部に左拳を叩き込み、続けて腹部に右膝蹴りを打ち込む。

 

シルバゴンは反撃として左腕を振るうが、ゼロは即座にそれを右腕で掴んで受け止め、そのまま左拳で腹部にパンチを連打する。

 

その後、シルバゴンは今度は右腕を振るうがゼロはそれをしゃがんでかわし、その後腹部に左膝蹴りを叩き込み、その後畳み掛けるように高めの左横蹴りを右半身に連打し、相手が怯んでしゃがんだところで跳躍して右足を大きく振り上げ、渾身の踵落としを叩き込み転倒させる。

 

流石はゼロは歴戦の勇士だけあって、剛力怪獣を苦戦する事なく圧倒していく。

 

シルバゴンは起き上がった後、今度は一回転して、大きく尻尾を振って攻撃を仕掛けるがゼロはそれを跳躍してかわすと同時に尻尾を両脚で挟み、そのまま宙に浮いたまま回転する事でスピンさせて地面に叩きつける。

 

その後ゼロは着地すると、横たわるシルバゴンの尻尾を掴み、力一杯放り投げ地面に叩きつける。

 

ビクトリーはレッドキングと格闘戦を展開していた。両者は互いの手を掴み合い、力比べを展開する。ビクトリーはレッドキングの怪力により両腕を下にねじ下ろし締め上げられそうになる。

 

ショウ「ビクトリウムバーン‼︎」

 

ビクトリーはレッドキングの右腕に左膝蹴りを打ち込んだ後、ゼロ距離でビクトリウムバーンを浴びせる事で何とか締め上げを振り解く。

 

その後ビクトリーはレッドキングの左足元に右ローキックを放ち、バランスを崩したところで更に右ハイキックを左半身に連発し、その後跳躍しての左足蹴りを胸部に打ち込んで後退させる。

 

《ウルトランス!グドンウィップ‼︎》

 

ショウはビクトリーランサーに『地底怪獣グドン』のスパークドールズをリードしてビクトリーの右腕をグドンの鞭『グドンウィップ』に変形させる。

 

そして、グドンウィップをレッドキングの首に巻き付けて思い切り引っ張り転倒させる。

 

ショウ「まーけーるーかーーー‼︎」

 

ショウは気合いの叫びと共に走りながら、右腕の鞭でとらえたレッドキングを引きずる。そしてしばらく引きずった後、力一杯右腕を振るい放り投げた。

 

ビクトリーは右腕を戻した後、首筋に右手のチョップ一閃!そしてその後、首筋を両手で掴んでそのまま持ち上げる『ネック・ハンギング・ツリー』を決める。レッドキングは、喉が詰まって苦しいのか、手足をバタつかせてもがき苦しむ。ここまで来ると、もはやどちらが怪力自慢か分からない(笑)

 

レッドキングを締め上げているビクトリーは、そのままジャイアントスイングで振り回して地面に叩きつける。

 

そして畳み掛けるようにレッドキングの首を掴み、豪華な首投げで地面に叩きつける!

 

ビクトリーは、いつもはスタイリッシュに戦うのだが、今回は怪力怪獣が相手故か、それともいつもより気合いが入っているのか、果てや怒りからか、レッドキング相手にパワフルに戦う。レッドキングは立ち上がるが、立て続けに投げ技を喰らった事で完全に弱っていた。

 

一方のシルバゴンと交戦しているゼロ。ゼロは両手で角を掴み、首投げの要領で投げつける。シルバゴンはレッドキングの側に落下する。

 

ゼロはビクトリーと並び立つ。

 

ゼロ「さ〜て、これで止めだ‼︎」

 

ゼロはUBを右手で叩き、エレキギターのようなサウンドと共に炎に包まれ『ストロングコロナゼロ』へと姿を変える。そして再びUBを右手で叩き、左腕に炎のエネルギーを溜める。

 

ビクトリーは両手でV字型のエネルギーを描き、それを右手に集めて腕を十字に組む。

 

ショウ「ビクトリウムシュート‼︎」

 

ゼロ「ガァァァルネイト、バスターーー‼︎」

 

ビクトリーは十字に組んだ腕からV字型の必殺光線『ビクトリウムシュート』を、ゼロは突き出した左拳から炎状の強力光線『ガルネイトバスター』を放つ!

 

ガルネイトバスターはシルバゴンを、ビクトリウムシュートはレッドキングをそれぞれ直撃!光線を浴びた二体は大爆発を起こし、二人はその爆風を背にポーズを決める。

 

子供「やったあ、やったあ、やったあー!」

 

海羽「やったねー!」

 

子供は海羽と手と手を取り合って、ウルトラマンの勝利を喜ぶ……と思ったら海羽はいつの間にかチアガールの格好をしていた。恐らく途中で着替えて応援していたのだろう(笑)

 

真美は笑顔でウルトラマン達を見つめ、言葉に出さずに喜びを見せる。

 

余談だがこうして見ると、子供っぽい海羽と大人っぽい真美とで喜び方に若干違いが見られるだろう(笑)

 

 

 

 

だが喜ぶのも束の間。………そう、ゼロに首を切り落とされ死体となったリンドンの頭の目が光り、頭が磁石に引き寄せられるかの様に体にくっ付く。そして起き上がった。

 

リンドンが復活したのである!

 

リンドンは復活するや否や暴れ始め、二人のウルトラマンはそれに気づき身構える。

 

ショウ「後はこいつだな。」

 

ゼロ「さあ、行くぜっ‼︎」

 

二人がリンドンに掛かろうとした時、突如上空から降り注いだ光の中からテロリスト星人バスコが現れる。

 

バスコ「やってくれるねウルトラマン共。だが、俺様のとっておき(リンドン)を倒せるかな〜?」

 

バスコはリンドンに加勢してゼロ達を倒そうとしている。リンドンは恐らく粉々にしても蘇るだろうから完全に細胞を破壊しないといけない…その為にはどうすればいいのか?二人はそれを思い、立ち止まる。

 

バスコ「…怖気付いたか⁉︎なら、俺様も暴れちゃうもんね〜」

 

バスコも手に持った剣『テロリストソードワイルダー』を振り上げ暴れようとする。

 

………その時だった。

 

ゼロ「…!ッ、何か上空から来るぞ!」

 

ゼロは早くも殺気を感じて上空を見上げ、ビクトリーも上空を見上げる。バスコもそれに気づき見上げる。

 

空の彼方から、何やら黒いオーラの様な物を放ちながら一つの影が飛び降りてくる。

 

そして降りてくるや、強烈な右拳をリンドンの胸部に打ち込んで吹っ飛ばし、着地する。

 

それを見たショウは驚愕する。飛んで来て着地したそいつはギンガダークだった!

 

それを知ったゼロも驚愕する。何しろ、かつてギンガダークと戦い、躊躇してたとは言え敗れた事があるのだから…。

 

ショウ「…ヒカル…。」

 

ゼロ「何てこった…こんな時にギンガダークまで……!」

 

ギンガダーク初見の櫂と真美、海羽は少し警戒している様だった。

 

ライト・カグラ「‼︎ヒカルさん⁉︎」

 

鎧「え?……ヒ、ヒカルさん?」

 

ミオ「二人共、あの巨人の事を知ってるの?」

 

ライトとカグラは驚きながらも、ギンガダーク初見の鎧とミオに、自分達がかつてギンガに助けてもらった事、その直後にギンガが闇落ちしてしまった事(第4話参照)などを話した。

 

鎧「……て事は、あ、あ、あれは伝説のウルトラマン……ウルトラマンギンガって事ですかー⁉︎」

 

鎧は、唐突にこの世界では存在を知られておらず、伝説として語られているウルトラマンギンガの闇落ちした姿だと知って驚きと共に、ギンガを見れた喜びからか興奮する。

 

ミオ「…信じられない……。」

 

バスコ「おお、これはギンガダーク。丁度良い。3対1でこいつら倒そうぜ!」

 

バスコの言葉にギンガダークは了解したのか、上を向いて雄叫びを上げる。

 

ゼロ「くっ……上等じゃねーか‼︎」

 

ゼロは覚悟を決め、ギンガダークと戦おうとしたその時、ビクトリーはギンガダーク目掛けて駆け寄り始める。

 

ゼロ「⁉︎ショウ、何をする気だ!」

 

ゼロの言葉も聞かず、ビクトリーはギンガダークに駆け寄り、両肩を掴む。

 

ショウ「ヒカル!良い加減目を覚ませ!」

 

だが、ギンガダークは問答無用でビクトリーに殴りかかる。ビクトリーは連打してくるパンチを避けながら語り続ける。

 

ショウ「全員に、お前の友人を殺せと命じている張本人が、今ここにいるんだぞ!」

 

ギンガダークを必死に説得するショウの姿をゼロは見つめている。

 

櫂「どうしたんだ?ゼロ。」

 

ゼロ「…ここはアイツ(ショウ)に任せようぜ。」

 

ゼロはどうやら何かを察したみたいだ。

 

ビクトリーは、パンチを打ってくるギンガダークの拳を受け止めるが、その直後に右膝蹴りを腹部に食らう。だがそれでも怯まず語りかける。

 

ショウ「…お前言ったよなあ……「仲間がいるから、俺は強くなれた」と……そんなお前が、仲間のために弱くなってどうするんだ⁉︎」

 

ショウの意味深な言葉にギンガダークは少し俯き、ためらう様な反応をするが、再びビクトリーに襲いかかる。

 

ビクトリーは再び殴りかかってきたギンガダークと組み合う。

 

ショウ「…俺は信じてるぞ……お前がそれ程ヤワじゃないってな。」

 

ビクトリーの語り掛けにギンガダークは僅かながら攻撃の手が緩み始めている様だった。ビクトリーとギンガダークは組み合続ける。

 

バスコ「ハハハハハ、良いね〜こう言う仲間同士の潰し合いって。」

 

バスコは二人の戦いを見つめ笑う。

 

バスコ「面白いところだが、そろそろ二人まとめて殺っちゃおう。リンドン、焼き殺せ!」

 

バスコの指示に応じたリンドンは、組み合ったまま離れないビクトリーとギンガダーク目掛けて火炎を噴射する。

 

炎は二人を包み、やがて大爆発を起こした!爆発は凄まじく、二人が木っ端微塵になってもおかしくない程である。

 

ゼロ「ヒカル!ショウ!」

 

ライト「ヒカル!」

 

カグラ「ヒカルさーん‼︎」

 

ゼロを始めるほとんどの人は、二人のウルトラマンは死んだのだと悟り始める………。

 

が、その時、爆風から何やら青白い光が現れて爆風を吹き飛ばし、白い煙だけが残った。

 

ゼロ「⁉︎……何だ?今のは………。」

 

 白い煙は徐々に消えていき、ゼロを始め全員それを見つめる。すると、全員ある違和感に気づく。

 

 煙の中から一つのしゃがんでいる影が、連続で光を発しながら現れるのが見える。それはギンガのように見えるが、よく見るとビクトリーの様な模様もあり、外見も派手なものになっている……。

 

 やがてその巨人は、立ち上がると共に気力で煙を全て吹き飛ばす。

 

 現れた巨人は、ギンガの姿にビクトリーの意匠が加わった派手な外見が特徴の『ウルトラマンギンガビクトリー』だ!

 

 ゼロ「…‼︎ギ、ギンガビクトリー⁉︎」

 

 ギンガビクトリー登場に全員、特にゼロは驚愕する。

 

 ギンガビクトリーは、ギンガとビクトリーが合体(フュージョン)した超強化形態であり、かつてヒカルとショウが、『時空魔人エタルガー』という強敵を倒すためにゼロから受けた特訓をクリアした際に、ゼロからヒカルに与えられた『ウルトラフュージョンブレス』にビクトリーランサーをタッチする事によりより変身する。

 

 また、ウルトラフュージョンブレスにはゼロ達平成ウルトラ戦士の力が宿っているため、ティガ〜ゼロまでの平成ウルトラマンの必殺技も使えるなど、正にチート級の強さを誇るウルトラマンなのだ。

 

 さっきまで戦い合っていて、それどころかギンガは闇落ちしていたのに何故ギンガビクトリーになれたのか……?ゼロの動揺は止まらない。

 

 ギンガビクトリー内の光の空間で、二人は会話する。

 

 ヒカル「ショウ……俺は一体……。」

 

 ショウ「やっと戻れたな。ったく……心配かけやがって。」

 

 ヒカル「…何だか知らねーが、とにかくあいつ倒そうぜ!」(リンドンを指差す。)

 

 ショウ「おう!」

 

 (BGM:ウルトラマンギンガの歌 2015)

 

 呆気に取られているゼロ達を他所に、ギンガビクトリーは構えを取る。

 

 バスコ「どんな姿になろうと、俺様の自信作は倒せないぜ‼」

 

 バスコはリンドンと共に駆け寄り始める。

 

 ヒカル「そいつはどうかな?」

 

 さっきまでダークだったヒカルの表情は、いつもの明るさを取り戻していた。

 

 因みに観戦している鎧達はと言うと、鎧は見たことないウルトラマンの登場に興味津々で、カグラは嬉し泣きし、ミオはそんなカグラの頭を撫でる。

 

 ギンガビクトリーは、直立したまま突進してきたリンドンの角を右手でつかんで余裕で止める。そして右拳を胸部に叩き込む。

 

 殴り飛ばされたリンドンは数百メートル吹っ飛んで地面に落下した。

 

 櫂「………強ええ…。」

 

 ゼロ「流石だな、あの二人は。」

 

 リンドンは今度はバスコと共に掛かる。ギンガビクトリーは再び突進してきたリンドンを抑え込むが、その隙に後ろからバスコが斬りかかろうとする。

 

 だが、ギンガビクトリーはリンドンを掴んだまま、後ろのバスコが振り下ろして来た剣を左足蹴りで弾き、その後リンドンに右ヘッドロックをかけて地面に叩きつける。

 

 バスコは今度は右横に剣を振るうがギンガビクトリーはそれをしゃがんでかわし、腹部に右前蹴りを打ち込む。

 

 少し怯みながらもバスコは今度は上から振り下ろすがギンガビクトリーは素早くバスコの右側に回り込み、剣を振るう右腕を右手で掴み、そのまま腹部に左拳を決め、更に背部に左横蹴りを打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 今度はリンドンが殴りかかる。ギンガビクトリーは振って来たリンドンの左腕を右腕で防ぎ、胸部に左右交互にパンチを打った後一回転して腹部に右拳を叩き込む。

 

 リンドンは反撃として右腕を振るって殴りかかるが、ギンガビクトリーはそれを左腕で防ぐと同時に腹部に右拳を決め、そのまま続けてパンチを連打した後に胸部に左前蹴りを打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 バスコとリンドンの二体がかりを圧倒するギンガビクトリー。ギンガビクトリーは、平成ウルトラ戦士達を圧倒した強さを誇るエタルガーを倒した程の強さを持っているため、並みの怪獣に宇宙人が加わった程度の相手なら敵ではないのだ。

 

 鎧「あのウルトラマン、とんでもなく強いですよ~!」

 

 ミオ「(笑いながら)も~鎧君ってばそれにしか興味が無いの?」

 

 ミオ達は安心もあり、笑い合う。

 

 ゼロも再び二人の成長ぶりを感じたのか、戦いを見つめながら頷く。

 

 櫂「…結構やるじゃねーか。」

 

 ヒカル「お前は再生できる、死ぬ事の無い体みたいだが、それだからこそ俺達には勝てない。」

 

 ギンガビクトリーのヒカルはリンドンを見つめながら意味深に語り始める。

 

 ヒカル「お前は不死身だからこそ、命の価値が分かっていないんだ。命とは、限りがあるからこそ美しく、価値がある。………自身は死ぬことが無く、他の命を簡単に切り捨てるお前なんかに、俺達が負ける訳ないんだ‼」

 

 ヒカルはウルトラフュージョンブレスを構える。

 

 鎧「気を付けてください!リンドンは再生する怪獣です!完全に破壊しないと倒せません!」

 

 鎧はギンガビクトリーにアドバイスする。

 

 ヒカル「サンキュー。なら、とっておきの技があるぜ。」

 

 ヒカルはフュージョンブレスのギンガビクトリーの横顔を象ったレリーフを回転させて『必殺技モード』に変えた後、レリーフの内側にあるウルトラ十勇士の姿があしらわれたディスク『ターレット』を回転させ、スイッチを止める。

 

 ディスクには、受け継がれていく光、そして、絆の力で戦うウルトラ戦士『ウルトラマンネクサス』の顔が現れる。

 

 ヒカル・ショウ「ウルトラマンネクサスの力よ!」

 

 二人の掛け声と共にギンガビクトリーは構えを取る。すると、隣に『ウルトラマンネクサス(ジュネッス)』の姿が浮かび上がる。

 

 ギンガビクトリーはネクサスのビジョンと重なりながら、両腕を伸ばした状態でクロスした後左右斜めに上げてL字に組む。

 

 ヒカル・ショウ「オーバーレイ・シュトローム‼」

 

 ギンガビクトリーは、L字に組んだ腕から必殺光線『オーバーレイ・シュトローム』を発射する!これは、敵を分子レベルまでに分解・消滅させるウルトラマンネクサス(ジュネッス)最大の光線技である。

 

 凄まじい光の奔流はリンドンを直撃!リンドンは身体を青白く発光させた後、爆発と共に光の分子となって消滅した。

 

ショウ「よし、これで奴は、二度と復活出来ない!」

 

 バスコ「うおあ~バカな!俺様の自信作(リンドン)が~!」

 

 ギンガビクトリーは、動揺するバスコに視線を向ける。

 

 ヒカル「ついでにお前もぶっ飛ばしてやるぜ!」

 

 ヒカルはフュージョンブレスのディスクを回しスイッチを止める。

 

 ディスクには、最強・最速のウルトラ戦士『ウルトラマンマックス』の顔が現れる。

 

 ヒカル・ショウ「ウルトラマンマックスの力よ!」

 

 構えを取るギンガビクトリーの隣にウルトラマンマックスの姿が浮かび上がる。

 

 ギンガビクトリーはマックスのビジョンと重なりながら、左手を天高く揚げて光を集中し、腕を逆L字に組む。

 

 ヒカル・ショウ「マクシウムカノン‼」

 

 ギンガビクトリーは、逆L字に組んだ腕からマックス最強最大の必殺光線『マクシウムカノン』を発射する!

 

 バスコは、即座にテロリストソードで迫り来る七色の強力光線を防ごうとするが、威力の凄まじさに剣で光線を受けたまま光線に押されて吹っ飛び、岩山に激突して爆発する。

 

 バスコ「お…おのれウルトラマン……。」

 

 バスコは砂煙の中から石つぶてを振るい落としながら立ち上がる。

 

 が、気が付いたら手に持っていたテロリストソードは刃の部分が砕けて無くなっていた。

 

 バスコ「俺のテロリストソードが‼」

 

 ヒカル「一気にトドメを……!」

 

 バスコ「くっ……ここは撤退だ!」

 

 “シュゥゥン”

 

 バスコは不利と見たのか、光と共に姿を消して退散した。

 

 雄々しく立つギンガビクトリー。ギンガビクトリーの圧倒的な強さを目の当たりにした櫂達は、その立ち姿に見入っていた………。

 

 

 

 ウルトラ戦士達は変身を解いた。真美達は鎧達と合流し、歩いて来る櫂達を迎える。歩いてきたのは櫂、ショウ、そして、いつもの表情に戻っていたヒカルだった。

 

 ライトとカグラは真っ先にヒカルの元へ駆け寄る。

 

 カグラ「良かった……本当に良かった………。(嬉し泣き)」

 

 ヒカル「ヘヘヘ、悪いな。心配かけちまって。」

 

 ライト「俺は信じていた…いや、見えていた。ヒカルが俺達の元に戻ってくるのが。」

 

 ヒカル「……おお。」

 

 再開を果たした三人は笑い合う。

 

 真美「お母さん、峠を越えたそうよ。良かったね。」

 

 真美は子供の母親の無事を伝える。しかし、完治までにはもうしばらくかかるため、退院まであと三日はかかると言う。

 

 子供「せっかくお母さんとまた過ごせると思ったのに………。」

 

 子供は再び少し暗い顔となり俯く。

 

 海羽「(笑顔で)夏休みなんだし、お姉さん達と一緒に遊ぼう?待ってるからね。」

 

 真美「寂しくなったら、いつでも言ってね。いつでも相手するから。だから元気出して。」

 

 子供「………ありがとう。」

 

 真美は笑顔で、少し元気を取り戻して礼を言う子供の肩に優しく手を置く。その温かい感触から、これまで張りつめていた感情の糸が切れたのか、子供は嬉し泣きを始める。

 

 真美は、チアガール姿の海羽と共に慰める。

 

 一方、ゼロショウは、ビクトリーランサーを通じての精神世界で何やら二人きりで話をしていた。

 

 ゼロ「しかし、何でヒカルは正気に戻ったのだ?」

 

 ショウ「……ヒカルはどうやらある物から、『すべての人類が彼の友人を殺そうとしている』と言う偽りの真実を植え付けられていた。だから俺は、その偽りの真実に上書きをしたのさ。」

 

 そう、ショウはヒカルが『ウルトラマンテラ』から植え付けられていた偽りの真実に、『すべての人類にヒカルの友人を殺す様に命じている者がいてそれはリンドンである』という偽りの真実を語りかけて上書きしたのだ。そして、それによってヒカルの闇が僅かにゆがんだ隙に、ほぼ強引にビクトリーランサーをヒカルのフュージョンブレスにタッチして、ギンガビクトリーに変身する際の光でヒカルを正気に戻したのである。

 

 ゼロ「……流石だな、ショウ。」

 

 ショウ「だが、これは偽りの真実に偽りの真実を重ねたに過ぎない……だから、まだアイツの中に闇はある。だから、今度はそのアイツの中の闇を完全に消す。」

 

 そう、今回の作戦は、偽りの真実を利用してヒカルの中に彼の闇を封じ込めた、所謂その場しのぎの作戦に過ぎなかった。

 

 ショウは、ライトとカグラと笑い合うヒカルを見つめながら、いつかは彼の闇を完全に消し去ると決意を決めた。

 

 櫂はヒカルの元に歩み寄る。

 

 櫂「ギンガ、今後も一緒に頑張ろうな。」

 

 ヒカル「あなたがゼロの変身者ですか?よろしくお願いします。」

 

 櫂「おう!」

 

 ひっそりと不敵な笑みを浮かべながらヒカルにフレンドリーに接する櫂。

 

 新たにウルトラマンが加わった嬉しさなのか、それとも邪の考えからなのか………?

 

 何はともあれ、今ここにゼロとギンガの地球をかけた戦いが再び始まった。

 

 霞ヶ崎に集結したゼロ、ギンガ、ビクトリー、パワード、コスモス、ソルのウルトラ六勇士。この先彼らの戦いはどうなるのだろうか?彼らを待ち受ける物とは?………今後も見守って行こう。

 

 

 

[エピローグ]

 

 宇宙船テライズグレートでは、『異次元超人巨大ヤプール』が何やら企んでいるかのように不気味に笑っていた………。

 

 ヤプール「ギンガが復活してしまったか。そろそろ、本気で行きましょうかね。フフフフフフ………。」

 

 ヤプールは一体何を企んでいるのだろうか………?

 

 To Be Continued………

 

 (ED:赤く熱い鼓動)




 遂にギンガが復活しました。しかしショウが言うように、まだ完全にヒカルの闇が消え去っていないため、まだ油断はできない状態です。

 また、今回のギンガビクトリーの戦闘シーンのBGMは、当初は『英雄の詩』にする予定でしたが、この曲は私にとってとっておきであり、後半戦のOPにするつもりなので、ギンガ復活と言う事もあり、『ウルトラマンギンガの歌 2015』に変更しました。

また、『DREAM FIGHTER』は、私的にゼロのみならずビクトリーにも当てはまる曲だと思いましたので、ゼロとビクトリー共闘シーンにはピッタリだと思いました。


 さて、前半戦も残すところあと二話となりました!残りの二話は、前後編形式の怒涛の展開が待っています!楽しみにしていてください!


 感想・指摘・アドバイス・リクエスト等をお待ちしています。


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第16話「俺達は、ウルトラマンだ!」

 前半戦クライマックスの前編です!

 ハッキリ言って、映画のようなスケールのバトルとなっています。

 今回、文字数が初めて20000を超えました(笑)


 (OP:TAKE ME HIGHER)

 

地球目前の宇宙空間に浮遊している『ウルトラマンテラ』の軍団の宇宙船『テライズグレート』。そこでは、幹部の一人である異次元からの使者『異次元超人巨大ヤプール』が、椅子に足を組んで座っている『桜井敏樹』と何やら話をしていた。

 

 敏樹「本当に大丈夫なのか?今回の作戦は…。」

 

 ヤプール「はい。既に準備は万端です。必ずこそウルトラマン共を倒して見せますぞ!」

 

 ヤプールは何処か自信満々であった。

 

 ヤプール「この作戦なら、ゼロはもちろん、ウルトラマン全滅間違い無しですぞ!」

 

 一体ヤプールはどんな作戦を思いついたのだろうか………?やプールが地球に向かおうとしたその時、

 

 敏樹「ちょい待て。」

 

 ヤプール「!何だい?」

 

 敏樹「ただ攻め込んでも意味はない。俺様がより強力なマイナスエネルギーを集めるための打ってつけの場所を教えてやる。」

 

 敏樹はヤプールに耳打ちを始める。

 

 敏樹「………麟慶大学だ!」

 

 

 

 場所は変わって8月1日。快晴の朝と共に始まった。正にフェスティバル日和である。

 

 この日は麟慶大学の『夏休みライブ』の日である!麟大の軽音部で結成されたバンドが勢ぞろいし、夏らしく爽快で盛り上がるライブを展開する。

 

 更に、各学部の売店付きであるため、大学生以外からも客が集まるほどの人気イベントである。

 

 どのバンドも盛り上がるが、トリは『豪快パイレーツ』『特急レインボー』が勉め、更にそれぞれ竜野櫂と新田真美がゲストボーカルとして参加する事である。

 

 このイベントは、例年通りの好スタートを切った。開始始めから大勢の観客が押し寄せ、ライブもトップから良い盛り上がりを見せている。

 

 自身の出番を控えている櫂は、同じくライブを控えている豪快パイレーツの伊狩鎧と共にぶらぶらと店を回っていた。

 

 因みに今日の櫂と鎧は、『ウルトラマンダイナ』と共に『ネオフロンティアスペース』で戦い抜いた防衛チーム『スーパーGUTS』のコスチュームを着ている。彼らのイベントの衣装だ。

 

 鎧「いや~櫂さん!気合入ってますね~!これは燃えて来たぞ~!」

 

 櫂「ああ、そうだな。(ガッツポーズ)今年も最高の一日にしようぜ!」

 

 鎧「喉大丈夫ですか~?櫂さんと真美さんはトリなんですからね~!何しろ学園一人気の美男美女が歌うのを、みんな楽しみにしてるんですから!」

 

 櫂「ハハハ、サンキュー。鎧達こそ頑張れよ。いつも通り、「派手に」行くんだろ?」

 

 鎧「分かってますね~」

 

 二人「ハハハハハハ………」

 

 二人は売店で買っていたフランクフルトを手に、上機嫌で笑い話し合う。

 

 ゼロ「フフ、平和で賑やかだな。櫂。」

 

 櫂「ああ。ゼロも見ていてくれよ。俺の……俺達の華麗なライブを。」

 

 櫂達が話をしながら歩いていたその時、

 

 「あ、櫂君、鎧君。」

 

 突然声がした方に二人は振り向き、ゼロも気付いた。

 

 それを見た瞬間、三人、特に櫂は少し顔を赤らめてフリーズする………。

 

 そこに立っていたのは、スレンダーなボディが栄える、輝くほどの純白なナース姿の真美だった。彼女は医学部であり、将来看護婦を目指していると言う事でこの格好で来たのだろう。

 

 ………それにしてもかなり凝ったナースのコスチュームを着ている。

 

 その傍らには赤い淵の眼鏡(恐らく伊達)をかけていて、深紅のチャイナ服に身を包んだ眞鍋海羽も一緒にいた。

 

 真美「………えへへ……今日、イベントだからちょっと気合を入れたんだけど……どう?」

 

 海羽「可愛い………かな?」

 

 海羽と真美は少し照れくさそうに苦笑いしながら尋ねる。

 

 鎧「こ………これぞ正に紅白美女………!」

 

 櫂「……おい、今日は張り切りすぎだろ(顔を赤くして笑いながら)」

 

 ゼロ「櫂?…おーい!赤くなってんぞお前。」(しかし…やべえ……可愛すぎる………)

 

 ゼロも僅かながら顔が赤くなっていた。

 

 櫂「ヘッ⁉……そ、そんな、き、き、き、気のせいだぜ!」

 

 櫂は必死で誤魔化そうと慌てるが、かえってバレバレである。

 

 真美「フフッ、良かった。気に入ってもらえて。」

 

 真美は滑稽な櫂を見て、口を押さえて笑い喜ぶ。それを見た櫂は少し照れくさそうに頷く。

 

 櫂「……まあ、気合が入るのはええことやな。今日は楽しもうで!ハハハ……」

 

 鎧「あの…何で関西弁になってるのですか?」

 

 海羽「うふっ……櫂君ってば照れてる照れてる~」

 

 櫂「バ…バッ……別に照れてねーよ!」

 

 真美「でも、櫂君のコスチュームもかっこいいよ。」

 

 海羽「うん!(両手でガッツポーズ)」

 

 櫂「へ?そうか?サンキュー。」

 

 四人がいい感じになっているその時、気が付くと何者かが彼らの写真を撮っていた。四人はそれに気づく。

 

 「ハア……ハア……スーパーGUTSのクールガイに紅白美女………いい、この組み合わせ……嫌いじゃないわ‼」

 

 写真を撮っていたオカマ口調の男子が櫂に抱き付こうとした時、

 

 (頭にチョップ)“スパンッ”

 

 「!痛ッ……何すんのよ克己ちゃん‼」

 

 「なーに勝手に撮ってんだ?京水。行くぞ。地獄を写しに(訳:写真を撮りに)行こうぜ。賢、レイカ、剛三、お前らも行くぞ。」

 

「ええ、克己。」

 

「ゲームスタート(訳:写真を撮る時間)だ。」

 

「んじゃ、お邪魔したな。美男美女たち。」

 

 五人はライブステージの方へとへと歩き去って行った。因みに現在、ライブの方は『re-ray』を演奏中である。

 

 この五人は麟慶大学の写真部の部員達であり、克己はその部長である。

 

 櫂達は、歩き去って行く写真部を少し困惑な顔で見つめる。

 

 鎧「………さ、仕切り直して、僕らもライブの方に行きますか!」

 

 櫂「ああ、そうだな。」

 

 海羽「賛成ー!」

 

 真美「私、ちょっと医学部の売店の手伝いをしてそれから行くね。」

 

 櫂、海羽、鎧はライブの方に、真美は医学部の方に行こうとした。

 

 その時、

 

 “ピキピキピキ………”

 

 学生「?何あれ?」

 

 学生「空が……ひび割れてる?」

 

突如、快晴の青空が強い衝撃を受けたガラスの様にひび割れ始め、何人かの学生達はそれに気づく。ひびは徐々に広がっていた。

 

櫂達もそれに気づく。

 

櫂「!何だあれは⁉︎」

 

鎧「空が割れている………はっ!もしかして⁉︎」

 

鎧は、早くも何かに勘付いているみたいだ。

 

空が割れるなんて、そんな馬鹿な話があるのだろうか………?誰しもがそう思い始めたその時‼︎

 

ガシャーン‼︎

 

ひび割れていた空が、ついにガラスが割れる様に音を立てて割れ、大きな赤い空間が剥き出しになった!

 

そして、その赤い空間から5体の巨大な生物が飛び降りてきた‼︎

 

 その5体の生物は、巨大な黒い体に珊瑚のような赤い管が無数に生えている外見が特徴の、珊瑚と宇宙怪獣が融合した『ミサイル超獣ベロクロン』、

 

 カメレオンと翼竜を合わせたような外見が特徴の、古代カメレオンと宇宙翼竜を融合させた『古代超獣カメレキング』、

 

 青とオレンジのコントラストの体色に、蛇腹状の前面に鉱物や結晶を思わせる背面が特徴のボリューム感のある体が特徴の、芋虫と宇宙怪獣を合体させた『一角超獣バキシム』、

 

 緑を基調としたカラフルだがどこか不気味に彩られた巨体に、虫や髑髏を合わせたような赤い二本牙が生えた顔をしていて下半身には羽のような尻尾や飾りが付いている、蛾と宇宙怪獣を合成させた『蛾超獣ドラゴリー』、

 

 全体的にウサギのような外見に口には大きな牙が生えた凶悪な面構えをしている超獣『満月超獣ルナチクス』。

 

 どれも、かつて『ウルトラマンA』を苦戦させた事がある、『異次元人ヤプール』が造った超獣達である!

 

 そんな超獣達が、突如軍団で攻め込んできたのだ!

 

 超獣達は咆哮を上げる。5体の一斉咆哮はたちまち町中に響き、麟大もライブが中断され、パニックとなった学生たちは我先にと安全な場所へと非難を始める。

 

 だがそれも束の間、逃げ惑う学生たちの前には大量の戦闘員『ヤプールコマンド』が現れる!

 

 そして超獣達は、ベロクロンは口から火炎や全身の突起物からミサイルを、バキシムは手先や嘴からミサイルを、ドラゴリーは口からの火炎や両手からのロケット弾『バーニングウィング』、カメレキングは翼から出す強風や口から吐く白い発火ガス、ルナチクスは口から火炎弾や目玉のミサイルと、それぞれ発射しながら傍若無人に暴れ始める。

 

 ヤプール人はウルトラマン殲滅のために、遂に総攻撃を仕掛けてきたのだろうか?

 

 櫂達も、突然の総攻撃に驚愕する。

 

 鎧「あれと、あれと……き、強力な超獣勢ぞろいですよ~‼」

 

 櫂「くそっ……よりによってこんな日にか!」

 

 櫂達が超獣軍団を見つめている間、ヤプールコマンド軍団は学生たちに襲い掛かり始める。

 

 ゼロ「櫂。こりゃあえらい事になったな。」

 

 櫂「ああ。………はっ!」

 

 櫂は何かに気付く。それは、他の医学部の女子を庇いながら逃げる真美の姿だった。真美は、普段は運動神経があり、足も速いのだが、今回は走り辛いナースの格好をしていて、その上他の女子を庇いつつ逃げているため、早く走れない状態だった。そんな真美にヤプールコマンドの刃が近づこうとしていた。

 

 櫂「真美‼」

 

 櫂は真美に襲い掛かろうとしているヤプールコマンドに駆け寄りつつ右足蹴りで吹っ飛ばす。

 

 櫂「大丈夫か?真美。」

 

 真美「ありがとう。私は大丈夫。」

 

 安心するのも束の間、別の一体が櫂と真美に襲い掛かろうとするが、鎧はそれをジャンプしての右回し蹴りで吹っ飛ばす。

 

 鎧「雑魚はうじゃうじゃいます!さあ、行きますよ櫂さん!」

 

 櫂「ああ、そうだな。行くぜっ‼」

 

 櫂は鎧と共にヤプールコマンド軍団に駆け寄る。そして、パンチ、蹴りなどで次々と薙ぎ倒し、襲われていた学生たちを救っていく。

 

 櫂は組み合っていた個体を右横に投げ飛ばし、そのまま後ろにいた個体を右回し蹴りで吹っ飛ばす。

 

 だがその隙に、別の個体が後ろから櫂に襲い掛かろうとしていた。

 

 海羽「アチョー!」

 

 “バコン”

 

 チャイナ服姿の海羽が、櫂に襲い掛かろうとしていた個体を右カンフーキック(?)で吹っ飛ばす。

 

 櫂「おお、サンキュー。海羽。」

 

 海羽「エヘッ!」

 

 櫂は海羽と共に再びヤプールコマンドに立ち向かう。

 

 海羽はスナップの利いた脳天右チョップを前方の個体に決め、続いて左右の個体が同時に繰り出して来たパンチをしゃがんでかわし、それにより左右の個体がお互いパンチをぶつけてしまったところで右の個体を右ハイキックで蹴飛ばし、続いて左の個体を回転しつつ左拳で吹っ飛ばす。

 

 因みに海羽は、格好からカンフーを意識しているのか、「アチョー!」などの掛け声を発しながらヤプールコマンドを蹴散らしていく。

 

 だが、その隙にも超獣達は、凄まじいパワーで周りのビルを薙ぎ倒しながら大学に近づいていく。

 

 海羽「櫂君、ここは私が行くわ!」

 

 そう言うと海羽は、変身アイテム『ハートフルグラス』を投げつける。ハートフルグラスはブーメランのように飛び、ヤプールコマンド数人を切り倒していく。

 

 海羽は跳躍する。そしてブーメランの様に戻って来るハートフルグラスを目にくっ付け、赤とピンクの光に包まれ巨大化し、『ウルトラウーマンSOL(ソル)』へと変身を完了する。

 

 「フラッシュソリッド‼」

 

 “ズゴーン”

 

 ソルは牽制として赤とピンクの光を纏った急降下キックをベロクロンに打ち込む。ベロクロンはたまらず吹っ飛び地面に落下した。

 

 ソルは土煙を上げながら着地し、すかさず超獣軍団に立ち向かう。

 

 ソルは跳躍し、駆け寄って来るドラゴリーの右肩を踏み台にして跳び、落下しながらルナチクスに袈裟懸けに右手刀を決める。

 

 その後、右から襲って来たカメレキングの右振りの殴り込みをしゃがんでかわし、腹部に右拳を打って後退させた後、左側から襲ってくるバキシムの腹部に左前蹴りを打ち込んで後退させる。

 

 だが、相手は怪獣の上をいく超獣。ソルが攻撃を決めても、持ち前のタフネスで怯むことなく反撃していく。

 

 ルナチクスはウサギの様に跳び跳ねながらソルに殴り込むが、ソルは何とか両手の殴り込みを両手で防ぎ、胸部に右前蹴りを打ち込む。

 

 その後、右側から攻め込んで来たカメレキングの左フックを右腕で受け止め、腹部にヒップアタックを決めて吹っ飛ばす。

 

 だが、その隙にバキシムの右振りのパンチを背後から喰らってしまい、体勢を崩したところでドラゴリーに左腕を掴まれ、怪力で放り投げられ、地面に落下する。

 

 ドラゴリーの怪力は、かつて一緒にAを攻撃していた『巨大魚怪獣ムルチ(二代目)』をズタズタに引き裂いて倒した程強力なものであるため、ウルトラ戦士一人を放り投げるなど容易い事である。

 

 ソルは立ち上がるが、その直後に飛んでいたカメレキングの急降下タックルを喰らい、よろけた所でベロクロンが手から放った光輪『テリブルハンドリング』で拘束され、更にベロクロンの手から放たれたレーザーで追い打ちを受けてしまう。

 

 大ダメージを受けたソルは地に膝を付いてしまう。

 

ソルは上半身屈んだ状態でも何とか立ち上がろうとするが、ベロクロンに背中を叩かれて再びうつ伏せで倒れ、更に追い討ちの蹴りを右横腹に喰らい転がる。

 

ルナチクスは仰向けで横たわるソルの腹部を踏みつけ始める。超獣達のペースを緩めない連携の効いた猛攻により、ソルは大苦戦を強いられていた。

 

 櫂「海羽‼……くそっ、こいつらうぜえっ‼」

 

ヤプールコマンドを蹴散らしていた櫂はソルのピンチに気づく。そして、加勢の為に変身しようとするが、ヤプールコマンドの数が多いため、なかなかタイミングが掴めない。

 

 櫂とソルは打つ手無しかと諦めようとしていた。その時、

 

 彼らと絆で繋がっている男たちが駆け付ける。

 

 ゼロとソルと同じく霞ヶ崎に集結し、共に戦う事を誓った勇者たちが!

 

 『ウルトラマンパワード』に変身するケンイチ・カイ、『ウルトラマンコスモス』に変身する春野ムサシ、『ウルトラマンギンガ』に変身する礼堂ヒカル、『ウルトラマンビクトリー』に変身するショウが駆け付けたのだ!

 

 四人は駆け付けるやヤプールコマンドを蹴散らしていく。突如現れた四人の勇士に櫂は安心の表情を浮かべ、他の学生は動揺しつつも感心する。

 

 特に女子は、イケメン四人が駆け付けてくれたことにより、憧れの目で見つめている人も多かった。

 

 ヒカル「櫂さん、助太刀に来ましたよ!」

 

 ショウ「共に戦おうぜ!派手なパーティーだな。」

 

 ムサシ「諦めない限り、勇士は何度でも立ち上がる!」

 

 カイ「ウルトラ戦士の、絆は断ち切れる事ない!」

 

 四人はパンチ、キック等でヤプールコマンドを倒しながら櫂に語り掛ける。

 

 櫂「お前ら………!よし、この雑魚共は俺に任せて、超獣達を頼む‼」

 

 ショウ「大丈夫なのか⁉すごい数だぞ!」

 

 その時、ライブを控えているマーベラス達残りの豪快パイレーツのメンバーも駆け付ける。

 

 アイム「わたくし達も手伝わせていただきますよ。」

 

 ハカセ「年に一度のイベントを、滅茶苦茶にはさせないぞ!」

 

 ルカ「ほんっと、しつこいんだから。」

 

 ジョー「大人しくやられろ、お前ら。」

 

 マーベラス「たまにはこういうのも良いな……よーし、派手にいくぜっ‼」

 

 マーベラス達もヤプールコマンド達に立ち向かう。マーベラスはワイルドに、ジョーはクールに、ルカは勝気に、ハカセはコミカルに、アイムは華麗に、それぞれ蹴散らしていく。

 

 鎧もそんな五人に負けじとアクロバティックに倒していく。

 

 櫂「見ての通り、こちらは間に合ってんのさ!」

 

 櫂はサムズアップして言う。

 

 ヒカル「……あなたもいい仲間を持ってますね。では、任せましたよ!」

 

 ヒカル達は、ソルを攻撃する超獣軍団の方へ駆け出す。それに気づいたベロクロンとバキシムは四人目掛けてミサイルを発射するが、四人はミサイルにより爆発が周囲で起こる中、その爆風を背に駆け続ける。

 

 そして、カイをセンターに四人は止まる。

 

 カイ「さあ、行きますか!」

 

 ヒカル「ここからは、ウルトラマンの反撃だ!」

 

 ムサシ「強敵相手なら、僕達はいつでも協力する!」

 

 ショウ「そして、勝利を勝ち取る!」

 

 四人は体勢を立て直し、各自変身アイテムを取り出す。四大ウルトラマンの一斉変身が始まった!

 

 カイは『フラッシュプリズム』を揚げてスイッチを押し、ムサシは『コスモプラック』を高く揚げ、ヒカルは『ギンガスパーク』にギンガのスパークドールズを、ショウは『ビクトリーランサー』にビクトリーのスパークドールズをリードし、それぞれスパークとランサーを高く揚げる。

 

 《ウルトライブ!》

 

 《ウルトラマンギンガ!》《ウルトラマンビクトリー!》

 

 ヒカル「ギンガー‼」

 

 ショウ「ビクトリー‼」

 

 ムサシ「コスモース‼」

 

 四人は眩い光に包まれる。そして、光の中からパワード、コスモス(ルナモード)、ギンガ、ビクトリーと順に右腕を突き上げたウルトラ戦士達が飛び出していく。

 

 そして、四人のウルトラマンは土煙を上げながら着地した!

 

四大ウルトラマンの登場に櫂達は安心の顔を見せ、他の学生は驚き見つめ始める。

 

 「マジかよ………」

 

 「嘘、ウルトラマンが四人も……」

 

 「なんか……感激!」

 

 「あの青と黄の発光部が付いているの、見たことないけど何だろう?」

 

 「なんか、鎧君から聞いたけど伝説となっているギンガとビクトリーらしいよ。」

 

 「え?マジ⁉超かっこいいじゃん!」

 

 学生たちは興奮し出し、中には写メを撮る者もいた。そして、声援を送り始める。

 

 ソルも、四人の元へ駆け寄る。

 

 海羽「ありがとう。来てくれたのね。」

 

 ムサシ「ああ。僕達は、ウルトラマンだからね。」

 

 ヒカル「ったく、大勢で女の子虐めやがって。ソル、こっからは倍返しと行こうぜ!」

 

 ショウ「俺達は、絶対に負けない!」

 

 カイ「行くぞっ‼」

 

 海羽「………はいっ!」

 

 四人とソルは、パワードを中心に横に並び、構えを取る。超獣達も、ベロクロンを中心に横に並ぶ。

 

 そして、ウルトラ戦士達と超獣軍団は互いに駆け寄り始める!

 

 パワードVSベロクロン、コスモスVSバキシム、ギンガVSドラゴリー、ビクトリーVSカメレキング、ソルVSルナチクスと、それぞれの戦いが始まった!

 

 櫂「…頼んだぜ、お前ら。」

 

 櫂は改めてソル達に超獣を任せ、引き続きヤプールコマンドを倒し始める。気が付くと、微力ながらも加勢している他の学生もいた。

 

 『Boys And Girls Be Ambitious!』を合言葉としている大学だけに、闘志は櫂達に負けないと言う表れなのだろうか?

 

 (BGM:ウルトラマンパワード)

 

 パワードは、ベロクロンに駆け寄りながら牽制の両足ドロップキックを胸部、腹部に打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 ベロクロンは怯みながらもすぐさまパワードに再び駆け寄る。パワードはベロクロンの顔面の二本角の間に右チョップを決め、続いて胸部に右水平チョップを打ち込む。そして、掴んで巴投げで投げ飛ばした。

 

 パワードは再びベロクロンに駆け寄って組み付き、左横腹に右膝蹴りを打ち込み、その後右腕を掴んで数回振り回した後投げ飛ばした。

 

 ベロクロンは起き上り、パワード目掛けて反撃のミサイルを発射する。パワードは両手から光輪『パワードスラッシュ』を発射する。丸のこぎり型の光輪は複雑な軌道を描きながら飛び、ミサイルを確実に全て破壊していく。

 

 ベロクロンは今度は両手から手裏剣のような光弾『テリブルスラッシュ』を発射するが、パワードはそれを側転、バク転で難なくかわしていく。

 

 そしてパワードは、ベロクロンが噴射してきた火炎放射を空高く跳んでかわし、このまま急降下しての右足蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 流石は、霞ヶ崎に集結したウルトラマンの中でも一番の先輩だけあって、『地球を愛した無敵のヒーロー』の強さは侮れないものであった。

 

(BGM:Spirit)

 

バキシムは、駆け寄って来るコスモスにミサイルを乱射する。ミサイルはコスモスの前方で大爆発するが、その爆風の中から『コロナモード』にチェンジしていたコスモスが駆けながら現れる。

 

 バキシムに近づいたコスモスは、バキシムの右フックをかわして右ヘッドロックをかけて、そのまま右膝蹴りを顔面に打ち込む。

 

 その後、背を向けたままバキシムの腹部に右拳を決め、その後振り向き様に腹部に『サンメラリーパンチ』を打ち込み、続けて荒ぶる鷹のようなポーズでの右前蹴りを胸部に打って後退させる。

 

 バキシムは反撃として、ミサイルを発射するが、コスモスはそれを跳んで避け、そのままバキシムを跳び越え始める。その際にコスモスは、右腕を大きく回して、金環日食のような輪っかの光と共に黄金の光に包まれて『エクリプスモード』へとモードチェンジを始める。

 

 着地と共にモードチェンジが完了し、コスモスは構えを取る。

 

 コスモスは、尚も迫って来るミサイルを、素早い動きでかわしながらバキシムに駆け寄り、目前まで近付くと、腹部に左右交互にパンチを決め、続けて腹部に左横蹴りを決める。

 

 その後、コスモスは跳躍しての右横蹴りを顔面の左側面に決める。キックの炸裂と共に小さな爆発が起こり、バキシムは後退する。

 

 バキシムは今度は、頭部の一本角のミサイルをコスモス目掛けて発射する。だがコスモスはそれを避けるどころか、光を纏った強力な右ストレートパンチ『ダイアモンドクラッシュ』で破壊する!

 

 そして、その際に起こった大爆発の爆風の中から跳んで現れ、そのまま急降下しての右足蹴り『フライングスパーキー』を頭部に決める!バキシムは吹っ飛んで地面に落下した。

 

 基本的に対話や共存を願う優しいウルトラ戦士コスモス。だが、許されない敵には果敢に立ち向かう。この姿こそが、真の勇者なのかもしれない。

 

 (BGM:ウルトラマンギンガの歌)

 

ヒカル「行くぜギンガ!」

 

 ギンガはドラゴリーと交戦している。

 

 ギンガはドラゴリーの振り下ろして来た右腕を左手で掴んだ後に右拳を腹部に叩き込み、続けて右膝蹴りを腹部に打ち込む。

 

 次にドラゴリーは上から振り下ろす形で頭突きを繰り出すが、ギンガはそれを左側にそれてかわし、逆に右アッパーを顔面に打ち込んでドラゴリーの頭を上げた後に、腹部に連続で左右交互にパンチを打ち込み、更に胸部に右前蹴りを打ち込んで後退させ、その際の反動を利用して後ろに跳んで距離を取る。

 

 ドラゴリーは、反撃としてギンガ目掛けて口から黒い稲妻状の光線を発射する。

 

 ヒカル「ギンガスパークランス‼」

 

 ギンガは、手に持ったギンガスパークを、槍状の武器『ギンガスパークランス』に変形させて振るって、迫り来る光線を弾く。弾かれた光線は二つに分かれ、それぞれギンガの左右背後に飛んだ後、爆発した。

 

ギンガはギンガスパークランスを手に、ドラゴリーに駆け寄る。ドラゴリーは迎え撃とうと左腕を振るうが、ギンガはランスでそれを弾き、先端でドラゴリーの左横腹に打撃を決める!

 

続けてランスを大きく振るって、右斜め下に振り下ろす形で胸部に斬撃を決め、更にランスの先端を腹部に突き立てて後退させる。

 

ギンガスパークランスでの攻撃が炸裂する度に、その部位に爆発が起こる。

 

続いてギンガは、ギンガスパークランスを地に突いて棒高跳びの要領で跳び、ドラゴリーの顔面に右膝蹴りを叩き込んで吹っ飛ばした!

 

ギンガは未来から来たウルトラマンであり、その実力も未知数の物であるため、並の怪獣には苦戦する事なく、例え超獣が相手でも、本調子なら遅れを取る事は無いのだ。

 

(BGM:ウルトラマンビクトリーの歌)

 

 カメレキングと戦うビクトリー。

 

 ビクトリーは、カメレキングの両腕を振るう殴り込みを連続右横蹴りでことごとく弾き、跳躍しての右浴びせ蹴りを胸部に打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 続けてビクトリーは、カメレキングが噴射した発火ガスをしゃがんでかわし、そのまま受け身を取って近づいた後に左肩のタックルを腹部に決め、その後立ちながら右拳を腹部に打ち込み、更に右前蹴りを胸部に打ち込んで後退させる。

 

 その後ビクトリーは、跳躍しての左斜め上に振り上げる形の右横蹴りをカメレキングの顔面の左側面に打ち込み、転倒させる。

 

 カメレキングは立ち上がると、翼を羽ばたかせて空高く飛び、急降下しての体当たりを仕掛けようとする。ビクトリーは掴んでそれを防ごうとするが、余りにも速く迫って来たため、咄嗟に地に滑り込んで倒れる様に避ける。

 

 カメレキングは再び上空に飛び上がり、体当たりを仕掛けようとする。

 

 ショウ「ビクトリウムエスペシャリー‼」

 

 ビクトリーは、前方で腕をクロスさせた後、拳を握った両腕を左右に立てて、全身のクリスタルから無数の光弾『ビクトリウムエスペシャリー』を上空のカメレキング目掛けて発射する!

 

 カメレキングは、いくつか飛んで避けることが出来たが、次々と迫って来る光弾を避け切れず、数発被弾して地面に落下してしまう。

 

 《ウルトランス!サドラシザーズ‼》

 

ショウはビクトリーランサーに『岩石怪獣サドラ』のスパークドールズをリードして、ビクトリーの右腕をサドラのハサミ『サドラシザーズ』に変形させる。

 

 カメレキングに駆け寄ったビクトリーは、左右袈裟懸けにハサミで斬撃を決め始める。斬撃が炸裂した部位は爆発を起こした。そして、数発斬撃を決めた後、一回転しての右後ろ蹴りを胸部に打ち込んで吹っ飛ばした!

 

 ギンガや仲間たちと共に戦い抜いたビクトリー。それにより手に入れた真の強さは、例え超獣が相手でも負けないのである。

 

 (BGM:STARLIGHT FANTASY)

 

ソルはルナチクスとの戦いを繰り広げている。

 

 ソルは、ルナチクスの振り下ろして来た右腕を両手を頭上でクロスして防ぎ、そのまま腕を右回りで下方へ回転させてひねる事で、ルナチクスを半回転させて転倒させる。

 

 続けてソルは、立ち上がるルナチクスの右腕を掴み、そのまま「エイ、エイ、エイ、……」と言う無邪気な掛け声と共に腹部に右横蹴りを連発する。

 

 更にソルは、右膝蹴りをルナチクスの腹部に打ち込んで上半身を屈ませたところで、「それっ!」という掛け声と共に顔面にヒップアタックを決め、怯んだところで、その場でルナチクスの顔面を蹴りながらの側転をして一旦距離を取る。

 

 ルナチクスはソル目掛けて眼球のミサイルを連発し始める。ソルはそれを軽い身のこなしでかわしながら、光の手刀『ライトニングハンド』や、矢尻型の光弾『ゴッドスラッシュ』等で次々と相殺していく。

 

 その隙にルナチクスは、頭を突き出しての突進を繰り出すが、ソルはそれを『跳び箱』ならぬ『跳びルナチクス』でかわす。

 

 海羽「ソリッドパワーキック‼」

 

 “バゴンッ”

 

 ソルは、バランスを崩したルナチクスの背部に強烈な跳び蹴り『ソリッドパワーキック』を打ち込んで吹っ飛ばした!

 

 ソルはこの中で唯一の女性ウルトラマン。だが、熱い心・諦めない気持ちなどがある限り、その強さは他の男性ウルトラマンに劣る事は無いのである。

 

 一方、ヤプールコマンドを相手している櫂達は、もうほとんどの個体をやっつけていた。そのため、余裕の出来た櫂は、ウルトラ戦士達の戦いを見守りながら残りの個体を相手する。

 

 学生達の声援を受け、ウルトラマン戦士達は超獣達を圧倒していく。

 

《ウルトランス!ウルトラマンヒカリ!》

 

ショウは、『ウルトラマンヒカリ』を模したクリスタルスパークドールズをビクトリーランサーにリードする。すると、「ナイトティンバー!」というヒカリの声と共に横笛状のアイテム『ナイトティンバー』が現れ、ショウはそれを掴み取る。

 

ナイトティンバー。それは、ウルトラマンヒカリが、数万年に一度蘇る『幻影宇宙帝王ジュダ・スペクター』を封印する為に開発し、ショウに与えた魔笛封印剣であり、ビクトリーを強化変身させる事もできる。

 

ショウは、横笛状の『ティンバーモード』のナイトティンバーを口に当て、メロディを奏でた後、カバーを展開して片刃の青い剣で敵を切る『ソードモード』へと変形させる。

 

すると、ビクトリーの周囲に現れた結晶のようなエネルギーからビクトリーにエネルギーが注がれ、ビクトリーは青い光に包まれる。

 

そして光が徐々に消えていき、ビクトリーは、青と銀の体色に赤と青で構成されたVクリスタルが特徴の『ウルトラマンビクトリーナイト』へと姿を変えた!

 

変身完了後、「放て!聖なる力‼︎」というヒカリの声が発声される。

 

ウルトラマンビクトリーナイト。それは、ナイトティンバーで「澄んだ心」と「強大な力」の両方を極限まで込める事でショウの中に眠るビクトリウムエネルギーを解放し、潜在能力を覚醒させた姿である。

 

ビクトリーナイトは、ナイトティンバーソードモードを持って構える。

 

カメレキングは、低空飛行でビクトリーナイトに体当たりを繰り出すが、ビクトリーナイトは側転するように跳躍して体当たりをかわし、同時にV字を描くような素早い斬撃でカメレキングの両方の翼を切り落とす!

 

翼を切り落とされたカメレキングは地面に落下する。

 

ビクトリーナイトはカメレキングに駆け寄り、左右袈裟懸けに、横一直線にと、青い光を纏った斬撃を次々と決めていく。そしてその後、一回転しての右足蹴りを胸部に打って吹っ飛ばした。カメレキングはもうグロッキーである。

 

ショウ「トドメだ!」

 

ショウは、ソードモードのポンプアクションを二回行う。

 

《2(ツー)!ナイトビクトリウムブレイク‼︎》

 

ヒカリの音声と共に、ナイトティンバーソードモードの刃先が青い光を纏う。

 

そしてビクトリーナイトは光り輝くナイトティンバーを逆手に持ち、カメレキングに駆け寄る。カメレキングは最後の力を振り絞り発火ガスを放つが、ビクトリーナイトはそれを駆け寄りながら跳躍してかわす。

 

ショウ「ナイトビクトリウムブレイク‼︎」

 

ビクトリウムナイトは、一回転しながら落下のスピードを活かして、必殺の光の斬撃『ナイトビクトリウムブレイク』を繰り出す!光の斬撃で斜めに両断されたカメレキングは大爆発した。

 

ビクトリーナイトのカメレキング撃破を見た学生達は喜びの歓声を上げる。特に女子の歓声は凄いものだった。恐らくビクトリーナイトの鮮やかな体色に目が入っているためでもあるからだろう(笑)

 

ドラゴリーと戦っているギンガは、ドラゴリーの振るう腕をしゃがんでかわし、腹部に力強くパンチを連打した後、腹部に右前蹴りを決めて後退させる。

 

ヒカル「ギンガハイパーパンチ‼︎」

 

ギンガはドラゴリーに駆け寄りながら一回転し、光を纏った右拳を腹部に叩き込む!ドラゴリーは、パンチがヒットした部位が爆発し、凄まじい威力により遠方へ吹っ飛んだ。

 

ドラゴリーはよろけながら立ち上がる。ギンガはクリスタルを白く輝かせ、右腕から伸ばした切っ先から光の刃『ギンガセイバー』を形成させる。そして、右腕を引き、ドラゴリーに駆け寄る!

 

ヒカル「ギンガセイバー‼︎」

 

“ザブシュッ”

 

ギンガはすれ違いざまにギンガセイバーでドラゴリーの首を斬った!首を斬られたドラゴリーは、斬られた部位から光を発し動きが止まる。

 

ギンガは振り向きざまにクリスタルを青く輝かせ、両腕を前方で交差させた後、S字を描くように左右に大きく広げてL字に組む。

 

ヒカル「ギンガクロスシュート‼︎」

 

ギンガはL字に組んだ腕から必殺光線『ギンガクロスシュート』を放つ!光線はドラゴリーの体を直撃し、ドラゴリーは大爆発した。

 

コスモス(エクリプスモード)は空高く跳躍する。

 

バキシムは上空のコスモス目掛けてミサイルを乱射するが、コスモスはそれを飛行しながらことごとくかわす。

 

バキシムは今度は両腕を合わせて火炎を噴射する。

 

コスモスは迫り来る火炎に対し、両腕を合わせて、斜め下に下ろす形でエネルギーを溜め、それにより形成された三日月型の破壊光刃『エクリプスブレード』を、腕を突き出して放つ!

 

光の刃はバキシムの火炎を切り消しながら進み、やがてバキシムを直撃!バキシムは縦真っ二つに斬られ、斬られた部位から光を発して動きが止まる。

 

コスモスは着地した後、両腕をクロスしてエネルギーを溜め、右拳を突き出して必殺光線『コズミューム光線』を放つ!光線が直撃したバキシムは大爆発した。

 

ルナチクスと交戦中のソルは、跳躍して両脚でルナチクスの頭を挟むように跳び乗り、「にゃー!」という掛け声と共にルナチクスの顔を引っ掻くような攻撃を行った後、そのまま跳躍してルナチクスの胸を蹴ってその勢いで宙返りきして着地する。

 

そして、「イエイ!」と言いながら両手ガッツポーズを決める。

 

ルナチクスの顔にはいくつか切り傷が出来ていた。

 

怒ったルナチクスはソル目掛けて眼球ミサイルを発射する。ソルはそれを前方へ受身を取って避ける。

 

そして、避けたミサイルが後方で爆発した際の爆風を背に、左脚をアキレス腱を伸ばすように後ろに引いて右腕を前に突き出し、必殺光線『ミスティックシュート』を放つ!

 

光線を浴びたルナチクスは、頭部から下半身にかけて爆発を起こした後、大爆発した。

 

パワードはベロクロンと殴り合いを展開するが、無敵のヒーローだけあり、ベロクロンを圧していく。

 

パワードは、ベロクロンの顔面の左側面に右拳を、腹部に左拳を打ち込んだ後、至近距離で跳躍しての右足蹴りを腹部に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

ベロクロンはパワード目掛けて今度は口に装備されたミサイルを発射するが、パワードは即座にそれを真上に跳んでかわし、右腕を突き出して光弾『エナジーナックル』をベロクロンの口に撃ち込む!

 

口内が爆発したベロクロンは、火炎とミサイルを封じられた。パワードは急降下しての右足蹴りを叩き込み、ベロクロンの顔の二本角を破壊する。ベロクロンはたまらず仰向けに倒れた。

 

パワードは、横たわるベロクロンを力一杯頭上に担ぎ上げた後、放り投げて地面に叩きつけた。

 

ベロクロンは完成に弱った。パワードは腕を十字に組んで、トドメの『メガスペシウム光線』を放つ。光線で十字に貫かれたベロクロンは大爆発した。

 

超獣達を撃破した五大ウルトラ戦士は、横に並ぶように合流する。彼らが下を見下ろすと、歓声とともに「ありがとう」と御礼の言葉を何度も言う学生達の姿があった。

 

一方、櫂や豪快パイレーツのメンバー達は、大量にいたヤプールコマンドをついに全員倒した。

 

櫂「さてと、雑魚も残らずポアしてやったぜ。サンキュー。マーベラス、みんな。」

 

ジョー「ま、いいって事だ。」

 

マーベラス「気に入らねえ奴らはぶっ倒す。それが海賊ってもんだろ。」

 

マーベラス達は、冗談交じりにどういたしましての返事をする。彼ら(特にマーベラス)は、バンド名に因んで、海賊になりきる癖があるが故であろう(笑)

 

真美「もう大丈夫よ。」

櫂やウルトラ戦士達の戦いを見守っていた真美は、怯えていた女子を宥める。

 

因みに、自分たちを守ってくれたという事で、櫂に歓声に御礼を言う学生も多かった。何しろ、学園男子で高い人気と信頼を持つ櫂に助けてもらったのだから喜びも大きいだろう。

 

海羽「ありがとうございます。やはり先輩方は違いますね!」

 

ヒカル「いや、君が諦めなかったから、俺たちは来れたんだ。」

 

ショウ「その心は、他のウルトラマンにも負けてないぞ。」

 

ソル達は見つめ合う。もうここで大団円かと思われた。

 

が、次の瞬間!

 

ビビビビ…

 

“ズドーン”

 

五人「‼︎?ぐおあっ‼︎」

 

突如、どこからか二本の稲妻状の光線が飛んで来て、五人のウルトラ戦士に命中。五人は吹っ飛んだ。

 

櫂達も、その光景に驚愕する。

 

海羽「…っ、一体何なの⁉︎」

 

五人は視線を前方に向ける。そこには一匹の巨大な生物が立っていた。

 

その生物は、ワニのような頭部を持ち、腰部分が大きく上に突き出した形状のケンタウロスのような重量感ある体格が特徴の超獣『変身超獣ブロッケン』だ!

 

 奴は、ヤプールがワニと宇宙怪獣を『超獣製造機』で融合させて誕生した超獣で、強力なスタミナに多彩な武器、特に二本の尻尾の先から放つ高熱光線『スネーク光線』は、かつてウルトラマンAを力尽きる寸前にまでダメージを与えたほど強力で、正に最強クラスの実力を持つ超獣なのである。

 

 ショウ「まだ隠し玉がいたとはな……」

 

 海羽「しかも、なんか超ヤバそうな感じ?」

 

 ムサシ「気を付けろ。奴は恐らく強敵だ。」

 

カイ「行くぞっ‼︎」

 

パワードの号令と共に、五人はブロッケンに駆け寄ろうとするが、ブロッケンはすぐさま爪先からの破壊光線やスネーク光線を五人目掛けて放つ!

 

光線の雨あられを浴びる五人はブロッケンに近づく事ができず、逆に手痛いダメージを喰らい倒れ、その後も容赦なくビームが五人のウルトラ戦士を襲う。

 

光線の雨あられが襲い来る中、ギンガは再びギンガクロスシュートを打とうと、両腕を前方で交差させてS字を描くように広げてエネルギーを溜めるが、L字に組む直前でビームの直撃を喰らい不発に終わってしまった。

 

容赦なく襲いかかる光線を受け続ける五人は激しくエネルギーを消費し、カラータイマーが赤く点滅を始める!

 

もはや絶体絶命の状況だった。

 

ウルトラ戦士達の苦戦を見守る学生達は、不安になりながらも絶えず声援を叫び続ける。

 

それを見ていた櫂は、左腕のウルティメイトブレスを見つめながら何か重い詰まっているような表情になる。

 

加勢せざるを得ないが、今ここで変身すれば、学生達に自身がゼロである事がバレてしまうと思っているのだろう。実はゼロも同じ事を考えていた。

 

櫂が迷っている時、櫂の耳に学生達の方からある言葉が飛び込んで来た。

 

「ねえ、ゼロは来てくれないの?」

 

「お願いゼロ…助けて!」

 

………助けて………その言葉を聞いた瞬間、櫂は思い始めた。今、みんながゼロ(俺)を必要としている……なのに俺は何戸惑ってるんだ?

 

 そうしている間にも五人はブロッケンに苦戦していた。ギンガとビクトリーナイトはそれぞれ左右の口の様な手で首を挟まれ、パワードはその下で足で腹部を踏まれており、コスモスとソルは近づこうとするが、光線により返り討ちにあっている……。

 

 今こそ、みんなのために戦わなければならないのではないか……! 櫂の想いはそういう風に強くなり始めていた………!

 

 そして櫂は、後ろで心配そうに見つめる真美の方を少し振り向き、真美もそれに気づく。

 

櫂「………真美………俺、行ってくるぜ。」

 

それを聞いた真美は、少し驚いたような顔をしたが、すぐに表情が変わる。

 

真美「ええ………気をつけて………。」

 

 真美の言葉を受けた櫂は、少し笑みを浮かべた後、前方へ少し駆けて止まる。その止まった位置は、真美はもちろん、他の学生達にも見える位置であった。

 

 櫂はついに、皆の前で変身する決心をしたのである!

 

ゼロ「おい、いいのか?今ここで変身すると、他の学生達にもバレちまうぞ!」

 

 ゼロは忠告する。だが、櫂の思念は曲がらなかった。

 

 櫂「でも地球の……人類の平和を守るのが、ウルトラマンの使命だろ‼︎……お前と一体化する時言ったよなあ?  

 

 「人々を守りたい」と……。」

 

 櫂の言葉にゼロは思い留まる。

 

 櫂「今まさに、そんな人々(学生達)が、俺たちを必要とし、助けを求めてるんだ………!俺はそんな人々を、全て守りたい。だから!……今こそ戦おうぜ!」

 

 櫂の熱い言葉を聞いたゼロに、同時に彼の熱い想いも届いた……!

 

 ゼロ「…分かったぜ。お前の熱い想い、しかと受け止めたぜ!」

 

 櫂とゼロの意思が遂に一致した…!ゼロと櫂は目止めを合わせ頷く。

 

 一方の学生達は、そんな櫂とゼロのやりとりを心配そうに見つめていた。何しろ、ゼロと櫂のやりとりは、周りの人から見れば櫂の独り言にしか見えないのである。

 

 「櫂君、大丈夫かな…」

 

 「あいつも遂におかしくなっちまったか?」

 

 マーベラス「あいつ……もしかして………」

 

 マーベラスが何かを察した時、櫂は学生たちの方へと振り向く。その目つきは正に決意に満ちたものであった。

 

 櫂「みんな、見ていてくれ……俺は…いや、俺達は……ウルトラマンだ‼」

 

 櫂が叫んだ時、UBからウルトラゼロアイが現れる!学生たちは驚愕する。

 

 UBからゼロアイを出現させた櫂は空高く跳びあがる。そして、叫んだ。

 

 櫂「レッツ、ゼロチェンジ‼」

 

 叫びと共にゼロアイは櫂の目にくっ付き、櫂は光に包まれ、ゼロのビジョンとオーバーラップするかのようにゼロの姿に変わり巨大化する。

 

 ………遂に戦場に舞い降りた『ウルトラマンゼロ』!櫂の変身を目の当たりにした学生たちは驚愕する者もいれば唖然とする者もいた。

 

 「竜野が…ゼロだと……マジかよ……」

 

 「櫂君がゼロだったなんて………」

 

 「私、聞いてない。」

 

 「今まで、私たちのために戦ってくれていたのね……」

 

 すると、学生たちは一斉にゼロに…いや、ゼロに変身した櫂に向けて声援を送り始めた。男子の力強い声援と女子の黄色い声援が一つになり、櫂の心に響いたのか、ゼロは少し振り向きサムズアップを決める。

 

 豪快パイレーツや特急レインボー、そして真美は、その光景を安心の表情で見つめていた。

 

 ゼロは学生たちの声援を背に、跳躍して、五人とブロッケンの間に着地する。五人もゼロの登場にはっと顔を上げる。

 

 ゼロ「おいおい、主役の登場盛り上げすぎだろ………。」

 

 ゼロは横たわる五人を見て軽口を叩く。だが彼の言う通り、正に『真打の登場』であった。五人は多大なダメージを受けているはずが、ゼロの登場により元気を取り戻したのか、立ち上がりゼロの元へ歩み寄る。

 

 ショウ「フッ、何を言う。まだまだ行けるぜ!」

 

 ムサシ「ウルトラマンも人間も無く、仲間がいる限り僕達は負けない。」

 

 ヒカル「不屈の心がある限り、何度でも立ち上がるぜ!」

 

 海羽「オーイエース!ゼロ君も来てくれたし、もう怖い物無しだよ!」

 

 カイ「俺達ウルトラマンは、地球を愛し、守って来た、無敵のヒーローだからな!」

 

 櫂「みんな………」

 

 ゼロ「フッ……お前ら……」

 

 櫂・ゼロ「上等だ‼」

 

 ゼロと櫂の声と共に、ゼロ達は一斉に構えを取る。ここからはウルトラマンの反撃タイムだ!

 

 (BGM:DREAM FIGHTER)

 

 まずはギンガが上空に飛び、コスモスとソルがブロッケンの左右を駆け始める。

 

 ムサシ「エクリプススパーク!」

 

 海羽「ゴッドスラッシュ!」

 

 コスモスは右から矢尻型の光弾『エクリプススパーク』、ソルは左からゴッドスラッシュを発射するが、ブロッケンはそれらを両手からのレーザーで相殺する。

 

 ヒカル「ギンガサンダーボルト!」

 

 だが、ブロッケンはソル達の攻撃を防いでいる隙に、上空でクリスタルを黄に輝かせてエネルギーを溜めていたギンガが発射した『ギンガサンダーボルト』の直撃を喰らいダメージを受ける。

 

 そして次に、後ろに回り込んでいたパワードが後方の体に横蹴りを打ち込み、それと同時にビクトリーナイトが前方の体に横一直線の斬撃を決める。

 

 その後、ギンガがブロッケンの右腕を掴み、そのまま腹部に右横蹴りを打ち込み、顔面の側面に左拳を決める。

 

 ギンガはブロッケンの前方へと受け身を取って距離を取り、ビクトリーナイトはそんなギンガを跳び越えながらブロッケンに跳びかかり、落下しながらの右横蹴りを顔面の左側面に叩き込む!

 

 ブロッケンは反撃として再びスネーク光線を発射するが、ソルはすかさずそれをミスティックシュートで相殺して抑え込み、その隙にパワードがメガスペシウム光線、コスモスがコズミューム光線を放ち、二本の尻尾を焼き切った!

 

 ブロッケンがスネーク光線を封じられ怯んだ隙にゼロが駆け寄る!

 

 ゼロは駆け寄りながら跳躍してブロッケンの顔面に右拳を打ち込み、続けて腹部に左横蹴りを打ち込む。

 

 ブロッケンは怯まず右腕を振るって殴り込むが、ゼロはそれを左手で難なく受け止め右拳で叩き落とした後、胸部に右振りの右拳を二発打ち込み、更に右拳を顔面に打ち込む。

 

 ゼロは頭部から『ゼロスラッガー』を取り出し、ナイフの様に使用してブロッケンの攻撃をかわしつつ目にも止まらぬ斬撃を次々と決め、ブロッケンにダメージを与えていく。

 

 ブロッケンは今度は右腕でパンチを放つが、ゼロは左手のゼロスラッガーでそれを防ぎ、そして右手のゼロスラッガーで下から振り上げるような斬撃で右腕を切り落とした!

 

 ブロッケンが怯んだ隙にゼロはその場で跳躍して、足に炎を纏った跳び蹴り『ウルトラゼロキック』を放つ!蹴りが胸部に命中したブロッケンは吹っ飛んで地面に落下した。

 

 五人はゼロと合流し、ゼロを中心に並び立つ。

 

 そしてゼロは、数歩前に進んだ。

 

 ゼロ「俺達はウルトラマンだ………この世に悪がいる限り、絶対に諦めない!」

 

 今こそトドメの時だ!ゼロはゼロスラッガーをカラータイマーに装着し、光刃にエネルギーを溜める。

 

 ゼロ「ゼロツインシュート‼」

 

 ゼロはカラータイマーに装着したゼロスラッガーから、強力必殺光線『ゼロツインシュート』を放つ!広範囲に照射される光線を浴びる様に受けたブロッケンは、やがて光線の中で姿が消える様に消し飛んでいき、やがて大爆発した!

 

 ブロッケンを撃破したゼロは、巨大な爆風を背にフィニッシュポーズを決める。

 

 ゼロの勝利に見守っていた学生たちは喜びの歓声を上げる。あまりにも嬉しいのか、叫ぶ者もいれば飛び跳ねる者もおり、夢中で写メを撮っている者もいた。

 

 五人はゼロの方を向き一斉に頷く。

 

 海羽「やったね、櫂君!(首をかしげてピース)」

 

 櫂「ああ!(サムズアップ)」

 

 すると、五人は光と共に姿を消した。恐らくゼロよりも長く戦っていて、ゼロが加勢する前からエネルギーの消費が激しかったため、タイムリミットになったためであろう。

 

 海羽が変身を解いて元に戻った瞬間、他の学生が驚く。

 

 「えっ⁉……ま、眞鍋もウルトラ戦士だったのか⁉」

 

 海羽「え、エヘヘ、黙っててゴメンちゃい。」

 

 ゼロはすぐに変身を解かず、仁王立ちしながら自身にお礼を言ったり写メを撮ったりしている学生たちを見下ろす。その姿は正に、平和を守った勇者の様であった。

 

 自身を必要とし、こんなにも感謝してくれる人々がいる………こんな人たちのために今後も戦っていこう。櫂は恐らくそう思っているのだろう。少し不敵な笑みを浮かべているが………。

 

 真美達も、ゼロを笑顔で見上げていた………。

 

 ゼロ「櫂、俺達もそろそろ変身を解くか。」

 

 櫂「ああ、ゼロ。」

 

 ゼロが変身を解こうとしたその時、

 

 《フハハハハハ‼これで勝ったと思っているのか!》

 

 突如、何処からか不気味な声が響き、ゼロは思わず辺りを見渡しながら頷き、騒いでいた学生たちも一気に静まる。

 

 すると、上空から稲妻のような光線が降り注ぎ、中から一体の巨人が現れた。巨大ヤプールである!

 

 ヤプール「よお、ウルトラマンゼロ。ここで会ったが百年目!」

 

 ゼロ「ヤプール………これまでの超獣は全て貴様が差し向けたものか⁉」

 

 ヤプール「そうだ!だが、それだけでは無い。実はあの超獣どもは、最終段階への第一陣に過ぎなかったのだ!」

 

 ヤプールの思わぬ言葉にゼロを始め、多くの人が驚愕する。

 

 海羽「そんな……あれで第一陣だなんて……」

 

 ショウ「あの超獣達は、捨て駒だったワケか?」

 

 ヒカル「しつこいし狡猾だし、最低な野郎だな。」

 

 ゼロ「………ッ、何デタラメをぬかしやがる‼」

 

 ヤプール「デタラメではない。これを見よ!」

 

 ヤプールが上空を差す。そこを向いてみると、上空には何やら動き回る超獣達のシルエットがあった。

 

 ベロクロン、バキシムなどとついさっき倒した奴らばかりだが、一体だけ、見覚えのないシルエットがあった。そいつはブロッケンの様な形をしているが、何処か違ったものである。

 

 ゼロ「………何だ?あれは。」

 

 ヤプール「フフフフフ、遂にウルトラ戦士抹殺が叶うのだ。さあ超獣どもよ、怨念と共に融合せよー‼」

 

 ヤプールの叫びが響く。すると、超獣達のシルエットはやがて合体し、一匹の超獣となり地に着地する。

 

 そして、超獣を包んでいた異次元空間のような不気味な光が消え、姿が現れた。

 

 そいつは一見、地獄超獣マザリュース、くノ一超獣ユニタング、牛神超獣カウラ、マグマ超人マザロン人が合体して誕生した『最強超獣ジャンボキング』に見える。

 

だが、後方の尻尾にはブロッケンの二本の尻尾が加わっており、下半身にはサボテンダーのようなトゲトゲが加わっており、顔は元にルナチクスが合わさったようなもので、背中にはカメレキングの大きな翼が生えており、両腕にはバキシムのトゲトゲとドラゴリーのヒラヒラが加わったものになっており、更に両肩や前方の体の背部にはベロクロンの赤い突起物が無数に付いている。

 

 奴は、やプールが既に蘇らせていたジャンボキングに、先ほどゼロ達に敗れた超獣を融合させて誕生させた『強化最強超獣テリブルジャンボキング』だ!

 

 よりおぞましい姿となって現れたジャンボキングにゼロは身構える。

 

 ヤプール「遂に完成したぞ………テリブルジャンボキング‼」

 

 ヤプールの声と共にテリブルジャンボキングは咆哮を上げる。その鳴き声は、ジャンボキングと加わった六体の超獣の鳴き声が同時に響くと言ういかにも不気味なものであった。

 

 ゼロ「これは…やるしかないのか……!」

 

 ヤプール「おーと、待て待て、これだけではないのだよ。」

 

 ゼロが構えを取った時、ヤプールが声を上げてゼロは立ち止まる。

 

 すると、上空から一匹の怪獣が下りてきて、土煙を上げながら着地する。

 

 その怪獣は、蛾が怪獣化したような巨大な体が特徴の怪獣『宇宙大怪獣ムルロア』だ!

 

 奴は、かつては『ムルロア星』に生息する生物であったが、核実験により母星を失い、それと同時にその影響で突然変異を起こしたものであり、復讐のために地球を襲ったが、当時地球で活躍していた『ウルトラマンタロウ』と、防衛チーム『ZAT』の活躍により撃破されている。

 

 今回は、ヤプールが怪獣墓場から持ってきたムルロアの霊体に、ドラゴリー製作の際に余った毒蛾を合体させて強化・復活させたものである。

 

 ヤプール「さあ、どうする⁉ゼロ!これでも身の程を知らずに戦うってのか⁉」

 

 二大強敵を従えているヤプールは、既に勝った気でゼロを挑発する。真美達はもちろん、他の学生たちも不安な表情で見つめ、中には怯えている学生もいた。

 

 ………だがゼロは、怖気づくどころか、闘志の湧いた表情で再び構えを取った。

 

 ヤプール「ほう、それでも戦うってのか?」

 

 ゼロ「やってみなきゃ、分かんねーって事だよ。ヤプール!」

 

 櫂「俺達を必要としている人もいる………その人たちのためにも、負けるわけにはいかねーんだ!」

 

 ヤプール「ならその熱意、試させてもらうぞ。」

 

 ゼロ「上等だぜ!ウオアアアアアア………‼」

 

 恐れ知らずのゼロと櫂。ゼロは、真美達が見守る中、ヤプールの従える強敵目掛けて駆け始める………!

 

 果たして、このバトルの行方は………⁉

 

 To Be Continued……

 

(BGM:赤く熱い鼓動)




 遂に、櫂がゼロである事が大学の学生達にも知られてしまいました。

 そんな中現れたヤプール率いる二大強敵超獣……果たしてどうなるのでしょうか⁉

 次回、前半戦のクライマックス‼

因みに私は本日、『仮面ライダー×仮面ライダー ゴースト&ドライブ 超MOVIE大戦ジェネシス』を観てきました。笑いあり涙ありでとても面白かったです。

 感想・指摘・アドバイス・リクエスト等をお待ちしています。


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第17話「燃えろ!ウルトラ6勇士」

 今年最後の投稿です!

 前半戦クライマックスと言う事で、ややてんこ盛りな感じに仕上がっています。

 なので目まぐるしく戦闘シーンが切り替わる所もありますのでご了承ください(笑)

 でも前半戦の締めくくり、そして今年の締めくくりとしては良い感じに仕上がっているかなとは思います。

因みにタイトルは、『ウルトラマンタロウ』第25話のオマージュです。

 来年もよろしくお願いします。


 (OP:TAKE ME HIGHER)

 

 〈前回のダイジェスト〉(BGM:ウルトラマンゼロのテーマ)

 

 8月1日、夏休みライブで盛り上がっていた櫂達の大学・麟慶大学。

 

 だが、そんな中突然超獣軍団が襲って来た。

 

 超獣軍団は、ウルトラマンゼロ達ウルトラ戦士の活躍によって撃破された。因みに竜野櫂は、この際に他の学生たちの前で変身したため、学生たちに自身がゼロに変身できることを知られている。

 

 だが、安心するのも束の間、実はその超獣軍団は第一陣に過ぎず、『ウルトラマンゼロ』の前に現れた『異次元超人巨大ヤプール』は、ゼロ達に倒された超獣達の魂と、既に蘇らせていた『最強超獣ジャンボキング』を融合させ、『強化最強超獣テリブルジャンボキング』を誕生させた。

 

 更にヤプールは、同じく強化・再生させていた『宇宙大怪獣ムルロア』も出現させた。

 

 二大強敵を差し向けて勝ち誇るヤプール。だが、そんな不利な状況の中でも臆する事ないゼロと櫂。ゼロはヤプール率いる二大強敵超獣に立ち向かって行くのであった………。

 

 〈ダイジェスト終了〉

 

 

 

 新田真美達や他の学生たちが見守る中、テリブルジャンボキング(以降:Tジャンボキング)、そしてムルロアを相手に激闘を繰り広げるゼロ。戦いは、周囲の地面が爆発を連続で起こし、土煙が舞い上がるほど激しいものである。

 

 ゼロはムルロアの振り下ろして来た両腕を両腕で弾き、左肩に右の手刀を決め、更に胸部に水平右チョップを叩き込んで後退させる。

 

 ゼロは跳躍し、落下しながらTジャンボキングの頭部に右足蹴りを打ち込んだ後着地する。

 

 だが、Tジャンボキングはそれほどダメージを受けていないようであった。

 

 ゼロ「何ッ⁉」

 

 櫂「あまり効いてないだと⁉」

 

 少し怯みながらもゼロはTジャンボキングに跳びかかりながら胸部に右膝蹴りを決め、その後腹部に左右連続でパンチを打ち込んで右脇腹に左横蹴りを叩き込むが、それでも奴は怯む様子も無く、逆にゼロはTジャンボキングの、腕のトゲトゲを活かした強烈な左フックを顔面に喰らいたまらず地に両手、両膝を付いてしまう。

 

 Tジャンボキングは更に攻撃を加えようとするが、ゼロは咄嗟にしゃがんだまま腹部に右足蹴りを打ち込み、その隙に受け身を取って距離を取る。

 

 ゼロ「チッ…こいつ、なかなかできる奴だぞッ!」

 

 櫂「ああ。」

 

 ゼロは再び高く跳躍し、Tジャンボキングに馬乗りになって前方の頭部にパンチの嵐を浴びせるが、後方の体のギロチンのような形をした触覚からの黄色い金縛り光線『サークルイエロー光線』にからめ取られ、その隙に後方の体の腕で叩き落とされてしまい、更に超重量級の体を支える足で右横腹を蹴り飛ばされてしまう。

 

 ゼロ「……ッ、まだまだ~……」

 

 落下したゼロは立ち上がり、再び反撃に出ようとしたその時、

 

 ゼロ「……ッ!!?ぐおあっ!」

 

 ゼロは突然苦しみだした。先ほど蹴られた右横腹にいつの間にか一本の黄色い巨大な棘が刺さっていて、その痛みからである。

 

 Tジャンボキングは先ほどゼロを蹴った際、同時に下半身に生えているサボテンダーから授かった棘を突き刺していたのだ。

 

 その痛みは想像を絶するものなのか、ゼロは棘が刺さった部位を押さえもがき苦しむ。そのダメージは、ゼロと一体化している櫂にも来ていた。

 

 海羽「きゃーっ‼櫂君!」

 

 真美「(口を両手で押さえ)………櫂君………!」

 

 眞鍋海羽はその光景に思わず悲鳴を上げて驚き、真美も不安の表情で見つめ始める。

 

 ヤプール「フハハハハハ!どうだ思い知ったか!?Tジャンボキング!一気に倒してしまえ!」

 

 ジャンボキングはヤプールの指示に応え、ブロッケンの二本の尻尾を伸ばして苦しむゼロをがんじがらめに縛って持ち上げる。

 

そして、そのままゼロに電撃を流し始める!赤黒い電撃を浴びるゼロと櫂は苦しみの悲鳴を上げる。

 

これはTジャンボキングの新技であり、倒された超獣の邪念の篭った電撃『テリブルサンダー』である。超獣の邪念が篭ってるだけあって威力は絶大で、ゼロのカラータイマーは点滅を始める!

 

ゼロに電撃を流したTジャンボキングは、ゼロを放り投げて地面に叩きつける。

 

ヤプール「まだこんなものでは無いぞ。受けるがいい!まずはベロクロンとバキシムの力!」

 

Tジャンボキングはヤプールの指示と共に、ベロクロンから受け継いだ体の突起物や、両手の発射口からゼロ目掛けて無数のミサイルを発射する!

 

ミサイルの雨嵐はゼロに降り注ぐ!ゼロはなす術なくミサイルを浴びていく……。

 

Tジャンボキングがゼロを痛ぶっている間にムルロアは傍若無人に街で暴れ始める。

 

ヒカル「まずい!このままでは……!」

 

ショウ「俺たちも行くぞ!」

 

礼堂ヒカルとショウは、加勢しようとそれぞれギンガスパークとビクトリーランサーを構え駆け始める。

 

カイ「待てっ!今のままでは…」

 

ケンイチ・カイが制止しようとするが、二人はそのまま駆けながらスパークとランサーを挙げる。

 

ヒカル「ギンガー‼︎」

 

ショウ「ビクトリー‼︎」

 

ヒカルとショウは光に包まれ巨大化し、ウルトラマンギンガとウルトラマンビクトリーが現れる。

 

ヒカル「ギンガスラッシュ‼︎」

 

ギンガはTジャンボキング目掛けてギンガスラッシュを発射する!だが、Tジャンボキングはブロッケンの尻尾からのスネーク光線で難なく相殺してしまう。

 

ヤプール「無駄だ!」

 

 逆にギンガとビクトリーはスネーク光線を受けてしまい、吹っ飛び倒れる。

 

 しかも、変身して数秒しか経ってないのにカラータイマーは点滅を始める!変身を解除して間もない状態で再び変身した上に、先ほどの戦いでのダメージがまだ残っていたためであろう。

 

 ショウ「マズい、もうエネルギーが!」

 

 もはやウルトラマン達は、完全に不利な状況に陥ってしまった。

 

 ヤプール「さーて、そろそろ仕上げと行きますか。ムルロア!」

 

 ヤプールの指示を受けたムルロアは、体の側面にある突起から勢いよく『アトミック・フォッグ』と言う黒煙を噴射し始める!

 

 これは、かつて地球全体を覆い、気温やライフライン等を狂わせ地球を大混乱に陥れた恐るべき黒煙である。黒煙はあっという間に広がり、やがては霞ヶ崎全体を覆ってしまった。

 

 はて、なぜ霞ヶ崎だけなのだろうか?………そこは謎のままである。

 

 更に、ゼロとギンガ達は広がって行く黒煙を少し浴びてしまい、毒性もあるのか、苦しみだす。

 

 ムルロアは、苦しむギンガとビクトリー目掛けて口から白いレーザー光線『ホワイダーレーザー』を発射する!これは、かつてムルロアが武器としていた溶解液『ホワイダースプレー』を、ヤプールの力によりレーザー状に強化させたものである。

 

 レーザーの威力は凄まじく、受けるギンガ達は徐々に力が抜けていき、カラータイマーの点滅も早くなる。

 

 ヤプール「ドラゴリーとルナチクスの力!」

 

 Tジャンボキングはゼロの右腕を掴み、ドラゴリーの怪力で上空に放り投げ、更に上空のゼロにルナチクスから受け継いだ眼球ミサイルを乱射して撃ち落す。

 

 ゼロはもはや立つのもままならない状態だった………。

 

 Tジャンボキングは、体の各超獣の部位を発光させる。すると、口と目、腕にエネルギーが集まって行く。

 

 そして、口と両目、両腕から一斉に光線を発射し、それらが一つとなって強力な竜巻のような破壊光線となり、ゼロを直撃する!これはTジャンボキング最強の技であり、超獣達の力を一気に開放して放つ『ハイブリッドテリブルバスター』である。

 

 強力な光線を浴びるゼロは、体から残りのエネルギーであろう光が漏れていき、やがて叫びと共に大爆発して消滅した!

 

 カイ「……ッ‼」

 

 真美「‼」

 

 海羽「櫂くーん‼」

 

 ゼロが敗れた………!その瞬間を目の当たりにした真美達は、ショックと絶望感により言葉を失ってしまう。

 

 ヒカル「櫂さん………ゼロ‼」

 

 ショウ「ヤロー‼」

 

 ギンガとビクトリーは、Tジャンボキングに向かおうとするが、その際に背後からムルロアの両手のハサミで首を挟まれ、投げ飛ばされてしまう。

 

 ムルロアは再度ギンガ達にホワイダーレーザーを浴びせる!ギンガ達も遂にパワーが尽きてしまったのか、光と共に消滅してしまった。

 

 気が付くと、学生たちの前で櫂はボロボロの状態で横たわっており、その少し先でヒカルとショウも横たわっていた。

 

 ゼロ「櫂……おい櫂!しっかりしろ!」

 

 ゼロはウルティメイトブレス(以降:UB)から必死に呼びかけるが、気絶しているのか、櫂は全く反応しなかった。

 

 学生たちは急いで櫂達の元へ駆け寄る。

 

ゼロ達を破ったTジャンボキングとムルロアは再び街で暴れ始める。街を蹂躙する二体に人々は必死に逃げ惑う。

 

中にはウルトラマンが敗れ、空が暗黒に包まれた事もあり絶望に暮れ始める者もいた。

 

 ヤプール「フハハハハハ!遂にゼロを打倒すことが出来た!これにより、もう恐れるものは何もない。この調子で残りのウルトラ戦士も残らず倒し、ついでにこの町の住人も皆殺しにしてやる!」

 

 ゼロ達の敗北に勝ち誇るヤプール。

 

 ヤプール「だが、今一気に殺してしまっても面白くない。しばらく生かしてやる。そして二時間後に再び現れ、貴様ら全員皆殺しにしてやる。男も女も、子供もだ!フハハハハハ……」

 

 宣告をしたヤプールは異次元の扉の中へと姿を消し、ムルロアとTジャンボキングも飛び去って行った………。

 

 

 

 真美達学生たちは、櫂達を医務室へと運んだ。ヒカルとショウは命に別状はなかったが、櫂の方はどうやら重傷みたいで、未だに意識が戻っていなかった。

 

 櫂はベッドで仰向けに寝かせており、その傍には真美と海羽、そして豪快パイレーツ、特急レインボーが付いていた。

 

 ゼロ「くそっ……まさかこんなことになっちまうとはな……。」

 

 「どうなっちゃうの?櫂君。」

 

 「櫂君、お願い、死なないで~」

 

 医務室の外では、意識が無い櫂に悲しむ学生が何人かいた。

 

 因みに現在外は、ムルロアの黒煙の飛散や、黒煙に町が覆われてしまった事での温暖化、更にはムルロアが引き連れたと思われる蛾『宇宙蛾スペースモス』が無数に飛び交っているため、学生たちは外に出られず、ほとんどが体育館で避難していた。

 

 因みにスペースモスは、視力が悪く光が苦手なムルロアの尖兵として、蛾の習性として光源を遮ったり、破壊したりする役目を持っている。

 

 この最悪な状況に、大半の学生が望みを失いそうになっていた。

 

 「ねえ、もう朝は戻って来ないの?」

 

 「ウルトラマンゼロも敗れてしまったし、そうかもしれないな。」

 

 「私、怖いわ。」

 

 「それにしても、竜野と眞鍋がウルトラマンだったとは。」

 

 「あいつら、今まで俺達のために戦ってくれてたんだな。」

 

 「でも、今ではゼロは敗れ、櫂が重傷……くそっ、どうすりゃいいんだよー‼」

 

 絶望に打ちひしがれる学生たちを、ムサシ、カイも何とも言えない表情で見つめていた………。

 

 「怖い……怖い……怖いよ~」

 

 「大丈夫、大丈夫だから……!」

 

 とある眼鏡をかけた内気そうな女子が体育館の隅でうずくまって怯えており、他の女子が必死で励ましていた………。

 

「……大丈夫。」

 

メガネ女子は、優しい声と共に右肩に温かい感触を感じ顔を上げる。そこには、自身の右肩に手を置いて優しい表情で見つめる真美がいた。

 

真美「絶対に、私たちは救われるよ。」

 

真美の、まるで物怖じしない表情にメガネ女子は動揺を感じる。

 

「……どうしてそう言えるの?」

 

真美「…たった今、櫂君が目を覚ましたの。」

 

「えっ……?」

 

そう、さっきまで目を覚まさず、一部では死んだとも思われていた櫂が目を覚ましたのだ。櫂の寝ているベッドはいつの間にか体育館に運ばれていた。

 

櫂「……よお、お前ら…心配かけちまったな。」

 

 ゼロ「!櫂っ、ようやく気が付いたか。」

 

櫂は、ダメージがまだ抜け切れてないのか、少し震える声で言った。

 

「竜野⁉︎」

 

「櫂君っ!」

 

「大丈夫?怪我は?」

 

 櫂「へへへ…この通りだぜ。」

 

 ゼロ「ヘッ…とりあえず良かったぜ。お前が無事みたいで。」

 

ゼロはひとまず安心し、櫂の安全を知った学生たちも、僅かながら安心の表情を見せる。よほど学園内での信頼度が高いのか、櫂の安全を知っただけで、さっきまで絶望していたのが僅かに元気を取り戻す者もいた。

 

 

 

一方、カイ、ムサシ、ヒカル、ショウは、敵についての話し合いをしていた。

 

カイ「ムルロアはかつて、地球全体を黒煙で覆った事があると聞いたことがある。だが今回はここ、霞ヶ崎だけ黒煙で覆っている。」

 

ヒカル「なぜ、この街だけなのでしょう?」

 

ムサシ「分からない。それはさておき、恐らくあの黒煙は、ヤプールが霞ヶ崎にのみ広がるようにコントロールしているに違いない。」

 

ショウ「じゃあ、ヤプールや、黒煙を出しているムルロアを倒せば、再び光は戻って来ると?」

 

カイ「それに、あのジャンボキングは、二人掛かりで連携しなければ勝てない…いやむしろ、二人掛かりでも勝てるかどうか…。」

 

ムサシ「それに、ヤプールもムルロアも前より強くなっている。」

 

ヒカル「だとすると、俺たちは6人で相手は3体だから各2人ずつで相手する事になるか……。」

 

四人は、何とかヤプール達を倒す策を分析して見つけ出すが、勝算の薄さに再び考え込んでしまう。

 

 と、その時、

 

 ゼロ「いや、勝算はまだあるぜ。」

 

 櫂「あのデカブツ(Tジャンボキング)は…恐らくヤプールを攻撃すれば倒せる。」

 

 突如、回復し切ってない体で、海羽に肩を貸してもらいながら自身たちの元に歩み寄って来た櫂が思わぬことを言った。

 

 ショウ「……どういう事なんだ?」

 

 櫂「さっきの戦いを見て何か気付かなかったか?あのヤプール、何やらジャンボキングをコントロールしている様にも見えた……。」

 

 ゼロ「俺も同じことを感じていた。恐らくあのジャンボキングは、ヤプールのコントロールにより、能力を強大に引き出せるのかもしれない。」

 

 櫂とゼロの言葉に、四人は「はっ」と何かに気付く。

 

 ムサシ「確かに………ヤプールは戦いに一切参加せず、ジャンボキングに指示を出すだけだった。」

 

 カイ「あの強さと防御力は、ヤプールのコントロールあってこそのものかもしれない。」

 

 そう、Tジャンボキングの凄まじい強さや防御力は、超獣達の邪念だけではなく、ヤプールがそれらの能力を巧みにコントロールしているからでもあると言う事に櫂は気づいていたのだ。

 

 流石は学園トップの頭脳も持っているだけあって、戦いの勘は流石のものだった。

 

 櫂「最も、それを観察していたせいで、思うように戦えなかったがな。ハハハ…」

 

 櫂は軽口を叩く。僅かながらいつもの調子に戻っている様だった。

 

 海羽「WOW(ワオ)!流石は櫂君。」

 

 海羽もいつもの明るさを取り戻していた。

 

 マーベラス「俺達も応援するぜ!」

 

 声がした方に六人は振り向く。そこには、体育館のステージ上で何やらライブの準備をしている『豪快パイレーツ』『特急レインボー』、そして、そのステージの中心に立つ真美の姿があった。

 

 明「お前たちを一生懸命応援するこの場所が俺達の死に場所だ!」

 

 鎧「ちょっと違いますけど…元気なら俺達も負けてませーん!」

 

 カグラ「ちょっと怖いけど…諦めない限り、」

 

 アイム「わたくし達は、決して悪に屈したりはしません。」

 

 ヒカリ「俺達も同じ学園の仲間として、」

 

 ハカセ「出来る限りのサポートを、どーんとするよ!」

 

 ミオ「私たちには、ウルトラ戦士のような力はないけど、」

 

 ルカ「度胸や根性は、ウルトラ戦士に負けてないわ!」

 

 トカッチ「(右手の親指で眼鏡を直しながら)だから、絶対に諦めないで!」

 

 ジョー「俺達が、学園のみんなが、ウルトラ戦士を必要としているからな。」

 

 ライト「俺には見えている……君達ウルトラ戦士が、悪をぶっ倒す所が!」

 

 マーベラス「さあ、派手にウルトラ戦士を…学園のみんなを奮い立たそうぜ!」

 

 マーベラス達の言葉に、六人は嬉しさの表情を見せる。真美は呼吸を整え、ゆっくりとマイクに近づく。

 

 真美「………櫂君達は…ウルトラ戦士達は、再び希望を持って戦おうとしています。だからみなさんも、どうか希望を捨てないで。」

 

 真美の言葉が響いた後、そろったバンドは応援歌を演奏し始める。

 

 豪快パイレーツと特急レインボーの合同演奏、そして、真美のボーカルで、『飛び立てない私にあなたが翼をくれた』が始まった。

 

 学生たちはすっかり聞き入っており、12人の演奏による力強く爽快なメロディ、そして、ボーカルの響き渡る澄んだ歌声は、気落ちしていた学生たちを次々と勇気づけていく様であった。

 

 ゼロ「あいつら……良い奴らだぜ。」

 

 櫂「ありがとう。真美、みんな。」

 

 櫂は演奏を聴きながら真美達に礼を言う。ウルトラ戦士に変身する六人も、自然と元気が湧いてくるような感じがしていた。

 

 

 

 そして演奏終了後、櫂達ウルトラ戦士六人は、櫂を中心にステージの上に立つ。そして、学生たちに向けて語りだす。

 

 カイ「みんなの再び希望を持つ姿に、俺達は心を打たれた。敵の力は強大だ。だが、みんながそうやって諦めない心を持ってくれる限り。俺達ウルトラ戦士は決して負けたりはしない。」

 

 カイは、櫂と海羽の方を向く。

 

 カイ「ジャンボキングの方は、ゼロとソル、お前たちに任せる。」

 

 櫂「えっ?」

 

 海羽「わ、私達ですか?」

 

 カイ「ああ。ウルトラ戦士である事を知られたことで、学園の仲間との信頼もより深まった君達なら、あの怪物を絶対倒せるに違いない。」

 

 カイの言葉に櫂と海羽は少し緊張を感じ始める。

 

 カイ「だが、ゼロの方は先ほどの戦いにより消耗が激しい。だから俺達の光も分ける。」

 

 そう言うとカイは、フラッシュプリズムを突き出してUBに光エネルギーを注ぐ。

 

 ムサシ「僕の光も使ってくれ。」

 

 続けてムサシが、コスモプラックからUBに光エネルギーを注ぐ。

 

 ショウ「俺のも。」

 

 ショウも、ビクトリーランサーから光エネルギーを分け与える。

 

 ヒカル「俺達が力を合わせれば、どんな敵も倒せます。 使ってください。俺達の力を。」

 

 ヒカルもギンガスパークを突き出してUBに、更には海羽のハートフルグラスにも光エネルギーを分け与えた。

 

 カイ達から分けてもらった光により、さっきまで微弱に光っていたUBはいつもの輝きを取り戻していた。

 

 ゼロ「みんな………ありがとう。力がみなぎって来たぜ!」

 

 すると、真美もステージに上がり、櫂の元に歩み寄る。

 

 真美「私は、ヒカル君達みたいにウルトラ戦士の力を持っていないから、力を分ける事が出来ないし、応援する事しか出来ないわ………いつも力になれなくて、ごめんね。」

 

 櫂は、少し俯く真美の右肩に手を置いた。

 

 櫂「なーに言ってんだ?真美。お前のその優しい笑みだけが、いつも俺に力を与えてくれてんだよ。」

 

 真美「櫂君………。」

 

 櫂の言葉に真美は顔を上げる。そして櫂と真美は笑顔で見つめ合う。

 

 櫂「絶対勝ってくる。だから、笑みを絶やさずに待っててくれ。」

 

 真美「うん!」

 

真美は万遍の笑顔で櫂を見つめる。その笑顔を見るだけで、櫂はさらに元気が湧いてくるような感じだった。

 

ヒカル「愛する者の愛情だけが、戦士の力になるもんだな。」

 

ショウ「ああ。俺たちが戦ってきたのは、それを守るためでもあるからな。」

 

ヒカルとショウは、櫂と真美のやり取りを見てお互い囁くように話す。

 

ムサシ「これぞ正に、心の絆だ。」

 

カイ「ああ。」

 

 

 

だが、それも束の間、2時間が経過したため、巨大ヤプールと二体の超獣は再び霞ヶ崎の街に現れた!

 

ヤプール「さあ!約束の時間だ!残りのウルトラマンも人間どもも、皆殺しにしてやる〜!」

 

ヤプールの声とも共に、Tジャンボキングは各超獣の部位からの光線発射や、巨体を活かしてのビルを崩したりなどして暴れ、ムルロアはハサミ状の両手を振るったり、口からのホワイダーレーザーを発射したりなどして主に光源のある所を破壊しながら暴れ始める。

 

街の人々は悲鳴を上げながら再び我先にと逃げ始める。

 

ヤプール「さあ、出て来い!ウルトラマン共‼︎」

 

ヤプールも、右手のカマを振るったり、その部位からレーザー『ストレートショット』を放ったりなどして、自信満々でウルトラマンを呼びながら暴れ始めた。

 

三体の大暴れによる振動が体育館に響き、全員は再びヤプール達が襲ってきた事に気付き、再び怯え始める学生も何人か出始めていた。

 

そして、よく耳を澄ましてみると、逃げ惑う人々の悲鳴の中から「助けて!ウルトラマン!」という声が聞こえてきた………。

 

海羽「………行こう……櫂君!」

 

櫂「………。」

 

気合いの声を上げる海羽の横で櫂は緊張からか、拳を握り真剣な表情で俯き始める。何しろゼロと一体化して初めて敗れた相手が再び襲って来たのだから無理も無いだろう。

 

「行って来い。竜野!」

 

「頑張って!私たちも応援するよ。」

 

学生たちの励ましの声に背中を押され、徐々に櫂の表情が和らいでいく。

 

真美「……私は最近、今よりもっと多くの人を助けたいと思った。……そう思わせてくれたのは櫂君よ。」

 

櫂「…真美…。」

 

真美の言葉に、櫂は勇気が湧いてきていた。

 

ゼロ「さあ、勝ちにいこうぜ。櫂!」

 

海羽「行こうぜ!」

 

櫂「………おう‼︎」

 

櫂は遂に決心を固めた!

 

が、その時、

 

突如、大量の『ヤプールコマンド』が体育館にうじゃうじゃと入ってきた!

 

思わず身構える櫂達。他の学生達も身構えるが、中には既にうずくまっている者もいた。

 

ヤプール「メインディッシュ(ウルトラ戦士)は最後に味わうべきだからな。まずはサラダ(人々)を味わうとしよう。かかれ‼」

 

 ヤプールの指示で、ヤプールコマンド軍団は学生たちを襲おうと一斉に駆け寄り始める!

 

 カイ「行くぞっ!」

 

 カイ達は向かおうと身構える。だがその時、

 

 学生たちの前に、豪快パイレーツや特急レインボーが並び立ち身構える。

 

 マーベラス「ここは俺達に任せて行けっ‼」

 

 櫂「………心得た‼」

 

 ヒカル・ショウ「ガレット‼」

 

 海羽「がってんてん!」

 

 マーベラス「っしゃあ、派手にいくぜっ‼」

 

 ライト「出発進行ー‼」

 

 (BGM:ENDLESS PLAY)

 

 ヤプールコマンド軍団との生身の戦いが始まった!豪快パイレーツや特急レインボーは、櫂達を先に進めようと先陣を切って雑魚を蹴散らしていき、櫂達はそれによって出来る道を駆けて先へ進む。

 

 マーベラスとライトは熱いリーダー同士。息の合ったワイルドな蹴り、拳等で雑魚を次々と叩き潰していく。

 

 二人はまず同時に駆けながらの跳び蹴りで前方の個体を蹴飛ばした後、マーベラスは後方の個体に肘打ちを浴びせその後左方の個体を右拳で吹っ飛ばし、更に前方の個体を前蹴りで吹っ飛ばす。

 

 ライトは右方の個体の腕を掴んでひねって地面に叩きつけた後、その個体を踏み台にして跳んで前方の個体に右拳を叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 ジョーとヒカリは、それぞれペアを組んでいるトカッチとハカセをサポートしつつ戦う。

 

 ジョーは何処からか持ってきた剣道部の刀で華麗な剣さばきで雑魚を次々と切り倒していき、トカッチも同じ刀で慎重に雑魚の攻撃を避けつつ闇雲に振り回しつつ雑魚を倒していく。

 

 ヒカリは前方の個体のパンチを腕で弾き右回し蹴りで吹っ飛ばした後、続けてかかって来た二体を左右パンチでふっ飛ばす一方で、ハカセはちょこまかと逃げ回りつつ、一体の個体が打ってきた蹴りを即座に掴んだ後そのまま流れる様にドラゴンスクリューからの足四の字固めを決めたりとトリッキーに戦う。

 

 このように対照的な二人がペアを組んで戦うのも面白い所だ。

 

 明「さあ、ここが俺達の死に場所だ!」

 

 鎧「ちょっと違いますけど…ギンギンに行くぜーっ!」

 

 お次は伊狩鎧と虹野明のペアだ。

 

 鎧は前方の個体の攻撃をバク転でかわした後、右方の個体を跳躍しての右回し蹴りで薙ぎ倒し、その後左方から襲って来た個体の腕を掴んで止めた後腹部に連続でパンチを打ち込んで更に右前蹴りで吹っ飛ばす。

 

 明は前方の個体の首根っこを掴んで放り投げた後、右方の個体を右ハイキックで吹っ飛ばし、その後左方の個体の腕を取ってそのまま腕ひしぎ十字固めを決める。

 

 一方で、女性陣も負けてはいない。

 

 ルカとミオは勝気女子同士。ルカは男性陣に負けない程のバク転やハイキック等を駆使して雑魚を倒していき、ミオは剣道の如くスナップの利いた手刀を頭頂部に決めたりして雑魚を倒していく。

 

 アイムはくるくると旋回しスカートを翻しながら手刀、回し蹴りなどを繰り出して華麗に戦う。

 

 一方のカグラは、最初こそは「怖い怖い…」と言いながら逃げていたものの、壁へと追い詰められた時、

 

 カグラ「私は強い、私は強い………スーパーガール‼」

 

 何度も自己暗示をかけた瞬間、突然人が変わったかのように強くなり、二匹を両手パンチで同時に吹っ飛ばしたりなどして雑魚を薙ぎ倒していく。

 

 カグラは普段は気弱で戦闘にはまるで不向きだが、先ほどの様に、ライトに次ぐ持ち前の想像力の高さを活かして自己暗示をかけて自身のステータスを底上げし、どんな戦闘スタイルも実現してしまう所謂なりきり派でもあるのだ。

 

 この事から他のメンバーから『なりきりリーダー』とも言われている。

 

 マーベラス達が雑魚を次々と倒す事で出来る道を駆け戦場へと向かう櫂達。

 

 気が付くと、マーベラス達の他にも、ささやかながらヤプールコマンドに立ち向かう学生たちも見え始めた。彼らも怯えてばかりでは何も始まらないと、遂に勇気を振り絞って立ち上がったのであろうか。

 

 これぞ正に『Boys And Girls Be Ambitious‼』である。

 

 その様子を見守りながら真美は心で呟いていた。

 

 (私、信じてる……どんな時でも、絆が皆を一つにしてくれるって……心の絆が皆を強くしてくれるって………!)

 

 

 

 遂に暴れるヤプール達の目前までたどり着いた櫂達は、櫂をセンターに横並びで止まる。

 

 ヒカル「………遂に来たか……みんなの思い、無駄にしないぜ!」

 

 その時、ヒカルはギンガスパークが光った事に気付く。ギンガがヒカルに語り掛けているのだ。

 

 ギンガ「ヒカル………新しい、良い仲間が出来たな。」

 

 ヒカル「………おう!」

 

 ムサシ「みんなで笑顔で帰るために、」

 

 ショウ「必ず勝利をつかみ取る!」

 

 カイ「みんな、しっかりやれよ。いいか?ちゃんと命だけは持って帰るんだぞ。」

 

 ヒカル・ショウ「ガレット‼」

 

 海羽「イエース‼さあ櫂君、そろそろ行っちゃう⁉」

 

 櫂「ああ!さあ、行くぜゼロッ!」

 

 ゼロ「おう‼」

 

 櫂・ゼロ「本当の戦いはここからだぜっ‼」

 

 六人は、大きな爆風を背に、一斉に変身アイテムを構える。

 

 カイはフラッシュプリズムを揚げてスイッチを押し、ムサシはコスモプラックを高く揚げる。

 

 ヒカルはギンガの、ショウはビクトリーのスパークドールズをそれぞれギンガスパーク、ビクトリーランサーにリードする。

 

 《ウルトライブ!》

 

 《ウルトラマンギンガ!》《ウルトラマンビクトリー!》

 

 海羽はハートフルグラスを右手に、一回転して上に揚げた後目に当てる。

 

 櫂は、左腕を胸前で曲げてUBからウルトラゼロアイを出現させる。

 

 櫂「レッツ、ゼロチェンジ‼」

 

 櫂の掛け声と共にゼロアイは櫂の目にくっ付いた。

 

 ヒカル「ギンガー!」

 

 ショウ「ビクトリー!」

 

 ムサシ「コスモース!」

 

 カイ「パワード!」

 

 海羽「ソルー!」

 

 櫂「ゼロー!」

 

 六人は眩い七色の光に包まれる。そしてその光が徐々に大きくなっていき、中から六人の勇士が現れ、土煙を上げながら着地する。

 

 ウルトラマンゼロ、ウルトラマンギンガ、ウルトラマンビクトリー、ウルトラマンパワード、ウルトラマンコスモス、ウルトラウーマンSOL(ソル)の、ウルトラ6勇士が今ここに大登場!

 

 ウルトラ戦士の登場に気付いたヤプール達。ヤプールはゼロがまだ生きていたことに驚愕する。

 

 ヤプール「なぜだっ⁉貴様はあの時、完全に倒したはずだ!」

 

 驚くヤプールを他所に、六人のウルトラ戦士は構えを取る。

 

 ヤプール「えーい、スペースモス!かかれ!」

 

 ヤプールの指示で、すべてのスペースモスが集まり、まるでビーム砲の様にゼロ達目掛けて一斉に飛び始める!

 

 だがゼロ達は、即座にそれぞれワイドゼロショット、ミスティックシュート、メガスペシウム光線、ムーンライトスマッシュ、ギンガクロスシュート、ビクトリウムシュートを一斉に放ち、それらが一つの合体光線となって迫り来るスペースモス軍団を瞬く間に全て焼き払った!

 

 ヤプール「‼ッ、バカなっ、そんな力を隠し持っていたとは…」

 

 ゼロ「まだ分かんねーのかヤプール‼俺達はみんなの想いを受けてここまで来た……だから、さっきとは一味も二味も違うんだよっ‼」

 

 ヤプール「えーいこざかしい!行くぞ超獣ども!」

 

 ヤプールはTジャンボキング、ムルロアと共にウルトラ戦士に襲い掛かり始める。ゼロは右腕の肘から先を数回回して気合を入れる。

 

 ゼロ「さあ、ブラックホールが吹き荒れるぜっ‼」

 

 (BGM:Final Wars!)

 

 ゼロが前方に指を差したのを合図に、ウルトラ6勇士はヤプール達に立ち向かい始める。

 

 ゼロ&ソルVSTジャンボキング、ギンガ&ビクトリーVSムルロア、パワード&コスモスVS巨大ヤプールと、それぞれの戦いが始まった!

 

 ギンガはムルロアと組み付き、ムルロアの右振りをしゃがんでかわした後、腹部に膝蹴りを決め、続けて胸部に右拳を打ち込み、その後駆け寄って来るビクトリーがしゃがんだギンガの背に右手をついて跳び、ムルロアの胸部に左足蹴りを決める。

 

 その後二人は並び立ち、同時に右前蹴りをムルロアの腹部に打ち込んで吹っ飛ばした。

 

 ムルロアは立ち上がり、二人目掛けてホワイダーレーザーを発射するが、ギンガはビクトリーの前に立ち、右手を前方に出して『ギンガハイパーバリアー』を展開してそれを防ぎ、その隙にビクトリーがギンガを跳び越える様に跳躍し、右横蹴りの要領で『ビクトリウムスラッシュ』を放つ!V字型の光弾はムルロアの胸部に命中。

 

 ヒカル「ギンガスラッシュ!」

 

 “ズドーン”

 

 更にギンガは『ギンガスラッシュ』をムルロアの胸部にヒットさせ追い打ちをかけた。

 

真美達麟慶大学の学生達も、ヤプールコマンドを全て倒したのか、全員外に出てゼロ達の戦いを見守り始めていた。

 

 コスモス(ルナモード)は、ヤプールの繰り出してくる右手の鎌を振っての殴り込みを受け流す様にかわしていく。

 

 そして、右横に振るったのをしゃがんでかわした後に、コスモスの後方に立っていたパワードが右回しのハイキックを顔面に打ち込み、更にコスモスが右の掌の『パームパンチ』を腹部に打ち込んで撥ね飛ばす。

 

ヤプールは怯まず右腕を振るって攻撃するが、パワードはそれを右回し蹴りで弾き、左右袈裟懸けで手刀を決めた後胸部に右拳を叩き込み、その後コスモスが横向きでの右前蹴り『ニンブルスマッシュ』を腹部に打って跳ね飛ばす。

 

パワードがヤプールと組み合っている間に一旦離れたコスモスは、気合いを入れて体を銀色に光り輝かせる。そして、その光が徐々に消えていき、コスモスは『スペースコロナモード』へとモードチェンジを完了した!

 

そして、コスモスは飛び始める。ヤプールは上空のコスモスを撃ち落そうと右手のカマからストレートショットを連射するが、スペースコロナモードは宇宙での活動スタイルでスピードに優れているため、それを活かして迫り来る光線を高速で飛んで避けつつ、手の先で攻撃を弾く『スペースコロナ・レセプト』で弾いていく。

 

そして光線を全て弾いた後、超スピードで急降下しながら『テンダーキック』を放つ!

 

蹴りが胸部に命中したヤプールは吹っ飛んで地面に落下した。

 

ゼロとソルは、Tジャンボキングの光線により周囲が爆発する中駆け寄る。そしてそれぞれ左右同時に組み付き、ソルが腹部に左膝蹴りを打ち込んだ後ゼロが跳躍して首筋に左の手刀を打ち込む。

 

パワードとコスモスがヤプールを相手しているため、ヤプールがコントロールだけに集中出来なくなった事でジャンボキングにダメージを与えられるようになっていた。

 

だが、Tジャンボキングはそれでもパワーが衰えてなく、それぞれ右腕、左腕でゼロとソルを跳ね飛ばす。

 

だが二人は怯む事なく、ゼロは前方の体の頭部にヘッドロックをかけ、ソルは後方の体に組みつく。二人でそれぞれ前方、後方に分かれて攻撃しようとしているのだ。

 

だがTジャンボキングのパワーは凄まじく、ゼロとソルは振り飛ばされそうになりながらも踏ん張る。

 

真美「勝てる……櫂君たちは絶対に…!」

 

「なあ新田、なぜお前はそんなに確信できるんだ?」

 

問いかける男子学生に、真美はソルに視線を向けて落ち着いた口調で意味深に答える。

 

真美「ある人が言ってたわ………男と女は、特に強い絆で結ばれてると。」

 

ソルはTジャンボキングの後方の体に光の手刀『ライトニングハンド』によるチョップを連打する。

 

袈裟懸け、横一直線にと斬撃を決めるたびにその部位に爆発が起こる。

 

それによりTジャンボキングが少し怯んだところでゼロはTジャンボキングの頭を掴んで下顎に右膝蹴りを決めた後、右前蹴りを胸部に打ち込んでその反動を活かして後ろに飛んで空中に制止する。

 

ゼロは空中で制止したまま右腕を胸に当てて額のビームランプから『エメリウムスラッシュ』を連射する!

 

細い緑の光線はTジャンボキング向けて飛んでいき、ブロッケンの尻尾を焼き切り、ベロクロンの突起部を破壊した!

 

それによりTジャンボキングが怯んだ隙にソルは腹部に右前蹴りを決め、その反動で後ろに飛びながら右手を突き出し『ゴッドスラッシュ』を連射する。

 

海羽「私たちは絶対に諦めない!私たちを必要としてくれる人がいる限り!」

 

 ゼロとソルは巧みな連携で徐々にTジャンボキングにダメージを与えていっていた。

 

パワードはヤプールが右腕を振るって来たのを素早く受け止め左腕で締め付けている隙に、コスモスが横から跳び膝蹴りを繰り出しカマを叩き折る!

 

ヤプールが怯んだ隙に二人は同時に左前蹴りを胸部に打ち込んで吹っ飛ばす!

 

 ヤプール「ありえん………!怨念の力でパワーアップして蘇ったこの俺が、なぜこうも圧される⁉」

 

 ヤプールは動揺を隠せない状態だった。

 

 カイ「答えは簡単だ!俺達は地球を愛し、」

 

 ムサシ「優しさから始まる…」

 

 カイ・ムサシ「無敵のヒーローだからだ‼」

 

 ムサシ「恨みとか、怨念とか、そんなもので蘇った奴なんかに、僕達が負けるわけがない!」

 

 そう言うとコスモスは目にも止まらぬスピードでヤプールに駆け寄り、前傾姿勢で両手の拳を叩き込む『フレイムパンチ』を胸に叩き込み吹っ飛ばした!

 

 

 

ギンガが横向きの左前蹴りでムルロアを吹っ飛ばした後、ヒカルはウルトラフュージョンブレスを構える。

 

 ヒカル「ショウ、俺達も本領発揮と行くか!」

 

 ショウ「ああ、ヒカル。」

 

 ヒカル・ショウ「見せてやるぜ!俺達の絆‼」

 

 二人が叫んだ後、ヒカルはフュージョンブレスのレリーフを回転させて変身モードにする。

 

 ヒカル・ショウ「ウルトラタッチ!」

 

 二人は掛け声と共に向かい合うようにジャンプする。そしてヒカルが左腕を突き出し、ショウがビクトリーランサーでフュージョンブレスにタッチをする。

 

 ヒカル「ギンガー!」

 

 ショウ「ビクトリー!」

 

 二人は掛け声を上げた後眩い光に包まれる。そして光の中から右腕を突き出して巨大化しながら『ウルトラマンギンガビクトリー』が現れた!

 

 ヒカル・ショウ「ギンガビクトリー!」

 

 ギンガとビクトリーの合体(フュージョン)が完了して登場したギンガビクトリーは構えを取る。そしてムルロア向かって駆け寄り始める。

 

 ギンガビクトリーは駆け寄りながら左方向へ一回転してムルロアの腹部に右拳を叩き込む。ムルロアは怯まずに右腕を振り下ろすがギンガビクトリーはそれをしゃがみながら後ろへ回り込んでかわし、その後ムルロアを掴んで巴投げで投げ飛ばす。

 

 次にギンガビクトリーは起き上ったムルロアの腹部に右膝蹴りを決めた後、右腕でヘッドロックを駆けて頭部に左拳を二発打ち込み、続けて右足で顔面を蹴り上げる。

 

 ギンガビクトリーはムルロアに掴みかかって投げ飛ばす。その後起き上ったムルロアの胸部に跳躍しての右足蹴りを叩き込んで再び転倒させた。

 

《ウルトランス!キングジョーランチャー!》

 

ショウはビクトリーランサーに『宇宙ロボットキングジョーカスタム』のスパークドールズをリードし、ギンガビクトリーの腕をキングジョーカスタムの銃『ペダニウムランチャー』へと変形させる。

 

ムルロアは立ち上がりホワイダーレーザーを放つがギンガビクトリーはそれを跳んで避け、そのまま上空からペダニウムランチャーから一発の弾丸を発射する!弾丸はムルロアの口内に命中して爆発。ムルロアはレーザーを封じられた。

 

ギンガビクトリーは着地した後腕を元に戻す。

 

ショウ「まだこんなもんじゃないぞ。絆の力をなめるな!」

 

ヒカル「お前はこの街を闇に閉ざした……だが、俺たちは心に太陽がある限り、何度も光を取り戻すんだ‼︎」

 

ヒカルはフュージョンブレスを構えた後、レリーフを回転させて変身モードに変えた後、ディスクを回転させてスイッチを止める。

 

ディスクには、ヒカルとショウの戦友である『ウルトラマンタロウ』の教え子でもあり、無限大の可能性でウルトラ兄弟や地球人との友情で戦い抜いた戦士『ウルトラマンメビウス』の顔が現れる。

 

ヒカル・ショウ「ウルトラマンメビウスの力よ!」

 

二人の掛け声とともにギンガビクトリーは構えを取る。すると、隣にウルトラマンメビウスの姿が浮かび上がる。

 

ギンガビクトリーはメビウスのビジョンと重なりながら、右手を左手にかざして両腕を横一直線に広げた後上に挙げることでエネルギーを溜め、両腕を十字に組む。

 

ヒカル・ショウ「メビュームシュート‼︎」

 

ギンガビクトリーは、十字に組んだ腕から必殺光線『メビュームシュート』を発射する!これはメビウスが持つアイテム『メビウスブレス』のエネルギーを開放して放つメビウスの必殺光線だ。

 

しかしギンガビクトリーのものは本家とは違い、十字に組んでいる左手より下の肘までからも光線が出ているのが特徴である。

 

渾身の必殺光線はムルロアの胸部から腹部にかけて直撃。ムルロアは木っ端微塵に吹き飛び跡形も無く爆散した。

 

ヤプール「‼︎ムルロア!……おのれ〜」

 

ヤプールが動揺している隙に、パワードとコスモスは必殺技の体勢に入り始める。

 

カイ「どこを見ている!お前の相手はここにいるぞ!」

 

パワードは腕を十字に組んで『メガスペシウム光線』を発射し、コスモスは両腕を回転させて宇宙エネルギーを溜めた後、両手を合わせて突き出して『オーバーループ光線』を発射する!

 

二人の合体光線はヤプールを貫くように直撃!

 

 「ぐおあぁぁぁぁ!………ウルトラ戦士め覚えてろ………ヤプール死すとも超獣死なず…怨念となって必ず復讐せんー‼」

 

 “ドガーン”

 

 ヤプールは復讐宣告の叫びと共に光のような物を散らしながら爆散した。

 

 ムサシ「お前がいくら蘇っても、僕らはそれを倒すまでだ。」

 

黒煙を噴射したムルロア、そしてそれをコントロールしていたヤプールが敗れた事により、霞ヶ崎を覆っていた黒煙が晴れ始める。黒煙が消え始めた部位からは光が差し、麟慶大学を包み込むように照らす。

 

真美たち学生達は、突然差し込んでくる光に顔を覆いながらも空が晴れてくる事を喜び合う。男子は拳を握って手を挙げ、女子は拍手しながら跳びはねる者もいた。

 

真美も、空を見上げながら静かに呟く。

 

真美「光が……戻って来る……。」

 

(BGM:ULTRA FLY 一番)

 

残るはTジャンボキングだけだ!ゼロとソルは、Tジャンボキングが残された超獣の部位を活かして発射したハイブリッドテリブルバスターを駆けながら受け身を取ってかわし、それによって起こった大爆発を背にジャンプする。

 

 海羽「強いモノだけを集めれば勝てるとは限らない…!」

 

 櫂「たとえ弱い者たちでも、諦めずに一つになってこそ、真の強さが出せるんだ‼ ゼロスラッガー‼」

 

 海羽「ライトニングハンド‼」

 

 ゼロとソルは、弱りつつあるTジャンボキングにそれぞれゼロスラッガー両手持ちとライトニングハンドで滅多切りを繰り出す!

 

 左右袈裟懸け、横一直線などと息の合った連携で斬撃を決めた後、ゼロは右側から、ソルは左側から跳び込んで渾身の一閃を決める!

 

 海羽「櫂君、今よ!」

 

 櫂「っしゃあ‼」

 

 ゼロ「決めるぜ‼」

 

 ゼロは右手でUBを叩きながら、見えなくなるほど晴れた青空へ高く飛び立つ。そしてエレキギターのようなサウンドと一番星のような赤い輝きと共に『ストロングコロナゼロ』へとタイプチェンジを完了し急降下を始める。

 

 ゼロ「ガァァァルネイト バスター‼」

 

 ゼロは急降下しながら右腕を突き出し『ガルネイトバスター』を発射する!

 

 強力な炎の光線は地上のTジャンボキングに直撃し爆発!Tジャンボキングは大ダメージを受けた。正に効果は抜群だ!

 

 ゼロは着地して両拳をぶつけて気合を入れた後、Tジャンボキングに駆け寄る。

 

 ゼロはTジャンボキングに組み付いた後、横振りの右拳を顔面の左側面に打ち込み、その後Tジャンボキングの右フックを左手で受け止め、跳躍して右拳を顔面に叩き込む。

 

 両者の戦いは激しく、周りで爆発が連続で起こり、土煙が舞い上がるほどである。

 

 続けてゼロはTジャンボキングの頭部を右手で抑え込み、そのまま重量感ある左拳を胸部に二発叩き込み、腹部に右横蹴りを打ち込んだ後、炎を纏った右拳を胸部に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 真美は、Tジャンボキングを圧倒するゼロの戦いを見守りながら小声で呟いた。

 

 真美「櫂君……海羽ちゃん……みんな……………ありがとう。」

 

 

 その時、彼女は何かが右頬を伝うのに気づいてそれを右手の指でそっと拭き取る………。

 

 

 

 真美「……ぁ………………涙が………………。」

 

 

 

 Tジャンボキングは完全にグロッキーとなった。今こそトドメの時である!

 

 ウルトラ6勇士は合流し、ゼロをセンターに横に並び立つ。

 

 ゼロは皆より前に数歩進み、ゼロスラッガーを合体させて『ゼロツインソード』を完成させ、五人のウルトラ戦士はそれにエネルギーを注ぐ。

 

 六人の光エネルギーを注いだゼロツインソードは七色の眩い光を放つ。

 

 ゼロは高く跳躍し、Tジャンボキング目掛けて虹の尾を引いて落下しながら七色に輝くツインソードを振り下ろす!

 

 ゼロ・櫂「プラズマスパークエスペシャリー‼」

 

 ゼロは、ゼロツインソードに六人の光エネルギーを合わせた必殺技『プラズマスパークエスペシャリー』を繰り出す!

 

 まずは落下しながらTジャンボキングを一刀両断し、その後右方向へと回転しながらの横一直線の斬撃を決める!

 

 Tジャンボキングは十字に斬られた部位から七色の光を放ち、やがて大爆発した!

 

 ゼロは大きな爆風を背に、ゼロスラッガーを戻し雄々しく立つ。

 

 ゼロの勝利に学生たちはこれまで以上な喜びの歓声を上げる。そんな中、真美は笑顔で無口でじっとウルトラ戦士達を見つめていた。

 

 激闘を終えたウルトラ6勇士は横に並び雄々しく立つ。

 

 今ここに、強大な敵から街を守った勇者たちがいた。そして、勇者たちは静かに光に包まれていき、やがて小さくなっていく様に消えていった………。

 

 学生達「ありがとう‼ウルトラマーン‼」

 

 学生たちのお礼の言葉は、遠くへと木霊していった………。

 

 

 

 事態終息後、学生たちは敵襲来によって中断となったライブの続きを翌日に延期する事を決め、この後は櫂と海羽がウルトラ戦士として勝利した事の記念の飲み会を開くことにした。

 

 学生たちはその飲み会の準備をしていて、一部では櫂と海羽を胴上げする学生たちもいた。

 

 

 学生たちが準備をしていく中、櫂と海羽、そして真美は屋上で空を見上げていた。

 

 真美「櫂君、海羽ちゃん、お疲れ様。」

 

 海羽「イエ~ス(ピース)」

 

 櫂「……ありがとな。俺達に力を分けてくれて。」

 

 真美「櫂君………。」

 

 ゼロ「ヤプール達は恐らくほんの一部に過ぎない。この先も恐らく、強大な敵は襲って来るだろう。だがお前と、お前の仲間たち。そして、愛する者を想う気持ちがあれば、どんな困難も越えて行けそうだな。」

 

 櫂「ああ。学生たちの信頼もより深まった事だし、この調子で突っ切るぜ!」

 

 (BGM:キラメク未来~夢の銀河へ~ 一番)

 

 ゼロ「おう!それでこそ男だ!」

 

 海羽「女も負けてませんよ~」

 

 櫂「おっと、そうだな。学園の合言葉は、」

 

 櫂・真美・海羽「Boys And Girls Be Ambitious‼………あ、」

 

 三人はたまたま同時に言った事が可笑しくなったのか、指差して笑い合う。

 

 そして、真美はそっと櫂の右腕に左腕を回し、櫂はそれにはっと気づく。

 

 真美「櫂君……私も今後、出来る限りのサポートはするわ。だから、私に出来ることがあったら何でも言って。あと、無理はしないでね。」

 

 櫂「………おう!」

 

 櫂と真美は笑顔で見つめ合った。

 

 だが、その最中櫂はひっそりと不敵な笑みを浮かべ、心の中で何かを呟いていた。

 

 (………これで俺と真美の距離は更に縮まったか………)

 

 ゼロ「櫂?おーい!」

 

 櫂「!ん?何だいゼロ。」

 

 ゼロに呼ばれた櫂は、良人モードに戻る。

 

 ゼロ「大丈夫か?少し休んだ方がいいぞ。」

 

 櫂「サンキュー。………だが、いくら功労者とはいえ、学生達だけに任せるわけにはいかねーよ。真美、海羽、手伝いに行こうぜ。」

 

 真美「うん、そうだね。」

 

 海羽「そうこなくっちゃー!」

 

 三人は笑い合いながら屋上を後にした。そんな三人の様子を下からカイ、ムサシ、ヒカル、ショウも笑顔で見つめていた。

 

 ゼロ(フッ………この三人なら、今後も大丈夫そうだな。)

 

 ゼロは心でそう呟いた。

 

 

 

[エピローグ]

 

 一方、地球目前の宇宙空間で静止している宇宙船『テライズグレート』では。

 

 桜井敏樹「ヤプールのやつ…惜しかったのにな~………まあいい。ある程度の刺激は味わえた。今後もマイナスエネルギーを集めていこう………俺を散々苦しめた奴らへの報いの為にもな。ハハハハハハ………。」

 

 桜井敏樹の笑い声が部屋中に響いた。彼は一体何を企んでいるのか?そもそも彼はなぜ闇落ちしてしまったのか?………その辺については今後分かっていくであろう。

 

 (ED:赤く熱い鼓動)




 読んでいただきありがとうございます!いかがでしたか?

 今年最後の投稿話と言う事で今まで以上に気合を入れました。

 豪快パイレーツや特急レインボーにも見せ場を出そうと、長ったらしい生身戦闘シーンも入れてしまいました(笑)

因みに『プラズマスパークエスペシャリー』は私が考えた技で、『プラズマスパークフラッシュ』の応用版です。

 さて、次回からは後半戦に突入し、物語は大きく動き出します!怒涛の展開や驚きの真実、更にはどんでん返し(?)等もあると思いますので楽しみにしていてください。

 感想・指摘・アドバイス・リクエスト等をお待ちしています。

 それでは皆さん、よいお年を!


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番外編
番外編「新田真美物語(ストーリー)私のクリスマス」


 約四か月もかかっちゃってすいません!


 今回はクリスマスに投稿ということで、クリスマス特別編として製作した番外編です!

 主役は本作のヒロインの真美ちゃんです。


 また、あの“50周年の戦士”も登場するという事で、劇中の台詞に歴代ウルトラシリーズのサブタイトルをいくつか隠してみました(笑)


 まあとりあえず細かいことは気にせず楽しんでもらえたらなと思います。


 それでは、どうぞ!


 ※ウルトラマンオーブ最終回のネタバレも少し含まれています。


 これは、今から8か月前、即ち今現在繰り広げられている激闘が始まる前に起こったクリスマスでの出来事を描いた物語である。

 

 

 (OP:英雄の詩)

 

 

 

 時はこの世界で西暦2014年。

 

 この年の12月23日。クリスマスが近く、例年のように町は賑わい、子供たちがどのプレゼントをサンタさんに頼もうかとウキウキしている時期から、この物語は始まる………。

 

 

 

 ごきげんよう、皆さん。そして、メリークリスマス。

 

 

 私は新田真美(にった まみ)。

 

 

 福岡県生まれ&育ちで現在は女子大学。

 

 

 私はただ普通に過ごしてるだけなんだけど、大学のみんなからは「文武両道」「美人」「優しい」「天使」さらには「良い匂い」とまで言われて高い信頼を受けてるの。

 

 美人や良い匂いはとりあえず置いといて(生まれつきかな?笑)………私で良いのなら、信頼してくれるのはとても嬉しいわ。

 

 

 優しいについてなんだけど…私はただ人として、悲しんでる人を放っておけないだけなの。

 

 自分だけ幸せになろうと思わず、みんな全員にも幸せになってほしいと思ってるからね。

 

 そういう理由もあって将来は看護婦を目指していて、今は時々地域の医療ボランティアにも参加しつつ、東京の『霞ヶ崎』の私立大学『麟慶大学』の医学部に在学していて、それ故に一人暮らしをしているの。

 

 

 今日(12月24日)は学期終了日の翌日で、つまり今日から冬休み。

 

 そしてクリスマスイブということで、この日私は地元福岡に帰省して、地元のクリスマスボランティアに参加してセール店のチラシとか、子供には軽いプレゼントをクリスマスで賑わう街中で配ることになってるの。

 

 

 ある人と一緒にね。

 

 

 その人は、竜野櫂(たつの かい)君。

 

 彼は私と同じ麟慶大学の学生で、工学部在学なの。

 

 彼と私は実は幼馴染、つまり彼も福岡生まれで、幼稚園かな?確かそれぐらいからずっと一緒なの。時々その事を思うと、何だか不思議な気持ちになるんだけどね。一体何なんだろう………?

 

 あ、そうそう。実は櫂君、工学部に所属してるけど、学力は医学部の私以上どころか学園一とも言われる程高くて、それに運動神経も学園最強と言われる程とても高いの。

 

 それ故に勉強では私に引けを取らない程信頼されていて、運動部でも各部長・部員から信頼されていて時々助っ人で参加したり、部長代理をしたりしているの。

 

 それに性格も男女関係なく誰にでも人当たりがいいの。

 

 

 (もっとも、真美はこの頃、櫂があの恐ろしい性格を隠し持っているとは思うはずもなかった。)

 

 

 あ、ここだけの話。実は櫂君、昔はとても軟弱でいじめられっ子だったの。

 

 でも誰よりも一生懸命努力して、今ではこのように万能な才能を手に入れたんだから、私は彼を尊敬もしているんだ。

 

 

 (まさかそんな櫂が後にウルトラの力を手に入れるとはもちろん思うはずもなかった。)

 

 

 ボランティア開始時間(午前10:00)10分前、開始場所の商店街前で櫂君と合流した。

 

 商店街は既にこの時間から賑わっており、至る所にツリーが置いてあったり、ある店はクリスマスセール、ある店はクリスマス限定商品やパーティーの食品を売ったりなど正に全体がクリスマスムードだったわ。

 

 

 因みにボランティアに参加する人はほとんどがコスプレしていたけど、もちろん私たちもコスプレしているよ。

 

 

 櫂「俺………どうかな?この格好。」

 

 真美「(満面の笑顔で)とっても似合ってるよ。」

 

 

 櫂君はサンタのコスプレをバッチリ決めて来ていたわ。

 

 普段は精悍でシャープな顔つきのクールな雰囲気の櫂君だけど、サンタコスをするとなんだか普段と違う感じが出ていて、私はこんな櫂君も魅力的だと思うわ。

 

 それに、櫂君には赤が似合うね………。

 

 

 因みに私のコスプレは、トナカイ。

 

 

 ………え?てっきりサンタだと思った?

 

 実は私、トナカイ結構好きなの。

 

 子供にプレゼントを届けるのはサンタだけど、トナカイがいないとその子供たちの元に行けないわけだから、そのために一生懸命頑張ってソリを引っ張るところが魅力的に感じて…

 

 それに、よく見たら可愛い。………私の感性、もしかしてちょっと変わってるかな?(苦笑

 

 

 トナカイの角のカチューシャを頭に付け、茶色いふさふさの丸襟や丸いボタンの付いた、スカート付きのベージュ色の衣装でトナカイコスをバッチリ決めてみた私。

 

 黒いニーソックスは履いてるけど、太ももがちょっと露出しちゃってるからそこがちょっと寒いかな?(苦笑

 

 真美「どう?………変かな?」

 

 櫂「おお、なかなか可愛いんじゃねーか?」

 

 真美「………ありがとう。」

 

 良かった~(ピース)

 

 

 開始の10時が来た。流石たくさんの人が出歩いているだけにチラシや子供用のプレゼントはあっという間に人々の手に渡っていく。

 

 途中おもちゃ屋の前で「買ってよ~」と親にせがむ子供がいたけど、その子にもプレゼントを渡したの。そしたらその子、落ち着いて笑顔になって「ありがとう」と言ってくれたわ。

 

 

 因みに何のプレゼントを渡したかというと………ウルトラマンゼロの人形。

 

 (もっとも真美は、後に櫂がゼロとして戦う事になるとは思うはずもなかった。)

 

 

 僅か一時間でチラシ等は完売し、ボランティアはあっという間に終了した。

 

 

 せっかくコスプレ決めて来たのに僅か一時間で帰るのもアレだから、ちょっと櫂君と街中を出歩くことにしたの。

 

 ………え?サンタとトナカイのコスプレで街を歩くのが恥ずかしくないのかって?

 

 大丈夫。この時期は割と多くの人、特に私たちぐらいの若いカップルとかはサンタとかのコスプレして出かけてるの。

 

 だから、何ともないわ(笑)

 

 

 でも、実は櫂君、別のクリスマスボランティアに参加する予定が入ってて、そのために午後から別の地方に移動しないといけないの。

 

 だから、櫂君と出歩く時間はざっと一時間しかないけどね。

 

 でも櫂君が別の地方でも子供たちを笑顔にしてくれてるなら、私はそれを応援するわ。

 

 

 櫂「流石にクリスマスは人が多いし、どの店も飾ってるな。」

 

 真美「そうだね。子供たちは嬉しそうだし、カップルは楽しそう。」

 

 

 櫂「………ごめんな、真美。今日忙しくて。」

 

 真美「ううん。気にしないで。櫂君がそうすることで子供たちが笑顔になるのなら、私は応援するわ。

 

 だってクリスマスは年に一度で、年一番ハッピーな日なんだもん。」

 

 櫂「そうか………ありがとな。俺、頑張るぜ。」

 

 私が満面の笑みで応援すると、櫂君はガッツポーズで返してくれた。

 

 

 櫂「じゃあさ真美、明日、福岡タワーの展望台に行こうぜ。」

 

 真美「………え?」

 

 櫂「(頬を少し赤らめて)い、、いやあ、天気予報によると今日晩から明日は大雪だからさ。きっと明日になると、とても幻想的で美しい景色が見れると思ってな。」

 

 真美「………とても楽しそうだね。分かったわ。」

 

 

 真美は笑顔で翌日のデート(?)を了解した。

 

 それにより櫂は笑顔で安心するような表情になるが、ひっそりと不敵な笑みを浮かべているのを真美は知らなかった………。

 

 櫂(明日は真美と二人っきりで………これで俺と真美の距離は少し縮むかな?)

 

 

 私、新田真美は櫂君の誘いを了解した。

 

 クリスマスの日に展望台から見る大雪の街………とてもロマンチックで素敵だと思うわ。

 

 

 櫂「そうだ真美、あと40分ぐらいしかないけど、今から近くのショッピングモールに行かないか?

 

 そこにはクリスマス限定の松坂浩二さんの写真展がやっているんだよ。」

 

 真美「松坂浩二さんって………最近あの南極でオーロラを撮ったという写真家の?」

 

 櫂「そうそう、きっとスゲえ写真がいっぱいあると思うぜ。」

 

 真美「…いいね、行こう。」

 

 櫂君と手を繋いで向かおうとしたその時、

 

 

 “ガッ”

 

 真美「ああ、ごめんなさい。」

 

 私は人とぶつかってしまった。

 

 その人はレザーコートに身を包んだ精悍な顔つきの青年だったような…。

 

 因みに片手には何故かラムネを持っていたわ。

 

 ???「おお、気を付けるんだぞ、トナカイの姉ちゃん。」

 

 その人は怒ることなく、気さくに返し、何処かへと歩いて行った。

 

 ………でも、その人を見た瞬間、私は反射的に何かを感じた。

 

 たくさんの人がクリスマスの街中を歩いている中、彼だけ何となく違う雰囲気を感じたような………。

 

 まあ、気のせいかな?(笑)

 

 

 

 先ほど真美とぶつかった青年は、たくさんの人が歩いている中、ふと立ち止まって辺りを見渡し始めた。

 

 ???「…さすらいの旅の途中で謎の反応を感じてここに辿り着いたのだが………この世界で、何が起ころうとしているんだ………?」

 

 一体彼は何のことを言っているのだろうか………?

 

 ???「だが、僅かだが何やら気配を感じるのは確かだ。もう少し様子を見てみるか。」

 

 そう言うと青年は何処かへと去って行った。

 

 ………しかもただ歩くではなく、瞬間移動のようにその場から消えるように!

 

 彼、もしかしてただの人間ではないのだろうか………?

 

 

 その一方で、そんな彼から遠くのビルの屋上では一つの影が。

 

 よく見てみるとその姿は人間ではなく、氷の塊のような鋭角的な体とランタン・シールドのような両腕が特徴の異形の姿をしている。

 

 宇宙人である事には間違いないであろう。

 

 

 ???「フフフ………この世界を狙ったのは当たりだった。今のタイミングなら、相当なマイナスエネルギーが集まるはずだ。」

 

 

 謎の怪人が自信満々げに笑っていたその時、

 

 

 ???「謎の反応の正体はお前か。」

 

 

 突然声のした方へ振り向く。

 

 

 そこには、先ほど辺りを見回していた男がいつの間にか立っていたのだ!

 

 

 ???「なっ!?………いつのまに!?」

 

 

 ???「生憎俺はお前みたいな妙を嗅ぎつけるのには慣れてるもんでね。」

 

 

 

 ???「へッ、まさか貴様もここに来ていたとは…なっ!」

 

 怪人は男に気付くや問答無用で襲い掛かり、男も持っていたラムネを真上に放り投げるとそれに応戦する。

 

 

 男と怪人は互角の組手を開始する。

 

 男は回転しながら右、左脚で回し蹴りを繰り出し、怪人はそれを身体を反らして避けると右腕を振るって殴り掛かり、男はそれを両腕で受け止めて腹部目掛けて右横蹴りを繰り出し、怪人はそれを左腕で弾いて防ぐ。

 

 

 両者はそのまま組み合う。

 

 

 ???男「この世界で何を企んでいる!?」

 

 ???怪人「ふっ、貴様に話すまでもないが、まずは名前だけ言ってやろう。

 

 俺様の名はグローザ星系人・グレイザ―だ!」

 

 

 そう、奴こそかつて暗黒四天王の一人であって、ウルトラマンメビウスなどを大苦戦させた『グローザム』や、ウルトラマンベリアルに仕えてウルトラマンゼロ抹殺を企む宇宙人軍団・ダークネスファイブの一人である『氷結のグロッケン』の同種族である『グローザ星系人』だったのだ!

 

 

 名乗ったグレイザーは右腕から氷の剣・グレイザ―ブレードを出すとそれを振って斬りかかり、男は咄嗟にバク宙で後ろに跳んでそれをかわし着地する。

 

 

 グレイザ―「あのお方のために、俺様は大量のマイナスエネルギーを集めなければならないのだ。

 

 それにより今このタイミングでこの世界を襲えば、クリスマスを地獄にされた人々は絶望し、巨大なマイナスエネルギーを発するに違いない。ヒーヒヒヒヒー!」

 

 

 ???「そういう事か………だが、貴様がどんな事をしようと、俺は全力で止める!」

 

 グレイザ―の企みが分かった男はそう言うと、先ほど投げたラムネが落ちて戻ってきたためにそれをキャッチする。

 

 

 グレイザ―「ヒーヒヒヒヒ、かっこいいなあ。だが、貴様にそれが出来るかな?」

 

 ???「なに?」

 

 グレイザ―「出来るモノなら止めてみるがいい!」

 

 

 そう言うとグレイザ―は、瞬間移動のようにその場から去って行った………。

 

 

 一人残された男は、俯きながら帽子をかぶる。

 

 ???「必ず止める………この世界の人たちも。」

 

 そう言うと男も、瞬間移動のようにその場から去って行った………。

 

 

 果たして、グレイザ―と対峙していた男は何者なのだろうか?

 

 

 とりあえず確かな事は、何かが起こりそうなことである………………。

 

 

 

 私、新田真美は櫂君と一緒にショッピングモールの写真展に着いた。

 

 櫂君の言う通り、綺麗なオーロラの写真がいっぱい飾られていて、その他にもいろんな場所の海、山、街並みなどの絶景写真が飾られていて、自然と見入ってしまうようなものばかりだったわ。

 

 真美「まあ、何て素敵な。」

 

 櫂「だな。まだ若くして(29歳)こんなにもいろんな世界の絶景を撮ってるんだから、スゲエよこの人は。」

 

 真美「確か松坂さんは、今も日本の山脈で写真を撮ってるんだよね?」

 

 櫂「ああ。嫁も子供もいるのに、クリスマスぐらい家族と一緒にいればいいのにな!(笑)」

 

 真美「でも………素晴らしい事だよ。

 

 子供に限らず、いろんな人の笑顔のためにいろんな場所を飛び回ってるなんて………ほら、写真を見てる人、みんな笑顔だy………」

 

 

 すると、私の声を遮るように、

 

 

 ???「ふんっ!こんな写真大っ嫌いだ!」

 

 

 突然思いもしない叫び声が聞こえ、その方向へ振り向くと、そこには小学生ぐらいの男の子がどこか不機嫌そうな顔で立っていた。

 

 すると、その子は何処かへと走り去っていった………。

 

 

 櫂「………何なんだ?あの子は………。」

 

 こんなにも素晴らしい写真のどこが嫌いなんだろう?

 

 櫂君が軽く受け流す中、私はあの子に何かあったのだろうと思ってはいた。

 

 でも一体何が不満だったんだろう………?私たちはもちろん、周りの人も、知るはずもなかった。

 

 

 

 やがて正午が過ぎて、櫂君が出発する時間が来てしまった。

 

 櫂「んじゃ、行って来るな。」

 

 真美「うん………気を付けてね。」

 

 櫂君は笑顔で私にサムズアップをした後、サンタコスのまま電車に乗り込み、やがて櫂君を乗せた電車は走り去って行った。

 

 クリスマス前に、櫂君と“あるもの”を観れないのは残念だけど、櫂君と言うサンタが、別の地域の子供たちに笑顔をプレゼントしていくのなら、大丈夫だから。

 

 

 櫂君を見送った後、時間は12時半ぐらいだったかな?私は駅を出た後、さっきのショッピングモールへと歩いていく。

 

 でもその間、どこか寂しい感じもした。さっきまで櫂君と一緒にいたからなのかな?

 

 

 やがてショッピングモールに着いた。でも私はその時、ある者に気付く。

 

 それは、とある少年がどこか悲しそうな表情でベンチに座り、チラシの様な物を見つめてるものだった。

 

 すると、突然風が吹いて少年の持ってたチラシが私の方に飛んで来る。

 

 私はそれを拾って見てみると、

 

 

 それはクリスマスイルミネーション大会のチラシだった。

 

 

 私が、本当は櫂君と一緒に見たかった、今夜開催するクリスマスイルミネーション大会………

 

 

 それは、今年初めて開催される、タワーの近くで、イルミネーションの蔦で出来た様々なアートを飾っていく…っていうイベントなの。

 

 

 私がそう思っていると、少年は手を振って乱暴気味に私からチラシを取り返す。

 

 その際私は少年の顔を目の当たりにする。

 

 

 ………それを見て私は驚愕した。その少年は、さっき写真展で見かけた男の子と同一だったの。

 

 

 悲しそうな表情をしている少年は走り去ろうとする。

 

 

 真美「あっ…ちょっと待って…」

 

 “ガッ”

 

 “ドサッ”

 

 少年は躓いて転んでしまった。その場に座ったまま擦りむいた膝を痛そうに見つめる少年の元に私は歩み寄る。

 

 真美「大丈夫?」

 

 

 私は鞄の救急箱でその子の手当てをした。

 

 真美「これで大丈夫。 痛かったよね? パパとママは?それとも一人で来たの?」

 

 でも、その子は暗い表情で俯いたまま何も言わない。

 

 どうしてなのか分からないけど、とりあえず私はその子を元気付けようとしてみた。

 

 真美「大丈夫よ。ほら、笑って。折角のクリスマスなんだし、プレゼントでも考えて…ケーキとかチキンも食べられるし……」

 

 ???「プレゼントなんて……いらないよ………。」

 

 真美「………へ?」

 

 その子は思わぬことを言ったの。

 

 折角のクリスマスなのに、プレゼントがいらないだなんて………。

 

 真美「それはどうして?」

 

 私は気になって聞いてみたけど、その子は何も言わないどころか再び暗い表情で俯いたまま、顔を横に向けてしまった。

 

 多分相当辛いことがあったのだろうけど、同時に私と言う見ず知らずの人に話しかけられた事への抵抗感もあるのだと思う。

 

 

 私は折れずにその子の目線までしゃがんで優しく話しかける。

 

 真美「どうしたの?辛そうに………何かあったの?」

 

 

 真美の親身な語り掛けを受けた少年は、少しながらちらっと真美の方へ顔を向け始める。

 

 そっと向けた視線の先には、じっと微笑みかけて見つめる真美の顔があった。

 

 その柔らかい笑顔はまるで女神が微笑みかけている様で、更に純白な垂れ目から来る優しい眼差しからは、自然と彼女が悪い人ではないという事が分かり始める。

 

 

 真美「何でも言ってみて。力になるよ。」

 

 

 更に光が弾け飛ぶかのようにニコッと笑いながら、耳障りの良い甘い艶声で話しかける。

 

 初対面ながらも、邪気を感じない真美の優しさに触れた少年は、遂に話す決心をしたのか、数秒黙った後、重い口を開いて話し始める。

 

 

 私、新田真美は話し始めたその子の話を聞き始める。

 

 

 その子の名は『松坂裕太』。

 

 聞いて驚いたことがあって、なんとその子はあの松坂浩二さんの息子さんなの。

 

 浩二さんは確か今は写真撮影のために日本の山脈に行ってるはずだから………そう、裕太君はパパとクリスマスを過ごせないという事なの。

 

 ママと妹の佳那はいるみたいなんだけど、パパとクリスマスとか過ごせるのは滅多に無いらしくて、今年ようやく一緒に過ごせると思ってたから急な仕事が入った事がショックだったみたい。

 

 

 〈回想〉

 

 2日前のある日、裕太はどこか不機嫌そうな顔でテレビゲームをしていた。

 

 側にはくしゃくしゃになったクリスマスイルミネーション大会のチラシが置かれていた。

 

 すると、スーツ姿で荷物をまとめた彼の父が出てくる。

 

 

 浩二「ごめんな、裕太……ホントに急な仕事が入ったんだ…

 

 お正月は絶対一緒に過ごせるから。だから…」

 

 

 裕太「父さんの嘘つき。 いつもいつもそうやって約束破って………。」

 

 父・浩二の詫びを遮るように裕太が冷たい言葉をぶつける。

 

 浩二「裕太………。」

 

 すると、裕太はゲームのリモコンを軽く叩きつけ、テレビの画面を切って立ち上がる。

 

 裕太「僕より仕事の方が大事なんでしょ?

 

 はぁ…もういい。嫌いだ!」

 

 浩二「あっ、裕太!」

 

 そう言うと裕太は涙を流しながら駆け足で階段を上がって行った………。

 

 浩二「………。」

 

 父はショックや、息子を悲しませてしまった罪悪感から何もかける言葉が何も無かった………。

 

 その後、父は何も言わず家を出て行った。

 

 〈回想終了〉

 

 

 事情を聞いた私は裕太君が可哀想で仕方がなかったわ………。

 

 クリスマスってやっぱり、家族全員で楽しく過ごしたいもんね………。

 

 

 真美「はぁ……そっかー………………それは辛いよね。」

 

 私は優しく語り掛けながらその子の頭を撫でてみた。

 

 真美「クリスマスはイブから家族と過ごしたいもんね…。 ごめんね。辛い事話させちゃって…。」

 

 

 すると、裕太君はこう言い出したの。

 

 裕太「父さんは僕のとこなんてどうでもいいんだ………。仕事の方が大事だから、いつもいつもこうやって…。」

 

 

 真美「本当に…そう思う?」

 

 裕太「…え?」

 

 真美「私はむしろその逆だと思うけどな~…。

 

 パパは、裕太君のことが大好きなんだよ…だから、仕事も一生懸命頑張ってるんだと私は思うけどな…。」

 

 裕太「でも………本当にそうなら家族を優先するはずだよ…。」

 

 

 私は折れずに語り続ける。

 

 真美「私もね………さっきショックな事があったの………。」

 

 その言葉に裕太君は少しはっとなる。

 

 真美「私もね、大好きな人と今年もクリスマス過ごせると思ったんだけど………彼は彼でやる事があって、一緒に過ごせなくなったの………。

 

 でもね、彼は別の場所で子どもたちを笑顔にしに行ってるんだよ。だから私は、それを応援することにしたの。」

 

 

 

 一方、別地域では、

 

 櫂「ヘクシューン!!

 

 ふぅ~………サンタ姿は意外と寒いぜ。」

 

 

 

 真美「彼は今頃、たくさんの子供たちを笑顔にしているわ。あなたのパパも同じじゃないのかな?」

 

 裕太「僕の父さんも………同じ?」

 

 真美「うん。 ねえ、さっきの写真展の写真、覚えてる? あれはね、あなたのパパがこのクリスマスのために撮って来たものなんだよ。

 

 あれを見ていた家族は、実際楽しそうに笑ってたわ。

 

 裕太君だけじゃない。クリスマスに多くの子供たちを楽しませるために頑張ってたんだよ。

 

 今仕事に行ってるのも、家族のためなんだから………。」

 

 裕太「分からない………分からないよ。僕。」

 

 父が頑張るのは家族のため………その話はまだ小学生の裕太君には難しかったみたい………。

 

 真美「………そうだよね………ごめんね………なにも慰めになれなくて………。」

 

 

 私、ダメだわ………悲しんでる子の気持ちは分かるはずなのに、まだこんなにも不器用だったなんて………………。

 

 私は裕太君への同情と自分の不甲斐なさに涙が出そうになったけどぐっとこらえた。

 

 

 その時、裕太君の鞄から何かが落ちるのに気づく。

 

 真美「あら?何かな?これ………。」

 

 気付いた裕太君もそれを拾い上げる。

 

 それは、小銭がいくつか入るかぐらいの小さな巾着のような財布だった。

 

 

 すると、裕太君は何かを思い出したのか、拾い上げた財布をじっと見つめ始める。

 

 真美「どうしたの?」

 

 私は気になってどうしたのか聞いてみる。

 

 

 財布の中には百円玉が六枚、所謂六百円が入っていた。

 

 実はそのお金は、パパが裕太君と妹の佳那ちゃんのために出発前に置いといてくれたイルミネーション大会の入場料だったの。

 

 

 それを見たことにより、裕太君はパパの愛情や、自分たちの事を思っていることを改めて感じたんだと思う。

 

 私も自然と笑顔になれたわ。

 

 

 真美「………嫌いだったら、こんな風に小遣いくれたりしないよ………。」

 

 私はパパと過ごせない寂しさに、愛情を感じたことによる嬉しさが重なったことにより涙目になり始める裕太君の背中を摩りながら語り掛ける。

 

 彼もゆっくりと頷いてくれたわ。

 

 

 でも、やっぱり寂しさは簡単には拭い去れないみたい………。

 

 そうだよね………まだ小学生だもの………。

 

 真美「(涙で目が少し潤みながら)そうだよね………寂しいよね……一緒に過ごしたいよね………分かるよ………………。」

 

 私も、大切な人とクリスマスイブを過ごせない、所謂彼と同じ境遇だからより気持ちが分かるわ。

 

 

 ちょっとでも寂しさを紛らわそうと、私は指で涙を拭いた後こんな質問をしてみたの。

 

 真美「ねえ、プレゼント、何が欲しい?」

 

 裕太君は少し黙った後答えてくれた。

 

 裕太「………ラジコン………。」

 

 真美「そ………じゃあ、折角だし、サンタさんに頼もうよ。」

 

 裕太「え?」

 

 真美「裕太君、今だって寂しくてもパパの事情を知ってて頑張てるじゃない。きっと、そんなあなたの所に、サンタさんは来てくれるよ。

 

 それに、折角のクリスマスなんだから。」

 

 私の話を聞いた裕太君は、ゆっくりと頷いてくれた。少し気分が落ち着いて、プレゼントが欲しい気持ちを取り戻したみたい。

 

 真美「じゃあ、お願いしよっか。」

 

 私がそう言うと、裕太君は再びゆっくり頷いて、そして両手を合わせて握ってお祈りを始め、私も一緒にそれをやり始める。

 

 真美「(目をつぶって)………お願いします………。」

 

 数秒お祈りをした後、私たちは両手を解いた。

 

 真美「よし、これできっとサンタさんも来てくれるよ。」

 

 裕太「………うん。」

 

 裕太君の顔には少し笑顔が戻ってる様だった。

 

 とりあえず良かった…。

 

 

 その時、私はある物に気付いたの。

 

 それは、裕太君の首にぶら下げている小さなカメラだった。

 

 真美「そのカメラは…どうしたの?」

 

 裕太「これは…父さんが去年のクリスマスにプレゼントでくれた物………これを下げとけば、少しでも寂しさを紛らわせるかと思ったんだけど………。」

 

 

 その時、私はそのカメラをきっかけにある事を思いついたの。

 

 真美「ねえ、パパが帰って来るのって確か明日だよね?」

 

 裕太「うん………明日の朝帰って来るんだけど…。それがどうかしたの?」

 

 真美「じゃあ、そのカメラで今夜イルミネーション大会で最高の写真を撮って、明日パパに見せてあげよう?」

 

 裕太「………え?」

 

 真美「子供の撮ったいい写真、きっとパパは喜んでくれると思うわ。

 

 一緒に過ごすのが出来ないなら、明日笑顔にさせるという楽しみを持とうよ。」

 

 

 私の提案を聞いた裕太君しばらく黙った後、私の方を向いて…

 

 裕太「うん。やってみるよ。」

 

 賛成してくれたみたい。

 

 真美「(笑顔で)ありがとね。まだ小学生なのに………偉いよ。」

 

 裕太「よーし、絶対にすっごい写真を撮って、父さんを驚かしてやるぞー!」

 

 気合が入る無邪気な小学生。それを見ると私は自然と笑顔になっていた。

 

 

 こうして、私は裕太君と後に大会にて合流する事を約束して、一旦別れたの。

 

 どうか今夜、最高の夜になれますように………。

 

 

 

 一方、そんな真美たちのやり取りを、一人の人間が遠くから見つめていた。

 

 

 先ほどグレイザ―と対峙していた“ラムネのお兄さん”である。

 

 

 ???「こんなに賑やかな時期でも………悲しんでる子がいたとはな………。

 

 そしてそんな子を元気づけようと尽力する姉ちゃん…いい女じゃねーか。

 

 彼女たちのためにも、どうにかしてこの世界のクリスマスを守らないとな。」

 

 

 男が決意を新たにしたその時、

 

 

 “バシ バシンッ”

 

 「うおあーっ!!」 「きゃーっ!!」

 

 

 突然近くから強力なフラッシュ音とともに数人の悲鳴が聞こえ、男はその方へと急行する。

 

 そこには、「目が見えない!」と叫びながらのたうち回る人間が数人いた。

 

 

 ???「どうしたのですか!?」

 

 

 男は目が見えない人の一人に話しかけてみる。

 

 よく見てみると、その人は目をつぶっているだけでなく、そこから血を垂らしているという何とも恐ろしい状態であった。

 

 その人はパ二クっていてうまく話せてなかったが、どうやら突然異形の生物が現れたかと思うと、その瞬間強烈なフラッシュが放たれてそれから目が見えなくなったという………。

 

 

 目が見えない人たちは、すぐさま病院送りとなった。

 

 楽しいはずのクリスマスにこんなにも恐ろしい事が起こるなんて………、

 

 あまりにも不吉な出来事。すると男は何かを感じ始めていた………。

 

 

 ???「グレイザ―が動き始めたか?………早いとこ止めないとな。」

 

 

 そう言うと男は再び何処かへ去って行った………。

 

 

 

 そして夕方近くになると、グレイザ―がとあるビルの屋上で、

 

 グレイザ―「ふっふっふっふっふ………順調順調。マイナスエネルギーは集まりつつある………さて、そろそろ最後の仕上げと行くか………。」

 

 不気味に笑うグレイザ―。いよいよ悪魔の計画の本番を始めようというのであろうか………………?

 

 

 

 

 そして、ついに夜が来た。

 

 

 私、新田真美はタワー間近のイルミネーション大会に来た。

 

 流石クリスマス。夜でも昼と同じくらい賑わってて、このイルミネーション大会もたくさんの人が来ていてとても楽しくなりそうだわ。

 

 

 遂に一斉に展示物のライトアップが始まる。

 

 クリスマスのサンタさんやトナカイ、スノーマンはもちろん、星や家や町など、いろんなものがライトの付いた蔦で作られていたわ。

 

 雪が降る夜の街でそれらが一斉に光り、クリスマスソングが流れるその光景はまるで幻想的で、このひと時だけ、私も含めて見る人を別世界に誘っているみたいな素敵な感覚がするわ。

 

 

 展示物の中には、実はウルトラマンとかもあるの。

 

 私が特に目に付いたのは、ウルトラマンゼロとウルトラマンネクサス。

 

 細かい部分までもがしっかりと作られていて、まるで今にも動き出しそうな感じがしたの。

 

 

 最も、真美は後に自身がウルトラマンネクサスに変身し、また友人の櫂がウルトラマンゼロとして戦う事になるとは思ってもいなかった………。

 

 彼女がゼロとネクサスの造形に惹かれたのは、何かしらの運命だったのかもしれない………。

 

 

 私、新田真美はクリスマスの夜の幻想的な世界をなおも楽しく歩いていた。

 

 その時、私は目の前の親子に気づいたの。

 

 その親子は、さっきの裕太君がママと妹の佳奈ちゃんと一緒に楽しくしている姿だったわ。

 

 

 裕太「お母さん、ちょっとそこらの写真撮ってくる。」

 

 母「ええ、気をつけるのよ。」

 

 

 すると、私に気づいた裕太君が、ママに一言言った後私の方に歩いて来たわ。

 

 昼間と違って笑顔になってて良かったわ。

 

 

 裕太「真美さんもやっぱり来てたんですね。」

 

 真美「(満面の笑みで)ええ。楽しい?」

 

 裕太「はい。これも真美さんのおかげです。」

 

 真美「良かった。写真の方はどう?」

 

 裕太「なかなか良い感じにならなくて………。」

 

 真美「そう…なかなかしっくり来ないのね。」

 

 裕太「でも、必ず父さんをあっと言わせるのを撮って見せます。」

 

 真美「頑張ってね。」

 

 良かった。昼間より生き生きとしてて。きっとこれが本来の彼だよ。

 

 

 真美「でも………なんだかやけに寒いわ………特に雪が激しく降ってるわけでもないのに………。」

 

 私がそう一人ぼやいたその時、

 

 

 「うおあーっ!!」 「キャーッ!!」

 

 

 真美「!………何かしら? ちょっと待ってて。」

 

 突然、近くから悲鳴が聞こえて気になった私は気になって行ってみる。

 

 真美「どうかしたのですか?」

 

 「目が………目が見えないの!」

 

 話しかけてみると、その人は目が見えないらしく、目をつぶっていて、なんとそこから血が垂れていたの。

 

 驚きつつも私は事情を聞いてみると、普通にイルミネーションを見て楽しんでいたら、突然そこから強烈な光が発せられてそれを見てから目が見えなくなったみたい…。

 

 

 どういうことだろう?………イルミネーションの明かりだけで失明するなんてあり得ないし、それも血が流れるほど…。

 

 誰かが影で暗躍しているのかな………?

 

 

 私が不思議に思っているその時、更にあちこちから悲鳴が聞こえ、そこの人たちはみんな失明して目から血を垂らしていく………。

 

 それにより、さっきまで楽しんでた人たちが一斉にざわつき始める………。

 

 

 折角のクリスマスなのに、こんなにも不吉で妙な事が起こるなんて、一体どういう事?

 

 

 

 その時、

 

 

 グレイザ―「ふっふっふっふっふ………どうだ?光を奪われた思いは!」

 

 

 どこからか声が聞こえ、それを聞いた周りの人たちは当たりを見渡し始める。

 

 

 すると、とある建物の屋上に何か妙な姿の影が現れたの………!

 

 その姿は、まるで氷でできたような姿をしていて…両腕には、まるで楯のような物を付けているわ………。

 

 裕太「真美さん………あれは………?」

 

 真美「………人じゃ…ないみたい………。

 

 まさか、あれが姿なき挑戦者の正体?」

 

 

 真美達の前に現れたその者こそ、先ほど侵略のタイミングを狙っていたグレイザ―だった!

 

 

 グレイザー「どうもどうも!この世界の愚かな人間ども!

 

 俺様はグローザ星系人・グレイザーだ!!」

 

 

 名乗りを上げるグレイザー。人々の中には怯える者まで出始めていた。

 

 

 真美「………宇宙人なの?」

 

 真美は突然の宇宙人の出現に驚きと動揺を隠せない。

 

 

 グレイザー「さあ、これから最終手段といこう!

 

 楽しい夜を潰された絶望により、マイナスエネルギーをたっぷりと生み出すがいい!」

 

 

 そう言うとグレイザーは、青い光を纏って巨大化をする!

 

 

 突如現れた宇宙人の巨大化により怯える人がさらに増える。

 

 

 裕太「真美さん………。」

 

 真美「大丈夫………早く安全な所へ…」

 

 

 グレイザー「先ほどの目つぶしフラッシュは、こいつらの仕業さ。

 

 出でよ!!」

 

 

 グレイザーがそう叫ぶと、彼の左右からそれぞれ黄色い光、青白い光と共に二体の巨大生物が現れる!

 

 

 一体は、硬質な皮膚に覆われ、黄色に光る大きく見開いた目が特徴の怪獣『高熱怪獣キーラ』、

 

 もう一体は、環形生物をも思わせる雪の結晶のようなフォルムにガスマスクのような赤い頭部、パイプ状の口が特徴の超獣『雪超獣スノーギラン』である!

 

 

 二体は現れると咆哮を上げながらグレイザーの左右に立ち、グレイザーの方を向く。

 

 どうやら二体はグレイザーの子分に当たるのだろう。

 

 

 グレイザー「お前たちよくやった。事前に失明した人間は、今頃マイナスエネルギーを発しているだろう!」

 

 

 キーラは目から発する強烈な閃光・ショック光線、スノーギランは頭部から強烈な閃光・フラッシュ光線を発射できる。

 

 どちらも相手の目を潰す効果があるため、昼間から起こっている失明事件はこいつらの仕業だと思われる。

 

 

 グレイザー「怪獣墓場から連れて来た子分怪獣はこれだけじゃない!

 

 出でよ!我が怪獣どもよ!」

 

 

 グレイザーの叫びにより、更に二つの稲妻のような光が降り注ぎ、そこからもう二体怪獣が現れる!

 

 

 一体は全身氷柱のような棘が生えているのが特徴の超獣『氷超獣アイスロン』、

 

 もう一体は青白いごつごつした皮膚に頭部の巨大な二本の角が特徴の怪獣『冷凍怪獣ラゴラス』である!

 

 

 グレイザーは計四体もの怪獣を怪獣墓場から子分として引き連れて来たのだ!

 

 しかも冷凍星人らしく、そのほとんどが冷凍怪獣である。

 

 先ほど真美が、いつもよりやけに寒く感じたのは、恐らくアイスロンの熱を吸収する性質がある皮膚によるものであろう。

 

 キーラは恐らく、スペシウム光線も効かなかった分厚い皮膚に覆われているため、寒さも寄せ付けないのであろう。

 

 

 裕太「真美さん、僕怖い。」

 

 真美「………そんな………。」

 

 突然の悪夢の始まりのような光景に真美は愕然としてしまう。

 

 

 グレイザー「さあ!最後の仕上げだ!怪獣ども!クリスマスに浮かれるこの街をめちゃめちゃにしてやれ!」

 

 

 グレイザーの指示を受けた怪獣たち。

 

 すると、まずはキーラとスノーギランが合図とばかりに同時に閃光を放つ!

 

 そして怪獣たちは一斉に暴れ始めた!

 

 

 キーラとスノーギランの閃光光線により、また更なる人々が失明してしまう!

 

 それは、裕太の母と妹・佳那もそうだった!

 

 裕太「お母さん!佳那!」

 

 

 キーラは怪力でビルなどを崩し、スノーギランは口や両手から冷凍ガスを噴射、アイスロンも口からの冷凍ガス、ラゴラスは口からの-240度の冷凍光線を吐きながら傍若無人に暴れ回る!

 

 怪獣たちの咆哮やビルやガラスの破壊音、逃げ惑う人々の悲鳴などが響き渡り、さっきまでクリスマスソングや賑わう人々の声で溢れていた街が一気に凄惨なモノへと変わっていく………!

 

 そして冷凍ガスや光線により周囲のビルなどが凍り付いていき、逃げ惑う人々の一部も凍り付いていく………。

 

 

 そしてグレイザーも、口からの冷凍ガス・ヘルフローズンブレスで周囲の物を凍り付かせたり、両腕の剣でビルなどを切り崩して暴れていく。

 

 

 グレイザー「ひゃーはははは!これで集まる………あのお方のための極上のマイナスエネルギーがー!!」

 

 

 グレイザーが高笑う中、人々の中には恐怖や失明などにパニ来る人々、恐怖で泣きじゃくる子供などが出始め、正に楽しいクリスマスが地獄に変わろうとしている………!

 

 

 グレイザーの狙いはこれだった!

 

 あるお方(不明)へのマイナスエネルギーを集めるために、地球人の特に楽しい時期の一つ・クリスマスに攻めにかかることで、楽しいクリスマスを地獄に変えることで人々をその分大きく絶望させ、より多くマイナスエネルギーを生み出させるのが目的なのだ!

 

 

 真美「どうしてこんな………………。」

 

 

 真美はショックで悲しみに暮れそうになりながらも、心で祈った。

 

 

 

 真美(助けてください………罪もない………幸せだった人々が悲しむのは見たくない………神様でも何でもいいから、どうか人々を………楽しいクリスマスを助けて………………!)

 

 

 

 僅かにも奇跡を信じ、とにかく助けを求め、祈り続けた………。

 

 

 

 そんな真美の懇望をも嘲笑うかのように、グレイザーや怪獣軍団の攻撃がイルミネーション大会までに牙をむこうとした。

 

 

 その時!

 

 

 

 真美の諦めず、前を向いて一心に祈る想いが、運命の限界を超えた………!

 

 

 そして今、世界中が待っている者が現れる!

 

 

 

 「ん?」

 

 「何だ?」

 

 裕太「真美さん………?」

 

 真美「何?………この音は………。」

 

 突如、どこからともなくハーモニカのようなメロディが聞こえ始め、その音色に真美達は一旦静まり、耳を傾け始める。

 

 暴れていたグレイザーたちもその音色に気付くと一旦暴れるのが止まる。

 

 

 その音色は決まってどこか物悲しい印象を受ける独特なメロディだが、真美達人々には、まるで現れた救世主のメロディのように聞こえていた。

 

 

 グレイザー「ぐっ!?………なっ、何だこの酷いメロディは!?」

 

 ハーモニカの音色を聞くグレイザーは何やら頭痛を感じるのか頭を抱え、怪獣たちも動揺するような反応を見せる。

 

 どうやらこの音色は、清らかな心の者にはいい音色に聞こえ、逆に邪悪な者は聞くだけで頭痛が起きるほどの拒絶反応をするみたいである。

 

 

 グレイザー「………誰だっ!!」

 

 

 グレイザーが叫ぶ。そのハーモニカを吹いていた人物はどこかビルの陰に隠れており、なんと先ほどグレイザーと対峙していた男であった!

 

 

 男はそのハーモニカを懐にしまうと、叫び返す。

 

 

 ???「お前みたいなゲス野郎に名乗るつもりはないが、敢えて名乗ってやろう!」

 

 

 グレイザー「何だとっ!?」

 

 真美「この声は一体………?」

 

 

 そう言うと男はとあるアイテムを取り出す。

 

 そしてそのアイテムこそ、彼が光の戦士である証!

 

 

 男が左手で持つそのアイテムは、青いリング部分に取っ手が付いた外見をしている。

 

 

 そして男が右手に持つカードに描かれている聖剣を持った戦士こそ、彼の変身する光の戦士!

 

 

 彼こそ、『ウルトラマンオーブ』に変身する青年『クレナイ・ガイ』なのだ!

 

 

 ウルトラマンオーブ。それは、ガイが左手に持つアイテム・オーブリングに歴代ウルトラ戦士の力を宿したカード・ウルトラフュージョンカードを二枚リードすることで、そのウルトラマンの力を借りることでそれぞれ特製の違う様々な姿にフュージョンアップするという特殊な能力を持つウルトラマンだ。

 

 だが、フュージョンアップできるようになったのには事情があり、かつて世界を破滅させる存在であって、ウルトラ戦士に封印されていたが復活した魔王獣を倒していた頃、ルサールカで光ノ魔王獣マガゼットンと戦った際に、その規模の大きさによって「ルサールカ大爆発」を引き起こしてしまい、またその際にそこで知り合った大切な少女・ナターシャを傷つけてしまった罪悪感もあって、本来の姿を失ってしまっていた。

 

 だが、それから108年後に地球人の少女・夢野ナオミと出会った事により、自分と彼女の宿縁、そして自分を信じる勇気を知った事により本来の自分の力を取り戻し、その後も決意を新たにして地球を守り抜いたのである。

 

 

 先ほどガイが奏でていたハーモニカは、入手した経緯は現時点では不明だがガイにとって大切な物である楽器・オーブニカである。

 

 

 なお、彼にはかつて戦友だったが、彼がオーブの力の手に入れたのをきっかけに敵対関係になってしまった宿敵・ジャグラス・ジャグラーがおり、彼とも幾度か激突した事がある。

 

 

 ガイ=オーブは、最大の魔王獣・マガタノオロチを、ジャグラーやSSP、ビートル隊との協力により撃破した後にさすらいの旅に出ており、その最中にグレイザーという謎の反応を感知して追っていく内にこの世界に辿り着いたのだと思われる。

 

 

 そして今、そんなさすらいの風来坊が、この世界の人類のために光の戦士となる時である!

 

 

 ガイが右手に持ってるカードに描かれている戦士は、ウルトラマンオーブ本来の姿であり最強の姿『オーブオリジン』である!

 

 そしてオーブオリジンが持っている剣は『オーブカリバー』であり、オーブ自身の紋章と、火・水・土・風の四つの属性が描かれた円形の盤面が特徴である。

 

 これはガイがとある場所の光の輪からオーブの力を手に入れた際に手に入れており、正にこの剣こそが、ガイが光の戦士・ウルトラマンオーブである証なのである!

 

 

 ガイはオーブリングを突き出した後、オーブオリジンのカードをリングにリードする。

 

 

 《覚醒せよ!オーブオリジン!!》

 

 

 ガイ「オーブカリバー!!」

 

 

 オーブオリジンのカードをオーブリングにリードする事により、音声と共にガイが叫んで手を伸ばすと、そのリングの光の中からオーブカリバーが飛び出し、ガイはそれを手にする。

 

 そして、カリバーのリング・カリバーホイールを回した後上に挙げてトリガーを引く。

 

 すると、オーブニカの音色のようなメロディと共にすべての紋章が点灯し、そこから溢れた光に包まれる。

 

 

 そしてその光の中からウルトラマンオーブ・オーブオリジンが右拳を突き出して飛び出す!

 

 

 オーブ「テアーッ!!」

 

 

 

 真美達は、突如現れた眩い光に戸惑いつつ目を覆っていた。

 

 だがその光は、先ほどのキーラたちのような邪悪な感じはせず、希望を感じる聖なるものだと感じていた。

 

 

 そしてその光がやがて人型になり、徐々に姿を現す………!

 

 

 グレイザー「くっ………何だっ!?」

 

 

 同じく目を覆うグレイザーが問う先に光の中から現れたのは、聖剣・オーブカリバーを手に雄々しく立つウルトラマンオーブ・オーブオリジンだった!

 

 

 オーブ「俺の名はオーブ、ウルトラマンオーブ!」

 

 

 遂に人々の前に姿を現したオーブオリジン!その姿は円形のカラータイマーに、赤と銀と黒で構成されたスマートでシンプルな姿をしている。

 

 人々は動揺しつつも、その輝かしい姿や剣から彼が正義の味方であると確信し、徐々に歓声を上げる声が上がっていく!

 

 

 裕太「わあ………ウルトラマンだ!

 

 頑張れー!ウルトラマーン!」

 

 裕太も失明した母と妹を庇いつつもウルトラマンオーブの登場に喜びを見せ、応援を始める。

 

 

 

 私、新田真美は、目の前の出来事が信じられなかった………。

 

 でも、私の瞳に映る現れた巨人から溢れる鮮やかな光は、どこか先ほど沈んでいた心を癒すものを感じ、同時に希望を感じるモノがあった。

 

 

 そして私は確信した………………想いが通じ、奇跡が起こったのだと。

 

 

 真美「みんなの………私の想いが届いて………奇跡が起こったのね。」

 

 

 気が付くと私は、自然と笑顔になっていて、知らぬ間に嬉し涙が一滴、頬を伝っていた………。

 

 

 頑張って!ウルトラマン!

 

 

 

 

 グレイザー「チッ、ウルトラマンか!

 

 だがしかし、我が軍団に一人で勝てるかな?

 

 かかるぞー!」

 

 グレイザーは怪獣軍団と共にオーブ目掛けて接近を始める!

 

 

 オーブ「銀河の光が、我を呼ぶ!」

 

 

 オーブは名乗りと共にオーブカリバーを頭上で回して光の弧を描いた後、両手持ちで構える。

 

 そして、オーブニカのメロディにも似た戦闘BGMが始まると共にグレイザー軍目掛けて颯爽と駆け寄る!

 

 

 牽制でスノーギランとアイスロンが同時に冷凍ガスを噴射して攻撃を仕掛けるが、オーブはそれを跳躍してかわす。

 

 そして空中からカリバーを思い切り横に振って、青く光る衝撃波を放つ!

 

 衝撃波を受けた四体の怪獣はその威力により同時に転倒してしまった。

 

 

 グレイザー「何ッ!?」

 

 

 グレイザーが動揺している隙に、オーブは上からカリバーを振り下ろして斬りかかり、辛うじてそれに気づいたグレイザーは両腕の剣でそれを防ぐが、その隙にオーブは無防備になったグレイザーの腹部に右足蹴りを打ち込んで後退させる。

 

 グレイザーは怯まず右腕の剣を振るって斬りかかるが、オーブはそれをしゃがんで避けると同時にすれ違い様に右横腹に斬撃をお見舞いする。

 

 そして互いに振り向いて向き合うと、オーブカリバーとグレイザーの左腕の剣が火花を散らしながらぶつかり合い、その隙にグレイザーは右腕の剣を振るうがオーブはそれを即座に左拳で弾き飛ばすと胸部に左肘を打ち込み、更に右足蹴りを腹部に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 その後オーブは、下から斜め上に振り上げる渾身の斬撃を浴びせる!

 

 

 “ズガーン”

 

 

 グレイザー「ぐおあああぁぁぁッ!!」

 

 

 渾身の斬撃を受けたグレイザーは爆発と共に大きく吹っ飛んで地面に落下して転がる。

 

 

 大ダメージを受けたグレイザー。だがすぐさま立ち上がって両腕の剣を振るってオーブに襲い掛かり始め、オーブもカリバーを手に駆け寄る。

 

 

 オーブはグレイザーの右腕の剣を身体を反らしてかわすと同時にカリバーの一振りでそれを叩き折る!

 

 

 グレイザー「ぐおああっ!?………ッまだまだー!」

 

 

 グレイザーは負けじと今度は左腕の剣を振り下ろすが、オーブはそれをカリバーで受け止め、そのまま右の手刀を下から振り上げて叩き折り、怯んだ隙にカリバーを両手持ちで一回転しての一撃で左腕の盾を叩き砕く!

 

 

 逆上したグレイザーは、がむしゃらに腕を振るって殴り掛かるが、オーブはそれをカリバーや腕脚でことごとく弾き、そして腹部に右脚での横蹴りを打ち込んで怯ませた後、小さく跳躍してカリバーを振り下ろし、光を纏った渾身の斬撃で右腕の盾を叩き割った!

 

 

 そしてグレイザーが動揺している隙に横一直線の斬撃を叩き込み、それを喰らったグレイザーは爆発と共に吹っ飛び地面を転がる。

 

 

 自身の光の力と聖なる剣で敵を圧倒するオーブ。

 

 様々な試練の末に本来の力を取り戻し、様々な強敵を倒して来たオーブにとって、人々を不幸にする事を考える卑劣なグローザ星系人は敵ではなかった!

 

 

 グレイザー「貴様っ………何故そんな力が!?」

 

 

 ガイ「俺だけの力じゃない………みんなの想いが、俺に更なる力をくれる………俺の世界の“彼ら”のように!」

 

 

 グレイザー「バカなっ………俺様は、あのウルトラマンメビウスを苦しめた、不死身のグローザムの仲間なんだぞー!」

 

 

 ガイ「愚痴ならあの世で仲間にぬかせ!」

 

 

 ガイ(オーブ)は、かつて自身が活躍した世界のとある人物たちの事を思いながら答えた後、再びオーブカリバーを構える。

 

 

 ガイ「お前の野望もここまでだっ!!」

 

 

 グレイザー「くっ!ほざけええぇぇぇ!!」

 

 

 ガイの言葉にグレイザーは逆上して駆け寄り始める。

 

 そして、オーブ目掛けて渾身のヘルフローズンブレスを噴射する!

 

 

 ガイ=オーブはカリバーを構え直すと、カリバーホイールを回して“火”の紋章を選択し、トリガーを引いた後さらにホイールを回す。

 

 

 カリバーの火の力の必殺技・オーブフレイムカリバーを放つ時だ!

 

 

 そして、カリバーの刃先に纏った炎で円を描き、カリバーを振るう事でそれを飛ばす!

 

 炎の輪は、冷凍ガスをかき消しながら飛んで行き、やがてグレイザーに直撃して閉じ込める。

 

 

 グレイザー「んなっ!?何だこれは!! 体が………体が熱くて溶けるー!!」

 

 

 炎の輪に閉じ込められたことによって体が氷で出来たも同然のグレイザーが苦しんでいる隙に、オーブは炎を纏った刃の一撃を叩き込む!

 

 

 オーブ「オーブフレイムカリバー!!」

 

 

 “ズギャーン”

 

 

 グレイザー「ぐおああああー!!」

 

 

 グレイザーは体中炎が付いた状態で上空に吹っ飛んでいく。

 

 その最中も、炎が付いている体の溶解は進んでいた。

 

 

 今こそトドメの時!ガイはオーブカリバーをオーブリングでリードする。

 

 

 《解き放て、オーブの力!》

 

 

 リングに読み込んだことによりオーブカリバーの力が解放され、ガイはホイールを回転させて全紋章を転倒させた後トリガーを引く。

 

 

 オーブは揚げたカリバーで光の円を描いた後、それを刃先に結集させて突き出し、虹色の必殺光線・オーブスプリームカリバーを放つ!

 

 

 オーブ「オーブスプリームカリバー!!」

 

 

 七色の必殺光線は上空のグレイザーを直撃!

 

 

 グレイザー「ぐおあああああああー!! おっ…俺の野望があああぁぁぁ………!!」

 

 

 “ズドガガガーン”

 

 

 グレイザーは次第に体が削れていき、やがて無念の叫びと共に大爆発して跡形も無く消し飛んだ!

 

 氷と相性の悪い炎の技に、最強技のコンボを喰らった事によって文字通り、二度と再生できない程に跡形も無く消し飛んだのである。

 

 

 見事、オーブがグレイザーを撃破した事により、街の人々は歓声を上げ、更なる応援の声も聞こえ始める。

 

 

 裕太「すげえ!………あのウルトラマン。」

 

 真美「(笑顔で)ええ………そうだね。」

 

 

 真美達も安心の表情でオーブを見つめており、目くらになっている裕太の母と妹も、安心を感じたのかいつの間にか落ち着いていた。

 

 

 早くも子分の怪獣たちを残して先に倒されてしまったグレイザー。怪獣たちは早くも親分が倒された事に動揺を隠せない。

 

 オーブの力に加え、真美達人々の想いの強さにより、グレイザーの悪事は脆くも崩れ去った!

 

 あとは子分の怪獣軍団だけである。

 

 

 

 オーブ「クリスマスだからな。特別に、凄いモノを見せてやるぜ!

 

 

 (8枚のウルトラマンのカードを取り出して)諸先輩方! 力、お借りします!」

 

 

 

 そう言うとガイは再びオーブリングを構え、オーブは紫の光に包まれる………。

 

 

 そう、ここからは、オーブ最大の能力・フュージョンアップを活かした戦いの始まりだ!

 

 

 

 ガイ「ウルトラマンさん!」

 

 《ウルトラマン!》

 

 ウルトラマン「ヘアッ!」

 

 

 ガイ「ティガさん!」

 

 《ウルトラマンティガ!》

 

 ウルトラマンティガ「デヤッ!」

 

 

 ガイは、ウルトラマンとウルトラマンティガ、所謂昭和と平成のファーストウルトラマンのカードをダブルリードし、ウルトラマンとティガのビジョンがガイの両側に並び立つ。

 

 

 ガイ「光の力、お借りします!」

 

 

 ガイはオーブリングを揚げ、同時に二人のウルトラマンもそれにシンクロして左腕を揚げる。

 

 

 《フュージョンアップ!》

 

 

 オーブリングは音声と共に側面のカバーが展開し、シンセサイザー調のメロディと共にガイは光に包まれ、リングはマンとティガと共に青、黄色と光った後に紫に輝く。

 

 

 そしてガイはマンとティガのビジョンと合体するかのように重なり紫に光り、やがてその光が下から消えていき姿を現す。

 

 

 《ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!》

 

 

 全身に纏っていた光が消えて姿を現したオーブは、光の中から右腕を突き出して飛び出す!

 

 

 人々の前に姿を現したオーブ次の姿、それは、フュージョンアップによりウルトラマンとティガのパワーを借りた姿であり、パワーとスピードのバランスに優れ、光線技を得意とする形態・ウルトラマンオーブ・スペシウムゼペリオンである!

 

 外見は赤、紫、黒で構成されたボディに肩のプロテクターなど、正にウルトラマンとティガが合体したような姿であり、額のランプの色は紫に輝いている。

 

 

 (BGM:オーブの祈り(full))

 

 

 オーブ「闇を照らして、悪を撃つ!」

 

 

 オーブ・スペシウムゼペリオンは、リング状の光を発生させながら決め台詞を言って構えを取ると、颯爽と自身に向かって来る怪獣たちの方へと駆け寄る!

 

 

 

 オーブの戦いを見守る真美たち。

 

 裕太「あ、ウルトラマンとティガだ!」

 

 裕太は相当なウルトラマン好きなのか、オーブを見ただけで元のウルトラマンを嬉しそうに当ててしまっている。

 

 真美「本当だ………凄いね、あのウルトラマン。」

 

 それを聞いた真美も、オーブのフュージョンアップの凄さに気付く。

 

 他のウルトラマンの力を借りることへの凄さに興奮しているのか裕太のウルトラマンオーブへの応援もさらに活発になり、真美も変わらず満面の笑みでオーブの戦いを見守り続ける。

 

 

 真美「………頑張って、ウルトラマン。」

 

 

 

 オーブは駆けながら跳躍し、先陣切って突っ込んで来たキーラの頭部を踏み台にしながら飛び越えるとその先のラゴラスの左肩に落下スピードを活かした右の手刀を浴びせ、続けて右腕の水平チョップ胸部に浴びせる。

 

 ラゴラスは反撃で右腕で殴り掛かるがオーブはそれを左腕で弾くと腹部に右脚蹴りを決め、続けて一回転して右回し蹴りを頭部に打ち込んで後退させる。

 

 

 次はアイスロンが左側から殴り掛かるがオーブはそれを右手で掴んで受け止め、そのまま右側から襲って来るスノーギラン、そして左側のアイスロンと続けて右脚蹴りを打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 

 その隙にキーラが背後から突進してくるが、オーブはそれを跳躍して反転してかわしキーラの背後に着地するとキーラの背中に右前蹴りを叩き込んで転倒させる。

 

 

 次にラゴラスが頭突きの突進を繰り出し、オーブはそれを素早く右にそれて両腕で角を掴むと、赤い模様を発光させてティガ(パワータイプ)の力を発揮させて背負い投げで地面に叩き付けた!

 

 

 スペシウムゼペリオンの戦闘スタイルは、正にウルトラマンのパワフルさとティガのスタイリッシュさが合わさっていて見事にバランスが取れている。

 

 フュージョンアップ形態の中ではオールマイティな基本形態なのだ。

 

 

 ラゴラスは立ち上がると、オーブ目掛けて渾身の冷凍光線を放つ!

 

 

 オーブは体勢を立て直すと、両腕を左右に大きく広げて紫色の光エネルギーを溜めてそれを右手に集束させてリング状に変形させる。

 

 

 オーブ「スペリオン光輪!」

 

 

 オーブは叫びと共にウルトラマンの八つ裂き光輪の派生技でもある光の輪・スペリオン光輪を投げる!

 

 光輪はラゴラスの冷凍光線を切断して消し飛ばしながら飛んで行き、やがてラゴラスの口元まで光線を相殺すると同時にすれ違いざまに頭部の右の角を切り落とす!

 

 

 ラゴラスが怯んだ隙にオーブは右腕、左腕の順番に両腕をL字に広げてエネルギーを溜め、それにより前面に光の輪が展開する。

 

 

 オーブ「スペリオン光線!!」

 

 

 オーブは叫びと共に両腕を十字に組んで必殺光線・スペリオン光線を発射!

 

 光線を浴びたラゴラスは大爆発して木端微塵に吹き飛んだ。

 

 

 キーラ、スノーギラン、アイスロンはそれぞれショック光線、ダブル冷凍ガスをオーブ目掛けて放つ。

 

 オーブはそれを跳躍してかわすと上空で反転し、その状態でガイは再びオーブリング構えて、オーブは次は青い光に包まれる。

 

 

 ガイ「ジャックさん!」

 

 《ウルトラマンジャック!》

 

 ウルトラマンジャック「シェアッ!」

 

 

 ガイ「ゼロさん!」

 

 《ウルトラマンゼロ!》

 

 ウルトラマンゼロ「デェェェイッ!」

 

 

 ガイは今度はウルトラマンジャックとウルトラマンゼロ、所謂武器や技などに共通点のあるウルトラマンのカードをダブルリードし、ジャックとゼロのビジョンがガイの両側に並び立つ。

 

 

 ガイ「キレの良いやつ、頼みます!」

 

 

 ガイは両側のウルトラマンと共にジャックの変身動作にもある右腕を揚げた後、ウルトラゼロアイをかざすようにオーブリングを目の位置に構えた後上に揚げる。

 

 

 《フュージョンアップ!》

 

 

 リングは、オーケストラ調の壮大なメロディと共に緑、青と光った後に青に輝く。

 

 

 《ウルトラマンオーブ! ハリケーンスラッシュ!》

 

 

 姿が変わったオーブは光の中から右腕を突き出して飛び出す!

 

 そして、とある高層ビルの上に着地する。

 

 

 次のフュージョンアップ形態は、ジャックとゼロのパワーを借りた姿であり、スピード戦を主体とする形態・ハリケーンスラッシュである!

 

 その姿は赤・青・黒で構成されたよりスマートなボディに右色のクリスタル、頭部にゼロスラッガーのようなスラッガーを持つのが特徴である。

 

 

 オーブ「光を越えて、闇を斬る!」

 

 

 オーブは決め台詞と共に両腕を回して青い風のような光を走らせながらポーズを決めると、ビルから飛び立ち地上のスノーギランの頭部に右横蹴りを叩き込む!

 

 次にキーラと組み合うと、そのままキーラに振り回される形で跳躍しながら両脚を振るい、それによる蹴りで背後にいたアイスロンを吹っ飛ばす。

 

 そして地面に足を付くと、組み付いていたキーラの右腕に左膝蹴りを打ち込んで一旦引き離すと、右回し蹴りを頭部に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 次にアイスロンが腕の鋭い突起を突き立てるが、オーブは側転してかわすと同時に蹴りでその攻撃を弾き、胸部に右脚蹴りを叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 そしてオーブはスノーギランに駆け寄ると同時に跳躍して右、回って左と胸部に二段蹴りを決めて吹っ飛ばした!

 

 

 軽やかな蹴り主体で戦い、蹴りが炸裂する度に青い風のような青いラインが走り火花が飛び散る。

 

 ハリケーンスラッシュはこの様に身軽さを活かしたスピーディーでキレのある格闘戦が得意なのである。

 

 

 オーブは体勢を立て直すと、頭部のスラッガーから光の刃・オーブスラッガーショットを飛ばす。そしてそれを前方で回転させることで光の渦は発生する。

 

 その光の中から、オーブスラッガーショットが合体したハリケーンスラッシュ専用の三又槍状の武器・オーブスラッガーランスを取り出す!

 

 

 オーブ「オーブスラッガーランス!」

 

 

 オーブは構えを取ると、怪獣たち目掛けて颯爽と駆け寄る。

 

 アイスロンは先陣切って突進するが、オーブはそれをランスの柄で受け止め、一回転して腹部に斬撃を決めて、続けて先端を胸部に突き立てて後退させる。ランスでの斬撃が決まる度に火花が飛び散る!

 

 怯まずアイスロンは至近距離から冷凍ガスを噴射するが、オーブはランスを高速回転させてそれを防ぎ、同時に赤と青の光の竜巻を発生させてそれに巻き込まれたアイスロンは上空高く巻き上げられる!

 

 それを追うようにオーブもランスを手に飛び立ち、身動きの取れないアイスロンのいる高さまで飛んで静止すると、ランスのレバーを三回引いて、穂先に光の刃を形成させる。

 

 

 オーブ「トライデントスラーッシュ!!」

 

 

 オーブはランスの穂先の光の刃で、残像を伴いながら目にも止まらぬ速さで相手を滅多切りにする最強の切断技・トライデントスラッシュを放つ!

 

 上空でアイスロンを滅多切りにしたオーブは地上に着地してポーズを決め、滅多切りにされたアイスロンは、上空で時間差で大爆発して消し飛んだ!

 

 

 ラゴラス、アイスロンと撃破され、怪獣軍団は残り二体となってしまったが、キーラとスノーギランは怯まず身構える。

 

 

 オーブは今度は赤黒い光に包まれる。

 

 

 ガイ「ゾフィーさん!」

 

 《ゾフィー!》

 

 ゾフィー「ヘアッ!」

 

 

 ガイ「ベリアルさん!」

 

 《ウルトラマンベリアル!》

 

 ウルトラマンベリアル「ゼェェアッ!」

 

 

 今度はゾフィーとウルトラマンベリアル、所謂光と闇代表のウルトラマンのカードをダブルリードし、ガイの両側にゾフィーとベリアルのビジョンが並び立つ。

 

 

 ガイ「光と闇の力、お借りします!」

 

 

 ガイはゾフィーとベリアルのビジョンと共に右腕を揚げた状態から左腕を大きく回した後リングを揚げる!

 

 余談だがこの動作は、まるでベリアルが宇宙牢獄から解放された際の肩慣らしの動作のようである。

 

 

 《フュージョンアップ!》

 

 

 リングは、オーケストラ調だがより荘厳で禍々しいメロディと共に黄色、濃い紫と光った後に赤黒く輝く。

 

 

 《ウルトラマンオーブ! サンダーブレスター!》

 

 

 姿が大きく変わったオーブは闇も混じったような光の中から右腕を突き出して飛び出す!

 

 そして、爆音と共に土砂を高く巻き上げながら着地する。

 

 

 次のフュージョンアップ形態は、ゾフィーとベリアルのパワーを借りた形態・サンダーブレスターである!

 

 外見は赤と黒で構成された筋肉質のボディに、ベリアルのように赤く釣り上がった目、鋭く尖った爪、肩にあるゾフィーのウルトラブレスターが特徴であり、他の三形態よりも大きく異なった姿をしている。

 

 戦闘力も他の三形態を凌駕するが、当初ガイはその力を制御できずに幾度か暴走し、周囲を顧みない暴れるような戦いぶりの末にナオミを傷つけてしまい心に深い傷を負ってしまったが、後に無事だったナオミの言葉によって自分を信じる勇気を取り戻し、闇を恐れなくなったことで制御可能となった。

 

 そしてその後も、ハイパーゼットンデスサイスを撃破したり、巨大ジャグラーやマガタノオロチと比較的互角に戦ったりなどそれなりに活躍している。

 

 

 因みに余談だが、サンダーブレスターの戦い方は某赤い通り魔を連想させるんだとか………?(笑)

 

 

 そんな見るからにヤバそうな雰囲気漂うサンダーブレスター。見ている人々の中にはビクつく子供も見られたが、オーブ自身であることに変わりはないためすぐに応援の声が飛び交う。

 

 

 オーブ「闇を抱いて、光となる!」

 

 

 オーブがドスの利いた口上と共に構えを取ると、身体の赤い模様が発光する。

 

 そして高速で飛んで接近すると、スノーギランに赤黒い光を纏ったパンチを叩き込み吹っ飛ばした!

 

 百メートル以上は吹っ飛んで地面に落下したスノーギランの姿に驚きつつも、キーラは攻撃を仕掛ける。

 

 キーラは両腕を振るって殴り掛かるが、オーブはそれを易々と両腕で防いでいき、右聖剣突きを腹筋で受け止めるとその右腕を乱暴に叩き落とし、頭部に右拳のパンチを決め、腹部に右、左と交互にパンチを打ち込んだ後、右脚蹴りを腹部に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 

 打撃が炸裂する度に、どこか骨が砕け、何かが潰れるような生々しい音が聞こえる。

 

 それほどサンダーブレスターのパワーは強力であり、やはり制御可能な今でもベリアルから受け継いだラフファイトは健在のようである。

 

 

 キーラは再度接近し、至近距離でショック光線を放って目つぶしにかかる!

 

 ………だがオーブ・サンダーブレスターは目を抑えるどころか、ダメージを受けた様子は全く見せなかった!

 

 自身の得意な目つぶしが効かない事に「そんな馬鹿な~!?」とばかりに動揺するキーラ。

 

 

 ガイ「闇の力も秘めたこの目を………潰すことはできないぜっ!」

 

 

 ガイがそう叫ぶと、オーブは赤黒い光を纏った正拳突きを顔面に叩き込み、怯んだ隙にヤクザキックにも似た右足蹴りを胸部に叩き込んで遠くに吹っ飛ばす!

 

 更に立ち上がったキーラ向かって駆け寄り、拳を握った状態で両腕を大きく広げてダブルラリアットのような打撃を叩き込んで転倒させる。

 

 

 オーブは右手に闇、左手に光のエネルギーをチャージし、それにより前面に白と赤黒い稲妻のような光の輪を発生させた後、両腕を十字に組む。

 

 

 オーブ「ゼットシウム光線ッッ!!」

 

 

 そして十字に組んだ腕から赤・黒・黄の稲妻を纏った光と闇の必殺光線・ゼットシウム光線を発射する!

 

 

 光線が直撃したキーラ。光線の威力も絶大であり、スペシウム光線も効かなかったキーラの体は、光線が命中した部位から抉れた肉片が飛び散って行く………!

 

 そしてキーラはその場で大爆発を起こし、大きな爆風と共に木端微塵に吹き飛んだ!

 

 

 オーブの連続フュージョンアップのコンボにより、残る怪獣は超獣スノーギランだけとなった。

 

 

 スノーギランは負けじと冷凍ガスをオーブに浴びせ始める。

 

 だが、オーブはなんと避けるどころか体で浴びるように受け止め始める!

 

 

 オーブ「最後は、お前の氷を溶かしてやるぜっ!」

 

 

 そしてそのままガイはオーブリングを構え、オーブは今度は金の光に包まれる。

 

 

 ガイ「タロウさん!」

 

 《ウルトラマンタロウ!》

 

 ウルトラマンタロウ「トアーッ!」

 

 

 ガイ「メビウスさん!」

 

 《ウルトラマンメビウス!》

 

 ウルトラマンメビウス「テヤッ!」

 

 

 ガイはウルトラマンタロウとウルトラマンメビウスの師弟コンビのカードをダブルリードし、ガイの両側にタロウとメビウスのビジョンが並び立つ。

 

 

 ガイ「熱いやつ、頼みます!」

 

 

 ガイはタロウとメビウスのビジョンと共に、一度両腕を広げた後、左側に体をひねり勢いよくリングを揚げる!

 

 

 《フュージョンアップ!》

 

 

 リングは、エレキギター調のメロディと共に赤、白と光った後に黄に輝く。

 

 

 《ウルトラマンオーブ! バーンマイト!》

 

 

 姿が変わったオーブはメビウスの輪状の炎のような光の中から銀のリングと共に右腕を突き出して現れる!

 

 なお、この際に他の形態とは違って右手を広げた状態なのが特徴である。

 

 

 最後のフュージョンアップ形態は、ウルトラマンタロウとウルトラマンメビウスのパワーを借りた姿であり、炎の力を駆使した格闘戦を得意とする形態・バーンマイトである!

 

 その外見は赤・金・黒で構成されたボディに額の黄色いランプ、頭部にはメビウスの赤いラインとタロウのウルトラホーンのような角が生えており、胸部にはメビウス・バーニングブレイブのファイヤーシンボルに似た模様があるのが特徴である。

 

 その燃えるような真っ赤な姿は、まさに二人の熱い闘志にガイの情熱が合わさっているようである。

 

 

 スノーギランはなおもオーブに冷凍ガスを浴びせ続けるが、全身に炎を纏って歩いて現れるオーブ・バーンマイトには通用しない。

 

 

 オーブ「紅に、燃えるぜっ!」

 

 

 オーブは口上と共にポーズを決めると同時に、周囲に炎を爆散させて冷凍ガスを吹き飛ばす。

 

 

 その炎のパワーは、少し遠くで観戦している真美たちにも熱が伝わる程であり、いつの間にか凍り付いていた人たちも元に戻っていた。

 

 

 真美「今年のクリスマスは、例年より暖かいわね…。」

 

 戦いを見守る真美は嬉しそうな表情でそっと呟いた。

 

 

 オーブは人々の歓声や応援が飛び交う中スノーギランと交戦する。

 

 まずオーブはスノーギラン向かって駆け寄り、すれ違いざまに右膝蹴りを腹部に叩き込む。

 

 次に振り向いたスノーギランの胸部に正拳突きを打ち込んで怯ませた後、頭部を掴んで腹部に左膝蹴りを2発打ち込んで頭部に右手の空手チョップを叩き込む。

 

 次にオーブは、右拳に炎を纏わせる。

 

 そしてその炎の拳・ストビュームナックルでスノーギランの顔面、腹部に2発とパンチを打ち込んだ後、頭部に渾身のラリアットを決めて転倒させる!

 

 それと同時にスノーギランの頭部の発光部が破壊され、フラッシュ光線が打てなくなった。

 

 

 スノーギランは負けじと口と両手から同時に冷凍ガスを噴射するが、オーブはそれをしゃがんでかわすと同時に足に炎を纏って滑り込むように突っ込み、炎の蹴り・ストビュームフットを足払いのように繰り出し、それを足元に受けたスノーギランはバランスを崩し始める。

 

 その隙にオーブは高く飛び上がると、そのまま空中で数回ひねりや回転を加えた後、その回転力や落下のスピードを活かして飛び蹴りを放つ。

 

 これぞタロウから受け継いだ蹴り技・スワローキックだ!

 

 蹴りはスノーギランの胸部に直撃すると爆音が鳴り響き、スノーギランはたまらず吹っ飛んで地面を転がる。

 

 豪快な格闘技の連続にスノーギランは完全にグロッキーとなった。

 

 

 ガイ「俺に触ると…火傷するぜっ!!」

 

 

 ガイ=オーブはそう吠えると、再び右拳に炎を纏わせ、ストビュームナックルでアッパーカットを叩み空叩くぶっ飛ばす!

 

 そして上空高く吹っ飛ぶスノーギランを追うようにオーブも飛び立つ。

 

 

 ガイ「ストビューーーム、ダイナマイトォォォォォォ!!」

 

 

 ガイ=オーブは激しく技名を叫びながら赤い閃光と共に両腕を胸部の位置に交差させる。するとオーブの全身が金色から七色へと発光した後全身が炎に包まれ、そのままスノーギラン目掛けて突っ込んでいく。

 

 これぞバーンマイト最大の必殺技であり、全身を炎と化して敵に突撃するストビュームダイナマイトである!

 

 炎に包まれたオーブは上空でスノーギランを羽交い締めにした後一気に爆発する!

 

 それによりスノーギランは撃破され、オーブは上空の大きな爆風の中から現れ地上に着地する。

 

 

 連続フュージョンアップのコンボにより見事グレイザー率いる怪獣軍団を撃破したオーブ。

 

 オーブはバーンマイトのままその場に立ち尽くし、人々はオーブの勝利に歓喜の声を上げる。

 

 

 そしてスノーギランが撃破された直後に、まるでクリスマスに平和が戻った事を象徴するかのようにちらちらと雪が降り始め、同時にジングルベルの音楽もしっとりと鳴り始める。

 

 

 真美「ありがとう………ウルトラマンオーブ。

 

 クリスマスを取り戻してくれて。」

 

 真美は両手を広げて雪を受けながら、満面の笑みでオーブを見上げて礼を言う。

 

 

 だが、失明した人々はそのままである………。

 

 

 すると、オーブは振り向いて右手を人々に、左手を病院の方へと向け黄色い光線を浴びせる。

 

 その光線を浴びる人の中で目の見える人はその眩しさに目を覆う。

 

 

 すると光が治まった後、失明していた人々が次々と目を開け始める!

 

 オーブは光線で失明した人々を治したのである。恐らく先ほどの光線はタロウのリライブ光線からの派生技なのであろう。

 

 

 裕太「お母さん大丈夫?」

 

 母「………目が見えるわ。」

 

 佳那「本当だ!」

 

 失明した目が治った裕太の母と妹も喜ぶ。

 

 真美「まあ、良かったね裕太君!」

 

 裕太「うん!」

 

 裕太も母と妹の完治を喜び、真美も松坂浩二の妻子の無事を喜ぶ。

 

 

 ガイ「これでこの世界も大丈夫だな。

 

 

 シュワッチ!」

 

 

 ガイ=オーブは人々の完成やお礼の声を受けながらこの世界の無事を確信し、両腕を揚げて飛び立つ。

 

 

 この世界を出て、再びさすらいの旅に出ようとしているのであろう。

 

 

 空高く飛び去ろうとした時、オーブは近くのタワーに気付く。

 

 

 オーブはタワーに手を向け、星屑のような光線を浴びせる。

 

 するとタワーは光に包まれ、光が消えるとなんとタワーはデコレーションされ、クリスマスツリーのようになった!

 

 タワーを巨大なクリスマスツリーに変えたオーブ。

 

 タロウはかつて東京タワーをキングブレスレットの力でクリスマスツリーに変えたことがあり、恐らくそれからの派生能力なのであろう。

 

 

 巨大なクリスマスツリーとなったタワーを人々は喜びや興奮の声を上げながら見上げる。

 

 

 ガイ「ちょっとサービスし過ぎたかな………ま、いいか。

 

 

 あの世界の“あいつら”のように、この世界の人たちにも、平和の夜明けをいつまでも見ていてほしいからな。」

 

 

 

 

 その頃、別世界、所謂オーブが活躍した世界の地球では、

 

 

 東京の北川町に一軒の小さなオフィスビルがあった。

 

 

 それは、怪奇現象追跡サイト・SSP(正式名:Something Search People)のオフィスビルである。

 

 SSPは、「世界のミステリーや怪奇現象を解明すること」をモットーとし、「ネバー・セイ・ネバー(できないなんて言わないで)」を合言葉としており、

 

 メンバーは、発起人兼代表(キャップ)の夢野ナオミ、ウェブ・カメラマン担当の早見ジェッタ、調査分析担当要員・松戸シンの三人で構成されている。

 

 

 彼らは魔王獣復活と共に現れたガイと出会ってから、魔王獣との戦いなど様々な事件に遭遇していき、またそれを通じて居候させていたガイと親しくなっていた。

 

 

 だが、ガイ=オーブがマガタノオロチを倒した(魔王獣が完全に滅んだ)後、彼らのもとから去って行ってさすらいの旅に出かけたため、それ以降大した怪奇現象に出会う事も無く平和な日々を送っており、そしてクリスマスイブを迎えていた。

 

 

 クリスマスイブということで、飾りなどが若干クリスマス仕様になっているオフィス内。今日も三人は集まっており、全員サンタ帽子をかぶっていた。

 

 

 ジェッタ「あーあ、マガタノオロチが滅んでからは、怪奇現象とか全く起こらなくなったね。」

 

 シン「そうですね、それじゃあ僕はそろそろ未来予測システムの開発を再開しましょうかね。」

 

 

 ナオミ「ガイさん………元気にしてるかな?………。」

 

 ジェッタとシンが平和になった事を語り合っている時、ナオミは旅立ったガイの事を気に掛けていた。

 

 

 ジェッタ「きっと大丈夫だよ。だって、ガイさんだもん。」

 

 シン「そうですね、今頃どこかで呑気にラムネかシュワシュワコーヒーでも飲んでたりして。」

 

 

 ナオミ「………そうだね。ガイさんはガイさんで今頑張ってるだろうし、私たちも、今やれる事を頑張らないとね。」

 

 

 三人が決意を新たにしたその時、

 

 

 ???「タ〇ル殿! 不可思議現象、発生ですぞ~!!」

 

 

 突然オフィスの外から声がして三人がそれに気づいたその時、

 

 

 一徹「おいかまいたち!…じゃなかったお前たち! さっきお坊さんみたいな人から、この近くで怪奇現象が起こったとの通報があった。」

 

 

 オフィスのドアを開けて入りながら、この世界の防衛チーム・ビートル隊の情報特務隊隊長でありナオミの叔父・渋川一徹が三人に知らせる。

 

 

 シン「おお、久々の怪奇現象ですね!」

 

 ジェッタ「ああ。今日もバッチリ、スクープを撮るぞー!」

 

 

 ナオミ「よーし、サムシング・サーチ・ピープル、出動!!」

 

 ジェッタ・シン「了解!!」

 

 三人は颯爽とオフィスの外に出て行く。

 

 

 一徹「ふふ、久々だけに、気合が入ってんな。」

 

 渋川もそんな彼らを見て微笑みながら、後を追い始める。

 

 

 一徹「ガイ君………このように、此方も頑張っている。

 

 (夜空を見上げて親指を突き出しながら)だから、そちらも頑張れよ。」

 

 

その一方で、SSPオフィス近くで、スーツ姿にサンタの帽子をかぶったジャグラーが、まるで何を考えているのか分からない表情で…

 

ジャグラー「ウルトラマンオーブ………違う世界でも、お前は希望の光か?………。」

 

 

 

 

 ガイ=オーブも、そんな彼らの頑張りを離れていても感じたのか、少しふっと笑っている様であった。

 

 

 ガイ「ひとまず、この世界はもう大丈夫だな。

 

 あばよ!」

 

 

 オリジンの姿に戻っていたオーブ(ガイ)はサムズアップをして渋川の台詞を言った後、空の彼方へと飛び去り、やがて星になった。

 

 その最中、またしてもオーブニカのメロディが街中に響いている様であった………。

 

 

 再びさすらいの旅に出かけたガイ=オーブは、次はどこへ向かうのか?………それは誰も知るはずがなかった………………。

 

 

 

 私、新田真美はさっきまで目の前で起こっていたことが信じられなかった。

 

 突然悪夢が襲ってきて、もう駄目かと思ったその時、同じく突然現れて悪魔を倒してくれたウルトラマン・オーブ。

 

 その光景は正に神が舞い降りてくれたようだったわ。

 

 

 でも、長らく現れなかったウルトラマンや怪獣が突然今になって現れるなんて、一体どういう事なんだろう………?

 

 何だか僅かに胸騒ぎも感じるけど、とにかくクリスマスが平和に戻ってくれた事が、私はとにかく嬉しいわ。

 

 だからオーブには本当に感謝している。

 

 

 オーブはどこへ行くのだろう?………どこかに旅立って行ったのかな………?

 

 またいつか来てくれると嬉しいな………。

 

 

 とりあえず私は考えるのをやめ、裕太君や彼の母や妹と一緒に、ツリーに変わったタワーを見上げていた。

 

 

 真美「綺麗ね………裕太君。」

 

 裕太「うん………ウルトラのクリスマスツリーだ。」

 

 

 すると裕太君はすかさずカメラでそのツリーを一回撮った。

 

 その写真はタワーとイルミネーションが同時に写っていて、ちらちらと降る雪がそれにデコレーションを加えてるかのようで、とても良い写りの写真になってたわ。

 

 

 裕太「父さんに見せる写真………これにするよ。」

 

 真美「(満面の笑みで)うん、それがいいかもね。」

 

 裕太君のパパに見せる写真も撮れたことだし、正にめでたしめでたしだわ。

 

 

 

 もうしばらくイルミネーションを堪能した後、私は裕太君の家族と別れることにした。

 

 

 母「どうも息子がお世話になりました。」

 

 真美「いえいえ。当然のことをしただけですよ。

 

 それより、明日からはお父さんとも一緒のクリスマス、お正月と楽しんでください。」

 

 

 佳那「じゃあねートナカイの姉ちゃん。」

 

 そう言えば私、まだトナカイのファッションのままだったわ(笑)

 

 真美「(しゃがんで佳那の頭を撫でながら笑顔で)うん。プレゼント楽しみだねー。」

 

 

 そして私は裕太君の方を向く、

 

 裕太「真美さん、今日は、本当にありがとうございました。」

 

 真美「私の方こそ楽しかったわ。明日からまた楽しんでね。

 

 あと、これからも家族を大事にね。」

 

 裕太「お礼に、これを。」

 

 裕太君は一枚の写真を私に渡してくれた。

 

 それは、さっき撮ったタワーのツリーとイルミネーションの写真だったの。

 

 

 真美「………ありがとう。大事にするよ。」

 

 裕太「僕、真美さんが好きです。父さんと母さんと、佳那の次に。

 

 綺麗で、優しくて………とってもいい匂い!」

 

 真美「(照れ笑いしながら)裕太君ったら………。」

 

 照れ笑いする私につられるように、裕太君やママ、佳那ちゃんも笑い、私たちは笑い合った………。

 

 

 私は笑顔で手を振りながら裕太君達を見送ったわ。

 

 どうかあの家族が、最高のクリスマスやお正月を過ごせますようにと祈りながら………。

 

 

 そして会場を出て、街灯やイルミネーションで光る帰り道を鼻歌を歌いながらルンルンと歩いて帰って行ったの………。

 

 

 え?どうしてって?

 

 

 明日、大切な人とようやくクリスマスを過ごせるからね~ 

 

 

 

 翌日、カーテンの隙間から穏やかに差し込む光で私は目が覚めた。

 

 朝が来たことに気付いた私は約束の時間が過ぎたかと思って慌てて起きたけど、時間はまだ朝の7時。

 

 

 約束の時間は9時。まだ間に合うわ。

 

 

 急いで顔を洗って、化粧水を塗って、髪形を整えて、朝食をとった私は鞄を持って出かける。

 

 

 今日は25日、クリスマスの日。

 

 

 昨夜の雪が屋根や道路に積もっていて、朝の冷たい空気は美味しくて、天気は穏やかに晴れていて、耳を澄ませてみると近所にこどものはしゃぐ声が聞こえるわ。

 

 多分子供たちがサンタさんが届けてくれたプレゼントで喜んでるんだわ。

 

 

 それを聞いている私はなんだかとても嬉しい感じになったの。

 

 本当に、平和なクリスマスが来たんだな~って思えるから。

 

 だからウルトラマンオーブ、本当にありがとう!

 

 

 すると、前から子供が一人、私の方に入って来たの。

 

 裕太君だったわ。

 

 

 真美「あら裕太君、おはよう。そして、メリークリスマス。」

 

 裕太「真美さんこそ、メリークリスマス。

 

 今日は気合が入ってますね。」

 

 真美「(照れくさそうに)そう?………ありがとう。」

 

 裕太君は私の衣装を気に入ってくれた。

 

 

 因みに今日はサンタコスにしてみたの。

 

 

 昨日がトナカイだったって事もあるけど(笑)、今日はクリスマスの日だし、大切な人と出かけるから、確かにちょっと気合を入れてみたの。

 

 早速気に入ってもらえて嬉しいわ。

 

 

 裕太「プレゼントのラジコンも届いたし、父さんがさっき帰ってきました。」

 

 真美「そう。良かったね。」

 

 

 裕太「そして、写真………

 

 気に入ってもらえました。」

 

 

 真美「(満面の笑みで)やったね。」

 

 裕太「これも真美さんのおかげです。

 

 本当にありがとうございました。

 

 これからもらった小遣いで父さんへのお疲れのプレゼントを買いに行くところです。」

 

 真美「そう、気を付けてね。

 

 それと、楽しいクリスマスとお正月を迎えてね。」

 

 裕太「はい!」

 

 

 私は、元気いっぱいに手を振りながら走って行く裕太君を笑顔で手を振りながら見送った。

 

 初めて会った時と違って元気になって本当に良かったわ。

 

 それに、とっても親思いで良い子だわ………だから、そんな子が、これからも幸せに暮らせますように。と私は思いながら、私は再び歩き出したの。

 

 

 “ある人”が待つ場所に向かって………。

 

 

 しばらく歩くと、約束通り、“彼”が待ってくれていたわ。

 

 

 櫂「………やあ、おはよう、真美。」

 

 

 櫂君は笑顔で、どこか照れくさそうに挨拶してくれた。

 

 

 真美「おはよう櫂君。」

 

 私も返事をし返したわ。

 

 

 因みに櫂君もサンタコス。

 

 つまり、今日は櫂君と私、ペアルックで出かけるという事だね。

 

 

 櫂「………………サンタ姿………なかなか可愛いじゃねーか。」

 

 

 良かった~………。櫂君はどこか照れくさそうに褒めてくれたわ。

 

 

 真美「ありがとう………。」

 

 

 櫂「んじゃ、行こっか。」

 

 真美「うん。」

 

 

 待ち合わせ場所で合流した櫂と真美は、お互い笑顔で手を繋いでタワー向かって歩き始めた。

 

 櫂はその最中も、ひっそりと不敵な笑みを浮かべていたが………………。

 

 

 私、新田真美は、櫂君と手を繋いで歩いて行った………。

 

 今日も楽しい一日になりますように!

 

 

 

 (ED:Shine your ORB)

 

 

 

 クリスマスで賑わう街を歩いていても、サンタ姿で歩く櫂と真美の姿は目立つものだった。

 

 

 何しろ二人は、麟慶大学が誇るイケメン&美人学生なのだから。

 

 シャープだが凛とした顔つきがかっこいい櫂と光るような笑顔がかわいい真美。二人ともサンタ姿が似合うわけである(笑)

 

 二人は楽しそうに笑って他愛もない話をし合いながらタワー向かって歩き続けた………。

 

 そんな他愛もない話も、クリスマス故か弾んでいる様であった………。

 

 

 だが、タワーに着いた瞬間、、、

 

 

 櫂「んなっ……………なっ………………なあああんじゃこりゃああぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

 櫂はクールな顔つきから想像できない程に驚いてしまっていた。

 

 

 それは、タワーがまだツリー状であったからである。

 

 

 真美「あ、………(苦笑いしながら)そっか、櫂君昨夜いなかったもんね………。」

 

 

 真美は、何も知らない櫂の驚く姿を、どこかおかしそうに笑うのであった………。

 

 しばらくして櫂が落ち着くと、櫂と真美はタワーへと入って行った………。

 

 

 昨夜いなかったが故に、オーブが活躍した事を知るはずもなかった櫂………。

 

 後にそんな櫂が、ウルトラマンゼロと一心同体になって戦う事になるとは、真美はもちろん誰も思うはずもなかった………。




 読んでいただきありがとうございます!

 いかがでしたか?


 今年(ウルトラシリーズ50周年)もあと少しで終わるということで、ウルトラマンオーブの活躍を描いてみました!

 また、母性溢れる優しさを持つ真美ちゃんが主役ということで傷ついた少年との交流を主体に描いてみました。


 ウルトラマンオーブはとても面白かったので、私はしばらくオーブロスが続きそうです(笑)


 因みにみなさんはオーブのフュージョンアップ形態だと何が好きですか?

 私はオリジンとバーンマイトです。


 ※今回、本編よりも櫂君と真美ちゃんがラブラブに見えるという点では人によって違和感を感じるかもしれませんが、そういう時は今回はパラレルワールドのストーリーだと思えば楽になれます………多分(笑)


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


 ※今回出たイルミネーション大会は、実際あるわけではなく私が適当に考えたものなのでご了承ください。



 因みに隠れていたサブタイトルは、

 「姿なき挑戦者」(ウルトラセブン第1話)

 「不死身のグローザム」(ウルトラマンメビウス第46話)

 「ウルトラのクリスマスツリー」(ウルトラマンタロウ第38話)

 でした。(登場順)


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番外編「新田真美物語(ストーリー)私のお正月」

 皆さん、明けましておめでとうございます。

 お正月を迎えたと言う事でふと思いついた番外編です。

 タイトルこそほのぼのしてますが、実は後半に非常に驚きの展開が待っています。

 ※オリヒロの真美ちゃんが主役なので、櫂君や海羽ちゃんはほとんど出て来ないと思っていてください。


(OP:青い果実)

 

私は新田真美。

 

福岡県出身だけど、今は将来看護婦になるために霞ヶ崎の麟慶大学医学部に在学していて、それ故に一人暮らしをしているの。

 

みんなからは「文武両道」「美人」「優しい」「良い匂い」なんてよく言われて、とても高い信頼を得ているんだけど、私は特に特別な事はしてなくて、ただ人として当然の事をして普通に過ごしているだけだよ。美人や良い匂いは分からないけど……そこは生まれつきなのかな?(笑)

 

まあ、確かに勉強に関しては結構努力したけどね。

 

特に仲の良い友達の中には、同じ大学に在学している幼馴染みの竜野櫂君や大学で知り合った眞鍋海羽ちゃんがいるんだけど……この二人は今、とても凄い力を持っているの。

 

櫂君は私以上の文武両道と性格の良さ、海羽ちゃんはみんなを元気にする明るさと人を虜にする可愛らしさと、それぞれ特有の凄い力を持っているんだけど、それにも負けない凄い力………。

 

二人は今、ウルトラマンの力も持っているの。

 

櫂君はウルトラマンゼロ、海羽ちゃんはウルトラウーマンSOL(ソル)にそれぞれ変身できるの。

 

私は最初は動揺したけど、怪獣頻出期以来3年ぶりに襲って来る敵の存在を知って、私はウルトラ戦士に変身して戦う彼らをできる限りサポートしてきたわ。

 

そして櫂君達、それからこの霞ヶ崎に駆けつけてくれたウルトラマン達のおかげで霞ヶ崎は何度も救われてきた。

 

私はウルトラ戦士に変身できないからあまり戦えないけど、傷つき疲れる戦士を応援して癒して、それによって櫂君達が元気になってくれて、それによって平和を守るのに繋がるなら、私はそれをこれからも一生懸命やっていくわ。

 

今日も、櫂君達ウルトラマンがヤプール軍団から霞ヶ崎を守ってくれたの。

 

 

 

………これから話すのは、そんな一生懸命戦ってくれる櫂君と海羽ちゃんを見て、ふと思い出した事。

 

思えばあの時は、未だに信じられない夢のような経験だったわ………。

 

 

 

それは、遡る事ちょうど7ヶ月前の1月1日。

 

私は地元に帰って正月を過ごしていたの。

 

紅白等を見たり年越しのカウントダウンをしたりして夜更かしをした大晦日の翌日のA.M.8:00、家族がまだ寝静まっている間、私は青が基調の袴姿で近くの神社に初詣に行ったの。

 

 因みに早朝で初詣に行くことは前日前もって親に言っています。

 

あ、そういえば私、元日早々に少し不思議な夢を見たの。

 

それはとある廃工場で、子供が怪物に襲われそうになっていて、助けようと手を伸ばした瞬間、私は突然光に包まれて、気がつくと私の目の前に石柩のような物が現れた……て言う夢なんだけど…。

 

一体何だったんだろう?……私は少し気になっていた………。

 

あ、話をずらしてごめんね。

 

初詣。早朝は流石にまだ寝静まっている所が多いのか、それほど人がいなかったからそのお陰でスムーズにお賽銭箱に小銭を入れて鈴を鳴らし、じっくりと願い事を拝むことが出来たわ。

 

 え?何を願ったって?

 

 

 

 「今年一年も、平和でみんなが幸せでありますように」ってね。

 

 最も、その6か月後にこの街が戦いの舞台になってしまうとは思いもしなかったけど………。

 

 

 

 参拝を終えた私は絵馬に願い事を書こうとした時、ふと何かに気付いた。

 

 そこには鳥居のそばで座り込んで、どこか悲しそうな顔をしている9歳ぐらいの男の子がいたの。

 

 私は気になってその子の元に歩み寄った。私、こういう風に困っている人を見ていると放っておけなくて、助けずにはいられないの。

 

 「僕、どうしたのかな?」

 

 私はその子のそばに歩み寄り、同じ目線までしゃがんで優しく話しかけてみたけど………その子は返事をする様子は無く、顔を他所へ向けてしまった。

 

 多分、話しづらいというのもあるかもしれないけど、何より私と言う見ず知らずの人物が話しかけたことに戸惑いを隠せないのかもしれない。

 

 「どうしたのよ…。一人で悲しそうに………。」

 

 私は折れずに、その子の横に座り込んで優しく話しかけ続ける。その子は私が怪しい人じゃないと思い始めたのか、横目ながら少しづつ私に視線を向け始める。

 

 「ねえ、私で良かったら言ってみて。力になるよ。」

 

 その子は遂に話す決心をしたのか、若干ぎこちなさがありながらもワケを話してくれた。

 

 その子の名前は佐久間裕(さくま ゆう)。その子は私よりも早い時間・A.M.7:00頃にママ(美智子)と初詣に出かけてたらしいの。

 

 何でも参拝を終えて帰ろうとした時、突如怪物が襲ってきて、何とか振りほどくことが出来たけど襲われた際に裕君のママが怪我をして家で寝込んでしまったみたい。

 

 それにより裕君は元気をなくしてしまったみたいなの。

 

 私は話を聞いた時、“怪物”と聞いた途端ふと夢の事を思い出し少し嫌な予感もしたけど、それよりもまだ幼くして親が怪我をした裕君が可哀想で仕方なかったわ。

 

 「……そっかそっか。それは辛かったね。ごめんね、思い出させちゃって。」

 

 「…いえ………大丈夫です。ただ………折角お正月ママと遊ぼうと思ったのに………。」

 

 因みに裕君は7歳の妹を入れた三人暮らしで、既にパパがいないみたいなの。私は思わず同情の涙が出そうになったけどぐっとこらえた。

 

 「じゃあ、私のところに来る?ぜんざいやおせちとかもあるよ。」

 

 私は気落ちしている裕君に気晴らしを提案する。

 

 「………え?」

 

私は少し驚く裕君の肩に優しく手を置いた。

 

 「ずっとここに独りで、寒かったでしょう?一回温まって落ち着こうよ。」

 

 その時、裕君は少しだけ笑顔になって「うん。」と答えてくれた。

 

 

 

 私は親に事情を話して、裕君を家に入れてぜんざいをご馳走したの。因みに、私の手作りです(苦笑)

 

 「おいしい……おいしいです。ママが作ったのと同じくらい……。」

 

 「良かった。気に入ってもらえて。」

 

裕君はとりあえず笑顔になってくれて私はひとまず安心した。

 

その後、裕君と色んな話をした。学校の事、楽しかった事、好きなテレビ、お正月の楽しみなど。

 

私としばらくお話した後、裕君は寝込んでいるママの面倒を見るために帰る事にしたの。

 

「ありがとうございます。真美さん。」

 

「いえいえ。頑張ってね。それから…」

 

私は裕君に携帯電話番号をメモした紙を手渡した。

 

「寂しくなったり、困ったりしたら、いつでも言ってね。助けてあげるから。」

 

「……ありがとう。お邪魔しました!」

 

裕君は元気よく挨拶した後に手を振りながら私の家を後にする。私はそれを笑顔で手を振って見送った。

 

「……あの子、辛い思いしてるはずなのに、偉いよ。」

 

私は家に入った後そっと呟いた。

 

「私もあの子に負けないように強くならないとね。じゃ、引き続き正月を楽しみますか。」

 

私が再び家族の部屋へ行こうとしたその時、

 

“ドーン”

 

突然、何かが爆発するような音がして私は驚いた。

 

「…!もしかして…」

 

その爆発音はよく耳を澄ましてみると裕君が去って行った方から聞こえていた。

 

「パパ、ママ、ちょっと行ってくる!」

 

私はママ達の制止を振り切って急いで音がした方へ駆けて行った。

 

すると、現場に着いて私は驚愕する。

 

そこには、仰向けで後ずさりする裕君、そしてその前には見たことない不気味な二体の等身大な怪物がいたの。

 

真美が目撃した二体の怪物。一体は全身茶色い体毛に覆われ、頭や手足は昆虫、節足動物を思わせる形状をしている『インセクティボラタイプビースト アラクネア』。

 

もう一体はカエルを思わせる外見が特徴の『アンフィビアタイプビースト フログロス』

 

二体とも普通の怪獣とは違う『スペースビースト』という存在であり、スペースビーストとは「情報を得ることで急激に成長する」「知的生命体の恐怖を餌に成長する」という特徴を持っており、生物を捕食する事により成長・増殖する宇宙から飛来した恐るべき存在である。

 

大きさは等身大から数十メートルなどとまちまちであり、裕を襲っていたアラクネアとフログロスは等身大の約2メートルの大きさである。

 

私、新田真美は今目の前で起こっている事が信じられないでいた。今目の前で一人の少年が見知らぬ不気味な怪物二体に襲われているのだから。

 

目の前で襲われている裕君を助けたいけど、私も恐怖で足がすくんであまり動けないでいたの。

 

その時、一体のカエルみたいな生物(フログロス)が口から火の玉を裕君目掛けて打ってきたの!

 

でもその時、さっきまですくんでいたのが嘘のように私の体は無意識に動き、裕君を抱いてその場から離れる事で辛うじて彼を火球から救う事ができた。

 

恐らく、私の普段から思っている「人を助けたい」という想いにより、本能的に私を動かしてくれたのかもしれない。

 

でも、それも束の間今度はもじゃもじゃの生物(アラクネア)が襲い掛かろうとして来たから私は裕君を連れて必死で走って逃げたの。

 

何とか廃工場まで逃げる事ができたけど、流石の私も息切れが激しかった。私、運動神経はある方なんだけど、今は袴姿。所謂走りづらい姿で走ったのだから体力の消費は激しかったの。

 

「大丈夫ですか?真美さん。」

 

「ええ。ありがとう。」

 

「いえ、礼を言うのはこちらです。真美さん、足速いんですね。」

 

「エヘヘ……。」

 

でも、安心するのも束の間、私たちを嗅ぎつけてきたのか、二体の怪物が再び私たちの目の前に現れた。

 

カエルちゃん(フログロス)は驚く私たち目掛けて火球を連打して来て、それが近くの鉄塔やドラム缶に命中して爆発。裕君を庇った私は鉄塔の下敷きになってしまい、残された裕君は恐怖によって固まりその場を動けないでいた。

 

フリーズしている裕君に容赦なくもじゃもじゃ(アラクネア)が忍び寄る。

 

私は必死で手を伸ばしながら抜け出ようと踏ん張るけど鉄塔は重くてなかなか抜け出れない。そうしている間にももじゃもじゃは再び倒れ込んで後ずさりをしている裕君に襲い掛かろうとしている。

 

絶体絶命な状況の中、私は心が折れそうになりながら、僅かながらも可能性を信じて踏ん張りつつ祈り続けた…。

 

(…こんな時、あの人なら…絶対に諦めないはず……!)

 

(だから私も諦めない……私は絶対、諦めない……!)

 

と、その時、

 

“ピシャン ボワン”

 

突然、音とともに私の目の前に一筋の光が現れる。私がそれに驚いて目を見開く中、その光の中から一つのスティックのようなアイテムがが現れた。

 

私は動揺しつつも、直感的にそのアイテムを掴む。すると、アイテムから光の柱が放射され、私の上に乗っかっていた鉄塔を吹き飛ばした。

 

自由になった私はすぐさま裕君の元に駆け寄り、二体の怪物にアイテムを向ける。するとアイテムから丸く青い光のバリアーが展開され、カエルちゃんが吐いてきた火球を防ぐことができたの。

 

「真美さん、あいつらです!僕とママを襲ったのは!」

 

「え⁉︎」

 

私が裕君の真実の言葉に驚いたその時、

 

突如、空から赤黒い光線が降ってきて、二体の怪物を直撃した。すると、怪物は徐々に大きくなっていき、最終的には見た感じ40メートルぐらいまで巨大化した。

 

因みに、光線が照射された空の彼方からとある謎の声が聞こえた。

 

???「……さあ……僕に刺激を味わせてくれたまえ………。」

 

私、新田真美は突然巨大化した二体の怪物から裕君と共に逃げていた。

 

でも、怪物たちは執拗に追ってくる。まるで私を狙っているようにも見えた。

 

そしてカエルちゃん(フログロス)の火球が近くで爆発し、私たちは吹っ飛ばされてしまう。

 

私はすぐさま裕君に「大丈夫?」と体を揺するけど、裕君は気絶してしまったのか返事をしない。

 

怪物は止まった私たちに容赦なく近づく。

 

……その時、私の脳裏には「ある人」が浮かんでいた。こんな時も絶対に諦めないであろうあの人の顔が………。

 

その時、私の持っているスティック状のアイテムが少し光を放った。

 

それを見た私は何かを察した。多分、誰かが諦めない私に力を貸してくれたのかもしれない……。この力で、裕君やその他の人々の笑顔が救えるのなら………!

 

遂に決心を決めた私は立ち上がり、怪物たちの方を振り向く。そして、手に持ったスティックを高く挙げた!

 

スティックを挙げた真美は、振り挙げたことでスティックの鞘が抜けて、溢れ出る光に包まれる。そして、光の中から右腕を突き出す銀色の巨人が飛び出し、着地する。

 

現れたのは、銀色のボディが特徴の光の巨人『ウルトラマンネクサス(アンファンス)』だった!

 

ウルトラマンネクサス。それはデュナミスト(適能者)と一体化する事で力と肉体を得る正体不明の光。その正体は伝説の『ウルトラマンノア』でもある。

 

ネクサスにはこれまで(変形態含めて)6人ものデュナミストが変身している。

 

そしてネクサスは今回、新田真美を新たなデュナミストに選んだのだ。

 

恐らく真美は、ある人との絆や、目の前で襲われそうになっている子供を救いたい気持ちにより、絶体絶命の現状にも抗い続け諦めなかった事によりデュナミストに選定されたのであろう。

 

即ち、真美が夢で見た石柩は『ストーンフリューゲル』であり、変身に用いたアイテムは『エボルトラスター』だったのだ。

 

しかし、正月の袴姿の美女がウルトラマンに変身するとは…カオスと言うかシュールと言うか…(笑)

 

「……何?……これ。」

 

真美は変身した自分の姿に戸惑う。だが、そうしている隙にもアラクネアとフログロスが襲い掛かろうとしていた。

 

「……よく分からないけど、これが私に与えられた力なら、やれるだけやってみるよ!」

 

真美はとりあえず考えるのを止め、戦う決心をした。

 

ネクサスは構えを取る。

 

一方、突如現れたネクサスを、とある人物が遠くから見上げていた。

 

「…何だ?あれは…。」

 

 ネクサスは二体のビーストに駆けて接近する。

 

 まずはフログロスの突進を、フログロスを土台に側転する事でかわし、その後フログロスの背後にいたアラクネアを左側へ一回転しての左脚蹴りで吹っ飛ばす。

 

 フログロスはネクサス目掛けて火球を発射するが、ネクサスはそれを右腕を突き出して光粒子エネルギーの刃『パーティクル・フェザー』を発射して相殺し、その後両手を十字に組んで光線『クロスレイ・シュトローム』を発射。光線はフログロスの胸部に命中して爆発し、フログロスは少し怯む。

 

だが、真美は戦いながらふと思っていた。これ以上この場所で戦うと、裕君や周りの街が巻き添えにされてしまうかもと。

 

ネクサスはバク転して距離を取って体勢を立て直した後、胸の『エナジーコア』に左腕を当てた後下ろす。するとネクサス(アンファンス)は揺らぐ水面の様な現象と共に青い光に包まれ、姿が変わった。

 

ネクサスは基本形態のアンファンスから、アンファンスの力を解放する事により、戦闘形態の『ジュネッス』へと二段変身することができる。

 

ジュネッスは、アンファンスから形状が変わるだけでなく、デュナミストによって色も変わるのだ。

 

真美のジュネッスは、青い体色が特徴で、右腕には『アローアームドネクサス』を装着している『ジュネッスブルー』だ。

 

ジュネッスブルーへと変身したネクサスは、左腕を右側のアームドネクサスに当てる形でクロスして左腕を左側に回した後に上に挙げて青い光線『フェーズシフトウェーブ』を上空に放つ。

 

これは、現実世界からは不可視であるネクサスの戦闘空間『メタフィールド』を作り出す光線であり、それを作り出してビーストを引き込む事で、ネクサスは本来の能力を発揮する事が出来るのだ。

 

上空で光線が爆発すると、そこから黄金の光が滝のように降り注ぎ、地表からは水泡のような光が立ち上る現象が起こる。そしてその光がネクサスとビーストの周囲を包み込むように広がり、やがてオレンジがかったオーロラのような光が満ちている空に、赤土のような色合いの地面に発光する物質がある空間が出来る。

 

 現実世界から見れば、突然ネクサスとビーストが消えたようにしか見えない。

 

 「!………消えた⁉」

 

 ネクサスを見上げていた青年は突然消えたことに驚いた。

 

ネクサスのメタフィールド展開が完了し、ネクサスお馴染みのBGMと共に、メタフィールドでの戦闘が始まった。

 

ネクサスはアラクネアの振り回してくる両腕をことごとくかわし、次に横に一回転して繰り出してきた尻尾攻撃を跳躍してかわした後に、左腕で右腕を、右腕で頭部をそれぞれ掴んで一本背負いで投げ飛ばす。

 

アラクネアは遠方に飛んで地面に落下した。

 

次にフログロスがネクサス目掛けて火球を発射するが、ネクサスは即座に右腕を突き出して青く輝く水面の波紋の様な円形状のバリア『サークルシールド』を展開してそれを防ぐ。

 

ネクサスはアラクネアが振り下ろしてきた右腕を即座に右腕で掴んで受け止め、同時にカウンターの如く右脇腹に左拳を決め、その後右脇腹に右横蹴りを打ち込んで吹っ飛ばす。

 

その後、フログロスに駆け寄りながら跳躍して胸部に右膝蹴りを決め、その後頭部に右の手刀を打った後回転しながら後ろに回り込み背部に左の手刀を打ち込み転倒させる。

 

真美は初めて、しかも突然にウルトラマンに変身した事で最初こそ戸惑いを隠せなかったが、とりあえず与えられた力で目の前の敵を倒す事だけを決めた。

 

そう、彼女は運動神経が抜群だけでなく、頭の切り替えも早いため、ビーストと戦えているのだ。

 

その戦闘スタイルは、大和撫子の如く滑らかな動きでスタイリッシュに戦う感じである。

 

二体は今度は同時にネクサスに襲い掛かる。

 

ネクサスから見て右側のアラクネアは左腕を振り下ろし、左側のフログロスは突進の形で頭突きを繰り出してくるが、ネクサスはフログロスの頭突きを左腕で、アラクネアの攻撃を右脚でそれぞれ受け止めて防ぐ。

 

 そして、フログロスの顔面の左側面に右の掌を打ち込み、次にアラクネアの頭部に右振りの右拳を打ちこみ、その後跳躍して脚を垂直に開いて二体に同時に蹴りを浴びせて吹っ飛ばす!

 

 一旦距離を取ったネクサスは体勢を立て直し、右腕を突き出して、アローアームドネクサスから光の剣『シュトロームソード』を形成させ、フログロス向かって駆け始める。

 

 フログロスは向かって来るネクサスに火球を連射するが、ネクサスは光の剣で火球を斬って弾きつつ駆け寄り続ける。

 

 そして、すれ違い様に右腕を振るってフログロスを横に一刀両断する!

 

 フログロスは切り口から光を放ち、やがて爆発して光の粒子となって消滅した。

 

 フログロスを撃破したネクサスに今度はアラクネアが跳びかかり始める。

 

 ネクサスは掛かって来るアラクネアの方を振り向いて体勢を立て直し、右腕を胸のエナジーコアに当てる。

 

 すると、エナジーコアの光が右腕のアローアームドネクサスに投影され『アローモード』が形成される。

 

 ネクサスはアローモードの光の弓を左腕で引き絞り、左腕を放す事で超高速の光の弓『アローレイ・シュトローム』を放つ!

 

 これは、ウルトラマンネクサス(ジュネッスブルー)最大の必殺技であり、広い命中範囲と高い切断・貫通力を持ち、敵を粒子にまで消し去ることが出来るのだ。

 

 高速で飛ぶ光の弓は、ネクサスに跳びかかるアラクネアを縦真っ二つに直撃!アラクネアは青白く発光した後爆発して光の粒子となって消滅した。

 

 ビースト二体を撃破したネクサスは光と共に消滅する。そして、現実世界に光と共に新田真美が戻って来る。

 

真美はさっきまでの出来事がまだ信じられないのか、少し唖然とした顔でそっと右手のエボルトラスターを見つめる。

 

すると、エボルトラスターは光を放って粒子となって消滅した………。

 

 

私、新田真美はさっきまでの出来事がまだ信じられないでいた。

 

ただ人を助けたい、その一心で頑張っていた私は突然光を得てウルトラマンに変身して怪獣と戦った……それは正夢だったけど、本当に夢を見ているような一時だった。

 

あの二体の怪物は何だったんだろう…?何者かが送り込んで来たのかな?

 

そして私に一時的に力をくれたウルトラマンは一体……?

 

突然の出来事を理解できずにいた私はとりあえず考えるのを止め、裕君そして人々を救うことが出来た事を喜んだ。

 

私は裕君の元へ歩み寄る。裕君は目を覚ましていた。

 

「…大丈夫?」

 

私は仰向けの裕君に話し掛ける。すると、裕君は右手で私の右頬を軽くつねり、笑顔を見せる。

 

「大丈夫。」

 

「……良かった。」

 

裕君の安全に私は安心した。

 

その後、私は裕君と一緒に話をしながら実家に向かい始めた。

 

 「僕ね、夢を見たの。真美さんが光になって怪物をやっつけてくれたんだ。」

 

 「うふっ、何?それ…」

 

 裕君の言葉を私は少し気になりながらも私は裕君と笑い合いながら歩いていた。

 

 裕君と共に歩いて実家に向かっている最中に、一人の青年が駆け寄って来た。

 

スマートな長身に精悍な顔つきのイケメン、駆け寄って来た彼は私の幼馴染の竜野櫂君だった。

 

 「大丈夫だったか?真美。」

 

 「あ、櫂君、私は大丈夫。ありがとね。」

 

 私の無事に、櫂君は嬉しそうな顔をした。

 

 「あの怪物たちに巨人はどうなったんだ?」

 

 「………巨人が怪物を倒して去って行ったわ。私、この目で見たの。」

 

 疑問を投げかける櫂君に私はそれらしい事を言って誤魔化した。その後、櫂君も入れて三人で会話をしながら帰り道を歩いた。

 

 思えば、私は櫂君の事を想いながら諦めなかった……私がウルトラマンに選ばれたきっかけは、もしかしたら櫂君と私の絆も関係していたのかもしれない………。

 

 

 絆…………ネクサス…………分かったわ。あのウルトラマンは、『ウルトラマンネクサス』。

 

 

 私の実家に着いた後、私は再び裕君と別れようとする。

 

 真美の母「裕君のお母さんから連絡が来たわ。お母さん、大した怪我じゃないから安静にしてれば普通に暮らせるみたいよ。」

 

 真美「良かったね、裕君。」

 

 裕「うん。これでお母さんとお正月が過ごせます。真美さん、今日は本当にありがとうございました。」

 

 私は礼を言う裕君の頭に優しく手を置く。

 

 「これからも家族を大事にね。」

 

 「はい。あ、あとこれを。」

 

 裕君は私に神社で買った『お守り』を渡してくれた。どうやら初詣の時に余分に買ってしまってたみたい。

 

 「真美さん、今年も元気でいてください。」

 

 「ありがとう。私、裕君を忘れないわ。」

 

 「僕も真美さんが好きです……ママの次に。真美さんは体力あるし、頭良いし、美人で優しいし、スタイル良いし、それに……」

 

 裕君は目をつむり、私の肩に顔を近づけた。

 

 「と~っても良い匂い!」

 

 「裕君ったら………ありがとね。」

 

 私は裕君に微笑みかけた。

 

 そして、何度もお礼を言いながら歩き去って行く裕君を私は手を振って見送ったの………。

 

 

 

 以上の事が、私が正月に経験した不思議な出来事。

 

 今、ウルトラ戦士として一生懸命戦ってくれている櫂君や海羽ちゃんを見ているとふと思い出したの。

 

 思えば、あの時裕君にもらったお守りは今でも大事に持っていて、さっき櫂君がやプール達と戦う時も握ってお祈りしてたわ。

 

 変身はあの時の一回きりだったから、今はウルトラ戦士に変身して戦う事が出来ないけど……今後も私なりのサポートで櫂君達をサポートをしていこうと改めて思った。

 

 あ、因みに私がウルトラマンネクサスに変身したのは櫂君にも海羽ちゃんにも内緒にしてるの(笑)

 

 でも、あの時がきっかけで私は信じるようになったの。

 

 絆が、みんなを一つにしてくれるって。

 

 櫂「おーい真美!飲み会が始まるぜ。」

 

 真美「はーい、今行くわ。」

 

 私は櫂君の呼ぶ方へ駆けて行った。

 

 今現在の事、そしてあの時の事。それらを想うと、私たちがウルトラ戦士に変身できたのは何かの運命なのかもしれない………。

 

だから今は、そんな運命により選ばれ戦っている櫂君達を今後も全力でサポートしていこうと思う。

 

 女も、見てるだけじゃ始まらないもんね!

 

 (ED:飛び立てない私にあなたが翼をくれた)




 読んでいただきありがとうございます!いかがでしたか?

 今回を思いついたきっかけはお正月が来たと言うのもありますが、ウルトラマンⅩ第20話の影響もあります。

 今回明かされた真実により、今作の主要人物三人ともウルトラマンに変身したと言う事になりました。

 竜野櫂(ウルトラマンゼロ)、新田真美(ウルトラマンネクサス)、眞鍋海羽(ウルトラウーマンSOL(ソル))。

 まあ、この中の内二人は一度きりの変身&オリトラウーマンですが(笑)

 実はこの真実が今後の展開の大事なポイントにもなったりすりのです。

 さて、次回からは後半戦に突入し、物語が大きく動き出します。

 今後ともよろしくお願いします!

 感想・指摘・アドバイス・リクエスト等をお待ちしています。


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番外編「眞鍋海羽物語(ストーリー)如月~きさらぎ~」

 今回の番外編はみんな大好き(?)眞鍋海羽ちゃんが主役です!(笑)


 今回は“二月(如月)”がテーマという事で、二月のイベント、主に節分を中心にしています。(節分の話でありながら、節分過ぎに投稿になってしまった事をお詫びします。)


 あと、今回はとある二人のウルトラ戦士が登場します!

 また、そんな彼らの登場がきっかけで、海羽(ソル)は後にゼロやコスモスを呼ぶことになるのです!

 まあどういう事かは見れば分かりますよ(笑)


 まあとりあえず細かい事は気にせずに楽しんでいただけたらなと思います!(笑)


 それでは、どうぞ!


 これは、この世界でのウルトラマンゼロたちが来る約5ヶ月前。つまり、2月の出来事を描いた物語である、、、。

 

 

 

 (OP:英雄の詩)

 

 

 

 ハロー!みんな、元気にしてるかな?

 

 

 最近寒い日が続くね~。

 

 くれぐれも、風邪をひかないように気を付けてね。

 

 

 おっと、話が脱線しちゃった。ごめんね。

 

 

 

 私は眞鍋海羽(まなべ みわ)。

 

 

 

 兵庫県神戸市生まれ&育ちで今は女子大生で霞ヶ崎で一人暮らしをしているの。

 

 

 大学は、霞ヶ崎の難関の私立大学・麟慶大学の商学部!

 

 

 

 私、いつもどんな時も元気と笑顔を絶やさずに過ごしてるの。

 

 

 でも、ただそれだけなのに、みんなからは「かわいい」とか「元気一杯」「癒される」「海羽ちゃんといると元気になる」、更にはたまにだけど「なでなでしたい」とまで言われるの。

 

 

 私も多少は認めてるんだけど………私、割と小柄だから、多分それに元気一杯な所がマッチする事によって、無邪気な子供のような可愛らしさを感じるのかな………?

 

 それで「かわいい」とか「癒される」「なでなでしたい」とか言われるのかも、、、

 

 

 あ~ん、何だか恥ずかしくなって来たわ!(照)

 

 

 でも、これだけは言える。

 

 いつも元気でいるのは、周りの人も常に元気でいてほしいからなんだよ。

 

 だから、もし落ち込んでる人がいるのなら、真美ちゃんほど適切な助言は言えないかもだけど、せめてその人の話を聞いてあげて、そして私の明るさで笑顔にさせることが出来たらな~って思ったりしてるの。

 

 

 

 あ、それと私、実はもう一つ特別な物を持ってるんだ。

 

 

 そ・れ・は~………

 

 

 

 私、ウルトラマンに変身できるの!

 

 

 あ、私女だから正確には“ウルトラウーマン”だけどね(笑)

 

 正式名は『ウルトラウーマンSOL(ソル)』。

 

 

 ………驚いてる?

 

 まさか私みたいな華奢な女子がウルトラ戦士になるなんて、想像もつかないもんね………。

 

 

 

 ………でも………私がウルトラの力を手に入れたのにはとあるワケがあるの………。

 

 みんなにはまだ言えないんだけどね………。

 

 

 ………て言うか、あれ?………そのワケって何だったっけ?………………。

 

 

 ソルと一体化した衝撃で忘れてしまったのかな…………?

 

 

 でも、微かに覚えてるのは、一体化する際に、何か優しい声に「貴女は選ばれた」みたいな事を言われた気がするな………。

 

 

 

 でも、この世界に異変が起こりつつあるのは確かだから、とりあえす今分からない事を考えていても仕方ないから、戦っていけばその内思い出すことになるかなと自分なりに割り切って、今は目の前のやれる事を一生懸命頑張ってる………って感じかな?………。

 

 

 と言うわけで、私は今大学生活をしつつ、時には人知れずウルトラ戦士として戦っていたりしているんだ。

 

 

 

 おっと前置きが長くなっちゃったね。じゃ、ここからが本編だよ。

 

 

 

 今日は2月3日、節分の日!

 

 そしてこの日は金曜日であり、更にたまたま大学が休みという事もあって、昼間は商学部のみんなと豆まきをすることにしたの!

 

 

 前もって買っていた、豆と鬼のお面とかを持って、商学部全員体育館に集まる。

 

 

 海羽「よーし、今年も悪い鬼さんを追い出すぞー!」

 

 やる気満々の私。

 

 

 生徒A「年の数だけ豆を食べるんだろ?俺は19個食べられるわけだぜ!」

 

 海羽「んもぅ~男子ったら食べることも考えるんだから…。」

 

 生徒A「何だよ?女子だって変わらないじゃないか。

 

 海羽こそ手に持ってる豆の量は何なんだ?」

 

 

 海羽「………あ。」

 

 いつの間にか私、女子の中で一番豆の袋を多く持ってたみたい………。

 

 

 海羽「(手を額に当てて舌をちょっと出して)えへ。」

 

 生徒A「今年も豆を食べて、悪い鬼を追い出して、お腹を福で一杯にしようぜ。」

 

 海羽「そうだね!」

 

 

 その時、

 

 

 “ピシャーン ゴロゴロゴロゴロ…”

 

 

 昼間だというのに突然強い光と共に雷が鳴り出したの。

 

 

 学生たちは驚いて、中には驚いてる人も何人か出ていたわ。

 

 

 海羽「何でいきなり雷が鳴るんだろう?………まだ昼過ぎなのに………。」

 

 学生B「まあ、暦だと節分の日が冬から春への季節の変わり目と言われてるけど………月的にはまだ寒い日が続くからね。寒雷が鳴ってもおかしくはないよ。」

 

 物知りな女子学生が、雷の意味を解釈しつつ色々説明してくれる。

 

 

 海羽「私、寒雷が鳴る日は不吉な事が起こるって聞いたことがあるわ………。」

 

 学生B「(少し笑いながら)そんなの迷信だよ。さ、寒雷もおさまった事だし、そろそろ豆まき始める?」

 

 海羽「………うん!」

 

 女子学生の励ましもあって、とりあえず安心した私はみんなと豆まきを始める。

 

 

 一斉に豆をまき始める学生たち。

 

 鬼のお面をかぶる係は………学科中の人気者たちって感じかな?

 

 実は私もその人気者の一人なんだけど、なぜか私は出来なかったわ。

 

 私が鬼っぽくないからなのかな?個人的にやってみたかったのに………………。

 

 

 ま、いっか。今は豆をまいて、鬼を追い出す事に専念しよーっと。

 

 

 鬼は―外!福は―内!

 

 

 

 だが、その同じ頃、そんな海羽たち商学部が楽しそうに豆まきをする様子をこっそり伺っている一人がいた。

 

 その者は見た感じ老婆のようであり、マントのような服で身を覆い、杖を突いて歩いている。

 

 

 ???「おのれ………今年も人間どもは我が仲間を………鬼を虐めよって~………。年に一度の節分の日とはいえ、やはり許せぬ!

 

 

 ………しかし、今回の作戦が成功すれば、きっと奴らは鬼を虐めなくなるだろう…ふっふっふっふっふ…。」

 

 

 そう言うと老婆はちらっと海羽達の持つ豆袋の方へと顔を向ける。

 

 

 ???「さっき寒雷を起こらせて注意を引きつけた隙に、豆の中に“ある物”を仕込んでおいた………それがあれば、人間どもはますます鬼を恐れる。間違いない。」

 

 

 そう呟いていると、豆まきの流れ弾が老婆にふりかかる。

 

 ???「ううっ!痛い痛い………やっぱり豆は嫌いじゃ…豆には勝てん………!」

 

 

 そう言うと老婆は、その場からスッと姿を消すように去って行った………。

 

 

 果たして、その豆に仕込んだ“ある物”とは一体何なのであろうか………?

 

 そしてその老婆は一体何者なのであろうか………?

 

 

 

 私、眞鍋海羽は、商学部のみんなといっぱい豆をまいた。

 

 

 でもこの後が大変………体育館の床あちこちに豆が散らばってるからみんなで全部拾わないといけないの。

 

 でも商学部のみんなとならすぐに全部拾えそうで良かった。

 

 

 豆を拾ったら年の数だけ食べて、恵方巻を丸かぶり……楽しみだな~ 

 

 

 そう思いながら豆を拾ってたその時、

 

 私はある人に目が止まったの。

 

 

 櫂君に負けず劣らず、背が高くて、身体が引き締まってて、端正な顔つきをしている一人の男子学生が、どこか暗そうな表情で豆を一粒ずつ拾っているのを………………。

 

 

 はぁ…体格羨まし~………私と正反対………。

 

 ……あ、いけないいけない。つい見惚れてたわ(笑)

 

 

 私はその男子学生を知ってる。

 

 

 彼は『佐藤宏隆』。私たちと同じ商学部の学生………って言わなくても分かるか。豆まきに参加してるんだもんね(笑)

 

 部活は空手部に所属してるの。だからあんなに体引き締まってるのかな………?

 

 

 実は彼、後日に空手の県大会を控えてるの。だから最近は特に練習に打ち込んでるんだ。

 

 毎日真剣な顔で、汗水流して………。

 

 

 まあ、一つだけ問題があるとすれば、友達が少ない事かな?

 

 普段あまり群れてなくて、一人狼って感じがあるかな?

 

 

 普段から一人でいることが多いんだけど、今日は特に暗そうな顔してる………。

 

 

 一人でいるのが寂しいは多分ないと思うから、何か悩みでもあるのかな………?

 

 

 気になった私は、初めてだけど話しかけてみる。

 

 海羽「ひーろーたーかー君!」

 

 “ポンッ”(肩を叩く音)

 

 宏隆「うわっ!?………何だ、眞鍋か。」

 

 海羽「えへへ、どう?豆はまけた?」

 

 宏隆「あ………ぁぁ。」

 

 

 そっけない返事………やっぱり何かありそう………。

 

 

 でも私はいつもの明るさを絶やさず話す。

 

 海羽「県大会もうすぐだね。」

 

 宏隆「お、おぅ。」

 

 海羽「優勝するためにも、今日自分の中の鬼を追い払おうね。」

 

 宏隆「ああ………。」

 

 

 さっきから素っ気ない………私に心を開いてないのが丸見えね。

 

 

 海羽「私もね、私の中の鬼を追い払ったの。確信はないけれど、そう思えば何だか今年一年も楽しく過ごせる気がして、とても笑顔になれるの。」

 

 宏隆「………そうなのか…相変わらずハッピーな奴だな。」

 

 海羽「ねえ、宏隆君ここ最近、何だか暗そうな気がするな………。最近何かあった?」

 

 宏隆「………………。」

 

 

 宏隆君は黙り込んでしまった………ふふふ、図星ね。

 

 

 私は覗き込むように彼を見つめながら語り掛ける。

 

 

 海羽「ねえ、私、真美ちゃんほど適切な事は言えないと思うけど………

 

 私で良かったら、話聞くよ。」

 

 

 宏隆は、自身に話しかける海羽に自然と引き込まれるような感覚になっていた。

 

 恐らく、一匹狼のような自分に、しかも初めてだというのに人懐っこく話しかける海羽に、何処か今までにない魅力を感じているのであろう。

 

 

 因みに海羽が商学部のアイドル的存在という事は、彼自身も知っていた。

 

 

 すると宏隆は少し躊躇った後、頑なに多くを語らなかった口を開いて話し始めた。

 

 海羽の無邪気さを見て、彼女なら大丈夫だと判断したのであろう。

 

 

 私、眞鍋海羽はようやく話し始めた宏隆君の話を聞き始める。

 

 

 彼はどうやら、昔から上手く友達が作れない事が悩みみたい………。

 

 一人で過ごすこと自体は何ともないみたいなんだけど………時に数人で楽しそうに話してる他の友達を見てると、寂しい気持ちが募っていくみたい。

 

 

 その友達があまりできない原因も、どうやら自覚してるみたい。

 

 宏隆「………俺………冗談の見分けがつかなくて………。」

 

 海羽「…ほえ?」

 

 

 どうやら彼は、例え冗談でも、人から酷い言い方されるのが苦手みたい………。

 

 例えば、先輩や友達が雑談の時「お前バカだろ。」って言われるだけでも、自分が馬鹿にされてるみたいでムカってなっちゃうみたい………。

 

 

 それは親や先生の説教でも同じ。どんな思いで自分を叱ってるなんて関係なく、とにかく辛辣な事を言われただけでその人に悪意を感じて、逆恨みしてしまうみたい………。

 

 だから、親と険悪になる事も少なくないんだって………。

 

 

 そうか~………もとから真面目で、プライドがある人だなーって思ってたけど、その性格が原因でもあったなんて………。

 

 クールな一匹狼だと思ってたけど、その心中には闇があったなんて………。

 

 

 海羽「………そっか………そんなワケがあったなんて………。」

 

 宏隆「ああ、だから、思うんだ………もっと余計な事を考えず、余裕の持った心さえあれば、人間関係も上手く行くんじゃないかと………。」

 

 

 心を開いて話した宏隆。すると、海羽の顔をふと見た瞬間少し驚く。

 

 彼女はいつの間にか目に涙を浮かべていたのだ。

 

 

 海羽「はっ………私、ダメなの。」

 

 海羽はそう言うと、指で涙を拭って話す。

 

 海羽「昔からなんだけど………私、泣き虫で………ちょっとでも辛いなとか、可哀想だなと思ったり、少しでも感動したりしたら、すぐ涙を出しちゃうの………。」

 

 笑顔になった海羽は、宏隆の方を向く。

 

 

 海羽「分かったわ。力になりたい。」

 

 

 宏隆「お………あ、あぁ。サンキュー。

 

 初めてだな………俺をここまで気に掛けてくれた人は………。」

 

 

 海羽「私に任せて、宏隆君。 ねえ、これから私に対して、思った事は何でもいいからそのまま言ってもいいよ。」

 

 宏隆「………え? 何でも言ってもいいのか?」

 

 海羽「うん!ありのままを。」

 

 宏隆「……まあ、よく分からないが、じゃあ遠慮なく言わせてもらうぜ。」

 

 海羽「よろしくね、宏隆君。………あ~………名前じゃあ堅苦しいわね……… ひろにゃんって呼んでいい?」

 

 宏隆「んなっ!?流石に恥ずかしいわそんなの!遠慮するわ。 何か子供っぽいし。」

 

 海羽「あ、それそれ!そんな感じ!」

 

 宏隆「え?………こ、こんな感じで良いのか?」

 

 海羽「うん!」

 

 

 あまり分からないまま、とりあえす海羽に言われた通り、思った事をそのまま口に出すことにした宏隆。

 

 果たして、彼を救うための海羽の考えとは何なのであろうか………………?

 

 

 やがて豆全部拾い終えた後、各自年の数だけ豆を食べる。

 

 

 そして次に恵方巻を丸かぶりだ。

 

 皆恵方を向いて丸かぶりを始める。

 

 

 ………だが、海羽の場合はその小さな体と同じく口も比較的小さく、大きく開けてもあまり丸かぶりといかず、半分以上をかじるのがやっとの程だった。

 

 それを隣で見ていた宏隆は、

 

 

 宏隆「お前口も小さいんだな。子供みたいだぜ。」

 

 海羽「えへへ。やっぱ背の高い人はいいな~。」

 

 宏隆「そうか?」

 

 いつの間にか友達のようないい感じになっている二人。

 

 

 あまり友達がいなかった宏隆も、初めて本音を言い合える仲が出来たのが嬉しいのか、どこか自然な笑顔になっているようであった………。

 

 

 やがて後片付けが終わり、商学部の節分大会が終わった。

 

 

 皆各自解散していき、海羽も宏隆と一緒に体育館を出て行く。

 

 

 海羽「県大会、頑張ってね。応援してるから。」

 

 宏隆「ああ、何だか少し自信が出てきたみたいだぜ。」

 

 

 海羽「嗚呼………私も空手やってみようかな~?」

 

 宏隆「やめとけ。お前小さいから、蹴り一発で吹っ飛んじまうぞ?」

 

 海羽「あ、ひど~い。」

 

 

 宏隆「…あ、すまん。ひどい事言っちまったか?」

 

 海羽「ううん。(満面の笑みで)これでいいんだよ。思った事をそのまま言えば。」

 

 

 宏隆「どうも、思った事が無意識に出ちまうみたいだ。」

 

 海羽「それがいいんだよ。

 

 思ってたことがそのまま無意識に出るって事は、それほど相手と楽しく話してるって事なんだから………。

 

 ねえ、宏隆君は悪意あって言ってた?」

 

 宏隆「い………いや?」

 

 海羽「ね。宏隆君は、それほど私と楽しく話していて、それだからこそ思った事をそのまま私に言えたって事なんだよ。」

 

 

 宏隆「………そういう事か………。」

 

 宏隆はこの時、海羽の言った事が理解でき始めていた。

 

 

 海羽「他の友達もそう。友達と遠慮なく話し合ってるって事は、それほどお互い友達に心を開いていて、だから自然と何も考えずに思った事が言えるんだよ。

 

 もし悪意があるのなら、それこそもっと酷い事を言うはずだよ。」

 

 

 その時、宏隆は初めて理解できた。

 

 

 友達などとの会話に出てくる言葉は、それほどお互い心を開いている証。

 

 だからこそ自然に思った事が言えるのであるため、決して悪意があってではないという事を。

 

 

 宏隆「………どうやら、俺の方が頭が固かったみたいだな。」

 

 海羽「うふ、やっと分かってくれた?んもう、意外と鈍いんだから。」

 

 宏隆「お前こそ、意外と頭いいじゃねーか。」

 

 海羽「あーっ、何よそれ!」

 

 宏隆「…ふふふふふ、」

 

 二人は可笑しくなったのか、笑い合っていた。

 

 

 無事に、孤独な一人の学生を救うことに成功した海羽。

 

 

 …だが、そんな海羽の様子を遠くからこっそり伺っている一人の学生がいた。

 

 

 海羽とは幼なじみの、経済学部在学の『桜井敏樹』である。

 

 彼は海羽とは幼馴染であり、ルックス良しの好青年だが、海羽とは違って劣等生であるが故に麟慶大学に入れず、海羽とは別の低レベルの大学に通っていた。

 

 だが、その大学が理由(ワケ)あって閉校となり、学力向上等のために特別採用で麟慶大学経済学部に入学した。

 

 そして彼と海羽は大学で櫂と真美と知り合い、友達になった。

 

 

 ………だが、皮肉にも経済学部は低レベルの生徒も多かった。

 

 そのため、彼は学力の低さや人見知りの激しさを露骨に馬鹿にされ、酷いいじめに遭う日々を送っている………。

 

 

 そのため、彼は今では心を閉ざし気味であり、大学も最近休みがちになっているのである………。

 

 

 今日は海羽のいる商学部が豆まきをやると知って、ちょっとストーカー気味(?)に様子を見に来ていたのである。

 

 

 敏樹「いいな…海羽。

 

 俺と違って新しい友達ができてるぜ…。」

 

 

 そう呟きながら、羨ましそうに海羽を見つめる桜井。

 

 ………だが、その一方で彼は、そばにある鉄のフェンスを何やら震えるほど強く握っていた…。

 

 そして顔も、徐々に暗いものへと変わっていく、、、。

 

 それはまさに、心にある深い闇が溢ているようであり、またそれを必死に抑えているように見えた。

 

 

 敏樹「…どうせ俺は………誰からも恵まれないんだ………!」

 

 

 そう呟くと、桜井はそのまま何処かへと歩き去って行った…。

 

 

 

 後に、闇落ちしてしまうことになる桜井、、、。

 

 そして海羽もまた、この頃はまだ知るはずもなかった………。

 

 幼なじみの闇落ち、そして自分がソルに選ばれたのは、その事も関係している事を、、、。

 

 

 

 校門まで宏隆と一緒に歩いた海羽。

 

 ここからは別れることにした。

 

 

 海羽「じゃあ、またね。あと、県大会、頑張ってね。」

 

 宏隆「ああ。お前に言われるまでもなく、優勝してくるぜ。」

 

 海羽「ふふ、すっかり自信を取り戻したみたいね。」

 

 宏隆「ははは、これもお前のおかげだ海羽。

 

 じゃあ、俺これから自主練しに行くから、じゃあな。」

 

 海羽「うん。じゃあねー。」

 

 

 海羽は手を振りながら、歩き去って行くひを見送った。

 

 

 そして自分もまた、帰り道をルンルンと歩き始める。

 

 海羽「明日は確か晴れだったね……朝から散歩でもしよっかなー?土曜日だし。」

 

 

 “ガッ”

 

 

 海羽「!ああっ、ごめんなさい!」

 

 

 私、眞鍋海羽は、ルンルンと道を歩いていると一人の女性にぶつかってしまい、慌てて謝った。

 

 

 ???「ああ、気をつけるんだぞ。」

 

 

 でもその女性は怒ることなく、私に一言そう言って歩き去って行った、、、。

 

 

 なかなか綺麗な人で、どこか冷たい感じがするけど…悪い人じゃなさそうだね。

 

 

 でも、何だろう?………あの女性を見た瞬間、何やら妙な胸騒ぎを感じたわ、、、。

 

 まるであの人が、普通の人間じゃないみたい………。

 

 

 気のせいかな?明日が楽しみでそう感じるだけかも。

 

 私は気持ちを切り替えて、また帰り道を歩き始めた。

 

 

 明日もいい日になりますよーに♪

 

 

 

 海羽と別れたばかりの宏隆は、自主練をしようと行きつけの体育館目指して歩いていた。

 

 その時、ある事に気がついたのかふと立ち止まる。

 

 宏隆「あ、そういやあ俺、まだ豆を食ってなかったな。」

 

 そう言うと宏隆は、先ほど節分大会の際に貰った豆袋を取り出し、数粒手に出して年の数だけ数え始める。

 

 宏隆「5、6、7、…ん?何だこれ?」

 

 豆を数えてる最中、宏隆は何かに気づく。

 

 

 それは、手に数粒ある白い豆の中に、一粒だけ何やら赤い豆が紛れていた事だった、、、。

 

 

 宏隆「お、赤い豆とは珍しいな。何か縁起がいいかもしれね。

 

 よし、これを8粒目っと…」

 

 

 やがて宏隆は、年の数(19)の豆を数え終えた。

 

 

 宏隆「県大会で優勝できますように…!」

 

 

 そう言うと手に置いた豆を一気に頬張る。

 

 そしてそれを噛み砕きながら再び体育館目指して歩き始めた、、、。

 

 

 その一方で、そんな宏隆を少し遠くから見つめているのは………先ほどの老婆であった。

 

 ???「ふっふっふ…あの男、赤い豆を食べたな〜。

 

 我々鬼の、天下の時は近そうだ。 ひぇーっへっへっへー!」

 

 老婆は不気味に笑いつつ、その場から姿を消した。

 

 

 …はて、あの赤い豆とは一体何なのであろうか、、、?

 

 そして老婆は一体何を企んでいるのであろうか、、、?

 

 

 

 

 “ガラガラドガシャーン”

 

 

 その夜、霞ヶ崎とは別の街で全く突然に、どこからともなく巨大な怪獣らしきものが出現して暴れ始めた!

 

 夜空が曇り、雷と共に現れたその鬼のような姿をした怪獣は超獣であり、『鬼超獣オニデビル』である!

 

 

 オニデビルは怪力を活かした豪腕で建物を次々と破壊していく。

 

 

 一方でその様子を、またしてもさっきの老婆が逃げ惑う人々の波の中で見ていた。

 

 

 ???「ふふふ…逃げろ逃げろ。鬼をいじめた報いを受けるがいい。ひっひっひ…。」

 

 

 老婆の感情に同調するかのように、オニデビルは雄叫びをあげつつ破壊のペースを上げていく…!

 

 

 節分の日に鬼の怪物が現れる………これほど縁起の悪いことはないであろう………。

 

 

 ただ一つだけ分かったことは、この老婆は何かしらの目的でやって来た侵略者かもしれないという可能性が大きくなったと言うことだろう。

 

 

 オニデビルの猛威が逃げ惑う人々にまでに及ぼうとしたその時、

 

 

 “ドガーン”

 

 

 突如、どこからともなく飛んで来た一つの光がオニデビルに体当たりをし、それによりオニデビルは小さな爆発と共に転倒する。

 

 

 そしてその光は大きく光って人型へとなっていき、やがてその無数のリング状の光の中から一人の巨人が現れた。

 

 

 赤が主体のボディカラーにウルトラセブンを思わせる真剣な顔つき、胸部の銀のプロテクターが特徴の正義の巨人。

 

 

 現れたのは『ウルトラマンジャスティス(スタンダードモード)』である!

 

 

 ウルトラマンジャスティス。それは『ウルトラマンコスモス』と同じく別宇宙『コスモスペース』出身のウルトラマンであり、その宇宙において宇宙正義を司る存在『デラシオン』の勢力に属するウルトラマンである。

 

 嘗てデラシオンが、害悪になると予見した『異形生命体サンドロス』に2000年の猶予を与えて見逃したが、その結果サンドロスが邪悪な存在になってしまった事により、その責任感からサンドロスを倒すべく追って戦っていく内に地球で初めてコスモスと出会い、協力してサンドロスを倒す。

 

 その後、デラシオンによって今度は地球が2000年後に害悪になると予見された為に、デラシオン代理として『グローカー』と共に地球に攻め入った事もあり、その際に一時コスモスと対立している。

 

 だが、それでも諦めない地球人や地球怪獣、更に子犬を助けようとした少女の優しさに触れた事により心を動かされ、デラシオンに反旗を翻してコスモスと共にグローカー達と戦い、更にデラシオンの説得に成功した事により地球のリセットを止めたこともある。

 

 このようにジャスティスは、幾度かコスモスと共に戦った事があるのだ。

 

 

 そしてその後もコスモスペースにて、デラシオンのもとで宇宙の平和のために尽力していたと思われるが、今回何かワケがあるのか、コスモスペースからこの世界にやって来たのである。

 

 

 ジャスティスはオニデビルの方へ向いてファイティングポーズを取り、オニデビルもジャスティスに気づいて吠える。

 

 

 ジャスティスは高速で側転、バック転をしながら接近した後、右足蹴り(ジャスティスキック)、正拳突き(ジャスティスパンチ)をボディに叩き込んで牽制し、打撃が炸裂するたびにその部位に小さな爆発が起こり火花が飛び散る。

 

 オニデビルも負けじと右手でジャスティスの首を掴んで締め上げ、苦しんでる隙に左手で殴り飛ばす。

 

 仰向けに倒れたジャスティスに、オニデビルは更に攻撃を加えようと接近する。

 

 

 超獣の中でも喧嘩っ早いと言われる程短気な性格のオニデビル。戦いを仕掛けてきたジャスティスに容赦なく襲い掛かる。

 

 

 仰向けに倒れていたジャスティスは、跳ね起きで起き上がるとカウンターの右足蹴りを腹部に打ち込み、更に一回転して右腕の肘から先を右の脇腹に叩き込み、更に左拳の裏拳を顔面に叩き込む。

 

 だが、オニデビルは少し怯みつつも裏拳が顔面に当たった直後にジャスティスの左腕を掴み、そのまま数回スイングして放り投げるが、ジャスティスは空中で体勢を立て直して着地する。

 

 

 オニデビルは角を赤く光らせてそこからショック光線を放つが、ジャスティスはそれを横に跳んでよけると同時に右手を突き出して『ダージリングアロー』を放つ!

 

 光の矢はオニデビルの胸部に命中して爆発。

 

 更にオニデビルが怯んでる隙に、受け身を取って着地した後右拳を突き出して攻撃光線『ジャスティススマッシュ』を放ち、オニデビルのボディに命中させて追い打ちをかける。

 

 

 オニデビルの猛攻を回避しつつ、戦いを優位に進めていくジャスティス。

 

 

 劣勢になりつつあるオニデビルに気付いた老婆は、、、

 

 ???「えええい!このままでは分が悪い。

 

 宿那鬼!!」

 

 

 老婆がそう叫ぶと、必殺技の体勢に入ろうとしたジャスティスの前に突然、目では捉えられないほどの素早い動きで“何か”が現れ、それがジャスティスの周りを何度もすれ違い始め、その度に何やら小さな衝撃が何度もジャスティスを襲う!

 

 それはまるで、身体が何度も斬られているかのようであり、体勢が崩れたジャスティスはその場倒れ込む。

 

 

 ジャスティスを何度も斬りつけた“何か”はオニデビルの横で止まってその正体を現す。

 

 

 それは、またしても鬼のような姿をしており、頭部の表と裏に顔があるのが特徴の鬼『二面鬼 宿那鬼(すくなおに)』である!

 

 オニデビルの助太刀で現れた宿那鬼は、高速移動をしながら手に持つ刀でジャスティスを斬りつけたのである。

 

 

 オニデビルは、現れた宿那鬼と腕をクロスさせる。はて、奴らは同じ鬼だけあって仲がいいのだろうか、、、?

 

 

 ジャスティスはふらつきながらも立ち上がろうとするが、オニデビルは角からショック光線を放ち、宿那鬼も口から熱戦を放つ!

 

 

 二つの光線はジャスティスの前方や周囲で爆発し、ダメージを受けると共にその爆風により視界が塞がれる。

 

 その隙に二体の鬼は、降り注ぐ雷と共に姿を消した。

 

 

 そして爆風が消えた頃には、既に二体の鬼の姿はジャスティスの目の前にいなかった、、、。

 

 

 ジャスティス「………逃げられたか………。」

 

 

 敵に退散されたジャスティスは立ち上がり、一言そう言うと光に包まれてそのまま小さくなっていく。

 

 そしてそのまま何処かへと飛んでいく。

 

 

 

 退散するジャスティスを見つめる老婆。どこか睨みつけるような表情になっていた。

 

 

 ???「ウルトラマンめ〜…同じ宇宙人でありながら、人間の味方しおって…

 

 な〜まいき〜〜〜!!」

 

 

 …これでハッキリと分かった。

 

 この老婆は宇宙人だと言う事を………!

 

 

 先ほどの言動を見る感じでも、恐らくオニデビル達も奴が送り込んだのであろう。

 

 しかし、奴の目的は一体何なのであろうか?

 

 オニデビル、宿那鬼とどちらも“鬼”の怪獣・超獣であり、節分で鬼を追い払う(いじめる?)人間を憎んでいるため、もしかしたら奴もまた、鬼のような姿をした宇宙人なのかもしれない、、、!

 

 

 

 その頃、突然現れて暴れたオニデビルによって怪我を負った人々が次々と救急隊によって運ばれていたが、その中でも傷が重いのか、一際苦しんでいる一人の女性がいた………。

 

 その女性は苦しみながらも、何やら両手にお守りの様な物を握りしめていた………………。

 

 

 

 小さな光となったジャスティスはとある場所で止まり、そして人間の姿に変わる。

 

 

 ジャスティスはこのように『ジュリ』と言う名で地球人の姿になる事ができるのだが、なんとその姿は“女性”なのである!

 

 “ウルトラマン”でありながら人間の姿になる時は女性の姿になると言う極めて珍しいタイプでもあるウルトラマン・ジャスティス。

 

 

 果たして彼(彼女?)の本当の性別は男なのか?女なのか?………ここがある意味ジャスティス最大の謎である、、、。

 

 

 ジュリは手に持っているバッジ状のアイテムを左胸に付ける。

 

 これはジュリからジャスティスの姿に戻る際に使用する変身バッジ『ジャストランサー』であり、中央にカラータイマーのような形の青い石が埋め込まれていて、左側に羽状のパーツが一枚あるのが特徴である。

 

 

 するとジュリは、精神統一するようにそっと目をつむる。

 

 そして、テレパシーで誰かと話を始めた。

 

 

 ジュリ『………すまない。また奴らに逃げられてしまった。』

 

 

 すると、ジュリとは違う場所にいるその者はテレパシーに応える。

 

 

 ???『そうか………引き続き捜索を続けていてくれ。

 

 私は引き続き、“奴”を探すことにする。』

 

 

 ジュリ『分かった。宇宙正義に基づき、必ず奴らを捕える。』

 

 

 ???『すまないな。私の任務に協力してくれて。』

 

 

 ジュリ『奴は偶々とはいえ、コスモスペースを荒らした………私はただ、その制裁を与えるために追っているだけだ。』

 

 

 ???『どんな理由であれ、平和のために行動しているのは私も君も同じだよ。

 

 考えは違えど志しは同じ。それが私たちウルトラ戦士というモノだよ。』

 

 

 ジュリ「………志しは………同じ…か……。」

 

 ジュリは男の意味深気味な言葉を考えるように、上を向いて呟く。

 

 

 ???『では、引き続き頼むぞ、ジュリ。』

 

 

 ジュリ『了解した。』

 

 

 ジュリはテレパシーを止め、そのまま何処かへと歩き去って行った………。

 

 

 しかし、ジュリと話していた男とは何者なのであろうか………?

 

 そして、彼の探している“奴”とは一体何なのであろうか………………?

 

 

 

 そして翌日、そんな昨夜の出来事を知る事もない海羽は目を覚ました。

 

 

 私、眞鍋海羽は新しい朝に目を覚ました。

 

 

 ベッドから起き上がってカーテンを開けると、そこから射し込む日差しで確信する本日快晴!

 

 今日もいい一日になりそうな予感。

 

 

 朝食を取ってパジャマから着替えて、早速外に出掛けて散歩を始める。

 

 まだ2月という事もあって肌寒いけど、比較的日が照ってるから少し暖かくて気持ちいいわ。

 

 

 河川敷を歩くと、そこを下ったところの川の近くの草むらでは、親子でキャッチボールをしてたり、サッカーをしているグループとかがいたりと楽しそうな光景が続いていて見ているこっちも楽しくなれる。

 

 

 小鳥の鳴き声も歌っているように聞こえ、今日一日、皆が楽しく過ごせる平和な一日になる!

 

 

 ………そう思ったその時、

 

 

 海羽「ん?」

 

 

 私は、前の遠くから誰かが歩いて来るのに気づいて反応をする。

 

 何だか、どこかで見たことあるような人だわ………。

 

 

 やがて、その人が近くまで歩いて来ると、私はその人が誰なのか気づく、

 

 昨日親しくなった佐藤宏隆君だわ。

 

 

 海羽「あ、宏隆君。おはよ~。」

 

 

 私は元気よく挨拶をしてみる………

 

 

 ………でも、宏隆君はどこか元気無さそうな表情で俯いていて、何やら両腕を押さえていたわ………。

 

 

 どうしたんだろう?………昨日とはまるで違う雰囲気の宏隆君が気になった。

 

 

 海羽「どうしたの?元気無さそうだけど………。」

 

 

 すると、宏隆君は思わぬことを言い出したの………!

 

 

 宏隆「眞鍋すまない………

 

 俺………………県大会出られないかもしれない………………。」

 

 

 海羽「………………え?」

 

 

 意外過ぎる発言に私は驚愕する。

 

 昨日までは前向きだった宏隆君が、何でそんな事を言うんだろう?

 

 

 宏隆君はそのまま話を続ける。

 

 

 なんでも昨日から腕に力が入らなくて、物を持ち上げるだけでも一苦労な状態が続いているみたいなの。

 

 その異変は空手の練習の時に気付いたみたいで、普段は拳で割るのが容易いはずの瓦十枚も、力が入らずに一枚も割ることが出来ず、組手でもしっかりと相手を掴むことが出来ずに結局練習中断を余儀なくされたみたいなの。

 

 

 その後病院に行って診てもらうと、腕の筋肉が弾力を失っていて、細胞が死んでいる状態になっているみたいなの。

 

 

 入院せざるを得ない状態みたいなんだけど、県大会を近くに控えた焦りからかその事が受け入れられずに、一日だけ猶予を貰うことが出来たみたいだけど、それでも良くならなかったら入院して、県大会も棄権せざるを得ないという約束になってしまったみたい………。

 

 

 今も鞄を持っているけど、腕で持つことは出来なくて、肩にかけるのが精一杯みたいなの。

 

 

 

 宏隆君を襲った突然の謎の不幸。

 

 腕が突然力を無くした事に疑問を感じるけれど、それよりも私は宏隆君が可哀想で仕方が無かったわ。

 

 昨日、あんなに張り切ってたのに………。

 

 

 宏隆「チクショウ………県大会まであまり日はないのに………。」

 

 

 海羽「………大丈夫?宏隆君。」

 

 宏隆「大丈夫じゃねえからこんな顔してんだろ………。」

 

 

 いけない!暗くなりかけてる………!

 

 

 海羽「………大丈夫よ。ほら、まだ一日は半分以上あるし、これから頑張ればきっと………」

 

 

 宏隆「何で気安く言えんだよ………。」

 

 

 海羽「………え?」

 

 

 宏隆「頑張れば何とかなるとでも言いてえのかよ!」

 

 

 私の必死の励ましも空しく、宏隆君の苛立ちは募っていく………。

 

 

 海羽「だって、折角猶予を貰えたんだから、そんな大切な時間を使って頑張ろうよ。」

 

 宏隆「何説教臭い事言ってんだよ………時間使って頑張ろう?どう頑張りゃあいんだよ言ってみろよ!!」

 

 

 ………………完全に自暴自棄になってるわ………………。

 

 

 逆ギレで怒鳴られた事には驚いたけど…それよりも気持ちが分かるからこその可哀想な気持ちの方が強く、今にも私は泣き出しそうになっている………。

 

 ほら、さっきも言ったように、私、泣き虫だからね………。

 

 

 宏隆「どうしてだよ………!どうしてこうなっちまったんだ………チクショー!!」

 

 

 そう叫びながら宏隆君は足元の石ころを一つ思い切り蹴り飛ばす。

 

 

 “カツンッ”

 

 

 ???「!!痛っ!」

 

 

 すると、飛んで行ったその石ころが何かに当たる音がしたかと思うと、その方向から何かの声が聞こえる。

 

 それに気づいた私は、思わず泣きそうになるのが止まってその声のした方向へと目を向けてみる。

 

 

 そこには、何かがうずくまっているのが見えて来て、しかもよく見てみるとそれはまるで人間じゃないような感じがするの………。

 

 

 私は恐る恐る歩み寄ってみる。

 

 

 海羽「………あ、あの~………もしもし?」

 

 

 私が話しかけた瞬間、それは驚いたのか一気にこっちを振り向く。

 

 

 やっぱりそれな人間じゃなくて、まるで鬼そのものの姿をした未知の生物だったの!

 

 

 ???「!!!」

 

 

 海羽「!!!」

 

 

 生物は驚き、海羽もまた未知の生物がいきなり振り向いたことに驚き、お互い同時に悲鳴を上げる。

 

 

 ???「ああっ!ごめんなさい!お願い助けて!殺さないで!…」

 

 海羽「ああっ、待って!大丈夫大丈夫、殺したりはしないから…!」

 

 海羽はすぐさま正気に戻り、パニックになっている生物を宥める。

 

 

 ???「………え?」

 

 鬼のような生物も、顔を覆っていた手を恐る恐る離して海羽を見つめ始める。

 

 その開けた視線の先には、自身に向かって微笑みかける海羽の顔があった。

 

 

 そして生物も、海羽の笑顔を見て彼女が自分に害をもたらす者ではないと確信したのか顔を上げる。

 

 

 海羽「うふ、鬼なのに結構可愛い顔してるじゃん。」

 

 海羽は笑顔のままその生物に語り掛ける。

 

 

 ???「………君も、可愛い………妖精みたいだ………。」

 

 

 海羽「!?えっ!?」

 

 

 海羽は突如生物から言い返された予想外の褒め言葉(?)に、顔を赤らめて驚く。

 

 

 海羽「そっ………それよりも、貴方は誰?地球人じゃないみたいだけど………。

 

 私は眞鍋海羽。」

 

 海羽は照れ隠しも含めて自己紹介し、その生物に対しても尋ねる。

 

 

 その生物は話し始めた。

 

 

 名前は『鬼怪獣オニオン』。

 

 そう、かつて『惑星アップル』のリンゴを食い荒らしているところを、そこに生息していた苦手なニワトリに追われて地球に逃げ込み、地球でも果物を食い荒して人々を困らせていたが、その時地球で活躍していた『ウルトラマンレオ』との対決になり、最後は巨大なリンゴの木に変えられた、あのオニオンなのである。

 

 上記の通り、奴は果物が大好物なのである。

 

 

 しかし、リンゴの木にされた筈のオニオンが何故またこうやって元に戻っているのであろうか………………?

 

 

 それはさて置き、オニオンの自己紹介を聞いた海羽は少し微笑む。

 

 海羽「ふふふ、鬼の姿でオニオン………なかなか面白いじゃない。」

 

 オニオン「え?………僕の事、何とも思わないの?」

 

 海羽「何が?」

 

 オニオン「だって、僕、こんな姿だし、それに怪獣だし………。」

 

 

 海羽「そんなの関係ないよ。」

 

 オニオン「………え?」

 

 海羽「なんとなく分かるの。貴方の顔を見てると、そう思えるの。」

 

 

 実際、オニオンはさっき海羽の顔を見た際も襲い掛かる様子はなく、素直に自己紹介をしている。

 

 そういう点からも、海羽はオニオンが悪い奴じゃないと確信していたのである。

 

 

 すると海羽は、オニオンの体の数か所の傷に気付く。

 

 

 海羽「いけない、酷い傷。 すぐに手当てした方がいいかもね。」

 

 オニオン「手当てを………してくれるのですか?」

 

 海羽「うん!私の家に来るといいよ。」

 

 

 海羽の誘いを聞いたオニオンは、さっきまでの不安な表情から、嬉しそうな表情を浮かべる。

 

 

 また、その様子を見ていた宏隆も、未知の生物にも寄り添う海羽の優しさに触れたのか、表情が和らぐ。

 

 

 そして、オニオンに肩を貸して立たせている海羽のもとに歩み寄り、反対側の腕を自身の肩に回す。

 

 

 海羽「………宏隆君?」

 

 宏隆「い…いやあ………お前を見てると、俺までこうしたくなっちまったよ………。」

 

 宏隆の少し照れくさそうに言う様子を海羽は少し可笑しく感じたのか、ふと微笑む海羽。

 

 海羽「相変わらず照れ屋さんね、宏隆君は。」

 

 宏隆「お前こそ、相変わらずお人好しだな。」

 

 改めて思った事をそのまま言い合う二人は笑い合う。

 

 宏隆「さっきは…八つ当たりして悪かったな。」

 

 海羽「………ううん。気にしてないよ。」

 

 宏隆「オニオンだっけ?さっきは石をぶつけて悪かったな。」

 

 宏隆の謝罪を聞いたオニオンは、再び笑顔になる。

 

 恐らく、こんなにまで地球人に親切にしてもらったのは初めてだからであろう。

 

 

 宏隆(みんなが、「眞鍋と友達になりたい」って言う気持ちが何となく分かる気がするぜ………。)

 

 宏隆は心でそう呟きながら、海羽と共にオニオンを海羽のアパートへと案内し始める………。

 

 

 

 一方で、そんな三人の様子を少し遠くから見つめている一人の男がいた。

 

 彼は、昨夜ジュリとテレパシーで会話していた人と同一であった。

 

 

 すると、男は目を光らせて三人を見つめる。

 

 そして呟く。

 

 ???「やはり、あの少女はこの世界のウルトラマンか………いや、性格にはウルトラウーマンか。」

 

 なんと海羽がウルトラの力を持っている事を見破ったのである!

 

 だが、男はその後海羽たちのもとに行く様子はなく、歩き去って行く三人を見つめていた。

 

 

 ???「しばらくは、あの少女に任せてみるか………。」

 

 

 そう言うと男は、何処かへと去って行った………………。

 

 

 宏隆とオニオンを部屋に入れた海羽は、二人を別々のソファーに座らせ、オニオンの手当てを始める。

 

 生憎宏隆は今腕が使えないため、ソファーでその様子を見ているしかなかった。

 

 

 手当てをしてもらうオニオン。すると、海羽の表情に気付く。

 

 それは、まるで何かを哀れむかのような表情であった。

 

 

 海羽「酷いわ………誰がどんな理由でやったか分からないけど、ここまで傷つけることないのに………。」

 

 

 手当てをしながら、海羽は同情からまた泣き出してしまった。

 

 それを少し困惑気味に見つめるオニオン、そして宏隆。

 

 

 海羽「ぁ………ごめんね………こんな事になるはずはなかったの………。」

 

 海羽は慌てて涙を拭き、再度手当てに取り掛かる。

 

 

 すると、

 

 

 オニオン「ありがとう、海羽さん。」

 

 自分を気に掛けてくれる海羽に、オニオンは礼を言う。

 

 

 それを聞いた海羽は、再び笑顔になった。

 

 

 やがて手当てが終わり、次に何か食料を与えよと考えた。

 

 海羽「何か食べる?」

 

 

 それを聞いたオニオンは考えながら当たりを見渡す。

 

 すると、机の上の数種類の果物が入った籠に目が止まる。

 

 

 オニオン「あれがいい!」

 

 オニオンは嬉しそうに籠に指を差す。

 

 海羽「あ、オニオン君果物好きなんだっけ。オッケー。」

 

 籠の果物を食べ始めるオニオン。リンゴは、食べやすいように海羽が包丁で皮を剥き、うさぎ型に切ることにした。

 

 鼻歌を歌いながらリンゴを切る海羽。その様子を見ていた宏隆は、心の中で思う。

 

 

 自分もこんな風に、海羽のようにどんな者とでも仲良くなれるような人になりたいと………。

 

 

 そう思った瞬間、宏隆の表情が変わった。

 

 それはまるで、何かを打ち明ける決心をしたかのようなモノだった。

 

 

 海羽「はい、宏隆君もどうぞ。」

 

 宏隆「え?ああ、サンキュー。」

 

 海羽が皿に入れて差し出したリンゴを受け取る宏隆、その後、リンゴを食べながら海羽に話しかけ始める。

 

 

 宏隆「…なあ、眞鍋。俺、お前にいう事があるんだ。」

 

 海羽「ん?」

 

 

 海羽が耳を傾けようとしたその時、

 

 

 オニオン「ぅ………うう………。」

 

 

 海羽は、オニオンの何かに苦しんでるかのような声を聞いて、その方へと振り向く。

 

 そこにはバナナの皮を剥けずに手こずっているオニオンの姿があった。

 

 普通バナナは簡単に皮が剥けるものである。

 

 だがしかし、オニオンはどんなに力を入れても皮が剥けずにいた。

 

 

 海羽「剥けないの?私が剥いてあげよっか?」

 

 

 海羽が手を差し伸べようとしたその時、オニオンは突然バナナを机に置き、

 

 

 オニオン「やっぱりだ………手に力が入らない………………。」

 

 

 海羽「………へ?」

 

 宏隆「ん?」

 

 

 二人はオニオンの気になる発言に反応する。

 

 

 海羽(宏隆君みたいな事言ってる………。)

 

 宏隆(俺みたいな事言ってる………。)

 

 

 海羽は恐る恐る問いかけ始める。

 

 海羽「………腕に、力が入らないの?」

 

 

 すると、オニオンはこう言った。

 

 オニオン「実は、数日前からこうなんだ………。」

 

 

 海羽たちが少し驚く中、オニオンは語り始める。

 

 

 ウルトラマンレオによってリンゴの木に変えられ、その姿のままやむなく過ごしていたオニオン。

 

 

 しかしある日、何者かが全く突然に、オニオンをリンゴの木から元の姿に戻したのである。

 

 

 いきなり元の姿に戻れたことに困惑しつつも、オニオンは大喜びし、そしてリンゴの木に変えられた事で懲りて反省したのか、同時に改心したのだ。

 

 もう二度と、人の果物を勝手に食べて迷惑をかけないと………。

 

 

 だが、改心したその時、とある老婆が自身に詰め寄って来たと言う………!

 

 

 〈回想〉

 

 ???「さあ、そこの鬼の坊や、改心した褒美にこのリンゴをあげよう。」

 

 

 突如オニオンの前に現れた老婆は、オニオンに改心したお礼だとリンゴを差し出す。

 

 

 オニオン「ほ………本当?おばさん。 ありがとう!」

 

 果物大好きのオニオンは、何も警戒することなく老婆からリンゴを受け取り、ムシャムシャと食べ始める。

 

 

 すると、

 

 

 オニオン「…ぅ?………うぅぅ………。」

 

 突如、オニオンは食べかけのリンゴを落とし、どこか苦しそうに両腕を押さえ始める。

 

 

 オニオン「う………腕の力が………………。」

 

 リンゴを食べた瞬間、自身の腕の力が抜けていく異変を感じ始めたのである。

 

 

 これじゃあまるで、“〇太郎”というより“白〇姫”である(笑)

 

 

 すると、さっきまで優しい表情だった老婆が、一気に悪そうな表情に変わる。

 

 ???「ふっふっふ………まんまと罠にかかったみたいだねぇ、坊や。」

 

 突然の表情変化にオニオンは少し怯える。

 

 ???「さあ、大人しく我が鬼連合の仲間になれば、命の保証だけはしてあげるわよ~。」

 

 オニオン「鬼連合………何だ?それは。」

 

 ???「毎年節分の日に我々鬼を虐める人間どもに仕返しをするために結成された、我ら鬼怪獣の軍団だよ。」

 

 オニオン「人間に………仕返し?」

 

 ???「そうだ。節分の日に攻めればより効果的だ。“豆”という果物なんかよりもずっと美味しいものだって食べれるんだぞ~。

 

 豆は、人の肉の味がするんだ。」

 

 老婆はオニオンを誘い込むため、苦手なはずの豆をオニオンが大好きな果物よりも美味しいと大噓を言ってハメようとする………。

 

 

 ???「君だって、鬼として嫌な気分がするだろ~?

 

 それなら、我が軍に入って、人間どもを懲らしめて、鬼の強さを見せつけようではないか。」

 

 

 オニオン「………僕、そんな軍に入りたくない。」

 

 ???「な~にぃ~?」

 

 オニオン「人間が鬼を怖がるのは、あなた達みたいな鬼がいるからじゃないですか?」

 

 ???「何だとぉ~?」

 

 オニオン「鬼だって人間に対して優しくなれば、人間たちもきっと鬼を見直してくれますよ。

 

 僕はそのためも含めて、これからは人間に迷惑かけず、心を入れ替えると決めたんだ!」

 

 オニオンの決心は固かった。老婆の巧みな誘い込みを全く受け付けず、連合加入を頑なに否定する。

 

 

 だが、それにより老婆は怒りを感じ始める。

 

 ???「きいいぃぃー!同じ鬼だというのに人間の味方をするというのか!?なーまいき~!」

 

 老婆はそう叫びながら顔を手で覆う。

 

 そしてその手を一気に放した瞬間、なんと老婆の顔がさっきよりもガラリと変わってしまった!

 

 

 それは、いかにも悪鬼の如く不気味な亡霊を思い起こされるような顔をした怪人のようなモノである。

 

 

 きさらぎ星人「このきさらぎ星人に刃向かうとは身の程知らずめ!」

 

 

 遂に自身の名を名乗った『鬼面宇宙人きさらぎ星人』は、口から火炎を吹き出してオニオンを攻撃し始める!

 

 

 きさらぎ星人。奴は以前にも節分の日に別の地球に攻め入ったことがあり、その時に同じ宇宙人でありながら鬼を虐める人間の味方をする『ウルトラマンタロウ』(当時地球を守っていたウルトラ戦士)をも憎み、豆の中に閉じ込めて人間に食べさせようとした事がある。

 

 その陰謀は失敗し、タロウに地球から追い出される形で退散したのだが、あれから42年後、この世界の節分の日に再び逆襲しに来たのである。

 

 

 オニオンは怯えながら必死に火炎攻撃から逃げ始める。

 

 そして、地球外へと逃げ出そうと巨大化をした。

 

 

 それを見たきさらぎ星人もまた、光に包まれて変身・巨大化をする。

 

 きさらぎ星人の姿は巨大化と共に変わり、『オニバンバ』という鬼のような姿となった!

 

 

 オニオン「おっ………おばさんも鬼だったなんて………!」

 

 

 オニバンバ「ひっひっひ…驚くのはまだ早い!

 

 オニデビル!宿那鬼!」

 

 

 オニバンバがそう叫ぶと、奴の左右に雷と共にオニデビル、宿那鬼が現れる!

 

 奴らは鬼連合軍構成のために、きさらぎ星人により怪獣墓場から蘇ったのである!

 

 

 オニオン「ぁ………はわわわわわ………。」

 

 

 オニオンは、自身の目の前に現れた鬼連合軍に怖気づいてしまう。

 

 

 オニバンバ「鬼連合軍の一員として、怪獣墓場から蘇らせた鬼怪獣たちだ! さあ………奴を捕えろ~!!」

 

 

 オニバンバの合図と共に、鬼連合はオニオンを捕えようと一斉にかかり始め、オニオンも必死に逃亡を始める………!

 

 

 こうして、オニオンと鬼連合軍の、宇宙をまたにかけた壮大な“鬼ごっこ”が始まったのである。

 

 

 オニバンバの火炎、オニデビルの怪力、宿那鬼の剣での攻撃を受け傷を負いつつもオニオンは必死に逃げ続け、そして逃げ続けた末にこの地球に辿り着いたというわけである。

 

 〈回想終了〉

 

 

 オニオンから事情を聞いた海羽は驚きを隠せなかった。

 

 海羽「なるほどね…悪い人に追われてるんだ………。」

 

 オニオン「はい………僕は奴らから攻撃を受けつつも逃げ続け、なんとかこの地球まで逃げて来れたんです………。」

 

 海羽「それでこんな傷を………酷い事をするものね…。」

 

 宏隆「え、~と…“オニババア”………だっけ?そいつから渡されたリンゴを食べた瞬間に、腕の力が抜けたのか?」

 

 オニオン「そうです………あ、あと“オニバンバ”です。」

 

 宏隆「おっとそうだった。 いや実はな、俺もお前と同じなんだ。」

 

 オニオン「宏隆さんもですか?」

 

 宏隆「ああ。昨日節分大会の後、その節分の豆を食べた直後に腕が力を無くしたんだ。

 

 でも、俺はその原因に心当たりがあるかもしれない………さっき海羽にそれを言おうとしたんだ。」

 

 海羽「え?宏隆君何か知ってるの?」

 

 オニオン「豆………あ、そう言えばあの時リンゴをかじった時、何か別の物がリンゴに入ってた感じがしたんです。」

 

 海羽「何かが?」

 

 オニオン「ええ…何か小さな粒を嚙み砕いたような………最初はリンゴの種かなと思ったけど味的に違っていて………。」

 

 

 宏隆「やはりな。」

 

 

 海羽・オニオン「え?」

 

 宏隆「これで繋がった………脳細胞が、トップギアだぜ!」

 

 宏隆は遂に原因が分かったのか、何やら決め台詞のような発言をする。

 

 

 海羽「何か分かったの?………て言うか、何でトップギア?」

 

 宏隆「い、いや…自動車部という事もあってちょっとノリでな。」

 

 海羽に軽く突っ込まれてしまった(笑)

 

 因みに宏隆は空手部だけでなく自動車部も兼部しているのである。

 

 

 宏隆「それより、遂に分かったんだよ。腕力を無くした原因が………

 

 それは、“豆”だ!」

 

 オニオン「え?」

 

 海羽「豆?」

 

 宏隆「ああ。実は昨日眞鍋と別れた後、豆を数えて食べたんだ。

 

 その時、その豆の中に、赤い豆が一粒紛れていたんだ………。」

 

 海羽「赤い豆?」

 

 宏隆「ああ。俺は縁起が良いと思って、その豆も数に入れて食べたんだ。

 

 すると、噛み砕いて飲み込んだ直後に、腕の力が抜けていって………。」

 

 海羽「そうだったんだ………。」

 

 宏隆「間違いない………あの赤い豆は、食べた者の腕力を奪う毒の豆なんだ。

 

 オニオン、お前が食べたリンゴにも、その赤い豆が入ってたんだ。」

 

 

 宏隆が推理したその時、

 

 

 “ゴロゴロゴロ、ピシャーン”

 

 

 海羽「きゃっ!?」

 

 突如、外から雷のような音が聞こえ、思わず海羽は驚く。

 

 窓から外を見てみると、さっきまで晴れ渡っていた空が雨雲に覆われていた。

 

 

 オニオン「奴らが………奴らが来る!」

 

 海羽「え?」

 

 オニオンが気になる事を言った瞬間、

 

 

 《ふっはっはっはっはっは~! よく分かったなあ!その通りだ!》

 

 

 突如、何処からか老婆のような声が響く。

 

 きさらぎ星人の声だ。

 

 オニオン「この声………きさらぎ星人!」

 

 海羽「この世界に来たって事?」

 

 

 《彼の言う通り、お前の食べた赤い豆はオニデビルの超能力によって生み出した、食べた者の腕力を無くす毒の豆なのだよ!》

 

 海羽「やっぱり………宏隆君の推理は当たってた!」

 

 宏隆の推理通り、宏隆やオニオンが食べた赤い豆は、オニデビルによって生み出された毒の豆なのである。

 

 オニデビルはかつても節分の豆に赤い豆を混ぜて人々に矢部させた事があり、きさらぎ星人がオニデビルを復活させたのはこの能力を見込んだからというのもあるのだ。

 

 

 海羽「なんて酷い事を………!」

 

 《よく聞けオニオン! 我らは今、お前がいる所の隣の町で暴れている!

 

 大人しく出て来い………でなければ、我ら鬼連合軍が街を襲撃し、人間どもを襲わせるぞ!》

 

 

 きさらぎ星人の声を聞いたオニオンは、慌てて海羽の家から外に出ようとする。

 

 それに気づいた海羽は慌ててオニオンの腕を掴んで止める。

 

 海羽「ああっ!待って!どこに行くの?」

 

 オニオン「だって、僕が行かなきゃ多くの人間が…!」

 

 海羽「でも、折角逃げてこの星まで来たのに…!それに傷もまだ癒えてないんだから!」

 

 

 その時、宏隆が語り出す。

 

 宏隆「オニオン! お前をみすみす行かせるわけにはいかないな。」

 

 オニオン「………え?」

 

 宏隆「………実は俺、さっき病院にいた時、腕の力よりもショックな事があったんだ………。」

 

 

 彼、佐藤宏隆にとって、腕よりもショックだった事。

 

 それは、さっき行ってた病院で、とある一人の女性が入院している事であった………。

 

 

 その女性はベッドの中でも、眠りながらお守りを大事に両手で握っていた………。

 

 そう、その女性は昨夜オニデビルの襲撃によって重傷を負い、苦しみながらお守りを握りしめながら運ばれて行った女性であったのだ。

 

 

 彼女の名は『長田汐里』。

 

 宏隆とは高校の時に知り合い、仲良くなって一緒に勉強やったり弁当を食べたり、仲間内で一緒に遊んだりしていく内に互いの事を理解し合っていったという。

 

 そして彼らは今では相思相愛な関係である。

 

 だが大学生になると、麟慶大学に行った宏隆と違い汐里は浄京大学という別の大学に行くことになったため、彼らは離れて暮らさなければならない事になったのであった。

 

 だが、大学入学後も互いに連絡を取ったり電話をしたり、時折手紙を送ったりしていたため、宏隆は汐里と電話をする事が週2~3回の楽しみであり、大学生活及び部活を頑張れる支えになっていたのだ。

 

 

 だが、そんな汐里が重傷を負い、意識不明の状態でベッドに寝込んでいたのである。

 

 恐らく、腕の力を失って県大会も危うくなった状態に恋人の重傷が重なり、そのために余裕を失って先ほど海羽に八つ当たりをしてしまったのであろう。

 

 隣町での出来事であったため、汐里は超獣(オニデビル)の襲撃により重傷を負ったという事など、宏隆は知るはずもなかった。

 

 

 宏隆「…汐里がベッドで寝ているのを見た時、俺スゲーショックだった………ショックでたまらず自分を失いかけそうにもなった………

 

 だが、そう思ってる一方で、俺は“もうこれ以上、他の者が、俺たちみたいになって欲しくない”とも思った………。

 

 だからオニオン、お前をみすみす奴らに渡してたまるか。」

 

 宏隆は、腕の力を失って苦しむ自分を知り、そして恋人の重傷を知り、もうこれ以上誰かが自分たちのようになって欲しくないと強く思うようになったのだ、

 

 それは友好的であれば、オニオンのように異生物でも例外ではなかったのだ。

 

 

 宏隆の思いを聞いたオニオンは嬉しそうな表情を浮かべる。

 

 ここまで人間に愛されたのは恐らく初めてだからであろう。

 

 

 宏隆「それに………汐里へのプレゼントも、もう買ってるんだ。」

 

 海羽「…え?」

 

 宏隆「実は彼女、今月の14日が誕生日なんだ。」

 

 海羽「14日って………バレンタインデーじゃない!?」

 

 宏隆「ああ。そして俺の県大会の翌日でもある。

 

 だから、その日に俺はあいつと遊園地で会う約束をしているんだ。

 

 もちろん、サプライズとして渡したいから、単に「遊ぶため」に会うことにしてるけどね。それにあいつも、毎年の事だから俺のためにチョコレートを用意してくれてるだろうし…。」

 

 海羽「はぁ〜…素敵な話ね。愛し合う男女が、バレンタインの日にプレゼントを交換し合うなんて…!」

 

 

 宏隆「でも………汐里は今入院していて、医師によるとどんなに頑張っても全治最短1週間………。果たして約束は果たせるだろうか……………。」

 

 

 その時、海羽は宏隆の肩に手を置く。

 

 

 海羽「………大丈夫。きっと約束の日に会えるよ。だって、愛し合う男女は一際絆も強いんだから。」

 

 宏隆「………絆?」

 

 海羽「うん、“心の絆”だよ、宏隆君。それがある限り、きっと思いは通じるよ。

 

 宏隆君が今汐里さんの事を思ってるように、きっと今でも汐里さんも宏隆君の事を思ってるはずだから。」

 

 宏隆「………そうだな。腕の事もそうだが、前を向いていくぜ!」

 

 宏隆はようやくいつもの調子を取り戻しつつあった。

 

 

 海羽「宏隆君、病院に行って、汐里さんの様子を見てきてあげて。」

 

 宏隆「ああ。海羽はどうするんだ?」

 

 

 海羽「オニオン君の事は私に任せて。」

 

 宏隆「………………分かった。へますんじゃねーぞ?」

 

 海羽「ふふ、いつまでも子供扱いしないの。」

 

 宏隆「ふっ、そうだったな。じゃあな。」

 

 

 かくして、宏隆は海羽の家を出て病院へと向かい始めた。

 

 

 オニオンと二人きりになれた海羽。

 

 海羽「オニオン君………実は私、こういうモノなの。」

 

 海羽はそう言いながら、懐からハートフルグラスを取り出してオニオンに見せる。

 

 そして、自身がウルトラウーマンである事を明かしたのだ。

 

 オニオン「海羽さんが………ウルトラ戦士?」

 

 海羽「うん、だから絶対、オニオン君は渡さない。

 

 約束するよ。」

 

 海羽がウルトラ戦士だと知ったオニオンは少し安心するような表情を浮かべる。

 

 

 海羽「でも………隣町までどうやって行こう………?」

 

 オニオン「あ、それなら僕の瞬間移動“ドロンパー”で行こう。」

 

 海羽「えっ?オニオン君そんな事もできるの?」

 

 オニオン「奴らから逃亡する旅をしてる最中に知り合った“酔っぱらい怪獣ベロン”君から教わったんです。」

 

 海羽「“酔っぱらい怪獣”なんてのもいるなんて………宇宙は広いわね………………

 

 …まあとにかく、分かった。お願いするね。」

 

 

 かくして、海羽はオニオンの“ドロンパー”という瞬間移動で隣町に向かい始めた………。

 

 

 

 そして二人は隣町に着く。

 

 そこには既にオニデビルと宿那鬼が猛威を振るっており、人々は逃げ惑い、きさらぎ星人はそれを不気味に笑いながら見つめていた。

 

 

 海羽「いけない!…早く行かないと…」

 

 海羽がハートフルグラスで変身しようとしたその時、

 

 

 きさらぎ星人「ふっふっふ…やっと来たなオニオン。」

 

 いつの間にか目の前に現れていた老婆の姿のきさらぎ星人に気付き立ち止まる。

 

 

 海羽「あなたね…オニオン君に酷い事をしたのは。」

 

 きさらぎ星人「酷い事?我らの言う事を聞かないオニオンが悪いのだよ。

 

 さあオニオン、考えは変わったかね?」

 

 オニオン「嫌だい!僕は絶対、お前らみたいな乱暴はしない!」

 

 きさらぎ星人「!何だとっ!?………また痛い目に遭いたいのか!?」

 

 オニオン「大丈夫だい!このお姉ちゃんが守ってくれるもん!」

 

 きさらぎ星人「何ぃ!?」

 

 

 オニオンがそう言うと、海羽は颯爽と一歩前に進み、右手にハートフルグラスを持つ。

 

 海羽「これ以上罪の無い者への乱暴は許せない!

 

 (指を差して)覚悟しなさい!きさらぎ星人“オニババア”!」

 

 

 きさらぎ星人「がくっ!(ずっこける)

 

 “オニババア”じゃない!“オニバンバ”じゃあ!!」

 

 海羽「………あ、間違えちゃった…。

 

 (右手を後頭部に当てて首をかしげて)ごめんちゃい、オニババロアさん。」

 

 きさらぎ星人「余計に違うわ!!」

 

 海羽「あ、また間違えちゃった…(少し舌を出して)てへっ。」

 

 決めたはずが盛大に間違えてしまい、少し照れる海羽。

 

 

 きさらぎ星人「ええい、生意気な小娘め!オニオンももはや使えない。

 

 オニデビルよ、やってしまえ!」

 

 きさらぎ星人がそう言うと、オニデビルは角を光らせてショック閃光を海羽たち目掛けて放つ!

 

 海羽はオニオンを庇いつつ、周囲に爆発が起こる中逃げ始める。

 

 爆発により土砂や石のつぶてが飛び散る中、海羽は怯えるオニオンを連れて必死に逃げ続ける。

 

 しかし、やがて爆発が自分たちの間近に起こり、それにより二人とも吹っ飛んで地面を転がる。

 

 

 きさらぎ星人「よしそこだ。宿那鬼よ、止めを刺せ!」

 

 きさらぎ星人の指示を受け、宿那鬼は刀を構えて横たわる海羽たち目掛けて前進する。

 

 

 万事休すと思われたその時、

 

 

 海羽たちの横に、一人の女性が現れる。

 

 それは、昨夜オニデビルを迎え撃ったウルトラマン・ジャスティスの人間態・ジュリであった。

 

 海羽はそのジュリを見上げると、驚くように目を見開く。

 

 

 海羽「あっ………貴女は!昨日の………!」

 

 

 そう、実は、海羽が昨日ぶつかった女性はこのジュリだったのである!

 

 

 きさらぎ星人「ジャスティスか!? ここまで追って来おって、しつこい奴だ!」

 

 海羽「………ジャスティス?」

 

 

 すると、ジュリは海羽の方を向く。

 

 ジュリ「ここは私に任せろ。」

 

 

 ジュリはそう言うと変身を決意し、胸に付けているジャストランサーを右手に取る。

 

 すると、ジャストランサーの羽が二枚に展開し、青い石から『正義の光』が溢れる。

 

 ジュリはそのままジャストランサーを胸の中心に当て、それによって正義の光に包まれて巨大化する。

 

 

 海羽やオニオン、そしてきさらぎ星人がその光に目を覆う中、その無数のリング状の光の中から一人のウルトラ戦士が現れる。

 

 ジュリはウルトラマンジャスティス(スタンダードモード)へと変身完了したのだ。

 

 

 海羽「…あのお姉さん…ウルトラマンだったの?」

 

 海羽は現れたジャスティスを見上げて驚愕する。

 

 

 オニオン「他にもウルトラマンがいたなんて………。」

 

 

 宿那鬼とオニデビルもジャスティスに気付いて構える。

 

 ジャスティスは構えを取ると、二体目掛けて駆ける。

 

 

 ジャスティスは接近しながら宿那鬼の突き立てた刀を横にそれて避けると同時にその腕を掴み、そのまま回転しながら宿那鬼の背後にいるオニデビルに左脚蹴りを決める。

 

 次に掴んでいた宿那鬼の腕を叩き放した後、胸部に二発パンチを打ち込んだ後顔面に右拳を叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 その隙に背後からオニデビルが殴り掛かるがジャスティスは背を向けたまましゃがんで回避すると同時に後ろに回り込み、右足蹴りを背中に打ち込んで転倒させる。

 

 宿那鬼は駆け寄ると同時に刀を振るうが、ジャスティスはそれを跳躍して宙返りをしてかわし、宿那鬼の後頭部に蹴りを決めた後着地する。

 

 オニデビルは右フックを繰り出し、ジャスティスはそれを左腕で受け止めると同時に右拳を胸部に打ち込み、続けて右肘を胸部に打ち込んだ後、跳躍して右足蹴りを胸部に叩き込んで後退させる。

 

 宿那鬼は袈裟懸けに刀を振るって斬りかかり、ジャスティスはしゃがんでかわすと同時に腹部に右脚蹴りを打ち込み、次に宿那鬼が繰り出す横降りの斬撃をしゃがんでかわして後ろに回り込むと背中に右脚蹴りを叩き込む。

 

 そして背後から右手で頭部、左手で腰部を掴み、そのままジャスティスホイッパ―で大きく放り投げた。

 

 

 ジャスティスは持ち前のパワーを活かした攻撃で戦いを優位に進めている。

 

 

 それを見かねたきさらぎ星人は、

 

 きさらぎ星人「えええい小癪な!こうなれば我も自ら行き、捻り潰してくれるわ!」

 

 

 そう言うときさらぎ星人は巨大化して戦闘形態・オニバンバの姿になる。

 

 

 オニバンバ「さあ、覚悟しろ!ウルトラマンジャスティス!」

 

 ジャスティス「貴様は意図してなかったとはいえ、コスモスペースを荒らした………宇宙正義に基づき、貴様にはそれなりの制裁を受けてもらう。」

 

 オニバンバ「ほざけ!」

 

 

 オニバンバの乱入により三対一の戦いに持ち込まれたジャスティス。だがそれでも怯まず立ち向かう。

 

 オニバンバは金棒を豪快に振り回して殴り掛かるが、ジャスティスはそれをことごとくかわしていき、やがて地面にめり込んだ金棒を踏み台にして跳躍すると、そのまま落下スピードを活かして上からジャスティスパンチを打ち込もうとする。

 

 だが、その隙に背後からオニデビルのショック閃光を受けてしまい、ダメージを受けると共にバランスを崩して地面に落下してしまう。

 

 そして宿那鬼は横たわるジャスティス目掛けて刀を突き立てる。

 

 ジャスティスはそれを即座に転がってかわすが、その後も宿那鬼は刀を何度も突き立て続け、ジャスティスはそれを転がり続けてかわしていく。

 

 刀を避けられる宿那鬼は今度は攻撃を熱戦へと切り替え、地面を転がっていたジャスティスはそれを喰らってしまいダメージを受ける。

 

 ジャスティスは立ち上がって、接近してきた宿那鬼と組み付くが、その隙に無防備となった腹部に右脚蹴りを喰らってしまい吹っ飛ぶ。

 

 

 鬼連合軍の連携により、徐々に不利な状況になっていくジャスティス。

 

 ジャスティスは体勢を立て直した後上空に飛び上がる。

 

 そして上空に静止したまま、ガッツポーズのようなポーズを取ってエネルギーを溜め、両手を前に突き出して衝撃光線『ビクトリューム光線』を放つ!

 

 これはジャスティス(スタンダードモード)最強の必殺技であり、かつてコスモス(エクリプスモード)の必殺光線・コズミューム光線との同時発射でサンドロスを撃破した事があるのだ。

 

 

 光線はオニバンバ目掛けて飛んで行く。ここで勝負が決まるか!?

 

 

 だが、しかし!

 

 

 オニバンバ「ふんっ、はあっ!!」

 

 

 “ズゴーン”

 

 

 ジャスティス「何っ!?」

 

 

 なんと、オニバンバは迫り来るビクトリューム光線を金棒の一撃で弾き飛ばしてしまたのだ!

 

 必殺光線が弾き返されるという想定外の出来事に驚愕し、動揺するジャスティス。

 

 

 その隙に、オニデビルのショック光線と宿那鬼の熱戦の同時攻撃を受けてしまい、爆発すると共に地面に落下する。

 

 

 うつ伏せに倒れるジャスティスは、何とか立ち上がろうと右膝、左足を地面に付くが、背後からオニバンバに背中を蹴られてバランスを崩し、その隙に背後から金棒で首を絞められ始める!

 

 

 オニバンバ「はっはっはっは!この金棒は強化されている!そんな光線にやられる、オニバンバ様ではないわ~!」

 

 

 ジャスティスを痛ぶるオニバンバは高笑う。

 

 

 ………しかし君、強化しているとはいえジャスティスの必殺光線を弾き返すとは………………どんだけ自身と金棒を鍛えて来たんだ!?(笑)

 

 

 

 海羽「はっ、ジャスティスさんが危ない!」

 

 ピンチに陥るジャスティスを見る海羽も変身を決意してハートフルグラスを取り出し突き出す。

 

 

 だがその時、

 

 海羽「いっ!………。」

 

 海羽は何やら苦しむように右腕を押さえ、そのはずみでハートフルグラスを落としてしまう。

 

 オニオン「………海羽、さん?」

 

 どうやら海羽は、先ほどオニデビルの攻撃からオニオンを庇いながら逃げていた時、転んだ際に打撲によって右腕を痛めてしまったようである!

 

 

 

 同じ頃、病院で寝ている汐里の傍で手を握っている宏隆は、何やら妙な胸騒ぎを感じていた。

 

 宏隆「海羽………!」

 

 

 

 腕を痛めている海羽。だが、それでも笑顔でオニオンの方を向き、

 

 海羽「大丈夫………オニオン君は、私が守るから!」

 

 

 海羽はそう言うと、地面に落ちたハートフルグラスに向かってうつ伏せに倒れる形でハートフルグラスを目に装着。

 

 そして赤とピンクの光に包まれて巨大化していきウルトラウーマンSOL(ソル)へと変身する!

 

 

 しかし、ソルは現れるや左手で右腕を押さえている。やはり痛みは変身後も残るようである。

 

 

 オニバンバ「うぬっ!?新たなウルトラ戦士か!やっつけてやる!」

 

 

 オニバンバの叫びを合図とし、オニデビルと宿那鬼がそれぞれ腕と刀を振り回して襲い掛かる。

 

 ソルは痛みに耐えつつそれらを持ち前の身軽さでかわしていく。

 

 

 オニオン「海羽さん………!」

 

 海羽「オニオン君、早く安全な所に…」

 

 

 “ドガッ”

 

 

 海羽「!!うぎゃっ!!」

 

 

 ソルは、心配するオニオンに声を掛けている最中にオニバンバの金棒の一撃を右肩に喰らって吹っ飛んでしまう!

 

 しかもそれにより右腕の痛みが更に増してしまい、もはや戦いに集中するのもままならない状態にまでなっていた。

 

 

 ジャスティス「いかんっ!」

 

 オニバンバ「おーっと!お前の相手はこの私だー!」

 

 ジャスティスは助太刀に向かおうとするが、オニバンバの妨害により向かえない。

 

 その隙にオニデビルと宿那鬼がソルに襲い掛かる!

 

 

 ソルは宿那鬼の大きく振り下ろす斬撃をなんとかしゃがんで後ろに回り込むことでかわすが、その後に宿那鬼の振り向き様の一直線の斬撃を右横腹に受けてしまい、その斬られた部位は爆発して火花が飛び散る。

 

 次にオニデビルがソルの腹部に右拳を打ち込み、そのまま右手だけで持ち上げて思い切り放り投げる!

 

 ソルは数回回転しながら地面に叩き付けられる。

 

 

 一方のジャスティスもオニバンバに苦戦しており、金棒の一撃を胴体に喰らって爆発と共に火花を散らしながら吹っ飛ぶ。

 

 

 ジャスティスとソルは合流するように同じ場所に落下する。

 

 

 オニバンバは金棒で思い切り地面を叩く。

 

 すると、その金棒の当たったところから、EXレッドキングのフレイムロードよろしく、爆発のような衝撃波が一直線に走り、オニバンバ前方にいるジャスティスとソルに直撃する。

 

 続けてオニデビルがショック閃光、宿那鬼が熱戦を発射し、ジャスティスとソルはそれが周囲で爆発したことにより、更なるダメージを受けて倒れ伏せてしまう。

 

 

 ソルより前に変身して戦っていたジャスティス。エネルギーをだいぶ消耗したのか胸のカラータイマーが赤に点滅を始める!

 

 

 オニバンバ「そろそろ終わりにするぜ~!」

 

 

 勝ち誇るオニバンバ。

 

 

 ソルはもはやここまでと、戦意を喪失しかけていた………。

 

 

 オニオン「ああっ、海羽さーん!!」

 

 

 その時、オニオンの叫びを聞いてソルはふとその方向を向く。

 

 

 そして、ある事を思い出す。

 

 海羽(………そうだ………約束したんだった………………オニオン君は、私が守るって………………。

 

 それに………宏隆君も、自分と汐里ちゃんのために今前向きになってるんだもん………………。

 

 だから、………私も絶対に諦めない!)

 

 

 ソルが心でそう叫んだ時、

 

 

 ???『そうだ………最後まで諦めない事………その心があれば、必ず道は開ける………!』

 

 

 どこからか別の声が、ソルの心中に語り掛ける。

 

 

 海羽「ん?誰?この声は………。」

 

 

 

 ソルが辺りを見渡しているその時、少し離れた場所で一人の男がその戦いの様子を見上げていた。

 

 

 その男はどこか真剣な目つきで見上げている。まるで戦いに向かう戦士であるかのように。

 

 

 ???「この世界のウルトラマンよ…、」

 

 

 男は遂に決心したのか、そう言うと懐からとあるアイテムを取り出す。

 

 

 赤いゴーグルの形状をしたそのメガネ上のアイテムこそ、彼が光の戦士である証。

 

 

 そのアイテムの名は『ウルトラアイ』。

 

 

 彼こそ、『ウルトラセブン』の人間体『モロボシ・ダン』なのだ!

 

 

 ウルトラセブン。それはM78星雲・光の国出身のウルトラ戦士であり、ウルトラ兄弟の一員でもある。

 

 彼はかつては恒点観測員340号として太陽系で活動していたが、その最中に地球を訪れた際に地球が数々の侵略者から狙われている事を知り、勇敢な地球人・薩摩次郎の行動に心を打たれ、彼をモデルに「モロボシ・ダン」の姿となって防衛軍・ウルトラ警備隊に入隊し、侵略者の魔の手から地球を守り抜いた。

 

 怪獣や侵略者と戦い続けた事による過労から一度は地球を去るが、後にウルトラ兄弟の3番目に加えられ、その後も他の兄弟たちのサポートをしたりなどして度々地球を訪れている。

 

 

 ついでに、再び地球防衛の任務に就いた際、敵の攻撃により変身能力を失い、ダンとして宇宙パトロール隊・MACアジア支部の隊長となって活躍し、当時地球を守っていたウルトラマンレオを地獄の鬼特訓により鍛え上げたという事も、付け加えておこう。

 

 

 そして今回、オニバンバの暗躍を阻止するために活動し始め、この世界にやって来たのである!

 

 

 ダン「私も行くぞ!」

 

 

 (BGM:ウルトラセブン(full))

 

 

 ダンはそう言うと、右手に持つウルトラアイを前に突き出す。

 

 

 ダン「デュワッ!」

 

 

 そして、掛け声と共に目に装着する。

 

 

 “ギュイイイイウウウゥゥゥゥゥン”

 

 

 そして特徴的な効果音と共にウルトラアイのレンズ部分に火花が回転し、やがてダンの全身が頭部から順にウルトラセブンの姿に変化する。

 

 そして完全に変身が完了した後、両腕でガッツポーズのようなポーズを取って巨大化する!

 

 

 

 オニバンバ「………ああん?」

 

 ジャスティス「………ん?」

 

 海羽「………あれは………?」

 

 

 オニバンバにジャスティス、そしてソルが気付いて目を向けた先には、現れた一人の巨人が雄々しく立っていた。

 

 

 全身が赤く、首周りから肩にかけてのプロテクター、六角形の目を持つ真剣な顔つきに頭部に装着した宇宙ブーメラン『アイスラッガー』が特徴の光の戦士。

 

 

 今ここに、ウルトラセブン参上!である。

 

 

 ジャスティス「来てくれたか…ウルトラセブン………。」

 

 

 海羽「………何だろう?………あの姿………まるで貫禄が違う………………!」

 

 ソルは一目見ただけでセブンから何やら特別な威厳を感じていた。

 

 それもそのはず、彼はウルトラ戦士だと二番目に地球に来ている、所謂ソル達よりも昔から地球を守ってきているため、正にソルにとっては大先輩なのである。

 

 

 オニバンバ「邪魔者が増えたか!? なら倒すまでだ、かかれ~!」

 

 ソルがセブンに感心する中、鬼連合軍はセブンを攻撃しようと一斉にかかり始める!

 

 

 セブン「デュッ!」

 

 セブンは掛け声と共にファイティングポーズを取ると、先手を切って斬りかかってきた宿那鬼の斬撃をすれ違いざまにかわし、次の宿那鬼の斬撃を背を向けたまま逆手持ちのアイスラッガーでそれを防ぐ。

 

 そしてそのまま左足の後ろ蹴りで刀を蹴り上げた後、振り向き様に右脚蹴りを腹部に打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 次にオニバンバの横降りの金棒での打撃を跳躍して受け前転で身を取ってかわした後、側転して接近して右脚の横蹴りを打ち込む。

 

 オニバンバは怯まず金棒を振り下ろすがセブンはそれをかわすと同時に後ろに回り込み両手で背中を突き飛ばす。

 

 オニバンバ「おのれっ!」

 

 オニバンバは振り向き様に口から火球を発射して攻撃するが、セブンはそれを横にジャンプしてかわすと同時に、左手を胸に当てて額から光線『エメリウム光線(Bタイプ)』を発射!

 

 光線が胸部に命中したオニバンバは爆発と共に吹っ飛ぶ。

 

 

 次にオニデビルがセブンに襲い掛かろうとする。

 

 セブンは片膝を付いた状態で両手を頭部に当てた後一気に振り下ろす。

 

 するとオニデビルは一回転して転倒した。

 

 これはセブンが体得している能力『ウルトラ念力』であり、このように怪獣を投げ飛ばす他に、気象を変化させることも可能なのだ。

 

 

 立ち上がったオニデビルは反撃でショック閃光を放ち、セブンはそれを跳躍してかわすと同時に宙返りしてオニデビルの前に着地。

 

 

 セブン「ヤーッ!」

 

 

 “ドガッ”

 

 

 そして両足のドロップキックを叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 セブンのキック力はダイナマイト200発分の威力があるため、それを喰らったオニデビルは数十メートル吹っ飛んでしまっている。

 

 

 

 ソル「………すごい………。」

 

 感心するソルたちの元にセブンは歩み寄る。

 

 

 セブン「君が、この世界のウルトラ戦士か。よく頑張ったな。ここからは協力と行こう。」

 

 

 そう言うとセブンは両手を額に当ててビームランプから照らすライトのような光線を発射し、それを浴びたソルはカプセルの様な光に包まれ、そしてその光が消えた後にソルはとある変化に気付く。

 

 それは、さっきまで痛んでた右腕が治っていたのだ!

 

 

 海羽「…はぁあ、腕が治ってる!」

 

 

 先ほどの光線は『ウルトラカプセル光線』であり、かつてオニデビルとの戦いで両腕の力を失い足を負傷したウルトラマンエースを治した事もあるのである。

 

 

 セブンは今度は同じポーズでジャスティスに別の光線を照射する。

 

 光線をカラータイマーに浴びたジャスティスはエネルギーが回復したのか、カラータイマーが青に戻る。

 

 恐らくこれはウルトラ戦士にエネルギーを与える『ウルトラチャージ』であろう。

 

 

 かくして、セブンにより力を取り戻したジャスティスとソルはセブンをセンターに横に並び立つ。

 

 

 海羽「ありがとうございます。セブンさん(ピース)。」

 

 セブン「行けるか?君たち。」

 

 ジャスティス「もちろんだ。」

 

 海羽「オッケーです!」

 

 

 オニバンバ「えええいおのれ! 人間の味方する者はみんな痛めつけるまでだ~!」

 

 

 オニバンバも左右にオニデビルと宿那鬼を並ばせて構える。

 

 

 それを見ていたオニオンは、

 

 オニオン「僕も………僕も海羽さんの役に立ちたい………!」

 

 

 ソル(海羽)の力になりたい………そう言う想いが強くなったオニオンは巨大化する。

 

 

 海羽「………オニオン君!」

 

 オニオン「海羽さん………これを使ってください!」

 

 オニオンはそう言いながら、ソル目掛けて自身の武器でもある金棒を投げる!

 

 自身は腕の力が無いために、自身の分まで頑張ってほしいという思いもあってソルに託したのである。

 

 

 海羽「………分かった。使わせてもらうね。」

 

 それを悟った海羽は、金棒を拾い上げて構える。

 

 

 これで戦闘準備は整った………。

 

 

 両組は数秒睨み合った後、互いに一斉に駆け寄り始める!

 

 

 セブンは宿那鬼、ジャスティスはオニデビル、そしてソルはオニバンバを相手することにした!

 

 

 セブンはアイスラッガーを手持ちに宿那鬼と激しい斬り合いを展開する。

 

 両者ともに一歩も譲らない剣劇。時にはジャンプし、時には背を向けたまま防いだりなど激しさを増していき、刀同士がぶつかる度に金属音と共に火花が飛び散る。

 

 

 だが、実はセブンはその間に、宿那鬼の隙を探していた。

 

 やがて、宿那鬼が真上から振り下ろす斬撃を刀を両手持ちで水平にして受け止めた隙に、無防備となった腹部にパンチを打ち込み、怯んだ隙に体を両手で掴んで大きく放り投げる。

 

 放り投げられた宿那鬼は着地に成功する。

 

 

 セブンは両手を額に当てて『エメリウム光線(Aタイプ)』を放つ!

 

 宿那鬼がそれを刀で防ぐことでエメリウム光線は撥ね返されるが、セブンは即座にアイスラッガーを頭上に投げる。

 

 すると撥ね帰って来たエメリウム光線はアイスラッガーに当たる事で反射し、再び宿那鬼の方へと飛んで行く!

 

 予期せぬ戦法により、エメリウム光線を胸部に受けた宿那鬼は爆発と共に吹っ飛ぶ。

 

 

 流石は昭和時代から長年戦ってきただけあって、セブンの戦闘センスはなかなかのモノである。

 

 

 

 オニデビルと戦うジャスティスは、さっきの名誉挽回とばかりに猛反撃をする!

 

 ジャスティスは右脚の前蹴りでオニデビルを後退させた後、バック転をして一旦距離を取る。

 

 そして両腕を左右に伸ばした後それを顔の前に持って行った後に下に降ろす。

 

 するとジャスティスの身体は金の光に包まれ、徐々に変わっていく。

 

 

 全身を包んでいた光が消えて現れたのは、金色のプロテクターが特徴のジャスティスの強化形態『クラッシャーモード』である!

 

 

 モードチェンジを完了したジャスティスは構えた後、猛スピードで側転、バック転をしながらオニデビルに接近し、左右交互のパンチを腹部に打ち込んだ後右脚の横蹴りを左脇腹打ち込み、更に左足の前蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 いずれも目にも止まらぬ速さである。

 

 逆上したオニデビルは右フックを繰り出すが、ジャスティスはそれを難なく両手で掴んで受け止め、そのまま背負い投げの要領で放り投げる!

 

 

 ジャスティスが真の正義を貫くときに発現すると言われ、スタンダードモードを上回る絶大なパワーを持つクラッシャーモードの前には、さしもの力自慢のオニデビルも敵ではないのだ!

 

 

 

 そしてソルは、オニオンから託された金棒でオニバンバと金棒同士の激突を始める。

 

 だがソルは金棒を使うのに慣れていないのか、がむしゃらにやや小刻みな打撃を繰り出すのが精一杯であり、オニバンバはそれをことごとく弾いていく。

 

 

 海羽「え~…まるで歯が立たないよ~!」

 

 オニバンバ「ふんっ!小娘ごときに、金棒が使えるものか!」

 

 

 既に勝ち誇るオニバンバは金棒を振り下ろし、ソルは両手持ちで水平にすることでなんとか受け止める。

 

 

 オニバンバ「どうやら勝負はついたみたいだな! 鬼を虐めた罰を受けよ!」

 

 

 オニバンバはそのまま更に力を入れて抑え込んでいき、ソルは受け止めたまま膝を付いてしまう。

 

 

 しかし、そんな中でも海羽の脳裏には浮かんでいた………。

 

 実際には見えなくても、今でも宏隆が、オニバンバたちによって怪我を負った汐里についてあげていることが………。

 

 

 海羽「………あんたみたいな鬼がいるから、悪い者扱いされるのよ………!」

 

 ソルは静かな怒りと共に語り出す。

 

 

 オニバンバ「ああん?」

 

 

 ソル「(オニオンの方を向いて)鬼にだって、良い鬼がいるんだもん………。」

 

 オニオン「海羽さん………。」

 

 

 海羽「(宏隆や汐里の事を思いながら)自分がされて嫌な事は………他人(ひと)にもしないものだよ………。」

 

 ソルはなおも語りつつ、湧いて来る力によって逆に抑え込みながら立ち上がる。

 

 オニバンバ「ど………どこにそんな力が………?」

 

 

 海羽「だから………虐めてほしくないなら、オニオン君みたいに良い鬼になって……出直しなさい!」

 

 

 ソルは遂に力を振り絞ってオニバンバを押し飛ばす!

 

 

 オニバンバ「くっ! 生意気な小娘め!いい加減に身の丈を知れー!」

 

 

 オニバンバはソル目掛けて火球を連射する。

 

 ソルはそれを金棒で弾きつつかわしていくが、数の多さに徐々に押されていく………!

 

 

 オニバンバ「はっはっは!そろそろ終わりにしてやる!」

 

 オニバンバは止めを刺そうと金棒を振り上げて襲い掛かろうとしたその時、

 

 突然後ろからだれかにしがみ付かれ動きを止められる。

 

 

 オニバンバを止めたのは、なんとオニオンであった!

 

 オニバンバ「んなっ!?なぜだ!?貴様は腕の力がない…筈!」

 

 オニオン「友達の事を思うと、勝手に体が動いたんだ!」

 

 オニバンバ「なん…だと?」

 

 オニオン「海羽さんは、最初にできた人間の友達………だから、いじめるなー!」

 

 

 “クシュンッ!”

 

 

 オニオンが力を入れたその時、口からくしゃみのように勢いよくガスが噴射される!

 

 

 海羽「うわッ!?………何?このガス………。」

 

 

 その時、オニバンバは目を押さえて苦しみだす。

 

 しかも何やら涙を流して………。

 

 オニバンバ「ぐおおおぁぁ~! 何だ!?この玉ねぎの臭いは!?涙が止まらぬ!」

 

 

 オニオンが吐き出したガスは、彼の武器でもある玉ねぎの臭いがする催涙ガスであった。

 

 

 それを浴びてしまったオニバンバは目が沁みてしまっていたのだ。

 

 

 オニオン「やった!これで隙が出来ましたよ、海羽さん!」

 

 オニオンがソルの方を向いたその時、

 

 

 海羽「私も~…。」

 

 ソルも多少目に沁みてしまっていたのか、目から涙(正確には滴のような緑色の光)を流していた。

 

 

 オニオン「あ、ごめん…海羽さん…。」

 

 海羽「(目を拭きながら)ううん。ありがとね。 オニオン君は早く安全なところへ。

 

 よーし、反撃開始だ!」

 

 

 ソルは涙を拭いた後、オニバンバ目掛けて駆け始める。

 

 オニオンとの友情が、彼女に逆転のチャンスをもたらしたのだ。

 

 

 オニバンバ「くっ…おのれっ!おのれおのれ~!!」

 

 オニバンバは沁みる目を拭きつつ金棒を闇雲に振り回すが、ソルはそれを身軽な動きでかわしていく。

 

 そして後ろからしがみ付いて、右足で右膝を踏んで膝を付かせた後、「それっ!」という掛け声と共に顔面にヒップアタックを打ち込んで吹っ飛ばした。

 

 

 オニバンバ「くっ…まさか鬼が人間の女の尻で攻撃される日が来るとは………!」

 

 

 

 セブンとジャスティスは止めを刺す時が来た。

 

 ジャスティスは空高くジャンプした後、急降下しながら『クラッシャーハイキック』を放つ!

 

 破壊力抜群のキックは一撃でオニデビルの頭部の角をへし折った!

 

 ジャスティスは着地した後接近しながら右足の後ろ回し蹴りをオニデビルの胸部に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 

 そしてバック転をして距離を取った後、両腕を左右に伸ばし、大きく回して上に揚げてエネルギーを溜めた後、それを前に突き出して『ダグリューム光線』を放つ!

 

 これは驚異的威力を誇るジャスティス(クラッシャーモード)最強の必殺光線である。

 

 

 光線を浴びたオニデビルは身体を発光させながらその場に倒れ、大爆発して砕け散った。

 

 

 

 セブン「ヤーッ!」

 

 セブンは右脚蹴りを宿那鬼の腹部に叩き込んで後退させると、両手を頭部に当ててアイスラッガーを投げつける!

 

 セブンの脳波でコントロールされるアイスラッガーは宿那鬼の周囲を飛んで攪乱しつつ身体を切り裂いてダメージを与えていく。

 

 

 そしてセブンは一旦戻って来たアイスラッガーを自分の手前に空中で静止させた後、両手を握手する様に組んでそのまま後ろに引く。

 

 

 セブン「ヤーッ!」

 

 

 そして引いた腕を前に突き出すと同時にアイスラッガーにハンディショットを当てることでアイスラッガーを威力やスピードを数倍に高めて放つ!

 

 

 これぞかつてガッツ星人を母艦ごと撃破したセブンの合わせ技『ウルトラノック戦法』である!

 

 

 “ガキーン”

 

 

 宿那鬼はそれを防ごうと刀を咄嗟に自身の前に立てるが、高速で白熱化して飛ぶアイスラッガーはそのまま刀を、そして宿那鬼の身体を貫く!

 

 

 気がつけば刀は折れていて、宿那鬼の身体には風穴が開いていた。

 

 

 セブンは動きが止まった宿那鬼目掛け、腕をL字に組んで必殺光線『ワイドショット』を放つ!

 

 

 セブン最強の光線を浴びた宿那鬼はその場に崩れ落ち大爆発して砕け散った。

 

 

 かくして、オニデビルと宿那鬼は再び怪獣墓場に送られる事になったのである。

 

 

 セブンとジャスティスによって子分の怪獣たちが倒され、自身もソル相手に劣勢となっているオニバンバ。

 

 ソルはオニバンバを横に投げて転倒させると、そのオニバンバ目掛けて「よいしょー!」という掛け声と共に跳躍して座り込むようにのしかかる。

 

 これぞ彼女の得意技・ヒップアタックの応用・ヒッププレスである。

 

 

 するとオニオンはソルに歩み寄り、ある物を手渡す。

 

 オニオン「これを。」

 

 海羽「これは……豆?」

 

 オニオンから渡されたのは、枡一杯の節分の豆であった。

 

 海羽「どうして、これを?」

 

 オニオン「昨日、海羽さんが出てきたとある建物(麟慶大学の体育館の事)の近くに落ちてたから、拾ってお守りとして持ってたんだ。

 

 オニバンバは豆が苦手。これを撒くんだ。」

 

 海羽「…分かった。ありがとね、オニオン君。」

 

 

 オニバンバ「くうぅ…まだ来るのか〜!?」

 

 再び立ち上がり戦闘態勢を取るオニバンバ。

 

 

 海羽「さあ、これで顔でも洗って、反省しなさい!」

 

 ソルは、何故か某変身ヒロインのように言った後、オニバンバに狙いを定めて枡から豆を掴んで投げつけ始める。

 

 

 今ここに、ウルトラウーマンSOL(ソル)の豆撒きが始まった!

 

 

 オニオンと共に「鬼はー外!福はー内!」という節分おなじみの台詞を言いながら豆を撒いていくソル。

 

 オニバンバ「い、痛いっ!……痛い、痛いよ〜!」

 

 豆を浴びていくオニバンバはたまらず痛がり出す。

 

 

 ……ってちょい待てアンタ、いくら弱点とは言えジャスティスの光線は撥ね返せて節分の豆は撥ね返せないってどういう事だってばよ!?

 

 …そんな我々の突っ込みもよそに、尚もオニバンバは豆を浴びて苦しみ続ける。

 

 

 その光景を、少し離れた場所でセブンとジャスティスがじっと立ち尽くして見つめていた。何ともシュールである(笑)

 

 

 オニバンバ「やっ………やっぱり豆は苦手じゃ………。」

 

 やがてオニバンバは戦意喪失して力が抜けてきたのか、手に持っていた金棒を力なく手放して落としてしまう。

 

 ソルは豆撒きをやめ、オニバンバが落とした金棒を拾い上げる。

 

 

 海羽「さーあ、大人しくお家に帰りなさい!」

 

 その時、横には同じく金棒を持ったオニオンが。

 

 オニオン「海羽さん、一緒にやりましょう!」

 

 海羽「あ、あれ?オニオン君いつの間に腕が………ま、いっか。

 

 んじゃ、いっくよ〜!」

 

 ソル、そしてオニオンはオニバンバの後ろに回り込み、そして同時に金棒を振るう!

 

 

 海羽「せ〜の!」

 

 

 海羽・オニオン「飛んでけー!」

 

 

 “ズコーン”

 

 

 二人の金棒の打撃を尻に受けたオニバンバは、その勢いで空の彼方へと飛んでいく………。

 

 海羽「(手を振りながら)お達者で〜!」

 

 どうやら今年も、ウルトラ戦士から追い出される形で退散する事になってしまったようである。哀れ。

 

 

 オニバンバ「チキショー!! 来年また来てやるからなー!! それまで覚えてろーーー!!」

 

 

 オニバンバは飛んで行きながら捨て台詞を叫んだ。

 

 これぞまさに負け犬ならぬ負け鬼の遠吠えと言ったところであろうか、、、

 

 

 ソルは手に持っていたオニバンバの金棒をハンマー投げの要領で振り回し、空高く放り投げる。

 

 

 海羽「(両手をメガホン代わりにして)お〜い!わっすれものだよ〜!」

 

 

 “ゴーン ゴーン”

 

 オニバンバ「いてててててっ!」

 

 金棒は無事にオニバンバの元に飛んで来たものの、どうやら飛んで来た金棒はオニバンバの顔や頭にぶつかってしまったようである。

 

 

 やがてオニバンバは空の彼方へと飛び去って行った………。

 

 果たして奴は来年もやって来るのであろうか………?

 

 それは誰も知るはずもない…て言うか、知らなくていいだろう(笑)

 

 

 鬼連合軍が去ったと共に、空も黒雲が晴れて青空が戻って来る。

 

 

 海羽「あ〜あ、行っちゃったね。」

 

 オニオン「だね。」

 

 

 戦いを終えた3人のウルトラ戦士とオニオンは合流する。

 

 海羽「助かりました。セブンさん、ジャスティスさん。」

 

 セブンとジャスティスは無言で頷いた。

 

 

 オニオン「僕の方からも、ありがとうございました。」

 

 セブン「ああ。オニオンも無事で良かった。」

 

 海羽「…え?お、オニオン君セブンさんと知り合いなの?」

 

 

 3人は人間体に戻り、ダンとジュリは海羽に事情を話し始める。

 

 どうやらセブンは宇宙をパトロールしていた時、オニオンがオニバンバたちに追われている事を知り、オニオンを救うためにそれを追跡していたのだという。

 

 そしてその追跡はいくつかの別宇宙までに及び、それによりジャスティスのいるコスモスペースにも訪れたのだ。

 

 オニバンバはオニオンを追い続けるあまりに、コスモスペースのいくつかの星を荒らしてしまったのだ。

 

 幸いムサシ(コスモス)たちの惑星ジュランには来なかったものの、その行為によりジャスティスは宇宙正義に基づき制裁を加える事を決め、またそれによってセブンとジャスティスは出会い、共にオニバンバたちを追う事を決めたのだ。

 

 そしてその後も追跡を続けていくうちに、この地球にたどり着いたのだという。

 

 

 海羽「なるほど………相当苦労なさってたんですね。お疲れ様です。」

 

 ダン「だが、追い続けた甲斐もあって、無事にオニオンを救うことができた。それはソル、君のためでもある。ありがとう。」

 

 海羽「い!いえいえ!礼を言うのは私の方です!

 

 私なんて無力で…セブンさんとジャスティスさんがいなかったら今頃どうなってたかと思うと…。」

 

 ダン「何を言ってる。オニオンと友達になることで、彼の心を救った。それだけでも立派なことだよ。」

 

 ジュリ「実際オニオンは君に協力したろ?それが何よりの証拠だ。」

 

 オニオン「うん!僕、海羽さんと仲良くなって、とっても嬉しかった。」

 

 海羽「(嬉しそうな顔で少し目を潤めて)オニオン君………。

 

 あ、そういえば前まで腕の力がなかったのに、どうしてさっきは金棒が持てたの?」

 

 ダン「恐らく、オニデビルを倒した影響だろう。それにより、奴の作った赤い豆の毒素も効果を無くしたんだ。」

 

 海羽「ああ、なるほどです。」(なら、きって宏隆君も今………。)

 

 

 

 海羽の予想通り、病院にいる宏隆も自分の腕が治っていることに気付いていた。

 

 

 宏隆「………腕に…力を感じる………?」

 

 

 宏隆は試しに正拳突きを数発打ってみる。

 

 すると、確かに風邪を切る音が聞こえた。これぞ腕の力が戻った証である。

 

 

 宏隆「………やった………腕の力が戻った………!

 

 よっしゃラッキー!!」

 

 宏隆は嬉しさの余りに大声を上げるが、自分が今病室の中だという事を思い出し慌てて口をふさぐ。

 

 

 宏隆「これで県大会に出れるぞ。汐里。」

 

 

 宏隆はそう言いながらベッドで眠る汐里の元に歩み寄って微笑みかける。

 

 

 よく見てみると、寝ている汐里の顔もどこか笑っているようであった。

 

 

 

 海羽「お二人はこの後どうするんですか?」

 

 

 ダン「私は一旦元の世界に戻る事にする。この世界に僅かながら異変が起きているらしいから、とりあえず仲間たちに知らせ、様子を見ることにするよ。」

 

 

 ジュリ「私はコスモスペースに戻る。奴ら(鬼連合軍)に制裁を加えることは遂行出来たからな。

 

 しかし、奴(オニバンバ)が二度と悪さをしない保証も無いからな、そうだな………

 

 よし、奴に猶予を与えよう。2000年ぐらいな。」

 

 

 海羽「に…2000年も~!?

 

 あ、でももし2000年後でも悪さをやっていたら?」

 

 

 ジュリ「その時はデラシオン次第だが、最悪処刑する可能性もある。

 

 まあ最も、2000年後も奴が生きてれば、の話だがな。ふっ(少し笑顔になる)。」

 

 

 海羽「…あ、あははは、そうですね~。」

 

 

 完全にオニバンバを年寄り扱いするジュリ(笑)

 

 はたしてオニバンバは2000年後、サンドロスの二の舞になるのであろうか?

 

 まあ、あまり心配する事でもないか?(笑)

 

 

 海羽「ねえ、オニオン君はどうするの?」

 

 オニオン「僕は………とりあえず平和な所で過ごしたいです。 あ、でも、海羽さんの家に泊めてもらうのも悪いし………。」

 

 ダン「それなら、アニマル星とかはどうだ?あそこなら果物の木もいっぱいあるし、君なら我がカプセル怪獣とも仲良くなれそうだ。」

 

 ダンが勧めるアニマル星。それは彼の所有するカプセルに入っている彼の仲間・カプセル怪獣のアギラの出身星である。

 

 ジュリ「ジュランとかもいいぞ。あそこは人間と怪獣が共存する惑星だ。きっと君にとってもいい場所だと思うぞ。」

 

 オニオン「う~ん…どちらもいいとこそうだし迷うな~。」

 

 ダン「それじゃあ、とりあえず一旦ウルトラの星に来るか? まずはその傷を治すべきだし。

 

 どこに住むかはその時に決めるのはどうだ?」

 

 オニオン「それじゃあ…そうします!」

 

 海羽「そっか………行っちゃうんだね、オニオン君…。」

 

 オニオンは、少し残念そうな顔をする海羽の元に歩み寄る。

 

 オニオン「(海羽の両手を握って)大丈夫海羽さん。また遊びに来るから。」

 

 海羽「オニオン君………約束だよ!」

 

 オニオン「うん!」

 

 海羽はオニオンとまた会う約束を交わし、互いに微笑み合う。

 

 

 ダン「それじゃあ、私たちはそろそろ旅立つ。

 

 もし、戦いが今後も激しさを増し、一人でもどうしようもなくなったら、“あいつ”を呼ぶといい。」

 

 

 海羽「あいつ?」

 

 

 ダン「その名は“ウルトラマンゼロ”だ。 まあ最も、私の息子だがな。」

 

 

 海羽「え˝え˝っ!?………セブンさん子供がいたんですか?」

 

 

 ダン「(少し照れくさそうに)ああ。

 

 あいつはまだ若いが、最大級の強さと無限の可能性を秘めている。

 

 きっと、頼もしいはずだ。」

 

 

 海羽「それで、そのゼロさんは今どこに?」

 

 

 ダン「………きっと今も、宇宙の平和のために旅をしているだろうな。

 

 私はあえてアイツにあまり干渉しない。アイツのやりたいようにやらせている。」

 

 

 海羽「へぇ~、息子さんの好きにさせてるんだ。優しいんですね、セブンさん。」

 

 ダン「ははは、なに、ただアイツが破天荒なだけだ。」

 

 

 ジュリ「私の戦友で“ウルトラマンコスモス”というのがいるのだが、彼を呼ぶのもいいかもしれない。」

 

 

 海羽「ウルトラマンコスモス?」

 

 

 ジュリ「ああ、怪獣とて悪い奴らだけじゃない。彼は怪獣たちの善悪を見分けることが出来、そんな怪獣たちと共存するという夢を叶えることに成功している。

 

 すなわち、真の優しさと強さが分かる奴だ。きっと、頼もしい力になってくれるはずだ。」

 

 

 海羽「へぇ~…二人とも凄そう!」

 

 

 ダン「辛い事もあるかもしれない。だがそんな時は無理せず、他のウルトラ戦士を呼ぶといい。

 

 そして信じるんだ。“例え離れていても、知らない者でも、私たちウルトラ戦士は繋がってる”と。」

 

 

 ジュリ「そしてその繋がりは、決して切れない事をな。」

 

 

 海羽「“心の絆”………ですね!」

 

 

 ダン「ああ。それじゃ、元気で頑張れよ!」

 

 

 海羽「はい!」

 

 

 ダンとジュリは海羽に別れを告げると、それぞれウルトラアイとジャストランサーでセブンとジャスティスに変身・巨大化する。

 

 そしてそれぞれ片方ずつオニオンの腕を掴み、飛び立ち始めた。

 

 

 海羽「またね~!オニオン君!」

 

 オニオン「うん!また遊びに来るから!」

 

 

 やがて二人はオニオンを連れて、空の彼方へと飛び去って行った………。

 

 

 

 セブンとジャスティス、そしてオニオンを手を振って見送った海羽は、ルンルンと道を歩き始める。

 

 

 しかし、怪獣と言う異生物とも仲良くなれるとは………正に、商学部のアイドル的存在であり、誰とでも仲良くなれる人気者の海羽ならではである。

 

 

 海羽「ゼロにコスモスか………あの二人が勧めてくれたんだもん。きっとすっごい強いんだよな~ 」

 

 

 そう言いながら歩いていてその時、誰かからの着信が来る。

 

 海羽「ん?何かしら?」

 

 

 スマホを確認してみると、宏隆からの着信だった。

 

 

 『病院まで来てくれ。凄いモノを見せてやる。』

 

 

 海羽「凄いモノ?………何だろう?」

 

 

 とりあえず海羽は、ハートフルグラスを目に付けてのテレポートで自分の街に戻り、病院へ向かう。

 

 

 

 海羽が病院の入り口近くに着くとそこには何やら宏隆が胴着姿で仁王立ちをしていた。

 

 彼の傍には、何やら十枚に重ねてある瓦がある………。

 

 

 宏隆「おーう!よく来たな海羽。」

 

 海羽「な、何?凄いモノって………。」

 

 宏隆「まあ見てなって。」

 

 

 宏隆は得意げにそう言うと、十枚に重ねた瓦の後ろに立ち、目をつぶって拳を腰に当て、一回深呼吸をして精神統一をする………。

 

 

 そして!

 

 

 宏隆「せいやっ!」

 

 

 “ドバキャッ”

 

 

 気合の叫びを上げた後、右肘の一撃で瓦十枚を一気に叩き割った!

 

 

 宏隆「(手を数回払った後指を差して)どうよ?」

 

 海羽「おおぉ~!」(拍手をする)

 

 

 宏隆は、自分の腕が元に戻った事を見事にアピールしたのである!

 

 

 海羽「腕の力が戻ったんだ。良かったね!」

 

 宏隆「ああ。これで県大会に出れるぜ。」

 

 海羽「でも、何でいきなり治ったのかな?」

 

 

 宏隆「さあな………まあ多分、俺自身が強いからじゃねーか?

 

 なんせ俺は、鍛えてますから!シュッ(敬礼のようなポーズを取る)。」

 

 

 海羽「ふふふ、もう、宏隆君ったら、すぐに調子に乗るんだから…。」

 

 宏隆「ははは、………………

 

 海羽………ありがとな、色々と。」

 

 海羽「県大会頑張ってね!(サムズアップ)」

 

 宏隆「おうよ!」

 

 宏隆も海羽にサムズアップを返した。

 

 

 海羽との交流を経て、閉ざしていた心を開き、自身を取り戻した宏隆。

 

 海羽もそんな一人の男を救えた事に安心し、宏隆が心を開いた事への嬉しさで一杯であった。

 

 

 そしてこの一件でのセブンとジャスティスとの出会いがきっかけで、後にソル(海羽)はゼロやコスモスを呼ぶことになるのである………………。

 

 

 

 (BGM:High HOPE)

 

 

 あれから9日後、バレンタインデー前日の事である。

 

 

 海羽は大学の友達、竜野櫂と新田真美と帰り道を歩いていた。

 

 

 海羽に関してはバレンタイン前日という事もあって、いつも以上にハッピーな気分のようだ。

 

 

 海羽「はぁ~楽しみだな~!明日のバレンタイン 」

 

 歌を口ずさむような喋り方で、時折ステップを踏んだりくるくる回ったりと正に超ハッピーモードの海羽を、櫂と真美は後ろから苦笑しながら見つめていた。

 

 

 櫂「おいおいなんだよ、随分と楽しそうだな海羽。」

 

 すると、海羽は全速力で櫂に駆け寄る。

 

 櫂「うおあっ!?」

 

 海羽「だってだって!明日はバレンタインデーなんだよ~!

 

 はぁ~!バレンタインデーにホワイトデー、私はこの日を楽しみにしてたんだ~!

 

 男の子と女の子が、チョコを交換して愛を分かち合うんだもん!正に、一年で一番ハッピーな日だよ~!あはははは~ 」

 

 どうやら真美がクリスマスが一年で一番ハッピーだと思うのに対し、海羽にとってはバレンタインデーとホワイトデーが一年で一番ハッピーな日であるようだ。

 

 

 櫂「でもお前人気者だから、渡すチョコも結構あんじゃねーのか? (少しからかうような顔で)大丈夫なんか?そこは。」

 

 海羽「ああ、それならもう準備できてるよ?」

 

 櫂「って早っ!!?」

 

 

 海羽「もちろんチョコを溶かして型を取ったりした手作りだけどね。

 

 やっぱ愛情を届けたいなら手作りでないと!

 

 もちろん櫂君の分も準備してるからね(ウィンク)。」

 

 

 櫂「(苦笑しながら)…お、おう、サンキュー。」

 

 真美「うふ、気合が入ってるね海羽ちゃん。私もあと十人分ぐらい作らないとな~。

 

 もちろん櫂君の分も準備してるよ。」

 

 櫂「おお、そうか、サンキュー。(ひっそりと不敵な笑みを浮かべる)」

 

 

 最も、学園内で多くの学生から信頼を集めている櫂の事だから、真美と海羽の他にも彼に渡す女の子は結構いそうな気はするが………(笑)

 

 

 櫂「もちろん、お前らホワイトデーはちゃんと返すからな。」

 

 海羽「うわー本当!?ありがとう!」

 

 真美「ありがとね櫂君。私、チョコ好きだから楽しみだなー…。

 

 あ、出来たらとろけるやつでお願いね。」

 

 櫂「へぇ~、真美はトロトロ派か。

 

 俺はチョコはパリパリ派だな。」

 

 真美「ふふ、櫂君歯ごたえあるもの好きだもんね。」

 

 櫂「ははは、まあな。」

 

 

 いつの間にか二人きりで話が弾んでいるパリパリ派の櫂とトロトロ派の真美。

 

 そんな二人も他所に、海羽はなおも一人ハッピーな気分でいるが………。

 

 

 その時、海羽はふとある事を思い出す。

 

 海羽「あ、そう言えば今日、宏隆君の試合の日でもあるっけ………

 

 宏隆君、どうなったのかな~………。」

 

 

 海羽がそう思ったその時、海羽のスマホが振動する。

 

 

 確認してみると、それは宏隆からの着信だった。

 

 海羽「あ、宏隆君だ!」

 

 

 『県大会、優勝できましたー!』

 

 

 文の初めはこれだった!

 

 

 海羽「おおっ! いーよしっ!(小さくガッツポーズ)」

 

 

 更に下の文には、

 

 

 『あと、汐里も昨日無事、退院できましたー!』

 

 

 その文の下には、大会の優勝トロフィーを持つ宏隆と、無事に退院出来て笑顔でピースを決める汐里の写真が添付されていた。

 

 

 それを見た海羽は、様々な嬉しさが重なり遂に感極まったのか、その場で泣き崩れ始める。

 

 

 櫂「!?何だ何だ!?」

 

 真美「どうしたの海羽ちゃん?」

 

 それに気づいた櫂と海羽は少し慌てて歩み寄る。

 

 海羽「え、えへへ、ごめんごめん。嬉しすぎてつい………。」

 

 櫂「ったくしょーがねー奴だなー。ほんじゃあ早く帰ろうぜ。早く明日になるためにもな。」

 

 真美「じゃあ、行こっか。」

 

 海羽「…うん、そうだね。」

 

 

 海羽は、櫂と真美と一緒に他愛もない話をしながら帰りながら、心で呟いた。

 

 

 

 海羽(良かったね、宏隆君。)

 

 

 

 そして翌日、バレンタインデー当日。

 

 

 霞ヶ崎の遊園地の観覧車の一つの部屋の中で一組の男女が少し照れくさそうにも互いを見つめて話をしていた。

 

 

 そう、この二人こそ、バレンタインデーの日の今日この遊園地で待ち合わせをする約束をしていた佐藤宏隆と長田汐里の二人であった。

 

 汐里が昨日無事に退院できたことで、約束通り遊園地で待ち合わせをすることが出来たのである。

 

 

 長田汐里。体つきはスマートで髪形はポニーテール、丸っこい小顔にぱっちりとした目、あどけない表情が可愛らしい女の子である。

 

 

 宏隆「とにかく、無事、汐里が退院出来て良かった。」

 

 汐里「宏隆君こそ、優勝おめでとう。」

 

 宏隆「はは…サンキュー。」

 

 宏隆と汐里は、ややぎこちないものの会話を楽しみ、笑顔で見つめ合う。

 

 会話がぎこちないのは恐らく、久しぶりに会ったからというのと、初めての二人きりで遊びに来たから気持ちが上がっているからという事が考えられる。

 

 

 汐里「あ、そうだ。」

 

 そう言うと汐里は鞄からあるものを取り出す。

 

 

 汐里「今日バレンタインだよね。はい、これ。」

 

 

 汐里が鞄から取り出して宏隆に差し出したのは、四角い透明ケースに入った星型に象られていて、カラフルなスプレーなどでデコレーションされているチョコだった。

 

 宏隆の思っていた通り、汐里は例年通り宏隆のためにバレンタインのチョコを作って用意していたのだ。

 

 

 宏隆「あっ………あ、、ありがとう。」

 

 宏隆は少し頬が赤くなりつつも、それを受け取る。

 

 

 汐里「良かった。」

 

 バレンタインのチョコを受け取ってもらえた汐里は嬉しさから笑顔になる。

 

 

 宏隆「じ、実は俺からも、渡すものがあるんだ………。」

 

 汐里「ん?」

 

 

 そう言うと宏隆は、鞄からオシャレな紙で包装されたリボン付きの箱を取り出し、照れくさそうに差し出す。

 

 

 汐里「………え?」

 

 

 宏隆「…ほ、ほら、汐里、今日誕生日だろ? だから………。」

 

 

 そう、それは宏隆から汐里への誕生日プレゼントであった。

 

 

 汐里はそれを受け取ると、包装している髪をはがして箱を開ける。

 

 

 その中には緑色のマフラーが入っていた。

 

 

 宏隆「汐里、確か新しいマフラーが欲しいとか言ってたよな?………

 

 それに、今寒い季節だし、どうかなと思って………。」

 

 

 汐里は数秒プレゼントのマフラーを見つめた後、顔を上げて宏隆の顔を見つめる。

 

 その顔は嬉しさで一杯の満面な笑みを浮かべていた。

 

 

 汐里「ありがとう。」

 

 

 汐里にプレゼントを喜んでもらえた宏隆も笑顔を返した。

 

 

 こうして、宏隆と汐里のサプライズプレゼント交換は見事に成功したのである。

 

 きっと彼らは今後このまま彼氏・彼女の関係へと発展していくのであろう………………多分。

 

 

 

 だが、そんな一方で彼らの一つ後の観覧車の部屋では、一人の青年が宏隆たちの様子をじっと見つめていた。

 

 

 桜井敏樹である。

 

 

 桜井「けっ………いいよな………空手ができるあいつはチョコを一杯もらえて………

 

 俺なんて海羽と真美にしかチョコを貰ってないのに………!」

 

 やや憎しみのこもった声色でそう呟く桜井。

 

 

 このように彼のマイナスエネルギーはどんどん集まって行き、やがて闇堕ちに繋がってしまうという事は、まだ誰も知るはずもなかった………………。

 

 

 

 (ED:ULTRA SEVEN)




 読んでいただきありがとうございます!いかがでしたか?


 私的には色々詰め込んでしまった感じはありますが、楽しんでいただけたでしょうか?

 とりあえず、ラストに長ったらしい恋愛ドラマみたいなシーンを入れてしまってすいません(笑)


 それはさておき、今回のゲストウルトラ戦士は、恐らく一番ゼロとコスモスと縁のあるセブンとジャスティスでした!

 彼らとの出会いがきっかけで、ソル(海羽)は後にゼロやコスモスを呼ぶことになるのです。

 セブンは昭和の中ではタロウと同率で一番好きなので今回登場させることが出来て嬉しいです。

 ジャスティスも個人的に大好きなウルトラマンです。

 最近コスモスの映画を見返して惚れ直してしまいました(笑)


 因みに今回登場したウルトラ戦士の中で、純粋な男なのはセブンだけだったりします(笑)


 そして今回の登場怪獣たちは、節分メインという事で鬼怪獣たちでした。

 余談ですが、思えば私、オニバンバの「豆は人の肉の味がする」という発言に思わずツボってしまった事があります(笑)(オニバンバのエピソード自体面白かったですけど)


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


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番外編「笹崎春菜物語(ストーリー)若き救世主達」

明けましておめでとうございます!

今回は今年最初かつお正月に投稿という事で特別編として制作した番外編です!

今回活躍するウルトラ戦士は2人であり、その内の1人はウルトラマンゼロ、そしてもう1人はそんなゼロと共に活躍したあの“ベリアル”の息子でもあるウルトラ戦士です!(あ、大ヒント言っちゃった?(笑))

そして主役は、櫂の本性を知っている数少ない人物の1人・笹崎春菜です!

とりあえず細かい事はあまり気にせず楽しんでもらえたらなと思います!(笑)

では、どうぞ!

注:ウルトラマンジード最終回のネタバレも少し含まれています。


 (OP:英雄の詩)

 

 

 これは、北海道の石狩で医療ボランティアに献身しているとある1人の女性が主役の物語である。

 

 

 こんにちは!みんな。

 

 私は『笹崎春菜』(ささざき はるな)。

 

 北海道の石狩出身で、今は将来医師になるために『浄京大学』の医学部に通いつつ、時折休日には災害医療ボランティア活動等に参加したりしてるの。

 

 お陰で最近ちょっと多忙気味だわ(汗)

 

 まあ、必要な単位は一応順調に取れてるし、ボランティア先でも割といい評価貰ってるし、充実してるかと言ったらしてるかな?(笑)

 

 

 因みに私にはボランティア先で知り合った友達もいるの。

 

 

 名前は『新田真美』(にった まみ)。私は彼女の事『まみたん』と呼んでるけどね(笑)

 

 彼女は東京の『麟慶大学』の医学部所属で、私と同じで将来看護婦を目指して時折医療ボランティア等に参加したりしてるよ。

 

 私とまみたんはいつだったかな…?ボランティア活動中に偶然知り合って意気投合。仲良くなって、一時は良きコンビとして一緒に活動したりしてたの。

 

 治療に不安になる子供をまみたんが優しく諭して落ち着かせて、ほんで私が適切な治療法で正確に治していく…みたいな感じでね。

 

 

 …だから、私たちが別々で治療している時、それぞれ長所が短所として働いてしまう事があるの…。

 

 

 常におっとりしてて優しいまみたんは治療の前に不安がる子供を諭すのに手間取り、迅速な判断力と行動力がある私はその反面せっかちだから、不安がる子供をあまり上手く諭せずに治療を優先的に進めてしまい、結果あまり子供に好印象を持たれないまま治療を完了させてしまう…という感じでね。

 

 お陰でまみたんは老若男女問わずかなりの人気者だけど、私はそれほどでもないわ(汗)

 

 

 …でも、私はそれでも構わないと思ってる。

 

 やはり私はその人の体を治すのが最優先だと思ってるから、たとえ嫌われても、その人が元気になってくれるのなら、私はそれでも構わないと思ってる…。

 

 

 …まあ、でも一方で、私もまみたんみたいな落ち着いた優しさがあったらなーと思ったりしてるけどね…。

 

 

 また、まみたんを通じて仲良くなった友達に『眞鍋海羽』(まなべ みわ)という子もいるの。

 

 彼女はまみたんと同じ麟大の学生で、体は小ちゃいけど明るさは誰よりも大きい、元気の塊みたいなとても気持ちのいい子なの。

 

 彼女がいるだけで元気になっちゃう感じだわ。大学でもアイドル的存在の人気者みたい。

 

 しかも海羽ちゃん、なんとウルトラ戦士でもあるのよ!(ウルトラウーマンSOL(ソル))

 

 それを知った時は驚いたわ…まさかあんなかわいい系の女の子もウルトラ戦士だったなんて…ホントに世の中何が起こるか分からないわね。

 

 

 …え?1人忘れてる?

 

 …勘弁してよ…今は“アイツ”の事なんて思い出したくないわ…。(※『竜野櫂』(たつの かい)の事です)

 

 

 (春菜は先日、櫂の恐ろしい本性で脅されたばかりであり、所謂櫂の本性を知っている数少ない人物の1人なのである…!)

 

 

 おっと、前置きが長くなったわね。それじゃ、始まるよ。

 

 

 

 時は、キングギドラとの大乱戦が終わって数日後のある日。

 

 

 日々、夏休み限定の医療ボランティア研修を頑張っている春菜は、この日は休日という事で友達とショッピングに出掛けていた。

 

 

 友達の名前は『岡田友実』(おかだ ともみ)。

 

 可憐な童顔にウェーブのかかった長い茶髪が特徴の彼女は同じ医療ボランティアの仲間でもあり、真美と同じでそこで春菜と知り合って仲良くなった。

 

 性格は天真爛漫で人懐っこい元気少女。その一方で、他者を思いやる優しさも持っており、体格も顔や性格からは想像できない程にスタイルが良く、身長も春菜より若干高い(春菜:160、友美:165)。

 

 

 所謂、彼女は真美と海羽両方の要素を持ち合わせている(人気者2人の要素を同時に持つとは何気に凄い女である(笑))。

 

 

 そんな友実も、真美と同じくボランティアで春菜とコンビを組むことが多く、特に子供たちからの人気が高く、治療時のみならず、弁当を食べる時も子供たちと楽しそうに話すことが多い。

 

 

 語りを春菜にバトンタッチしよう。

 

 

 私、春菜はトモ(←友実の愛称)と一緒にショッピングに出かけていた。

 

 ファッションは多分時間がかかるだろうから先にカフェで一息ついて行こうかなと思ているの。

 

 いつもは白衣を着ている私たちも、この日はTシャツにデニムといつもよりオシャレをして出かけているわ。

 

 

 春菜「まずはカフェで一息していかない?」

 

 友実「うん、いいかもね!賛成ー! そうだな~…アイスクリーム何味にしよっかな~…?」

 

 ははは、全く、トモはまみたんに負けず“食べるの大好き”なんだから。

 

 友実「ねえ、ハルちゃんはどんな服見るの?」

 

 春菜「え?…まあ、色々見るわよ。」

 

 友実「へぇ~…ハルちゃんがじっくりと服見るイメージあまりないな~…いつも研修先では真剣なハルちゃんが。」

 

 春菜「んなっ!?…そ、そりゃ私だって乙女よ。服だって、普段から新しいの欲しいなっていつも思ってたんだから。」

 

 友実「へへへ、ごめんごめん。私ハルちゃんがどんな服見るか楽しみだな~。」

 

 春菜と友実はこんな風に楽しく話し合いながら街を歩いていた。

 

 

 春菜(トモ…相変わらず元気一杯だな…。おまけに優しいしね。 でも現場では、まみたんほど宥めでもたつく事は無いけれども…何と言うか…緊張感があまり無いというか…。)

 

 春菜ははしゃぐ友実を見ながら心の中で呟いていた。やはり手際よく作業をこなす春菜にとって、友実は真美と同じく難点が目立つようである。

 

 春菜(…でも…まみたんもそうだけど…これがトモの特徴でもあるしね…やっぱ自分は自分、人は人と、それぞれのやり方を尊重すべきなのかな…。)

 

 

 友実「んん?どうしたのハルちゃん…。」

 

 春菜「ん? ううん。何でもない。さ、行きましょ。」

 

 

 二人が目的地に向かおうとしたその時、

 

 

 春菜「ん?」

 

 突如、春菜は何かに気付く。友実も春菜が振り向いた方を向いた瞬間気付いた。

 

 

 二人の視線の先には、とある人気の少ない場所でとある一人の青年が何やら辺りを見渡しながら佇んでいた。

 

 

 その青年は、長身でオレンジ色の未来風のレザーコートを着ており、顔は精悍な顔つきをしているなかなかのイケメンである。

 

 

 …そう、実は彼は先日、『時空生命体ガルキメス』率いる時空怪獣軍団から現代と未来の平和を守るために(第24話参照)、相棒の『マゼラン星人アニー』と共に未来からやって来た、櫂の息子でもある青年『竜野慧』(たつのけい)である!

 

 彼は櫂たちと共にガルキメスたちを撃退した後彼らと別れ、未来に帰る前にもうしばらく現代の地球を探索していたのである。

 

 側にアニーがいない事から、既にアニーだけ先に帰らせた後だと思われる。

 

 

 友実「…何?あのイケメン…超タイプかも!」

 

 イケメンに目がない友実は慧を見て瞳を輝かせている。

 

 春菜「でも、一人で何をやっているのかしら…?」

 

 春菜が彼の行動を怪しんでいたその時。

 

 

 慧「北海道…この時代でも、僕が済む未来でも、変わらず良い街だな…。」

 

 そう言うと慧は、探索が十分に済んだのか、首に下げているタイムワープのペンダントを光らせ始める。

 

 慧「何より父さんも母さんも元気そうで良かった。僕も未来に帰って出来ることを頑張ろう。」

 

 ペンダントが光を放つと、慧は精神統一のように目をつぶり、その場でゆっくりと空中に浮遊し始める。

 

 

 友実「わぁ!あれすごい!何!?」

 

 春菜「うわっ!?」

 

 二人はその光景に驚愕し、友実は同時に興味を感じて思わず前に飛び出してしまい、春菜もその巻き沿いを食らって前に飛び出てしまう。

 

 

 …だが、二人が踏み出た場所もちょうどタイムワープのエネルギーが及ぶ領域だったのか、徐々に二人も上空に浮遊を始めてしまう…!

 

 春菜「え?ちょ…嘘でしょ!?」

 

 友実「わー!?私たちどうなっちゃうのハルちゃーん!」

 

 

 やがてペンダントが放つ光が輝きを増し、それにより上空に出来た小さなワームホールに慧は飛び込んでいき、春菜たちもそれに巻き込まれて吸い込まれてしまう…!

 

 

 「きゃー…!!」

 

 

 完全にワームホールに吸い込まれ、そして時空の穴が消滅すると共に二人の悲鳴もフェードアウトしていった…。

 

 

 

 春菜「…ぅ…ぅぅ…。」

 

 やがて春菜は気が付いて目が覚めた。

 

 春菜「…ぇ、えぇ…?」

 

 起き上って辺りを見渡してみると、そこは何処なのかも分からない、薄暗く、暴風が吹き荒れる荒れ地のような場所であった…。

 

 

 春菜「ここ、何処だろう…?」

 

 

 春菜は何処なのかも分からない地を、激しく風が吹き荒れる中、呆然と歩いて行く…。

 

 

 やがてしばらく歩いて行くと、突如目の前にとある光景が広がる。

 

 

 春菜「…何…?あれ…?」

 

 

 “キイイイィィィッッ!!”

 

 

 春菜「ひゃっ!?…。」

 

 

 突如、何やら生物の悲鳴のような音が響き、春菜はそれに驚きつつも目の前の光景を見つめていく…。

 

 

 やがて黒煙のような霧が徐々に晴れていき目の前の光景がハッキリした瞬間、春菜は一瞬息をのみ、大きな目を見開いて驚く…!

 

 

 その光景とは、必死に抵抗する『宇宙怪獣エレキング』の群れを、4匹の怪獣、そして一体の宇宙人らしき生命体が襲っている様子であった…!

 

 

 怪獣軍団の面子は、『残酷怪獣ガモス』『牡牛座怪獣ドギュー』『円盤生物シルバーブルーメ』『宇宙大怪獣ムルロア』そしてそれらに指示するように行動する宇宙人『邪悪生命体ワロガ』である!

 

 ガモスは破壊と殺戮を至上の悦びとしているが故、かつて宇宙や地球の各地で破壊と殺戮を繰り返し、

 

 ドギューは弱い者いじめを好む宇宙の嫌われ者であり、かつては罪の無い小熊座の少年『ボック』の母親を殺した上に地球に侵入して人や動物を虐殺してまで追い回した事があり、

 

 シルバーブルーメは、かつてはブラックスター発の円盤生物一号として、地球防衛隊である『MAC』(マック)を全滅させたのを皮切りに地球に侵入後、破壊活動をして多数の人間を殺害し、

 

 ムルロアは宇宙の蛾『スペースモス』を引き連れて地球に侵入するや、旅客機を叩き落としたのを始め、苦手な太陽の光を遮るために地球を黒煙『アトミック・フォッグ』で覆い尽くし、光源を中心に溶解液で人を溶かしつつ破壊の限りを尽くした事があり、

 

 そしてワロガもかつて高い知能と邪悪な精神を駆使し、ある時は人間と怪獣を争わせるために宇宙ステーション『レニ・クロサキ』を蘇生させて利用すると同時に罪の無い怪獣『古代怪獣ガルバス』を操ったり、ある時は別個体が『ウルトラマンコスモス』と一体化している青年『春野ムサシ』を洗脳して自分の配下に置こうとした事がある。

 

 このように、いずれもかつては破壊や殺戮、狡猾な手段を行った悪名高い面々である!

 

 (ムルロアに関しては住んでいた星を地球人の核実験により破壊された上で変異したものであるため、被害者的な存在でもあるのだが…。)

 

 

 怪獣たちはエレキングを襲いつつ周囲も破壊しているのに対し、エレキングたちはその様子はなく、ただただ必死に怪獣たちに抵抗しているのみである事から、恐らくこのエレキングたちは襲われている側であり、元は大人しく暮らしていた者たちだと思われる…!

 

 

 ガモスやドギューは既に弱っているエレキングを更に容赦なく痛ぶったり、シルバーブルーメはエレキングの頭上に覆いかぶさって上から黄色い溶解液を浴びせて溶かしながら捕食していき、ムルロアはエレキングの体を両手の鋏で切り裂いたり口からの溶解液『ホワイダースプレー』で次々溶かしたりていく…!

 

 特にガモス、シルバーブルーメ、ムルロアの三体は溶解液を主な武器としているため、倒されていくエレキングの中には、特に無惨に溶けて骨になったり、中身等が剥き出しになった状態で死体になって倒れる個体が続出していく…!!

 

 ドギューも怪力と鋭い爪を活かして殴打したり頭部の角を活かしての突進をしたりなどして殺害していき、シルバーブルーメは上記の溶解液の他に触手で絞め殺したりなどしてエレキングを倒している。

 

 ワロガもテレポートをしつつ両手の『ソードパンチアーム』を活かした殴打で痛ぶって弱らせた後、光弾『アームスショット』で止めを刺して爆破したりなどして次々とエレキングを倒していく…!

 

 

 次々と無惨に殺されていくエレキング…春菜はその光景を戦慄して目を見開いて見つめるしかなかった…。

 

 

 すると、春菜は更に何かに気づく。

 

 それは、エレキング達を惨殺しつつ暴れる怪獣たちの近くで、一人の宇宙人が必死に走って逃げている様子であった…。

 

 宇宙人ではあるが、逃げている様子から善良な存在ではないかと春菜は確信していた。

 

 その走っている宇宙人は、何やら両腕で赤ん坊ぐらいの頭身の小さいエレキング(所謂『リムエレキング』)を守るように抱きしめていた…。

 

 

 ドルズ星人「聞きなさーい!虫けらども!」

 

 

 突如上空から声が聞こえ、春菜は驚くと同時に見上げる。

 

 

 そこには、何やら毒々しい体色と、脳髄が剥き出しになったような不気味な頭部が特徴の宇宙人『凶悪宇宙人ドルズ星人』が、浮遊した状態で高みの見物をしている…!

 

 

 ドルズ星人「あんた達は私たちに刃向かった罰として、報いを受けるのよ~!」

 

 ドルズ星人の叫びと共に、怪獣たちは更に暴れるペースを上げていく…!

 

 

 因みにこのドルズ星人、声は男なのだが喋り方はオネエ口調である事からオカマだと思われる。

 

 

 ガモスは背中の刺をミサイルにして飛ばし、ワロガは両手から光弾を発射する。

 

 それによる爆発が、必死に逃げる一人の宇宙人を巻き込もうとしている…!

 

 

 春菜「はっ…だめ…危なーい!!」

 

 

 それを見た春菜は必死に助けようと手を伸ばし、それにより彼女もまた、爆発に巻き込まれそうになる…!

 

 

 

 春菜「はっ!!?」

 

 

 その時、さっきまでの目の前の出来事が突然テレビを切るようにプツンを消えた後、春菜は目を覚ます。

 

 

 仰向けに倒れ、息が上がっている彼女の目線の先には、心配そうに見つめる友実の姿があった。

 

 友実「ハルちゃん大丈夫?随分うなされてたみたいだけど…。」

 

 

 どうやら先ほどの光景は春菜の見ていた夢だったようである。

 

 春菜「なんだ…夢か…。」

 

 友実「…ん?どうしたの?」

 

 春菜「い…いや、なんでもない。ありがとうトモ。」

 

 

 やがて春菜は起き上り、友実と一緒に辺りを見渡し始める。よく見てみると、目の前の様子は都会ではあるものの自分達が今いる場所は先ほどの街中ではなく河川敷の近くと若干違うようであった。

 

 春菜「ここ…何処だろう…?」

 

 友実「さあ…。」

 

 

 目の前の景色に違和感を感じた二人は、ふとさっきの青年(慧)が起こした現象の巻き込みを受けたことを思い出す。

 

 春菜「私たち…さっきの謎の空間によって、別の場所に飛ばされたのかな…?」

 

 友実「そうかも…なんだかさっきよりも温かいし、ここ北海道じゃあないみたいだね…。」

 

 以外にも勘が鋭い友実はそう呟いた。

 

 

 春菜「ここは一体何処なんだろう…?それに、さっきの不思議な青年は…?」

 

 

 色々と疑問を感じる春菜。

 

 

 

 一方そんな彼女たちの後ろでは、とある一人の青年が、何かを探しているような様子で辺りを徘徊していた。

 

 

 「やっぱりここにもいないな…。」

 

 

 青年が呟いたその時、そんな彼の影の中から何やら突き出た目が特徴の宇宙人が顔を覗かせる。

 

 「この辺探したけど見つからなかった。リク、そっちは?」

 

 「僕もなかなか見つからなくて困ってるんだ。」

 

 青年は腰につけているナックルを握る。

 

 「レム、周辺に反応はない?」

 

 「はい。半径2キロ圏内をサーチしましたが、それらしき反応を感知できません。」

 

 「そうか…引き続き範囲を広げて頼む。」

 

 「分かりました。」

 

 

 「ペガ、僕らも引き続き捜索を続けよう。」

 

 「うん。じゃあ僕、あっちの方を探してみるね。」

 

 「頼んだ。」

 

 そう言うと青年は、再び高くジャンプしながら辺りを徘徊し始める…。

 

 

 「にしてもモアのやつ、どこ行ったんだろ…。」

 

 

 リク、レム、ペガ、モア………この四つの名前で既にピンと来た人もいるのではないだろうか?

 

 

 そう、春菜たちは別の宇宙“サイドスペース”の地球に迷う込んだという事であり、この世界は『ウルトラマンジード』が活躍した世界でもあるのだ!

 

 

 ウルトラマンジード。それは、かつてこの世界の宇宙を襲った際、超時空消滅爆弾によって宇宙を滅ぼす規模の大爆発『クライシス・インパクト』を引き起こした悪のウルトラマン『ウルトラマンベリアル』が、かつて『ウルトラマンヒカリ』が、戦いに終止符を打つために開発したウルトラマンの力を秘めたアイテム『ウルトラカプセル』収集のため、自身が駒として暗躍させていた『ストルム星人』の『伏井出ケイ』に自身の遺伝子を基に作らせたウルトラマンに変身できる人工生命体であり、所謂ベリアルの事実上の息子でもあるのだ!

 

 地球での姿は『朝倉リク』という青年であり、誕生した後に赤ん坊の状態で天文台に捨てられていた所を保護されて戸籍登録された後、様々な仲間と出会いながら成長していき、そして青年になった時、自身がウルトラマンである事、そしてベリアルの息子である事も知らされてもそんな自分の運命を受け止め、抗いながら仲間と共に戦っていき、やがて見事ベリアルを倒すことで自分の宿命に打ち勝つ事に成功した。

 

 

 レムとは、星山市(リクが住む街)の天文台の地下500メートルにある、今ではリクたちの家でもある秘密基地『星雲荘』の報告管理システムであり、黄色い球体状のコアを持っている。因みに星雲荘は本来はベリアルの宇宙船『ネオブリタニア号』である。

 

 ベリアルの遺伝子を持つリクに星雲荘の所有権を譲渡し、ライザーとウルトラカプセルを託して以降、怪獣出現現場を球体型偵察機『ユートム』を通じてモニターに移して知らせたり、リクをエレベーターで現場に転送したりなどしてリクたちをサポートしてきた。

 

 因みに緊急措置として、自身の声を元に肉体を作り出して女性の姿になって脱出する事もできる。

 

 

 ペガとは、かつて『ウルトラセブン』と対峙した『放浪宇宙人ペガッサ星人』の同族の少年であり、親に、宇宙で旅をして大人の男になって戻ってくるように言われた事がきっかけで旅をしていた最中に地球に漂着し、その際にカプセルが壊れてしまい住まいも無く孤独で困っていた所でリクと出会い、それ以降一緒に暮らすようになった

のだ。

 

 内気で臆病な性格であり、またリクから人前に出ないように言われている事から、普段はダーク・ゾーンを作り出してリクの影の中に隠れている。

 

 

 彼らが捜している“モア”という者は、恐らく仲間なのであろう。

 

 

 このように、宇宙人も交え、ベリアルの息子が活躍したというとんでもない世界に迷い込んでしまった春菜と友実。

 

 果たしてこの先、彼女たちを待ち受ける運命とは…?

 

 

 

 場面を春菜たちに戻そう。

 

 友実「…ん?」

 

 春菜が色々と考え事をしていた時、友実は何か聞こえたのか、耳を澄ましつつ徐々に歩き出す。

 

 春菜「どうしたのトモ?」

 

 それに気づいた春菜も不思議がりながらも後をついて行く…。

 

 歩いていく内に聞こえている音が徐々にハッキリとしていき、その音は何やら小動物の鳴き声のようなものであった。

 

 

 河川敷をまたぐ橋の柱の所まで来たその時、二人はそこにうずくまっている一人に気付く。

 

 友実「誰かしら…あの子…。」

 

 春菜「さぁ…一人で何してるのかな…。」

 

 二人は怪しみつつもその人物に近づいてみる。

 

 

 友実「どうしたの僕?迷子?」

 

 その時、その人はいきなり話しかけられた事に驚いてふと友実達の方を振り向く!

 

 そしてその顔を見た瞬間、友実と春菜も驚く!振り向いたその顔は人間ではなかったからである!

 

 その姿は、ピンク色の大きな目が特徴の宇宙人『変身怪人ピット星人』であった!因みに小柄である所から、子供であると思われる。

 

 ???「あなた達誰!?怖い…!」

 

 驚いたピット星人の少女は立ち上がり怯えるように身構える…!

 

 友実「ああっ!ちょっと待って!私たちは何も悪い事しないから…!」

 

 いきなりの宇宙人に驚きつつも、友実は怯えるピット星人に必死に呼びかける。

 

 

 春菜「はっ…!」

 

 

 その時、春菜は何かに気づいた…。

 

 それは、ピット星人が両腕でリムエレキングを抱いている様子であった…。

 

 友実「はっ!…なにそれ、かわいい~!」

 

 友実がリムの可愛さに見惚れる中、春菜は先ほど自分が見た夢をふと思い出す…。

 

 自身が夢で見た“必死に逃げる人影”…それと同じモノを感じた春菜は、落ち着いた口調で問いかけ始める…。

 

 春菜「ねえ、君、一体誰なの?」

 

 ???「…え?」

 

 いきなり問いかけられたピット星人はリムエレキングを守るように抱きつつ警戒し続ける。

 

 その様子に気付いた春菜は、彼女の膝の傷に気付き話を変える。

 

 春菜「怪我してるじゃない。治療してあげるよ。」

 

 ???「………。」

 

 春菜「その傷、早く消毒しないと黴菌が入っちゃうよ…?」

 

 自分と言う異星人を目の前に驚きつつも、恐れるどころか自分に親切にしようとする彼女たちの優しさに触れたピット星人の少女は戸惑い始めたのか、その場に立ち尽くしたまま俯き始める…。

 

 友実「何か元気無さそうだね…どうかしたの?」

 

 俯くピット星人に、友実は下から覗き込むように話しかける。

 

 友実「ねぇ、私で良かったら聞いてあげるよ。」

 

 友実の優しい呼びかけを聞いたピット星人の少女は、徐々に警戒心が緩んで来たのか、俯く顔を上げて友実の顔を見つめ始める。

 

 ???「…聞いてくれるの?」

 

 友実「(満面の笑みで)うん!」

 

 どうやらピット星人は、心を開き始めたようである。

 

 春菜「じゃあ、トモは話を聞いててあげて。その間に私が治療するわ。」

 

 春菜と友実はピット星人を近くの石の上に座らせ、話を聞くと同時に傷の手当を始める。

 

 

 春菜が手慣れた手つきで手当をする中、ピット星人は二人に打ち明け始める。

 

 そのピット星人の少女の名は『ミリー』。最近まではピット星で平和に暮らしていた。

 

 故人である両親は優秀なエレキングトレーナーであった事から、将来は優秀なエレキングトレーナーになる事が夢であり、一人ぼっちになった後も、野生・飼育関係なくピット星各地のエレキングの観察を続けていた。

 

 因みにエレキングトレーナーとは、エレキングを育て上げ、ペットのように可愛がり一緒に暮らしつつピット星の平和や生活ために有効活用していくというピット星で最近新たにできた職である。

 

 だがある時、とある野生のエレキングの群れを観察していた時、突如ピット星に襲い掛かって来た怪獣軍団によってその群れが襲われた時にその巻き添えを食らいそうになり、必死に逃げつつもその群れが遺した赤ちゃん(リムエレキング)だけでも助けてなんとか逃げ切った。

 

 そしてその後、そのリムエレキングとは同じ境遇同士として仲良くなり、同時に立派な成体に育て上げることを決心し、努めて来たのだという。

 

 しかし、ちゃんと毎日三色御飯を与えたり、一日に少なくとも一回は発電のトレーニング等をさせたりしているのだが、一向に成長する様子は無く、何が悪いのか分からなくなった彼女は自分に、そして将来にも自信を持てなくなってしまい、そして今、ここ地球にいるという“憧れの人”に相談をするために地球にやって来たのだという。

 

 だが、地球に降り立って探し回ってみたもののなかなか会えず、そして疲れ切って河川敷の柱に座り込んでいたのだという…。

 

 

 ミリーの話を聞いた春菜と友実は、彼女の壮絶な人生を聞いて驚きと同時に同情により胸が痛くなりつつあった。

 

 ミリー「地球のどこを探しても…憧れの人になかなか会えなくて…そしてもう疲れてしまいました…。」

 

 友実「そっか…まだ子供なのに、かなり苦労してきたんだね。よしよし…。」

 

 友実は優しい表情で、労を労うようにミリーの頭を撫でる。

 

 見てみると彼女の目は涙で潤んでいた。先ほども言ったように友実は真美と海羽の要素を併せ持っているような性格。そのため優しいと同時に涙脆い一面もあるのである。

 

 

 そして春菜は、ミリーに起こった出来事が、やはり先ほど見た夢の光景と全く同じである事を確信し、更に彼女とリムが思った以上に辛い目に遭い続けた事を知って同情心が強くなっていた。

 

 傷の手当てを終えた春菜はゆっくりと俯き、そして静かにミリーに話しかけ始める。

 

 

 春菜「…私たち…力になれるかな…?」

 

 

 ミリー「…え?」

 

 

 友実「ハルちゃん…?」

 

 

 春菜の思いもしない一言に、ミリーと友実は耳を疑う。

 

 

 春菜は話を続ける。

 

 春菜「私、こんなにも胸が痛くなったの久しぶりかも…。これは多分、相手に対する感情が、普段自分が強く持っている使命感よりも強くなった証だと思うの。」

 

 そう、普段春菜は相手への感情よりも、今自分がすべき事(怪我、病気の手当てなど)を優先的に行動するのだが、今回に至っては今自分がすべき事よりも、困っている目の前の人(ミリー)を助けたいという感情の方が強く出ているのである。

 

 これは春菜にとっては珍しい感情なのである。

 

 

 春菜はミリーの肩に手を置いて話の続きをする。

 

 春菜「あなたは、お父さんとお母さんを失っても、新しい友達を見つけて自分の将来のために前向きに頑張って来た。それでも心が折れそうになりながらも、めげずにはるばる地球までやって来た…

 

 …まだ子供なのにここまでやれたなんて…偉いよ…。私たちは、そんなあなたの力になりたい。」

 

 

 春菜の言葉を聞いたミリーは、嬉しさで目が潤みながらも問いかける。

 

 ミリー「でも…怖くないのですか…?私、宇宙人だし、まだ赤ちゃんとはいえ怪獣も抱いてるし…。」

 

 友実「そんなの関係ないよ。」

 

 ミリー「…え?」

 

 友実「私、信じてたわ。宇宙人の中にも、良い心を持つ人もいるという事を…。そして今あなたに会った事で、それは本当なんだと実感することが出来たわ。だって、怪獣たちによる襲撃の中から、そのエレキングの赤ちゃんを必死に助けたんでしょう…。

 

 それに、(リムの頭を撫でながら)このエレキング、とても可愛いじゃない。きっと優しいあなたなら、将来立派なエレキングに育てられると思うよ。」

 

 

 友実の信じる心、そして、宇宙人や怪獣だろうと分け隔てなく接する優しさに触れたミリーは、嬉しさから潤んでいた目から一筋の涙を流す。

 

 友実はそれをポケットから取り出したハンカチで拭き取りながら語り掛ける。

 

 友実「泣かないで。私たちが力になってあげるから。」

 

 

 そして春菜も、しゃがんでミリーの背中に手を当てて語り掛ける。

 

 春菜「必ず、あなたをその“憧れの人”に会わせてあげる。」

 

 

 ミリー「…うっ…うっ…ぐすんっ………ありがとうございます! どうかよろしくお願いします!」

 

 ミリーは涙を拭き、二人にお礼を言って、頭を下げて協力をお願いする。

 

 

 春菜「さ、行きましょ。疲れてるだろうから私がおぶってあげよっか。」

 

 春菜(まみたんの気持ち…なんとなく分かった気がするな…。)

 

 

 友実「しかし珍しいね~。ハルちゃんが相手の感情優先で行動するなんて。」

 

 春菜「んなっ!?…べ、別に私だって、困ってる人がいたらちゃんと助けてあげるんだから!」

 

 友実「うふっ、照れなくてもいいのに、(ミリーの方を向いて)ね~!」

 

 春菜「ちょっ…も~トモったら~!」

 

 いつものやり取りに戻った春菜と友実の姿を見たミリーは、可笑しさから少しクスっと笑いが出ていた。彼女が僅かながら元気を取り戻しつつある証である。

 

 

 友実「じゃ、そろそ行こっか。」

 

 ミリー「うん!」

 

 

 三人が行こうとしたその時、

 

 

 春菜「…ん?あれは何だろう?」

 

 春菜は何かに気づいてその方向へと指を差し、ミリーと友実もその方向へと振り向く。

 

 

 それは、何やら数人の人が必死に走っている光景であった。

 

 その様子はまるで何かから必死に逃げているような感じであった…。

 

 しかも不思議な事に、その逃げている人々は不思議な事に全員見た感じ園児から小学生ぐらいの“女の子”ばかりなのである…!

 

 

 友実「はっ…あれは何!?」

 

 更に友実も何かに気づいたのか、驚きと共に空を見上げる。

 

 

 空を見上げた春菜たちは驚愕した。

 

 

 そこには、何やらUFO型の巨大な要塞が、ゆっくりと飛んでこちらに向かって来ているのである!

 

 

 突如上空に現れた巨大な要塞の影に覆われる春菜たち。

 

 友実「…何なの!?あれは…!」

 

 春菜「巨大な…UFO!?」

 

 ミリー「何何!?…怖い…!」

 

 怯えるミリーは耳を両手で押さえてうずくまってしまう。

 

 

 春菜と友実が驚きつつもその要塞の動きをよく見てみと、なんとその要塞の飛ぶ方向が逃げている女性たちと全く同じであるのだ。

 

 

 友実「あのUFO、あの女の子たちを狙っているのかな?」

 

 春菜「分からない…一体誰が操縦してるの!?…ねえミリーちゃん、何か知らない?」

 

 ミリー「知らない…私…全く知らない…!」

 

 

 すると、今度はその要塞を追うように大勢の大人たちが押し寄せる!

 

 友実「こっ…今度は何!?」

 

 友実が驚き困惑する中、騒ぐ大人たちの言葉が聞こえ始める。

 

 

 「早く…誰か助けてください!!」

 

 「子供があの中に!!」

 

 

 春菜「へ?…子供…?」

 

 

 突然押し寄せて来た大人たちの言葉に春菜たちの困惑が強まる中、その要塞の下部から紫色の筒状の光線が放たれる!

 

 

 その光線を浴びた女の子たちは宙を浮き、やがてその光線を辿って要塞の中に吸い込まれていく…!

 

 

 更に、近くにいた春菜たちもその巻き沿いを浴びて宙に浮き始めてしまう…!

 

 春菜「へ?…嘘!?」

 

 友実「そ、そんな、嫌だ~!」

 

 

 やがて春菜たち三人も、光線を辿って要塞の中に吸い込まれてしまう…!

 

 

 要塞が発した光線に吸い込まれ、要塞の中に放り込まれた三人。起き上って周りを見てみると、三人はとある薄暗い通路に立っていた。

 

 

 ミリーは恐怖で震えながら友実に抱き付いている。

 

 友実「どこ?ここは…。」

 

 春菜「多分、円盤の中だと思うけど…。」

 

 

 その時、

 

 

 「あらあら、勢い余って大人まで吸い込んじゃったわね~。」

 

 

 突如後ろからオネエ口調の声が聞こえ、三人は振り向くとそこには1人のドルズ星人が立っていた!

 

 

 三人、特に夢でも同じ口調のドルズ星人に遭遇した春菜は警戒するように身構える。

 

 

 友実「のっ…の…脳みそが剥き出しになってる〜!?」

 

 

 「んなっ!?…ムッキー!! 失礼ね!私の頭は元々こんな形なのよ!」

 

 いきなり頭の事を指摘されたドルズは逆上しそうになりながらも気を取り直す。

 

 「おっと!怒りはお肌に良くないわね…。では気を取り直して、おめでとう!あなた達は我がドルズの改造対象に選ばれたのです!」

 

 友実「…私たちが…改造対象…?」

 

 春菜「一体どういう事なの?」

 

 「ふふふ、まあそう慌てずに、後ほど教えますわよ。」

 

 

 ミリー「…お前は…。」

 

 ミリーはとりわけ睨みつけるようにドルズ星人を見つめており、ドルズもその様子に気づく。

 

 「おや、あなたは確かあの時我が怪獣軍団により無様に死んでいったエレキングどもの中を走って逃げていた子ね〜?てっきりエレキングどもと共に死んだかと思えば、そんなひ弱な赤ちゃんなんか拾ってのうのうと生き延びてたとはね〜。」

 

 ドルズの非情な言葉にミリーはより視線が強くなり、春菜と友実は怒りを感じる。

 

 「なんです?その目は、そもそもあなた達ピット星人どもが私達の改造対象になる事を拒んだから襲撃される事になったのですわよ?」

 

 春菜「やっぱり…ピット星を襲ったのはあんた達だったのね…。」

 

 友実「何勝手な事言ってるの!…ミリーちゃん達は…ただ嫌だから嫌だと言っただけなのに、拒まれたからってそれを逆ギレするように攻撃して、怪獣とはいえ尊い命を奪うなんて…そんなの勝手過ぎるよ!」

 

 

 「むむっ…ムッキー!だまらっしゃい!しつけの足りない小娘ども!」

 

 “ビビビビビビ…”

 

 “バチーン”

 

 友実「ひゃっ!」

 

 ドルズは手先から光線を出してそれを友実たちの足元に命中させて軽く脅す。

 

 

 「私よりスタイル良い上に生意気な事言って来るなんて…益々許しておけませんわね〜。

 

 クラップ!ゴイル!」

 

 ドルズがそう叫ぶと、突然それぞれ春菜と友実の横から2人のドルズが現れ、それぞれ春菜と友実の腕を掴んで捕える!

 

 友実「ひゃっ!?ドルズ星人が更に2人?」

 

 春菜「何なの?あんた達…。」

 

 

 クラップ「へっへっへ…俺たちゃドルズ仲良し3兄弟!俺は二男のクラップ!」

 

 ゴイル「そして僕ちんは、三男のゴイルだべ〜!」

 

 なんと、ドルズ星人は3人、しかも兄弟で地球に攻めて来たのである!

 

 

 マルフォイ「そして私は長男のマルフォイ。よろしくね〜。」

 

 自己紹介をしながら、マルフォイはミリーに接近し彼女が抱いていたリムエレキングを無理矢理取り上げる!

 

 ミリー「はっ!…返せ!それは私の大切な友達なんだ!お前なんかが触るなー!」

 

 マルフォイ「うるさいわね〜、ふんっ!」

 

 ミリー「うわっ!」

 

 リムを返せと抵抗するミリーを、マルフォイは軽く突き倒す。

 

 

 マルフォイ「生意気な子達にはお仕置きが必要ね〜。クラップ!ゴイル!この3人を広場まで連れて行きましょう。」

 

 クラップ「いえっさー!」

 

 ゴイル「了解だべ兄者。」

 

 マルフォイ「このエレキングも、後ほどじっくり処刑するとしましょ~。」

 

 マルフォイはミリー、クラップは春菜、ゴイルは友実をそれぞれ連れて行き、やがてとある扉を開けて3人をその中へ放り込んだ。

 

 

 3人は顔を上げると、目の前の光景に驚愕する。

 

 今自分たちが入れられた部屋はだだっ広い広場であり、そして目の前には沢山の女の子たちがうずくまって泣きじゃくっているのだ!

 

 恐らく彼女たちも同じくドルズ3兄弟に拉致された子供達であろう。

 

 

 春菜「何なの?この子たちは…。」

 

 友実「これも、奴らの仕業?」

 

 

 すると、広場の上空に巨大なモニターが現れ、そこにあの3兄弟が映し出される!

 

 マルフォイ『いいわね〜。大量に女の子たちが手に入ったわ。』

 

 春菜「ドルズ!この子たちをどうするつもりなの!」

 

 

 マルフォイ『ふっふっふ、その集めた可愛い女の子たちには、我々の侵略の手伝いをしてもらうのよ〜。

 

 ベリアルがいなくなった今、それに代わって宇宙を制圧できる大チャンス!

 

 その子たちは、我がドルズ星の素晴らしき科学により、『うろこ怪獣メモール』に改造し、攻撃兵器として利用するのよ!』

 

 

 マルフォイがそう言うと、モニターの右半分にメモールの写真が映し出される!

 

 それを見た春菜たちは顔を渋らせ、女の子たちはより泣き声が強まってしまう!

 

 メモールに改造されると知った上にその姿を見た事により、「自分たちがあんな恐ろしい姿に改造されるなんて…。」という気持ちが、恐怖と悲しみを増幅させたのであろう。

 

 

 マルフォイ『これだけの数のメモールが誕生すれば、地球はおろか、宇宙を制圧など夢でもないわ〜!オーホホホホホホホ!

 

 さあ!もっと泣いて改造のためのマイナスエネルギーを発散させなさーい!ホホホホホホ…!」

 

 マルフォイの高笑いを最後に、モニターの画面も消えた。

 

 

 春菜「くっ!…なんて残酷な奴らなの…!」

 

 友実「大変…早くこの子たちを助けて、ここから脱出する方法を考えないと…!」

 

 春菜「でも…一体どうすれば…。」

 

 春菜たちは、ドルズ3兄弟の企みに怒りを感じながらも、特別な力もない自分たちのどうすればいいか分からない現実に、やや途方に暮れそうになっていた…。

 

 

 ドルズに拉致された事により親とはぐれ、泣きじゃくる少女たち。同時にそれにより、メモール改造のために必要なマイナスエネルギーが順調に集まりつつあった!

 

 要塞の数カ所の発光部の光が強くなりつつあるのが、その証である!

 

 

 マルフォイ「ふっふっふ、いいわね〜順調にマイナスエネルギーが集まりつつある。

 

 (片手をメガホン代わりにして)もっと泣きなさーい! オホホホホホ!」

 

 

 マルフォイは、物事が順調に進みつつある事に気分も上げ上げになっていた…。

 

 

 なおも親を恋しがって泣き続ける少女たち。中には既に泣き止んでいた子が、泣いている子を懸命に励ましている様子もあった。

 

 

 春菜たちはそんな光景をやるせない表情で見つめるしかなかった…。

 

 

 …だが、実はそんな中に、春菜たちの他にも比較的大人な女性が二人ほど捕えられていたのだった。

 

 

 一人はラフな格好に刀剣を提げている少女、もう一人は長身でスーツ姿の女性である。

 

 彼女たちもまた先ほど紹介したリクたちをサポートしてきた仲間であり、一人は刀剣を用いる武術に長けた少女『鳥羽ライハ』、もう一人はリクの幼馴染であり、防衛組織『AIB』(正式名称:Alien Investigation Bureal(異星人捜査局))のエージェント『愛崎モア』である。

 

 因みにAIBとは、地球で犯罪行為を行う宇宙人の取り締まりを主な任務としており、また宇宙規模の連合組織であるため、メンバーの中には異星人も存在している。

 

 また世間一般には極秘の組織でもあるため、メンバーは普段は“ニコニコ生命保険”の社員であると偽装しており、モアは自分がAIBである事はリク達にしか打ち明けていない。

 

 

 二人とも恐らくリク達と少女蒸発事件の捜査をしていた最中、春菜たち同様、少女たちが攫われる際の巻き沿いで捕らわれたのであろう。

 

 

 ライハ「マズいわね…子供の数が増えている。」

 

 モア「そうだね、早く何とかしないと…でも…捜査していた私たちまで捕まっちゃうなんて…。」

 

 ライハ「仕方ないよ。捜査を始めた時点でも、まだ正体どころか真相も分からなかったんだから…。」

 

 捜査する側なのに逆に捕まってしまった事に凹みそうになるモアを、ライハは宥める。

 

 ライハ「ここはリク達を信じよう。」

 

 モア「そうだね。リッくんなら、きっと助けに来てくれるよね! 私たちも今出来る事をしないと。」

 

 ライハに励まされたモアは、自分たちを捜しているリク達を信じ、いつもの元気を取り戻す。

 

 

 ライハとモアはとりあえず泣いている少女たちを宥める事にした。しかし、そう簡単に行くものではなく、恐怖や不安の方が強い少女たちは、一向に泣き止む様子はない…。

 

 

 モア「なかなか泣き止まない…ん?」

 

 モアは何かに気づいて振り向く。ライハもそれに気づいて向いてみるとその先にいるのは、少し離れた場所でうずくまっているミリーだった。

 

 モア「あれは…AIBが捜索していた、ピット星人。」

 

 実はAIBは、少女蒸発事件とほぼ同時期に確認された、地球に入り込んだピット星人の捜索も行っており、そのピット星人がミリーなのであった。

 

 

 何故消息事件と同時にミリーを捜索していたかと言うと、事件との関連性が無いかどうかを確かめるためでもあったのである。

 

 ライハ「彼女も、私たちと同じく捕えられてたって事なの…?」

 

 モア「…泣いてる…?」

 

 ミリーの様子を見て、彼女が事件の犯人じゃないかと言う事も予想に入れていた二人は、そうじゃない事に気付く。

 

 

 広場の隅でうずくまっているミリー。友達のリムを奪われた事に悲しんでいるのである。

 

 それに気づいた友実は、ミリーの元に歩み寄り、しゃがんで優しく話しかける。

 

 

 友実「お友達も、心配だよね…。」

 

 ミリー「…ぇ…?」

 

 友実「リムエレキングちゃん…。」

 

 

 ミリー「…ずっと一緒だったんだ………私が奴ら(ドルズ三兄弟)の襲撃から助けてから…ずっと…。」

 

 

 やがてミリーは寂しさからすすり泣きを始め、友実は「大丈夫」と呼びかけながら彼女の背中を優しく摩り始める。

 

 

 その様子を見守る春菜。すると、

 

 モア「そのピット星人と、お知り合いなのですか…?」

 

 突然モアに話しかけられた春菜は少し驚きながらも振り向く。

 

 春菜「あ…あなた達は…?」

 

 モア「突然すいません。私たち、その子を捜索していた、ニコニコ生命保険の者です。」

 

 そう言いながらモアは春菜に名刺を差し出す。

 

 春菜「ニコニコ…生命保険? 初めて聞く保険ですね…しかも、宇宙人とかも探したりするんですか?」

 

 モア「え…ええ、私たち、人間だけではなく身寄りもない宇宙人を保護したりもするのです。」

 

 春菜「ご存知だったのですか?ミリーが親もいなかった事を…?」

 

 モア「え?………(小声で)天涯孤独…ミリー…?………ええ!もちろん。」

 

 どうやらモアは、名前がミリーである事、彼女が天涯孤独である事もまだ知らなかったようである。

 

 

 ライハ「…地上であの子と知り合ったの?」

 

 春菜「ええ…何か、元気が無さそうだったら放っておけなくて………(ミリーの方を振り向いて)両親は既に他界、折角できた友達も、今奪われてしまっていて…。」

 

 

 ミリーの境遇を知ったライハとモアも憐れむような表情に変わる。特にライハは、同じ両親を失っている者として彼女の気持ちが痛いほど分かっているようであった。

 

 ライハ「そんな…お父さんもお母さんもいないなんて…。」

 

 モア「(少し涙ぐんで)まさか…そんなにも可哀想な子だったなんて…。」

 

 

 ミリー「うっ…ぐすんっ…リムまで…リムエレキングまでいなくなったら……私!……」

 

 友実「大丈夫。」

 

 なおも泣きじゃくるミリーを友実は優しく抱きながら語り掛け続けていた。

 

 

 一方、ライハは何かに気づいて振り向く。そこには、二人の少女の姿が。

 

 ライハ「マユちゃんに…エリちゃん…?」

 

 なんと、かつてリトルスター保持者としてライハ達と知り合った『原エリ』と『伊賀栗マユ』も捕えられていたのだった!

 

 

 実際、地上で子の無事を祈っている大人たちの中にはエリの叔父の『久米ハルヲ』とマユの母親の『伊賀栗ルミナ』の姿も。

 

 ルミナ「お願い!マユを返してー!」

 

 ハルヲ「エリ…無事だよな…エリ!」

 

 「誰かウチの子を助けて!」

 

 「どうか無事でありますように…!」

 

 子供を攫われた大人たちはなおも祈り、叫び続ける。

 

 

 それを遠くから見つめているリク。彼もまた遂に要塞を見つけたのだ!

 

 ペガ「リク!どうやらマユちゃんやエリちゃんもあの中にいるみたいだよ。」

 

 リク「あぁ…早く助けないとな…でも、今あの要塞を爆破したら、中の子供たちまで……はっ、もしかしてモアもあの中に!?」

 

 

 ゼロ「どうやら、そうみたいだな。」

 

 

 リクは声のした方に振り向くと、そこには眼鏡を外した『伊賀栗レイト』が立っていた。

 

 

 レイトは、ルミナの夫でありマユの父親でもあるサラリーマンである。普段は気弱な性格だが有事の際は勇気を見せる所もあり、かつて少年を救おうとして瀕死の重傷を負った際に、その姿に感動したゼロに一体化されることで完治し、それ以降は戸惑いつつもゼロとしてリク達と共に戦ってきた。

 

 そう、実はジードの地球はゼロも訪れており、かつてクライシス・インパクト時のベリアルとの戦いで傷を負い、ウルティメイトブレスレットが破損しつつもウルトラカプセルを探すために訪れた。

 

 傷により万全ではなく活動時間も限られていた事からレイトと一体化する事で彼の命を救うと同時に自身も長時間活動できる、所謂“win-winの関係”となり、それ以降は主にジードをサポートする形で共に戦ってきた。

 

 彼や仲間たちの協力、そしてキングの奇跡によりジードがベリアルを撃破して自分の宿命の戦いに終止符を打った後、傷やブレスレットも治ったゼロは地球を後にしたのだが、恐らく宇宙空間でドルズ星人の暗躍に気付き、彼らを追って地球にやって来たのであろう。

 

 そしてそのドルズ星人によりマユも捕えられている事を知ったために再びレイトと一体化したに違いない。

 

 

 ゼロは状況によってはレイトの体を断りなく動かす事があり、その際に眼鏡を外し、発せられる声もゼロのものになる。今レイトはそんな状態である。

 

 

 リク「レイトさん…それに、ゼロ!」

 

 ペガ「帰って来たんだ!」

 

 ゼロ「ああ、久しぶりだなリク、ペガ。」

 

 リクとペガはゼロとの唐突な再会に驚きを隠せなかった。

 

 

 リク「ゼロは何か知っているの?」

 

 ゼロ「ああ、奴らはドルズ星人。あの要塞で地球中の少女を攫い、メモールに改造してベリアル無き今の宇宙を制圧しようと企んでいる凶悪な宇宙人だ。」

 

リク「侵略のために、地球の子供を利用だって!?」

 

 リクは驚愕する。さらにレムは付け加える。

 

 レム「過去にもドルズ星人により女性が一人メモールに改造され、攻撃兵器として地球に送り込まれたという記録があります。」

 

 ペガ「そんなにも酷い奴らだなんて…。」

 

 ゼロとレムからドルズの事を聞いたペガは、その非道さに胸が痛くなる。

 

 

 リク「でも、もうブレスが治ったんでしょ?なのになんでまたレイトさんと…。」

 

 ゼロ「どうやらあの中にはマユも捕えられているみたいでな。レイトも居ても立っても居られなくなったってワケだ。」

 

 レイト「そういう事です!」

 

 

 リク「レイトさん…絶対に助けましょう。あなたの娘さんも。」

 

 レイト「はい!」

 

 決心を固めたリクとレイトは拳を合わせた。

 

 

 リク「ジーっとしててもドーにもならない。あの要塞に突っ込もう!」

 

 ペガ「でも、大丈夫かなぁ…。」

 

 

 ゼロ「大丈夫だ。応援も二人いるからな。」

 

 リク・ペガ「…え?」

 

 

 場面を要塞の中に戻そう。

 

 エリ「私たち、一体どうなっちゃうのかな…?」

 

 泣きじゃくる少女たちを宥めつつ、不安になっていくエリ。すると、そんなエリにマユが話しかける。

 

 マユ「大丈夫だよ。」

 

 エリ「…え?」

 

 マユ「きっと、大丈夫だよ。だって、ウルトラマンが、絶対に来てくれるもん!」

 

 マユは、まだ幼い少女ながらもウルトラマンが来てくれることを信じ、その心を強く持ち続けていたのである!

 

 流石はウルトラマンゼロ(に変身する者)の娘である。その言葉を聞いたエリも、次第に勇気が出始める。

 

 エリ「…そうだね。諦めず祈れば、必ずウルトラマンは来てくれる…そう信じて、頑張らないとね。」

 

 マユとエリはかつてウルトラマン(ジード)に祈った者同士。一気にここで意気投合した。

 

 

 するとマユは泣きじゃくるミリーの元に駆け寄り、俯くミリーの顔の前に握った右手を差し出す。

 

 それに気づいたミリーが顔を上げると同時にマユは手を開くと、その手には一個の飴が。

 

 

 マユ「泣かないで。」

 

 

 飴を差し出し、無邪気な笑顔でミリーに話しかけるマユ。

 

 

 ミリー「…私に?」

 

 マユ「うん!」

 

 新たな地球人の親切に触れたミリーは、嬉し涙を拭きつつ飴を受け取る。

 

 ミリー「…ありがとう。」

 

 友実「良かったね。」

 

 

 エリ「偉いね、マユちゃん。」

 

 歩み寄って来たエリもマユの親切を褒める。

 

 

 このように決して諦めていない少女達もいる事を知ったライハとモア、そして春菜、友実も、次第に希望を取り戻しているようであった。

 

 

 春菜「みんな大丈夫!諦めなければ、きっと希望はあるよ!」

 

 元気に少女たちに呼びかける春菜。

 

 

 モア「よーし、ジーっとしてても、ドーにもならないね!」

 

 そう言うとモアは、偶然持ち込んでいたお手玉を三つ取り出し、それを投げ始める。

 

 ライハ「モア、こんな時に遊んでいる場合じゃ…」

 

 モア「こういう時だからこそだよ。 ほーら見て見てー!」

 

 

 モアがお手玉を投げ始めたのは、少女たちを元気づけるために芸を見せるためだったのだ。

 

 モア「よっ、よっ、よっ…ほら、凄いでしょー。よっ、よっ…」

 

 リズムよく三つのお手玉を投げてはキャッチしていくモア。さっきまで泣いていた少女たちも徐々に泣き止んでその芸を見つめ始めていく…。

 

 

 モア「よっ、よっ…う、うわっ…きゃっ!?」

 

 “ドシーン”

 

 やがてモアはバランスを崩し、同時に近くにあった段差に躓き尻餅をついてしまう。

 

 

 だが、それを見た少女たちはその様子が可笑しかったのか一斉に笑い始める。

 

 

ミリー「ふふ、なんだあれ。」

 

さっきまで泣いていたミリーも笑顔を取り戻しており、それを見た春菜と友実も安心の表情になる。

 

 

モア「いててててて…。」

 

尻を押さえて痛がるモアだが、子供達が笑っているのを見て安心の表情になる。

 

モア「やった…やっぱ子供は笑ってるのが1番だよ!」

 

アクシデントが起こったものの見事に子供達を笑わす事に成功したモアの元に、ライハが笑顔で歩み寄る。

 

ライハ「ナイス。」

 

サムズアップをするライハに、モアもサムズアップを返した。

 

 

 マルフォイ「随分と楽しそうですねぇ~。」

 

 

 だがそれも束の間、子供たちが泣き止んだことに気付いたマルフォイが広場のど真ん中に降り立つ!

 

 それにより笑っていた子供たちは再び怯え始める!

 

 

 春菜「あんた…何しに来たの!」

 

 

 マルフォイ「決まってるじゃな~い!もっと泣かせに来たのです!」

 

 

 “ビビビビ…”

 

 “バチンッ”

 

 

 マルフォイは脅しとして手からの光線を地面に命中させ、それにより子供たちは恐怖により再び泣き出す!

 

 

 折角笑顔にした子供たちを再び泣かされた事により、春菜たちは再び怒りを感じ始める。

 

 

 マルフォイ「そうです!泣くのです!それにより、改造に必要なマイナスエネルギーを発生させるのよ~!」

 

 

 泣きじゃくる子供達を前に嘲笑うマルフォイ。よく見て見ると奴はリムを右腕に抱えていた!

 

 それに気づいたミリーは立ち上がりマルフォイに突っ込み始める!

 

 友実「ああっ、ミリーちゃん!」

 

 

 マルフォイにしがみ付き、両手でがむしゃらに叩き始めるミリー。

 

 ミリー「返せ!私の友達を返せ!この外道なオカマ野郎!」

 

 マルフォイ「ふんっ!」

 

 ミリー「うわっ!!」

 

 マルフォイはミリーをあっさりと蹴り倒した。

 

 マルフォイ「私を侮辱するとは、しつけの足りないガキね…どうやらお仕置きが必要みたいね~。」

 

 そう言いながらマルフォイは倒れ伏すミリーに接近し始める…!

 

 

 ライハ「止めなさい!」

 

 

 ライハはミリーを襲おうとするマルフォイの前に颯爽と立ちふさがる!

 

 

 マルフォイ「あらら、貴女みたいな小娘に何が出来るのよ?」

 

 そう言いながらマルフォイはライハに接近し、左手で“顎クイ”をして詰め寄る。

 

 マルフォイ「痛い目に遭いたくなければ、私に逆らわない方がいいわよ~オーホホホホホ…!」

 

 

 …だが、マルフォイは完全にライハを見くびっていた。

 

 

 ライハ「あんた…私の事女だからって舐めてる?」

 

 マルフォイ「はぁん?」

 

 

 ライハ「はっ!!」

 

 “ドゴッ”

 

 マルフォイ「!ぐふぉっ!?」

 

 ライハはマルフォイが油断した隙に、自身に顎クイをする腕を振り払った後、素早く腹部に右の掌を打ち込んで撥ね飛ばす!

 

 

 ライハは背中の鞘から刀剣を引き抜いて構えを取る。遂に己の武術を活かす本領発揮モードに入ったのだ!

 

 

 マルフォイ「ムッキー!なんなのこいつ!」

 

 逆上したマルフォイは両手を突き出して光線を乱射するがライハはそれを刀剣を振るってことごとく打ち消していく。

 

 やがて接近すると、マルフォイの左フックを右足蹴りで撥ね返し、続けて右脚で左脇腹、頭部と二段蹴りを決めた後、跳躍しながら一回転して回転と落下のスピードを活かして剣を振り下ろすがマルフォイは後ろに下がる事で辛うじてそれをかわす。

 

 マルフォイは今度は両手同時に光線を放つが、ライハはそれを一回転しながら剣で切り裂いて打ち消し、それと同時に接近して右足でマルフォイの右腕を蹴る!

 

 リムを抱えていた右腕を蹴られた事により、マルフォイはリムを手放してしまった!

 

 マルフォイ「ああっ!!」

 

 マルフォイが宙を舞うリムに気を取られている隙に、ライハは渾身の右足蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 得意の武術でマルフォイを圧倒するライハ。6年前から両親の敵を討つために磨き上げたその腕前は非常に高く、生半可な宇宙人では全く歯が立たないのである!

 

 

 ミリー「リム!」

 

 ライハの機転によりマルフォイが手放したリムを、ミリーは両腕で見事にキャッチした。

 

 そして、嬉しさからリムに頬ずりしながら嬉し涙を流す。リムも嬉しそうに両腕を振っていた。

 

 ミリー「良かった…本当に良かった…!」

 

 友実「良かったね。ミリーちゃんが取り返したんだよ。」

 

 ミリー「うん!」

 

 優しく話しかける友実に、ミリーは元気よく返事をした。

 

 

 モア「ナイス!ライハちゃん。」

 

 春菜「…凄い!」

 

 モアは機転を利かせたライハにサムズアップをし、春菜はライハの強さに感心と同時に驚きを見せる。

 

 

 ライハ「あなたの負けよ。大人しくこの子たちを解放しなさい!」

 

 降伏を命じるライハ。だが、マルフォイは更に逆上する。

 

 マルフォイ「ムッキー!!なんて下品な女! クラップ!ゴイル!」

 

 

 マルフォイの呼びかけを受けたクラップとゴイルはすぐさま現れ、たちまち三兄弟でライハを囲んでしまった!

 

 クラップ「へっへっへ!助太刀いたしますぜ兄者!」

 

 ゴイル「いくら強くても僕ちん達には勝てないべ~!」

 

 マルフォイ「さあ、ドルズ星に代わってお仕置きよ~!」

 

 

 ライハを囲むドルズ三兄弟は一斉に光線を放つ!ライハはそれを回転しながら刀剣で弾き返すが、その隙を突かれてクラップに右腕、ゴイルに左腕を掴まれて動きを封じられてしまった!

 

 

 “ビビビ…”

 

 “バチンッ”

 

 ライハ「ぐっ…!」

 

 

 マルフォイは手からの光線をライハの無防備な腹部に命中させてダメージを与え、受けたライハは一気に力が抜けてしまった。

 

 

 マルフォイは弟たちに捕えられたライハに接近し、再び顎クイをする。

 

 マルフォイ「さっきはよくも私を蹴ってくれたわね。悪い娘め…。」

 

 クラップ「兄者、もう一気に殺っちゃいましょうぜ!」

 

 ゴイル「賛成だべー!」

 

 マルフォイ「ふふふ、覚悟なさい…!」

 

 

 ライハに止めの光線を浴びせようと、マルフォイは腹部に突きつけた右腕を発光させ始める…!

 

 

 絶体絶命と思われたその時!

 

 

 ミリー「止めろーっ!!」

 

 

 マルフォイ「…ああん?」

 

 広場中に響くほどのミリーの叫びを聞いたマルフォイは光線のチャージを止めて振り向く。

 

 

 ミリー「宇宙は…誰かが支配するものじゃない!…他の星の者同士が平和に暮らすものなんだ!!」

 

 

 ミリーの勇気の叫びを聞くモアと春菜たちも「そうだね」とばかりに笑顔を見せ、子供たちも次第に泣き止み始めていく…。

 

 

 ミリー「私も、もう泣かないから、だから希望を捨てないで!」

 

 

 すると、泣き止んだ子供の一人がミリーの手を握る。

 

 「私ももう泣かないから、だからウルトラマンが来てくれるのを信じる!」

 

 

 気が付くと、泣き止んだ子供たちが口々にウルトラマンの登場を信じて叫び始める。

 

 

 マルフォイ「何っ…何だと!?」

 

 ドルズ三兄弟は動揺し始め、春菜たちは希望を取り戻した子供たちの姿に感心する。

 

 ライハ「みんな…。」

 

 モア「…感激です!」

 

 春菜「みんな強いよ…。」

 

 友実「だね!」

 

 

 その時!

 

 

 “ズドーン”

 

 

 突如、外側から壁が爆発し、大きな穴が開く!

 

 

 春菜「ひゃっ!?」

 

 モア「一体何!?」

 

 

 一同が驚き見つめる中、その爆風の中から一人の影が飛び込む!

 

 

 “ドガッ”

 

 マルフォイ「ぐふぉ~!?」

 

 

 飛び込んで来た影はマルフォイの胸部に飛び蹴りを打ち込んで吹っ飛ばす!

 

 

 クラップ「兄者!?」

 

 クラップとゴイルが動揺している隙にモアはすぐさま携帯銃『アスタナージ・ガン』を引き抜き弾丸を二発撃って二人の頭部に命中させる!

 

 怯んだクラップとゴイルはライハを手放し、自由になれたライハはモアの元に駆け寄る。

 

 ライハ「ありがとう、モア。」

 

 モア「いえいえ!」

 

 

 ライハとモアは先ほどマルフォイを蹴飛ばし着地した人を見つめる。それは、スーツ姿に端正な顔立ちが特徴の男。

 

 彼は、AIBのエージェントであり、モアの先輩でもある『シャドー星人ゼナ』であった!

 

 ゼナはかつて『猛毒怪獣ガブラ』を引き連れて侵略を企てた『宇宙ゲリラシャドー星人』の同族であり、当初は任務に勤しみつつ、クライシス・インパクトの影響を受けたシャドー星の復興を目指していたが、新人のモアのひたむきな姿に心を動かされて任務を重視するようになり、それ以降よくドジを踏むモアに悩まされつつも彼女と共に違法行為をする宇宙人を取り締まって来た。

 

 

 モア「ゼナ先輩…!」

 

 ゼナに気付いたモアは感極まる。ゼナはモアの元に歩み寄る。

 

 ゼナ「大丈夫か?」

 

 モア「ええ、この通り!」

 

 ゼナ「全く、まさかお前まで捕まっていたとはな。」

 

 モア「ぅぅ…面目無いです…。」

 

 

 ゼナ「…だが無事でホッとした。」

 

 モア「…(嬉しそうな表情で)ゼナ先輩…!」

 

 

 マルフォイ「誰?誰このイケメン!」

 

 立ち上がったマルフォイはゼナに心酔しつつも襲い掛かる!

 

 マルフォイ「だが容赦しないわよ〜!」

 

 

 ゼナはマルフォイの駆け込みながらの前蹴りを右手で叩き落とした後、続けて打ち込んできた右フックを左腕で受け止めて右拳でボディブローを決めて後退させる。

 

 マルフォイ「イケメンで強い…嫌いじゃないわ!」

 

 マルフォイは更に興奮しながら右フックを繰り出すがゼナはそれを左腕で受け止めてそのまま右足蹴りを腹部に2発打ち込んだ後、脳天に手刀を打ち込んで胸部に正拳突きを打ち込んで後退させる。

 

 そしてゼナは一回転しての足払いでマルフォイを転倒させた!

 

 

 マルフォイ「まさかここまで強いとは…。」

 

 クラップ「兄者!助太刀いたしますぜ!」

 

 ゴイル「戦える奴が1人増えた所で我が三兄弟に勝てるわけ…」

 

 

 ゼロ「1人じゃねーよ!」

 

 

 クラップ・ゴイル「!?」

 

 

 ゼロ「ゼアッ!」

 

 “ドガッ”

 

 クラップ「ぐあッ!」

 

 ゴイル「うひょ~!?」

 

 今度はゼロ人格のレイトが飛び出して来て、跳躍してクラップとゴイルにそれぞれ右足、左足の蹴りを打ち込んで吹っ飛ばす!

 

 

 ゼロ「へッ、待たせちまったなぁ!」

 

 着地を決めたゼロレイトは右手でで口元を擦りながら立ち上がる。

 

 

 モア「レイトさん!それに…ゼロも!!」

 

 ゼナ「ゼロも帰って来たか…しかし…、」

 

 ライハ「何なの?あのお面は…。」

 

 

 …よく見てみると、レイトの顔はゼロのお面をかぶっていた。

 

 恐らくこれは子供たちにウルトラマンである自分の顔を覚えられないようにするための対策であろう。

 

 

 レイト「良かった。マユも無事みたいですよ。」

 

 ゼロ「ああ!」

 

 

 クラップ「何だ貴様!」

 

 ゴイル「ブッ飛ばすぜ~!」

 

 

 クラップとゴイルは左右から同時にゼロレイトに殴り掛かるが、レイトは体はゼロが動かしているだけあってまるで動きが読めているかのようにかわしていき、やがてクラップに前蹴り、ゴイルに裏拳を顔面に決める。

 

 そしてゼロレイトは地に手を付き、ブレイクダンスのごとく身体を回転させながら蹴りを放って二人を吹っ飛ばす!

 

 

 マルフォイ「やだあそこも強いイケメン! 私が抱きしめてあげr…」

 

 ゼロ「キメーんだよッ!!」

 

 “ドガンッ”

 

 マルフォイ「ぐふぉ~!」

 

 駆け寄って来たマルフォイに、ゼロレイトは前転しつつ放ったスコーピオンキックを顔面に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 そしてかつてチンピラにやったように、横たわるマルフォイの右足を踏みつける。

 

 “ギリギリギリ…”

 

 マルフォイ「いててててて…!」

 

 

 ゼロ「俺の娘に手を出そうなんて…」

 

 ゼロ・レイト「(右手で逆ピース)二万年早いぜ!!」

 

 ゼロとレイトの声が重なった。

 

 

 「わぁーすごーい!!」

 

 「かっこいい~!!」

 

 ゼロレイトに見惚れ始める子供たち。

 

 

 レイト「ゼロさん、ここはいっちょ決めません?」

 

 ゼロ「そうだなぁ…それじゃあ…」

 

 そう言いながらゼロレイトは親指で口元を擦りながら子供たちの方を振り向く。

 

 

 ゼロ「俺はゼロ…サラリーマンゼロだ!!」

 

 

 そして、ゼロのポーズで名乗りを決めた!

 

 なるほど、スーツ姿でゼロのお面を被っているから“サラリーマンゼロ”…考えたモンである(笑)

 

 

 マユ「パパ…。」

 

 歓声を上げる子供たちの中で、サラリーマンゼロが父親である事に既に気付いていたマユは嬉しそうに呟いた。

 

 

 その時、一人の白衣の女性が子供たちに呼びかける。

 

 トリィ「みんな、助けに来たからもう大丈夫だよ!」

 

 

 ミリー「…はっ!」

 

 

 ミリーはその女性を見た瞬間驚きの声を出す。そして、数秒見つめた後呟く。

 

 

 ミリー「…トリィさん…?」

 

 

 トリィ「ミリーちゃん…?」

 

 トリィと呼ばれたその女性も、ミリーを見た瞬間彼女の名前を呟く。

 

 

 そう、ミリーが探していた憧れの人とは、『ピット星人トリィ=ティプ』の事だったのである!

 

 

 トリィはかつて地球侵略を目論み、その兵器として自身が育てたエレキングを持ち込んだのだが、地球とその文明を気に入った事で同胞を裏切って計画を中止し、エレキングも眠らせて封印した。

 

 その後、目覚めたエレキングの解放をジードに願った事でリトルスターを譲渡して『ウルトラマンヒカリ』のカプセルを起動させ、その後AIBに研究職員として就職している。

 

 

 ミリーはそんなトリィに憧れを抱き、彼女と知り合った後は時折彼女に何かしら相談したり交友したりしていたのである。

 

 

 そして今回、自身のリムエレキングの育成に困ったという事で、エレキングを育てた経験もあるトリィに相談するために地球に来たのであった。

 

 

 トリィ「良かった!無事だったみたいね。」

 

 ミリーの安全を喜ぶトリィ。恐らく地球に迷い込んだのが同じピット星人だという事で、本来は研究職員である彼女も特別に捜査に協力していたのであろう。

 

 

 ミリー「トリィさん…!」

 

 ミリーもトリィに会えた事に嬉しそうに反応するが、直後に涙ぐみながら俯く。

 

 

 トリィ「…何か困ってるんだね。」

 

 何度かミリーの相談に乗った事があるトリィは、彼女の気持ちをすぐに察した。

 

 

 トリィ「言ってみて。力になるから。」

 

 トリィはしゃがんでミリーの肩に手を当てて優しく話しかける。

 

 

 そしてミリーは話した。リムの事、自分の将来の事、そして、リムの育成に困っている事…。

 

 

 事情を聞いたトリィはしばらく黙った後ふっと微笑み、ミリーの頭を撫でる。

 

 トリィ「そっか…結構苦労してたんだね…。分かったわ。私も協力してあげる。」

 

 ミリー「…え?」

 

 トリィ「私、エレキングを育てたことあるから、力になれると思うの。 一緒にその子を立派に育てよ。」

 

 ミリー「ぐすんっ…うっ………ありがとうございます…。」

 

 トリィの言葉を聞いたミリーは、嬉し涙を拭いてお礼を言い、それを聞いたトリィは満面の笑みで頷いた。

 

 

 春菜と友実も安心の表情でミリーに歩み寄る。

 

 友実「良かったね、ミリーちゃん。」

 

 春菜「夢に向かって頑張ってね。」

 

 ミリー「うん!」

 

 

 マルフォイ「ムッキー!私達そっちのけで何楽しそうにしてんのよ! 行きますわよ〜!」

 

 

 マルフォイがトリィ達に襲い掛かろうと飛び上がったその時!

 

 

 リク「はっ!!」

 

 

 “ドゴンッ”

 

 

 マルフォイ「あら〜!!?」

 

 

 空中でリクの膝蹴りを喰らったマルフォイは床に落下した。

 

 

 マルフォイに膝蹴りを決めたリクは着地する。

 

 そしてレイト、ゼナ、トリィと合流する。

 

 

 ライハ「リク!」

 

 モア「リッ君!やっぱり来てくれたんだね!」

 

 エリ「リク兄ちゃん!」

 

 ライハとモア、エリも安心の表情になる。

 

 

 リク「ああ。待たせたね。」

 

 ペガ「ライハ達も無事そうで良かった。」

 

 リクとペガも彼女達の方を振り向いて微笑む。

 

 

 するとリクは、今も1人泣いている少女の元に歩み寄る。

 

 

 リク「君達の笑顔を取り戻す。 ヒア・ウィー・ゴー。」

 

 

 そう言いながら彼女の目線までしゃがみ、笑顔で拳を突き出す。

 

 

 そう、かつて自分が幼い頃、憧れのヒーロー『ドンシャイン』にしてもらったように…。

 

 

 それを見た少女も次第に泣き止み、そしてリクの拳に自分の拳を合わせる。

 

 “シャキーン”

 

 少女は涙で濡れた顔を拭い、それを見たリクも微笑み返した。

 

 

 ゼロ「ゼナ!トリィ!協力ありがとよ!」

 

 ゼナ「いや、AIBの隊員として当然のことをしたまでだ。」

 

 トリィ「それに、私が気に入ったこの地球のために力になりたいからね。」

 

 ゼナとトリィにお礼を言ったゼロは、リクの方を振り向く。

 

 

 ゼロ「さあ、ここからはネクスト・ステージだな!」

 

 

 リク「ああ!希望を捨てない一人一人が希望のかけら!それらが一つになれば、どんな運命も越えて行ける!」

 

 

 「「「ジーっとしてても、ドーにもならねえ!!」」」

 

 

 春菜と友実を除く全員の声が重なった。希望を取り戻した一人一人が一丸となり、今まさに最悪だった状況を覆そうとしているのだ!

 

 

 春菜「救世主が…来てくれた…。」

 

 春菜もリク達という救世主の登場に安心で笑顔になっていた。

 

 

 マルフォイ「ムッキー!!調子に乗んじゃないわよ!!」

 

 マルフォイはそう叫ぶと、近くの色んなスイッチが付いている機械をいじくる。

 

 

 すると、要塞の下部から巨大な光線が地上目掛けて放たれ、やがてその光線が地上に着いた時、その中から四体の怪獣が現れる!

 

 ガモス、ドギュー、シルバーブルーメ、ワロガ、ムルロアである!やはり春菜が夢で見たエレキングを襲っていた怪獣軍団はドルズ三兄弟の配下であり、恐らく怪獣墓場から蘇ったモノだと思われる。

 

 

 春菜「やっぱり、夢で見た怪獣と同じだわ!」

 

 

 マルフォイ「更に、私達も行くわよ〜!」

 

 クラップ「了解ですぜ兄者!」

 

 ゴイル「踏み潰したるでー!」

 

 ドルズ三兄弟もテレポートするようにその場から姿を消し、巨大化して街に降り立つ!

 

 

 マルフォイ「さあ暴れなさい!そしてこの街をいつかのピット星の虫ケラ共のように全滅させるのです!」

 

 

 マルフォイの指示と共に怪獣たちは一斉に暴れ始める!

 

 

 ハルヲ「なんてこった!こんな時に怪獣かよ!」

 

 ハルヲを始め子供の安否を願っていた大人たちも我先にと逃げ始める!

 

 

 マルフォイ「さ・ら・に!宇宙空間ではとっておきの怪獣が待ち受けているのよ~! その名も、『暗黒怪獣バキューモン』!」

 

 なんと、ドルズ三兄弟が怪獣墓場から蘇らせた怪獣はガモスたち五体だけではなく、バキューモンもその一体だったのである!

 

 なんと抜け目のない連中なのであろうか…?

 

 黒い煙状の不定形な姿をしている、所謂“生命を持ったブラックホール”とも言えるバキューモンは、実際宇宙空間で待機している。

 

 天体を吸収しながら無限に巨大化するその煙のような存在は、実に不気味なモノである。

 

 

 恐らく光に弱いムルロアが昼間だというのに現在活動できるのは、バキューモンが地球の近くの宇宙で待機しているが故にその影響で地球上も薄暗くなっているためであると思われる。

 

 

 そしてドルズ三兄弟は、いざ作戦が失敗した場合はバキューモンに地球を飲み込ませる事で一気に全滅さてもらおうと企んでいるのであろう…!

 

 

 マルフォイ「オーホホホ!少々乱暴だけど、これで地球は私達の物よ〜!」

 

 

 …しかし、浮かれてるドルズは誤算がある事に気づくはずも無かった…。

 

 

 要塞に取り残した者たちの中には、機械いじりが得意なペガがいるという事を…!

 

 

 ゼロ「俺が奴らの相手をして時間を稼ぐ。その間にリクとペガはこの金属の塊を地上に落とせ。」

 

 リク「わかった!」

 

 ペガ「任せて!」

 

 

 ゼロ「よーし、行くぞレイト!」

 

 レイト「はい!ゼロさん!」

 

 

 遂に変身を決意したゼロレイトはゼロのお面を外した後、左腕に付けたウルティメイトブレスレットから『ウルトラゼロアイNEO』を出現させ、それを手に取って目に当てる!

 

 

 ゼロ「デアッ!」

 

 “ピシャイィィン ギュイイイイィィィィン”

 

 ゼロ「セアッ!」

 

 

 レイトの体は赤と青の光に包まれ、特殊な効果音と共に頭から順にゼロの姿に変わり、やがて右腕を突き出して光の中から飛び出す!

 

 

 一方ドルズ三兄弟はというと…

 

 マルフォイ「ではここでイケてる名乗りを決めちゃうわよ〜!」

 

 

 クラップ「ドルズ兄弟次男・クラップ!」

 

 ゴイル「同じく三男・ゴイル!」

 

 マルフォイ「そして〜! ドルズ兄弟長男であり、ドルズ星1のビューティー・マルフォ〜イ!!」

 

 3人は妙なポーズと共に名乗りを上げる。

 

 そしてクラップとゴイルは横並びで地面に両手・両膝をつき、マルフォイはそれぞれ2人の背中に足を置いて上に立ってポーズを決める。

 

 

 ドルズ三兄弟「我ら!ドルズ仲良し三兄弟!!」

 

 

 所謂組体操のピラミッドのような体制で名乗りを決めた3人なのだが、どこか抜けた感じである。

 

 

 マルフォイ「さ〜あ、私ほど美しい者もそれほどでもない者も、ドルズ星に代わってお仕置きよ〜!」

 

 

 ゼロ「だからそれがキメーんだよっ!!」

 

 

 マルフォイ「何ですって!?」

 

 

 マルフォイが上を向くと、そこには変身&巨大化が完了したゼロが足に火を纏って『ウルトラゼロキック』で突っ込んで来る姿が!

 

 ゼロ「ふぉおおりゃあっ!!」

 

 “パコーン”(所謂ボーリングのピンが倒れるような音)

 

 マルフォイ「あら〜っ!?」

 

 

 ウルトラゼロキックでピラミッド状態の3人を吹き飛ばしたゼロは華麗に着地を決める。

 

 

 (BGM:ウルトラマンゼロのテーマ)

 

 

 ゼロ「俺はゼロ…ウルトラマンゼロだ!!」

 

 立ち上がったゼロは名乗りと共にポーズを決める。

 

 

 一方で春菜はゼロの登場に驚愕していた。

 

 春菜「…この世界にも、ゼロが来ていたなんて…しかも違う人と共に戦ってる…?」

 

 

 マルフォイ「ムッキー!私達の名乗りをコケにして!まずはアンタからお仕置きよ!」

 

 ドルズ三兄弟はゼロ目掛けて一斉に手から光線を放つ!

 

 ゼロ「セアッ!」

 

 “ジャキーン”

 

 ゼロは瞬時にゼロスラッガーを取り出し、三つの光線を切り裂いて相殺した。

 

 そしてお返しとばかりに右腕を胸に当てて額のビームランプから『エメリウムスラッシュ』を発射してドルズ三兄弟に命中させ、3人は爆発と共に吹っ飛ぶ。

 

 

 マルフォイ「アチチチチ!…よくもやったわね〜!」

 

 マルフォイはゼロに闇雲に突っ込んで行くが、ゼロは棒立ち状態で片手で頭を押さえ込んで易々と受け止める。

 

 ゼロ「言っとくが俺、もう傷が治ってんだぜ?」

 

 そう言うとゼロは跳躍し、右脚を斜め上に振り上げて蹴りを放つ!

 

 蹴りを胸部に食らったマルフォイはたまらず吹っ飛んだ。

 

 

 ゴイル「あ、兄者!」

 

 クラップ「こうなれば怪獣達と連携してやっつけますぜ〜!」

 

 

 怪獣軍団は暴れるのを止め、狙いをゼロに変える。

 

 ワロガはゼロ目掛けて光弾を放つが、ゼロはそれを回し蹴りの要領で流行ったウルトラゼロキックで打ち飛ばす!

 

 

 “ズガーン”

 

 クラップ「ひぎゃあああ!!」

 

 ゴイル「ぐおああ!!」

 

 マルフォイ「オゥノオオオオオ!?」

 

 しかも運悪くその流れ弾を食らってしまった三兄弟はダウンしてしまう。

 

 

 ワロガは今度は接近戦を挑もうとゼロに向かって駆け寄る。

 

 ゼロはワロガが放った横蹴りを両腕で防いだ後、続けて打ってきた左フックを右腕で防ぎ、そのまま打ってきた右足蹴りを左腕で弾き返した後腹部に連続でパンチを打ち込み後退させる。

 

 その後ワロガの左腕の殴り込みを右足蹴りで弾き返した後、後ろ回し蹴りを胸部に打ち込んで吹っ飛ばした。

 

 

 接近戦では不利だと判断したワロガはテレポートをしようと姿を消し、その間に残りの四体がゼロに襲い掛かる!

 

 ドギューは先手を切って殴り掛かるがゼロはそれを易々と受け止め、腹部に目にも止まらぬ速さで連続パンチを打ち込んだ後右の掌を打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 次にムルロアが横から殴り掛かるがゼロはそれを蹴りで弾き返し、続けて前蹴りを胸部に叩き込んで後退させた後、頭部からゼロスラッガーを両手で取り出す。

 

 ガモスはしゃがんで尻尾を立ててそこに生えている棘をミサイルのように飛ばして攻撃するが、ゼロはそれをゼロスラッガーでことごとく切って相殺ししながら走って接近していき、やがて至近距離まで来ると後ろ回し蹴りを腹部に叩き込む!

 

 ガモス、ドギュー、ムルロアはなおもゼロに殴り掛かるが、ゼロはそれらをまるで動きが読めているかのようにかわしつつゼロスラッガーで確実に斬撃を決めてダメージを与えていく。

 

 シルバーブルーメは一瞬の隙を突いて触手をゼロの右腕に巻き付けて捕え、更にテレポートしてきたワロガが上空からゼロに迫り来る!

 

 だがゼロは慌てる事無く、自身に巻き付いたシルバーブルーメを逆に力一杯振り回し、上空のワロガにぶつける! そして、互いにぶつかり合った二体は地面に落下した。

 

 

 以前と違って傷が完治し、ブレスレットも治った事で本来の力を取り戻したゼロは、その強さで戦いを優位に進めていた。

 

 その姿は正に、かつて初陣で怪獣墓場での百体の怪獣軍団相手に無双した時のようである。

 

 

 一方、ゼロが時間を稼いでいる間にペガが色んなスイッチが付いている機械をいじくっている。

 

 ペガは機械いじりも得意であり、その腕前はかつて自身の不注意で壊してしまったリクの大事なドンシャインの置時計を直した事がある程である。

 

 ペガ「え〜と、これをこうして、こうやって…」

 

 手慣れた速さで色んなスイッチを押していくペガ。やがて準備が整う。

 

 ペガ「よし、準備オッケー!」

 

 リク「みんな!しっかり掴まってて!」

 

 リクの呼びかけを聞いた一同は衝撃に備えて周りの物に掴まり始める。

 

 

 ペガ「よ〜し…ポチッとな!」

 

 “ピッ”

 

 

 ペガは“Enter”と書かれた大きなスイッチを押す。すると、宇宙船は勢いよく地面に向かって降下し始める!

 

 ペガは機械を操作して着陸システムを作動させたのだ。

 

 

 ゼロ「よし、上手くいったみたいだな。」

 

 ドギューの角を掴んで押さえ込んでいたゼロもそれに気づいて安心する。

 

 

 “ズドーン”

 

 やがて宇宙船は勢いよく地面に着地した!

 

 

 モア「さあ!みんな急いで!」

 

 宇宙船内に捕らえられていた子供達は、一斉に先ほど開けた穴から走って脱出を始める!

 

 

 やがて互いに駆け寄る大人達と子供達は喜び合いながら再会を果たす。

 

 親と再会できて嬉し泣きをする子供、「会いたかった」と声を上げながら親に抱き着く子供、そんな子供を抱き寄せる大人…。

 

 エリとマユも、それぞれハルヲとルミナに駆け寄り、再会を喜び抱き合う。

 

 ハルヲ「エリ、怪我はないか?」

 

 エリ「うん!平気だよ。」

 

 

 ルミナ「良かった…本当に良かった…。」

 

 マユ「ママー。パパが助けてくれたんだよ!」

 

 ルミナ「…レイト君。」

 

 ルミナは、戦っているゼロを見上げて微笑みかける。

 

 

 無事に親と再会出来た子供達を見て安心するリク、ライハ、ペガ、モア、ゼナ、トリィ…そして春菜、友実、ミリー。

 

 モア「良かった…。」

 

 

 親子の再会を見届けたリクは、真剣な表情に変わると共に数歩前に出る。

 

 ライハ「…行くんだね、リク。」

 

 リク「ああ。今度は僕が頑張る番だ。」

 

 ペガ「気をつけてね。」

 

 リク「必ず、帰って来るから。」

 

 

 変身を決意したリクに気づいたゼロも、組み合っていたムルロアを蹴飛ばした後リクに呼びかける。

 

 ゼロ「よーし、一緒に行こうぜ!リク!」

 

 リクは無言で頷いた後、赤と黒が基調で二重螺旋のような発光部が特徴の握力測定器のような形状の変身アイテム『ジードライザー』を取り出す。

 

 

 春菜「あの子も…ウルトラマンなの…?」

 

 リクを不思議そうに見つめる春菜。やがてリクはライザーを胸元に構える。

 

 

 リク「ジーっとしてても…」

 

 リク・レイト・ゼロ「ドーにもならねぇ!!」

 

 

 3人の声が重なった。遂に変身の時だ!

 

 

 ゼロ「行くぜレイト!」

 

 レイト「はい!」

 

 

 レイトはゼロアイをライザーに装着し『ライザー(ゼロモード)』にする。

 

 

 ゼロ「ギンガ!オーブ!」

 

 ギンガ「ショウラァッ!」 オーブ「デヤッ!」

 

 

 ゼロ「ビクトリー!エックス!」

 

 ビクトリー「ヘアッ!」 エックス「イィーサァァッ!」

 

 

 レイトは、ウルトラマンギンガとウルトラマンオーブ(オーブオリジン)の力を宿した『ニュージェネレーションカプセルα』と、ウルトラマンビクトリーとウルトラマンエックスの力を宿した『ニュージェネレーションカプセルβ』を起動させ、装填ナックルにセットした後ライザーでスキャンする。

 

 

 《ネオ・フュージョンライズ!》

 

 

 ゼロ「俺に限界はねぇ!」

 

 

 ゼロレイトは口上を上げた後、ライザーを目に当ててトリガーを引く。

 

 

 ゼロ「ヘアッ!」

 

 

 《ニュージェネレーションカプセル! α!β!》

 

 

 ゼロの周囲に現れたギンガ、オーブ、ビクトリー、エックスのビジョンが1人ずつゼロに重なり、ゼロは眩い光に包まれ、やがて姿が変わる!

 

 

 《ウルトラマンゼロビヨンド!》

 

 

 ゼロ「デヤッ!」

 

 

 眩い光の中から右腕を突き出して現れたのは、今までのゼロを“超越”した存在と言われる強化形態『ウルトラマンゼロビヨンド』に変身完了したゼロだ!

 

 

 次はリクが変身体勢に入る!

 

 

 リク「融合!」

 

 ゼロ「ジェェァッ!」

 

 

 リク「アイ、ゴー!」

 

 ウルトラの父「ドァァッ!」

 

 

 リク「ヒア・ウィー・ゴー!」

 

 

 リクは『ゼロカプセル』と『ウルトラの父カプセル』を起動させ、装填ナックルにセットした後ライザーでスキャンする。

 

 

 《フュージョンライズ!》

 

 

 リク「守るぜ!希望!!」

 

 

 リク「はぁーっ…はっ!!」

 

 リクは口上を上げた後、ライザーを高く揚げてから胸元でトリガーを引く!

 

 

 リク「ジィィィィィィィィィィド!!」

 

 

 《ウルトラマンゼロ! ウルトラの父!》

 

 

 音声と共にゼロと父のビジョンがリクの左右に現れ、やがてそれがリクと重なり眩い光を放つ!

 

 

 《ウルトラマンジード! マグニフィセント!》

 

 

 やがて光の中で『ウルトラマンベリアル(アーリースタイル)』(ベリアル嘗ての姿)に似た顔が浮かび上がった後、ゼロとウルトラの父の力を借りた“強大な力を秘めた崇高な戦士”と言われる形態『マグニフィセント』に変身完了したジードが光の中から両腕を後ろに向けた姿勢で飛び出す!

 

 

 ジード「はぁぁっ!」

 

 

 “ドギューン”

 

 

 変身が完了した二人の戦士の拳が飛び出し、それぞれムルロアの顔面、胸部に炸裂して爆発を起こす!

 

 ムルロアは後退し、他の怪獣たちと合流し身構える。

 

 

 眩い光により目を覆っていた人々が徐々に顔を上げると、そこには現れた二人の戦士が背を向けて雄々しく立っていた…。

 

 

 やがてジードとゼロは顔だけを振り向かせ、「もう大丈夫」とばかりに一回頷く。

 

 

 二人のウルトラマンの登場に、人々は安心の表情になり、そして一斉に応援の声を上げ始める!

 

 

 春菜「あのウルトラマンは一体…。」

 

 ジードを始めてみた春菜と友実は驚き表情でジードを見上げる…やはりベリアル譲りの鋭い目つきが目を引き、ベリアルと何らかの関係があると思わせているのであろうか…?

 

 

 リク・レイト・ゼロ「行くぞーっ!!」

 

 

 (BGM:フュージョンライズ!)

 

 

 人々の歓声を背に、ジードとゼロは構えを取る!

 

 

 ガモスとムルロアは溶解液、ワロガは光弾を同時に放って牽制するが、ジードは両手を突き出してエネルギーの盾『アレイジングジードバリア』を展開してそれらを防ぎ、周囲に爆発が起こる!

 

 ジードは爆風の中から、頭部のホーンから発生させたムチ状の電撃『メガエレクトリックホーン』を振るって怪獣たちにぶつけ、更に爆風の中から上空に飛びあがったゼロが、急降下しながら蹴りを放ってワロガを吹っ飛ばす!

 

 しかもそれにより、ワロガの頭部のテレポートアイが爆発と共に破壊され、テレポートが出来なくなった。

 

 更にジードが駆け寄りながら跳躍し、肩の突起を活かした斬撃をドギューに叩き込む。

 

ドギューは火花を散らしながら吹っ飛ぶ。

 

 

 ゼロ「背中を借りるぜ、ジード!」

 

 リク「はい!」

 

 

 ジードとゼロは背中を合わせた後、それぞれムルロアとドギューとシルバーブルーメ、ガモスとワロガを相手し始める!

 

 ジードはムルロアとドギューの連続で放つ殴り込みをことごとく避けたり腕で受け止めたりしつつ、強力なパンチやキックを打ち込んで確実にダメージを与えていく。

 

 ゼロも跳躍して脳天にチョップ、殴り込みをかわしてからの脇腹にキックとガモスに強力な打撃を決めてダメージを与え、その後ガモスと組み合ったまま後ろから襲い掛かるワロガに跳躍して右足、左足と順に二段蹴りを打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 ジードはドギューの角を活かした突進を、角を掴む事で易々と受け止め、そのまま軽々と遠くへと放り投げる!

 

 その隙にシルバーブルーメはジード目掛けて触手を数本伸ばして攻撃を仕掛けるが、ジードはそれを横向きに跳んでかわすと同時に右腕を振り上げて『メガスライサークロス』を投げつけて命中させる!

 

 シルバーブルーメが怯んだ所でゼロは咄嗟にワロガの肩を踏み台にして跳躍し、上空のシルバーブルーメに強力な横蹴りを打ち込んで地上に叩き落とした!

 

 続けてムルロアの両腕での殴り込みを受け止めると、腹部に膝蹴り、胸部に前蹴りと続けて打ち込んで後退させ、更に両拳で緑色のエネルギーを纏った『メガボンバーパンチ』を叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 合体元がいずれも最強クラスのウルトラ戦士だけあって、強大な力で怪獣軍団と互角以上に戦うマグニフィセントとゼロビヨンド。その姿は正に、かつて光の国や怪獣墓場で怪獣軍団に果敢に立ち向かったウルトラの父やゼロを思わせる。

 

 

 ゼロはガモス、ワロガを跳躍して脚を広げて同時に蹴りを打ち込んで吹っ飛ばした後、そのまま上空に飛んで静止する。

 

 

 ゼロ「クワトロスラッガー!」

 

 

 ゼロは頭部の4本のスラッガーから光の刃『クアトロスラッガー』を出現させ、ムルロア目掛けて投げつける!

 

 4本のスラッガーは一斉にムルロアの体を貫き、ムルロアはスラッガーが貫いた所から光を発しながら動きを止める。今こそと止めだ!

 

 

 ジードは両手の拳を合わせて緑色の稲妻状のエネルギーを溜め始める。

 

 その間にシルバーブルーメが妨害しようと後ろから接近するが、ジードが広げた両腕の拳が当たった事で逆に吹っ飛ばされる。

 

 

 リク「ビッグバスタウェイ!」

 

 

 ジードは両腕をL字に組んで必殺光線『ビッグバスタウェイ』を放つ!

 

 光線が体全体に直撃したムルロアは大爆発して砕け散った。

 

 

 ガモス、ドギュー、シルバーブルーメがゼロビヨンドを相手にしている間にワロガはジード目掛けて駆け始める。

 

 

 リク「融合!」

 

 ヒカリ「デヤッ!」

 

 

 リク「アイ、ゴー!」

 

 コスモス「ハァッ!」

 

 

 リク「ヒア・ウィー・ゴー!」

 

 

 リクは今度は『ヒカリカプセル』と『コスモスカプセル』を起動させ、ナックルにセットしてスキャンした後トリガーを引く!

 

 

 《ウルトラマンジード! アクロスマッシャー!》

 

 

 ジードは今度はウルトラマンヒカリとウルトラマンコスモスの力を借りた青い形態『アクロスマッシャー』に変身し、光の中から広げた右手を突き出して飛び出す!

 

 

 リク「見せるぜ!衝撃! アトモスインパクト!」

 

 

 現れたジードは口上と共に両腕を大きく回して円を描いた後、左腕を前に十字を作る構えを取り、その状態でワロガの放って来たストレートを受け止める。

 

 そしてそのままO型の衝撃光線『アトモスインパクト』をワロガに浴びせて吹っ飛ばし距離を取る。

 

 

 リク「スマッシュビームブレード!」

 

 

 ジードは左人差し指と中指で印を作り、右腕にエネルギーを集中させた後振り下ろす事で光の刃『スマッシュビームブレード』を形成して構える。

 

 ワロガもソードパンチアームを構えて駆け寄る。

 

 

 火花を散らしながら激しい剣劇を繰り広げる両者。しかしジード(リク)はライハからの特訓の中で剣術も教わっていたのか、手慣れた流派で、まるで流れる水のような剣さばきでことごとくワロガの打撃を弾き返していく。

 

 ワロガは左フックを繰り出してジードはそれをブレードで受け止め、続けて打って来た右腕を左膝で受け止めて弾き返した後そのまま横蹴りを腹部に叩き込んで後退させる。

 

 そしてジードは高速で一回転しながら渾身の斬撃を繰り出し、それを胸部に受けたワロガは火花を散らしながら吹っ飛んだ!

 

 

 ワロガのピンチに気付いたガモスはジード目掛けて溶解液を噴射する!

 

 

 リク「ジードクロー! コークスクリュージャミング!」

 

 

 ジードは咄嗟に二又のかぎ爪型の武器『ジードクロー』を取り出し、即座に『コークスクリュージャミング』を発動させ、一回転して発生させたエネルギーで溶解液を受け流した。

 

 

 不利と見たワロガは球体に変形し、逃げようと飛び始める。

 

 それに気づいたジードは跳躍し、かつてメカゴモラの攻撃をかわした時のように複数のビルを踏み台にして跳びはね、やがて大きくジャンプする事で上空の球体ワロガを跳び越える形で追いつく。

 

 

 《シフト・イントゥ・マキシマム!》

 

 

 リク「ディフュージョンシャワー!」

 

 

 ジードは突き出したクロー中央部にエネルギーを集中させ、そこから無数のエメラルド色の針状光線『ディフュージョンシャワー』を放ちワロガに浴びせる!

 

 ワロガは上空で大爆発して消し飛んだ。

 

 

 リク「融合!」

 

 セブン「ダーッ!」

 

 

 リク「アイ、ゴー!」

 

 レオ「イヤーッ!」

 

 

 リク「ヒア・ウィー・ゴー!」

 

 

 リクは今度は『セブンカプセル』と『レオカプセル』を起動させ、ナックルにセットしてスキャンした後トリガーを引く!

 

 

 《ウルトラマンジード! ソリッドバーニング!》

 

 

 ジードは今度はウルトラセブンとウルトラマンレオの力を借りた赤いロボットのようなモールドの形態『ソリッドバーニング』に変身し、炎のような光の中から右腕を突き出して飛び出す!

 

 

 リク「燃やすぜ!勇気!」

 

 

 “ドギューン”

 

 

 ジードは上空から口上を上げ、全身のバーニアから蒸気を噴射しながら落下しつつ、落下スピードと右腕のバーニアによる加速を利用したパンチをドギューの顔面に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 続けて着地すると、ゼロと組み合っていたガモスに横蹴りを叩き込んで吹っ飛ばした。

 

 

 ゼロ「サンキュー、ジード。」

 

 ゼロはジードと拳を交わした後、ガモスに超スピードの連続パンチ『ゼロ百裂パンチ』を打ち込んで怯ませ、更に跳躍して光を纏った横蹴りをガモスに浴びせてダメージを与える!

 

 

 ジードはドギューの右フックを左腕で受け止めた後右肘を腹部に打ち込み、続けて左腕の殴り込みを両腕で弾き返した後右脚蹴りを胸部に叩き込む!

 

 いずれも炎を纏ったモノであり、その威力は絶大である!

 

 次にジードはドギューの爪を拳で受け流した後、胸部に連続でパンチを打ち込み、更に両拳を同時に打ち込むパンチを腹部に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 シルバーブルーメは触手を伸ばしてジードの左腕に巻き付けるが、ジードは咄嗟に右手で頭部の宇宙ブーメラン『ジードスラッガー』を取り出して触手を切り落とす。

 

 

 リク『サイキックスラッガー!』

 

 

 ジードは組み付いて来たドギューを回し蹴りで後退させた後、スラッガーをウルトラ念力で投げつける!

 

 

 複雑な軌道を描きながら飛ぶスラッガーはドギューの頭部の角を二本とも切り落とし、続けてシルバーブルーメの触手も、攻撃を避けつつことごとく切り落としていく!

 

 

 やがてジードは戻って来たスラッガーを右腕部プロテクターに装着すると上空に飛び上がる!

 

 

 リク「ブーストスラッガーパンチ!」

 

 

 ジードは上空のシルバーブルーメに、すれ違いざまに『ブーストスラッガーパンチ』を打ち込む!

 

 ブースターの加速力にスラッガーの切断力がプラスされたパンチを受けたシルバーブルーメは、触手が全て切り落とされ、更に本体に蜘蛛の巣のようなヒビが入る…!

 

 

 更にジードは上空でスラッガーを今度は脚部プロテクターに装着する。

 

 

 リク「ブーストスラッガーキック!」

 

 

 ジードはブースターの加速力とスラッガーの切断力を加えた必殺キック『ブーストスラッガーキック』を、落下スピードもプラスしてシルバーブルーメに叩き込む!

 

 シルバーブルーメは上空で大爆発を起こし、完全に砕け散って消滅した。

 

 

 一方ガモスと組み合っているゼロは、そのまま再びクアトロスラッガーを出現させ、それを合体させて大剣『ビヨンドツインエッジ』を形成して右手で持ち、ガモスの腹部を切りつけることで一旦組み付きを引き離す。

 

 

 ゼロ「俺の刃を刻み込め!」

 

 

 ゼロはツインエッジに全エネルギーを集めてボディラインを発光させる。やがて刀身が紫色に輝き巨大な刃状のエネルギーを形成する!

 

 

 ゼロ「ツインギガブレイク!」

 

 

 そしてゼロは跳躍して一回転し、落下しながらドギューに必殺の斬撃『ツインギガブレイク』を放ち、大きくℤ字に斬りつける!

 

 ドギューは切られた部位を発光させながら動きを止める。今こそ止めだ!

 

 

 ジードは右腕部のアーマーを展開し、右腕を回しながら拳にエネルギーを溜める。

 

 

 リク「ストライクブーストォォ!!」

 

 

 ジードは右腕を突き出し拳から必殺光線『ストライクブースト』を発射し、ドギューに浴びせる!

 

 ドギューは大爆発し、木端微塵に吹き飛んだ後炎上した。

 

 残る怪獣はガモスだけである!

 

 

 一方で春菜たちは子供達の歓声が飛び交う中、ジード達の戦いを見守っている。

 

 友実「凄いわ!あのウルトラマン達!」

 

 春菜「ええ…ゼロは相変わらずだし、それに…あのジードって言うウルトラマンも…。」

 

 ジードを見つめる春菜の表情は、自然と優しいものになっていた…。

 

 最初はベリアルに似ていると言う事でジードに少し警戒気味だった春菜だが、人々の歓声を浴びながらゼロと力を合わせ戦うその勇姿を見て、彼は間違いなく正義のウルトラマンだと確信したのである。

 

 

 リムを抱いているミリーも子供達に混じってジードとゼロを応援している。

 

 ミリー「リム…君も見てる?…明日に向かって進み続けるウルトラマンたちだよ!」

 

 

 リク(ジード)は人々の歓声を背に、次の変身(フュージョンライズ)に入る!

 

 

 リク「融合!」

 

 ウルトラマン「シュワッ!」

 

 

 リク「アイ、ゴー!」

 

 ベリアル「ゼェェッ!」

 

 

 リク「ヒア・ウィー・ゴー!」

 

 

 リクは今度は『ウルトラマンカプセル』と『ベリアルカプセル』を起動させ、ナックルにセットしてスキャンした後トリガーを引く!

 

 

 《ウルトラマンジード! プリミティブ!》

 

 

 ジードは今度はウルトラマンとベリアルの力で変身する、父・ベリアルを彷彿させるルックスが特徴の形態『プリミティブ』に変身し、爪を立てるように広げた右手を突き出して青と赤紫の稲妻が交叉した禍々しい光の中から飛び出す!

 

 

 リク「決めるぜ!覚悟!」

 

 

 “ドゴンッ”

 

 

 ジード・プリミティブは登場すると共にジャンプして勢いよく突っ込み、ガモスに強力な膝蹴りを叩き込む!

 

 そして着地した後、ガモスの右フックを左腕で受け止めて右手で叩き落とした後、一回転しながら爪を突き立てるような打撃を顔面に打ち込み、更に逆方向に一回転しながらローキックを腹部に打ち込む。

 

 ガモスは至近距離で溶解液を浴びせようと溜め込むが、噴射寸前にジードが顎を掴んで無理矢理上に抑え込んだ事で噴射した溶解液はジードに当たらずに終わり、更にジードはそのままガモスにアッパーを叩き込む!

 

 そしてガモスが怯んだ隙にジードは両腕をそれぞれ左右に広げる形でひっかき攻撃を腹部に決め、更に跳躍して両足のドロップキックを胸部に叩き込んで吹っ飛ばすと同時にその反動を利用して空中で一回転した後着地しゼロと合流する。

 

 

 プリミティブの野獣のような荒々しい連続攻撃を受けたガモスはグロッキーとなった。

 

 

 リク「一緒にいきましょう!」

 

 ゼロ「おぅ!」

 

 

 ジードは体勢を立て直すと、両腕を前でクロスし、そのまま頭上に持って行った後円を描くように両腕を広げながら身体を反らしてエネルギーをチャージする。

 

 野獣が雄たけびを上げるように首を回し、目は光が漏れ出るように強く発光し、そして全身は両腕を中心に赤黒い稲妻を纏っている…。

 

 

 ゼロも両腕を左右に広げてエネルギーを溜めていく…!

 

 

 リク「レッキングバーストォォォ!!」

 

 

 ゼロ「ワイドビヨンドショットォォ!!」

 

 

 やがて必殺光線のエネルギーチャージが完了した二人。ジードは腕を十字に組んで『レッキングバースト』、ゼロは腕をL字に組んで『ワイドビヨンドショット』を同時に放つ!

 

 

 ガモスもフルパワーで溶解液を噴射して応戦するが、“溶解液”ごときでは“滅びの光線”と“全てを超越した光線”に勝てるはずがない。

 

 レッキングバーストとワイドビヨンドショットは溶解液をことごとく消し飛ばしながら突っ込んで行き、ガモスの体全体に直撃する!

 

 二つの必殺光線を浴びたガモスはしばらくもがき苦しんだ後大きく発光し、やがて大爆発して炎上した。

 

 

 リク「よしっ!」

 

 ゼロ「やったぜ!」

 

 見事な連携で怪獣軍団を撃破したジードとゼロは、大きな爆風を背にポーズを決める。

 

 

 人々もウルトラ戦士達の勝利に歓声を上げる。

 

 ミリー「凄いや!」

 

 モア「いーやったー!」

 

 トリィ「流石は、みんなの為に覚悟を決めて戦ってきたウルトラマンだよ。」

 

 ゼナ「あとは、あの黒いデカブツだけだな。」

 

 

 ジードとゼロは、今にも地球に向かおうとしているバキューモンを見上げる。

 

 ゼロ「さあ、もうひと頑張りだ!」

 

 リク「行こう!」

 

 

 その時、

 

 

 マルフォイ「流石にやるわね!ウルトラ戦士ども!」

 

 

 声のした方を振り向くと、そこにはやっと気絶から目覚めた(笑)ドルズ三兄弟が立っていた。

 

 クラップ「まさか俺達が気絶してる間に怪獣どもを倒していたとはな!」

 

 ゴイル「なかなかやるんじゃないか!」

 

 マルフォイ「こうなったら最後の手段よ!ある程度集まったマイナスエネルギーを使って、バキューモンと一体化するの! そして私たちの意思で、地球を始め、宇宙全体を制圧するのよ〜!」

 

 クラップ「よ〜し、行きますか兄者!」

 

 ゴイル「行くべ〜!」

 

 最後の手段を宣言したドルズ三兄弟は跳躍して一回転して等身大に戻り、宇宙船に乗り込む。

 

 

 マルフォイ「マイナスエネルギー、全開放よ〜!」

 

 

 “ピッ”

 

 

 そう叫びながら、マルフォイは1番大きな赤いスイッチを押す!

 

 すると、宇宙船は黄金に輝き、離陸を始め、そして高速で空の彼方へと飛び立つ!

 

 やがて宇宙船は成層圏を超えて宇宙にたどり着き、そして宇宙空間で待機しているバキューモンの中へと突っ込んで行く…!

 

 

 マルフォイ・クラップ・ゴイル「暗黒怪獣、バキューモーン!!」

 

 

 宇宙船がバキューモンの体内に入って行くと同時に三兄弟の叫び声もフェードアウトしていく…。

 

 

 やがて、ドルズ三兄弟とその宇宙船ごとマイナスエネルギーを取り込んだバキューモンは、煙状の全身の数カ所を発光させた後、やがてその煙状の体がドルズ星人のような形になる!

 

 今まさに、バキューモンとドルズ三兄弟が、子供達の泣き声で集めたマイナスエネルギーで一体化したのである!

 

 

 その異形は地球上からも見える程に大きく、子供達はそれを見て再び怯え始め、春菜達は身構える。

 

 

 マルフォイ「ふははははは!もはや俺達は、全宇宙を制覇出来る神となったのだ!! 地球もろとも飲み込んで皆殺しにしてやる!はっはー!」

 

 バキューモンと一体化したマルフォイは、強大な存在と一つになれた事で本性が剥き出しになり、オネエ口調は一切無くなり完全に俺言葉になっている。

 

 

 ドルズ三兄弟の意思で、バキューモンは地球目掛けて接近を始める! その間にも、周囲のいくつかの小惑星が飲み込まれ始めていた…!

 

 

 バキューモンが接近を始めた事により、地球も太陽が遮られ、暗くなり始める…!

 

 

 …だが、ウルトラ戦士達はもちろん、人々も希望を捨てていなかった!

 

 

 ゼロ「…フンッ、何が“神”だ!てめーらが神を名乗るなんざ、二万年早いぜ!」

 

 リク「胸の中で芽生えた光…それが明日を照らすんだ!」

 

 

 ミリーも、絶えず声援を送る子供達と共にウルトラ戦士達に声援を送る。

 

 

 ミリー「リム…みんな…ウルトラマンの力になろう! 頑張れ!ウルトラマンジード!ウルトラマンゼロ!」

 

 

 春菜「私達も、力になろう!」

 

 友実「そうだね! (両手をメガホン代わりにして)ウルトラマーン!!頑張れー!!」

 

 

 人々の声援を受けるジードとゼロも、ひしひしと勇気が湧いて来る。

 

 ゼロ「みんな…上等だぜっ!!」

 

 レイト「この最高の絆を道しるべに、どんな運命も超えて行きましょう!」

 

 リク「僕が僕であるために…誰の笑顔も曇らせない! (ライハ達の方を向きながら)支え合う仲間達の笑顔が力…それがあるからGEED(ジード)は…僕は強くなる!」

 

 

 遂に決心を固めたリクは、次なる変身に入る!

 

 

 リク「融合!」

 

 ベリアル「ゼェェッ!」

 

 

 リク「アイ、ゴー!」

 

 キング「ダァァッ!」

 

 

 リク「ヒア、ウィー、ゴー!」

 

 

 リクはベリアルカプセルと『キングカプセル』を起動させ、ナックルに装填後ライザーでスキャンする。

 

 

 リク「はっ!」

 

 

 《ウルトラマンベリアル! ウルトラマンキング!》

 

 

 リクはライザーを持った腕を大きく回した後、掛け声と共にトリガーを引く。

 

 すると、発光部から虹色の粒子が放出され、その中から『超絶撃王剣キングソード』が現れる!

 

 

 《我、王の名の下に!》

 

 

 リクはキングカプセルをキングソードの柄部の装填口にセットし、それによりクリスタルが七色に輝き、鈴の音のような待機音が鳴る。

 

 

 《ウルトラマンキング!》

 

 

 リク「変えるぜ!運命!!」

 

 

 《トロワ!》

 

 

 リク「はっ!」

 

 

 リクは口上を叫んだ後、キングソードの柄に手をかざした後前に突き出しトリガーを引く!

 

 

 リク「ジィィィィィィィィィィド!!」

 

 

 鈴の音が響く中、リクは叫びと共にアーリーベリアルのような姿に変身して飛び上がり、ベリアルとウルトラマンキングのビジョンと融合して光を纏う!

 

 

 (BGM:GEEDの証(full))

 

 

 《ウルトラマンジード! ロイヤルメガマスター!》

 

 

 やがて神々しい光の中からキングソードを持った右手を突き出して飛び出したのは、ベリアルとキングのカプセルの力で変身したジードの最強形態『ロイヤルメガマスター』である!

 

 

 黄金の装甲が施された全身に、獅子の鬣にも似た側頭部と、ビームランプのある王冠状に施された頭頂部が特徴で、更に『ウルトラマント』のような黄金のマントを纏っているその姿は正にキングを彷彿とさせるものであり、神々しい。

 

 

 ロイヤルメガマスターに変身完了したジードは金色の粒子にも似た余波を放ちながら緩やかに着地する。その姿は正に神が舞い降りて来たようである。

 

 しかもその余波によりバキューモン接近により発生した闇を消し去り青空を取り戻す!

 

 

 春菜達はその神々しいジードの姿に見惚れていた。

 

 友実「わぁ〜!キラキラしてて格好良い〜!」

 

 春菜「…神が…舞い降りたわ。」

 

 

 マルフォイ「ええいこざかしい!」

 

 バキューモンは宇宙空間から地上のジード達目掛けて、自身の闇の一部を人魂状にして無数に放つ!

 

 さしづめ“暗黒弾”とでも名付けておこうか。

 

 

 地上に向かって来る暗黒弾に、怯え伏せる人々!

 

 

 リクは咄嗟に『ウルトラ6兄弟カプセル』を取り出し、キングソードに装填する。

 

(ウルトラ6兄弟!》

 

 リク「はっ!」

 

 そして、左手をクリスタルにかざしてロッドモードにして揚げる!

 

 

 リク「ブラザーズシールド!」

 

 

 ジードは前方にウルトラ6兄弟のビジョンを出現させ、それぞれのサインが円状に描かれ、魔法陣として形成されたバリアー『ブラザーズシールド』を展開させて迫り来る暗黒弾を防ぐ。

 

 やがて暗黒弾を防ぎ切った後、シールドは6兄弟と共に消滅した。

 

 

 リク「行こう!ゼロ!」

 

 ゼロ「おう!」

 

 ジードとゼロは地面を蹴り、宇宙向かって飛び立つ!

 

 地上の人々は、宇宙に飛び立つそんな2人を応援しながら見送る。

 

 

 春菜「頑張って…正義のウルトラマン。」

 

 

 なおも襲いかかって来る暗黒弾をキングソードやツインエッジで切り裂きつつ飛び続け、やがて宇宙空間に辿り着いたジードとゼロ。

 

 

 バキューモンは今度は放ち続ける暗黒弾を自在に操り始め、暗黒弾はまるで生きているかのように四方八方に飛び回りながらジードとゼロに襲い掛かる!

 

 

 リク「バルカンスパークル!」

 

 ジードは飛び回りながらキングソードを突き出し、杖先に形成した王冠状のオーラから無数の光の矢『バルカンスパークル』を放ち、周囲の暗黒弾を次々と相殺していく。

 

 ゼロも飛び回ってツインエッジを振るいながら暗黒弾を切り裂いていく。

 

 ゼロ「エメリウムスラッシュ!」

 

 そして額のビームランプから光線『エメリウムスラッシュ』を放ち暗黒弾を次々と破壊する。

 

 ジードとゼロの猛攻により、暗黒弾は残り僅かとなった。

 

 

 リク「スウィングスパークル!」

 

 ジードはキングソードを剣モードにし、回転しながら刀身に集めたエネルギー『スウィングスパークル』を放つ!

 

 一振りの光刃は残りの暗黒弾を全て切り裂き破壊した。

 

 

 マルフォイ「これならどうだー!」

 

 バキューモンは新たに生み出した暗黒弾を集中させ、やがて一つの大きな隕石のようにして放つ!

 

 ジードとゼロは自身の数倍もある大きな暗黒弾を正面から受け止め、押さえ込み始める。しかし流石に大きすぎるためか少し押され気味になり始める。

 

 

 ゼロ「ツインギガブレイク!」

 

 ゼロはツインエッジを輝かせてツインギガブレイクを放ち、暗黒弾をZ字に切り裂く!

 

 

 《ウルトラマンタロウ!》

 

 リク「はっ!」

 

 リクはキングソードに『タロウカプセル』を装填し、クリスタルに左手をかざした後ロッドモードにして突き出す!

 

 

 リク「ストリウムフラッシャー!」

 

 

 ジードは全身を虹色に輝かせ、キングソードを中心に『ストリウム光線』に似たポーズで灼熱の破壊光線『ストリウムフラッシャー』を放つ!

 

 光線はZ字の切り跡を中心に暗黒弾を粉々に破壊した。

 

 

 リク・レイト・ゼロ「うぉぉぉぉああああ!!」

 

 

 ジードとゼロはバキューモン目掛けて突っ込んで行き、やがて体内に突入する!

 

 

 体内に入った2人だが、入った瞬間何やら苦しみ出す。

 

 バキューモンの体内は、地球を角砂糖一個分の大きさにする程の圧力が働いているのだ!

 

 

 レイト「うぅ…い、意外と苦しいですね。」

 

 ゼロ「あぁ、だが俺達は諦めない!」

 

 リク「新たな世界を信じ、明日に向かって進み続けるんだ!」

 

 

 ジードとゼロは圧力を気合いで張り切りながら体内を飛び回り、そしてあちこちをキングソードやツインエッジで切り裂いていく!

 

 

 ゼロ「バルキーコーラス!」

 

 ゼロは周囲に8つの光球を生み出し、両腕を広げてその光球から一斉に破壊光線『バルキーコーラス』を放つ!

 

 貫通力の高い8つの光線はバキューモンの体内を貫き、やがて外に突き抜ける!

 

 

 「ぐおおおおあああっ!!」

 

 一体化してるが故にダメージもリンクするのか、ドルズ三兄弟は苦しそうに叫ぶ。

 

 

 《ウルトラマンジャック!》

 

 リク「はっ!」

 

 リクは今度は『ジャックカプセル』を装填し、クリスタルに左手をかざした後ソードモードにして突き出す。

 

 

 リク「ランススパーク!」

 

 

 ジードはキングソードの剣先を突き出し、『ウルトラマンジャック』の武器『ウルトラランス』にも似た貫通光線『ランススパーク』を放つ!

 

 かつてザイゴーグを貫いた強力な貫通光線は同じくバキューモンの体内を貫き、外に突き抜ける!

 

 

 体内から切られ、貫かれ続けたバキューモンは体のあちこちから蒸気のような粒子を吹き出し、そこから既に飲み込んでいた星々を吐き出し始める。

 

 

 ジードとゼロは、自分達が開けた穴から宇宙空間に脱出した。

 

 

 マルフォイ「なっ…何故だっ!?…何故強大な力を得た俺達が、ちっぽけな貴様らごときに〜…!」

 

 

 ゼロ「ちっぽけ?…フッ、まだ分からねーのか!戦ってんのは俺達だけじゃねーんだよ!」

 

 

 レイト「ルミナさんやマユや…多くの人達の願いが、僕達に無限の力をくれるんだ!」

 

 

 リク「お前がどんなに星を飲み込もうと、明日を照らすのは胸の中で芽生えた光…それが絶えない限り、どんな強大な敵にも負けないんだ!」

 

 マルフォイ「お〜の〜れ〜!」

 

 

 ジードは少し前に出る。

 

 

 リク「トドメだ!」

 

 

 リクはライザーをキングソードのクリスタルにかざす。

 

 

 《解放せよ!宇宙最強の力!!》

 

 

 そしてトリガーを弾いた後左手をクリスタルに三回かざす。

 

 

 《アン・ドゥ・ロトワ!》

 

 

 リク「はっ!」

 

 

 そしてクリスタルを七色に輝かせているキングソードを突き出す!

 

 

 リク「ロイヤルエェェェンド!!」

 

 

 ジードはキングソードを杖のように揚げてエネルギーを溜め、 左手で十字交差して眩い輝きと共に黄金の破壊光線『ロイヤルエンド』を放つ!

 

 

 黄金の最強光線を浴びるバキューモンは、体のあちこちから黄金のスポットライトのような光を放ち始める。

 

 

 マルフォイ「うぐっ…ぐおおぉぉぉあああ〜!!お、俺達の野望がああぁぁ〜!!」

 

 

 ドルズ三兄弟の叫びと共に、バキューモンは続けて爆発音を起こし、やがて黄金の粒子を放ちながら完全に消滅した。

 

 

 その様子は地上の人々からも見え、人々はジード達の勝利を喜び合う。

 

 友実「やったー!!ウルトラマンが、ウルトラマンが勝ったよハルちゃん!!」

 

 春菜「ええ…凄いわ…本当に。」

 

 

 モア「良かった…本当に良かった〜!」

 

 ライハ「ほら泣かないの…あはははは…」

 

 ライハ達も嬉しさから笑い合う。

 

 

 ミリー「リム、やったよ…ウルトラマンが勝ったよ!」

 

 ミリーもリムと共に勝利を喜ぶ。

 

 

 残虐な侵略者達に完全勝利したジードとゼロ。2人は青い地球を背に横並びになり、そして互いを見つめ頷く。

 

 ゼロ「やったな、ジード。」

 

 リク「…ああ!」

 

 2人は拳を合わせた。

 

 

 2人の勝利を祝福するように、太陽も輝きを取り戻した…。

 

 

 

 地球に戻って来たジードとゼロは、それぞれリクとレイトの姿に戻り、ライハ達と合流する。

 

 真っ先に駆け寄って来たのはモアであり、やがてリクとモアは笑顔で見つめ合いながらドンシャインポーズを決めた。

 

 ライハ「…お疲れ様、2人とも。」

 

 ライハも笑顔で2人を出迎えた。

 

 リク「ありがとう…ライハ達や、大勢の人たちのおかげで、侵略者を倒す事が出来た。」

 

 ゼロ「レイト、久々の戦闘大丈夫だったか〜?」

 

 レイト「平気ですよゼロさん。それにしても、何気に初めて宇宙に行ったな〜。」

 

 モア「宇宙か〜私も行ってみたいな〜!」

 

 ゼナ「(モアの肩に手を置いて)そのためにも、しっかりと実践経験を積むんだな。」

 

 モア「(敬礼をして)あ、はい!ゼナ先輩!」

 

 

 ハルヲ「いや~本当に良かった!エリも無事で。」

 

 エリ「リク兄ちゃん、ありがとう。」

 

 ルミナ「あなた、お疲れ様。」

 

 マユ「かっこよかったよパパー。」

 

 ハルヲとエリそしてルミナとマユもリク達と合流した。

 

 

 リク「店長…エリちゃん。」

 

 レイト「ルミナさん…マユ。」

 

 

 レム「二人とも、見事なナイスファイトでした。」

 

 リク「レム…ありがとう。」

 

 レム「二人とも無事に帰って来てホッとしました。」

 

 

 一方春菜と友実は、ミリーとの別れの時が来ようとしていた…。

 

 友実「行っちゃうんだね…ミリーちゃん…。」

 

 ミリー「はい。私、一旦トリィさんと一緒にピット星に帰って、リムの育成を教わろうと思います。」

 

 春菜「(笑顔で肩に手を置いて)しっかりやるんだよ。応援してるから。」

 

 ミリー「はい!この子を、強く、優しく、どんな侵略者にも負けない立派なエレキングに育てるために。」

 

 トリィ「ミリーちゃんのために色々とありがとうございました。」

 

 友実「いえいえ、私達はただ人として当然の事をしただけですよ。」

 

 春菜「それに、ミリーちゃんの一生懸命な姿に心を打たれたんです。本当にいい子ですね。」

 

 

 ミリー「春菜さん、友実さん、本当に、ありがとうございました。」

 

 ミリーは春奈達に一礼した後、今度はリク達の方に歩み寄る。

 

 

 ミリー「ウルトラマンさん達も、ありがとうございます。これからもこの美しい地球を守ってね。」

 

 リク「ああ。元気でね。」

 

 ゼロ「おう。お前も立派なエレキングトレーナーになれよ。」

 

 ミリー「…はい!」

 

 リクとゼロに励まされて笑顔になるミリーを、春菜たちも笑顔で見つめ合っていた…。

 

 

 やがて春菜と友実は、ミリー、そしてリク達に手を振りながら歩き去って行く。

 

 

 ミリー「ありがとう!さようならー!」

 

 春菜「さようなら!ミリーちゃん!」

 

 友実「元気でねー!」

 

 

 別れの挨拶をしながら見えなくなるまで手を振った後、春菜と友実は河川敷を二人っきりで歩き始める。

 

 

 友実「頑張り屋のミリーちゃんなら、きっと立派なエレキングトレーナーになれるよ。」

 

 春菜「そうだね。なんだか彼女に励まされた気がする。…私たちも、看護師になるために頑張らないとね!」

 

 友実「うん!」

 

 

 二人はミリーとの出会いをきっかけにより将来への決心を固め、笑顔で見つめ合った。

 

 

 …だがそれも束の間、二人は重大な事に気付く!

 

 

 春菜「…あ、そういえばどうやって帰るんだっけ…?」

 

 

 友実「あ」

 

 

 “ポクポクポク…チーン”

 

 

 友実「そーーーだったーーー!!!」

 

 

 そう、そもそも春菜と友実は慧のタイムスリップに巻き込まれてこの世界に迷い込んで来たのである!

 

 それを思い出した二人は、帰る術が無いかどうか慌てて考え始める。

 

 

 友実「わーどうしようどうしよう!帰る家なんてどこにも無いよ~!」

 

 春菜「ま、まあまあ一旦落ち着こうよトモ。」

 

 

 その時、

 

 

 慧「どうやら、あなた達を巻き込んでしまったみたいですね。」

 

 

 春菜と友実は、突然声のした方を振り向く。

 

 

 そこには、自身の不注意に気付いてやって来た慧が立っていた!

 

 

 友実「わッ!? 出たイケメ~ン!」

 

 春菜「本当に~…じゃなくて!あんたね!私たちを巻き込んだのは!」

 

 

 突っかかる春菜に、慧は冷静に返す。

 

 慧「はい、どうやら僕の不注意で…本当にすいませんでした。なので、僕が責任をもってあなた達を元の世界に送って行きます。」

 

 

 友実「え?そんな事出来るの?」

 

 春菜「あんた…一体何者なの…?」

 

 

 慧「僕は…ただの通りすがりの、時空の旅人ですよ。」

 

 

 櫂の息子である事を隠し、それなりの自己紹介を済ます慧。春菜は不思議がりながらも、彼に元の世界に送ってもらう事にした。

 

 

 

 リク「さて、事態も終息したし、帰ってドンシャイン見るかー!」

 

 ペガ「ふふ、今日はどんな内容なの?」

 

 リク「今日はね、なんとドンシャインとレムがね…」

 

 リク、ペガ、ライハ、モア、レイト、ルミナ、マユ、ハルヲ、エリ、ゼナ、トリィ、そしてミリーも他愛も無い会話を楽しみながら帰り道を歩いていた。

 

モア「ねえねえ!リッくん達も大勝利したし、みんなも無事だった事だし、みんなでお祝いしない?」

 

リク「う〜んそうだなぁ〜…。」

 

 

モアの提案を聞いたリクは、楽しそうに数歩前に出る。そして体を大きく反らして…、

 

 

リク「今夜は焼き肉っしょ〜! ハッハッハッハッハ…!」

 

 

(BGM兼ED:キボウノカケラ(1〜2番+大サビ))

 

 

リクの提案に一同は賛成する。

 

 

ライハ「いいんじゃない。」

 

モア「はぁぁあ、いいねそれ〜!」

 

ミリー「焼き肉…?」

 

トリィ「この地球のご馳走の1つだよ。」

 

ペガ「とっても美味しいんだよ〜。」

 

ルミナ「たまにはいいかもね!」

 

マユ「やった〜焼き肉〜!」

 

エリ「いっぱい食べようね。」

 

マユ「うん!」

 

 ゼロ「俺も地球を出る前に、皆といっちょ楽しくやりますか。」

 

 

モア「よ〜し、(ゼナの肩に手を置いて)それじゃあゼナ先輩、(敬礼をして)ご馳走様です!」

 

ゼナ「わ、私が出すのか?」

 

リク「儲けが高いんでしょ〜?“ニコニコ生命保険”って。」

 

リクとモアはすっかりゼナに奢ってもらう前提である(笑)

 

レイト「あ、良かったら僕からも出しますよ。ちょうど昨日給料日だったし。」

 

 ゼロ「お!太っ腹じゃねーかレイト!」

 

ハルヲ「俺からも出すぜ!儲け分から!」

 

エリ「おじさん奢れるぐらい儲けてんの?」

 

ハルヲ「んなっ、ヒドいなエリちゃ〜ん!」

 

 

 リク「あはは…ん?」

 

 

 リクは前を見た瞬間ふと足が止まる。

 

 

 視線の先には、何やら一人の可憐な女性がこちらを見つめて立っていた。

 

 

 レム「あのー…私も一緒にいですか?」

 

 

 リク「…レム?」

 

 

 なんと、レムは再び肉体を作り出してリク達の前に現れたのである!

 

 今回は“緊急措置”ではなく、単に“リク達と一緒に楽しみたいから”という個人的な感情で…。

 

 

 リクは少し驚きながらも再び笑顔に戻り、レムに近寄る。

 

 

 リク「もちろん!レムも、ヒロインの一人なんだから。」

 

 

 レム「ヒロイン………悪くないですね。」

 

 レムも、自然と笑顔になっていた。

 

 

 モア「何よ…(ライハの肩を掴んで揺さぶりながら)何よあのいい感じ~!!」

 

 ライハ「ちょっとモア落ち着いて…。」

 

 モア「いいもん!じゃあ私リッくんの隣に座るから!」

 

 ハルヲ「お?モアちゃん嫉妬ファイヤーですか~?」

 

 モア「べッ…別にそんなんじゃないもん!」

 

 ゼナ「まあモア、そう恥じる事は無い。」

 

 モア「ちょ、ゼナ先輩まで~!?」

 

 エリ「そもそもレムって誰?」

 

 

 リクはいつもの賑やかな雰囲気に戻っている一同を見て笑い合いながら、道を歩いて行った…。

 

 

ナレーション(リク)「“宿命を変える”という使命を達成した僕たちだからこそ、こうやって大団円を迎えられているのかもしれない。

 

誰だって、壁にぶち当たる事もある。大きくても、小さくても…

 

でも、限界を決めない限り、そして、仲間がいる限り、どんな壁でも超えて行けるんだ!」

 

 

 

一方、慧に連れてもらったお陰で無事に元の世界に戻れた春菜と友実は、ひとまずカフェで一息入れていた。

 

しばらくジードの世界にいたのだが、どうやら此方の世界はあまり時間は進んでいなかったみたいである。

 

 

友実「はぁ〜…あまり時間が進んでなくて良かったね! この後のショッピングどこ行こっかな〜?服も見たいし〜…。」

 

 

友実がこの後のショッピングをどう楽しもうかはしゃいでいる最中、春菜は1人考え事をしていた…。

 

 

春菜(…きっとあのウルトラマン、色々苦労してきたんだろうな…。)

 

春菜は、ジードがベリアルの息子である事を知る事はなかったものの、彼の目つきの悪さから彼の出自、それ故の周りからの評価が最初はあまり良くなかったという事をなんとなく察していた。

 

春菜(それに、共に戦ったウルトラマンが、いつも人気絶頂のゼロだなんて…うふっ、あの2人、まるで私とまみたんみたいね…。)

 

自然と春菜は、ジードにちょっと親近感を感じていた…。

 

 

友実「…ん?ハルちゃんどうしたの?」

 

春菜「ん?!い、いや、ちょっとボーッとしてた。ごめんごめん。」

 

心配した友実に声をかけられた事で春菜は我に帰る。

 

 

友実「大丈夫?…まあ、別の世界行ったりと今日は色々あったからね。…一体何だったんだろうね。あの一時って…。」

 

春菜「さあね…。ま、とりまこの後はショッピングでも楽しみましょ。」

 

友実「そうだね。」

 

コーヒーを飲み終えた2人は会計を済ませてカフェを後にする。

 

 

春菜「…ねえトモ。」

 

友実「ん?な〜に?」

 

 

春菜「自分の運命って、変える事が出来るのかな…?」

 

友実「え?急にどうしたの?」

 

春菜「…いや、やっぱ何でもない。さ、行きましょ。」

 

友実「うん、行こう。ねえ、私ちょっと見てみたい服があるの…。」

 

 

春菜はとりあえず考えるのをやめ、とりあえず今は友実と休日のショッピングを楽しむ事にした…。

 

 

…だが、そんな中で今日の経験をきっかけに新たな決心をしていた…。

 

 

ナレーション(春菜)「本当に自分はこうでいいのかな?…自分のやり方はこれで合ってるのかな?…そう思う時が誰にでもあると思う…。

 

でも、私はこれからも自分を信じ、そして、仲間と助け合いながら頑張っていこうと思う…。

 

そうしていけば、いつかはトモやまみたんみたいに子供達からの好意を得られる時が来るかもしれない…。

 

根拠はあまり無いけれども…なんだかそうなる気がしてきた…いや、誰かがそういう自信を持たせてくれたの…。

 

 

…“ウルトラマンジード”がね。」

 

 

〈完〉




読んでいただきありがとうございます!


ウルトラマンジードがゼロと共に活躍する長編物語、いかがでしたか?

 色々とてんこ盛りになってしまいすいません(笑)


ジードもとても面白い作品でしたね!全話見終わった後、私は非常に感動しました。

ベリアルの息子という運命を背負いつつも仲間と共にそれに抗い続け、そして見事その宿命に打ち勝ったというラストに心を打たれたのです。


 そして、そんなジードも初期は出自故にかなりの苦労人でもありましたので(笑)、同じ苦労人である春菜を主役にしてみました。


私は現在ジードロス進行中です(笑)劇場版も待ち遠しいですね。


皆さんは特にお気に入りのフュージョンライズはありますか?

私はソリッドバーニングで、DCDオリジナルだとシャイニングミスティックです!


今年も時間を見つけては作品を執筆して投稿していこうと思いますので、どうぞよければ今年もよろしくお願いします!


感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています!


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番外編「バクタリ少年の夢」

 今回はかなりのシュールな異色回です。


 始めに皆さん、『ウルトラマンA』に登場した超獣、『獏超獣バクタリ』をご存知でしょうか?


 今回はそのバクタリが主役の番外編です!

 どういう意味かは本編を見れば分かりますよ。多分(笑)


 一方で櫂君と海羽ちゃんは、今回は脇役程度の登場です(笑)

 時系列はあえて言いませんが、櫂君に関してはまだゼロに本性を露わにしていない頃です。


 まあとりあえず楽しんでいただければと思います。

 強いて言うなら、雰囲気は『ウルトラマンギンガS』の第11話、もしくは『ウルトラゾーン』に近いです。


 また、サブタイトルも一つ隠してあります。

 あと、有名アニメの小ネタもいくつかあります(笑)


 それでは、どうぞ!


 ………………これは、心の闇を利用されて超獣の姿になってしまった軟弱な少年と、一人の女性の交流を描いた物語である………………。

 

 

 

 (OP:英雄の詩)

 

 

 

 霞ヶ崎にあるとある三つの土管がある空き地。

 

 

 今日も、いつもの様に昼間は遊ぶ児童たちで賑やかになっていた。

 

 

 

 そんな最中に、突如乱入してきたガキ大将と思われる一人の男児が、男女関係なく他の生徒からお菓子を無理矢理横取りしているところだった。

 

 お菓子を横取りされたとある女児はガキ大将に「返してよ。」と訴えるが、体格の違いや風貌の怖さで強気になれない。

 

 

 この空き地を『多々良島』とすれば、ガキ大将の男児は『どくろ怪獣レッドキング』みたいな感じなのであろう。

 

 

 すると、女児はたまたま近くにいて、素通りしようとしたとある男児に助けを求める。

 

 

 「ねえ、義雄君も何か言ってよ!」

 

 義雄「え?………いやぁ………ちょっと………………。」

 

 

 突然無茶振りされた、どこか気弱そうな男児は動揺する。そして、何も言い返すことが出来なかった。

 

 

 男児・義雄は何処にでもいそうな霞ヶ崎で暮らす気弱な小学6年生。

 

 いつも軟弱な彼も、日々ガキ大将やその他の権力が強い児童から虐められており、先生に叱られることも少なくない事から、あまり楽しくない学校生活を送っていた。

 

 

 更に、今朝おねしょをしてしまって、それにより新たな弱みを握られたばかりである。

 

 因みに今日の彼のおねしょはちょっと変わった形をしており、その形は、何処か怪獣のようなフォルムであった………。

 

 両親は結婚して以来の二人きりの旅行に出掛けている、所謂今は一時的な一人暮らしであるため、おねしょをしてしまった布団は仕方なく竿に干している。

 

 選択などは母から教わり、家庭科の調理実習などで、料理等は出来るみたいなので一人暮らし自体は問題ないみたいなのだが、両親がいない寂しさもあって日々あまり元気がなかった。

 

 

 そんな軟弱な生徒の義雄。今日もいつもの様にガキ大将に狙われてしまった。

 

 

 「お前も早くそのお菓子よこせよ!」

 

 義雄「ちょ………やめてよ………。」

 

 「何だよ?おねしょした事をみんなにバラされたいのか?」

 

 義雄「う、………うぅ………。」

 

 

 結局、弱みを握られている事もあって、何も抵抗が出来ずにお菓子を取られてしまった………。

 

 

 

 その後、義雄はてぶらの状態で帰り道を一人とぼとぼ歩いている。

 

 恐らく友達もあまりいないのであろう。

 

 

 その時、

 

 

 “ワン! ワン! ワン!”

 

 義雄「うおあああっ!!?」

 

 

 突然一匹の犬が義雄目掛けて走ってきた。

 

 義雄はびっくりして尻もちを突いてしまう。

 

 

 すると今度は、犬が走ってきた同じ方向から、メガネをかけた一人の女性が慌てて慣れない足取りで走って来る。

 

 

 ???「ああ、ここにいた。 んも~勝手に飛び出しちゃダメだって言ったでしょ?」

 

 

 犬は女性に気付くと、彼女のもとに駆け寄ってなつき始める。

 

 恐らく飼い主なのであろう。

 

 

 ???「僕、ごめんね~。 じゃあ、気を付けて帰ってね。」

 

 義雄「え………ええ。」

 

 

 女性は犬を連れて歩き去って行った………。

 

 義雄はそんな女性の後ろ姿を、どこか哀愁さを感じる表情で見つめていた………。

 

 

 義雄「あの人………なんか動物臭い………………。」

 

 

 

 そしてとある公園のベンチで。

 

 

 義雄「あーあ、今日のおやつも取られちゃったよ………。

 

 おまけに水を吐く怪獣に追われる夢を見たと思えば、またおねしょしちゃうし………。」

 

 

 そう言いながら義雄は、ポケットからある物を取り出す。

 

 

 それは、母の手作りのデフォルメされた“獏”のぬいぐるみであった。

 

 おねしょ癖のある義雄のために、それが治るためにという思いも込めて母が手作りで義雄に渡したのである。

 

 彼はこれをいつもお守りとして大事に持っているのである。

 

 

 義雄「ねえ獏………早く僕の悪い夢を食べてくれよ………いや、夢だけじゃなくて、僕に降りかかる不幸も、全部食べてくれよ………。」

 

 

 義雄は、行き場のない寂しさを紛らわすように獏のぬいぐるみに語り掛ける。

 

 だが、当然ながら獏のぬいぐるみはなにも応えることは無い………。

 

 

 再び寂しさを感じた義雄は、上を向いて呟く。

 

 

 義雄「はあ………パパとママ、早く帰ってこないかな………………。」

 

 

 

 だが、そんな黄昏れている義雄を、近くの物陰から虎視眈々と狙うように見つめる一人のスーツ姿のすかした男がいた。

 

 

 敏樹「………ちょっと待てコワード。あのガキが今回の狙いか?」

 

 

 コワード「ええそうです。日々不幸な目に遭っている少年こそ、より強大なマイナスエネルギーを生み出すのですよ。

 

 まあ、私のやり方を見ていてくださいよ。」

 

 

 なんと、桜井敏樹と通信していた!

 

 

 奴は、テライズグレートから送り込まれた新たな刺客なのであろうか………?

 

 

 

 すると男は義雄の元にこっそりと歩み寄り、彼の肩を軽く数回たたく。

 

 義雄は突然の事に驚くように男の方を振り向く。

 

 

 コワード「元気がなさそうだねえ、僕ちゃん。」

 

 義雄「………誰?おじさん。」

 

 義雄は突然話しかけてきた男に動揺しつつも恐る恐る問いかける。

 

 

 コワード「んなっ!?おじさん?………………とまあ、さて置いて………

 

 君の気持ちが、だいぶ分かる人だよ。」

 

 義雄「え?」

 

 コワード「学校では先生に叱られ、友達に逆らえず虐められてばかり………

 

 おまけにおねしょもしてしまってそれまでも弱みとして使われ、頼りになる親も今はいない………

 

 なぜ君がこんなにも不幸なのか分かるか?」

 

 義雄は意味が分からず無口で首をかしげる。

 

 

 コワード「君は運が無いから! 神から見放されたから不幸続きなのです!!」

 

 

 男はまるで少年に頭に叩き込ませるように語り掛ける。

 

 それを聞いた義雄は辛さや寂しさがフラッシュバックしたのか俯き始める。

 

 

 コワード「………だが、そんな君に力を授けよう。」

 

 すると男は広げた右手に黒と紫の光を溜め始める………!

 

 義雄は驚くどころか、そのエネルギーに自身のマイナスエネルギーが共鳴しているのか、自身の目も紫に光り始める………!

 

 

 コワード「自分を見放したそんな世の中に、復讐するのだ!………そのぬいぐるみもろとも、君を怪物に変えてあげよう!

 

 はっ!!」

 

 

 男は右手に溜めたエネルギーを義雄に浴びせる!

 

 義雄の体は黒と紫の禍々しいエネルギーに包まれてそのまま巨大化しようとする!

 

 男の巧みな術にハマってしまった義雄は、怪物となって破壊活動をしてしまうのであろうか………!?

 

 

 コワード「ふははははは、やったぞ!

 

 さあ、今こそ破壊しろ!はははははは………」

 

 

 男は作戦が見事成功したと思い高笑いを続ける………!

 

 

 が、その時、

 

 

 

 “ポンッ”

 

 

 

 どこか軽い音が聞こえたと同意に、男の高笑いも止まる………。

 

 

 それもそのはず、禍々しいオーラの中から軽い音と共に現れたのは、人間サイズの『獏超獣バクタリ』であったのだ………!?

 

 

 コワード「………………あり?」

 

 

 バクタリ「………ん?………わっ!?何だこの姿は?」

 

 しかも、義雄の意識がそのまま残ってしまっていた!

 

 

 因みになぜバクタリになったのかというと、恐らく手に持っていた獏のぬいぐるみも一緒だったからであろう………。

 

 

 コワード「くそっ!まだ闇が十分じゃなっかのか………だからこんな中途半端なサイズに………………。」

 

 バクタリ「え?」

 

 コワード「作戦が失敗したからには仕方ない………今ここで処刑するー!!」

 

 

 そう言うと男は、まだ状況が分からずにいるバクタリの姿の義雄に掴みかかる!

 

 

 バクタリ「うわっ!?何するんですか?………やめ………やめてくださいっ!!」

 

 

 バクタリは嫌がりつつも、掴みかかった男を振り飛ばす。

 

 元が小学生の少年で人間サイズとはいえ、超獣になった今パワーはそれなりにあり、振り飛ばされた男は吹っ飛んで地面を転がる。

 

 

 すると男は立ち上がると、両腕をクロスし始め、それと同時に全身が光に包まれ始める!

 

 

 コワード「ナターン星人コワード様をなめるなー!」

 

 

 名乗った男は、光と共に姿が変わる!

 

 

 その姿は、かつて『ウルトラマンティガ』と戦った『侵略宇宙人ナターン星人』のモノであった!

 

 

 彼こそ、テライズグレートから派遣された新たな刺客・ナターン星人コワードなのである!

 

 

 バクタリ「うっ………う、宇宙人だ~!!」

 

 

 男の正体に驚き怯えるバクタリは必死に逃げ始め、正体を現したコワードはそんなバクタリを追いかけ回し始める!

 

 

 義雄君………アンタも一応今の姿は“超獣”なんですよ?(笑)

 

 

 街中で追いかけっこをする二体の異形の者。それに気づいた人々は怪獣出現と勘違いし、悲鳴を上げて逃げ始める。

 

 余談だがバクタリは、その巨体に似合わず意外にも逃げ足が速く、その速さはかつて『ウルトラマンA』と戦った際、エースの掴みかかりを三度も回避したほどである。

 

 

 バクタリ「みんな~!!助けて~!

 

 ウルトラマンを……ウルトラマンを呼んでくれ~!!」

 

 

 バクタリの姿の義雄は逃げながら必死に助けを求めるが、姿が姿。人々は聞いてくれるはずもない………。

 

 

 やがて、異常事態に気付いた『竜野櫂』と『眞鍋海羽』が駆け付ける!

 

 二人ともそれぞれ『ウルトラマンゼロ』と『ウルトラウーマンSOL(ソル)』に変身できる者だ。

 

 

 コワード「!くっ……ウルトラマンか………まあいい、まだ考えがある。

 

 それに我が超獣もいることだし………ここは一旦引くか。」

 

 

 コワードは気になる事を行った後、必死で逃げるバクタリを残して何処かへと去って行った………。

 

 

 

 櫂「出たぞっ!」

 

 海羽「あれね。」

 

 バクタリに気付いた櫂と海羽は、それぞれ既に『ウルトラゼロアイ』と『ハートフルグラス』(いずれも変身アイテム)を、銃型のガンモードに変えて構えている。

 

 

 バクタリ「あっ!お兄さーん!お姉さーん! 早く助けt…」

 

 

 櫂「撃てーっ!!」

 

 

 “ズキューン ズキューン…”

 

 

 “ズガンッ ズガガンッ…”

 

 

 バクタリ「きゃッ!? 痛ッ………ちょっと………何をするのー!!?」

 

 

 櫂と海羽は、バクタリとなった義雄の助けを求める声を聞くはずもなく問答無用で射撃し始める………。

 

 無理もない。彼らは事情を知らないのだから………………。

 

 

 バクタリ「痛い………ちょ………やめてくださいよ~!!」

 

 バクタリは銃撃を受けて痛がりながらも必死に逃げ始める。

 

 

 櫂「逃がすかーっ!!」

 

 

 櫂と海羽は、後を追いつつ銃撃を続ける………。

 

 

 やがてバクタリは、銃撃が届かない場所までなんとか行くと、そのまま一目散に走り去って行った………。

 

 

 櫂「くそッ!逃げられたか………。逃げ足早いな~アイツ。」

 

 ゼロ「ああ、惜しかったな。しかし、何故またバクタリが出たんだろうな?」

 

 海羽「それも等身大で、何だか不思議ねー…。」

 

 櫂「とにかく、このまま奴を放っておけないな。出来る限り探そうぜ。」

 

 海羽「うん、そうだね。」

 

 ゼロ「よーし、櫂、海羽、相手が相手だが、くれぐれも気を付けるんだぞ。」

 

 櫂「ああ!」 海羽「オッケー!(敬礼してウィンク)」

 

 

 櫂と海羽は、何処かへと走り去って行った………。

 

 

 

 一方、櫂たちの銃撃からなんとか逃れたバクタリは、とある商店街の魚屋さんの建物の影に隠れていた。

 

 

 バクタリ「はぁ………今日は厄日だよ~………。」

 

 

 そう言いながら建物の影からそっと表に出たその時、

 

 

 バクタリ「わッ!?」

 

 

 目の前には、魚屋さんの主人のおじさんがじっと見つめていた。

 

 

 バクタリ「あ、あの~…とりあえず話を聞い…」

 

 

 魚屋「怪獣ーッ!!」

 

 魚屋はそう叫ぶと、たまたま手に持っていた大きな魚(マグロ?)でバクタリを叩き始める。

 

 バクタリ「痛いッ………痛ッ………ち、違うんだよ!話を聞いてってば………。」

 

 バクタリは必死に訴えながら魚屋にすがるが、あくまで姿は超獣であるため、力が強すぎてうっかり魚屋を倒してしまう。

 

 

 バクタリ「ああ、ごめんなさい………」

 

 バクタリは必死に詫びるが、その様子を目の前の数人の主婦たちに見られてしまう。

 

 無論、主婦たちにとっては、怪獣(バクタリ)が魚屋を襲っているようにしか見えない。

 

 

 主婦たち「きゃーッ!!」

 

 主婦「魚屋さんが怪獣に襲われとるー!!」

 

 

 主婦たちは魚屋を助けようと、近くの果物等をバクタリ目掛けて投げつける。

 

 

 バクタリ「痛ッ!………ちがう………違うんだよ~!!」

 

 

 バクタリは悲痛な叫びを上げながら、その場から逃げて行った………。

 

 

 

 超獣の姿になってしまったがために、周りから話を聞いてもらえず怪獣として扱われる哀れな一人の小学生。

 

 もはや行き場のない状況にまで追い込まれていた………………。

 

 

 

 そして夕方。バクタリはとある河川敷の橋の下に立ち尽くしていた………。

 

 

 バクタリ「はぁ………そろそろ夜が来るな………

 

 でも姿がこれだし………家に帰ってもパパもママもいないし………

 

 僕、どうすればいいんだろう………………。」

 

 

 バクタリは途方に暮れてその場に座り込む。

 

 中の義雄君はもはや泣きそうになってしまっていた………………。

 

 

 その時、

 

 

 バクタリ「………、わっ!?」

 

 

 バクタリはあるモノに気付いて驚く。

 

 

 そこには、メガネをかけていて、髪は後ろで束ねている見た感じ20代後半の若い女性がじーっと見つめていた。

 

 

 その女性は紛れもなく先ほど義雄の姿の時に出会った、犬を連れていた女性だった………。

 

 

 その女性は怖がったり、逃げるような様子も見せず、ただじーっとバクタリを見つめている………。

 

 バクタリはどうしたらいいか分からず戸惑っている………。

 

 

 バクタリ(うぅ………やっぱりこの人動物臭い………。見た目はそこそこ良いのに………。)

 

 

 バクタリがそう思ったその時!

 

 

 

 女性「か・か・か・か・か・可愛い~~~!!」

 

 

 突然表情がガラリと変わり、瞳を文字通り光らせて「可愛い」と叫んだのだ!

 

 

 バクタリ「ええッ!?」

 

 

 女性「はあああ~まさかこんな所にこんなに人間サイズの怪獣ちゃんがいたなんて~!!」

 

 女性は困惑するバクタリを他所に、すがってあちこちを触りながら興奮する。

 

 

 バクタリ「ちょっ………ちょっと待ってよ! 僕は怪獣じゃないってばー!」

 

 バクタリは力加減をして女性を振り放して訴える。

 

 女性「え~? うふっ、おかしな事言うのね。姿が怪獣なのに。」

 

 バクタリ「まあ、今はそうだけど………。」

 

 女性「私、知ってるよ。バクタリでしょ?」

 

 バクタリ「“バク”だから“バクタリ”? 安直だな~。」

 

 

 ………おい義雄君、姿が姿だからって目上の女性相手にタメ口になってるぞ?(笑)

 

 

 バクタリがそのまま歩き去ろうとしあその時、

 

 

 バクタリ「!痛っ…。」

 

 突然、右肩を押さえて痛がり始める。

 

 

 女性「どうしたの?」

 

 女性は気になってその左肩を見てみると、そこには何かに焼かれたような小さい傷が出来ていた。

 

 恐らく、先ほど櫂に撃たれた際に出来た火傷の傷であろう。

 

 

 

 因みに、何故櫂に撃たれた傷かというと、実は先ほど櫂と海羽がバクタリを銃撃した際、二人それぞれ撃つ場所がだいぶ違っていたのだ。

 

 海羽はとりあえすおどして止めることを先決して、足元を集中的に射撃していたのだが、それに対して櫂は、その場で始末しようとバクタリの体を容赦なく射撃していたのだ。

 

 そしてその際に、櫂の射撃の一つがバクタリの右肩に直撃し、それによってバクタリはその部位に火傷の怪我を負ってしまったのである。

 

 

 その場で討伐しようとした櫂と、とりあえす大人しくさせようとした海羽。

 

 この違いだけでも、櫂の内心の腹黒さと、怪獣への憎悪が伺えるであろう………………。

 

 実際櫂は射撃する際、どこか不敵な笑みを浮かべていたのだから………………。

 

 

 

 女性「あらまあ、火傷ね。可哀想に。

 

 今治療してあげるからね。」

 

 そう言うと女性は、“動物用”と書かれた救急箱を取り出し、バクタリの患部を消毒した後、そこに絆創膏を貼った。

 

 

 白い十字形の絆創膏を。

 

 

 絆創膏を貼ってもらった事により痛みが癒えたバクタリは女性に礼を言う。

 

 バクタリ「ありがとうございます。動物相手なのにこんなにも上手いなんて…(僕、元々人間だけどね、、、)」

 

 

 女性「えへへ、私、動物大好きなの。 だから動物の治療法も勉強してるし、

 

 それに…それだからかな~…なぜか動物の怪獣に詳しいのよね~。」

 

 

 バクタリ「………動物好き………ですか?」

 

 女性「うん!だからあなたみたいな可愛らしい動物怪獣にも目が無いの。」

 

 

 バクタリ(なるほど………それで動物臭いわけだ………。)

 

 

 バクタリがそう思った時、

 

 

 “ぐ~きゅるるるる………”

 

 

 バクタリ「あ、」

 

 女性「ん?」

 

 

 どこからか聞こえた音、それはバクタリのお腹が空く音だった。

 

 

 女性「うふ、お腹空いたのね。 良かったら私の家に来る?」

 

 バクタリ「え?」

 

 

 

 よってその夜、バクタリは女性の家に入れてもらうことにした。

 

 

 バクタリ「!どひゃ~っ。」

 

 女性の家に入った瞬間、バクタリは驚愕する。

 

 

 なんと女性の家にはあちらこちらに、様々な飼育している動物がいるのである!

 

 

 ペットの定番の犬や猫はもちろん、ハムスターやリス、ウサギ、インコなど種類も様々であり、正に彼女の家自体が動物園のようである。

 

 

 女性「えへへへへ、ごめんね、ちょっと落ち着かないと思うけど、この子たちみんないい子だから。」

 

 バクタリ「え、えーと…」

 

 有理香「あ、自己紹介がまだだったね。

 

 私は有理香。沢城有理香(さわしろ ゆりか)。」

 

 バクタリ「有理香さん、本当に動物が大好きなんですね…。」

 

 

 有理香「うん!みんなどれも可愛いし! いずれは“あの鬚とベレー帽が特徴の人”みたいに、たーっくさん飼うのが夢なんだー。」

 

 バクタリ「そ………そうですか。」

 

 

 有理香「ねえ、バクタリちゃんは知ってる?

 

 みんな姿や形、大さは違うけど、一つだけ、私たち人間と同じところがあるの。」

 

 バクタリ「………それは………?」

 

 

 有理香「“生きてる”って事。

 

 みんなそれぞれ命を持ってて、それぞれの人生を一生懸命頑張ってる。

 

 そしてその中で、こうやって人間と触れ合う事で、互いを愛し合い、争う事なく共存できる………

 

 だから、例え姿が違っても、こうする事で人間の命は、様々な生物の命と繋がってる………凄い事だと思わない?」

 

 

 バクタリ「………はぁ。」

 

 有理香はどこか深い事を人懐っこく話すが、付いていけないバクタリはつい素っ気ない返事をしてしまう。

 

 

 有理香「あ、ごめんね、変な事話しちゃって………お腹空いてるんだよね?」

 

 

 そう言うと有理香は、バクタリを座らせ、そして籠一杯のフルーツを差し出す。

 

 

 有理香「さ、どうぞ。」

 

 

 バクタリ「ありがとう………でも………どうやって食べよう………?」

 

 

 バクタリは、どう食べようか悩んでいたその時、あるモノに気付く。

 

 

 ………それは、自身のバクのような長い鼻であった。

 

 

 すると、その鼻を使ってリンゴを一つ掴み、そしてそれを口に運んでムシャムシャと食べ始める。

 

 まるで象のような食べ方である。

 

 

 バクタリ「………おいしい。」

 

 

 早くもバクタリの姿での食べ方が分かった後、余程お腹が空いていたのか、籠一杯の果物をあっという間に平らげた。

 

 しかし、口から食べ物を食べる際は鼻を使う………ある意味バクタリの新しい発見でもある(笑)

 

 

 バクタリ「ふう、お腹いっぱい。ごちそうさまでした。」

 

 有理香「どういたしまして。」

 

 

 満腹になったバクタリは、周りの有理香が飼っている動物たちを見渡し、そして問う。

 

 バクタリ「有理香さん、この動物たちの世話、大変じゃないですか?」

 

 

 有理香は同じく動物たちを見渡しながら答える。

 

 有理香「確かに、一匹一匹世話しないといけないから大変なのは確かね~………でも、この子たちといる時が一番好きだから、だから全然しんどくなんてないわ。」

 

 バクタリ「有理香さん、本当に動物が好きなんですね。」

 

 有理香「ええ。さっきも言ったけど、みんな私たちを同じ命を持って生きている。ただ家で飼っとくだけじゃあ可哀想だから、いつもみんな散歩に連れて行ってるの。」

 

 バクタリ「どひゃ~、すごいですね。 注目されませんか?」

 

 有理香「ふふふ、実は一度散歩の最中にテレビ局の取材を受けて、世間で話題になった事があるの。

 

 “霞ヶ崎一、動物を飼う女性”ってね。」

 

 バクタリ「テレビにも出たんですか………有理香さん、凄いです。」

 

 有理香「へへへ…と言っても一時期だけだよ。 でも、今でもたまに取材が来たりするけどね。」

 

 バクタリ「有理香さんみたいな人が増えたら、もっと人間は動物と共存できるかも。」

 

 

 有理香「そうだね~…世の中にはまだ、自分たちの都合のためにむやみに動物を殺す者たちもいる………。

 

 だから私は、そんな人たちにも、どんな動物も人間と共存できるという事を分かってもらいたいの。

 

 そのためにも私は将来、立派な動物トレーナーを目指してるんだ。」

 

 

 バクタリ「………そうですか………。」

 

 

 バクタリは有理香の話を聞いて、彼女がどれだけ動物が大好きなのかを痛感する。

 

 

 そしてある決心をする。

 

 

 

 バクタリ「有理香さん、僕、力になりたいです。」

 

 

 有理香「………え?」

 

 

 バクタリ「僕………有理香さんがどれだけ動物を愛しているかがよく分かりました………だから………そんな有理香さんの役に立ちたい………。

 

 明日、散歩の手伝いをさせてください。」

 

 

 バクタリの気持ちを聞いた有理香は少し困惑するが、やがて笑顔になる、

 

 有理香「………分かったわ。よろしくね、バクタリちゃん。」

 

 有理香は笑顔で了解した。

 

 

 バクタリ「やったー。僕の方こそよろしくお願いします。」

 

 バクタリはインコたち動物にも挨拶を始める。

 

 バクタリ「しばらくよろしくね。」

 

 

 “キーッ キーッ”

 

 

 だが、インコは近づいたきたバクタリに気付くやバクタリの頭部を突きながら部屋を飛び回る。

 

 犬や猫も、威嚇するように吠え始める。

 

 

 恐らく初めて会う者という事もあって、動物たちはまだ警戒しているのであろう。

 

 

 バクタリ「痛てッ………痛い痛い………!」

 

 有理香「ああッ!みんな落ち着いて!バクタリちゃんは悪い子じゃないから………。」

 

 

 

 やがて騒ぎが治まった後、有理香は入浴などを済ませた後就寝する。

 

 バクタリも、別の部屋でちゃんと布団の中で寝かしてもらっていた。

 

 

 バクタリ「………有理香さん………凄いな~………………動物好きとはいえ、こんな姿の僕を怖がることも無く、こうやって泊めてくれる………………

 

 僕、必ず恩返しするぞ~。」

 

 

 やがて、バクタリも仰向けで布団をかけた状態で眠りについた………。

 

 

 

 

 そして翌日、有理香はいつもの様に動物たちの散歩を始め、バクタリもその手伝いを始める。

 

 

 因みに散歩コースは比較的山中であり、あまり人目の付かない所であるためバクタリも安心して散歩が出来るコースであった。

 

 

 バクタリも何匹か動物を散歩させてみるが、やはり最初はあまりなつかずに手を焼くことも多かった。

 

 でも、有理香の手助けもあって、辛抱強く付き合っていく内に、動物たちはバクタリにもなつくようになっていった。

 

 

 途中何匹か逃走してしまうが、その際はバクタリの大きな鼻の嗅覚を利用して探すことで見つけて行った。

 

 嗅覚で目的を探す………これもある意味新しい発見である。

 

 

 こうして様々な壁に当たりながらも交流を続ける事によって、やがて夕方になる頃には、動物たちはバクタリにも完全になつくようになった。

 

 全動物の散歩を終えたバクタリと有理香は、河川敷で座って川を眺めながら語り合う。

 

 

 有理香「バクタリちゃん、夕方まで散歩に付き合ってくれて…ありがとね。」

 

 バクタリ「いえ、有理香さんの役に立てて嬉しいです。

 

 それに、有理香さんが言っていた“命は繋がってる”………この意味がなんとなく分かった気がします。」

 

 バクタリの言葉を聞いた有理香はどこか嬉しそうだった。

 

 

 有理香「確かに、最初はお互い違う姿だったら警戒するよね………でも、今日バクタリちゃんが動物たちと仲良くなれたように、違う姿の者でも、必ず分かり合える。

 

 もしかしたら、今でもバクタリちゃんの事を警戒している人がいるかもしれない………でも、そんな人たちとも、必ず分かり合える日が来ると思うわ。

 

 現に今日、私の動物ちゃんたちと仲良くなれたんだもん。」

 

 

 バクタリ「…有理香さん………。」

 

 有理香の言葉を聞いたバクタリは、義雄だった頃のある事を思い出す。

 

 

 それは、自分も幼い頃からこうやって母と楽しく散歩している事だった。

 

 思えばどんなに辛い事があっても、母と散歩する時が一番楽しく、そして母の優しさに癒されてきた事を、、、。

 

 今は両親ともに旅行に出ていてしばらく不在だったため、義雄は辛さや寂しさの方が大きくなりつつあり、うっかりこの事を忘れかけていたのだ。

 

 そして改めて思い出せた今、自分はまだ神に見放されていないという事に気づく事ができ、少し前向きになれるような感じだった。

 

 

 すると有理香は手を合わせて、何かを思い出したかのように言い始める。

 

 有理香「あ、そうだ!」

 

 バクタリ「?どうしたのですか?」

 

 

 有理香「バクタリちゃん、、、明日手伝ってほしい事があるの。」

 

 バクタリ「………?」

 

 

 

 そして翌日、バクタリと有理香は動物たちと共にある場所へ。

 

 

 それは、遊園地である。

 

 

 実は有理香、数週間に一回は遊園地を訪れ、自身の動物たちの芸を子供たちに見せるというボランティアもやっているのである。

 

 今日はそれを、バクタリにも手伝ってもらおうとしてるのだ。

 

 

 準備をしながら、二人は話す。

 

 有理香「ホントごめんね〜。これまで手伝わせちゃって。」

 

 バクタリ「いえいえ、有理香さんの役に立てるなら何でもしますよ。

 

 それに、これも、人と動物の繋がりを深めるための一つだと思いますからね。」

 

 有理香「バクタリちゃん………。」

 

 

 すると、有理香はバクタリにある事を話し始める。

 

 

 有理香「…ねえ、昨夜、私の夢、食べたでしょ?」

 

 

 バクタリ「えっ?!」

 

 

 有理香の突然の言葉にバクタリは慌てるような反応をする。

 

 どうやら本当みたいである。

 

 

 有理香「ふふふ、やっぱりね。」

 

 バクタリ「で…でも、何で分かったんですか?」

 

 

 有理香「だって、貘って“悪い夢を食べてくれる”という言い伝えがあるでしょ?

 

 それに、その頭。輪っかの一つがたまに光ってるでしょ? それが証拠。」

 

 

 有理香に言われた事でバクタリ自身も気づく。

 

 それは、自身の頭にある無数の輪っかの内、一つだけ時たま紫に光るのである。

 

 バクタリは伝説の生き物・貘と同じく人間の夢が好物であり、食べた夢は、頭にある無数の輪っかの中に保存する事が出来るのだ。

 

 すなわち、この光ってる一つの輪っかこそ、バクタリが人間の夢を食べた何よりの証拠なのである。

 

 

 流石は動物好きなだけあって、有理香はバクタリの能力にも非常に詳しかった。

 

 

 有理香「…でも助かったわ。すごく怖い夢だったから…。」

 

 

 有理香はそのまま夢の内容を語り出した。

 

 

 それは、一本杉のある湖のつり橋の上に立っていたその時、突如その湖の中から激しく水しぶきを上げながら一匹の怪獣が現れて追いかけ回して来たという。

 

 その怪獣は口から白、赤と二種類の色の水を吹き出しながら追いかけ続け、やがてその水が自身に降りかかろうとしたその時、

 

 

 突如、自分を残して周りが一気に暗くなり、最初は戸惑ったが、やがて自分は助かった事を確信した。

 

 

 そして目が覚めて、先ほどの出来事が夢だと分かった時、バクタリが夢を食べてくれたんだと確信したという。

 

 

 有理香の夢の内容を聞いたバクタリは、数秒黙った後話し出す。

 

 

 バクタリ「………有理香さん、とても苦しそうだったから………。」

 

 有理香「………え?」

 

 

 バクタリは、自ら有理香の夢を食べたのである。

 

 

 それは、自身も寝付こうとした時、有理香の部屋から何やら苦しそうな声が聞こえ、気になって部屋に入ってみると、そこには有理香がベッドの中で寝ながら苦しそうな声を上げていたという。

 

 それを見たバクタリは、有理香が悪い夢を見てうなされている事に気付き、何とかしてやろうと悩んでいたその時、突如、自身の頭部の輪っかが光り出したかと思うと、有理香の中から紫の光のようなモノが飛び出して自身の頭の一つの輪の中に入って行った………。

 

 そして動揺している間にそのオーラを吸収し終えて頭部の発光が治まった頃には、有理香はさっきまでの苦しそうな感じではなくなり、気持ちよさそうな表情で寝付いていたという………。

 

 そしてその時初めて、自分が獏の力で有理香の悪い夢を食べたのだと実感したという。

 

 

 バクタリが、自分のために悪い夢を食べてくれたことを知った有理香は笑顔で感謝の言葉を言う。

 

 有理香「………ありがとうバクタリちゃん。おかげで気持ちよく眠れたから、今日も無事にこの子たち(動物たち)の芸が出来そうだよ。」

 

 バクタリ「い………いやあ~…そんな………。」

 

 有理香「あとちょっとで開園時間だわ。急ぎましょ。」

 

 バクタリ「あ、はい。」

 

 

 バクタリと有理香は残りの準備を急ぎ始める。

 

 

 しかしバクタリは準備しながら、さきほどの有理香から聞いた夢の内容が気になっていた。

 

 

 バクタリ(有理香さんの夢………僕がおねしょした時の夢と似てるなぁ………。一本杉の湖から水を吐く怪獣が出てきたところも………。)

 

 

 

 一方で、テライズグレートでは、そんなバクタリと有理香の様子をモニターから見ているコワードは、

 

 コワード「くっ………うかつだった………バクタリを野放しにしていたばっかりに、あの女(有理香)におねしょをさせて陥れる作戦が失敗してしまった………。

 

 バクタリめ………あんな能力を持っていたとは………………。

 

 まあいい。こうなったら次の策を考えるまでだ。」

 

 そう言うとコワードは、部屋から出て行った………。

 

 奴は、今度はどんな策を考えているのであろうか………………?

 

 

 

 同じ頃、義雄の家の竿に干されたままの布団には、なんとまだ昨日の“怪獣のような形のおねしょの跡”が残っていた………。

 

 

 “ビヨヨ~ン”

 

 

 するとなんと、そのおねしょの跡が、奇妙な音と共に布団から離れ、何処かへと飛んで行ったのだ!

 

 何処に飛んで行くのかは分からないが、このように義雄や両親が不在の間に、常識ではあり得ない事が起こっていた………。

 

 

 はて………この突如飛んで行ったおねしょは、有理香の夢と何か関係があるのであろうか………………?

 

 

 

 そのことを知るはずもないバクタリ(義雄)と有理香は、やがて遊園地が開園し、寄って来た子供たちの前で様々な動物の芸を見せ始める。

 

 

 自転車に乗る犬、玉乗りをする猫、動きでボケる猿に有理香が突っ込むというちょっとした漫才、おもちゃのダンベルをくわえて持ち上げるインコなど、様々な凄くて微笑ましい動物たちの芸を見ている子供たちは非常に楽しそうだった。

 

 

 特に今日は、バクタリがいるという事もあり、着ぐるみの怪獣だと思った子供たちは一斉にバクタリに駆け寄る。

 

 バクタリは着ぐるみの怪獣になりきるために、無口でそんな子供たちと戯れ始める。

 

 

 有理香の手伝ってほしい事、それは動物たちの芸の手伝いの他に、集客のためにこうして着ぐるみの怪獣として子供たちと戯れるようにしてほしいという事だった。

 

 姿がバクタリという超獣とはいえ、大きさが等身大であるため、着ぐるみの怪獣としてなら遊園地に入ることが出来、またそれによって子供たちも寄って来るだろうと考えたのである。

 

 正に、見事に成功したのである。

 

 

 バクタリの姿の義雄にとてっては、子供たちが喜んで自分に寄って来る姿はどこか新鮮に感じ、またそれによって自分も自然と嬉しく感じていた。

 

 そして、同時にこんな事も思っていた。

 

 

 バクタリ(………有理香さん………好きな動物たちのためじゃなくて、こんな風に子供たちの笑顔のためにも頑張ってるなんて………………。

 

 この人には是非、全動物と仲良くなって、立派な動物トレーナーになってほしいな………………。)

 

 

 粋な計画により、今日も動物芸のボランティアは成功をおさめ、閉園後の後片付けを終えたバクタリと有理香は帰宅した。

 

 

 大きな疲れからか、有理香はどこか満足そうな顔で椅子に倒れ込むように座る。

 

 

 バクタリ「有理香さん、本当に、お疲れ様でした。」

 

 有理香「はあ~、バクタリちゃんこそ、私の無理を聞いてくれて、疲れたでしょ?

 

 今夜はゆっくり休むといいよ。」

 

 有理香はぐったりした体勢で椅子に座ったままバクタリに労う言葉をかける。

 

 

 “ピンポーン”

 

 

 その時、インターホンが鳴る。

 

 有理香「ん?何かしら?」

 

 有理香は疲れた体を起こしながら玄関に向かう。

 

 有理香「はーい。」

 

 返事をしながらドアを開けると、なんとそこには櫂と海羽の姿があった!

 

 バクタリ「げげっ!」

 

 部屋の入り口からこっそりと見ていたバクタリは、昨日自分を撃った櫂と海羽の突然の訪れに驚く。

 

 

 櫂「突然にすいません。麟慶大学二年の竜野櫂です。」

 

 海羽「同じく、眞鍋海羽で~す。」

 

 櫂「最近この辺りに怪獣がうろついているという噂を耳にしたのですが、何か心当たりはないですか?」

 

 海羽「ないですか?」

 

 

 櫂と海羽の問いかけに、有理香ははっとなって少し黙ってしまう、、、。

 

 

 恐らく、最近見かける怪獣とは、自分が今かくまっているバクタリの事だと感じたのであろう………………。

 

 

 櫂と海羽は、昨日に引き続きバクタリの捜索を続けていたのだ。

 

 

 海羽「………?どうされましたか?」

 

 有理香「え?、、、い、いえ、私は何も………。」

 

 有理香は思わず嘘を言ってしまった。

 

 

 櫂「そうですか………突然すいません。失礼しました。」

 

 有理香「え、ええ………気を付けてね。」

 

 櫂「はい。おい海羽、次行くぞ。」

 

 海羽「オッケー!」

 

 

 櫂と海羽は、有理香に挨拶をした後足早に何処かへと去って行った………。

 

 

 自分がその探している怪獣を家に入れているというのに思わず嘘をついてしまった事に少し罪悪感を感じつつも、有理香はそっと部屋に入り、やや怯えるバクタリに笑顔で話しかける。

 

 

 有理香「もう大丈夫よ。」

 

 バクタリ「そうですか………ありがとうございます。」

 

 

 有理香「(手を合わせて)それじゃ、今夜はゆっくり休みますかー………

 

 ……あ、あとうさぎちゃんの餌やりをしなきゃいけなかった。」

 

 有理香はあと一つやり残しがあった事に気付く。

 

 

 バクタリ「あ、有理香さんはお疲れですから、うさぎの餌やりは僕に任せてください。」

 

 有理香「本当に~?………じゃあ、お願いしちゃおっかな。」

 

 バクタリ「分かりました。」

 

 

 バクタリは早速人参を取り出す。

 

 実は義雄は、学校の飼育係の一人であり、うさぎ担当なのである。それにより、人参はうさぎが食べやすい形に切らないといけない事を知っているバクタリ(義雄)は、なんと腕の一本爪の先端を使って人参を切り始める!

 

 

 バクタリの一本爪にはこういう使い方もあったとは………我々も驚きである。

 

 

 やがて人参を何本にも細長く切ったバクタリは、それを持ってうさぎの元へ。

 

 細長く切った人参を差し出すと、うさぎはそれを食べ始めた。

 

 うさぎもまた、バクタリになつくようになっていたのである。

 

 

 バクタリ「………やった、食べてくれた。」

 

 有理香「本当だわー。」

 

 それに気づいた有理香も、歩み寄ってしゃがんで、餌を食べるうさぎを見つめる。

 

 バクタリ「やっぱりかわいいですねー。」

 

 有理香「完全にバクタリちゃんにもなついちゃってるしね。」

 

 

 有理香は餌を食べ続けるうさぎを見つめながら呟き始める。

 

 有理香「………バクタリちゃんが来てくれたおかげで、私、結構助かったわ………。」

 

 バクタリ「え?」

 

 有理香「この子たちもなつくようにもなったし、そのおかげで家がいつもより賑やかになった感じで、今日の芸ボランティアも今まで以上に成功できた………そして今、こうやって餌もやってくれるようにもなってくれて………………」

 

 有理香は感謝の言葉を語り続けていく内に、徐々に涙声になっていく………………。

 

 

 

 有理香「………ぐすんっ………すん………………バクタリちゃん………………ありがとね………………ありがとう………………。」

 

 

 

 わずか数日の付き合いながらバクタリへの感謝がいっぱいの有理香は遂に感極まって、しゃくり泣きをしながら、涙を拭きながらお礼を言った。

 

 

 バクタリ「………有理香さん………………。」

 

 

 嬉し泣きで自分にお礼を言う有理香。それを見たバクタリは、自分は本当に有理香の役に立てたのだなあと実感し、改めて嬉しい感じになった………………。

 

 

 その後、二人は今日の疲れを取るために、ぐっすりと眠りについた………。

 

 

 

 だが、その頃別の場所………それも、義雄や有理香の夢に出てきた一本杉のある湖に似た場所で。

 

 とある一匹の怪獣らしきものが湖面から姿を現しており。周りに口からの水流を吹き付ける。

 

 水流の威力は凄まじく、当たっただけで小さな山なら簡単に削れ飛ぶほどであった。

 

 怪獣は、今度は赤い液体を周りに浴びせる。

 

 するとなんと、赤い液を浴びた場所は爆発し、炎が燃え上がる。

 

 恐らく怪獣が吐く赤い液隊は爆発性がある危険なモノなのであろう。

 

 

 そしてそんな暴れる怪獣の様子を見つめるコワードは、不気味に笑っていた、、、。

 

 

 コワード「ふっふっふ………ではそろそろ、次の策の実行と行きますか~。」

 

 

 コワードがそう言うと、怪獣は湖の中に潜って姿を消した、、、。

 

 

 そしてそれと同時に、今朝何処かへと飛んで行ったおねしょの跡が、奇妙な音と共に干されている義雄の布団に戻った………。

 

 

 ………はて、怪獣はもしかして、このおねしょに擬態しているのであろうか?………………。

 

 

 

 

 そして翌日、この日もバクタリは、朝から有理香の動物たちの散歩を手伝っていた。

 

 

 バクタリ「今日もいい天気ですね~………暑いけど。」

 

 有理香「そうね~…これが終わったら後でアイス食べようよ。私が奢るから。」

 

 バクタリ「え?いいんですか?」

 

 有理香「うん。バクタリちゃん、昨日芸の手伝いに餌やりと色々やってくれたでしょ。そのほんのお礼。」

 

 バクタリ「やったー!」

 

 有理香「ふふふ…。」

 

 

 はしゃぐバクタリは犬と共に走り、それを有理香が笑顔で見つめていたその時、

 

 

 コワード「ここにいたか………バカ超獣!!」

 

 

 突如、バクタリの行く手を阻むように目の前に、人間態のナターン星人コワードが現れる!

 

 

 しかもバクタリを“バク超獣”ではなく“バカ超獣”と言いながら…(一文字違い笑)。

 

 

 バクタリ「!うわっ!!」

 

 

 バクタリは突然目の前にコワードが現れたことに驚く。

 

 連れていた犬は威嚇して跳びかかるように吠える。

 

 

 “ワン! ワン! ワン!”

 

 

 コワード「うわーっ!!」

 

 

 思いの外、コワードは驚いた(笑)

 

 だがすぐさま体勢を立て直す。

 

 

 コワード「いつまで人間なんかと一緒にいる気だ?ええ?」

 

 非情な問いかけをするコワード。

 

 

 バクタリ「な、何でそんなことを言うんですか!?」

 

 コワード「君は神に見放された存在なんだぞ?いまだにその姿でいるのが何よりの証拠だ。」

 

 またしても巧みな術でハメようとするコワード。バクタリは再び心が揺らぎ始めたのか、黙り込んでしまう。

 

 

 有理香「ちょっと…あなた一体何なんですか?」

 

 不審者が来たと思った有理香はバクタリを庇うようにコワードに突っかかる。

 

 

 コワード「ん?何だこの女は?」

 

 するとコワードは有理香の腕を掴み、引き寄せ始める!

 

 

 有理香「ち、ちょ…何するんですか!?」

 

 有理香の動物たちも、彼女を助けようとしているのかコワード目掛けて接近する。

 

 するとコワードは、空いている左手から光線の鞭を出して動物たちをまとめて縛って捕えてしまう。

 

 

 有理香「バクタリちゃんっ!………。」

 

 バクタリ「はっ………やめろ!有理香さんと動物たちを放せ!」

 

 コワード「ははははは、それだよ!その怒りだ!さあ、もっと怒れー!!」

 

 そう言いながら、なんとコワードは捕えている有理香の腕を締めつけ始め、有理香は痛がり始める。

 

 動物たちも怯えるような鳴き声を上げ始める………。

 

 

 有理香「ちょっ……痛い……やめてよ!…せめてこの子たち(動物たち)だけでも放しなさいよ!」

 

 コワード「やーだーねー!」

 

 有理香は痛がりながらも、動物たちの事を第一に考えて必死に抵抗するが、コワードはやめるはずもなく、バクタリの怒りを煽るために有理香たちをなぶり続ける、、、。

 

 

 バクタリ「どうして………どうしてそんな酷い事ができるんだあああぁぁ〜!!!」

 

 

 バクタリは遂に怒りの叫びを上げ、それと共にマイナスエネルギーと思われる紫のオーラを放ち始める、、、!

 

 怒りによって我を失いかけているのであろうな、、、?

 

 

 コワード「ふっふっふ、いい感じだ。さあ、仕上げといくか、ふんっ!!」

 

 

 コワードはそう言うと、有理香たちを乱暴気味に開放した後、怒り狂うバクタリに手からの黒と紫のエネルギーを浴びせる!

 

 

 エネルギーを浴びたバクタリは苦しそうな声をあげながら見る見る巨大化していき、やがてそれにつれて義雄少年の叫び声がバクタリの鳴き声へと変わっていく、、、!

 

 

 “オヴァヴァヴァヴァオウーン”

 

 

 そして遂に、バクタリは巨大な超獣となってしまった!

 

 

 コワード「成功だ…大成功だぜー!」

 

 コワードは、バクタリを巨大化させる事に成功して狂ったように叫ぶ。

 

 

 有理香「…バクタリちゃん………。」

 

 有理香は動物たちを庇いながら、巨大化してしまったバクタリを悲しそうな顔で見上げる………。

 

 

 巨大化したバクタリは、引き続き捜索していた櫂と海羽にも既に見えていた。

 

 海羽「あっ、あれ、バクタリちゃんじゃない?」

 

 櫂「あのヤロー遂に巨大化しやがったか!」

 

 ゼロ「急いで向かうぞ!」

 

 櫂・海羽「おう!」

 

 

 コワードは、咆哮を上げるバクタリに更に叫びかける。

 

 コワード「さあ、己の怒りに加え異次元エネルギーを浴びたお前は今、完全なる超獣だ!

 

 さあ暴れろ………たった1日の女のために、多くの人が犠牲になる……これほど最高な事は無いぜ〜フハハハハハ!!」

 

 

 コワードの声を聞いたバクタリは、それに応えるように街に向けて歩みを進め始める………遂に破壊活動を始めてしまうのか………!?

 

 

 有理香「やめて………バクタリちゃん!」

 

 有理香は必死に呼びかけるが、まるでバクタリに聞こえる様子がない………。

 

 

 やがてバクタリは、市街地の目前にまで向かっていた…。

 

 街の人々は既に、超獣が出現した事により逃げ始めている。

 

 

 コワード「ハハハハハ!さあ、破壊しろバクタリ!」

 

 

 

 ………だが、市街地の目前にまで来た時、突如バクタリの足が止まってしまう。

 

 

 その事にコワードはもちろん驚き、有理香もはっと驚く。

 

 

 櫂と海羽も、突然動きが止まったバクタリに反応する。

 

 海羽「………あれ?急に止まった?」

 

 櫂「…いきなりどうしたんだ?」

 

 

 コワード「おいどうしたバクタリ!さっさと街を破壊しろー!」

 

 

 バクタリ「………それはできない…。」

 

 

 コワード「!なんだと〜!?」

 

 なんと、あれほどのマイナスエネルギーを浴びて巨大化したにもかかわらず、バクタリは今も義雄の理性を保っていたのだ!

 

 予想外の出来事にコワードは少しうろたえる。

 

 

 バクタリ「街を壊したら……有理香さんだけじゃなく、たくさんの人が悲しむ………有理香さんが笑顔にした、たくさんの人が。」

 

 コワード「なにい〜!?」

 

 有理香「…バクタリちゃん………。」

 

 

 バクタリ「僕は確かに、自分は運がなく、価値のない人間だと思っていた………

 

 でも、有理香さんと過ごすうちに、そんな事は無いと気づけたんだ。」

 

 バクタリの言葉に有理香は少し嬉しそうな表情になる。なおもバクタリは語る。

 

 バクタリ「大好きな動物たちだけじゃなくて、こんな姿の僕にも優しくしてくれて、家に入れてくれて、僕が少しでも手伝いをしたら、笑顔で礼を言ってくれた………。

 

 そして僕は気づけたんだ…人間の価値は運がある無いじゃない………動物も入れて、他のモノのためにできるかどうかで分かるんだと…。

 

 僕、有理香さんならどの動物とも仲良くなれて、立派な動物トレーナーになれると信じてる………だから、将来そんな有理香さんの幸せな姿を見るのが、僕の夢なんだ。

 

 だから………僕にはそんな有理香さんが楽し暮らすこの街を、破壊する事はできない!」

 

 

 有理香「…バクタリちゃん…。」

 

 

 バクタリの気持ちを聞いた有理香は嬉しそうな表情で安心する。

 

 一緒に過ごしていくうちに紡いで来た二人の絆が、見事闇の力に勝ったのてある!

 

 

 櫂「…そっか、そういうことか。」

 

 海羽「…ほえ?」

 

 櫂も何かに気づいたのか、納得するような反応をする。

 

 

 コワード「ちぇっ、こうなってしまっては仕方ない。俗物はちゃんと始末しないとな。

 

 

 ドリームギラス!!処刑しろ!!」

 

 

 “ゴゴゴゴゴゴゴゴ…”

 

 

 コワードの叫びが響くと、突如地面が激しく揺るぎ始める!

 

 

 有理香「!ひゃっ!?」

 

 バクタリ「な、何だ?」

 

 

 櫂「何が起ころうってんだ!?」

 

 海羽「はっ、櫂君あれ!」

 

 

 “ズドーン”

 

 

 “キュピキュピキュピ キョッキョッキョ”

 

 

 突如、地面が割れて爆発が起こり、そこから奇妙な鳴き声と共に巨大生物が現れる!

 

 

 魚を奇妙にデフォルメしたような顔に口の下のドリル状の突起物、長い尻尾が特徴の超獣『夢幻超獣ドリームギラス』である!

 

 

 ドリームギラスは手始めに周囲に口からの水流や赤い液体を吹き付ける!

 

 水流の威力は一撃でビルが粉々になるほどであり、赤い液体は浴びた場所が大爆発し炎が燃え上がる。

 

 

 バクタリ「あ………あれだ!」

 

 有理香「夢に現れた怪獣!」

 

 

 ドリームギラスを見たバクタリ(義雄)と有理香は驚く。

 

 なんでも先日の夢に出てきた怪獣と同じ姿をしているというのだ!

 

 

 コワード「怪獣じゃない。超獣ドリームギラスだ。

 

 その通り!こいつには人の夢に現れたり、擬態したりする力がある。

 

 こいつに水をかけられる夢を見させることでおねしょをさせ、それによって更に馬鹿にされることでマイナスエネルギーを発生させようとしたのだ。

 

 まあ最も、その女(有理香)に関しては失敗したけどね………あの俗物(バクタリ)のせいで!」

 

 

 作戦を邪魔された上に用済みとなったバクタリに怒りを向けるコワード。

 

 

 バクタリ「じゃあ、僕のおねしょももしかして…!?」

 

 コワード「その通り!こいつが擬態していたのだ。

 

 子供のおねしょが一番、怪しまれずに隠れられるからね~。」

 

 

 有理香「それで人が寝静まった所を狙って夢の中に侵入させてたわけね………人の中に入るなんて………俗物はどっちよ!?」

 

 

 コワード「俺様の作戦の邪魔をする方だろ~!今からそれを始末させるんだ。行け!」

 

 

 コワードの指示を受け、ドリームギラスは進撃する。

 

 

 バクタリ「有理香さんが好きなこの街を………壊させない! うおおおおああ………!!」

 

 

 バクタリはドリームギラスに立ち向かう!

 

 そして二体は組み付く。悪夢を食べるバクタリと、悪夢を作るドリームギラス。所謂“夢”関係の超獣同士が今、ぶつかり合う。

 

 

 変身しようとした櫂と海羽もふと手が止まる。

 

 櫂「何なんだ一体?」

 

 海羽「何が起こってるの~!?」

 

 

 二体の巨大な超獣の戦いの激しさは、周りに地響きが起こり、土砂などが巻き上がるほどである。

 

 ………だが、バクタリは次第に押されていき、やがて力負けして押し倒される!

 

 

 姿は超獣とはいえ、中身は小学生の少年。本物の超獣に叶うはずもなかった。

 

 

 だが、バクタリは立ち上がって再度ドリームギラスに立ち向かう。

 

 有理香の存在が、軟弱だった義雄をここまで強くさせたのだ。

 

 

 バクタリはドリームギラスにがむしゃらに両腕のパンチを放つが、ドリームギラスはそれを受けても物ともせず、逆に右フックで返り討ちに遭わせ、次にしゃがんだところで腹を蹴り上げて吹っ飛ばす。

 

 

 バクタリは横たわりながらも爪先から火炎を噴射して攻撃を仕掛ける!

 

 だが、ドリームギラスは即座に水流を吹き、水流は火炎を消し飛ばしながら飛んで行き、やがてバクタリに直撃する!

 

 バクタリはそのまま主流に押されて吹っ飛び、地面に落下する。

 

 

 ドリームギラスはうつ伏せに倒れるバクタリに尻尾を何度も打ち付けて追い打ちをかける!

 

 

 尻尾で何度も打ち付けられても立ち上がろうとするバクタリを見守る有理香。

 

 

 すると、有理香は動物たちと共にバクタリに声を掛け始める!

 

 

 有理香「頑張ってバクタリちゃん!」

 

 

 バクタリ「………有理香……さん………?」

 

 

 有理香「私、あなたならもっと強くなれると信じてる!だからあなたは俗物なんかじゃない!

 

 

 この子たちの散歩を手伝ってくれた………遊園地での芸に、協力してくれた………うさぎちゃんに、餌をやってくれた………とってもいい子なんだもん!!」

 

 

 バクタリ「有理香さん………。」

 

 

 有理香「私、バクタリちゃんと過ごして、とっても楽しかった!

 

 この子たちもそう思ってるよ!」

 

 

 有理香に同調するように、動物たちも一斉に応援のような鳴き声を上げる。

 

 

 バクタリ「………僕も同じだよ、有理香さん………。」

 

 

 有理香「………へ?」

 

 

 バクタリ「僕も、有理香さんと過ごしたおかげで変われた………今なら、自信持って言えるよ!」

 

 

 有理香「………バクタリちゃん………。」

 

 

 バクタリ「君を想う力が………僕を強くしてくれたんだ………………。」

 

 

 互いの絆を確かめ合うバクタリと有理香、動物たち。

 

 櫂と海羽もそれが分かったのか、みつめながらふっと笑顔になる。

 

 

 コワード「くだらん。ドリームギラス!やれ!」

 

 だが、無情にもコワードが指示を出し、ドリームギラスは口から赤い液をバクタリに吹き付ける!

 

 

 “ドガガガガーン”

 

 

 バクタリ「あああ!………ああっ!………。」

 

 

 赤い液を浴びたことにより、爆発を起こしたバクタリは、崩れ落ちるようにその場に倒れ込む。

 

 有理香は両手で口を押さえ、動物たちも鳴き声が止んでしまう。

 

 

 うつ伏せに倒れた状態で身体から煙を上げながら痙攣するバクタリ。完全に弱っていた。

 

 

 コワード「いっひっひ、そろそろトドメと行きますか。ふんっ!」

 

 

 コワードは腕をクロスさせ、光と共に巨大化する!

 

 

 コワード「今こそこれの出番だな。」

 

 そう言いながら、何やら妙な形状の銃を取り出すコワード。

 

 コワード「俺が開発した新兵器・ナターンビームガンだ。

 

 今こそこれで俗物を………焼き尽くしてやる!!」

 

 

 “ズガーン”

 

 

 コワードは叫びと共にナターンビームガンからエネルギー弾を放つ!

 

 

 邪悪な光の弾丸はバクタリ目掛けて一直線に飛んで行く………!絶体絶命!

 

 

 バクタリ「うわあああああ!!」

 

 有理香「はああっ!!」

 

 

 

 櫂「レッツ、ゼロチェンジ!!」

 

 

 “ギュイインウウウゥゥン”

 

 

 左腕のウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを出現させていた櫂は、それを目に装着して赤と青の光と共に巨大化し、『ウルトラマンゼロ』へと変身する!

 

 

 

 バクタリ「………僕………もうここまでか………………。」

 

 

 “ズガーン”

 

 

 バクタリ「………ん?」

 

 

 諦めかけてたバクタリは、自身の前で眩い光とともに何かが爆発した音を聞いてふと振り向く。

 

 

 

 そこには、両手を突き出して光の障壁を出現させて立っている一人の巨人の後ろ姿があった。

 

 

 そしてその巨人はバクタリの方を振り向き、ゆっくりと頷く。まるで「よく頑張ったな、あとは任せろ。」と語り掛けるように。

 

 

 鋭い目つきに頭部のトサカのような二本のスラッガーを持つその巨人こそ、櫂が変身した光の巨人『ウルトラマンゼロ』であった!

 

 現れたゼロは光の障壁『ウルトラゼロディフェンダー』を展開させ、バクタリに向かう弾丸を防いだのである。

 

 

 バクタリ「………ウルトラマン…ゼロ…。」

 

 

 ゼロの登場に安心したのか、バクタリはどこか嬉しい表情をしているようであった。

 

 

 はて、しかし最初はバクタリを撃破しようとした櫂だが、なぜ今“守ろう”という意思に変わったのであろうか、、、?

 

 

 それは、バクタリが元は軟弱な少年だと分かったからである。

 

 思えば自身もかつて、気弱でいじめられる日々を送る過去がある、、、。

 

 そして、大切な女性の存在のおかげで強くなれた…。

 

 これらの事から、櫂はバクタリになってしまった少年に何かしら自分に似た所を感じ、それにより憎悪から同調に変わり、行動も撃破から肩入れに変わったのであろう…。

 

 

 自身もかつては虐められる立場だった櫂。なので彼は、軟弱で虐められる人の気持ちがよく分かるのである。

 

 

 

 コワード「現れたなウルトラマンゼロ!」

 

 コワードはドリームギラスと共に構えを取って威嚇する。

 

 

 バクタリ「ゼロ………有理香さんが好きな………この街を守って………。」

 

 バクタリはだいぶ弱っていてのか、若干震えた声でゼロに懇望する。

 

 そして、疲れて倒れ込むように横たわる。

 

 

 ゼロ「…任せろ!」

 

 ゼロはお疲れとばかりにサムズアップを決めた後、コワードたちの方を鋭く振り向き構える。

 

 

 コワード「貴様も今にあの俗物みたいにしてやる!かかるぞー!」

 

 コワードは叫びながらドリームギラスと共にゼロ目掛けて掛け始める!

 

 

 ゼロ「さあっ!!」

 

 

 (BGM:DREAM FIGHTER)

 

 

 ゼロも気合いの掛け声と共に颯爽と駆け寄る。

 

 そしてドリームギラスの腹部に正拳突きを叩き込む!

 

 強烈な一撃によりドリームギラスはたちまち怯んで後退する。

 

 

 だが、すぐさま負けじと右フックを繰り出して反撃するが、ゼロはそれを側転してすれ違うように交わした後、胸部に渾身の右脚蹴りを叩き込む!

 

 ドリームギラスは反撃の頭突きを繰り出すがゼロはそれを両手で掴んで押さえ込む。

 

 

 コワード「今がチャンス!」

 

 

 その隙にコワードが後ろから襲いかかるが、、、

 

 

 ゼロ「せあっ!」

 

 

 “ドゴンッ”

 

 

 コワード「!あら〜!?」

 

 

 歴戦の勇者・ゼロに死角無し!ゼロはそのまま後ろ回し蹴りを打ち込んでコワードを吹っ飛ばす。

 

 そしてその後ドリームギラスを横方向に投げ飛ばした。

 

 

 少年を利用し、更に人の夢を踏みにじる卑怯な作戦を展開したナターン星人と超獣。それに怒りを燃やすゼロはその2体を物ともせず圧倒していく、、、!

 

 

 コワード「小癪なっ!」

 

 コワードはナターンビームガンからエネルギー弾を放つが、ゼロはそれをしゃがんで避けると同時に滑り込むように突っ込み、腹部に右脚蹴りを叩き込み、それを受けたコワードはスピンして地面に叩き付けられる。

 

 

 ドリームギラスは長い尻尾を振るって攻撃を仕掛ける。

 

 ゼロはそれを避けるどころか掴んで受け止める。

 

 

 コワード「よーし、今のうちに…」

 

 コワードが再びエネルギー弾を撃とうとしたその時、

 

 

 海羽「どーん!」

 

 

 “ボーン”

 

 

 コワード「うおあっ!!?」

 

 

 突如、死角からソルの跳びかかってのヒップアタックを受けてたまらす吹っ飛ぶ。

 

 海羽もいつの間にかウルトラウーマンSOL(ソル)に変身していたのだ。

 

 

 コワード「貴様も邪魔するというのか!?」

 

 

 海羽「ええ。人の心を利用するなんて許せない!

 

 

 月に代わって、お仕置きよ!」

 

 ソルは某変身ヒロインのような台詞を口走り、更にポーズまで真似てしまっている(笑)

 

 

 コワード「…今は昼間だが?」

 

 海羽「なっ……ノリだよノリ~!」

 

ソルはコワードの的確なツッコミに思わず恥ずかしそうに慌てる。

 

 

 コワード「どうでもいい!貴様も容赦はせんぞ!」

 

 

 “ズガーン”

 

 

 ソル目掛けてエネルギー弾を撃つコワード。

 

 

 海羽「よっと。」

 

 ソルはそれを脚を前後180度に開脚しながらしゃがんでかわし、その後前転をしながら接近して………

 

 

 海羽「えいっ!」

 

 

 “チーン”

 

 

 コワード「!!?ぎょおおおおあああぁぁぁぁ~!!」

 

 

 なんとコワードの大事な“あそこ”に蹴りを打ち込んでしまった!

 

 

 痛さの余りにあそこを押さえてしゃがんで悶絶するコワード。ソルはそれを土台にして「よいしょ!」と言いながら跳び箱の要領で跳び越える。

 

 

 一方のドリームギラスの尻尾を掴んでいたゼロも、そのまま数回手刀を打った後、背中に右足蹴りを叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 ドリームギラスはコワードの傍に落下する。

 

 

 立ち上がったドリームギラスは、再度ゼロに尻尾攻撃を繰り出す。

 

 

 ゼロ「せいっ!」

 

 

 ゼロは頭部の二本のゼロスラッガーを投げつける。

 

 二本の宇宙ブーメランは複雑な軌道を描きながら飛び、そしてドリームギラスの尻尾を瞬時に切り刻んだ!

 

 

 ドリームギラスが怯んでる隙にゼロスラッガーはゼロの頭部に戻り、ゼロとソルは一旦合流する。

 

 海羽「お待たせ櫂君。」

 

 ゼロ「おう!」

 

 

 二人は二体の方を向いて構える。

 

 ゼロ「超獣の方は任せた。」

 

 海羽「オッケー。」

 

 ゼロの指示にソルは了解する。

 

 いつもよりどこか物静かに喋るゼロ。その様子からはどこか静かな怒りを感じる………。

 

 

 コワード「二人まとめて吹っ飛ばすぜ!」

 

 ゼロとソルをまとめて吹っ飛ばそうと、逆上したコワードが再びナターンビームガンを構えたその時、

 

 どこからか霧のようなものが飛んで来て、それがナターンビームガンに当たったかと思うと、その光線銃は一瞬にして溶けてしまった。

 

 

 コワード「あああ~!!俺のナターンビームガンがっ!?」

 

 

 自身の武器が突如溶けてしまった事に驚くコワードは、その霧が飛んで来た方へと振り向く。

 

 そこには最後の力を振り絞って立ち上がっているバクタリの姿があった。

 

 

 そう、先ほどナターンビームガンを溶かした霧は、バクタリの頭頂部の突起から噴射されたあらゆるものを風化する溶解霧・バクタリ光線である。

 

 

 コワード「おのれ貴様~!」

 

 

 怒るコワードがバクタリに向かおうとしたその時、

 

 

 “ガシッ”

 

 

 コワード「ぬっ!?」

 

 

 ゼロ「どーこ見てんだ? お前の相手は、この俺だっ!」

 

 

 “ズガンッ”

 

 

 コワード「!!ぐうおはっ!!」

 

 

 ゼロに後ろから頭を掴んで止められ、振り向いたところに右フックを喰らって吹っ飛んでしまう。

 

 

 コワードは怯まずゼロに接近し、二人は組み合いを始めるが、そこにゼロが腹部に膝蹴りを二発打ち込み、跳躍して首筋に手刀を打ち込んで右アッパーを叩き込んだ後、一回転しての右ハイキックを頭部に打ち込んで吹っ飛ばした!

 

 立ち上がった後、再びゼロ向けて跳びかかるが、ゼロはそれを跳躍してかわすと同時に背中に右脚蹴りを叩き込む!

 

 コワードはたまらず小さな岩山に激突し、そのまま地面に倒れ伏した。

 

 

 かつて同族がウルトラマンティガに瞬殺されたように、戦闘力自体は低いナターン星人。

 

 今回も怒りに燃えるゼロにほぼ一方的に圧倒されていく………。

 

 

 

 ドリームギラスと戦うソルは、ドリームギラスの高圧水流を跳躍して避けると、そのまま肩車をしてもらうように跳び付き、そのまま「エイ、エイ、エイ、…」と言いながら頭部に小刻みのパンチを連打する。

 

 そしてそのまま頭部を脚で挟んだままフランケンシュタイナーの要領で地面に叩き付ける。

 

 

 ドリームギラスは右腕を振るって殴り込むが、ソルはそれを両腕で掴んで受け止め、そのまま「えいっ! とうっ!」と言いながら左脇腹に右脚蹴りを二発打ち込み、更に腹部に右足蹴りを打ち込んでしゃがませたところに「それっ!」という掛け声と共にヒップアタックを顔面に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 

 ソルは両腕に赤とピンクの光を纏わせてライトニングハンドを形成して猛接近する。今こそトドメを刺すのだ!

 

 ドリームギラスは口から赤い液体を噴射して返り討ちに遭わせようとするが、ソルはそれを咄嗟に後ろ向きにしゃがんでかわし、そのまま滑り込むように接近し続ける!

 

 

 海羽「ソリッドライトブレイク!!」

 

 

 ソルは滑り込んで接近しながらライトニングハンドの両手を合わせ、すれ違いざまにドリームギラスを一直線に斬りつける!

 

 これぞ、ライトニングハンドを用いた中での最強技・ソリッドライトブレイクである!

 

 

 ドリームギラスは切り口から光を発しながら倒れ、やがて大爆発して吹き飛んだ。

 

 

 海羽「やったーっ!」

 

 

 ソルはドリームギラスの爆風を背に、身体を横向きにして首をかしげて右拳を顎の下に当ててポーズを決めた。

 

 

 

 怒りのパワーで、卑劣なナターン星人コワードを圧倒していくゼロ。

 

 

 既にストロングコロナゼロになっていたゼロは、両拳に炎を纏って猛接近し、そして左右交互の炎のパンチを物凄い速さで連続で打ち込んだ後、強烈な右拳の一撃を叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 だが、コワードはなおも立ち上がって腕から光弾を発射するが、ゼロはそれを手を突き出しただけで防いでしまう。

 

 

 ナターン星人コワード………戦闘力はそれほど無いくせにタフさだけは中々の者である(笑)

 

 

 コワードは動揺しながらも光弾を連射し続けるが、ゼロはそれらを手を少し振るうだけで弾き飛ばしつつ歩いて接近する。

 

 完全に余裕綽々である(笑)

 

 

 コワード「なっ………何故だ!? なぜ、あんな俗物のために!!?」

 

 

 コワードは最後のあがきとばかりにゼロに心無い事を叫ぶ。

 

 

 ………だが、その心無い言葉こそ、命とりとなってしまうのだ!

 

 

 ゼロは一旦立ち止まり、少し俯いたまま拳を震えるほど強く握り始める………。

 

 

 ゼロ「………俗物………だと?」

 

 

 コワード「えっ?」

 

 

 ゼロは俯いたまま静かに呟いた後、そっと顔を上げて握った右拳を上げ始める。

 

 

 ゼロ「何故そう言い切れる?

 

………何かと言えば俗物俗物と………お前にはそれにしか見えないのか?あいつ(バクタリ)が…。」

 

 

 コワード「………なっ………なにを?」

 

 

 コワードは、ゼロの強力な怒りの闘志に完全に怖気づいてしまっていた。

 

 

 そしてゼロは右拳を振り上げて………

 

 

 

 ゼロ「歯ぁ、食いしばれーーーーーっ!!!」

 

 

 

 “ズバキャッ”

 

 

 コワード「ぐおあああぁぁぁぁぁーーー!!」

 

 

 怒りの鉄拳を顔面に叩き込み、それを受けたコワードは空高く吹っ飛び始める。

 

 

 ゼロ「お前が人間の価値がどうとか決めつけるにゃ、二万年早いぜッ!!

 

 お前のその腐った正念、訂正してやるーっ!!」

 

 

 ゼロはそう言いながら飛び立ち、青い光を発しながら今度はルナミラクルゼロへと変わる。

 

 ゼロ「ルナミラクルゼロ。」

 

 怒りが頂点だからこそ、頭がシーンと冷えるモノである。そういう時こそ、クールに決める時だ!

 

 

 そしてゼロはコワードの位置まで飛んで静止すると、右手を額に当てて精神を統一する。

 

 

 ゼロ「ミラクルゼロスラッガー!」

 

 

 そして右手を突き出すと共に、頭部から無数に分裂する光のゼロスラッガー・ミラクルゼロスラッガーを飛ばす!

 

 

 無数の光の宇宙ブーメランは四方八方へと飛んでいき、やがて全方向からコワードの体を滅多斬りにする!

 

 

 そして、ゼロが着地すると同時にゼロスラッガーも元に戻り頭部に収まる。

 

 

 コワード「ぎゃあああぁぁぁ……アイ・アム・ジ・エンドーーーッ!!」

 

 

 “ドガガガーン”

 

 

 空中で滅多斬りにされたコワードは、ゼロが着地した後時間差で叫びながら大爆発して消し飛んだ。

 

 

 ゼロ「ヘッ………きたねえ花火だぜ。」

 

 

 ゼロは爆風を見上げて親指で口元をさすりながら、某サ○ヤ人のような台詞を言う(笑)

 

 

 バクタリ「………やった。」

 

 有理香「勝ったわ。」

 

 バクタリはゼロたちの勝利を喜びつつ多少よろけながらも立ち上がり、有理香も両手を合わせて握って、嬉しそうな表情で呟いた。

 

 

 海羽「やったね、ゼロ(ピース)。」

 

 ゼロ「ああ、お疲れ。

 

 ………人間の価値ってのは、力とか、運じゃねえ。

 

 他のモノのために、尽くせるかだ。」

 

 海羽「(陽気そうに)そうそう。」

 

 

 ゼロはそソルと合流した後、残ったバクタリの方へと歩みを始める。

 

 

 有理香は、ゼロとソルの方へと向かうように走った後、こう叫ぶ。

 

 

 有理香「ウルトラマーン!

 

 バクタリちゃんを助けてあげてー!」

 

 

 その声を聞いたゼロとソルは静かに頷く。

 

 

 ゼロ「フルムーンウェーブ。」

 

 海羽「ゴッデスピュアリファイ。」

 

 

 二人は右手を突き出し、ゼロは鎮静光線・フルムーンウェーブ、ソルは浄化光線・ゴッデスピュアリファイを放つ。

 

 二つの光線はゆっくり飛びながら合わさり、その様子はまるでオーロラの夜空に雪が降ってるようでどこか幻想的である。

 

 

 光線を浴びたバクタリは、粉雪とオーロラのような光に包まれる。

 

 そして、少しずつではあるが体が透け始める。ゼロとソルの奇跡の力により、今まさに超獣バクタリから少年の義雄に戻ろうとしているのである。

 

 

 有理香「バクタリちゃん………。」

 

 

 光線に包まれて姿が消えかけているバクタリは有理香の方を振り向き、少ししゃがむ。

 

 

 バクタリ「有理香さん………ありがとう………………楽しかった………。」

 

 有理香「………(涙をこらえて少し笑顔で)私も同じだよ。」

 

 バクタリ「僕………有理香さんの幸せな未来を夢見てます………(手を振りながら)また、会おうね。」

 

 有理香「………約束だよ。」

 

 

 バクタリを有理香は、別れの会話と同時に次また会う事を約束する。

 

 有理香の目からは、一筋の涙が頬を伝い、やがて下に落ちていく。

 

 

 やがてバクタリは光に包まれた状態で手を振りながら小さくなっていく様に消えていき、やがて完全に姿を消してしまった………。

 

 

 有理香「バクタリちゃん………………

 

 さようならーーー!!!」

 

 

 バクタリが消えていくのを見届けた有理香は、遂に感極まったのか、別れの挨拶を精一杯の声で叫ぶと、そのままその場で泣き崩れ始める。

 

 

 いずれ別れることにはなる………そう感じてはいたのだが、いざ別れると寂しさは思ってたよりも倍になるモノである。

 

 

 動物たちは、泣き崩れる有理香を慰めるように彼女に寄り添う。

 

 有理香「ぐすんっ………ぁ………ごめんね君たち………。」

 

 有理香はなんとか泣き止み、動物たちを抱き寄せる。

 

 

 有理香「必ず………全ての動物と仲良くなって、立派な動物トレーナーになるからね、バクタリちゃん………………。」

 

 少し涙ぐみながらも、少し笑顔で上を向いて夢に向かっての決意を新たにする有理香。

 

 未知の生物との生活。それが、一人の女性に再び夢を追う自信を持たせたのである。

 

 

 海羽「一件落着だね。」

 

 ゼロ「ああ、俺たちもそろそろ手を引くか。」

 

 海羽「オッケー。」

 

 ゼロとソルも、光と共に姿を消した。

 

 

 動物たちとともに帰り道を歩く有理香。

 

 その様子を見つめている一人の少年がいた………。

 

 その少年こそ、バクタリから元の少年の姿に戻れた義雄であった。

 

 

 義雄「………有理香さん………。」

 

 

 

 あれから数日後、沢城有理香はごく普通の生活に戻っており、いつもの様に動物たちと散歩をしたりなど、動物たちと触れ合う毎日に戻っていた。

 

 

 ………だが、動物好きな有理香にとっては楽しい一時のはずなのに、どこか浮かない顔になっていた………。

 

 バクタリとの生活が終わった事により、心にぽっかりと穴でも開いたのであろうか………?

 

 

 そしてある日、この日有理香は雑誌などの編集記者からのインタビューに答える日だった。

 

 

 今の動物たちの調子や将来への目標など、記者たちの質問に答えていく有理香。

 

 だが、心の中ではバクタリの事を思い続けていた………。

 

 

 有理香(バクタリちゃん………………元気にしてるかな………?)

 

 

 その時、有理香はあるモノに気付く。

 

 

 有理香「はっ………。」

 

 

 それは、とある一人の少年が、自分たちの前を通り過ぎていくところだった。

 

 しかもその少年は、手に何やらデフォルメされた獏のぬいぐるみを持っている………。

 

 

 そう、その少年こそ、バクタリの姿で有理香と交流した義雄であった。

 

 

 有理香はバクタリの正体を見てはいないが、その獏のぬいぐるみを持った少年を見た瞬間、何かを確信したのか、ふと笑顔になる。

 

 

 有理香(………バクタリちゃん………私、頑張るからね………………。)

 

 

 そして再び感極まったのか、その場でしゃがんで、嬉しさも含めたすすり泣きを始めてしまう。

 

 

 「あれ?沢城さん?」

 

 「どうされましたか?」

 

 

 記者たちの心配も無視するように嬉し泣きを続ける有理香。

 

 だが、彼女の泣き顔自体はどこか笑っているようにも見えた………………。

 

 

 

 そして、先ほど有理香たちを通り過ぎた義雄はというと、いつもの空き地に向かっていた。

 

 

 義雄「有理香さん………僕、頑張る。だから有理香さんも頑張ってね………楽しみにしてるから。」(独り言)

 

 

 その顔には、バクタリになる前までのどこか冷たい感じはまるでなく、自身のある笑顔に溢れていた。

 

 

 怪獣とか関係なく動物好きの一人の女性との出会い、そして交流が、ネガティブだった彼に自身を持たせたのであろうか………。

 

 

 義雄が空き地に着いた時、また例のガキ大将が、他の人からお菓子を横取りしている最中だった。

 

 男女関係なく威張ってお菓子を横取りするガキ大将。中には泣き出す者までいた。

 

 

 義雄「またかよ………仕方ない。」

 

 

 そう言うと義雄は、なんといつもなら逃げ腰になるはずが、足早にガキ大将に向かって行く………!

 

 

 威張り続けるガキ大将。すると、自身の肩に何かが触れる感覚がして振り向く。

 

 そこには、自身の肩に手を置く義雄の姿があった。

 

 

 「なんだ義雄!?」

 

 義雄「やめなよ。お菓子をみんなに返すんだ。」

 

 

 「ああ?何言ってんだお前?」

 

 ガキ大将は勢いよく振り向き義雄を威嚇し始める。

 

 義雄は思わずビビる。少しながら強くなっていたとはいえ、やはりガキ大将の威圧感からの恐怖は凄いモノだった。

 

 

 「義雄のくせに、生意気だぞ?」

 

 某国民的アニメのガキ大将のような台詞を言いながら詰め寄るガキ大将。義雄は思わず後ずさりを始めていた………。

 

 

 今回も、力敵わず負けてしまうのだろうか………?

 

 

 

 だが、その時義雄は横目であるモノに気付く。

 

 

 眼鏡をかけていて、長髪を後ろに束ねていて、、、そして多種の動物を連れている女性が空き地を通り過ぎようとしているのを………。

 

 その女性こそ、義雄がバクタリの姿で交流した有理香であった。

 

 有理香はインタビューを終えたばかりで今帰る最中である。

 

 

 その有理香の楽しそうな横顔を見た義雄は、さっきまで怖気づいていた顔がふと笑顔に変わった。

 

 

 義雄(有理香さん………………逃げちゃだめだ………有理香さんのおかげで、自信がついたんだから………!)

 

 

 勇気を取り戻した義雄は仁王立ちをしているガキ大将を睨み付けるように見つめ始める。

 

 

 そして、仁王立ちをしているからこそ大きく開いている脚を見て“ある所”に気付き、それにより“ある事”を思い出す………!

 

 

 〈回想〉

 

 海羽「えいっ!」

 

 

 “チーン”

 

 

 コワード「!!?ぎょおおおおあああぁぁぁぁ~!!」

 

 〈回想終了〉

 

 

 そう、先日の戦いで、ソルがコワードの“あそこ”を蹴って悶絶させた事だった………!

 

 

 義雄は一旦足を踏ん張り、その仁王立ちしているがためにむき出しになっている“あそこ”目掛けて………!

 

 

 

 “チーーーン”

 

 

 

 有理香「ん?………誰かオーブントースターでパンでも焼いてるのかな?」

 

 空き地を通り過ぎたばかりの有理香は、そのまま歩き去って行った………。

 

 

 

 その頃、空き地の様子はというと………、

 

 

 さっきまで仁王立ちをして威張っていたガキ大将が、何やら横になって完全に伸びていた………。

 

 しかも股間を押さえて(笑)

 

 

 そして義雄は、ガキ大将が横取りしていたお菓子を取り戻しており、皆から感謝の言葉を受けていた、

 

 

 義雄は、ガキ大将のむき出しになっていた股間に蹴りを炸裂させ、見事ダウンさせたのである!(笑)

 

 

 見事ガキ大将を倒した事であっという間に皆から注目される義雄は、一人ずつにお菓子を返していく。

 

 

 

 義雄(有理香さん………僕、やったよ。)

 

 

 有理香との交流は、確かに彼を強くさせていた。

 

 

 

 しばらく経って、義雄は駆け足で家に帰った。

 

 なんでも今日は両親が帰ってくる日であるらしい。

 

 

 家に帰った義雄は、部屋でテレビを見ながら今か今かと待ち続けていた………。

 

 

 “ガチャッ”

 

 父「ただいまー。」

 

 

 両親が帰ってきた。

 

 

 義雄「あ…パパとママだ!」

 

 義雄は嬉しそうに玄関に走って行く。

 

 

 義雄「ただいま~!」

 

 母「ただいま義雄!ちゃんとお留守番してくれたみたいね。」

 

 義雄「うん!」

 

 

 父「義雄、元気にしてたか?」

 

 

 義雄「………うん!」

 

 

 

 義雄は満面の笑みで元気に返事をした。

 

 

 自身がバクタリになった事については、自分だけの秘密という事であえて黙っておくことにした………。

 

 

 (ED:ウルトラの奇跡)




 読んでいただきありがとうございます!

 いかがでしたか?


 今回はウルトラマンギンガS第11話を思う人もいれば、ウルトラゾーンを思う人もいたと思います(笑)


 バクタリ自体は結構マイナー寄りの超獣ですが………実は私、幼い頃バクタリの見た目などがが怖くて、夢にも出てくるほどのトラウマだった思い出があって、それも含めて個人的に印象に残っている超獣なのです。

 まさか自身のトラウマだった超獣が主役の、しかも等身大で人間と交流する話を書く日が来るとは思いもしませんでした(笑)

 因みにバクタリは鼻を使って物を食べる、嗅覚が鋭いなどの新設定は、私が自分なりに考えてみた新解釈です(笑)


 私自身、ウルトラマンAの超獣が結構好きでもあります(笑)何と言うか、他の怪獣には無い、あの派手で毒々しい感じがたまらないのです。

 出来たら本作で全超獣を出したい程ですね(笑)

 因みに私、超獣だとドラゴリーがお気に入りです。


 因みに今回、事情を知らなかったとはいえ、前半は櫂君と海羽ちゃんが少し悪者に見えてしまいましたね。(特に櫂君(笑))


 余談ですが、Aでのバクタリの動きが意外にも俊敏で、その様子が某梨の妖精に似てると思うのは私だけでしょうか?(笑)


 後書きが長くなってすいません。

 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


 因みに隠れていたサブタイトルは、

 『君を想う力』(ウルトラマンダイナ第46話)

 でした。


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番外編「ベストマッチな出会い」

 今回は、ちょっとした箸休めとして製作してみました。

 今回はみんなのアイドル・眞鍋海羽ちゃんが主役です。

 また、去年初登場した“ある戦士”が登場し、海羽ちゃんと共演します!(因みにウルトラシリーズの戦士ではありません)

 とりあえず楽しんでもらえたら幸いです。

 では、どうぞ!


 霞ヶ崎とは全くかけ離れたとある街にて、2匹の巨大生物が破壊の限りを尽くしていた。

 

 一体は兎のような外見が特徴の超獣『満月超獣ルナチクス』、もう一体は文字通り戦車の上に恐竜が乗っかったような姿が特徴の怪獣『戦車怪獣 恐竜戦車』である。

 

 

 ルナチクスは兎のように飛び跳ねながら口からの火炎やミサイルのように発射する目玉で、恐竜戦車はキャタピラで豪快に駆け回りながら目からのレーザーや戦車部の三連戦車砲、強力な尻尾で次々とビルなどを破壊していく…!

 

 もはや二体によって全滅するのかと思われた…!

 

 

 だが、そんな傍若無人に暴れ回る怪獣、超獣の前に、2人の戦士が立ちはだかる!

 

 ジャック「ここでも怪獣達が暴れていたか。」

 

 カイ「早い所止めた方が良さそうだな。」

 

 現れたのは、しばらくゼロ達と別れ、2人でこの世界の捜索に出ていた『ウルトラマンパワード』と『ウルトラマングレート』、もとい『ケンイチ・カイ』と『ジャック・シンドー』である!

 

 

 カイ「行くぞ!」

 

 カイの掛け声と共に2人はそれぞれ変身アイテム『フラッシュプリズム』と『デルタ・プラズマー』を手に取る。

 

 カイはフラッシュプリズムを高く揚げてスイッチを入れ、ジャックはデルタ・プラズマーを左掌に乗せて精神統一を始める。

 

 2人は眩い光に包まれ、やがてその中でそれぞれパワード、グレートへと変身完了した2人は飛び出す!

 

 

 あわやルナチクスによって破壊されそうになるオフィスビル。中にはまだ逃げ遅れたサラリーマンやOL等が取り残されている!

 

 だが間一髪、現れたパワードがルナチクスに飛び蹴りを打ち込んで転倒させた事により事なきを得た。

 

 ルナチクスに飛び蹴りを決めたと同時に着地したパワードは、右脚を一払いした後立ち上がり構えを取る。

 

 

 こちらも、あわや進撃する恐竜戦車のキャタピラで潰されそうになる民家。そこに現れたグレートが正面から恐竜戦車を受け止めて押さえ込む。

 

 そして押し合いの末、グレートはそのまま恐竜戦車を力一杯持ち上げて放り投げた!

 

 恐竜戦車を投げ飛ばしたグレートは両手を2回払った後構えを取る。

 

 

 今ここに、パワードVSルナチクス、グレートVS恐竜戦車の戦いが始まった!

 

 パワードはルナチクスの放った右フックを左腕で受け止め、右掌で腹部を押し飛ばし、次にルナチクスの放った左フックをかわすと同時に右脚蹴りを胸部に叩き込んで後退させる。

 

 その後ルナチクスはパワード目掛けて突進攻撃を繰り出すが、パワードはそれをすれ違いざまにかわすと同時に首筋にチョップを叩き込んで転倒させる。

 

 パワードは仰向けに倒れるルナチクスに馬乗りになって連続でチョップを浴びせるが、そこにルナチクスが至近距離で放った火球攻撃を受けてしまい吹っ飛ぶ。

 

 

 グレートは恐竜戦車の背中に跨って頭部にチョップを連打するが、背後からの尻尾攻撃で叩き落とされる。

 

 その後体勢を立て直したグレートは恐竜戦車に駆け寄り、背中を土台に横向きに一回転する形で後ろに回り込み、尻尾を両手で掴んで引っ張り始め、恐竜戦車も負けじとキャタピラのエンジンを吹かして振りほどこうとする。

 

 力比べの末、恐竜戦車は大きく尻尾を振るってグレートを振り飛ばす。

 

 

 恐竜戦車は目からレーザーを放って攻撃を仕掛け、グレートはすぐさま『トライアングルシールド』を張ってそれを防ぐが、その隙に恐竜戦車の三連戦車砲の砲撃を腹部に受けてしまい、爆発と共に吹っ飛ぶ。

 

 グレートのピンチを見たパワードは、組み合っていたルナチクスを押して引き離し、跳び蹴りを胸部に叩き込んで転倒させた後、グレートを跳び越えながら掌から『エナジーナックル』を恐竜戦車の頭部に打って牽制する。

 

 ジャック「助かった、パワード。」

 

 カイ「いいって事よ。」

 

 パワードのアシストを受けたグレートは体勢を立て直して立ち上がる。

 

 

 恐竜戦車は再び三連戦車砲から砲撃を放つが、グレートはそれを両手で吸収し、凝縮して撃ち返す『マグナムシュート』を発動!

 

 撃ち返した砲撃は恐竜戦車の戦車砲を破壊した!

 

 怯んだ恐竜戦車に、グレートは跳躍して飛び蹴りを叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 

 ルナチクスはパワード目掛けて火炎を噴きつけるが、パワードはそれを両腕を突き出して『ハンドシャットアウト』で防ぐ。

 

 続けてパワードは、ルナチクスがマシンガンのように連射する目玉を受け身を取ってかわしつつ『パワードスラッシュ』で相殺していき、やがてパワードスラッシュの一つがルナチクスの片耳を切り落とす!

 

 パワードは怯んだルナチクスを両腕で頭上に揚げ、『パワードリフター』で投げ飛ばして地面に叩き付けた!

 

 ふらつきながらも立ち上がるグロッキー状態のルナチクス。パワードは腕を十字に組んでトドメの『メガスペシウム光線』を放ち、それを胸部に受けたルナチクスは大爆発して消し飛んだ。

 

 

 グレートは恐竜戦車の尻尾を両腕で掴み、ジャイアントスイングで振り回した後放り投げて地面に叩き付けた。

 

 立ち上がった後、最後の力を振り絞って突進を繰り出す恐竜戦車。グレートは刃状のエネルギー『グレートスライサー』を両腕に発生させ(所謂『ダブルグレートスライサー』)、構えて精神を統一させた後駆け出し、すれ違い様に恐竜戦車を十字に斬りつけた!

 

 スライサーを消して立ち尽くすグレートの背後で、恐竜戦車は大爆発して砕け散った。

 

 

 ルナチクスと恐竜戦車を撃破したパワードとグレートは合流し、戦いを見守っていた人々のお礼の歓声を受けながら互いの腕をクロスさせた。

 

 

 変身を解除した二人(グレートに関しては“人間体になった”と言った所か)。

 

 カイ「とりあえずこの街は大丈夫そうだな。」

 

 ジャック「あぁ。次を回るとしよう。 しかし、ここの所世界各地での異変が急増している。これは新たに何かが起こりそうな予感だ。」

 

 カイ「あぁ。我々も気を引き締めて行かないとな。」

 

 

 新たな決意を固めた二人は、守り抜いたその街を後にする事にした。

 

 カイ「しかし、何故“兎と戦車”の怪物だったのだろう…?」

 

 ジャック「…さぁな。」

 

 

 場所を霞ヶ崎に変えよう。

 

 

 ハロー! みんな元気かな? 『眞鍋海羽』でーす!

 

 今日はいい天気だから、私は朝から散歩に出かけてまーす!

 

 それにしても日差しと言い風当たりと言い、気持ちいいわ! だから思わず鼻歌まで歌っちゃってる。

 

 

 あ、因みに私、最近好きになった子がいるの。

 

 

 …あ、“男”じゃないよ!“男”じゃ! “怪獣”でね!

 

 

 海羽「いや~んグビちゃん可愛い~!」

 

 そう、好きになった怪獣は『深海怪獣グビラ』!

 

 『春野ムサシ』さんの話でこの子が出て来たのがきっかけなんだけど、それが凄く可愛いの! はんぺんみたいな体つきで模様も綺麗だし~、両手のヒレもキュートだし~♪

 

 だから私、散歩しながら時折スマホの画像アプリでグビちゃんの写真を眺めたりしているの。

 

 

 海羽「もしいつかグビちゃんに会えたら、背中に乗らしてもらって一緒に海を渡りたいな~。」

 

 そう言いながら海羽が頭でイメージしているのは、『ウルトラウーマンSOL(ソル)』の姿でグビラの背中に乗って、楽しそうに海を渡っている自身の映像であった。

 

 

 海羽「グビちゃん、いつか櫂君や真美ちゃんにも紹介しよーっと。」

 

 …海羽…真美はともかく、櫂に紹介するのだけは止めておいた方がいいぞ?

 

 もはや“怪獣絶対殺すマン”である彼に紹介したら、密かにゼロに変身して海まで捜索に行って、爆殺する可能性だってあり得るのだから…(汗)。

 

 

 それに、陽気な海羽はあるモノに気づいていなかった…。

 

 それは、遠くをよく見渡してみると、何やら街の向こうに巨大な壁が立っており、更にその上空は相当の高さまで赤い光が伸びているという事を…。

 

 

 この巨大な壁を、なんでも人々はこう呼んでいるという…。

 

 

 “スカイウォール”と。

 

 

 尚も散歩を楽しんでいる私・眞鍋海羽。その時、目の前にあるモノが現れて一旦立ち止まる。

 

 海羽「…ほえ?」

 

 目を凝らして見てみると、それは人間じゃなくて…白と黒の色合いで…モコモコしていて…熊さんみたいな…。

 

 

 …嘘? え、夢じゃないよね?

 

 

 目の前にパンダが現れるなんて…!

 

 

 目を疑いながらも恐る恐る近づいて見つめてみたけど、間違いないわ。この毛並み、のそのそした動き…本物のパンダだわ!

 

しかも小柄だから多分子供ね!

 

 

 海羽「わぁ!本物だ!本物のパンちゃんだ!可愛い~!」

 

 私は突然の事に驚きながらも、本物のパンちゃんに会えた事への嬉しさの方が勝っていた。

 

 今まで本物のパンちゃんは動物園で見た事はあるけれど、こうやって間近で会えたのは当然ながら初めてだからね。

 

 

パンちゃんって可愛いよね! モコモコしてるし〜、白と黒の模様がとってもキュートだし〜♪

 

…でも、どうしてこんな所にいるんだろう?…野生だなんて考え難いし、近くに動物園は無いから逃げて来たワケでも無さそうだし…。

 

 

海羽「ねぇ、パンちゃんは何処から来たの?」

 

私は膝に手を当てて屈んだ姿勢でパンちゃんにそう聞いてみたけど…無反応だわ…。

 

やっぱり人間の言葉は分からないのかな…?

 

 

とりあえず私は、パンちゃんが可愛いあまり撫で撫でをしようとした…その時、パンちゃんは何やら反射的に避けるような動きを見せる。

 

海羽「ひゃっ…パンちゃん…?」

 

驚いた私は戸惑いつつもパンちゃんを見つめてみると、なにやら私を見つめながら警戒するように身構えている…まるで何かに怯えているみたいだわ…。

 

 

そして目元をよく見てみると…この子、泣いてる…?

 

 

子パンダの怯えるような様子、そして目元が濡れている事から泣いている事に気付いた海羽は、言葉が通じないと分かりながらも問いかけてみる。

 

海羽「…どうしたの? 何を泣いてるの?」

 

優しくそう語りかける海羽だが、子パンダは尚も警戒している。

 

海羽「(両手をゆっくり前に突き出して)大丈夫。大丈夫だよ。 私、何も悪い事しないから…。」

 

海羽の懸命な呼びかけに、子パンダは徐々に警戒態勢を解いていく。

 

海羽「だから安心して。」

 

満面の笑みで優しく語りかける海羽を見て、彼女の優しさと、その笑顔から溢れる純真な心に気づいたのか、子パンダは完全に警戒心を無くした。

 

そして、必死に鳴き声を発しながら海羽に語り掛け始める。

 

 

海羽「…僕はもう…ママに会えない…寂しい…寂しいよー…。 どういう事なの?それ…。」

 

子パンダの語り掛けが何故か翻訳出来た海羽。

 

 

海羽「…え?嘘? 私、パンちゃんが何言ってるか分かってる!?」

 

突然の自身の予想外の能力に驚きながらも、海羽は子パンダの話を聞いた。

 

 

なんでも、元は中国の竹林で親と一緒に過ごしていたのだが、突然怪しい人に攫わらてしまったのだと言う。

 

だが、日本に着いた所でなんとか隙をついてその人の元から逃げ出す事が出来たのだが、その後当てもなく彷徨っていた所、海羽に出会ったのだと言う。

 

 

海羽「そっかー…攫われて、お母さんと離れ離れになっていたなんて…。」

 

子パンダから事情を聞いた海羽は、可哀想だという思いから目が潤んでおり、その状態で子パンダを抱き寄せた。

 

海羽「それは辛いよね…ごめんね、すぐに気づいてあげられなくて…。」

 

そう語り掛けながら、潤んだ目から一筋の涙を流す海羽。子パンダは彼女の優しさを、優しい声と抱き寄せられる暖かさで感じたのか、嬉し涙を流しいるようであった。

 

 

海羽「でも、もう大丈夫。私が、お母さんの元に帰してあげるわ。」

 

その言葉に子パンダは「そんな事が出来るの?」みたいな反応を示す。

 

海羽「うん! 実は私、あっと言う間に遠くまで行ける力を持ってるんだよ〜。」

 

そう言いながら海羽は、変身アイテム『ハートフルグラス』を子パンダに見せる。

 

海羽「だからもう大丈夫。すぐにお母さんに会えるわ。 ほ〜ら、悲しくないよ〜♪」

 

そう言いながら子パンダになでなでをしながら満面の笑みを見せる海羽。子パンダも海羽の笑顔を見てもう大丈夫だと確信したのか、海羽にじゃれ付いている様子から、僅かながら元気を取り戻しているようであった。

 

海羽「あはは、くすぐったいよ〜。」

 

 

出会ってわずか数分で、子パンダと心を通じ合わせた海羽。そもそも明るくて人がいい彼女は人間だけでなく、善良な怪獣とも仲良くなれるのだから、尚更動物とも簡単に仲良くなれるのであろう…。

 

それに麟慶大学内での『友達になりたい人ランキング』でも、櫂や真美を差し置いて1位になったりする程なのだから…。

 

 

海羽「それじゃ、行きましょ。」

 

そう言いながらハートフルグラスを取り出し、変身しようとしたその時。

 

 

スチール星人「そうはさせねーよ!」

 

海羽「!…誰?」

 

 “ズガガーン”

 

 海羽「きゃあっ!!」

 

 突然、謎の声と共に黄色い光線が飛んで来て、海羽達の周囲で爆発する!

 

 

 海羽「…誰!?」

 

 子パンダを庇うように身体を伏せた後、海羽は光線の飛んで来た方を振り向き問いかける。

 

 

 その視線の先には、何やら黒と黄色を基調としたボディに、長く伸びた人差し指、頭部に丸のこぎりのような三つの突起物が付いているのが特徴の怪人が立っていた。

 

 その怪人は『宇宙超人スチール星人』である!

 

 先ほど海羽達を襲った光線は、スチール星人が頭部の突起物から放った破壊光線である!

 

 

 海羽「まさか…宇宙人?」

 

 スチール星人「探したぜ…そいつを返してもらうぞ!」

 

 海羽「そいつって…パンちゃんの事?」

 

 案の定、子パンダはスチール星人を見て怯えるように海羽に縋り付いている。間違いない。こぱ子パンダはスチール星人に攫われて日本に来たのであろう。

 

 スチール星人「そうだ。さぁ、良い子だから、こっちにおいで。」

 

 海羽「ふざけないで! どうしてパンちゃんを攫ったの?」

 

 

 スチール星人「貴様に話すまでもないが…俺はヤプール様の命を受けてそいつを攫ったのだ。なんでもヤプール様はパンダで超獣を作りたいみたいだしなぁ!」

 

 海羽「この子を怪物にするなんて…そんな事しようとする奴なんて、くしゃくしゃのポイだよ!」

 

 

 海羽はハートフルグラスを目に当てて赤とピンクの光に包まれ、やがてウルトラウーマンSOL(ソル)へと変身が完了する。

 

 今回は相手に合わせ、等身大である。

 

 

 海羽の変身に驚く仕草を見せる子パンダ。ソルは子パンダの頭を優しく撫でながら語り掛ける。

 

 海羽「大丈夫だよ…あなたは私が守る。そして、お母さんに会わせてあげるからね。」

 

 

 スチール星人「小娘め…捻り潰してくれる!」

 

 ソル目掛けてスチール星人は破壊光線を放つが、ソルは即座に両手を突き出して銀の光のバリア『リフレクションダイヤー』を張ってそれを防ぐ。

 

 そしてバリアを残したままソルは高く跳び上がり、スチール星人に肩車をしてもらうように跳び付き、そのまま「エイ、エイ、エイ…」という掛け声と共に頭部に小刻みの連続パンチを打ち込む。

 

 スチール星人は自身の上に乗っているソルにパンチを放つが、ソルは即座に飛び上がって避けた事で逆に自身の頭を殴ってしまう。

 

 そしてスチール星人が怯んだ隙に、ソルは落下のスピードも加えたヒップアタックをスチール星人の顔面に叩き込む!

 

 海羽「それーっ!」

 

 “ボーン”

 

 スチール星人「うぉわっ!」

 

 スチール星人はたまらず吹っ飛び地面を転がるが、受け身を取って即座に立ち上がる。

 

 

 スチール星人「くっ…小娘め、意外にやるな。」

 

 海羽「あんたみたいな誘拐犯は、(手でピストルを作ってポーズを決めて)逮捕しちゃうぞ! なーんてね。」

 

 

 ソルが再びスチール星人に向かおうとしたその時!

 

 海羽「うっ!?」

 

 突如、誰も触れていないというのにその場で身体が固まって動けなくなってしまった。それは子パンダも同じである。

 

 海羽「な…何これ?…動けない…。」

 

 どんなに体を動かそうともがいても、腕一本ですら一センチも動かす事が出来ない。

 

 

 その時、突如ソルの目の前に開いた異次元空間から一人の人影が歩いて現れる。

 

 その姿は白衣を身に纏った女医のような姿に、顔には何やら白い能面を付けている。

 

 

 海羽「ぁ…あなたは…一体…?」

 

 ???「だらしが無いぞ、スチール星人。」

 

 海羽の問いかけを他所に、女はスチール星人に冷たく言い放つ。

 

 スチール星人「も、申し訳ない女ヤプール様。この小娘が邪魔しに入ったもので。」

 

 

 ???「…フッ、こんな私の念動力で動きが止まっちゃう程度の奴に手こずるとはな。」

 

 海羽「何ですって!」

 

 

 能面の女の正体は、ヤプールの生き残り『異次元人 女ヤプール』であった!

 

 ウルトラ戦士への報復を狙う彼女は、手始めにパンダで新たな超獣を作り出そうと、配下のスチール星人にパンダを連れて来るように命じていたのである。

 

 

 彼女の台詞でも分かるように、今ソルが身動きが取れないのは、女ヤプールが彼女にかけている念動力の影響である。

 

 

 女ヤプール「一刻も早く、報復への準備を進めなければならないのだ。スチール星人、早くパンダを連れてって行きなさい。」

 

 スチール星人「了解しましt…」

 

 女ヤプール「…ん…待てよ。」

 

 ふとソルを見た女ヤプールは何かを思い付き、スチール星人も思わず動きが止まる。

 

 

 女ヤプール「あの小娘も捕えるのだ。人間も素材にして、二体の超獣を作ってやろう。」

 

 スチール星人「お!それいい考えっスね!」

 

 海羽「そんな…!」

 

 

 その時、女ヤプールの念動力により動けずにいたソルは突然自由の身になる。

 

 海羽「はっ…念動力を…解いた?」

 

 女ヤプール「動けないままの貴様を痛ぶっても面白くない。だから敢えて自由の身にしてやった。 その代わり、我が連合軍に勝てるかな?」

 

 

 女ヤプールがそう言い放った時、ソルを取り囲むように瞬く間に無数の怪人が現れる!

 

 海羽「何ですって…!」

 

 

 現れたのは『地底エージェントギロン人』、『宇宙怪人レボール星人』(赤・青・黄の三体)、『凶悪宇宙人ドルズ星人』、『侵略宇宙人ナターン星人』の計6人である!

 

 いずれも女ヤプールの配下の怪人である。

 

 

 海羽「…絶対に負けない…パンちゃんを守る為にも!」

 

 自身を囲む怪人軍団にも怯まず、ソルは果敢に戦いを挑む!

 

 

 ソルはまずは先陣切ったドルズ星人の左フックをしゃがんでかわし、「えいっ!」という掛け声と共に両手で突き飛ばし、続けてギロン人とナターン星人のそれぞれ左右からの殴り込みをそれぞれ左右の腕で防ぎ、そのまま「やーっ!」という掛け声と共に跳躍して大きく開脚して二人同時に蹴りで吹っ飛ばす。

 

 ソルは着地した後、後ろから殴り掛かるドルズ星人の腕を振り向き様に素早く受け止め、そのまま「エイ、エイ、エイ…」という掛け声と共に胸部に連続蹴りを打ち込み、その後ドルズ星人の頭突きとして振り下ろして来た頭部を素早く避け、「それーっ!」という掛け声で顔面にヒップアタックを打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 

 一人一人がそれ程戦闘力が高くない為に戦いを優位に進めていたソルだが、やがて数の暴力に押され始める。

 

 三人のレボール星人は「レボール…レボール…」と不気味に発しながらソルの周囲を身軽に跳び回り始める。

 

 海羽「うぅ…目が回る…。」

 

 

 そしてソルが攪乱された隙に、ギロン人は両手からの散弾状の光線、レボール星人はレーザーガンからの光線、ドルズ星人とナターン星人は両手からの光線を、それぞれ一斉に放つ!

 

 怪人軍団の一斉攻撃を成す術もなく浴びてしまったソルは大ダメージを受けて倒れ伏してしまう。

 

 

 海羽「ぐっ…やっぱりこの人数…一人じゃキツイよ…。」

 

 女ヤプール「フッ…やはりその程度だったか。」

 

 倒れたソルに嘲笑うかのように言い放つ女ヤプール。

 

 

 女ヤプール「スチール星人!今の内にパンダを連れて来い。 この場で超獣に改造してやる。」

 

 スチール星人「イエッサー!ヤプール様!」

 

 海羽「はっ、ダメー!」

 

 急いでソルは止めに向かおうとするが、それぞれギロン人とナターン星人に左右から捕まれて動きを止められる。

 

 

 スチール星人「ホラ大人しくしやがれ!」

 

 嫌がる子パンダを、女ヤプールの元に連れて行こうと無理矢理掴み上げるスチール星人。

 

 

 海羽「お願いやめて! ヤプール、あんた、昔からもこうやって罪の無い動物を超獣にして来たの!? こんな酷い事はもうやめて!」

 

 

 女ヤプール「昔話に興味は無いし、モルモットの顔などいちいち覚えてない。」

 

 海羽の必死の懇望も冷たく一蹴する女ヤプール。

 

 

 スチール星人に連れられ、今にも女ヤプールの手に渡りそうになっている子パンダ!

 

 

 海羽「パンちゃん!!」

 

 

 その時!

 

 

 “ズキュキューン” “ズガガッ”

 

 

 スチール星人「ぐおわっ!?」

 

 海羽「!?」

 

 

 突如、何処からか弾丸が飛んで来てスチール星人、そしてソルを取り押さえていたギロン人とナターン星人に命中し、そのショックでそれぞれ二人はソルを解放してしまい、スチール星人は子パンダを放り投げる形で手放してしまう。

 

 スチール星人が手放した子パンダはソルが両腕でキャッチする。

 

 

 女ヤプール「何だと?」

 

 スチール星人「誰だっ!」

 

 海羽「はっ!」

 

 

 ふと振り向くと、ある一人の青年が謎の銃を片手に、不思議な外見のバイクを駆りながらこちらに向かって来ていた。

 

 そして間近まで来ると、大きく車体を旋回させながらレボール星人三人とドルズ星人に体当たりを決めて吹っ飛ばした。

 

 ???「よっと!」

 

 

 青年は怪人たちを吹っ飛ばした後バイクを止め、ソルに歩み寄る。

 

 ???「大丈夫か?君。」

 

 海羽「あ…はい…ありがとうございます、おじさん…。」

 

 ???「…いいかよく聞け。“おじさん”じゃない。“お兄さん”だ。」

 

 そう言いながら青年はヘルメットを取り、端正な顔立ちのイケメン顔を露わにする。

 

 海羽「はっ…(全力で頭を下げながら)ごめんなさい!お兄さん!」

 

 海羽(ヤバい!…超イケメンかも!?)

 

 青年のイケメン顔を目の当たりにしたソル(海羽)は、慌てて謝り、訂正する。

 

 

 ???「分かればよし。」

 

 青年は女ヤプール率いる怪人軍団の方を振り向く。

 

 ???「しかしコイツらは何なんだ?…“スマッシュ”とは違うっぽいし、“ファウスト”とも関係無さそうだな…。」

 

 海羽「すまっしゅ?…ふぁうすと?…よく分からないけどお兄さん気を付けて! パンちゃんを怪物に改造しようとした悪い奴らなの。」

 

 ???「何だって?」

 

 

 女ヤプール「邪魔をするな! 私は復讐のために、そいつを生物兵器・超獣に改造するのだ!」

 

 ???「超獣? 何の事だかさっぱりだが、生物を怪物に改造する辺り、どうやらやってる事はファウストと変わり無いようだな。」

 

 

 ソルに抱かれている子パンダは、不安を吐露するように鳴き声を上げる。

 

 海羽「パンちゃん…ごめんね…。」

 

 ソル(海羽)は、抱いている子パンダにそう優しく語り掛けながらそっと抱き寄せる。

 

 海羽「怖いよね…泣きたいよね…こんな思いをさせて、本当にごめん…。」

 

 ソルは子パンダに語り掛けていく内に、目から緑の光の粒子状の涙を流し始めており、それを少し浴びた子パンダは僅かながら落ち着きを取り戻しているようであった。

 

 海羽「でも、信じて欲しい。私がついてるよ。何が襲って来ても、必ずパンちゃんを守り抜いてみせる。 だから安心して。ねっ?」

 

 ソルの優しい語り掛けを聞いた子パンダは、涙目から嬉しそうな顔に変わる。

 

 

 ???「…アンタ、とても良い奴だな。」

 

 青年は子パンダに優しくするソルを見てそう言いながら微笑んだ。

 

 

 海羽「(子パンダの頭を撫でながら)ここで待っててね。私が、あんな奴らちゃっちゃとやっつけて来るから。」

 

 ソルは子パンダを安全な場所まで連れて行って置いた後、青年と合流する。

 

 

 女ヤプール「邪魔をするなら、例え力の無い人間でも容赦はせんぞ。」

 

 女ヤプールの言葉と共に、怪人軍団も一斉に威嚇するように構える。

 

 海羽「お兄さん、早く逃げて。あんな奴ら、私がちゃっちゃt…」

 

 

 ???「いや。逃げないね。」

 

 

 女ヤプール「…何だと?」

 

 海羽「どう…して?」

 

 

 ソル達が困惑する中、青年は不敵な笑みで懐からとあるアイテムを取り出す。

 

 

 そのアイテムは、何かを入れ込むようなスロットが二つ、そして右側に手動回転式のレバーが付いている。

 

 

 海羽「それは…何ですか?」

 

 女ヤプール「貴様…一体何者だ?」

 

 

 ???「やれやれ…まだ知らない人がいたとはな…。 正義のヒーロー・“仮面ライダー”であり、“天才物理学者”であるこの俺・桐生戦兎を!」

 

 

 そう、海羽たちの前に現れたこの青年こそ、『仮面ライダービルド』に変身する青年『桐生戦兎』であるのだ!

 

 

 そして彼が持っているアイテムこそ、ビルドに変身するベルト『ビルドドライバー』である!

 

 (因みに戦兎が駆って来たバイクはビルドの専用バイク『マシンビルダー』、戦兎が持っていた銃はビルドの専用武器『ドリルクラッシャー』である。)

 

 

 女ヤプール「仮面ライダーだと?」

 

 

 海羽「仮面ライダー? …何ですかそれ?」

 

 戦兎「え?君仮面ライダーも知らないの? この世界の正義、そして、ラブ&ピースのために戦うヒーローの事さ。」

 

 海羽「へぇ~、正義のヒーローか…じゃあウルトラマンと同じね!」

 

 戦兎「ウルトラ…マン? 何だそれ?」

 

 海羽「あなたの言う仮面ライダーと同じ、(手をハート形にしたりダブルピースをしながら)ラブ&ピースのために戦う正義の戦士だよ。」

 

 戦兎「へぇ~…ん?じゃあもしかして君は、仮面ライダーではない?」

 

 海羽「うん!私はウルトラマン! …あー、私の場合は女子だから“ウルトラウーマン”だけどね。 名前は“キュートでパワフルなタフガール・ウルトラウーマンSOL(ソル)”!」

 

 戦兎「天才の俺ですら知らない正義のヒーローがいたとはな…だが、そういうのと共闘するのも悪くない。最高だ!」

 

 海羽「イエーイ! じゃ、一緒にやっちゃいましょ!」

 

 初対面ながらも同じ正義のヒーローである事から意気投合した戦兎とソルは互いに腕を合わせる。

 

 

 女ヤプール「何二人でコソコソやっている…お前達、やってしまえ!」

 

 苛立って来た女ヤプールは怪人たちに指示を出し、怪人たちは威嚇するように構える。

 

 戦兎「じゃ、コイツらは俺に任せろ。君はあの能面野郎を。」

 

 海羽「オッケー!」

 

 

 ソルは跳躍して一回転をした後、女ヤプールの前で着地する。

 

 海羽「よくもパンちゃんを泣かしてくれたわね! 許さないんだから!」

 

 女ヤプール「フッ、ほざけ。返り討ちにしてくれる。」

 

 女ヤプールはソル目掛けて両手から光弾を連射し始め、ソルはそれらを赤とピンクの稲妻エネルギーを纏った両手『ライトニングハンド』で斬り飛ばしつつダッシュで女ヤプールに接近する!

 

 海羽「それーっ!」

 

 そして目前まで近づくと、女ヤプールの放った殴り込みをしゃがんでかわすと同時に腹部に右足蹴りを叩き込む!

 

 女ヤプール「ぐっ…なんだと?」

 

 海羽「私が、その程度の奴じゃないって所、見せてあげるわ!」

 

 

 

 ソルが女ヤプールと交戦する中、戦兎は怪人軍団を前にビルドドライバーを装着し、二つのボトル型アイテム『フルボトル』を取り出して構える。

 

 

 戦兎「さぁ、実験を始めようか。」

 

 

 そう言うと戦兎は、自身の周囲にあらゆる数式を発生させながらフルボトルを上下に振った後、上部のキャップを回し、スロットに装填する。

 

 

 《ラビット! タンク! ベストマッチ!》

 

 

 相性の良いラビットとタンクのフルボトルを装填した事により、ドライバーのベストマッチ判別の音声が鳴る。

 

 

 次に戦兎はドライバー右側のレバーを回す。

 

 《Are you ready?》

 

 コールと共に戦兎の周囲に小型ファクトリー・スナップライドビルダーが展開し、それぞれ前後にラビットとタンクのハーフボディが生成される。

 

 

 戦兎「変身!」

 

 

 戦兎の変身ポーズでの掛け声の後、前後のハーフボディが戦兎の身体と結合し、変身が完了する!

 

 

 《鋼のムーンサルト! ラビットタンク! イエーイ!》

 

 

 変身が完了した後、フレミングの右手の法則にも似たポーズを決める。

 

 

 戦兎が変身したのは、ラビット(兎)とタンク(戦車)の力を宿したビルドの基本形態『仮面ライダービルド・ラビットタンクフォーム』である!

 

 

 海羽「わぁ…! ヤベーィ! スゲーィ! カッコいいかも!」

 

 女ヤプール「あれは…!」

 

 ビルドを始めてみたソル(海羽)はテンションが上がってはしゃぎ、女ヤプールは驚愕する。

 

 

 (BGM:Be The One(full))

 

 

 スチール星人「何だあれは? おめーら!行くぞー!!」

 

 スチール星人は怪人軍団に指示を出し、一斉にビルドに襲い掛かる!

 

 

 戦兎「勝利の法則は決まった!」

 

 ビルドは戦車の砲身のようなアンテナを指で撫でた後にポーズを決め、怪人軍団に立ち向かう!

 

 

 ビルドはまずは先陣を切ったスチール星人の殴り込みをかわすと同時に左拳でボディブローを決め、次にギロン人のハサミ状の腕の殴り込みを後ろ回し蹴りで弾いた後、そのまま一回転して振り向くと同時に顔面に右拳でのパンチを叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 次にビルドはドルズ星人の突進をかわすと同時に後ろに回り込み、背部に左脚蹴りを叩き込んで転倒させる。

 

 その隙にナターン星人は大きく跳躍して飛び掛かろうとするが、ビルドはバネが内蔵されたラビットの左足で地面を蹴ってナターン星人のいる位置まで大きく跳び上がり、キャタピラ状の右足で強烈な跳び蹴りを腹部に叩き込む!

 

 上空で蹴りを喰らったナターン星人はたまらず地面に落下し、続けてビルドは着地する。

 

 ドルズ星人は再びビルドに襲い掛かるが、ビルドは即座にドリルクラッシャーを取り出し、ドルズ星人の右フックをしゃがんでかわすと同時にブレードモードで腹部を斬りつけ、続けて胸部に突き立てて後退させる。

 

 

 《Ready go! ボルテックブレイク!》

 

 戦兎「はっ!」

 

 ビルドはドリルクラッシャーのスロットに海賊フルボトルを装填して『ボルテックブレイク』を発動させ、音声と共に青い波状の衝撃波を飛ばし、それを足元で受けたドルズ星人は上空高く打ち上げられる。

 

 

 《Ready go! ボルテックフィニッシュ!》

 

 ビルドは再度ドライバーのレバーを回して必殺技『ボルテックフィニッシュ』を発動させ、助走を付けて左脚で跳躍し、グラフを模したエネルギーの滑走路に沿って、右脚でキックを放つ!

 

 戦兎「はーっ!」

 

 “ズガーン”

 

 グラフのX軸で拘束されたドルズ星人は、ビルドの必殺キックを受けて大爆発して吹き飛んだ。

 

 

 戦兎「次はこれだ!」

 

 ビルドは怪人たちの攻撃を往なしながら、次のフルボトルの装填に入る。

 

 

 《ゴリラ! ダイヤモンド! ベストマッチ! Are you ready?》

 

 戦兎「ビルドアップ!」

 

 ビルドはゴリラとダイヤモンドのフルボトルを振った後ドライバーに装填してレバーを回し、それにより生成されたハーフボディが身体と結合してフォームチェンジが完了する。

 

 《輝きのデストロイヤー! ゴリラモンド! イエーイ!》

 

 次に変身したのは、ゴリラの怪力とダイヤモンドの硬度を持つパワーに特化した形態『ゴリラモンドフォーム』である!

 

 

 スチール星人「このやろ…!」

 

 “ガキーン”

 

 スチール星人「…ッ! 痛って~!」

 

 スチール星人は再度ビルドに殴り込むが、その拳がビルドが即座に向けたダイヤモンドを模した左肩に当たってしまい、逆に自身が痛がり始める。

 

 戦兎「ほい!」

 

 “ズドーン”

 

 スチール星人「ぐぉあっ!」

 

 その隙にビルドは右腕の巨大ナックル『サドンデストロイヤー』でスチール星人にアッパーを打ち込んでかち上げる。

 

 その後も続けて襲い掛かって来るナターン星人、レボール星人をことごとく右腕のパンチで吹っ飛ばしていき、ギロン人の放つ両手からの光線をダイヤモンドの左手で反射する形で弾き飛ばしつつ接近し、一回転の遠心力を加えたサドンデストロイヤーでのパンチを叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 スチール星人は再び接近しようとするが、ビルドはサドンデストロイヤーで地面を一殴りし、その衝撃で足元が爆発したスチール星人は吹っ飛ぶ。

 

 

 ビルドは襲い掛かるギロン人をパンチで往なしつつレバーを回してボルテックフィニッシュを発動する。

 

 《Ready go! ボルテックフィニッシュ!》

 

 ビルドは戦いの影響で砕けたアスファルトやコンクリートをダイヤモンドに変化させてギロン人を拘束し、サドンデストロイヤーでライダーパンチを叩き込む!

 

 ギロン人は自身を拘束していたダイヤモンドと共に粉々に砕け散って消滅した。

 

 

 《タカ! ガトリング! ベストマッチ! Are you ready?》

 

 戦兎「ビルドアップ!」

 

 ビルドはタカとガトリングのフルボトルを振った後装填してレバーを回し、次なるフォームチェンジに入る。

 

 《天空の暴れん坊! ホークガトリング! イエーイ!》

 

 次にチェンジしたフォームは、タカの飛行能力とガトリングの連射機能が合わさっており、背中の翼“ソレスタルウィング”が特徴の形態『ホークガトリング』だ!

 

 

 ナターン星人はビルド目掛けて突進を繰り出すが、ビルドは翼で浮遊しながら連続でキックを放って吹っ飛ばす。

 

 次にレボール星人三人衆が連続で跳躍を初めてビルドを攪乱しようとする。

 

 戦兎「そんな虚仮威しは通じないよ?」

 

 戦兎(ビルド)はそう言うとホークガトリング専用武器『ホークガトリンガー』を取り出して飛び立つ。

 

 ビルドは上空を飛び回りながらホークガトリンガーから弾丸を連射していき、瞬く間に三体のレボール星人を撃ち落とした!

 

 地上からスチール星人とナターン星人がそれぞれ破壊光線を同時に放って撃ち落とそうとするが、ビルドは上空で旋回しながらそれらをかわしていき、逆に弾丸を数発放ってダメージを与える。

 

 

 ビルドは急降下してナターン星人に体当たりを叩き込んで上空にかち上げ、続けて真下から連続でキックを打ち込んで更に空高く打ち上げる。

 

 そしてホークガトリンガーのリボルマガジンを10回分動かしてボルテックブレイクを発動し、球状の特殊フィールドにナターン星人を隔離する。

 

 《フルバレット!》

 

 戦兎「はーっ!」

 

 “ズガガガガガ…”

 

 “ズドガーン”

 

 ビルドはナターン星人に100発の弾丸の雨あられを撃ち込み、蜂の巣にされたナターン星人は大爆発して吹き飛んだ!

 

 

 《忍者! コミック! ベストマッチ! Are you ready?》

 

 戦兎「ビルドアップ!」

 

 ビルドは落下しながら次のフォームチェンジに入り、今度は忍者とコミックのフルボトルを振った後装填してレバーを回す。

 

 《忍びのエンターテイナー! ニンニンコミック! イエーイ!》

 

 忍者の技とコミックの実現能力を持つ形態『ニンニンコミック』になったビルドは、4コマ状の図柄が存在する刀身が特徴の忍者形態専用の刀型武器『4コマ忍法刀』で落下の勢いも加えた斬撃を繰り出し、それを喰らったスチール星人は斬られた胸部から爆発で火花を散らしながら吹っ飛ぶ。

 

 スチール星人は怯まず破壊光線と火炎を駆使して反撃を繰り出すが、ビルドは忍者の如く軽い身のこなしでそれらを回避していき、やがて全て避け切った後、スライディングをしながらスチール星人に接近し、すれ違い様に腹部を斬りつけてダメージを与えた。

 

 

 レボール星人三人衆はビルドを取り囲み、それぞれ三方向から同時にパンチを繰り出す。

 

 《隠れ身の術! ドロン!》

 

 ビルドは4コマ忍法刀のトリガーを4回引いて隠れ身の術を発動し、周囲に煙幕を発生させて姿を消し、ビルドを見失ったレボール星人三人衆はあたふたし始める。

 

 《風遁の術! 竜巻斬り!》

 

 隙を突いてビルドは風遁の術を発動し、レボール星人三人衆に竜巻を纏った斬撃を繰り出してまとめて吹っ飛ばした!

 

 

 体勢を立て直したレボール星人三人衆は再びビルドに襲い掛かる。

 

 《分身の術!》

 

 ビルドはトリガーを1回引いて分身の術を発動し、自身の分身を2体出現させ、それぞれ1人1体レボール星人に立ち向かう。

 

 《火遁の術! 火炎斬り!》

 

 戦兎「「「はーっ!」」」

 

 そして3人のビルドは同時にトリガーを2回引いて火遁の術を発動し、それぞれ1人1体レボール星人に火炎を纏った斬撃を叩き込む!

 

 レボール星人三人衆は同時に大爆発して吹き飛び、ビルドは分身を消滅させた後スチール星人の方を振り向く。

 

 

 スチール星人「馬鹿な…まさか貴様にこれほどまでの強さが…!」

 

 戦兎「そうだな~…お前はパンダを泣かしたから、これで行くぜ!」

 

 次々と怪人達が倒されていく事に動揺するスチール星人を他所に、ビルドは次のフォームチェンジに入る!

 

 

 《ロケット! パンダ! ベストマッチ! Are you ready?》

 

 戦兎「ビルドアップ!」

 

 ビルドは今度はロケットとパンダのフルボトルを振った後装填してレバーを回し、ロケットとパンダのハーフボディを身体に結合させて変身完了する。

 

 《ぶっ飛びモノトーン! ロケットパンダ! イエーイ!》

 

 次に変身したのは、ロケットとパンダの力を宿した形態『ロケットパンダフォーム』である!

 

 

 スチール星人「おぉ!大好きなパンダが…だが容赦はせんぞ~!」

 

 スチール星人はビルドに接近すると軽い身のこなしでパンチやキック等を放って行くが、ビルドはそれらをかわしたり防いだりしていき、やがて隙を突いて右腕の巨大な爪『ジャイアントスクラッチャー』で身体を2回引っ掻き、更にロケットを模した左腕で噴射の勢いを加えたパンチを叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 スチール星人は高く跳躍してビルドに跳び蹴りを繰り出そうとする。

 

 ビルドはロケットの噴射を利用してスチール星人の位置まで飛び上がると、スチール星人に渾身の引っ掻き攻撃を打ち込み、更にロケットのアーマーを射出してぶつけて撃ち落とす!

 

 

 スチール星人「ぐうぉぉあっ! まさか…俺も、ここで終わりなのか!」

 

 戦兎「そう、ここで終わりさ。 これで決める!」

 

 満身創痍のスチール星人。ビルドは再度レバーを回してトドメのボルテックフィニッシュを発動する。

 

 

 《Ready go! ボルテックフィニッシュ!》

 

 ビルドはグラフを模したエネルギーの滑走路に沿って飛び、急降下と共にジャイアントスクラッチャーでの一撃を叩き込む!

 

 スチール星人「ぐぉぉぉぉあああっ!! 女ヤプール様…ごめんなさああぁぁい!!」

 

 “ズドガガーン”

 

 スチール星人は断末魔の叫びを上げた後、大爆発して吹き飛んだ。彼は皮肉にも、自身の大好きなパンダの力を持つフォームで倒されてしまったのであった…。

 

 

 戦兎「ま、こんなもんか。」

 

 

 

 女ヤプール「まさか!…私の怪人軍団がこうも簡単に…!」

 

 ソルと交戦中の女ヤプールは、自身の配下の怪人軍団の全滅に動揺を隠せない。

 

 海羽「あれ~、よそ見している場合かな?」

 

 ソルに背後から肩をツンツンされた女ヤプールは体勢を立て直してソルに右フックを繰り出すが、ソルは脚を180度開脚させる形でしゃがんでそれをかわし、続けて女ヤプールが放った蹴りを横に転がってかわす。

 

 ソルは立ち上がると、女ヤプールのパンチをかわすと同時に肩車をしてもらう形で跳び付き、「エイ、エイ、エイ…」という掛け声と共に連続で頭部に猫パンチを放つが、女ヤプールは何とか身体を前方に振って振り落とす。

 

 立ち上がったソルは女ヤプールが放った回し蹴りをバレリーナの如く回転しながらかわした後、再度パンチを放った女ヤプールの腕を掴みそのまま「エイ、エイ、エイ…」という掛け声と共に連続で腹部に右脚蹴りを打ち込み、それにより相手が前屈みになった所で「それっ!」!という掛け声と共に背中に上から肘打ちを打ち込んで更に体を屈ませる。

 

 海羽「ソリッドアイアンヒーップ!」

 

 ソルは大きく前屈みになった女ヤプールの顔面に、赤とピンクの光エネルギーを纏った尻での打撃技『ソリッドアイアンヒップ』を叩き込む!

 

 “ズドーン”

 

 “バリーン”

 

 女ヤプール「ぐぉわっ!」

 

 強烈な打撃を顔面に喰らった女ヤプールは、それにより顔につけていた能面が粉々に砕けてしまった。

 

 

 女ヤプール「うっ…うぅ…。」

 

 顔を両手で押さえながら覚束ない足取りで後ずさりをする女ヤプール。やがてその両手を離して剥き出しになった顔を露わにする。

 

 その顔は正に巨大ヤプールそのものであった!

 

 

 海羽「やっぱりヤプールだけに、乙女でもその素顔は醜いモノね!」

 

 女ヤプール「おのれ…私の素顔を見たからには、生かしてはおけぬ!」

 

 

 戦兎「それはこっちの台詞だね。今度こそお前を倒す!」

 

 ビルド(戦兎)はソルと合流しながら啖呵を切る。

 

 海羽「ビルドさん、一緒にやりましょう!」

 

 戦兎「あぁ。種類の違う戦士同士の共闘。これは面白い実験になりそうだ。」

 

 海羽「イエーイ! 本邦初公開!仮面ライダーとウルトラウーマンの共闘ね!」

 

 戦兎「あぁ。というワケだ。 覚悟しろ!」

 

 ビルドは女ヤプールに指を差し、ソルもそれに乗じて指を差す。

 

 

 女ヤプール「黙れ!例え貴様らが勝っても、勝った者は常に負けた者の怨みと怨念を背負って生き続けるのだ!」

 

 女ヤプールはビルドとソルに(負け惜しみにも聞こえる)呪いの言葉を投げかける。

 

 戦兎「そんな非物理的なモノ、俺達が吹き飛ばしてやる。」

 

 そう言い返すと、ビルドは缶型強化アイテム『ラビットタンクスパークリング』を取り出し、振った後、プルタブ型のスイッチを入れて起動させてビルドドライバーに装填する。

 

 《ラビットタンクスパークリング!》

 

 音声が鳴った後、ビルドはレバーを回し、それにより前後にハーフボディが生成される。

 

 《Are you ready?》

 

 海羽「オケーィ!」

 

 戦兎「ビルドアップ!」

 

 周囲に炭酸のようなエフェクトを散らしながらハーフボディはビルドの身体と結合し、変身が完了する!

 

 《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング! イエイ! イエーイ!》

 

 ビルドが次に変身したのは、ラビットタンクの強化版でもある強化形態『ラビットタンクスパークリングフォーム』である!

 

 

 海羽「わぁ~! かっこいい~!鮮やか~!超ギザギザだし、ウサギちゃんも可愛い~!」

 

 ソルはビルド・ラビットタンクスパークリングフォームに見惚れ、はしゃぎながら体の各所や兎の形状の左目やアンテナ等を触り始める。

 

 戦兎「嬉しいが見惚れるのは後。今はコイツを倒すぞ。」

 

 海羽「イエース!」

 

 

 戦兎「勝利の法則は決まった!」

 

 海羽「決まった!」

 

 ビルドとソルは、口上を上げながらそれぞれタンクの砲身状のアンテナと猫耳状の頭の突起を指で撫でた後にポーズを決める。

 

 

 女ヤプール「黙れええぇぇぇ!!」

 

 逆上した女ヤプールは、手からの光弾を乱射しながらソル達を攻撃するが、ソルはそれらを赤とピンクの稲妻を纏った腕『ライトニングハンド』によるチョップで相殺していき、その間にビルドが『ラピッドバブル』による泡の破裂を活かした高速移動で女ヤプールの目前までに近づき、左足蹴りを腹部に打ち込んで後退させる。

 

 女ヤプールは闇雲に両腕を振るってビルドに殴り掛かるが、ビルドはそれらを易々と往なしつつ、女ヤプールの右腕を左腕で受け止めると同時に右の掌を胸部に打ち込み、続けて右足蹴りを腹部に、一回転しての左脚での上段回し蹴りを頭部にと決めて行き、更に軽く跳躍しての右足蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 ビルド・ラビットタンクスパークリングの打撃が炸裂する度に、発生する『インパクトバブル』の破裂により同時に衝撃波が発生される為、相手に的確なダメージを与えて行く。

 

 

 ビルドは弓型の武器『カイゾクハッシャー』を取り出し、女ヤプールの連射する光弾を避けながら各駅電車、急行電車、快速電車、海賊電車とそれぞれのエネルギー供給による射撃を撃ち込んで行き、それと同時にソルも矢尻型の光弾『ゴッドスラッシュ』を連射して撃ち込んで行く。

 

 そしてビルドとソルはそれぞれ左右から女ヤプールに駆け寄り、それぞれカイゾクハッシャーによる斬撃、ライトニングハンドによるチョップを同時にすれ違い様に叩き込んで大ダメージを与える!

 

 

 女ヤプール「何故だっ…何故ヤプールの怨念を背負った私が、貴様らごときにっ!」

 

 大ダメージで膝を付いた女ヤプールは、自身の押される状況を受け入れられずにいる。

 

 戦兎「教えてやるよ。実験の結果、どうやら俺達はベストマッチみたいだからさ。」

 

 海羽「つまり…私達は、相性の良いコンビって事ね!」

 

 戦兎「一気に決めるよ。プリティーガール。」

 

 海羽「イエース!」

 

 

 ビルドは再び高速移動で女ヤプールに接近し、スライディングタックルで宙に浮かせ、更に地面に手を付いての真下からのキックで上空高く打ち上げる!

 

 女ヤプールをかち上げたビルドも地面を蹴ってジャンプし、女ヤプールよりも高い位置までに跳び上がる。

 

 

 《Ready go!》

 

 ビルドはドライバーのレバーを再度回して必殺技『スパークリングフィニッシュ』を発動させ、ワームホールの様な図形を出現させてその中に女ヤプールを拘束する。

 

 そしてソルも地上で胸の前で両手を合わせ、脚は左膝を曲げ、右足は後ろに伸ばす。そして上からハートを描くように腕を振った後、両手を合わせて右腰に持って行き、赤とピンクのエネルギーを溜めて行く…!

 

 

 海羽「ミスティックシュート!!」

 

 《スパークリングフィニッシュ!》

 

 戦兎「はーっ!!」

 

 ソルは地上から右掌を突き出して必殺光線『ミスティックシュート』を放って上空の女ヤプールに浴びせて行き、更にビルドが上空から急降下しながら無数の泡と共にライダーキックを叩き込む!

 

 

 女ヤプール「ヤプールはいずれまた怨念と共に蘇る…必ず…復讐せん…!」

 

 女ヤプールはそう言い残すと、上空で大きな爆風を発生させながら大爆発して砕け散った…!

 

 

 初対面ながらも見事な連携で女ヤプールを撃破した2人。ソルは必殺技の体勢を解き、ビルドも着地してソルと合流する。

 

 

 (BGM終了)

 

 

 戦兎「やったな!」

 

 海羽「うん!ハッピー!」

 

 ビルドとソルは勝利のハイタッチを交わした。

 

 

 変身を解除した2人。

 

 戦兎「へぇ~、こんな華奢な美少女がヒーローやってるなんてビックリだな。」

 

 初めてソルの変身前・海羽と対面した戦兎は驚きを隠せない。

 

 海羽「エへ。仲間達のお陰もあって、何とかやって来れてる感じだけどね。あと、私女子だから“ヒロイン”ね。」

 

 戦兎「その変身システムも、開発したモノなのか?」

 

 海羽「カイハツ?…う~ん違うなぁ…なんと言うか…光に選ばれた…みたいな?」

 

 戦兎「何?その非科学的な感じ…ウルトラマンの変身システムは仮面ライダーとは違うんだな。」

 

 

 海羽「まぁね。それよりも仮面ライダービルド、カッコいい! もしかして戦兎さんが発明したモノなの?」

 

 戦兎「そ。言っただろ?天才物理学者だって。このビルドドライバーも、ベストマッチウェポンも、全て俺が発明したモノなんだ。」

 

 最も、正確に言えばビルドドライバーは元々『葛城巧』(戦兎の正体)の父『葛城忍』が設計・開発を行っていたモノなのだが…。

 

 海羽「これら全てあなたが発明したの?すっご~い!戦兎さんって本当に天才なのですね!」

 

 戦兎「…本当にそう思う!?」

 

 海羽に天才と言われた瞬間、戦兎は突然気分が高揚し、髪の毛の一部がアホ毛のようにピョンとはねる。

 

 戦兎「そうでしょ?…凄いでしょ?最高でしょ?天才でしょ?」

 

 海羽「うん!いいな~…その頭脳、私も半分欲しい程だよ。」(櫂君や真美ちゃんとどっちが頭良いだろう…?)

 

 海羽が褒めちぎった事により、戦兎は益々調子に乗ってしまう。

 

 

 しかし良かったな戦兎。相手が素直な性格の海羽ちゃんで…。

 

 これがエゴイストでもある櫂君だったら間違いなく目の敵にされていたであろう…。

 

 

 戦兎「いや~俺を天才ぶりが分かるとはなかなかいいね君。 オマケに愛想が良くて可愛らしい。 どっかの“筋肉バカ”や、無愛想な女とは大違いだ。」

 

 海羽「(照れ臭そうに両手を頬に当てて)いや~んそれ程でもないよ~。」

 

 

 一方、『nascita』(ナシタ)という喫茶店にて。

 

 “ブーッ!!”

 

 コーヒーを飲んでいた『万丈龍我』は、突然コーヒーを吹き出してしまう。

 

 紗羽「ひゃっ!? ちょっとどうしたのよ…またコーヒーが不味かったの?」

 

 万丈「それだけじゃねぇ!…なんか、誰かが俺を馬鹿にした気がして…。」

 

 『滝川紗羽』は机にかかった万丈の吹き出したコーヒーを拭き取る中、あるモノに目が止まる。

 

 それは、『石動美空』が何やら不機嫌そうな表情で手に持つ糸切り鋏をチョキチョキ言わせている光景だった…。

 

 紗羽「美空ちゃん…どうしたの?」

 

 美空「何だか分からないけど…刻みたい気分…。」

 

 

 気を良くした戦兎は、海羽に秘密にするのを条件にビルドドライバーやフルボトルの事を詳しく話した。

 

 専門用語を多用する戦兎の説明に海羽は時折首をかしげていたが、おおよその事は理解しているようであった。

 

 海羽「へぇ~…凄いです。様々なボトルの組み合わせで多様な戦闘が出来るなんて。 それに、フルボトルも兎とかパンダとかいろんな種類があって面白いな~。」

 

 戦兎「でしょ? そして、俺が最初に発見したベストマッチが、ラビットタンク。このラビットとタンクのフルボトルで変身するんだ。」

 

 そう言いながら戦兎は海羽にラビットとタンクのフルボトルを見せる。

 

 

 海羽「すごーい。兎と戦車のフルボトルだ…私にも触らせてください!」

 

 戦兎「ダメだ。君にはまだ早いよ。」

 

 海羽「え~!いいじゃないですか~。」

 

 やがて戦兎と海羽は追いかけっこに発展する。

 

 海羽「触らせてくださ~い!」

 

 戦兎「いやダメだってば。」

 

 海羽「もうズルいです~!」

 

 フルボトルを巡って追いかけっこをする2人。だがその表情はどこか楽しそうであった…。

 

 

 やがて戦兎と海羽は別れる時が来た。海羽はこれから子パンダを中国へ連れて行くつもりである。

 

 海羽「今日はありがとうございました。戦兎さん。」

 

 戦兎「いやいや。俺の方こそ嬉しかったぞ。君みたいな魅力的な美少女と出会えて。」

 

 海羽「エヘヘ。 じゃあ、私はこれからこの子をお家に送って行きますね。」

 

 そう言うと海羽はハートフルグラスを目に当てて等身大のウルトラウーマンSOL(ソル)に変身する。

 

 海羽「それじゃ、またいつか会いましょうね。」

 

 戦兎「あぁ、それじゃ、またな。」

 

 海羽「はい! それじゃあパンちゃん、行きましょ。」

 

 ソルは子パンダを抱き上げて、中国に向かって飛び去って行った…。

 

 

 戦兎「眞鍋海羽…ウルトラウーマン…か。 またいつか一緒に戦う日が来るといいな。」

 

 そう言うと戦兎はマシンビルダーに乗り込む。

 

 戦兎「…ところで、万丈とアイツ…俺にとってどっちの方がベストマッチなんだろう? …ま、どうでもいっか。」

 

 戦兎はヘルメットを被り、マシンビルダーを駆って何処かへと去って行った…。

 

 

 海羽「ヤホーィ!」

 

 子パンダを連れて空高く飛ぶソル。

 

 海羽「楽しい?パンちゃん。」

 

 海羽に問われた子パンダは、楽しそうな素振りを見せて返事をした。

 

 

 海羽「そう!良かった! アハハハハハ…」

 

 ソルは尚も笑いながら、子パンダと一緒に楽しそうに飛行を続けていた…。

 

 

 

 …だが、次の瞬間、笑い続けていく内に徐々に視界が暗くなって行き、それと同時に意識も遠のいて行く…。

 

 

 そして、やがてうっすらと気が付き始める。

 

 

 

 海羽「ぅ…ぅぅ…ん?」

 

 目を覚ますと、自身はベッドの上で横になっていた。

 

 

 そして寝起きでまだ虚ろな意識の中、辺りを見渡した後、海羽は確信する。

 

 

 海羽「あぁ…夢か…。」

 

 そう、先ほど海羽が子パンダと出会った事、怪人軍団と戦った事、そして桐生戦兎(仮面ライダービルド)と出会った事等々…全て夢の中の出来事だったのである。

 

 

 しかし、よくもまぁ凄い夢を見たモノである。

 

 

 海羽「夢だったなんて、ちょっぴり残念。 それにしても仮面ライダービルド…そして桐生戦兎さん…カッコ良かったなぁ…。現実にもいてくれたらいいな…。」

 

 

 夢の余韻に浸る海羽。だが、意識がハッキリし始めた瞬間、ある事を思い出す…。

 

 

 海羽「…そっか…私、赤と白の2人にやられて…。」

 

 そう、海羽が寝ているのは正確に言えば病院のベッドなのである。

 

 

 現在の海羽は、先ほどレッドマンとハヌマーンに完膚なきまでに痛めつけられ重傷を負い、病院で入院中なのである。

 

 

 それに気づいた瞬間、一気に悲しみがこみ上げ始める…。

 

 その悲しみは入院している自身の不甲斐なさ、(相手が悪かったというのもあるが)レッドマンとハヌマーンに手も足も出せずに負けた悔しさ、華麗な活躍したと思えば夢だったという残念さ、病室で一人という寂しさなど、様々な思いからであった。

 

 

 海羽「…いけないいけない…ブルーになっちゃ…ハッピーな事考えなきゃ…。 苺のショートケーキ…カスタードプリン…カシス味のマカロン…。」

 

 なんとか大好きなスイーツの事を考えて持ち直そうとするものの、既に日も暮れて夜に入っていたという事もあり、益々悲しみは深まって行く…。

 

 海羽「私も…もっと櫂君達みたいに強くなりたいなぁ…。」

 

 涙声でそう呟いたその時、誰かが病室のドアをノックする音が聞こえる。

 

 

 海羽「はーい。」

 

 急いで涙を拭いた海羽は返事をする。ドアを開けたのは看護師であった。

 

 

 看護師「眞鍋さん、お友達がお見舞いに来てくれましたよ。」

 

 海羽「…え?お見舞い?」

 

 

 愛想良く海羽に呼びかけた後、看護師はそのお見舞いに来た人を病室に入れて去って行く。

 

 

 お見舞いに来たのは新田真美であった。

 

 真美「こんばんは。海羽ちゃん。」

 

 海羽「真美ちゃん…また来てくれたんだね。」

 

 満面の笑顔で挨拶をする真美に、海羽は無理に笑顔を作って返事をした。

 

 真美「体の方は、大丈夫?」

 

 海羽「ぅ…うん。今は何ともないよ。先生の言う通り、もう一日安静にすれば大丈夫かも。」

 

 真美「それなら良かった。私、海羽ちゃんに元気になって欲しいから、海羽ちゃんの大好きなスイーツ買って来たの。」

 

 そう言いながら真美は手に持っていたコンビニのビニール袋の中身を見せる。

 

 中には先ほど海羽が呟いていたスイーツ全てが入っていた。

 

 海羽「わぁ! ありがとう真美ちゃん!」

 

 真美から差し入れを受け取った海羽は、僅かながら元気を取り戻しているようであった。

 

 

 しかし、まだ悲しい気持ちである事には変わり無いため、改まって真美に語り掛ける。

 

 海羽「…真美ちゃん…少し、話してもいい?」

 

 真美「いいよ。どうしたの?」

 

 

 海羽は真美に話したい事を全て話した。お見舞いに来てくれた事への感謝の気持ち、先ほど凄い夢を見た事、そして、悲しい思いをしている事…。

 

 真美は親身になって丁寧に相槌を打ちながら話を聞いた。そして海羽が全てを話し終えた後、無言で優しい眼差しで海羽の肩にそっと手を置いた。

 

 その温かい感触に触れた海羽は、遂に感極まって泣き出しそうになる。

 

 真美「海羽ちゃんはよく頑張ったと思うよ。」

 

 海羽に労いの言葉をかける真美。だが、なおも泣くのをこらえ続ける海羽。そんな海羽を真美はそっと抱き寄せる。

 

 真美「内緒にしておくから、泣いても大丈夫。」

 

 その優しい言葉に安心を覚えた海羽は、すすり泣きを始める。嬉しい気持ちだけを残し、今の悲しい気持ちを全て洗い流すかのように…。

 

 

 海羽がある程度泣いて落ち着いた後、真美はある話を持ち出す。

 

 真美「そういえばさっき私、面白い人の話を聞いたの。」

 

 海羽「…誰?」

 

 真美は海羽の病室に付く直前に、知り合いでもあるこの病院の看護師に偶然出会い、その人から、内緒にするのを条件にある患者の話を聞いたのだという。

 

 

 その患者の名前は『佐藤太郎』。

 

 なんでも彼は最近結成されたばかりのバンド『ツナ義ーズ』のメンバーであり、“バンドが売れたら女子アナと結婚して牛丼卵付き100杯食べて、ビル1000件買う”と言うのが夢の、非常にハイテンションなチャラ男のような性格の男性だという。

 

 

 〈回想〉

 

 彼がこの病院に入院する事になった原因はと言うと、同じメンバーの『岸田立弥』の車の送迎によりバイト先に向かった時である。

 

 

 昨日の昼頃。やけに荒っぽい運転の立弥の車は、佐藤太郎のバイト先に着くと停車する。

 

 佐藤太郎「Fo~!」

 

 立弥「アニキ!行ってらっしゃ~い!」

 

 ハイテンションで車から降りて行く佐藤太郎と、そんな佐藤太郎を車窓から見送る立弥。

 

 

 すると、佐藤太郎は入り口前で大きく体を後ろに反らせて…。

 

 

 佐藤太郎「夜は焼き肉っしょぉぉぉ!! アッハッハッハッ…」

 

 

 言ってる事は意味不明だが、どうやらその日は給料日だったようである。

 

 その時!

 

 

 “グギッ”

 

 

 佐藤太郎「!!? ヴエ˝エ˝エ˝エ˝ェェェ!!!」

 

 

 …どうやら体を反り過ぎて腰をヤってしまったようである…実に間抜けな話である。

 

 “ピーポー ピーポー”(所謂救急車の音)

 

 立弥「アニキ~!大丈夫っスか!」

 

 佐藤太郎「ママ~! ママ~!」

 

 〈回想終了〉

 

 

 まだ若者ながら、変なポーズでうっかり腰を痛めてしまった事により入院せざるを得なくなってしまった佐藤太郎の話を聞いた海羽は、さっきまで悲しんでいたのが嘘のように爆笑し始める。

 

 真美「ね?彼には申し訳ないけど笑えるでしょ?」

 

 真美もつられて笑い始める。

 

 真美「この話はここだけの内緒にしようね。」

 

 海羽「うん、分かった…それにしても、焼き肉で腰痛めてしかも「ママ~」だなんて…プフッ、ハハハハハハ!」

 

 

 …しかし、海羽は知るはずも無かった…その佐藤太郎は、顔が夢で出会った桐生戦兎とそっくりだという事を…。

 

 

 ある程度笑い合った後、海羽は真美に礼を言う。

 

 海羽「今日は本当にありがとう、真美ちゃん。」

 

 真美「また何かあったら遠慮なく言ってね。私に出来る事は何でもするから。」

 

 海羽「うん、それじゃあね。」

 

 真美「明日も来るから。おやすみ。」

 

 海羽「おやすみ~!」

 

 満面の笑顔で、真美は病室を後にした。

 

 

 海羽「私、もっと強くなるわ。そのためにも、今はしっかり休まないとね。」

 

 真美の優しさのお陰で元気を取り戻した海羽は、差し入れのスイーツを見ながら前向きに決心した。

 

 

 海羽「これからも櫂君や、ウルトラマンさん達と力を合わせて行くんだ。愛と平和のため、そして、トシ君(桜井敏樹)を取り戻すためにも…。」

 

 海羽はスイーツを頂きながら窓から星空を眺める。

 

 海羽「…とりあえずレッドマン達は任せたよ。櫂君、みんな…。」

 

 

 と言うワケで、海羽が戦兎と出会って共闘した事は、夢の中の出来事だったのである。

 

 何故海羽が人間なのにパンダの言う事が分かったのか、何故女ヤプールの配下の怪人の中にヤプールとは無関係の宇宙人もいたのか、何故霞ヶ崎にスカイウォールがあったのか、そして何故霞ヶ崎に桐生戦兎がいたのか…。

 

 …もはやそれらを突っ込むのは野暮な話である。何故なら全て夢の中での出来事なのだから…。

 

 

 だが、実際現実に起こった事が二つある。

 

 それは、パワードとグレートがルナチクスと恐竜戦車と戦った事、そして、最近海羽がグビラにハマり始めたという事である。

 

 

 〈エピローグ〉

 

 

 ひょんな事から、麟慶大学ではハロウィンパーティーが開催されていた。

 

 どうやら今年もハロウィンの日が来たみたいである。

 

 

 海羽「ハッピーハロウィ~ン!!」

 

 イベント事が大好きな海羽は、案の定テンション高くはしゃいでいた。

 

 櫂「ったく海羽のやつ、相変わらずイベント大好きだな。」

 

 真美「ふふ、いいじゃない。今日は楽しみましょ。」

 

 櫂「そうだな。」

 

 櫂と真美も一緒であった。

 

 

 因みにハロウィンという事もあり、学生全員が吸血鬼や魔女、ミイラなどと仮装しているのだが、櫂は『ウルトラマンベリアル・アトロシアス』(段ボール等で作ったギガバトルナイザー付き)、真美は『超大魔王獣マガタノオロチ』、海羽は『虚空怪獣グリーザ』と、何故かニュージェネシリーズのラスボスに仮装していた。

 

 流石に他の仮装と比べると少々浮いている所はあるが、皆を惹きつけるカリスマ性を持つ櫂がベリアル、良スタイルな反面食べるのが大好きな真美がマガタノオロチ、そしていつも笑顔で笑っている海羽がグリーザに仮装していると考えるとある程度は納得が行くモノである。

 

 

 実験、学園で人気の高い三人の完成度の高い仮装姿に、多くの学生が釘付けになっていた。

 

 最も、その中には海羽の仮装を見て「みーたんだぁ~!」とはしゃいでいる人もいたのだが…恐らく海羽のファンであろう。

 

 

 櫂「んじゃ、いろいろ回りますか。」

 

 真美「そうだね。」

 

 海羽「早くトリックオアトリートしましょ!トリックオアトリート!」

 

 三人が移動しようとしたその時。

 

 

 ???「素晴らしい…実に素晴らしい…!」

 

 突如、何処からか男性の声が聞こえ、三人は振り向く。

 

 

 そこには眼鏡をかけていて、スーツを着込んだ男性が、どこか狂気をも感じる笑顔で杖を両手持ちにして立っていた。

 

 

 櫂「誰だ?あいつ。」

 

 真美「私も見かけた事が無いわね…。」

 

 海羽「商学部でも見覚えが無いし…。」

 

 どうやら麟慶大学の学生では無いみたいである。

 

 

 ???「実に素晴らしい仮装姿だ…!」

 

 海羽「そ…それは、どうも。」

 

 仮装姿を褒められたため、とりあえず礼を言う海羽。

 

 

 その時!

 

 

 ???「ハーッハッハッハッハ!! ならば! 答えは一つ!」

 

 “バキッ”

 

 男性は、突如狂ったかのように笑った後、両手持ちにしていた杖を膝でへし折る。

 

 

 ???「あなたに…忠誠を…誓おおおおおぉぉぉぉー!!」

 

 

 海羽「えええぇぇぇ~!!?」

 

 

 その時。

 

 

 海羽「はっ!」

 

 一瞬意識が飛んだかと思うと、海羽は気が付いて目を覚ました。

 

 自身は病室のベッドの上、窓からは朝の日差しが射し込んでいる…どうやら夢だったみたいである。

 

 

 海羽「何だ夢か…。ハッピーハロウィンで楽しい夢だったけど、変な男の人も出て来て不思議な夢だったな…。」

 

 

 先ほど見た夢を不思議がりながらも、目が覚めた海羽は両腕を広げて体を伸ばした。

 

 海羽「う~ん…よし、今日も元気に体を休めるぞ~。」

 

 

 日付は8月20日。そう、この日海羽は、再度お見舞いに来る真美を通じて、ウルトラマンエックスや大空大地達と出会う事になるのである…。

 

 

 〈完〉




 読んでいただきありがとうございます!


 今回登場した戦士は“仮面ライダービルド”でした!

 実は私、ビルドが結構気に入ってしまって(笑)、終わってしまった事でロスが起こってしまっている程です。(まぁ、現在放送中のジオウも楽しんで見てますが)


 また、今回はビルドを登場させるかつやりたい放題やるというテーマと言う事もあり、ビルドが登場するのは海羽ちゃんの夢の中の世界と言う設定にしました。

 あと、投稿日が投降日と言う事もあり、最後にちょっとだけハロウィンネタも入れてみました。

 仮面ライダーとウルトラウーマンの共闘、いかがでしたか?


 因みにビルドのフォームはベストマッチだけでもかなりの数があるという事もあり、今回は登場させるフォームを6つに絞りました。

 ジーニアスフォームやクローズ、グリス、ローグ等の登場を期待されていた方、申し訳ございませんでした。(因みに私はクローズも大好きです)


 因みに私の好きなビルドのフォームは結構あるのですが…三つに絞るのならラビットタンク、ホークガトリング、ラビットタンクスパークリングです。


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


 因みに今回は仮面ライダーが登場する特殊な回であるため、OP、ED、サブタイトルを探せ!はナシにしました。


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〈後半戦〉第3章「加速するレッドゾーン」
第18話「可能性の瞳」


 お待たせしました。大学のレポート等で忙しい中完成させることが出来ました。

 後半戦第1話です。とりあえず楽しんで読んでもらえれば幸いです。

 今回は比較的ウルトラマンレオの要素が多いです。

 また、男性陣と女性陣それぞれの活躍もあります。

 また、13話以来にあの二人が再登場です。

 あと、ソルちゃんの新技も登場します。


 (OP:英雄の詩)

 

 8月1日、ヤプールの総攻撃を破ったウルトラマンゼロたちウルトラ戦士と竜野櫂たち麟慶大学生。

 

だが、その後の記念の飲み会では大半の学生がはしゃいで飲みまくって酔い潰れてしまったため、翌日に予定していた『麟慶大学夏休みライブ』の続きは明後日の8月3日に変更となった。

 

その内の竜野櫂も、久々に飲みまくって酔ったため、その夜千鳥足で帰り道を歩き、下宿先に帰った途端、倒れこむようにベッドで眠りについたんだとか。

 

櫂はシャープなイケメン顔とは似合わず、結構酒を飲む一面があるのだ。

 

一方での新田真美は、酒に弱いため少量しか飲めないが、その分スレンダーな美ボディとは似合わず大食いな一面もある。

 

そのため、飲み会では久々に食べまくって満足したんだとか。

 

因みに真美には「太れない」という羨ましすぎる悩みがあるんだとか(笑)

 

何はともあれ、その日学生たちは夕方から夜にかけて飲み会で大はしゃぎし、その後ほとんどの人がぐっすり眠れた。

 

 

 

 ???「助けてくれよ~!」

 

 

 だが同じ頃、遠い宇宙の彼方から一つの不思議な壺が地球目掛けて飛んでいて、その壺からは不思議な声が響いていた。

 

 地球目前の宇宙空間に浮遊している宇宙船『テライズグレート』からその壺を眺めている少年『桜井敏樹』は、髭を生やしたがたいの良い屈強そうな男と話していた。

 

 敏樹「なるほどな、今回の作戦もなかなかの刺激を味わえそうだ。」

 

 ???「でしょ~?見てーてください。強大な闇を生み出す自信がありまぜ。」

 

 敏樹「………良いだろう。お手並み拝見といこう。地球へ向かえ!」

 

 ???「待ってました~!そのお言葉。弱い者いじめ大好き俺様のプライドにかけて!」

 

 そう言うと男は宇宙船を出て地球に向かって行った。

 

 ………だが、敏樹はそんな男をどこか冷ややかな目で見つめながらそっと舌打ちをしていた………。

 

 敏樹「“弱い者いじめ”か………悪趣味もいいとこだ………!」

 

 敏樹はドスの利いた声で呟いた。

 

 一体、何が癇に障ったのだろうか………?

 

 

 

 翌日の8月2日、早朝既に酔いが醒めていた櫂は、昨日の戦いの疲れと酔いを完全に醒まそうと朝の散歩をしていた。

 

 そこで、偶然にも同じく朝の散歩をしている稲葉健二と居合わせ、一緒に歩いていた。

 

 健二「櫂さん、昨日は大活躍でしたね。お疲れ様です。」

 

 櫂「ああ、サンキュー。だが、俺だけが得た勝利ではない。」

 

 健二は疑問で少し首をかしげる。

 

 櫂「共に戦うウルトラ戦士たち、それから真美達学生達。みんなの強力あってこその勝利だ。」

 

 健二は納得の表情を見せる。

 

 ゼロ「こいつは学生達全員に招待を知られてしまったワケだが…逆にそれによって信頼もより深まったワケだ。」

 

 健二「櫂さん、本当に信頼が深いんですね。」

 

 櫂「ハハハ、まあな。(ひっそりと不敵な笑み)」

 

 櫂はなおも健二と歩きながら話し続ける。

 

 櫂「それに、自分が特に大切だと思うモノや愛する者、それらを想えば、より強さを引き出せるのさ。」

 

 ゼロ「ハハッ、櫂、お前だいぶ成長したんじゃねーのか?」

 

 櫂「フッ、そうかもな。」

 

 健二「……そうですね。俺も、さなちゅんとの仲がより深まって、それによって前よりも強くなれた気がします。すべてあなた達ウルトラ戦士のおかげです。」

 

 健二は改めて櫂に先日(第11、12話参照)のお礼を言う。

 

 因みに稲葉健二と小野早苗は彼氏と彼女の関係なのだが、お互いを“ケンちゃん”、“さなちゅん”とあだ名で呼びあっているのだ。

 

 櫂「ま、良いって事よ!」

 

 櫂は気さくに健二の背中を叩き、二人は笑い合う。

 

 だが、心の中では………

 

 (そう………それによって俺と真美の距離は縮まったワケだ……この調子だぜ………。)

 

 櫂がそんな考え事をしていたその時、

 

 “ガッ”

 

 櫂「⁉ギャハッ!」

 

 “ドサッ”

 

 櫂は何かに躓いて転んでしまった。

 

 健二「大丈夫ですか?櫂さん。」

 

 櫂「イテテテテ……何だ?」

 

 櫂は起き上り、自身が躓いた物を拾い上げる。

 

 櫂「何だこれ?」

 

 健二「壺……ですかね?」

 

 見てみるとそれは壺であった。だが今どきのおしゃれさは無く、茶色い表面に周囲には赤、青、黄、緑など様々なダイヤルらしきものが付いている、見た目は小学生の工作の様な物だった。

 

 健二「落とし物…ですかね?」

 

 櫂「落とし物にしてはかなりぼろっちいな。でも、ちゃんと交番に届けた方がいいかもな。」

 

 櫂たちは壺を届けようと交番へ行こうとしたその時、

 

 “ガシャーン”

 

 「キャ~‼」

 

 突如、何処からか物音と女性の悲鳴が聞こえる。

 

 櫂「⁉何だっ!」

 

 櫂たちは急いで声のする方へ駆けて行く。

 

 そこには、銀行の近くで一人の若い女性に襲い掛かり首を絞めあげる屈強な男がいた。先ほどの物音は女性が襲われ始めた際の銀行のガラスが割れる音である。

 

 櫂「健二、これを頼んだ!」

 

 櫂は急いで壺を健二に手渡し駆け始める。

 

櫂は駆けながら男の右肩に跳び蹴りを打ち込んで吹っ飛ばし女性と引き離す。

 

 櫂「大丈夫か⁉早く逃げろ。」

 

 「ええ、ありがとうございます。イケメンに助けてもらえて嬉しいです!」

 

 女性は櫂にお礼を言って逃げて行った。

 

 「何するでーい貴様!」

 

 男は斧を振るいながら櫂に殴りかかる。櫂は振り下ろして来た斧を両腕をクロスして受け止める。

 

 櫂「か弱い女に乱暴する奴に言われたくないね。」

 

 そう言うと櫂は受け止めていた腕を叩き落とし腹部に右拳を打つが、なんと奴は腹筋で耐えてしまった。

 

 櫂が驚いている隙に男は右腕を掴んで放り投げるが櫂は宙返りして着地し、跳躍しての右回し蹴りを顔面に打ち込み振り下ろしてきた右腕を掴んで受け止め腹部に右横蹴りを連続で叩き込む。

 

 更に櫂は左手で右腕を掴んだまま右脇腹に右肘を叩き込んで、その後跳躍しての右後ろ蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 すると男は壺を大事に持っている健二に視線を向ける。そして、次なる標的を健二に決め駆け寄り始める。

 

 櫂「!しまった…」

 

 男は健二に駆け寄りながら拳を振り上げる。

 

 その時、

 

 “ドガンッ”

 

 「⁉ガハッ!」

 

 突如、男は何者かからの跳び蹴りを左肩に喰らい吹っ飛ばされる。蹴りを打ったのは礼堂ヒカルだった。

 

 ヒカル「早く非難するんだ。」

 

 健二「は…はい。」

 

 ヒカルは健二を逃がした後、櫂と共に男に挑む。

 

 櫂とヒカルはそれぞれ左右方向からパンチ、キック等を放つが男も負けじと二人の攻撃を往なしていく。

 

 そして櫂とヒカルはそれぞれ左右同時に右前蹴りを放つが男はそれを両手で受け止め、振り払う形で放り投げるが、二人は空中で一回転して着地する。

 

 「おっと、お前らの相手してる暇ないのだ!あいつを…あいつを探さねば………!」

 

 男はそういうと急いでどこかへ去って行った。

 

 櫂「……チィッ、逃げられたか。」

 

 ヒカル「でも、襲われる人を救えて良かったですね。」

 

 櫂「ああ。それよりもあいつ、すごい力だったな。」

 

 ヒカル「確かに。まるで人間ではないな……」

 

 櫂「それに、探している“あいつ”とは……」

 

 ヒカル「後を付ける必要がありそうですね。」

 

 櫂「そうだな。」

 

 健二「僕も行きます!」

 

 櫂達三人は男の後を付ける事にした。

 

 

 

 一方、新田真美、眞鍋海羽、そして小野早苗は他愛も無い話をしながら朝の散歩“ガールズウォーキング”をしていた。

 

話の内容はもちろん、昨日の激戦の事である。

 

早苗「じゃあ、真美さんのサポートあるからこそ、櫂さんも海羽さんも戦えるんですね。」

 

真美「ええ。それに、戦いにはそれに向かう者と、戦い傷つく戦士を癒す者が必要でしょ?私は後者の者として尽力してるの。」

 

海羽「流石は真美ちゃん!でも、私は真美ちゃんならウルトラ戦士としても戦えると思うけどな〜。」

 

真美「え?」

 

海羽「だって真美ちゃん、みんなを助けたい想いを持ってるんでしょ?それだけでも十分素質あると思うけどな〜。きっと真美ちゃんなら、櫂君に負けないファイトができると思うよ。」

 

海羽はにこやかに話す。

 

真美「ありがと海羽ちゃん。でも…私は櫂君ほど身体能力は無いし、それに…………だから、やっぱり私は戦士をそっと見守る方が向いてるかな(笑顔で)。」

 

 その時、早苗は真美の右肩に手を置く。

 

 早苗「今すぐに答えを出さなくても、今は海羽ちゃん達に任せて、可能性を信じて考えてみようよ。」

 

 真美「……可能性?」

 

 早苗「うん。ウルトラ戦士である海羽ちゃんが言うんだもん。きっと真美ちゃんはウルトラ戦士になれる可能性に満ちてるんだよ。」

 

 真美「可能性に満ちてる……?」

 

 海羽「うん。特に真美ちゃんの、そのキラキラした瞳にね。」

 

 真美「私の…瞳?」

 

 海羽「うん!真美ちゃん、普段からキラキラしてるけど……最近目の輝きが増した気がするんだよね~。」

 

 海羽の意味深気味な言葉に真美は少し困惑する。

 

 真美「それが、可能性とどう関係あるの?」

 

 海羽「う~ん…何となく……かな?(笑顔で)」

 

 真美「プフッ………何それ?(笑顔)」

 

 三人は笑い合った。

 

 三人が笑いながら歩いていたその時、

 

 早苗「………ん?」

 

 早苗は何かに気付き反応する。

 

 真美「どうしたの?」

 

 真美たちも早苗が見ている方へ顔を向ける。

 

 そこには何かがうずくまっているのが見えていた。だがよく見てみるとそいつは人間ではないようである。

 

 三人は恐る恐るも歩み寄ってみる。

 

 早苗「あ…あの~………どうかされましたか?」

 

 早苗が話しかけた瞬間、そいつは驚くように早苗たちの方を振り向く。

 

 そいつはやはり人間ではなく、ピョコピョコと上下する目に身体にはトゲのようなイボが生えている、怪獣にもゆるキャラにも見える生物だった。

 

 ???「!!!!」

 

 早苗「!!!!」

 

 生物は驚き、早苗も異形の生物が突然振り向いたことにより驚き、お互いに悲鳴を上げる。

 

 ???「ごめんなさい!お願い!殺さないで~!」

 

 真美「ま…待って。私たちは敵じゃないから……」

 

 生物は何やら怯えている様である。真美は気持ちを切り替え話しかける。

 

 だが、生物は慌てて逃げようとする。

 

 真美「待って……」

 

 “ガッ”

 

 真美「!キャッ!」

 

 “ドサッ”

 

 真美は追いかけようとするが、躓いて転び尻もちをついてしまう。

 

 海羽と早苗は慌てて真美に駆け寄り、生物もそれを見てふと立ち止まる。

 

 早苗「!真美さん。」

 

 海羽「真美ちゃん大丈夫?」

 

 真美「イテテテテ……」

 

 真美が尻もちを付いて痛がっている時、誰かが手を差し伸べるのに気づく。

 

 ???「………大丈夫ですか?」

 

 手を差し伸べたのは、生物だった。真美は嬉しさや、その生物が悪い奴ではない事への安心もありふと笑顔を見せる。

 

 

 

 その後、三人は事情を聞いた。

 

 彼の名は『(わんぱく怪獣)タイショー』。なんでも彼は怪獣小学校の四年生であると言う。だが、彼は勉強が苦手で学校をさぼる日も多く、学力は低い。

 

 一ヶ月前、とある悪者に襲われ母親が負傷し、自身は緊急避難用の壺のようなカプセルに入って宇宙を漂っていた所、地球にたどり着いたと言う。

 

 真美「とある悪者?」

 

 タイショー「うん。そいつによってお母さんは怪我をして家で寝込んでいるんだ………でも、それだけじゃないんだ………。」

 

 そう言うとタイショーは、右手を震わせながら小指を立てる。

 

 タイショー「………殺されたんだ…。」

 

 タイショーの手話と言葉に三人は察する。………そう、タイショーは母親が負傷しただけではなく、恋人も殺されてしまったのだ。

 

 真美「………そんな………。」

 

 海羽「何て酷い事を………。」

 

三人が深刻になる中、タイショーはなおも話し続ける。

 

彼は上記の学力イマイチに加え体力もあまり無い事からいじめられる事が多く、そして母親が負傷した事により、父親はタイショーをこれ以上いじめられ無いように本格的に強く賢い子に育てようと尽力してきたという。

 

だが、タイショーは普段からいじめが多い上に母親が怪我をし、恋人も殺されてしまった事から完全に腑抜けになってしまい、それを見兼ねた父親により「心身ともに強くなれ」という想いから、お仕置きとして壺に閉じ込められ宇宙を漂っていた………。

 

という訳なのである。

 

真美「そう……それは可哀想に。」

 

話を聞いた真美は哀れむ顔でタイショーの頭を撫でる。

 

海羽はと言うと…完全に同情として泣き出していた。彼女は良くも悪くも泣き虫な一面があるのだ。

 

早苗「タイショー君……。」

 

早苗もほぼ言葉が出ない状態だった。

 

タイショー「おいら、お仕置きされる際に嫌で泣いたんだけど、そしたら父ちゃんが「その目は何だ⁉︎その涙でお前が強くなれるのか…?自分が守れるのか?」って言われて……でも、すぐに強くなれたら苦労なんてしないよ……。」

 

タイショーは弱音を吐きつつ涙目になる。

 

その時、早苗はタイショーの元に歩み寄る。

 

早苗「分かった。私たちが力になってあげる。」

 

そう言うと早苗はタイショーにハンカチを差し出し、タイショーは顔を上げる。

 

早苗「まずは勉強面を鍛えようよ。苦手な教科は何?」

 

タイショー「……算数。」

 

早苗「そう。じゃあ私が教えてあげる。」

 

早苗はタイショーの学力強化のために勉強を教える事にした。

 

海羽「勉強なら真美ちゃんもいるよ。(真美に手を向けてウインク)」

 

タイショー「……ありがとう。お願いします。」

 

真美「これで涙拭くといいよ。」

 

真美は嬉し泣きをするタイショーにハンカチを差し出した。

 

 

 

早速、三人は早苗の家でタイショーの学力強化を始める事にした。

 

子供とはいえ怪獣を家に入れる訳だが、早苗の両親は仕事で不在なため丁度いいタイミングだった。

 

勉強を教えるのは主に早苗で、真美はそのサポート、海羽は紅茶を入れたり、休憩時のマッサージなどを担当する事になった。

 

え?なぜ早苗がメインで教えるかって?彼女は勉強できる他に、将来小学生の先生を目指しているため、今のうちに経験を積んでおこうと思ったからである。

 

タイショーの勉強特訓が始まった。早苗は丁寧に教えていく。

 

タイショーも理解力が高く、教えてもらってる内容を次々と吸収していく。

 

その様子に海羽と真美も安心の表情を浮かべた。

 

 

 

同じ頃、男性陣(櫂、ヒカル、健二)は大男探索を続けていた。

 

健二「そういえば、今朝の新聞に妙な記事が載ってました。」

 

櫂「何だ?」

 

健二「なんでも、昨夜だけで百数人の人が謎の怪物に襲われ大半の人が死んだんだと…。その怪物は毛むくじゃらの怪物だったらしいです。」

 

健二の言葉に櫂達はあの大男への疑惑を深める。

 

櫂(そういえばさっきの木偶の坊も、毛むくじゃらな服を着ていた。もしや……)

 

ヒカル「とにかく、今はあの男を探しましょう。」

 

櫂「ああ。見つければ何か分かるかもしれないしな。」

 

櫂達は再び駆け始めた。

 

 

 

それから約二時間後、早苗たちはタイショーに勉強を教えた後、おさらいとしてテストを作って回答させた。

 

 その結果……なんとタイショーは82点を記録したのだ!早苗たちの教えがいいのかタイショーの理解力がいいのか、それはともかく三人は最終的に良い結果を残せたことを喜び合った。

 

 ………だが、当の本人のタイショーはどこか浮かない顔をしている、それどころか再び泣き始めていた。

 

 早苗「…どうしたの?タイショー君………ん?」

 

 早苗はタイショーのテスト用紙を見て何かに気付いた。

 

 それは嬉し泣きではなく、問題文に書かれていた『お母さんと別れた~』と言う部分を見て、母親が怪我したことや恋人が殺されたことがフラッシュバックした事による泣きだった。

 

 早苗「……思い出しちゃったのね…よしよし、もう泣かないで。」

 

 早苗はタイショーの背中を摩る。だが、よく見てみると嬉し泣きも少し混ざっている様だった。

 

 早苗「こんな思いをしながらも、よく頑張ったね。」

 

 真美「オセロでもする?勝たせてあげるから。」

 

 タイショー「やらない。」

 

 海羽「じゃあ、紅茶で一息入れる?」

 

 タイショー「いらない。」

 

 真美と海羽は気晴らしを提案するが、タイショーはことごとく拒否してしまった。

 

 早苗「じゃあ、ちょっと散歩でもしましょうか?」

 

 早苗の言葉にタイショーは顔を上げる。

 

 早苗「外の空気でも吸ってスッキリしましょ?」

 

 タイショー「………うん。」

 

 かくして、三人はタイショーを連れて昼の散歩に出かけた。

 

外の空気を吸ったおかげか、タイショーは落ち着いていた。

 

 早苗は歩きながらタイショーに語り掛ける。

 

 早苗「タイショー君、やっぱり君は可能性に満ちてるよ。」

 

 タイショー「え?」

 

 早苗「私たちが教えてあげる時は目を輝かせてたし、お母さんの事を思い出したときは泣いてたでしょ?それがその表れだよ。」

 

 早苗は意味深も込めて話し続ける。

 

 早苗「タイショー君は、自分はもっと偉くなりたい、お母さんが元気になってほしい、それは願いだけではなく、そう言った可能性を信じてるからこそ瞳は輝いたり涙を流したりできるんだよ。」

 

 海羽「可能性の信じ様によって、瞳は様々な反応を示す……て事だね。」

 

 早苗「逆に、悪い可能性ばかり信じてると、瞳は輝きを失ってしまうわ。だからその調子で良い方への考えを忘れないでね。」

 

 早苗の言葉に再びいい方への可能性を信じる思いが強くなったのか、タイショーの瞳は再び輝いてるように見えた。

 

 真美「じゃ、ウルトラマンに頼んでお家に連れて帰ってもらう?」

 

 タイショー「え?そんな事できるのですか?」

 

 真美「うん。だってウルトラマンは、私の………」

 

 真美が言おうとしたその時、

 

 「み~つけた!」

 

 突如、早苗たちの前に大男が立ちはだかる。早苗たちは思わず身構える。

 

 早苗「あなた誰?」

 

 「引っ込んでろ!俺はそいつに用があるんだ!」

 

 その時、タイショーは何やら驚いてるようだった。

 

 早苗「この子に何をする気!?」

 

 「いいからどいてろ‼」

 

 “ガッ”

 

 早苗「キャアッ!」

 

 大男はあろうことか右横振りの右拳で早苗を殴り飛ばし、タイショーに歩み寄り始める。

 

 海羽と真美はその光景に驚愕しながらも咄嗟にタイショーと横たわる早苗の前に回り込み身構える。

 

 「お前らも邪魔するのか?……なら容赦はせんぞ!」

 

 大男は真美達を先に潰そうと拳を振り上げる。

 

 真美達はこれまでかと目をつぶった………!

 

 その時、

 

 健二「俺のさなちゅんに何しやがんだあああぁぁ‼」

 

 “ガシャーン”

 

 「‼ガハッ⁉」

 

 間一髪、大男を見つけた健二が早苗を殴られた怒りと共に突っ込み、大男の頭に思い切り壺をぶつける!

 

 健二の怒りの力が強かったのか、大男が石頭だったのか、壺は割れてしまったが効果はあったみたいで大男は頭を抱えて痛がる。

 

 櫂「真美達に手え出すんじゃねえええ‼」

 

 “ドガンッ”

 

 続いて櫂が、真美達を潰されそうになった怒りと共に突っ込み、跳躍しての右足蹴りで大男を吹っ飛ばす。

 

 かくして、大男を追っていた櫂、ヒカル、健二『男性陣』と、タイショーの面倒を見ていた真美、海羽、早苗『女性陣』が合流した。

 

 真美「櫂君。」

 

 海羽「ヒカルさん!」

 

 早苗「ケンちゃん…。」

 

 女性陣は、男性陣の登場に嬉しさを含めて反応する。

 

 ゼロ「やっと見つけたぜ。」

 

 櫂「そこまでだ!この外道野郎!」

 

 ヒカル「罪のない者を殺す事は許せない!」

 

 健二(タイショーの方を向いて)「愛する者を失う辛さ、分かります。」

 

 健二の言葉に女性陣は少し驚く。何故かと言うと健二の言葉がまるでタイショーの事を知ってるかのようであるからだ。

 

 早苗「ケンちゃん……何で知ってるの?」

 

 早苗は問いかける。

 

 ヒカル「ああ、大男とは違う特殊な反応を『ギンガスパーク』で感知して、念のためその反応のする場所の様子をギンガスパークの力で伺ったってわけ。」

 

 櫂「そして、そちらの様子を伺いながらでくの坊を追っていた所、奴はそれと同じところに向かっている事を知り、それによって大男とその生物(タイショー)が何かの関係があるのではないかと感づいたわけだ。」

 

 櫂達の戦士としての見事な勘に、女性陣は感心した。

 

 真美「戦士としての勘、流石だね。」

 

 海羽「そうだね!……あ、でもそれって、盗聴と同じなんじゃ………」

 

 櫂「おーっと!待て待て皆まで言うな。後でお詫びでクレープ奢ってやっからさ。」

 

 海羽「え?本当?やったー!」

 

 櫂「お前らもタイショーの為に一生懸命頑張ってらからな。ま、「お疲れ様」って事よ。」

 

 櫂は、事情が事情とはいえ盗聴したことを詫び、後で奢りをすることを約束する。………………………密かに舌打ちしながら。

 

 「お前ら、何処までもこのドギュー様を邪魔しやがって~‼」

 

 大男は逆上しながら立ち上がり、遂に自分の名を名乗る!櫂達は身構える。

 

 謎の大男の正体は、弱い者いじめが大好きな宇宙の嫌われ者怪獣『牡牛座怪獣ドギュー』が人間に化けた姿だったのだ。

 

 奴は宇宙で狼藉を働いていた中、ひ弱と見たタイショー一家も襲撃し、母親に重傷を負わせ、地球に迷い込んだタイショーをも殺そうとやって来たのである。

 

 ゼロ「ドギュー……お前の事は親父(ウルトラセブン)から聞いている………やっぱお前は反吐が出そうなほどのゲス野郎だぜ!」

 

 ドギュー「!!何だとッ!」

 

 事情を知った櫂は怯えるタイショーに歩み寄る。

 

 櫂「安心しろ。こいつは俺達がぶっ倒してやる。」

 

 櫂の言葉にタイショーは少し落ち着く。

 

 ドギュー「ハッ⁉お前らがこの俺を倒すだと⁉笑わせやがって!」

 

 櫂「笑ってんじゃねえ………」

 

 櫂は呟きながらゆっくり立ち上がり、そして鋭い視線でドギューの方を振り向く。

 

 櫂「何笑ってんだ!この木偶の坊‼」

 

 ドギュー「!!ッ何だと~!!」

 

 櫂は怒りのこもった声で怒鳴り、ドギューは逆上する。

 

 ヒカル「タイショーはすげえよ…お前なんかよりずっとな!」

 

 ドギュー「何ッ⁉」

 

 健二「愛する者を殺されても、希望を捨てずにさなちゅん達の助けで少しながら強くなったからな。」

 

 ゼロ「それに比べてお前は、その顔…その目は何だ⁉ 「俺はこの後も、もっと多くの者を殺せる」みたいな目をしてるぜ!」

 

 ドギュー「うっ!………」

 

 どうやらドギューは図星を突かれたみたいだ。

 

 ドギューも少し怯むほど、男性陣の怒りは凄まじいモノである。何故ならみんな愛する者がいるもの同士。それ故に愛する者を失った者の気持ちが誰よりも分かるからである。

 

 健二「でもタイショーは、愛人を殺され、家族が重症になっても、希望を捨てず、少しずつ強くなっている。」

 

 櫂「だから………「これからも多くの命を奪える」………そんな負の可能性しか信じてないお前なんか、タイショーの足音にも及ばねーんだよ‼」

 

 櫂達の言葉に、タイショーは嬉そうに手を合わせて櫂達を見守る。

 

 ドギュー「えーいごちゃごちゃうるせー!少しずつが何だ!力では俺様が上だ~!!」

 

 ドギューは逆上し、拳を振り上げ櫂達に襲い掛かる。

 

ドギューは右拳を振り下ろすがヒカルは咄嗟にギンガスパークでそれを防ぎ、腹部に数発左拳を決めて右前蹴りで吹っ飛ばす。

 

 続いて櫂が側転、バク転で近づいた後に右後ろ蹴りを胸部に打ち込む。

 

 ドギューは怯まず拳を振るって反撃するが、櫂はそれをことごとく両腕で防ぎ、ドギューの右膝に左ローキックを打ち込んでバランスを崩させた後に右膝蹴りを胸部に打ち込んで転倒させる。

 

 そして櫂はドギューの右腕を掴み、一本背負いで投げ飛ばす。ドギューは地面に落下した。

 

 ドギュー「おのれ……このドギュー様をコケにしやがって……うおああぁぁぁ‼」

 

 立ち上がったドギューは、人間体では不利と見たのか、雄たけびと共に黒いオーラの様な物を発散させながら巨大化していき、牛と熊を合わせたような外見が特徴の本来の姿『牡牛座怪獣ドギュー』となった!

 

怪獣体となったドギューは咆哮を上げながら、鋭い爪を活かした剛腕でビルを崩して暴れつつ櫂達を踏みつぶそうと近づく。

 

特に頭の角を活かした突進は強烈で、一撃で高層ビルが崩れてしまうほどである。

 

 海羽「これ以上タイショー君を泣かせはしないんだから!」

 

 海羽はドギュー向けて叫んだ後、タイショーの方を振り向く。

 

 海羽「………ちょっと待っててね。」

 

 そう言うと海羽はドギューの方へ駆け出し、走りながら懐から『ハートフルグラス』を取り出し目に当てる。

 

 海羽は赤とピンクの光に包まれ巨大化し『ウルトラウーマンSOL(ソル)』への変身を完了する。

 

 ドギューもソルの登場に気付き襲い掛かる。

 

 ソルはドギューの振り下ろして来た右腕を即座に掴み、そのまま右膝を踏み台にし、肩車をしてもらうように飛び乗り「エイ、エイ、エイ、エイ、……」と掛け声を上げながら頭部に小刻みのパンチを連打するが、ドギューは前方に身体をかがめてソルを振り落とす。

 

 ドギューは仰向けのソルに襲い掛かるがソルはドギューの顔面を蹴りながらの跳ね起きで起き上り、直ぐに左脇腹に右横蹴りを打とうとするがドギューはそれを左腕で掴んで受け止める。

 

 だがソルは怯まず、そのまま跳躍し左横蹴りを頭の右側面に打ち込む。

 

 蹴りはクリティカルヒットだった………だがしかし、ドギューはそれでもソルの右脚を掴んでいる左腕を放さない。

 

 ソルが驚いている隙にドギューは自慢の怪力でソルを振り回し投げ飛ばす。

 

 ソルは地面に落下するが、転がり起き上りながら右手を突き出し『ゴッドスラッシュ』を発射する。しかしドギューは頭部を振るってゴッドスラッシュを角で弾いてしまった。

 

 その後ドギューは、動揺するソル目掛けて「甘いわ!」とばかりに角を活かした突進を繰り出す。巨体の怪獣の突進を喰らったソルはたまらず数十メートル吹っ飛びビルに激突した。

 

 弱い者いじめ大好きで暴力的な嫌われ者だけあり、ドギューは女の子であるソルを力の差を見せつけるかのように痛めつける。

 

 ドギューに苦戦するソルを心配そうに見守るタイショーと健二と女性陣。

 

 その時、櫂はヒカルに語り出す。

 

 櫂「フッ………海羽に先を越されたな。」

 

 ヒカル「え?」

 

 櫂「昔、女子(おなご)は戦いに出る男の帰りを待つ者だった………。だが今では、このように女子も男と同じように戦えるようになっている………。(ヒカルの方を振り向いて)俺達も、ますます負けてられないな!」

 

 (そう………女なんかに負けてられないからな………。)

 

 櫂はひっそりと不敵な笑みと共に心で不吉な事を呟く。

 

 ヒカル「………おう!俺達も、愛する者を失った者(タイショー)の気持ちに応えてやらないとな!」

 

 ゼロ「二人とも………上等だ!」

 

 櫂とヒカルは決意に満ちた表情で見つめ合う。そして、タイショー達を背に横に並び立つ。

 

 二人の顔を見た健二は安心の表情に変わる。恐らく決心をした二人の眼差しに、あの強敵(ドギュー)を倒せる可能性………いや、確信を見出したのであろう。

 

 ヒカルは懐から『ギンガスパーク』を、櫂は左腕のウルティメイトブレスから『ウルトラゼロアイ』を出現させる。

 

ヒカルはギンガスパークの側面のスパークブレードを展開させることで出現させたギンガのスパークドールズを掴み取り、伸ばした腕を8の字を描くように振った後正面でギンガスパークにリードする。

 

 《ウルトライブ!ウルトラマンギンガ!》

 

 櫂「レッツ、ゼロチェンジ‼」

 

 櫂の掛け声と共にゼロアイは櫂の目にくっ付く。

 

 ヒカル「ギンガー‼」

 

 ヒカルはギンガスパークを高く揚げる。二人は眩い光に包まれ、中から『ウルトラマンゼロ』と『ウルトラマンギンガ』が登場し、土煙を上げて着地する。

 

 今ここに、乱暴者の怪獣に怒りを燃やす新ウルトラタッグが降り立った。

 

 ソルも二人の登場に気付く。

 

 海羽「来てくれたのね………。」

 

 ドギューは再びソル目掛けて角を突き立てた突進をするが、ソルは即座に右にそれる事で避け、それと同時に「よいしょ!」という掛け声でドギューの顔面にヒップアタックを決める。

 

 ドギューはバランスが崩れ転倒した。横からの攻撃とはいえドギューの突進を崩すとは、彼女の尻はどんだけ強いのだろうか………(笑)

 

 ソルはゼロ達の元へ駆け寄る。そしてゼロ、ギンガとソルはゼロをセンターに並び立つ。

 

 もはや怖い物無し、ここから逆転開始だ!

 

 と思ったその時、

 

 突如、上空から赤黒い渦のような光線が降り注ぎ、それがタイショーに直撃する!

 

 健二と早苗、真美が光線が降り注いだ衝撃で吹っ飛ばされ、光線を浴びたタイショーは赤黒いオーラや稲妻の様な物を発散しながら巨大化していく。

 

 そして巨大化したタイショーは我を失ったのか、雄たけびを上げて暴れようとする。

 

 突然の出来事にウルトラ戦士、そして真美達は驚愕する。突如降り注いだ光線は一体何なのだろうか………?

 

 何はともあれ、タイショーも止めなければならない………ソルは数秒間、暴れるタイショーを見つめた。

 

 海羽「タイショー君は私に任せて。二人はドギューを頼むわ。」

 

 海羽はタイショーを救う事を決め、ゼロと数秒見つめ合う。

 

 ゼロ「………分かった。頼んだぜ。」

 

 ゼロとソルは拳をかわした。ソルはタイショーに向かって駆け始める。

 

 ゼロとギンガはドギューの方を向き、構えを取る。

 

 ゼロ「ここからは男と男の戦いだぜ。櫂。」

 

 櫂「ああ。行こうぜゼロ。」

 

 ヒカル「ここからは俺達のステージだ‼」

 

 (BGM:DREAM FIGHTER)

 

 二大ウルトラマンVSドギューの戦いが始まった!

 

 ギンガは上空に飛び、ゼロはドギューに接近する。

 

 ゼロはドギューが振り下ろして来た右腕を右腕で掴み、同時に左手で角を掴んで抑え込む。

 

 ヒカル「ギンガサンダーボルト‼」

 

 ゼロがドギューを抑え込んでいる間に上空からギンガが右手を突き出し『ギンガサンダーボルト』を放つ!

 

 電撃が直撃してドギューが怯んだ隙にゼロは腹部に二発右横蹴りを打ち込み、顔面に右側面に左拳を叩き込む。

 

 ドギューは鋭い爪を活かして腕を振り回して反撃するがゼロはそれをバク転でかわした後、両手で頭部のゼロスラッガーを飛ばす。

 

 二本の宇宙ブーメランは複雑な軌道を描きながら飛び、瞬く間にドギューの頭部の二本角を切り落としゼロの頭部に収まる。

 

 ゼロは再びドギューに駆け寄り右ヘッドロックをかけてそのまま地面に叩きつける。だがその直後隙をつかれて爪を活かしたパンチを胸部に二発喰らい火花を散らして吹っ飛ぶ。

 

 ドギューは倒れるゼロを掴んで起き上らせ、更に攻撃を加えようとするが、ゼロは腹部に左右パンチを打ち込み、それによってドギューが手を放した後さらに顔面の左右側面にパンチを浴びせる。

 

 そしてゼロはドギューの左腕を掴んで一本背負いで地面に叩きつけた。ドギューは地面を転がって起き上った後、不利と見たのかゼロから逃走しようと駆け出す。

 

 だが、そんなドギューの行く手をふさぐ様に、前方にギンガが着地する。

 

 ギンガはドギューに駆け寄った後、腹部に右横蹴りを打ち込み胸部に二発パンチを決め、更に腹部に右横蹴りを二発打ち込み、顔面の右側面に左拳を叩き込んだ後背部に左横蹴りを打ち込んで転倒させる。

 

 ギンガはドギューがうつ伏せに倒れた所に追い打ちをかける様に跳躍して踏みつける様に右膝を叩き込む。

 

 今度はゼロがうつ伏せに屈むドギューに左横蹴りを打って転がし、更に左腕を掴んで起き上らせた後胸部に右拳を打ち込み、更に一回転しての右足蹴りを胸部に叩き込む。

 

 ゼロはドギューの背中を蹴りギンガの方へ飛ばす。ギンガは顔面の右側面に左拳を打った後一回転して右拳を腹部に叩き込む。

 

 ドギューがふらついたところでゼロとギンガはそれぞれ左右から同時に足払いを決めて転倒させる。

 

 そしてそれぞれ左右の腕を掴んで起き上らせた後、ゼロは左足、ギンガは右足の前蹴りを同時に打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 二大ウルトラマンタッグにフルボッコされ完全に劣勢となったドギュー。しかし奴は運が悪かった。何故ならゼロにギンガと二人の強力なウルトラマンの怒りを買ってしまったのだから。

 

 まあ、奴はこれまで様々な命を奪い、弱い者を泣かせてきたのだから、それに相応しい報いを受けたと言えよう。

 

 ゼロ「(右腕の肘から先を回しながら)さ~て、そろそろ決めるぜ!」

 

 ゼロは空高く飛び上がり空中で静止する。

 

 ドギューが上空のゼロに気を取られている隙にギンガは『ギンガスパークランス』を持って駆け寄り、先端を腹部に突き立て、力一杯上空にかち上げる。

 

 その後ギンガは両腕を前方で交差させ、S字を描くように左右に大きく広げた後L字に組む。

 

 ヒカル「ギンガクロスシュート‼」

 

 ギンガは上空のドギュー目掛けて必殺光線『ギンガクロスシュート』を放ち、それと同時にゼロも両腕をL字に組んで必殺光線『ワイドゼロショット』を放つ!

 

 上空で二つの光線はドギューを挟み込むように直撃。二つの光線に文字通り“挟み撃ち”にされたドギューは空中で大爆発。

 

 ゼロ「(右親指で口元を擦りながら)ヘッ………汚ねえ花火だぜ。」

 

 ギンガと共にドギューを撃破したゼロは気障なセリフを吐いた後着地し、ギンガと共にソルの戦いを見守り始める。

 

 一方ソルは、殴り飛ばされたりなどタイショーに意外と苦戦していた。恐らく説得するために攻撃を控えているからであろう。

 

 海羽「お願いタイショー君、目を覚まして!」

 

 ソルはタイショーに掴みかかり必死に呼びかけるが、タイショーは「離せ!」とばかりにソルを叩き始める。洗脳されたが最後、誰の声も届かないのであろうか………?

 

タイショーは左肩を掴んでいたソルの腕を振り払い、顔や胸を叩いて吹っ飛ばした。

 

ソルは地面に落下した後即座に立ち上がり構えを取る。何か良い方法は無いのであろうか………?

 

 その時、海羽は何かが語り掛けているのを感じ始める。海羽はその声に耳を傾け始める。

 

 ???「も………もう………だめだ……体が勝手に………。」

 

 海羽「!タイショー君⁉」

 

 それはタイショーの声だった。どうやら善の心は完全に失ってなかったようだ。そのわずかに残った善の心がソルの心中に入り海羽に話しかけているのであろう。

 

 タイショー「やっぱり僕は、落ちこぼれの、ダメ怪獣だ………強くなれず、良いように扱われる運命なんだ………。」

 

 海羽「タイショー君は、ダメ怪獣なんかじゃないよ!!」

 

 タイショー「え?」

 

 海羽の叫びにタイショーは反応する。

 

海羽「タイショー君は、全然ダメ怪獣じゃないよ! だって……尻餅ついた真美ちゃんを心配してくれたじゃない! 怪我しているお母さんを心配してたじゃない! それに、学力も付いてきてるじゃない!………私、タイショー君は優しいし理解力もあるからとても凄いと思うよ!」

 

海羽の必死の呼びかけにタイショーは動きが止まる。気が付いたらソルは目から涙のような光が溢れ出ていた。

 

海羽は良くも悪くも涙もろく、それはソルに変身しても変わらないのである。

 

タイショー「……泣いてるの?僕のために。」

 

ソルは慌てて涙(?)を拭く。

 

海羽「うん。あなたはもっと強くなれるわ。その可能性を信じてるからこそ涙が出ちゃう……それに、女の子だもん。」

 

海羽の言葉を聞き、ソルの瞳を見たタイショーは再び自身の可能性を信じる気持ちが強くなったのか、完全に動きを止める。徐々に善の意識が戻りつつあるみたいだ。

 

ゼロ「…よくやったな海羽。」

 

ゼロはソルの元に歩み寄り肩に数回手を当てる。

 

海羽「ありがとう。」

 

ゼロ「今なら元に戻せるぜ。」

 

海羽「私に任せて。コスモスさんをヒントに新技が出来たから。」

 

そう言うとソルは数本前に出た後、両手を目に当てて優しい光を溜め、その両手を突き出してオーロラのような光線に変えて発射する。

 

海羽「ゴッデスピュアリファイ。」

 

ゴッデスピュアリファイ。それはソルが『ウルトラマンコスモス』の鎮静技『フルムーンレクト』をヒントに新しく身につけた技であり、オーロラのような優しい光で包み込み、怪獣の興奮を鎮めたり善の怪獣に取り付いた悪のエネルギーのみを消し去ったりなど様々な奇跡の効果を発揮するのだ。

 

 オーロラのような光に包まれたタイショーは赤黒いオーラを発散しながら小さくなっていく。そして元の等身大の姿に戻った。

 

 ゼロ「すごいじゃないかソル!」

 

 海羽「(自身の後頭部を撫でながら)エヘヘ……。」

 

 

 

 三人のウルトラ戦士は変身を解いた。そして真美達と合流する。

 

 真美達は別れを惜しみつつも、ウルトラマンにタイショーを送ってもらう事を決めた。

 

 タイショー「ありがとうございました。おかげで自分に自信がつきました。」

 

 真美「次合う時は、もっと強く、偉くなれてるといいね。」

 

 海羽「また遊ぼうね!(首かしげてピース)」

 

 タイショーは、特にお世話になった真美、海羽、早苗に礼を言う。

 

 早苗「タイショー君ならきっとなれるわ。だから、自分の可能性を信じて忘れないでね。」

 

 タイショー「うん!」

 

 その時、タイショーの目はいつもの輝きを取り戻しているように見えた。

 

 それは間違いなく、櫂達男性陣の勇気と、真美達女性陣の優しさが、彼に再び自信を持たせることに成功した証であろう。

 

 海羽は再びハートフルグラスを目に当てソルに変身する。そしてタイショーを掌に乗せ宇宙へ飛び始めた。

 

 櫂達は手を振り「さよなら」を言いながらタイショーを見送る。

 

 櫂「あいつ、学校をさぼってたらしいな。今後ちゃんと真面目に勉強するのだろうか…」

 

 早苗「大丈夫ですよ!タイショー君ならきっと。」

 

 早苗は櫂の方を振り向く。

 

 櫂「なぜそう言い切れる?」

 

 早苗「だってさっき勉強教えた時、ちゃんと理解してくれてましたから。それに、別れ際のタイショー君の瞳は輝いてました。きっと彼、「自分はもっと偉くなれる」という可能性を信じる気持ちが強くなったのですよ。」

 

 櫂「成る程、『可能性の瞳』か。ま、例え落ちこぼれでも、努力次第でやり直せる。それには人間も怪獣も無いって事だな。」

 

 櫂は早苗の言葉に納得する。

 

 ゼロ「櫂、お前の目も輝いてるぜ。お前きっと「悪を殲滅できる」という可能性を信じてるんじゃないのか?」

 

 櫂「え?……ま、まあ、そうだ。ゼロ、今後も頑張ろうぜ!」

 

 ゼロ「おう!」

 

 櫂はゼロと話した後、ひっそりと真美を見つめ始める………。

 

 真美「どうしたの?櫂君。」

 

 櫂「え?い、いや、何でも。」

 

 真美「そう。(笑顔で)お疲れ。」

 

 櫂は真美に「サンキュー。」とばかりにサムズアップを向けた。

 

 

 

 その頃、ゼロとギンガはどこか白い空間に立っていた。ギンガは何やらゼロに話があるらしくギンガスパークを通じてゼロアイの中のゼロを呼び出したのだ。

 

 ゼロ「ギンガ、何だ?話って。」

 

 ギンガ「君が今共に戦っている青年(竜野櫂)。彼からは何となくだが僅かに邪悪な物を感じる気がするんだ。」

 

 ギンガの思いがけない言葉にゼロは驚く。

 

 ゼロ「邪悪なものだと⁉」

 

 ギンガ「ゼロは特に何も感じなかったか?」

 

 ゼロ「ああ。奴は正義感高く人思いの好青年にしか思えないが………。」

 

 ゼロはどうやら、まだ櫂の二面性に気付いてないみたいだ。

 

 ギンガ「そうか………。だとしたら私の思い違いかもしれない………。」

 

 ゼロ「まあ、とにかく、今後も共に頑張って行こうぜ。」

 

 ギンガ「ああ………。」

 

 ゼロとギンガは分かれ、それぞれ変身アイテムへと戻って行った。

 

 ゼロアイに戻った後もゼロはモヤモヤが収まっていなかった。

 

 突然ギンガがあんなことを言い出すなんて………もしかしたら何かあるのかもしれない………。

 

 櫂「ゼロ?どうした?おーい。」

 

 ゼロ「⁉おっと、どうした?櫂。」

 

 櫂「お前も戦い疲れてるんだな。ま、今日は休もうぜ。明日はライブだし、今後襲って来る敵にも備えてな。」

 

 ゼロ「……おう、サンキュー。」

 

 やはり、この青年が邪悪なはずがない。ゼロはそういう確信を持ち続けていた。

 

 ヒカル「俺はこれからショウと合流しようと思います。」

 

 櫂「ああ。じゃあ今日はひとまずここで。」

 

 櫂はヒカルと別れを告げ、真美と共に帰り道を歩き始めた。

 

 

 

 [エピローグ]

 

一方、宇宙船テライズグレート内では、桜井敏樹が何やら宇宙人と話をしていた。

 

 敏樹「ドギューめ、口ほどにもない奴だ。しかし今回で、お前の能力とやらをじっくり拝見することが出来たぜ。」

 

 ???「この光線を浴びれば、どんなに善良な怪獣も思いのままですぞ!」

 

 敏樹「今回は破られてしまったが、なかなかの効力だな。」

 

 ???「でしょ~?今後はこの能力も有効に使えると思いますぜ。我が『アクマニア念力』は。」

 

 敏樹と交渉している宇宙人。それは緑の丸っこい身体に巨大な一つ目が特徴の『宇宙悪霊アクマニア星人』である。

 

 先ほどタイショーを暴れさせた光線は彼の洗脳光線『アクマニア念力』である。

 

 敏樹「良いだろう。今後も頑張りたまえ。僕の刺激のためにもね。」

 

 敏樹はアクマニア星人の能力を見込んだのか、新たな幹部宇宙人として働くことを許可した。

 

 アクマニア星人「光栄ですぞ。必ずしもウルトラ戦士どもを、フフフフフフ………。」

 

 新たな刺客が増えた敵勢。今後も激しい戦いが続きそうである。

 

 

 To Be Continued………。

 

 

(ED:ウルトラの奇跡)




 読んでいただきありがとうございます。

 今回は後半戦第1話と言う事で比較的シンプルなものに仕上げ、ウルトラマンも本作の主役でもあるゼロとギンガのタッグの活躍を描きました。

 また、健二君と早苗ちゃんは今後も櫂たちの協力者として登場するかもしれません。

今後もウルトラ戦士達のタッグマッチ、驚きの展開や驚きのゲスト、敵キャラ等が登場していくと思いますので期待はほどほどに(笑)楽しみにしていてください。

 これからも本作をよろしくお願いします。

 ところで時事の話題ですが、ウルトラマンゼロとセーラー〇ーズが遂に結婚しましたね(笑)

 感想・指摘・アドバイス・リクエスト等をお待ちしています。


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第19話「怪獣使いと少年少女」

 今回、満を持してあの“怪獣使いの男”が初登場です!

 また、最後には驚き&まさかの展開が待ってます。

因みにタイトルは、割と印象深い『帰ってきたウルトラマン』のあのエピソード(敢えて何かは言いません笑)のオマージュです。


 (BGM:英雄の詩)

 

 ウルトラマンゼロ達がドギューと戦う前日。そう、ヤプール総攻撃による大決戦が展開された日、ヤプールが敗れた後、地球目前の宇宙空間で浮遊している宇宙船『テライズグレート』では、桜井敏樹が『テロリスト星人バスコ』と『メフィラス星人キョウ』に何やら指令を送っていた。

 

 バスコ「何だい?敏樹の旦那。」

 

 キョウ「ヤプール亡き今、新たな作戦でも思いつきましたか?」

 

 すると敏樹は、二人に『テラバトルナイザー』(第8話参照)を手渡す。

 

 敏樹「ヤプールは死んだ。だがしかし、奴は気前が良い事に作り置きを置いて逝ってくれたのだ。その作り置きの一部をお前たちに与えよう。」

 

 バスコ「作り置きだあ⁉」

 

 キョウ「ヤプールの事だ。きっと素晴らしい物を残してくれたに違いない。」

 

 敏樹「ああ。ある意味“明後日攻め込むには”相応しい奴らだ。有効に扱えよ?」

 

 一体敏樹は、二人に何を与えたのだろうか………?

 

 

 

 そして、ゼロ達がドギューと戦い、タイショーを救う戦いをしていたほぼ同じ頃、事件は起こっていた。

 

 とある中部地方ののどかで平和な田舎町。その町の線路を新幹線が走っていた。

 

 その新幹線はトンネルの中へと入ろうとしていた。

 

 平和な田舎町を快調に走る新幹線。もはや何も起こらないように思えた。

 

 だが、そこから少し離れた森林より、木を踏みつぶしながら一匹の生物が接近する!

 

 その生物は緑色のボディに、鶏冠のような巨大な背びれが特徴の超獣『鈍足超獣マッハレス』だ!

 

 マッハレスは遅めの足取りで新幹線の方へと一直線へと向かう。

 

 そしてトンネルの出口まで近付いたその時、マッハレスはトンネルを出たばかりの新幹線を蹴飛ばす!

 

 マッハレスに蹴飛ばされた車両は近くの岩山に激突し爆発。マッハレスは残りの車両も両手で持ち上げ地面に叩き付け破壊した。

 

 突然起きた参事。だがそれも束の間、今度は旅客機が飛んで来て、マッハレスの上空を通り過ぎようとしていた。

 

 するとマッハレスは、今度は上空を向いて旅客機目掛けて口から爆発性白色ガスを噴射。ガスを浴びた旅客機は上空で大爆発し木端微塵に吹き飛んだ!

 

 マッハレスは騒音と高速に動くものを極端に嫌う超獣なのである。なので地底から突如現れてはジェット機や新幹線を次々と破壊していくのだ。

 

 新幹線と旅客機を破壊したマッハレスは勝ち誇るかのように咆哮を上げる。そして気が済んだのか、その場で地面を掘り地中へと姿を消した。

 

 平和だった田舎町に突如起こった超獣による大参事。それはあまりにも唐突で早すぎたため、他のウルトラ戦士も気付けなかった。一体何人もの命が失われたのだろうか………。

 

 

 更に同じ頃、いくつかの都会街でも奇妙な出来事が起こっていた。

 

 なんでも、全国のあちらこちらで怪獣らしきものが一瞬にして現れ、一瞬にして消えるという不可思議現象が多発していると言う。

 

 一瞬なので被害はないものの、そもそも一瞬故にそれが怪獣なのかという疑問すら抱える人も多かったんだとか。

 

 そして現れては消えるを繰り返していく内に、その出現区域は、次第にある一つの場所に集中している様であった………。

 

 

 更に更に同じ頃、霞ヶ崎付近の岩山でも不思議な事が起こっていた。岩山の上空に突然、ワームホールのような穴が開き、中から一つの光と共に、青を基調とした巨大な宇宙船が現れたのである。

 

 船内では、何やら爽やかなイケメン顔の男性と髭を生やした中年の男性が会話をしている。

 

 二人とも青とグレーを基調とした隊員スーツと思われる服を着ている。

 

 「ようやく着いたみたいですね、ボス。」

 

 「ああ。」

 

 「謎の声の主……ここにはいないみたいだが。」

 

 「そうだな。しかし、ようやくここまで来れたんだ。徹底的に探すぞ。」

 

 「了解!」

 

 そういうと宇宙船は、霞ヶ崎の方へと飛んで行った。

 

 テライズグレートではないが、突如現れた宇宙船は何なのだろうか?そして、その船に乗っている人とは………?

 

 

 

 そして翌日の8月3日、麟慶大学夏休みライブが再開された!

 

 二日前、ヤプール総攻撃により中断になってしまったため、今回はその続きである。

 

 二日前と同じく、各学科の売店付きで、初めから観客が押し寄せる好スタートを切った。

 

 因みにこの日の朝、前日の大参事の事が新聞に載っていたこともあり、麟慶大学はライブで稼いだ金を被災地の寄付としても使う事にした。

 

 だが、この参事はあまりにも唐突だったため、新聞記事もマッハレスの仕業と知らず、新聞では『不慮の事故』としてとらえられていた。

 

また、ライブは午前中に終わる予定なので、これにより新田真美はライブの後、被災地ボランティアとして現地に行くことになったのだ。

 

 真美「と言うわけで、終わった後すぐ行くことになったわ。帰るのは深夜になりそう……ごめんね、櫂君。」

 

 櫂「いいよいいよ。頑張って来いよ。被災地ボランティア。」

 

 真美「うん。ありがとね。」

 

 真美は竜野櫂に詫びるが、櫂は気さくに真美を応援する。

 

 櫂「しかし、これが不慮の事故には思えないんだが………。」

 

 真美「確かに。それに各地で不可思議な現象も起きてるみたいだし…これ以上何も起こらなければいいけど………。」

 

 櫂と真美は、昨日の出来事を思い少し不安になりつつある。

 

 ゼロ(確かにただの不慮の事故で新幹線と旅客機が同時に爆破するはずが無い……これは何かある……絶対。)

 

 ゼロも嫌な予感を感じ始めていた。

 

 その時、豪快パイレーツのメンバーの一人でありキーボード担当のアイム・ド・ファミーユがどこか深刻そうな顔で歩いて来た。

 

 真美「あら、アイムちゃん、どうしたの?」

 

 アイム「…今朝、ニュースを見たんです。……不慮の事故により無くなった者の親族達が悲しんでました………。」

 

 彼女は今朝のニュースの惨状を見て、同情により少しブルーになっていたのだ。

 

 アイム「一体誰が…あんな酷い出来事を引き起こしたのでしょう………。」

 

 鎧「そんなに深刻になる必要無いんじゃないですか?」

 

 その時、豪快パイレーツのドラム担当であり、ウルトラ・怪獣オタクの伊狩鎧が気さくに話しながら歩いて来る。

 

 鎧「もう既に、現場に捜索班が着いてるはずです。必ず原因は分かりますよ!」

 

 アイム「…そうですね。」

 

 鎧の前向きの励ましにアイムはひとまず笑顔を取り戻す。

 

 海羽「そうだね、とりあえず今は楽しもう!ね?(首をかしげる)」

 

 眞鍋海羽は櫂と真美の肩に手を置き、鎧とアイムの方を向いて明るく語り掛ける。

 

 真美「………そうだね。とりあえず楽しもっか。」

 

 櫂「俺達はトリだしな。よーし、燃えてキター!」

 

 鎧「良いですね~、じゃ、早速行きましょー!」

 

 ゼロ「フッ、どうやら好調になったみたいだな。楽しんで来いよ」(ま、今はとりあえず考えるのを止めとくか。)

 

 櫂と真美達も了解する。そして四人でライブステージの方へと向かい始める。

 

 因みにこの日は、まず残りバンド3組がライブをし、その後『特急レインボー』の演奏で真美が『飛び立てない私にあなたが翼をくれた』を歌い、最後にトリとして櫂が『豪快パイレーツ』の演奏で『青い果実』を歌う事になっている。

 

 ライブは大盛況の中快調に進み、櫂と真美が歌う時は特に盛り上がった。

 

 本ライブのトリだからと言うのもあるが、何より麟大一人気と信頼を集める美男美女が歌うためである。

 

 因みに櫂と真美は昨年、大学内にて開催された『ミスター&ミス麟大コンテスト』で、当時一年ながらグランプリを獲得しているのだ。

 

 そんな凄い二人がライブのトリを務めるのであるから盛り上がるのも無理は無いであろう。

 

 更に言えば、櫂はウルトラマンゼロに変身できるわけだから尚更である。

 

 「櫂君も真美ちゃんも素敵~!」

 

 「ある意味麟大のG5プリンスとG3プリンセス的存在だな!」

 

 学生たちは盛り上がる。因みに『G5プリンス』と『G3プリンセス』とは、この世界の人気アイドルユニットである。

 

 やがて、トリである櫂が歌い終え、見事なフィナーレを飾った………。

 

 だが、会場の歓声の盛り上がりの勢いは静まっていなかった。

 

 「もう一回!もう一回!もう一回!………」

 

 なんと、アンコールが始まった。

 

 これには櫂もテンションがMAXでアンコールに応える………と、思われたその時、

 

 “ドンッ”

 

 突然櫂は、機嫌悪そうな顔でステージの床を強く踏みつける!音はマイクまで通じて、会場中に響き渡った。

 

 予想外の櫂の行動に学生たちはビクつき、ざわつき始める。

 

 すると櫂が語り出した。

 

 櫂「お前ら………何考えてんだよ⁉」

 

 明らかに怒っている………。学生の中には焦る者もいれば、「もしかしたら過労で疲れてるんじゃないのか?」と心配する者も多数見られる………。

 

 櫂はなおも語り続ける。

 

 櫂「今日は一昨日の代理日なんだぞ⁉………代理日だから………………二倍楽しまなきゃなんねーよな⁉」

 

 怒り顔だった櫂は突然元の爽やかな笑顔に戻る。

 

 どうやらさっきの怒りはちょっとした脅しパフォーマンスだったようだ。

 

 それを知った学生たちは再び歓声を上げる。

 

 櫂「もう一丁行きますか男子ー‼」

 

 「おー‼」

 

 力強い歓声が響く。

 

 櫂「もう一丁行きますか女子ー‼」

 

 「いえーい!」

 

 黄色い歓声が響く。

 

 櫂「よーし、じゃあ行くぜ麟大。」

 

 「「いえーい‼」」

 

 男子と女子の歓声が合わさって響く。櫂達も既にスタンバイが完了していた。

 

 櫂「それじゃあもう一丁、派手にいくz………」

 

 “ズドーン”

 

 櫂「⁉うおああぁぁっ⁉」

 

 「キャッ!」

 

 「な、何だっ⁉」

 

 櫂が気合いの叫びと共にアンコールを始めようとしたその時、突然大きな地響きが起こり全員驚愕する。

 

 真美「………一体何なの?」

 

 海羽「…あれは⁉」

 

 海羽が指差した方向に何人か振り向く。

 

 振り向いた先の向こうには、一匹の生物が現れていた。

 

 その生物は、四角めのボディに、頭部にはカラフルな斑点が着いた三日月状の突起が付いている変わったフォルムをしている超獣『騒音超獣サウンドギラー』だ!

 

 奴は『音』をエネルギー源にしており、音を食べると言う変わった習性を持った超獣である。

 

 昨日、世界各地に現れては消えていた者の正体はこのサウンドギラーであり、エネルギー蓄積のために世界各地の騒音が発生する場合に現れては消えるを繰り返していく内に、やがて出現場所を比較的騒音が多い日本に集中し、そして遂にはエネルギーが満タンになり実体化を果たしたのだ。

 

 超獣出現に学生たちはパニックを起こしながらも安全場所へと避難を始め、我先にと駆け始める。

 

 アイム「もしかして、昨日の事件の犯人はあいつが………?」

 

 鎧「いいえ、サウンドギラーは音が大好きなので違います。」

 

 アイムは新幹線と旅客機の事故の犯人をサウンドギラーと疑うが、サウンドギラーの習性を知っている鎧はそれを否定する。

 

 サウンドギラーはビルを薙ぎ払いながら麟慶大学へと向かう。まるで「もっと騒音(ライブ音声)を出せ!」と煽っている様だ。

 

 マーベラス「俺達のライブを騒音扱いかよ…ふざけやがって………!」

 

 豪快パイレーツのリーダーであり、メインボーカル&ギター担当のキャプテン・マーベラスは苛立ちを感じる。

 

 学生たちが避難していく中、真美は逃げる際に転んで怪我をした女子大生を庇いながら避難している。

 

櫂「どうやら戦うしかないみたいだな。」

 

ゼロ「ああ。一丁やりますか!」

 

櫂「行くぜゼロッ!」

 

遂にゼロと櫂は戦う決心をし、櫂は変身に移ろうとする…。

 

その時、

 

“ズドーン”

 

櫂「うぉあっ⁉︎……今度は何だ⁉︎」

 

櫂は変身しようとしたところ、新たな地響きに体勢が崩れる。

 

その時、サウンドギラーの後ろ側にもう一匹生物が現れた。

 

そいつは、昨日大暴れをしたマッハレスである!

 

鎧「うおおぉぉあー!まさかマッハレスまで現れるなんて〜!」

 

鎧はマッハレス出現に興奮する。

 

何しろ、対をなす習性を持つ超獣が同時に出現したのだから。

 

マッハレスも恐らくライブの音声に反応し、会場を破壊するために現れたのだろう。

 

アイム「では……昨日の事故の犯人はあいつが……?」

 

アイムは鎧からマッハレスの習性を知り、新幹線と旅客機を襲った張本人だと察する。

 

すると、サウンドギラーはマッハレスの出現に気づいた瞬間、マッハレスの方を振り向く。

 

そして、互いに睨み合いを始めた。バトルが起こるのだと思われる。

 

何しろサウンドギラーとマッハレスはそれぞれ「騒音が好きな超獣」と「騒音が嫌いな超獣」。ウマが合わず対立するのも当然である。

 

 二体は、同時に咆哮を上げたと共に互いに駆け寄り始める。

 

そして激しく組み付き殴り合いを始める。街中で『大怪獣バトル』ならぬ『大超獣バトル』が始まった!

 

 それも、ライブ音声(騒音)を駆けた争いなのだから困った話ではある。

 

 サウンドギラーはマッハレスの左横腹に右横蹴りを打って引き離した後腹部に横振りの頭突きを打ち込んで後退させる。

 

 その後接近し、更に攻撃を加えようとするが、マッハレスはカウンターの右前蹴りを腹部に打ち込み、更に顔面の左側面にパンチを打って後退させる。

 

 その後マッハレスは長い尻尾を振るって攻撃を仕掛けるがサウンドギラーはそれを掴んで受け止め、横に放り投げる。

 

 ゼロ「怪獣同士の戦いか………“あの男”を思い出すな…。」

 

 ゼロはとある人物を思い出してるようだった

 

 真美「あのまま同士討ちで倒れてくれたらいいけど………。」

 

 真美が願い始めたその時、

 

 櫂「…ん?あれは何だ?」

 

 櫂は何かに気付く。真美や海羽もその方向を振り向いた時、唖然とする。

 

 キョウ「マッハレスを引っ込めろよ!今回の作戦はサウンドギラーの方が有効的なんだ!」

 

 バスコ「まーたチマチマした作戦かよ⁉ 手あたり次第騒音の場所を破壊した方が効率的だ!」

 

 キョウ「やれやれ、いつもそうやって計画性の無い破壊活動ばっかり……!」

 

 バスコ「んだとぉー⁉」

 

 そこには、テロリスト星人バスコとメフィラス星人キョウが喧嘩を始めていた。

 

 どうやらサウンドギラーはキョウのもので、マッハレスはバスコのものだったみたいだ。

 

 敏樹が二人に送ったヤプールの置き土産とはこの二体の超獣だったのである。

 

 「有効的に使え」と命じて与えたはずが、二人は同時に召喚してしまったため、このようないざこざが生じてしまったのである。

 

 バスコ「えーい!お前なんかラッキョウに埋もれろ!ラッキョウに!」

 

 キョウ「何ぃー⁉ お前なんかその切れ味抜群のなんちゃらソードでビー玉ばかり斬っとけ~!」

 

 バスコ「ぅおーい!それ言うんじゃねー!同胞のトラウマが………!」

 

 ………とまあ、こんな感じで二人の喧嘩は取っ組み合いにまで発展してしまっている。

 

 意見の食い違いで喧嘩をする二人の宇宙人と、そんな二人とシンクロする様に争う彼らが使役する超獣二体。その光景を見てみると少し可笑しなものである。

 

 「ペットは飼い主に似る」と言う言葉はあながち間違っていないみたいだ(笑)

 

 だが、これ以上二体を放置しておくと被害が拡大するかもしれない。

 

 海羽「と、とりあえずあの二体を止めないと………私、行って来る!」

 

 海羽は懐から『ハートフルグラス』を取り出し、一回転して上に揚げた後目に当てる。

 

 グラスを目に当てた海羽は跳躍し、赤とピンクの光に包まれ巨大化し『ウルトラウーマンSOL(ソル)』に変身完了し着地する。

 

 ソルは土煙を上げながら組み合う二体の超獣に駆けて接近する。

 

 だが、ソルが跳び付こうとした時、サウンドギラーと組み合っていたマッハレスは「女は引っ込んでろ!」とばかりに張り手でソルの胸を突き飛ばす。

 

 正に、喧嘩の仲裁に来た女子高生を「邪魔だ!」と突き飛ばす不良みたいである。

 

 吹っ飛ばされたソルは一旦立ち上がり、立ち止まり二体を見つめ始める。

 

 海羽「あ~もう、これじゃあ近付き辛いよ~!」

 

 ソルは自分をそっちのけで争い続ける二体を見て困り果てる。

 

 櫂「俺も行くぜ海羽!」

 

 櫂がゼロアイを召喚しようとした時、彼の目の前に数体の『ヤプールコマンド』が現れる。

 

 櫂「チイッ…お前ら…邪魔すんな!」

 

 櫂はヤプールコマンド軍団の相手を始める。

 

 

 

 だがその頃、テライズグレートから此方の様子を伺っていた敏樹はあきれ顔である。

 

 敏樹「…ったく、あいつらに二体を与えた俺が馬鹿だったよ………。アクマニア星人!」

 

 アクマニア星人「了解しやっさー!アクマニア念力照射‼︎」

 

 『宇宙悪霊アクマニア星人』は、敏樹の命令に独特な返事で答えた後、地球向けて大きな一つ目から『アクマニア念力』を発射する!

 

 アクマニア念力は組み合っているサウンドギラーとマッハレスに降り注ぐ!

 

赤黒い渦のような光線を浴びた二体は争いを止め、同時にソルへと視線を向ける。

 

海羽「!またあの光線が…⁉︎」

 

ソルが動揺してる間にも、二体はソル目掛けて駆け寄り始める!

 

どうやらアクマニア念力の力により、二体は今ではアクマニア星人の意のままなのであろう。

 

バスコ「あ゛ー!勝手に俺たちの超獣を〜!」

 

キョウ「やれやれ……。」

 

バスコとキョウも喧嘩を止め、操られる二体の戦いを見つめ始める。

 

ソルは二体目掛けて掛けながら跳んで、先陣を切って来たサウンドギラーの肩を踏み台にして跳躍し、マッハレスの首に脚を挟んで『フランケンシュタイナー』で地面に叩き付ける。

 

 その後寄って来たサウンドギラーの振り下ろして来た右腕を左チョップで弾き腹部に右肘を叩き込んだ後、反対方向のマッハレスの腹部に右前蹴りを打ち込む。

 

 だが善戦も束の間、その直後背後からサウンドギラーが体当たりを仕掛ける!

 

 頭突きのタックルをモロ背中に受けたソルはたまらず吹っ飛び、反対方向にいたマッハレスがそれを受け止める。

 

 マッハレスは二発ソルを殴った後、サウンドギラーの方へ投げ飛ばし、サウンドギラーは飛んでくるソルの背中を叩き、地面に叩きつける。

 

 相性が合わない事でさっきまで争っていた二体が一転、完璧なまでの連係プレーで一人のウルトラウーマンを圧倒していく………アクマニア念力の力は絶大なのだ。

 

 二体はソルをそれぞれ左右から腕を掴んで起き上らせた後、左右それぞれから同時に横蹴りを腹部に打ち込む。

 

 その後マッハレスが横降りの頭突きをソルの腹部に打ち込んでサウンドギラーの方へ吹っ飛ばし、サウンドギラーはソルを受け止め羽交い絞めにしたところでマッハレスが身体をぶつけるようなタックルを繰り出し、その後二体同時にそれぞれ左右から挟み込むようにタックルを決める。

 

 二体の重量を活かした攻撃を喰らったソルがふらついた隙に、二体は同時にソルの背中を殴り吹っ飛ばす。

 

住民や学生たちの声援も空しく二体に圧倒されていくソル。その光景は正に二人の不良がか弱い女子高生をいじめている様にも見えるから実に見苦しい物である。

 

 怪獣を超えた力を持つ『超獣』。それが二体がかりで連携するのだから圧倒されるのも無理なく、厄介な話である。ソルはもはや勝ち目がない状況まで追い込まれていた。

 

 ソルは何とか立ち上がろうとするが。サウンドギラーは頭部からリング光線を発射してソルを拘束した後両手を突き出し、指先からミサイル弾を乱射する。

 

 ミサイルの雨あられを成す術なく浴びるソル。ダメージにより再び仰向けに倒れ込んだ。

 

 櫂「海羽!……くそ~!」

 

 櫂は苦戦するソルを見て、怒りと共にやや焦り気味にヤプールコマンドへの攻撃ペースを上げる。

 

 だがそうしている隙にも、二体は仰向けに横たわるソルに接近し、サウンドギラーは馬乗りになり、マッハレスはしゃがみ込み、そしてなぶる様に殴るなりして追い打ちをかける。

 

学生たちが不安になりながらもソルに声援を送るが、中には「女の子相手に…」と言う風なブーイングすらいくつか飛び交い始めていた。

 

 櫂の相手しているヤプールコマンドはあとわずかになっていたが、全滅させた後だと手遅れのリスクが高い状況だった。

 

 櫂「どうすりゃいいんだぁぁー‼」

 

 櫂の叫びが響いたその時、

 

 「はっ、あれは何⁉」

 

 一人の学生が何かに気付く。その方向に振り向いてみると、遠くから何やら一機の宇宙船が飛んで来る。

 

 徐々に近づいて来るうちにその宇宙船の姿が分かり、更にそれは砲塔が付いてたりと戦闘用の宇宙船の様である。

 

 それは青を基調としたカラーの大型宇宙輸送船『スペースペンドラゴン』である!

 

 スペースペンドラゴン。それは宇宙開拓時代を迎えた近未来で必要な豊富な資源の輸送や惑星開拓等のスペースミッションを目的に結成された宇宙規模の組織『ZAP SPACY』の宇宙船である。

 

 惑星間の輸送任務等を主とするが、元は対怪獣用の戦闘艦でもあるため攻撃用の武器も設置されているのだ。

 

 ペンドラゴンを操縦しているのは、スペースペンドラゴンの船長『ヒュウガ(日向浩)』である。

 

 ヒュウガ「ようやく見つけることが出来た。派手に暴れてるな……ワイバーンミサイル発射‼」

 

 ヒュウガはソルを叩きのめすマッハレスとサウンドギラーに狙いを定め、『ワイバーンミサイル』を一斉発射!

 

 ミサイルの一斉攻撃を受けた二体は怯む。ソルはその隙に馬乗りになっていたサウンドギラーを蹴りで吹っ飛ばし、転がってその場から脱し立ち上がる。

 

 櫂「………何だ?あの宇宙船は………。」

 

 櫂はペンドラゴンを見上げる。

 

 二体はペンドラゴンを狙い始め、サウンドギラーはミサイル弾、マッハレスはガスを噴射するが、ヒュウガの操縦するペンドラゴンはそれをかわしていく。

 

 ソルはペンドラゴンを狙う二体を止めるべく二体に背後から跳びかかり左右それぞれ同時にヘッドロックをかけるが、超獣二体のパワーは凄まじく振り飛ばされそうになる。

 

 二体の猛攻を受けたダメージによるものか、ソルのカラータイマーは赤く点滅を始める………。

 

 ヤプールコマンドを全滅させた櫂が二体に手こずるソルを見上げていたその時、一人の人間が櫂の前に降り立つ。

 

 櫂が少し警戒する中、振り向いたその青年はZAPのクルーであり、怪獣を操り戦う者『レイオニクス』である青年『レイ』だ!

 

 彼は一見普通の地球人だが、その正体は、自身の後継者を決めるため、『四次元怪獣ブルトン』で『惑星ボリス』を怪獣無法惑星に変えたり、『惑星ハマー』にレイオニクスを集結させ、勝ち残った者を後継者にしようと企んだりなどして宇宙に大怪獣バトルを仕掛けた張本人『究極生命体レイブラッド星人』の遺伝子を持つ地球人であり、レイブラッド星人『レイモン』に覚醒・変身する事も出来る。

 

 彼は、レイブラッド星人の遺伝子を持つが故に、その邪悪な血がもたらす闘争本能と葛藤しながらも仲間との協力もあり、暴走を克服後レイブラッド星人を倒し、宇宙での大怪獣バトルに終止符を打っている。

 

 その後もウルトラ戦士達と共に怪獣墓場で『ウルトラマンベリアル』率いる怪獣軍団と戦ったり、ゼロやその仲間たちと共に『惑星チェイニー』で偽ウルトラ兄弟たちと、『ビートスター天球』でビートスター率いるロボット軍団と戦っている。

 

 そして今回、彼もソルの声に呼ばれ、謎の光に導かれ、ヒュウガと共に駆け付けて来たのだ。

 

 だがしかし、彼らだけの力では時空を越えるのは不可能。ウルトラ戦士か何者かが彼らをここに連れて来たのであろうか………?

 

 ゼロ「おお、レイ!久しぶりだな!」

 

 レイ「ああ、久しぶりだな。ゼロ。」

 

 櫂「え?あ、あの~ゼロ、あいつと知り合いなのか?」

 

 鎧「何言ってるんですか櫂さん!レイさんですよレイさん~!」

 

 ゼロはレイとの再会を驚きつつも喜び、鎧は本物のレイに会えたことで興奮する。

 

 ゼロ「お前もソルに呼ばれて来たのか⁉」

 

 レイ「ソル?……今戦っているあの娘(こ)の事だな。どうやら今は再開を喜んでる場合じゃなさそうだ。」

 

 そう言うとレイは、『ネオバトルナイザー』を取り出す。これは、怪獣を操るアイテム『バトルナイザー』が進化した姿であり、最強クラスのレイオニクスの証でもあるのだ。

 

 学生たちもレイの方に注目が集まる。

 

 レイ「ここは俺が行く!」

 

 そう言うとレイはネオバトルナイザーを揚げる!

 

 (BGM:レイの戦い)

 

 “ピン ピン ピン”

 

 《バトルナイザー モンスロード!》

 

 ネオバトルナイザーはアナライズ音と共に下部の三つのボタンが発光し、中央のプレート部が左右に開く。

 

 そして中からカードのようなエネルギー体が出現し、中央のウインドウ部にスキャンされた後遠方へ飛んで行く。

 

 エネルギー体は徐々に実体化していき、やがて怪獣の姿となった。

 

 現れたのは、知らない人はいないであろうあの強豪怪獣。

 

前方に大きく彎曲した首、三日月状の巨大な角、太く大きな尻尾が特徴の怪獣『古代怪獣ゴモラ』だ!

 

 ゴモラはレイの主力パートナー怪獣であり、これまで惑星ボリス、惑星ハマー等で様々な強敵と戦い勝利してきた。

 

 また、動きも以前のゴモラでは考えられない軽快かつダイナミックな所も特徴であり、正に怪獣の粋を超えた最強クラスの強さを持っている怪獣であり、ある意味“怪獣界のウルトラマンゼロ”と言えよう(笑)

 

 ゴモラは土煙や土砂を天高く巻き上げ着地して咆哮を上げる。

 

 ゴモラの登場に学生たちは驚愕し、中には彼が味方と知らず、新たな怪獣が出たと怯える者もいる。

 

 ヒュウガ「大丈夫。あの怪獣は見方だ。」

 

 いつの間にかペンドラゴンから降りていたヒュウガが学生たちに語り掛ける。

 

 「おじさま、何なの?あのイケメン…。」

 

 一人の女子生徒がヒュウガに問いかける。

 

 ヒュウガ「(お、おじさまって………)彼は………怪獣使いだ。」

 

 レイ「行け!ゴモラ!」

 

 レイの指示でゴモラは二体目掛けて接近する。

 

 二体はまたしてもソルを仰向けに倒し殴り始めている。

 

 ゴモラは駆け寄りながらマッハレスの左肩に右足蹴りを叩き込んで吹っ飛ばし、続けてサウンドギラーに掴みかかりソルから引き離した後、腹部に左膝蹴りを打ち込み、続けて角を活かした横降りの頭突きを腹部に打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 その後ゴモラはサウンドギラーに一回転しての尻尾攻撃を叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 ゴモラはソルに歩み寄る。ソルは少し驚くが、ゴモラが手を差し伸べた時察する。

 

 海羽「私を………助けてくれ…た……?」

 

 ソルはゴモラの手を借りて立ち上がる。

 

 海羽「(首をかしげて角を撫でながら)ありがとね、ゴモちゃん♡」

 

 ソル(海羽)に礼を言われ、ゴモラは「礼を言われる程でもないぜ…」とばかりに頬を少し赤らめる。彼女のキュートさは怪獣をもメロメロにしてしまうのであろうか………?(笑)

 

 レイ「(ゴモちゃんって………)戦え!ゴモラ!」

 

 海羽「行くよ!ゴモちゃん!」

 

 レイの声を受けゴモラはソルと共に構えを取る。

 

 そして同じく並び立つ二大超獣向けて駆け寄り始める。

 

 (BGM:エターナル・トラベラー)

 

 ゴモラVSマッハレス、ソルVSサウンドギラーとそれぞれの戦いが始まる。

 

ソルはサウンドギラーの振り下ろして来た右腕を受け止め、「えい、とうっ!」と言う掛け声で右脇腹に左横蹴りを二発打ち込む。

 

 その後胸部に右肘を打ち込んだ後、一回転しての右足払いを左足元に打ち込んで転倒させた後、「それーっ」と言う掛け声と共に跳躍して仰向けに倒れるサウンドギラーに座り込むように伸し掛かる。

 

 ゴモラは先手必勝として跳躍してマッハレスの胸部にドロップキックを浴びせる。

 

 その後マッハレスが怯んだ隙にゴモラは接近し、左横降りの左拳を顔面に、右拳を腹部に打ち込んだ後跳躍しての角を活かした体当たりを胸部に浴びせて吹っ飛ばす。

 

 ゴモラは再び接近するが、振り下ろした右腕を受け止められ、右腕で殴り飛ばされる。

 

 レイ「負けるな!ゴモラ!」

 

 レイの叫びでゴモラは気合の雄たけびを上げ、マッハレスに跳び付く。

 

 そしてマッハレスの振って来た右腕を身体を反らしてかわした後、腹部に頭突きを繰り出し、続けて左足、右足と前蹴りを打ち込み、それによりマッハレスが屈んだ隙に頭から掴んで投げつけて地面に叩き付ける。

 

 レイのゴモラはこれまでゼットンやタイラント、キングジョーブラック等の強敵と戦い倒している。いわば通常の怪獣には考えられない次元の違う戦闘力を持っているため、例え超獣が相手でも後れを取ることは無いのだ。

 

 海羽「ゴッドスラッシュ!」

 

 ソルは左拳を腰に右手を突き出し『ゴッドスラッシュ』を数発発射する。矢尻型の光弾を身体に数発受けたサウンドギラーはダメージを受け怯む。

 

 ソルは今度は駆け寄りながら両手を赤とピンクの光で覆った『ライトニングハンド』でサウンドギラーに手刀を浴びせる。

 

 左右斜め、右横一直線にと火花を散らせながら手刀を炸裂させた、腹部に右横蹴りを浴びせた後、ライトニングハンドで挟み込むようにサウンドギラーの身体を掴む。

 

 海羽「ハイスピンサンダー!」

 

 ソルはライトニングハンドで身体を掴んだ状態で相手に赤とピンクの電撃を流し込む『ハイスピンサンダー』を浴びせる!

 

 サウンドギラーは大ダメージを受けグロッキーとなった。

 

 マッハレスは大きく回転して尻尾攻撃を繰り出す。ゴモラも真似する様に一回転して尻尾攻撃を繰り出す。

 

 両者の尻尾は激突するが、尻尾の力だとゴモラの方が上だったみたいで、マッハレスはダメージを受けたような素振りを見せる。

 

 その隙にゴモラは再び一回転し、マッハレスの腹部に強烈な尻尾の一撃を浴びせ転倒させる。

 

ゴモラはうつ伏せに横たわるマッハレスに接近する。

 

そしてマッハレスの大きな背ビレを両手で鷲掴みする。

 

“ブチ ブチ ブチッ”

 

ゴモラは怪力でマッハレスの背ビレを力一杯引きちぎる!背ビレは火花を散らしながら千切れた。

 

ゴモラは千切った背ビレを得意げに持ち上げ、そして投げ捨てた。

 

だが、そんなスプラッタな光景に、戦いを見守る学生達の中には興奮する男子もいれば、思わず「きゃあっ!」と悲鳴を上げて目を覆ったり顔を背けたりする女子も存在していた。

 

そう、怪獣の戦い方とはウルトラ戦士以上にパワフルかつワイルドなのだ!

 

立ち上がったマッハレスはだいぶ弱っている。ゴモラはマッハレスに駆け寄り右膝蹴りを腹部に打ち込み、それにより屈んだところで頭を左手で掴んで顔面に数回右拳を打った後、右足で顔面を蹴り上げ、更に跳躍し角を活かしたタックルを胸部に打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 ゴモラは跳躍して一回転し、18番の打撃技でもある尻尾での浴びせ蹴り『大回転打』を叩き込む!

 

 強烈な打撃を頭部に受けたマッハレスは数回回転しながら吹っ飛び地面に落下する。

 

 それを見たソルもそれを真似るかのように跳躍して一回転し、右足での浴びせ蹴りをサウンドギラーの頭部に叩き込む。

 

 サウンドギラーも数回回転しながら吹っ飛び地面に落下した。

 

 サウンドギラーはふらつきながらも立ち上がり、最後の力を振り絞って両手の指先から渾身のショック光線を発射する!

 

 ソルは背筋を伸ばした後、両手を胸の前でクロスし、それを左腰に移しながら左足をアキレス腱を伸ばす様に後ろへ伸ばして赤とピンクの光エネルギーを溜め、更にその動作でショック光線を避けたため光線はソルの背後で大爆発する。

 

 海羽「ミスティックシュート!」

 

 ソルは爆風を背に右拳を腰に、左腕を突き出して必殺光線『ミスティックシュート』を放つ!

 

 光線はサウンドギラーの腹部に直撃!サウンドギラーは大爆発し、ソルはその爆風を背に「イエイ!」と首を傾げて顎下に右ガッツポーズを決める。

 

 ゴモラは跳躍し、マッハレスの真上で一回転してマッハレスの頭部に強烈な尻尾の一撃を浴びせる!マッハレスはもう既にグロッキーとなりふらついている。

 

 レイ「ゴモラ!超振動波だ‼」

 

レイの叫びと共にネオバトルナイザーがオレンジの光を放つ。

 

 レイのトドメの指示を聞いたゴモラは着地した後、頭部の角にオレンジ色のエネルギーを溜め、マッハレスに突っ込む。

 

 そしてマッハレスの腹部に鼻先の角を突き刺して必殺の『超振動波(ゼロシュート)』を叩き込む!

 

 超振動波。それはゴモラが本来地面を掘削する際に使用するものだが、このように必殺光線としても使用できるのだ。地面を掘る際にどんなに硬い岩盤をも砕くために使用するだけあって破壊力は抜群であり、このように鼻先を相手の体に突き刺して体内に流し込む『ゼロシュート』の他にも光線技の様に遠距離攻撃としても使用できる。

 

 体内に超振動波を流し込まれるマッハレスはもがき苦しむ。そしてそのまま全身を発光させた後大爆発し、跡形も無く消し飛んだ!

 

 マッハレスを撃破したゴモラはレイの方を振り向き誇らしく勝利の雄たけびを上げる。

 

 ソルはゴモラの元へ歩み寄る。そして頭の角を撫でる。

 

 海羽「やったね、ゴモちゃん。」

 

 ソル達の勝利に学生たちは喜びの歓声を上げる。そして、レイにもお礼の言葉を掛ける者もいた。

 

 ゴモラはその歓声に反応して雄たけびを上げ、ソルは首を傾げて「イエイ!」と言い、右手ピースを突き出す。

 

 バスコ「おいおい、やられちまったぜ。」

 

 キョウ「せっかくのヤプールの置き土産を無駄にしてしまいましたね………。」

 

 バスコ「少なくともあの小娘(ソル)はもうエネルギーが僅かのはず………今のうちに巨大化して止めを………」

 

 バスコとキョウが巨大化しようとしたその時、

 

 ゼロ「よーお、お前ら、まだいたのか?」

 

 バスコ「‼………ゼロ!」

 

 キョウ「いつの間に⁉」

 

 櫂はいつの間にかウルトラマンゼロに変身して巨大化していた!驚く二人を見下ろすゼロ。

 

 ゼロ「わいどぜろしょっと。」

 

 “ビー”

 

 “ズドーン”

 

 バスコ・キョウ「ギャぁぁぁぁぁ‼」

 

 ゼロは軽い言い回しと共に、二人目掛けて腕をL字に組んで『ワイドショット』を発射し、バスコとキョウはその爆発により上空に吹っ飛ぶ。

 

 キョウ「こんなのありですかよー!」

 

 バスコ「俺達今回、いいトコ無しだったじゃねーか!」

 

 キョウ「それじゃ、一緒に、」

 

 バスコ・キョウ「嫌な感じ~‼」

 

 “キラーン”

 

 二人は空の彼方へ吹っ飛びやがて星となった。

 

 吹っ飛ぶ二人を見上げた後ゼロはゴモラとソルの元へ歩み寄る。

 

 ゼロ「よくやったな、ソル。ありがとな、ゴモラ。」

 

 海羽「エヘッ。じゃ、私はここで。」

 

 そう言うとソルは、光と共に小さくなっていき、海羽の姿に戻った。

 

 学生たちの方へ駆けて行く海羽。学生たちはそれを出迎える。

 

 「やったな眞鍋!よくやった!」

 

 「海羽ちゃんありがとう!お疲れ様。」

 

 海羽「みんな…ありがとう。」

 

 海羽は学生たちに笑顔を向ける。ゼロとゴモラはその光景をどこか嬉しそうに見下ろしている。

 

 だが、その時、

 

 ゼロ「‼危ない!」

 

 “ズドーン”

 

 勝利を喜ぶのも束の間、突如どこからか白い光線が飛んで来て、避けたゼロ達の足元で爆発する。

 

 ゼロ「………ッ、何者だ⁉」

 

 身構えるゼロとゴモラの先には、新たに現れた一匹の怪獣が立っていた。

 

 それは、一見『巨大魚怪獣ムルチ』の様だが鰭の色が黄色であり、下半身に青い結晶が埋め込まれており、目つきも瞳がある凶悪な面構えになっている。

 

そいつはムルチを強化改造した怪獣『巨大魚怪獣ゾアムルチ』だ!

 

先ほどの光線はゾアムルチが吐いた破壊光線である。

 

ゼロはゾアムルチを見た瞬間、「はっ!」と何かに気づく。ゾアムルチからは何やら強大なマイナスエネルギーを感じるのだ。

 

ガスト「ハハハ、ゼロ!流石に勘が鋭いな。」

 

突如、ゼロの目の前に『ブラック指令ガスト』が黒いオーラと共に現れる。

 

櫂「………ッ!てめえ!」

 

 櫂はガストを睨み付ける。何しろ以前彼の卑劣の作戦により自身の愛する者の好きな物が利用され、自身は追い詰められた事があるのだから。(第13話参照)

 

 ガスト「昨日、超獣により理不尽に殺された者たち。その人数があまりにも多かったものでな、そんな奴らの残留思念をムルチに注ぎ込むことで誕生したゾアムルチだ!」

 

 ゼロや真美達は、ゾアムルチの正体を知り驚愕する。そう。このゾアムルチは、マッハレスにより破壊され全滅した新幹線と旅客機の乗客の怨念によるエネルギーを、通常のムルチに注ぎ込むことで誕生したのである。

 

 ゾアムルチは咆哮を上げゼロ達に襲い掛かろうとする。その姿、顔つきは正に理不尽に殺された者の行き場のない恨み、怒りを表してるようだ。

 

 敏樹「なるほど…殺された人々の魂を怪獣パワーアップに利用してウルトラ戦士と戦わせる…いい。良い刺激だね~。」

 

 キョウ「正に見事ですな。」

 

 バスコ「キイ~!抜け駆けされた~‼」

 

 テライズグレートから見ている敏樹は感心し、ゼロにぶっ飛ばされてボロボロとなって帰ってきたバスコとキョウも悔しがりながらもガストの作戦に感心する。

 

 ガスト「ハハハハハ!どうだゼロ!お前は無意識に殺された人々を相手するに等しいのだ!そんな奴らと戦えるかな~?」

 

 ガストは勝ち誇る様に笑う。ゼロはしばらく下を向いて拳を握り止まったままである………。

 

 ……だが、しばらくするとゼロは顔を上げ、そしてゆっくりとゾアムルチ向かい歩き始める。

 

 ガスト「おや?とうとう殺す決心がついてしまいましたか?」

 

 ガストはゼロに挑発する様に言い放つ。

 

 ゼロ「………何言ってんだ……ありがとよ。またしても丁寧に説明してくれて。」

 

 ゼロの思わぬ言葉にガストは驚く。よく見てみるとその表情は何処か決断に満ちていた。

 

 ゼロ「俺はこいつを殺す気はない………だからと言ってやられるわけでもない………ただ、もし無念の思いを抱える人々の魂が怪獣になっちまったのなら………俺はそんな奴らの想いを受け止めた上で、奴らを楽にするまでだ!」

 

 (BGM:すすめ!ウルトラマンゼロ)

 

 そう言うとゼロはなおもゾアムルチに歩みを進める。ゾアムルチはゼロ目掛けて破壊光線を連射する。闇雲に乱射するその姿は正に怒り狂い暴徒と化した人々の様である。

 

 だが、ゼロは足元や自身の周りの地面に光線が当たり爆発が起こりながらもゾアムルチ向かい歩き続ける。

 

 そしてゼロは歩きながら静かに左腕のウルティメイトブレスレット右腕でを叩く。するとゼロはハープのような効果音と共に全身が青い光に包まれ姿が変わった。

 

 ゼロ「ルナミラクルゼロ。」

 

 ゼロはウルティメイトブレスレットの力により、鮮やかな青い体色が特徴の、ミラクルパワーを見せる青きウルトラマンゼロ(超高速戦士)『ルナミラクルゼロ』へとモードチェンジした!

 

 これはウルトラマンダイナとウルトラマンコスモスから授かった力によるもので、コスモスのルナモードとダイナのミラクルタイプの力を併せ持つ姿である。

 

 ゾアムルチは歩いて来るルナミラクルゼロになおも破壊光線を連射するが、ゴモラが光線の様に発射した超振動波を胸部に喰らい怯むことで光線の発射が止まる。

 

 ゾアムルチの光線が止まった隙にゼロはゾアムルチ向かって駆けて接近する。

 

 ゾアムルチもすぐさま体勢を立て直し、邪念を込めるような大振りの殴る、蹴る等で向かい打つが、ゼロはそれらを腕や脚等で素早く弾いて行き、そしてゾアムルチの右フックを左腕で受け止めた後腹部に右の掌を打って撥ね飛ばす。

 

 ゾアムルチは人々の怨念によりパワーアップしているはずなのだが、迷いなく戦うゼロの力はそれを凌駕している。

 

 そして、戦う姿はまるでコスモスのルナモードの様だが、ルナミラクルゼロはそれよりもスピーディーであり、撥ね飛ばす力も強力である。

 

 ゾアムルチは怯ますゼロに接近し右腕を振っての殴り込みを繰り出すがゼロはそれを左手で掴んで受け止め、そのまま左腕で抱え込むように締め上げる事でゾアムルチを自身から離れないように固定する。

 

 そしてゼロはそのまま右の掌をゾアムルチの胸に当て、光のエネルギーを開放する。

 

 すると、ゾアムルチは優しい光に包まれ、背部から何やら魂のような小さな光が次々と抜けて天に昇っていく。

 

 ゼロは、ルナミラクルゼロの力により、ゾアムルチに取り込まれていた怨念こもった人々の魂を浄化し、解放しているのだ!

 

 邪念のこもった人々の魂が抜けていくことにより、さっきまでもがき暴れていたゾアムルチは動きが次第に鈍って行く。

 

 ゼロ「レボリウムスマッシュ!」

 

 そして、ゾアムルチからすべての魂が抜けた所でゼロは右の掌をゾアムルチの胸に当てたまま衝撃派『レボリウムスマシュ』を打ち込み吹っ飛ばす。

 

 ガスト「バカな⁉俺の自信の作戦が、いとも簡単に………!」

 

 自身の作戦があっけなく失敗したガストは動揺を隠せない。

 

 眩い光となり、天に昇って消えていく魂を見上げる真美達。

 

 真美「これで………殺された人たちは少しでも救われたのかな。」

 

 真美は安心の表情で、どこか問いかける様に呟いた。

 

 ゾアムルチは立ち上がり、再びゼロ達に襲い掛かろうとする。人々の怨念の魂が抜けたとはいえ、まだムルチとしての凶暴さが抜けていないのだ。

 

 ゼロ「フルムーンウェーブ。」

 

 ゼロはすぐさまゾアムルチの周囲を高速回転しながら右手を突き出して鎮静光線『フルムーンウェーブ』を放ち、ゾアムルチを泡状に包み込む。

 

 するとゾアムルチは凶暴さが収まって動きが止まり、完全に大人しくなった。

 

 ゾアムルチを大人しくさせたゼロはゴモラの横に立ち、「決まったぜ!」とばかりにフィニッシュポーズを決め、学生たちも歓声を上げる。

 

 「櫂様ーゼロ様ー素敵~!」

 

 「すげー!怪獣を一瞬で大人しくさせるなんて!」

 

 「櫂君流石ー!」

 

 自信のあった作戦がいとも簡単に破られたガストは、空中で浮遊した状態で地団太を踏んで悔しがる。

 

 ガスト「えーいおのれゼロ!今度こそ…今度こそは貴様をー!」

 

 そう言うとガストは黒いオーラの様な物と共に姿を消した………。

 

 レイ「ゴモラ!よくやった。 さあ、戻れ。」

 

 レイはネオバトルナイザーを突き出す。するとゴモラはカードのようなエネルギー体へと変わり、ネオバトルナイザーへと飛んで行き入った。

 

 ゴモラが戻り、残ったのは通常の姿へと戻ったゼロと、大人しくなったゾアムルチだけとなった。

 

 櫂「あーあ、あんにゃろー(ガスト)、怪獣見捨てて行っちまったよ………。」

 

 ゼロ「そうだな………さ~て、こいつ(ゾアムルチ)をどうしようか………?」

 

 ゼロと櫂がゾアムルチをどうしようか悩んでいたその時、レイのネオバトルナイザーが一定の効果音と共に僅かな光を放つ。

 

 それを見たレイは何かを悟ったのか、ゾアムルチ向けてネオバトルナイザーを向ける。

 

 すると、ゾアムルチはオレンジ色の光に包まれ、やがてカードのようなエネルギー体へと変わり、レイのネオバトルナイザーへと飛んで行き収納された。

 

 なんとレイはゾアムルチを新たなパートナー怪獣にしたのである!

 

 かつてレイは、『古代怪獣ゴモラ』と『原始怪鳥リトラ(S)』の他に『宇宙怪獣エレキング』もパートナー怪獣として共に戦っていたが、エレキングはレイのライバル『キール星人グランデ』の怪獣『暴君怪獣タイラント』との戦いに敗れ消滅してしまったため、現在使用できる怪獣はゴモラとリトラだけであった。

 

 だが今回は、エレキングの後を継ぐ新たな水棲パートナー怪獣としてゾアムルチがレイの新たなパートナー怪獣となったのである。

 

 恐らくゾアムルチ自身も、既に自身は主人(ガスト)に捨てられたと悟り、レイのパートナーとして戦う道を選んだのであろう。

 

 レイがゾアムルチを回収する光景を見たゼロは少し驚く。その後変身を解いて櫂の姿に戻る。

 

 ゼロが変身を解く姿を見て、お礼の声を上げる学生も何人かいた。

 

 (フッ………そうだ。俺はみんなのために戦う…所謂良い事をしている良い奴なんんだ………もっと俺を称えるがいい………。)

 

 櫂はそう心で呟きながらそっと不敵な笑みを浮かべる。だがすぐさま良人モードに戻り学生たちの元へ駆けて行く。

 

 海羽「レイさん…さっきは、ありがとうございました。」

 

 レイ「ああ。良いって事だ。」

 

 ヒュウガ「君たちが無事で何よりだ。」

 

 真美「しかし素敵ですね。怪獣を操って戦えるなんて。」

 

 レイ「いや、ただ操ってるだけじゃない。俺とこいつら(ゴモラ達)は強い絆と信頼関係で繋がっている。だからどんな強敵とも戦い抜けてきたんだ。」

 

 櫂「へえ~、斬新ですね。」

 

 怪獣を操って戦うというこれまでに見ないタイプの戦士に櫂と真美は関心している。

 

 ゼロ「お前、より強くなってるな。」

 

 レイ「ゼロこそ。」

 

 ゼロとレイは再会を喜ぶ。

 

 ゼロ「しかし、何故ゾアムルチはお前のパートナーになったのだろうか?」

 

 レイ「多分、あいつ自身も居場所が無いと悟ったんだろう。それに………」

 

 レイはネオバトルナイザーを取り出し見つめ始める。

 

 レイ「このゾアムルチは、理不尽に殺された者たちの化身でもあるんだろ?なら殺さず、仲間として一緒に戦う…。それこそが、死んだ者たちへのせめてもの償いと思ってな。」

 

 レイの理由を聞いた海羽は、レイの人の良さに思わず涙を流していた。最も、そんなレイも初期は怪獣を道具としか見てなかった男だったのだが(笑)

 

 ゼロ「敵はこれからも次々と攻めて来るかもしれない。レイ、これからも頑張ろうぜ!」

 

 櫂「こちらからも、よろしくお願いします。」

 

 レイ「おう!」

 

 櫂はレイと握手を交わす。………だが、その間、櫂は心で何やら妙な事を呟いていた。

 

 (チッ………コスモスと言いこいつと言い、何で俺をイラつかせる者と戦わねばならねーんだ!………。)

 

 このように、心ではとんでもない事を呟いているが、表面は人当たりの良い好青年を演じている………彼の本性が爆発するのは一体いつなのであろうか………?

 

 この後、大勢の学生がレイに駆け寄り、質問攻めをしたりサインを求めたりなどしてレイを困らせたのを付け加えておこう。

 

 その後、ライブは再開された。だが、盛り上がったのはライブだけではなく、櫂と海羽がゼロとソルに変身し、学生を手や肩などに乗せると言うちょっとしたサービスイベントも披露したのである。

 

 そのイベントにはレイも参加させられ、そのためだけにゴモラを召喚したのは言うまでもない。

 

 ライブは大盛況の中、午後1時に幕を閉じた。

 

 レイとヒュウガは、世界各地に現れつつある怪獣を倒すべく、櫂達に一旦別れを告げ、ペンドラゴンで霞ヶ崎を後にした。

 

 レイはこれからもゼロ達と戦うであろう。ゴモラ、リトラ、そして、新たに仲間となったゾアムルチと共に………。

 

 そして真美も、災害ボランティアに出発しようとしていた。

 

 真美「それじゃ、行って来るね、櫂君、海羽ちゃん。」

 

 海羽「頑張ってね!」

 

 櫂「あまり無理しないようにな。」

 

 真美「ありがとう。おかげで心置きなく取り組めるわ。櫂君も海羽ちゃんも、殺された者たちの事を想って頑張ってくれたし、それに………その人たちは今でも生きてるから………レイさんの新しい仲間として。」

 

 真美は櫂と海羽に感謝の言葉と意味深な事を言う。

 

 海羽「おお、レイさんは“霊”(レイ)を仲間にしたわけだね!」

 

 真美「…プフッ、何それ海羽ちゃん。」

 

 櫂「海羽、親父ギャグ上手いじゃないか。」

 

 海羽「はれ?そうだっけ?」

 

 三人は笑い合った。そして、櫂と海羽は出発する真美を見送った。

 

 海羽「………いつしか、全国の人が悲しむことなく安心して暮らせるように戻れたらいいね。」

 

 櫂「ああ。レイの様に怪獣とも仲良くなれるほど平和になれたら良いかもな。」(あり得ないな………怪獣と仲間なんて………。)

 

 櫂と海羽は、新たに敵を撃滅するための決意を固めた。

 

 最も、櫂は心中とんでもない事を呟いているが………。

 

 彼は本性を露わにする時が、そう遠くないかもしれない………いや、今現在はまだ大丈夫であるのか?

 

 引き続きそっと見守って行こう。

 

 

 

 [エピローグ]

 

 一方、レイたちと一緒にワームホールをくぐってやって来た不思議な光は、霞ヶ崎上空を飛んでいた。

 

 ???「この街から邪悪なエネルギーを感じる………。私を読んだ謎の声の主は一体どこにいるのだろうか………?」

 

 そう言うと謎の光は何処かへと飛んで行った………。

 

 

 To Be Continued………。

 

 

 (ED:ウルトラの奇跡)




 読んでいただきありがとうございます!

 今回はレイが初登場と言う事で、10話以来に気合を入れて作成しました。

 大怪獣バトルも割と私の思い入れ深い作品でもあります。

さて、次回は14話以来の、やりたい放題回第2弾です!(笑)

ただ、14話と違ってギャグ回を意識して作成します。

また、14話以来にあの美少女宇宙人も再登場しますので乞うご期待を!(笑)

 感想・指摘・アドバイス・リクエスト等をお待ちしています。


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第20話「君に出会えたから」

 お久しぶりです。

 更新が遅くなってすいません。

 今回はギャグ回を意識したやりたい放題回第二弾です(笑)

 ウルトラマンマックス第16話、もしくはウルトラマンⅩ第16話を見る感覚でご覧ください(笑)

 (どちらかと言うと雰囲気や流れ的にウルトラマンギンガS第12話に近いかな………?)


(OP:英雄の詩)

 

 

 地球と月の間の宇宙空間で静止している侵略者の宇宙船・テライズグレート。

 

 そこでは、幹部宇宙人の一人・ナックル星人ゲドーが何やら張り切っている。

 

 ゲドー「遂に…ついに来たぜ!」

 

 敏樹「ん?一体何を見つけたってんだ?」

 

 ゲドー「あのヤローを遂に見つけたんだよ!明日攻め込むぜ…覚悟しやがれ!フフフフフ…。」

 

 桜井敏樹に言い放った後、ゲドーは何処へと去って行った。

 

 敏樹「…ま、いっか。」

 

 敏樹はあまり理解できないままゲドーを見送った。

 

 

 

 

怪獣使いの青年・レイの強力もあり、超獣二体を破った日の夜の11時頃、竜野櫂はアパートの入浴を終え自室に戻っていた。

 

 因みに櫂は、夏は入浴してその直後にアイスを食べてスッキリするのが好きなんだとか。

 

 櫂「ふぅ……さて、風呂上がりのアイスでも食って寝ますか。」

 

 櫂が冷蔵庫に向かおうとしたその時、

 

“ブウウン”

 

 櫂のスマホの着信音が鳴る。それに気づいた櫂はスマホを拾い上げ確認すると、新田真美からLINEで「ただいま~」と来ていた。

 

 どうやら真美は災害ボランティアから帰ってきたみたいだ。

 

 櫂「フッ、真美………お疲れ。」

 

 櫂が「お疲れ様」と返信を打とうとした時、更に追加される様に動画が送信される。

 

 櫂はその動画を再生してみた。

 

 そこには真美の災害ボランティア活動の様子が映っていた。

 

 負傷者を治療する姿、病人を看病する姿、恐怖等で泣く子供を優しく宥める姿………どれも一生懸命で、それを見ている櫂はふと笑みを浮かべた。

 

 そして動画の最後、真美は現地の人たちの不安を和らげるために『星のように…』をギターで弾き語りする。

 

 彼女は趣味としてギターの心得もあるため、時々学生ライブでギタリストとして参加もしたりするんだとか。

 

 静かなギターの爪弾きで始まった調べ。

 

 真美の透明感ある澄んだ歌声、それにスパイスを加えるようなギターの音色が一つとなって、不安に染まっていた人々の心を癒し、落ち着かせていく。

 

 そしてやがて、周りの何人かも一緒に歌い始めていた。

 

 さわやかな笑顔で楽しそうに歌う真美の映像を最後に、動画は終わった。

 

 ゼロ「ヘッ、いい歌声じゃねーか。まるで女神の様だぜ。」

 

 見終えた櫂はスマホを持ったまま上を向き、呟き始める。

 

 櫂「思えば真美は、ここ最近怪獣災害が起こる地域にボランティアとして赴いているよな………。あいつ、いつもにこやかだけど、もしかしたら俺並み…もしくは俺以上に疲労を重ねているかもな。」

 

 櫂は幼なじみの勘からか、真美は見た目以上に相当な疲労を重ねているのではないかと感じ始める。

 

 櫂「思えば、昔は気弱で軟弱だった俺は、あいつに出会えたから………あいつといられたから、何度も折れながらも頑張って行けたのかもな………。」

 

 ゼロ「成る程な。真美の存在は、お前にとって大きな支えだったのか。そしてそれは今でも変わらない。」

 

 ゼロは、櫂と真美の絆や友情の強さを改めて感じ始める。

 

 櫂「ま、最も、そのお陰で今では超絶な才能を得ているけどね………誰にも屈しない力を………。」

 

 櫂は静かに握った右の拳を見つめ、不敵な笑みを浮かべながら静かに呟く。

 

 ゼロ「ん?どうした?櫂。」

 

 櫂「(良人モードに戻って)いや、なんでもないさ。」

 

 その時、

 

 “ピポンパン ピポンパン………”

 

 櫂のスマホの電話機能の着信音が鳴り、櫂はすぐさま応答する。

 

 真美からの着信だった。

 

 櫂「おお、真美、お疲れ様。どうしたんだ?こんな真夜中に。」

 

 真美「あの~…櫂君…折り入って頼みがあるの………。」

 

 櫂「ん?」

 

 

 

 

 そして翌日、ひょんなことから櫂は真美と二人っきりのデートを始めていた。

 

 なんでも真美は一度行ってみたかった所があり、そこはどうも一人で行くのが恥ずかしいために櫂と一緒に行こうと考えたのだという。

 

 櫂「しかし、こうやって二人っきりで出かけるのって、いつぶりだろうな。」

 

 真美「そうだね…。」

 

 櫂は幼なじみの真美と出かけるのを久しぶりに思い、それを聞いた真美は笑顔で反応する。

 

 櫂「折角だから、今日は思いっきり楽しもうな!」

 

 真美「(笑顔で)うん!」

 

 笑顔で櫂の左腕に自身の右腕を絡ませる真美。そのまま仲良く歩く二人。

 

 真美の笑顔を見た後櫂はひっそりと不敵な笑みを浮かべる………。

 

 (フッ、これが、俺と真美の本来あるべき姿なのだよ………。)

 

 櫂が心で呟いたその時、

 

 真美「さ、着いたわ。」

 

 櫂「(良人モードに戻って)へ?」

 

 真美の指差した方へ顔を向ける。

 

 櫂「………!!?」

 

 それを見た瞬間、櫂は驚きと共に困惑する。

 

 それはなんと『メイド喫茶』だった………。

 

 

 

 真美は嬉しそうに軽快なステップで入り、櫂は動揺が止まらないまま吸い込まれる様に入る。

 

 真美「はあ~一度来てみたかったんだよね、ここ。」

 

 櫂「お…おお、そうか。」

 

 きゃぴきゃぴとはしゃぐ真美に櫂はぎこちなく返す。

 

 恐らく櫂は、真美の行きたかった店が意外過ぎたと思ったのだろう。無理は無い。彼女はとても清楚なイメージで、こういうオタクが集いそうな店には行きそうにない感じだったのだから………。

 

 メイド喫茶に入った櫂と真美は、早速メイド(ウェイトレス)に出迎えられる。

 

 ???「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様♡(ウィンクしながら首をかしげて左脚の膝より下を上げ、両手でハートマーク)」

 

 櫂「ああ、どうも………ってあああっ!!?」

 

 ???「はああああっ!!?」

 

 ウェイトレスに声を掛けられた瞬間、櫂は鼻の下を伸ばすのも束の間、何かに気付いたのか驚きの声を上げ、ウェイトレスも同じく驚きの声を上げる。

 

 櫂「……み………海羽?」

 

 なんと、櫂と真美を出迎えたウェイトレスは、彼らの友人・眞鍋海羽だったのだ!

 

 

 櫂「何でお前がここに?………何で普通にメイドしてんの~!?」

 

 櫂は困惑が止まらない。真美は目を見開いて両手で口を押さえてフリーズし、海羽は突然の友達登場に慌て始める。

 

 海羽「あ、い、いや、そ、その~こ、これにはワケが………!」

 

 

 

 約5分後、海羽はとりあえず櫂と真美を客として席に招待した後事情を話す。事情を話してる最中も恥ずかしさからか、海羽は頬を赤らめていた。

 

 なんでも彼女はこのメイド喫茶で、数日前からウェイトレスのバイトを始めていたと言う。

 

 事情を聞いた後も櫂と真美の動揺は止まらない。

 

 櫂「い、いや~それにしても、海羽がこんなバイトを始めてたとはね~。」

 

 ゼロ「ま、驚きだよな。だが、そのメイド衣装似合ってんぞ、海羽。」

 

 真美「うん。とっても可愛いよ。」

 

 海羽「へ?………ありがとう!」

 

 海羽はメイド姿を褒められて照れながらも礼を言う。

 

 それもそのはず、海羽は普段でさえ周囲を虜にする無邪気な可愛らしさを持ているのであるから、白とピンクのメイド服を着たらそれが一層際立つのも当然である。

 

 海羽「私、もうすぐバイトの時間終わるから、良かったらこの後三人で出かけない?」

 

 真美「(笑顔で)そうだね。」

 

 櫂「そうだな…カラオケなんかどうだ?」

 

 海羽「お、いいね!私大好き!」

 

 と言うわけで、メイド喫茶の後三人でカラオケ行くことにした。

 

 (チッ………俺と真美のデートはここまでか。)

 

 櫂はまたしても心で何かを呟いている。

 

 海羽「あ、じゃあとりあえず、注文した紅茶とオムライス持ってくるね!」

 

 海羽はそういうとルンルンと軽快なステップで厨房へと向かって行った。

 

 そして櫂が頼んだ紅茶と真美が頼んだオムライスを持ってきた。

 

 因みにこのメイド喫茶では、オムライス等にはケチャップでお絵かきすると言うサービスも存在している。

 

 ……しかし、櫂は真美のオムライスのケチャップ文字を見た瞬間、紅茶を吹き出しそうになる。

 

 なんとそこには、何やら傘のような模様で下には“櫂”、“真美”とそれぞれ書かれているのだ!

 

 (バ…バカッ、何書いてんだよ………だが、分かってくれてんじゃねーか………。)

 

 櫂は動揺しつつも、ひっそりと不敵な笑みを浮かべる。

 

 真美「…とても綺麗に書いてるね。」

 

 真美も数秒動揺してるような顔をした後笑顔に戻りオムライスを頂きはじめる。

 

 櫂はそんな真美を、紅茶をすすりながらこっそり不敵な笑みで見つめていた………。

 

 そして10分後、櫂と真美は会計を済ませ、海羽はバイトの時間が終わり店を後にした。

 

 因みに海羽はメイド喫茶を出た後もメイド服のままである。

 

 海羽「それじゃ、行こっか。」

 

 櫂「メイド服のままかよ………ま、いいか。海羽だし。それじゃあ行くか!」

 

 三人がカラオケに向かおうとしたその時、

 

 

 

 “ズドーン”

 

 

 

 真美「!………何?」

 

 突如、大きな音と共に地響きが起こり、三人は驚く。

 

 櫂「ッ!!」

 

 櫂は即座に上を見上げる。そこには突如怪獣が現れていた。

 

 その怪獣は、翼の生えた恐竜のような外見が特徴の怪獣『豪力怪獣アロン』である!

 

 アロンはいきなり現れるや、大きく裂けた口を開けて咆哮を上げて暴れようとする。

 

 櫂「ったく、こんな時に怪獣かよ。」

 

 海羽「私、チャチャっとやっつけてくるわ。」

 

 海羽は櫂と真美の前に数歩進み、懐からハートフルグラスを取り出し、メイド服のスカート部をなびかせながら一回転して目に当てる。

 

 そして、赤とピンクの光と共にウルトラウーマンSOL(ソル)へと巨大変身し、アロンに立ち向かい始める。

 

 アロンは怪力を活かし両腕を振るって殴り込みを繰り出すが、ソルはそれをしなやかに連続で繰り出す右横蹴りでことごとく弾いていく。

 

 そして、連続横蹴り、跳躍してのチョップなどで攻撃を加えていく。

 

 ソルの華麗でしなやかな戦いぶりは、戦いを終始優位に進めていく。

 

 

 櫂「今日は良い感じだな、海羽。」

 

 真美「ええ。このまま一気にやっつけそう。」

 

 

 櫂も真美も、ソルの勝利を確信していた。

 

 

 その時、

 

 

 ???「きゃーっ!!」

 

 突如、女性の悲鳴が聞こえて櫂と真美はふと振り向く。

 

 

 なんとそこには、一人の若い女性を捕まえているナックル星人ゲドーが立っていた!

 

 驚愕する櫂と真美。

 

 櫂「お前は!?」

 

 女声「助けてー!」

 

 櫂「宇宙人達の一味か!?………その人を放せ!」

 

 ゲドー「嫌だな!この辺に“あいつ”がいると言う事で来てみたら一向に見つかんねーし、お前らには邪魔されるし!…どいつもこいつも俺様をイラつかせやがって~!!」

 

 ゲドーは相当イラついている様である。

 

 真美「あの怪獣もあなたが送り込んだの?」

 

 ゲドー「そうだ。だがアロンは囮だ。ゼロとソルが相手してる隙に“あいつ”を殺ろうと思ったんだが、少々予定が狂っちまったぜ!」

 

 櫂「とにかくその人を放せ!」

 

 櫂はゲドーに向かって行こうとする。

 

 ゲドー「おっと!来るんじゃねー。この女の命が欲しけりゃなー!」

 

 ゲドーが女を人質に取っているためにうかつに近づくことが出来ない。

 

 櫂「くそっ………どうすれば…。」

 

 

 

 一方のアロンと戦っているソルは、脇腹に横蹴り、跳躍して数回転しての回し蹴り等で着々とダメージを与えていた。

 

 しかし、ソルが顔面目掛けてハイキックを放ったその時、アロンは即座に背中の翼を羽ばたかせて空を飛ぶ事でそれをかわす。

 

 そして飛び回り、反射ガラスで覆われたビルの後ろに回りこむ。

 

 ソルもそのビルの後ろに回りこむが、なぜかアロンの姿はそこにはいなかった。

 

 海羽「あ、あれ?おかしいな〜。」

 

 あたりをキョロキョロ見渡すソル。その時、彼女の後ろのビルのガラスに不気味な怪獣のような姿がうつる。

 

 なんとアロンは、かつてウルトラセブンと戦った際に水溜りに姿を隠したことがあるように、ビルのガラスに姿を隠していたのだ!

 

 そうとも知らないソルに、アロンは背後からビルのガラスから飛び出して体当たりを仕掛ける!

 

 因みに「どこのミラーワールドのライダーだよっ!」と突っ込んだら負けだ(笑)

 

 だがソルは、それを咄嗟にフィギュアスケートのように回転しながら横に跳んでかわす。それと同時に回転しながら光の手刀『ライトニングハンド』で左の翼を切り落とした!

 

 このようにソルは優位な戦いを進めていた。

 

 

 

 だが、櫂たちの方は、人質を取られているがために下手に身動きできない状態であった。

 

 ゲドー「そんなにこいつ(女性)の命が大切か⁉︎なら大人しくゼロブレスレットを渡せ!」

 

 櫂「んなっ⁉︎…いくらなんでも卑怯だぞ!」

 

 櫂(………こうなったら渡すと見せかけて『ウルトラゼロスパーク』を放って女性を解放するしか………。)

 

 ゲドー「なーっはっはっはー‼︎俺の外道行為に卑怯も妥協もラッキョウもラッキ◯ーロもねーんだよ!はっはっはっはっは……」

 

 

 ゲドーが勝ち誇ったかのように笑ったその時!

 

 

 “バキュン”

 

 “ズガッ”

 

 ゲドー「⁉︎ぐおはっ!」

 

 突如、背後から銃撃を受けたゲドーは思わず女性を手放し、櫂たちは女性を急いで避難させる。

 

 ゲドー「…ッ、誰だ⁉︎」

 

 ゲドーが被弾した背中を押さえながら振り向いたその時、彼を含めた全員が驚愕する。

 

 なんとそこには、ウルトラゼロアイ(ガンモード)を構えて立っている真美が立っていたのだ⁉︎

 

 真美「わ…わ、私が⁉︎」

 

 櫂「ゼロアイを構えてるだと⁉︎」

 

 櫂と真美は驚きを隠せない。まあ、当然か(笑)

 

 

 すると、もう一人の真美はゼロアイをしまいその場から跳躍して櫂たちの方へと着地する。

 

 真美?「どうやは非道なやり口は、変わってないみたいだな。」

 

 もう一人の真美の声色が変わった。更に驚く櫂と真美、そしてゲドー。

 

 すると、もう一人の真美が発光し、徐々に姿が変わっていく。

 

 そしてなんと、真美は宇宙人の姿となった!

 

 ……いや、本物の真美は既に櫂と一緒のため、正確には「元に戻った」というところだろう。

 

 

 その宇宙人とは、茶色凸凹なボディに、卵のような銀色の頭が特徴の宇宙人『凶悪宇宙人ザラブ星人』である!

 

 

 ……しかし今回はなぜか赤のチェックを着ている。

 

 櫂「!!?んなっ⁉︎」

 

 真美「あなたは…⁉︎」

 

 驚く櫂と真美。………しかし、一番驚いたのは……、

 

 

 ゲドー「あ゛あ゛あ゛〜〜〜‼︎ 貴様は『ザラブ星人ブラコ』⁉︎」

 

 

 なんとそいつは、テラ軍の間では行方不明とされていた幹部宇宙人・ザラブ星人ブラコだったのだ!

 

 ゲドーはまさに、このブラコを探していたのである。

 

 ゲドー「っしゃー!ようやく見つけたぜ!……ってかお前、今まで何してたんだよ⁉︎」

 

 ゲドーは張り切りながらもツッコミを入れる。

 

 ブラコ「私かい?私はこの地球を少し堪能していただけさ。」

 

 ゲドー「堪能って……ふざけてんのか⁉︎ まあいい。お前を見つけたからには即座に………、」

 

 ゲドーがブラコに襲いかかろうとしたその時、

 

 櫂「即座に…何だって?」

 

 ゼロ「何だって?」

 

 既に櫂が左腕のウルトラゼロブレスレットからウルトラゼロアイを出現させて構えていた。

 

 ゲドー「………殺るに決まってんだろ‼︎ 大体この『卵頭の焼肉ボディ野郎』のせいで、俺の作戦メチャクチャになったんだからな‼︎(第4話参照)」

 

 そう、ゲドーはかつて、捕えた子供たちを拘束する際にブラコから借りたテープを使用したところ、恐怖で泣く子供たちの涙によりテープが解けてしまい自由にすることを許してしまったことがある。

 

 この失敗を機に、ゲドーはブラコを目の敵にするようになり、今でも根に持っていたのだ。

 

 ブラコ「何を言ってんだい?そもそも君が、「何でもいいから縛るものを貸してくれ」と言ったのが悪いんだろ?」

 

 ゲドー「うるせー!どうせならもっと頑丈なのをよこしやがれ!おらああぁぁ……」

 

 ゲドーが自棄っぱちで向かおうとしたその時、

 

 

 敏樹「一旦戻れ。」

 

 

 突如、何処からか桜井敏樹の声が響いてゲドーはふと立ち止まる。

 

 ゲドー「何故戻らなきゃなんない⁉︎俺様は今すぐこいつらを殺らなきゃ気が…」

 

 敏樹「戻れ!」

 

 ゲドー「っ、えーいうるさい!せめてこいつらだけでも…」

 

 その時、ゲドーが足元から上にかけて紫に光り始める。

 

 ゲドー「⁉︎えっ⁉︎ちょ、おい待て!ちょい!…」

 

 “ボシュッ”

 

 突然、ゲドーは小さな爆発と煙と共に何処かへ消えてしまった。

 

 あまりにも反抗するので、敏樹が強制的にテレポートさせたのだ。

 

 真美「………何だったのかな?今の。」

 

 櫂「さあな。でも、人質を開放出来て良かったな。」

 

 いきなりの出来事に櫂達は困惑するが、とりあえず安心する。

 

 

 櫂「ザラブ星人、サンキュー………じゃねーよ!お前何なんだよ⁉何で人間を庇ったんだよ⁉」

 

 櫂はブラコに対する驚きが消えてなかった。

 

 ブラコ「話してもいいが、まずはあれが片付いてからだね。」

 

 そう言ってブラコは、戦うソルの方を指差す。

 

 

 ソルはアロンを完全に追い詰めた。今こそトドメの時だ!

 

 両手に赤とピンクの光を集中させ接近し、左右から挟み込むように体を押さえつけ、ゼロ距離で電撃必殺技を叩き込む!

 

 海羽「ハイスピンサンダー!」

 

 赤とピンクの電撃を浴びているアロンはもがく。そしてそのまま発光して大爆発し、跡形も無く吹き飛んだ!

 

 海羽「イエーイ!」

 

 勝利したソルは右拳を挙げて左脚を曲げて飛び跳ねる。

 

 そして、ピンクに発光して小さくなっていき、海羽の姿へと戻った。

 

 

 

 海羽「何か分からなかったけど、今回は楽勝だったね☆」

 

 櫂「ああ。あの外道野郎、変身しようとする俺を見たら尻尾巻いて逃げやがったしな(笑)」

 

 真美「それに、ザラブ星人さんが来てくれたお陰でもあるしね。」

 

 櫂「そうそうザラブ星じ………、」

 

 

 櫂・真美・海羽「って何でザラブ星人がいるのよー!?」

 

 

 櫂と真美と海羽は事態が終息した事をとりあえず喜び合うが、突然のザラブ星人の登場、そしてそもそもなぜ地球人を助けたのかと言う事に困惑する。

 

 それもそのはず、ザラブ星人はかつて同族が、地球人に友好(自分たちは兄弟)であるかのように見せかけ、ウルトラマンと地球人の信頼関係を失わせるために『にせウルトラマン』に変身して街を破壊した事があるのだから………。

 

 今回もそんな演技の為に地球人を助けたのではないか………⁉三人ともそう思い始めていた。

 

 

 櫂「き、貴様!まさかまた友好的と見せかけの演技の為か⁉」

 

 だが、ブラコは動じず対応する。

 

 ブラコ「まあまあ、落ち着きたまえ。私はあの野蛮な同族とは違う。」

 

 ブラコの丁寧な物言いも相まって、三人はブラコが悪企みをしているのではないと言う事に気付く。

 

 海羽「………じゃあ、なぜ地球に来てるの?」

 

 ブラコ「確かに私はさっきのナックル星人と同じく、軍団の幹部宇宙人だった………しかし、偵察としていざ地球に降り立ってみたら………、」

 

 

 ブラコはそのまま語り始めた。

 

 なんでも彼は、あのお方(桜井敏樹)の指示で、半分散歩感覚で偵察として地球に降り立った時(7月23日)、青く広がる空、緑豊かな大地、澄み渡る海に心を奪われてしまったと言う。

 

 さらに街を歩いていると(この時は適当に地球人に化けていた)、転んだ際に「大丈夫ですか?」と声を掛けてもらった、どこ行こうか迷ってた際「どこかお探しですか?」と声を掛けてもらったなど、すれ違う地球人の優しさに触れ、気が付けば地球を攻撃する気が完全に失せ、侵略宇宙人は止め、地球で暮らそうと決めたと言う。

 

 

 櫂「………そっか、つまりお前はすっかりこの地球が気に入ったワケだな?」

 

 ブラコ「ええ。地球は美しいし、地球人は優しい。我が母星と違って………」

 

 真美「どうしたのですか?」

 

 ブラコは突然どこか悲しそうに下を向き始め、真美はそれを下からのぞき込むようにして話しかける。

 

 ブラコ「我が母星・ザラブ星では、私は優秀な変身家でした………ですが、その跳びぬけた変身能力を評価され過ぎて、それが悪い宇宙人にも知られてしまって、そいつらにこの変身能力を無理矢理悪事に利用され、更にはその罪の濡れ衣を着せられることもあったんです………そこでそんな日々が嫌になってザラブ星を飛び出して宇宙を放浪していたところにあのお方と出会い、そして地球にたどり着いたというわけです………。」

 

 三人とも唖然とした…なんせブラコが地球に着くまで、思いのほか壮絶な過去を持っていたため………。

 

 

 真美「そっかー………、辛かったよね。ようやく居場所が見つかって良かったね。」

 

 真美は同情の涙を指で拭う。

 

 ブラコ「ありがとうございます。やはり地球人は優しいですね。」

 

 海羽「真美ちゃんの優しさは飛びぬけてるからね。真美ちゃん、悩み持ちやすい私の為にも涙を流してくれるんだから~。」

 

 櫂「ここ地球は良い所だ。お前さえ良ければここで一生過ごしてもいいんだぞ。」

 

 ブラコ「ありがとうございます。ですが、ここは遊び場として訪れようと思います。私には居住所がありますから。」

 

 櫂「居住所?一体誰の?」

 

 ブラコ「そろそろ来てくれますよ。」

 

 櫂「んん?」

 

 櫂が何のことか理解できないでいたその時、

 

 

 

 ???「あ、見つけた。ブラコ君!」

 

 突如、ブラコの背後から女声が聞こえる。ブラコを始め全員はその方を振り向く。

 

 その時、櫂達三人、特に海羽は驚きの表情を見せる。

 

 服装こそ白いシャツに黄色のパーカーを着ている、見るからにごく普通の地球人の少女だが、ある物がきっかけで櫂達はすぐさま気付く。

 

 

 可憐な童顔にサラサラな長髪に大きな蝶の髪飾りを付けている………、

 

 

 そう、駆け寄ってきた彼女は、かつてテラ軍により追われる身となっていたが櫂たちの活躍で救われ、その際に海羽と親しくなった(第14話参照)ペダン星人『バレッタ』なのだ!

 

 

 ブラコ「おお、バレッタちゃん。」

 

 駆け寄ってきたバレッタは、そのままブラコと手を取り合う。

 

 バレッタ「んも~突然いなくなるんだから探しちゃったよ。」

 

 ブラコ「ははは、悪い悪い。ちょっと見過ごせない事があってな。」

 

 

 海羽「……バ…バレッタちゃん?」

 

 バレッタ「あ、海羽ちゃんたちも久しぶり!」

 

 海羽は困惑しつつも話しかけ、バレッタはそれに反応する。

 

 

 ………だが、櫂達は再会の喜びよりも気になることがあった。それは、バレッタがやけにブラコと仲良さそうにしているところだった………!

 

 三人は恐る恐る問い始める。

 

 海羽「バレッタちゃん………どうしてまた地球に…?」

 

 真美「何故、ブラコさんと仲良さそうに…?」

 

 櫂「(各々指差しながら)どういう関係なのお前らー⁉」

 

 バレッタ「い、いや………これは、その~…」

 

 バレッタが何やら言いづらそうにしているその時、

 

 

 ブラコ「ん?君達、私のハニーとは知り合いなのかい?」

 

 

 櫂・真美・海羽「………………へ?」

 

 海羽「は…」

 

 真美「に…」

 

 櫂「い~?」

 

 

 “ポクポクポク、チ~ン”

 

 

 櫂・真美・海羽「えええぇええぇぇぇえーーー~!!!???」

 

 真美「は……ハニーってことはもしかして………、」

 

 バレッタ「あ、………あはは…、」

 

 驚きと共に困惑する三人を見て、バレッタは少し照れくさそうに右頬を掻いた後ブラコの左腕に抱き付き、ブラコは照れくさそうに右手を後頭部に持っていく。

 

 櫂「もしや………バレッタの言ってた“彼氏”って………、」

 

 海羽「“ザラブ星人”だったって事~~~!!?」

 

 

 ブラコ「その通り、まさか君たちが私のハニーとお知り合いだったとはね。」

 

 バレッタ「なんか、脅かしちゃってごめんね。」

 

 

 三人、特に海羽は混乱が止まらなかった。それもそのはず、バレッタの彼氏が意外過ぎたどころか、ザラブ星人とペダン星人がカップルとは………。

 

 櫂「………つまり、このカップルは彼氏・彼女共に追われる身だったてことか…。」

 

 

 “ピキピキピキ…ガシャーン”

 

 

 ある意味のショックにより、海羽の脳内で思い描いていたバレッタの彼氏象がガラスのようにひび割れ砕ける。

 

 海羽「そ………そんな………、」

 

 海羽はあまりのショックにより挙動不審である。倒れる寸前だ。

 

 その時、海羽は走馬灯の中にある言葉を思い出す。

 

 

 『互いに恋する男と女の絆は一際強いんだから!』(第14話より)

 

 

 海羽「はぁ…少なくともその言葉は本当みたいだね。はぁ~………」

 

 “ドサッ”

 

 海羽は倒れ込み、一時的に気を失ってしまった。

 

 櫂「!ぅおい、海羽!」

 

 真美「大丈夫?」

 

 櫂と真美は即座に歩み寄り、ブラコとバレッタはそれを少し申し訳なさそうに見つめていた………。

 

 

 

 海羽は約10分後に目を覚ました。とりあえず三人は、バレッタ達からワケを聞くことにした。

 

 なんでもバレッタは追われる身として宇宙を飛び回っていた所でたまたま同じ境遇のブラコと出会い、一緒に助け合いながら逃亡していく内に仲も良くなっていき、そしてやがて付き合う仲となったという。

 

 櫂「へえ~…まさか宇宙人軍団の間でそんな事があったとはな。」

 

 真美「助け合っていく内に恋も育んできたわけね。」

 

 海羽「でも、それはそれでロマンチックで良いかも。」

 

 ゼロ「しかし驚きだよな~なさかザラブ星人とペダン星人が恋仲になるなんてな。」

 

 櫂「そうだな…って、ゼロ!ようやくしゃべり始めたか!?」

 

 ゼロ「へへへ、ちょっと昼寝しててな。」

 

 ブラコ「あなたがウルトラマンゼロですか。いやはや、あの時はバレッタちゃんをありがとうございます。」

 

 ゼロ「へへッ、ま、いいってことよ!(フィニッシュポーズ)」

 

 ブラコ「まあとにかく、私は平和に過ごすことにしたのです。ね、バレッタちゃん。」

 

 バレッタ「うん。ブラコ君。 海羽ちゃん、脅かしちゃってホントに…(手を合わせて頭を下げて)ごめんちゃい!」

 

 海羽「ううん。いいんだよ。良かったね。一緒に協力し合える異性ができて。」

 

 バレッタ「ありがとう。海羽ちゃん。」

 

 櫂「ああ、そうだな………。」

 

 そう言うと櫂はひっそり真美を横目で見つめる………。

 

 

 その時、バレッタがある事を提案する。

 

 バレッタ「それよりさあ、みんな、ブラコ君の変身能力見てみる?」

 

 櫂「え?変身といってもまさかあの出来損ないウルトラマンにでもなるんじゃねーのか?」

 

 ブラコ「とんでもない。私の変身はあんなに醜くない。完璧なのだ。」

 

 そう言うとブラコは、両手で顔を覆うようなポーズをとる。そして、それを広げるように手を離す。

 

 ブラコ「はっ!」

 

 掛け声とともにブラコは光に包まれる。そして、どこか聞き覚えのある効果音………そう、ウルトラマンの変身音と共に姿を変え、なんと『ウルトラマン』の姿へと変わった!

 

 それはにせウルトラマンと違い目も爪先も尖ってなく、ボディに黒いラインも入っていない…そう、完璧にウルトラマンの姿に変身したのだ!

 

 …と言ってもザラブ星人の変身は大抵は外見のみであるため、スペシウム光線とかが撃てるかは謎である。

 

 あまりにも完璧なブラコの変身に櫂たちは思わず歓声が上がる。

 

 真美「凄ーい。そっくりそのまま変身できるなんて。」

 

 ゼロ「なるほど、そりゃあ悪質な宇宙人も狙うわけだな。」

 

 ブラコ「私は様々なものにそっくり完璧に変身できるのだ。だがそれだけではない。 自分だけでなく、他の者も変身させる事が出来るのだよ。」

 

 櫂「えっ⁉︎マジかよ⁉︎」

 

 ブラコ「それならやってみよう………ん〜…はっ!」

 

 ブラコは櫂に手のひらを突きつけて念を込める。すると櫂は発光し姿が変わっていく………。

 

 

 櫂「よ〜し、変身完了したかな〜……って!何でよりによってこいつなんだ〜⁉︎」

 

 櫂はなんど、『メフィラス星人キョウ』の姿へと変えられてしまった!

 

 海羽や真美も驚愕する。

 

 

 櫂「確かにそっくり完璧に変身できてるけどさ…何で⁉︎なんでこんなブサイク面に変身させんだよ‼︎」

 

 ゼロ「フフフ…櫂、よっぽどキョウが嫌なんだな。」

 

 櫂「当たりめーだろ!あんなラッキョウ野郎!」

 

 櫂はキョウの姿にされた事にややパニクり状態である。

 

 ブラコ「どうです?私の変身能力は完璧だとお分かりに…」

 

 櫂「(殺気の込もった顔で)はーやーくーもーどーせ〜!」

 

 “ギリ ギリ ギリ………”

 

 ブラコ「ぐっ…わ、分かった分かった。今戻すから。ギブギブギブ…」

 

 ブラコは怒り心頭の櫂に首を締められ慌てて櫂を元に戻す。

 

 因みにこの光景は、メフィラス星人(二代目)(櫂)がウルトラマン(ブラコ)の首を締めているという構図なのだからあまりにも不愉快な光景である(笑)

 

 

 イケメンな元の姿に戻った櫂は安心する。

 

 櫂「ったく、とんでもない能力だな。こいつの変身は…。」

 

 バレッタ「エヘヘ…でも、面白いでしょ?いろんなモノに変身させられるんだから。」

 

 櫂「まあ、そうだな。」

 

 ブラコ「だが、この変身能力は戦闘などにも役に立っているのだ。例えば、強い者に変身する事で相手を退散させたりなどな。」

 

 ゼロ「成る程、ブラコの完璧な変身能力にバレッタの機敏なキングジョー………それらが合わさるとある意味滅茶苦茶強いカップルかもな。」

 

 ゼロは、ブラコとバレッタのコンビはある意味強いのではないかと感じ始めていた………。

 

 

 と、その時、

 

 

 健二「あ、櫂さん、みんな。」

 

 早苗「奇遇ですね。ちょうどみんな揃ってるなんて。」

 

 二人で散歩している健二と早苗に偶然出会った。

 

 櫂「おお健二、早苗。」

 

 健二「………あの~………そちらの宇宙人は…?」

 

 櫂「あ、い、いや、その………、」

 

 “健二と早苗”のカップルに“ブラコとバレッタ”のカップルを見られてしまった………。

 

 櫂は少し頭を抱える………。

 

 

 櫂と真美・海羽はブラコたちの関係を健二たちに話し、それにより健二たちは納得した。

 

 そして、折角と言う事でみんなでこの後カラオケに行くことになった。

 

 なんでも、ブラコとバレッタはカラオケも好きなんだとか………宇宙人のくせに地球の音楽をすっかり気に入っているのである(笑)

 

 そう、彼らは短期間で地球の文化に馴染んでしまってもいた………。まあ、これはこれで良い事なのだろうか。

 

 

 

 その頃、テライズグレートでは、無理矢理転送させられたゲドーが敏樹に不満をぶつけていた。

 

 …だが、やや理性を失い声を荒げるゲドーに対し、策を考える敏樹。 話がかみ合うはずも無く………、

 

 ゲドー「なーぜ俺様を転送しやがった!折角奴を殺れるチャンスだったのに!…」

 

 敏樹「奴の変身能力はやはり使える気が…」

 

 ゲドー「今度こそ俺様は奴を!…」

 

 敏樹「まずは奴を捕えるのが大j…」

 

 ゲドー「あんにゃろー!腹が立って仕方がねえ!」

 

 敏樹「ちょ、お前!俺の言う事聞いてないな~!?」

 

 ゲドー「うるせー俺はさっさと殺りてーんだ!」

 

 敏樹「あ~そう!ならもう好きにしやがれ!」

 

 ゲドー「お~そうしてもらうぜ!ならさっさと転送しやがれこのやろ~!」

 

 もはや二人は言葉のドッジボール状態であった。

 

 それどころか、ゲドーは格上と思われる敏樹にタメ語や命令語まで使ってしまっている………。

 

 それほど、ブラコに対する憎悪で整理がつかなくなってしまっているのか………?

 

 

 

 一方、櫂・真美・海羽・健二・早苗、そしてブラコ・バレッタの7人は、約4時間カラオケを楽しんだ。

 

 それぞれ好きな曲を歌うのはもちろん、二人組など、複数で歌うと言う事も楽しんだ。

 

 例えば、櫂と健二は二人で『乱舞Escalation』をデュエットし、真美・海羽・早苗・バレッタ女子勢は『Enter Enter MISSION!』を歌ったりしている。

 

 ブラコに関しても様々な曲を歌い、更には『Who's That Guy』などの見た目とギャップを感じるクールな曲まで歌っている(笑)

 

 バレッタは『青い夜の記憶』という、彼女の幼さ感じる童顔とはギャップを感じる大人びた曲まで歌っている(笑)

 

 櫂と真美はもちろん、それぞれの十八番『英雄』、『飛び立てない私にあなたが翼をくれた』も歌った。

 

 そして最後は、全員で『Climax Jump』を歌い大盛況で締めくくった。

 

 

 

 P.M3:00頃、7人はカラオケハウスを出た。

 

 海羽「いや~楽しかったね!」

 

 真美「そうだね。こんな大勢でカラオケしたの久しぶりかも。」

 

 櫂「しかし、ブラコもバレッタも歌うまいな。」

 

 ブラコ「まあ、地球の音楽は素晴らしいから、歌えるように練習もしたのさ。それにしても、〆のClimax Jumpは盛り上がったな。」

 

 バレッタ「Climax Jump良いよね~!「諦めたら試合終了さー」って所とか~ 」

 

 ブラコ「それを言うなら「諦めたらそこが終点さー」じゃないのかい?」

 

 バレッタ「あ、そうだった。エヘヘ。 試合終了は確か“ス〇ム〇ンク”の方だったよね。」

 

 ブラコ「あの漫画もなかなか面白いよな。」

 

 バレッタ「うんうん!私も初めて読んだ瞬間ハマっちゃって………」

 

 

 ………いつの間にか、ブラコとバレッタは二人きりで話が盛り上がっていた。

 

 と言うか、地球の漫画にまでハマっているとは…地球に馴染んでるにも程がある(笑)

 

 

 早苗「フフフ、あの二人、楽しそうね。」

 

 健二「ああ。まるで俺たちみたいだね。」

 

 早苗「フフッ、ねえ、これからどうする~?」

 

 健二「そうだね、どこ行こうか?」

 

 

 健二と早苗の方も、二人きりで話が盛り上がっていた。

 

 

 地球人同士と宇宙人同士。二組のカップルを櫂は見つめていた。ひっそりと不満そうな表情で、横目で真美を見つめながら………。

 

 

 真美「ん?なーに?櫂君。」

 

 櫂「え?い、いや、何でもない。 彼ら、楽しそうだな~って思ってね。」

 

 真美「(笑顔で)………そうだね。」

 

 海羽「正にカップルって感じ~。」

 

 海羽は、楽しそうに話す二組のカップルに嬉しそうに見とれていた。その隙に櫂は真美と二人きりで話そうと考える。

 

 櫂「………なあ、真美。」

 

 真美「どうしたの櫂君?」

 

 櫂「あ、いや…その………」

 

 櫂は激しい緊張により言葉に詰まってしまい、真美はそんな櫂を首をかしげてあどけない表情で見つめる。

 

 

 櫂「………………こんな平和で楽しい日々が、今後もずっと続くといいな。」

 

 櫂は固い笑顔でとりあえず話す言葉を見つける。

 

 真美「………そうだね。」

 

 真美は笑顔で答えた。

 

 櫂と真美が良い感じになりそうになったその時、

 

 

 ゲドー「フンッ、カップルほど見苦しいものはないぜ!」

 

 ふと驚いた7人は声の方へ振り向く。そこには打倒ブラコに燃えるゲドーが立っていた!

 

 身構える7人。

 

 ブラコ「やれやれ、あなたも懲りないですね~。」

 

 ゲドー「うるせー!お前のそういう喋り方ムカつくんだよ!そもそもお前、語尾に“ブラ”を付けるマヌケっぽい喋り方じゃなかったのかよ!?」

 

 ブラコ「あー確かにそうでしたね。多分この地球で暮らす内に、そんな癖は無くなったのでしょう。」

 

 ゲドー「………ほほぅ………それほどこの地球に馴染んでしまったワケか………なら………もはや貴様は完全なる裏切り者………排除するしかねーな!!」

 

 怒り心頭のゲドーは右手を上に挙げ、その先から稲妻のような光を空の彼方へ発する。

 

 すると、晴れ渡っていた空に突然黒い大きな穴が開いた雨雲のようなものが現れ、そこから稲妻状の光線が地面に落ちると、その光が徐々に形を変えていく。

 

 そしてやがて、その光から一匹の巨大生物が現れる!

 

 その巨大生物は、赤いボディに頭頂部の青い皿のような部分が特徴の怪獣『破壊獣モンスアーガー』である!

 

 モンスアーガーは咆哮を上げ、櫂達は驚愕しモンスアーガーを見上げる。

 

 ゲドー「どうだあ!?ガモスに次ぐ俺様の三大相棒怪獣の一匹モンスアーガーだ!貴様ら等、一捻りだああぁぁ!!」

 

 そう言うとゲドーも腕をクロスし、土砂や土煙を上げながら巨大化する。

 

 ゲドー「モンスアーガー!街を破壊しろ。俺様は此奴(ブラコ)を潰してやる~!」

 

 モンスアーガーは暴れようとし、ゲドーはブラコたちを潰そうと歩みを進める。

 

 ゼロ「………櫂、」

 

 櫂「ああ。行くしかないみたいだな。」

 

 櫂は変身のためウルトラゼロアイを出現させようと左腕を曲げる。

 

 

 と、その時、

 

 

 突如上空から四つの光線が飛んで来てゲドーたちに命中する。

 

 ゲドー「!ッ、何だ!?」

 

 上空を見上げると、そこには頭、胸、腹、足の4機の宇宙船に分離したキングジョーが飛んで来、そのコックピットにはバレッタが搭乗していた!

 

 バレッタはいつの間にかキングジョーを呼び出し乗り込んでいたのだ!

 

 ブラコ「ほほう、さすがマイハニー。仕事が早い。」

 

 ブラコは自慢の彼女を持ったなと感心する。

 

 キングジョーは上空で合体して『宇宙ロボットキングジョー』となり、土砂や土煙を上げながら着地する。

 

 バレッタ「させない…!地球の破壊なんて!」

 

 ゲドー「えーい小癪な!モンスアーガー!小娘もろともスクラップにしてやれ!」

 

 モンスアーガーはキングジョーに襲い掛かり、キングジョーはそれを迎え撃つ。

 

 両者は激しいパンチの応酬から始め、次にキングジョーはロボットとは思い難い素早いパンチやキックで攻撃し、モンスアーガーも負けじとそれを怪力で防いだりして反撃を仕掛ける。

 

 重量級である両者の戦いは地響きが起こり、周りの地面が爆発を起こすほど激しいものである。

 

 

 ゲドー「そちらは任せたぞモンスアーガー。さてと、俺様は早くあんにゃろーを………

 

 ………へ?」

 

 

 ゲドーはブラコを潰そうと振り向くが、その瞬間驚愕しふと動きが止まる。

 

 

 その視線の先には、いつの間にか登場していた6人の光の巨人が立っていた。

 

 ウルトラマンゼロ、ウルトラマンギンガ、ウルトラマンビクトリー、ウルトラマンパワード、ウルトラマンコスモス(ルナモード)、ウルトラウーマンSOL(ソル)のウルトラ6勇士である!

 

 

 櫂と海羽はいつの間にかケンイチ・カイ、春野ムサシ、礼堂ヒカル、ショウと合流し、6人同時で変身していたのだ!

 

 ゲドー「な………何でお前ら6人揃ってんだよ!?」

 

 予想外過ぎる展開にゲドーは焦りを感じる。

 

 

 そんなゲドーの焦りを他所にゼロ達は名乗りとポーズを始める。

 

 

 ゼロ「若き最強戦士・ウルトラマンゼロ!」

 

 

 カイ「地球を愛した無敵のヒーロー・ウルトラマンパワード!」

 

 

 ムサシ「慈愛の勇者・ウルトラマンコスモス!」

 

 

 ヒカル「銀河の覇者・ウルトラマンギンガ!」

 

 

 ショウ「勝利の地底戦士・ウルトラマンビクトリー!」

 

 

 海羽「キュートでパワフルなタフガール・ウルトラウーマンSOL(ソル)!」

 

 

 ゼロ「光あるところ、正義の雄叫びあり! 俺たち、」

 

 

 全員「新・ウルトラ6勇士!!」

 

 

 6人が名乗り終えるとゲドーはずっこける。

 

 ゲドー「っておめーら!なに戦隊チックに名乗ってんだよ~!!」

 

 起き上ったゲドーは突っ込む。確かに、過去にもウルトラ戦士が複数で共闘する事はあったが、戦隊チックに名乗ったのは今回が初であろう(笑)

 

 ゼロ「い…いや~、ちょっとノリで。」

 

 ゲドー「ふざけてんのか!? 俺様相手に~!」

 

 カイ「ふざけてはいない!それほど今回は気合が入ってるって事だ!」

 

 自分もノってやったくせにしれっと正論っぽいことを言うカイがどこかシュールである(笑)

 

 ムサシ「悪事は許さないぞ!」

 

 ショウ「勝利するのは俺たちだ。」

 

 ヒカル「またぶっ飛ばしてやるぜ、脳筋野郎!」

 

 海羽「アーユーレディー!?」

 

 櫂「いくぞーっ!!」

 

 櫂の掛け声でウルトラ6勇士は一斉に駆け出す。ゲドーもゼロたち目掛けて駆けだす。

 

 ゼロとソルは跳躍してゲドーを跳び越え後ろに回り、ギンガとコスモスはそれぞれ右側、左側に回り込み、ビクトリーは上空高く跳躍する。

 

 ゲドーは完全に囲まれてしまった。

 

 ショウ「ビクトリウムスラッシュ!」

 

 ビクトリーは上空からビクトリウムスラッシュを二発発射する。ゲドーは一発目は腕をクロスして防ぐが、二発目は防ぎきれず被弾する。

 

 そしてバランスを崩した隙にパワードが駆け寄り右の掌を胸部に打って撥ね飛ばす。

 

 そして左右から挟み込むようにギンガがギンガスラッシュ、コスモスがムーンライトスマッシュを同時に打って追い打ちをかける。

 

 ゲドー「くっ………おのれ………おのれー!」

 

 ゲドーは怯まずに今度はソル目掛けて突進するが、ソルは「それーっ!」という掛け声と共にそれを跳び箱のようにかわし、それによりバランスを崩したところに待ち構えていたゼロが駆け寄り、右回し蹴りを顔面に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 6人のウルトラ戦士の連係プレーによりゲドーはたちまち追い詰められてしまった。

 

 一方のモンスアーガーも、バレッタの機敏で力強いキングジョーによりやや押され気味になっていた。

 

 

 ゲドー「くそっ………こうなったら醜くて嫌だが、最後の手段だ!」

 

 ゲドーの言葉にゼロたちは身構える。

 

 ゲドー「見ていろウルトラ戦士ども!これが俺様の本領発揮だ! はああぁぁぁ………!」

 

 拳を握って力を入れるゲドー。すると、彼は発光し、腕、足等の筋肉が肥大していく。

 

 やがてゲドーは、全身ムキムキの状態へと変わった!

 

 ゼロ「…ッ!?何だあれは!」

 

 驚愕するゼロたち。

 

 ゲドー「っしゃあ!パワー全開!これぞ俺様の強化戦闘形態・ストロングマッスルだ!」

 

 ゲドーがムキムキのマッチョになった姿は、彼の強化形態『ナックル星人ゲドー(ストロングマッスル)』である!

 

 ゲドー「行くぜっ!覚悟しやがれ!」

 

 ゲドーはゼロたち目掛けて駆け始める。筋肉により重量も増したのか、地面を踏むたびに土煙が巻き上がる。

 

 まずはコスモスが腕を掴んで抑え込もうとするが………

 

 ゲドー「甘いわー!」

 

 なんと一振るいでコスモスを軽々と放り投げ、コスモスは岩山に激突する。

 

 その後も次々とウルトラ戦士が立ち向かうが………

 

 ゲドー「ムーダムダムダー!もはや今、強化した俺様を止めることは出来ないのだ!」

 

 ゲドーは勝ち誇る様に叫びながらウルトラ戦士達を蹴散らしていく。

 

 向かったパワードは右横振りの右拳で殴り飛ばされ、その次にビクトリーは右前蹴りで吹っ飛ばされる。

 

 その後ギンガは首根っこを掴まれて放り投げられ、ソルは左拳を腕で防ぐが威力の強さに吹っ飛んでしまう。

 

 そしてゲドー(ストロングマッスル)はゼロに襲い掛かる。

 

 最初は互角な攻防戦を展開していたが、ストロングマッスルの力の強さからか徐々に防御するだけでもダメージを感じる様になってしまう。

 

 

 そしてゲドーはゼロと組み付いた時、ふとキングジョーと戦うモンスアーガーの方を振り向く。

 

 すると、あろうことかそのまま目から破壊光線・ナックルアイビームを放つ!

 

 赤く細い波状の光線はキングジョーに命中し爆発した。

 

 バレッタ「!?キャァッ!」

 

 やや優勢だったキングジョーは不意打ちにより隙が出来てしまい、今度はモンスアーガーが優位に立とうとしている。

 

 

 ゼロ「!ッ、バレッタ!」

 

 バレッタに気を取られているゼロをゲドーは放り投げ、ゼロは咄嗟に空中で一回転して着地する。

 

 ゲドー「ぎゃはははは!ざまーみろ!俺様に立てつくからさ!」

 

 

 ………だが、このゲドーの行動や発言は、ある男を怒らせてしまった………。

 

 

 そう、ザラブ星人ブラコである!

 

 

 ブラコ「………やってくれましたね………マイハニーに向かって………!」

 

 

 ブラコは激しい怒りを静かに見せながら、腕をクロスして巨大化する。

 

 ゼロたち、そしてゲドーも巨大化したブラコに気付く。

 

 ゲドー「ああん?どうした貴様!?わざわざ俺様に潰されに来たか!?」

 

 

 ブラコ「違う!………私がお前を潰しに来たのだ!」

 

 

 ゲドー「あああ?貴様に出来んのかよ!?」

 

 ブラコ「ゼロ、みんな、ちょっと来てくれ。」

 

 ブラコは、余裕をこくゲドーを他所にゼロたちを集合させる。

 

 そして、何やらゼロたちに耳打ちのようなことを始める。

 

 激しい怒りと共に、何か策でも思いついたのであろうか?

 

 

 「あのな、まず………」

 

 「なになに?………」

 

 「ごにょごにょ………」

 

 「ふむふむ、」

 

 「なるほど。」

 

 

 ゲドー「てめーら何話してんだ?降参の仕方についてか!?」

 

 耳打ちする7人にゲドーは少しイラついていた。

 

 すると、作戦会議が終わったのかゼロ達はゼロをセンターに横に並び立つ。

 

 

 ゼロ「違う! お前に勝つ作戦についてさ!」

 

 ゲドー「………ほほぅ、そんなにやられたいみたいだな………くだらない戯言ぬかしやがって~!!」

 

 思わぬことを言われ逆上したゲドーはゼロたち目掛けて目から渾身のナックルアイビームを放つ!

 

 光線はゼロ達に命中して大爆発を起こし、ゼロたちを包み込むように大きな爆炎が巻き上がる。

 

 ゲドー「はっはっはっはっは!ざまーみやがれ!」

 

 ゲドーは勝ち誇る様に笑った。

 

 が、その時、

 

 カイ?「はああっ!」

 

 爆炎の真上からウルトラマンパワードが飛び出す!

 

 ゲドー「ケッ!しぶとい奴め!跳び蹴りを放つ気だな?俺様が叩き落とし………」

 

 ゲドーが拳を構えたその時、

 

 

 カイ?「ビクトリウムスラッシュ!」

 

 

 “ズドーン”

 

 ゲドー「アバァァァ!?」

 

 なんと、パワードが宙に浮かんだまま蹴りの体勢で脚から『ビクトリウムスラッシュ』を放った!

 

 あまりにも予想外過ぎる行動にゲドーは対処できず被爆してしまう。

 

 

 へ?“パワード”が“ビクトリウムスラッシュ”!??

 

 

 困惑するゲドーを他所に今度はギンガが駆け寄り始める。

 

 ヒカル?「よし、行けるわ!」

 

 なぜか小指を立てながら駆け寄るギンガ………って言うか、さっき語尾に“わ”を付けなかったか!?

 

 ヒカル………君はいつからオネエになったのだ!??

 

 ゲドーはギンガ目掛けて頭を突き出して突進するが、ギンガはそれを跳び箱のようにかわす。

 

 このような避け方は以前ファイヤーゴルザと戦った際に披露した事があるためさぞかし違和感はないと思われる。

 

 だがしかし、その後ギンガはゲドーの右腕を掴むとそのまま腹部に連続で左横蹴りを放つ。

 

 しかも「エイ、エイ、エイ………」という掛け声を上げながら!?

 

 その後頭を掴んで跳躍して「それっ!」という掛け声と共に頭突きを繰り出すが、ゲドーが石頭だったのか、地震も若干痛がる。

 

 ヒカル?「いった~い……んもう!」

 

 ギンガは八つ当たりとばかりに後ろ回し蹴りでゲドーを撥ね飛ばした。

 

 ………ちょい待て!今回のギンガはいつもよりやけに動きが軽快だし、掛け声もなぜ「エイ、エイ、エイ…」や「それっ!」などと女々しくなってるのだ!?

 

 アンタの掛け声はもっと「デヤッ!」や「ショォラァァァ!」などとかっこいいモノだろぅ!??

 

 

 ショウ?「今だ!」

 

 ムサシ?「どんどん行くぜっ!」

 

 今度はやけに大人びたビクトリーと、やけにオレ言葉を話すコスモスが立ち向かう。

 

 ゲドー「コスモスはルナのままか………激しい攻撃が出来ないはず。よし!まずは此奴から………」

 

 ゲドーがコスモスに向かって行ったその時、

 

 “バゴンッ”

 

 ゲドー「!?ぐへっ!!」

 

 なんとコスモス(ルナモード)は“掌”ではなく“拳”でゲドーの顔面にパンチを打った!

 

 ゲドーは動揺しながらも腕を振るって反撃するがコスモスはそれを左腕で防ぐと同時に右拳を腹部に叩き込む。

 

 そして胸部に左右交互に連続でパンチを打た後跳躍して右足蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 ………ちょい待て!コスモス!アンタそもそも“慈愛の勇者”だろっ!?

 

 相手が外道な奴とはいえ、コロナモードならともかくルナモードでそんなにアグレッシブに攻撃してもいいのか!?

 

 

 ゲドーが吹っ飛んだ先にはビクトリーが待ち構えていた。

 

 ビクトリーは蹴りが主体の戦闘スタイル。それを知っているゲドーはふと立ち止まる。

 

 が、しかし、ビクトリーはゲドーの攻撃を受け流す様に避けつつ腹部に右、左、そして両手と掌を打ち込んで撥ね飛ばした。

 

 ビクトリー………本来ならもっと華麗な蹴りを連発するはずなのに、今回はやけに控えめだな…。

 

 

 ウルトラ戦士達の妙な言動が続く中、今度はソルが立って構えていた。

 

 海羽?「ここからは、俺の番だ。」

 

 立って構えるソル。だが、いつものキャピキャピした感じではなくどこか凛としており威厳を感じる。

 

 …って言うか、さっき一人称“俺”って言わなかったか!?

 

 彼女、気合が入りすぎておかしくなってしまったのだろうか………?

 

 ソルはゲドーに駆け寄ると。左手で腕を掴んで胸部に右拳を二発打ち込み、腹部に左横蹴りを打った後、後ろ回し蹴りで吹っ飛ばす。

 

 …ん?今回ソルの攻撃はやけに重みを感じるな…いつもなら軽快な連続蹴りに「エイ、エイ、エイ…」などという無邪気な掛け声が特徴なのに………?

 

 

 パワードがビクトリーの技を? ギンガがいつもよりはっちゃけてる? コスモスとビクトリー戦い方逆じゃね? ソルがやけに可愛さを感じない? ………ゲドーは完全な混乱へと追い込まれていた。

 

 そんな中、今度はゼロが駆け寄って来る。

 

 ………が、それを見た瞬間目を疑う。

 

 なんとゼロの隣にもう一人ゼロがいる………つまり、ゼロが二人いるのだ!

 

 ゲドー「ウルトラマンゼロが二人………!?」

 

 二人のゼロは息の合った連携でパンチ、キックなどを駆使してゲドーを攻撃していく。

 

 ゲドーが片方のゼロのパンチを受け止めた隙にもう一人が腹部に蹴りを打ち込み、それによりバランスを崩したところで交互にハイキックを打ち込み、そして二人同時に前蹴りを胸部に打ち込んで吹っ飛ばした。

 

 今度はゼロが二人に………⁉︎ しかもコピーではなくそれぞれが独立した動きで攻撃している⁉︎………ゲドーの困惑は深まっていく。

 

 

 

 一方のキングジョーはと言うと、モンスアーガーの剛腕と爪を活かした連続パンチ『アーマードラッシュ』をボディに受け、火花を散らしながら後ずさる。

 

 更にその後モンスアーガーが口から放った赤色破壊光弾『大破壊光弾』を連射し追い打ちをかける。

 

 光弾はボディに数発、足元や周りの地面に次々と当たり爆発を起こす。

 

 モンスアーガーはキングジョーを掴み抑え込もうとする。

 

 モンスアーガーは持ち前の怪力や光弾で徐々に戦いを優位に進めていた。

 

 バレッタ「くっ………このままじゃ………。」

 

 

 バレッタが呟いたその時、

 

 

 “ズガガガガガッ”

 

 突如飛んで来た振動波のような光線を受けモンスアーガーは怯む。

 

 モンスアーガーが視線の向きを変えると、そこには『古代怪獣ゴモラ』が立っていた!

 

 バレッタ「………はっ!」

 

 バレッタは、突如現れ自身をアシストしたらしきゴモラに少し動揺するが、ふと何かに気付く。

 

 

 視線の先には『原始怪鳥リトラ』の背中に乗って飛んで来る『レイ』がいた!

 

 バレッタを救ったゴモラはレイのゴモラだったのだ!

 

 それを知ったバレッタは安心の表情になる。

 

 バレッタ「………レイさん………。」

 

 レイ「共に戦おう! 行けっ!ゴモラ!」

 

 バレッタ「オッケー! 行くよ!キングジョー!」

 

 二人の掛け声を受け、ゴモラとキングジョーは構える。そしてモンスアーガー目掛けて駆け始める。

 

 ゴモラは先手必勝として、駆け寄りながら角を活かした横振りの頭突きを腹部に打ち込む。

 

 モンスアーガーは反撃として尻尾を振るうがゴモラはそれを頭部の兜状の角で受け止めて防ぎ、その隙にキングジョーが跳躍して落下スピードを活かしたパンチを背部に叩き込み転倒させる。

 

 モンスアーガーは立ち上がり、頭突きの突進を繰り出すがゴモラはそれを両手で頭部を掴んで受け止め、蹴りで顔面を蹴り上げる。

 

 そして一回転しての尻尾攻撃を繰り出すが、モンスアーガーは尻尾を掴むことでそれを受け止める。

 

 だがゴモラは怯まずそのまま右後ろ蹴りを腹部に打ち込み、それによりモンスアーガーは尻尾を放して後退する。

 

 その隙にゴモラは再度一回転して強烈な尻尾攻撃『テールハンマー』を胸部に叩き込み吹っ飛ばす。

 

 そしてモンスアーガーがゴモラから離れたところで、キングジョーはゴモラを後ろから跳び越えながらジャンプし、落下スピードを活かした渾身の右拳を胸部に叩き込む!

 

 パンチを打ち込まれた部位は爆発を起こし、モンスアーガーは吹っ飛び地面に叩き付けられる。

 

 かつてゴモラは大阪、キングジョーは神戸を舞台に大暴れした事があり、それぞれウルトラマンとウルトラセブンを苦戦させた事がある強豪怪獣である。

 

 そんな二体が連携取って攻撃してくるのだから流石のモンスアーガーも一気に劣勢となっていた。

 

 

 

 一方のゲドーはと言うと、二人のゼロの連携を取ったパンチ、キックによりほぼ一方的に攻められていた。

 

 だが、もう一人のゼロは少し違っていることに気付く。

 

 

 なんと攻撃しながら「ブラ」「ブラ」と口走っているのだ!

 

 

 それによりゲドーはようやく何かに気付く。

 

 ゲドー「そ……そうか!これはブラコの変身能力………!」

 

 ゲドーがそう呟いた瞬間、ゲドーと組み付いていたもう一人のゼロは光を放ちながら姿を変えていき、やがてザラブ星人の姿へ………。

 

 ブラコ「その通りだ!」

 

 そう、もう一人のゼロはブラコが変身していたものなのだ!

 

 ゲドーが驚くのを他所に、ブラコはなんとパンチを連発し始める!

 

 ブラコ「オーラオラオラオラオラー!よくもマイハニーを!この外道め~!」

 

 すごい速さでパンチを連打した最後、渾身のアッパーでぶっ飛ばした!

 

 ゲドーは地面に落下した後、並び立つゼロたちを見つめる。

 

 すると、ゼロ達は発光した後それぞれ元の姿の戻る。

 

 そう、妙な言動をしていたゼロ達は、実はブラコの変身能力によりそれぞれ違うウルトラ戦士に変身していたもので、パワードがソルに、コスモスがビクトリーに、ギンガがコスモスに、ビクトリーがパワードに、ソルがギンガにと、それぞれ姿を変えていたのだ!

 

 そしてゼロだけそのままで、ブラコがゼロに変身していたのである。

 

 ゲドー「くっ、お前ら、味な真似を~!」

 

 攪乱しながらの猛攻を受けたゲドーはもう消耗していた。

 

 

 レイ「ゴモラ!超振動波だ!」

 

 バレッタ「デスト・レイ、発射!」

 

 ゴモラは頭部の角にオレンジ色の光を発生させてエネルギーを溜めた後、鼻先の角から光線状の『超振動波』を発射し、キングジョーは両目のようなパーツから赤く細い波状光線『デスト・レイ』発射する!

 

 超振動波とデスト・レイを同時に浴びたモンスアーガーは大爆発して吹っ飛び、ゲドーのそばに落下する。

 

 

 ゼロ「さ~て、そろそろぶっ飛ばしてやろうか。」

 

 ゼロは身体を赤く発光させ『ストロングコロナゼロ』へと姿を変え、その左右にブラコ、キングジョーが並び立つ。

 

 ゲドー「……まッ、待て!話せばわかる!」

 

 だがゼロ達は問答無用。ゼロは右拳に炎のエネルギーを、ブラコは指先に、キングジョーは両目のようなパーツにエネルギーをそれぞれ溜める。

 

 

 ゼロ「ガァァルネイト、バスター!!」

 

 

 ゼロは右拳を突き出し『ガルネイトバスター』、ブラコは両手の指先から『エネルギーバルカン』、キングジョーは両目のようなパーツからデスト・レイを、三人同時に発射する!

 

 

 “ズドガーン”

 

 

 ゲドー「ぎゃああぁぁぁ!!」

 

 

 ゲドーとモンスアーガーは、大爆発により空高く吹っ飛んでいく………。

 

 ゲドー「いつかぶっ殺すからな~!!」

 

 正にベタな悪役の捨て台詞である(笑) 二体はやがて空の彼方へと吹っ飛び星になった。

 

 真美「あらあら………ごきげんよう………。」

 

 早苗「少し、虐めな気もしたけど…、」

 

 健二「ま、悪い奴だから仕方ないさ。」

 

 真美に健二、早苗も吹っ飛ぶ二体を見上げながらささやかに手を振る。

 

 

 ゼロ「バンデロと違って、あまり手ごたえが無かったな………。」

 

 ゼロは、かつての惑星ギレルモでの戦いをふと思い出しながら呟く………。

 

 

 二体が吹っ飛ぶのを見届けた6人のウルトラ戦士、そしてゴモラ、ブラコ、キングジョーは見つめ合う。

 

 そして互いに頷き合った。まるで互いに「ありがとう。」と言い合うように………。

 

 

 

 ウルトラ戦士たちは変身を解き、レイはゴモラを戻し、そしてブラコも等身大に戻り、バレッタもキングジョーから降りる。

 

 櫂達はカイ、ムサシ、ヒカル、ショウ、レイと別れる。

 

健二と早苗のカップルも、二人っきりで櫂たちと別れた。

 

 櫂「サンキュー、ブラコ。まさかあんな粋な作戦を思いつくとはな。」

 

 海羽「(両頬に手を当てて)ほんっと!楽しかったな~!」

 

 ブラコ「いやいや、あなた達、そしてマイハニーを助けたいと咄嗟にね。」

 

 真美「(両手を合わせて)素敵です。愛する人のために、咄嗟に行動できるなんて。 (小声で)まるで…櫂君みたい…。」

 

 ブラコ「(照れくさそうに)ははは…いやーしかし、愛する者のためを思うと咄嗟に潜在的な力が発揮できるって本当みたいだね。」

 

 ブラコはバレッタの方を振り向く。

 

 ブラコ「追われる身だった私は、一時期この変身能力を持っている自分の存在価値を疑ったことがあるんだ。「悪役に目を付けられるような能力を持った私は、本当にいていいんだろうか?」…ってね。」

 

 バレッタは少し驚きの表情を見せる。ブラコはバレッタの手を握る。

 

 ブラコ「………だが、同じ境遇でも諦めなかった君に出会えたお陰で、私も自分に自信が持てるようになったよ。 君に出会えたから、私はこの能力を良い事に使おうと強く思うことが出来た。 だから今回も、ゼロたちの力になることが出来たんだ。」

 

 ブラコの言葉を聞いたバレッタは、嬉しさからか目を潤める。

 

 バレッタ「ブラコ君………ありがとね!」

 

 バレッタは顔を上げて笑顔を見せる。

 

 

 ゼロ「愛の力って、やはり強いモノなんだな。」

 

 海羽「そうだよそうだよ~!たとえ宇宙人同士でも、男と女の愛しあう心は強い力を引き起こすんだから!」

 

 櫂「ああ、そうだな。」

 

 そう言いながら櫂はひっそりと真美を見つめる………。

 

 

 バレッタ「ねえねえ、折角だからもう一泊して地球を観光しない?」

 

 ブラコ「お、いいね。賛成だ。」

 

 海羽「よ~し、じゃあ明日は霞ヶ崎動物園に行こう!」

 

 バレッタ「動物!?私地球の動物大好きなの!可愛いし。」

 

 真美「バクちゃんもいるからあそこは良いよ。」

 

 

 真美達が明日のスケジュールで盛り上がっていたその時、

 

 

 櫂「なあブラコ、盛り上がってるところちょっとすまない。」

 

 ブラコ「ん?何だい?」

 

 櫂「すまんが、君たち宇宙人に指令を送っている者の姿に変身してくれないかな?」

 

 ブラコ「構わないが、どうしたんだい?」

 

 櫂「いや~、どうも何となく気になってな、」

 

 ブラコ「良いでしょう。 んんん~~~………はっ!」

 

 ブラコは身体を発光させて、姿を変える。

 

 ブラコは、自分達宇宙人に指令を送っている者へと姿を変えた。

 

 それは人間の様であり、見た感じ年齢は櫂達と同じくらいなイケメンな男だった………。

 

 

 すると、姿を変えたブラコを見た櫂、真美、海羽は驚愕する!

 

 

 真美「ま………まさか………?」

 

 海羽「間違いないわ………。」

 

 櫂「………桜井敏樹………?」

 

 

 ………そう、ブラコが変身した男は間違いなく、消息不明になっていた櫂達の友人『桜井敏樹』だった………!

 

 

 一気に深刻な表情になる櫂達。ブラコは元の姿に戻る。

 

 ブラコ「どうしたんだい?」

 

 櫂「………実は………その男は………消息不明になっていた俺たちのダチなんだ。」

 

 それを聞いたブラコとバレッタも驚愕する。

 

 バレッタ「………そうだったなんて………。」

 

 海羽「しばらく顔を見ないから、どこで何やってるんだろうと思ってたけど………。」

 

 真美「でも、もしかしたら他人の空似かもしれないし、とにかくこれが今後桜井君の行方を捜す手掛かりになりそうだね。」

 

 海羽「うん、そうだね。」

 

 櫂「サンキュー、ブラコ。」

 

 ブラコ「え?………ええ、ああ。」

 

 ブラコは困惑しながらも返事をする。

 

 櫂「明日もしっかり楽しんで来いよ!」

 

 櫂たちは、整理がついてない状態ながらも、僅かながらも手掛かりを教えてくれたことのお礼を言う。

 

 ブラコ「はい、地球をもう一堪能してきます。」

 

 バレッタ「楽しみだな~動物園。」

 

 櫂たちは、ブラコとバレッタと共に夕焼けの道を歩き始めた………。

 

 

 

 [エピローグ]

 

 ゼロたちにぶっ飛ばされ、テライズグレートに帰還したゲドーは、ボロボロの状態で個室にいた。

 

 ゲドー「モンスアーガー、ゆっくり休むんだ。 イテテテテテ…くそっ………ゼロたちを倒すには、俺様の三大相棒怪獣最強の“アイツ”も出撃させるしかないのか………?」

 

 そう言うとゲドーはふと振り向く。

 

 その視線の先の暗闇には、蛇腹状の黒いボディに、頭部の大きな一本角が特徴の怪獣が、赤い目を光らせて唸り声を上げていた………。

 

 

 To Be Continued………。

 

 

 (ED:ウルトラの奇跡)




 読んでいただきありがとうございます!

 いかがでしたか?カオス回第二弾は(笑)

 ですが、今回で櫂たちは行方不明になっていた敏樹を探す手掛かりを見つけると言う今後の展開のために重要なシーンも入れました。

 ナックル星人ゲドーはもちろん、モンスアーガーも今後も出てくるかもしれません。

 ブラコとバレッタのカップルも今後出すかも?笑

 次回以降もアッと驚く回が続くと思います(多分)。

 と言うわけで、今後もよろしくお願いします!

 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


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第21話「光の子供」

 今回は、GW特別篇第1弾のつもりで製作しました!

 タイトルでもお分かりのように、あのウルトラ戦士もゲストで登場です!

 もしかしたら色々とおかしなところがあると思いますが、とりあえず娯楽として楽しんでいただければ幸いです!笑

 因みに、今回で櫂君に(悪い意味で)大きな変化が起こってしまいます!

 また、登場する怪獣もあの“怪獣王”と戦った強敵怪獣三体が登場です!


 (OP:英雄の詩)

 

 

 

 ウルトラマンギンガとウルトラマンビクトリーは、苦戦を強いられている………!

 

 

 

 吹っ飛ばされた二人は地面に激突し、土砂や土煙を巻き上げる。

 

 

 

 二人はすぐさま立ち上がり、怪獣の方を振り向き構える。

 

 

 その視線の先に強烈な威圧感を発しながら立っている怪獣は、黄金のウロコに覆われたボディに巨大な翼、そして竜のような長くしなやかな三つの首が特徴の怪獣。

 

 

 『宇宙超怪獣キングギドラ』である!

 

 

 ギンガとビクトリーを吹っ飛ばしたキングギドラは三つの首から稲妻状の破壊光弾『引力光線』を乱射しながら周りのビルなどを破壊する。

 

 周りの物を一瞬で破壊する引力光線、巨体により足踏みしただけで起こる地響き、ちょっと羽ばたいただけで起こる強風………正にこれだけでも強敵感がひしひしと伝わる者である。

 

 恐らくこれまでの怪獣たちとは一、二味も違うのだろう。

 

 なにしろ奴は、別宇宙の金星を死の星に変えたことがあり、何よりそこの地球ではあの“怪獣王”を幾度か大苦戦させたことがあるのだから………。

 

 だが、ギンガとビクトリーはそんなキングギドラに怯まず立ち向かう。 カラータイマーは既に赤く点滅を始めていた………。

 

 

 

 そしてその近くで、同じくウルトラマンパワードが二体の怪獣相手に苦戦を強いられていた。

 

 その二体の怪獣も、これまでと違う者たちである。

 

 

 一方は、ドリルのような腕とカブトムシのような外見が特徴の怪獣『昆虫怪獣メガロ』、

 

 もう一方は、ゴーグルのような単眼と大きな角、肘から先が大きな鉤爪状になっている両腕・ハンマーハンドが特徴の怪獣『未来怪獣ガイガン』である!

 

 この二体もかつて、別宇宙で怪獣王を苦戦させたことがある強敵怪獣である。

 

 今回もその時と同じく、コンビでパワードを追い詰めていた。

 

 メガロは別世界ではシートピア海底王国の守護獣である。

 

 今回の個体はそれと同一個体なのか、はたまた別個体なのであろうか………そこら辺は今のとこ不明である。

 

 ガイガンも同一個体と考えられるが、奴は“サイボーグ怪獣”というもう一つの異名も持っているため、今回の個体は新たに造られた個体という考えも否定できない。

 

 

 しかしなぜ白昼堂々、そんな強力な怪獣が三体も現れたのだろうか?………

 

 テラ軍も流石に、後が無いと焦りを見せ始めたのだろうか?………

 

 

 パワードは既に消耗しており、パワード・アイは深紅に変色し、カラータイマーは点滅を始めていたが、力を振り絞り立ち向かう。

 

 パワードはメガロの振り下ろして来たドリル状の腕を左腕で受け止め、そのまま右手で角を掴んで背負い投げで地面に叩き付ける。

 

 その後メガロを掴んで起き上らせ更に攻撃を加えようとするが、その隙に背後からガイガンのハンマーハンドの一撃を受けてしまう!

 

 打撃を受けた部位は爆発し火花を散らす。

 

 それによりパワードが怯んだところでメガロが角を活かした横振りの頭突きを腹部に叩き込み吹っ飛ばす。

 

 そしてパワードが地面にうつ伏せで倒れたところで更にメガロは横腹を蹴り転がす!

 

 パワードはもはや立ち上がるのもやっとの程弱っていた。

 

 メガロは角の先端から『レーザー殺獣光線』、ガイガンは単眼から赤いレーザーをそれぞれ同時に発射し、容赦なくパワードに浴びせて追い打ちをかける………!

 

 

 ギンガは『ギンガスパークランス』を手に果敢に挑む。

 

 ランスを振り回し、突いたりなどして攻めかかるが、キングギドラの三つ首の連携攻撃により返り討ちに合う。

 

 例えば、ランスで左側の首を攻撃している隙に右側の首が頭突きを繰り出し、それをギンガスパークランスを右手に持ち替え、頭突きを繰り出して来た右の首を左手で掴んで防ぐが、それにより両腕がふさがってしまったところで中央の首が頭突きを胸部に叩き込む。

 

 など、隙の無い三つ首の連携攻撃でギンガは逆に痛めつけられる。

 

 キングギドラは、三つ首を一つにして同時に頭突きをギンガの胸部に叩き込む!

 

 強烈な打撃が命中した部位は爆発を起こし、ギンガは吹っ飛び地面に叩き付けられる。

 

 

 今度はビクトリーが跳びかかる。

 

 そして、跳躍して渾身の右横蹴りを繰り出すが、その右脚を左の首に噛み付かれ、更に右の首で首を、中央の首で右腕を噛み付かれ、そしてそのまま地面に思い切り叩き付けられる!

 

 激しく土砂や土煙を巻き上げて叩き付けられるビクトリー。その後、キングギドラは横たわるビクトリーの横腹を、重量ある巨体を支える足で蹴り上げる!

 

 ビクトリーは大きく吹っ飛び、ギンガはそれを受け止めようとするが、それでも勢いが止まらず、ビクトリーを抱えたまま吹っ飛び岩山に激突してしまう。

 

 ショウ「凄いパワーだ……恐らく今までと桁が違う。」

 

 ヒカル「二人力を合わせるぞ、ショウ!」

 

 ギンガにライブしている礼堂ヒカルとビクトリーにライブしているショウの二人も、既に消耗していた。

 

 数々の戦いを経て、連携力が増したギンガとビクトリーの二人がかりをここまで追い詰めるとは、キングギドラの強力さが伺え、恐怖すら感じるものである。

 

 ギンガとビクトリーはカラータイマーの点滅が早まる中、最後の力を振り絞ってそれぞれギンガクロスシュート、ビクトリウムシュートの体勢に入る。

 

 が、キングギドラは「させるか!」とばかりに大きな翼を羽ばたかせて強力な突風を吹き付け、それを浴びた二人は体勢が崩れてしまう。

 

 更にキングギドラは三つの首から同時に引力光線を放ち、それを浴びたギンガとビクトリーは崩れる様に倒れ込んでしまう………。

 

 一方のパワードも、メガロが放った『地熱ナパーム弾』を喰らい、爆発で吹っ飛びギンガ達のそばに落下する。

 

 

 三体の怪獣は、エネルギーがほとんどなく、立ち上がるのも困難な状態の三人のウルトラ戦士向かって勝ち誇る様にゆっくりと歩み寄り始める………。

 

 

 もう、ここまでなのか………!?

 

 

 だが、三体は突然回れ右で背中を向ける。

 

 少し驚く三人を他所に、三体は各自羽を羽ばたかせて飛び立ち、やがて空の彼方へと消えて行った………。

 

 

 三体が突然去って行ったことに困惑しつつも、もうエネルギーが無い三人はその場で身体を光らせて小さくなっていき、それぞれ変身者に戻る。

 

 

 

 ヒカル「ハァ……ハァ……とんでもねー強敵だな、あいつら。」

 

 ショウ「あの三つ首の攻撃、そして強力な翼を突破しなければ。」

 

 カイ「それに他の二体(メガロ・ガイガン)も、あの連携力……流石に一人では………。」

 

 ヒカル「頑張りましょう先輩………人々を守るために………。」

 

 カイ「ああ、そうだな。」

 

 ヒカル、ショウ、そしてパワードに変身するケンイチ・カイの三人は、疲れで息が切れながらも、次なる襲撃へと備えることにした。

 

 

 一方、そんな戦いを少し離れた岩陰から伺っていた一人の人間がいた………。

 

 その男は、何やら軍隊のようなごつい服を着込んでいてがたいが良く、逆立った短髪をしており、顔には十字の傷が刻み込まれている。いかにも威厳のある男である。

 

 その男はウルトラ戦士敗北を見届けると、何やら悔しそうな顔で岩壁に拳を打ち付ける。

 

 そして憎しみのこもった声で呟く。

 

 ???「宇宙超怪獣……キング…ギドラ………………!」

 

 

 

 一方、宇宙船・テライズグレートでは、幹部宇宙人のテロリスト星人バスコが桜井敏樹と話をしていた。

 

 敏樹「うぉーい!なぜ止めを刺させなかった? あそこでもう一撃喰らわせとけば、確実に倒せたはずだろ!?」

 

 バスコ「まあまあ、折角超強力な怪獣を貰ったんでね、ウルトラ戦士どもをじわじわと痛めつけてやっつけてやりたいんだよ。 特にゼロって奴はね。 それでこそ刺激だろう?」

 

 敏樹「………んまあ、そうだが、忘れるなよ。 お前には“もう後が無い”と言う事を………。」

 

 バスコ「………ああ………分かってんよ。」

 

 はて、一体バスコに後が無いとはどういうことなのだろうか………?

 

 

 それは、今(8月7日)から三日前(8月4日)のこと。

 

 〈回想〉

 

 テライズグレートでは、バスコがウルトラ戦士討伐に焦りを見せていた。

 

 バスコ「なあ!もっとウルトラ戦士どもを徹底的に倒せる怪獣をくれないか!?」

 

 敏樹「相当焦ってるみたいだな。じっくりの方が刺激があって楽しいのだが。」

 

 バスコ「今は直ったが、俺はこの自慢のテロリストソードを奴らに折られたんだ!(第15話参照) 許すわけにはいかねえ………!あいつらは徹底的に倒せねば………!」

 

 敏樹「………はぁ………仕方ない。じゃあお前に超強力な怪獣を三体授けよう。」

 

 バスコ「!?おお、マジっすか!?」

 

 敏樹「その代わり! ………確実に倒せ。折角超強力な怪獣たちを与えてやってんだ。 “お前にはもう後が無い”。 それが条件だ。」

 

 バスコ「………ああ。俺様もこのテロリストソードで戦います。 確実にあいつらを………!」

 

 バスコは強い決心と覚悟を決めた………………。

 

 〈回想終了〉

 

 

 こういうわけで、バスコはキングギドラ、ガイガン、メガロという強力怪獣を三体も与えられると言う出血大サービスを受けたのである!

 

 “もう後が無い”のを条件に………。

 

 それによってバスコは確実にウルトラ戦士達を倒すと決心し、倒す機会を虎視眈々と狙っていたのである………。

 

 

 バスコ「次は………ゼロたちを狙いますか………ふっふっふっふっふ。」

 

 

 

 その頃、霞ヶ崎では、しばらく上空を彷徨っていた一つの光がとある路地に降り、そして発行したかと思うと徐々に形を変えていく。

 

 そしてなんと人間の姿となった!

 

 筋肉質であり、“UMA”(ユーマ)のロゴがプリントされたインナーを着ており、何やらウルトラマンのカラータイマーのようなペンダントを下げているその男は、辺りを見渡していた。

 

 ???「確かこの辺のはずだ。………レイ達を連れて来てから数日間探索していたが、間違いなくこの町に邪悪な物を感じる………。」

 

 そう言うと男は何処かへと移動を始めた。

 

 ???「私の“心友”も、ここに来てるはずだ。」

 

 

 はて、パワード達の戦いを眺めていた男、そして、光から人間となり霞ヶ崎に降り立った者。この二人は一体何者なのであろうか………?

 

 

 様々な謎を伴い、この物語は始まる!

 

 

 

 

 三人の敗北から少し後(8月7日 P.M.13:00)、竜野櫂と新田真美、眞鍋海羽は、消耗した三人のために軽い食料、足りなくなった治療道具などを買いに出かけていた。

 

 真美「(心配そうな顔で)ヒカルさんたち…今までに見ない感じに傷を負ってたね。」

 

 櫂「ああ。これは俺たちも行くことになるかもな、ゼロ。」

 

 ゼロ「ああ。話を聞いただけでも、奴の強敵さが伝わるぜ。」

 

 櫂「力を合わせて戦うことが必要かもな。」

 

 海羽「そのためにも、ヒカルさんたちにも元気になってもらわないとね!(両手ガッツポーズ)」

 

 三人もヒカル達からキングギドラたちの話を聞いただけでも緊迫感を感じており、それなりの覚悟を決めていた。

 

 真美「じゃあ、まずは食料調達しよっか。ゼリーとか消化の良いものがいいかもね。」

 

 海羽「それならプリンもいいかもよ!」

 

 櫂「海羽…お前も食いたいだけだろ?」

 

 海羽「(右手を後頭部に)エヘヘ、ばれていたか。」

 

 三人は笑い合いながら近くのスーパーに向かっていた。

 

 

 と、その時、

 

 

 真美「………あ………。」

 

 真美は突然、何かに気付いたのか立ち止まる。櫂と海羽もそれに気づく。

 

 海羽「どうしたの?真美ちゃん………ん?」

 

 櫂と海羽も、真美が見つめる方へ振り向く。

 

 そこには、底に車輪の付いた黄色のキャリーバッグを持っている女性が歩いていた。

 

 その女性は、見た感じ165センチあるんじゃないかと言うほど背が高く、顔つきは小顔でどこか大人っぽさも感じる可憐なモノで、髪形は綺麗な長髪を後ろで一つに束ねており、スタイルは真美に勝るとも劣らないほどスレンダーである。

 

 櫂「………誰だ?あの人は…。」

 

 海羽「なんか、素敵~。」

 

 すると、その女性も真美に気付くや、どこか驚く様な表情で立ち止まる。

 

 困惑の表情で見つめ合う真美と女性。すると、女性は話しかけ始める。

 

 

 ???「………もしかして、まみたん?」

 

 

 櫂「………へ!?」

 

 海羽「まみ…たん………?」

 

 櫂と海羽は少し驚く。それもそのはず、突然現れた女性は真美に話しかけるだけでなく、何やらあだ名のような呼び方で真美を呼ぶのだから………。

 

 

 真美「ハルちゃん…?」

 

 すると、真美もその女性に話し返した。それも同じくあだ名のような呼び方で。

 

 

 ???「おおーやはりまみたんだー!まさかここで会えるなんて!」

 

 真美「奇遇だねー。」

 

 

 突如、真美はその女性とまるで再会を喜ぶように喜び合い始める。

 

 櫂と海羽はますます理解不能の状態であった。

 

 櫂「うおいおい!一体どうなってんだってばよー!?」

 

 海羽「どういう関係なのー!?」

 

 

 

 真美は櫂と海羽に事情を話した。

 

 彼女の名は『笹崎春菜(ささざき はるな)』。

 

 真美とは医療ボランティアの同期の仲であり、時々一緒に活動していく内に仲が良くなっていったと言う。

 

 そして春菜は真美を“まみたん”、真美は春菜を“ハルちゃん”と、それぞれあだ名で呼びあっていると言う。

 

 因みに年も真美と同じ所謂同級生だが、医療ボランティア経験では真美より上であり、大学も麟慶大学よりも難しい『浄京大学(じょうけいだいがく)』の医学部に通っている。

 

 所謂彼女は真美以上の優等生と言うわけである! 下手したら頭の良さでは櫂と同じかもしくはそれ以上かもしれない………。

 

 上には上があるとはまさにこういうことである。

 

 櫂「初めて知ったよ。真美に医療ボランティアで親しい仲がいたなんてな。」

 

 海羽「ほんっと、私もだわ。」

 

 春菜「脅かして悪かったわね。まみたんの………彼氏さんとお友達さん?」

 

 それを言われた櫂は心拍数が急激に上がる!

 

 “彼氏さん”だなんて!?………………………。

 

 だが、その一方でどこか不敵な笑みも浮かべていた………。

 

 真美「紹介するよ。幼馴染の竜野櫂君、それから大学のお友達の眞鍋海羽ちゃん。」

 

 海羽「(ダブルピースで)よろしく~!」

 

 櫂「よろしくな。」

 

 春菜「へえ~、まみたん、結構いい友達出来てんじゃん!」

 

 春菜は気さくに真美の背中を数回たたく。

 

 真美「ありがとう………でも、どうして? ハルちゃん、いきなり石狩市から上京して来るなんて………。」

 

 そう、春菜はこの夏休み、北海道の石狩町に災害ボランティアの研修として出かけていたのだが、研修期間はまだ終わっていないはずなのに上京してきたのである。

 

 だが、真美の問われた瞬間、春菜は突然少し俯き黙り込んでしまう………。

 

 さっきまで気さくに話していた春菜が突然どうしたのであろうか?…櫂は少し怪しそうに見つめていた。

 

 真美「………あ、ごめん。言いたくなかったら、いいよ。」

 

 春菜は顔を上げ、いつもの笑顔に戻る。

 

 春菜「ま、まあ、こちらも色々あってね。 それより、買い物?私も手伝おっか?」

 

 真美「本当に? ありがと~。」

 

 突然元気に戻った春菜を、櫂はなおも怪しそうに見つめていた………。

 

 櫂「ゼロ………彼女は………。」

 

 ゼロ「ああ。あれは何かありそうだな………。」

 

 

 4人は近くのスーパーへと向かい始めた。

 

 だが、その様子を影から見つめている一人の男がいた………。

 

 その男は顔に十字の傷を負っている………そう、先ほどギドラを見つめていたのと同一人物なのだ!

 

 ???「………………。」

 

 ますます謎が深まるその男。果たして彼は誰なのだろうか………………………?

 

 

 

 買い物を予定よりも早く終えた4人は、どこか公園のベンチで休憩をとっていた。

 

 特に衣料品の買い物は、経験深い春菜の協力もあって、わずか約十分で終わってしまったのだ。

 

 海羽「春菜さんすごいわ。必要な衣料品を確実に探し見つけちゃうなんて。」

 

 真美「ハルちゃんはこれまでボランティアでいろんな負傷者を治療してきたからね。」

 

 櫂「研修しつつもボランティアに参加したりと結構多忙らしいな。」

 

 春菜「まあ、怪我して苦しんでる人、黙って見てられないからね。災害地で医療ボランティアが開催されたら、私はすぐに飛んでくんだから。」

 

 櫂「優しいんだな。だが、無理しないように体には気を付けろよ。」

 

 春菜「サンキュー!やっぱまみたん、良い友達持ってるじゃない!」

 

 春菜は櫂の人の良さに嬉しそうだった。 心に深く隠している櫂の本性を知るはずも無く………。

 

 海羽「災害ボランティアって、結構大変なの?」

 

 春菜「うん。迅速な判断も必要だし、子供がどんなに泣いて嫌がっても、強引に治療を進めないといけないたまの非情さも必要になるの。」

 

 すると、春菜は真美の方を向く。

 

 

 春菜「だから、災害ボランティア研修は、まみたんにはまだ無理かもね。」

 

 

 春菜の思わぬ発言に櫂も海羽も驚愕し、真美は少し俯く。

 

 櫂「………それはどういう事かな?」

 

 櫂は冷静に問いかける。

 

 春菜「まみたんは優しさが良い所なんだけど………その優しさが理由よ。」

 

 櫂の困惑が続く中、春菜はなおも語り続ける。

 

 春菜「そりゃあ、優しさはまみたんの魅力だし、そこは最大の長所だと思ってる。………でもね、それが短所として働くこともあるのよ。」

 

 海羽「優しさが………時に短所?」 

 

 春菜「さっきも言ったでしょ? もし子供が一刻を争う重傷な時、その子が例え泣いて嫌がっても強引に治療を進めるたまの非情さも必要だって………。 一緒に医療ボランティアで活動していて思ってたんだけど、まみたんは泣いて嫌がる子供を宥めるだけでも時間をかけている気がするのよ。」

 

 櫂は春菜の話を聞いていた。   何やら拳を震えるほど強く握りながら………。

 

 春菜「子供に優しくするのも良いけど、もしその子供が一刻を争う状況だったら、その間に症状が悪化するかもしれないじゃない? だからまみたんには将来看護婦を目指すのなら、その甘さを抑える必要もあると私は思うな。」

 

 真美「………確かに………そうかもね。私も薄々気付いてたの。」

 

 春菜「それなら良いけど、まあ、そこを今後少しづつ治していくといいよ。」

 

 真美「うん。」

 

 春菜の辛口は意見に真美は笑顔で納得する。

 

 「優しさが短所でもあるなんて………。」海羽は困惑がまだあったが、これも春菜の経験豊かであるが故のアドバイスである事に気付く。

 

 

 だが、その一方で櫂の中の何かが音を立てて崩れる………………。

 

 下ろしていた両手をわなわなと震わせる櫂………。

 

 ゼロ「………櫂?」

 

 

 春菜「ちょっと、トイレ行って来るね。」

 

 真美「ええ、分かったわ。」

 

 春菜は公園外の公衆便所へと向かい始める。

 

 櫂「お、俺もトイレ行って来るぜ。」

 

 真美「え、ええ。分かったわ。」

 

 櫂も春菜を追うようにトイレに向かい始める。 どこか不敵な笑みを浮かべながら………………。

 

 真美「櫂君、なんか少し慌ててるようだったけど………。」

 

 海羽「そうかな?………多分いきなりお腹が痛くなったんじゃない?さっきもアイス買って食べてたし。」

 

 真美「まあ、今は夏本番だから、きっとその前も冷たいものを食べてたのかもね。」

 

 真美も海羽も特に気にすることなく櫂達を待つことにした。

 

 

 そう、櫂の恐ろしい企みに気付くはずも無く………………。

 

 

 

 春菜「ふぅ~、スッキリした。」

 

 約5分後、春菜は女子トイレから出た。

 

 ………が、その時、彼女はふと驚く。

 

 女子トイレの外に櫂が立っていたのだ。まるで待ち構えていたかのように。

 

 春菜「なんだ櫂君か。待っててくれたの。」

 

 櫂「まあな。君はこの町は初めてみたいだから迷わないかと心配でね。」

 

 櫂はいかにも紳士のように振る舞う。不敵な笑みを浮かべつつ………。

 

 春菜「じゃあ、私、先戻っとくね。」

 

 春菜はそんな櫂を少し不思議そうに見つめながら真美達のところに戻ろうとしたその時、

 

 櫂「俺が付いててやろうか? 一人じゃあ不安なんだろう?」

 

 春菜は櫂の発言が少し嫌味に聞こえ始めてきた。

 

 

 春菜「………もしかして、ふざけてるの?」

 

 すると、櫂の表情が少し険しくなる!

 

 櫂「ふざけてるのは君の方じゃないのかなあ? 他人の優しさを短所とかわけわからない事をぬかして。」

 

 表情は険しいのにどこか落ち着いた口調で話す櫂がどこか不気味である。春菜は怯まず話し返す。

 

 春菜「あ、あれはただ、私はまみたんの事を思って………」

 

 櫂「いや違うな!」

 

 春菜の言い分を遮る様に櫂が叫ぶ。

 

 櫂「君は真美の事を思っていない………優しいが故に人気のある真美に嫉妬してるんだ。」

 

 春菜「私が嫉妬だって?………なに馬鹿なこと言ってんの?」

 

 櫂「ああん?馬鹿が馬鹿言うな!」

 

 

 すると櫂は春菜の右腕を掴んでそのまま後ろへねじ込んで壁に叩き付ける!

 

 

 思わぬことをされた春菜は驚きと共に言葉を失う。

 

 ゼロ「おっ、おい櫂!?何やってんだ!」

 

 ゼロの困惑も他所に、櫂は語り出す。

 

 櫂「人に優しくすることこそ彼女のアイデンティティーみたいなもんだ。 お前はそれを否定した。 すなわち、お前は真美そのものを否定したに値するんだよ。分かる?」

 

 春菜「べ……別にそんなつもりは微塵も無いわよ! 人は優しいだけじゃいけないって言いたいのよ!」

 

 櫂「チッ、やっぱり真美を否定してんじゃねーか………ま、お前がどうあがこうと此方が有利だけどね。」

 

 春菜「…え?」

 

 櫂「今じゃ、俺と真美は麟慶大学では最も信頼を集める存在でねえ。海羽も俺たちの事を深く信頼している。 どういう事か分かるか?」

 

 春菜は答えられずにいた。

 

 櫂「ここ霞ヶ崎の連中は俺の味方って事だよ。長い間石狩にいたアンタがどう難癖つけようとねぇ~。」

 

 櫂は不気味にも、不敵な笑みを近づけながら語り続ける。

 

 櫂「麟慶大学より上だか知らないが、偉い大学に行ってるからって偉そうにしてると………痛いよ?」

 

 そういうと櫂は、ねじ込んでいる腕を絞める力を強める。春菜は痛みを感じ顔を少ししかめる。

 

 櫂「いくら頭が良かろうと、いざと言う時はこういう風に力でねじ伏せる等容易い事なのだよ。 ましてや女なら尚更なんだよ。」

 

 ゼロ「おい櫂!お前どうかしちまったんじゃねーのか!?その発言明らかに差別だぞ!」

 

 だが、ゼロの呼びかけも完全に他所にする。

 

 

 櫂「現に昔ひ弱だった俺は、真美の優しさによって支えられ、今では強くなった。 即ち彼女の優しさで俺はエリート級の力を手に入れられたのだよ。 ま、女はもともと男に優しくし、癒すためだと思ってるけどね………………

 

 だから邪魔なんだよ………分かるか?………俺の事を癒せない女(やつ)は邪魔なんだよ!」

 

 

 ゼロ「!!………櫂………お前………………。」

 

 櫂はとんでもないことを口走った後、腕をねじ込んで壁に叩き付けていた春菜を乱暴に解放する。そして、今度は壁ドンのように詰め寄る。

 

 櫂「さっきここに来た理由が言えずにいたが、どうせ真美に嫌味を言うために来たのだろう?え?」

 

 春菜「ちっ………違うわよ。」

 

 櫂「じゃあ何なんだよ?自分の知性を自慢するためか?そして俺たちから地位を横取りってか?ええ?」

 

 櫂に追い詰められた春菜は、遂に吹っ切れた。

 

 

 春菜「違うわ!私は思い人を追ってここに来たのよ!」

 

 

 櫂は春菜の叫びに少し驚くが、すぐさま不敵な笑みに戻る。 それどころか笑い始めた。

 

 櫂「………ふふふふふふ…なんだ、そんな理由かよ。 そんなんでわざわざ研修抜けて北海道から来たのかよ? 気になる思い人のために?

 

 ………………お前も大甘じゃねーか。………そんなお前が、なに人のために優しくする真美に偉そうに“甘さ”とかぬかしてんだよ?ええ?」

 

 ゼロ「櫂!いい加減にしろ!お前ホントにどうなっちまったんだ!?」

 

 

 櫂「はあ?これが俺の本性だし?」

 

 

 ………………ゼロはショックを隠せなかった………もしかしたら興奮で思わず口走っただけかもしれない………でも、そんな感じがあまりしなかった。

 

 まさか………好青年だと思っていた櫂の本性が、こんなに恐ろしいモノだったなんて………。

 

 

 ゼロ「櫂、冗談はよせ!」

 

 櫂「冗談?これは本気だ。 俺は昔さんざん虐げられていた。その時悟ったんだ。

 

 『実力のある者が、尊重される』と………。

 

 だから死ね程努力して絶大な実力を手に入れた今、そんな俺がペコペコされるのは、当然の事だよなぁ………。

 

 だからそんな俺を不快にさせる奴は邪魔なんだよ………ましてや、優しい筈の女がそんな事したらなおさら苛立つんだよ!」

 

 

 ゼロ「………まさか、俺との一体化を望んだのもそのためなのか!?」

 

 櫂「ああ!その通りだ。ウルトラの力を手に入れれば、ますます愚民どもは俺を必要としてくれる………現に今そうだしな。 ありがとよ。力を貸してくれて。」

 

 ゼロ「ふざけるな!そんな事のために力を貸していたとは、俺ながら情けないぜ! ウルトラマンゼロ一生の不覚だ!」

 

 櫂「そんな事? 何言ってんだ? これは愛する真美の為でもあるんだぞ? さあゼロ、侵略者を殲滅しなきゃいけねーんだろ?今後も共に戦おうぜ。」

 

 ゼロ「断る! そんな邪な考えの為に力を貸すほど、俺たちウルトラマンは甘ったれじゃねーんだよ!」

 

 櫂「………それはどうかな? ふんっ!」

 

 櫂はウルティメイトブレスレットを付けている左腕に力を入れる。すると、ウルティメイトブレスレットが光を放ち始める。

 

 ゼロ「う、うおい、櫂!何をする!? うわっ!」

 

 すると、なんとウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイが現れる!

 

 櫂は悪意地の強さで、ゼロの意思は関係なくゼロアイを出現させてしまったのだ!

 

 そう、ゼロがどんなに力を貸さないと抵抗しても、櫂の悪意地の強さの前では無駄と言う事である。

 

 

 ゼロ「…ッ、こうなったら今からお前と分離してやる!」

 

 ゼロは櫂と分離しようと踏ん張るが………どうしたことか、なかなか櫂から離れることが出来ない………!

 

 櫂「無駄だよ。そんな事しても。」

 

 なんと、櫂の悪意地の強さは無理矢理ゼロの力を引き出すだけではなく、ゼロの意思で分離するのも妨げてしまうのである!

 

 

 ………なんて最悪なんだ………ゼロは心で呟き落胆する。

 

 

 すると、櫂はゼロに語り掛ける。

 

 櫂「………いいか?ゼロ。お前は今、本当の俺を知ってしまった………今後は余計な事をするなよ? もし真美とかにばらしたりしたら、気に入らない奴らをお前の力で痛めつけるぞ?」

 

 ゼロは驚愕する。

 

 櫂「そんなことをされたらどうなるか、分かってんだろうな~?お前は光の国での評価が落ち、追放されることになるかもな~ふふふふふふ………。」

 

 ゼロ「櫂………貴様~………!」

 

 ゼロはもはやなすすべなく途方に暮れていた。

 

 

 そんなやり取りを見ていた春菜も驚愕する。

 

 櫂がゼロと一体化しているのは、先ほどの買い物の最中の会話で真美から聞いていたのだが、まさかこんな恐ろしい事を考えていたなんて………………。

 

 春菜は急いで真美達のところへ戻ろうとする。

 

 と、その時!

 

 “バコーン”

 

 突如響いた何かが砕けるような音に驚き振り向く。

 

 そこには、トイレの石の壁に右の拳を叩きつける櫂の姿があった!

 

 右の拳は約5ミリぐらい食い込んでおり、壁は拳が食い込んだ部分から約半径10センチぐらいに蜘蛛の巣のようなヒビが広がっている。

 

 そして、拳が食い込んだ部分からポロポロと破片が落ちていた。

 

 櫂はその状態のまま、殺気に満ちた鋭い視線を春菜に向ける。

 

 櫂「もはやお前も俺の本性を知ってしまった………この事は、他の者には黙ってもらうぞ。

 

 真美はもちろん、警察とかにも言ってみろ。お前もこの壁のようになるぞ。」

 

 櫂からの完全な脅しであった………櫂の恐ろしい本性や、確かな強さを目の当たりにした春菜は、恐怖によりこれ以上の抵抗ができず、言われる通りにせざるを得なかった………………。

 

 

 

 同じ頃、真美と海羽はトイレに行った櫂と春菜を待ち続けていた。

 

 真美「なんか、遅いわね。櫂君もハルちゃんも……。」

 

 海羽「きっと、二人とも腹を壊してるんだよ。」

 

 真美「そうかもね。もうちょっとしたら戻るかな。」

 

 真美たちは当然、今頃春菜が櫂の恐ろしい本性により怖い目に遭わされてるとは知るはずもなかった。

 

 

 と、その時、とある一人の男性が公園の外から見つめているのに真美達は気づく。

 

 彼が着ている服には“UMA”のロゴがプリントされている………。

 

 真美はその男性に恐る恐る話しかける。

 

 真美「あ…あの~…どうかされましたか?」

 

 すると、その男性は返事もせずに何処かへと歩き去って行った………。

 

 歩き去って行く男性を、真美達は不思議そうに見つめていた………。

 

 

 その男は、歩き去りながら何やら考え事をしていた。

 

 ???「確かにこの辺から邪悪な波動を感じたのだが………気のせいだったのだろうか? あの少女たちが発してるなんてことはあり得ないし………。」

 

 彼は公園の辺りから微弱な邪悪な波動を感じ取っていたのだった。この時点で彼が普通の人間ではないのは明らかであろう。

 

 ???「微弱だったから、恐らく怪獣ではないだろう。」

 

 そういうと男は再び歩き始めた。

 

 もしやだが、その微弱な邪悪な波動は春菜に逆上している櫂から発せられていたのであろうか………?

 

 

 

 場面を真美達に戻す。

 

 真美「何だったのかな?あの人………。」

 

 海羽「あの服………もしかして、」

 

 海羽は、先ほどの男性の服装から、何やら心当たりがあるような感じだった。

 

 

 櫂「よお、お待たせ!」

 

 春菜「ごめんねー待たせちゃって。」

 

 その時、櫂達がトイレから戻ってきた。

 

 真美「あ、櫂君、ハルちゃん。」

 

 海羽「んも~遅かったから心配しちゃったよ。何かあったのかな~って。」

 

 いや最も、何かあったのだが………。

 

 春菜「ごめんごめん。ちょっと腹痛くてね。」

 

 櫂「俺も突然腹痛に襲われちゃってさ。」

 

 真美「フフ、やっぱり私たちの思った通りだったわ。」

 

 櫂「へ?そうか?」

 

 四人は笑い合っていた。

 

 最も、櫂は先ほどの凶悪な本性から良人モードに戻っており、春菜はそんな櫂に脅されてる以上、何事も無かったかのように振る舞うしかなかった………。

 

 それ故に、春菜の笑顔は何処か固くなっていた。

 

 櫂「じゃあ、そろそろヒカル達のところに行くか。あいつら多分待ちくたびれてるぞ。」

 

 海羽「そうだね。カイさんも待ってるし。」

 

 春菜「治療なら私も協力するよ。」

 

 真美「本当?ありがとうハルちゃん。」

 

 四人は笑顔で公園を後にした。

 

 

 だが、その様子を、先ほど真美達を見つめていた男が伺っていた。

 

 再び引き返して来たのである。

 

 ???「今、カイって言ったか?………やはり彼も、この世界に来ていたのか………?」

 

 そういうと男は、櫂達の後を付ける様に歩き始めた。

 

 パワードの変身者のカイを知っている?………彼はもしかしたら、カイと同じウルトラ戦士なのであろうか………?

 

 

 

 その頃、とある都市では、メガロとガイガンが大暴れをしていた。

 

 メガロはドリル状の腕でビルを崩したり、レーザー殺獣光線や地熱ナパーム弾で辺りを火の海にしながら暴れ、ガイガンはハンマーハンドや腹部の回転鋸でビルを容易く切り崩しながら暴れる。

 

 都市を蹂躙する二体。その時、そんな二体の前に浮遊する等身大のバスコが現れる。

 

 バスコ「よーしお前らまだまだ元気みたいだな。ほんじゃあその勢いで、霞ヶ崎にいる残りのウルトラ戦士どもを、痛ぶって来てやれ!」

 

 バスコの指示を聞いた二体はその場から飛び去り、霞ヶ崎へと向かい始めた………。

 

 

 

 一方、とある貸し切りの体育館で櫂達を待っているカイ、ヒカル、ショウはと言うと。

 

 ヒカルとショウは、かつてエタルガーを倒すために特訓をした時のように、手錠でつないでランニング、腹筋、組手などの特訓をしていた。

 

 ラフな格好で汗水流して特訓をする二人。だが、仮にも二人はキングギドラとの戦いで怪我をしている。それを押しての特訓なのだから若干痛みは感じていた。

 

 だが、そんな状態でも特訓を続けるのだから二人の気合の入り様が伺える。

 

 カイ「二人とも無理すんなよ。まだ傷が癒えてないんだから。」

 

 ヒカル「分かっています。ですが、相手は今までにない強力な怪獣です。」

 

 ショウ「ゆっくりはしていられないんでね。」

 

 カイは少し呆れつつも、一生懸命な二人を見守っていた。

 

 カイ「確かに、俺も悠長に構えていられないかもな。 こういう時こそ、“心友”が来てくれればな………。」

 

 カイが何やら気になることを呟いていたその時、

 

 櫂「お、みんなお待たせー!」

 

 カイ「お、櫂達戻って来たか。」

 

 櫂達が戻って来たことにカイ達三人は気づき、ヒカルとショウも特訓を中断する。

 

 ヒカル「おお、待ちくたびれたぜ。………あのー、そちらの女性は一体?」

 

 ヒカルは櫂達と一緒に来た春菜に気付く。

 

 

 櫂達はヒカル達を治療しながら、買い出し途中に春菜と出会った事、そして彼女が真美とは医療ボランティアの仲間であり親しい仲である事を話した。

 

 ヒカル「へえ~、それじゃあ春菜さん、忙しい中わざわざ来てくれたのですか。」

 

 春菜「え?…え、ええ。そうよ。」

 

 春菜は上京した本当の理由をまだ言えずにいた。

 

 ショウ「この町は最近怪獣が頻繁に現れている。あんたも気を付けた方がいいぞ。」

 

 春菜「ええ、ありがとう。でもウルトラマンも来ていると聞いているわ。 あなた達もそうだし、それに…彼らも。」

 

 春菜は櫂と海羽の方を向く。

 

 春菜「怪獣が出た時はよろしくね。」

 

 櫂「おうよ!」

 

 海羽「(ダブルピースで)任せて~!」

 

 だがその時、櫂はひっそりと不敵な笑みを浮かべており、春菜はこっそりと「チッ」と舌打ちをする………。

 

 櫂の本性を目の当たりにした後なのだから、櫂に友好に接する演技は流石に苦しいものがあった………。

 

 

 カイ「フゥ~、痛みが少し治まった。あんた治療が上手いね。」

 

 ショウ「流石は真美と同じ医療専門だけはあるな。」

 

 春菜「へへへ、ありがとね。」

 

 カイとショウは春菜の腕を褒める。 だが、それを見ている櫂はどこか不満そうな顔を浮かべていた。

 

 だが、

 

 ヒカル「真美さんも、いつもありがとうございます。」

 

 真美「へ?………ええ、ありがとう。」

 

 ヒカルが真美に礼を言うのを見て、櫂は今度は不敵な笑みに戻る………。

 

 彼は真美を愛するあまり、彼女を良く言わない者は誰であっても許さないのであろうか………?

 

 櫂の本性を知っているのは、この中では今のとこゼロと春菜だけ………今後も少しずつ櫂の本性を知る者が増えていくのであろうか………?

 

 

 その時、櫂、ヒカル、ショウ、カイ、海羽は、空に何やら光が現れた事に気付く。

 

 その光は徐々に形を変えていき、やがて複雑な文字のような形へとなった。

 

 それはウルトラマンコスモスからのウルトラサインであった。

 

 内容は、『信州の軽井沢から異常な生命反応を感じるため、そこに向かう。』とのことである。

 

 櫂「………異常な…生命反応だと?」

 

 海羽「一体何なのかな?」

 

 ショウ「まさかキングギドラ?………じゃなければいいが………。」

 

 五人はサインの内容が少し気になった。

 

 

 

 同じ頃、霞ヶ崎に到達したメガロとガイガンは地響きを立てながら着地する。

 

 そして、ウルトラ戦士をおびき出そうとばかりに傍若無人に暴れ始める。

 

 怪獣たちが暴れる事により起こる地響き、破壊され砕けるビルやガラスの音、大地を揺るがすように響く怪獣たちの咆哮が、我先に逃げ惑う人々を嘲笑うかのように容赦なく続く。

 

 体育館にいた櫂たちもそれに気づいて外に出る。

 

 春菜「まさか、こんな時に出てくるなんて………。」

 

 真美「ハルちゃんは早く安全な所へ行って。怪獣なら、櫂君達がちゃっちゃとやっつけてくれるから。」

 

 櫂「ああ。」

 

 海羽「(ウィンクをしながら)任せて。」

 

 春菜「………任せたわ。」

 

 春菜は、比較的元気な櫂と海羽に怪獣を任せることにした。

 

 だが、一方でカイは俯き何か考え事をしていた………。

 

 

 櫂と海羽が変身道具を構えようとしたその時!

 

 

 ショウ「?あれは何だ?」

 

 ショウは何かに気付き、他の者もそれに気づく。

 

 そこには、遠くから飛んで来る何かが見えていた。近づいて来るうちに、それが飛行機のようなものである事に気付く。

 

 春菜「………あれは…もしかして………?」

 

 春菜が飛んで来るものに何やら心当たりを感じ始めた時、やがて飛んで来るものがはっきり見える。

 

 飛んで来たのは、航空自衛隊の主力戦闘機『F-15Jイーグル』である!しかも四機も。

 

 その中でも戦闘を飛んでいるリーダー機と思われる機体のコックピットには、がたいが良く、逆立った短髪に十字の傷がある顔が特徴の男性が乗っていた。

 

 春菜は見た感じその男性に、驚きの表情で見とれてる様であった。

 

 春菜「………やっぱり………この街に来てたのね………………。」

 

 春菜の妙な反応に気付いた櫂は何かを察し始める。

 

 櫂(…もしかして………あいつの言ってた“思い人”ってのは………………?)

 

 

 

 先頭機に乗っている男性は暴れるメガロとガイガンを見下ろしていた。

 

 ???「…キングギドラは見かけないな………だが、この街には“アイツ”も来てるはずだ。何としてでも怪獣どもを撃滅するぞ!」

 

 ???「「「了解!!」」」

 

 そして、四機のF-15Jイーグルは分散して怪獣に挑み始める!

 

 まずは隊長機が弾丸を怪獣たちの足元に数発撃つことで注意を反らせる。

 

 そして、二機ずつに分かれてそれぞれ怪獣の相手を始める!

 

 一機が怪獣を攻撃して注意を反らしたところでもう一機が死角から攻撃する、左右それぞれの方向に飛んで怪獣にどちらを狙えばいいか動揺させたところで後ろから二機同時に攻撃するなど、巧みな連携でメガロたちを攻撃していく。

 

 特に春菜が見とれている隊長機は格別で、ガイガンのレーザーを、レーザーの周りを旋回して避けながら突っ込んでいきミサイルを打ち込む、ハンマーハンドやメガロの腕のドリルでの打撃をことごとく避け、股をくぐって後ろに回り込んでミサイルを打ち込むなど、卓越した操縦テクで怪獣たちを攻撃していた。

 

 言っちゃあ悪いが、こういう一般の防衛軍の戦闘機は怪獣にあっけなく撃墜されるのがお約束であろう。

 

 だが、今回現れた4機の戦闘部隊は見る限り撃墜される気がしない。

 

 まるでウルトラ戦士と共に戦った特殊な防衛隊並な操縦テクなどで怪獣たちに挑んでいた。

 

 

 戦闘機部隊の戦いを見ている櫂達は、彼らの戦闘スキルに感心していた。

 

 櫂「まさか、怪獣相手にあんなに奮闘する戦闘機は初めてだぜ。」

 

 春菜は怪獣と戦う戦闘機を両手を握って見守っていた。だが、その表情は良く見てみるとどこか複雑な感じもしていた………。

 

 海羽「なんか素敵~!」

 

 ………だが、そうしてる間にある事に気付く。

 

 ショウ「おい、カイがいないぞ!」

 

 真美「えっ!?」

 

 ヒカル「一体何処へ…!?」

 

 いつの間にか、櫂達のところにカイの姿はいなかった。

 

 

 そのカイは、櫂達の元を離れ、体育館の裏側まで移動して一人立っていた。

 

 そして変身アイテム・フラッシュプリズムを取り出しじっと見つめ始める。

 

 カイ「傷はまだ癒えていない………今戦えば、傷はさらに広がり、最悪の場合俺は………………でも!」

 

 カイは遂に決心したのか、フラッシュプリズムを揚げてスイッチを押す!

 

 そして、あふれ出る光に包まれてその中から自身が変身したウルトラマンパワードが右腕を突き出して現れる。

 

 

 パワードはメガロとガイガンの前に着地する。それを見て驚愕する櫂達。

 

 ゼロ「カイ!?………まだ傷は癒えてないはずだぞ!」

 

 ショウ「恐らくそれを承知の上で変身したんだろう。」

 

 真美「……どういうこと?」

 

 ショウ「カイは、一度奴らに完膚なきまでに叩きのめされている………。」

 

 ヒカル「そうか、だからカイさんは、どうしても自分の力で倒したいんだ………!」

 

 

 戦闘部隊のパイロットたちも現れたパワードに驚く。

 

 ???「………ウルトラマン…だと?」

 

 パワードは構えを取った後二体に果敢に挑む。

 

 まずはガイガンのハンマーハンドを両腕で受け止め、そのまま一回転して横のメガロに後ろ蹴りを打ち込みそれと同時にガイガンを地面に叩き付ける。

 

 次にメガロが反撃で振って来た右腕を左腕で受け止め腹部に右の掌を打って撥ね飛ばす。

 

 その後さらに攻撃を加えようとするがメガロのカウンターの前蹴りを喰らってしまい吹っ飛ぶ。

 

 そこへメガロの反対側で待ち構えていたガイガンに羽交い締めにされ、その隙にメガロは攻撃を加えようとするが、パワードはそのまま跳躍して両足蹴りをメガロの胸部に打ち込み、さらに落下スピードを活かしてガイガンを背負い投げで投げ飛ばす。

 

 だが、怪我を押しての戦闘故かパワードは膝を付いてしまう。

 

 その隙にガイガンの発射したレーザーを胸部に喰らい地面に倒れ込む。

 

 何とか立ち上がるが、よく見てみると自身の周りにメガロの姿が見当たらない………。

 

 

 と思ったその時、突然背中に斬撃を喰らったような衝撃が走る!

 

 

 メガロは地面に潜り、パワードに背後の地面から出てくると同時にドリルで攻撃したのである!

 

 その後も地面に潜っては飛び出してのドリル攻撃を数回続けてパワードにダメージを与えていく。

 

 あまりにも早いメガロの地面に潜る攻撃をパワードは成すすべなく喰らっていく………。

 

 

 メガロたちの連携に苦戦するパワードを真美達は深刻そうな表情で見守る。

 

 海羽「私たちも行った方がいいかも………行こう櫂君。」

 

 櫂「ああ、そうだな。行くぞゼロ。」

 

 櫂はウルトラゼロアイを出現させる。 だが、ゼロは………、

 

 ゼロ「櫂………。」

 

 櫂「(不敵な表情で囁くように)………何だよ………約束したじゃねーか………お前が余計な事をしない限り、俺もいつもの様に好青年でいると………それとも、まだ俺が信用できないってか?」

 

 ゼロ「本当に、そうなんだろうな?」

 

 櫂の本性を知ったばかりのゼロは、それによる動揺や失望感により決断に乏しかった。

 

 海羽「何してるの?早くしないとカイさんが…、」

 

 

 だが、そうしてる間にもガイガンが櫂達目掛けてレーザーを発射しようと単眼を赤く発光させていた。

 

 今にもレーザーが発射されそうである………!

 

 櫂「はっ、危ない!」

 

 櫂は急いでゼロアイをガンモードに変形させる。 だが、もはや手遅れの状態になっていた!

 

 

 真美達がレーザーが来ると顔を伏せたその時!

 

 

 ???「心友のピンチに来たぞ!」

 

 “ズガーン”

 

 突如、叫びと共に何処からか弾丸が飛んで来てガイガンを直撃する。 それによりガイガンはレーザー未発射に終わる。

 

 櫂達は弾丸の発射された方へと振り向く。

 

 そこには、さきほどの“UMA”のロゴがプリントされたインナーを着ている男性が銃を構えて立っていた。

 

 真美「あの人は?」

 

 真美は先ほど自分たちを見つめていた男性が再び来たことを驚く。

 

 男性は『UMAガン』という銃をしまいながら語り出す。

 

 ???「謎の反応の正体はやはり怪獣たちだったか………今行くぞ、心友。」

 

 櫂「………心友? 何言ってんだあの人。」

 

 海羽「あの人………もしかして!」

 

 その時、男性は海羽の方を向く。

 

 ???「君が私を呼んだ者だな。 レイ達を連れて到着することが出来た。」

 

 海羽「はああっ、やっぱり!」

 

 ???「ここは私が行く。」

 

 

 パワードはなおも怪獣に苦戦している。すると男は、首から下げている三角のカラータイマーのようなペンダントを左掌に乗せる。

 

 すると、そのペンダントの発光部が緑色の点滅して光が解放し始める。

 

 そして、男が目をつぶって精神統一をする。すると男の身体は徐々に光の巨人へと変わっていき、やがて爆発のような光の中から巨大化し飛び立つ。

 

 今ここに、一人の光の巨人が登場した!

 

 

 一方、メガロの穴掘り攻撃を連続で受けたパワードはダウンしてしまっている。

 

 二体はその隙に大暴れを再開する。

 

 怪獣の我が物顔の進撃に逃げ惑う人々。

 

 すると、ガイガンがハンマーハンドで崩したビルの破片が、逃げ遅れたとある母と幼い娘に降りかかろうとする!

 

 その親子は絶体絶命の危機だった………!

 

 

 と、その時、飛んで来た光の巨人の手が母子を間一髪掴み、安全な場所へと運び降ろす。

 

 自分達の安全を知った母子はお礼と共に巨人を見上げる。

 

 光の巨人は母子を降ろし、「もう大丈夫だよ。」とばかりに頷いた後、立ち上がってく。

 

 そのうちにその巨人を包んでいた光が徐々に消えていき、やがて姿を現す。

 

 

 姿を現したその巨人はゼロたちと同じウルトラ戦士。

 

 赤とシルバーホワイトで構成されたボディに三角形のカラータイマー特徴の光の戦士、

 

 『ウルトラマングレート』である!

 

 

 グレートの登場に櫂達は驚愕し、海羽はどこか嬉しそうな表情になる。

 

 海羽は恐らく、ソルとしてグレートも呼んでいたのであろう。

 

 

 ウルトラマングレート。それはM78星雲・光の国出身のウルトラ戦士であり、かつて『邪悪生命体ゴーデス』を追って太陽系にやって来た際、火星で遭難した科学者の青年『ジャック・シンド―』と一体化して地球に来たことがある。

 

 その後はジャックと時には反発し合い、助け合ったりなどして、ジャックや防衛軍『UMA』と共にオーストラリアで怪獣たちと戦ってきた。そしてゴーデスを倒すことに成功している。

 

 最後はコダラ―とシラリーの二大強敵怪獣をUMAとの協力で倒した後、正体がばれないようにジャックと分離し、シラリーの死体を抱えながら、環境問題を起こす人間に再びやり直すチャンスを与えて宇宙へと帰還している。

 

 

 今回はソルに呼ばれて光の国が存在する次元の宇宙から駆け付けて来たのである。

 

 即ち、先ほどグレートに変身した男はジャック・シンドーであり、変身の際に使用したアイテムは変身ペンダント『デルタ・プラズマー』である。

 

 だが、今回のグレートは、パワードとは違い再びジャックと一体化したのではなく、グレートが単体で駆け付けて来ており、普段はジャックの姿に変身して行動しているのだ。

 

 因みに彼は、同じく海外で活躍したパワードとは“心友”関係にあるんだとか。

 

 

 グレートは跳躍し、横たわるパワードと暴れる怪獣たちの間に着地する。

 

 現れたグレートを見たパワードも、いきなりの心友の登場に驚愕する。

 

 

 グレートは構えを取った後、高く跳躍して跳び蹴りを放つ。ガイガンはそれを横にそれてかわすが、グレートが着地した直後に放った回し蹴りを腹部に喰らい吹っ飛ぶ。

 

 続けてドリル状の腕を振るって殴りかかるメガロの攻撃を素早く腕で防いでいき、メガロの腹部に右膝蹴りを叩き込み、続けて後ろから接近するガイガンに右後ろ蹴りを叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 その後、メガロを横投げで地面に叩きつけた後、背後のガイガンに振り向き様に両手でパンチを打ち込み、怯んだ隙に回し蹴りを頭部に叩き込んで吹っ飛ばした。

 

 

 怪獣二体に互角以上の戦いを展開するグレート。グレートは怪獣二体を同時に相手にできるほどの戦闘力を持っており、終盤でコダラ―に敗北するまではほぼ無敗という戦歴を持っているのである。

 

 

 だが、グレートが、メガロのレーザー殺獣光線を両手を広げて展開する『トライアングルシールド』で防いでいる隙に背後からガイガンが斬りかかろうとする!

 

 “ズゴーン”

 

 だが、そのガイガンに青色破壊光弾が当たりガイガンは怯む。

 

 グレートはその方向を振り向くと、立ち上がって両腕を突き出すパワードの姿があった。

 

 回復したパワードは、『パワードボム』を発射してガイガンを攻撃したのである。

 

 

 パワードはグレートの方へと駆け寄る。そして今ここに、海外で活躍した二大ウルトラ戦士が並び立った!

 

 お互い無言で頷いた後、握手を交わす。その様子は正に「共に戦おう!」と言っている様である。

 

 今こそ、唐突ながらも再会を果たした友同士が、力を合わせる時である!

 

 パワードとグレートは構えを取り、メガロとガイガンも身構える。

 

 そして両組共に、土砂や土煙を上げながら駆け寄り始める!

 

 パワードはメガロを、グレートはガイガンをそれぞれ相手にすることにした!

 

 

 (BGM:ぼくらのグレート)

 

 

 グレートはガイガンの振り下ろした左腕を右脚蹴りで弾き返し、胸部に右横蹴りを打ち込む。

 

 続けて胸部に左右交互にパンチを打ち込み、ガイガンが左右から挟み込むように打って来たパンチを素早く両腕で受け止めて防いでそのまま腹部に右膝蹴りを決めた後、両腕を振り上げてガイガンを一旦離し、腹部に左右同時のパンチ『グレートパンチ』を打ち込んで後退させる。

 

 グレートは跳躍し、ガイガンを跳び越えながら背中に右足蹴りを叩き込んで着地する!

 

 グレートは今度は精神波を光線に変えて拳から放つ技『ナックルシューター』を、左右手を交互に突き出しながら連射する。

 

 光線の雨あられはガイガンに次々と当たっていき、ダメージを与えていく。

 

 ガイガンは反撃として単眼からレーザーを放つが、グレートは再びトライアングルシールドを展開してそれを防ぎ、更にそのままバリアを残して跳躍してガイガンに急降下キックを放つ!

 

 蹴りが頭部に命中したガイガンは、その部位が爆発するとともに吹っ飛び地面に落下した。

 

 

 心友が来てくれた………今度は負けないぞ!とばかりにパワードはメガロに猛攻をする。

 

 パワードはメガロの両腕の殴り込みを両腕で受け止め、そのまま強烈な頭突き『ウルトラ・ヘッドパッド』を顔面に打ち込んで後退させる。

 

 メガロが予想外の攻撃に動揺しつつ痛がっている隙に、手刀と前腕のパワードスタビライザーを駆使した手刀『パワードチョップ』を左右袈裟懸けに打ち込んで爆発を発生させ、その後右前蹴りを腹部に打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 真っ向勝負は不利と見たメガロは再び地面に潜る。

 

 パワードは落ち着いて辺りを見渡しながら、両目・パワード・アイから透視光線『パワードアイビーム』を発射する。

 

 すると、メガロが今どこを掘り進んでいるのかがはっきり見える!

 

 これで穴掘り攻撃も怖くない!

 

 メガロが次飛び出してくる場所を察知したパワードは、その場所目掛けて跳躍して蹴りを放つ!

 

 すると案の定、メガロはその場の地面から飛び出したと同時にパワードの跳び蹴りをモロ喰らってしまい、驚きながらも吹っ飛び地面に落下する。

 

 

 怪獣たちを追い詰めて行く二人の海外ウルトラマンの戦いを見守る櫂たち。その強さに感心する者がほとんどであった。

 

 櫂「へえ~、結構やるもんだな。あのグレートも。」

 

 海羽「(顔の横で両手を合わせて)海外ウルトラ戦士の強力タッグ、なんか素敵だわ~。」

 

 ショウ「あれだけ苦戦した怪獣相手も、仲間が来てくれただけでこうも変わるとは。」

 

 ヒカル「自然と力が湧いてくるもんなんだよ。“心の友”が来てくれるってのは。」

 

 真美「そうだね。」

 

 

 春菜「………………凄い………。」

 

 春菜はウルトラ戦士達の勇姿にほぼ言葉を失っていた。

 

 そして、同時に複雑な思いも抱いていた………。あの恐ろしい本性を隠し持っている櫂君が、こんなにも巨大な力を持っているなんて………………と。

 

 

 空中に浮遊して観戦しているF-15Jイーグルの隊長機のパイロットも、ウルトラ戦士達の戦いに見とれていた。

 

 ???「………あれが………ウルトラマンの強さ………………。」

 

 

 

 猛反撃によりメガロとガイガンを弱らせたパワードとグレート。今こそトドメの時である!

 

 パワードはメガロの頭部の角を掴んで一本背負いの要領で投げ飛ばした。

 

 地面に叩き付けられたメガロはふらつきながらも立ち上がり、角から渾身のレーザー殺獣光線を放つが、パワードはそれを横に跳んで避けると同時に右手を突き出して『パワードスラッシュ』を放つ!

 

 丸のこぎり型の光輪はメガロの頭部の角を切り落とした!

 

 メガロは「あ、あれ?無い!」とばかりに両手を頭部に当てて慌てるような素振りを見せる。

 

 パワードは受け身を取って立ち上がると同時に、両腕を十字に組んで『メガスペシウム光線』を放つ!

 

 光線で身体を十字に貫かれたメガロは大爆発して吹き飛んだ。

 

 パワードは大きな爆発を背に雄々しく立つ。

 

 

 グレートはガイガンに駆け寄る。そして、振り下ろして来た右腕を、回転して背を向けながら右腕で受け止めると同時に右横腹に左拳を打ち込み、その後腹部に左右交互のパンチを三発撃ち込み、更に右前蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 グレートは両腕から刃状のエネルギー『グレートスライサー』を発生させる。

 

 そしてガイガンに勢いよく駆け寄り、光の刃ですれ違い様にガイガンの両腕の鎌を斬り落とす!

 

 最大の武器を失ったガイガンは完全にグロッキーとなった。

 

 グレートは両腕を胸前でクロスさせてエネルギーを集中させてプラズマスパークと同じエネルギーを生み出し、手を上下に開いて高熱火球『ウルトラストゥリング』を放つ。

 

 最強必殺技『バーニングプラズマ』発射の時だ!

 

 強力なプラズマはガイガンを貫くように直撃!ガイガンはそのままプラズマに包まれる様に発光してやがて跡形も無く爆散した。

 

 

 ガイガンを撃破したグレートは、同じくメガロを撃破したパワードと合流する。

 

 そして、お互い見つめ合って頷き合った後、勝利を表すかのように雄々しく並び立つ。

 

 櫂たちもその様子を安心の表情で見つめていた。

 

 一方でヒカルとショウは、何やら二人で決断をしていた………。

 

 ヒカル「あとは、あのキングギドラだけだな。」

 

 ショウ「ああ。今度は俺たちが、奴を倒す番かもな。」

 

 二人は、キングギドラへのリベンジの覚悟を決める様に拳を合わせた………。

 

 

 

 二人のウルトラ戦士は変身を解いた。そして、ジャックは櫂たちに改めて自分の事を話す。

 

 櫂「あなたが、さっきのウルトラマンですね?」

 

 ジャック「ああ。私の名はウルトラマングレート。 かつて共に助け合いながら戦った青年の姿を借りている。」

 

 カイ「まさか、君も来てくれるとはな。嬉しいぞ。」

 

 ジャック「こちらこそ。 私は同じく呼ばれたレイ達を連れてこの世界にやって来たのだ。」

 

 海羽「じゃあ、なぜレイさんたちと一緒に来なかったのですか?」

 

 ジャック「それは………私は私で調査する事があったのだ。この世界の地球の環境汚染状況、この街以外でのマイナスエネルギー発生場所など…。

 

 だが、その最中にある一人の男を見つけ、気になったその男をしばらく観察していたのだ。」

 

 櫂「ある男の観察?………一体誰なんだ?」

 

 と、その時、

 

 ???「やはりあんたか? 俺を見回っていたのは………。」

 

 突如声がした方へ全員振り向く。

 

 そこには軍隊のような服装にがたいが良く、逆立った短髪に顔の十字の傷が特徴の男が立っていた………そう、驚異的な操縦テクを発揮した隊長機のパイロットである。

 

 その彼を見た瞬間、春菜は両手を口に当てて驚きの表情を見せる!

 

 春菜「………やっぱり………ここに来てたのね………………。」

 

 ???「お前………やはり俺を追って来たのか………………。」

 

 二人の会話を聞いた櫂以外の一同は驚く。

 

 真美「………もしかして…ハルちゃんが上京してきた理由って………?」

 

 春菜は少し黙り込んだ後、重そうに口を開いて答えた。

 

 春菜「………ええ………彼を追って来たのよ………。」

 

 

 果たして、この男と春菜の関係とは………? そして、グレートはなぜこの男に目を付けたのであろうか………?

 

 

 その辺については、次回に続く!

 

 

 

 [エピローグ]

 

 バスコ「え~い!まさかメガロとガイガンが敗れるとは………新たなウルトラ戦士も来るとは忌々しい………。

 

 まあいい。まだキングギドラという切り札が残っているからな………奴に思う存分暴れてもらって、人々からその恐怖によるマイナスエネルギーを集めるとしますか。」

 

 すると、キングギドラはバスコの指示を待つかのように彼の前にその巨体を表す。

 

 バスコ「キングギドラ!………思いっきり暴れて来い。 そして人々から、恐怖によるマイナスエネルギーをじゃんじゃん発生させるのだ! 邪魔をするウルトラ戦士が出れば、殺しても構わないぜ。」

 

 バスコの指示を聞いたキングギドラは、了解すると同時に大きな羽を羽ばたかせながら飛び立ち、地球に向かい始める………………。

 

 バスコ「にっしっし………これでテラ様は完全復活されるであろう。それに………………

 

 今頃軽井沢からも、マイナスエネルギーが溢れ出てるかもな。フフフフフフ………。」

 

 

 

 一方コスモスは、その信州の軽井沢目掛けて飛んでいる最中であった。

 

 

 

 軽井沢から溢れるマイナスエネルギーの原因は何なのか? 果たして最強の怪獣キングギドラは倒せるのであろうか?

 

 そして、櫂の恐ろしい本性を知ってしまったゼロの、今後の戦いはどうなってしまうのであろうか………………?

 

 

 To Be Continued………。

 

 

 (ED:地球は君を待っていた)




 読んでいただきありがとうございます!いかがでしたか?

 今回でついに櫂君の本性が剥き出しになってしまいました!(今のとこ知ってるのはゼロと新キャラ・春菜だけですが………。)

 それにより気まずくなりつつあるゼロと櫂の今後の戦いにも注目です!

 因みに、櫂が本性を剥き出しにするシーンの描写は、『仮面ライダー555』のある人物を基にしています。(櫂の二面性の設定も実は彼がモデルです。)

 ウルトラマングレートについては、ウルトラマンⅩで言うマックス達みたいに、その話限りのスペシャルゲストみたいな感じの客演の予定です。(まだ予定なので変更の可能性あり笑)

 少なくともグレートは次回も活躍しますよ!

 さあ、次回はGW特別篇第2弾!目玉はギンガ&ビクトリーVSキングギドラの決着戦です!

 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


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第22話「進撃のギドラ」

 お待たせしました!

 GW特別篇第2弾と言いながらGW明けの投稿となってしまい申し訳ありません汗

 今回は私も大好きな怪獣・キングギドラが大暴れの回です!

 また、ドラマパートなどでもしかしたら若干おかしなところがあると思いますが、純粋に楽しんでいただけたら幸いです(笑)

 注:かなりのグロ&ショッキング描写もあります。

 では、始まります!


 (OP:英雄の詩 二番)

 

 

 [前回のダイジェスト]

 

 テロリスト星人バスコが、桜井敏樹から最後のチャンスだと与えられ引き連れて来た強力な三大怪獣・宇宙超怪獣キングギドラ、昆虫怪獣メガロ、未来怪獣ガイガンを相手に、ギンガ、ビクトリー、パワードは完敗してしまう。

 

 その少し後、敗北と同時に負傷した三人の為に買い出しをしていた竜野櫂、新田真美、眞鍋海羽の三人は、その最中に笹崎春菜という女性に出会う。

 

 彼女は真美とは医療ボランティア内での仲間であり、また親しい仲である事を櫂達は初めて知る。

 

 春菜は、ワケあって石狩から上京してきたと言うのだが、それ以上は何も話そうとしなかった………。

 

 だが、医療ボランティアの経験が真美より豊富な春菜は、真美に辛口なアドバイスをするのだが、それにより真美を想う櫂の逆鱗に触れてしまい、二人っきりになった隙を突かれて過激な脅しを受けてしまい、それと同時に櫂の恐ろしい本性を目の当たりにしてしまう。

 

 櫂と一体化しているゼロも、同時に櫂の恐ろしい本性を知ってしまったため、今後櫂と共に戦う事に戸惑いや不安を抱くようになってしまった………。

 

 そんな中、メガロとガイガンが再び来襲!カイは怪我を押しつつも二体にリベンジを挑むが、癒え切っていない傷の痛みと二体の連携により苦戦を強いられる。

 

 一方の春菜は、メガロとガイガンを攻撃する戦闘機のパイロットを見た瞬間、目の色が変わっていた………。

 

 パワードが追い詰められたその時、颯爽と現れたのは、パワード達と同じくソルに呼ばれてやって来たウルトラ戦士・ウルトラマングレートであった!

 

 パワードはグレートと協力してメガロたちを撃破する事に成功。

 

 グレートは変身を解いた後、自身もソルに呼ばれて来たこと、そして、ある男が気になって観察していたことを話した。

 

 その男とは、先ほどメガロたちを攻撃していた戦闘機のパイロットであった。

 

 その男と春菜は見つめ合った瞬間、互いに驚く。

 

 果たして、彼らの関係とは一体………?

 

 そして、密かに決心する礼堂ヒカルとショウは、キングギドラを倒すことはできるのであろうか………………!?

 

 [ダイジェスト終了]

 

 

 

 見つめ合う春菜とF-15Jイーグルの隊長機の男。そして、互いに語り出す。

 

 春菜「………やっぱり………ここに来てたのね………………………。」

 

 ???「お前………やはり俺を追って来たのか………………………。」

 

 真美「………もしかして…ハルちゃんが上京してきた理由って………?」

 

 春菜「………ええ………彼を追って来たのよ………。」

 

 

 その会話には、流石の櫂も驚いていた………まさか春菜の追って来た思い人が、航空自衛隊の隊員だったとは………………。

 

 

 ???「来ちゃダメだってあれほど言ったのに、どうしていう事聞かなかったんだ!?」

 

 春菜「だって!………アンタどうせ無茶するだろうから………心配で来たのよ!」

 

 ???「ヤツに食い殺されてもいいのかよ!?」

 

 カイ「まあ、二人とも落ち着け!………まずはどういう事なのか、説明してくれないか?」

 

 カイは口論になりそうになった二人を宥め、事情を話す様に要求した。

 

 一方で、春菜はしっかりしている所から強い女性だとイメージしていた真美は、春菜がわざわざ石狩から霞ヶ崎にやって来た理由が意外過ぎて少し動揺していた。

 

 まさか思い人がいて、その人が心配で来たなんて………………。

 

 

 

 F-15Jイーグルの隊長機の男の名は『斎木和寿(さいき かずとし)』。春菜とは同じ石狩出身の幼馴染という関係である。

 

 彼と春菜は幼い頃から仲が良く、よく他の友達と北海道の大自然を走り回ったりなどして遊んでいた。

 

 二人は、喜びを分かち合い、また、時に弱さを補い合いながらも、楽しい幼少期時代を過ごしていた。

 

 

 〈回想〉

 

 そして、幼い頃のある日、彼らはとある石狩の高原で、とある約束をしたと言う。

 

 斎木「俺決めた! 大きくなったら強くなって、人々を守る。」

 

 春菜「人々を?」

 

 斎木「ああ。春菜だって守ってやるよ。」

 

 春菜「ホントに?ありがとー!」

 

 二人は握手を交わす。

 

 春菜「じゃあ、春菜も大きくなったら人々を助けることをしたいなー?」

 

 斎木「春菜ならなれるさ! じゃあ、約束しようぜ。お互いその夢を叶えると!」

 

 春菜「うん!」

 

 二人は約束の指切りを交わした。

 

 

 ………ところが、その時!

 

 

 “ピキピキ……ピシャーン”

 

 

 突如、雲一つなく晴れ渡っていた光源の空の少し遠くに雨雲の様な物が現れ、稲妻が何本か降り注ぐ………!

 

 

 ………そう、その時から、和寿と春菜の幸せな日々が崩されてしまうのである………!

 

 

 二人は突然の稲妻に恐れながらも、その黒雲の方へと向かう。

 

 黒雲は徐々に広がっていき、何やら電気のような光を帯びていた。

 

 そしてしばらく行くと、いち早く何かを察知していたのか、当時の陸上防衛軍の隊員たちが兵器を備え待機していた。

 

 その光景を見ただけで、二人は戦争の様でどこか不吉な物を感じていた。

 

 「!おい坊ちゃん嬢ちゃん!ここにいては危ないぞ!」

 

 二人は隊員の一人に見つかってしまった。

 

 だが、和寿は動じる事無く問いかける。

 

 斎木「ねえ、今から何するの?」

 

 「ああん?あの黒雲が見えないのか? ありゃあどう見てもただの雲じゃねえ!ぜってー何か出てくるぜ………その出てくるであろう何かを、今からぶっ飛ばしてやんだよ!」

 

 そういうと隊員は、元の配置に戻って行った。

 

 当時幼かった和寿には理解できない所があったが、とにかく攻撃する事だけは分かっていた。

 

 

 黒雲の雷はますます強くなっていく。

 

 「来るぞ………砲撃準備ー!!」

 

 砲撃のスタンバイをする隊員たちに緊張が走る………!

 

 和寿と春菜も、息をのんでその状況を見守る………………。

 

 

 “パンッ”

 

 

 春菜の持っていた赤い風船が割れた………!

 

 「撃て―ッ!!」

 

 “ズドーン ズドーン…”

 

 そして、それを合図にするかのように一斉に黒雲目掛けての砲撃が始まる!

 

 弾を発射する爆音やそれによって起こる振動、そしてそれが次々と黒雲に命中する爆音に、和寿と春菜は今までに見たことない光景だと見とれていた。

 

 

 だが、砲撃直前に割れた風船を見た春菜は何やら不吉なものを感じていた………。

 

 まるで、今にも何かが壊されてしまう合図のような感じで………………。

 

 

 やがて黒雲は爆発の煙に包まれ、隊員たちは砲撃を一旦止める。

 

 「………………やったか?」

 

 とある隊員は双眼鏡で黒雲の様子を伺っていた。

 

 が、その時、その隊員は、煙の中から何やら光るものが現れ始める事に気付く。

 

 煙は少しずつ薄れていき、その中の光るものも徐々に姿を現していく………。

 

 それは黄金に光っており、一見ドラゴンのように見えるが首が三つあり、大きな翼に二又に別れた長い尻尾を持っている………。

 

 「………………なんだあれは?………」

 

 やがて現れたものは、羽を羽ばたかせて煙を完全に吹き飛ばすことで完全に姿を現す!

 

 

 今ここに、『宇宙超怪獣キングギドラ』が登場した!

 

 

 見たことないかつ思いがけない巨大生物の出現に、隊員たちはパニックになりながらも砲撃再開のスタンバイを始め、和寿と春菜は急いで近くの岩陰に隠れながらその生物を驚きの表情で見上げる。

 

 斎木「………何だ?あいつは………。」

 

 

 スタンバイが完了した隊員たちは、再びキングギドラに砲撃を始めるが、キングギドラはその砲撃もまるでもろともせず隊員たちの近くに地響きを立てながら着地する。

 

 「隊長!弾が尽きました!」

 

 「すぐに装填しろ!」

 

 隊員たちは完全なパニックに陥りながらも大砲の球を装填するが………………

 

 「だめだ!間に合わない………!」

 

 装填を終えた頃には、もうキングギドラは目前にまで迫っていた………………!

 

 

 手前にいた隊員が、恐怖で身震いしながらも慌てて逃げようとするが、時すでに遅し、キングギドラの首の一つに脚を銜えられ、そのまま持ち上げられ始める………!

 

 隊員は死の恐怖で必死に叫び始める!

 

 「助けてくれ!」「ごめんなさい!」

 

 だが、ギドラは無情にも暴れる隊員をゆっくり持ち上げ続ける。 まるで人間が捕まえた魚の鮮度を確認しているかのように………。

 

 そして、もう一方の頭が、大きく口をあけながら隊員の上半身に迫る!

 

 「ごめんなさ~~~~い!! ギャぁぁぁぁ………………」

 

 もう一方の頭が、隊員の上半身を銜えると共に、隊員の叫び声もフェードアウトしていく………。

 

 そして、二つの首で隊員の上半身、下半身を銜えたキングギドラはそのまま引っ張り始める!

 

 ミシミシ…と何やら骨が折れていく様な不快な音が聞こえる………そして!

 

 “ブチブチ、ブシャーッ”

 

 遂にキングギドラは、生々しい音と共に隊員を上半身、下半身にと真っ二つに食いちぎってしまった!

 

 食いちぎられた隊員の無残な死体はその後ポイと投げ捨てられる…。

 

 その後もキングギドラは、次々と隊員たちを銜え上げては無残に食いちぎっていく!

 

 その余りにも信じられない光景を見ている和寿は戦慄し、春菜は目をつぶり耳をふさいで悲鳴を上げる。

 

 春菜「きゃーっ!!」

 

 斎木「しっ!見つかるぞ! さ、早く!」

 

 和寿はなんとか冷静さを保ち、怯える春菜の手を掴んで石狩の町へと急いで逃げる様に戻る。

 

 

 キングギドラは隊員を全て殺した後、三つの頭の口から一斉に引力光線を発射し、残された兵器などを全て破壊していく!

 

 三本一斉の引力光線の威力は凄まじく、その場にあった兵器を全て巻き上げて粉々に破壊し、その勢いで辺りの高原を焼け野原にしてしまった!

 

 町に着いた和寿たちも、外に出ていた町の人たちと一緒にその光景を恐怖の表情で呆然と見つめていた。

 

 

 すると、キングギドラは巨大な羽を羽ばたかせて石狩の町目掛けて飛び始める!

 

 それを見た人々は、完全にパニックとなり一斉に逃げ始める!

 

 焼け野原となった高原、悲鳴を上げて一斉に逃げ惑う人々………正にこの世の終わりの始まりの様であった。

 

 和寿と春菜もはぐれないように手をつなぎ、逃げ惑う人の波に流される様に逃げる。

 

 しかし、とうとう町に着いてしまったギドラは、そんな人々を嘲笑うように三方からの引力光線を乱射しながら暴れ始める。

 

 光線の乱舞により次々と破壊される建物。中にはその瓦礫に潰されて死んでいく者もいた。

 

 そして、ギドラは一番逃げる人々が行き詰っている所を見つけるや、その場所から人々を摘み上げては食いちぎり始める!

 

 一人、また一人と次々と摘み上げられ、その度に上からは大量の血が臓器と共に降り注ぐ!

 

 

 食いちぎられていく人々、慌てて逃げるあまりに鉄塔や車に激突して気絶する人、親とはぐれたのか、逃げ惑う人の波の中熊の縫いぐるみを抱いて泣き叫ぶ幼い少女………まさに地獄絵図のような光景が続く。

 

 その後もキングギドラは、石狩の町を蹂躙し続けた………………。

 

 

 

 キングギドラの襲撃により、石狩の町の半分以上が破壊され、人々も半分以上尊い命を失ってしまった………。

 

 和寿と春菜は辛うじて生き残り、彼らの両親は生き残ったものの重傷を負ってしまい、札幌の病院へと搬送されてしまった………。

 

 石狩が大打撃を受けてしまったため、和寿と春菜はその他の人々と共に別の地に移り住みざるを得なくなってしまった。

 

 その送り出す船の中、春菜はまだ恐怖により泣きじゃくっており、和寿はそれを宥めていた………。

 

 だが、そんな中和寿は密かに憎しみにこもった表情になり、そして呟いた。

 

 

 斎木「………………殺してやる………………!」

 

 

 春菜は思わず顔を揚げる。そこには震え上がり、険しい表情で憎しみのこもった声で呟く和寿の姿があった。

 

 和寿「………春菜を泣かせた…それだけじゃなく、多くの人たちを殺した………それに両親まで………………あいつは絶対に許さない………………殺してやる………………!」

 

 これは今から約十年前の出来事であった………。

 

 〈回想終了〉

 

 

 

 和寿と春菜の余りにも壮絶な過去を聞いた櫂達はショックを隠せず、言葉を失ってしまっていた。

 

 櫂もチラリと春菜を見つめながら意外そうな顔をしていた。 まさか、彼女にそんな壮絶な過去があったなんて………………。

 

 だが、それよりも真美の優しさを辛く言われたことでの怒りの方が強かったのか、すぐさま「ざまあ見やがれ………!」とばかりに不敵な笑みを浮かべる………。

 

 真美に関しては両手で口を押さえて震えており、海羽に関してはショックのあまりにハンカチを取り出してすすり泣きを始めている。

 

 春菜「あれからカズ君は、まるで変わってしまった………。」

 

 

 二人はあれから青森に移り住むことになった。

 

 だが、和寿は前のように春菜と遊ぶことはなくなり、暇さえあれば運動、トレーニング等をしていたと言う。

 

 春菜は時にその様子を見守っていたが、その時の彼の姿は一所懸命の中にもどこか行き場の無い怒りも感じていた。

 

 

 和寿は完全に、キングギドラはへの憎しみに囚われていたのである。

 

 

 中高と上がってもその様子は変わらず、同時にそれによって身体能力も格段と上がっていったのである。

 

 そして、高校を卒業後、和寿は春菜に伝えもせず、航空自衛隊育成所がある東京でむりやり一人暮らしを始めた。

 

 そして約二年後、和寿は航空自衛隊育成所を首位でパスし、正式に航空自衛隊員になれたのである。

 

 

 だがしかし、和寿はキングギドラへの憎しみしかないために個人プレーが目立ち、やがて隊長から突き放されてしまった。

 

 だが、育成所時代から彼が最も親しくしていたマサト、ユウジ、タカオの三人は彼について来た。 見放されながらも仲間が付いて来るのだから、それほど操縦スキルが高いのが伺える。

 

 そしてその後も、キングギドラ追跡の為に仲間と行動し続けて現在に至るのである。

 

 

 今回春菜は、和寿がようやくキングギドラの居場所を突き止めたため霞ヶ崎へ向かう事を偶然知ったため、だいぶ復旧した地元・石狩での研修を抜けてわざわざやって来たと言う。

 

 このことから、今回現れたキングギドラは十年前のと同一個体であり、恐らくその強さを見込んだテラにより、新たな戦力として加えられたのであろう。

 

 

 春菜「…もう………何年もキングギドラを追い続けてるよね………。」

 

 斎木「ああ。俺はあいつが憎い………あいつを倒すためなら、地の果てまで追ってやるんだ!」

 

 春菜「でも!………………少しは自分の事も考えてよ………私、テレビで時々見かけたわ………アンタが、無茶をして怪我をしたというニュースを………。

 

 キングギドラが憎い気持ちは分かるよ………でも、そのためだけに自分の命が無くなっちゃ、元も子も無いじゃない!」

 

 斎木「そのため“だけ”だと!? お前もあの惨事を見ただろ!? なら奴が憎い気持ちが分かるはずだろ!?」

 

 

 春菜は少し黙り込んでしまった………。

 

 櫂たちも二人の会話を心配そうに見つめている一方で、ジャックは「やはり…。」というような表情をしていた………。

 

 

 

 一方、謎の生体反応を感じる軽井沢の山地に着いたウルトラマンコスモスこと春野ムサシは、探索として森林を歩き回っていた。

 

 ムサシ「確かこの辺に反応があったはず………。」

 

 辺りを見渡しながら、鳥や虫の声だけが響く山道を歩き回っていたその時、ムサシはふと何かに気付き立ち止まる。

 

 ムサシ「………!!これは!?」

 

 そこには、思いもしないものが横たわっていてムサシは驚く。

 

 

 カンガルーのような等身大の怪獣が横たわっていた。しかも体中には何かに焼かれた様な痛々しい火傷を負っている…。

 

 そしてその先を見てみると、同じくカンガルーそっくりの怪獣が、鳥のような怪獣を宥めている様であった。

 

 

 ムサシが目撃した怪獣とは、カンガルーそっくりの二体の怪獣は『カンガルー怪獣パンドラ』とその子供『カンガルー怪獣チンペ』、そして鳥そっくりの怪獣は『鳥怪獣フライングライドロン(子)』である。

 

 

 チンペは無残な死体として横たわっており、フライングライドロン(子)(以降:子ライドロン)は右の翼の先端を負傷して泣いており、パンドラはチンペを失った悲しみで泣きながらも持ち前の母性で子ライドロンを慰めていたのだ。

 

 

 ムサシ「一体何故こんな事に………。」

 

 ムサシは直感で、パンドラたちが悪い怪獣ではない事に気付き、なぜこうなったのかを伺う事にした。

 

 

 ムサシ「コスモース!」

 

 

 ムサシはコスモプラックを揚げて光に包まれ、ウルトラマンコスモス(ルナモード)へと変身する。

 

 コスモスの登場に子ライドロンは怯え始め、パンドラは敵ではないかと身構える。

 

 ムサシ「待ってくれ! 僕は敵ではない。 安心して。」

 

 コスモスはパンドラたちに掌を向け、自分は敵ではないと説得する。

 

 パンドラたちは理解したのか、構えを解く。

 

 ムサシ「一体何があったんだ? 言ってみて。」

 

 パンドラはコスモスに、涙ながらに自分たちに起こった出来事を語り出した。

 

 因みにコスモス(ムサシ)は善良な怪獣との交流が深いため、怪獣語が理解できるのである。

 

 この世界のパンドラは軽井沢の近くの人間が立ち入らない崖の洞窟にある巣に住んでいる草食性の大人しい怪獣で、チンペと言う人懐っこい子供怪獣と共に平和に住んでいた。

 

 だが、ある日チンペを連れて樹木や木の実を取りに行っていた時、突如、上空から“黄金の三つ首の怪獣”(所謂キングギドラ)が襲って来たと言う。

 

 その怪獣の光線によりチンペは倒れ、自身も尻尾に怪我を負ってしまったと言う。

 

 危機を察知したパンドラは黄色いガスを吐いてその怪獣の目を眩まして、その隙に何とか逃げ切れたらしい。

 

 よく見てみると、パンドラの尻尾の先端には痛々しい傷口があり、そこから黄色い血が出ている………。

 

 

 一方のフライングライドロンも、本来は星から星へと放浪の旅を続ける渡り鳥怪獣であった。

 

 だがある日、親子で地球を通り過ぎようとした時、地球から黄金の三つ首の怪獣が襲って来たと言う。

 

 その怪獣の光線により、子供は右の翼を負傷して地球に落下したとのこと………。

 

 更に子ライドロンはそれにより、地球の大気や引力に邪魔されて宇宙に帰れなくなってしまったのだ。

 

 それによって泣き叫んでいた時、パンドラと出会ったと言う。

 

 

 余りにも残酷な境遇の怪獣たち。それを聞いたコスモスは、その事をウルトラサインでゼロ達に知らせた。

 

 サインを呼んだゼロたちは、それは間違いなくキングギドラの仕業だとすぐに分かった。

 

 ゼロ「ギドラめ………どこまで残酷か………!」

 

 海羽「酷い………親子怪獣までに………………。」

 

 海羽は、子ライドロンたちが可哀想なあまりに思わず涙を流してしまっている。

 

 その時、櫂がそっと肩に手を置く。

 

 櫂「………行ってやれ海羽。 コスモスと共に、あいつらを助けてやれ。」

 

 海羽「………うん!」

 

 海羽は涙を散らしながら頷く。そして、ハートフルグラスを目に当ててウルトラウーマンSOL(ソル)へと変身し、軽井沢向けて飛び始める。

 

 

 ゼロはウルトラサインでコスモスに、「今ソルがそちらに向かっている。」と伝える。

 

 ムサシ「そうか………じゃあそれまでに、僕が面倒を見ておこう。」

 

 コスモスが了解したその時、

 

 “ゴゴゴゴゴゴ…” “ピシャーン”

 

 突然空が曇ったと思うと、雷雨が降り始める。その時子ライドロンは何かに呼びかけるように飛び跳ね始める。

 

 ムサシ「!………どうしたんだ?」

 

 

 雷雨を降らせていたのは、地球を出てすぐの宇宙で待機しているフライングライドロンの親(以降:親ライドロン)であった。

 

 親ライドロンは、キングギドラの攻撃により子供が地球に落ちてからずっと泣きながら子供を見守っていた。

 

 そして稲妻のような声で呼びかけ、稲妻のような光で照らして雨を降らせ、子供が地球の大気の中で乾いてしまわないようにしているのである。

 

 それに気づいた子ライドロンは、宇宙で見守っている親を恋しがり始めたのである。

 

 ムサシ「大丈夫……大丈夫だから、落ち着くんだ!」

 

 コスモスが興奮する子ライドロンを必死で宥めていたその時、

 

 

 “ゴゴゴゴゴ…ズドーン”

 

 

 突如、雨雲を突き破って雷とは違う赤黒い渦のようなエネルギーが降り注ぐ!

 

 そのエネルギーはパンドラと子ライドロンを直撃!

 

 少し吹っ飛び驚愕するコスモス。

 

 すると、パンドラと子ライドロンは目を赤く光らせ、なんとコスモスに襲い掛かり始める!

 

 恐らく先ほど降り注いだエネルギーの影響なのだろう。

 

 コスモスは動揺しながらもそう察し、二体の攻撃を受け流す様にかわしながら呼びかける。

 

 ムサシ「君達!どうしたんだ! しっかりしろ!」

 

 だが、謎の光線に操られる二体はもう止まれないのか、容赦なくコスモスに攻撃を仕掛ける。

 

 二体が悪い怪獣ではない事を知っているコスモスは下手に攻撃できず、かわすか防ぐかの一方であった………。

 

 

 その様子を、宇宙空間から見つめている一人の宇宙人。

 

 『宇宙悪霊アクマニヤ星人』である!

 

 突然降り注いだ光線は、彼が発射した『アクマニヤ念力』である!

 

 そのアクマニヤ念力を浴びたパンドラと子ライドロンは操られているのである!

 

 アクマニヤ「フフフ…いいねぇ~…助けるはずの怪獣に攻撃されるとは………最高に楽しいよ。」

 

 アクマニヤ星人は不気味に笑いながら防戦一方のコスモスを見ていた。

 

 

 軽井沢に向かって飛んでいるソルに、コスモスからテレパシーが届く。

 

 海羽「!コスモスさん、どうしたのですか?」

 

 ムサシ「早く来てくれ!善良な怪獣たちが、操られている!」

 

 海羽「分かりました。もうすぐ着きます!」

 

 ソルは飛行速度を上げて軽井沢へと急ぐ。

 

 海羽「かっ飛ばすよ~!」

 

 

 ソルは、ゼロにテレパシーでコスモスからの伝言を伝える。

 

 ゼロ「何ッ!?操られてるだと?」

 

 ヒカル「何だって!? 一体誰なんだ!タイショーの時と言い今回と言い、一体誰が謎の光線を出してんだ!?」

 

 櫂「………確か、あの光線はどれも宇宙から降り注いでいた………。」

 

 ジャック「じゃあ、直接宇宙に行って調べる必要があるな。」

 

 そう言うとジャックはカイの方を向く。

 

 ジャック「一緒に行こう。」

 

 カイ「………ああ。」

 

 カイとジャックは、光線の原因の為に宇宙へ調査に行くことにした。二人は横に並び立つ。

 

 カイはフラッシュプリズムを揚げてスイッチを押し、ジャックはデルタ・プラズマーを左手に置き精神統一を始める。

 

 二人は眩い光に包まれる。そして、光の中からウルトラマンパワード、ウルトラマングレートが現れる!

 

 そして、二人の海外ウルトラマンは、宇宙向けて飛び立って行く。

 

 

 宇宙空間では、アクマニヤ星人がなおも苦戦するコスモスを見つめていた。

 

 アクマニヤ「ふふふ…そのままやられるのだよ!ははははは…、」

 

 “ズドーン”

 

 アクマニヤ「!?うぉあちゃっ!」

 

 アクマニヤ星人は突如、横から黄色い光線を喰らってしまい、痛がりながらも振り向く。

 

 そこには親ライドロンの姿が!

 

 親ライドロンは、アクマニヤ星人が子供を操ってるのを察知し、敵と見なしてトサカからの光線『エレクトロ・ビーム』で攻撃したのである。

 

 アクマニヤ「ほほう、俺様に不意打ちとはいい度胸だな。覚悟しろ!」

 

 そいう言うとアクマニヤ星人は目を赤く発光させる。すると、それを見た親ライドロン身動きが取れなくなってしまった!

 

 アクマニヤ「喰らえ!目から怪光線!」

 

 アクマニア星人は、動きを止めた親ライドロンに、トドメとして目から怪光線を放つ!親ライドロンは絶体絶命だ!

 

 と、その時、

 

 間一髪、駆け付けたグレートが親ライドロンの目の前で静止する。

 

 すると、両手を突き出して怪光線を受け止め、凝縮し始める。

 

 そして腕を一旦引いた後、腕を突き出して凝縮した怪光線を撃ち返す!

 

 これはグレートの技『マグナムシュート』であり、敵が発射した火炎、冷気、光線等を受け止め、凝縮して撃ち返す荒技である。

 

 “ズドーン”

 

 思いも寄らない出来事に対処できないまま、アクマニア星人は撃ち返された光線を目に受けてしまう。

 

 アクマニヤ「ぎゃああぁぁぁ! ああっ! 目がっ! 目が~!」

 

 そして、アクマニヤ星人が痛がっている隙に今度はパワードがアクマニヤ星人の角を掴み、大きく振り回して投げ飛ばす。

 

 そして、両手からパワードスラッシュを発射し、瞬時にアクマニヤ星人の両腕を斬り落とした!

 

 アクマニヤ星人の前に、親ライドロンを守る様に雄々しく浮遊する二人の海外ウルトラマンタッグ。

 

 アクマニヤ星人は一気に不利な状況に追い込まれたと思われた。

 

 アクマニヤ「やられた~!………なーんて!」

 

 アクマニヤ星人の発言に二人は動揺する。

 

 すると、なんと背後から斬り落としたアクマニヤ星人の両腕が飛んで来て、それぞれパワードとグレートの首を絞める!

 

 アクマニヤ星人は、様々な奇怪な能力を持っており、その一つが、例え腕を斬り落とされても、それを遠隔操作することが出来るのである!

 

 アクマニヤ「ふははははは!残念だったな! 返り討ちに合わせてくれる!」

 

 アクマニヤ星人は目を赤く発光させて怪光を放ち、二人を更に苦しめる。

 

 親ライドロンは、苦戦する二人を心配そうに見守りながらも、地球に雷雨を降らせ続けていた。

 

 

 一方のコスモスは、雷雨が降り注ぐ中、尚も攻撃を続ける二体に手こずっていた。

 

 さらに、雷雨が降り続ける影響で、ぬかるみに足を捕らわれそうになる。

 

 パンドラの吐き出す火炎放射と子ライドロンの吐き出す弾丸を、コスモスは両腕を広げて『リバースパイクバリア』で防ぐが、その直後にパンドラの突進を喰らって吹っ飛んでしまう。

 

 ムサシ「何とか大人しくさせなければ…。」

 

 呟くムサシを他所に、二体は横たわるコスモスに接近する。

 

 と、その時、

 

 海羽「や~め~な~さ~~~い!」

 

 遂にソルが到着した!

 

 ソルはコスモスの目前に着地するや、二体に同時に組み付き足止めをする。

 

 ムサシ「海羽ちゃん!」

 

 海羽「お待たせ!ムサシさん。」

 

 ソルの加勢により、コスモスは気力を取り戻し立ち上がる。

 

 ムサシ「一緒に、彼らを助けよう!」

 

 海羽「イエース!」

 

 コスモスとソルは、それぞれパンドラと子ライドロンの相手を始める。

 

 コスモスはパンドラの攻撃をことごとく受け流していく。そして、振り下ろして来た腕を左腕で受け止め、腹部に右の掌を打って撥ね飛ばす。

 

 パンドラは次は尻尾を振るって攻撃するが、コスモスはそれを掴んで受け止める。

 

 そして、パンドラが振り払おうともがく中、コスモスはそれに耐えつつ尻尾の怪我に手をかざして『コスモフォース』を浴びせる。

 

 すると、尻尾の患部は光に包まれ、瞬く間に傷が塞がった。

 

 まだ操られてるとはいえ、傷が治ったパンドラは少し落ち着いたのか、動きが鈍る。

 

 その隙にコスモスはバク転で一旦距離を取り、両手を胸部に当てて優しい光を集めた後、右手の平を突き出して『ルナエキストラクト』を発射する。

 

 浄化光線を浴びたパンドラは優しい光に包まれ、赤黒いオーラの様な物を発散しやがて眼も赤い輝きから元に戻る。

 

 コスモスの力により、アクマニア念力の呪縛から解放され元に戻ったパンドラは大人しくなった。

 

 

 一方のソルは、子ライドロンの攻撃をかわしたり受け止めたりしながらある事に気付く。

 

 それは、最初は雨で良く分からなかったが、よく見てみると黄色い涙を流しながら攻撃しているではないか。

 

 そう、アクマニア念力とは、怪獣の意思関係なく、無理矢理暴れさせる恐ろしい力なのである。

 

 暴れたくないはずの子ライドロンはアクマニア念力により無理矢理暴れさせられており、それにより傷も疼き、辛さで泣いているのである。

 

 それを知ったソルは、突発的にある行動に出た。

 

 なんと、子ライドロンを抱きしめ始めたのである!そして、目から緑色の涙のような光を溢れさせながら語り始める。

 

 海羽「ライドロンちゃん……ごめんね………………辛いよね…泣きたいよね………こんな思いをさせて、本当にごめん………。」

 

 最初はバタついていた子ライドロンだったが、自然と動きが鈍っていく。

 

 海羽「でも、あなたは絶対に救われる。 絶対に、私が助けてみせる。

 

 ………だから安心して。」

 

 ソルの優しい語り掛けを聞いた子ライドロンは、それによる安心のためか、少し大人しくなる。

 

 海羽「リライブ・フォース。」

 

 その隙にソルは子ライドロンの翼の傷に、降り注ぐ雪のような光線『リライブ・フォース』を浴びせる。

 

 これは怪獣の傷を治したり、死んでしまった善良な怪獣を生き返らせるためなどに使う神秘の光線である。

 

 リライブ・フォースを浴びた子ライドロンの右の翼は傷が治った。

 

 海羽「ゴッデスピュアリファイ。」

 

 更にソルは、両手を目に当てて優しい光を集めた後、両手を突き出してオーロラのような浄化光線『ゴッデスピュアリファイ』を発射して子ライドロンに浴びせる。

 

 光線を浴びた子ライドロンは、オーロラのような光に包まれ、赤黒いオーラの様な物を発散して元に戻った。

 

 コスモスとソルによって大人しくなったパンドラと子ライドロン。

 

 ソルはついでに、チンペの死体にもリライブ・フォースを浴びせる。

 

 すると、チンペは目の輝きを取り戻す。命が戻った証である。

 

 生き返り、傷も治ったチンペは起き上り、真っ先に親であるパンドラの元に駆け寄る。

 

 パンドラも喜びながら、跳びかかるチンペを抱きしめる。そして“高い高い”をする。

 

 再開を喜ぶカンガルー怪獣親子。コスモスとソルは彼らに、安全な地底の世界に戻る様に命じ、それに応じたパンドラは、チンペと共に住処へと戻って行った。

 

 気がつくと雷雨もいつしか治まっていた。コスモスとソルはパンドラ親子を見送った後、今度は子ライドロンを宇宙へ運び出す。

 

 

 一方の宇宙空間では、コスモスたちがパンドラたちを大人しくさせたことを知り、パワードとグレートは安心し、アクマニヤ星人は焦り出す。

 

 アクマニヤ「馬鹿なっ!? こうも簡単に………!?」

 

 カイ「フッ………残念だったな、アクマニヤ。」

 

 ジャック「私たちは絆で繋がっている。だから絶対に負けないのだ。」

 

 パワードとグレートは力を振り絞り、自分たちを絞め上げていたアクマニヤ星人の腕を強引に引きはがし、アクマニヤ星人に思い切り投げつける!

 

 投げつけられた腕が目玉に当たったアクマニヤ星人は再び痛がる。

 

 その隙にパワードとグレートはそれぞれアクマニヤ星人の左右斜め上に飛行し、急降下キックを放ち左右それぞれ角を破壊する!

 

 アクマニヤ「馬鹿なっ………ウルトラ戦士め………くそ~!」

 

 完全に劣勢となったアクマニヤ星人。

 

 パワードは腕を十字に組んで『メガスペシウム光線』を、グレートは手を上下に開いて『バーニングプラズマ』を同時に発射する!

 

 アクマニヤ「ぎゃあぁぁ~…アミーゴ~~~!!」

 

 二つの強力な光線が直撃したアクマニヤ星人は大爆発し、木端微塵に吹き飛んだ。

 

 

 アクマニヤ星人を撃破した二大海外ウルトラマンは振り向く。そこには、ちょうど子ライドロンを連れて来た二人の慈愛ウルトラマンが来ていた。

 

 そして子ライドロンは二人に一礼した後、親ライドロンの元へ飛んで行く。

 

 再開したライドロン親子は、再会を喜んだ後親子仲良く飛び去って行った………。

 

 ライドロン親子を見送る四人。ソルは感動の再会に涙していた。

 

 海羽「あんなにも仲のいい親子怪獣たちも平気で切り離しちゃうなんて………。」

 

 ムサシ「ああ。キングギドラは、凶悪な怪獣だ。」

 

 ムサシと海羽は、平和に過ごしていた親子怪獣たちを不幸の悲しみに追いやったキングギドラへの新たな怒りが込み上がっていた。

 

 ジャック「だが、あの二人なら、絶対にやってくれるだろう。」

 

 カイ「…あの二人とは………まさか………。」

 

 ジャック「そう、“あの二人”だ。」

 

 

 

 ジャックの脳裏に浮かんだのは、同じ頃、体育館で引き続き特訓をしている“あの二人”………。

 

 “ヒカルとショウ”の事であった。

 

 彼らはキングギドラに完膚なきまでに叩きのめされている。だが、その悔しさをバネに一生懸命特訓をしている姿を見て、彼らなら次こそはキングギドラを倒せるのではないかと見込んでいたのだ。

 

 

 

 四人のウルトラ戦士は地球に戻り、櫂達の元に戻る。そして、変身を解く。

 

 すると、和寿がジャックの元に歩み寄り問いかける。

 

 斎木「………なあ、確かお前は、四日間俺を見回ってたみたいだな………それは何故なんだ?」

 

 すると、ジャックはゆっくりと答え始める。

 

 

 ジャック「………私はこの地球に着いた時、二つの強い反応を感じた。 気になった私は一緒に来ていたレイ達を先に行かせ、その反応のする方へと探索に向かったのだ。

 

 そして広島まで行ったとき、そこで見つけたのが、君だ。」

 

 

 和寿ははっと反応する。何か心当たりがあるのであろうか………?

 

 

 ジャックは語り続ける。広島まで着いた時、なんとそこでキングギドラが暴れていたのだ。

 

 光からグレートになって戦おうとしたその時、ふと何かを見つける。

 

 それは、キングギドラを相手に果敢に挑む四機のF-15Jイーグルであった。

 

 その時、グレートはふと見ただけで気づく。 それは、いつもの防衛軍と違ってなかなか撃墜されず攻撃している所から、彼らの操縦スキルが高いこと。

 

 そして、その中での一機がやけに突っかかってるような戦い方をしている事であった。

 

 険しい表情で操縦するその機体のパイロットは間違いなく斎木和寿であったのだ。

 

 和寿の機体が危機に陥った時、グレートは光の状態でひとまずキングギドラにバーニングプラズマを放って追い払うことが出来たが、和寿の様子が気になったグレートはその後も彼らをサポートしつつも福岡、網走とキングギドラを追う彼らの後をついては見つめていたと言う………。

 

 彼らを観察していく内に気付いたこと。それは、和寿の機体が個人プレーに走りがちで仲間の機体と連携がとれていない事。

 

 そして、優れた聴覚をすませてみると、キングギドラへの復讐しか考えない和寿と、チームで連携を取って戦う事を主張する仲間たちとで口論が絶えなかったと言う事である………。

 

 そんな彼らを見て、グレートはかつての自分とジャックを重ね合わせていたのだ。

 

 グレートもかつて、ジャックがグレートの制止を振り切ってUMAに入隊する、ジャックの意思関係なくグレートが怪獣を倒そうとするなど、意見が食い違う事があったのである。

 

 だが、そうした対立がありながらも、グレートがジャックを、ジャックがグレートをと互いに助け合って戦い抜いて来たのである。

 

 だが、意見の食い違いで対立すると言う点では和寿達も同じだが、グレートたちと違っている所があった。

 

 それは、互いにあまりに主張が強すぎて、協力し合い、助け合う事が無かったと言う事である………。

 

 

 それを言われた和寿は、図星を突かれたのか少し俯く。

 

 グレート「気持ちは分かる。だが、その個人的な感情だけで一方的に行動している様なら、“そんな事”と思われるのも無理は無い。」

 

 斎木「………あんたに………あんたに俺の気持ちが分かるかよっ! 俺は、故郷を………そこの人々を奴に荒らされたんだぞ!………」

 

 和寿は声を荒げるが、ジャックはそれを返す様に…

 

 ジャック「じゃあ聞こう。君は一人なのか?」

 

 その言葉に和寿は何かを刺激されたのか、はっと驚く。

 

 

 思い出したのである。昔、幼馴染の春菜とどうしてきたのか………。

 

 

 “喜びを分かち合い、弱さを補い合い”………。

 

 

 そして、ギドラ襲撃前の記憶がフラッシュバックする。

 

 思えば、昔も春菜と楽しみつつも、互いに助け合いながら過ごしていたと言う事を………。

 

 そして、その度に笑い合っていた際の春菜の笑顔が最高に良かったと言う事………。

 

 その春菜の笑顔を守るためにも、人々を守る事が将来したいと思えた事も思い出した………。

 

 ジャック「君がどんなに実力があっても、チームプレーに勝ることは無い。 ましてや、感情に流されては自信を失い、持ち前の腕が発揮できないものなんだ。

 

 …だが、君には春菜だけではなく、同じ航空自衛隊の仲間がいるではないか。

 

 奴は君にとっては憎い奴かもしれないが、彼らと協力して倒してこそ、喜びは大きいんじゃないのか?」

 

 何か葛藤をしているのか、俯いたままの和寿の袖を少し掴んで春菜は語り掛ける。

 

 春菜「………キングギドラが憎い気持ちは分かるよ………でもね、自分のその気持ちを押し付けて突っ切るだけじゃあ、どんなに腕があっても空回りするだけなんだよ。

 

 ………私もね、かつては「病人を何とかしなくちゃ。」って想いが強すぎて、自分が担当の病人の事は自分で全部何とかしようと思った事があるの。

 

 でもその結果、空回りして失敗しそうになったの………でも、その時助けてくれたのが、まみたんだったわ。」

 

 それを聞いた真美はふと反応して春菜を見つめる。

 

 春菜「まみたんが優しく病人を諭してくれたおかげで、私は確実に治療して病人を救うことが出来たの。

 

 それをきっかけに、私はまみたんと知り合い、一緒に協力するようになったの。」

 

 春菜は真美の方を振り向く。

 

 春菜「私も思い出したわ…あんたの優しさのおかげで、これまで多くの病人が安心し、私もその人たちを確実に治すことが出来たと言う事を………。

 

 まみたんの優しさは多くの病人を救うきっかけを作ってくれたと言う事を………。

 

 私は、迅速な判断と行動力がいいってよく言われるけど………それ故にせっかちで、心の準備が出来てない病人をより不安にさせるって言われた事があるの………。

 

 私も、長所だと思てた所が、短所として働くことがあったわ………。でもまみたんのおかげでそれに気づくことが出来た…

 

 ありがとう………ごめんね。」

 

 真美は少し目を潤ませ、嬉しそうな表情をする。

 

 真美「ううん。ハルちゃんは私に良い事を言ってくれたと思うよ。

 

 それに、お互い優れてるところがある分、欠けてるところもある………それらを互いに補い合ってからこそ、初めて事を成すことが出来るんだって気付けたわ。」

 

 真美の言葉に笑みを浮かべた春菜は再び和寿の方を向く。

 

 春菜「私は、カズ君のように戦闘機で戦えないけど、いつでもカズ君の事を思ってる………

 

 それに、カズ君には同じ戦闘機で戦う仲間がいるじゃない。彼らと協力し、助け合っていけば、多分今よりもっと戦えると思うわ。」

 

 

 和寿は悟った。 マサト、ユウジ、タカオの三人が、なぜ防衛軍を追放された自分について来たかを………。

 

 それは、彼らがそれほど自分を必要としており、彼らとはより強い信頼関係にあるからだ。

 

 そして、実力のある自分、判断力のあるマサト、お調子者のユウジ、クールなタカオ………それぞれの特徴を浮かべた和寿は、それらを活かして協力し合えば、より高度な戦術で戦えるかもしれないと思い始めた………。

 

 幼い頃、自分と春菜がよく協力し合い、助け合いもしていたと言う事も思い出し………。

 

 そしてついに、和寿は個人的な感情だけで動いていた自分が間違っていたことに気付く。

 

 

 斎木「………春菜………すまなかった………。キングギドラを憎むあまり、お前にいつも心配かけちまって………。」

 

 春菜は「いいんだよ。」とばかりに笑顔で首を横に振るう。

 

 

 斎木「キングギドラは、必ず倒す! マサト、ユウジ、タカオと力を合わせてな。」

 

 

 和寿の新たな決意を聞いた春菜は、嬉しさから和寿を抱き寄せ、和寿も抱き返しながら頭を撫でる。

 

 

 ジャック「そして、君の他にも、キングギドラを倒そうと今頑張ってる二人がいる。」

 

 ジャックがそう言うと、特訓を中断したヒカルとショウが、和寿と春菜の前に現れる。

 

 ショウ「俺たちも、奴に惨敗したリベンジをするつもりだ。」

 

 ヒカル「俺たちとも、力を合わせましょう!」

 

 和寿は「了解した!」とばかりに笑顔でサムズアップし、ヒカルとショウもサムズアップを返す。

 

 

 決意を決めた若者たちを、夕焼けがオレンジ色に包んでいた………。

 

 

 

 

 だが同じ頃、霞ヶ崎からだいぶ離れた別の都市は、暴れたキングギドラによって凄惨な状況になっていた。

 

 引力光線で破壊され尽くしたであろう街並み。竜巻を受けたように樹木がへし折れており、民家は瓦や屋根が飛ばされ雨戸も外れて歪んでおり、傾いたビルや電柱を残して一面焼け野原の瓦礫と化している………。

 

 人々の中には、母親に抱かれながら恐怖で泣きじゃくる子供、更には親を探して泣き叫びながら歩く子供まで見られていた………!

 

 そして辺りには、キングギドラが食いちぎっただろう無残に真っ二つにされた人間の死体が転がっていた………!

 

 余りにも凄惨な光景に悲しみに溢れる人々………。

 

 そんな人々から徐々にマイナスエネルギーが集まっている………テロリスト星人バスコはそう思いながら不気味に笑いながら見つめていた………!

 

 バスコ「そろそろ、ウルトラ戦士皆殺しと行きますか………!」

 

 

 

 

 その夜、全員はその体育館で一緒に寝ることにした。ヒカルとショウは外で満点の夜空を見上げていた。

 

 ヒカル「………みんないろんな思いで戦ってるんだな。」

 

 ショウ「ああ。俺たちもそうだしな。 俺もかつて、一人でも十分戦えると思ってたのだから、和寿の奴に少し親近感を感じるぜ。」

 

 ヒカル「でも、その間違いに気づき、仲間と協力し合ってからこそ、戦ってこれたもんな。」

 

 ショウ「ああ。あいつらの想いを無駄にしないようにも、そして、失われた多くの命の為にも、明日は頑張って奴(キングギドラ)を倒そうぜ。」

 

 ヒカル「おう!」

 

 ヒカルとショウは拳を合わせた。

 

 

 

 一方の櫂は、どこか浮かない顔で夜空を見上げていた………。

 

 櫂「………あの女に、まさかあんな壮絶な出来事があったとはな………。そして、欠点にもなる長所もあったとは………。」

 

 ゼロ「そうか………確かお前、両親を怪獣災害で失ってんだよな。」

 

 櫂は、真美の優しさを欠点と言った春菜がまだ許せなくいたが、彼女が自分と同じ境遇だと言う事を知り、少し複雑な心境になっていた………。

 

 そして、春菜の過去を聞いた際の、真美の何かを思い出したかのような悲しそうな表情も思い出していた………。

 

 そう、真美もまた、怪獣により母親を失っているのである。

 

 これらの事により、櫂は怪獣にも激しい憎悪を抱いており、それ故に、怪獣を助けるコスモスや、怪獣を仲間にするレイが気に食わないのである。

 

 ゼロ「そうだったのか………だがな、彼らは悪くない怪獣を救ったり、仲間にしているだけだ。悪い怪獣はちゃんと倒すぜ。」

 

 櫂「怪獣は悪い奴ばかりだと俺は思うけどな………。」

 

 櫂は少し険しい表情になっていた………。

 

 

 と、その時、何処からか静かにアコースティックギターの音が聞こえ始める。

 

 櫂がふと振り向くと、そこには廃車の上に座り込み、アコギを弾いている真美の姿があった。

 

 そして真美は静かに目をつむると、『君にできるなにか』を歌い始める。

 

 真美の澄み渡る歌声、それにスパイスを加えるようなギターのサウンドは静かに響き渡り、櫂の他にも少し離れたところにいるヒカルとショウ、カイ、ムサシ、海羽、春菜にも聞こえていた………。

 

 その歌詞や真美の天使のような歌声を聞く櫂は見とれ聞き入っており、ムサシはどこか嬉しそうな表情を浮かべていた………。

 

 

 そして、君にできるなにかを爪弾き終えた真美はギターを背負い、そっと廃車から降りる。そして櫂に気付く。

 

 真美「櫂君………聞いてくれたのね。」

 

 櫂「ああ………いい曲だなって思ってね。」

 

 真美「ムサシさんが教えてくれたの。 「夢に迷った時……夢を信じたくなった時に……そっと口ずさめばいい。」ってね。」

 

 自分には甘さがあるんじゃないかと自信を失いかけていた真美は、ふとムサシから教わった曲を思い出したのである。

 

 櫂「………真美なら大丈夫さ。 お前の優しさは、老若関係なく患者を安心させられるんだから。」

 

 真美「ありがとう。 でも、これだけじゃ何かが足りないと、私も感じ始めたの………。だから、とりあえず今は、きっぱりしたハルちゃんと協力し合って医療ボランティアをやって行こうと思ってる。 そして、徐々に欠けている所を直していこうと思ってるの………。」

 

 櫂「そうか………頑張れよ。」

 

 櫂と真美は笑顔で見つめ合う。 仮にも真美は、櫂の恐ろしい本性をまだ知らないのだから………。

 

 

 櫂は夜空を見上げながら真美に問いかける。

 

 櫂「なあ………真美も怪獣によって親を失ってんだろ? 怪獣を保護するムサシを見て、何とも思わないのか?」

 

 真美「………どうしてそれを?」

 

 櫂「い、いや………怪獣は元々俺たち人間を脅かす存在だろ? 現にキングギドラだって………。 だから、そんな怪獣たちを仲間にする奴らが、俺はどうも分からなくて………。」

 

 真美「……櫂君は、ムサシさんの事が嫌いなの?」

 

 真美はどこか悲しそうな表情で櫂を見つめる。

 

 真美「………確かに、怪獣たちの中には凶悪なのだっているわ………。でもね、私、たまに暴れる怪獣たちを見て思っちゃうの………

 

 上手く行けばあの力を、誰かを救うために使えそうだな………ってね。」

 

 櫂ははっと反応する。

 

 真美「レイさんだって、怪獣を力を合わせて多くの人を救ってるじゃない。 だから、より多くの怪獣たちも仲間になれば、より多くの人々を救えると思うの………。

 

 だから、『怪獣との共存を目指す』………私は、その考えは素晴らしいと思うわ。」

 

 

 

 真美がその事を言っていた同じ頃、別宇宙の地球では。

 

 ???「はっ…はっ……ハクショーン!!」

 

 ???「どうした?大地。夏風邪か?」

 

 ???「分からない…誰か噂してるのかな?………。」

 

 

 

 真美の言葉を聞いた櫂は、複雑な心境になり俯く。

 

 真美「………ごめんね。私、何か変な事言っちゃったかな?」

 

 櫂「い、いや………ただ、俺にはどうしても理解できなくて………。」

 

 真美「………まあ、櫂君は両親を失ってるから、無理ないかもね………。」

 

 真美は櫂を憐れむ様な表情で見つめる。

 

 真美「でも、今答えを出すこと無いと思うわ。 今後もゆっくり考えて、答えを探していこう?」

 

 櫂「………………そうだな………。」

 

 真美「じゃあ、お休みね。」

 

 真美は体育館の中に入って行った………。

 

 ゼロ(………櫂………………。)

 

 櫂はまだ複雑な心境が取れておらず、ゼロはそれをただ見つめるしかなかった………。

 

 

 そんな櫂を、春菜は少し遠くから見つめていた。

 

 春菜「あんな奴も、大きな悩みや悲しい過去を持ってるなんてね………。」

 

 「よお、まだ起きてたのか?」

 

 春菜は話しかける声が聞こえる方へ振り向く。 和寿だった。

 

 春菜「カズ君………。」

 

 斎木「………さっきはありがとな。 俺の目を覚まさせてくれて。」

 

 春菜「………。」

 

 斎木「奴は憎むべき奴だ………。だが、だからってそれに囚われて暴走すると、その憎むべき奴と同等になってしまうと気付けた。」

 

 春菜ははっと顔を上げる。

 

 斎木「大切なのは、仲間と協力し合いながら戦う事………そうする事で初めて本当の強さや正義感が引き出せること………春菜がそう俺に気付かせてくれたからな。」

 

 春菜「カズ君………。」

 

 春菜は目を潤ませ嬉しそうな表情で和寿を見つめる。

 

 ヒカルとショウも、和寿と春菜の元へ歩み寄り、二人もそれに気づく。

 

 ヒカル「それに、みんないろんな思いを持っています。 そんな思いも全部受け止め、尊重して戦うのも大事だと俺は思います。」

 

 ショウ「そうしていく内に、その中のどれが間違ってるのかも見つけることが出来ますからね。」

 

 斎木「………そうだな。」

 

 春菜「………そう…だね………。」

 

 春菜も納得するが、心内では「櫂君だけは受け止められないわ…。」とばかりにひっそりと不満そうな表情を浮かべる………。

 

 ヒカル「俺たちも思いは違いますけど、奴を倒したい気持ちは同じです。 力を合わせて戦いましょう。」

 

 ショウ「そして、みんなで勝利を勝ち取ろうぜ。」

 

 斎木「………おう!」

 

 三人は拳を合わせた。

 

 その様子を、ジャックはどこか嬉しそうに見つめていた………。

 

 そしてヒカルは決意の表情で夜空を見上げ、心の中で語り出す。

 

 

 ヒカル(キングギドラ…………俺たちはここだ…………………いつでも来いっ!!)

 

 

 

 

 そして明け方………。

 

 運命の日が遂に来た………!

 

 朝焼けが照り付ける中、櫂たちは既に全員起きて集まっていた。

 

 この時は、豪快パイレーツのメンバー・ドン・ドッゴイヤー(通称:ハカセ)も来ており、兼部している理科部、科学部と合同で開発していたレーダーを持って来た。

 

 ハカセ「これを使って。 今後怪獣と戦うために、開発していたんだ。」

 

 櫂「よし、早速キングギドラの場所を探るぞ。」

 

 全員の緊張感が走る中、レーダーを起動させる。

 

 キングギドラらしき赤い反応は、秋田でしばらく静止していたが、そこから北上していき、やがて北海道に近づいてることが分かった。

 

 

 その着陸予想場所は………石狩である!

 

 

 和寿と春菜は驚愕する!………何しろ石狩は彼らの地元だが、同所にキングギドラが現れ最初に暴れた場所なのだから………

 

 

 今では彼らにとって“思い出の場所”でもあり、“トラウマの場所”でもあるのだから………。

 

 

 和寿は少し俯き、拳を強く握る………キングギドラの着陸場所を知って動揺しているのであろうか………?

 

 そんな彼に、ヒカルとショウは語り掛ける。

 

 ヒカル「………行きましょう………斎木さん!」

 

 ショウ「その思い出の場所にトラウマが植え付けられたのなら、奴を倒し、それを引き抜くだけです!」

 

 ヒカルとショウの言葉に再び奮い立ったのか、和寿は顔を上げる。

 

 斎木「………そうだな………。」

 

 そして春菜の方を向く。

 

 

 斎木「行って来る………。俺とお前の思い出の場所を守り、絶対に生きて帰るからな。」

 

 

 春菜「………約束だよ。」

 

 和寿は「当たり前だ。」とばかりにサムズアップを決める。

 

 

 斎木「さあ………………行こう!」

 

 ヒカル・ショウ「ガレット!」

 

 

 そして、和寿と仲間のマサト、ユウジ、タカオはそれぞれのF-15Jイーグルに乗り込む。

 

 和寿「二人のウルトラマンと連携し、キングギドラを撃滅する。それが今回の任務だ。」

 

 マサト「ああ、分かってるよキャプテン。」

 

 ユウジ「りょーかい!腕が鳴るね~。」

 

 タカオ「気を抜かずに頑張るぞ。」

 

 

 ヒカルとショウも、櫂たちよりも前に進む。

 

 ヒカル「俺たちも行くぜ。」

 

 ショウ「おう!」

 

 二人はそれぞれギンガスパーク、ビクトリーランサーを突き出し、ギンガ、ビクトリーのスパークドールズを出現させ、ライブサインにリードする。

 

 

 《ウルトライブ!》

 

 

 《ウルトラマンギンガ!》 《ウルトラマンビクトリー!》

 

 

 そして、ヒカルとショウはスパーク、ランサーを揚げて叫ぶ。

 

 

 ヒカル「ギンガー!」 ショウ「ビクトリー!」

 

 

 二人はライブが完了し、眩い光の中からウルトラマンギンガ、ウルトラマンビクトリーが姿を現す。

 

 ヒカル「行こうぜ!準備はいいか?」

 

 和寿「ああ………行くぞ!」

 

 

 遂に、和寿たちの戦闘機は石狩向かって飛び立ち始め、それを追うようにギンガとビクトリーも飛び立って行く。

 

 

 今戦場に向かう勇者たちを、櫂たちは見えなくなるまで見送った………。

 

 春菜「………カズ君………。」

 

 心配そうな表情をする春菜。ジャックは彼女の肩に手を置く。

 

 ジャック「心配ないさ。正気に戻った彼なら、必ずキングギドラを倒して帰って来る。」

 

 春菜は少し安心の表情になり、「そうだね。」とばかりに頷いた。

 

 

 

 だが、その時、突如上空から一筋の光線が降り注ぎ、地面に当たって爆発する!

 

 櫂たちが驚愕する中、その爆風の中から一人の宇宙人が現れる。

 

 驚愕する櫂達の視線の先に現れた一つの影。

 

 それは、巨大化したテロリスト星人バスコである!

 

 バスコはキングギドラがギンガ達を相手してる間に一人でもウルトラ戦士を斬り倒そうとやって来たのだ!

 

 バスコ「さてと、キングギドラがギンガとビクトリーを相手してる間、貴様らを斬り殺してやるよ~!」

 

 バスコはテロリストソードを手に、余裕綽々と構える。

 

 ジャック「ここは私が行くか…。」

 

 

 と、その時、櫂は何かを考えるように俯いたまま、一歩、一歩と歩き始める………。

 

 ゼロ「………………櫂?」

 

 ゼロは少し困惑する。ゼロに本性を知られてしまい、敵視している怪獣たちの中にも悪くない怪獣もいることを信じる真美の事もあり、まだ迷いがあるはずだが………遂に再び戦う決心をしたのであろうか………?

 

 ゼロ「櫂………遂に決心したのか?」

 

 櫂「………怪獣に善も悪もある事はまだ信じられねー………だが、明らかに悪い怪獣どもは、ぶっ倒すまでだ!」

 

 ゼロ「フンッ………なら、とりあえず力を貸すとするか。」

 

 櫂「ああ。これも真美の為でもあるからな。」

 

 ゼロ「ったくお前………じゃ、行きますか!」

 

 

 ゼロはとりあえず櫂に力を貸すことにした。

 

 櫂はそっと左腕を前に突き出し、ウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを出現させる。

 

 それを見たジャックは、「ここは彼に任せてみるか。」とばかりに何かを悟ったかのような表情で下がる。

 

 一方で春菜は少し驚く。落ち着いた動きでゼロアイを出した櫂の姿を見て、不思議と彼が無理矢理ゼロの力を引き出したかのように見えなかったからだ。

 

 だが、春菜は櫂の恐ろしい本性を目の当たりにしたが故に、「もしかしたらまみたんの為だけに変身するのかも…。」という考えもあり、半信半疑であった………。

 

 

 櫂「レッツ………ゼロチェンジ。」

 

 櫂は静かに呟く。そして、ゼロアイは櫂の目にくっ付き、櫂は七色の光に包まれてウルトラマンゼロに変身・巨大化する。

 

 

 今ここに現れたウルトラマンゼロは、バスコと睨み合う。

 

 そして、頭部からゆっくりと取り出したゼロスラッガーを両手持ちで構える………。

 

 ゼロ「行くぞっ!」

 

 バスコ「上等だっ!」

 

 遂に二人は精神統一が完了したのか、互いに駆け寄り始める。そして、すれ違い様に互いの刃が火花を散らしながらぶつかり合う!

 

 

 今ここに、最後の戦いに臨むバスコ、そして、とりあえず再び櫂と戦う事を決めたゼロの一騎打ちが始まった………!

 

 

 

 同じ頃、キングギドラは遂に石狩、それも奴が最初に登場した高原に着陸する!

 

 そして、三つの首から引力光線を乱射して暴れ始める!

 

 和寿と春菜の思い出の場所であり、ある意味“始まりの場所”でもある高原が、再び焼け野原になろうとしている………!

 

 そして近くには、春菜の通ってる災害ボランティア研修所が!

 

 研修生は見学に来ていた小学生たちを連れながら、安全な場所へ急いで走り始める!

 

 パニックになる男性、爆音で耳を塞ぐ女性、そして、恐怖で泣き叫ぶ子供たちを嘲笑うかのように、傍若無人に暴れ続けるキングギドラ。

 

 そしてついに、研修生や子供たちがとある崖に追い込まれてしまった!

 

 その人たち目掛けて、キングギドラは引力光線を溜め始める………!

 

 子供たちは「怖いよ~」と泣き続け、研修生たちは子供たちを宥めながらほぼ諦めかけている………!

 

 

 

 もう終わりだ!………誰もがそう思ったその時!

 

 

 

 ヒカル「ギンガファイヤーボール!」

 

 “ズガガガガガーン”

 

 突如、上空から無数の隕石状の火炎弾がキングギドラに降り注ぐ! 火炎弾が自身の周りの地面に落ちて爆発し、その中のいくつかを被爆した事でキングギドラは怯み、引力光線発射が止まる。

 

 

 

 研修生や子供たち、そしてキングギドラは上空へと振り向く。

 

 (BGM:ウルトラマンギンガの歌 イントロ)

 

 そこにいたのは、到着したギンガとビクトリー、そして、和寿たちを乗せたF-15Jイーグルだった!

 

 子供「あ、ウルトラマンだ!」

 

 女性「来てくれたんだね!」

 

 子供「うん!」

 

 研修生たちは安心の表情になり、子供たちは泣き止んでウルトラマンを応援し始める。

 

 

 ギンガとビクトリーは着地し、和寿たちの機体もそれぞれ二人の左右に二機ずつ静止する。

 

 和寿「改めて総員に告ぐ! 二人のウルトラマンと連携し、キングギドラを撃滅せよ!!」

 

 マサト・ユウジ・タカオ「了解!!」

 

 

 ヒカル「行くぜギンガ、ショウ!」

 

 ショウ「ああ。掴むぜ、ビクトリーを!」

 

 ギンガとビクトリーは構えを取る。

 

 

 そして、ギンガとビクトリーは土砂と土煙を巻き上げながら駆け始める!

 

 

 和寿たちの機体も先陣を切って飛ぶ。

 

 

 まずはユウジとタカオの機体がそれぞれキングギドラの左右に回り込み、同時にミサイル攻撃を始める。

 

 それにより左右の首は注意を引かれ、それぞれ機体を打ち落とそうと頭突き、噛み付き等を繰り出すが、二人の機体は素早くアクロバティックにそれをかわしていく。

 

 ユウジ「ほいっと! 当たんねーよーだ!」

 

 タカオ「どこを狙ってる? こっちだ!」

 

 

 その隙に今度はマサトの機体が後ろ、そして和寿の機体が真上からミサイル攻撃を打ち込む。

 

 

 それによってキングギドラが完全に注意を引かれたところで、ギンガとビクトリーはキングギドラに組み付き、その衝撃で土砂と土煙が巻き上がる。

 

 そして、ビクトリーは膝蹴りを腹部に打ち込み、ギンガは跳躍して中央と左の首の間にチョップを叩き込む。

 

 

 だが、これで怯むキングギドラではない。すぐさま体勢を立て直し、三つ首を束ねた頭突きでギンガ、ビクトリーと順に突き飛ばす。

 

 

 だが二人のウルトラマンも、今回は決してくじけない。

 

 ビクトリーは左の翼に掴みかかり、左脚の横蹴りを繰り出すが左側の首で銜えられ防がれる。だが、すぐさまそのまま跳躍して背部に右横蹴りを叩き込む。

 

 そしてギンガは掴みかかり、右腕で右の羽を抑え込み、左腕で右、中央の首を束ねて締め上げる。

 

 だが、キングギドラの力は衰える事無く、ギンガは強大なパワーで振り払われそうになりながらも踏ん張る。

 

 その間にビクトリーが左側から蹴り等で攻撃を加え、和寿たちも四方八方に散りながら注意を反らそうとミサイル攻撃を続ける。

 

 三者の戦いは大地を揺るがせ、周りの地面は爆発し土砂や土煙が巻き上がり、石つぶてが飛び散るほどである。

 

 

 ヒカル「許すものか!………これ以上の破壊を………たくさんの人の幸せを、奪う事を!」

 

 

 

 一方のゼロVSバスコの一騎打ちも激しいものであり、刃と刃が何度もぶつかり合い火花が飛び散る。

 

 ゼロの腕は健在で、片手のゼロスラッガーでバスコの剣を受け止め、もう片方のゼロスラッガーで弾き飛ばしたところで回し蹴りで吹っ飛ばす。

 

 その後もすかさず駆け寄るが、ゼロスラッガーを横に振ったのをしゃがんでかわされ、その隙に剣の一撃を胸部に喰らい、火花を散らすながら吹っ飛ぶ。

 

 バスコは更に左手から弾丸『テロファイヤー』を連射してゼロに追い打ちをかける。

 

 僅かながら苦戦をするゼロ。例の件もあり、ゼロと櫂がまだ完全に噛み合っていないのであろうか………?

 

 

 バスコ「フハハハハ、どうした!?もうここで終わりか!? なら最初は貴様から斬り殺してやるよ!」

 

 

 ゼロは爆発による煙の中ゆっくりと起き上る。 その様子からまるでそれほどダメージを受けていないようである。

 

 バスコ「馬鹿なっ!? 俺のテロリストソードを受けても立ち上がるとは!?」

 

 バスコが動揺する中、ゼロは親指で口元を擦りながら鼻で笑う。

 

 ゼロ「効かねーよ! そんな攻撃。」

 

 “ガッ”

 

 バスコ「なっ!?」

 

 ゼロは高速で接近してバスコの首を掴み、今度は櫂の意識で囁くように語り始める。

 

 最も、この事はゼロの意識が櫂に強引に乗っ取られてるというワケだが………。

 

 ゼロ「俺には守るべきものがあるんでね~………その反面てめーは守るべきものが無い………だから怪獣と暴れて人々を奪うしか能が無い………………その時点でもう勝負は決まってんだよ。」

 

 バスコはいつもとはどこか違うゼロの口調に不思議と恐怖を感じていた。

 

 ゼロ「てめーはあの時真美を殺そうとした(第9話参照)………許さねえ………………覚悟しやがれ!」

 

 “バゴンッ”

 

 バスコ「ぐおはっ!?」

 

 ゼロはバスコの顔面を乱暴気味に殴ってぶっ飛ばす。

 

 ゼロ「ウルトラゼロキック!!」

 

 ゼロは高速で飛んで接近しながら、両足に炎を纏ったウルトラゼロキックを五連打する!

 

 バスコはテロリストソードで二発はなんとか防げたが、三発目で防ぎきれず剣を弾き飛ばされ、残りの二発を胸部に喰らい吹っ飛び岩山に激突する。

 

 ゼロは着地して両拳をぶつけた後、再びゼロスラッガーを取り出して光と共にゼロツインソードへと合体変形させて構える。

 

 

 だが、その構えの際の視線から、何やら強烈な殺気を感じる………。

 

 まだ、櫂の意識の方が強く出ていると言う事である。

 

 

 バスコ「え~い!小癪な~!!」

 

 バスコはテロリストソードを拾い上げ、逆上してゼロに襲い掛かる。

 

 

 両者ともに怒っているがために、激しい剣撃戦が展開される!

 

 だが、バスコがやや雑な大振りな斬撃なのに対し、ゼロは荒々しくもどこか落ち着いた流派で確実に相手の剣撃を防ぎつつ斬撃でダメージを与えていく。

 

 そう、櫂は精神が荒れていながらも、剣道部で培われた腕を活かして、それにゼロの力をプラスさせることで、戦いを優位に進めているのだ!

 

 仮にも櫂は、麟慶大学一の身体能力や頭脳を持っている………そしてゼロに変身して戦う事で、それにゼロの力がプラスされることで、向かうとこ敵無しの史上最強のウルトラマンゼロとして戦う事ができると言う事である!

 

 しかし、その一方で彼は恐ろしい本性も隠し持っている………もし櫂を敵に回してしまったら、恐らく誰でも止めることが出来ないであろう………。

 

 バスコ「ふっ…ふはははは………いい、これでいいのだ! 例え俺が倒れても、キングギドラはもう既に多くのマイナスエネルギーを発生させてくれた………そして奴が、ギンガとビクトリーを倒しさえすれば………。」

 

 バスコは押されながらも、自身のキングギドラに自身を持っているが故に、やや満足げに笑っている。

 

 ゼロ「黙れっ!黙れっ!黙れ黙れ黙れ黙れーーー!!!」

 

 ゼロは更に怒り狂い、ゼロツインソードで左右斜め、真上からの振り下ろし、横一直線などと乱暴気味に斬撃を決めて確実にダメージを与える。

 

 バスコは激しく斬られ続けていく内に傷が増えていくが、それでも傷口から血を吹き出しながら、快感に浸るかのように笑い続ける………。

 

 バスコもまた、もう後が無いが故に、やややけっぱちになっているのだ。

 

 

 そして遂に、ゼロツインソードの渾身の一撃・プラズマスパークフラッシュが、バスコのテロリストソードを粉々に粉砕した!

 

 バスコ「ぬおあーっ!? お、俺のテロリストソードが!!」

 

 ゼロはツインソードをゼロスラッガーに戻して頭部に戻すと、今度は肉弾戦を挑むつもりなのか駆け寄り始める。

 

 バスコ「え~い! おのれっ! おのれおのれおのれ~!!」

 

 バスコも逆上し、左手からテロファイヤーを連射しながら駆け寄り始め、ゼロはそれにより周りに爆発が起こる中走り続ける!

 

 両者の戦いは、もはや決着が着きそうなところまで近づいていた………!

 

 

 

 一方のギンガ&ビクトリーVSキングギドラはというと、此方も激しい攻防戦が続いていた。

 

 ギンガとビクトリーが左右の首を相手してる間に、和寿たちの機体が中央の首を集中的に攻撃する。

 

 マサト「ほらほら、こっちへ来い!」

 

 マサトの機体が旋回などをしながら威嚇し、中央の首がそれに反応して頭突きを繰り出して来たところでかわす。

 

 その隙に、真正面から和寿の機体が突っ込む!

 

 斎木「くらえーーーっ!!」

 

 一瞬の隙を突き、和寿は渾身のミサイルを発射する! ミサイルは見事、中央の首の角を破壊した!

 

 斎木「ッしゃあ!!」

 

 キングギドラが少し怯んだ隙に、ギンガ達は一旦距離を取る。

 

 和寿の機体は引き続きキングギドラに真正面から接近し、そして手前まで接近したところで九十度真上に方向転換して飛び立つ。

 

 それによりキングギドラは三つ首とも注意を引かれてしまう。

 

 

 《ウルトランス! EXレッドキングナックル!》

 

 

 ビクトリーは、ウルトランスで右腕をEXレッドキングナックルに変形させて殴りかかる!

 

 斜め振り下ろし、ストレートとパンチを決め、パンチが決まる度にその部位に爆発が起こり炎が飛び散る。

 

 少し怯んだキングギドラにギンガは右前蹴りを胸部に打ち込み、その反動を活かして上空に飛び立ち静止する。

 

 そして、ギンガクリスタルを黄色に輝かせ、両腕をクロスさせて左右下に下ろした後、左腕を揚げて頭上に雷の渦を発生させる。

 

 《ウルトランス! エレキングテイル!》

 

 ビクトリーはギンガがエネルギーを溜めている間に、ウルトランスで右腕をエレキングテイルに変形させ、電気を帯びた打撃を連打して妨害を防ぐ。

 

 

 ヒカル「ギンガサンダーボルト! ショオラァァ!」

 

 

 ギンガは雷の渦を電撃光線・ギンガサンダーボルトに変えて投げつける! 電撃光線を浴びたキングギドラはダメージを受ける。

 

 

 その隙にビクトリーはキングギドラの胸部を蹴りつけ、その反動を活かして跳躍して宙返りを始める。

 

 

 ショウ「ビクトリウムエスペシャリー!」

 

 

 ビクトリーは宙返りしながら、全身のクリスタルから光の光弾・ビクトリウムエスペシャリーを発射し、それを受けたキングギドラは更にダメージを受ける。

 

 その後、和寿、マサトが右側、ユウジ、タカオが左側とそれぞれ攻撃し始める。

 

 

 ショウ「俺たちは限界を超える…例えどんな奴が相手でも!」

 

 ヒカル「ああ、その証拠として、今から俺たちの本領を見せてやる!」

 

 ヒカル・ショウ「見せてやるぜ!俺たちの絆!!」

 

 ヒカルは左腕のウルトラフュージョンブレスのレリーフを回転させて変身モードに変える。

 

 ヒカル・ショウ「ウルトラタッチ!!」

 

 二人は向かい合うようにジャンプし、ヒカルは左腕を突き出し、ショウはビクトリーランサーでフュージョンブレスにタッチする。

 

 ヒカル「ギンガー!」 ショウ「ビクトリー!」

 

 二人は叫びと共に、眩い光に包まれる。 今こそ、ギンガとビクトリーがフュージョンする時である!

 

 

 ………だが、二人が合体するまでにはタイムラグがあった………!その隙を突いて、中央の首が二人目掛けて引力光線を発射しようと溜め始める………!

 

 

 斎木「はっ………危ないっ!」

 

 

 和寿は咄嗟に、右側の首への攻撃を止め、なんとキングギドラの真正面に回り込み始める!

 

 

 マサト「………ッ、隊長!?」

 

 ユウジ「無茶ッスよ!」

 

 引力光線を溜める中央の首の真正面に回り込んだ和寿の機体は、旋回しながら機体の正面を向ける。

 

 そして、ミサイルを乱射し始めるが、被爆しても引力光線の溜めが止まらない………!

 

 恐らく、渾身の光線を放とうとしており、それにより相当な量のエネルギーを溜めているのであろう。

 

 斎木「うおおおおあああぁぁぁー!!」

 

 それでもなお、和寿は気合の叫びを上げながら攻撃の手を緩めない。 まもなく光線は発射されそうである!

 

 タカオ「引いてください!このままでは命が危ないですよ!」

 

 だが、キングギドラ討伐に燃える不屈の男は諦めない………!

 

 

 斎木「うおああぁぁ!!………止めるものか!………これによって、二人(ギンガとビクトリー)の勝利に貢献できるのなら!………………

 

 またこれにより、俺とハルちゃんの思い出の場所(石狩)も、、、守れるのなら!………………

 

 死など怖くないっっっ!!  うおあああああぁぁぁぁ………………!!」

 

 

 和寿は、多くの人々を、そして、自分と春菜の思い出の場所を守るために、命を投げ出す覚悟を決めて捨て身の攻撃を続ける!

 

 

 ………そして!

 

 

 

 “ズビュビュビュビュビュビュ………”

 

 

 

 “ズドガーン”

 

 

 

 マサト・ユウジ・タカオ「!!!!!!」

 

 

 ………遂に、無情にも、中央の首の引力光線が発射され、それをモロ喰らった和寿の機体は、大爆発して大破してしまった………………!

 

 それにより、和寿の気合の叫びもフェードアウトするように消えた………。

 

 

 タカオ「おいマジかよ………。」 ユウジ「ウソでしょ!?」 マサト「キャプテーン!!」

 

 

 仲間たちは、和寿が死んだと思って唖然とし、絶望に打ちひしがれそうになっている………。

 

 

 キングギドラも、和寿の機体が爆発した際の爆風を見つめ、やがて完全に破壊したと思ったのか、誇らしく雄たけびを上げる………。

 

 

 と、その時!

 

 

 “バゴンッ”

 

 

 突如、爆風の中から光の拳が飛び出し、それをモロ胸部に喰らったキングギドラは吹っ飛んで地面に落下する。

 

 

 マサト・ユウジ・タカオ「!!?」

 

 

 絶望しかけたマサトたちも、その光景に驚く。

 

 

 すると、爆風は内部から突風のような光により一瞬で消し飛ばされる!

 

 

 そしてその中から、身体に纏っていた光を消滅させて『ウルトラマンギンガビクトリー』が姿を現す!

 

 

 和寿の捨て身の援護の甲斐もあり、ギンガとビクトリーはフュージョンを無事完了したのだ!

 

 

 ギンガビクトリーは起き上るキングギドラを見つめながら拳を強く握る。その様子はまるで静かな怒りを表している様である。

 

 ショウ「彼(和寿)の想い………無駄にしないぜ!」

 

 ヒカル「俺たちも…彼も………守るべき人がいるから………そして、共に戦う仲間がいるから、強くあれる!

 

 今から、その共に戦う仲間たちも力を、喰らわせてやるぜ!」

 

 

 ヒカルはフュージョンブレスを必殺技モードに変えてディスクを回転させてスイッチを止める。

 

 

 ディスクには、彼らと共に戦う仲間の一人。優しさと強さを兼ね備えた慈愛の勇士・ウルトラマンコスモス(ルナモード)の顔が映し出される!

 

 ヒカル・ショウ「ウルトラマンコスモスの力よ!」

 

 二人の掛け声と共に、ギンガビクトリーの隣にウルトラマンコスモス(エクリプスモード)の姿が浮かび上がる。

 

 ギンガとビクトリーはコスモスのビジョンと重なりながら、腕をクロスさせてエネルギーを溜め、右腕を突き出す!

 

 ヒカル・ショウ「コズミューム光線!!」

 

 ギンガとビクトリーは、突き出した右腕からコスモス(エクリプスモード)最強の必殺技・コズミューム光線を発射する!

 

 キングギドラは光線をモロ胴体に喰らい、そのまま光線に押されて吹っ飛び岩山に激突して爆発する!

 

 

 だが、キングギドラはそれでも怯まず爆風の中から飛び出して低空飛行でギンガビクトリーに体当たりを仕掛ける!

 

 

 ヒカルは再びディスクを回転させてスイッチを止める。

 

 今度はディスクには、同じく彼らと共に戦う仲間の一人。あらゆる宇宙で仲間と共に戦い、若き最強戦士として成長した、そして何よりウルトラセブンの息子である戦士・ウルトラマンゼロの顔が映し出される!

 

 ヒカル・ショウ「ウルトラマンゼロの力よ!」

 

 

 一方のバスコと戦うゼロも、バスコをアウトローな前蹴りで吹っ飛ばすと体制を整える。

 

 

 ゼロ・ヒカル・ショウ「ワイドゼロショット(ォォォ)!!」

 

 

 ゼロとギンガビクトリーは、それぞれ違う場所で戦っていながらもまるでシンクロしてるかのように左腕を水平に伸ばした後L字に組んで協力光線・ワイドゼロショットを発射する!

 

 

 ギンガビクトリーはキングギドラの低空飛行アタックを跳躍して避けると同時にゼロのビジョンと重なりながらワイドゼロショットを発射して背部に命中させて墜落させ、ゼロはワイドゼロショットをバスコの胸部に当てて爆発させて吹っ飛ばすことでダメージを与える。

 

 

 バスコはよろけながらも立ち上がるが、いつの間にか真ん前まで来ていたゼロに右肘を首に打ち付けられそのまま崖まで押されて叩きつけられる。

 

 すると、ゼロはまたしても櫂の意識で語り出す。

 

 

 ゼロ「貴様は悪すぎた。………………生まれ変わったら、良い奴になれ………もし悪い奴に生まれ変わっちまったなら、………その時は俺みたいになればいいんだよ………。」

 

 

 どこか落ち着いた口調で恐ろしい事を語るゼロにバスコはゾワつく。

 

 ゼロは口が悪いのは知っていたが、どこか不気味な事を言った事が無かったのでちょっとした動揺も感じているのだ。

 

 最も、櫂の恐ろしい本性で話しているのだから………。

 

 

 ゼロは横蹴りでバスコを吹っ飛ばし、更に攻撃を加えようと掛かって行く………勝負はもう着きそうな感じであった………………。

 

 

 

 ギンガビクトリーもキングギドラと対峙する。

 

 ヒカル「今のお前の相手は、俺たちだけじゃないぜ!」

 

 ショウ「愛する者との思い出のために、死をも覚悟した彼も今、俺たちと共に戦ってるのだ!」

 

 

 ヒカルとショウはそういうと後ろを振り向く。

 

 なんと彼らの後ろには、ボロボロの姿で横たわっている和寿の姿があったのだ!

 

 

 実は、和寿の捨て身の機体に引力光線が発射され始めた頃にちょうどギンガビクトリーへのフュージョンが完了したため、すぐさま光の速さで接近する事で、機体が爆発し始めた瞬間に辛うじて和寿だけ救う事に成功したのである。

 

 そして、気を失った和寿を、ギンガビクトリーの中の光の空間に寝かしているのである。

 

 だが、ヒカルとショウは微かに感じていた。

 

 例え気を失っていても、彼は今も闘志を持っている事を………そう、和寿は今でもヒカル達と共に戦っており、所謂今回は二人ではない。三人でのギンガビクトリーなのだ!

 

 ヒカル「………共にキングギドラを倒そうぜ………斎木さん………。」

 

 

 和寿と自分たちが繋がっていることを確信したヒカルとショウは、再び前を向き構える。

 

 ショウ「今回のギンガビクトリーはいつもと一、二味も違う。 行くぞっ!」

 

 ヒカル「お前が不幸にした人々………そして、彼(和寿)と彼女(春菜)分の怒りも喰らいやがれっっっ!!」

 

 

 (BGM:英雄の詩 full)

 

 

その隙にギンガビクトリーは構えを取ると、キングギドラ向かって駆け寄り始める。

 

 

 ユウジ「俺たちも、キャプテンの努力を無駄にしない!」

 

 タカオ「行くぞっ!」

 

 マサト、ユウジ、タカオも全力で飛び回りながらキングギドラにミサイル攻撃を連射して攻撃していく。

 

 

 駆け寄るギンガビクトリーは、キングギドラの三つ首の頭突きをチョップ、膝蹴りなどで弾き返しながら接近し掴みかかり、そのまま超パワーで押し出して岩山に叩き付ける!

 

 その後、腹部に右肘を一撃食らわせた後、三つ首の頭突きをことごとく避けながら右腕で中央、左側の首、左肘で右側の首を抑え込み、再び岩山に叩きつけ動きを止める。

 

 そして、ギンガビクトリーはキングギドラの腹部に右膝蹴りを連発し始める。

 

 激しい力によるものか、周りに土砂や土煙が巻き上がる中、二発、三発、四発………遂には十発撃ち込んだ後、一旦両腕を離して両拳同時のパンチ・ギンガビクトリーハイパーパンチを腹部に叩き込む!

 

 パンチと共に打ち込まれた凄まじいエネルギーにより、キングギドラはすぐ後ろの岩山を破壊しながら吹っ飛び地面に落下する。

 

 

 《ウルトランス!シェパードンセイバー!》

 

 

 ショウはビクトリーランサーにかつての戦友・地底聖獣シェパードンのクリスタルスパークドールズをリードする。

 

 そしてギンガビクトリーは地面から引き抜く様にシェパードンセイバーを取り出し、更にはギンガスパークランスを左手に取って、変則的な二刀流で駆け寄る!

 

 接近すると同時に左手でギンガスパークランスを回しながら光を纏った打撃を連打し、その後シェパードンセイバーで左右袈裟懸け、回転しながらの横一直線の斬撃を浴びせる!

 

 打撃や斬撃が炸裂する度に、その部位に爆発が起こる。

 

 ギンガビクトリーは前蹴りをキングギドラの腹部に打ち込み、その反動で後ろに跳び始める。

 

 

 ヒカル・ショウ「シェパードンセイバーフラーッシュ!!」

 

 

 ギンガビクトリーは後ろ向きに跳びながらシェパードンセイバーをV字に振るい、V字型の光弾を発射するシェパードンセイバーフラッシュを発動する!

 

 巨大なV字型の光弾はキングギドラの胴体に直撃し、大爆発を起こし大ダメージを与える。

 

 ギンガビクトリーはなおも槍と剣の二刀流を駆使した斬撃を加えていく。

 

 

 ヒカルとショウ、そして和寿が一つになったギンガビクトリーは、そのいつも以上の圧倒的な力で残虐な怪獣キングギドラを圧倒していく………!

 

 

 一方のゼロ対バスコの戦い。

 

 両者は互いに雄たけびを上げながら駆け寄る。

 

 そして、互いに駆け寄りながらバスコは自棄糞気味でテロファイヤーを連発し、ゼロはそれをゼロスラッガーで弾きながら走り続ける。

 

 

 そして遂に、両者はすれ違い、それと同時にゼロの渾身の斬撃・ゼロスラッガーアタックが決まった!

 

 すれ違った両者は止まって数秒静止する………。

 

 そしてやがて、バスコは身体の各部から火花を散らしながらもがき始める。

 

 バスコ「まっ………まさかゼロたちウルトラ戦士共ではなく………このバスコ様の最期が来るとは~~~!!

 

 ぐおォォあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 “ドガーン”

 

 バスコはしばらく火花を散らした後、身体を発光させて大爆発! 完全に消し飛んだ。

 

 激しい激闘の末、バスコを撃破したゼロは大きな爆発を背に雄々しく立つ………だが、その様子はいつもと違い、どこか哀愁さも感じるものになっていた………。

 

 ゼロ「………決まったぜ………………。」

 

 見守っていた真美たちは喜び合う。春菜もその内に入ってるのだが、例の件もあり、どこか固い笑顔であった………………。

 

 

 

 《ウルトランス!グドンウィップ!》

 

 

 ギンガビクトリーは今度はウルトランスで右腕を地底怪獣グドンの鞭・グドンウィップに変形させる。

 

 そして激しい打撃の雨あられを浴びせた後、鞭で三つ首を束ねて締め上げると、そのままキングギドラを引き寄せてカウンターのような左拳を胸部に打ち込み、更にもう一発思い左拳を腹部に叩き込んだ後腹部に左横蹴りを打ち込む。

 

 

 《ウルトランス!ハイパーゼットンシザーズ!》

 

 

 今度は右腕を宇宙恐竜ハイパーゼットン(イマーゴ)の腕・ハイパーゼットンシザーズに変形させ、暗黒火球を纏ったパンチを叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 キングギドラは岩山をいくつか破壊しながら吹っ飛んだ後地面に落下する。

 

 

 だが、相当なダメージを受けてるはずのキングギドラはなおも立ち上がる。どこまでタフな奴なのであろうか。

 

 

 ヒカル「お前は殺戮のために何度も立ち上がる………

 

 だが俺たちは、平和や人々の笑顔、そして守るべき人や仲間たちのために何度も立ち上がる!

 

 だから!お前には絶対に負けない!」

 

 

 ヒカル・ショウ「ウルトラマンネクサスの力よ!」

 

 

 ヒカルとショウは、離れていても勝利を信じる仲間たちとの絆を込めてウルトラマンネクサスの力を発動させる!

 

 

 ヒカル・ショウ「クロスレイ・シュトローム!!」

 

 

 ギンガビクトリーはキングギドラの一斉引力光線を横に跳んで避けると同時に、ウルトラマンネクサス(アンファンス)のビジョンと重なりながら腕を十字に組んでクロスレイ・シュトロームを放つ!

 

 必殺光線はキングギドラの左側の首に直撃!左側の首は爆発と共に金の粉の様な物を散らしながら吹き飛んだ!

 

 首を一つ失ったキングギドラは混乱を始める。

 

 

 ヒカル「未来のため、どこまでも力は込み上がる!」

 

 

 ヒカル・ショウ「ウルトラマンマックスの力よ!」

 

 

 今度は、自分と愛する者たちの未来を掴むために湧き上がる力を込めてウルトラマンマックスの力を発動させる!

 

 ヒカル・ショウ「マクシウムカノン!!」

 

 

 ギンガビクトリーはマックスのビジョンと重なりながら、左手を上に挙げて光を集中し、腕を逆L字に組んでマクシウムカノンを発射する!

 

 七色の最強光線はキングギドラの右側の首に直撃し、跡形も無く粉々に吹き飛ばした!

 

 

 首を二つ失い中央の首だけとなったキングギドラは、怒り狂ったのか空高く飛び上がり、そして急降下しながら引力光線を乱射し始める!

 

 だが、それにより周りの地面に光線が直撃し爆発が連続する中でもギンガビクトリーは怯まない。

 

 

 ヒカル「そして………必ず生きて帰るという約束を果たすために!」

 

 

 ヒカル・ショウ「ウルトラマンメビウスの力よ!」

 

 

 そして今度は、自分達と櫂達、そして和寿と春菜の「必ず生きて帰る。」という約束への想いを込めてウルトラマンメビウスの力を発動させる!

 

 

 ヒカル・ショウ「メビュームバースト!!」

 

 

 ギンガビクトリーはウルトラマンメビウス(バーニングブレイブ)のビジョンと重なりながら、両腕を広げた後拳を胸部に寄せることで炎のエネルギーを胸の部分に発生させて、メビュームバーストを上空のキングギドラ目掛けて放つ!

 

 巨大な火球はキングギドラを包むように直撃、そしてキングギドラは大爆発し、若干燃え上がりながら地面に落下した。

 

 

 ギンガビクトリーの猛攻、そして必殺技の連続を受けたキングギドラはもうかなり劣勢となっていた。

 

 そしてふらつきながらも立ち上がった後、不利と見たのかそれとも戦意消失したのか、大きく羽根を羽ばたかせて空の彼方へ飛び始める。

 

 宇宙へと逃げるつもりだ!

 

 

 ヒカル・ショウ「逃がすかあ!!」

 

 

 ギンガビクトリーも飛んでそれを追いかけ始める。

 

 

 マサト「……あとは、任せたぜ。 ウルトラマン。」

 

 マサトたちは後をギンガビクトリーに任せ、空の彼方へ飛んでいくキングギドラと、それを追うギンガビクトリーを見上げていた………。

 

 

 そして両者はついに宇宙空間にたどり着く!

 

 

 キングギドラはギンガビクトリーの追跡に気付いたのか止まって振り向き、ギンガビクトリーも静止する。

 

 

 ヒカル「俺たちはこれだけの想いを持って戦っているんだ。………破壊しか目的としていないお前なんかが、俺たちの絆に叶うわけないんだ!」

 

 ヒカルはフュージョンブレスのスイッチを押し、ウルトラ10勇士の力を結集させる。

 

 今こそ、長年に渡って人々の幸せを奪った悪魔の怪獣にトドメを刺す時だ!

 

 

 ヒカル・ショウ「受けてみろ!人間とウルトラマンの力を!」

 

 

 眩い光と共に、ギンガビクトリーの周囲にティガ、ダイナ、ガイア、コスモス、ネクサス、マックス、メビウス、ゼロの姿が現れる。

 

 

 ヒカル・ショウ「ウルトラフュージョンシュート!!」

 

 

 ギンガビクトリーは8人のウルトラ戦士のビジョンと一斉に重なりながら腕を十字に組み、ウルトラ十勇士の力を結集させた最強光線・ウルトラフュージョンシュートを放つ!

 

 

 最強光線はキングギドラを直撃し始め、キングギドラはもがき苦しみ始める。

 

 

 ヒカル・ショウ「うおおおおあああぁぁ………!!」

 

 

 ヒカルとショウが更に力を込めることで光線の太さ、威力も増大していく………。

 

 

 “ズドガガーーーーーン”

 

 

 遂に、長年に渡って人々の幸せを奪って来た怪獣・キングギドラは、炎の輪っかのような光を広げながら大爆発を起こし、跡形も無く消し飛んだ!

 

 

 その大爆発は地球からも見え、それを見た櫂たちは、ギンガとビクトリーの勝利を確信し喜び合う。

 

 海羽は嬉しさの余り泣き崩れ、真美はそれを宥め、カイたちも笑顔で見つめ合う。

 

 変身を解いていた櫂も、嬉しそうな表情で上空を見上げた。 ひっそりと不敵な笑みを浮かべながら………………。

 

 

 キングギドラを撃破したギンガビクトリーもそれに気づいたのか、地球の方を振り向きサムズアップを決めた。

 

 

 ウルトラ戦士、そして最後まで絆を信じた人間たちが今、悪魔の大怪獣に大勝利した瞬間である!

 

 

 地球に帰って行くギンガビクトリー。それを遠くの宇宙空間から見つめている二人の宇宙人がいた。

 

 一人は、ウルトラマンたちと戦った宇宙忍者バルタン星人の同族であり息子にあたり、黒を基調に金や銀が散りばめられた配色が特徴の『宇宙忍者バルタン星人Jr』、

 

 もう一人は、バルタン星人をゆるキャラのようにデフォルメしたような外見が特徴の『チャイルドバルタン』である。

 

 

 それぞれかつて現れた別個体が、別次元に現れたバルタン星人の子供であるため、兄弟関係なのか友達関係なのかは不明だが、二人仲良く一緒に地球に戻って行くギンガビクトリーを見つめていた。

 

 

 バルタンJr「はぁ………ウルトラマンも段々と変わって来てるね。」

 

 チャイルド「そうだね。にしても、この地球には複数のウルトラマンが集まってるらしいけど、何かあるのかな?」

 

 バルタンJr「きっと新しい侵略者か何かだよ。 僕ちんたちも負けてられないね。

 

 僕ちんたちバルタン星人とウルトラ戦士たちの勝負も、まだ“一回の表”なのだから………

 

 さ、帰ろ。マミーがご飯作って待ってる。」

 

 チャイルド「うん、帰ろう。」

 

 そう言うとバルタン星人Jrとチャイルドバルタンは何処か(おそらく彼らの家)へ去って行った。

 

 先ほどの会話のやり取りからして、彼らはもしかしたら兄弟なのかもしれない………………?

 

 

 

 櫂たちは、激戦を制して帰ってきたヒカル、ショウ、そして和寿を出迎えた。

 

 横一列に並んで歩いて来る彼らの姿は、正に戦場から帰ってきた戦士そのものの様であった。

 

 

 カイとジャックはヒカルとショウの元へ歩み寄る。

 

 ジャック「………よくやったな、君達。」

 

 カイ「(拳を突き付けて)お互い雪辱が果たせて良かったな!」

 

 ショウ「離れていても、あなた達先輩方と仲間たちを近くに感じていました。」

 

 ヒカル「だから諦めず戦い抜けたんです。」

 

 四人は笑顔で見つめ合った。

 

 

 そして、春菜は和寿の元へと歩み寄る。

 

 春菜「………………約束………守ってくれたね。」

 

 斎木「………ハルちゃんが、本当の強さを気付かせてくれた………だから、仲間と共に勝つことが出来たんだ。」

 

 春菜は嬉しそうな笑顔を浮かべた後、和寿のボロボロの姿を見て苦笑いを始める。

 

 春菜「その恰好………また無茶したんでしょ?」

 

 斎木「あ、あはは、ちょっとな。」

 

 和寿と春菜は楽しそうに笑い合った。

 

 

 その様子を櫂と真美、海羽は見つめていた。

 

 真美「良かったね。あの二人(和寿と春菜)に更なる絆が生まれたみたいで。」

 

 海羽「ほんっと、感激~!」

 

 櫂「ああ。そうだな………(小声で)まるで俺と真美みたいに………。」

 

 真美「ん?何か言った?櫂君。」

 

 櫂「え?い、いや、良かったな~って。」

 

 真美「………(笑顔で)そうだね。」

 

 櫂と真美は笑顔で見つめ合う。

 

 

 櫂と真美、和寿と春菜………この二組の男女はどこか似ているのだが、ただ一つ、男側の性格に明らかな違いがあるという所は言うまでもないであろう………………。

 

 

 

 

 そして夕方頃、春菜は石狩に戻り、災害ボランティア研修に復帰する事にした。

 

 櫂たちは空港でそんな春菜を見送ることにした。

 

 そして、春菜の出発と共に和寿もマサトたちと戦闘機で出発する事にした。

 

 和寿の機体はキングギドラとの戦いで大破したため、和寿はマサトの機体に一緒に乗る事にした。

 

 

 真美と春菜は別れの握手を交わす。

 

 春菜「じゃあ、元気でね。まみたん。」

 

 真美「うん。ハルちゃんも、研修頑張ってね。」

 

 春菜「まみたんも医療ボランティア頑張って………たまには心を鬼にしてみてね。」

 

 真美「ハルちゃんも、時々肩の力を抜くのを忘れずにね。」

 

 櫂たちは、笑顔で見つめ合う春菜と真美と見つめていた。

 

 春菜「出発までまだ一時間もあるわ。ちょっとトイレ行って来るね。」

 

 春菜はトイレへと向かって行った。

 

 

 ヒカルとショウは和寿に別れの挨拶をしていた。

 

 斎木「ありがとう………君たちのおかげで、憎き奴をやっつけられた。」

 

 ヒカル「いえ、俺たちも、斎木さんの諦めない姿勢に心を打たれました。今後はより気を引き締めて頑張って行こうと思います。ですので、斎木さんたちも頑張ってください。」

 

 斎木「ははは………ところで、ジャックは?」

 

 ショウ「カイとともに旅立って行きました。「しばらくは心友同士で地球各地を探索していく。」と。

 

 恐らく貴方の成長を認めたんでしょうね。」

 

 斎木「………あいつ………水臭い所もあるんだな………。」

 

 

 

 ジャック「へくしゅ!?」

 

 カイ「?大丈夫か?」

 

 ジャック「ああ。誰か私を噂してるみたいだ。

 

 恐らく、あの男であろう。」

 

 カイ「ああ。しかしいいのか?彼に挨拶一つしないで。」

 

 ジャック「私は彼の成長を見届けた………。だから、もう大丈夫であろう。」

 

 カイ「………それもそうだな。」

 

 

 

 斎木「ま、あいつから気付かされた事を大事に、今後も仲間と頑張っていくよ。」

 

 ヒカル「頑張ってください!」

 

 和寿とヒカル、ショウは拳を交わした。

 

 

 ユウジ「そろそろ準備しましょうよキャプテーン!」

 

 タカオ「まずは基地に戻って機体修理ですね。」

 

 マサト「俺たちも手伝うぜ。」

 

 和寿「おう!」

 

 

 

 ………だがその頃、女子トイレに行っていた春菜はというと………。

 

 彼女がトイレから出た瞬間………、

 

 そこに櫂が待ち伏せしていた………………!

 

 春菜「………!………こ、今度は何?」

 

 春菜は少しビビりつつも問いかける。

 

 櫂はまたしても、険しい表情でどこか落ち着いた口調で言い始める。

 

 櫂「君はまだ分かってないなぁ………真美が心を鬼にできるわけないだろ?

 

 彼女は少しでも子供を泣かせただけで罪悪感を感じるほどなんだから………。

 

 優しさを捨てるとは、彼女にとってアイデンティティーを捨てるようなもんだっつってんだろ?」

 

 春菜「…ッ、アンタねえ!………」

 

 櫂「おーっと!俺に反発してみろ!」

 

 櫂はそう言うと、再びウルティメイトブレスレットから強引にウルトラゼロアイを出現させる………!

 

 ゼロ「………くっ!、櫂、貴様~………。」

 

 完全なる脅しに春菜はふと動きが止まる。

 

 

 櫂「………忘れるなよ?………今君が生きていられるのは、誰のおかげかなぁ?」

 

 

 春菜はまたしても、櫂の恐ろしい本性を目の当たりにして固まってしまった。

 

 櫂「あまり俺を不快にさせない方がいいぜぇ………立場も考えて………じゃないとこのゼロの力で痛い目に合わせるぞ?

 

 いざと言う時はこの力であっという間に石狩まで飛ぶことも出来るんだぜぇ?」

 

 ………もはやここまでくると狂気すら感じるものである。

 

 櫂「言っとくが、向こうに戻った隙に携帯とかで真美に俺の本性をばらすんじゃねーぞ?」

 

 そう言うと櫂はスマホを取り出し春菜にあるページを見せる。

 

 なんとそれは電話帳で、『笹崎春菜』の番号が新しく登録されていたのだ!

 

 それを見た春菜は驚愕する。

 

 櫂「真美に教えてもらって登録したのさ。 今や俺はお前の番号を所持している………毎日嫌味な電話をかけられたくなかったら、この事を真美にばらさない事だな?

 

 じゃないと、今日晩から毎日、お前に嫌味な電話をかけるぞ?それでもいいのか?ええ?」

 

 ………春菜はもはや、どうしようもない状態にまで追い込まれてしまった………………。

 

 

 

 そして少し後、櫂と春菜はトイレから戻り真美達と合流する。

 

 春菜は出発の準備を改め、櫂たちに別れの挨拶をする。

 

 ………そして最後にこう呟いた。

 

 

 春菜「ヒカル君、ショウ君、…そしてカズ君………ありがとう………思い出の場所から、トラウマを消してくれて。」

 

 

 ヒカルとショウはサムズアップをし、和寿は少し照れくさそうに頷いた。

 

 斎木「………またいつか会おうな。」

 

 春菜「うん! まみたんも………元気でね。」

 

 真美「うん…ハルちゃんもね。」

 

 

 春菜はやがて、櫂たちに笑顔で手を振りながら飛行機の入り口の方へと歩き去って行った………。

 

 最も、春菜はその最中にひっそりと櫂の方を向いて舌打ちをしたのだが………。

 

 

 和寿「よし!それじゃあ俺達も行きますか!」

 

 マサト・ユウジ・タカオ「おう!」

 

 和寿たちもそれに合わせるように各戦闘機に乗り込んでいく。

 

 

 やがて、和寿たちの戦闘機と、春菜を乗せた飛行機が離陸し飛び始め、櫂たちはそれを空港の外で手を振って見送った………。

 

 

 海羽「………行っちゃったね。」

 

 真美「うん………。」

 

 海羽「今後大丈夫かなあ?斎木さんも春菜さんも…。」

 

 真美「きっと大丈夫だよ。 二人とも、自分の欠点に気付けたんだから………まあ、私が言う事でもないけどね。」

 

 海羽「………そうだね。それに二人ともより仲も深まったみたいだし、やっぱ愛し合う男女の絆は強いモノだね。」

 

 真美「(笑顔)そうね。」

 

 

 櫂も見えなくなるまで飛んで行く機体を見送っていた。

 

 だが、そんな中笑顔で語り合う真美と海羽を見てひっそりと不敵な笑みに変わる。

 

 

 櫂(フッ………その通りだ………俺と真美の絆もあいつらなんかより強い………

 

 真美のためなら、ゼロの力で何だってやってやるつもりだからなぁ………。)

 

 

 ゼロ(まさかこんな最悪な事になっちまうとはなぁ………早いとこ悪どもを殲滅して、こいつの身体から離れる様にならないと………。)

 

 

 今一心同体となっている二人はやや気まずくなりつつある………。

 

 今後の彼らの戦いはどうなってしまうのであろうか………?

 

 今は見守っておこう。しかし、過酷になるのは間違いないであろう………。

 

 

 

 [エピローグ]

 

 旅立って行く和寿と春菜を見送ったヒカルとショウは、空港の屋上で夕日を見つめていた………。

 

 

 ヒカル「綺麗な夕焼けだな………この夕焼けがこれからも続くように………守って行こうぜ。この地球を。」

 

 ショウ「ああ。櫂たちも多分そう思ってるはずだ。」

 

 

 ヒカルとショウが語り合っていたその時、

 

 突然ヒカルは目の前が光ったかと思うと、いつの間にか白い空間に立っており、そして自身の前にはギンガが立っていた。

 

 ギンガは何やらヒカルに話があるようだ。

 

 

 ヒカル「………どうしたんだ?ギンガ。」

 

 ギンガ「今、私たちと共にゼロとなって戦っている青年がいるだろ?」

 

 ヒカル「………櫂さんの事か? それがどうかしたのか?」

 

 ギンガ「今後彼と戦う時は、注意をした方がいい。」

 

 ヒカル「!?どういう事なんだ?」

 

 

 だが、ギンガはそれ以上は語らずに白い空間は消滅し、ヒカルは元の場所に戻る。

 

 

 ヒカル「今後櫂さんと戦う時は注意だと?………ギンガは一体何が言いたかったんだ………?」

 

 

 ヒカルはギンガが言った事の意味がまだ分からずにいた………………。

 

 

 To Be Continued………。

 

 

 (ED:ウルトラマンビクトリー/ウルトラマンギンガの歌)




 読んでいただきありがとうございます!

 いかがでしたか?

 今回はゼロと櫂が現時点ちょっと気まずいだけあって、ヒカルとショウが完全に主人公してましたね(笑)

 パワード&グレートの“海外コンビ”とコスモス&ソルの“慈愛コンビ”は一度書いてみたかったのでそこら辺は私としては良かったと思います(笑)

 また、今回のキングギドラの描写はもしかしたら思い入れの強い方には受け入れがたいと思いますが、私が作った新しいキングギドラ像として見ていただければ幸いです(笑)

 また、今回はギンガとビクトリーがメインということで、クライマックスはウルトラ十勇士も若干意識しています!

 さて、遂に櫂君の恐ろしい本性を知ってしまったゼロ。

 彼の戦いは遂に“レッドゾーン(危険区域)”になってしまうのでしょうか!?

 今後の展開にも注目です!

 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


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第23話「憎悪と優しさと時空の使者」

 新話完成です。

 今回は気分的にサブタイトルを仮面ライダーオーズっぽくしてみました(笑)


 今回、櫂君が更に偉い事になってしまいます汗(笑)


 また、新たな敵も登場します!


 注:一部ショッキングな描写があります。


 (OP:英雄の詩)

 

 

 地球と月の間に浮遊する宇宙人達の拠点でもある宇宙船・テライズグレートでは、アクマニヤ星人にテロリスト星人バスコと、幹部宇宙人を一気に二人も失った事に皆動揺し、次はどう攻めようかと練っている最中であった。

 

 

 ガスト「奴らア、ますます強くなってやがってないか?こりゃあマズいかもしれないぜ?」

 

 ゲドー「こうなれば俺様の相棒怪獣の残りの二体と一気に攻めるしかないのだろうか………?」

 

 

 ブラック指令ガスト、ナックル星人ゲドーが頭をひねっていたその時、メフィラス星人キョウは言い出す。

 

 キョウ「僕に考えがあるんだ。」

 

 策士であるキョウは、早くも何やらいい策を思いついた様子である。

 

 ガスト「?何だ?」

 

 キョウ「それは見てのお楽しみさ。ふふふ…。」

 

 

 そう言うとキョウは、今度は椅子に座る桜井敏樹の方を振り向く。

 

 キョウ「それには………貴方の協力も必要なのです。どうかお願いいたします。」

 

 敏樹「ほう………何かいい策でも思いついたのか?」

 

 

 果たしてキョウの今度の作戦とは………………?

 

 

 

 テラ軍の幹部宇宙人・テロリスト星人バスコの総攻撃との壮絶な死闘を制して翌日の8月9日。

 

 

 この日、竜野櫂と新田真美は朝から図書館に来ていた。

 

 なぜかと言うと、彼らはそれぞれ所属学科で夏休みの研究課題を出されていたため、その素材収集&まとめをするためである。

 

 

 櫂は工学部、真美は医学部での自分のテーマを決め、研究課題を進め出来たら終わらせる日にしたのである。

 

 

 万が一怪獣などが現れた時の為に、この日はショウと春野ムサシを霞ヶ崎の街に、礼堂ヒカルと眞鍋海羽を露金渓谷の近くの村『八幡那須岳村』にとそれぞれ偵察を任せることにした。

 

 

 

 夏休みだけあり、人も多くクーラーの効いた図書館で、二人は学科違いと言えど、時に相談し合いながらも順調に課題の素材収集を進めていた。

 

 まだ朝の九時。図書館が開いて1時間しか経ってないにもかかわらず、流石は学園トップの二人だけあって、早くもかなりの素材をコピー、ノートに書き写すなどして集めており、二人は既に昼過ぎまで働いたかのような達成感を感じ始めていた。

 

 

 真美「(満面の笑みで)だいぶ資料集まって来たね。」

 

 櫂「ああ、そろそろ本格的に取り掛かれるかな?」

 

 真美「あ、私もうちょっと医療関係の本見て来るけどいい?」

 

 櫂「おお。見て来いよ。」

 

 真美「えへへ、ごめんね。すぐ戻って来るから。」

 

 

 良い感じに楽しそうな櫂と真美。櫂の左腕のウルティメイトブレスレットに宿るウルトラマンゼロは、少し不安も感じながらその光景を見つめていた。

 

 ………そう、ゼロは既に、櫂の恐ろしい“本性”を知ってしまってるのだから………。

 

 

 ゼロ(櫂のヤツ………今日は良い感じだな。このまま何も起こらなければいいんだが………。)

 

 

 真美が医療関係の本を見に行こうとしたその時、

 

 

 ???「ぎゃはははははははは!」

 

 櫂・真美「!!?」

 

 突如、図書館にもかかわらず何処からか若者たちの大きな話し声や笑い声が聞こえ始め驚く。

 

 たまに図書館などの公共の場で、このようなマナーの悪い若者たちはよく見かけるものだが、いざ目の当たりにすると、すごく迷惑で不愉快なモノである。

 

 

 その騒いでる集団は、男子3人、女子2人の見た感じ櫂たちと同じぐらいの若者たちであった。

 

 男A「それ本当かよ!!?マジヤベーじゃん!!」

 

 女A「そうよ!はっはっは!だから言ってやったのよ!「それは私だ」ってね!!」

 

 5人「ぎゃはははははははは!!」

 

 

 5人のバカ騒ぎは絶え間なく続いていた。

 

 櫂はそんな彼らを迷惑に感じながらも、その内図書館のスタッフが注意するだろうと放っておくことにした。

 

 櫂が再び作業に取り掛かろうとしたその時!

 

 

 女B「………何よ?何か用?」

 

 男B「俺たちが迷惑だって?」

 

 例の集団が誰かに言い返す声が聞こえ、櫂は再び振り向く。

 

 最初は図書館のスタッフだと思っていたが、振り向いた瞬間櫂は驚いた!

 

 

 なんと、その若者たちに注意しているのは真美ではないか!?

 

 

 真美は困ってる人に限らず、こういった人間も放っておけないのであろうか………?

 

 櫂は驚きながらも、集団に注意する真美を見つめ始める。

 

 

 男C「騒ぐなら外でやれってかぁ!?」

 

 真美「うん。ここは公共の場だよ? 外の方が、自由にできると思うわ。 いったん外に出て、涼しい場所でも見つけて、そこで楽しく話し合うといいよ。」

 

 

 真美の説得はとても優しいものだった。

 

 決してきつい言い方をせず相手を諭せる真美はやはり素晴らしいと、櫂は見ていて改めて感じていた。

 

 

 男A「………とりあえず出るか。」

 

 女A「ええ、行きましょ。」

 

 ようやく真美の言う事を理解したのか、若者たちは荷物をまとめて図書館を後にしていった。

 

 

 因みにこの図書館には一応、普通の話し声で雑談などが出来る部屋・雑談室があるのだが、この部屋は櫂と真美のような二人組が入る様なスペースであるため、彼らのような集団には向いていないであろう。

 

 

 若者たちを見送った真美は、櫂の元へ戻る。

 

 真美「ふぅー…静かになったね。」

 

 櫂「ああ。じゃ、再び取り掛かりますか。」

 

 真美「ごめーん。その前に私、もっと多くの医療関係の本見たいから、一旦近くの書店に行こうと思ってるの。」

 

 櫂「そうか…じゃあ、その間俺はジュースとか適当に買って来るわ。 真美の差し入れの手作りサンドイッチも楽しみだしな。」

 

 真美「(笑顔で)櫂君ったら…じゃあ、一旦図書館を出よっか。」

 

 櫂「ああ、そうだな。俺、この本戻してから行くから、先に行ってても良いぜ。」

 

 真美「そう?じゃあ、行っておくね。」

 

 そう言うと真美は鞄を持って図書館を後にした。

 

 櫂は出していた工学関係の本を棚に戻してから、荷物をまとめて図書館を後にした。

 

 

 さて、真美のサンドイッチ楽しみだなあ……熱いし冷たい飲み物買って来るぞ……櫂が心を弾ませて図書館を出た、、、

 

 

 が、その時………

 

 

 女B「こいつ大学で上位だからって偉そうで、ウザいんだよね。」

 

 櫂「!!」

 

 突如、図書館を出てすぐの目の前の出来事に櫂は驚愕する………!

 

 

 そこには、先ほどの若者たちが真美を通せん坊して逆恨みとばかりに絡んでいるではないか!

 

 恐らく真美が図書館を出るのを外の図書館の門の日陰で待ち伏せしていたのであろう………。

 

 せっかく真美が愛情込めて注意したと言うのに…それに素直になるどころか逆恨みするなんて………………。

 

 

 櫂の中の何かが崩れ始める………………。

 

 

 若者たちに通せん坊され絡まれている真美は、動揺しながらもそこを急いで通り過ぎようとするが………

 

 

 女A「待ちな!」

 

 真美「きゃっ、」

 

 

 女子Aが行かせるかとばかりに真美の右腕を掴んで止め、その隙に女子Bが真美から鞄を奪い取る!

 

 そして鞄のチャックを開けてひっくり返し、中身を地面に落とし始めた!

 

 女B「外なら何やっても自由なんだよね?」

 

 真美「ちょ…やめて……やめてよー…」

 

 ひっくり返された鞄からは教材、そしてサンドイッチの入った弁当箱が全て地に落ち、それを見て嫌がる真美を女子が腕を掴んで抑え込む。

 

 

 男子三人はその光景を馬鹿にし笑いながら傍観者に徹している…!

 

 男C「ははははは!無様だな!」

 

 男B「いいぞやれやれー!」

 

 男A「相手がわるかったでちゅねお嬢ちゃ~ん…ぎゃははははは!」

 

 

 若者たちの完全なる逆恨みからの集団での陰湿な虐め行為………櫂はそれを呆気にとられる様な表情で見つめる………

 

 

 …そして、やがて櫂はどこか険しい表情になって真美をいじめる若者たちの元へ歩み寄り始める………。

 

 

 ゼロ「…おい?……おい櫂!?お前まさか………!?」

 

 ゼロは早くも不吉な物を感じ呼びかけるが、櫂は一向に返事をせず歩みを進める。

 

 

 やがて、男子三人が櫂に気付き、女子二人も櫂に気付いて真美への虐めを止める。

 

 男A「ああん?何だお前?」

 

 真美「櫂君………。」

 

 男B「(からかうように)へえ~彼女のお知り合いさん?」

 

 男C「あ~もしかして怒ってる? こりゃあ悪いことしちゃったかな~ははは………」

 

 

 歩み寄って来た櫂をからかいだす男子三人。

 

 ゼロ(………こりゃあマズいぞ………!)

 

 ゼロの不安が強まる中、櫂は拳を密かに強く握った後、顔を上げて喋り出した。

 

 

 櫂「ああ、彼女の友達だ。

 

 俺が責任を取る。彼女を虐めるなら俺を代わりに殴ってくれ。」

 

 

 ………あまりにも意外過ぎる櫂の発言!ゼロも真美も驚いていた。

 

 

 男A「ほ~う…いい度胸じゃねーか! んじゃ、いっくぜ~!」

 

 “バゴン バゴン バゴンッ”

 

 櫂「ガッ!」

 

 男子三人は遠慮する様子も無く、ためらいも無く一人ずつそれぞれ櫂の腹部にパンチ、キック、そして顔面を殴り飛ばす!

 

 櫂は吹っ飛び地面に倒れた。

 

 

 真美「………櫂君………。」

 

 その光景を真美は心配そうに見つめ、女子二人も真美を放しヤジを飛ばす。

 

 女A「なにあいつ?こいつ(真美)の代わりに殴られに来たの?」

 

 女B「男のくせにだっさ~!」

 

 女子二人「はははははは!」

 

 

 それでも櫂は、やり返したり言い返す様子が無い………敢えて自分が身代わりになることで真美を助けようとしているのであろうか………………?

 

 

 男C「なあ、そろそろ行かねーか?」

 

 男A「そうだな。気は晴れたしな!」

 

 男B「お前らも行くぞ!」

 

 女B「ええ、そうね。」

 

 女A「(真美の方を向いて)あんた、感謝しなさいよ?このダサ男に! はははははは…」

 

 

 若者たちは笑い合いながら歩き去って行った………………。

 

 

 歩き去って行く若者たちを見つめながら、櫂は真美の元へ歩み寄る。

 

 櫂「大丈夫か?真美。」

 

 真美「ええ、、ありがとう……でも櫂君も大丈夫?」

 

 櫂「(笑顔で)ははっ、これしきの痛み、真美が無事なら平気だよ!」

 

 真美「(優しい眼差しで)櫂君………本当にありがとね。」

 

 櫂と真美は笑顔で見つめ合い、一緒に地面のノートや弁当箱を拾い上げる。

 

 

 二人はふと弁当箱を開けて中の真美の手作りサンドイッチを確認すると………案の定、全部ではないが形が崩れているものもあった。

 

 さきほどひっくり返された影響である………。

 

 真美「あぁ………折角朝早く起きて作ったのに………。」

 

 悲しそうな表情になる真美………そんな真美の肩に櫂は優しく手を置く。

 

 櫂「心配すんなよ。どんな形になろうと、真美の作ったもんだ。上手いに決まってる!(サムズアップ)」

 

 真美「(目を潤めつつも嬉しそうな表情で)櫂君………。」

 

 櫂「まあ元気出せ。俺が冷たいジュースとか買って来るからよ。」

 

 真美「じゃあ、私は書店の方へ行くね。………本当に…ありがとね。」

 

 櫂「なーに、俺とお前は幼馴染の仲良しじゃねーか。 当然のことをしたまでだよ。

 

 んじゃ、ちょっくら近くのスーパーに行ってくら。」

 

 真美「ええ、気を付けてね。」

 

 櫂「おう。」

 

 

 櫂と真美は一旦別れてそれぞれ違う方向へと向かって行く。

 

 

 因みに櫂の向かっている方向はと言うと………先ほどの若者たちが歩き去って行った方向と同じなのである………………。

 

 もしや………ゼロは再び不安になり始める。

 

 櫂は爽やかな笑顔で駆けて行く………と思ったらひっそりと不敵な笑みを浮かべていた………その表情は殺意のみで満ちている………。

 

 

 既に、櫂の中の何かが音を立てて崩れていた………………。

 

 

 

 

 一方、八幡那須岳村に向かい露金渓谷を歩いているヒカルと海羽はというと、歩きながら他愛もない話をしていた。

 

 

 海羽「へえ~、ヒカルさんって、いろんな所を旅しているのですね。なんか素敵!」

 

 ヒカル「俺は冒険家を目指してるからな。別の宇宙から来たし、つまり今も冒険の真っ最中ってやつだ。」

 

 海羽「でも、別の宇宙から来たって事は…ヒカルさんの家はこの世界にないってことですよね? そこら辺はどうしてるんですか?」

 

 ヒカル「い…いや~……そこはあの“ファミーユ財閥”ってところが何とかしてくれてね。」

 

 海羽「あ、そっか~。アイムちゃん財閥の娘だもんね!」

 

 

 同じ頃、家でもある豪邸で紅茶を飲んでいるアイム・ド・ファミーユはというと、

 

 アイム「くしゅんっ…?」

 

 執事「大丈夫ですかアイム嬢様、風邪でも引かれましたか?」

 

 アイム「誰か、私(わたくし)の噂をしてるのでしょうか…?」

 

 

 豪快パイレーツのメンバーの一人でキーボード担当のアイムは。フランスのファミーユ財閥のお嬢様でもある。

 

 ファミーユ財閥はその名で予想される通り、とても大金持ちの財閥でもある。そのため、家の一つや二つ貸すのは造作も無いのである。

 

 

 海羽「いいな~、アイムちゃん財閥の娘でしょー。私なんてごく普通の女の子だし…。」

 

 ヒカル「本当にそうかなぁ?」

 

 海羽「…え?」

 

 ヒカル「確かに財閥の娘はそれはそれで凄いが、海羽ちゃんも十分凄いと思うぜ。」

 

 海羽「そうですかね?」

 

 ヒカル「お前には、その底抜けの明るさがあるじゃねーか。その誰でも元気にする明るさに、俺たちも救われて来たんだぜ。」

 

 海羽「(照れくさそうに右手を頭の後ろに当てて)…えへへ………。」

 

 ヒカル「それにお前は、どんな事でも一生懸命に頑張るだろ?それだけでも、十分凄い人間だよ。」

 

 海羽「ありがとうございますヒカルさん。」

 

 ヒカルからほめの言葉を受けた海羽は笑顔になる。

 

 ヒカル「それに………一生懸命なお前を見てると、一番親しい俺の友達を思い出すんだ………。」

 

 海羽「一番親しいお友達さんですか?」

 

 ヒカル「ああ。そいつらも今、俺と同じで夢に向かって一生懸命なんだ。」

 

 

 

 一方、とある別宇宙の地球にて。

 

 

 家で大福を包んでいる少女が、

 

 ???「へくちゅ、、、」

 

 その少女はふと窓から空を見上げる。

 

 ???「(何かを悟ったような笑顔で)また私の噂をしてるのね。」

 

 

 カメラで写真を撮ろうとしている少年と、その視線の先でアイドルのように着飾る少女が、

 

 ???&???「「へくしゅん!」」

 

 “カシャッ”

 

 ???「ああっ!?」

 

 ???「大丈夫?健太。」

 

 ???「悪りぃ千草。たぶんずれちゃった。」

 

 ???「いいよいいよ。私もちょうどくしゃみしちゃったから。」

 

 ???「じゃ、撮り直すか。」

 

 ???「オッケー。」

 

 

 そして、とある組織の基地で研究をしている少年が、

 

 ???「………礼堂君、今でも元気にやってるかな………僕も負けてられないね。」

 

 ???「友也、ちょっと来てくれ。調べてほしい事がある。」

 

 ???「ガレット。」

 

 

 

 ヒカルは海羽と話しながら、自分の地球で夢に向かって頑張る友人たちの事を思い浮かべていた。

 

 海羽「へえー…ヒカルさんの友達も、夢に向かって一生懸命頑張ってるんですか。素敵ですね。」

 

 ヒカル「どんな事でも良い。何かを一生懸命頑張れれば、それだけでも素晴らしい人間だと俺は思うぜ。」

 

 海羽「そうですね。………私にも一生懸命頑張ってる友達がいるしね………櫂君に………真美ちゃんに………………それから………………もう一人いたんだっけ………。」

 

 海羽はある人の事を思い、ふと空を見上げる。

 

 海羽「今何やってるんだろう………………?」

 

 

 一方テライズグレートでは、

 

 敏樹「へくしっ!」

 

 キョウ「!大丈夫ですか?敏樹様。」

 

 敏樹「気にするな。それより作戦を実行するぞ。」

 

 キョウ「ははっ。ゼロ以外のウルトラ戦士の元にはそれぞれ怪獣を放っておきました。

 

 そろそろ八幡那須岳村で怪獣が目覚めるはずですよ~ふふふ…。」

 

 

 場面をヒカルと海羽に戻そう。

 

 海羽「それより、八幡那須岳村はまだかな~?」

 

 ヒカル「たしかそろそろ着くはずだが………ん?」

 

 

 ヒカルが視線の先に何かに気付いた。その先には遠くで小さく見えるが。民家が並んでいるのが見える。

 

 

 二人はもう、村の前まで来ていたのだ。

 

 

 海羽「(顔の横で両手を合わせて)ようやく着いたわ~!」

 

 ヒカル「よし、行くぜ!」

 

 二人は民家の並ぶ村へと歩みを速めて進んで行く。

 

 

 

 

 一方、先ほど自分たちを注意した真美を虐めていた若者たち五人組は、

 

 男A「(馬鹿にするように笑いながら)にしてもさっきのヤツ、自分から殴られに来るとは大した奴だよな~!」

 

 男B「いやいやただのドM馬鹿だっての!」

 

 女A「そうよね~、あんな女の彼氏なんだもん。」

 

 女B「ささ、あんなダサ男とその彼女の事なんて忘れましょ!」

 

 

 櫂「………へぇー…ダサ男か………あんな女か………それほど不愉快だったんだね。」

 

 

 突如、聞き覚えのある声が聞こえ五人はふと立ち止まる………

 

 ……それどころか、一斉に驚く!

 

 

 聞き覚えのある声の正体は、いつの間にか自分たちの目の前に立っている櫂だったのだから………!

 

 

 櫂はいつの間にか、先回りして彼らを待ち伏せしていたのである………!何たる行動力だろうか!?

 

 

 男A「ああん?何か用か?」

 

 男B「また殴られたいのか?」

 

 若者たちは櫂を威嚇するが、櫂はどこか好青年の顔で冷静に話す。

 

 櫂「いや、そうじゃないんだ。さっきはすまなかったね。 お詫びに良い所に連れて行ってやるよ。」

 

 女A「へぇ~、じゃあ楽しませてもらうよ?」

 

 女B「さっさと連れてってよ。」

 

 櫂「じゃあ、付いて来て。」

 

 そ言うと櫂は若者たちを案内し始めた………。

 

 

 もちろん、櫂は彼らを楽しい所に連れて行く気は造作も無い………。

 

 櫂は不気味に笑うような表情を浮かべながら、五人を誘導し続ける………。

 

 その表情は、正に“復讐の鬼”以外の何者でもない………………。

 

 

 

 しばらく誘導し、たどり着いたのは………

 

 …そこは人が誰もいないとある建物の裏であり、お世辞にも楽しい所とは言えない所であった。

 

 若者たちは動揺する。

 

 男C「??………おい、ここのどこが楽しい所なんだよ?」

 

 女B「からかってるわけ? ほんといい加減にしてよね!?」

 

 男子Cと女子Bが櫂に詰め寄る。

 

 

 櫂「いや、からかってなんかないよ。これから俺が、君たちを楽しませてやるからさあ。」

 

 櫂はどこか不敵な笑みで返す。

 

 櫂「ところで、君たちは俺の事ダサ男だと思ってるみたいだけど………俺が自ら殴られたのは、彼女(真美)を君たちから助けるために過ぎないんだよ?」

 

 男C「はあ?何が言いてーんだ?」

 

 

 櫂「君たち、彼女の注意ちゃんと聞いてなかったのかなぁ?彼女は愛情をこめて、優しく君たちを注意してやったんだよ?」

 

 

 女B「いや、返って迷惑だし? せっかく私たち涼しい所で楽しく話してたのに、それを邪魔しちゃって、ほんっっと嫌な女…」

 

 

 と、その時!

 

 

 

 櫂「黙れクズ!!」

 

 

 

 “バギッ!!”

 

 

 

 女B「!!!?きゃはッ!!」

 

 

 

 四人「!!!?」

 

 

 

 ゼロ「!!!?櫂っ!?」

 

 

 

 なんと櫂は、女子Bの頬を殴り飛ばしてしまったのだ………!

 

 しかもグーで!!

 

 ゼロはもちろん、残りの四人も驚愕を隠せず、殴られた女子Bは、予想外の暴行に驚きつつも倒れる。

 

 

 女子Bは早くも恐ろしい殺気を感じたのか、殴られた右頬を押さえ、地に尻を付いたまま足をひくひくさせながら仲間たちの元へ後ずさりをする。

 

 

 男C「てんめえ!なにしやがんd…」

 

 “ガッ”

 

 男C「!ぐっ!?」

 

 男子Cは逆上し櫂に殴りかかるが、逆に腕を掴まれ、そのままねじ込まれて壁に叩き付けられる!

 

 締め上げる力がよほど強いのか、男子Cは苦しみつつも櫂を睨み付ける。

 

 

 ………だが、櫂はそれ以上に殺気を感じる表情で睨みながら語り出す。

 

 

 櫂「あーあ、折角真美の言う事を素直に聞いてれば、こんな事にならなかったのにねぇ………。

 

 ほんっとにお前ら救えないクズだなぁ…。」

 

 

 櫂は表情に似合わずどこか落ち着いた口調で言い放った後、男子Cを一旦突き飛ばした後、両脇腹に交互ミドルキックを叩き込む!

 

 そして下顎に強烈な右アッパーを叩き込み、男子Cはその威力で宙返りをして地面にうつ伏せで叩きつけられる!

 

 更に櫂は、四つん這いで痙攣する男子Cに追い討ちとばかりに横腹を蹴り転がす!

 

 仲間の元まで転がった男子Cは既にグロッキーとなっており、腹を押さえ痙攣していた。

 

 

 男子Cを早くもしばき倒してしまった櫂。

 

 

 男子A「てんめええぇぇぇ!!」

 

 男子AとBは櫂の強さに驚きつつも、仲間を殴られた事に逆上し櫂に襲い掛かる!

 

 だがしかし、櫂は二人の双方からのパンチのラッシュをまるで動きが読めてるかのように余裕でかわす。

 

 そして逆に、素早くそして思いパンチやキックを男子AとBの顔や腹などに次々と決めていき、それを喰らう二人は徐々に勢いが劣って行く。

 

 恐らくこの五人の中では特に強いであろう男子AとBを余裕で同時にボコボコにしていく櫂。櫂はもともと学園トップと言われるほどの強さを持っているが、長らくゼロとして戦っていく内に、更に身体能力が上がっているのであろう。

 

 

 櫂の狙いは彼ら五人を人気のない所まで誘い込み、まとめてボコボコにしてしまおうと言う事だったのだ!

 

 

 男子AとBがいたぶられていく様を、女子二人は恐怖からか震えながら見守る………。

 

 自分たちが虐めた彼女の彼氏がこんなに強い奴だったなんて………とばかりに。

 

 

 櫂は男子2人の髪を同時に鷲掴みにし、そのまま二人の頭をぶつけ合った後、前方へ投げ捨てる。

 

 そして跳躍して一回転し、仰向けに倒れる二人の腹部にそれぞれ左右同時に踵落としを叩き込む!

 

 男子AとBもやがてグロッキーとなってしまった。

 

 

 櫂「ふぅ~………哀れだなあ………ほんっとに哀れだ。お前ら。」

 

 櫂は険しい表情で倒れる男子三人を踏みつけながら、どこか落ち着いた口調で言い放つ。

 

 なんとも悪魔のような恐ろしい光景である。

 

 

 ゼロ「おい櫂っ!お前…自分が何してんのか分かってんのか!?」

 

 

 ゼロの呼びかけも、当然櫂に届くはずが無い………。

 

 

 女B「まずいよ…あいつ……。」

 

 女A「逃げましょ!」

 

 とてつもない恐怖を感じていた女子二人は、早く櫂から逃げようと走り去ろうとする。

 

 

 が、

 

 

 “ガシッ”

 

 

 女子二人「ひっ!?」

 

 

 櫂「どこ行こうとしてんのかなっっ!」

 

 

 櫂は女子二人を逃がすかとばかりに二人の襟首をそれぞれ両手で掴み、そのまま思い切り引っ張って地面に叩き付ける!

 

 そして、二人の髪を左右それぞれ手で鷲掴みして起き上らせ、そのまま不気味な笑みで顔を近づけながら語り始める。

 

 櫂「君たちにはた~っぷりとお仕置きしないとねえ………。」

 

 女A「な……何で………何でよ!?」

 

 女子Aは恐怖で声が震えながらも問いかける。

 

 

 櫂「君たちは真美の愛情こもった注意を素直に聞くどころか鞄をひっくり返した………おかげで真美の大事に綺麗に使ってたノートが汚れ、手作りのサンドイッチも崩れちまったんだよねぇ…。」

 

 

 女子二人は恐怖のあまり何も言い返せないでいた………。

 

 

 櫂はなおも不気味な笑みを徐々に険しい表情にしながら語り続ける。

 

 

 櫂「つまり、君たちは悪い事をしてそれを指摘された………だが、それを直すどころか逆に暴力を振るった………その意味が分かるか?………

 

 君たちは悪い事に悪いことを重ねたのだよ………なら、その分の制裁を喰らうのは、当然の事だよなあ?」

 

 

 “バゴンッ”

 

 女A「きゃあっ!!」

 

 その瞬間、櫂は彼女たちの髪を掴んでいた手を放すと、まずは女子Aの胸にパンチを打ち込み吹っ飛ばす!

 

 

 続いて女子Bの右腕を掴み、背負い投げの要領で地面に叩き付ける!

 

 

 更にそのまま女子Bの腕を掴んだまま、仰向けに倒れる女子Bの腹をヤクザの様に乱暴気味に踏みつけ始める!

 

 

 しかも四発も!!

 

 

 とても男が女にする事ではない事をしている櫂に、ゼロは驚愕しつつも必死に呼びかけ続ける。

 

 ゼロ「櫂!!おい櫂!! もうやめろ!!もう十分だろ!!」

 

 

 それでもお構いなしの櫂。今度は女子Aの右腕を掴んで起き上らせると、そのまま腹部に一、二、三、四、五発拳を打ち込み、その後跳躍して落下スピードを活かして背中に右拳を叩き込み、それによって女子Aが膝を付いたところで更に背中に右膝を打ち込んで転倒させる。

 

 

 すごすごと逃げようとする女子B。だが櫂はそれを逃さない。

 

 櫂「何してんだお前?来いよ!」

 

 櫂は女子Bの右腕を掴み止める。

 

 櫂「ホラ立てよぉ!」

 

 

 櫂は女子Bを起き上らせると、そのまま腹部にパンチを連打し始める!

 

 よほど憎悪が強いのか、なんと十発もパンチを打ち込み、更に腹部に膝蹴りを二発打ち込む!

 

 

 そしてふらつき始めた女子Bを一旦前に突き飛ばした後、胸元に右足を打ち込み、そのまま押し込んで壁に叩き付ける!

 

 

 ゼロ「おい櫂!!お前自分が何してるのか分かってんのか!? 相手は女だぞ!?」

 

 櫂「はあ?それが何だってんだ? 俺の女は真美だけなんだよ!」

 

 櫂はなおも女子Bを足で押さえつけ睨みながら語り続ける。

 

 

 櫂「こいつらみてーなクズは女じゃねえ………真美みたいに優しい奴が女なんだよ! 俺の事癒せず、イラつかせる女は邪魔なんだよ!」

 

 

 “バシンッ”

 

 

 櫂は女子Bを左手の甲で叩いて転倒させる。

 

 そして、女子二人が並んでうつ伏せで転倒しているその間にしゃがみ込み、女子二人の髪を鷲掴みにして顔を上げる!

 

 女子二人はグロッキーとなっていた。

 

 

 櫂の真美に対する愛………それが大きすぎるが故の行動がこんなにも恐ろしいとは………………それよりもとにかく、好青年だと思っていた櫂がこんなにもどす黒い本性や憎悪を抱いていたとは………………、

 

 この本性を麟慶大学の学生たちはもちろん、もし真美や海羽とかに知られたらと思うと………考えただけでも恐ろしいことである。

 

 

 櫂「所詮お前らはクズなんだよ………真美を傷つけた………それにより俺の逆鱗に触れた………ほんっとに哀れだよ………お前ら………。ふんっ!」

 

 

 “ガッ!”

 

 

 櫂は女子二人の顔を地に叩きつけた後、立ち上がり背を向けて数歩歩き立ち止まる。

 

 

 櫂「…まあいい。殺したら逆に俺がクズだからなあ………見逃してやるよ。」

 

 男子A「な………何だと?」

 

 櫂「生かしてやると言ってんだ。とっとと消え失せろ。」

 

 

 櫂の言葉を聞いた若者たちは、傷ついた身体を何とか動かせながらもその場から逃げようとする。

 

 

 が、その時!

 

 

 “バキュン” “ズドーン”

 

 

 突如、何やら光の弾丸が飛んで来て自分たちの足元で爆発し、五人はふと驚き立ち止まる。

 

 

 その視線の先には、何やら派手な色合いの銃を持った櫂が立っていた………。

 

 そう、櫂はウルトラゼロアイを取り出し、ガンモードに変形させていたのである。

 

 

 櫂「………実は俺な、あのウルトラマンゼロに変身できるんだよ。」

 

 

 男A「………嘘だろ………。」

 

 

 櫂「ふふふ、つまりどういう事か分かってるのかなあ?

 

 俺はこの力を使って時空やら場所やらを移動するのは造作も無いことなのだよ………。」

 

 

 櫂は身体を光り輝かせて、若者たちより少し離れた場所から目前まで瞬間移動する。

 

 ゼロの力を持っている事の証明として、その力をちょっと使ったのである!

 

 櫂がゼロの力を持っていることを目の当たりにした若者たちは、更なる恐怖にかられる。

 

 

 櫂「この事をもし親とか警察とかに言ってみろ………この力で、瞬時に君たちのところへ行くのだって容易い事なのだよ。

 

 ましてや君たちの親をバラバラにする事だって容易い事なのだよ………。

 

 もし自分や親の命が欲しければ、この事を黙っておくんだなあ。」

 

 

 櫂からの完全なる脅し………!だが、それがあまりにも完璧すぎて、彼らは恐怖により誰にも伝える気が無くなっていた………………。

 

 

 男A「いっ………行こうぜお前ら。」

 

 やがて若者たちは、すごすごと退散していった………。

 

 

 余りにも恐ろしい櫂の暴行と脅し………それを知るものは誰もいない………。

 

 若者たちが去って行った後、櫂もビルの裏地を去り、何事も無かったかのように図書館への道を歩き始めた………。

 

 

 櫂「俺をイラつかせるならまだいい………だが真美を傷つけたりしたら…俺は容赦しない………!」

 

 

 櫂は拳を強く握って呟きながら歩みを進めていった。

 

 櫂「さて、早く戻るか。真美が待ってる。」

 

 

 だが、その時、

 

 

 ???「いいですねえ~…愛する者思うその強い気持ち。」

 

 

 櫂「!?誰だっ!」

 

 

 突如声のした方に櫂は振り向く。

 

 

 ………そこに立っていたのは、等身大のメフィラス星人キョウであった!

 

 櫂はすぐさま身構える。

 

 

 櫂「貴様!何しに来た!?」

 

 キョウ「いえ…別に喧嘩をしに来たわけではありません。

 

 ただ、君の愛する者を想うその気持ち………そんなに彼女が好きなのですか?」

 

 紳士的だがどこかからかうかのようなキョウの言い方に、櫂はイライラを強める。

 

 

 櫂「………(俯いて小声で)悪いのかよ………。」

 

 キョウ「はい?」

 

 櫂「(顔を上げて)悪いのかよ!!………真美はなあ、幼い頃からずっと一緒だった大事な友なんだ!! 友を好きになるのは当然の事だろう!!」

 

 櫂は思わず声を荒げる。だがキョウは怯むどころか静かに笑いながら言い始める。

 

 

 キョウ「友を好きになるのは当然…ですか。 なら彼はどうなんです?」

 

 そう言うとキョウは、合図とばかりに右腕を揚げる。

 

 すると、上空から一筋の光線が放たれ、それがキョウの真横で実体化を始める………。

 

 

 やがて実体化が完了し、それを見た櫂は驚愕する………!

 

 

 キョウの真横に立っているのは………………消息不明である彼らの大学の友人・桜井敏樹であるのだ!

 

 

 櫂「さ………桜井?………何でここに………?」

 

 

 すると、キョウは思わぬことを言い出す!

 

 

 キョウ「この男も、君の友なんだよねえ? 彼は今、僕たちの元にいるのだよ。」

 

 

 !!………キョウからの衝撃的な発言。………櫂は動揺をしつつも問いかける。

 

 

 櫂「やはり………ブラコの言ってたことは本当だったのか?………しかし何故だ………何故なんだ!?」

 

 

 キョウ「君がこの男を助けなかったからだよ?」

 

 櫂「何だと?………どういうことだ!?」

 

 キョウ「この男も虐められていたのだよ。それを助けなかったから彼はこのようになってしまったのだよ?」

 

 櫂「なっ………出鱈目を言うな!」

 

 キョウ「出鱈目? 本当だよ? ね、敏樹様。」

 

 

 すると、敏樹の口が喋った………!

 

 

 敏樹「どうして俺も助けなかったのさ? 俺も虐められていたのに………。」

 

 

 それを聞いた櫂は混乱を強める………!本人も、闇落ちしたのは自分のせいだと思っていたなんて………!

 

 櫂の心は大きく揺らぎ始めていた………!

 

 櫂「………何故だ………何故なんだよ?………、」

 

 敏樹「友なら、さっきのように虐められていた俺も助けてくれたはずだ。 でも、それをしてくれなかったから、俺はこの様になってしまったのだよ。」

 

 

 櫂「………嘘だ………俺の所為なんて………………そんなの嘘だああぁぁぁー!!」

 

 櫂は自棄糞とばかりに敏樹に殴りかかる!

 

 

 が、その直前で敏樹は光を放って消えてしまった………それにより空振った櫂は驚きつつも地面に両手と膝を付く。

 

 

 そう、さっきの敏樹はテライズグレートにいる敏樹を光線で立体的に地上に映したもの………所謂モニターみたいなものである。

 

 

 櫂「今のは………立体映像だったというのか………。」

 

 動揺が続く櫂にキョウは追い討ちをかけるように無常に容赦なく言い放つ。

 

 

 キョウ「君はあの男を友だと思ってないのだね?………もし友なら、さっきの彼女(真美)のように助けてたはずだろ?

 

 なのに彼がどんなに酷いいじめを受けても君たちは一向に助けず、やがて彼はいじめを苦に自殺をしようとしたところで僕たちに出会い闇落ちをした………………。

 

 見ろ、君は彼が闇落ちするまで彼を放っておいた………

 

 彼だけでなく、他の人たちも、少しいじめられたって大して全員助けないだろ?

 

 つまり、君はあの女しか目にないわけ………違うかなあ?」

 

 

 櫂「黙れえええ!!」

 

 

 櫂はついにブチ切れてキョウを睨みながら立ち上がる!

 

 

 ゼロ「櫂!こいつの口車に乗せられるな!こいつの思う壺だぞ!」

 

 

 ゼロは必死に呼びかけるが、もうここまで来ると櫂はもう止められない………。

 

 櫂「何が悪いってんだよ………真美はなあ…いっちばん付き合いが長いんだよ………。

 

 とても俺と仲良いし、そして誰よりも優しい………。

 

 ………真美はなあ………俺の女になるかもしれない人なんだよっ!!」

 

 

 櫂はそう言うと、左腕を突き出してウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを召喚して掴み取る!

 

 ゼロ「止めろ櫂………止めるんだ!」

 

 櫂「俺の真美に対する思いを踏みにじるのか………なら、容赦しねえ!」

 

 ゼロの意思関係なく無理矢理ゼロアイを出した櫂は、キョウを鋭く睨みながら怒りに任せてそれを血走った目に当てる。

 

 そして光に包まれ、等身大のウルトラマンゼロへと変身を完了する。

 

 櫂「うおおおおあああぁぁぁ~!!」

 

 ゼロに変身した櫂は怒りと気合いの叫びを上げ、その際に彼の周りに黄の炎のような光が解放される。

 

 ゼロは完全に櫂の意識で、怒りに任せてキョウ目掛けて駆け寄り始める!

 

 キョウ「ふっふふ、いいね、そうこなくっちゃ。」

 

 櫂「黙れええぇぇぇ!!」

 

 ゼロ「櫂っ!!」

 

 

 

 

 同じ頃、既に書店から図書館に戻っていた真美は、櫂を待ちながらちょっとずつ研究課題を進めていた。

 

 時間は午前の11時を回っていた。

 

 

 真美「櫂君遅いわね………結構迷ってるのかな。」

 

 真美は、今とても恐ろしい事になってると知るはずも無く、櫂の帰りを待ち続けることにする。

 

 真美「きっと私を慰めるために、いろんな物を買ってきてくれてるのかもね………よし、私も頑張ろっと。」

 

 

 再び課題に取り掛かろうとしたその時、真美はふと何かに気付く。

 

 それは、対向側の席に座って何やら計算ドリルと思われる教材を開いて泣いている小学生の男の子の姿だった。

 

 泣いてる子が気になった真美は、その子に優しく話しかける。

 

 

 真美「どうしたの?僕。 何を泣いてるの?」

 

 優しい表情で覗き込むように話しかける真美に、その子は涙声で返事をする。

 

 子「夏休みの宿題の計算ドリルが分からなくて…でも今日はこのページを終わらせないと帰れないんだ………。」

 

 子供の事情を聞いた真美は、同情からか憐れむ様な表情になる。

 

 真美「………そっか……それは辛いよね……。」

 

 真美は子供の頭を優しく撫でる。そして、提案をする。

 

 真美「ねえ、お姉ちゃんと一緒にやろう?分からない所は教えてあげるから。だから泣かないで。」

 

 子「え?………本当?」

 

 子供は涙を拭きながら聞き返す。でも、真美の座っている机の教材などに目が留まる。

 

 子「でも、お姉ちゃんもやることがあるんじゃ…」

 

 真美「(満面の笑みで)いいのいいの。困ってる子を放っておくなんて出来ないよ。」

 

 子「………ありがとう。」

 

 真美の優しさに触れた子供は笑顔になる。

 

 真美は子供の宿題の手助けを始めた。 櫂が帰って来るまでの時間稼ぎのつもりも含めて………。

 

 

 他者をも想う優しさを持つ真美。そんな彼女は今も他者を助けながら健気に櫂を待っている………。

 

 彼は今、自分を想う余りに宇宙人の策にハマり、暴走しているとも知らずに………………。

 

 

 

 

 一方ゼロに変身した櫂はと言うと、等身大でキョウと戦いを繰り広げていた………

 

 

 ………と言っても、実際はゼロが一方的にキョウを殴っている様にも見えるが………。

 

 

 怒りに駆られ、乱暴にパンチを連打するゼロに対し、それを受け流しつつもなぜか笑うキョウ。

 

 櫂「何故だ………何故笑う!!? そんなに可笑しいのかよ!………愛する者を想うのが、そんなに可笑しいのかよっっ!!」

 

 キョウ「可笑しいわけではない。ただ、君はその愛する者にしか目が行ってないんだなと思ってね。」

 

 櫂「何ッ………それはどういう事だっっ!!」

 

 “ドゴッ”

 

 櫂意識のゼロは乱暴に前蹴りを打ってキョウを後ずさりさせる。

 

 今日は蹴られた胸を押さえつつも冷静に語り続ける。

 

 キョウ「文字通りだよ。 君はその女しか目に入っていない。だから“桜井敏樹”と言う友人を見捨て、それにより彼は“敏樹様”となった………つまり、友人が闇落ちしたのは、君があの女に酔い過ぎているからなのだよ違うかね?」

 

 

 櫂の最愛の真美への想いを利用して櫂を無情にも容赦なく煽るキョウ。櫂の怒りは更に温度を上げていく………。

 

 

 櫂「………黙れ………黙れ………………おんんんん前に!何が分かるんだああぁぁぁ!!」

 

 

 “バキッ ドガッ バギッ………”

 

 

 櫂意識ゼロは再びキョウに猛然と駆け寄り、マシンガンの如く乱暴にパンチを連打し始める!

 

 

 櫂「ブサイク面のお前にっ!!………俺と真美の関係をっ!!………バカにする資格ぁねえんだよっっっ!!」

 

 

 なおもパンチを打ち続けるゼロ。 一方それを受け続けているキョウは、表面上は余裕に見えるが………

 

 

 キョウ(うっ!!?………コンプレックスである顔をまた否定された~超ショック………しかしこれ痛ぇな………え、やば、やばやば、痛い痛い痛い!!………こりゃあさっさと作戦を次の段階へ移さねば………!)

 

 

 ………どうやらやせ我慢だったようだ(笑)しかし、彼の考えるゼロを利用した作戦とは?

 

 

 キョウはめげずに櫂を煽り続ける。

 

 キョウ「で、どうすんだい?この僕を?………」

 

 櫂「ぶっ潰す!! はぁぁあああああああ………!!」

 

 ゼロ「櫂…だめだ!冷静になるんだ! 櫂っっ!!」

 

 

 ゼロの呼びかけを他所に櫂は叫ぶ。そしてゼロは力を込め、身体を激しい炎で包んでストロングコロナゼロへと姿を変える!

 

 櫂の怒りの影響か、ストロングコロナの身体は何やら凄まじい炎を発散させている。

 

 

 そして、ストロングコロナゼロは両拳に怒りの炎を集中させ、キョウに激しいパンチを放つ!

 

 左右ストレートを一発ずつ、そしてその反動によりキョウが回って背を向けた所でその背中にパンチを放って吹っ飛ばす!

 

 

 パンチが炸裂する度にその部位に爆発が起こり、激しい火の粉が飛び散る。 そのラッシュを受けて吹っ飛んだキョウはというと………

 

 

 キョウ(痛てっ………ものすっごく痛えっ! 痛いと同時に熱い………そろそろ最終段階へ移さねば僕の方が殺される………!)

 

 

 そう思ったキョウは、仰向けで殴られた部位を押さえつつも、ダメージの疲れにより息を切らせながらももう一発櫂を煽る。

 

 

 キョウ「ハァ……ハァ………その女は………この街の……平和よりも大事と……言いたいのかね?………」

 

 

 

 櫂「…っっっ………えええええい黙れ!! 黙れっ!! 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れええぇぇぇぇーーー!!!」

 

 

 

 櫂は完全に激しい怒りに支配されてしまっていた! 狂ったように叫んだ後、右拳に大きな炎エネルギーを集中させ、キョウ目掛けて駆け寄り始める!

 

 キョウに完全に止めを刺す気だ!

 

 

 それを見たキョウは、慌てるどころか寧ろ待ってましたと言うような余裕さである。

 

 

 キョウ(ふふふ………計画通りだ………そろそろ人間に化けるとするか………。)

 

 

 キョウのこの後の計画はこんな感じである。

 

 

 〈この後の計画〉

 

 ゼロが炎の拳でパンチを放とうと駆け寄る。

 

 ある程度近づいたところでキョウが人間に化けて叫ぶ。

 

 

 キョウ「助けてくれーっ! 殺されるーっ!」

 

 

 それによってゼロ(櫂)は御用。そうではないとしてもその人間の状態でパンチをかわすことで殺人未遂の罪を擦り付ける。

 

 そのトドメにより怒り・絶望同時に感じる櫂から大量のマイナスエネルギーが集まる………。

 

 〈終わり〉

 

 

 キョウはこのように恐ろしい計画を立てていた………!

 

 

 流石は卑怯もラッキョウも無い卑劣な策士・メフィラス星人キョウ。

 

 

 櫂はそれを知るはずも無く、今にもトドメを刺そうと駆け寄り続ける………!

 

 

 櫂「死ねえええぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 ゼロ「よせええええ!!」

 

 

 キョウ「いいぞ………その調子だ………!」

 

 

 策士ながらも身体を張った大胆な策で順調にゼロを填めていくキョウ………。

 

 ゼロは………櫂はこのままキョウの策のままに陥ってしまうのであろうか!?

 

 

 

 その時…!

 

 

 

 《ウルトライブ GO! キングジョー!》

 

 

 “ドガーン”

 

 

 櫂「!!? ぐおおぁぁぁっ!!」

 

 キョウ「っ!? なっ、何だっ!?」

 

 

 突如、何処からかキングジョーカスタムの形状をした光弾が飛んで来て爆発する!

 

 その爆発によりゼロは吹っ飛び、キョウも驚きつつも爆風で少し吹っ飛ぶ。

 

 

 ゼロは受け身を取って膝を付くと、そのまま光弾が飛んで来た先を見つめる。

 

 

 そこには、ビクトリーランサー(ガンモード)を構えて立つショウの姿であり、彼と同行しているムサシもやがて駆け付ける。

 

 

 先ほどの光弾はショウが放ったキングジョーカスタムのモンスシューターである。

 

 

 ゼロたちが戦っている場所の近くに二人はたまたまいたため駆け付けることが出来、間一髪ゼロ(櫂)は難を逃れれたのである。

 

 

 ショウ「加勢しに来たぞ、ゼロ。」

 

 ムサシ「今度は何を考えてるキョウ!」

 

 

 キョウ「くううぅ、もう少しだったのにい~!

 

 ………だが、さっきのゼロの攻撃で体の数か所が痛てえ………

 

 このまま戦えば、間違いなく僕は死ぬ。

 

 ………仕方がない………今日はこの辺にしてやるっ!」

 

 “シュウウゥゥン”

 

 作戦を破られ、ウルトラ戦士が二人も加勢した事により不利と見たキョウは、渋々と退散していった………。

 

 

 ショウ「逃げたか………。」

 

 ムサシ「大丈夫か?櫂、ゼロ。」

 

 

 二人はゼロの元に歩み寄る。

 

 ………が、しかし、ゼロはどこか哀愁漂う表情で立って俯いたまま返事をしない………。

 

 

 ムサシ「………どうしたんだ?」

 

 

 ゼロは以降に返事をしない………。

 

 やがて、俯いたまま二人をちらっと見た後、二人に背を向けて何処かへと飛び去って行った………。

 

 

 明らかにいつもと様子が違っていたゼロ。二人はそれを不思議そうに見送っていた………。

 

 

 ショウ「あいつ………一体どうしたんだ?」

 

 ムサシ「…きっと、敵を逃がしたのが悔しかったんだよ。」

 

 ショウ「だといいが………。」

 

 ムサシ「さ、行こう。」

 

 ショウ「ああ。」

 

 ショウは何か不吉な物を感じながらもムサシとの動向を再開する………。

 

 

 ショウの脳裏にはあるものがよぎっていた………。

 

 

 それは、先日ギンガから言われた事である。

 

 

 「今後彼(櫂)と戦う時は気を付けろ」………その言葉が浮かぶたびに、ショウは櫂の事が気になってならなかった………………。

 

 

 

 そんな櫂はというと、既に変身を解いていた。

 

 

 “ガッ”

 

 

 櫂「ショウの野郎………。」

 

 

 櫂は何処かの壁に拳をぶつけ、憎しみのこもった声で呟く。

 

 ショウにキョウを倒すのを邪魔された事を根に持っているのだ。

 

 憎しみの対象が新しく出来てしまったのであろうか………………?

 

 

 そんな櫂だが流石に周りの目が気になったのか、良人モードに戻り歩道を歩き始める………………。

 

 

 

 そして約30分後。真美は図書館の門で子供を見送る所だった。

 

 時間は約12時半を回っていた。

 

 どうやら子供の宿題は無事に終わったようである。

 

 

 子「ありがとうお姉ちゃん。」

 

 真美「いえいえ。 無事に終わって良かったね。」

 

 子供は真美に礼を言い、真美は満面の笑顔で応える。

 

 真美「もしまた困った事があったら、遠慮なく来てもいいからね。今日はもうしばらく図書館にいるから。

 

 夏休み、楽しんでね。」

 

 子「はい。じゃあ、さようなら。」

 

 真美「あ、ちょっと待って………。」

 

 真美は子供を一旦呼び止め、鞄を探り始める………そして取り出したのは…………弁当箱からの数少ない綺麗な状態のサンドイッチ一切れだった。

 

 真美「お腹空いたよね? お疲れ様。」

 

 真美はそれを子供に手渡す。

 

 子「…ありがとうございます!」

 

 

 真美はやがて礼を言いながら帰って行く子供を、笑顔で手を振りながら見送った………。

 

 

 真美「よし、じゃあ戻りますか。」

 

 真美が図書館に戻ろうとしたその時、

 

 

 櫂「………真美?」

 

 

 ちょうど帰ってきた櫂に話しかけられ振り向く。

 

 櫂「…何してんだ?」

 

 真美「………ちょっと、人助けをしてたの。」

 

 櫂「そうか………ごめんな、遅くなっちまって。 ほら、飲み物とか色々買って来たぜ。」

 

 真美「ありがとね。 じゃあ、ちょうど昼だし、図書館のラウンジでお昼にしましょ?」

 

 そう言いながら真美は笑顔で弁当箱を取り出す。

 

 櫂「………そうだな。その後協力しながら頑張って研究課題頑張ろうぜ。」

 

 真美「うん。」

 

 櫂と真美は笑顔で話し合った後、二人仲良く図書館に入って行った。

 

 

 ………だが、その際も櫂の心の中は、、、

 

 

 櫂(俺と真美の関係を踏みにじる奴は………真美を虐める奴は………誰であろうと潰すまでだ………。

 

 いざとなれば俺にはゼロの力もあるしなあ………。)

 

 

 そう思いながら、ひっそりと不敵な笑みを浮かべていた………………。

 

 

 ゼロ(マズいなこれは………櫂が怒れば俺でも制御できないし、櫂から分離することも出来ない………………早いとこなんとかせねば、またあの悪夢が………………。)

 

 

 ゼロはそう考えながら、ある事を脳裏に浮かべていた………。

 

 

 そう、かつて宿敵に自身を乗っ取られ、仲間たちを手に掛けてしまったあの時の事を………………。

 

 

 確かに、このまま櫂と一体化し続け、やがて櫂が怒りや不満を爆発させれば、またあの時の悪夢がよみがえる恐れがある、、、。

 

 

 ゼロ(此奴、ある意味ベリアルよりたちが悪い奴だからな………そうなる可能性も否定できないぜ………………。)

 

 

 ゼロの不安は少しずつだが強まりつつあった………………。

 

 

 激しい憎悪を抱く櫂と、他社をも想う優しさを持つ真美。………

 

 

 彼と彼女の想いが交錯する時が果たして来るのだろうか………?

 

 

 そしてその時櫂は?真美は?………彼らの“男と女としての”関係はどうなってしまうのであろうか………?

 

 

 とりあえず今は変わらず見守って行こう………………。

 

 

 

 ほぼ同じ頃、ムサシ、ショウの二人は、霞ヶ崎を少し離れたとある岩山の場所にてあるものを見つけていた。

 

 

 それは、上空にできた何やら黒や白、紫が混ざったようなワームホールのような不気味な歪みが発生している事である。

 

 

 ムサシ「あの歪みは、一体何なんだ………。」

 

 ショウ「何やら起こりそうなのは確かだな………。」

 

 

 と、その時!

 

 

 “ズドーン”

 

 

 突如、歪みの穴から稲妻のような光が地面に落ち、それが徐々に実体化していく………。

 

 やがて完全に実体化が完了し、一体の怪獣となる。

 

 

 その怪獣は、頭部の巨大な二本の角、肩と肘と膝に生えたトゲ、鉱物のような金と黒で構成されたボディが特徴の怪獣『超力怪獣ゴルドラス』である!

 

 

 ゴルドラスは雄たけびを上げるや暴れようとする。

 

 ゴルドラスは時空を歪ませる能力を持っている………ひょっとするとこの歪みは、奴が発生させた時空の歪みなのであろうか?

 

 驚愕する二人を他所に、ゴルドラスは怪力で岩山などを崩しながら暴れる。

 

 

 ムサシ「あの歪みは、怪獣を出現させるものなのか?」

 

 ショウ「分からないが、今は奴を止めなきゃな。」

 

 

 ショウは懐からビクトリーランサーを取り出し突き出し、中から現れたビクトリーのスパークドールズを手に取ってライブサインをリードする。

 

 

 《ウルトライブ!ウルトラマンビクトリー!》

 

 

 ショウは光となって現れたビクトリーと一体化し、V字型の光と共に右拳を突き出しながらウルトラマンビクトリーが現れる!

 

 

 ビクトリーは顔の前で両腕をクロスさせて着地する。そして構えを取る。

 

 現れたビクトリーに気付いたゴルドラスも構える。

 

 

 ビクトリーはゴルドラス目掛けて駆けて跳躍して跳び蹴りを放つ!

 

 ゴルドラスはそれを両腕で受け止め逆に押し飛ばすが、ビクトリーはそれを利用して宙返りし、後ろの岩山を蹴ってスピードを付けてゴルドラスに跳びかかる!

 

 ビクトリーはゴルドラスに跳び付き、その勢いで両者は倒れ地面を転がる。

 

 しばらく転がった後、両者は抱き合ったまま立ち上がり、一旦互いに手を放して距離を取る。

 

 

 ゴルドラスは腕を振るって殴り込むが、ビクトリーはそれをしゃがんだり回し蹴りで弾きながら往なしていく。

 

 そしてビクトリーは胸部に連続で左横蹴りを放つ。命中はしたがゴルドラスは頑丈な体でそれを耐えきり、上から振り下ろすような頭突きを繰り出すが、ビクトリーはそれを右横にそれて避け、ゴルドラスに右ヘッドロックをかける。

 

 そしてそのまま一旦跳んだ後、落下スピードを活かしてゴルドラスを前方に投げつけ地面に叩き付ける!

 

 

 ビクトリーは更に攻撃を畳みかけようと、ゴルドラス目掛けて跳躍して跳び蹴りを放つ!

 

 

 ………だが、なんとゴルドラスは自身の周りに半球状のバリヤーを張ってビクトリーのキックを防いでしまった!

 

 蹴りを弾かれたビクトリーはたまらず地面に落下する。

 

 

 ショウ「ビクトリウムシュート!」

 

 ビクトリーは怯まず跳ね起きで起き上ると、両腕で描いたV字型のエネルギーを右腕に溜めて腕をL字に組んでビクトリウムシュートを放つ。

 

 だが、ゴルドラスは再びバリヤーを張ってビクトリウムシュートを防いでしまう。

 

 

 そして逆に頭部の角から電撃光線を放ち、それがビクトリーの左肩に命中して爆発する。

 

 ビクトリーが怯んだ隙に更に電撃光線を胴体に浴びせて追い打ちをかけ、ビクトリーはダメージにより膝を付く。

 

 

 ゴルドラスは右手でビクトリーの首根っこを掴むと、そのまま怪力で持ち上げて放り投げる!

 

 

 ビクトリーは徐々に押され始めていた。

 

 

 

 一方ムサシはというと、

 

 

 ムサシ「コスモース!」

 

 

 ムサシはコスモプラックを揚げてウルトラマンコスモスに変身。光の中からコスモス(ルナモード)が右手の平を突き出して飛び出す。

 

 

 着地したコスモスは上空の歪みの穴を見上げる。直接接近して何なのか調べるつもりだ。

 

 

 ムサシ「まずはあの歪みの正体を調べなければ…、」

 

 

 と、その時!

 

 

 “ズドドドガーン”

 

 

 ムサシ「!?」

 

 

 なんと突如、歪みの穴から火炎、火球、光弾が降り注ぎ、コスモスの周囲に命中して爆発する!

 

 

 コスモスは驚きながらもそれらの攻撃をなんとかしてかわすことが出来る。

 

 

 そして再び歪みを見上げた時、あるものに気付く。

 

 

 それは、歪みの穴の奥で、何やら人型の異形の生命体が、どこかあざ笑うかのようにこちらを見つめているのである!

 

 ムサシ「まさか、あいつが歪みを発生させた張本人!?」

 

 コスモスが再び向かおうとした時、歪みの穴は徐々に小さくなっていき、やがて消滅してしまった。

 

 

 ムサシ「…さっきの生命体は、一体何だったんだ………。」

 

 

 ムサシが考え事をしている間にも、ビクトリーはゴルドラスに苦戦していた。

 

 怪力でビクトリーを抑え込むゴルドラス。それに気づいたコスモスは、とりあえずビクトリーに加勢する事にした。

 

 コスモスは右手を突き出してルナストライクを放つ。ビクトリーに気を取られていたゴルドラスはバリヤーを張れず、それを受けてしまいビクトリーを手放す。

 

 その隙にビクトリーは数回受け身を取って距離を取り。その後オーバーヘッドキックのように後ろ向きに跳躍してビクトリウムスラッシュを放つ!

 

 

 ショウ「ビクトリウムスラッシュ!」

 

 

 “ズドーン”

 

 

 ビクトリウムスラッシュが顔面に命中して爆発し、ゴルドラスは怯むと同時に角を破壊されてしまった。。

 

 ビクトリーはコスモスと合流して並び立つ。ここから一気に反撃の時だ!

 

 

 ………が、次の瞬間ゴルドラスの上空に再び歪みの穴が発生する。

 

 そしてゴルドラスは不利と見たのか、その穴の中に飛び込んで逃げ込み、ゴルドラスが入ったと同時に閉じて消えてしまった。

 

 

 ショウ「ッ………逃げられたか。」

 

 ムサシ「でもこれで、歪みと怪獣は何かの関係がある事が分かった。一旦戻ろう。」

 

 

 コスモスとビクトリーは身体を光らせて小さくなっていき、変身を解いた。

 

 

 

 ………だが、そんな光景を、合う越し離れた場所から見つめている一人の青年がいた………。

 

 その青年は二人のウルトラマンが消滅したのを見た後、何やら辺りを見渡し始める。

 

 

 ???「………さっきのウルトラマン………もしかしたらこの世界は………………あの人がいるかもしれない!?」

 

 

 そう言うと青年は、どこか急ぐ様に何処かへと走り去っていった………………。

 

 彼は一体何者なのであろうか………………?

 

 

 

 場面を変身を解いた二人に戻す。

 

 ショウ「あの穴はあの怪獣の出入り口であり、何者かが発生させたものなのは間違いない………。」

 

 ムサシ「僕はさっき、あの穴の中で何かがこっちを見ているのが見えたんだ。 まるでこっちを見て、嘲笑ってるかのようだった………。」

 

 ショウ「?………それは一体何なのですか?」

 

 ムサシ「分からない………見たことが無い、未知の生命体だったから………。」

 

 

 その時、

 

 

 ???「俺、そいつが何者なのか分かりますーっ!!」

 

 

 突然、声がした方に二人は振り向く。

 

 そこには、走りながら向かって来る一人の青年………

 

 

 豪快パイレーツのメンバーの一人でドラム担当、更にはウルトラマンや怪獣などに詳しい所謂ウルトラオタクの伊狩鎧である。

 

 

 ムサシ「鎧君、なぜここに?」

 

 鎧「今日は久々にトレーニングしようと思って、ここら辺までランニングしていたんです。 そしたらちょうど、あなた達の戦いと、上空の穴が見えたのです!」

 

 鎧は息を切らせながら話した。

 

 ショウ「じゃあ、お前はあの怪獣や生命体が何なのか分かるのか?」

 

 

 鎧ははっきりと答えた。

 

 鎧「はい。 先ほどショウさんたちが戦った怪獣は、超力怪獣ゴルドラス。

 

 そして、歪みの穴の中にいた生命体は………………

 

 

 時空生命体・ガルキメス!」

 

 

 鎧の言葉を聞いた二人は驚愕する。

 

 ショウ「時空………だと?」

 

 ムサシ「じゃあ、そのガルキメスって奴が、歪みの穴を発生させた張本人ってこと?」

 

 鎧「ええ、恐らく。 ゴルドラスも時空を操る能力を持ってますので、ガルキメスとは何かの関係があるのは間違いないでしょう。」

 

 ムサシ「じゃあ………さっき穴から降って来た火炎や火球とかも………?」

 

 鎧「恐らく………他にもガルキメスやゴルドラスと共に時空を越えてやって来た怪獣がいるのだと思います。」

 

 

 鎧は更に考察して語る。

 

 鎧「ですが、ゴルドラスは角を破壊されると時空界を発生できなくなります………つまりあの時空の穴はガルキメスが発生させたものであり、他の複数の時空を移動できる怪獣を連れて攻めて来てるのか、

 

 あるいはガルキメスは時空怪獣軍団のリーダー格であり、それらを従える宇宙人が陰にいるのか………俺としてはこれらの事が事が得られます!」

 

 

 ムサシ「ありがとう鎧君。とにかくこれで敵の正体が大体わかった。」

 

 ショウ「ビクトリーランサーが何やら微弱なエネルギー反応を示している………恐らく奴らはまだそう遠くには行っていない。」

 

 鎧「探索なら俺も手伝います!」

 

 ムサシ「ああ、一緒に行こう。」

 

 

 かくして三人は、ガルキメス率いる時空怪獣軍団の探索を始めた………………。

 

 

 

 

 因みに、上記のショウたちの一連の出来事が起こっているほぼ同じ頃、ヒカルと海羽はというと、

 

 

 海羽「(ラムネのボトルを頬に当てながら)んんん~!生き返る~!」

 

 ヒカル「やっぱ夏の暑い日のラムネは最高だな!」

 

 ようやく八幡那須岳村に到着し、ラムネで一息入れていた。

 

 

 八幡那須岳村。そこは正に山中の村と言う感じであり、売店は僅かにあるが、村のほとんどは木や藁でできた古風な民家が並んでいる。

 

 のどかであり、自然に囲まれていることもあり、霞ヶ崎以上に空気が美味いのも特徴である。

 

 

 ヒカル「ギンガスパークによると、この村辺りから何やら巨大な生命反応を感じるようだが………どこにいるんだろう?」

 

 海羽「さあ………少し、探す必要がありそうね。」

 

 ヒカル「よし、行ってみるか!」

 

 海羽「(左脚の踵を上げて右拳を揚げて)おー!」

 

 

 ヒカルと海羽は八幡那須岳村の探索を始めた………。

 

 

 果たしてこの村で彼らを待ち受けている者とは………………?

 

 

 

 [エピローグ]

 

 

 キョウ「痛っっってええぇぇぇ~~~!!(泣)」

 

 

 ガスト「ったくお前…なんであんな無茶したんだよ…。」

 

 ゲドー「まあ、その度胸だけは認めるけどさ………。」

 

 

 テライズグレートに響く悲鳴………それは、先ほどの身体を張った作戦に失敗し、あざだらけになって帰って来たメフィラス星人キョウが、ブラック指令ガストやナックル星人ゲドーに手当てをしてもらっているところであった。

 

 更にストロングコロナゼロに殴られたと言う事もあり、火傷も何か所かに負っていた。

 

 

 正にキョウにとってこの上ない骨折れ損の“くたびれ儲け”ならぬ“こぶ儲け”であろう(笑)

 

 

 キョウ「おんのれゼロ!あんちくしょ~………覚えてろおおぉぉぉ~!!」

 

 

 キョウさん………闇が広がりつつある櫂をわざと刺激までして捨て身の作戦を実行するとは………

 

 

 どうも、お疲れ様です!!(笑)

 

 

 To Be Continued………。

 

 

 (ED:ウルトラの奇跡)




 いかがでしたか?

 今回は全体的に重くなってしまい申し訳ありません!(>人<;)

 何より櫂君が前回以上に暴走してしまいましたね汗

 周りに激しい憎悪を抱く櫂君と、他者をも想う優しさを持つ真美ちゃん………。

 ………彼らの関係は今後どうなってしまうのであろうか?

 変わらず見守っててください汗


 さて次回は未来と現代を跨いだエピソードです、お楽しみに!


 因みに余談ですが、遂にウルトラマンオーブが始まりましたね!

 早速見てみたのですがとても面白く、今後もすごく楽しみにしています!(笑)


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


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第24話「未来からの挑発」

 大変長らくお待たせしました!

 オリンピック観戦などで忙しい中、完成させることが出来ました!


 今回は私も大好きなあのウルトラマンが参戦します!!(ヒントは、オーブにも力を貸しているウルトラマンです。)


 また今回は、劇場版仮面ライダードライブをリスペクトした内容であるため、色々と衝撃な真実&展開も待っています。

 では、どうぞ!


 地球にある一つの赤い大きな光球が向かっていた………。

 

 その光球はまるで燃え盛る太陽の様である。

 

 すると、その光球は地球の目前まで来ると一旦静止する。まるで地球を観察し始めたみたいだ。

 

 

 そしてやがて声が聞こえ始める。

 

 「………やはりこの地球から、僅かだが邪気を感じる………ギンガの言う事は本当だったか………。」

 

 何やらウルトラマンギンガとは関係がある様子。

 

 

 「これは、再び“彼”と戦う時が来るのであろうか………………?」

 

 

 果たしてこの光球の正体は何なのだろうか?

 

 ギンガとの関係は? そして“彼”とは一体誰なのだろうか………………?

 

 

 (OP:英雄の詩)

 

 

 謎の生命反応を察知して、研究課題で忙しい竜野櫂と新田真美の代わりに、霞ヶ崎周辺を探索しているショウと春野ムサシ。

 

 

 彼らは探索途中、とある岩山周辺の上空に巨大な謎の歪みの穴が開いているのを見つける。

 

 そしてその中から現れた超力怪獣ゴルドラスと戦い、なんとか退けることが出来たのだが、その最中に穴の中に何者かが潜んでいるのを目撃する。

 

 

 その正体は、たまたま居合わせた伊狩鎧により時空生命体ガルキメスであることが判明し、奴が率いる時空怪獣軍団が迫ってきているのではないかと察知する。

 

 

 鎧の協力も借りることにした二人は、まだ微かに感じる反応を頼りに探索を続けることにした………。

 

 

 探索を続けながら、三人は他愛も無い会話をする。

 

 ムサシ「そういえばさき穴から発射された攻撃………あれを見た感じだと、怪獣はガルキメス含めてあと二体はいるって事になるね。」

 

 ショウ「そういう事になるな。一気に攻めて来られたらたまらないぞ。」

 

 鎧「こういう時こそ、櫂さんもいてくれたら頼もしいんですけどね~。」

 

 

 

 一方そんな櫂はと言うと、

 

 櫂「ヘ………ヘックチ!!?」

 

 真美「大丈夫?櫂君。」

 

 櫂「ああ。 何だったんだ?今のくしゃみは…。」

 

 

 竜野櫂と新田真美は、予定よりも早く研究課題が進んだと言う事もあり、残りは家出することにし、荷物をまとめている。

 

 

 時刻は二時頃であった。

 

 

 真美「櫂君………さっきは助けてくれて、ありがとね。」

 

 真美は先ほど若者たちから助けてもらった事について櫂に礼を言う。(前回参照)

 

 

 櫂「えっ!?………ま、、まあ、真美は大切な……その………あれだからな。」

 

 真美「ん?」

 

 櫂「と、とにかく、当然のことをしたまでだよ。 あんなレベルの低い奴らなんかに、真美を傷つけられるわけにはいかなくてね。」

 

 真美「………(満面の笑みで)ありがとう。」

 

 

 櫂は、先ほど恐ろしい言動をしてしまった事もあり、若干戸惑いながらも答えた。

 

 

 櫂「これからも、真美は俺が守ってやるよ。 だって俺は………(小声で)真美が………なんでもない。」

 

 真美「ありがとう。 ふふっ、櫂君疲れてる? 帰って休んだ方がいいかもね。」

 

 櫂「あ、、、ああ。」

 

 

 櫂はどこか気まずいような表情で、真美と共に図書館を出る。

 

 真美「じゃあ、またね。」

 

 櫂「ああ。 真美も、ゆっくり休めよ。」

 

 櫂と真美は分かれ、それぞれの帰り道を歩き始める。

 

 

 …だが、そんな帰り道の中、櫂は一人になった瞬間、

 

 櫂「俺を不快にさせる奴は………真美を傷つける奴は………全て潰すまでだ………例えそれが誰であろうともな。」

 

 案の定、不敵な笑みで本性を剥き出しにして呟いていた………。

 

 ゼロ「櫂………。」

 

 櫂と一体化しているウルトラマンゼロは、それを掛ける言葉を失い見つめていた………………。

 

 

 

 そして櫂は、何処かボーっとするかのように少し遠くの街並みを見渡し始める………。

 

 工場の機械音、歩く人々の話し声、子供たちのはしゃぐ声などを耳にしながら………。

 

 

 櫂(ウルトラマンの力を得た俺のおかげでこんなにも平和が続くんだ………せいぜい力の無い人どもは感謝すべきだよなあ………。)

 

 

 櫂がひっそりと不敵な笑みを浮かべながら心で呟いたその時!

 

 

 全く突然、上空から一体の巨大生物が降って来た………!

 

 “ドガシャーン”

 

 その生物は、ちょうど真下にあったビルを踏み崩しながら着地する。

 

 

 櫂「!!?」

 

 ゼロ「何だっ!?」

 

 突如、大きな爆発音と共に地響きが起こり、二人は驚く。

 

 

 彼らが振り向いた先に見えたその巨大生物とは、、、

 

 

 脳みそが剥き出しになったような頭部、大きく長い耳、マツカサのようにゴツゴツした鱗のような皮膚、頭のてっぺんの一本角………いかにも得体の知れない外見をしている超獣。

 

 

 『タイム超獣ダイダラホーシ』である!

 

 

 ダイダラホーシは、人を馬鹿にし嘲笑っているかのような不気味な鳴き声を発しながら暴れ始め、町の人々は突然の超獣出現に大騒ぎになり逃げ惑う。

 

 

 更に上空を見てみると、いつの間にか巨大な黒い積乱雲のようなものが広がっている。

 

 その積乱雲は電気を帯びており、いかにも普通の積乱雲とは思えないものである。

 

 

 すると、その積乱雲の下部から大きな穴が開き、その中から時空生命体ガルキメスが、一匹の怪獣と共に現れる。

 

 

 ガルキメスと共に現れた翼の生えたその怪獣は、『時空怪獣エアロヴァイパー』である!

 

 

 あの積乱雲のようなものは、時空を越えて現れるエアロヴァイパーが出入りするエネルギー体だったのだ。

 

 

 エアロヴァイパー、そしてダイダラホーシ。いずれも時間移動が出来るという能力を持つ怪獣・超獣である。

 

 恐らく二体は何処からかの時間から時空を越えて現代にやって来たのであろう。

 

 

 エアロヴァイパーと共に現れたガルキメスは、着地後前方へ指を差す仕草をする。まるで二体に暴れるよう指示しているみたいだ。

 

 そしてその合図と共に二体は暴れ始める。

 

 

 ガルキメス率いる怪獣軍団は存在した………!それにガルキメスはその中でも上位各の様である。

 

 

 因みに同じ頃、とあるビルの壁からちらっと顔を見せながら櫂を見つめている一人の男性がいた………。

 

 その男性は、先ほどゴルドラスが発生させたワームホールから落ちて来た男(前回参照)であり、長身でオレンジのレザーコートを着ており、精悍な顔立ちをしている………。

 

 一体彼は何者なのだろうか………………?

 

 

 ???「やはりいた………この場所に………奴らもそろそろ来るはずだ………………。」

 

 

 

 二体に指示を出した後、ガルキメスはその場から姿を消した。

 

 空を飛びながら火球を吐いて暴れるエアロヴァイパー、楽しむかのように飛び跳ねながらビルを崩して暴れるダイダラホーシ。

 

 それを見た櫂はゼロに、、、

 

 櫂「………行くぞゼロ。」

 

 ゼロ「櫂………。」

 

 ゼロは何やらためらうように首をひねって俯く。

 

 やはり櫂の本性を知ってしまったがために、彼に自分から力を貸すのがやや消極的になってきているのだ………。

 

 櫂「何やってんだ?街が壊されちまうぞ。 そしたら、真美も死んじまうんだぞ?」

 

 ゼロ「………お前が真美を想おうが自由だ………ただ、街が破壊されるのを見過ごしてはいられねえ………行くぞ櫂………。」

 

 櫂「ふんっ………行くぞ…。」

 

 櫂がウルトラゼロアイを召喚しようとしたその時、

 

 

 櫂「!!ッ、」

 

 

 突如、何処からか何者かが蹴りを放ってきたため、咄嗟にそれをかわす。

 

 

 体勢を立て直して前方を見てみると、そこには黒いスーツの男性と、白い服装に近未来風の髪形の女性が複数立って構えていた。

 

 

 櫂「何なんだこいつら!?」

 

 ゼロは目を光らせ、瞬時に超能力で正体を見破った。

 

 ゼロ「こいつらは人間ではない! エイリアンが人間に化けているんだ。」

 

 

 それを聞いた瞬間、櫂の目つきが変わる。 それはまるで殺気に満ちた以外何者でもないものだった………。

 

 櫂「ほ~う………なら話は早いな………てめーらさっさとぶっ潰して、怪獣どもをやっつけるぞ。」

 

 「そうはいかないね。 怪獣たちの邪魔は………やれ!」

 

 

 軍団の一番奥にいたボスと思われる壮年の男性が指示を出し、エイリアン達は櫂に襲い掛かる!

 

 やはりガルキメス達を連れて来た異星人は存在していた………!

 

 

 櫂は襲い掛かるエイリアン達を、驚異の身体能力で次々と薙ぎ倒す。

 

 まずは先陣切って来た男エイリアンの殴り込みをしゃがんでかわし、腹部にパンチを二発打って前蹴りで吹っ飛ばす。

 

 次に手刀を打って来た女エイリアンの腕を掴み、それをひねりながら同時に後ろの男エイリアンを後ろ蹴りで吹っ飛ばし、腕をひねっていた女エイリアンを腹部に左の掌を打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 次に男女エイリアンがそれぞれ左右からパンチを打ってくるが、櫂はそれを身体を反らしてかわし、それにより二人は同士討ちになってしまう。

 

 その隙に櫂は男、女エイリアンに交互に顔面に拳を打ち込み、その後男、女という順番でそれぞれ右足、左足で踏みつける様に蹴って吹っ飛ばしながら跳躍し、回転しながら落下し、そのスピードや遠心力を活かして前方の男エイリアンの頭頂に蹴りを叩き込んでダウンさせる。

 

 次に男エイリアンの右腕の殴り込みを右腕で防ぎ、その後左脚で右腰、顔面の右側面にと二段蹴りを決め、それによって怯んだ隙に胸部に猛スピードでパンチを連打し、跳躍一回転しての右後ろ蹴りを叩き込んでぶっ飛ばす。

 

 

 櫂は左腕を突き出し、ウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを召喚させ、それを手に取ってガンモードに変えて構える。

 

 そして横向きに跳躍しながら弾を連射し、エイリアン達を次々と撃ち倒していく。

 

 

 櫂の猛攻により、エイリアン達は瞬く間に減っていき、やがて残りは壮年の男性エイリアンと、ストレートな髪形で美貌の華奢な女性エイリアンだけとなった。

 

 

 「何ッ!!? こうも簡単に我が軍が………くそっ、どうもここまでの様だな。」

 

 そう言うと壮年の男性エイリアンは、緑の光と共にその場から姿を消した。

 

 

 櫂「あっ!!………くそ、逃げられたか。」

 

 ゼロ「だが、まだ一人残ってるぜ。」

 

 櫂は、残った女性エイリアンに鋭い視線を向ける。

 

 

 ………だが、その残った女性エイリアンは、どこか無抵抗な体勢の様でもあった………。

 

 

 櫂「覚悟しろっ………!」

 

 ???「ひっ………!」

 

 櫂がゼロアイを構えて、怯えるその女性を撃とうとしたその時!

 

 

 

 ???「殺(や)っちゃだめだ父さーん!!」

 

 

 

 ………………!? 突然何処からともなく聞こえる叫びに櫂は思わず攻撃を止める。

 

 父さん?

 

 何のことか分からず疑問に思いながらも、櫂は声のした方へと振り向く。

 

 

 そこには必死そうな表情でこちらに掛けて来る、オレンジのレザーコートを着た男性の姿だった………!

 

 

 その男性は櫂の元に駆け寄り、櫂の腕にしがみ付く。

 

 櫂「うおあっ!? な、何だお前!」

 

 ???「お願いだ父さんっ……撃たないでくれーっ!!」

 

 

 櫂は全く状況が掴めず、ただその青年を振りほどこうとするのに精一杯だった。

 

 女性エイリアンはその光景をじっと見つめている………。

 

 

 ゼロ「何をしている櫂っ! 早くしないと街がっ!」

 

 櫂「でもこいつがっ!!」

 

 

 櫂が青年に手こずっている間にも、エアロヴァイパーとダイダラホーシは街で暴れている。

 

 このままでは街が危ない………!

 

 

 と、その時、

 

 

 ???「好き放題暴れてんじゃねええぇぇぇ!!」

 

 突然、熱い叫びと共に、遠くから一機の飛行機が飛んで来る………!

 

 その飛行機は近くまで来ると戦闘機だと分かり、やがてそれが『F-15Jイーグル』と言う事が分かる………!

 

 

 そのパイロトこそ、紛れもなくあの男、

 

 

 斎木和寿である!

 

 

 斎木「不死身の男、街の危機に再び帰って来たぜえええ!!」

 

 気合の叫びと共に二体目掛けて機体から弾丸を放つ斎木。

 

 二体は弾丸攻撃を受けたことにより斎木の機体に気付く。

 

 

 彼はキングギドラ撃破後、仲間と共に旅立って行ったのだ(第22話参照)が、今回新たな敵の存在を知り、急遽ここ霞ヶ崎に飛んで来たのである!

 

 

 櫂、そして櫂にしがみ付いている青年とそれを見ている女性エイリアンも斎木の登場に気付く。

 

 櫂「!?、斎木っ。」

 

 ???「あれが………斎木さん………。」

 

 

 斎木は卓越した操縦テクで二体に攻撃を仕掛ける。

 

 エアロヴァイパーは飛びながら斎木の機体に火球を吐きつける。

 

 斎木「甘いわっ!」

 

 が、斎木機はそれを旋回して避け、同時にミサイルを発射。見事エアロヴァイパーに命中する。

 

 

 続いてダイダラホーシが、上空の斎木の機体目掛けて火炎を噴射する。

 

 斎木機は油断していたのか、火炎攻撃に包まれてしまう………!

 

 それを見て火炎攻撃を止め、勝ち誇りの鳴き声を発するダイダラホーシだが、、、

 

 なんと斎木機は撃墜されておらず、それどころかいつの間にかダイダラホーシの背後に回り込んでいたのだ!

 

 それに気づかないダイダラホーシ。斎木はその隙に弾丸攻撃数発を背中に打ち込み、それによりダイダラホーシが驚いて振り向いたところでミサイル攻撃をぶちかます!

 

 ミサイル攻撃をモロに受けたダイダラホーシはたまらず背後に跳んで怯んだ。

 

 例え一機でも、怪獣二体と互角以上に渡り合う斎木の操縦テクニック。 流石はキングギドラ打倒のために鍛錬を重ねて来ただけはあると改めて思わされる。

 

 

 思わぬ乱入者による猛攻により二体は一旦引くと判断したのか、エアロヴァイパーは再び積乱雲のようなエネルギー体を発生させ、ダイダラホーシと共にその中へ入り始める。

 

 そして、二体が入ったと同時にエネルギー体は消滅した………。

 

 

 二体が姿を消したことで櫂はとりあえずゼロアイをウルティメイトブレスレットにしまい、青年もしがみ付ていた手を放す。

 

 

 斎木「奴らどこに逃げやがった? 必ず見つけてやっつけるぞー!」

 

 斎木はそう言うと、何処へと去って行った。

 

 

 すると、謎の青年は脱力するような体勢で呟く。

 

 ???「………奴ら………再び僕らの時代に戻って行ったか………。」

 

 櫂「えっ?」

 

 すると、青年は再び櫂に掴みかかって語り掛ける。

 

 ???「早く奴らを見つけよう! そして倒すんだ…」

 

 “ガッ”

 

 櫂は青年を突き飛ばした。

 

 ???「!?」

 

 櫂「よく言うぜ。奴らを逃がしたのは、お前が邪魔したからだろーが!」

 

 ???「ごめん、突然突っ込んできて………。でも、彼女は必要不可欠なんだ………。」

 

 青年は再び必死そうに語り掛ける。

 

 ???「未来を救うには僕と彼女の力が必要なんだよ父さん!」

 

 櫂「誰が父さんだっ! お前いい加減にしろよ!」

 

 櫂は状況が読めず、馬鹿にされてるのではないかと言う怒りもあってか、自分を“父さん”と呼ぶ青年を乱暴気味に振りほどき叫ぶ。

 

 

 その時、

 

 

 ???「うっ!………。」

 

 突然、青年が膝を付き、その膝を抑え込んで苦しみ始める………。

 

 櫂「!?どうしたっ!」

 

 櫂は思わずしゃがんで青年に話しかける。

 

 見てみると、ジーンズを穿いているその青年の右膝には血が滲んでいる………!青年は傷を負っていたのだ!

 

 櫂「お前っ、大丈夫かよ!?」

 

 ???「手当てした方が、いいかもね………。」

 

 櫂「!………お、、、おう………。」

 

 突然、今まで無口だった女性エイリアンが話しかけ、櫂は少し動揺しながらも応える。

 

 

 

 櫂は女性エイリアンと一緒に青年を手当てした。

 

 と言っても真美と違って救急箱を持っていないため、簡単に濡らしたティッシュで傷口を拭き、絆創膏を貼ってその上から布を巻いたぐらいだが………。

 

 ???(母さんに手当てしてもらってたのを思い出すな………。)

 

 青年は心でそう呟きつつも櫂に礼を言う。

 

 ???「ありがとう。お陰で痛みが少し和らいだよ、父さん。」

 

 櫂「ちょっと待て。 その“父さん”ってのはどういう事だ? それにお前ら、何者なんだ?」

 

 櫂の問いかけに青年は少し戸惑い始める………。そして、ゆっくりと女性エイリアンの元へ視線を移した。

 

 ???「………この際、話した方がいいかもよ?」

 

 ???「………そうだね………。」

 

 女性エイリアンの助言を受け、青年は遂に言う決心をした。

 

 

 ???「………………落ち着いて………聞いてほしい………。」

 

 櫂「?………おう。」

 

 

 青年は大きく息を吸った。そして言い始めた………

 

 

 ………が、その青年が次に言ったことは、非常に驚きべきことであった………!

 

 

 

 ???「僕は“竜野慧(たつのけい)”。 2042年の未来から来た、あなたの息子だ!」

 

 

 

 ………………竜野?………………息子??………………。

 

 

 ゼロ「!!?っ、櫂の息子だとっ!!?」

 

 ゼロは当然ながら驚きを隠せなかった。

 

 櫂も当然ながら非常に耳を疑っていた。

 

 未来から来た?自分の息子?………こいつふざけてるのか? といった考えまで出始めていた………。

 

 

 櫂「………………嘘だ?………」

 

 慧はゆっくりと首を振った。

 

 慧「………本当だよ、父さん。 急だから信じられないかもしれないけど………。」

 

 そう言うと慧は、懐から何かを取り出した。

 

 

 それはなんと、ボロボロの若い頃の櫂(つまり現代の櫂)の写真だった!

 

 ゼロ「………間違いない………この写真の櫂は、今いる櫂と全く同じものだ。」

 

 櫂「そんな馬鹿な…。」

 

 

 それを見た櫂は、僅かながら信じ始め、同時に信じられない気持ちも大きくなっていく………。

 

 櫂「そうか………俺、近い将来、結婚することになってんのか………。」

 

 慧「…やっと、信じてくれたね?父さん。」

 

 すると櫂は、女性エイリアンの方を指差して問いかける。

 

 櫂「じゃあこいつを庇ったのはなんでだ!? 俺の血を引いてるのなら、悪は見逃さないはずだ! こいつはさっきのエイリアン集団の一員なんだぞ!?」

 

 

 櫂の威圧に怯える女性エイリアン。すると慧は彼女を庇うような仕草をしながら櫂に話す。

 

 慧「彼女は違う! 彼女は無理矢理エイリアン集団に入れられた難民なんだ!」

 

 櫂「何だって?」

 

 

 慧は少し俯きながら櫂の近くに歩み寄る。

 

 慧「…落ち着いて…聞いてほしい………。

 

 今父さんたちが戦っている悪の集団………そいつらは、今から26年後の未来・2042年にも攻め込んで来たんだ。」

 

 慧の言葉に櫂もゼロも耳を疑う。 慧は話し続ける。

 

 慧「さっき暴れていた怪獣たち、エアロヴァイパーにダイダラホーシ、それからさっきはいなかったけどガルキメスにゴルドラス。

 

 ………奴らは皆、時間を移動する能力を持っているんだ。

 

 宇宙人達は奴らを僕らの時代に送り込み、破壊活動をさせたんだ。

 

 奴らはまず、最初に目についたマゼラン星を襲撃した。」

 

 

 そう言うと慧は再び彼女の元に歩み寄る。

 

 慧「そして彼女は、そのマゼラン星から逃げて来た難民なんだ。」

 

 

 櫂「!?宇宙人だと?」

 

 ゼロ「マゼラン星人か………親父(ウルトラセブン)から聞いたことがある。 しかし奴らは地球を「狂った星」だと思ってんだろ?そんな奴らが何故地球に?」

 

 慧「僕の時代では、地球とマゼラス星は友好関係がだいぶ深まっていたんだ。 交際していたとあるザラブ星人とペダン星人が結ばれ、その星に住み着き始めたのがきっかけで。」

 

 

 櫂・ゼロ「何いっっ!?」

 

 

 二人は驚く。 その未来で結ばれるとあるザラブ星人とペダン星人に心当たりがあるからだ。

 

 

 櫂「ブッ………ブラコとバレッタ、ついに結ばれるかー。」

 

 ゼロ「そんでマゼラン星に住むとは………全く宇宙は広いもんだぜ。」

 

 

 慧「その夫婦がマゼラン星の住人と仲良くなり、地球での思い出の話もしたことで、地球に遊びに来るマゼラス星人も増えたんだとか………。

 

 そしてその中で一番地球を気に入ってたのが、彼女なんだ。」

 

 

 すると彼女は重い口を開くように語り始める。

 

 アニー「私はアニーと言います。 敵の襲撃により、私の星・マゼラン星は壊滅状態に陥り、私は父から授かったこのペンダントにより、地球に逃げ込んで来たのです………。」

 

 マゼラス星人アニーは首にかけている赤いルビーの埋め込まれたペンダントを差し出し見せる。

 

 どうやらこのペンダントには、場所から場所へと瞬間移動したり、時間を移動したりする力があるようである。

 

 アニー「怪獣たちを率いていたエイリアンたちは、このペンダントの力だと知らず、私自身にこの力があるんだと勘違いして、私を侵略の仲間にしようとしたの………。そして私は無理矢理エイリアン集団に入れられて………。」

 

 櫂「そういう事だったのか………すまないな。誤解して。」

 

 誤解が解け、櫂はアニーに詫びる。 彼は自分を不快にさせない者や立場が弱い者には優しいのだ。

 

 アニー「いいえ。それよりありがとうございます。エイリアン集団を倒してくれて。」

 

 慧「一人、壮年の男性のボスには逃げられてしまったがな。 彼は今どこにいるんだろう………?」

 

 

 櫂はいよいよ本題に入ろうとする。

 

 櫂「しかし、お前らの関係は何なんだ? 何故、現代に来たんだ?」

 

 慧は少し躊躇った後、話し始める。

 

 慧「怪獣たちが僕らの時代に来る約二か月前、突然空から女の子がゆっくりと降って来て、たまたまそれを見つけた僕その女の子をキャッチしたんだ。

 

 その女の子が、アニーなんだ。

 

 会ったばかりの頃の彼女はとても暗かったけど、僕が献身に手当てをしたり、食べ物を与えたり、話をしたりすることで、徐々に心を開いて行って………

 

 そして僕が彼女と出会って約一か月後、つまり怪獣たちが攻めて来る一か月前、彼女から事情を聞いた僕は、その事を父さんや母さん、それから斎木さんたちにも知らせ、斎木さんたちには万が一のため万全な出撃準備と厳重な警戒態勢をたのんでしてもらった。

 

 そして僕は、彼女を元気付けるために、地球の色んなところに連れていき、楽しむことで彼女は徐々に笑顔を取り戻していき、僕も嬉しい気持ちになっていた………。

 

 

 ………だが、しかし………。」

 

 

 そういうと慧は、懐からテレビのリモコンのような物を取り出す。

 

 これは『タイムビジョン』と言い、未来や過去を問わず映したい場所や時間などを、先端から発する光によりライトモニターを構成し、映すことが出来るという未来のリモコン型アイテムだ。

 

 慧はタイムビジョンを操作しボタンを押す。すると先端から光が発してライトモニターが形成され、とある光景が映し出される………。

 

 

 その光景を見た瞬間、櫂は、ゼロは驚愕する。

 

 

 その光景は、未来の霞ヶ崎の街を蹂躙するガルキメスにゴルドラス、エアロヴァイパー、ダイダラホーシの姿。それからアニーが無理矢理エイリアン集団にされるという余りにも凄惨な光景だった………!

 

 光弾を乱射するガルキメス、怪力で次々とビルを破壊するゴルドラス、空を飛びながらその衝撃波や体当たりでビルを破壊するエアロヴァイパー、身軽な動きで走ったり跳びはねたりしながらビルを破壊するダイダラホーシ………。

 

 正に、霞ヶ崎の街を我が物顔に暴れ回る怪獣たち。

 

 更には斎木たちと思われる戦闘機軍も、善戦空しくガルキメスの光弾やゴルドラスの電撃光線、エアロヴァイパーの火球、ダイダラホーシの火炎などで次々と撃ち落されていき、やがて全滅してしまっていた………!

 

 

 櫂「!!斎木たちが全滅だと!?」

 

 慧「残念ながら…僕らの時代には今のようにウルトラマンがいないから、人間の力だけで立ち向かうしかなかったんだけど………敵の猛攻により、力及ばなかった………。」

 

 櫂は、映し出される無残な光景を、唖然としつつも噛みしめながら見つめる。

 

 

 映像はなおも続き、やがて暴れる怪獣たちによって霞ヶ崎のほとんどは廃墟となり、怪獣たちは自身の能力により上空に時空の穴を形成し、その中に飛び込んで行ったところで映像は終わり、モニターは消滅する。

 

 

 櫂「………嘘だろ………。」

 

 何とも言えない表情で俯く櫂に、慧は話し出す。

 

 慧「以上が未来の記録だ。………僕らの時代の霞ヶ崎を破壊し尽くした怪獣たちは、現代を襲撃しようと時間移動を始め、エイリアン集団もアニーの能力により時間移動を始めたんだ。

 

 僕はその際の時空の入り口に飛び込んで一緒に現代に来たんだ。

 

 アニーを助けるためでもあるけど、、、何よりこの時代の父さんに、怪獣たちが現代に向かっていることを知らせるために。」

 

 

 まさか自分たちの未来でそんな悲惨な事が起こってたなんて………そう思う櫂は信じられないような顔で俯き、数秒黙り込む。

 

 

 櫂「待てよ………霞ヶ崎を破壊しつくした………なら、お前の家族は!?」

 

 

 慧は少し躊躇いながらも、重い口を開くように語り始める。

 

 

 慧「父さんは傷を負いながらも生き延びれた。 でも………………

 

 ………………母さんと、妹の爽が死んでしまって………………。」

 

 

 !!!??

 

 

 櫂は驚愕し、同時に何やら心が振動する。

 

 自分と息子は生き残れたのに、それ以外の家族が死んでしまうなんて………………。

 

 その話を聞いた瞬間に、何やら妙な胸騒ぎを感じたのだ。

 

 

 それと同時に、自分は将来子供を二人(一男一女)設ける事も知った。

 

 

 慧「母さんと妹が死んでしまってから、いつも何事にも諦めなかった父さんは、変わってしまった………。

 

 母さんの死体を抱いて泣き叫び、やがて精神崩壊を起こし、まるで魂の抜けた抜け殻の様になってしまって………………。」

 

 

 辛そうに話す慧を心配するアニーはそっと彼の肩に手を置く。

 

 慧「未来とは、常に複雑なモノ………でもだからこそ、せめてこの時代にいるうちにでも奴らを倒せば、もしかしたら少しでも未来は変わるかもしれない。

 

 俺はその僅かな可能性に掛けたい………だから!………父さん、………………協力してくれる?」

 

 

 自分の息子がこんなにも必死にお願いしている………………。

 

 櫂はそう思うながら数秒俯いた………そして慧の前に歩み寄り、顔を上げる。

 

 

 櫂「………当たり前だ。 俺の息子の未来、救うために頑張ってやる。」

 

 櫂は息子の未来を救おうと決心した。 ………だが、その一方で、下ろしている拳を震えるまでに強く握っていた………。

 

 まるで溢れ出る憎しみを必死に抑え込んでるかのように………………。

 

 慧「………ありがとう………父さん………。」

 

 

 櫂(父親)の了解を得た慧は思わず嬉し泣きをしそうになる。

 

 アニー「慧君、泣かないで。 ほら、これを食べて。」

 

 アニーは慧にあるものを差し出す。 それは、いかにも現代にありそうな赤い包み紙に包まれた板チョコだった。

 

 慧「ありがとうアニー。 そう言えば父さんと母さんも、辛いときや嬉しいとき、これを食べてたっけ………。」

 

 チョコを受け取る慧。 櫂はそっと問いかける。

 

 櫂「…そのミルクチョコ………買ったのか?」

 

 慧「うん………この時代に来た時、なんか、おいしそうだったから………。それにしても、この時代は紙や金属で買い物をするんだね………何か、新鮮だなぁ。」

 

 現代に感心する息子・慧に、櫂はふと笑顔になった。

 

 

 慧「そう言えば、母さんの形見を僕は持ってるんだ。」

 

 そう言うと慧は腰に下げている小さな容器から一つのガチャガチャのようなカプセルを取り出し二つに割る。

 

 すると、なんとそのカプセルが光ったかと思うと徐々に形になっていき、やがて別の物になる。

 

 なんとギターが現れたのだ。

 

 このアイテムは未来の物で、どんなに大きいものでも縮小してしまい、手軽に持ち運べる超便利なカプセルなのだ。

 

 

 櫂「!!!???」

 

 

 その慧が持っておる母の形見のギターを見た瞬間、櫂は驚愕する。

 

 そのギターに何やら見覚えでもあるのであろうか………………?

 

 

 すると、慧は近くの廃車に座り込み、ギターである曲を爪弾き歌い始める。

 

 

 慧「夢を追いかけて~すべてが変わる~…」

 

 

 その出だしを聞いた瞬間、櫂はまたも驚愕する。

 

 その出だし、そのメロディ………間違いない。『君にできるなにか』であるからだ!

 

 その時、櫂は思い出す………確か数日前、自分の何よりも大切な人も、この曲を爪弾き歌ってたっけ………………。

 

 櫂がそう思っている間にも慧は歌い続け、アニーはその素晴らしい歌にうっとりする。

 

 

 やがて、一サビ歌い終えた後、慧はギターを見つめながら語り始める。

 

 

 慧「この曲は、母さんが大切な人から教わった曲なんだ………。

 

 「夢に迷った時、夢を信じたくなった時に、そっと口ずさむといいよ。」ってね。

 

 母さんは時々この曲を弾いて自身を無くした僕に聞かせて、励まし、慰めてくれていた………。

 

 

 いつも優しい母さんが、この曲を歌う時は、特に優しい表情になるんだ………。」

 

 

 ………いつも優しい………母さん………………!?

 

 

 慧の言葉を聞きながらギターを見つめている櫂は、その言葉が頭に付く。

 

 何やら心当たりでもあるのであろうか………?

 

 

 すると櫂は、ひっそりと憎しみのこもった表情をし、両手も震えるまで強く握る。

 

 その様子にゼロは気づいており、同時に櫂から何やら闇のオーラのようなモノが微かだが溢れている事にも気付く。

 

 ゼロ「………櫂………一体どうしたんだ………?」

 

 

 

 一方のアパートに戻った真美はと言うと、

 

 真美「………櫂…君………やっぱりショートケーキには苺だよ…むにゃむにゃ………。」

 

 例の課題の続きをしていたのだが、疲れていたのかノートや資料等を広げたまま、勉強机で寝言を言いながらうたた寝をしていた。

 

 

 

 場面を櫂たちに戻す。

 

 慧「時間が無い。奴らがこの時代にいる間に奴らを倒そう。 でなきゃ、未来が無い。」

 

 櫂「………ああ、行こうぜ。息子。」

 

 櫂はいつもの良人モードになり、慧とアニーと共に怪獣軍団の元に向かおうとする。

 

 

 と、その時、

 

 

 櫂達の前に大勢のエイリアン集団が跳んで現れる!

 

 まるで櫂達を先に行かせないようにしているかのように。

 

 

 慧「…どうやら、僕たちを先に行かせないつもりだね。」

 

 アニー「やるしかないね、これは。」

 

 櫂「よし、行くぞっ!」

 

 

 櫂と慧、アニーはエイリアン集団目掛けて駆け始め、戦闘を始める。

 

 櫂は飛びぬけた身体能力で次々と薙ぎ倒していく一方で、慧も櫂の息子だけあって、父親譲りの身体能力を活かして強力なパンチ、キックでエイリアンを倒していく。

 

 アニーも一応戦闘の心得があるのか、敵の攻撃を受け止めつつ正確にパンチやキックをヒットさせ、エイリアンをダウンさせる。

 

 

 因みに慧とアニーは、未来で開発された武器・ハイパーガン(外見はスーパーガンを赤と白で彩った感じ。光線はスーパーガンの光線を青くした感じ。)をも駆使してエイリアンを倒していた。

 

 

 だが、今回の櫂の戦い方には若干いつもより粗っぽさが出ていた。

 

 そして櫂の表情もなにやら何かを憎んでいるかのように険しくなっていた………………。

 

 先ほどの慧の母親の話から、何かに火が付いてしまったのであろうか………?

 

 櫂(よくも………よくもよくも、よくもっっ!!)

 

 

 

 一方、町はずれの岩山で怪獣探索をしながら霞ヶ崎の街の目前まで来たショウたちはと言うと、

 

 ショウ「奴ら、なかなか姿を現さないな。」

 

 ムサシ「きっと、奴らも僕らを警戒しているんだ。」

 

 鎧「怪獣たちを操っているボスさえ出てくれれば話は早いんですけどね~…。」

 

 

 鎧がそう呟いたその時、

 

 

 ???「呼んだか?」

 

 

 鎧「あ、噂をすれば………って、えええっ!!?」

 

 

 まさか噂をすれば本当に出るとは思っても無かったのか、鎧はノリツッコミのように驚き、ショウたちも振り向く。

 

 そこにいたのは、不気味に笑いながら立っている、先ほど櫂達から逃げた壮年の男性の姿をしているエイリアンだった!

 

 

 三人は身構え、そしてショウが問いかける。

 

 ショウ「素直にお出ましになるとはな。何者だっ!?」

 

 すると、壮年の男性は答えた。

 

 

 ガルキメス「我が名は時空生命体ガルキメス。」

 

 

 なんと、その壮年の男性こそ、怪獣軍団のリーダー格であり、ガルキメスが人間に変身した物だったのだ!

 

 

 ムサシ「お前がガルキメスなのか?」

 

 鎧「まさか人間に化けてたなんてっ!」

 

 

 ガルキメス「ふふはははは…我もテラ様率いる軍団の一員でな。しばらくの間時空を越えて未来等を攻めるように命じられていたのだよ。

 

 そして我は、同じ時間を移動できる怪獣たち。エアロヴァイパー、ダイダラホーシ、そしてゴルドラスを率いて様々な時間の世界を破壊してきた。

 

 お前たちの未来もだ。」

 

 鎧「俺たちの……未来だと!?」

 

 ガルキメス「そして時間移動からの殺戮に飽きた我は、そろそろ我の生まれた現代の世界を破壊しようとやって来たワケなのだ。」

 

 ショウ「させるかっ!」

 

 ショウはガルキメスに駆け寄って殴り掛かるが、ガルキメスは軽い身のこなしで跳躍してそれをかわし、高い岩の上に飛び乗る。

 

 

 ガルキメス「これからお前たちに、怪獣地獄と言う名の廃墟となった街を見せてやるぜ!

 

 出でよ!」

 

 

 ガルキメスの叫びが岩山にこだまして響く。

 

 すると、上空に例の積乱雲のようなエネルギー体が現れ、その中からエアロヴァイパーが現れ、そしてダイダラホーシが姿を現しながら走りながら現れる。

 

 そして二体は現れるや火を噴いて暴れ始める。

 

 

 鎧「うおあああっ!!あれはエアロヴァイパーにダイダラホーシ! 超レアな怪獣と超獣ですよー!」

 

 鎧は二体の登場にウルトラオタクであるが故、興奮する。

 

 

 ショウ「はしゃいでいる場合か! こいつらは俺たちに任せろ。」

 

 ムサシ「鎧君は安全な所に!」

 

 鎧「あ、はい。では、頑張って下さ~い!」

 

 鎧は安全な所まで移動する。

 

 

 ショウはビクトリーランサーをムサシはコスモプラックを取り出す。

 

 今こそダブル変身の時だ!

 

 ショウはビクトリーランサーにビクトリーのスパークドールズのライブサインをリードして上に挙げ、ムサシはコスモプラックを上に挙げて叫ぶ。

 

 

 《ウルトライブ!ウルトラマンビクトリー!》

 

 

 ムサシ「コスモース!」

 

 

 二人は眩い光に包まれ、鎧はその光の眩しさに思わず目を覆う。

 

 

 そして、その光の中からウルトラマンコスモス(ルナモード)、ウルトラマンビクトリーと順に右腕を突き出して飛び出す。

 

 そして現れた二人は土砂や土煙を上げながら着地をした。

 

 暴れていた二体もウルトラマンの登場に気付き、エアロヴァイパーはダイダラホーシの横に着地する。

 

 そして両者ともに身構える。

 

 

 ガルキメスはウルトラマンの登場に慌てるどころか、お手並み拝見とばかりに腕を組んで余裕そうな表情で戦いを見つめ始める。

 

 鎧は安全な所に隠れつつショウたちの戦いを見守り始める。

 

 

 ショウ「行くぞっ!」

 

 ビクトリーはダイダラホーシに跳びかかり、そのまま抱き付いて地面に転がる。

 

 

 コスモスはエアロヴァイパー目掛けて駆け寄る。

 

 だが、コスモスが掴みかかろうとした時、エアロヴァイパーは頭部の角を発光させる。

 

 すると、エアロヴァイパーはその場から姿を消した。

 

 突然消えたことに驚くコスモス。

 

 だが次の瞬間、エアロヴァイパーは動揺するコスモスの背後に現れる!

 

 コスモスはふと後ろを振り向くが、その直後にエアロヴァイパーの翼に打ちひしがれ吹っ飛ぶ。

 

 コスモスは少し怯みつつも駆け寄りパームパンチを放つが、エアロヴァイパーはまたしても角を発光させて姿を消す。

 

 すると今度はエアロヴァイパーは上空から現れ低空飛行で突っ込む!

 

 コスモスはそれに気づくが、若干タイミングが遅かったため避けることが出来ず、低空飛行の体当たりをモロに喰らって吹っ飛び地面に背中から倒れる

 

 コスモスはエアロヴァイパーの時間移動能力を活かした瞬間移動に翻弄されているのだ!

 

 

 コスモスが立ち上がっている隙にエアロヴァイパーは再び高く飛びあがり、急降下を始める。 再び体当たりをお見舞いしようとしている!

 

 だが、コスモスも負けてばかりではない。

 

 コスモスは立ち上がり体勢を立て直すと、右腕を揚げて急降下して来るエアロヴァイパー目掛けて飛び始める!

 

 そして、そのまま銀色の光を放ちながらスペースコロナモードへとモードチェンジを完了し、蹴りの体勢で上空から突っ込んで来るエアロヴァイパー目掛けて斜め上に突っ込む!

 

 そしてすれ違い様に必殺キック・テンダーキックを打ち込む!

 

 蹴りが炸裂して火花が飛び散り、蹴りを喰らったエアロヴァイパーはたまらず空を飛ぶバランスを崩し、地面に落下する。

 

 コスモスも着地し、エアロヴァイパー向かって走り出し、エアロヴァイパーはそれを翼と同化している腕を振るって迎え撃つ。

 

 コスモスはエアロヴァイパーのカウンターの叩き込みを右回し蹴りで弾き、そのまま跳躍して一回転して左足蹴りを決める。

 

 エアロヴァイパーは怯まず左腕を振るって反撃するが、コスモスはそれをしゃがんでかわすと同時に回転して右足の足払いを決め、それにより体勢を崩したところで更に側転しながらの足蹴りを決める。

 

 そしてコスモスは跳躍しての後ろ回し蹴りを胸部に打ち込んで吹っ飛ばした。

 

 

 スピーディーな戦いで優位に進めるコスモス・スペースコロナ。

 

 蹴りを放つ度に残像の青いラインが弧を描き、炸裂する度にその部位に火花が飛び散る。

 

 

 ダイダラホーシと組み合っていたビクトリーは前蹴りで後退させ、コスモスと合流。そして、二大ウルトラマンが並び立つ。

 

 ショウ「未来も過去も…壊させはしない!」

 

 ムサシ「行くぞっ!」

 

 

 (BGM:ウルトラマンビクトリーの歌 2015)

 

 

 二大ウルトラマンは再び二大怪獣に向かい、コスモスVSエアロヴァイパー、ビクトリーVSダイダラホーシとそれぞれの戦いが始まる!

 

 

 ビクトリーはダイダラホーシの腕を振るっての攻撃をファイティングポーズを取りながらかわしていき、しゃがんでボディブローを決める。

 

 そしてダイダラホーシが怯んだ隙に右脚で脚元、腰部、頭部と三段蹴りを決め、それによりしゃがんだ隙に膝を踏み台にして跳び付き、肩車してもらうように頭部を脚で挟み込み、そのままフランケンシュタイナーを決めて叩きつける!

 

 

 ビクトリーは更に足払いを繰り出して畳み掛けようとするが、ダイダラホーシはそれを身軽さを活かした跳躍でそれをかわし、次にビクトリーが放った回し蹴りも跳躍で避ける。

 

 そして落下と同時にビクトリーに背後から飛び付き、数発叩いた後放り投げる。

 

 ダイダラホーシは火炎を放射して追い討ちを狙うが、ビクトリーはそれを受け身や側転などでかわしつつ徐々に接近していき、目前まで来たところで左足で下顎を蹴って口を閉じさせることで火炎攻撃を封じ、その隙に右脚での横蹴りを腹部、回転ハイキックを頭部に決める。

 

 ダイダラホーシは左腕を振るって殴り掛かるが、ビクトリーはそれを掴んで受け止め、同時にカウンターの右脚の横蹴りを叩き込んで後退させる。

 

 

 《ウルトランス! グドンウィップ!》

 

 

 ビクトリーはウルトランスで右腕をグドンの鞭・グドンウィップに変形させ、打撃を浴びせ始める!

 

 続けざまに斜めに振り下ろす打撃を二発浴びせ、左横蹴りを腹部に打ち込んだ後、下から振り上げる鞭の打撃を叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 ビクトリーは戦いを徐々に優位に進めていった。

 

 

 コスモス(スペースコロナモード)とエアロヴァイパーとの戦い。

 

 コスモスは残像の水色のラインを走らせながらのスピーディーな蹴りのラッシュで徐々に押していた。

 

 そして連続のキック技・サクセッションキック、両拳のパンチ・フレイムパンチを連続に叩き込んで吹っ飛ばした。

 

 エアロヴァイパーは不利と見て空中戦に持ち込もうと上空に飛びあがり、コスモスもそれを追うように上空に飛びあがる。

 

 空中戦が始まった!

 

 コスモスは上空のエアロヴァイパーに掴みかかるが、エアロヴァイパーはそれを振りほどこうと頭部を振り下ろし頭突きを繰り出すが、コスモスはそれを避けようと後方に飛んで距離を取る。

 

 そして両者は再び組み付き、そのまま数回回転した後互いに手を放して距離を取ると、コスモスはその隙に両足のドロップキックを打ち込む!

 

 コスモスは更に畳みかけようと飛びかかろうとするが、エアロヴァイパーは時間移動能力で姿を消すことでそれを回避する。

 

 コスモスが辺りを見渡している隙にエアロヴァイパーはコスモスの背後に出現し、コスモスはそれに気づくがタイミングが少し遅かったため、火球攻撃を数発モロに喰らって吹っ飛んでしまう。

 

 エアロヴァイパーはコスモスに跳びかかるが、今度はコスモスが超スピードで瞬間移動のように姿を消し、動揺しているエアロヴァイパーに真上から背部に両足で踏みつけるようなキックを打ち込み吹っ飛ばす。

 

 両者は高速で飛びながらぶつかり合ったり、組み合っては離れなどの激しい空中戦を展開する。

 

 両者の空中戦はなおも続く。エアロヴァイパーは飛びながらコスモスに火球攻撃を連射するが、コスモスはスペースコロナ・レセプトでそれを弾きつつ超スピードで飛んでそれをかわしていく。

 

 しばらく追撃戦を続けた後、両者は一旦向かい合って空中に静止し互いを睨み合う。

 

 そしてエアロヴァイパーは火球を二発放つが、コスモスはそれをかわし、飛んで接近すると同時にタップチョップを放って頭部の触角を切断する!

 

 触角を斬られたエアロヴァイパーは空中から地面に落下する。

 

 これでもう時間移動能力は使えない!

 

 コスモスは着地すると、両手を回して集めた宇宙エネルギーを、両手を突き出す事で撃ち出す必殺光線・オーバーループ光線を放つ!

 

 光線はエアロヴァイパーを直撃!エアロヴァイパーは大爆発して吹き飛んだ。

 

 

 《ウルトランス! シェパードンセイバー!》

 

 

 ショウは戦友・シェパードンの魂が宿ったクリスタルスパークドールズをリードしてウルトランスを発動し、ビクトリーはシェパードンセイバーを地面から引き抜くように取り出す!

 

 

 ショウ「これで決める!」

 

 

 シェパードンセイバーを手に取るビクトリーを見たダイダラホーシは、近くの大木を引き抜き構える。

 

 

 そしてお互い構えのまま静止する。精神を集中させているのであろうか?

 

 

 そして数秒静止した後、ビクトリーとダイダラホーシは互いに駆け寄り、互いに剣を振って交錯する!

 

 

 交錯の瞬間、剣と剣がぶつかり合うような金属音と何かが斬れるような音が同時に響いた。

 

 

 再び両者は静止する。果たして斬り合いに勝ったのはどっちなのだろうか…?

 

 

 

 すると数秒静止した後、ダイダラホーシの持っていた大木が真っ二つに斬れ、同時に爆発音と共にダイダラホーシの頭部の触角が斬れて地面に落ちる。

 

 斬り合いはビクトリーの勝ちだった! 触角を失った事により、ダイダラホーシは時間移動能力を失ってしまった。

 

 

 ダイダラホーシが怯んだ隙にビクトリーはシェパードンセイバーの刃先を左手で一撫でして七色の光エネルギーを溜め、V字を描くように振って相手を切り裂くシェパードンセイバーフラッシュを放つ!

 

 ダイダラホーシはV字に斬られて動きを止める。

 

 そして、斬られた部位から光の帯を走らせながら後ろに倒れ、ビクトリーがシェパードンセイバーを地面に刺したと同時に大爆発して吹き飛んだ。

 

 

 鎧「いいいやったああぁぁぁ~!!」

 

 二大ウルトラマンは見事怪獣を撃破し、その勝利に観戦していた鎧は興奮気味に歓喜の声を上げる。

 

 

 ダイダラホーシを撃破したビクトリーは、同じくエアロヴァイパーを撃破してルナモードに戻ったコスモスと合流する。

 

 そして両者は「やったな」とばかりに頷き合う。

 

 

 ショウ「怪獣たちは倒したぞ。 姿を表せガルキメス!」

 

 人間態のガルキメスに指を差すビクトリー。

 

 

 ガルキメス「…ふふふふふふふふふふ…。」

 

 …だがしかし、ガルキメスは怖気づくどころか、下を向いてどこか不気味に笑っていた。

 

 その姿に二人は驚く。

 

 ショウ「何が可笑しい!?」

 

 

 ガルキメス「…お前たちは、これで勝ったと思っているのか?」

 

 ショウ「何だと!?」

 

 

 するとガルキメスは、驚くべきことを言う!

 

 

 ガルキメス「さっきの二体は前座に過ぎない………これからが、お前たちを倒す最終段階だ!」

 

 

 そう言うとガルキメスは、眼から紫の光を放ってその光に包まれて巨大化する事で、人間態から元の巨大怪人体に戻る。

 

 

 ムサシ「最終段階とは一体何なんだ!?」

 

 ガルキメス「今に分かるさ………はっ!」

 

 ガルキメスは右腕を揚げ、手先に紫の光を発生させる。

 

 すると、その光に応えるかのように上空に例の時空の歪みが広がり、先ほどの二体が撃破された場所から怪獣の顔を模したエネルギー体が飛び始める。

 

 先ほど倒されたエアロヴァイパーとダイダラホーシの霊体だ!

 

 

 その光景にコスモスもビクトリーも驚愕を隠せない。

 

 

 同じ頃、ガルキメスの配下のエイリアン軍団を相手している竜野親子とアニーはと言うと、

 

 だいぶ軍団の数を倒せてはいたが、まだ多数は残っていた。

 

 そこで慧は、エイリアンを蹴散らしながら櫂に言った。

 

 慧「父さん、ここは僕とアニーに任せて、先に行って!」

 

 櫂「大丈夫なのか⁉︎慧。」

 

 慧「これぐらい平気さ!…」

 

 櫂に話している最中にエイリアンの一人が殴りかかって来たが、慧はそれを回し蹴りで薙ぎ倒す。

 

 慧「それに早く奴らを倒さないと、未来はない!」

 

 慧の言葉を受けた櫂は、どこかひっそりと不敵な笑みを浮かべる、、、

 

 

 そして、決心した。

 

 櫂「分かった…頼んだぞ、慧。」

 

 慧「……やっと……名前を呼んでくれたね…父さん……。」

 

 慧はどこか嬉しそうだった。

 

 

 櫂は慧と見つめ合った後、その場から走り去って行き、慧は戦いながらその父の背中を見つめていた……。

 

 

 ……が、慧たちから離れた瞬間、櫂の表情が険しく激変する!

 

 その表情は正に、憎しみ以外は何も感じないものだった!

 

 櫂「……あの野郎……未来に行ってまで………ぶっ潰す!!」

 

 そう叫ぶと櫂は、ウルティメイトブレスレットをはめている左腕に力を入れてウルトラゼロアイを出現させる。

 

 櫂はまたしても憎しみで戦おうとしているのだ!

 

 ゼロ「おっ…おい櫂⁉︎ どうしたんだ⁉︎」

 

 ゼロの呼びかけにも当然答えることなく、櫂は怒りに任せてゼロアイを目に当てる。

 

 そして、赤と青のラインを走らせながら光に包まれて巨大化し、ウルトラマンゼロへの変身を完了する。

 

 完全に櫂の意識に支配されているゼロはその場から飛び立ち始めた。

 

 

 一体櫂は、何に怒りを燃やしているのであろうか……?

 

 さきほどの息子・慧の母の未来での死から、何やら心当たりがあるのであろうか………?

 

 

 不安な中、場面を戻そう。

 

 謎の時空の歪みと二体の怪獣の霊を出現させたガルキメスは言い始める。

 

 ガルキメス「これから貴様らが倒した二体の魂を、時空の歪みで待機しているゴルドラスに与え、最強のゴルドラスを誕生させるのだ!」

 

 

 そう言うとガルキメスは、「フンッ!」と言う掛け声と共に揚げて光を発している右腕を横に振るう。

 

 すると、エアロヴァイパーとダイダラホーシの魂が混ざり合うように歪みの中に入り、その中で雷を帯びている黒雲のようなものが発生し、徐々に広がっていく。

 

 

 コスモスとビクトリーが見上げる中、黒雲のようなエネルギー体は徐々に降りて来、歪みは消滅する。

 

 そしてやがて、エネルギー体は徐々に消滅していき、その中から一匹の怪獣が現れる。

 

 

 その怪獣は一見さっき戦ったゴルドラス(前回参照)に似ているが、肩や肘の刺や鼻先の角、そして膝の刺や足の爪がより鋭く伸びており、頭部の小さく顔つきもシャープになっている。

 

 そして体格もより筋肉質の力強い感じになっており、見るからに強さをひしひしと感じるものになっていた。

 

 

 ガルキメス「遂に誕生だ! これぞゴルドラスの究極形態・キングゴルドラスだ!」

 

 

 ガルキメスが誕生させたのはゴルドラスの強化体・超力怪獣キングゴルドラスであった!

 

 キングゴルドラスは咆哮を上げ、それを見た二人のウルトラマンは身構える。

 

 

 ショウ「まさか、こんな隠し球を持っていたとはな!」

 

 ガルキメス「隠し球? やだなあ、切り札と言ってくれよ。」

 

 

 ガルキメスはウルトラマン二人の方を指差し、キングゴルドラスに指示を出す。

 

 ガルキメス「相手をしてやれ、キングゴルドラス。」

 

 すると、キングゴルドラスは頭部の角から破壊雷光・ゴルドニックサンダーを放つ!

 

 これはキングゴルドラスの攻撃技の一つであり、自身の意思で自在にコントロールして障害物を避け、対象に確実にヒットさせる事が出来る恐るべき技なのだ!

 

 迫り来る雷光はコスモスとビクトリーの足元や周辺で爆発!二人の周囲で激しい土煙が巻き上がる!

 

 二人は直撃はしなかったものの、爆発等によりダメージを受けて少し怯む。

 

 

 二人が怯んでいる隙を逃さず、キングゴルドラスは土煙の中から現れるように二人に接近する。

 

 そして、コスモスを横振りの頭突きの一撃で吹っ飛ばし、続けてビクトリーを右腕の殴り込みで吹っ飛ばした。

 

 二人は怯まず立ち上がりキングゴルドラスに立ち向かう。

 

 それぞれ左右腕を掴んで抑え込もうとするが、キングゴルドラスの怪力であっさりと振り払われ、逆にコスモス、ビクトリーと順に殴り飛ばされてしまう。

 

 キングゴルドラスはコスモスに上から振り下ろす頭突きを繰り出すが、コスモスはそれを身体を左に反らせてかわし、腹部に右の掌を打ち込む。

 

 だが、キングゴルドラスの強靭な腹筋により効き目が無く、逆に腹筋を活かしたボディアタックを喰らって転倒する。

 

 その後今度はビクトリーが右脚で二連続で蹴りを放つが、キングゴルドラスはそれを難なく右腕で弾いて防いでしまう。

 

 その隙にコスモスは立ち上がると同時に正面蹴りのニンブルスマッシュを腹部に打ち込み、更にビクトリーが「ビクトリウムバーン!」の掛け声と共に頭部のクリスタルから光線技・ビクトリウムバーンを放って命中させる。

 

 光線が命中して爆発し、キングゴルドラスは少し怯むような素振りを見せたが、直ぐに二人に襲い掛かる。

 

 

 二人のウルトラマンを押していくゴルドラスを見ながら、ガルキメスは不気味に笑いながら言う。

 

 ガルキメス「フフフフフ、無駄だ。キングゴルドラスを倒すことはできない。

 

 なぜならそいつはただのゴルドラスではないのだから。

 

 ゴルドラス、そしてエアロヴァイパーとダイダラホーシの霊体。この三つを融合させることで格段とパワーも破壊力も増し、無制限にあらゆる次元を行き来できるようになったのだからな。

 

 

 …しかしあいつ、キングゴルドラスになってからバリヤーあまり使わなくなったなあ………ま、単なる力でもこの強さだ。問題ないだろう。」

 

 

 それは、無敵と思われるキングゴルドラスには、ただ一つ欠点があった。それは、バリヤーをあまり使わなくなったことである。

 

 かつての姿の頃は、バリヤーを駆使してビクトリーの技を防ぐ等して戦っていたのだが、キングになってからバリヤーをあまり使わなくなり、ほぼ力押しの戦い方が目立っているのである。

 

 キングゴルドラスは、強大な力を手に入れたが故に、常に自分より強い相手と戦い、勝つ事しか考えなくなってしまったのだろうか………?

 

 だが、純粋な力だけでもウルトラマン二人を押しているのだから、とても手ごわい相手なのは間違いないであろう。

 

 

 なおもコスモスとビクトリーを圧倒するキングゴルドラス。キングゴルドラスはコスモスの首を片手で掴んで持ち上げ、放り投げてしまう。

 

 続いてビクトリーの蹴りを腕で弾き、それによりビクトリーがバランスを崩して膝を付いたところで右足で横蹴りを放つ。

 

 ビクトリーは蹴りを両腕で受けとめようとするが、巨大なパワーにより防ぎきれずに吹っ飛んでしまう。

 

 

 倒れて膝を付いている二人にキングゴルドラスは再びゴルドニックサンダーを放つ!

 

 稲妻の乱れ打ちのような雷光が二人に容赦なく降り注ぎ、周囲も爆発・炎上し、二人はダメージにより再び地に倒れ込む。

 

 更に、追い打ちをかける様に二人のカラータイマーが赤く点滅を始める!

 

 

 ガルキメス「ふはははは! キングゴルドラス!そろそろ止めを刺すんだ!」

 

 キングゴルドラスは角にありったけのエネルギーをチャージし始める。

 

 フルパワーのゴルドニックサンダーで二人に止めを刺そうとしているのだ!

 

 

 もはやここまでか………⁉︎

 

 そう思ったその時!

 

 

 突如、上空から一人の巨人が二人とキングゴルドラスの間に勢いよく降り立つ!

 

 それを見たコスモスとビクトリーは「はっ、」と反応する。

 

 現れたその巨人はウルトラマンゼロだったからだ。

 

 そしてゼロは、降り立つや直ぐさまキングゴルドラスに跳びかかり始める!

 

 キングゴルドラスは反射的にチャージをやめ、ゼロの体当たりを両腕をクロスして防ぎ、そのまま両腕を広げるように押し飛ばす。

 

 吹っ飛んだゼロは背中から倒れ後転するが直ぐさま立ち上がり、右腕を胸に当てて額のビームランプからエメリウムスラッシュを放つが、キングゴルドラスはまたしても両腕をクロスしてそれを防ぎ、両腕を広げるようにビームを弾き飛ばし、弾かれたビームはキングゴルドラスの周囲に散乱して爆発する!

 

 そしてキングゴルドラスは、カウンターとばかりにゴルドニックサンダーを放つ。

 

 雷光はゼロの足元で爆発! だがゼロはそれを避けるようにジャンプし、キングゴルドラスの腹部にやや力任せの飛び蹴りを打ち込む。

 

 だがキングゴルドラスは怯む様子もなく、腕を振るって反撃を始め、ゼロはそれをかわしつつ、今度は胸部にこれまたやや力任せのパンチを連打し始める。

 

 だがそれも効いてる様子はなく、逆にゼロは頭部を殴られ怯むと同時に一旦距離を取る。

 

 

 そしてゼロは一旦立ち止まり、キングゴルドラスと対峙し始める。

 

 その姿はまるで強烈な視線で睨みつけてるようである。

 

 ゼロの攻撃さえもことごとく弾き返す強靭さを持つ強敵・キングゴルドラスとどう戦おうか考えているのであろうか………?

 

 

 ショウ「…!一体どうしたんだ⁉︎ゼロは。」

 

 ムサシ「戦い方が、まるでいつものゼロじゃない⁉︎」

 

 突然の乱入に驚きつつも、二人はゼロの戦い方がどこかいつもと違うことに気付く。

 

 ムサシ「まるで、強い憎しみに駆られているようだ。」

 

 ……ゼロ、もとい櫂は、憎しみで戦っていることが既に勘付かれていた。

 

 

 そのゼロはというと、、、やはりキングゴルドラスを睨みつけながら櫂の意識で、

 

 櫂「なるほどな………怪獣たちの力を一つにし、より強力になってるみたいだが、俺は負けねえ。」

 

 一見、ヒーローが言いそうなことだが、その直後の台詞で、、、

 

 

 櫂「テメーは許さねえ………潰す………徹底的に、ブッッ潰す!!」

 

 

 正に、憎しみ以外に何も感じない非道な叫びを投げかけ、ゼロは再びキングゴルドラスに跳びかかる!

 

 ゼロは走りながらスライディングをかけ、その蹴りが見事足元に命中したキングゴルドラスはうつ伏せに転倒し、立ち上がったゼロは倒れているキングゴルドラスの横腹を蹴りつける。

 

 そしてキングゴルドラスを力づくで起き上がらせると、なんと乱暴気味にパンチ、キック等のラッシュを始める!

 

 

 それを見ているガルキメスも、ゼロが憎しみで戦っている事に気付いていた。

 

 ガルキメス「ふっふっふ…何があったか知らないが、憎しみで戦っては、エネルギーの消耗を早めるだけだぜ?」

 

 

 ガルキメスの言う通り、ラッシュを続けているゼロのカラータイマーが早くも点滅を始める!

 

 憎しみの赴くままに戦っているが故に、同時に余計なエネルギーも消耗しているためだある。

 

 そして怒りでいっぱいであるがため、冷静な判断や力の調整も出来ずにいるため、いつものような戦いができていないのだ。

 

 先ほどキングゴルドラスにことごとく攻撃を弾き返されたのもそのためである。

 

 

 だがゼロは、そんな事も御構い無しとばかりにラッシュを続ける。

 

 櫂「よくもっ!………よくも未来に行ってまでっ!………大切なものをっ!!!」

 

 何やら意味深なことを口走る櫂。

 

 

 乱暴気味にラッシュを繰り出した後、ゼロは頭部からゼロスラッガーを取り出して切りつけ始める!

 

 横振りに二つ同時に切りつけ、左右袈裟懸けに切りつけ、それにより背を向けたところで上から二つ同時に振り下ろす斬撃を背中に浴びせる!

 

 ゼロの制御の利かない怒りの斬撃。炸裂する度に激しく火花が飛び散り、流石のキングゴルドラスもダメージを受けたのか、吹っ飛ぶ。

 

 

 

 同じ頃、エイリアン集団を無事に撃退した慧とアニー。

 

 しかし、

 

 慧「………!」

 

 アニー「慧君………?」

 

 二人ともある異変に気付く。

 

 

 それは、慧の身体が僅かながら透け始めていたのである!

 

 まるでそのうち消えてしまいそうな感じで………………。

 

 自身の手を見た慧もそれに気づいていた。

 

 

 少し透けては戻ってを繰り返す慧の身体………それを知った慧は何やら不安そうな顔で上を向き、呟く。

 

 

 慧「………父さん………………。」

 

 

 どうやら櫂に何かがったのだろうと思っているようだ。

 

 最も、慧の思っている通り、櫂は今現在本性ムキ出しで理性を失って暴走している………。

 

 

 櫂の暴走と慧の消失は、何やら関係があるのであろうか………………?

 

 

 

 様々な謎を残すまま、場面を暴走している櫂に戻そう。

 

 ムサシ「櫂!一体何があったんだ!?」

 

 ショウ「何があったか知らないが、自分を見失うな!」

 

 二人の呼びかけももちろん届くはずも無く、怒りの燃えた櫂の意識のゼロは雄たけびを上げながら猛攻を続ける、、、

 

 

 ゼロは左腕を水平に伸ばしてエネルギーを溜め始める。

 

 櫂「許さねえ………ぶっ潰す!………!」

 

 ゼロ「おい櫂!このままじゃあエネルギーが尽k…」

 

 櫂「ここでくたばれえええぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 ゼロは、極限にまでエネルギーを溜めた腕をL字に組んで、怒りを込めたワイドゼロショットを放つ!

 

 だが、流石に危険と見たのか、キングゴルドラスは両腕を回して自身の周りにバリヤーを形成してそれを防ぎ始める。

 

 なおもゼロは光線を発射し続ける。だが、そうしてる間にもエネルギー現象は早まり、カラータイマーの点滅が早まって行く………。

 

 櫂「ぅぉぉぉおおおあああああああー!!!」

 

 櫂は全エネルギーに怒りを込めて更に力を入れ、それにより光線の太さや勢いが増していき、その余りに大きなエネルギーの反動によりゼロは地に着いた足で地面を削りながら後ろにさがっていく………。

 

 

 すると、キングゴルドラスのバリヤーにヒビが入り始め、それが徐々に広がって行く………。

 

 

 そして、

 

 

 “バリーン”

 

 

 遂に、キングゴルドラスのバリヤーが、ガラスが割れる様に粉々に砕け散った…!

 

 櫂の怒りのパワーが打ち勝ったのである!

 

 

 ムサシ「やった!バリヤーを破ったぞ!」

 

 ショウ「………だがゼロが………。」

 

 

 二人が視線を向けた先………そこには、腕をL字に組んで立ったままの状態で、目やビームランプの輝きを失っているゼロの姿だった………!

 

 キングゴルドラスのバリヤーを破ったと同時にゼロもエネルギーが尽きてしまったのだ…!

 

 そしてゼロは、光に包まれると同時にその場から消滅してしまった。

 

 

 ゼロが消滅した場所を見てみると、そこには横たわっている櫂の姿があった。

 

 櫂の意識が前面に出ると、その分櫂自身に負荷がかかってしまうのである。

 

 そのダメージにより、櫂は気を失ってしまったのであろう。

 

 

 ガルキメス「怒りで我を失った末に自滅とは、なんと素晴らしき。」

 

 ガルキメスは思わぬ形でゼロが敗れたことに喜びを感じる。

 

 ショウ「貴様!櫂に何を吹き込んだんだ!?」

 

 ガルキメス「別にな~にも? キングゴルドラス!こいつらは我に任せて、思う存分暴れるがいい!」

 

 ガルキメスはコスモスとビクトリーに襲い掛かる。

 

 二人は応戦するが、その間にもキングゴルドラスは街を破壊し始める………!

 

 ビクトリーはなんとかしてキングゴルドラスの方へと向かおうとするが、ガルキメスが持ち前の身体能力でパンチや飛び蹴り等を放つため、うかつにキングゴルドラスに接近できない。

 

 

 コスモスたちに互角に渡り合うガルキメスは、もはや自分たちの勝利だと思い高笑う。

 

 ガルキメス「この時代のこの街も未来みたいに壊滅させてやるぜ! そしてその後、あらゆる時代の世界を壊滅させ、全時代を我々の物にしてやるのだ!」

 

 

 ガルキメスに手こずる二人のウルトラマンに、逃げ惑う人々の悲鳴………。

 

 もはやここまでだと思われた。

 

 

 と、その時!

 

 

 突如、上空から赤い光球が現れる。 そしてよく見てみたら、その中に一人の影が見える。

 

 

 すると、その光球の中の人影はキックのポーズを取り、その両足から赤色光線を放つ!

 

 

 光線はキングゴルドラスの頭部に命中し爆発。 突然の攻撃に驚いたキングゴルドラスは上空を向く。

 

 ガルキメス「!? 一体、何が起こったんだ!?」

 

 ガルキメスもそれに気づき動揺。同じく気付いていたウルトラマン二人。

 

 ビクトリーはその隙にガルキメスに後ろ回し蹴りを打ち込み、続けてコスモスが掴みかかって回転の遠心力で投げて地面に叩き付けた。

 

 

 ムサシ「………何だ?あれは。」

 

 二人のウルトラマンは赤い光球を見上げる………。

 

 すると、光球は地面に降りて発行を始め、徐々に人型になって行く………。

 

 やがて完全に人型になった後、光が徐々に消えていき、掌を広げた状態の右腕を揚げている一人の光の巨人が現れる!

 

 

 ショウ「!あれは………!」

 

 その巨人を見た二人のウルトラマンは驚愕する………

 

 ………いや、コスモスたちよりも驚愕し、興奮しているのは鎧だった………。

 

 鎧「うおおおぉぉぉああああああー! あの方は………あの方はあああ!!!?」

 

 

 顔はウルトラセブンに似ており、引き締まった真っ赤な体、スラリとした長い脚、そして、頭部の二本の角・ウルトラホーンが特徴の『ウルトラマンNO.6』の戦士。

 

 現れたのは、『ウルトラマンタロウ』である!

 

 彼はゼロと同じくM78星雲・光の国出身であり、ゾフィーを長男とするウルトラ兄弟の6番目、そして、宇宙警備隊大隊長であるウルトラの父(本名:ウルトラマンケン)と、戦士たちの傷を癒す銀十字軍を率いるウルトラの母(本名:ウルトラウーマンマリー)を両親に持つウルトラ戦士である。

 

 その赤く燃えるボディーカラーは若さの象徴であり、かつて地球では、宇宙科学警備隊・ZATの血気盛んな青年・東光太郎と一体化して怪獣や宇宙人達と戦った事がある。

 

 因みに先ほどタロウが放った光線はフット光線である。

 

 

 タロウは既に点滅している二人のカラータイマーに向けて手を差し出し、手先から青い光線・ウルトラチャージを照射する。

 

 タロウからエネルギーを授かった二人のカラータイマーは青に戻る。

 

 

 ムサシ「貴方は………?」

 

 タロウ「私はウルトラマンタロウ。 久しぶりだな、ショウ。 大丈夫か?」

 

 

 鎧「ウルトラマンタロウさんじゃないですかああぁぁぁ!!!」

 

 ショウ「タロウ!?………なぜここに!?」

 

 ショウも驚いていた。

 

 タロウはかつて、ギンガに力を与える形で共に戦った事があるため、ギンガ、もといヒカルと共に戦ったショウは既に彼の事を知っていたのだ。

 

 

 ショウ「貴方も、ソルに呼ばれてここに………?」

 

 タロウ「いや、私を呼んだのは彼女ではない。 だが、彼女の事はある者から聞いている。」

 

 ショウ「ある者?」

 

 タロウ「そうだ。 君もよく知っている、あの戦士だ。」

 

 

 

 一方同じ頃、

 

 ヒカル「(ギンガスパークを手に取って)おいおいどうしたギンガ? くしゃみするなんて珍しいな。」

 

 

 

 とある戦士からの連絡を受けて駆け付けたタロウ。

 

 今颯爽と登場したタロウはファイティングポーズを取る。

 

 

 ガルキメス「新たなウルトラマンだと? なんでもいい。邪魔するそいつからだ!」

 

 ガルキメスの声と共にキングゴルドラスはタロウ目掛けて襲い掛かる!

 

 

 (BGM:ウルトラマンタロウ)

 

 

 タロウはキングゴルドラスの突進をジャンプでかわす。

 

 そしてそのまま空中で数回きりもみを決めて遠心力と急降下の勢いをプラスして蹴り込むスワローキックを放つ!

 

 蹴りはキングゴルドラスの頭部に命中し、キングゴルドラスは吹っ飛んで倒れ込む。

 

 これはタロウの得意技の一つであり、主に戦闘開始時に先手必勝で使う事が多い。

 

 この強力な蹴り技はこれまで多くの怪獣をダウンさせてきたのだ。

 

 

 キングゴルドラスはすぐさま立ち上がり再びタロウに襲い掛かる。

 

 キングゴルドラスは腕を振って殴り込むが、タロウは駆け寄りながらしゃがみ込んでかわすと同時にボディにタックルを決める。

 

 今度はキングゴルドラスの左腕の殴り込みを右腕で防ぎ、そのまま腹部に左脚の横蹴りを二発決め、頭部に左腕の手刀・ウルトラチョップを決める。

 

 そしてキングゴルドラスの胸部や腹部などに両手の拳・ウルトラパンチを連打する!

 

 その姿はまるでボクサーの様である。

 

 思えばかつてタロウとして戦った東光太郎もボクシングをやっていたため、これはまさに彼から受け継いだ戦い方なのだ。

 

 そしてキングゴルドラスが怯んだ隙に右腕と首筋を掴み、そのまま後ろに倒れ込んで巴投げで投げつける!

 

 キングゴルドラスは再び立ち上がるが、そこにタロウは跳躍して右脚の横蹴りを腹部に叩き込んで後退させる。

 

 

 圧倒的な戦闘力でキングゴルドラス相手に優位に戦うタロウ。

 

 タロウは常に父譲りの勇気と、母から学んだ優しさを胸に戦っている。 それ故に、ウルトラ兄弟NO.1と言われる超絶パワーは、常に怪獣たちを圧倒するのだ!

 

 

 キングゴルドラスは反撃のゴルドニックサンダーを放つ。

 

 だがタロウは両手を突き出して光の壁・タロウバリヤーを展開してそれを防ぐ。

 

 そしてそのままタロウバリヤーを半球状のバリヤー・プッシュリターン光線に変えて押し出す!

 

 半球状のバリヤーを物理攻撃として受けたキングゴルドラスは爆発して少し怯む。

 

 

 キングゴルドラスはタロウに向かって行き、タロウもキングゴルドラス向けて駆け寄る。

 

 そして互いに手を掴んで力比べを始める。

 

 互いに抑え込みを続ける両者。 どうやらパワーは互角みたいだ。

 

 タロウはキングゴルドラスの腹部に横蹴りを一撃打った後、頭部のウルトラホーンから青い熱戦・ブルーレーザーを放つ!

 

 光線はキングゴルドラスの頭部に命中し、それによりキングゴルドラスの頭部の角が破壊された!

 

 これによってキングゴルドラスは、時間移動能力を使えなくなった。

 

 そしてキングゴルドラスが怯んだ隙に、タロウは頭部を掴み、ウルトラパワーを活かした背負い投げで放り投げて地面に叩き付けた!

 

 

 ガルキメス「馬鹿なっ!? 二体の怪獣をも取り込んで、強化されたはずのキングゴルドラスが………!」

 

 ショウ「今だっ!」

 

 動揺するキングゴルドラスを他所に、タロウの猛攻にコスモスとビクトリーも続く。

 

 コスモスは駆け寄りながら両腕を大きく回し、太陽のフレアのような赤い光に包まれコロナモードへとモードチェンジを完了する。

 

 

 ビクトリーはキングゴルドラスに駆け寄り、右腕の殴り込みを受け止めると同時に一回連して左脚の蹴りを腹部に打ち込み、続けて跳躍して首筋に手刀を決める。

 

 そしてキングゴルドラスが振り向いたところに跳躍して前転するように一回転しての浴びせ蹴りを叩き込み吹っ飛ばす!

 

 

 続けてコスモス(コロナモード)が駆け寄り、胸部にサンメラリーパンチを叩き込み、続けて頭部に掴みかかって腹部に膝蹴りを二発打ち込み、更にその場で跳躍して空中に静止して身体を発光させて蹴り込むコロナサスペンドキックを頭部に打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 

 二人のウルトラマンはタロウと合流し、タロウを中心に横に並び立つ。

 

 今こそ、怯んだキングゴルドラスにトドメを刺す時だ!

 

 

 タロウ「行くぞっ!」

 

 ムサシ「ああ!」

 

 ショウ「おう!」

 

 

 コスモスは頭上に揚げた両腕を胸の前で回転させて気を集め、両手を突き出して帯状の超高熱火炎の圧殺波動・ブレージングウェーブ、

 

 ビクトリーは両腕でV字を描いて発生させたエネルギーを溜め、腕をV字に組んでビクトリウムシュートを放つ!

 

 ムサシ「ブレージングウェーブ!」

 

 ショウ「ビクトリウムシュート!」

 

 

 だが、キングゴルドラスは最後の力を振り絞ってバリヤーを展開して二つの光線を防ぐ!

 

 二人は光線を発射し続けるが、キングゴルドラスも負けじとバリヤーを張り続ける。 またしても、必殺技を防がれて終わるのか?

 

 

 だが、そこで今度はタロウが発射体勢に入る。

 

 タロウは開いた右手を高く揚げると同時に左手を腰に当て、そこから左手を上げて右手に重ねてスパークを起こし、両手を腰に添えて大気中の宇宙エネルギーを溜め始め、身体が虹色に光る。

 

 

 タロウ「ストリウム光線!」

 

 

 タロウはエネルギー充填後、呼び声と共に両腕をT字型に組んで必殺光線・ストリウム光線を発射する!

 

 

 これはタロウの最大の必殺技であり、ウルトラマンAのメタリウム光線の20倍もの威力があると言われているウルトラ兄弟の中でも威力の高い光線技なのだ。

 

 これまでこのストリウム光線により、多くの怪獣を撃破してきた。

 

 

 ストリウム光線はキングゴルドラスのバリヤーを直撃!

 

 ブレージングウェーブ、ビクトリウムシュート、そしてストリウム光線が重なった事により、遂にその威力に耐え切れず、キングゴルドラスのバリヤーはガラスが割れるような音を立てて砕け散る!

 

 そしてそのまま三つの光線はキングゴルドラスを直撃!

 

 キングゴルドラスはしばらくもがき苦しんだ後、大爆発して砕け散った!

 

 

 キングゴルドラスを撃破した三人のウルトラマンは、互いを見つめ頷き合う。 まるで「よし、やったぞ。」と言っているように。

 

 

 ガルキメス「馬鹿な………キングゴルドラスが倒されるとは………だが、この偉大なるガルキメスが、貴様らに負けるはずが無い。」

 

 ガルキメスは、キングゴルドラスが倒された事に動揺しつつも自尊心を保ち語る。

 

 ガルキメス「まずは邪魔をしたタロウ、貴様から………」

 

 

 “ドガッ”

 

 

 ガルキメス「!ぐおあっ!」

 

 タロウに視線を向けていて油断をしていたガルキメスは、ビクトリーの不意打ちの跳び蹴りを喰らって吹っ飛んでしまう。

 

 

 そしてビクトリーもといショウは、ガルキメスに怒りを感じる視線を向ける。

 

 

 ショウ「許さんぞ貴様!」

 

 

 《ウルトランス! ウルトラマンヒカリ!》

 

 

 ショウは、ウルトラマンヒカリのクリスタルスパークドールズをリードする。

 

 

 《ナイトティンバー!》

 

 

 そしてヒカリの掛け声の音声と共に、光と共に魔笛封印剣・ナイトティンバーが出現し、ショウはそれを掴み取る。

 

 そしてショウは、横笛として使用するティンバーモードでメロディを奏でた後カバーを展開し片刃の青い剣のソードモードへと変形させて揚げる。

 

 するとビクトリーの周りに光の結晶体が現れそこからビクトリーに光が注がれていき、身体が青い光に包まれる。

 

 

 そしてその光が徐々に消えていき、中からウルトラマンビクトリーナイトへと強化変身を完了したビクトリーが現れる。

 

 

 《放て!聖なる力!!》

 

 

 ヒカリの音声と共にビクトリーナイトはナイトティンバーを構える。

 

 

 ガルキメス「どんな姿になろうと同じだあああ!!」

 

 ガルキメスはやや自棄気味にビクトリーナイトに襲い掛かる。

 

 ビクトリーナイトはガルキメスの上から振り下ろす右腕を左腕で防ぎ、そのまま右手で持っていたナイトティンバーで腹部を二回斬りつける。

 

 ガルキメスは怯んで少し後退した後、得意の格闘術でパンチやキックを放つが、ビクトリーナイトはそれらを避けたりナイトティンバーで弾き返したりなどしてことごとくかわしていく。

 

 そしてガルキメスの左腕、右腕での殴り込みをそれぞれ右腕、左腕で防ぐと、そのまま胸部に二発蹴りを打ち込み、怯んで手を放したところで回転しながら横一直線での斬撃を浴びせ、続けてそのまま一回転しながら右足での回し蹴りを頭部に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 ガルキメスは今度は両手からの光弾を乱射し始めるが、ビクトリーナイトはそれをナイトティンバーでことごとく斬って弾きながら走って接近。

 

 そして近づいたと同時に跳躍して一回転し、回転と落下のスピードを活かした斬撃を叩き込む!

 

 そして続けざまに斜め、横など目にも止まらぬ速さで斬撃を連打し、最後は斜め上に振り上げる斬撃を叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 斬撃を決めるたびに残像の青いラインが走り、爆発が起こった。

 

 

 ビクトリーナイトの猛攻によって完全に劣勢となったガルキメス。

 

 ガルキメス「これが貴様らの強さか……だが、俺はあらゆる時空からより強い怪獣を出現させ、次こそは全時空のこの街を壊滅させてやる!」

 

 そう言うとガルキメスは上空に時空の歪みの穴を発生させ、そこへ入って逃げようと跳躍する。

 

 

 だがしかし、それを見逃すウルトラ戦士ではない!

 

 

 タロウは跳躍して数回きりもみを決め、上空のガルキメスにスワローキックを決める!

 

 蹴りを喰らったガルキメスはたまらず地面に落下し始め、さらにそこに待ち構えていたコスモスによりすれ違い様に背中に横蹴りを叩き込まれ地面に叩き付けられる。

 

 

 上空の歪みも消滅し、完全に逃げ場を失ったガルキメスにトドメを刺す時である!

 

 

 ショウ「貴様に、次などない!」

 

 

 そう言うとショウはナイトティンバーのポンプアクションを1回行う。

 

 

 《1(ワン)! ナイトビクトリウムフラッシュ!!》

 

 

 ヒカリの声の音声が鳴り、ショウがマウスピースを兼ねるトリガーを引くことで刃先が青白く発光する。

 

 そしてビクトリーナイトは跳躍する。

 

 

 ショウ「ナイトビクトリウムフラッシュ!」

 

 

 ビクトリーナイトは落下しながら必殺の回転切り・ナイトビクトリウムフラッシュを放つ!

 

 ものすごい速さの回転切りを喰らったガルキメスは吹っ飛び、ビクトリーナイトはその反動で再び上空に飛び立つ。

 

 

 《3(スリー)! ナイトビクトリウムシュート!!》

 

 

 ショウは今度はポンプアクションを3回行いヒカリの声の音声が鳴る。

 

 ビクトリーナイトは上空に静止したままナイトティンバーを右手で立てて持ち、刃先を撫でる様に左手を上げると刃先が激しく発光する。

 

 

 ショウ「ナイトビクトリウムシュート!」

 

 

 ビクトリーナイトはナイトティンバー(ソードモード)のトリガーに左腕を当てて十字を組んで必殺光線・ナイトビクトリウムシュートを放つ!

 

 強力な光線はガルキメスを直撃!

 

 

 ガルキメス「ぐおおおおあああああ!!………我が………我が魂は、テラ様と共にありいいいぃぃぃ………………!!」

 

 

 “ズドガガガーン”

 

 

 ガルキメスは最後の叫びを残し、大爆発して砕け散った。

 

 

 ビクトリーナイトは着地し、二人のウルトラマンと合流する。

 

 ショウ「タロウ、助かった。」

 

 タロウ「いや、礼はいいさ。 私もちょうど駆け付けたところだったしな。」

 

 

 ビクトリーナイトは未だに気を失っている櫂の方を振り向く。

 

 ショウ「それにしても、櫂のヤツ、一体何があったんだ………?」

 

 ムサシ「それに、敵は散り際に「テラ様」と言っていた………いったい誰の事なのだろう?」

 

 

 二人の疑問にタロウは少し俯いた後、話し出す。

 

 

 タロウ「どうやら、君たちに話す時が来たようだな。」

 

 タロウの言葉に二人は反応する。

 

 

 タロウ「奴が言っていたテラの事………そして、あの青年の事も。」

 

 

 

 同じ頃、自身の消滅しかけた身体に不安を感じている慧はアニーと共に街を歩いていた。

 

 アニー「大丈夫よ慧君。 ほら、今は何もないじゃない。」

 

 慧「ああ………でも………さっきの現象は一体………。」

 

 

 慧は不安そうに歩きながら、ある事を考えていた。

 

 

 それは、

 

 

 慧(もしかしたら、この時代で父さんが死んでしまい、それにより未来の僕も消滅してしまうのではないのだろうか………?)

 

 

 と考えていたのだ!

 

 そしてさっきの現象が、その兆候ではないのかと考えていたのだ。

 

 

 もしかしたら櫂は暴走を繰り返すたびに、自滅に近づいているのかもしれない………!?

 

 

 あれこれ考えているうちに、慧は考えるのすら嫌になってしまった。

 

 アニー「慧君………。」

 

 慧「ごめんアニー。ちょっとだけ、一人にしてくれないか?」

 

 アニー「え?………ええ。」

 

 

 慧は一旦アニーを残し、一人で近くの公園へととぼとぼと歩いて行った………。

 

 アニーはその後ろ姿を心配そうに見つめていた………………。

 

 

 

 噴水のある最寄りの公園のベンチで一人座っている慧。

 

 

 慧「未来で母さんが死んだだけではない………もしこの時代で父さんに何かがあったら………僕は………僕は………………。」

 

 慧は再び色々と考えていく内に、余りの悩ましさに頭を抱え俯き始める。

 

 慧「僕はどうしたらいいんだ………………。」

 

 

 その時、

 

 

 真美「あのー………、」

 

 慧「!」

 

 突如、話しかける声が聞こえ顔を上げて見ると、そこには心配そうに見つめる真美の姿があった。

 

 昼寝を終えた真美は、気分をリセットさせるために公園に散歩に来ていたのだ。

 

 陽は既に夕日となっていた。

 

 

 真美「………大丈夫ですか?」

 

 真美が優しく話しかけるが、どうしたことか慧は少し顔を背け黙り込んでしまう。

 

 それどころか、なにやら頬を赤らめていた。

 

 

 真美は慧の横に座る。

 

 真美「どうしたのですか? 私で良かったら言ってみてください。」

 

 

 すると慧の顔はますます赤くなり、息も若干荒くなる。

 

 そして慧は、ある事を頭に浮かべていた。

 

 

 慧の母「どうしたの?慧。 ママでよかったら言ってみて?」

 

 

 それは、自身が幼い頃、泣きじゃくる自分に母がいつも優しくしてくれたことだった………。

 

 

 慧はやがて体が小刻みに震えはじめ、何やら目が潤み始める。

 

 その様子を真美はあどけない顔で心配そうに見つめる。

 

 

 慧「おっ………俺は………………ッッ!」

 

 真美「ん?」

 

 

 すると慧は、勢いよくベンチから立ち上がり、真美は少し驚く。

 

 

 慧「母さあああぁぁーーーん!!」

 

 

 慧は涙声が混じった声で叫びながらその場を走り去っていった………。

 

 

 真美は一体何が起こったのか理解できずにいたが、何かを察したのかふと笑顔になる。

 

 真美「きっとママと喧嘩でもしたのかな。 無理も無いよ、見た感じ思春期だし………。」

 

 

 そう呟いた真美はその場を歩き去ろうとしたその時、自身のスマホの着信音が鳴る。

 

 真美はスマホを取って通話を始める。

 

 

 真美「もしもし?」

 

 櫂「ああ………ま、真美? 俺だ。」

 

 

 電話をしてきたのは、既に意識を取り戻していた櫂だった。

 

 

 真美「あら櫂君。 どうしたの?きょどってるみたいだけど………。」

 

 

 櫂「い、いや、その………すまん、何か、いきなりお前と話したくなって………。」

 

 

 真美「………ふふふふふ。櫂君、もしかして疲れてるのかな?」

 

 櫂「え?」

 

 真美「無理も無いわね。 今日も暑かったし、課題も頑張ったし、

 

 それに、櫂君はいつもゼロ君と一緒に頑張ってくれてるし………。」

 

 櫂「………ああ………。」

 

 真美「(笑顔で)ね、明日アイスでも食べに行きましょ? 気分転換も必要だよ。」

 

 櫂「ああ。そうだな。」

 

 真美「じゃ、また明日…」

 

 櫂「あー真美。」

 

 真美「どうしたの?」

 

 

 櫂「………絶対に悪を殲滅させ、誰もが平和に過ごせる世界を………未来を作る。」

 

 真美「………頑張ってね。応援してるから。」

 

 

 櫂と真美は互いに通話を切った。

 

 

 真美「(笑顔で)みんな………疲れてるのよ、きっと………さ、返って課題の仕上げでもしよーっと。」

 

 真美は鼻歌を歌いながら公園を後にした。

 

 

 一方の櫂はと言うと、

 

 櫂「絶対に死なせるもんか………真美に何かする奴は、俺が容赦しない………誰であってもな!」

 

 ………案の定、一人になった瞬間本性を剥き出しにしていた。

 

 ゼロ「櫂………。」

 

 そして慧のある言葉を思い出していた。

 

 

 慧「いつも優しい母さんが、この曲を歌う時は、特に優しい表情になるんだ………………。」

 

 

 櫂(間違いない………慧の母親は、絶対に………絶対に………………!)

 

 櫂はまたしても不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

 と、その時、

 

 

 慧「父さん。」

 

 櫂「!?なんだい?」

 

 突如現れて話しかける慧に驚きつつも返事をする。

 

 慧「僕はここで、とりあえず未来に帰る事にするよ。」

 

 櫂「………もう帰るのか?」

 

 慧「うん。 おかげでガルキメス達は滅んだ。 僕は残党の殲滅や、未来の街の復興に専念する事にするよ。」

 

 櫂「そうか………頑張れよ。」

 

 慧「父さんも………良い未来が築けるように………頑張ってね。」

 

 櫂「おう!」

 

 櫂と慧の父子は拳を交わした。

 

 これぞ男と男の近いと言うヤツなのだろうか。

 

 

 櫂と別れた慧はアニーと合流し、タイムワープのペンダントを光らせ始める。

 

 アニー「本当にいいの?慧君。」

 

 慧「ああ。 父さんも母さんも、元気そうだったか安心したよ………。」

 

 アニーはふと笑顔を見せる。

 

 慧「それにガルキメスの連合は滅んだ………あとは父さんたちが頑張ってくれれば、もしかしたら未来は変わるかもしれない………僕はその可能性を信じている。」

 

 アニー「未来は常に、不安定なモノだからね………。」

 

 慧「でも、父さんと共に戦った戦士も言っていたよね。 未来とは良いようにも悪いようにも変えることが出来る………それを成すのは、この時代で生きている父さんたちだ。」

 

 

 

 一方同じ頃、

 

 ヒカル「(ギンガスパークを取り出して)どうしたギンガ?またくしゃみしたぞ? 珍しい事もあるもんだな。」

 

 海羽「そりゃあウルトラマンも人間だもの。 くしゃもぐらいするものだわ。」

 

 ヒカル「それもそうだな。」

 

 

 

 ペンダントの力により赤い光に包まれる慧とアニーは、もうじきタイムワープする直前であった。

 

 慧は最後に霞ヶ崎の街を見渡しながら呟いた。

 

 慧「父さん………僕は信じてるからね………若い母さんも、無理しないように………みんな、頑張って。」

 

 

 

 “シュウウゥゥゥン”

 

 

 慧は最後に笑顔を見せ、アニーと共にその場からタイムワープで消滅した。

 

 

 息子に未来を託された櫂。果たして彼はそれを成すことが出来るのであろうか………………?

 

 

 

 そして夜、ムサシ、そしてショウは別れようとしていた。

 

 だが、二人は何やら深刻そうな顔をしていた。

 

 

 ムサシ「まさか、あんな事実が潜んでたなんて………。」

 

 ショウ「ああ。俺たちもそろそろ悠長に構えていられないかもな………。」

 

 

 果たして二人はタロウから何を聞かされたのであろうか………………?

 

 

 因みにタロウは霞ヶ崎のパトロールをしつつ、ある者の元へと向かうためにショウたちと別れたと言う。

 

 果たして誰の元に向かっているのであろうか………?

 

 

 そして櫂たちは敵を殲滅し、平和な未来を築くことが出来るのであろうか………………?

 

 今後も見守って行こうではないか。

 

 

 

 [エピローグ]

 

 

 その夜、アパートに帰った伊狩鎧はと言うと。

 

 

 鎧「うおおおおあああ! まさかタロウさんのウルトラサインを撮る日が来るなんてえええ!!

 

 これは永久保存版ですよ!!」

 

 

 部屋で一人で興奮していた。

 

 

 なぜかと言うと、時間を遡ろう。

 

 

 

 タロウがコスモスとビクトリーと別れようとした時である。

 

 鎧「タロウさああぁぁん!! まさかタロウさんにも会えるなんて感激ですぅ!!

 

 良かったらちょっとの間で良いので、サインを………!」

 

 

 タロウ「………分かった、最高のサインをやろう。」

 

 そう言うとタロウは、何故か飛び去って行った………。

 

 鎧「!?あれ?タロウさん!? タロウさぁあああん!?」

 

 

 サインをやると言いながら飛び去って行ったタロウ。鎧ががっかりしようとしたその時、

 

 

 上空に光と共にウルトラサインが現れた、ウルトラオタクである鎧にはそれがタロウのウルトラサインであることに気付く。

 

 

 鎧「あ、あれは!! タロウさんのウルトラサインじゃないですかあああ!!」

 

 タロウが言っていた最高のサインとは、自身のウルトラサインの事だったのだ。

 

 

 こうして鎧は、上空のウルトラサインをすかさずスマホで写真を撮ったと言う事である。

 

 しかも十回も!!

 

 

 自身のスマホに残るタロウのウルトラサインに興奮して夜を過ごす鎧であった。

 

 

 To Be Continued………。

 

 

 (ED:ウルトラの奇跡)




 読んでいただきありがとうございます!

 いかがでしたか?

 今回の展開で色々と察した人もいるかと思います(笑)

 果たして櫂はある者と結ばれ、無事に幸せな未来を築けるのでしょうか?


 そして今回はウルトラマンタロウの参戦!

 やはり主題歌をバックに怪獣を圧倒するタロウの戦いは素晴らしいものですよね!

 タロウは昭和の中でも特に好きなウルトラマンなので今回でようやく出すことが出来て嬉しい限りです!(因みに平成だとゼロ。)

 勝手に興奮しちゃってすいません(;^_^A


 タロウは今後も大きく関わって行くのでそこら辺も楽しみにしていてください。


 後書きが長くなってすいません。

 次回はヒカル君と海羽ちゃんが主役の回です。


 では、次回もお楽しみに!


 因みに余談ですが、私は先日シン・ゴジラを観て来ました。

 今年観た映画の中でもトップ3に入るんじゃないかくらい面白かったです!

 劇場版仮面ライダーゴースト・ジュウオウジャーも近々観に行く予定です。


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


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第25話「奪われたフュージョンブレスとハートフルグラス」

 お待たせしました!久々の本編の続きです!

 最近まで大学で期末試験があったりマラソンに参加したりなど何かと忙しかったのですが、ようやく完成です。


 今回の主役はヒカル君と海羽ちゃんの新コンビです!

 この二人が今回、怪獣たちをおびき出すために大胆な作戦を展開します!

 また、海羽ちゃんファンには多少刺激が強いかもしれない描写もありますのでご了承ください。

 というか、事前に言っておきます。海羽ちゃんファンの方、すみません!!(笑)


 また今回は『ウルトラマンギンガ(無印)』を意識した描写もいくつかあり、あと後半では、『ウルトラマンガイア』を見た方なら分かるかもしれないネタも仕込まれています(笑)


 あと、去年のニチアサ番組の小ネタも紛れています。


 あと、サブタイトルも二つ隠してみました。


 それでは、どうぞ!


 いつも優しい母さんが………………(チョコを手に持って)そういえば父さんと母さんも、これを食べてたっけ………………。

 

 

 未来からの敵の襲来を撃退したその日の夜、竜野櫂の脳内には繰り返しある言葉が過っていた。

 

 

 それは、敵と同じく未来から来た自分の息子・慧の言葉である。

 

 

 アパートの自室にいる櫂は机に肘をついて頭を抱えたまま、なにやら自分に言い聞かせるように呟き続けていた。

 

 

 櫂「間違いない………………慧の母親………つまり、俺と結ばれるものは………………間違いない………………。」

 

 

 一方同じ頃、

 

 

 真美「…へくちゅ、」

 

 

 夜の散歩をしている新田真美は、ふと小さなくしゃみをしていた。

 

 

 真美「どうしたんだろう………今日はなんだか不思議な一日だったわ。」

 

 

 真美は星が光る夜空を見上げながら、呟いた。

 

 

 真美「………ま、いいか。きっと疲れてるんだよ。

 

 明日は久しぶりに櫂君と二人きりで出かけるわけだし、今日はもう帰って寝ーよおっと 」

 

 

 そう言うと真美は軽やかな足取りで、ルンルンと鼻歌を歌いながら帰り道を歩いて行った。

 

 

 櫂の息子の登場、そして、何やら秘密を知っていると思われるウルトラマンタロウの参戦により、更に謎が深まっていく………。

 

 

 もしかすると、櫂と真美という二人の男女が、何か鍵を握っているのかもしれない………?

 

 

 

 (OP:英雄の詩)

 

 

 

 今回は、櫂の闇が広がって暴走が加速したり、櫂の息子や敵が未来から来たりなどで大騒ぎしているのとほぼ同じ頃の別の場所での話である。

 

 

 露金渓谷の偵察を任され八幡那須岳村を目指していた礼堂ヒカルと眞鍋海羽の二人は遂に村に到着した。

 

 

 ヒカル「ここが八幡那須岳村か。」

 

 海羽「何だか昔からある感じがしていい感じ~!」

 

 

 八幡那須岳村。そこは彼らが住んでいるようなところとは異なり、レンガの屋根の民家、藁や木でできた民家が多く、まさしくのどかな田舎らしい自然に囲まれた村である。

 

 

 海羽「う~ん…空気も美味しいし、最高。」

 

 海羽は背伸びをしながら言った。

 

 普段都会暮らしの彼女にとってはよほど珍しい場所なのであろう。

 

 

 因みにこの村の入り口には大きな鳥居が立っており、その左右には二つの石像が立っていた。

 

 

 一つは狐、そしてもう一つは百足である。

 

 

 ヒカル「何だろう、この石像は………何だか変わってる組み合わせだな。」

 

 海羽「狐は分かるけど何で百足なんだろう~……もっとマシな動物だったらいいのにね。」

 

 海羽は身震いしながらヒカルに縋り付いて言った。彼女は恐らく百足のような昆虫が苦手なのであろう。

 

 

 ヒカル「ははは…まあ、とりあえず村に入ろうぜ。

 

 実はここに着いてから、俺のギンガスパークがまだ微弱ながら反応をしているんだ。」

 

 海羽「あ、実は私のハートフルグラスも同じく。………きっとこの村に何か秘密があるんだよ。」

 

 ヒカル「っしゃあ、行こうぜ。」

 

 海羽「うん!」

 

 

 ヒカルと海羽は鳥居の下を通り、村へと入って行った。

 

 

 因みに彼らは気づかなかったが、鳥居の上にもう一つ石像が立っていた。

 

 その石像の動物は、鳥である。

 

 狐、百足、そして鳥。これらの石像は果たして何を意味しているのであろうか………?

 

 

 

 海羽「ラムネ二つくーださーいな!」

 

 村に入ったヒカルと海羽はとりあえず一息つくことにした。

 

 近くの駄菓子屋に寄り、木を切った後のような椅子に座ってラムネを飲む二人。

 

 すると駄菓子屋の年配男性が二人に興味を示して来た。

 

 「おーお随分と若い二人が来たものだねー。」

 

 海羽「え、えへへへ、どうもー。」

 

 「こんなにもイケメンに美少女が来てくれて嬉しいぞー。是非ゆっくりしてってな。」

 

 若者がこの村に来るのが余程珍しいのか、男性は嬉しそうにヒカルと海羽の間に割って座り、二人の肩に手を回して気さくに話した。

 

 この村の人はフレンドリーで良い人たちなのであろうか………?

 

 

 ヒカル「因みにこの村には、俺たちと同じくらい若い人も住んでいるんですか?」

 

 ヒカルが質問した瞬間、男性の明るい表情が少し曇る。そして、こう言った。

 

 「………ああ。いるよ。……いや、“いた”って言った方が正しいかもしれねえ。」

 

 海羽「…ほえ?」

 

 ヒカル「“いた”………ですか?………。」

 

 ヒカル(過去形?………てことは、今はいないという事なのか………?)

 

 男性の意味深な回答にヒカル達は困惑していた。

 

 

 すると、男性は立ち上がり話を変える。

 

 「そういやあ、今この村は今夏祭りしてんだ。兄ちゃんたちも行くかい?」

 

 

 ヒカル達が来たこの日はちょうど八幡那須岳村で年に一度の夏祭りが行われる日であった。

 

 

 すると、海羽はものすごい高さで立ち上がり男性に詰め寄る。

 

 

 海羽「今、夏祭りって言いました!?」

 

 「え………お、おう。」

 

 男性は困惑しつつも答える。海羽の目は普段以上に輝きを増していた。

 

 彼女はどうやら、屋台などで賑わう祭りが大好きなようである。

 

 

 ヒカルと海羽は男性に案内され、夏祭りの会場へと向かい到着する。

 

 この村の夏祭りは八幡那須岳神社付近で行われており、近くにはいろんな屋台が並び立っていた。

 

 

 ヒカル「うおお、これはすげえゼ!」

 

 海羽「やったー!まずはどれから回ろうかなー!?」

 

 ヒカル「おいおい行き過ぎて迷子になんなよ。」

 

 まるで幼い少年少女のようにはしゃぐヒカルと海羽。それを男性はどこか懐かしむように見つめていた。

 

 

 「おーいマサ、そろそろお前さんの紙芝居の時間が近いじゃないのか?」

 

 マサ「おーっと、そうだった。んじゃ、準備しますか。」

 

 ヒカル達が知り合った男性の名は『マサ』と判明した。

 

 ヒカル「紙芝居………ですか?」

 

 マサ「ああ、毎年夏祭りには、俺が自作の紙芝居を子供たちに聞かせてやってんだ。………あまり子供は多くないがな。」

 

 ヒカル「へえ~………紙芝居なんてもう何年も聞いてねえな………俺も聞いてもいいですか?」

 

 マサ「お、もちろんだ若造よ!ははは…」

 

 ヒカル「なあ、海羽も聞いてみようz………」

 

 ヒカルが海羽の方を振り向くと、、、

 

 彼女は既に右手に綿菓子、左手に水風船、そして頭にはお面を付けたりと、もう既に祭りを楽しんでいる真っ最中であった。

 

 ヒカル「(苦笑しながら)ははは…ったくまるで子供だなあ。」

 

 海羽「(嬉しそうに首をかしげながら)えへ?」

 

 マサ「そういう兄ちゃんも、その手の物は何だい?」

 

 ヒカルも、右手に射的で取ったコケシ、左手に買っていた焼きそばを持っていた。

 

 彼もいつの間にか祭りを満喫している最中だったのである。

 

 ヒカル「あ、あははは………それより海羽、紙芝居見ようぜ。 これからマサさんがやるみたいだぞ。」

 

 海羽「え?紙芝居? 見る見るー!」

 

 ヒカルの誘いを聞いた海羽は、まるで子供のように跳びはねる。

 

 

 それを見て微笑みつつも、ヒカルは夏祭りで賑わう辺りを見渡し、何かを思い始める………。

 

 

 ヒカル「夏祭り………ここが俺の世界だったら、“あいつ”も一緒に連れて行きたいな………。」

 

 

 

 

 その頃、そんなヒカルの世界に住むとある少女が…。

 

 

 石動美鈴「…くしゅんっ!?………何だろういきなり………誰か噂してんのかな?」

 

 

 何やら家の台所で和菓子を作りながらふとくしゃみをしていた………。

 

 

 

 

 気が付くと紙芝居の準備をしているマサの周囲には大勢の子供が集まっており、マサはそんな子供たちに一人一本ずつ、懐かしの味付けのイカを配っていた。

 

 もちろんヒカルと海羽にもである。

 

 

 海羽「はぁ~紙芝居を聞くのっていつ振りだろう?」

 

 ヒカル「ああ、俺も何か、懐かしい気分だぜ。」

 

 

 やがて、紙芝居が始まった。

 

 今時祭りで紙芝居をする所が、どこか昭和っぽさを感じていいものである。

 

 

 内容は、ここ八幡那須ヶ岳ができるまでの話である。

 

 マサは慣れた口調で紙芝居を読み始める。

 

 

 マサ「昔々その昔、この辺がまだ見渡す限りの原っぱだった時の事だ。

 

 そこに一軒二軒と家が出来て、畑や田んぼをこしらえて、やがて小さな村が出来たんだ。

 

 そこに更に人が増えて、村はどんどん大きくなっていきました。

 

 

 けれど、良い事ばかりだったこの村に、突然大きな脅威が襲いかかって来ました。

 

 一体何だと思う?

 

 それはね、大きな山よりも二、三倍大きい九尾の狐の怪物と、大きな山を八巻き半するほどの大きな百足の化物だったんだ!」

 

 

 マサがそう読むと共に、次に出された紙にはその巨大な狐と百足の絵が描かれていた。

 

 

 海羽「ひゃっ…?」

 

 ヒカル「へえ~、結構迫力あんじゃん。」

 

 

 マサ「その狐の妖怪は北から、そして百足の妖怪は南からやって来て、この村に住み着いてしまったんですよ。

 

 そして大狐と大百足は、毎年若い男女を一組ずつよこせと言ってきたんですよ。

 

 

 さあ、可哀想な娘さんを囲んで、村人たちが悲しんでたその時、その前に一人の旅人が通りかかったのです。

 

 旅人は村人から話を聞くと、「よし、それではこの私が、その大狐と大百足を退治してあげよう!」と言いました。

 

 そして弓を手に山を登る旅人を見た大狐は、真っ赤な口から狐火を吹いて、嘲笑ったんです。

 

 グエへへへへへ、ギェ〜へへへへへへへ〜!」

 

 

 顔芸まで披露しながら大狐が笑うのを表現するマサ。それを見る子供たちはその可笑しさから笑い始める。

 

 

 海羽「ふふふ、狐が笑うわけないじゃない。」

 

 ヒカル「ほんと、可笑しな話だよな。」

 

 ヒカルたちも無邪気にそれを楽しむ。

 

 

 マサ「そんな弓で、俺様たちが殺せるとでも思っているのか!?

 

 グエへへへへへ、ギェ〜へへへへへ〜!」

 

 

 すると突然!さっきまで晴れ渡っていた空が突然曇り、強い風が吹き始める!

 

 突然の天候の変化にヒカルと海羽はもちろん、マサや子供たちも驚き動揺する。

 

 そして、何やら村の入り口の鳥居の狐と百足、そして鳥の石像の目が光って点滅する。

 

 その様子はマサの表現する笑いに共鳴するかのようであった…!

 

 

 だが、そんな突然の怪現象はすぐに収まり、強い風も止み、曇っていた空も晴れ始める。

 

 鳥居の石像も、いつの間にか元に戻っていた。

 

 

 ヒカル「…何だったんだ?今の。」

 

 海羽「怖かった〜。」

 

 ヒカルと海羽、子供たちは動揺を隠せないが、マサはすぐさま切り替えて紙芝居の続きを始める。

 

 

 しかし、先ほどの怪現象は一体何だったのだろうか………?

 

 ひょっとすると、何かの前兆なのだろうか、、、?

 

 

 マサ「…さあさあ、話の続きだよ。

 

 

 さて旅人は、力一杯引き絞った矢を放った!

 

 矢はただの矢ではなかったのです。

 

 人々や村の平和を守るために、神様が与えた不思議な力を込めた矢だったのです…!」

 

 

 …だが、マサがそう読み聞かせながら大狐ならびに大百足が倒される絵を出したその時、

 

 恐れていた事が起こる…!

 

 

 夏祭りの場所から少し離れた山地が、突然地響きを立て始め、そして一つの小さな山が岩を散らし、土砂を巻き上げながら割れる!

 

 

 そしてその中から一体の巨大生物が現れた!

 

 

 緑色の体に長い首と、まさに百足のようなフォルムを持つその巨大生物こそ百足の怪獣『百足怪獣ムカデンダー』である!

 

 ムカデンダーは現れると咆哮と共に目を覚ます。

 

 

 そしてもう一方では、突然人魂のような火が現れて空中で爆発すると、その中から今度は狐のような怪獣が現れる。

 

 『狐火怪獣ミエゴン』の登場だ!

 

 

 突如現れた、まさに紙芝居の怪物に似た二体の怪獣。

 

 手始めに口からの火炎を噴射して暴れ始める!

 

 夏祭りの人々もそれに気づき一斉に逃げ始める!

 

 

 海羽「!あれはっ⁉︎」

 

 ヒカル「紙芝居が、現実になったというのか⁉︎」

 

 ヒカルたちも驚きを隠せない。

 

 マサ「そんな………遂に目覚めちまったか…。」

 

 海羽「え?」

 

 マサ「い…いや、それより兄ちゃん姉ちゃんも、早く避難するぞ!」

 

 マサは何やら気になることを呟きつつもヒカルと海羽に避難を促す。

 

 

 やがて、ヒカルと海羽が怪獣の目につかない場所まで避難した時、ミエゴンとムカデンダーは妨げになる小山や岩壁を破壊しつつ、夏祭りの場所の目前まで迫っていた。

 

 

 ………ところが、妙なことに二体はその場所で立ち止まり周りを見渡し始める。

 

 何かを探しているのであろうか………?

 

 

 すると、二体はなぜか引き返し始める。

 

 

 ヒカル「逃がすかっ!」

 

 

 ヒカルはそう言いながら、ギンガスパークの先端から光弾を発射する。

 

 

 …だが、なんと光弾が当たる直前にミエゴンの姿はスッと煙のように消えてしまい、それにより光弾は空振って飛んで行った。

 

 恐らく頭部の角からの透明シャワーを自身に浴びせて姿を消して退散したのだろう。

 

 

 ムカデンダーも地面を掘りながら地中に姿を消した………。

 

 

 

 突然現れたかと思うとすぐに地中に姿を消した二大怪獣。

 

 ヒカルと海羽は隠れてた場所から姿を現し、マサたち村人たちも姿を現していく。

 

 

 ヒカル「何だったんだ?あの二体は…。」

 

 海羽「なんか…何かを探してるみたいだったけど…。」

 

 

 「…もうおしまいだ…!」

 

 すると、村人の一人が地に伏せて嘆き始める。

 

 辺りを見渡すと、他の村人たちも何やら深刻そうになっていた…。

 

 

 ヒカル「あの……どうされましたか?」

 

 

 ヒカルが尋ねてみると、同じく深刻そうにしていたマサが重い口を開くように話し始める。

 

 

 マサ「…遂に目覚めてしまったんだよ…九尾の狐と百足の怪物が。」

 

 

 ヒカル「九尾の…狐?」

 

 海羽「百足の…化け物?」

 

 ヒカル・海羽「………ああっ!!」

 

 ヒカルと海羽は何かを思い出し、口をそろえる。

 

 

 海羽「そういえばさっきの怪獣、紙芝居の怪物とそっくりだった!」

 

 ヒカル「もしかして、さっきの紙芝居の内容は…、」

 

 

 マサ「………ああ、ここ八幡那須ヶ岳村の、古くからの伝説でもあるんだ…。」

 

 

 マサはそのまま語った。

 

 なんでも、ここ八幡那須ヶ岳村には古くからの言い伝えがあり、およそ数百年前の遥か昔、平和なこの村に九尾の狐の怪獣(ミエゴン)と百足の怪獣(ムカデンダー)が突如現れ、村を破壊し、人々を食い荒らしていたという。

 

 食われていく人々の中には特に若い人、特に女性が多く、その若い人々がよほど気に入ったのか、二体はその後も現れる度に若者を食い荒らしては姿を消していたという。

 

 

 海羽「そんな伝説があったなんて………。」

 

 ヒカル「この村に若い人が見当たらないのも、その伝説が関係してるのですか?」

 

 

 マサ「ああ、あれから村人は、若者は別の所に移住させ、子供が生まれた際もすぐさま両親ともに移住させていたんだ。」

 

 

 なお、そんな二体の怪獣の襲撃に遭う日々を送り、村人たちが悲しんでる最中、偶然通りかかった武士が事情を聞き、退治を引き受けたという。

 

 

 海羽「ホントに紙芝居そっくりだね~流れが。」

 

 マサ「ああ、今日の紙芝居は、今日がその怪物たちが封印された日、すなわち縁日でもあるという事で、その伝説に沿って作ってみたんだが………よりによってこんな時に甦るとは………。」

 

 マサは軽はずみな行動をしたのではないかと落胆する。

 

 

 だが、確かな事がただ一つ、その言い伝えの怪獣・ミエゴンとムカデンダーは、縁実の紙芝居で語られた伝説を聞いた人々の意思が同調して復活したのである。

 

 

 入り口の鳥居の石像も、そんな封印された二体を象ったものだったのだ。

 

 

 海羽「あああっ、マサさんのせいじゃないですよ。」

 

 海羽は慌てて慰める。

 

 マサ「………優しいなあ嬢ちゃん………孫を思い出すよ。」

 

 海羽「………………へ?」

 

 マサもまた、自分の孫娘を都会に移住させているのだった………。

 

 

 ヒカル「封印で留まったということは………その武将は弓で仕留めそこなったということですか?」

 

 マサ「ああ………だからせめて、奴らが復活しないように、若い者たちを移住させる事をみんなで決めたんだ………最も、俺の紙芝居は旅人の矢で倒されて終わりだけどな………。

 

 おかげで俺は、なかなか孫娘と会えず、孫娘が幼い頃から離れて暮らしていて、たまのお盆や正月に会うぐらいで、気がついたら大きくなっていた………こんなに悲しいことは無いよ。」

 

 

 マサが自分の孫娘との離れ暮らしを話しながらちらっと横を見てみると………

 

 そこには泣き崩れている海羽の姿があった………。

 

 彼女は色んな意味で涙もろい(泣き虫?な)一面もあるのである。

 

 

 ヒカルは困惑しつつも泣いている海羽の背中を摩る。

 

 ヒカル「だ………大丈夫か?海羽。」

 

 海羽「ぐすん………えへ、ごめんなさいね。私、こう見えて泣き虫なの。」

 

 

 「お兄ちゃんお姉ちゃんも早くこの村から出た方がいい。奴らの餌食になるぞ。」

 

 村人の一人がヒカルと海羽に村から出るように勧める。

 

 

 ………だが、二人は了解する様子を見せず、それどころか何やら笑顔で見つめ合っていた。

 

 

 マサ「………どうしたんだ?」

 

 

 ヒカル「村人の皆さん、その必要はないですよ。」

 

 「え?」

 

 海羽「そんな化物、さっさとやっつけちゃお、(ヒカルの方を向いて首をかしげて)ね。」

 

 

 マサ「な、何を言ってるのだね?」

 

 

 思わぬ返事に困惑する村人たち。

 

 

 「あ、そういえばさっき…。」

 

 その時、村人は何かを思い出す。

 

 

 それは、先ほどヒカルが取り出したアイテム(ギンガスパーク)から光弾を発射した事だった。

 

 

 「あんた達、もしかして………?」

 

 

 ヒカル「ふっ、そのもしかして…さ。」

 

 するとヒカルと海羽は、懐からそれぞれ変身アイテム・ギンガスパークとハートフルグラスを取り出す。

 

 

 一斉に驚く村人たち。

 

 「………そんな…。」

 

 「………まさか…。」

 

 マサ「あんたら、もしかして…。」

 

 

 すると、そんな二人を見た旅人たちは何かを確信したのか、ふと笑顔になって行く人も出始めていた。

 

 

 マサ「………兄ちゃんたちがこの村に来たのは、何かの運命かもしれないな………。」

 

 

 マサの言葉に微笑むヒカルたち。

 

 

 ヒカル「任せてください。俺たちが、この村に新たな伝説を築きますよ。」

 

 海羽「『光の戦士が、怪物を倒して平和を取り戻す』という伝説をね!(少し首をかしげてウィンク)」

 

 

 すると、村人たちは彼らに希望を見出したのか、一斉に彼らの方を見つめる

 

 その表情はまるで「任せたよ」と訴えかけているようであった。

 

 

 「あんたら、くれぐれも無理すんじゃないよ。」

 

 「まだ若けーんだから、自分らより先に死んじゃいけねーぜ?」

 

 村人たちは二人を励まし始める。

 

 

 ヒカル「あはは…大丈夫ですよ。俺たちは、絶対に死にませんから!」

 

 海羽「必ず、みんな無事に帰しますから!」

 

 

 

 怪獣撃破を決意したヒカルと海羽。

 

 そんな彼らの様子を、村人たちよし少し後ろから、木に隠れて見つめているとある2人組がいた………。

 

 

 しかもそれは、二人とも若い男なのである!

 

 

 ???「なあ、本当にやるのかよ?賢。」

 

 ???「あたぼーよ! 絶対に………。」

 

 

 はて、この村にいる若者は、訪れたヒカルと海羽しかいないはずなのだが………一体彼らは何者なのであろうか………?

 

 そして、何やら企んでいるっぽい事とは………?

 

 

 

 ミエゴンとムカデンダーの撃破をヒカルと海羽に任せた村人たち。

 

 だが、そんな村人たちの中に一人、未だに落胆している者がいた。

 

 その人は何やら大きな筒を持っており、どうやら花火職人のようである。

 

 

 「はぁ〜…今夜は夏祭りの目玉・花火大会があるというのに………今年は中止かな?」

 

 

 すると、海羽が職人の元へ歩み寄ると…

 

 海羽「ドント・ウォーリーですよ、おじさん。」

 

 「…え?」

 

 

 海羽「花火大会、普通にやっちゃってください!

 

 皆さんも、花火大会普通に楽しんでください!」

 

 

 海羽の思わぬ呼びかけに、職人はもちろん村人たちも困惑してざわつき始める。

 

 

 「な、何を言ってるのだねお嬢ちゃん。怪物が襲って来るのだぞ?」

 

 海羽「だからこそ、ですよ。(右手で矢印を作って少し首をかしげる)

 

 奴らをどうおびき寄せ、どう倒すかも既に考えてますから。」

 

 自信満々な海羽の意味深気味な発言を聞いた村人たち。まだ困惑は治らないものの、彼女たちが光の戦士である事に変わりはない事からの安心感からなのか少し落ち着いた。

 

 海羽「ささ、そろそろ夕方ごろですし、花火大会の準備を進めてください!」

 

 

 すると、海羽は職人の手を握って…

 

 海羽「(目を光らせながら甘えるような表情で)私も見たいわ〜………貴方の打ち上げは・な・び〜♡」

 

 

 ………なんとも!これまでにない小悪魔じみた仕草を見せてしまう海羽…。

 

 

 ヒカル「うわぁ…。」(大胆…!)

 

 流石のヒカルも引き気味な顔で見つめていた。

 

 

 だが、そんな海羽の表情をモロ目の前で見てしまった職人。さっきまで若干暗かった表情が、一気にニヤけ出して顔も赤くなる。

 

 

 職人「(照れ臭そうに海羽の手を慌てて振り払って)こ、ここ、こんな顔、さ、されたら、やらないわけにはいかないなっ!」

 

 海羽「(ピースして小声で)イエイ。」

 

 

 かくして、やたらと張り切る花火職人を中心に、花火大会の準備が始まった………。

 

 

 マサはヒカルと海羽に付き添うことにした。

 

 ヒカル「さてと、奴らをぶっ潰しに行くか!」

 

 マサ「それにしても、どうやって村の人たちが襲われないように奴らをおびき寄せるんだ?」

 

 ヒカル「それだな……若者の俺たちが一際目立つように仕向けるしかないと思うが…。」

 

 

 ヒカルは今回はUPGのジャケットではなく私服で来ているため、今のままでは怪獣の目に留まるほど目立たないのである。

 

 

 その時、ヒカルはある場所に気付く。

 

 それは、昔風の民家が大半の村の中でも、一際現代風に見えて目立つ建物がある事だった。

 

 屋根のてっぺんに十字架がある事から、その建物は教会だと思われる。

 

 

 ヒカル「あの建物は何ですか?」

 

 マサ「ああ、あれは十数年前に出来た教会だよ。他の教会に比べたら小さめだけどね…。

 

 でも、さっきも言ったようにこの村には若者がいないから結婚式が挙げられるわけでもなく、創立したっきり全く使われてないんだ………。

 

 ぶっちゃけ人々が助かるのならあんな教会、怪獣たちに壊されても構わないよ…。」

 

 

 マサがぼやいたその時、

 

 

 海羽「それなら、私に良い考えがあります!」

 

 突然、海羽が元気よく、そしてどこか嬉しそうに挙手する。

 

 

 マサ、そしてヒカルは「それは何?」とばかりに一斉に海羽の方を振り向く。

 

 

 海羽「ヒカルさんは私と、」

 

 

 

 ヒカル「………ん?」

 

 

 

 

 海羽「私と………結婚してください!」

 

 

 

 

 ………………突然(色んな意味で)とんでもない事を言い出す海羽………………。

 

 

 

 マサ「………え?」

 

 

 ヒカル「………え??」

 

 

 

 ヒカル・マサ「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!!???」

 

 

 

 二人は大変大きく驚き(←当然だw)、その勢いで早送りのように後ろ向きに後ろにさがっていき、やがて後ろにあった壁にぶつかるように引っ付く!

 

 

 ヒカル「けっ………!?」

 

 マサ「こん………!?」

 

 

 驚く二人の方を向いて、海羽は笑顔で頷いた。

 

 

 

 いきなりヒカルに結婚を申し出るとは………………彼女、一体何を考えているのであろうか………………?

 

 

 

 

 一方、ヒカルの世界に住んでいる、エプロン姿で三角巾をしている和菓子を作っているとある少女、

 

 

 美鈴「………何だろう?………妙に胸騒ぎがするわ………………ま、いっか。」

 

 

 

 

 海羽は、驚きを隠せない二人を他所に、“ある物”を差し出す。

 

 海羽「はい、これ。」

 

 ヒカル「な………なんだよ、これ………?」

 

 

 差し出されたのはスラックスにベストと、なぜか喫茶店とかにあるウェイターの衣装であった。

 

 ヒカル「なっ………何でウェイターの衣装なんだよ?」

 

 益々困惑が募るヒカル。

 

 海羽「だってタキシードとウェディングドレスがないから…だから、ヒカルさんはスラックスとベスト、そして私はメイド服でね。」

 

 

 そう、海羽はウェイターとウェイトレスの服を持っていたのである。

 

 流石はメイド喫茶でバイトしているだけはある(?)。

 

 

 ヒカル「でっ………でも、メイド服ならともかく、何でウェイターの服まで持ってんだよ!?」

 

 海羽「ふふふ、それは、最近ウェイターとしてバイトの後輩がメイド喫茶に入って来たからね~。」

 

 

 

 同じ頃、

 

 健二「へっ………へくしゅん!?」

 

 早苗「大丈夫?ケンちゃん…。」

 

 健二「あ、ああ、大丈夫ださなちゅん。」

 

 

 

 そして夜が来た。

 

 八幡那須岳村では予定通りに毎年恒例の夏祭りの大目玉・花火大会が始まった。

 

 

 夜空には打ち上げられた花火が爆発音と共に鮮やかな火花で様々な模様を描き、人々は袴などの衣装でくつろぎながらそれを眺める。

 

 

 ………そんな中でも、何人かヒカルと海羽の事を心配する人も見られる。

 

 「…あのお兄ちゃんたち、大丈夫かねぇ?」

 

 「なあに、きっと大丈夫じゃよ。なんせ光の巨人なのだからなぁ。」

 

 「ああ、わしらにとっちゃあ、運命の出会いかもしれないねぇ………。」

 

 「付き添いのマサも無事であればいいんだが………。」

 

 

 

 マサ「へくちっ!………なんだよ、誰か噂してんのか?

 

 それにしても外の花火は今年も綺麗だなあ………ホントにこんな中で怪獣を倒すのかね〜…。」

 

 マサがぼやく先には、教会の祭壇の前でやや緊張気味に立っているウェイター姿のヒカルだった。

 

 マサ「…ええい、こうなったら、いっそあの兄ちゃん達に任せてみるか。」

 

 そう言いながらヒカルの元に近づくマサ。

 

 マサ「な〜に緊張してんだ!?若造。」

 

 マサはややからかうようにヒカルに話しかける。

 

 ヒカル「だっ、だって! 偽造とはいえ産まれて初めての結婚式という体感をするんっスよ!?」

 

 やはりヒカルは緊張していた(笑)

 

 マサ「心配すんなって。それよりアンタ、全力で海羽ちゃんの事を幸せそうにしてやれよ〜。

 

 お姫様抱っこでもして、アツ〜いキスでもかましてやれよ。」

 

 ヒカル「バッ!……抱っこしてキスだなんて!

 

 ……流石にヤバいですよ!色々と…。」

 

 

 ヒカルがテンパっている間にも、既にメイド姿で花束を持った海羽がバージンロードを歩いて向かって来ていた………!

 

 

 マサ「おおっ!海羽ちゃんなかなか様になってるね~!

 

 んじゃ、こっからは新郎新婦水入らずって事で、

 

 あばよっ!(サムズアップ)」

 

 

 ヒカル「ち、ちょっとマサさ~ん!」

 

 

 マサが「ヒューヒュー」と言いながら出て行くと、遂に海羽は祭壇の所にまで上がって来た。

 

 

 そして、見るからに幸せそうな表情でヒカルを見つめて………、

 

 

 海羽「抱っこしてキスして。ダーリン。」

 

 

 

 ヒカル「ん?

 

 

 え˝え˝え˝えええぇぇぇーーー~~~!!!???」

 

 

 

 

 その頃、ヒカルの世界で、

 

 

 “グチュッ”(所謂苺を握り潰す音)

 

 

 美鈴「ああっ、つい力が入って潰れちゃった………。

 

 あ〜、なんか知らないけどホントにムカムカする…。疲れて来たのかな?………

 

 そうだ、そろそろ見たい番組始まるし、今日はここまでにしよっと。」

 

 

 

 同じ頃、宇宙船、テライズグレートでも…

 

 桜井「あ〜なんか知らねーがイライラするぜ………!」

 

 ゲドー「お、分かりますぜ旦那!ここんところゼロ達に負けてばかりですからね〜。」

 

 桜井「そうじゃない!………なんか知らねーけど…とにかくイライラすんだよ!」

 

 ゲドー「はて………一体どうしたのだろうか………?」

 

 

 

 八幡那須岳村の教会にて。

 

 ヒカルは多少動揺で震えつつも、ちゃっかり海羽をお姫様抱っこしていた。

 

 動揺はしているものの、流石は大柄なだけあって軽々と海羽を持ち上げているヒカル。

 

 誰が仕掛けたか分からないが、何処からか鐘の音が鳴っており、一応結婚式の雰囲気は十分に出ている。

 

 

 しかし、偽造とはいえ教会の中でウェイターとウェイトが結婚式を挙げる光景は何ともシュールである(笑)

 

 

 ヒカル「は………は、はい、だ、抱っこしました。」

 

 

 海羽「じゃあ誓いのキスだよ?」

 

 

 ヒカル「え?………あ、ああ、は、はいっ!(←裏声)。」

 

 

 ヒカルと海羽は目をつむる。そしてヒカルは半開きで白白目を向いた状態で物凄いスローで顔を近づけ始める………。

 

 

 ………そう、これはあくまで若者である自分たちが目立って怪獣たちをおびき寄せるための“偽造の結婚式”なのだから、実際にキスするわけにはいかないのである!(海羽自身はどう思ってるか分からないが………。)

 

 

 ヒカル(………チクショウ………早く怪獣出てくれよ~………。)

 

 

 顔と顔が数ミリまでに近づき、ヒカルが心でそう呟いたその時!

 

 

 “ドガシャーン”

 

 

 突然、教会の天井が音を立てて崩れ始める!

 

 

 そして天井が壊れた事で剥き出しになった外から二体の怪獣が咆哮と共に顔を覗かせる!

 

 

 どうやら海羽の立案した偽造結婚式作戦は成功したようである!

 

 

 え?なぜ外部の怪獣たちが内部の海羽たちに気付いたかって?

 

 残念だが、今回そこは突っ込んではいけないのだ!

 

 

 と言うか、海羽の作戦自体にツッコミを入れるのは野暮である(笑)

 

 

 海羽「成功したわ!やったね!ヒカルさん。」

 

 

 ヒカル「お……あ、ああ、そうだな。」(助かった~)

 

 最も、(ガールフレンドのいる)ヒカルにとって、これほど安心した事はないであろう(笑)

 

 

 大胆な作戦により、完全にヒカルと海羽を狙い始めたミエゴン、ムカデンダー。

 

 やがて教会は二大怪獣により崩され破壊される。

 

 

 なおも打ち上げられ続ける花火を見ている村人たちはそれに気づき思わず怖気づいてしまう。

 

 

 ヒカルと海羽は宙返りをし、村人たちの前に着地する。

 

 

 海羽「来い来い(恋恋)ハネムーン作戦、大成功~!」

 

 

 二人はウェイターとメイド服を脱ぎ捨て私服に戻る。

 

 

 ヒカル「ってそんな名前だったの?………まあ、いっか。

 

 (村人たちの方を振り向いて自信満々な表情で)こっからは俺たちに任せとけ!」

 

 

 マサ「…まさか本当に成功しちまうとは………今どきの若者、恐るべし…。」

 

 完全に呆気にとられるマサ。

 

 

 ミエゴンとムカデンダーは再び咆哮を上げて襲い掛かる。

 

 だが、彼らの視線は完全にヒカルと海羽だけに向いていた。

 

 

 海羽「…あ、あれ?怪獣さんたち、私の方を向いてない?」

 

 

 ヒカル「ふっ、やっぱ奴らにとって若い女の方が美味いんだろうな。

 

 だが、そうはさせない!

 

 あっちが二体なら、こっちも“二頭”だ!」

 

 

 海羽「(首をかしげて)ほえ?」

 

 

 そう言うとヒカルはギンガスパークと『双頭怪獣キングパンドン』のスパークドールズを取り出す。

 

 そしてライブサインをリードする。

 

 

 《ウルトライブ!キングパンドン!》

 

 

 ヒカル「っしゃあ!」

 

 

 ヒカルはギンガスパークを上に揚げ、そこから溢れる銀河状の光に包まれる。

 

 

 そしてライブサイン状の光の中から、ウルトラマンよろしく右腕を突き上げてキングパンドンが飛び出す!

 

 

 ………しかし、怪獣がウルトラマンのポーズで出てくる………これほどシュールな事はないであろう(笑)

 

 

 キングパンドンへとライブが完了したヒカル。

 

 

 ヒカル「よーし、こっちも頭が二つ。だから五分五分だ!」

 

 

 海羽「おお、なるほど!」

 

 

 一方で、ヒカルが怪獣(キングパンドン)へとライブ(変身)する所を目の当たりにした村人たち。

 

 中には唖然とする者もいれば、腰を抜かす者もいた。まあ、当然であろう(笑)

 

 

 海羽「あ………あ、あはははは、あれも、光の巨人であるが故に出来ることです~うふふふ…。」

 

 海羽は、ヒカルの特別な能力に驚く村人たちにそれらしい事を言ってとりあえずごまかす(笑)

 

 

 二体に向かうキングパンドン。

 

 ミエゴンが横降りの頭突きを腹部目掛けて繰り出すが、キングパンドンはそれをわざと受けると同時に両腕で掴んで受け止め、数回背中を叩いた後アッパーで打ち上げる。

 

 その後も怪獣同士の激しい殴り合いを展開するミエゴンとキングパンドン。

 

 

 その隙にムカデンダーが背後から襲い掛かろうとするが………、

 

 

 なんとキングパンドンの右の頭だけが後ろを振り向き、そして二つの口から同時に火炎弾・双頭撃炎弾を放つ!

 

 

 そう、ヒカルはキングパンドンの二つの頭を利用して前後への同時攻撃を繰り出したのである!

 

 キングパンドンを選んだのはこのように二つの頭を利用して二体の怪獣を同時に相手するためでもあるのだ。

 

 

 火炎弾を受けたミエゴンとムカデンダーが怯んでいる隙に、更にキングパンドンは今度は青とオレンジの二色の破壊光線・ダブルレイ・インパクトを放ち追い打ちをかける。

 

 

 ヒカル「どうよ!」

 

 

 得意げになるヒカル。キングパンドンの今度はムカデンダーの長い首に組み付く。

 

 キングパンドンが噛み付こうとしているムカデンダーの頭を押さえている隙に、ムカデンダーは右腕の鞭で打撃を連続で打ち込む。

 

 ヒカル「いってっ!ヤロー!」

 

 ムカデンダーに対しキングパンドンは右腕で頭を、左腕で右腕を掴み、身体に数回蹴りを打ち込む。

 

 その隙にキングパンドンは背後から襲い掛かろうとするが、キングパンドンは今度は長い尻尾を打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 

 キングパンドンの特徴を有効に活かして戦いを優位に進めるヒカル。

 

 

 最初は動揺していた村人たちの中にも僅かにも応援の声が出始める。

 

 

 海羽「あちゃ~………こりゃ私の出番無いかも………?」

 

 

 ヒカル「よーし、これでトドメだっ!」

 

 

 キングパンドンは火炎弾を放つ!

 

 

 “ドガーン”

 

 

 火炎弾はムカデンダーの首の付け根に命中して爆発する!

 

 

 だが、しかし!

 

 

 マサ「………えっ!?」

 

 

 海羽「(両手を頬に当てて)嘘~!?」

 

 

 ヒカル「んなのアリかよっ!!??」

 

 

 一同が驚愕するその先には驚きの光景が!

 

 

 なんとムカデンダーの首と胴体が切り離れたのである!

 

 しかもどちらも死ぬことなく別々に動いているのだ!

 

 

 そう、ムカデンダー一番の特徴。それは、切り離された首と胴体がそれぞれ別々に動けるという事なのである!

 

 

 ヒカル「百足の怪獣だけはあるな…。」

 

 ヒカルが感心しつつも動揺している隙にムカデンダーの首は飛びかかり、キングパンドンの右腕に噛み付く!

 

 

 ヒカル「いってっ! おい離れろって!」

 

 

 “ドゴンッ”

 

 

 ヒカル「うおわっ!?」

 

 

 その隙にミエゴンが背後から体当たりをかましてキングパンドンを転倒させる。

 

 

 キングパンドンが転倒した後もムカデンダーの首は噛み付いたまま離れない。

 

 ミエゴン、そしてムカデンダーの胴体は、横たわるキングパンドンを叩いたり踏みつけたりして甚振り始める!

 

 

 ヒカル「二体が三体になるなんて聞いてねえぞっ!!?」

 

 

 海羽「あちゃ~!思わぬピンチだよ~!」

 

 

 ヒカル「負けるかっ!うぉぉぉああー!!」

 

 ヒカルは気合を入れ、キングパンドンは何とか立ち上がると同時に二体を吹っ飛ばす。

 

 そして反撃しようとミエゴン向かい接近するが、ミエゴンはスッとその場で姿を消してしまう。

 

 

 キングパンドンが辺りを見渡している間にミエゴンは透明のままキングパンドンに接近し、そして姿を現すと同時にボディアタックを叩き込む!

 

 

 そしてミエゴンは再び姿を消す。

 

 再びキングパンドンが辺りを見渡している隙に、今度はムカデンダーが火球を放って攻撃する。

 

 

 ヒカル「あっちっ! くそー!」

 

 

 ヒカル(キングパンドン)がムカデンダーの攻撃に翻弄されている隙に、ミエゴンは再び透明のまま接近して攻撃しようとする。

 

 

 その時、どうした事か突然ミエゴンが姿を現す。

 

 それも、何かに妨害されたかのような素振りを見せながら…。

 

 

 海羽「ん?どうしたのかな?キツネちゃん…。」

 

 

 マサ「………まさか………。」

 

 

 ミエゴンは再び透明になる。

 

 しかし、またしても姿を現す。それも何かと戦っているような素振りを見せながら。

 

 

 すると、ミエゴンが姿を現したと同時に更にもう一体の怪獣も姿を現す!

 

 その怪獣は、全身がゴツゴツした岩で出来たような姿をしていた。

 

 

 海羽「ひょえ~、もう一体怪獣が出るなんて~!」

 

 

 だが、その怪獣は姿を現したかと思うとすぐに姿を消し、それ以降姿を現す様子はなかった………。

 

 

 海羽「………あれ?今のは何だったのかな………?」

 

 

 謎の怪獣による思わぬ妨害に遭ったミエゴン。

 

 その怪獣が姿を消した後、再びキングパンドンへと攻撃を仕掛ける。

 

 

 ミエゴンは口からの火炎・狐火を放射。ムカデンダーの火炎弾との同時攻撃をキングパンドンに浴びせ始める。

 

 キングパンドンにライブしているヒカルは絶体絶命のピンチまでに陥っていた…!

 

 

 ヒカル「…まだだ………ここでやられるワケにはいかねーんだよっ!」

 

 そう言いながらヒカルは村人たちの事を思う。 彼は決してくじけていなかった!

 

 

 ヒカル「俺は絶対に諦めない………!この村を守り抜くまでには………

 

 命、燃やすぜっ!!」

 

 

 そして村人たちにマサ、海羽の声援も響き始める。

 

 「立て!立つんだ!」

 

 「頑張ってー!そして村の平和を取り戻してー!」

 

 

 マサ「そうだ!行けー! やるんだヒカルー!」

 

 

 海羽「この村を………絶対に守り抜こう!」

 

 

 

 ヒカル「っしゃあ!テンション上がって来たぜっ!」

 

 

 再び勇気が満ちた時、ヒカルはギンガスパークを揚げる。

 

 すると側面のスパークブレードが展開し、先端から光と共に『ウルトラマンギンガ』のスパークドールズが現れる。

 

 ヒカルはギンガのスパークドールズを掴み取り、胸元でギンガスパークの先端にスパークドールズを立てる形でライブサインをリードする。

 

 

 《ウルトライブ!ウルトラマンギンガ!》

 

 

 発声音と共に柄にあるスパークフェイスカバーが展開してギンガの顔を模したスパークフェイスが出現。

 

 そしてヒカルはそのまま銀河状の光に包まれる。

 

 

 その光の中から、スパークドールズリード時のポーズに似た腕を組むポーズでウルトラマンギンガが回転しながら飛び出る。

 

 

 現れたウルトラマンギンガは回転しながら着地すると同時に土砂や土煙を巻き上げる。

 

 

 (BGM:ウルトラマンギンガの歌)

 

 

 遂に光臨したウルトラマンギンガ!

 

 夜の闇に身体の6か所のクリスタルを輝かせてゆっくりと体を起こすその姿は、正に神秘的で幻想的である。

 

 

 「おぉ…神じゃ、神が舞い降りたー!」

 

 村人たちは初めて見るウルトラマンの姿に驚き感心し、また夜に輝くギンガの姿にどこか神のような威厳を感じる。

 

 

 マサ「あれがウルトラマンか…。」

 

 海羽「そう!銀河の覇者、その名もウルトラマンギンガー!」

 

 

 ミエゴンとムカデンダーは現れたギンガ目掛けて同時に火炎を吹き付けるが、ギンガはその場に立ったまま右手を突き出し、銀河状のバリアー・ギンガハイパーバリアーを展開し、火炎攻撃を無効化させる。

 

 それどころかそのまま押し返して逆にダメージを与える!

 

 

 ヒカル「なんか懐かしいな、この感覚……全身半端じゃねぇパワーを感じるぜ!」

 

 それもそのはず、今回ヒカルは久々に怪獣を経てギンガにライブしたのだから、恐らく一時的に初心に戻っているのであろう。

 

 

 ヒカル「よし、行くぜギンガ!」

 

 

 ヒカルがギンガスパークを構えると同時にギンガも構え、怪獣たちに向かって行く。

 

 

 ギンガはミエゴンの右フックを駆けながらしゃがんで後ろに回り込む形でかわし、それと同時に拳を握った右腕を背中に叩き込んで転倒させる。

 

 

 次にムカデンダーの首を掴む。

 

 ムカデンダーは右腕の鞭を振り回し叩いて離そうとするが、ギンガは即座に右腕に蹴りを打ち込んで防ぎ、両手で頭部の角を掴んでジャイアントスイングで大きく振り回す。

 

 

 「ショオラァァ!!」

 

 

 ギンガはムカデンダーを大きく放り投げ、ムカデンダーは地面に叩き付けられる。

 

 

 ミエゴンは再び殴り掛かる。

 

 ギンガはミエゴンの振ってきた左腕を右腕で防ぐとそのまま腹部に左拳を二発打ち込んだ後一回転しての右腕の手刀を頭部に打ち込み、更に一回転しての右脚の回し蹴りを頭部に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 

 ギンガがミエゴンと戦っている間にムカデンダーは背後から接近する。

 

 

 “ガキーン”

 

 

 “ギエエェェィィィン!?”

 

 

 だが、ムカデンダーは突然ギンガの方から伸びてきた光の槍に胴体を突かれ、爆発と共に怯んで後退する。

 

 

 ギンガは背後のムカデンダーに気付き、即座にギンガスパークランスを召喚したのだ!

 

 

 二体は前後からギンガに襲い掛かろうとするが、ギンガは両手でギンガスパークランスを自在に振り回して牽制し、そしてムカデンダーの胴体に右足蹴り、ミエゴンの胸部にランスの穂先突きを同時に決める。

 

 その後再びランスを振り回して二体に斬撃を決め、炸裂するとその部位から爆発と共に火花が飛ぶ。

 

 

 そしてランスを地面に思い切り突きつけ、その勢いで上空叩くジャンプする。

 

 

 ヒカル「ギンガファイヤーボール!!」

 

 

 “ズガガガガガーン”

 

 

 そして上空でクリスタルを赤に輝かせて拳を振り下ろし、上空から無数に生み出した隕石状の火炎弾・ギンガファイヤーボールを放つ!

 

 二体とも無数の火炎弾を数発受けてダメージを負い、さらに周囲の爆発による爆風により後退する。

 

 

 並の怪獣たちを難なく倒し、ダークザギやモルドスペクターなどの強敵とも互角に戦ってきたほどの戦闘力で二大怪獣相手に戦いを優位に進めるギンガ。

 

 

 その凄さに村人たちは花火どころかほとんどギンガの方に見入ってしまっている。

 

 

 

 海羽「ギンガさん相変わらず凄いけど…これじゃあ花火がもったいないわ………

 

 というわけで、私も加勢しまーす!」

 

 

 海羽が挙手すると共に加勢宣言する。

 

 それを聞いた村人たちは海羽の方に視線を向け始める。

 

 

 「お嬢ちゃん、もしかして…。」

 

 「あんたも行くのかね?」

 

 

 海羽「イエス! はいみなさーん!ちゅうもーく!」

 

 海羽はそう言うと懐からハートフルグラスを取り出す。

 

 

 海羽「レッツ、ジャーンプ!」

 

 

 そしてそれを目に装着すると共に高くジャンプする!

 

 

 海羽は両腕を広げた状態で空高く飛んで行きながら、巨大化しつつ赤とピンクの光に包まれて『ウルトラウーマンSOL(ソル)』の姿へと変わる。

 

 

 海羽「イエーイ!!」

 

 

 “ドーン”

 

 

 現れたソルは上空で爆発する花火を背に大の字ポーズを決める!

 

 人々の視線で見ると、夜空で爆発する色とりどりの花火を背に、鮮やかな色合いの巨人が大の字を決めるその様子はまさに美しい他何もないものであった。

 

 

 「おお…なんと美しい…!」

 

 「あっちは女神じゃ!」

 

 村人たちは口々にその美しさに反応する。

 

 

 しかし、ギンガとソルをそれぞれ神と女神に例えるとは…この村人たちもなかなか面白いものである。

 

 

 ギンガも思わずミエゴンの角を掴んで抑え込んでいるまま見上げてしまっている。

 

 

 海羽「よっと!」

 

 ソルは見事に両足で着地を決める。

 

 ギンガも一旦ミエゴンを投げつけソルの元へ。

 

 

 ヒカル「お前だけ目立ちすぎだろ!」

 

 海羽「(右手を後頭部に当てて)えへへ…。」

 

 ヒカルは軽口で突っ込む。

 

 

 いやいやヒカル(ギンガ)、アンタもド派手な登場からの無双、全身のクリスタルとかなり目立ってるぞ!?(笑)

 

 

 合流したギンガとソルは二体の方を向いて構える。

 

 

 「ああ、神様女神様!どうかこの村を救ってくだされ!」

 

 「頼むー!」

 

 マサ「勝て!勝ってこの村の英雄になるんだ!」

 

 

 ヒカル「へへっ、俺たちが神様と女神様だってさ。」

 

 海羽「英雄になれるなんてなんかそそるわね~!」

 

 

 ミエゴンとムカデンダーもギンガとソル向かって身構える。

 

 二体の様子はまるで「この村に守り神がいたとは…!」と驚いているようにも見える。

 

 

 海羽「そろそろ行っちゃう!?」

 

 

 ヒカル「ああ………この村を、なめるなよっ!!」

 

 

 (BGM:Legend of Galaxy~銀河の覇者)

 

 

 ヒカルの合図の掛け声と共に、男女ウルトラコンビと二大怪獣の戦いの火蓋が切って落とされる!

 

 

 ギンガとミエゴンは互いに土砂を巻き上げながら駆け寄る。

 

 ギンガは駆け寄るスピードも加えた右足蹴りを胸部に叩き込む。

 

 そして怯んだ隙に頭部に右の手刀を決め、続けて左脚蹴りを腹部に打ち込む。

 

 ミエゴンは至近距離から火炎を吹き付けようとするが、ギンガは即座に発射直前で両手で口を掴んで塞ぎ、そのまま後ろ向きになって右腕で首、左手で角を掴んで背負い投げで放り投げる!

 

 

 ムカデンダーを相手するソル。

 

 ムカデンダーの角を右手で掴んで左の拳で頭部に小刻みのパンチを繰り出すが、ムカデンダーの右腕の鞭で叩かれて思わず放してしまう。

 

 ソルは次に「えいっ!」という掛け声で回し蹴りを打ち込むが、ムカデンダーは蹴りを受けると同時に再び首を切り離す。

 

 

 海羽「ひゃっ!? また離れちゃった!」

 

 

 驚くのも束の間、ムカデンダーの胴体が襲い掛かりソルはそれと組み合う。

 

 

 だが、その隙に、

 

 

 “ガブッ”

 

 

 海羽「!!?ギャッ!?」

 

 

 ソルは背後からムカデンダーの首に、なんと尻を噛まれてしまう!

 

 

 海羽「(裏声で)ちょっとっ!? どこ嚙んでんのよっ!!」

 

 ソルは女性故に思わぬところを噛まれた事により、驚くと同時に後ろ蹴りで首を蹴り放し、その後振り向いて顔面にビンタをかましてさらに蹴り飛ばす。

 

 蹴り飛ばされた首は吹っ飛び崖に激突する。凄い威力である。

 

 

 怪獣も男も、むやみに女の尻を触るものではないのだ(笑)

 

 

 すると、ムカデンダーの胴体が何やら苦しみ始める。

 

 海羽「…んん~?」

 

 どうやらムカデンダーの首と胴体は、切り離れても痛覚や感覚は共有されているみたいだ。

 

 

 海羽「………うふっ。」

 

 

 それに気づいたソル。するとムカデンダーの首を掴み取り、角を掴んで抑え込み、面白半分で「エイ、エイ、エイ…」という掛け声と共に頭部にパンチを連続で打ち込む。

 

 すると、やはり胴体はのたうち回る。

 

 

 海羽「あはは、楽し~!」

 

 

 “子供は残酷”とはまさにこの事なのであろうか?………(笑)

 

 

 面白くなってきたソルは、角を掴んだまま今度は「えい、とうっ!」という掛け声で顔面に尻を二発打ち込み、その後両手で角を掴んで数回大きく振りし「それーっ!」という掛け声で投げつける!

 

 投げ飛ばされた頭部は胴体と激突。くっ付きはしたものの既にムカデンダーはふらついていた。

 

 

 ギンガはミエゴンの右手のパンチを左手で掴んで受け止めると、そのまま引き寄せると同時にカウンターの右肘を胸部に叩き込み、次に右膝蹴りを腹部に決め、その後一回転して右拳を頭部に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 

 再びギンガスパークランスを取り出すギンガ。

 

 ミエゴンは渾身の火炎を噴射して攻撃を仕掛け、ギンガはランスを両手持ちで回転させてそれを防いでいく。

 

 ギンガはそのまま接近していき、やがて目前まで接近するとランスの先端を腹部に突き立てる!

 

 

 ヒカル「っしゃあ、怪獣の一本釣りだぜー!!」

 

 

 そしてそのまま頭上高く持ち上げ、そしてランスを振るって空高く放り投げる!

 

 ギンガもランスで地面を突いて棒高跳びの要領で高く飛び上がる。

 

 

 ヒカル「ギンガサンダーボルト!!」

 

 

 ギンガは上空でクリスタルを黄色に輝かせ、頭上に発生させた雷の渦を右手に集めて電撃光線・ギンガサンダーボルトを投げつける!

 

 電撃光線を受けたミエゴンは大ダメージを受けたまらず地面に落下する。

 

 

 二大怪獣が怯んでいる隙にギンガとソルは合流する。

 

 

 そんな二人を見上げた時、マサは何かを思い出す。

 

 マサ「そうか………思い出したぞ。あの伝説の続きを………!」

 

 そう、彼が紙芝居のネタにもした、ここ八幡那須岳村の伝説の続きを思い出したのだ。

 

 

 それは、やがて村人でも敵わなくなり、完全に希望が断たれそうになったその時、

 

 村人たちの献身な祈りが通じたのか、突然黒雲に晒されていた空から一筋の光が降り注ぎ、その中から二人の光の巨人が現れ、二体の怪物を封じ込めたのだという。

 

 それにより、村には束の間の平和が訪れたというのだ。

 

 

 そして村人たちはその二人の巨人を、神と女神の化身と見たのである。

 

 

 マサ「まさにあの二人こそ、その神と女神の再来かもしれね。」

 

 

 ヒカルと海羽のこの村への来訪、そしてギンガとソルという光の巨人の登場により、マサは何かしらの運命を感じたのかもしれない………。

 

 

 

 ミエゴンは反撃のために、再び透明化しようとする。

 

 

 ヒカル「また見えなくなる気かっ!?」

 

 

 だが、またしてもミエゴンは妙な動きと共に透明化が止まる。

 

 すると、ミエゴンの背後から、ミエゴンを羽交い締めにした状態で一体の怪獣が現れる!

 

 

 先ほどもミエゴンの透明化を防いだ者だ。

 

 

 今度ははっきりと姿を現したため、村人たちにもその怪獣が見えた。

 

 

 「あ、あれはっ!」

 

 「間違いねえ!」

 

 

 村人たちはその怪獣を見て何やら反応をする。

 

 

 マサ「ゴルバゴス………奴が出て来たと言うのか!?

 

 滅多な事では出て来ない奴が!?」

 

 

 その怪獣の正体は『透明怪獣ゴルバゴス』。

 

 

 この世界では、八幡那須岳村の隣の山・大熊地獄ヶ岳に生息しており、特に暴れる様子もなく大人しく生息している怪獣である。

 

 そのためその存在を知っている村人たちからは唯一無害な怪獣と見なされていたのである。

 

 

 しかし、夜行性であるとはいえ常に大熊地獄ヶ岳に過ごしているため、そんなゴルバゴスが山から村へ降りて来るのは非常に珍しい事なのだ。

 

 

 マサ「きっと怪獣たちが目覚めたのに気づいて、居ても立ってもいられなくなったに違いねえ!」

 

 

 ミエゴンを抑え込むゴルバゴス。

 

 しかし、ムカデンダーの火球を食らってしまい手を放してしまう。

 

 そして怯んだ隙にミエゴンに投げ飛ばされる。

 

 

 吹っ飛ぶゴルバゴスを間一髪ギンガが受け止め、地面に降ろした。

 

 唐突に現れたゴルバゴス。だが、ヒカルも海羽も特有の直感からか、奴が悪い怪獣ではないという事を悟っているようであった。

 

 ヒカル「誰だか知らねーが、悪い怪獣じゃねーみたいだな。」

 

 海羽「あとは私たちに任せて休んでて!(ピース)」

 

 

 ギンガは数歩前に出る。

 

 するとミエゴンも数歩前に出た。

 

 両者共、決着をつけるつもりである!

 

 

 ヒカル「さあ、勝負だ!」

 

 

 ヒカルは気合を入れる。そしてギンガはクリスタルを青に輝かせ、両腕を前方でクロスさせた後、S字を描くように左右に大きく広げてエネルギーを溜める。

 

 一方のミエゴンも、溢れ出る程に口内に火炎をチャージしていた。

 

 

 ヒカル「ギンガクロスシュート!!」

 

 

 ギンガは腕をL字型に組んで必殺光線・ギンガクロスシュートを放ち、対するミエゴンも渾身の火炎を噴射する!

 

 ギンガの光線とミエゴンの火炎は激しくぶつかり合う。ミエゴンは負けじと更に力を込めて火炎の火力と勢いを上げていく。

 

 

 ヒカル「例えどんなに力を上げていっても…ギンガはその上をいくぜっ!!」

 

 

 ヒカルがそう叫ぶと同時にギンガは力を入れ、光線の威力を上げていく。

 

 ギンガクロスシュートはミエゴンの火炎は次第に押していき、やがてミエゴンの体を直撃する。

 

 光線の直撃を受けたミエゴンは大爆発して砕け散った。

 

 

 残ったムカデンダーは怯まずギンガとソル目掛けて火球を連射し始める。

 

 ギンガは咄嗟に右手を突き出してギンガハイパーバリアーを展開してそれを防いでいく。

 

 

 海羽「イエーイ!!」

 

 

 その間にソルが、ギンガの股下からスライディングしながらムカデンダーに突っ込んでいく!

 

 

 海羽「ソリッドライトブレイク!!」

 

 

 そしてそのまま赤とピンクの光・ライトニングハンドを纏わせ、ソリッドライトブレイクですれ違いざまに胴体を斬りつける!

 

 ムカデンダーは切り口から赤とピンクの光を溢れさせながら数秒苦しんだ後、大爆発して砕け散った。

 

 

 ムカデンダーを撃破したソルは右手を握ってそれを下顎に当て、首をかしげてポーズを決める。

 

 

 見事、二大怪獣を撃破した二大男女ウルトラ戦士。

 

 彼らは正に、この村にとっては予期せぬ救世主であるだろう。

 

 村人たちも、礼を言いつつ平和が戻った事を喜び合う。

 

 マサ「ありがとう………ヒカル、海羽。」

 

 

 

 一方、先ほど何やら怪しげな会話をしていた若者二人も………、

 

 ???「ふっふっふ…やはり凄まじい力だな。あれほどの力があればきっと………。」

 

 ???「しかしよお、本当に実行する気かよ?」

 

 ???「何言ってんだ。ここまで来たんだ、やるっきゃねーだろ!」

 

 

 

 ヒカル「やったな、海羽!」

 

 海羽「うん、そうだね!イエイ!」

 

 ギンガとソルも合流してハイタッチを決める。

 

 

 

 ………だが、その隙に彼らを背後から狙う者がいた。

 

 

 なんと、先ほど撃破されたムカデンダーは完全に撃破されておらず、首だけが残っていたのである!

 

 

 ムカデンダーの首は虎視眈々とギンガとソルを狙い、そして一気に飛びかかり始める!

 

 二人ともそれに気づいていない。危うし!

 

 

 が、その時、突如横から火炎弾数発が飛んで来て、ムカデンダーの首に直撃する。

 

 ムカデンダーの首は大爆発し、その爆発にギンガとソルは思わずビクッと驚き後ろを振り向く。

 

 

 そこには、両腕を振り上げて立っているゴルバゴスの姿があった。

 

 ゴルバゴスはムカデンダーの首の生存にいち早く気付いていたため、ギンガたちに飛び掛かる寸前に口からの火炎弾で撃破したのである。

 

 

 ヒカル「ナイスショットだ!(サムズアップを決める)」

 

 海羽「ありがとね。ゴバちゃん。(首をかしげてピース)」

 

 ヒカルと海羽は、自分たちを助けたゴルバゴスに礼を言う。

 

 

 しかし“ゴバちゃん”とは………ゴモラに対して“ゴモちゃん”といい、海羽は怪獣に対して実に面白いあだ名を付けるのもである(笑)

 

 

 因みに先ほどゴルバゴスが決めると同時に、花火大会の方も最後の大きな一発が夜空で鮮やかに大爆発していた。

 

 

 

 ヒカルと海羽は変身を解き、マサたち村人たちと合流する。

 

 

 「いや~ホントに何とお礼を言えばいいのか。これで孫娘も安心して遊びに来れる。」

 

 「このご恩は一生忘れません。ホントにありがとうございます。」

 

 村人たちからは嬉しさに満ちたお礼の言葉が飛び交う。

 

 

 ヒカル「いやいや、俺たちの方こそ、あなた達が無事で何よりですよ。」

 

 海羽「これで、息子さんや娘さんとも安心して会えますね!」

 

 マサ「本当だよ。お陰でこれからは孫娘とお盆、正月と会える日が増える。非常に嬉しいものだよ。

 

 君たちは本当に神と女神だ!ははははは…。」

 

 マサは気さくにヒカルと海羽の間に入り、二人の肩に腕をまわす。

 

 ヒカル「(照れくさそうに)そんな…俺たちが神だなんて。」

 

 海羽「いんじゃないん?だった私たち、この村を守ったんだもん!」

 

 三人は笑い合った。

 

 

 海羽「ところで、さっき現れたもう一体の怪獣って…?」

 

 マサ「ああ、ゴルバゴスは昔から隣の山・大熊地獄ヶ岳に住んでいる怪獣でな。とっても大人しい奴なんだ。」

 

 ヒカル「この世界にも、人間と共存している怪獣がいたんですね。」

 

 

 マサ「………だが今回、そんな奴がわざわざ山から降りて来るとは………非常に珍しい事なんだよ。

 

 それに最近もやけに気性が荒くなった気がしてな。先日も夜中、不気味な唸り声が聞こえると共に謎の山崩れが起こったんだが、ありゃあきっとゴルバゴスの仕業に違いねえ。唸り声が奴の鳴き声にそっくりだったんだ。」

 

 

 ヒカル「………そう言えばさっき戦いが終わった後、山の方へと帰って行きました。それも何やら慌てるように。」

 

 海羽「そう言えば確かに。普通邪魔な敵がいなくなれば、安心して大人しく帰っていくはずなのにね。」

 

 ヒカルも海羽も、先ほどの戦いの際にゴルバゴスの様子のおかしさに僅かながら気付いていた。

 

 

 果たして、普段大人しいはずのゴルバゴスの妙な様子の変化の原因とは一体何なのであろうか………?

 

 先ほど慌ただしく山に帰っていく様子から、もしかしたら奴の棲み処でもある大熊地獄ヶ岳で何かが起こっているのかもしれない………………?

 

 

 何はともあれ、とりあえず八幡那須岳村に完全なる平和が訪れた事を、村人たちはヒカルと海羽とともに喜び合った。

 

 

 

 花火大会も終わった事により、村人たちによる後片付けが始まり、賑やかだった雰囲気も徐々に冷めていく………。

 

 

 海羽「あ~あ、もう終わっちゃうか………寂しくなるね。」

 

 ヒカル「まあこの村に平和が戻った事だし、来年からはもっと楽しめるかもしれねーぞ?」

 

 海羽「ああ、そうか!その時は今年以上に大歓迎されそうだな~ 

 

 『天使降臨』って感じで。」

 

 ヒカル「ははは、その時は櫂さんたちも誘ってみるか。」

 

 二人は早くも来年への想像の話で盛り上がっていた。

 

 

 ヒカル「さてと寝床はどうしよっかな~…。」

 

 

 その時、

 

 

 明人「あの~…。」

 

 

 ヒカル「ん?」

 

 海羽「ほえ?」

 

 突然、一人の若者が話しかけてきたのに気付く。

 

 

 振り向いてみると、そこには二人の若者がいた。

 

 先ほど観戦しつつ妙な会話をしていた男2人組である。

 

 

 明人「寝床に困ってるんですか?」

 

 

 ヒカル「え?………ああ。夜もそろそろ更けるころだし、山中だから今から街に戻るのも危険かなと思って…。」

 

 突然話しかけてくる青年・賢にヒカルは困惑しつつも答える。

 

 

 海羽「もしかして、あなた達も寝床に困ってるの?」

 

 明人「い、いえ。良かったら俺たちと一緒にどうかな~っと思って…。」

 

 

 海羽「え?(目を輝かせて)もしかして泊めてくれるの!?」

 

 輝雄「はい。僕たちこの近くの河原でキャンプをやってるんですよ。」

 

 海羽「はああ~!夏にキャンプかー。ワクワクもんだ~!!」

 

 ヒカル「いいんですか?俺たち二人も泊めてもらって…。」

 

 明人「いいですよ。俺らのテント割と大きいんで。」

 

 輝雄「4人なんて余裕で入りますよ。」

 

 ヒカル「そっか………んじゃ、お言葉に甘えて。」

 

 海羽「(敬礼をして)今夜だけ、お邪魔しまーす♪」

 

 

 明人「俺は明人だ。よろしく。」

 

 輝雄「僕は輝雄。」

 

 

 かくして、ヒカルと海羽は突如現れた親切な二人・明人と輝雄のキャンプに泊めてもらう事になった。

 

 

 ヒカルと海羽を自分たちのキャンプ場へと案内する二人。

 

 だが、その間に何やら妙な会話をしていた。

 

 

 輝雄「ホントに上手く行くんだろうな?明人。」

 

 明人「ったく心配性だな~。とりあえず誘う事には成功したんだ。あとは此奴らが寝付くのを待つだけだよ。」

 

 輝雄「…んまあ、賢がそう言うなら…。」

 

 

 明人「それに………あいつのためでもあるんだしな…!」

 

 

 果たして、賢の言うあいつとは一体何者なのであろうか………?

 

 そして彼らは一体何を企んでいるのであろうか………?

 

 

 そんな事を知るはずもないヒカルと海羽は、彼らの案内でキャンプ場へとたどり着く。

 

 たどり着いた河原はとても広く、周りには様々な色のテントがいくつか建てられていた。

 

 

 海羽「わ~!とても広いし空気も美味しい!」

 

 ヒカル「そうだな。なんだか何処か懐かしい感じだぜ。」(初めてギンガとして戦っていた時も、こうして学校にテントを建てて寝てたっけ…)

 

 

 ヒカル達は早速賢たちのテントに案内される。

 

 他のよりも一回り大きい緑色のテントだった。

 

 

 そして、時間も時間という事もあり、僅か数十分程四人で度他愛も無い話をした後、ヒカル達は寝付いた。

 

 

 ヒカル達が寝付いたのを確認すると、輝雄は明人に知らせに行く。

 

 輝雄「完全に寝付いたみたいだ。」

 

 明人「そうか。よっぽど戦い疲れてんだな。ぐっすり寝てやがるぜ。」

 

 

 すると明人と輝雄は少し離れた茂みの方へと向かって行く。

 

 そしてそこに向かって声を掛け始める。

 

 

 明人「(右手を口元に添えて若干小声で)おーい、もう大丈夫だぞー。」

 

 

 すると、その茂みの中からなんと一人の青年が出てくる。

 

 

 賢「ふんっ、どうやら順調に進んでいるようだな。」

 

 輝雄「いよいよ作戦は最終段階だぜ?本当にやるのかよ?」

 

 賢「当ったり前だ!あいつらを救うには、もうこうするしかないんだよ!」

 

 

 明人・輝雄「しーっ、しーっ。(テントを指差して)起きちゃうよ。」

 

 

 賢「あ、いけねえいけねえ。

 

 んじゃあ、さっさと取り掛かるぞ。」

 

 

 彼の名は『古田 賢』(ふるた けん)。明人と輝雄との協力で結構している企みとは一体何なのであろうか………?

 

 

 その企みは、遂に最終段階へと突入する!

 

 

 テントの中でぐっすりと寝付いているヒカルと海羽。

 

 

 すると、賢がテントにこっそりと侵入し、何かを探すように辺りを見始める。

 

 そして、何かに目が付いたのか、賢はヒカルに向かってそーっと手を伸ばし始める。

 

 

 賢が光るから奪い取った物。それはなんとヒカルの腕に付いていたウルトラフュージョンブレスであった!

 

 

 ウルトラフュージョンブレスを抜き取った賢は、「ついにやったぞ。」とばかりに不敵な笑みを浮かべる。

 

 

 すると賢は、続いてある物に気付く。

 

 

 それは、横になって寝ている海羽の胸のポケットからはみ出ているハートフルグラスであった………………。

 

 

 

 翌朝、テントの入り口のチャックの隙間から射し込む日差しを顔に受けてヒカルと海羽は目覚める。

 

 

 ヒカル「んん……あああ~(←所謂あくび)。よく寝たぜ。」

 

 

 上半身を起こして背伸びをするヒカル。それに続き、『二次元怪獣ガヴァドン(A)』の抱き枕を抱えて寝ていた海羽も目を覚まし眠たそうに起き上がる。

 

 

 海羽「ふぁぁぁ~…やっぱケーキは苺ショートだよ…。」

 

 ヒカル「へへっ、美味しい夢でも見てたのか?」

 

 

 ヒカルは外に出て、背伸びしながら朝の空気を吸う。

 

 木の葉は日差しを浴びて艶を出しており、川面も朝の日差しで揺らめきながらキラキラ光っている。

 

 

 ヒカル「やっぱ朝の自然の空気は美味いぜっ!」

 

 

 ヒカルはそう言いながらふとウルトラフュージョンブレスを付けている左腕を見つめるが………、

 

 

 ヒカル「………あれ………………?」

 

 

 何やら左腕を見つめて妙な反応をする。

 

 次に上着・ズボンのポケット、上着の下、ズボンの中などを探る………。

 

 

 ヒカル「………ない………………ウルトラフュージョンブレスがない!!」

 

 

 なんと、いつも左腕に付けている筈のフュージョンブレスがなくなっていたのだ!

 

 

 すると、

 

 

 海羽「大変だ大変だ大変だ~~~~~~!!!」

 

 

 テントの方から海羽が騒ぎながら全速力で駆けて来る。

 

 

 ヒカル「う、おおい、どうしたんだよ!?」

 

 

 ヒカルはそのままぶつかって来る海羽をなんとか受け止める。

 

 

 すると、海羽はそのまま泣き出してしまう。

 

 

 ヒカル「どうしたんだよ!?」

 

 

 

 しばらくすると海羽は落ち着き、事情を話す。

 

 なんでも彼女も、ハートフルグラスを無くしてしまったらしい。

 

 

 海羽「朝起きたら胸のポケットに入れてたはずのハートフルグラスが無くなってたの。 はぁ~…ガチしょんぼり沈没丸…。」

 

 

 ヒカル「海羽もか。実は俺も、ウルトラフュージョンブレスがどっか行っちまってな。」

 

 海羽「一体どういう事だろう………二人とも大事なアイテムを無くしちゃうなんて………。」

 

 

 突然、ウルトラマンとして戦うのに大事なアイテムを同時に無くしてしまった二人。

 

 

 ヒカル「あれがないとギンガビクトリーになれないのに………チクショウ、ショウに何て言えばいいんだよ!?」

 

 海羽「私も………大事な使命を果たすために手に入れたソルの力なのに………。」

 

 

 ヒカル「大事な使命? 海羽がウルトラの力を手に入れたのは、何かワケがあるのか。」

 

 海羽「ええ………前までは忘れてたのに、なんだか最近、ちょとずつ思い出してきているような気がするの………………。」

 

 ヒカル「大事な使命………それは一体………?」

 

 

 海羽が気になる事を呟いたその時、

 

 

 斎木「おっ?久しぶりだな!ヒカル!」

 

 

 突然話しかける声が聞こえ二人は振り向く。

 

 

 そこに立っているのは、軍隊のような服を着込んでいてがたいが良く、逆立った髪型をしており、顔には十字の傷が刻み込まれているのが特徴の男。

 

 

 そう、彼こそかつてヒカル達、そしてウルトラマングレートとの交流を経て、仲間と協力することでの本当の強さを知り、そしてヒカルとショウと共に宿敵・キングギドラを倒した軍人の男『斎木和寿』である!

 

 

 ヒカル「おお!斎木さん!お久しぶりです!」

 

 海羽「これはこれは、予期せぬ再会………。」

 

 

 斎木「こんなとこで会うとは奇遇だなー。

 

 元気にしてたか?」

 

 

 ヒカル「はい、もちろん。」

 

 海羽「この通りー!………と言いたいとこだけど、今はちょとね………。」

 

 斎木「ん?どうしたんだい?」

 

 

 ヒカルと海羽は斎木にも事情を話した。

 

 斎木「それは困ったな~………ウルトラマンになるためのアイテムを無くすなど…。」

 

 

 ヒカル「………?そう言えば、今朝あの二人(賢と輝雄)見かけないな。」

 

 海羽「そう言えばそうだね………はっ、まさかあの人たちが!?」

 

 ヒカル「ははは、まさか。俺たちを寝かしてくれたいい人たちだぜ?その人たちが、人の物を盗むなんて。 きっと山菜か何かを取りに行ってるんだよ。」

 

 

 ヒカルがそう言ったその時、

 

 

 斎木「ん?なんかテントの中に紙切れが一切れあるぞ?」

 

 

 斎木が何かに気付いて指差す方をヒカル達も振り向く。

 

 そこには、ヒカル達が寝たテントの中に、何やら妙なボロボロの紙切れが一切れ落ちていた。

 

 

 早速ヒカルがそれを拾って見てみると、そこには妙な何やらひらがなと誤字だらけの汚い手書きの文字が並んでいた。

 

 

 ヒカルはそれを読んでみる。内容はこんな感じだった。

 

 

 『ぐっすりおねんねの二人に告ぐ。 紗(正:妙)なブレスレットとサングラスはわれわれフルータ星人が与(正:預)かった。 ついでに若もの二人もあずかっている われわれからのじょうけんを授(正:受)けよ。 われわれにはどうしてもブレスレットとサングラスがひつようだ。 このじょうけんをのんでくれるなら二人をかえそう。 しかしことわるのなら二人のいのちはない。 こたえは大熊じごくが岳で(正:待)っているぞ。』

 

 

 ………これは完全なる脅迫状だった!

 

 しかもひらがな&誤字だらけという事もあって、間違いなく宇宙人『フルータ星人』が手書きで書いたものなのであろう。

 

 

 いきなりの脅迫状に、三人とも驚きを隠せなかったが、一方で困惑も少しあった。

 

 ヒカル「フ………フルータ星人?」

 

 ヒカルは、聞いたこともない妙な星人の名前に少し困惑気味だ。

 

 

 一方で熱血漢の斎木は怒りを露わにしている。

 

 斎木「くっそー!やっぱりそうだ!」

 

 

 海羽「え?斎木さん何か知ってるんですか?」

 

 斎木「いや実は俺、コックピットのレーダーで謎の反応をキャッチしてな。それを追っていく内に、この山に辿り着いたと言うワケなんだ。」

 

 

 ヒカル「じゃあ、そのフルータ星人って奴が、この山で何か暗躍しているという事ですか?」

 

 

 海羽「もしかして、昨日のゴバちゃんの様子がおかしかったのも………フルータ星人の仕業!?」

 

 

 斎木「間違いねえ…!」

 

 

 こうして、三人の意思が一致した。

 

 

 斎木・ヒカル・海羽「フルータ星人、許すまじ!!」

 

 

 炎を背景に、フルータ星人への怒りを燃やす三人(笑)

 

 

 ヒカル「とにかく、まずはその大熊地獄ヶ岳に向かいましょう。」

 

 斎木「ああ。俺は近くに止めている戦闘機で先に行っておく。ヒカルと海羽ちゃんも気を付けるんだぞ。」

 

 海羽「オッケーですキャプテン!」

 

 

 こうして、斎木は近くに止めていた戦闘時『F-15Jイーグル』で先に大熊地獄ヶ岳に向かい始める。

 

 どうやらキングギドラとの戦いで大破した自身の機体は直ったみたいである。

 

 

 ヒカルと海羽も斎木を見送った後、大熊地獄ヶ岳に向かおうとする。

 

 ヒカル「よし、俺たちも行くぞ海羽。」

 

 海羽「オッケー!」

 

 

 その時、

 

 

 マサ「おお、ヒカル君に海羽ちゃんじゃないか!」

 

 

 突然ここ河川敷に投網を持ってやって来たマサが話しかける。

 

 マサは夏には毎朝ここ河川敷に魚を捕りに来るのである。

 

 

 ヒカル「マ……マサさん!? おはようございます。」

 

 海羽「ご………ご無沙汰しています~。」

 

 

 マサ「こんな朝早くにどこに行くのかね?」

 

 

 ヒカル「い、いや~…俺たちはちょっくらそこら辺を散歩して、それから帰ろうと思っていまして…。」

 

 マサに問われたヒカルは、それっぽい事を言って何とか誤魔化す。

 

 

 そして慌てていた故か、一人称が“僕”になってしまっている。

 

 

 マサ「そうかー………もう帰っちまうのか………折角仲良くなったのに…。」

 

 マサはどこか残念そうに反応する。

 

 

 海羽「だ…大丈夫ですよ!私たち、また遊びに来るから!」

 

 ヒカル「そう!今度はもっと仲間を連れて来ますよ!」

 

 

 マサ「………本当か?なら、次合うのが楽しみだな。んま、気を付けるんだぞ。」

 

 

 ヒカル「は、はい。マサさんこそこれからもお元気で。」

 

 海羽「お元気で。」

 

 

 かくして、ヒカルと海羽は手を振りながらマサと別れを告げ、大熊地獄ヶ岳へと向かい始めた。

 

 奪われたフュージョンブレスとハートフルグラスを取り戻すために、その奪ったフルータ星人に怒りを燃やして………。

 

 

 ヒカル「チクショウ、フルータ星人め、ギンガクロスシュートでぶっ飛ばしてやる!」

 

 

 海羽「人の物を勝手に奪うなんて、許せないんだから!

 

 ………それに………あれ(ハートフルグラス)は、私がどうしても必要な物なの………………ある大事な使命を果たすための………………。」

 

 

 そう言いながら海羽の脳裏に様々な光景が混ざり映る。

 

 

 理不尽にいじめに遭う男、自殺をしようとするその男とそれを止めようとする海羽、その男が何やら黒と紫の光を溢れさせながら叫ぶところ、そして、自身の前に立ちはだかる一人の闇の巨人………………などなど。

 

 それらを浮かべていると、自然と海羽の表情は少し沈んでいた。

 

 しかし、海羽はすぐさま正気に戻り、奪われた変身アイテムを取り戻すために山へと向かい続ける。

 

 

 果たして二人は無事に変身アイテムを取り戻すことが出来るのであろうか………?そして、ソルの力を授かった海羽の使命とは一体何なのであろうか………………?

 

 

 

 一方、大熊地獄ヶ岳へと続く道の別の場所で。

 

 

 明人「ひっひっひ!!ついにやったな賢!」

 

 輝雄「これでなんとか行きそうだね!」

 

 賢「ああ!協力してくれてありがとな!」

 

 

 何かと嬉しそうに話しながら道を駆ける三人。

 

 

 それも、明人の腕にはウルトラフュージョンブレスが付けられており、輝雄の手にはハートフルグラスが握られているのだ!

 

 

 そう、変身アイテムを奪ったのはヒカルと海羽をキャンプに泊めた彼らだったのである!

 

 

 あの脅迫状も賢が手書きで書いたものであり、わざと汚い字でひらがな&誤字だらけの文字を並べることで、いかにも宇宙人が書いたような感じにしたのであろう。

 

 

 名前の“フルータ星人”も、恐らく賢の苗字“古田”から来ているのであろう。何とも安直な考えである(笑)

 

 

 輝雄「しかしホントに良かったのかな~………仮にも彼らは隣の村を守った英雄なんだぜ?」

 

 

 賢「バーロー!今更なに言ってんだ! せっかくここまで来たんだ。あとは無事に事を済ますだけだ!」

 

 

 輝雄「でもさあ、仮にこの奪った変身アイテムで変身できなかったらどうすんだよ?」

 

 

 賢「心配すんな。そのために脅迫状を書いたんじゃないか。 多分あいつらはあの脅迫状を読み、俺たちを追って来るだろう。 仮に変身できなくても、その時は追って来たあいつらにこいつらを返せばいい話だ!」

 

 

 なんとも身勝手な奴らである………。

 

 

 賢「………それに………………あいつを救うためでもあるんだしな………………。」

 

 

 果たして、賢が救おうと考えているあいつとは一体誰なのであろうか………………?

 

 そして彼らは奪った変身アイテムを使って何をしようとしているのであろうか………………?

 

 

 

 そしてもう一方で、斎木やヒカル達の他にも大熊地獄ヶ岳へと向かっている者たちがいた。

 

 

 飛行しているのは、ZAP SPACYの大型宇宙輸送船『スペースペンドラゴン』。

 

 レイとヒュウガもまた、謎の反応を感知して大熊地獄ヶ岳へと向かっているのである。

 

 

 レイ「ボス、到着時間はあとどれくらいだ?」

 

 ヒュウガ「このスピードで行けば、ざっと二時間ぐらいだな。」

 

 レイ「分かった。万が一のために、到着までにゴモラ達を休ませておく。」

 

 ヒュウガ「おお、この反応は思った以上に大きい。今回もあまり無理するなよ。」

 

 レイ「分かってる………。」

 

 

 レイはそう言うと、取り出したネオバトルナイザーのディスプレイを見つめる。

 

 

 自身のパートナー怪獣のゴモラ、リトラ、そして先日新たに仲間にしたゾアムルチの元気そうな姿が映される。

 

 

 レイ「これからもよろしくな、ゴモラ、リトラ。

 

 そして、ゾアムルチも。」

 

 三体は元気よく鳴き声を上げて返事をする。それを見たレイはふっと笑顔になった。

 

 

 ペンドラゴンは大熊地獄ヶ岳向かいスピードを上げて飛んで行く………。

 

 

 謎の秘境・大熊地獄ヶ岳へと向かう若者たち。そこに待ち受けるモノとは一体何なのであろうか………………?

 

 

 

 [エピローグ]

 

 

 ヒカル達が大熊地獄ヶ岳へと向かっているほぼ同じ頃、霞ヶ崎にて。

 

 

 この日櫂は真美と二人っきりでお出かけする約束をしていたのだ。

 

 待ち合わせの公園で真美を待つ櫂。

 

 

 櫂「真美のやつ意外と遅いな~………きっと寝坊してんだろうな。あいつ、ここんとこボランティアとかで忙しい感じだったし。」

 

 いつもの様に恐ろしい本性を隠し、良人モードでフランクに話す櫂。

 

 そんな櫂を、ゼロはどこか複雑な表情をするように見つめていた。

 

 

 櫂「それでこそ、今回はあいつにとって最高の息抜きにしてやんねーとな。

 

 なあ、ゼロ。」

 

 ゼロ「え?………あ、ああ。」

 

 

 フランクに話しかける櫂に、ややぎこちない返事を返すゼロ。

 

 

 真美「お待たせ~櫂君。」

 

 

 その時、真美がやって来た。

 

 

 櫂「お、よう、真美。」

 

 

 “ドクンッ”

 

 

 櫂「い˝っ!?!?」

 

 

 後ろから真美に話しかけられた瞬間、櫂の心臓が大きく振動する。

 

 

 真美「ごめんね~…ちょっと寝坊しちゃって。化粧水塗ってたりしてたら時間かかっちゃった。」

 

 櫂「はは、やっぱりな。まあここんとこお前お疲れって感じだったしな。

 

 今日は楽しもうぜ。」

 

 真美「(満面の笑顔で)うん、そうだね。」

 

 

 合流した櫂と真美は歩き始める。

 

 

 真美の満面な笑顔を見る櫂は、ひっそりと不敵な笑みを浮かべる。

 

 櫂(そう………今日は真美と二人っきり………………誰にも邪魔させないし、誰にも真美に手を出させない………………もしそんな奴がいるのなら。俺が潰すまでだ………………!

 

 

 なんせ真美は、俺の女になるかもしれない女だしなぁ………ふふふふふふ~…。)

 

 

 真美と楽しそうに歩く櫂を見ているゼロは、何やら一人呟いていた………………。

 

 

 ゼロ「………やはり、櫂の本性は、真美は知らない方が幸せなのかもしれない………………。

 

 もし知られてしまえば、それこそ櫂は精神崩壊を起こして暴走しかねないし、それに真美も相当ショックを受け、最悪再起不能な状態までになってしまうかもしれないしな………………。

 

 少なくとも真美と海羽は、櫂は邪気の無い、素敵な好青年としか思っていないのだから………………。」

 

 

 櫂の本性を知らせない方が櫂のためであり、また、真美や海羽のためでもあると考えていたのである。

 

 

 ゼロ「しかし、そうする事無く悪を殲滅しないといけないな………俺も、改めて覚悟を決めるとするか………!」

 

 

 ウルトラ戦士の中でも最強と言われているゼロの力でさえも抑え込むことのできない櫂の強い悪意地。

 

 そこでゼロは、櫂の本性を周り(特に真美と海羽)に知らせる事無く、悪を殲滅させることを決めるのであった。

 

 

 果たしてゼロはこれを達成でき、無事に櫂の支配下でもあるこの状況から抜け出すことが出来るのであろうか………………?

 

 

 櫂「まずは何処から行こっか?」

 

 真美「あ、私見たい服があるんだけどいいかな?」

 

 櫂「おお、いいぜ。」

 

 真美「んじゃ行こうか。」

 

 

 他愛もない話をしながらお出かけに向かう櫂と真美。

 

 彼らの関係も今後どうなってしまうのかも気になるところである………………。

 

 

 To Be Continued………。

 

 

 (ED:Starlight)




 読んでいただきありがとうございます!いかがでしたか?


 今回、ヒカル達が変身アイテムを奪われる展開は前から予定していましたが、それ以外はほぼ私の遊び心で作ってみました(笑)


 ヒカルと海羽ちゃんの新コンビはいかがでしたか?(笑)


 作戦の偽造とはいえ海羽ちゃんの結婚シーンを書いてしまった事を改めてファンの方にお詫びします(笑)


 また今回は怪獣を経てのギンガへの変身、ギンガの回転しながらの登場、ギンガの無双戦闘シーンなど、ギンガ(無印)で見られた描写をいくつか入れてみました。

 因みに私、個人的には無印でのギンガの回転しながらの登場の方が好きだったりします(笑)


 また“フルータ星人”ネタについては、ウルトラマンガイア第35話が元ネタです(笑)(ガイアの中でも特に好きな話の一つでもあります)


 次回は、変身アイテムを奪われたヒカルとギンガのピンチに“あの戦士”が駆け付けます!


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。



 また、隠されたサブタイトルは、

 『天使降臨』(ウルトラマンガイア第49話)

 『予期せぬ再会』(ウルトラギャラクシー大怪獣バトル第10話)

 でした。(登場順)


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第26話「帰ってきた戦友」

 皆さんお久しぶりです!

 すいません、私、今年寮からアパートに引っ越したのですがネットを繋げるのに一か月以上かかった事もあって投稿まで一か月以上かかってしまいました。


 今回は前回の続きで、フュージョンブレスとハートフルグラスを奪われたヒカルと海羽に危機が訪れます!

 その危機に怪獣使いの男、そしてあのウルトラ戦士が駆け付けます!


 因みに今回は四通りの戦闘シーンを書いたのですが、それ故に文字数が今までで一番多くなってしまいました(笑)

 まあとりあえず楽しんでいただけたらなと思います。


 因みにサブタイトルも二つ隠しております。


 それでは、どうぞ!


 とあるショッピングモールのテラスにて。

 

 

 この日、一緒にお出かけに行っている竜野櫂と新田真美は、近くのアイス屋さんで買ったアイスを食べていた。

 

 櫂はブドウ味、真美はチョコミントである。

 

 

 ………だが、櫂は青空を向いて、何やら上の空のようであった。

 

 何か考え事をしているのであろうか………?

 

 

 真美「櫂君?………櫂君?」

 

 櫂「え?あ、ああ、何だ?真美。」

 

 真美に話しかけられた櫂は、ふと反応する。

 

 

 真美「アイス、溶けちゃうよ?」

 

 櫂は真美に指摘されてふと手元を見てみると、いつの間にか溶けているアイスの滴がコーンを伝い自身の手に付いていた。

 

 櫂「ああっ、いけねえ!」

 

 櫂が慌てる中、それを見た真美はふっと笑顔になり、そして指でそのアイスの滴を拭い取って舐めた。

 

 

 真美「(面々の笑みで)ブドウもいいね。 私、今度来たら、櫂君と同じのにしてみよっと。」

 

 櫂「あ、ああ、そうか………。」

 

 

 あどけない笑顔で話す真美。だが櫂はまたしても生返事をした後上の空になろうとしている。

 

 

 真美「何か悩みでもあるの?」

 

 それに気づいた真美が心配して話しかけてみる。

 

 

 櫂「い、いやあ………特に悩みは無いんだけど………ただ……ちょっと………、」

 

 真美「ただ……ちょっと………?」

 

 

 櫂「なんつーか………

 

 今…さあ、………こうやって…一緒にいるじゃん…?」

 

 

 真美「櫂君と私が?」

 

 

 櫂「ああ………いやだから何だってワケじゃないんだけどさあ………なんつーか………

 

 今現在だけじゃなくて…昔っから一緒なわけじゃん………

 

 これだけ一緒にいたら………そろそろ、アレなんじゃないかな………?」

 

 

 真美「あれ?」

 

 

 ぎこちなく回りくどい話し方が続く櫂。真美はあどけない表情で聞き続ける。

 

 だが、一体櫂は何が言いたいのであろうか?………それは我々はもちろん、真美も知るはずもない………。

 

 

 ウルトラマンゼロは、そんな二人のやり取りを、ただ見つめるしかなかった………………。

 

 

 そこに、二人は近くで立ったまま泣いている幼稚園児ぐらいの子供に気付く。

 

 真美「ちょっとごめんね。」

 

 真美は櫂に一言詫びり、一旦席をはずす。そして子供の元に歩み寄る。

 

 

 真美「僕、どうしたの? 何を泣いてるの?」

 

 その子の目線までしゃがんで優しく話しかける真美。すると子供は泣くのが一旦止まり、涙目で真美を見つめる。

 

 

 真美「(アイスを差し出して)これ、食べる?」

 

 

 子供を一旦元気付けようと自身のアイスを付いていたプラスチックのスプーンで一口食べさせる真美。

 

 それも正に、母親が子供に「あーん」と食べさせるように………。

 

 

 一口食べた子供は少し笑顔を取り戻す。

 

 真美「(満面の笑みで)美味し?良かった~。」

 

 

 ………だが、そんな真美の様子を見ている櫂は、更にモヤモヤが募っていく………。

 

 そして、かつて未来からやって来た自身の息子・慧の言葉がまたしてもフラッシュバックする………。

 

 

 慧『いつも優しい母さんが………いつも優しい母さんが………………いつも優しい母さんが………………………。』

 

 

 子供に優しくする真美を見つめている櫂は、その一言が木霊するように脳内に何度も再生されていく………。

 

 

 櫂「間違いない………………絶対に間違いないんだ………………!」

 

 

 すると、真美は子供の手を繋いで立ち上がる。

 

 真美「ごめんね櫂君。この子、この辺で迷子になっちゃったみたいなの。ちょっと探して来るからちょっとゆっくりしてて。」

 

 櫂「お…おぉ、分かった。」

 

 真美は子供を連れて何処かへと歩いて行った………………。

 

 

 その後ろ姿をじっと見つめる櫂。

 

 一体彼は、真美を見て何を思っていたのであろうか………………?

 

 

 ゼロ「………櫂………………。

 

 アイス…溶けてるぞ?」

 

 

 そう、櫂がボーっとしている間に、夏の日差しを浴びて溶けていく櫂のアイスは遂に崩れ始め、コーンを通じて櫂の手にベットリと………!

 

 

 櫂「!?うわ、やっべっ!!」

 

 

 

 (OP:英雄の詩)

 

 

 

 簡単に前回のダイジェスト。

 

 

 謎の反応を感知して、八幡那須岳村を訪れた礼堂ヒカルと眞鍋海羽。

 

 そこで彼らは、その村で伝説の怪物として恐れられていた、狐火怪獣ミエゴンと百足怪獣ムカデンダーを倒して村に平和を取り戻した。

 

 その後彼らは、同じくその村を訪れていた若者二人・明人と輝雄の勧めでキャンプに泊めてもらった。

 

 

 だが、しかし!翌日目を覚ますと彼らの元からウルトラフュージョンブレスとハートフルグラスが無くなっていたのである!

 

 

 残された脅迫状を見た二人は、昨日の透明怪獣ゴルバゴスの異変も含めて謎の宇宙人・フルータ星人の仕業だと確信し、偶然居合わせた男・斎木和寿と共に隣の禁断の山・大熊地獄ヶ岳へと向かう事にした!

 

 

 一方でZAP SPACYのクルーでレイオニクスの青年・レイと同じくZAP SPACYのボス・ヒュウガも、謎の反応を感知し、宇宙船・スペースペンドラゴンで大熊地獄ヶ岳へと向かっていた。

 

 

 そして、脅迫状にフルータ星人を名乗ってフュージョンブレスとハートフルグラスを奪い取った青年・古田賢は、仲間の明人と輝雄と共に大熊地獄ヶ岳へと一直線に向かっていた………。

 

 

 今まさに、それぞれ様々な思い・形で禁断の秘境・大熊地獄ヶ岳へと向かっている若者たち。

 

 

 果たして、そこで待ち受けるモノとは一体何なのであろうか………………?

 

 

 

 昨日、ギンガからのウルトラサインを受けて駆け付けたウルトラマンタロウは、光球に姿を変えて飛行を続けていた。

 

 それは、ある場所へ向かっているようであった。

 

 

 タロウ「微かだが、何やら胸騒ぎを感じる………急がねば。」

 

 

 そう言いつつ飛行を続けるタロウ。

 

 彼もまた、大熊地獄ヶ岳に向かっているのであろうか?

 

 

 

 大熊地獄ヶ岳。そこは、八幡那須岳村から約2、3キロ離れた所にある山地であり、その形状は、大きな湖のような沼がある平地の周囲を囲むように山がそびえ立っている感じである。

 

 

 ………その中でも一際大きい火山状の山・大熊山の頂は、何やら火山のように大きくくぼんでいる。この山が昔は活火山だった名残である。

 

 その頂の窪みが何やら不気味に赤く発光していて、その中から何やら固い物を激しく突くような音が連続で響き続ける………。

 

 はて、大熊山は今では死火山であるはずなのに、今になって再び突然溶岩が煮えたぎってきたのであろうか………?

 

 そして、その中から響く妙な音の正体とは………?

 

 

 さらにそのふもとの沼の傍には、何やら謎の球体が複数転がっており、その沼の近くの低山では何やら銀の城のような巨大な白の結晶がそびえ立っている………………。

 

 

 このように、見るからに不吉な雰囲気漂う大熊地獄ヶ岳。

 

 

 更にその山からは、何やら妙な音が山びこ等を通じて遠くへと響いている。

 

 それはまるで人間の叫びのようにも聞こえる奇妙なものである………。

 

 

 

 その音は、大熊地獄ヶ岳へと向かっている古田賢たちの耳にも聞こえていた。

 

 賢「………聞こえる。………………悲痛の叫びが………………!」

 

 明人「本当だ………やっぱこの山にいるんだな?」

 

 輝雄「賢が見た謎の怪物は………この山にいるという事なのか?」

 

 

 賢「間違いないんだ! 霞ヶ崎と露金渓谷の間の森林以外で湖のある場所は…ここ大熊地獄ヶ岳しかないんだからな………。

 

 それに、愛が怪物にさらわれる前から、この山で怪物を見たという噂が絶えなかったしな………!」

 

 

 輝雄「でも、怪物の存在はネットだけの噂だろ?テレビニュースで放送された情報はあくまでこの山に来た人たちがみんな行方不明になったということなんだし………。」

 

 

 賢「俺は見たんだ!!」

 

 

 輝雄が現実的な突っ込みを入れている時、そんな彼の声を遮るように賢が叫ぶ。

 

 

 賢「………ごめん………いきなり大声出しちゃって………………。

 

 でも俺、実際に怪物を見たんだ………………二日前に、愛と一緒に森林をハイキングしていた時に………。」

 

 

 賢はそのまま二日前の出来事を話し始める。

 

 

 

 〈回想〉

 

 

 二日前、霞ヶ崎と露金渓谷の間の森林をハイキングしている賢とその妹・愛(まな)。

 

 仲のいい兄妹二人は、他愛もない話で笑い合いながら歩いていく。

 

 

 賢「もうちょっとで休憩所の湖に着く。あとちょっとだ愛。」

 

 愛「うん、そこでお昼にしよ!」

 

 

 やがて賢と愛は湖のほとりに着く。

 

 霞ヶ崎付近の森林に一つだけあるこの大きな湖の名は『人食い悪島湖』というなんとも不吉な名前であり、なんでもこの湖に入って帰ってきた者はいないと言われるほどの底なし沼のようであるのだ。

 

 

 賢と愛は湖の近くの岩などを椅子代わりにして座り込み、持参してきた弁当を食べ始める。

 

 

 愛「それにしても、こんなに綺麗な湖の名前に“人食い”なんて、誰が付けたんだろうね~。」

 

 元から明るい性格の愛は輝くような笑顔で呑気にサンドイッチを食べながら話す。

 

 

 賢「さあな。なんでもこの村に以前昔入った人がいて、その人は永久に帰って来なかったと言う言い伝えがあるらしい。

 

 そんな曖昧な昔話から来てるんじゃないかな。」

 

 賢はおにぎりを食べながらどこか胡散臭い由来を話す。

 

 

 愛「へえ~。お兄ちゃんよく知ってるね。」

 

 賢「な~に、ダチがおふざけ半分で俺に言った事だけどな。」

 

 

 賢・愛「はははははは…。」

 

 

 昼を食べながら楽しそうに話し合う古田兄妹。

 

 

 

 だが、そんな仲睦まじい兄妹の時間はたちまち壊される………。

 

 

 

 愛「………あれ?あれ、何かな?」

 

 賢「何だ?」

 

 

 愛は突然何かに気付き湖の方を振り向き、賢もそれに気づいて振り向く。

 

 

 そこには湖の湖面に、何やら二つの不気味な赤い人魂の様な物が浮かんでいたのだ。

 

 

 賢「………何だ?あの妙な光は………。」

 

 賢が湖面の人魂を怪しむ中、愛はその人魂をあどけない表情で不思議そうに見つめている。

 

 

 その時!

 

 

 突如湖面の水が激しく水柱を立てる。

 

 そしてその中から一匹の巨大怪獣が上半身を現す!

 

 

 蛙によく似たその怪獣は『大蛙怪獣トンダイル』である!

 

 

 突然の巨大怪獣の出現に驚き、トンダイルを見上げる賢と愛。

 

 愛「かっ………怪獣!?」

 

 賢「マジかよ………とりあえず早く逃げるぞ!」

 

 

 二人が逃げようとしたその時、トンダイルの真っ赤な目が怪しく光る。

 

 愛「!?きゃああぁぁーーっ!!」

 

 それを見た愛は身動きが取れなくなってしまう!

 

 これはトンダイルの放った催眠光波である。

 

 

 賢「はっ、愛!!」

 

 賢が驚くのも束の間、トンダイルは次に口から球状のカプセルを吐き出した。

 

 これは“トンダイルカプセル”という泡状のカプセルであり、主に餌となる人間を捕える際に使用する他、“破裂弾”として攻撃に使う事もできるのである。

 

 

 カプセルは動きの取れない愛を瞬く間に閉じ込める。

 

 

 愛「お兄ちゃーん!助けて~~~!!」

 

 賢「愛っ!!」

 

 

 賢は急いで愛を助けに行こうとするが、愛を閉じ込めたカプセルは引き寄せられるようにトンダイルの手中に!

 

 そしてトンダイルは湖の中に潜っていき姿を消してしまった………………。

 

 

 突然怪獣が現れたかと思うと、あっという間に以前の平穏に戻った湖………それは、一瞬の出来事であった………………。

 

 その一瞬の出来事の中で、突然妹を連れ去られた賢はその場で呆然とする。

 

 

 賢「………嘘だろ………………。」

 

 

 戸惑いながらも賢は妹が帰って来るのを信じて待ち続けたが、夕方になっても妹どころか怪獣も出てくる様子もなかった………。

 

 

 賢「愛ーーーーーーっ!!」

 

 

 賢の悲しい叫びが、夕方の森林に響き渡った………。

 

 

 〈回想終了〉

 

 

 

 賢「あれから俺は祈り続けたんだ………どうか愛を…妹を返してくれと………。

 

 そしたらテレビニュースで、ここ大熊地獄ヶ岳にも行方不明事件が起こっているという情報を得た………。

 

 それで俺は確信したんだ………ここと愛がさらわれた湖は繋がっていて、あの蛙野郎はそれを利用して人間を次々とさらっているのを………!」

 

 

 賢は拳を強く握り、トンダイルへの怒りを現しながら語る。

 

 それを聞いた明人と輝雄も、彼の言ってることが本当であるように思えてきた。

 

 

 輝雄「そうなのか………なら、大熊地獄ヶ岳に行けば、全てが分かるかもね。」

 

 明人「それに、折角俺たち“フルータ星人”を名乗ってここまで来たんだ。愛ちゃんを助けるためにも、行くしかないっしょ!

 

 それに、賢は昔っからシスコンなんだk…」

 

 

 “スパンッ”(頭にチョップする音)

 

 

 明人「!?あいてっ!」

 

 賢「やかましや!」

 

 

 賢はザックからヒカル達から奪ったウルトラフュージョンブレスとハートフルグラスを取り出す。

 

 賢「………これであの大蛙野郎を………ぶっ倒してやるぜっ!」

 

 

 最も、彼はこれらが素人が扱えるものではないという事を知らないままなのだが………。

 

 

 

 一方のヒカルと海羽も、奪われたフュージョンブレスとハートフルグラスを取り戻そうと大熊地獄ヶ岳へと向かっているのだが………、

 

 海羽「はぁ~…まだ着かないの~?」

 

 アップダウンが激しい山道を走り続けている事でばてて来たのか、海羽は近くの岩に座り込んでため息をつく。

 

 ヒカル「まだ1.5キロ。目的地までもう半分だな。さあ、もうひとっ走りだ。」

 

 海羽「延々と続くアップダウン………(足をバタバタさせながら)もう一歩も歩けない~!!」

 

 

 ヒカル「あ、百足がお前のケツを噛もうとしてる。」

 

 

 海羽「い˝!?ぎゃああああぁぁぁ!!」

 

 

 “ガッ”

 

 

 ヒカル「!!うおあっ!?」

 

 海羽「どこ!?どこなの百足!?」

 

 

 ヒカルの言葉に海羽はその場から叫んで跳びあがり、その勢いでタックルのようにヒカルに跳び付く。

 

 

 ヒカル「な~んだ、草でした~。はははははは…。」

 

 

 ヒカルは笑いながらそこらで採ったねこじゃらしを見せびらかす。

 

 ぐずる海羽を奮い立たせるために、軽くからかっただけなのだった。

 

 

 海羽「(駄々をこねるように軽く連打で叩きながら)んも~バカバカバカ…。」

 

 ヒカル「ははは、ごめんごめん悪かったって。」

 

 

 だが、そんなヒカルのおちょくりのおかげで海羽は再び立つことが出来た。

 

 海羽「でも………ありがとう。なんだかまだ行ける気がしてきたわ。」

 

 ヒカル「お、その意気だ!その調子で、フルータ星人からアイテムを取り戻そうぜ。」

 

 

 海羽「うん、そうだね。それに………ハートフルグラスは、私にしか使えないから………。」

 

 ヒカル「お前にしか………使えない?」

 

 海羽「うん………私ね、ハートフルグラスを失った時、突然思い出したの………………今までは何故か忘れてたのに………。」

 

 突然改まって気になる事を話し出した海羽。ヒカルは思わずそれに聞き入っている。

 

 海羽「私がウルトラの力を手に入れたのは、とある使命のためなの………。」

 

 ヒカル「使命………………?」

 

 

 海羽「とりあえず今は急ぎましょ。あれを取り返さないと、ウルトラマンとして戦えない。」

 

 ヒカル「そうだな。今後現れるかもしれない強敵のためにもギンガビクトリーが必要かもしれないし…。

 

 早くそのフルータ星人って奴をぶちのめそうぜ。」

 

 ヒカルと海羽は再び出発し始める。

 

 

 フルータ星人(正体は賢たちなのだが…)から、奪われた変身アイテムを取り返すために………………。

 

 

 

 そのフルータ星人(笑)はというと、2~3キロの道のりを駆けた後に、遂に大熊地獄ヶ岳に辿り着く。

 

 三人は、自分たちの現在地の大きな沼のある平地を囲む崖、山々の景色を見回している。

 

 

 輝雄「すげえ………実際はこんなにも眺めがいいんだ、大熊地獄ヶ岳は。」

 

 明人「こんなとこにとても怪獣がいるとは思えんがな………。」

 

 賢「間違いないんだ。あの森から次に近い沼がある場所はここなんだから………。」

 

 そう言いながら賢は沼を見つけ、そこを指差す。

 

 賢「ほら見ろ、この大きな沼。いかにも奴が住んでいそうなデカさだ。」

 

 輝雄「でもさあ、こーんなにも大自然に恵まれた山地にそんな物騒なモンがいるなんて、とてもじゃないが信じられないぜ。」

 

 輝雄が呑気に辺りを見渡しながらぼやいていたその時、

 

 

 明人「………ん?」

 

 輝雄「何なんだこれ?」

 

 

 突然、三人はとあるモノが降ってきた事に気付く。

 

 その降ってきたモノとは、何やら白くて粉のようなもので、とても雪に酷似しているモノなのだ。

 

 

 明人「何だか、雪みてーだな。これ。」

 

 明人は体に付いていくその白いものを叩き落としながら呟く。

 

 賢「バカな。今は真夏だぞ?雪なんて降るもんか。それよりも、早く愛を探そうz…」

 

 賢は何かに気付いたのか、いきなり話すのが止まる。

 

 

 賢「………この白い物………何だか硫黄の臭いがするぞ?」

 

 

 降りしきる白い雪のようなモノは、なんと硫黄の臭いがするのだというのだ。

 

 

 その時、

 

 

 輝雄「!!うおあああっ!!?」

 

 

 突然、輝雄が大きな声で驚き、賢と明人もそれに驚く。

 

 明人「何だよ輝雄いきなり…、」

 

 賢「脅かすなよ…、」

 

 

 賢・明人「うわッ!!?」

 

 

 賢たちも、輝雄の方を振り向いた瞬間驚きの声を上げる。

 

 

 三人が唖然として見上げる先………そこには一匹の巨大生物が座って胡坐をかいて眠っている。

 

 

 その巨大生物は頭部の一本角が特徴の恐竜のような外見が特徴の怪獣『凶暴怪獣アーストロン』である。

 

 

 胡坐をかいた状態でいびきをかきながら眠るアーストロンを見上げる三人。

 

 眠っているとはいえ、自分たちの目の前にいるのは巨大怪獣。三人は驚愕を隠せない。

 

 輝雄「たまげたよ………視線を変えたと思えばいきなりコレなんだから………。」

 

 明人「しっかし目の前で見る怪獣は迫力は違うぜ。 眠ってるけど。」

 

 賢「あの蛙野郎ではないが………やはりこの山に怪獣は存在してたか………。」

 

 

 “グルルルルル…”

 

 

 輝雄「うわっ!?」

 

 明人「しっ!大声出したら起きちまうぞ………ん?」

 

 続いて明人は何かに気付く。

 

 彼の視線の先に見えるのは、アーストロンの少し向こうの低山にそびえ立つ何やら銀の城のような巨大な白の結晶であった。

 

 よく見れば、その色は今降っている雪の様なモノと同じである。

 

 

 その時、たまたま上を向いていた賢が何かに気付く。

 

 賢「しっ!二人とも、早く隠れるんだ。」

 

 突然急いで岩陰に隠れ、二人にも隠れるように急かす賢。

 

 明人「なっ、なんだ?」

 

 輝雄「どうしたんだよ賢…。」

 

 二人も賢に疑問を抱きつつ岩陰に隠れる。

 

 

 賢「(空を指差して)あれを見ろ。」

 

 賢に言われ、指差す方向を見上げる二人。

 

 そこには、何やらこちらの方に向かって飛んで来るものが見える。

 

 近づいて来るにつれ、それが何なのかが徐々にハッキリと見えてくる。

 

 

 その姿はプテラノドンに似た外見をしている巨大生物。

 

 

 その生物は『始祖怪鳥テロチルス』である。

 

 

 輝雄「うそ?」

 

 明人「マジかよ…また怪獣かよ………!」

 

 賢「こいつら………あの蛙野郎の仲間と言う事なのか!?」

 

 三人は新たに現れた怪獣を見て困惑の声を上げる。

 

 

 翼を羽ばたかせながらゆっくりと降下し、やがて銀の城に着地するテロチルス。

 

 着地の際の強風は周りの小石や木の葉などを紙屑のように軽々と吹き飛ばしていき、その強風は小石や木の葉と共に賢たちの方へも飛んで来る。

 

 三人は急いで腕で顔を覆いながら小石が当たらないように岩に隠れ見つめる。

 

 

 “ピギイイイギャアアアァン”

 

 テロチルスは銀の城に着地した後、口から雪のような糸を吐き出し始める。

 

 

 それを見た瞬間、賢は目を見開く。

 

 賢「………あれだ!………今降っているこの雪のようなモノは………。」

 

 明人「そうか。あの妙な城も、奴が作った物なんだ。」

 

 

 賢は気づいたのだった。さっきから降っている雪のようなモノ。それはテロチルスが吐いているのモノなのだと。

 

 

 テロチルスはなおも銀の城にガス状の糸を吹き付け続ける。

 

 この銀の城も、恐らくテロチルスの吐き出す糸で作られたモノなのだろう。

 

 

 “グルルルルル…”

 

 

 その時、テロチルスの着地とその際の風の影響か、眠っていたアーストロンが目を覚ましてしまった。

 

 

 “グアアアアオオォン”

 

 

 起き上ると同時に咆哮を上げるアーストロン。

 

 するとテロチルスの方を振り向き何やら吠え続ける。まるで何かを訴えているようだ。

 

 それに気づくテロチルスもそれに応えるかのように吠え続ける。

 

 

 輝雄「あいつら、何をしているんだ?」

 

 明人「何やらいがみ合っているように見えるけど………戦い合いそうな様子はないね。」

 

 賢「あいつら、多分仲間なんだよ。人間で言う会話みたいなもんだ。」

 

 

 賢の言う通り、アーストロンとテロチルスが互いに吠え続けるその光景は、まるで会話をしているようにも見える。

 

 

 ここで、二匹の鳴き声をちょっと日本語に翻訳してみよう。

 

 アーストロン「な~んだよテロチルスか。折角気持ちよく寝てたのによぉ。」

 

 テロチルス「ああ寝てたのか。悪いな、起こしちまって。」

 

 アーストロン「んで、銀の城の方はどうなのよ?」

 

 テロチルス「ああ、いい感じに出来上がっている。そろそろ完璧だ。」

 

 

 “ズドーン”

 

 

 その時、一際大きい火山状の山・大熊山の頂が火山のように大爆発を起こす!

 

 賢たち三人はもちろん、アーストロンとテロチルスも驚きその方を振り向く。

 

 

 アーストロン「来たね?この時が。」

 

 テロチルス「ああ。俺たちが鍛え上げた“アイツ”が、完全に目覚める頃だ。こうしちゃいられねえ。早いとこ銀の城の完成を急がねば…。」

 

 テロチルスが再び銀の城製作に取り掛かろうとしたその時、

 

 

 テロチルス「………聞こえる………何かが飛んでくる音が………。」

 

 アーストロン「ん?俺には何にも聞こえねえぞ?」

 

 テロチルスは音に敏感なところがある。そのため、アーストロンには聞こえなくても彼には何かが聞こえているのだ。

 

 テロチルス「近いな………俺、ちょっくら偵察に行って来るわ。邪魔者かもしれぬ。」

 

 アーストロン「お、おお、気を付けるんだぞ。」

 

 

 ………と、まあ、怪獣語翻訳はこの辺にしておこう。

 

 テロチルスは翼を羽ばたかせ、何処かへと飛び去って行った。

 

 それを見送ったアーストロンは、再び胡坐をかいて眠り始める。

 

 

 はて、彼らが話す“アイツ”とは一体何の事なのだろうか………?

 

 恐らく突然起こった死火山であるはずの大熊山の爆発が関係しているのであろう。

 

 

 その爆発する大熊山の火口では、煮えたぎり飛び散るマグマを背に一匹の巨大生物が背筋の凍るような不気味な雄たけびを上げていた。

 

 

 その怪獣はテロチルスと同じく鳥に似た外見をしているのだが、それよりも一回り大きく、全体的に燃え上がる炎のようなフォルムをしている。

 

 

 そいつは赤いトサカに両頬にある赤い袋、そして何より最大の武器でもある大きく黒い嘴が特徴の鳥型の怪獣『火山怪鳥バードン』である!

 

 

 奴は非常に獰猛な肉食怪獣であり、かつて古代に好物でもある『食葉怪獣ケムジラ』を死滅させたと言われている。

 

 そしてその後大熊山の火口で長い眠りについていたのだが、最近になって遂に目覚めてしまったのであろう。

 

 

 上記のように非常に鋭利な嘴が武器であり、かつて別個体がこれによりタロウ、ゾフィーと立て続けに滅多刺しにして倒した事があるという非常に恐ろしいモノなのである。

 

 

 バードンは雄たけびを上げると、何やら近くの岩場に嘴で突き始める。

 

 嘴の威力は高く、1、2発で岩を容易く砕いていき、その後も連続で撃ち込み続ける。

 

 そして数回嘴を打ち付けた後、大きく羽ばたいてその場から飛び立ち始める。

 

 

 バードンは火口の爆発と共に現れ、賢たち三人もそれを目撃し驚愕する。

 

 

 賢「また怪獣が出たぞ!?」

 

 明人「しかも、またしても新しい奴だ………くそっ…どうなってんだ……ここは怪獣動物園か!?」

 

 輝雄「いや、そんな呑気なもんじゃないよ。恐怖の怪獣魔境だ。」

 

 賢「どっちでもいいっての!」

 

 

 火口から現れたバードン。それに気づいたアーストロンは「待ってました!」とばかりに咆哮を上げる。

 

 バードンもまた、アーストロンやテロチルスと仲間関係なのであろうか?

 

 

 火口から現れたバードンは、そのまま何処かへと飛び去って行った。

 

 

 

 一方、昨夜ヒカルと海羽が平和を取り戻した八幡那須岳村では、バードンは見えないが大熊山の爆発は見えており、村人たちはまたしても不安に駆られていた。

 

 

 そんな最中、

 

 マサ「はっ、思い出したぞ!」

 

 マサが何かを思い出したようだった。

 

 

 「どうしたのかねマサ?」

 

 

 マサ「伝説の続きだよ………

 

 狐と百足の化物は光の巨人により封印されるのだが、その直後に巨大な火の鳥の化物が三匹の怪物を従えて現れ………………

 

 

 巨人は敗れる………と。」

 

 

 思い出した事、それは、村に平和を取り戻したのも束の間、その直後に巨大な火の鳥の怪物が三匹の怪獣を従えて現れ、巨人は敗れるという伝説の続きで会った………。

 

 

 それを聞いた村人たちは不安を募らせ、再び絶望しそうになる人も出始める。

 

 

 しかし、マサは違っていた。

 

 そんな物騒な伝説の続きを語ったにも関わらず、すました顔を見せる。

 

 

 「どうしてそんな顔していられるのかね?」

 

 マサ「………信じてるからさ。奇跡を。」

 

 「奇跡?」

 

 

 マサ「ああ、実際昨日も神と女神が現れ、この村に平和を取り戻したじゃないか。

 

 あの子たちが、またやってくれるよ、きっと。」

 

 

 根拠は無いものの、マサのその言葉を聞いた村人たちはそれを信じ、願い始める。

 

 

 マサ「必ずやってくれると信じてるぞ………ヒカル…海羽ちゃん。」

 

 

 

 その頃、村から少し離れた上空では、

 

 斎木の操縦するF-15Jイーグルがテロチルスと空中戦を繰り広げていた。

 

 

 テロチルスは恐らく優れた聴覚で斎木の戦闘機の接近して来る音にいち早く気付き、先制攻撃を仕掛けて来たのであろう。

 

 

 斎木「くっそ、この鳥野郎!!」

 

 

 斎木はご自慢の操縦テクでアクロバティックに旋回等をしながらミサイルで攻撃を仕掛け、テロチルスも負けじとそれを回避しつつ鼻からの光線で反撃する。

 

 

 斎木「こいつ、フルータ星人の手下だな!?」

 

 

 まだフルータ星人が実現すると思い込んでる斎木(笑)は引き続き攻撃を続行する。

 

 

 普通このような戦闘機は怪獣に撃墜されるのがお約束みたいなものなのだが、優れた腕の斎木が操縦するF-15Jイーグルはテロチルスの攻撃をことごとくかわしていく。

 

 ここまで怪獣と互角にやり合える一般の戦闘機も珍しいモノである。

 

 

 F-15Jイーグルはテロチルスの光線を避けつつ正面から突っ込みながらミサイルを連射していき、やがて機体を逆さにしてすれすれの所ですれ違うように衝突を回避する。

 

 そしてその後に垂直上昇旋回を決めながら真上からテロチルスの背中にミサイルを打ち込む。

 

 

 斎木「っしゃあ!そろそろ止めと行くぜ!」

 

 

 斎木が止めに入ろうとしたその時、テロチルスは一旦上空で静止して翼を羽ばたかせて突風を起こし始める。

 

 流石の斎木の戦闘機も、最大瞬間風速100メートルと言われる突風を受けて徐々にバランスが崩れ始める。

 

 斎木「うあっ!?…くっ、くっそ~!!」

 

 完全にバランスが崩れたところで体当たりでトドメを刺そうと突進を始めるテロチルス。絶体絶命の危機に追い込まれた斎木。

 

 

 “ズガガガガーン”

 

 

 テロチルスは突如、何処から飛んで来た無数のミサイルを一斉に受けて被爆して落下を始める。

 

 

 斎木「………何だ?」

 

 

 斎木が振り向いた先には、一機の宇宙船が駆け付けていた。『スペースペンドラゴン』である。

 

 

 謎の気配を感知して大熊地獄ヶ岳に向かっていたレイとヒュウガ。その最中に偶然テロチルスと戦闘する斎木を見かけて加勢に入ったのであろう。

 

 そして対怪獣用の戦闘機だった頃の名残りでもある武装・ワイバーンミサイルで先制攻撃を仕掛けたのである。

 

 

 斎木「おぉ、何だか知らねーがサンキュー!」

 

 

 初見にも関わらず敵ではない事を察した斎木は軽く礼を言う。

 

 

 ヒュウガ「やはりこの山に怪獣がいたのか!?」

 

 

 レイ「奴は確か…テロチルス!」

 

 

 F-15Jイーグルとペンドラゴンが上空で並ぶ。

 

 斎木「よーし、反撃開始だ!ここからは共闘といこうz…、」

 

 

 その時!

 

 

 斎木「!うおあっ!!」

 

 突如、上空から何かが急降下してきたために二機は咄嗟に回避する。

 

 そしてその急降下してきたモノは、テロチルスが落下した地面に着地する。

 

 

 バードンだ。

 

 

 レイ「更にバードンだと!?」

 

 以前バードンと交戦経験のあるレイはバードンの出現に驚愕する。

 

 

 バードンは着地した後、倒れているテロチルスを起き上らせる。

 

 斎木「何やってんだろ?あいつら。」

 

 レイ「奴らは仲間同士なのか?」

 

 それを見た戦闘機の三人は、二体が仲間関係にある事を察する。

 

 

 すると二体は上空の二機の戦闘機目掛け、テロチルスは鼻からの光線、バードンは口からの火炎・ボルヤニックファイアを噴射する!

 

 斎木「!?うぉあっ!」

 

 二機とも咄嗟に旋回して回避することで事なきを得る。

 

 だが、その隙に二体はそれぞれ違う方向へと飛び去って行った………。

 

 

 斎木「ああっ! チキショウ、、!」

 

 斎木は二体に逃げられた事を悔しがる。

 

 

 とりあえず両者は一旦機体を着陸させて対面する事にした。

 

 

 レイとヒュウガ、そして斉木は初のご対面を果たす。

 

 ヒュウガと斉木は握手を交わした。

 

 斎木「さっきはありがとうございます。お陰で助かりました。」

 

 ヒュウガ「いえいえ、当然のことをしたまでです。」

 

 レイ「それにしても凄い腕だ。あんたも何か防衛チームに属してるのか?」

 

 斎木「そうだな、まあ、防衛軍という程ではないのだが、俺はもともと地球防衛軍の隊員だったが、今は独自のチームで活動してる感じだ。」

 

 ヒュウガ「それにしても貴方も同じ所を目指しているとは奇遇ですね。」

 

 

 斎木「ええ、ウチの自慢の戦闘機・F-15Jイーグルのレーダーが謎の反応を探知したもんで…。

 

 それになんでも、あの山でフルータ星人とか言う宇宙人が、何やら暗躍しているようなんですよ。」

 

 

 レイ「フルータ星人?………聞いた事ない名前だな。」

 

 それもそのはずだ!笑 そもそもフルータ星人自体存在しない宇宙人なのだから、、、

 

 多分大学で怪獣学を専攻しているZAPの怪獣博士・オキに聞いても分からないであろう、、、(笑)

 

 

 ヒュウガ「レイも知らない宇宙人か………さっきの怪獣たちも、そのフルータ星人と何か関係しているのであろうか………?」

 

 斎木「それよりも大変なんだ!そのフルータ星人って奴、2人のウルトラ戦士の変身アイテムを奪って何か悪だくみをしようとしているんだ。」

 

 ヒュウガ「なんだって!?」

 

 レイ「ひょっとすると…さっきの怪獣たちは、フルータ星人が自分たちの邪魔をさせぬよう差し向けた刺客なのかもしれない…!」

 

 

 ヒュウガ「…と、いうことは、、、?」

 

 

 斎木「ああ、間違いねえ、、、!」

 

 

 レイ・ヒュウガ・斎木「間違いねえ、フルータ星人の仕業だ! ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」

 

 燃え盛る炎(イメージ)を背景に、フルータ星人への怒りを燃やす三人。

 

 

 しかし、見ず知らずの若者が軽はずみで名乗ったはずのフルータ星人が、すっかり大袈裟な話になってしまっている、、、(笑)

 

 これは先が思いやられるわ………汗

 

 

 ヒュウガ「とにかく、一刻も早くフルータ星人の企みを阻止せねばな。」

 

 斎木「よし、そうと決まればF-15Jイーグルでひとっ飛びしてぶっ潰してやる!」

 

 存在しないはずのフルータ星人を、早速潰す気満々になってしまっている熱血漢・斎木和寿(笑)

 

 

 ヒュウガ「いや待て。今戦闘機でこのまま真っ直ぐ行くのは危険だ。」

 

 斎木「、、なぜだ?」

 

 レイ「さっきの怪獣についてなんだが、恐らく一体はテロチルスだと思われる。

 

 奴は口からガス状の糸を吐くのだが、その糸は排気ガスに触れると毒ガスになるみたいなんだ。」

 

 斎木「何っ?!、それは本当か?」

 

 ヒュウガ「あぁ、以前ウチの怪獣博士が、そう言ってたからなあ。

 

 

 

 一方、別宇宙のレイ達の世界、所謂大怪獣バトルの世界では、宇宙空間を飛行しているZAPのスペースペンドラゴンにて。

 

 

 オキ「へっ…へっくしっ!!………ああっ!少しズレちゃった………。」

 

 ペンドラゴンのクルーであり、大学で怪獣学を専攻していた怪獣マニア・オキ(隠岐 恒一)が、とある怪獣の骨格標本を真剣に組み立てていた。

 

 オキ「出来た!」

 

 そして遂に出来たことに喜びの表情をする。

 

 

 その時扉が開いて一人のクルーが入って来る。

 

 タンクトップ姿に肩にタオルをかけているその青年は、同じくペンドラゴンのクルーであり、優秀な腕前から他のクルーから『魔法使い』とも言われているエンジニア・クマノ(熊野 正彦)である。

 

 格好からして恐らくトレーニングルームから戻って来たのであろう。

 

 

 クマノ「オキも一緒にいk………なーんだまた怪獣の骨格標本か?」

 

 少し呆れながらも笑ながら反応する。

 

 オキ「へっへー。今度のは自信作ですよ。」

 

 クマノ「その怪獣なら知ってる。当ててみようか………アーストロンだろ?」

 

 オキ「違いますよ~。ゴーストロンです。」

 

 そう言うとオキは側にあるディスプレイに、怪獣図鑑と思われるファイルからゴーストロンのデータを映し出す。

 

 因みにゴーストロン(別名:爆弾怪獣)は、外見がアーストロンに非常に似ており、アーストロンの弟分の怪獣とも言われているのだ。

 

 

 オキ「よーく見てください。アーストロンとの違いは角があるか無いかでもありますが、他にもこの大腿骨が…」

 

 クマノ「おーっと皆まで言うな!………どうせまた怪獣の講義するつもりだろ?」

 

 二体の違いを語ろうとするオキを慌てて止めるクマノ。彼は度々オキの怪獣講義に付き合わされているのである(笑)

 

 

 クマノ「こないだなんてゴルザとファイヤーゴルザの違いで5時間も付き合わされたからなあ…。」

 

 オキ「そうですか?今回はコンパクトに2時間で済ませようとしたんですけど…。」

 

 クマノ「いやそれでも長いって!」

 

 

 …とまあこんな感じでいつもの凸凹コンビぶりで漫才を繰り広げるクマノとオキ。

 

 

 しばらくするとオキはゴーストロンの骨格標本を指で軽く突きながらぼやく。

 

 オキ「………ボスにレイ………うまくやってるかな?」

 

 クマノ「………あの二人なら大丈夫さ。なんでもあのウルトラマンゼロまでついてるみたいだし、きっと今も戦っているよ。」

 

 オキ「………そうですね。僕たちも頑張らなきゃ。」

 

 すると、二人の元に通信が。

 

 ハルナ『これより、惑星デントに到着します。』

 

 クマノ・オキ「了解!」

 

 通信を入れたのはペンドラゴンの副長・ハルナ(榛名 ジュン)であった。

 

 ボス(船長)のヒュウガが不在なため、今は彼女が船長代理を務めているのである。

 

 そのハルナも、コックピットで二人の事を考えていた。

 

 ハルナ「ボス………レイ………どうかご無事で。」

 

 

 その頃、オキの個室にて。

 

 オキ「そうそう。僕最近はレッドジャックの爪にも興味あるんですよ。」

 

 クマノ「ホントか?お前は本当に好奇心が尽きないな~。」

 

 オキ「今度会ったら分捕ってみたいな~爪。」

 

 クマノ「お前は命がいくつあっても足りないぞ!?」

 

 とまあこんな感じで、二人は再び漫才じみたやり取りに戻っていた………(笑)

 

 

 ハルナ「惑星デント。これより大気圏突入・着陸します。」

 

 旅立っている二人への皆の想いと共に、ペンドラゴンは資源を届けに惑星デントへと入って行った………。

 

 

 

 ヒュウガ「それに、ペンドラゴンのレーダーが、あの火山周辺の特殊な物質の反応を感知している。恐らく奴が吐いたガスなのだろう。」

 

 斎木「そうか……それじゃあ、今イーグルで向かったらヒカルと海羽ちゃんが危ねーな。

 

 分かった。じゃあ俺はこっから徒歩で向かう事にする。この先村もあるから、そこの様子見も含めてな。」

 

 ヒュウガ「分かった。我々は、ガスが届いていない所を飛びながら、先に山へ向かう事にするよ。」

 

 斎木「そうか………分かった。」

 

 レイ「この先の村を通って行ったら、、推定5キロぐらいはある。間に合うか?」

 

 斎木「おうよ!元防衛軍といえど、健脚は健在だ。」

 

 レイ「…そうか。くれぐれも気をつけるんだぞ。」

 

 斎木「それじゃ、お互い健闘を祈ろう。」

 

 そう言うと斎木はヒュウガと握手を交わした。

 

 

 そして、レイとヒュウガはペンドラゴンに乗り込んで飛び立ち始め、斎木はその場からやや駆け足気味で山に向かい始める。

 

 

 ヒュウガ「急ぐぞレイ。何としてもフルータ星人の野望を阻止せねば。」

 

 レイ「ああ。」

 

 そう言いながら、レイは既にネオバトルナイザーを取り出している。

 

 

 ペンドラゴンが飛び去った後、斎木の方はと言うと、、、

 

 斎木「うぉぉぉぉおおああーーー!!待ってろフルータ星人!必ず俺がぶっ飛ばしてやらあー!!」

 

 武装をしておきながら、気合い十分でダッシュを始めてしまっている。

 

 ダッシュを続けていくうちに、瞬く間に八幡那須ヶ岳村にたどり着いた。

 

 

 、、、だが、そこに待ち受けていたのは、村人たちの熱烈な歓迎であった。

 

 「おお!早速観光客が一人来たわい。」

 

 「ようこそ、八幡那須ヶ岳村へ。」

 

 斎木「お?、、あ、ああ、サンキュー。」

 

 

 昨夜のギンガとソルの活躍により平和な観光地に戻った村に早速人(斎木)が訪れた事に村人たちは喜び、大勢で挙って歓迎し始める。

 

 そして、一斉にチラシを渡し始める。恐らくこの村の観光案内のモノなのだろう。

 

 、、、だが、斎木は急いでいると言うのに大勢の村人が一人一人斎木にチラシを(しかも同じ内容w)渡していくためなかなか前に進めず、所謂見事に通せんぼうを喰らってしまっていた(笑)

 

 

 斎木「あ、ああ、サンキュー。分かった。分かったから行かせて……はい分かったから、、分かっ……

 

 早く行かせてッッ!!」

 

 

 ……とまあ、こんな風に思わぬ通せんぼうに斎木は少し情けなさそうな困惑の表情で悲痛(?)の声を上げる。

 

 

 

 その頃、大熊地獄ヶ岳では、次々と現れる怪獣により、賢たちフルータ星人(笑)は焦りを募らせ始めていた。

 

 明人「やべーよこれ。はやいとこ賢の妹を助けてこっから逃げようぜ!」

 

 輝雄「他の連れ去られた人たちも、、一体どこにいるのかな、、、。」

 

 その時、賢が何かに気づく。

 

 賢「!はっ、見ろよあれ!」

 

 明人と輝雄も賢が指差す方を振り向く。

 

 その先にあったのは、大きな湖のほとりに無数散りばめられている球体の何かだった。

 

 

 賢「………似てる………。」

 

 

 賢は、それがトンダイルが吐き出した愛を閉じ込めたカプセルに似ている事に気づき、急いで走って向かい始める。

 

 明人「おっ、おい待てよ賢!」

 

 明人と輝雄も慌てて後を追う。

 

 

 三人が無数の球体の方に近づくにつれ、何かが聞こえてくるようであった。

 

 それはまるで人間の泣くような声が、、、。

 

 

 

 やがて湖のほとりに辿り着くと、三人は驚愕する!

 

 そこには案の定、トンダイルカプセルと思われる球体が無数に転がっており、その中には一人ずつ人間が閉じ込められているのだ!

 

 見た感じその大半は女性や子供のようである。

 

 中には泣きじゃくる子供もいれば、飢えや疲労の所為かぐったりしている女性や子供まで見られた。

 

 

 驚きの光景を目にした三人は、やはりトンダイルの仕業によって人々が連れ去られたのだと確信する。

 

 賢「………ほらな!やっぱり俺の言った通りだ。」

 

 明人「それにしてもよくもこんなに集めたな~…。」

 

 輝雄「感心してる場合!?早くこの子たちを助けないと!」

 

 賢「…あ、ああ、そうだな。」

 

 そう言うと賢は懐からヒカルと海羽から奪ったウルトラフュージョンブレスとハートフルグラスを取り出す。

 

 

 出来るはずもない事を実行するために、、、。

 

 

 賢「蛙野郎め…この人たちを解放したら見てろよ。」

 

 

 賢たちは人々の目の届く場所まで移動する。

 

 賢「みんなーーー!! 大丈夫かーーー!?」

 

 賢の呼びかけを聞いた人々は一斉に反応する。

 

 「早く助けて!!」

 

 「怖いよ~!!」

 

 特に子供たちの悲痛な叫びが飛び交っている。

 

 

 それらの声が飛び交う中で、遂に賢は遂に妹の愛の入ったカプセルを発見する!

 

 中に入っている愛はだいぶ衰弱していて、助けを呼ぶ元気すらままならない状態であった。

 

 

 賢「愛!!………………待ってろよ。今こそウルトラの力で…!」

 

 愛を見つけた賢は遂に決心をし、左腕にフュージョンブレスを装着し、右手にハートフルグラスを持つ。

 

 

 賢「やーーーっ!!」

 

 

 賢は気合の叫びと共に左腕に力を入れ、ハートフルグラスを目に当てる!

 

 

 ………だが、賢の姿に変化が起こらず、光が溢れて変身するような気配がない………。

 

 明人「………へ?」

 

 輝雄「どうしたんだろう………………。」

 

 

 賢「バカなっ!?こんな筈は無い! やーーっ!?、やーっ!、やーっ!………」

 

 諦めきれない賢はその後も何度も試してみるが、一向にウルトラ戦士に変身出来ない………。

 

 

 やはりウルトラマンの変身アイテムは、選ばれた者にしか扱えないのであろうか………?

 

 

 

 何度も試す賢を後ろから見守る明人と輝雄。

 

 輝雄「おいおい、こりゃあマズい事になってきたなあ…。」

 

 明人「ああ。アイテムはあるのに変身できないなんて………。」

 

 

 二人が困惑しているその時、

 

 

 海羽「待ちなさい!!」

 

 

 突如、後ろから“聞き覚えのある”女性の声が飛び交い、二人は一瞬固まった後徐々に後ろを振り向く。

 

 

 明人「げげっ!?」

 

 驚く明人の視線の先に立っていたのは、彼らフルータ星人(笑)を追って大熊地獄ヶ岳にたどり着いたヒカルと海羽であった!

 

 

 ヒカル「そこまでだフルータ星人!!」

 

 海羽「ウルトラマンの変身アイテムを奪って何を企んでるか知らないけど、好きなようにはさせないわ!」

 

 完全に明人たちを悪の宇宙人だと勘違いしているヒカルと海羽。

 

 

 明人と輝雄は慌てながらも何とか話を聞いてもらおうと取り繕う。

 

 明人「い、、、い、いや~! こ、これには深~いワケがありましてね…。」

 

 輝雄「そ、そうそう! なんつーか、、、俺たちの、その、個人的な事情がありましてね………。」

 

 明人・輝雄「(互いに向き合って)ね~!」

 

 

 ヒカル・海羽「ん?」

 

 

 明らかに様子がおかしいフルータ星人(笑)二人に気付くヒカルと海羽。

 

 

 そして明人と輝雄は、ヒカルと海羽に全てを話した。

 

 フルータ星人を名乗ったのは自分達だという事、フュージョンブレスなどを盗んだのも自分達だという事、そして、それらをやったワケを………。

 

 

 それを聞いたヒカル達は、若干納得しながらも複雑な気分でいる。

 

 ヒカル「ったく、なにがフルータ星人だ………。」

 

 海羽「はぁ~…だからおかしいと思ったんだよ………今朝起きたら賢君たち居ないしさ~。」

 

 ヒカル「しっかし回りくどいよな~………そういう事なら始めから俺たちに頼めばいいのに…。」

 

 

 明人「それが………………あいつが自分の力で妹を助けたいと聞かなくてな。」

 

 そう言うと一同は明人が振り向いた方に振り向く。

 

 そこには、なおも変身アイテムを構えて何度も変身しようと試みる賢の姿だった。

 

 輝雄「それで、奪ったとしても扱える保障がないとも分かっていた俺たちは、いざと言う時にアンタらに来てもらうために脅迫状を書いたってワケだ。」

 

 

 古田賢たちの事情を聞いたヒカル達。それを聞いた瞬間、表情が変わる。

 

 ヒカル「こんな回りくどい作戦立てたのも………全ては妹一人のために………?」

 

 海羽「なんて妹思いなお兄ちゃんなんだろう………。」

 

 自分たちの変身アイテムを奪ってまで妹を助けようとする賢の姿………やった事自体はよろしくない事なのだが、その妹思いの精神にはヒカルと海羽も感動に近い感心を隠せずにはいられないようである………。

 

 

 輝雄「結果的には俺たちも共犯者になったという事なのだが………全てはあいつと、あいつの妹のためにやむを得なかったんだ………ごめんな。」

 

 明人「この一言だけじゃあ許されないかもしれないが………ホントにごめんな。」

 

 

 ヒカル「いや、アンタらは立派だ。」

 

 

 明人・輝雄「え?」

 

 

 ヒカルの思わぬ言葉に二人は反応する。

 

 ヒカル「確かに、俺たちの変身アイテムを奪ったのは許されない事だ………しかし、その動機の中には、様々な良心が交差していたとはな。

 

 妹思いの兄、そしてその友達に協力する友達思いのお前ら………フタを開ければみんな良い奴らじゃねーか。」

 

 海羽「そうそう!もう感動しちゃうわ~~! 人の事を考え、思いやれる心、それがあれば、いい人だという証だよ。」

 

 アイテムを奪われた身ながらも、ヒカルと海羽の自分達の気持ちを理解する発言に明人たちは感動を感じ始める。

 

 

 ヒカル「その努力だけは認める。だからあとは俺たちに任せろ。な。」

 

 ヒカルの説得を聞いた明人と輝雄は無言で頷く。

 

 

 次にヒカルは、賢の元に歩み寄る。

 

 賢「くそっ!!………こんなに試してるのになぜ変身出来ない!?………愛を………みんなを助けなきゃいけないというのに………………!」

 

 何度変身しようと試しても出来ない事に、遂に俯いて息を切らせながら弱音を吐き始める賢。その横にヒカルの姿が現れる。

 

 ヒカル「これで分かっただろ?ウルトラマンの変身アイテムは、選ばれて者にしか扱えないんだ。」

 

 横から語り掛けるヒカルに、賢は横目で視線を向ける。

 

 ヒカル「アンタの妹思いの精神は立派だ。だからあとは俺たちに任せろ。」

 

 

 ヒカルの説得を受ける賢は、無言で若干複雑な表情になる………。

 

 

 現実を突きつけられてもなお、自分の力で妹を助けたい気持ちが強く出いるのであろうか………………?

 

 

 

 “ザッパーン”

 

 

 賢「…!ッわっっ!!」

 

 

 ヒカル「何だ!?」

 

 

 突如、目前の湖から激しい水しぶきが飛び散り、一同は驚愕する。

 

 

 そして水しぶきと共に現れた巨大な水柱が徐々に滝が流れるように崩れていき、その中から一匹の巨大生物が現れる!

 

 

 現れたのは賢の思った通り、トンダイルであった!

 

 トンダイルは現れたと同時に咆哮を上げる。

 

 そしてトンダイルの出現・咆哮により捕らわれている人々、特に子供たちは恐怖により泣き叫び始める。

 

 

 ヒカル「怪獣だと!?」

 

 海羽「それも大きな……蛙!?」

 

 賢「やはりここに潜んでいたか蛙野郎!!」

 

 ヒカル「えっ!?お前あの怪獣の事知ってんのか!?」

 

 

 賢「あぁ…あいつが愛を………………!

 

 愛を返せーーー!!」

 

 

 賢は怒りに任せてトンダイルに向かって行こうとするが、間一髪ヒカルがそれを食い止める。

 

 ヒカル「待てって!その姿で行くのは無茶だ!」

 

 明人「賢!ここは早く逃げようぜ!」

 

 輝雄「このままじゃ俺たちもお陀仏だ!」

 

 

 賢「バカヤロー!!愛を放って逃げられるか!!」

 

 

 明人たちの呼びかけをも聞かず一向に愛の近くから離れようとしない賢。

 

 

 トンダイルはそんな賢に目を付け、そしてそこ目掛けて口から火炎を噴射する!

 

 

 “ズドーン”

 

 

 賢「うわあああぁぁぁ!!」

 

 ヒカル「ぐおああああーーっ!!」

 

 

 火炎が近くで爆発したヒカルと賢は、その爆風により吹っ飛ぶ。

 

 海羽「ヒカルさん!!」

 

 明人・輝雄「賢!!」

 

 

 ヒカル「…ぉ、おい…大丈夫か?」

 

 賢「ぁぁ…。」

 

 ヒカルは何とか賢を立ち上がらせる。トンダイルはなおもヒカル達を追って火炎を吐きながら歩き続ける。

 

 

 火炎による爆発が周囲に起こり、それにより土砂や石のつぶて、熱風が吹きつけながらも一同は足早に逃げ続ける。

 

 

 ヒカル「賢!とりあえずアイテムを返すんだ!」

 

 海羽「はっ!そ、そうよ!そうすれば変身できるから………!」

 

 ヒカルと海羽の言葉を聞いた賢は、なおも複雑な表情ながらもとりあえずハートフルグラスを海羽に投げて返そうとそれを持つ右腕を振り上げる。

 

 

 だが、そこにトンダイルが口からトンダイルカプセルを一つ吐き出し、それがヒカル達向かって飛んで行く………!

 

 

 海羽「えっ!? ちょっと………きゃーーーっ!!」

 

 そしてそのカプセルが瞬く間に海羽を閉じ込め、トンダイルの手中に捕らわれてしまった!

 

 

 ヒカル「海羽ーーー!!」

 

 

 ヒカルの叫びが響く中、トンダイルは嘲笑うかのように吠えた後、海羽を閉じ込めたカプセルを他の人々を閉じ込めたカプセルの山の方へ放り投げる。

 

 

 海羽「閉じ込められちゃったよ~~~!」

 

 ハートフルグラスを取り返す直前にカプセルに捕えられてしまった事で変身不能になってしまった海羽。

 

 

 ヒカル「そんな………………。」

 

 賢「嘘だろ………。」

 

 

 一同が唖然としているその時、

 

 

 “ズドーン”

 

 

 ヒカル「………ぐっ!!?」

 

 賢「今度は何だ!?」

 

 

 突如後ろで謎の爆発が起こり、一同は爆風を防ぐために腕で顔を隠しつつも振り向く。

 

 

 振り向いた視線の先に見たのは、此方を睨み付けるアーストロンと、同じ表情で空中に浮かんでいるテロチルスであった!

 

 アーストロンは再び眠りが覚め、テロチルスも先ほどの偵察から戻って来たのである!

 

 そしてアーストロンは口からの溶岩熱線、テロチルスは鼻先からの光弾で牽制攻撃を仕掛けて来たのだ。

 

 

 ヒカル「怪獣は一体だけじゃねーのかよ!」

 

 賢「こいつはマズいな………!」

 

 明人「マズいって絶対………!」

 

 輝雄「あ………あ…あ………。(←途方に暮れるあまり言葉が出ない)」

 

 

 海羽「はわわわわ………これは絶体絶命?」

 

 

 三体の怪獣に狙われるヒカル達を見て海羽は不安を募らせる。

 

 

 愛「………お兄…………ちゃん………………。」

 

 捕らわれている愛は、朦朧とする意識の中で弱弱しくも自分のために頑張る兄の事を気に掛けるかのように譫言を呟いた………………。

 

 

 怪獣たちはと言うと、再び日本語訳するとこんな感じの会話をしている。

 

 アーストロン「おいおい、こんな所に侵入者か?」

 

 テロチルス「トンダイル、何なんだこいつらは?」

 

 トンダイル「聞いてくださいやし!こやつらバードンのための御飯を盗もうとしたんでございやすよ!」

 

 アーストロン「ほーう………いい度胸してんじゃん人間の分際で!」(指をポキポキ鳴らす)

 

 テロチルス「バードンのために作ったベッドルーム(銀の城)も荒らされちゃあ困るしな。」

 

 アーストロン「こいつらも捕えてバードンの飯のおかずにしてやろうぜ。」

 

 トンダイル「あっしにお任せくださいやし!」

 

 

 アーストロン「俺たちも手伝ってやる………捕まえろー!!」

 

 

 会話を聞いた感じだと、どうやらアーストロンたちはトンダイルよりも立場的に一つ上のようである………。

 

 

 なんて言ってる場合ではなく、アーストロンの指示と共に三体は一斉にヒカル達に襲い掛かろうとする!

 

 彼らを捕えようと容赦なく吹き付ける火炎、熱線、光弾の雨が周囲で爆発する中、四人は必死に逃げ続ける。

 

 

 海羽「大丈夫………大丈夫だから! もうちょっとの辛抱だから頑張って!」

 

 捕らわれている海羽は、ヒカル達を心配そうに見守りながらも同じく捕らわれて泣きじゃくる子供たちや弱った女性たちを励まそうと声を掛けていた。

 

 

 怪獣たちの火炎などを避け続けるヒカルたち。飛び道具が当たらないと見た怪獣たちは、今度は近くの小さい岩山を崩したり足元の複数の岩を蹴り飛ばしたりなどして岩石をぶつけようとする!

 

 今度は岩石の雨あられが降りしきる中、ヒカル達は必死に逃げ続ける。

 

 

 賢たちを庇いながら逃げ続けるヒカルは、ふととある事を思い出していた………。

 

 

 それは、かつてエタルガーを倒すために、ショウと共にウルトラマンゼロから受けた特訓の事である。

 

 

 あの時ゼロは、二人で息を合わせる特訓のために近くの山から自分たちに岩を落として来たのである。

 

 

 〈回想〉

 

 ゼロ「二人で息を合わせて逃げないとヤバいぞぉぉ~。」

 

 ヒカル「こんなの無茶苦茶だ~!!」

 

 〈回想終了〉

 

 

 ヒカル「思えば、あの時のゼロの特訓もあながち間違いじゃなかったのかもな………。」

 

 岩を避けながらヒカルがそう呟いている間にも、怪獣たちは既に目前までに迫っていた………!

 

 

 明人「うわあぁ~!俺達もうおしまいっスよ~!!」

 

 輝雄「パンにジュース………!」

 

 賢「それを言うなら“万事休す”だろー!!?」

 

 

 ヒカル「いや、まだ終わりじゃねーよ。」

 

 そう言うとヒカルは賢たちよりも数歩前に出て懐からギンガスパークを取り出し、賢たちの方を振り向く。

 

 

 ヒカル「アンタの妹さんも………海羽ちゃんも………みんなも必ず助ける!!」

 

 

 賢「ヒカルさん………………。」

 

 

 

 遂に変身する決心をしたヒカル。

 

 ヒカルは右手に持つギンガスパークを前に突き出し、側面のスパークブレードを展開させて先端から光と共に現れたギンガのスパークドールズを左手で掴み、両腕をS字を描くように振った後スパークドールズのライブサインを先端のスパークリーダーでリードする。

 

 

 《ウルトライブ!ウルトラマンギンガ!》

 

 

 発声と共に柄にあるスパークフェイスカバーが展開してギンガの顔を模したスパークフェイスが出現する。

 

 

 ヒカル「ギンガー!!」

 

 

 ヒカルはギンガの名前を叫びながらギンガスパークを高く揚げ、そこから溢れ出る銀河状の光に包まれる。

 

 

 「ショォォラアァァ!」

 

 

 そしてその銀河状の光から右手を突き上げるポーズでウルトラマンギンガが現れる!

 

 

 ライブ(変身)が完了し、土砂を巻き上げながら着地するギンガ。

 

 三大怪獣を前に悠然と構えを取る。

 

 

 賢「あれがウルトラマンギンガ………。」

 

 ギンガの出現に賢たちは息をのむ。

 

 

 海羽「ヒカルさん………………。」

 

 ギンガを見守る海羽は心配そうな感じである。それもそのはず、自身は変身アイテムを奪われた上に捕らわれの身となってしまった、所謂今は三大怪獣を相手にヒカルがギンガで孤軍奮闘するしかないのだから………。

 

 

 三大怪獣は出現したギンガを前に身構えながら威嚇の咆哮を上げる。

 

 トンダイル「今度はウルトラマンの登場でございやすか!?」

 

 テロチルス「邪魔者は誰だろうと潰すべしだな。」

 

 アーストロン「覚悟しろ!俺たち三対で袋叩きにしてやらあ!」

 

 ………恐らくこのような事を言っているのだろう。

 

 

 ヒカル「いや……三対一じゃない………俺とギンガ………………すなわち、三対二だ!」

 

 三大怪獣を前にヒカルはそう言い聞かせながらギンガスパークを構え、それと同時にギンガは怪獣軍団に向かって行く。

 

 

 ギンガは先陣切って突っ込んできたトンダイルの突進を避けると同時に首筋にチョップを決めることで受け流し、その後そのまま回転して右脚蹴りをアーストロンの腹部に決める。

 

 その隙にテロチルスが背後からギンガにしがみ付いて動きを封じ、その隙にトンダイルが攻撃を加えようとするが、ギンガはその状態のまま右足でトンダイルの腹部を蹴って吹っ飛ばす。

 

 次にギンガはテロチルスの腹部に右肘打ちを数回決めた後、右拳の裏拳を顔面に叩き込むことで羽交い締めから逃れ、更に振り向いて腹部に四発連続パンチを打ち込んだ後右足蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 だが、一瞬の隙を突いてアーストロンが尻尾攻撃を繰り出し、それを胸部に受けたギンガが怯んだ隙に右手で頭部を叩いてダウンさせる。

 

 アーストロンは倒れ込んだギンガに更に攻撃を加えようとするが、ギンガは左手、左膝を付いた状態でアーストロンの腹部に右脚蹴りを決め、更に腹部に右拳のギンガハイパーパンチを叩き込む。

 

 アーストロンは少し怯みながらも反撃として右脚を振るって蹴りを繰り出すが、ギンガは即座にその場から受け身を取ってかわすと同時に距離を取る。

 

 

 テロチルスは翼を羽ばたかせて飛び立ち、ギンガ目掛けて接近しながら両脚をバタバタ震わせて連続蹴りを繰り出し、ギンガはそれを数発喰らい後退しながらも何とか両腕をクロスさせて防ぐ。

 

 だがその隙にトンダイルが突進の要領で頭突きを繰り出し、ギンガはそれを腹部に受けるがそれと同時に咄嗟にトンダイルの頭部を掴んで受け止め、そのままヘッドロックに切り替えるとそのままジャンプして落下スピードを利用して地面に叩き付ける。

 

 

 土砂や土煙が巻き上がるほど激しい戦いを繰り広げるギンガと三大怪獣。持ち前の戦闘力が高いだけあってギンガは三対一でも比較的互角に渡り合っていた。

 

 ヒカル「流石にこれはキツいぜ………。」

 

 だが、流石に相手が多いだけあってヒカル自身の消耗は激しいようであった。

 

 

 アーストロンとテロチルスはそれぞれ溶岩熱線と光弾を同時に放つ。

 

 ギンガはそれを右手を突き出してギンガハイパーバリアーを展開して防ぐが、バリアを消した瞬間既に目前までに飛んで迫っていたテロチルスに掴んで捕えられ、そのまま空中に運ばれ始める。

 

 

 ギンガを捕えたテロチルスはそのまま空中を飛行し続ける。どこかに叩き付けようとしているのであろうか?

 

 

 ヒカル「ギンガセイバー!」

 

 

 “ズパーン”

 

 

 ギンガは即座に右腕に光の剣・ギンガセイバーを形成させてそれでテロチルスの胴体を斬りつけて怯ませることで何とか逃れることに成功し着地する。

 

 

 着地したギンガ目掛けてアーストロンは溶岩熱戦、トンダイルは火炎を吹き付けて攻撃を仕掛け、ギンガはそれを側転したり受け身を取ったりしてかわしていく。

 

 だが、その隙を狙いアーストロンは大きく尻尾を振って攻撃を仕掛け、ギンガはそれを咄嗟に右腕で防ぐが若干タイミングが遅れた事もあり少し吹っ飛ぶ。

 

 

 三大怪獣相手に徐々に押され気味になっていくギンガ。三大怪獣は既に勝ち誇ったかのように咆哮を上げ、戦いを見守っている海羽たちは不安が募っていく………。

 

 海羽「ヒカルさん………ギンガ………………頑張って………………。」

 

 少し弱弱しくも声援を送る海羽。自身は閉じ込められてて変身できないため、応援以外何もする事が出来ない事に不甲斐なさを感じているのであろう………。

 

 

 賢たちも、戦いを見守り応援する事しか出来ない事に僅かながら苛立ちを感じ始めていた。

 

 賢「チクチョウ………変身アイテムさえ使えれば………!」

 

 

 

 海羽「………………!?」

 

 

 賢・明人・輝雄「………………!?」

 

 

 

 その時、海羽たちは何かに気付いた………!

 

 

 それは、上空から何かがこちらに向かって飛んで来る様子であった………!

 

 その飛んで来るモノは近づくにつれて姿がハッキリ見えていき、やがて完全に姿が見えた瞬間一同は戦慄する………!

 

 

 海羽「は………はわ……はわわわわわ………ひ、ひょっとしてもしかして………。」

 

 

 賢「いよいよヤバいぞ、これは………。」

 

 

 海羽「“地球最強”とも言われている凶暴な怪獣………!」

 

 

 やがて新たに飛んで来たモノは、地響きを上げながら地面に着地し、背筋が凍るような甲高い特徴的な咆哮を上げる。

 

 

 遂に“バードン”が、人々の前にその姿を現したのだ!

 

 

 ヒカル「あれは………ショウが戦ったって言ってたバードンか!?」

 

 

体はアーストロンたちよりも一回り大きく、燃え盛る炎のようなフォルムを持つその姿は正に怪獣界の“総大将”とも言われるだけあって圧倒的な貫禄と威圧感を放っている。

 

 

 バードンが出現した瞬間、三大怪獣はギンガへの攻撃を止め、一斉にバードンの方へと集まる。

 

 そして、三体が何やら喜ぶように鳴き声を上げた後、テロチルスは何やら「やったな!」とばかりにバードンの背中を叩き、そしてアーストロンは何やら指示を出す仕草をする。

 

 

 そしてそれを見たバードンは一回頷いた後、嘴を大きく開いてボルヤニックファイアを吹き出す!

 

 

 その火炎の威力は凄まじく、ギンガは咄嗟にギンガハイパーバリアーを展開するがそれだけでは防ぎきれず、火炎を受けているバリヤーの淵から炎が漏れてギンガに直撃!

 

 ギンガはたまらずバリヤーを解いて後ろに跳んでさがる。

 

 

 ボルヤニックファイアの威力を見たアーストロンは何やら「やったな!」とばかりに喜ぶような仕草を見せ、バードンもまた同じ仕草をする。

 

 

 どうやらバードンは、火炎放射の方法はアーストロンから、飛行技術はテロチルスから受け継いだようである。

 

 

 そしてバードンは次に、湖の方へ視線を変える。

 

 バードンはそこにある人々を閉じ込めた無数のカプセルを見た後、何やら労をねぎらうかのようにトンダイルの頭を撫で始める。

 

 バードンは人間も含めてあらゆる肉を好んで食べる怪鳥。恐らくこれらの捕えた人間たちは、トンダイルがバードンの食事のために用意したモノなのであろう。

 

 

 ついでに行っておくと、小山に作られた銀の城は、テロチルスがバードンの寝床として作ったものなのである!

 

 

 これらから分かるように、アーストロン、テロチルス、トンダイルの三大怪獣は、バードンとは仲間関係なのである。

 

 そして、伝説とも言われるほど永い眠りから目覚めた四匹は、ここ大熊地獄ヶ岳を自分たちの棲み処にしようと色々と準備を進めている最中だったのであろう。

 

 

 先ほど大熊山の火口から聞こえた妙な音は、恐らくバードンが嘴を突き刺す特訓をしている音だったのであろう。

 

 

 ヒカル「メンバー増量なんて、聞いてねえぞ!?」

 

 ヒカルは、相手が増えて四対一に持ち込まれたと思い動揺する。

 

 

 バードン出現の瞬間、捕えられている人々、特に子供たちは再び泣きじゃくり始める。

 

 かつてウルトラマンタロウと死闘を繰り広げたバードン。その歴史は実はこの世界では教科書に載っているほどであり、所謂彼らはバードンの恐ろしさを知っていたのである。

 

 

 四大怪獣はギンガ向かって咆哮を上げる。

 

 ヒカル「やるしかねえっ!!」

 

 ヒカルは半やけっぱちで再び構え、それと共にギンガも怪獣軍団目掛けて接近しようとする。

 

 

 バードンは両腕の翼を大きく羽ばたかせて強風を起こし始め、それを受けるギンガは強風に阻まれて接近できない。

 

 強風の影響は周囲にも広がり、砂煙や土塊、石などが風と共に飛んでくる中、賢たちは急いで岩壁に隠れようとする。

 

 

 ギンガが強風に手こずる隙にアーストロンは溶岩熱線を噴射し、ギンガはそれを腹部に受けて爆発して吹っ飛ぶ。

 

 そしてギンガが怯んだ隙にバードンは接近し、頭部を振り下ろして嘴を突き刺そうとするがギンガはそれをなんとか横にそれて避けると同時に左腕でヘッドロックを掛けるが、両腕で数回胴体を叩かれた事により手放してしまい、その隙にバードンの横降りの頭突きを胸部に喰らってしまう。

 

 バードンは再び嘴を突き刺そうと頭部を振り下ろし、ギンガはそれを嘴を両手で掴むことで受け止めるが、その隙に無防備になった腹部に右手、左手のかぎ爪攻撃を食らってしまいその部位から火花が飛び散り、たまらず手を放してしまったところに更に右手のかぎ爪の一撃を胸部に喰らい、火花を散らすと同時に吹っ飛ぶ。

 

 

 恐らくバードンは相当アーストロンたちに鍛えられたのであろう。その強さは強大であり、流石のギンガも苦戦を強いられていた。

 

 

 賢「………俺たちのせいだ………………俺たちが軽はずみでこんな事しなければ………………。」

 

 苦戦するギンガと変身できない海羽を見た賢は、海羽が変身できなくなり、ヒカルがギンガで孤軍奮闘で大苦戦を強いられることになってしまった原因は自分たちにあるのではないかと痛感し、悔しがり始める………。

 

 

 バードンの猛攻によりダメージを受けて倒れ込んでいるギンガに、バードンが止めで嘴を突き刺そうと迫る!

 

 

 危うし!ギンガ!

 

 

 

 ………だがその時、突然バードンの動きが止まる。

 

 ………いや、止まったのではない。バードンのもがいている姿を見ると、恐らくバードンは何者かに止められているようだ。

 

 

 すると、そのバードンを食い止めている者が姿を現す!

 

 

 『透明怪獣ゴルバゴス』が、バードンを羽交い締めにしている状態で透明状態から姿を現したのだ!

 

 ヒカル「!ゴルバゴス………!?」

 

 海羽「ゴバちゃん!」

 

 ヒカルと海羽はゴルバゴスの登場に驚く。

 

 

 ここ大熊地獄ヶ岳は元々はゴルバゴスの住み家。そこを突然眠りから目覚めた怪獣たちに無理矢理奪われようとしているのだから黙っていられないのは当然であろう。

 

 ゴルバゴスは住み家を取り戻すためも含め、ギンガに加勢することにしたのである!

 

 

 ヒカル「やはりな………………様子がおかしかったのは、コイツら(バードンたち)が目覚め、住み家を奪われようとしているからだったんだな………。」

 

 ヒカルはようやくゴルバゴスの様子がおかしかったワケを察する。

 

 

 ヒカル「お前は今、必死に頑張っている………なら俺たちも、それに応えてやらないと………!」

 

 そう言うとヒカルは気合を入れ、ギンガは何とか立ち上がる。

 

 

 一方賢たちの方はと言うと、ゴルバゴスの事情を知らない彼らはまた新たに怪獣が現れたことに動揺を隠せないようであった。

 

 賢「チクショウ…また怪獣かよ、今度こそギンガは………。」

 

 輝雄「………そうでもないと思うぞ?」

 

 賢「………え?」

 

 輝雄「あの新しく出た怪獣(ゴルバゴス)、何だかあの鳥野郎(バードン)を食い止めようとしているようにも見える………。」

 

 だが、輝雄の方は三人の中でも早くもゴルバゴスが他の怪獣たちとは違う事に気付いていた。

 

 

 振りほどこうともがくバードンに、なおも必死にしがみ付くゴルバゴス。

 

 ギンガゴルバゴスに羽交い締めにされているバードンに飛び掛かると同時に右拳のパンチを頭部に叩き込み、更に胴体に数発パンチを連打し始める。

 

 だが、仲間の危機を黙って見過ごせるかとばかりにトンダイルがギンガに頭部を突き出して突進!

 

 ギンガはなんとかそれを受け止めるものの、そのままトンダイルとの交戦にと切り替えられてしまう。

 

 

 今度はアーストロンが背後からゴルバゴスに溶岩熱線を噴射し、それをモロ背中に受けたゴルバゴスはたまらず怯んでバードンを捕えていた腕を離してしまう。

 

 

 すると、自由の身になれたバードンはすぐさまゴルバゴスの方を振り向き、、、

 

 

 “ザシュッ ブシュッ ブシュッ”

 

 

 振り向き様にゴルバゴスの体の至る所に嘴を突き立てて攻撃を始めたのだ!

 

 嘴で突かれた部位は痛々しい音と共に傷が出来、そこから血が垂れ始める………!

 

 

 バードンの嘴は特訓に特訓を重ねてより鋭利になっている。そのため、並みの怪獣ならば少し突くだけで簡単に傷つけることが出来るのである!

 

 

 バードンの非情なる攻撃に戦いを見守る一同は戦慄し、海羽に関してはショックで少し涙ぐんでしまっている、、、。

 

 

 バードンはボルヤニックファイアを火球状にしてゴルバゴスに連射して浴びせ、それによるダメージで倒れ込んだゴルバゴスをアーストロンの方へと蹴り転がす。

 

 アーストロンは自分の方へと転がってきたゴルバゴスを起き上らせると、一旦ゴルバゴスを前蹴りで後退させた後、頭部の角を突き立てた頭突きを繰り出す!

 

 アーストロンの角を胸部に受けてしまったゴルバゴスはその部位が爆発すると共に吹っ飛び背後の岩山に激突する。

 

 

 バードンは岩山に激突したゴルバゴスに、嘴を突き刺す攻撃・シャークノーズを繰り出すが、ゴルバゴスはそれを辛うじてかわす。

 

 それにより嘴はゴルバゴスの背後にあった岩山にあ立ったのだが、その瞬間その岩山は爆発と共に砕け散ってしまった!

 

 

 バードンの攻撃を何とか避けれたゴルバゴスだが、先ほどの攻撃により既に戦意を喪失するまでに弱っていた。

 

 そんなゴルバゴスにバードンは止めとばかりに再び嘴を突き出して突進を始める!

 

 

 ヒカル「はっ、危ないッ!」

 

 

 ゴルバゴスの危機に気付いたヒカル。ギンガは交戦していたトンダイルを前蹴りで一旦吹っ飛ばした後、ゴルバゴスの方へと急行する。

 

 

 そして、なんとゴルバゴスの前方に回り込んで両腕を広げる………!

 

 

 ギンガは、自身が盾になることでゴルバゴスを守ろうとしているのだ、、、、、、!

 

 

 “ブシュッ”

 

 

 ヒカル「ぐうォォあああああ~!!」

 

 

 海羽「きゃ~~~!!」

 

 

 バードンの嘴は、ギンガの右腕に突き刺さった!

 

 

 ライブしているが故に痛みが伝わったのかヒカルは痛そうに叫びを上げ、海羽も思わず悲鳴を上げる!

 

 

 すると、バードンは今度はその嘴を突き刺した部位から、嘴の横の袋に蓄えられている毒を流し込み始める!

 

 毒は瞬く間にギンガの右腕全体に広がっていき、やがてギンガの右腕は紫に変色し動かなくなってしまう!

 

 

 バードンは嘴を離す。ギンガは動かなくなった右腕を力なくだらりと下げ、その場で膝、左手を地に付いてしまう。

 

 そして、危機を知らせるかのようにギンガの胸のカラータイマーが赤く点滅を始める!

 

 

 ギンガをダウンさせたバードンは再び標的をゴルバゴスに戻して襲い掛かろうとするが、力尽きる寸前ながらもなおもギンガはバードンを食い止めようと、右膝を地に付きながらも正面から左腕、体全体を使って必死に食らい付く。

 

 バードンはギンガを邪魔だとばかりに両腕で叩いたり足で蹴ったりなどして引き離そうとするが、それでもギンガは必死にしがみ付き続ける、、、。

 

 

 テロチルスとトンダイルはというと、もう「我々の勝利だ」と確信したのか完全に傍観者になっている。

 

 

 アーストロンはと言うと、完全に弱ったゴルバゴスを「邪魔だ」とばかりに尻尾で叩き飛ばした後、残った賢たちを捕えようと接近を始める、、、!

 

 

 自分たちの行動が危機的状況を生み、更にその状況下で唯一の希望だったギンガも力尽きる寸前にまで追い込まれた事により、賢は罪悪感や絶望感により愕然とし始める、、、。

 

 仲間の明人と輝雄も、完全に恐怖と絶望感により足が震え、言葉を失っていた、、、。

 

 

 賢「………全部俺のせいだ………。妹を助けようとここまで来たのに、、、それも果たせないまま、どうやらここで終わりのようだな………………。

 

 愛………ごめんな………………。」

 

 

 賢が完全に諦めかけたその時、

 

 

 海羽「賢君!聞いて!」

 

 

 賢「………?」

 

 

 賢は海羽の突然の呼びかけに気付く。

 

 

 海羽「そのハートフルグラスはね! 折りたたむと銃にもなれるの!」

 

 

 ………突然、奪われた自身の変身アイテムの銃モードの説明をする海羽。賢は最初はどういう事なのか理解できずにいたが、しばらく考えた後でその意味が分かる!

 

 

 賢「………そうだよな………………愛する妹を助けるために折角ここまで来たんだ………

 

 ならば、、例え望み薄であっても、諦めず最後まで自分に出来ることをやる………………

 

 そうすれば、必ず希望の突破口は見つかる!」

 

 

 自身のやるべきことに気付いて奮い立った賢。それを見る海羽は少し嬉しそうな表情になる。

 

 

 愛も今は気絶しているものの、自分を助けようとする賢の熱意が伝わったのか、その寝顔は何処か少し気持ちよさそうなものへと変わっていた、、、、、、。

 

 

 賢「絶対に諦めてたまるか………何故なら俺は………ウルトラマンのアイテムを奪ってまでここに来た………

 

 フルータ星人なんだ!!」

 

 

 賢(フルータ星人)は決心の叫びを上げた後、手に持っているハートフルグラスを折り畳みガンモードへと変形させる。

 

 そして、自身に迫り来るアーストロン目掛けて光弾を連射し始める!

 

 

 賢「来い!怪獣。 勝負だ!」

 

 

 そう叫ぶと賢は、なおも光弾を連射しながら走って移動を始める!

 

 アーストロンは光弾を受けつつも、賢を仕留めようと溶岩熱線を吐きながら追いかけ始める。

 

 光線が自身の周囲の地面に直撃して爆発する中、なおも賢は怯まず攻撃しつつどこかに誘導するかのように走り続ける。

 

 

 そしてしばらく走った後、賢は突然方向転換を始め、さっきとは逆方向を走り始める。

 

 アーストロンもそれに同調するように身体の向きを変える。

 

 

 そして、再び熱線を吐こうとしたその時、突然アーストロンの体がバランスを崩したかのようにぐらつき始める。

 

 足元を見てみると、アーストロンの足の片方が地面の窪みにつまずいてしまっていた。

 

 そしてアーストロンはその場でバランスを崩して倒れ、近くの岩山に激突する!

 

 

 賢はアーストロンを攻撃して逃げながら誘導し、足場を崩して転倒させるという作戦を見事成功させたのである!

 

 賢「足元には気を付けな―!」

 

 見事に作戦を成功させた賢は得意げに軽口を言う。

 

 

 ………だが、これぐらいでへこたれるような凶暴怪獣ではない。

 

 アーストロンはすぐさま立ち上がると賢目掛けて溶岩熱線を発射!

 

 

 “ズドーン”

 

 

 賢「ぐわッ!!」

 

 

 熱線が自身の間近で爆発し、その衝撃と爆風で賢は吹っ飛ばされ地面を転がる。

 

 どこか打ち所が悪かったのか、横たわる賢は少し悶絶する。

 

 

 アーストロンはチャンスとばかりに賢を捕えようと接近する。 今度こそダメなのか、、、!?

 

 

 賢「………くっそ~…!」

 

 

 いよいよここまでかと賢が諦めかけたその時、

 

 

 

 “ズガガガッ”

 

 

 突如、何処からか弾丸が数発飛んで来てアーストロンの頭部に命中する。

 

 アーストロンは弾丸が飛んで来た方を振り向き、賢もその方を振り向く。

 

 

 レイ「随分と派手に暴れてるようだな。」

 

 そこにいたのは、ZAP専用の攻撃銃・トライガンナーを手に立っているレイだった!

 

 

 賢「!………貴方は一体………?」

 

 

 突然の見覚えのない人物の登場に賢が困惑している時、更に上空からはスペースペンドラゴンが飛んで現れる!

 

 

 ヒュウガ「ガスを避けながらなんとか辿り着けたぞ!」

 

 

 どうやらレイとヒュウガは無事テロチルスのガスを避けて来る事が出来たみたいである!

 

 

 ヒカル「レイさん…ヒュウガさん………!」

 

 ヒカルも二人の登場に気付く。

 

 

 ギンガはなおも膝を付きながらもバードンにしがみ付き進撃を食い止め続ける。

 

 

 ヒュウガ「ワイバーンミサイル発射!」

 

 

 ペンドラゴンを操縦するヒュウガは、引き金を引いてワイバーンミサイルを一斉に発射!

 

 ミサイルの雨あられはバードン、アーストロン、更には傍観者に徹していたテロチルスとトンダイルにも命中!

 

 

 バードンはたまらず怯み、その隙にギンガは腹部に右脚蹴りを打ち込んで吹っ飛ばすと受け身を取ってその場から離れる。

 

 

 レイは危うくアーストロンに襲われそうになっていた賢に歩み寄る。

 

 レイ「大丈夫か?あんた。」

 

 賢「え、えぇ………………。」

 

 賢は少し困惑しながらも返事をする。

 

 

 その時、レイは賢の左腕のフュージョンブレスと、右手のハートフルグラスに気付く。

 

 レイ「それは………もしかしてウルトラマンの変身アイテム………?」

 

 賢「ぎくッ!?」

 

 自身の持っている物がウルトラマンの物である事に気付くレイの鋭さに少し驚く賢。

 

 

 レイ「あんた、一体誰なんだ? フルータ星人はどこにいるんだ?」

 

 

 問いかけるレイに、賢は恐る恐る自身の名を名乗った。

 

 賢「ぼ………僕は、古田賢という者でして………………。」

 

 

 “古田賢”。その名前を着た瞬間、レイは何かが頭に引っかかる………。

 

 

 レイ「古田……賢………?

 

 

 “ふるた”………?

 

 

 “フルータ”………?

 

 

 ………………(賢を指差して)ああぁっ!!?」

 

 

 ようやくフルータ星人の正体(笑)に気付いたレイは、ややキャラ崩壊ではないかとばかりに驚く。

 

 賢は少し申し分なさそうに小刻みに頷いた。

 

 

 宇宙人と思われたものが、実はただの地球人だった………予想外の展開にレイは少し頭を抱える。

 

 

 レイ「まさかフルータ星人の正体がただの人間だったとはな………………まあいい。後でワケを話してもらう。ひとまず安全な場所へ急げ!」

 

 賢「あ、はい!」

 

 レイの指示を受けた賢は急いで明人たちの方へ駆け寄る。

 

 

 明人「なあ賢。何なんだ?あの人たち………。」

 

 輝雄「着ている服も、俺たちと結構違う感じだな…。」

 

 それもそのはず、レイたちの着ているのはZAPのスーツなのだから、、、。

 

 賢「彼は俺を助けてくれた………悪い人ではなさそうだ………。」

 

 

 賢の安全を確認したレイはヒュウガに通信を入れる。

 

 レイ「地上からボスへ。」

 

 ヒュウガ「おおレイ!フルータ星人は一体何処にいるんだ!?」

 

 レイ「いや。フルータ星人は実在しなかった。」

 

 ヒュウガ「何だって!?」

 

 レイからの予想外の返事に驚くヒュウガ。

 

 

 レイ「………全て、人のいたずらだったようだ。」

 

 

 ヒュウガ「何ですと!?」

 

 

 レイを通じてフルータ星人の正体を知ったヒュウガは驚きを隠せないと同時に少し拍子が抜けているようであった。

 

 

 

 斎木「俺もいるぜーーーっ!!」

 

 

 更に、何処かからか熱い叫びが聞こえたかと思うと一球ずつ威力のある弾丸が怪獣たちに直撃する!

 

 

 一同が振り向いてみると、そこにはバズーカを手に斎木の立っている姿があった!

 

 斎木も、先ほどの村人たちの通せんぼ(笑)をなんとか振りって、走り続けて何とかここまで辿り着くことが出来たのである!

 

 

 斎木「ただでさえ暑いのに、武装している姿で突っ走ってきたぜ! 今夜は風呂に入らないとな!ははは…。」

 

 ヒュウガ「おう!斎木も間に合ったか!」

 

 ヒカル「来てくれたのですね。斎木さん。」

 

 ヒカルは毒によるダメージで苦しみながらも斎木が来てくれたことを喜ぶ。

 

 

 斎木「俺たちで力を合わせて、怪獣たちを、そしてフルータ星人をぶっ潰そうぜ!!」

 

 そう、斎木だけまだフルータ星人の正体を知らないのである(笑)

 

 

 ………だが、勝機が見え始めたのも束の間、ギンガは自信の体を回る毒に苦しみ続ける。

 

 

 ヒカル「折角斎木さんたちが来てくれたというのに………………このままじゃ、こっちが先に力尽きちまう………………。」

 

 

 ………その時、ヒカルは何かに気付いたのか目を細めて遠くを見つめ始める。

 

 

 その視線の先には、何やら光の球体の様な物がこちらに向かって飛んで来るようであった………。

 

 その球体にはレイやヒュウガ、賢たち、そして海羽も気付く。

 

 

 レイ「………今度は、何が来るんだ………?」

 

 賢「また怪獣じゃねーだろうな?」

 

 

 ギンガ「………あの球体は………もしかして………………?」

 

 ヒカル「ん?ギンガ何か知ってんのか!?」

 

 ギンガは早くも何かを察しているようであった。

 

 

 すると、光球は近くまで飛んで来ると眩い光を放ち始める!

 

 一同が目を覆う中、光球は徐々に変形していき、やがて背後の波紋のマークと共に光の戦士が右手を広げて飛び出す!

 

 

 (BGM:ウルトラマンタロウ(一番サビ~))

 

 

 現れたのは、燃えるような真っ赤なボディ、そして頭部に生えた二本の角・ウルトラホーンが特徴のウルトラ戦士。

 

 

 それは光の国の選りすぐりのメンバーで構成されていると言われているウルトラ兄弟最強とも言われ、かつてヒカル=ギンガをサポートしたり共に戦ったりして彼を導いたこともあるウルトラ戦士。

 

 

 ウルトラマンNO.6・ウルトラマンタロウの登場だ!

 

 

 ギンガのウルトラサインをうけてこの世界にやって来て、そして今回、ヒカルとギンガの危機を察知して駆け付けて来たのである!

 

 

 颯爽と飛んで来るタロウを見上げる一同。やはり驚きを隠せないようである。

 

 

 

 海羽「はぁぁ………タロウ!」

 

 賢「タロウ?」

 

 レイ「タロウ!」

 

 ヒカル「………ウルトラマン…タロウ!!」

 

 (↑ここBGMにリンクする感じで(笑))

 

 

 

 タロウは飛びかかると同時にバードンに急降下キックを浴びせる!

 

 突然頭部を蹴られたバードンは混乱しながらもすぐさま起き上る。

 

 

 そして、ショックで一時的にぼやけている視界の先にはなにやら真っ赤な巨人が悠然と構えて立っている………。

 

 

 バードンは動揺しつつも改めて目を凝らしてみてみると徐々に視界が回復いていき、そして完全に視力が戻った時、驚くような仕草を見せる!

 

 視線の先に立っているのは、かつて同胞を撃破したウルトラ戦士・タロウが立っていたのだから!

 

 

 他の怪獣たちも新たなウルトラマンの登場に身構える。

 

 

 バードンが動揺している隙にタロウは胸部に水平チョップを叩き込み、更に腹部に右脚蹴りを打ち込んだ後右の翼を掴んで放り投げる。

 

 立ち上がったバードンは嘴を大きく開けてボルヤニックファイアを吹き出す!

 

 

 タロウは両手を突き出して光の壁・タロウバリヤーを展開して火炎を防ぐ。

 

 そしてバリヤーを消滅させると同時にタロウはバードン目掛けてキングブレスレットを投げつける!

 

 キングブレスレット。それはかつてタロウがバードンを倒すためにウルトラの母から授かった、あらゆる物に変形したり様々な光線を放ったりできる万能武器であり、本体部のサークルクロスに王冠状のクラウントップが特徴である。

 

 

 タロウが投げたキングブレスレットはバードンの嘴に填まる。バードンは口輪作戦により火炎を封じられてしまった!

 

 バードンがブレスレットを外そうと両手を嘴に添えている間にタロウはスライディングで突っ込んで行き、そしてバードンに足払いのように蹴りを打ち込んで転倒させる。

 

 

 他の怪獣たちも黙って見ているわけにはいかない。

 

 テロチルスは体当たりをしようと空高く飛びあがり、アーストロンは溶岩熱線を発射して攻撃を仕掛ける。

 

 タロウは熱線をジャンプしてかわすと同時に空中で数回きりもみを決め、それにより遠心力の勢いをプラスしてテロチルスにスワローキックを叩き込んだ。

 

 蹴りを食らったテロチルスはたまらず地面に落下する。

 

 

 アーストロンは着地したタロウに殴り掛かる。

 

 タロウはアーストロンの右フックを後ろに跳んでかわし、左フックを右足蹴りで弾いて撥ね返す。

 

 次にタロウは、アーストロンの頭部の角を振り下ろす頭突きをかわすと逆に右足のウルトラキックを繰り出してアーストロンの頭部を蹴り上げ、次に胴体にボディブローを連打し、更に背を向けて両腕で角、首を掴み、ウルトラパワーを発動させて背負い投げで放り投げる!

 

 投げられたアーストロンはその先にいたトンダイルに激突し、二体は同時に地面に転倒する。

 

 

 バードンは背後からタロウに襲い掛かろうとするが、タロウは既に見切っていたのか、振り向き様にカウンターの右脚ミドルキックを腹部に叩き込む。

 

 蹴りを食らったバードンはたまらず吹っ飛び、またそれと同時にバードンの口輪として填まっていたキングブレスレットが外れ、タロウの腕に戻る。

 

 

 ヒカル「へへ………やっぱタロウは強ええや………。」

 

 再びタロウの強さを見て感心するヒカル。かつてタロウは、ギンガの前で暗黒の魔神・ダークルギエルを圧倒した事もあるのだから………。

 

 ウルトラ兄弟最強と言われるほどの強さを誇るタロウ。その超絶パワーでバードンを始め四大怪獣軍団を圧倒する。

 

 

 四大怪獣が一旦合流し警戒し始めた所で、タロウはギンガの元へ歩み寄る。

 

 タロウ「大丈夫か、ヒカル。」

 

 ヒカル「ああ。………来てくれてありがとう。タロウ。」

 

 

 タロウ「言ったはずだ。「君が呼べば、いつでも助けに来る」とな。」

 

 

 再会の喜びも含めて言葉を交わすタロウとヒカル。

 

 だがそれも束の間、ギンガの体内への毒の進行は進んでおり、再びギンガは苦しむような仕草を見せる。

 

 

 それに気づいたタロウはキングブレスレットから光線を発射し、それをギンガに浴びせる。

 

 するとギンガの体は右腕を中心に光を放ちながら毒素を消し飛ばしていき、やがて毒が完全になくなった!

 

 恐れくこれはキングブレスレットから放つ解毒光線・毒素消去能力なのであろう。

 

 

 ヒカル「うおおっ!元気戻ったぜ!」

 

 エネルギーがだいぶ無くなっているものの、体を回る毒が消え去った事により右腕も復活し、気力を取り戻したヒカル。それに同調するかのようにギンガも立ち上がる。

 

 ギンガはタロウの方を向いて「ありがとう」と言うかのように頷き、それを見たタロウも頷き返す。

 

 そしてタロウと回復したギンガは、怪獣たちの方を向いて並び立つ。

 

 

 レイは懐からネオバトルナイザーを取り出し高く揚げる。

 

 

 レイ「行けっ!ゴモラ!リトラ!ゾアムルチ!」

 

 

 (BGM:レイの戦い)

 

 

 “ピン ピン ピンッ”

 

 

 《バトルナイザー モンスロード!》

 

 

 ネオバトルナイザーはアナライズ音と共に下部の三つのランプが点灯し、中央のプレート部が左右に展開する。

 

 そしてその中から三つのカードのようなエネルギー体が出現し、中央のウィンドウ部にスキャンされた後遠方へ飛んで行く。

 

 

 エネルギー体は地上で二つ、上空で一つ徐々に実体化していき、やがて怪獣の姿となる!

 

 

 現れたのは、これまでレイのパートナーとして戦ってきた怪獣、『古代怪獣ゴモラ』と『原始怪鳥リトラ』、

 

 そして、先日新たに仲間となった怪獣、『巨大魚怪獣ゾアムルチ』である!

 

 

 因みにレイのリトラは、以前現れたリトラよりも大型の個体であるため、性格には『リトラ(S)』と命名されている。

 

 

 現れたレイの三大怪獣は、ギンガたちの横に並び立ち咆哮を上げる。その横にはペンドラゴンも浮遊する。

 

 

 レイ「俺たちも力を貸すぞ!ギンガ!」

 

 ヒカル「(少し嬉しそうな表情で)レイさん………。」

 

 

 

 一方で賢たちはというと………味方とはいえ更なる怪獣の出現にもはや唖然としていた。

 

 賢「怪獣が次々と出てくるなぁ………。」

 

 明人「………せやね………。」

 

 輝雄「一体何者なんだ?あの男(レイ)は………………。」

 

 

 賢「………怪獣使い………………?」

 

 

(BGM:ウルトラマンギンガの歌)

 

 

 タロウ「ヒカル………今こそ再び力を合わせて戦おう!」

 

 ヒカル「………ガレット!」

 

 

 そう言うとタロウは両腕をクロスする。

 

 すると自身の体が光に変わり、そしてギンガのカラータイマーから中に入り込み、ヒカルの左腕に装着され始める。

 

 

 ヒカルの腕に装着されたモノは、覆っていた光が徐々に消えていきやがて姿を現す。

 

 

 それは、タロウが再びヒカルに与えた力。

 

 

 メインカラーは赤で、タロウの顔を模ったレリーフが特徴の、タロウが変身したアイテム、その名も『ストリウムブレス』だ!

 

 

 これはウルトラ6兄弟の力が秘められたアイテムであり、以前もタロウが一時的にヒカルに与えたことがある力でもある。

 

 ギンガをギンガストリウムにパワーアップさせる事が出来るアイテムであり、かつてこの力も借りてヒカル=ギンガはショウ=ビクトリーと共にチブル星人エクセラーの侵略と戦った事があるのである。

 

 

 今回ギンガのウルトラサインを受けたタロウはこの世界に来る前に、ストリウムブレスのために再びウルトラ兄弟から力を授かって来たのだ。

 

 

 帰ってきた戦友から再び授かった力・ストリウムブレス。ヒカルはそれをどこか懐かしく感じつつも気合いを入れる。

 

 ヒカル「久しぶりだな………今こそ、ウルトラの兄弟の力を見せてやろうぜ、タロウ!」

 

 

 今こそ変身の時だ! ヒカルはストリウムブレスのレリーフを横に傾けて変身モードにする。

 

 

 タロウ「今こそ、ひとつになる時!」

 

 

 次にヒカルはタロウの掛け声の後ギンガスパークの先端で先端のスイッチを押しながらリードする。

 

 

 タロウ「ウルトラマンタロウ! ギンガに力を!ギンガストリウム!」

 

 

 タロウの掛け声と共にストリウムブレスは光を放ち、ヒカルはポーズを決める。

 

 

 そしてギンガはタロウの変身音と共に太陽のイメージをバックにタロウのビジョンと一体化し、二人が合わさって背後に波紋のマークが広がった後、ギンガの体は光と共に徐々に変わっていく………!

 

 

 やがて変形が完了し、ギンガは光を消滅させながら右手を広げて上に揚げた状態で現れる。

 

 

 現れたギンガは、タロウを彷彿させる胸のプロテクターや額のビームランプ、そして若干タロウっぽくなっているボディラインが特徴のよりスマートな姿になっていた。

 

更にタロウからのストリウムエネルギーにより、カラータイマーも赤から青に戻る。

 

 

 この姿こそ、ギンガがタロウと一体化して通常のギンガからパワーアップした形態、『ウルトラマンギンガストリウム』である!

 

 

 賢「うわあ………!」

 

 明人「ウルトラマンとウルトラマンが…一体化しやがった………!」

 

 海羽「すご~い!(軽く拍手)」

 

 

 周囲から注目が集まる中、ギンガストリウムは揚げていた両腕をゆっくりと降ろしていく、

 

 

 ヒカル「まずは捕らわれた人たちの救出だ!」

 

 

 そう言うとヒカルはストリウムブレスのレリーフを縦に傾けて必殺技モードに切り替え、そしてウルトラ兄弟の姿があしらわれたディスク・ターレットを回転させてスイッチで止める。

 

 

 タロウ「ウルトラマンジャックの力よ!」

 

 

 発動するのはウルトラ兄弟4男。帰ってきたウルトラマンことウルトラマンジャックの力だ!

 

 ヒカル「おりゃっ!」

 

 タロウの掛け声と共にヒカルは更にディスクを回転させる。

 

 

 タロウ「ウルトラバーリア!」

 

 ジャック「シェアッ!」

 

 タロウの掛け声と共にギンガストリウムは人々が捕らわれてるトンダイルカプセルの方に手を向けて光を発する。

 

 

 “パリーン パリーン パリーン…”

 

 

 すると、人々を閉じ込めていたトンダイルカプセルは瞬く間に次々と破裂していき、やがて全ての人が解放された。

 

 

 ギンガストリウムが発動したウルトラマンジャックの力・ウルトラバーリアは使い方は様々であり、バリアーを展開するだけではなく相手の攻撃を押し返したり、このように相手を閉じ込めている物の内側から別のバリアーを展開することでそれを破裂させて解放させるという使い方もあるのである!

 

 

 海羽「良かったねみんな! さあ、早く安全な場所へ!」

 

 トンダイルカプセルから解放された人々は喜び合った後、海羽の言葉で早速急いでその場から安全な場所へと移動し始める。

 

 

 賢「ほ、ほら、早くこっちへ!」

 

 賢の呼びかけにより、解放された人々は賢たちの方へと駆け寄る。

 

 

 すると、よほど怖かったのと解放された嬉しさからか泣き出す者も続出し、中には海羽にすがり付く者も見え始める。

 

 海羽「あ、、あ〜よしよし、怖かったよね〜…。」

 

 海羽は困惑しながらも自身に泣いてすがる子供たちをなだめ始める。

 

 

 賢「ひ、ひとまず良かったな……みんな無事d、、」

 

 

 愛「お兄ちゃーん!」

 

 

 その時、賢の独り言を遮るように女性の呼び声が聞こえ、賢はその方へと振り向く。

 

 

 そこには、群れる子供たちを避けながらこちらに走ってくる一人の女性がいた。

 

 

 そしてその女性は駆け寄ると同時に賢に抱き付く!

 

 

 そして賢はすぐさま気づく。走ってきたその女性は、捕らわれていた人の一人で賢の妹・愛であった。

 

 

 愛「………お兄ちゃん………。」

 

 愛は賢に抱きついた状態で嬉し涙を流し始める。賢はそんな愛をふっと笑顔で見つめながら頭を撫でた………。

 

 

 明人「良かったっスね、賢。」

 

 輝雄「ホントに………。」

 

 

 ヒカル「良かったな。賢。」

 

 ヒカルも安心の表情を見せる。

 

 トンダイルに連れ去られた 人々は皆解放され、古田兄妹も無事に再会を果たせた。あとは怪獣軍団を倒すだけだ!

 

 向かい合うギンガストリウム&レイ怪獣御三家とバードン率いる4大怪獣軍団。 バードンは、自分の食事を逃がされた事に怒りを露わにし。トンダイルも折角集めた人間を逃がされた事に怒るような仕草を見せる。

 

 

 ギンガストリウムもゴモラやゾアムルチと共に、タロウと同じファイティングポーズを取る。

 

 

 ヒュウガ「さあ、戦闘開始だ!怪獣どもを撃滅するぞ!!」

 

 レイ・斎木「了解!」

 

 ヒカル「ガレット!!」

 

 

 ヒュウガの指示を合図に、ギンガストリウム達は颯爽と駆け始め、対する怪獣軍団も駆け寄り始める!

 

 遂に、決戦の火蓋が切って落とされた!

 

 ゴモラはアーストロン、リトラはテロチルス、ゾアムルチはトンダイル、そしてギンガストリウムはバードンの相手をする!

 

 各戦士のサポートに回るペンドラゴン。斎木もバズーカを担いで援護に回る事にした。

 

 

 バードンは翼の付いた両腕を大きく振るって怒りの猛攻を仕掛けるが、ギンガストリウムはカンフーマスターのごとくそれらを無駄の無い身のこなしでかわして攻撃を加える手法で翻弄していく。

 

 

 ゴモラ対アーストロンの戦いは正に力と力のぶつかり合い。

 

 互いに角を突き出した頭突きでぶつかり合い、その後ゴモラは右フックをアーストロンの頭部に打ち込んだ後頭部の角を掴むが、アーストロンは頭部を振り上げてそれを振りほどいた後右脚でゴモラの腹部を蹴り上げて後退させる。

 

 ゴモラを後退させたアーストロンは溶岩熱線を噴射して攻撃。熱線がゴモラの周囲で爆発し、またゴモラ自身も数発受けてダメージを受ける。

 

 

 それに気づいたギンガストリウムは一旦バードンの相手から離れ側転をしながらアーストロンに接近し、そして下から顎を蹴って口を閉じることで熱線攻撃を止め、そしてアーストロンが怯んだ隙に後ろ回し蹴りを胸部に打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 ナイスアシストだ!

 

 ギンガストリウムがアーストロンを攻撃している隙に背後からバードンが迫るが、今度はゴモラがバードンを体当たりで食い止め、更に角から照射するビーム状の超振動波を浴びせて後退させる。

 

 

 互いにアシストし合ったゴモラとギンガストリウムは「ナイス」とばかりに腕と腕を当てる。そしてそれぞれ自身の対戦相手に戻る。

 

 

 アーストロンは突進する形の頭突きを繰り出すが、ゴモラはそれを真正面から両腕で受け止めて思い切り横に放り投げ、投げられたアーストロンはスピンしながら吹っ飛んで岩崖に激突する。

 

 立ち上がったアーストロンはゴモラに勢いよく駆け寄りながら右フックを繰り出すが、ゴモラはそれをしゃがんで避けると同時にカウンターで右脚蹴りを腹部に叩き込んだ!

 

 アーストロンが怯んだ隙に更に左足蹴りを腹部に打ち込んで後退させ、そして一回転しながら強烈な尻尾の一撃を頭部に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 アーストロンは“凶暴怪獣”の異名を持つことから非常に強力な怪獣。だがレイのゴモラも、強豪怪獣であるに加えてこれまで様々な大怪獣バトルを勝ち抜いて来たため、絶対の強さを得ている。

 

 そんな経験値の違いからゴモラはアーストロンを圧倒して行く。

 

 ゴモラの猛攻を受けたアーストロンだが、なおも怯まずゴモラと殴り合いの戦いを展開する。

 

 

 一方のギンガストリウム対バードンはというと、

 

 バードンは大きく右腕を振って殴りかかるがギンガストリウムはそれをしゃがんでかわすとバードンの背部に右手の手刀を打ち込み、その後バードンの振ってきた左腕をしゃがんで避けると同時に腹部に左拳を叩き込み、そこから更に連続パンチを腹部に打ち込んだ後跳躍して頭部に右手の手刀を打ち込んだ。

 

 

 テロチルスと戦うリトラは、他の怪獣よりも小柄な体を活かし、素早く飛び回りながらテロチルスの殴り込み攻撃を避けつつ接近して嘴で突いたりして攻撃していく。

 

 やがてリトラは一旦遠く離れた後、勢いよくテロチルス目掛けて突っ込んでいくが、テロチルスは即座に翼を羽ばたかせて上空に飛び上がり、リトラも即座にそれを追うべく飛び上がる。

 

 空中戦へと切り替わるリトラ対テロチルスの戦い。リトラは口から火球・ファイヤーアタックを連射しながらテロチルスを追撃し、テロチルスもそれを避けながら上空を飛び回る。

 

 やがてペンドラゴンもリトラの援護に回り始め、対アステロイド砲やワイバーンミサイルなどを駆使してテロチルスを追撃する。

 

 

 リトラ&ペンドラゴン対テロチルスの空中の激しくスピーディーな追撃戦。三者とも目まぐるしく武器を放ちながら上空を飛び回るため、その様子はまるで目で捉えきれないほどである。

 

 

 一方のゾアムルチ対トンダイルの水棲怪獣同士の対決。更に言えば魚VS蛙の戦い(笑)

 

 トンダイルは口からポ○モンのバ○ル光線のごとくトンダイルカプセルをゾアムルチ目掛けて吹き付けて攻撃を仕掛ける。

 

 ゾアムルチはそれらを口からの青い破壊光線で破壊していき、援護に回る斎木も手持ちのバルカン砲でそれらを確実に打ち壊していく。

 

 そしてそれによる爆風でトンダイルが一時的に視界を遮られている隙に、斎木はバルカン砲の弾丸を乱射してトンダイルに浴びせ、更にゾアムルチは爆風を通過して勢いよくトンダイルに跳びかかる!

 

 両者は抱き合ったまま地面を転がり、やがてそのまま近くの湖に着水。水中戦に切り替わった。

 

 両者はゆっくりと湖の地面に着地し、バトルを再開する。

 

 ゾアムルチはトンダイルと組み合った後、頭部に右手チョップをきめて屈ませるが、トンダイルはそのまま横振りの頭突きを腹部に決めて反撃する。

 

 トンダイルは更に攻撃を加えようと右腕を振って殴りかかるがゾアムルチはその右腕に噛み付くことで受け止め、そのまま顎に力を入れて痛みを与えた後、一旦噛み付きを解いて腹部に右脚蹴りを叩き込んだ。

 

 

 激しい肉弾戦を繰り広げる両者だが、水中の水の抵抗故に動きは若干遅めである。

 

 

 吹っ飛ばされたトンダイルは接近戦は不利と見たのかそのまま水中を遊泳して体当たりしようとし、ゾアムルチもそれに対抗するために水中を遊泳し始める。

 

 そして水中を素早く遊泳しつつ互いにぶつかり合っていく。

 

 

 

 怪獣軍団と激しいバトルを繰り広げるギンガストリウムとレイの怪獣御三家、そしてペンドラゴン。

 

 それを見守る海羽と子供たちは応援の声をかけていく。

 

 海羽「さあ!ギンガが、レイさんの怪獣たちが私たちのために戦ってくれてるよ! 私たちも元気一杯に応援して力になろう!

 

 せーの!頑張れー!!」

 

 子供たち「頑張れ〜!」

 

 海羽「頑張れー!!」

 

 子供たち「頑張れ〜!!」

 

 

 それを苦笑しながら見ている古田兄妹と明人、輝雄。

 

 明人「あ、あはは…元気がいいなー海羽さん。」

 

 輝雄「ああ、有り余ってるぜ。」

 

 賢「ただ一つ言えるのは、みんなウルトラマンを信じてるという事だな。」

 

 愛「うん。だから私たちは助かったのかもしれない…。」

 

 

 すると、

 

 海羽「それじゃ!今度はお兄さん、お姉さん達も一緒に!」

 

 

 明人・輝雄「へ?」

 

 賢・愛「俺/私達のこと?」

 

 

 海羽「頑張れー!!」

 

 賢「がっ…」

 

 賢・愛・明人・輝雄「頑張れー!」

 

 海羽「頑張れー!!」

 

 賢・愛・明人・輝雄・子供達「頑張れーー!!」

 

 

 海羽「絶対に負けないで!レイさん!ウルトラマン!

 

 頑張れーーー!!」

 

 全員「頑張れーーー!!」

 

 

 (BGM:英雄の詩)

 

 

 海羽たちの熱い声援はギンガストリウムたちに届いた!

 

 レイ「ありがとう! みんなの声援は、ゴモラたちに届いたぜ!」

 

 ヒカル「うおぉ〜!元気湧いてきたぜ! よっしゃいくぞー!」

 

 

 ギンガストリウムたちの猛攻撃が始まる!

 

 バードンは両腕の翼を振るって襲い掛かるが、ギンガストリウムは左翼を右腕、右翼を右膝で受け止めて右拳で叩き落とした後、腹部に右肘を打ち込み、更に跳躍して左膝を胸部に叩き込んで後退させる。

 

 怯まずバードンは嘴を突き刺そうと頭部を振り下ろすが、ギンガストリウムはそれを体を横に反らせて避け、それによりバードンが屈んだ姿勢になったところで首筋に手刀を打ち込み、さらに大きく右足を振り上げて渾身の踵落としを背部に叩き込んで転倒させた!

 

 ギンガがタロウと一体化して変身するギンガストリウム。ギンガ自身の強さにタロウの力が合わさったその戦闘力はバードンを圧倒していく。

 

 

 

 リトラ&ペンドラゴン対テロチルスの空中戦。

 

 激しい追撃戦が続く中、テロチルスは突然旋回してリトラに接近し、そして両腕でリトラを鷲掴みにして捕らえた!

 

 リトラを捕らえたテロチルスはそのまま急降下し始める。ポ○モンで言う地球投げみたいな技で地面に叩きつけようとしているのか、、!?

 

 リトラは必死にもがくが、自身と約4倍もある体格差からなかなか抜け出せない。

 

 

 その時、リトラは何かを見つける。それは何やらテロチルスの胸にある切り傷だった。

 

 実はテロチルスは先ほどギンガとの交戦中にギンガセイバーで斬られた際に、胸に切り傷が出来ていたのである。

 

 

 “ブシュッ”

 

 リトラはテロチルスの胸の切り傷に勢いよく嘴を突き刺した!

 

 テロチルスは悲痛な叫びと共にリトラを手放し、そして急降下の際の加速も相まって自身が地面に叩きつけられてしまう。

 

 

 胸を押さえてよろけがらも立ち上がるテロチルスはだいぶ弱っている。トドメのチャンスだ!

 

 リトラは体を燃え上がらせ、やがて姿を変える。

 

 全身が赤く染まったその姿こそ、レイのリトラの最強攻撃形態『ファイヤーリトラ』である!

 

 ファイヤーリトラは全身に燃え上がる炎を纏わせ、それを巨大な火の鳥状に変形させて相手にぶつける必殺技・ファイヤーストライクを放つ!

 

 巨大な火の鳥はテロチルスの胸の傷口を中心に直撃!それによりテロチルスは全身の体内に炎が走り、やがて大爆発して吹き飛んだ。

 

 

 テロチルスを撃破したファイヤーリトラは、ペンドラゴンと共に上空で並ぶ。

 

 ヒュウガ「やったな、リトラ。」

 

 

 

 水中を遊泳しながら激しくぶつかり合うゾアムルチとトンダイル。

 

 トンダイルはより力を込めた体当たりをお見舞いしようと勢いよくゾアムルチに突っ込む。

 

 ゾアムルチはそれをスレスレのところで避けると同時にトンダイルの左腕に噛み付き、そしてそのままジャイアントスイングで数回振り回して大きく放り投げ、トンダイルは岩山に激突した。

 

 顎の力だけで怪獣を投げ飛ばすと、レイのゾアムルチははなかなかの者である。

 

 トンダイルは立ち上がるが、ゾアムルチの猛攻のダメージと水中を遊泳し続けた事による疲れからか動きが鈍くなってた。

 

 

 ゾアムルチは全身から口に渾身のエネルギーを込める。

 

 そして最大パワーの破壊光線を発射する!その反動はもの凄く、ゾアムルチは発射と同時に少し後ろに下がっている。

 

 破壊光線が直撃したトンダイルは、そのままその威力により後ろに下がっていき、やがて大爆発。湖の藻屑となった。

 

 

 

 一方のアーストロンと戦うゴモラ。

 

 ゴモラはアーストロンの角を右手で掴み、そのまま頭部の兜状の角を活かした頭突きを頭部にお見舞いする。

 

 その後ゴモラは腹部に右足蹴り、頭部に右フック、跳躍して胸部にタックルと連続攻撃をアーストロンに浴びせる。

 

 そして怯んだところに更に大きく前転して尻尾でのあびせ蹴り・大回転打を繰り出す!

 

 強烈な尻尾の一撃は見事頭部に決まり、吹っ飛ばすと同時に角をへし折った!

 

 

 追い詰められたアーストロンは、最後の手段として口内が燃え上がるほどエネルギーをチャージし始める。

 

 ゴモラも角にエネルギーをチャージし始める。

 

 

 遂にアーストロンは渾身の溶岩熱線を発射し始める!

 

 

 レイ「超振動波だーーーっ!!」

 

 

 ゴモラもレイの叫びと共にビーム状の超振動波を放つ!

 

 

 熱線と振動波は激しくぶつかり合う。どうやら力は互角のようだ。

 

 だが、徐々にアーストロンの熱線が押されていき、それと同時にゴモラも徐々にアーストロンに接近していく。

 

 そして、ゴモラは至近距離まで来ると鼻先の角をアーストロンの腹部に突き刺して体内に流し込む超振動波(ゼロシュート)を叩き込む!

 

 体内に超振動波を流し込まれるアーストロンはしばらくもがき苦しんだ後、全身がオレンジ色に発光して大爆発し跡形もなく吹き飛んだ。

 

 アーストロンを撃破したゴモラはレイの方を振り向いて勝利の雄叫びを上げる。

 

 

 残るはギンガストリウムVSバードンの一騎打ちである!

 

 

 海羽「さあ!最後はみんなでギンガを応援するよ!

 

 せーの!」

 

 全員「頑張れー!!」

 

 

 海羽たちの更なる応援を受けるギンガストリウムはバードンを圧倒する。

 

 

 バードンは接近戦は不利と見たのか、翼を羽ばたかせて上空に飛びあがり始める。空から体当たりを仕掛けようというのだろうか?

 

 その時、ゴモラがギンガストリウムの前方に立って両腕を広げる。恐らく自身を踏み台にして跳べという事なのだろう。

 

 ヒカル「サンキュー、ゴモラ。」

 

 ギンガストリウムは走ってジャンプし、更にゴモラの肩を踏み台にして空高く跳び上がる。

 

 そして上空のバードンにすれ違いざまにチョップを叩き込み、それを食らったバードンはたまらず地面に落下する。

 

 ギンガストリウムも土砂や土煙を巻き上げながら着地する。

 

 

 立ち上がったバードンはなおも両腕を交互に払って殴りかかり、ギンガストリウムはそれらを両腕で交互に防いだ後、腹部に右拳を打ち込み、更に顔面に裏拳をお見舞いする。

 

 再びバードンは右腕で殴りかかるがギンガストリウムはそれを左手で掴んで受け止めるとそのまま自身の方に引き寄せてカウンターの右肘を胸部に叩き込み、続けて頭部に左手の空手チョップを打ち込む。

 

 そして胸部に左右連続パンチを打ち込んだ後、跳躍して胸部に右足蹴りを叩き込み、その反動で空中で反転して着地する。

 

 

 ヒカル「行くぜウルトラ兄弟!」

 

 

 ヒカルは再びディスクを回してスイッチで止める。

 

 

 タロウ「ウルトラセブンの力よ!」

 

 

 次に使うのはウルトラ兄弟3男で深紅のファイター・ウルトラセブンの力だ!

 

 ヒカル「おりゃっ!」

 

 タロウの掛け声と共にヒカルは更にディスクを回す。

 

 

 バードンはボルヤニックファイアを噴射して攻撃を仕掛ける、ギンガストリウムは即座に上空に飛んで避けて静止する。

 

 ギンガストリウムの横にウルトラセブンのビジョンが浮かぶ。

 

 タロウ「エメリウム光線!」

 

 セブン「デュワッ!」

 

 ギンガストリウムはセブンのビジョンと重なりながら額に両手を当ててエメリウム光線を発射する。

 

 二発連続で発射されたエメリウム光線はバードンの両頬に命中して爆発し、毒袋を焼き切った。

 

 撃ち落とされた毒袋。根本から焼き切られたため幸い毒が漏れることは無かった。

 

 

これで毒が飛び散る心配することなく撃破できる。

 

 

 タロウ「ゾフィーの力よ!」

 

 ヒカルはディスクを回してスイッチで止め、ウルトラ兄弟No.1の強い兄貴・ゾフィーの力を発動させる。

 

 ギンガストリウムの隣にゾフィーのビジョンが浮かぶ。

 

 タロウ「Z光線!」

 

 ゾフィー「ヘアッ!」

 

 タロウの掛け声と共にギンガストリウムはゾフィーのビジョンと重なりながら、両腕を上に揚げて左右に広げた後両手の先を合わせて突き出して稲妻状の光線・Z光線を放つ!

 

 光線はバードンの頭部に命中して爆発し、そしてそれによりバードンの頭部のトサカに引火して頭に火がついてしまう!

 

 頭部が燃え始めたバードンはその場でのたうち回る。

 

 

 ………かつてバードンは、ボルヤニックファイアでゾフィーの頭を燃やした事がある。(因みにそれにより、ゾフィーは“ミスターファイヤーヘッド”という変な称号を得てしまう(笑))

 

 だが、今回はそのゾフィーの力で自身がファイヤーヘッドになってしまったのだ!

 

 バードンにとって、これほど皮肉な事は無いであろう(笑)

 

 

 タロウ「決めるぞヒカル!」

 

 ヒカル「ああっ! これで最後だっっ!!」

 

 

 ヒカルはディスクを回してスイッチで止める。

 

 

 タロウ「ウルトラマンタロウの力よ!」

 

 最後に決めるのはウルトラマンNo.6でウルトラ兄弟最強の戦士・ウルトラマンタロウの力だ!

 

 ギンガストリウムの隣にタロウのビジョンが現れ、ギンガストリウムはそれと共に開いた右手を上げると同時に左手を腰に当て、そこから左手を上げて右手に重ねスパークを起こし、両手を腰に添えて全身を虹色に輝かせながらエネルギーを溜める。

 

 

 タロウ「ストリウム光線!」

 

 タロウ(掛け声)「トァーッ!」

 

 

 ギンガストリウムはエネルギーを溜めた後、タロウのビジョンと重なりながら両腕をT字に組み、タロウ最強の必殺光線・ストリウム光線を発射する!

 

 七色に輝く光線はバードンの体全体を直撃!バードンは苦しみながら光線の威力でしばらく後ろにさがった後、やがて大爆発して爆発四散する!

 

 

 バードンを撃破したギンガストリウムはその大きな爆風を背に雄々しく立つ。

 

 遂に、ギンガとレイの怪獣御三家が大勝利した!

 

 

 海羽「いぃぃぃぃぃぃぃやったーーーーー!!!」

 

 ギンガ達の勝利に海羽はうるさいほどに喜びの叫びを上げ、子供たちも跳びはねてギンガ達にありがとうを言いながら喜ぶ。

 

 古田兄妹や明人・輝雄も安心の笑みでギンガ達を見上げる。

 

 

 ヒュウガ「やったな!」

 

 斎木「いぃやっほーぅ!!最高だぜ!!」

 

 

 ギンガストリウムをセンターに、一同は並び立つ。レイはゴモラ達を見上げる。

 

 レイ「ゴモラ!リトラ!ゾアムルチ! よくやった。 さあ、戻れ。」

 

 レイはネオバトルナイザーを揚げ、ゴモラとリトラ、ゾアムルチはカード上のオレンジ色のエネルギー体に変わり、レイのバトルナイザーに戻った。

 

 そしてレイは、ネオバトルナイザーに戻った三体を労をねぎらうような笑みで見つめる。

 

 

 子供たちの声援を受ける中、やがてギンガストリウムもそれに応じるように一回頷いた後光に包まれて小さくなっていきヒカルの姿に戻る。

 

 ヒカルの左腕には、ストリウムブレスが付けられていた。ヒカルはそれを微笑みながら見つめる。

 

 ヒカル「ありがとう。タロウ。」

 

 ストリウムブレスはヒカルのレイに応じるようにウルトラバッヂの発光音と共に光った。

 

 

 

 一方、そんな一連の戦いを遠くから見ている一人の青年がいた。

 

 ???「タロウさん、まさかギンガさんにもああいう形で力を貸していたとは………お疲れさんです。」

 

 そう言うと、帽子を深々とかぶって何処かへ歩き去って行った………。

 

 

 

 戦いは終わり、一同は傷ついたゴルバゴスの近くに歩み寄る。

 

 タロウ「なるほど、このゴルバゴスと言う怪獣は、元々この山で平和に暮らす怪獣だったんだな。」

 

 ヒカル「そうなんだ。やっとそれを荒らす怪獣たちが滅んだというのに………この有様さ。」

 

 ヒュウガ「怪獣たちに勇敢に立ち向かった彼に、我々は敬意を称さないとな。」

 

 一同はゴルバゴスを哀れむような表情で見つめる。

 

 

 ヒカル「海羽、お前の力でなんとかならないのか?」

 

 海羽「(胸に拳を当てて)私に任せて。」

 

 ヒカル「おお、頼んだぜ!」

 

 

 海羽「………ガレット!!」

 

 

 ヒカル「………ってお前いつから隊員になったんだよ。」

 

 ヒカルから突っ込みを受ける海羽。

 

 

 海羽「ほえ?………

 

 (頬を赤らめて両手の人差し指を当てながら)………だって言ってみたかったんだもん………………。」

 

 

 海羽はフルータ星人(笑)から返してもらったハートフルグラスを目に当ててウルトラウーマンSOL(ソル)へと巨大化変身する。

 

 それを見た子供たちは少し驚く。

 

 「うお~すっげ~!!」

 

 「お姉ちゃんもウルトラマンだったの!?」

 

 海羽「(ピースして)へへへ~。よーく見ててね。」

 

 

 ソルは横たわるゴルバゴスの元へと歩み寄る。

 

 海羽「(両手を膝に付けて少し屈んで)………大丈夫?ゴバちゃん。」

 

 ソルに気付くゴルバゴス。しかし、先ほどの事もあってか横たわったまま警戒するように吠え始める。

 

 海羽「ひゃっ!?」

 

 ソルは少し驚くがすぐさまゴルバゴスに語り掛ける。

 

 海羽「(手の平を向けて)大丈夫。私はあなたの敵じゃないから。」

 

 ソルの優しい語り掛けを聞くゴルバゴスは大人しくなっていく。

 

 海羽「(しゃがんで頭を撫でながら)よしよし。何も怖くないから。 (両手を合わせて首をかしげて)さっきはごめんね。」

 

 語り掛けで大人しくなったゴルバゴスにソルは手をかざして粉雪状の治療光線・リライブフォースを浴びせる。

 

 ゴルバゴスは優しい光に包まれると傷が回復し、やがて完全に元気になって起き上る。

 

 

 そして、何やらソルに懐くような仕草を見せる。どうやら彼女の事が気に入ったみたいである。

 

 海羽「(頭を撫でながら)よしよし、あなたのお家はもう大丈夫だよ。」

 

 

 ヒュウガ「彼女にあんな力があったとはな。」

 

 レイ「子供たちだけじゃなく、罪の無い怪獣に対しても優しく出来る。良い感じだな。」

 

 

 明人「っつーか、子供たちだけじゃなく怪獣にも好かれるって………海羽さんってある意味最強………………?」

 

 輝雄「おぉ、さっきも子供たちに元気よく呼びかけてたし………彼女、もしかしたら将来バスガイドさんとか、ウルトラマンのショーのお姉さんとかイケるんじゃないかな………?

 

 なぁどう思う?読者のみんな。」

 

 明人「いや誰に聞いてんだよ!?(ツッコミのチョップを打つ)」

 

 

 雑談をしつつもゴルバゴスを助けたソルを見上げる一同も安心の笑みを浮かべる。

 

 

 タロウ「彼女の力なら、きっと………………。」

 

 そんな中、タロウはソルの力を見て何かを感じ始めていた………………。

 

 

 するとゴルバゴスはある方向へ振り向くと、口から火球を数発発射してテロチルスが作っていた銀の城を焼き払った。

 

 やはり自分の住み家には邪魔なモノだと思ったのであろう。

 

 

 やがてゴルバゴスはソルたちに手を振って大熊地獄ヶ岳の山奥へと帰っていき、ソル達もそれを手を振って見送る。

 

 海羽「じゃあね~ゴバちゃーん!」

 

 ヒカル「元気でやれよー!」

 

 ヒュウガ「達者でな~!」

 

 子供たち「さようなら~!!」

 

 

 賢「これで一件落着だな。」

 

 愛「だね。」

 

 

 だが、その時、

 

 

 斎木「そこまでーーーーーっ!!!」

 

 

 いきなり斎木の怒号が飛び、一同は驚いてその方向に振り向く。

 

 斎木「今更人間面しても無駄だっ! フルータ星人!」

 

 そこには斎木が古田兄妹や明人、輝雄に向かって右手にバズーカ、左手にガトリングと、反動?何それ美味しいの?な態勢(明らかに怪獣戦よりも凄い武装(笑))で威嚇する。

 

 それを見た古田兄妹、明人、輝雄は困惑する。

 

 

 斎木としてはまだ終わってなかったのだ!

 

 村人の通せんぼを突破して到着した時は既に激戦の真っ最中であったため、フルータ星人の正体を知るタイミングが斎木には無かったのだ。

 

 

 ヒカル「斎木さんっ!」

 

 呆れるようにヒカルが斎木に歩み寄って耳打ちをする。

 

 

 斎木「古田兄妹?………

 

 

 “ふるた”?………

 

 

 “フルータ”?………………。」

 

 

 ここに来てようやく真相を知った斎木。

 

 すると、斎木が何やらひきつった表情で震え始め、耳打ちをしたヒカルをはじめ周囲の人たちは恐る恐る離れていき、それを見ていたソルも口元に手を添えて「あわあわ…」と後ずさりを始めている。

 

 

 そしてやっと真相を知った斎木はブチキレてしまう(笑)

 

 

 斎木「なぁぁぁにを考えとんじゃお前らあああああぁぁぁぁぁーーーーーー!!!」

 

 

 斎木は、ただでさえ貫禄ある顔つきを更に強張らせて絶叫してしまう………………。

 

 

 

 その後、ヒカルと海羽の説明によりやっとフルータ星人……じゃなかった(笑)、古田兄妹の事情を知った斎木。

 

 斎木「そうなのか………そういう事情があって………………。」

 

 賢「は、はいっ!ですから決して悪いことをしようとなんて微塵にも………なあ!?明人、輝雄!」

 

 明人「そうなんスよ!」

 

 輝雄「許してくださいやし!」

 

 三人は完全に斎木にビビってしまっている(笑)

 

 

 斎木「よーし、事情は分かった、ただし嘘をついて、人の物を盗むのはいけないぞ!?教訓として覚えておきなさい!」

 

 賢・明人・輝雄「はいっ!!」

 

 

 ヒカル「でも無事妹も救えたし、良かったじゃんか。」

 

 海羽「そうそう!みんなも助かったし、終わり良ければ総て良しだよ!」

 

 

 賢「そ、そうだよな! 愛が無事で…良かった…良かった………!」

 

 慌てるように愛にすがる賢。

 

 

 明人「賢のやつ、結構必死だったしな~!」

 

 輝雄「そうそう、こいつ彼女いるくせにすっげ~シスコンなもんだから…、」

 

 賢「ばっ!?…バカ何言ってんだ!?」

 

 明人と輝雄がからかうように言っているのを賢は慌てるように止め始める。

 

 どうやらシスコンなのはまことみたいだ(笑)

 

 明人「あ、でも、俺らの同級生でこいつに負けないくらいシスコンな奴がもう一人いるんだよな~。」

 

 

 

 ???「…へっくしゅんっ!?」

 

 ???「お兄ちゃん大丈夫?」

 

 ???「ああ、何ともない。行くぞカ〇ン。」

 

 そう言うと青いレザージャケットを着た青年と彼といっしょにいる少女は歩き去って行く。

 

 恐らく彼らも兄妹で、兄の方は過度のシスコンなのであろう(笑)

 

 

 

 輝雄「あーいたね~。賢、むしろそいつを呼んだ方がすんなり行けたんじゃねーのか!?」

 

 賢「だからシスコンシスコン言うな~!!」

 

 なおも二人からからかわれる賢。

 

 

 ヒカル「………ん?」

 

 だが、そんな賢の妹・愛を見たヒカルは何か反応する。

 

 

 海羽「…ほえ? どうしたのヒカルさん。」

 

 ヒカル「………“まな”………………そう言えば似てる………………。」

 

 

 ヒカルが愛を見て気付いたこと。

 

 それは、自分の世界でかつてチブル星人エクセラ―(SD)がビクトリウムを奪うために送り込んだが、ギンガたちとの戦いやヒカルたちとの交流により心を入れ替えた後、エクセラ―や彼によって復活したダークルギエルと戦うギンガたちの勝利に貢献した後爆散し、後にビクトリウムのペンダントにバックアップしていた自身のデータを基に復元されて特捜組織『UPG』の一員となったアンドロイド・マナに似ているという事なのだ。

 

 因みに彼女は元々は“ワンゼロ”と言う名前だったが、後にヒカルの幼馴染・石動美鈴によって“マナ”という名づけで改名しており、また“マナ”とはハワイの言葉で『取り戻す命』と言う意味でもあるのだ。

 

 髪は黒で服装も一般人のものだが、それ以外では髪型といい顔つきといい、マナに非常に似ているのである。

 

 名前の読みも同じなだけあってヒカルにとっては非常に驚きなモノだった。

 

 

 するとヒカルは、賢の元に歩み寄って肩に手を置く。

 

 賢「ん?なんスか?ヒカルさん。」

 

 

 そして、改まってこう語り掛けた。

 

 

 ヒカル「賢………愛(マナ)の………妹の命を取り戻せて良かったな。」

 

 

 賢「………お、…おう。」

 

 賢は少し困惑しながらも嬉しそうに返事をした。

 

 

 

 かくして、事態は完全に終息した。あとはみんなで安全に帰るだけである。

 

 

 因みに先ほどギンガストリウムによって焼き切られたバードンの毒袋は、斎木が今後の兵器への応用などに使うために回収数する事にした。

 

 既に仲間のユウジ、タカオには連絡を取っており、後で彼らと一緒に運んで行く予定である。

 

 

 ヒカル「んじゃ、全部解決した事だし、フュージョンブレスも戻って来た事だし、帰りますか!」

 

 海羽「うん!そうだね。」

 

 斎木「帰るまでが戦いだしな!気を引き締めていこう!」

 

 ヒカル「そんな、「帰るまでが遠足」みたいに言わないでくださいよ(笑)」

 

 

 ヒュウガ「私たちは近くにペンドラゴンを止めてるから、この辺で。」

 

 斎木「そうか……折角会えたのに残念だな。」

 

 レイ「そのうちまた会えるさ。なぜなら皆同じ空の下にいるのだから。」

 

 ヒカル「お、分かってますねレイさん。」

 

 レイの言葉にヒカルは少し嬉しそうだった。

 

 海羽「そうだね。また怖~い怪獣が出てくるかもしれないし…、」

 

 ヒュウガ「ああ、その時はまた共に戦おう。」

 

 レイ「困った時は、いつでも呼んでくれよな。」

 

 ヒュウガ「じゃあ、くれぐれも気を付けて。」

 

 かくして、レイとヒュウガは斎木やヒカル、海羽、子供たちに別れを告げながらペンドラゴンを止めている場所へと歩き去って行った。

 

 

 海羽「それじゃ、私たちも下山して帰りましょ~! これからお兄さんとお姉さんが案内するから、ついて来てね~!」

 

 子供たち「は~い!!」

 

 海羽「絶対に離れないでね! 僕は・私はついてこれるって人手を挙げて~!!」

 

 子供たち「はーい!!」

 

 またしてもショーのお姉さんのごとく子供たちに元気よく呼びかける海羽。

 

 

 賢「しっかし相変わらずパワフルだな~海羽さん。」

 

 明人「ああ。マジで将来バスガイドさんとか向いてるかもしれね…。」

 

 ヒカル「周りを魅了する元気と可愛さ。それが彼女の一番のとりえさ。」

 

 

 すると海羽は古田兄妹や明人、輝雄の方を向いて。

 

 海羽「それじゃあ、下山後子供たちを家に送る担当は、賢君たちに頼もうかしら?」

 

 賢「へ!? お、俺たちが!? マジかよ~…霞ヶ崎外から来てる子もいるんだよな?」

 

 明人「まあ賢。迷惑かけちまったのは確かだし、ちょっとしたペナルティとしてやろうぜ。」

 

 輝雄「そうそう。それについでに霞ヶ崎外の街から来てんならちょとした旅ができるわけじゃねーか。 今は夏休みだし、折角だから俺たちで思いで作ろうぜ?」

 

 賢「………それもそうだな。よし!引き受けた!

 

 (愛の方を振り向く)……悪いが愛、下山したら先に帰っててくれ。」

 

 

 愛「………いや…私も一緒に行きたい。 お兄ちゃんたちと一緒に出掛けてみたいし、それに子供たちともっと交流してみたいし。」

 

 実は賢の妹・愛は子供好きな一面もあるのである。兄とは真逆だ(笑)

 

 

 賢「愛………そっか…よし、それじゃあ一緒に行こっか!」

 

 愛「(満面の笑みで)うん!」

 

 かくして、古田兄妹たちは子供たちを送る事を引き受けた。

 

 

 ヒカル「それじゃ、気を付けて帰りましょ~!」

 

 海羽「さあ、お兄さんお姉さんたちについて来て~!」

 

 子供たち「はーい!!」

 

 ヒカルと海羽に導かれ、子供たちは大熊地獄ヶ岳を下山し始めた。

 

 

 斎木「ふっ………相変わらず元気がいいな………。」

 

 そんなヒカル達を微笑ましくみつめる斎木も、彼らの後について歩き始めた。

 

 

 だが、子供たちを先導する中、ヒカルは何かを考えていた。

 

 ヒカル(海羽ちゃんがソルに選ばれた理由………一体彼女は何のためにウルトラマンの力を手に入れたんだ………?)

 

 そう思いながら子供たちと触れ合ってる海羽を見つめた。

 

 

 先ほどのタロウの発言といい、何やら海羽(ソル)には秘密があるようである………………。

 

 

 タロウ「ヒカル………どうやら君も感じ始めたか………。」

 

 ヒカル「………タロウ。」

 

 タロウ「来たるべき戦いは近づいている………彼女がウルトラマンになったのも、それに関係しているのだろう。」

 

 ヒカル「海羽ちゃんが……ウルトラマンになれたのはやはりワケがあるんだな。」

 

 タロウ「ああそうだ。いずれ君も知る時が来る………。」

 

 果たして、海羽がソルの力を手に入れたきっかけとは一体何なのであろうか………?

 

 

 それはとりあえず置いといて、タロウが再び駆け付けて来た事により今後はストリウムブレスとフュージョンブレス両方が使えるようになったヒカル。

 

 今後状況や場合によってどちらかを使い分けて戦えるのである。

 

 

 帰ってきた戦友から再び授かった力と共に、ヒカルは今後も悪を殲滅するために仲間と戦う決心をした。

 

 

 

 〈エピローグ〉

 

 同じ頃、引き続きショッピングをしている櫂と真美。

 

 どうやら迷子の子供も無事に親が見つかったようである。

 

 

 櫂「次はどこに行こうか。真美。」

 

 真美「私次はこの店の服見てみたいな。ここならメンズ・レディース両方あるから櫂君も楽しめるよ。」

 

 櫂「おおそうか。じゃあ行こうぜ。」

 

 櫂と真美が店に向かおうとしたその時、

 

 

 “ガッ”

 

 真美「ああ、ごめんなさい。」

 

 真美はとある通りすがりの男の人とぶつかってしまった。

 

 ???「おお、気を付けるんだぞ姉ちゃん。」

 

 その人は怒ることなく気さくに返して歩いて行った。

 

 櫂「大丈夫か?真美。」

 

 真美「えぇ………。」

 

 

 だが、真美はそんな男を見て何か心当たりがあるようであった………………。

 

 真美(あの人………どこかで見たような気が………………。)

 

 真美は何かしらのデジャヴみたいなものを感じていた。

 

 

 一方で櫂は、先ほど真美とぶつかった男の後ろ姿を少し睨みながら…

 

 櫂(けッ…真美にぶつかりやがって!………何なんだあいつは?)

 

 真美とぶつかった事に怒りを感じつつもやはりあの男が何者なのか気になっていた。

 

 

 だが、やがて考えるのをやめた。

 

 櫂「一体誰だったんだろうな?あいつは…それよりも行こうぜ。真美。」

 

 真美「ええ、そうだね。」

 

 櫂と真美は目的の店に向かって再び歩き出した。

 

 

 果たして、先ほど櫂と真美の前に現れたレザーコートに身を包み、ラムネのビンを手に持つその“風来坊”のような青年とは一体誰なのであろうか………………?

 

 

 To Be Continued………。

 

 

 (ED:キラメク未来~夢の銀河へ~)




 読んでいただきありがとうございます!いかがでしたか?


 最後にさりげなく出てきた男が誰なのか、もしかしたら何人かもうお察しかと思います(笑)


 前回は無印ギンガを意識してコミカルに仕上げたので、今回はギンガSを意識してそれに大怪獣バトルの要素も加えて熱い展開の連続にしてみました。

 また今回はタロウが駆け付けたことにより、ギンガストリウムが再登場しました!

 ギンガビクトリーも好きなのですが、個人的にギンガストリウムも大好きなので今回ようやく登場させることが出来て嬉しいです(笑)

これでヒカル君は今後ストリウムブレスとウルトラフュージョンブレスを使い分けれるようになりましたね。

また、今回も海羽ちゃんの元気一杯な性格を爆発させてみましたが、私先日ウルトラマンのショーを見に行きまして(笑)、その際にお姉さんが子供たちに呼び掛ける所を見て「こういう感じの事を海羽ちゃんにもやらせてみよう」と思って取り入れてみました(笑)

また、今回アーストロン達怪獣が会話をするシーンはゴジラ対ガイガンでゴジラとアンギラスが吹き出しで会話をするシーンをヒントに思いつきました(笑)


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。

今回は特にネタを盛り込んでしまいました(笑)が、長文でも構いませんので、コメントを書ける方は待ってます^ ^


 余談ですが、遂に新作・ウルトラマンジードの情報が解禁されましたね!

 ビジュアルも凄くカッコいいし、なによりあのウルトラマンベリアルの息子という事なので一体どんなウルトラマンになるのか私とっても楽しみです!

 早く戦う所が見たいな~(ワクワク)

 それでは、次回もお楽しみに!


 因みに今回隠れていたサブタイトルは、

 『怪獣動物園』(ウルトラマンティガ第22話)

 『恐怖の怪獣魔境』(帰ってきたウルトラマン第3話)

 でした(登場順)。


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第27話「地球の目覚め」

皆さん、お待たせしました!


今回の主役は、本作でも特にアツアツ(?)の高校生カップル、稲葉健二君と小野早苗ちゃんです!

また、今回はあの“地球のウルトラマン2人”も参戦します。

そしてこの2組の出会いが、とびっきりの奇跡を起こります!


また、そのウルトラマン2人が初登場ということで、そのウルトラマンの主題歌を思わせるセリフも入れてみました!是非探してみてください(笑)


また、いつものようにサブタイトルを1つ隠しており、あと隠しネタとして私の大好きな“とある戦隊”のセリフも散りばめられています(笑)


それでは、どうぞ!


 (OP:英雄の詩)

 

 

 礼堂ヒカル(ウルトラマンギンガ)と眞鍋海羽(ウルトラウーマンSOL(ソル))達が、八幡那須ヶ岳村と大熊地獄ヶ岳に平和を取り戻したほぼ同じ頃、

 

 竜野櫂と新田真美は、引き続き二人きりのショッピングを楽しんでいた。

 

 二人は先ほど服屋に寄っており、真美は何かお気に入りの服でも見つかって買ったようであり、手に持つハートなどで可愛らしく仕上がっている紙袋の中を覗き込みながらルンルンと歩いていた。

 

 

 櫂「良かったな真美。目星の物が見つかって。」

 

 真美「うん!櫂君に協力してもらったおかげだよ。試着に付き合ってくれてありがとね。」

 

 櫂「えっ?…ま、まあ、俺はちょうどしっくり来るものがなくて暇してたから、それなら真美にお似合いの服を見つける手伝いでもしようかな〜って思っててね。あはは…。」

 

 お礼を言う真美に、櫂は少し照れ臭そうに返した。

 

 真美「でも櫂君、ホントに見る目があるよ。このコーデ、私でも思いつかなかったわ。」

 

 櫂「そうか?真美も結構いい線ついてたけど思うけどな〜。」

 

 

 …とまあ、こんな感じで楽しそうに会話をしながら歩く櫂と真美。

 

 

 その一方で櫂と一体化し、櫂の左腕のウルティメイトブレスレットに宿っているウルトラマンゼロは、何やら考え事をしていた。

 

 ゼロの脳裏に、先ほど真美とぶつかった男の姿が浮かび上がる。

 

 ゼロ「さっきの男…さては“あいつ”なのか?…まさかあいつも、この世界に来てたとはな…。」

 

 どうやらゼロは、彼と以前面識があるみたいであり、既に誰なのか見当がついているようであった。

 

 

 そんなゼロの考え事も他所に、なおも櫂と真美は楽しそうに話しながら歩く。

 

 真美「それにしてもお腹すいたな〜。時間的にもちょうどいいし、お昼にしようよ。」

 

 櫂「それもそうだな。さ、て、どこで食べようか…」

 

 真美「私は今日パスタの気分だな〜。」

 

 櫂「そうか。俺はなんだかピザ食いてーし、じゃあイタリアンにするか!」

 

 真美「(満面の笑みで右腕を挙げて)賛成ー!」

 

 意見が合致した櫂と真美は、昼ご飯の時間にすることにした。

 

 櫂「確かこの近くにイタリアンのレストランがあったはず…。」

 

 

 

 櫂と真美をはじめ、多くの人々が歩き回る晴天に恵まれた都会の街並み。

 

 

 だが、そんな平和な街に魔の手が迫ろうとしていた…!

 

 

 突然、晴れ渡った空がヒビ割れ、そこから緑色に爛々と怪しく光る複眼のような物が現れる。

 

 そして何かを探すようにぎょろぎょろと街を見渡し始める…。

 

 

 怪しげな眼は、まるで人々のみを見つめているようであった…。

 

 

 しばらく人々を見続けていると、やがてとある人物に狙いを定めた!

 

 

 それは、櫂と楽しくデートしている女性・新田真美だった!

 

 

 『この娘だ…!』

 

 どこからか怪しげな声が響く…。

 

 

 一方で櫂と真美は、近くのイタリアンレストランの位置をググって調べていた。

 

 櫂「お、真美、こっから10分程度のところにあるみたいだぞ。」

 

 真美「そう。それじゃ、行きましょー♫」

 

 

 真美が陽気に鼻歌歌いながら行こうとしたその時!

 

 

 “ズゴゴゴゴゴ…”

 

 

 真美「!?、きゃーっ!」

 

 

 突如、真美の足元の地面が崩れ始め、真美はその中へと引きずり込まれ始める!

 

 

 真美「櫂君ー!」

 

 櫂「はっ、真美っ!」

 

 突然の出来事に驚く櫂。真美は助けを呼ぶように櫂に呼びかける。

 

 

 まるで蟻地獄のような砂の渦は、なおも容赦なく真美を引きずり込んでいく!このままでは真美が地面の底へと沈んでしまう!

 

 

 櫂「一体どうなってんだ!?これは…、」

 

 

 ゼロ「櫂!それよりも早く真美を助けるぞ!

 

 

 お前が誰よりも守りたい女なんだろ?」

 

 

 ゼロは若干皮肉を込めて櫂に呼びかける。

 

 櫂「ちっ、こんな時に都合のいい事言いやがって…! まあいい、今行くぞ真美!」

 

 

 櫂が真美を助けようとゼロに変身しようとしたその時!

 

 

 “ピキーン”(所謂光が現れる音)

 

 

 突如、砂の渦の中心から発行音と共に赤い光が現れる、、、!

 

 

 櫂「…何だ?これは…。」

 

 真美「一体何?…ひゃっ!?」

 

 突如現れた光に驚きや戸惑いを隠せない櫂と真美。すると、砂に飲み込まれそうになってた真美はその光に掬い上げられるように宙を浮く。

 

 そして、地上の櫂の横におろされた。

 

 櫂「…大丈夫か?真美。」

 

 真美「私は大丈夫…それより、何だろう?あの光…。」

 

 二人は砂の渦の中心から現れた光を見つめる…すると、やがて砂の渦はその赤い光を飲み込むように消滅し、元のコンクリートの地面に戻った。

 

 

 突如起こっては何事も無かったかのように消えた目の前の一瞬の出来事に戸惑いを隠せない櫂と真美。

 

 櫂「何だったんだろうな?今のは。」

 

 

 健二「櫂さん!真美さん!」

 

 その時、突然声をかけながら走ってくる一人の少年に二人は反応する。

 

 それは櫂たちの知り合いの高校生・稲葉健二であった。

 

 櫂「おお健二、久しぶりだな。」

 

 健二「ええ、櫂さんこそ、お元気そうで。」

 

 真美「あら?今日は一人?」

 

 健二「ええ、さなちゅんは別の用事があって。」

 

 因みに彼、同級生で幼馴染の小野早苗とは彼氏彼女の関係であり、お互いの事をケンちゃん、さなちゅんと呼び合っている。

 

 

 健二「それよりも、先ほどこの辺で妙な蟻地獄のようなモノを見ませんでしたか?」

 

 健二が二人に問いかけた事、、それはまさにさっき目の前で起きた事であった!

 

 櫂「ああ、見たも何もさっき真美がそれに飲み込まれそうになってな、一瞬焦って助けようとしたら、今度はそこから赤い光が現れてよ。」

 

 真美「うん。その光のおかげで私は助かったんだけどね。」

 

 

 健二「…やっぱりですか…。」

 

 櫂・真美「え?」

 

 健二「いや、実は最近ニュースも取り上げてるんですけど、何でも、近頃この辺で謎の女性失踪事件が起きているんですよ。」

 

 櫂「ああ、それなら俺も最近ちょっとニュースで見た気がする。」

 

 真美「あんまりじっくりは見れてないけどね。」

 

 健二が語り出した事。それは、最近霞ヶ崎の至る所で突然女性が失踪するという謎の現象が起こっており、それは正に間違いなくさっき櫂の目の前で起こった事なのである。

 

 更に、それを目撃した者は必ず「蟻地獄を見た」と言うのだが、警察側では決定的な証拠が掴めておらず、今現在ではホログラフィーを使った誘拐事件として捜査が進められているという。

 

 

 ゼロ「なるほど、そんな怪事件が、ここ霞ヶ崎で起こってるのか。」

 

 真美「何だか不気味だわ。女性だけが次々と蒸発していくなんて…。」

 

 真美は少し寒気を感じたかのように身震いする。

 

 櫂「だな。きっと誘拐犯は相当な変態かエロおやじに違いないぜ。早く見つけてとっちめてやんねーとな。」

 

 健二「それがですね、女性が消えた。問題はそこだけじゃないんですよ。」

 

 

 すると健二は、真美にある質問をする。

 

 健二「真美さん、貴女は何型ですか?」

 

 真美「えっ?…私は、O型だけど…?」

 

 突然血液型の質問をされ、少し疑問を感じつつも自分はO型だと答えた真美。

 

 すると、健二の表情が更に真剣になった。

 

 健二「やっぱり…。」

 

 櫂「ん?何だ?失踪事件と真美の血液型が何か関係してるのか?」

 

 健二「ええ…実は最近事件の事をググって知ったんですけど、消えた女性はみんなO型という事が一致してるんですよ。」

 

 その発言に二人、特に真美は驚きを隠せなかった…!

 

 

 櫂「女性はO型限定か…ますます謎だ。」

 

 真美「どうしてだろう?犯人はO型の輸血が必要なのかな?」

 

 流石は医学部らしい推測をする真美。

 

 ゼロ「それにしてはやり方が乱暴過ぎないか? 健二、お前は何か心当たりはないのか?」

 

 健二「分かりませんね…とにかく、その事件の事が気になった俺は、最近この辺を探索してるんです。何か手掛かりが掴めたり、運良ければ犯人を見つけられるかなと思いまして。」

 

 櫂「そうなのか…まあくれぐれも気をつけろよ。あと犯人を見つけたら一人で無理せずすぐ警察に知らせるんだぞ。」

 

 ゼロ「そしてその犯人が宇宙人か怪獣だったら、櫂に知らせるんだ。」

 

 ゼロがそう言うと同時に櫂は左手のウルティメイトブレスレットを健二に見せるポーズを取る。

 

 

 櫂「どんな怪獣や宇宙人だろうが、俺がゼロと共に倒してやるぜ!(サムズアップ)」

 

 

 健二「分かりました。櫂さんと真美さんも引き続きデートをお楽しみくださいね。

 

 櫂さん、もしまた真美さんが危なくなったら頼みます。」

 

 

 櫂「おう!俺に任せろ。」

 

 爽やかな表情で返事をした櫂だが、その一方でひっそりと不敵な笑みを浮かべていた…。

 

 櫂(今の俺にはゼロの力もある…誰が真美を狙おうと、俺がこの力で…。)

 

 

 健二「それじゃあ俺はこの辺で。」

 

 櫂「じゃあなー!」

 

 真美「ちゃおー!(訳:さようなら)」

 

 手をふながら走り去る健二を見送る櫂と真美。

 

 

 櫂「んじゃ、気を取り直してお昼にしようぜ。」

 

 真美「(満面の笑みで)うん、そうだね。行きましょ。」

 

 手を繋いでレストラン向かって歩き始める二人。

 

 

 櫂「…真美…。」

 

 

 真美「…何?櫂君。」

 

 

 櫂「心配する必要、無いからな…例えお前に危機が迫っても、俺がマッハ全開で守ってやる。 ゼロと共に。」

 

 

 真美「(満面の笑みで)ありがとう。櫂君。」

 

 

 自身を守ってくれる櫂の言葉に、真美は嬉しさであどけない笑顔を見せる。

 

 

 一方、ゼロの方はというと、

 

 

 ゼロ(ちっ、櫂のヤツ、都合の良い事ばかり言いやがって…まあどんなに本心ドス黒かろうが、人々を守りたい気持ちに変わりはねーがな………それに真美を守ることが、コイツにとってアイデンティティーの一つみたいなもんだしな…。)

 

 

 やはり櫂の本心を知ってるが故に、複雑な心境に陥っていた…。

 

 

 

 やあ、俺は稲葉健二。

 

 俺は最近、この辺りで頻発している女性失踪事件の手掛かりを掴むために探索をしている。

 

 

 俺は実際、数日前から目の前で女性が一人ずつ砂の渦に飲み込まれていくところを目撃している。

 

 

 突如、女性の足元から蟻地獄のような砂の渦が広がり、引きずり込み始める…。

 

 助けを求める声を叫びながら必死に這い上がろうとする女性。しかしもがけばもがくほど砂の中に飲み込まれていき、やがて完全にその中へと沈んで姿を消す…。

 

 

 ある時は遊園地のティーカップ、ある時はアパートに入る前の空き地…。

 

 突然現れては消える謎の蟻地獄は一体何処から、そして何者が起こしているのだろう…?

 

 そして女性が失踪する度に、その遺族やカップルの男性の悲しむ姿がテレビに映し出される…。

 

 これ以上、誰かの涙も見たくない俺は一行も早く在り処を掴もうとしているのだが、その俺の焦りを嘲笑うかのようになおも被害が広がっていく…。

 

 

 だが、飲み込まれそうになった女性の中には助かった者も何人かいた。

 

 砂の渦の中に飲み込まれそうになった時、突如その中心から赤い光が射し込み始め、女性を掬い上げて地面に降ろす…。

 

 そして、赤い光は砂の渦と共に消滅する…。

 

 

 地面から現れる光…地底の中にもウルトラマンがいるのだろうか…?あり得ない気もするが。

 

 ビクトリーは地底人が変身するウルトラマンと聞いたことがあるが、あの光はビクトリーとはちょっと違った気がする…。

 

 謎な現象の連続…。

 

 でも、その時俺は、その光の中で何かを見た気がしたんだ…。

 

 

 光の中で見たビジョン…それは、とある赤茶けた砂漠のような大地で、大きな蟻のような怪獣、そしてそれと戦う赤い光を纏った巨人…。

 

 あまりはっきりしてなかったからよく分からないけど…その光景はウルトラマンと怪獣の戦いのようにも見えた…。

 

 

 謎の失踪に幻覚…とにかく謎な事が多いこの頃。

 

 とりあえず俺は、怪事件が多発する霞ヶ崎を駆け、手掛かりを突き止めることに専念していこうと思う。

 

 

 

 違う場所で頑張ってる、さなちゅんのためにも…!

 

 

 

 一方、そんな健二の彼女・小野早苗はというと。

 

 

 こんにちは。私は小野早苗。

 

 私は今、霞ヶ崎から離れた県にある海辺・蛍ヶ原海岸にいるの。

 

 

 え?水着で海に泳ぎに来たかって?

 

 

 違う違う(笑)私は、ある手掛かりを探しにここに来たの。

 

 

 ただっ広い純白の砂浜に足跡を残しながらよちよち歩く蟹、そこに静かに撃つ波、一直線を描いてどこまでも広がる青い海…これだけを見ると何事も無いように見えるんだけど…、

 

 

 問題は、ここから少し離れた場所での出来事。

 

 

 今私が歩いている砂浜から見える、数百メートルぐらい離れた海岸沿いの道路のある崖。

 

 

 一見何事も起こらない車が快調に走る道路に見えるけど…近づいてみるとそこには信じられない光景が待ち構えているの。

 

 

 道路の横のガードレールは何やら車が突っ込んだかのように破れていて、その先の空き地には車の残骸と思われる鉄くずに、なんと人の骨があちこちに転がっているの…!

 

 

 唐突に信じがたい怖い事言っちゃってごめんね…でも、これは事実なの。

 

 

 この奇妙な光景は最近ニュースも取り上げ始めていて、私はそのニュースを見て知って来てみたんだけど………その光景は実際に見てみると予想以上に惨いモノだわ…。

 

 ただ一つ分かるのは、何者かの仕業でこの道路を通る車やそれに乗っている人が襲われているという事だね。

 

 

 それにもう一つ気になる事が。

 

 現場に近づいてみると、何だか凄くアルコール臭い臭いがするの…飲酒運転の事故かな?と一瞬考えたんだけど、それにしては人が白骨化してたりと不自然な所があるからすぐに違うと気づくことが出来た。

 

 

 ガードレール破れた先に車の残骸や骸骨が散らばり、アルコールの臭いが漂う謎の光景…。

 

 一体誰の仕業なのか?それを突き止めるために私はこの海岸に来たの。

 

 

 早苗「よーし、必ず突き止めるぞー。」

 

 水色のワンピース姿に潮風でさらさらと靡く髪をかき上げて気合十分な私。あ、別に「事件よ起これ」と言ってるわけじゃないけれど、もし今私の目の前で事が起きたとして、それがもし怪獣とかの仕業なら、ウルトラマンに変身できる櫂さんや海羽さんに連絡できるからね。

 

 

 …でも、じーっと見つめてても一向に何かが起こりそうにない…。

 

 今日は何も起こらないのかな?…それはそれで平和っていう事でいいんだけれども…。

 

 私はやがてただ車が通り過ぎていく海沿いの道路を見つめていく内に暇になっていき、その場でしゃがんで砂浜を歩く蟹を指で突いたりなどして遊び始めている。

 

 

 気がついたら、とっくに昼を過ぎていた。

 

 早苗「あーあ、来るだけ損だったのかなー?」

 

 しゃがんで指で突いている蟹に語り掛けるようにそうぼやく私。

 

 早苗「ここまで来るのに電車片道1時間以上かかったのに…このまま帰るのもあれだしなー…。」

 

 

 とまあこんな感じで色々ぶつぶつ独り言を言ってたその時、

 

 

 賢「ヘい、か~のじょ!」

 

 

 早苗「!…へっ?」

 

 早苗は突然後ろから誰かに話しかけられて少し驚いて振り向く。

 

 

 賢「お困りのようですねぇ。」

 

 

 そこにいたのは、早苗と同じくらいの男女4人組と、三人の子供たち(男の子2人、女の子1人)だった。

 

 

 早苗「えっ、え~と…あなた達は?」

 

 突然見ず知らずの人に話しかけられた事に少し動揺する早苗。

 

 

 明人「ほら、彼女困ってんじゃねーかよ。」

 

 輝雄「だからやめとけって言ったのに…。」

 

 明人「賢はシスコンで女好きだからな~彼女いるのに…。」

 

 賢「んなっ!?……う、うるへー! 人をスケベでシスコンみたいに言うなっ! だって彼女めっちゃ困ってるみたいだったから話しかけただけだ!」

 

 明人「何だよ~賢がスケベでシスコンってズバリ正解じゃねーかよ~!」

 

 

 いつの間にか早苗そっちのけでいつものやり取りになってしまっている三人。早苗はそんな三人を少し困惑の表情で見つめる。

 

 

 愛「んも~お兄ちゃんったら…すいません、私たちは…。」

 

 

 愛という女性は代わって自分たちの事を早苗に話し始める。

 

 

 皆さん既にお気づきかもしれないが、彼らはフルータ星人…じゃなかった(笑) 古田兄妹(賢・愛)と、彼らの友人の鈴木明人、坂口輝雄なのである。

 

 彼らはとある事情により、“フルータ星人”を名乗ってヒカルと海羽から変身アイテムを奪い、トンダイルにさらわれた賢の妹・愛とその他の人々を取り戻そうとした高校生の若者たちである。(前回、前々回参照)

 

 

 最終的にギンガ達の活躍もあって、無事に愛やその他の人たちを助けることが出来た彼らは、ペナルティという意味も含めて子供たちを家に送る事になったのである。

 

 正にその真っ最中であった。

 

 

 早苗「そうですか…この子達のお家に。」

 

 賢「そ!あとはこの3人のお家がこの近くにあるみたいなんだ。」

 

 早苗「頑張ってくださいね。フルータ星人…ぷふっ…。」

 

 早苗は冗談交じりで賢たちをフルータ星人と呼んだ瞬間吹き出してしまう。

 

 賢「んなっ!?…なにがおかしんだよ〜!」

 

 早苗「だって…フルータ星人ってネーミング…安直で面白いんだもん…。」

 

 どうやら早苗は、フルータ星人がツボにはまってしまったみたいである。

 

 やがて早苗は、普段の物静かなイメージとはかけ離れるくらい爆笑し始める。

 

 

 輝雄「…こんなの…初めてだ…フルータ星人でここまで笑う人。」

 

 明人「良かったな賢!女の子にウケてもらって。」

 

 そう言いながら賢の背中を叩く明人。

 

 賢「いっ、いやあ、笑ってもらえたのはいいんだけど…複雑だぁ〜…。」

 

 少し困惑してしまう賢。だがすかさず気持ちを切り替え、何やら爆笑する早苗を見つめ始める…。

 

 

 賢「…夏の砂浜で、水色のワンピース姿で爆笑する儚げな美少女…いい…これはいい…いい画(え)になるぜっ…!」

 

 一人でボソボソそう言いながら、こっそりとカメラを構え始める、、、!

 

 

 明人「いや!なに撮ろうとしてんね〜ん!!」

 

 “スパーン”(所謂ツッコミのチョップ)”

 

 賢「?!っ、あうちっ!…ってーなああっ!!」

 

 賢…アンタ相当ヤバい奴かもしれない…?(汗)

 

 

 

 早苗とフルータ星人たちが楽しく話してる間にも、日が暮れそうになり始めていた。

 

 するとそこで、気になった輝雄が早苗に問いかける。

 

 輝雄「そういえば、早苗さんってどこから来たのですか?」

 

 早苗「あっ…。」

 

 ここで早苗はふと思い出す。自分は本来何しに霞ヶ崎から何駅も離れたこの海岸に来たのかを…。

 

 改まった早苗は自分がどこから来たのかを話し、ついでに何の目的で来たのかも話した…。

 

 賢「そうか…でも、なんの手掛かりも掴めないまま1日が終わろうとしてるわけだな。」

 

 早苗「えぇ…折角霞ヶ崎から来たのに…無駄な事だったみたい…。」

 

 明人「でも、諦めるのはまだ早いんじゃねーのか?」

 

 輝雄「そうそう、俺もそれニュースで知ってから興味を持ってたんだ。」

 

 二人の言葉に、諦めようとしていた早苗の心は揺れ動き始める。

 

 賢「そろそろ日が暮れるし…俺たちも実は霞ヶ崎出身でな、この子達を近くの家に帰したら、そこの民宿で宿泊しようと思ってんだが、良かったら一緒に泊まろうぜ。」

 

 そう言いながら賢は、数十メートル離れた先の別荘のような民宿を指差す。」

 

 早苗「えっ?…でも…あそこ宿泊費とかはどうなってるんですか?」

 

 明人「ああ、それなら問題ない。あそこは無人の宿泊施設でな、入り口に貯金箱があってそこに200円入れればOKだぜ。」

 

 

 早苗はしばらく考え悩んだ…そして、やがて決心した。

 

 

 早苗「では、お言葉に甘えて。」

 

 賢「よーし、決まりだな。」

 

 輝雄「一晩だけかもしれないけど…よろしくね。」

 

 明人「よろしく。…あ、でも、着替えとかはどうすんだ?」

 

 早苗「あ、それなら心配いりません。実は私、野宿覚悟で着替え一式、それから寝袋も持って来てるので…。」

 

 さらっと凄い事を言ってのける早苗に少し唖然となるフルータ星人一同。とても現役JKとは思えない考えである…汗

 

 彼女は物静かな一方で、強い意志も持っているのである。

 

 

 賢「お…おお、そっか。じゃあ問題ねーな。」

 

 愛「よろしくね。早苗さん。」

 

 早苗「よろしく。これで安心して操作ができるから嬉しいわ。」

 

 明人「おう。それに、夜になったら何か分かるかもしれねーし。」

 

 輝雄「俺たちも出来る限り協力するよ。」

 

 

 賢「とりあえず、まずは俺たちがこの子達を家に帰してくるから、ちょっと1時間ぐらい待っててくれ。悪いな。」

 

 早苗「いえいえ、大丈夫ですよ。」

 

 愛「一人にするのもあれだから…私、一緒に留守番するよ。早苗さんとも色々話してみたいし。」

 

 早苗「…(満面の笑みで)うん。」

 

 

 かくして、賢、明人、輝雄の3人のフルータ星人は子供達を家に帰すために連れて行き始め、早苗は愛と一緒に留守番をする事になった、、、。

 

 

 二人っきりになった瞬間、早速ガールズトークを始めている早苗と愛。

 

 そんな中、早苗は再び強く決心していた…。

 

 

 早苗(絶対に突き止めてみせるわ…。あの悲惨な光景は、一体誰の仕業なのかを…!)

 

 

 

 一方、先ほど櫂たちと別れ、謎のO型女性失踪事件の手掛かりを探している健二は、

 

 健二「くそっ…今日も何も分からないまま1日が終わるか…。まあいい。続きは明日にしよう。」

 

 そう言うと、捜査を打ち切って帰り道を歩き始める。相当走り回ったのか、汗をかいて息切れを起こしてしまっている。

 

 

 健二「必ず何かあるはずだ…突然現れては消える蟻地獄…その中から時たま現れる赤い光…幻覚かもしれんが、実際俺はその光の中のビジョンを目にしている。…そして確信したんだ。これはただ事ではないと…!」

 

 

 相当な強い執念を見せる健二。果たしてこの難事件、そして突如現れた赤い光についての手掛かりを掴む事が出来るのであろうか…?

 

 

 

 その夜、早苗はフルータ星人たちと一緒に民宿でバーベキューをしていた。

 

 因みにご飯は、賢持参の飯盒で炊いたものである。

 

 明人「いや〜それにしてもいいね〜!こう男女交えての夜のバーベキューって。」

 

 輝雄「それな。何だか合宿って感じが出でいいよな〜。」

 

 賢「お前ら分かってんじゃーん!」

 

 肉や野菜の刺さった串をがっつきながら、完全に場酔いで盛り上がっている男子3人。

 

 女子2人はジュースの入った紙コップを手に、座り込んで話し合っている。

 

 愛「あはは…んも〜お兄ちゃんったら…。」

 

 早苗「愛ちゃんのお兄さんって、面白い人だね。それに妹思いだし、とってもいい人だわ。」

 

 愛は少し嬉しそうな顔になる。早苗が兄・賢の事を褒めるのが嬉しかったのだろう。

 

 愛「それにしても早苗さんに既に彼氏がいたんなてね〜…いいなー、私も早く出会いが欲しい。」

 

 早苗「愛ちゃんならきっと出来るよ。しっかりしていて、優しいし。」

 

 愛「ありがとう早苗さん。私、頑張るわ。」

 

 

 だが、

 

 

 賢「うぉーい!!?愛は誰のもんでもねー!俺のもんだ!他の男には絶t…!」

 

 明人「まあまあ落ち着けよ賢。」

 

 シスコンの賢の猛烈な突っ込みを抑える明人、輝雄。そしてそれを少し困惑するように見つめる妹・愛と早苗…。

 

 

 …ダメだ、賢のやつ、場酔いが酷いとこまで行ってしまっている…汗

 

 

 早苗「ふふふふふ…面白いわね。賢さんたち。」

 

 愛「うん。ドキドキ愉快な人たちでしょ。お兄ちゃんたち。」

 

 改めて早苗が賢たちといる事に楽しさを感じ始めたその時、

 

 

 愛「…ん、わあすごい!」

 

 突然愛が何かに気づいて指を差し、早苗、残りのフルータ星人もその方向を振り向く。

 

 

 その先に見えたのは、海岸沿いの道路辺りの所に沢山の光る物が飛び回っている光景。

 

 

 見た感じその沢山の光は蛍である。

 

 

 早苗「本当だ。蛍があんなにいっぱい…。」

 

 

 明人「しっかし珍しいな。あんなにいっぱい飛ぶ蛍見た事ないぜ。」

 

 輝雄「ああ。夜の闇に飛び交う光。幻想的だねえ。」

 

 愛「凄いね、お兄ちゃん。」

 

 賢「おぅ!何だかいい感じになって来たぜ…。 (両手をメガホンにして)たーまやー!!」

 

 明人「(ツッコミのチョップを入れながら)いやいや、それ花火を見る時に言う事だから!」

 

 

 早苗「ホント、綺麗ね~…ん?」

 

 飛び回る蛍に見惚れていた早苗は、その光景をじっくり見ていく内にふとある事に気付く。

 

 

 早苗「…何だろう…あの白い煙…。」

 

 海岸沿いの道路の骨が転がってる辺りの所に飛び交う蛍の群れ、その近くには何やら白い煙のようなモノが浮かんでいたのである。

 

 

 少し怪しんでその煙と蛍の群れをじっくり見つめる早苗。だが、特に何か起こりそうな気配はなかった。

 

 

 早苗「他に近くでバーベキューしている人たちがいるのか、それとも誰かが何か燃やしているのかもね。」

 

 そう思い、早苗はやがて考えるのを止めた。

 

 

 

 やがてフルータ星人一同は早苗と一緒にバーベキューを片付け、風呂は近くの銭湯で済ませた。

 

 

 そして就寝の時間が来る。

 

 もちろん、部屋は男子と女子で別である(笑)

 

 

 賢「チクショゥ…今夜は早苗と寝れねーのか…。」

 

 明人「まあ、しゃーねーさ。折角二つ部屋があんだから、女子は女子で安眠せようぜ。」

 

 輝雄「それに賢寝相悪しい、寝るのが賢と一緒だと、早苗何されるか分からんからね~。」

 

 賢「ああ!言ったなぁ~!?」

 

 やがて男子部屋は枕投げを始めてしまっていた…。

 

 

 

 女子部屋の方はというと、二人とも一応寝袋の中なのだが…、

 

 

 早苗「ねえねえ、愛ちゃんってクラスに好きな人とかいるの?」

 

 愛「う~ん…気になる人はいたりするんだけどね。〇〇君もいいし、〇〇君もいいし…。」

 

 

 とまあこんな感じで、まるで修学旅行の消灯時間後の布団の中での密かなガールズトークのような会話を楽しんでいた。

 

 

 愛「ねえ、早苗さんの彼氏ってどんな人なの?」

 

 

 早苗「う~んそうだな~…

 

 彼はとても真面目で…」

 

 

 

 健二「へくしゅ…!」

 

 

 

 早苗「それ故に神経質で…」

 

 

 

 健二「へくしゅ!、へくしゅ!」

 

 

 

 早苗「でも、誰よりも人の事を思えるとてもいい人。」

 

 

 

 健二「ぶェっくしょーん!!」

 

 

 

 早苗が噂する度に、それに同調するようにくしゃみをする健二。

 

 

 

 健二「…何だ?今日は俺疲れてんのかな…?」

 

 

 

 愛「へぇー…とてもいい人と出会えたんだ。」

 

 早苗「出会えたって言うか…彼と私は幼なじみだったからそれらしい感情は前からあったりはしたんだけどね…。」

 

 愛「いいな~…私も早く良い男と出会いた~い。」

 

 

 

 一方、先ほどの海岸沿いの道路では、今でも大量の蛍らしき光が飛び回っており、その近くからは白いガスのようなモノが吹き出ていた。

 

 よく見てみるとそのガスは崖の岩壁から吹き出ており、更にそこからは何やら不気味な咆哮が鳴り響いていた…。

 

 蛍たちもよく見てみると大量にいるにも関わらず特定の位置しか飛んでいなく、その様子はまるで何かを待ち構えているようであった…。

 

 

 特定の方向しか飛ばない蛍、岩崖から吹き出ある謎の白いガスとそこから鳴り響く不気味な咆哮…これらから成るあまりにも不自然な光景は、裏で何者かが暗躍している可能性の方が大きいであろう。

 

 

 すると、数台の車やトラックがその道路を通過しようと走って来る…!

 

 このまま走り続けると車やトラックは謎のガスを浴び、蛍の群れと接触してしまう…!

 

 

 その時、

 

 

 “ピキーン”(所謂光が現れる音)

 

 

 突如、謎のガスが吹き出ている岩崖から発光音と共に謎の青い光が現れる。

 

 その光が現れた瞬間、さっきまで飛び回っていた蛍の群れは瞬く間に何処かへと散って行き、謎のガスも徐々に消えていく…。

 

 

 やがてガスや蛍は完全に姿を消し、射し込む青い光だけが残された道路を車たちは通過する。

 

 

 そして青い光も、車が通過した後ゆっくりと消えていく………まるで車が無事に通過するのを見守ってから消滅している様にも見えた…。

 

 

 

 やがて水平線から真っ赤な太陽が海を染め、真っ暗だった空を照らしながら登っていき、朝が来た。

 

 

 愛「ふぁぁぁぁ~…おはよう早苗さん。」

 

 

 早苗「う…うぅぅん…。」

 

 

 気持ちよさそうに背伸びをしながら早苗に朝の挨拶をする愛。しかし早苗の方はどこか冴えない様子。

 

 

 愛「どうしたの?あまり寝れなかった?」

 

 早苗「えっ?…い…いや…寝れたは寝れたんだけどね…。」

 

 愛「悪い夢でも見ちゃった?」

 

 

 早苗「悪いというか…とても不思議な夢を見たんだ…。」

 

 

 

 早苗が見たという不思議な夢。

 

 それは、いつもの様に彼女が謎の白骨化事件の手掛かりを掴もうと海岸から海沿いの道路を見つめていた時、その崖から一斉に白いガスが噴射され始め、それを浴びた車は次々とクラッシュしていく。

 

 それはまるで毒ガスでも吸って意識を失ったかのように。

 

 

 次々とクラッシュしていく車に、そこから聞こえてくる人々の悲鳴………そんな地獄絵のような光景に早苗は居ても立っても居られなくなり単身突っ込んで行き始める…!

 

 だが、案の定彼女一人でもどうすることも出来ず、やがて彼女も謎のガスを吸ってしまい生命の危機に瀕し始める…!

 

 

 もう駄目か!?そう思ったその時、突如遠くの海の方から例の青い光が現れたかと思うと、その光が射し込むところから海が真っ二つに割れていく。

 

 そしてよく見てみると、その割れた海の間に青い光に包まれた巨人がしゃがんだ状態で現れ、やがてこちらを見つめながら雄々しく立っていく姿が見えたという…。

 

 

 

 以上が、早苗が見たという夢である。

 

 

 愛「へえ…海が割れてそこから現れる巨人か…なんだか神秘的。」

 

 早苗「うん…その夢を見てから、なんだか変な気分なんだ…場所もこのビーチだったし、そう遠くないうちに本当に起こりそうな感じで…。」

 

 愛「正夢…って事?」

 

 早苗「いや…まだ実際に起きてないから分からないけど…本当にそうなりそうな感じがするの…。」

 

 不思議な夢を見てからどこか不思議な気持ちになっている早苗。それはどんなモノなのか自分でも分からない感覚であった。

 

 

 愛「まあとにかく、ここで考えても何も始まらないよ。ほら!」

 

 そう言いながら愛は元気よくカーテンを開け、そこから日差しが射し込む光に二人は一気に残っていた眠気が覚める。

 

 愛「今日もとってもいい天気だよ。それにほら、例の道路も今のところ車が快調に走ってるし。」

 

 愛が指差す海岸沿いの道路を見てみると、確かに何か起こりそうな感じはなく車が快調に走っていた。

 

 早苗「本当だ…。」

 

 愛「ねえ、朝食取ったら、折角だし海で遊ばない?私水着持って来てるの。海岸沿いの道路なら、海で遊びながらも見えるし監視も出来るから一石二鳥じゃない?」

 

 早苗「…そうだね。私も水着持って来てるし、賛成ー!」

 

 愛の提案にとりあえず考えるのを止め、今日初めて笑顔になって賛成する早苗。

 

 やがて二人は、すでに起きていた男子陣の待つ一階へと降りて行った…。

 

 

 早苗が見た不思議な夢。実際、早苗がそれを見ていた夜も、海岸沿いの道路で不思議な現象が起きていた…。

 

 この二つの出来事に何か関係でもあるのだろうか…?

 

 

 ただ一つ言えるのは、昨日の夜の出来事からあの場所に何かがあるのは間違いない事である…。

 

 

 

 そんな同じ頃、健二は例のO型女性失踪事件の手掛かりを掴もうと早速霞ヶ崎の街を駆けていた。

 

 

 それもどうした事か、昨日よりもどこか慌ててるような表情で…既に汗も流していた。

 

 

 

 そのきっかけは今朝6時ぐらいの事。妙な胸騒ぎを感じて目を覚ました健二は何かに導かれるようにある場所へと急行した。

 

 とあるアパートが数件建つ場所に辿り着き、そこで目にしたのは警察数人がなにやら穴を掘っていて、その近くでとある男性が慌てるように警察の一人に縋っているという妙な光景だった…。

 

 

 警察1「本当にここで間違いないんですか?」

 

 男性「はい、間違いないです。」

 

 警察1「ここで間違いないんですね?」

 

 男性「間違いありませんよ!」

 

 男性の証言が半信半疑なのか、何度も確認を取る警察。

 

 

 ここで男性の証言を基に、回想する。

 

 

 〈回想〉

 

 それは昨夜の深夜に起こった出来事だった…。

 

 とある一組の男女の乗った車が、アパートの前に止まる。

 

 その車の中から一人の女性が降りた。

 

 

 女性「今日はありがとう。とっても楽しかったわ。」

 

 男性「おお、また今度一緒に行こうな。」

 

 どうやら二人はカップルで、その日デートをしていたようである。

 

 

 やがて男性にお礼を言いながら自分のアパートに向かい始める女性。

 

 男性「またな!」

 

 女性「じゃあねー!」

 

 

 女性が振り向いて手を振りながらお礼を言ったその時!

 

 

 “ズゴゴゴゴゴ…”

 

 

 女性「きゃーっ!! 助けてー!助けてー!!」

 

 

 突如、女性の足元が崩れ始め、そこから蟻地獄のような砂の渦が広がっていき女性はその中へと沈んでいく。

 

 

 男性「はっ!?」

 

 男性は慌てて駆け寄るが、蟻地獄のような砂の渦は悲鳴や助けを求める声を上げながら這い上がろうとする女性を容赦なく引きずり込んでいく…!

 

 するとやがて女性が砂の渦の中心までに近づくと、そこから何やら昆虫の牙のようなモノが現れ、女性を挟み込み地中へと引きずり込んでしまった…。

 

 

 女性が地中へと姿を消したと同時に蟻地獄も姿を消し、何事も無かったかのように元の地面に戻った。

 

 

 突然謎の現象と共に姿を消してしまった彼女。男は動揺しながらも急いで警察署へと急行したのだという…。

 

 〈回想終了〉

 

 

 近くで見つめながら男が警察に言っていた証言をこっそり聞いていた健二の表情に戦慄が走る。

 

 更に警察が消えた女性はO型だったと発言したことで確信する。

 

 健二「間違いない…例の事件と同一のものだ…!」

 

 

 なおも穴を掘り続ける警察。しかし5メートルぐらい掘っても何も見つかる様子はなく、一時引き上げざるを得なくなった。

 

 警察2「駄目です。どんなに掘ってもそれらしきものは見つかりそうにありません。」

 

 警察1「ふむ…これ以上掘っても無駄なようだな…。」

 

 男性「じ…じゃあアッキーは?…僕の晶子は、どこへ!?…ねえ!僕の晶子は…!?」

 

 男は動揺と絶望感から完全に混乱し、彼女の行方を警察に問い詰める………。

 

 

 この一連の光景を見つめていた健二は決心したのだった。

 

 健二「よーし、今日こそ必ず手掛かりを掴む!…そして、二度とこんな事が起こらないようにする…!」

 

 

 

 あの後健二は、少しでも早く手掛かりを掴もうと現場を離れてすぐに街を駆けて探索を始めているのである。

 

 

 健二「はぁ…はぁ…はぁ…どこだ犯人!?…どこにいる!?…。」

 

 必死に走り続けているため既に息切れを起こしてしまっているが、それでも必死に駆け続ける。

 

 

 健二「出て来い犯人!!隠れるなんて卑怯だぞ!!この根暗野郎ーぅ!!」

 

 焦りや犯人への怒り、いらだちから、立ち止まって叫びを上げる健二。

 

 

 だが、流石に無理をし過ぎたのか、走り続けたことによる疲れに夏の暑さが重なってめまいを感じ始める。

 

 健二「…ち…ちくしょう…こんな…時に…早く犯人…を…捕まえなきゃいけ…ない…の…に…。」

 

 

 段々と意識が遠のっていき、やがてその場に倒れ込もうとしたその時、

 

 

 “ガッ”

 

 

 健二「…え?」

 

 

 突如、健二は倒れ込みそうな自分の体を誰かが腕で支えるのに気づきふと顔を上げる。

 

 

 櫂「ったく、無茶し過ぎだっての。」

 

 顔を見上げた先には自信を見つめている櫂の顔が見えていた。

 

 

 間一髪、櫂は倒れ込みそうになった健二の体を腕で受け止めて支えたのである。

 

 

 真美「大丈夫?健二君。」

 

 更にその横にいる真美が、心配そうな表情で話しかける。

 

 どうやら櫂と真美は、今日も2人っきりでお出かけしているようである。

 

 

 健二「…櫂さん…真美さん…。」

 

 心配する2人の顔を見た健二は、少し安心の笑みを浮かべた後、そのまま櫂に支えられた状態でぐったりしてしまう。

 

 

 バテている健二にゼロも語りかける。

 

 ゼロ「にしても、まだ午前中だというのに今日1日頑張りましたみたいな疲れ様だな。無茶なやつだぜ。

 

 んま、俺がかつて共に戦った仲間にもいたな…そういう無茶の出来る奴が。」

 

 

 一方、フューチャーアースにて。

 

 ???「ぶぇっくしゅーん!?」

 

 とあるスーパーGUTSの隊員服を着た青年がくしゃみをしてしまっていた。

 

 ???「誰か…俺の事噂してんのか…?」

 

 

 真美「また女性が1人消えたんだって?、さっきニュース速報で流れてたわ。」

 

 健二「…はい…ですから僕は、これ以上犠牲者が出て欲しくないから…一刻も早く犯人を見つけ出そうと…。」

 

 櫂「人のために頑張るのもいいが、まずは自分を大事にしねーと元も子もないぞ。」

 

 健二「あ、はい…すいません…。」

 

 なおも息を切らせながら焦りを見せる健二を櫂は諭す。

 

 

 真美「これから夏本番で益々熱くなることだし、水分補給もしっかりしないとね…。

 

 ねえ、近くの喫茶店に行きましょ?あそこはクーラーも効いてるし、アイスティーとか飲んで一息入れようよ。」

 

 水分補給もろくにしてなかったために熱中症寸前の健二に真美は一息いれる提案をする。

 

 櫂「お、それいいな真美。健二確か朝から何も食べたり飲んだりしてないんだろ?一度美味いスイーツと冷たい飲みもん飲めば、絶対に道は開けるぜ。」

 

 健二「えっ?、いや、なんか悪いですよ…僕なんかのためにお二人さんに気を使わせちゃってるみたいで…。」

 

 真美「(健二の両肩に手を置いて笑顔で)気にしないで。健二君最近頑張ってるんだもん。」

 

 二人に悪いと思っている健二に真美は笑顔で優しく話す。

 

 櫂「俺と真美もちょうどそこに行こうとしていた所なんだ。お前も少しは羽を伸ばせよ。」

 

 櫂(ふん…ホントは俺と真美の時間を邪魔されたくないんだが…真美を襲おうとした犯人を見つけようと頑張ってることだし、今回ばかりは許してやるか。)

 

 

 健二「…でも…どんなに走っても何も進展はないし…。」

 

 

 ここ数日どんなに走っても何も掴めない事に心が折れそうになっている健二。その時、

 

 

 真美「スマイルスマイル。一度涼しい所でくつろいで頭を冷やせば、必ず道は開けるよ。」

 

 真美は健二の頬を軽くつねりながら満面の笑顔で優しく語り掛ける。

 

 

 思わぬ事をされて少し動揺する健二だが、目の前の真美の明るい笑顔を見つめると自然と焦る気分が落ち着いていく。

 

 

 健二「じ…じゃあ、お言葉に甘えて、ちょっと休んじゃおっかな…。」

 

 このままでもらちが明かない事に気付いた健二はひとまず一休みする事を決めた。

 

 

 真美「それがいいよ。」

 

 

 健二「でも僕お金が…。」

 

 櫂「心配無用っスよ!俺が奢ったるからさ。」

 

 健二「ほ、本当ですか?ありがとうございます。」

 

 櫂「よーし、それじゃあ決まりだな。早く行こうぜ真美。」

 

 真美「うん。私何食べよっかなー 」

 

 

 かくして、櫂と真美は疲れた健二を連れて近くの喫茶店に向かい始める。

 

 

 だが、櫂と真美に連れられながらも健二の不安は消えていなかった。

 

 健二(渦に飲まれそうになった女性を助けていた例の赤い光…だが、その光の救出も追い付かないほどに早く、広範囲に被害が広がりつつある…。犯人は例の光の妨害や僕の捜索に気付いて焦り始めたのだろうか?…悠長にしてられないのは確かだな…。)

 

 

 

 赤い巨人の幻覚を見た健二と、青い巨人の夢を見た早苗…半信半疑でいる二人だが、実は気付いていなかった…。

 

 この大地、そして海にて、それぞれ二人の光の巨人が目覚めつつあるという事を…。

 

 

 

 一方早苗の方はというと、既に朝食を終えてフルータ星人たちと海遊びを楽しんでいた。

 

 

 海パン姿の賢たち男子陣が海辺で水のかけ合いなどをして遊びはしゃいでいる頃、水着姿の愛・早苗の女子陣は砂浜でゆったりと山を作ったりなどして遊んでいた。

 

 

 だが、愛と一緒に山を作っている早苗の表情はどこか上の空で明後日の方向を向いており、砂山を叩く手も機械的な動きになっていた。

 

 愛「…早苗さん?」

 

 愛は呼びかけながら早苗の顔の前で手を軽く振る。

 

 早苗「…ッへッ!?」

 

 ようやく気付いたのか少し裏声で驚く早苗。

 

 愛「さっきからボーっとしちゃって、どうしちゃったの?」

 

 早苗「い、いや…なんでも…今日は暑いから、ついボーっとしちゃって…、」

 

 愛「とてもそうには見えなかったよ~?」

 

 早苗「…ぇ…?」

 

 何となく誤魔化すように振る舞う早苗だったが、愛は既に何かお見通しのようであった。それにより早苗は図星を突かれたかのように反応する。

 

 愛「話してよ~…私たち、もう友達じゃない?」

 

 

 …あどけなく話しかける愛。自分の事を“友達”と言いながら…。

 

 早苗「…ありがとう、愛ちゃん。」

 

 それにより早苗は心を動かされ、やがて少しずつ曇っていた表情に明るさを取り戻し、やがて心の内を話し出す。

 

 早苗「私、こうやって呑気にビーチで遊んでていいのかな~?って思ったりしてたの。」

 

 愛「…ん?」

 

 早苗の出だしの発言に疑問を感じる愛。早苗は続ける。

 

 

 早苗「わざわざ離れた街から電車でここまで来たと言うのに、出来てるのはただじーっと現場を見つめてるだけ。

 

 結局何も手掛かりを掴めていないまま、こうやって呑気に遊んでばかりいる…。

 

 …あ、別に愛ちゃんたちに出会ったのが間違いってわけじゃないよ?愛ちゃんたちと遊ぶのはとっても楽しいし…

 

 …ただ…ただの人間の女の子の私が大事件の手掛かりを突き止めようなんて、やっぱり無駄な事だったんじゃないかなー?って思ったり…。」

 

 

 早苗の心の悩み、それは、自分がやっていたことは無駄な事だったんじゃないかという事であった。

 

 

 思わぬ本音を聞いた愛は少し驚くような表情を見せ、やがて少し黙り込んだ後、、、

 

 

 愛「…私…早苗さんのやった事は、無駄じゃないと思うけどな…。」

 

 早苗「…え?」

 

 

 愛「まず、わざわざ別の地域からここまでやって来る…それだけでも凄い事だよ。行動力高いね、早苗さん。」

 

 早苗「…愛ちゃん…。」

 

 自分の行動自体から褒める愛。それに早苗は少し嬉しそうな表情になる。

 

 

 愛は話を続ける…二人の友達と一緒に子供のように海辺で遊ぶ兄・賢を見つめながら。

 

 

 愛「実は私の兄ね、私を助けるために無茶をした事があるの。

 

 怪獣に襲われた私を助けるために、ウルトラマンからアイテムを奪ってまでして向かって行ったの。」

 

 

 早苗「え?あなたのお兄さんが?」

 

 海辺で友達とプロレスをしたりバックドロップ等をしたりして子供のように遊び回る賢の方を振り向きながら、早苗は驚きの反応を見せる。

 

 

 愛「最後はウルトラマンの助けもあったんだけどね。でも、お兄ちゃんは私を助けるために諦めなかった。

 

 

 その時、私はお兄ちゃんを初めてヒーローだと思った。

 

 

 確かに、ウルトラマンの力を持ってない私たちは無力かもしれない…でもね、例えただの人間でもそれなりに頑張れば、必ず何かに繋がるんだなーってあの時思ったの。」

 

 

 早苗「諦めず…それなりに頑張る…?」

 

 

 愛「早苗さんも、まだ望みが消えたわけじゃない。(海沿いの道路を指差して)ほら、現場はここからも見えるわけだし、おかげで遊びながら監視ができるし、一石二鳥じゃない。

 

 (早苗の両手を握って)私たちも出来る限りのサポートはするから。だから頑張ろう?

 

 (両手のガッツポーズを振りながら)ファイトーファイトー!」

 

 

 愛の励ましを受けた早苗は、閉ざしかけていた心に再び光を取り戻した。そして表情もいつもの明るさを取り戻す。

 

 

 早苗「ありがとう愛ちゃん。」

 

 

 愛と早苗は笑顔で見つめ合う。

 

 

 …だが、そこに空気を読まない男子陣が…

 

 

 “バシャーン”

 

 

 愛・早苗「!?きゃっ!!」

 

 

 突然冷たい海水をかけられた女子陣はその冷たさに思わず驚く。

 

 

 賢「おーい愛早苗!なにいつまで日向ぼっこやってんだー!?」

 

 明人「いっしょに遊ぼうぜー!」

 

 

 愛「んもう、お兄ちゃんったらー!」

 

 早苗「やったわねー!?」

 

 そう言いながら女子陣も海辺に向かって駆け始める。

 

 そして男女交えての海水のかけあいが始まった。

 

 

 愛の励ましにより、もうひと頑張りする事を決めた早苗。

 

 

 

 場所は変わって喫茶店にて話し合いながら一息ついている健二と櫂、真美。

 

 クーラーの効いた場所で一息ついたためかさっきまで焦っていた健二もだいぶ落ち着き、櫂と真美と他愛もない話をしながらアイスティーを飲んでいる。

 

 

 因みにテーブルをよく見てみると、何やら真美の近くだけ食後の皿が多く重なっていた…?

 

 

 健二「真美さん…結構食べるんですね…。」

 

 

 櫂「だよな…(指折りしながら)ワッフルだろ? パンケーキだろ? アイスを御代わりして…そしてチョコパフェだろ?

 

 よく食うよな~。」

 

 真美「私、次はフレンチトーストをいただこっかな〜♪」

 

 櫂「…って!?まだ食うのかよ? お前ホントにスゲえな~。」

 

 櫂と健二は真美の意外な大食いぶりに呆気に取られている。

 

 因みにそれぞれパンケーキ+コーヒー、ワッフル+アイスティーをいただいている。

 

 真美「あはは…今日は特にお腹空いてたからね。大丈夫。自分で食べた分は自分で払うから。」

 

 健二「それにしても、その美貌やスタイルでよく食べる。それに加え運動もできますからね…真美さんは本当に健康的女子ですね。」

 

 完全に調子が良くなった健二はその勢いもあってか真美を褒めちぎり、真美は少し照れくさそうに笑う。

 

 

 健二「それにしても、櫂さんと真美さんは今日もデートしてたんですね。」

 

 櫂「い…いや、デートと言うか、真美が昨日行き忘れた服屋さんがあるって言うから俺はその付き添いで行ってるだけだよ。」

 

 少し照れながらも櫂は今日出かける意味を話す。

 

 健二「へぇ~…真美さんのためにですか…男らしいですね櫂さん。あ、それとも、女の買い物に早速振り回されちゃってるんですか〜?」

 

 健二は昨日に引き続き真美とデートしている櫂を軽くからかう。

 

 櫂「ははは、そんなんじゃねーよ。なんでも今から行く服屋さんは真美1人じゃ判断に困るほど品揃いがいいみたいなんだ。だから、俺も一緒に行っていいコーディネートを考えてやるって事よ。」

 

 櫂(ふんっ!この俺が…女に振り回されるほどヤワなわけねーだろ…!)

 

 櫂は心で黒い呟きをしつつも、表面で笑って受け流す。

 

 

 真美「そうなの。櫂君の服のコーディネート、とってもいいセンスしてるのよ。」

 

 真美も笑顔でチョコパフェをスプーンで掬って食べながら櫂を褒めちぎる。

 

 健二「相変わらず凄いですね…櫂さん…体力あって、勉強できるだけじゃなくて、それ以外もそつなくこなすなんて凄過ぎです。

 

 …それに比べ俺は…はぁ…。」

 

 健二は櫂の才能を賛美しつつも、それと比べるかのように自分の無力さを嘆くように呟く。

 

 櫂「なーに言ってんだ健二。お前だって過酷な状況を突破して、自分の闇にも勝ったじゃねーか。それだけでも立派だぜ?」

 

 櫂は健二のネガティヴ発言を否定し、以前自分の闇に勝つことができた健二の努力を褒める。(第11、12話参照)

 

 …最も、今でもドス黒い本性を隠している櫂が言うものだからこちらとしては少し複雑な感じではあるが…。

 

 真美「そうだね。あの頃の健二君を思い出すと、今じゃすっごく成長してると思うよ。あれからいろんな事件にも協力してくれたし。」

 

 真美も健二を褒めながら、いつの間にか次のオーダー・フレンチトーストをいただき始めていた(笑)

 

 健二「成長…ですか。そうですかね~?」

 

 若干照れ臭そうな感じになっている健二。

 

 櫂「ああ、間違いないさ。今だってこんな暑い中、謎の失踪事件の犯人を突き止めようと頑張ってる。それも立派な証拠の一つさ。」

 

 健二「そうですか…でも…俺まだ何も手掛かりを掴めてなくて…俺のやっている事なんて意味なかったんじゃないかと思うと、少し…。」

 

 再び少し俯く健二。そこに真美が半分に切ったフレンチトーストを差し出しながら優しく話す。

 

 真美「決して無駄じゃないよ健二君。その頑張りは絶対に裏切らないわ。少しあげるから、これでも食べて元気出して。」

 

 真美の優しい言葉を聞いた健二は俯いていた顔が上がり、暗くなりそうになってた表情も治っていく。

 

 健二「真美さん…俺…嬉しいです。」

 

 再び元気を取り戻した健二は真美から貰ったフレンチトーストを頬張りながらこう宣言する。

 

 

 健二「なら俺、ギリギリまで頑張ってみます!」

 

 

 真美「…え?」

 

 櫂「なんだって?」

 

 健二の思わぬ宣言に櫂と真美は少し困惑のような反応をする。

 

 健二「犯人の足の先、もしくは髪の毛でもいいですから、とにかく何かが分かるまでギリギリまで頑張ってみせますよ。

 

 そして何かが分かって、それが宇宙人か何かだったら、その時こそ櫂さん、ウルトラマンに頼るのです。」

 

 健二の決心の意味。それはまさにアツいものであった。

 

 ゼロ「…健二…。」

 

 その言葉には、櫂の左腕のウルティメイトブレスレットに宿るゼロも感心を示していた。

 

 真美「そう…頑張ってね。あと、無理はしないでね。」

 

 意味を知った真美はそっと応援の言葉を送る。

 

 すると、健二は更に決心の意味を深く語る。

 

 健二「ウルトラマンというのはそもそも、俺みたいな人間がギリギリまで頑張って、それでもピンチの連続な時に手を差し伸べてくれる光。俺はそう思っています。

 

 ですから、俺はまず人間としての力でやれるところまでやってみたいんです。そしてこの頑張りを続けて何かに繋がったその時、俺自身も更に変わることができるとなんとなく思うんです。

 

 ですから、俺はギリギリまで頑張って、踏ん張ってみせます!」

 

 櫂「…そうか、そこまで言うなら、やれるところまで頑張って来い!」

 

 健二の熱い語りを聞いた櫂と真美は、彼の頑張りを応援する事にした。

 

 ゼロ「お前…ウルトラマンの極意を分かってんじゃねーか。ホントに成長したんだな、健二。」

 

 ゼロもフィニッシュポーズを決めながら健二の成長を改めて認める。

 

 最初からウルトラマンに頼るのではなく、まずは人間の力でギリギリまで頑張ってそれでもどうにもならない時はじめて頼る。それが彼のポリシーのようである。

 

 最も、ウルトラマンの力を求めてゼロと一体化した櫂は内心少し複雑な気持ちではあったが…。

 

 

 ゼロ「それにしても健二、お前初期よりもだいぶ男らしくなったなあ。お前もしかしたらウルトラマンになる資格、あるんじゃねーの?」

 

 健二「ぇ…えぇ!? そうですかね~?」

 

 ゼロ「ま、困った時は遠慮なく俺たちに頼れ。いつでも飛んで行ってやる。」

 

 櫂「応援してるぜ、健二。」

 

 健二「はいっ!」

 

 

 櫂(そう…君にはせいぜい頑張ってもらわないとねぇ〜………真美を拐おうとした何者かをブチのめすためにも、ふふふ…。)

 

 櫂は健二を応援しつつも、またしてもひっそりと不敵な笑みを浮かべつつ内心私怨のこもった呟きをしていた…。

 

 

 

 同じ頃、一旦砂浜に上がって愛たちと一休みをしている早苗も。

 

 

 早苗「決めたの! 私、ギリギリまで頑張る。」

 

 

 愛「ギリギリまで…」

 

 賢・明人・輝雄「頑張る?」

 

 

 早苗「うん。私、事件の手掛かりを掴むために、自分に出来ることをやる事にしたの。

 

 一人の人間として、やれる事を全力で頑張れば、きっと何か見つかるはず。私はそう信じるわ。」

 

 

 早苗の決心を聞いたフルータ星人一同は、それに感心する。

 

 

 賢「驚いた…こんなにガッツのある女の子初めてだ…。」

 

 明人「そう言って、そんな子も魅力的とか思ってんじゃないの?賢君。」

 

 輝雄「立派だな。早苗。」

 

 賢「決して無理すんじゃねーぞ?俺たちもいるんだから。」

 

 早苗「うん。ありがとうみんな。あと…」

 

 

 次に早苗は愛の方を振り向く。

 

 

 早苗「ありがとう、愛ちゃん。」

 

 

 愛「頑張ってね、早苗さん。」

 

 

 愛・早苗「いえーい!」(両手ハイタッチ)

 

 

 明人「ん?何だ何だ?」

 

 輝雄「早苗に何か言ったのか?愛ちゃん。」

 

 愛「ふふふ、言っちゃおっかな~?」

 

 輝雄「何だよ気になるじゃねーか!」

 

 明人「言えよ~!」

 

 愛「どうしよっかな~?」

 

 いつの間にか追いかけっこを始めてしまっている明人・輝雄と愛。

 

 

 賢「俺たちも行くぞ早苗! ダッシュ豪快だ~!」

 

 賢も早苗と共にその後を追い始める。

 

 

 そして賢は、自分の隣で髪をさらさらと靡かせながら笑顔で走る早苗を見つめながら心の中で呟いていた。

 

 

 賢「しかし、仮に犯人が宇宙人か怪獣だとしても、今ここにウルトラマンはいない…ヒカルさんと海羽さんも連れて来りゃあ良かったかなー?

 

 …でも、今じゃガッツの塊の早苗…彼女ならもしかして…?」

 

 

 

 仲間の励ましにより、再び頑張る気力を取り戻し、新たな決心を固めた健二と早苗。

 

 

 …だが、そんな彼らの決心をも嘲笑うかのように、新たな事件が起ころうとしていた…!

 

 

 それはとあるショッピングモールにて。

 

 

 そこのとある一階の福屋にて、とある子連れの母親が選んだ服を持って試着室に入ろうとしていた。

 

 その母親は見た感じ結構若い感じであった。

 

 

 母「じゃ、ちょっと待っててね。」

 

 女の子「うん!」

 

 

 母親は女の子にそう言うと試着室に入っていき、熊の縫いぐるみを持った女の子は元気に返事をした後隣のおもちゃ屋さんへと駆けて行った。

 

 

 試着室内にて、服を試し着しようとする母親。

 

 

 その時、

 

 

 “ゴゴゴゴゴゴ…”

 

 

 突如、何処からか妙な物音がしてきて母親はそれに気づく。

 

 

 母「…何の音かしら…?」

 

 

 すると!

 

 

 “ズゴゴゴゴゴ…”

 

 

 母「!!?きゃー…」

 

 

 突如、母親の足元から激しい土煙と共に例の蟻地獄が現れ、母親を引きずり込んで悲鳴ごと飲み込んであっという間に姿を消してしまった…。

 

 

 一瞬にして現れては一瞬にしてまた一人女性を飲み込んで姿を消した蟻地獄…。

 

 

 

 同じ頃、例の海沿いの道路にて。

 

 とある一台の赤いスポーツカーに乗ったカップルがそこを通り過ぎようとしていた。

 

 運転中だというのに車のステレオで音楽をガンガン鳴らしながらワイワイ騒いで盛り上がっており、ラフな格好でサングラスをかけているその男女二人。正によく見る今どきの若者である。

 

 

 ワイワイ盛り上がっていたその時、運転していたカップルの女性が突然何かに気付いて車を止める。

 

 カップル男「ったく何だよ?…ん?」

 

 突然の急ブレーキに愚痴りそうになっていた男性も、目の前の何かに気付く。

 

 

 二人の視線の先には、昼間にも関わらずなんと大量の蛍が飛んでいるのである!

 

 

 目の前の蛍のような光の群れにカップルの男女は

 

 カップル男「何だありゃ?」

 

 カップル女「めっちゃいっぱい飛んでるやん! 蛍ちゃうあれ?」

 

 カップル男「バカ言え、蛍が昼間に飛ぶわけねーだろ?」

 

 カップル女「それもそうか。それじゃあ、誰かのいたずら?」

 

 カップル男「そうかもしれねーな…舐めやがって。なあ、いっちょエンジン飛ばして一気に吹っ飛ばしちまおうぜ!」

 

 カップル女「賛成ー!よっしゃかっ飛ばすぞ~!」

 

 

 カップルの女は再びエンジンをふかせてスポーツカーを走らせ始める。

 

 さっきよりもスピード前回のスポーツカーは蛍の群れを次々と撥ね飛ばしていく。

 

 カップル男「イヤーッホウ!!いいぞやれやれー!!」

 

 

 だが、二人が調子に乗り始めたその時、

 

 

 今度はスポーツカーが通り過ぎようとしている海沿いの道路の崖から、勢いよく白いガスが噴射し始める!

 

 

 カップル女「…今度は何?」

 

 カップル男「霧か何かか?」

 

 カップル女「でも、こんなに一気に広がるものかな~?」

 

 

 白いガスがカップルの乗るスポーツカーを包んだその時!

 

 

 カップル男「…!?うぐっ!?、、げほげほっ…何だか息苦しくないか!?」

 

 カップル女「げほげほ…しかも、げほ、何?このアルコールの臭いは…げほげほ……子供の次はおやじのいたずら!?」

 

 突如、ガスを吸った瞬間呼吸困難に襲われるカップル。息苦しさにハンドルを回す手も覚束なくなっていき、それにより車もクラッシュ寸前までにふらつき始める。

 

 

 すると今度は、先ほどの大量の蛍が一斉にカップルに飛び付き始める!

 

 

 飛び付く蛍に体のあちこちを噛まれているのか、カップルはその場でのたうち回りながら悲鳴を上げる。

 

 

 やがてカップルを乗せたスポーツカーはガードレールを突き破ってクラッシュし、それにより車から放り出されたカップルは地面に叩き付けられる。

 

 

 大量の蛍が纏わり付く横たわるカップルのその姿は、既に死んでいるようであった…。

 

 

 

 その頃、海に浸かった状態でフルータ星人とビーチバレーを楽しんでいる早苗は、

 

 

 早苗「…はっ?」

 

 

 突如何かを感じたのか、ふと動きが止まって自分に飛んで来たボールを落としてしまう。

 

 

 賢「どうした?早苗。」

 

 愛「何かあったの?」

 

 心配して賢と愛が話しかける。

 

 

 早苗「…今、何か胸騒ぎを感じたの…。」

 

 

 賢「何だって?」

 

 早苗「何かを感じたの…それはとっても不吉なモノ…。」

 

 そう言いながら早苗は、例の道路の方を指差す。

 

 

 早苗「…あそこで、何かが起こってる…?」

 

 

 

 立て続けに怪事件が発生した今、一旦場面を健二の方に戻そう。

 

 真美「はぁ~、今日もっぱい食べたし、スマイル満開だね。」

 

 満面な笑みを浮かべて満足そうな真美。

 

 櫂「んじゃ、そろそろ行こっか。」

 

 真美「そうだね。」

 

 健二「それじゃあ俺は、改めて探索を始m…」

 

 

 櫂と真美は会計を済ませ、健二は二人と別れて再び探索を始めようとしたその時、

 

 

 「ねえねえ、また人が消えたんだって?」

 

 「怖いわね~。」

 

 

 近くの席に座っている女子高生二人の気になる会話が耳に飛び込む。

 

 櫂はこっそりと女子高生のスマホ画面を覗いてみると、そこにはニュース速報で、五分前に近くのショッピングモール・イサンモールで女性が一人消えたという記事が開かれていた。

 

 

 イサンモール…それは正に今から櫂と真美が向かおうとしているショッピングモールである!

 

 

 気が付くと、外ではパトカーがサイレンの音と共にそのショッピングモールの方向に向かって走り去って行った。

 

 

 真美「櫂君…もしかして…?」

 

 櫂「ああ、行こう真美!」

 

 健二「ああっ!俺も行きます!」

 

 不吉な胸騒ぎを感じた三人は喫茶店を出て駆け足でイサンモールに向かい始める。

 

 

 やがて三人がイサンモールに着くと、案の定駐車場にはパトカーが止まっていた。

 

 

 更に中に入ってみると、一階のとある福屋の試着室周辺に警察が数人集まって何やら捜索をしており、周りの客たちはその光景を群がって傍観している。

 

 

 因みにこの福屋は櫂と真美が行こうとしていた店であったため、特に二人は驚きを隠せなかった。

 

 

 真美「一体何があったのかな?この店で。」

 

 櫂「聞いてみようぜ。」

 

 

 二人は警官の一人に事情を聞いてみた。

 

 なんでもこの試着室に入っていた女性が突然姿を消してしまったのだという。

 

 しかも目撃者の証言によると中から砂が吹き上がるような音が聞こえたというのだ。

 

 

 話を聞いた三人は例の蟻地獄による失踪事件がまた起こったのだと確信した。

 

 

 試着室の入り口の傍では一人の女の子がうずくまって泣きじゃくっており、三人はその子が消えた女性の子供だという事も確信する。

 

 

 目の当たりにした残酷な現実。櫂は静かに怒りを感じながら拳を強く握り、真美は心の痛さに顔を背ける。

 

 

 そして健二は下ろした両手をわなわなとさせながらひきつった表情で下を向く。

 

 今回の事件の責任は自分にあると痛感しているのだろうか…?

 

 

 やがて健二は数秒下を向いた後、力なく震わせていた両手を握り拳に変え、震えるほど強く握り始める…。

 

 

 健二「櫂さん…真美さん…。」

 

 

 真美「…ん?」

 

 櫂「何だ健二。」

 

 残酷な事件により、苛立ちを感じている櫂と涙目になっている真美は健二に呼ばれて振り向く。

 

 

 二人の視線が注ぐ中、健二は真剣な顔をゆっくりと上げる。

 

 

 健二「俺…地下鉄に乗ってきます…。」

 

 

 真美「へっ…?」

 

 櫂「何だって?」

 

 健二の思わぬ発言に二人は少し驚く。

 

 

 話を続ける健二。

 

 

 健二「今まで俺…陸上で捜査をしていたから空回っていたのかもしれません…。

 

 ですから、直接地下に行けば、犯人を見つけられるかもしれません。」

 

 

 健二の新たな決心。それは、自ら直接地下に行って犯人を見つけ出すという事であった。

 

 

 櫂「危険だぞ健二。いくらギリギリまで頑張るからって。」

 

 真美「健二君にもしもの事があったら大変…」

 

 

 健二「もうこんな惨事は見たくないっっ!!」

 

 

 健二は自身の身を案ずる櫂と真美の声を遮るように叫んだ。

 

 

 健二「…すいません。…でも、このままじゃ、被害が広がる一方なんです…。」

 

 

 真美「健二君…。」

 

 

 健二「犯人があっちが顔を見せないのなら…こっちから炙り出すまでです。

 

 大丈夫です。櫂さんと真美さんのくれた勇気で、必ず暴いて見せます!」

 

 

 櫂「…そうか…なら、行ってこい健二。」

 

 

 再び健二の熱い思いを聞いた櫂は、彼を送り出すことにした。

 

 

 櫂「いいか、ちゃんと命だけは持って逃げるんだぞ。」

 

 

 健二「…はい!もしもの時は、よろしくお願いします。」

 

 

 健二は二人に敬礼をすると、その場から走り去って行った。

 

 

 真美「健二君…大丈夫かな?」

 

 真美は泣きじゃくる女の子を優しく抱いて背中を摩りながら、健二の身を案ずる。

 

 櫂「なに、彼は大きく成長した。彼の力を信じるんだ。」

 

 

 櫂((健二を見送りながら不敵な笑み)そうだ…君が犯人を見つけた時が、俺がそいつを完膚なきまでにブチのめす時だ…ふふふ…。)

 

 

 櫂が心でそう呟いたその時、

 

 

 ゼロ「…櫂…何か不吉な気配を感じるぞ。」

 

 ゼロはいち早く何かを察知し、それを櫂に知らせる。

 

 櫂「何だと?」

 

 

 その時、

 

 

 ???『…ふははははは…我が超獣に単身で挑むとは、あの少年も馬鹿な奴め!』

 

 

 突如どこからか声が聞こえてゼロも櫂も驚愕する。

 

 

 ゼロ「ッ!?誰だっ!」

 

 

 ギロン人「ふはははは、我が名はギロン人!新たな刺客として動き出した地底エージェントだ!」

 

 

 ゼロと櫂にテレパシーで話しかけている者、それはテラ軍の新たな刺客として送り込まれた『地底エージェントギロン人』であった!

 

 

 ゼロ「もしや…謎の失踪事件は貴様の仕業なのか!?」

 

 

 ギロン人『そうだ。我がペット・超獣アリブンタに食事をさせていたのだよ。

 

 アリブンタはO型の血液が好物でなあ!おかげで、たくましい超獣に成長してくれた。

 

 東京は餌が多い、絶好の飼育場だ!ふははははは…!』

 

 

 謎の失踪事件の正体。それはギロン人が引き連れた超獣『大蟻超獣アリブンタ』の食事で会ったのだ!

 

 アリブンタはO型の血液が好物であり、それを持つ女性を四次元蟻地獄で引きずり込んで捕食していたのである。

 

 

 ギロン人のやり口を知った二人は怒りが一気に湧いて来る。

 

 ゼロ「人間を餌呼ばわりしやがって…ふざけんな!」

 

 

 櫂「ってことは…真美を狙ったのもそのために………許せねえ…!」

 

 またしても激しい怒りにより震えるほど拳を握る櫂。最愛の真美をも奪おうとした事件の正体を知った今、激しい怒りと殺意は完全にギロン人の方に向いている櫂。

 

 だが、そのギロン人は現時点姿を見せておらず、場所も特定できていないため、倒しに行こうも行けない事に更なる苛立ちを感じる。

 

 

 それはゼロも同じであった。

 

 ゼロ「どこにいるんだ?姿を見せやがれ卑怯者!!」

 

 ギロン人『ふふふふふ、嫌なこった! それより、卑怯とかラッキョウとか言ってる間にも、更なる被害が増えるかもよ〜?』

 

 ゼロ「何っ?どういう事だ!」

 

 ギロン人『本当の地獄はここからだ!ふははははは…!』

 

 ギロン人の高笑いがフェードアウトしていき、やがて聞こえなくなると共にテレパシーも聞こえなくなった。

 

 

 櫂「ヤロー…必ず見つけ出してぶっ殺してやる…!」

 

 既に殺る気満々の櫂は、指をポキポキ鳴らしていた。

 

 

 ゼロ「奴め、本当の地獄とは一体何のことなんだ…?いち早く見つけてぶっ倒してーが、まだ奴の居場所が特定できねー…それに敵の正体が知った今、櫂の奴も怒りが心頭だ…こりゃあまた暴走しちまいそうだぜ…。」

 

 

 ゼロはそう呟きながら「やれやれ」とばかりに片手で頭を抱える。

 

 

 ゼロ「それと、真美を含め、時たま攫われそうな人を助けていた謎の光…あれからは微かだが、俺たちウルトラ族と同じ力を感じた…。

 

 この世界の地球の大地に、ウルトラマンが宿っているというのか…

 

 はっ、もしや!?」

 

 

 ゼロは、謎の赤い光について遂に何かを勘付いたようだった…。

 

 

 一方で、何処かに潜んでいるギロン人も、

 

 ギロン人「それにしても、アリブンタの食事を邪魔していた奴が目障りだな…

 

 ま、奴の救出も間に合わない程に、アリブンタの食事ペースは速かったがな。姿を現したが最後、やっつけてやるぜ。」

 

 ギロン人は、謎の光の正体が既に何なのか知っているようであった。

 

 

 ギロン人「さーて、そろそろアリブンタが、あの小僧(健二)を殺るところかな…?ふふふ…。」

 

 

 

 その頃、遂に健二は地下鉄に乗り込んだ。

 

 健二と大勢の人々を乗せた地下鉄はいつもの様に暗い道を照らしながら線路を走っていく。

 

 つり革につかまったまま居眠りをする人、集って漫画を読み合う女子高生、楽しそうに話すカップルなど、地下鉄の中は平和そのものだった。

 

 

 だが健二は、席に座ってくつろぎながらも真剣な表情で窓の外を眺めていた。

 

 

 健二「絶対にもう誰も亡くしたり、悲しませたりはしたくない…。」

 

 

 これまで謎の事件により消えていった人やそれにより悲しむ遺族の事を考えながら、健二は静かに湧き上がる怒りと共にそっと呟いた。

 

 

 

 一方の早苗側。

 

 

 謎の胸騒ぎを感じた早苗は海から上がり、水着姿のまま駆け足で例の海沿いの道路の崖の方へと向かって行く。

 

 それに賢たちフルータ星人もついて行く。

 

 

 一同は遂に、妙なガスが漂っている現場に辿り着く。

 

 早苗「確かこの辺のはず…。」

 

 愛「それにしても不気味ね~…。」

 

 明人「にしても凄いアルコールの臭いだな~。」

 

 輝雄「でも、ガードレールが破れてる。何か起こったのは確かだな。」

 

 賢「よし、探ってみよう。…ん?」

 

 賢は何かに気付き、他の者もそれに気づく。

 

 そこには何やら蛍らしきものが飛び回っているのだ。

 

 だが、今の午前の明るいときに蛍が光を発して飛ぶはずが無い。一同はそうすぐさま違和感に気付く。

 

 愛「何だろう…これ。」

 

 輝雄「やっぱ蛍なんじゃねーの?小さくて光ってて飛び回ってるし…。」

 

 明人「でも、こんな明るいときにこんなに光って飛ぶなんておかしくないか?」

 

 

 賢「…どうした?早苗。」

 

 賢は何やら妙に身震いする早苗に気付く。

 

 早苗「なんだか…すごい胸騒ぎがするの…。

 

 まだはっきりとは分からないんだけど…これから不吉な事が起きそうで、更に自分が違うモノになるような気がして…。」

 

 直接現場に来た早苗は突然様々な予感を感じ胸騒ぎを感じていたのだ。

 

 

 賢「なに、気のせいだよ。なにしろアルコールの臭いがして、午前なのに蛍が光って跳び回る、奇妙な場所に来たんだからn…」

 

 

 愛「きゃーっ!!」

 

 

 賢「!!どうした愛?…うわっ!?」

 

 

 突然愛が悲鳴を上げ、賢をはじめ一同は彼女が見ているものの方を振り向く。

 

 

 そこにあったのは、大破した車体、そして二人分の人骨だった!

 

 恐らくこの人骨と残骸は先ほどドライブをしていたカップルと彼らが乗っていたスポーツカーのモノであると思われる。

 

 

 目を覆わんばかりの凄惨な光景。それを見た一同は驚愕する。

 

 

 そして今までテレビ越しで見ていた早苗も初めて生で見て驚く。

 

 早苗「…やっぱり惨いわ…テレビで見るよりも…。」

 

 

 凄惨な光景を見たと同時に一同は確信を始めていた。

 

 明人「…これは間違いねえ。」

 

 輝雄「誰かが暗躍しているんだよ、きっと。」

 

 賢「ていうか、そうとしか考えられねえ!」

 

 愛「早苗さん、これはチャンスかもよ。犯人は近くにいるかもしれないわ。」

 

 早苗「うん。それにこの辺に蛍が飛んでるのも何か気になるし、探ってみよう。」

 

 

 

 遂に探していた手掛かりに近づいてきた早苗たち。

 

 

 だが、そんな彼女たちの様子を海沿いの道路の崖の上から見下ろしている者がいた。

 

 

 常時奇妙な効果音を発しているその者は人間ではなく地底人。『地底超人アングラモン』である。

 

 

 恐らく奴こそが、ここ海沿いの道路で暗躍している者なのであろう。

 

 

 アングラモン「いかん、我々の暗躍がとうとう人間どもに暴かれようとしている。」

 

 やはりそうだ!

 

 アングラモン「特にあの小娘。あやつは中々のガッツがある。用心せねば。」

 

 特に昨日から自分の暗躍を探っていた早苗への警戒は大きい様であった。

 

 

 アングラモン「こうなったら少々手荒だが、やむを得ん。あの者たちを皆殺しにし、ついでに破壊工作といこう。

 

 出て来い、出て来い!ホタルンガ!!」

 

 

 アングラモンの叫びが崖に響いたその時、早苗たちの周囲を飛んでいた蛍の群れが束になって飛び回り始める!

 

 

 早苗とフルータ星人一同はその光景に驚きつつも見つめる。

 

 賢「な、何だ!?」

 

 愛「何が起こってるの!?」

 

 

 早苗「…さっき何か声が聞こえたような…。」

 

 

 飛び回る蛍の群れはやがて一か所に集中し始める。

 

 

 そしてそれらが合体した時、一匹の超獣が現れる!

 

 

 蛍のような外見が特徴の、蛍と宇宙怪獣が合体して誕生した超獣『大蛍超獣ホタルンガ』の登場だ。

 

 

 超獣の出現に一同は驚愕する。

 

 早苗「蛍たちがっ!?」

 

 賢「おかしいと思ったんだ!やはり怪獣だったのか!」

 

 

 アングラモン「“怪獣”じゃない。“超獣”ホタルンガだ。」

 

 ちゃっかり訂正するアングラモン(笑)

 

 

 アングラモン「人間を捕食し続けたホタルンガは十分に逞しく成長した。今ならそやつらを潰す事など容易いはずだ。 馬鹿な奴らめ。無謀にも我々の暗躍を暴こうとするからこうなるのだよ。 “飛んで火にいる夏の虫”とは正にこの事だな。ふははははは。

 

 ホタルンガ!捻り潰せ。」

 

 

 謎のガスで弱った人間を捕食していた謎の蛍の群れの正体は、このホタルンガが無数の蛍に化けて分裂した姿だったのである。

 

 ギロン人がアリブンタにO型の女性を捕食させていたように、アングラモンもまた引き連れてきたホタルンガに人間を捕食させていたのである。

 

 

 これにより健二と早苗、それぞれが追っていた怪事件の正体が明らかになった!

 

 

 アングラモンの命を受けたホタルンガはハサミ状の両手で崖を崩し、早苗たちはそれにより降りかかる岩を避けながら必死に逃げていく。

 

 

 愛「私たちここで終わっちゃうの~!?」

 

 賢「んな事ねえ!早く逃げるぞ!」

 

 

 怖気づく愛の腕を無理矢理引っ張りながら逃げる賢。

 

 流石はどんな時でも妹を見捨てないシスコンな兄である……なんて言ってる場合じゃない。

 

 

 ホタルンガは今度は頭部から爆発性のある溶解液を噴射して攻撃していく。

 

 溶解液が周囲で爆発する中、早苗たちは必死に逃げ続ける。

 

 

 明人「怪獣災害、一難去ってまた一難かよ~!!」

 

 輝雄「とにかく今は走るぞ!止まったら終わりだ!」

 

 早苗「早く!」

 

 “ズドーン”

 

 早苗「きゃーっ!!」

 

 

 絶体絶命の状況までに追い込まれている早苗たち。

 

 

 

 一方で健二の乗っている地下鉄にも危機的状況が訪れようとしている。

 

 

 運転手「…!あれは何だ!?」

 

 

 運転手は何かに気付く。

 

 その先には、トンネルという筒の先に何かが暴れているのが見える。

 

 

 運転手「あーっ!」

 

 

 運転手は異変に気付いて慌てて急ブレーキをかけるが時すでに遅し、やがてその筒を抜けた時、その先で待ち構えていた巨大な生物の猛威が襲い掛かる!

 

 

 トンネルという筒を抜けた先には線路は無く、地下鉄の車体は奇怪な巨大な怪物が待ち構える地面へと落下する!

 

 

 驚き窓から見上げる乗客たち、そして健二の視線の先に立っていたのはギロン人の言っていた超獣アリブンタであった!

 

 

 突然超獣に襲撃された地下鉄の乗客たちは「怪獣だ!」等とパニックになって騒ぎながら狭い車内を我先に走り回って逃げ始める。

 

 健二もそんな乗客たちに半ば押し込まれながらもとりあえず逃げていく。

 

 

 健二「こんな所に怪獣が!?…マジかよ!」

 

 

 ギロン人「“怪獣”じゃない。“超獣”アリブンタだ。」

 

 同じくちゃっかり訂正をするギロン人(笑)

 

 

 ギロン人「さあ、仕上げと行こう!生意気にも我の暗躍を探っていた小僧(健二)への見せしめのためにも、そこの人間どもを皆殺しにしてしまえ!」

 

 

 ギロン人の命を受けたアリブンタは、落下のショックで動きが止まった地下鉄に接近。そして両手のハサミで車体の上部を切り裂いたり、口からの蟻酸で車体を溶かしたりなどしながら中の人々を剥き出しにしていく!

 

 車体が壊れ、超獣が目前にまで迫って来た事により人々は更にパニックになっていく。

 

 同じく中にいた健二も、驚きと同時にある事に気付く。

 

 

 健二「蟻みたいな外見だな…はっ!もしや霞ヶ崎を蒸発都市にしたのは奴なのか!?」

 

 

 アリブンタの外見により、女性失踪事件の犯人が奴(アリブンタ)である事に気付く!

 

 

 健二「やっと犯人を突き止めた…しかし…もうここまでなのか…ッ!」

 

 健二はアリブンタの猛威が自身にまで及ぼうとして来たことにより自身の努力が水の泡になってしまうのではないかという事に途方に暮れそうになっていた…!

 

 アリブンタの猛威は周りの乗客にも襲い掛かろうとしている…!

 

 

健二「そんなっ!…全部、無駄だったと言うのか!?…俺がやってきた事は…。」

 

 

 

 健二が地下鉄もろともアリブンタに襲われている正に同じ頃、早苗もフルータ星人たちと共にホタルンガの攻撃により絶体絶命の危機に追い込まれていた!

 

 

 やがて必死に逃げていく内に、愛が足を挫いて転んでしまう!

 

 

 賢「愛っ!」

 

 早苗「大丈夫!?」

 

 愛「ちょっと、挫いちゃったみたい…。」

 

 

 愛の無事を案ずる早苗たち。だが、そうしている間にもホタルンガの猛攻は目前にまで迫っていた!

 

 

 明人「チクショ…!」

 

 輝雄「もう駄目だ~!」

 

 賢「愛っ…!」

 

 愛「お兄ちゃん…!」

 

 

 早苗「私の所為だわ…私が無謀な探索を続けた所為で…みんなが…。」

 

 早苗も自分の努力が結果他人を巻き沿いにしてしまったのではないかという罪悪感もあって途方に暮れ、今にも絶望しそうになっていた。

 

 

健二は急いでスマホを取り出して櫂に連絡しようとするが、自分も乗っていた地下鉄は電波の届かない域に落ちているのか、残酷にも画面には“圏外”と表示されていた…。

 

 

もはや打つ手なし…健二はやるせなさから叫んだ。

 

 

 健二「どうしたらいいんだあぁぁーーーーーー!!!!!!」

 

 

 

 場所は違えど、同時に周りの人々共々絶体絶命の危機に追い込まれた健二と早苗。

 

 

 だが、彼らは微かでもまだ希望を捨ててはいなかった…!

 

 

 

 ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張った彼らは、更にその先の奇跡を信じ始めたのだ…!

 

 

 

 早苗「もう…どうにも、こうにも…。」

 

 

 健二「どうにもならない…。」

 

 

 そんな時!

 

 

 

 健二・早苗「ウルトラマンが、、、欲しい!!」

 

 

 

 場所は違えど二人の声が重なった!

 

 

 

 そしてその時、大いなる奇跡が訪れる!

 

 

 

 “ピキーン”

 

 

 健二「うわっ!? なっ、何だ!?」

 

 

 健二は突如、自身の目の前に現れた赤い光に驚く。

 

 

 健二「…また…赤い光…?」

 

 

 

 一方の早苗の方も同じく、海から青き光が差し込んでいた。

 

 早苗たちはもちろん、ホタルンガも思わず攻撃の手が止まりその光の方を向いている。

 

 

 早苗「あれは…青き光…?」

 

 

 愛「…何?あれは…。」

 

 明人「もしや、新たな敵か!?」

 

 賢「冗談じゃねーぞ!」

 

 

 その時!

 

 

 早苗「?!えっ?、ち、ちょっと…!?」

 

 早苗は突如青き光に掬い上げられるかのように宙を浮く。

 

 

 愛「…早苗さん?」

 

 賢「お前…どうなっちまってんだ?」

 

 

 古田兄妹が驚くのも束の間、宙を浮く早苗は青き光に引き寄せられるかのように海向かって飛んで行く!

 

 早苗「うわっ!? きゃーっ!」

 

 

 やがて早苗は海の中へと姿を消してしまった…。

 

 

 突然の出来事に唖然とするしかないフルータ星人一同。

 

 輝雄「早苗が…海に、喰われちまった…。」

 

 明人「馬鹿言うなよ…一体、どうなっちまってんだ…?」

 

 

 

 早苗「水っ!水っ! 溺れる〜!」

 

 海の中に放り込まれた早苗は慌てて必死にもがく。

 

 

 早苗「…あれ?溺れない…?」

 

 …だがしかし、やがて溺れる気配がしない事に気付き、それどころか自身は海中とは違うどこか不思議な空間の中にいる事に気付く早苗。

 

 早苗「ここは…どこだろう…?」

 

 

 しばらく辺りを見渡して行くと、やがて早苗は何かを見つけた!

 

 早苗「はっ!…あれは…?」

 

 

 

 同じ頃の健二の方はというと、例の赤い光が現れた瞬間、周囲の自身以外の時間が止まり、それどころか彼もまた、瞬く間に不思議な空間へと誘われる。

 

 そしてそこであるモノを見上げていた…。

 

 

 健二「…あれは…。」

 

 

 見上げる視線の先にある巨大なモノ。

 

 

 それは先ほどのアリブンタではなかった。

 

 

 赤い光に全身を包んだ巨人が雄々しく立っていたのである!

 

 

 更に健二は、その巨人の胸に付いている逆三角形の青く光るランプに気付き、そして咄嗟に呟いた。

 

 

 健二「…ウルトラマン…?」

 

 

 

 一方の早苗も、健二と同じく目の前に現れた巨人を見上げていた。

 

 その巨人も胸に青く光るランプを付けているのだが、全身は青い光に包まれていた。

 

 

 早苗「。ウルトラマン…?」

 

 彼女もまた、その巨人を見た瞬間咄嗟に呟く。

 

 

 突然自身の前に現れた巨人をウルトラマンと確信した健二と早苗。

 

 

 健二「もしかして…赤い光と共に見守ってくれてたのは、君なのか?」

 

 早苗「…あなたなの?」

 

 2人の問いかけに、2人の巨人はゆっくりと頷いて答える。

 

 それにより、2人の確信はより強まった。

 

 

 健二「そうか…なあ、お願いがある。今、みんなが危ないんだ!

 

 (先ほどアリブンタにより恋人を失った男性や、母親を失った女の子を浮かべながら)もうこれ以上、誰かの涙は見たくない。

 

 俺は、みんなを…助けたい。」

 

 

 早苗「私は…みんなの力になりたい!」

 

 

 2人の願いを聞いた2人の巨人は、ゆっくりと頷いた後、そっと両手をかざす。

 

 

 健二・早苗「俺(私)を…試しているの(か)?」

 

 

 すると、赤と青の巨人は光の粒子になり、それぞれ健二と早苗を包み込むように周囲に拡散する。

 

 光に包まれる2人は戸惑いながらもそこから不思議な力を感じ始める。

 

 

 健二「…この光…とっても暖かくて…俺を包んで……いや…光が、俺の中に、」

 

 

 早苗「光が、私の中に、」

 

 

 健二・早苗「入ってくる…!」

 

 

 やがて2人は、それぞれ赤と青の眩い光に包まれる!

 

 

 

 地下鉄の方は止まっていた時間が動き出したのか、乗客に襲い掛かろうとするアリブンタ、そして地下鉄内を逃げ回る乗客たちが再び動き始める!

 

 

 アリブンタは地下鉄の目前までに迫っており、乗客たちもほとんどが諦めかけていたその時!

 

 

 “ピキーン”

 

 

 突如、アリブンタと地下鉄の間に赤い光の柱が射し込み、アリブンタは思わず後ずさりをし、地下鉄の乗客たちもその眩しさに目を覆う。

 

 

 「…何?あの光…。」

 

 

 人々は突然現れた光を目を覆っていた手を少しずつ離しながら見つめ始める。

 

 

 アリブンタも目を覆っていた徐々に手を離しながら光を見つめ始める…。

 

 

 “ジュワッ!”

 

 

 “ガッ”

 

 

 その時、光の中から何かが頭部に掴みかかり、それに驚くアリブンタ。

 

 

 人々も目を覆っていた手を完全に離した時、目の前の光景に驚く。

 

 

 (BGM:逆転のクァンタムストリーム)

 

 

 それは、何やら赤い光に全身が覆われている巨人が、アリブンタと組み合っていた。

 

 

 人々は驚愕するが、見つめていくうちにその巨人が自分たちを守って戦っている事に気付き始めていく。

 

 

 やがて巨人はアリブンタを力任せに放り投げた後、地下鉄の方へと歩み寄る。

 

 

 そして地下鉄の全車両を両手で掴んで拾い上げると、そのままアリブンタが地上から掘ってきたと思われる穴を伝って地上に向かって飛び立つ。

 

 

 やがて地上に到着して着地すると、掴んでいた車両を地上に降ろし、「もう大丈夫」と言うように一礼する。

 

 

 地下鉄の乗客たちは警察等の指示で急いで車両から出て行き、そして自分たちを助けてくれた巨人に礼を言う。

 

 

 人々の無事を確認した巨人は立ち上がる。

 

 

 

 やがて後を追って来たアリブンタも激しい土砂や土煙を巻き上げて地面を突き破って地上に現れる。

 

 

 巨人はアリブンタの方を振り向くと、その場から高く跳躍する。

 

 そして空中で一回転しながら全身の赤い光を更に光り輝かせ、やがてその全身の光を消滅させながら着地していく。

 

 

 そして全身の光が完全に消えて姿を現すと同時に両足を付いて着地。

 

 

 “ズドーン”

 

 

 着地の瞬間、その衝撃で巨人の周囲の地面から土煙や土砂が天高く巻き上がる!

 

 それはまるで地球の大地と巨人が、互いに力の呼応をしているかのようである。

 

 

 そう、ド派手な着地で現れたのは、地球の大地の赤い光の巨人、『ウルトラマンガイア』だ!

 

 

 彼は地球の大地より授けられた赤い光で変身するウルトラマン。すなわち、他のウルトラマンとは異なり出身地は“地球”であるため、正に彼は“地球の化身”なのである。

 

 彼の着地は正にそんな地球の化身の登場に地球の大地自身がその力に応えているようなものなのである!

 

 

 大地から地上を見守っており、時たまアリブンタの捕食を阻止していた光の正体も彼なのである。

 

 恐らくこのガイアはこの世界の者、即ちパラレルワールドのガイアであり、かつて同じウルトラマンのアグルと共に宇宙から襲来する人類の滅亡を望み怪獣などを送り込んだ存在・根源的破滅将来体などと戦い抜いた後、恐らくかつての変身者『高山我夢』と分離して長い間大地に帰っていたのだが、今回地底から暗躍する者の存在に気付いたことにより邪悪な者の存在を知り戦う決心をしたのであろう。

 

 今回登場したガイアは赤・銀で構成されたボディに胸部の金のフレームが特徴の『ウルトラマンガイア(V1)』であるが、これは恐らく初めてウルトラマンになった人物が戦い慣れていない健二であるが故に、まだアグルから授かった力を引き出せていないからであろう。

 

 

 人々はガイアの登場に歓声を上げる。

 

 

 櫂「…あれは何だ!?」

 

 真美「新たな…ウルトラマン?」

 

 櫂と真美も、先ほどの女の子を連れながらガイアを見上げていた。

 

 

 現れたガイアはアリブンタと対峙しながら何やら自身の両腕を見つめたりしている。

 

 健二「…これは…この姿は一体…?」

 

 それはガイアに変身した健二自身の動揺する動きであった。

 

 

 健二は大地のガイアの光に選ばれたのである!

 

 

 

 一方フルータ星人の方はと言うと、ホタルンガ共々光り輝く海の方を見つめていた。

 

 

 すると、その海が更に輝き、その瞬間海がモーゼの十戒のごとく割れ始める!

 

 

 愛「…何?あれ…。」

 

 明人「…すっげ~!」

 

 賢「一体…何が起こってるんだ?」

 

 

 フルータ星人一同は驚きと共にその光景に何やら神秘的なものを感じていた。

 

 

 輝雄「はっ!何かいる!」

 

 

 輝雄はその割れた海の中に何かを見つけ、賢たちも目を凝らす。

 

 

 (BGM:アグル降臨)

 

 

 そこには、割れた海の間に青く輝く巨人が、両腕の肘から先を顔前に立てた状態でしゃがんでいた。

 

 

 賢たちがそれに驚愕する中、その巨人はそっと健たちの方を向いて一回頷く。まるで「もう大丈夫」と言っているようである。

 

 

 賢「あれ…もしかして早苗…なのか…?」

 

 早くも賢は何かを察していた。

 

 

 青い光の巨人はゆっくりと立ち上がり、それと共に身体の青い光も消えて姿を現す。

 

 

 現れたのは海の青い光の巨人『ウルトラマンアグル』である!

 

 

 彼はガイアと同じく地球出身のウルトラマンであるため“地球の化身”のようなものであり、割れた海こそ正に彼と地球の海の力の呼応なのである。

 

 

 海沿いの道路で謎のガスとホタルンガ捕食の妨害をしていた光の正体も彼であり、彼もまたかつての戦いの後、変身者『藤宮博也』と分離後海に帰っていたのだが、海の傍で暗躍する者の存在に気付き邪悪な者と戦う決心をしたのであろう。

 

 

 早苗「…これは一体…?」

 

 アグルもまた、自身の腕などを何度も見つめていた。

 

 変身した早苗が、自分の姿に戸惑っているのである。

 

 

 早苗は海のアグルの光に選ばれたのである!

 

 

 恐らくこのアグルもパラレルワールドの存在であり、登場した形態は青・黒・銀で構成されたボディの『ウルトラマンアグル(V1)』である。

 

 

 

 それぞれガイアとアグルの光に選ばれた健二と早苗。

 

 恐らくガイアとアグルは地上を見守っていく内に、彼らの自らの危険を顧みず人間としてギリギリまで頑張る姿に共感してウルトラマンとして戦えると見込み、そして彼らが危機に瀕した事もあってそれぞれ光を授けたのであろう。

 

 

 

 早苗「えっ?…こ、これが私?あり得ない!?」

 

 動揺が続く早苗は、ふと下を見てみる。

 

 早苗「何これ?うわぁぁあ!?たっか〜!?私いつの間にこんな高い所にいるの〜!?」

 

 ウルトラマンとなって巨大化したが故に目線も上がり、下の景色が小さく見える早苗は自分がいつの間にか高い所にいるのかと少し驚き勘違いをしていた。

 

 なおもアグルに変身した自身の姿に動揺する早苗。

 

 

 だがその時、ふと見上げた視線の先には今にもフルータ星人一同に襲い掛かろうとするホタルンガが見えた。

 

 

 早苗「はっ!…愛ちゃん達が…危ないっ!」

 

 

 “デュアッ!”

 

 

 早苗=アグルは愛たちの危機に気付き、咄嗟にその場から飛び立ちホタルンダ目掛けて接近する!

 

 アグルが飛び立つと同時にさっきまで割れていた海も元に戻って行く。

 

 

 アグルはホタルンダに勢いよく飛び付き、両者は海沿いの道路の崖に激突する。

 

 そしてそのまま組み付いたまま離さない。恐らくフルータ星人たちを襲わせないように押さえ込んでいるのであろう。

 

 

 輝雄「…俺たちを…守ってる?」

 

 明人「やっぱり、あれは早苗なのか!?」

 

 自分たちを守るアグルの姿にフルータ星人は更に強く確信する。

 

 

 アングラモン「ええい!想定外の事態だ!…止むを得ん…ホタルンガ!場所を変えるぞ。まずはその巨人を叩き潰せ!」

 

 主人の命を受けたホタルンがはアグルと組み付いたまま背中の羽を羽ばたかせ始め、やがてそのまま飛び立ち始める!

 

 アグルもホタルンガに連れられる形で飛び始め、やがて両者は何処かへと飛び去って行った…。

 

 

 遠く飛び去って行くアグルとホタルンがを呆然と見つめるフルータ星人一同。

 

 愛「…早苗さん…どうなっちゃったの…?」

 

 

 賢「…カッコよすぎる…!」

 

 

 

 アリブンタと対峙する健二=ガイアはというと、

 

 

 健二「これが…ギリギリまで頑張った末に俺に授けられた力なのか?…」

 

 まだ自分の姿に戸惑いながらも、早くも自身に与えられた力の意味を理解し始めていた。

 

 彼は悪としてとはいえ一度は妄想ウルトラセブンとして巨大変身したことがある(第11話参照)。そのためかガイアとして巨大変身した今も比較的飲み込みが早いのであろう。

 

 

 だが、そうこう考えてる間にもアリブンタが既に目前にまで迫っていた…!

 

 

 健二「うっ、うわあっ!?ちょと待て〜!!」

 

 

 いきなりの奇襲に驚き慌てる健二。

 

 アリブンタはハサミ状の両腕を振るって殴りかかるが、ガイアはそれを何とか両腕で掴んで受け止める。

 

 アリブンタは今度は牙を突き立てた頭突きを連続で繰り出すが、ガイアはそれを顔を左右にそらして避け、両者はそのまま組み合ったまま地面を転がり始める。

 

 ガイアはアリブンタにマウントを取られる形になってしまい、アリブンタは再び頭突きを繰り出すが、ガイアはそれを何とか両手で掴んで受け止め、そして右足でアリブンタの頭部を蹴り、それによりアリブンタが少し後ずさった事で何とかマウントを逃れる。

 

 だが、マウントを逃れたのも束の間、立ち上がろうとしている最中に背後から体当たりを食らってしまい再び転倒してしまう!

 

 

 やはり健二は実戦経験があまり無いため戦い慣れていないのか、とりあえず手探りで目の前の敵と戦っていくのだが苦戦を強いられる。

 

 

 健二「やはり…いきなりの実戦は、ちょっときついな…。」

 

 

 その時、健二=ガイアは何かに気づいたのかふと上を向く。

 

 そこには上空から何かが落下して来るのが見えていた…。

 

 

 “ズドーン”

 

 

 そしてやがて、ガイアたちの近くに落下する!

 

 それは、先ほどの海沿いの道路付近の海岸から飛んで来たアグルとホタルンガであった!

 

 

 健二「あ…新たなウルトラマン!?」

 

 

 驚愕する健二。櫂と真美もその光景に驚いていた。

 

 櫂「また1人ずつ、ウルトラマンと怪獣が来た…!?」

 

 真美「一体どうなってるの!?」

 

 ゼロ「櫂、真美。彼らはウルトラマン。ガイアとアグルだ。」

 

 ゼロは2人にウルトラマンの名を教える。

 

 櫂「ガイア…?」

 

 真美「アグル…?」

 

 ゼロ「ああ。彼らはそれぞれ、大地と海の光のウルトラマンだ。」

 

 真美「…大地と海……って事は、」

 

 ゼロ「ああ。彼らの出身地は、ここ地球ってワケだ。」

 

 櫂「…驚いたなぁ…まさか地球産まれのウルトラマンがいたなんて…!」

 

 櫂も真美も、ガイアとアグルの出身が地球という事は初耳のようである。

 

 

 真美「それにしても…あの2匹の怪獣、どちらも昆虫のような見た目ね。」

 

 アリブンタとホタルンガを見つめた真美は二体の外見的特徴に気付く。

 

 櫂「ああ。だから真美、健二が追っていた謎のアリ地獄怪事件の犯人は、奴らなのかもしれないぞ。」

 

 櫂は先ほどギロン人からテレパシーで伝えられたという事を少しぼかして真美に真実を伝える。

 

 

 真美「じゃあ…この子のママを殺ったのも…。」

 

 犯人に気付いた真美。犯人を知った二人はより深刻な表情でガイア達の戦いを見つめる。

 

 

 ガイアとアグルはそれぞれアリブンタとホタルンガと戦うが、変身者がどちらも戦い慣れていない人間であるがために苦戦を強いられている。

 

 

 それを見ていたゼロも、何かに気付きつつあった。

 

 ゼロ「あの二人…あんな覚束ない戦い方じゃないはずだが…。」

 

 

 そしてアグルの方を向いて、

 

 ゼロ「…あのアグル…妙に動きが女っぽいな…?」

 

 

 ガイアとアグルはそれぞれアリブンタとホタルンガと組み合い、それと同時に激しく土煙や土砂が巻き上がる。

 

 だが、二人とも怪獣よりも強い超獣のパワーに押されていき、やがて押し倒されてしまう。

 

 

 アリブンタは仰向けに倒れているガイアにマウントを取って手のハサミをを突き立てたパンチを繰り出し、ガイアはそれを顔を反らすことでかわしていく。

 

 ガイアはやがてアリブンタの腕を掴んで受け止め、両脚で頭部を挟み込んで頭部にがむしゃらにチョップを打っていくが、アリブンタはそのままガイアを持ち上げて放り投げる。

 

 

 アグルはホタルンガ向かおうとするが、威嚇するように腕を振るって来るホタルンガに腕を伸ばそうとしては引っ込める等の繰り返しでなかなか近づけないでいる。

 

 その様子はまるで生身の人間が熊か何かの獣に立ち向かっている様である。

 

 やがてアグルはホタルンガの頭部からの爆発性の溶解液を浴びて爆発して吹っ飛んでしまう。

 

 

 アリブンタは口から蟻酸を噴射してガイアに浴びせる。

 

 蟻酸を顔に受けたガイアは苦しみながらも何やら強烈な臭いを感じたのか鼻をつまむような仕草も見せる。

 

 ガイアはその場から受け身をとって蟻酸攻撃から逃れるが、その隙にアリブンタは両手のハサミから火炎を放射し、ガイアはそれをモロ胸部に受けて爆発と共に吹っ飛ぶ。

 

 アリブンタは倒れたガイアに接近し、右手のハサミで首を挟んでそのまま絞めつけ始める。

 

 ハサミで首を絞められたまま立ち上がったガイアはなんとかそれを力ずくで振りほどくが、その直後にアリブンタの頭突きを腹部に喰らって遠く吹っ飛んでしまう。

 

 

 アグルはホタルンガに苦戦しながらも何とか大勢を立て直す。

 

 早苗「ここでくじけるワケには、いかないんだから!」

 

 

 その時、何かの衝撃が早苗の脳裏に走った。

 

 早苗「…イメージが浮かんだ!」

 

 

 アグルは両腕を斜めに広げる。すると両手の間に光の帯が走り、やがてそれが一つの光弾に変わる。

 

 アグルは必殺技の一つ『リキデイター』を放とうとしているのだ!

 

 

 唐突に早苗の脳裏に浮かんだイメージは必殺技の発射ポーズだったのである。

 

 

 …だが、ホタルンガはそれに気づくや辺りを見渡し始める。そして真美と少女を見つけるとそちらの方向に尻尾を向ける。

 

 

 真美「…何をするつもりなの…?」

 

 

 ホタルンガは蛍の如く尻尾の下部を発光させ始める。

 

 すると、なんと真美と少女はそれに引き込まれるかのように宙を浮き始める!

 

 

 真美「ひゃっ!?何これ!?」

 

 

 櫂「!真美!!」

 

 

 真美「櫂くーん…!」

 

 

 櫂も異常事態に気付くが、それも束の間、真美と少女は瞬く間にホタルンガの尻尾に吸い込まれ、中に取り込まれてしまった…。

 

 

 早苗「…はっ!?真美さん!」

 

 

 今まさにリキデイターを打つ動作に入っていた早苗(アグル)もそれに気づき、思わず手をそらせてしまう!

 

 それにより、光弾はホタルンガとは全く違うあさっての方向へと飛んで行ってしまった…!

 

 

 アングラモン「ふふはははは!どうだ!貴様がホタルンガを倒せば、あの小娘共の命も無いぞ!!」

 

 早苗「はっ!?」

 

 

 アグルは声のする方を振り向くと、そこにはいつの間にか巨大化していたアングラモンの姿があった。

 

 

 ガイアもふと振り向いてみると、そこには同じく巨大化したギロン人の姿があった。

 

 

 健二「まさか…!」

 

 早苗「裏で超獣たちに指示を出してたのって、あなた達なのね!」

 

 ギロン人「理解が早いねえ。その通り。 我々はあるお方の命を遂行するためにも、ウルトラマンは邪魔なもんでねぇ。」

 

 アングラモン「ホタルンガ達の食事を邪魔した報いのためにも、ここで死んでもらうぞ!」

 

 

 どうやらギロン人とアングラモンは何者かの命を受けて侵略工作にやって来た仲間内のようであり、それぞれ超獣の生育という下準備の最中にガイアとアグルという思わぬ邪魔が入ったため、まずは彼らの排除として二体の超獣に命を出していたのである。

 

 

 アングラモン「ホタルンガに人質を取らせておいた。これで奴らは手出し出来まい。」

 

 ギロン人「下手に手を出してみろ。今ホタルンガが取り込んでる小娘を、我がアリブンタのご馳走にしてやるぜ。」

 

 早苗「そんな…私たちを倒すために、真美さんを巻き込むなんて…!」

 

 健二「なんて卑怯な奴らだ…!」

 

 ギロン人「卑怯もラッキョウもありませんよ。ふふふ…。」

 

 

 その頃、宇宙船・テライズグレートでは、

 

 メフィラス星人キョウ「それ僕のぉ…。」

 

 

 健二「チクショウ…一体どうすれば…。」

 

 早苗「真美さんに何かあったら…!」

 

 アングラモンの巧妙な人質作戦により、益々下手に手を出しづらくなったガイア(健二)とアグル(早苗)。

 

 

 ギロン人「さあアリブンタ、思う存分痛ぶってやれ!」

 

 アングラモン「今こそトドメの時だ!」

 

 

 アリブンタは動揺するガイアに猛然と襲い掛かっていく!

 

 下手に手を出せないガイアはアリブンタのハサミのパンチなどを食らい徐々にダメージを受けていく…!

 

 

 ホタルンガは尻尾の先端のハサミで動揺するアグルの首を挟み込み、そのまま尻尾を光らせてショックを浴びせる!

 

 強烈なショック攻撃を食らったアグルはその場で崩れ落ちるように倒れ込む…!

 

 

 やがて、二人の胸のランプが危険を知らせるように赤く点滅を始める…!

 

 ガイアとアグルは他のウルトラマンとは違い、地球出身であるが故に制限時間が無く、胸のランプもカラータイマーではなく『ライフゲージ』と言われている。

 

 これはエネルギーの残量やダメージを受けた事を知らせるために点滅するのであって、今まさに敵の策略によりピンチに陥った二人への危険信号として点滅を始めたのだ!

 

 

 アングラモン「ふははははは!愉快!痛快!」

 

 ギロン人「さあ、一気に止めを刺せー!!」

 

 

 

 …だが、この危機を“ある男”が黙って見ているはずが無かった…!

 

 

 “最愛の者”を襲われかけたどころか、今まさに人質に取られている事に、激しい怒りと殺意を燃やす“あの男”が…!

 

 

 櫂「レッツ…ゼロチェンジ…!!」

 

 

 櫂は、静かにどこか殺気を感じるドスの利いた声で掛け声を言い、それと共にウルティメイトブレスレットから出現させていたウルトラゼロアイは櫂の目にくっ付く。

 

 

 “ピシャイィィン ギュイイイイィィィィン”

 

 

 櫂は赤と青の光と共に『ウルトラマンゼロ』へと巨大変身した!

 

 

 ギロン人とアングラモン、そしてガイアとアグルもゼロの登場に気付く。

 

 

 健二「…櫂さん…。」

 

 早苗「来てくれたのね…。」

 

 健二と早苗は櫂が助太刀に来てくれたんだと思い、そっと安心感と共に呟く。

 

 

 最も、櫂はそのためだけに変身したのではないが…。

 

 

 ギロン人「ふっ、ゼロか…今更現れた所で何になるってんだ?」

 

 アングラモン「貴様も人質のためにここで死ぬがいい!!」

 

 

 そう言うとギロン人は両手のハサミからギロン光線を、アングラモンは胸部から地震光線を、それぞれ同時にゼロ向けて放つ!

 

 

 “ズドーン”

 

 

 二つの光線はゼロに命中し、大爆発を起こす!

 

 

 健二「はっ、櫂さん!?」

 

 

 ギロン人たちはゼロを倒したと確信して高笑いする一方、健二たちは心配そうに見守る。

 

 

 …だが、彼らは完全にゼロを侮っていた。

 

 

 “ガッ”

 

 

 ギロン人「…うっ!?」

 

 

 ギロン人は突然何かに頭を掴まれる感覚を感じて驚く。

 

 

 上を向いてみると、なんとゼロが右手で自身の頭を掴み、そのまま逆立ちをしていた!

 

 

 ゼロ「当たらなきゃ意味ないぜっ!?」

 

 かつてダークロプスゼロにも言った同じ事を言い放つゼロ。

 

 だが、櫂の意識が表に出ている故か、その声色は殺気に満ちていた…。

 

 

 ゼロは手を放し、空中で一回転しながらギロン人の後頭部に蹴りを決めて吹っ飛ばした。

 

 強力な蹴りを誰しもの弱点に打ち込むという中々えげつない戦法。櫂の彼らへの憎しみが伝わって来る。

 

 

 ギロン人「くうっ!…お、おのれゼロ!」

 

 

 ゼロ「てめーらクズをぶっ殺す前に…、」

 

 そう言うとゼロ(櫂の意識)は、ガイアと組み合っているアリブンタの方を振り向く。

 

 そして頭部のゼロスラッガーを一つ取り出し、思い切りアリブンタ目掛けてぶん投げる!

 

 

 “ブスッ”

 

 

 思い切りぶん投げたゼロスラッガーはアリブンタの背中に刺さり、アリブンタは痛みや驚きでガイアを手放す!

 

 ガイアをアシストするためとはいい、自身の武器を相手の体に思い切りぶっ刺すという…もはやこれは単に戦法とは言えず、暴挙とも言えるだろう(汗)

 

 ゼロは怯んでいるアリブンタに接近し、刺さったゼロスラッガーを引き抜くと同時にアリブンタを蹴り倒した。

 

 

 櫂「今のは真美を襲おうとした事への借りだ…!」

 

 

 健二「…櫂さん…。」

 

 健二(ガイア)は、自分を助けてくれたゼロ(櫂)に感謝の視線を向ける。

 

 

 だがその時、

 

 

 『…無様だな…それでも選ばれし者か。』

 

 健二「…えっ?」

 

 突然、ゼロからのテレパシーが健二の元へと届く。

 

 

 『お前は光に選ばれたんだ…なら、その光を使い、愛する者のために頑張れ…!』

 

 その言葉を最後に、ゼロのテレパシーは聞こえなくなった。

 

 健二「…愛する者を…守る…。」

 

 最初は戸惑っていた健二だが、次第にその言葉により勇気が湧いて来るようであった。

 

 

 …実は先ほどのテレパシーは、ゼロ自身ではなく私怨の篭った櫂からのものとは知らずに…。

 

 どうやら櫂は、既にゼロの力でガイア達の正体が健二達だという事を見抜いていたようである。

 

 櫂の目的はあくまで真美を襲おうとしたギロン人たちをぶっ倒す事であり、そのためにも健二たちを奮い立たせようとしているだけなのである。

 

 

 ゼロは、右手にゼロスラッガーを持ったまま今度はアグルを苦戦させるホタルンガに後ろから接近。そして真美達を閉じ込めている尻尾を左手で鷲掴みする!

 

 ホタルンガは驚きながらも振りほどこうともがくが、櫂の憎しみに満ちたゼロの力はそれを放さない。

 

 

 ゼロは、右手に持ったゼロスラッガーを振り上げて…、

 

 

 櫂「真美を…返せーーーっ!!」

 

 

“ガイイィィィン”

 

 

 “ザブシュッ”

 

 

 ホタルンガの尻尾を、根元から斬り落としてしまった!

 

 ホタルンガは転倒し、斬られた断面からは体液(血?)と思われる黄色い液体が飛び散る!

 

 

 早苗「!?ひゃっ!」

 

 早苗(アグル)はその光景に驚愕するが、その直後にゼロが、切り落とした尻尾から真美たちを救出する所を見て安心する。

 

 

 早苗(櫂さん…やっぱりあなたはいい人です。)

 

 純粋な早苗は、櫂の本性を知る事も無く心でそう呟いた。

 

 

 ゼロは、救出した真美と少女を地面に降ろす。

 

 女の子「…お姉ちゃん…!」

 

 真美「良かった~、もう大丈夫だよ。」

 

 少女は怖かったのか、安心と共に泣きながら真美に縋り付き、真美はそれを抱きしめて優しく語り掛ける。

 

 

 その光景を見たゼロもひとまず安心する。

 

 ゼロ「ひとまず安心だな、櫂。」

 

 櫂「ああ…ここからは真美も戦いを見守る。 スマートな戦いで、奴らに怒りをぶつけようじゃないか?ゼロ。」

 

 ゼロ「ふんっ!…今回ばかりは同意だぜっ!櫂!」

 

 

 久しぶりに、ゼロと櫂の意見が合致した!

 

 

 ゼロ(と櫂)は、怒りの眼差しを向けながらギロン人達の方を振り向く。

 

 ゼロ「待たせちまったなぁ! (ファイティングポーズを取りながら)今度こそぶっ倒してやるぜ…!」

 

 

 ギロン人「ふんっ、随分と自信満々だな。」

 

 アングラモン「その自信、今にへし折ってやる!」

 

 

 ギロン人とアングラモンはそれぞれゼロの左右に挟み込むように立つ。

 

 

 アングラモン「いつまでも舐めた真似しやがると…」

 

 

 “ドゴンッ”

 

 

 アングラモン「ぐぉはっ!?」

 

 

 ギロン人「んなっ!?」

 

 

 ゼロに啖呵を切ろうとしたアングラモンだが、ゼロに御構い無しとばかりに顔面を殴られてしまう。

 

 

 アングラモン「…貴様っ…!」

 

 しばらく両手で顔を押さえて痛がった後、ゼロに怒りの視線を向ける。鼻からは血が垂れていた。

 

 

 ゼロ「お前らなぁ、俺を見くびり過ぎだっての。」

 

 

 アングラモン「んなっ…なんだとー!!」

 

 ゼロに煽られた事に逆上した二人はそれぞれ左右からパンチを放つが、ゼロはそれを両腕で易々と受け止める。

 

 そしてゼロはアングラモンを膝蹴りで軽く弾き飛ばし、その後ギロン人を足払いで転倒させる。

 

 

 ゼロ「さあ来いよ。俺に腹立ってんだろ?」

 

 ギロン人「こいつ…舐めんなー!」

 

 挑発されて更に逆上したギロン人とアングラモンは同時にゼロに襲い掛かる。

 

 ゼロは右からのギロン人の蹴りを右手で防いだ後腹部に右肘を打ち込み、その後アングラモンの左からの右フックをしゃがんでかわすと同時に腹部に右脚蹴りを打ち込む。

 

 その後しゃがんだままギロン人の足を掴み、そのままジャイアントスイングで地面に叩き付ける。

 

 そして立ち上がったギロン人を渾身の右横蹴りでサッカーボールの如く蹴飛ばし、続けて左後ろ蹴りでアングラモンを同じくサッカーボールの如く蹴飛ばした!

 

 

 ゼロに励まされるようにアシストされ、更にゼロの勇姿を目の前にし、そして自分たちを応援する真美たちを目にしたガイア(健二)とアグル(早苗)は、徐々に勇気を取り戻しているようであった。

 

 そして、再びアリブンタたちにより不幸になった人々の事を思い出しながら、怒りと共に立ち上がる。

 

 

 早苗「そうよ…今ここで、やられるわけにはいかない…!」

 

 

 健二「櫂さんだって、人々、そして、愛する者のために戦っているんだ。」

 

 

 早苗「負けない…真美さんも、私たちの勝利を信じてくれているから。」

 

 

 健二「だから…これ以上、愛さえ知らずに育ったモンスターなんかに、皆の笑顔を汚されてたまるか!

 

 

 …うぬぼれるなよ…邪悪な願いを持つ者め……最後の力が枯れるまで、ここから一歩もさがらない!」

 

 

 健二・早苗「俺(私)は、ウルトラマンなんだ!!」

 

 

 (BGM:ウルトラマンガイア!)

 

 

 遂に勇気が満ちた二人。ガイアとアグルは構えを取った後、それぞれアリブンタとホタルンガ向かって駆け始める。

 

 走る際、一歩一歩地面を踏む度に土砂が巻き上がる。それはウルトラマン、そして大地の怒りが呼応しているようである。

 

 

 ガイアは走る勢いでアリブンタに体当たりを決め、次にアリブンタのパンチを弾いて防いだ後胸部にがむしゃらに連続でパンチを打ち込み、腹部に右脚蹴りを決める。

 

 その後アリブンタの反撃の右フックを両腕で掴んで受け止めると、そのまま振り回した後右脚で蹴飛ばし、続けて両手同時にパンチを腹部に叩き込む。

 

 

 アグルはホタルンガの殴り込みをしゃがんで避けると同時に腹部にラリアットを決め、その後右腕を掴んで腹部に右脚蹴りを決めた後、横に放り投げる。

 

 立ち上がったホタルンガは頭部を振り下ろして頭突きを繰り出し、アグルはそれを両手で受け止めた後に頭部にチョップを繰り出し、その後左脇腹に連続で右脚蹴りを打ち込み、更に跳躍して両足蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 

 アリブンタと組み合うガイアは、自身の腕に組み付くアリブンタの腕を振りほどいた後、胸部に右肘を叩き込み、続けて腹部に左膝蹴り、胸部に左脚蹴りと連続で蹴りを打ち込む。

 

 そして跳躍して落下スピードを活かした右膝蹴りをボディに叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 先ほどのゼロの(櫂の私怨が籠った)攻撃を受けたアリブンタとホタルンガは、初心者が変身したガイアとアグルと互角に戦えるほどまでに劣勢になっていたのである。

 

 

 ギロン人とアングラモンを圧倒するゼロも、善戦し始めたガイアとアグルをどこか安心の表情で見つめている。

 

 櫂(ふふふ、いいぞ。その調子でぶっ倒せ…! 真美を襲おうとしたクズ野郎をな…!)

 

 …最も、櫂はあまりよろしくない考えをしているが…。

 

 

 アグルは再度ホタルンガの頭突きを受け止め、そのまま腹部に膝蹴りを二発打ち込んだ後、跳躍して右脚での横蹴りを頭部に叩き込み、蹴りが命中すると同時に爆発が起こりホタルンガは吹っ飛ぶ。

 

 

 ガイアは右足の前蹴りを胸部に叩き込み、続けて頭部にチョップを叩き込んだ後、胸部に力強くパンチを連続で打ち込み、そして最後に渾身のボディブローを叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 ギロン人「ああっ!アリブンタ!」

 

 アングラモン「ホタルンガ!」

 

 ゼロ「おめえら!よそ見してる場合じゃねーだろ!」

 

 自身の配下の超獣が押されてる事に動揺するギロン人達だが、ゼロはそんなの御構い無しとばかりに猛攻を続ける。

 

 ゼロはギロン人の腕を掴んで自身の前に軽く放り投げた後、腹部に右足の前蹴りを打ち込み、その後回し蹴りを頭部に叩き込み、ギロン人は回転しながら吹っ飛んで地面に叩きつけられる。

 

 次に、バック転をしながらアングラモンに接近すると同時に逆立ちでの両足蹴りを顔面に打ち込み、続けて腹部に水平チョップ、首筋に空手チョップを決め、その後両手で大きく持ち上げて力一杯放り投げた!

 

 

 超獣、そして地底人たちを圧倒するウルトラマン3人。

 

 どれも邪な心がある、無い関係なく人々を、そして愛する者を守るために戦っている。

 

 そしてその想いは、例えどんな者であろうと、力任せの邪悪な願いを持つ者には決して負けないのである!

 

 

 アグルはホタルンガの首を掴んでジャンプし、落下スピードを利用して地面に叩き付ける。

 

 続けてはホタルンガに接近すると同時に、一回転しながらの後ろ蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 

 アグルは再び広げた両手の間に光弾・リキデイターを作り出し、それを両手を突き出すことでホタルンガ目掛けて放つ!

 

 光弾はホタルンガの胸部にクリーンヒット。爆発し、完全にグロッキーとなったホタルンガ。今こそ止めだ!

 

 

 アグルは両腕を上下広げて頭部のランプ・ブライトスポットに光の刃を垂直に伸ばし、そして腕を振り下ろすと同時にそれを必殺光線『フォトンクラッシャー』にして放つ!

 

 

 アグル最強の必殺技を浴びたホタルンガは大爆発し、木端微塵に吹き飛んだ!

 

 

 ホタルンガを撃破したアグルは必殺技ポーズを解いてゆっくりと立ち上がる。

 

 

 アリブンタはガイア目掛けて渾身の蟻酸攻撃を吹き付けるが、ガイアは両手を突き出して光の円形のバリヤー『ウルトラバリヤー』を張ってそれを防ぐ。

 

 そしてその場からバリヤーを残したまま高くジャンプし、アリブンタの頭部に強力な急降下キックを浴びせる!

 

 蹴りを頭部に受けたアリブンタは爆発と共にたまらず吹っ飛ぶ。

 

 続いてアリブンタの頭部を掴み、そのまま駆け込みながら跳躍して顔面を地面に叩き付けるフェイスクラッシャーを決める!

 

 更に倒れ込んで怯んだアリブンタを、重量により少しふらつきながらも頭上に持ち上げ、力一杯放り投げて地面に叩き付けた!

 

 

 ガイアの強力な連続攻撃を受けて大ダメージを受けながらも、なおもふらつきながらも立ち上がって向かって行こうとするアリブンタ。

 

 

 健二「…よし、浮かんだ!これで決めてやる!」

 

 早苗と同じく突然衝撃と共に頭に必殺技のイメージが浮かんだ健二。今こそ止めだ!

 

 

 ガイアは腕をT字型に組んでエネルギーを溜め、右腕をL字型に構え直して左腕を右腕の関節に乗せて必殺光線『クァンタムストリーム』を放つ!

 

 光線はアリブンタに直撃して爆発する。

 

 アリブンタは大ダメージを受けて怯むが、まだ絶命する様子はなく、ふらつきながらもなおも襲い掛かろうとする。

 

 流石はかつて『ウルトラマンA』の必殺光線『メタリウム光線』や、『ウルトラマンビクトリー』の連続ウルトランス、『ウルトラマンヒカリ』の光の剣『ナイトビームブレード』にも耐えた程であり、アリブンタの耐久力は侮れないものがある。

 

 

 だが、健二(ガイア)は決して諦めない。今こそギリギリまで頑張る時だ!

 

 

 クァンタムストリームを耐えられたガイアは、「これならどうだ!」とばかりに次の必殺技の体勢に入る。

 

 

 両腕を水平に伸ばした後、額に当ててエネルギーを溜めながら屈み、立ち上がりつつ額から鞭のようにしならせながら光の刃を放つ。

 

 

 これぞガイアのもう一つの必殺技『フォトンエッジ』だ!

 

 

 光の刃はアリブンタの体を切り裂く様に直撃!アリブンタは赤の光に切り刻まれるエフェクトを出しつつ、しばらくもがき苦しみながら後退し、やがて倒れ込んで大爆発し木端微塵に吹き飛んだ。

 

 

 最後までギリギリまで頑張って二大超獣を撃破したガイアとアグルは合流し互いに見つめ合い、頷き合う。

 

 それはまるで、互いに誰なのかを理解し合い、「お疲れ様」を言い合っているようである。

 

 

戦いを見守る真美たちも、ガイアたちの勝利を喜ぶ。

 

真美「…ウルトラマンが仇を取ってくれたんだよ。あなたのママの。」

 

真美は、まだ少し泣いている女の子に優しくそう語りかけながら、背中を優しくさする。

 

 

 ゼロはギロン人とアングラモンを同時に投げつける。

 

 

 アングラモン「こ…こんなことが…!」

 

 ギロン人「まさかゼロが…こんなにも強力なウルトラ戦士だったとは…!」

 

 二人は散々ゼロ(と櫂)の怒りの攻撃を受けたのか、既にふらついていた。今こそトドメのチャンスである!

 

 

 ゼロ「止めだ!」

 

 櫂「地獄に落ちろ!」

 

 真美が見ているために比較的平静を保っているとはいえ、怒りに燃えているが故に相変わらず物騒な物言いをする櫂(笑)

 

 

 ゼロは右の手刀を燃え上がらせる。そして右腕を振り上げ、二人目掛けて飛びかかる!

 

 

 ゼロ「てめーらが俺を倒そうなんざ…二万年早いぜっ!! ビッグバンゼロ!!」

 

 

 “ズドーン”

 

 

 ギロン人・アングラモン「うおおぉぉあああああー!!」

 

 

 ゼロは二人の足元に炎の手刀『ビッグバンゼロ』を叩き込み、二人は爆風と共に土砂や土煙を巻き上げながら大爆発するその場から空高く吹っ飛ばされる!

 

 

 ゼロは上空高く打ち上げられる二人に鋭く視線を向け、狙いを定めながら左腕を水平に伸ばす。

 

 

 ゼロ「ワイドゼロショット!!」

 

 

 そして技名を叫ぶと共に両腕をL字に組んで必殺光線『ワイドゼロショット』を放つ!

 

 

 強力な必殺光線は上空の二人目掛けて一直線に飛んで行き、やがて直撃する!

 

 

 ギロン人「ぐおおおおあああぁぁぁ!!?…なっ…なぜだああぁぁぁー…!」

 

 

 “ズドーン”

 

 

 やがて二人は上空で大爆発した。

 

 

 ゼロ「決まったぜッ!!」

 

 ゼロは爆風を背に振り向いてフィニッシュポーズを決める。

 

 

 櫂「へッ…汚ねぇ花火だ。」

 

 櫂は上空の二人の地底人の爆発を見つめながら、不敵な笑みで呟いた。その表情は正に、倒した二人を「ざまあみろ!」と小馬鹿にしているようであった…。

 

 

 地底人を撃破したゼロは、ガッツポーズのようなポーズで光に包まれながら櫂の姿に戻る。

 

 そして変身を解いた櫂は、真美たちと共にガイア(健二)の戦いを見守り始める。

 

 

 真美「(満面の笑みで)櫂君、お疲れ様。 そして…ありがとね。」

 

 櫂「ああ。真美たちも無事だったようで何よりだ。………(ガイアたちの方を振り向いて)よく頑張ったな…新米。」

 

 

 櫂はそう呟きながら、不敵な笑みと共に勝利したガイアとアグルを見つめた。

 

 

 櫂の援護、叱咤激励によりなんとか初勝利を制したガイア(健二)とアグル(早苗)。最も、櫂はあくまで憎い奴をぶっ倒すために自分たちを利用したに過ぎないとも知らずに…。

 

 

 

 やがて変身を解除したガイアとアグル。その数分後、

 

 

 健二「…いや~、それにしても驚いたよ。まさかさなちゅんがウルトラマンになっちまうなんて…。」

 

 早苗「ふふ、それを言うならケンちゃんもでしょ?」

 

 

 とある海岸にて楽しそうに話し合う健二と早苗のカップル。どうやら二人は既に互いにウルトラマンになった事を打ち明け合ったみたいである。

 

 最初は当然二人とも驚いたのだが、それぞれ既に変身した頃から何となく勘づいていたようであり、つまり半分は案の定という事なのである。

 

 

 早苗「でも不思議ね…どうして互いに分かっちゃったのかな。」

 

 健二「それは…俺たちがそれほど一緒にいてきたから…じゃないかな。」

 

 早苗「…え?」

 

 健二「思えば俺たち、昔からずっと一緒だった…かつて過酷な環境にいた時も、一緒に頑張って来たもんな。」

 

 早苗「確かに。ケンちゃん一度は闇に落ちかけた(第11話参照)けど、それを振り切ることが出来たしね。」

 

 健二「あの時は櫂さんに真美さん、それからショウさんがいなかったらどうなってたことやら(第12話参照)…でも、そのお陰で本当の強さ、自身を取り戻せた。」

 

 早苗「そして今じゃ正義のウルトラマン。何だかそう思うと、感動だな。」

 

 

 健二「本当の強さや自身が分かった今だからこそ、変身、敵の撃破に繋がったのだと思う…

 

 俺もお前も、自分の力を信じて飛び込んだ。だから、勇気の光をつかめたんだ。」

 

 

 二人とも、自分がウルトラマンに選ばれたのは何故なのかを見いだせていた。

 

 

 健二「…今後も頑張っていこうな。ギリギリまで頑張った末に授かったこの力で。」

 

 早苗「ええ。いつか追い付こうね。櫂さんや海羽さんに。」

 

 

 健二「ブレイク限界しようぜ。どんな困難も。」

 

 早苗「ええ。このキラキラ世界(地球)を、守るために。」

 

 二人は決心を決め、笑顔で見つめ合いながら互いに腕をクロスする。

 

 

 早苗「んじゃ、そろそろ戻りますか。」

 

 健二「ああ。さなちゅんの新しい友達がどんな人なのか楽しみだ。」

 

 

 そう言うと二人は手を繋ぎ、砂浜を駆け始める。

 

 

 しばらく走った先には、古田兄妹とその友達、所謂フルータ星人一同が待っていた。

 

 

 二人は早苗がいた海岸まで飛んだ後に変身を解いたのである。

 

 

 賢「ん?おう、早苗!」

 

 愛「早苗さん!」

 

 賢と愛をはじめ、一同もそれに気づく。

 

 

 早苗「ただいま~。ごめんね勝手にいなくなっちゃって。」

 

 明人「ったくホントだぜ。」

 

 輝雄「今までどこ行ってたんだよ?」

 

 早苗「い、いや…ちょっと色々あってね…。」

 

 

 賢「…彼は誰なんだ?」

 

 賢は早苗と一緒にいる健二に気付く。

 

 

 早苗「ああ、紹介します。 私の彼氏の稲葉健二です。」

 

 

 健二「は、あはは…突然だけど、よろしく。」

 

 

 愛「…え?」

 

 

 輝雄「か」

 

 明人「れ」

 

 賢「し?」

 

 

 フルータ星人一同「彼氏~~~!!?」

 

 

 …驚くのも当然である。突然いなくなってしばらくして戻ったかと思うと、唐突に彼氏まで連れてくるのだから…。

 

 

 賢「へぇ~…まさか彼氏を連れてくるために突然消えたのか?」

 

 早苗「い、いやいやそれだけじゃないんだけどね…。」

 

 輝雄「俺たちの心配も知らないで、呑気な人だな~。」

 

 愛「へぇ~なかなかいい人そうだね。」

 

 健二「お、おお、サンキュー。 君たちがさなちゅんの新しい友達か。なかなか賑やかだね。」

 

 早苗「うん。みんなとってもいい人たちなんだよ。」

 

 

 賢「一体何がどうなってんだ?怪獣は現れるし、それに立ち向かう巨人、そして早苗は突然消えたかと思えば彼氏連れてくるし…。」

 

 

 早苗「ま、まあ、事情はあとで話すよ。 とりあえずまだ昼間だし、遊ぼ。 ねえ、ケンちゃんね、金槌な私と違って泳げるんだよ~。」

 

 健二「お、おいやめろって。」

 

 賢「マジか?」

 

 愛「へぇ~、確かに運動できそう。見てみたーい!」

 

 明人「よーし、俺と勝負しようぜ!」

 

 

 健二「あー、その前に…

 

 初対面でいきなりすまんが、ちとマッサージしてくれないか?」

 

 

 フルータ星人一同「え?」

 

 

 早苗「そういえば私も、体じゅう筋肉痛~。愛ちゃん、ごめんけど揉んでくれる?」

 

 

 …やはり二人は、初めてのウルトラマンとしての戦いで体じゅう筋肉痛になっていた(笑)

 

 

 フルータ星人一同は困惑しつつもとりあえず健二と早苗をマッサージし始めた。

 

 

 新たにウルトラマンの力を手に入れた二人の若者。まだまだ未熟だが、きっと今後もいろんな困難にぶつかっていくだろうが、きっと協力して超えていくだろう。

 

 

 ゼロやソルなどの心強い仲間たちもいるのだから…。

 

 

 (ED:Lovin'You Lovin' Me)

 

 

 

 [エピローグ]

 

 

 健二と早苗が、ガイアとアグルとして戦う決心をしたのも束の間、とある満身創痍な怪人がふらつきながらも歩いていた。

 

 

 アングラモン「ハァ…ハァ………お、おのれウルトラマンゼロ…!」

 

 

 その怪人とはなんとアングラモンである!

 

 

 実は奴は先ほどのゼロとの戦いでトドメを刺される際、辛うじてギロン人を盾にする事で逃れることが出来たのである!

 

 即ち、先ほどのギロン人の断末魔の「何故だ」は、仲間であるはずのアングラモンに盾にされた事に対しての無念の叫びだったのである。

 

 

 自身が不利になると仲間を見捨てる…正に、極悪非道の証である。

 

 

 アングラモンはやがてとある工業地帯前に辿り着くと、何かを呼びかけ始める。

 

 

 アングラモン「出て来い、出て来い!ギタギタンガ!!」

 

 

 アングラモンがそう叫ぶと、突然地面から土砂や土煙が勢いよく噴き上がり、そこから一匹の超獣が現れる!

 

 

 アングラモンの下僕超獣『地底超獣ギタギタンガ』だ!

 

 

 アングラモンはホタルンガの他にも超獣を怪獣墓場から引き連れていたのである!

 

 

 現れたギタギタンガは咆哮を上げる。

 

 

 アングラモン「暴れろギタギタンガ!今こそ地球人を全滅させるのだ!」

 

 

 アングラモンの命を受けたギタギタンガは工業地帯で建物を崩して暴れ始める!

 

 工業地帯の人々が逃げる中、ギタギタンガは頭部の角から白いガスを噴射する。

 

 すると、それを吸った人は苦しみだす。

 

 

 これは、ギタギタンガの武器であるアルコールの臭いがする酸欠ガスなのだ。

 

 即ち、早苗が探索していた海沿いの道路の崖から噴射していたアルコールの臭いがする白いガスの正体は、奴の酸欠ガスだったのである!

 

 ギタギタンガはホタルンガの餌の人間を捕らえるべく、地底に潜みながらガスを噴射する事でホタルンガの捕食の手伝いをしていたのだ。

 

 

 ギタギタンガはなおも暴れ続ける。工業地帯は今に全滅しそうになっていた…!

 

 

 アングラモン「ふははははは!まずは一つ、全滅させそうだぜ…!」

 

 

 既に勝ち気でいるアングラモンは高笑いをする。

 

 

 その時!

 

 

アングラモン「…ん?」

 

突如、何処からかハーモニカの音色が聞こえ始め、アングラモンはそれに気づく。

 

 

それはどこか物悲しい印象を受ける独特なメロディである。

 

 

アングラモン「…!?ぐっ………この音は…?」

 

 

ハーモニカの音色を聴いた瞬間アングラモンは苦しみだす。

 

 

邪悪な者が聞くと苦しむハーモニカの音色。これが聞こえたということは…“あの男”が帰って来た証!

 

 

アングラモン「…っ!」

 

 

アングラモンはふと振り向いてみると、その視線の先には1人の男が立っていた!

 

 

「…よお、派手に暴れてるみたいだな。」

 

男はそう言いながらハーモニカを懐にしまう。

 

 

アングラモン「貴様何者だ…動くな!」

 

警戒するアングラモンが攻撃の体勢に入ろうとした時、男は咄嗟に手に持つラムネの瓶を投げつける!

 

 

“カツンッ”

 

アングラモン「!ぐぉわっ!」

 

ラムネの瓶が、自身の弱点でもある胸に直撃したアングラモンはたまらず吹っ飛ぶ。

 

 

男は深々とかぶっていた帽子を取り、素顔を露わにする。

 

 

そう、レザーコートに身を包み、ハーモニカをクールに吹き鳴らす彼こそ、かつてこの世界のクリスマスイブに攻め込んで来た『グローザ星系人グレイザー』の軍団から人々を救った風来坊。

 

 

『ウルトラマンオーブ』に変身する『クレナイ・ガイ』なのだ!

 

 

彼はクリスマスの事件終息後、一度自分の世界に戻っていたのだが、また謎の反応を感知したのか、再びこの世界にやって来たのである!

 

 

ガイはその場からジャンプして一回転し、暴れるギタギタンガの前に着地する。

 

 

ガイ「おーっと!ここから一歩も通さないぜ?…俺が相手だ。」

 

 

ガイは変身アイテム『オーブリング』を取り出して前に突き出し、光に包まれる………。

 

 

To Be Continued………。




読んでいただきありがとうございます!いかがでしたか?


今回はガイアとアグルの参戦回でした!

ストーリー構成的には、ウルトラマンA第5話とウルトラマンガイア第1〜2話を組み込んだ感じにしてみました。


…さて、健二と早苗の高校生カップルが、ガイアとアグルの光を授かって戦うという今回の展開に驚愕した方もおられるかと思います。(特にガイアファンの方)

賛否あるかと思いますが、とりあえずガイアファンの方すいません!(特にアグルファンの方笑笑)


気を取り直して、ガイア、アグルも大好きなウルトラマンであるということで、今回ようやく参戦させる事が出来ました。

今回登場したのはV1ですが、もちろん今後V2やスプリームヴァージョンも登場させますので楽しみにしていてください!


また、今回久々に櫂(主人公)と真美ちゃん(ヒロイン)もガッツリ登場させる事が出来、またゼロ様のスマートな戦闘も久々に書けたので、自画自賛ではないですがそこも私的には良かったかと(笑)


今回隠れたサブタイトルは、

『蒸発都市』(ウルトラセブン第34話)でした!


あと最後に、遂に『ウルトラマンジード』が始まりましたね!

どの形態も最高にカッコいいし、更にゼロ様も参戦したので今後の展開がとても楽しみです! いつか機会があれば、ジードも本作に登場させたいですね〜(ニヤリ)

第3の姿・アクロスマッシャーの参戦も楽しみだし、キングやベリアルの行方も気になるところですね。


感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


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第28話「熱き風来坊」

 お久しぶりです!


 今回は皆さんお待ちかねのあの“夕日の風来坊”の活躍が始まります!


 また、前回アリブンタによって母親を失った少女のために、櫂と真美ちゃんが前代未聞の行動に出ます!またそれにより櫂が久々に盛大なキャラ崩壊(?)を起こしてしまいます(笑)


一部文才に欠けるような表現があるかもですがとりあえず楽しんでもらえたらなと思います(笑)


 それではどうぞ!


(OP:英雄の詩)

 

 

 クレナイ・ガイはオーブリングを突き出して紫色の光に包まれる!

 

 

 ガイ「ウルトラマンさん!」

 

 《ウルトラマン!》

 

 「ヘアッ!」

 

 

 ガイ「ティガさん!」

 

 《ウルトラマンティガ!》

 

 「チャッ!」

 

 

 ガイはリングにウルトラマンとウルトラマンティガのウルトラフュージョンカードをダブルリードし、ガイの左右に二人のビジョンが現れる。

 

 

 ガイ「光の力、お借りします!」

 

 

 《フュージョンアップ!》

 

 

 ガイはオーブリングを揚げ、左右二人のウルトラマンもそれにシンクロして左腕を揚げる。

 

 オーブリングは音声と共に側面のカバーが展開し、シンセサイザー調のメロディと共にガイは光に包まれオーブの姿となり、リングはマンとティガと共に青、黄と光った後に紫に輝く。

 

 そしてオーブの姿のガイはマンとティガのビジョンと合体するかのように重なり紫に光り、やがてその光が下から消えていき姿を現す。

 

 

 《ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!》

 

 

 全身に纏っていた光が消えて姿を現した『ウルトラマンオーブ・スペシウムゼペリオン』は、マンとティガのタイトルバックが合わさったような背景で、光の中から右腕を突き出して飛び出す!

 

 

 オーブは右腕を突き出した状態で、リング状の光を発生させながら姿を現す。

 

 

 アングラモン「あのウルトラマンは…!?」

 

 暴れていた『地底超獣ギタギタンガ』は目の前の現れたオーブに驚くような仕草を見せ、ギタギタンガを引き連れて来た『地底超人アングラモン』(等身大)もそれを見上げて驚く。

 

 

 ガイ「俺の名はオーブ! 闇を照らして、悪を撃つ!」

 

 

 オーブは決め台詞と共に構えを取る。

 

 

 対峙するオーブとギタギタンガ。やがて戦闘が開始する!

 

 

 (スペシウムゼペリオン戦闘BGM)

 

 

 互いに駆け合う両者は激しく土砂を巻き上げながら組み合い、力比べの後、両者は一旦離れる。

 

 オーブはギタギタンガの左右交互の殴り込みを左右交互に順に弾いた後腹部に右足蹴りを決める。

 

 オーブは再びギタギタンガと組み合ってしばらく押し合った後、右脇腹に左脚のミドルキックを決め、離れたところで頭部に右手の手刀を決め、更に胸部に両手を合わせたチョップを叩き込む。

 

 

 後退したギタギタンガは、反撃として頭部の角の先端から酸欠ガスを噴射し、オーブはそれを顔に受けてしまう。

 

 

 ガイ「うわっ!?…酒臭ッ……!!」

 

 

 オーブはアルコール臭に悩みながらも咄嗟に右腕で円を描いて光のバリア『スペリオンシールド』を張ってそれを防ぐ。

 

 

 ガイ「お酒の量は控えた方がいいぜ?」

 

 

 ガイは一言軽口を言い、そしてオーブはその場から大きくジャンプしてギタギタンガを跳び越え後ろに回り込む。

 

 

 ガイ「スペリオン光輪!」

 

 

 オーブは両腕を広げてエネルギーを溜め、それをリング状にして『スペリオン光輪』にして投げつける!

 

 

 しかし、ギタギタンガはノコギリ状の刺の付いた尻尾でそれを輪投げのように受け止めてしまう。

 

 

 オーブがそれに驚く隙にギタギタンガは尻尾を振って光輪を投げ返すが、オーブは咄嗟に身体を反らしてそれを避ける。

 

 

 ガイ「なかなかやるな。」

 

 

 アングラモン「我も行くぞギタギタンガ!」

 

 

 そう言うとアングラモンはオーブの真後ろで巨大化し、すぐさまオーブを羽交い締めにしてしまう!

 

 

 ガイ「んなっ!?」

 

 

 アングラモン「カラータイマーを狙え!」

 

 

 アングラモンの指示を受けたギタギタンガは羽交い締めにされているオーブに接近する。

 

 だが、オーブはそのまま跳躍し、両足蹴りをギタギタンガの胸部に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 そして着地すると、後ろのアングラモンに語り掛ける。

 

 ガイ「あんた、相当弱ってんだろ?」

 

 アングラモン「…ッ!?何だとっ!!」

 

 ガイ「腕の力、緩みまくりだぜ!」

 

 

 そう、アングラモンは先ほどの『ウルトラマンゼロ』との戦いによりだいぶ疲弊していたのだ!

 

 

 アングラモンが動揺している隙にオーブは両腕を上に伸ばすことで羽交い締めを振りほどき、右肘を腹部に叩き込む。

 

 そしてアングラモンが怯んだ隙に振り向いて両腕を掴み、ティガのタイプチェンジ音と共に赤い部分を発光させてティガ・パワータイプのパワーを発揮してジャイアントスイングで豪快に振り回して投げつける!

 

 

 ギタギタンガの傍に落下したアングラモンはふらつきながらも立ち上がる。

 

 アングラモン「お、おのれ…体が万全だったら…。」

 

 

 二体が動揺している隙に、オーブは止めの体勢に入る。

 

 オーブは右腕、左腕と順に両腕をL字に広げてエネルギーを貯め、前面に光の輪が展開する。

 

 

 ガイ「スペリオン光線!!」

 

 

 オーブは技名を叫ぶと共に両腕を十字に組んで必殺光線『スペリオン光線』を放つ!

 

 

 光線はギタギタンガ目掛けて一直線に飛ぶ。

 

 

 だが、ギタギタンガに直撃直前のところにアングラモンがギタギタンガの前方に回り込んだことで、光線はアングラモンに直撃する!

 

 

 アングラモン「ぐぉぉあああああ!!…い、今だギタギタンガ!…逃げろ…そして、暴れる場所を変えろ…!」

 

 

 “ズドガーン”

 

 

 アングラモンはそう言い残すと、大爆発して消し飛んだ。

 

 

 オーブは爆風を見つめる。しばらくすると徐々に薄れて消えていき、やがて地面に何かが掘ったかのような大きな穴が開いているのが見え始める。

 

 

 アングラモンが盾になっている隙にギタギタンガは地面を掘って逃走したのである。

 

 

 仲間を見捨てて盾にしたアングラモンが、今度は自らが盾になって散ることになるとは…、

 

 以外にも部下思いのある奴である。

 

 

 ガイ「一人逃げられたか…。」

 

 ガイ(オーブ)は少し悔しがるように呟く。

 

 

 やがてオーブはガイの姿に戻る。

 

 そしてギタギタンガによって破壊された工業地帯を見つめながら呟く。

 

 

 ガイ「この世界の異変は、前よりも酷くなりつつあるな…。

 

 あらゆる場所での怪獣の出現、タロウさんやギンガさんなどの諸先輩方の集結、

 

 そして、謎のウルトラ戦士(『ウルトラウーマンSOL(ソル)の事です』)の登場…

 

 とりあえず、何か大きな事が起こりそうなのは確かだな。」

 

 

 そう言うとガイは何処かへと歩き去り始める。

 

 

 ガイ「それに…新たにガイアさんとアグルさんとして覚醒したグリーンボーイとグリーンガール…これが一番の予想外だな。」

 

 

 どうやらガイは、いつの間にか稲葉健二と小野早苗のカップルが『ウルトラマンガイア』と『ウルトラマンアグル』として覚醒した事も確認済みのようである。

 

 流石は風のように現れては消える風来坊と言ったところか。

 

 

 そして、ガイが彼らの事を浮かべた事は、一体何を意味するのだろうか…?

 

 

 

 …だが、ガイにとってその上を行く予想外の出来事が起こっていた…!

 

 

 よく見てみると、ガイは独りではなく、彼の側には2人の異形の生物がお供していた。

 

 

 一人目は、蝉とザリガニをフュージョンアップ(笑)したような外見に、両手の巨大なハサミが特徴の宇宙人…。

 

 

 そう、皆さんご存知の、恐らくウルトラシリーズ一ポピュラーな宇宙人、『宇宙忍者バルタン星人』。

 

 

 因みにこのバルタン星人は、どこかさすらいの民をイメージさせる古布を身に纏っている。

 

 

 もう一人…いや一匹は、これも皆さんご存知の怪獣…いや珍獣。

 

 全体的に丸っこい体に赤いひだで覆われているのが特徴の珍獣、『友好珍獣ピグモン』である。

 

 

 …いきなり過ぎて混乱している方もいるだろうから説明しよう(笑)

 

 

 それは、ガイが『亡霊魔道士レイバトス』との戦いの数日後、奴が蘇えらせた怪獣の残党と戦いつつ宇宙を旅していた際に、とある正義の戦士たちで結成された宇宙警備隊に出会った。

 

 

 その名は『ウルティメイトフォースゼロ』(以降:UFZ)。

 

 

 メンバーは炎の戦士・グレンファイヤー、鏡の騎士・ミラーナイト、鋼鉄の武人・ジャンボット&ジャンナインのジャンファイト兄弟に、ゼロを入れた五人である。

 

 グレンたちはゼロがかつてベリアルが銀河帝国を築いたアナザースペースへと戦いに向かった際に出会った戦士たちであり、志が一緒だったゼロと協力して『カイザーベリアル』を打倒した後に(ほぼゼロの独断で(笑))結成された宇宙警備隊であり、基本的にゼロをリーダーに、アナザースペースで建造した『マイティベース』を拠点に、ベリアル軍壊滅後も宇宙の平和のために戦い続けている。

 

 

 そんな彼らと出会ったガイは、彼らと共闘後、挨拶程度でマイティベースを訪ねたのだが、その際にそこでUFZの皆と一緒に暮らしていたピグモンとも出会った。

 

 だが、ピグモンはガイが気に入ったのか、彼にべた付き始め、しばらく離れる様子はなさそうであったため、UFZの許可により数日間だけピグモンにガイと一緒に旅をしてきてもいいという事になったのである。

 

 

 そしてピグモンを連れて一緒に旅をしている最中に、今度はバルタン星人と出会ったのだ。

 

 彼の名はバルタン星人の『バルタ』。なんでも彼は、自分の場所が無い“風来坊”のバルタン星人を自称しているのである。

 

 

 それを聞いたガイは一気に共感し、ピグモンがバルタにも懐き始めたというのもあり、しばらく一緒に来ることを提案した所、しばらくは行動を共にする事になったのである。

 

 

 そしてガイは、ピグモンとバルタを連れて櫂たちの地球にやって来たのである。

 

 

 バルタ「ガイの旦那、拙者にも出来る事があればなんなりと。」

 

 世界の異変を感じるガイを、バルタは気にかけている。どうやらガイに、ちょっとした忠誠心を誓っているようである。

 

 

 ガイ「…いや、大丈夫だ。それよりも、早く“彼ら”の元へ向かうぞ。」

 

 バルタ「…彼らとは何ぞよ?」

 

 

 ガイ「新たに光を得た、若者たちだ。」

 

 健二と早苗の事である。

 

 

 そう言うとガイはバルタ、そして自分にベタつくピグモンと共に、健二と早苗を探しに出かけ始める…。

 

 

 

 一方、そんなグリーンボーイ&ガール(笑)の健二と早苗は、仲良くなったフルータ星人一同(古田賢&愛兄妹、鈴木明人、坂口輝雄)と一緒に海辺で遊んで楽しんでいた。

 

 

 しばらく海で遊んだ後、雑談をしながら日向ぼっこをしている一同。

 

 

 因みに健二と早苗は、自分たちがウルトラマンに覚醒した事をフルータ星人一同に打ち明けており、彼らの腕にはそれぞれ変身アイテム『エスプレンダー』、『アグレイター』が握られていた。

 

 

 早苗「この輝きこそ、私たちがウルトラマンになれたって証ね。」

 

 健二「ああ、この力、人々のために使っていこう。」

 

 賢「しっかし驚きだよな〜。2人はカップルで、ウルトラマンなんだから。」

 

 明人「ちくしょ〜なんで俺じゃねーんだよ!」

 

 明人はちょっと妬みも含めて軽口を言う。

 

 輝雄「あはは、明人さっきめっちゃビビってたじゃねーか!」

 

 明人「!?んなっ、バカ言え!そっちこそ…!」

 

 輝雄「賢なんて妹の事で必死だったしな!」

 

 賢「んなっ!…人をシスコンみたいに言うなっ!」

 

 いつの間にか、いつものやり取りを展開するフルータ星人一同。そんな彼らを健二と早苗、愛はほくそ笑みながら見つめていた。

 

 

 早苗「愛ちゃん、困った時は言ってもいいんだよ。この力でスーッと行けるんだから。」

 

 愛「そう?でもわざわざ来てもらうのも悪いし、それに私にはお兄ちゃんがいるし…。」

 

 健二「じゃあ、お兄さんが忙しい時は言ってよ。遠い町からここまで来れたのも、この力のおかげなんだから、ホント便利だぜ。」

 

 愛「あ、あはは…。」

 

 

 愛は少し困惑の笑みを見せる。早苗も健二もウルトラマンの力を手に入れてすっかり浮かれ始めているようだ。

 

 

 と、そこへ。

 

 

 ガイ「おい兄ちゃんたち。」

 

 

 突然聞こえた聞き覚えの無い声の方へと一同は振り向く。

 

 

 そこに立っていたのは、ガイだった。

 

 

 突然現れたレザーコートの男に見入っている一同。するとガイはこう言った。

 

 ガイ「ウルトラマンさんの力は、そんな軽い気持ちで使うもんじゃないぜ?」

 

 

 早苗「…え?」

 

 健二「なんだって?」

 

 即座に自分たちの事だと気づいた二人だったが、見ず知らずの人に突然話しかけられたがために、困惑の方が大きかった。

 

 

 やがてガイは、そう言い残すと健二たちの前から歩き去って行った。

 

 

 早苗「…ウルトラマンの力は、軽い気持ちで使ってはいけない…?」

 

 健二「俺たちは、それほどの強大な力を手に入れたという事なのか…?」

 

 早苗と健二は、困惑しつつもガイから告げられた忠告について深く考え始めていた…。

 

 

 ウルトラマンの力を手に入れたばかりの二人にとって、その力を使っていい時と悪い時とで分別がまだつかないのであろうか…?

 

 

 

 ここで一旦場所を変えよう。

 

 ガイアとアグルにより、アリブンタとホタルンガを撃破されて一件落着後、竜野櫂と新田真美は、一人の少女を宥めていた…。

 

 

 …O型の女性を捕食していたアリブンタにより母親を失った少女である。

 

 

 櫂「なかなか泣き止まねーな…。」

 

 泣き続ける少女にやや呆れ気味になっている櫂。

 

 真美「無理もないよ…こんなにも幼いのに、ママを亡くしちゃうなんて…。」

 

 そう言いながら真美は、少女の背中を優しく摩る。

 

 

 やがて真美は黄色に紫の水玉模様のハンカチを取り出す。そして、涙と鼻水で濡れる少女の顔を拭き始める。

 

 

 真美「こんな顔がぐしょ濡れちゃって…可哀想…。」

 

 憐れむような表情で耳障りの良い艶やかな声でそう呟きながら丁寧に涙を拭き取っていく真美。

 

 

 すると、少女は突然泣き声が止まった。そしてゆっくりと真美の顔の方を振り向く。

 

 真美「うふ、お顔、かわいいね。」

 

 少女は不思議と優しい表情で見つめる真美に見入っていた。

 

 だが、それによりまた母親を思い出したのか再び泣き出しそうになる。

 

 

 真美はそれを慌てて止める様子はなく、少女の肩に優しく手を置いて話しかける。

 

 真美「辛いよね…泣きたいだけ泣くといいよ。

 

 そうだ、私の家来る?何か美味しい物も作ってあげる。」

 

 

 少女は泣きそうでしゃくれながらもゆっくりと頷いた。

 

 

 少女はたちまち真美の家に行くことになった。

 

 真美「ごめんね櫂君。予定が変更になっちゃって。」

 

 櫂「いいさ。それより、早くその子をゆっくりさせてやってくれ。」

 

 真美「うん。じゃあ、またね。 (少女の方を向いて)行こ。」

 

 真美は少女と手を繋いで歩いて行き、櫂はそれを見送った。

 

 

 そして一人になった瞬間、またしても表情が変わる!

 

 

 櫂「やはり怪獣は害悪だな。早い所駆逐した方がいいだろう。」

 

 ゼロ「櫂…。」

 

 櫂「見ただろ?ゼロ…所詮怪獣なんてあんなもんだ…奴らは人の幸せを奪う。(右手の拳を震えるほど強く握って)だから俺が片っ端からぶっ殺す!…それだけだ…!」

 

 

 そう言うと櫂も何処かへと歩き去って行った…。

 

 

 先ほどの櫂の発言を聞いたゼロは言葉を失うが、それを同時にとある不安にも駆られていた。

 

 

 それは、いずれかはレイや彼の怪獣、そしてコスモスにまでも手に掛けるつもりではないのかという事だった…。

 

 

 「怪獣はみんな害悪」…この考えを持っている限り、そのような行動に移るのも不思議ではないと思い始めたのだ。

 

 

 ゼロ(櫂の奴…そうならなければいいが…。)

 

 

 

 アリブンタにより母親を失った少女。彼女の名は『滝里奈』。

 

 

 母親と二人暮らしだった彼女は、たちまち母親を失ったために一人になってしまい、それを知った親族は、彼女の母親の死を悔やみ、式を挙げる準備をすると同時に、どこが彼女を引き取るかを考え合う事にした。

 

 

 なので、式が終わり、引き取り先が見つかるまでに約四日間、だれかが親代わりとして引き取っておかないといけないのである。

 

 

 里奈を自分の家で泣きたいだけ泣かせ、パンケーキをご馳走した後、真美はその事について悩んでいた。

 

 真美「四日間どこがいいかな…。」

 

 

 その時、偶然そこに居合わせた伊狩鎧が…。

 

 鎧「俺に任せてください真美さん!」

 

 真美「いいの?鎧君。」

 

 鎧「はい!俺ん家はすっごい楽しいですよ~!絶対に!彼女を!楽しませてみせま~す!!」

 

 まるでゴー〇イシルバーの名乗りのようなアクションでハイテンションで自信を見せる鎧。

 

 真美「…じゃあ、お願いね。」

 

 鎧「(敬礼して)はいッ!!」

 

 

 というワケで、里奈はたちまち鎧が引き取る事になった…。

 

 

 …だがしかし…、

 

 

 翌日(8月12日)、どうしたことか、鎧は里奈を連れ、いつものようなハイテンションな気分ではなく、げっそりした様子で櫂と真美の前に現れた…⁉︎

 

 

 いつものギンギンな感じは微塵にも無く、珍しく凹みまくっている鎧の表情。身体も少し前方に屈んでおり、両腕もだらりと下がっており、その様子は表情も相まってまるでゾンビのようである(笑)

 

 

 真美「ど、どうしたの?鎧君。」

 

 真美は鎧の滅多に見せない表情に少し困惑しつつも心配そうな表情で下から覗き込むように話しかける。

 

 

 鎧「それが…昨日…里奈ちゃんを家に泊めたのですが………。」

 

 

 

 〈回想〉

 

 

 それは昨日の事。里奈を泊める事になった鎧は、彼女を楽しませようと一際張り切っていた…。

 

 

 鎧「さ~あ!里奈ちゃん!ウチはとても楽しいよ~!」

 

 

 いつものハイテンションで里奈をもてなす鎧。

 

 しかし、里奈は相変わらず暗い表情をしており、その表情が一向に変わりそうにない…。

 

 

 鎧「何がしたい!?ゲーム?オセロ?将棋?(小声で)これは無いか…テレビ見る?御飯にする?それとも俺と、ウルトラマンについて語り合いますかー!?はははははは…!」

 

 

 里奈「ウザい…。」

 

 

 鎧「…へ?」

 

 

 さっきまで張り切っていた鎧は里奈の思わぬ一言に思わず耳を疑い聞き返す。

 

 

 鎧「…なん…て?」

 

 

 里奈「(顔を上げて睨むような表情で)暑苦しいの、ウザい!」

 

 

 鎧「………………そんな………、」

 

 

 “ガーーーーン”

 

 

 鎧「なんでええぇぇぇーー!!??」

 

 

 〈回想終了〉

 

 

 

 里奈に「ウザい」とあしらわれてしまった鎧。その後もなかなか懐いてもらえず、結局、里奈とほとんどコミュニケーションを取れないまま一夜を過ごしたのだという…。

 

 

 鎧のハイテンションぶりは時にはウザいと思う人もいるだろうが、こんなにもストレートに言われてしまった事が余程ショックだったみたいだ。

 

 

 「子供は正直」とも言われるが、流石である(笑)

 

 

 真美「そ、そっか…でもよく頑張ったね。」

 

 真美は少し困惑の苦笑を浮かべつつも労う言葉をかける。

 

 

 櫂「どうやらこの子に鎧が合わなかったみたいだな…こうなれば残りの日は他の人に…、」

 

 

 櫂がそう言いかけた瞬間、

 

 

 突然、里奈は真美の元に駆け寄り、そして真美に抱き付く。

 

 

 巻き付く腕が、真美の良スタイルを際立てるくびれにスッポリとはまり込み、顔は食い込むぐらいに腹部に押し付けている。

 

 そして里奈はそのまま静かに泣き出す。

 

 

 …どうやら彼女は、一緒に過ごすなら真美の方がいいみたいである。

 

 おそらく昨日真美に優しくしてもらった時に、そんな真美に母親と同じものを感じたのであろう。

 

 

 それに気づいた真美は、困惑から優しい眼差しに変わり、泣きながら自身に抱き付く里奈の頭を撫でる。

 

 

 真美「そっか…そうなんだよね………ごめんね。なかなか気付いてあげられなかったなんて…。」

 

 

 里奈にそう優しく語り掛ける真美を見て、櫂はまたしても何やら複雑な表情になる…。

 

 

 だが、そんな櫂が何やら考えようとするのも束の間、真美は櫂に言い出す。

 

 

 真美「ねえ櫂君、ちょっと協力してくれる?」

 

 櫂「…ええ?」

 

 

 

 それから約3時間後の事である…。

 

 

 ひょんな事から櫂は、本日から三日間、真美の家で過ごすことになったのだ…!

 

 

 突然最愛の人の家にお邪魔する事になった櫂。家に上がった今も魂が抜けたような唖然とした表情のままである(笑)

 

 

 ゼロ「…あー、櫂?大丈夫か?………おーい!」

 

 

 久々に何とも言えない表情を見せた櫂を心配するゼロだが、今の櫂にはそんなゼロの呼びかける声も聞こえない…。

 

 

 そして真美は、エプロン姿でルンルンと櫂の元に歩み寄り、そしてこう言った。

 

 

 

 真美「それじゃあ、三日間よろしくね。パーパ。」

 

 

 

 …そう、真美の提案により、櫂と真美は、三日間だけ里奈の親代わりを務める事になったのである!

 

 

 真美にパパと呼ばれた櫂は、困惑を通り越して混乱に陥ろうとしている。

 

 

 櫂「ぱ…ぱぱ…ぱ…俺が…パパか…へへへッ…。」

 

 

 ゼロ「うぉい!?櫂!しっかりしろ! まあ俺も困惑してるけど…。」

 

 

 だが、次の瞬間、櫂は目の前で、ママ代わりの真美に懐く里奈の姿を見て我に返る。

 

 

 そしてある事を考え出す。

 

 

 櫂「…そうだ…気を確かに持つんだ、俺。………これは俺と真美の未来の姿なんだ…そのシミュレーションとしてやればいいんだ…。」

 

 

 櫂(それに…これにより、俺と真美がよりくっつくかもしれんしな…ふふふ。)

 

 

 不敵な笑みをひっそりと浮かべながら心でそう呟く櫂は、再び里奈を見て決心する。

 

 

 櫂「将来生まれる俺の子供のためにも、子育ての練習だと思ってこいつを存分に楽しませてやるか。」

 

 

 そう言うと櫂は、真美と戯れる里奈の元へと歩み寄る。

 

 

 里奈「ママー!よろしく!」

 

 真美に抱き付きながら無邪気に挨拶をする里奈。

 

 

 櫂「里奈。今日から三日間、俺たちがお父さんとお母さんだから、存分に楽しく過ごそうな。」

 

 真美「ホラ里奈ちゃん。今日からパパになる櫂君だよー。」

 

 櫂は里奈に作り笑顔で語り掛け、続けて真美が里奈に櫂という新しいお父さんを紹介する。

 

 

 里奈は真美に抱き付いたまま櫂の方を振り向く。

 

 

 遂に自分のことをパパと呼んでくれるのか!?…櫂がドキドキしながら微かにそう期待し、ゼロがドキドキしていたその時…!

 

 

 

 里奈「よろしくね、櫂。」

 

 

 

 ………………………???

 

 

 

 “ポクポクポクポク…チーン”

 

 

 

 “ドテーッッッ!!?”

 

 

 

 櫂は里奈の返事に耳を疑い、数秒フリーズした後に時間差でずっこける!

 

 

 パパと呼んでくれるのかと思いきや、何故か自分はまさかの呼び捨てで呼ばれたのである!

 

 

 櫂「おッ…俺だけ何で呼び捨て~!?」

 

 櫂は、久しく出さなかった力が抜けたような声で叫ぶ。

 

 

 里奈の意外な発言に、真美も困惑を隠せなかった。

 

 真美「あっ…あはははは、だ、大丈夫。そのうちパパって呼んでくれると思うよ。」

 

 

 軽く励ましの言葉を掛ける真美。それを聞いた櫂は再び気を取り直したのだが、それも束の間…、

 

 

 里奈「ねえママ、今から遊ばない?」

 

 真美「ごめんね~里奈ちゃん。ママ今からやらなきゃいけない事があるの。」

 

 里奈「…じゃあ櫂とは?」

 

 真美「か…櫂パパなら遊んでくれるよ、(櫂の方を向いて)ね。」

 

 

 またしても呼び捨てされてしまった(笑)

 

 

 櫂「…あ…あはははは…よーし分かった。一緒に遊んじゃらあ!」

 

 

 櫂は再び困惑するが、再び気を取り直し、やや自棄気味に里奈の遊び相手を引き受けた。

 

 

 真美「ありがとう櫂君。じゃあ私は今から皿洗いとかご飯の準備とかするから。」

 

 

 里奈「じゃあ行こう、櫂。」

 

 櫂「お、おう!(だからパパって呼んでくれよ~)」

 

 櫂は里奈に手の裾を引っ張られる形で外に出る。

 

 

 真美はそんな二人を笑顔で見送った後、皿を洗いながら心で呟いていた。

 

 

 真美(私も将来、こんな風にお母さんになるのかな…。最近看護婦のシミュレーションばかりしてるから、こういうシミュレーションもたまにはいいかも。)

 

 

 因みに櫂と真美は、里奈の親代わりを務めるという事で、先ほどそれ用の道具(子供用の皿、御飯の材料など)の買い出しをしたのである。

 

 

 

 唐突に真美と共に三日間里奈の親代わりを務める事になった櫂。

 

 

 彼はまだ知らなかった…。

 

 

 この先に待ち受ける、『子育て地獄』を………。

 

 

 

 とある公園で里奈の遊び相手をする櫂。

 

 

 櫂「や~ら~れ~た~!」

 

 

 てっきりおままごとでもしているのかと思いきや、その遊び内容はと言うと、なんと女の子らしからぬ“戦いごっこ”なのである(笑)

 

 

 もちろんやられ役(怪獣役?)は櫂である。

 

 

 (邪の心で)ウルトラマンの力を得ている男が、子供の遊び相手で怪獣役をやる事になるとはどこか皮肉である(笑)

 

 

 里奈「もう一回!櫂もう一回!」

 

 

 櫂「…ってえぇえ!?」

 

 まだやろうとする里奈に櫂は呆れ気味の声を上げる。

 

 

 ゼロ「櫂ー頑張れー。(棒読み)」

 

 櫂「くうぅ~ゼロ貴様~!」

 

 ゼロ「お前と真美が将来結ばれれば子供も生まれる。その時の子育てのためだ。」

 

 櫂「くっ…そうか分かった。じゃあやるしかねーな~!」

 

 ゼロの皮肉も込めた励ましを聞き、櫂はやや自棄気味に了解した後再び里奈の相手を始める。

 

 

 そしてその後も、数回相手をした後、、、

 

 

 櫂「はい、やられたー。ホラもうこれでいいだろ?そろそろ帰r…」

 

 

 “ドシン”

 

 

 櫂「ゴフッッッ!!?」

 

 

 突如、仰向けに倒れている櫂に馬乗りで伸し掛かる里奈。

 

 

 そして、

 

 

 里奈「とどめだー!」

 

 

 無邪気にそう言うと、そのまま櫂に猫パンチを連打し始める!

 

 

 櫂「えッ…お、おい…何してんだおm…やめろー!」

 

 

 櫂の悲痛の叫びも空しく、里奈はなおも「エイ、エイ、エイ…」という掛け声と共に猫パンチを連打していく…。

 

 

 怪獣(超獣)により母親を失ったモノだから、やられ役の櫂をその怪獣だと思って攻撃しているのだろうか…。

 

 

 実際、子供のパンチはそれほど痛くないのだが、櫂は滅多に受ける事の無い仕打ちに屈辱的になりつつあった…。

 

 

 櫂(くっ…このガキ…その気になれば一捻りだ………いつかブッ飛ばしてやる…!)

 

 

 完全無欠に見える櫂だが、実は性格以外にもう一つ難があった…。

 

 それは、櫂は医療ボランティアに参加している真美と違ってこういう風に子供の相手はあまりした事が少ないため、子供の相手はあまり慣れていないという事である。

 

 

 そのため、唐突に里奈の親代わりを務める事になったがために四苦八苦しているのだ…。

 

 

 やがて里奈は気が済んで攻撃を止めた後、近くの公園の遊具で遊び始める。

 

 

 その間に、櫂は心の中でこう思っていた…。

 

 

 今朝までの“可哀想な子供”の姿は何処へやら…。

 

 

 母を失った悲しみはもちろんまだ消えていないであろうが、親代わりを得た瞬間驚くほど変貌してしまったためである。

 

 

 純真な子供だと思っていたのが、まさかこんなにもヤンチャなお転婆娘だったなんて…。

 

 

 

 櫂「なんて日だッッッ!!!」

 

 

 

 今日一日で様々な予想外に直面した櫂は、夕日に向かって某お笑い芸人のような台詞を悲痛に叫んだ。

 

 櫂の叫びが、夕方の街に木霊する。

 

 

 その時、スマホの電話の着信音が鳴ったため櫂は電話に出る。真美からである。

 

 櫂「おぅ真美か。どうした?」

 

 真美『あ、櫂君?そろそろご飯出来そうだから里奈ちゃん連れて帰って来てね。』

 

 櫂「…了解。」

 

 

 櫂はやや脱力したような声で返事をした後に電話を切る。

 

 

 そして夕日に向かい、何故かゼロのフィニッシュポーズを上に向けた状態にして、そしてまたしても某芸能人のように叫んだ…。

 

 

 

 櫂「イエーーーーーーイ!!!」

 

 

 

 …またしても櫂の叫びが、夕方の街に木霊した…。

 

 

 里奈「…どうしたの?櫂。」

 

 そう言いながら里奈は、あどけない表情で首をかしげる。

 

 

 …櫂は、やけっぱちになりそうなほどナーバスになりかけているのであろうか…?(苦笑)

 

 

 

 その夜、就寝の時間が来た。

 

 櫂、真美、里奈はそれぞれ別々の部屋で寝ることになった。

 

 櫂としては真美と一緒の部屋で寝たい気持ちもあったのだが、幼馴染とはいえ大学生の男女が一緒の部屋で寝るだけでも勇気がいり、また、ただでさえ女子の家で三日間お邪魔になるだけでもありがたいと思い、渋々別の部屋で寝ることを受け入れたのだ。

 

 

 色々あったその日の疲れを一気に発散するかのようにベッドの布団をかけて気持ちよさそうに眠っている櫂。

 

 

 だが、その時、

 

 

 里奈「櫂……櫂………櫂ー!」

 

 

 突然自分を呼び捨てする声が聞こえ、櫂はふと眠い目を半分開ける。

 

 

 その視線の先には、何やら不安そうな表情で見つめている里奈の顔があった。

 

 

 櫂「うぅ…どうした?遊びなら明日にしてくれ…。」

 

 櫂はそう言って再び眠りに就こうとするが…、

 

 里奈「トイレ…一緒に行ってくれる?」

 

 櫂「…何?トイレか?」

 

 一時的に目が覚めた櫂は、里奈のトイレに付き合う。

 

 

 因みにその後も里奈は何度もトイレに行き、櫂はその度に付き合わされたため、その夜は少ししか眠れなかったんだとか…。

 

 

 ここからは、この三日間で二人(特に櫂)が特に苦労した事を紹介していこう(笑)

 

 

 次の日(一日目:8月13日)、晴天に恵まれたために櫂と真美は里奈を連れて少し離れた公園に出掛けていた。

 

 そこは最寄りの公園よりも広く、遊具も豊富で、遊ぶ子供も比較的多いい所なのだ。

 

 そして何より最寄りよりも大きいジャングルジムがあるのだ。

 

 

 そんなジャングルジムに…里奈は登っていた(笑)

 

 

 里奈「あはは…あはははは…!」

 

 元気一杯にジャングルジムの上で移動し続ける里奈。そんな彼女を櫂と真美は下から見上げていた。

 

 

 櫂「お、おーい!危ないぞ降りて来ーい!」

 

 やや焦り気味の櫂。里奈にもしもの事があったらと心配しているのであろうか?

 

 それとは対照的に真美は終始落ち着きを保っている。

 

 櫂「…なぁ真美。何でお前、そんなに落ち着いてるんだ?」

 

 真美「(あどけない笑顔で)え?だって決まってるじゃない。」

 

 櫂「何が?」

 

 そこにゼロが横入りをする。

 

 ゼロ「万が一あの子が落ちそうになっても、その時は櫂か真美がキャッチすればいいって事だろ?二人とも身体能力あるしな。」

 

 真美「そゆこと。それに櫂君にはゼロの力があるじゃない。」

 

 あどけない笑顔でそう言った後、再び上を向く真美。彼女は恐らく子供との交友が多いために、子供の事をある程度知っているがために落ち着いていられるのであろう。

 

 

 子育て地獄によるナーバスにより冷静な判断が出来なくなり始めている櫂。

 

 

 里奈「わーい!わーい!あはは…、」

 

 なおもジャングルジムの上で遊ぶ里奈。

 

 

 だが、やがて彼女は足を滑らせて落下し始めてしまう!

 

 

 櫂「ホラ言わんこっちゃねぇ!いくぞゼロ!」

 

 ゼロ「おうよ!」

 

 

 櫂はゼロの力を発揮して思い切り跳躍する!

 

 

 そして見事に里奈をキャッチした!

 

 

 真美「(軽くガッツポーズ)やったッ!」

 

 

 里奈「わあ、櫂すごーい!」

 

 

 櫂「へッ、だろ?どうよこの身体能力…」

 

 

 だが、それも束の間、

 

 

 “チーン”

 

 

 ゼロ「…あ…。」

 

 

 真美「(目を見開いて両手を頬に当てて)Oops!」

 

 

 ゼロと真美が呆気にとられている先には、鉄棒の上で里奈をしっかり抱いたまま口をぽっかり開けて震えている櫂の姿があった。

 

 

 なんと櫂は、高くジャンプして里奈をキャッチしたのはいいものの、その後運悪く鉄棒の上に落下してしまい、それにより股間を強打してしまった…!

 

 

 櫂はしばらく震えた後、倒れ込んでしまった。

 

 

 里奈「ママ―!」

 

 櫂の腕から抜けた里奈は真美の方へ駆け寄る。

 

 真美「大丈夫?怪我はない?」

 

 里奈「うん!櫂が守ってくれたからね!」

 

 

 真美は、苦笑しながら倒れ込んだまま悶絶している櫂にも心配して話しかける。

 

 真美「…櫂君も、大丈夫?」

 

 

 櫂「…あ…あは…あはは…大丈夫だ………ちゃ、ちゃんと…キャッチ出来たからな…あは、あははははは…。」

 

 返事は出来たものの、痛みにより少し挙動不審な喋り方になってしまっている櫂。

 

 

 ゼロ「ご…ゴホンッ(咳払い)、櫂………ドンマイ………あは。」

 

 

 どうした櫂よ!?完全に調子が狂ってしまっているゾ!!??(笑)

 

 

 

 因みに櫂はその夜も何度も里奈のトイレに付き合わされたんだとか…。

 

 

 

 次の日(二日目:8月14日)は、三人で市民プールに出掛けたのだが、そこでも里奈のやんちゃぶりに手を焼いていた。

 

 

 プールのあちこちをはしゃいで泳ぎ回ってたからのもあるが、排水口に吸い込まれる感じが気に入ったのか、里奈が何度も排水口に近づいたため、その度に何度も吸い込まれそうになった彼女を助けたりしたのだとか…。

 

 因みにこの時は、水泳部でもある真美も結構活躍している。

 

 

 そして帰宅後。

 

 

 真美「楽しかったねー里奈ちゃん。」

 

 里奈「うん!ママ泳ぎ上手いね!イルカみたい!」

 

 真美「そう?ありがとね。」

 

 こうして母子が楽しく話している一方、

 

 

 櫂「はぁ…はぁ…ガキの相手もしたが故か、プール行ってここまで疲れたのは初めてだよ…。」

 

 里奈に手を焼いた櫂はだいぶ疲れていた。

 

 ゼロ「お前…この子育てはもしかしたら今後強敵と戦うための特訓になるんじゃねーか?」

 

 ゼロがそう軽口を叩くが、丁度その時櫂は…。

 

 

 櫂「…にしても真美…相変わらずスッゲーくびれの美ボディに、むっちりした長い脚してるよなぁ…。」

 

 

 櫂は疲れによるものか、プールでの真美の水着姿を思い出しながらややとんでもない事を呟いていた。

 

 

 ゼロ「…櫂?…櫂?………ダメだ…疲れてるようだ…。」

 

 

 ゼロは櫂が完全に子育てノイローゼに陥りかけている事に気付いた。

 

 

 里奈「櫂ー!遊ぼー!」

 

 櫂「…うわっ!?」

 

 その時、里奈が急接近してきて櫂の手を引っ張り始め、それにより櫂は我に返る。

 

 

 真美「櫂君ごめーん、御飯の準備できるまでまた里奈ちゃんと遊んでくれる?」

 

 

 櫂「…フッ…フハハ、良いぜ!相手した野郎じゃねーかー!」

 

 櫂はやや壊れ気味にそう言った後、里奈を連れて外に出かけ始めた。

 

 

 ゼロ「…櫂…遂にカラータイマー点滅か?」

 

 

 真美「まさか里奈ちゃんがあんなに元気一杯な子だったとはね…櫂君も相当手を焼いてるみたい。」

 

 

 ゼロは遂にガチで櫂を案じ始め、真美は櫂を見送りつつ微笑みながらそう呟いた。

 

 

 一方とある公園で。

 

 

 里奈「櫂ー!こっち来てー!」

 

 

 ジャングルジムのてっぺんで元気よく櫂パパを相変わらず呼び捨てで呼ぶ里奈。

 

 

 そんな櫂はと言うと…慣れない子供の相手にノイローゼなのに加え、親代わりで蓄積された疲労により半壊状態であった…。

 

 

 櫂「くっ…このガキ…マジで引き取り先が出来たらブッ飛ばしてやるぜぇ…!」

 

 ゼロ「ハイハイそんな事言ってないで、可愛い子供が呼んでるぜ? 早く行ってやれよパーパ。」

 

 櫂「うッ…うるせー!ゼロがパパって言うんじゃねー! 大体あのガキ(里奈)が俺をパパと呼ぶべきだろ!?なんで一向に呼び捨てなんだよ~!!」

 

 櫂は里奈からパパと呼んでもらえず、一向に呼び捨てで呼ばれることにやはりわずかながら不満を感じているようだ。

 

 

 ゼロ「もしかしたら里奈は櫂の事を“親父”じゃなくて“遊び相手のお兄ちゃん”と考えてんじゃねーのか?ホラ、彼女、母と二人暮らしだったみたいだし。」

 

 それなりの解釈を独り言のように呟くゼロ。初期は破天荒の塊だった彼、随分と洞察力も上がったものである。

 

 

 

 そしてその夜、親子三人はそれぞれ別室で就寝していた。

 

 

 櫂に至っては、余程疲れていたのか、体は横向きに、布団が完全に捲れた状態で眠っていた。

 

 

 櫂(今度こそ眠るぞ…12516匹の羊、12517匹の羊、12518匹の羊、12519匹の羊、12520匹の羊…)

 

 

 とてつもない数にまで羊を数えている櫂(笑)。

 

 だが、子育てはそんなに甘くない(笑)いつもの様に、途中で起きた里奈が訪ねて来る。

 

 

 里奈「…櫂…櫂…。」

 

 

 またしても途中で起こされた櫂。乱暴気味に布団を蹴飛ばして起き上りながら…、

 

 櫂「もうなんだよガキ!!安眠邪魔しやがってそんなに楽しいのかよ!!大人しく寝てろ!!」

 

 子育てノイローゼが限界値に達しかけたのか、遂に櫂は起き上ると共に怒鳴りつけてしまう。

 

 

 だが、その直後に里奈の顔を見た瞬間、一気に櫂の表情が変わる。

 

 

 それは、里奈の表情はいつものように無邪気な笑顔ではなく、どこか悲しげな暗い表情だったのである。

 

 

 それに加え、櫂に怒鳴られた事により泣き出しそうになっている。

 

 

 普段なら真美のいない陰で気に入らない人をいびる櫂だが、幼い子供を泣かせるのは少し気が引ける。ましてや里奈の親代わりをしている今そんな事をしてしまったら真美も悲しんでしまうと思ったのか、ここは剥き出しそうな本性をぐっとこらえて里奈に話しかける。

 

 櫂「…どうした?里奈。」

 

 

 里奈「私ね…怖い夢見たの…。」

 

 

 里奈は涙声でそう答えた。

 

 

 その瞬間、櫂は思い出す。

 

 

 思えば彼女は、先日超獣によって母親を失ったばかりだという事を…。

 

 

 今見せている表情が、母親を失ったばかりの時の表情にそっくりである事から、恐らく夢の中で母親を失った記憶にうなされたのであろうと櫂は悟った。

 

 

 櫂「そっか…じゃあ、ちとついて来い。」

 

 そう言うと櫂は里奈を連れて真美の部屋に入る。

 

 そして軽く揺すって真美を起こす。

 

 真美「うぅ…どうしたの?櫂君。」

 

 櫂に起こされ、眠い目をこすりながらゆったりと上半身を起き上がらせる真美。

 

 そして、櫂と一緒に来た里奈の悲しそうな表情に気付く。

 

 

 櫂「なんか、怖い夢にうなされたみたいなんだ…。」

 

 櫂がそう言った瞬間、真美も悟った。

 

 きっと母親を失った悲しみがフラッシュバックしたのだと…。

 

 

 真美は憐れむような表情で里奈を見つめた後、優しい眼差しで見つめながら優しくこう語り掛けた。

 

 

 真美「今日は一緒に寝る?」

 

 

 それを聞いた瞬間、里奈は表情にわずかながら明るさを取り戻し、同時に嬉し涙を出しながら真美のベッドに向かう。

 

 やはり里奈にとって、真美はかつての母親の面影を感じるのであろう…。

 

 

 添い寝をする二人を、ひっそりと不敵な笑みを浮かべながら見つめる櫂。

 

 

 里奈「ママのベッド温かい!」

 

 真美「ふふ、さ、楽しい夢でも見ましょ。」

 

 

 櫂はやがて二人が就寝するのを見届けると真美の部屋を後にし、自分の部屋に戻り始める。

 

 

 普段はあんなにお転婆でも、彼女だって辛いんだな…そう里奈を憐れんでいる一方で心の中では、

 

 

 櫂(ふふふ…俺を差し置いて真美と一緒に寝るのは解せないが、これであのクソガキに邪魔されずに眠れる…。)

 

 

 櫂は今まさに、本心と良人モードが交叉している状態であった…。

 

 

 翌日(8月15日)の朝6時頃、櫂はトイレに行きたくて目が覚めた。

 

 そして用を済ませた後、あくびをしつつぼやきながら寝床に戻ろうとする。

 

 櫂「ふぁぁ~…結局昨夜もあまり寝れなかったぜ…。」

 

 

 その時、櫂はふと何かに気付いて振り向く。

 

 視線の先のベランダで、何やら真美が里奈の背中を優しく摩りながら語り掛けている姿が見えていた。

 

 

 真美「また思い出しちゃったのね………。」

 

 どうやら里奈はまたしても先日の超獣の事を思い出して目が覚めてしまい、悲しくなってきたみたいである。

 

 それに気づいた真美が優しく宥めていたのであった。

 

 

 真美「今日はとびっきり美味しい物を作ってあげるね。」

 

 真美の語り掛けを聞いた里奈は少し落ち着きを取り戻しつつあった…。

 

 

 その様子を見ていた櫂。昨日までは里奈に対して憎しみの方が大きかったのだが、「残り一日、彼女のために親代わりを尽くそう」「彼女を楽しませてやろう」という気持ちに変わりつつあった…。

 

 

 その一方で、やはり怪獣に対する憎悪も増幅しつつあった………。

 

 櫂(…今後出てくる怪獣…どんな者であれ、この俺が片っ端からぶっ殺してやる………!!)

 

 

 里奈の親代わりを務めるのはあと一日。果たして櫂と真美はどう過ごすのだろうか?そして、櫂のメンタルは持つのであろうか…?(笑)

 

 

 

 里奈のやんちゃぶりに手を焼いて頭を痛める櫂と、終始落ち着きを保って温かく里奈の面倒を見る真美。

 

 

 だが、そんな二人のドタバタ子育て生活であるが、実はその一方で、別の場所ではとんでもない事が起こっていたのだ…!

 

 

 

 ここで、たちまち櫂と真美が親代わりを務める事が決まった三日前(8月12日)に遡ってみよう。

 

 

 この日、健二と早苗は霞ヶ崎付近のとある高原でピクニックをしていた。

 

 

 因みに彼らは、自身がウルトラマンである事はたちまち賢たちフルータ星人とだけの秘密にすることにしている。

 

 

 早苗「う~ん…空気が美味しいね。」

 

 健二「ああ。それにいい天気。正にピクニック日和だ。」

 

 二人はとある高台の上から霞ヶ崎の街を見渡していた。

 

 

 健二「…絶対に守ろうな。この街を。俺たちの光で。」

 

 早苗「ええ。少しでも、櫂さんや海羽さんに追い付くように…。」

 

 平和な街を見渡しながら、二人は改めてウルトラマンの力で頑張ることを決心した。

 

 

 早苗「愛ちゃんたち、元気かな…?」

 

 

 早苗がそう呟いたその時、

 

 

 愛「私なら元気だよー。」

 

 

 突然後ろから聞こえた聞き覚えのある声に二人は反応し振り向く。

 

 

 そこに立っていたのは小さめのリュックを背負って満面の笑顔で見つめる愛だった。

 

 

 健二・早苗「愛ちゃん!?」

 

 

 愛「えへへ、奇遇だね。」

 

 

 思わぬ再会に二人は驚く。

 

 

 愛はこの日、一人で健二たちと同じ山でピクニックをしていたのである。

 

 

 健二「驚いたな~…まさか同じ山でピクニックしていたなんて。」

 

 愛「私も。まさかウルトラマンと再会できるなんて。」

 

 早苗「でも、珍しいね。シスコンのお兄ちゃん(賢)が一緒じゃないなんて…。」

 

 愛「ああ、(少し笑いながら)実はお兄ちゃん、昨日海でクラゲにいっぱい刺されたみたいで。」

 

 

 一方、賢は家で、

 

 賢「へッ…へッ……ぶェっくしょーん!!

 

 …誰だッ!俺をシスコン呼ばわりしてんのは!?」

 

 

 愛「一応私が手当てしたし、今日は家で安静にすることにしたの。」

 

 健二「なんだそうなのかー。」

 

 一同は笑い合う。

 

 

 早苗「ねえ、良かったらこれから一緒に楽しまない?」

 

 愛「え?いいの?」

 

 健二「ああ。もうちょっと景色のいいトコに行ったら昼飯にするつもりなんだ。」

 

 愛「一緒に弁当か〜、行く行くー!」

 

 早苗「よーし、決定ーい!」

 

 

 三人が楽しんでいたその時、

 

 

 「随分と楽しそうですねぇ〜。」

 

 

 突如、どこからか聞こえた軽い口調の台詞に3人は反応する。

 

 

 早苗「誰!?」

 

 

 そう言いながら振り向いた先には、何やらコウモリのような宇宙人が木の枝に足をついた逆さま状態で見つめていた。

 

 

 早苗「あなた一体誰?…人間じゃないみたいだけど…。」

 

 

 早苗が問いかけると、その宇宙人はその場から跳躍して一回転して着地をして名乗る。

 

 

 グラシエ「我が名は、バット星人グラシエ!」

 

 

 早苗「バット星人?」

 

 健二「…グラシエ?」

 

 

 名乗りを挙げた宇宙人。それはかつて『カイザーダークネス(ウルトラマンベリアル)』に仕えてゼロ抹殺を企んだ宇宙人5人衆『ダークネスファイブ』の尖兵としてゼロの能力を調べる役割としてゼロに挑んだ『触角宇宙人バット星人グラシエ』なのである!

 

 奴はその時にゼロに倒された筈なのだが、今回何らかのきっかけで蘇ったのか、突如姿を現したのである。

 

 

 グラシエ「自己紹介は終わりました。では単刀直入に! ウルトラマンゼロはどこだかご存知でしょうかー?」

 

 

 健二「ゼロ…?何故ゼロの事を知っている!?」

 

 グラシエ「私は、かつてゼロを抹殺するために挑んだのですが、彼にに倒されてしまったのです。ですが何故か甦った私は、この世界にゼロが来ている事を知り、報復のためにやって来たのです!」

 

 グラシエは相変わらずの軽い敬語口調で健二たちに自身のゼロとの因縁を話す。

 

 

 早苗「ゼロさんと、以前交戦経験があったんだ…。」

 

 愛「てかこの世界にゼロも来ていたの!?」

 

 早苗が関心する一方、愛はこの世界にゼロも来ていたことを初めて知り驚く。

 

 

 “シュンッ”

 

 

 早苗「ひゃっ!?」

 

 

 瞬時に健二たちの目前までに移動した後、グラシエは問いかける。

 

 

 グラシエ「あなた達、ゼロの居場所をご存知ありませんか?」

 

 

 ゼロの居場所を問いかけるグラシエ。だが、健二たちもまたそのゼロの仲間であり光の戦士。例え知っていても素直に教える気は無かった。

 

 

 健二「分からない。…それに例え知っていても、教えないと言ったら…!?」

 

 

 そう抵抗しながら、エスプレンダーを取り出そうと懐に手を突っ込む健二。

 

 

 グラシエ「…やはりそう来ましたか~…仕方ありませんね。こうなったら無理矢理にでも炙り出すまでです!」

 

 

 グラシエはそう叫びながら空中に浮遊し、やがて指を鳴らす。

 

 

 “パチンッ”

 

 

 “ジジジジジジ…”

 

 

 “ズドーン”

 

 

 すると、突如空にワームホールのような空間の穴が現れ、そこから赤黒い稲妻のような光線が放たれる!

 

 

 それが地面に直撃して爆発すると、その爆風の中から二体の怪獣の影が現れる!

 

 

 最初は煙で黒い影のようにしか見えなかったが、煙が薄れるにつれ怪獣の姿が徐々にハッキリとしていく…。

 

 

 健二「…あれは…?」

 

 

 健二も早苗、愛も目を凝らして怪獣の姿を確認する。

 

 

 早苗「エレキングとレッドキング!?」

 

 

 怪獣の姿を確認した早苗は目を見開いてそう呟いた…!

 

 

 そう、彼女の言う通り、現れた二匹は外見がそれぞれ『どくろ怪獣レッドキング』と『宇宙怪獣エレキング』に酷似しているのである。

 

 

 いずれもかつて他の怪獣を倒した事があり、それぞれ『ウルトラマン』、『ウルトラセブン』と激闘を繰り広げた強豪怪獣である!

 

 

 しかし二体とも姿が若干異なり、レッドキングは普段よりも一回り大きく、エレキングは体の模様が青白くて何処か刺々しくなっており、両手には2本ずつ爪が生えている。

 

 

 グラシエ「ふっふっふ…確かに奴らはレッドキングとエレキングですが、普通よりも一味も二味も違うのですよ。」

 

 

 人差し指を振りながらそう言うと、グラシエは声高に怪獣たちの紹介を始める。

 

 

 グラシエ「エントリーNo. 1! 装甲怪獣レッドキング!!

 

 

 エントリーNo.2! 放電竜エレキング!!」

 

 

 グラシエに指名されると共に、レッドキングとエレキングはそれぞれ爆散するマグマと青白い雷(いかづち)バックに咆哮を上げる!

 

 

 そう、グラシエが呼び出した怪獣は『装甲怪獣レッドキング』と『放電竜エレキング』なのだ!

 

 

 いずれもあの最強・最速の戦士『ウルトラマンマックス』と激闘を繰り広げた怪獣であり、レッドキングはかつて太平洋上に突如出現した浮遊島『サブジェクト・ファントム』にて災いの神として君臨していた怪獣であり、マックスを苦戦させただけでなく、かつて古代人に作られた人工知能であり、その島を制御するシステムだった『電脳珍獣ピグモン』の守護獣『両棲怪獣サラマドン』と『飛膜怪獣パラグラー』を立て続けに倒してしまった事もある獰猛な怪獣であり、エレキングは『変身怪人ピット星人』の配下として、ある時は1人の女性のペットになりすまし、ある時は複数で襲撃して来たりなどしてマックスと二度に渡り戦った怪獣である!

 

 また、いずれもマックスと二度に渡り激闘を繰り広げたという共通点もある。

 

 

 恐らくグラシエはこの二体の戦歴を知って判断し、ゼロ抹殺として選び怪獣墓場から蘇らせたのであろう。

 

 

 健二「くっ…!」

 

 強敵怪獣の出現に緊張の表情で身構える健二と早苗。愛は早苗の後ろに隠れて怖気づいている。

 

 

 グラシエ「どうです?これぞかつてゼロにぶつけた地獄の四獣士以上に強力な、選りすぐりの二大怪獣!」

 

 

 健二「グラシエ…今から何をする気だ!?」

 

 

 グラシエ「決まってますよ?レッドキングとエレキングを暴れさせ、ウルトラマンゼロを炙り出すのです。行け!!」

 

 

 グラシエの指示を受けた二大怪獣は咆哮を上げた後、暴れようと街目掛けて進撃を始める!

 

 

 健二「止めろー!!」

 

 

 健二が焦りで叫んだその時…!

 

 

 “ズドーン”

 

 

 突如、二大怪獣の前方の地面から激しく土砂が巻き上がる!

 

 

 グラシエ「ああん?」

 

 健二「ん?」

 

 早苗「今度は何…?」

 

 

 グラシエと健二たちが見つめるその先の砂煙の中から咆哮を上げて現れたのは、先日主人であったアングラモンを失い、野良超獣となったギタギタンガであった!

 

 

 恐らくギタギタンガはあの後も、アングラモンから受けた破壊工作の指令を続行し、各地で暴れていたのであろう。

 

 そして今回、霞ヶ崎を襲撃しようと再び姿を現したのである!

 

 

 現れたギタギタンガは街目掛けて進撃しようとするが、すぐさまレッドキングとエレキングに気付き、睨み付けるように身構える。

 

 本能により、自身の邪魔をする怪獣に敵意を燃やしているのであろうか…?

 

 

 早苗「もう一体現れるなんて…。」

 

 健二「さなちゅん、俺たちも行くしかないね。」

 

 早苗「そうね…。」

 

 変身を決心しようとする健二と早苗。だが、現れたギタギタンガを見たグラシエは、顎に手を当ててしばらく考えた後、

 

 グラシエ「ちょうどいいですねぇ、レッドキングとエレキングの力を試してみましょうか。

 

 (健二たちの方を向いて)グレードアップした二体の力、あなた達に見せてあげましょう。

 

 (ギタギタンガの方を指差して)行け!!」

 

 

 ギタギタンガを、蘇らせた二体の実験台にする事にしたグラシエ。指示を受けたレッドキングは、指をポキポキ鳴らしてドラミングをした後、ギタギタンガ目掛けて突進する!

 

 

 ギタギタンガもレッドキング目掛けて駆け寄り、やがて二体は組み合う。

 

 

 始めは両者互角と思われたが、次第にギタギタンガが押され始めていき、やがてレッドキングはギタギタンガの両腕を掴んで軽く持ち上げて放り投げる!

 

 立ち上がったギタギタンガはレッドキングの胸部に横降りの頭突きを決めるがレッドキングは強靭なボディで耐え抜き、逆に両手でギタギタンガの頭部の角を掴んで屈ませ、顔面に膝蹴りを二発打ち込んだ後右拳のアッパーでかち上げ、その後頭部に左フックを決め、続けて腹部に右足蹴りを叩き込んで怯ませた後ヘッドロックを決め、そのまま走り込みながらフェイスクラッシャーで地面に叩き付ける!

 

 レッドキングはギタギタンガの頭部を両手で掴み、更に攻撃を加えようとするが、ギタギタンガはそれを振りほどき、レッドキングの身体に連続してパンチを打ち込むが、レッドキングはまるでダメージを受けた様子はない。

 

 逆にレッドキングは左手でギタギタンガの右腕を掴んで受け止め、そのまま右腕で頭部にカウンターのラリアットをぶち込んで転倒させる!

 

 更に転倒したギタギタンガに数回ストンピングを打ち込んだ後、サッカーボールのように蹴り転がした!

 

 

 圧倒的な力でギタギタンガを圧倒するレッドキング。流石はかつてマックスを苦戦させただけあって、その力には怪獣の上を行く超獣の一体であるはずのギタギタンガもまるで歯が立たない!

 

 健二たちも、その超獣をも圧倒するレッドキングの圧倒的な強さに見入っていた。

 

 

 立ち上がったギタギタンガは、頭部の角から酸欠ガスを噴射してレッドキングに浴びせる。

 

 だが、これもレッドキングにはまるで通用していない!強靭なパワーを持ち、かなりのタフネスでもあるレッドキングは、その分肺活量もとてつもなく高いのであろう…。

 

レッドキングはガスを浴びたまま近くの岩を持ち上げ、ギタギタンガ目掛けて投げつける!

 

 レッドキングの投げた岩はギタギタンガのガスを噴射している角に命中し、破壊してしまった!

 

 武器の発射口を破壊されて怯むギタギタンガ。

 

 

 グラシエ「さてお次は、エレキングの力!」

 

 

 指示を受けたエレキングは、口から三日月状の光弾『放電刃』を連射してギタギタンガにぶつける!

 

 ギタギタンガがそれを数発受けて怯んだところで、今度は長い尻尾を体に巻き付けて放電する。

 

 これぞエレキングの必殺技『エレクトリックテール』である!

 

 ギタギタンガの体中に青白い電気を流し込んだ後エレキングは巻き付けた尻尾を解く。ギタギタンガは完全にグロッキーとなった。

 

 

 レッドキングは動きを止めたギタギタンガを軽々と頭上高く持ち上げ、力一杯上空目掛けて放り投げる!

 

 そして力を溜めると、上空のギタギタンガ目掛けて口から勢いよく岩石を放つ!

 

 これぞ、サブジェクト・ファントムのレッドキングの必殺技であり、体内に溜め込んだ爆発性の高い岩石を吐き出す『爆発岩石弾』である!

 

 爆発性の高い岩石を全身に受けたギタギタンガはそのまま上空で大爆発し、粉々に砕け散った。

 

 勝利したレッドキングとエレキングは咆哮を上げる。

 

 

 ギタギタンガを引き立て役とし、その強さを証明した二大怪獣に戦慄する健二たち。

 

 健二「なんて強さだ…。」

 

 

 グラシエ「どうです!二大怪獣の強さは! これならばさしものゼロも大苦戦いや敗北間違いなしですねぇ~!」

 

 グラシエは二大怪獣の強さを自慢しつつ、再びゼロ打倒を宣言する。

 

 

 それを聞いた健二は、戦慄しつつも振るえるほど強く拳を握った後、言い出す。

 

 

 健二「…行こう、さなちゅん。」

 

 

 早苗「!…ケンちゃん?」

 

 

 健二の思わぬ発言に早苗は少し驚く。だが、健二はそんな早苗の気持ちを分かっているかのように続ける。

 

 

 健二「分かる。お前も見ただろ?あいつらの強さ。俺だって怖いさ。

 

 だが、今食い止めておかないと街に被害が出てしまう…。

 

 それに…今の俺たちは、ウルトラマンなのだから…!」

 

 

 早苗「ケンちゃん………そうだね。ゼロさん…櫂さんも、いつも頑張ってくれてるもんね。私たちも、折角ウルトラマンから光を授かったんだし…!」

 

 健二「俺たちも、櫂さんと肩を並べられるように…。」

 

 早苗「愛ちゃん…下がってて…。」

 

 愛は心配そうな表情で、無言で安全な所へ下がっていく。

 

 

 健二と早苗は遂に変身を決心し、健二はエスプレンダーをはめた右手を左肩に当てて手前に突き出し、早苗はアグレイターはめた右腕を下におろし、アグレイターの翼状のパーツを左右に展開させる。

 

 

 “ピキーン”(所謂エスプレンダー発光音)

 

 

 “ピシーン ガガガガガガ…ファイーン”(所謂アグレイター点滅&発光音)

 

 

 エスプレンダーは赤い光を放ち、アグレイターは発光部を激しく点滅させながら青い光を放ち、健二と早苗は光に包まれる。

 

 

 そして赤と青の光の中から、『ウルトラマンガイア』と『ウルトラマンアグル』(いずれもV1)が飛び出す!

 

 

 “ズドーン”

 

 

 W(ダブル)変身により登場したガイアとアグルは激しく土砂を激しく巻き上げながら着地する。

 

 

 構えを取るガイアとアグル。レッドキングとエレキングもそれに気づき身構える。

 

 

 グラシエ「おぉ、アメイジング! まさかあなた方もウルトラマンだったとは…!」

 

 健二と早苗がガイアとアグルである事を知らなかったグラシエは、2人の変身に少し驚き、そして…、

 

 

 グラシエ「いいでしょう。ゼロを抹殺する前に、まずはあなた方の力を試してみましょうか。」

 

 

 健二「絶対にやらせない! ゼロは、俺たちの仲間だ!」

 

 

 グラシエ「ゼロの仲間ですか…なら、尚更倒さなければなりませんねぇ〜…

 

 

 では、ゲームスタートと行きますか。行け!レッドキング!エレキング!」

 

 

 グラシエの指示を受けたレッドキングとエレキング、そしてガイアとアグルは、互いに地響きを立て、土砂を巻き上げながら駆け寄る!

 

 

 因みに互いに駆け寄る際、一歩踏むごとに土砂が激しく巻き上がっているのだが、この様子はガイアとアグルは地球出身故に2人の力に地球の大地が呼応しているように見えるのに対し、レッドキングとエレキングの方は二体の破壊する意思が大地にも伝わり、二体が駆けるだけでも地球の破壊を進めているように見える。

 

 即ち同じ動きでも全く違う印象を受けるため感慨深いものを感じる。

 

 

 ガイアはレッドキング、アグルはエレキングと、それぞれ相手する事になった。

 

 

 ガイアはレッドキングに駆けて接近すると同時に右足の前蹴りを叩き込む。

 

 レッドキングは少したじろぐが、大してダメージを受けた様子はなく、ガイアは続けて胸部に右肘でエルボー、左手チョップを首筋の右側に叩き込むがレッドキングはこれも耐え抜き、再び攻撃しようと向かって来たガイアの胸部にカウンターパンチを打ち込んで弾き飛ばした。

 

 ガイアは少し怯むが直ぐに体勢を立て直し、レッドキングの右フックをしゃがんでかわすと同時に後ろに回り込み、しがみ付いておんぶされるような形でマウントを取って頭部にチョップを打ち込むが、直ぐさま前方に放り投げられ地面に落下する。

 

 レッドキングは、横たわるガイアをサッカーボールのように何度も蹴って転がした後、両手で首を掴んで立ち上がらせ、そのまま締め上げ始める…!

 

 

 エレキングと対するアグルは、最初は腕のリーチの差を活かして殴り込みをかわしてからのキックで応戦していたが、跳び蹴りを放とうと高く跳躍した時、エレキングの全身を大きく回転させて放った長い尻尾の打撃を喰らって地面に落下してしまう。

 

 アグルは気を取り直して立ち上がると、接近して来たエレキングと組み合うが、エレキングはそのまま全身に青白い電気を走らせてアグルに感電させ、怯んだ隙に更に電気を走らせた両手の爪による引っ掻き攻撃を連続で繰り出し、それを受けたアグルは火花を散らせながら吹っ飛ぶ。

 

 体勢を立て直したアグルは、広げた両手の間に発生した光の帯を光弾『リキデイター』に変えて放つ!

 

 しかし、エレキングはそれに動じずに口から青白い光弾を連射して、リキデイターに数発当てた後相殺する!

 

 そしてアグルに動揺する間も与えずそのまま光弾の雨あられを浴びせる…!

 

 

 一方レッドキングは、尚もガイアの首を締め上げ続けていた…。

 

 

 “ガチッ”

 

 

 だが、ガイアは苦しみつつもがむしゃらにレッドキングの右足の甲を左足で踏みつけ、それによりレッドキングが痛がりながら手を放した隙に腹部に前蹴りを叩き込んで後退させる。

 

 

 向かい合う両者。足の甲を踏まれたレッドキングだが痛かったのは踏まれた時のみだったようであり、今は痛みを感じず逆に怒りに火が点いてしまっていた。

 

 

 健二「一気にカタを付けてやる!」

 

 

 健二(ガイア)はそう叫ぶと、腕を十字に組んでエネルギーを溜め、右腕をL字型に構えて左手を右腕の関節に乗せて必殺光線『クァンタムストリーム』を発射する!

 

 

 レッドキングも力を溜めると、口から勢いよく爆発岩石弾を放つ!

 

 

 光線と岩石は、両者の間で激しく爆発を起こしながらぶつかり合う。

 

 

 健二「うぉぉぉぉぉぁぁぁあああ…!!」

 

 

 ガイアは更に力を込めて光線の威力を増していく。光線は岩を破壊しつつ徐々にレッドキングに向かう。

 

 

 だがその時!

 

 

 グラシエ「おやおや、いいんですか?そんな事しちゃって。」

 

 健二「…何ッ!?」

 

 突然グラシエが意味深な発言をし、健二(ガイア)はそれに気づく。

 

 

 グラシエ「今ここでレッドキングを爆破すれば、あなた自身はもちろん、この辺一帯も吹っ飛んでしまいますよ~?」

 

 

 健二「何ワケの分からんことを抜かしやがる!」

 

 

 グラシエ「レッドキングの吐き出す岩石は爆発性の高いモノ。それが体内に詰まっているという事は…もうお察しできるでしょう?」

 

 

 健二「…はっ!?」

 

 

 グラシエの発言でようやく気付いた健二。

 

 そう、今ここでレッドキングを爆破してしまうと大爆発を起こし、自分や早苗、愛はもちろんの事、民家も存在する周囲一帯が吹っ飛んでしまう危険性があるという事に…!

 

 今のレッドキングは“動く火薬庫”同然なのである!

 

 

 動揺により光線の威力が弱まるガイア。その隙にレッドキングは更に力を入れて岩石を発射し、クァンタムストリームを完全に相殺した後そのままガイアにぶつける!

 

 岩石の直撃を受けたガイアはたまらず吹っ飛び、地面に叩き付けられる!

 

 

 グラシエ「くくく、脆い…脆いですねぇ、あなた方がゼロの仲間なのも頷けます。」

 

 健二に皮肉のこもった言葉を言い放つグラシエ。

 

 

 地面に横たわるガイア。爆発岩石弾の直撃により受けたダメージは相当なモノなのか、悶絶したまま起き上れない。

 

 

 更に大きなダメージを受けた影響か、危機を知らせるようにライフゲージも点滅を始める…!

 

 

 レッドキングはガイアに接近すると、両手で右腕を掴み、そのまま軽々とスイングして地面に叩き付ける。

 

 続いてガイアを軽々と頭上高く持ち上げ、軽々と放り投げて地面に叩き付けた後、横たわるガイアの腹に蹴りを入れて吹っ飛ばす。

 

 ガイアはよろけながらも立ち上がり、残された力を振り絞り右足で横蹴りを放つが易々と脚を掴まれることで受け止められ、その状態で跳躍して左脚で蹴りを放つがまたしても脚を掴まれることで受け止められる。

 

 そしてレッドキングはそのままガイアの両足を掴んだ状態でジャイアントスイングで何度も振り回した後遠方へと思い切りぶん投げる!

 

 投げ飛ばされたガイアは岩山にぶつかった後、崩れ落ちるように地面に倒れる…。

 

 

 エレキングと対するアグルも不利な状況に追い込まれていた。

 

 アグルは突進するエレキングの角を両手で掴みなんとか抑え込むが、その隙にエレキングは長い尻尾をアグルの首に巻き付け、そのまま振り回して地面に叩き付けた!

 

 更に尻尾をアグルの全身に巻き付け、力を込めて放電する!

 

 

 エレクトリックテールをモロに喰らってしまったアグルは、エレキングが尻尾を解いた後、その場に崩れるように倒れ込んでしまった。

 

 

 アグルもまた、大ダメージを受けたことによりライフゲージが点滅を始める。

 

 

 それぞれウルトラマンをダウンさせたレッドキングとエレキングは得意げに咆哮を上げる。

 

 

 グラシエ「もう少し骨のある方だと思いましたが、ここまでですか。

 

 実に呆気ないですが、お陰でゼロを倒すためのいいウォーミングアップになりました。

 

 トドメです!」

 

 

 グラシエの指示を受けたレッドキングとエレキングは、それぞれガイアとアグルにトドメを刺そうと接近を始める…!

 

 

 早苗「そんな…。」

 

 健二「…チクショゥ…!」

 

 

 悔しがる健二と早苗。正に絶体絶命!

 

 

 

 一方、そんな戦いを少し離れた場所から見つめている者たちがいた。

 

 その者たちこそ、再びこの世界にふらりとやって来たさすらいの風来坊と、それにお供する宇宙人の風来坊、そして、そんな彼らに懐く珍獣が…!

 

 謎の反応を感知してやって来たガイとバルタ、ピグモンが、ガイア達の戦いを見つめていたのである。

 

 

 ガイは、今にもやられそうになっているガイアとアグルを見て遂に居ても立っても居られなくなった。

 

 

 ガイ「バルタ…お前の分身で奴らを翻弄しててくれ。」

 

 バルタ「心得たぜ旦那!」

 

 

 “ピシィィィン”

 

 

 “フォッフォッフォッフォッフォッフォ…”

 

 

 バルタは了解すると、古布を脱ぎ捨て、ハサミ状の両手をクロスした後頭の横に立て、特殊音声と共に巨大化すると共にガイア達の方へ瞬間移動して現れる。

 

 

 いきなり現れたバルタン星人。それには健二と早苗はもちろん、グラシエも驚きを隠せなかった。

 

 グラシエ「おやおや、いきなり何です?」

 

 健二「ッ!?こんな時にバルタン星人まで!」

 

 早苗「何て事なの…。」

 

 

 だが、健二たちは即座に気付いた。それは、バルタン星人は自分達ではなく、怪獣達の方を向いて身構えているという事を…。

 

 

 そして、バルタはガイアとアグルの方に振り向いて語り掛ける。

 

 

 バルタ「お困りのようだねぇ。」

 

 

 早苗「貴方は…一体誰ですか?」

 

 

 バルタ「誰でもない。ただの風来坊さ。」

 

 

 グラシエ「何を訳の分からぬことを。やっておしまい!」

 

 

 指示を受けたレッドキングとエレキングはバルタ目掛けてそれぞれ爆発岩石弾と放電刃を放つ。

 

 

 だが、バルタはまたしてもバルタン星人おなじみの効果音と笑い声と共に青白い自身の残像を残して移動する形でかわす。

 

 岩石と光弾はバルタの残像をすり抜ける形で不発に終わる。

 

 

 二体が動揺している隙に更にバルタは二体の周囲に瞬時に自身の分身を多量に発生させ始める!

 

 

 これぞ、宇宙忍者バルタン星人の特技の一つ『分身の術』である。

 

 

 レッドキングとエレキングは当てずっぽうにバルタの分身目掛けて岩石と光弾を発射したり殴り掛かったりしていくが、いずれもすり抜けて空ぶる一方であり、見事に翻弄され始めていた。

 

 

 レッドキングに関してはイライラしてきたのか、自身の頭を叩き始めている。

 

 

 健二「スゲェ…。」

 

 早苗「流石は宇宙の忍者だわ…。」

 

 バルタン星人の超能力を目の当たりにし感心する健二と早苗。

 

 

 一方ガイはバルタが二体を翻弄している間に変身に入ろうとしていた。

 

 

 ガイ「ピーちゃん…少し下がっててくれ。」

 

 どうやらガイは、ピグモンの事を“ピーちゃん”と呼んでいるようだ(笑)

 

 ガイの言葉を聞いたピグモンは、一旦ガイの側から離れ、安全な所まで下がって木陰から見守り始める。

 

 

 遂に変身の時が来たガイは、オーブリングを突き出し、金色の光に包まれる…!

 

 

 ガイ「タロウさん!」

 

 《ウルトラマンタロウ!》

 

 タロウ「トァーッ!」

 

 

 ガイ「メビウスさん!」

 

 《ウルトラマンメビウス!》

 

 メビウス「セヤッ!」

 

 

ガイはウルトラマンタロウとウルトラマンメビウスのフュージョンカードをオーブリングにダブルリードし、ガイの両側に二人のビジョンが並び立つ。

 

 

 ガイ「熱いやつ、頼みます!」

 

ガイはタロウとメビウスのビジョンと共に一度両腕を広げた後、体を左側にひねり勢いよくリングを揚げる!

 

 

 《フュージョンアップ!》

 

 

 ガイは光に包まれ、リングは音声と共に側面のカバーが展開し、エレキギター調のメロディと共に赤、白と光った後に黄色に輝き、そしてガイはタロウとメビウスのビジョンと合体するかのように重なり炎のような光に包まれ、やがてその光が下から消えていき姿を現す。

 

 

 《ウルトラマンオーブ! バーンマイト!》

 

 

 姿を現した『ウルトラマンオーブ・バーンマイト』は、炎をバックにメビウスの輪のマークが浮かび上がり、やがて爆発と共に波紋のマークが浮かんだ、所謂タロウとメビウスのタイトルバックと巨大化カットが合わさったような背景で、手を広げた状態で飛び出す!

 

 

 (バーンマイト戦闘BGM)

 

 

 オーブは体に炎を纏った状態で空中で数回ひねりや回転を加えた後、その回転力や落下のスピードを活かして急降下キックを放つ!

 

 

 ガイ「オリャーッ!」

 

 

 “ズガーン”

 

 

 炎を纏った『スワローキック』の直撃を受けたレッドキングは爆発と共に大きく転倒し、キックを決めたオーブは着地を決めると共に体に纏っていた炎を消滅させて姿を現す。

 

 

 ガイ「紅に燃えるぜっ!」

 

 オーブは振り向くと共に口上を決める。

 

 

 颯爽と登場したウルトラマンオーブ。ほぼ諦めかけていた健二(ガイア)と早苗(アグル)は驚愕と共にそれを見上げ、戦いを見守っていた愛も目を見開いて驚く。

 

 健二「…何だ…?」

 

 早苗「あの戦士は…?」

 

 愛「なんか…かっこいいかも。」

 

 

 バルタ「では、拙者はここで…。」

 

 そう言うと、バルタは自身の分身を消滅させると共に等身大に戻り戦いを見守り始める。

 

 

 グラシエ「全く、次から次へと何です?」

 

 グラシエはさっきから続けて現れる乱入者に呆れ気味になりつつも二体に指示を出す。

 

 

 レッドキングはオーブに接近し、オーブも両手の拳同士をぶつけて気合を入れる。

 

 両者はメンチを切るようにお互い睨み合いつつ接近し合った後、激しいパンチの応酬を始める!

 

 腕と腕、拳と拳が激しくぶつかり合い、やがてオーブはレッドキングの右フックを左腕で受け止めて右拳で叩き落とした後、跳躍しつつ左腕でラリアットを繰り出すがしゃがんでかわされる。

 

 

 両者は互いに手と手を組み合い、互いの腕が震える程の力比べを繰り広げる。

 

 やがて組み合った両者の腕が下にねじ込まれた時、オーブは頭突きをレッドキングの頭部に打ち込み、その痛みによりレッドキングが怯んだ隙に更に膝蹴りを腹部に叩き込んで前屈みにさせた後、レッドキングの首の後ろに左腕を回し、右手で掴んだレッドキングの左腕を自身の首の後ろに引っ掛け、そのまま勢いよく後ろに倒れ込みブレーンバスターで地面に叩きつけた!

 

 

 更に怒ったレッドキングは砂、石などを振い落としながら立ち上がり、オーブ目掛けて爆発岩石弾を放つ。

 

 

 ガイ「ストビュームフット!」

 

 

 “ズガン”

 

 

 オーブは迫り来る岩石をしゃがんでかわすと共に足に炎を纏って滑り込むように突っ込み、炎の蹴りを足払いのように繰り出し、それを右足(先ほどガイアに踏まれた部位)に受けたレッドキングは、痛そうに右足を押さえながら転倒した。

 

 

 レッドキングが押され始めた事に気付いたエレキングはオーブ目掛けて放電刃を連射する。

 

 

 オーブは迫り来る光弾を、手刀で弾きつつ軽快なフットワークでかわしていき、やがて赤黒い光に包まれる…。

 

 

 ガイ「ゾフィーさん!」

 

 《ゾフィー!》

 

 ゾフィー「ヘアッ!」

 

 

 ガイ「ベリアルさん!」

 

 《ウルトラマンベリアル!》

 

 ベリアル「ゼェェアッ!」

 

 

 ガイ今度はゾフィーとウルトラマンベリアルのカードをダブルリードし、ガイの側面に二人のビジョンが並び立つ。

 

 

 ガイ「光と闇の力、お借りします!」

 

 ガイはゾフィーとベリアルのビジョンと共に右腕を揚げた状態から左腕を大きく回した後リングを揚げる!

 

 

 《フュージョンアップ!》

 

 

 ガイは光に包まれ、リングはオーケストラ調だがより荘厳で禍々しいメロディと共に黄色、濃い紫と光った後に赤黒く輝き、そしてガイはゾフィーとベリアルのビジョンと合体するかのように重なり赤黒く禍々しい光に包まれ、やがてその光が下から消えていき姿を現す。

 

 

 《ウルトラマンオーブ! サンダーブレスター!》

 

 

 姿を現した『ウルトラマンオーブ・サンダーブレスター』は、かつてベリアルを閉じ込めていた宇宙牢獄が砕けた後に十字状の光が放たれ、青い光と赤黒い闇が交互に映り、やがてエメラルド色の光と赤黒い稲妻のエフェクトを背に右腕を突き出して飛び出す!

 

 

 (サンダーブレスター戦闘BGM)

 

 

 ガイ「闇を抱いて光となる!」

 

 

 “ドガンッ”

 

 

 オーブは口上を述べながら右腕で放電刃を防ぎつつ走ってエレキングに接近し、赤黒い光を纏ったパンチを顔面に叩き込んでエレキングを吹っ飛ばした!

 

 

 早苗「…姿が変わった?」

 

 愛「あ、あれもかっこいい…でも、ちょっと怖いかも?」

 

 突如姿を変えたオーブには早苗たちも驚きを隠せなかった。

 

 

 エレキングはエレクトリックテールを決めようと尻尾をオーブの右腕に巻き付ける。

 

 だが、オーブは電気を流し込まれる前に逆に勢いよく自身の右腕に巻き付いた尻尾を引っ張り、それによりエレキングは高く引き上げられた後大きく弧を描いて地面に激突する。

 

 

 エレキングは立ち上がると、今度はレッドキングと共にオーブに襲い掛かる。

 

 オーブは駆け寄って来る二体に正面から突っ込んで行き、やがて自身が二体の間に来る形でレッドキングに左腕、エレキングに右腕と同時にラリアットを叩き込んで転倒させる。

 

 そしてオーブは片手でそれぞれの頭を掴んで起き上らせた後、エレキングの頭部にパンチ、レッドキングの腹部にキックをそれぞれ叩き込んで吹っ飛ばした。

 

 

 自分たちが苦戦した怪獣二体と互角以上に戦うなんて…健二と早苗はオーブの強さに感心すると同時に驚愕していた。

 

 

 グラシエ「ふっふっふ、面白い…実に面白いですねぇ!」

 

 突如グラシエがオーブと怪獣たちの間に浮遊した状態で現れ、両者は一旦戦闘態勢を解く。

 

 

 グラシエ「ウルトラマンゼロに報復しようとやって来たのですが、見た事もないウルトラマンとこんなにも遭遇する事になろうとは…。」

 

 ガイ「お前の狙いは、ゼロさんを抹殺する事だったのか。」

 

 グラシエ「そうです。どうやら貴方もゼロと何か関係があるようですねぇ。」

 

 ガイ「あぁ。ゼロさんは俺の師匠でもあり仲間だ。それを狙うなど、俺が許さない。」

 

 ガイ(オーブ)はグラシエの目的を知り、再び身構える。

 

 

 健二「グラシエ…貴様ー!!」

 

 ガイアはよろめきながらも立ち上がる。

 

 グラシエ「おやおや、そんなボロボロの状態でまだやろうってのですか?」

 

 健二「当たり前だ!!こんなにもやられて…黙っていられるか!!」

 

 

 惨敗してもなお闘志を維持している健二(ガイア)の姿を見たグラシエは…。

 

 グラシエ「なるほど…気が変わりました。では猶予を与えましょう。それまでに強くなって来る事ですね。」

 

 健二「何ッ!?」

 

 早苗「猶予?…それはいつまでなの!?」

 

 グラシエ「いつまでとかはありませ~ん。あなた方が強くなり次第、いつでもどうぞ。」

 

 ウルトラマンとしてまだ未熟な健二と早苗は、完全にグラシエに舐められてしまっていた。

 

 それを知った二人。ガイア(健二)は悔しそうに地面を殴り、アグル(早苗)は途方に暮れたように下を向く。

 

 

 ガイ「彼らが強くなるまでの間、お前はどうする気だ?」

 

 グラシエ「もちろん、ゼロの抹殺は取っておくつもりですよ~?メインディッシュは最後に取っておかないと。

 

 …それに、あなたの事も気になりますしねぇ。その姿、どうやら貴方は“あのお方”からも力をお借りしているようですねぇ。」

 

 グラシエが言う“あのお方”とは、もちろんベリアルの事である。

 

 

 グラシエ「では、またの機会を!」

 

 

 “ズドーン”

 

 

 グラシエは、怪獣二体と共に、赤黒い稲妻状の光と共にその場から姿を消した…。

 

 

 ベリアルの力も借りている事に触れられたオーブは何か考え事をするかのようにその場に立ち尽くし、ガイアとアグルは尚も悔しそうな素振りを見せていた…。

 

 

 しかし、グラシエは何故蘇ったのであろうか………?桜井敏樹がウルトラマンテラの力により蘇生させたのか、それとも彼のゼロへの私怨が彼を蘇らせたのか、もしかするとベリアルがゼロを抹殺させるために蘇らせたのか………?

 

 こればかりは謎のままであった。

 

 

 

 やがて3人は変身を解いた。

 

 早苗「大丈夫?ケンちゃん…。」

 

 健二「あぁ…すまねぇ…。」

 

 健二は特に傷が深いのか、早苗と愛に肩を貸してもらっていた。

 

 

 ガイ「危ない所だったな。」

 

 突如声のした方を振り向く2人。そこには先ほど自分たちを助けたガイとバルタ、そしてピグモンが立っていた。

 

 

 健二「誰だ?アンタは。」

 

 早苗「それにバルタン星人とピグモンまで…?」

 

 愛「それに…男の人が、ピグモンに懐かれてる…?」

 

 突然の見知らぬ1人の男が異形の生物二体を引き連れている妙な光景に驚きつつも疑問を投げかける3人。

 

 

 ガイ「俺はクレナイ・ガイ。通りすがりの風来坊さ。」

 

 名乗ったガイ。すると健二は更なる事に気づく。

 

 健二「もしかして…さっきのウルトラマン?」

 

 ガイ「フッ、流石に察しがいいな…ま、俺の側にバルタもいるから気づくか。」

 

 バルタ「拙者、バルタン星人のバルタと申す。ガイと旅先で知り合いお供している風来坊だ。」

 

 ガイに指名されたバルタは自己紹介をする。

 

 ガイ「そしてこのピグモンも、同じく旅先で知り合い、しばらくは俺たちと一緒する事になった者だ。」

 

 ガイは自身にじゃれ付くピグモンの頭を撫でながら紹介する。

 

 

 3人「…はぁ…。」

 

 健二たちはまだちょっとキョトンとしている。

 

 

 ガイは更に詳しく話した。自分たちがなぜこの世界に来たのか、自分は何者なのか、そしてゼロとの関係など…。

 

 ピグモンにより治療を受けながら話を聞いた健二たちはようやく理解したようだった。

 

 健二「じゃあ…誰かに呼ばれて来たというわけではないのか。」

 

 早苗「ゼロさんって、結構顔が広いのね…。別宇宙にも仲間がいるのに加え、ピグモンとも仲が良いなんて…。」

 

 愛「ウルトラマンオーブも、初めて聞く名前ですね。とてもカッコいいです!」

 

 愛からカッコいいと言われたガイは照れ顔になりそうになりながらも話を続ける。

 

 ガイ「ゼロさんは俺の師匠でもあり、共に戦った仲間だ。そのゼロさんがこの世界に来ている事を知って来たんだが…君たちは何か知っているか?」

 

 健二「…それは…。」

 

 ガイからゼロの居場所を聞かれた健二たちは返答に困る…。

 

 今ではゼロを呼び出すのは、彼と一体化している櫂を呼び出すようなものなのであり、櫂がゼロである事をあまり広めないようにしているのだろうか…?

 

 ガイ「知らないならいいさ。」

 

 

 健二たちは少しホッとした後、バルタにも話を振ってみる。

 

 健二「バルタは何処の星出身なんだ?」

 

 少し躊躇いつつもバルタは答える。

 

 バルタ「…拙者の星は今は無い。バルタン星は、地球人の行き過ぎた核実験で無くなってしまったからな。」

 

 早苗「そんな…。」

 

 思わぬ真実を知った早苗は言葉を失う。まさか、自分たちの星が他の星の住人に大きな被害を与えていたなんて…。

 

 健二「では、地球人が憎いのか?」

 

 バルタ「確かに拙者は地球人を恨んだ。しかし、その一方で宇宙を旅してみたいとも思っていた拙者は、放浪の旅に出掛けることにした。」

 

 そして放浪の旅を続け、様々な星の文明等に触れていく内に改心し、更にガイと知り合って地球に訪れた事により、僅かながらも地球人の進歩、自然等の美しさに魅了されたのだという。

 

 バルタ「だから、拙者に帰る場所などない。宇宙を放浪する。それが拙者の生きがいなんじゃ。」

 

 愛「旅をしていく内に心が変わり、憎き対象も愛すべき者に変わったか…何だか素敵です!」

 

 早苗「地球人は確かに、自分たちの価値観や正義感によって他の星の宇宙人や怪獣たちにも危害を加えた事もあった…。でも、今はそれらを反省し、少しずつだけど進歩しつつある…。」

 

 健二「俺たちも、そんな地球人の一人として、これからも地球や宇宙のために頑張って行かないとな。」

 

 三人は地球人として頑張って行く気持ちを一新した。

 

 

 ガイ「しかし、まさかこの世界にもガイアさんとアグルさんが存在し、その力を君たちが継いでいたとはな。」

 

 健二「はい。まだ未熟だけど、一生懸命やっています!………と言いたい所だが…さっきは…。」

 

 健二は、先ほどの戦いでの惨敗を思い出し、悔しさから拳を強く握り始める。

 

 早苗「先ほどの敵は余りにも強力で、まるで歯が立ちませんでした…。」

 

 早苗もまた悔しさから俯き始める…。

 

 

 気が付くと、ピグモンも何やら元気が無さそうに縮こまっていた。

 

 ピグモンもかつてはレッドキングに殺された身(このピグモンがその同一個体かどうかは不明だが)。その記憶が蘇ってしまったのであろう。

 

 

 ガイ「無理もない。奴らは強力な怪獣たちだ。あの最強・最速のマックスさんでさえ苦戦した相手だからな。」

 

 ガイは、何処から得た情報かは不明だが更に詳しく話した。あのレッドキングとエレキングがマックスと戦った個体であるという事、そもそもマックスとは何なのか、そして、普通のレッドキングとエレキングとどう違うのかを…。

 

 健二「なんてこった…最強・最速の戦士をも苦しめた怪獣だと?」

 

 早苗「私たちはそんな奴らと戦ってたなんて…。」

 

 驚きを隠せない健二と早苗。

 

 

 すると今度はピグモンが何かを話し始めた。

 

 バルタはそれを通訳して代弁する。

 

 それは、かつてサブジェクト・ファントムにてレッドキングを封印していたピグモンの事である。

 

 そのピグモンもまたレッドキングに狙われた事があり、それを守ろうとした怪獣・サラマドンとパラグラーを立て続けに倒してしまった事を。

 

 ピグモンは、それほどレッドキングが獰猛で残忍である事を知らせたかったのである。

 

 しかし、このピグモンが何故サブジェクト・ファントムのピグモンの事を知っているのか?そこばかりは謎である。

 

 

 愛「…うっ…うっ…すんっ…。」

 

 突然泣き声が聞こえ、ガイがその方を振り向くと、愛がすすり泣きを始めていた。

 

 ガイ「…何故泣いているんだ?」

 

 愛「だって…自分を守ってくれていたという事は、仲間だったという事でしょ?…それが殺されるなんて、どんなに辛いか…。」

 

 例えどんな者であれ命を尊ぶ慈悲深い心を持っている愛。それ故に、バルタの境遇に加え、ピグモンの守護獣が殺された事の話を聞いて心が痛んでいたのだった。

 

 

 早苗「何て心無い奴なのかしら…。」

 

 健二「愛さえ知らずに育ったモンスターめ…命を簡単に切り捨てるなんて…絶対に許せねぇ!」

 

 健二と早苗も、レッドキングへの怒りがひしひしと湧き上がっていた。

 

 

 健二「でも俺は…そんな奴にまるで力及ばず…ほぼ一方的にやられた………。

 

 悔しい………!奴を…投げ返したい………!!」

 

 

 先ほどの戦いで、レッドキングに何度も投げ飛ばされた事へのこの上ない悔しさを感じ始める健二。

 

 自分はウルトラマンという強大な力を得たというのに、そんな自分があんなに軽々と何度も投げられてしまうなんて…。

 

 

 ガイ「俺が、奴を投げ返せるようになるようにしてやろう。」

 

 健二・早苗「え?」

 

 ガイの言葉に健二と早苗は顔を上げる。

 

 ガイ「先ほどグラシエはお前たちに強くなるまで待ってやると言ったが、恐らく奴はその間も別の街を襲ったり、ゼロさんを見つけ次第暗殺したりするだろう…。そうなる前に、お前らが奴らにリベンジ出来るように手を貸してやる。」

 

 早苗「私たちが、奴らに勝てるようにしてくれるって事?」

 

 健二「しかし、一体どうすればいいんだ…?」

 

 

 健二たちの問いかけを聞いたガイは、帽子を深々とかぶった後…、

 

 

 ガイ「明日の正午過ぎ、町外れの採石場に来るんだな。」

 

 

 健二「採石場…?」

 

 

 ガイ「今日はここまでだ。あばよっ!」

 

 

 バルタ「では、そゆことで~…。」

 

 

 ガイは、バルタとピグモンと共に何処かへと去って行った…。

 

 

 健二「俺が…アイツ(レッドキング)を投げられるようにしてくれるのか…?」

 

 早苗「それってひょっとして、私たちに力をくれるって事かしら?」

 

 健二「まあとにかく、奴らにリベンジするためならこの際、行ってみよう…。」

 

 困惑しつつも、健二と早苗はガイに言われた通りにする事にした。

 

 

 翌日の昼過ぎ、健二と早苗はガイに言われた通り採石場を訪れる。

 

 

 案の定、ガイがバルタとピグモンと共に待っていた。

 

 

 健二「言われた通り来たぞ。風来坊さん。」

 

 早苗「単刀直入だけど…私たちに力をくれるのですか?」

 

 

 すると、ガイはこう答えた。

 

 ガイ「力をあげるんじゃない…お前らが自身の中に眠る力を引き出せるようにするんだ。」

 

 

 早苗「…ぇえ?」

 

 健二「どういう事だ?」

 

 

 疑問を投げかける健二と早苗にガイは語り掛ける。

 

 ガイ「お前らはそれぞれガイアさんとアグルさんの光を手にした。だが、その二人のウルトラマンさん方の光の力を、まだ十分に使いこなせていない。」

 

 健二「何でそれが分かるんだよ?」

 

 

 ガイ「俺はかつて別世界でガイアさんとアグルさんと共に戦った事があるからだ。お前らは弱いんじゃない。ガイアさんとアグルさんの本当の力をまだ出し切れていないだけなんだ。

 

 だからこれから三日間、それが出来るようになるよう俺が手を貸してやる。」

 

 

 早苗「一体、何をするつもりですか?」

 

 

 

 ガイ「決まってるだろ?…特訓さ!」

 

 

 

 健二「(早苗の方を向いて)とっ…?」

 

 

 早苗「(健二の方を向いて)くん…?」

 

 

 健二・早苗「(同時に正面を向いて)特訓!?」

 

 

 ガイの思わぬ発言に健二と早苗は驚きを隠せなかった。

 

 まさかの特訓を提案したガイ。彼はかつてレイバトスを倒すためにウルトラセブンとゼロの親子を相手に特訓をした事があるため、その経験からであろう。

 

 

 ガイ「この三日間で行う特訓はもう決めている。それをクリアすれば、奴らに勝つための力を引き出せるはずだ。どうだ?」

 

 

 健二と早苗は緊張の表情で少し考え始めた…。

 

 

 ガイ「決めるのはお前らだ。嫌と言うなら俺が今すぐ奴らを倒して来てやる。」

 

 

 しばらく考えた後、二人は遂に決心した。

 

 健二「これをクリアすれば、俺は奴(レッドキング)を投げ返せるんだよな…。」

 

 早苗「えぇ…それに、奴(エレキング)の多彩な攻撃も攻略できるかも…。」

 

 健二「そして、これも櫂さんに近づくための一歩として…。」

 

 

 すぅ~…(←所謂息を大きく吸う音)

 

 

 健二・早苗「お願いします!!」

 

 

 二人の決意に満ちた真剣な表情を見たガイは、すこしフッと笑った後返事をする。

 

 ガイ「いいだろう。それでこそウルトラマンさんに選ばれし者だ。」

 

 

 バルタ「では、拙者とピグモンはマネージャーと言う事で。」

 

 ピグモン「ぴ~!」

 

 

 かくして、オーブ(ガイ)によるガイア(健二)とアグル(早苗)の特訓の三日間が幕を開けた!

 

 

 ガイ「本日最初の特訓は、人間の姿での基礎体力の向上。まずはこの採石場を走って10週だ!」

 

 

 健二・早苗「え!?」

 

 

 …果たして健二と早苗はガイによる特訓をクリアし、三日後にグラシエ率いる二大怪獣にリベンジできるのであろうか…!?

 

 

 (ED:ウルトラの奇跡)

 

 

 

 [エピローグ]

 

 

 健二と早苗は、三日後にレッドキングとエレキングにリベンジするためにガイによる特訓を始めていた。

 

 

 一番最初は、人間の姿での基礎体力のためということで採石場を走って10週である。

 

 

 …だが、これがただのランニングであるハズが無かった………。

 

 

 “チュドーン” “ズドーン”

 

 

 健二「うぉわっ!?」

 

 早苗「きゃっ!?」

 

 

 なんと、ガイは手から発射する光弾を、走る健二と早苗の後ろの地面で爆発させているのだ…!

 

 これは“常に戦いに危機感を持てるようになるために”…みたいだが………。

 

 

 ガイ「ほらほら、もっと速く走らないとヤバいぞ~?」

 

 バルタ「傷薬は拙者たちが持ってますので、問題ないぜ!」

 

 

 健二「こんなの無茶苦茶だ~~~!!!」

 

 

 やはりガイの特訓はセブンとゼロ直伝の特訓。一筋縄で行くモノではなかった………。

 

 

 頑張れ!健二!早苗! ガイアとアグルの光を宿し者よ!!

 

 

 To Be Continued………。




 読んでいただきありがとうございます!


 櫂と真美ちゃんの親代わりの親代わり子育てはいかがでしたか?(笑)

恐らく第25話でのヒカル君と海羽ちゃんの偽造結婚式作戦に次ぐ衝撃だったのではないかと思います(笑)


 あと今回は久しぶりに櫂のコミカルな描写も出来ました(笑)


 今回は前半に櫂と真美ちゃんの親代わりの日々を描き、中盤から一旦遡って健二と早苗のガイさんとの出会いを描くというちょっと変わった構成にしてみました。


 次回はグラシエVSオーブの闘い、そして、ガイア&アグルVSレッドキング&エレキングのリベンジマッチ、お楽しみに!


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


あと余談ですが、最近遂に劇場版ウルトラマンジードの情報が解禁されましたね!

オーブやジャグラーも登場するみたいなので私はもう既に待ち遠しい状態です!(笑)


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第29話「生命(いのち)のかぎり~ヴァージョンアップ・ファイト!~」

 お待たせしました!


 今回はガイア&アグルVSレッドキング&エレキングのリベンジマッチです!


 そしてオーブも引き続き活躍します!


 また、タイトルでも分かるように、今回満を持して“あの形態”も登場しますよ!?(ニヤリ)


 そしていつもながら、サブタイトルも隠しています!


 では、どうぞ!


 (OP:英雄の詩)

 

 

 三日間で、自身の中に宿る『ウルトラマンガイア』と『ウルトラマンアグル』の力を完全に解放出来るようになるために、『稲葉健二』と『小野早苗』の二人は“銀河の流れ者”の風来坊『クレナイ・ガイ』からの激しい特訓を受けていた。

 

 

 最初の(過酷な)ランニングを終えた二人はバテバテで休憩に入っている。

 

 健二「こりゃあ大変な特訓日和になりそうだね、さなちゅん。」

 

 早苗「えぇ。でも、二人で力を合わせて頑張ろうよ、ケンちゃん。」

 

 過酷な特訓ながらも二人はまだ前向きだった。

 

 

 バルタ「流石は我が同胞と長年戦ってきたウルトラ戦士の一人だけはあるな。ガッツが違うね~。」

 

 ピグモン「ピ~!」

 

 特訓を受ける健二たちのマネージャーをしている『バルタン星人バルタ』と『友好珍獣ピグモン』(通称:モロボシ君、ピーちゃん、etc)も、彼らの気合に感心を示していた。

 

 

 ガイ「よし、じゃあ次の特訓に取り掛かるぞ。」

 

 やがてガイの言葉と共に次なる特訓の時間が始まる。

 

 ガイ「基礎体力で体を慣らす特訓は終えた。次からは実際にウルトラマンになって特訓をする。」

 

 健二「え?…で、でも俺とさなちゅんはともかくガイさんは変身後3分間しか動けないんじゃ…?」

 

 早苗「それにここでウルトラマンになって特訓したら、周りに住む人たちに迷惑がかかりませんか…?」

 

 健二と早苗は疑問を投げかける。

 

 

 ガイ「安心しろ。迷惑対策も万全だ。 バルタ!」

 

 バルタ「いよっ!ここで拙者の出番ですな!」

 

 健二「え?…。」

 

 

 “ピシーン” “フォッフォッフォッフォッフォッフォ…”

 

 

 健二と早苗の疑問が深まる中、バルタは特殊な効果音と笑い声と共に巨大化をする。

 

 

 そしてガイもオーブリングを構えて紫色の光に包まれる。

 

 

 《ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!》

 

 

 音声と変身音と共に、光に包まれたガイは巨大化後『ウルトラマンオーブ・スペシウムゼペリオン』に変身(フュージョンアップ)完了して姿を現す。

 

 

 バルタ「じゃ、行きますぜ旦那!」

 

 そう言うとバルタは、特殊な効果音と共に『分身の術』を発動し、オーブと健二、早苗の周囲に自身の分身を出現させて取り囲む。

 

 

 早苗「…何をしようとしてるの?」

 

 

 ガイ「スペリオン光線!」

 

 

 するとオーブは両腕をL字に組んでエネルギーを溜めた後、バルタ目掛けて『スペリオン光線』を発射する!

 

 

 光線がバルタに迫る…!健二と早苗が驚愕したその時、バルタの胸の装甲が観音開きになり、特殊な鏡が出現する!

 

 これぞかつて『宇宙忍者バルタン星人二代目』や『超科学星人ダークバルタン』も使用した事がある、バルタン星人の弱点でもある『スペシウム光線』対策として開発された特殊な鏡『スペルゲン反射鏡』である!

 

 

 スペリオン光線はバルタの反射鏡に命中して反射し、その横の分身の反射鏡、その横の分身の反射鏡と次々と命中しては反射していき、やがて全分身の反射鏡に命中して反射した事により一つの光線の輪が出来る!

 

 健二たちが驚愕するのも束の間、やがて彼らを取り囲む光線の輪は更に激しく発光し、その眩い光がオーブを、そして健二たちを包んでいく………!

 

 

 やがて健二と早苗は気が付いて目を開けると、自分たちは辺り一面真っ白な空間に立っている事に気付く。

 

 早苗「…どういうこと?」

 

 健二「俺たちは、採石場にいたはずだよな…?」

 

 

 動揺する健二たちの前にオーブ、そして等身大のバルタが現れる。

 

 ガイ「ここは、俺とバルタの力で生成した『スペルゲンフィールド』だ。」

 

 健二「スペルゲンフィールド?」

 

 バルタ「ガイの旦那の光線の力を、拙者と分身たちのスペルゲン反射鏡の力で増幅させて作り上げた異空間だ。」

 

 早苗「外からはどう見えているのですか?」

 

 ガイ「いや、外からは何も見えない。要するに、俺たちは先ほどの採石場には存在していない。 まあ、例えるならネクサスさんのメタフィールドみたいなもんだ。」

 

 ガイは自身とバルタの力で作り上げたスペルゲンフィールドの事を簡単に説明し、分かりやすい例えまで話す。

 

 

 しかし、ガイ(オーブ)………アンタいつの間にこんな異空間を作るスキルを思いついていたのだ!?………。

 

 

 ガイ「この空間は光エネルギーで生成したが故に、三分しか活動できないウルトラマンでもいつもより長時間活動が出来る。 今後はこの空間でウルトラマンに変身して特訓を行う。」

 

 

 早苗「なるほど、ここなら人の迷惑を気にせずに特訓できるという事ですね!」

 

 健二「よーし、俺たちも行こう!さなちゅん。」

 

 健二と早苗も、それぞれ『エスプレンダー』と『アグレイター』を揚げ、それぞれ赤と青の光に包まれた後『ウルトラマンガイア』と『ウルトラマンアグル』(いずれもV1)に巨大化&変身完了をする。

 

 

 ガイ「よし、二人とも変身したな。 次は光線技に対処するための特訓だ。」

 

 早苗「光線技対策…?」

 

 健二「具体的に、どんな事をすんだ?」

 

 

 ガイ「俺が発射する光線を避けるなりかわすなり弾くなり何でもするといい…そして、お前らが上手く対処できるようになったら止めだ。」

 

 

 健二・早苗「…分かりました…。」

 

 健二(ガイア)と早苗(アグル)は息を呑みながらも了解の返事をした…。

 

 

 オーブはゆっくりと構えを取り、それにより健二と早苗に更なる緊張が走る…。

 

 

 ガイ「バルタ…合図を頼む…。」

 

 

 バルタ「オーケー………それじゃあ特訓…スタート!!」

 

 

 ガイ「スペリオン光線!」

 

 

 特訓スタートの合図と共に、オーブはいきなりスペリオン光線を放つ!

 

 

 健二「うわっ!?」

 

 早苗「ひゃっ!!」

 

 

 ガイアとアグルは驚きつつも反射神経を利かせてそれを避ける。

 

 

 健二「い、い、いきなりかよ!?」

 

 

 ガイ「特訓はもう始まった。気を抜かすと、危ないぜ?」

 

 

 ガイの言葉に二人はより気が引き締まる。

 

 早苗「なるほどね…そういう事なら…」

 

 健二「やってやるか!」

 

 

 ガイアとアグルは同時にそれぞれ『クァンタムストリーム』と『フォトンクラッシャー』を放つ!

 

 

 オーブはそれを即座に『スペリオンシールド』を張って防ぐ。

 

 

 そして二つの光線を完全に防ぎきりシールドを消滅させると同時に不意打ちとばかりに『スペリオン光輪』を投げつける!

 

 

 ガイアとアグルはまたもや驚きつつもそれを上空に飛び上がる事で回避するが、オーブはすぐさま体の紫の部位を発光させてティガ(スカイタイプ)の能力を発動させて高速移動で回避された光輪を追いかけて掴み、上空のガイアとアグルに再び投げつける!

 

 

 早苗「きゃっ!?」

 

 健二「マジかよ!!?」

 

 

 ガイアとアグルはなんとかかわす事に成功するが、その隙にいつの間にか目の前に来ていたオーブに同時に腹部に掌を打ち込まれて地に落下する!

 

 

 早苗「まるで隙が無いわ…。」

 

 健二「流石は、あの化け物二匹を退けただけはあるな…。」

 

 

 ガイ「おしゃべりをしている場合じゃないぞ?」

 

 

 二人が感心している間にも、オーブは再びスペリオン光線のポーズに入ろうとしていた…。

 

 

 

 ところで、現在健二たちが特訓をしているのは8月13日だが、ここで一旦8月15日に飛んでみよう。

 

 

 この日、竜野櫂と新田真美は、先日アリブンタにより母を失った『滝里奈』の引き取り先が決まるまでの三日間の親代わり生活の最終日と言う事で、とびっきり彼女を楽しませようと誓い合った。

 

 

 そこで、本日はスペシャルゲストとして『眞鍋海羽』も呼び、遊園地で遊ぶことにした。

 

 

 遊園地に到着し、真っ先にはしゃぐ里奈…そして海羽。

 

 

 海羽「よろしくね~里奈ちゃん! 今日はお姉さんたちと一緒に遊ぼうね~!」

 

 里奈「うん!遊ぼ遊ぼ~!」

 

 流石は海羽。早速里奈と仲良くなっている。

 

 

 櫂「フッ、姉みたいな人が増えて、里奈も嬉しそうだな。」

 

 真美「そうね~。私達も、一緒に楽しみましょ。」

 

 櫂「おうよ。」

 

 

 因みに昨日までは里奈に対し憎悪しか抱いていなかった櫂だったが、今日は違った…。

 

 

 今朝に彼女は自身と同じ境遇だと改めて知ったため、純粋に“里奈のために尽くそう”“彼女を楽しませてやろう”と言う気持ちが強く出て、所謂里奈の前でも“良人モード”でいられるようになったのである。

 

 

 一方で、怪獣に対する憎悪は以前より肥大してしまったが…。

 

 

 既に里奈を連れて入り口前まで来ている海羽。

 

 海羽「ほらパパー!ママー!早く行くよ~!」

 

 

 櫂「フッ、海羽ったら…じゃ、行きますか。」

 

 真美「ええ。」

 

 

 遊園地に入った一行は、存分に楽しみ始めた。

 

 

 特に楽しんでいるのは里奈である。やはり櫂と真美と海羽と一緒に、まるで家族と一緒にいるかのように楽しんでいた。

 

 里奈と一緒にジェットコースターに乗った櫂は彼女以上にテンションが上がったり(因みに海羽と真美はジェットコースターが苦手なため下から写真を撮ったりなどして待っている)、

 

 里奈と一緒にコーヒーカップに乗った海羽は、降りた後もはしゃいでいる里奈とは対照的に酔ってしまったり、

 

 里奈と一緒に観覧車に乗った真美は彼女と一緒に下の景色を見つめたり…。

 

 

 など、一同は里奈を楽しませる事を中心に、遊園地を満喫していた…。

 

 

 他にも櫂・海羽、真美・里奈とペアに分かれてゴーカートに乗ったり、四人で一緒にフリーフォールに乗ったりなど、楽しみ続ける一同。

 

 

 いつもはドス黒い事を考えている櫂も、今回ばかりは純粋に楽しんでいるようであった…。

 

 

 

 さて、日時を8月13日に戻そう。

 

 

 ガイア(健二)とアグル(早苗)は、オーブ(ガイ)からの光線技に対処する特訓をなんとか制したようであり、膝に手を突いてばてていた。

 

 二人ともライフゲージが鳴っている事から、相当ハードな特訓だったのであろう…。

 

 

 ガイ「よし、お疲れさんです。今日はここまで。」

 

 

 ガイがそう言うと共に、スペルゲンフィールドが消滅して元の場所に戻って行き、それと同時に変身&巨大化していた三人は光に包まれると共に変身を解いて人間態に戻る。

 

 

 早苗「はぁ…はぁ…意外とハードね…この特訓…。」

 

 健二「あぁ。だが、これを越えれば強くなれるのかもしれない…一緒に頑張ろう。」

 

 早苗「そうね…。」

 

 

 ガイ「明日は肉弾戦の特訓だ。しっかり身体を休めてくれ。」

 

 

 健二・早苗「はい!」

 

 

 健二と早苗はガイたちと別れ、帰り道を歩き始める…。

 

 健二「明日も頑張ろうな。さなちゅん。」

 

 早苗「…えぇ…。」

 

 何やら早苗の返事は少し元気が無いようであった…。

 

 健二「…ん?どうした?」

 

 早苗「へっ?…い、いや、何でもない。そうだね。」

 

 早苗の返事が少し気になりながらも、健二は早苗と手を繋いで帰り道を歩き続けた…。

 

 

 そして翌日(8月14日)の正午過ぎ、ガイたちが待ついつもの採石場に健二と早苗は到着する。

 

 そして昨日と同じようにスペルゲンフィールドを張り、その中で特訓を行う。

 

 

 バルタ「今日もしっかり頑張ってくだせぇ!」

 

 ピグモン「ピ~!」

 

 

 健二「よし、行きますか!」

 

 早苗「本日もよろしくお願いします。」

 

 ガイアとアグルに変身&巨大化した二人。

 

 

 ガイ「それじゃあ、本日の特訓開始だ。」

 

 

 ガイはオーブリングを構えて金色の光に包まれる。

 

 

 《ウルトラマンオーブ! バーンマイト!》

 

 

 『ウルトラマンオーブ・バーンマイト』に変身(フュージョンアップ)を完了したオーブ。

 

 

 ガイ「今から俺が打つ打撃や投げ技などを受け止めたり、受け流したりすることが出来ればクリアだ。」

 

 

 健二・早苗「分かりました!」

 

 

 ガイ「それじゃ、行くぜ!」

 

 

 オーブは早速炎を纏った両拳のパンチを放つ!

 

 ガイアとアグルは少しビクつきながらもそれをなんとかかわす。

 

 

 ガイ「お前らも打って来てもいいんだぜ。」

 

 健二「そうか…それならっ!!」

 

 ガイアとアグルは気合を入れてそれぞれ右の正拳突きと右足蹴りをオーブに繰り出す!

 

 

 …が、オーブはそれらを片手ずつで易々と受け止めると、そのまま軽々とひねってスピンさせて地面に叩き付けた。

 

 

 続けてオーブは蹴りを放つが、ガイアはそれを受け身を取って前転する事でなんとかかわし、お返しとばかりにストレートの右足蹴りを放つが、オーブはそれを両手で掴んで受け止めると、軽々と豪快に放り投げた!

 

 投げられたガイアは地面に叩き付けられる。

 

 

 健二「チクショー!!」

 

 

 健二は、先日レッドキングに投げられた事がフラッシュバックしたのか、悔しそうに地面に拳をぶつける。

 

 

 ガイ「この特訓をクリアすれば、あんな風に投げることが出来るんだぞ。」

 

 

 健二「…そうだったなぁ…まだ、負けてらんねー!!」

 

 ガイの言葉に再び奮起したガイア(健二)は、立ち上がり、オーブに向かって駆けて行った…。

 

 

 

 ここでまた一旦15日に飛んでみよう。

 

 

 遊園地で十分に遊んだ櫂、真美、海羽、里奈の一家(笑)は帰り道を歩いていた。

 

 

 真美「楽しかったね里奈ちゃん。」

 

 里奈「うん!みんなと遊んで楽しかったー!」

 

 海羽「ホント!私も今ハッピーな気分だよ!」

 

 櫂「海羽。お前は元からハッピーだろ。」

 

 海羽「あ、そうだった。てへぺろ。」

 

 一同は笑い合った。

 

 

 真美「それじゃ、晩御飯の買い物をして帰りましょうか。」

 

 海羽「そだねー。 ところで今夜は何?」

 

 

 真美「ふふ、今夜はすき焼きよ。」

 

 

 この時、海羽は里奈よりも喜んだことは言うまでもない(笑)

 

 

 

 さて、14日に。

 

 

 ようやく特訓をクリアしたガイアとアグルは、昨日と同じくライフゲージ点滅の状態でへとへとになっていた。

 

 ガイ「よし、今日はここまで。お疲れさんです。」

 

 スペルゲンフィールドは消失し、三人も変身を解く。

 

 

 ガイ「明日は最終メニューだ。それをクリアすれば、お前らはマシに戦えるようになるだろう。」

 

 健二「そうか。燃えて来るな!」

 

 

 早苗「…本当に…強くなれるのかな…?」

 

 思わず早苗はぼそっと呟いた。

 

 

 健二「ん?どうした?」

 

 早苗「い、いや、なんでもない…。」

 

 

 ガイ「今日は解散だ。ゆっくり休んでくれ。」

 

 ラムネを呑みながらガイがそう言うと、健二と早苗はガイたちと別れ、帰り道を歩き始めた…。

 

 

 帰り道を歩く二人。しかし、何やら二人とも無口という少し気まずい雰囲気だった…。

 

 

 健二「…明日の特訓も、頑張ろうな。」

 

 健二が場を変えようとそう言った時、

 

 

 早苗「本当に…これで良かったのかな…?」

 

 

 健二「…へ?」

 

 早苗の思わぬ発言に健二は耳を疑う。

 

 

 健二「どうしたんだよ?急に…。」

 

 

 すると早苗はふっと健二の方を向き…。

 

 

 早苗「私たちは、ギリギリまで頑張って諦めない精神を認められ、ウルトラマンの光を手に入れた…。

 

 でもそれは、生きるか死ぬかの領域に踏み込んだ事だということを、この特訓で痛感したの。」

 

 

 早苗の言葉に健二ははっとなった。

 

 健二「…確かに、昨日も今日もアイツ(オーブ)は容赦なかったしな…まるで本当の敵みたいに。」

 

 

 早苗「オーブさんだけじゃない…その前に戦った怪獣たちも、本気で私たちを殺るつもりでかかって来た…。その時初めて感じたの…

 

 櫂さん達は、こんなにも危険で命がげな事を日々やって、人々を守って来たんだなって…。だからそんな立場に私達がなってもよかったのかなって思ったの。」

 

 

 健二「何言ってんだよ。俺たちは昔とは違う。闇を越え、より絆も深まった。(第12話参照) 俺たちならいけるって。」

 

 

 早苗「うん。自分の闇に勝ったケンちゃんならいけるよ。 でも、私は特に自分の闇に勝ったわけでもなく、ほとんどただケンちゃんをサポートするばかり…こんな私が、ウルトラマンやれるのかなーって…。」

 

 

 早苗の苦悩を聞いた健二は、少し考えた後こう言った。

 

 

 健二「…分かった。じゃあ今日一緒に帰るのはここまでだ。」

 

 

 早苗「え?」

 

 

 健二「しばらく一人にするから、そのことについてじっくり考えるといいよ。 明日返事を聞かせてね。それじゃあ。」

 

 

 笑顔でそう言うと健二は、別の帰り道を走って行った。

 

 

 早苗「…考える…か…。」

 

 そう呟きながら、早苗はトボトボと帰り道を歩き始めた。

 

 

 早苗を一人にする事にした健二。しかし、彼も彼で不安を感じていた。

 

 健二「さなちゅん…大丈夫だろうか…?」

 

 

 俯いてそう呟きながらトボトボと歩く健二。

 

 

 その時、すれ違いそうになった一人の女性が話しかけて来た。

 

 

 真美「あら?健二君?」

 

 

 それは、晩御飯の買い出しに出掛け、帰っている最中の真美だった。健二もそれに気づく。

 

 

 健二「…真美さん。」

 

 

 真美「健二君…何かあったの?」

 

 心配そうな表情でそう優しく話しかける真美。

 

 

 健二は真美に相談する事にした。二人は街が一望できる近くの高台のベンチに座る。

 

 

 真美は健二に優しい口調で問いかける。

 

 真美「どうしたの? 早苗ちゃんと喧嘩でもした?」

 

 健二「い、いや、喧嘩はしてないんだけど…ただ、ちょっと…、」

 

 真美「ただ、ちょっと?」

 

 

 健二はどう言おうか迷っていた。自分がウルトラマンである事は言えるはずも無いし…。

 

 

 しばらく悩んだ後、決心がつくかつかないか決まらぬまま思わずこう聞いた。

 

 

 健二「あ、あの、真美さんは突然自分に特別な何かが手に入ったらどう思いますか?」

 

 真美「…え?」

 

 

 健二「い、いや、あの…例えば突然自分に特別な賞状とか、資格とかが手に入ったらどうなのかなーって思って…

 

 でも、真美さんなら悩むこと無いですよね…真美さんは優しいし、勉強も運動もなんでも出来る凄い方だし…。」

 

 

 すると真美は、

 

 真美「ふふ、いっぱいあるわよ。」

 

 優しくそう答える真美に、健二は少し耳を疑う。

 

 

 真美「私もね、日々の実習とかで実績を残して教授に褒められたり、成績優秀賞を貰ったりしするんだけれども、その度に思っちゃう事があるのよ。

 

 “本当に、私がこれを貰っていいのかなー”って。」

 

 

 真美の語りに頷きながら耳を傾ける健二。

 

 

 真美「…でもね、そんな時、私はこう考えるの。

 

 “何かを与えられたという事は、それに相応しい何かを持っているんだな”って。」

 

 

 健二「…それに相応しい…何か?」

 

 

 真美「うん。私、普段あまり意識しないんだけどね、教授に褒められるのも、成績優秀賞を貰うのも、同級生たちから信頼されるのも、ボランティア先の子供たちから好かれるのも…全て私が、私自身も気付かないうちにそうされるのに相応しい人になっていたからだと思うの。」

 

 

 真美の言葉に、健二はしばらく心の中で忘れていたあるモノが蘇っているような感じがした。

 

 

 真美「だから、何か特別なモノを得た時は、それはその人に相応しいモノだから…だと思うな。」

 

 

 満面の笑みで語り掛ける真美。健二は遂に俯いていた顔を上げた!

 

 

 健二「ありがとうございます真美さん!俺、大事な事をやっと思い出しました!」

 

 

 急いで健二が走って行こうとしたその時、

 

 

 真美「健二君。」

 

 健二は真美の呼びかけにふと立ち止まり振り向く。

 

 真美「良かったら明日の晩御飯、一緒に食べない?櫂君や海羽ちゃんも一緒の予定なの。」

 

 健二「…真美さんの家に…ですか。」

 

 真美「うふ、明日はすき焼きよ。」

 

 次の瞬間、健二は一気に表情が変わった。

 

 健二(おぉ! 決戦前のいい力付けになるかも!?)

 

 健二「では、お言葉に甘えて!」

 

 真美「うふ、早苗ちゃんも誘ってみるといいよ。」

 

 健二「はい!ありがとうございます!」

 

 そう言いながら一礼すると、健二は走り去って行き、真美はそんな彼の後ろ姿を笑顔で見送った…。

 

 

 帰り道を走りながら健二は、思い出した何かを呟き始める。

 

 

 健二「今ハッキリと思い出した!

 

 …俺は自分の中の闇に勝利し、その後も人のために櫂さん達に協力し続け、さなちゅんは俺を昔から支え続け、今でも誰に対しても分け隔てなく親切に接している…例え怪獣であろうと!(第18話参照)

 

 …俺ら、こんなにもスゲー事を続けているんだ!

 

 きっとガイアとアグルは、そんな俺らを地球の奥から見つめ続け、そして、ウルトラマンの力を使うに相応しいと判断してくれたんだろう…!」

 

 

 健二はようやく気付いたようであった…。

 

 

 何故、自分たちがウルトラマンの力を得たのかを…。

 

 

 

 一方、健二にしばらく一人で考えるように言われた早苗は、一人トボトボと道を歩いていた。

 

 

 早苗「私…どうしてウルトラマンになっちゃったのだろう…?」

 

 

 その時、

 

 バルタ「おや、早苗殿。」

 

 

 早苗「…え?」

 

 

 突然話しかけられた早苗はふと前を見てみると、そこにはバルタとピグモンが。

 

 

 早苗「バルタさん…ピーちゃん…。」

 

 

 バルタは早苗に問いかける。

 

 バルタ「まだ帰ってなかったのか? 健二殿は?」

 

 早苗「ち、ちょっと一人で散歩がしたくて…。お二人は何故ここに?ガイさんは?」

 

 バルタ「ああ、拙者たちはガイの旦那のために、ラムネを買いに行ってるもので。」

 

 早苗「そうですか…。」

 

 

 早苗は少し躊躇ったが、勇気を出してバルタに問いかけた。

 

 早苗「あ、あの…。」

 

 バルタ「ん?どうした?」

 

 

 早苗「い、いや、あのー…

 

 バルタさんって、いろんな超能力をお持ちですが、その力を何のために使おうとお考えですか?」

 

 

 バルタ「…え?」

 

 いきなりの思いがけぬ質問に困惑しつつも、バルタは答えた。

 

 

 バルタ「せやな~…あまり考えた事無かったが…

 

 まあ、とりあえず誰かの役に立てれば…かな?」

 

 

 早苗「誰かの…ために?」

 

 

 バルタ「ああ、前も言ったが、拙者はこの地球を愛してしまった。それは、この地球に住む地球人もそうだ。」

 

 早苗「私たち…地球人も?」

 

 バルタ「以前怪獣に苦戦する君たちを分身で助けただろう?あれも愛する者…君たちという地球人のためにやったんだよ。」

 

 

 バルタが忍術等を使う理由。それは、自身の愛する者のために力を使う…。それは地球人も例外ではなく、以前早苗たちを援護したのも、早苗たちという地球人を助けるためだったのである!

 

 

 それを聞いた早苗は、徐々に顔の明るさが戻りつつあるようであった。

 

 

 バルタ「拙者の旅にもいずれは終わりが来るであろう。 だからもし死ぬ時が来たら、せめて誰かのために何か出来てから散りたい。拙者はそう考えておる…。」

 

 

 と、その時、早苗がバルタのハサミ状の腕を両手で掴む!

 

 

 早苗「絶対に、死なせたりはしません!」

 

 

 バルタ「あれ?さ、早苗殿?」

 

 困惑するバルタに早苗は更に語り掛ける。

 

 早苗「私…助けてもらった時から、あなたも仲間だなと思っていました…。なので、絶対に死なせたりしません。あなただけじゃなく、全ての人々も。 ウルトラマンの力を得た、私たちが!」

 

 

 バルタ「…お、おお、そうか。それは頼もしい。」

 

 早苗の熱い決意の言葉を聞いたバルタは、困惑しつつもとりあえず反応した。

 

 

 早苗も遂に、自身がウルトラマンの力を得たワケに気付けたようである。

 

 

 早苗「バルタさん、ピーちゃん、明日もまた、よろしくお願いします!」

 

 バルタ「お、おお、頑張れよ。」

 

 ピグモン「ピー!」

 

 

 バルタたちに一礼した早苗は彼らと別れ、駆け足で帰り道を進み始めた。

 

 

 バルタ「フッ、早苗殿、顔色が一気に変わったな。これは今後の成長が楽しみだ。」

 

 

 早苗「私がウルトラマンに選ばれた理由…それは、愛する者を守りたいという気持ちを常に持っていたから…!

 

 タイショー君の時も、ホタルンガに襲われた時も…。

 

 単純だけど、その気持ちを強く持っているのが大事なんだって、ハッキリ分かったわ。」

 

 

 

 かくして、健二も早苗も自身がウルトラマンに選ばれたワケにハッキリと気付けた。彼らのさらなる成長が期待できる中、日付は翌日(15日)になる。

 

 

 いつもの時間に、いつもの採石場にやって来た健二と早苗。そんな彼らの目つきは、昨日までとは考えられない程真剣で、決意に満ちているようであった。

 

 

 ガイ「ほぉ、今日はいつにも増していい目してんじゃねーか。」

 

 それを見たガイも、眼差しから何かを感じながらも反応する。

 

 

 早苗「本日も、よろしくお願いします!」

 

 健二「ビシバシいっちゃってください!」

 

 

 ガイ「フッ、気合十分だな。じゃ、行くぞ。」

 

 

 ガイはいつもの様にオーブ・スペシウムゼペリオンに変身し、バルタと協力してスペルゲンフィールドを張る。

 

 

 健二と早苗もガイアとアグルに変身&巨大化する。

 

 

 健二「今日は特訓最終日だが、どんな事をするんだ?」

 

 ガイ「そう、今日は最終日。だから、その集大成に相応しいメニューだ。」

 

 

 すると、ガイは思いもしない事を言った!

 

 

 ガイ「今から俺は、サンダーブレスターになり、わざと暴走する。 それを食い止めることが出来たらクリアだ。」

 

 

 予想外な特訓メニューを聞いた健二と早苗は驚愕すると共に戦慄が走る…!

 

 

 なにしろサンダーブレスターは、先日自分たちが苦戦したレッドキングとエレキングを同時に圧倒した程の強さを持っているのだから…!

 

 

 …しかし、新たな決意を固めた二人は怖気づかなかった。

 

 健二「へっ…面白そうじゃねーか…上等だ!」

 

 早苗「その特訓、受けて立ちます!」

 

 

 ガイ「その意気だ。前2日の特訓をクリアできたお前らなら、この最後の特訓もクリア出来るはずだ。

 

 それに、今日は昨日までよりも、目の輝きが違うみたいだしな。」

 

 

 早苗「へへっ、ここでも来ましたか、“可能性の瞳”。」

 

 健二「俺たちはようやく大切な事に気付けた…だから昨日までとは違う!」

 

 

 それを見ていたバルタとピグモンも、彼らに感心しているようであった。

 

 バルタ「ふふっ、これは面白くなりそうだ。」

 

 

 ガイ「それじゃ…行くぞ。」

 

 ガイはオーブリングを構え、赤黒い光に包まれる。

 

 

 《ウルトラマンオーブ! サンダーブレスター!》

 

 

 『ウルトラマンオーブ・サンダーブレスター』に変身(フュージョンアップ)完了したガイ。

 

 

 すると、下を向き、胸のカラータイマー部に右手を当てて念じ始める…。

 

 

 ガイ「ベリアルさん…闇の力…お借りします…。」

 

 

 すると、オーブの体から何やら赤黒いオーラのような物が溢れ始める。

 

 わざと暴走するために、ベリアルの闇の力を全開にしているのだろうか…?

 

 

 しばらくするとオーラの流出は治まり、オーブは下を向いたまま両腕をだらりと下げる…。

 

 

 ガイア(健二)は心配になり、恐る恐る歩み寄ってみる。

 

 

 健二「…あ…あのー…大丈夫ですk…」

 

 

 その時!

 

 

 “ガッ”

 

 

 健二「!?ぅぐっ!!」

 

 

 突然ガイアはオーブに首根っこを鷲掴みされてしまう!

 

 驚きつつもガイアはオーブを見てみると、体の赤い所が発光しており、つり上がった目も赤黒く光を放っていた。暴走が始まった合図である!

 

 

 オーブはガイアを首根っこを掴んだまま思い切り放り投げ、ガイアは地面に叩き付けられる!

 

 

 早苗「はっ、ケンちゃん!」

 

 健二「大丈夫ださなちゅん…なるほど、こいつはヤベーかもな…だが、俺たちは負けないぜ!」

 

 

 ガイアとアグルは今度は同時に駆け寄り、それぞれオーブの左腕、右腕に組み付く。

 

 そしてそのまま押し飛ばそうと踏ん張る。

 

 

 だが、オーブはガイアを腹部に膝蹴りを打ち込んで引き離し、続けてアグルの右腕、頭部をそれぞれ左手、右腕で掴むと、そのまま後ろに放り投げる!

 

 アグルは地面に叩き付けられる。

 

 

 健二「ヤロー!」

 

 ガイアは右脚の回し蹴りを繰り出すが、それをオーブにあっさりと腕で弾き返され、逆に右肘を腹部に受け、更に左手で首を掴まれるとそのまま右拳で何度も胸を殴られ、その後アウトローな右足蹴りを腹部に喰らって吹っ飛ばされる!

 

 

 更にガイアに攻撃を加えようとするオーブに、アグルは後ろから羽交い締めのように掴みかかるが、逆に後ろ向きに放った頭突きを顔面に喰らい、それにより怯んで放してしまった隙に、オーブが振り向きつつ放った右腕のラリアットを喰らい地面に叩き付けられる。

 

 

 サンダーブレスターの暴走モードは、かつて他の三形態が歯が立たなかったマガオロチやギャラクトロンを圧倒し、完膚なきまでに叩きのめした程の強さであり、今ガイアとアグルも、その強さに圧倒され始めていた。

 

 

 健二「うおおぉぁぁあー!!」

 

 ガイアは前かがみに突っ込み、オーブの胴体にしがみ付き、そのまま押さえ込もうとする!

 

 健二「負けてたまるかー!!」

 

 だが、オーブはガイアの背中に右肘を数回叩き込み、更に両手を組んでのパンチを叩き込んで完全に引き離した後、ガイアの顔面にアッパーを叩き込んだ!

 

 ガイアは半回転した後、仰向けに地面に落下する。

 

 

 そしてオーブは、仰向けに倒れたガイアの腹部に何度も踏みつけを喰らわし始める!

 

 

 早苗「ケンちゃん!」

 

 助太刀しようとアグルはオーブに駆け寄りながらパンチを放つが、オーブはそれを素早くしゃがんでかわすと同時にアグルの腹部に右掌を打ち込んで後退させる。

 

 後退したアグルはダメージにより膝を付いてしまう。

 

 

 ピグモン「ピ~…」

 

 バルタ「大丈夫だ。…今の彼らなら、きっと…。」

 

 流石に心配になってきたピグモンに、健二たちを信じているバルタは声を掛けて諭した。

 

 

 オーブはガイアの腹部を踏みつけ、そのままグリグリと力を入れ始める…!

 

 

 痛みに悶え苦しむガイア(健二)!

 

 

 …しかし、新たな決意を固めた男は諦めなかった…!

 

 

 ガイアは自身を踏みつけるオーブの足を両手で掴む。

 

 

 健二「うぐっ…絶対にここでへこたれるか…俺は…いや俺たちは、決心したんだ…!」

 

 

 オーブは、語り掛けながら自身の足を掴んで持ち上げようとするガイアに気付く。

 

 

 健二「俺たちは…ウルトラマンに選ばれる前から…“愛する者たちを守りたい”と思い続けていた…。

 

 単純に見えるが…そのために行動し続けたからこそ、俺たちはそれを見込まれたんだと…!」

 

 

 健二の語りを聞いた早苗も、自然と力が湧いて来て立ち上がる。

 

 早苗「ケンちゃん………そうよ…だから私たちは諦めない!」

 

 

 アグルはオーブに駆け寄り、そして掴みかかる。

 

 

 早苗「愛する者たちが、私たちウルトラマンを待っているのよ!」

 

 

 アグルのアシストのお陰もあり、ガイアはオーブの足を掴んだまま徐々に立ち上がり、やがてガイアは下半身、アグルは上半身を持ってオーブを担ぎ上げる!

 

 

 健二「だから俺たちは…与えられた地球の力を…生き抜く力を…!」

 

 

 早苗「愛する者を守るために…使っていくの!」

 

 

 健二・早苗「生命(いのち)の限りっ!!」

 

 

 ガイアとアグルは一斉にオーブを放り投げる!

 

 オーブは地面に叩き付けられた。

 

 

 健二「単純にそれだけだが、それが俺たちの決意だ!!」

 

 

 オーブは立ち上がり、再び攻撃を仕掛けようとする。

 

 

 健二「これで止めてやるぜっ!」

 

 

 ガイアとアグルはそれぞれクァンタムストリームとフォトンクラッシャーを同時に放ち、オーブに浴びせる!

 

 

 二人の光線技を同時に喰らったオーブは大爆発した!

 

 

 爆風に包まれるオーブ…。

 

 

 健二「…やったか…。」

 

 

 ガイアとアグル、そしてバルタとピグモンも、その爆風をじっと見つめていた…。

 

 

 その時、

 

 

 ガイ「お前たち、よくやった。」

 

 

 その一声と共に、爆風の中からオーブが現れた。

 

 どうやら暴走は治まったみたいである。

 

 

 バルタ「遂にやりましたぜガイの旦那ー!」

 

 ピグモン「ピ~!」

 

 それに気づいた瞬間歓喜の声を上げるバルタとピグモン。

 

 

 早苗「…てことは私たち…?」

 

 健二「暴走を…止められたという事なのか…?」

 

 

 ガイ「そうだ。お前たちの強い想い、確かに受け止めたぜ。」

 

 

 ようやく特訓成功に気付けた健二と早苗も喜び合う。

 

 健二「よっっっしゃー!!」

 

 早苗「やったねケンちゃん!」

 

 健二「ああ!」

 

 ガイアとアグルは互いの腕をクロスさせた。

 

 

 変身を解除する三人はバルタとピグモンと合流する。

 

 バルタ「おめでとう!お主共。」

 

 ピグモン「ピ~!」

 

 ガイ「よくぞ俺の特訓に耐え抜いたな。」

 

 

 健二「え?…て事は、これですべての特訓が完了したという事か…?」

 

 

 ガイ「そうだ。それに自分がウルトラマンに選ばれたワケに気付き、それ相当の決心も付いた。今のお前たちなら、ガイアさんとアグルさんの真の力を引き出せるかもな。」

 

 

 早苗「(健二の方を向いて)やったね!(ピース)」

 

 健二「ああ!お互いに頑張り合ったからこそだな。」

 

 すべての特訓をクリアした事が分かった健二と早苗は再び喜び合った。

 

 

 ガイ「決戦はいよいよ明日だ…今日はじっくり休んで、明日に備えてくれ。

 

 以上だ。お疲れさんです。」

 

 

 健二・早苗「ありがとうございます!」

 

 

 ガイたちと別れた健二と早苗は、帰り道を歩き始めた。

 

 それも昨日と違い、笑顔で語り合いながら…。

 

 

 健二たちを見送りながら、バルタはガイに話しかける。

 

 バルタ「ついにやりましたね旦那。彼らの活躍が楽しみですな~。」

 

 

 ガイ「…なぁ、バルタ。」

 

 バルタ「ん?なんスか?」

 

 ガイ「お前はこの地球が相当気に入っているみたいだが、他の星も行きたいとは思わないのか?」

 

 

 ガイの問いかけに、バルタは少し考えた後答える。

 

 

 バルタ「地球を離れる前に、もう一つ愛する地球人のために役に立てることを出来れば…な。」

 

 

 ガイ「…フッ、そうか。」

 

 ガイ意味深気味な返答にとりあえず相槌を打った。

 

 

 ピグモン「ピュイ~…。」

 

 しかし、一方でピグモンは何やら胸騒ぎを感じているようであった…。

 

 

 

 その夜、健二と早苗は櫂、真美、海羽、そして里奈と一緒に、真美の家で晩御飯を呼ばれた。

 

 

 因みに今更だが、真美の一人暮らしはアパートを借りているのではなく、一人暮らし用の一軒家を借りており、そこに下宿しているのである。

 

 なるほど、そこならば子供を招待し、家族のように過ごす事も可能である。

 

 

 家族6人(?)ですき焼きを取り囲み、会話を弾ませながら味わう一同。

 

 因みに今回は、櫂と海羽も手伝って作ったのだという。

 

 

 健二「くぅ~…やっぱ一頑張りした後のすき焼きは格別だぜ!」

 

 櫂「ん?今日何かしたのか?」

 

 健二「え…ええ、ちょっとジムに行ってトレーニングに…な、さなちゅん。」

 

 早苗「う…うん、そうだね。」

 

 

 どうやら二人は、自身がウルトラマンである事をもうしばらく内緒にするみたいである。

 

 …既に櫂にはバレているのだが…。

 

 

 真美「二人も遠慮なく食べてね。」

 

 健二「はい!」

 

 海羽「キタコレ!6人でワイワイと! いいわね~こうやって大勢で鍋パーティー!」

 

 櫂「そうだな、お、海羽~?肉ばかり食べんじゃねーぞ?」

 

 海羽「んも~櫂君ったら! この通り、野菜もちゃんと食べてま~す!」

 

 櫂「はは、そうだったな。」

 

 櫂と海羽は食べながら楽しそうに話している。

 

 

 真美「あーん…美味し?」

 

 里奈「うん、美味しい!」

 

 真美「(満面の笑みで)良かった。」

 

 真美は正に母親のように里奈に食べさせ、彼女と共に喜び合っている。

 

 

 早苗「それにしても知りませんでした。真美さんに、こんなに可愛いお知り合いがいたなんて。」

 

 真美「え?…えぇ、そうよ。昔から一緒に遊んでるんだー。」

 

 どうやら真美もまた、自分が里奈の親代わりをしていた事を健二と早苗には内緒にしているようである(笑)

 

 

 早苗は、里奈に挨拶をしてみた。

 

 早苗「よろしくね。里奈ちゃん。」

 

 里奈「よろしくー早苗姉ちゃん。」

 

 早苗「うふ、可愛いわねー。」

 

 流石は、将来小学校の先生を目指しているだけあって、早苗は子供との接しに慣れているようである。

 

 

 健二も挨拶をしてみた。

 

 健二「今夜限りだが、よろしくな。里奈ちゃん。」

 

 

 里奈「よろしくね、健二。」

 

 

 健二「…へ?俺だけ呼び捨て~?」

 

 

 一同は更に笑いに包まれた。

 

 

 その後も、健二と早苗は櫂たちと楽しく話しながら食事をし、その後里奈とカードゲーム等をして楽しんだ後、真美の家を後にする。

 

 

 因みにトランプなどのカードゲームでは、里奈は健二にボロ勝ちしたんだとか?(笑)

 

 

 健二・早苗「ごちそうさまでした!」

 

 健二「いや~本当に美味しかったです。ありがとうございます!」

 

 真美「そちらこそ、より賑やかで楽しく出来たから…来てくれてありがとね。」

 

 早苗「いつかまた、里奈ちゃんと遊べたらいいな~。」

 

 真美「うふ、そうだね。」

 

 

 櫂「帰り道には気を付けるんだぞ。」

 

 健二「はい!櫂さんと海羽さんも、ありがとうございます。」

 

 海羽「じゃあね~。」

 

 早苗「おやすみなさい。」

 

 

 健二と早苗は櫂、真美、海羽と手を振りながら別れた後、手を繋いで帰り道を歩き始める。

 

 

 健二「…さなちゅん。」

 

 早苗「…何?ケンちゃん。」

 

 

 健二「明日は、絶対に勝とうな。」

 

 

 早苗「…そうだね。今の私たちなら、絶対に行けるよ。」

 

 

 健二「あぁ…この世界は、滅んだりなんかしない。」

 

 

 二人は満月で星が煌めく夜空を見上げながら、明日への気合を入れた…。

 

 

 

 そして、翌日(16日)、

 

 

 遂に、決戦の日は来た…!

 

 

 健二と早苗は、三日前にレッドキングとエレキングと戦い、オーブ(ガイさん)と出会った同じ場所に来ていた。

 

 

 因みにこの日は、フルータ星人兄弟とその友達(賢・愛・明人・輝雄)も一緒である。

 

 

 早苗「…遂に来たね…この日が…。」

 

 健二「ああ…いつでも来いってんだ。」

 

 

 愛「二人とも…無理はしないでね。」

 

 健二「心配いらねーさ。ガイさんにキッチリと鍛えてもらったからね。」

 

 

 賢「しかし、この三日間でそんなにも強くなる特訓をしていたとはなー。」

 

 明人「ふふ、賢も妹を守れるために、もっと鍛えたら~?」

 

 賢「ばっ!?…だから人をシスコンみたいに言うなー!」

 

 輝雄「“みたいに”じゃなくてシスコン“そのもの”だろ~!?」

 

 賢「ったくお前ら~!」

 

 

 いつの間にか、いつものやり取りになってしまっているフルータ星人一同。それを見て愛は少し困惑していた。

 

 

 愛「んも~お兄ちゃんたちったら…。」

 

 

 だが、そのやり取りを見ていた健二と早苗は、少し笑いが出ていた。

 

 

 早苗「ありがとう、みんな。お陰で緊張が少しほぐれたわ。」

 

 健二「絶対に勝って帰る。約束してやるよ。」

 

 

 二人の真剣ながらも明るい表情に、愛も自然と笑顔になっているようであった…。

 

 愛「健二さん…早苗さん…。」

 

 

 その時!

 

 

 グラシエ「ふっふっふ…どうやら逃げずに来れたみたいですね~!」

 

 

 一同は声のした方を振り向く。自分たちの目の前にいつの間にかグラシエが立っていた!

 

 

 グラシエ「やあどうも。お久しぶりで。」

 

 少し皮肉っぽく健二たちに挨拶をするグラシエ。

 

 

 健二「遂に出て来たな…バット星人グラシエ!」

 

 

 グラシエ「おや…ふふふっ、その様子だと随分と自信満々のようですね~!」

 

 自身を睨み付ける健二の眼差しを見て、グラシエは三日前とは違う気力を感じたのであろうか。

 

 

 健二「当ったり前だ!とあるお節介な風来坊に、みっちりと鍛えてもらったからな!」

 

 早苗「それに、戦いへの覚悟も変わった…。今日は絶対に負けない!」

 

 

 グラシエ「ふっふっふ、いいでしょう。 レッドキング!エレキング!」

 

 

 “ズドーン”

 

 

 グラシエの呼びかけを受け、激しい地響きと共に『装甲怪獣レッドキング』と『放電竜エレキング』が姿を現した!

 

 咆哮を上げる二体。どうやら二体も気合十分のようである。

 

 

 グラシエ「さあ見せてみなさい。あなた達の本気を!」

 

 

 二大怪獣を見上げ、遂に変身の決意を固めた二人は数歩前に出る。

 

 

 そして、後ろで見守るフルータ星人一同の方を振り向き…、

 

 早苗「安全な所で、見守っていて。」

 

 健二「必ず、生きて帰るから。」

 

 

 賢「…健二…。」

 

 愛「早苗さん…。」

 

 フルータ星人一同は少し不安がりながらも、安全な場所に移動し、健二たちを見守る事にした。

 

 

 健二「さぁ、行こうぜ!!」

 

 早苗「ええ!!」

 

 

 健二はエスプレンダーをはめた右手を左肩に当てて手前に突き出し、早苗はアグレイターをはめた右腕を下におろし、アグレイターの翼状のパーツを左右に展開させる。

 

 

 健二「ガイアー!!」

 

 

 早苗「アグルー!!」

 

 

 “ピキーン”(所謂エスプレンダー発光音)

 

 

 “ピシーン ガガガガガガ…ファイーン”(所謂アグレイター点滅&発光音)

 

 

 エスプレンダーは赤い光を放ち、アグレイターは発光部を激しく点滅させながら青い光を放ち、健二と早苗は光に包まれる。

 

 

 そしてそれぞれ赤と青の光の中からガイアとアグルが飛び出す!

 

 

 “ズドーン”

 

 

 ガイアとアグルは激しく土砂を巻き上げながら着地した。

 

 そして、巻き上がった土砂により起こった土煙を振り払うように、雄々しく立ち上がる。

 

 

 レッドキングとエレキングも、二人の登場に気付き身構える。

 

 

 グラシエ「遂に現れましたねウルトラマンガイア!ウルトラマンアグル!」

 

 

 賢「いよいよだな。決戦の時…。」

 

 愛「えぇ…そうね…ん?」

 

 

 その時、愛は何かに気づいた。

 

 

 愛「ガイアさんとアグルさんの姿…三日前と違うような…?」

 

 

 現れたガイアとアグル。だが、よく見てみると姿が以前と変わっていたのである!

 

 

 ガイアは胸のプロテクターが黒くなっており、アグルは体色が鮮やかな青になっており、胸のプロテクター『アグルブレスター』のボディーラインに金色が入っている。

 

 

 ガイアとアグルはそれぞれ自身の中のアグルの力、己の中の力を解放させて『V2』へと進化したのである!

 

 

 ガイ(オーブ)から課せられた特訓をクリアし、更に自身のウルトラマンに選ばれしワケ、守るべきモノに気付けた健二と早苗の成長に、ガイアとアグルの光が応えたのであろう。

 

 

 腕、胴体などを見つめながら、自身の姿の変化に反応する二人。

 

 健二「何だ…この姿は…。」

 

 早苗「前よりも、力が湧いて来る。」

 

 

 二人の闘志に応えるように、それぞれプロテクターが発光する。

 

 

 賢「スゲェ…前とまるで違うな。雰囲気。」

 

 

 バルタ「修行の成果が試されるときですな。」

 

 

 しれっと現れるバルタとピグモン。

 

 賢「ぅわあッ!? だ、誰だよお前!」

 

 愛「あ、バルタさんピーちゃん、どうも。」

 

 賢「…てか愛お前知ってんのかよ!?」

 

 愛「え…あはは、ガイさんの仲間だよ。」

 

 バルタ「驚かせてすまなかった。初めまして。バルタと申す。」

 

 賢「アンタも…健二さんたちの特訓に関わってたのか?」

 

 バルタ「えぇ。そしてその特訓を通して、彼らが強くなったことを確信した。その成果が楽しみだ。」

 

 明人「異星人二人に特訓してもらったのか…?健二さんと早苗さんは。」

 

 輝雄「マジパねえ…これは超強くなってるかも!?」

 

 フルータ星人一同は、健二たちの強さへの期待が高まっていた。

 

 

 グラシエ「ほほぅ、これは面白くなりそうですねぇ。」

 

 グラシエも二人の成長を確信しほくそ笑む。

 

 

 両者じっくりと対峙する…。まるで激闘への呼吸を整えているようである…。

 

 

 やがて、近くの電線が軽く火花を散らしたのを合図に互いに地響きを立て、土砂を巻き上げながら駆け寄る!

 

 

 健二「よし、行くぞっ!!」

 

 

 ガイアはレッドキングと、アグルはエレキングとそれぞれ組み合い、それと同時に衝撃により激しく土砂の柱が巻き上がる!

 

 

 …以前ならこの時点で力負けしていたのだが、なんと今回は互いに互角な押し合いを展開していた!

 

 

 早苗「…何…この力は…。」

 

 健二「以前と…まるで違うぜっ!!」

 

 

 両者互角の押し合いを展開した後、ガイアはレッドキングの放って来た右フックを左腕で防いだ後、そのまま右拳のストレートを胸部に打ち込み、続けて右脚の前蹴りを腹部に叩き込んで後退させ、アグルは押し合いで組み合ったままエレキングを持ち上げ、放り投げて地面に叩き付けた!

 

 

 愛「やった!互角に戦えてる!」

 

 賢「スゲェ…流石は選ばれし者たちだ。」

 

 以前よりも強くなっている事が明らかになったガイアとアグルに、賢と愛は感心を示す。

 

 

 グラシエ「ほぅ…確かに以前よりは強くなっていますねぇ…。」

 

 

 そう言うとグラシエは市街地の方を振り向き…。

 

 

 グラシエ「では、レッドキングたちが戦っている間、私はいっちょ破壊してきますか。」

 

 

 健二「何ッ!?」

 

 早苗「何ですって!?」

 

 

 驚愕する一同。

 

 賢「テメー!…戦いを見物するんじゃなかったのかよ!何で破壊なんか…!」

 

 グラシエ「あら、だからって“何もしない”と言ってませんよ~?今やあの二人はレッドキングたちと互角に戦えるほどに強くなった。どうやら戦いは長引きそうなので、その間に暇つぶしをするのですよ。」

 

 

 輝雄「暇つぶしで破壊行動とか…!」

 

 明人「明らかに残忍な宇宙人のする事だな…!」

 

 

 グラシエ「残忍で結構!私はただ、ウルトラ戦士どもを抹殺したいだけなのだ~!!」

 

 そう言いながらグラシエはみるみる巨大化していき、それに伴って口調も荒々しくなっていく…!

 

 

 グラシエ「さぁ!暴れてやる!…ウルトラ戦士が現れるまでなぁ!!」

 

 

 グラシエは市街地に向かい始める…!ガイアとアグルはレッドキングとエレキングとの戦いにより向かうことが出来ない…!

 

 

 その時、

 

 

 ガイ「やっぱそう来たかー!」

 

 

 グラシエ「…何だと!?」

 

 

 グラシエが声のした方を振り向くと、その視線の先にはクレナイ・ガイが、帽子を取りながら立っていた。

 

 

 ガイ「後を付けておいて正解だったぜ。」

 

 

 健二「ガイさん…!」

 

 早苗「来てくれたんだね…!」

 

 ガイの登場に健二と早苗も安心する。

 

 

 ガイ「お前らは戦いに集中してろ。…コイツは、俺が引き受ける。」

 

 

 健二・早苗「はいっ!!」

 

 

 グラシエ「何を小癪な~!!」

 

 

 ガイはグラシエを睨み付けるような鋭い視線で見つめる。

 

 ガイ「お前の相手は、この俺だ!」

 

 

 ガイはオーブリングを突き出し、光に包まれる。

 

 そして、オーブオリジンのカードをリングにリードする!

 

 

 《覚醒せよ!オーブオリジン!》

 

 

 ガイ「オーブカリバー!」

 

 

 ガイの叫んで手を伸ばすと共に光を発するリングの中から『オーブカリバー』が飛び出し、ガイはそれを手にする。

 

 そして、カリバーのリング・カリバーホイールを回した後上に揚げてトリガーを引く。

 

 すると、オーブニカの音声のようなメロディと共に全ての紋章が点灯し、そこから溢れた光に包まれる。

 

 

 そしてその光の中から『ウルトラマンオーブ・オーブオリジン』が右拳を突き出して飛び出す!

 

 

 ガイ「テアーッ!」

 

 

 (オーブオリジン登場BGM)

 

 

 グラシエ「うぐっ…何だこの光は!」

 

 

 グラシエが眩しさに目を覆う中、オーブはリング状の光を発しながら姿を現す!

 

 

 ガイ「俺の名はオーブ! ウルトラマンオーブ!」

 

 

 オーブの登場に一同は反応する。

 

 バルタ「おっ、来ましたかガイの旦那!」

 

 賢「え?…てことは、あれが健二たちを鍛えた…。」

 

 愛「ええ。ウルトラマンオーブよ。 あの姿もカッコいい~!」

 

 バルタ「あれが真の姿なのですぞ!」

 

 

 健二「あれが真の姿…つまり…、」

 

 早苗「己の力を引き出せる、形態…?」

 

 

 グラシエ「現れたなウルトラマンオーブ。 まずは貴様からやっつけてやる!」

 

 そう言うとグラシエは自身の武器でもある剣を引き抜いて構える。

 

 

 ガイ「銀河の光が、我を呼ぶ!」

 

 オーブは名乗りと共にカリバーを頭上に回して光の弧を描いた後、両手持ちで構える。

 

 

 (オーブオリジン戦闘BGM)

 

 

 グラシエ「ゼアーッ!」

 

 ガイ「テアーッ!」

 

 

 両者は互いに駆け寄りながら武器を振り下ろし、そして互いの武器が激しく火花を散らしながらぶつかり合う!

 

 

 お互いに剣と剣を合わせて競り合いをした後一旦離れ、オーブは左から横降りにカリバーを振るうがグラシエはそれを瞬時に防ぎ、逆に頭上から大きく剣を振るうがオーブは逆手持ちのカリバーでそれを防ぐと、そのまま右脚蹴りを繰り出すがグラシエはそれを即座に左腕で防ぐ。

 

 そしてお互い同時に放ったパンチが同時にお互い胸部に命中し、吹っ飛ぶ形で後退して距離を取る。

 

 オーブとグラシエは互いに剣を振るいながら接近し、互いの剣が火花を散らしながらぶつかると同時に両者はすれ違う。

 

 その後グラシエは後ろから斬りかかるが、オーブは背を向けたまま右逆手持ちのカリバーでそれを防ぎ、そのまま左足の後ろ蹴りを腹部に命中させて後退させる。

 

 

 オーブは振り向き様にカリバーを振るって斬りかかるが、グラシエはそれを高く跳び上がる事でかわす。

 

 

 ふと上を向くオーブは、グラシエが上空から急降下しながら放った剣を振るっての衝撃波を即座に横に跳んでかわすと同時に右手を突き出して光弾『オリジウムソーサー』を二発放つが、グラシエはそれを剣でことごとく弾き返した。

 

 

 そして急降下すると共に頭上から剣を振るって斬りかかるが、オーブはそれを両手持ちのカリバーで防ぐ形で受け止める。

 

 

 グラシエ「ふふふ、なかなかやるなぁ、ウルトラマンオーブ!」

 

 ガイ「まだまだここからだ!」

 

 

 

 その頃、櫂と真美、海羽の三人は、里奈を見送りに空港まで彼女を送った。

 

 因みに里奈は、現在シングルマザーで一人女児持ちの彼女の母の妹が引き取ることになった。

 

 

 遂に飛行機の時間が近く、里奈を見送る時が来た一同。里奈の新しい母は彼女と手を繋ぎながら櫂たちに礼を言う。

 

 

 「ありがとうございます。どうも姉の娘がお世話になりました。」

 

 

 真美「いえいえ、私たちはただ最低限の親代わりをしただけですよ。」

 

 海羽「とっても可愛い娘ですね!」

 

 櫂「ま、彼女は予想以上に元気少女だったけどな。思った以上に手を焼いたぜ。」

 

 櫂の発言に一同は笑い合う。

 

 どうやら櫂は、里奈に対する憎悪はすっかり無くなっているようである。

 

 

 海羽「また一緒に遊ぼうね~。」

 

 人懐っこくそう言いながら里奈の頬をつつく海羽。

 

 里奈「楽しかったよ海羽姉ちゃん。」

 

 

 次に真美が里奈の元に歩み寄り、目線までしゃがむ。

 

 真美「楽しい事、悲しい事、嬉しかった事、何でもいいから、もしまた話したくなったら遠慮なくいつでも電話してね。」

 

 真美は優しくそう言いながら自身の携帯番号をメモした紙切れを里奈に手渡した。

 

 里奈「…ありがとう。ママ、大好き!」

 

 里奈はそう言いながら真美に抱き付いた。

 

 里奈「ママの次に大好き。綺麗で、優しくて、とってもいい匂い!」

 

 真美「うふ、ありがとね。」

 

 そう言いながら、真美は優しく抱き返した。

 

 

 櫂「じゃあな。元気でやれよ。」

 

 櫂も、少し申し分なさそうに里奈に別れの言葉を送った。

 

 

 里奈「じゃあね櫂。」

 

 

 櫂「ふっ…相変わらず俺は呼び捨てかよ。」

 

 

 一同は再び笑い合った。

 

 

 やがて里奈は、新しい母親と共に改札を通って手を振りながら歩き去って行く。

 

 

 里奈「さよならー!」

 

 

 櫂「元気でなー!」

 

 海羽「さようならー!」

 

 真美「また遊ぼうねー!」

 

 

 やがて三人は里奈を見送った後、空港を後にする。

 

 

 海羽「あーあ、私もっと里奈ちゃんと遊びたかったなー。」

 

 真美「うふ、きっとまた遊べるよ。私たちに懐いてくれたし。」

 

 櫂「ただ気を付けろよ~。彼女は見た目以上にお転婆だから、油断したら大きく手を焼くぜ。俺みたいに。」

 

 海羽「へぇ~、子供に手を焼く櫂君か…見てみたかったなー。」

 

 櫂「ばっ…よせよ!」

 

 一同は笑い合った。

 

 

 やがて海羽と真美が他愛もない会話を始めた時、ゼロはひっそりと櫂に話しかける。

 

 ゼロ「ふっ、櫂、どうやら彼女には友好的になったみたいだな。」

 

 櫂「あぁ…アイツは俺と同じ境遇。そう思うと、むしろ憎悪よりも楽しませてやろうという気持ちの方が勝っちまってな。」

 

 ゼロ「ふっ、そっか…。」

 

 

 櫂「…だから…これ以上アイツみたいな人を増やさないためにも…怪獣は一匹遺さず駆逐する…俺はそう決めてんだ…!」

 

 

 そう言いながら櫂は、少し真剣な表情と共に拳を強く握る。

 

 

 ゼロ「櫂…。」

 

 

 ゼロはまだ言えなかった…。“怪獣だって悪い奴ばかりじゃない”という事を…。

 

 いつかそれを伝える時が来る…ゼロはそう言い聞かせながら、とりあえず今はまだ櫂の様子を見ることにしたのだ。

 

 

 その時、

 

 

 ゼロ「お!櫂。何やら邪悪な宇宙人反応をキャッチしたぜ!」

 

 櫂「お、そうかゼロ!」

 

 ゼロ「ここはいっちょやりますかっ!」

 

 

 櫂「あぁ………この三日間の…ストレス発散には丁度いい…!」

 

 櫂は不敵な笑みでそう呟くと、左腕のウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを出現させる。

 

 

 櫂「レッツ、ゼロチェンジ!!」

 

 

 掛け声と共にゼロアイは櫂の目にくっ付き、やがて櫂の体は赤と青の光と共に徐々にゼロの姿に変わっていき、巨大化する…。

 

 

 

 オーブVSグラシエの戦いは、なおも激しく続いていた。

 

 互いの振るう剣と剣が、激しく火花を散らしながらぶつかり合う。

 

 

 激しい斬り合いの中、グラシエはオーブにささやく。

 

 グラシエ「オーブ!この前のあの姿…あなたも“あのお方”から力を借りている身。即ち、私と同じなのだよ!?」

 

 

 グラシエは、先日目にしたオーブ・サンダーブレスターから、オーブも自身と同じ闇から力を借りる存在だと思わせようと掛かって来ているのだ!

 

 

 グラシエ「あの強大な闇の力、我が戦力にピッタシ。どうだ?愚かな人間の味方なんかやめて、私と共に闇の勢力に就かないか?ひぇっひぇっひぇっひぇっひぇ…!」

 

 

 …だが、オーブ(ガイ)は揺るがぬ強い意志を持っていた。

 

 ガイ「お前なんかと一緒にすんじゃねーよ!」

 

 

 グラシエ「…なんだと!?」

 

 

 ガイ「確かに、俺もかつてはベリアルさんの闇の力に飲まれたりした事があった…。

 

 だがな、かけがえのない人間たちのお陰で、俺は闇を恐れず逆に抱きしめ、自分の力にすることが出来た…!

 

 つまりこの闇は、俺の中の正義の闇なんだ!」

 

 

 グラシエ「…正義の…闇だと!?」

 

 ガイの思わぬ言葉に動揺し始めているグラシエは、次第にオーブに押され始めていく…!

 

 

 ガイ「いつまでも闇に縋る、お前なんかとは違うんだー!!」

 

 

 オーブは渾身の横降りの斬撃をグラシエの腹部に炸裂させグラシエはダメージを受けて後退する。

 

 

 グラシエ「くっ…ほざけー!!」

 

 

 グラシエは剣の刀身を発光させ、渾身の一撃を打ち込もうと接近する!

 

 

 オーブはカリバーのホイールを回して“火”の紋章で止めてトリガーを引いてホイールを回転させ、カリバーの刀身に炎を纏わせる。

 

 そしてオーブはグラシエの斬撃をカリバーで受け止めると、そのまま激しく火の粉を散らしながら攻撃を受け流していく…!

 

 

 ガイ「オーブフレイムカリバー!」

 

 

 そして完全に攻撃を受け流した後、カウンターの『オーブフレイムカリバー』を腹部に叩き込む!

 

 

 炎の斬撃を喰らったグラシエは爆発と共に大きく吹っ飛び地面に叩き付けられる。

 

 

 グラシエ「うぐっ…おのれオーブ…こうなればレッドキングとエレキングに加勢を…!」

 

 

 ゼロ「そうはさせねーよっ!」

 

 

 グラシエ「…ふぬっ!?」

 

 

 突如どこからか聞こえた聞き覚えのある声に反応したその時!

 

 

 ゼロ「ふぉぉぉぉぉりゃあッ!!」

 

 

 “ドガッ”

 

 

 グラシエ「!ぐはっ!」

 

 

 グラシエは現れたゼロの急降下キックを胸部に喰らい、大きく吹っ飛んでしまった。

 

 

 蹴りを決めたゼロは着地し、起き上ってポーズを決める。

 

 

 ガイ「あなたは…ゼロさん!?」

 

 ゼロ「よお!お待たせ! …てかオーブも来てたのか!?この世界に…!」

 

 ガイ「えぇ。ゼロさんも、コイツの反応を追って来たのですか?」

 

 ゼロ「あぁそうだ!とりあえず、挨拶は後だ!」

 

 互いに予期せぬ出会いに驚きつつも声を交わす。

 

 

 岩山に叩き付けられたグラシエは、突然のゼロの登場に驚きつつも一番の狙いの登場に反応し、体勢を立て直そうとする。

 

 グラシエ「ゼロも現れましたか…丁度いい…二人まとめてぶっ倒s…」

 

 

 “ゴシャッ”

 

 

 グラシエ「…うぐッ!?」

 

 

 突如、グラシエはゼロの右足蹴りを顔面に喰らい、そのまま岩山に押さえつけられてしまう。

 

 

 ゼロ「お前まさか蘇っていたとはなー。それに俺のかわいい後輩にちょっかいかけやがって!」

 

 櫂「ゼロ此奴に因縁あるのか? なら話は早い…ストレス発散にいっちょ付き合えよ…!(不敵な笑み)」

 

 

 グラシエ「ぅっ…今回のゼロ…何だか雰囲気が違う…!?」

 

 

 グラシエは早くもいつもと違うゼロの雰囲気に気付きつつあった。

 

 なにしろ今の彼は、邪の心を隠し持っている青年・櫂と一体化しているのだから…。

 

 しかも今回の櫂は、三日間の子育て地獄によりストレスが最高潮に達しているのだから…(笑)

 

 

 ガイ「一緒に行きましょう!ゼロさん!」

 

 

 そう言うとオーブは青色の光に包まれる。

 

 

 ガイ「ジャックさん!」

 

 《ウルトラマンジャック!》

 

 ジャック「シェアッ!」

 

 

 ガイ「ゼロさん!」

 

 《ウルトラマンゼロ!》

 

 ゼロ「デェェェアッ!」

 

 

 ガイはウルトラマンジャックとウルトラマンゼロのカードをダブルリードし、二人のビジョンがガイの両側に並び立つ。

 

 

 ガイ「キレの良いやつ、頼みます!」

 

 

 ガイは両側の二人と共に、右腕を揚げた後、オーブリングを目の位置に構えた後上に揚げる!

 

 

 《フュージョンアップ!》

 

 

 リングは音声と共に側面のカバーが展開し、オーケストラ調の壮大なメロディでジャックとゼロと共に緑、青と光った後に青に輝く。

 

 そしてオーブはジャックとゼロのビジョンと合体するかのように重なり青く光り、やがてその光が下から消えていき姿を現す。

 

 

 《ウルトラマンオーブ! ハリケーンスラッシュ!》

 

 

 全身に纏っていた光が消えて姿を現した『ウルトラマンオーブ・ハリケーンスラッシュ』は、『帰ってきたウルトラマン』のタイトルバックが移り、そこからゼロの変身バンクを思わせる赤と青と白の閃光が飛び出す背景と共に、光の中から飛び出す!

 

 

 (ハリケーンスラッシュ戦闘BGM)

 

 

 ガイ「光を超えて、闇を斬る!」

 

 

 オーブは姿を現すと同時に青い旋風にも似た波動を巻き起こしつつ口上を上げながらポーズを決める。

 

 

 因みにハリケーンスラッシュの元のウルトラ戦士は、二人ともバット星人と戦って倒した事がある。ある意味“バット星人キラー”とも言える形態である(笑)

 

 

 なおもグラシエをややアウトローなパンチやキックで痛ぶるゼロ。よほど櫂はストレスが溜まっているのであろう。

 

 

 やがてゼロがグラシエを上空に蹴り上げたところでオーブは高く跳躍し、上空でグラシエに青い閃光を纏った足で疾風の如く蹴りつける『流星スラッシュキック』を決める!

 

 グラシエは地面に落下する。

 

 

 ゼロ「ストロングコロナゼロ!」

 

 

 『ストロングコロナゼロ』にタイプチェンジしていたゼロは、立ち上がったグラシエに炎を纏ったパンチを連打していく!

 

 右フックを顔面に、次に左ボディブローを決め、その後右ストレートを受け止められるが即座に右膝蹴りを腹部に打ち込んで引き離した後、右アッパーを叩き込み、そして両手を合わせて握ったパンチを頭上から打ち込んで叩き込んで屈ませる。

 

 

 グラシエが屈んだところでゼロは右腕、オーブは左腕をそれぞれ掴む。

 

 

 ゼロ・ガイ「ウルトラハリケーン!」

 

 

 ゼロとオーブは共通の投げ技『ウルトラハリケーン』で、青い竜巻に巻き込ませる形でグラシエを上空に放り投げる!

 

 

 ガイ「オーブスラッガーランス!」

 

 オーブは頭部から飛ばしたオーブスラッガーショットを回転させて合体させて『オーブスラッガーランス』を生成する。

 

 

 ゼロ「ガァァルネイト、バスター!!」

 

 ガイ「オーブランサーシュート!!」

 

 

 ゼロは右拳に炎エネルギーを纏わせて突き出して炎状の強力光線『ガルネイトバスター』を、オーブはオーブスラッガーランスのレバーを一回引いて突き出し、先端から破壊光線『オーブランサーシュート』を放つ!

 

 

 二つの強力光線を受けたグラシエは大爆発して大ダメージを受ける。

 

 

 グラシエ「ぅぐはぁっ!!…まさか…この私が…二度もウルトラ戦士にっ…!」

 

 完全にグロッキーとなったグラシエ。今こそトドメの時だ!

 

 

 ガイ「闇に帰れ…これで終わりだ!」

 

 ゼロ「二度と蘇えんじゃねーぞコウモリ野郎!」

 

 櫂「地獄に落ちろおぉぉ!!」

 

 

 オーブは上空のグラシエ目掛けて高く跳び上がり、『ルナミラクルゼロ』にタイプチェンジしていたゼロは右腕を顔の前に持って来て精神を統一する。

 

 

 ゼロ「ミラクルゼロスラッガー!」

 

 

 ゼロは右腕を突き出し、無数に分離するゼロスラッガー『ミラクルゼロスラッガー』を飛ばす!

 

 

 オーブはオーブスラッガーランスのレバーを三回引いて刃先を輝かせる。

 

 

 ガイ「トライデントスラッシュ!」

 

 

 オーブは必殺技『トライデントスラッシュ』を発動させ、四方八方から複雑な軌道を描きながら飛び回るミラクルゼロスラッガーと共に目にも止まらぬ速さでグラシエを斬り裂いていく!

 

 

 オーブがグラシエを斬り裂いている間、ゼロスラッガーはゼロの元に戻って行き、やがて元のゼロに戻っていたゼロはスラッガーを合体させて『ゼロツインソード』を生成すると、刀身を輝かせながらグラシエ目掛けて高く跳び上がる!

 

 

 そして、ゼロはすれ違いざまに必殺の斬撃『プラズマスパークフラッシュ』を、そしてオーブはトライデントスラッシュの最後の強力な一撃を、それぞれ同時に叩き込む!

 

 

 会心の一撃を決めたゼロとオーブは着地してポーズを決める。

 

 

 グラシエ「おっ…おのれゼロ!オーブ!…お、俺が倒れても、あやつら(レッドキングとエレキング)が必ずガイアとアグルを倒し、お前らを~…!」

 

 

 “ズドガーン”

 

 

 グラシエは捨て台詞を吐いた後、上空で大きく発光した後大爆発して跡形も無く消し飛んだ。

 

 

 櫂「ヘッ…汚ねぇ花火だ!…あースッキリしたー!」

 

 どうやら櫂は、十分ストレス発散ができたようである(笑)

 

 

 共闘を終えたゼロとオーブ(オーブオリジン)は握手を交わす。

 

 ガイ「ゼロさん、お疲れさんです。また一緒に戦えて光栄です。」

 

 ゼロ「良いって事よ。俺も丁度、あのコウモリ野郎が気に入らなかっただけでね。」

 

 櫂「この人は…ウルトラマンオーブって言うのか?」

 

 ゼロ「あぁ。俺の後輩だ。」

 

 ガイ「その声は…今ゼロさんと共に戦っている者ですね。初めまして。」

 

 櫂「お、おぉ、初めまして。俺、竜野櫂だ。よろしくな。」

 

 ガイ「こちらこそ。」

 

 

 気さくに自己紹介をする櫂だが、当然心の中では不敵な笑みを浮かべながら…、

 

 櫂(フッ…ウルトラマンがまた増えたか…これで怪獣ども殲滅にまた近づけるかな…。)

 

 

 やがて三人は、レッドキングとエレキングと戦っているガイアとアグルの方を振り向く。

 

 ガイアとアグルはそれぞれレッドキングとエレキングと互角の戦いを展開しており、フルータ星人一同はその様子を見守っていた。

 

 

 ゼロ「コウモリ野郎の言ってたレッドキングとエレキングとはあいつらの事だな…よーし、俺もいっちょ加勢しt…」

 

 ガイ「待ってくださいゼロさん。」

 

 ゼロ「ああ?何だよオーブ。」

 

 

 ガイ「…あの二人を…信じてみましょう。」

 

 

 ゼロ「…へっ、そうか。分かったぜ。」

 

 ガイの言葉に何かを察したのか、ゼロもガイアとアグルの戦いを見守ることにした。

 

 

 やがてゼロとオーブは変身を解き、人間態に戻る。

 

 

 ガイ「初めまして。俺はクレナイ・ガイ。」

 

 櫂「あ、ああ、どうも。 しかし、何故加勢しないんだ?」

 

 ガイ「ガイアさんとアグルさんは、自身の中の潜在的な力を引き出せるはずだ。俺はそれに期待したい。」

 

 櫂「あ…ああ、何だか知らねーがそういう事か…。」

 

 

 

 ガイアさんとアグルのレッドキングとエレキングとの戦いは白熱を増していた。

 

 

 ガイアは連続でパンチを胸部に打ち込むが、レッドキングはそれに怯まず右フックを打ち込み、ガイアはそれを喰らったがそれによる体の回転を活かして回し蹴りを頭部に打ち込む。

 

 その後、お互いにカウンターのパンチが胸部に決まり同時に後退する。

 

 

 アグルはエレキングの尻尾攻撃をなんとか右腕で弾き返すと、続けて打って来た左フックを右腕で受け止めるとカウンターの右足蹴りを腹部に打ち込んで後退させる。

 

 エレキングは突進の形で頭突きを繰り出し、アグルはそれを両手で頭部を掴んで受け止めるが、強い力により押さえ込まれそうになる…。

 

 

 やはりV2に覚醒して強くなったとはいえ、二体の怪獣もそれに負けない強さを隠し持っていた…!

 

 

 …だが、二人は決して諦めてはいなかった。

 

 

 早苗「こいつらやっぱり強い…でも、私たちは諦めない…! ガイさんが言ってくれたんだもん…!」

 

 

 健二「今の俺たちなら、真の力を引き出せると…! ガイさんも、ゼロと共に俺たちのために頑張ってくれたんだ…今度は、俺たちが頑張る番だ!」

 

 

 その時、

 

 

 斎木「根性見せろウルトラマーン!!」

 

 

 健二・早苗「…え?」

 

 

 フルータ星人一同「この声は…!?」

 

 

 一同は声のした方を振り向く。そこには、4機のF-15Jイーグルが飛んで来る光景が!

 

 

 『斎木和寿』とその仲間たち(マサト、ユウジ、タカオ)が、怪獣出現に気付き加勢に来たのだ!

 

 斎木「加勢しに来たぜ!」

 

 マサト「随分と派手なバトルが始まってるな!」

 

 ユウジ「腕が鳴るね~。やってやるぜ!」

 

 タカオ「気を抜かずに行くぞっ!」

 

 

 賢「ぅわぁ…斎木…。」

 

 賢は、先日の件(第26話参照)もあって、まだ斎木の事を恐れているようである(笑)

 

 

 愛「ま、まあまあ(汗)。でも、加勢に来てくれたなら心強いわ。」

 

 明人「おっかねえ人だけど、腕は確かだからな。」

 

 輝雄「これは益々燃えて来るね。」

 

 

 斎木「撃て!」

 

 斎木の合図と共に、4機は一斉に弾丸を発射する!

 

 弾丸を数発喰らったレッドキングとエレキングは、注意が斎木達にそれる。

 

 そしてそれぞれ爆発岩石弾と放電刃を放つが、斎木達は高度な操縦テクによりそれらをかわしつつ、続けて弾丸を発射していく。

 

 

 早苗「斎木さん…みんな…。」

 

 健二「ありがとよっ!!」

 

 

 思わぬ援軍により元気を取り戻したガイアとアグルは、再び2体に挑む!

 

 

 健二・早苗「今こそ、ガイさんからの特訓の成果を見せる時!!」

 

 

 エレキングは尻尾攻撃に切り替え、4機目掛けて大きく尻尾を振るうが、アグルは「させるか!」とばかりに高く跳躍すると、上空で大きく脚を振るって尻尾攻撃を蹴って叩き落とす!

 

 

 その後着地するとエレキングの右腕を掴んでそのまま腹部に右足蹴りを打ち込み、続けて小さく跳躍して左前蹴りを胸部に叩き込む。

 

 その後、エレキングの首を掴んで高くジャンプした後、落下スピードを活かして地面に叩き付けた。

 

 

 アグルは再び体勢を立て直すと、高く跳躍してすれ違いざまに右足蹴りを放ち、エレキングの左側の角を叩き折った!

 

 その後、着地して再び構えを取る。

 

 

 基本スペックはガイアV2を上回ると言われているアグルV2。自身が選ばれた意味、そして戦う理由に気付いた早苗は今、その力を引き出せるようになったのである!

 

 

 早苗「わぁ…これなら行ける…行けそうだよ!」

 

 

 やがてアグルは余裕が出始めたのか、右手を突き出して指を軽く曲げて挑発するようなポーズを取る。

 

 

 だが、エレキングはアグルの思わぬ強さに警戒しているのか、向かって来る様子は無い…。

 

 

 やがてアグルは挑発のポーズを解くと、「そっちが来ないならこっちから行くぜ!」とばかりに必殺技のポーズに入る!

 

 

 アグルは両腕を回転させて光エネルギーを発生させ、やがてそれを両腕を胸に持ってくることで溜める。

 

 

 アグルの必殺技のチャージをじっと見つめるエレキング。やがてアグルは両腕を引いて右腰辺りに持ってくることで精神を統一させる…。

 

 

 すると、エレキングは「今だ!」とばかりに口からの放電刃を連射し始める!

 

 

 だが、アグルはそれに動じる事無く、「遅い!」とばかりに両腕を突き出し、リキデイターの強化版とも言われるスクリュー状の波動弾『フォトンスクリュー』を放つ!

 

 

 波動弾は放電刃を打ち消しながら突っ込み、やがてエレキングの体を貫通する!

 

 

 胸部に風穴を開けられ動きが止まるエレキング。やがてアグルが背を向けると、エレキングは大爆発して跡形も無く消し飛んだ…。

 

 

 アグルは遂に、エレキング撃破に成功したのである!

 

 

 賢「ィよしっ!!」

 

 愛「やったー!!」

 

 輝雄「やるじゃないか早苗さん!!」

 

 明人「かっけー!!」

 

 

 フルータ星人一同はアグルの勝利に歓喜する。

 

 

 ガイ「…ふっ、やったな。」

 

 バルタ「やりましたな。」

 

 ガイ達も、早苗(アグル)の勝利に彼女の成長を感じた。

 

 

 

 あとはガイアVSレッドキングだけである!

 

 

 レッドキングは口から爆発岩石弾を放つが、ガイアはそれを両手を突き出して『ウルトラバリヤー』を展開して防ぎ、そして跳躍してバリヤーを跳び越えて急降下キックを放つが、レッドキングはそれを右腕で受け止めて防ぎ、そのまま押し飛ばすがガイアは空中で宙返りして着地する。

 

 両者は駆け寄りつつ肩での体当たりをぶつけ合い、その後ガイアの右フック、左膝蹴りをレッドキングはそれぞれ左腕、右腕で防いだ後、右拳のストレートを放つがガイアはそれを両腕をクロスして防ぎ、それを右拳で叩き落とした後、不意にレッドキングの左フックを顔面の右側面に喰らうが、すかさずお返しとばかりに右フックをレッドキングの顔面の左側面に叩き込む!

 

 そして両者は再び組み合い力比べを始める!

 

 

 両者の戦いの激しさは周囲にも伝わり、土砂や土煙、石の粒が連続して起こる小さな爆発と共に巻き上がる。

 

 

 やがて両者はお互い右足蹴りを同時に放ち、それが同時にそれぞれ腹部に命中して後退する。

 

 

 このように、ガイアはレッドキングと一進一退の互角な戦いを繰り広げていた。

 

 

 ガイからの特訓を突破し、自身が選ばれた理由、戦う理由に気付き、更にV2となった事で強さも増したはずなのだが、それでもレッドキング、やはりかつてマックスを苦戦させた事があるだけあって、それに負けない強さで戦いを挑んでいた。

 

 

 アグルはガイアに加勢しようと構えを取る。しかし、

 

 

 健二『待ってくれさなちゅん! こいつは俺自身の力で倒したいんだ!』

 

 健二はガイアの力で、テレパシーでアグルの中の早苗に語り掛けた。

 

 早苗「…でもケンちゃん…。」

 

 

 すると、健二の意思を察したガイも早苗(アグル)に呼びかける。

 

 ガイ「あいつにやらせてみろよ!」

 

 早苗「…ガイさん…。」

 

 

 ガイ「…彼なら出来る…信じるんだ…。」

 

 

 ガイの言葉を聞き、そして健二の強い意志に気付いたアグル(早苗)はゆっくりと頷いた後、体を青く発光させて小さくなっていき、やがて変身が解除されて人間体の早苗に戻る。

 

 

 早苗「ケンちゃん…私、信じるよ…。 ケンちゃんが勝つのを…!」

 

 早苗はガイアの方を向いて懸命にお祈りした。

 

 

 ユウジ「よーし、こうなったら奴にミサイルをぶち込んでやる!」

 

 マサト「待てユウジ!」

 

 ユウジ「はぁん?」

 

 マサト「さっき奴の体内をスキャンした。見ろ。」

 

 マサトはユウジの機体のモニターにデータを送り込む。

 

 マサト「奴の体内には爆発性の高い岩石が詰まっている。ミサイルで爆破してしまえば、この辺りが吹っ飛ぶぞ!」

 

 ユウジ「なんてこった…これじゃあガイアや周辺の人達まで吹っ飛んじまう!」

 

 

 隊員達が苦悩している間にも、ガイアの『クァンタムストリーム』とレッドキングの爆発岩石弾が激しいぶつかり合いを展開していた。

 

 

 健二「今爆破したらダメだ…なんとか今の内に、反撃の隙を作らないと…!」

 

 今回の健二は冷静だった…しかし、果てしなく続く撃ち合いになかなか隙が見つからずにいた。

 

 

 斎木「とにかく今は、援護射撃だ!」

 

 

 斎木たちはガイアへの援護としてレッドキングにレーザー砲で牽制する!

 

 

 それによりレッドキングは標的を斎木達の機体に変えて岩石を乱射する!

 

 

 斎木「…ッ!全機回避!!」

 

 

 斎木達は絶妙な操縦テクで岩石をかわしていくが、その手数の多さにかわすのが精一杯でいた。

 

 

 やがて、岩石弾の一部が崖に命中し、そこから砕けた岩石が落下し始める!

 

 

 その下にはフルータ星人一同が!

 

 

 賢「はっ…みんな逃げるぞ!」

 

 

 一同は急いでその場から脱し始めるが、ピグモンが足を挫いて転んでしまう!

 

 

 賢「はっ…ピグモン!!」

 

 

 ピグモン「ピー!!」

 

 

 諦めかけ、両手で顔を覆うピグモンに落石が迫る!

 

 

 バルタ「はっ…危ないっ!!」

 

 

 その時、バルタは咄嗟に突っ込んで行き、ピグモンと突き飛ばす!

 

 

 “ガラガラガラ、ドガッシャーン”

 

 

 それによりピグモンは難を逃れたが、それと引き換えにバルタが落石の下敷きに!!

 

 

 愛「はっ…バルタさーん!!」

 

 賢「バルタっ!!」

 

 

 健二・早苗「バルタさん!!」

 

 

 フルータ星人一同は急いで駆け寄り、積み重なっている石をどかし始める。

 

 

 やがて中からバルタを見つけた一同は急いで引き上げるが、彼は既に傷だらけで弱っている状態であった。

 

 

 やがてガイと櫂も歩み寄る。

 

 

 愛「しっかり…しっかりしてバルタさん!」

 

 愛と早苗、ピグモンが揺すった事によりなんとか意識を取り戻すバルタ。

 

 バルタ「…ぁぁ…良かった…無事だったみたいだな…。」

 

 

 ガイ「…何故あんな無茶を…!」

 

 意識が朦朧とする中、バルタは答えた。

 

 バルタ「…言ったよなぁ…自分はこの地球が気に入った…だから…地球を出る前に…もう一度地球人の役に立ちたいと…ヘへっ…どうやら…今がその時だったみたいだな…。」

 

 

 ガイ「お前には忍術があるだろそれを使えばこんな事にならなかったはずだ…!」

 

 

 バルタ「…へへっ…どうやら、忍術を…使おうという意思よりも…助けたいという…意識の方が勝っちゃった…みたいだ…。」

 

 

 悲しに暮れる一同…その様子を見た櫂はどこか複雑な心境になっていた…。

 

 櫂「…バカな…宇宙人が…地球人のために…おのれを犠牲に…?」

 

 ゼロ「な、これで分かっただろ? 宇宙人にだって善良な奴もいる。これが何よりの証拠だ。」

 

 動揺する櫂に語り掛けるゼロ。櫂は更に苦悩を強める…。

 

 

 やがてバルタはガイアの方を向いて語る。

 

 

 バルタ「ガイア! 必ず勝利を掴み取ってくれ…君なら出来る…選ばれた本当の意味に気付けた…君な……ら………。」

 

 

 やがてバルタは搾り出すように喋った後、力尽きてその場に倒れ伏してしまった…。

 

 

 賢「…何…。」

 

 明人・輝雄「嘘だろ…。」

 

 ガイ「…。」

 

 早苗「そんな…。」

 

 

 愛「そんn………バルタさああぁぁーん!!」

 

 

 言葉を失う一同。愛とピグモンは悲しみの叫びを上げた。

 

 

 

 それを見た斎木達、そしてガイアも、一瞬言葉を失う。

 

 

 斎木「…何て事だ…!」

 

 

 ガイア(健二)は俯き、静かに怒りにより拳を握り始める。

 

 

 健二「…くっ………いい加減に…しやがれ…!」

 

 

 健二の脳裏には浮かんだ…レッドキングにより、ピグモンを護るために命を落とした守護獣、命を狙われたピグモン、そして、今まさにレッドキングにより力尽きたバルタ…。

 

 

 それらを脳裏に浮かべた健二(ガイア)は、遂に怒りにより吠える!

 

 

 健二「貴様は…貴様はどれだけ命を奪えば気が済むんだあぁぁ!! うおおおおああぁぁぁ!!」

 

 

 怒りに燃えるガイアは、レッドキング向かい真っ向から駆け始める!

 

 

 早苗「はっ…ケンちゃん!」

 

 

 ガイ「ダメだ健二! 怒りに駆られてはいけない!!」

 

 

 だが、そんなガイの忠告も他所にガイアはなおも駆け続ける…!

 

 

 やがてレッドキングは、真正面から吹っ飛ばしてしまおうと岩石弾を吐き出す溜めを始める!

 

 

 斎木「いかんっ!!」

 

 

 だが、

 

 

 “パフッ”

 

 

 レッドキングは岩石弾を吐き出そうと口を開けるが、どうした事かそこから岩石が発射される事無く、間抜けな音と共に土煙が少し出る程度に終わってしまう。

 

 

 レッドキングは少し驚いた後再び口を開けるが、やはり岩石は発射されず、間抜けな音と共に土煙が少し…。

 

 

 なんとこういう時に、レッドキングは体内に溜めていた岩石弾が全て無くなってしまったのだ!

 

 

 レッドキングは動揺とイライラにより遂に自身の頭を叩き始めてしまう。

 

 

 その隙にガイアは走りながら高く跳躍し、レッドキングの頭部に強力なジャンプキックを決める!

 

 

 蹴りがヒットした箇所が爆発を放つと共にレッドキングは吹っ飛び地面に叩き付けられる。

 

 

 恐らくガイアは仮にレッドキングが岩石弾を発射したとしてもそれも計算に入れ、先ほどのように跳躍して避けると共にジャンプキックを決める気でいたのであろう。

 

 怒りに燃えていても、ガイとの修行で培われた精神は健在だったのである!

 

 

 早苗「やった!」

 

 賢「やるな健二!!」

 

 愛「凄い…ちゃんと計算していたなんて…!」

 

 

 早苗とフルータ星人一同はガイアのナイスファイトに感心を示す。

 

 

 ガイ「よし、奴は岩石が無くなり吐けなくなった。 今こそ、力を解き放て!」

 

 

 健二「…はいっ!!」

 

 

 ガイの助言に健二は気合の返事をする。

 

 

 タカオ「ふっ、どうやら展望は見えたみたいだ。」

 

 

 斎木「全機ウルトラマンガイアを援護しろ! 心置きなくやれ!!」

 

 

 マサト「了解した!」

 

 ユウジ「イエッサーキャプテン!腕が鳴るね~!」

 

 タカオ「行くぞっ!」

 

 

 斎木の指示を受け、F-15Jイーグルは一斉に怯むレッドキングに射撃を始める!

 

 

 健二「貴様だけは絶対にゆ˝る˝さ˝ん˝っっ!!」

 

 

 その隙に体勢を立て直して気合の叫びを上げたガイア(健二)は、遂に“ヴァージョンアップ”のポーズに入る!

 

 

 健二「地球の力を…生き抜く力を…今こそ、生命(いのち)の限り使う時だ!!」

 

 

 ガイアは両拳を腰に当てた後で両腕を頭上に高く挙げ、胸の前で両手を瞬時に合わせると同時に左右に広げ、その状態で両腕を内側に180度回転させた後、胸の前で交差させた両拳を下に降ろす!

 

 するとガイアの体は赤と青の眩い光に包まれ、そして徐々に姿が変わって行く…!

 

 

 早苗「ケンちゃんが…ガイアが変わる!」

 

 

 一同が見守る中、遂に姿を現した新しいガイア。

 

 

 両腕と両足にアグルを象徴する黒と青の線が入り、両手首を下半身の赤の割合がV2より増し、体格もより筋肉質な姿が特徴の“最高のウルトラマンガイア”。

 

 

 ガイアは、自身と、自身の中のかつて授かったアグルの光の力を最大限に解放した最強形態『スプリームヴァージョン』にヴァージョンアップしたのだ!

 

 

 ガイアの光を受け継いだ健二がガイとの特訓を通し、自身が選ばれた真の理由、そして、愛する者を守りたいという単純ながらも大切な思いを強めた事により、遂にヴァージョンアップが可能になったのである!

 

 

 (BGM:ガイアノチカラ(full))

 

 

 明人「おぉ…スゲェ…カッコいい!」

 

 輝雄「あれなら行けそうだよ!」

 

 賢「よーし、行けー!ぶっ潰せー!!」

 

 愛「頑張って!…バルタさんのためにも…!」

 

 早苗「頑張れー!」

 

 

 ガイ「行け…健二…ウルトラマンガイア!!」

 

 

 健二「うおぉ! 何だ!この力は…負ける気がしねぇ!!」

 

 

 ヴァージョンアップに加え、一同の声援を受けたガイア(健二)は、とてつもなく力がみなぎって来た。

 

 

 健二「さあ、来いっ!!」

 

 

 遂にファイティングポーズを取るガイアSV!レッドキングは闇雲に突っ込んで行く…!

 

 

 組み合うガイアとレッドキング。しかし力の差は歴然としており、ガイアは組み付いた瞬間、レッドキングを軽々と放り投げる!

 

 

 次に、レッドキングが起き上がろうとする間もなく、ガイアは右腕を掴んで引き上げて一本背負いを決める!

 

 

 レッドキングが起き上ったところで今度はホールドして放り投げるガイア!

 

 

 すぐにまた組み付き、ガイアはレッドキングを頭上まで持ち上げ、背中から叩きつける!

 

 

 なおも負けてたまるかとばかりに接近するレッドキング!しかし、ガイアはそんなレッドキングの突進をあっさりと往なしつつ投げ飛ばす!

 

 

 今度は反撃とばかりにキックを放つレッドキング。だが、ガイアはあっさりと脚を掴んでひっくり返す!

 

 

 再び突進を繰り出すレッドキング。しかし、ガイアはそれを下半身に組み付く事で受け止め、そのまま担ぎ上げた後背中から叩きつける!

 

 

 ガイアは一度高く跳躍して横たわるレッドキングの元に着地した後、レッドキングの右足を掴み軽々と放り投げる!

 

 

 レッドキングは今度は尻尾を大きく振るって反撃するが、ガイアはそれを軽々と受け止め、逆にドラゴンスクリューを繰り出して地面に叩き付ける!

 

 

 再びレッドキングの尻尾を掴んだガイアは、今度は力一杯スイングして地面に叩き付ける!

 

 

 よろめきながらも立ち上がったレッドキングは再びガイアと組み合うが、ガイアはあっさりと巴投げで投げ飛ばす!

 

 

 連続の投げ技に流石に弱って来たレッドキング。ガイアは今度はレッドキングを頭上高く担ぎ上げ、力一杯放り投げた!

 

 

 地面に叩き付けられたレッドキング。実に12回も連続で投げ技を喰らった事により既に体がガタガタなのか、立ち上がるのもやっとの程になっていた。

 

 

 (何気に投げられ回数が『金属生命体ミーモス』を超えた!(笑))

 

 

 流石は“投げの鬼スプリーム”とも呼ばれるだけあり、これまで数々の怪獣を倒し、ウルトラマンマックス、そして自身をも苦戦させたレッドキングを圧倒し、軽々と何度も投げ飛ばすスプリームヴァージョンの強さは侮れないモノがあった。

 

 

 実際ガイアは、何気にこの形態になって負けた事が一度も無いのだから…。

 

 

 ガイアは、なんとか立ち上がったレッドキングに猛接近し、渾身のラリアットをぶち込んで再び地面に叩き付ける!

 

 

 更に跳躍して前転しながら横たわるレッドキングの腹部に踵落としを叩き込む!

 

 

 そして仰向けに倒れるレッドキングを右拳だけで頭上高く持ち上げ、そのまま放り投げた!

 

 

 完全にグロッキーとなったレッドキング。今こそ決める時である!

 

 

 健二「トドメだ!!」

 

 

 ガイアは体勢を立て直すと、腕を大きく振りかぶって赤と青の光エネルギーを溜めていき、そして体の前で両手を合わせ、右手を下にずらして最強必殺光線『フォトンストリーム』を放つ!

 

 

 ガイアSVの代名詞とも言える最強光線を頭部から喰らっていくレッドキング。

 

 

 やがてしばらくもがき苦しんだ後、死んだ事にすら気付かないほどの速度で頭部から順番に蒸発していき、やがて跡形も無く消し飛んだ!

 

 

 遂に、健二(ガイア)は、因縁の相手・レッドキングに打ち勝ったのである!

 

 

 早苗「やったー!!」

 

 愛「凄い…!健二さんが勝ったー!」

 

 賢「よっしゃー!!」

 

 明人・輝雄「イエーイ!」(ハイタッチを決める)

 

 

 早苗とフルータ星人一同は喜び合う。

 

 

 ガイ「やったな…健二。」

 

 ガイもふっと微笑みつつ健二(ガイア)の勝利に安心する。

 

 

 ゼロ「よっしゃっ! 遂にやったな!」

 

 櫂「あぁ…アイツ…更に強くなりやがって…。」

 

 櫂も健二の勝利、そして強くなったことを喜んでいた。

 

 …ひっそりと不敵な笑みを浮かべつつも…。

 

 

 見事に勝利したガイアSV(健二)は、応援してくれた早苗たちに向かってサムズアップを決めた。

 

 

 

 変身を解き、早苗たちの元に戻った健二は、早苗と勝利の握手を交わす。

 

 

 早苗「やったねケンちゃん! 遂に私たち、勝ったんだね!」

 

 健二「ああ! ガイさんの特訓…それから、皆の想いのお陰でもあり、俺たちは強敵に勝てたんだ!」

 

 

 ガイは健二と早苗の元に歩み寄り、それぞれ片手ずつで二人の肩に手を当てる。

 

 ガイ「二人とも…お疲れさんです。」

 

 

 早苗「はい!ガイさん、本当にありがとうございました。」

 

 健二「ガイさんのお陰で、俺、遂にアイツ(レッドキング)を投げ飛ばすことが出来たぜ!」

 

 

 …最も、倍返しにも程がある回数投げていたが…(笑)

 

 

 ガイ「愛する者を守りたい…君たちの決意は単純に見えるかもしれないが、それだけでも十分大事な事だ。その想いを忘れるんじゃないぞ。」

 

 

 健二・早苗「はい!」

 

 

 健二と早苗は遂に、ガイに一人前のウルトラ戦士として認められた瞬間である!

 

 

 賢「にしても凄かったよな~!あんなデカブツを軽々と何度も…!」

 

 明人「ふふっ、賢も妹を守るためにあれぐらい力を付けたらどうなの~?」

 

 賢「んなっ!?…また俺をシスコン扱いしたな~!」

 

 輝雄「“扱い”じゃなくて事実は事実だろ~!」

 

 賢「うっ…うるへ~!!」

 

 賢たちはいつものやり取りに戻っていた。

 

 

 愛「お兄ちゃんったら…でも、これが一番落ち着くよ。」

 

 早苗「うん!いつもの雰囲気に戻った…平穏が訪れた証拠ね!」

 

 

 愛「そうだね……でも…。」

 

 

 さっきまで微笑んでいた愛だったが、再び少し硬い表情になり、振り向く。

 

 

 その視線の先にはバルタが横たわっており、ピグモンはその体に縋りながら泣いていた。

 

 

 愛「…一人…私たちのために散ってしまった…。」

 

 健二「あぁ…奴も良い奴だったよな…。」

 

 早苗「折角地球という友達の星が出来たのに…可哀想…。」

 

 

 自分たちのためにおのれを犠牲にしたバルタを憐れむ一同。

 

 

 ガイ「せめて、墓標でも建ててやろうぜ。」

 

 早苗「えぇ…感謝の意をこめて…。」

 

 健二「建てるか…“ある戦士の墓標”ってな…。」

 

 

 

 だが、その時!

 

 

 

 バルタ「…誰の墓標だって?」

 

 

 

 一同「…へ!!??」

 

 

 

 突如、聞き覚えのある声が聞こえたかと思うと、なんと横たわっていたバルタの体は上半身を起き上らせる!

 

 

 バルタ「やあ!」

 

 

 当然縋っていたピグモンも驚く。

 

 

 実は、バルタは死んでいなかったのだ!

 

 

 ガイ「おっ…お前、生きていたのか!?」

 

 賢「信じられない…あれだけの重傷を負いながらも…!」

 

 明人・輝雄「アンベリーバボー!」

 

 愛「でも…良かった…! ね、ピーちゃん!」

 

 ピグモン「ピー!」

 

 健二「しかし良かった…本当に良かった…!」

 

 早苗「えぇ!バルタさんは死ぬにはまだもったいない人だよ!」

 

 

 一同は驚きつつも、バルタの無事を喜び合った。

 

 

 ピグモンはバルタに縋り、今度は嬉し泣きを始める。

 

 

 バルタ「へへへ…まさかこんなにも皆から好かれていたとは…。」

 

 

 それを見た櫂。

 

 櫂「チッ…やっぱ宇宙人って、簡単にはくたばらないな。」

 

 ゼロ「まあそう言うな櫂。とりあえず良かったじゃねーか。」

 

 櫂「(不敵な笑みを浮かべて)あぁ…そうだなぁ…。」

 

 

 櫂(まあいい。もし奴が邪悪な本性を持っているのなら、それを見せた瞬間俺が切り刻んでやる…!)

 

 

 バルタの生存を喜ぶ一同。しかし、流石に傷が深いのか、上手く立ち上がるのもやっとの程であった。

 

 

 愛「大丈夫?バルタさん…。」

 

 バルタ「へ…へへ、ちょっと傷が思った以上に重いみたいだ…。」

 

 

 その時、

 

 

 斎木「そのバルタン星人、しばらく我々が与かってもいいか?」

 

 

 そう言いながら、F-15Jイーグルから降りていた斎木達が合流する。

 

 

 健二「え?与かるって…?」

 

 早苗「バルタさんを、どうするつもりですか?」

 

 

 斎木「フッ、案ずる事は無い。重傷なんだろ?傷の治療のために、それ専門の人の所に連れて行ってやるよ。」

 

 

 健二「治療専門の人…そんな人が知り合いにいるのですか?」

 

 

 斎木「あぁ、それも凄い腕なんだぞ~!」

 

 

 

 一方、北海道石狩市の医療ボランティアにて。

 

 笹崎春菜「へっ…へっくちっ!!」

 

 岡田友実「大丈夫?ハルちゃん。」

 

 春菜「え…えぇ、大丈夫…。」

 

 友実「最近忙しいもんね…ま、無理せず頑張ろ!」

 

 春菜「えぇ、そうだね…(上を向いて)カズ君…また私の噂をしているな~。」

 

 

 

 場所を戻そう。

 

 

 斎木「それぐらいの傷、そいつがちょちょいと治してくれるんだぜ?」

 

 

 早苗「なるほど…それは頼もしいですね!」

 

 

 愛「お願いします。どうかバルタさんを、元気にしてあげてください!」

 

 

 斎木「という事なんだが、お前さん自身はどうだ?」

 

 

 バルタ「あなた達は初めて出会う地球人…更にその行先でも新たな出会い…いいでしょう。では、しばらく世話になります。」

 

 

 斎木「ははっ、ったく他人行儀だな…それじゃ、決まりだな。」

 

 

 しばらく斎木達が与る事が決まったバルタ。しかし、それを知ったピグモンはバルタに縋り付く。恐らく友達に行って欲しくないのであろう。

 

 

 バルタ「ピーちゃん…案ずることはない…傷が治ったら必ず戻って来るさ。」

 

 しゃがんで頭を撫でながらピグモンを諭すバルタ。それを聞いたピグモンは少し安心して落ち着いたのか、少し大人しくなる。

 

 

 バルタ「自分が戻ってきたら、また一緒に魚釣りに行こうな。」

 

 ピグモン「…ピ~…。」

 

 

 次にバルタは、マサト、ユウジに肩を貸してもらいながらガイの元に歩み寄る。

 

 

 バルタ「ガイの旦那…行く前に、渡すものがある。」

 

 ガイ「…渡すもの?」

 

 

 バルタはガイにあるモノを手渡す。それは、分身しているバルタン星人の姿がプリントされたカードだった。

 

 

 バルタ「別れる前に渡しておこうと、ずっと持ってたんだ。もし良ければ、いざという時にこれを使ってみてくれ。」

 

 

 ガイ「…分かった。」

 

 

 ガイはバルタと固い握手を交わした。

 

 

 やがてバルタは斎木の機体に乗せてもらい、そして出発の時が来た。

 

 

 愛「じゃあ、元気でね。」

 

 健二「また会おうな。」

 

 早苗「約束だよ。」

 

 バルタ「あぁ。必ずまた会おうな。」

 

 

 斎木「よーし、それじゃ、発射!!」

 

 

 やがて斎木達の機体は離陸を始める。一同はそれを手を振りながら見送る。

 

 

 バルタ「それじゃ、しばしの間…さらばでござるっ!!」

 

 

 4機のF-15Jイーグルは、何処かへと飛び去って行った…。

 

 

 見えなくなるまで手を振って見送ったピグモン。気が付けば、寂しさから目から涙を流し始めていた。

 

 

 そんなピグモンに、健二と早苗、フルータ星人一同は語り掛け始める。

 

 愛「大丈夫だよ、ピーちゃん。」

 

 明人「ピグモンには、俺たちがいる。」

 

 輝雄「俺たちが新しい友達だ。」

 

 賢「これからも遊び相手になっちゃるぜ。」

 

 健二「困った時はいつでも力になるぜ。」

 

 早苗「だから泣かないで。」

 

 

 一同の優しい語り掛けに、ピグモンは今度は嬉し涙を出し始める。愛はそんなピグモンにハンカチを差し出した…。

 

 

 そんな様子を少し離れた場所で見つめるガイと櫂。

 

 ガイ「地球人と異生物の友情…やはり悪くないな。」

 

 櫂「へぇ~…そうですか…。」

 

 案の定櫂は、どこか腑に落ちない感じであった…。

 

 ゼロ「しかしオーブ、何故モロボシ君はお前と一緒に旅してたんだ?」

 

 ガイ「え?…まあ、色々あってな。」

 

 

 すると、愛がピグモンを連れて来る。

 

 

 愛「ねぇ、良かったら櫂さんもピグモンと。」

 

 

 ピグモンは櫂によろしくの握手を求める。

 

 

 櫂「ゲッ!?」

 

 

 ゼロ「(囁くように)ホラ櫂。握手してやれ。お前を信頼している仲間の頼みだぞ?」

 

 

 櫂「ぅ…うぅ…。」

 

 

 ゼロの皮肉も込めた囁きで後を押され、櫂はしぶしぶピグモンと握手をした。

 

 

 櫂と握手出来て嬉しがるピグモン。しかし、次の瞬間、櫂は自身の顔をピグモンの耳元に近づけ…!

 

 

 櫂「(不敵な笑みで、囁くように)少しでも人間様に危害とか加えてみろ…その時は俺がテメーを潰すからなぁ?」

 

 

 それを聞いたピグモンは、一気に櫂に恐怖を感じ始め、急いで握手していた手を放してしまう!

 

 そして愛の後ろに隠れ始める!

 

 

 愛「えっ?…あら、どうしたのピーちゃん?」

 

 愛の後ろに隠れ、警戒するように櫂を見つめるピグモン。

 

 

 愛「櫂さん…一体ピーちゃんに何て言ったの?」

 

 

 良心モードに戻った櫂はこう言った。

 

 

 櫂「それはもちろん、「俺とお前は友達だ」って言ったんだぜ。」

 

 

 愛「なーんだ、ピーちゃんったら照れちゃって、かわいい!」

 

 

 この時は愛もまだ櫂の本性に気付くはずがなかった…。

 

 

 先ほど櫂がピグモンに恐ろしい事を囁いた事は、彼と一体化しているゼロしか知らないのだから…。

 

 

 ゼロ(チッ、櫂の奴…まぁ、モロボシ君は大人しく、心優しい子だ。櫂の標的になる事は無いであろうが…。)

 

 

 やがてガイは、ピグモンと共に再びさすらいの旅に出ることにした。

 

 

 健二「行っちゃうんだね…ガイさん。」

 

 早苗「きっと、また会えますよね?」

 

 

 ガイ「あぁ。どうせ地球は丸いんだ。またすぐに会える。」

 

 

 愛「ピーちゃんも、元気でね。」

 

 ピグモンは愛に元気よく手を振った。

 

 

 ゼロ「困った時はいつでも来てやるからな!モっ君!」

 

 

 …だが、どうした事かピグモンは返事をしつつも少し後ずさりをしてしまう。

 

 

 ゼロ「あ…あれ?どうしちゃったのかな~?」(クッソ…これも櫂って奴のせいだ…!)

 

 

 健二「じゃ、またいつか…。」

 

 

 ガイ「あぁ。あばよっ!」

 

 

 ガイはそう言うと、帽子をかぶり、ピグモンと共に何処かへと歩き去って行った…。

 

 歩き去りながらガイはオーブニカを奏で、そのメロディは辺りに響き渡る。

 

 

 愛「元気でねー!」

 

 

 早苗「ガイさん…とてもいい人だったね。」

 

 健二「あぁ。ガイさんに教わった事、絶対に忘れない。」

 

 

 

 やがて櫂も、健二たちに別れを告げて帰り道を歩き始める。

 

 櫂「あの調子なら、彼らも大丈夫そうだな…。」

 

 ゼロ「…あぁ。きっとこれからも、立派に戦って行けるぜ。」

 

 

 ゼロ(んま、最も、俺は櫂の行く末が一番心配だがな…。)

 

 

 

 ハッピーエンドを迎えた事により、いつもの明るい雰囲気に戻った健二と早苗、フルータ星人一同は他愛もない会話を楽しみながら帰り道を歩いていた。

 

 

 愛「ねえねえ!健二さんも早苗さんも大勝利した事だし、何か祝わない?」

 

 

 健二「う~ん…そうだなぁー…。」

 

 

 やがて健二は数歩前に出る。

 

 

 そして、大きく体を反らして…、

 

 

 健二「夜は焼き肉っしょおおぉぉぉ!!」

 

 

 (ED:Beat on Dream on)

 

 

 [エピローグ]

 

 

 地球と月の間の宇宙空間に待機している敵の本拠の宇宙船『テライズグレート』では…、

 

 

 敏樹「グラシエの奴…折角甦らしてやったのに…案外使えない奴。」

 

 

 どうやらグラシエは、ゼロ抹殺のためもあり、『桜井敏樹』の力により蘇ったようである。

 

 

 しかし、そんなグラシエも敗れてしまった事により、再び新たな策を考えていた。

 

 

 そして、ある考えに行き着いた…!

 

 

 敏樹「こうなったら…そろそろ“アイツら”を呼ぶ頃…かな?」

 

 

 不敵な笑みでそう呟く桜井敏樹。

 

 

 そして、配下の宇宙人達に指令を出す!

 

 

 敏樹「アイツらが今どこで狩りをしているのか調べろ! 見つけ次第、地球に呼び寄せる!

 

 

 …あの“赤い通り魔”と“白猿”をなぁ…!」

 

 

 To Be Continued…




 読んでいただきありがとうございます!いかがでしたか?


 今回は満を持してガイア及びアグルのV2、そしてガイア・スプリームヴァージョンが登場しました!

 本当の戦う意味を知り、更なる力を手に入れた健二ガイアと早苗アグルの今後の活躍にもご期待ください!


 そして、恐れられているあの“赤い通り魔”と“白猿”も近々登場し、更なる激闘が始まります!


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています!


 また、今回隠れたサブタイトルは『ある戦士の墓標』(ウルトラギャラクシー大怪獣バトルNEO第11話)でした!


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第30話「眞鍋海羽の一人旅」

 皆さん(特に海羽ちゃんファンの方々)お待たせしました!!

 今回は、お得意様の提案により生まれた海羽ちゃんが主役のエピソードです!

 ※櫂君と真美ちゃんは一切出て来ませんのでご了承ください。


 また、今回は新たに二人のウルトラ戦士が参戦しますが、そのうち一人は女性です!


 とりあえず楽しんでもらえたらなと思います!


 では、どうぞっ!!


 因みにサブタイトルも一つ隠しています。


 (OP:英雄の詩)

 

 

 ハロー!みんな元気にしてる?

 

 

 私は眞鍋海羽(まなべみわ)。

 

 

 東京の霞ヶ崎の『麟慶大学』商学部2年生で、現在は夏休み中で~す!

 

 

 …でも、この夏休み、結構大変なのよ。

 

 

 …え?それだけ充実した楽しい夏休みを過ごしてるのかって?

 

 

 実はそうじゃないんだ。

 

 ここの所夏休みになってから、悪い怪獣や宇宙人が次々と攻めて来るようになったの。

 

 

 夏休み以前からも各地で怪獣や宇宙人とかが暴れてたりと言う事もあって、場所や場合によっては私も駆け付けたりしたんだけどね…。

 

 

 (彼女はウルトラ戦士『ウルトラウーマンSOL(ソル)』に変身して戦う力を持っているが、その力を得た経緯はまだ不明のままであり、本人も一時的に忘れてしまっているようである。)

 

 

 最近は私一人だけじゃ対処しきれない程に頻繁になって来たの…。まあ、そもそも私みたいな華奢な女子がウルトラマンやってるだけでも凄い事だと思うけれどね…。

 

 

 …だから、今では前もって呼んだウルトラ戦士達が駆け付けて来てくれて本当に感謝してるわ。

 

 

 その内の一人である『ウルトラマンゼロ』は若き最強戦士とも言われるだけあってとっても強くて、とってもカッコいいし、それに学園1のパーフェクトガイ『竜野櫂』君と一体化してるから正に向かう所敵無しだよね!

 

 

 (海羽は、まだ櫂の恐ろしい本性を知らない…。)

 

 

 それにしても、一体黒幕は誰で、何の目的で暗躍しているのかしら…?それに、どうして私がソルの力を得たのかな…?

 

 

 そんな事を考えつつも、今はとりあえず目の前の平和を守るために、先輩ウルトラ戦士達と一緒に迫り来る敵と戦い続けてるわ。

 

 

 おっと、前置きが長くなっちゃったわ。ごめんちゃい(てへぺろ)。

 

 

 8月17日。この日私は一人新幹線で長野に向かっているの。

 

 

 なんでも昨日、そこの田舎町に住んでいるおじいちゃんに、畑でいい夏野菜と果物が出来たから食べに来ないかと誘われたの!

 

 

 はぁ~おじいちゃん、おばあちゃん家に行くのいつ振りだろ~?

 

 折角誘ってくれた事だし、お腹一杯食べてくるぞ~!ついでに最近の楽しかった事とかも話したいな~ 

 

 

 私はそんな風に心を躍らせながら、新幹線の中で駅弁を食べていた。

 

 

 …あ、因みに私がウルトラマンである事は内緒にするつもり。

 

 何故かって?だってそんな事を知ったら驚いて腰を抜かしちゃうに違いないよ!(笑)

 

 だから、これだけは絶対に内緒にするね。

 

 

 本当は櫂君と真美ちゃんも誘いたかったけど、二人はどうやら別の用があるみたいなの。

 

 でも、一体何の用なんだろ~?二人そろって…。

 

 …はっ!?これは、ひょっとしてもしかして~!?

 

 

 …あ、そうこう考えている間に次の停車駅のアナウンスが流れた。私が降りる予定の駅だ!

 

 

 海羽は新幹線を降りた後、電車、バスと乗り換えをしていき、やがて目的地の長野のとある田舎町に着いた。

 

 

 私、眞鍋海羽、遂に到着しましたー!

 

 (目を閉じて大きく深呼吸)ん~!やっぱ自然に囲まれた田舎は空気が美味しいわね~!

 

 それじゃ、歩いて向かおっと!

 

 

 海羽は祖父母の家に向けて歩き始めた。因みに祖父母の地元でも、学園のアイドル的存在になった孫娘の海羽の事は知れ渡っており、そこの人達は海羽に色々と親切にしてくれるのだという。

 

 実際、歩いている最中も海羽に気付いた地元の知り合い達は久々に海羽が帰省してきたことに喜び、歓迎も込めた挨拶を送っていた。

 

 

 やがて海羽は祖父母の家に到着する。

 

 海羽「おじいちゃーん!おばあちゃーん!ただいまー!」

 

 インターホンを鳴らして元気よく呼びかける海羽に気付いた祖父・荘と祖母・美穂は彼女を出迎える。

 

 荘「おう、海羽お帰り!よくここまで来たね。」

 

 海羽「うふ、おじいちゃんも、元気そうで何よりだわ。」

 

 美穂「海羽ちゃん、大きくなったね~!」

 

 海羽「へ?…そ、そうかな~?あはは…。」

 

 小柄な私が大きくなったなんてって言われるなんて…何だか不思議な感じね。

 

 櫂君と真美ちゃんが大きいだけなのかな?(笑)

 

 

 荘「まあとりあえず上がりなさい。遠くから疲れたでしょ。」

 

 美穂「あんたのためにスイカ切ってあるよ。」

 

 海羽「本当?やったー!」

 

 

 私は家に上がらせてもらい、労いとして出してくれたスイカと冷えたお茶で一息ついた。

 

 

 海羽「ぷは~!やっぱ夏には冷たい麦茶だよ~。」

 

 

 荘「それじゃ海羽、わしらは畑を耕したり、野菜や果物を収穫しに行って来るよ。」

 

 美穂「海羽ちゃんはゆっくりしとくといいよ。」

 

 

 おじいちゃんとおばあちゃんは親切心でそう言ってくれたけど…、

 

 

 海羽「あ、じゃあ私も行くー!」

 

 …思わずそう言ってしまった(笑)

 

 

 海羽「私も、それ手伝ってみたい。」

 

 美穂「…あんた、手伝ってくれるんかね?」

 

 海羽「うん!折角もてなしてくれたもん。そのほんのお礼。」

 

 荘「それじゃあ、お言葉に甘えて手伝ってもらおうかのー。」

 

 美穂「助かるねー。」

 

 海羽「(胸に拳を当てて)えへんっ!私に任しんしゃーい!」

 

 

 おじいちゃんもおばあちゃんも毎日汗水流して頑張って農業やってくれて、時々霞ヶ崎に住んでいる私に仕送りしてくれたりしてたもん。その恩返しをしなきゃ。

 

 それに、若者として、いや孫として、孝行してやりたいもんね 

 

 

 かくして、祖父母の農業を手伝う事にした海羽。張り切って持って来ていた作業用の着替えに着替え、日差し対策の麦わら帽子をかぶり、道具を受け取って早速取り掛かる…

 

 

 …だが、いざ取り掛かると…。

 

 

 海羽「ぜぇ…ぜぇ…これ重いよ~!」

 

 

 海羽は鍬を持って畑の土を耕す作業を買って出たのだが、鍬の予想外の重さと夏の日差しの暑さに早速手こずっていた。

 

 

 海羽「はぁ…櫂君と真美ちゃんなら、こんなの余裕で振るってサクサクと作業が出来るんだろうな~…。」

 

 

 そう呟きながらも、海羽は滝のような汗を流しながらがむしゃらに鍬を振り下ろしていった…。

 

 

 海羽「えい、えい、私だって、やればできる子なんだから!」

 

 

 …だが、努力空しく結局畑一行分しか耕すことが出来ずあとは祖父母が全て終わらせ、そして日が暮れ始めてしまった。

 

 

 海羽「はぁ…結局これだけしか出来なたっかわ…ガチしょんぼり沈没丸~…。」

 

 

 気落ちする海羽の元に、収穫した野菜や果物を持った祖父母が歩み寄る。

 

 

 荘「海羽、お疲れさん。」

 

 美穂「帰って御飯にしましょ。」

 

 

 海羽「…ごめん…私、これだけしか役に立てなくて…。」

 

 涙声で謝る海羽。すると祖母・美穂が彼女の頭に手を置いて優しく語り掛ける。

 

 祖母「何を言うかね。わしらのために一生懸命頑張ってくれた…その気持ちだけでも十分嬉しいんじゃよ。」

 

 海羽「…おばあちゃん…ありがと~。」

 

 嬉しさで泣きながらも海羽はお礼を言った。

 

 

 荘「海羽、今日もいっぱい夏野菜や果物が採れたぞ!」

 

 そう言う祖父や祖母の抱える籠には、きゅうり、ナス、トマト、ピーマン、カボチャ、イチジク、桃、なし、ブドウ、夏ミカンなど、新鮮な夏野菜や果物がたくさん入っていた。

 

 

 海羽「うわ~!どれも美味しそう!」

 

 それを見た海羽は一気に元気を取り戻した。

 

 

 すると、何かがひらめく。

 

 海羽「あ、キラッとひらめいた!」

 

 

 すると海羽は笑顔で祖父母の方を向いて…、

 

 海羽「晩御飯は私が作るから、おじいちゃんとおばあちゃんはゆっくりしてていいよ!」

 

 

 そして夜、作業着から普段着に着替えた海羽はしっかりと手を洗った後ピンク色のエプロンを着て晩御飯を作った。

 

 

 本日採れたての野菜を使った夏野菜カレーである。

 

 

 荘「おぉ、これは美味しそうじゃ。」

 

 美穂「海羽ちゃんに料理してもらうのは初めてじゃのー。」

 

 海羽「うふ、そうだよね。さ、食べてみて。」

 

 

 人に料理を作ったのは初めてだったため海羽はドキドキしていたが、やがて祖父母が美味しそうに頂いているのを見て安心する。

 

 美穂「うん、これは美味しい。」

 

 海羽「良かった~。」

 

 荘「海羽、お前一人暮らしで腕を上げたな~?」

 

 海羽「あ、あはは、まあね。」(本当は最近始めた自炊でやっとカレーが作れるようになったばかりなんだけどね…エへ )

 

 美穂「あんた、将来いい嫁さんになれるんじゃないかね?」

 

 海羽「(頬を赤らめて)ちょ、やめてよ~。」

 

 祖父母と楽しそうに話しながら晩御飯の時間を過ごす海羽。

 

 

 海羽もまた、自身が作ったカレーから採れたての野菜の味を堪能していた。

 

 海羽「(頬に手を当てて)ん~!やっぱり採れたての野菜は美味しいわ~!」

 

 荘「じゃろ?わしらが育てた自慢の野菜じゃからな~。」

 

 美穂「それに、最近は普段よりよく採れるようになったしね。」

 

 

 海羽「…普段よりよく?」

 

 祖母の言葉が引っかかった海羽は問いかける。

 

 

 荘「ああ。普段ならわしらの野菜目当てに畑を荒らしにイタチやタヌキやイノシシが来て野菜を食われちまう事が多いんだが、最近それがピタリと起こらなくなったんじゃよ。」

 

 美穂「普段なら今日の半分ぐらいしか野菜や果物が採れんのんじゃが、最近になっていきなり今日みたいに多く採れるようになったんじゃよ。」

 

 

 海羽「そっか…でも良かったじゃん。野菜が多く採れるようになったなんて。」

 

 美穂「そうじゃね。お陰で最近は食べ物に困ってないよ。」

 

 荘「きっと誰かがイノシシたちを追っ払ってくれてんじゃ。感謝感謝!」

 

 海羽「ふふふ、そうそう!」

 

 

 口ではそう言って祖父母を納得させた海羽だが、一方で祖父母の言葉に少し怪しみを感じたりしていた。

 

 海羽(畑を荒らす動物たちが急に来なくなるなんて…何か不気味ね…。何事も無ければいいけど…。)

 

 

 

 一方、海羽の祖父母の畑では奇怪な現象が起きていた。

 

 誰もいなくなった畑へ、一匹のタヌキが駆けて向かっていた。

 

 やがて畑に着いたタヌキは、早速野菜を漁ろうとしたその時!

 

 突如、野菜の葉っぱと葉っぱの間から長い蔦のようなものが伸びて来て、瞬く間にタヌキを捕えて引きずり込む!

 

 何処かへ引きずり込まれたタヌキは叫び声を上げるが、やがてそれもフェードアウトしていき、そしてタヌキの姿は全く見えなくなってしまった…。

 

 

 突如、畑で起こった動物の神隠し…この奇妙な現象は一体何なのであろうか…?

 

 

 

 そして別の場所では、野菜をいっぱい積んでいたトラックが何者かに襲われて大きく転倒していた。

 

 「なっ…何だ!あれは…!」

 

 「ばっ…化け物だ~!!」

 

 辛うじて助かった運転手のおっさん2名はそう叫びながら、腰を抜かしつつも一目散に逃げていく。

 

 

 炎上するトラックから放り出された大量の野菜。それを、一匹の巨大生物が拾い上げて平らげ始めていた。

 

 

 それも、何やら「モット~! モット~!」と吠えながら…。

 

 

 野菜を頬張っている緑色の恐竜みたいなその巨大生物は、かつて地球のビタミンCを狙いにやって来た正体不明の宇宙人の置き土産として地球にやって来た事がある食いしん坊の怪獣『食いしん坊怪獣モットクレロン』である!

 

 

 突如平和な村に現れたモットクレロン。はて、今回現れた個体もまた何者かによってビタミン強奪のために送り込まれたのであろうか…?

 

 

 トラックの野菜を食べ尽くしたモットクレロンは、なおも「モット!モット!」と吠えながら腹を押さえる。恐らくまだ食べ足りないのであろう。

 

 何しろモットクレロンは、一度にキャベツ500個、ミカン3000個を平らげる程の食欲を持っているのだから…。

 

 

 

 更に別の場所では、何やら二体の怪獣の戦いが勃発していた。

 

 

 …と言っても、正確には一方が、無抵抗なもう一方を一方的に叩き続けているという状況なのだが…。

 

 

 両手で叩いて攻撃している一体は、ピンク色の体の各所に機械的なパーツが付いているのが特徴の怪獣『食いしん坊怪獣モモザゴン』。

 

 

 そして無抵抗にうずくまっているもう一体は、翼状の両腕が特徴の怪獣『だだっ子怪獣ザンドリアス』である。

 

 

 モモザゴンはかつては『猛毒宇宙人ザゴン星人』の配下として送り込まれた事がある。

 

 ザンドリアスは地球人で言えばちょうど中学生くらいの年齢の子供の怪獣であり、かつては母親の『親怪獣マザーザンドリアス』との喧嘩で拗ねて地球にやって来ており、その時対峙したウルトラ戦士の計らいにより仲直りして宇宙へ帰っている。

 

 

 近くにザゴン星人がいない事からザゴン星人の仕業ではなさそうではあるが、恐らくこのモモザゴンも何者かに送り込まれているのであろう。

 

 

 それよりも、ザンドリアスが再び地球に来たのは何故であろうか…?

 

 かつて地球に来た時から実に35年も経っている事から流石に別個体ではあろうが、マザーザンドリアスが追って来る気配もない事から親子喧嘩ではなさそうではある…。

 

 

 何はともあれ、ザンドリアスはモモザゴンから攻撃を受けており、恐怖により無抵抗にうずくまっているのである。

 

 二体の近くには先ほどと同じく野菜を積んだトラックが慌てて逃げるように走っている事から、恐らくモモザゴンは耳のレーダーで見つけた食べ物を手に入れようとした所をちょうど遊び相手と勘違いして飛び込んで来たザンドリアスによって妨害され、逆上したのであろう。

 

 

 モモザゴンはザンドリアスを押し倒し、ザンドリアスは地面を転がる。

 

 

 そして、怪電波で攻撃しようと耳を発光させたその時!

 

 

 突如空から一人の影が、風を切る音と共に数回回転した後急降下し、モモザゴンの頭部に蹴りを打ち込んで着地する!

 

 モモザゴンは転倒したがすぐに起き上がり身構える。

 

 

 視線の先に立ち上がる一人の巨人。

 

 

 それは初代ウルトラマンをイメージした顔に、頭部の赤いトサカ、そして、腹部の菱形の『ウルトラバックル』が特徴のウルトラ戦士。

 

 

 愛と勇気を教えてくれる、涙の味を知っているウルトラ戦士『ウルトラマン80』の登場である!

 

 

 (ウルトラマン80登場BGM)

 

 

 ウルトラマン80。それはウルトラ兄弟の一員であり、宇宙防衛隊の一員でもあるウルトラ戦士である。

 

 かつて地球を訪れて地球人『矢的猛』の姿で異常現象の調査をした際、怪獣出現を確認と同時にその原因が人間の悪の心『マイナスエネルギー』であると考え、子供達に愛と勇気を教えるために『桜ヶ丘中学校』に理科の教師として赴任し、更に地球防衛隊『UGM』の隊員にもなり、マイナスエネルギーの生み出す怪獣たちと戦って来た。

 

 幼馴染にウルトラの星の王女『ユリアン』という戦士がおり、彼女がワケあって地球を訪れた後も、彼女の助けを借りつつも戦っていき、やがてウルトラの星への帰還が迫っていた事実もあり、地球人(UGM)が自分自身の力で『冷凍怪獣マーゴドン』を倒すのを見届けた後にユリアンと共に地球を去ってM78星雲に帰って行った。

 

 

 なおザンドリアス親子が仲直りするきっかけを作ったのも80であり、正にザンドリアスも80のかつての教え子みたいなモノである。

 

 

 ザンドリアスは80に気付くと、まるで来てくれたことを喜ぶかのような仕草を見せる。

 

 80は一回頷いてザンドリアスに避難するように指示を出した後、構えを取る。

 

 80が構えを取る際に振った腕が風を切り、“FO”という特殊な音が鳴り響く。

 

 

 (BGM:ウルトラマン80)

 

 

 80の構えと共にモモザゴンは雄たけびを上げて駆け寄る。食事を邪魔されたのが余程気にくわないのであろう。

 

 

 80も駆け寄ると同時に、モモザゴンの頭部を台にして側転して後ろに回り込む。

 

 そして後ろから右脚蹴りを放つがモモザゴンは振り向くと同時にそれを右腕で弾いて防ぐ。

 

 その後モモザゴンは左フックを繰り出すが80はそれを素早くしゃがんでかわした後、跳躍して喉元に左足蹴りを打ち込み、続けて頭部に右手のチョップを叩き込んだ後、モモザゴンの殴り込みを数回バク転でかわしつつ一旦距離を取る。

 

 モモザゴンは反撃として耳から怪電波を放つが、80はそれを両手を交差させて『ウルトラVバリヤー』でそれを防ぎ、続けて右腕を真っすぐに伸ばして手先から光線『ウルトラストレートフラッシュ』を放ち浴びせてダメージを与える。

 

 80は側転、バク転をしながら接近した後、右足での回し蹴りを頭部に叩き込み、続けて胸部にパンチを打ち込んだ後、右腕のチョップを振り下ろすがそれを受け止められ、逆に頭突きを腹部に喰らって後退してしまう。

 

 

 体勢を立て直した80は再びモモザゴンに駆け寄り、地面に手を突いた状態で両足を後ろに蹴り上げて放つ『カンガルーキック』を決めた後、跳ね起きで立ち上がった後右向きに回転して振り向きつつ右脚のミドルキックを腹部に打ち込み、更に小さく跳躍しての右足蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 跳躍等を多用したアクロバティックな戦法により戦いを優位に進める80。だが、その間にもザンドリアスは数回地団太を踏んだ後、発行して隕石状の姿になり、地面に潜って姿を消してしまった。

 

 

 ザンドリアスが姿を消すのに気づいた80は何やら一瞬動きが止まる。だが、その隙にモモザゴンの体当たりを喰らって吹っ飛んでしまった。

 

 

 再び体勢を立て直した80は高く跳躍し、頭部に渾身の右足蹴りを叩き込み、モモザゴンは蹴られた部位が小さく爆発すると共に吹っ飛んで地面を転がる。

 

 これぞ、80が最も得意とする蹴り技『ウルトラ400文キック』である!

 

 

 モモザゴンはふらつきながらも立ち上がるが、既にグロッキーな状態だ。

 

 

 80は体勢を立て直した後、両腕を上で交差してスパークさせた後、両拳を腹部に当てて、腹部のウルトラバックルから無数の光の矢『バックルビーム』を放つ!

 

 これは80の光線技の一つであり、サクシウム光線と並んで決め手として使う事が多い必殺技である!

 

 

 光の矢は拡散後、一点に集中してモモザゴンの体を貫く!

 

 

 モモザゴンは炎に包まれしばらくもがき苦しんだ後、やがて燃え尽きるように消滅した…。

 

 

 モモザゴンの撃退を確認した80はしばらく辺りを見渡した後、両手の先をカラータイマーに合わせてそれにより発生した無数のリング状の光に包まれ小さくなっていき、やがて地球人・矢的猛の姿となった。

 

 

 猛「ザンドリアスを逃してしまったか…。それに何やら暗躍する者も現れたし、より警戒が必要かもな。」

 

 

 猛がそう呟いたその時、

 

 

 涼子「猛!」

 

 

 猛を呼ぶ声と共に一人の女性が駆け寄る。

 

 彼女はユリアンの人間体『星涼子』である。

 

 

 どうやら80とユリアンはM87星雲の宇宙から一緒にこの世界の地球にやって来たようである。

 

 

 涼子「そっちはどうだった?」

 

 猛「ザンドリアスは見つける事は出来たが、思わぬ怪獣の出現によって逃してしまった。君の方は?」

 

 涼子「私も、なんとか野菜を食べていた怪獣を見つけたけど逃げられてしまったわ。」

 

 どうやらユリアンは80がモモザゴンと戦っている間にモットクレロンの相手をしていたようである。

 

 猛「しかしまさかこの宇宙にもザンドリアスが存在していたとはな…今度は何の理由でこの地球に来たのだろう…?」

 

 涼子「それに、それに反応するように他の怪獣も現れたし、これは何かありそうね。」

 

 猛「ああ。この辺りを引き続き調査しよう。」

 

 涼子「ええ、猛。」

 

 猛と涼子は再び散らばって調査を始めた…。

 

 

 どうやら二人は、この世界に来た際に、この世界の地球に迷い込んだこの世界のザンドリアスを捜索しにこの町を訪れたようである。

 

 だが、それと同時にモモザゴンやモットクレロン等の思いもしない怪獣が現れた事により、より調査を強化しようと決めたのであった。

 

 

 果たしてこの田舎町に一体何が起こっているのであろうか…?

 

 

 更に、モモザゴン等が現れた同じ田舎町のとある地面に大きな穴が開いており、そこから何やら鞭のようなものがはみ出たり引っ込んだりしていた…。

 

 

 不吉な前兆を伴いながらも、海羽の祖父母の地元の田舎町は新しい朝を迎える…。

 

 

 翌日(8月18日)、朝の日差しが差し込むと共に鶏の鳴き声が鳴り響く。朝が来た知らせである。

 

 

 それに気づいた海羽も、ガヴァドンAの抱き枕を片手に抱えた状態で大あくびをして起き上がる。

 

 海羽「ふわああぁぁ〜…おはよう。…たっぷりケーキ食べ放題の夢を見れた…。」

 

 海羽…なんとも幸せな夢を見たものである。

 

 

 すると、誰かが海羽の頬を軽くつねる。祖父であった。

 

 海羽「…んむ?」

 

 荘「ケーキもいいけど、野菜もしっかり食べるんだぞ〜。」

 

 海羽「え、えへへ、分かってるよおじいちゃん。」

 

 流石は海羽の祖父だけあって、朝から元気がいいものである。

 

 

 朝食を取った海羽は、いつものような元気少女に。

 

 海羽「それじゃあ、今日も収穫手伝うよ。」

 

 荘「お、それじゃあ頼んじゃおうかな。そうだ、いくつかお土産として持って帰れよ。」

 

 海羽「わぁー!本当?ありがとう! 櫂君と真美ちゃんに何を持って帰ろっかな~ 」

 

 

 海羽が心を弾ませていたその時、

 

 

 美穂「おかしいね~。」

 

 何やら違和感を感じている祖母に海羽も気付く。

 

 海羽「どうしたの?おばあちゃん。」

 

 

 海羽が尋ねてみると、なんでもいつもなら朝食を食べ終わる頃に近所のお春婆ちゃんが家を通り過ぎる際に挨拶をするはずなのだが、今日はまだ挨拶どころか姿を現してすらいないのである。

 

 

 お春婆ちゃんは海羽の祖父母の知り合いであり、海羽も昔から顔見知りがあった。

 

 

 海羽「確かに、お春婆ちゃんまだ来ないねー。」

 

 美穂「腰でも痛めたんかのー…。」

 

 

 荘「て言うか、今日は一際静かじゃないか?」

 

 

 更なる違和感に気付いた祖父。確かに、普段からのどかな田舎町ではあるが、今日はいつもより一際静かなのである。

 

 

 海羽「確かに…一体今日はどうしちゃったんだろう…?」

 

 

 海羽が首をひねったその時、

 

 

 海羽「…ん?あれは何だろう?」

 

 

 少し遠くを見てみると、何やら何やら謎の動きをしている人を数人見つける。

 

 その人たちは何やら壁を数回ノックするような動作をしていた…。

 

 

 海羽「何だろう?あの人たち…私ちょっと見て来る!」

 

 

 海羽は家を出ると、謎の動作をしている人々の所へと駆け寄る。

 

 

 海羽「あのー!どうしたのでs…」

 

 

 “ガンッ”

 

 

 海羽「!きゃあっ!!」

 

 

 人々の手前まで駆け寄ったその時、突如何かに頭をぶつけて痛みで少しふらついて後退する。

 

 

 海羽「いたたたたた! いった~! え~ん!何かに頭ぶつけた~!!」

 

 

 頭を押さえて痛がる海羽。

 

 

 …だが、しばらくして前を見てみると、特に壁らしきものは見当たらない…。

 

 海羽「…あれ?おかしいなぁ…。」

 

 

 気を取り直して、海羽はノックするような動作をしている人の一人に話しかける。

 

 

 海羽「あのー、どうしたのですか?」

 

 

 「それが…突然こっから先に入れなくなって…なんか見えない壁があるみたいなの!」

 

 

 海羽「…見えない…壁?」

 

 

 人の言葉を聞いた海羽は落ち着いて手をゆっくり前に伸ばしてみる。

 

 

 すると、目の前は何もない筈なのに、何やら壁に触れたような感覚を感じる!

 

 

 海羽「!本当だ! 何もないのに、感覚を感じる!…これが見えない壁?」

 

 

 見えない壁に初めて気づいた海羽。すると、ふと振り向いたその時、視線の先に何やら地面に開いている大きな穴に気付く。

 

 海羽「…何だろう?これ…なんだか不気味。」

 

 

 更に海羽は、少し離れた視線の先の畑で何やら祖父母が驚いているのに気づきそこに駆け寄る。

 

 

 海羽「どうしたのおじいちゃんおばあちゃん!」

 

 

 畑に辿り着いた時、海羽もそれを見て驚愕する。

 

 

 海羽「…なっ…何?この花…。」

 

 

 その畑には、何やら見た事の無い真っ赤な花びらの花が辺り一面にいっぱい咲いているのだ。

 

 

 荘「なっ…何だよこれ?」

 

 美穂「あたしらこんなの植えた覚えないよ。」

 

 

 朝から早々次から次へと起こる怪奇現象に、海羽は何かを感じ始めていた。

 

 

 海羽「見えない壁…地面の大きな穴…そして突如畑に咲き乱れる赤い花………これはきっと、何者かが…。」

 

 

 海羽が呟きながら再び穴の所に歩み寄ったその時、

 

 

 「…随分とお困りのようですねーお嬢さん。」

 

 

 海羽「…ん?」

 

 

 突如、誰かに話しかけられて後ろを振り向く海羽。

 

 そこに立っていたのは、何やらスマートなスーツを着ている男性が不敵な笑みで立っていた。

 

 

 海羽「…あ、あなたは…。」

 

 「貴女と、運命の出会いをしに来た者です。」

 

 海羽「…えぇ?」

 

 

 男の掴めない発言に困惑気味の海羽。

 

 

 海羽「あ、あなたは何かを知っているのですか?」

 

 「もちろん。貴女がここに来たのは運命だという事。身の回りの怪奇現象、そして、私とばったり出会えた事…全てはあなたに決められた運命…。」

 

 海羽(駄目だ…この人全然掴めない…見た感じすかした優男っぽいけれど…。)

 

 

 すると、男は一瞬にして海羽に接近し、右手を顎に添えて軽く顎クイをする!

 

 海羽「…ひゃっ!?」

 

 「どうやらこの世界で一緒に夜明けのコーヒーを飲む相手は…貴女が良いかもしれませんね~。」

 

 海羽(うわ~何何?この人…もしかして不審者?)

 

 

 海羽が完全に困り始めたその時、

 

 

 “ピュロロロロロン”

 

 

 “ピギイイィィーッ”

 

 

 突如、特殊な効果音と共に地響き、そして怪獣の鳴き声のような音が響き、海羽は振り向く。

 

 

 そこには、80とユリアンが昨日から捜索している怪獣・ザンドリアスが現れていた!

 

 

 海羽「怪獣が現れた!?」

 

 

 街の人達は怪獣が現れたとパニックになり始める。

 

 

 美穂「な、なんじゃあれは!?」

 

 荘「まさか…怪獣じゃ!」

 

 

 海羽「はっ、おじいちゃんおばあちゃん!」

 

 

 海羽が今にも腰を抜かしそうになっている祖父母に気付いたその時、男はあろうことか後ろから不敵の笑みで、海羽の肩に顎を乗せる!

 

 

 海羽「ひゃッ!?な、何ですか貴方?」

 

 「どうやら事態は急変し始めたようだな…この修羅場、貴女は光の力でどうにか乗り切れるかな~?ヒッヒッヒ…。」

 

 海羽「へっ?…貴方、私がウルトラマンである事を知っているの?」

 

 「さあ、どうやら。」

 

 

 男は一旦海羽から離れる。

 

 「では私は、探し者を探しに行くとしますか…。」

 

 海羽「探し者?…それって?」

 

 

 「…この世界に迷い込んだ、通りすがりの風来坊です。 それじゃあお嬢さん、また会いましょう。

 

 アゥ・クードゥ・フードゥル。」

 

 

 男はそう言い残すと、一瞬にして雷のような閃光と共にその場から姿を消してしまった…。

 

 

 海羽「ひゃっ!? あ、あれ?いなくなっちゃった………一体誰だったんだろう?…それに、あんころヌードル?…さっき何て言ったんだろう…?」

 

 

 そう海羽が考えている間にも、ザンドリアスは駄々をこねるように地団太を踏み、住人たちは逃げ惑い始める。

 

 海羽の祖父母も…!

 

 

 海羽「はっ、おじいちゃんおばあちゃん!…よーし、とりあえず今は、あの怪獣を止めるしかないね!」

 

 そう言うと海羽は、気合を入れてザンドリアスの方へと駆けて行った…。

 

 先ほど日本語で『雷の一撃』(出会い頭の一目惚れ)と言って去って行ったその男が、かつて『クレナイ・ガイ』(『ウルトラマンオーブ』)とは昔からの戦友であり、ライバルでもある『ジャグラス・ジャグラー』だとも知るはずも無く…。

 

 

 やはりジャグラーも、ガイを追ってこの世界にやって来ていたのだ…!

 

 

 海羽はザンドリアスの近くまで走って止まった後、変身アイテム『ハートフルグラス』を取り出して一回転して目に当てる。

 

 海羽の体は赤とピンクの光に包まれて徐々に姿が変わっていき、やがて変身&巨大化する!

 

 

 海羽は『ウルトラウーマンSOL(ソル)』へと変身を完了した!

 

 

 ソルの登場にザンドリアスは気づき、逃げ惑っていた住人達、そして見えない壁の向こうの住人たちも気付いて立ち止まる。

 

 

 「あれは何だ!?」

 

 「…ウルトラマンなのか?」

 

 美穂「あら!あれは何じゃろうね?おじいさん…。」

 

 荘「ウルトラマン…まさか本当にいたのか…?」

 

 

 海羽「さあ、もうこれ以上、アンタの好きにはさせn…」

 

 

 “ガッ”

 

 

 海羽「ひゃっ!?ちょ…ちょっと何~!?」

 

 

 ソルはカッコよく決めようとしたのだが、その最中にザンドリアスにじゃれ付かれてしまう。

 

 恐らくザンドリアスは、ソルを遊び相手と勘違いしているのであろう。

 

 

 海羽「う~ん!…ちょっと…は~な~れ~な~さいよっ!」

 

 ソルはなんとかがむしゃらに押さえてザンドリアスを引き離す。

 

 

 海羽「この~!…あれっ!?」

 

 ソルは体勢を立て直して殴り掛かろうとするが、ザンドリアスは素早くソルの後ろに回り込み、そして翼状の腕でソルの尻を軽く数回叩く。

 

 海羽「ひゃっ!!?…ちょっと!どこ触ってるのよ~!!」

 

 ソルは驚きと共に両手で尻を押さえて振り向くが、その様子を見たザンドリアスは可笑しくて笑い転げてしまう。

 

 

 見事にザンドリアスに遊ばれているソルを見る住人たちは、その意外な光景に完全に呆気に取られていた

 

 「…ウルトラマンって…あんなんだっけ?」

 

 「さあ…なんか、違うくない?」

 

 美穂「うふ、あの子、なんだか似てるのぉ。」

 

 荘「…うん、確かに似ておる。」

 

 荘・美穂「海羽に似ておる。」

 

 流石は海羽の祖父母はソルを見て孫と似たモノを感じ始めていた。

 

 

 さっきからふざけまくるザンドリアスに、ソルは一丁声を上げる!

 

 海羽「も~…メっ!!」

 

 ソルに一喝されたザンドリアスは、一瞬にして笑いが止まって固まってしまう。

 

 やはり子供の怪獣だけあって、怒られる事には非常に敏感なようである。

 

 

 動きが止まったザンドリアスに、ソルは色々と問いかけ始める。

 

 海羽「いい? この町に変な見えない壁を張ったのはあんた?」

 

 ザンドリアスは俯いて答えない。

 

 海羽「地面に大きな穴を開けたのもあんた?」

 

 ザンドリアスは俯いて答えない。

 

 海羽「畑に変な花を咲かせたのもあんたの仕業?」

 

 ザンドリアスは俯いて答えない。

 

 

 海羽「んもう!答えてよ~!!」

 

 一向に答えないザンドリアスに、ソルは再び子供のように地団太を踏んで声を上げてしまう。

 

 

 すると、ザンドリアスは少しビクつくような仕草を見せると、目に涙を浮かべ始める…。

 

 やはり怒られる事には敏感のようだ。

 

 

 海羽「…あぁ、ごめんね…別に泣かせる気は無かったの…。」

 

 それを見たソルは思わず穏やかな声に変わり、ザンドリアスを宥めようと近づき始める…。

 

 やはり怪獣だろうと分け隔てない優しい心を持っている彼女は、子供の怪獣には尚更完全に非常になれないのだろう…。

 

 

 が、その時!

 

 

 海羽「…ぅぶへっ!?」

 

 

 ソルは隙を突かれてザンドリアスに顔に土をかけられてしまう!

 

 見事に体まで反れるリアクションをしたソルを見て、ザンドリアスは再び笑い始める。

 

 

 どうやらさっきの涙はウソ泣きだったようである。

 

 

 海羽「(頭を抱えて上を向いて)んも~!!こっちが泣きたいよ~!!」

 

 

 ザンドリアスに翻弄されるソルは遂に呆れ果て、途方に暮れ始めていた…。

 

 

 その時、

 

 

 猛『君…そこのウルトラ戦士。』

 

 海羽「ん?」

 

 突如、何者かがテレパシーで自身に話しかけるような声が聞こえ、ソルは当たりを見渡す。

 

 やがて少し先に男女二人が立っているのに気づく。

 

 その二人こそ、矢的猛と星涼子であった。

 

 海羽『あなた達は…?』

 

 ソルもまたテレパシーで問いかける。

 

 猛『僕らはその怪獣を追って来た、君と同じウルトラ戦士なんだ。』

 

 海羽『へ?そうなんですか? あ、じゃあ、この怪獣についても、何かご存知ですか?』

 

 涼子『その子はザンドリアスと言って子供の怪獣なの。』

 

 海羽『…子供の怪獣!?』

 

 

 猛と涼子から、ザンドリアスが子供の怪獣である事を知らされた海羽は、見方が変わる。

 

 海羽「…じゃあ、この子は何も悪くないって事?」

 

 

 ソルがザンドリアスに罪は無いと感じ始めたその時、

 

 

 “モット~! モット~!”

 

 

 突如、別の怪獣の鳴き声が聞こえてその方向を振り向く。

 

 

 そこには、現れたモットクレロンが畑の野菜を貪り食い始めている光景が!

 

 

 海羽「う、嘘!?別の怪獣!?」

 

 

 すると、それに気づいた涼子が叫ぶ。

 

 涼子「あ!昨夜の野菜泥棒!!」

 

 

 海羽「へ?野菜泥棒?…て事は、悪い事してる~!」

 

 ソルは急いで野菜をむさぼっているモットクレロンに駆け寄り、掴んで引き離そうとする。

 

 

 海羽「う~ん!駄目だよ人の野菜勝手に食べちゃ~!」

 

 だが、食事を邪魔されたと思ったモットクレロンは振り向くと同時にソルを突き飛ばしてしまう。

 

 

 海羽「ひゃっ!」

 

 

 ソルは尻餅をついてしまった。

 

 

 更にモットクレロンは口から青い緑の液体を噴きつけ始める!

 

 

 海羽「!きゃ~!?」

 

 ソルは慌てて尻餅をついたまま後ずさりをしてなんとかかわす。

 

 海羽「青臭っ…ちょっと!アンタ野菜の食べ過ぎよ~!」

 

 だが、そんなソルの言葉もそっちのけで尚も「モット~!」と吠えながら畑の野菜をむさぼり始める。

 

 

 「遊ぼう!遊ぼう!」!とばかりにせがんで来るザンドリアスに、野菜をひたすら食べ続けるモットクレロン。

 

 二体の怪獣に手を焼くソルは完全に頭を抱えていた。

 

 

 海羽「ああもうどうしたらいいの~!?」

 

 

 その時、

 

 

 モットクレロンが畑の“例の赤い花”をむしった時、そこから地面が崩れて土煙が勢いよく巻き上がり、モットクレロンはそれに驚いて後ろに倒れてしまう!

 

 

 やがてそこから一匹の怪獣が現れた!

 

 

 右手の鞭、左手の鎌、そして、腹部の大きな赤い花が特徴のその怪獣は『宇宙大怪獣アストロモンス』である!

 

 

 そう、昨夜からこの町の畑に咲いていた赤い花は宇宙植物の一種である『吸血植物チグリスフラワー』であり、そのチグリスフラワーが成長し切ってアストロモンスになったのだ!

 

 昨夜の動物失踪事件の正体は、畑のチグリスフラワーが蔦で捕えて捕食していたのである!

 

 

 ソルも、突如現れたアストロモンスに驚きつつも腹のチグリスフラワーを見て気付く。

 

 海羽「あれは…畑に咲いてたのと同じ花!?」

 

 

 現れたアストロモンスは咆哮を上げると、手始めに手前の倒れているモットクレロンの腹部を踏みつけて動きを封じ、鞭を何度も振り下ろして叩きつけ始める!

 

 

 痛ぶって弱らせたところを腹のチグリスフラワーで捕食しようとしているのだ!

 

 

 海羽「はっ、やめなさ~い!」

 

 

 ソルはアストロモンスに駆け寄って組み付き、そのままモットクレロンと引き離す。

 

 そして右腕を掴んだまま「エイ、エイ、エイ…」と掛け声を上げながら何度も腹部に蹴りを打ち込むが、アストロモンスは怯まず左手の鎌を振り下ろす。

 

 ソルはそれを辛うじて右腕で受け止めると、「よいしょ!」という掛け声と共に腹部にヒップアタックを叩き込んで後退させる。

 

 だが、アストロモンスはすぐさま右手の鞭を振り下ろし、ソルの尻を叩いてしまう。

 

 海羽「痛った~い!! んもう!レディーのお尻はデリケートなんだから~!」

 

 ソルはプンプン起こりながらの振り向くが、その隙にアストロモンスは左手の鎌を振り下ろして打撃を胸部に叩き込んでソルを吹っ飛ばしてしまう!

 

 海羽「きゃ~っ!」

 

 ソルは地面を転がった後、何とか立ち上がる。

 

 

 海羽「なかなかの強敵ね…。」

 

 

 その時!

 

 

 “ピギイィィィン!?”

 

 

 突如後ろからザンドリアスの悲鳴が聞こえ、ふとその方向を振り向くと、何やら長い鞭のような物がザンドリアスの首に巻き付いていた。

 

 

 その鞭は、先ほどの地面の穴から伸びている…!

 

 

 すると、その穴から土煙を噴出させながら、一匹の怪獣が現れる!

 

 

 頭部の大きな角、長い鞭が生えたハサミ状の腕、二股に分かれたハサミ状の尻尾が特徴のその怪獣は『バリヤー怪獣ガギ』である!

 

 

 そう、先ほどの見えない壁とは奴が張ったバリヤーであり、地面の穴は奴の蟻地獄のような巣の入り口だったのである!

 

 

 海羽「え~!?一体どれだけ怪獣が現れるの~!?」

 

 

 ガギは、かつて別個体が、遊園地に潜伏し、繁殖の卵を産み付けるために子供たちを捕えて土中の巣に引きずり込んだ事がある。

 

 その時の個体もバリヤーを張って遊園地を覆い尽くしたのだが、それは繁殖のために必要な子供が逃げないようにするためであり、恐らく今回の個体も、繁殖に必要な人々が逃げないように街中にバリヤーを張ったのであろう。

 

 もしかすると、お春婆ちゃんも奴の巣の中に捕えられているのかもしれない…!

 

 

 そして今遂に姿を現したガギは、ザンドリアスをも捕えようとしているのだろう!

 

 

 右腕の鞭をザンドリアスの首に巻き付けているガギ。必死にもがくザンドリアスを弱らせようと左手の鞭で叩いていく。

 

 

 海羽「はっ、そっちもダメ~!」

 

 

 ソルはまたしても急いでガギに駆け寄り、頭部に掴みかかって押さえ込み始める。

 

 

 海羽「う~ん…放しなさいよ~!」

 

 ソルは左手で角を掴み、がむしゃらに右手で頭部を何度も叩いていく。

 

 

 だが、それに怒ったガギは、ザンドリアスを一旦放すと右手の鞭でソルを叩きつけ、怯んだ隙に左手のかぎ爪でひっかいて攻撃する!

 

 ソルは引っかかれた腹部から火花を散らしながら後退する。

 

 

 海羽「うっ…まさか怪獣がこんなに現れちゃうなんて…。

 

 ぐっ!?」

 

 

 ソルは一瞬の隙を突かれ、後ろからアストロモンスの鎌を首に引っ掛けられてしまう!

 

 

 そして身動きが取れない状態で更にガギが鞭で何度も叩いて追い打ちをかける!

 

 

 そしてアストロモンスが思い切りソルを放り投げると同時に、ガギが大きく尻尾を振るい、ソルの腹部に命中させて叩き落とす!

 

 

 二体の連携攻撃により既にふらつき始めているソル。そんな彼女にアストロモンスはチグリスフラワーの花弁からの霧状の溶解液を噴きつけて浴びせて追い打ちかける!

 

 

 大ダメージを受けたソルは膝を付いてしまい、カラータイマーも点滅を始めてしまう…!

 

 

 心配そうにソルを見つめるザンドリアスとモットクレロン。ソルはそんな二体の方を振り向く。

 

 

 海羽「ハァ…ハァ…だ、大丈夫…あなた達は、私が守るから…。」

 

 

 二体は、大ダメージを受けつつも自分たちを守るために戦ってくれているソルに、次第に心が惹かれているようであった…。

 

 

 アストロモンスはソルの首に鞭を巻き付ける。そして次第に引き寄せ始める…!

 

 一気に止めを刺そうとしているのだ!

 

 

 海羽「うっ…私…もうここまでなのっ…!?」

 

 

 ソルの絶体絶命の危機に気付いた猛と涼子。

 

 涼子「あ、あの子が危ない!」

 

 猛「うん、僕らも行こう!」

 

 涼子「でも、この見えない壁が邪魔して前に進めない…。」

 

 どうやら二人は、ガギが張ったバリヤーの外側にいるようである。

 

 猛「よし、久々にあの力を使おう。」

 

 涼子「いいわ、猛。」

 

 

 そう言うと、二人は遂に変身を決意する!

 

 

 猛は正拳突きのように両拳を右・左の順に連続して突き出した後、変身アイテム『ブライトスティック』を頭上に揚げ、涼子は変身アイテム『ブライトブレスレット』を装着した右腕を胸の前に構えた後、高く揚げる!

 

 

 “FO! FO!”

 

 

 猛「エイティ!」

 

 

 涼子「ユリアン!」

 

 

 二人の掛け声と共に、ブライトスティックはボタンを押した後、クリスタルバーが伸長・発光し、ブライトブレスレットは宝石部が光り輝く。

 

 

 そして変身エネルギーが二人を包み、やがて光の中で姿が変わり巨大化する!

 

 

 (ウルトラマン80登場BGM)

 

 

 遂に変身&巨大化が完了した80とユリアン!

 

 

 「あ!新しいウルトラマンだ!」

 

 それに気づいた人々は声援を送り始める。

 

 

 猛「行くぞ!ユリアン。」

 

 涼子「ええ、80。」

 

 

 80とユリアンは空中にジャンプしてボディを重ね合わせる。

 

 

 そして、高速で回転しながら発行してバリヤーに突っ込んで行く!

 

 

 これぞ二人の強力な合体技『ダブルパワー』である!

 

 

 “バリンッ”

 

 

 ダブルパワーにより、見事バリヤーを破って中に突入する事に成功した二人は合体を解く。

 

 

 そして80が降下すると共に跳び蹴りをアストロモンスの背中に決める!

 

 

 アストロモンスはダメージを受けると共に、驚きによりソルを放してしまう。

 

 

 解放されたソルの前に、80とユリアンは着地する。

 

 

 80たちに気付いたザンドリアスは喜び、子供のようにはしゃぐような仕草を見せ、一方のガギは、自身の自慢のバリヤーが破られた事に動揺を始める。

 

 

 80とユリアンはソルの元に歩み寄る。

 

 猛「大丈夫か?この世界のウルトラマン。」

 

 海羽「…あなた達は…?」

 

 涼子「この世界にやって来たウルトラ戦士よ。」

 

 

 海羽「私が呼んだ以外にも、ウルトラマンが…しかも、ウルトラマンとウルトラウーマン一人ずつ!?」

 

 

 猛「説明は後回しだ。今は共に戦おう!」

 

 

 そう言うと80は、カラータイマーに両手を添え、そこからエネルギーをソルのカラータイマーに照射する。

 

 

 エネルギーを補充してもらった事により、ソルのカラータイマーは青に戻った。

 

 

 海羽「わああ、力が戻って来る! ありがとうございます!」

 

 

 ソルは立ち上がると、三人のウルトラマンは、ソルをセンターに横一列に並び立つ。

 

 

 アストロモンスとガギも横に並び立って身構える。

 

 

 猛「行くぞっ!」

 

 涼子「はっ!」

 

 海羽「イエーイ!」

 

 

 人々の歓声を背に、3人のウルトラ戦士は80の合図と共に怪獣たちに立ち向かう!

 

 

 80はアストロモンス、ユリアン&ソルのウルトラウーマンコンビはガギを相手に戦いを始める!

 

 

 80はアストロモンスの鞭や鎌の攻撃をことごとくかわしつつ、素早くパンチやキックを放って確実にダメージを与えていく。

 

 

 ユリアンはガギの振るって来た右腕を掴んで受け止めると、そのまま腹部に右脚蹴りを決め、続けてガギの放って来た左フックをしゃがんでかわすと共に左側に回り込み、左腕の『ユリアンチョップ』を叩き込む。

 

 だが、ユリアンは一瞬の隙を突かれて頭部の巨大な一本角を活かした頭突きを腹部に喰らって吹っ飛んでしまう。

 

 それを見たソルはガギに突っ込み、背中におんぶしてもらうように飛びついた後、そのまま頭部に「エイ、エイ、エイ…」と言いながらがむしゃらに連続パンチを打ち込むが、やがて振るい落とされてしまう。

 

 

 涼子「一緒に行きましょ、後輩。」

 

 海羽「ハイ!先輩!」

 

 

 ユリアンとソルは今度はそれぞれ右腕、左腕と同時にガギに組み付く!

 

 そしてそのままソルが再び「エイッ、エイッ、エイッ…」と発生しながら腹部に左膝蹴りを連続で打ち込み、それによりガギが怯んだ隙にユリアンが右手で頭部の角を掴み、そのまま軽く跳躍して頭部に左手のチョップを叩き込んで屈ませる。

 

 

 ガギが屈んだ隙に、ソルは右手でガギの頭部の角を掴む。

 

 

 海羽「せ~のっ、それーっ!」

 

 

 “バキーン”

 

 

 なんと海羽は、ガギの角を右手で掴んだまま、ヒップアタックで叩き折ってしまった!

 

 

 海羽「(角を持った右手を揚げて左拳は顎の下に当てて)イェイ!」

 

 

 角を折られたガギは少し怯む。

 

 

 しかし、得意の打撃攻撃とはいえ、尻で怪獣の角を折ってしまうとは…彼女の尻の破壊力は侮れないモノである(笑)

 

 

 怯んだガギにユリアンとソルはそれぞれ前蹴り、ユリアンキックとソリッドキックを同時に放ち、ガギを吹っ飛ばした!

 

 

 

 アストロモンスと対する80は、連続バック転でアストロモンスに接近すると、アストロモンスの放って来た鎌の打撃を右足の回し蹴りで弾き飛ばした後、後ろ回し蹴りを胸部に叩き込んで後退させる。

 

 続けてアストロモンスが振るって来た右腕の鞭をかわすと同時にアストロモンスの右腕に組み付き、そのまま首筋の右側に右手のチョップを打ち込み、続けて右脚蹴りを腹部に叩き込み、そしてアストロモンスが反撃で打って来た打撃を連続バク転でかわすと同時に距離を取る。

 

 

 再び「FO!」と風を切りながら構えを取る80。

 

 80はアストロモンスが振るって来た渾身の鞭攻撃を跳躍してかわし、そのまま空中で一回転をしつつアストロモンスを跳び越えて後ろに回り込むと、後ろからヘッドロックを掛ける形で組み付く。

 

 だが、アストロモンスが思い切り前方に屈んだことで前方に放り投げられてしまった。

 

 

 アストロモンスは一瞬の隙を突いて、鞭を80の首に巻き付ける!

 

 そしてそのまま引き寄せ始める。引き寄せた所を一気に攻撃しようとしているのだろうか?

 

 80は鞭を振りほどこうと自身の首に巻き付く鞭を両手で掴むが、なかなか解ける様子は無い。

 

 やがてアストロモンスの目前まで引きずり込まれた80。だが、無敗のウルトラ戦士は怯むことなく右拳のパンチをアストロモンスの腹部のチグリスフラワーの花弁に放つ!

 

 

 …だが、なんとパンチは決まるどころか、右腕が丸ごとズッポリとはまり込んでしまった!

 

 

 80は驚きつつもなんとか抜け出そうと左手でパンチやチョップなどを打ち込むが、嘲笑うような鳴き声を上げるアストロモンスは一向に放す様子は無い。

 

 アストロモンスは、かつて『オイル超獣オイルドリンカー』をチグリスフラワーの花弁で丸呑みして捕食したように、そのまま80を捕食しようとしているのだ!

 

 

 ピンチになった80、その時!

 

 

 “モット~!”

 

 

 “ブシャーッ”

 

 

 モットクレロンが遂に勇気を振り絞り、緑の液体をアストロモンスに噴きつける!

 

 

 液体を頭部からモロ浴びてしまったアストロモンスは、その青臭さに怯み、80を解放してしまった。

 

 

 解放された80は数回前転で受け身を取って一旦距離を取り、モットクレロンの方を向いて「ありがとう」とばかりに一回頷いた。

 

 

 (BGM:がんばれウルトラマン80(full))

 

 

 体勢を立て直した80、今こそ反撃の時だ!

 

 

 80は側転、バク転でアストロモンスに接近し、左肩に右手のチョップを打ち込み、続けて右、左と交互にミドルキックを腹部に叩き込んだ後、左腕で右手、右腕で花弁を掴んでそのまま担ぎ上げて地面に叩き付ける!

 

 

 80は再び“FO!”と言う音を立てながら構えを取ると、空高く跳躍する!

 

 そして空中で数回きりもみを決めた後、降下してアストロモンスの肩に右足蹴りを決め、蹴られた部位は小さく爆発し、アストロモンスは倒れ込む。

 

 

 着地した80は、すぐさま再び高く跳躍して数回きりもみを決めると、降下しながら今度は両足で背中に蹴りを叩き込み、同じく蹴られた部位は小さく爆発し、アストロモンスは再び倒れ込む。

 

 

 80はまたしても着地した後空高く跳び上がり、空中で数回きりもみを決めた後、降下と共にアストロモンスの頭部に右足蹴りを叩き込み、蹴られた部位は小さく爆発する!

 

 

 アストロモンスは再び倒れ込んだ後再び立ち上がるが、既に弱ってふらつき始めていた。

 

 80のウルトラ400文キックを連続で喰らって大ダメージを受けたのである!

 

 

 再び跳躍した80は、空中で宙返りを決めた後、降下と共に合わせた両手の先に赤いエネルギーを集中させて放つチョップ『ウルトラ拳』を頭部に叩き込む!

 

 

 チョップが決まった頭部は爆発を起こし、アストロモンスは再び仰向けに倒れ込んだ!

 

 

 ガギは反撃として両手の鞭を伸ばし、それぞれユリアンとソルの首に巻き付ける!

 

 

 そして、締めつける力に苦しむ二人を徐々に引き寄せていく。引き寄せたところで一気にかぎ爪で引っ掻いて攻撃しようとしているのだ!

 

 

 その時、何処からか赤色の光線が飛んで来て、ガギの鞭を焼き切る!

 

 そしてガギが怯んだ隙にザンドリアスが飛行しながらの体当たりを叩き込んで転倒させた!

 

 

 ザンドリアスは、口からの光線『ヨルゴビーム』でガギの鞭を焼き切り、自分を守ってくれるユリアンとソルを手助けしたのだ!

 

 

 解放された二人は自身の首に巻き付いている鞭を取って投げ捨てる。

 

 

 海羽「ありがとね、ザンドリアスちゃん!(首をかしげて右手でピース)」

 

 ソルに礼を言われたザンドリアスは、照れているのか頬を赤らめる。

 

 

 涼子「行くわよ。」

 

 海羽「はい!」

 

 

 ユリアンとソルは再びガギに駆け寄る!

 

 ガギは最後の武器のかぎ爪を活かした右フックを繰り出し、ソルはそれを掴んで受け止め、その隙にユリアンが腹部に左脚蹴りを打ち込んで後退させた後、続けてソルが「えいっ!」と言う掛け声と共に腹部にヒップアタックを打ち込む。

 

 ガギは二人目掛けて突進するが、二人はそれをかわしながら首筋の背部にチョップを打ち込むと同時に後ろに回り込み、そして二人同時に前蹴りを背中に叩き込んで転倒させた!

 

 

 二人の共闘を見ていて気付くのが、同じウルトラウーマンでもユリアンはスタイリッシュにチョップやキックを放ってクールに、そしてソルははしゃぎながら時折ヒップアタックを打ったりなどしてキュートに戦っており、それぞれ戦闘スタイルの違いがあって面白い(笑)

 

 

 80の猛攻により完全にグロッキーになったアストロモンス。

 

 80は体勢を立て直すと、腕を胸の下でクロスさせた後上に広げてエネルギーを溜め、その後両手を頭部に当ててエネルギーを集中させた後、腕を左右交互に振って切断性のある赤い矢尻型光弾『ウルトラダブルアロー』を放つ!

 

 

 “バシュッ バシュッ バシュバシュッ!”

 

 

 二つの光弾は複雑な軌道を描きながらアストロモンスに向かって行き、そして右手の鞭、左手の鎌、頭部の角、そしてチグリスフラワーの花弁を斬り落とした!

 

 

 完全に動きを止めたアストロモンス。今こそトドメだ!

 

 

 80は左腕を上に、右腕を横に伸ばした後、腕をL字に組んで必殺光線『サクシウム光線』を放つ!

 

 

 七色の必殺光線はアストロモンスの身体を直撃し、アストロモンスは全身をストロボのように光らせた後、大爆発して粉々に吹き飛んだ!

 

 

 アストロモンスを撃破した80は光線のポーズを解き、その場に雄々しく直立する。

 

 

 ユリアンとソルは二人同時にガギを担ぎ上げて放り投げて地面に叩き付けた!

 

 ガギも既にグロッキーである。

 

 

 海羽「そろそろ決めますか!?先輩!」

 

 涼子「ええ。ここは二人の力を合わせましょ。」

 

 海羽「二人の力を…? 何だか分からないけど、(首をかしげて敬礼ポーズ)やってみま~す!」

 

 

 ユリアンとソルは同時に高く跳躍し、空中でボディを重ね合わせる。

 

 そしてそのまま高速に回転しながら発光してガギに突っ込んで行く!

 

 

 ユリアンはダブルパワーを、今度はソルと重ね合わせて放つのだ!

 

 

 二人の光の体当たりはガギとすれ違うような形で直撃し、二人は合体を解いて着地する。

 

 

 …が、ソルはどうやら酔ってしまったようであり、地面に膝を付いてしまう(笑)

 

 

 ガギは同じく身体がストロボのように光った後、大爆発して砕け散った!

 

 

 ガギの撃破を確認したユリアンは、気分悪そうに膝を付いているソルに歩み寄り、「大丈夫?」とばかりに背中を摩る。

 

 海羽「うっ…よっ…酔っちゃったみたい…。」

 

 

 猛「…彼女にダブルパワーという高度な技は早すぎたか…。」

 

 

 凶悪な怪獣を撃退した三人のウルトラ戦士に、人々は喜び、お礼を言う。

 

 「ありがとー!」

 

 「ありがとう!ウルトラマン!!」

 

 

 海羽「…(ピースして)えへっ。」

 

 酔っているソルだったが、人々の感謝の声を聞いて少し元気が出たようであった。

 

 

 

 だが、そんな一方で、先ほど海羽に接近した男・ジャグラーが、ウルトラマンオーブの変身アイテム・オーブリングを黒くしたようなアイテム『ダークリング』を手に、それを上に突き上げる。

 

 すると、ダークリングの光輪部に何やら黒いオーラのようなモノが吸い込まれ、やがてそれがカードの変わり、ジャグラーはそれを抜き取った。

 

 

 ジャグラー「俺からもお礼を言わせてもらうぜ、お嬢さん。」

 

 

 ジャグラーは不敵な笑みでそう呟いた後、手に持っている数枚のカードを見つめる。

 

 彼の手には、昨夜80が倒したモモザゴン、そして、先ほど倒したばかりのアストロモンスとガギのカードが…!

 

 

 ジャグラーは、倒されたガギ達の怨念から彼らの力を宿したカードを作り出して入手したのである。

 

 

 ジャグラー「これで少しは“アイツ”に近づけたかな…?ヒヒッ。」

 

 

 そう言うとジャグラーは、不敵に笑いながらどこかへと歩き去って行った…。

 

 

 ダークリングは、宇宙で最も邪な心の持ち主の元にやって来るアイテム…。

 

 

 はて…ジャグラーに何か邪な心が再び芽生えてしまったのであろうか…?

 

 

 

 やがて酔いが醒めたソルは、80とユリアンにお礼を言う。

 

 海羽「ありがとうございます。あなた達が来てくれなかったら今頃どうなってたか…。」

 

 猛「いいんだ。僕らはたまたまあの子(ザンドリアス)を探しにここに来たんだ。」

 

 海羽「へぇ~、ザンドリアスちゃん、80さん達とも知り合いなんだ。」

 

 猛「い、いやぁ、知り合いというか…“教え子”…かな。」

 

 海羽「(首をかしげて)ほえ?」

 

 

 やがて三人は、モットクレロンの方を振り向く。

 

 海羽「あの子は、一体何なのかしら。」

 

 

 すると、ユリアンは少し俯いた後答える。

 

 

 涼子「…あの子は…捨てられた身なの…。」

 

 

 海羽「…へ…?」

 

 

 実は昨夜、捜査を再開し始めた80とユリアンの元に、かつてモットクレロンと対峙した事があるウルトラマン『ウルトラマンタロウ』からウルトラサインが届いたのである。

 

 それによると、そのモットクレロンはとある宇宙人に飼われていたのだが、暴食が原因で捨てられてしまい、宇宙を彷徨っていた最中に地球に迷い込んだのだという…。

 

 

 モットクレロンの事情を知ったソルは、可哀想なあまり目から黄緑色の光の涙をこぼす。

 

 海羽「うっ…ぐすんっ…そんなに可哀想な子だったなんて…。」

 

 

 ソルは涙を拭きながら、畑の野菜をむさぼろうとしているモットクレロンの元に歩み寄り、そして抱き寄せる。

 

 

 海羽「辛かったんだよね…。」

 

 ソルに優しく抱き寄せられたモットクレロンは、一旦野菜を食べる手が止まり、そして彼女に懐くような仕草を見せる。

 

 

 海羽「うふ、くすぐったいよ~、あはは…。」

 

 

 すっかりモットクレロンに懐かれたソル。80とユリアンはその光景を微笑ましそうに見つめていた。

 

 

 ソルは二人の元に戻る。

 

 海羽「お願い80さん、あの子を小さくしてあげて。」

 

 猛「…え?」

 

 海羽「その間、私はユリアンさんと一緒にザンドリアスちゃんの遊び相手をするわ。あの様子だとまだ遊び足りないみたいだし 」

 

 涼子「…と言うワケで、あとはよろしくね~。」

 

 ユリアンとソルは、遊びたくてうずうずしているザンドリアスの元に歩み寄る。

 

 海羽「ほ~ら、何して遊ぶ~?」

 

 

 ソルからいきなりお願いを受けた80は、少し困惑しつつもモットクレロンを小さくすることにした。

 

 猛「一生懸命頑張ってくれた、可愛いお嬢さんの頼みだ。聞いてやろう。」

 

 そう言うと80は両手を胸に当ててリング状の光線『タイマーショット』を放ち、モットクレロンに浴びせる。

 

 光線を浴びたモットクレロンは体が発光すると共に徐々に小さくなっていき、やがて小動物ぐらいの大きさにまで小さくなった。

 

 猛「…これでよし!」

 

 

 

 やがて時間ギリギリまでにザンドリアスの遊び相手をした3人のウルトラ戦士は変身を解き、人間の姿で合流する。

 

 海羽はハムスターぐらいの大きさのモットクレロンを両手に乗せて、嬉しそうな表情で猛に礼を言う。

 

 海羽「ありがとうございます!80さん。」

 

 猛「いいんだ。それにしても、その子をどうする気だい?」

 

 海羽「良い住み場所が見つかるまで、とりあえず私が飼おうかと思います。 大丈夫です!今はすっかり私に懐いてますから、きっと言うことを聞いてくれますよ!」

 

 猛「そっか、なら、しっかり頼んだぞ。」

 

 海羽「(敬礼をして)はいっ!」

 

 

 涼子「それにしても、なかなかの戦いぶりだったよ。」

 

 海羽「本当ですか?ありがとうございます!」

 

 涼子「それに、怪獣を一瞬で懐かせるあの優しさ…あなた、怪獣を飼って世話とか出来るんじゃない?」

 

 海羽「えぇ…そうかな~?」

 

 猛「涼子よりも素直でいい子そうだしな。」

 

 涼子「あ、猛何よそれ~!」

 

 三人は笑い合った。

 

 海羽「(小声で)うふ、二人とも仲が良いじゃない。」

 

 

 先ほど遊んだ際に聞いた話だが、どうやらザンドリアスは迷子になってこの地球に迷い込んだようであるため、ユリアンは宇宙の親の元に送っていく事にした。

 

 海羽「では、お願いします、ユリアンさん。」

 

 涼子「ええ、任せといて。 また一緒に戦いましょ。同じウルトラウーマンとして。」

 

 海羽「はい!」

 

 

 次に海羽は数歩歩いてザンドリアスを見つめる。

 

 海羽「また遊ぼうね。ザンドリアスちゃん。」

 

 ザンドリアスは嬉しそうに地団太を踏む。どうやらザンドリアスも、海羽(ソル)に懐いているみたいである。

 

 海羽「うふ、じゃあ、またね~!(元気よく手を振る)」

 

 

 涼子はブライトブレスレットを装着した右腕を高く揚げる。

 

 涼子「ユリアン!」

 

 ブライトブレスレットから溢れ出る光に包まれた涼子はユリアンに変身&巨大化する。

 

 涼子「それじゃ、行きましょ。」

 

 ザンドリアスは一礼する。やがてユリアンはザンドリアスを連れて空の彼方まで飛び去って行った…。

 

 

 海羽「(両腕を振って)ばいばーい!」

 

 

 猛「彼女だけで大丈夫だろうか…ま、大丈夫か。」

 

 

 海羽「80さんはこれからどうするのですか?」

 

 猛「僕はもうしばらくこの地球に留まるよ。この世界にも、何やら異変が起きているみたいだからね。」

 

 海羽「本当ですか!?助かります!」

 

 猛「あぁ。それに、何やらこの世界から、強大なマイナスエネルギーを感じるんだ…。」

 

 海羽「そうなのですか?」

 

 猛「二つの場所から感じるんだ…一つは空の彼方から…そして、もう一つはこの地球上から。まるでとある人間が、とてつもなく邪で、強大な闇を抱えているような…。」

 

 海羽「そんなに負の心を持っている人が…いるのですか…。」

 

 

 …このとき海羽はまだ知らなかった…。

 

 

 ウルトラマン80・矢的猛が感じているこの強大なマイナスエネルギーの持ち主の正体が、彼女もよく知る“とある人物”だという事を…。

 

 

 猛「誰なのかはまだ知らないけど、やがてその心が邪悪な怪獣を生み出す可能性も否めない。だから僕もこの世界に留まって一緒に戦うよ。」

 

 

 海羽「光栄です。また一人、先輩ウルトラ戦士と戦えるなんて…

 

 よろしくお願いいたします!」

 

 

 猛「ああ、よろしく。」

 

 

 猛と海羽は握手を交わした。

 

 

 猛「じゃあ、僕はそろそろ行くよ。」

 

 海羽「はい。また会いましょう。」

 

 猛「何かあったらまた呼んでくれ。」

 

 海羽「はいっ!」

 

 

 猛は左右の拳を交互に突き出すと、ブライトスティックを高く揚げる。

 

 

 “FO! FO!”

 

 

 猛「エイティ!」

 

 

 猛はブライトスティックから放たれた光に包まれ、ウルトラマン80に変身&巨大化する。

 

 

 「ショワッチ!」

 

 

 そして高く飛び上がり、やがて空の彼方へと飛び去って行った…。

 

 

 

 海羽「80さん…また一人頼もしいウルトラマンが来てくれたわ…。

 

 それにユリアンさんも、いつかまた色々お話ししたいな~  “ウルトラガールズトーク”って感じで。」

 

 

 80たちを見送った海羽は、モットクレロンを胸のポケットに入れて歩き出す。

 

 海羽「大人しくしててね。」

 

 “モットー! モットー!”

 

 モットクレロンは海羽の言う事を素直に聞いているようであった。

 

 

 しばらくすると、祖父母が海羽に歩み寄る。

 

 美穂「海羽ちゃーん!」

 

 海羽「あ、おじいちゃんおばあちゃん。」

 

 荘「大丈夫か?怪我は…」

 

 海羽「大丈夫大丈夫。安全な所に避難してたから。」

 

 当然海羽は、自身がウルトラウーマンである事を祖父母に隠す。

 

 

 海羽(私がウルトラ戦士だなんて知ったら…間違いなく腰抜かすよね…最悪の場合ぽっくり…?)

 

 

 しかし、

 

 

 美穂「いや~しかしあの女の子の戦士(ソルの事です)、海羽ちゃんにそっくりじゃったねー。」

 

 

 海羽「(裏声で)へっ!?」

 

 

 荘「あぁ確かに。声とか仕草とか、完全に海羽だったな~!」

 

 

 流石は、自身の孫だけあって祖父母はソルの仕草から海羽の面影を感じていたようだ。

 

 

 海羽「…そっ…そうだね、確かに私に似てたわね~…世の中自分にそっくりな人が3人いるとか言われてるけど、まさかウルトラマンで似てる人がいたんてね~あはははは…。」

 

 なんとか誤魔化すことに成功した海羽(笑)

 

 

 美穂「それよりスイカ切っとるよ。食べるかい?」

 

 海羽「本当!?やったー!」

 

 海羽は喜びながら祖父母と共に彼らの家に戻って行った…。

 

 

 モットクレロンも連れて…。

 

 

 海羽「(こっそりと)モットクレロンちゃんも食べる?」

 

 “モットー! モットー!”

 

 海羽「うふふっ。」

 

 

 因みにガギの巣に捕えられていた人々は、お春婆ちゃん含めて無事に全員救出されたのだという。

 

 

 

 一方、地球と月の間の宇宙空間で待機している宇宙船『テライズグレート』では、

 

 

 敏樹「ふっ、どうやら今回も失敗に終わったみたいだな。」

 

 キョウ「はいっ!すいません! 一気にソルをやっつけられるいいチャンスだと思ったのですが、思わぬウルトラ戦士が来た者で…。」

 

 

 どうやら今回、アストロモンスとガギ、モモザゴンを差し向けたのはメフィラス星人キョウであり、恐らくこれらの怪獣は怪獣墓場から蘇らせたものだと思われる。

 

 

 だが、『桜井敏樹』は何やら余裕そうな表情をしていた。

 

 

 敏樹「ふっ、問題ない。もうすぐ“アイツら”が地球に到着するはずだ。」

 

 

 キョウ「アイツら…と言いますと…?」

 

 

 敏樹「なあに、見れば分かるさ。ふふふっ。」

 

 

 

 祖父母の家でスイカをいただく海羽。口元に種が数個付くほどにがっついている。

 

 モットクレロンも小さい体ながら二切れをペロリと、なんと皮まで食べ尽くしてしまっている。

 

 “モットー! モットー!”

 

 海羽「ふふふ、もう、相変わらず食いしん坊なんだから。」

 

 海羽は、すっかりモットクレロンと仲良くなっていた。

 

 

 そして、海羽は食べながら一言ぼやいた。

 

 海羽「80さんとユリアンさんにも食べさせたかったな…。いつかまた会ったらご馳走しよーっと 」

 

 

 

 やがて昼過ぎ、霞ヶ崎に戻ることにした海羽は、お土産に夏野菜数個とスイカを二個を貰った。

 

 

 美穂「それじゃあ、元気でな。」

 

 荘「向こうでもしっかりやるんじゃよー!」

 

 海羽「うん!おじいちゃんおばあちゃんも元気でね~!」

 

 海羽は祖父母に手を振ると、バス停への道のりとルンルンと歩き始めた。

 

 

 やがてバス、電車と乗り継いだ後の新幹線の中。

 

 海羽は相変わらずお腹を空かせているモットクレロンに野菜を食べさせつつ、自身も駅弁を食べていた。

 

 美味しそうにナス、トマト、ピーマンなどの野菜をムシャムシャと食べていくモットクレロンに、同じく美味しそうに駅弁をモグモグ食べていく海羽。

 

 海羽「(満面の笑みで)美味し?」

 

 “モットー!”

 

 海羽「うふ、やっぱおじいちゃんおばあちゃんが育ててくれた野菜だもん。格別だもんね。」

 

 やがて与えた野菜を食べ終えたモットクレロンは、まだ食べ足りないのか、何やら「モットー!」と吠えながらせがむような仕草を見せる。

 

 海羽「え?まだ? 今はここまで。あとは夜のお楽しみ。」

 

 

 “モットー!”

 

 

 “ビチャッ”

 

 

 海羽「ひゃっ!?」

 

 

 モットクレロンは、口からの青い液を海羽の右頬に噴きつけ、何やら笑うような仕草を見せる。

 

 見事にイタズラしたのだ。

 

 

 海羽「んも~モットクレロンちゃんったら…。」

 

 何処か楽しそうにモットクレロンを見つめる海羽。

 

 

 と、こんな感じで、海羽は帰りの新幹線の中で楽しそうにモットクレロンと戯れていた。

 

 

 …が、その音を偶然聞いてしまったとある乗客が席を立ち歩きつつ辺りを見渡し始める。

 

 

 「なんか変な音が聞こえるな~…。」

 

 

 海羽「ひゃっ…?」

 

 それに気づいた海羽は、少し慌てつつも急いでモットクレロンを胸のポケットに入れる。

 

 

 やがて海羽は、その乗客に話しかけられる。

 

 「ねえ、お嬢ちゃん何か知らない?」

 

 海羽「へっ?…ど、どうしたのですか?」

 

 「いや何か甲高い声で「もっとモットー! モットー!」とか言う声が聞こえるので気になって…。」

 

 

 海羽(…マズい…!)

 

 

 自身が匿っているモットクレロンの鳴き声が聞こえてしまっている事に気付いた海羽は、慌てつつも咄嗟にこう答えた。

 

 

 海羽「すっ…すいません私が言ったんです!」

 

 「…え?」

 

 海羽「私が言ったんですよそれ! (モットクレロンの声真似で)モットー! モットー! もっとー新幹線でゆっくりしたいな~なんて、あはは…。」

 

 

 それを聞いた乗客は、思わず少し吹いて笑いつつも納得する。

 

 「ふふふっ、君なかなか面白いね。 まああまり迷惑かけないようにね。」

 

 

 そう言うと乗客は、自身が座っていた席に戻って行った…。

 

 

 海羽「ふぅ~何とかなった~…。」

 

 すると、海羽の胸のポケットからモットクレロンが顔を出す。

 

 “モットー!”

 

 海羽「(満面の笑みで)うふ、もう大丈夫よ。」

 

 

 やがて海羽は、車窓から外を眺めながら呟く。

 

 

 海羽「向こうに戻ったら、ムサシさんかレイさんとかと相談しよっかな…(モットクレロンの方を向いて)大丈夫。きっとあなたにとっていい住み場所が見つかるわ。(モットクレロンの頭を撫でながら)それまで私が面倒見るからね。」

 

 “モットー! モットー!”

 

 海羽「ふふふ。」

 

 

 次に海羽は、お土産でもらったスイカを見つめる。

 

 海羽「一つは櫂君に渡そっかな…。それに26日は真美ちゃんの誕生日だし、真美ちゃん「一度でいいからスイカを丸ごと一つ食べたい」って言ってたしね。ふふふ。」

 

 海羽は何やら意味深な発言をした後、再びモットクレロンと戯れながら駅弁を食べ始めた。

 

 

 海羽「帰ったら櫂君や真美ちゃんに色々話をしよーっと。」

 

 

 (ED:地球人だよ)

 

 

 

 [エピローグ]

 

 

 だが、そうやって人間と怪獣がほのぼのと戯れている間にも、宇宙からはとんでもない奴ら二人が地球に接近していた…!

 

 

 一人は真っ赤なボディをしており、もう一人は何やら白い猿のような姿をしている…。

 

 

 二人は今月面に立っていた。何やら片手には怪獣の生首のようなモノを持って…!

 

 

 やがて赤いアイツは、もう片方の手に短剣のようなモノを持ち、それで狙いを定めるように地球を指した。

 

 

 「レッドファイッ!!」

 

 

 To Be Continued………。




 読んでいただきありがとうございます!

 久々の海羽ちゃんが主役のエピソード、いかがでしたか?


 今回はほのぼのしてたのも束の間、ラストシーンで既に気付かれた方もいるかもですが、次回はとうとうあの“危険人物二人”が地球に降り立ってしまいます!


 新たに参戦した80とユリアンも、今後も登場させる予定なのでそこも楽しみにしていてください!

 あと、今回海羽ちゃんに“闇の仕草”をかましたジャグラーさんも(笑)


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


 隠れてたサブタイトルは『運命の出会い』(ウルトラマンメビウス第1話)でした!


 あと余談ですが、遂に劇場版ウルトラマンジード公開まであと一週間を切りましたね!

 私は既に待ち遠しくてドーしようもないです!(笑)

 新しく登場するウルティメイトファイナルの活躍も早く見たいな~(ワクワク)。

 では、また!


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VSレッドマン&ハヌマーン3部作
第31話「赤と白のアイツら」


 皆さん、お待たせしました!


 今回は遂にあの“赤い通り魔”と“白い猿”が来襲し、彼らとの激闘が始まります!

 今回はその三部作の第一弾です!


 また、ラストには“とあるウルトラマン”も登場します!


 そして、いつもながらサブタイトルも隠しております!


 では、どうぞ!


 (OP:英雄の詩)

 

 

 8月19日。この日、竜野櫂と新田真美、眞鍋海羽の3人は、近くのコンサートホールへ、麟慶大学附属高等学校の吹奏、合唱楽団の演奏会を聴きにやって来ていた。

 

 真美「客が多いわね〜。」

 

 櫂「ま、なにしろ附属高校が誇る吹奏、合唱楽団の演奏会だからな。」

 

 海羽「押し流されそうだよ〜。」

 

 人混みの中を、はぐれないように手を繋いで入場していく櫂と真美、海羽はやがて指定席に着いて座る。

 

 海羽「ふぅ〜やっと座れたわ。楽しみだね、櫂君、真美ちゃん。」

 

 櫂「ああ。今回はどんな曲を演奏するんだろうな。」

 

 真美「えぇ。素晴らしい演奏で、日々の疲れを癒しましょ。」

 

 

 やがて辺りが暗くなり、幕が上がり、吹奏、合唱楽団が姿を現わす。

 

 総勢50人ぐらいの大人数の団体だ。

 

 

 櫂「うおー、相変わらずスゲー人数だな。」

 

 真美「そうだねー。しかも例年よりちょっと増えてる。」

 

 海羽「はぁ〜…なんか凄そう! (小声で)ね、モットクレロンちゃん。」

 

 “モットー! モットー!”

 

 因みに海羽は、こっそりとハムスター大の『食いしん坊怪獣モットクレロン』も連れて来ている(笑)

 

 

 やがて司会者の挨拶が終わると、指揮者が前に立ち、そして彼の合図とともに演奏が始まる!

 

 

 大勢いながらも演奏するメロディや合唱の歌声は、騒がしくなくむしろ穏やかで、自然に聴く人を惹きつける様なものだ。

 

 

 因みに演奏しているのは『ぼくらのウルトラマン』である。

 

 

 海羽「はぁ~…最高~!自然と疲れが取れて行くようだわ。」

 

 真美「ん~そうね。綺麗な演奏と歌声の絶妙なハーモニーだわ。」

 

 櫂「やっぱ大人数で奏でる音楽は格別だな。な、ゼロ。」

 

 ゼロ「おぉ、そうだな。」

 

 海羽「(小声で)ね~モットクレロンちゃん。」

 

 “モットー!”

 

 櫂と海羽はそれぞれゼロとモットクレロンに話しかけた。

 

 

 

 ゼロ「光の国でも出来そうな気がするな…全ウルトラ戦士を集め、それぞれ楽器を持たせて…。」

 

 素晴らしき演奏を聴いていく内に、ゼロはいつの間にか妙な想像を始めていた(笑)

 

 

 

 櫂「それにしても…“凶悪怪獣やっつける、僕らのウルトラマン”…か…いい歌詞じゃねーか。」

 

 そして櫂もまた、不敵な笑みを浮かべながらそんな事を呟いていた…。

 

 

 

 …しかし、演奏開始からしばらく経った後である。

 

 

 真美「…何だろう…私、何だか胸騒ぎを感じるわ…。」

 

 

 突然、真美は妙な胸騒ぎを感じ始めていた。

 

 櫂「ああん?一体どうしたんだ?」

 

 真美「分からない…本当にいきなりなの…。」

 

 海羽「大丈夫?真美ちゃん。」

 

 真美「えぇ…とりあえず大丈夫だけど…。」

 

 

 真美(何だろう?…この曲が始まった瞬間、胸騒ぎが始まった感じ…?)

 

 

 …演奏開始前まではなんとも無かった真美に、演奏開始後に突如起こった不穏な気分…。

 

 

 果たしてこれは何を暗示しているのであろうか…?

 

 

 

 約2時間後、演奏会は終了し、櫂たちは大勢の客と共に会場を後にした。

 

 

 櫂「いや~それにしても、最高の演奏だったな。」

 

 海羽「そうだね~! 真美ちゃん、あれから大丈夫だった?」

 

 真美「えぇ。どうやら治まったみたい。心配してくれてありがとね。」

 

 櫂「ま、俺たち仲間だからな。いいって事よ!」

 

 海羽「そうそう!」

 

 

 このように、3人は会話を楽しみながら帰り道を歩いていた。

 

 

 その時、

 

 

 櫂「…ん?」

 

 

 櫂は何かに気づいて上を向き、それに気づいた海羽も上を向く。

 

 

 視線の先の上空には、光と共にウルトラ文字が浮かんでいた。

 

 

 『ウルトラマンコスモス』からの『ウルトラサイン』であった!

 

 

 ウルトラ戦士の力を持っている櫂と海羽はサインの内容を読んでみると、「ソル、すまんが今すぐ月に来てくれ」というメッセージが。

 

 

 海羽「え?私?…一体どうしたんだろう?コスモスさん…。」

 

 櫂「分からねぇな…とりあえず行ってみたらどうだ?」

 

 海羽「えぇ…何か重大な事態が起こっているのかも…それじゃあ、ごめんね。櫂君と真美ちゃんは先に帰ってて。」

 

 真美「…気を付けてね。」

 

 海羽「うん!」

 

 

 海羽は『ハートフルグラス』を取り出して目に当て、赤とピンクの光と共に『ウルトラウーマンSOL(ソル)』に変身&巨大化する。

 

 そして、月に向かい飛び去って行った。

 

 

 櫂と真美はそんなソルを見送る。

 

 真美「一体…月で何が起こったのかしら…。」

 

 櫂「さあな…とりあえず今は海羽の無事を祈っておこう。いざという時は、俺とゼロが助太刀に行ってやるか。」

 

 ゼロ「そうだな、櫂。」

 

 

 

 やがてソルは月に到着し、月面の上空を飛び回っていた。

 

 

 海羽「コスモスさん…一体何処に…ん?」

 

 

 やがてソルはコスモスを見つける。

 

 

 ソルを待っていたコスモス(ルナモード)の側には、何やら二体の怪獣がぐったりとしていた。

 

 

 着地してコスモスと合流するソル。

 

 海羽「コスモスさん、一体どうしたのですか?」

 

 ムサシ「見てくれ。この怪獣たちが…!」

 

 海羽「…!ひゃっ…!」

 

 

 コスモスの側にいる怪獣たちを見た瞬間、海羽は一瞬戦慄した…!

 

 

 そこには、いずれも月の怪獣でもある二体『臼怪獣モチロン』と『月怪獣キララ』が、見るにも無残な傷だらけの姿で横たわっているのだ!

 

 両者とも、体の数か所に何度も強く殴られた様なアザ、何かで切り付けられたような痛々しい傷が出来ている…!

 

 

 海羽「大変…この怪獣たちかなり弱ってる…。」

 

 ムサシ「あぁ、だから、彼らを元気にするために君の力も必要だと感じて、それで君を呼んだんだ。」

 

 海羽「…でもどうして?…誰がこんな酷い事を…。」

 

 ムサシ「説明は後だ。まずは彼らの傷を治そう。」

 

 海羽「そうですね。」

 

 

 コスモスとソルはモチロンとキララの治療に取り掛かり、それぞれ『コスモフォース』と『リライブ・フォース』を浴びせる。

 

 

 それにより、二体の傷は癒えたのだが、あまりにも元の傷が深かったために後遺症が残ってしまっていた。

 

 そのため、コスモスはとりあえず二体を一旦自身の星『惑星ジュラン』に連れて行き、そこで後遺症を治す事にした。

 

 

 ジュランに連れて行くのは、彼らを襲った“ある者達”から守るためでもあった…!

 

 

 ムサシの話によると、たまたま地球周辺の宇宙空間をパトロールしていた最中、月面でモチロンとキララが何者かに襲われているのを見つけたのだという。

 

 

 なんでも一人は白い猿のような姿、そしてもう一人は真っ赤なボディに清朝の暖帽のような形状の頭部をした、ウルトラマンと似ても似つかない姿をしていたのだという…。

 

 

 いずれも凶器を持っていた二人から敵意と殺意を感じたコスモスは、急いでモチロンとキララの助けに入り、なんとかコロナモード、エクリプスモードとチェンジしつつ追い払う事に成功したのだという…。

 

 

 ムサシから衝撃的な事実を聞いた海羽は、少し胸が苦しくなっていた。

 

 海羽「彼らは一体何者なんだろう?…それにしても酷いわ…どんな理由があったとしても、罪の無い怪獣をここまで傷つけるなんて…。」

 

 

 ソルは憐れみながら、二体の頭を撫でる。気が付くと目からは緑色の滴のような光の粒子が溢れていた。

 

 同情から、涙を流しているのである。

 

 

 それを見た二体は、「ありがとう」とばかりにソルの手を握った。

 

 

 海羽「…へへへ…ありがとね。」

 

 

 どうやら二体に気に入られたようである。

 

 

 やがてコスモスは、二体を連れて出発する事にした。

 

 ムサシ「とりあえず僕は、彼らを奴らから守るためにも、一旦ジュランに連れて行ってその後すぐに戻って来るよ。」

 

 海羽「はい。」

 

 ムサシ「海羽ちゃんも、奴らには気を付けるんだ。多分まだ地球周辺にいるはずだ。」

 

 海羽「分かりました。ゼロさん達にも伝えておきますね。」

 

 

 最後にソルは、モチロン達の方を振り向き、

 

 海羽「元気でね。モっちゃん、キラちゃん。」

 

 

 …いつの間にかあだ名も付けていた(笑)

 

 

 やがてコスモスとソルは別れ、ソルは地球向かって飛び始める。

 

 

 海羽「…モっちゃん達を襲った者達って…もしかして新手の凶悪な宇宙人なのかな…?」

 

 

 

 一方地球では、櫂と真美は帰り道を歩いていた。

 

 

 櫂「そろそろ正午だし、どっか食って帰るか?今日は俺が奢っちゃるよ。」

 

 真美「本当?ありがとう。 何食べよっかな~  お腹も空いたし…カレーかな…ラーメンかな…とんかつ、お寿司にオムライス…どれにしようか迷うね。」

 

 楽しそうに笑顔で昼飯を考える真美。よほどお腹が空いているのであろう(笑)

 

 櫂「ははっ…真美の食べたい物多いな…よし!それじゃあそん中から選んじゃるか。」

 

 

 櫂が昼飯を決めようとしたその時!

 

 

 “ズドーン”

 

 “ゴゴゴゴゴゴ…”

 

 

 突然、連続して起こる衝撃音と共に地震が起こり始める!

 

 

 真美「ひゃっ!?」

 

 櫂「な、何だ!?」

 

 

 しばらくすると地震は治まった。

 

 

 真美「ふぅー…びっくりした…。」

 

 櫂「あぁ。しかしさっきの地震、まるで何かが地面に落下したような感じだった…。ん?」

 

 

 「あれは何だ?」

 

 「何かが落ちてるな…。」

 

 「行ってみようぜ。」

 

 

 櫂と真美が一安心するのも束の間、今度は周囲の人々が何かに向かって行くのに気づく。

 

 

 真美「あの人たち、一体何を見つけたんだろう…?」

 

 

 その時、櫂の表情が少し真剣なものに変わる…。戦士として、そして怪獣キラー思考としての勘が働いているのだろうか…?

 

 

 櫂「…行ってみよう。」

 

 

 櫂と真美も、人だかりが出来ている所に辿り着く。

 

 

 やがて人々が見つめてる物を見た瞬間、二人は驚愕した!

 

 

 そこには、何やら大きくて黒くて丸い物が地面にめり込んでいたのである!

 

 

 一見岩石のようにも見えるが、それにしては余りにも丸いため、人々はそれが何なのかと不思議がりながら見つめていた。

 

 

 櫂「何だこの黒い塊は…。」

 

 ゼロ「まさか、新たな侵略者が送り込んだ何かなのか?」

 

 真美「でも…一体何の目的だろう…?」

 

 

 三人が黒い物体に不思議がっているのも束の間、

 

 

 「キャーッ!!」

 

 

 今度は別の市民の叫びを聞いて、三人はその方へと急行する。

 

 

 なんとそこには、何やら怪獣の生首や肉片のような物がそこら辺にたくさん転がっているのである!

 

 

 怪獣の欠片だけあってその大きさは大きく、実際直撃を受けたビルや道路は崩れたり破損したりしている。

 

 それに大気圏突入したためか、黒焦げになった状態であった。

 

 

 真美「…何なの?これ…。」

 

 櫂「まーた妙な現象が起こり始めたなー。」

 

 

 櫂と真美は、目の前に起きている奇妙な現象に、それを不思議そうに見つめる人々を見渡しながら何かを感じ始める。

 

 

 櫂「隕石にぶつかってバラバラになった怪獣が、隕石ごと振って来たのか?」

 

 真美「それもありそうだけど、でももし隕石ならもっと甚大な被害が出てるハズだし…一体何なんだろう…?」

 

 櫂「それもそうだな…それかこの黒いデカブツは怪獣の卵だったりとか…。」

 

 櫂がなかなかいい線を突いたその時、周囲の人々の声から、早く誰かこの黒い物体をどけてくれないかなという声が飛び交い始める。

 

 

 確かに、黒い物体と破片たちが落下したこの場所は、街のど真ん中である。実際道路が妨げられ、交通に悩む人々が続出し始めているのは確かなのだから…。

 

 

 櫂「よーし、こうなったらとりあえず、こいつらをどかしてやるか。」

 

 ゼロ「そうだな…行くぞ櫂!」

 

 

 櫂『レッツ、ゼロチェンジ!!』

 

 

 櫂はウルトラゼロアイを目に装着し、赤と青の光と共に『ウルトラマンゼロ』へと変身&巨大化する。

 

 

 ゼロの登場に人々は歓喜する。

 

 

 ゼロ「へへっ、これからこいつらをどかしてやるから、皆はちょっと下がっててくれ。」

 

 

 ゼロの指示を受け、真美を含めた人々は安全な場所にまで下がり始める…。

 

 

 櫂(ふっふっふ…これだよこれ…特別な力のない人間どもが、俺を求めてくれるこの感じ…。)

 

 櫂は不敵な笑みを浮かべながら、心の中でそう呟いていた…。

 

 

 ゼロ「デヤッ!」

 

 

 やがてゼロは右腕を胸に当てて額のビームランプから『エメリウムスラッシュ』を発射し、街中に散らばる肉片を焼き払い始める…。

 

 光線は確実に肉片を焼き、跡形も無く消し飛んで行く…。

 

 

 やがて肉片の処理が終わった後、ゼロは残った黒い塊を頭上高く持ち上げる。

 

 

 ゼロ「こいつはとりあえず安全な場所まで運んで行くぜ。」

 

 

 そう言うとゼロは飛び立ち、黒い塊を街はずれにまで運び始める…。

 

 

 やがて櫂は、ゼロのテレパシー能力を利用して真美に話しかける。

 

 櫂『すまんが真美、二人でのランチはまた今度だ。本当にすまない。』

 

 真美「…うぅん。いいよ櫂君。また楽しみにしてるね。」

 

 

 やがてゼロは、街はずれの、街と森林の間に位置する高原までに黒い物体を運び、地面に置く。

 

 

 そしてそれをじっくりと見つめ始める…。恐らく今は櫂の意識なのであろう…。

 

 

 櫂(しっかしコレは一体何なんだ?…でも、怪しいモノは何かが起こる前に爆破しておくがベストだよなぁ…もしコレが怪獣の卵なら、それこそ大変な事が起こるぞ…。)

 

 

 流石は“怪獣絶対殺すマン”。黒い物体を調べる必要は無いと爆破する事にしてしまった。

 

 

 やがてゼロは櫂の意識のまま、ゆっくりと『ワイドゼロショット』の構えに入り始める…!

 

 櫂「へへっ…悪く思うなよ。 これで…エンドマークだ…!」

 

 

 やがて完全にL字が組まれ、光線が発射されそうになったその時!

 

 

 海羽「きゃあああああああ!!」

 

 

 ゼロ・櫂「…何だ!?」

 

 

 ゼロが悲鳴の聞こえた上空を振り向くと、そこには手足をバタバタさせながら落下して来るソルの姿が…!?

 

 彼女は間違いなく、ゼロの方目掛けて落下していた…!

 

 

 海羽「誰か、止めて~~~!!」

 

 

 ゼロ・櫂「え?ち、ちょ…く、来るな~!!」

 

 

 “ドシーン”

 

 

 やがてゼロは咄嗟にソルを受け止めようとするが、余りの落下スピードに受け止めたと同時に倒れ込んでしまい、ソルはその上に座り込む状態になってしまう。

 

 

 海羽「ふぅ~…一時はどうなるかと思ったわ…。」

 

 

 安心するのも束の間…

 

 

 ゼロ「ソ…ソル…とりあえずどいてくれ…。」

 

 

 その声に、ソルはゼロが自身の尻の下敷きになっている事に気付く!

 

 

 海羽「ああっ!ごめんなさいゼロさん!櫂君!」

 

 

 ソルは急いで立ち上がり、それにより解放されたゼロも立ち上がる。

 

 ゼロは自身の腕や胴体、脚の砂を払い落とし始める。

 

 

 ゼロ「ふぅ~…重かった…。」

 

 海羽「あ!何よそれ~!」

 

 ゼロ「おっと、悪りぃ悪りぃ。それよりソル、何であんな面白い落下の仕方をしたんだ?」

 

 

 海羽「あ、それがね…。」

 

 

 話によると、ソルは大気圏を突破して地球に着いた直後に、同じく大気圏を突破した何やら黒い数個の物体に当たり、それによりバランスを崩したのだという…。

 

 

 ゼロ「黒い物体…?」

 

 海羽「ゼロも何か知ってるの?」

 

 ゼロ「実はさっきその黒い物体は街中にも散らばっていてな。俺はさっきそれらを焼き払った後、同じく落下していたこいつ(黒い物体)を運んで来たってワケだ。」

 

 海羽「へぇ~…一体何なんだろう?黒い物体は…。」

 

 ゼロ「現時点では何なのかは分からないが、よく見たら生々しいモノだったから、怪獣の物だという事は間違い無さそうなんだ。」

 

 海羽「そうなの!?…じゃあ、その黒くて丸くて大きい物も?」

 

 ゼロ「分からない…これに関しては、まだ調査が必要かもな。」(最も、さっき櫂が容赦なく爆破しようとしたのだがな…。)

 

 

 ソルは黒く丸い物体をじっくりと見つめ始める。

 

 

 海羽「なんかこれ、すごく気になるかも…。ねぇ、これ、しばらく私が見てもいい?」

 

 ゼロ「え?」

 

 海羽「何だか分からないけど、興味が湧いて来て…しばらく観察してみたいの。」

 

 

 ゼロ「…分かった。ただし、何かあったら連絡してくれ。」

 

 海羽「やったー! (敬礼して)りょーかい!」

 

 

 かくして、ゼロは黒い物体の観察をしばらくソル(海羽)に任せる事にした。

 

 

 やがてゼロとソルはお互い別れを告げ、ゼロはその場から飛び立って街に戻り始める…。

 

 

 ソルも変身を解いて海羽の姿に戻り、海羽は連れて来ていたモットクレロンと一緒に観察を始める…。

 

 

 海羽「一体何が出るんだろうねー?」

 

 “モット―!”

 

 

 一方、街に戻ったゼロは光と共に櫂の姿に戻った。

 

 ゼロ「いいのか櫂。あれを海羽に任せて。」

 

 櫂「あぁ。もしあれが怪獣の卵だとしても、海羽は怪獣の扱いになれている。 それに、もし生まれた怪獣が凶悪な奴なら…俺と海羽でぶっ倒してやる…!」

 

 そう言いながら、不敵な笑みを浮かべる櫂。

 

 

 ゼロ(どーせ善良な怪獣でもぶっ倒そうとする癖に…まあいい。もしコイツがまた暴走しそうになったら、ウルトラサインでコスモスか他のウルトラマンを呼んで救援を求めるか…。)

 

 

 ゼロは心でそう呟きながら、とりあえず櫂を見守る事にした。

 

 

 

 一方宇宙空間では、何やら複数の怪獣が飛行しているのが見える。

 

 鳥にも似た姿をしたその怪獣の群れは、『渡り鳥怪獣バル』の群れであった。

 

 彼らは10年に一度、群れを成して宇宙を渡る非常に大人しい性質の宇宙の渡り鳥である。

 

 

 そして、そんなバルの群れに襲い掛かる一匹の宇宙怪獣がいた!

 

 鋭い牙の生えた凶悪な形相が特徴のその怪獣は、残忍な性格の宇宙の肉食怪獣『スペース・ジョーズ ザキラ』である!

 

 

 ザキラとバルは天敵同士であり、ザキラはバルを格好の常食にしているのだ!

 

 

 ザキラはバルを捕食するほどパワーアップする性質を持ち、かつて別個体のザキラも、成層圏外で多くのバルを捕食してパワーを蓄積した結果、周囲500㎞に台風並みの被害を与えるという凄まじい破壊力を誇り、そのパワーは『ウルトラマン80』をも敗北寸前にまで追い込んだ程なのである!

 

 

 そう、先ほど地球に降り注いだ黒い物体は、恐らくザキラが捕食したバルの食べかすなのであろう…!

 

 

 そして黒くて丸くて大きい物体も、ザキラに襲われた群れが遺した卵なのかもしれない…!

 

 

 そんな事を知るはずも無く、海羽はバルの卵を、モットクレロンと一緒にキュウリを塩を振って丸かじりしながら見つめ続けていた…!

 

 海羽「なかなか何も起こらないね。」

 

 “モットー!”

 

 

 やがてザキラから逃げるバルの数体がザキラに捕まりそうになる…!

 

 

 その時!

 

 

 突如、別の方から旋風が飛んで来て、ザキラを吹き飛ばしてしまう!

 

 

 ザキラが体勢を立て直して振り向いたのも束の間…

 

 

 「レッドナイフ!!」

 

 

 突如、何やら大型のナイフを持った赤い巨人が斬りかかって来たため、ザキラは慌ててそれを回避し、マッハ10のスピードで急いで目前にある地球に逃げ込み始めた…。

 

 

 地球へと逃げていくザキラを、突如現れた“赤と白の二人の巨人”は見つめている…。

 

 まるで“後で追いかけて行けばいいさ”と言う感じで敢えて見逃しているみたいでどこか不気味である…。

 

 

 謎の巨人たちのお陰で命拾いしたバル…

 

 

 …しかし!

 

 

 二人の巨人は、今度はバルの群れの方を振り向き、そしてそれぞれ大型の短剣と三叉槍を構え始める…!

 

 標的をバルに切り替えたのであろうか…!?

 

 

 「レッドファイッッ!!」

 

 

 やがて、赤と白の二人の巨人は、バルの群れに猛然と襲い掛かり始める…!

 

 

 …ひょっとすると先ほどザキラを追い払ったのは、自分たちの獲物を取られないためだったのかもしれない…!?

 

 

 

 バルの卵の観察を続けている海羽。だが、何も起こらないが為に、遂に暇を持て余し始めた…。

 

 海羽「あーあ…退屈になって来たな…。何か漫画でも持ってくれば良かったかな?」

 

 海羽がそうぼやいていたその時、彼女の胸のポケットのモットクレロンが何やら騒ぎ始める。恐らく空腹になったのであろう。

 

 海羽「お腹空いたの? …よし、それじゃあ一旦何か買いに行こっかな。私もそろそろお昼食べたいし。」

 

 “モットー!”

 

 海羽の提案を聞いたモットクレロンは嬉しそうに鳴いた。

 

 

 海羽「多分、この卵ももうしばらくは何も起こらないだろうし、20~30分ぐらい放置しても多分大丈夫でしょ。 じゃ、行ってこよっと 」

 

 

 海羽が楽観的な事を言ったその時!

 

 

 “ズビビビビビ…”

 

 

 “ズドーン”

 

 

 海羽「!?きゃっ!!」

 

 

 突如、上空から謎のレーザーが飛んで来て、海羽の近くの地面に命中して爆発する!

 

 

 海羽「…何!?」

 

 いきなりの爆発に驚きながらも、海羽は上空を振り向く。

 

 

 そこには、先ほど謎の巨人から逃げて来たザキラが此方に向かって飛んで来る様子が!

 

 先ほど飛んで来たレーザーは、ザキラが目から放ったものであった!

 

 やがてザキラは着地した後、大きく咆哮を上げる。

 

 

 海羽「そんな…こんな時に別の怪獣!?」

 

 

 ザキラは辺りを見渡し始める…すると、やがて黒くて丸い物体…バルの卵を目につける!

 

 恐らくただ地球に逃げ込んだだけではなく、同時にバルの卵を見つけたのだからこの場所に着地したのであろう…!

 

 

 ザキラはよだれを拭くような仕草を見せた後、咆哮を上げながらバルの卵向かって歩みを進め始める!

 

 

 海羽「!狙いはあの卵!?」

 

 

 早くもザキラの目的に気付いた海羽。一方モットクレロンは、恐怖により海羽に縋り付いていた。

 

 海羽「…大丈夫。あの怪獣、私がちゃっちゃと追い払うから。」

 

 モットクレロンを撫でながらそう言い聞かせた海羽は、モットクレロンを安全な場所まで運んで降ろす。

 

 

 海羽「そこで待ってて。必ず、無事に戻って来るから…。」

 

 

 モットクレロンは少し不安そうながらも頷いた。

 

 

 海羽「その卵には、指一本触れさせない!」

 

 

 遂に変身を決心した海羽は、ハートフルグラスを目に当て、赤とピンクの光と共にウルトラウーマンSOL(ソル)となって巨大化する!

 

 

 卵の前に立ち塞がるソル。それに気づいたザキラは怒り、敵意を向け始める!

 

 

 海羽「行っくわよ~!」

 

 

 ソルは構えを取るとザキラ目掛けて駆け始め、ザキラもソル目掛けて地響きを立てながら駆け始める!

 

 

 海羽「ソリッドダーイブ!」

 

 

 やがてソルは走りながら跳躍し、ザキラに体当たり『ソリッドダイブ』を繰り出すと同時に組み付き、両者はそのまま地面を転がる。

 

 

 やがてソルは一旦ザキラから離れる。とりあえず卵から距離を取って引き離す事には成功した。

 

 

 海羽「フゥ~…重さもたまには役に立つのね。」

 

 そう軽口を言った後、ソルは再びザキラに挑む!

 

 

 ザキラと組み合うソル。そのまま力比べに入るが、やはりバルを捕食してパワーアップしたザキラの力は凄まじく、ソルはあっさりそのまま押され始める…!

 

 

 ソルは負けじと「エイ、エイ、エイ…」と掛け声を上げながらザキラの腹部にがむしゃらにパンチを放つが、逆に腕を掴まれ軽々と放り投げられてしまう!

 

 

 海羽「うっ…なんてパワーなの!?」

 

 

 ソルが身構える中、ザキラは近くの岩山を剛腕で叩き崩して威嚇する!

 

 

 海羽「えーい!これならどうだー!!」

 

 

 ソルは今度は高く跳躍して飛び蹴り『ソリッドキック』を放つ!

 

 

 しかし、これもザキラの右腕だけで軽々と受け止められ、逆に押し飛ばされてしまう!

 

 

 なんとか着地に成功したソルだったが、その直後にザキラの目からのレーザーの直撃を胸に受けてしまう!

 

 

 海羽「ぐっ…!」

 

 

 ダメージを受けて膝を付いてしまうソル。

 

 ザキラは自慢げに咆哮を上げた後、ソルに接近すると、右腕、左腕と交互に振るって叩きのめし、そして、右腕の爪を活かしたパンチをソルの左の二の腕に叩き込む!

 

 

 海羽「うっ…!」

 

 

 鋭い爪で左の二の腕を引っ掻かれたソルは、そこから血のようにピンク色の光の粒子を溢れさせながら悶え苦しむ!

 

 

 その隙にザキラは、横降りの頭突きをソルの腹部に炸裂させて吹っ飛ばす!

 

 

 ソルは地面を転がった後、なんとか立ち上がろうと膝を付く。

 

 …しかし、ザキラの想像を絶する強さ、そして、左腕の痛みにより、勝算は薄れ始めていた…。

 

 

 モットクレロンも心配そうにソルを見守る…。

 

 

 海羽「くっ…一体どうすれば…!」

 

 

 その時!

 

 

 海羽「…ん?」

 

 

 ソルは、ふと何かに気づき上空を見上げる。

 

 

 そこには、何やら赤と白の二人の巨人が飛んで来る様子であった…。

 

 

 一人の赤い巨人は従来のウルトラマンと同じポーズで、もう一人の白い巨人は卍型の独特のポーズでそれぞれ飛来し、やがて着地する…。

 

 

 海羽「あれは…何…?」

 

 

 ソルは突如飛来した二人の巨人をじっと見つめる…。

 

 

 海羽「…ウルトラマン?」

 

 

 その姿をよく見てみると、一人の赤いアイツは、真っ赤なボディに銀の手袋・ベルト・ブーツ、辮髪帽のような形状の頭部が特徴であり、もう一人の白い巨人は、神話に出てくるようなデザインの白い猿のような姿が特徴であり、どちらもウルトラマンとは似ても似つかない姿をしている…!

 

 

 海羽「…いや…なんか違う…!」

 

 

 現れた二人の巨人は、手に何やら怪獣の生首を持っている!

 

 それは、先ほど遭遇したバルのものであった!

 

 やはりバルの群れはあの後、この二人によって狩られてしまったのである!

 

 

 実際宇宙空間に浮遊するバルの死骸の中には、何かで刺されたり斬られたような傷跡があったり、何度も殴られたり蹴られたりしたようなアザがあったり、他にも首を折られたのか、180度反対側に曲がっていたり、肉を全て剥がされたのか、頭部だけ骸骨になって死んでいる個体もいた…!

 

 

 バルの生首を持つ赤いアイツは、それをザキラ目掛けて放り投げる!

 

 

 ザキラはそれを見事キャッチし、そしてムシャムシャと美味しそうに食べ始めた…。

 

 

 海羽「…あ…あなた達は…一体…?」

 

 

 海羽に問いかけられ、二人は彼女の方を振り向く。

 

 

 …皆さん既にお気づきであろうが、この二人はウルトラ戦士ではない存在…。

 

 

 一人目の、赤いボディに銀の手袋・ブーツ・ベルト、清朝の暖帽を被ったような形状の頭部、独楽の上にアンテナが立ったような形状になっているのが特徴の“赤いアイツ”は『レッドマン』、

 

 もう一人の、神話に出てくるようなデザインで、沖縄のシーサー像にも通じる意匠が含まれている外見が特徴の“白い猿”は『ハヌマーン』である!

 

 

 レッドマン。それは、レッド星雲レッド星出身の、ウルトラ戦士とは異なる戦士であり、怪獣退治の専門家であり、“平和を愛する戦士”と言われている。

 

 また、銀河連邦の一員でもあり、宇宙空間、地球上と、人知れず怪獣と戦う孤高の戦士である。

 

 

 ハヌマーンは、1万年以上前からタイの平和を守って来た風神ラマヤーナの子で、風の女神サワハによって生み出された、所謂“タイの戦士”である。

 

 かつて3人組の仏像泥棒に射殺された、タイの勇気ある少年『コチャン』に『ウルトラの母』が命を与えた事により誕生し、その後は仏像泥棒を懲らしめ、現れた怪獣軍団をウルトラ6兄弟と共に撃滅したと言われている。

 

 

 このように、いずれもウルトラ戦士とは違う戦士が、ソルに呼ばれたワケでもないのに突如地球にやって来たのである!

 

 

 はて、彼らもまた地球の危機を知り、自ら駆け付けてくれたのであろうか…?

 

 

 …しかし、彼らには一つ違和感があった…。

 

 それは、先ほどレッドマンが生首を持っていた事から分かるように、バルの群れにまで襲い掛かった事である。

 

 もし本当にお互い平和を愛する戦士ならば、バルが善良な怪獣である事も見分けがつくはずなのである…。

 

 

 まあ、とりあえずこの疑問は置いておこう。

 

 

 突如現れた、見た事も無い戦士たちを不思議そうに見つめるソル。

 

 海羽「あなた達は…?」

 

 

 二人はすぐに返事をすることなく、じっとソルを見つめ始める…。

 

 まるで怪しい奴ではないかどうかをじっくりと観察しているようである…。

 

 

 海羽(誰なのかな?この人たち…見た感じウルトラマンとは違うみたいだし、一風変わった宇宙人…?まさかね…。)

 

 

 …この時海羽(ソル)は、彼らが何者なのかまだ知るはずも無かった…。

 

 

 その時!

 

 

 “ビビビ…”

 

 

 “ズドーン”

 

 

 突如、背後からレーザーが飛んで来て、レッドマンとハヌマーンの足元に命中して爆発する!

 

 

 二人は見事な瞬発力でそれを交わして振り向くと、そこにはザキラが!

 

 ザキラは牽制攻撃を仕掛けたのである。

 

 

 …だが、実はザキラはあまりにも“命知らずな事”をしてしまったのである!

 

 

 (レッドマン登場BGM)

 

 

 ザキラに狙いを定めたレッドマンとハヌマーンは、準備体操感覚でゆっくりとファイティングポーズを取り始める…。

 

 

 「レッドファイッ!!」

 

 

 やがて、レッドマンの合図と共に二人は駆け始め、戦闘が開始する!

 

 

 まずレッドマンが先陣を切ってザキラに組み付き、そのまま力比べを始める。

 

 やがてレッドマンは隙を突いて背を向け、ザキラの右腕を右腕で抱え、左腕を首に回す。

 

 

 「トォッ!!」

 

 

 そしてそのまま一本背負いで地面に叩き付けた!

 

 

 ザキラが立ち上がる間もなく、レッドマンは頭部を掴んで起き上らせる。

 

 

 「イヤッ!!」

 

 

 そして再び背負い投げの要領で投げ飛ばした!

 

 

 続いてハヌマーンが三叉槍『トライデント』を手に、猿のように跳ねながらザキラに接近する。

 

 

 ザキラは剛腕を振って殴り掛かるが、ハヌマーンはトライデントを振るって威嚇を仕掛ける事でザキラを油断させ、その隙にパンチやキックを腹部に叩き込む!

 

 続いてザキラが怯まず打って来た殴り込みを全て拳で弾き返すと、跳躍しての両足蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 ザキラはレッドマンの方に落下した!

 

 レッドマンはザキラを力ずくで起き上らせると、左手で頭部を掴んだまま右拳でのパンチを連打していく。

 

 そして腹部に見脚蹴りを叩き込んだ後、アッパーを叩き込んで頭部をかち上げる!

 

 

 だが、ザキラも負けてばかりではない。

 

 ザキラはレッドマンが打って来た右ストレートをかわすと同時にその腕に噛み付いた!

 

 

 流石に激しい痛みが走るのか、レッドマンは痛がるように苦しみつつも、引き離そうとザキラの頭部を押さえる。

 

 ザキラの噛む力は、かつてバルの子供を一瞬にして噛み殺してしまった程強力なものであり、そんな噛み付き攻撃を受けるレッドマンもその痛みを感じ始めていたのだ…!

 

 

 その時!

 

 

 “ザシュッ”

 

 

 ハヌマーンは援護として、背後からトライデントをザキラの背中にぶっ刺した!

 

 

 ザキラは痛みにより噛み付きを放してしまい、その直後、それぞれ左右に立つレッドマンとハヌマーンからパンチ、キック等の打撃を連続で受け始める…!

 

 その様子はまさしくリンチである!

 

 

 バルを捕食して力を増したはずのザキラも、長年戦って来た二人の戦士の連撃に次第に押され始めて行った。

 

 

 やがてハヌマーンはザキラの右腕を掴み、振り回してレッドマンの方へ投げつける。

 

 

 (BGM:レッドマン)

 

 

 「レッドナイフ!!」

 

 

 レッドマンは、彼の必殺武器の一つでもある、短剣にも似た形状の巨大ナイフ『レッドナイフ』を取り出し、自身に向かって来るザキラの胸に勢いよく振り下ろす!

 

 

 “ザシュッ”

 

 

 海羽「きゃ~っ!!」

 

 

 ナイフがザキラの胸に勢いよく突き刺さり、それを見たソルは悲鳴を上げる。

 

 そしてそれにより、想像を絶する二人の息の合った残虐ファイトに戦慄を感じ始めていた…!

 

 

 ザキラは崩れ落ちるように仰向けに倒れる。胸を刺された事により、既に致命傷に近い大ダメージを受けたのである!

 

 

 レッドマンはそんなザキラに馬乗りになり、致命傷だというにも関わらず、お構いなしに容赦なく頭部などにパンチを浴びせて行く!

 

 そして頭部を掴み、地面に何度も叩きつけて行く…

 

 

 “メキメキメキ…ボキボキッ!”

 

 

 海羽「(うずくまって目を両手で隠して)ぅぎゃ~~っ!!?!」

 

 

 レッドマンはザキラの頭部を掴んだまま、90度横に思いっきり捻って首を折ってしまった…!

 

 

 「レッドアロー!」

 

 

 “ザシュッ”

 

 

 更にレッドマンは、彼の必殺武器の一つである、石突が十字型なのが特徴の槍『レッドアロー』を取り出し、それを首筋に思い切り突き刺してしまった!

 

 

 ザキラはわなわなと腕を振るわせた後、やがて力尽き、力を失った腕、脚、そして体はだらりと地面に倒れ伏した。

 

 

 ザキラを倒してしまったレッドマンは、アローを突き刺したまま立ち上がり、そしてハヌマーンと共にザキラの死体をじっと見つめる。

 

 この行為は恐らく相手が死んだかどうかを念入りに確認する『レッドチェック』と言われるモノであろう。

 

 

 やがてザキラの死を確認し終えたレッドマンは、やり切った感と同時にどこか満足さも感じるかのようにゆっくりと空を見上げ、ナチス式敬礼みたく右腕を斜め上に突き上げ勝利のポーズを決めた。

 

 

 するとハヌマーンは、仕上げとして片手持ちの三叉槍を数回回して眼前で構え、そこから旋風『ハリケーンガン』を放つ!

 

 強力な旋風はザキラの死体を包み込み、やがてザキラの死体は肉が全て消滅して骸骨だけになってしまった…。

 

 

 ハヌマーンは、ザキラの死体の肉を全て吹き飛ばしたのである!

 

 

 海羽「…す、凄…い…。」

 

 少々残酷ながらも強敵ザキラをやっつけたレッドマンとハヌマーンに、ソルは恐る恐る歩み寄る。

 

 海羽「ぁ…あの~…助けてくれて、ありがとうございます…。」

 

 

 二人は再びソルの方を向く。そして、徐々に歩み寄って行く…。

 

 

 ようやく悪ではない事に気付き、握手を求めに来ているのであろうか…?

 

 

 海羽(…あ、あは…良かった…この人たち悪い人たちじゃn…)

 

 

 …が、次の瞬間!レッドマンは急に視線を変える!

 

 

 その視線の先にいたのは、ソルの戦いを見守っていたハムスター大のモットクレロンである!

 

 

 レッドマンは次なる狙いをモットクレロンに定め、そして歩み寄って行く…!

 

 

 未知の赤い巨人が歩み寄って来る事に気付き、やがてその影に覆われたモットクレロンは怯え始める!

 

 

 海羽「はっ…モットちゃん!!」

 

 

 モットクレロンの危機に気付いた海羽。レッドマンが右足を振り上げ踏み潰そうとした所を間一髪、ソルはレッドマンにしがみ付いて引き離す事に成功する!

 

 レッドマンは自身に縋り付くソルを無理矢理振りほどく。

 

 

 海羽「何て事をするのですか!? モットちゃんは悪い子じゃありません!!」

 

 

 海羽(ソル)は必死に二人に呼びかける。

 

 

 …だが、二人はまたしてもじっとソルを見つめていた…その視線は先ほどとは違い、どこか射貫くような、殺意に満ちた感じになっている…。

 

 

 レッドマン「…怪獣…みんな…敵!」

 

 

 海羽「…!何ですって!?」

 

 

 ようやく言葉を話したレッドマンだったが、その言った事はあまりにも衝撃的な事であった!

 

 

 更に!

 

 

 ハヌマーン「怪獣はみんな殲滅しろ! 怪獣に見方する奴は、死ぬべきなんだ!!」

 

 

 ハヌマーンもまた、衝撃的な事を口走る!

 

 

 海羽「…あ、あなた達、何を言っているのですか!?」

 

 

 ソル(海羽)は動揺を隠せない。そんな彼女にレッドマンは駆け寄りながら蹴りを放つが間一髪ソルは受け身を取ってそれをかわす。

 

 

 海羽「待ってください!一旦話し合いましょ!一体どうしたのですか!?」

 

 

 レッドマン「その必要…無し…!」

 

 ハヌマーン「怪獣の味方をするならお前も敵だ!殺してやる!」

 

 

 そう言い放つと、二人はゆっくりとファイティングポーズを取り始める…。

 

 

 海羽「…ここは一回やるしかないみたいね…。」

 

 ソルもまた覚悟を決め、構えを取った…。

 

 

 互いに対峙する二対一の巨人…。一旦静まった高原に吹き付ける風の音が緊張を駆り立てる…。

 

 

 レッドマン「レッドファイッ!!」

 

 

 やがてレッドマンの合図と共に、レッドマンとハヌマーンはソルに猛然と駆け寄る!

 

 

 まず先陣切って来たハヌマーンのムエタイ調の蹴りをソルは右の手刀で弾き返して防いだ後、続いてレッドマンが放って来た右ストレートを、右腕を掴むことで防ぐ。

 

 

 海羽「待ってください!どうして私たち戦士同士が戦わなくちゃいけn…」

 

 

 “ドゴンッ”

 

 

 海羽「!?ごォふっ!」

 

 

 なおも必死に呼びかけようとするソルだったが、問答無用とばかりに放って来たハヌマーンのミドルキックを腹部に喰らい後退する。

 

 

 その後更にレッドマンの前蹴りを胸部に受けて吹っ飛んだ!

 

 

 海羽「…どぅ…して…私の声は届かないの…?」

 

 

 ソルに動じる隙も与えず二人はなおも襲い掛かる!

 

 

 レッドマンは片手でソルの首根っこを掴みそのまま持ち上げる!

 

 しばらく苦しむソルだったが、がむしゃらにレッドマンの腹部を蹴ることでなんとか解放される。

 

 その後ハヌマーンが振り下ろして来た左手の手刀を右腕で受け止めると、そのまま腹部に左手の手刀を打ち込んで後退させる。

 

 

 だが、その隙にレッドマンが背後から膝蹴りを背中に打ち込んだことでソルはバランスを崩し、更にハヌマーンが放った両足蹴りを胸部に喰らって再び吹っ飛ぶ!

 

 

 ハヌマーンは三叉槍を振り回して念を入れ、やがてそれを剣に変形させて振り回す!

 

 因みにこのハヌマーンの剣だが、切れ味は良くなく、斬撃ではなく終始殴打に徹する武器でもある。

 

 

 なんとか立ち上がったソルだが、ハヌマーンの剣の一撃を顔面に喰らい吹っ飛び、レッドマンの側に落下する!

 

 

 レッドマンは右手でソルの首を掴んで無理矢理起き上らせると、そのまま左手で胸部、腹部に乱暴気味にパンチを数回打ち込み、更に腹部に膝蹴りを二発打ち込んで屈ませる。

 

 ハヌマーンは屈んだソルの背中に、その行為を楽しむかのように何度も剣を振り下ろして殴打し、やがて強力な一撃を叩き込んで地面に叩き付ける!

 

 レッドマンは地面にうつ伏せで横たわるソルの横腹を蹴って転がした!

 

 

 再びソルに歩み寄ったレッドマンは、ソルの右腕を掴んで無理矢理起き上らせると、そのままハヌマーンが剣を背中に打ち込んで転倒させ、再びレッドマンが起き上らせると再びハヌマーンが剣を背中に打ち込んで転倒させて…これを三回繰り返す!

 

 そしてソルがふらついた所で…

 

 

 レッドマン「レッドナイフ!!」

 

 

 “ズパーン”

 

 

 レッドマンは再びレッドナイフを取り出し、袈裟懸けにソルの胸部を斬りつけた!

 

 斬撃が決まった胸部は小さな爆発と共に火花を散らし、大ダメージを受けたソルは崩れ落ちるように地面に倒れ込んでしまった…。

 

 

 海羽「…うっ……なん…て…強さ……なの…。」

 

 

 二人の連携により劣勢になったソル。遂にカラータイマーは赤になり点滅を始める!

 

 

 レッドマン「怪獣は…みんな敵…それに見方する奴も…みんな…敵!」

 

 

 “ドゴンッ ドゴンッ”

 

 

 海羽「!!う˝ぐぉああぁーっ!!」

 

 

 レッドマンは片言で呟きながら仰向けに横たわるソルに歩み寄ると、乱暴気味に腹部を二発踏みつける!!

 

 踏みつけが決まる度に、その部位は小さな爆発と共に火花を散らした!

 

 

 海羽は痛みの余り、普段では考えられない程ドスの利いた叫びを上げる!ソルは完全に弱り切り、もはや立ち上がるのも困難な状態にまでなっていた…!

 

 

 ハヌマーンは、何やら勝利を喜ぶかのように猿のように跳びはねる。

 

 

 するとレッドマンは、近くに崖を見つけるやソルの両足を掴む。

 

 そして、そのまま引きずりながら崖淵に向かって一直線に走り出す!

 

 

 レッドマン「レッドフォール!!」

 

 

 遂に崖淵まで来たレッドマンは、技名を叫びながら投げ技『レッドフォール』で、担ぎ上げたソルを崖下目掛けて投げ落とす!

 

 

 既にグロッキーであるがために飛ぶ力はおろか、叫ぶ元気すら無いソルは、なすすべもなく崖下目掛けて落下していく…!

 

 

 もはや一巻の終わりか!?

 

 

 その時!

 

 

 《ウルトライブ! ウルトラマンギンガ!》

 

 

 どこからか聞き覚えのある音声が鳴り響いたかと思うと、突如、青白い光に包まれた巨人が飛んで来てソルをキャッチする。

 

 ソルを抱えたままその巨人は崖を飛び上がり、地上に着地してソルをゆっくりと降ろす。

 

 

 ソルを降ろした巨人は、体の光を消滅させていき、やがて姿を現す。

 

 

 現れたのは『ウルトラマンギンガ』であった!

 

 

 海羽「…ヒカル…さん…?」

 

 ヒカル「へへっ、間に合って良かった。大丈夫か?」

 

 ギンガにライブしている『礼堂ヒカル』は、海羽の無事に安心する。

 

 

 新たな巨人の出現に気付き身構えるレッドマンとハヌマーン。

 

 

 《ウルトライブ! ウルトラマンビクトリー!》

 

 

 またしても聞き覚えのある音声が鳴り響いたかと思うと、レッドマンの横から現れた『ウルトラマンビクトリー』が、レッドマンに蹴りかかる!

 

 

 レッドマンは間一髪それを避けると、右、左と腕を振り下ろして殴り掛かるが、ビクトリーはそれをそれぞれ左、右の腕で受け止めて防ぐ。

 

 その隙に背後からハヌマーンが迫るが、それを察知したビクトリーはそのまま跳躍し、背後のハヌマーンに左足、右足と二段蹴りを打ち込んで吹っ飛ばした。

 

 そして着地すると、レッドマンの右脇腹に左脚蹴りを打ち込み、怯んだ隙に跳躍して胸部に右足蹴りを叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 ショウ「2人がかりで女の子を痛ぶるなんて最低だぞ。」

 

 ビクトリーにライブしている『ショウ』は、吹っ飛ばした二人に軽口を叩く。

 

 

 海羽「…ショウさん…も…。」

 

 

 ギンガ(ヒカル)とビクトリー(ショウ)は、ザキラの出現に謎の二人の戦士の登場と、度重なる異変に気付いて駆け付けたのである!

 

 

 ヒカル「あとは俺たちに任せてくれ。」

 

 

 ヒカルはソルにそう語り掛けた。そして、ギンガとビクトリーは合流して構える。

 

 

 ヒカル「よっしゃっ!行くぜっ!」

 

 ショウ「覚悟しろ!」

 

 

 ギンガ&ビクトリー、そしてレッドマン&ハヌマーンは、互いに土砂や土煙を激しく巻き上げながら駆け寄る!

 

 

 そして、ギンガはレッドマン、ビクトリーはハヌマーンの相手をする事になった!

 

 

 ビクトリーは先手必勝として駆け寄りながら跳び蹴りを放つが、ハヌマーンはそれを三叉槍を持った右腕で叩き落とすことで防ぐ。

 

 続けてビクトリーは背を向けたまま、ハヌマーンが振り下ろして来た三叉槍を持った右腕を右腕で受け止めて防いだ後、右肘を腹部に叩き込んで後退させ、続けて振り向き様に足払いを繰り出すがハヌマーンはそれを跳躍してかわす。

 

 

 《ウルトランス! サドラシザーズ!》

 

 

 ショウは『岩石怪獣サドラ』のスパークドールズを『ビクトリーランサー』にリードし、ビクトリーの右腕はサドラのハサミ・サドラシザーズに変わる。

 

 

 ビクトリーはサドラシザーズ(以降:ハサミ)を構えてハヌマーンに接近する。

 

 ハヌマーンの振り下ろした三叉槍をハサミで挟んで受け止め、そのまま力比べをした後一旦押し飛ばす。

 

 そして一回転しての斬撃を繰り出すがハヌマーンも三叉槍でそれを弾き、武器同士のぶつかり合いにより激しく火花を散らす。

 

 ハヌマーンは今度は右手持ちの三叉槍で正面から突いて攻撃を仕掛けるが、ビクトリーはそれを左腕で受け止めると同時にカウンターとしてハサミの一撃を胸部に決め、ハヌマーンが怯んだ隙に跳躍しての右足蹴りを胸部に叩き込んで後退させる。

 

 ビクトリーは更に攻撃を加えようとするが、ハヌマーンは負けじと三叉槍でハサミを弾き返し、ムエタイの蹴りにも似た右足蹴りを繰り出す!

 

 ビクトリーは辛うじてハサミで防ぐことが出来たが、その威力により後ろ向きに吹っ飛ぶ。

 

 

 ギンガはレッドマンに勢いよく飛びかかり、そしてそのまま両者は組み合い、力比べになる。

 

 組み合ったままレッドマンはギンガの腹部に右膝蹴りを打ち込むが、ギンガもお返しとばかりにレッドマンの胸部に右膝蹴りを叩き込む。

 

 そして両者は同時にパンチを放ち、それが互いに顔面に命中する事でクロスカウンターとなる。

 

 だが、ギンガは怯むことなく、自身の顔面に命中したレッドマンの右腕を左腕で掴み、そのまま引き寄せると同時にカウンターの右肘を胸部に打ち込み、続けて左拳を胸部に叩き込んで後退させる。

 

 

 レッドマン「レッドアロー!」

 

 

 ヒカル「ギンガセイバー!」

 

 

 接近戦では不利と見たレッドマンは再びレッドアローを構え、ギンガも右腕に光の刃『ギンガセイバー』を形成させて構える。

 

 

 そして互いに構えて駆け寄り、すれ違いざまに武器と武器をぶつかり合い、激しく火花が散る。

 

 その後両者はお互い振り向き様にそれぞれ槍と刃を振り下ろして交える。

 

 金属同士がぶつかるような音を響かせ、激しく火花を散らしながら激しい斬り合いを展開する両者。

 

 やがてギンガは、レッドマンのアローでの正面突きをセイバーで受け止めて押し返した後、跳躍して蹴りを放つがレッドマンはそれを辛うじてアローで防ぎ、ギンガは反動を利用して反転して距離を取った後着地してビクトリーと合流する。

 

 

 ショウ「こいつらには、一斉攻撃がいいかもな。」

 

 ヒカル「あぁ、一気に決めるぞ!」

 

 

 《ウルトランス! シェパードンセイバー!》

 

 

 ショウは『地底聖獣シェパードン』のクリスタルスパークドールズをリードし、ビクトリーは地面から、シェパードンを模した聖剣『シェパードンセイバー』を引き抜いて構える。

 

 

 ショウ「これで決める!」

 

 

 ギンガはクリスタルを赤に輝かせ、構えと共に周囲に無数の火炎弾を生み出す。

 

 

 ヒカル「ギンガファイヤーボール!」

 

 

 ショウ「シェパードンセイバーフラッシュ!」

 

 

 ギンガは右腕を突き出して無数の火炎弾『ギンガファイヤーボール』を発射し、ビクトリーはシェパードンセイバーをV字型に振ってV字型の光弾『シェパードンセイバーフラッシュ』を放つ!

 

 

 無数の火炎弾とV字型の光弾は、レッドマンとハヌマーン目掛けて飛んで行き、やがて彼らに命中して大爆発が起こる!

 

 

 ショウ「…やったか!?」

 

 

 大爆発により煙に包まれたレッドマンとハヌマーンを見つめるギンガとビクトリー。

 

 

 …しかし、やがて煙が徐々に消し飛んで行って姿を現したレッドマンとハヌマーンは、それぞれレッドナイフと三叉槍を手に持ってピンピンとしていた!

 

 二人は咄嗟に手持ち武器で、火炎弾と光弾を全て斬り裂いて相殺したのである!

 

 

 ショウ「何っ!?」

 

 ヒカル「全て相殺しただと!?」

 

 

 レッドマン「レッドサンダー!」

 

 

 動揺する二人に、レッドマンは右腕を突き出して破壊光線『レッドサンダー』を、ハヌマーンは三叉槍を構えて青白い破壊光線を放つ!

 

 

 二つの光線はギンガとビクトリー、そして彼らの周囲の地面に降りかかって爆発し、二人はそれをなすすべも無く受けてダメージを受ける…!

 

 

 膝を付くギンガとビクトリー。レッドマンとハヌマーンは勝ち誇り嘲笑うかのように武器を構えてゆっくりと歩きながら接近していく…。

 

 

 救援に来たギンガとビクトリーをも圧倒するレッドマンとハヌマーンの強さは侮れないモノであった!

 

 

 ソルは先ほどの大ダメージにより横たわっているため、二人を助けに行く事もできない…!

 

 海羽「…ヒカルさん…ショウさん…!」

 

 

 

 …だが、そんな戦いを見つめている一人の人影がいた。

 

 

 スマートなスーツ姿のその男は、不敵な笑みを浮かべながら、何やら『クレナイ・ガイ』が奏でるオーブニカのメロディに似た口笛を吹いている…。

 

 

 彼こそ、ガイを追ってこの世界にやって来た『ジャグラス・ジャグラー』である!

 

 

 レッドマンとハヌマーンに苦戦するギンガとビクトリー、そして、瀕死のソルを見渡したジャグラーは、口笛を止めて舌打ちをする。

 

 

 ジャグラー「お嬢さん(海羽)とは夜明けのコーヒーを飲む約束をしてるんだ…その前に死んでもらっちゃあ困るぜぇ?」

 

 

 ジャグラーはそう言うと、黒いオーブリングのようなアイテム『ダークリング』を取り出して突き出し、赤黒い闇に包まれる。

 

 

 ジャグラー「ゼットンさん!」

 

 《ゼットン!》

 

 

 ジャグラー「パンドンさん!」

 

 《パンドン!》

 

 

 ジャグラーはリングに『宇宙恐竜ゼットン』と『双頭怪獣パンドン』のカードをダブルリードし、ジャグラーの左右に二体のビジョンが現れる。

 

 

 ジャグラー「闇の力、お借りします!」

 

 

 《超合体!》

 

 

 ジャグラーはダークリングを揚げ、左右のゼットンとパンドンもそれにシンクロして腕を揚げる。

 

 ダークリングは音声と共に側面のカバーが展開し、エレキギター調のメロディと共にジャグラーは赤黒い闇に包まれ魔人体となり、同じくゼットンとパンドンも赤黒い闇に包まれる。

 

 そしてジャグラーはゼットンとパンドンのビジョンと合体するかのように重なり、やがて全身を覆っている闇が下から消えていき姿を現す。

 

 

 《ゼッパンドン!》

 

 

 全身を覆っていた闇が消えて姿を現した、ゼットンとパンドンの特徴を併せ持った外見が特徴の合体獣『合体魔王獣ゼッパンドン』は、赤黒い闇の中から右腕を突き出して飛び出す!

 

 

 ゼッパンドンはジャグラーの高笑いと共に、リング状の闇を発生させながら姿を現す。

 

 

 ゼッパンドンの登場に気付くレッドマンとハヌマーン、そして、ギンガとビクトリー、ソル。

 

 

 ヒカル「!何だあれは!」

 

 ショウ「こんな時に新たな怪獣か!」

 

 

 海羽「…あの声…もしかして…。」

 

 以前ジャグラーと顔見知りの海羽は、声を聞いただけで察した。

 

 

 するとゼッパンドンはソルの方を向く。

 

 ジャグラー「やぁお嬢さん。また会いましたね。」

 

 

 それを見たギンガとビクトリーは、ゼッパンドンの様子を不思議がる。

 

 ヒカル「何してんだ?アイツ…。」

 

 ショウ「何者なんだ…?」

 

 

 すると、レッドマンは、新たに現れた怪獣・ゼッパンドン目掛けてレッドアローを投げつける!

 

 

 しかし、ゼッパンドンはその場からテレポートで姿を消すことで避ける。

 

 

 突然相手が消えた事により動揺しているレッドマンとハヌマーン。その隙にゼッパンドンは二人の背後に現れる!

 

 レッドマン達もそれに気づいて振り向くのだが時は遅し、ゼッパンドンはレッドマンの顔面に右フックを叩き込んで吹っ飛ばし、ハヌマーンの腹部に左脚蹴りを叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 すぐさま起き上ったレッドマンとハヌマーンは、今度はそれぞれレッドサンダーとハリケーンガンを放つ!

 

 

 ジャグラー「ゼッパンドンシールド!」

 

 

 ゼッパンドンは自身の前方に、ゼットンの力を利用した緑色のバリヤー『ゼッパンドンシールド』を展開してレッドサンダーとハリケーンガンを防ぐ。

 

 

 そしてシールドを消滅させると同時に口からゼットンとパンドンの力を利用した火炎弾『ゼッパンドン火炎弾』を連射する!

 

 

 火炎弾はレッドマンとハヌマーン、そして彼らの周囲の地面に命中して爆発し、二人は怯む。

 

 

 レッドマンとハヌマーンが怯んでいる隙に、ジャグラーはソル達に呼びかける。

 

 

 ジャグラー「今の内ですよお嬢さん。」

 

 海羽「え?…えぇ…。」

 

 

 ジャグラー「小僧たちも、ここは一旦引け!」

 

 ショウ「くっ…誰が小僧だ!」

 

 ヒカル「確かに、このままじゃらちが明かない。一旦引くぞ!」

 

 

 レッドマンとハヌマーンは爆発により起こった煙をなんとか払いのけて再び構えるが、その視線の先には既に誰もいなくなっていた…。

 

 

 二人が怯んでいる隙に、ギンガとビクトリー、ソル、そしてゼッパンドンは変身を解いたのである。

 

 

 

 ソルから変身を解いた海羽は、やはり大ダメージにより、ボロボロの状態で横たわっていた…。

 

 そんな海羽にモットクレロンは心配そうに寄り添う。

 

 

 海羽「…モットちゃん…大丈夫だから…ね…。」

 

 

 海羽は苦しみながらも無理して笑顔を作ってそう語り掛けると、モットクレロンを守るように抱きしめ、胸のポケットに入れる。

 

 

 …だが、それに気づいたレッドマンは、モットクレロンを海羽ごと踏み潰そうと歩みを始める!

 

 

 海羽「はっ…!」

 

 

 絶体絶命だと思ったその時、海羽の前方にジャグラーが立ちふさがる!

 

 

 《モモザゴン!》

 

 

 そして、ダークリングに『食いしん坊怪獣モモザゴン』のカードをリードして召喚する!

 

 

 レッドマンとハヌマーンの前方に立ち雄たけびを上げるモモザゴン。レッドマンとハヌマーンはそれに気づき身構える。

 

 

 「レッドファイッ!!」

 

 

 そしてレッドマンの掛け声を合図に、二人はモモザゴンに猛然と襲い掛かる…!

 

 

 海羽「怪獣を…呼び出した…?」

 

 するとジャグラーは海羽の方を振り向き、不敵な笑みで語りかける。

 

 ジャグラー「今の内ですよ?」

 

 同じく駆け付けたヒカルとショウは、自身の肩を貸して海羽を起き上らせる。

 

 ヒカル「とりあえず安全な所へ。」

 

 ショウ「しっかり掴まってろよ。」

 

 

 やがてヒカルとショウは海羽を連れてその場を立ち退き、ジャグラーもその場から去って行った…。

 

 

 (BGM:ぼくらのウルトラマン)

 

 

 レッドマンとハヌマーンは、二人がかりでモモザゴンを痛めつけていた。

 

 

 ハヌマーンは再び三叉槍を剣に変えて構え、モモザゴンの突進を交わすと同時に背中に一撃を決める。

 

 その後二人でモモザゴンを挟み、レッドマンはパンチ、キック、ハヌマーンは剣による打撃を容赦なく打ち込んでいきモモザゴンを痛めつける。

 

 完全にうずくまって無抵抗のモモザゴンに、その行為を楽しむかのように打撃を連打していくレッドマンとハヌマーン。

 

 なんとかリンチから抜け出せたモモザゴンは、一旦距離を取ると、レーダー上の耳から怪音波を発射して攻撃を仕掛けるが、ハヌマーンは剣の一撃でそれを打ち消してしまう。

 

 

 レッドマン「レッドキック!」

 

 

 レッドマンはモモザゴンに勢いよく駆け寄ると、必殺の跳び蹴り『レッドキック』を叩き込み、片方のレーダー状の耳を叩き折ってしまった!

 

 

 完全に怯んだモモザゴン。ハヌマーンはトドメとばかりに剣を縦に持ち、それを三日月状カッター『ハヌマーンスラッシュ』に変えて投げつける!

 

 

 三日月状のカッターはモモザゴンを縦真っ二つに斬り裂き、やがてモモザゴンは大爆発して炎上した…。

 

 

 またしても残酷なやり方で怪獣を撃破したレッドマンとハヌマーンは、互いに手を繋ぎ、その手を上に揚げる。

 

 

 怪獣には容赦なく撃破にかかり、それの味方をする者にも容赦ない彼らの目的とは一体何なのであろうか…?

 

 

 

 一方、レッドマン達の近くでは、ジャグラーが何やらモモザゴンが爆発した方からドス黒い闇のようなモノを、自身の武器『蛇心剣』で吸収していた。

 

 恐らく吸収しているのは、撃破されたモモザゴンの怨念みたいなモノなのであろう…。

 

 

 吸収し終えたジャグラーは、その蛇心剣をじっと見つめる…。

 

 

 ジャグラー「まだだ…まだこれしきじゃあ…。」

 

 

 相変わらず先が読めない行動をするジャグラー。彼もまた果たして何を企んでいるのであろうか…?

 

 

 

 その時、レッドマンに何者かからテレパシーが入る!

 

 

 『よぉ、今日も派手にやってるみたいですなぁ。』

 

 

 レッドマンにテレパシーを送っている者は、宇宙空間で残りのバルの群れを襲っていた。

 

 

 その宇宙人は、何やら銀ピカの鎧のようなスーツに身を包み、そこに武装されている武器で次々とバルを襲いながらレッドマンに語り掛け続ける。

 

 

 『いい情報を見つけたんでね。なんでも、怪獣が多く保護されている世界を見つけたのだよ。』

 

 

 宇宙人からの知らせを受けたレッドマンは、「了解した」とばかりに頷くと、テレパシーを切る。

 

 

 そして、ハヌマーンと何やら指示を出し合うようにジェスチャーでやり取りをする。

 

 

 やがて二人は別れ、ハヌマーンは卍型のポーズで何処かへと飛び去って行く。

 

 

 「レッドナイフ!!」

 

 

 レッドマンは再びレッドナイフを取り出し、思い切り一振りする。

 

 

 すると、ナイフの刀をなぞるように空間に次元の裂け目が出来る!

 

 レッドマンはその中に入って行き、やがて裂け目はレッドマンが入った後ゆっくりと閉じて行った…。

 

 

 果たしてレッドマンは、宇宙人からの知らせを受け、何処に向かっているのであろうか…?

 

 

 一方で、先ほどレッドマンに情報提供した宇宙人は、右腕に武装されているバルカン砲や、左腕に武装されているビーム砲などでなおもバルを襲っていた。

 

 

 「ふっふっふ…やっぱアイツらのグルになって正解だったぜぇ!

 

 桜井敏樹とかいう奴から授かったこのパワードアーマーのお陰もあって、以前よりもこんなにも怪獣を狩る事が出来るようになったからなぁ!

 

 …狩ってやるぜぇ…この調子で、アイツらと共に、全怪獣を狩り尽くしてやるぜぇ!

 

 このノワール星人デニス様がなぁ!!」

 

 

 宇宙人の正体は、『桜井敏樹』率いるテラ軍からの新たな刺客であり、レッドマン達と手を組んで攻めて来た『怪獣狩人ノワール星人デニス』である!

 

 

 ノワール星人はJ34星系ノワール星出身の宇宙人であり、かつて怪獣を生きた資源と考えていた同族が、地球の怪獣を利用しようと『地底怪獣テールダス』や『岩石怪獣ネルドラント』などを改造(メカレーター化)した事がある邪悪な宇宙人である。

 

 

 このデニスという個体もそのノワール星人の一人なのだが、彼は以前の個体とは少し異なり、単に“怪獣を狩る事”を至高の喜びとしているのである!

 

 そのためなら、例え罪の無い怪獣にも容赦なく、その残忍さを見たテラ軍から仲間として招き入れられ、そしてレッドマン達と協力して怪獣たちを根絶やしにするようにと指令を受けているのだ!

 

 

 因みにデニスは、敏樹から授かったパワードアーマーという特殊な銀色の鎧を着ており、それにはバルカン砲やビーム砲など、様々な武器が武装されている。

 

 

 デニス「ふぅ~…いい加減鳥どもを狩るのも飽きたなぁ…。」

 

 するとデニスは、地球の方を振り向く。

 

 デニス「地球に行けば、もっと多くの怪獣が狩れるかもなぁ! 行こうぜ!レッドキラー!」

 

 

 …そう、デニスは、ノワール星の技術で作り上げた一匹の怪獣兵器を引き連れていた!

 

 

 その怪獣は、両手に切れ味鋭いブーメラン『カミソリブーメラン』が武装されているのが特徴の怪獣『ブーメラン怪獣レッドキラー』である!

 

 

 レッドキラーもまた、ブーメランを飛ばしてバルを斬り裂いて襲っていたが、ノワール星人の指示を受け、彼と共に地球に向かい始めた…。

 

 

 デニス「さぁ、狩るぜ狩るぜー!! ヒャッホーゥ!!」

 

 

 地球に向かうデニスとレッドキラー。果たして、彼らの今後の動向は何なのか!?

 

 

 

 一方地球にて。

 

 

 レッドマン達の攻撃により重傷を負った海羽は病院送りとなった。

 

 

 ヒカルとショウから事情を聞いた櫂と真美も、偶然居合わせた『伊狩鎧』『ライト(鈴樹来斗)』『ミオ(夏目美緒)』と一緒に病院に駆けつける。

 

 

 既に医師からの手当てを終えていた海羽は病室のベッドで横になっていた。どうやら医師によると、今日、明日入院して安静にしていれば退院できるとの事。

 

 

 櫂「大したことなくて良かった…大丈夫か?海羽。」

 

 海羽「え、えへへ、どうやら大丈夫みたい。心配かけてごめんね。」

 

 真美「海羽ちゃんが誤る事ないよ。それにしても、一体何者かしら…。」

 

 

 鎧「海羽さんが、ここまで痛めつけられるなんて…。」

 

 ライト「それに、ギンガとビクトリーでも苦戦を強いられた…。」

 

 ミオ「相当な相手ね…。本当に誰なんだろう…?」

 

 

 一同が疑問を投げかける中、櫂は“良心モード”で海羽を笑顔で見つめつつ、心中では…。

 

 

 櫂(…許せねぇ…どこの誰だか知らねーが…海羽をこんな目に遭わせやがって…駆逐してやる…ぶっ殺してやる…!!)

 

 

 ゼロ「しかし、そいつらはウルトラマンとはどこか違う奴らだったんだろう? 新手の宇宙人なのかそれとも…?」

 

 

 鎧「レッドマンとハヌマーンなんて…俺も聞いた事がありません!」

 

 

 ヒカル「なぁタロウ。何か奴らの事知ってるか?」

 

 ヒカルは、左腕の『ストリウムブレス』を通じて『ウルトラマンタロウ』に問いかける。

 

 

 すると、タロウは意外な発言を返した。

 

 

 タロウ「あぁ…まさか奴らもこの地球に来ていたとはな…。」

 

 

 ヒカル「!奴らもこの地球に!?」

 

 ショウ「どういう事なんだ?」

 

 

 タロウ「…奴らはレッドマンとハヌマーン…彼らもかつては、我々ウルトラ戦士と同じく平和を愛する戦士だった…。」

 

 タロウは少し躊躇ったが、遂に真実を話し始めた…。

 

 

 

 なんでもレッドマンとハヌマーンは二人とも、かつては正義の戦士として戦っていたんだが、“行き過ぎた正義”により、その道を誤ってしまったのだという。

 

 

 先ほども言ったように、レッドマンは銀河連邦の一員として、凶悪な怪獣や宇宙人と戦い続けていた。

 

 

 …だが、そうしていく内に、彼は怪獣を善悪関係なく次々と倒していくようになったのだという。

 

 

 善良な怪獣も手に掛け始めた為に、何度かは銀河連邦隊長に注意を受けたり、謹慎を受けたりしたのだが、それでも一向に無差別な怪獣殺害を止める事無く、遂に善良な怪獣だけでも倒した数が10万匹を超えてしまった事により、銀河連邦を追放されたのだという…!

 

 だがその後も、『ウルトラセブン』の相棒達でもある『カプセル怪獣』達の星『メタル星』『バッファロー星』『アニマル星』などの惑星の善良な生物をも多数手に掛けた事により、とうとう光の国で“指名手配”“見つけ次第死刑判決”が下ってしまったのだという…!

 

 

 はて、彼は正義感が強すぎたのか、それとも怪獣に対する何やら強い私怨があるのであろうか…?

 

 先ほどの戦いを見ても分かるように、怪獣に対する攻撃や殺り方が惨たらしい所から見て、後者の方が当てはまるのかもしれない…。

 

 

 ハヌマーンも、3人組の仏像泥棒に殺害された勇気あるタイの少年『コチャン』に『ウルトラの母』が命を与えた事により誕生した。

 

 その後、熱射病で倒れた少年『アナン』を、サングロテトリチャナーの花で救ったり、タイを襲う異常気象の原因でもある、地球に近づきすぎている太陽の精『スーリヤ』に直接語り掛ける事により、太陽を地球から遠ざけさせ、干ばつの危機を回避させたりと、こちらも正義や平和のために戦う戦士であった…。

 

 

 しかし、その一方で、コチャンの姿に戻って仏像泥棒の前に現れて然るべき報いを与えたのだが、そのやり方は非常に惨たらしく、

 

 「逃げても無駄だ!仏様を奪った罪は重い!生かしてはおけぬ!」

 

 「お前たちを殺してやる!」

 

 「仏様を大切にしろ!大切にしない奴は、死ぬべきなんだ!!」

 

 「どうした? どこに行ったぁ?」

 

 「おぉ? ボクシングか。お前がその気なら相手になってやる!」

 

 …などと、ヒーローらしからぬ物騒な言葉を言い放ちながら楽しそうに追いかけまわした後、踏みつぶしたり、倒した木の下敷きにしたり、手で掴んで握り潰したりと次々と殺害していったのだ!

 

 

 その後も、人類の行き過ぎた科学が引き起こした大爆発によって地中から目覚めた5体の怪獣相手にも容赦なく襲い掛かり、なんでもその時『ウルトラ6兄弟』を洗脳し、彼らと共に惨たらしく怪獣たちを倒していったのだととか…!

 

 

 その後もハヌマーンは、罪を犯した人を容赦なく殺害したり、レッドマンと同じく怪獣も善悪関係なく無差別に殺害していった事により、遂にレッドマンと同じく“指名手配”“見つけ次第死刑判決”が下ってしまったのだという…!

 

 

 恐らくハヌマーンは、殺された少年の私怨がヒーローの力に乗り移った事により、歪んだ正義のヒーローになってしまったのであろう…。

 

 

 

 タロウから二人の事を聞いた一同は驚愕した。

 

 長く続いているウルトラの歴史の中で、そのように道を誤った戦士もいたなんて…そう思うと、その戦士たちに対する憐れみも浮かんで来る。

 

 

 ヒカル「まさか、そんなにもヤバい奴らだったとはな…。」

 

 海羽「そんな…怪獣にも罪の無い子だっているのに…酷過ぎるよ…。」

 

 

 よく見てみると真美は、何やらすすり泣きを始めていた…。

 

 櫂「…何を泣いているんだ?」

 

 

 真美「うっ…だって…罪の無い怪獣も殺されていったんでしょう?…彼らにとって、どんなに辛いか…。」

 

 

 だが、櫂は心の中で…

 

 

 櫂(…何で怪獣なんかに同情してんだ?…俺と真美は同じ怪獣に親を殺された身なのに…この考えの差は一体何なんだ…?)

 

 

 海羽(…間違いないわ…あの時モっちゃん(モチロン)とキラちゃん(キララ)を襲ったのも、恐らく奴らね…。)

 

 海羽は確信した。モチロンとキララを襲ったのも間違いなくレッドマン達だという事を…!

 

 

 ゼロ「ふっ…暴走する正義…か…。それにより、正義の道を誤った者達…ちょっと哀れだが、俺たちが倒してやるしかないみたいだな…。」

 

 タロウ「あぁ。次生まれ変わったら、真の正義の戦士として生まれ変わってくれと願いつつ、彼らを葬ろう。」

 

 

 櫂(いや、彼らはもう正義の戦士だろ?…凶悪怪獣やっつけるんだぜ?)

 

 

 ショウ「そのためにも、俺たちの正義の力を存分にぶつけてやらないとな。」

 

 ヒカル「あぁ。次こそは、全力で奴らに挑もうぜ。 だよな、櫂さん。」

 

 

 櫂「え?…え、あぁ、そうだよな。」

 

 

 タロウ「私も、タイでの後悔を胸に、ハヌマーンを倒さなければならない。」

 

 ヒカル「だな。奴らに本当の正義というのを見せてやろうぜ。」

 

 

 かくして、(あまり気が乗らない櫂を除く)一同は、本当の正義の心を込めてレッドマンとハヌマーンを打倒する事を決意した。

 

 

 ライト「俺たちにも、出来る事があったら言ってください。」

 

 ミオ「力になりますから。」

 

 鎧「遠慮なんて、いりません!」

 

 

 ヒカル「ありがとう。じゃ、その時は力になってもらうぜ。」

 

 

 櫂「海羽はゆっくり休んで…奴らは、他にウルトラ戦士に任せろ。」

 

 海羽「うん。ありがとね。 気を付けてね。」

 

 櫂「おうよ!任せろ。」

 

 海羽「あ、あと…高原に置いている卵の事も…よろしくね。」

 

 櫂「あぁ。」

 

 

 櫂(ふっ…俺は奴らとは戦わねーがな…奴らはせいぜいヒカル達に任せておくか…最も、レッドマンとハヌマーンが勝ってくれればベストだがな。卵も、適当に他の奴らに任せておけばいいか…。)

 

 

 …やはり、怪獣絶対殺すマン・櫂にとって、レッドマンとハヌマーン程共感できる存在はいないのであろうか…?

 

 

 やがて、一同は病室を後にする事にした。

 

 真美「また何かあったら、いつでも呼んでね。」

 

 海羽「うん。みんなありがとう!」

 

 櫂「んじゃ、元気でな。」

 

 

 一同は病院を後にし、やがて鎧とライト、ミオはそれぞれ帰り道を歩き始める。

 

 

 真美「私、海羽ちゃんに何かデザート買ってあげよっかな。」

 

 櫂「お、いいんじゃねーのか?海羽のやつ、きっと喜ぶぜ。」

 

 真美「へへ、そうだよね。じゃあ、私、近くのコンビニ行って来るね。」

 

 櫂「おぉ、それじゃあな。」

 

 櫂と真美は、お互い手を振り合いながら別れた。

 

 

 ヒカル「じゃあ櫂さん、俺たちは奴らの探索をしてきますので。」

 

 櫂「お…おぅ。」

 

 ショウ「櫂さんも、奴らを見つけたら、すぐにお知らせください。」

 

 櫂「おぉ。もうすぐ日が暮れるし、気を付けるんだぞ。」

 

 ヒカル「はい!行こう、ショウ。」

 

 ショウ「あぁ。」

 

 ヒカルとショウも、レッドマンとハヌマーン探索のため櫂と別れた…。

 

 

 …しかし、一人取り残された櫂は、どこか浮かない表情をしている…。

 

 

 櫂(…アイツらがいれば、凶悪怪獣殲滅が早まるハズなのに…何故どいつもこいつも有効利用じゃなくて駆逐する事しか考えないんだ…?)

 

 

 心の中でそう呟く櫂。すると、そんな櫂にゼロが語り掛ける。

 

 

 ゼロ「櫂…どうせあいつらと、戦わないつもりでいるんだろ?」

 

 

 櫂「うっ…。」

 

 

 痛い所を突かれたのか、櫂は一瞬言葉を失う…。

 

 

 ゼロ「ふっ…だろうな。お前は恐らく、怪獣を次々とやっつける奴らを上手く利用できるんじゃないかと考えてるかもだが、現にそれにより、奴らは今や脅威の存在になっているのも事実だぞ。」

 

 

 ゼロの言った事はあまりにも図星過ぎた…櫂は思わず何かを考えこむように黙り込んでしまう…。

 

 

 ゼロ「んま、お前がアイツらと戦わないのは自由だ。けど、そうなった場合誰が犠牲になると思う?

 

 真美だ。」

 

 

 櫂「…何…だと?」

 

 

 ゼロの思わぬ言葉に櫂は驚く。

 

 

 ゼロ「忘れるなよ、奴らは巨大なんだ…もし奴らが下手に暴れて、真美がその巻き沿いになったらどうする?それもあり得る事なんだぞ?」

 

 

 櫂「えぇいうるせー!!俺がどうしようと俺の勝手だ!それに、もし奴らが真美に何かしようとしたら、その前に俺が奴らをぶっ潰してやるよ!!」

 

 

 ゼロ「ふっ、そうか…。」

 

 

 櫂「とにかく、怪獣、そして、真美に危害を加える者、これらはみんな俺の敵だ!容赦はしないつもりだからなぁ!!」

 

 

 そう言うと、櫂は早歩きで帰り道を歩き始めた…。

 

 

 ゼロ(とりあえず、今櫂に言える事は言ったつもりだ…。あとは、コイツがどう動くかだな…。)

 

 

 

 因みに、先ほど一同の病院でのやり取りを、こっそりと聞いている者がいた…。

 

 

 ガイ「盗み聞きをするつもりは無かったが…どうやら、新たな敵の出現みたいだな。」

 

 

 その者は、『ウルトラマンオーブ』こと『クレナイ・ガイ』であった!

 

 

 ガイ「それにしても、怪獣を無差別に倒すものか…ふっ…アイツらは答えを急ぎ過ぎなんだよ…。怪獣にだって、悪くない奴らもいる…俺たちウルトラマンは、それを守る必要もあるからな…。」

 

 ガイはそう言いながら、付き添いの『友好珍獣ピグモン』の頭をポンポンする。

 

 

 ガイ「安心しろピーちゃん。お前も絶対に死なせない。」

 

 

 そう言った後、ガイは帽子をかぶり、ピグモンと共に歩き出す。

 

 

 ガイ(俺たちウルトラマンは、正義のためにも戦っている…アイツらに、本当の正義とやらを見せてやろうじゃねーか…。)

 

 

 

 引き続きレッドマンとハヌマーンの探索を続けるヒカルとショウ、奴らと戦うかどうかを躊躇う櫂、そして、密かに決意をするガイ…果たしてウルトラ戦士たちは、行き過ぎた正義故に闇に落ちたレッドマンとハヌマーンに勝てるのであろうか…?

 

 

 (ED:ウルトラの奇跡)

 

 

 [エピローグ]

 

 

ノワール星人デニスは、相棒のレッドキラーと共に地球に到着し。先ほどレッドマン達が降り立った高原に着地していた…。

 

 

デニス「ほほぅ、これが、俺達が狩ったバルどもが遺した卵ってやつか。」

 

 

そう楽しそうに言いながらデニスは、目の前の巨大なバルの卵を見つめていた。

 

 

レッドキラーは早速卵を切り崩そうと、ブーメランを飛ばそうと構える!

 

デニス「待て!レッドキラー!」

 

しかし、デニスの制止を受けて止める。

 

 

…そしてデニスは、卵をじっくりと見つめながら呟いた…。

 

 

デニス「…卵のまま殺っちまっても面白くねーだろ…孵化した後だ…その時を狙って狩ってやる…その方が悲鳴も聞けるし、正に一石二鳥だぜぇ〜! ヒヒヒヒヒヒ…!」

 

 

不敵な笑みを浮かべるような表情で、恐ろしい事を考え呟くデニス…果たしてバルの卵、そしてそこに眠る雛の運命やいかに!?

 

 

 

 …そして一方、そんなデニスから先ほど状況提供を受け、時空を移動したレッドマンはとある世界に来ていた…!

 

 

 レッドナイフを振り回しながら、その世界の街で大暴れするレッドマン。彼は、ある方を目指しているようであった…!

 

 

 暴れる彼の進む先には、何やらX字型の巨大な建物が建っている…。

 

 

 この世界にも、地球を守る防衛軍が存在していた…!

 

 

 ジュネーブに本部を置く地球防衛組織『UNBER(アンバー)』。それは未だ地球各地で不安定な状態で眠っているスパークドールズの回収、保管、研究を任務としている。

 

 

 因みにこの世界のスパークドールズは、地球各地で眠っていた怪獣の姿をしたオーパーツという事になっている。

 

 

 UNBERによって組織された防衛部隊『Xio(ジオ)』は、15年前に発生した太陽フレア『ウルトラ・フレア』によってスパークドールズから目覚めた怪獣たちに対抗するために結成された組織であり、そのX字型の基地『オペレーションベースX』を拠点としているのである。

 

 

 そう、この世界とは、上記の説明でも分かるように、“とあるウルトラマン”が活躍していた世界なのである!

 

 

 恐らくノワール星人デニスは、この世界で大量に眠るスパークドールズという怪獣に目を付けたのであろう…!

 

 そしてそのスパークドールズを狙い、レッドマンはやって来たのである!

 

 

 レッドナイフを振るって傍若無人に暴れながら、Xioの基地を目指すレッドマン。

 

 

 神木「何としてでもタイプAの進行を食い止めろ!」

 

 

 基地内で副隊長と共に、出動した隊員達を見守る『神木正太郎』隊長は隊員たちに指示を出す。

 

 

 XiO隊員一同「了解!!」

 

 

 上空からはXiOの戦闘機『スカイマスケッティ』が光弾『ファントン光子砲』を、地上からはXiOのホバー戦車『ランドマスケッティ』が光弾『ファントンレールキャノン』を連射して攻撃を仕掛ける。

 

 

 だが、レッドマンはそれをレッドナイフで斬って相殺していき、いくつか被弾したのだが大したダメージを受けた様子は無い…。

 

 

 恐らくスカイマスケッティには『貴島ハヤト』隊員が、ランドマスケッティには『風間ワタル』隊員が搭載しているのであろう。

 

 

 地上からは、XiOの女性隊員『山瀬アスナ』が、携帯銃『ジオブラスター』にカスタムパーツ『ウルトラブースター』を装着する。

 

 

 《ウルトライザーモード、起動します》

 

 

 ウルトラブースターを装着したことで、ジオブラスターは『ウルトライザー』へと変形した。

 

 

 アスナは引き金を引くと、ウルトラマンの両腕を模したパーツがL字型に組まれる。

 

 

 《ウルトラマンの力を、チャージします》

 

 

 音声ナビと共にエネルギーがチャージされ、やがて『スペシウム光線』にも似た破壊力の高い必殺光線が発射される!

 

 

 強い反動と共に発射された光線はレッドマン目掛けて飛んで行く!

 

 

 …しかし、レッドマンはそれもレッドナイフで受け止めると、思い切り振って弾き飛ばし、弾かれた光線は四方八方の地面に飛んで爆発した!

 

 

 アスナ「嘘!?これもダメ?」

 

 強力武器も通用しない事に動揺を隠せないアスナ。

 

 

 なおも進撃を続けるレッドマン。もうXiO基地の近くにまで来ていた!

 

 

 大地「アスナ、ここは俺が行く!」

 

 アスナ「えぇ、気を付けてね。」

 

 大地「あぁ。必ず、奴を食い止める!」

 

 

 そう言うと、『大空大地』と言うXiOの隊員はレッドマンの近くまで走り、立ち止まる。

 

 

 大地「エックス、ユナイトだ!」

 

 

 エックス「よし、行くぞ!」

 

 

 そう、彼こそ、この世界で活躍したウルトラ戦士『ウルトラマンエックス』とユナイト(一体化)している隊員なのである!

 

 

 大地は、エックスがデータ化して宿っている、金を基調としたマルチデバイス『エクスデバイザー』を突き出し、上部ボタンを押して側面のパーツをX字に展開して『Xモード』に変形させる。

 

 そしてそこから出現したエックスのスパークドールズを手に取ってリードする。

 

 

 《ウルトラマンエックスと、ユナイトします》

 

 

 大地「エックスー!!」

 

 

 大地はエクスデバイザーを高く揚げて叫び、X字の光に包まれる!

 

 

 そしてその光の中から、大地とのユナイトが完了した『ウルトラマンエックス』が右拳を突き出して飛び出す!

 

 

 エックス「イーッサアアアッ!!」

 

 

 《エックス、ユナイテッド!》

 

 

 To Be Continued………。




 読んでいただきありがとうございます!いかがでしたか?


 今回はレッドマンとハヌマーンの大暴れを中心に描いてみました。


 今回は海羽ちゃんファンにとって心を痛めるような描写をしてしまった事をお詫び申し上げます(笑)


 因みに本作のレッドマンとハヌマーンですが、姿形や能力は全く同じですが、私オリジナルの存在として、悪役として登場させています。

 例えるなら、劇場版仮面ライダーフォーゼで言う『キョーダイン』、MOVIE大戦アルティメイタムで言う『アクマイザー』みたいな感じで見てもらえたらなと思います。


 次回は、VSレッドマン&ハヌマーン編三部作の第二弾で、ウルトラマンエックスも本格参戦します!お楽しみに!


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています!


 因みに今回隠れたサブタイトルは『暴走する正義』(ウルトラマンオーブ第14話)でした!


 あと余談ですが、遂にウルトラマン新シリーズ『ウルトラマンR/B(ルーブ)』が解禁されましたね!

 今回は兄弟ウルトラマンとなかなか面白そうな設定で、正に『ウルトラ兄弟』や『レオ兄弟』を彷彿とさせますね!

 兄のウルトラマンロッソと弟のウルトラマンブル…どちらも最高にカッコいいので早く戦う姿が見たいです!


 では、次回もお楽しみに!


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第32話「友よ、いざユナイト!」

 お待たせしました!


 今回はVSレッドマン&ハヌマーン編三部作の第二部で、前回最後に登場したウルトラマンエックスも本格参戦します!


 サブタイトルも一つ隠しています!


あと、ちょっとした“中の人ネタ”や“名前ネタ”も含まれています(笑)


 とりあえず楽しんでいってください!(笑)


 では、どうぞ!


 (OP:英雄の詩)

 

 

 『ウルトラマンエックス』の世界にて、エックスは『レッドマン』と戦いを繰り広げていた!

 

 

 レッドマンと組み合っていたエックスは一旦離れた後、左フック、右脚の回し蹴りを繰り出すが、レッドマンはそれをことごとくかわす。

 

 次にレッドマンは右フックを繰り出し、エックスはそれを左腕で防ぐが、その隙にレッドマンが放った左拳のボディブローを腹部に食らって後退してしまう。

 

 

 レッドマン「…怪獣はみんな敵…それに味方する奴も…みんな敵!」

 

 

 エックス「…何だって?」

 

 大地「こいつ、怪獣を憎んでいるのか?」

 

 

 レッドマンの発言に動揺している隙に、エックスはレッドマンの前蹴りを腹部に食らって後退する。

 

 

 大地・エックス「Xスラッシュ!」

 

 

 レッドマン「レッドナイフ!」

 

 

 エックスは右腕を突き出して矢じり型のエネルギー弾『Xスラッシュ』を断続的に放つが、レッドマンは即座に『レッドナイフ』を取り出してそれを防いでいく…!

 

 

 その戦いを見ていた『Xio』の女性隊員『山瀬アスナ』は、隊長『神木正太郎』からの指令を受ける。

 

 

 神木「アスナ!ジオブラスターで大地とエックスを援護しろ!」

 

 

 アスナ「了解!」

 

 

 《ターゲット、ロックオン》

 

 

 アスナはXioの携帯銃『ジオブラスター』を構えて引き金を引き光弾を連射するが、レッドマンはそれをレッドナイフを振るって全て打ち消していく。

 

 そして掴みかかってきたエックスのうでを振りほどくと、振り向きざまにレッドナイフで袈裟懸けに斬撃を繰り出し、胸部を斬られたエックスはそこから火花を散らしながら吹っ飛ぶ!

 

 

 その時、別世界から『怪獣狩人ノワール星人デニス』がレッドマンにテレパシーを送る。

 

 デニス『レッドマン、ここは一旦この世界に戻るんだ。そしてエックスを始末した後、また怪獣どもを狩りに来ればいい。』

 

 

 レッドマン「…了解…。」

 

 

 レッドマンは、エックスを後ろから左腕で首を絞めて捕えると、そのままレッドナイフで頭上の空間を切り裂き、次元の裂け目を出現させる!

 

 

 レッドマン「怪獣…それに味方する奴…みんな…始末する…!」

 

 

 そう言うと、レッドマンはエックスを連れて次元の裂け目に入っていき、更に近くにいたアスナもその吸引に巻き込まれて吸い込まれてしまう!

 

 

 レッドマンとエックス、そしてアスナを吸い込んだ後、次元の裂け目は完全に閉じてしまった!

 

 

 突然の大地、アスナ両隊員、そしてウルトラマンエックスの消失に動揺を隠せない隊員一同、そして隊長、副隊長。

 

 

 タケル「ウルトラマンエックスの反応、タイプAと共に完全に消失!」

 

 チアキ「同時に大地、アスナ両隊員からの通信も途切れました!」

 

 

 神木「大地アスナ! 応答しろ! 大地アスナ! 大地アスナ!!」

 

 

 隊長がどんなに呼びかけても、2人からの返事が返って来ることは無かった…。

 

 

 

 そして、舞台はデニスがいる別世界、すなわち、竜野櫂たちが住む世界に移る…!

 

 

 8月20日、朝の8時頃、新田真美は借家を出ると、ルンルンと鼻歌を歌いながら道を歩いていた。

 

 眞鍋海羽のお見舞いに向かっているのである。

 

 

 真美「海羽ちゃん、元気にしてるかな~?」

 

 

 そう言いながら、差し入れの手作りのおはぎを持って足軽に歩いている…。

 

 

 真美「…ん?」

 

 

 その時、真美は何かに気づいてふと立ち止まる。

 

 

 視線の先には、何やら足元に金を基調としたデバイスのような物が落ちていた…。

 

 

 真美「…これ…何だろう?」

 

 

 真美はそれを拾い上げて見つめる。すると、そのデバイスのディスプレー部がウルトラマン型に発光したかと思うと突然話しかける!

 

 

 エックス「やあ、お嬢さん。」

 

 真美「ひゃっ!?」

 

 当然ながら驚きを隠せない真美。

 

 

 エックス「あぁ、脅かしてすまない。私は、ウルトラマンエックスだ。」

 

 

 そう、真美が拾った物とは『エクスデバイザー』である!

 

 恐らく大地はこの世界に迷い込んだ際に、エックスとのユナイト解除と共に紛失してしまったのであろう…!

 

 

 真美「…ウルトラマン…エックス…?」

 

 エックス「話を聞いてくれないか?」

 

 

 真美はいきなりの展開に戸惑いつつも、とりあえずエックスからの話を聞いた。

 

 

 自分は何処から来たのか、この世界に来たきっかけなど、そして、大地という青年を探している事を…。

 

 

 そして真美は、既にレッドマンの事を知っていただけあってすぐに話を理解した。

 

 

 真美「なるほど、レッドマンはあなたの世界にも攻めて来たのね…。」

 

 エックス「君はあの赤い巨人を知っているのか?」

 

 真美「えぇ。彼は元々この世界の戦士で…光の国の罪人なの。」

 

 エックス「罪人?」

 

 

 今度は真美がエックスにレッドマンの事を話した。

 

 彼の出自、犯した罪、そして、死刑判決を受けている事などを…。そしてついでに白猿『ハヌマーン』の事もエックスに話した。

 

 

 エックス「なるほど、怪獣を憎んでいるのはそういう事なのか。」

 

 真美「彼らはもはや、この世界では脅威の存在になってるの…だから早く倒さないと、罪の無い怪獣がまた犠牲になるわ…。」

 

 

 真美からレッドマン達の詳細を聞いたエックスは、この世界のために協力する事を決めた。

 

 

 エックス「分かった。私も協力しよう。」

 

 真美「ありがとう…じゃあ、早く大地という人を探さないとね。」

 

 エックス「一緒に探してくれるのか…すまない。」

 

 

 真美「いいのよ。困っている人を放っておけないわ。」

 

 

 そう言いながら真美は輝かんばかりの満面の笑顔を見せる。

 

 

 エックス「うっ………(小声で)可愛い…。」

 

 エックスは思わず頬を赤らめていた。

 

 

 真美「あ、その前に入院してる友達の所に行ってもいい?差し入れを渡したいの。」

 

 エックス「え…あぁ、構わない。」

 

 真美「ありがとう。じゃあすぐに行くね。」

 

 

 そう言うと真美は、再び鼻歌を歌いながら病院への道を歩き始める。

 

 

 エックス(…なんて可愛らしくて、感じのいい子なんだ…。アスナもこれぐらい可愛げがあればな…。)

 

 

 

 アスナ「ヘックチッ!」

 

 大地「大丈夫?アスナ。」

 

 アスナ「えぇ…エックスが噂でもしているのかな?」

 

 大地「かもしれないな…ジオデバイザーにエックスの反応をキャッチする機能を付けといて良かったよ。」

 

 アスナ「でも…ここ何処だろう?…さっきいた街とは全然違うし…。」

 

 大地「どうやら俺たち、別の世界に迷い込んでしまったみたいだな。」

 

 

 一方で同じくこの世界に迷い込んだ大地とアスナも、銀を基調とした隊員用携帯端末『ジオデバイザー』から発せられる反応を元にエクスデバイザーを探していた。

 

 

 大地「とりあえずまずはエックスを見つけ出そう。帰る方法はそれからだ。」

 

 アスナ「えぇ、そうね。」

 

 

 再びエックス捜索のために歩き出そうとしたその時!

 

 

 アスナ「…ん?」

 

 大地「どうしたのアスナ?」

 

 

 アスナは何かに気づく。その視線の先には、医者の白衣を着込んだ、黒髪にメッシュのような白髪が混じった髪形が特徴の男性と、サイケデリックなファッションに身を包んだ高校生ぐらいの少女が。

 

 

 大地「…あの顔…?」

 

 アスナ「どこかで見たような…?」

 

 

 大地・アスナ「あーっ!」

 

 

 二人は男性の方の顔をじっくりと見てみる。そして何かに気づいたのか同時に驚いた。

 

 そして、その男性の方に駆け寄り話しかける。

 

 

 アスナ「ハヤトさん!?」

 

 

 (BGM:EXCITE)

 

 

 大我「あぁ?なんだてめーらは。」

 

 ニコ「誰?こいつら。」

 

 

 大地「あれ…よく見たら違うよ?」

 

 アスナ「あ、本当だ。」

 

 どうやら人違いだったみたいである。

 

 

 大我「ったく、いきなり話しかけといて人違いかよ。」

 

 ニコ「ほんっと、やめてよね!勘違いも甚だしい!」

 

 

 アスナ「それは失礼しました。ところで、この近くで金色のデバイス見ませんでした?」

 

 

 ニコ「はぁ?そんなの知らないし!邪魔だから早くどいて!」

 

 アスナ「何よさっきから、お子ちゃまは黙ってて!」

 

 ニコ「何よそれ!」

 

 

 大地は喧嘩になりそうな二人の間に入り込む。

 

 大地「まあまあまあ。とにかく俺らは人違いをしていたし、この人たちはデバイスの事何も知らないみたいだよ、アスナ。」

 

 

 大我「アスナ?…ポッ〇ーピポパポ、お前そんな姿にもなれるのか?」

 

 アスナ「ポッピー?…何ですかそれ?」

 

 大我「ちっ…どうやらこれも人違いみたいだな。」

 

 ニコ「早く行こ、大我。」

 

 大我「あぁ、ゲームの時間が無くなっちまうからな。」

 

 

 大地「…ゲーム?」

 

 

 大我「そう…俺たちは、終わりなきGAME、楽しむだけ。」

 

 ニコ「そゆこと。」

 

 

 大我・ニコ「(右手で銃を作って)BANG(バン)!」

 

 

 そう言うと大我という青年とニコという少女は何処かへと歩き去って行った。

 

 

 大地とアスナは結局二人が何者だったのか分からず終いであった…。

 

 

 アスナ「結局何だったんだろう?…あの二人。」

 

 大地「さぁ…でもあの男性、顔がハヤトさんそっくりだったな…。」

 

 

 アスナ「ま、それよりも早くエックスを探しましょ。」

 

 大地「そうだね。」

 

 

 大地とアスナはエックスの探索を再開した。

 

 

 

 一方、病院で入院している海羽を訪ねた真美。海羽は真美の差し入れのおはぎを美味しそうに頬張っていた。

 

 

 海羽「う~ん!やっぱ真美ちゃんの手作りのお菓子は美味しいよ!」

 

 

 真美「良かった。食べ物を普通に食べられるぐらい元気になって。」

 

 真美は満面の笑みで海羽の回復ぶりを喜んだ。

 

 

 エックス「彼女、かなり元気のいい子だな…それに何やら特別なオーラを感じる。」

 

 

 真美「…え?」

 

 

 エックスの呟きは、海羽にも聞こえていた。

 

 海羽「ん?さっき何か聞こえたような…?」

 

 

 真美「…海羽ちゃん…実はね…。」

 

 

 真美は、海羽にエクスデバイザーを見せ、そしてエックスの事を話した。

 

 

 海羽「そっか…エックスさんの世界にもレッドマンが攻めて来たなんて…。」

 

 

 その事を知った海羽は、少し暗い表情になりながらも、エックスに自分の事を話した。

 

 自分もウルトラ戦士である事、そして、レッドマン達に戦いを挑んだがまるで敵わず叩きのめされた事を…。

 

 

 エックス「驚いた…まさか君もウルトラ戦士だったとはな。」

 

 海羽「(少し舌を出して)エへ。 まだ新米だけどね。」

 

 エックス「しかも女性だから“ウルトラウーマン”か…なかなか面白いじゃないか。」

 

 海羽「え…そうですか?」

 

 

 海羽はエックスといつの間にか会話が弾んでいた。どうやら早くも仲がよくなたみたいである。流石は海羽である。

 

 

 エックス「君も散々苦労してきただろう…奴らの事は、私と大地に任せてくれ。」

 

 

 海羽「ありがとう。でも、この世界にいるウルトラ戦士は私だけじゃないよ。」

 

 エックス「え…他にもウルトラ戦士が来ているのか?」

 

 海羽「うん。例えばゼロとか、ギンガとかビクトリーとか!」

 

 エックス「おぉ、どれも顔見知りのあるウルトラ戦士だ。」

 

 海羽「そうですか?じゃあ彼らと力を合わせるのも良いかもしれないね!」

 

 エックス「そうだな。教えてくれてありがとう。」

 

 

 真美「それじゃ、早く大地さんを探しましょ。」

 

 エックス「そうだな。」

 

 

 真美「それじゃあ海羽ちゃん、また来るね。」

 

 海羽「うん。差し入れありがとう。」

 

 

 笑顔で海羽に別れを告げた真美は、病院の外を出た。

 

 

 真美「探すと言っても…どの方向を歩いたらいいのかな…?」

 

 

 とりあえずどうしようか迷っていたその時、

 

 

 アスナ「それ…エクスデバイザーですか?」

 

 

 真美「…え?」

 

 

 大地「探してたんですよ。返してもらえますか?」

 

 

 話しかけられた方を振り向くと、そこにはエクスデバイザーを探していた大地とアスナの姿が!

 

 

 エックス「おぉ!大地アスナ!探したぞ!」

 

 大地「こっちも探してたよ。エックス。」

 

 

 真美「この人が…大地さん…?」

 

 

 無事に大地とアスナと再会したエックスは、とりあえず同行していた真美を紹介し、そして真美と共にレッドマンとハヌマーンの事を話した。

 

 

 その事情を聞いた大地たちは驚きを隠せなかった。

 

 

 アスナ「そんなにヤバい奴らなんて…。」

 

 大地「怪獣を憎み続け、そのために道を誤ってしまった戦士か…。」

 

 

 エックス「あぁ、そうやら奴らを倒さないと、罪の無い怪獣が次々と犠牲になって行くみたいなんだ。」

 

 

 レッドマン達の事を聞いた大地は、共存するのは不可能だと判断し、そして遂に決心した。

 

 

 大地「エックス、こうなったら力を合わせて戦おう。」

 

 エックス「そうだな。奴らに“本当の正義”というのを見せつけて、それから葬ろう。」

 

 アスナ「私も賛成。」

 

 

 三人の意見が一致した。

 

 

 真美「本当に、ありがとね。」

 

 

 大地「いえ、俺たちもウルトラマンですから、当然ですよ。」

 

 エックス「それにこの世界に来ているウルトラ戦士とも力を合わせれば百人力だしな。」

 

 

 かくして、エックスと大地、アスナもレッドマンとハヌマーン殲滅に協力する事にした。

 

 

 エックス「ここで早速だが、ここから南西5キロメートル先に異常な電波を感じるんだ。」

 

 大地「何だって?」

 

 アスナ「もしかして、レッドマン達が関係しているのかも…。」

 

 大地「すぐに向かおう。」

 

 真美「あ、良かったら私、車を出しますよ。」

 

 大地「そうか?助かります。」

 

 

 よって一同は、真美の車で目的地へと向かった。

 

 

 因みにもうじき到着の際、「間もなく目的地周辺です」とエックスがカーナビのように喋ったという事を付け加えておこう(笑)

 

 

 目的地に到着した一行。そこは昨日レッドマンとハヌマーンが降り立った高原であり。異常な電波の正体はそこに転がる『渡り鳥怪獣バル』の卵の事であった!

 

 

 黒い球体の卵を見上げる一同。

 

 大地「異常な電波の正体はこれか…。」

 

 真美「これね…海羽ちゃんが言ってた卵は。」

 

 アスナ「え?これって怪獣の卵なの?」

 

 大地「じゃあ、もうじき孵化する可能性も…?」

 

 

 その時、卵が微かに動き始めた!

 

 

 真美「あ…卵が動き始めたわ。」

 

 驚く真美。アスナは警戒としていつでもジオブラスターを引き抜ける体勢に入る。

 

 

 大地「内部の温度が高い。それに、中のモノが動いている。 もうじき生まれる!」

 

 エクスデバイザーで内部を分析した大地は、卵がもうすぐ孵化する事を告げる。

 

 

 すると、黒い殻にひびが入る。

 

 

 そしてそこから徐々に殻を突き破りながら、一匹の雛の怪獣が現れる。

 

 

 バルの雛が無事に生まれたのである!

 

 

 大地「生まれた!」

 

 アスナ「見た感じ…鳥の怪獣?」

 

 真美「あ、本当だ、よく見たら可愛いー。」

 

 

 生まれたてのバルはその場ではしゃぐように羽をパタパタさせながら跳びはねる。

 

 

 大地「アスナ、銃を下げて。 コイツを観察してみるんだ。」

 

 アスナ「えぇ。」

 

 

 すると、バルは大地の方を向き、そしてじっくりと見つめ始める…。

 

 

 大地「…何だ?」

 

 突然見つめられて首をかしげる大地。すると、バルもそれを真似するように首をかしげる。

 

 

 大地「…コイツ、俺の真似をした…!?」

 

 

 驚く大地。それを見たバルは再び笑うように跳びはねる。

 

 

 困惑する大地。するとエックスが話す。

 

 エックス「この怪獣、もしかして大地に懐いてるんじゃないのか?」

 

 大地「俺に懐いてる?…という事は…。」

 

 

 真美「きっと、“刷り込み”ね。バルちゃんは生まれて最初に見た大地さんを親だと思ってるんだわ。」

 

 アスナ「へぇー…大地がお母さんか。」

 

 エックス「これは面白い事になったな。」

 

 

 大地「笑い事じゃないよエックス!」

 

 

 エクスデバイザーを通してエックスに話しかける大地を見て、バルもそこらの石を拾って似たような仕草を見せる。

 

 

 間違いない。バルは刷り込みにより大地を母親だと思い、懐いているのである。

 

 

 大地「えへへ…困ったなぁ…。」

 

 

 

 同じ頃、霞ヶ崎から外れたとある街のガスタンク付近にて、またしても“例の三人”が猛威を振るっていた。

 

 

 執拗に追いかけるレッドマンから必死に逃げる一匹の怪獣。今度狙われたのは『球好き怪獣ガラキング』である!

 

 

 ガラキングは丸いものや球遊びが好きな怪獣であり、かつて地球に飛来した際、ガスタンクで毬遊びをしたり、人間とバレーボールをしたりなどし、最終的には『ウルトラマンタロウ』と戦い、アタックサーブにより宇宙に送り返されている。

 

 

 恐らくガラキングは久しぶりに地球のガスタンクで球遊びをしようと飛来した所をレッドマン達に見つかってしまったのであろう。

 

 

 デニス「ホラホラ逃げんじゃないよー!!ヒャッハハハー!!」

 

 

 『怪獣狩人ノワール星人デニス』は楽しそうに高笑いしながら、パワードアーマーの左腕に装着されたビームガンをガラキングの足元に打ち込む!

 

 

 ビームガンを脚に打ち込まれたガラキングはその場で膝を付いてしまう。

 

 

 レッドマン「レッドファイッ!!」

 

 

 レッドマンは逃げ足が止まったガラキングに猛然と襲い掛かる!

 

 膝を付いたガラキングにヘッドロックをかけ、そのまま頭部に数発パンチを打ち込む。

 

 

 レッドマン「イヤッ!!」

 

 

 そして背負い投げの要領で地面に叩き付けた。

 

 

 そして同じ頃、すぐそこの空港にて、ハヌマーンはとある男三人組を追いかけ回していた。

 

 

 なんでもその三人組は離陸寸前の旅客機をハイジャックしていた凶悪犯のようであり、結果レッドマン達三人、そしてガラキングが飛来した事により飛行機はストップになった上にハヌマーンに見つかり、追いかけ回される羽目になってしまったのであろう。

 

 

 ハヌマーン「逃げても無駄だ!人々を陥れた罪は重い!お前たちを殺してやる!!」

 

 

 相変わらず物騒な言葉を発しながら、怯えて逃げ回る犯人を追いかけ回すハヌマーン…。

 

 

 ハヌマーン「どうした?どこへ行ったぁ?」

 

 

 デニス「狩るぜ狩るぜ狩るぜ~!FO~!!」

 

 

 デニスはハイテンションに叫びながら、レッドマンが羽交い締めにしているガラキングにアーマーの右腕に武装されたバルカン砲を連射して浴びせる!

 

 

 そして、それにより弱ったガラキングをレッドマンは乱暴気味に蹴り倒した!

 

 

 うつ伏せに横たわるガラキングに馬乗りになるレッドマン。

 

 

 レッドマン「レッドナイフ!!」

 

 

 “ザシュッ”

 

 

 レッドマンはレッドナイフを取り出すと、思い切りガラキングの背中をぶっ刺してしまった…!

 

 

 一旦マウントを解いて立ち上がり、レッドチェックをするレッドマン。するとガラキングは腕をわなわなと震えさせて痙攣していた。どうやらまだ死んでいないようである。

 

 流石はかつて『ウルトラマンタロウ』の『ストリウム光線』に耐えただけあって、そのタフさは侮れないモノだ。

 

 

 ガラキングの生存に気付いたレッドマンは、舌打ちをするように首を横に振ると、横たわるガラキングの腹を蹴って転がす!

 

 

 そして今度こそ息の根を止めようとレッドナイフを構え始める…!

 

 

 一方、犯人を追いかけ回すハヌマーンは、最後の一人を掴んで持ち上げていた。

 

 

 残りの二人は既に踏み潰したり、瓦礫の下敷きにして殺害済みのようである。

 

 

 恐怖におびえて暴れ回る最後の一人をゆっくりと目前まで持ち上げるハヌマーン。まるでその行動を楽しんでいるようである。

 

 

 そして、握り潰そうともう片方の手を振り上げたその時、

 

 

 “ガッ”

 

 

 突如、何者かに腕を掴まれて阻まれてしまう。

 

 

 振り向くとそこには『ウルトラマンゼロ』の姿が!

 

 

 どうした事か、竜野櫂はゼロに変身して駆け付けたのである!

 

 

 ゼロ・櫂「おーっと、人殺しだけは見過ごせねーな…。」

 

 

 偶然にもゼロと櫂の声がハモる。

 

 そしてゼロは、犯人を捕まえているハヌマーンの腕にチョップを打ち込み、それによりハヌマーンは犯人を放してしまう!

 

 

 …因みにその後地面に落下した犯人は再び逃亡を図るが、空港の先で待ち構えていた警察に取り押さえられたのは言うまでもない。

 

 

 デニス「チッ…ウルトラマンゼロか…ハヌマーン!やっちゃえやっちゃえー!!」

 

 

 ゼロに邪魔をされたハヌマーンは狙いをゼロに変え、三叉槍を片手に猿のように跳びはねながら襲い掛かる!

 

 ゼロもゼロスラッガーを取り出して応戦する。

 

 

 ハヌマーンは右手に持つ三叉槍を突き出すが、ゼロはそれを右足蹴りで弾き返して防ぐ。

 

 その後も三叉槍とゼロスラッガーが火花を散らしながらぶつかり合う。

 

 

 ゼロは、ハヌマーンが振り下ろした三叉槍を、後ろ向きで右手で逆手に持ったゼロスラッガーで受け止めて防ぐと、振り向き様に左手のゼロスラッガーで横一直線の斬撃を腹部に決めて火花を散らし、そしてハヌマーンが怯んだ隙に胸部に後ろ回し蹴りを叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 一方、ガラキングに止めを刺す寸前だったレッドマンは盟友ハヌマーンの危機に気付き、そのままレッドナイフを手にゼロに襲い掛かる!

 

 

 すぐさま襲い掛かるレッドマンに気付いたゼロは、レッドマンが振り下ろしたレッドナイフを両手のゼロスラッガーをクロスさせて受け止めて防ぐと、そのまま腹部に右足蹴りを叩き込むと同時に宙返りをして距離を取って着地をする。

 

 

 再度ゼロに襲い掛かろうとするレッドマンとハヌマーン。すると、どうしたことかゼロは「待て!」とばかりに右手の平を突き出す。

 

 

 それを見たレッドマンとハヌマーンも一旦動きが止まる。

 

 

 すると、ゼロの中の櫂はテレパシーで二人に話しかける。

 

 

 櫂『…俺はお前らと喧嘩するつもりはない…。』

 

 

 すると、次にとんでもない事を話す!

 

 

 櫂『…どうだ?ここは一旦俺と手を組まないか?』

 

 

 なんと、二人と手を組む事を提案して来たのである!

 

 

 ゼロ「櫂!お前何言ってんだ!!」

 

 櫂『俺も怪獣が憎いんでね…だから俺と手を組めば、怪獣殲滅が早まると思うんだ…どうだ?』

 

 

 ゼロ「やめろ!こいつらと組んでも後々後悔するだけだぞ!!」

 

 櫂「後悔?ハッ、そんな事しないよ…だって俺、本当に怪獣が憎いんだもん…。」

 

 

 櫂の言葉を聞いたレッドマンとハヌマーンは、武器を仕舞うと、ゆっくりとゼロの方に歩み寄り始める…!

 

 

 今にも櫂の口車に乗せられそうになっているのだ!

 

 

 このまま櫂は、二人と手を組んでしまうのだろうか…!?

 

 

 デニス「お?邪魔者かと思ったが、どうやら面白い事になりそうだな~ハハァ!」

 

 

 

 だが、そこに一人の男が駆け付けた。

 

 レザーコートに身を包み、テンガロンハットをかぶっている“銀河の風来坊”が…!

 

 

 今ここに、『ウルトラマンオーブ』こと『クレナイ・ガイ』の登場である!

 

 

 ガイ「あれがレッドマンとハヌマーンだな…。」

 

 

 ゼロがレッドマンとハヌマーンと戦っていると思っている(勘違いしている)ガイは、変身を決心する!

 

 

 ガイ「ゼロさん、今、助太刀します!」

 

 

 ガイは『オーブリング』を構えて紫色の光に包まれる。

 

 

 ガイ「ギンガさん!」

 

 《ウルトラマンギンガ!》

 

 ギンガ「デュアッ!」

 

 

 ガイ「エックスさん!」

 

 《ウルトラマンエックス!》

 

 エックス「イーッサーッ!」

 

 

 ガイはギンガとエックスのカードをダブルリードし、それによりガイの両側に二人のビジョンが現れる。

 

 

 ガイは二人のビジョンと共に両腕を回転させて胸元で合わせた後、オーブリングを一旦腰に構えた後、頭上に挙げる!

 

 

 ガイ「シビれるやつ、頼みます!」

 

 

 《フュージョンアップ!》

 

 

 ガイはオーブ・オーブオリジンの姿になると、リングと共に左右の二人に合わせて青、黄と光った後に紫に輝く!

 

 

 《ウルトラマンオーブ! ライトニングアタッカー!》

 

 

 そして二人のビジョンと合体するように重なり合った後、フュージョンアップが完了し、背景に渦巻く銀河から電光が迸り、そこから細かい水色のサイバーラインとX状の水色のサイバーラインが走り、その後亜空間をバックにX状の電撃と共に右拳を突き出して飛び出す!

 

 

 現れたのは、ギンガとエックスの力でフュージョンアップした形態『ライトニングアタッカー』である!

 

 

 外見は全体的にエックスをロボットにしたようなサイバーメカニックかつフルメタルボディの趣が強く、顔や胸部、両肩、両腕にギンガ由来のクリスタルが装着されており、カラータイマーはО字にXの字がかぶさるようなものになっている。

 

 

 (ライトニングアタッカー登場BGM)

 

 

 ガイ「電光雷轟、闇を討つ!!」

 

 

 現れたオーブ・ライトニングアタッカーは、口上と共にゼロとレッドマン達の間に着地すると同時に稲妻を纏ったパンチを地面に叩き込み、その衝撃により両者を引き離す!

 

 

 数歩後退したレッドマンとハヌマーンは、新たな敵が現れたとばかりに構えを取る。

 

 

 オーブは、突然のオーブの登場に驚きを隠せないゼロの元に歩み寄る。

 

 ガイ「大丈夫ですか?ゼロさん。」

 

 ゼロ「え?…あ、あぁ、大丈夫だ。」

 

 ゼロは思わずそう答えた。

 

 

 ガイ「一緒に戦いましょう。」

 

 ゼロ「お、おぉ!」

 

 

 櫂(チッ…いい所で邪魔しやがって…!)

 

 

 ガイの勘違いのおかげでレッドマン達の仲間になるのを免れたゼロは、オーブと共に構えを取る。

 

 

 …最も、櫂は他人(ガイも含める)の前では仮面を被らなければいけない為、仕方なく良人モードになっているのだが…。

 

 

 (ライトニングアタッカー戦闘BGM)

 

 

 両者は互いに駆け寄る!

 

 そしてオーブはレッドマン、ゼロはハヌマーンをそれぞれ相手にする事にした!

 

 

 ゼロは相変わらず余裕そうに、ハヌマーンの繰り出すパンチやキックをまるで動きが読めているかのように的確にかわしたり受け止めたりしていき、逆にパンチやキック等を確実に打ち込んでダメージを与えていく。

 

 

 オーブは放った右ストレートをレッドマンの左手で受け止められ、そしてレッドマンが放った左拳のボディブローを右手で受け止める。

 

 そして両者は同時に右足蹴りを放ち、それが互いに同時に命中した事により一旦後退する。

 

 

 因みにライトニングアタッカーの放つ打撃は一撃一撃が稲妻を纏ったモノであるため、そのためかレッドマンは若干ダメージを受けたような仕草を見せる。

 

 

 その後オーブは、レッドマンが駆け寄って放った右脚蹴りを両手で掴んで受け止め、右拳で叩き落とした後、稲妻を纏った左拳を胸部に叩き込む!

 

 そしてレッドマンが怯んだ隙に続けて右、左と交互にパンチを胸部に打ち込んだ後、腹部に稲妻を纏った右足蹴りを叩き込む。

 

 

 その後、レッドマンが怯まず放った右ストレートを回転しながらしゃがんでかわすと同時に、カウンターの右拳を腹部に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 ゼロはハヌマーンのムエタイ調のキックを右脚で受け止めると、そのまま腹部に右足蹴りを打ち込み、続けて跳躍しながら一回転しての回し蹴りを頭部に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 レッドマンとハヌマーンは一旦合流する。

 

 

 オーブは上空に飛び上がり静止する。

 

 

 ガイ「アタッカーギンガエックス!!」

 

 

 オーブは空中で両手両足を広げたX字のポーズで静止して、全身から電撃を放つ技『アタッカーギンガエックス』を、地上のレッドマンとハヌマーン目掛けて放つ!

 

 

 レッドマン「レッドサンダー!」

 

 ハヌマーン「ハリケーンガン!」

 

 

 レッドマンは『レッドサンダー』、ハヌマーンは『ハリケーンガン』を即座に放ち迎え撃つ!

 

 

 二つの光線はぶつかり合って競り合い、やがて大爆発を起こしてX字型の爆炎が広がった!

 

 

 ガイ「やったか!?」

 

 

 爆炎をじっくりと見つめるオーブ。やがて爆炎は徐々に消えていく…。

 

 

 そしてその中から二人の姿が!どうやらダメージは負ったものの死んではいなかったみたいである。

 

 

 ガイ「何ッ!?」

 

 ゼロ「チィッ!」

 

 櫂(よっしゃッ!!)

 

 

 レッドマン達の生存に驚くゼロとオーブ。(そして喜ぶ櫂)

 

 

 すると、レッドマンはレッドナイフでオーブを指してこう言った。

 

 

 レッドマン「お前…なかなか面白い…。今度また…勝負しろ…。」

 

 

 ガイ「何だって…?」

 

 

 やがてレッドマンとハヌマーンは、その場から飛び去って行った…。

 

 

 ガイ「あっ…待て!!」

 

 

 するとゼロがこう呼びかける。

 

 

 ゼロ「オーブ!後の事は俺に任せて、お前はレッドマン達を追うんだ!」

 

 

 ガイ「…分かりました。ゼロさん。」

 

 

 ゼロの言葉を素直に聞き入れたオーブは、近くで戦いを見守っていた連れのピグモンを拾い上げて掌に乗せる。

 

 

 ガイ「では、あとは任せましたね。」

 

 ゼロ「おぅ!」

 

 ガイ「ピーちゃん、しっかり掴まってろよ。」

 

 

 オーブはピグモンを連れて、レッドマン達を追いに何処かへと飛び去って行った…。

 

 

 一方、レッドマン達の戦いを見ていたデニスも。

 

 デニス「へぇ~、ウルトラマン…まさかここまでやるとはな…こいつは俄然面白くなって来たぜ!」

 

 

 すると、パワードアーマーのレーダー装置が何かを捕えた!

 

 

 デニス「お!?また面白そうな怪獣反応を捕えやがったぜ~…さてと、狩りに行きますか~!」

 

 

 そう言うとデニスもまた、その場から何処かへと飛び去って行った…。

 

 

 デニス「さぁ、狩るぜ狩るぜ~!!ヒャッホーィ!!」

 

 

 果たしてデニスの次なる標的は!?

 

 

 

 一人残ったゼロ。その近くには先ほどレッドマンにやられて虫の息のガラキングが横たわっている。

 

 

 櫂「チッ…もう少しでレッドマン達を仲間につけたのに、オーブの野郎余計な事しやがって…!」

 

 ゼロ「櫂…テメーって奴は!何を考えてんだ!」

 

 

 ゼロの呼びかけも完全無視の櫂は、視線をガラキングに向ける。

 

 櫂「ま、せめてコイツだけでもぶっ倒してやるよ。」

 

 

 ゼロ(櫂の意識)は、頭部からゼロスラッガーを取り出しながらゆっくりとガラキングの方へと歩み寄る…。

 

 

 ゼロ「止めろ櫂!!いい加減目を覚ましやがれ!!」

 

 櫂「あ?目なら覚めてますよ?(指で目を広げながら)ほらこの通り。」

 

 ゼロの説得に全く聞く耳を持たない櫂。

 

 

 とうとうゼロは横たわるガラキングの目前にまで来てしまった…!

 

 

 櫂「じゃあ…死んでもらおうかなぁ…?」

 

 

 ゼロがゼロスラッガーを振り上げようとしたその時!

 

 

 ヒカル「ゼロー!」

 

 

 櫂「…はっ!?」

 

 ゼロ「おぉ、ギンガ、ビクトリー!」

 

 

 ゼロが声のした方を振り向くと、そこには二人のウルトラマンが飛んで来る様子が見えた。

 

 

 駆け付けたのは『ウルトラマンギンガストリウム』と『ウルトラマンビクトリーナイト』である。

 

 

 ギンガストリウムとビクトリーナイトは着地してゼロと合流する。

 

 最も、この時櫂はすぐさま良人モードになっているのだが…。

 

 

 ゼロ「お前らも、レッドマン達を探していたのか?」

 

 ヒカル「ああ。この辺りでレッドマン達を見なかったか?」

 

 ショウ「それに、この怪獣は?」

 

 ゼロ「それがだな…」

 

 

 その時、櫂は、

 

 

 櫂「この怪獣はレッドマン達に襲われていて、俺たちが助けてやったんだ。」

 

 

 ゼロ(コイツ…根っからの嘘を…!)

 

 

 ヒカル「そっか…ま、殺されなくて良かったぜ。」

 

 

 ゼロはとりあえずこの場を離れる事に決めた。

 

 ゼロ「コイツの事、頼んでもいいか? 俺は引き続きレッドマン達を追う。」

 

 ヒカル「いいぜ。コイツの事が終わったら、」

 

 ショウ「俺達も引き続き捜索に出る。」

 

 

 ゼロ「じゃあ、頼んだぜ。」

 

 

 ゼロはその場から飛び去って行った…。

 

 

 …しかし、そんなゼロをビクトリーは何やらじっと見つめていた…。

 

 

 ショウ(ゼロ…何やら動揺してるように見えたが…気のせいか?)

 

 

 ヒカル「おーい何やってんだショウ、早くコイツ助かるぜ。」

 

 ショウ「お、おぉ、そうだな。」

 

 

 ヒカル「ギンガコンフォート。」

 

 ギンガストリウムは『ギンガコンフォート』を発動させ、ビクトリーナイトは『ナイトティンバー』を横笛状の『ティンバーモード』にして奇跡のメロディを奏でる。

 

 

 緑と青の優しい光はガラキングを包み、レッドマン達から受けた傷などを癒やしていく…。

 

 

 やがて元気になったガラキングは立ち上がり、ギンガとビクトリーにお礼を言うように一礼する。

 

 

 ヒカル「いいって事よ!(サムズアップ)」

 

 

 するとガラキングは丸まって球体になった。どうやら宇宙に帰るようである。

 

 

 ヒカル「そっか、分かったぜ。」

 

 

 ギンガとビクトリーは球体のガラキングを持ち上げる。そして軽く宙に投げた後、アタックサーブを打ち込んで飛ばした。

 

 

 ギンガとビクトリーが見送る中、ガラキングは空の彼方へと飛んで行った。

 

 

 ヒカル「よし、じゃあ、俺たちも行きますか!」

 

 ショウ「あぁ、そうだな。 (小声で)それに…ゼロの事も気になるし…。」

 

 ヒカル「ん?どうしたショウ?」

 

 ショウ「いや、なんでもない。行こう。」

 

 

 ギンガとビクトリーは何処かへと飛び去って行った…。

 

 

 

 一方、とある人気の付かない場所にて、既に変身を解除していた櫂は苛立ちからそこらの壁を蹴りながら発狂していた。

 

 かなり荒れているようである。

 

 

 櫂「なんでだよ…なんでどいつもこいつも邪魔すんだよおおぉぉぉ!!」

 

 

 そんな櫂に怯まずゼロは話しかける。

 

 ゼロ「これで分かっただろ?奴らは悪くない怪獣の区別が出来る。出来てないのはお前だけなんだ。 いい加減理解しろ。怪獣も悪い奴ばかりじゃないという事を!」

 

 櫂「何が悪くない怪獣だ!! そもそも奴らは体がデカい…それだけでも迷惑…いや人々の脅威なんだよ!! ウサギや猫などと言った動物とは違うんだぞ!? そんな得体の知れない怪獣どもなんぞ信用できるか!!」

 

 ゼロ「だが櫂!お前は見ただろ!モロb…ピグモンなどと言った、人間と仲良くなる怪獣も!」

 

 櫂「じゃあ聞こう!今まで俺たちが戦って来た怪獣。悪い奴と良い奴、どっちが多かった?」

 

 ゼロ「うっ…!」

 

 櫂「悪い奴の方が多かったよなぁ!?レッドキングもリンドンもベロクロンもヤプールもドギューもキングギドラもアリブンタもその他諸々!!」

 

 ゼロ「…確かに、今まで戦った怪獣は悪の怪獣の方が多かった…しかしなぁ!!」

 

 櫂「怪獣なんぞ所詮害悪なんだよ…例えどんな奴だろうと、いつ俺たちの脅威になるか分からん!」

 

 ゼロ「貴様…それ正気で言ってんのか!」

 

 櫂「あぁ正気さ! 忘れんなよ…俺も真美も、怪獣に親を殺されているという事を…そいつへの復讐も考えてるからなぁ…!」

 

 

 櫂はゼロにそう言い放つと、足元の石ころを蹴飛ばしながら帰り道を歩き始めた…。

 

 

 ゼロ(櫂の奴…もう我慢ならねぇ…! こうなったら…!)

 

 

 遂に業を煮やしたゼロは、櫂にバレないようにこっそりと一筋の光を発信した。

 

 

 ゼロは、誰かに『ウルトラサイン』を発信したのである!

 

 

 果たしてサインは誰に向かって飛んでいるのであろうか…?

 

 そしてこれにより、今後櫂の正体についての何か大きな動きが起きるのであろうか…?

 

 

 櫂(フッ…こうなれば奴らを心の中で応援するしかねーか…直接俺が仲間にならんでも奴らは強い…奴らが簡単に他のウルトラ戦士に負けるワケがないからなぁ…! 邪魔なんだよ…怪獣も、俺のことを好きにならない人間も、みんな邪魔なんだよ…!)

 

 

 またしても櫂は、心の中でとんでもない事を考えていた…!

 

 

 普段は人前で好青年を演じ、自分に好意を持たない人や怪獣は排斥しようと考える本性を持っている櫂…。

 

 その悪意地の強さは、ゼロの力を持ってしても制御し難いモノであった…。

 

 果たして彼の今後の行動は?そして、彼の本性は遂に誰かに知られてしまうのであろうか…!

 

 

 ゼロ(このまま奴と一緒にいると、いつか俺の好感度が下がっちまいそうだぜ…!)

 

 

 

 場所を高原に戻そう。

 

 ひょんな事から生まれたてのバルの雛に母親だと思われてしまった大地は、とりあえず研究のためもあり、バルの面倒を見る事にした。

 

 

 大地「じゃあ、このバルの面倒は俺とアスナに任せてくれ。」

 

 真美「分かりました。あとは任せますね。お母さん。」

 

 大地「はは…(苦笑)。」

 

 

 真美は一旦大地とアスナと別れ、車を走らせて行った。

 

 

 相変わらず大地の仕草を真似しつつはしゃぐバルの雛。それを見つめる大地とアスナ。

 

 

 アスナ「まさかこの子の親たちも、レッドマン達に殺られていたなんてね…。」

 

 

 どうやらバルの事情を真美から聞いたみたいである。

 

 そう、このバルの雛は仮にもレッドマン達に殺された親たちが遺した卵から孵化したモノなのだから…。

 

 

 二人はそんなバルに対し、同情の気持ちが湧き始めていた。

 

 

 大地「そうなら、せめてこの子だけでも、しっかりと守ってやらないとな。」

 

 アスナ「で、今後どうするの?この子を。」

 

 大地「もはやこの子には親はいない…俺たちの世界に帰る時、一緒に連れて行くか検討中だ。」

 

 アスナ「…それってもしかして…。」

 

 

 大地とアスナのやり取りを心配そうに見つめるバル。

 

 それに気づいた大地は大きく手を振った。

 

 大地「大丈夫だよバル!」

 

 それを見たバルも、安心と同時に大地の真似として大きく手を振った。

 

 

 大地「全く、真似ばっかりするんだから…。」

 

 大地はそう言いながら、楽しそうつつも少し呆れるような顔でバルを見つめる。

 

 エックス「ははは、随分と懐かれてるな、大地。」

 

 

 アスナ「まるで、ユナイトしてるみたいね…。」

 

 大地「え?」

 

 アスナ「大地とあの子。大地が何かすればあの子も同じ動きをする…それって、お互い繋がってると思わない?」

 

 エックス「なるほど、親子なだけじゃなくて、信頼し合える友としてユナイトしているからこそ…か。」

 

 大地「はは…そうかもしれないね。生まれて俺を見たその時から、とっくにユナイトしていたのか…。」

 

 大地とアスナは笑顔で見つめ合った。

 

 

 大地(父さん…母さん…俺また、夢に一歩近づけた気がするよ…。)

 

 

 その時、

 

 

 ガイ「へぇ~…今度は怪獣のお母さんになったのか大地。」

 

 

 大地「はい………えっ!!?」

 

 

 突然横からガイに話しかけられた大地は、振り向くと同時に驚く。

 

 

 ガイ「よぉ、久しぶりだな大地。」

 

 

 大地「ガイさん!」

 

 エックス「久しぶりだな。」

 

 アスナ「え…この人が、大地の言ってたガイさん?」

 

 

 大地(エックス)とガイ(オーブ)は、かつてガイの世界の地球にて『宇宙魔女賊ムルナウ』の野望を阻止するために共に戦った事があるため、既に顔見知りなのである。

 

 

 大地「ガイさんもこの世界に来ていたのですね。」

 

 ガイ「あぁ、この世界にも色々と異変が起きてるからな。」

 

 

 アスナ「それにしても…どうしてピグモンも一緒なのですか?」

 

 アスナは、ガイのお供をしているピグモンが目についた。

 

 

 ガイ「え?…まぁ、色々あってな。」

 

 大地「まぁ、彼は銀河の風来坊だから、きっと旅先で出会ったんだよ。」

 

 エックス「色々あるものなんだな。風来坊は。」

 

 

 ガイ「そういう事ですエックスさん。 それより大地、何やらあの子(バル)のお母さんになったらしいじゃないか。」

 

 大地「そうなんですよ。あいつ生まれてすぐ見た俺を、刷り込みで親だと思ってるみたいなんです。」

 

 ガイ「すり…こみ?」

 

 大地「動物の赤ちゃんが、生まれて最初に見たモノを親だと思い込む現象の事です。」

 

 

 ガイ「そうか…だいたい分かった。」

 

 

 次に大地は、少しかしこまって話し始める。

 

 大地「あの子の親は、もういないんですよね…。」

 

 ガイ「もしかして、レッドマン達の仕業か?」

 

 大地「え?ガイさんもレッドマン達の事を知ってるのですか?」

 

 ガイ「あぁ、なんでも奴らは無差別に怪獣などを襲っていった事で死刑判決が出た、この世界の光の国の犯罪者らしいからな。」

 

 

 エックス「流石は銀河の風来坊…。」

 

 アスナ「何でもお見通しって事ね…。」

 

 ガイの知識に感心するエックスとアスナ。

 

 

 最も、ガイがレッドマン達の事を知っているのは、病院での櫂達のやり取りを盗み聞きしたお陰なのだが…(笑)

 

 

 ガイ「俺はさっき奴と一戦交えて来た…なかなかの手強い奴だった。」

 

 大地「実は、俺の世界にも奴は攻めて来ました…。」

 

 ガイ「何?奴が大地の世界にも?」

 

 大地「はい。俺たちは、奴に連れられる形でこの世界に来たのです…。奴はとにかく怪獣を憎み、怪獣ばかりを狙う奴でした。」

 

 ガイ「奴らは歪んだ正義により、道を誤り、今や最大の敵になってしまったからな…。だからせめて、倒す時は正義の心を存分にぶつけてやろうと俺は決めたんだ。」

 

 大地「俺もそうしようと思います。」

 

 

 大地はレッドマンと戦う前、エクスデバイザーの解析機能『ガオディクション』によりレッドマンを解析したのだが、感情のほとんどが“攻撃”や“殺意”しかなかったため、既に共存は不可能だと判断していたのだ。

 

 

 大地「倒す前に、少しでも奴に、怪獣の正義の力を感じてもらえたらなと…俺はそう思っています。」

 

 エックス「大地らしくて良い判断だな。」

 

 大地「エックス…。」

 

 エックス「じゃ、そのためにも、次戦う時は全力を出そう。」

 

 大地「そうだね。」

 

 

 大地とエックスは改めて硬く決心した。

 

 

 ガイ「ふっ…更に立派になってるな、大地。」

 

 

 その時、大地はふと父親の形見でもある『古代怪獣ゴモラ』のスパークドールズを取り出す。

 

 

 ゴモラのスパークドールズは何やらバルの方を向いてカタカタと揺れていた。

 

 どやら大地の心友でもあるゴモラは、大地と仲良くなっているバルに焼餅をやいているようである。

 

 大地「ははは、妬くなよゴモラ。今日からお前の新しい友達だ。」

 

 そう言われるとゴモラの動きが止まった。どうやら大地の言葉を素直に聞き入れ、バルを友達として認識したみたいである。

 

 

 大地「ゴモラも、「よろしく」って言わないとね。」

 

 

 大地たちのやり取りを見たガイは、バルを大地たちに任せる事に決めた。

 

 ガイ「どうやら、あの子は大地たちに任せて大丈夫そうだな。行こう、ピーちゃん。」

 

 ピグモン「ピー!」

 

 

 だが、その時!

 

 

 デニス「うっひょふお~! 狩り甲斐のある怪獣がいるじゃねーか!!」

 

 

 大地「!」

 

 ガイ「誰だ!」

 

 

 その時!突如どこからか飛んで来た数発の光弾がバルの足元で爆発する!

 

 突然の爆発にバルは驚くと同時に怯え、縮こまってしまう。

 

 

 大地「バル大丈夫か!?」

 

 

 デニス「やっぱ怪獣を撃つのは楽しいぜぇ~!」

 

 

 ガイ「…ッ!!」

 

 

 一同は声のした方を振り向く。そこには、パワードアーマーを着たノワール星人デニスが立っていた。

 

 

 デニス「よ~ぉ!初めましてだっけなぁ!」

 

 不気味なハイテンションで一同に挨拶をするデニス。

 

 

 突然の怪しい宇宙人の登場。ガイはファイティングポーズで身構え、大地とアスナはジオブラスターを引き抜いて向ける。

 

 

 ガイ「随分と荒っぽい挨拶だな!」

 

 アスナ「アンタ…宇宙人!?」

 

 

 デニス「おいおい!何俺様に物騒なモン向けてんだよぉ!」

 

 アスナ「物騒なのはアンタでしょ! いきなりバルの雛を撃って!」

 

 デニス「雛?…ハッ!アイツやはりあの卵から孵ったのか!」

 

 大地「お前…バルの雛を狙っていたのか!?」

 

 

 デニス「その通り! 生まれたての雛ほどいい悲鳴を上げるからなぁ! 狩らせてもらうぜヒャッハー!!」

 

 

 そう言うとデニスは、再びバルに光弾を連射する!

 

 

 バルは光弾が足元で爆発する中、怯えながらも逃げ回り、やがて岩崖の壁にうずくまる。

 

 

 アスナ「止めなさい!!」

 

 

 アスナは叫びながらジオブラスターを連射するが、デニスの来ているパワードアーマーは頑丈で光弾を易々とはね返してしまう。

 

 

 デニス「ふぅ~…そんなの痛くも痒くもねーなぁ~!!」

 

 アスナを挑発するように嘲笑うデニス。

 

 

 アスナ「このっ!!」

 

 

 アスナは銃をしまうと、格闘戦に切り替えてデニスに駆け寄る。

 

 アスナは駆け寄りながら右足蹴りを繰り出すが、デニスはそれを左腕で易々と受け止める。

 

 続けてアスナはハイキックを放つが、デニスは体を反らしてそれを避けた後、右足蹴りを放つがアスナはそれを両腕で防ぐ。

 

 次にデニスは右フックを繰り出すがアスナはそれをしゃがんでかわすと同時にデニスの下半身に組み付く。

 

 そしてそのまま、右足を後ろ向きに大きく振り上げてデニスの頭部に蹴りを叩き込む!これぞアスナが得意とする蹴り技『スコーピオンキック』である!

 

 

 デニス「ふぅ~…いい蹴り持ってるね~。でも、まだまだぁー!!」

 

 頭部を蹴られたデニスは思わず後退するが、すぐさま体勢を立て直し襲い掛かる!

 

 デニスはアスナに飛び掛かりつつ右膝蹴りを放つ!

 

 アスナはそれを両腕で防ごうとしたが、威力の大きさに防ぎきれず、吹っ飛んでしまう!

 

 

 大地「アスナ!」

 

 

 吹っ飛んで地面を転がるアスナ。

 

 アスナ「ぐっ…なんて強さなの…!」

 

 

 デニスは余裕そうに笑いながらアスナに接近する。

 

 デニス「このパワードアーマーはなぁ…俺様に底知れぬパワーを与えてくれんだよ!」

 

 

 アスナは反撃としてパンチを繰り出すが、デニスはその腕を掴んで受け止め、そのままねじ込み始める…!

 

 

 デニス「貴様のような小娘に、負けるはずはねーんだよ…ヒヒヒヒヒヒ…。」

 

 

 余裕の笑みを見せるデニス。その時!

 

 

 ガイ「伏せろ!!」

 

 

 突如ガイの叫びが聞こえ、デニスは思わず向こうを向き、アスナはすぐさまその場でしゃがむ。

 

 

 すると、ガイはアスナを飛び越え、デニスに強力な跳び蹴りを叩き込んだ!

 

 

 “ドガッ”

 

 デニス「ぐおはっ!!?」

 

 

 蹴りをモロ胸に喰らったデニスは吹っ飛び地面に落下するが、すぐに立ち上がる。

 

 更にその隙に、大地がジオブラスターにウルトラブースターをセットして構えていた。

 

 

 《ウルトラマンの力を、チャージします》

 

 

 大地「行っけーっ!!」

 

 

 大地は引き金を引き、反動でバランスが崩れそうになりつつも必殺光線をデニスに放つ!

 

 

 デニスはすぐさまそれを両腕をクロスさせて防ぎ、吹っ飛びそうになりつつも力ずくで光線を後ろに弾き飛ばした!

 

 弾き飛ばされた光線はデニスの背後で大爆発を起こし、大きな爆炎が立ち昇る。

 

 

 デニス「ふぅ~…危なかったぜ。」

 

 大地「そんな…ウルトライザーも効かないなんて…!」

 

 エックス「コイツのアーマーは、とてつもない強度だ!」

 

 

 動揺する大地たちにデニスは話しかける。

 

 デニス「俺様はあの怪獣を狩りに来ただけだ! 邪魔すんなっての!」

 

 

 ガイ「お前…さてはレッドマン達の仲間か?」

 

 デニス「お! 分かった? その通り! いや~流石ガイ!察しが鋭いね~!」

 

 

 大地「一つ聞こう。何故レッドマン達の仲間になり、怪獣たちを狩るんだ!?」

 

 

 デニス「決まってんだろ!? 楽しいからだよ~ん! 狩る時の快感!狩られる怪獣の悲鳴は最っ高だぜぇ~!」

 

 

 もはや清々しいほどの邪悪な本性を見せるデニスに、大地たちは怒りが沸々と湧いて来る。

 

 

 大地「最低だな!お前!」

 

 

 デニス「最低? フッハハハハ! 最っ高の褒め言葉だぜぇ~!! ヒャハハハハハ!!」

 

 

 やがてデニスは、視線をバルに向ける。

 

 デニス「おっと!こうしてる暇じゃねー…さっさとアイツ狩るとすっか! 出でよ!!レッドキラー!!」

 

 

 デニスの叫びと共に、激しい地響きと共に地面から勢いよく土砂が巻き上がり、やがて一匹の怪獣が地上に現れる!

 

 

 現れたのは、デニスの手先である怪獣兵器『ブーメラン怪獣レッドキラー』である!

 

 

 大地「怪獣まで引き連れていたのか!」

 

 

 デニス「そうだ!レッドキラーは我がノワール星の技術で作り上げた自慢の怪獣兵器だ!」

 

 

 《ガオディクションを、起動します》

 

 

 大地はすぐさまデバイスでレッドキラーを解析する。しかし、解析の結果は…

 

 

 《攻撃、殺意》

 

 

 大地「仲間なだけあって、その感情はレッドマン達と同じって事か!」

 

 

 デニス「ふっふっふ…やれ!レッドキラー!」

 

 

 デニスの指示を受け、レッドキラーは手始めに口から爆発性のあるガスを噴射する!

 

 ガスを浴びた地面は大爆発を起こし、炎上した。

 

 

 バルが爆発の炎に怯えている隙に、レッドキラーは両手に装備したブーメラン『カミソリブーメラン』を投げつける!

 

 

 レッドキラーの脳波でコントロールされるブーメランは高速回転し、複雑な軌道を描きながら飛び、やがてバルの近くの岩山に命中した!

 

 ブーメランが命中した岩山はいとも容易く切り崩れた!

 

 

 デニス「どーだ!カミソリブーメランの切れ味は!! 次は直接当てちゃうぞ~!?斬っちゃうぞ~!?」

 

 

 大地「なんて切れ味なんだ!」

 

 エックス「このままじゃあ、バルが危ないぞ!」

 

 

 バルの絶体絶命の危機!

 

 

 …その時、大地は遂に決心した。

 

 

 大地「…俺…行くよ。」

 

 

 アスナ「行くんだね…大地。」

 

 

 大地「あぁ。奴(レッドキラー)を倒すだけじゃない…バルも助けに。」

 

 エックス「大地…もしかして…。」

 

 

 ガイ「そうか…じゃあ、行って来い大地。コイツ(デニス)は俺に任せろ。」

 

 

 大地「…はい!」

 

 

 遂に大地はレッドキラーの方に向かって走り始める。

 

 この時大地は、レッドキラーと戦う事の他に、“ある事”を決断していた…。

 

 

 やがてレッドキラーの近くにまで来た大地は立ち止まる。

 

 

 大地「エックス! ユナイトだ!」

 

 エックス「よし、行くぞっ!」

 

 

 今こそユナイトの時だ!

 

 大地はエクスデバイザーの上部ボタンを押して側面のパーツをX字に展開して“Xモード”に変形させ、現れたエックスのスパークドールズを手に取ってリードする。

 

 

 《ウルトラマンエックスと、ユナイトします》

 

 

 大地「エックスー!」

 

 

 大地はエクスデバイザーを高く揚げて叫び、X字の光に包まれる。

 

 

 エックス「イーッサアアアッ!」

 

 

 《エックス、ユナイテッド》

 

 

 ナビ音声と共に、大地とのユナイトが完了したウルトラマンエックスが光の中から右拳を突き出して飛び出す!

 

 

 現れたエックスは、サイバーテイストの光と共に着地していき、そして着地時に土砂が円を描く『スパイラル着地』を決める!

 

 

 着地を決めたエックスはゆっくりと起き上り、ポーズを決める。

 

 

 デニス「現れたなぁ…ウルトラマンエックス!」

 

 デニスはガイと格闘しながら、エックスの出現に気付く。

 

 

 エックスは拳を一回地面に当てると、レッドキラー目掛けて飛び掛かる!

 

 そしてあわやバルにブーメランを飛ばそうとしていたレッドキラーに両腕をX字に組んだチョップを叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 レッドキラーは体勢を立て直してエックスに襲い掛かる。

 

 エックスはレッドキラーの右フックを左腕で受け止め、右拳で叩き落とした後、続けてレッドキラーが打ち込んで来た左右から挟み込みようなパンチを両腕で受け止めると、腹部に右足蹴りを打ち込んで後退させる。

 

 レッドキラーは再度右フックを繰り出すが、エックスはそれをしゃがんでかわすと同時に後ろに回り込み、背中に右腕を叩き込む。

 

 その後エックスはレッドキラーにヘッドロックを掛け、そのまま跳躍して落下スピードを活かして地面に叩き付けた!

 

 

 エックスは更に攻撃を加えようと接近するが、隙を突かれてレッドキラーの右腕での足払いを喰らい倒れてしまう。

 

 レッドキラーはマウントを取ろうと襲い掛かるが、エックスはすぐさまレッドキラーの腹を蹴って後退させ、跳ね起きで起き上る。

 

 

 大地・エックス「Xクロスチョップ!」

 

 

 エックスは右手にエネルギーを集め、X字に斬り裂くように放つチョップ『Xクロスチョップ』を放ち、更にそこに両拳でのパンチを叩き込む!

 

 レッドキラーは爆発と共に吹っ飛び、地面を転がる。

 

 

 エックスの連撃により押され始めたレッドキラー。ガイと組み付きつつもそれに気づいたデニスは…、

 

 デニス「フッ…レッドキラーめ、手間取ってんな。」

 

 

 すると、視線をエックスを応援するバルに向ける。

 

 デニス「よーし、こうなったら!」

 

 

 するとデニスは、バル目掛けて左腕を突き出して一つの光弾を放つ!

 

 

 光弾を受けたバルは、何やら体中に紫のオーラを放ちながら苦しむような仕草を見せる!

 

 

 アスナ「どうしちゃったのバル!」

 

 ガイ「貴様!バルに何をした!」

 

 

 デニス「ふふふ…奴には一旦、操り人形になってもらいますぜ~!」

 

 

 ガイ「何だと!?」

 

 

 そう、デニスがバルに放ったのは、アーマーの左腕に装備されている、怪獣を洗脳する光弾『ダークサンダーボール』なのである!

 

 

 アスナ「バル!しっかり!」

 

 

 だが、アスナの呼びかけも空しく、やがてバルは目が赤く発光し、咆哮を上げる。

 

 洗脳され始めたのである!

 

 

 レッドキラーの頭突きを喰らい後退するエックス。それをバルが羽交い締めにするように受け止めた。

 

 

 大地「あぁ、サンキューバル。早く安全な所へ。」

 

 

 エックスはレッドキラーに向かおうとするが、バルはエックスを羽交い締めにしたまま放さない。

 

 

 エックス「何っ!?」

 

 大地「どうしたんだバル!」

 

 

 デニス「フッハハハハ!! どうだ!自分の子供に裏切られる思いは!!」

 

 

 大地「何だって!」

 

 エックス「お前!バルに何かしたのか!?」

 

 

 デニスの言葉で、大地とエックスもバルが操られている事に気付く。

 

 

 デニス「今だレッドキラー!!」

 

 

 レッドキラーはエックス目掛けて両手のカミソリブーメランを投げつける!

 

 ブーメランは飛び回りながらエックスに命中して切り裂いていく!

 

 

 しかもよく見ると、ブーメランはエックスを斬り裂くと同時にバルにも命中しているのだ!

 

 

 やはりデニスにとってバルは、今は操っているとはいえ所詮は狩る対象の怪獣…エックス共々殺してしまおうと考えているのであろうか…?

 

 

 レッドキラーは一旦ブーメランを両手にしまい、既に勝ち誇るように雄たけびを上げる。

 

 

 デニス「フハハハハハ!!ウルトラマンを殺すと同時に怪獣も殺せる! これぞ正に一石二鳥!! さぁ、怪獣のガキ共々死ぬがいい!!」

 

 

 エックスと共にダメージを受けたバルは一旦エックスを放す。

 

 

 エックス「バル、しっかりするんだ!」

 

 エックスはバルの肩に手を置き必死に語り掛けるが、バルはエックスの腕を振り払い、翼をバタバタさせながら殴り掛かるが、エックスはそれを往なしつつなお必死に呼びかける。

 

 

 大地「バル!俺だ!!分かるだろ!!」

 

 

 …すると、バルの攻撃の手が止まった。

 

 大地「…バル?」

 

 

 すると、バルはなにやら頭を抱えて苦しむような素振りを見せ始める。

 

 

 どうやら自分にとっての母親・大地の声が聞こえたバルは、少しだけ意識が戻りつつあるようである!

 

 

 エックス「やった。どうやら大地の声が届いたみたいだぞ。」

 

 大地「バルは…戦ってるんだ。自分を支配しようとする闇のエネルギーと。」

 

 

 デニス「何だと!?」

 

 自身の洗脳機能が狂い始めた事に動揺が隠せないデニス。

 

 

 ガイ「ふっ、残念だったな。今や大地とあの怪獣は強い絆でユナイトしている。」

 

 アスナ「アンタの安っぽい洗脳なんかで、簡単に途切れるはずがないのよ!」

 

 

 デニス「くっそ~こんな筈が…!」

 

 

 デニスは動揺している隙に、組み合っていたガイの右脚のハイキックを頭部に喰らい吹っ飛ぶ!

 

 

 大地「バル…待っててくれ。すぐに助けてやるから。」

 

 

 バルにそう語り掛けた大地。エックスは体勢を立て直し、レッドキラーに駆け寄る!

 

 

 エックスは駆け寄りながらの右肩での体当たりをレッドキラーの胸部に決めると、続けて腹部に右拳、左拳と交互にパンチを打ち込む。

 

 レッドキラーは反撃として左フックを放つが、エックスはそれを左腕で受け止め、そのまま右手で頭部の突起を掴んで押さえ込む。

 

 

 アスナ「一緒に行こう…ゴモラ。」

 

 アスナは、Xioがゴモラのスパークドールズを解析して得られたデータを元に作り上げたサイバー怪獣『電脳怪獣サイバーゴモラ』のサイバーカードを取り出し、ジオデバイザーにリードする。

 

 

 《サイバーゴモラ、ロードします》

 

 

 ナビ音声と共にジオデバイザーから現れたサイバーゴモラのスパークドールズをアスナは手に取り、ライブサインをリードする!

 

 

 《リアライズ!》

 

 

 ナビ音声と共に、アスナの前方にサイバーテイストのエフェクトと共にサイバーゴモラが実体化して現れた!

 

 

 アスナが脳波コントロールするサイバーゴモラは、エックスと組み合うレッドキラーに向かい突進し、頭部の角を活かした体当たりを叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 アスナ「私もゴモラと共に戦うわ!」

 

 

 大地「アスナ…ゴモラ…ありがとう。」

 

 エックス「よし、一気に決めますか!大地!」

 

 大地「あぁ、こっちも行くぞ!」

 

 

 大地は、目の前に現れたエクシードXのスパークドールズを手に取り、エクスデバイザーにリードする。

 

 

 《ウルトラマンエックス、パワーアップ!》

 

 

 ナビ音声と共に現れた虹色の剣『エクスラッガー』を手に取った大地は、側面にあるパネルをスライドタッチして刀身にエネルギーを集中させた後トリガーを引く。

 

 

 大地・エックス「行くぞっ! エクシード、エーックス!」

 

 

 大地はエックスと共に叫びながら、エクスラッガーをX字に振るう!

 

 

 エックスはサイバーテイストの光と共に、黒や青の割合が増えたボディに、サイバーテイストのエフェクトを思わせる虹色のラインディテールが走っているのが特徴の姿に変わり、エクスラッガーは額に装着される!

 

 

 エックスは、大地とエックスが更に強固なユナイトを成した強化形態『ウルトラマンエクシードX』に強化変身したのだ!

 

 

 (BGM:ウルトラマンX)

 

 

 現れたエクシードXは、サイバーゴモラを横に、サイバーテイストのエフェクトを発しながらポーズを決める!

 

 

 そして、エクシードXとサイバーゴモラは共にレッドキラー目掛けて駆け始める!

 

 

 エックス・大地・アスナ「俺(私)達は一心同体!!」

 

 

 エクシードXは側転しながらレッドキラーに接近すると、腹部に前蹴りを決め、次にレッドキラーが反撃で放った右フックを右の手刀で弾き返した後、胴体に切り裂く様なチョップを流れるように連続で打ち込む!

 

 レッドキラーは両腕で殴り込むが、エクシードXはそれをかわすと同時に上空にジャンプし、そしてバトンタッチするようにサイバーゴモラが接近する。

 

 サイバーゴモラはレッドキラーの胴体に体当たりを決めるがレッドキラーはそれに耐え切り、そして両者はそれぞれ巨大な腕の爪、両手のブーメランを活かしたパンチの応酬を始める!

 

 怪獣同士の激しいパンチの応酬の末、サイバーゴモラの右フックがレッドキラーの頭部に決まり、その部位から火花が飛び散る!

 

 そしてサイバーゴモラはレッドキラーの胸部に爪を活かしたパンチを決めて後退させた後一旦しゃがみ、そしてエクシードXがサイバーゴモラの背中に手を付いて跳び越えるように跳躍し、レッドキラーの胸部に跳び蹴りを叩き込む!

 

 続けてエクシードXはレッドキラーの胸部に左右交互にパンチを決め、右足蹴りを打ち込んだ後、頭部から両腕で掴み、サイバーテイストのエフェクトを発しながら豪快に放り投げた!

 

 

 大地・エックス「エクスラッガー!」

 

 エクシードXは額に手をかざし、虹色の光と共にエクスラッガーを取り外し、ポーズを決める。

 

 

 レッドキラーは両手からカミソリブーメランを投げつける!

 

 サイバーゴモラは両腕を顔の前に立てる事でブーメランを防いだ。

 

 サイバーゴモラに防がれたブーメランは今度はエクシードX目掛けて飛ぶ!

 

 

 エクシードXは飛んで来るブーメランを、エクスラッガーをX字に振るう事で撥ね返す!

 

 

 レッドキラーの脳波でコントロールされているブーメランは、再びエクシードXに向かう!

 

 

 大地はエクスラッガーのスライドを2回タッチしてトリガーを引く。

 

 

 大地・エックス「エクシードスラーッシュ!!」

 

 

 エクシードXは、高速で何度も斬りつける技『エクシードスラッシュ』を放つ!

 

 

 残像が残るほどの高速のスピードで繰り出される斬撃は、ブーメランを滅多切りにしていき、やがて完全に破壊し爆発させた!

 

 

 自慢の武器を破壊されたレッドキラーは動揺を隠せない。

 

 

 サイバーゴモラは前転して尻尾浴びせ攻撃『大回転打』をレッドキラーの頭部に叩き込み、続けてエクシードXも前転して浴びせ蹴りをレッドキラーの頭部に叩き込む!

 

 

 そして、エクシードXとサイバーゴモラのそれぞれエクスラッガーと爪を活かした斬撃の同時攻撃を胸部に喰らい吹っ飛んだ!

 

 

 エクシードXとサイバーゴモラの連携攻撃により、完全にグロッキーとなったレッドキラー。今こそ決める時である!

 

 

 エックス「決めるぞ!大地!」

 

 大地「おぅ!」

 

 

 エクスラッガーを一旦額に収納したエックス。大地はエクスラッガーを額にかざし、逆方向にスライドタッチをし、エックスもそれに合わせて額をなぞる事でエクスラッガーに虹色の光エネルギーが溜まって行く…!

 

 

 アスナ「ゴモラ!サイバー超振動波よ!」

 

 

 アスナの指示を受けたサイバーゴモラは、エネルギーを両腕のクローと角に集め、レッドキラーに高速で接近し、ゼロ距離で『サイバー超振動波』を浴びせる!

 

 そしてある程度振動波を流し込んだ後、レッドキラーを頭上高くかち上げた!

 

 

 やがてエネルギーが完全にチャージされたエクシードX。大地はエクスラッガーのトリガーを引いた!

 

 

 大地・エックス「エクスラッガーショット!!」

 

 

 エクシードXは、額のエクスラッガーから必殺光線『エクスラッガーショット』を放つ!

 

 

 強力な虹色の必殺光線は上空のレッドキラーを直撃し、それを受けたレッドキラーは大爆発して砕け散った…!

 

 

 見事レッドキラーを撃破したエクシードXとサイバーゴモラは、爆発を背景にポーズを決め、そして互いの腕をクロスさせた。

 

 

 

 デニス「あぁっ!バカな!! 俺様の自慢の怪獣兵器レッドキラーが!!」

 

 ガイ「今だ!」

 

 ガイは、デニスが動揺している隙に、スライディングで接近しながらデニスの腹部に強力な右足蹴りを叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 デニス「ぐはっ!! おのれー!!」

 

 デニスはガイ目掛けて光弾を発射するが、ガイはすぐさま『ウルトラマン』のカードを取り出してそれでガードし、はね返された光弾はデニスに直撃して大爆発した!

 

 デニス「ぐぉは~!!?」

 

 光弾を喰らい大爆発したデニスは爆風に包まれる…。

 

 

 ガイ「くじけない限り…俺たちウルトラマンは決して負けることは無い。」

 

 

 

 大地「ゴモラ、ありがとう。」

 

 アスナ「お疲れ様。」

 

 大地とアスナから感謝と労いの言葉を受けたサイバーゴモラは、咆哮を上げた後、消滅した。

 

 

 再びエクスラッガーを取り出したエクシードXは、なおもダークサンダーボールの力で苦しんでいるバルの方を振り向く。

 

 

 大地「今助けてやるからな、バル。」

 

 

 大地はエクスラッガーのスライドタッチを3回行い、ブーストスイッチを押す。

 

 

 大地・エックス「エクシード、エクスラッシュ!!」

 

 

 エクシードXはエクスラッガーを地面に立て、自らとバルを虹色のオーラで包む。

 

 そして高速で飛びながら、虹色に光るエクスラッガーですれ違いざまに2度斬りつけた。

 

 

 これぞ、エクシードXが最も得意とする技で、相手に宿った闇のエネルギーを無効化する究極技『エクシードエクスラッシュ』である!

 

 

 エクシードエクスラッシュを受けたバルは、紫のオーラを発散していき、やがて赤く光っていた目が元に戻った。

 

 ダークサンダーボールの力は無事完全に無効化されたのである。

 

 

 バルを元に戻したエクシードXは、光に包まれやがて通常のエックスに戻る。

 

 

 正気に戻ったバルは、あどけない表情でエックスを見つめる。

 

 

 大地はしばらく考え込んだ後、バルにこう言った。

 

 

 大地「バル…一緒に行こう。 平和の星…俺たちの世界へ。」

 

 

 …その言葉を受けたバルは、目から一粒の涙をこぼした…。

 

 まだ赤ちゃんなので言葉の意味は分からないかもだが、恐らく大地の優しさを感じたのだろう…。

 

 

 アスナ「大地…もしかして…。」

 

 

 アスナが何かを察した時、エックスは右腕を胸に当て、横に広げた後、両腕を左へ大きく振りかぶりながら左脚で踏ん張りってエネルギーを溜め、その際に足の裏から周囲にエネルギーの余波が放射される。

 

 

 大地・エックス「ザナディウム光線!」

 

 

 エックスは腕をX字に組んで光線技『ザナディウム光線』を発射する!

 

 

 これはエックスが最も得意とする光線技で、大地とエックスのユナイトが最高潮に達した際に使用可能になる。

 

 そして、相手に命中すると大爆発を起こし、その後怪獣を殺す事なく、データ化してスパークドールズに圧縮するという変わった能力を持っているのである。

 

 

 ザナディウム光線はバルに命中し、バルは大爆発を起こした後、無数の粒子状の光が一転に集中していき、やがてスパークドールズへと圧縮された。

 

 

 大地「…これでいいんだ…。」

 

 大地が変身前に決心した事とは、レッドキラーを倒し、バルを助け、そしてスパークドールズにするという事だったのである。

 

 

 

 大地はエックスとのユナイトを解除した後、バルのスパークドールズを拾い上げてアスナと合流する。

 

 アスナ「本当に、これで良かったの?」

 

 大地「あぁ、この子はもう親もいない、この世界では生きていけない存在だったんだ。だから、俺たちの

世界へ連れて行く。」

 

 エックス「なるほど、この子のいい住み家を作ってやるつもりだな。」

 

 大地「あぁ。いつか、怪獣たちの住みやすい環境が整ったら、他の怪獣たちと共にこの子も元の姿に戻すつもりだ。」

 

 アスナ「そっか…じゃあそうなるまで、頑張ろうね。」

 

 大地「あぁ。 (バルを見つめながら)待っててね…君にピッタリのいい住み家を作ってやるから。」

 

 

 大地の新たな決心を受け止めたガイも、後押しの言葉を掛ける。

 

 ガイ「頑張れよ、大地。」

 

 大地「はい!」

 

 

 ガイ「これでひとまず、一件落着だな、な、ピーちゃん。」

 

 そう言いながらガイはピグモンに話しかけるが…、

 

 

 ガイ「…あれ?…ピーちゃん…?」

 

 

 どうした事か、ガイの横にいるはずのピグモンの姿が見当たらず、ガイを始め一同は辺りを見渡す。

 

 

 デニス「ふっふっふ…まだ終わってねぇだろぉ! まだよぉ!!」

 

 

 デニスの声のした方を振り向くと、そこにはデニスが、アーマーの右腕からのレーザーロープでピグモンを捕えて立っている姿が!

 

 驚愕する一同。デニスはまだ生きていたのである!

 

 

 アスナ「デニス!?」

 

 ガイ「貴様…まだ生きていたのか!」

 

 デニス「ケッ…パワードアーマーで覆われた俺様があれぐらいで死ぬかよ!」

 

 

 そう言いながらデニスは必死にもがくピグモンを自身の所に引き寄せる!

 

 

 ガイ「ピーちゃんを放せ!」

 

 デニス「そうして欲しければ、俺様たちに勝ってみるんだなぁ!」

 

 ガイ「何!?」

 

 

 そう言うデニスの背後に、レッドマンとハヌマーンが着地する!

 

 

 大地「レッドマン!…それに、あれがハヌマーンか…!」

 

 

 レッドマンはデニスと彼が捕えたピグモンを手に乗せる。

 

 

 デニス「予告する! 明日の夜明け、陽が昇った頃に月面に来い! そこで決着を付けてやる。 俺たちに勝てなければ、コイツ(ピグモン)の命もないぜ~!」

 

 ガイ「明日の朝に決闘だと?」

 

 

 すると今度はレッドマンがガイに指差しながら呼びかける。

 

 レッドマン「今度こそ…お前…倒す!」

 

 

 デニス「という事だ!せいぜい己の技を磨いて来るんだなぁ~! ヒャッハハハハハハ~!!」

 

 

 デニスの高笑いと、ピグモンの助けを求める悲鳴が響く中、レッドマンとハヌマーンは彼らを連れて飛び去って行った…。

 

 

 ガイ「おいっ!!………くっ…!」

 

 ピグモンを攫われたガイは、悔しさから握った拳を降ろしたまま少し俯く。

 

 

 エックス「どこまでも卑劣な奴らだ。」

 

 アスナ「それに罪もない怪獣を人質にするなんて…。」

 

 

 大地「…ガイさん…戦いましょう。」

 

 

 大地の言葉に一同は反応する。

 

 

 大地「今度こそ奴らに、本当の正義と言うのを見せてやるのですよ。」

 

 

 するとガイは大地の元に歩み寄り、そして大地の胸に拳を当てる。

 

 

 ガイ「そうだな…揺るぎない強い意志…それを持ち続ければ、必ず勝機はある。」

 

 大地「ガイさん…。」

 

 

 ガイ「諦めず前を向いたその時、限界を超える…。俺たちウルトラマンはそうやって正義のために戦って来た…今こそその正義を、奴らに見せてやる時だな!」

 

 大地「はい!」

 

 

 決心を決めたガイと大地は、握手を交わした。

 

 

 大地「必ず、勝ちましょう。」

 

 ガイ「あぁ。」

 

 

 その時、

 

 

 ヒカル「それなら、俺たちも手を貸すぜ。」

 

 

 レッドマン達を追っていたヒカルとショウも駆け付けた!

 

 

 大地「あなた達は!」

 

 ヒカル「久しぶりだな、大地。」

 

 ショウ「随分と立派になったじゃないか。」

 

 

 ガイ「大地、この方たちは?」

 

 

 ヒカル「俺は礼堂ヒカル。(ギンガスパークを見せて)ウルトラマンギンガ。」

 

 ショウ「俺はショウ。(ビクトリーランサーを見せて)ウルトラマンビクトリー。」

 

 

 ガイ「おぉ!ギンガさんにビクトリーさんですか。 初めまして。俺はクレナイ・ガイ。(オーブリングを見せて)ウルトラマンオーブだ。」

 

 

 オーブは以前ギンガとビクトリーとも共闘した事があるのだが、人間体としての対面はこれが初めてであるため、互いに自己紹介をした。

 

 

 ガイ「あの時は、力を貸してくれてありがとうございます。」

 

 ヒカル「ま、いいって事ですよ。」

 

 ショウ「俺たちウルトラマンは、助け合う者でもあるからな。」

 

 

 大地「ヒカルさんとショウさんも、この世界に来ていたのですね。」

 

 ヒカル「あぁ。同じウルトラマンとして、この世界を救うためにな。」

 

 

 アスナ「嘘…ウルトラマンが、こんなにも揃うなんて…。」

 

 

 一同は話し合った。レッドマン達の事を。そして、力を合わせて奴らを倒そうという気持ちが一致した!

 

 

 ヒカル「一緒に奴らを倒そうぜ。俺たちが力を合わせれば絶対に負けない。」

 

 ショウ「奴らに、真の正義の力というものを見せてやろうぜ。」

 

 大地「それに、(ゴモラのスパークドールズを取り出して)正義の怪獣の力も…。」

 

 ガイ「悪を挫き、平和を築くのがウルトラマンだからな。共に戦いましょう…!」

 

 

 遂に集結したニュージェネレーションヒーローズ!

 

 

 果たして光の国の指名手配犯・レッドマン達を倒す事は出来るのだろうか!?

 

 

 次回に続く!

 

 

 (ED:Unite~君とつながるために~)

 

 

 〈エピローグ〉

 

 

 先ほど、レッドマン達と一戦交え、手を組もうとしたが失敗した櫂は、一人道を歩いていた…。

 

 

 櫂「あ、そうだ。海羽のやつ、あれから元気になったかな…ちとお見舞いに入ってやろっと。」

 

 そう言いながら、病院への道を歩き始める。

 

 

 …心中ではまだ、怪獣への憎悪と、それ故のレッドマン達の仲間になり損ねた事への悔しさが残っているが…。

 

 

 櫂が道を歩いていると、とある一人の男とすれ違った…。

 

 

 すると、その男は何やら腰に下げていた剣を取り出す!

 

 

 …そう、櫂とすれ違った男は『ジャグラス・ジャグラー』であった。

 

 

 ジャグラー「どうした…急に闇のエネルギーが十分に溜まったぞ…。」

 

 

 そう言いながら『蛇心剣』を見つめるジャグラー。どうやら昨日から集めていた闇のエネルギーがいきなり一杯になったみたいである…!

 

 いきなりの事に驚くジャグラーだったが、嬉しさの方が勝ったのか、不敵な笑みになる…!

 

 ジャグラー「何だか知らねーが…これで目的のモノは揃った…! ふふ…フフフ…フフハハハハハハ…!」

 

 

 ジャグラーは高笑いをしながらどこかへと歩いて行った…。

 

 

 しかし、ジャグラーはまだ知るはずも無かった…。

 

 

 先ほどいきなり蛇心剣に集まった闇のエネルギーは、先ほどすれ違った“竜野櫂”から発せられたマイナスエネルギーからによるモノだという事を…!

 

 

 To Be Continued………。




 読んでいただきありがとうございます!


 今回の話で、ようやく念願だったニュージェネレーションヒーローズを全員本作に登場させる事が出来ました!


 次回はそんなニュージェネレーションヒーローズが、レッドマン達と最後の戦いを展開する、VSレッドマン&ハヌマーン三部作の最終章です!

 お楽しみに!


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています!


 今回隠れたサブタイトルは『平和の星』(ウルトラマンダイナ第33話)でした!


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第33話「輝け!ニュージェネレーションヒーローズ」

お待たせしました! VSレッドマン&ハヌマーン3部作も遂に完結編です!


また、いつもながらサブタイトルも1つ隠しております。


それでは、どうぞ!


 (プロローグ)

 

 

 宇宙空間で浮遊している宇宙船『テライズグレート』の船内にて『レッドマン』と『ハヌマーン』、そして『怪獣狩人ノワール星人デニス』が、『桜井敏樹』達と対話していた。

 

 

 敏樹「どうやら明日、ウルトラ戦士どもと決着を付けるみたいじゃないか。」

 

 デニス「イエース! 奴らを片付け終えたら、楽しい怪獣殲滅を再開するのさ!!」

 

 

 だが、『ナックル星人ゲドー』と『メフィラス星人キョウ』は、そんな彼らを皮肉る。

 

 ゲドー「あまり自惚れない方がいいぞ?」

 

 キョウ「ウルトラ戦士の力を甘く見てると痛い目に合うぜ?」

 

 経験者は語る。

 

 

 ハヌマーン「問題ない! ウルトラ戦士なんぞ、怪獣ども同様、切り刻んで、引ん剝いてやるぜ!」

 

 レッドマン「奴ら…怪獣殲滅に…邪魔な存在…!」

 

 ハヌマーンとレッドマンは、何やら余裕そうに返答した。

 

 

 ゲドー「フンッ、随分と余裕綽々みたいだな…どーせあれだろ? 奴らを倒した暁にはこの軍団に加入して、俺達から地位を横取りってか?」

 

 その時、突然デニスの声色が変わる。

 

 デニス「は?地位? そんなの興味ないね。」

 

 ゲドー「…へ?」

 

 レッドマン「俺たちが…求めるもの…怪獣…それに味方する者を…殲滅…!」

 

 ハヌマーン「それが、唯一俺達を満たしてくれるものだ!」

 

 三人の発言に、ゲドーとキョウは一気に恐怖を感じ始めた。

 

 キョウ「…こいつら…かなりヤベー奴らだ…!」

 

 

 ハヌマーン「それとも、この中の誰かが、今から俺達の相手をしてくれるってのか?」

 

 レッドマン「(レッドナイフを取り出し)誰だ…名乗れ…!」

 

 ゲドー「ヒィィ…!」

 

 キョウ「ぅぅぅ…。」

 

 

 一気に緊迫した空気になる!

 

 

 デニス「まあまあ、体力は明日の決戦までに取っておこうぜ!」

 

 ハヌマーン「それもそうだな。」

 

 レッドマン「見逃して…やろう…。」

 

 ゲドー「フゥゥ~…。」

 

 キョウ「助かった~…。」

 

 

 気を改めて、デニスは敏樹に語り掛ける。

 

 デニス「な~に、奴らには勝てますよ。人質も取ってますからね~。」

 

 そう言うと、デニスは人質として捕えている『友好珍獣ピグモン』に視線を向ける。

 

 

 デニス「それでは、俺様たちはここで失敬! よっしゃ!明日が楽しみだぜぇ~!ヒャッホーゥ!!」

 

 やがてレッドマン、ハヌマーン、デニスは船外へと出て行った…。

 

 

 敏樹は、窓から去って行く三人を見つめながら、ふと右の拳を胸に当て、小さく発光させる。

 

 敏樹「もし彼らまでやられてしまった時は…いよいよ俺がテラ様の力を解放する時が来るかもなぁ…!」

 

 

 

 (OP:英雄の詩)

 

 

 

 8月20日の夕方、竜野櫂と新田真美は、再び眞鍋海羽のお見舞いに来ていた。

 

 海羽「櫂君、真美ちゃん、本当に何度もありがとね。」

 

 真美「うぅん、気にしないで。海羽ちゃんも元気になってるみたいで良かった。」

 

 櫂「明日の朝にはもう退院出来るんだろ?」

 

 海羽「うん! 体もすっかり元気だよー! ほら、この通り。」

 

 海羽は元気よく両腕を伸ばしたり曲げたりするが、その際にうっかり右の拳を壁にぶつけてしまう。

 

 海羽「痛っ! いった~!」

 

 真美「大丈夫?」

 

 真美は痛がる海羽に慌てて心配しながら寄り添い、櫂はその光景を見て呆れるように笑う。

 

 そして、海羽の回復ぶりに安心した。

 

 櫂「完全に、いつもの海羽に戻ってるな。」

 

 

 櫂と真美は病室を後にする事にした。

 

 真美「それじゃあ、明日の朝また来るね。」

 

 海羽「うん、ありがとう。」

 

 海羽は満面の笑みで二人を見送った。

 

 

 病院を出た櫂と真美は、お互い別れて帰る事にした。太陽はもう沈みかけており、オレンジの光が街中を包んでいた。

 

 真美「それじゃあ、また明日ね。」

 

 櫂「あぁ。気を付けるんだぞ。」

 

 

 別れた二人はそれぞれ別の帰り道を歩き始めた。

 

 

 川沿いの帰り道をルンルンと歩いて行く真美。

 

 真美「海羽ちゃんも元気になった事だし、後はレッドマンとハヌマーンね…。」

 

 真美がそう呟いたその時、

 

 

 ガイ「その事なら、心配いらないぜ。」

 

 

 真美「…ん?」

 

 突如、何処かから聞こえる声に気付いた真美はふと前方を見据える。

 

 

 そこには、レザーコートを肩に被せ、テンガロンハットを被った男が、道沿いの手すりに座り込んでラムネを飲んでいるのが見えた。

 

 『ウルトラマンオーブ』に変身する『クレナイ・ガイ』である。

 

 

 真美はガイに恐る恐る声を掛けてみる。

 

 真美「あの~…貴方は一体…?」

 

 

 すると、ガイは立ち上がってレザーコートを着直し、真美の方を振り向く。

 

 

 ガイ「俺の事、覚えてないか? “トナカイの姉ちゃん”。」

 

 

 真美「トナカイの?…あ!」

 

 トナカイの姉ちゃんという言葉、そして彼が手に持つラムネの瓶で、真美は思い出した!

 

 

 真美「もしかして、あの時の“ラムネのお兄さん”?」

 

 

 真美は思い出した。昨年のクリスマスイブの日に、人混みの中でぶつかった人だという事を。(番外編『私のクリスマス』参照)

 

 

 意外な形でガイと再会した真美。

 

 

 一方、すっかり体が元気になった海羽は、少し夕方の散歩として病院の周辺を徘徊する事にした。

 

 

 海羽「ふぅ~…やっぱ体が元気って最高だね~!」

 

 

 その時、

 

 

 大地「良かった…すっかり元気になったみたいだね。」

 

 

 海羽「ん?」

 

 海羽は声のした方を振り向くと、そこには『ウルトラマンエックス』に変身(ユナイト)する青年『大空大地』と、『山瀬アスナ』の姿が。

 

 

 海羽「あの~…どなたですか?」

 

 エックス「いきなりですまない。海羽。」

 

 海羽「あ、その声はエックスさん?…て事は?」

 

 

 大地「初めまして、俺は大空大地。」

 

 アスナ「私は山瀬アスナ。よろしくね。」

 

 

 海羽「エックスさん…無事に大地さんと再会出来たんだ。」

 

 

 エックスと再会し、大地とアスナとは初対面の海羽。

 

 

 そして、真美と同じく帰り道を歩いている櫂。

 

 

 櫂「さてと、海羽が元気になって何よりだ…後は、レッドマンとハヌマーンをどうするかだなぁ…。」

 

 櫂は、先ほどの真美と同じことを不敵な笑みで呟いていた…。

 

 

 ゼロ「櫂…お前って奴はまた変な事を…」

 

 ゼロが櫂に何か言おうとしたその時、

 

 

 ヒカル「オッス、櫂さん。」

 

 ショウ「また会えたな。」

 

 

 話しかける声に気付いた櫂は前方を振り向くと、そこには『ウルトラマンギンガ』に変身(ライブ)する『礼堂ヒカル』と、『ウルトラマンビクトリー』に変身(ライブ)する『ショウ』の姿が。

 

 

 ゼロ「ヒカル、ショウ。」

 

 櫂「お…おぅ、また会えたな。」

 

 すぐさま“良人モード”になった櫂、そしてゼロは、二人に挨拶をし返した。

 

 

 櫂「俺に何か用かい?」

 

 ヒカル「あぁ、その“レッドマンとハヌマーン”の事で。」

 

 

 それぞれ別の場所で、ニュージェネレーションヒーローズの変身者に出会った櫂、真美、海羽。

 

 

 

 まずは、ガイと出会った真美から見てみよう。

 

 

 道沿いの手すりに座って話し合う二人。

 

 ガイ「あの時はすまなかったな。」

 

 真美「いえいえ、私も、もっと注意して歩くべきでした。」

 

 ガイ「で、あれからクリスマスは楽しめたか?」

 

 真美「はい…でも…途中、悪夢が降りかかって来ました。 恐ろしい宇宙人が、怪獣軍団と共に襲い掛かって来たの…。」

 

 ガイ「…そうか…。」

 

 真美「でもその時、恐ろしい怪獣軍団の魔の手から、一人のウルトラ戦士が助けてくれたの。名前は確か…“ウルトラマンオーブ”だったかな…?」

 

 ガイ「…。」

 

 真美「正に奇跡だったわ。 戦う彼の姿は、眩しくて、勇ましくて、カッコよくて…まるで神のようだった…。」

 

 ガイ「…。」

 

 真美「だから、私はオーブに本当に感謝しているの。また来てくれたらいいな~なんて思いながらね。ふふふ…。 あ、ごめんなさい。なんか、私が一方的に喋っちゃって…。」

 

 ガイ「いや、いいんだ…。」

 

 

 真美の話を聞いたガイは、少し考えるように俯いた後立ち上がり、真美を見つめて話し始める。

 

 

 ガイ「実は、さっき君が言っていたレッドマンとハヌマーンの事なんだが…。」

 

 真美「え?ご存知なんですか?」

 

 ガイ「あぁ、俺は明日、そいつらと決着を付けるために、行かなければならない。」

 

 真美「え?どうして、あなたが…?」

 

 

 ガイの突然の言葉に困惑し始める真美。すると、ガイは遂に打ち明けた!

 

 

 ガイ「実は俺は、普通の人間じゃないんだ。 俺こそが、遠くの宇宙からやって来たウルトラマンオーブなんだ。」

 

 

 ガイの告白に衝撃を受ける真美!それに同調するかのように、夕日に光る川の水面が輝きを増す!

 

 

 夕日に光る水面をバックに見つめ合うガイと真美。

 

 

 ガイ「…驚いたか?」

 

 真美「…うぅん…私も前から勘づいていたわ…。あの巨人…どこか雰囲気があなたに似てるなー…ってね。」

 

 ガイ「そうか…。俺は銀河の風来坊…流れ者だからな。」

 

 真美「宇宙の風来坊か…なんかロマンチックだね…。そして、旅をしながら宇宙の平和を守って来てたんだね…。」

 

 ガイ「ま、そう言った所かな。」

 

 真美「あの時は、本当にありがとう。今でも、感謝してもしきれないわ。」

 

 ガイ「平和を守る者・ウルトラマンとして当然の事をしたまでだ。」

 

 真美「そして…また戦いに向かうのね。」

 

 ガイ「あぁ。奴らも、放っておけない存在だからな。」

 

 

 真美「私も連れて行って。」

 

 ガイ「…え?」

 

 真美「彼らに、本当の正義とは何なのかを説いたいの…。」

 

 ガイ「…フッ、バカ言うなよ。奴らはもはや銀河の犯罪者なんだぜ。」

 

 真美「…冗談に決まってるじゃない。」

 

 真美は、少し残念そうながらも、笑いながら言った。

 

 

 真美「必ず…勝って戻って来てね。」

 

 ガイ「あぁ。当然だ。」

 

 そう言うとガイは、テンガロンハットを被り直し、真美の肩に手を置いた。

 

 ガイ「それじゃ、あばよ。」

 

 

 夕日の方へと歩き去り始めるガイ。

 

 

 真美「待って。」

 

 ふとガイを呼び止める真美。ガイは顔だけを振り向かせる。

 

 

 真美「あなたの名前…まだ聞いてなかったね…。」

 

 

 ガイ「…俺はガイ…クレナイ・ガイだ。」

 

 

 真美「私は真美…新田真美。」

 

 

 真美に名前を告げたガイは、再び夕日に向かって歩き去り始め、そして歩きながら『オーブニカ』を取り出してメロディーを奏で始める。

 

 

 夕焼けの空に響き渡るオーブニカのメロディーにうっとりしながら、真美はガイを見送った。

 

 

 真美(まさかあの人がウルトラマンオーブだったなんてね…。 私、信じてる…必ず、勝って帰って来ることを…。)

 

 

 ガイ(真美か…いい名だな。 彼女なら大丈夫だと思い正体を打ち明けたが、どうやら間違いじゃなかったみたいだな…。 必ず、奴らに本当の正義とやらを見せつけてやるぜ。)

 

 

 互いを信じながら別れたガイと真美。

 

 

 

 次は、大地とエックス、アスナと出会った海羽を見てみよう。

 

 

 まず海羽は、大地たちから『渡り鳥怪獣バル』の事を聞いた。

 

 海羽「そっか…あの卵から生まれたバルちゃんを、保護する事にしたのですね。」

 

 大地「あぁ。(バルのスパークドールズを取り出して)この子はもはやこの世界では生きていけない身だったから…だから俺たちで、この子の住みやすい環境を作ってあげる事にしたんだ。」

 

 海羽「へぇ~…バルちゃん、良い環境が出来たらいいね。」

 

 大地「それに、他の怪獣たちも、元の生息域に近い環境が整ったら、元に戻して解放してあげる…怪獣たちと共に生きる事が、俺たちの目指している夢なんだ。」

 

 海羽「はぁ~なんて素敵な夢なの!」

 

 アスナ「あなたも、怪獣が好きなの?」

 

 海羽「うん! 悪い子ばかりじゃなくて、かわいい子もたくさんいるからね。」

 

 

 すると、大地は気を改めて話し始める。

 

 大地「それじゃあ…俺たちの夢や、君の笑顔のためにも…奴らを倒さないとな。」

 

 

 海羽「…え?…奴らってもしかして…。」

 

 

 大地「レッドマンとハヌマーン。俺たちは明日、奴らと決着を付ける事になったんだ。」

 

 海羽「…そうですか…。」

 

 少し心配そうに返事をする海羽。

 

 

 エックス「心配はいらない。私たちはこれまで数々の戦いを潜り抜けて来た。それにより、今ではより強固なユナイトを果たせるようになっている。決して負けはしないよ。」

 

 大地「そうだ…絶対に、勝って帰って来るよ。」

 

 

 海羽「…分かった。信じるよ。だから頑張ってね。」

 

 大地たちを信じる事にした海羽は、満面の笑みと共に握手の手を差し伸べる。

 

 大地「ありがとう。約束する。」

 

 大地と海羽は約束の握手を交わした。

 

 

 大地は今度はアスナの元に歩み寄る。

 

 大地「アスナも、必ず勝って帰って来るから…だから待っててね。」

 

 アスナ「…言われなくても信じてるよ。大地。」

 

 大地とアスナは、信頼の握手を交わした。

 

 

 アスナ「しかし、これってまるで昔の時代劇か何かみたいね…。」

 

 大地「…え、何が?」

 

 アスナ「ほら、女・子供が、戦いに出る戦士を見送るみたいな。」

 

 大地「…はは、そうだね。」

 

 

 海羽「ちょっとちょっと! 子供ってまさか私の事~!?」

 

 アスナ「え?ち、違う違う。子供はこの子の事。」

 

 アスナは慌てながらバルのスパークドールズを見せる。

 

 海羽「な~んだ、良かった~。」

 

 

 海羽が安心したのも束の間、

 

 

 エックス「確かに、海羽は子供みたいに元気で可愛らしい子だしな。」

 

 エックスが口を滑らせてしまった!(笑)

 

 海羽「ほら!やっぱり私の事子供だと思ってるじゃ~ん!」

 

 大地「エックスったら、余計な事言っちゃって!」

 

 

 一同は笑い合った。

 

 

 やがて海羽は、大地たちと別れる事になった。

 

 海羽「それじゃあ、またね、大君、エッ君、あーちゃん。」

 

 大地「大君…か。ルイルイみたいな子に同じあだ名付けられちゃった。」

 

 エックス「エッ君って…私の事か?」

 

 アスナ「あーちゃんって…私?」

 

 困惑するエックスとアスナ。

 

 海羽「えへへ、ちょっとあだ名を考えてみたんだけど…どうかな?」

 

 アスナ「…いいんじゃないん。それほど私たち、仲良くなったって事なんだから。」

 

 エックス「そうだな。知らぬ間に私たちとあの子も、強くユナイトしているのかもしれない。」

 

 

 大地「必ず…また戻って来るよ!海羽ちゃん。」

 

 

 海羽「待ってるからね~!」

 

 

 海羽は大きく手を振りながら大地たちを見送った。

 

 

 海羽(大君達なら…きっとやってくれるよね! 私、信じてるよ!)

 

 

 大地(海羽ちゃんは俺たちを信じてくれた…この想い、絶対に無駄にしない!)

 

 

 エックス(絶対に、勝利しよう!)

 

 

 新たな友情を築き、別れた大地達と海羽。

 

 

 

 そして、最後はヒカルとショウと出会った櫂を見てみよう。

 

 

 櫂「何?それは本当かい?」

 

 ヒカル「あぁ…明日の朝、月で決着を付けようと奴らに告げられたんだ…。」

 

 ショウ「その事を、櫂さんに伝えようと思ってな。」

 

 どうやらヒカルとショウは、翌日レッドマン達と決着を付ける事を櫂に伝えるために会いに来たようである。

 

 

 櫂「…それを何故、俺に伝えに来たんだ…?」

 

 様々な感情が交叉する中、櫂は問いかけ、それを聞いたヒカルは笑顔で答えた。

 

 

 ヒカル「ヘッ…だって、櫂さんはレッドマン達にコテンパンにされた海羽さんの仲間じゃないですか。」

 

 

 櫂「…君達…。」

 

 ショウ「だから彼女の仇は、俺たちがきっちりと取る。それを伝えに来たんだ。」

 

 

 ヒカル「それにタロウも、タイでの後悔を胸に、ハヌマーンと決着を付けたいみたいだしな。」

 

 タロウ「あぁ、その後悔を払う為にも、私には奴を倒さなければならないという義務がある。」

 

 ヒカル「必ず勝とうぜ。ウルトラ兄弟の力と共にな。」

 

 ヒカルの左腕の『ストリウムブレス』になっている『ウルトラマンタロウ』も、既に決心を固めていた。

 

 

 櫂「しかし大丈夫か? 知ってるかもしれんが、奴らは強敵だ。」

 

 一見ヒカル達を心配しているように見える櫂だが、一方で本心では…

 

 櫂(フッ…お前ら二人で奴らに勝てるかな? 現に昨日追い詰められたみたいじゃねーか…奴らの勝利は目に見えている。)

 

 

 だが、ヒカル達は前向きだった。

 

 ヒカル「大丈夫さ。俺たちには、頼もしい仲間も付いている。」

 

 櫂「…仲間?」

 

 ショウ「俺たちと共に戦いに出る、頼もしいウルトラ戦士が二人いるんだ。」

 

 ヒカル「櫂さんはまだ会ってないと思うから、戦いが終わったら紹介するぜ。」

 

 

 櫂「…そうか…楽しみにしているぜ。 その代わり、絶対に勝って来いよ。」

 

 

 ショウ「フッ…言われるまでもないさ。」

 

 ヒカル「必ず、奴らに本当の正義と言うのを見せてやるぜ。」

 

 

 三人は拳を合わせた。

 

 

 やがてヒカルとショウは、櫂と別れる事にした。

 

 ヒカル「それじゃあ、戦いに行って来るぜ。」

 

 櫂「あぁ、気を付けて来いよ。」

 

 ゼロ「困った時は、いつでも呼んでいいからな!」

 

 ショウ「大丈夫だ。俺達が絶対に片づけてやるから。」

 

 ゼロ「フッ、そうかい…じゃあ、全力で戦って来い!」

 

 ヒカル・ショウ「ガレット!」

 

 

 櫂と別れたヒカルとショウは、何処かへと歩き去って行った…。

 

 

 …ところが、ヒカル達と別れた直後、櫂は不敵な笑みを浮かべる…。

 

 

 櫂(フッ…何が“本当の正義”だ…! ま、こうなったら戦いの最中に奴らがレッドマン達の価値に気付く事を祈るしかないか。 奴らほど、悪い怪獣達を殲滅するのに必要不可欠な人材はいないからなぁ…!)

 

 

 そう心で呟くと、帰り道を歩き始めた…。

 

 

 …まずこれだけは言える。

 

 

 ヒカル達が、レッドマン達の価値に気付くことは無いであろう。

 

 

 

 櫂と別れたヒカルとショウ。

 

 ヒカル「櫂さんにあんな事言っちまったし、こりゃあ絶対に勝たないとな。」

 

 ショウ「あぁ、だが今回は俺たち二人だけじゃない。」

 

 ヒカル「あぁ、ガイさんに大地、頼もしい仲間も付いてるしな。」

 

 

 ショウ「…それに、大地からこれも借りてるしな。」

 

 そう言いながらショウは、『古代怪獣ゴモラ』のスパークドールズを取り出す。

 

 

 実は大地は、同じ怪獣の力で戦う者同士として、ショウに自身の友達でもあるゴモラのスパークドールズを貸したのである。

 

 “奴らに正義の怪獣の力を見せつけるため”という思いも込めて…。

 

 

 ショウ「大地…お前の思い、絶対に無駄にしないぜ。」

 

 ゴモラのスパークドールズを見て改めて決心を固めたショウに、ヒカルは声を掛ける。

 

 ヒカル「彼らと力を合わせて、必ず掴もうぜ、ビクトリーを!」

 

 ショウ「おぅ!」

 

 

 ヒカルは、ショウの差し伸べた拳に上、下と順に拳を当て、その後二人はハイタッチを交わした。

 

 

 ヒカル・ショウ「見せてやるぜ!俺達の絆!!」

 

 

 

 一方、別次元の地球では、

 

 ???「へッ…ヘックション!!」

 

 ???「ちょっとどうしたんだよカツ兄。」

 

 ???「分からん…なんか、誰かが俺たちの真似した気がして…。」

 

 ???「そんなの気のせいだよ、さ、早くすき焼きの材料買いに行こ。」

 

 ???「そうだな。」

 

 

 

 場所を戻そう。

 

 

 先ほど大地達と別れた海羽は、病院に入り、自分の病室に戻っていた。

 

 

 海羽「大地さん達なら、きっとやってくれるよね。」

 

 

 笑顔でそう言いながら、病室の扉を開いて入ったその時!

 

 

 ジャグラー「やぁ、お嬢さん。」

 

 

 海羽「ひゃッ!?」

 

 

 なんと、海羽の病室にはいつの間にか『ジャグラス・ジャグラー』が入っていた!

 

 突然ジャグラーに声を掛けられた海羽は驚く。

 

 

 海羽「あ、あ、あなた…いつ入ったんですか!?」

 

 海羽の質問を他所に、ジャグラーは花瓶の花をいじっていた手を止め、海羽に接近する!

 

 ジャグラーに迫られ思わず後ろに下がる海羽はやがて壁に背が付き、すかさずジャグラーは海羽に“壁ドン”をする!

 

 

 海羽「な…な、何なんですか!?一体…。」

 

 ジャグラー「案ずる事は無い。あなたの様子を見に来ただけです。 どうやらすっかり元気になったみたいで安心しましたぁ…ヒヒヒッ。」

 

 海羽「そ…それは、どうも。」

 

 海羽は困惑しながらもジャグラーに礼を言った。

 

 

 やがてジャグラーは海羽から離れ、病室の窓をゆっくりと開ける。

 

 そして顔だけを海羽の方に振り向かせる。

 

 ジャグラー「どうやら明日のようだな、決着の日は。」

 

 海羽「…え?あなたもご存知なのですか?」

 

 ジャグラー「あぁ、俺は“奴”のため、そして、あなたの為なら何とでも。」

 

 海羽「一体…あなたは何者なの…?」

 

 ジャグラー「おっと、確かにいずれ共に夜明けのコーヒーを飲む者に名前を覚えてもらわないとですねぇ…。 ジャグラス・ジャグラーという者です。」

 

 海羽「ジャグラス…ジャグラー?」

 

 ジャグラー「それから、そこに置いてあるのは俺からの差し入れです。 それではお嬢さん、アデュー。」

 

 そう言うとジャグラーは、明けた窓から外へと飛び出した!

 

 海羽「へ? ちょっと!」

 

 海羽は慌てて窓から頭を出して外を見渡すが、何処を見てもジャグラーの姿は見当たらなかった…。

 

 

 海羽「ジャグラーさん…もしかして彼も…ウルトラ戦士か何かなのかな…?」

 

 

 そう言った後、海羽はベッドのそばの机に置いてあるジャグラーからの差し入れを手に取る。

 

 プラスチック製のコップにストローが刺さっており、中には氷と共に茶色い飲み物が入っている。

 

 海羽はそれを恐る恐る飲んでみる。

 

 

 海羽「うぅー…味は…コーヒーかな? でも何かソーダみたいにシュワシュワするし…変わった飲み物ね…。 でも、ちょっと微妙かな。」

 

 ジャグラーからの差し入れは『しゅわしゅわコーヒー』であった。

 

 

 海羽「…それに、私と夜明けのコーヒーを飲むとか言ってたけど…私、紅茶の方がいいな~…。」

 

 

 

 先ほど海羽と別れたジャグラーは、既に病院から遠く離れた場所にいた。

 

 そして、闇のエネルギーが満ちた蛇心剣を引き抜いてそれを不敵な笑みでじっくりと見つめていた…。

 

 

 ジャグラー「ヒッヒッヒ…遂に…遂に機は熟したぜぇ…! 待ってろよ? ガァイ…!」

 

 

 ジャグラーは一体何をしようとしているのであろうか…?

 

 

 

 その夜、櫂は何やら真っ暗な道を当ても無く歩いていた…。

 

 櫂「…ここは…どこなんだ…?」

 

 

 するとその時、何処からか女性の悲鳴が聞こえる! しかもよく聞いたら二人分の!

 

 

 驚いた櫂は辺りを見渡す。

 

 櫂「…何だ!? 誰かいるのか!?」

 

 

 その時、突然櫂の前方にスポットライトのような光が射し込む!

 

 そしてその光の先にはとんでもない光景が!

 

 

 櫂「…嘘だろ…?」

 

 

 櫂の目線の先、そこにはレッドマンとハヌマーンが、弱っている真美と海羽を追いかけ回している光景が…!

 

 

 真美「…櫂君…。」

 

 海羽「…助けて…!」

 

 

 櫂「真美!海羽!」

 

 二人の危機を目の当たりにした櫂は、変身しようとウルトラゼロアイを取り出すが、ふと手が止まってしまう…!

 

 

 それは、二人を助けたい気持ちと同時に、自身にとって必要な存在・レッドマンとハヌマーンを倒そうかどうかという躊躇いの気持ちも出始めていたのである…!

 

 

 悩み俯き、ゼロアイを握る手に力を入れる櫂…気が付いたらその手には汗が出始めていた。

 

 

 海羽「きゃっ!」

 

 真美「海羽ちゃん!」

 

 やがて、海羽が躓いてこけてしまった!

 

 

 それをチャンスとばかりにそれぞれレッドナイフと三叉槍を振り上げるレッドマンとハヌマーン!

 

 ハヌマーン「今だ!」

 

 レッドマン「怪獣は…みんな敵…それに味方する奴も…みんな…敵!」

 

 ハヌマーン「死ねー!」

 

 

 真美・海羽「きゃー!!」

 

 

 絶体絶命の危機!

 

 

 櫂「…ぅっ…ぅっ…ぅっ………うああああああああああー!!!」

 

 

 まだ整理がついていなかった櫂は、まるで何かに突き動かされるように、発狂しながらゼロアイを目に当て、『ウルトラマンゼロ』へと巨大変身する!

 

 

 あわや真美と海羽に襲い掛かりそうになったレッドナイフと三叉槍を、ゼロは両手持ちのゼロスラッガーで受け止める。

 

 そして何が何だか分からないまま発狂しながら、まずはレッドマンの腹部を二発斬りつけ、その後向かって来たハヌマーンを腹部にヤクザキックを打ち込む事で怯ませた後、袈裟懸けに斬撃を叩き込む!

 

 次にゼロはゼロスラッガーを合わせてゼロツインソードを形成し、尚も発狂しながらそれで闇雲にレッドマンとハヌマーンを斬りつけて行く…!

 

 

 櫂「うぉぉぉぉああああー!!!」

 

 

 ゼロ(櫂の意識)は、必殺の『プラズマスパークフラッシュ』を叩き込み、それを受けたレッドマンとハヌマーンは大爆発して砕け散った…。

 

 

 二人を撃破したゼロは、まるで一気に力が抜けたようにその場で膝を付いてしまう…。

 

 どうやら櫂自身は、まだ混乱しているようである。

 

 

 櫂「ハァ…ハァ…真美…海羽…大丈夫k…」

 

 

 とりあえず真美と海羽の安否を確認しようと振り向いたその時…!

 

 

 …その視線の先には、二人が変わり果てた姿で力なく横たわっていた…。

 

 

 どうやら闇雲にレッドマン達を攻撃していく内に、知らぬ間に真美達を巻き込んでしまっていたようである…!

 

 

 最悪な結果…そのショックに同調するかのように、カラータイマーが赤く点滅を始める…!

 

 

 …信じられない光景を見たゼロ(櫂の意識)は、その場で膝を付いたまま力なく俯き、そしてしばらく痙攣した後、上を向いて発狂した…。

 

 

 櫂「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉああああああー!!!」

 

 

 

 その時!

 

 

 櫂「…ぅぶはぁっ! ハァ…ハァ…ハァ…。」

 

 

 気が付くと場所が変わっており、辺りには見慣れた風景…自分の部屋の壁や時計、窓などが見え、自身はベッドの上だった…。

 

 

 どうやら夢だったようである。

 

 

 時刻はまだ夜中の3時であった。

 

 

 櫂「ハァ…ハァ…ハァ…夢か…良かった…。」

 

 

 だが、安心するのも束の間、櫂は先ほどの夢の事を考え始めていた…。

 

 ジレンマに陥りながらも、真美と海羽を助けるべくやむなくレッドマンとハヌマーンを倒したものの、真美達もその巻き添えで死んでしまった夢…。

 

 

 櫂(あれは一体どういう事なんだ?…何かを暗示しているという事なのか…!?)

 

 

 すると、櫂はある考えに行きついた…。

 

 

 櫂「…レッドマン達を仲間にしたければ真美達を諦め、真美達を守りたければレッドマン達を諦めろ…そういう事なのか…?」

 

 

 その考えに行きついた瞬間、櫂は徐々に気持ちが落ち着き始め、そしてとりあえず外の空気を吸うために窓を開けて外を見つめながら呟いた…。

 

 

 櫂「…そもそも俺が戦っているのは…自分の為…怪獣どもを殲滅する為…そして、“真美達を守る為”…。 やはりレッドマン達を仲間にするのは…不可能だという事なのか…?」

 

 

 ゼロ(…櫂…お前まさか…。)

 

 

 もしかすると、櫂はレッドマン達は倒すべき存在だという事に僅かながら気付き始めているのかもしれない…。

 

 

 

 櫂の思考が気になる中、やがて朝焼けが街を包み込み、朝がやって来た…。

 

 

 遂に、決戦の日がやって来たのである!

 

 

 ガイ・大地・ヒカル・ショウの4人・ニュージェネレーションヒーローズは、既に昇る太陽を背に、決心を固めた表情で横並びに立っていた。

 

 

 4人を照らす朝焼けの光は輝きを増し、その様子はまるで4人の闘志に同調しているようである。

 

 

 ヒカル「いい朝が来たぜ…いよいよだな、みんな!」

 

 ショウ「あぁ、覚悟は、とっくに出来ている!」

 

 大地「行こう! 地球の…そして、怪獣達の未来のために!」

 

 エックス「心がユナイトした私達の力、見せてやろう!」

 

 ガイ「諸先輩方、皆さんの力、お借りします!」

 

 

 4人「いざ、勇気を胸に!!」

 

 

 遂に4人は変身に入る!

 

 

 ヒカルとショウはそれぞれギンガスパークとビクトリーランサーからギンガとビクトリーのスパークドールズを取り出し、大地はエクスデバイザーの上部ボタンを押してXモードに展開させ、それにより出現したエックスのスパークドールズを取り出す。

 

 

 《覚醒せよ! オーブオリジン!》

 

 ガイ「オーブカリバー!」

 

 ガイはオーブリングにオーブオリジンのカードをリードし、それにより光から現れたオーブカリバーを手に取る。

 

 そしてカリバーホイールを回転させて全紋章を点灯させた後、トリガーを引く!

 

 

 《ウルトライブ! ウルトラマンギンガ!》

 

 《ウルトライブ! ウルトラマンビクトリー!》

 

 《ウルトラマンエックスと、ユナイトします!》

 

 ヒカル、ショウ、大地もそれぞれスパーク、ランサー、デバイザーにギンガ、ビクトリー、エックスのスパークドールズをリードする!

 

 

 ヒカル「ギンガー!!」

 

 ショウ「ビクトリー!!」

 

 大地「エックスー!!」

 

 ガイ「オーブ!!」

 

 

 4人は一斉に変身アイテムを揚げ、眩い光に包まれる!

 

 

 「ショォラァァ!!」

 

 「ツェァッ!!」

 

 「イーッサァァァ!!」 《エックス、ユナイテッド!》

 

 「テアーッ!!」

 

 

 そして、光の中からギンガ、ビクトリー、エックス、オーブ(オーブオリジン)と順に右腕を突き出して飛び出した!

 

 

 変身が完了し登場した4人のニュージェネレーションヒーローズは、朝陽を背に雄々しく立つ。

 

 そして、4人一斉に上を向いた後、決戦の地・月向けて飛び立つ!

 

 

 戦いに出て行く4人の戦士を、櫂、真美、海羽、アスナはそれぞれ違う場所で見送る。

 

 真美「ガイさん…。」

 

 海羽「大君…。」

 

 アスナ「大地…。」

 

 櫂「ヒカル…ショウ…。」

 

 

 

 その頃、月でニュージェネレーションヒーローズ4人を待つレッドマン、ハヌマーン、デニスは、暇つぶしかつ準備体操感覚で猛威を振るっていた!

 

 奴らは今度は月の砂漠で、そこに生息する『月怪獣ペテロ』の群れに襲い掛かっていた!

 

 既に数体のペテロが犠牲になっており、いずれもバラバラになってたり、何かで斬られたり刺されたような痛々しい傷を残して倒れたりと無惨な姿で死んでいる…!

 

 

 デニス「ヒャッハー!! 奴らが来る前の準備体操には丁度いい獲物だぜぇー!!」

 

 妙なハイテンションで、ペテロの群れにバルカン砲やビーム砲をぶっ放していくデニス。

 

 

 因みに奴に捕えられたピグモンは、とある岩山の上に、球状のエネルギーカプセルの中に閉じ込められた状態で置かれていた。

 

 カプセルを壊そうと必死に小さな手を振るピグモン。そんなピグモンにデニスは接近する。

 

 

 デニス「安心しろ。今から来る奴らが俺達に勝ったら解放してやる。 ま、無理な事だけどな! ヒャーッハッハッハッハ!!」

 

 デニスは高笑いをした後、再びペテロの群れを狙い始める。

 

 

 レッドマンとハヌマーンはそれぞれレッドナイフと三叉槍を構え、デニスも彼らと共に、必死に逃げる残りのペテロの群れ向かって駆け始める!

 

 このままレッドマン達によって全滅してしまうのだろうか!?

 

 

 

 その時!

 

 

 

 ヒカル「ギンガクロスシュート!!」

 

 ショウ「ビクトリウムシュート!!」

 

 大地・エックス「ザナディウム光線!!」

 

 ガイ「オリジウム光線!!」

 

 

 “ズドガガガーン”

 

 

 レッドマン「…くっ…!」

 

 ハヌマーン「うぉわっ!!」

 

 デニス「…ッ、何だ!!」

 

 

 突如、上空から4つの光線が降り注ぎ、それらが足元で大爆発したレッドマン達は思わず後退する!

 

 

 …遂に参上したニュージェネレーションヒーローズ!

 

 

 4人はレッドマン達を得意光線で牽制した後、一斉に土砂を巻き上げながら着地する!

 

 

 着地後ゆっくりと立ち上がった4人は、レッドマン達と対峙する。

 

 デニス「フッ…待ってたぜぇ!」

 

 ハヌマーン「遂に来たな!若きウルトラ戦士ども!」

 

 レッドマン「…殺る時が…来た…!」

 

 

 両者が対峙している隙に、ペテロ達は無事に遠くへと逃げて行った。

 

 

 ガイ(オーブ)は、レッドマン達の更に向こうの岩山に置かれているピグモンに気付く。

 

 ガイ「ピーちゃん…待ってろよ。 こいつらを倒して、助けてやるからな。」

 

 

 デニス「フッハァッ! やれるものならやってみるんだなぁ!!」

 

 ハヌマーン「お前らも怪獣ども同様、切り刻んで、引ん剝いてやるぜ!!」

 

 レッドマン「…今度こそ…殺す…!」

 

 

 4人を挑発するレッドマン達だが、決心を固めていた4人は怯まない。

 

 ヒカル「へッ!やってやるさ! 今度こそケリをつけるぜ!」

 

 ショウ「覚悟しろよ! 今度は本気で行くぜ!」

 

 大地「これ以上、怪獣達の血を流させない!」

 

 エックス「人々と同様、地球上で生きる命だからな!」

 

 ガイ「悪を挫き、平和を築く…それがウルトラマンだ!」

 

 

 デニス「へッ!どうほざこうと無駄だ! どうせお前らはここで、死ぬんだからなぁー!!」

 

 

 ガイ「いや、死ぬ気は無いな…。 最後に勝つのは、真の正義だ!」

 

 

 そう叫ぶと、オーブはオーブカリバーを取り出し構える!

 

 

 ガイ「銀河の光が、我を呼ぶ!!」

 

 

 ガイの口上と共に4人は構えを取り、そして一斉にレッドマン達向かい駆け始める!

 

 

 レッドマン「レッドファイッッ!!」

 

 

 レッドマン達も、レッドマンの掛け声を合図に一斉に駆け始める!

 

 

 オーブはレッドマンを、エックスはデニスを、ギンガ・ビクトリーはハヌマーンをそれぞれ相手に戦い始める!

 

 

 遂に、激闘の火蓋が切って落とされた!

 

 

 

 一方地球では、海羽は無事に病院を退院し、櫂と真美はそれを出迎えていた。

 

 海羽「櫂君真美ちゃん、本当に何度も来てくれて、ありがとね。」

 

 櫂「いいって事よ。それより良かった。海羽が元気に戻って。」

 

 真美「うん。今日はお祝いで、夜どこか食べに行きましょ。」

 

 海羽「わーい! 賛成ー!」

 

 

 海羽の退院でお祝いムードになる中、3人は心の中で、レッドマン達と戦うウルトラ戦士達の事を思っていた…。

 

 真美(…信じてる。 私たちも応援してる。 だから頑張って!)

 

 海羽(きっとやってくれるよね! だって、ウルトラマンなんだもん!)

 

 

 真美と海羽がそう思う一方で、櫂は…

 

 櫂(さーて…勝つのはどっちかなぁ? フッ。)

 

 …まるでどっちが勝ってもいいみたいな思考であった…。

 

 

 

 (BGM:英雄の詩(1~2番))

 

 

 ギンガ・ビクトリーVSハヌマーン!

 

 

 ビクトリーは跳躍して飛び蹴りを放つが、ハヌマーンはそれを三叉槍で受け止めて防ぎ、続けてギンガが打って来た左拳のパンチも三叉槍で受け止め、そのままカウンターの左拳を放つが、ギンガはそれを右手で掴んで受け止める。

 

 それによりハヌマーンの両手が塞がった隙に、ビクトリーはスライディングキックをハヌマーンの右膝の裏に打ち込んで所謂“膝カックン”を決め、バランスを崩したハヌマーンがよろけた隙にギンガは膝蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 次にビクトリーはハヌマーンの三叉槍を持つ右腕に掴みかかる。

 

 ハヌマーンはそれを振りほどこうとしながらも接近して来たギンガに左脚蹴りを繰り出すが、ギンガはそれを両腕で防いだ後、腹部に右拳を打ち込み、続けてビクトリーがハヌマーンの右脇腹に左脚蹴りを打ち込み、そしてギンガとビクトリーはそれぞれ右足、左足の蹴りを同時にハヌマーンの胸部に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 体勢を立て直したハヌマーンは、反撃として三叉槍からハリケーンガンを放つ!

 

 《ウルトランス! キングジョーランチャー!》

 

 ビクトリーはすかさずウルトランスで右腕をキングジョーランチャーに変形させ、そこから弾丸を連射してハリケーンガンを相殺していき、その間にギンガはクリスタルを黄色に輝かせて空高く飛び上がる。

 

 ヒカル「ギンガサンダーボルト!」

 

 ギンガはギンガサンダーボルトを上空から放ち、ビクトリーに気を取られていたハヌマーンはその直撃を受けてダメージを受ける。

 

 

 《ウルトランス! EXレッドキングナックル!》

 

 “ドゴンッ”

 

 ハヌマーン「ぐわっ!」

 

 更にビクトリーは、ウルトランスでEXレッドキングナックルに変形させた右拳でハヌマーンを殴り飛ばす!

 

 ハヌマーンはそれをすかさず腕をクロスさせて防ごうとしたが、威力の高さにそのまま吹っ飛び岩山に激突した!

 

 

 タロウ「ヒカル! 今こそ、ウルトラ兄弟と共に戦うんだ!」

 

 ヒカル「あぁ! 行くぜタロウ!」

 

 ヒカルはストリウムブレスを変身モードにしてギンガスパークでリードする。

 

 タロウ「今こそ、一つになる時! ウルトラマンタロウ!ギンガに力を! ギンガストリウム!」

 

 タロウの掛け声と共にギンガはタロウと一体化し、眩い光と共に『ウルトラマンギンガストリウム』へとスタイルチェンジする!

 

 

 ハヌマーンは跳びはね体を掻くような仕草をしながら接近し、(切れ味の悪い)剣に変形させた三叉槍を振り下ろすが、ギンガストリウムはそれを右膝で受け止め、左拳で打ち上げた後、右拳のパンチを胸部に叩き込んで後退させる。

 

 その後、ギンガストリウムは跳躍して膝蹴りを叩き込み、ハヌマーンはすかさず両腕クロスさせるが、防ぎ切れずに直撃を受けて吹っ飛ぶ!

 

 

 ショウ「大地…使わせてもらう!」

 

 ショウはそう呟くと、大地から借りたゴモラのスパークドールズをランサーにリードする!

 

 

 《ウルトランス! ゴモラテイル!》

 

 

 今ここに友情のウルトランスが発動され、音声、そしてゴモラの鳴き声と共に、ビクトリーの右腕はゴモラの尻尾『ゴモラテイル』へと変形した!

 

 ショウ「行くぞ!」

 

 新たなウルトランスで立ち向かうビクトリー。ハヌマーンの剣の一振りをスピンしながらしゃがんでかわすと同時に腹部に一撃を決める!

 

 ハヌマーン「ぐぉわっ!」

 

 

 ギンガストリウムは自身の方に吹っ飛んで来たハヌマーンの右腕を左腕で掴んで捕える。

 

 タロウ「ゾフィーの力よ! M87光線!」

 

 そしてそのまま『M87光線』を発動させ、右手を胸に当てた後ハヌマーンの腹部に当て、ゼロ距離で叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 ハヌマーン「くっ! …これならどうだー!」

 

 なんとか着地して体勢を立て直したハヌマーンは、剣を三日月状カッター『ハヌマーンスラッシュ』にして投げつける!

 

 タロウ「ウルトラマンの力よ! スペシウム光線!」

 

 ギンガストリウムは腕を十字に組んで『スペシウム光線』を放つ!

 

 スペシウム光線がハヌマーンスラッシュとぶつかり合う中、ビクトリーは接近し、超振動波を纏ったゴモラテイルの一撃でハヌマーンスラッシュを吹っ飛ばした!

 

 吹っ飛ばされたハヌマーンスラッシュは剣に戻り、地面に突き刺さる。

 

 

 ハヌマーンは今度は後ろを向き、伸縮自在の尻尾を伸ばして捕えようとするが、ギンガストリウムとビクトリーはそれを側転やバク宙、宙返りなどでかわしていく。

 

 タロウ「ウルトラセブンの力よ! エメリウム光線!」

 

 ギンガストリウムは上空で静止し、両手を額に当ててビームランプから『エメリウム光線』を発射し、ハヌマーンの尻尾を根こそぎ焼き切った!

 

 

 ハヌマーン「ぐわっ! なにくそー!」

 

 更に怒ったハヌマーンは、剣を引き抜いて三叉槍に戻した後、三叉槍から3発の光輪『ウィンドスラッシュ』を放つ!

 

 タロウ「ウルトラマンジャックの力よ! ウルトラバーリア!」

 

 ショウ「ビクトリウムスラッシュ!」

 

 ギンガストリウムは光のシールド『ウルトラバーリア』を展開して2発を防ぎ、ビクトリーは『ビクトリウムスラッシュ』で1発を打ち落とす!

 

 

 タロウ「ウルトラマンエースの力よ! メタリウム光線!」

 

 ギンガストリウムはシールド消失と同時に上半身を左後方に捻った後両腕をL字に組んで『メタリウム光線』を放ち、その直撃を受けたハヌマーンは岩山をいくつか破壊しながら吹っ飛ぶ!

 

 

 なんとか立ち上がったハヌマーンにビクトリーは駆け寄り、キックも交えながらゴモラテイルを鞭の如く連続で叩き込んでダメージを与えていき、そしてテイルを首に巻き付けて思い切り引っ張ることで空中できりもみさせ、更にそこにハイキックを叩き込んで打ち落とした!

 

 

 タロウ「ウルトラマンタロウの力よ! ストリウム光線!」

 

 ギンガストリウムは右手を上げ、そこに左手を重ねてスパークを起こし、両手を腰に添えて身体を虹色に光らせながら大気中の宇宙エネルギーを溜めた後、両腕をT字に組んでタロウの必殺光線『ストリウム光線』を放つ!

 

 ハヌマーンはすかさずハリケーンガンを放って迎え撃つが、押し合いの末にストリウム光線が押し勝ち、直撃を受けたハヌマーンは大きく吹っ飛んだ!

 

 ハヌマーン「馬鹿な!…タイでの戦いが、こんな形で仇になるとは…!」

 

 

 かつてタイにて自身が洗脳したウルトラ兄弟、そして彼らと共にリンチしたゴモラの力で追い詰められていくハヌマーン…正に因果応報である。

 

 

 

 (BGM:ウルトラマンX(1~2番))

 

 

 エックスVSノワール星人デニス!

 

 

 組み合って力比べをしていた両者は一旦離れて対峙する。

 

 大地「人と怪獣が、必ず共存できる日が来る!」

 

 エックス「共に羽ばたこう!」

 

 大地・エックス「新時代へ!!」

 

 デニス「ほざけええぇ!!」

 

 

 両者は互いに駆け寄り、デニスはエックスが放った跳び蹴りを両腕をクロスさせて防ぐ。

 

 次にデニスは右脚蹴りを放ち、エックスはそれを両腕で防いだ後、続けてデニスが打って来た左フックを右腕で受け止めて左拳で叩き落とした後、右拳のパンチを胸部に叩き込み、その後デニスが打って来た右フックをしゃがんでかわすと同時に左脚蹴りを右脇腹に叩き込んで後退させる!

 

 デニスは走り込んでエックスに殴り掛かるが、エックスはそれをかわすと同時にすれ違いざまに右足蹴りを背中に打ち込んで転倒させる。

 

 

 デニス「馬鹿なッ! パワードアーマーで、俺様のパワーは上がってるハズ!!」

 

 動揺しながらもデニスは再びエックスに駆け寄り、エックスは再び構えを取り、地面に拳を当てて体勢を立て直すと同じくデニスに駆け寄り、すれ違いざまにラリアットを叩き込んで地面に叩き付けた!

 

 

 エックス「私達はさまざまな戦いを超え、より強くユナイト出来るようになった。」

 

 大地「そしてそれは、怪獣達とも同じ…だから、怪獣の命を平気で切り捨てるお前達には絶対に負けない!」

 

 デニス「あり得ぬ! そんなの、俺様は認めんぞォォォ!!」

 

 

 自尊心を傷つけられ逆上したデニスはエックスに殴り掛かるが、エックスはしゃがんでかわし、腹部に左右交互にパンチを打ち込む。

 

 大地・エックス「Xクロスキック!」

 

 そして、至近距離で跳躍し、両腕、両脚を開いたX字の姿勢からエネルギーを集中した右脚で飛び蹴り『Xクロスキック』を繰り出し、それを胸部に受けたデニスは爆発と共に吹っ飛んだ!

 

 

 エックス「次は貴様が、怪獣達に狩られる番だ!」

 

 大地「受けてみろ!怪獣達の力を!」

 

 

 ここからは、エックス最大の特徴の一つ・サイバー怪獣の鎧『モンスアーマー』を活かした攻撃の始まりだ!

 

 

 《サイバーゼットン、ロードします サイバーゼットンアーマー、アクティブ!》

 

 まず大地はサイバーゼットンのカードをデバイザーでロードし、それによりエックスは『ゼットンアーマー』を装着する!

 

 デニスはアーマーの右腕部のバルカン砲を乱射するが、エックス・ゼットンアーマーは上空でゼットンシャッターを張ってそれを防ぎ、逆にゼットンの手を模した両腕を突き出して波状光線を打ち込んでダメージを与える。

 

 大地・エックス「ゼットントルネード!」

 

 エックスはゼットンシャッターを纏って回転突撃する『ゼットントルネード』を繰り出し、その直撃を受けたデニスは大きく吹っ飛び地面に落下する。

 

 

 《サイバーベムスター、ロードします サイバーベムスターアーマー、アクティブ!》

 

 次は『ベムスターアーマー』を装着するエックス。デニスはアーマーの左腕部のビーム砲を放つ!

 

 大地・エックス「ベムスタースパウト!」

 

 エックス・ベムスターアーマーはベムスターの腹部を模した盾でビームを吸収し、地面に突き立てて撃ち返す『ベムスタースパウト』を決め、デニスは撃ち返されたビームの直撃を受ける!

 

 更にエックスは、回転して横に跳びながら盾を投げつけ、その直撃を受けたデニスは転倒する。

 

 

 《サイバーエレキング、ロードします サイバーエレキングアーマー、アクティブ!》

 

 次に装着したのは『エレキングアーマー』。

 

 デニスは接近して右フックを繰り出すが、エックス・エレキングアーマーはそれをしゃがんでかわすと同時にエレキングの腕を模した右腕の砲身を腹部に突きつけ、そのまま鞭のような電撃を放ってデニスを絡め取り、大きく振り回して地面に叩き付ける!

 

 大地・エックス「エレキング電撃波!」

 

 エックスは右腕の砲身から青・黄・緑の3色の電撃『エレキング電撃波』を放ち、デニスに叩き込む!

 

 

 デニス「ぐぉあッ!! 馬鹿なッ! 俺様がこうも圧されるとは!」

 

 この時デニス自身も気付いていなかった…モンスアーマーの連続攻撃により、自身のパワードアーマーにヒビが入り始めていたという事を…!

 

 

 大地「行くぞゴモラ!」

 

 《サイバーゴモラ、ロードします サイバーゴモラアーマー、アクティブ!》

 

 大地は最後にサイバーゴモラのカードをロードし、エックスは『ゴモラアーマー』を装着する!

 

 デニスは猛接近し左右交互にパンチを放つが、エックス・ゴモラアーマーはゴモラの腕を模した両腕でそれを防いだ後、右足の前蹴りを腹部に打ち込んで後退させる。

 

 そして、両腕を大きく振って巨大な爪を活かしたパンチを繰り出し、それらがデニスの胸部に炸裂する度に火花を散らす。

 

 デニスは怯まず再び駆け寄るが、エックスはそれをかわすと同時に、すれ違いざまに爪の一撃を背中に打ち込んで転倒させた。

 

 大地・エックス「ゴモラ振動波!」

 

 エックスは両腕の爪でデニスの体を挟み込み、『ゴモラ振動波(ゼロシュート)』を叩き込む!

 

 振動波を流し込まれたデニスの体は爆発し、それによりパワードアーマーも遂に完全に破壊され、デニスは砕けたアーマーの破片と共に吹っ飛び地面を転がる。

 

 デニス「そんな…あり得ない! 俺様のパワードアーマーが…!」

 

 

 これまで自身が楽しみで狩って来た怪獣達の力に押されていき、遂にはアーマーが砕けて丸裸になってしまったデニス…こちらも因果応報である。

 

 

 

 (BGM:Ultraman Orb -Touch the Sun-)

 

 

 オーブVSレッドマン!

 

 

 オーブ・オーブオリジンはオーブカリバーを、レッドマンはレッドアローを手に、互いに対峙しながらゆっくりと歩み寄って行く…。

 

 …やがてその歩みは走りに変わり、両者は互いに駆け寄ると同時に武器を振り下ろす!

 

 

 両者は剣を振り下ろすと同時に金属音と共に火花を散らしながらすれ違い、次にオーブは振り向き様にカリバーを振ってレッドマンはそれをしゃがんでかわす。

 

 その後両者は互いに金属音と火花を発しながら武器を振るってぶつかり合わせ、やがて武器同士をぶつかり合わせて力比べをした後、オーブはハイキックを打ち込んで引き離す。

 

 

 レッドマン「イヤッ!」

 

 レッドマンはレッドアローの先端を突き立てて突進を繰り出すが、オーブはそれを宙返りをしながらレッドマンを跳び越える事でかわす。

 

 そして着地すると、背後からレッドマンにカリバーを振り下ろすが、レッドマンは即座に背を向けたままレッドアローでそれを防ぐ。

 

 レッドマンは振り向き様にレッドアローで斬りかかるが、オーブは即座に後ろに下がってかわし、その後なおも振り下ろして来たレッドアローをカリバーで受け止めると、力づくで押し飛ばすと同時にレッドマンの腹部に膝蹴りを叩き込んで後退させる!

 

 

 レッドマン「必ず…殺す! レッドアロー!」

 

 ガイ「テアーッ!」

 

 

 両者は対峙した後、それぞれ自身の武器を投げつける!

 

 そして空中でレッドアローとオーブカリバーが激しくぶつかり合う中、戦いは肉弾戦に変わる!

 

 

 両者は駆け寄ると同時にパンチを放ち、同時に胸部に当たる事で後退する。

 

 その後両者は掴み合い、押し合いを展開した後、レッドマンはオーブを地面に投げつけるが、レッドマンの腕を掴んでいたオーブはレッドマンを投げ返す!

 

 立ち上がったレッドマンはオーブに前蹴りを放つが、オーブは脚を掴んで受け止めると逆に脚に数発パンチを打ち込んでダメージを与え、それによりレッドマンが怯んだ隙に胸部にハイキックを打ち込む!

 

 レッドマンは怯まず右ストレートを放ち、オーブはそれを左手で掴んで受け止め、右拳で打ち落とした後、腹部にボディブローを打ち込み、更に左頬に右拳を叩き込む!

 

 なおもレッドマンはパンチを放つが、オーブはそれをしゃがんでかわすと同時に一回転して右脇腹に右拳を打ち込み、それにより怯んだ隙にレッドマンの頭部、左腕を掴み、一本背負いの要領で放り投げて地面に叩き付けた!

 

 

 レッドマン「理解…不能…! この俺…追い込まれる…?」

 

 ガイ「誰かのために戦う気持ちが、俺に限界を超えた力を与えてくれる…そう、お前が捨てた力だ!」

 

 ガイは動揺するレッドマンに一喝した。

 

 

 オーブカリバーによる剣戟、そして初代ウルトラマンを彷彿とさせる泥臭い肉弾戦を駆使してレッドマンを追い込んで行くオーブ・オーブオリジン…既に勝負は見えているかのように見えた。

 

 

 その時。

 

 

 デニス「レ…レッドマン! なぁ、頼む!助けてくれないか?」

 

 突如、デニスがレッドマンに縋り始める。エックスの猛攻により過信していたパワードアーマーが砕けてしまった今、仲間であるレッドマンに助けを求め始めたのだ。

 

 

 レッドマンは無言でデニスの方を振り向く。

 

 デニス「なぁ頼むよ~! 仲間だろ? 怪獣殲滅の為でもある。 俺様に、新しいアーマーを…!」

 

 さっきまで自信満々だったデニスが、不利になった途端必死になって仲間に助けを求めるその姿…実に哀れである。

 

 

 その時!

 

 

 レッドマン「…お前…もう用ない…!」

 

 

 デニス「…へ?」

 

 

 “ザシュッ”

 

 

 デニス「…ぅぐほぁっ…!?」

 

 

 ガイ「!」

 

 大地「何だと!?」

 

 

 …なんと、無情にもレッドマンは戦力外となったデニスの腹部に、用済みとばかりにレッドアローを突き刺したのだ!

 

 

 信じられない光景にオーブ、そしてデニスの相手をしていたエックスは驚愕する。

 

 

 デニスは薄れゆく意識の中、血を吐きつつ、レッドマンに縋り付きながらこう言った。

 

 デニス「ぐぉはっ…フッ…し…所詮…は…俺様も…怪獣殲滅の為に…利用されてた…と言う事なの…か…?」

 

 レッドマンはデニスを見つめたまま無言で何も言わない…。徐々に倒れ行くデニスを見つめるその表情は、まるで落ちぶれた者を見下げているようで不気味である。

 

 デニス「…ヘッ…最悪だ…ぜ…。」

 

 そう言い残すと、デニスはその場に力なく倒れ伏せ、完全に息絶えてしまった…。

 

 

 これまで自身が狩って来た怪獣達の力で追い詰められていき、最後は仲間だと思っていた者に切り捨てられる形で散って行ったデニス…あまりにも皮肉であり、哀れな最期である。

 

 

 エックス「何て奴だ! 自分の仲間まで手に掛けるとは…!」

 

 大地「間違いない…奴は共存不可能な悪魔だ!」

 

 

 ガイ「何て事を…!」

 

 レッドマン「レッドフォール!」

 

 なおも驚きを隠せないオーブ。レッドマンはその隙を突いてオーブ目掛けてデニスの死体を放り投げる!

 

 オーブはなんとかそれをかわす事が出来たがその隙にレッドマンはレッドナイフを取り出し、先端から弾丸『レッドショット』を発射してオーブを攻撃する。

 

 レッドマン「レッドサンダー!」

 

 レッドショットを放ちつつ、更にレッドサンダーを重ねるレッドマン!オーブは光弾や光線が足元や周囲で爆発する中、自身もそれらの爆発でダメージを受けていく。

 

 レッドマン「レッドナイフ!」

 

 “ズパーン”

 

 ガイ「ぐぉあっ!」

 

 そして、レッドマンは怯んだオーブに駆け寄りながらレッドナイフの一振りで斬りつけ、オーブは斬られた胸部から火花を散らしながら吹っ飛び地面に落下する!

 

 

 エックス「オーブ!」

 

 大地「ガイさん!」

 

 

 予想外の事態により、形勢が逆転され始めているオーブ…!

 

 

 レッドマン「怪獣は…みんな敵…それに味方する奴も…みんな敵…!」

 

 レッドマンは勝ち誇るように、レッドナイフを手に、横たわるオーブ向かって歩みを進めて行く…。

 

 

 

 オーブのピンチ、その時!

 

 

 

 ジャグラー「蛇心剣抜刀斬!」

 

 

 “ザシュッ” “ズドーン”

 

 

 レッドマン「…ぐおっ!?」

 

 

 突如、聞き覚えのある声と共に闇の一筋がレッドマンを斬り裂き、吹っ飛ばした。

 

 

 ガイ「…何だ?」

 

 戸惑うオーブの目の前に、何者かが着地する。

 

 それを見た瞬間、ガイは驚愕した…。

 

 ガイ「…お前は…!」

 

 

 ジャグラー「どうだ?テメーのナイフよりもよっぽど斬れるだろぉ?」

 

 

 レッドマンにそう言い放つ彼を、オーブは足元から徐々に見上げていき、やがて彼が巨大化した『ジャグラス・ジャグラー(魔人態)』である事に気づいた!

 

 ジャグラーは巨大化し、ガイ達を追って月まで来たのである!

 

 

 ガイ「何故…ここに…。」

 

 いきなりのジャグラーの登場に動揺するオーブに、ジャグラーは手を差し伸べる。

 

 ジャグラー「相変わらずのようだな、ガイ。」

 

 ガイ「…フッ、お前さんもな。」

 

 オーブはとりあえずジャグラーの手を取り立ち上がる。

 

 

 色々疑問に思いながらも、とりあえずガイはジャグラーにこう聞いた。

 

 ガイ「お前さん、何故ここに来た? 巨大化までして。」

 

 ジャグラー「テメーを倒すのはこの俺だ。他の者に横取りされてたまるか。 それに…」

 

 ジャグラーは、先日海羽(ソル)がレッドマン達に痛めつけられた事を思い浮かべる…。

 

 ジャグラー「(レッドマンに蛇心剣を向けて)アイツらには借りがあるんでね。」

 

 どうやらジャグラーは、海羽がレッドマン達に痛めつけられた事への報復のためにやって来たみたいである。

 

 

 因みにジャグラーが巨大化できたのは、蛇心剣の闇のエネルギーによるものであり、先日から集めていた闇のエネルギーは、巨大化してレッドマン達と戦うために溜め込んでいたのである。

 

 

 ガイ「フッ、そうかい。 じゃあアイツらは、俺とお前さんの共通の相手という事か。」

 

 

 立ち上がったレッドマンは構えを取り、オーブとジャグラーも、それぞれオーブカリバー、蛇心剣を手に構えを取る。

 

 

 レッドマン「新たな敵…だが…俺が殺る…!」

 

 

 (BGM:True Fighter)

 

 

 ジャグラー「遅れるなよ?ガイ。」

 

 ガイ「フッ、こっちの台詞だ。」

 

 

 オーブ・ジャグラー、そしてレッドマンは互いに地面を蹴り、土砂を巻き上げながら飛び掛かる!

 

 

 ジャグラーはレッドマンのレッドナイフの一振りを蛇心剣で受け止め、それをオーブがカリバーで下から打ち上げた所にジャグラーがすれ違いざまに横一直線の斬撃を腹部に決め、更にオーブがカリバーで背中に一撃を決めて追い打ちをかける。

 

 レッドマン「レッドサンダー!」

 

 レッドマンはレッドサンダーを放ち、オーブはそれを『カリバーシールド』で防ぎ、その間にジャグラーがオーブを飛び越えて高く跳躍し、落下のスピードも加えた強烈な蛇心剣の一撃を叩き込む!

 

 怯んだレッドマンにジャグラーは更に袈裟懸け、半回転しながらの横一直線と連続で斬撃を決め、更に後ろ蹴りを腹に打ち込んで後退させる。

 

 レッドマンが再度放つレッドショットをオーブとジャグラーはそれを剣で弾き飛ばしながら接近し、2人同時に剣を振るってX字を描くような斬撃を叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 ガイ「オーブウインドカリバー!」

 

 

 オーブは“風”の紋章を光らせてオーブカリバーを振るい、巨大な竜巻を起こしてレッドマンを上空に巻き上げる!

 

 そしてジャグラーはレッドマンの位置まで飛び上がり静止する。

 

 

 ジャグラー「蛇心剣・新月斬波!」

 

 

 ジャグラーは闇のエネルギーを三日月状の刃にして飛ばす必殺剣『蛇心剣・新月斬波』を繰り出し、その直撃を受けたレッドマンは上空で爆発した後地面に落下した。

 

 

 ジャグラー「どうだ?痛めつけられたお嬢さんの恨みは。」

 

 着地したジャグラーに今度はハヌマーンが三叉槍を振り下ろすが、ジャグラーは即座に蛇心剣で受け止める。

 

 ハヌマーン「お前も新たな敵だな? 血祭りに上げてやる!」

 

 ジャグラー「そうか、テメーにも借りがあるんだっけなぁ…?」

 

 そう言うとジャグラーはハヌマーンの腹部に右足蹴りを打ち込んで後退させ、更に剣を振るって立ち向かう。

 

 

 大地「俺達は、絶対に負けないんだ!」

 

 ふと何かに気づいた大地はそう言って辺りを見渡すと、大地の周囲に無数の怪獣達のサイバーカードが飛んでいる。

 

 大地と絆を繋いで来た怪獣達は、再び大地達と戦おうとしているのである。

 

 エックス「怪獣達が、私達の思いに応えてくれている!」

 

 大地「みんな…一緒に戦おう!」

 

 大地はデバイザーを突き出し、そこに全てのサイバーカードが読み込まれていく!

 

 そしてそれらと一体化したエックスは、右肩と胸部にゴモラアーマー、左肩にエレキングアーマー、左腕にベムスターアーマーのシールド、そして右腕にはゼットンアーマーの装甲とエクスラッガーが装備される!

 

 

 大地・エックス「ハイブリッドアーマー!アクティブ!」

 

 

 今ここに、奇跡のアーマー『ハイブリッドアーマー』が再び登場した!

 

 

 (BGM:オーブの祈り(1~2番))

 

 

 いよいよ激闘はクライマックスへ!オーブは次のフュージョンアップを始める!

 

 

 ガイ「セブンさん!」

 

 《ウルトラセブン!》

 

 セブン「デュワッ!」

 

 

 ガイ「ゼロさん!」

 

 《ウルトラマンゼロ!》

 

 ゼロ「デェェェヤッ!」

 

 

 ガイはウルトラセブンとウルトラマンゼロのカードをダブルリードし、彼の左右に二人のビジョンが現れる。

 

 

 ガイ「親子の力、お借りします!」

 

 ガイは二人のビジョンと共に右腕を真横に伸ばすポーズから、両腕を拳にして交差し、胸を張って力こぶを作った後オーブリングを揚げる!

 

 

 《フュージョンアップ!》

 

 音声と共にオーブオリジンの姿となったガイは二人のビジョンと重なり、やがてその光が周囲を回るオーブスラッガーショットに沿って下から消えていき、オーブが姿を現す。

 

 《ウルトラマンオーブ! エメリウムスラッガー!》

 

 そしてフュージョンアップが完了した『ウルトラマンオーブ・エメリウムスラッガー』は、光の渦のエフェクト、セブンOPの影絵が出現した後、赤と青の閃光が煌めく背景と共に右拳を突き出して飛び出す!

 

 

 ガイ「智勇双全、光となりて!」

 

 “ドゴンッ”

 

 登場したオーブは口上と共にレッドマンに飛びかかり、青のエフェクトを纏った回し蹴りを顔面に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 レッドマンはレッドナイフを手に斬りかかるがオーブはそれを手持ちのアイスラッガーで受け止め、回し蹴りで叩き落とす。

 

 素手となったレッドマンは今度はパンチを放つがオーブはそれを片手で掴んで受け止め、そのまま胸部にアイスラッガーでの乱れ斬りを打ち込んで行く!

 

 ガイ「俺達は負けない! 俺達を信じ行かせてくれた、人達の思いに応えるためにも!!」

 

 そう叫びながらオーブは乱れ斬りを決めた後、スラッガーでの渾身の一撃を叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 ハヌマーン「はっ…レッドマン!」

 

 ジャグラーと交戦していたハヌマーンは狙いをオーブに変え、ウィンドスラッシュを放つ!

 

 

 ガイ「トリプルエメリウム光線!」

 

 

 オーブは上空に飛び上がると、両腕を額に添えた後、左腕を胸元に当てながらエネルギーをチャージし、右拳を突き出して額のランプから光線『トリプルエメリウム光線』を放ち、瞬く間に迫り来る三つの光輪を破壊した。

 

 

 ハヌマーンは今度はオーブに飛びかかろうと跳躍。オーブは迫り来るレッドマンを跳び越えると同時に肩を踏み台にして更に飛び上がり、ハヌマーンの顔面にゼロキックを彷彿させる強力な跳び蹴りを叩き込み、それを受けたハヌマーンはたまらず地面に落下した。

 

 

 ガイ「超(ハイパー)ウルトラノック戦法だ!」

 

 

 オーブは頭部のオーブスラッガーショットとアイスラッガーの三刀流をウルトラ念力で飛ばす『超(ハイパー)ウルトラノック戦法』を繰り出す!

 

 オーブスラッガーショットは回転しながら、アイスラッガーは白熱化しながら空中で乱舞しつつ、レッドマンとハヌマーンを斬り裂いて行く!

 

 

 三つのスラッガーを頭部にしまったオーブは次のフュージョンに入る!

 

 

 ガイ「ギンガさん!」

 

 《ウルトラマンギンガ!》

 

 ギンガ「デュアッ!」

 

 

 ガイ「ビクトリーさん!」

 

 《ウルトラマンビクトリー!》

 

 ビクトリー「ジュァ…!」

 

 

 ガイ「エックスさん!」

 

 《ウルトラマンエックス!》

 

 エックス「イーッサーッ!」

 

 

 ガイはギンガ、ビクトリー、エックスのカードをリードし、彼の周囲に三人のビジョンが現れる。

 

 

 《トリニティフュージョン!》

 

 ガイがオーブリングのトリガーを引くと、音声と共に光の渦が現れ、やがてそこから丸鋸状の武器『オーブスラッシャー』が形成され、ガイは手に取る。

 

 そしてスラッシャーの側面のギンガの額、ビクトリー・エックス・オーブのカラータイマーの形のマークをスライドタッチすることで4色の刃が発光する。

 

 

 ガイ「三つの光の力、お借りします! オーブトリニティ!!」

 

 

 ガイは三人のビジョンと共に、スラッシャーで逆時計回りで円を描きそれを真上にかざす事でトリニティフュージョンを発動させる!

 

 オーブオリジンの姿となったガイは三人のビジョンと合わさって輝き、やがてその光が下から消えていく事でオーブは姿を現す。

 

 そして『ウルトラマンオーブ・オーブトリニティ』へとトリニティフュージョンを完了したオーブは、宇宙空間に光が迸った後、淡い水色のサイバーラインが走り、ビクトリウムにも似た結晶が飛び散った後、虹色に光る電脳空間の中心で交差する銀河を背に右拳を突き出して飛び出す!

 

 

 ガイ「三つの光と絆を結び、今立ち上がる!」

 

 現れたオーブは口上を上げると同時にレッドマンとハヌマーンに両拳を突き出しながら飛びかかり、それぞれ右拳、左拳で強力なパンチ『トリニティウムストレート』を叩き込み、更に二人が怯んだ隙に一回転しながら跳躍し、ビクトリウムスラッシュにも似た蹴り技を叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 着地し、右肩からオーブスラッシャーを取り出して構えを取るオーブ。立ち上がったレッドマンとハヌマーンはそれぞれレッドサンダー、ハリケーンガンを放って反撃するが、オーブは即座に虹色のバリア『トリニティウムシールド』を張ってそれを防ぐ。

 

 そしてその隙にギンガストリウム、ビクトリー、エックス・ハイブリッドアーマー、そしてジャグラーは上空に高く跳び上がり、それぞれギンガスパークランス、シェパードンセイバー、エクスラッガー、蛇心剣で順にレッドマンとハヌマーンを斬りつけ、その後更にオーブが駆けつけ、虹色のエフェクトを発しながら左右斜め、横一直線にとオーブスラッシャーで斬りつける!

 

 更に5人は振り向き様に一斉に七色のエフェクトを発しながら斬撃を放ち、それらの直撃を受けたレッドマンとハヌマーンは大爆発と共に吹っ飛び地面に落下する。

 

 

 ハヌマーン「ゴフッ!…ハァ…ハァ…馬鹿な…俺達は…ここでやられてしまうのか…!?」

 

 レッドマン「…理解…不能…俺達が…やられるなど…!」

 

 

 ニュージェネレーションヒーローズ、そして加勢したジャグラーの猛攻撃により、レッドマンとハヌマーンは遂に満身創痍となった。

 

 体中無数の切り傷を負って流血しており、吐血すら始めてしまっているボロボロの二人。まさか自分自身が、かつて狩って来た怪獣達の立場になってしまうとは思いもしていなかったであろう…。

 

 

 今こそ、長年に渡って怪獣を無差別に狩って来た悪魔二人に止めを刺す時だ!

 

 

 ニュージェネレーションヒーローズは、オーブをセンターに並び立つ。

 

 ヒカル「さぁ、決めるぜ!」

 

 ショウ「行くぞ!」

 

 大地「これでトドメだ!」

 

 エックス「真の正義の前に!」

 

 ジャグラー「砕け散れ…!」

 

 ガイ「今こそ、力を一つに!」

 

 

 5人は一斉に必殺技の体勢に入る。

 

 ギンガストリウムとビクトリーは周囲にウルトラ6兄弟のビジョンを現しながらそれぞれ腕を回してエネルギーを溜めて行き、エックスは体中のアーマーを光らせながらザナディウム光線を同じ予備動作でエネルギーを溜めて行き、ジャグラーは蛇心剣にありったけの闇のエネルギーを込める。

 

 そしてガイは側面を三回スライドタッチした後、グリップ部の下にあるブーストスイッチを入れる事で刃部を伸ばし、それによりオーブは大きく振りかぶる溜めポーズの後、ガイのいる空間内でギンガの額とビクトリー・エックス・オーブのカラータイマーを組み合わせたエンブレムがガイの背後で輝き、オーブはそのエンブレムに似た形の超巨大な八つ裂き光輪を頭上に生成させる。

 

 

 ヒカル・ショウ「コスモミラクルエスペシャリー!!」

 

 大地・エックス「ウルティメイトザナディウム!!」

 

 ジャグラー「最大出力、新月斬波!!」

 

 ガイ「トリニティウム光輪!!」

 

 

 ギンガストリウムとビクトリーはそれぞれ『ギンガエスペシャリー』と『ビクトリウムエスペシャリー』を同時に放つ合体光線『コスモミラクルエスペシャリー』、エックスは胸から最強光線『ウルティメイトザナディウム』、ジャグラーは闇のエネルギーを極限までに込めた巨大な新月斬波を、そしてオーブは究極の光輪技『トリニティウム光輪』を、一斉に放つ!

 

 

 まずはコスモミラクルエスペシャリーとウルティメイトザナディウムが一つになってレッドマンとハヌマーンを包み込むように直撃し、次に新月斬波が二人の体を貫き、そして最後にトリニティウム光輪が二人を直撃し、縦に両断する!

 

 

 ハヌマーン「…このっ…我々が…何故だーっ!!」

 

 レッドマン「…敗北…死…理解…不能ー!!」

 

 

 二人はそう言い残し、やがて仰向けに倒れると同時に巨大な炎の輪っか状の光を発生させながら大爆発し、跡形も無く消し飛んだ!

 

 

 ニュージェネレーションヒーローズの大勝利! 遂に、光の国の罪人二人を撃破した一同は必殺技の体勢をゆっくり解く。

 

 大きな爆風が晴れたその先に見えたのは、大爆発により出来た大きなクレーターに、その中心の地面にはまるで二人の墓場を現すかのように、レッドナイフと三叉槍が交叉して刺さっていた…。

 

 

 

 因みにその大爆発は地球からも微かに見えたのか、地球でニュージェネレーションヒーローズの勝利を信じていた人たちはそれぞれ別の場所で喜ぶ。

 

 真美「ガイさん…みんな…ありがとう。」

 

 海羽「やったー! 遂にやったんだね!」

 

 アスナ「えぇ、大地達がやってくれたわ。」

 

 

 女性陣が純粋に喜ぶ中、櫂は…、

 

 櫂「フっ…逝ったか…。」

 

 レッドマンとハヌマーンの死を喜んでるのか悔やんでるのか分からない妙な反応を示していた…。

 

 

 

 遂に悪魔二人に勝利したニュージェネレーションヒーローズは、輪になって互いに見つめ合っていた。

 

 ギンガとエックスは通常の姿に戻っており、オーブもオリジンの姿に戻っていた。

 

 4人ともカラータイマーが赤く点滅しているが、激闘の後という事もあり、それは危険信号と言うよりも、戦いを終えたウルトラ戦士に「お疲れさんです」と語り掛けているようであった。

 

 

 ガイ「皆さん…お疲れさんです。」

 

 ガイ(オーブ)は、無事に救出したピグモンを手に乗せ、先輩達に労いの言葉を掛けた。

 

 

 ヒカル「オーブこそお疲れ! 良かったなタロウ、雪辱を果たせて。」

 

 タロウ「あぁ。これでまた、我々ウルトラ兄弟も更に前に進める気がして来た。」

 

 

 大地「皆さんと力を合わせたからこそ、俺達は勝てたんですね…。」

 

 ショウ「その通りだ。 大地、ありがとな。これ返すぜ。」

 

 ショウは空間を通じて大地にゴモラのスパークドールズを返却し、大地はそれを受け取る。

 

 

 エックス「だがまだ油断は出来ない。宇宙には、ハヌマーンやレッドマンみたいな奴がまだいっぱいいる。」

 

 大地「でもその時は、また俺達が力を合わせて戦えばいいよ。」

 

 エックス「そうだな。可能性はゼロではない。」

 

 ガイ「誰かを守りたいという思い、それがあれば、どんな敵にも負けません。」

 

 

 ジャグラー「…誰かを守りたいという…思いか…。」

 

 闇の力を出し切った事により等身大に戻っていたジャグラーは、少し離れた所でオーブ達の会話を聞いていた。

 

 

 ヒカル「例え離れていても、俺達は空の下で繋がっている。」

 

 ショウ「もしまた、強大な敵が現れたその時は…、」

 

 ガイ「あぁ、また共に戦いましょう。」

 

 

 4人は拳を合わせた。これからも力を合わせて戦おうという思いを込めて…。

 

 そして、ふと振り向いた先の太陽に照らされている地球は、いつもよりも明るく見えた…。

 

 

 

 (ED兼BGM:TWO AS ONE(full))

 

 

 地球に戻り、変身を解いたニュージェネレーションヒーローズ。

 

 

 ガイは思わぬ再会を果たしたジャグラーと話し合う。

 

 ジャグラー「ったく、テメーと言う奴は。 俺がいなかったらどうなってた事か。」

 

 ガイ「お生憎様。俺は他人(ひと)の力を借りて戦うのが得意でね。」

 

 ジャグラー「フッ。」

 

 相変わらずお互い皮肉り合う二人。

 

 

 ガイ「お前さんこそ、ワケありとはいえ自ら俺と共に戦いに来るとは珍しいじゃないか。」

 

 ガイにそう言われたジャグラーは、またしても海羽の事を浮かべてしまう。

 

 ジャグラー「たっ…たまたま気にくわない相手だっただけだ。 それより忘れるなよ、いずれテメーを倒すのはこの俺だ。」

 

 ガイ「まだそんな事を…ま、好きにするがいいさ。」

 

 そう言うとガイはテンガロンハットをかぶりながら立ち上がる。

 

 ガイ「あばよ。」

 

 そう言いながらジャグラーの肩に手を置いた後、どこかへと歩き去って行った。

 

 

 去って行くガイを見つめながら、ジャグラーは呟いた。

 

 ジャグラー「ガイ…テメーがいる限り、俺もこの世界にいるぜ…少なくともお嬢さんと夜明けのコーヒーを飲むまではなぁ。」

 

 

 

 一方違う場所にて、

 

 海羽「ヘックチ!」

 

 アスナ「大丈夫?海羽ちゃん。」

 

 海羽「ェ…エヘヘ、誰か私の噂してるのかなぁ? それより、もう帰っちゃうなんて寂しいよ~。」

 

 

 どうやら大地とアスナは一旦自分達の世界に帰る事にしたみたいであり、大地はその後、隊長や副隊長、仲間達に事情を説明した後、必要な物を揃えてこの世界に戻る事にしたみたいである。

 

 

 大地「大丈夫。俺はすぐ戻って来るよ。 この子をラボに届けたらね。」

 

 そう言いながら大地は、海羽にバルのスパークドールズを見せる。

 

 海羽「バルちゃんを助けてくれたし、レッドマン達をやっつけてくれたし、ホントに感謝してもしきれないよ…。」

 

 海羽は思わず嬉し涙を流し、慌ててそれを手で拭く。

 

 大地「あぁっ…大丈夫?」

 

 海羽「エヘヘ…ごめんちゃい。 バルちゃんをよろしくね。」

 

 大地「あぁ。必ず、良い環境に住ませてやるからな。」

 

 

 アスナはバルのスパークドールズを見つめてこう言った。

 

 アスナ「ルイルイ、この子気に入りそうだね。」

 

 大地「そうだね。」

 

 

 海羽「あーちゃんとも、もっと話したかったな~。」

 

 アスナ「きっとまた会えるよ。だって、私達はもうユナイトしてるんだから。」

 

 エックス「それ私のぉ~…。」

 

 海羽「そうだね! 今度また会ったら女子トークしましょ! あ、その時は真美ちゃんも一緒に!」

 

 

 海羽は今度はエックスに話しかける。

 

 海羽「エッ君も、また戻って来るんだよね!」

 

 エックス「あぁ。私は大地と二人で一人だからな。 それに、私ももっと君と話したい。」

 

 海羽「やったー!」

 

 

 その時、エックスはまたしても余計な一言を!

 

 エックス「それに君は魅力的だ。アスナと違って“ザ・女の子”って感じだしな。」

 

 アスナ「エックス、それどういう事よ!」

 

 エックス「すまんアスナ、ひっくり返すのだけはやめてくれ!」

 

 一同は笑い合った。

 

 

 やがて別れの時が来た。

 

 大地「それじゃ、またね。」

 

 エックス「しばしのお別れ。」

 

 アスナ「元気でね。」

 

 海羽「うん!」

 

 

 大地「エックス!」

 

 大地はエクスデバイザーの上部ボタンを押し、そこから溢れる光と共にエックスとユナイトし巨大化する。

 

 そして『ウルトラマンゼロアーマー』(所謂ウルティメイトイージス)を装着し、アスナを手に乗せて飛び立つ。

 

 海羽「バイバーイ!」

 

 海羽は元気よく手を振りながら、ワームホールへと入って行くエックスを見送った。

 

 

 やがてエックスが入ったと同時にワームホールが消失した後、海羽は輝かんばかりの笑顔で元気よくステップ踏みながら歩き始める。

 

 海羽「私も、仲間達と一緒に頑張るよ…大君達みたいに。 ね、モットちゃん。」

 

 「モットー!」

 

 海羽の胸のポケットに入っている『食いしん坊怪獣モットクレロン 』は元気よく返事をする。レッドマンとハヌマーンが滅んだためか、いつもより元気で活き活きとしているようであった。

 

 

 その時、海羽の元にウルトラサインが届く。『ウルトラマンコスモス』からだ。

 

 どうやらモチロンとキララも無事に回復して元気を取り戻したため、月に帰したみたいである。

 

 海羽「良かった…モッちゃんもキラちゃんも元気になって…いつか遊びに行こっと!」

 

 そう言うと、海羽は再び鼻歌を歌いながら軽やかなステップで歩き始めた。

 

 

 一方、ジャグラーはそんな海羽を、少し離れた場所から見つめていた。

 

 ジャグラー「お嬢さん…また会いましょう。」

 

 不敵な笑みでそう言った後、何処かへと歩き去って行った。

 

 

 

 因みに、先ほどジャグラーと別れたガイは、今度は真美に会っていた。

 

 真美「ありがとう。 私、信じてたわ。」

 

 ガイ「今回もまた、ウルトラマンとして当然の事をしたまでさ。」

 

 真美「私、応援したり、信じたりする事しか出来なくて…。あまり力になれなくて、ごめんね。」

 

 ガイ「フッ…何を言う。君は俺達を信じ続けた、それだけでも、俺達の力になったんだ。悪に勝てたのはそのお陰でもある。俺からもお礼を言うぜ。」

 

 真美「ガイさん…。」

 

 

 ガイはテンガロンハットをかぶる。

 

 ガイ「それじゃ、俺はこの辺で。」

 

 真美「またどこか行っちゃうの?」

 

 ガイ「どうせ地球は丸いんだ。またどこかで会える。」

 

 真美「そうだね。もしまた会えたら、その時は何か美味しい物を作るわ。」

 

 ガイ「美味しい物?…フッ、楽しみにしてるぜ。 あばよ。」

 

 そう言うとガイは、ピグモンを連れて何処かへと歩き去って行った…。

 

 

 真美は歩き去って行くガイに手を振りつつ、満面の笑みで呟いた。

 

 真美「いつか…またどこかで…。」

 

 

 

 一方、ヒカルとショウは櫂に勝利を報告し、そしてある食べ物を進めていた。

 

 櫂「うん、このブイチョコってやつ、なかなか美味いな。」

 

 櫂が進められて食べている食べ物とは『ブイチョコウェハース』である。どうやらこの世界でも商品として売られているみたいだ。

 

 ショウ「だろ? 一度食うとやみつきになるぜ。」

 

 櫂「後で真美と海羽の分も買ってやるか。ありがとよ、美味いもん進めてくれて。」

 

 ヒカル「なに、俺達を信じてくれたほんのお礼だ。 櫂さん達が信じてくれたから、俺達は勝てたんだからな。」

 

 櫂「そ、そうか。それは良かったな。」

 

 

 だが、櫂は心の中で…。

 

 櫂(アイツらがやられてしまったか…惜しい奴らを亡くしてしまったが、まあいい。怪獣どもはゼロの力でも十分やっつけられる。 そして今後どうするかは、またじっくり考えればいいさ…!)

 

 

 ヒカル「それじゃ、またな櫂さん!」

 

 ショウ「また共に戦おう!」

 

 櫂「…おぅ、またな!」

 

 

 ヒカル達と別れた櫂は、道を歩き始めた。ゼロはそんな櫂を見つめながら、心で呟く。

 

 ゼロ(今回の件や、昨夜の夢の効果で、少しは考えが変わってるといいがな…ま、少なくとも真美達を守る為にも戦っているのは確かだ。 そうである限り、どんな奴でも許さないんだろうな…。)

 

 

 

 その夜、櫂・真美・海羽の三人は、海羽の退院祝いとして、回転寿司に食べに来ていた。

 

 因みにお会計は、櫂と真美で割り勘する予定である。

 

 海羽「う~ん!美味しい! 寿司食べるのいつぶりだろう? それに退院後だから格別ね~!」

 

 真美「そうだね、次は何食べよっかな~?」

 

 櫂「真美…もう20皿食ってるのか…相変わらずすげーな。」

 

 真美「えへへ。 今回は海羽ちゃんの退院祝いだから、いっぱい食べましょ。」

 

 櫂「そうだな。 俺は次は…しめさばにしよっかな…。」

 

 因みに現在の皿の数は、櫂12枚、真美20枚、海羽9枚である。

 

 

 食べながら笑顔で話し合う二人を見つめながら、櫂はまたしても不敵な笑みで心で呟いた。

 

 櫂(この笑顔を…これからも守って行くんだ…。そのためには例えどんな奴でも許さない…。怪獣はもちろん、例えウルトラマンであろうがなぁ!)

 

 

 怪獣への敵意はそのままで、今後も真美達を守る為に戦う事を改めて強く誓った櫂…。

 

 

櫂(そういえば確か、26日は真美の誕生日だったなぁ…。)

 

 

 果たして、今後櫂の本性が誰かにバレてしまうのであろうか? そして、櫂が心を入れ替える時は来るのか? …今後も見守って行こうではないか…。

 

 

 (ED兼BGM終了)

 

 

 〈エピローグ〉

 

 

 レッドマン達とニュージェネレーションヒーローズが激闘を繰り広げた月の近くの宇宙空間を彷徨う者がいた。

 

 

 ハヌマーン「まだ…これで終わらんぞ…!」

 

 

 なんと、ハヌマーンの生首が宇宙空間を彷徨っているのである!

 

 

 実はハヌマーンは、トリニティウム光輪で身体を両断されたものの、間一髪頭部だけは両断を逃れたため、結果生首だけが微かな生命を持って残ったのである。

 

 なんたる生命力であろうか…。

 

 

 ハヌマーン「すぐさま…桜井敏樹の元に戻って…元の体を…。」

 

 

 その時、

 

 

 アスカ「そうはさせない!」

 

 

 ハヌマーン「…!誰だ!?」

 

 

 突如何処からか声が響き、ハヌマーンはふと振り向く。

 

 

 …その視線の先には、ある一人の巨人が浮遊していた。

 

 

 赤・青・銀で彩られたボディに、カラータイマーの両脇に付いたプロテクター『ダイナテクター』、頭部に付いた結晶『ダイナクリスタル』が特徴の光の巨人。

 

 

 現れたのは『ウルトラマンダイナ(フラッシュタイプ)』である!

 

 

 アスカ「ハヌマーン…お前の悪事もここまでだ!」

 

 そう言いながらファイティングポーズを取るダイナ。

 

 ハヌマーン「何者か知らんが、邪魔はさせんぞ!」

 

 ハヌマーンはふと大口を叩くものの、所詮は頭部のみの弱体化。攻撃できるハズも無ければ、その場からすぐさま逃げ切る事も不可能であった。

 

 

 ハヌマーン「しまった!早く桜井敏樹の元へ…!」

 

 自身の立場に気付いたハヌマーンは、そう言って急いでテライズグレートに向かおうとするが、ダイナは「逃がすか!」とばかりに頭部を掴み、野球のピッチングのように投げつける!(所謂『ウルトラフォーク』)

 

 アスカ「おりゃーっ!」

 

 “ズガンッ”

 

 ハヌマーン「ぐおわっ!」

 

 

 宇宙岩石にめり込んだハヌマーンの頭部。ダイナはすかさずそこに、両腕を十字に組んで青色の必殺光線『ソルジェント光線』を放つ!

 

 

 ハヌマーン「ぐぉわーっ!!」

 

 “ズドガーン”

 

 

 光線の直撃を受けたハヌマーン(頭部)は、オレンジ色の光輪を発生させ、岩石ごと大爆発して砕け散った!

 

 

 アスカ「見たか!俺の超ファインプレー!」

 

 

 『アスカ・シン』(ダイナ)はそう言うと、振り向いて地球を見つめる。

 

 アスカ「あれが、ゼロが来ている別世界の地球か…。 待ってろよゼロ、今行くぜ! ジュワッ!」

 

 

 ダイナは飛び始め、地球に入って行った…。

 

 

 はて、ダイナは何故突如この世界にやって来たのであろうか?

 

 台詞から見るに、もしかするとゼロのウルトラサインは彼に届いたのかもしれない…。

 

 

 レッドマンとハヌマーンが滅びた今、今後敵側もどう攻めて来るのか…気になる所で次回に続く。

 

 

 To Be Continued………。




読んでいただきありがとうございます!


今回は私自身も書くのを楽しみにしていたレッドマンとハヌマーンとの決着編という事で、気合いを入れて制作しました。

恐らく今回のバトルシーンは今までで一番力を入れて書いた気がしますが、決着編という事もあり、また“徹底的に真の正義をぶつける”という裏テーマの下、怪獣、そして海羽ちゃんに仇成す3人には派手に散ってもらいました。


レッドマンとハヌマーンが滅んだ今、今後櫂達のバトルはどうなって行くのか、敵側はどう攻めて来るのか等を楽しみにしていただけると幸いです。

また、最後にちょっとだけ登場したウルトラマンダイナも今後本格参戦しますので、そこも楽しみにしていてください。


感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています!


また、今回隠れたサブタイトルは『勇気を胸に』(ウルトラマンマックス第30話)でした。


あと余談ですが、私最近、ウルトラマンR/B(ルーブ)が毎週の楽しみになっています!

素人ながらも自分達なりに力を合わせて戦うウルトラマンロッソ&ウルトラマンブルの兄弟がとてもカッコよく、オーブダーク・ノワールブラックシュバルツも結構魅力的なキャラクターだなと思いました!

次のエレメント・グランドの登場も楽しみです!

ロッソ・ブルもいつか機会があれば本作に登場させたいと思います。


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番外編2
番外編「俺たちの光」


 今回は、年末年始特別編第一弾として製作しました!


 今回はゼロと、彼の仲間である“ある戦士達”が大活躍します!


 とりあえず楽しんでもらえたら幸いです。


 では、どうぞ!


 ※因みに今回は、試しに久々に「」の前に名前を付けずに小説を書いてみましたが、分かり辛い等と何か意見があれば遠慮なく言ってください。


 (プロローグ)

 

 

 地球から遠く離れた宇宙にて、一つの光り輝く惑星があった。

 

 

 エメラルドのように緑に光り輝くその惑星の美しさは、その外見だけでも平和な星であると確信できる程であった。

 

 

 …しかし、そんな平和な惑星に、突如、“凶獣”が降り立った…!

 

 

 凶獣は、緑溢れる惑星に降り立つや、口や口状の両手からの青色破壊光線や肩の角からの赤色の電撃で破壊の限りを尽くす。

 

 

 凶獣の蹂躙により、緑で溢れていた周囲は次々と赤く燃え上がって行き、逃げ惑うその惑星の住民も次々と死んで行き、正に徐々に地獄へと変わって行く…!

 

 

 凶獣に破壊されて燃えて行く惑星は、緑から赤く染まりながらヒビ割れて行き、やがて大爆発して砕け散ってしまった…!

 

 

 凶獣は、滅ぼした惑星の爆発の中から姿を現し、何処かへと飛び去って行く…。

 

 

 美しい平和な惑星を瞬く間に滅ぼした凶獣は、果たして何処へ向かっているのだろうか…?

 

 

 

 (OP:GO AHEAD~すすめ!ウルトラマンゼロ~)

 

 

 

 時は、本作の(腹黒)主人公・竜野櫂が、ウルトラマンゼロと出会う一年前の夏のある日…。

 

 

 陽が沈んでも暑さが止まない夜を迎えたとある街にて、一人の可憐な女性が、苦しそうに腹を抱えながら、覚束ない足取りで街を歩いている…。

 

 

 

 …私は今…何処へ向かっているの…?

 

 

 …私は…何処に行けばいいの…?

 

 

 …突然現れた悪魔…によって…故郷を滅ぼされ…て…必死に逃げていく内に気を失い…気が付いたらこの星に…来ていた…この星は…何処か…故郷に似て…いるけど…結局私の…居場所なん…て…見当たら…ない…。

 

 

 …私は…このまま死ぬ…のかな?…死ん…で、お父…さんや…お母さんや、友…達の所に行く方が…楽…なのかもしれ…な…い…。

 

 

 

 女性は、遠のって行く意識の中、何かを求めるかのように心で必死に呟きながらも歩みを進めて行くが、やがて力尽きてその場で倒れ込んでしまう…。

 

 

 

 お願…い…誰か…助け…て…。

 

 

 

 女性はやがて瞼をゆっくりと閉じて、意識を失ってしまった…。

 

 

 彼女は何者なのだろうか…?

 

 ただ一つ思われるのは、発言から見るに、もしかしたら彼女は凶獣によって滅ぼされた惑星の異星人の生き残りなのかもしれない…。

 

 

 

 そして翌日。

 

 

 ハロー!みんな! 私は眞鍋海羽。

 

 

 今日もいい天気でお出かけ日和! と言うワケで、今日は(新田)真美ちゃんと二人で男子禁制(笑)女子だけのお出かけしているの!

 

 

 …本当は(竜野)櫂君も誘いたかったけど、櫂君は別の用事があるみたいだから…残念だな~。

 

 ま、櫂君はまた今度誘えばいっか(笑) とにかく今日は私と真美ちゃん、2人っきりの女子会ね♪

 

 

 因みに今日のスケジュールは、午前はカフェでお茶をして、午後は遊園地で遊んで〜、そして夕方以降は晩御飯として焼肉屋さんに行く予定なの!

 

 

 あ〜!もう楽しみ過ぎて仕方がないわ!(笑) そう心がはしゃぎながらも、私は真美ちゃんと一緒にたわいも無い話を楽しみながら最初の目的地・カフェに向かう。

 

 

 「う~ん!今日もいい天気でお出かけ日和! 楽しみだね、真美ちゃん。」

 

 「えぇ。久しぶりだわ。こうして女子だけで出かけるの。」

 

 「へ? って事は普段は男子も一緒?」

 

 「うん。男女混合と言う感じね。櫂君だけじゃなくて、いろんな男子とも親睦を深めるために一緒に御飯に入ったりしてるの。」

 

 「真美ちゃんって、とっても顔が広いんだね。 まぁ当然か。(指折りしながら)真美ちゃんは綺麗だし、優しいし、と~っても良い匂いがするんだもん!」

 

 「(照れ臭そうに)そんな…それほどでもないよ~。」

 

 早速女子トークで盛り上がっている私達。これは楽しい一日になりそうだわ!

 

 

 「まずはカフェね。海羽ちゃんはコーヒー派?紅茶派?」

 

 「紅茶! コーヒーはまだ飲み慣れてなくてね。 真美ちゃんは?」

 

 「私も紅茶かな~…一応コーヒーも飲めるんだけどね。 ケーキ何個食べよっかな~?」

 

 「へ? …もしかして真美ちゃんって、結構食べる人?」

 

 「えへへ…よく驚かれるんだけどね。 実は私、いっぱい食べないと力が出ないの。」

 

 「よく食べて、よく運動する…それも美貌や良スタイルの秘訣なんだろうな~。 私も見習わなきゃ。」

 

 「海羽ちゃんも、毎日元気一杯でニコニコしてる。羨ましい程の愛されキャラだわ。」

 

 いや、此方からすれば、陽気な海羽ちゃんとおっとりした真美ちゃん。どちらも愛されキャラな気がするが(笑)

 

 

 私、眞鍋海羽は、尚も真美ちゃんと会話を楽しみながら道を歩いていた。その時。

 

 「…ん?あれは何?」

 

 私は何かに気づき指を差し、真美ちゃんもその方を振り向く。

 

 

 「誰だろう?あの人…。」

 

 「あんな所に倒れていて…ちょっと行ってみよ、真美ちゃん。」

 

 そこには、ポニーテールの髪形が特徴の、どこか儚げな雰囲気がある若い女性が一人、道端に倒れ込んでいたの。

 

 気になって歩み寄ってみると、体に所々汚れが付いている事から、私達はタダ事じゃないと感じたわ。

 

 「大丈夫。死んではいないみたい。」

 

 手首に触れて脈を診た真美ちゃんは、その人がまだ生きている事を確認する。

 

 「それにしてもどこの人だろう?…ここ霞ヶ崎では始めて見る顔だし…。」

 

 「とりあえず、どこか安全な場所で手当てしましょ。」

 

 「大丈夫かなぁ?…見ず知らずの人だし…危ない人だったらどうしよ~。」

 

 「大丈夫。傷を負って倒れているなんて、きっと何かあったんだよ。それに、落ち着いて話せばきっと分かり合えるよ。」

 

 「…そうだね。まずは話す事が大事だよね。じゃあ、運びましょ。」(真美ちゃん…やっぱり優しいし、落ち着いているな…。)

 

 この人を助ける事にした私と真美ちゃん。とりあえず真美ちゃんは上半身を抱え、私は両足を持って、二人でその人を安全な場所まで運び始める。

 

 …と言っても、両足を持っているだけだから私はあまり負担が無いんだけどね…。真美ちゃん…力もあるんだな…羨まし~。

 

 

 

 同じ頃、この世界の宇宙空間にて。凶獣が地球目掛けて一直線で飛んでいた。

 

 真っ赤な目を光らせ、良い獲物を見つけたとばかりに不気味に咆哮を上げながら徐々に地球へと近づいて行く凶獣。

 

 このまま地球も、凶獣の手によって滅ぼされるのであろうか?

 

 

 「ちょっと待った!!」

 

 その時、何処からか声が響くと共に、凶獣は突如飛行を止めてその場で浮遊し始める。

 

 何かに行く手を阻まれたみたいである。

 

 

 (BGM:ウルトラマンゼロのテーマ)

 

 

 咆哮を上げながら赤い目で睨み付ける先には、赤と青と銀で構成されたボディに、胸部から腕にかけてのプロテクター、鋭い目つき、そして、頭部にトサカのように二つ付いた宇宙ブーメラン『ゼロスラッガー』が特徴のウルトラ戦士が腕組みをして立ち尽くすように浮遊している。

 

 

 今ここに『ウルトラマンゼロ』の登場だ!

 

 

 「…フッ!」

 

 凶獣の前に現れたゼロは、親指で口元を擦る仕草を見せた後、啖呵を切る。

 

 「こっから先には、行かせねぇぜ!」

 

 

 邪魔をされて怒った凶獣はゼロ目掛けて口から破壊光線を放つが、ゼロは即座にウルティメイトブレスレットから取り出した槍・ウルトラゼロランスを盾・ウルトラゼロディフェンダーに変形させてそれを防ぐ!

 

 盾に直撃した光線はそこを中心に拡散していき、ゼロの背後で大爆発する。

 

 

 「これ以上の破壊は許さねぇ! 行くぞ、凶獣ルガノーガー!!」

 

 ウルトラゼロディフェンダーを収めたゼロは、ファイティングポーズを取った後、ルガノーガー目掛けて雄たけびを上げながら飛びかかる!

 

 

 ゼロが立ち向かう怪獣、それは『凶獣ルガノーガー』であった!

 

 奴は美しい惑星を次々に滅ぼす悪魔の様な怪獣であり、わずか一日で星一つ壊滅させるなど朝飯前である。

 

 先ほど緑の惑星を破壊したのも奴であり、恐らくゼロの台詞から見るに、ゼロは様々な宇宙を跨ぎながら、星を襲うルガノーガーを追跡していたと思われる。

 

 そして次はこの世界の地球を破壊しようとした今、ようやく見つけて追いついたゼロはこの場でやっつけようと立ち向かっているのである!

 

 

 赤色の電撃を放つ肩の角、牙の生えた口状の両手、腹部の反射板のような装甲、エネルギー吸収能力を持つ尻尾と、正に全身凶器の体であり、また先程も言ったように星を容易く破壊する程の強さを持つ怪獣ルガノーガー相手に、果たしてゼロはどう戦うのであろうか…!?

 

 

 

 …私は今、周囲が爆発し、炎が燃え盛る中、両親と手を繋いで逃げていた。

 

 美しい緑に囲まれた私の星が地獄と化していく中、私はただ、迫り来る炎から逃げるべく必死に走るしかなかった…。

 

 

 やがて、私達の近くで大爆発が起こり、そのはずみで両親と離れてしまい、私と両親の間は炎で隔たれてしまう。

 

 「お父さん! お母さん!」

 

 私は必死に呼びかけるが、高温と転倒のダメージにより、両親は既に力が尽きかけていた。そんな中、両親は私に最後の言葉を投げかける。

 

 「逃げるんだ…!」

 

 「あなただけでも…生きるのよ…!」

 

 躊躇う私。その間にも炎がすぐそこまで迫っていた…。

 

 

 いよいよ身の危険を感じた私は、ギリギリまで両親を見つめた後、涙を散らしながら振り向いて走り始めた…。

 

 

 必死に走る中、両親の最後の言葉が何度も頭の中で繰り返されていき、やがて気が遠くなるように視界が暗くなり始め、私の意識も薄れて行く…。

 

 

 

 「お父さん…お母さん…。」

 

 

 やがて意識が戻った私は、譫言のようにそう呟きながらそっと目を開ける。

 

 

 気が付くと私は寝かされており、視線の先には優しい眼差しで私を心配そうに見つめる顔が…。

 

 

 そうか…私は夢を見ていたのか…。それにしても、ここは何処だろう…? この人たちは…誰? それに、私が枕にしている膝から伝わるこの温かさは一体…?

 

 

 

 ここで、語りをチェンジしよう。

 

 

 私、新田真美と海羽ちゃんは、道端で倒れている女性を発見し、その人を二人で公園まで運び、傷の手当てをした後、私の膝枕で寝かしていたの。

 

 そして遂に、その人はゆっくりと目を覚ましたわ。何やら片目から一筋の涙を流しながら…。

 

 

 「あ、目を覚ました!」

 

 海羽ちゃんもそれに気づく中、その人は譫言のように呟く。

 

 「…ここは…何処…?」

 

 とりあえず私は、その人の安否を確認する。

 

 「大丈夫ですか?」

 

 「…あなた達は…?」

 

 「道端で倒れていたから、私と真美ちゃんで安全な場所まで運んで手当てをしたんだよ。」

 

 海羽ちゃんが明るく説明した後、その人はゆっくりと起き上る。

 

 「そ…二人ともありがとう…。」

 

 その人は素っ気なく私達にお礼を言った後、トボトボと何処かへと歩き始める…。

 

 「何処へ行くのー?」

 

 「何処でも一緒でしょ…。」

 

 海羽ちゃんの問いかけにもそっけない返事…それに暗い表情…何かあったに違いないわ。

 

 

 「真美ちゃん、あの人なんかブルーだね。」

 

 「うん…なんか悲しい顔してる…。」

 

 「なんか、放っておけないかも…。行ってみる?」

 

 「そうね。」

 

 私、眞鍋海羽と真美ちゃんは、元気が無さそうなその女性の元へ歩み寄る。

 

 

 「元気無さそうだけど、大丈夫?」

 

 まず真美ちゃんがそう優しく問いかけてみる。でも、その子は俯いたまま何も答えない…多分、私達が見ず知らずの人達だから戸惑いもあるんじゃないかな…。

 

 「今日はいい天気! だから暗い顔しないで、笑顔になろ? さあさあ!」

 

 私は気を紛らわそうと明るく笑顔を促してみるけど…彼女は尚も俯いている…よっぽど心を閉ざしているわこれ…。

 

 そんな彼女を真美ちゃんは尚も心配そうな優しい表情で、上目遣いで見つめる。

 

 

 周囲を自然と笑顔にする力を持つ明るさを持つ海羽。だが、今回は彼女の明るさを以てしても一人の女性の心を晴らす事が出来ない…。

 

 無理も無いかもしれない…。何しろ彼女は故郷を滅ぼされ、両親も友達も全て殺されたのだから…。

 

 

 私、眞鍋海羽は、真美ちゃんと一緒に彼女を元気付けようとするけれど、彼女は一向に俯いた顔を上げてくれない…。

 

 「…もしかして、よっぽど辛い事があったのかな…?」

 

 「関係ないでしょ…どうせ私なんて…どうなったって…。」

 

 私の気を取り直した問いかけも素っ気なく返した後、彼女は再度トボトボと歩き去ろうとする。

 

 「関係なくないよ! だってこの星(地球)、この空の下で出会ったんだもん。 だからもう仲間じゃない。」

 

 「うん。それに、あなたは悪い人じゃないわ。その純粋な瞳を見れば分かるもん。」

 

 再度私は明るく、真美ちゃんは優しく彼女に語り掛ける。

 

 

 …凶獣に故郷を滅ぼされ、家族も友達もみんな殺され、それでも必死に逃げてこの星(地球)に辿り着いたものの行く当ての無い私は今、絶望で頭が支配されそうになっていた…。でもそんな中、こんな私に懸命に話しかけてくれる二人がいた…。

 

 一人は明るく、一人は温かく、私に話しかけてくれる…。

 

 多分この星の人物で、初めて出会う人なんだけど…それにも関わらず私を心配してくれる二人…そんな二人に私は徐々に警戒心が薄れて行く…。

 

 

 「何かあったの?良かったら話してみて。 何か私達に出来る事があるかもしれないじゃない?」

 

 

 温かい一人(真美)が、私にそう語り掛けた…。その確かな優しさと包容力を感じた私は、完全に二人への警戒心が無くなり、ゆっくりと顔を上げた…。

 

 

 どうしようか迷った…この人達なら話しても良いかもしれない…でも、やっぱり話しづらい…て言うか、思い出すとまた悲しみが込み上がって来る…。

 

 思い出してまた心が痛くなった私は、思わず涙目になってしまった…その時。

 

 「…ぇ?」

 

 温かい一人は、私をそっと抱きしめた。突然の事に私は思わずちょっと驚く。

 

 「無理に話さなくてもいいよ…。ごめんね、思い出させちゃって…。」

 

 そう優しく私に語り掛ける彼女…。彼女の温かさを肌でも感じた私は、遂に感極まって目に溜めていた涙が頬を伝い始める。

 

 「辛かったよね。でも、話そうとしてくれてありがとう。 いつでも聞くから、話したくなった時でいいよ。」

 

 「うぅ…ぐすん…ぁ…ありが…とぅ…。」

 

 涙声ながらも、私は自分に優しくしてくれた二人に絞り出すような声でお礼を言った。

 

 それと同時に、私に新しい友達が出来た事を確信した…。

 

 明るい一人(海羽)は、泣いている私の顔に小さな布切れ(ハンカチ)を当てて涙を拭いてくれる。よく見たら彼女も涙を流していた。

 

 「うぅ…ェ…エへ…ごめんね。私、泣き虫なモノだから…。」

 

 泣きながらも明るさを忘れずに語り掛ける彼女を見ていると、何故だか不思議と笑顔になり始める。

 

 「二人ともありがとう。こんなにも人に優しくされたのって、いつ振りかしら。」

 

 

 「エヘヘ、あ、そう言えば自己紹介まだだったね。私は眞鍋海羽。(ダブルピースで)よろしくね~!」

 

 「(満面の笑みで)私は新田真美。よろしく。」

 

 へぇ~、明るい方は海羽ちゃんで、温かい方は真美ちゃんね。

 

 

 「…リリカ…私は、リリカって言います。」

 

 私、リリカも、照れ臭く感じながらも自己紹介をした。

 

 

 「へぇ~、リリカちゃんって言うんだ。」

 

 「可愛くて良い名前だね。」

 

 二人とも、早速私の名前を気に入ってくれた。嬉しい。 名前を褒められたのもいつ振りだろう…?

 

 「ねぇリリカちゃん。良かったらこれから私達と一緒に出掛けない?」

 

 「…え?」

 

 「私達は、これからお出かけをする所なの。遊んだり、食事をしたり…リリカちゃんもどう?」

 

 「もう私達は友達! だから一緒に楽しもうよ。ね!」

 

 輝くような笑顔で明るく誘ってくれる二人。そして、私を友達と言ってくれた…。私は更に嬉しくなった。

 

 「うん!」

 

 私は、新しい友達二人と出かける事にした。

 

 「よーし、じゃあまずはカフェへレッツゴー!」

 

 そう言いながら海羽ちゃんは私の手を握り元気よく駆け始め、私もそれにつられて走り始め、真美ちゃんもそれに続く。

 

 

 しかし何故だろう…小柄だけど誰よりも明るい海羽ちゃんを見てると自然と元気になり、そっと包み込むような優しさを持つ真美ちゃんを見てると自然と気持ちが落ち着いて来る…。

 

 ここ、地球と言う星の人間が、こんなにも素晴らしいなんてね…。

 

 

 海羽と真美の優しさに触れて僅かながら元気を取り戻し、更に二人と友達になった孤独な異星人・リリカ。

 

 彼女なら、他にも多くの地球人と仲良くなれるかもしれない。

 

 

 

 だが、そんな彼女を狙うかのようにこの世界の地球を狙うルガノーガー。ゼロはそいつと激闘を繰り広げている。

 

 ルガノーガーは肩の角から赤い電撃を放ち、ゼロはそれを飛び回りながら、先が読めているかのようにかわしていく。

 

 一瞬の隙を突いてルガノーガーは口状の両手から破壊光線を放ち、その直撃を受けたゼロは大爆発する…。

 

 …かに見えたが、間一髪両手持ちのゼロスラッガーで防いでいたゼロは、爆発の中から飛び出すと同時に飛行の勢いも加えた『ウルトラゼロキック』を放つ!

 

 炎のキックはルガノーガーの胸部に直撃し、ルガノーガーは少し吹っ飛ぶが、蹴りが当たった部分が反射板のような装甲であったために、致命傷どころか大したダメージを受けていないようであった。

 

 「フッ、面白い。久しぶりの手ごたえのある相手になりそうだぜっ!」

 

 幾度の激闘をくぐり抜けて来た事により培われた恐れを知らない強い心を持つゼロは、慌てる事無くそう言うと、再度ルガノーガーに立ち向かう。

 

 

 

 その頃、宇宙でそんな激闘が行われている事を知るはずも無い地球にて。

 

 私、眞鍋海羽と真美ちゃん、そしてリリカちゃんは、カフェでの一時を終えた。

 

 「ん~!やっぱ紅茶を飲みながらのケーキは最高だね!」

 

 「そうね。 あ、海羽ちゃん、(右の口元に指を当てながら)クリーム付いてるよ。」

 

 「ほえ?」

 

 真美ちゃんにそう言われ、私は右の口元を舐めてみる。ホントだ。クリームが付いてたわ。

 

 「気付かなかった…(右手を後頭部に当てて少し舌を出しながら)エへ。」

 

 

 その時、リリカちゃんが思わぬ事を言い出したの。

 

 「…あのふわふわして甘い食べ物…なかなか美味しいわね。」

 

 「…へ?…もしかしてリリカちゃん、ケーキ食べたの初めて!?」

 

 「へぇ~、あれケーキって言うんだ。」

 

 驚いたわ…リリカちゃん、見た感じ結構生きてそうなのに、まさかケーキを食べた事が無いどころかそれ自体知らなかったなんて…。

 

 (最も、リリカはそもそも地球人ではなかった。それ故なのだが…。)

 

 

 「うふ、リリカちゃん、ちょっと不思議ちゃんかな?」

 

 真美ちゃんが口に手を当てて微笑みながらそう言った。

 

 「…そう、なのかな?」

 

 なにやら天然っぽい発言をするリリカちゃん。次第に私達は可笑しくなって来て笑い合った。

 

 「じゃあ、次は遊園地ね。行きましょ。」

 

 「うん!少しでも多くアトラクションに乗れるように…早く行こう行こー!」

 

 私は楽しみでテンションが上がり、走り出そうとしたその時。

 

 「きゃっ!」

 

 …間抜けな事に、うっかり転んでしまったわ。

 

 「海羽ちゃん大丈夫?」

 

 急いで真美ちゃんとリリカちゃんが歩み寄って起き上らせてくれる。

 

 「え~ん!怪我しちゃったよ~!」

 

 右膝に痛みを感じる私は怪我をしたと確信し、泣き出しそうになる…。

 

 …でも、実際見てみたら、なんと痛みを感じていた右膝は無傷で、気が付いたら痛みも引いていたわ。

 

 「…あれ?何ともないみたい。」

 

 「良かった…(笑いながら)んもう海羽ちゃんはしゃぎ過ぎよ。」

 

 「えへへ、ごめんちゃい。」

 

 私達は再び笑い合った。そしてそのまま遊園地に向かい始める。

 

 友達二人との遊園地。思いっきり楽しむぞ~!

 

 

 …先ほどの海羽の無傷は偶然ではなく、実はリリカの能力によるモノであった。

 

 海羽の確信通り右膝を擦り剝いていたが、リリカは彼女を起き上らせている間に、気づかれないように患部に手を当て、治療能力で傷を治したのである。

 

 やはり異星人だけあって、地球人には無い能力を持つリリカ。その能力を、自分を笑顔にしてくれた新しい友達へのちょっとした恩返しとして使ったのであろう。

 

 (海羽ちゃん達は、私に笑顔を取り戻させてくれた…。だから、今度は私も、彼女たちの笑顔を守りたい。)

 

 海羽達と笑い合いながら、リリカは心でそう呟いた。

 

 

 

 宇宙空間にて。ゼロとルガノーガーの死闘は激しさを増していた。

 

 ゼロはルガノーガーの口からの破壊光線を回避しつつも突撃し、装甲の無い喉元にパンチを決める!

 

 少し怯みながらもルガノーガーは右腕を振るって殴り掛かるがゼロはそれを左腕で受け止め、そのまま右拳で胸部、頭部とパンチを撃ち込んだ後、右フックを繰り出すが、ルガノーガーの口状の左腕に噛み付かれてしまう。

 

 ゼロは怯まずルガノーガーの左腕に右脚蹴りを打ち込む事で噛み付きを放させ、続けて左足蹴りを胸部に打ち込んで吹っ飛ばすと同時にその反動を利用して宙返りをしながら距離を取る。

 

 ゼロは距離を取った後、腕をL字に組んで必殺光線『ワイドゼロショット』を放つが、またしても胸部の装甲で防がれてしまう。

 

 次にゼロは、後ろの小隕石を蹴って勢いを付け、再度ウルトラゼロキックを放つ!

 

 だがルガノーガーはそれに対し、まずは口からの破壊光線で勢いを相殺し、その隙に肩の角からの電撃を上半身に浴びせて撃ち落とす!

 

 ルガノーガーの知性をも感じさせる攻撃を受けたゼロは、近くの小惑星の上に落下する。

 

 「くっ…なかなかやる奴だ。しかし、地球に侵入させてたまるか!」

 

 ゼロは口元を擦りながら立ち上がると、再びルガノーガー目掛けて飛び立つと同時に、エレキギターのサウンドと共に体を燃え上がらせて『ストロングコロナゼロ』へとタイプチェンジする!

 

 「俺に挑んだ事を後悔させてやるぜー!!」

 

 死闘はまだまだ続きそうである…!

 

 

 

 再度地球に戻ろう。

 

 私、眞鍋海羽と真美ちゃんは、新しい友達・リリカちゃんと一緒に遊園地を楽しんでいた。

 

 どうやらリリカちゃんは遊園地も初めてだったようで驚いたけど、いざ一つアトラクションに乗ってみた瞬間ドハマりしたようで、終いには私よりもはしゃぎ始める始末(苦笑)

 

 ジェットコースターにコーヒーカップ、観覧車、空中ブランコ等…結構色々乗ったハズだけど、それでもリリカちゃんはまだはしゃいでいるわ。

 

 因みにお化け屋敷にも入ったんだけど、恥ずかしながらビビったのは私ぐらいで、肝が大きい真美ちゃんは平気どころか楽しんでいて、リリカちゃんに関しては平気どころかどんどん前へ進んで行く感じだったわ。

 

 リリカちゃん…お化け平気なタイプなのね…羨ましいな~。

 

 (最も、彼女がお化け平気なのは、皮肉にも凶獣により故郷を滅ぼされるという所謂“お化け以上の恐怖”を味わったためなのだが…。)

 

 

 「ねぇ!私、またあれに乗りたい!」

 

 そう言いながらとあるジェットコースターを指差すリリカちゃん。でも私は、少し疲れ気味になっていた。

 

 「ごめん…私、ちょっと休憩するよ。」

 

 「じゃあ、私が付き合うわ。近くにベンチやショップもあるし、海羽ちゃんはゆっくり休んでるといいよ。」

 

 「うん、ごめんね真美ちゃん。」

 

 リリカちゃんは、付き添いの真美ちゃんと一緒にアトラクションへと向かい始める。

 

 

 ベンチに座り、再度ジェットコースターを楽しむ二人を見上げながら、私はふと笑顔になる。

 

 「まさか、最初はあんなに暗かったリリカちゃんが、あそこまで笑顔になるとは思いもしなかったな~。」

 

 私は空を見上げてそう呟きながら、今日出来た新しい友達を今後も大事にしていこうと改めて心に決めた。

 

 

 

 そんな海羽が見上げる空の先の宇宙空間にて。

 

 ストロングコロナのゼロは、ルガノーガーに炎のパンチやキックを連続で浴びせて行き、やがてルガノーガーを頭部から掴む。

 

 「ウルトラハリケーン!」

 

 ゼロは技名を叫ぶと同時に竜巻のように高速回転させながらルガノーガーを放り投げる!

 

 「ガァァルネイト、バスタァァァ!!」

 

 ゼロはウルティメイトブレスレットを叩く様な仕草を見せた後、エネルギーを溜め、右拳を突き出して炎状の強力光線『ガルネイトバスター』を放つ!

 

 だが、ルガノーガーは竜巻の中で回転しながらも、口と両手から同時に破壊光線を放ってガルネイトバスターを相殺し、その隙に電撃を放ってゼロに浴びせる!

 

 電撃攻撃により光線の発射が止まったゼロに、破壊光線が追い打ちをかける!

 

 …しかし、ゼロは大爆発の中で、ハープのような音色と共に体を青く輝かせて『ルナミラクルゼロ』へとタイプチェンジし、ウルトラゼロランスを手に飛び出す!

 

 

 ゼロは、超スピードの突進『パーティクルナミラクル』でルガノーガーに接近すると同時にランスの一撃を叩き込むが、案の定装甲で防がれて通用しない。

 

 逆に殴り飛ばされるゼロだが、それでも怯まず、自身の周囲に無数の光のゼロスラッガー『ミラクルゼロスラッガー』を出現させる。

 

 「ミラクルゼロスラッガー!」

 

 ゼロは掛け声と共にランスを持った手を突き出し、それにより無数のスラッガーは一斉にルガノーガーに向かって飛ぶ!

 

 ルガノーガーは自身の周囲を跳ぶスラッガーに対し、飛び回りながら破壊光線や電撃で防いだり撃ち返したりしていく。

 

 

 その隙に通常形態に戻っていたゼロは、本体のゼロスラッガーをカラータイマーの左右に装着し、そこにエネルギーを溜めて行く。

 

 「これで終わりだっ!!」

 

 ゼロは胸部のスラッガーから必殺光線『ゼロツインシュート』を放ち、光線はルガノーガーに命中して大爆発した!

 

 「決まったぜ!」

 

 ゼロはゼロスラッガーを頭部に戻しながら、右手のフィニッシュポーズを突き出して勝利宣言をする。

 

 

 …しかし、爆発が晴れた先にはルガノーガーの姿どころか、バラバラになった死体すら確認できない…!

 

 「何だと!?」

 

 動揺するゼロ。その間にもルガノーガーはゼロの背後に回っていた!

 

 実は、星の大爆発にも耐えられる強度を誇るルガノーガーはゼロツインシュートの直撃にも耐え抜き、更にその際に生じた爆発に紛れてゼロの後ろに回ったのである!

 

 

 ゼロが辺りを見渡している隙に、ルガノーガーは尻尾を勢いよく伸ばしてその先端をゼロの背中に突き刺す!

 

 「ぐぉあっ!!? …ヤロー!」

 

 ゼロは突然の痛みに驚きつつも振り向いて反撃しようとするが、どうした事か突然ふらつき始める。

 

 「うっ…何だこれは…力が抜けていく…!」

 

 そしてよく見てみると、ルガノーガーの尻尾から体へエネルギーが走って行くのが確認できる。

 

 ルガノーガーは尻尾でゼロのエネルギーを吸収しているのだ!

 

 エネルギーを吸われて力が抜けていくゼロ。やがてカラータイマーが点滅を始める!

 

 ルガノーガーは弱ったゼロに両手からの破壊光線を浴びせ、当たって爆発すると同時に尻尾を抜いて離す。

 

 

 ある小惑星の上に落下して転がるゼロ。エネルギーを吸われたためか既に息切れを起こしていた。

 

 同じくルガノーガーも小惑星に着地し、余裕を見せるかのようにゼロ向かってゆっくりと前進する。

 

 「こいつは…ちょっとヤベェかもな…。」

 

 流石のゼロも、不利になった状況に焦りを見せ始めていた。

 

 

 ルガノーガーは、ゼロへのトドメとして口と両手からの破壊光線、そして肩の角からの電撃を同時に発射しようとエネルギーを溜め始める…!

 

 

 その時、突如上から一筋のリング状の光線が飛んで来てルガノーガーに直撃し、それによりエネルギーのチャージが止まる。

 

 

 ゼロがそれに驚く中、彼の前に、光と共に一人の巨人が降り立つ。

 

 

 「はっ…!」

 

 それを見た瞬間、ゼロは微かに驚いた。

 

 

 ゼロの前に雄々しく立っているのは、真っ赤なボディに、胸から腕にかけてのプロテクター、ゼロと同じく鋭い目つき、そして、頭部に立つ一本の宇宙ブーメラン『アイスラッガー』が特徴の戦士。

 

 

 登場したのは、M78星雲・光の国出身で、ウルトラ6兄弟の一員であり、そしてゼロの父親でもある“真紅のファイター”と言われるウルトラ戦士『ウルトラセブン』だ!

 

 

 先ほど牽制したリング状の光線は、セブンの技の一つ『ウルトラスパイラルビーム』である。

 

 

 「親父…!」

 

 突然の父親の登場に驚きを見せるゼロ。

 

 「相変わらず無茶をしているようだな、ゼロ。」

 

 セブンはゆっくりとゼロの方を振り向いてそう言った。

 

 「何故、親父がここに…?」

 

 「我々も、あの凶獣を追っていたのだ。 それに、危なっかしい息子を放っておけないからな。」

 

 セブン…何気に親バカ?(笑)

 

 

 しかし、歴戦の勇者であり、“生涯現役”の戦士だけあって、立ち尽くすだけでもかなりの貫禄を感じる。

 

 

 (ウルトラセブン戦闘BGM)

 

 ルガノーガーは、現れたセブン目掛けて口からの破壊光線を放つ!

 

 「デュワッ!」

 

 セブンはファイティングポーズを取った後、頭部に手を当ててアイスラッガーを投げつける!

 

 セブンのウルトラ念力により白熱化しながら飛ぶアイスラッガーは、ルガノーガーの光線を両断していき、やがて光線を全て切った後、高く飛んで反転した後、急降下しながら尻尾の先端を切り落とす!

 

 セブンは戻って来たアイスラッガーを頭部に戻す。これでルガノーガーは相手のエネルギーを吸収出来なくなった。

 

 怒ったルガノーガーは肩からの電撃を乱射するが、セブンはそれを軽快なフットワークでかわしながら接近し、右肩の体当たりを撃ち込んで後退させる。

 

 「ダーッ!!」

 

 更に跳躍して、両足のドロップキックの形で『ウルトラキック』を叩き込み、それを胸部に喰らったルガノーガーは少し吹っ飛んで転倒した。

 

 

 「やっぱ凄ェな…。」

 

 父親の強さに改めて感心するゼロ。

 

 ルガノーガーが倒れている隙にセブンはゼロの元に歩み寄り、腕を貸して立ち上がらせた後、額のビームランプに手を当ててゼロのカラータイマーにエネルギーを照射する。

 

 これはウルトラ戦士にエネルギーを与える『ウルトラチャージ』であり、エネルギーを補給したゼロのカラータイマーは青に戻る。

 

 「サンキュー親父。力が湧いて来たぜ!」

 

 元気を取り戻したゼロは、軽快に足踏みしながら首を回し、ポーズを取る。

 

 

 ここからは、セブン・ゼロ親子による反撃が始まるのであろうか…!?

 

 

 

 その頃、地球にて。

 

 私、眞鍋海羽と真美ちゃんは、新しい友達・リリカちゃんと一緒に、遊園地を遊び尽くした後、今日最後の楽しみ・焼肉屋で夕食を楽しんでいた。

 

 ハラミ、トントロ、タン、カルビ、ホルモン等…どれもジューシーで美味しかったな~! あ、あと合間に食べたクッパやサラダも美味しかった!

 

 食事をしながら楽しくワイワイ話す…これぞ女子会の醍醐味ね!

 

 (最も、食べた量は真美ちゃんが一番多かったのは言うまでもない(笑))

 

 …え?大学生だからお酒も飲んだのかって?

 

 私も真美ちゃんもまだ一年生で20歳いってないから今回は飲んでないよ~!(笑)

 

 十分肉を味わった私達は〆として冷麺を味わっていた。因みにこの後控えているデザートのシャーベットも楽しみ~♪

 

 「今日食べたモノ、どれも美味しかったな~。地球って、こんなにも美味しいモノが一杯あったなんて。」

 

 「…へ?地球?」

 

 「ぁ…ぃ…いやあ、今まで食べたモノの中で一番美味しかったって意味ね!」

 

 またしてもリリカちゃんの天然っぽい言動。私達は笑い合った。

 

 ビックリした~。発言からして一瞬リリカちゃんが他の星の人かと思っちゃったから…。

 

 (実際、他の星から来た者なのだが…。)

 

 やっぱリリカちゃんって、不思議ちゃんで面白いわね。

 

 

 「…海羽ちゃん…真美ちゃん…今日は本当にありがとね。」

 

 リリカちゃんはかしこまり、改めて私達にお礼を言った。

 

 どうやら私達と出会い、私達と初めて遊んだ今日一日は本当に楽しかったみたい…私達は改めて嬉しい気持ちになった。

 

 真美ちゃんは「どういたしまして」とばかりに満面の笑みで一礼し、私は笑顔でピースをしたわ。

 

 

 「それにしても、なんかまだ足りないわ…追加注文でクッパもう一杯食べよっかな~。」

 

 真美ちゃんが上品に冷麺をすすりながらそう言った。

 

 「…え?まだ食べるの!?」

 

 「真美ちゃん…やっぱりよく食べるんだね…凄いな…。」

 

 私もリリカちゃんも驚きを隠せなかった。 やっぱり凄いわ…細身をキープしながらよく食べれるって…。

 

 

 

 …とまあこんな感じで女子達が楽しく食事を楽しんでいた頃、宇宙空間にて。

 

 セブンが加勢した事により、ルガノーガーとの激闘はいよいよ佳境に入ろうとしていた!

 

 

 小惑星上で対峙するセブン・ゼロ親子とルガノーガー。ゼロは既にやる気満々だ。

 

 「っしゃあ! ここからは、親子の力で一気にぶっ倒すぞ!」

 

 「…いや、それだけでは無い。」

 

 「…え?」

 

 

 「お前の仲間達も、連れて来たぞ。」

 

 「…仲間…?」

 

 

 セブンの気になる発言に首をひねるゼロ。

 

 

 その時、ゼロの頭のスラッガーが太陽の光を受けて光った瞬間、そこから特殊な効果音と共に光り輝く十字型の鏡のような紋章が現れ、ゼロがそれに驚く中、その中から一人の巨人が飛び出す!

 

 (ミラーナイト登場BGM)

 

 現れたのは、別次元宇宙・アナザースペースの鏡の星出身であり、二次元人の父とエスメラルダ人の母を持つ“鏡の騎士”『ミラーナイト』だ!

 

 「フッ!」

 

 光り輝く体で飛び出したミラーナイトは、腕をY字型に広げた状態で残像を現しながら跳躍し、ルガノーガーの頭部に二、三回蹴りを決めた後、宙返りをしてゼロたちの元に着地する。

 

 「ミラーナイト!」

 

 華麗に登場したミラーナイトに反応するゼロ。

 

 「助太刀に参りましたよ、ゼロ。」

 

 

 さて、お次は…。

 

 

 (グレンファイヤー登場BGM)

 

 「ファイヤアアアアァァァァ!!」

 

 何処からか熱い叫びが聞こえ、ルガノーガーがその方を振り向くと、一人の巨人が全身に炎を纏った状態で突っ込んで来ていた!

 

 炎を纏ったその巨人は、同じくアナザースペース出身で、そこを股にかける炎の海賊の用心棒を務めていた“炎の戦士”『グレンファイヤー』だ!

 

 「どりゃっ!!」

 

 グレンファイヤーは勢いよく突っ込みながらルガノーガーの顔面に炎のパンチを決めた後、ゼロたちの元に着地する。

 

 「ヒャッホーゥ!いっちょ上がりぃ!」

 

 熱く登場したグレンファイヤーは、炎を起こしながら髪をかき上げる仕草を見せる。

 

 「グレンファイヤー…!」

 

 反応するゼロ。ルガノーガーは奇襲したミラーナイト、グレンファイヤーに怒り、破壊光線を一斉に撃とうとする!

 

 

 (ジャン兄弟登場BGM)

 

 その時、何処からか無数のミサイルや光弾が降り注ぎ、ルガノーガーはそれらが自身や周囲の地面に命中した事により光線のチャージが止まる。

 

 ルガノーガーがふと上を向くと、そこには二人の鋼の戦士が!

 

 一人は、アナザースペースの惑星・エスメラルダに代々伝わる、伝説の宇宙船『スターコルベット・ジャンバード』が変形した“鋼鉄の武人”と言われる巨大ロボット『ジャンボット』!

 

 もう一人は、かつてはジャンボットをベースに人工天球・ビートスター内にて暗殺ロボット・ジャンキラーとして生み出されたが、ゼロ達と交戦していく内に命の意味を説かれた事で心を学んで正義に目覚め仲間となった“最強のメカロボット”『ジャンナイン』!

 

 所謂“鋼鉄のジャン兄弟”と言われる二人の武人が登場! 先ほどルガノーガー牽制したのは、ジャンボットの『ジャンミサイル』とジャンナインの『ジャンキャノン』である。

 

 「「ダブルジャンナックル!」」

 

 二人は、左腕のロケットパンチ『ジャンナックル』を同時に放つ合体技『ダブルジャンナックル』を放ち、それを頭部に受けたルガノーガーは転倒する。

 

 ジャン兄弟もゼロたちの元に着地し、ゼロはそれに反応する。

 

 「ジャンボット…ジャンナイン…!」

 

 「我々も力を貸すぞ、ゼロ。」

 

 「兄さんと一緒に…!」

 

 

 ゼロの元に駆け付けた四人の戦士。今ここに『ウルティメイトフォースゼロ』のメンバーが揃った!

 

 ウルティメイトフォースゼロ。それは、かつてゼロがアナザースペースにて『カイザーベリアル』として君臨していた『ウルトラマンベリアル』の帝国軍に立ち向かった際、その旅路で(ジャンナインを除く)彼らと出会い、彼らと協力してベリアル軍を破った後、ゼロの発案により結成された宇宙警備隊であり、それ以降は人工天球・ビートスターでの戦いを通じてジャンナインを加えた後、アナザースペースに建造した秘密基地『マイティベース』を拠点に宇宙の平和を守り続けていた。

 

 そして今回、セブンの呼びかけによって星々を滅ぼすルガノーガーの存在を知り、ゼロの危機に駆け付けたのである!

 

 

 因みにこの四人の戦士は、それぞれ『ミラーマン』、『ファイヤーマン』、『ジャンボ―グA』、『ジャンボ―グ9』に酷似しているんだとか…?

 

 

 父親が連れて来た思わぬ援軍に、どこか嬉しそうに口元を擦るゼロ。

 

 「ヘッ…お前ら…来てくれたのか。」

 

 

 「何故我々を呼ばなかったのだ?」

 

 「ほんっと!たまに水臭い所あるよな~ゼロちゃんは!」

 

 ジャンボットは疑問を投げかけ、グレンファイヤーは軽口を叩く。

 

 「ヘッ、戦いに熱中する余り、忘れちまってたぜ。」

 

 何処か冗談交じりに返すゼロ。

 

 「なるほど!今回の敵はそれほどやべ~奴って事だな!」

 

 伸脚をしながら勝手に納得するグレンファイヤー。まぁ、当たってはいるが。

 

 「あぁ。奴は星を簡単に破壊する程の怪物だ。」

 

 「なんと…これは久々に腕が鳴りそうですね。」

 

 そう言いながら警戒するように構えるミラーナイト。

 

 

 「それに、奴の装甲は、俺のゼロキックやワイドゼロショットもはね返すほど頑丈だ。」

 

 「相当硬いんだな!焼き鳥の頭といい勝負じゃねーか!」

 

 「誰が頑固だ!それに私は焼き鳥ではない!」

 

 「何だよぉ!」

 

 「あぁあぁ!お前らまたかよ…。」

 

 いつの間にかいつものやり取りになってしまっているグレンファイヤーとジャンボットにゼロは少々呆れ気味。

 

 

 「でも、奴は一人…それに、殺戮は心の無い者がする事…だから、僕達が負けるはずが無い!」

 

 「その通りですね。皆で力を合わせましょう。」

 

 前向きな言葉をかけるジャンナインに、ミラーナイトは同調する。

 

 

 やがてルガノーガーは、ゼロ達に向かって「無視をするな!」とばかりに咆哮を上げる。

 

 「お前ら、覚悟はできてるか?」

 

 改めて、メンバー全員に投げかけるゼロ。

 

 「問題ない。行こうゼロ。」

 

 「そんなの…ゼロと出会った時からとっくに決めていた。」

 

 「おうよ!それに、今回はセブンの伯父貴もついてるしなぁ!」

 

 「我々の力を見せてやりましょう。」

 

 一人一人返事をするウルティメイトフォースゼロのメンバー。それを見ていたセブンは無言で頷いた。

 

 

 「覚悟しやがれ! ルガ…え、えーと…ルガノール…いや、ルガノーダー…え~と…あ!ルガノーガー!!」

 

 相変わらず名前を間違えながらも、ルガノーガーに啖呵を切るグレンファイヤー。

 

 

 「今度こそ、ここでお前を討つ!」

 

 ジャンボットもそれに続く。

 

 …何やら前からルガノーガーの存在を知っていたかのような言い回しだが、そのワケについては後ほど…。

 

 

 「お前ら…上等だぜっ!!」

 

 遂に決意を固めた一同は、ゼロの言葉と共に一斉にルガノーガーの方を振り向く。

 

 

 「行くぜっ!」

 

 ゼロの掛け声と共に、一同は一斉にファイティングポーズを決める!

 

 

 今ここに、ウルティメイトフォースゼロwithウルトラセブンの、宇宙の命運をかけた戦いが始まる!

 

 

 先手必勝とばかりにルガノーガーは口からの破壊光線を放ち、それがゼロ達の足元で大爆発する!

 

 ゼロ達はその爆発の中から飛び立ち、ルガノーガーもそれを追うように飛び立つ!

 

 

 「俺たちは、ウルティメイトフォースゼロ!! 宇宙のワルは、全部ぶっ倒す!!」

 

 ゼロの言葉と共に、遂に戦闘が始まった!

 

 

 (BGM:運命のしずく~Destiny's Star~)

 

 

 ルガノーガーは電撃を乱射して攻撃を仕掛けるが、ゼロ達はそれらを飛び回ってかわしつつ、ゼロは額のビームランプからの光線『エメリウムスラッシュ』、ミラーナイトは手からの手裏剣状の光線『ミラーナイフ』、グレンファイヤーは手から放つ火球『グレンスパーク』、ジャンボットは頭部から放つ緑色のビーム攻撃『ビームエメラルド』、ジャンナインは胸部の発光部からの光弾『ジャンフラッシャー』、そしてセブンは額のビームランプからの光線『エメリウム光線』で、それぞれ相殺していく!

 

 

 「行くぞ、ゼロ!」

 

 「おぅ、親父!」

 

 セブン・ゼロ親子は一旦並んで静止し、それぞれアイスラッガーとゼロスラッガーを飛ばしてそれらをプロペラ状に並べて飛ばす合体技『コンビネーションゼロ』を放つ!

 

 合体した三つのスラッガーはルガノーガーの電撃をことごとく消し飛ばしながら飛び、やがて電撃の発射口である両肩の角を斬り落とした!

 

 

 ルガノーガーが怯んだ隙に、ジャンナインが下から上昇しながらアッパーパンチでかち上げ、更に上で待機していたミラーナイトが急降下キック『ミラーキック』を叩き込む!

 

 「ファイヤースティック!」

 

 「ジャンブレード!」

 

 更に、ルガノーガーが降下する先で待ち構えていたグレンファイヤーとジャンボット。グレンファイヤーは炎の棒『ファイヤースティック』による打撃、ジャンボットは右腕に生成したエメラル鉱石の剣『ジャンブレード』による斬撃を同時に放ち、それを受けたルガノーガーが吹っ飛んで小惑星の上に落下する。

 

 

 同じく小惑星に着地してルガノーガーに駆け寄る一同。土砂や石などを振るい落としながら立ち上がるルガノーガーは、自身に駆け寄るゼロ達目掛けて両腕からの破壊光線を発射する!

 

 ジャン兄弟は飛び上がり、ミラーナイトはバック転をし、そしてゼロ、セブン、グレンファイヤーは受け身を取りながら前転をして、それらをかわす。

 

 ゼロとグレンファイヤーはそれぞれルガノーガーの左右に回って腕を掴んで動きを止め、その隙にセブンがルガノーガーの胴体に体当たりを決めた後、更に前蹴りを打ち込んで後退させる。

 

 怯まずルガノーガーは両腕を振るって殴り掛かるが、三人はそれを回避しながら一旦距離を取り、今度はジャン兄弟とミラーナイトが駆け寄り、ジャン兄弟はルガノーガーの腹部に同時にパンチを叩き込み、ミラーナイトは跳躍して大きく右脚を振り上げた蹴りを頭部に叩き込む!

 

 ミラーナイトは着地をした後、ルガノーガーの右フックを右脚蹴りで弾き、続けてそのまま一回転をしながら後ろ向きの左ハイキックを頭部に打ち込む。

 

 

 「俺たちのビッグバンは!!」

 

 「もう止められないぜぇぇっ!!」

 

 そして、飛び上がったミラーナイトと入れ替わる形でゼロとグレンファイヤーが駆け寄り、ゼロは炎を纏った手刀『ビッグバンゼロ』、グレンファイヤーは全身に超高熱エネルギーを纏って連続で殴る『ファイヤーダッシュ』を繰り出す!

 

 炎の手刀とパンチの連続は、激しく火の粉を散らして炸裂しながらルガノーガーに確実にダメージを与えていく!

 

 やがて二人はルガノーガーが怯んだ隙に体勢を立て直し、ゼロは跳躍してウルトラゼロキックを、グレンは炎のパンチ『グレンファイヤーパンチ』を放つ!

 

 炎のキックが胸部に、炎のパンチが腹部に直撃したルガノーガーは、小隕石をいくつか破壊しながら大きく吹っ飛ぶ。

 

 

 何とか踏ん張って静止したルガノーガーは、再びゼロ達目掛けて口、両手からの破壊光線を一斉に放つ!

 

 「ジャンバスター!」

 

 ジャンナインは、両腕を広げた状態で腰のパーツを展開させ、そこから超強力ビーム『ジャンバスター』を放ってルガノーガーの破壊光線を相殺していく!

 

 ジャンナインがルガノーガーと光線の打ち合いをしている隙に、ジャンボットは左肩のシールドを巨大な斧『バトルアックス』に変形させて手に取る。

 

 「バトルアックス! 必殺風車!!」

 

 そして『必殺風車』を発動させ、高速回転しながらルガノーガーに突っ込み、バトルアックスの強力な一撃を叩きつけて吹っ飛ばす!

 

 更に、ルガノーガーが吹っ飛んだ先で待機していたセブンがルガノーガーの尻尾を掴み、『ウルトラスウィング』で何度も振り回した後、大きく投げ飛ばす!

 

 

 ウルティメイトフォースゼロの連携攻撃を受けていくルガノーガーは徐々に弱っているようであった。

 

 

 「今こそ、絆の力を見せる時だ!」

 

 「あぁ!」

 

 セブンの言葉を受けたゼロは左腕を揚げ、ウルティメイトブレスレットから光の鎧を出現させてそれを装着する!

 

 これは、かつてベリアル帝国軍との戦いの中で『ウルトラマンノア』から授けられた、どんな悪も倒し、時空すら超える事が出来る伝説の鎧『ウルティメイトイージス』であり、それを装着したゼロは“光の勇者”『ウルティメイトゼロ』になったのである!

 

 

 「ブラックホールが吹き荒れるぜっ!!」

 

 ゼロは高速でルガノーガーの周囲を飛びながら、連続ですれ違い様に右腕の刀剣『ウルティメイトゼロソード』による斬撃を決めて行き、やがて強力な一撃を叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 それでも意地を見せるルガノーガーは、ウルティメイトゼロを見つけるや、そこに口からの破壊光線を浴びせる!

 

 破壊光線が命中したゼロは、大爆発して砕け散ったかのように見えた…!

 

 …だが、砕け散った欠片をよく見てみると、一つ一つが鏡の破片であり、その中からミラーナイトが姿を現す!

 

 「鏡を作るのは得意でね。 残念でした。」

 

 ミラーナイトは、鏡でゼロの虚像を映し出すトリックプレイでルガノーガーを翻弄したのである!

 

 

 「引っかかったな!バ~カ!!」

 

 再びファイヤースティックを手に持って、ルガノーガーを挑発するグレンファイヤー。それに乗ったルガノーガーは破壊光線や殴り掛かり等で攻撃を仕掛ける。

 

 「燃えるマグマのォ!ファイヤーフラァァァッシュ!!」

 

 「シルバー、クロス!!」

 

 グレンファイヤーはそれらをかわしながらファイヤースティックですれ違い様に殴りつける『ファイヤーフラッシュ』を繰り出し、更にミラーナイトは両腕をクロスした後勢いよく広げて十字型の光の刃『シルバークロス』を連射する!

 

 光の刃の雨あられを浴びるように受け、更にファイヤーフラッシュでの一撃を喰らったルガノーガーは大きく吹っ飛んで小惑星の上に落下する!

 

 

 「これで決める!」

 

 仲間たちがルガノーガーの相手をしている間、ゼロは“ゼロディフェクター”という現象でイージスを超弓状の『ファイナルウルティメイトゼロモード』に変形させる。

 

 そしてゼロは、光の弓を引いてエネルギーを充填しながら照準の調整を始める。

 

 「俺たちに勝とうなんざ、二万年早いぜ!」

 

 

 今こそ、数々星々を滅ぼし、沢山の人々の幸せを奪った悪魔の怪獣にトドメを刺す時だ!

 

 

 一方、破壊光線で接近出来なくすることでミラーナイト達の陽動を振り切ったルガノーガーは、ゼロの方を振り向き、口と両手から破壊光線を一斉に放とうとエネルギーを溜め始める。

 

 

 それを見たセブンは「させるか!」とばかりに再度アイスラッガーを投げつけ、白熱化しながら飛ぶアイスラッガーはルガノーガーの体を斬りつつ周囲を飛び回り注意を引く。

 

 「最強光線、一斉発射ぁぁぁ!!」

 

 その隙に、セブンは腕をL字に組んで必殺光線『ワイドショット』を、それに続きグレンは叫びと共に火球状のグレンスパーク、ミラーナイトはシルバークロス、ジャンボットはビームエメラルド、ジャンナインはジャンバスターを、それぞれ一斉に放つ!

 

 五人の一斉攻撃をそれぞれ五方向から囲まれるように喰らったルガノーガーは、大爆発を起こすと共に完全に弱り動きが止まる。

 

 そして、遂に腹部の装甲にヒビが入った!

 

 

 「受けてみろ!凶獣!」

 

 ルガノーガーが弱ったと同時に、ゼロもエネルギーの充填と照準の調整が完了する!

 

 

 「これが、俺たちの、光だー!!」

 

 

 ゼロは叫びと共に、光り輝くウルティメイトイージスを撃ち出す必殺技『ファイナルウルティメイトゼロ』を放つ!

 

 撃ち出されたイージスはルガノーガーに命中すると高速回転し、ルガノーガーの体を貫いた!

 

 ルガノーガーは赤く発光し、稲妻状の光を発生させながらもがき苦しんだ後、断末魔と共に大爆発して吹き飛んだ!

 

 

 (BGM終了)

 

 

 遂に父親や仲間と共に悪魔のような強敵を撃破したゼロは、大爆発が晴れた後、イージスを戻したウルティメイトブレスレットを見つめながら呟いた。

 

 「みんな…ありがとう。」

 

 

 そして、セブンやグレン達もゼロに合流する。

 

 「フゥ~…あーあ、疲れた。」

 

 グレンは合流すると同時に、炎を起こしながら髪をかき上げるような仕草を見せる。

 

 「やりましたね、ゼロ。」

 

 ミラーナイトはゼロに労いの言葉を掛ける。

 

 「俺たち、いいチームワークだったよなぁ!」

 

 「あぁ、久しぶりの熱い戦いだった。」

 

 「ま、計算内の結果だがな。」

 

 グレンファイヤー、ジャンボット、ジャンナインも勝利を喜ぶ。

 

 そしてセブンは、腕組みした状態で何も語らず静かに頷いた。

 

 

 「…ヘッ…やっぱ、最高のチームだぜ!」

 

 嬉しそうに口元を擦りながらそう言ったゼロは、父親や仲間達と共に守り抜いた地球の方を振り向く。

 

 

 そして、「もう大丈夫だ」とばかりにフィニッシュポーズを決めた。

 

 

 その時、突如、ゼロ達ウルティメイトフォースゼロの周囲が白い空間に変わる!

 

 「…!何だ…?」

 

 「この空間は…?」

 

 「兄さん、これは一体…?」

 

 「何が起こるんだ?」

 

 「おいおい!何がどうなってんだよぉ!」

 

 

 一同が驚きを隠せない中、彼らの前に一人の人間の女性らしき者が現れる。

 

 「彼女は…?」

 

 「お?何なんだこの可愛い子ちゃんは!?」

 

 「人間らしいですね。」

 

 「新しい…有機生命体…?」

 

 四人が彼女に反応する中、ジャンボットは…。

 

 

 「君は、S-851惑星のリリカじゃないか!」

 

 なんと、突如ゼロ達の前に現れた女性はリリカであり、ジャンボットは彼女の事を知っていたのである!

 

 因みにこの空間はリリカの精神世界であり、彼女はそこに一時的にゼロ達の精神を誘い込んでいる状態なのである。

 

 

 「ありがとう。邪悪を倒し、地球と宇宙の平和を守ってくれて。」

 

 リリカ(精神体)は、笑顔でゼロ達にそう言った。

 

 

 「おいおい!何がどうなってんだ焼き鳥!」

 

 「ジャンボット…彼女とは知り合いなのか?」

 

 「これは、何かあったっぽいですね。」

 

 「兄さん、教えてよ。」

 

 四人に問い詰められたジャンボットは、少し躊躇いつつも話す決心をする。

 

 「いいだろう。それは、約四日前の事だ。」

 

 

 約四日前。それは、ルガノーガーがリリカの故郷『S-851惑星』を襲った日であった。

 

 たまたまその惑星近くの宇宙をジャンバードの状態でパトロールしていたジャンボットは、その惑星でのルガノーガーの蹂躙を目撃し、急いで駆け付けたのである。

 

 だが時すでに遅し、惑星は既に崩壊寸前な状態であり、住人もほとんどが死に絶えていた…!

 

 そんな中で、瀕死の状態で唯一生き残ったリリカを見つけたジャンボットは、ジャンバード状態の自身の中にリリカを回収し、近くの安全な惑星・地球に避難させようと飛び立ったのである。

 

 ジャンバードは一旦リリカを地球上に降ろした後、ルガノーガーの存在を他の仲間に知らせようと再び宇宙に飛び立ち、恐らくその最中にルガノーガーを追っていたセブンと出会ったのだと思われる。

 

 しかし、リリカの生存を知っていたルガノーガーは、S-851惑星を破壊した後、密かにジャンバードを追い始めており、結果としてジャンバードの行動が地球が狙われる引き金になってしまっていたのである!

 

 

 因みに、何故リリカはルガノーガーの撃破を知っているかと言うと、実は彼女は治療能力の他に、遠くの状況を把握する能力も持っており、真美たちと楽しみつつもその能力でゼロたちの戦いを見守り、勝利を信じ続けていたのである。

 

 

 「つまり、ルガノーガーが地球に接近するきっかけを作ってしまったのは私だったんだ。申し訳ない。」

 

 自身の過失を謝罪するジャンボット。ゼロ達は珍しくドジを踏んだジャンボットに驚きを隠せない。

 

 「まさかジャンボットがドジを踏むとは…。」

 

 「珍しい事もあるのですね。」

 

 「兄さん…嘘でしょ?」

 

 ゼロとミラーナイトは珍しがり、ジャンナインは兄の思わぬ失敗に動揺を隠せない。

 

 「そんな失敗しやがって、やっぱどっか壊れてんじゃねーのか焼き鳥ぃ!?」

 

 「だから謝ったじゃないか! それに私は焼き鳥ではないジャンボットだ!」

 

 またしてもグレンファイヤーがからかい、ジャンボットがムキになるいつものやり取りが始まる。

 

 

 そんな彼らのやり取りを微笑みながら見ていたリリカは、再び語り掛ける。

 

 「でも、結果としてルガノーガーを撃破してくれた。本当に感謝してるわ。」

 

 「しかし、私は君の惑星を守れなたっか…どう詫びたらいいやら。」

 

 ジャンボットはリリカの星を守れなかった事に罪悪感を感じているようだ。

 

 「ううん。気にしないで。私は、故郷に似た地球を第二の故郷にする事にしたから。 それに、とっても素敵な新しい友達も出来たから。」

 

 リリカの前向きな言葉を聞いた一同は、安心し始める。

 

 「それなら良かった…。どうかこれからも、元気で過ごしてくれ。」

 

 「兄さんが守った、素晴らしき有機生命体。」

 

 「また何か困った事があったら、我々を呼んでくださいね。」

 

 「銀河の果てからでも、駆け付けてやっからよぉ!」

 

 「じゃあ、あばよ!達者でな!」

 

 

 ウルティメイトフォースゼロの言葉を聞いたリリカは、「ありがとう」と言わんばかりの満面の笑みを見せると、光と共に消滅し、それと同時に白い空間も消えてゼロ達は元の場所に戻る。

 

 

 「彼女なら、今後も地球で元気に過ごせそうだな。」

 

 ゼロは、リリカの地球生活の安心を確信する。

 

 

 その時、突然グレンファイヤーが小言を言い始める。

 

 「しっかしよぉ!地球に接近したルガノーガーを迎え撃ったって事は、ゼロもルガノーガーの存在を知ってたって事だろ!?」

 

 「え?…まぁ、そうだが。」

 

 「何だよどいつもこいつも!それなら俺も呼んでくれても良かったじゃねーかよ!」

 

 「あなたが少し鈍いだけじゃないですか?」

 

 「おいおい人の事言えるのかなミラちゃん?オメーも知らなかったくせに!」

 

 「僕も、ルガノーガーの存在を知らなかった…。」

 

 「ほら!ナインの坊主も知らなかったって言ってんぞ!」

 

 「ジャンナインはその時たまたま別の宇宙をパトロールしていたんだ。」

 

 「何だよそれなら俺だってよぉ!その時色んな宇宙を飛び回って超ー忙しかったんだかr…」

 

 

 …いつの間にかいつもの賑やかな雰囲気になっているウルティメイトフォースゼロの面々。

 

 そのやり取りを見つめながら、ゼロは「フッ」と微笑んだ。

 

 平和になったからこそ、いつものやり取りが出来ているんだと…。

 

 

 「ゼロ。」

 

 「何だ?親父。」

 

 セブンの呼びかけに振り向くゼロ及びウルティメイトフォースゼロの面々。

 

 「宇宙とは、常に不安定なもの。だから今後も、凶悪な敵が現れる可能性もあるであろう…。だがお前と、お前の仲間達なら、どんな困難も超えて行けそうだな。」

 

 「…ヘッ、心配いらないぜ、親父。」

 

 セブンの安心の言葉を受けたゼロは、何処か嬉しそうに逆ピースを向ける。

 

 「ウルティメイトフォースゼロの諸君。 これからも、ゼロをよろしく頼むぞ。」

 

 「おうよ!」

 

 「仰せの通りに。」

 

 「任せてくれ。」

 

 「うん。」

 

 

 「デュワッ!」

 

 グレン達の返事を受けて頷いた後、セブンは両腕を揚げて何処かへと飛び去って行った…。

 

 

 セブンを見送った後、ゼロ達もアナザースペースに帰る事に決めた。

 

 「さてと、私達もそろそろ帰りますか。」

 

 「い…いや、ミラーナイト、そうしたいんだが、まだイージスの力が戻ってなくてな。」

 

 先程ルガノーガーとの戦闘にウルティメイトイージスを使ってしまったため、まだエネルギーが回復するのを待つ状態であった。

 

 「じゃあ、しばらく待つ事になるのか。」とジャンナイン。

 

 「なんだよ! んじゃあちょっくらこの宇宙の探索でもしよっかな~。 しっかし可愛かったな~さっきのリリカって子! 異星から来た、儚げな美少女!って感じで…。」

 

 「ま、姫様の美しさ程ではないがな。」

 

 「ちぇっ!焼き鳥は相変わらず姫様バカだよな~!」

 

 「私はバカではないし焼き鳥でもない! 一体どれだけ私を侮辱したら気が済むのだ!」

 

 

 再びグレンファイヤーと口論になるジャンボットだが、その時何かを思い出した。

 

 「あ!」

 

 「どうしたの?兄さん。」

 

 「そういえば今日は姫様がマイティベースに…。」

 

 

 「「「「あーっ!!」」」」

 

 

 ゼロ達も何かを思い出して驚く。

 

 実はこの日は、惑星エスメラルダの第二王女『エメラナ・ルルド・エスメラルダ』が、ゼロ達の基地・マイティベースを訪れる日だったのである!

 

 

 「ゼロ、どうにか早くイージスを回復出来ないのか?」

 

 「いっ…いやぁ、そう言われても…。」

 

 「ったくこんな時に!どんだけ融通の利かないイージスちゃんなんだよ!」

 

 「知らねーよそんなの!ノアに聞けよノアに!」

 

 急用を思い出した瞬間、グレンファイヤーとジャンボットはイージスの回復を急かし始めてしまう。

 

 

 「それじゃ、イージスが回復するまで、少しこの宇宙を探索してみませんか?」

 

 「もしかしたら、悪がいるかもしれないし。」

 

 ミラーナイトとジャンナインが提案をした瞬間、ゼロ達の口論も治まった。

 

 そして、提案した二人は先に飛び立つ。

 

 「フッ、それもいいな!」

 

 「仕方がない。しばらく付き合うか。」

 

 「それいいねぇ…って、それさっき俺が提案したやつじゃねーかよ!ミラちゃんよぉ!!」

 

 ゼロ、ジャンボット、グレンファイヤーと順に、後を追うように飛び立つ。

 

 

 そしてウルティメイトフォースゼロは、他愛もない言い合いをしながら、この宇宙の探索を始めるのであった…。

 

 

 「これからもよろしくな…お前ら。」

 

 仲間達と飛びながら、ゼロはひっそりと呟いた。

 

 

 だが、この時ゼロは思いもしていなかった…。

 

 地球時間で一年後、『竜野櫂』という好青年を装ったエゴイストと共に戦う事になってしまうとは…。

 

 

 

 …一方、そんなゼロ達を、遠く離れた場所から紫のオーラと共に見つめている一人の“黒いウルトラマン”がいた…。

 

 「おのれゼロ!そしてウルティメイトフォースゼロ! まさかルガノーガーも倒すとはな…。」

 

 憎しみの籠った声でそう言った後、その“黒いウルトラマン”は何処かへと去り始める。

 

 「だがいつか必ず、お前らを地獄に叩き落としてやる…!」

 

 

 どうやらルガノーガーは、その“黒いウルトラマン”の差し金だったようである…。

 

 

 『ウルトラマンベリアル』の…!

 

 

 (そしてゼロとベリアルの戦いは、『ウルトラマンジード』の物語へと続く…。)

 

 

 

 その頃、夜を迎えた地球にて。

 

 私、リリカは、今とても嬉しい気持ちで溢れている。

 

 絶望しかけていた私を新しい友達が助けてくれて楽しませてくれたし、それにゼロ達がルガノーガーを倒してくれたのだから…。

 

 焼肉屋を出る前にトイレに行き、能力でゼロ達にお礼を言った私は、海羽ちゃんと真美ちゃんと一緒に焼肉屋を出て、星空を見上げながら夜の道を歩く。

 

 

 そして、別れの時が来た。

 

 「海羽ちゃん、真美ちゃん、今日は本当にありがとう。 とても楽しかったわ。」

 

 「私達も、リリカちゃんと遊んで楽しかったわ。」

 

 「そうそう! 楽しい一日、あっという間だったな~。」

 

 心からお礼を言った私に、二人は笑顔で返してくれた。

 

 

 「私、これからも頑張れる気がして来たよ。二人のお陰だわ。」

 

 「良かったわ。もしまた気分が落ち込んでどうしようもなくなったら、いつでも声を掛けてね。助けてあげるから。」

 

 「出来る限りの事、何でもするよ~!」

 

 どこまでも優しい二人。私は益々嬉しい気持ちになった。

 

 

 「またいつか、何処かで会おうね。」

 

 「うん。約束だね。」

 

 「また一緒に遊ぼうね!」

 

 私達は笑い合いながら、別れの握手を交わした。

 

 

 そして、見えなくなるまで手を振りながら海羽ちゃん達と別れた。二人も、見えなくなるまで笑顔で手を振ってくれた。

 

 「さようならー!」

 

 「元気でねー!」

 

 「また遊ぼうねー!」

 

 

 やがて海羽ちゃん達が見えなくなった後、しばらく歩いた私は、綺麗な星空を見上げる。

 

 

 今日食べたケーキ、ソフトクリーム(遊園地にて)、焼き肉…どれも美味しかったな~。

 

 

 お父さん…お母さん…私、ここ地球という綺麗な星に来て、素晴らしい友達に出会うことが出来た…。

 

 これからは、この星を、第二の故郷として生きる事にしたわ。

 

 

 宇宙に散ってしまった命の為にも、私は強く生きて行くわ。 だから、見守っていてね。

 

 

 リリカは星空を見上げて心でそう言った後、ふと一つの小箱を取り出す。

 

 そしてその小箱の蓋を開けると、美しいオルゴールの音色が響き始める。

 

 

 演奏されている曲は、『星のように…』である。

 

 

 リリカはそっと目を閉じてそのメロディーを聞きながら、改めて心に決めるのであった…“強く生きる事”を…。

 

 母の形見でもある、オルゴール小箱から優しく鳴り響くメロディーを聞きながら…。

 

 

 

 私、新田真美は、海羽ちゃんと一緒に帰り道を歩いていた。

 

 リリカちゃんという素晴らしい友達と別れた後…。

 

 「リリカちゃん、一体何処から来たんだろうね。」

 

 無邪気に海羽ちゃんが話しかけ、私は笑顔で応える。

 

 「そうね…聞いてみたらどうかな?」

 

 「あ、そうだね!早速聞いてm…。」

 

 海羽ちゃんがそう言いながらスマホを取り出したその時、何かを思い出した。

 

 「あ!…そう言えば、LINE交換してなかった…。」

 

 「あ、そう言えば…。」

 

 私もそれを思い出す。そう言えば遊びに夢中で連絡先交換してなかったね(笑)

 

 

 (最も、リリカは異星人であり地球に来たばかりであったため、そもそもスマホ自体持っていなかったのだが…。)

 

 

 「あ~しまった~!これじゃあいつまたどこで会えるか分からないよ~!」

 

 今にも取り乱しそうになっている海羽ちゃんに、私は落ち着いて笑顔で語り掛けた。

 

 「大丈夫。必ずまた会えるよ。」

 

 「…へ?」

 

 「だって…リリカちゃんも私達も、みんな同じ空の下にいるんだもん。」

 

 「…そうだね! じゃあそのためにも、私達も前向きに生きて行こうね!」

 

 「(満面の笑みで)うん。」

 

 

 私達は、他愛もない会話を楽しみながら帰り道を歩き始める。

 

 リリカちゃんは、何処でどんな生活をしているのだろう…?その事は私も海羽ちゃんも知らない。

 

 …でも、私達は信じている。リリカちゃんは、これからも元気で暮らして行ける事を。

 

 そして、いつかまた会える事を…。

 

 

 何時しか聞こえ始めていたオルゴールの音色の“星のように…”を口ずさみながら、私達は帰り道を歩き続けた…。

 

 

 素直で良い子であるリリカなら、今後ももっと多くの友達が出来、元気に暮らして行けるであろう…。

 

 我々もそれを信じようではないか。

 

 

 

 そしてあれから数か月が経ち、クリスマスが近い時期。真美達の大学『麟慶大学』は、野外でクリスマス会を行っていた。

 

 学生たちのほとんどはコスプレをしており、衣装だけではなく鬚まで付けて本格的にサンタさんになりきっている男子生徒もいれば、友達同士で可愛らしいトナカイのコスプレをしている女子生徒がいたりなど、コスプレは様々であった。

 

 軽音楽部のバンドの演奏を聴いたり、ビンゴ大会を楽しんだりなどして会は盛り上がっている。

 

 そして、最後のオードブルを味わいながら自由に雑談などをする時間の時、サンタ服を模した白いファー付きの衣装を着ている真美と海羽は、女子同士の会話を楽しんでいた。

 

 そんな中、海羽はふと何かを思い出して上を向く。

 

 「…それにしても、リリカちゃん、どっかで元気でやってるかな?」

 

 海羽はやはり、数か月前に出会って友達になって別れたリリカの事が気になっていた。

 

 「きっと元気でやってるよ。」

 

 真美は満面の笑顔で返した。

 

 

 その時、真美は何かに気づく。

 

 それは、大学の敷地外のデパートの入り口で、一人の女性がサンタさんの衣装で道行く人たちに笑顔で「メリークリスマス」と元気よく言いながらクリスマスキャンペーンの広告のチラシを配っている姿だった。

 

 それを見た真美はふと微笑む。

 

 その女性は、どこかリリカに似ていたのである…いや、きっとリリカ本人だと確信したのであろう。

 

 「きっと大丈夫だよ。だって、リリカちゃんだもん。」

 

 真美は改めて海羽に笑顔でリリカは大丈夫だと語り掛けた。

 

 「そうだね。リリカちゃんは素直で強い子だもん。だから私達も、こえからも元気に過ごそうね!」

 

 「(満面の笑みで)うん。」

 

 新しい友達の無事を確信した二人は、引き続き他の学生たちと共にクリスマス会を楽しんで行った…。

 

 

 私、眞鍋海羽と真美ちゃんは、これからも降りかかるであろうどんな困難にも負けないつもりで生きていく事を改めて決意した…。

 

 

 元気に過ごしているであろう私たちの光…新しい友達を信じて…。

 

 

 (ED:我らがウルティメイトフォースゼロ!)

 

 

 〈エピローグ〉

 

 真美たちの世界の宇宙空間を探索後、イージスの力が元に戻ったウルティメイトフォースゼロは、アナザースペースの基地・マイティベースに戻った。

 

 因みにジャンボットだけやたら急ぎ気味だったのは言うまでもない(笑)

 

 

 マイティベースには、純白なドレスに身を包んだ可憐な女性が、『友好珍獣ピグモン』(ゼロ曰く『モロボシ君』)と共に、帰って来たゼロ達を迎えた。

 

 「ヘッ…帰って来たぜ。エメラナ。」

 

 「ようこそ、マイティベースへ。」

 

 「ひっさしぶりだなぁ!」

 

 「ご無事で何よりです。」

 

 「ただいま。素晴らしき有機生命体。」

 

 一人ずつ挨拶をするウルティメイトフォースゼロの面々。

 

 

 「お帰りなさいませ。皆さん。」

 

 エメラナは笑顔でゼロ達に返した。

 

 

 その時、ゼロは何かを思い付く。

 

 「そうだな~…久々にエメラナが来てくれたから…“あの姿”になってやっか!」

 

 

 そう言うとゼロは、両腕を広げたガッツポーズのようなポーズで光と共に等身大になって行き、やがて“あの青年”の姿になる…。

 

 

 アナザースペースの『惑星アヌー』に住む開拓民であり、ベリアル帝国軍の攻撃で瀕死の重傷を負った際にゼロが一時的に一体化する(体を乗っ取る)形で命を救った青年『ラン』の姿に…。

 

 

 ランの姿になったゼロと、エメラナは、無言で笑顔で見つめ合い、改めて再会を喜び合う。

 

 その様子を、他のウルティメイトフォースゼロのメンバーとピグモンは、空気を読んで無言で見つめていた(最も、グレンファイヤーが茶化そうとしてミラーナイトがそれを止めるやり取りがあったワケだが…)。

 

 

 ウルティメイトフォースゼロは、これからもどんな敵にも負けないであろう…。

 

 

 信頼し合える仲間、そして、守るべき者がいる限り…!

 

 

 〈完〉




 読んでいただきありがとうございます!いかがでしたか?


 今回の物語を書こうとしたきっかけは、「そう言えばまだウルティメイトフォースゼロを登場させてなかったなぁ…」と思ったそれだけです(笑)

 ただ、前からいつかウルティメイトフォースゼロも登場させたいなと思っていたので、今回がそのベストタイミングだと思いました。


 また、今回の人間側の主役・海羽ちゃんと真美ちゃんですが、いつか櫂抜きで彼女達のコンビを書いてみたいと思っていたので今回取り入れてみました。

 そしてルガノーガーをチョイスしたのも、他者を思いやる優しさのある彼女達と、故郷を滅ぼされた異星人との交流を書いてみようと思い付いたのがきっかけでもあります。

 ただ、彼女たちが傷ついた者を助ける展開はそろそろマンネリ化しつつあるかなとも思っていますので、次は別の形で彼女達の活躍を描いてみたいなと思ったりもしている私です。


 因みに、UFZと海羽ちゃん達のシーンで、それぞれ“男の友情”と“女の友情”も少し意識してみました(笑)


 因みに皆さんはウルティメイトフォースゼロの、ゼロ以外のメンバーでは誰が好きですか?

 私はグレンファイヤーかミラーナイトで迷っています。


 ※今回登場した異星人・リリカと、彼女が住んでいた星の名前・S-851惑星は、原作『ウルトラマンマックス』に出たモノと全く同じですが、今回は別宇宙の全くの別物のつもりで描写しました。


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


 後書きが長くなって申し訳ありません。また、今回が今年最後の投稿になる可能性もありますので一応言っておきます。

 皆さん、よいお年を!


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番外編「朝日の照らす家族」

 明けましておめでとうございます!

 お待たせしました!年末年始特別編第2弾です。

 今回の主役は竜野櫂の息子・竜野慧で、登場するウルトラマンはあの“赤と青の兄弟ウルトラマン”です。

 とりあえず楽しんでもらえたら幸いです(笑)

 そして宜しければ、今年も本作やその他の作品、そして私・剣音レツをよろしくお願いします!

 では、どうぞ!

 ※ウルトラマンR/B最終回以降のネタバレも含まれています。


 (BGM:英雄の詩)

 

 

 

 これは、とある未来から来た1人の青年とその相棒宇宙人のコンビと、とある兄弟とその妹の、出会いの物語…。

 

 

 

 やあ、みんな。元気にしてるかい?

 

 

 僕は竜野慧(たつのけい)。

 

 

 苗字でも分かるように、僕は2042年の時代からやって来た、竜野櫂(たつのかい)の息子なんだ。

 

 

 年は現在19歳。だから現在は、元気に楽しく大学生活を謳歌している!

 

 

 …本来はそのハズなんだけど、実は僕、今時空を気ままに旅しているんだ。

 

 

 僕の住む時代を攻めた後、父さんが『ウルトラマンゼロ』として戦っていた時代に行った『時空生命体ガルキメス』率いる時空怪獣軍団を、その時代の父さん達と協力して壊滅させた(第24話参照)後、僕は相棒の『マゼラン星人アニー』と共に、様々な時代を旅しながら自分の時代に帰り途中。

 

 

 帰ったら、エイリアン軍団の残党の殲滅や、壊された街の復興に専念しようかと考えているんだけれど…過去の時代でガルキメス軍団を滅ぼしたし、あとはその時代の父さん達の頑張り次第で僕の時代は変わっているかもしれない…。

 

 と密かに望んでいたりもするんだ。

 

 

 …何より、奴らの襲撃で…母さんと妹の爽(さわ)が…。

 

 

 …いけないいけない。後ろ向きな事を考えちゃ…。

 

 そもそも未来とは、常に複雑なモノ…それに、良いようにも悪いようにも変える事が出来る…。

 

 だから、ガルキメス軍団が滅んだ今、もしかしたら未来は少し変わっているかもしれない。僕はその可能性を信じているんだ!

 

 

 (因みに慧は、若い頃の父・櫂が、かなりドス黒い本性の持ち主であった事は実は全く知らないのである…!)

 

 

 おっと、前置きが長くなったね。それじゃあ、本編に入るよ。

 

 

 タイムワープのペンダントの力で自分達の時代に帰りながら時空を旅していた僕とアニーは、とある時空の世界に降り立った。

 

 僕達が降り立った場所は、ある山の中の緑が広がる広場のようで、そこはたくさんの人々がピクニックに訪れたりしている。

 

 

 「とりあえず、この世界で一休みしよっか。」

 

 「そうね。ペンダントの力を回復させるためにも。」

 

 僕は赤いルビー、アニーは青いサファイアが埋め込まれたペンダントを手に乗せる。タイムワープのペンダントはこうして休みながら使わないとオーバーヒートを起こしてしまう恐れがあるんだ。

 

 

 「それにしてもいい天気ね。みんな休日を思い思いに過ごしているみたいだし。」

 

 「そうだね。」

 

 アニーは楽しそうに広場でピクニックを楽しんでいる人々を見渡して笑顔で話し、僕はそれに相槌を打つ。

 

 

 因みに近くにある看板を見てみると、白いスーツを着込んだいかにも陽気そうな女性の写真と共に『アイゼンワンダーランド』と書かれていた。

 

 なるほど、それがこの広場の名前か。

 

 

 その時、僕達の元に一つのビーチボールが飛んで来た。

 

 僕がそれを咄嗟にキャッチすると同時に1人の少年が駆け寄って来る。このボールの持ち主かな。

 

 「はい、どうぞ。」

 

 「ありがとう。」

 

 僕は笑顔でしゃがんで少年にボールを渡し、それを受け取った少年は元気よくお礼を言った。

 

 

 すると少年は、興味深そうに僕達をじっと見つめ始める。

 

 「どうしたの?僕。」

 

 「お兄ちゃん達、変わってるね。」

 

 「え?」

 

 少年の言葉に僕達はふと困惑する。まぁ、無理も無いか。子供にとって、それぞれオレンジと純白のレザーコートを着ている男女はさぞ目を引くものであろう。

 

 「キワムちゃーん。」

 

 「はーい! お兄ちゃんお姉ちゃん、ありがとう。」

 

 やがて、母親の呼ぶ声を聞いた“キワム”という少年は、改めて僕達にお礼を言った後、母親の元へと駆けて行った。

 

 

 母親と楽しそうにしている少年を見て、僕は何かを思い出してふと俯き出す。

 

 「慧君、どうしたの?」

 

 「い、いやあ…仲良さそうな親子だなーと思ってね…ちょっと、昔を思い出しちゃった。」

 

 「そ、慧君も、昔ああやってお父さんとお母さんと遊んでたんだね。」

 

 「うん。まぁ父さんは多忙だったけど…でも、遊べるときはしっかりと遊んでくれた。」

 

 家族との思い出を語っていく内に、またフラッシュバックしてしまった…ガルキメス軍団によって家族が壊滅状態になってしまった事、そして、これから帰る先の未来で、僕の家族はどうなっているのかと言う不安な気持ちが…。

 

 …いけないいけない!ブルーになっちゃ…良い方向に考えないと…。

 

 

 不安で顔が曇り始めたその時、ふと僕の口の中に一欠片の板チョコが入り込む。

 

 「…んん?」

 

 僕は少し驚くと共に俯いていた顔を上げて振り向く。僕の口にチョコを入れたのはアニーだった。

 

 「辛い時こそ、チョコレートは甘いよ。」

 

 アニーはそう言いながら、無邪気な笑顔でチョコレートを口に入れる。

 

 「…そうだね。ありがとうアニー。お陰で元気を取り戻したよ。」

 

 母さんが、大好物でいつも携帯していたミルクチョコレート。僕とアニーも今はそれを携帯していて、特に辛い時、元気が無くなった時に一欠片食べると不思議と元気が湧いて来るんだ。

 

 それのお陰で再び元気になった僕は、再び前向きな気持ちでアニーと共に歩き始める。

 

 

 家族は絶対に大丈夫だ…決して、絆を諦めない。 そして信じなきゃ、その先の輝きを。

 

 

 僕とアニーは下山をしてしばらく歩くと、ある街に辿り着く。どうやらこの街は『綾香市』と言うらしい。

 

 

 (綾香市。それは、首都近郊のベッドタウンであり、1300年前に、現れる度に人々を恐怖させていたと言い伝えられている魔神・偶龍璽王(グルジオ)が潜んでいたと言われる星・妖奇星(あやかほし)が墜落したという事でそう呼ばれるようになり、更にアイゼンテックが拠点を移してから急激に整備が進み、現在は企業城下町の様相を呈している。

 

 最も、その伝説の正体は、1300年前にとある二体の巨人と一体の怪獣が、とある強大な敵に立ち向かった後に共に地球に落下したモノなのだが…。)

 

 

 ビルや民家が並び立っていながら、何処か田舎の名残りも感じる、何だか居心地が良さそうな街だね。遠くを見てみると何やらヘンテコなタワーのようなビルが建っているけど…。

 

 (そのヘンテコなタワーのようなビルこそ、拠点を置いた事で綾香市が田舎から企業城下町として発展するきっかけとなった巨大ベンチャー企業『アイゼンテック』の本社ビルである。)

 

 

 僕達は、通り過ぎる人に挨拶をしながら街を歩いている。

 

 「とてもいい街そうだね。ここ。」

 

 「あぁ。平和だな。空気も美味いし。」

 

 

 その時、僕達の前からある二人の青年が他愛もない話をしながら歩いて来て、やがてすれ違った。

 

 それぞれ赤のジャケットと青のパーカーを着ている。それに、あの二人は兄弟かな?

 

 何故分かったって? それは1人が「カツ兄」と呼んでいたからね。それに会話の雰囲気的にもなんとなく。

 

 その兄弟とすれ違いつつ、仲良さそうな様子を見つめながら、僕はまたふと思い出していた。思えば僕も、妹の爽とああやってよく他愛のない話をしていたっけ…。

 

 「…うっ?」

 

 その時、その兄弟とすれ違った瞬間、僕の頭に軽く衝撃が走る。

 

 「…慧君?」

 

 「…アニー…今、僕の脳裏に衝撃が走った…。」

 

 「本当?」

 

 驚くアニー。それもそのはず、僕の脳裏に衝撃が走るのは、近くにあるモノがいる時だけだ。

 

 それは、“特別な力を持った者”。

 

 「あの二人…もしかして…。」

 

 ある心当たりを感じた僕は、先ほどすれ違った兄弟らしき二人の方を振り向く。

 

 

 そしてそれは、その兄弟も同じであった。

 

 「それにしても腹減った~。」

 

 「そうだな。今夜はすき焼きだっけ。帰って材料買いに行こうぜ。」

 

 「それじゃあカツ兄は荷物持ちね。」

 

 「え?嫌だよ、イサミも持てよ。」

 

 このように他愛もない会話をしながら慧とアニーとすれ違ったその時、二人は何かに気づき、懐からあるモノを取り出す。

 

 二人が取り出した、青を基調とした、両側にレバー、中央にジャイロが付いているのが特徴のアイテムが、それぞれ赤と青に点灯していた。

 

 「カツ兄…これは?」

 

 「ジャイロが光り出した…一体何故…?」

 

 赤いジャケットの青年は突然の出来事を不思議がりながらも、ふと先ほどすれ違った慧達の方を振り向き、青いパーカーの青年もそれに続く。

 

 「まさか…あのカップルが…?」

 

 「カップルかは知らないけど…確かにあの二人、この街で見かけた事が無いな…。」

 

 「追ってみようぜカツ兄。」

 

 「え?でもそれストーカーになるんじゃ…。」

 

 「大丈夫だって、たまたま行く道が同じだったって誤魔化せばいいんだよ。」

 

 「ったくしゃーないな…。」

 

 二人は、こっそりと慧とアニーの後をつけることにした。

 

 

 僕・竜野慧は、さっきすれ違った二人、そして脳裏を走った衝撃が気になりながらも、アニーと一緒に街を歩いていた。

 

 「そうだ。折角来た事だし、何かお土産買って行かない?」

 

 アニーが良い提案をしてくれた。そうだね。父さん、そして、未来で生きているであろう母さん、爽に何か買って帰ろう。

 

 「そうだね、行こう。」

 

 

 家族にお土産を買う事にした僕達は、近くのお土産屋さんに立ち寄る。

 

 「どれにしようかな~…?」

 

 実に品揃えが良いお土産屋さんだが、それ故に結構迷う僕達。

 

 その時僕達は、近くで楽しそうにワイワイ話し合っている女子高校三人を見かける。

 

 「あの子達に聞いてみようかな、アニー。」

 

 「JK? ぇ~慧君そういう趣味だったの~?」

 

 「バッ…バカッ!そう言う意味じゃねーよ!」

 

 「フフフ…冗談よ冗談。」

 

 「な~んだ、ハハハ…。」

 

 

 僕とアニーは笑い合った後、その女子高校三人に声を掛けてみる。

 

 「あの~、ちょっとすいません。」

 

 他愛も無い会話をしていた女子高校三人は僕の声に気付き振り向く。その瞬間!

 

 「あなたは誰ですか?カッコいいかも~!」

 

 「ヤバい!超イケメン!」

 

 「それに美女も一緒だ~!」

 

 「背も超~高いですよ~!」

 

 僕とアニーを見た三人ははしゃぎ始める。 イケメンか…照れちゃうな(笑)

 

 「とても目の保養になりました! お礼にはい、飴ちゃん!」

 

 女子高生の一人が僕達に飴玉を一つずつ手渡し、僕達は困惑しつつもとりあえずそれを受け取る。

 

 「あ…ありがとう。 ちょっと聞きたい事があるんだけど、いいかな?」

 

 僕は気を取り直して三人に尋ねる。

 

 

 「ここで、お土産におススメの物とかあるかな?」

 

 僕の質問に、先ほど飴玉をくれた子が応えてくれる。

 

 「あ、それならこれとかおススメですよ!」

 

 そう言いながらその子が取り出した一つの箱。それには『綾香市銘菓 あやかほし饅頭』と書かれている。

 

 なるほど、お饅頭か…悪くないかもね…そう思ったその時。

 

 「おぉ!饅頭!?」

 

 突然、アニーのテンションが上がる。 そうか…そう言えばアニーは地球の食べ物ではお饅頭が好物なんだっけ…。

 

 「ぉ…お姉さん、お饅頭が大好きなのですか?」

 

 「えぇ!大好き! “好き”じゃなくて、“大好き”!」

 

 アニーの目はキラキラと光っていた。

 

 

 すると、突然妙な音楽と踊りが始める。

 

 「あ~やか あ~や~か~♪

 

 あ~やか あ~や~か~♪

 

 あ~やか あ~や~か~♪

 

 あやかほし饅頭~ ワンダバ~♪」

 

 アニーと飴玉の子が笑顔でノリノリで歌って踊る中、僕もぎこちないながらもそれに合わせる。

 

 

 それでは、気を取り直して。

 

 「それじゃあ、これにしようかな。」

 

 「あやかほし饅頭か~、食べるのが楽しみ~!」

 

 テンションが上がっているアニーはどうやら二箱買うつもりのようだ。よほど饅頭が好きなんだな…。

 

 僕はそんなアニーをちょっとおちょくってみる。

 

 「しかし饅頭って、外装が違うだけで、中身は食べれば同じなんじゃないのかな?」

 

 「違う! 饅頭をバカにするな~!」

 

 案の定の反応だ(笑)

 

 「饅頭ってのはねぇ!それぞれ違う風味があって素晴らしいんだから! 栗饅頭は栗の香ばしさ、黒糖饅頭は大人の甘さ、卵饅頭は子供が大好きな甘さ…どれも違ってどれもいいんだからね~!」

 

 「ハハハ、ごめんごめん、冗談だって。」

 

 饅頭を熱弁し始めるアニーを笑いながら軽く鎮める僕。 しかし、こんなアニー始めて見たなぁ(笑)

 

「きっとこのあやかほし饅頭も、これにしか無い味わいがあるんだわ〜きっと!」

 

「あ…あはは、そうかもね。」

 

 

 そんな僕達のやり取りを見ていた飴玉の子は、クスクスと笑い始める。

 

 「仲が良いのですね。お二人さん。」

 

 「あ…あはは…。」

 

 その子を見た時、僕もアニーも自然とつられて笑い始める。

 

 「ありがとね。よさげなお土産を教えてくれて。」

 

 「いえいえ、今日はたまたま学校が早く終わった日なので、私達もたまたまこの店に寄っていたのです。」

 

 お礼を言った僕に、笑顔で返してくれる飴玉の彼女。 なんて明るくて、感じのいい子なんだ…。

 

 

 僕達は会計を済ませるが、その際にレジの人から妙な話を聞く。

 

 なんでも最近、ここ綾香市以外の日本の各地で、様々な謎の被害が勃発しているらしい。

 

 「謎の被害…ですか?」

 

 「あぁ。なんでも、巨大な怪獣が暴れ回ったとかそういう噂が出回ってるんだよ。」

 

 

 一人の未来人が、訪れた別世界の町の人から聞いた一つの気になる事件。

 

 なんでも約3日ぐらい前から、ここ綾香市以外の日本の各地にて、巨大生物により町が破壊されているという噂が飛び交っているというのだ。

 

 実際、破壊された町がニュース等でも取り上げられており、その壊れ様からも何者かが暴れて壊したとしか思えないのだと言う…。

 

 更にその事件とほぼ同時期に、日本各地の若い女性が何者かによって重傷を負わされるという事件も勃発し始めたという…。

 

 なんでも被害者の女性はどれも刃物によって斬られたかのような痛々しい傷を負っているとの事。

 

 

 そして、その人々の噂は実際の事であった…!

 

 まず、綾香市外のとある街では、ある国立競技場周辺にて二体の巨大生物が暴れている。

 

 一体は青、もう一体は赤い体をしており、前者は強靭な力や口からの泡状の溶解泡で、後者は細く8の字に絡み合った尻尾や口からの火炎で、ビルなどを崩していく。

 

 この二体の怪獣はいずれも3億5000年前の超古代文明に恐れられた存在であり。青い一体は“青い悪魔”と言われる『青色発泡怪獣アボラス』、赤い一体は“赤い悪魔”と言われる『赤色火炎怪獣バニラ』である!

 

 奴らはかつては国立競技場にて激闘を繰り広げた、所謂敵対する者同士のはずだが、今回は戦い合う様子は無く暴れ回っている事から、何者かが怪獣墓場から復活させて操っている可能性が高い。

 

 

 そして一方で別の街にて。こちらでも二体の怪獣が我が物顔に暴れ回っていた。

 

 この二体は外見が非常に似ており、緑色の体をしている。見分ける方法は、頭部に赤いトサカのような角が付いているかいないかである。

 

 実はこの二体は兄弟怪獣であり、角の生えた方は『兄怪獣ガロン』、もう一体は『弟怪獣リットル』である!

 

 凶悪かつコンビネーション抜群なこの兄弟怪獣は、かつても破壊の限りを尽くして甚大な被害を出し、『ウルトラマンレオ』をも敗北寸前にまで追い詰めた程の強敵である。

 

 その時はレオと『アストラ』の兄弟に敗れた事から、この二体も何者かが復活させたと思われる。

 

 

 口から火花やロケット弾を撒き散らしながら、ビル等を崩しつつ進撃する兄弟怪獣。そんな二体を、少し離れた場所から一人の宇宙人が見つめていた。

 

 黒いタイツを着たような体に、金髪にマスクを付けた顔、そして右腕の巨大なサーベルが特徴の宇宙人『サーベル暴君マグマ星人』である!

 

 「俺を不快にさせる町など、壊れちまえばいい。ガロン、リットル、アボラス、バニラ。その調子で暴れるのだ。」

 

 奴の台詞から見るに、どうやら暴れている四体の怪獣は奴の配下のようである。

 

 「お、また一人、良さげな者達を見つけたぜ~。」

 

 マグマ星人はそう言うと、体を光らせて何処かへと去って行った…。

 

 突如、四体の怪獣を引き連れて攻めて来た奴の目的とは一体何なのか…?

 

 

 更に、そんなマグマ星人と配下の怪獣達の様子を、宇宙空間から紫のオーラと共に伺っている者がいる!

 

 骨と肉が逆転したような外見に、扇のような形状の左手が特徴のその宇宙人は、恐らくマグマ星人達の親玉的存在であろう。

 

 「どうやら俺様が出る程でもないみたいだなぁ…。 フッフッフ…。」

 

 その宇宙人は不気味に笑いながら余裕を見せる。そして遂に名を名乗る。

 

 

 「手始めにこの宇宙の地球から破壊してやるよ…この俺様、デスレ星雲人ジェノアがなぁ!」

 

 

 その宇宙人は、かつて『暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人』に仕える“暗黒四天王”の一員であった『策謀宇宙人デスレム』や、『暗黒大皇帝カイザーダークネス』に仕える“ダークネスファイブ”の一員である『炎上のデスローグ』の同族である“デスレ星雲人”『ジェノア』である!

 

 

 このように、綾香市民、そして慧達が知らない間にとんでもない奴らが攻めて来ていたのだ!

 

 果たして奴らの侵略の目的は何なのだろうか…?

 

 

 そんな大変な事が起こっているのをまだ知るはずもない慧達。とりあえずその人の言った事を心に留めておく事にした。

 

 そして会計を済ませた後、僕達は飴玉の子に改めてお礼を言う。

 

 「改めてお礼を言うよ。ありがとう。」

 

 「早く食べるのが楽しみだな〜!」

 

 「いえいえ、人のハッピーの為なら、私は何でもしますから!」

 

 「…ハッピー?」

 

 「はい! ハッピーがあれば、何でも出来ます。そして、そのハッピーは世界を救う事も出来るのです!」

 

 突然、謎の持論を語り出す飴玉の子。とりあえず彼女はハッピーと言う言葉が好きみたいである。

 

 「そ…そっか。正直何だかさっぱりだけど、“ハッピー”は“幸せ”。確かに世界のみんなが幸せになれば、平和が来るかもね。」

 

 「はい!そういう事です!」

 

 無理矢理答えを出した僕だったが、彼女は納得してくれた。

 

 

 「あ、自己紹介まだだったね。僕は竜野慧。」

 

 「私はアニー。」

 

 「私は、湊アサヒって言います。」

 

 「アサヒちゃんか…素敵な名前だね。」

 

 「わぁ!イケメンに名前褒めてもらってハッピーです~!」

 

 飴玉の子の名前は『湊アサヒ』か…本当にいい名前だ。 まるで平和な家庭を照らす太陽のよう…。

 

 しかし、またイケメンと言ってくれた…僕もハッピー(笑)

 

 

 (最も、そのアサヒには大きな秘密があるのだが、それは後ほど…。)

 

 

 一方、慧とアニーを尾行していた例の2人は、お店の外からその様子を伺っていた。

 

 「アサヒのやつ、あの二人とすっかり仲良くなっちゃって。」

 

 「いいじゃないかイサミ。ハッピーと飴玉で誰とでも仲良くなれるのがあいつの良い所だ。それにあの人達も、見た感じ悪い人達じゃなさそうだ。」

 

 「それより聞いたかカツ兄。あのレジの人の話。」

 

 「あぁ。やはりあの事件は怪獣や異星人の仕業の可能性が高いか…。」

 

 「またこれを使う時が来そうな気がするな。」

 

 「そうだな。」

 

 そう言いながら二人は、ふと例のジャイロ状のアイテムを取り出し見つめる。

 

 どうやらこの二人も例の事件は既知のようであり、それが怪獣の仕業じゃないのかという考えも持ち始めていた。

 

 

 ここで、この二人を紹介しておこう。

 

 会話の呼び名でも分かるようにこの二人は兄弟であり、赤いジャケットを着た方は『湊カツミ』、青いパーカーを着た方は『湊イサミ』である。

 

 そして名前でも分かるように、彼らはアサヒの兄でもあるのだ。

 

 

 ジャイロ状のアイテムを見てある程度察しがつくかもしれないが、彼らにも大きな秘密があるのだが、それについても後ほど…。

 

 

 「それじゃ、行こっかアニー。」

 

 「えぇ。早くあやかほし饅頭食べたいな~!」

 

 「私達も行きましょうか。」

 

 アサヒがそう言いながら振り向くが…。

 

 

 …どうしたことか、アサヒと同行していた友達の『えりな』、『ななか』の姿は見当たらなかった。

 

 「…あれ? 二人ともいないです。」

 

 それに気づいた僕、竜野慧とアニーも驚く。

 

 「本当だ。さっきまで一緒にいたのに…。」

 

 「トイレにでも行ってるのかな?」

 

 

 「…ん?」

 

 一同が店を出て辺りを見渡していたその時、僕は何かに気づく。

 

 それは、店の向かい側にある公園のベンチに、一人のツインテールの髪形が特徴の幼い少女が、どこか悲しそうな顔で座っている。

 

 「あの子…どうしたのかな…?」

 

 気になった僕は無意識にその少女の方へと向かい始める。

 

 「あぁ、慧君?」

 

 それを見たアニー、そしてアサヒちゃんもそれに続く。

 

 

 近くまで来てみると、その子はいかにも泣き出しそうな感じだった。

 

 「お顔がハッピーじゃないですね…。」

 

 ついて来ていたアサヒちゃんも心配そうである。僕はその子に優しく声を掛けてみる。

 

 「ねぇ、どうしたの?」

 

 その子は顔を上げて僕の顔を見たかと思うと、再び無言で俯いてしまう。

 

 僕はその子の目線までしゃがんで引き続き声を掛ける。

 

 「お父さんかお母さんとはぐれちゃったの?」

 

 質問を変えてみたけどその子は無言で首を振る。

 

 「じゃあ、帰り道が分からなくなっちゃったとか?」

 

 再び無言で首を振る。

 

 これでもないのなら、一体何で悲しんでるんだろう?この子…。

 

 とにかく、困っている人を放っておけない僕は、また余計な世話を焼いてしまった(自覚しています(笑))。

 

 

 (慧君ったら…相変わらずお節介なんだから…。)

 

 少女に懸命に声を掛ける慧を見て、アニーは呆れながらもどこか笑みを見せながら心で呟く。

 

 恐らく、慧の世話焼きな性格を前からよく知っているからであろう。

 

 彼の優しさは恐らく母親譲りだと思われる。

 

 

 僕、竜野慧は、悲しそうにしている少女に声を掛けてみるけど、彼女は一向に何があったのか話してくれない…。

 

 「はぁ…一体何があったんだろう…。」

 

 困り果てた僕。その時、アサヒちゃんがその子に声を掛ける。

 

 

 「もしかして、親と喧嘩でもしちゃったのですか?」

 

 

 それを聞いた少女は、しばらく黙り込んだ後、ゆっくりと頷いた。

 

 

 その子の表情を見ただけで、一発で何があったのかを当てたアサヒちゃんに、僕もアニーも驚く。

 

 「凄い…。何故、分かったの?アサヒちゃん。」

 

 「私も、前にお父さんと喧嘩して、家出してしまった事がありますから…。その時の私も、この子と同じ顔をしていました。」

 

 「そうなのか…。」

 

 僕としては意外だった…。いつも明るそうなアサヒちゃんも、こんな表情をする時があったんだなって…。

 

 

 「もしよろしければ、私達に言ってみてください。」

 

 アサヒちゃんもその子の目線までしゃがみ、笑顔でそう語り掛ける。

 

 

 慧の優しさに加え、アサヒの明るさを見た少女は、遂に話す決心をした。

 

 彼女の名は『木下佐希恵』。シングルマザーである母と、妹の『万智』との三人暮らしである。

 

 彼女の母は、彼女が幼い頃に父と離婚してしまったため、女手一つで自分を育ててくれている母を彼女は愛していた。

 

 しかし、しばらくして妹が生まれた後である。母は、生まれたばかりの妹の世話で大忙しであり、自分は放ったらかしにされる事もあり、時には妹と喧嘩をした際に母が妹の味方をする事もあったのだと言う。

 

 母は自分よりも妹が好きになってしまったのだろうか?そう思った彼女はある日、その事への不満を言った事がきっかけで母と喧嘩をしてしまう。

 

 

 そしてその際に、思わずこの一言を言ってしまったのだと言う…。

 

 「お母さんの子供になんて、生まれてこなけりゃ良かった!」

 

 

 結局その日は、母と口を利けずに終わってしまったが、後に彼女はその発言への罪悪感を感じ始めていた。

 

 その数日後、母の誕生日が来たのだが、なんとその日母は、みんなで何処かへ食べに行こうと言ったのである。

 

 あんな酷い事を言った自分を誘ってくれるの…? 佐希恵はそう思いながらも、妹・万智も入れた三人で何処かへ出かけたのだが…

 

 

 …その際に、怪獣が現れたのだと言う…。

 

 

 幸い自分と妹は無事で済んだのだが、怪獣が暴れた影響で母が重傷を負ってしまい、病院に搬送されてしまった。

 

 

 そして唯一の親である母が入院してしまった事により、母が退院するまでは妹共々綾香市のおじいちゃん、おばあちゃんの家で過ごす事になったのだという。

 

 

 佐希恵の悲惨な事情を聞いた一同は胸が苦しくなる。

 

 「そっか…それは辛いよね。」 慧は佐希恵に寄り添う。

 

 「思い出しちゃったよね…それなのに話してくれてありがとう。」

 

 そして、フラッシュバックして涙目になる佐希恵の背中を摩りながら労いの言葉を掛ける。

 

 

 「この世界にも…怪獣が現れたなんてね…。」

 

 アニーは、佐希恵の家族を襲った怪獣の事が気になっていた。

 

 「それにしても…平和な家族の幸せを奪うなんて…。」

 

 そして、その怪獣への静かな怒りが込み上がって来る。

 

 

 「きっと、お母さんがあんな目に遭ったのは私のせいだ…。」

 

 慧に背中を摩ってもらっていた佐希恵は涙声でそう言った。

 

 「…ぇ?」

 

 「私が、お母さんの子供になんて生まれなきゃよかったなんて言ったから、お母さんがあんな目に…!」

 

 どうやら佐希恵は、母が重傷を負った事へのショックもあってか、罪悪感を通り越して自虐的になりかけているようだ。

 

 それを聞いた慧は、咄嗟に佐希恵を抱きしめる。

 

 「違う…佐希恵ちゃんのせいじゃないよ。」

 

 慧に優しく抱きしめられた佐希恵は、少し落ち着いているようであった。慧は引き続き優しく語り掛ける。

 

 「悪いのは、佐希恵ちゃん達を襲った怪獣。だから佐希恵ちゃんは何も悪くないよ。」

 

 慧は佐希恵の肩に手を当て、引き続き語り掛ける。

 

 「それに、あの発言が悪いって事に気づけたんだよね。それだけでも十分偉いよ。お母さんが、愛情もって育てた証拠だね。」

 

 「お母さんが…?」

 

 「うん。佐希恵ちゃんは、お母さんは自分より妹の方が好きなんだと思ってたみたいだけど、むしろ佐希恵ちゃんが好きだからこその対応だったんじゃないのかな?」

 

 「私が…好きだから…?」

 

 「うん。まだ独身の僕が言う事でも無いと思うけど…子育てってとても大変な事なんだ。特に、子供が2人以上いる家庭や、子供がまだ生まれて間もない家庭はね。 だから、時にはある程度生きている先に生まれた子よりも、色々躾けたり教え込まないといけない生まれて間もない子の方に力が入ってしまう事もあるんだよ。」

 

 「私が…ある程度生きたから…?」

 

 「うん。実際、妹が生まれる前、お母さんは佐希恵ちゃんの面倒を一生懸命見てくれたんでしょ? そして妹が生まれた後も、お母さんは佐希恵ちゃんの面倒を見てくれてるんだよ。」

 

 「でも、最近は万智ばかりなのに…分からない…分からないよ、私。」

 

 

 「それはね、佐希恵ちゃんが、ある程度立派に育ったからじゃないかな?」

 

 

 「…え…?」

 

 慧の思わぬ言葉に驚きを隠せない佐希恵。慧は続ける。

 

 「お母さんはこれまで佐希恵ちゃんの面倒をしっかり見てきて、そして妹が生まれた時に判断したんじゃないのかな? “しばらく妹の方に集中しても、佐希恵は大丈夫”ってね。

 

 先に生まれてある程度生きた佐希恵ちゃんの方が、ある程度色んな事が出来るし、知識もある。だから喧嘩をした時も、どうしても佐希恵ちゃんの方が勝ってしまって、場合によっては泣かしてしまう恐れがある…だから、どうしても弱い方を守りたくなっちゃうだけなんじゃないのかな?」

 

 「…。」

 

 佐希恵は、慧の言葉を徐々に理解してきているのか、大人しくなって聞いているようであった。

 

 「だから、お母さんは決して佐希恵ちゃんが嫌いになったんじゃないと思うよ。ただ、ある程度生きてきた佐希恵ちゃんよりも色々と教えないといけないし、危険な目に遭わせたくない妹の方にどうしても力が入っちゃうだけだと思うよ。」

 

 「…お母さんは…いつでも私の事が…好きだった…?」

 

 「うん。実際妹が生まれた後も、学校行く時雨の心配してくれたよね? 一緒にお風呂入ってくれたよね? ご飯も…食べさせてくれたよね?」

 

 「…うん…。」

 

 「(満面の笑みで)じゃあ、それが何よりの証拠だよ。 いつだって、誰もが誰かに愛されてる。佐希恵ちゃんがお母さんを愛してるみたいに、お母さんも佐希恵ちゃんと妹の万智ちゃん、両方を愛してるんだよ。」

 

 慧の考察による優しい説得を聞いた佐希恵は、遂に前も今でも母に愛されているという事を思い出した。そして、嬉しさもあって涙を流す。

 

 「…ぐすんっ…うっ…また…お母さんの…ご飯が食べたいなぁ…。」

 

 涙ながらにそう言う佐希恵を、慧はそっと抱き寄せて語り掛ける。

 

 「きっとまた出来るよ。 決して、絆を諦めない限り…。」

 

 今でも続く母の愛情に気づき、母に謝る決心をした佐希恵。だが…。

 

 「ねぇ、絆って…何?」

 

 「え?」

 

 どうやら小学生である佐希恵は、絆という言葉をまだ知らなかったみたいである(笑)

 

 

 「慧さん…素敵です。」

 

 アサヒは、持ち前の優しさで佐希恵を諭した慧に感激している。

 

 「まぁ、言い換えればお節介、もしくはお人好しね。慧君ったら、昔からああなの。例え見ず知らずの人でも、困っている人を放っておけなくて…。」と、若干呆れ気味に話すアニー。

 

 「それでも素敵ですよ。イケメンだし、優しいし、子供の扱いも上手い…きっと私の学校に来たらモテモテで、女子の間で取り合いが起こりますよ。」

 

 「うふ、そうかもね。」

 

 アニーとアサヒは笑い合う。

 

 

 そして、アサヒは佐希恵の方に歩み寄る。

 

 「よく気づきましたね。そんな偉いあなたに、はい、飴ちゃん。」

 

 アサヒは佐希恵に飴玉を手渡した。それも2つ。

 

 「ありがとう…2個もくれるの?」

 

 「1つはお母さんのです。仲直りして、ハッピーになりましょう。」

 

 笑顔でそう言いながらアサヒは、右手で親指と小指を立ててハッピーのポーズを見せる。

 

 「…ハッピー。」

 

 それを見た佐希恵も、ふと笑顔でポーズを真似り、それを見たアサヒは微笑む。

 

 

 アサヒは慧に1つの疑問を投げかける。

 

 「しかし、慧さんは何故そんなにも母と子の事が分かるのですか?」

 

 「…実は、僕にも妹がいるんだ。 だから昔、喧嘩で妹を叩いて泣かしてしまった時、よく父さんに怒られてたよ。“女を殴って泣かす者は、男以前に人間としてクズだ!”ってね。」

 

 慧の思わぬ発言にはっと驚く表情を見せるアサヒ。

 

 「でも、その発言も愛情故だったんだとすぐに分かったよ。 実際僕の方が年上で、しかも男だから、どうしても力が強いからね。 だから、妹を危険な目に遭わせたくないのと同時に、僕にも間違った人間に育って欲しくないという想いからだったんだとすぐに気づいた。」

 

 「慧さんの親御さんも、とても子供思いなのですね。」

 

 「あぁ。母さんもいつも優しかったし…だから僕は、おかげで力を正しい事に使い、困っている人を助ける人間になろうと思えるようになった。 そして同時に、どんな形であれ、親は子供の事を思っていると思うようにもなったんだ。」

 

 「慧さんの家も、素敵な家庭ですね。」

 

 「えへへ…。」

 

 アサヒに自分の家庭を褒められて、慧はとても嬉しそうであった。

 

 

 …しかし、妙である。実際に女性に暴行した事がある櫂が、そんな事を言うとは…。

 

 一体彼は、大学生時代から慧の父になるまでの間、何があったのだろうか…?

 

 

 そして、こっそり慧達の後を付けていたカツミとイサミも、そんな一部始終を見ていた。

 

 「あの慧って青年の言う通りだな。家族というのはいろんな形がある。それがみんないいってな。」

 

 カツミも慧の言葉に共感している。

 

 「父さんも、普段はダサTシャツばかり作ってるけど、実際俺達にこんなカッコいい服作ってくれたし、それだけでも愛情感じるよな。」

 

 そう言いながらイサミは自分のパーカーを見つめ、カツミも自分のジャケットを見つめる。

 

 

 その頃、湊家の家でもある綾香市のセレクトショップ『クワトロМ』にて、カツミ・イサミ・アサヒの父親である湊家の大黒柱の『湊ウシオ』は…。

 

 「へっくしっ!! …なんだなんだ?今誰か、俺の噂をしてるのか?」

 

 

 「しかしこれでハッキリと分かったな。あの慧っていう人は、悪い人ではない。」とイサミ。

 

 「あぁ。むしろ好青年だ。いっそアサヒの彼氏でもいいかもな。」

 

 「へぇ~カツ兄がそんな事言うなんて意外。」

 

 「なんだよ、アサヒもそろそろ彼氏が出来てもいいとふと思ったそれだけだよ。」

 

 いつものやり取りになるカツミ・イサミ兄弟だが、どこか楽しそうであった…。

 

 

 そして気を取り直して、ある決心をする。

 

 「しかし、あの子の発言ではっきりと分かったな。怪獣が現れたと。」とカツミ。

 

 「あぁ。早い所やっつけた方がいいかもな。 もしこの町にでも現れたら、俺達兄弟の力を見せてやろうぜ。」

 

 「おぅ!」

 

 カツミ・イサミ兄弟はハイタッチを交わした。

 

 

 「私、これからお母さんに誕生日プレゼント買うんだ。」

 

 若干元気を取り戻した佐希恵はそう言った。

 

 「お、そうか。いいプレゼントが見つかるといいね。」と慧。

 

 「お母さん…Tシャツが欲しいと言ってたような…。」

 

 「あ、それなら家に来てみてはどうですか? 家、セレクトショップなので、Tシャツとかも沢山種類がありますよ。」

 

 「行く! せれくと…なんとかはよく分からないけど。」

 

 アサヒの提案に賛成した佐希恵。

 

 

 「じゃあ、僕達も行ってみようか、アニー。」

 

 「そうね。」

 

 慧達も同行する事にした。

 

 

 出発しようとしたその時、アサヒが慧に語り掛ける。

 

 「兄弟って…やっぱいいものですね。」

 

 「…え? もしかしてアサヒちゃんも兄弟がいるの?」

 

 「はい。お兄ちゃんが二人います。 お兄ちゃん達も昔よく喧嘩してたと、お父さんが言ってました。」

 

 「“言ってました”?…まるで、兄弟なのに、自分は今まで知らなかったみたいな言い方だね…。」

 

 アサヒの言い回しにふと引っかかる慧。

 

 

 その時!

 

 

 「フッフッフ~! 見ぃつけたぜ!」

 

 突如、何処からか謎の声が聞こえ、一同はその方へと振り向く。

 

 

 その視線の先には、なんとマグマ星人が右腕に付けたサーベルを撫でながら立っていた!

 

 

 「貴様は…マグマ星人!」

 

 マグマ星人が邪悪な宇宙人である事を知っている慧は警戒するように身構え、佐希恵は怯えて慧にしがみ付き、アニーもアサヒを守るように身構える。

 

 「お?俺の事知ってんのか? 俺も有名になったもんだね~!」

 

 「貴様…何しに来たんだ? 見つけたって…何をだ!?」

 

 「その表情や喋り方からして、何か良い事は考えて無さそうね。」

 

 軽々しい喋り方をするマグマ星人に対し、慧とアニーは真剣に返す。

 

 

 「そう怖い顔すんなよ。 俺が欲しいのは、その娘だ。」

 

 

 そう言いながらマグマ星人が指差した先は…アサヒだ!

 

 「えっ?…わ、私?」

 

 「そうだ。お前でちょうど3人目になる。俺の嫁候補がなぁ!」

 

 「嫁候補だと? 一体何を企んでいる!?」

 

 「いいだろう。どうせお前らはここで死ぬんだから教えてやる。」

 

 

 マグマ星人の企み。それは、デスレ星雲人ジェノアと共に様々な世界の地球を破壊する事だが、その前に自分の嫁候補を3人捕える事である!

 

 なんでも奴は、まずは宇宙一美しいと言われている怪獣『宇宙鶴ローラン』に告ったのだが振られてしまった事があるのだという。だが、同じ失敗を繰り返さないときっぱりとローランを諦めた奴は、地球人女性の美しさを知った事により、それに目を付けたのだと言う。

 

 

 そう、つまり奴は、かつてローランに振られた事に逆上して彼女を殺そうとした所を『ウルトラマンレオ』に倒されてしまったあの“ストーカーマグマ星人”が蘇ったモノなのである!

 

 

 (つまり、先ほど慧が言った父・櫂の言葉は、間接的にこのマグマ星人をディスった事になる(笑))

 

 

 様々な世界の地球の破壊は、父の復讐をしたいと言うジェノアの企みであり、そして同じくジェノアによって怪獣墓場から蘇ったアボラス・バニラ・ガロン・リットルと共に攻めに来たのだという。

 

 

 実はジェノアは、暗黒四天王の一員だったデスレムの息子なのである!

 

 

 つまり今回は、家族(父)を失った者の復讐の侵略なのである!

 

 

 マグマ星人の企みを知った慧達は、更なる怒りが込み上がる。

 

 「仕返しのために、関係ない人達まで巻き込むなんて…許されるはずが無いだろ!」

 

 「そんなの知った事か! いいから、そこの小娘! さっさと俺の所に来い!」

 

 慧の怒りの言葉を一蹴したマグマ星人はアサヒに高圧的に呼びかける。

 

 「いやです!」

 

 もちろん、素直に行くはずが無いアサヒ。

 

 

 「ほ~ぅ、この俺に逆らうのか? お友達がどうなってもいいのかな~?」

 

 そう言いながらマグマ星人はある方向にサーベルを指し、一同はその方へと振り向く。

 

 「はっ!」

 

 それを見たアサヒは驚く。なんとそこには、鎖で縛られた状態で気を失っているえりな、ななかの姿が!

 

 「フッフッフ、俺の嫁候補の内の2人だ。 こいつらはお前のお友達なんだろ? こいつらの命がどうなってもいいのか?えぇ?」

 

 そう言いながらえりなとななかにサーベルを向けるマグマ星人。

 

 完全に人質を取られてしまった慧達一同は、下手なことが出来ないとばかりに何も出来なくなってしまう。

 

 「隙あり!」

 

 その隙に、マグマ星人はサーベルの先端から怪光線を発射し、それが足元で爆発した慧達は吹っ飛んで地面を転がる。

 

 「立てォラア!」 「いやっ!」

 

 そしてマグマ星人はその爆風に紛れて、転倒したアサヒの腕を掴んで無理矢理起き上がらせる。

 

 遂にアサヒは捕えられてしまった!

 

 

 「ジェノア様ー!! 遂に嫁候補を3人捕えたぞー!!」

 

 マグマ星人がジェノアを呼び出し、それにより上空に紫のオーラと共にジェノアが現れる。

 

 「それでは、後はこの世界を破壊するだけだな?」

 

 「そゆことー!」

 

 マグマ星人が嫁候補を3人見つけた事により、あとは地球を破壊するだけとなった!

 

 

 「さぁ、今こそ一斉に呼び出せ!」

 

 「かしこまりー! 出てこいやぁぁぁ!!」

 

 そう叫びながら口笛を吹くマグマ星人。その瞬間、激しい地響きと共に、それぞれ4か所から激しく土砂を巻き上げながら4体の怪獣が地上に現れる!

 

 アボラス・バニラ・ガロン・リットルだ!

 

 

 「あれ…! 私達を襲ったのは、あれ!」

 

 佐希恵はそう言いながらガロン・リットル兄弟の方を指差す。どうやら彼女の家族を襲い、母親に怪我をさせたのは、その兄弟怪獣だったようだ!

 

 「何だって!?」 驚愕する慧。

 

 

 「さぁ暴れろ! 手始めにこの町から破壊するのだ!」

 

 マグマ星人の合図により、4体は一斉に暴れ始める!

 

 アボラスは溶解泡、バニラは火炎放射、ガロン・リットル兄弟は火花やロケット弾をそれぞれ吹きながら、怪力でビル等を崩しながら暴れて行く!

 

 「俺様も行くぜぇ!」

 

 そしてジェノアも地上に降り立ち、左手から火炎や火球を放ち、デスレムクローでビルを崩しながら暴れる!

 

 綾香市の市民は突然の怪獣出現にパニックとなり、我先にと逃げ惑い始める!

 

 

 「ヒャハハハハハ!! これでこの世界はおしまいだ! この世界を皮切りに、様々な世界の地球を破壊してやるぜ~!!」

 

 高笑いをするマグマ星人。慧とアニーは悔しそうにマグマ星人を睨み付け、佐希恵は恐怖から泣き出しそうになっている。

 

 

 綾香市はこのまま地獄と化してしまうのであろうか…!?

 

 

 …だが、アサヒだけ違った。彼女は絶望するどころかどこか余裕な表情である。

 

 「…ん?どうした? 世界が終わるからショックで頭が可笑しくなっちまったか?」

 

 「…違います。まだ希望があるからです。」

 

 「何だと? こんな状況で、まだ希望があると言うのか!?」

 

 

 「はい。 それは…お兄ちゃん達です!」

 

 

 アサヒがそう言ったその時!

 

 

 「!? ぐぉはっ!!」

 

 

 突如、何処からか勢いよく飛んで来た物がマグマ星人の頭部に命中し、それによりマグマ星人は捕えていたアサヒを手放してしまう!

 

 そして、マグマ星人が手放したアサヒをアニーが受け止めた。

 

 「大丈夫?アサヒちゃん。」

 

 「はい。ありがとうございます。」

 

 「しかし…急に何なんだろう…?」

 

 そう言いながらアニーはふと地面に転がっているある物に気付く。

 

 

 それは、一つの野球ボールであった!

 

 

 「野球ボール…?」と、アニーが首を傾げたその時。

 

 

 「あ!あそこ!」

 

 アサヒが指差した方を振り向く慧とアニー、佐希恵。

 

 

 「チィッ! 誰だ!!」 同じくマグマ星人も振り向く。

 

 

 その先にいるのは、カツミ・イサミ兄弟であった!

 

 「カツ兄ナイスピッチング!」 「よっしゃーっ!」

 

 先程マグマ星人の頭を直撃したのは、カツミが投げた豪速球であった!

 

 カツミは幼少期から野球が得意であり、今でも草野球チーム『ホワイトベアーズ』のピッチャーとして活躍している程である。

 

 

 「カツ兄! イサ兄!」

 

 助けに来てくれた兄達に嬉しそうに反応するアサヒ。

 

 「アサヒ!大丈夫か?」 「あとは俺達に任せろ!」

 

 カツミとイサミも、アサヒの無事を確認する。

 

 

 「あの人達が…アサヒちゃんのお兄さん…?」

 

 アサヒが叫んだ呼び名により、二人が彼女の兄だという事に気づく慧。

 

 

 「貴様ら、この俺にボールをぶつけるとは大した度胸じゃねーか。」

 

 自身を牽制した兄弟に怒りを見せるマグマ星人。

 

 「最近噂になってた謎の町破壊事件の真犯人はお前だったんだな!」

 

 そう言いながらマグマ星人を指差すカツミ。

 

 「大人しく帰った方が、身のためだと思うぜ!?」

 

 イサミもそれに続く。

 

 

 「フッ、何をほざくか! 俺は復讐として様々な世界を破壊する! そして、この可愛い子ちゃん達のどれかと結ばれるのだ!」

 

 「その通りだ! 親父の仇としても、様々な世界を破壊して我々のモノにして、いずれウルトラ戦士に復讐してやる!」

 

 マグマ星人は改めて自分達の企みを宣言し、ジェノアもそれに続いた。

 

 

 「ふざけやがって。お前らの好きにはさせるかよ!」とイサミ。

 

 「それに、俺達の可愛い妹を、お前らなんかに渡すか!」とカツミ。

 

 そんな兄弟に、ジェノアとマグマ星人は更に言い返す。

 

 「貴様らがどうほざこうと無駄だ! この世界はもはや俺様たちのモノ! 貴様らは死ぬだけだ!」

 

 「ただの人間ごときが、俺達を止められるワケがない!」

 

 

 「ただの人間? …ところがどっこい、そうじゃないんだよな~。」

 

 「何だと?」

 

 イサミの余裕な発言に反応するマグマ星人。

 

 「この町に来たのが間違いだったな!」

 

 カツミの発言と共に、二人は懐から例のジャイロ状のアイテムを取り出す。

 

 

 「そのアイテムは…!?」

 

 「お前らは…一体!?」

 

 慧やマグマ星人の問いかけに、兄弟は叫んだ!

 

 

 「「俺達は、ウルトラマンだ!!」」

 

 

 そう、この湊カツミ・イサミ兄弟はウルトラマンであり、このアイテム『ルーブジャイロ』でそれぞれ『ウルトラマンロッソ』、『ウルトラマンブル』に変身するのである!

 

 

 ロッソ・ブルという二人のウルトラマン。それはルーブジャイロと、各属性を宿したメダル状のアイテム『ルーブクリスタル』を用いて変身するウルトラマンであり、かつて『惑星O-50』にて力を授かった先代が『コスモイーター ルーゴサイト』の脅威に立ち向かった際に戦死し、現在はカツミ・イサミ兄弟がその変身能力を受け継いでいるという状態である。

 

 最初はいきなり力を得た事により戦いに慣れてなく苦戦も多かったが、経験を積んで行ったことで連携力も増していった事で様々な敵との戦いを潜り抜けて行き、最後は家族との協力や絆の力によって、先代が果たせなかったルーゴサイト撃破に成功している。

 

 

 かつて自分達をウルトラマンとして否定していた先代ウルトラマンの妹『美剣サキ』(本名は『グリージョ』)から最終的に認められた事もあり、今では立派なウルトラマンとして成長した二人。そんな二人が、綾香市の危機に再び立ち上がる時である!

 

 

 「何ィ!! ウルトラマンだとぉ!?」

 

 「ケッ、厄介な者たちが現れたモノだぜ!」

 

 この世界にウルトラマンが存在していたという想定外の出来事に、ジェノアもマグマ星人も驚きを隠せない。

 

 

 「なるほど…あの二人とすれ違った際、妙な衝撃が走ったのはそういう事だったのか。」

 

 「この世界に、ウルトラマンが二人もいるなんてね。」

 

 慧は先ほどの現象の事を納得し、アニーはこの世界にウルトラマンが複数存在している事に驚く。

 

 

 「だが、ウルトラマンが二人出て来た所で、我が軍団に勝てるかな~!?」

 

 なおも余裕ぶった態度を見せるマグマ星人。

 

 

 そんな奴に、兄弟は静かな怒りを見せる。そしてカツミ・イサミと順に語って行く。

 

 「お前達だけは許さない…! お前達のせいで、どれだけの命が犠牲になったと思う…! どれだけ罪の無い家族が悲しんだと思うんだ!」

 

 「(佐希恵をチラッと見ながら)現にここにだって…。 復讐か何か知らねーが、悪の家族のために、平和な家族が壊されてたまるかってんだ!」

 

 「だから俺達は負けない…! …家族であるこの地球の人々を守る為にも…! ウルトラマンの名のもとに!」

 

 「「お前たちをぶっ倒す!!」」

 

 

 遂に変身を決心した二人は、暴れ回るジェノアと怪獣軍団の方を振り向く。

 

 

 「ふんっ!変身させるかってんだ!」

 

 そう言いながらマグマ星人は兄弟にサーベルを向け、怪光線を発射しようとする!

 

 その時、横から慧が突っ込み、右足蹴りでサーベルを蹴り上げると、続けて左足での後ろ回し蹴りを胸部に叩き込んで後退させ、更に携帯銃『ハイパーガン』(未来で開発された銃型の武器)による光弾数発を腹部に打ち込んで吹っ飛ばす!

 

 未来で父・櫂に鍛えられたためか、飛び抜けた身体能力を持つ慧はマグマ星人の相手を引き受ける事にした。

 

 「慧君!受け取って!」

 

 そう言いながらアニーは慧に自身のハイパーガンを投げ、慧はそれをキャッチする。

 

 「サンキュー、アニー。 借りるぜ。」

 

 アニーに礼を言いながら、二丁拳銃で構えを取る慧。

 

 

 「コイツは僕に任せて、行け!ウルトラマン!」

 

 

 慧の言葉を受けたカツミ・イサミ兄弟は頷く。遂に変身の時が来た!

 

 

 二人はそれぞれ腕を上下に振って拳を当てた後にハイタッチを決めた後、ルーブジャイロを前に突き出す!

 

 

 「「オレ色に染め上げろ! ルーブ!!」」

 

 

 カツミ・イサミは『ルーブクリスタルホルダー』からそれぞれ火のエレメントを宿した『タロウクリスタル』と、水のエレメントを宿した『ギンガクリスタル』を取り出す。

 

 

 「「セレクト、クリスタル!」」

 

 

 そして掛け声と共にそれぞれクリスタルの二本角、一本角を展開し、ルーブジャイロにセットする。

 

 

 《ウルトラマンタロウ!》

 

 《ウルトラマンギンガ!》

 

 

 音声と共にカツミとイサミの背後にそれぞれウルトラマンタロウとウルトラマンギンガのビジョンが現れ、やがてそれぞれ火と水の紋章に変わる。

 

 

 「まとうは火! 紅蓮の炎!」

 

 「まとうは水! 紺碧の海!」

 

 

 二人はルーブジャイロを揚げて口上を上げた後、グリップを三回引いてそれぞれ火と水の力を解放する!

 

 

 《ウルトラマンロッソ! フレイム!》

 

 《ウルトラマンブル! アクア!》

 

 

 「「はーっ!!」」

 

 

 カツミとイサミはそれぞれ火と水を纏い、やがて『ウルトラマンロッソフレイム』『ウルトラマンブルアクア』へと変身が完了してそれぞれ右拳と左拳を突き出して飛び出す!

 

 

 「シュワーッ!」

 

 「ハァーッ!」

 

 

 遂に登場した二大ウルトラマンは、土砂や砕けたコンクリートを巻き上げながら着地し、それに気づいたジェノアと怪獣軍団は一斉に振り向く。

 

 そして、ロッソとブルはゆっくりと立ち上がってポーズを決める。

 

 因みに両者とも一見シルエットが似ているが、それぞれ頭部の形状がロッソは二本角、ブルは一本角なのが特徴である。

 

 

 「わぁ! ウルトラマンだ!」

 

 さっきまで怯えていた佐希恵は、ウルトラマン達の登場に嬉しそうに反応し、そんな彼女にアニーは声を掛ける。

 

 「うん。ウルトラマンが助けに来てくれた。だからもう大丈夫だよ。さ、一緒に応援しよっか。」

 

 「うん! 頑張れー!」

 

 

 「頑張ってください! カツ兄! イサ兄!」

 

 アサヒも元気よく応援し始める。

 

 

 交戦中の慧とマグマ星人も、組合ながらロッソとブルを見上げる。

 

 「あれが、この世界のウルトラマンか!」

 

 「忌々しい! 怪獣ども!潰してしまえ!!」

 

 

 「この世界のウルトラマン。貴様らの力がいかなるものか、お手並み拝見だぜ。」

 

 ジェノアはどうやらまずは怪獣軍団に任せ、自身は少し離れて見物するようである。

 

 

 町の人々の歓声が飛び交う中、対峙するロッソ・ブルのウルトラマン兄弟と、アボラス・バニラ・ガロン・リットルの怪獣軍団。

 

 「さて、変身したはいいものの、4対2でどう戦えばいいやら…。」

 

 「確かに、これは前例無い事だよな、カツ兄。」

 

 どうやら2人は、初の4対2の戦いに若干不安を感じているようだ。

 

 「でも、やるっきゃないでしょ! それにただの4対2なんかじゃない。 アイツらは破壊と殺戮以外何も無い。 しかし俺達は(アサヒの方を向いて)家族がいる…。 (応援してくれる佐希恵や綾香市民の方を向いて)守るべき者達がいる…。 それが俺達のアドバンテージだ!」

 

 「そうだな。だから俺達は負けない。 絶対に!」

 

 

 その時、アイゼンテックのビルから放送が聞こえ始める。

 

 《カツミ! イサミ! 母さんも手を貸すわ!》

 

 放送でカツミ達に呼びかけているのは、彼らの母親であり、現在はアイゼンテックの3代目社長でもある女性『湊ミオ』である!

 

 初代社長の『愛染マコト』も2代目社長の美剣サキもいなくなった今、新たな社長として綾香市の復興と更なる発展のために励んでいた彼女。そして今回、再び訪れた綾香市の危機に息子達に手を貸そうと駆けつけたのである。

 

 因みに、先ほどのアイゼンワンダーランドの看板に載っていた写真の女性も、彼女である。

 

 

 「母さん!」

 

 「ありがたい!」

 

 カツミとイサミは母ミオに感謝の言葉をかける。

 

 

 「さぁ! 親子で綾香市を守るわよ! ハイ、ダーリン! ビームを撃ちまくっちゃって!」

 

 「ハイハイ〜! 怪獣拘束システム発動!」

 

 ミオはアイゼンテック社の秘書AI『ダーリン』に指示を出し、それを受けたダーリンは『怪獣拘束システム』を発動させ、本社ビルから怪獣を拘束する光線『トラクタービーム』を連射し始める!

 

 ガロン・リットル兄弟がそれに対抗し始め、ビームを受けてもそれを持ち前のタフさで耐えながら、口からの火花やロケット弾などで相殺していく。

 

 

 母ミオとダーリンがガロン・リットル兄弟を引き受けている間に、ロッソとブルはアボラスとバニラを相手にする事にした。

 

 「よし、行くぞイサミ!」

 

 「あぁ!2対2なら行けるっしょ!」

 

 手と手のタッチを決めた後、一斉に駆け始める兄弟ウルトラマン。

 

 アボラスは溶解液、バニラは火炎を吹いて迎え撃つが、ロッソは手からの火炎、ブルは手からの水流でそれぞれ打ち消しながら向かって行き、やがて接近すると同時にロッソは後ろ回し蹴りをアボラスの胸部に、ブルは一回転してのパンチをバニラの腹部に打ち込んで後退させる。

 

 

 ロッソとアボラスは組み合い、アボラスは怪力で抑え込もうと力を入れる。

 

 力で押さえられるロッソは膝を付きそうになるが、なんとか踏ん張ってアボラスの腹部に前蹴りを叩き込み、更に怯んだ隙に左右交互のパンチを胸部に、右フックを顔面に打ち込んだ後、跳躍しての上段回し蹴りを頭部に叩き込む。

 

 だがアボラスも負けてなく、蹴られた勢いを利用して回転しながら尻尾を振るい、それをロッソは咄嗟に両腕で防ぐが、威力の高さに少し後退する。

 

 

 ブルはバニラの右フックをかわした後、胸部に右脚蹴りを打ち込み、その後もがむしゃらにパンチやキックを連続で撃ち込んで行く。

 

 やがてブルはバニラと組み合って力比べとなり、怪力により押さえ込まれそうになるが、咄嗟にそのまま跳躍して両足蹴りを胸部に叩き込んで後退させる事で逃れる。

 

 バニラは後退しながらも口から火炎を吹いて反撃に出る。

 

 「アクアジェットブラスト!」

 

 ブルは手を突き出して強力な水流『アクアジェットブラスト』を噴射し、火炎を打ち消すと同時にバニラにもぶつけて吹っ飛ばす!

 

 

 ブルに吹っ飛ばされたバニラは、同じくロッソに蹴飛ばされたアボラスと合流する。

 

 アボラスとバニラは同時にロッソとブルに襲い掛かるが、ロッソとブルは同時に2体の間に飛び込み、X字を描くように前転をして受け身を取って2体の背後に回り込む。

 

 そしてロッソはバニラの、ブルはアボラスの尻尾を掴み、それぞれ同時に引っ張る事で2体を激突させる!

 

 アボラスと激突させられた事で怯んだバニラに、ロッソとブルは同時に右足蹴りを胸部に叩き込んで転倒させた!

 

 

 アボラスは持ち前のスタミナで立て直すと、再び兄弟ウルトラマンに向かって行く。

 

 ロッソとブルはアボラスの突進を正面から胸部にそれぞれ右拳と左拳のパンチを打ち込む事で受け止め、そしてそのままもう片方の掌を胸部に打ち込む事で後退させ、更にそれ右足、左足でのキックを腹部に打ち込んで怯ませた後、跳躍して落下の勢いも加えてのパンチを胸部に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 「まずはお前から片付けてやるぜ!」

 

 そう言うとイサミは『オーブリングNEO』を取り出す!

 

 オーブリングNEO。それは、かつてウルトラマンの力を求めて地球にやって来て、愛染マコトに憑依していた『憑依生命体チェレーザ』が開発し、『ウルトラマンオーブダーク』(因みに自称は『ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ』)に変身する際に使用していたアイテムであり、R/B兄弟はこれを使用して『ウルトラマンオーブ』の必殺技を放つことが出来るのだ。

 

 

 イサミはオーブリングNEOのスイッチを上にスライドして“R/Bモード”にした後、中央部のボタンを押して必殺技を発動させる。

 

 《スペリオン光線!》

 

 音声と共にブルは両腕をL字に広げてエネルギーを溜めた後、腕を十字に組んで『ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン』の必殺技でもある必殺光線『スペリオン光線』を放つ!

 

 アボラスは光線の直撃を受けるが、多少ダメージを受けたものの数秒間の直撃に耐え切った!

 

 流石はかつて『ウルトラマン』の『スペシウム光線』を2度も耐えただけはあり、かなりの頑丈さである。

 

 

 だが、ロッソ達の攻撃を受けた事もあって、だいぶ弱っているのは確かである。ここで一気に止めだ!

 

 「こいつ、かなりタフな奴だな。」

 

 「それなら、その倍の威力をお見舞いしてやる!」

 

 そう言うとイサミは、R/BモードのオーブリングNEOのボタンを長押しした後にルーブジャイロにセットし、グリップを3回引いて合体技を発動させる!

 

 《トリプルオリジウム光線!》

 

 音声と共にロッソとブルはそれぞれ右腕と左腕を挙げ、2人の背後に『ウルトラマンオーブ オーブオリジン』の幻影が現れ、そして2人の前方にリング状のエネルギーが現れる。

 

 「「トリプルオリジウム光線!!」」

 

 ロッソとブルは巨大なオーブオリジンの幻影と共に、腕を十字に組んで合体光線『トリプルオリジウム光線』を放つ!

 

 太い青白い光線の周りを赤と青の光線が渦巻く形の巨大な集束光線はアボラスの体を直撃!アボラスはそれすらも耐えようと踏ん張ったが、ロッソとブル、そしてオーブオリジンの力を合わせた強力光線の前には耐え切れず、やがて胴体に大きな風穴を開けた後大爆発して砕け散った!

 

 

 「わぁー、すごーい!!」

 

 「えぇそうね。」

 

 見事怪獣を一体撃破したロッソとブルを見て佐希恵は無邪気にはしゃぎ、アニーはそれに同調する。町の人々からも歓声が飛び交っていた。

 

 

 「ほほ〜ぅ…。」

 

 ジェノアは兄弟の意外な強さにどこか関心するかのような反応をする。

 

 

 「まさか! ウルトラマンどもにあんな力があるとは!?」

 

 「フッ、ウルトラマンの力、舐めない方がいいよ?」

 

 マグマ星人はウルトラマン達の思わぬ力に驚き、慧はそれに余裕の軽口を投げつける。

 

 「フンッ! そんなの、貴様を倒した後にジェノア様と共にぶっ潰してやるぜ!」

 

 「出来るものならやってみる? 行くぞ!」

 

「おのれ青二才がああぁぁぁ!!」

 

 慧とマグマ星人は互いに雄叫びを上げながら駆け寄る。両者の戦いはこれから激しくなりそうだ。

 

 

 一方、ガロン・リットル兄弟は、連続で迫り来るアイゼンテックのトラクタービームに対し、一方が火花で受け止めている間にもう一方がロケット弾で打ち消したりなどの絶妙なコンビネーションで対応していた。

 

 

 「母さん、サンキュー。 もういいぜ。」

 

 「あとは俺達に任せてくれ。」

 

 カツミ達は、協力してくれた母ミオにお礼を告げ、あとは自分達に委ねるよう頼む。

 

 

 「ハイ、ダーリン…怪獣拘束システムを解除して。」

 

 「いいんですか? まだ3対2と比較的不利な状況です。 息子さん達が心配じゃないのですか?」

 

 怪獣拘束システム解除を命じるミオに疑問を投げかけるダーリン。そんなダーリンにミオは落ち着いて応える。

 

 

 「…あの子達は、もう自分で考えて行動出来るんだよ…。」

 

 

 兄弟ウルトラマンの母であるミオのその言葉に何かを察したダーリンは、解除を決める。

 

 「怪獣拘束システム、解除。」

 

 

 息子達に後を託した母ミオは、笑顔で語り掛けた。

 

 「後は任せたわよ…自慢の息子達。」

 

 

 アイゼンテックのビーム攻撃が止まった事により、ガロン・リットル兄弟、そしてバニラは標的をロッソ・ブル兄弟に変えて咆哮を上げながら構える。

 

 ここからは、兄弟VS兄弟+αのバトルの始まりだ!

 

 

 「ここからは、俺達兄弟の戦いだな、カツ兄。」

 

 「あぁ。一気に決めて行こうぜ!」

 

 「「オレ色に染め上げろ! ルーブ!!」」

 

 

 正義の兄弟の本領を発揮する時! カツミとイサミはルーブクリスタルホルダーからそれぞれ土のエレメントを宿した『ビクトリークリスタル』と、風のエレメントを宿した『ティガクリスタル』を取り出す。

 

 

 「「セレクト! クリスタル!」」

 

 

 掛け声と共にそれぞれクリスタルの二本角と一本角を展開してルーブジャイロにセットする。

 

 

 《ウルトラマンビクトリー!》

 

 《ウルトラマンティガ!》

 

 

 音声と共にカツミとイサミの背後にそれぞれウルトラマンビクトリーとウルトラマンティガのビジョンが現れ、やがてそれぞれ土と風の紋章に変わる。

 

 

 「まとうは土! 琥珀の大地!」

 

 「まとうは風! 紫電の疾風!」

 

 

 2人はルーブジャイロを揚げて口上を上げた後、グリップを三回引いてそれぞれ土と風の力を解放する!

 

 

 《ウルトラマンロッソ! グランド!》

 

 《ウルトラマンブル! ウインド!》

 

 

 「はーっ、シュワッ!」

 

 「はぁーっ!」

 

 

 カツミとイサミはそれぞれ土と風を纏い、やがて『ウルトラマンロッソグランド』『ウルトラマンブルウインド』へと変身が完了してそれぞれ右腕を、両腕を挙げた状態で飛び出す!

 

 

 (BGM:Hands)

 

 

 金と紫の光と共に現れたロッソグランドとブルウインドは、それぞれ手から岩状と風状のエネルギー弾を放ちながらガロン・リットル兄弟に駆け寄る!

 

 

 慧VSマグマ星人も、マグマ星人が慧の2丁拳銃の銃撃をサーベルを振るって弾き返したり、慧がマグマ星人のサーベルによる斬撃を足技で弾き返し、逆に跳躍しての回し蹴りを顔面に叩き込んだりなど、戦いは激しさを増していた!

 

 

 「頑張れー!! ウルトラマーン!!」

 

 (負けないで…慧君…!)

 

 佐希恵は元気よくウルトラマンを、アニーは心で祈るように慧を応援し始める。町の人達も歓声に拍車がかかる。

 

 

 そしてアサヒは、信じてる故の笑顔で2人を応援する。

 

 「頑張ってください…世界中の皆さんの、ハッピーを守るために!」

 

 

 先陣切ったロッソグランドは、同じく先陣切ったリットルにすれ違いざまに右足蹴りを打ち込んで転倒させてそのままガロンとバニラに向かって行き、ブルウインドはリットルに向かって行く。

 

 ロッソはガロンの腹部に両拳のパンチを打ち込み、続けてガロンの右フックを受け流すと同時に胸部に右足蹴りを叩き込み、続けて背後から迫っていたバニラに右足の後ろ蹴りを叩き込む。

 

 ガロンとバニラはそれぞれ左右方向からロッソを挟み撃ちにしようと駆け寄るが、ロッソが即座に後ろに跳んで回避した事により、二体は激突してしまう。

 

 互いにぶつかった事により揉めそうになる二体。その隙にロッソは跳躍し、バニラの顔面に右拳、ガロンの顔面に左足蹴りを同時に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 フレイムを上回る剛力で、一撃一撃重い攻撃を確実に決めて行くロッソグランド。一方のガロンとバニラは、やはり兄弟でもない、“赤の他人”ならぬ“赤の他獣”同士では上手く連携が取れないみたいである。

 

 

 ブルはリットルの左フックを回転しながらしゃがんでかわすと同時に右足蹴りを腹部に打ち込み、その後リットルの突進をかわすと同時にヘッドロックをかけて頭部に数発パンチを打った後、頭部をアッパーでかち上げ、更に後ろ回し蹴りを胸部に叩き込んで後退させる。

 

 そしてブルは、跳躍して大きく右脚を振り上げ、蹴りをリットルの頭部に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 スピードがより強化されたブルウインドは、吹き抜ける紫の風を放ちながら素早い動きで攻撃を決めて行く。

 

 

 ガロン・リットル兄弟、そしてバニラは一旦合流し、ロッソ・ブル兄弟も合流する。

 

 三体の怪獣は、ロッソ・ブル兄弟に向けてそれぞれ火花とロケット弾、火炎を同時に噴射する!

 

 「ストームシューティング!」

 

 ブルは、頭上に発生させた竜巻を光線として撃ちだす『ストームシューティング』を放って火花・ロケット弾・火炎との押し合いを始める!

 

 「グランドエクスプロージュン!」

 

 その隙にロッソは、上空に巨大な岩の塊を作り上げて相手に投げつける『グランドエクスプロージュン』を放ち、三体の一斉攻撃を完全に相殺する!

 

 

 大爆発により起こった粉塵に紛れて、兄弟は次のクリスタルチェンジに入る。

 

 《ウルトラマンロッソ! ウインド!》

 

 《ウルトラマンブル! フレイム!》

 

 今度はロッソが風のクリスタルで『ウルトラマンロッソウインド』、ブルが火のクリスタルで『ウルトラマンブルフレイム』へとチェンジする!

 

 

 それぞれ粉塵の中から、ロッソは上空に飛んで両手に発生させた竜巻を打ち込む『ストームフリッカー』を放ち、ブルは走って現れながら両手から炎の光線を放つ『フレイムバーン』を放つ!

 

 ガロンは火花でストームフリッカーを、バニラは火炎でフレイムバーンをそれぞれ相殺していき、その間にリットルが背後からブルに体当たりを放って転倒させる。

 

 そしてガロンがブルを起き上らせて羽交い締めにし、そこにリットルがドロップキックを放とうと駆け始める!

 

 流石は兄弟怪獣だけあり、ガロンとリットルの連携は見事を言わざるを得ない。

 

 しかし、キックを打とうと跳躍したリットルを、上空からロッソが急降下キックを叩き込んで打ち落とした!

 

 そしてガロンが動揺している隙にブルはガロンの腹部に右肘、顔面に右拳を打ち込み、更に右足の後ろ蹴りを叩き込んで後退させる。

 

 

 「サンキュー、カツ兄!」

 

 「おぅ!」

 

 ロッソとブルはタッチを交わした後、突進して来るリットルに対し、ロッソは右拳を胸部に、ブルは倒れ込んで回避すると同時に右足蹴りを腹部に叩き込んで後退させる!

 

 更に怒ったリットルは、ロッソとブル目掛けて渾身の火花を噴射する!

 

 

 「ロッソサイクロン!」

 

 「パイロアタック!」

 

 ロッソウインドは竜巻をスローイングの要領で投げつける『ロッソサイクロン』を、ブルフレイムは掌から炎を放つ『パイロアタック』を放ち、それらを合わせて生み出した炎の竜巻『ファイヤートルネード』という合体技を放つ!

 

 炎の竜巻はリットルの火花攻撃を打ち消していき、やがてリットルを直撃して上空高く巻き上げる!

 

 炎の竜巻に巻かれたリットルはしばらくもがき苦しんだ後、断末魔を上げて大爆発して消滅した!

 

 

 弟を倒されてしまったガロンは、怒りと共に突進して行き、ロッソとブルは即座にそれをかわす。

 

 やがてガロンとバニラに挟まれてしまうロッソとブル。ガロンはブル目掛けてロケット弾を、バニラはロッソ目掛けて火炎を同時に放つ。

 

 

 《ウルトラマンロッソ! アクア!》

 

 《ウルトラマンブル! グランド!》

 

 ロッソとブルは前後入れ替わりながら、それぞれ水のクリスタルで『ウルトラマンロッソアクア』、土のクリスタルで『ウルトラマンブルグランド』へとチェンジする!

 

 

 ロッソは横に跳びながら水の力を秘めた光弾『スプラッシュボム』をバニラに投げつけ、ブルは横に跳びながら黄金の光弾『ロックブラスター』をガロンに放つ!

 

 水の光弾はバニラに着弾後、包み込むように展開して爆発し、黄金の光弾を受けたガロンは吹っ飛んで地面に落下する。

 

 苦手な水の攻撃を受けた事により、バニラはしばらく動きが鈍り始める。

 

 「しばらく大人しくしてろ!」

 

 そう言うとロッソはブルと共にガロンに立ち向かう。

 

 

 「ルーブスラッガーロッソ!」

 

 「ルーブスラッガーブル!」

 

 ロッソとブルは頭部から大小二振りの剣『ルーブスラッガー』を取り出しながら駆ける。

 

 ロッソのスラッガーは赤い刀身で二刀流が特徴の『ルーブスラッガーロッソ』、ブルのスラッガーは青い刀身で一振りの大剣が特徴の『ルーブスラッガーブル』である。

 

 

 ロッソはガロンの左フックを順手持ちの右手の剣で受け止めた後、ガロンの腹部を逆手持ちの左手の剣で斬りつけ、更にブルが一直線の斬撃を叩き込んでそれに続く。

 

 そしてロッソとブルがそれぞれ左右斜めから斬撃を放ってX字を描くように斬りつけた後、同時にすれ違い様に腹部に斬撃を決めながら後ろに回り込み、更に同時に跳躍して振り下ろした剣を背中に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 斬撃が決まる度に、その部位から火花が飛び散る。ロッソ・ブル兄弟の息の合った連携による斬撃を受けたガロンは完全に弱り切っている。今こそトドメだ!

 

 

 《ウルトラマンゼロ!》

 

 《ウルトラセブン!》

 

 

 カツミとイサミはそれぞれ“烈”の『ゼロクリスタル』と、“刃”の『セブンクリスタル』をスラッガーにセットして必殺技を発動する!

 

 

 「ゼロツインスライサー!」

 

 「ワイドショットスラッガー!」

 

 

 ロッソアクアはスラッガーを振るって水の属性を宿した二本の破壊光刃『ゼロツインスライサー』を、ブルグランドはスラッガーを振るって土の属性を宿したアイスラッガー状の破壊光刃『ワイドショットスラッガー』を放つ!

 

 まずはワイドショットスラッガーがガロンの体を貫き、そして前方からゼロツインスライサー、背後から反転したワイドショットスラッガーが同時にガロンの体を斬り裂く!

 

 計三つの破壊光刃により体を斬り刻まれたガロンは、その場で大爆発して砕け散った。

 

 

 

 「馬鹿なッ!? 俺達の怪獣軍団が、こうも簡単に…!?」

 

 自身の怪獣軍団が次々とやられていく事に更なる動揺を隠せないマグマ星人。慧は言葉を投げつける。

 

 「見たか! あれがウルトラマンの、そして、決して絆を諦めない兄弟の力だ!」

 

 「あり得ない! そんなモノなどに…!」

 

 事実を受け入れられないマグマ星人は逆上し、サーベルを振るいながら慧に襲い掛かる!

 

 慧はサーベル攻撃をしゃがんでかわすと同時に二丁拳銃の銃口をマグマ星人を腹部に当ててゼロ距離で光弾を連射して後退させ、一回転して体勢を立て直した後、更に二丁拳銃の光弾を打ち込んでダメージを与える。

 

 そして怯んだマグマ星人に、跳躍して跳び蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 「罪の無い者達の笑顔を奪う貴様らなんかに、負けはしないんだ!」

 

 着地した慧はマグマ星人にそう言い放った後、ロッソ・ブル兄弟の方を振り向く。

 

 「この町は…もう大丈夫だな。」

 

 

 怪獣軍団で最後の一体となったバニラは、負けるかとばかりにロッソとブル目掛けて渾身の火炎放射を放つ!

 

 「アクアミラーウォール!」

 

 ロッソは円形状の水のバリア『アクアミラーウォール』を展開して火炎を防ぎ始める。

 

 「アースブリンガー!」

 

 そしてその隙にブルが地面を叩いて地中からの衝撃波『アースブリンガー』を放つ!

 

 地中からの衝撃波を受けたバニラは上空高く打ち上げられてしまう。

 

 

 「仕上げと行きますかカツ兄!」

 

 「あぁ!」

 

 「「セレクト!」」

 

 ロッソとブルはクリスタルチェンジをし、それぞれロッソフレイム、ブルアクアへと変わる。

 

 

 そして二人は腕を広げてそれぞれ火と水の力を解放した後、腕を8の字を描くように回した後にそれぞれ十字に、L字に組む!

 

 「フレイム!」

 

 「アクア!」

 

 「「ハイブリッドシュート!!」」

 

 ロッソは炎のエネルギー光弾『フレイムスフィアシュート』を、ブルは水のパワーの破壊光線『アクアストリューム』を放ち、それを収束させて放つ合体光線『フレイムアクアハイブリッドシュート』を上空のバニラに浴びせる!

 

 強力な合体光線を受けたバニラは、上空で大爆発して砕け散った!

 

 

 (BGM終了)

 

 

 見事に怪獣軍団を撃破したロッソとブル。それを見た町の人々は更なる歓声を上げ、佐希恵も無邪気に喜んで行く。

 

 「あのウルトラマン達すごーい!!」

 

 「そうね…あれが、兄弟の絆の力。」

 

 そう悟ったアニーに、アサヒは嬉しそうにこう言った。

 

 「そうです! 兄弟が力を合わせれば、何でも出来るのです!」

 

 

 「あり得ない…こんな事が…!」

 

 なおも動揺するマグマ星人に、慧はこう言った。

 

 「貴様らの負けだ。 大人しく帰って、罪を償ったらどうだ?」

 

 

 だが、マグマ星人が素直に聞くはずが無い。

 

 「ふざけるな! こうなったら俺自ら行ってやる! そしてジェノア様と共にあの兄弟どもをぶっ倒した後、世界の破壊を再開するのだー!!」

 

 そう叫びながら、マグマ星人は巨大化してロッソとブルの前に立ちはだかる。

 

 「さぁジェノア様! 我々で一気にやっちゃいましょうぜ!」

 

 「フッ、仕方がない。 よくぞここまでやったな兄弟ウルトラマンども! だが、ここで終わりだ!」

 

 ジェノアは共闘に賛成し、ロッソ・ブル兄弟に啖呵を切る。そして、マグマ星人と共に構えを取る。

 

 

 だが、決して心が揺るがない兄弟は、自分達を応援してくれる慧達や町の人々を見て、啖呵を切り返す。

 

 「俺たちは負けない! ウルトラマンを信じてくれる、みんながいる限り!」

 

 「俺たちも、とっておきを見せてやる!」

 

 

 R/B兄弟は最後の変身に入る!

 

 《キワミクリスタル!》

 

 「「セレクト! クリスタル!」」

 

 カツミは、ルーブクリスタルの力を結集した究極のクリスタル『キワミクリスタル』を起動させ、イサミと共に口上を上げた後に展開する。

 

 《兄弟の力を一つに!》

 

 七色に光るキワミクリスタルをルーブジャイロにセットすると、カツミとイサミの背後に『ウルトラマン』と『ウルトラマンベリアル』、そしてタロウ、ティガ、ギンガ、ビクトリーのビジョンが現れ、やがて七色の光と共に極の紋章に変わる!

 

 「「まとうは極! 金色(こんじき)の宇宙!」」

 

 カツミはキワミクリスタルをセットしたルーブジャイロを揚げ、イサミと共に口上を上げた後、グリップを三回引いて極の力を解放する!

 

 

 《ウルトラマンルーブ!》

 

 

 キワミクリスタルの力でロッソとブルは『ウルトラマンルーブ』へと合体変身し、七色の光の中から右拳を突き出して飛び出す!

 

 「デュアッ!!」

 

 

 黄金の輪っかのような光を発しながら現れたウルトラマンルーブは構えを取る。

 

 金、銀、黒が基調の神々しい姿に、ロッソ・ブルの時よりも凛とした顔つきが特徴のその姿は、それを見ただけで希望を感じる人も出て来る程である。

 

 

 「わぁ…金と銀がすごく綺麗でかっこいい…!」

 

 「すごーい! がんばれー!!」

 

 アニーはルーブの神々しい姿に見惚れ、佐希恵は更なる応援の声を掛け始める。

 

 

 「マグマ星人、まずはお前から行ってみろ。」

 

 「イエッサー! お任せくだせぇ!」

 

 ジェノアの命を受け、マグマ星人は余裕綽々にサーベルを構えてルーブに駆け寄る。

 

 「どんな姿になろうと関係ねぇー!」

 

 

 (BGM:Ready To Beat)

 

 

 人々の歓声を背に、ルーブも戦闘を開始する!

 

 ルーブはマグマ星人向かって颯爽と駆け始め、振るって来たサーベルを左腕で受け止めて右肘を胸部に打ち込み、続けて胸部に右足蹴りを叩き込んで後退させる。

 

 「ぐっ!…ヤロー!」

 

 怯まずマグマ星人は突撃しながらサーベルを突き立てるが、ルーブはそれを避けると同時にマグマ星人の背中に左脚蹴りを決め、続けて腹部に右脚蹴りを打ち込んで屈ませた所に更に左脚を大きく振り上げて強力な踵落としを背中に叩き込んで地面に叩きつける!

 

 

 無駄の無い余裕な動きで相手の攻撃を受け流し、ロッソ・ブルの時よりも大幅に上がった攻撃力で確実な一撃を決めていくルーブの戦闘スタイルの前に早くもダウンさせられたマグマ星人。

 

 「クッ…こうなったら俺様がぶちのめしてやるぜ!」

 

 遂に業を煮やしたジェノアは自らルーブを倒そうと、左手から火球を連射し始める。

 

 ルーブはそれらをかわしたりチョップで弾き飛ばしたり等しながらジェノアに駆け寄り、やがて接近すると同時に右足蹴りを胸部に叩き込む!

 

 ジェノアは負けじと左腕のデスレムクローを振るって殴りかかるが、ルーブはそれを右腕で受け止めて左拳で叩き落した後、ジェノアの胸部に左右の拳交互にパンチを連打していき、更に強力な右拳での一撃を顔面に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 カツミ・イサミ兄弟の意思が合致した時に変身可能であり、極を纏っているだけあって圧倒的な力を持つルーブは、湊家、そしてその他の家族(世界中の人々)への思いを胸に、邪悪な宇宙人達を圧倒していく!

 

 そんなルーブを見つめながら、慧は心で呟いた。

 

 (たとえ絶望が襲って来ても…決して絆を、明日を諦めない限り、希望は開ける…。 それをあの兄弟と妹のアサヒちゃん、そして、佐希恵ちゃんが気づかせてくれた気がするな…。)

 

 慧はそう心で呟いた後、湊兄妹たちへの感謝の表れでもある満面の笑みを見せながらルーブを応援する。

 

 

 「頑張れ、兄弟ウルトラマン。 君達なら負けない。」

 

 

 ルーブは再度襲って来たマグマ星人のサーベルによる突きや斬撃をことごとくかわしていき、やがてサーベルを左手で掴んで受け止めると、そのまま跳躍して落下の勢いも加えた左の手刀を叩き込んでへし折る!

 

 「うぉわっ!? 俺のサーベルが…!」

 

 激しく火花を散らしながら折れた自身のサーベルに動揺するマグマ星人に、ルーブは胸部に右足蹴りを叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 次にルーブは、振り向き様に上段回し蹴りをジェノアの頭部に叩き込み、次にジェノアが放ったデスレムクローでの殴り込みを左腕を掴む事で受け止め、そのまま頭上高く担ぎ上げて放り投げる!

 

 投げられたジェノアは、マグマ星人の近くに落下した後、立ち上がる。

 

 

 「「ルービウム光線!」」

 

 

 ルーブは両腕を回転させてエネルギーを集中させ、十字に組んで黄金の必殺光線『ルービウム光線』を放つ!

 

 ジェノアは、迫り来る光線に気付くや、あろうことか近くにいたマグマ星人を前方に突き飛ばして盾にしてしまう!

 

 正に「近くにいたお前が悪い」とはこの事である。

 

 「そんなぁぁぁ!! そりゃ無いっスよ旦那ああぁぁぁ!!」

 

 哀れ盾にされたマグマ星人は、光線の直撃を受けて大爆発した。その爆発の中から現れる形で、ジェノアは上空に飛び立つ。

 

 

 「何て卑劣な奴だ!」

 

 「あんな奴には絶対に負けない!」

 

 カツミとイサミは、仲間を平気で切り捨てたジェノアに更なる怒りを見せる。

 

 

 「「ルーブコウリン!」」

 

 カツミは円形の万能武器『ルーブコウリン』を取り出して6枚刃を展開し、それによりルーブもカラータイマーに手を当ててルーブコウリンを手に取って上空に飛び立つ!

 

 

 「ルーブコウリンブル!」

 

 まずはイサミが手にして“ルーブコウリンブル”となり、上空で超スピードで移動しながらジェノアにすれ違い様に斬撃を叩き込んで地面に落下させる。

 

 

 「ルーブコウリンロッソ!」

 

 次にカツミが手にして“ルーブコウリンロッソ”となり、接近した後にジェノアに左右袈裟懸けに斬撃を決め、更に下から振り上げる形の斬撃を下半身から胸部にかけて叩き込む!

 

 ジェノアは斬られた部位から爆発と共に火花を散らしながら吹っ飛んだ。

 

 

 「ぐっ…何故だっ! …暗黒四天王の一人だったデスレムの血を引く俺様が、何故兄弟ごときに!」

 

 自分の不利を認められないジェノアに、R/B兄弟は答えた。

 

 「俺達には、俺たちの守るべきものがある!」

 

 「お前は、仲間を平気で切り捨てた!」

 

 「「それだけの違いだー!」」

 

 

 ルーブはジェノアが立ち上がったところで大きく跳躍しながら接近し、ルーブコウリンによる落下の勢いも加えた強力な一撃によりデスレムクローを叩き折った!

 

 そこから更に左右横降りの斬撃を胸部に決め、左脚蹴りを腹部に打ち込んだ後、パンチの要領で放つルーブコウリンでの渾身の一撃を胸部に叩き込み、その部位から火花を散らしながら吹っ飛ばす!

 

 

 ルーブの猛攻、そしてルーブコウリンによる斬撃を連続で受けたジェノアは、遂に弱ってきていた。そして、ルーブもカラータイマーが赤く点滅を始める。

 

 今こそトドメの時だ!

 

 

 「よっしゃ! 決めるぜ!」とイサミ。

 

 その時、カツミ・イサミ兄弟の前に、優しい光と共に一人のオーラが現れる。

 

 そのオーラの正体は湊アサヒであった。

 

 

 「カツ兄…イサ兄…私も一緒に。」

 

 二人にそう語り掛けるアサヒ。実は彼女の正体は、人を思いやる気持ち、ハッピーな心の集合により生まれたと思われるクリスタルであり、ルーブジャイロがカツミ・イサミ兄弟の元に現れたと同時に誕生したのである。

 

 妹でありながら、家族との思い出の記憶が曖昧なのはそのためである。

 

 

 彼女はかつてルーゴサイトとの最終決戦の際、湊兄妹の絆による『マコトクリスタル』を作り出す原動力になり、兄達の逆転勝利に貢献している。

 

 そして今回も、兄達の勝利のためにマコトクリスタルを起動しようと現れたのだ。

 

 

 しかし、兄達の反応は違った。

 

 「サンキュー、アサヒ。でも大丈夫だ。」

 

 「お前は、(佐希恵の方を向きながら)一人の心を救うために十分頑張ってくれた。」

 

 「だから、あとは俺達に任せてくれ。 コイツとは、俺達二人がケリをつける!」

 

 アサヒの労を労い、二人で決着を付ける事を決めていたカツミ・イサミ兄弟。そんな兄達の言葉を聞いたアサヒは、満面の笑みと共にその場から消え慧達の元に戻る。

 

 

 アサヒの協力を断ったカツミ・イサミ兄弟。アサヒはかつてマコトクリスタル起動と引き換えに一度消滅した事があるため、恐らくそれが再び起きないための意図もあったのだと思われる。

 

 

 「終わりにしてやる! 喰らえぇぇぇ!!」

 

 ジェノアはそう叫ぶと、左手から全力を込めた火炎放射を放つ!

 

 

 遂にジェノアとの決着を付ける時が来たルーブはルーブコウリンを構える。

 

 《高まれ、究極の力!》

 

 カツミは、キワミクリスタルのスイッチを押した後、音声と共にキワミクリスタルをルーブコウリンにセットし、ルーブコウリンの後部スイッチを押す事で必殺技を発動する!

 

 

 「「ルーブボルテックバスター!!」」

 

 

 ルーブはエネルギーを溜めた後、突き出したルーブコウリンから必殺光線『ルーブボルテックバスター』を放つ!

 

 「「はああああぁぁぁ!!」」

 

 七色の破壊光線は、兄弟の気力の高まりと共に威力を増していき、やがて火炎を全て押し切った後ジェノアに直撃する!

 

 「ぐぉわああぁぁっ!! お…俺様…の…野望も…ここまでなのか…? 残念無念~!!」

 

 ジェノアは最期にそう叫ぶと、大爆発して消し飛んだ。

 

 

 (BGM終了)

 

 

 遂に、邪悪な侵略者の軍団を倒したR/B兄弟。戦いを見守っていた町の人々は一斉に感謝の歓声を上げ始め、慧達も喜び合う。

 

 「やったー!ウルトラマンが勝ったー!」

 

 「良かったね!」

 

 元気よく喜ぶ佐希恵に、アニーは同調する。

 

 「この世界は、もう大丈夫そうだな。」

 

 兄弟ウルトラマンの強さを見届けた慧も、安心の表情でそう呟いた。

 

 

 「カツ兄、イサ兄、ありがとうございます。 ハッピー!」

 

 アサヒは笑顔で兄達に感謝しながら、ハッピーのポーズを決めた。

 

 

 そして、友達でもあった美剣サキの形見でもあるオレンジが基調のルーブジャイロ(美剣サキ仕様)取り出して呟いた。

 

 「また、お兄ちゃん達がやってくれましたよ。ツルちゃん…。」

 

 

 戦いを終えて、変身を解除して戻って来たカツミ・イサミ兄弟を慧達、そして妹のアサヒが迎える。捕えられていたえりな、ななかも無事に解放された。

 

 

 僕、竜野慧は、凄いモノを目撃した。

 

 この世界にもウルトラマンが存在し、しかもそれが兄弟であり、更に町の人々みんな“家族”と見て、それらとの絆を諦めない力で戦い抜いたのだから…。

 

 絆を諦めない。それが家族…。そんな彼らを見て僕は決めた…。僕も、決して家族との絆を諦めない事を…。

 

 

 それに、まさかアサヒちゃんがクリスタルの化身だったとは驚きだなぁ…。どうりで彼女からも何処か特別なオーラを感じたワケだよ。

 

 でも、例えどんな存在でも家族として、妹として受け入れた湊家。 なんて度量が大きい一家なんだろう。 それに、湊家関連で誕生した者だから家族である事に変わりは無いんだろうな。

 

 

 何はともあれ、この世界の危機が救われ、そして佐希恵ちゃんも元気を取り戻してくれた。これで一件落着だね!

 

 

 「カツミ君、イサミ君、そしてアサヒちゃん…君達は、本当に素晴らしい兄妹だ。」

 

 「君達なら、どんな困難も超えて行けそうね。」

 

 僕とアニーは湊兄妹に労いの意も込めて言葉をかける。

 

 

 「慧さん達こそ、未来人…別の世界の人でありながら、この世界のためにありがとうございます。」

 

 「あなた達に会えてハッピーでした!」

 

 カツミ君とアサヒちゃんが感謝の言葉を返してくれた。嬉しいな。

 

 

 「しかしスゲェよな!まさか未来人が来るなんて…ちょっと、そのペンダント調べてもいいですか?」

 

 「ほらイサミ、いつものクセが出てんぞ。」

 

 イサミ君は未来から来た僕達に興味津々であり、それにカツミ君が突っ込みを入れる。

 

 …まぁ、確かに未来人が来るのって普通に考えて驚きだし、そりゃあ興味も湧いて来るよね(笑)

 

 

 次に僕は、佐希恵ちゃんの方へ。

 

 「佐希恵ちゃん。君は本当に素直で偉い子だよ。 だからこれからもお母さんを…家族を大事にね。」

 

 「うん! 今日は本当にありがとう。慧さん。」

 

 改めて元気を取り戻した佐希恵ちゃんを見た僕は、自然と笑顔になれた。

 

 

 その時、僕達の元に1人の女性がやって来る。カツミ君達の母さん・ミオさんだ。

 

 かなりのべっぴんさんだなぁ…。それに、さっきはあのビル(アイゼンテック)にいたのにもうここに来るなんて、凄い行動力だ。

 

 「カツミ、イサミ。今日は本当にお疲れさん!」

 

 ミオさんは気さくにそう言いながらカツミ君とイサミ君の背中を叩く。

 

 「あはは…ありがとう母さん。」

 

 カツミ君は苦笑しながら母ミオさんにお礼を言う。

 

 

 「…この人達は?」

 

 次にミオさんは僕達に気づく。アサヒちゃんは紹介してくれる。

 

 「私達の新しい友達、竜野慧さんとアニーさんです!」

 

 「ほほーぅ、なかなかの美男美女じゃない!」

 

 そう言いながらミオさんは僕達の背中も叩く。 綺麗でパワフルなお母さん…なかなか魅力的な人だな。

 

 

 そしてミオさんは、カツミ君達にこう言った。

 

 「今夜はすき焼き! 母さんはもう少しアイゼンテックでやる事があるから、お疲れな所悪いけど、帰りに豆腐とネギ、白滝を買って来てね! うーたんも、お腹を空かせて待ってるハズだから。」

 

 「分かったよ、母さん。」 「先に準備しておくね。」

 

 カツミ君もイサミ君も笑顔で応えた。

 

 

(因みにカツミ達の両親は、互いに“うーたん”、“みーしゃん”と呼び合っている。 かなり仲良しな夫婦みたいだ。)

 

 

 すき焼きか…思えば僕の母さんも、よくすき焼きを作ってくれてたっけ…。

 

 「良かったら、慧君たちもどう?」

 

 「あと、佐希恵ちゃんも、万智ちゃんと一緒に!」

 

 ミオさんとアサヒちゃんは僕達、そして佐希恵ちゃん達も誘ってくれる。

 

 「…え? いいのですか?僕達まで…。」

 

 「折角だから呼ばれようよ。この世界での、一つの思い出として。」

 

 「…そうだね。じゃあ、お邪魔します。」

 

 アニーの背中押しにより、僕は呼ばれる事にした。

 

 「わーい!すき焼き楽しみ!」

 

 佐希恵ちゃんも無邪気に喜ぶ。

 

 

 「じゃあ、いつもの倍は材料買わないとね。 と言うワケで荷物持ちよろしくな、カツ兄。」

 

 「え?嫌だよイサミも持てよ。」

 

 「いや俺無理〜だってルーブジャイロ持ってんだもん。」

 

 「いやそれは俺も同じだろ。」

 

 気がつけばいつものやり取りを始めているカツミ・イサミ兄弟を見つめて笑いながら、僕達は彼らの家に向かい始める。

 

 

 そして、すき焼きの買い出しをした後、僕達は湊家の家でもあるセレクトショップ・クワトロMに着く。佐希恵ちゃんはそこでお母さんへの誕生日プレゼントのTシャツを買う事にした。

 

 この店はTシャツの他にも帽子やコート、サングラス等、色んな物が置いてあって実に品揃えがいい店だ。

 

 そしてこの店のオーナー・湊ウシオさんが出て来て迎える。

 

 「お、お帰りカツミ、イサミ、アサヒ。 あれ?みーしゃんは?」

 

「まだアイゼンテックでやる事があるってさ。」

 

ミオさんがいない事に疑問をかけるウシオさんにイサミ君は答えた。

 

「ん?この人たちは誰だ?」

 

 ウシオさんも僕達に気付いて興味を持ち始める。またしてもアサヒちゃんが紹介してくれる。

 

 「私の新しい友達です。」

 

 「竜野慧と言います。」 「私はアニー。よろしくお願いします。」

 

 「アサヒ…お前、いつの間に新たに二人も出来たんだ?」

 

 ウシオさん…意外と親バカなのかな?(笑)

 

 

 「今日ですよ。」

 

 「ほほぉ、なかなかいい感じの二人じゃないか。 そんな二人には、これだ!」

 

 ウシオさんはそう言いながら、新作と思われるTシャツを僕達に見せる。

 

 「父さんまたTシャツ作ったのかよ。」

 

 イサミ君が若干呆れながらも笑いながら言った。なんでもウシオさんはブランド『UshioMinato』を手掛ける服飾デザイナーで、特にTシャツのデザインは毎日行っているのだが、いつも独特なセンスであまり評価が良くないらしい…(苦笑)

 

 Tシャツにはそれぞれ大きく“美男女”という文字が、それぞれ美が金色、男が青色、女が桃色でプリントされている。

 

 「これはなかなか…。」 「絶妙なTシャツですね。」

 

 僕とアニーは少し困惑しながらも、その独特なセンスのTシャツをとりあえず褒める。 て言うか、また“美男美女”って言ってもらえた…嬉しいな(笑)

 

 「父さんまた間違えてるよ。 “美男女”じゃなくて“美男美女”。」

 

 「え? そうだっけ?」

 

 カツミ君が突っ込みを入れた事で、場が笑いに包まれる。 ウシオさん、ドジな一面もあるのか…結構面白いお父さんだな。

 

 

 他にも彼がデザインしたTシャツを見てみると…“I♡綾香市”や、“親知らず”、“汗染み”、“もう、おしまいです”、“大円団”etc…。

 

 う~ん、どれも実に独特なセンスだな…(苦笑) (中には“父の背中を超えていけ”などと比較的マトモな事を書いているのもあったが…。)

 

 「私、これにする!」

 

 そんな中、佐希恵ちゃんは決めた。青と黄色の鮮やかな色合いが特徴の“☆いとしいHAPPY&BLUE”だ。

 

 なるほど。これは女性も好きそうな可愛らしいデザインとカラーリングだ。

 

 「(笑顔で)いいんじゃない?」とアニー。

 

 

 「ねぇ、折角だから私達も何か買って行かない? この世界からの自分へのお土産として。」

 

 「え? そうだな~…。」

 

 アニーの提案を受けて、僕は困惑しつつも全種類のTシャツを見渡してみる…。

 

 

 その時、僕はある一つのTシャツに目が止まった。

 

 

 それは、“うちゅ~ん”とデザインされたTシャツである。

 

 

 「じゃあ、これにしよっかな。」

 

 これもなかなか独特なセンスなのだが、何故か僕はこのフレーズが気に入ってしまった(笑)

 

 「お!慧君だっけ? 君なかなかお目が高いね~!」

 

 どうやらこの“うちゅ~んTシャツ”は、ウシオさんのイチオシだったみたいである。

 

 因みにアニーは「かわいいから」という理由で“にゃんちゃって”Tシャツに決めた。

 

 

 「良かったな~父さん。今日はTシャツが三着も売れて。」

 

 「なんだよ! 普段だって売れてんだろ?」

 

 「なな、今度は俺たちにもデザインさせてくれよ、絶対父さんよりいいの書ける自身がある。」

 

 「おいおいおい!父さんのこの素晴らしいセンスを超えるなど至難の業だぞ~!」

 

 「よく言うよ自分で!」

 

 カツミ・イサミ兄弟がおちょくったのがきっかけで、何処か楽しそうに他愛もない言い合いを始める湊親子。そんな様子を僕とアニー、佐希恵ちゃん、そしてアサヒちゃんは笑いながら見つめた。

 

 

 その夜、僕達は湊家で晩御飯のすき焼きを呼ばれた。

 

 湊家五人に僕達四人を加えた計九人での食事は実に賑やかで、ワイワイと色んな人と色んな話を楽しみながらすき焼きを頂いた。

 

 この賑やかさも、正に“家族”って感じでやっぱりいい感じだな…。すき焼きもとても美味しかったし。

 

 まぁ、僕は僕の母さんのすき焼きが一番好きだけどね。これだけは譲れない(笑)

 

 

 そしてご飯を呼ばれ、湊兄妹や木下姉妹とカードゲーム等をして楽しんだ後、僕達は未来に帰る事にした。

 

 

 「それじゃあ、お元気で。さようなら!」

 

 「またいつでも遊びに来てくださいね!」

 

 「友達になれてハッピーでした!」

 

 

 「またいつか遊びに来るね!」

 

 「ご馳走さまでしたー!」

 

 手を振りながら別れの挨拶をする湊兄妹に、僕達も歩き去りながら手を振る。

 

 

 「それじゃ、帰ろっか。」

 

 「えぇ、そうね。」

 

 そして、湊家が見えなくなった所で、僕達は力が回復したタイムワープのペンダントを起動させ、それにより発生した時空移動空間の入り口に入った。

 

 

 入り口は僕達が入ると同時に閉じる。 今日も別世界でいい体験をしたな…。

 

 あめ玉とおまんじゅうを通じてアサヒちゃんと仲良くなり、それに続く形で一人の少女の心を救い、そしてウルトラマンの兄弟に出会えたのだから…。

 

 

 そして彼らのおかげで、“決して絆を諦めない事”の大切さに気付いた…。

 

 

 だから僕も諦めない…。帰った先の未来で、元気な家族が待ってくれているのを…。

 

 

 

 やがて未来(自分の時代)に帰った僕は、アニーと別れた後、自分の家に辿り着く…。

 

 

 ガルキメス軍団の襲撃で死んだ事になっていた母さんは…妹の爽はどうなっているのだろうか…。

 

 

 不安が募って行く中、僕は“男は度胸だ!”!とばかりに遂にドアをオープンさせて家の中に入った。

 

 

 そして、恐る恐る帰宅の挨拶をした。

 

 

 「…ただいま!」

 

 

 玄関から力の入った挨拶が家中に響いた後、数秒間沈黙が続いた…。

 

 

 …やはり何も変わらなかったのか…そう思ったその時、台所がある大部屋から、一人が姿を現して僕を見つめた。

 

 

 …なんとその人は女性であり、僕は一瞬目を疑った!

 

 

 …そしてその女性は、柔らかい笑顔、優しい声で僕にこう言った…。

 

 

 「…お帰り。」

 

 

 …間違いない。僕を迎えてくれたのは、母さんだ!

 

 

 (ED兼BGM:夢飛行(1番+2番サビ~))

 

 

 湊兄妹が教えてくれた決して絆を諦めない気持ちが、不安定な未来をいい方向へと変えてくれた!

 

 

 そう確信した慧は、嬉しさの余り思わず母に抱き付き、嬉し涙を流し始める。

 

 「…良かった…本当に良かった…。」(この瞬間…起こった奇跡…それはきっと、嘘じゃない…!)

 

 「ちょっと…どうしたのよ…。」

 

 息子の思わぬ行動に少し困惑しながらも、母は優しい表情で息子・慧の頭を撫でる。

 

 

 その時、誰かが一人、家に帰って来る。

 

 「あれぇ? お兄ちゃん泣いてるの?」

 

 ブレザーの制服姿で帰って来たのは、現在高校生の妹・爽である。

 

 

 「ちげーよ。ゴミに目が入っただけだ。」

 

 慧は焦りの余りに“目にゴミが入る”を言い間違えてしまう。

 

 「ゴミに目? ふふっ、お兄ちゃん何言ってるのよ!」

 

 可笑しくなった慧と爽、そして彼らの母は笑い合う。

 

 そして、同時に慧は嬉しさが増した。 未来が変わったから、こうやって賑やかな家族の雰囲気が戻って来たのだと…。

 

 

 更に家族らしい会話がしたくなった慧は、晩御飯の話に入る。

 

 「ねぇ母さん、今日の晩御飯は何?」

 

 「今日は爽ちゃんの好きなハンバーグよ。」

 

 「やったー! さっきまで疲れてたけど元気出る~!」

 

 「じゃあ、今日は僕も手伝うよ!」

 

 「そう? じゃあ、まずは買い出し頼もうかしら。」

 

 「あ、じゃあ私も行くわ!」

 

 「それじゃあ、僕はスーパーで玉ねぎや人参、パン粉を買って来るから、爽は肉屋さんでミンチ買って来て。」

 

 「オッケー!」

 

 晩御飯の買い出しを引き受けた慧と爽は、買い物袋を手にそれぞれの方向へと出かけて行った…。

 

 

 そして道を歩きながら、慧は嬉しそうに青空を見上げながら呟いた。

 

 「この平和がいつまでも続くように…僕達も頑張るよ。 兄弟ウルトラマン、アサヒちゃん。」

 

 

 そしてカツミ達の世界で数週間後のある日、カツミはいつものように大学に向かうイサミと、高校に向かうアサヒを見送っていた。

 

 「それじゃ、行って来るわ。」

 

 「行ってきますカツ兄。」

 

 「行ってらっしゃい。今日もお互い頑張ろうな。」

 

 「おぅ!」

 

 カツミとイサミはタッチを交わした。

 

 

 その時、アサヒのスマホに着信が入る。 木下佐希恵からだ。

 

 どうやらあれから母親と和解することが出来、プレゼントも気に入ってもらえたみたいである。そして母親は無事退院出来たのだと言う。

 

 「佐希恵ちゃん、お母さんと仲直りしたんだな。」

 

 「これで本当の一件落着だね。」

 

 それを知ったカツミとイサミは安心する。

 

 「はい!ハッピーです! この事を慧さんにも知らせよっと♪」

 

 

 そして慧の世界にて。スマホのLINEによりアサヒからの報告を受けた慧も、安心の表情になる。

 

 「良かった…佐希恵ちゃんの家族も元に戻って。」

 

 因みに慧の使っているスマホは未来の技術により、別の世界の人とも連絡が取り合える非常に万能な機能が備わっているのだ。

 

 住んでる世界が違うアサヒとLINEのやり取りが出来るのもそのためである。

 

 慧はアサヒに返信した。“これでみんなハッピーになったね!”と。

 

 

 その時、小柄でポニーテールとシュシュ、小顔ながらぱっちりとした目が特徴の一人の可憐な女子が慧に話しかける。

 

 「何してるの?慧君。」

 

 「え? 友達とLINEしてたんだよ。」

 

 「へぇ~、とてもそうには見えなかったな~顔からして。」

 

 「なっ…何変な事言ってるんだよ。」

 

 「ふふふ、冗談よ冗談。さ、授業が始まるよ。」

 

 「そうだね。行こっか。」

 

 「はぁ〜、授業の後学食で何食べよっかな~?」

 

 「今日は唐揚げのおろしポン酢が食べたいかも。」

 

 「はぁぁ!それいいね〜!」

 

 慧はその女子と一緒に他愛もない会話をしながら授業が行われる教室に向かい始める。

 

 

 未来がいい方向に変わった事により、慧はまた大学生活が送れるようになったのである。

 

 慧が通っている大学の名前は、父・櫂の母校・麟慶大学だ。

 

 

 因みに慧と一緒にいる女子は、名前は『眞鍋美桜』(まなべみお)である。

 

 苗字で大体分かると思うが、皆がよく知る“あの人物”の娘である。

 

 小柄でニッコリしてて元気一杯な性格…確かに、とても母である“あの人物”によく似ている。

 

 

美桜と一緒に教室に入り、窓際の机に座った慧は、ふと笑顔で窓の外の青空を見上げる。

 

別の世界で頑張っているカツミ・イサミ・アサヒの姿を思い浮かべながら…。

 

 

僕、竜野慧は、数週間前に別の世界で出会った湊家を決して忘れる事は無いであろう。

 

彼らのおかげで、僕達家族の物語は再び始まったのだから。

 

湊家の物語、そして僕達竜野家の物語はこれからも終わる事は無いであろう。

 

みんなが、決して絆を諦めない限り!

 

 

竜野櫂の息子・竜野慧の物語はひとまずハッピーエンドとなった。

 

これからも彼は、父譲りの強さと、母譲りの優しさで、正しく生きて行けるであろう。

 

 

〈完〉




 読んでいただきありがとうございます!いかがでしたか?


 ウルトラマンR/Bはニュージェネシリーズの中でもコメディ色が強かったし、後半は先の読めない展開になったりなど、結構楽しめた作品でした。

 主題歌担当もオーイシマサヨシさん、三森すずこさんと豪華さが増した気がしましたね。

 また、愛染マコトや美剣サキ、ルーゴサイト等、様々な敵との戦いが展開された所も面白かったですね。

 そして“兄弟”の、そして“家族”の物語でもあったR/Bと絡めるため、今回は櫂の息子の慧を主役にしました。


 劇場版はジードの他にも、新悪のウルトラマンのトレギア、新ウルトラウーマンのグリージョ、そして新合体ウルトラマンのグルーブと、新しいウルトラ戦士がいっぱい登場するのでとても楽しみですね。


 因みに余談ですが、私の推しは湊カツミで、彼のジャケットを購入しました(笑)

 あと、ウルトラマンだとロッソ派、属性だとフレイムとウインド、ウシオさんのTシャツだと“うちゅ〜ん”Tシャツ、エピソードだと「さよならイカロス」が特に好きでしたね。

 今回も後書きが長くなって申し訳ありません。


 今年も時間を見つけては作品を制作して行こうと思いますので、宜しければ今年もよろしくお願いします。


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています!


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ウルトラマンコスモス&ウルトラマンジャスティス~High HOPE~
第34話「ヒカルとひかる」


 お久しぶりです。約5か月ちょっとぶりの投稿になります。

 2019年になってから一気に忙しくなり、気が付いたら平成が終わり、令和が始まっていました(笑)

 とまぁ、言い訳もここまでにして、長い間お待たせして申し訳ございません。

 そして、新元号開始おめでとうございます!(つまり今回は、令和最初の投稿でもあります。)


 というワケで、今回は前後編に渡って展開する、新たな強大な敵との激闘の前編です!

 今回は新キャラが一気に4人も登場し、更に、過去に本作に登場した“ある人物”や“あるウルトラ戦士”も再登場します!


 また、今回からOP・メインEDが変わります。

 そして、サブタイトルも一つ隠れています。


 それでは、どうぞ!


 (BGM:ULTRA BRAVE)

 

 

 これは、8月23日のある日、一つの何気無い出会いから始まった、強大な敵との戦記である。

 

 

 やぁ、みんな! 俺は礼堂ヒカル。 俺は今、パトロールの真っ最中だ。

 

 

 先日の八幡那須岳村での怪獣軍団の目覚め、赤と白のアイツらの襲撃と、最近敵の攻撃は勢いを増しつつある。

 

 だから俺達ウルトラマンも、この世界での警戒態勢を強化しつつあるんだ。

 

 

 早速、ギンガスパークで謎の異変をキャッチした俺は、霞ヶ崎から少し離れた街・潮風町を訪れ、徘徊している。

 

 

 潮風町のビル街を歩きながら、辺りを見渡すヒカル。

 

 しかし、見渡す感じその町は、道路を目まぐるしく走る大勢の車、忙しく歩き回るスーツ姿の人々、仲良く手を繋いで歩く親子などと、特に変わった所は無い、いつも見る平和な街の光景そのものであった。

 

 

 「異変を感じるのはこの辺だが、今の所特に何も無いな…寧ろ平和そのものだ。」

 

 確認としてギンガスパークを取り出しながら呟くヒカル。案の定、ギンガスパークのクリスタル部分は一定の音声と共に点灯していた。

 

 

 「ま、闇雲に探しても仕方ないか。 始めて来る街だし、少し徘徊してみるか。」

 

 一旦楽観的になったヒカルは、ギンガスパークをしまい、潮風町を徘徊し始める。

 

 

 

 その頃、宇宙空間にて。誰も知らない戦いが繰り広げられていた。

 

 

 対峙している二体の影の一人は『ウルトラマンジャスティス(スタンダードモード)』。

 

 

 そしてもう一体は、一見『宇宙恐竜ゼットン』のようだが、それよりもスタイリッシュで人間に近い姿をしており、剣の様な突起状の腕、背中に生えた翼、細長い尻尾も備えているのが特徴であり、鳴き声も従来のゼットンよりも野太い。

 

 ジャスティスが戦っているのは、これまでのゼットンの優れた部分だけを抽出して作り出された、ゼットンの強化体『宇宙恐竜ハイパーゼットン(イマーゴ)』である!

 

 

 ハイパーゼットンは、両腕の肘から先を立てた状態で、首を回した後構えを取り、ジャスティスもファイティングポーズを取る。

 

 

 「フッフッフ…我がハイパーゼットンに一人で勝てるかな? ウルトラマンジャスティス。」

 

 ハイパーゼットン内の空間でそう嘲笑うのは、歪な形で、白い筋の入った黒い頭部に、頭頂部の触角、一つ目が付いているのが特徴の宇宙人。

 

 かつて様々な個体が、侵略のためにゼットンを地球に送り込んで来た『変身怪人ゼットン星人』の同族『ゼットン星人ゼボス』である。

 

 

 「宇宙の正義のために、お前を倒す。」

 

 そう言いながらジャスティスは、ハイパーゼットンに向かって行く!

 

 

 「ならば、やってみろ!」

 

 ゼボスのその言葉と共に、ハイパーゼットンもジャスティスに向かって行く!

 

 

 果たして、突然にして“滅亡の邪神”の異名を持つ強敵・ハイパーゼットンを引き連れて来たゼボスの企みとは何か?

 

 そして、ジャスティスは何故再びコスモスペースからこの世界にやって来たのか…?

 

 

 

 場所を地球に戻そう。

 

 

 ある程度町を徘徊したヒカルは、晴れた青空を見上げながらビル街を歩く。

 

 「この街も、霞ヶ崎に負けずいい街だな。 空気も美味いし、色んな形のビルがあって、ショップも色んなジャンルが揃っている。」

 

 そして、ヒカルはある事を思い出す。

 

 「そう言えばこの街、ちょっと歩いた所に“潮風広場”という高原があるみたいだが…そこも行ってみよっかな。」

 

 

 そう呟いたその時、ヒカルは何かに気づく。

 

 

 「…ん?」

 

 視線の先にあるモノは、とある駐車場で停車している一台の車だった。

 

 その車のタイヤは白線から完全にはみ出ており、車体も他の車よりも前に突き出た状態で停車していた。

 

 

 …更に、車窓越しに中を見てみると、セミロングの黒髪に、透明感溢れる色白の肌、彫刻のように整った可憐な顔、そしてピンクのカーディガンを着ているお洒落姿の一人の女性が、何やら運転席に座ってハンドルを握った状態で俯いている。

 

 そしてその女性の顔をよく見てみると、涙を流している。彼女はすすり泣きをしているのだ。

 

 

 「どうしたのですか!?」

 

 いきなり、車を不安定に停めた状態で泣いている女性を目の当たりにしたヒカルは、驚きと共に思わず駆け寄る。

 

 

 …どうやら彼女は、何度やっても上手くバックで駐車できない事への不甲斐なさに泣いていたみたいであり、それを知ったヒカルは、代わりに上手く駐車してみせた。

 

 元の世界で特捜チーム『UPG』の隊員として活躍しているヒカルは、入隊する前からそのチームの車両『シュナウザー』を難なく運転してみせた程のスキルを持っているため、今回も難なく一般車両を駐車する事に成功したのである。

 

 

 女性は、少し笑顔を取り戻した状態で、涙を拭きながらヒカルにお礼を言う。

 

 「本当に、ありがとうございます。 本当に…申し訳ないです。」

 

 「ヘヘ、いいって事よ。 それにしても驚いたよ。車停めた状態で泣いてるから、猫でも轢いたのかなって。」

 

 「すいません。 私、車の免許取って間もないですから、まだバックが上手く出来なくて…。」

 

 「そっか…でもこんなの、練習すれば出来るもんだぜ? 何なら俺が教えよっか?」

 

 「え? いいんですか? まだ初対面なのに…。」

 

 「関係ないって。同じこの空の下で住んでる者同士に、初対面とか知り合いとか。」

 

 彼女はヒカルの提案を受け、バックの練習をする事にした。幸いにもこの駐車場は、車の停まる頻度が他の駐車場よりも少ないため、練習するには最適の場所であった。

 

 

 「俺は礼堂ヒカル。君は?」

 

 「“ひかる”? …ぷふっ。」

 

 ヒカルの自己紹介を聞いた彼女は、何故か軽く吹き出して笑う。

 

 

 「どうしたんだ?」

 

 「実は、私も“ひかる”なんです。 名前は八橋ひかる。」

 

 「おぉ!マジで!? スッゲー偶然!」

 

 

 彼女の名前は『八橋ひかる』(やつはし ひかる)。 そう、この出会いは、“二人のひかる”の出会いでもあった。

 

 実際、“ひかる”のように男女共通の名前は数多くあるため、このように名前が被るのも珍しくない事である。

 

 

 下の名前が同じなのがきっかけで、早速ヒカルとひかるの親睦が深まりつつあるようであった。

 

 

 きっと、ヒカルの出身の世界に住む石動美鈴という名の少女は、今頃突然来たムカつきにペンをへし折るか、苺を握り潰すかしているであろう(笑)

 

 

 ヒカルの付き添い&指導の下、ひかるはバック駐車の練習を始めた。

 

 

 

 その頃、宇宙では、ジャスティスとハイパーゼットンの激闘が繰り広げられていた。

 

 

 ジャスティスはハイパーゼットンの右ストレートを左膝で防ぎ、胸部に右拳を打ち込んで後退させ、続けて上段回し蹴りを放つが、上半身のみを瞬間移動させてかわしたハイパーゼットンは、逆にジャスティスを蹴り飛ばす。

 

 次にジャスティスは、ハイパーゼットンの右フックをかわしながら後ろに回り込んだ後、後ろ蹴りを放つが、ハイパーゼットンは『ハイパーゼットンテレポート』でその場から一瞬で姿を消す事でかわす。

 

 

 辺りを見渡すジャスティスはやがてハイパーゼットンを見つけ、腕を突き出して光の矢『ダージリングアロー』を連射する。

 

 ハイパーゼットンは迫り来る光の矢をテレポートでかわしながら飛んで向かって行き、やがて全てかわし切った後に飛び蹴りを放ち、ジャスティスはそれを即座にクロスさせた両腕で防ごうとするが、受け止めきれずにそのまま吹っ飛び、ある小惑星に落下する。

 

 

「どうした? ウルトラ戦士の力はその程度か?」

 

 ゼボスの言葉に臆する事なく、ジャスティスは即座に立ち上がり、浮遊するハイパーゼットンを見上げて再び飛び掛かる!

 

 

 

 場所を地球に戻そう。

 

 一生懸命練習をするひかる。彼女自身、不器用なのと、バック以外の駐車方も練習し、時に上手く行かず泣き出しそうになる事もあったため、約1時間はかかったが、ヒカルが懲りずに親切に教えて行った事もあり、なんとか出来るようになるまで上達した。

 

 「やったじゃん。」

 

 上手く駐車できるようになったひかるを褒めるヒカル。

 

 「ありがとうございます。 でも…1時間もかかっちゃいましたね。 …すいません。」

 

 「結果論だよ結果論。終わり良ければ総て良し! 君は駐車が出来るようになった。それだけでも凄ぇ事さ。」

 

 ヒカルの言葉に、ひかるは再び笑顔になる。

 

 

 (ヒカル…また一つ、立派になってるな。)

 

 ストリウムブレスから見守っていたタロウは、以前会った時よりも進歩しているヒカルの様子に感心する。

 

 

 「あの…ヒカルさん。 お礼に何か奢らせてください。」

 

 「え?」

 

 ひかるの思わぬ誘いに少し驚くヒカル。心なしか、少し頬が赤らめていた。

 

 「そうだな…もっと君といろんな話してみたいし、お言葉に甘えて。」

 

 「ありがとうございます。じゃあ、早速行きましょう。」

 

 

 ひかるからのお礼として、奢ってもらう事にしたヒカル。 …おっと、美鈴は今頃、二本目のペンをへし折っている所かな?(笑)

 

 

 

 ヒカルとひかるは、駐車場からすぐ近くにあるコーヒーのチェーン店『スターボックスコーヒー』(略:スタボ)で一息していた。

 

 二人はそこで、窓からの景色を眺めつつ、ストロベリーフラペチーノをすすっている(ヒカルの分はひかるの奢り)。

 

 「ちょうど冷たいモノが飲みたかったんだ。ありがとな。」

 

 「いえいえ。私の方こそ、本当にありがとうございます。」

 

 

 「にしても、この世界にはこんなにいい店があるんだな。」

 

 「…この世界?」

 

 「ぁ…じゃなくて、この街! 俺、この街に来るの初めてだからさ。」

 

 思わず口走ってしまったヒカルは、慌てて訂正する。 最も、潮風町に来た事が初めてであるのは確かなのだが。

 

 「私も初めてなんですよ。今は、大学の関係で霞ヶ崎に住んでいるもので。」

 

 

 実はひかるは、竜野櫂や新田真美、眞鍋海羽らと同じ、霞ヶ崎の麟慶大学の学生なのである。

 

 今年、真美と同じ医学部に入学したばかりの一年生であり、初めての上京により右も左も分からない彼女は、霞ヶ崎及びその周辺の街の事をもっと知りたいと思い、この夏休み、色んな場所に出掛けているのだという。

 

 

 「そっか。結構行動力あるんだな。」

 

 「い、いえいえ。私はただ、知らない場所を知りたいだけなので…。」

 

 「でも分かるぜ。知らない場所に行ってみたいというその気持ち。」

 

 「…ぇ?」

 

 「俺も今、いろんな場所を旅しているんだ。 潮風町、いい街だよな。空気は美味いし、景色もいいし、海も近いし。」

 

 ヒカルは、引き続き話す。

 

 「世界には、俺たちのまだ知らない場所が沢山ある。 いろんな場所を旅して来た俺も、まだ行ったが事ない場所はいっぱいある。 でもいつかそこに行って、その場所の人々にも会うつもりだ。」

 

 「そのような事が、出来るのですか?」

 

 「出来るさ。同じ地に立って住む、地球人だから。 遠い地球の反対側の人だって、この空の下で繋がっている。 みんな、同じ空の下で暮らす仲間なんだぜ。」

 

 

 ヒカルの話を聞いたひかるは、少し笑った後、ゆっくりと俯いて呟く。

 

 「ヒカルさんって、とても前向きなのですね。」

 

 「え?」

 

 「私は、とてもなれないな…。 すぐ卑屈になりがちだから…。」

 

 「何かあったのか?」

 

 「いや…何かあったワケじゃないんですけど…私、自分に自信が持てない事があるんですよね…。」

 

 ひかるは、引き続き話す。

 

 「自分は自分で出来る事があって、それに自信を持っていいんじゃないかと、頭では思うんですけど…。 他の分野とかで自分より出来る人を見ると、それだけで自信が無くなってしまう事があるんですよね…。 他にも、自分の好きなアーティストよりも売り上げのいいアーティストを見た時とか、自分が応援していたスポーツ選手が、試合で負けてしまった時とか…。 とにかく、自分に関係する事で何かあると、途端に自信が無くなってしまうんです。」

 

 

 ひかるの話を聞いたヒカル。彼女の意外な一面を知り、軽く何度も頷く。

 

 「そっか…結構苦労してるんだな。」

 

 「はい…。」

 

 「でも、音楽やスポーツ選手に関しては、大事なのは売り上げや、戦績とかじゃなくて、いかに人々の心を響かせるかだと俺は思うけどな。」

 

 「…心に、響く?」

 

 「あぁ。ひかるにとって、その好きなアーティストやスポーツ選手が一番なら、それでいいじゃないか。 大切なのは、同じそれらが好きな人達と一緒に応援する事。 売り上げや戦績で、それらの良さが廃れるワケじゃないんだから。」

 

 いかにも、ロックミュージシャンの両親を持つヒカルらしき持論である。

 

 

 「そう…なんですかね。」

 

 「ひかる自身もそうさ。その礼儀正しさ、好奇心だけでこの街に来れる行動力。 これらも自信持っていいと俺は思うけどな。」

 

 「ありがとうございます。 でも、本当に何の目的も無くふらっと来ただけですから…。 今こうやってスタボで一服しましたけど、この後何をしようか全く分からなくて…。」

 

 

 「よし分かった。とりあえず、ジム行くか?」

 

 「え? ジムですか?」

 

 ひかるはヒカルが出した思わぬ発言にやや困惑気味に返す。

 

 「あぁ、さっき街を徘徊した際、良さげなジムを見つけたんだ。ちょっとそこで体動かそうぜ。」

 

 ヒカルが出した提案とは、気持ちがモヤモヤするなら、一旦運動してスッキリしようぜという事だった。

 

 「…確かに…ここ最近あまり運動出来てないし…行ってみようかな。」

 

 ひかるは笑顔でそう答えると、残りのフラペチーノを飲み干して立ち上がる。

 

 

 「んじゃ、行くか。」

 

 「はい。 あ、その前にちょっと…。」

 

 ひかるはスマホを取り出し、SNSを開く。先程フラペチーノを飲む前に、それで所謂“映え”の写真を撮ったため、それを投稿しているのである。

 

 いかにも現代の女子らしい行動である。

 

 やがてひかるは投稿を終えると、ヒカルと共に店を後にし、ジムへ向かいだす。

 

 

 

宇宙空間での戦いは、激しさを増していた。そして飛び回りながら戦っていく内に、両者は地球の目の前までに来ていた。

 

 ジャスティスとハイパーゼットンは、宇宙空間を飛び回りながら激しいパンチやキックの応酬を展開するが、ハイパーゼットンは一瞬の隙を突いてジャスティスを殴り飛ばす。

 

 ジャスティスは体勢を立て直した後、ハイパーゼットンに向かって飛んでパンチを放つが、ハイパーゼットンはテレポートでそれをかわすと同時に後ろに回り込み、辺りを見渡している隙を突いてジャスティスを後ろからチョップで吹っ飛ばした後、テレポートで吹っ飛ぶジャスティスの前方に回り込んで両腕のパンチを打ち込み、更にテレポートで背後に回り込んで背中に跳び蹴りを叩き込んで再び小惑星の地面に叩き付ける。

 

 

 ハイパーゼットンは、胸部の発光器官に作り出した火の球から、一兆度を超えると言われる火球『暗黒火球』を地上のジャスティス目掛けて連射する!

 

 すぐさま立ち上がったジャスティスは、両手を突き出して光のエネルギー波動『ライトエフェクター』を連射し、迫り来る火球を相殺していく!

 

 

 火球と光弾の激しい打ち合いにより連続で発生する爆発が、両者の視界を遮って行く。

 

 そして、打ち合いが終わって晴れた爆発の中から、既にガッツポーズの体勢でエネルギーのチャージが完了したジャスティスが現れ、両腕を突き出して必殺光線『ビクトリューム光線』を放ち、その直撃を受けたハイパーゼットンは大爆発した!

 

 

 光線の体勢を解いたジャスティスは、「やったか?」とばかりに爆発したハイパーゼットンを見つめる。

 

 …ところが、爆発が晴れた時、そこにハイパーゼットンの残骸が無い事に気づき、僅かながら動揺を見せる。

 

 

 そしてハイパーゼットンは、いつの間にかジャスティスの背後に立っていた…!

 

 

 実はハイパーゼットンは、次の瞬間、ジャスティスが必殺光線を撃って来る事を想定に入れ、テレポートで回避すると同時に、その残像で作った分身をその場に残すという離れ技を決めたのである!

 

 つまり、先程ジャスティスのビクトリューム光線を受けて爆発したのは、残像で作った分身に過ぎなかったのだ!

 

 

 ようやく背後のハイパーゼットンに気付いたジャスティスだが、その直後に相手の蹴りを腹部に喰らい、地面を滑るようにして吹っ飛んだ後、その先の岩山に激突する!

 

 

 ジャスティスは、土砂や石を振り落としながら立ち上がるが、ダメージにより、既に息切れを起こしている。

 

 「フッフッフ…どうした? これでも我がゼットンの力は、まだ不完全なのだよ?」

 

 「何だと?」

 

 ゼボスの思わぬ発言に、ジャスティスは驚きの仕草を見せる。

 

 

 「あと少しで完全となる。そろそろあの地球では、それの最終段階が始まるはずだ。」

 

 

 ゼボスが気になる事を言ったその時、ハイパーゼットンは何処からか飛んで来る光線に気付き、即座にバリヤーを張って防ぐ。

 

 光線を防いだハイパーゼットンはバリヤーを消滅させたが、その直後にその方向から超高速で飛んで来た者の飛び蹴りを喰らって吹っ飛ぶ!

 

 ハイパーゼットンは地に足を付けたまま吹っ飛びながら踏ん張り、やがて止まった後に前を振り向く。

 

 

 「誰だ!」

 

 ゼボス、そしてハイパーゼットンの視線の先には、ジャスティスの隣にもう一人、銀と紫の巨人が立っているのが見える。

 

 

 現れたのは『ウルトラマンコスモス(スペースコロナモード)』だ!

 

 コスモスは今回も地球周辺の宇宙を探索していて、やがてジャスティスの反応を感じて駆け付けたのであろう。

 

 先程ハイパーゼットンが防いだ光線は、コスモスの撃った『オーバーループ光線』であり、喰らった蹴りは『テンダーキック』である。

 

 

 「コスモス…!」

 

 突然の思わぬ再会に少し驚きを見せるジャスティス。

 

 「ジャスティス、共に戦おう。」

 

 ジャスティスはコスモスの言葉を受けて頷いた後立ち上がり、共に構えを取る。

 

 

 「面白い。だが、我がゼットンに勝てるかな?」

 

 ゼボスのその言葉と共にハイパーゼットンは飛びかかり始め、コスモスとジャスティスもそれに向かって行く…!

 

 

 果たしてコスモスとジャスティスは、ハイパーゼットンの侵攻を食い止められるのか…!?

 

 

 

 場所を地球に戻して。

 

 

 しばらく歩いて、『潮風スポーツジム』というスポーツジムに到着したヒカルとひかるは、受付を済ませた後、二階のトレーニングルームに入る。

 

 このスポーツジムは大きめの建物であり、中には大きめのトレーニングルームの他に、子供専用エリア、更にはバッティングセンターやボウリング場などもある、非常に充実した施設なのである。

 

 ヒカル達が入ったメインのトレーニングルームは、室内はとても広く、マシンも10種類以上あり、他にもたくさんの人々が利用している。

 

 

 「わぁ…すごい人ですね。」 「あぁ、みんな精が出てるな。」

 

 二人は一生懸命トレーニングしている人々を見て感心する。

 

 

 …その時、ヒカルはある事に気づいた。

 

 

 それは、ひかるは、他の女性に比べて、一際大きいという事である。

 

 実は彼女は、178㎝とかなりの長身であり、ある程度運動も出来るという事から、麟大ではバレーボール部に所属している。

 

 その長身に加え、黒髪に隠れるんじゃないかという程の小顔、細長い手足、モデルのようにスラリとした体格と、スタイルも抜群である事から、一年生ながら早速、大学内の女子では真美や海羽に迫るんじゃないかという勢いで注目を集めている。

 

 実際、ヒカルも180㎝以上とかなりの長身の筈なのだが、ひかるの場合、彼よりも数センチ程度低いようにしか見えないというのだから驚きである。

 

 

 (しかし…こんなにでっけえ女子、初めて出会ったかも?)

 

 「…ん? どうしたのですか? 私の顔に、何か付いていますか?」

 

 「い、いや…とにかく、何か始めようぜ。」

 

 

 既に、運動用の服に着替えている二人は、早速何かトレーニングをしようとしたその時、あるモノを見つける。

 

 

 それは、ある一人の女性が、束ねた髪を靡かせながら一定のペースでルームランナーで走っている姿である。

 

 綺麗なフォームで走る彼女の姿格好は、ランニングウェアにショートパンツと非常にラフな格好であり、それにより、スレンダーな体や長い手足がよく映えている。

 

 

 「あの人、なかなかよく走るな。」

 

 「えぇ…。」(あの後ろ姿…もしかして…?)

 

 ヒカルが感心する一方、ひかるは走っている彼女に見覚えがあるようであった。

 

 

 やがて走り終えた彼女は、呼吸をしながらルームランナーから降り、タオルで程よくかいた汗を拭き取り始める。

 

 すると、そんな彼女の元に、一人のピンクのスポーツウェアを着込んだ小柄な女性が歩み寄り、スポーツドリンクを手渡す。

 

 

 「真美ちゃん、お疲れ。」

 

 「ありがとう。」

 

 

 そう、ルームランナーで走っていた彼女は真美であり、スポーツドリンクを渡しに来た彼女は海羽だったのである!

 

 

 「あれ、海羽?」 「新田先輩。」

 

 それぞれヒカルとひかるに声を掛けられた海羽と真美は、それに気づいて振り向く。

 

 

 「あれ?ヒカルさんじゃない!」 「ここで会えるなんて、奇遇ですね。」

 

 海羽は思わぬ遭遇に嬉しさと同時に驚き、スポーツドリンクを飲んでいた真美は一旦口を離して驚く。

 

 

 「ホントスッゲー偶然。 何故このジムに?」

 

 「なんとなく、海羽ちゃんと潮風町に出掛けたいなと思って、ちょっと立ち寄り感覚で来たのです。」

 

 ヒカルの問いかけに、真美は笑顔で答える。

 

 

 実は真美は、休日にたまにジムでトレーニングをするのも密かな趣味であり、普段は霞ヶ崎のジムを利用しているのだが、今は夏休みという事もあって、まだ行った事の無い街・潮風町のジムを利用するついでに、その街でお出掛けしようと考えたのである。

 

 毎日ランニングもしているというのだから、大食いながらこれだけ抜群なスタイルを保てるのも納得である。

 

 

 海羽も、マネージャー的役割として自らそれに付き添いつつ、自身もそれなりにトレーニングとかをしたりしている。

 

 「やっぱり真美ちゃん凄いな~…私も見習おっかな。 私、休日はショッピングとかお菓子作りとかばかりしているから。」

 

 無邪気にそう話す海羽。海羽のプライベートは正に“女の子”って感じで実に可愛らしいモノである。

 

 

 「海羽ちゃんが一緒に来てくれて、とても助かってるよ。いつもありがとう。」

 

 真美は、タオルで汗を拭きながら海羽に感謝の意を表し、それを受けた海羽は嬉しそうな表情になる。

 

 

 「俺も、なんとなくこの街に来てみたんだ。良い街だよな~、潮風町。」

 

 「そうだね。」 「いい街ですよね。」

 

 ヒカルの言葉に、海羽と真美は笑顔で共感する。

 

 

 やがて真美はひかるにも気づき、愛想良く話しかける。

 

 「ひかるちゃんも来てたのね。」 「ぇ…あぁ…。」

 

 何やら、後ろめたさも感じる素っ気ない返事をするひかる。

 

 

 「それにしても、“ひかる”が二人か~…似た者同士かもね?」

 

 海羽は二人の“ひかる”を見ながら冗談交じりに話す。

 

 

 「そうかもな。彼女、なかなか行動力あるし。」

 

 「えへへ…そう…かもですね…。」(そんな…私と一緒だなんて、寧ろ申し訳ないよ…。)

 

 ひかるは笑顔を見せながらも、やはり心の中では後ろめたさがあり、少し俯く。

 

 

 「どうかした?」

 

 ひかるの表情に気付いた真美は、覗き込むように優しく話しかける。

 

 「ぃ…いえ、何でもないです。」

 

 ひかるは笑顔を作って返した。 しかし、何があって、彼女はここまで卑屈になってしまっているのであろうか…?

 

 

 「ほら、ひかるちゃんも一緒にやろうよ!」

 

 海羽は元気よくそう言いながら、促すようにひかるの服の袖を引く。

 

 「そうですね。やりましょう、眞鍋先輩。」

 

 海羽とひかるはエアロバイクの方へ向かって行き、ヒカルと真美は笑顔でそれを見届ける。

 

 

 ひかるは、海羽と共にエアロバイクに向かいながら何やらあどけない笑顔の海羽をじっと見つめる。

 

 (…眞鍋先輩…ヤバい、超可愛い…! すりすりしたい~!)

 

 …実はひかるは、“可愛いモノが大好き”という一面もあるのである。

 

 小っちゃい体で、いつも元気一杯の海羽は、正に彼女にとって格好の癒し対象なのであろう。

 

 「どうかしたの~?」 「いっ…いや、なんでもないです。」

 

 あどけない顔で問いかける海羽に、ひかるは頬を赤らめながら答える。

 

 

 …因みに皆さんご存知のように、海羽は小柄であるため、長身のひかると並ぶといよいよ“大人と子供”のように見えてしまい、更に真美も、ひかると並ぶと小さく見えてしまうのだから不思議である。

 

 

 「じゃ、俺達も始めるか。」 「えぇ、そうね。」

 

 ヒカルはクロストレーナー、真美はアブドミナルの方へ向かい、それぞれトレーニングを始める。

 

 

 約1時間後、レッグプレスでのトレーニングを終えたひかるは、カウンター席付きの窓際で休憩を始める。

 

 そして、その隣には喘いでいる海羽もやって来る。

 

 「ハァ…ハァ…やっぱ凄いね、ひかるちゃん。 私なんてもうあちこち筋肉痛~。」

 

 「ありがとうございます。でも、そうでもないですよ。私も、そろそろ疲れて来た感じで…。」

 

 スポーツドリンクを飲みながら会話をする海羽とひかる。

 

 

 「本当に凄いよ、ひかるちゃん。スラっとしてて、運動も出来るし、実際、医学部での成績良いみたいだし、バレー部でも活躍してるらしいじゃん!」

 

 「いえ、それ程でもないですよ…成績に関してはあくまで医学部1年生内ですし…。」

 

 「それでも十分凄いよ! 私なんて商学部内で平均的だし…はぁ、その体格や才能、分けて欲しいな~。」

 

 「(小声で)そんな…。」

 

 海羽は素直にいい所を言っているのだが、ひかる本人は褒めちぎり過ぎじゃないかという思いがあった。

 

 

 「私、入学した時から、竜野櫂先輩? その人が凄いなと思っているんです。」

 

 「ほえ?」

 

 ひかるの突然の思わぬ発言に、少し驚く海羽。ひかるは話を続ける。

 

 「竜野先輩は、スタイル良いし、イケメンだし、運動も勉強も学園内でトップクラス…おまけに周囲を惹きつける人間性とカリスマ性がある…ホントに素晴らしい人ですよね。」

 

 

 ひかる…アンタ、彼の本性を知らない今だからこそ、そんな事が言えるのだぞ!?(汗)

 

 

 「櫂君は格が違うよ~。私、今じゃ友達であると同時に、尊敬もしちゃってるんだから。もちろん真美ちゃんも!」

 

 どうやら海羽にとって櫂と真美は、友達であると同時に、尊敬に値する存在でもあるようだ。

 

 「竜野先輩はカッコいいし万能だし、新田先輩は優しいし何でも出来るし…それに眞鍋先輩も、明るくて、誰にでも元気を与えてくれる。 それに比べて私は、はぁ…。」

 

 

 その時、休憩に入った真美が歩み寄る。

 

 「ひかるちゃんも魅力的だと思うよ。」

 

 「…え? 私が?」

 

 「うん。スラっとしてて健康的だし、勉強も運動も出来るし…それに、何よりその素直さと礼儀正しさ。」

 

 「そんな…私は、人として当然の事をしているだけですよ。それに、勉強とか運動とか、先輩たちに比べたらまだまだ…。」

 

 またしても後ろ向きな発言をするひかるに、海羽は語り掛ける。

 

 「その“人として当然の事”が出来ている時点で、十分凄い事なんだよ。」

 

 「出来ている時点で…?」

 

 続けて真美が語る。

 

 「うん。残念な事に、それすら出来ない人も、世の中結構いたりするの。 でも、ひかるちゃんはそれが出来ている。それだけでも、十分誇っていい事なんだよ。」

 

 ひかるの肩に手を置きながら、真美は話を続ける。

 

 「私、こないだ偶々バレー部の部長さんと話す機会があったんだけどね、その時、言ってたの。 「将来、キャプテンを任せられるかもしれない人がいる」ってね。 あれ、ひかるちゃんの事じゃないのかな?」

 

 「そんな…私なんて、まだまだですよ。部の中で飛び抜けて上手いワケじゃないし、私より出来る人、他にもいると思うし…。」

 

 その時、今度はヒカルが歩み寄る。

 

 「何言ってんだ。君は出来る人だよ。 だからさっき、車の駐車も出来たんじゃないか。」

 

 「はっ…。」

 

 ヒカルの言葉でひかるは思い出す。 先程、ヒカルの教えにより、今まで出来なかった車のバック駐車が出来るようになった事を。

 

 「一度じっくり自分を見てみようよ。 絶対、自信持てる事がまだ見つかるはずだよ。」

 

 「…そう…ですかね…?」(新田先輩…良い匂いだなぁ…。)

 

 

 その時、ある一人の女性が話しかけて来る。

 

 「あれ、ひかるちゃん?」

 

 話しかけられたひかるを始め、一同は振り向く。そこには、笑顔が似合う可憐な顔に、丸みのあるショートヘアが特徴で、水色の半袖のスポーツウェアを着こなしている、全体的にさっぱりした印象の女性が立っている。

 

 

 「…愛紗…ちゃん?」

 

 「やっぱり! ひかるちゃんもここに来てたんだ!」

 

 「奇遇だね。」

 

 

 彼女の名は『渕上愛紗』(ふちがみ あいさ)。彼女も今年、麟大(文学部)に入学したばかりの一年生であり、ひかるとは、大学で知り合って友達になった仲である。

 

 彼女はテニス部に所属しており、その高い腕から、部長からは将来キャプテンを任せられるかもしれないと見込まれている。

 

 更に言うと彼女は友達思いで、常に笑顔を振りまく元気少女でもあるため、ある意味“ポスト眞鍋海羽”的な存在であろう。(海羽と違って小柄ではないが(笑))

 

 

 「愛紗ちゃんも、このジムに来てたなんてね。」

 

 「なんとなく、出掛けたついでに一汗かきたいなーと思ってね。 それにしてもその運動着、とても似合ってる~。アスリートみたい!」

 

 「愛紗ちゃんも、とても爽やかでいい感じだね。」

 

 「嬉しい!ありがとう。このスポーツウェア、最近買ったばかりなんだ~。」

 

 出会って早速、楽しそうに話し合うひかると愛紗を、ヒカルと真美、海羽は笑顔で見つめる。

 

 

 やがて愛紗は、真美と海羽にも気付く。

 

 「新田先輩に眞鍋海羽も来てたのですね。 そして…この方は?」

 

 「俺は礼堂ヒカル。 真美達とは、最近知り合いになってな。」

 

 「ヤバい!?超イケメンかも~! …おっと失礼。よろしくお願いします。」

 

 「おぅ!」

 

 愛紗はヒカルと握手をする。

 

 「あんた、元気がいいな。」

 

 「えへへ、眞鍋先輩の明るさには、敵いませんけどね!」

 

 「えぇ?そうでもないよ~。 愛紗ちゃんの明るさも、周りに元気をくれるよ。」

 

 「ありがとうございます! まさか眞鍋先輩に褒めてもらえるなんて。」

 

 

 仲良く話し合う海羽とひかる、愛紗を見つめるヒカルと真美。

 

 「先輩後輩関係なく、仲良いんだな。麟大って。」

 

 「うん。合言葉でもあるように、先輩とか後輩とか、男子とか女子とか関係なく。仲が良くて、助け合うことが出来る。」

 

 真美は笑顔で、麟大の良さを語る。(最も、その良さから外れ、闇に落ちてしまった人(桜井敏樹)もいるのだが…。)

 

 

 「それにしてもいいな~、愛紗ちゃんって。 1年生にしてもうテニス部のエースなんでしょ?」

 

 「そんな事ないよ。ひかるちゃんも、バレー部で活躍しているみたいじゃない。」

 

 「私はそんな…。私より出来る人も結構いる気がするし…私自身、全力でやっている筈なのに、部長からは「まだ己の力を引き出せてない」とか言われたし…私、全然だわ。」

 

 「そうかな~。 何回か練習見て思ったけど…私、ひかるちゃんなら、将来バレー部のキャプテン務められると思うけどな~。」

 

 「…え?」

 

 愛紗から思わぬことを言われ、ひかるは少し困惑する。 因みに愛紗は、テニス部が休みの日は、バレー部の練習を見学に訪れる事も多々あるのだ。

 

 「多分後は、ちょっとしたキッカケ…じゃないのかな?」

 

 「ちょっとした…キッカケ?」

 

 「うん! それさえあれば、きっともっと自分の凄さに気づけると思うよ!」

 

 愛紗からの励ましの言葉に、ひかるは再び考え込む。

 

 

 そこに、ヒカルと真美達も歩み寄る。

 

 「ひかるちゃんなら出来るよ。だってまだ1年生だもん。可能性のかたまりだよ!」

 

 「困った時は、私達も力になるわ。」

 

 「だから頑張ろうぜ。自分の力を信じてみろよ。」

 

 

 「愛紗ちゃん…皆さん…。」

 

 ヒカルや大学の同期、先輩達からの励ましの言葉を受けたひかるは、嬉しくなると同時に嬉し涙が出そうになる。

 

 

 海羽はひかるに元気よく歩み寄り、背中に手を当てる。

 

 「ねぇ、後でチーズドッグ食べに行かない? さっき駅前で美味しそうな店見つけたの!」

 

 「チーズドッグ!? 食べたい! 行こうよひかるちゃん!」

 

 海羽の誘い、更に愛紗に背中を押されたひかるは、笑顔で答える。

 

 「…はい。 先輩達と食べに行くの、初めてかも。」

 

 

 海羽達のやり取りを見て、ヒカルは呟いた。

 

 「いいな、これぞ青春!って感じで。」(美鈴達と過ごしたあの時を思い出すぜ。)

 

 

 「ヒカルさんも、一緒にどうですか?」

 

 「え? …じゃあ、俺も女子会にお邪魔しよっかな。」

 

 真美からの誘いに、ヒカルは少し照れ臭そうながらも了解した。

 

 「寧ろイケメンなら大歓迎だよー!」

 

 「やめろよ!恥ずかしいなー。」

 

 愛紗の発言にヒカルは顔を赤らめ、それにより一同は笑い合う。

 

 

 偶然の出会いを繰り返した事により集まり、より親睦が深まったヒカルと麟大の同期コンビ2組。

 

 

 

 しかし、そんな彼らの絆を引き裂くように、怪獣が現れる!

 

 

 

 突然、大きな地震が襲い掛かる!

 

 ヒカル達は勿論、ジムの人々もパニックになり、大きな揺れにより倒れるマシンも出始め、バーベルやスポーツドリンクのペットボトル等も床に落ちて転がって行き、蛍光灯も点滅する!

 

 「ひゃっ!? 何?これ。」 「何が起こってるの?」 「きゃ~っ!」 「ひかるちゃん大丈夫!?」

 

 海羽、真美、ひかる、愛紗が口々に言う中、ヒカルは窓越しに何かに気づく。

 

 「あれは!」

 

 

 ヒカルと同じ方向を真美達も見つめる。そこには、少し離れた場所で、地面が激しく土砂等を巻き上げ、道路や車等を巻き込みながら割れて行く!

 

 そしてそこから、一体の巨大生物が現れる!

 

 

 現れたのは、恐竜型の外見に、黒い棘で覆われた体、頭部の長い一本角が特徴の怪獣『吸血怪獣ギマイラ』だ!

 

 

 かつて、『ウルトラマン』が追っていた怪獣『宇宙怪獣ベムラー』は、“宇宙の平和を乱す悪魔のような怪獣”と言われていた。

 

 ギマイラは正に、その言葉が似合うのではないかという程凶悪な怪獣であり、かつて地球に飛来した際に『潮風島』を支配し、そこで島民の生き血を吸って力を蓄えた事がある。

 

 その時は、不完全な状態で目覚めたのだが、それにも関わらず当時戦った『ウルトラマン80』を終始圧倒しており、そのパワーに加え、高い知能や数々の恐ろしい能力も持っているため、正に凶悪な怪獣である。

 

 

 現れたギマイラは、自身の体に付いた土砂を振るい落とした後、上を向いて大きく咆哮を上げ、その衝撃により、ジムの窓ガラスが一斉に割れて破片が飛び散る!

 

 「きゃーっ!!」

 

 ひかるは恐怖により、悲鳴を上げながら耳を塞ぎ、その場に崩れ落ちるように蹲る。

 

 

 ギマイラは尚も咆哮を上げ続け、それが潮風町全域に響き渡るようであった。

 

 威圧感のある外見、凶悪な面構え、そして、遠くの建物にも影響を及ぼす程の衝撃を与える咆哮…正にこれらだけでも、凶悪な怪獣である様子をひしひしと感じる。

 

 

 激しく地響きを立てながら進撃を始めたギマイラ。それを見たジムの人々もパニックになり、ダンベルを落としたり、マシンから慌てて降りたりした後、足早に外に出て逃げようと出口のドアに我先にと押し寄せる!

 

 「ひとまず、俺達も出るぞ!」

 

 ヒカルの言葉を受け、真美達も人混みの中を駆け始める。

 

 

 …だが、その途中のキッズコーナーの前にて、恐怖で覚束ない足取りで走っていたひかるは、後ろから勢いよく走って来た人にぶつかって転倒してしまう!

 

 「きゃっ!!」 「はっ、ひかるちゃん!」

 

 それに気づいた真美は急いでひかるの元に歩み寄り、肩を貸して立ち上がらせようとする。

 

 「大丈夫?」 「ぁ、はい…すいません。」

 

 

 「真美ちゃん!!」 「ひかるちゃーん!!」

 

 海羽と愛紗は振り向いて二人に呼びかけるが、波の様な人混みに押され、徐々に離れて行く…!

 

 「俺が行く!二人は先に逃げろ!」

 

 ヒカルは必死に人混みをかき分けながら真美たちの元へ向かい始める。

 

 

 だがその時、暴れるギマイラは、角から稲妻状の破壊光線を発射し、それがスポーツジムにも命中して爆発する!

 

 「ぐっっ!!」

 

 爆発した建物は、爆風と共に砕けたセメント等を飛び散らしながら真っ二つに割れ、それによりヒカルと真美達は引き離されてしまう!

 

 ヒカルの向こう側には、真美とひかる、そしてキッズコーナーにいた子供たちが取り残されており、周りには逃げ道が一つも無い!

 

 「真美! ひかる!」

 

 ヒカルは呼びかけるが、真美は怯える子供達をあやしながらヒカルに声を掛ける。

 

 「ヒカルさん、私達は大丈夫ですから、早くあの怪獣を!」

 

 

 「…分かった。必ず、助けに行くからな!」

 

 ヒカルは少し躊躇った後、真美に約束し、出口へと急行する。

 

 

 一方、ジムの外に出た海羽達は急いで逃げようとするのだが、咆哮を上げながら、破壊光線を乱射したり、怪力でビルを崩したり等して暴れて行くギマイラ。

 

 それにより発生する瓦礫やガラスの破片などが彼女達の周囲に降り注ぎ、徐々に逃げ場が無くなりそうになっていた!

 

 「私達、もうダメなの~!?」 「しっかりして愛紗ちゃん! さ、早く!」

 

 諦めかけている愛紗に懸命に呼びかける海羽。ギマイラはそんな必死な人々を嘲笑うかのように進撃を続ける。

 

 

 

 「絶対に許さねぇ!」

 

 遂に、ジムの外に出たヒカルは、ギマイラを睨み付けるように見つめて呟いた後、ギンガスパークを取り出して構える。

 

 

 《ウルトライブ! ウルトラマンギンガ!》

 

 

 「ギンガー!!」

 

 

 現れたギンガのスパークドールズをリードしたヒカルは、ギンガスパークを揚げて叫び、銀河状の光に包まれる。

 

 

 暴れるギマイラは、遂に海羽達に光線を浴びせようとエネルギーを溜め始める!

 

 「こうなったら行くしか…!」

 

 もうダメだと諦める人々。それを見た海羽が、バレ覚悟で変身しようと決めたその時、青い光球が飛んで来てギマイラに体当たりをする!

 

 ギマイラはその場に転倒し、顔を背けていた人々は徐々に顔を上げて行く。

 

 

 青い光球は着地すると徐々に人型になり、やがてその中から徐々に立ち上がりながら光の巨人が現れる。

 

 

 『ウルトラマンギンガ』の登場だ!

 

 

 「あれが…この世界に来た、ウルトラマン?」 「うん!ギンガって言うんだよ。 (小声で)ヒカルさん…頑張って。」

 

「カッコいいかも〜!」

 

 愛紗は初めて見るギンガの姿に見惚れて、海羽は安心の表情になる。

 

 

 ギンガは構えを取り、ギマイラと対峙する。

 

 「行くぞ!」

 

 ヒカルの掛け声と共にギンガが向かおうとしたその時、ギマイラは何やら上を向いて、普段の鳴き声を違った咆哮を上げる!

 

 その不気味な咆哮は、潮風町全域に響き渡っているようであった。

 

 

 「…何なんだ?」

 

 ヒカル及びギンガが困惑していたその時!

 

 

 「ぐあっ!?」

 

 

 突然何かに首を挟まれ、驚きと共に苦しみだすギンガ!

 

 横を見ると、そこには別の怪獣が現れていた!

 

 ギンガの首を絞めているのは、その怪獣の特徴でもある左腕の巨大な鋏である。現れたのは『ラブラス』という怪獣だった!

 

 

 「もう一体怪獣が!?」

 

 ヒカルの困惑を他所に、ラブラスは左腕の鋏で首を挟んだまま、ギンガを放り投げる!

 

 

 「このヤロー!」

 

 海の近くに落下したギンガはすぐさま立ち上がり、再び向かおうとするが、今度は海から現れた黒い触手に足を絡まれてしまう!

 

 触手はそのままギンガを引いて転倒させた後、その本体も、激しく水しぶきを上げながら海から現れる!

 

 次に現れたのは、黒い蛸のような外見に、無数の触手が特徴の怪獣『タコ怪獣ダロン』だ!

 

 

 「どういう事だ!? 一気に二体も現れるなんて…!」

 

 ヒカルは更に困惑する。ギンガは三方向から怪獣に囲まれた。

 

 ラブラスもダロンも、ギマイラが妙な咆哮を上げた直後に現れたのだから、恐らくギマイラの配下の怪獣達なのだろう。

 

 

 新たな二体の怪獣の出現により、人々は更なる恐怖に駆られる。

 

 「三対一になっちゃったよ…大丈夫かな…。」

 

 「大丈夫!ギンガは超強いんだから。」(それに、三対一じゃない…ヒカルさんとギンガで、三対二だよ!)

 

 不安になる愛紗に、ヒカル及びギンガの事をよく知っている海羽は前向きな言葉を掛ける。

 

 

 緊張感を煽る沈黙の中、対峙する三体の怪獣と一人の巨人。やがてギマイラは、自分は高みの見物をするかのように少し離れた場所に移動すると、再び奇妙な咆哮を上げる。

 

 そして、ラブラスとダロンはその咆哮に操られるかのように一斉にギンガに向かって行く!

 

 

 間違いない。この二体はギマイラの支配下にある怪獣なのだ。

 

 

 ギンガはまずは向かって来たラブラスの両腕を掴み、そのまま一回転して遠心力を加えて地面に投げつける。

 

 次に振り向き様にダロンに組み付き、膝蹴りを二発腹部に打ち込み、続けて左拳のパンチを撃とうと左腕を振り上げるが、ダロンは触手の一本をそれに巻き付けて封じる。

 

 左腕を掴まれた状態でギンガは、ダロンの鞭の様な触手攻撃をかわしつつ右拳でのパンチを撃ち込んで行き、そのまま後ろから迫って来たラブラスの腹部に振り向き様に左脚蹴りを叩き込んで後退させる。

 

 だが、ギンガは一瞬の隙を突かれてダロンの触手攻撃を背中に喰らい、怯んだ隙にラブラスの左腕の鋏でのパンチを胸部に受けて吹っ飛び、地面に転倒する。

 

 

 流石のギンガも、ギマイラに操られる二体の怪獣の連携に苦戦を強いられていた…!

 

 

 

 一方、先ほどギマイラに壊れたスポーツジムの建物内に取り残された真美とひかる、そして子供達5名(男の子2人、女の子3人)。真美は脱出しようと瓦礫等を動かそうとするが、彼女の力だけでは少し動かすのがやっとであった。

 

 「駄目だわ…ビクともしない…。」

 

 

 子供達は恐怖で泣き出しており、ひかるは彼らを宥めようと呼びかけている。

 

 「みんな、大丈夫だよ。 泣かないで。 どこか痛い?」

 

 一向に返事をせず泣き続ける子供達。すると、女の子の一人がひかるに抱き付く。

 

 ひかるは少し驚きながらも、その子の頭を撫でながら言い聞かせる。

 

 「そうだよね…怖いよね…分かるよ…。」

 

 実際、自分自身も恐怖を感じているひかるは、彼女達に同調して、そう言い聞かせるしか出来なかった。

 

 何も出来ない自分に不甲斐なさを感じたひかるは、再び自信を失いそうになった。

 

 

 その時、真美は瓦礫を動かすのを一旦止め、子供たちの元に歩み寄ってしゃがみ、男の子の一人の頭にそっと手を当てて優しく話しかける。

 

 「ねぇ、ボク達は、今何が食べたい?」

 

 「新田…先輩?」

 

 真美の思わぬ質問に困惑するひかる。

 

 

 その時、真美の声を聞いた子供達は、少し落ち着いて顔を上げる。

 

 それにより、優しい表情で見つめる真美の顔を見た事により安心感を覚えたのか、口々に答え始める。

 

 「…ハンバーガー」 「フライドチキン」 「アイスクリーム」 「プリン」 「クレープ」

 

 

 子供達の返答を聞いた真美は満面の笑顔になる。

 

 「そっか。 因みにお姉ちゃんは…ラーメンでしょ、お寿司でしょ、オムライス、かつ丼、ステーキ、焼き肉、ケーキ…食べたいものがいーっぱい。」

 

 「…ははは、あり過ぎだよ。」 「欲張りだねお姉ちゃん。」

 

 「えへへ…。」

 

 子供の一人がそう言ったのを皮切りに、周囲は笑いが溢れ始める。

 

 

 「新田先輩…やっぱり凄いな。」

 

 真美の、人を安心させる凄さを目の当たりにしたひかるも、徐々に元気が戻り始める。

 

 

 「私は…ドーナツが食べたいです。」

 

 真美は、そう言ったひかるの方を向いて微笑みかける。

 

 

 「ひかるちゃん、ドーナツ好きだもんね。」

 

 

 「はっ…!」

 

 

 真美の言葉を聞いたひかるは、心に何かの衝撃を受け、自然と嬉しさが込み上がって来る。

 

 

 (新田先輩…覚えててくれたんだ…!)

 

 

 実はひかるは、入学式の新入生の自己紹介の時にドーナツ好きである事も公言しており、その事を真美はあまり絡みが無いにも関わらず覚えていたのである。

 

 

 それを知ったひかるは、失いかけていた“自信”を、徐々に取り戻し始めていた…。

 

 

 真美は全員に語り掛ける。

 

 「今頑張って、助かったら、食べたいもの、美味しいものも食べれるようになるんだよ。」

 

 その言葉を聞いた子供達は、表情に明かりが戻り始める。

 

 「お姉ちゃん達も力になるわ。だから頑張ろ。ね。」

 

 「「「「「うん!」」」」」

 

 満面の笑みで語り掛ける真美に、元気を取り戻した子供達は返事を返す。

 

 

 『自信持っていいと俺は思うけどな。』

 

 『“人として当然の事”が出来ている時点で、十分凄い事なんだよ!』

 

 『きっともっと自分の凄さに気づけると思うよ!』

 

 真美の言葉を聞き、そして、先程のヒカルと海羽、愛紗の言葉を思い出した事により、元気を取り戻した子供達を見たひかるも、決心を始めていた。

 

 (希望を取り戻した子供達…私達が支えてあげなきゃね。)

 

 

 同じく望みを取り戻したひかるは、真美が自分を覚えてくれていた事を知った事で自信を取り戻し、諦めずにここから抜け出し、子供達も助けたい…そういう思いが強くなっていく…。

 

 

 「まずはこの瓦礫をどかさないとね…ボク達、手を貸してくれる?」

 

 真美が子供達にそう語り掛けたその時、

 

 

 「私に任せてください。」

 

 

 「…ひかるちゃん?」

 

 自信ありげに申し出るひかる。真美は子供達と共に彼女の方を振り向く。

 

 

 真美達が困惑と共に見つめる中、ひかるは腕捲りをすると、目の前にある、自身の背丈よりも大きく、分厚く、下手するとtありそうな、コンクリート製の一つの瓦礫の欠片を両手でしっかりと掴む。

 

 

 「ふんにゅっ!!」

 

 

 そして、何処か可愛らしい掛け声と共に力を入れ、なんとその大きな瓦礫の欠片を持ち上げたのである!

 

 

 「…ひかる…ちゃん?」

 

 「あんな大きい物を軽々と!」

 

 「スゲェ!!」 「怪力だ!怪力姉ちゃんだ!」

 

 それを目の当たりにした真美は驚きで目を見開き、子供達は驚きと同時に興奮し出す。

 

 

 ひかるは持ち上げてどかした瓦礫を置いた後、どこか照れ臭そうに微笑みかける。

 

 「えへへ…。」

 

 

 「ど…どうしたの?その力…。」

 

 「新田先輩…今まで黙ってたのですが…私、力が強いんです。」

 

 右腕を曲げてポーズを取りながらにこやかにそう言うひかるは、引き続きワケを話す。

 

 

 実は彼女は、“馬鹿力”と言われる程の怪力を有しているのである!

 

 その力は凄まじく、一説では十数㎏の牛乳缶を片手でひょいと持ち上げたり、投げた野球ボールが約60m先の金網にめり込んでしまったり、突然絡んで来た自身よりもガタイのいい男性を、恐怖で悲鳴を上げながら咄嗟に手を突き出しただけで数十メートル先まで突き飛ばしてしまったりした事があると言われている。

 

 過去にこの怪力を活かして自動販売機の下に小銭を落とした子供のお助けをした事があるのだが、その時にその子供に怖がられ、それと同時にその近くにいた子供達も怖がって逃げて行ったのがキッカケで自信を無くし、それ以降この特徴を隠すようにして来たのである。

 

 しかし、今回の真美とのやり取りという“ちょっとしたキッカケ”で“自信”を取り戻した事により、再び人のために怪力を活かそうと決心したのである。

 

 つまり彼女は、“お洒落女子”であり、“怪力女子”でもあったのだ!(下手をすると、純粋な力だけでは櫂よりも上かもしれない…?)

 

 

 ひかるの話を聞いた真美は、ふと何かを思い出し始めていた…。

 

 (…そういえば、さっきジムで30キロのダンベルを軽々と上げ下げしてたような…。)

 

 

 ワケを聞いた後も驚きを隠せない表情の真美だったが、やがてそれが微笑みに変わる。

 

 「…凄いわ、ひかるちゃん。 ありがとう。お陰で助かりそうだわ。」

 

 「凄ぇよ姉ちゃん!」 「かっこいい!」 「ありがとう!」 「どんどんやっちゃって!」 「行け~!」

 

 真美の感謝の言葉、そして子供達の元気のいい言葉を聞いたひかるは、彼らに微笑みかける。

 

 「ありがと、ボク達。 さ、もうひと頑張りしますか。」

 

 そう言うとひかるは、引き続き瓦礫の除去に取り掛かる。真美達もそれを手伝い始めた。

 

 

 一方、ギンガはと言うと、ラブラスと接近戦を展開するが、一瞬の隙を突かれて正拳突きを胸部に喰らい、その後繰り出して来た上段蹴りを咄嗟に両腕で防ごうとするが、その威力に吹っ飛んでしまう。

 

そして、吹っ飛んだ先に待ち構えていたダロンに両腕、両脚、胴体に触手を巻き付けられる形で羽交い締めにされてしまう!

 

 その力は凄まじく、もがいても解ける様子は無い。前方からは鋏を構えたラブラスが迫っていた!

 

 

 「クソっ…こうなったらギンガストリウムで…!」

 

 そう言っている間にも、ラブラスは広げた鋏をギンガの首目掛けて突き出し始めていた!

 

 

 その時!

 

 

 《ウルトランス! サドラシザーズ!》

 

 

 聞き覚えのある音声と共に、1人の巨人がギンガとラブラスの間に滑り込む。

 

 現れたのは、右腕をウルトランスで岩石怪獣サドラの鋏・サドラシザーズに変形させた状態の『ウルトラマンビクトリー』である!

 

 ビクトリーはラブラスの鋏をサドラの鋏で挟む事によって防ぎ、力比べの末にそれを張り飛ばし、それと同時に一回転しての上段回し蹴りを頭部に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 「ショウ!」

 

 ビクトリーの加勢に嬉しそうに反応したヒカル。それに同調するようにギンガも気力を取り戻し、クリスタルを黄色く輝かせ、自身に巻き付いた触手を通じて黄色の電撃をダロンに流し込む!

 

 体が痺れたダロンは、たまらずギンガを解放してしまい、それにより自由の身となったギンガはビクトリーと合流する。

 

 

 「大丈夫か?ヒカル。」

 

 「平気だ。しかし、何故お前までここに?」

 

 「何故は無い。俺達、どれだけ一緒に戦って来たと思っている?」

 

 「…そうだったな!」

 

 長年共に戦った絆の深さにより合流した二人の戦士は、互いに腕をクロスさせる。

 

 

 その時、ギンガ及びヒカルはあるモノに気付く。

 

 

 それは、先程閉じ込められていた真美とひかる、子供達が、無事に脱出出来ていた事であった。

 

 一同は笑顔でギンガ達を見上げながら手を振り、無事を知らせる。

 

 「ギンガさん!ビクトリーさん! 私達はもう大丈夫です!」 「無事に脱出出来ました!」

 

 真美とひかるの言葉を聞き、更にひかるの満面の笑みを見たヒカルは、確信する。

 

 「彼女、どうやら失っていたモノを取り戻したみたいだな…上出来だ!」

 

 ギンガは、自信を取り戻したひかるにサムズアップを向け、それを見たひかるも元気よくサムズアップを返す。

 

 

 「真美ちゃーん!」 「ひかるちゃん!」

 

 真美とひかるの安全に気付いた海羽と愛紗は、2人の元に駆け寄り、真美達もそれに気付く。

 

 「良かった、無事で。」 「えぇ、ひかるちゃんのお陰だよ。」

 

 嬉し涙を出しながら抱き付く海羽の頭を撫でながらそう言う真美。それを聞いた愛紗は少し驚く。

 

 「えっ? …もしかしてひかるちゃん…力、解放しちゃったの?」

 

 「えへへ」 ひかるは笑顔で、少し照れ臭そうに頭の後ろに手を当てる。

 

 「そんな…ひかるちゃん、あんなに力を人に見せるの嫌がってたのに…。」

 

 心配する愛紗に、ひかるは変わらず笑顔で語る。

 

 「確かに、私はこの馬鹿力がコンプレックスで、今まで隠していたわ…。 でも、ようやく思えるようになったの。この力を持ってる私にしか出来ない事がある。この力を、人の為に使って行きたいと。」

 

 「ひかるちゃん…。」

 

 「そして、みんなの言葉、そして、新田先輩が私の事を覚えてくれていた事が、その自信を取り戻させてくれた。 本当にありがとう。」

 

 自信を取り戻したひかるの先ほどとは違う晴れ渡った笑顔を見た一同は、安心と嬉しさから同じく笑顔になる。

 

 

 

 ひかるが自信を取り戻した事により、より深まった彼女達の仲を確信したヒカルも、勇気が漲って来る…!

 

 「彼女達は勇気を出した…今度は俺達の出番だぜ!」 「おぅ!」

 

 ギンガとビクトリーは、威嚇するように触手を広げて構えるダロンの方を向き、同時にファイティングポーズを取る。

 

 「まずはコイツからやろうぜ!」 「あぁ、行くぞ!」

 

 

 (BGM:キラメク未来~夢の銀河へ~)

 

 

 一斉に駆け出すギンガとビクトリー。ダロンは無数の触手を四方八方から突き出し始めるが、ギンガは『ギンガスパークランス』による打撃や頭部のクリスタルからの紫の光弾『ギンガスラッシュ』、ビクトリーは脚のクリスタルからの光弾『ビクトリウムスラッシュ』や頭部のクリスタルからの光線『ビクトリウムバーン』で、触手を次々と弾き返しながら接近して行く!

 

 まずは接近したビクトリーが、連続回し蹴りの要領でビクトリウムスラッシュを打ち込んで行き、次にダロンが反撃で伸ばして来た一本の触手を掴むとそれを伝って一回転しながら接近して左肘を胸部に打ち込み、更に跳躍してダロンを飛び越えながら、ビクトリウムスラッシュを纏った蹴りを頭部に叩き込む!

 

 次にギンガが接近すると、ギンガスパークランスにより火花を散らしながら左右斜めと斬撃を決めた後、ランスの先端を胸部に突き立てて後退させる。

 

 そしてダロンの触手攻撃を避けながらすれ違い様に一直線の斬撃を決めた後、後ろ蹴りを背中に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 

 《ウルトランス! ウルトラマンヒカリ!》

 

 《ナイトティンバー!》

 

 ショウは『ウルトラマンヒカリ』のクリスタルスパークドールズをリードして『ナイトティンバー』を召喚して掴み取る。

 

 そして、ティンバーモードでメロディを奏でた後、カバーを展開してソードモードへと変形させて揚げる!

 

 《放て!聖なる力!》

 

 ビクトリーはヒカリの音声と共に、周囲に現れた結晶体から注がれるエネルギーを浴びて、青い光と共に『ウルトラマンビクトリーナイト』へと変身を完了する!

 

 

 ショウはナイトティンバーのポンプアクションを1回行う。

 

 《1(ワン)! ナイトビクトリウムフラッシュ!》

 

 ヒカリの音声と共に、ショウはトリガーを引いて刃先を青白く発光させる。

 

 

 「ナイトビクトリウムフラッシュ!」

 

 ビクトリーナイトは高く飛んだ後、急降下しながら必殺の回転斬り『ナイトビクトリウムフラッシュ』を放つ!

 

 高速回転をするビクトリーナイトは、迫り来るダロンの足をことごとく切り落としながら突っ込んで行き、やがて本体に回転斬りを決めて吹っ飛ばす!

 

 

 ダロンはだいぶ弱って来たようだ。今こそトドメである!

 

 

 「一気に決めるぞ!」

 

 ヒカルは、ストリウムブレスを変身モードにしてギンガスパークでリードする。

 

 「今こそ、一つになる時! ウルトラマンタロウ!ギンガに力を! ギンガストリウム!」

 

 ギンガはタロウの掛け声と共にタロウと一体化して『ウルトラマンギンガストリウム』となり、眩い光から現れる!

 

 

 ヒカルはディスクを回してスイッチを押し、『ウルトラマンジャック』の力を発動させる!

 

 「ウルトラマンジャックの力よ! ウルトラショット!」

 

 タロウの掛け声と共に、ギンガはジャックと同じポーズを取った後、右腕に左手を添えた状態で右手の先から必殺光線『ウルトラショット』を発射する!

 

 光線を浴びたダロンは、その場で大爆発して砕け散った…!

 

 

 (BGM終了)

 

 

 「やったー!」 「あとは、あのトゲトゲ怪獣とハサミ怪獣だけだね!」

 

 ダロンを撃破したギンガ達を見て、愛紗とひかるは純粋に喜ぶ。見守っている人々も歓声と声援を上げる。

 

 

 …しかし海羽は、ラブラスの方を見て何やら違和感を感じていた。

 

 (さっきのあのハサミ怪獣ちゃんのパンチとキック…何処か空手っぽかったような…?)

 

 

 ギマイラは、ラブラスに指示を出すように腕を振るう。

 

 …しかし、妙な事に、ラブラスの動きはさっきよりも勢いが無いような感じであった…。

 

 

 ギンガストリウムはラブラスに果敢に向かって行き、ヘッドロックをかけてそのままジャンプした後、落下スピードを利用して地面に叩き付ける!

 

 地面を転がったラブラスは立ち上がるが、豪快な投げ技を喰らったためか、既に動きが鈍っていた。

 

 

 ギンガストリウムはトドメの『ギンガクロスシュート』を放とうと、クリスタルを青く輝かせながら、両腕を前方でクロスさせた後、S字を描くように左右に大きく広げて構える事でエネルギーを溜めて行く…!

 

 「ギンガクロスシュート!」

 

 ヒカルの掛け声と共に、ギンガは腕をL字に組んで光線を発射しようとする!

 

 

 その時!

 

 

 「やめてーっ!!」

 

 

 突然、真美達の前に一人の女性が走りながら立ち塞がり、ギンガストリウムに渾身の叫びを上げる!

 

 

 それを聞いたギンガストリウムは咄嗟に構えを解き、その女性の方を振り向く。ヒカルは困惑を始めている。

 

 「一体何なんだ?」

 

 

 突如現れた、赤いラインの入った黒のジャージを着込んでおり、輪郭が整った可憐な顔に、ショートの茶髪が特徴の一人の女性。困惑する真美達。愛紗とひかるは彼女が誰なのかすぐさま気付く。

 

 「…スミちゃん?」 「どうしたのよ?」

 

 

 “スミちゃん”と呼ばれる彼女の名は『小河寿美江』(おがわ すみえ)。

 

 ひかるや愛紗と同じで現在麟大1年生であり、農学部に所属しており、部活は陸上部に所属している“スポーツ女子”である。

 

 ひかる達とは顔見知りだが、真美達とは今回対面するのが初めてである。

 

 

 「どうしたの?」 「どうしてギンガさんに攻撃を止めさせたの?」

 

 落ち着いて問いかける真美と、あどけない顔で問いかける海羽。だが寿美江は、初めての人達に対する人見知りの他に、言いたくても言いづらい気持ちもあるのか、出ようとする言葉を押さえ込むように俯いて黙り込んでしまう…。

 

 

 「もしかして、あの怪獣の事、何か知っているのか?」

 

 そう言いながらヒカル(ギンガ)はラブラスの方を振り向く。 するとその視線の先には、何やら頭を抱えながら必死にもがくような仕草を見せるラブラスの姿が!

 

 「何だと?どうしたんだ?あの怪獣は…。」

 

 ヒカルは驚きを隠せず、ショウもラブラスの異変に気付く。

 

 「あいつ…自分の中の何かと戦っているのか?」

 

 

 「どうしたんだろう?あの怪獣…。」 「スミちゃん、何か知っているの?」

 

 ひかると愛紗は改めて寿美江に問いかけるが、寿美江は変わらず渋い表情で俯いたまま答えようとしない…。

 

 

 その時。

 

 

 「俺が話そう。」

 

 何処からか男性の声が聞こえ、一同は振り向く。

 

 特に海羽は、聞き覚えのある声だったためか、一番反応が素早かった。

 

 

 そこには、一人の長身かつガタイのいい、端正な顔立ちの男性が歩いて来ている。

 

 それを見た海羽は思わず名前を呟いた。

 

 

 「宏隆君?」

 

 

 彼はかつて海羽と、鬼怪獣オニオンを巡る騒動を通じた交友経験のある『佐藤宏隆』である(番外編『眞鍋海羽物語(ストーリー 如月~きさらぎ~)』参照)。

 

 彼は海羽と同じく麟慶大学商学部2年であり、今では県大会優勝の実績を認められ、空手部の主将を務めている。

 

 因みに真美も彼とは面識があり、あの一件から自信を取り戻した彼は、あれから真美に勉強を教えてもらったり等もしており、ひかる達も入学時にあいさつ程度で声を掛けた事があるという。

 

 

 しかし、彼と寿美江は一体何の関係があるのだろうか?

 

 

 「久しぶりだな、海羽。」 「宏隆君も、相変わらず元気そうね。」

 

 二人はとりあえず再会の声を掛け合った後、本題に入る。

 

 

 「宏隆君は何か知ってるの? あの怪獣の事…。」

 

 

 海羽の問いかけを聞いた宏隆は、少し躊躇うように首を横に向けた後、重い口を開くように話し始める。

 

 「まず、寿美江は、今年入部したばかりの空手部のマネージャー。 そして…。」

 

 

 次に宏隆は、ラブラスの方を向く。

 

 

 「あの怪獣は…同じく今年入ったばかりの、俺の後輩なんだ。」

 

 

 宏隆の思わぬ発言に、一同は動揺を隠せなかった。

 

 「ぇ…一体どういう事?」

 

 「あの怪獣が…?」 「佐藤先輩の…後輩?」

 

 「つまり…元は人間って事なの?」

 

 海羽、愛紗・ひかる、真美は口々に発現する。

 

 

 宏隆は更に詳しく話す。

 

 彼の所属する空手部に、今年新しく二人の新入部員が出来た。その一人が寿美江。

 

 そしてもう一人は、『道枝真』(みちえだ まこと)という社会学部に所属する男子生徒である。

 

 

〈回想〉

 

 今朝、宏隆、真、寿美江の三人は、気まぐれに朝のランニングをしていた。

 

 だがその時、突然何処からか謎の霧が発生したのである。

 

 張り切って1番前を走っていた真は、それをモロに浴びたかと思えば突然苦しみ出し、それを見た宏隆と寿美江は即座に回避しながら真に声をかけた。

 

 …しかし、時は既に遅く、霧を全身に浴びた真はしばらく苦しんだ後、まるで思考が停止したかのように脱力する。

 

 

 そして次の瞬間、何処からか飛んで来た青い光線が真に降り注ぎ、それを浴びた真は苦しみながら、おぞましい光を放ちながら徐々に姿が変わって行き、やがてあの変わり果てた姿(ラブラス)になってしまったのだという…。

 

 怪獣になった後、ある程度自我を取り戻したのか、真は自分の姿に動揺しながらも、宏隆達のためを思ったのか、その場からトボトボと姿を消したのだという…。

 

 〈回想終了〉

 

 

 ラブラスの正体は人間だったのだ!この事から、肩書きはさしづめ『人間怪獣』と言った所であろう…。

 

 宏隆の話を聞いた海羽達は、驚きを隠せないと同時に信じられないと言わんばかりの表情になっていた。

 

 「そんな…まさか…。」 「あの怪獣が、マコちゃんだなんて…。」

 

 真とある程度仲の良いひかると愛紗も、激しい動揺を隠せない。

 

 「信じられんかもしれんが、俺も寿美江も目の前で、この目で見たんだ。真は…怪獣にされちまった…!」

 

 宏隆は、悔しさから下げた拳を強く握る。

 

 「私も、あの時何も出来なかった…。苦しむ仲間に…何も出来なかった…。」

 

 「あまり自分を責めるな寿美江。実際、何が起こるか分からない状況だったのだから…。」

 

 寿美江はショックと不甲斐なさで泣き出しそうになるが、宏隆がそれを宥める。

 

 

 「一体誰なの? 宏隆君の仲間に、そんな事をしたのは…。」

 

 海羽も、心の痛みから泣き出しそうになりながらも問いかける。

 

 

 「それなんだが、あの時真が怪獣になったと同時に、何処からか、真の怪獣とは違う鳴き声が聞こえたんだ。 それは、アイツの鳴き声だ!」

 

 そう言いながら、宏隆はギマイラの方を指差した!

 

 

 どうやら、あの時聞こえた鳴き声が、今出現しているギマイラと同一であった為、即座に特定出来たたようである。

 

 それに、どうやらギマイラは潮風町に来る以前にも、各地で猛威を振るっていたようであり、それが最近ニュース等で取り上げられていたというのもあるらしい。

 

 

 そして、宏隆の特定は正しかった!

 

 ギマイラの能力の中には、角から浴びた対象を怪獣化させる光線を放ち、自分の支配下にするという恐ろしいモノがある!

 

 先程のダロンも、恐らく東京湾のタコが怪獣化した存在なのだろう。

 

 

 更にギマイラは、口から吸いこんだ相手の思考能力を低下させ、思いのままに操る事の出来る、宇宙のカオスで出来た霧を吐き出す事も出来、先程の回想から、真を怪獣化させる前も使用したと考えられる。

 

 この霧は無機物を破壊するという二重の効果を持つ事で武器としても使用可能であり、なんと地球のあらゆる薬品でも分解が不可能というとんでもないモノなのである!

 

 

 ラブラスの正体が、ギマイラによって怪獣化された仲間だという事が判明した事により、一同の動揺は深まる。

 

 先程ラブラスが苦しむような素振りを見せていたのは、恐らくある程度理性が戻った事により、ギマイラの支配と必死に戦っていたのであろう。

 

 真という人物は、相当精神力がある人物だと思われる。

 

 

 「一体、どうすればいいの…?」

 

 寿美江はその場で崩れるようにうずくまってすすり泣き始め、ひかるはしゃがんで彼女の背中を摩る。

 

 

 「なんてこった…コイツ(ギマイラ)、半端じゃねぇ程ヤバい奴だな!」

 

 「まずはアイツ(ラブラス)を元に戻す事が先決だ。」

 

 ギンガストリウムとビクトリーナイトは、ラブラスを元に戻す事を優先する事にした。

 

 

 「こうなったら、ギンガさんのギンガコンフォートと、ビクトリーさんのナイトティンバーのメロディと、私のゴッデスピュアリファイを合わせて…。」

 

 そう言いながら『ハートフルグラス』を取り出して、ひかる達に見えない場所に隠れて変身しようとする海羽。

 

 

 …しかし、この時は誰もまだ知らなかった…。

 

 

 ギマイラによって怪獣化されたモノは、“死ぬ”意外に戻る方法が無いというあまりにも残酷な真実を…!

 

 

 次の瞬間、海羽は、ふと変身の手を止めて上空を見上げる。

 

 

 ギンガストリウムとビクトリーナイト、そして真美達も、それにつられて見上げてみると、そこには何かが隕石のように発火しながら落下して来る…!

 

 

 そしてそれは、地面に激突すると同時に大爆発し、それにより発生した強風に一同は思わず顔を腕で隠しながら背ける。

 

 

 やがて煙が晴れて行き、そこに現れたのは信じられないモノであった!

 

 

 ハイパーゼットンが、コスモス(スペースコロナモード)とジャスティス(スタンダードモード)を、それぞれ右足、左足で踏みつけた状態で立っているのである!

 

 二人のカラータイマーは、既に赤く点滅を始めていた!

 

 

 「何!?あれは…。」 「新しい敵が…来たと言うの?」 「私、怖いわ。」

 

 愛紗とひかるは驚愕し、寿美江は恐怖でひかるに縋り付く。

 

 

 「コスモスさん…?」「ジャスティスさんもいるわ!」

 

 真美と海羽は、コスモスとジャスティスに気付く。

 

 

 「ハイパーゼットンだと!」 「こんな時に!」

 

 かつてハイパーゼットンと交戦経験のあるギンガとビクトリーも警戒態勢に入る。

 

 

 そしてハイパーゼットンは、その場からテレポートしてコスモス達よりちょっと前に現れる。

 

 「やれやれ…我がハイパーゼットンに勝とうなど、愚かな考えです。」

 

 ハイパーゼットンを中で操っているゼボスは余裕そうに呟く。

 

 

 そしてハイパーゼットンは、すっかりくつろいでいるギマイラの方を振り向く。

 

 「ギマイラも、よくやってくれた。お陰で我がゼットンの力は、最高潮目前までに溜まった。」

 

 

 「その怪獣は、貴様の差し金だったのか!」 ショウは啖呵を切る。

 

 

 「その通り! 我が名はゼットン星人ゼボス。 あるお方のために新たに派遣された、ゼットン星人随一の、ゼットン使いさ。」

 

 

 (あるお方って…トシ君(桜井敏樹)の事なのかな…?)

 

 ゼボスの言葉を聞いた海羽は、心でそう呟く。

 

 

 ゼボスはテライズグレートから新たに派遣された刺客であり、ゼットンを使って破壊と殺戮を好む凶悪な宇宙人である。

 

 海羽の察し通り、桜井敏樹のためにマイナスエネルギーを集めるために暗躍して来て、まず手始めにコスモスペースを襲撃しようとしたのだが、そこでジャスティスとグローカーの妨害を受ける。

 

 そして、マルチバースを移動しながらジャスティスと追撃戦をしていく内に、この世界に戻り、この世界の地球を襲撃しようと変更したのである。

 

 更に、マイナスエネルギーはハイパーゼットンのエネルギー源にもなるため、まだ力が不完全だったハイパーゼットンを完全にするためにも、地球に怪獣墓場から連れたギマイラを放って人々にマイナスエネルギーを発生させようと企んだ。

 

 企み通り、ギマイラが地球の各地で暴れたり、人を怪獣化させたりなどして暗躍した事により順調にマイナスエネルギーは集まって行き、ジャスティスや加勢したコスモスと交戦しながらそれを吸収して行った事により、強さも完全目前にまで溜まって行ったのである!

 

 それにより、コスモスとジャスティスを返り討ちに追い込んだと同時に地球に飛来したという事である。

 

 

 ゼボスの説明により、彼の企みを知った一同。

 

 「そんな…そんな事のために、マコちゃんを怪獣にするなんて…。」

 

 寿美江はより悲しみと絶望が深まって行き、再び膝から崩れ落ちる…!

 

 

 「いい感じに絶望してるね~。その調子でもっと絶望したまえ。我がゼットンのために!」

 

 

 「ふざけるな!お前だけは許さない!」 「俺達が、アイツ(ラブラス)を元に戻すまでだ!」

 

 ヒカルとショウはゼボスの言葉に怒りを露わにし、ラブラスを救おうとする。

 

 

 しかし、ゼボスは無情にも真実を告げる!

 

 「無駄だよ? ギマイラに怪獣にされたモノは、死ぬまで元に戻れない!」

 

 

 …その言葉はウルトラマン達に衝撃を与え、そして真美達の心に突き刺さる…!

 

 「死ぬまで…戻れない…?」 「じゃあ、真君は…一生あの姿で…?」 「もう…どうする事も出来ないの…?」

 

 特にひかる、愛紗、寿美江の同級生三人のショックは大きく、三人とも膝から崩れ、もはや絶望に等しいほどに項垂れる…。

 

 

 「みんな、気を確かに。」 「きっと何か方法はあるわ。」

 

 海羽と真美は三人に、肩に手を置きながら優しく呼びかける。

 

 

 「ふざけた事を言うな!!」とショウ。

 

 「お前を倒し、絶対に彼を元に戻す!!」とヒカル。

 

 

 ギンガストリウムとビクトリーナイトは構えを取るが、エネルギーの消耗と同時に活動の限界が近づいて来たのか、カラータイマーが赤く点滅を始める!

 

 「くっ…こんな時に!」

 

 

次々とウルトラ戦士達が弱って行く中、ゼボスはここぞとばかりにハイパーゼットンと共に攻撃に入ろうとする!

 

「フッフッフ…次はお前らの番だぁ…!」

 

 

 ハイパーゼットンは首を一回ししながらギンガストリウムとビクトリーナイトに歩みを進めて行くが、その時、最後の力を振り絞ったコスモスが後ろからしがみ付く!

 

 そして、続けて立ち上がったジャスティスも向かって行く!

 

 

 「ギマイラ!ジャスティスにトドメを刺せ!」

 

 ゼボスは慌てる事無くギマイラに指示を出し、ギマイラは咆哮を上げた後、尻尾を大きく振ってハイパーゼットンに向かって行くジャスティスの首元に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 ハイパーゼットンはしがみ付くコスモスの腹部に左肘を打ち込み、更に左腕の裏拳を顔面に打ち込んで引き離した後、振り向き様に右腕のラリアットを叩き込んで地面に叩きつけると、再び腹部を踏みつける!

 

 ジャスティスはギマイラの突進をなんとか受け止めると、右拳を頭部に打ち込んでかち上げるが、その直後にギマイラの頭突きを腹部に喰らい、続けて剛腕と爪を活かしたパンチを胸部に二発喰らう。

 

 ジャスティスは後退した後体勢を立て直し、反撃の右脚蹴りを打ち込むが、ギマイラはそれをあっさり腕で撥ね返した後、両手の爪を活かしたパンチを叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 「俺達も行くぞ!」

 

 ヒカルの掛け声と共に、ギンガストリウムとビクトリーナイトはコスモス達に加勢しようとするが、その時、背後から無数の火球が襲い掛かる!

 

 激しい火球の雨あられはギンガ達、そして周囲の地面を直撃して爆発して行き、やがて二人は吹っ飛んで地面に叩き付けられると同時に、ダメージにより変身が解除されてギンガとビクトリーの姿に戻る!

 

 

 「今度は何だ!?」

 

 ギンガはうつ伏せに倒れた状態で後ろを振り向き、ビクトリーもそれに続く。

 

 

 煙が晴れた先に現れたのは、外見はゼットンに似ているが、全体的に体型がごつくなっており、より大きく頑丈になった甲殻に両手の鋭利なクロー、顔面の発光体はT字に変形しているのが特徴である。

 

 新たに現れたのは、ハイパーゼットンと同じくゼットンの強化形態『EXゼットン』である!

 

 

 「ゼットンがもう一体だと!?」

 

 新たな敵の出現に驚愕する二人。

 

 

 「言っただろ? 我はゼットン星人随一のゼットン使い。 侵略のために育てたゼットンは、ハイパーゼットンだけではないのだよ。 やれ!EXゼットン!」

 

 

 ゼボスの指示を受けたEXゼットンは両腕を広げてギンガとビクトリーに襲い掛かる!

 

 ギンガとビクトリーも立ち向かい、組み付いて押さえようとするが、EXゼットンはそれをあっさり振りほどくと、ギンガ、ビクトリーと順に引っ掻き攻撃を打ち込み、それにより二人が後退して膝を付いた所で、ビクトリーの腹部を蹴って飛ばし、ギンガの胸部に爪を活かしたパンチを叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 二人が消耗しているという側面があるとはいえ、従来のゼットンよりも格段とパワーアップした圧倒的な力で圧倒して行くEXゼットン。

 

 

 ハイパーゼットンは踏みつけていたコスモスを、腹を蹴って転がす。

 

 コスモスはすぐさま右足、左膝を付いて体勢を立て直すと、両手を突き出してオーバーループ光線を放つ!

 

 だが、ハイパーゼットンは仁王立ちしたまま『ハイパーゼットンアブゾーブ』を発動させ、迫り来る光線を吸収・増幅し、波状光線として撃ち返す!

 

 撃ち返された光線を浴びて行くコスモスは、苦しみながらも手を伸ばし、覚束ない足取りで近づこうとするが、やがてカラータイマーが先程よりも早く点滅した後、止まってしまう…!

 

 遂にエネルギーが尽きてしまったコスモス!カラータイマーが止まった後、目の光も消え、やがて全身が銅像のように変色した後、光の粒子を散らしながら消滅してしまった…!

 

 

 「コスモス!」

 

 動揺するジャスティス。ギマイラはその隙にジャスティスの背中にパンチを叩き込んで殴り倒し、更に胸部を蹴って飛ばす!

 

 ギマイラは上を向いて咆哮を上げながら、頭部の角にエネルギーを溜めて行き、やがて突進してそれをジャスティスの胸部に突き立てる!

 

 そしてそのままジャスティスの体に強力なエネルギーを流し込み、それを受けたジャスティスは苦しんだ後、カラータイマーの点滅が止まり、目の光が消え、その場で消滅してしまう!

 

 

 コスモス、ジャスティスと立て続けに力尽きて行く中、ギンガとビクトリーは諦めずにEXゼットンに立ち向かう!

 

 ビクトリーは右脚蹴りを繰り出すが、EXゼットンそれをあっさり弾いた後、胸部に引っ掻き、頭突きを続けて打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 今度はギンガがパンチを打ち込むが、EXゼットンはをそれを片手で掴んで受け止めてねじ込んだ後、ギンガの胸部に右手、左手とパンチを打ち込み、腹部に右足蹴りを打ち込んだ後、アッパーカットの要領で引っ掻き攻撃を胸部に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 「ギンガサンダーボルト!!」 「ビクトリウムバーン!!」

 

 ギンガとビクトリーは体勢を立て直しながら、即座に『ギンガサンダーボルト』と『ビクトリウムバーン』を放つが、EXゼットンは背中のジェット噴射でその場から飛び立つ事でそれらを回避する。

 

 そして高く飛んだ後、急降下して体当たりしながら100兆度の火球『100トリリオンメテオ』を放つ大技『ゼットンバックファイア』を放つ!

 

 「「ぐああああぁぁぁぁ!!」」

 

 灼熱の炎がギンガとビクトリーの周囲を取り囲んで大爆発した!

 

 EXゼットンは着地した後、ドラミングのような仕草で勝ち誇るように咆哮を上げる。

 

 

 見守っていた真美達、そしてその他大勢の人々がじっくりと見つめる中、爆発により発生した煙は晴れて行くが、その先に見えたのは廃墟となった土地のみであり、ギンガとビクトリーの姿は跡形も無かった…。

 

 彼らもまた、力尽きて消滅してしまったのである…!

 

 

 真美達、そしてその他人々の声援も空しく、強大な敵の前に敗れてしまったウルトラ戦士達…。

 

 人々の中には膝を付いたり、泣き出したりなどして、絶望に暮れそうになっている者も出始めていた…。

 

 

 そして海羽は、なにやら悔しそうな表情で下を向いたまま、ハートフルグラスを握る手を震わせていた…。

 

 

 「…ヒカルさん!」

 

 思い出したかのようにヒカルが心配になったひかるは走り出し、真美達もそれに続く。

 

 

 廃墟となった土地までに走って行き、必死に名前を呼びながら探して行き、やがてボロボロの姿で横たわる二人を発見する。

 

 コスモスに変身する『春野ムサシ』と、ジャスティスの人間体『ジュリ』である。

 

 

 「ムサシさん!」 「ジュリさん!」

 

 真美はムサシに、海羽は宏隆と共にジュリに寄り添い、「大丈夫ですか?」等と声を掛けて行く。

 

 二人は辛うじて意識があるみたいだ。

 

 「真美…ちゃんか…来てくれたんだね。」 「ムサシさん…。」

 

 「海羽か…まさかこういう形で…再会するとはな…。」 「ジュリさん…。」

 

 

 「はっ、ヒカルさん!」

 

 ひかるは、少し先で横たわっているヒカルとショウに気付き、愛紗と寿美江と共に駆け付ける。

 

 「ヒカルさん!大丈夫ですか?」 「(ショウに向かって)あなたも!」 「しっかりしてください!」

 

 必死に体を揺すりながら呼びかけるひかると愛紗、寿美江。やがてヒカルとショウはゆっくりと目を開ける。

 

 「ひかるちゃん…みんな…俺は一体…。」

 

 心配そうに自身を見つめるひかる達を見渡しながら、ヒカルは先ほどEXゼットンに敗れた事を思い出す。

 

 (…そっか…俺達は…アイツに…!)

 

 

 その時、ゼボスは街の人々に呼びかける!

 

 「見たか!!人間ども!! 我が配下達の圧倒的な力!!そしてそれらを育てた我の、驚くべき才能!!」

 

 

 「自分で驚くべき才能とか言いやがって…!」

 

 悔しそうな表情で睨みながら呟くショウ。ゼボスは続けて呼びかける。

 

 

 「引き続き絶望するがいい!! そうすればあるお方のためにマイナスエネルギーが集まり、それと同時に我がゼットン達も完全になる!! しかし、一気に絶望させるつもりは無い!じわりじわりとやってやる…!」

 

 ゼボスの意思で動くハイパーゼットンは、ギマイラの方を振り向く。

 

 「ギマイラは引き続きこの街に居座れ。 そして休むなり暴れるなり、好きにするがいい。」

 

 その言葉に真美達、そして人々は驚愕する! ギマイラは自由を与えられた。つまり、いつ休み、いつ暴れるか分からないのである!

 

 「ハイパーゼットンもEXゼットンも、完全な強さを得るまであと一歩となった。その仕上げと行こうじゃないか。引き続き絶望し、マイナスエネルギーを出すがいい! 明日の夜明け頃には完全になるだろうから、総攻撃はその時だな。 ま、せいぜい頑張りたまえ人間ども。 フハハハハハァ!!」

 

 ゼボスの響く高笑いを残し、ハイパーゼットンはその場からテレポートして、EXゼットンは飛び立って去って行った…。

 

 

 ギマイラは近くのビルを枕にするようにしてくつろぎ始め、その場には虚しく立ち尽くすラブラスのみが残された…。

 

 「真!!」 「マコちゃん!!」

 

 宏隆と寿美江はラブラスの姿の真に呼びかける。

 

 辛うじて真の意識が残っているのか、ラブラスも二人を見下ろす。

 

 だが、ラブラス(真)は、自身を心配そうに見つめる彼らを見渡した後、後ろを振り向いてトボトボと歩き去り始める。

 

 「はっ…待って!!」

 

 寿美江の叫びも空しく、やがてラブラスの姿は潮風高原の向こうへと見えなくなってしまった…。

 

 ラブラス(真)が去ってしまった事により、寿美江はその場で崩れるように膝を付き、顔を覆って泣き始め、愛紗は彼女の元に歩み寄って優しく背中を摩る。

 

 

 ヒカルが謎の反応を感知して駆け付けた平和そうな街に訪れた脅威は、想像を絶するものであった…。

 

 

 ビルを使って一休みをしているギマイラだが、いつ暴れ出すか分からない状況なため、一部の街の人々はとある隣接する二つの廃工場への非難を余儀なくされてしまった…。

 

 その廃工場には、潮風町及びその近郊でギマイラの被害に遭って怪我を負った人々も、医療ボランティアの人達と共に非難をしていた。

 

 

 真美は、海羽やひかる、愛紗の助けを借りながら、廃工場から少し離れた場所で傷ついたヒカル達の手当てをし終えた後、医療ボランティアに参加し始める。

 

 白衣の姿でボランティアの人達と共に懸命に治療作業をしていたその時、真美の元に一人の少年がやって来る。

 

 

 それに気づいた真美、同時に誰なのかに気付く。

 

 「あれ?裕君?」

 

 「真美さん…。」

 

 彼は、今年の正月に、スペースビースト騒動を通じて真美と親しくなった少年『佐久間裕』であった(番外編『新田真美物語(ストーリー) 私のお正月』参照)。

 

 

 「久しぶり。裕君もこの街に来てたのね。」

 

 笑顔で話しかける真美だが、裕はどこか暗い表情をしている。

 

 「どうしたの?」

 

 裕の目線までしゃがんで優しく話しかける真美。彼女の柔らかい笑顔を見て彼女の優しさを思い出した裕は、ワケを話す決心をする。

 

 

 彼は母、妹と一緒に飛行機に乗って東京へと旅行に出掛けていた。

 

 だがその時、突如黒いトゲトゲの怪獣が襲って来て、乗っていた飛行機が攻撃されたのだという。

 

 幸い大破を逃れた飛行機は、急遽近くの潮風町の空港になんとか不時着する事に成功したのだが、多くの怪我人、そして数名の死者を出してしまったのだという。

 

 よく見たら裕の胸元も、治療の後と思われる包帯が見え、現在同じく怪我を負った母と妹も治療を受けているという…。

 

 

 知り合いの家族も災難に見舞われた事を知った真美は、胸が痛くなる。それと同時に、裕達を襲った怪獣はギマイラだと確信する。

 

 「そっか…怖かったよね。 でも、裕君も家族も無事で良かったわ。」

 

 そう言いながら裕の頭にそっと手を当てる真美。しかし…。

 

 「正月に続いて…どうして僕の所にばかり不幸が来るんだろう…?」

 

 悲しそうにそうぼやく裕を見て、真美は一時かける言葉を失ってしまう…。

 

 

 更に。

 

 

 「ねぇ、人は死んだら、何処に行くんだろう…? 天国って、本当にあるのかな…?」

 

 

 「えっ…。」

 

 

 その発言を聞いた瞬間、真美は悟った…。

 

 裕も、重なる不幸に加え、人々と同じく絶望的な状況下に置かれてしまった事により、望みを失いかけているという事を…。

 

 

 裕の可哀想さに対する胸の痛さに涙目になりかけた真美は、裕をそっと抱き寄せる。

 

 「そうだよね…怖いよね…私もだよ…。」

 

 今の真美に出来る事は、こうやって寄り添う事ぐらいであった…。

 

 

 

 宏隆とひかる、愛紗は、意気消沈している寿美江に寄り添っていた。

 

 「ほら、食うか?」 宏隆はそう言いながら、持っていたチョコレートを差し出すが、寿美江は受け取るどころか、振り向く様子すらない…。

 

 「駄目だ…完全にショックでやられてしまっている…。」

 

 「無理も無いわ。大切な仲間が、怪獣にされてしまったんだもん…。」

 

 「それに、強大な敵にウルトラマンもやられてしまってこの状況…一体どうすればいいんだろう…。」

 

 ひかると愛紗も、どうしたらいいか分からない状況に途方に暮れそうになっていた…。

 

 

 「とりあえず、寿美江は俺に任せて、二人はウルトラマン達の様子を見て来てくれ。」

 

 「分かりました。行こ、愛紗ちゃん。」 「えぇ。そうね。」

 

 寿美江を宏隆に任せて行こうとするひかると愛紗。

 

 

 その時、愛紗のスマホの着信音が鳴る。

 

 「あ、ちょっとごめん。ママからだわ。」

 

 電話に出る愛紗。

 

 

 「もしもし、ママ? どうしたの?」

 

 

 しばらく黙る愛紗。母の話を聞いているのであろう。

 

 

 「…ぇ…? ぅ…嘘でしょ…?」

 

 どうしたのか、何やら動揺を始める愛紗。表情も段々と暗くなっていく…。

 

 

 「…そんな…。」

 

 やがてそう呟くと、力が抜けた手からスマホがすり抜けて地面に落ちてしまう…!

 

 

 「お、おい、どうした?」 「どうしたの?愛紗ちゃん。」

 

 宏隆とひかるも、心配そうに声を掛ける。 愛紗は暗い表情のまま俯き、やがて涙目になり始める…。

 

 

 

 廃工場から少し離れた、とある使われていない倉庫にて、治療を受けたウルトラ戦士四人は話し合っていた。

 

 「またしても強大な敵が現れたな。しかも半端じゃない位の…。」

 

 「以前ハイパーゼットンと戦った事あるが、恐らく今回のはその数倍も強い…。」

 

 「それに、同じくらい強いEXゼットンまで…ゼットン星随一のゼットン使いってのは、案外伊達じゃないかもな。」

 

 ヒカルとショウは改めてゼボスのハイパーゼットン達の強さを実感する。

 

 

 「僕も、以前ゼロやダイナと共にハイパーゼットンと戦った事があるのだが、君たちの言う通り、今回の個体は歴代最強かもしれない。」

 

 ムサシも、今回のハイパーゼットンの格の違いを感じていた。

 

 「それに、あのゼボスって奴は、命を受けてやっているマイナスエネルギーを集める他に、個人的な目的があると思うんだ。」

 

 「それはどういう事ですか?」

 

 ムサシの発言に疑問を投げかけるヒカル。そこにジュリが口を挟む。

 

 「本当にマイナスエネルギーを集めるだけが目的ならば、ギマイラだけで間に合うはずだ…。 だが奴は、強化されたゼットンを二体も引き連れている…。」

 

 それを聞いたショウ、そしてヒカルは察した。

 

 「そうか…奴はマイナスエネルギーを集めた後、それによって完全になったハイパーゼットンと共に主を殺して…!」

 

 「自分が、侵略者の座に就こうとしているという事か!」

 

 ムサシとジュリは話を続ける。

 

 「そういう事だ。どちらにしろ、この世界の人々を危機に陥れる事に変わりは無い。」

 

 「宇宙の秩序、そして正義のために、必ず奴を倒さねば…。コスモス、また一緒に戦ってくれないか。」

 

 「そうしたい所だが…。」

 

 そう言いながら『コスモプラック』を取り出すムサシ。それを見たジュリ、そしてヒカルとショウは驚愕する。

 

 先程敗れた際のダメージがあまりにも大きかったのか、コスモプラックは石化していた…。

 

 「でも、僕は諦めない。僕達を必要としている人たちがいる限り…。」

 

 そう言いながらムサシは、怯える廃工場の人々を見つめる。

 

 

 「私も、受けたダメージが大きい…まだ時間がかかりそうだ。」

 

 ジュリもそう呟きながら『ジャストランサー』を取り出す。

 

 

 「俺達もダメージが大きい。次いつ変身できるか分からない。」

 

 「だが、あのように苦しんでいる人達のためにも、俺達は諦めない。」

 

 「だな、ショウ。」

 

 同じく諦めない姿勢を崩さないヒカルとショウは、互いの腕をクロスさせる。

 

 

 (あと、あの怪獣(ラブラス)をどうやったら元の人間に戻せるか…。)

 

 ムサシはラブラス(真)をどうすれば救出出来るかも諦めず考えていた…。

 

 

 その時、そんな彼らのやり取りを聞いていた海羽は、何やら申し分なさそうに声を掛け始める。

 

 「ぁ…あの…。」

 

 「どうした?海羽。」ヒカルもそれに気づいて声を掛け、他の三人も海羽の方を振り向く。

 

 

 「ごめんなさい!」

 

 

 …突然謝り出す海羽に若干困惑気味の4人。

 

 「何故、謝るのだ?」ジュリが問いかける。

 

 

 「私…あの時怖くて…何も出来ませんでした…!」

 

 海羽は、涙ながらにワケを話し出す。

 

 

 先程、ウルトラ戦士達4人がゼボス率いる怪獣軍団に苦戦して敗退していた時、彼女も変身して加勢し、ラブラスも助けようとした。

 

 しかし、ハイパーゼットン、EXゼットン、そしてギマイラの圧倒的な強さを目の当たりにした時、ふと先日の恐怖が蘇ってしまったのである…。

 

 

 赤いアイツと白猿に痛めつけられた時を…!(第31話「赤と白のアイツら」参照)

 

 

 あの時が軽くトラウマになっている海羽は、変身して戦うのに躊躇いが出てしまい、結果ウルトラ戦士達は敗北し、現在のような絶望的な状況になってしまったため、自分にも責任を感じていたのである。

 

 

 「私は完全に逃げてしまった…。私達ウルトラ戦士を、必要としてくれてる人たちが…いるというのに…。 バカだよね…私…。」

 

 涙声で自責を始めてしまっている海羽。そこに、ヒカルが歩み寄り、海羽の頭に手を当てる。

 

 「泣くことはねーよ。」

 

 ヒカルの思わぬ言葉に顔を上げる海羽。

 

 「実際、敵は強大だったんだ。だからその判断は間違ってなかったと思うぜ。だって、お陰でお前は、無傷で済んだんだから…。」

 

 「ヒカルさん…。」

 

 ショウ達も海羽に声を掛ける。

 

 「誰だって怖い時はある。大切なのは、その恐怖をどう越えて行くかだ。」

 

 「それに、君は一人じゃない。我々ウルトラ戦士もついている。」

 

 「今は変身できないけど…それでも僕達はウルトラマンだ。今でも出来る事があるはずだ。」

 

 

 ウルトラ戦士達からの励ましの言葉を聞いた海羽は、少しながら元気を取り戻しているようであった。

 

 「皆さん…。」

 

 

 「俺達が諦めない限り、ウルトラの光も消えない。だから諦めず頑張ろうぜ。」

 

 ヒカルが前向きにそう言ったその時…!

 

 

 「バッカみたい!!」

 

 

 突然響いた叫び声に4人と海羽はふと驚き、振り向く。

 

 そこには、涙目になって立ち尽くす愛紗の姿があった…。

 

 

 「愛紗…ちゃん? どうしたの?」

 

 海羽の心配も他所に、愛紗は続けて言い放つ。

 

 

 「何よ!ウルトラマンがそんなにめでたい存在なの!? ウルトラマンがそんなに簡単に消えない存在って言うんだったら、今すぐ全部の怪獣をやっつけちゃってよ!!」

 

 

 突然の愛紗の悲痛の叫びを浴びた一同。さっきまで希望を取り戻しつつあった表情は再び曇り始め、掛ける声を失ってしまう…。

 

 愛紗は顔を覆って泣き出してしまう…。

 

 「怪獣も…ウルトラマンも…大嫌い…!!」

 

 

 そこに、深刻そうな表情のひかるがヒカル達の元に歩み寄り、ワケを話す。

 

 「突然ごめんなさい。 実は…愛紗ちゃんのおじいちゃんの住む長野にもあの怪獣(ギマイラ)が現れて…おじいちゃんの家が壊されたみたいなの…。」

 

 

 「…そんな…。」

 

その時、ヒカル達の頭に思い浮かぶ。愛紗のおじいちゃんの家が無残にもギマイラに踏み潰され、瓦礫になって行く光景が…。

 

 ひかるから残酷な事実を聞かされたヒカル達は、ショックで胸に衝撃が走り、憐れむような表情で、壁にもたれ掛かってうずくまる愛紗を見つめる。

 

 今、彼らは、彼女にどう声を掛けてやったらいいのか分からなかった…。

 

 

 「小さい時から大好きだった畳の部屋も、庭の柿木も…全部なくなっちゃった…。」

 

 涙声でそう呟く愛紗。涙脆い海羽も、顔を覆ってしゃがんで泣き始める。

 

 

 その様子を宏隆と寿美江も見つめており、宏隆もやるせない思いでいた…。

 

 

 その時、寿美江は自身の腕を掴んでいた宏隆の腕を振り払い、何処かへと走り始める!

 

 見た感じだと、ギマイラの方へと走って行くようであった!

 

 

 「お、おい!寿美江! 何やってんだ!」

 

 宏隆は慌てて寿美江を追いかけ、何とか捕まえて引き留める。

 

 「何考えてんだ! 死ぬ気かよ!」

 

 

 「もぅ…嫌なんです…。」

 

 「…ぇ?」

 

 何やら小声で気になる事をぼやいた寿美江。すると彼女は何の感情か分からない表情で言い放つ。

 

 

 「もう何もかも嫌なんです! 大切な人は怪獣にされるし! 友達は酷い目に遭うし! もう限界!!」

 

 

 寿美江も、度重なる不幸に遂に自暴自棄になってしまっていた…。

 

 

 「寿美江…。」

 

 彼女の悲痛な叫びを聞いた宏隆は、ヒカル達と同じく掛ける言葉を失ってしまう…。

 

 

 

 その時、さっきまで一休みをしていたギマイラは起き上る!

 

 そしてあくびをするように咆哮を上げた後、近くのビルを剛腕や尻尾で破壊しながら暴れ始める!

 

 

 避難している人々はもはや途方に暮れており、怯えながらそれを見つめるしかなかった…。

 

 夕焼けに染まる街の色も、今では住人たちの絶望に拍車をかけているようであった…。

 

 

 「ギンガは? …ウルトラマンは…?」そう呟く少女。

 

 「やられちまったよ…敵の勢力は強大…あの巨人が4人いても、まるで歯が立たないなんて…もう、どうにもならねぇ…。」

 

 「よしてください!子供相手に何言ってるんですか!?」

 

 絶望に拍車をかけるような無神経な発言をする男性を非難する少女の母親。

 

 更に、追い打ちをかけるように、その母親の抱いている赤子が泣き叫び始め、母は懸命にその子をあやし始める…。

 

 

 「ウルトラマンは、どこに行ったの…?」少女はただ、そう呟くしかなかった…。

 

 

 大きな夕日をバックに咆哮を上げるギマイラ。一方その様子を、ゼボスは宇宙空間から彼特有の千里眼で見つめていた。

 

 「フッフッフ…いいぞ、その調子だ。それに、あの街(潮風町)には特殊な電磁網を張っておいた。他の場所にいるウルトラ戦士どもは気づいて駆け付けられないし、あの場にいるウルトラ戦士どもも、他のウルトラ戦士に助けを求める事が出来ない…!」

 

 そう言いながらゼボスは、人々の方へを視線を向ける。

 

 「ゼットンの食事は貴様らの絶望と恐怖心。 これからも存分に怖がりたまえ。我がゼットンのために! フハハハハハ…!」

 

 

 

 果たして、このかつてない絶望的な状況を人々は、そしてウルトラ戦士達は、越える事が出来るのだろうか!?

 

 

 (ED:キボウノカケラ)

 

 

 〈エピローグ〉

 

 真美達が大変な目に遭った同じ日の昼間にて、櫂は久々に一人のプライベートを楽しんでいた。

 

 …まぁ最も、ゼロが一緒だから厳密には一人ではないのだが…。

 

 

 櫂は映画館を出る。どうやら映画を鑑賞していたみたいだ。

 

 「ふぅ…流石は人気の話題作だけあって、面白かったな~。」

 

 (櫂の奴…久々に素直な楽しそうな顔してるんじゃないのか…?)

 

 ゼロは、久々に見る櫂の素直な笑顔にひとまず安心しているようであった。

 

 

 櫂はふと空を見上げる。

 

 「真美と海羽も、今頃は楽しくやってんだろうな…。 しかし、あいつらなら現地で撮った写真とかをLINEで送って来るはずなのに…一向に来ねーな…ま、それほど夢中に楽しんでるって事だろ。」

 

 そう楽観的に言いながら、櫂は歩き出す。

 

 「さてと、バッティングセンターでも行くか。久々にかっ飛ばすぞ~!」

 

 

 …この時、ゼボスの潮風町に張った電磁網の影響もあり、櫂もゼロも知るはずが無かった…。

 

 

 愛する二人が今、大変な事になっているという事を…!

 

 

 To Be Continued…




 読んでいただきありがとうございます!いかがでしたか?


 自分が書いたながら、今回は恐らく本作で一、二を争うんじゃないかという程の絶望的な状況になってしまったんじゃないかと思ったりしています(笑)

 果たしてこの大ピンチをどう切り抜けていくのか…次回にご期待ください!


 ギンガストリウムとビクトリーナイトのコンビは一度書いてみたかったので、そこが個人的に良かった点でもあります(笑)

 因みに今回の新キャラの一人・八橋ひかるの怪力設定は、最近YouTubeでも配信されている“ある仮面ライダー”の登場人物を元にしました。

 もしかしたら愛紗や寿美江も、隠された抜きんだ特徴があるかもしれませんね。


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています!


 今回隠れたサブタイトルは『可能性のかたまり』(ウルトラマンX第2話)でした。


 因みに余談ですが、今年の春、劇場版ウルトラマンR/Bを舞台挨拶付きで鑑賞しました。

映画は、成長したリク(ジード)の頼もしさ、グリージョの可愛さ、そして、トレギアとグルーブの大迫力のCGバトル等と、全体的にとても見応えがあって面白かったですね。

そして映画鑑賞後、本物の湊兄弟とハイタッチをしましたが、その際私はカツミのジャケットを着ていたので、本物のカツミから「お揃い」と言って貰えました!

ウルトラマンの俳優さんに会ったのはこの時が初めてだったので、とても思い出深い1日になりましたね。


そして、今年の新作ウルトラマン『ウルトラマンタイガ』の放送が楽しみですね!

 タロウ教官の息子だけにとてもカッコいい!

 更に、ジョーニアスの故郷・U40出身の『ウルトラマンタイタス』や、オーブやロッソ・ブル起源となったO50出身の『ウルトラマンフーマ』もとてもカッコいいので、三人『トライスクワッド』の活躍が早く見たいです!(ワクワク)

劇場版R/Bに続いてトレギアも登場するみたいなので彼の活躍にも期待ですね。


 では、次回もお楽しみに!


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第35話「ダイナミックなアイツ」

 皆様、お久しぶりです。

 実は私・剣音レツは今年就職しまして、それにより更に忙しくなってしまいました。

 …とまあ、言い訳もここまでにして(笑)、なので、今年は更新が遅れ気味なのをお詫び申し上げます。


 さて今回は、あの“伝説の英雄”と謳われる、“ダイナミックな、ダイナマイトな”ウルトラ戦士が参戦します!

 また、いつも通りサブタイトルも1つ隠しております。


 また、ジードを見た人なら思わずクスっとなる(?)ようなシチュエーションもあります。


 では、どうぞ!


 (OP:ULTRA BRAVE)

 

 

 桜井敏樹からの新たな刺客であり、ゼットン星人随一のゼットン使いを豪語する『ゼットン星人ゼボス』が引き連れて来た『宇宙恐竜ハイパーゼットン(イマーゴ)』『EXゼットン』『吸血怪獣ギマイラ』の強豪怪獣軍団により、敗退してしまったコスモス、ジャスティス、ギンガ、ビクトリーの4大ウルトラ戦士…。

 

 4人の変身者は次の変身が困難になる程のダメージを受けてしまい、潮風町の人々、そして真美達は、もはや絶望に打ちひしがれ始めていた…。

 

 

 そんな彼らを嘲笑うかのように、ギマイラは夕焼けの町を傍若無人に暴れ回る!

 

 頭部の角からの稲妻状の破壊光線、その角を活かした頭突き、怪力を誇る腕や尻尾などで、次々とビル等を破壊し、踏みつぶして行くギマイラ。

 

 そして、それにより飛び散る瓦礫などが、人々にも降りかかろうとしていた!

 

 

 「みんな!!危ない!! 早く中に避難しろ!!」

 

 佐藤宏隆が咄嗟にそう叫んだ事により、人々は一斉に廃工場内へと避難を始める。非難する人々の中には恐怖で悲鳴を上げたり、耳を塞いだりしている者もいた。

 

 

 新田真美、眞鍋海羽、八橋ひかるも、人々に落ち着くように呼びかけながら避難して行く。

 

 その時3人は、転んだ状態で泣きじゃくっている、クマのぬいぐるみを抱いた幼女を見つける!

 

 「はっ…海羽ちゃんひかるちゃん、先に行ってて。」

 

 「真美ちゃん!?」 「気を付けてください!」

 

 真美は幼女の元に急行し、「大丈夫?」と声を掛けながら抱き上げようとするが、そこに破壊されたビルにより発生した小さなコンクリートの破片が飛びかかる!

 

 

 「危ない!!」

 

 宏隆は咄嗟に両腕を広げ、盾になる事で真美達を庇う。

 

 しかし、破片の中でも大きい一つが宏隆の右肩に当たってしまう!

 

 「…っぐはっ!」

 

 「はっ…宏隆君大丈夫?」

 

 「心配…いらないさ…早くその子を。」

 

 宏隆は痛そうに右肩を押さえながらも促し、真美は幼女を連れて避難し始める。

 

 

 宏隆の後輩・小河寿美江は、失意ながらもその様子をじっと見つめていた…。

 

 「…佐藤先輩…。」

 

 

 一方、その様子を宇宙空間から千里眼で見ていたゼボスは何かを思い付く。

 

 「もうちょい戦力を増やしておけば、より多くの絶望を集められるかもなぁ…。 ギマイラ!その男も怪獣にしてしまえ!」

 

 

 テレパシーでゼボスの指示を受けたギマイラは、怪我で動きが鈍っている宏隆に視線を向け、角に怪獣化光線のエネルギーを溜め始める!

 

 

 「マズい…!」

 

 それに気づいた宏隆は足を速めようとする。

 

 

 「はっ…宏隆君…!」

 

 「宏隆君危ない!!」 「佐藤先輩!!」

 

 少女を非難させた真美、そして海羽、ひかるも呼びかけるが、光線はもう発射寸前であった!

 

 

 宏隆も怪獣にされてしまうのか!? そう思ったその時!

 

 

 突如、上空から手裏剣状の光弾が飛んで来てギマイラに命中して爆発する。

 

 光線発射を妨害されたギマイラが上空を振り向いた時、更にそこから光を纏った何かが高速で飛んで来て体当たりを仕掛け、その直撃を受けたギマイラは転倒する。

 

 

 飛んで来た者は着地し、やがて立ち上がると同時に纏っていた光を消滅させて姿を現す。

 

 

 真美達は、眩い光で目を覆いながらも、そこから現れる巨人を見上げる。

 

 

 現れたのは、青と銀のボディが特徴の戦士『ウルトラマンダイナ(ミラクルタイプ)』である!

 

 

 『ウルトラマンダイナ』。それは、人類が宇宙開発に希望を求めて火星に前線基地を構築し、“ネオフロンティア”と呼ばれる大航海時代を迎えた世界『ネオフロンティアスペース』からやって来たウルトラマンである。

 

 その世界で、ネオフロンティア計画を推進する『地球平和連合TPC』に所属する特捜チーム『スーパーGUTS』のメンバーである型破りな青年『アスカ・シン』と一体化した後、『宇宙球体スフィア』を始め、様々な怪獣や異星人等と戦い、その世界の平和を守って来た。

 

 そして、『暗黒惑星グランスフィア』を撃破後、その際に発生したワームホールの中に消えて生死不明となるが、その後『ZAP SPACY』と出会う形で怪獣墓場での『ウルトラマンベリアル』の怪獣軍団との戦いに参戦する事で生存が判明し、その後も“フューチャーアース”でゼロやコスモスと共にバット星人の侵略に立ち向かったり、“王立惑星カノン”に迫る危機を察知して救援に駆け付けたりなど、宇宙を旅しながら様々な敵と戦い続けている。

 

 そして今回、ゼロのウルトラサインでの呼びかけに応えてこの世界に駆け付けたのである!

 

 

 「あれは…!」 「確か鎧君が言っていた…ウルトラマンダイナ!」

 

 宏隆はダイナの登場に驚き、海羽も同じく驚きながらも名前を思い出す。

 

 

 さっきまで怯えていた人々も、予期せぬ新たなウルトラマンの登場に少し表情が和らぐ。

 

 

 先ほどギマイラが受けた光弾は『ビームスライサー』であり、同じく受けた体当たり技は『ミラクルロケットアタック』である。

 

 

 因みにダイナを見上げる人々の中に“ウルトラマンジャイアン”だの“ウルトラマンスーパーデラックス”だのと言い間違えている人もいた気がするのだが気のせいだろう(笑)

 

 

 ギマイラは新たに現れたウルトラマンを前に威嚇するように咆哮を上げ、やがてダイナも構えを取り、両者は対峙する。

 

 

 ギマイラは先手として角から稲妻状の破壊光線を放つが、ダイナはそれを素早く受け身を取ってかわすと同時に接近し、腹部にストレートパンチ、一回転してのチョップを続けて打ち込む。

 

 少し怯んだものの、大したダメージを受けた様子を見せないギマイラは、頭部を振り下ろして角を活かした頭突きを繰り出す。

 

 ダイナはそれを両腕で受け止めた後そのまま頭部に何度も手刀を振り下ろすが、やがて振り飛ばされ、更にギマイラの右フックを頭部に喰らい吹っ飛ぶ。

 

 

 ギマイラは再度、角から破壊光線を放つが、ダイナは即座に受け身を取って立ち上がり、振り向き様に両腕を突き出して光線を吸収した後、右腕を突き出して撃ち返す。

 

 これぞ、スピードとサイキック能力に秀でたミラクルタイプの超能力の一つ『レボリウムウェーブ・リバースバージョン』だ!

 

 

 撃ち返された自身の光線の直撃を受けたギマイラは大爆発する!

 

 …しかし、爆風が晴れた先にはバラバラになった死骸らしきモノが見えず、地面は何者かが掘って潜ったかのように盛り上がっていた。

 

 どうやら逃げられてしまったようである。

 

 

 「逃げられたか!」

 

 ダイナはアスカの意思で悔しそうに右腕を一振りする。

 

 

 怪獣が撤退した事により、ひとまず静まった人々。ダイナは彼らの方を振り向き、安否を確認して頷いた後、光と共に縮小していく事で姿を消す。

 

 

 海羽はダイナが立っていた場所の方向へと駆け始め、真美達もそれに続く。

 

 

 しばらく走り、やがてダイナが立っていた場所に着いた時、一同は立ち止まる。

 

 そこには、黒とグレーを中心とし、背中に“ASUKA”とローマ字が入っているツナギ式のスーツを着込んだ一人の青年が、ダイナの顔を象った変身アイテム『リーフラッシャー』を手に立っている。

 

 

 「ぁ…あの…あなたはもしかして…。」

 

 海羽が恐る恐る話しかけると、男は振り向き自己紹介をする。

 

 

 「俺はアスカ・シン。 怪我は無かったか?」

 

 そう、彼こそ、先ほどダイナに変身していたアスカ・シンであった!

 

 

 

 予期せぬ戦士の来訪。真美達はとりあえずアスカを自分達の避難所に案内する。

 

春野ムサシをはじめ、人間体のウルトラ戦士達も現れたアスカに反応する。

 

「君は確か…ウルトラマンダイナ。」 「久しぶりだな、ムサシ。」 アスカは声を掛けるムサシに返事をする。

 

「あなたが、ダイナの変身者なのですね。」 礼堂ヒカルも、以前共闘はしたものの、人間体では初対面のアスカに声を掛ける。

 

「君たちがギンガとビクトリーか、よろしく!」

 

ヒカルとショウを見たアスカは、先輩っぽく気さくに挨拶をした。

 

 

 「先ほどはありがとうございます。お陰で人々はひとまず落ち着きました。」

 

 真美は丁寧にお礼の言葉をかける。

 

 「ま、いいって事よ!」

 

 アスカは気さくに返した後、辺りを見渡す。

 

 「それにしても、偉い事になってるな…偶々駆け付けて正解だったぜ。」

 

 「アスカさんも、この世界の異変を感じて来たのですか?」

 

 海羽の問いかけに、アスカは意外な返答をする。

 

 

 「いや、俺は、“あるウルトラマン”の呼びかけを受けて、ここに来たんだ。」

 

 

 (…あるウルトラマン…?)

 

 アスカの返答に、一瞬困惑する海羽を始めとする一同。アスカは続ける。

 

 「そして、時空を超えてこの世界に来た時、ちょうどこの街からの異常な反応を感知して駆け付けたのだが…まさか、あんなバケモノ(ギマイラ)が暴れていたとはな。」

 

 

 どうやらアスカが潮風町を訪れたのは偶然だったみたいである。海羽達にとっては少し嬉しい偶然なワケだが…。

 

 

 「その“あるウルトラマン”とは、一体誰なのですか?」

 

 真美が問いかけにアスカは答える。

 

 「それは…“ゼロ”と言うウルトラマンだ。 なんでも、「ある人を助ける手伝いをして欲しい」とかなんとか言ってたような…。」

 

 

 アスカの返答に真美、そして海羽は驚愕で目が見開き、そして頭に疑問が浮かぶ。

 

 (ゼロさんが…ダイナさんを…?)

 

 (ある人とは…一体誰なんだろう…?)

 

 

 この時、二人はまだ知らなかった…。ゼロが助けて欲しいという人物は、自分達の身近にいる“ある人物”だという事を…!

 

 

 真美達の疑問を他所に、ひかるは嬉しそうな表情でアスカに近づく。

 

 「それにしても、こんな時に言うのもアレだけど光栄だな~。まさか“伝説の英雄”と言われるアスカさんに会えるなんて。」

 

 「お? 伝説の英雄? 俺そんなに有名になってんの!?」

 

 驚きながら反応するアスカはどこか嬉しそうである。

 

 「なんでも、別世界で、人類を守るために宇宙に消えたみたいですからね。歴史の教科書にも載っています。 正直、まさか生存していたとは…。」

 

 ひかるに肩を貸してもらっている宏隆も、アスカを知っていたようである。

 

 「おいおいよせよ!俺は“不死身のアスカ”だぜ? それにしても、英雄とは照れちまうじゃねーか!」

 

 調子を良くしてしまっているアスカにつられるように笑う一同。

 

 

 早くもアスカと真美達の親睦が深まりそうになっていたその時、それに横槍を入れるような声が飛ぶ。

 

 「へぇ~…伝説の英雄さんですか…。 じゃあ、今すぐこの状況をどうにかしてよ…あのバケモノを倒してよ…。」

 

 さっきまでショックでうずくまっていた渕上愛紗が立ち上がり叫んだ事により、一同は驚きと共に振り向く。

 

 「愛紗ちゃん…」 「その割には、さっきバケモノを仕留め損なってたじゃない!」

 

 止めようとするひかるの声を遮るように、アスカに辛辣な言い方をしてしまう愛紗。

 

 「うぅ…おいおいお嬢さん、そこは触れちゃいけない所でしょ。」 「愛紗…お前いい加減にしろよ…追い払ってくれただけでもありがたいと思えy…」」

 

 非難されながらも気さくに返すアスカと、注意しようとする宏隆の声を遮断するように、愛紗はネガティブな発言をする。

 

 「結局、1人程度来た所で何も変わらない。 この状況が360度コロっと変わるワケじゃないし、マコちゃんが元に戻るワケじゃないし! …おじいちゃんの家が…元に戻るワケじゃないし…。」

 

 愛紗は再び俯いてすすり泣きを始める中、失意の寿美江が現れ、追い討ちをかけるように、魂の抜けたような声で言い放つ。

 

 「どうせ何をしても無駄だよ…あるのはもう…絶望のみ…。」

 

 2人の後ろ向きな発言に、言葉を失う一同。 そんな中、アスカは怒りで拳を握りしめているが、その怒りは自身を非難した愛紗に向けてではなかった。

 

 (こんなにも人々を絶望させちまうとは…よっぽどやべー奴らが侵略してんだな…この街は。)

 

 アスカは、辺りの避難している人々も見渡しながら心でそう呟いた。

 

 流石は伝説の英雄。アスカは元々熱血な男なのだが、自身の世界での戦いや、長年宇宙を旅しながら戦って来た経験からの落ち着きにより、怒りを向けるべき相手がハッキリとしていた…!

 

 

 

 その頃、宇宙空間で待機しているゼボス。

 

 「チッ…ダイナの奴、ギリ潮風町に電磁網を張る直前に侵入してたか…。」

 

 どうやらダイナが来る事は完全に予想外だったようである。

 

 「お陰で予定が狂っちまったな…。 だが、人間どもが変わらず絶望してくれてるお陰でギマイラやEXゼットン、そしてハイパーゼットンのパワーが満タン直前まで来てるのは事実…。 ここからは新たな最終手段に入るとするか。」

 

悪そうにそう呟くゼボス。

 

 

 「絶望と恐怖心はな…人間からだけではないのだよ。 そして、我が引き連れたゼットンシリーズは、まだ他にもいるのだよ…ヒヒヒ…。」

 

 不気味に笑いながら、意味深な発言をするゼボス。 果たして、奴の新たな最終手段は何なのだろうか? そして、新たに放つ刺客とは…?

 

 

 

 場面を地球に戻そう。

 

 日が暮れ、夜が来ていた地球。 だが、それにより避難している潮風町の人々の不安は増大していく一方であった。

 

 先程怪我をした宏隆も真美に治療してもらい、右腕を包帯で固定している状態である。

 

 「良かったね宏隆くん。しばらく安静にしたら治る怪我で。」

 

 宏隆に笑顔で話しかける海羽。どうやら幸運にも、大事には至らなかったようである。

 

 「あぁ、真美も、サンキュー。」 「いえいえ。」

 

 お礼を言う宏隆に、真美は笑顔で返事をした。

 

 

 …しかし、これらの真美達の笑顔も所詮は作り笑顔に過ぎず、辺りを見渡す事で再び現実を突きつけられる。

 

 「愛紗ちゃんやスミちゃんだけじゃないわ…みんな望みを失いかけている。」

 

 「なんとか、この場を少しでも和らげる事は出来ないのかな…?」

 

 不安に発言するひかるに、海羽は同調する。

 

 

 「妙だな…ゼロを呼びたい所なのに、イマイチ繋がらねぇ…。」

 

 アスカはゼロとテレパシーで連絡を取ろうと試みるが、電磁網のおかげで繋がらなくて苛立っていた。

 

 

 「みんながこんなにも苦しんでるのに…私ってば、何してるんだろう…。」

 

 海羽は、状況を知りながらも、トラウマから変身できなかった自分の不甲斐なさを改めて痛感していた。

 

 

 …その時、海羽は何かに気づいたようであった。

 

 「…ん?」

 

 

 同じ頃、医療ボランティアのスタッフの一人が弱気になり始める。

 

 「薬が足りない…。 (電気の)燃料も、あとどれだけ持つか…。」

 

 

 そして、少女が空腹に耐えきれなくなり母親に泣きつく。

 

 「お母さん、お腹空いたよ~。」 「もう少しだから頑張って…。」 「え~ん…。」

 

 

 その時、そんな少女の元におにぎりが二つ入った小さな容器を持った手が差し伸べられる。

 

 「どうぞ。」

 

 優しく話しかける女性の声により、気付いた少女は泣き止んで受け取る。

 

 「ありがとう…。」

 

 「ありがとうございます。 あなたは…?」 母親もお礼を言い、その女性に問いかける。

 

 「ただいま到着しました。隣町の食品ボランティアです。 元気出してね。」

 

 女性は笑顔で答えた後、再び少女に優しく語り掛けた。

 

 「良かったね。」 母親は喜ぶ少女の頭を撫でる。

 

 

その様子を見ていた真美と海羽は、少女に優しくした彼女を見て何かに気づく。

 

 

 ポニーテールが特徴の、どこか儚げな雰囲気がある美しき女性…。

 

 

 「もしかして…リリカちゃん?」

 

 真美が恐る恐る問いかけると、その女性は微笑んだ。

 

 「えぇ、久しぶりね、真美ちゃん、海羽ちゃん。」

 

 彼女こそ、約1年前、故郷の惑星・S-851惑星を凶獣ルガノーガーに滅ぼされて地球に来た所、そこで出会った真美達との交流により前向きに生きる気持ちを取り戻し、地球を第二の故郷として生きていく事を決めた宇宙人の女性『リリカ』なのである(番外編「俺たちの光」参照)!

 

 現在は会社員として働きつつ、災害ボランティアの食料班に参加したりしているという。

 

 「まさか、ここでまた会えるなんて驚き~。」 海羽は嬉しそうな笑顔で語り掛ける。

 

 「私も驚きだよ。」 リリカは他の人にも食品を配りながら言う。

 

 「リリカちゃんも、人々をサポートするボランティアに参加してるのね。」と真美。

 

 「えぇ。人を助ける団体に、いつか参加したいと思っていたから。 (小声で)もう二度と、私みたいな境遇の人を出さないためにも…。」

 

 「リリカちゃんって、とても優しいんだね。」

 

 海羽は感激で涙を流してしまっている。

 

 「そんな…私はただ、人として当然の事をしているだけだよ。」

 

 そう言いながらリリカは、泣きながら縋る海羽の頭を撫でる。 ほぼ同年代の筈なのに、海羽が小柄な事もあって、この構図はもはや親子みたいである(笑)

 

 

 3人が予期せぬ再会を喜び合っている中、先程困っていたスタッフが何かに気づいて声をかける。

 

「新しい医療班と食品班が到着したぞ!」

 

 

 その声を聞いた真美達一同も振り向く。

 

 そして、医療班を見た真美は軽く目を見開いて驚く。

 

 

 「ハルちゃん…トモちゃん…?」

 

 

 「オッスまみたん、手伝いに来たよ。」 「トモも一緒で~す!」

 

 到着した医療班の中に、真美の知り合いの『笹崎春菜』と『岡田友実』もいたのである!(友実に関しては、番外編『笹崎春菜物語(ストーリー) 若き救世主達』に初登場)

 

 「でもどうして? 石狩で研修をしていたんじゃ…。」

 

 「あー、ほら、最近、この近辺での怪獣事件が増えているじゃない? だから、しばらく霞ヶ崎にいるようにと命じられて来たの。」(櫂には会いたくないけどね…。)

 

 「そゆこと~!」

 

 真美の問いかけに春菜と友実は笑顔で答え、真美は嬉しさと安心の笑みを浮かべる。

 

 

 「良かった…これで、なんとか治療が間に合いそうだ。」

 

 現地の医療スタッフがそう言ったのを皮切りに、人々も安心の表情になり始める。

 

 

 場の空気が変わりつつある中、真美は今度はある光景を目にする。

 

 それは、先程、絶望していた少年・佐久間裕を、ある一人の少年が励ましている光景であった…。

 

 そしてその少年はなんと、裕と同じく真美がかつてクリスマスの日に知り合った『松坂裕太』である!(番外編『新田真美物語(ストーリー) 私のクリスマス』参照)

 

 どうやら裕太も家族でココ潮風町を訪れた際に事件に巻き込まれたみたいであり、裕とは小学校の友達同士のようである。

 

 だが、裕太は裕とは違い、強い意志を持っていた。

 

 「大丈夫。元気出せよ。 信じてれば、ウルトラマンはまた来てくれる!」

 

 「…本当?」

 

 「うん!僕もかつて、ウルトラマンに助けてもらった事があるんだ。」

 

 そう言いながら裕太は一枚の写真を裕に差し出す。それには、勇ましくオーブカリバーを構えるウルトラマンオーブ・オーブオリジンが写っていた。

 

 実は裕太はあの時、オーブの戦いを見ながらこっそり一枚撮っていたのである。

 

 そして、こうした状況でも強く意思を持っていられるのも、あの時助けてくれたオーブのお陰であった!

 

 「わぁー、凄い!かっこいい!」

 

 オーブの写真を見た裕は、少しながら笑顔が戻り始める。

 

 

 その頃、春菜と友実も早速治療に取り掛かっており、それぞれ裕の母、妹を担当し始める。

 

 「じゃあ、私この人を診るから、トモはあの子を診てあげて。」

 

 「しょうちのすけ!」

 

 …流石は春奈。自分の立場を分かってらっしゃる(笑)

 

 

 人々に食料を配るリリカ、他の医療スタッフと共に懸命に怪我人を診て行く春菜と友実、裕太と楽しそうにしている裕…それらを見渡しながら、真美や海羽達は笑みを浮かべて行く。

 

 

 “私達には、助け合える仲間がこんなにいるんだ…”と、改めて思い始めていた。

 

 

 真美は、元気を取り戻しつつある裕の元に歩み寄り、しゃがんで頭にそっと手を当てる。

 

 「やっぱり笑ってる方が可愛いよ、裕君。」

 

 満面の笑みでそう語り掛ける真美を見て、裕は嬉しそうな笑顔を浮かべる。

 

 「真美さん…。」

 

 「みんな諦めずに頑張っている…。 私達も信じよ。きっと大丈夫だと。」

 

 「うん!」

 

 真美は今度は裕太の方を向く。

 

 「ありがとね、裕太君。 お陰で私も元気になったわ。」

 

 「そんな…僕はただ、信じているだけです。ウルトラマンは、きっとまた来てくれると。 それに、お母さんと佳那…そして、今は離れてるけど…お父さんもついてるし!」

 

 真美にお礼を言われた裕太は照れ臭そうながらも、強い意志を見せる。

 

 真美はそんな裕太に「偉いよ。」とばかりに頭を撫でながら微笑んだ後、春菜達を手伝い始める。

 

 

 「ハルちゃんとトモちゃんも、ありがとね。」

 

 「礼には及ばないよ。私達、仲間じゃない。」 「そゆこと~!」

 

 仲間だから、助け合うのは当たり前…そんな春菜達の意見も、真美、そして周囲の人々を勇気づけ始める。

 

 「私も何か手伝うわ! 荷物持ちと、道具の出し入れぐらいなら出来ると思うから。」

 

 そう言いながら海羽も駆け寄る。

 

 

 思わぬ仲間との再会に喜び、とのそんな彼らと協力して行く真美と海羽を見つめる宏隆とひかる。

 

 「先輩達…顔が広い事は知ってたけど、やっぱり凄いですね。」

 

 「あぁ。海羽も真美も、分け隔てなく、他人のために尽くせるからな。 そして、それによって勇気づけられる人も多い。 実際、人付き合いが苦手だった俺も、あいつ(海羽)のお陰で変われたからな。」

 

 感心するひかるに、宏隆は自身の経験も交えて二人の良さを改めて称える。

 

 

 それと同時に、二人は辺りを見渡しながらある事を思い出し始める。

 

 「思えば私も、困った時はいつも主に愛紗ちゃんが力になってくれたっけ。勿論先輩達も。」

 

 「俺も、寿美江のサポート、そして、彼女の汐里の支えがあるから、今も快く空手の練習に取り組めるのかもな。」

 

 (宏隆さん、彼女がいるんだ…。)

 

 ひかるちゃん、何やら心の中では残念そう(笑)

 

 「誰も、決して一人きりじゃない。必ず、支え合える仲間がいる。」

 

 「だからこんな状況でも、みんな希望を捨てきらずに頑張れるのね…。」

 

 

 宏隆とひかるの言葉を聞き、失意の寿美江、そして隅でうずくまっていた愛紗も何かを感じたのか、ふと彼等の方を振り向く。

 

 「…誰も必ず…支え合える仲間が…いる…。」

 

 愛紗は感慨深そうに呟いた。

 

 

 真美達の様子を、ウルトラ戦士達も見つめていた。

 

 「ルギエルと戦ったあの時を思い出すな、ヒカル。」

 

 「あぁ。あの時も、みんな希望を捨てていなかった。」

 

 ヒカルとショウは、かつての雫ヶ丘における復活したダークルギエルとの戦いを思い出す。

 

 「あの少女も、危機的状況ながら愛する命のために一生懸命だった。」

 

 ジュリは、自身の心を変えるきっかけとなった、自身の危険を顧みず犬を助けようとした少女を思い出す。

 

 「紡いで来た絆の糸が、彼女たちを会わせたのかもしれないな。 こんな状況だからこそ、協力し合って超えて行くために。」

 

 「心の絆か?」 ムサシの言葉にジュリは反応する。

 

 「うん。 みんな一生懸命頑張っている。僕達も今出来る事をやろう。」

 

 「そうだな、ガレット!」 「変身出来なくても俺達はウルトラマンだからな。」 「希望…か。やはり曖昧なモノではないな。」

 

 ムサシの言葉にヒカル、ショウ、ジュリは返事をする。

 

 

 その時。

 

 「アンタはもしや、あの時の…。」

 

 突如、一人の男性がムサシに話しかけ、四人は振り向く。

 

 その男性は、霞ヶ崎動物園の園長であり、獏愛好家でもある『獏田睦三郎』である。

 

 「獏田さん。久しぶりですね。」

 

 ムサシも思わぬ再会に驚きつつ挨拶をする。

 

 ムサシはかつて、メフィラス星人キョウの策略により超獣バクタリに変えられてしまった、動物園の名物であり、獏田と仲良しでもあるアメリカ獏の『バクちゃん』を、コスモスとして救った事があるのである(第10話参照)。

 

 「あの時は本当にありがとうございます。お陰でバクちゃんは今も元気ですし、変わらず動物園の人気者です。」

 

 気さくに感謝の言葉を言う獏田に、ムサシは笑顔になる。

 

 何故潮風町にいるのかを聞くと、今日は動物園の休園日であり、ちょっとふらっとお出かけをしようと偶々潮風町訪れていたのだという。

 

 「それで、偶々事件に巻き込まれたのですか…それは災難ですね…。」

 

 憐れむムサシに、獏田は気さくにこう返した。

 

 「いや。 だって俺は信じてっからよ。ウルトラマンは必ずまた来てくれるって。 あの時もそう信じていたから、バクちゃんが助かったんだから。」

 

 「獏田さん…。」 前向きな獏田の言葉に、ムサシをはじめ他のウルトラ戦士達も笑顔になる。

 

 「おっとそうだ。 これは、私とバクちゃんからのお礼だ。」

 

 そう言って獏田がムサシに渡したのは、デフォルメされたバクちゃんを模したラバー付きのストラップであった。

 

 「最近売り始めた動物園の人気商品だ。 いつかまたアンタと会った時渡そうと、ずっと持ってたんだ。」

 

 「…ありがとうございます。 大事にします。」

 

 ムサシは笑顔で受け取った。

 

 

 その時、何処からかひっそりとギターの音が聞こえ始める。

 

 ムサシ達や真美達、そして一部の人々も振り向くと、そこには廃車の上に座り込み、ギターを弾いているアスカの姿が。

 

 そしてアスカは、ある歌を歌い始める。

 

 

 その曲とは『君だけを守りたい』である。

 

 

 アスカが歌い出した瞬間、人々も一斉に聞き入り始める。

 

 この世界では、アスカが歴史の教科書に載っているみたいに、君だけを守りたいも、音楽の教科書に載っているのである。

 

 そしてその歌は、いつもこの世界の人々を勇気づけて来たのである。

 

 

 皆がアスカの歌を聴いている中、海羽は何かを感じたのか、そっと目を閉じて下を向き、手と手を合わせて握り、胸に当てる…。

 

 

 やがて弾き語りが終わると、アスカはギターを置き、廃車から降りる。人々は一斉に拍手をしていた。

 

 

 ムサシ達と真美達はアスカの元に歩み寄る。

 

 「やっぱり、とってもいい曲ですね。」 真美は満面の笑顔で言った。

 

 

 「心が折れそうになった時、そっとこの曲を口ずさめばいい。」

 

 

 アスカの言葉に感慨深そうな表情になる一同。アスカは続ける。

 

 「誰だって、辛い事に折れそうな時はある。俺だってしょっちゅうあった。 だがその時に、自分にとって大切な者の事を思うんだ。 そうすれば、限界は越えられるはず。」

 

 

 それを聞いた海羽は、再び下を向いて物思いにふけ始める。

 

 トラウマによって変身を躊躇っている自身も、大切な者、守りたい者の事を思えば、変われるのかと…。

 

 

 「そして信じるんだ。世界は終わらないと。 かつて行った別の地球の人々も、そう信じてくれたからこそ、俺達ウルトラマンは戦えた。」

 

 ここでアスカが言う“別の宇宙の人々”とは、フューチャーアースの子供達とチームUの事である。

 

 

 アスカの言葉を聞いた愛紗と寿美江も、表情はそのままながらも、じっとアスカを見つめていた…。

 

 彼女達も、少しずつながら心が動き始めているのかもしれない…。

 

 

 その時、突如、激しく地響きが起こり始め、ウルトラ戦士達は即座に身構え、人々は怯え始める!

 

 

 「急に何!?」 ひかるはビクつきながらも辺りを見渡す。

 

 「またギマイラのヤローが出たのか!?」

 

 「でも、この周辺にそれらしき気配は無いよ。」

 

 海羽は宏隆にそう言った後、ふと何かを感じたのか、何処かへと駆け始める。

 

 「ぅおい!?どこ行くんだよ海羽!」

 

 「この先の高原の方に何かいそうなの!」

 

 海羽のその言葉を聞き、宏隆、真美、ひかるも後を追い始め、ウルトラ戦士達もそれに続く。

 

 

 やがて一同は、街のすぐ隣にある『潮風高原』という高原に辿り着く。

 

 そこは徒広い自然の広場であり、近くには海の眺めも良い崖もある。

 

 因みにここ潮風高原と潮風町の名前の由来は、海が近い事から、時折潮の香りがするという所からである。

 

 

 今は夜だが、ここは夜に訪れる人のために、夜には外灯が付くようになっているため、ある程度高原の状況を把握出来る。

 

 

 そこで一同は、驚愕の光景を目にする!

 

 

 「…嘘だろ…。」 「マジかよ…。」 「あれって…怪獣?」

 

 宏隆、アスカ、真美と口々にそう言う中、その視線の先にはなんと一匹の怪獣が現れていた!

 

 

 その怪獣は、魚のようなフォルムに、ヒレのような四足、モンガラカワハギのような背中の模様、そして鼻先のドリルが特徴の『深海怪獣グビラ』である。

 

 

 よく見たらグビラの背後に土の盛り上がりが見える事から、恐らく本来の住み家である深海を離れ、地面を掘り進んで現れたと思われる。

 

 

 「そんな…どうしてここにも怪獣が…?」 真美に縋りながら問いかけるひかる。

 

 「コイツもあのゼボスって奴が送り込んだのか!?」 そう言いながら身構える宏隆。

 

 

 …そんな中、海羽はじっとグビラの様子を伺っていた。

 

 実際グビラは暴れる様子も無く、何かを訴えるように吠え続けているのである。

 

 …それも、かなり苦しそうに…。

 

 「グビちゃん…もしかして…苦しんでる…?」

 

 

 「クソッ…こんな時に変身出来ないとは…。」 そう言いながら悔しそうにギンガスパークを見つめるヒカル。

 

 「それに、ここに現れたのには、何かワケがあるのだろうか…?」

 

 かつてフューチャーアースにて、罪の無い別個体のグビラと交戦経験のあるムサシはそう言った。

 

 

 「よーし! ここは俺が…!」

 

 アスカが変身しようと、リーフラッシャーを取り出そうとしたその時。

 

 

 「待ってください。」

 

 「…どうしたんだ?」

 

 前に現れて自身を止めた海羽に問いかけるアスカ。

 

 

 「ここは、私に任せてください。」

 

 そう言うと海羽は、グビラの元に歩み寄る。

 

 

 「グ~ビちゃん♪ 一体どうしたの?」

 

 そう言う海羽に視線を向けるグビラ。そこには、満面の笑顔で自身を見つめる海羽の姿があった。

 

 「何だか苦しそうだね…何かあったの?」

 

 海羽の優しい問いかけを聞いたグビラは一旦落ち着き、何やら海羽に話しかけるように声色を変える。

 

 

 「ってアンタら!何当たり前のように見てんの!?」 「海羽さんは一体…!?」

 

 グビラ(怪獣)と会話をしている海羽を、動じる事なく見つめる一同に突っ込むアスカとひかる。

 

 

 「彼女はああ見えて、怪獣との交流経験が多いんだ。」 とムサシ。

 

 「へぇ~…先輩が…。」

 

 ひかるは、先輩の意外な一面に驚きを隠せない。

 

 

 「じゃあ、あの怪獣とも仲が良いってか?」

 

 「あぁ、確かグビラとは、最近仲良くなったばかりだと言ってた。」 とムサシ。

 

 「うそ~ん…!」

 

 アスカも、怪獣と仲良くしている少女を前に驚きを隠せない。

 

 

 「いろんな世界を旅してると、やっぱ変わった人とも出くわすモンだな…。」

 

 感慨深そうにそう呟くアスカ。

 

 

 そんな中、海羽はグビラの訴えを聞いていた。 どうやら善良な怪獣との交流経験が多いだけあって、怪獣の言葉もある程度分かるようである。

 

 

 「…ある者に…命を狙われていて…それから…逃げて来た…?」

 

 

 グビラの言っている事を理解した瞬間、若干動揺の表情を見せる海羽。

 

これでグビラは暴れるために出て来たのではない、何かに追われてやって来たという事が分かったのだが、一体その者とは何なのだろうか…?

 

 

その時、再び地震が起こり始め、地面が激しく揺れ始める!

 

「うわっ!? またかよ!」 「今度は何なの!?」 「ひかるちゃん、つかまってて!」

 

宏隆、ひかる、真美と口々に言う中、グビラは再び何かを訴えるように吠え始める!

 

 

「…え? 急いでさがれって?」

 

海羽がグビラの言葉を理解した瞬間、彼女とグビラの真下の地面が一際揺れ始める!

 

 

 「間違いない…下から何か来るぜ!」

 

 アスカも、下から何かが迫って来る気配を感じ取っていた。

 

 

グビラに更に「急げ!」と言われたのか、海羽がとりあえずその場を離れ始めた時!

 

 

 グビラの真下の地面を勢いよく突き破って何かが現れ、それによりグビラは空高く打ち上げられてしまう!

 

 

 一同は驚きながらも、その現れた者を見上げ、驚愕する!

 

 「あれは…ゼットン!?」

 

 真美はそう言うが、一方で宏隆は別の名前を口にする。

 

 「いや…キングジョーにも見えるぞ!」

 

 そう、彼らの言う通り、現れた巨大生物は、一見ゼットンに見えるのだが、そこにキングジョーのパーツが食い込んだ、所謂“サイボーグ化したゼットン”とも言える外見が特徴であり、角や両手の爪は赤く禍々しいものになっている。

 

 

 「ふっふっふっ…コレは招かれざる観客だが、見せしめには丁度いい…やれ!ペダニウムゼットン!」

 

 何処からかゼボスの声が響く。現れたのは、キングジョーとゼットンの融合獣『ペダニウムゼットン』である!

 

 ゼボスの指示を受けたペダニウムゼットンは、落下してくるグビラを片腕の一払いで叩き飛ばし、グビラは地面に落下する。

 

 「あぁっ…グビちゃん!」 海羽はグビラを心配する。

 

 「どう言う事だ! まさかゼットンとキングジョーを融合させたのか!?」

 

 宏隆の問いかけにゼボスは不気味に笑いながら答える。

 

 「その通りだ! 我がゼットンに、ペダン星人からこっそり盗んだキングジョー、そしてベリアルの遺伝子を融合させて作ったのだ! ゼットン星随一のゼットン使いの我には、こういうのも容易い事なのだよ。」

 

 因みに何故ゼボスがベリアルの遺伝子を持っていたのか…それだけは不明である。

 

 ゼボスが得意げに説明している間にも、ペダニウムゼットンは横たわるグビラを踏みつけ始める!

 

 「あぁっ! やめて! 何て事をするの!?」

 

 海羽にゼボスは返答する。

 

 「フッフッフ…ゼットンの食事の絶望と恐怖心を生み出す対象、それは人間だけではないのだよ。」

 

 ゼボスは、ハイパーゼットン等が完全になるためのマイナスエネルギーを生成するために、深海で暮らしていたグビラを狙い始めたのである!

 

 「まさか、グビラを痛めつけて、それによって残りのマイナスエネルギーを!?」

 

 ムサシもそれに早く勘付くが、そうしてる間にもペダニウムゼットンはグビラを踏みつけたり殴ったり等して痛めつけて行く。

 

 「させるかよ!」

 

 アスカが変身するためにリーフラッシャーを取り出そうとするが、ペダニウムゼットンは即座に頭部の角から赤い電撃光線を放ち、それが地面に当たって発生した爆発により、アスカをはじめ一同全員吹っ飛ぶ!

 

 

 他に伏せた状態で、グビラの悲痛な叫びとも取れる鳴き声を聞いている海羽は、再び変身を躊躇い始める…。

 

 ハートフルグラスを手に取るものの、グビラを助けたいという気持ちと、トラウマにより発生する返り討ちに遭うんじゃないかという気持ちの狭間におり、なかなか変身に踏み込めない…。

 

 (どうしよう…。 でも、このままじゃ、グビちゃんを見殺しにしちゃう…!)

 

 

 「そろそろいいだろう。 やれ!」

 

 海羽が戸惑っている間にも、ゼボスの指示を受けたペダニウムゼットンは、グビラを蹴り転がした後、トドメを刺そうと両腕を突き出して火球・ペダニウムメテオのチャージを始める!

 

 

 全てを燃やすのではないかという程大きな火球が発射され、とうとうグビラは焼き殺されるのか!?

 

 

 (グビちゃん…!) 海羽も、後悔と共に半分諦めかけ、強く目を瞑る!

 

 

 その時、何か鈍器のようなモノがペダニウムゼットンを殴りつけ、それにより火球のチャージが弱まる。

 

 「や〜っ!!」

 

 更にその隙に、何者かがペダニウムゼットンの足元にタックルをし、それによりバランスを崩したペダニウムゼットンは転倒してしまう。

 

 

 「…何…?」

 

 突然起こった出来事。海羽はとりあえずゆっくり瞼を開けてみると、一同は上を見上げて驚愕していた…!

 

 「なんだよアレ…。」 アスカの言葉により、海羽も同じ方を恐る恐る振り向く。

 

 

「海羽さん!」 「大丈夫ですか!?」

 

 現れたのは、いずれもかつて共通の敵との戦いを通じて海羽と交友を深めた怪獣『鬼怪獣オニオン』と『わんぱく怪獣タイショー』である!(番外編「眞鍋海羽物語(ストーリー)如月〜きさらぎ〜」、第18話「可能性の瞳」参照)

 

 先程ペダニウムゼットンを殴ったのは、オニオンの武器の棍棒である。

 

 海羽「オニオン君…タイショー君!」

 

 友達の怪獣と知った瞬間、海羽は嬉しそうな表情になる。

 

 

 「なんだ? あの子、あの二体とも仲良いのか?」

 

 「あぁ。いずれも海羽ちゃんが助けた怪獣だ。」 「オニオンの時は私も一緒だったな。」

 

 アスカの問いかけにムサシとジュリは答える。

 

 

「たまげたなぁ…。 でも、彼女ならハネジローとも仲良くなれるかもな。」

 

アスカはそう呟いた。

 

 

 「海羽の奴…やっぱ本当に凄いんだな。」 「素敵です! 例え相手が何でも、分け隔てなく仲良くなれるなんて!」

 

 宏隆は呆気に取られ、ひかるは感激する。

 

 

 「しかしタイショーも、何故また地球に来たんだ!?」

 

 ヒカルの問いかけにタイショーとオニオンはペダニウムゼットンと交戦しながら答える。

 

 「久々に海羽さんに会いたくて、地球に遊びに来たんです!」 「そしたら、なんだかとんでもない事になっていて…!」

 

 どうやら二体は、偶々地球に遊びに来た所に今回の事件に遭遇したみたいである。

 

 また二体は、海羽がグビラと仲良くなっている事も知っていた。

 

 「それに、この怪獣(グビラ)も、海羽さんの友達なんでしょ?」 「それなら、僕たちも守りたいんです!」

 

 

 「…そこまでしてくれるの…?」 申し分なさそうに問いかける海羽に、二体は健気に答える。

 

 「何言ってるのですか! 海羽さんの友達は、僕たちの友達でもあります!」 「それに、以前助けてくれた恩返しもしたくて…!」

 

 「オニオン君…タイショー君…。」 二体の言葉に海羽は嬉しさで目が潤み始める。

 

 

 「フンッ! 何が友達だ! ペダニウムゼットン、やれ!」

 

 ゼボスは冷徹にも、鼻で笑い飛ばしながら指示を出す。

 

 ペダニウムゼットンは、先陣を切って突っ込んで来たタイショーを腕の一払いで突き飛ばし、続けて突っ込んで来るグビラを足蹴りで吹っ飛ばす。

 

 次にオニオンの振り下ろした金棒を右腕で受け止め、腹部に左足蹴りを打ち込んで後退させる。

 

 オニオンとタイショーは同時に突っ込むが、ペダニウムゼットンはそれぞれ二体の首根っこを片手で掴んで受け止めると、そのまま持ち上げて放り投げる!

 

 ペダニウムゼットンは三体の周囲をテレポートで移動しながら赤いレーザーや電撃を撃ち込んで行く!

 

 光線や電撃の雨あられは三体の周囲を爆炎で包んで行き、やがて三体は大ダメージを受けてダウンしてしまう!

 

 オニオンとタイショー、そして傷ついたグビラはペダニウムゼットンに立ち向かうが、圧倒的な力により劣勢になって行く…!

 

 

 「オニオン君たちが危ない…でも…。」

 

 友達の危機! しかし、トラウマに支配されている海羽は、ハートフルグラスを震えた手で握りながら途方に暮れていた…。

 

 そんな海羽の元に、アスカは歩み寄る。

 

 「アンタ、結構スゲー奴なんだな。」

 

 「ぃ…いや…そんな…。」

 

 「あれだけ怪獣と仲良くなれるなんて、出来る奴はそんなにいないんだぜ。」

 

 「でも…。」

 

 

 続けてヒカルとショウが歩み寄る。

 

 「誰だって、向き合いたくないものはある。 怖い事だったり、辛い事だったり…。 だが、人間にはそれを吹き飛ばす力がある。」

 

 「限界を超える、それが人間だからな。」

 

 

 「そうだ。 そして、その限界を超えた時、初めて見えるものがある。」

 

 

 ヒカルとショウ、そしてアスカの後押しを受ける海羽は、重い顔を上げ、傷つきながらもペダニウムゼットンな立ち向かうオニオン達を見つめる。

 

 力及ばず打ちのめされているにも関わらず、自分やグビラのために奮闘している二体を見て、海羽は何かを感じ始めたのか、ハートフルグラスを持った手を震わせながら徐々に立ち上がり始める。

 

 

 友達が不利ながらも頑張ってくれている。 なのに、ウルトラマンでもある自分は何を過去に囚われて怖気付いているのだろうか? …と言い聞かせながら。

 

 

 まだ恐怖は残っており、涙目になっているが、海羽は目を覆う涙の幕を突き抜けるような凛とした視線を敵に向ける。

 

 「忘れてたわ…私、ウルトラウーマンだもんね…。 目の前に…守りたいものがあるのなら、行かなくちゃ!」

 

 その喋りには、いつもの明るさが戻っているようであった。

 

 

 遂に決心を固めた海羽は、一回瞬きをし、一筋の涙を頬に伝わせながらハートフルグラスを突き出す!

 

 「今は、あなた達だけを守りたい!」

 

 海羽は、涙を散らしながら一回転した後ハートフルグラスを上に挙げ、目に当てる。 その姿は、華奢な体に反していつもより凛としているようであった。

 

 赤とピンクの光に包まれ、やがて『ウルトラウーマンSOL(ソル)』へと巨大変身が完了した海羽は、気合いの声を上げる!

 

 「キュートでパワフルなタフガール・ウルトラウーマンSOL(ソル)、爆現!!

 

 

 一方オニオン、タイショー、そしてグビラは、ペダニウムゼットンの圧倒的な強さにより遂に反撃も出来ない程に弱っていた。

 

 「さて、三匹まとめて灰にしてしまいな!」

 

 ゼボスの指示を受け、ペダニウムゼットンは再びペダニウムメテオのフルパワーチャージを始める!

 

 もうここまでかと悟りながらも、オニオンとタイショーはグビラを守るように腕を広げ、顔を横に背ける。

 

 

 「やめなさ〜い!!」

 

 その時、叫びとともにソルが体当たり技『ソリッドダイブ』で突っ込み、更にそれと腕をクロスさせての電撃チョップ『ライトニングハンド』を重ねた荒技を叩き込む!

 

 相手が小柄ながらも、ソルの強烈な一撃を受けたペダニウムゼットンは、爆発と共に火球のチャージが止まると同時に地面に倒れる。

 

 

 ソルは着地した後、腕や脚などを数回払いながら立ち上がり、オニオンとタイショーは嬉しそうな表情でソルの後ろ姿を見つめる。

 

 「海羽さん…。」 「来てくれたのね。」

 

 

 やがてソルは、オニオン達の元に歩み寄り、そして三体まとめて抱き寄せる。

 

 「みんな…ありがとう…。」

 

 そう言いながら目から緑の粒子状の涙を流していた。 オニオンとタイショーも、感謝の意も込めて抱き返す。

 

 ソルはそのまま、三体に包み込むように回復光線『リライブ・フォース』を浴びせる。

 

 

 (あの赤いオッサンと白いお猿さんは、もういなくなったんだもん…。 だから、恐れる事なんて、何も無いもんね…。)

 

 心でそう呟く海羽。ハヌマーンはともかく、レッドマンに対してはかなり辛辣な呼び方をしてしまっている(笑)

 

 

 先輩ウルトラマン達の後押し、そして友達を守りたい一心で、トラウマを乗り越えて変身した海羽。そんな彼女をウルトラ戦士達や、宏隆とひかる、そして真美も嬉しそうな表情で見つめていた。

 

 

 「あの小娘共々、やってしまえ。」

 

 そう言いながら指を鳴らすゼボス。 それと共に、何かが無数のリング状の光と共に転送される。

 

 現れたのは、一見普通のゼットンだが、体型は太めであり、角がプヨプヨしており、体色も灰色っぽく、鳴き声も「ブモー」である。

 

 所謂かつてバット星人が引き連れ、ウルトラマンジャックと戦った『宇宙恐竜ゼットン二代目』に酷似している。

 

 「見た目はブサイクになってしまったが、強さはかつてジャックと戦った個体と同等だ。 正に鬼に金棒。 フフフ…。」

 

 これから先はこのゼットンを、仮に“二代目ゼットン”と呼んで行こう。

 

 

 ペダニウムゼットンも既に立ち上がっており、まだ三体を回復させているソルにペダニウムメテオを浴びせようとチャージを始め、二代目ゼットンも両腕を突き出して火炎・ゼットンナパームを発射し始める!

 

 悪魔の火炎は高原を破壊して行き、それによりソルも集中が途切れそうになる…!

 

 

 「俺も行くぜ!」

 

 アスカはそう言うと前に出て、変身アイテム・リーフラッシャーを手に取る。

 

 「ダイナー!!」

 

 (ウルトラマンダイナ登場BGM)

 

 アスカは叫びながらリーフラッシャーを斜め上に突き出す!

 

 すると、リーフラッシャーの発光部分が展開し、クリスタル部分から眩い光が放たれてアスカを包み込む。

 

 やがてその光の中からメタル状態のダイナが右拳を突き出して現れ、巨大化するにつれて赤、青、銀と色が付いて行き、変身が完了する!

 

 

 『ウルトラマンダイナ(フラッシュタイプ)』は、光の中から飛び出て現れると同時に二代目ゼットンに飛び蹴りを叩き込み、次はその反動を利用してペダニウムゼットンに飛びかかり、渾身のパンチを顔面に叩き込む!

 

 ペダニウムゼットンはその部位が爆発すると共に後退し、同時に火球のチャージも止まる。

 

 

 着地して雄々しく立つダイナ。 ちょうどグビラ達の回復が終わったソルは、そんな伝説の英雄の背中を見つめる。

 

 「上等だぜ! 後輩。」 ダイナは振り向いてそう言うと、ソルにサムズアップを向けた。

 

 「うふ…イエイ!」 ソルは嬉しそうにピースを返した。

 

 

 …もしかするとダイナ(アスカ)は試していたのかもしれない。ソル(海羽)の心の強さを…。

 

 彼自身も、これまで勝って来れたのは自身、及びスーパーGUTSを始めとする共に戦った人々の強さのお陰でもあるのだから。

 

 「君だけを守りたい…その気持ちで恐怖を超えた。 凄いよ海羽ちゃん。」

 

 真美も満面な笑顔でそう言った。

 

 

 ペダニウムゼットンと二代目ゼットンは、ゼボスからの指示を受けたのか、それぞれダイナとソルに、地響きを立てながら向かって行く!

 

 「やってやるぜ!」 「こっちは任せて!」

 

 ダイナとソルも構えを取った後、それぞれペダニウムゼットンと二代目ゼットンに向かって走り始める。 それぞれの戦いが始まった!

 

 

 (ウルトラマンダイナ戦闘BGM)

 

 

 ダイナはペダニウムゼットンに駆け寄ると同時に右足蹴りを腹部に、続けて右拳のパンチを喉元に打ち込み、その後跳躍しながらの回し蹴りを頭部に叩き込む!

 

 打撃が決まる度に、その部位から小さい爆発と共に火花が飛び散る。

 

 ペダニウムゼットンも負けじと反撃を始め、突っ込んで来るダイナの胸部を右手で押さえて勢いを止め、続けて左手のパンチを打ち込んで後退させ、更に右フックを叩き込んで後退させる。

 

 更に追い打ちをかけようと接近するペダニウムゼットンに、ダイナは即座に腹部に右足蹴り、連続パンチを続けて打ち込み、更に右肘を腹部に打ち込んだ後、大きく跳躍しての飛び蹴り『フラッシュキック』を胸部に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 “ダイナミック”と“ダイナマイト”が名前の由来でもあるダイナ。正にその名前に恥じない豪快な格闘戦でペダニウムゼットンと互角に戦って行く。

 

 

 一方のソルは、若干体格差がありながらも、二代目ゼットンに果敢に立ち向かう。

 

 二代目ゼットンはパンチやキックを放って行くのだが、ソルはそれを身軽にかわしながら「エイ、エイ」という掛け声と共にキックやチョップを打ち込んで行くが、一瞬の隙を突かれて二代目ゼットンの左フックを右の二の腕辺りに喰らって後退する。

 

 「流石はゼットンの仲間ね。 でも、私には心強い仲間もいるんだから!」

 

 そう言いながらソルは、二代目ゼットンの右フックを、前後180度開脚しながらしゃがんでかわし、その隙に待ち構えていたオニオンが棍棒で殴りつけ、怯んだ所にタイショーが背後から膝の関節部を蹴る事で膝カックンをしてバランスを崩す。

 

 「ソリッドアイアンヒーップ!」

 

 ソルはバランスを崩した二代目ゼットンに、赤とピンクの光エネルギーを纏った尻の打撃技『ソリッドアイアンヒップ』を跳躍して繰り出し、それを胸部に喰らった二代目ゼットンは爆発と共に地面に倒れる。

 

 二代目ゼットンはすぐさま立ち上がり、顔の発光部位から光弾を放って反撃に出るが、今度はグビラがそれを鼻先のドリルで受け止め、逆回転させて上空に打ち上げる。

 

 打ち上げられた光弾は上空で花火となって爆発し、グビラは自慢げに拍手のように前足を叩く。

 

 「グビちゃん、お見事!」 ソルはグビラに首を傾げながらピースを向ける。

 

 二代目ゼットンはめげずに今度はゼットンナパームを放つが、グビラは再度ドリルを回転させながらそれらを弾き返して行き、二代目ゼットンは逆に被弾してしまう。

 

 「それーっ!」

 

 怯んだ二代目ゼットンに、グビラのドリル『ダイハードドリル』での体当たりと、ソルの飛び蹴りが同時に炸裂する!

 

 

 相手はゼットンの亜種だけあってかなり強力。 しかし、友情を育んだ仲間が一緒のソル(海羽)は、それに負けない強さで戦う。

 

 

 ゼットン二代目は最後の手段に出たのか、体から電流を放ちながら向かって来る。

 

 対するソルも、再度両腕にライトニングハンドを纏って向かい、両者、色とりどりの電流を放ちながら激しくパンチやチョップの欧州を始める。

 

 互いに打撃を決めたり殴られたり、感電したりさせたりなど、一進一退の攻防を繰り広げている。

 

 

 一方のペダニウムゼットンと戦うダイナ。互いに拳と拳をぶつけたり、フックを素早くしゃがんでかわしたりなどして激しいパンチの応酬を繰り広げ、やがてダイナはペダニウムゼットンの右フックを左腕で、左ストレートを右手で掴んで受け止め、そのまま両者は押し合って力比べを始める。

 

 やがてダイナは、相手の右腕に左膝蹴りを打ち込んで離し、続けて左手のチョップを相手の左腕に打ち込む事で一旦ペダニウムゼットンを自身から引き離した後、右ストレートのパンチを顔面に打ち込み、更に横回転しながら飛び上がって足底で蹴る技・ローリングソバットを腹部に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 (BGM終了)

 

 

 ダイナは一旦バック転をして距離を取った後、ペダニウムゼットン目掛けて右腕を突き出してくさび形の光弾『ビームスライサー』を放つ!

 

 しかし、ペダニウムゼットンは即座に両腕の肘から先を立てる構えでゼットンシャッターにも似たバリアを張って、手裏剣状の光弾をはね返す。

 

 「何ぃ!?」

 

 ダイナは続けて八つ裂き光輪に似た光のカッター『ダイナスラッシュ』、三日月状の光のカッター『フラッシュサイクラー』を放つが、いずれもバリアで防がれてしまう。

 

 

 ダイナが動揺している隙に、ペダニウムゼットンはテレポートでその場から姿を消す。

 

 辺りを見渡すダイナ。やがてペダニウムゼットンはダイナの背後に現れ、ダイナは即座に振り向きざまに回し蹴りを放つが、テレポートで避けられる。

 

 その後もペダニウムゼットンはダイナを挑発するように、ダイナのパンチやキックをテレポートで避けては傍に現れるを繰り返し、やがてダイナの背後に現れ、それに気づいて振り向いたダイナを右フックで吹っ飛ばす。

 

 

 ペダニウムゼットンは、今度はテレポートを繰り返しながらダイナに赤いレーザーや電撃、火球を連続で浴びせて行く!

 

 ダイナはそれらをチョップで弾いたり、受け身やバック転などをして回避して行くが、次々と襲って来る飛び道具に徐々に被爆して行く…!

 

 

 キングジョー、ゼットンと、最強クラスの怪獣同士の融合だけあって、キングジョー譲りの硬い装甲に、ゼットンの特殊能力を併せ持っているペダニウムゼットンは、これまで様々な戦いをくぐり抜けて来た伝説の英雄・ダイナ相手にも遅れを取らない強さだった!

 

 

 二代目ゼットンと組み合っているソルも、ダイナのピンチに気づく。

 

 「はっ、ダイナさんが! ハイスピンサンダー!!」

 

 ソルは二代目ゼットンと組み合ったまま『ハイスピンサンダー』を発動させ、赤とピンクの電撃を流し込む!

 

 感電して怯んだ二代目ゼットンは、幾多もの小さな爆発で火花を散らしながらソルから離れる。

 

 

 「みんな! 行くよ!」 ソルの呼びかけにグビラ、オニオン、タイショーは返事をする。

 

 まずソルが両手にライトニングハンドを纏い、「それっ!」という掛け声と共にそれを光弾にして投げつけ、グビラがそれをドリルでキャッチする。

 

 グビラはドリルの逆回転で光弾を大きくしながら体を振るって投げつけ、タイショーがそれをキャッチする。

 

 「行くぞ〜!」 

 

 タイショーは野球の投球のフォームでそれを勢いよく投げつけ、その先で待ち構えていたオニオンが、野球のバッターの如く棍棒を振るって打ち上げる!

 

 “カキーン”

 

 気持ちのいい打撃音と共に、プロ野球選手もビックリのホームランを打ち上げたオニオン! 打ち上げられた光弾は、見事上空のペダニウムゼットンに命中して爆発する!

 

 「よしっ!」 「やったー!」 「イェーイ!」 オニオン、タイショー、そしてソルは喜びの声を上げ、グビラも再び拍手をするような仕草をする。

 

 戦いを見守っていた真美たちも、拍手と共に歓声を上げる。

 

 「海羽ちゃんとグビちゃん達、凄い!」 真美は満面の笑みで小さく拍手しながら言った。

 

 「見たか!私達のウイニングショット!」

 

 ソルは得意げにそう言いながら、首を傾げてピースを向ける。 だが、その直後にカラータイマーが鳴り始める。

 

 今回は回復技も使ったため、いつもよりエネルギーの消費が早いみたいである。

 

 

 「上出来だぜ後輩!」 ダイナは跳ね起きで立ち上がった後、そう言いながらソル達にサムズアップを向ける。

 

 ソル達の連携技を受けて落下したペダニウムゼットン。ダイナはすかさず、腕を十字に組んで必殺光線『ソルジェント光線』を放ち、それを胸のカラータイマー状のコアに受けたペダニウムゼットンは、オレンジ色の光を発生させながら爆発する!

 

 ペダニウムゼットンは、胸のコアを破壊されながらも立ち上がり、テレポートをしようと一定の動作をするが、その場から姿を消す事は出来ない。 どうやら破壊されたコアはテレポートやバリアなどの特殊能力の中枢だったみたいだ。

 

 「あとはこっちのもんだぜ!」

 

 そう言って気合を入れたダイナは、再びペダニウムゼットン向かって走り始める。

 

 

 「よっしゃ! じゃあこっちもそろそろやっちゃうよ〜!」

 

 ソルもそう言って気合いを入れると、両腕にライトニングハンドを纏って精神統一をするようにゆっくりと構えを取る。

 

 あどけなく微笑んでいるように見える顔の特徴でもある、丸く大きい目からの鋭い視線は、二代目ゼットンの急所をしっかりと見据えていた。

 

 やがて二代目ゼットンは両手を突き出してゼットンナパームを一斉発射し出し、ソルはそれを合図に、素早くしゃがんでそれをかわすと同時にスライディングしながら突っ込む!

 

 「この距離なら、バリアは張れないわ! ソリッドライトブレーイク!!」

 

 ソルは渾身の叫びと共に、スライディングしながらすれ違いざまにライトニングハンドで斬りつける『ソリッドライトブレイク』を決める!

 

 胴体を鳩尾部から横真っ二つに斬られた二代目ゼットンは、その部位から光を放ちながら動きが止まる。

 

 更にソルは振り向きざまに右拳を突き出して必殺光線『ミスティックシュート』を放ち、それを浴びた二代目ゼットンは大爆発して砕け散った!

 

 

 「よしっ!」 「やったー!!」 宏隆とひかるを始め、真美達一同は喜びの声を上げる。

 

 「えへへ…イエイ!」 ソルも真美達の方を振り向き、ピースマークを向ける。

 

 そしてオニオン、タイショー、グビラとハイタッチを交わす。

 

 「グビちゃん達も、ありがとね!」

 

 トラウマを乗り越え、友達である怪獣と共に見事強敵を倒したソル。正に勇気と友情の大勝利である。

 

 「あっ…ふぁぁ~…。」

 

 だがその時、ソルの体が青白く静かに光り始め、やがて力の抜けた声と共に光の粒子状となって姿を消す。どうやらちょうどエネルギーが切れて活動の限界が来たみたいである。

 

 

 真美達、そして等身大になったオニオンとタイショーは、早速変身が解けた海羽の元に歩み寄ると、そこには大の字で横になっている海羽がいた。

 

 「おい、大丈夫か?」 「「海羽さん。」」

 

 宏隆とオニオン&タイショーが声を掛けると、海羽はゆっくりと瞼を開いて呑気に返事する。

 

 「えへへ…久しぶりにハッスルしちゃった…。」

 

 疲れながらもどこか満足げな表情の海羽を見て、一同は安心する。

 

 

 残った敵・ペダニウムゼットンは、バリアとテレポートを失いながらも、持ち前の怪力でダイナ・フラッシュタイプと互角に渡り合っている。

 

 やがて両者は、互いに同時に放ったパンチが胸部に当たって後退する。

 

 

 「こっちも決めるぜ!」

 

 ダイナ(アスカ)はそう言うと、カラータイマーの前で両腕を組んで、斜め上に広げてから下に降ろす!

 

 すると、頭部のダイナクリスタルから溢れた赤い光がダイナの体を包み、やがてそれが消えると同時に姿が変わる!

 

 現れたのは、赤と銀で構成された筋肉質な体が特徴のパワーに秀でた形態『ウルトラマンダイナ(ストロングタイプ)』である!

 

 

 (BGM:ウルトラマンダイナ)

 

 

 ムサシ達ウルトラマンは既に安心の表情になっており、真美達はダイナの筋肉質な体に見入っている。

 

 「コレはなかなか凄い筋肉だな。」 「よーし! そのままやっちゃえー!」 「ぶちかませー!!」

 

 特に、格闘技をしている宏隆と、馬鹿力を持つひかるは、より興奮しているようであった。

 

 

 ダイナはファイティングポーズを取ると、ペダニウムゼットンに向かって行く!

 

 ペダニウムゼットンは火球、電撃を放って迎え撃つが、ダイナはそれをパンチやチョップ等で弾きながらなおも前進する。

 

 途中、何度か電撃が体に当たるが、自慢の筋肉によりほとんどダメージを受けない。

 

 ダイナは接近すると同時に一回転してパンチを腹部、続けて頭部に打ち込み、ペダニウムゼットンは殴られた部位から火花を散らしながら後退する。

 

 次にダイナは、向かって来るペダニウムゼットンを軽々と担ぎ上げて地面に叩きつける!

 

 ダイナはペダニウムゼットンを掴んで起き上がらせると、そのまま左横腹に右膝蹴りを2発打ち込み、続けて左フックを顔面に決めた後、ペダニウムゼットンの反撃の右腕のパンチを掴んで受け止めると同時に腹部に右脚蹴りを打ち込んで後退させる。

 

 ダイナの打撃が決まる度に、その部位から小さな爆発と共に火花が飛び散る。

 

 更にダイナは、跳躍して両足のドロップキックを繰り出し、それを胸部に喰らったペダニウムゼットンは爆発と共に大きく吹っ飛ぶ!

 

 

 「凄い力ね…。」 「ホント、惚れ惚れしちゃいます!」

 

 海羽はダイナ・ストロングタイプの力強さに圧倒され、ひかるに至っては完全に虜になってしまっている。

 

 

 立ち上がったペダニウムゼットンは、ダイナ向かって駆け寄り始め、ダイナも再度ファイティングポーズを取った後、右腕を大きく振り上げて駆け寄る。

 

 そして同時にパンチを放つ両者の腕が火花を散らしながら交差し、それぞれ拳が相手の顔面の元へ! これぞ“クロスカウンター”である!

 

 しかし、ダイナの拳はしっかり当たっている一方で、ペダニウムゼットンのパンチは届いていなかった…。 ダイナは相手の腕をレールにして、より深く、正確にパンチを打ち込んだのである!

 

 「よしっ!」 宏隆は思わずガッツポーズを取る。

 

 

 ダイナは、怯んだペダニウムゼットンの腹部に渾身の右拳の『ストロングパンチ』を叩き込み、それにより前屈みになった所ですかさず体を掴んで持ち上げパワーボムで地面に叩きつける。

 

 更にダイナはペダニウムゼットンの両足を掴み、そのまま『バルカンスウィング』で何度も振り回して放り投げる!

 

 地面に叩きつけられ、転がったペダニウムゼットンはふらつきながらも再び立ち上がるが、ダイナの豪快な攻撃の連続により完全にグロッキーとなっていた。

 

 

 今こそトドメの時である! ダイナは胸の前で両拳を合わせて発生させた気力を凝縮して、右パンチのアクションで放つ必殺技『ガルネイトボンバー(シューティングバージョン)』を繰り出す!

 

 超高熱の赤色破壊光弾はペダニウムゼットンの硬い装甲をもぶち抜き、体に大きな風穴が空いたペダニウムゼットンはそのまま大爆発する!

 

 辺りにはキングジョーのものと思われるスクラップの破片や、ゼットンのものと思われる赤い破片などが飛び散っていた。

 

 

 ダイナの勝利に一同は喜びの歓声を上げ、グビラも前足で拍手をする。 そんな中、ダイナは振り向いて海羽の方を見つめる。

 

 海羽は「ありがとう」と言わんばかりの輝かしい笑顔でピースを向け、それを見たダイナは一回頷いた後サムズアップを返す。

 

 

 変身を解いて一同と合流するアスカ。グビラは海に帰る事にした。

 

 「じゃあ、グビちゃん、また遊ぼうね!」

 

 そう言いながら海羽は元気よく手を振り、グビラも一回瞬きをする事で返事をする。

 

 グビラは近くの崖から海に飛び込み、泳いで帰り始める。

 

 「バイバーイ!」 海羽はなおも手を振りながら、見えなくなるまで見送った。

 

 

 グビラを見送った後、海羽は今度はアスカの方に歩み寄り、お礼を言う。

 

 「アスカさん、ありがとうございます。 私に勇気を引き出させてくれて。」

 

 「俺のお陰じゃねぇ。 友達を救いたい一心でトラウマを振り切ったんだろ? 間違いなくお前の強さだ。」

 

 「えへへ…。」

 

 アスカからそう返された海羽は、歯を見せて満面に微笑む。

 

 

 アスカは続けてこう言った。

 

 「勝利出来たのも、お前とあの怪獣達の友情のお陰でもある。 やはり育んで来た友情と、それによって芽生えた絆は裏切らないな。」

 

 

 「育んだ友情と、芽生えた絆か…。」 ひかるは感慨深そうに呟く。

 

 「きっとそれがあったから、ハルちゃんやリリカちゃん達と再会出来たのかもね。」

 

 「そして、今はその人達と協力し助け合っている。」

 

 「まだ、諦めるワケにはいかねーな。」

 

 真美、海羽、宏隆も徐々に前向きになって行く。

 

 

 「敵は強大だけどね…。」 海羽はトラウマを乗り越えたものの、今現在の敵の強大さからまだ少し不安があるみたいである。

 

 

 そんな海羽に、アスカはこう投げかけた。

 

 「もしまたくじけそうになったら、その時は俺の名前を思い出せ。 「俺はダイナミックなダイナ、ダイナマイトのダイナだ!」 とな。」

 

 「そうですね! ダイナミックなダイナ! ダイナマイトのダイナ! そして…大好きなダイナ!」

 

 「お? コイツ~。」

 

 アスカは海羽の額を軽く突く。 そしてアスカと海羽をはじめ、一同は笑い合う。

 

 

 「僕達も力を貸します!」 「出来る事は何でもするよ~!」

 

 「ありがとう。」

 

 オニオンとタイショーの心強い言葉も受けた事により、いつもの明るさが戻る海羽。

 

 

 「必ず、EXゼットンを倒そうぜ。」 「あぁ、今度は負けない。」

 

 「もう一度、希望を信じようか。」 「そうだな。まだ終わりじゃない。」

 

 ヒカルとショウ、ムサシとジュリも、それぞれ決心を固めていた。

 

 

 …一方、こっそりついて来ていた愛紗も、そんな彼らのやり取りを聞き、表情が同じながらも何やら感慨深そうに呟いていた…。

 

 「育んだ友情と絆…か…。」

 

 

 

 同じ頃、ゼットン星人ゼボスはペダニウムゼットンを使った最終段階が敗れ、救援として向かわせた二代目ゼットンも敗れた事を悔しがる。

 

 「おのれ…ウルトラマンダイナ、まさかあれ程の強さとは…。」

 

 だが、その一方でゼボスにはまだ余裕があるようであった。 先程の作戦で得たマイナスエネルギーにより、ギマイラは完全な力を得たからである。

 

 「ゼットン共も、完全まであと一歩手前まで来ている…明日早朝、ギマイラを放って一気に絶望と恐怖心を集めてやる…。」

 

 ゼボスはそう言うと、雄叫びをあげるギマイラを見上げながら、不気味に笑っていた…。

 

 

 果たして、ダイナと言う頼もしい仲間も参戦したウルトラ戦士たちは、ゼボスの野望を砕く事が出来るのだろうか…?

 

 

 (ED:君だけを守りたい)

 

 

 〈エピローグ〉

 

 一方、櫂が一人のプライベートを楽しんでいた霞ヶ崎はというと、ウルトラマンゼロが戦闘を繰り広げていた!

 

 相手はなんとゼットンである!(因みに姿はノーマル)

 

 どうやらゼボスは、潮風町以外にも各地にゼットンを放っていたみたいである。

 

 

 「ったくいきなり暴れやがって! 人の迷惑とかも考えろ!」

 

 「人様のプライベートの邪魔すんじゃねぇ!」

 

 ゼロと櫂は、それぞれ怒りのポイントは違えど、ゼットンを倒すと言う意思は一致していた。

 

 

 ゼロはゼットンと激しいパンチの応酬を繰り広げ、やがて一瞬の隙を突いて胸部に右足蹴りを打ち込んで後退させる。

 

 次にゼットンは左フックを繰り出し、ゼロがそれを両腕で受け止めた隙に右脚蹴りを繰り出すが、ゼロは即座にそれを両腕で防いだ後、ゼットンの胸部、腹部、頭部等と様々な部分に連続でパンチを浴びせ、更に跳躍して浴びせ蹴りを頭部に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 ゼットンはかつてウルトラマンを倒した程の強豪怪獣なのだが、やはり本来の強さに櫂の身体能力が加わったゼロは、それと互角以上に戦っていた。

 

 

 ゼロは腕をL字に組んで『ワイドゼロショット』を放つが、ゼットンはそれをゼットンシャッターで防ぎ始める。

 

 だがゼロは諦めず、光線を発射しているまま跳躍し、『ウルトラゼロキック』を繰り出す!

 

 少々無茶な戦法だが、必殺光線に、必殺キックの合わせ技の前にはゼットンシャッターもガラスのように砕け散り、同時に蹴りを喰らったゼットンは吹っ飛んで地面を転がる。

 

 ゼットンは尚も立ち上がり、今度はゼロ目掛けて一兆度の火球を連射し始める!

 

 ゼロスラッガーを手に持ったゼロは、それらを斬り裂きながら猛接近し始め、やがてスラッガーを合わせて『ゼロツインソード』にすると、それを風車のように振り回しながら火球を全て打ち消していく!

 

 「プラズマスパークフラッシュ!」

 

 ゼロは光の斬撃『プラズマスパークフラッシュ』を繰り出し、すれ違い様にゼットンを斬り裂く!

 

 横一文字に斬られたゼットンは、時間差でその部位に一筋の線を発生させ、やがて大爆発して消し飛んだ。

 

 

 「決まったぜ!」

 

 ゼットンを撃破したゼロはフィニッシュポーズを決めてそう言った後、その場に佇んで星が瞬く夜空を見上げる。

 

 「しかし、何故ゼットンなんかがいきなり現れたんだ…?」

 

 ゼロはふとある方角を振り向く。それは、あの潮風町へと続く方角だった。

 

 「何者かが、何処かで暗躍しているのだろうか…?」

 

 外部のウルトラ戦士に気付かれないように電磁網を張られている潮風町だが、ゼロは戦士の勘で僅かながら異変を感じ取っているようであった…。

 

 

 霞ヶ崎のゼットンを撃破したゼロ。しかし、恐らくゼボスは他にも各地にゼットンを放っているに違いない。

 

 きっと、それぞれの地でパトロールをしているウルトラ戦士達が迎え撃っているかもしれない…。

 

 

 To Be Continued…




 読んでいただきありがとうございます。


 実は、このゼボスとの激闘編、最初は中盤を作らない予定でしたが、コメント欄にてダイナの登場を待ち望んでいるコメントもあったという事で、急遽ダイナを本格参戦させる形で今回の中編を作成しました。

 アスカはサーガの時は若干大人びていましたが、今回のアスカの描写はダイナ本編当時も少し意識してみました。

 次回はゼボス率いるゼットン軍団との激闘のクライマックスを描く後編で、ダイナも活躍する予定です!

 また、海羽ちゃんがグビラと仲良くなった経緯は、現在制作中の番外編で描く予定なので、そちらもお楽しみに!


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


 因みに今回隠れたサブタイトルは『ウイニングショット』(ウルトラマンダイナ第5話)でした。


 あと余談ですが、私は『ウルトラマンタイガ』『ULTRA GALAXY FIGHT NEW GENERATION HEROES』が毎週の楽しみです!

 タイガはいよいよクライマックスに突入しそうですね。タロウの息子だけにとてもカッコよく、またパワフルなタイタス、トリッキーなフーマも魅力的で気に入りました!

 トレギアの今後の動きにも目が離せませんね。

 トライスクワッド及びトレギアも、いつか私の作品に登場させようかな?(ニヤリ)

 ギャラクシーファイトも、毎回大迫力のバトルにフォームチェンジと見所満載で、最近いよいよ佳境を迎え、なにより今日の配信でオーブ、エックス、ジード、ギンガ&ビクトリーが“ゼロの力を使うフォーム”になって大興奮です!(笑)


 では、失礼いたしました!


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第36話「心の扉を開けて」

みなさん、お待たせしました! 今年最後の投稿になります!


ゼボス率いる怪獣軍団との激闘の決着編であり、タイミングがタイミングという事で年末年始特別編という意味も込めて制作しました。

ハッキリ言って今回は、今年最後の投稿に相応しくてんこ盛りです(笑)


それでは、どうぞ!


 (OP:ULTRA BRAVE)

 

 

 アスカ・シン(ウルトラマンダイナ)の参戦、そして新田真美たちの友情を育んだ人たち(一部怪獣)との再会を通じて、心に若干心が動き始めたのか、失意だった渕上愛紗は体操座りで考え事をしていた。

 

 「育んだ友情と、それにより芽生えた絆。 そして希望…。 それらを忘れなければ、本当にいい方向に変われるのかな…?」

 

 そう言いながら、近くで眞鍋海羽や岡田友実が、幼稚園児ぐらいの子供たちと遊んでいるのを見つめていた。

 

 因みに子供達のまとめ役は、小学生の松坂裕太と佐久間裕である。

 

 他にも、笹崎春菜に怪我した右腕を再度診てもらっている佐藤宏隆、真美や八橋ひかるとも仲良くなり、話し合っている鬼怪獣オニオン&わんぱく怪獣タイショーやリリカなど…。

 

 気がつけば、今見える範囲でも生まれ続けている友情を眺めながら、物思いにふけていた…。

 

 

 その時、愛紗は近くで泣いている1人の幼稚園児ぐらいの女の子に気づく。

 

 一瞬躊躇ったが、辺りを見渡した後、その子に話しかける。

 

 「ねぇ、どうしたの?」

 

 優しく話しかける愛紗だが、女の子はまだ気づかない。

 

 「どうしたのよ…。」

 

 愛紗は再度声を掛けながら隣に座り、頭を撫でる。 気がついたら愛紗の顔には、本来の笑顔が戻りつつあるようであった。

 

 「ねぇ、好きな曲とかある?」 「…ヤギさんがお手紙読まずに食べちゃうやつ…。」

 

 愛紗の問いかけに、一旦泣き止んだ少女は答えた。

 

 「じゃあ、今からお姉ちゃんが歌ってみるから、聞いてみて。」 そう言うと愛紗は、呼吸を整えた後、少女の好きなその曲の最初の一文を歌い始める。

 

 それも、拳をつけながら演歌調に!

 

 「すごーい。」 少女は愛紗の歌唱力を褒める。 顔には無邪気な笑顔が戻りつつあった。

 

 「それじゃあ次、行くよ。」

 

 そう言うと愛紗は、再度同じ一文を、今度は目を閉じてオペラ調に歌い始める!

 

 実は、これが彼女の1番得意な歌唱法であり、その透明感のある伸びやかな歌声は少女の心を癒して行く。

 

 「すご〜い!」 少女はすっかり元気になり、拍手をしながら飛び跳ねる。

 

 「ありがと。」 愛紗は笑顔で再度少女の頭を撫でる。

 

 正に今ここに、新しい友情と絆が芽生えた瞬間であった…。

 

 

 元気を取り戻し、遊ぶ子供達の元へと駆けて行く少女を笑顔で手を振りながら見送った愛紗は、その直後にスマホの着信音に気づき、通話に入る。

 

 「もしもし? …あぁ、お母さん?」

 

 

 同じ頃、ゼットン星人ゼボスは、翌日の計画を着々と練りつつあった。

 

 「恐らくソルは倒すのは容易いだろうが、あの熱苦しい癖に冴えているダイナって奴が目障りだな…。 しかし、それに対する対策はもう既に用意してある。 それでダイナを引きつけた隙に、ギマイラを放って一気に残りのマイナスエネルギーを集めてやる…。」

 

 どうやらダイナという頼もしい仲間が来たものの、まだ油断出来ないみたいである。

 

 

 場所を地球に戻して、同じく真美達の様々な触れ合いを見つめるウルトラ戦士達。その時、ジュリは1人の中学生ぐらいの少年に気づく。

 

 目が止まったキッカケは、恐らくその少年が連れている犬であろう。 かつて自身は、愛犬のために体を張った少女によって心を動かされた事があるのだから…。

 

 「その犬は、君の相棒なのか?」

 

 そっと声を掛けるジュリ。少年は相手が見ず知らずの女性ながらも、ハキハキと答える。

 

 「はい。 ジャスティスは、僕の相棒!」

 

 愛犬の名前を聞いた瞬間、ジュリは少し目を見開いて驚くような表情になる。 なにしろ自分のウルトラマンと同じ名前なのだから…。

 

 以前、ジュリが出会った少女の愛犬の名前は“コスモス”だったので、そう考えるとこれ程奇遇な事は無いであろう。

 

 「ジャスティスと一緒だから、僕はこんな状況でも、希望を捨てず、前を向けるのです。」

 

 「…そうか、頑張れよ。」

 

 自身のウルトラマンと同じ名前の愛犬をパートナーに持つ前向きな少年に、ジュリはふと笑顔を見せながら声を掛ける。

 

 

 ジュリは、歩み寄って来た春野ムサシに声を掛ける。

 

 「この地球の人類も、やはり捨てたものではないな。」

 

 「うん。みんな諦めず、夢や希望を捨てずに頑張っている。 僕らもそれに応えないとね。」

 

ムサシとジュリは決意も込めた笑顔で見つめ合う。

 

 

一方礼堂ヒカルとショウは、スマホで音楽を聴いている女子高生の集まりに声を掛ける。

 

因みに見ず知らず同士のため、あらかじめVチョコを渡した上でという事を付け加えておこう。

 

「何を聴いてるんだい?」

 

「King & Queenの曲です。 この曲を聴いてれば、どんな時も元気を貰えるから。」

 

因みに“King & Queen”とは、この世界の地球の日本で人気のアイドルグループの事である。

 

曲の影響もあってか、明るめに答える女子高生を見て、ヒカルは感慨深そうに呟く。

 

「“歌はみんなを元気にする”…千草もあの時、そう言いながら歌でみんなを励ましてたっけ。」

 

「千草…お前の幼馴染のあの子か?」

 

「あぁ。それに、それを中継したのは健太だし、美鈴も現場で皆を励ましていた。 人間どんな時も、仲間と協力し合える力を持っている。」

 

「そうだな。 それに怪獣も例外じゃない。 だよな、シェパードン。」

 

ショウはそう言いながら、地底聖獣シェパードンのクリスタルスパークドールズに語り掛ける。 シェパードンのスパークドールズも、唸り声と共に応えているようであった。

 

 

その時、ウルトラ戦士達は一斉に何かに気づく。 それは、変身不能にまでエネルギーを失っていた筈の変身アイテムが、ほんの微かだが光を放ち始めている事だった。

 

「これは…?」

 

ジュリをはじめ、全員変身アイテムを手に取って見つめる。

 

「僕たちの築いて来た友情が…育んで来た絆が…再び力を与えてくれているのか?」

 

真美&海羽とリリカ、真美と春菜&友実、真美と裕&裕太、ムサシと獏田、海羽とオニオン&タイショー&グビラなど、様々な者同士が築いて来た友情、そしてそれにより育んで来た絆。 そして今でも新たに友情が生まれつつある。

 

それに気づいた事により、その友情や絆を感じたウルトラマン達も力を取り戻しつつあるのではないかとムサシは感じる。

 

実際、彼らを絶望的状況なこの場で会わせたのも、彼らが紡いで来た心の絆のお陰なのかもしれない。

 

 

「いや、それだけじゃないな。」

 

ウルトラ戦士4人は、そう言ったこの中で1番の先輩戦士・アスカの方を振り向く。

 

「君達は一度、強大な敵を前に限界を感じ、諦めかけたはずだ。 でも、そういう友情や絆を感じた事により希望を信じ、今再び立ち上がろうとしている。 光の力は、そんな君達の強さに応えて戻りつつあるんじゃないか?」

 

正に核心を突いた発言だった…! アスカの発言を聞いた4人も、何か心に来るものがあるのか、再び変身アイテムを見つめる。

 

改めて見ると、微弱ながらも溢れ出るその光は、正に再び這い上がろうとする自分達に呼応するかのようであった。

 

「確かに、敵は強大だが、まだ限界を決めるには早いと思った。」 「俺たちはこれまでも、様々な戦いを潜り抜けている。」 「そしてその中に、確かに諦めない人間の姿もあった。」 「信じてくれる人がいる限り、僕たちウルトラマンは負けないからね。」

 

ヒカル、ショウ、ジュリ、そしてムサシと、前向きな言葉をかける。

 

 

後輩達の逞しさを感じたアスカは、少し安心したような表情になり、かつて別世界でゼロと共に戦った青年も勇気づけた言葉をかける。

 

「限界を超えた時、初めて見えるものがある。 掴み取れる力が。」

 

 

ウルトラ戦士達が再び立ち上がる決心を固めた頃、愛紗は先程慰めた少女が元気に遊んでいるのを見つめながら、1人の女性と話していた。 その少女が通う保育園の先生である。

 

「本当にありがとうございます。おかげであの子、すっかり元気になっちゃって。」

 

「いえいえ、私はただ、放っておかなかっただけですから。」

 

「実はあの子、女の人とあまり話さなかったんで…うちの保育園では男性の先生に面倒を見てもらう形で元気に過ごしてたんです。 恐らく、今回の事件で再び恐怖や悲しみを感じてしまったんでしょうね…。」

 

「…それはと言いますと…?」

 

「…先月、お父さん死んだんです。 怪獣事件で。」

 

重い口を開くように真実を打ち明ける女性。 因みにもし竜野櫂がこれを聞くと、烈火の如く怒りながら本格的に怪獣殲滅を始めるであろう(汗)

 

「…そうですか…。」

 

真実を聞いた愛紗は、何か心に感じたのか、胸にそっと手を当てる。

 

 

そこにひかるが笑顔で歩み寄って来る。

 

「とても綺麗だったよ。 さっきの歌声。」

 

「…私の特技の一つ。 絶望のあまり忘れてたわ。」

 

愛紗は高校では演劇部だった経験から歌が上手く、その歌声に加え美貌を見込まれてスカウトされた事から、現在は大学生活の傍ら、ミュージカルの舞台にチョイ役で出演したりしている。

 

実際、麟大の女子生徒の中では真美とタメを張るぐらい美しい歌声とも言われている。

 

「私、知ってたよ。 愛紗ちゃんは本当は優しい子だという事を。」

 

「ありがとう…。 それに、思えば私に優しくしてくれる人も、周りを見ればいっぱいいたわ。 ヒカルさんは初対面にも関わらず私にフレンドリーに接してくれたし、真美さんや海羽さん、それにひかるちゃんとかも、普段から私を気にかけてくれるし…。」

 

愛紗は改めて思い始めていた。自分はこんなにもたくさんの人から愛されているという事を。

 

「私も、今回の件を通して改めて感じたわ。 ヒカルさんのお陰で、苦手だったバック駐車も出来るようになったし、愛紗ちゃん達のお陰で自分の良さにも気づいて自信を持てるようになったし。」

 

 

 二人が互いに前向きになって行く中、愛紗はある話を切り出す。

 

「…さっきね…お母さんから電話が来たの。 「おじいちゃんの家の件は、こちらでなんとかするから心配しなくていいよ」って。」

 

「そう…。」

 

「お父さんが大工さんとコネがあるし、それにおじいちゃんも、保険が降りたからそのお金で生活出来るって…。」

 

「良かったね、愛紗ちゃん。」

 

ひかるは安心の意も込めた満面の笑みを浮かべる。

 

「…私、何一人で悲しんでたんだろう。」 愛紗もうっすらと笑顔が出る。

 

「愛紗ちゃんも、私も、そしてここにいるみんなも、支え合える仲間がいる。 だからこんな状況でも望みを捨てずに頑張れる。」

 

 ひかるは引き続き話しながら、先程愛紗が慰めた少女の方に視線を向ける。

 

 「あの子も、愛紗ちゃんが支えてくれたから笑顔になれた。 たとえ同じ境遇の人同士でも、互いに支え合って行けば絶えず笑顔は守れる。

 

 忘れないで。私達、どんなときも、決して一人じゃない。 きっとマコちゃんもそう思っているわ。」

 

 ひかるはそう言いながら、ギマイラによって『人間怪獣ラブラス』に変えられてしまった友人『道枝真』の事も信じる。

 

 ひかるの言葉に、遂に心を動かされた愛紗は、嬉し涙を一拭いすると、立ち上がって振り向く。

 

 その顔は、さっきまでの暗さは無く、いつもの明るい愛紗に戻っているようであった。 正に、曇天が一気に、雲一つ無い青空に晴れ渡ったように。

 

 「私、ウルトラマンを信じるわ。 平和のため、そして、私やあの子みたいな境遇の人を増やさないために…。」

 

 「そうだね。 ウルトラマンさん達も、再び立ち上がろうとしている。 私達も前を向いて、それを支えなくちゃ。」

 

 ひかるも満面の笑みで立ち上がり、愛紗とピースを向け合う。

 

 

 ひかると愛紗のやり取りを見ていた真美、海羽、宏隆も、嬉しそうな表情だった。

 

 「愛紗の奴、どうやらいつもの調子を取り戻したみたいだ。」

 

 「そうね…。 みんな、前を向こうとしている。」

 

 「まだ、希望は断ったわけじゃないもんね!」

 

 宏隆、真美、海羽とそう言った後、三人は愛紗たちの元へ。

 

 

春菜&友実、獏田、裕&裕太、オニオン&タイショー、そしえリリカも、元気を取り戻しつつある人々を見て呟く。

 

「なんだかいい感じになって来たわね。」 「そうね〜、トモも嬉しい!」

 

「バクちゃん…いいお土産話が出来そうだよ。」

 

「ウルトラマンは負けない!」 「そうだ! 僕たちが諦めない限り!」

 

「海羽さんも、頑張って。」 「僕たちもついているよ。」

 

「信じてるよ…ウルトラマン。」

 

 

希望を取り戻しつつある真美達やその他の人々を、相変わらず魂が抜けたような表情で見渡して行く小河寿美江も、ひかるの言葉をそっと呟いた。

 

「私たち…決して…1人じゃない…。」

 

失意で抜け殻のようだった彼女のその瞳には、僅かながら生気が戻って来ているようであった…。

 

 

ウルトラ戦士達や真美達、その他の人々、そして愛紗と、様々な人間達が、閉じかけていた心の扉を開け、希望を取り戻しつつある中、やがて一時的な安心のためか、やがてみんな静かに寝静まり始める。

 

 

 そしてしばらくすると、周囲がうっすらと明るくなり始め、やがて登り始める日の光が朝を告げる。

 

 ウルトラ戦士たちは、倉庫の外で朝日を見上げていた。

 

「今日もいい夜明けだぜ! 決戦の日にはもってこいだな。」 ヒカルは伸びをしながらいつもの調子で呟く。

 

「この美しい夜明けが、これからも続くように頑張ろう。」

 

ムサシの言葉に、一同は決意の表情で頷いた。

 

 

「あの…。」

 

そこに、愛紗が申し分なさそうな感じで話しかけて来て、ウルトラ戦士たちは彼女の方を振り向く。

 

「昨日は、ごめんなさい。 あんな言い方しちゃって…。」

 

愛紗は心の準備を数秒で済ませると、ウルトラ戦士たちに大きく頭を下げて謝った。

 

「あなた達のせいじゃないのに…怪獣が現れたのも、マコちゃんが怪獣にされたのも、こんな状況になったのも、そして、おじいちゃんの家が壊されたのも…。」

 

愛紗の謝罪に確かな誠意を感じた一同は、嬉しそうに微笑む。

 

「気にすんなよ。お前が本当は優しいって知ってたからさ。」 「愛紗ちゃんも、色々と辛かったんだよね。」 「だが、そんな中、お前は自力で立ち直った。」 「間違いない。強い人間の1人だ。」

 

「…皆さん…。」

 

ヒカル、ムサシ、ショウ、ジュリと順に言葉を掛け、それを聞いた愛紗は嬉しさで目が潤み始める。

 

愛紗は今度はアスカの方に数歩進んで謝罪する。

 

「アスカさんも、昨日はあんな言い方してすいませんでした。」

 

それを聞いたアスカはフッと笑うと、愛紗の頭に掴むように手を当てる。

 

「化け物は、俺たちウルトラマンに任せろ!」

 

起きて間もないためにまだ寝癖で乱れている愛紗の頭を軽くガシガシ撫でながらそう言ったアスカ。 愛紗は無言で笑顔で頷いた。

 

 

気がつくと真美達も目を覚ましており、その他の人々も次々を目を覚まして行く。

 

「ここにウルトラウーマンもいるよ〜!」 「私たち、ウルトラマンを信じてます。」 「悪なんかぶっ飛ばしてやれよ!」 「絶対に、生きて帰ってくださいね…。」

 

海羽、真美、宏隆、ひかると声を掛けて行く中、寿美江がウルトラ戦士達の元に歩み寄る。

 

その表情は、抜け殻のようだった昨日までとは違い、微かに生気が戻っているようであった。

 

 「マコちゃんの事も…よろしくお願いします。」

 

 昨日までとは違った、しっかりとした声でそう言った寿美江。 それを見たウルトラ戦士達、そして真美達は嬉しくなり、一斉に微笑む。

 

 寿美江もまた、希望を取り戻しつつあるみたいである。

 

「言われなくても分かってるよ。」 ムサシは寿美江の肩に手を置いて優しくそう言った。

 

 

「よーし! この調子で、悪をぶっ倒そうぜ!」

 

そう言いながら愛紗と寿美江の肩に手を回すヒカルだが、そこでムサシはふと現実を見つめ直す。自分たちはまだエネルギーが十分に戻っていないのだ。

 

「でも、まだ現時点まともに戦えるのはアスカと海羽ちゃんだけだ。」

 

だが、アスカと海羽の表情は変わらない。

 

「任せろ! 俺たちがギマイラとかを相手にしている間には(エネルギーが)戻るだろうから。」

 

「私も、出来る限りの事は全力でするわ!」(首を傾げてウインクしながらピースを向ける)

 

2人の前向きな言葉を聞いた一同は再び安心の表情になる。 そこに、オニオンとタイショーもやって来て、それぞれ海羽の手を掴む。

 

「海羽さん…無理しないでくださいね。」 「死んでしまったら僕たち、悲しいですから。」

 

「私、またあなた達と遊びたいから。 だから絶対に生きて帰るよ。」

 

首を傾げながら嬉しそうに微笑む海羽の顔を見て、オニオン達もふと安心の表情になる。

 

 

「行こうぜ、後輩!」

 

「イェース!」

 

アスカは海羽の肩に手を置き、海羽は笑顔でアスカにピースマークを向けた。

 

 

その時、ウルトラ戦士達は何かを感じ取ったのか、一斉に変身アイテムを取り出し始める!

 

「なんだこれは…この辺からじゃないぞ!」 とショウ。

 

「隣町から、何やら強力で邪悪なエネルギーを感じるぞ!」

 

ヒカルの言う通り、感じる悪のエネルギーは、潮風町の隣の町から出ていた。 しかも、潮風町一帯に張られている電磁網の影響で、何者なのかまでは感じ取れない。

 

「きっと、ギマイラかEXゼットンかが暴れてるんだろう。」 「ゼボスの奴、今度は別の街からも恐怖心を集める気か?」

 

ムサシとジュリは、エネルギーの大きさから、ゼボスが残りの絶望と恐怖心を集めるためにギマイラかEXゼットンを暴れさせ始めたのではないかと推測する。

 

 

真美達やその他の人々も不安になりそうになる中、アスカは数歩前に出てリーフラッシャーを取り出す。

 

「俺、ちょっくら行って来る。 海羽、こっちの方は頼んだぜ。」

 

「…ラジャー!」

 

海羽は緊張により数秒遅れながらも、アスカに元気よくサムズアップを向けた。

 

 

「フッ、いつから隊員になった! …じゃ、行って来るぜ。」

 

アスカは海羽に一言軽口を言った後、リーフラッシャーを高く揚げる。

 

「ダイナー!!」

 

叫びとともに溢れ出る光に包まれたアスカは、その中からウルトラマンダイナ(フラッシュタイプ)として飛び出し、そのまま隣町向かって飛び立つ。

 

 

「頼んだよ…アスカ。」

 

ムサシは飛び去って行くダイナを見送りながら呟いた。

 

 

しかし、それを宇宙から千里眼で見ていたゼボスは嘲笑う。

 

「フフフ…ウルトラ戦士どもめまんまとかかったな…。 行け!ギマイラ!EXゼットン!」

 

そう、なんとこれはゼボスの罠であり、隣町で別の用意していたゼットンシリーズを暴れさせ、そこにダイナをおびき寄せた所で、潮風町に残ったエネルギーの少ないウルトラ戦士達を、完全な力を得たギマイラ、EXゼットンで一気に潰してやろうとしているのだ!

 

 

潮風町では、案の定強い地響きと共に激しく土砂が巻き上げながら吸血怪獣ギマイラが地上に現れ、EXゼットンも炎のようなオーラを放ちながらテレポートで現れる!

 

予想外の展開にウルトラ戦士達はもちろん、真美達も驚愕する!

 

「おいおい!これはどう言う事だ!?」 「二体ともこっちに現れちゃったよ!?」

 

宏隆とひかるが口々に驚く中、生気を取り戻した寿美江と愛紗が推測をする。

 

「きっと、隣町には別の怪獣を用意したのかも…?」 「そこにダイナさんをおびき寄せるために…!」

 

 

2人の推測通り、隣町では別の怪獣が暴れていた。

 

その怪獣は、ゼットンの体が『双頭怪獣パンドン』の体表で覆われたような姿であり、更に両肩の赤く長い突起、サメか深海魚を思わせる頭部、そして『大魔王獣マガオロチ』のような赤く長い尻尾が特徴の合体怪獣『合体魔王獣ゼッパンドン』である!

 

恐らく自称ゼットン星随一のゼットン使いであるゼボスの事だから、自身の育てたゼットンに、ゴース星人から授かったであろうパンドン、そして何故か持っていたマガオロチの遺伝子で作り上げたのであろう。

 

口からのゼッパンドン火炎弾、頭部の突起からの紫色の破壊光線、マガオロチ譲りの怪力や尻尾の破壊力で、周囲のビル等を破壊しながら、逃げ惑う人々を嘲笑うかのように暴れるゼッパンドン。

 

その前に、隣の潮風町から飛んで来て到着したダイナが着地して構える。

 

「ゼボスのヤロー、まだゼットンシリーズを隠し持ってたとは!」

 

ダイナ(アスカ)は予想外の敵に驚愕するダイナ。 ゼッパンドンはダイナに気づくと、指をポキポキ鳴らし、片手で手招きして挑発するようなポーズを取る。

 

ダイナはそんなゼッパンドン向かって果敢に飛び付き、両者はそのまま力比べを始める。

 

「さっさとコイツ倒して、海羽ちゃん達の元へ戻るぞ。」

 

ダイナはゼッパンドンと力比べをした後、一旦押し離し、頭部に右フック、胸部に連続パンチ、腹部に右脚蹴りを連続で打ち込むが、その直後にゼッパンドンの右フックを喰らい後退する。

 

ゼッパンドンは続けて突進を繰り出すが、ダイナはそれを頭部を掴んで受け止め、そのまま膝蹴りを下顎に、右パンチを頭部に打ち込んで後退させる。

 

更に追い討ちをかけようとするダイナだが、ゼッパンドンの横振りの頭突きを腹部に喰らい、更に一回転しての尻尾攻撃を受けて吹っ飛ぶ。

 

ゼットンとパンドン、そしてマガオロチの力をも持つゼッパンドンは、歴戦の勇者・ダイナ相手でも遅れを取らない強さだった!

 

なるほど、これ程の強さなら足止めにピッタリであろう。

 

 

その頃、潮風町ではEXゼットンとギマイラが暴れ始めていた。

 

ギマイラに関しては口からの青白い破壊光線という新技も身に付けており、より広範囲を破壊出来るようになっていた…!

 

「…あれ、マコちゃんじゃない!?」

 

再び怯え、逃げ惑う人々の中、寿美江は暴れる二体の近くにいるラブラスを見つける。

 

よく見ると苦しそうに頭を抱えて身震いしており、体の数カ所には傷を負っていた。

 

恐らく、真の意識で反抗する度にギマイラから拷問を受けていたのであろう。 そして今は、ギマイラによって無理矢理暴れさせられようとしているが、真の意識でその支配と戦い続けている。

 

「マコちゃん!」 「よせ!今は危険だ!」

 

思わずラブラスの元に行こうとする寿美江を宏隆が引き止める。

 

逃げ惑う人々の波の中で立ち尽くしながら、ウルトラ戦士達はまだ力が戻り切っていない変身アイテムを悔しそうに握りしめ、真美達は不安になり始める。

 

 

「一体どうすれば…。」

 

愛紗も途方に暮れそうになる中、とある1人の少女が声を掛けて来る。

 

「ウルトラマン来てくれる?」

 

「…えっ?」

 

人々の叫びや悲鳴が渋滞する中、少女のか細い声を確かに聞き取った愛紗はふと視線を下に向ける。 その少女は、昨夜、愛紗が慰めた少女だった。

 

「ウルトラマン、きっと来てくれるよね?」

 

再び問いかける少女。愛紗は笑顔で彼女の目線までしゃがみ、頭を撫でる。

 

「大丈夫。 信じていれば、必ずウルトラマンは来てくれるよ。」

 

「本当?」

 

「うん。 さ、早く安全な所へ。」

 

再び笑顔になった少女は再び避難し始め、愛紗はそれを手を振って見送る。

 

 

例えどんな状況でも、ウルトラマンを信じ続ける小さな命。 それを見た海羽は、ハートフルグラスを持つ手の震えが止まり、数歩前に出る。

 

「私、行くわ。」 「い、行くってお前、1人で大丈夫なのか?」

 

出動を決意した海羽を心配する宏隆。 だが次の瞬間、自身の方を振り向いた海羽の顔を見て、心配が確信に変わる。

 

「彼女なら大丈夫」という確信が…!

 

「大丈夫。対処もバッチリ浮かんでるから。 それに、(先ほどの少女の方を向いて)今でも、ウルトラマンを信じ、待ってくれている人がいる。 私も、そんな人達の力になりたい。」

 

「そうか…覚悟は十分って事か。 じゃあ、行って来い!」

 

決意を決めた海羽の、普段の愛らしい顔つきからの想像もつかないような凛々しい眼差しを見て、宏隆、そして真美達は送り出す決心を決め、「行って来い」とばかりに無言で頷く。

 

 

海羽は怪獣達の方を振り向くと、一回転をしてハートフルグラスを上に挙げた後目に当て、赤とピンクの光に包まれて『ウルトラウーマンSOL(ソル)』へと巨大変身する。

 

「これ以上、好き勝手させないんだから!!」

 

ソルはそう叫ぶと、華奢な体を振るわせながら二体の巨大怪獣向かって走り出す。

 

ソルに気づいたギマイラはカウンターの右フックを繰り出すが、ソルはそれを走りながらしゃがんでかわし、そのままEXゼットンに突っ込み体に組み付く。

 

EXゼットンは、自身を押さえ込もうとするソルを掴んで引き離すと、剛腕を振るって殴りかかるが、ソルは小柄故の身軽さを活かし、ちょこまか動いてそれらをかわしながら、「エイ、エイ…」という掛け声と共に小刻みにパンチやキックを打って行く。

 

 (このEXゼットンも、昨日のペダニウムゼットンも、ガタイのいいゼットン君はパワーは高いけどその分腕の振りが大きい。 だから、相手が殴る前にこちらが素早く動いてかわしながら攻撃して行けば、相手は疲れるはず…!)

 

ソル(海羽)の対処法とは、相手が殴打を繰り出す前に素早く動いてかわし続け、消耗させるという事だった。

 

 なるほど、これなら敵の攻撃をモロに喰らう事も無く、大したダメージは与えられなくても動かせ続ける事である程度体力を削る事は出来そうである。

 

 「なるほど、考えたな海羽。」 「(両手をメガホン代わりにして)その調子~!」 「頑張って!」

 

 宏隆、愛紗、寿美江が口々に応援し、ソルはそれに応えるようにEXゼットン相手に奮闘して行くが、事がそう簡単に上手く行くはずが無く、やはりソル一人に強力な怪獣二体が相手では分が悪い。

 

 

 ソルは、EXゼットンの振り下ろした右腕を受け止めた隙を突かれ、ギマイラの尻尾攻撃を喰らって吹っ飛んでしまう。

 

 ダウンしたソルにEXゼットンは火球、ギマイラは角からの電撃を一斉に放ち、ソルはそれらが周囲に命中して爆発する中、腕で顔を覆う。

 

 「絶対に…負けないんだから…!」

 

 

 自分達ウルトラ戦士の復活を信じ、不利な状況ながらも奮闘するソル、そしてそれに応えるように一瞬光ったジャストランサーを見て、ジュリは決意の表情で数歩前に出る。

 

 「ジュリ…行くんだね。」

 

 いち早く察したムサシは声を掛け、それを聞いたジュリは振り向いて頷く。

 

 「もうじきエネルギーは戻るはずだ。 それまでに、私もソルの足止めを手助けする。」

 

 「…分かった。」 ムサシをはじめ、ヒカル、ショウ、そして真美達も、信頼しているが故なのか、止める事無くジュリを送り出す。

 

 

 「思えば、オニオンを助けた時もアイツ(ソル)と一緒だった。 これも何かの縁だな。」

 

 感慨深そうにそう言うと、ジュリはジャストランサーを右手に取り、それにより羽が2枚に展開した後胸に当て、溢れ出る“正義の光”に包まれる。

 

 そして光となってソルの近くまで飛ぶと、無数のリング状の光と共に『ウルトラマンジャスティス(スタンダードモード)』へと巨大変身が完了する。

 

 

 「…ジャスティスさん!」

 

 ソルは思わぬ援軍に喜ぶがそれも束の間、まだエネルギーが完全に戻っていないためか、登場して早々ジャスティスカラータイマーは赤く点滅を始めていた。

 

 「大丈夫なのですか?」 「気にするな。行くぞ。」 「…はい。」

 

 ジャスティスは手を貸してソルを起き上らせた後、ポーズを取ってギマイラに向かって行き、ソルも再びEXゼットンに向かって行く。

 

 

 ジャスティスはギマイラに駆け寄ると同時に前蹴りを腹部に打ち込み、続けて左フックを頭部に叩き込み、更にハイキックを繰り出すが、ギマイラはそれを両腕で掴んで受け止めて放り投げ、ジャスティスはスピンしながら地面に落下する。

 

 立ち上がったジャスティスはギマイラにパンチを連続で放つがあっさりと往なされ、やがて右拳を掴まれるとそのまま引きつけられると同時にパンチを胸部に喰らい、続けて横振りの頭突きを腹部に喰らい前屈みになったところに両腕で背中を叩かれて地面に叩き付けられる。

 

 更にギマイラは、倒れたジャスティスをサッカーボールの様に何度も蹴り転がした後、強力な蹴りの一撃を叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

ジャスティスは地面を転がった後即座に態勢を立て直し、膝をついた状態で両腕を突き出して『ビクトリューム光線』を放ってギマイラに浴びせる。

 

スタンダードモード最強の必殺光線なのだが、エネルギーが完全ではなかったため威力はいつもより低く、効果はギマイラを数歩後退させる程度に留まる。

 

更にジャスティスは、不調の状態で光線を放った影響で、一気に脱力感に襲われ始める!

 

ギマイラは光線を受けた胸を「効かねぇな」と言わんばかりに数回払った後、お返しとばかりに口から青白い熱戦を吐いてジャスティスに浴びせる。

 

熱戦をモロに浴びたダメージで更に動きが鈍ったジャスティス。 ギマイラはその隙に、口から無数に枝分かれした触手状の舌を伸ばしてジャスティスの体に巻き付けて電撃を流し込み始める。

 

「はっ、ジャスティスさん! …きゃーっ!!」

 

ジャスティスのピンチ見たソルは急いで加勢しようとするが、EXゼットンに腕を掴まれて投げられる形で止められる。

 

 

全身を迸る電撃に苦しむジャスティスと、EXゼットンに手こずるソル。 それらを見守る真美達不安になって来る。

 

「おいまだなのか!? 今こそ動いてくれ!!」 「俺たちにはどうする事も出来ないのか!!」

 

ショウもヒカルも、まだ光が戻らない変身アイテムを見て苛立ちが隠せない。

 

「…コスモス…。」

 

ムサシも、途方に暮れるように石化しているコスモプラックを見つめる。

 

 

「…ん?」

 

…その時、ムサシは何かに気づいた。 それは、石化しているコスモプラックの僅かな亀裂から、僅かに光が漏れ始めている事である…。

 

 

尚も苦戦をするジャスティスとソル。 ジャスティスのカラータイマーの点滅は、身の危険を知らせるように速さを増して行く…。

 

「そこだギマイラ! 今度こそジャスティスにトドメを刺せ!!」

 

指示を受けたギマイラが、ジャスティスにトドメを刺そうと接近し始めたその時、寿美江は何かに気付く。

 

「あっ、見て! マコちゃんが!」

 

そう言いながら指を差す寿美江の方向を、一同は振り向く。

 

 

そこには、傷ついた体を引きずってギマイラ向かって行くラブラスの姿があった!

 

遂に、ラブラスになっている真の強い精神力がギマイラの支配に打ち勝ち、彼の意識のまま、ギマイラを倒そうと向かって行っているのである!

 

 

ジャスティスにトドメを刺そうと角に光線のエネルギーを溜めて行くギマイラに、ラブラスは背後から鋏で首を挟んで攻撃する!

 

 驚いたギマイラは光線のチャージが止まると同時に怒りで振り向き、ラブラスを攻撃し始める。

 

 ラブラスの、元の人間・道枝真の空手の型を活かした抵抗も空しく力の差は歴然としており、ギマイラは剛腕、尻尾などによる殴打でラブラスを痛めつけて行く。

 

 「もうやめてー!!」 「よせ! これ以上行ったら危険だ!」

 

 寿美江は、怪獣の姿とは言え痛めつけられる友人を見てたまらず悲痛の叫びを上げながら向かおうとし、宏隆はそれを止める。

 

 「くっ……やめ…ろ…。」

 

 ジャスティスも加勢に入りたいが、戦う力が皆無に等しい程に弱っている事から向かえない事に苛立ちを感じる。

 

「フッフッフ…もはやラブラスは役に立たんから興醒めだ。 ギマイラ!殺(や)ってしまえ。」

 

 ゼボスの非情な指示を聞いたギマイラは、恐怖で不安がる人々や、悔しがるジャスティス、宏隆に止められながら悲痛な叫びを上げる寿美江を嘲笑うかのように、尚もラブラスを痛めつける。

 

 傷ついた体を振るわせながら何度も向かって行くラブラスだが、逆にギマイラに何度も投げつけられ、ダメージで身体が鈍って行く一方である…。

 

 

 やがてラブラスは、反撃する余裕もない程に完全に弱り切り、立ち上がるだけでもやっとの程の状態になった…。

 

 

 その姿を見て寿美江が最悪な事態を想定した時、それは次の瞬間、一気にリンクした。

 

 

 無情にもギマイラは、角にエネルギーを溜めた後、弱ったラブラスの胸に突進して突き立ててエネルギーを流し込む!

 

 

 ラブラスは悲鳴のような叫び声を上げた後、両腕を上げた状態で動きが止まり、やがてそのまま崩れるように地面に倒れ伏してしまった…。

 

 

 「マコちゃーん!!」

 

 寿美江は宏隆の制止をがむしゃらに振りほどいた後、ラブラスの近くまで駆け寄り、真美達もそれに続く。

 

 寿美江は真のニックネームで必死に何度もラブラスに呼びかけるが、それも空しく、ラブラスはゆっくりと目を閉じて動きを止めてしまった…。

 

 

 “友の死”…その言葉が頭をよぎった寿美江は、崩れるようにその場に座り込んで泣きじゃくり始め、ひかるは無言で泣く寿美江の背中を摩り、真美達も真や寿美江への憐れみで泣き始める人も出始める。

 

ウルトラ戦士達も何もできない苛立ちを隠せず、特にジャスティスは、倒れ伏した状態で悔しそうに地面に拳を打ちつけ、ソル(海羽)もショックでEXゼットンとの戦いへの集中がままならなくなって行く…!

 

 

…しかし、そんな今こそ、真の勇者が立ち上がる時だった…!

 

 

ギマイラを含め、ゼボス率いる怪獣軍団が容赦なく次々と引き起こす悲劇…。

 

それらを思ったムサシは遂に真剣な目付きになり、僅かに光が溢れ出るコスモプラックを震えるほど強く握り、戦場へと駆けて行く!

 

 

「なぜ夢を奪うんだ!! お前たちにそんな資格があるのか!!」

 

 

ムサシは立ち止まってそう叫んだ後、今自分が守りたいもの、自身や周りの人々の育んで来た友情や絆などを思いながらコスモプラックを見つめる。

 

ムサシの強い思いにより、石化しているコスモプラックの亀裂は徐々に広がり、それに比例するように溢れる光も大きくなっているようであった。

 

 

そんなコスモプラックを通じて、ムサシはコスモスに強く呼びかける。

 

「コスモス! 今こそ僕に力を! 皆を…皆の幸せを守るために…今こそ!!」

 

ムサシの強い想いや熱い呼びかけを受けたコスモプラックは、遂に光を取り戻し、石化を吹き飛ばして光り輝く!

 

 

一方、倒れたジャスティスを踏みつけているギマイラは、彼目掛けて角からの電撃を放つ!

 

「はっ、危ない!」

 

真美が心配で叫ぶ中、ムサシは光り輝くコスモプラックをゆっくりと構え、勢いよく高く揚げる!

 

 

「コスモース!!」

 

 

ムサシの叫びが木霊する中、光の尾を放ちながら高く上がったコスモプラックは眩い光を放ち、それがムサシを包み込むと同時に電撃をはね返す。

 

 

「…なん…だと…?」

 

ゼボスは動揺し、真美達は眩い光に目を覆う。

 

やがて顔を上げると、そこには黄金の光に包まれながら巨大化して現れる『ウルトラマンコスモス(ルナモード)』の姿があった!

 

(ウルトラマンコスモス登場BGM)

 

やがて青と銀の姿を現して構えを取るコスモス。 青く輝くカラータイマーが完全復活を物語っており、初めて完全復活をしたウルトラマンを人々は見上げる。

 

「イエーィ! コスモスさんの復活ね!」

 

ソル(海羽)も喜びの声を上げながら引き続きEXゼットンの攻撃をかわし続け、そして真美達も少し安心の表情になる。

 

 

(BGM:Touch the Fire)

 

 

コスモスは右腕を突き出して光線『ムーンライトスマッシュ』を放ち、それを受けたギマイラが後退する事でジャスティスは踏みつけから開放される。

 

「僕たちは負けない…信じてくれるもの…守るべきものがいる限り!」

 

ムサシのその声と共に、コスモスはギマイラ目掛けて駆け始める!

 

「えぇい!ギマイラ!! 逆に潰してやれ!!」

 

ゼボスの苛立ちの指示を受けたギマイラも標的をコスモスに変えて殴りかかるが、コスモスは腕を広げてすれ違う形てそれをかわし、その後ギマイラの尻尾攻撃を振り向きざまに右膝で防ぎ、続けてギマイラが連続で殴りかかるのを流れるような動きで往なした後、腹部に『パームパンチ』を打ち込む。

 

コスモスは続けて蹴り技『ニンブルスマッシュ』を放つが、ギマイラは脚を掴む事でそれを受け止めると逆に放り投げ、コスモスは数回スピンした後着地するが、即座にギマイラの放った突進を受けて吹っ飛んでしまう。

 

ギマイラは更に追い打ちをかけようと向かうが、コスモスは右腕を挙げて全身を赤く輝かせて『コロナモード』へとチェンジしながらギマイラの右フックを回りながらしゃがんでかわし、それと同時にモードチェンジが完了したコスモスはギマイラの腹部に右足蹴りを叩き込んで転倒させる!

 

ギマイラを蹴り倒したコスモス・コロナモードは立ち上がってポーズを決めた。

 

 

「…頑張れ! ウルトラマンコスモース!!」

 

ある1人の女性がそう叫んだのを皮切りに、さっきまで不安で怯えていた人々から、老若男女問わず応援の声が飛び交い始める!

 

その歓声を背に、コスモスは尚もギマイラと交戦する!

 

 

両者は互いに駆け寄ると、激しくパンチの応酬を展開し、やがてコスモスは右腕でギマイラの右腕をレールにして回転させながら引き離した後、腹部に右拳、胸部に左拳、前蹴りを打ち込んで後退させ、更に両拳のパンチ『サンメラリーパンチ』を叩き込み、ギマイラはその部位から火花を散らしながら吹っ飛んだ。

 

 

コスモスは、天空に気を送って発生させた雷を落とす荒技『サンダースマッシュ』を放ち、ギマイラはそれが周囲に落ちて爆発し、自身もいくつか受ける中、コスモス向かって走る。

 

ギマイラはそのまま突進を繰り出すが、コスモスは両腕を回して身体を金色に輝かせながら後方宙返りをしてかわし、着地すると同時に『エクリプスモード』へとチェンジが完了してポーズを取る。

 

コスモスはギマイラに超高速で接近すると、胸部に強力なパンチ『ダイアモンドクラッシュ』、頭部に跳躍しての蹴り技『フライングスパーキー』を叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

“優しさ”のルナモードから、“強さ”のコロナモード、そして“勇気”のエクリプスモード。

 

連続モードチェンジでギマイラを押して行くコスモスを見守る人々は絶えず歓声を上げ続け、真美達もいつの間にか笑顔になっており、悲しみに暮れていた寿美江も僅かながら笑みが戻る。

 

…その時、寿美江はふと何かに気づき、倒れているラブラスの方を振り向く。

 

なんと、さっきまで動きを止めていて、死んだと思われていたラブラスが、だいぶ衰弱しているとはいえ息を吹き返していたのである!

 

ラブラス(道枝真)は生きていた!

 

「…マコちゃん…。」

 

まだ怪獣の姿とはいえ、友人の無事を知った寿美江の顔は、さっきまでの深い悲しみから一転、柔らかい笑顔になっていた…。

 

 

思わぬ奇跡が起こる中、コスモス・エクリプスモードは素早いパンチやキック等でギマイラを押して行き、更に前蹴りを叩き込むと同時に後方宙返りをして距離を取った後、両腕に集めたエネルギーを三日月状の破壊光刃に変えて発射する『エクリプスブレード』を放ち、それの直撃を受けたギマイラは大きく吹っ飛んだ!

 

 

 (BGM終了)

 

 

 「みんなと一緒に掴もう。 希望の未来を。」

 

やがてコスモス(ムサシ)もラブラスの生存に気づいて一言言った後、一度胸を張って精神統一をし、両腕を回して黄金の光エネルギーを全身に纏う。

 

 やがてその光エネルギーが消失すると、その中から新たなモードが姿を現す。

 

 それは、体色はエクリプスモードと同じだが、全体的に青の割合が増えており、頭部には赤と金のトサカが付いているのが特徴の、優しさ、強さ、勇気に“希望”を体現した「未来を信じる、希望の巨人」のモード『ウルトラマンコスモス(フューチャーモード)』である!

 

 恐らく、再び希望を持ち始めている人々、そして真美達がキッカケで現れた“フューチャーエナジー”で、再び変身が出来たのであろう。

 

 

 「コスモスが、また変わった。」 「しかも…なんだかとてつもない希望を感じるわ。」

 

 宏隆とひかるを始め、真美達は初めて見るコスモスのモードの神秘さに見入っていた。

 

 

 ギマイラは再度突進を繰り出すが、コスモスはそれを片手で角を掴む事で食い止め、そのまま腹部に肘の一撃を打ち込んだ後、一本背負いの要領でギマイラを放り投げて地面に叩き付ける!

 

 

 そしてふらつきながらも立ち上がるラブラスの方を振り向くと、エクリプスモードのコズミューム光線と似た構えで青い必殺光線『コスモストライク』を放って浴びせる。

 

 これは、コズミューム光線がフューチャーエナジーによってパワーアップした光線であり、所謂破壊光線にも浄化光線にもなるのだ。

 

 光線を浴びたラブラスは、優しく光る青い光に包まれると、そのまま黒いオーラのようなエネルギーを外に出して消滅させながら小さくなって行き、やがて元の道枝真の姿へと戻った。

 

 「マコちゃん!」

 

 寿美江を始め、宏隆とひかる、愛紗も、ラブラスの消えた方へと駆け寄る。 確かにそこには、横たわっている真の姿があった!

 

 寿美江は必死に呼びかけるが、一向に返事が無くて不安になる、

 

 「大丈夫。 脈はあるみたい。」 「きっと、消耗が激しかったんだよ。 しばらく寝かしてあげよ?」

 

 生存を確認したひかると、愛紗が声を掛けた事により、寿美江は再び笑顔になった。 そして愛紗と共にコスモスを見上げてこう言った。

 

 「「ありがとう…ウルトラマン。」」

 

 

 「馬鹿な!? ギマイラの怪獣化は、死なない限り元に戻らないはず!!」

 

 動揺を隠せないゼボス。 恐らくコスモストライクはコズミューム光線が数倍パワーアップした光線技であるため浄化能力もそれほど強化されている。だから、ギマイラの性能すらも吹き飛ばす奇跡のパワーを秘めていたのであろう。

 

 

ラブラスを元に戻したコスモス。次はジャスティスの元に歩み寄り、『フューチャーフォース』でジャスティスに自らのエネルギーを分け与える。

 

コスモスからのエネルギーを得たジャスティスはカラータイマーが青に戻った。

 

「ありがとう、コスモス。」 「共に戦おう、ジャスティス。」

 

ジャスティスは身体を金色に輝かせながら、左右に広げた両腕を顔の前に持ってきた後に下に降ろし、やがて身体の光が消えると同時に『クラッシャーモード』へとモードチェンジが完了する。

 

コスモス・フューチャーモードとジャスティス・クラッシャーモードは、共に戦おうというアイコンタクトを交わした後、立ち上がって並び立ってポーズを決めた後、威嚇するように咆哮を上げるギマイラ向かって走り始める!

 

 

戦いの中で様々な奇跡が起こって行く中、EXゼットンを相手しているソルは疲弊し始めており、カラータイマーも赤く点滅を始めている。

 

「ハァ…ハァ…おかしい…もうだいぶ動いたはずなのに…一向にペースが衰えないわ…。」

 

疲れによって動きが鈍っているソルは、EXゼットンの攻撃を避けきれずに受ける回数が徐々に増えて行く…。

 

 

そんなソルの戦いを見守っていたヒカルとショウ。 すると、彼らの手に持つギンガスパークとビクトリーランサーが光を放つ。

 

どうやらギンガとビクトリーも、エネルギーが完全に戻ったみたいである。

 

(ウルトラマンギンガ戦闘BGM)

 

「どうやら俺たちも、行けるみたいだぜ!」 「行こう。 俺たちも、みんなの希望になるんだ!」

 

自身のウルトラマン達の復活に更にテンションが上がったヒカルとショウ。 2人は走りながらそれぞれギンガスパークとビクトリーランサーにギンガとビクトリーのスパークドールズをリードして上に挙げる!

 

「ギンガー!!」 「ビクトリー!!」

 

それぞれ青と黄色の光となった2人はソルの目の前まで飛ぶとそれぞれ光り輝きながらギンガとビクトリーの姿となり、同時に向かってくるEXゼットンをダブルパンチで吹っ飛ばす!

 

「ギンガさん…ビクトリーさん…来てくれたのね…。」

 

駆けつけた2人を見て、ソルは一安心すると同時に脱力感でその場に座り込む。

 

「よくやったな!ソル。」 「あとは俺たちに任せろ!」

 

2人の言葉を受けたソルは、「頼んだ」と言わんばかりに頷くと、そのままピンクの光と共に縮小して行き、海羽の姿に戻る。

 

海羽を踏み潰そうと向かうEXゼットンだが、ギンガとビクトリーはそれを真正面から食い止め、それぞれパンチ、キックを同時に打ち込んで後退させる。

 

「どこを見ている! お前の相手は、俺たちだ!!」

 

(BGM終了)

 

 

次々とウルトラマンが復活し、人々の歓声が絶えない中、オニオンとタイショーは、変身を解除し、疲れで横たわっている海羽の元に駆けつける。

 

「海羽さん…大丈夫ですか?」

 

そう自身に話しかけるオニオンに、海羽は大丈夫の印として笑顔でピースを向けた。

 

「とても、カッコよかったですよ。」 「…ありがとね。」

 

海羽は、自身を褒めるタイショーに、優しくお礼を言った。

 

 

ギマイラと激闘を繰り広げる優しさや戦士と正義の戦士。

 

ジャスティスは先陣切ってギマイラに駆け寄って胸部に連続でパンチを打ち込み、その隙にコスモスが背後から『エクリプススパーク』を放つと同時にジャスティスは横にそれ、矢尻型の光弾を受けたギマイラが少し怯んだ隙にコスモスは跳躍して回し蹴りを繰り出し、ギマイラはそれをしゃがんでかわすがその隙を突かれジャスティスの右脚蹴りを腹部に喰らう。

 

ジャスティスはギマイラの左ストレートを受け止め、続けてコスモスはギマイラの右フックを回転しながら受け流すと同時に胸部に左肘を打ち込み、続けてジャスティス、コスモスと順にパンチを胸部に打ち込んだ後、2人同時の前蹴りを叩き込んで吹っ飛ばした。

 

ギマイラも負けておらず、舌を高速で伸ばしてジャスティスの右腕に絡みつけて引き寄せると同時に噛み付き、右腕を噛まれているジャスティスは痛みを感じながらも引き離そうとギマイラの頭を押さえる。

 

その時、コスモスが跳躍しての横蹴りをギマイラの頭部に叩き込み、それにより怯んだギマイラは噛み付きを解いてしまい、解放されたジャスティスはすかさずギマイラの腹部を蹴ると同時に後ろに飛び、その先で待ち構えていたコスモスがジャスティスの両手を掴んで振り回してギマイラに投げつける!

 

これぞコスモスとジャスティスの連携技『コンビネイト・アタック』である!

 

かつてはエクリプスモードとスタンダードモードで繰り出したのだが、今回はそれよりも強いモード同士であるため威力は絶大で、投げられたジャスティスは回転しながらギマイラの周囲を飛び回って連続で体当たりを決めてダメージを与える。

 

ギマイラが怯んだ隙にジャスティスは目の前に着地して両手で角を掴み、そのまま超パワー『クラッシャーブローム』で引っ張ってへし折った!

 

自慢の角を折られて一気に弱体化したギマイラ。ジャスティスはギマイラの体を掴んで頭上高く持ち上げ、『ジャスティスホイッパー』で放り投げて地面に叩きつける!

 

コスモスとジャスティスは合流して再度構えを取る。

 

ギマイラはふらつきながらも立ち上がると、最後の力を振り絞って口から渾身の破壊光線を放つが、コスモスは両腕を広げて光の壁『ゴールデンエクストラバリア』を張ってそれを防ぐと同時にジャスティスが拳に気を集めて熱戦『バトレックショット』を放ち、それを頭部に受けたギマイラは光線の発射が止まり、更にその隙にコスモスが飛び蹴り『フューチャーキック』を叩き込み、ギマイラは吹っ飛んで地面を転がる。

 

 

ギマイラは再度ふらつきながらも立ち上がるが、最強の姿のコスモスとジャスティスの連携攻撃の前に完全にグロッキーとなっていた。今こそトドメである!

 

コスモスとジャスティスは横に並んで立ち、互いの内側の腕を交差してエネルギーをスパークして放した後、外側の腕からそれぞれ発射した光線同士を絡み合わせて一本の光線にして放つ。

 

これぞ、コスモスとジャスティスの必殺光線を収束させて放つ合体光線『クロスパーフェクション』だ!

 

強力な合体光線を全身に浴びたギマイラはその場に倒れ込み、大爆発して砕け散った!

 

 

コスモスとジャスティスはギマイラの爆発を背に雄々しく立ち、それを見た人々は歓声を上げ、特にギマイラに恨みを持っていた愛紗と寿美江は互いの手を合わせて飛び跳ねながら喜ぶ。

 

 

だが、安心するのも束の間、コスモスとジャスティスがふと上を見上げると、上空にハイパーゼットンのビジョンが浮かび上がると同時にゼボスの声が響く。

 

「コスモス! ジャスティス! 宇宙へ来い! 今度こそ決着を付けてやる!」

 

ゼボスが苛立ちの声でそう言うとハイパーゼットンのビジョンは消え去った。 どうやらゼボスは、自らハイパーゼットンを頭部から操り、ウルトラ戦士達と最後の戦いを挑もうとしているようである。

 

 

「行こう、ジャスティス!」 「あぁ、最後の戦いだ!」

 

コスモスとジャスティスの意思は揺るぎがなかった。

 

「行ってくれ! 俺達も終わり次第加勢する!」

 

EXゼットンと組み合っているギンガ(ヒカル)も、コスモス達の後押しをする。

 

 

それを受けた2人は、無言で一回頷いた後、両腕を上げて飛び立ち、やがて宇宙目掛けて空の彼方へと飛んで行った…。

 

「頼んだわ。 ウルトラマン。」

 

憎き存在がすっかりいなくなった事で完全に目の輝きを取り戻した愛紗は、手と手を合わせて握り、飛び立つコスモス達を祈りながら見送った。

 

 

(BGM:キラメク未来〜夢の銀河へ〜)

 

EXゼットンと戦うギンガとビクトリーは、先程のソルの戦いを参考に、EXゼットンが大振りの殴り込みを放つ前に素早く動きながらパンチ、キック等を決めて行く。

 

「ギンガセイバー!」

 

次にギンガは右腕に生成した『ギンガセイバー』で斬りかかり、殴りかかるEXゼットンの腕をレールにして滑らせながら接近し強力な一撃を叩き込む!

 

《ウルトランス! ハイパーゼットンシザーズ!》

 

更にビクトリーはギンガを飛び越えて『ハイパーゼットンシザーズ』に変形させた右腕で暗黒火球を纏った一撃を叩き込む!

 

 

EXゼットンは体勢を立て直して頭部から火球を放つが、ギンガとビクトリーは即座にギンガスパークランスとシェパードンセイバーを取り出して同時に斬りつける事で吹き飛ばした後、それぞれ武器を地面に突き立てて棒高跳びの要領で飛び上がる。

 

「ビクトリウムエスペシャリー!」 「ギンガサンシャイン!」

 

2人はそれぞれ反対方向からX字を描くように飛びながら、ビクトリーは全身の各クリスタルから光弾『ビクトリウムエスペシャリー』を、ギンガは全身のクリスタルを桃色に輝かせて右腕を突き出して破壊光線『ギンガサンシャイン』を放つ!

 

EXゼットンは無数の光弾の雨あられを受けて怯んだ隙に、破壊光線の直撃を受け、爆発とともに吹っ飛んだ!

 

 

「お前は強い! 実際、俺達は1度負けた。 でもな、俺達は1人じゃない。 守る者がいる…信じてくれる者がいる!」

 

「それに改めて気づいた今、その者達がいる限り、俺達の強さは倍以上だ!」

 

「よっしゃ! 一気に決めるぜショウ!」

 

「おぅ!」

 

 

「今こそ、1つになる時! ウルトラマンタロウ! ギンガに力を! ギンガストリウム!」

 

《放て! 聖なる力!》

 

眩い光とともにギンガは『ギンガストリウム』、ビクトリーは『ビクトリーナイト』へとチェンジすると、再びEXゼットンに立ち向かう!

 

 

ギンガストリウムはEXゼットンと激しくパンチの応酬を繰り広げ、一瞬の隙を突いて腹部に右拳の一撃を叩き込み、続けてボクシングのようにパンチを連続で打ち込み、更に跳躍して胸部に右足蹴りを叩き込むと同時に後方宙返りをして着地する。

 

続けてビクトリーナイトがナイトティンバーとシェパードンセイバーの二刀流で駆け寄り、蹴りを交えながらの目にも留まらぬ速さの乱れ切りを決めた後、二刀流でX字に斬りつけ、更に一回転しながら横一直線の一撃を叩き込んだ。

 

そしてギンガストリウムのパンチとビクトリーナイトの刃の一突きが、同時にEXゼットンの胸部に決まる!

 

 

 EXゼットンは後退しながらも体勢を立て直し、頭部から100トリリオンメテオを放つ!

 

 「《ナイトビクトリウムフラッシュ!》!」

 

 「ウルトラマンの力よ! スペシウム光線!」

 

 ビクトリーナイトは回転斬り『ナイトビクトリウムフラッシュ』を繰り出して迫り来る100兆度の火球を斬って消し飛ばし、その間にギンガストリウムが上空に飛び上がり、腕を十字に組んで『ウルトラマン』の必殺技『スペシウム光線』を放ち、その直撃を胸部に受けたEXゼットンは怯む。

 

 

 ギンガとビクトリーの連携攻撃によりだいぶ追い込まれて来たが、EXゼットンはなおも勢いが衰えず、最後の手段として上空に飛び上がって旋回した後、低空飛行で体当たりしながらトリリオンメテオを放つ『ゼットンバックファイア』を繰り出す!

 

 ビクトリーナイトは二刀流を、刃先を輝かせながら十字に構えて精神統一をする…。

 

 「そこだ!」

 

 「《ナイトビクトリウムブレイク!》!」

 

 そして、低空飛行で飛んで来るEXゼットン及び奴が放った火球が間近まで来た所で必殺の斬撃『ナイトビクトリウムブレイク』を繰り出し、シェパードンセイバーで火球を薙ぎ払いつつ走って接近し、逆手持ちのナイトティンバーですれ違いざまに縦一直線に切り裂く形ですれ違う。

 

EXゼットンは大ダメージを受け、爆発と共に地面に落下する。 奴は完全にグロッキーだ。

 

 

「これでトドメだ!」

 

ヒカルはそう言うと、ストリウムブレスのディスクをライブサインに合わせてスイッチを押し、ウルトラ6兄弟の力を結集させる。

 

「ウルトラ兄弟の力を1つに!」

 

タロウの掛け声と共にギンガはウルトラ6兄弟のビジョンと重なった後、両拳を合わせ、腕を広げた後振りかぶってエネルギーを溜める。

 

「「コスモミラクル光線!!」」

 

ギンガストリウムは伸ばした右腕から下の体全体から最強必殺光線『コスモミラクル光線』を放つ!

 

EXゼットンは最強の必殺光線を浴びながらもギンガストリウムに向かおうと数本前進するが、やがて耐えられなくなり、その場で大爆発して跡形も無く消し飛んだ!

 

2人で連携してEXゼットンを倒したギンガとビクトリーは、合流して拳を合わせる。

 

(BGM終了)

 

 

ギマイラに続きEXゼットンと、強敵怪獣を次々と撃破するウルトラ戦士達。 そんな彼らに歓声を上げる人々の中、真美達も笑顔で見つめ合う。

 

「あとは、自称野郎(ゼボス)とハイパーゼットンだな。 頼んだぜ、ウルトラマン。」

 

宏隆は、最後の敵の打倒を願いながら呟いた。

 

 

 

宇宙空間では、コスモスとジャスティス、そしてハイパーゼットンが対峙していた。

 

ハイパーゼットンは、中にいるゼボスの怒りの影響か、自身の周囲に暗黒の禍々しいオーラを放っている。

 

「よくここまでやれたなウルトラ戦士ども! しかし、このハイパーゼットンは我の怒りのパワーにより、完全体同然のパワーを引き出せる…! 貴様らはここで終わりだぁ〜!!」

 

ゼボスは、以前のクールな感じとは違う醜悪な声で叫ぶ。 自身の怒りと、ハイパーゼットンの強大な力により、神経が麻痺してしまっているのだろうか?

 

 

「ここで終わるわけにはいかない!」 「終わるのは、お前の方だ。」

 

コスモスとジャスティスは啖呵を切った後、ハイパーゼットン目掛けてクロスパーフェクションを放つが、ハイパーゼットンは光線の周りを旋回しながら飛んで接近し、2人に体当たりを打ち込んで吹っ飛ばす!

 

2人はすぐさま体勢を立て直すと、コスモスは駆け寄ってローキック、ジャスティスはストレートパンチを放つが、ハイパーゼットンはそれぞれ下半身、上半身だけをテレポートさせてかわすと同時にパンチ、キックで吹っ飛ばすという離れ業を見せる。

 

尚も2人はハイパーゼットン向かって飛び立ち、あらゆる方面からパンチやキック等を打ち込んで行くが、ハイパーゼットンはそれらをテレポートでかわしながら逆に2人にパンチやキック等を決めて行き、やがてテレポートにより生じた残像の分身と共に挟み討ちにし、それぞれコスモスとジャスティスを殴り飛ばす。

 

 「前よりも、スピードと攻撃力が上がっている!?」

 

 コスモス(ムサシ)は、以前よりも強くなっているハイパーゼットンに動揺しながらも、奴の周囲を飛び回りながらエクリプススパークを放って行き、ジャスティスも同じようにバトレックショットを放つ。

 

 「当たり前だぁ!! 地球上から集めた人間どもの絶望と恐怖心、そしてゼットン星随一のゼットン使いである俺様が内部で操っている! もはや完全体同然のハイパーゼットンを前に、勝てる筈がないのだー!!」

 

 ゼボスが醜悪な笑みでそう言いながら、ハイパーゼットンはコスモス達の攻撃をテレポートを交えながら飛び回ってかわして行き、コスモス達も負けじと光線を撃って行く。

 

 やがてコスモスとジャスティスは、お互いハイパーゼットンの左右について挟むと、同時にコスモストライクとダグリューム光線を放つが、ハイパーゼットンがその場からテレポートで姿を消す形でかわしたため、互いの必殺光線が当たったコスモスとジャスティスは吹っ飛ぶ。

 

ハイパーゼットンは一旦静止すると、体を高速に回転させながら暗黒火球を乱射し始め、その雨あられは周囲の隕石や小惑星などにも破壊の影響を及ぼし、コスモスとジャスティスも大爆発による大ダメージで大きく吹っ飛ぶ…!

 

 

「まずい!コスモス達が!」

 

一方、地球で戦っているダイナはコスモス達のピンチを察知するが、手強いゼッパンドンにより加勢できない。

 

ダイナはゼッパンドンの尻尾攻撃をバック転をしてかわすが、その隙に放たれたゼッパンドン火炎弾を受けて爆発し吹っ飛ぶ。

 

「クソッ! このままじゃラチがあかないぜ!」

 

肉弾戦では互角であり、光線技を撃てばシールドで防がれる。 攻守共に完璧なゼッパンドンにダイナは手こずっていた。

 

ゼッパンドンがダイナに再度向かって行こうとしたその時。

 

 

「フンッ! ハアッ!!」

 

 

突如、何処からか聞こえる掛け声と共に闇の一閃がゼッパンドンを斬りつけ、それにより倒れたゼッパンドンの背後から1つの影が現れる。

 

ふと驚くダイナが見たその影の正体は、なんと巨大化した『ジャグラス・ジャグラー(魔人体)』であった!

 

 

「お久しぶり、光の戦士さんよ。」

 

「お前は! …確かジャグラー!」

 

かつて惑星カノンでの戦いで対面している2人は、思わぬ形で再会を果たす。 ジャグラーはダイナの方へと向かう。

 

 

「今回ばかりは俺も手を貸してやろう。」

 

「そりゃあありがてーが、一体どういう風の吹き回しだ?」

 

 

ダイナ(アスカ)の問いかけに、ジャグラーは蛇心剣をゼッパンドンに向けて言った。

 

「…俺以外のゼッパンドンは認めん。 マガイモノは消えろ!」

 

どうやらジャグラーは、自身がかつて(ガイの真似事をしてまで)変身した事があるゼッパンドンに、特別な思い入れがあるみたいである。

 

 

「そうか、だが気をつけろ。奴は強敵だ。」

 

「奴の事は俺がよく知っている。 俺が奴の注意を引く、その隙にお前は後ろから行け!」

 

「ラジャー!」(サムズアップ)

 

 

(BGM:ULTRA HIGH)

 

ダイナとジャグラーの一時的な共闘が始まる!

 

ジャグラーは真正面からゼッパンドンに向かって行き、ダイナは上空に飛び上がる。

 

ゼッパンドンが連続で放つ殴り込みを、ジャグラーは蛇心剣で巧みに受け止めてはね返しつつ、袈裟懸け、一直線などと斬撃を確実に決めて行く。

 

やがてゼッパンドンは至近距離からゼッパンドン火炎弾を乱射し始め、ジャグラーはそれを咄嗟に蛇心剣で防ぎ、そのまま後ろに下がる。

 

「蛇心剣・新月斬波!」

 

ジャグラーは剣を振るい、火炎弾を弾き飛ばすと同時に『新月斬波』を放ち、ゼッパンドンはそれをゼッパンドンシールドで防ぎ始める。

 

 

だが、2人にとってはこれが狙いであった!

 

ゼッパンドンがシールドを張っている隙に、ダイナは背後からバリアの無い背中に飛び蹴りを決め、それにより体勢が崩れシールドが消えたゼッパンドンは新月斬波の直撃を受ける!

 

ダイナは怯んだゼッパンドンの頭部を掴むと、そのまま駆け込んでフェイスクラッシャーで叩き付け、続けて続けて尻尾を掴んで『ハリケーンスウィング』で振り回して放り投げる!

 

「蛇心剣…抜刀斬!!」

 

ジャグラーは闇の力を込めながら蛇心剣を引き抜くと、必殺の斬撃『蛇心剣・抜刀斬』を乱れ切りの形で繰り出し、それを受けたゼッパンドンは大ダメージを受けた。

 

ゼッパンドンを斬りつけたジャグラーが横に飛んで避けると同時に、その先の視界に現れたダイナは、両腕を斜めに広げた後に十字に組んで『Cチャージソルジェント光線』を放つ!

 

強化ソルジェント光線の直撃を受けたゼッパンドンは、発行しながら仰向けに倒れ、大爆発して砕け散った。

 

(BGM終了)

 

 

ゼッパンドンを撃破したダイナは、手を貸したジャグラーの方を振り向く。

 

「助かったぜ。 お前、少しはマシになったじゃねーか。」

 

だが、ジャグラーは何も言わずに「フッ」と鼻で笑った後、等身大へと縮小して人間体になる。

 

「正義の味方ってやっぱめんどくせぇ! だが、俺は奴を倒すまで、やめる気はないからなぁ…。」

 

そう言い残すと、何処かへと去って行った…。

 

 

歩き去るジャグラーを見つめながら、ダイナは感慨深そうに呟く。

 

「アイツ…少しは光の戦士に近づけてるじゃねーか。 戦い方が。」

 

 

しかし、ジャグラーは歩きながら、何やら気になる事を呟いていた…。

 

「しかし妙だな…。 この世界に来てから、蛇心剣に闇のエネルギーを集めたワケでもないのに、自在に巨大化出来るし闇の力も使える。 俺の身に、何が起きてやがる…?」

 

 

 

これで残るはハイパーゼットンとゼボスだけになったのだが、そのハイパーゼットンに、コスモスとジャスティスは大苦戦を強いられていた…!

 

ハイパーゼットンはそれぞれ右足、左足でコスモスとジャスティスを踏みつける形で仁王立ちしており、2人のカラータイマーは既に点滅を始めている…!

 

ゼボスはコスモス(ムサシ)に言った。

 

「確かさっき、「夢を奪う資格があるのか?」と言ったなぁ? あるさ。 何故なら俺様の夢のためだからなぁ!」

 

「何だと?」

 

「俺様の地球侵略のための、邪魔な存在は全て消し去る…当然の思考ではないかぁ。」

 

「ふざけるな! お前みたいな奴のために、罪の無い人達の夢を消していいわけがない!」 「我々、ウルトラ戦士が食い止めてみせる…!」

 

「…無駄だよ。」

 

コスモスとジャスティスの絞り出したような声を一蹴するゼボス。 ハイパーゼットンは2人をまとめて蹴り上げ、さらに腕の一払いで地球の大気圏側の方へとぶっ飛ばす!

 

 

「ゼットン星随一のゼットン使いである俺様、そしてその俺様が作り上げたハイパーゼットン…。 それらが合わさった今、貴様らに勝ち目はないのだ!!」

 

ゼボスの叫びと共に、ハイパーゼットンは暗黒火球を、自身とほぼ同じ大きさまでにチャージして放つ!

 

コスモスとジャスティスの並びをも優に超える巨大な火球は瞬く間に2人を包み込む形で直撃し、邪悪な炎が2人の体を焼き始める!

 

 

真美達が見守る地球上からも、その不吉な燃え上がりは微かに見えており、人々は不安になり始める。

 

「お願い…負けないで…。」

 

ひたすら祈り続ける真美。しかし、その祈りもチリにするかのように、邪悪な炎はウルトラマンの体を焼き、その中から光を奪って行く…!

 

 

コスモスとジャスティスは自身の体が溶けながらも諦めず、最後の力を込めてコスモストライクとダグリューム光線を放つが、ハイパーゼットンはそれらをハイパーゼットンアブゾーブで吸収して行くためにダメージを与えられず、エネルギーの消費と共にカラータイマーの点滅が早まる一方である…!

 

「無駄だぁ!! ゼットン星随一のゼットン使いの我と一体化したハイパーゼットンには勝てぬ!! 地球破滅の始まりの花火として派手に散るがいい!!!」

 

 

既に勝利を確信し、高笑うゼボス。 しかし、コスモスもジャスティスも、諦めない心はまだ燃え尽きてはいなかった…!

 

「まだ終わりじゃない…。 宇宙正義の行使の為にも…ここで倒れるわけにはいかない…!」

 

「僕らにはまだ…輝く希望がある…守るべきもの達がいる…その限り、絶対に負けない!」

 

 

そして諦めない心は、真美達も同じであった。

 

「絶対に負けないわ…だって、ウルトラマンだもの!」と海羽。

 

「私は自信を持てるようになった…ウルトラマンのお陰でもあるんだよ!」とひかる。

 

「それに、私に希望を取り戻させてくれたのもウルトラマンだった!」と寿美江。

 

「今じゃ確信を持って言えるわ! 大好きだよ!ウルトラマン!」と愛紗。

 

「そうだ!! 俺達も諦めたいない! だから、ウルトラマン達も、諦めるなー!!!」と宏隆。

 

そしてその他の人々も、絶えずウルトラマンの勝利を信じ、応援の声をかけ続ける!

 

 

だが、そんな人々の必死な思いも空しく、ウルトラマン達は今にも邪悪な炎の中に消え去りそうであった…!

 

 

「フンッ…くだらん。 終わりだ!」

 

ゼボスがそう言い放つと、ハイパーゼットンは吸収した光線を増幅して邪悪な光線にして撃ち出す!

 

 

邪悪な光線は、邪悪な炎ごと包むようにコスモスとジャスティスを包み込むように直撃し、2人の姿は消しゴムで擦ったシャーペンで薄く書いた線のように消し飛んだ後、大爆発した!

 

 

その爆発は地球上からも見え、それを見た人々は最悪の結末を確信し、再び絶望しようとする人が続出し始める…!

 

真美達も、下を向いて悔しがる者もいれば、泣き崩れる人も出始めていた…。

 

 

「…あれは…?」

 

その時、真美は何かに気づいて空を見上げ、それに他の人達も続く。

 

 

そこには、先程の爆発が見えたのと同じ位置に、先程の邪悪な炎とは違う、どこか神秘的な眩い光が見えているようであった…。

 

 

その神秘的な光は実際、コスモスとジャスティスが爆発したのと同じ場所で広がっており、それを目の前にハイパーゼットン、そしてゼボスは戸惑いを見せる。

 

「…なんだ?…あれは…!」

 

 

その光を見た地球上の人。 真美達はもちろん、その他の人々も再び絶望しそうになっていたが踏み止まり、新たな希望の誕生を確信し始めていた…!

 

 

「…来たぜ!とびっきりの奇跡が!」

 

宏隆のその呟きは、やがて実現する!

 

 

神秘的な眩い光は、やがてコスモスとジャスティスのカラータイマーのようなビジョンが1つになった後輝きを増し、その中から1人の“神秘の勇者”が飛び出す!

 

 

銀とグレーの割合が多く、紫のプロテクター、周囲から光が放射線状に伸びて行くような形状のカラータイマーが特徴のその戦士は、自信を包み込んでいた光を徐々に消滅させ、その神秘的な姿を露わにする。

 

 

現れたのは、大いなる2つの力が出会う時に初めて姿を現わすと言われており、宇宙に生きる全ての使命を見つめ、護るために存在するという伝説の超戦士『ウルトラマンレジェンド』である!

 

かつてコスモスペースにて、コスモスとジャスティスがグローカーの地球リセットに立ち向かった際にも登場しており、今回もその時と同じくコスモスとジャスティスが1つになる事で登場したレジェンド。 正しくコスモスとジャスティスを始めとするウルトラ戦士達や、諦めずそれを信じる人々が起こした奇跡である!

 

 

「どんな姿になろうと無駄だぁ! 俺様が捻り潰してやるぅ!!」

 

ゼボスの叫びと共にハイパーゼットンが向かって行こうとしたその時、そこに駆けつけた『ウルトラマンダイナ(ミラクルタイプ)』の高速移動でのパンチを即座に飛び上がってかわすが、そこに同じく駆けつけた『ウルトラマンギンガビクトリー』のパンチを胸部に食らって吹っ飛ぶ!

 

 

駆けつけたダイナとギンガビクトリーは合流する。

 

「俺達も相手だ!ゼボス!」

 

「終わるのはお前の方だ!」

 

「本当の戦いは、ここからだぜ!」

 

ヒカル、ショウ、アスカと順にそう言った後、2人(厳密には3人)は構えを取る。

 

 

「おのれ小癪な〜!!」

 

ゼボスの逆上と共にハイパーゼットンはダイナとギンガビクトリーに向かって行く!

 

ダイナは体を丸めて高速回転しての体当たり『ダイナローリングアタック』を繰り出し、ハイパーゼットンはそれをテレポートでことごとくかわして行く。

 

「「ウルトラマンコスモスの力よ! コズミューム光線!!」」

 

その間にギンガビクトリーはコスモスの力を発動し、コスモス(エクリプスモード)の必殺技・コズミューム光線を放つが、ハイパーゼットンはそれをハイパーゼットンアブゾーブで吸収して撃ち返す。

 

そこにダイナが即座にギンガビクトリーの前に回り込み、『レボリウムウェーブ(アタックバージョン)』を放って撃ち返された光線をブラックホールの中に流し込む。

 

「「ウルトラマンゼロの力よ! ワイドゼロショット!!」」

 

その隙にギンガビクトリーはウルトラマンゼロの必殺技・ワイドゼロショットを、ダイナが横にそれると同時に放ち、その直撃を受けたハイパーゼットンは吹っ飛ぶ!

 

 

その吹っ飛んだ先に待ち構えていたレジェンド。大きく構える事もなく立ち尽くすように浮遊するその姿は、伝説の戦士としての余裕を感じる。

 

「えぇい!キラキラしやがって! 消してやる!」

 

ハイパーゼットンは闇雲に殴りかかるが、レジェンドはそれらを全て見切っており、瞬間的に体を動かしてかわして行く。

 

今度はテレポートしながらの攻撃に切り替えるハイパーゼットンだが、レジェンドは時間すら移動すると言われている、ハイパーゼットンを超える瞬間移動能力で対抗し、パンチやキックなどを打ち込んで逆にダメージを与えて行く。

 

「おのれ! これならどうだ!!」

 

ハイパーゼットンは今度は暗黒火球を乱射して行くが、レジェンドはそれらを両手をかざして吸収して増幅して行き、そのパワーを利用して押し戻す能力『オーロラルパワー』を発動しながら接近して行き、やがて暗黒火球を完全に押し戻すと同時にパンチを打ち込む!

 

パンチ1発だけでも威力は絶大であり、受けたハイパーゼットンは小惑星をいくつか破壊しながら大きくぶっ飛ぶが、なんとか踏み止まる。

 

 

「バカなっ! 2つが1つになっただけで…!」

 

レジェンドの圧倒的な強さに動揺を隠せないゼボスに、ヒカルはウルトラフュージョンブレスを操作しながら言い放つ。

 

「2つじゃねぇ! それは俺達ウルトラ戦士、そして希望を捨てなかった人々の思いから生まれた、奇跡の力なんだ! 自身の野望のために、命を切り捨てようとするお前とは、ワケが違うんだ!!」

 

 

「うっ…おのれっ! おのれおのれおのれ〜!!」

 

更に逆上したゼボス。 ハイパーゼットンはギンガビクトリー向けて高速で飛びかかる!

 

「「ウルトラマンマックスの力よ!」」

 

ギンガビクトリーはウルトラマンマックスの力を発動し、右手を天に挙げて虹色の光線を出して召喚した『マックスギャラクシー』を装着する。

 

そしてハイパーゼットンの体当たりをスレスレの所でかわすと同時にマックスギャラクシーから伸ばした光の剣『ギャラクシーソード』ですれ違いざまに羽を切り落とした!

 

「「ギャラクシーカノン!!」」

 

更にギンガビクトリーは、マックスギャラクシーから最強光線『ギャラクシーカノン』を放ち、ハイパーゼットンを撃ち落とす!

 

 

とある小惑星に落下したハイパーゼットンは、ふらつきながらも立ち上がる。 3体のウルトラマン(その内1人は伝説の戦士)の連携攻撃により、流石にかなり消耗していた。

 

「おっ…おのれ…俺様が、ここで終わるはずが…!」

 

ゼボスの往生際の悪い発言と共にハイパーゼットンは再度暗黒火球をレジェンド目掛けて放つが、ダイナは即座に回り込んで『ウルトラバリヤー』で防ぐ。

 

「今だ! 伝説の力とやらを、見せてやれ!!」

 

“伝説の英雄”に促された“伝説の戦士”は、一回頷いた後、ハイパーゼットン向かって飛び立つ。

 

ハイパーゼットンは尚も暗黒火球を放つが、レジェンドはそれをオーロラルパワーで押し戻しながら接近する。

 

そしてハイパーゼットンの目前まで来ると、そのまま体を回転させ、全身のエネルギーを一気に放つ宇宙最強の究極技『スパークレジェンド』を放つ!

 

撃ち返された暗黒火球と同時に、伝説の戦士が放つ神秘的な眩い光を浴びるハイパーゼットンは、徐々に体が崩れて行く…!

 

「ばっ…馬鹿なっ!? なぜだぁぁぁ〜!!!」

 

やがて、内部にいるゼボス諸共、ハイパーゼットンは大爆発して完全に消し飛び、宇宙の塵になった…。

 

 

遂に、ゼットン軍団を率いて人々を恐怖に陥れた悪魔が完全に滅び去った!

 

それを消し去った神秘的な光は地球上からも見え、真美達を始めとする人々は歓喜の声に溢れる。

 

「ありがとう。 ウルトラマン。」

 

嬉しさで泣き崩れる海羽の頭を優しく撫でながら、真美は満面の笑みで呟いた。

 

 

ハイパーゼットン及びゼボスを撃破したレジェンドは、青く輝く地球を見つめ、やがて神秘の光と共に変身を解除し、コスモス(ルナモード)とジャスティス(スタンダードモード)に戻る。

 

そしてそこにダイナ、ギンガ、ビクトリーが合流し、5人は互いを見つめ合ってアイコンタクトを交わした後、勝利の印として拳を合わせた。

 

自分たちが守り抜いた、地球を見つめながら…。

 

 

(BGM:High HOPE)

 

 

激戦を終えて、地球に帰って来たウルトラ戦士達を、真美達は笑顔で迎えた。

 

真美と海羽はアスカを迎え、特に海羽は、嬉し泣きをしながら勇気を思い出させてくれた事のお礼を言い、真美はそれを満面の笑みで宥める。

 

その構図は正に母親と子供のようである。

 

愛紗と寿美江はムサシとジュリを迎え、愛紗は憎き存在・ギマイラを倒してくれた事のお礼を言い、寿美江は真を助けてくれた事でムサシに泣きながら何度もお礼を言う。

 

宏隆とひかるはヒカルとショウを迎え、ひかるは改めてヒカルに自信を取り戻させてくれた事のお礼を言い、宏隆に関してはいつの間にかショウといつか一緒に特訓する事の約束をしてしまっている。

 

 

潮風町の人々も老若男女問わず、昨日までとは違い、いつもの元気さを取り戻していた。

 

町はある程度破壊されてしまったが、最後まで望みを捨てなかった強い彼らなら、きっとすぐ町を復興させる事であろう…。

 

 

ムサシとジュリは、潮風町の高原にて、青空を見上げている。

 

「この青空が今日も見られるのも、僕たちウルトラマンだけじゃない。 最後まで頑張り続けてくれたみんなのお陰でもある。」

 

「そうだな。 しかし、それがいつまでも続くとは限らない。 2000年後、もし地球が害悪なものだとデラシオンが判断すれば、私はまたグローカーと共にリセットしに来るかもしれない。」

 

「その時は、今度は全力で止めるさ。 (真美達の方を向いて)あの子達みたいな人が、1人でもいる限り。」

 

「(ふっと笑って)相変わらずのようだな。 …またどこかで会おう。」

 

ムサシはジュリに、無言で一回頷いた。

 

 

コスモスペースに帰る事にしたジュリ。ついでにオニオンとタイショーを送り帰す事にした。

 

「また、遊びに来てね。」

 

「言われなくてもいつかまた来るよ。」 「いつかは、僕の友達にも海羽さんを紹介したいなー。」

 

「えへへ…それじゃあ、元気でね。」

 

ジュリはジャスティスに変身し、オニオンとタイショーを手に乗せて飛び立つ。

 

「バイバ〜イ!」

 

海羽は空の彼方へと飛び去るジャスティスが見えなくなるまで、大きく手を振って飛び跳ねながら見送った。

 

 

一方、ヒカルとひかるにも、一旦の別れの時が来ていた。

 

「ここで、お別れになるのですね…。」

 

「またいつか会えるさ。 もうしばらく、この辺にいるつもりだからな。」

 

「必ず、また会いましょうね。 本当に、色々とありがとうございます。」

 

ヒカルにお礼を言うひかるのその顔は、正に自信に満ちた、光らんばかりの笑顔であった。

 

「俺たちはみんな、この空の下で繋がっている。」 「困った時は、また駆けつけるからな。」

 

「…ガレット!」

 

ヒカルとショウの心強い言葉に、ひかるは嬉しそうに返事をしながら敬礼をした。

 

 

「アスカはこれからどうするつもりだい?」 「俺はこの世界を探索する事にする。 ゼボスは滅んだが、それ以外にも邪悪な気配を感じるしな。」

 

アスカ(ダイナ)は、しばらくこの世界に留まってパトロールを続ける事を決め、その内ゼロに会えたらなとも考えていた。

 

そこに宏隆と愛紗、寿美江が歩み寄る。

 

「あなた達に会えて、本当に光栄でした。 くれぐれも気をつけてくださいね。」

 

「ラジャー!」

 

誠実な声を掛ける宏隆に、アスカはサムズアップを向けて返事をした。

 

「私、やっぱりウルトラマンが大好きです!」 「私達に、希望を与えてくれる存在!」

 

愛紗と寿美江の言葉に、アスカとムサシは少し照れくさそうな表情で見つめ合った。

 

 

「それじゃあ、またいつかどこかで。」

 

アスカは真美達にそう言うと、リーフラッシャーを取り出す。

 

「ダイナー!!」

 

そしてリーフラッシャーを挙げ、眩い光と共にダイナに変身すると、空高く飛び立ち、何処かへと飛び去って行った…。

 

「ダイナさんか…また心強い味方が増えたなぁ…。」

 

海羽は飛び去って行くダイナを見上げ、感慨深そうに呟いた。

 

 

「時間が出来たら、私もおじいちゃんの家の復興を手伝おうかな。 あと、ここ潮風町の復興も。」

 

愛紗はそう言いながら、潮風町の人々の中の、先程自身が慰めた少女の方を振り向く。

 

その少女も、昨夜とは違い、子供らしい明るさが戻っていた。

 

 

「本当に、ありがとうございました。 町を救ってくれただけじゃなく、私の友達も救ってくれて。」

 

「いいんだよ。 光の戦士として、当然のことをしただけなんだから。」

 

笑顔で改めてお礼を言う真美に、ムサシは同じく笑顔で返す。

 

「それに、僕たちウルトラ戦士が勝てたのは、君たちのお陰でもある。 君たちは、一度閉じかけていた心の扉を再び開いて、最後まで望みを捨てずに頑張ってくれた。 その前向きな精神も、僕たちウルトラマンの力になるんだ。」

 

「ムサシさん…。」

 

 

そこに、ひかると愛紗が道枝真を連れてやって来る。 どうやら彼はもう元気みたいだ。

 

その真の外見はと言うと、髪型は金のメッシュが少し入っており、顔もシャープな男前なのだが、背はやや低めである。

 

寿美江よりも僅かな差で低く、愛紗とそんなに差もないため、ひかると並ぶと子供に見えてしまう程である。

 

「そうそう! それに、マコちゃんも無事に帰って来たし!」

 

明るくそう言う愛紗だが、真は何やら暗い顔をしている。

 

「みんな…本当にごめん…。 僕が鈍臭いから、怪獣になっちまって…みんなに迷惑をかけちまって…。」

 

…実は彼、先程ラブラスの姿でギマイラの支配に打ち勝ったように、精神力自体は強いのだが、一方でちょっとした事で落ち込み、自虐的になりやすい一面があるのである。

 

しかし、ひかる達は彼を責めるつもりは無かった。

 

「何行ってるの。 マコちゃんは全然悪くないよ。」

 

「うん。さっきだって、あのバケモノに屈しない強さを見せてくれたじゃない! 本物凄いよ!」

 

「…そう…かな…?」

 

ひかると愛紗が笑顔で語り掛ける中、寿美江も歩み寄る。

 

「…また…一緒に空手部頑張ろうね。 次こそは絶対負けないんだから。」

 

寿美江は笑顔でそう言って真に正拳突きのように拳を向け、やがて笑顔になった真もそれに自身の拳を合わせた。

 

「佐藤先輩に、少しでも近づくぞ。」

 

 

「それじゃ!大団円になった事だし、今からタピらない? マコちゃんとスミちゃんも行こ?」

 

「私は…今度にするよ愛紗ちゃん。 なんか、終息した瞬間、一気に疲れちゃった。ごめんね。」

 

「そう…まぁ確かに、スミちゃんが1番辛かったもんね。 今日はゆっくり休んで、また一緒に遊ぼ。」

 

「うん!」

 

寿美江は、昨日の虚無感に溢れていた表情とはかけ離れた、素晴らしい笑みで返事をした。

 

 

「俺も、一旦霞ヶ崎に帰って休むよ。 (小声で)明日は、彼女の汐里の付き添いで空手の練習をする予定だしな。」 と宏隆。

 

 

「私は、もうちょっとリリカちゃんや、ハルちゃん達の手伝いをしてから帰るわ。 それに、久々に色々話してみたいし。」

 

「私も、裕太君や裕君ともっと触れ合ってみたい! あ、あと、獏田さんからバクちゃんの近況も聞きたいし!」

 

「なんでも、最近無事に子供を産んだらしいよ?」

 

「え! 本当? (頬に手を当てながら)バクちゃんも遂にお母さんか〜!」

 

真美と海羽も、いつもの楽しそうなやり取りを始めており、それも平和が戻った事を象徴していた。

 

 

…しかし、まだこの世界の地球が完全に平和になったワケではない。

 

その時が来るまで、ウルトラ戦士達はこれからも支え合える仲間達と共に頑張って行くであろう…。

 

 

肩を組んでタピオカを飲みに向かう真、ひかる、愛紗の3人、霞ヶ崎へと帰り始める宏隆と寿美江、他愛もない話をしながら潮風町の人々のケアをする春菜達の元へと向かう真美と海羽。

 

いずれも、楽しそうに話し合っていた。

 

 

そんな彼らを見送りながら、ムサシは笑顔で呟いた。

 

「…これからもよろしくね。 この世界の、素晴らしい人達。」

 

(BGM終了)

 

 

(ED:心の絆)

 

 

〈エピローグ〉

 

強大な敵が倒れ、真も無事に帰って来たというお祝いも込めて、タピオカを飲みに向かうひかる、愛紗、そして真の3人。

 

さっきまで落ち込んでいた真も、女子2人と楽しそうに話しながら歩いている。

 

「ねぇ、ひかるちゃんと愛紗ちゃんは何を飲むの?」

 

「私は…苺ミルクかな。」 「私は抹茶ミルク。」 ひかると愛紗はそれぞれ答える。

 

「僕は…やっぱミルクティーかな?」

 

「そうなの? たまには違う味も試してみない?」

 

「お? それいいかもね!」

 

 

このように、3人は他愛もない話を楽しみながら、歩き続ける。

 

 

…しかし、そんな3人の明るい笑顔の前に、1つの影が降りる!

 

 

突如起こった衝撃音と地響きにより3人は驚き、ふと前方に現れたモノを見上げる。

 

そこにはなんと、『宇宙恐竜ゼットン』が立っていた!

 

 

恐らくこのゼットンは、ゼボスが引き連れたゼットン軍団の残党であろう。

 

「うそ!? なんでまたゼットンが!?」 「まだ生き残りがいたという事!?」 「ひとまず逃げよう!」

 

ひかる、愛紗、真の順にそう言っている間にも、ゼットンは顔の発光部から火球を乱射して暴れ始める!

 

 

周囲が破壊されて行く中、やがてひかる達にもその炎が襲い掛かろうとする…!

 

 

その時!

 

 

「テアーッ!!」

 

突如、勇ましい掛け声と共に1人の巨人が飛び出し、蹴りの一撃をゼットンに喰らわす!

 

 

後退するゼットンはすぐさま体勢を立て直す。 ひかる達も、覆っていた顔を上げてその巨人を見つめる。

 

 

現れたのは、『オーブカリバー』を手に立つ『ウルトラマンオーブ(オーブオリジン)』であった!

 

「俺の名はオーブ! ウルトラマンオーブ!」

 

 

ひかる達は、初めて見るオーブの姿に魅入っている。

 

「…ウルトラマンオーブ?」 「かっこいいかも〜!」 「新たな…ウルトラマン。」

 

 

「銀河の光が、我を呼ぶ!」

 

(オーブオリジン戦闘BGM)

 

オーブは口上を上げてオーブカリバーを構えると、ゼットンが乱視して来る火球を切り飛ばしながら接近し、オーブカリバーでの斬撃の一撃を叩き込んで吹っ飛ばす!

 

「オーブグランドカリバー!」

 

オーブはオーブカリバーの“土”の紋章を光らせて地面に突き立てて『オーブグランドカリバー』を放つ!

 

ゼットンはゼットンシャッターを張って防ごうとするが、弧を描きながら地を張って向かう二条の黄色い光線は、バリヤーを破ると同時にゼットンにもダメージを与える!

 

「オーブウォーターカリバー!」

 

ゼットンは再び火球を連射するが、オーブはオーブカリバーの“水”の紋章を光らせて『オーブウォーターカリバー』を発動し、カリバーから放つ水流で火球を消していき、やがて水のエネルギーを纏った一撃を振るって完全に消し飛ばすと同時にゼットンも吹っ飛ばす!

 

オーブカリバーからの技の連続に、早くも劣勢になったゼットン。 今こそトドメだ!

 

「オーブスプリームカリバー!!」

 

オーブは挙げたオーブカリバーを円を描くように振るって、カリバーの4属性、そして自身の光と闇のエネルギーを結集させた後、突き出した先端から必殺光線『オーブスプリームカリバー』を放つ!

 

虹色の破壊光線を浴びたゼットンは、体を七色に発光させながら倒れ、大爆発して消し飛んだ。

 

「あばよっ!」

 

オーブはゼットンの爆発を背に決め台詞を言った。

 

 

「…凄ぇ。」 「カッコいい〜!」

 

感心する真と、惚れ惚れしているひかる。 オーブは体を光らせて変身を解除すると、真たちの前に『クレナイ・ガイ』の姿で現れる。

 

「怪我は無かったか? 兄ちゃん達。」

 

ガイを見た瞬間、女子2人は更に興奮する。

 

「やだ! 超イケメン!」 「あの、あなたは誰ですか!」

 

「俺か? 俺はクレナイ・ガイ。 通りすがりの風来坊だ。」

 

 

「風来坊? …て事は、いろんな所を旅してるのですか?」 と真。

 

 

すると、女子2人はガイに高速で接近し、質問責めを始める。

 

「あの、最近旅した場所はどこですか?」 「好きな食べ物は?」 「好きな女性のタイプは何ですか?」

 

「おっ…おいおい、質問は1人一回ずつで頼むぜ。」

 

ガイは困惑して苦笑しながら言った。

 

 

「こらこら、彼困ってるだろ?」

 

「あ、ごめんなさい。つい…。」

 

真が窘めた事により、女子2人は一旦正気に戻る。

 

 

「ねぇ、これから行く所とかあるんですか?」

 

「い…いや、特に無いが?」

 

「じゃあじゃあ、今から私達とタピオカ飲みに行きません? 色々お話もしたいし。」

 

「た…たぴ? 何だそれは?」

 

「いいから、飲めば分かるって〜。」

 

 

「ったく…若い女子はこれだから…。」

 

ひかる達に半ば強引に誘われる形でガイは彼女達に同行し始め、真はそれを呆れ気味に見ながらも笑いながらついて行く。

 

 

銀河の風来坊と出会った3人の若者。 彼らの物語は、また後のお話で…。

 

 

〈終〉




読んでいただきありがとうございます!


今回で、年の終わりと共にまた1つ大きな敵との戦いが終わりました。

コスモスとジャスティスを共闘させて、フューチャーやレジェンドもいつか登場させたいと思っていたので今回ようやくそれが実現出来たのが私としては嬉しかったですね。

私がコスモスでやりたい事、あとはサーガぐらいですね(ニヤリ) (その前に櫂をどうにかせねばアカンのだが(汗))


来年も、時間を見つけては小説を書いて投稿して行こうと思いますので、どうぞ私でよろしければこれからもよろしくお願いします。

では、よいお年を!


感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています。


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番外編3
番外編「大きな我(じぶん)」


 明けましておめでとうございます!


 お待たせしました!年末年始特別編第2弾です。


 今回の主役は前回(第36話)のラストで出会ったクレナイ・ガイと、道枝真・八橋ひかる・渕上愛紗の麟大1年生トリオであり、登場するウルトラマンは“タロウの息子”と“ジョーニアスの後輩”と“新たな惑星O-50の戦士”です!

 また、ラストには去年大出世した“あのウルトラ戦士”も登場します!


 相変わらず文才はあまり無いですが、とりあえず楽しんでもらえたら幸いです(笑)


 そして宜しければ、今年も本作やその他の作品、そして、特撮ヒーロー(特にウルトラマン)大好きな私・剣音レツをよろしくお願いします!


 では、どうぞ!


 そういえば、今回の投稿日(1月4日)は、ウルトラマンタロウの超豪華な“ある回”の放送日でもあったような…(独り言)。


 ※ウルトラマンタイガ最終回のネタバレも含まれています。


 (OP:ULTRA BRAVE)

 

 

 M78星雲・光の国。

 

 それは、地球から300万光年離れた所に位置する惑星であり、ウルトラマンたちの故郷で、“ウルトラの星”とも呼ばれている。

 

 エメラルドグリーンに輝く神秘的なその惑星が目の前に見える宇宙空間のとある岩壁だけの小惑星で今、戦いが繰り広げられていた!

 

 光の国の中でも特に優れた戦士で構成されたチーム『ウルトラ兄弟』の1人で、光の国で教官を務める戦士『ウルトラマンタロウ』が、数人の宇宙警備隊隊員・候補生と共に超獣軍団に立ち向かう!

 

 現れた超獣は、珊瑚と宇宙怪獣の合成で、黒い体に生えた無数の赤い管が特徴の『ミサイル超獣ベロクロン』

 

 芋虫と宇宙怪獣の合成で、蛇腹状の青い前面と鉱物を思わせるオレンジの背中が特徴の『一角超獣バキシム』

 

 蛾と宇宙怪獣の合成で、毒々しい緑の体に髑髏のような顔から突き出た赤い二本牙が特徴の『蛾超獣ドラゴリー』

 

 蘭の花と宇宙怪獣の合成で、緑の体に、左右に大きく広がった羽、右手に持った武器・短槍が特徴の『忍者超獣ガマス』

 

 アゲハ蝶の幼虫と宇宙怪獣の合成で、悪魔のような物々しい風貌に、左手は鎌、右手は鉄球になっており、頭部には遠隔操作可能な剣が付いているなど、正に“全身武器”な超獣『殺し屋超獣バラバ』

 

 カウラ、ユニタング、マザリュース、マザロン人、巨大ヤプールが合体した、“超獣の王”とも言うべき最強の超獣『最強超獣ジャンボキング』の六体だ!

 

 赤い者と青い者と2種類おり、カラータイマーの無いその胸がまだ一人前のウルトラ戦士ではない事を物語っているが、候補生たちはそれぞれ一体に2人1組で全力で挑む!

 

 だが、やはり怪獣を超えた存在・超獣たちのパワーは凄まじく、それぞれベロクロンのミサイル乱射で吹っ飛び、バキシムの火炎放射に焼かれ、ドラゴリーの怪力で軽々と投げ飛ばされて行く!

 

 ガマスと戦う組は、ウルトラブレスレットを変化させたウルトラランスに似た槍で、同じく短槍を持つガマスと剣戟を繰り広げるが、ガマスの煙幕による瞬間移動、まきびしなどの忍術に翻弄された隙に切りつけれて行き、バラバと戦う組は、バラバの頭部の剣から放つショック光線を受けて怯んだ隙に右手の鉄球、左手の鎌で痛めつけられ、ジャンボキングと戦う組だけは3人なのだが、3人がかりでもケンタウロス型の巨体を誇るジャンボキングは押さえ切れず、逆に前後の体に付いている計4本の腕による怪力で圧倒され、後半身の目から発射する黄色い光線『サークルイエロー光線』で身動きが取れなくなった所に前半身の目からのレーザー、口からのミサイルや火炎で吹っ飛ばされる!

 

 

 候補生たちが超獣軍団に苦戦を強いられる中、タロウは『異次元超人エースキラー』と戦っていた。

 

 タロウはエースキラーの左手の鉤爪や、右手に持つ音叉状の刃物による攻撃を素早くかわしつつパンチやキックで応戦し、エースキラーもそれに負けず攻撃を続ける。

 

 両者は組み合い、そのままエースキラーは頭部の発光部から『エメリウム光線』を放ち、タロウもそれに対し頭部のウルトラホーンから『ブルーレーザー』を放ち、互いに光線がぶつかり合う反動で後ろに飛ぶ事で距離を取る。

 

 続けてエースキラーが腕を十字に組んで放った『スペシウム光線』をタロウは突き出した両手先から放つ『シューティングビーム』で相殺し、その際に発生した爆発の中から飛び出す形で両者は宇宙空間を飛び回り始め、エースキラーは『ウルトラブレスレット』を飛ばし、タロウはそれに対して腕を十字に組んで三日月状の光のカッター『タロウカッター』を飛ばし、二つの光のカッターがぶつかり合う中、両者は再び組み合い、そのまま小惑星に落下する。

 

 タロウはエースキラーの回し蹴りを宙返りをしてかわす形で距離をとって着地すると同時に腕をT字に組んで『ストリウム光線』を放ち、それに対しエースキラーは赤い光弾状の『M87光線』を放ち、2つの強力な光線がぶつかり合って大爆発が起こる!

 

 エースキラーが爆発で視界がくらんでいる隙にその中からタロウが飛びかかり、落下のスピードも加えた右手のチョップを首筋に叩き込み、続けてボクシングのように連続でパンチを腹部に打ち込んだ後、跳躍しての横蹴りを脇腹に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

 跳ね起きで起き上がるエースキラーの元に、ウルトラの候補生たちを痛めつけた超獣軍団は集まり、ウルトラの候補生たちも、傷ついた体を引きずりながらタロウと交流する。

 

 「みんな! 大丈夫か?」

 

 タロウは候補生たちを気にかけるが、次の瞬間、何者かの不気味な笑い声が響いた事により身構える。 その主は『異次元人ヤプール』のものだった。

 

 「タロウ! 今から貴様に、我らの傑作を見せてやる!」

 

 ヤプールがそう言うと、エースキラーの右腕に黒い禍々しいオーラと共にあるガントレット状のアイテムが装着される。

 

 「何だと!?」

 

 そのアイテムを見て驚愕するタロウを他所に、候補生の1人はウルトラランスを手にエースキラーに飛び掛かる!

 

 「極星光波手裏剣!」

 

 ヤプールの声と共にエースキラーはアイテムに手をかざしてスライドする事で手裏剣状のエネルギー波を生み出して投げつけ、候補生の1人を撃ち落とす!

 

 タロウ達がその候補生を気にかける暇も与えず、エースキラーは次の必殺技に入る。

 

 「プラニウムバスター!」

 

 今度はアイテムから緑色の光球を発生し、左腕を大きく振り下ろし鉤爪で引っ掻く事で撃ち出し、他の候補生たち数人はそれが間近に直撃した爆発により吹っ飛ぶ!

 

 「あれらの技…さては!」

 

 タロウが動揺する間に、エースキラーは次の必殺技に入り、ストリウム光線に似た予備動作でエネルギーを溜めて行く。

 

 「ストリウムブラスター!」

 

 エースキラーは腕をT字に組んで虹色の必殺光線を放ち、それらが周囲に当たって大爆発する中、それにより発生した爆風にタロウはなんとか耐え抜くが、候補生たちは全員吹き飛んでしまう!

 

 

 「フハハハハハ! 我々はたった今、目的の場所を特定した! 行くぞ超獣ども!そして、タイガキラー!」

 

 ヤプールが高笑いと共に発した指令を受けた超獣軍団は咆哮を上げ、ガラスのように割れて現れた異次元の入り口に入って行き、そして“エースキラー”改め『タイガキラー』もその中に入った後、入り口は塞ぐ。

 

 

 「タイガキラーだと…?」

 

 先程ヤプールが叫んだ名前が気になっていたタロウは、ダウンした候補生たちの安否を確認しながら呟いた…。

 

 

 しばらくすると、光の国から『ウルトラの母』率いる『銀十字軍』が駆けつけ、傷ついた候補生たちを治療するために光の国に運び始める。

 

 そんな中、タロウは母に先程の敵の事を伝える。

 

 「と、いう事です、母さん。」 「もしその名が本当だとしたら、もしや奴らの狙いは…。」

 

 タロウから事情を聞いたウルトラの母は、ある程度検討がついたのか少し不安になりながらも、タロウに命じる。

 

 「行きなさいタロウ。 必ず、その世界を救うのです。 “お前の息子”とともに。」

 

 「はい、母さん。」

 

 タロウは返事をした後、腕をクロスさせて発射した光線『トゥインクルウェイ』により発生した次元の穴へと飛び込んで行く。

 

 

 今回の物語(ストーリー)の舞台となる、ある世界の地球に向かって…。

 

 

 

 その世界の地球に、宇宙人が密かに暮らしている事は、あまり知られていない。

 

 これは、そんな星で出会った若者たちの、奇跡の物語である!

 

 

 

 一方、その世界の地球のとある場所で、ある男女4人組が光のエフェクトと共に降り立つ。

 

 『クレナイ・ガイ』が、『道枝真』(みちえだ まこと)、『八橋ひかる』(やつはし ひかる)、『渕上愛紗』(ふちがみ あいさ)の3人、所謂“麟大1年生トリオ”を連れて来たのである。

 

「まずはこの世界を回ってみるか。」

 

ラムネ瓶を片手にガイがそう言う中、ひかるはある事を確認する。

 

「あの、ここって本当に私達が住んでるのとは違う世界の地球なのですか?」

 

「あぁ、そうだ。 言ったろ?俺は銀河の風来坊だと。」

 

「凄い! 私達、本当に次元を超えちゃったって事だね!」

 

愛紗が益々はしゃぎ始める中、真は申し分なさそうに言う。

 

「なんか、本当にすいません。 僕らのためにわざわざ…。」

 

「なに、たぴおか? だっけ? 君達が美味いもんを飲ませてくれたほんのお礼だ。」

 

どうやらガイは、先程ひかる達と飲みに行ったタピオカが気に入ったみたいであり(第36話エピローグ参照)、それを飲ませてくれた彼らへのお礼として、別次元の地球に連れて行く事にしたと言う事である。

 

最も、ガイが真っ先に飲み干す中、ひかる達は主にインスタ映えの写真を撮るのに夢中だったワケだが(笑)

 

「それに、この世界は、“俺の後輩”が頑張っている世界でもあるしな…。」

 

更にそう呟くガイ。 どうやらこの世界に来た理由は、他にもあるみたいである。

 

 

ガイの発言から少なくとも分かったのは、この世界は“あるウルトラマン”が活躍して世界でもあるという事だ。

 

…いや、厳密にはあるウルトラマン“達”と言った方がいいのかもしれない…。(それは後ほど分かります)

 

 

「タピオカだけで別次元の世界に連れてもらえるなんて…なんか感激だな。」

 

真も、来た事ない世界へのワクワクが湧き始めているようであった。

 

「じゃあさ、せっかく来たんだし、もっと探索してみない?」

 

「賛成ー! 新しい友達も出来るかもしれないしね!」

 

ひかるの提案に愛紗は明るく賛成する。

 

「くれぐれも気をつけるんだぞ。 ま、いざという時は俺がついている。」

 

「はい、ガイさん。」 真は安心の表情で返事をした。

 

 

…しかし、彼らがはしゃぐのも束の間、次の瞬間事件は起きる!

 

 

「…ん? あれは何?」

 

ひかるが指差す方を一同は振り向く。

 

そこには不気味な揺らめきと共に、一体の巨大生物が半透明な状態で姿を現していた。

 

 

殺し屋超獣バラバである!

 

 

半透明な状態で咆哮を上げるバラバに怯え始めるひかる。

 

「そんな…この世界にも怪獣が!?」

 

「いや…あれは超獣だな。」

 

冷静に訂正をしながら身構えるガイ。 真と愛紗も驚愕の表情でバラバの巨体を見上げる。

 

 

するとバラバは、真達に気づくや、右手の鉄球の先端をムチのように伸ばして攻撃し始める!

 

「きゃっ! こっちに向かって来るよ〜!」

 

「早く逃げろ!」

 

ひかるが更に怯え始める中、ガイは彼女達に早く安全な場所に避難するように促す。

 

ガイの指示を受けた3人は急いで避難しようと逃げ出すが、“殺し屋超獣”の名を持つバラバの殺意に満ちた攻撃はなおも容赦なく襲い掛かり、やがて真達は、バラバのムチの先端が近くの地面に命中した衝撃で転んでしまう!

 

真とひかるは大した怪我は無かったが、愛紗は砕けたコンクリートの破片などにより、右足を怪我してしまっていた!

 

「愛紗! 大丈夫か!」 「早く捕まって…!」

 

真とひかるは急いで愛紗を肩を貸して起き上がらせ、安全な場所へと急ぐ。

 

 

尚も真達に襲い掛かろうとするバラバの方を振り向き、ガイはオーブリングを挙げる!

 

《ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!》

 

そして紫の光と共に『ウルトラマンオーブ・スペシウムゼペリオン』へと巨大変身して構えを取る。

 

「スペリオン光線!!」

 

オーブは腕をL字に広げた後十字に組んで必殺光線『スペリオン光線』を放つが、光線は半透明なバラバの体をすり抜けてしまう。

 

そしてバラバは攻撃をやめると、不気味な揺らめきと共に姿を消した…。

 

 

突然の敵の撤退に戸惑い、その場に立ち尽くすオーブ。

 

真とひかるは、怪我をした愛紗に呼び掛けるが、どうやら気を失っているようである。

 

「傷も案外深いわ…早く何処かで治療をしないと…。」

 

「しかし、どこでしよう…?」

 

 

2人が困っている中、変身を解いたガイは考え事をしていた。

 

「さっきの超獣…何しに現れたんだ…? それに、誰に送り込まれた…?」

 

 

尚も困っている真とひかる。 そこに、ある1人の青年が声を掛ける。

 

「あの…何かお困りでしょうか?」

 

2人は振り向くと、そこには青いジャケットに黒い帽子を被った青年が、膝に手をついて見つめていた。

 

やがてその青年も、愛紗の傷に気付く。

 

「酷い傷だ…早く手当をしないと。」

 

「でも、一体どこですれば…。」 ひかるは問いかける。

 

「僕の会社の事務所で良かったら。」

 

優しい笑顔でそう言う青年。 真達は困惑しつつもそれに甘える事にし、青年に案内されて歩き始め、ガイも少し遅れてついて行く。

 

 

因みにその青年の右腕には、とある“ガントレット状のアイテム”が付いていた…。

 

 

気を失っていた愛紗は、その青年が働く会社の事務所のソファーの上で毛布をかけてもらっている状態で目を覚ます。

 

「ぅ…うぅ…。」

 

愛紗はゆっくりと目を開け始め、やがて虚ろな視覚がハッキリとし始める。

 

「大丈夫かい?姉ちゃん。」

 

視界がハッキリとすると同時に、自身に覗き込んでそう呼び掛ける者の顔もハッキリと見える。

 

 

…しかし、その顔は人間ではなく、黒いタイツを着たような姿に、金髪に仮面を被った宇宙人『サーベル暴君マグマ星人』の顔であり、それを見た愛紗は一気に意識が戻ると同時に驚く!

 

「キャ〜ッ!!」

 

“ベチンッ”

 

「!? 痛ってっ!!」

 

愛紗は驚きの余りマグマ星人にビンタすると同時に起き上がり、近くにいたひかるに抱き付く。

 

 

「よっ…良かった、意識が戻って。」

 

ひかるはパニックながらも意識が戻った愛紗に、苦笑しながらも安心する。

 

「一体何!? 何処なのここ〜!」

 

「落ち着けよ。 ここは安全な場所だし、あの人達も悪い人達ではない。」

 

「…え?」

 

真の言葉を聞いた愛紗は、一旦落ち着くと辺りを見渡す。

 

 

「痛ってぇな〜。」 「大丈夫ですか?」

 

「フッ、その顔でいきなり覗き込むからだ。」

 

「凄い瞬発力…!」

 

「ごめんなさいね、いきなり驚かせちゃって。」

 

ビンタされた頬を押さえるマグマ星人に、それを気遣う『宇宙商人マーキンド星人』、そんな彼らに皮肉を言う男性、愛紗の起きて早々の行動力に呆気に取られるメガネをかけた女性、愛紗に一言詫びるスーツ姿の女性…。

 

そして、先程真達を案内した青年が歩み寄る。

 

「ここはイージス。 君たちみたいな人を、宇宙人絡みの事件から警備する組織だ。」

 

 

真達が案内されたのは『E.G.I.S.』(正式名称:Enterprise of Guard and Investigation Survice)。 それはこの世界の地球で結成された民間警備組織であり、主に地球に移住した宇宙人絡みの事件を追う組織である。

 

宇宙人絡みの事件を専門に扱う警察組織『外事X課』に所属していた女性『佐々木カナ』が立ち上げた企業であり、メンバーも宇宙人絡みを扱うだけに個性揃いで、正体はヒューマノイド型の宇宙人『アマヤルム星人』で、元不良宇宙人でもある実働隊員『宗谷ホマレ』、元は『宇宙爆蝕怪獣ウーラー』を抹殺する為に『エオマック星』の科学者が作ったアンドロイド『ピリカ03』でもあった、オペレーターの女性『旭川ピリカ』、元は悪の宇宙人で構成された犯罪組織『ヴィラン・ギルド』の構成員及びオークションの主催者であったが、ウーラーとの戦いを経て心を通わし、新たにそれぞれ警備士、会計としてメンバーとなったマグマ星人、マーキンド星人などがいる。

 

 

…つまりこの世界の地球は宇宙人が密かに暮らしており、最近、その宇宙人との共存に大きな一歩を踏み出したばかりと言った所である。

 

 

そして先程真達を案内した青年は、イージスの新人隊員であり、心優しく正義感の強い青年『工藤ヒロユキ』だ。

 

 

「あっ、超イケメン…。」

 

ヒロユキを見た愛紗は、更に落ち着きを取り戻す。

 

そして、ヒロユキ達からイージスの事を更に詳しく聞き、完全に不信感が無くなる。

 

「そうですか…宇宙人との共存も目指してるのですね(凄い世界に来たんだ、私達…)。」

 

 

「そ、宇宙人だからと言って、偏見は良くない。 宇宙人にだって、悪人じゃない奴もいるんだから。」

 

カナは、かつて外事X課にいた頃に助けられなかった“セミ少女”や、腐れ縁でもあった“セモン星人ミード”の事を思いながら言った。

 

「俺も、元は不良宇宙人だったが、変わる事が出来たしな。 中には、変われる余地のあった奴もいたし…。」

 

ホマレはそう言いながら、嘗ての弟分でもあった宇宙人“ヴォルク”の事を思い浮かべる。

 

「そうそう! 種族なんて関係ない。 頑張れば友達にだってなれるんだから。」

 

ピリカも笑顔で便乗しながら、かつて交流を深めた“セゲル星人・葵”の事を思い浮かべる。

 

 

「それに、今正にここにいる彼らこそが、その証拠だしね。」

 

ヒロユキはそう言いながら、自身の後輩でもあるマグマ星人やマーキンド星人に手を向ける。

 

「おぅ! 俺達も、すっかり足を洗ったぜ。」 「今や、イージスの一員として、汗水流す毎日です。」

 

 

愛紗は、恐る恐るマグマ星人に、先程ビンタしてしまった事を詫びる。

 

「あ、あの、さっきはすいませんでした。」

 

「なに、いいって事よ。 姉ちゃんが無事だったんだから。 それより、俺達の事、怖くないのか?」

 

「はい! 私…いや、私達、宇宙人とか怪獣とか、慣れっこなので。」

 

「こりゃたまげたな…。」 「凄い子達ですねぇ…。」

 

愛紗達の肝の大きさに感心するマグマ星人とマーキンド星人。

 

 

それもそのはず、彼女たちは以前にとても恐ろしい体験をしているのだから(第34〜36話参照)、そのお陰もあって、宇宙人を見た程度ではなんとも思わなくなったのであろう。

 

 

「例え宇宙人であっても分け隔てなく…だから、見ず知らずの僕達の事も助けてくれたのですね。」

 

そう言う真に、ヒロユキはこう言った。

 

「困っている人がいたら助けるのは当たり前だよ。 それが誰であっても、例えどこの星の人であっても。」

 

「そうですか。」 (なんて熱いハートの持ち主なんだ。)

 

改めてヒロユキの優しさに触れた真は、嬉しい気持ちになった。

 

 

「凄い。このコンピューター、全部一人で扱っているの?」

 

「えへへ、まあね〜。 あ、触らないでね。」

 

「分かってるよ。 それにしても凄いな〜。」

 

 「あはははは、あなた達、すっかり仲良くなっちゃって。」

 

ひかるも、すっかりピリカと笑い合って心を通わせており、カナはその様子を嬉しそうに笑いながら見つめていた。

 

 

「素敵ですね。 知らない人でも手を差し伸べられるなんて。」

 

「まぁ、アイツは熱血バカだからな…。 お人好しな所あるんだよ。」

 

「それでも素敵ですよ。 私もああいう風に、もっと優しくなりたいな…。」

 

愛紗はホマレの皮肉を聞きながらも、ヒロユキに憧れを抱き始めていた…。

 

 

 因みにガイは、敢えて敵の奇襲に備えてイージスの事務所の中に入らず、外から真達の様子をラムネを飲みながら伺い、フッと微笑んでいた。

 

 「俺の後輩も、この世界でいい仲間を得たもんだな…。」

 

 

…因みにヒロユキだが、実は彼には、ある“3体の戦士”が宿っている。

 

 「タイガ、さっき現れたのは、確か超獣って言ったね?」

 

 「あぁ。 きっとまた、何者かが暗躍を始めたのだろう。」

 

 ヒロユキと会話をしながらミニサイズで現れたのは、ヒロユキと一体化している戦士の一人であり、赤と銀の体に青のプロテクター、頭部の二本の角“ウルトラホーン”が特徴の『ウルトラマンタイガ』である。

 

 

 ウルトラマンタイガ。 それは、M78星雲・光の国出身で、ウルトラマンタロウの息子である新米ウルトラ戦士であり、“光の勇者”の二つ名を持つ。

 

 性格は正義感の強い熱血漢で、候補生時代はトップクラスの実力を持っていた程だが、精神的に未熟な面もあり、タロウという偉大なウルトラ戦士の息子である事もコンプレックスであったが、仲間と共に幾多の困難を乗り越えて行った事もあり、最終的には“タロウの息子”というコンプレックスも乗り越えるほど成長している。

 

 宇宙で修行している過程で『ウルトラマンタイタス』や『ウルトラマンフーマ』と出会って意気投合し、彼らと『トライスクワッド』というヒーローチームを結成。

 

 その後、元は光の国の科学者で、タロウの旧友でもある闇の戦士『ウルトラマントレギア』に、タロウやニュージェネレーションヒーローズに加勢する形で挑むが敗れ、光の粒子となって時空の狭間を彷徨っていた所、自らの危険も顧みずに友達でもあった怪獣『チビスケ』(後の『海獣キングゲスラ』)を助けようとしたヒロユキを救うために自らと一体化させ、回復のために眠りに就き、そして12年後、尚も危険を顧みず他者を助けようとするヒロユキの覚悟を受け取る形で復活した。

 

 その後、ヒロユキやタイタス、フーマと共に、トレギアの乱入や狡猾な罠にかかりながらも地球を守り抜き、トレギアとも決着を付けている。

 

 

 ウルトラマンタイタス。 それは、かつて地球の守りに就いたウルトラ戦士『ウルトラマンジョーニアス』と同じ『U40』出身のウルトラマンであり、“力の賢者”の二つ名を持つ。

 

 赤と黒のボディに、“スターシンボル”でもある星型のカラータイマー、額の星型のランプ・アストロスポット、そして鍛え抜かれた筋肉隆々の体つきが特徴であり、その肉体を活かした格闘戦を得意としている。

 

 また、“賢者”と言われるだけあって知識も豊富で、健全な精神の持ち主で相手の挑発にも動じない冷静沈着な所もあり、タイガとフーマの仲裁に入る事もしばしばである。

 

 

 ウルトラマンフーマ。 それは、『ウルトラマンオーブ』などが力を授かった『惑星O-50』出身のウルトラマンであり、“風の覇者”の二つ名を持つ。

 

 スマートな青い体に、胸部のプロテクターと、他2人に比べて比較的オーソドックスな外見が特徴であり、忍者のような素早い身のこなしで敵を翻弄する戦法を得意としており、光の手裏剣を駆使する。

 

 性格は荒っぽく、似たような性格のタイガとは衝突する事もあるが、義理堅く、頭が切れる一面もある。

 

 

 「超獣と言うのは確か、タイガが「ヤプールが滅んだ今も出現し続けている」と言っていたな。」

 

 「もしかしたらヤプールが密かに復活しているのかもしれないな。」

 

 同じくミニサイズで現れたタイタスとフーマも警戒体勢に入りつつある。 因みに定時のトレーニングを欠かさないタイタスは、腕を組んでスクワットをしながら会話をしている。

 

 「でも、今の俺達は以前よりも絆が強まっている。 あのトレギアにも勝ったんだ。きっと負けることは無い。」

 

 「そうだな。」 「そうこなくっちゃ!」

 

 タイガの前向きな言葉にタイタスとフーマも同調し、ヒロユキも無言で頷く。

 

 

 その時、同じくイージスの事務所のソファーで寝ていた一人の宇宙人が騒ぎ出す!

 

 「うわっ!? 一体なんだ!?」

 

 イージスや真達はもちろん、トライスクワッドもタイガを始めその方を振り向く。

 

 そこには見慣れない宇宙人が、何かに怯えるような仕草をしながら座っていた。 イージス実働隊員のヒロユキ、ホマレによると、先程怪物(バラバ)に襲われており、救助し保護した際に、偶然その場に居合わせていた真達に出会ったたのだという。

 

 「あの子は確か、『遊牧宇宙人サイモン星人』の子供だな。」

 

 その宇宙人を見て、タイタスは即座に名前を当てる。

 

 更にタイタスが言うには、サイモン星人はかつて母性をヤプールに侵略されて以来、当てもなく宇宙を彷徨っている悲劇の存在だという。

 

 実際、攻撃的な態度を見せない事から、友好的な宇宙人である事は一目瞭然である。

 

 

 「へぇー…他の星まで侵略しちまうとは、やっぱひっでー奴らだ。ヤプールは。」

 

 フーマは後頭部に両手を当てながら言った。

 

「それ程の悪魔…やはり、エースの言ってた事は本当みたいだな。」

 

タイガもヤプールの狡猾さを改めて認識する。

 

 

ホマレも宇宙人ギャング時代になんらかの形で知ったのか、サイモン星人やヤプールの事を知っており、彼らについてをイージスや真達に話した。

 

「そんな…そんなにも可哀想な子だったなんて…。」

 

ひかるは憐れむような顔で見つめながら言った。

 

 

その時、サイモン星人の子供は、愛紗の元に歩み寄り、包帯が巻かれている彼女の足にそっと触れる。

 

「心配してくれるの? あなたも傷心していると言うのに…。」

 

愛紗は優しくそう言うと、サイモン星人の子供をそっと抱き寄せて頭を撫でる。

 

 

 その愛紗の優しい行動を見たヒロユキは、どこか嬉しそうに微笑んだ。

 

 (いつかこのように…人間と宇宙人が手と手を取り合い、共存できるようになったらいいな…。)

 

 

「ホマレ先輩の言っている事が本当なら、さっきの怪物も、そのヤプールって奴が関わっているのかも。」

 

「かもね…また、あなた達の力が必要になるかも、ヒロユキ。」

 

ヒロユキの考察を聞いたカナは、ウルトラマンの力を持っているヒロユキに、再び力を貸すように頼む。

 

「もちろんです。 僕も、彼ら(タイガ達)も、様々な戦いを通して、以前よりも大きくなっています。 だから、絶対に負けません。」

 

「ははっ、逞しくなったわね!」

 

ヒロユキの心強い言葉を聞いたカナは気さくにヒロユキの肩を叩き、ヒロユキもふと笑みを浮かべる。

 

 

「俺達も、あの子(サイモン星人の子供)の為に、怪物の在り処を炙り出さねーとな。」

 

「しょうちのすけ!」

 

ホマレとピリカも、気合が入り始めていた。

 

 

「仕方ねぇ、俺達も協力しますか!」 「ですね。」

 

マグマ星人とマーキンド星人も、ヤプールが相手ながらやる気を出し始める。

 

 

「僕達も、出来る限りの事はします。」 「さっさと見つけ出して、やっつけて貰わないとね! ウルトラ戦士に。」

 

真とひかるも、イージスに協力する事を誓った。

 

 

「フッ、この世界の人間も、俺の世界のアイツら(SSP)に負けず立派だな。」

 

外からやり取りを聞いていたガイも、彼らの逞しさに感心していた。

 

 

「それじゃあ、私は佐倉さんにも情報提供を要請するわ。 その間ヒロユキ、ホマレ、マグマ星人は在り処を探して、ピリカとマーキンド星人はそのサポートをお願い。」

 

「分かりました。」 「了解!」 「いっちょやってやるか!」 「あいよ。」 「了解です。」

 

カナ社長の指示に、イージスの面々は返事をし、すぐに取り掛かろうとする。

 

因みに『佐倉』とは、カナの外事X課時代の上司であり、今もたまにイージスに顔を出しては宇宙人絡みの事件の解決を依頼したりしている。

 

 

しかし、その時だった!

 

 

「その必要はない!」 「キャーッ!!」

 

突然、醜悪な声と共に愛紗の悲鳴が響き、全員その方へと振り向く。

 

 

そこにはなんと、サイモン星人の子供が愛紗を羽交い締めにして捕らえている姿が!

 

「…ぉ、おい、何の冗談だ?」 「どうしたの?」

 

真とひかるは動揺しながらも声を掛けるが、その直後、サイモン星人の子供の目は白から禍々しい赤に変色し、触角の先端を怪しく点滅させながら先程の醜悪な声で話し始める!

 

 

「ご親切にここまで連れて来てくれてありがとよ、人間ども。」

 

「…お前…まさか!」 ヒロユキは早くも勘付く。

 

 

「そうだ! お前らが探そうとしているヤプールというのは、この私だ!」

 

なんと、ヒロユキ達が匿っていたサイモン星人の子供は、実はヤプール人が化けた偽物だったのだ!

 

 

「やはりな…この宇宙人のように弱い者に化けておけば、人間どもはたちまち警戒心を無くす…愚かなものだ。」

 

ヤプールは更に話した。 友好的でひ弱な宇宙人の子供に化ける事で庇護欲に訴えかけ、更に念の入った事に、自作自演で自らをバラバに襲わせる事でイージスを欺き、連れて行ってもらう事で相手基地に潜入しようという目論見だったのだ。

 

 

 全てはそう…ウルトラマンタイガを、仲間諸共抹殺するため!

 

 

 恐らくこのヤプールは、真達の世界で、『竜野櫂』が変身する『ウルトラマンゼロ』達に滅ぼされたヤプール(第16、17話参照)の残党が、マルチバースを超えてやって来たモノなのであろう。

 

 

 人間の良心を利用してウルトラマンを抹殺しようとしている事、そして、それにより愛紗が怪我をしてしまった事を知った真とひかるは怒りが湧いて来ており、それはイージスも同じであった。

 

 「何て下衆な奴らなんだ!」

 

 「関係ない人まで巻き込んで…怪我までさせるなんて!」

 

 

 「下衆だと? ファッ! 最っ高の褒め言葉だぜぇ~!」

 

 サイモン星人の子供の姿のヤプールは高笑いをしながら、愛紗を捕えたまま外に出始める。

 

 「待てッ!」

 

 先陣を切ったホマレを始め、一同も後を追うように外に出る。

 

 

 やがて外でヤプールと対峙する一同。 するとヤプールは、サイモン星人の子供から『巨大ヤプール』の姿に戻る!

 

 「ひゃっ!?」

 

 捕えられている愛紗を始め、その赤くトゲトゲした禍々しい容姿に驚愕する一同。ホマレはスタンガンとしての機能付きのトンファー、マグマ星人はサーベルを、それぞれ既に構えている。

 

 

 やがてヤプールは、天高く叫び始める。

 

 「出でよ!! 我がしもべ達よ!!」

 

 

 ヤプールの叫びと共に、青空がガラスのように音を立てて割れ、その中の異次元空間からベロクロン、バキシム、ドラゴリー、ガマス、ジャンボキングが現れ、激しい地響きと共に土砂を巻き上げながら着地する!

 

 

 「超獣ども! ウルトラマンタイガ及びその仲間達は、纏めてここにおる! この街諸共叩き潰してしまえー!!」

 

 更に驚愕する一同を他所に、ヤプールの指示を受けて超獣達は一斉に暴れ始め、街の人々は逃げ惑い始める!

 

 

 「そんな…。」 「マジかよ…!超獣があんなに!」

 

 ミサイルや火炎を噴射しながら暴れるベロクロンとバキシム、自慢の剛腕や、そこから発射するロケット弾でビル等を崩して行くドラゴリー、短槍や八方手裏剣などでビルを切り崩していくガマス、目からのレーザーや口からの火炎やミサイルなど、全身の武器をフルに活かして暴れるジャンボキング…。

 

 流石のヒロユキもタイガも、超獣の数に圧倒され始めていた…。

 

 

 「ふははははは!! どうだ!! これで貴様らは終わりだぜ!! この女の命が惜しけりゃあ、大人しく超獣どもの攻撃の前に塵になるんだな!! …あ、でもそうするとこの女も死ぬから、どっちみち助からねぇな~!! さぁどうだ!? 恐怖で言葉も出まい!?」

 

 既に、勝利宣言とばかりに高笑いをするヤプール。 恐らく恐怖で縮まっているであろう愛紗にも声を荒げる。

 

 

 人質を取られている以上、このままタイガ達はヤプールに敗れ、街も完全に破壊されてしまうのだろうか…!?

 

 

 …しかし、愛紗は思わぬ事を言った。 しかも笑顔で。

 

 「なーんだ、この程度の侵略か。」

 

 

 「んなっ!?」

 

 思わぬ発言に驚くヤプール。 愛紗は続けて言う。

 

 

 「残念だけどね、私は…いや、私達はさっき、もっと恐ろしい侵略者により、もっと恐ろしい目に遭って来たのよ。 ま、ウルトラマン達が助けてくれたけどね。」

 

 愛紗が言っているのは、ゼットン星人ゼボス率いる怪獣軍団との激闘の事である。

 

 「それに、今も私達には心強い味方が付いている…。 だから、それに比べたら貴方なんて…トゲトゲした気持ち悪いオッサンにしか見えないわ!」

 

 

 「んなっ!? …なんだと~!!??」

 

 

 愛紗の発言に動揺するヤプール。 その隙に颯爽とガイが現れ、ヤプールに蹴りをお見舞いし、それを受けたヤプールは愛紗を手放してしまい、即座に真が愛紗を助ける。

 

 

「お前ら立派だな。 ここは俺に任せろ。」

 

ガイは真達の強さを認め、ジャケットを着直した後、オーブリングにオーブオリジンのカードをリードしてオーブカリバーを召喚して手に持ち、カリバーホイールを回してトリガーを引いて上に挙げる!

 

「オーブ!!」

 

ガイは叫びと共に眩い光に包まれ、『ウルトラマンオーブ・オーブオリジン』へと巨大変身し、オーブカリバーを手に持ち超獣軍団に果敢に立ち向かう!

 

「銀河の光が、我を呼ぶ!!」

 

「おぉ!! オーブじゃねぇか!!」

 

フーマは思わぬオーブの登場に驚きと共に興奮する。

 

「あれは…!」 「見たことないウルトラマン!?」 「結構カッコいいかも?」 「あれが…フーマと同じ星のウルトラマン?」

 

真とひかる、愛紗が安心の表情になる中、イージスの面々は初めて見るオーブの姿に見入っていた。

 

 

 オーブは五体一という不利な状況ながらも、極力カリバーや自身の光線技や光輪などを活かした遠距離戦で超獣軍団に対応し、やがて接近して来たベロクロンやドラゴリーを、蹴りを交えつつのオーブカリバーでの斬撃で迎え撃つ!

 

 

 「大丈夫? 怪我は無い?」 「えぇ、ありがと。」 「おのれ~!」

 

 愛紗を気遣う真に襲い掛かろうとするヤプール。 すると今度は、ひかるがヤプールの腕を掴む。

 

 「ふんにゅ~!!」

 

 そして、何処か可愛らしい掛け声と共に背負い投げの要領でヤプールを放り投げて地面に叩き付けた!

 

 「おぉ~…お見事!」

 

 ひかるの思わぬパワーを目の当たりにしたピリカは、軽く拍手をする。

 

 

 「おぉ! あのお嬢さん、なかなかのパワーだな。」

 

 案の定、力自慢のタイタスも、ひかるの思わぬ腕力に驚きつつも感心していた。

 

 「なぁなぁ、旦那とあの子がバディゴーした方が強かったんじゃねーのか?」 「おぉ、それもそうかもしれないな。」

 

 フーマの軽口に同意しかけるタイタス。

 

 

 「でも、やっぱ俺たちの一番の相棒はヒロユキだ。」

 

 「そうだな。」 「異議なし!」

 

 「みんな…。」

 

 タイガの言葉にフーマもタイタスも同意し、ヒロユキは嬉しそうな表情になる。

 

 

 今度はホマレとマグマ星人がヤプールを相手し始め、高い格闘能力を発揮してパンチ、キック等で押して行き、やがてホマレが回し蹴りを打ち込んで後ろを向かせた所にそれぞれトンファーとサーベルでの一撃を叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 

「おのれ〜人間ごときが何故ここまでの強さを!?」

 

お決まりの、追い詰められた悪役の見苦しい発言を放つヤプール。 ヒロユキは数本前に出て言った。

 

「人間の力を侮っていたな! 確かに、宇宙人や異次元人に比べたらひ弱かもしれない…。 でも、あらゆる苦難を、困難を、仲間と共に超えて行けば、貴様らに屈しない強さが手に入る!」

 

「何だと…!?」

 

「僕たち、ここにいるみんなは、これまで様々な困難や、辛い事に当たって来た…タイガ達も、闇の力に負けそうになった事があった…。 でも、それらを超えて来たからこそ、その時よりも大きな我(じぶん)になっている…だから、お前みたいな奴には絶対負けない!!」

 

 

鋭い視線で指を差して自分達の強さを断言したヒロユキ。 その時、ある“伝説の戦士”が舞い降りる!

 

 

「その通りだ! ヤプール!」

 

「…この声は…!?」

 

聞き覚えのある声が響いてタイガがそれに反応したその時、上空から太陽のように光り輝く光球が降りて来る。

 

 

「…この輝きは…!」

 

タイガを始め、一同がその神秘的な輝きに見入っている間にも、その光球は更に光り輝き、やがてその中から光の戦士が現れる!

 

 

 (BGM:愛の戦士タロウ)

 

 

「父さん!」

 

「タロウさん!」

 

タイガとオーブが驚く視線の先で、パーにした右手を挙げて現れたのは、ヤプールを追ってやって来たウルトラマンタロウだ!

 

 

「あれが、タイガのお父さん?」

 

「あぁ、まさか、ヤプールを追ってここに来たのか?」

 

ヒロユキやタイガを始め、一同は登場したタロウを見上げる。

 

「あれは確か…ウルトラマンタロウ。」

 

「あのウルトラ兄弟の?」

 

「なんか…感激。」

 

「ウルトラマン…。」

 

「タロウ…。」

 

「カッコいいじゃん!」

 

「確か、レオの先輩か?」

 

「そうらしいですねぇ…。」

 

真、ひかる、愛紗、カナ、ホマレ、ピリカ、マグマ星人、マーキンド星人と順に呟く。

 

 

「ヤプール!襲うタイミングを誤ったな! 今やタイガも、仲間達も強くなっている! お前のような邪悪な存在に負けるはずが無い!」

 

タロウは、ヤプールに啖呵を切った後、ポーズを取り、オーブと共に超獣軍団に立ち向かう!

 

 

 タロウは素早い身のこなしから繰り出すパンチ、キックなどの格闘戦でバキシム、ジャンボキングと戦い、オーブは、引き続き主に遠距離戦に持ち込んでベロクロン、ドラゴリー、ガマス戦う。

 

タロウとオーブ。 どちらも歴戦の勇者だけあって、超獣が二体以上相手でも遅れを取らず、互角の戦いを展開している。

 

 

 (BGM終了)

 

 

父の言葉を聞き、戦う父の背中を見たタイガは、嬉しい気持ちになると同時に勇気が湧いて来る。

 

例え違う世界で離れていても、父は常に自分の事を思っていた…。 その時点で自分は一人では無かったし、そのお陰もあって苦難を超えて来れたのだと…。

 

 

「我らは1つ! その力の拳が、邪悪な侵略者を砕く!」

 

「ぶっちぎろうぜ! 勝利と言う、煌めく未来へダッシュだ!」

 

「行こう! ヒロユキ! 大きな我(じぶん)になって、強くなった俺達の強さを、見せてやろうぜ!」

 

タイタス、フーマ、そしてタイガと順に前向きな言葉を掛け、やがてヒロユキにも完全に勇気が満ちる!

 

「あぁ! 行こう…仲間と共に…そして、父と共に!」

 

 

 「生まれた星は違っていても!」

 

 「共に進む場所は一つ!」

 

 「永遠の絆と共に!」

 

 「我ら四人!」

 

 「「「「トライスクワッド!!」」」」

 

 フーマ、タイタス、タイガ、ヒロユキ、そして全員と順に分ける形で、トライスクワッド誓いの言葉を叫ぶ4人。 今こそ変身の時である!

 

 

「そうはさせんぞ! こうなったら…!」

 

ヤプールはそう言うと、赤黒いオーラのようなエネルギー体になり、5つに分かれて各超獣に入り込む!

 

怨念体になって直接超獣に入り込み、自ら操るつもりである!

 

 

「超獣どもと共に、貴様らを捻り潰してやるわ!!」

 

 

ヤプールの叫びと共に、ガマスはタロウやオーブの攻撃を撒菱、煙幕などで振り切り、イージスや真達を潰そうと向かい始める!

 

「ここは逃げるぞ!」

 

ホマレの合図で、ヒロユキ以外のみんなは安全な場所へと逃げ始める。

 

既にガマスは、口からの吹き矢で攻撃を始めていた!

 

 

「行くぜ!相棒!!」

 

 

《カモン!》

 

 

遂に変身を決意したヒロユキは、掛け声と共に右腕のガントレット状のアイテム『タイガスパーク』のレバーをスライドさせて起動させ、そして腰に付けた『ウルトラマンタイガホルダー』から『ウルトラマンフーマキーホルダー』を取り出す!

 

 

「風の覇者、フーマ!!」

 

 

ヒロユキは二つ名を叫ぶと、フーマキーホルダーをタイガスパークを付けた右腕に持ち替える事でリードし、スパークのクリスタル“バディスフィア”が青に発光する事でフーマの力が解放される。

 

 

「バディー…ゴー!!」

 

 

ヒロユキは掛け声と共に大きく振りかぶった後に右腕を高く挙げ、青い眩い光に包まれる。

 

 

《ウルトラマンフーマ!》

 

 

「セイヤッ!!」

 

 

そしてウルトラマンフーマに変身(バディゴー)が完了し、フーマは光の中から左腕を突き出して飛び出す!

 

 

一方、愛紗は痛手を負っている事もあり、転んで逃げ遅れてしまう!

 

「はっ、愛紗ちゃん!」

 

ひかるが手を伸ばすも間に合わず、無情にもガマスに宿っているヤプールはそれに気付くや指示を出す!

 

「まずは俺様に生意気な口を叩いた、あの小娘を狙え!!」

 

ヤプールの指示を受けたガマスは、倒れている愛紗目掛けて八方手裏剣を放つ!

 

愛紗が諦めかけ、目をつぶって顔を背けたその時!

 

 

「極星、光波手裏剣!!」

 

 

現れたフーマが超スピードで愛紗の前に回り込み、左手をバディスフィアに当ててスライドさせて生成した光の手裏剣『極星光波手裏剣』を投げつけて八方手裏剣を相殺し、更にそれにより発生した爆風から愛紗を守るために彼女の前に右手を立てる。

 

 

爆風が落ち着き、愛紗がそっと顔を上げると、そこには自身を見下ろしながら安否を確認するフーマの姿があった。

 

 

「大丈夫かい? 姉ちゃん。」

 

「ぁ…はい。」

 

「下がってな。」

 

「はい…。」

 

フーマに促された愛紗は、何故か頬を赤らめながら安全な場所へ。

 

 

「大丈夫?愛紗ちゃん。」

 

「うん。 ありがとう。」

 

心配してくれたひかるにお礼を言った愛紗は、皆と共にウルトラマンの戦いを見守り始める。

 

 

 (BGM:覇道を往く風の如し)

 

 

「俺の名はフーマ! 銀河の風と共に参上!!」

 

 

フーマは決め台詞と共に構えを取り、ガマスはそれに向かって吹き矢や八方手裏剣で攻撃を仕掛ける!

 

「疾風怒濤! ぶっちぎるぜぇ!!」

 

フーマはそう叫ぶと、残像を残す程の目にも留まらぬ速さでガマスの飛び道具をかわしながら周囲を飛び回り、逆に光の手裏剣を打ち込んでダメージを与えて行く。

 

だが、ガマスもやられてばかりではなく、煙幕による移動、八方手裏剣などでの相殺などをしてフーマの攻撃に対応して行く。

 

その間にベロクロンとバキシムが火炎を噴射して加勢するが、フーマはそれを避けるどころか両腕を下げ、真正面から受け止めながら突撃し、そのまま体当たりを叩き込んで二体纏めて吹っ飛ばす!

 

そしてスライディングしながら着地すると、短槍を持ったガマスに対抗して右手のタイガスパークから蛇腹状の光の剣『スラッシュソード』を形成して挑む!

 

両者は、火花を散らしながら目にも留まらぬ互角な剣戟を繰り広げており、その様子は正に激しく吹きつける2つの風がぶつかり合っているようである。

 

 

 両者の剣戟が互角かに見えたが、フーマは一瞬の隙を突かれ、ガマス短槍での一突きを腹部に受けてしまう!

 

 “ザブシュッ”

 

 「ぐぉあぁぁっ!!」

 

 (BGMが一旦止まる)

 

 

 「ひゃっ!!」

 

 悲鳴を上げる愛紗を始め、腹部を貫かれて動きを止めたフーマに驚き、不安になって行く一同…。

 

 フーマはガマスにやられてしまったのであろうか…?

 

 

 …だが次の瞬間、フーマの体は煙と共に姿を消し、ガマスは驚きと共に辺りを見渡す。

 

 

 「残念だったな!」

 

 

 そして、フーマは無傷だったどころか、いつの間にかガマスの後ろに回り込んでいた!

 

 

 フーマは、ガマスに短槍を突き立てられる直前に『神速残像』を発動して自身の残像を作り出し、致命傷を受けたかのように見せかけて幻惑したのである!

 

 

 (BGM再開)

 

 

 ガマスは驚きながらも振り向き、再び短槍を突き立てようとするが、フーマは即座に回し蹴りで短槍を蹴り落とし、続けて跳躍しての左回し蹴りを頭部に打ち込む。

 

「ストライクスマッシュ!!」

 

更にフーマは、タイガスパークから形成した光エネルギーを右脚に纏っての回し蹴り『ストライクスマッシュ』を放ち、それを頭部に受けたガマスは大きく吹っ飛び地面に落下する。

 

「兄ちゃん! そろそろ決めようぜ!」 「おぅ!」

 

フーマの呼びかけにヒロユキは答えた。

 

 

《カモン!》

 

ガマスが怯んだ隙に、ヒロユキは再度タイガスパークのレバーをスライドして起動させる。

 

そして、立てた左手の肘から先の手首に、『ウルトラマンギンガ』の力を秘めた、ギンガの頭部とカラータイマーを模したブレスレット『ギンガレット』が装着される。

 

《ギンガレット! コネクトオン!》

 

ヒロユキは両腕を前方に伸ばす形でギンガレットにタイガスパークをかざしてリードして力を解放する。

 

 

そして、フーマはギンガのビジョンと重なった後、敵にピースマークを向けて宣言する!

 

 

「これはピースマークじゃねぇぞ! お前はあと2秒で終わりだ!!」

 

 

…そう、これはただのピースマークではなく、相手の残りの秒数を表していた!

 

 

逆上したガマスはフーマ目掛けて八方手裏剣を放つ。

 

「七星光波手裏剣!!」

 

フーマは超スピードでそれをかわしてガマスの後ろに回り込むと同時に、七色に輝く光の手裏剣『七星光波手裏剣』を投げつける!

 

…それは正に、フーマの宣言通り、僅か2秒での出来事だった!

 

光の手裏剣で斬り裂かれたガマスは大爆発して砕け散り、それと同時にフーマは左手を背中に置いた状態で着地する。

 

「っしゃあっ! 一丁上がりぃ!!」

 

 

 (BGM終了)

 

 

「かっこいい〜!」

 

愛紗は頬を赤らめて無邪気にそう言いながら、両手をハート型にする。

 

…間違いない。 彼女、すっかりフーマに惚れてしまっている。

 

 

 「フーマ、いいよな。」

 

 「はい!」

 

 同じくフーマが推しなホマレの言葉に、愛紗は元気よく返事をした。

 

 

 最も、同じフーマが“好き”でもそれぞれホマレは“LIKE”、愛紗は“LOVE”という意味なのだが(笑)

 

 

ガマスを撃破したフーマに、今度はベロクロン、バキシム、ドラゴリーが襲い掛かる!

 

巨体を振るわせて襲い掛かる三体の攻撃をフーマは素早くかわしながら言った。

 

「旦那! 力でぶちのめしてやれ!」

 

「分かった!」

 

 

《カモン!》

 

 

ヒロユキは再度タイガスパークを起動し、次は『ウルトラマンタイタスキーホルダー』を取り出す。

 

 

「力の賢者、タイタス!!」

 

 

ヒロユキは二つ名を叫び、タイタスキーホルダーを右手に持ち替える事でタイガスパークでリードしてタイタスの力を解放する。

 

 

「バディー…ゴー!!」

 

 

ヒロユキは掛け声と共に大きく振りかぶって右腕を高く挙げ、黄色い眩い光に包まれる。

 

 

《ウルトラマンタイタス!》

 

 

「フンッ!」

 

 

そしてウルトラマンタイタスに変身(バディゴー)が完了し、タイタスは光の中からガッツポーズの体勢で飛び出す!

 

 

(BGM:WISE MAN'S PUNCH)

 

 

「タ! イ! タス!!」

 

現れたタイタスは、登場して早々、三段階でボディビルダーのポーズを決めて気合いを入れる!

 

 

「「キレてるよ〜!!」」

 

それを見たピリカとひかるは、思わず笑顔で声援を飛ばす。

 

ピリカは元々トライスクワッドだとタイタスが推しのウルトラマンであり、馬鹿力のひかるも、その筋肉を見て、早速タイタスが気に入り始めたのであろう。

 

 

ベロクロンとバキシムは、タイタス目掛けてミサイルを発射して行くが、タイタスはそれらを避けるどころか、体の自慢の筋肉で弾き返しながら接近して行く。

 

「オォォラァァァ!!」

 

そして、接近すると同時にダブルラリアットを繰り出して二体纏めて叩きつけた!

 

 

次はドラゴリーがタイタスに襲い掛かり、両者は互いに手と手を掴んで組み合い、そのまま力比べを始める。

 

ドラゴリーはかつて、『巨大魚怪獣ムルチ(2代目)』の体をバラバラに引き裂いた事がある程の怪力の持ち主であり、力比べでもタイタスに負けてなかったが、それでもタイタスは賢者の精神で動じる事は無い。

 

 

「なかなかのパワーだな…しかし!」

 

そう言ってタイタスは、ドラゴリーの腹部に膝蹴りを叩き込んで後退させる事で一旦引き離す。

 

 

「賢者の拳は、全てを砕く!!」

 

タイタスはそう言って構えると、ドラゴリー目掛けて駆け始める!

 

 

タイタスのショルダータックルとドラゴリーのボディアタックがぶつかり合い、その後タイタスはドラゴリーの右フックを左腕で受け止めて右拳で叩き落とした後、胸部に右腕のチョップ、左拳のパンチを続けて打ち込み、ドラゴリーの頭突きを両腕をクロスして受け止めてそのまま押し飛ばした後、頭部に右フックを叩き込む。

 

そしてドラゴリーが前屈みになった所で右腕でヘッドロックを掛けると、そのままプロレスラーの如く左腕を曲げてポーズを取る。

 

「はいっ!」

 

振りほどこうともがくドラゴリーを他所に、掛け声と共にポーズを決めた後、首筋に右拳を打ち込み、左拳で頭部にアッパーを叩き込んで突き上げる。

 

 「マッスル! マッスル! スーパーマッスル!」

 

 更にタイタスは、謎の掛け声を上げながらドラゴリーの胸部にパンチ2発を打ち、そして1回転しての強力な一撃を叩き込んで吹っ飛ばした。

 

 

 力勝負では一枚上手であったタイタス。 ドラゴリーは体勢を立て直すと、タイタス目掛けて口から赤黒い稲妻状の光線を放つ!

 

 「星の一閃! アストロビーム!!」

 

 タイタスは即座に、ボディビルダーのようなポーズで、額のアストロスポットから星型のエフェクトが連続している黄色いビーム『アストロビーム』を放ち、二つの光線はぶつかり合って大爆発が起こる!

 

 

 「マアアァァッスルッッッ!!」

 

 タイタスは爆発で起こった煙の中から走って現れ、そのままドラゴリーに接近し、緑色のエネルギーを纏った右拳での渾身のパンチ技『ワイズマンフィスト』を胸部に叩き込み、ドラゴリーは喰らった部位が爆発し火花を散らすと同時に、大きく吹っ飛んで地面に落下する。

 

 

 「すご~い!!」

 

 タイタスの戦いを見ていたひかるは、大柄な体からは想像もつかない程、嬉しそうに軽く飛び跳ねながら拍手をしている。

 

 彼女は同じ力持ちとして完全にタイタスが気に入ったみたいである。

 

 

 タイタスの豪快な格闘技の連続に弱ったドラゴリー。 今こそトドメだ!

 

 「強烈な一撃をぶち込むぞ!」

 

 タイタスはそう言いながら、左腕を曲げ、右腕を斜め上に伸ばすポーズを取る。

 

 

 《カモン!》

 

 ヒロユキは再度タイガスパークを起動し、左腕の手首に今度は『ウルトラマンジード』の力を秘めた、ジードの頭部とカラータイマーを模したブレスレット『ジードレット』が装着される。

 

 《ジードレット! コネクトオン!》

 

 ヒロユキはタイガスパークでジードレットをリードして力を解放し、それによりタイタスはジードのビジョンと重なる。

 

 

 タイタスは、ボディビルのポージングをしながらバディスフィアから紫に輝く光球を生成する。

 

 「レッキングバスター!!」

 

 そして、技名を叫ぶと共に、右手のパンチで光球を打ち出す!

 

 光球の直撃を受けたドラゴリーは、胴体に大きな風穴が出来た後、そのまま大爆発して砕け散り、タイタスはその爆発を前に勝利のボディビルのポージングを取る。

 

 

 (BGM終了)

 

 

ガマス、ドラゴリーと続けて撃破された超獣軍団だが、尚も怯まずに、ヤプールの意のままにウルトラマン達に襲い掛かる。

 

「タロウさん、そしてその息子さんが一緒なら、俺はこれで行くぜ!」

 

《ウルトラマンオーブ! バーンマイト!》

 

オーブは、タロウと『ウルトラマンメビウス』のビジョンと重なりながら炎のような光に包まれ、やがてそれが消滅して姿を現わすと同時に『ウルトラマンオーブ・バーンマイト』へと変身(フュージョンアップ)が完了する!

 

「紅に、燃えるぜっ!!」

 

オーブは口上と共にポーズを決めた後、タロウと共にジャンボキングに挑む!

 

ジャンボキングは、それぞれ前後の体でタロウとオーブの相手をし、前半身はタロウと互角な格闘戦を展開し、やがて至近距離で目から破壊光線を放ち、タロウは即座に『タロウバリヤー』を張ってそれを防ぐ。

 

後半身は、オーブ目掛けて触角からサークルイエロー光線を放ち、オーブはそれをメビウスの『メビウスディフェンサークル』に似た光のバリヤー『ストビュームディフェンダー』で防いだ後、跳躍して全半身と後半身の間に跨り、そのまま後半身にパンチを連打して行く。

 

 

 尚も超獣軍団と激闘を繰り広げるウルトラ戦士達。 街の人々(+宇宙人)も、気が付けばウルトラマンに声援を送り始めていた。

 

 

タイタスがベロクロンとバキシムの二体を相手に互角に戦う中、タイガは改めて決心してヒロユキに呼びかける。

 

「父さん達も頑張ってくれているんだ…。 俺達も、そんは父さんに見せてやろうぜ! 俺達の強さを!」

 

「あぁ! 行くぞタイガ!!」

 

 

《カモン!》

 

 

ヒロユキはタイガスパークを再度起動し、『ウルトラマンタイガキーホルダー』を取り出す。

 

 

「光の勇者、タイガ!!」

 

 

そして二つ名を叫ぶと、タイガキーホルダーを右手に持ち替える事でタイガスパークでリードし、バディスフィアが赤に発光する事でタイガの力が解放される。

 

 

「バディー…ゴー!!」

 

 

ヒロユキは掛け声と共に大きく振りかぶって右腕を高く挙げ、赤の眩い光に包まれる。

 

 

《ウルトラマンタイガ!》

 

 

「シュアッ!!」

 

 

そしてウルトラマンタイガに変身(バディゴー)が完了し、タイガは光の中から父タロウよろしく、パーにした右手を突き出して飛び出す!

 

 

(BGM:超勇者BUDDY GO!)

 

 

登場したタイガはそのまま空高く飛び立ち、ベロクロンとバキシムはそれを撃ち落そうとミサイルを連射して行く。

 

「スワローバレット!!」 「ハンドビーム!!」

 

タイガは迫り来る無数のミサイルを、上空を飛び回りながらかわしつつ、腕を十字に組んでタイガスパークから放つ光弾『スワローバレット』や、突き出した両手の先から連続で放つ光弾『ハンドビーム』などで相殺して行く!

 

 

 《カモン!》

 

 

 再度タイガスパークを起動させたヒロユキは、今度は左の拳を突き出し、中指に『最凶獣ヘルべロス』の力を宿した、ヘルべロスの頭部を模した怪獣リング『ヘルべロスリング』が装着される。

 

 怪獣リング。 それは本来、トレギアがタイガを闇に落とすために仕組んだ物であり、かつてヘルべロスを始め、様々な怪獣リングをその怪獣を倒す度に手に入れていたタイガは、知らずにそれを乱用した事により一度闇に落ちた事がある。

 

 だが、仲間との絆(←トレギアが最も嫌うモノ)で光を取り戻して以降は、闇を克服した故か問題なく使えるようになっている。

 

 

 《ヘルべロスリング! エンゲージ!》

 

 ヒロユキは、左拳に右手をかざす事でリングをスパークでリードし、ヘルべロスの力を解放する。

 

 

 「ヘルスラッシュ!!」

 

 タイガは、両腕に生成したヘルべロスの技でもある二本のカッター状のエネルギー波『ヘルスラッシュ』を飛ばし、それを受けたバキシムはダウンする。

 

 

 タイガは空中で素早くムーンサルトスピンを決めた後、右足にエネルギーを集中させて急降下し、強烈な跳び蹴り『タイガキック』を放ち、それを胸部に受けたベロクロンは吹っ飛ぶ。

 

 

 タイガは着地してポーズを取った後、ベロクロン向かって駆け寄ると同時に跳躍しての右脚蹴りを胸部に打ち込み、続けて頭部に右フック、腹部に後ろ回し蹴りを打ち込んで後退させる。

 

 ベロクロンも負けじと両腕を振るって殴り掛かるが、タイガはそれらを素早く往なした後、ベロクロンにヘッドロックを決め、そのままジャンプして落下スピードを利用して地面に叩き付ける。

 

 次にタイガはベロクロンの頭部を掴んで起き上らせ、アッパーで頭部を打ち上げた後、腹部に連続パンチを打ち込んだ後、両足のドロップキックを叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 ベロクロンはふらつきながらも起き上がると、大きく開けた口からそこからミサイルを発射しようとする。

 

 「させるか!!」

 

 タイガはそう叫ぶと、再度腕を十字に組んでスワローバレットを一発放ち、見事ベロクロンの口内を打ち抜く!

 

 ミサイル攻撃を封じられたと同時に弱点を攻撃されたベロクロンは動きが止まる。 今こそトドメだ!

 

 

 「行くぞヒロユキ!」

 

 《カモン!》

 

 タイガの呼びかけを受け、再度タイガスパークを起動させたヒロユキの左手首に、今度はウルトラマンオーブの力を秘めた、オーブの頭部とカラータイマーを模したブレスレット『オーブレット』が装着される。

 

 《オーブレット! コネクトオン!》

 

 ヒロユキはタイガスパークでオーブレットをリードして力を解放し、それによりタイガはオーブのビジョンと重なる。

 

そして、父・タロウの必殺光線『ストリウム光線』と似た予備動作で、体を虹色に輝かせながらエネルギーを溜める。

 

「スプリーム、ブラスター!!」

 

タイガは右腕のタイガスパークが正面に来る形で腕をT字に組み、前方にO-50の光の輪っかに似たリング状の光を発生させながら、自身の必殺技『ストリウムブラスター』をオーブの力で強化した必殺光線『スプリームブラスター』を放つ!

 

光線の直撃を受けたベロクロンはその場で大爆発して砕け散った…。

 

 

ベロクロンを撃破したタイガ。しかしそれも束の間、今度は息を吹き返したバキシムが襲い掛かる!

 

 

「どんどん行くぞ!」

 

ヒロユキの気合の声と共に、タイガキーホルダーは発光し、やがてタイガキーホルダーと地球の力が融合した『フォトンアースキーホルダー』へと変化する。

 

 

《カモン!》

 

 

《アース! シャイン!》

 

 

再度タイガスパークを起動させたヒロユキはフォトンアースキーホルダーを取り出し、スパークでダブルリードした後前に突き出す。

 

 

「輝きの力を手に!!」

 

 

ヒロユキは掛け声と共にフォトンアースキーホルダーを右手に持ち替え、それによりキーホルダーの先端が左右に展開して力が解放され、タイガの身体へ脚から順に黄金の鎧が装着されて行き、最後にウルトラホーンが大型化し金色になる!

 

 

「バディー…ゴー!!」

 

 

ヒロユキは掛け声と共に大きく振りかぶって右腕を高く挙げ、金色の眩い光に包まれる!

 

 

《ウルトラマンタイガ! フォトンアース!》

 

 

 「シュアッ!!」

 

 

 タイガは、太古から地球に眠っていた神秘の力で、黄金の鎧を全身に纏った荘厳な姿が特徴の“大地天空の勇者”の二つ名を持つ強化形態『ウルトラマンタイガ・フォトンアース』へと転身が完了し、光の中から一旦左腕を挙げた状態から右腕に挙げ直すポーズで飛び出す!

 

 

 現れたタイガ・フォトンアースはポーズを取った後、襲い掛かって来るバキシムに正面から向かって行く!

 

 バキシムはタイガ目掛けて鼻や両手からのミサイルを連射するが、タイガはそれらを頑丈な鎧やチョップなどで弾き返しながら向かって行き、やがて接近すると同時に一回転してのパンチを胸部に打ち込む。

 

 続けてタイガはバキシムの左フックを右腕で受け止めてそのまま左拳のパンチを腹部に打ち込み、更にバキシムが振り下ろして来た頭部を、頭部の一本角と掴む事で受け止め、右膝を顔面に打ち込む事で突き上げる。

 

 更に胸部に連続でパンチを打ち込んだ後、下顎にアッパーパンチ、頭部に右フックを打ち込み、そして跳躍して両足のドロップキックを胸部に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 立ち上がったバキシムは、接近戦では不利と見たのか、ミサイルでもある頭部の一本角をタイガ目掛けて発射し、タイガはその直撃を受けて爆発する!

 

 …しかし、黄金の頑丈な鎧で耐え切ったタイガは煙の中から現れてバキシムに駆け寄り、バキシムの巨体を掴み、そのまま力一杯放り投げて地面に叩き付けた!

 

 

 「オーラム、ストリウム!!」

 

 タイガは、両腕を引き絞るポーズでオーロラを背に大気中の光エネルギーを体内に吸収した後、腕をT字に組んで黄金の必殺光線『オーラムストリウム』を放つ!

 

 光線の直撃を受けたバキシムは、大爆発して黄金の粒子と共に跡形も無く消し飛んだ!

 

 

 (BGM終了)

 

 

 「流石は私の息子だ。」

 

 ジャンボキングと戦いながらタイガの戦いを見ていたタロウは、息子の成長ぶりに、やや親バカとも取れるようなコメントをする。

 

 

 その隙にジャンボキングは接近するが、タロウは即座にそれをジャンプして避け、そのまま空中でムーンサルトスピンを繰り返した後、急降下して放つ蹴り技『スワローキック』を繰り出し、ジャンボキングの頭部に叩き込む!

 

 更にジャンボキングが怯んだ隙に、背後からオーブ・バーンマイトが足先に炎を纏ってスライディングする形で蹴り技『ストビュームフット』を繰り出し、それを後半身から前半身にかけて受けたジャンボキングは体勢が崩れ始める。

 

 そして並び立ったタロウとオーブは、同時に前蹴りをジャンボキングに叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 歴戦の勇者2人が最強超獣を相手している間、それ以外の超獣を撃破されたヤプールは、遂に今回の切り札を呼び出す!

 

 「出でよバラバ! そして、タイガキラー!!」

 

 ヤプールの叫びと共に再度青空が割れて現れた異次元空間から、バラバ、そしてタイガキラーが現れる!

 

 

 「あれね! さっき愛紗ちゃんを怪我させたのは!」

 

 ひかるはバラバの姿を見て、一瞬で先程の出来事の犯人である事を見抜いた。

 

 

 「タイガ…キラーだと!?」

 

 思わぬ敵の名前に驚きながらも構えを取るタイガ・フォトンアースに、2体は襲い掛かる!

 

 タイガはタイガキラーの走りながらの上段回し蹴りをしゃがんでかわし、続けてバラバの鉄球の殴り込みを両腕で防いだ後胸部に右肘を打ち込んで後退させ、その後もタイガキラーの素早い身のこなしから繰り出す格闘技や、バラバの鉄球や鎌による攻撃をかわしたり防いだりしつつ、互角に戦って行く。

 

 

 すると、2体と戦うタイガに、ヤプールは言い放った。

 

 「フハハハハ! そのタイガキラーは、貴様らがトレギアと言う奴に敗れたあの時、私の一部が密かに貴様らかが放ったエネルギーの一部を回収し、それを元にエースキラーを改造したタイガ抹殺用の兵器だ!! 貴様らはヤプールの怨念パワー、そして、己の持っている技で、敗れる事になるのだ!」

 

 

 またしても勝利宣言のように高笑うヤプール…。 しかし、タイガ達の返答は、ヤプールの予想と大きく違った。

 

 「…フフッ…フッハハハハハ! 何がタイガキラーだ! 笑わせるな!」 「なぁにぃ~!?」

 

 フーマの言葉に苛立ちを見せ始めるヤプール。 続けてタイタスが言った。

 

 「どうやら貴様は襲うタイミングだけでなく、力を調べるタイミングも間違えたみたいだな!」

 

 そして、タイガが続く。

 

 「俺達は、あれからヒロユキや色んな人たちと出会い、その仲間達と様々な困難を超えて来た…! 即ち、あの時よりも、確実に強くなっているんだ!!」

 

 現にタイガは、2体相手でも一撃も受ける事無く互角に戦えている。

 

 タイガは、同時に組み合っていたバラバとタイガキラーを一旦押し飛ばす事で距離を取る。

 

 

 「今こそ見せてやろう…僕ら4人の力を!!」

 

 ヒロユキの掛け声を合図に、彼らは最後の変身に入る!

 

 

 「タイガ!トライブレード!!」

 

 

 ヒロユキは叫びと共に、燃え上がる聖火のような炎の剣『タイガトライブレード』を手に取り、下部のスイッチを押す。

 

 

 「燃え上がれ! 仲間と共に!!」

 

 

 次にヒロユキは口上を上げた後、回転盤“バーニングホイール”を回し、それにより剣身に炎が迸り、エネルギーが充填されると共に切っ先のクリスタルが発光する。

 

 

 「「「「バディー…ゴー!!」」」」

 

 

 そしてタイガ、タイタス、フーマと共に、彼らのビジョンと重なりながら掛け声と共にブレードを天に揚げてトリガーを引く!

 

 

 ブレードから放たれた赤、黄、青の三色の光が光のオーロラに変わり、その中から青い吹雪をバックにフーマ、無数の光球をバックにタイタス、そして三色の光が渦巻くエフェクトをバックにタイガのポーズを取りながら、燃え盛る炎のようなボディライン、プロテクター、ウルトラホーンが特徴の、ヒロユキを含めたトライスクワッドのメンバーが合身した最強形態『ウルトラマンタイガ・トライストリウム』が飛び出す!

 

 

 「セイヤッ!!」 「フンッ!!」 「シュアッ!!」

 

 

 (BGM:Buddy,steady,go!(full))

 

 

 「俺は、ウルトラマンタイガ! トライストリウム!!」

 

 

 街の人々、そして真達の歓声も最高潮になる中、現れたタイガ・トライストリウムはタイガトライブレードを手に敵目掛けて駆け始める!

 

 

 タイガは、殴りかかって来たバラバの鉄球を蹴りで撥ね返し、一回転しながらすれ違いざまにブレードの一撃を叩き込む。

 

 その後、タイガキラーの背後からの鉤爪を背を向けたままブレードで受け止めると、振り向き様に左右斜め、横一直線と斬撃を三発決め、次にタイガキラーが放った蹴りをブレードで防いだ後、下から斜めに振り上げる斬撃を叩き込み、そのまま一回転しての回し蹴りを右脇腹に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 バラバは背後から左手の鎌で斬りかかるが、タイガはそれを背を向けたまま左手持ちのブレードで防ぎ、そのまま右肘を腹部、裏拳を顔面に打ち込んで後退させ、更に後ろ蹴りを腹部に打ち込んだ後、振り向きざまにブレードを振り下ろして強力な一撃を叩き込んだ!

 

 

 タイガトライブレードでの攻撃が決まる度に、その部位から小さな爆発と共に火花が飛び散る。

 

 

 バラバは遠距離からの攻撃に切り替え、頭部の剣をタイガ目掛けて発射する!

 

 しかしタイガはそれを避けるどころか、正面からブレードで受け止めて力ずくで振り飛ばし、剣は地面に刺さった。

 

 

 バラバは今度は鉄球の先端を鞭のように伸ばして捕えようとするが、タイガはそれを敢えてブレードに絡み付かせ、そのままぐるぐると剣身に巻き付けながらバラバに接近し、やがてブレードを勢いよく振るう事で鞭を引き千切って投げ捨てた後、渾身の一撃でバラバの右手の鉄球を斬り落とし、更にブレードの先端を突き立てる一撃を胸部に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 バラバが怯んだ隙にタイガは必殺技の体勢に入る。

 

 「トライスクワッド!!」

 

 ヒロユキはブレードのスイッチを四回押した後、同じくタイガトライブレードを構えるトライストリウムのビジョンと共に回転盤を回しエネルギーを充填した後トリガーを引く。

 

 そしてタイガは、ブレードを三色の光を放ちながら三回スイングした後、剣先から赤・黄・青の三色に燃え盛る螺旋状の必殺光線『トライストリウムバースト』を放つ!

 

 「「「「トライストリウムバースト!!」」」」

 

 光線の直撃を受けたバラバは、断末魔の悲鳴を上げた後、大爆発して消滅した!

 

 

 バラバを撃破したタイガ・トライストリウムは、再度ブレードを構えてタイガキラーに挑む!

 

 

 一方、ジャンボキングと戦っているタロウとオーブは、ジャンボキングの火炎、ミサイル、レーザーの一斉砲火にも怯まず、それらを回避しながらジャンボキングに接近し、オーブはすれ違いざまに炎を纏ったパンチ『ストビュームナックル』を顔面に叩き込み、その後タロウは腹部にボクシングの様に連続パンチを打ち込んだ後、顔面にストレートパンチを打ち込み、更に跳躍して横蹴りを叩き込んで吹きっ飛ばした!

 

 

 タイガ・トライストリウム対タイガキラーの戦いは、仲間と一つになっているタイガが優勢であり、タイガキラーの荒々しい動きの攻撃をブレードで往なして行った後、後ろ回し蹴りを胸部に打ち込んで後退させる。

 

 

 体勢を立て直したタイガキラーは、遂にタイガ達の必殺技を使い始める!

 

 「極星光波手裏剣!」

 

 ヤプールの声と共に、タイガキラーはフーマの必殺技・極星光波手裏剣を投げつける!

 

 

 「「風真烈火斬!!」」

 

 タイガはそれを横に跳んで避けると同時にフーマの力を発動し、刀身に蒼い風を纏ったブレードを逆手に持って振るい、蒼い炎を纏った巨大な光輪『風真烈火斬』を放つ!

 

 巨大な光輪が直撃して体を斬られたタイガキラーは吹っ飛んで地面に落下する。

 

 

 「プラニウムバスター!」

 

 跳ね起きで立ち上がったタイガキラーは、次はタイタスの必殺技・プラニウムバスターを放つ!

 

 

 「「タイタスバーニングハンマー!!」」

 

 タイガは敵の放った光球をブレードで受け止め、そのままタイタスの力を発動し、剣先に黄金の光球を発生させて、ハンマー投げの要領で投げつける『タイタスバーニングハンマー』を放つ!

 

 偽の光球を上乗せした黄金の光球は、タイガキラーに突っ込んで直撃し、大きく吹っ飛ばす!

 

 

 「ストリウムブラスター!」

 

 流石に僅かにふらついて来たタイガキラー。 今度はタイガの必殺技・ストリウムブラスターを放つ!

 

 

 「「タイガブラストアタック!!」」

 

 タイガは今度はタイガの力を発動し、刀身を左手で撫でる事で炎を纏ったブレードを突き出しながら全身にも炎を纏って突撃する『タイガブラストアタック』を放つ!

 

 炎を纏ってブレードを突き出しているタイガは、偽の必殺光線を切り飛ばしながら突撃し、やがてその直撃を受けたタイガキラーは大きく吹っ飛び、地面に落下して転がる。

 

 

 「馬鹿な!…完璧にコピーした貴様らの技を、それ以上の力で打ち消すとは…!」

 

 タイガキラーに宿っているヤプールは、悔しそうな声を上げる。

 

 

 「どれだけ表面をコピー出来ても、仲間との絆がある俺達は、侵略しか考えない貴様らとはワケが違うんだ!」

 

 自分達の強さの意味を叫ぶタイガ。 そこにジャンボキングが背後から迫る!

 

 タイガは即座にブレードで噛み付きを防ぎ、蹴りを腹部に打ち込んで後退させた後、ブレードによる乱れ斬りを打ち込む!

 

 更に強力な一撃を、タロウのキック、オーブのパンチと同時に叩き込んでジャンボキングを吹っ飛ばした!

 

 

 《カモン!》

 

 タイガスパークを起動させたヒロユキは左手首に、かつて共に戦ったゼロに授けられた、ゼロの力を秘めたブレスレット『プラズマゼロレット』を装着する。

 

 そしてスイッチを押してブレードとクリスタルを展開した後、そこに右手をかざす事でスパークでリードして力を解放する。

 

 《プラズマゼロレット! コネクトオン!》

 

 

 「ネオストリウム光線!!」

 

 「ストビューム光線!!」

 

 「タイガダイナマイトシュート!!」

 

 タロウは腕をX字に組んでストリウム光線の強化版『ネオストリウム光線』を、オーブは全身を七色に発光させてエネルギーを溜めた後、腕を十字に組んで必殺光線『ストビューム光線』を、そしてタイガはゼロのビジョンと重なった後、両腕を左右に広げて、全身から虹色の破壊光線『タイガダイナマイトシュート』を、一斉に放つ!

 

 巨体を誇る最強超獣も、三つの強力な光線技の直撃には耐えられず、その場で大爆発して砕け散った…!

 

 

 父と先輩と共にジャンボキングを撃破したタイガは、再びタイガトライブレードを手に持ってタイガキラーと戦う…!

 

 

 父や先輩、そして仲間達と力を合わせて超獣軍団を撃破し、残った敵・タイガキラーを追い詰めて行くタイガ。

 

 そんなタイガをひかる達と共に見守りながら、真は呟いた…。

 

 

 「そうか…。 あれが偉大な父親から生まれた息子が得た…大きな我(じぶん)…!」

 

 

 タイガは一回転しての強力な斬撃の一撃を叩き込んでタイガキラーを吹っ飛ばし、更にそれによりタイガキラーのタイガスパークが破壊された!

 

 グロッキーになったと同時にエースキラーに戻ってしまった相手に、タイガ…いや、トライスクワッドは最後の攻撃に入る!

 

 

 「クワトロスクワッド!!」

 

 ヒロユキはブレードのスイッチを長押しした後、同じくタイガトライブレードを構えるタイガ、タイタス、フーマのビジョンと共に回転盤を回しエネルギーを充填した後トリガーを引く。

 

 そしてタイガは突き出した剣先から、ヒロユキを含めた“クワトロスクワッド”全員の力を秘めた、虹色に燃え盛る螺旋状の最強光線『クワトロスクワッドブラスター』を放つ!

 

 「「「「クワトロスクワッドブラスター!!」」」」

 

 

 最強光線の直撃を全身に浴びる形で受けたエースキラーは、虹色の光と共に大爆発して完全に消し飛び、タイガはその爆発を背にポーズを決めた。

 

 

 (BGM終了)

 

 

 タイガ達の大勝利に街の人々はもちろん、真達も歓声を上げる。

 

 「見事な大勝利だ!」 「うん! やっぱウルトラマンの力は素晴らしいわ!」 「うん!惚れ惚れしちゃう!」

 

 真、愛紗、ひかると口々にそう言うが、それも束の間、実は敵は完全に滅んでいなかった…!

 

 

 不気味な唸り声と共に、それぞれ各超獣が撃破された場所からヤプールの邪念と思われる赤黒いオーラが現れ、やがてそれらが一つになって、ウルトラマン達の数十倍の大きさの巨大ヤプールの姿となる!

 

 「おのれウルトラ戦士ども…! しかし、怨念がある限り、我らヤプールは何度でも蘇るぞ!」

 

 

 肉体を失い、邪念のみになりながらも最後のあがきを見せるヤプールを見上げながら、タイガは通常の姿に戻ってタロウやオーブと合流する。 カラータイマーは赤く点滅を始めていた。

 

 

 「行くぞ! タイガ!」

 

 「あぁ!!」

 

 タロウの呼びかけに気合の返事を返したタイガ。 今こそ親子の力でヤプールの邪念を消し飛ばす時だ!

 

 

 タロウ・タイガ親子は数歩前に出た後、それぞれストリウム光線とストリウムブラスターのチャージに入る。

 

 流石は親子なだけあって、必殺光線の予備動作がそっくりで、動きもバッチリシンクロしている。

 

 

 「「ストリウム…!!」」

 

 「光ー線っ!!」「ブラスター!!」

 

 

 二人は体を七色に輝かせた後、同時に腕をT字に組んで一斉に放つ!

 

 

 「ヤプール死すとも…超獣死なず…怨念となって必ずや…復讐せん…!!」

 

 

 親子の放つ七色の合体光線を受けたヤプール(邪念体)はそう言い残すと、全身が燃えて塵になるように消滅した…!

 

 

 ヤプールを完全に消し去ったウルトラ戦士たちに、人々は再度喜びの声を上げ、真達はもちろん、イージスの面々も喜び合う。

 

 

 強大な敵に勝利した三大ウルトラマンは合流する。

 

 「お二人とも、お疲れさんです。」

 

 オーブオリジンに戻っていたオーブは、タロウ・タイガ親子に労いの言葉を掛け、タロウは無言で頷き、タイガは軽く笑いながら自身の後頭部を撫でる。

 

 

 そして、タロウはタイガの方を振り向いて言った。

 

 「しばらく見ない内に、立派になったな、タイガ。」

 

 「ありがとうございます。 しかし、まだまだです。 もっと強くなって、いつかは父さんを完全に超えてみせます!」

 

 「そうか…お前はまだまだ伸びそうだな。 楽しみにしておるぞ。」

 

 「はい!」

 

 タロウ・タイガ親子は拳を合わせた。

 

 

 やがてタロウは別れを告げて飛び立ち、空の彼方へと飛び去って行った。

 

 

 タロウを見送った後、タイガとオーブも光と共に縮小して変身を解く。

 

 「タイガのお父さん…とても偉大な人だね。」

 

 「あぁ。 やはりウルトラ兄弟の一員は、実際に会うと貫禄が違うものだ。」

 

 「それに、まさかオーブにも会えるなんて…ホント感激だぜ。」

 

 ヒロユキ、タイタス、フーマと順にそう言った後、タイガは改めて目標を呟いた。

 

 

 「いつかは絶対、父さんを超えるぞ!」

 

 

 戦場から帰った二人は、戦いを見守っていたイージスの面々や真達と合流する。

 

 ヒロユキは、今までにない激闘で流石に疲れたのか、崩れるようにぐったりし始め、イージスはそれを慌てて支え、笑って軽口を言いながらヒロユキを労う。

 

 「…ただいま。」

 

 「お帰り。」 「お疲れ様です。」 「今日もカッコよかったですよ!」

 

 真達も笑顔でガイを労い、ガイは満更でもないようにふと笑った。

 

 

真な今度はヒロユキに歩み寄る。

 

「ヒロユキさんも、お疲れ様でした。 まさか1人で3人ものウルトラマンになるなんで、ホント凄いですね。」

 

「はは、そんな事ないよ。 僕も初めてタイガ達が付いた時はダメダメだったんだから。 真君達も、なかなかの勇気だったよ。」

 

お礼を言われたヒロユキは真達を褒め返し、真もひかるも愛紗も嬉しそうな表情になる。

 

 

次に真は苦笑しながら申し分なさそうにこう言った。

 

「僕も、ヒロユキさん達みたいに強くなりたいな…。 実は僕、なかなか自分に自信が持てなくて…すぐ凹んでしまうんですよ…。」

 

それを聞いたヒロユキは、ふと笑った後、優しい表情で真に言った。

 

「誰だって完璧じゃないよ。 僕だって、時にどうやったら完璧に出来るか悩んだ時もあった。」

 

「え…ヒロユキさんも?」

 

「うん。 でも、僕は“ある恩師”のお陰で、あまり気にせずに、自分なりに頑張る事が出来るようになった。 「失敗しても何度でもやり直せばいい」って感じでね。」

 

ここでヒロユキが言う恩師とは『小田さん』(本名:ナックル星人オデッサ)の事である。

 

「完璧じゃなくてもいい…自分なりに…。」

 

ヒロユキの言う事を理解し始めて行く真。

 

「誰かに笑われたって、気にしなくてもいい。 自分の信じるものを貫けばいいと思うよ。」

 

 

「…そうですね…。 やってみます! 自分なりに。」

 

真は自身に満ちた笑顔で返事をし、それを見たヒロユキも微笑む。

 

 

周りを見渡せば、イージスと真達をの親睦は深まっており、ヒロユキと真の他にも、ホマレとマグマ星人、マーキンド星人は同じ宇宙人故か早速ガイと意気投合しており、カナ・ピリカとひかる・愛紗は女子トークを繰り広げている。

 

 

そして、遂に別れの時が来た。

 

「それじゃあ、真君達も頑張ってね。」

 

「はい。 ヒロユキさんもイージス、それからウルトラマン頑張ってくださいね。」

 

ヒロユキと真は友情の握手を交わす。

 

 

「あ〜もうお別れか〜。」 「もっとお話ししたかったな〜。」

 

ひかると愛紗は別れを惜しみ始めるが、そんな彼女たちにカナとピリカが笑顔で言う。

 

「またいつでも来なさい。 歓迎してあげるから。」

 

「うん! ひかるちゃんと愛紗ちゃんはもう、“ペアルック&おさぼり同盟”の正式なメンバーなんだから。」

 

「「…はい!」」

 

2人の言葉に、ひかると愛紗も同じく笑顔になって返事をする。

 

「その時は、俺も歓迎と共にビシバシ鍛えてやる。」

 

「え?…あ、あの、すいません…それはいいです。」

 

「え? うそ〜ん…。」

 

トレーニングをひかるにナチュラルに断られて呆気にとられるホマレを見てカナとピリカ、そしてヒロユキ、真、愛紗も笑う。

 

 

最後にガイが、タイガの変身者でもあるヒロユキの肩に手を置いて言った。

 

「まさか、アンタが1人でタイガ、タイタス、フーマの3人に変身してたとはな。」

 

「はい…僕もまだ、未熟な所はありますが…これからも一生懸命やります。」

 

「フッ、そうか…頑張れよ、後輩。 あばよ!」

 

ガイはヒロユキの肩を軽く一回叩いてそう言うと、テンガロンハットを深くかぶって振り向いて歩き始める。

 

それに真、ひかる、愛紗も続き始め、ヒロユキ達イージスに手を振りながら歩き去って行き、イージスもそんな真達を手を振りながら見送る。

 

タイガ、タイタス、フーマの3人も、ミニサイズでヒロユキの近くに立って真達を見送っていた…。

 

 

(BGM:Sign)

 

 

やがて、ガイの移動能力により、自分達の世界に戻った真、ひかる、愛紗の3人は、ガイにお礼を言って別れた。

 

最も、ガイは別れ際に「どうせ地球は丸いんだ。 またどこかで会える。」というお決まりのセリフを言っていたという事を付け加えておこう。

 

3人は夕焼けの中帰り道を歩きながら、最近の出来事について話し合っている。

 

「なんか、最近凄い体験を結構したね。」

 

「うんうん! 笑えない事もあったけど、沢山のウルトラ戦士にも会えたしね!」

 

愛紗は、一時期嫌っていたウルトラマンを今ではスッカリ気に入ってしまっている。

 

「マコちゃんなんか、怪獣n…」 「うぉーい! それやめろひかる。 黒歴史なんだから。」 「あぁ、ごめんごめん。」

 

真もひかるのブラックジョークを慌てて止めながらも笑っている事から、自身が怪獣になってしまった事はそれ程トラウマになっていない様である。

 

恐らくこれもウルトラ戦士のお陰であろう。

 

「でも、それらの経験のお陰もあって、僕はもっと多くの事を経験したいと思った。」

 

「私も! 大学生活もまだ1年目なんだし、もっと色んな事にチャレンジしよっかな〜。」

 

「確かに。 そうすればもっと多くの人に会えるかもしれないしね。」

 

真、愛紗、ひかると順に前向きな発言をする。

 

 

「ハートぶつけ合える誰かや…」 「ずっと笑い合える誰かと、もっと出会うために!」

 

真とひかるは、それぞれヒロユキとピリカの事を浮かべながら呟いた。

 

 

「それに、もっと色んなウルトラ戦士に会ってみたいしね!」

 

「そうだね。 タイガカッコよかったし、彼らを見習って、もっと強くならないと…。」 「私も、タイタスさんみたいにもっと力をつけたいな〜。」

 

愛紗の言葉に、真とひかるもそれぞれ気に入ったウルトラマンを浮かべながら同調した。

 

…それにしてもひかる、アンタ十分に腕の力強いだろ!? これ以上強くなったらいよいよ手が付けられなくなるんじゃないか?(笑)

 

 

「うんうん! カッコいいウルトラマン達にもっと会いたいよね〜。」

 

愛紗はそう言いながら、こっそりと何かを取り出して見つめ始める。

 

 

それは、戦闘中にこっそりとカメラで撮っていた、戦うフーマの写真である。

 

「…フーマ様♡」

 

愛紗はどうやら守ってもらった事もあって、余程フーマの事が気に入っているみたいである。

 

 

同じ頃。

 

「ヘッ…ヘックシュン!!」

 

「大丈夫か?フーマ。」

 

「あぁ、何だか知らねーが急に寒気が…。」

 

「風邪でも引いたんじゃねーの?」

 

「いや引いてねーし!」

 

思わずくしゃみをしたフーマをタイタスが案じるが、その直後にタイガがおちょくったために再びいつもの喧嘩が始まろうとしてしまう。

 

「もう…いつもこれなんだから…。」

 

ヒロユキは、喧嘩しそうになるタイガとフーマ、そしてそれの仲裁に入るタイタスを見ながら、呆れながらも何処か楽しそうに呟く。

 

 

やがて4人は、今回の出来事について話し合い出す。

 

「それにしても、今日は凄い経験をしたね。 タイガのお父さんや、フーマの先輩も来てくれたし。」

 

「あぁ、改めて見たけど、やっぱ父さんは凄いよ。 俺も追いつけるように頑張らなくちゃ!」

 

「俺も、いつかオーブやロッソ、ブルと肩を並べられるように。 (小声で)あと、グリージョにも会いたいし。」

 

「私も、いつかタロウ達ウルトラ兄弟のように威厳のある戦士になるためにも、欠かさず定時のトレーニングだ。」

 

タイタスはそう言うと、定時のトレーニングである“腹筋3万回”を始める。

 

 

ヒロユキは、先輩達と共に戦った今回をキッカケに改めて気合いを入れる3人を見て、ふと微笑んだ。

 

 

「これからもよろしくね。」

 

「あぁ!」

 

ヒロユキの言葉に、タイガは返事をした。

 

 

そして真達は互いに別れを告げ、それぞれ帰り道を歩き始める。

 

真は、夕日を見上げて帰り道を歩きながら、改めて誓いを呟いた。

 

 

「自分なりに頑張り続けて、いつかは何事にも負けない大きな自分になるぞ。 ヒロユキさん達みたいに!」

 

 

(BGM終了)

 

 

(ED:ヒトツボシ)

 

 

〈エピローグ〉

 

タイガ達によって倒された超獣軍団。 しかし、実はまだ残党がいた!

 

 

宇宙空間で、迷子になったと思われる『鳥怪獣フライングライドロン』の子供を追いかける1匹の超獣。

 

古代カメレオンと宇宙翼竜の合成で誕生した、緑の体に背中に生えた翼等と、カメレオンと翼竜を合わせたような外見が特徴の『古代超獣カメレキング』である!

 

 

口から発火ガスを吐きながら追いかけ続けるカメレキング。 やがて必死に逃げていたフライングライドロンの子供はガスを受けて小さく爆発してバランスを崩し、とある小惑星に落下してしまう!

 

倒れ伏して痛みや恐怖で泣いているフライングライドロンの子供に襲い掛かろうとするカメレキング、その時!

 

 

「リブットキックG!!」

 

 

何処からか聞こえた勇ましい掛け声と共に、一人の光の巨人がカメレキングに急降下キックを決めて吹っ飛ばす形で現れる!

 

 

 現れた巨人は着地した後、名乗りを上げながら構えを取る。

 

 

 「ギャラクシーレスキューフォース・ウルトラマンリブット、出動!!」

 

 

 現れたのは、赤と銀のボディに、腕や脚に青いクリスタル“ギャラクシウム”を付けているのが特徴で、宇宙の厄災から生命を守る存在であり、光の国とも協力関係にある組織『ギャラクシーレスキューフォース』に所属するウルトラ戦士『ウルトラマンリブット』である!

 

 

 カメレキングは標的をリブットに変えて襲い掛かり、リブットも颯爽とカメレキングに立ち向かう!

 

 リブットはカメレキングに接近すると同時に腹部に右ストレート、更に一回転しての右手のチョップを胸部に打ち込む。

 

 カメレキングも負けじと左フックでリブットを殴りつけるが、リブットはすぐさま体勢を立て直すと、後ろ回し蹴りを腹部に、更に跳躍しての右手チョップを首筋に連続で決める。

 

 カメレキングは再度右フックを放つが、リブットはそれを両手で掴んで受け止めてそのまま右肘を首筋に打ち込み、続けてカメレキングの左ストレートを両手で受け止めると同時に腹部に左膝蹴りを叩き込み、更に跳躍しての右足蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 マレー語で“嵐”と言う意味でもあるリブット。 その名の通り、嵐のような素早い動きで相手の攻撃を回避し、東南アジアの伝統的な武術“シラット”に似た動きを交えた格闘戦で戦いを優位に進めるリブット。

 

 

 カメレキングは翼を羽ばたかせ、上空に飛び立って攻撃しようとする!

 

 「リモートカッター!!」

 

 リブットは掛け声と共に、両腕を振るう事でギャラクシウムから水色の円盤状の光のカッター『リモートカッター』を二発投げつけ、それぞれ複雑な軌道を描いて飛びながら、カメレキングの左右の翼を斬り落とした!

 

 

 格闘戦で追い込まれ、翼も斬り落とされて完全に弱ったカメレキングに、リブットはトドメの体勢に入る。

 

 リブットは両腕を回し、腰を落としてエネルギーを溜めた後、両腕をL字に組んで必殺光線『ギャラクシウムブラスター』を放つ!

 

 「ギャラクシウムブラスター!!」

 

 光線の直撃を受けたカメレキングは、断末魔の叫びと共に大爆発して砕け散った…!

 

 

 リブットがカメレキングを撃破するのを見たフライングライドロンの子供は元気になって喜ぶような仕草を見せ、そして歩み寄って来るリブットに律儀に一礼した。

 

 「礼には及ばないよ。 か弱き生命を守り、救助するのが、ギャラクシーレスキューフォースの使命だからね。」

 

 リブットは胸に拳を当ててそう言った後、フライングライドロンの子供と共に飛び立ち、親の元へを案内し始める形で共に飛び去って行く…。

 

 

 今も、ギャラクシーレスキューフォースの一員として宇宙の平和を守っているリブット。

 

 果たして彼も今後、今現在ゼロ達が来ている世界の地球に来るのだろうか…? それはまだ知らない。

 

 

 〈完〉




 読んでいただきありがとうございます! いかがでしたか?


 今回はタイガの世界の後日談という設定にしつつ、「私的にこういう形のタロウ・タイガ親子の共演が見てみたいな」という思いから、パラレルストーリーという意味合いも込めて製作しました。


 ウルトラマンタイガは、初めて情報が解禁された時は“タロウの息子”と言う事で非常に興奮した覚えがありますね。

 更にはジョーニアスの後輩、新たなO-50の戦士、劇場版R/Bで初登場したトレギアも登場するという事で、非常に豪華な作品だなと思いました。

 ボイスドラマも三人の雑談だったり、三人の過去が更に深く分かる内容だったりと、とても楽しめましたね。

 OPソングは、ニュージェネシリーズのOPの中でも上位に入るくらい好きになりました。

 また、恐らくネクサス以来であろう前半と後半でEDが違うという試みも面白いと思いましたね。


 今回主役を張った真、ひかる、愛紗の三人も、今後も登場させて行きたいと思います。


 皆さんはトライスクワッドだと誰が推しですか?

 私は前はタイガと言いましたが、どれもカッコよくて良いキャラしているので、結局一番は決めづらいです(笑)

 因みにエピソードだと、私は第6話『円盤が来ない』と第18話『新しき世界のために』、あとゼロが登場する第23話『激突!ウルトラビッグマッチ!』が特に好きでした。

トレギアも、いつか本作に登場させたいですね。 共演させるのはもちろん、トレギアの先輩でもあるあの“闇のウルトラマン”です!


 因みに劇場版は、なんでもタロウが闇堕ちするという事で、タロウ大好きでもある私としては正直複雑な気持ちもありますが、ニュージェネレーションヒーローズが勢ぞろいするという事で、既に期待値は大です!

 タイガが闇堕ちした父親をどう救うのかも楽しみですね。


 また、ラストに登場したリブットですが、去年配信された『ULTRA GALAXY FIGHT NEW GENERATION HEROES』にて晴れて映像作品への登場が実現したという事で、それの記念も含めてちょっとだけ登場させました。

 ギャラクシーファイトもニュージェネ勢揃いに大迫力のバトルと、とても見所があって大満足でしたね。

 リブットも早速好きになりました。


 後書きが非常に長くなって申し訳ありません。


 今年も時間を見つけては作品を制作して行こうと思いますので、宜しければ今年もよろしくお願いします。


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています!


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番外編「真に美しい者たち」

 新年、明けましておめでとうございます!


 まず最初に、去年は様々な事情があって一話しか投稿できなかった事をお詫び申し上げますm(__)m


 今回は年末年始特別編と言う意味も込めた番外編で、登場するのは去年活躍されたあの“ゼロの弟子”でもあるウルトラマンです!

 相変わらず文才は無いですが、とりあえず楽しんでもらえたら幸いです(笑)


 そして宜しければ、今年も本作やその他の作品、そして、特撮ヒーロー(特にウルトラマン)大好きな私・剣音レツをよろしくお願いします!


 では、どうぞ!


 とある夜の街。

 

 各所で光っている外灯が、黒い建物や道路などをいい感じに彩っているその夜の街にて、戦いが繰り広げられていた。

 

 

 その巨体を振わせ、激しくコンクリートの道路を崩す勢いで足踏みしながら進撃する一体の怪獣は、『宇宙古代怪獣エラーガ』である!

 

 

 それを迎え撃つのは、一見『宇宙ロボットキングジョー』に見えるが、色合いは白と黒のモノトーンになっており、胸部には青のプロテクターが付いているのが特徴である。

 

 エラーガと戦っているのは『特空機3号 キングジョー・ストレイジカスタム』だ!

 

 

 『ストレイジ』。 それは、日常的に出現する怪獣に対抗するために結成された、地球防衛軍日本支部(GAFJ)の対怪獣ロボット部隊である。

 

 正式名称は『対怪獣特殊空挺機甲隊』(STORAGE(Special Tactical Operations Regimental Airborne and Ground Equipment))であり、対怪獣特殊空挺機甲(通称:特空機)という巨大ロボットを駆使して、災害を巻き起こす怪獣などに立ち向かうのだ。

 

 

 このキングジョー・ストレイジカスタムも、かつて『海賊宇宙人バロッサ星人』が襲撃の際に使ったキングジョーのボディを回収し、解析・カスタマイズしたものである。

 

 

 キングジョーはロボットモードの姿で突如現れたエラーガと交戦しており、お互い馬力を活かした殴り合いを展開していた。

 

 やがてエラーガを右腕の砲身で殴って怯ませた隙に、折り畳み式の左腕を伸ばして攻撃する近接鉄拳攻撃システム・ペダニウムハンマーを叩き込んで後退させるが、エラーガが即座に頭部から放った光線を浴びて大爆発してしまう!

 

 

 《キングジョー・ストレイジカスタム タンクモード!》

 

 

 だが、キングジョー・ストレイジカスタムは大破しておらず、即座に爆風に紛れて自走多目的兵装型・タンクモードへと変形していた。

 

 キングジョー・ストレイジカスタムのタンクモードはエラーガの周りを走行しながら、全砲門からの一斉射を浴びせて行く。

 

 だが、エラーガも負けておらず、闇雲に振るった尻尾の一撃で動きを止めると、再度頭部から光線を放って反撃する。

 

 キングジョー・ストレイジカスタムは即座にコアシップ、ヘッドファイター、ブレストタンク、レッグキャリアーの4機に分離するセパレートモードになる事でそれを回避すると、それぞれ多連装ペダニウム誘導弾、ペダニウムハンマー、等を四方八方から浴びせて行く!

 

 

 キングジョー・ストレイジカスタムの変形を駆使した攻撃に完全に怯んだエラーガ。

 

 キングジョー・ストレイジカスタムは再度ロボットモードに変形すると、エラーガに至近距離から砲身を向けてエネルギーを溜めて行き、やがてそこから強力なビーム・26口径750mmペダニウム粒子砲を放つ!

 

 至近距離からビームに押される形で吹っ飛ぶエラーガは、やがて大爆発して地面に叩き付けられた!

 

 そしてしばらく痙攣した後、そのまま絶命する…。

 

 

 見事、エラーガを倒したキングジョー・ストレイジカスタムは、その場で堂々と立ち尽くす。

 

 だが、反撃により多少ダメージも受けたみたいである。

 

 とりあえずキングジョー・ストレイジカスタムは、その場から飛び立ち、基地に向かって飛び去って行った…。

 

 

 …しかし、飛び去って行くキングジョー・ストレイジカスタムを、とあるビルの屋上から一つの影が見上げていた…。

 

 「フッ…まあいい。 ここからが本番だ…。」

 

 黒ずくめの衣装に身を包んだいかにも不気味なその影はそう言うと、紫のオーラと共にその場から姿を消した…。

 

 

 一体、奴は何者なのだろうか…?

 

 

 そしてこの世界で、一体何が起ころうとしているのだろうか…?

 

 

 (OP:ULTRA BRAVE)

 

 

 皆さん、ご機嫌よう。

 

 私は新田真美。

 

 麟慶大学を無事卒業し、国家試験に合格した私は、晴れて近くの街の病院『日向クリニック』の看護師になる事が出来たの。

 

 …と言っても、まだ研修生の段階だけどね。

 

 大学の医学部にいた頃は、ある程度看護師の仕事を分かったつもりでいたんだけど…実際に現場に臨んでみると、私が想像してたのとだいぶ違っていたわ。

 

 切り替わる予定、迅速に対処しなきゃいけない状況、様々な形で不安がったり文句を言ったりして来る患者への対処など…。

 

 まだまだ学ばなきゃいけない事がいっぱいあるみたいだわ。

 

 ま、言っちゃうと私はまだ半人前…いや、“三分の一人前”と言った所かな?(笑)

 

 それに、辛い事だけど、医者も看護師も決して神様じゃないのは分かっている。

 

 だから私は、手の届く範囲で守れる命は一生懸命守って、それでもどうしても守れなかった命があったら、その存在を絶対に忘れない…そう言う心意気でやって行こうかとも思っているの。

 

 

 今日も、いつものように忙しい研修を午前中に終えた私は、近くのコンビニへとランチを買いに出かけた。

 

 

 …でも、その道中に、何やら奇妙な光景を見かけたの…。

 

 昨夜倒されたと言われている怪獣の死体の周囲に大勢の人が集まって、何やら一斉に両手を挙げてるわ。

 

 あまりハッキリ聞こえなかったけど…何やら一斉に脱力したような声で呪文のようなものを喋っていたわ…。

 

 なんか、どっかの宗教の団体みたい…。 昨日のあの怪獣といい、最近は謎の飛行機墜落事故も頻発して、その患者も私の病院に流れて来るし…一体何が起ころうとしているんだろう…?

 

 まぁ、とりあえず分からない事をじっくり考えても仕方ないと、私はお茶とサンドイッチの入った袋を手に、足早に病院へと戻って行ったわ。

 

 

 ランチを食べた後、私はしばらく病院内を見学する事にしたの。

 

 看護師として働く以上、病院の事をもっと知っておかないとね。

 

 それに12月に入ったという事でもうすぐクリスマスでもあるし、彼のためにm…おっと、こっから先は私のプライベートだね(笑)

 

 

 白衣の姿で院内の様々な部屋を回っていたその時、私は何かに気づく。

 

 視線の先のとある廊下の椅子に座っている小学生ぐらいの1人の男の子が俯いていたの。

 

 見てみると、目には涙を浮かべて泣いているわ…。

 

 院内見学自体、私が勝手にやってるだけだし、一旦中断して、私はその子の元へと歩み寄る。

 

 「ねぇ…。」

 

 真美は少年に静かに声をかけてみる。 少年は少し驚くように、涙目のまま視線を上げる。

 

 「大丈夫?」

 

 更に真美は、少年の目線までしゃがんで優しく話しかける。

 

 少年は、知らない人に話しかけられたという事で少し戸惑ったが、看護師の優しさを表すような白衣の姿、そして優しい表情で見つめる真美の顔を見て、話しても大丈夫だと判断したのか、若干キョドりながらも少しずつ話し始める。

 

 少年の名は冴(さゆる)。 なんでも彼の母親は難病に侵されていてこの病院に入院しているようであり、明日、手術を迎えると言う事で、それを励ますためという事もあってお見舞いに来ているのだという。

 

 上手く行けばクリスマス前には退院できるみたいなのだが、もし上手く行かなかったら来年まで…もしくは最悪の場合…。

 

 だから、とても不安な気持ちでもあるのだと言う。

 

 「…そっか…それは辛くて心配だよね…。」

 

冴の境遇を知り、彼の辛い心に寄り添おうとする真美。

 

 

 …しかし、彼が不安なのはそれだけではなかった。

 

 なんでも、母の様子が、昨日お見舞いに来た時と違っていたのだという。

 

 病室のベッドで横になっているのは同じなのだが、何やら終始、魂の抜けたような表情で窓の外を見つめており、時折「キリエル様…」と戯言のように呟いているのだという…。

 

 どんなに話しかけても、感情を感じない生返事ばかりという事もあって、母は難病の影響でおかしくなって、このまま助からないんじゃないかと思った冴は、一層悲しくなったという…。

 

 全てを話した後、悲しさがフラッシュバックしたのか、真美に縋り付く冴。 真美はそんな彼の頭を撫でる。

 

 「心配だよね…。 きっとお母さんは、明日の手術の事で一時的に不安になってるんじゃないかな? きっとすぐ良くなるよ。」

 

…そう声を掛けるものの、確信はないどころか自信が揺らいでいたため、それ以上の事は言えなかった…。

 

 

 …更に真美は、ある事に気づいていた…。

 

 よくよく考えてみると、先程ランチを買いに行った際に見かけた人々も、似たような状態だったという事である…!

 

 そして、その人々も「キリエル様…」と呟いていたという事も…!

 

 真美はそれらを思い出した瞬間、これはただ事ではないとも思い始めていた…!

 

 

 その時、ふと窓から外を見てみると、何やらミリタリー感のあるつなぎとベスト、ヘルメットを付けた1人の女性が、病院のスタッフの1人とやり取りをしていた。

 

 「本日、この病院で何か異常な事とかありませんでしたか?」

 

「いや、特にないね。」

 

「そうですか、近くの怪獣の死骸に人々が群がっているという不可思議現象も起きています。 何でもいいので何かあったら知らせてくださいね。」

 

 そうやり取りすると、女性はその場から去って行った…。

 

 「もうすぐ死体処理班が来るはずだけど…一体、何が起ころうとしてるの…?」

 

 エラーガの死骸に群がる人々を見つつ歩きながらそう呟く女性は、ストレイジの隊員で、高い操縦スキルを持ったエキスパート、『ナカシマ・ヨウコ』である。

 

 因みに昨夜、キングジョー・ストレイジカスタムを駆ってエラーガを倒したのも彼女である。

 

 ヨウコは改めて辺りの偵察を続ける事にし、ストレイジの特殊車両・ステッグへと戻って行った。

 

 

 引き続き、冴の頭を撫でている真美。 その時、誰かが話しかけて来る。

 

 

 「それはきっと、キリエル人の仕業っすね。」

 

 

 突然、聞いた事も無いワードを交えながら話しかけて来た誰かの方へと真美は振り向く。

 

 

 そこには、爽やかで端正な顔立ちの青年2人がやり取りしていた。

 

 「ちょ…ハルキさん、流石にいきなり過ぎなんじゃ…。」

 

 「お…押忍、そうっスね。 ちゃんと一から話しますよ。」

 

 

 「…あの~…あなた達は一体…?」

 

 恐る恐る真美は問いかけ、それを聞いた青年2人は仕切り直す。

 

 

 「話す前に、俺たちの事は誰にも言わないと約束してくれますか?」

 

 「え? …えぇ。」

 

 真美は戸惑いながらも了解したため、青年たちは詳細を話し始める。

 

 

 デニムジャケットを着込んだ、大好きなTVのヒーロー・ドンシャインのキーホルダーを付けている1人は『朝倉リク』。

 

 みんな知っているだろうが、あの悪のウルトラマン『ウルトラマンベリアル』の遺伝子で造られた、所謂ベリアルの息子でもあるウルトラ戦士『ウルトラマンジード』として戦う青年である。

 

 

 そして先程のヨウコと同じ隊員服を着ているもう1人は『ナツカワ・ハルキ』。

 

 彼は元ストレイジの隊員であり、ストレイジ在隊中に『ウルトラマンゼット』と一体化した青年でもある。

 

 

 ウルトラマンゼット。それは、(本人曰く非公開だが)M78星雲・光の国出身のウルトラ戦士であり、あの歴戦の戦士『ウルトラマンゼロ』に憧れ、(半ば強引に)彼に弟子入りして、努力の末に宇宙警備隊に入隊した若きウルトラ戦士である。

 

 光の国を襲撃し、そこで『ウルトラマンヒカリ』が開発した『ウルトラゼットライザー』と『ウルトラメダル』を飲み込んだ『凶暴宇宙鮫ゲネガーグ』をゼロと共に追い、そこでゼロと生き別れた後に引き続き追って地球に来訪。

 

 その際の戦闘で共闘する形で出会い、自身もろとも窮地に陥って命を落としたハルキと一体化し、それ以降は地球の平和のために戦った。

 

 

 ハルキはゼットと一体化後、怪獣や宇宙人、暗躍する『寄生生命セレブロ』などと戦って行き、その最中に『どくろ怪獣レッドキング』との戦いを通じて、怪獣も生命の一つという事を知って苦悩する事もあったが、『四次元怪獣ブルトン』の事件の際に時を超えてかつての父・マサルと出会い、「手が届く範囲で守れる命は全力で守り、それで傷つけた、もしくは守れなかった存在は絶対に忘れない」と決意を新たにして改めて戦いに臨み、その後ゼットやストレイジの仲間達と共にセレブロの文明自滅ゲームを破って全てが終わった後、宇宙で苦しむ命を守るためにゼットと共に宇宙へと旅立った。

 

 

 因みにウルトラマンゼットの名付け親は『ウルトラマンエース』であり、地球の言葉で“最後”を意味する“Z”から転じて、戦いの無い平和な宇宙をもたらす最後の勇者になれという願いが込められている。

 

 

 リク(ジード)の事は、“ベリアルを倒してM78星雲にその名を轟かせた超有名な人”として、リク君先輩(ジード先輩)という呼び名で敬っており、『ラストジャッジメンター・ギルバリス』、『虚空怪獣グリーザ』などの強敵が襲来した際に共闘している。

 

 

 今回、2人が地球に帰って来たのは、この地球に新たな侵略者が現れたからである。

 

 

 その侵略者とは『炎魔人キリエル』である。

 

 キリエルとは太古の昔、既に地球に侵入していたと言われている精神生命体(エーテル体)であり、その頃から人類に干渉を行い、「より良い方向に導く」と囁いて支配しようとして来た。

 

 自己顕示欲が強い彼らは、嘗て地球の守りについていた『ウルトラマンティガ』を「自分たちより後に地球に来たくせに好き勝手にしている」と敵視し、自分こそが救世主であると人類に認めさせるため、2度に渡ってティガに挑戦した事もある。

 

 

 そして今回、ネオフロンティアスペースを抜けて、マルチバースを潜ってこの世界にやって来た一部のキリエルの目的は、ティガのみならず「光の戦士こそが悪魔」と人類に認めさせるために「自身こそが救世主」と人々に囁いて洗脳し、頼るのが自身しかいなくなった事で余裕が無くなった人々に自身を崇拝させる事によりその人々から発生したマイナスエネルギーと、バロッサ星人を利用してリクから奪った『ジードライザー』と『ベリアルカプセル』の力を利用して、再び同胞たちを呼び出すために地獄の門を開こうと言う事である。

 

 

 ジードライザーを盗まれたリク(ジード)は改めてヒカリからゼットライザーを授かり、道中、バロッサ星人は撃破したものの、既にジードライザーを手にしていたキリエルがゼットの地球に侵入したため、ゼットと共に追う形でやって来たのだと言う。

 

 

 恐らくエラーガの死骸に群がっている人々は既にキリエルの干渉を受けた人々であり、そして冴の母もまた、その一人なのであろう。

 

 

 「…そんな…昨日の怪獣といい、また侵略者が来てしまうなんて…。」

 

全てを知った真美な、新たな侵略者の来襲に愕然とする。

 

 「大丈夫っす! 必ず、俺たちがキリエルをやっつけて見せます!」

 

 「そうだね。 僕たちは、ウルトラマンだから。」

 

ハルキは頼もしい言葉をかけ、リクもそれに続き、それを聞いた真美も少し嬉しそうな顔になる。

 

 

 しかし、冴は先程よりも悲しみが増しているようであった。

 

 「どうしたんだ?僕。」

 

 リクは話しかけてみる。

 

 「きっと…お母さんは、もう治らないと諦めてるんだ…。 お母さん、難しい病気だし、明日手術だけど…もう治らないと諦めてるから、そのキリ…なんとかにアッサリと操られて…。」

 

涙ながらにそう言う冴に、真美もとりあえず頭を撫でながらも、悲しそうな表情になり、掛ける言葉を失ってしまう…。

 

 

 その時、ハルキは冴の目線までしゃがんで語りかけ始める。

 

 

 「僕、見えるものだけを信じちゃダメだ。」

 

 

 「…え?」

 

 冴はふと俯いていた泣き顔を上げる。 ハルキは続ける。

 

 「きっと君のお母さんは、絶対に病気を治したいとまだ足掻いていると思うよ。」

 

 「お兄ちゃんどうしてそれが分かるの?」

 

ハルキの言葉に疑問に思う冴。 リクはそのワケを話す。

 

「きっとキリエルの目的は、地獄の門を開ける事、そしてエラーガを強化・復活させる事なんだ。 そしてそのためには、いずれもマイナスエネルギーが必要。 だから、洗脳した人々はエラーガの死骸の方に集まるようにしてるハズなんだ。」

 

ハルキはその続きを話す。

 

 「でも、君のお母さんはまだ病室のベッドにいる。 もしかしたらキリエルの洗脳を受けてる一方で、心の中はまだ邪悪な力に負けていない。 だからまだ病室の中にいるんじゃないかな?」

 

ハルキ達の推測を聞いて、母はまだ完全に諦めていない事を確信し始めている冴は、少しずつ出始めた安心と嬉しさからか涙目になり始める。

 

 「キリエルを倒せば、お母さんはもちろん、大勢の人々も元に戻る。 約束だ。俺たちが、絶対に元に戻す。」

 

 そう言うとハルキは小指を差し出し、それに対し冴も震える手で小指を差し出し、ハルキと約束の指切りをした。

 

 

 「…苦しいよね。」

 

 少し安心したものの、尚も涙目でいる冴。 真美は背中を摩りながら寄り添う。

 

 今にも泣きそうな目をしてるのだが、冴も男の子。 無理に我慢しているのであろう。

 

そんな冴に、真美は目線までしゃがんで語りかける。

 

 「辛い時は泣いてもいいんだよ。」

 

 その優しい言葉を聞いた冴は、安心感からかさっきまで抑えていた感情を一気に解放するように、真美に抱きついて泣き始める。

 

 「男の子かどうかなんて関係ない。 泣きたい時は泣く。 自分の感情に素直になる方が、気持ちが少しは楽になれるんだよ。 泣く事は、心の傷を癒すための1つの方法なんだから。」

 

自身に抱きついて泣く冴の頭を撫でながらそう語る真美。 やがて冴は気が済んだのか、少し落ち着く。

 

 「お姉ちゃん…ありがとう。 僕、少し楽になった。」

 

 「泣く事で、心のモヤモヤを洗い流せたみたいね。」

 

 すると、リクがこう言った。

 

 「泣く事は心のモヤモヤを洗い流す…か。 カップ焼きそばで言う、湯切りみたいな!」

 

 突然のリクのジョーク。 しかし、一同はあまりにも唐突過ぎたのか、一瞬戸惑ってしまう。

 

 どうやら見事に滑ったみたいだ(笑)

 

 「ぷふっ…何よそれ。」

 

 やがて真美が時間差で笑い出したのをキッカケに、辺りは一気に笑いに包まれた。

 

 

 そして、ハルキは改めて冴に言った。

 

 「必ず、お兄ちゃん達がなんとかする。 だから、安心しろ。」

 

「…押忍!」

 

「お? 僕、なかなかいいね〜、押忍!!」

 

 辺りは改めて笑いに包まれた。

 

 

 そのやり取りをインナースペース内から見ていたゼットも、ハルキの成長を改めて感じていた。

 

 「ハルキ…立派になったなと、改めてウルトラ強く感じております!」

 

そしてゼットも、改めて決意を新たにした。

 

 「必ず侵略者を倒し、みんなを元に戻す! ウルトラ気合い入れるぜー!!」

 

 

…だが、それも束の間、その希望を見出したやり取りを遮るかのように1人の影が現れる。

 

 「随分と楽しそうだな、愚かな人間ども。」

 

 若干ノイズの混ざった声が聞こえ、一同はその方向へと振り向く。

 

 そこには、白と黒を基調とした悪魔のような姿に、右半分は泣き顔、左半分は笑い顔に見える不気味な顔つきが特徴の、おぞましい姿の怪人のような者が立っていた。

 

 奴こそ紛れもなくハルキ達が追って来たキリエル人である。

 

 今回の個体は、人間や巫女の姿をしていた以前のキリエル人とは違い、等身大時から『炎魔戦士キリエロイド』の姿で登場している。

 

 これからは奴を便利上『キリエロイドⅢ』と呼んで行こう。

 

 

「キリエル…!」

 

 ハルキとリクが即座に身構える中、キリエロイドⅢは余裕の体勢を崩さずに話し続ける。

 

 「何を考えているかは分からないが、その内君達も、我らキリエルしか頼れる者がいないと思い知る。」

 

 「そうなるものか! お前達は、ただ救世主を装って、侵略がしたいだけだろ!」

 

 ハルキがそう切り出す中、キリエロイドⅢはそのハルキ達にこう切り返す。

 

 「ウルトラマンどもよ、おこがましいとは思わないかね?」

 

「何?」とリク。

 

「この星の守護神にでもなったつもりかもしれんが、君たちが現れるずっと前から、この星の愚かな生き物たちはキリエル人の導きを待っていたのだよ。」

 

「そんなの、屁理屈に決まっている! 地球は歴史も文明も、人間たちと、そこに住む生き物たちが作って来たものなんだ!! 」

 

 「お前たちは、無理に人間に干渉して、支配しようとしている。 しかし人間は、それぞれちゃんと自分の名前を持っている…自分は自分だという気持ちを持っている! だから、簡単に支配されるほどやわじゃない!!」

 

 ハルキとリクは熱い言葉を投げかけるが、それでもキリエロイドⅢの余裕は一向に崩れる様子はない。

 

 「…ふむ、確かに、マイナスエネルギーの溜まる速度が予定より遅れ気味だな…。 手荒なやり方は好きじゃないけど、こうなったら次の手に入るか。」

 

 

 そう言うとキリエロイドⅢは指パッチンをする。

 

 すると突然地響きが起こり始め、ハルキとリクは突然な事に戸惑い、冴は真美に縋り付き、真美は冴の安全のために抱き寄せる。

 

 やがて病院の近くの街の地面から激しく土砂やコンクリートの破片などが巻き上がり、そこから一体の巨大怪獣が現れる!

 

 現れたのは、無数の角が生えた頭、硬いウロコで覆われた体、熊手状の尻尾が特徴の『再生怪獣サラマンドラ』だ!

 

 

 サラマンドラとは別の地面からは砂嵐が巻き上がり、そこから地面が蟻地獄のように崩れて行く。

 

 そこから更に激しく砂煙を巻き上げながら、クワガタムシのような一対の大顎、硬い甲羅に覆われた、カブトムシやアリジゴクのような体が特徴の怪獣『磁力怪獣アントラー』が現れる!

 

 

 そして、更に近くの別の場所では、巨大な氷の塊のようなものが現れ、それが徐々に変形して行って一体の巨大怪獣になる。

 

 白い体毛に覆われたマンモスのような外見が特徴の『冷凍怪獣マーゴドン』である!

 

 

 現れた3体の大怪獣。サラマンドラは鼻から放つ火炎やロケット弾、大きく振るった尻尾での打撃等でビルを崩し、アントラーは顎の間からの七色のオーロラのような磁力光線でビルを引きつけ、巨大な顎で切り崩すなどをして行き、マーゴドンは鼻や全身からの冷凍光線で凍り付かせたビルを体当たりで崩すなどをして、それぞれ暴れて行く!

 

 キリエロイドⅢは、3体の怪獣も引き連れて来ていたのだ!

 

 

 突如現れて暴れ始めた怪獣軍団に驚愕する一同。

 

 「我が集めたマイナスエネルギーとデビルスプリンターで怪獣墓場から再生させ、我の支配下に置いた怪獣軍団だ。 これで街の人々に恐怖を植え付け、一気にマイナスエネルギーを集めてやる。」

 

 

 デビルスプリンターとは、ウルトラマンベリアルの細胞の因子であり、次元を超えて様々な宇宙に散らばり、怪獣たちを凶暴化させている。

 

 現在、宇宙警備隊が手分けして捜索・消去に励んでいると言われている。

 

 

 怪獣の出現に街の人々は一気にパニックになって逃げ始め、それはエラーガの死骸に群がっていた人々もそうであった。

 

 最も、エラーガに群がっていた人々はまだ洗脳状態なため、キリエルの名で助けを呼びながら逃げているのだが…。

 

 

 「ふっふっふ…これで十分以上なマイナスエネルギーはすぐに集まるであろう。 これで愚かな人どもは完全に我に救世主と崇めるであろう…!」

 

 暴れ回る怪獣軍団に、恐怖で逃げ回る人々を見下ろしながら高笑いをするキリエロイドⅢ。

 

 冴は恐怖で再び涙目になりそうになり、真美は「大丈夫だよ」と語り掛けるように彼の頭をそっと撫でる。

 

 

 …しかし、ウルトラマン2人は違っていた…!

 

 圧倒的に絶望的な状況になったハズなのに、その熱気のある表情は衰える事は無かった…!

 

 「…何故だ…? 何故絶望し、我を崇めない?」

 

「この地球を守っているのは、僕たちだけだと思ったかい?」

 

「頼もしい仲間は、まだまだいるんスよ!」

 

リクとハルキの言葉をまだ理解出来ないでいるキリエロイドⅢ。

 

 

 その時、何かがジェット噴射で向かって来る音が聞こえ、キリエロイドⅢを始め、一同は振り向く。

 

 

 「…なんだアレは…?」

 

 

 《着陸します! ご注意ください!》

 

 

 キリエロイドⅢの目線の先、そこには、空の彼方から颯爽と飛んで来たロボットが、AIのアナウンス音と共に着陸する光景であった!

 

 着陸したのはストレイジの戦力のロボットの一体の『特空機2号・ウインダム』である!

 

 「やっぱり、最近の一連の事件には、黒幕がいるって事ね!」

 

ウインダムに搭載しているヨウコは、そう気合の声を上げる。

 

 

 「怪獣が一気に三体も出て来るなんて、スッゲ~!! …あ、ウゥン! ヨウコ!怪獣たちのデータは分かり次第教えるから、とりあえずダメージを与える事に専念して!」

 

 そう基地からヨウコに通信しているのは、ストレイジの装備研究開発班に所属している、怪獣好きでもある女性『オオタ・ユカ』である。

 

 

 「了解! さぁ、どこからでもかかって来なさい!」

 

 怪獣たちも身構える中、ヨウコはそう叫ぶと、三対一という圧倒的不利であろう状況の中、臆する事無く怪獣軍団に向かって行く!

 

 ウインダムは先手必勝とばかりにサラマンドラに跳び蹴りを叩き込み、続けて胸部に二発チョップを打ち込むが、直後にサラマンドラの殴り込みを二発受けて怯んだ隙に尻尾での一撃を受けて吹っ飛んでしまう。

 

 地面に転がりながらもウインダムは頭部の発光部からレーザーショットを放ってサラマンドラに浴びせるが、硬いウロコに覆われているサラマンドラには通用しない!

 

 

 「なかなか、やるじゃない!」

 

 そう言うヨウコの声と共に立ち上がったウインダム。 マーゴドンは鼻から冷凍ガスを放って氷漬けにしようとするが、ウインダムは即座にジェット噴射で横にスライドしてそれを回避する。

 

 「もう氷漬けになるのは懲り懲りよ!」

 

 ヨウコはそう言うと、今度はマーゴドン目掛けてレーザーショットを放つ!

 

 マーゴドンの体に命中して爆発するが、熱エネルギーが好物でもあるマーゴドンはダメージを受けるどころか、その爆発すら吸収してしまう!

 

 

 「そんな…!」

 

 ことごとく攻撃を無効化されて行く事に流石に動揺を隠せなくなっているヨウコ。 その隙を突き、アントラーは背後から大顎でウインダムを挟み込み、身動きが取れなくなった所にマーゴドンが体当たりを叩き込み、ウインダムは大きく吹っ飛んでしまう!

 

 「キャァ!!」

 

 《ダメージレベル、40%!》

 

 

 怪獣たちから攻撃を受けるごとにダメージを受けていくウインダム。 キリエロイドⅢはそれを高笑いしながら見つめていた。

 

 「フハハハハ!! たった一体で我が怪獣軍団に挑むとはなんと愚かな…! さぁ、今こそ地獄の門を…。」

 

 「チェストー!!」

 

 キリエロイドⅢがジードライザーを取り出そうとしたその時、ハルキが掛け声と主に駆け寄りながら蹴りを放ち、キリエロイドⅢは即座にそれを避ける。

 

 「俺たちウルトラマンの事を忘れたんスか!? 行ってくださいリク君先輩! 俺もすぐに行きます!」

 

 「分かった!」

 

 ハルキに促されたリクは、苦戦するウインダムに加勢するために窓から飛び降りる形で病院の外に出る。

 

 

 「ジーっとしてても、ドーにもならねぇ!!」

 

 

 リクはゼットライザーを構えてトリガーを引いて起動させ、それにより現れたZ字型の光の扉・ヒーローズゲートに飛び込んでインナースペースに入る!

 

 

 《RIKU Access granted》

 

 

 リクはウルトラアクセスカードを手に取り、中央のスリットにセットして認証した後、腰に付けているゼットホルダーからウルトラマンギンガ、ウルトラマンエックス、ウルトラマンオーブのウルトラメダルを取り出す!

 

 

 「ライブ! ユナイト! アップ!」

 

 

 「ウルトラマンギンガ! ウルトラマンエックス! ウルトラマンオーブ!」

 

 

 《GINGA》 《X》 《ORB》

 

 

 リクはメダルをライザーのスリットにセットし、ブレードをスライドさせる事でスキャンさせ、構えを取る。

 

 

 「集うぜ! キラ星!!」

 

 

 リクは口上を上げた後、ライザーのトリガーを押す!

 

 

 「ジード!!」

 

 

 「ショゥラァ!」 「イーッスァッ!」 「スェァッ!」

 

 

 《ULTRAMAN GEED GALAXY RISING》

 

 

 ギンガ、エックス、オーブのパワーでウルトラフュージョンが完了したリクは、飛び立つ3人の光の軌道が重なり合った後、更にプリミティブの基となるウルトラマンとベリアルのビジョンと重なり、ベリアルのアーリースタイルにも似たジード本来の姿の顔や全体像が浮かび上がった後、ベリアルの鋭く吊り上がった目、ギンガ、エックス、オーブの変身バンク、そして光と闇の渦を背景に、広げた右手を突き出して飛び出す!

 

 

 現れたのは、ジードがゼットライザーを用いて変身する新たな強化形態で、プリミティブをベースに、全体的な攻撃力がアップしている『ウルトラマンジード・ギャラクシーライジング』である!

 

 

 現れたジードは激しく土砂を巻き上げながら着地した後、ゆっくりと体を起き上らせて構えを取る。

 

 「あれは、あの時の…!」

 

 ヨウコもジードの登場に気付いて反応する。

 

 

 ジードは怪獣軍団に飛びかかると、まずはサラマンドラに飛び膝蹴りを叩き込み、怯んだ隙に荒々しく爪で引っ掻くような打撃を打ち込んで行く。

 

 だが、その隙に背後から迫って来たアントラーの大顎に体を挟まれてしまう!

 

 「ギャラクシーカッティング!」

 

 ジードは即座にギャラクシーカッティングを発動し、腕の刃を伸ばしてアントラーの頭部に肘打ちを打ち込むように斬撃を打ち込む事で挟み込みから逃れる。

 

 更に振り向き様に横一直線に斬撃を打ち込んだ後、腹部に前蹴りを叩き込んで吹っ飛ばすと同時に、その反動を活かして宙返りをしながら後ろに飛ぶ。

 

 「プラズマ光輪!」

 

 ジードは着地した後、ギンガサンダーボルト、エクシードイリュージョン、オリジウムソーサーを混ぜたような1つの巨大な光輪を発生させて4つに分離させて投げつける技・プラズマ光輪を放つ!

 

 4つの光輪の内、それぞれサラマンドラとアントラーに命中した2つはダメージを与える事に成功するが、後の2つは案の定、マーゴドンに爆発エネルギーごと吸収されてしまう!

 

 「何だって!?」

 

 ジードが一瞬動揺した隙にマーゴドンは冷凍ガスをジードに浴びせて一瞬視界を遮った所に体当たりを浴びせ、それを受けたジードはスピンして地面に叩き付けられる!

 

 一方でアントラーは顎を活かした頭突きをウインダムに打ち込んで後退させ、更にサラマンドラは鼻から火炎を噴射してウインダムを焼き尽くそうとする!

 

 「キャッ!!」

 

 「危ない!」

 

 もうダメだとばかりに顔を背けるヨウコ。 立ち上がったジードは即座にウインダムの前方に回り込み、プリミティブのモノに似た円形状のバリア・ジードバリアを展開してそれを防ぐが、その隙にマーゴドンが再度体当たりを仕掛けて来る!

 

 

 …しかし、マーゴドンは、突如何処からかジェット噴射で飛んで来た鉄拳を体に喰らい、たまらず転倒する。

 

 

 ジード、そしてウインダムはふとある方向を振り向くと、そこにはロケットパンチを元の腕に戻して立つ一体のロボットが。

 

 現れたのは、ストレイジが最初に開発した、所謂世界初の対怪獣ロボット『特空機1号・セブンガー』である!

 

 

 「セブンガー!!」

 

 突如のセブンガーの加勢に、喜びも混じった驚きの声を上げるヨウコ。

 

 

 「この骨董品も、まだまだ使えるのだよ。」

 

 そう声をかける、セブンガーに搭載している老年の男性は『イナバ・コジロー』(愛称:バコさん)である。

 

 彼は元々ストレイジの整備班の班長であるのだが、他にも空手の腕前が高かったり、巨大なマグロを調達して解体したり、手品を披露したりなど、かなり器用な人物でもあり、特空機の操縦も造作もないのである。

 

 

 最初に開発された事もあって、ストレイジのシンボル的存在でもあるセブンガーは、5年に渡る運用・戦闘による老朽化や、新たに開発されたキングジョー・ストレイジカスタムの主力化に伴って退役し、主にPR活動用として利用されていたが、バコさんによって常に出撃可能な状態に整備されており、その後も度々出動している。

 

 そして今回も、昨夜の戦闘で受けたダメージによりメンテナンス中のキングジョー・ストレイジカスタムに代わって、バコさんの操縦で戦場に降り立ったのである!

 

 

 「バコさん! 来てくれたんですね!」

 

 セブンガーに乗っているのがバコさんだと気づいた、“枯れ専”(年上好き)でもあるヨウコは更に喜びの声を上げる。

 

 それは、基地内からモニターで見ているユカも同じであった。

 

 「さぁ、体勢を立て直して行くぞ!」

 

 「了解!」

 

 バコさんの一喝を受けて奮起したヨウコはウインダムを立ち上がらせる。

 

 

 そしてセブンガーはアントラー、ウインダムはサラマンドラ、そしてジードはマーゴドン相手に戦闘を再開する!

 

 

 一方ハルキは、キリエロイドⅢと互角の立ち回りを繰り広げていた。

 

 互いに素早く、かつ力強いパンチやキックの応酬を展開しており、見守っている真美たちもそれを目で追うのが大変な程である。

 

 やがてハルキはキリエロイドⅢの右脚蹴りを左脇腹に喰らって一瞬怯むが、その後放って来た右フックをしゃがんでかわすと同時に腹部にボディブローを叩き込んでお返しする。

 

 「チェストー!!」

 

 更にハルキは、上段の回し蹴りをキリエロイドⅢの頭部に叩き込み、それを喰らったキリエロイドⅢはたまらず吹っ飛んで壁に叩き付けられた。

 

 ウルトラマンZと一体化しているだけでなく、自身も空手の有段者でもあるハルキは、生身でも高い身体能力を発揮するのである。

 

 

 目の前のハルキ、そして外で奮闘するジードと特空機たちを見て、真美たちは徐々に安心の表情になって行く。

 

 「ハルキさん…皆さん…頑張ってください。」

 

 真美は満面の笑みでそう呟いた。

 

 

 キリエロイドⅢを蹴り飛ばしたハルキは、外で戦うジードと特空機達の方を振り向き、それらをじっくりと見つめながら呟く。

 

 「…先輩たちは、ギリギリまで頑張ってくれた…!」

 

 「それにより、俺たちの気持ちも更にグッと出来上がった!」

 

 怪獣軍団と戦い続けている仲間たちの諦めない気力を感じるハルキとゼット。 それにより、彼らの気力も上がった。

 

 

 今こそ変身の時である!

 

 

 「行くぞハルキ!」

 

 

 「押忍!!」

 

 

 ハルキはゼットの呼びかけに気合いの叫びで返事をした後、ゼットライザーを取り出し、トリガーを引いて起動させる。

 

 

 そしてそれによりハルキの背後にZ字型の光の扉『ヒーローズゲート』が現れ、ハルキは『ウルトラアクセスカード』を手に取り、中央のスロットにセットする。

 

 

 《HARUKI Access granted》

 

 

英語のネイティブな発音の音声と共に認証が完了し、ハルキはブレードをスライドさせ、背後から迫るヒーローズゲートを潜って『ウルトラマンゼット・オリジナル』へと変身が完了する!

 

 

 《ULTRAMAN Z》

 

 

 眩い光と共に現れたゼットを前に、真美は目を見開いて驚くと共に見入る。

 

 「あれがウルトラマンゼット…!」

 

「遂に現れたなウルトラマンゼット!」

 

キリエロイドⅢは余裕そうにそう言うと、構えをとってゼットに襲い掛かる!

 

 「ウルトラ派手に行くぜ!」

 

 「押忍!」

 

ゼットも構えを取って立ち向かう!

 

 ゼットはキリエロイドⅢの駆け寄りながらの回し蹴りをすれ違いざまにしゃがんでかわすと、右ハイキックを放つがキリエロイドⅢはそれを左腕で防いだ後左フックを繰り出すが、ゼットはそれを左腕で防ぎ、右拳で胸部に2発、顔面に1発パンチを決めて後退させる。

 

 キリエロイドⅢは即座に体制を立て直すと右ハイキックを放つが、ゼットはそれを両腕で防いだ後、腹部に両手のパンチ、続けて一回転して左肘のエルボーを胸部に叩き込む。

 

 キリエロイドⅢは流石に押され気味なのに流石に苛立ちを感じてきたのか、やや荒っぽく左右交互にパンチを放つがゼットはそれらを往なして行き、やがて相手の右パンチをかわすと同時に右腕で右腕、左腕で体を掴んで腹部に右膝蹴りを打ち込み、続けて胸部に左足の前蹴りを叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 大きく吹っ飛ぶキリエロイドⅢだが、後ろにあった壁を両足で蹴って勢いをつけてゼットに飛びかかる!

 

 「チェストー!!」

 

 ハルキの掛け声と共にゼットはそれを横に跳んでかわすと同時にキリエロイドⅢの背中に右脚蹴りを叩き込んだ!

 

 たまらず地面に叩きつけられるキリエロイドⅢ。 ゼットは再度構えを取り、戦いを見守っている真美はそれに魅入っていた。

 

 「凄い…。」

 

 

両者の等身大バトルはゼットの方が優勢であった。 キリエロイドⅢは、さっきまでの余裕を無くし、遂に逆上する!

 

 「おのれぇ! キリエルに刃向かう者は、報いを受けるがいい!!」

 

キリエロイドⅢはそう叫ぶと、自身の怨念の象徴のような黒っぽい紫のオーラのようなものを纏いながら巨大化する!

 

 ウインダムに乗っているヨウコにセブンガーに乗っているバコさん、そしてジードも巨大化したキリエロイドⅢに気づく。

 

 「嘘…こんな時に新たな敵が!?」

 

ただでさえギリギリな戦いを強いられている中で乱入して来た新たな敵に動揺を隠せないヨウコ。

 

 「貴様らから、叩き潰してやる!」

 

 キリエロイドⅢはそう言いながら自身の顔に手をかざすと、それを勢いよく横に振って広範囲に『獄炎弾』を放つ!

 

 火炎はサラマンドラと組み合ってたウインダム、アントラーと組み合ってたセブンガー、マーゴドンに馬乗りになって押さえ込んでいたジードにも直撃し、3体は一斉に吹っ飛ぶ!

 

 更にキリエロイドⅢは飛び上がり、ウインダムに飛び蹴りを叩き込んで吹っ飛ばした後、セブンガーに鋭い爪・キリエルクローを活かした引っ掻き攻撃を叩き込む!

 

 さっきまで3対3だったのが、敵が1体増えた事により一気に不利になった巨大戦。 真美と同じく見守っていた冴は再び不安と恐怖に襲われそうになる。

 

 

 しかし、それでも真美は落ち着いた表情を変えず、歩み寄り、優しく肩を掴んで囁く。

 

 「怖いだろうけど大丈夫。 …彼らが、絶対にやってくれる。」

 

真美はそう言った後、笑顔でゼットを見つめる。

 

 

 ここからは、ゼットのウルトラフュージョンを活かした戦いの始まりだ!

 

 「ハルキ! ウルトラフュージョンだ!!」

 

「押忍!!」

 

 

再度気合を入れた2人! インナースペース内のハルキはホルダーからウルトラマンゼロ、ウルトラセブン、ウルトラマンレオのメダルを取り出す!

 

 

 「宇宙拳法、秘伝の神技!!」

 

 

「ゼロ師匠! セブン師匠! レオ師匠!」

 

 

 《ZERO》 《SEVEN》 《LEO》

 

 

ハルキはメダルをライザーのスリットにセットし、ブレードをスライドさせる事でスキャンさせる。 そしてハルキの背後に巨大なゼットが現れて両腕を広げる。

 

 

 「押忍!!」

 

 

 「ご唱和ください、我の名を! ウルトラマンゼーット!!」

 

 

「ウルトラマンゼーット!!」

 

 

ハルキは気合を込めた叫びと共にライザーを高く揚げてトリガーを押す!

 

 

 「ヘアッ!」 「デュワッ!」 「イヤァッ!」

 

 

《ULTRAMAN Z ALPHA EDGE》

 

 

 「キェアッ!」

 

 

 ゼロ、セブン、レオのパワーでウルトラフュージョンが完了したゼットは、飛び立つ3人の光の軌跡が重なり合った後、そこから発生した回転花火、青い水飛沫、そして赤と青の光を背景に、右拳を突き出して飛び出す!

 

 

 現れたのは、師匠譲りの宇宙拳法を使った格闘戦が得意なスピード格闘形態『アルファエッジ』だ!

 

 

 一方、サラマンドラは倒れたウインダムを踏みつけていた。 踏む回数が増える度にダメージも蓄積して行き、そのダメージがコックピットにも響く…!

 

 ジードもキリエロイドⅢとマーゴドン、セブンガーもアントラーの相手で手一杯なため、助太刀する事が出来ない!

 

 「グッ…このままじゃ…!」

 

 ヨウコの脳裏に敗北の2文字が浮かびそうになったその時、ヨウコは何かの影が自身の顔を通過するのに気づきふと空の方を見上げる。

 

 その視線の先には、自身、即ちウインダムを飛び越えながら空中で一回転する1人の影がおり、それが何者なのか確信した瞬間、ヨウコはさっきまでの険しい表情が和らいで行く…!

 

 同じくバコさん、そして基地のモニターで見ていたユカも、その者に気づいた瞬間、嬉しさも含めた驚きの表情になる…!

 

 ウインダムを飛び越えて現れたのはウルトラマンゼット・アルファエッジだ!

 

 「キェアッ!」

 

ゼットは掛け声と共にサラマンドラの頭部に飛び蹴りを決め、その直撃を受けたサラマンドラは吹っ飛び、それによりウインダムも踏み付けから解放される。

 

 土砂やコンクリートの破片などを巻き上げながら着地を決めたゼットは立ち上がり、ゆっくりとウインダムの方を振り向き安否を確認する。

 

 

 「ゼット様…!」

 

「て事は…ハルキも!?」

 

「ウルトラマンが…帰ってきたか…。」

 

ヨウコ、ユカ、バコさんは、唐突ながらもゼット、そしてハルキの帰還&加勢に希望を感じ始める。

 

 「ゼット!」

 

ゼットに気づいたジードも、組み合っていたマーゴドンをアッパーカットの形で叩き込むギャラクシーカッティングでぶっ飛ばし、続けて横から接近して来るキリエロイドⅢを飛び膝蹴りで吹っ飛ばした後、ゼットの元に駆け寄る。

 

 セブンガーも、組み合っていたアントラーをダブルパンチで後退させた後、ウインダムの元に歩み寄って肩に手を当てる。

 

 「ヨウコ! まだ行けるな?」

 

「もちろんです!」

 

バコさんの檄を受けたヨウコは迷わず応答し、ウインダムを起き上がらせる。

 

 「やっぱり、主役は遅れて登場だね。」

 

 「お待たせしましたジード先輩、皆さん!」

 

 ゼットは合流したジードと特空機達に声をかけた後、敵の方へと視線を向ける。

 

 

 「加勢したかウルトラマンゼット! だが、我が地獄の怪獣軍団に勝てるかな?」

 

怪獣達と並び立つキリエロイドⅢは、余裕そうな発言と共に構えを取る。

 

 

 ウルトラマンと特空機たちも、ゼットをセンターに横に並び立つ。 その敵を見据えたままのゆっくりな動作は、戦いの前で呼吸を整えているようにも見えた。

 

 

 「2人のウルトラマンと連携し、怪獣たちを撃滅するぞ!!」

 

「了解!!」

 

バコさんの呼びかけにヨウコは応答し、それを合図にウルトラマンと特空機たちは構えを取る!

 

 

 (BGM:ご唱和ください 我の名を!(full))

 

 

「押忍!! 行きますぜゼットさん!!」

 

 「あぁ! ウルトラ燃えるぜ!!」

 

 人々の声援を受けながら、ゼットとジード、セブンガー、ウインダムは一斉に駆け出し、それぞれサラマンドラ、キリエロイドⅢ、アントラー、マーゴドンを相手し始める!

 

 さっきまで怯えていた冴も、一緒に見守る真美を横に、ウルトラマン達に声援を送り始めていた。

 

 

 ゼット・アルファエッジはサラマンドラの突進をクロスさせた両腕で頭部を押さえる事で防ぎ、そのまま振り払った後、胸部に左右交互に拳を打ち込む。

 

 次にサラマンドラは両腕を交互に振るって殴りかかるが、ゼットはそれらをことごとく手刀で往なして行き、やがてサラマンドラの右フックを左脚の回し蹴りで弾いた後、そのまま連続で頭部に回し蹴りを打ち込んで吹っ飛ばす。

 

 回し蹴りの体勢を解いた後、ゆっくり構えを取りながら呼吸を整えるゼット。キリエロイドⅢは今がチャンスとばかりに一旦ジードから離れると、ゼットに背後から襲いかかる!

 

 しかし、既に“心眼”で背後からのキリエロイドⅢを捉えていたゼットは、向きざまに炎を纏った回し蹴り『アルファバーンキック』を叩き込み、そのカウンターを喰らったキリエロイドⅢはたまらず吹っ飛び、そこに更にゼットは額のビームランプからのレーザー光線・ゼスティウムメーザーで畳み掛け、その直撃を受けたキリエロイドⅢは爆発と共に地面に落下した。

 

 再度サラマンドラはゼットに殴り込むが、ゼットはサラマンドラの右腕を左手で掴むと、そのまましゃがみ込んで右脇腹に右肘を打ち込み、続けて顔面に裏拳を決めた後、胸部に連続でパンチを打ち込み、怯んだ隙に跳躍して大きく脚を振るい、頭部を蹴り上げて吹っ飛ばした!

 

 ゼロ、セブン、レオ。 3人の師匠譲りの洗練された素早い宇宙拳法で、相手に隙を与えず手数でダメージを与えて行くアルファエッジ。 サラマンドラは鼻から火炎を噴射して遠距離攻撃を仕掛ける。

 

 ゼットはゼットスラッガーを稲妻状のエネルギーで連結させてZ字型の光のヌンチャク『アルファチェインブレード』を形成させ、それを巧みに振り回して火炎を切り飛ばして行く!

 

 

 ゼットがサラマンドラと交戦している間、測定結果を得たユカは即座にパイロット2名に知らせる。

 

 「ヨウコ!バコさん! サラマンドラの弱点は喉よ!」

 

 「オーケー!」

 

ヨウコは返事をし、セブンガーとウインダムはそれぞれアントラーをパンチ、マーゴドンをキックで吹っ飛ばした後、サラマンドラに狙いを定める。

 

 「硬芯鉄拳弾!」 「レーザーショット!」

 

セブンガーは右腕のロケットパンチ・硬芯鉄拳弾、ウインダムは額の発光部から光線技・レーザーショットを放つ!

 

 ロケットパンチを顎に受けたサラマンドラは火炎攻撃を中断されると同時に真上を向いてしまい、その先にレーザーショットが喉を直撃する!

 

 更にゼットは滑り込みながら、すれ違いざまにサラマンドラの喉に光のヌンチャクでの一撃を叩き込む!

 

 喉の再生器官を完全に破壊されて完全に動きを止めたサラマンドラ。 ゼットは滑り込みを止めると同時に、振り向きながら両手を胸の前で水平に構えて斜めに開いた後、左手を前に、右手を後ろに伸ばしてエネルギーを溜める。

 

 「ゼスティウム光線!!」

 

ゼットは左右の腕をぶつけあうようにして十字を組み、必殺光線・ゼスティウム光線を放つ!

 

 必殺光線を喉を中心に体全体に浴びたサラマンドラは、断末魔の叫びと共に体にZ字を浮かび上がらせた後、大爆発して砕け散った!

 

 

 ゼットがサラマンドラを撃破した後、マーゴドンはウインダムのヘッドロックを振り払うと、ゼットに背後から突進を仕掛ける!

 

 だが、またしても心眼で捉えたゼットは、背を向けたまま、既に召喚していた槍状の武器『ゼットランスアロー』の先端をマーゴドンの鼻に突き立て、そのまま振り向くと、上にかち上げて起き上がらせた後、一回転して身体に斬撃、更に回し蹴りを頭部に叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 再度ゼットに突進を仕掛けるマーゴドン。 ゼットはゼットランスアローを手に駆け寄ると、柄の先端を背中に突き立てて棒高跳びの要領で飛び越えた後、背中に1発斬撃を決め、腹部を蹴って再度起き上がらせると、連続で回転しながら腹部に2発斬撃を決め、更に胸部に先端での一撃を叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 流れるようなさばきでランスカッターでの斬撃を決めて行くゼット。斬撃が決まる度に青いラインが走り、命中した部位から火花が飛び散る。

 

 マーゴドンはゼットを凍らせようと渾身の冷凍ガスを噴射する。

 

 「ゼットアイスアロー!!」

 

ゼットはランスのZ字型のレバーを2回引いた後、氷の矢・ゼットアイスアローを放ち、それにより冷凍ガスを消し飛ばされると同時に直撃したマーゴドンは全身が凍り付いてしまう。

 

 「ゼットランスファイヤー!!」

 

ゼットはレバーを1回引いた後、炎を纏ったエッジで描いたZ字型のエネルギーを飛ばす技・ゼットランスファイヤーを凍りついたマーゴドンにぶつける!

 

 炎のエネルギーは命中すると、高速回転しながらマーゴドンの体にZ字を灼き付けそのまま粉々に爆砕した!

 

 

 サラマンドラ、マーゴドンを続けて撃破したゼット。 今度はアントラーがゼットに迫る!

 

 

 「真っ赤に燃える、勇気の力!!」

 

 「マン兄さん!」《ULTRAMAN》 「エース兄さん!」《ACE》 「タロウ兄さん!」《TARO》

 

ハルキは今度はウルトラマン、ウルトラマンエース、ウルトラマンタロウのメダルを取り出し、スリットにセットしてスキャンする。

 

 「ウルトラマンゼーット!!」

 

 ハルキは叫びと共にトリガーを押す。

 

 「ヘアッ!」 「トワァッ!」 「タァァッ!」

 

 《ULTRAMAN Z BETA SMASH》

 

「キェアッ!」

 

ウルトラフュージョンが完了したゼットは、飛び立つマン、エース、タロウの軌跡が重なり合った後、真っ赤な背景、光の波紋、そして虹色の後光を背景に、両方の拳を突き出して飛び出す!

 

 次にウルトラフュージョンしたのは、3人の“ウルトラの兄さん”達の力が一つになったパワー形態『ベータスマッシュ』だ!

 

 

 「ウルトラマーン! ゼーット! ベータスマーッシュ!!」

 

現れたゼット・ベータスマーッシュは、ドスの効いた声で自身の名前を叫びながらタロウのスワローキックのように空中で数回スピンした後、急降下して両足蹴りをアントラーの頭部に叩き込んだ吹っ飛ばす!

 

 「ダァーッ!!」

 

着地したゼットは、右腕を振り上げて気合の叫びを上げる。

 

 アントラーはゼットに顎を突き立てた突進を繰り出すが、ゼットはそれを大胸筋で受けて耐えた後、逆に左手でアントラーの右顎を掴むと、そのまま胸部にパンチを2発、更にアッパーカットを打ち込んだ後、右足で腹部を蹴って飛ばした!

 

 マッシブなプロレスラー体型のベータスマーッシュは、その筋肉質な手足からパワフルな格闘技を繰り出して行き、その豪快な戦法は、並大抵の怪獣を圧倒するのである!

 

 パワー勝負では不利と見たアントラーは、両顎の間から虹色の磁力光線を放ち、それを浴びるゼットは踏ん張りながらも徐々にアントラーの方へと引き寄せられて行く…!

 

 恐らく、先程真美が言っていた度重なる飛行機事故の原因もこの光線だと思われ、やがて後ろ向きでアントラーの顎の間まで来てしまったゼットはそのまま挟み込まれる!

 

 自慢の顎でゼットを締め上げて行くアントラー。 ゼットは若干苦しみながらも力を振り絞り、「気合いだー!」と一言叫ぶと、アントラーの右顎を両手で掴み、そのまま力ずくで火花を散らせながらへし折った!

 

 ゼットはへし折ったアントラーの顎を「取ったどー!」と叫びながら揚げた後、投げ捨てる。

 

 自慢の顎を折られたアントラーは怯むと同時にゼットを解放してしまい、その隙にゼットは背を向けたままアントラーの頭部に左右交互に肘を打ち込んだ後、後ろ蹴りを腹部に決めて後退させ、さらに振り向くと同時に駆け寄りながら豪快に右腕のラリアットを叩き込み、それを受けたアントラーはたまらず地面に叩きつけられた!

 

 ゼットはボディビルダーのようなポージングで気合を入れた後、グロッキーになって横たわっていたアントラーを頭上高く持ち上げた後、そのまま空高く放り投げ、自身もそれを追うように飛び立つ。

 

 「ゼスティウムアッパー!!」

 

ゼットは空中のアントラー目掛けて飛びながら、真っ赤に燃えるゼスティウムエネルギーを纏い、それを右拳に集中させて必殺パンチ・ゼスティウムアッパーを放つ!

 

 強力な必殺パンチを受けたアントラーは、それを受けた頭部から順に爆発して粉々に吹き飛んだ!

 

 

 上空でアントラーを撃破したゼットは着地を決める。 残るはキリエロイドⅢだけである!

 

 キリエロイドⅢはゼット目掛けて獄炎弾を放つが、ゼットはエースの変身のウルトラリングを合わせるポーズのように両手を胸の前で合わせた後、両腕を上下に振り上げて、エースのバーチカルギロチンに似た三日月状の光のカッター・ベータクレセントスラッシュを放ってそれを切り飛ばし、キリエロイドⅢはそのまま迫って来た光のカッターを素早い身のこなしでかわした後、ゼット目掛けて駆け始める!

 

 

 「変幻自在、神秘の光。」

 

「ティガ先輩」《TIGA》 「ダイナ先輩」《DYNA》 「ガイア先輩」《GAIA》

 

 ハルキは今度はウルトラマンティガ、ウルトラマンダイナ、ウルトラマンガイアのメダルを取り出し、スリットにセットしてスキャンする。

 

 「ウルトラマンゼーット!!」

 

 ハルキは叫びと共にトリガーを押す。

 

 「タァッ!」 「デャッ!」 「ジュァッ!」

 

《ULTRAMAN Z GAMMA FUTURE》

 

「キェアッ!」

 

 ウルトラフュージョンが完了したゼットは、飛び立つティガ、ダイナ、ガイアの軌跡が重なり合った後、ティガ、ダイナ、ガイアと順にそれぞれのOP演出にも似た背景から広げた右手を突き出した飛び出す!

 

 次にウルトラフュージョンしたのは、平成ウルトラマンの中でも神秘的なイメージが強く、光の力で変身する3人の力を借りた超能力形態『ガンマフューチャー』だ!

 

 「ガンマスルー」

 

 ウルトラゼットライザーを手に光と共に現れたゼット・ガンマフューチャーは、左手を突き出してガンマスルーを発動し、魔法陣のような光の紋様を出現させる。

 

 ゼットに飛びかかっていたキリエロイドⅢはその紋様の中に入り、ゼットの背後に現れた同じ紋様から現れる事で攻撃が空ぶってしまう。

 

 ガンマスルーはこのように物質を透過する超能力技であり、自身に向かって来る相手や攻撃を別地点へと飛ばす事も可能なのだ。

 

 自身に起こった事をまだ理解しきっていないキリエロイドⅢが辺りを見渡している隙に、ゼットは後ろ蹴りを背中に打ち込み、続けて振り向きざまにライザーで袈裟がけ、一直線、アッパーという形で斬撃を繰り出し、それを受けたキリエロイドⅢは火花を散らしながら吹っ飛ぶ。

 

 体勢を立て直したキリエロイドⅢは、紫のオーラのようなエネルギーと共に力を集中させ、6体の分身を出現させる!

 

 数人のキリエル人が合体する事で変身する戦闘形態・キリエロイド。 どうやら今回の個体は、その合体したキリエル人の数だけ分身を生み出せる能力を持っているようである!

 

 計7体のキリエロイドⅢは一斉にゼット達に襲い掛かって行く!

 

 「ガンマイリュージョン」

 

 ゼットは指パッチンをしてガンマイリュージョンを発動し、ティガ・マルチタイプ、ダイナ・フラッシュタイプ、ガイア・V2の幻影を出現させる。

 

 また、幻影と言っても実態を持つものであり、各戦士はそれぞれ独立した行動をすることが出来るできるのだ。

 

 これで7対7とフェアな勝負になり、7体のキリエロイドⅢはそれぞれゼットとその幻影たち、そしてジード、セブンガー 、ウインダムを相手に戦闘を始める!

 

 ゼットとティガ、ダイナ、ガイアの幻影は互角で素早い格闘戦を展開し、ジードはベリアルの爪で引っ掻くような荒々しい戦闘スタイルで圧倒し、セブンガーは素早い格闘技に耐えながらもパンチなどで的確にダメージを与えて行き、ウインダムは獄炎弾を体の各部のジェット噴射による瞬間移動でかわしながら、各部からのミサイル・20式対怪獣誘導弾で的確にダメージを与えて行く!

 

 「全エネルギーを右手に集中!」

 

《アンリミテッドモードに移行します!》

 

ヨウコはアンリミテッドモード【SC2-017NJ Ⅱ】を発動させ、ウインダムは右手にエネルギーを集中させる!

 

 「ウインダムヨウコインパクト!! バーニングエンドォォォ!!」

 

 ヨウコの叫びと共にウインダムはキリエロイドⅢにジェット噴射で接近しながら、全エネルギーを集中させた右の手刀を叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 続けてセブンガーも硬芯鉄拳弾、ジードもレッキングリッパー、ティガ、ダイナ、ガイアの幻影も各自キックで、次々とキリエロイドⅢを吹き飛ばして行く!

 

 「ゼスティウムドライブ」

 

ゼットもキリエロイドⅢを蹴飛ばした後、ヘッドギアに手をかざしてガイアのフォトンエッジのようにエネルギーを溜めた後、ダイナのフラッシュバスターのように両手から赤と青の光線を鞭のように振るって攻撃する技・ゼスティウムドライブを放ち、滅多打ちにされたキリエロイドⅢは吹っ飛び、同じく吹っ飛ばされた6体の分身たちとぶつかる形で合流し、そのショックでキリエロイドⅢとその分身たちの頭上に羽の生えた小さなガッツ星人のような小鳥が飛び回る。

 

 キリエロイドⅢが怯んでいる隙に、ハルキはウルトラマンコスモス、ウルトラマンネクサス、ウルトラマンメビウスのメダルを取り出し、スリットにセットしてスキャンする。

 

 《COSMOS》 《NEXUS》 《MEBIUS》

 

 「チェストー!!」

 

「ライトニングジェネレード!」

 

 ハルキが気合の叫びと共にトリガーを押した後、ゼットはゼットライザーを用いて上空に雷雲を発生させそこから電撃光線を発射する技・ライトニングジェネレードを放ち、キリエロイドⅢを分身体を消しとばすと同時に大ダメージを与える!

 

 「バッ…バカなっ…この俺が、こんな所で…!」

 

 完全にグロッキーになったキリエロイドⅢは、その自尊心から、自身が押されているのを受け入れられずにいた。

 

「トドメはこれだ!」

 

 ゼットの声と共に、ハルキはウルトラマンジャック、ゾフィー、ウルトラの父のメダルを取り出し、スリットにセットしてスキャンする。

 

 《JACK》 《ZOFFY》 《Father of ULTRA》

 

「チェストー!!」

 

 ハルキが気合の叫びと共にトリガーを押した後、ゼットは必殺技・M78流・竜巻閃光斬を発動し、ゼットライザーから巨大な光剣を出現させ、それを振るう事で竜巻を発生させてキリエロイドⅢを巻き上げる。

 

 「M78流・竜巻閃光斬!!」

 

 ゼットは技名を叫ぶと共に光剣を光輪に変形させて投げつけ、上空でZ字に切り裂かれたキリエロイドⅢは、地面に落下した!

 

 

 (BGM終了)

 

 

 「やったー!!」

 

基地内から戦いを見ていたユカは、ウルトラマンと特空機たちの怪獣軍団撃破に喜びの声を上げる。 気がついたら側には、怪獣研究センターに所属する青年『カブラギ・シンヤ』、そして整備班の面々も集まり、勝利を喜んでいた。

 

 「良かった…。」

 

 《ウインダム、実用行動時間終了!》

 

 ヨウコも安心の表情で疲れから脱力し、それにリンクするかのようにウインダムの実用行動時間が終了し、アナウンスが流れる。

 

 先程、アンリミテッドモードを発動した事もあってのエネルギー切れである。

 

 

 セブンガーに乗っているバコさんも、何かを悟ったかのように無言で頷いた。

 

 

 冴も無邪気に「やったー!」と喜びの声を上げており、そばにいた真美も満面の笑みでゼット達を見上げていた。

 

 「やっぱり、ウルトラマンの力は凄いわ。」

 

 

 …しかし喜ぶのも束の間、なんとキリエロイドⅢはまだ死んでいなかった…!

 

 体のZ字型の切り口から血のように光を溢れさせ、フラつきながら立ち上がり、それに気づいた一同も再び身構える。

 

 「勝ったつもりだろうがもう遅い〜!!」

 

「…なに?」

 

「奴を、見るがいい〜!!」

 

キリエロイドⅢは、ある方向を指差してそう叫ぶと、そのまま倒れて爆発四散した。

 

 

 一同がキリエロイドⅢの指差した方向を振り向くと、そこには先程まで死体として横たわっていたエラーガが、黒っぽい紫色のオーラを放ちながら立ち上がっていた!

 

 どうやらキリエロイドⅢを崇拝する者たちから集めたマイナスエネルギーにより生体エネルギーが増大してパワーアップしているようであり、姿も昨日と違い、両肩と鼻先に鋭い赤い角を生やしている。

 

 「昨夜倒した怪獣が、甦るなんて!」

 

昨夜、キングジョー・ストレイジカスタムでエラーガを倒したヨウコは驚愕を隠せない。

 

 強化して目覚めたエラーガは、辺りに地響きが起こるほどの咆哮を上げた後、鼻先と両肩から赤い稲妻状の破壊光線を乱射し、辺りを破壊しながらウルトラマン達に向かう!

 

 ジードは構えを取るとエラーガに向かって行き、飛び膝蹴りを胸部に打ち込むが、まるで効果がない。

 

 怯まず右フックを放つがエラーガはそれを左手で掴んで受け止め、続けて打って来た左パンチも右手で掴んで受け止めてしまう!

 

 両者はそのまま力比べを始め、やがてパワー負けしそうになったジードは腹部に何度も膝蹴りを打ち込むが、それも効果がない。

 

 やがてエラーガは手を離すと、ジードの腹部を殴り、それにより屈んだ所に背中を殴って転倒させ、更に腹部を蹴って飛ばす。

 

 更に畳み掛けるように、大きく尻尾を振るってジードを叩き飛ばした!

 

 

 「マイナスエネルギーで強化してるのか!?」

 

 ジード・ギャラクシーライジングすらも圧倒するエラーガの強さに驚愕するリク。

 

エラーガは再度赤い稲妻状の光線を乱射し始め、その光線の雨あられの前にジード、そしてゼットも近づく事が出来ない!

 

 更に、ゼットよりも先に登場して戦っていたジードのカラータイマーが赤く点滅を始める!

 

 「ゼットアイアス!」

 

やがて、光線が動けないウインダム、そしてその後ろの真美たちがいる病院に命中しそうになっている事に気づいたゼットは、即座にそれらの前に回り込み、 Zと描かれた魔法陣のような紋様のバリアを七層に分けて展開する技・ゼットアイアスを発動してそれを防ぐ。

 

 「ハルキ、こいつはウルトラヤバく強い奴ですぞ!」

 

「ゼットさん、こうなったら俺たちも全力で行きましょう!」

 

 「そうだな、ウルトラフュージョンだ!」

 

「押忍!!」

 

 

最後のウルトラフュージョンに入った2人! ハルキはホルダーからゼロ、ジード、そしてウルトラマンベリアルのメダルを取り出す。

 

 すると、3枚のメダルに宿る3人のライバル同士の力が共鳴し合い、やがてそれぞれウルトラマンゼロビヨンドライズメダル、ウルトラマンジードライズメダル、ウルトラマンベリアルアトロシアスライズメダルへと昇華・変質する!

 

 これらはウルトラメダルが強化したものであり、金色の縁が特徴の『ライズウルトラメダル』である。

 

 

 「闇を飲み込め!!黄金の嵐!!」

 

 

「ゼロ師匠! ジード先輩! ベリアル !」

 

 

《ZERO BEYOND》 《GEED》 《BELIAL ATROCIOUS》

 

 

 ハルキはライズウルトラメダルをライザーのスリットにセットしてスキャンする。

 

 

 「押ォォォォ忍!!」

 

 

「ご唱和ください、我の名を! ウルトラマンゼーット!!」

 

 

「ウルトラマンゼェェェーット!!」

 

 

 ハルキは気合を込めた叫びと共にライザーを高く揚げてトリガーを押す!

 

 

 「シュッ!」 「ヴアァッ!」 「ヌウァッ!」

 

 

《ULTRAMAN Z DELTA RISE CLAW》

 

 

 「キェアッ!!」

 

 

ゼロビヨンド、ジード、ベリアルアトロシアスのパワーでウルトラフュージョンが完了したゼットは、ヒロイックながらもアラビアン風のやや不穏な雰囲気のBGMと共に、飛び立つ3人の光の軌道が重なり合った後、ゼロビヨンド、ジードの変身エフェクト、そしてストルム粒子のような緑の光の粒子の奔流が走るのを背景に、広げた右手を突き出して飛び出す!

 

 現れたのは、善と悪を超越した、3人のライバル同士のウルトラマンの力を得たゼットの最強形態『デルタライズクロー』だ!

 

 

 現れたゼットは、ジードを踏みつけていたエラーガ目掛けて黄金の嵐を纏って突撃し、そのまま吹っ飛ばした!

 

 そしてジードの前で嵐の中から姿を現し、「お待たせしました」とばかりに顔だけを振り向かせる。

 

 手には、片刃の短剣の柄頭にベリアルの頭がくっ付いたような外見が特徴の幻界魔剣『ベリアロク』を握っている。

 

 ゼットの最強形態での加勢に安心と共に一回頷くジード。

 

 「スッゲー! カッコいい!」 「頑張って…ウルトラマン。」

 

冴もその神々しい姿に興奮して応援に熱が入り、真美も変わらぬ暖かな表情で、静かに声援を送る。

 

 

 インナースペース内では、ハルキがベリアロクとやり取りをしている。

 

 「奴は、マイナスエネルギーによって強化されてるのです! だから、俺たちの全力の力で一気に倒しましょう!」

 

 「フンッ、ソイツは面白い! なら俺様の攻撃にどこまで耐えれるか試してやる!」

 

「ベリアロクさん! それを言うなら、「俺たち」です!」

 

 

 (BGM:Promise for the future)

 

 

 「行きましょう! ジード先輩!」

 

 「あぁ!」

 

ゼットはベリアロク、ジードはゼットライザーを手に構えを取り、エラーガに立ち向かう!

 

 2人は同時に斬りかかるが、エラーガはそれを同時に受け止めて押し返すが、ゼットとジードは怯まず即座にクロスするようにそれぞれ上半身、下半身を斬りつけ、更に同時に後ろ回し蹴りを腹部に叩き込む!

 

 エラーガは鼻先の角から稲妻状の渾身の破壊光線を放つが、ジードはそれをエラーガを大きく飛び越える形でかわし、その間にゼットが突き出したベリアロクは破壊光線を口に当たる部分で吸収して撃ち返し、その直撃を受けたエラーガが怯んだ隙にジードは技の体勢に入る。

 

 《GINGA》 《X》 《ORB》

 

「ギャラクシーバースト!!」

 

リクはライザーで再度ギンガ、エックス、オーブのメダルをスキャンし、技名を叫ぶと共にトリガーを押す。

 

 ジードはゼットライザーにエネルギーを集め、赤黒い稲妻も入った光の刃・ギャラクシーバーストを放ち、それを背後から直撃を受けたエラーガはダメージを受ける。

 

 強化されたエラーガは、必殺技を受けながらも再度ウルトラマン達に向かって行く。

 

 エラーガは頭部を大きく振るって角を活かした頭突きを繰り出すがゼットはそれを左手持ちのベリアロクで受け止め、そのまま頭部を右拳のアッパーでかち上げ、その後ジードがライザーで一直線に斬りつけ、更にゼットが喉元を斬りつけ、そして2人同時にすれ違いざまに一直線の斬撃を叩き込んだ!

 

 そして2人は再度エラーガに向かうと、ゼットが上下平行に一直線を2発、そしてジードが左斜め下に、合わせてZ字を描くように斬りつけ、更に同時にそれぞれベリアロクの柄頭、ライザーを活かしたパンチを同時に叩き込み後退させる!

 

 2人の息の合った連携に押されて行くエラーガは、最後の手段とばかりに光線をフルチャージで放とうと両肩、鼻先の角にエネルギーを溜め始める…!

 

 「来るか…!?」

 

ゼット達は身構え、やがて光線が発射されそうになったその時、突如、横から何かがブースターでの加速と共に突っ込んで来て、すれ違いざまに右腕のドリルの一撃でエラーガの肩の角の一本を破壊した!

 

 予期せぬ攻撃に角の一本を折られた事で、怯む形で光線のチャージが止まったエラーガ。

 

 攻撃したのは、右腕にドリル状のパーツ・超硬芯回転鉄拳を装着したセブンガーであった!

 

 《セブンガー、実用行動時間終了!》

 

 「こっちはもうこれで限界だ。 2人ともやれ!!」

 

 最後の力を振り絞ってアシストしたバコさんは、セブンガーの実用行動時間終了と共に二人に託す!

 

 「押忍!! サンキューバコさん!!」

 

 ハルキは返事と共に感謝の言葉を言った後、ゼット共にベリアロクを構える。

 

 「フン!」 「ヌゥア!」

 

 「デスシウムファァァァング!!」

 

 ハルキはベリアロクのスイッチを2回押して技・デスシウムファングを発動させ、ベリアロクはドスの利いた声でその技名を叫ぶ。

 

 ゼットがベリアロクを突き出すと、そこから巨大なベリアルの頭部が射出され、そのままエラーガに向かって頭部に噛み付いた!

 

 頭部を噛まれると同時に爆発したエラーガは、鼻先の角が折れてしまった。 流石にだいぶ弱って来たみたいである。

 

 

 今こそ、2人で力を合わせてトドメである!

 

 「これで決める!」

 

 ジードは背後に燃える鳥のようなオーラを形成させながら、両腕をクロスさせて上に揚げた後、赤黒い稲妻を纏い、雄叫びを上げながら左右に広げる。

 

 そして続けてオリジウム光線、ザナディウム光線の予備動作を取った後、ギンガクロスシュートのように両腕を広げる構えを取った後に右腕の肘に左の拳を当てる構えで必殺光線・レッキングフェニックスを放つ!

 

 「レッキングフェニックス!!」

 

 レッキングバーストに燃え盛る炎を纏わせたような破壊光線はエラーガを直撃し、それを浴びて行くエラーガは大ダメージを受けてやがて動きを止める。

 

 

 「決めるぞ!! ハルキ!!」

 

 「押忍!!」

 

 ハルキは再度ベリアロクを構えると、スイッチを3回押す。

 

 「フン!」 「ヌゥア!」 「ハァッ!」

 

 「デスシウムスラァァァッシュ!!」

 

 「チェストー!!」

 

 ベリアロク、そしてハルキの叫びと共にゼットは刀身に光と闇のエネルギーを込めた紫色の光を纏ったベリアロクを構えて高速でエラーガに接近し、ベリアロクでの最強技・デスシウムスラッシュを繰り出し、すれ違いざまにZの字を描くように身体に大きく斬撃を叩き込んだ!

 

 2人のウルトラマンの最強技を同時に受けたエラーガは、断末魔の叫びを上げながら大爆発して跡形も無く消し飛んだ…!

 

 

 (BGM終了)

 

 

 ゼットとジードは体勢を解いた後、合流する。

 

 その間に、ゼットはカラータイマーの点滅が始まると同時にウルトラフュージョンも解けてオリジナルの姿に戻るが、それは単なるエネルギーの消耗ではなく、敵の軍団との激戦が終わった事への安心からでもあった。

 

 「フンッ、なかなか楽しめたぜ。」

 

 デルタライズクローの変身が解けた後、ベリアロクも満足そうにそう言って異次元に戻って行った。

 

 

 戦いを見守っていた病院、街の人々は既に洗脳が解けており、大勝利を収めたウルトラマン2人を見上げて喜びの歓声を送る。

 

 「ありがとう!! ウルトラマーン!!」

 

 冴も元気一杯にお礼の言葉を叫び、側にいた真美も満面の笑みで頷いた。

 

 やがて2人のウルトラマンは上空を見上げると、その場から飛び立ち、空の彼方へと飛び去って行った。

 

 ゼットは、上空に大きくZ字の軌道を描きながら…。

 

 

 ウインダムとセブンガーから降りていたヨウコとバコさん、そして現場に来ていたユカも、飛び去るゼットとジードを見つめていた。

 

 因みにユカは、ちゃっかり先程撃破した怪獣たちの細胞のサンプルをゲットしてしまっている(笑)

 

 「まさか、ゼットが帰って来てくれるなんてね。」

 

 ユカは嬉しそうにそう言った。

 

 「えぇ、それに、“アイツ”も…。」

 

 ヨウコが言いかけたその時、どこからか「おーい!」という呼び声が聞こえ、三人はその方へと振り向く。

 

 「先輩みんな!久しぶりでーす!!」

 

 そこには、爽やかな笑顔で手を振りながら駆け寄って来るハルキとリクであった。

 

 「噂をすれば。」 「ハルキ! リッ君も!」

 

 三人も、ハルキ達の方へと駆け寄って行った…。

 

 

 再会を果たすハルキとストレイジのメンバー。 その様子を、ある一人の男が遠くから見つめていた…。

 

 その男はスマートなスーツ姿に、片手には何やら盆栽を抱えている。

 

 「少なくとも半人前以上にはなった…かな? フフフッ。」

 

 男は不敵な笑みでそう言うと、何処かへと歩き去って行った…。

 

 

 実はこの男、ジャグラス・ジャグラーであり、かつてここZの世界の地球では、ヘビクラ・ショウタという名でストレイジの隊長を務めた事もあるのである。

 

 その真の目的は、かつて自身を否定した“光の巨人”たちも、正義や力の使い所によっては危ういという事を、“人造ウルトラマン”を以てウルトラ戦士達や自身や己の正しさを盲信する者たちに知らしめる事であり、巨大戦力も必要だったために、寄生生物・セレブロの文明自滅ゲームを利用し、ウルトラマンに匹敵するロボットを作らせてそれを奪おうとしていた。

 

 最終的にストレイジやウルトラマンゼットの活躍もあってそのゲームが破られた後、目的は達成できなかったものの、「じゃあな」とだけ言い残し、晴れ晴れとした顔でストレイジを去っている事から、とある騒動を経験したこの世界の人類なら“光の戦士”や、それを利用した過剰な力に依存して自滅する事も無いだろうと判断したのだと思われる。

 

 

 キリエロイドⅢ、及びその怪獣軍団が滅んだ事により、奴を崇拝していた人々も元に戻った。

 

 …もちろん、病室の“あの人”も…。

 

 「お母さん!!」

 

 冴は急いで母の病室にダッシュし、ドアを開ける。真美もついて来ていた。

 

 視線の先には、ベッドの上に横たわった状態で辺りを見回している母の姿があった。

 

 「…私は…一体、何をしてたのかしら…?」

 

「…お母さん!!」

 

母の無事を確認した冴は、感極まって嬉し泣きしながら母に抱き付く。

 

 母はどうやら崇拝してた時の記憶を失っているようで、少し戸惑っていたが、直ぐに何かを察したのか優しい笑顔になり、泣き付く冴の頭を撫でる。

 

 「良かったね、冴くん。」

 

 真美も冴の肩に手を置いて優しく語り掛けた。

 

 

 これで、母の手術は無事、予定通り明日行われるのである。

 

 

 その様子を、病室の入り口からハルキとリクも見ていた。

 

 「本当に良かったっスね、リッくん先輩。」

 

 「あぁ。」

 

 リクは返事をしながら、撃破したキリエロイドⅢから取り戻したジードライザーを見せる。

 

 

 すると、そんな二人に気付いた冴は、今度は二人にお礼を言う。

 

 「お兄ちゃん達も、ありがとう!」

 

 

 「…押忍!」

 

 ハルキは爽やかな笑顔でサムズアップをし、リクもそれに続いた。

 

 

 インナースペース内では、ゼットが今回の一連の事件で、最後まで折れずに頑張り続けた人々を称えていた。

 

 「俺たちウルトラマンにも負けない、ウルトラ強い信念を持った人たち…。 彼らの頑張りや応援もあったから、俺たちは勝つことが出来た。」

 

 「その真(まこと)に美しい心を、いつまでも忘れずにな。」

 

 そう言うと、ゼットはサムズアップを決めた。

 

 「よし! 俺もいつか、ゼロ師匠に正式に1人前と認めてもらうよう、ウルトラ頑張るぜぇー!!」

 

 

 翌日、予定通り、冴の母の手術は行われた。

 

 手術室のランプが点灯している中、廊下の長椅子に座り、目をつぶって俯きながら手術の成功を一心に祈る冴。

 

 側には本日の研修を終えた真美もついており、冴の膝に当てて強く握る拳にそっと包み込むように手を当てる。

 

 

 沈黙の廊下内全体に緊張が走る中、やがてランプが消え、扉が開いて主治医が出てくる。

 

 冴、そして真美は立ち上がり、主治医の元へと歩み寄る。

 

 

 すると、主治医は冴の目線までしゃがみ込み、そっと頭に手を当てる。

 

 「もう大丈夫だ。 お母さんは、あと三日すれば退院できるよ。」

 

 どうやら手術は無事成功したみたいである!

 

 

 それを知った冴は、嬉しさの余り真美に抱き付き、真美は驚きながらも優しい眼差しで頭を撫でる。

 

 「良かったね。」

 

 「うん。 これも、励ましてくれた真美さんのお陰です。 それに、頑張ってくれたウルトラマン達も。」

 

 「ありがとう。 でもこれは、紛れもなく冴くんの思いの強さのお陰だよ。」

 

 「え?」

 

 「ウルトラマンも私も、ただ出来る事をしただけ。 お母さんの回復を一番願っていたのは冴くんよ。 きっと、その想いの強さが届いたんだわ。」

 

 「僕の…お陰。」

 

 真美に優しく諭された冴は、一層嬉しくなり、真美と笑顔を交わした。

 

 

 (私も、こんな風に患者さんが笑顔になってくれるような、立派な看護師を目指そっと)

 

 真美は心の中でそう決心した。

 

 

 その様子を、病院の外から伺っている3人がいた。

 

 任務中のハルキとヨウコ、そしてリクである。

 

 

 (BGM兼ED:Connect the Truth)

 

 

 「あの子とお母さん、良かったっスね。」

 

「あぁ。 あの子の想いの強さが、勝ったんだろう。」

 

 真美たちと同じく、冴の母の回復を喜び合う3人。

 

 

 「いや〜しかし驚きましたよ。 先輩たち、前よりも更に腕を上げてたんですから。」

 

「な〜に見くびってんのよ。 いつかもっと腕を上げて、宇宙用ロボットであんたをアシストしに行くんだから。」

 

 「押忍! その日まで、俺ももっと強くなるっス!」

 

 ハルキとヨウコは笑顔を交わした。

 

 

 やがてヨウコは2人に問いかける。

 

 「2人とも、もう行っちゃうの?」

 

「押忍。 まだ宇宙には、デビルスプリンターを利用した悪や、それにより苦しんでる命がいっぱいいるので。」

 

 「じゃあ、僕たちはここで。」

 

「おーい!」

 

 2人がそれぞれゼットライザーとジードライザーを構えようとしたその時、何処からか元気のいい呼び声が聞こえ、一同はその方へと振り向く。

 

 そこにはユカが、バコさんとカブラギと共にやって来ていた。

 

 「もう行っちゃうの? これからバコさんのマグロで打ち上げだよ〜! 整備班もみんな集まってるよ〜!」

 

ユカがそう言う横で、バコさんとカブラギは一尾ずつ大きなマグロを持っていた。

 

どうやら今回は2匹みたいである。

 

 「マグロ、ごs…」 「ご賞味ください!!」

 

「いやアンタが言うんかい。」

 

バコさんとカブラギの漫才のようなやり取りに、一同は笑い合う。

 

 

「旅立つ前に、またみんなでどう? リッくんも。」

 

「押忍!!」

 

「僕もいいんですか!?」

 

ヨウコに促された事もあり、2人は旅立つ前に呼ばれる事にした。

 

 

 「よーし! そうと決まったら行っくよ〜!」とユカ。

 

 「僕、マグロ大好きです。」とリク。

 

 「今回は寿司も握ろうかな。」とバコさん。

 

 「よっしゃあ〜! 班長手伝いますよ!」とカブラギ。

 

 「今回はより賑やかになりそうだな〜!」とハルキ。

 

 一同は基地に向かい、陽気に語り合いながら歩き去って行った…。

 

 

 ロボットを駆使して地球のために戦うストレイジ、ウルトラマンジードとして戦うリク、そしてウルトラマンゼットとして戦うハルキ…。

 

 彼らはこれからも、自身が持つ力を正しい事に使って行けるであろう…。

 

 

 「…ウルトラマン…みんな…ありがとう。」

 

 真美も、病院の窓から、満面の笑みでハルキ達を見下ろしながら呟いた。

 

 

 (BGM兼ED終了)

 

 

 [エピローグ]

 

 私、真美は、突如強い光が差し込んでくるのに気づき、目を覚ました。

 

 

 視界も意識もまだ虚な中、辺りを見渡すと、机、テレビ、パソコン、掛け時計など…いつも見慣れたものたちが…。

 

 

 どうやら私は自分の部屋のベッドの上で寝てたみたいだわ…。

 

 

 …え?

 

 

 て事は、さっきの出来事は全て夢だったって事??

 

 

 それに気づいた瞬間、真美は一気に目が覚めた。

 

 

 なんと、自身が看護師の研修生になっいた事、母の回復を願う少年と共にウルトラマンゼット達の活躍を見守ったのも、全て夢での出来事だったのである!

 

 

 …しかし、真美は不思議と、夢での出来事が、夢だけじゃない気がしていた。

 

 そして、窓を開けて、新鮮な早朝の空気を吸いながら、感慨深そうに呟いた。

 

 「…あのウルトラマンゼットって人も、きっとどこかの世界で、人々の幸せのために頑張ってるんだろうなぁ…。」

 

 

 実を言うと、実際にゼットの世界では、真美が夢で見た出来事が起こったのである。

 

 そして、ハルキたちがその世界の真美という看護師の女性と交流したのも…。

 

 ある意味正夢だったのである。

 

 

 「ハルキさん、とても素敵な人だったなぁ…。 ウルトラマンに変身する人って素晴らしい人ばかりだよね。」

 

 …真美…そんな事言ってられるのも、まだ櫂の本性を知らない今の内だぞ(汗)

 

 

 「私も、あんな風に悲しんでる人に寄り添える看護師になれるように、頑張らなくちゃ。」

 

 爽やかな笑顔でそう呟くと、窓を閉めて朝食の準備に入る真美。

 

 

 外見のみならず、心も美しい真美なら、きっと素敵な看護師になれるであろう。

 

 

 そして、不思議な正夢が意味するものとは…?

 

 

 ひょっとすると、実際にゼットと真美が出会う日が来るのではないだろうか…?

 

 

 何はともあれ、別世界を越えた正夢の物語であった。

 

 

 [完]




 読んでいただきありがとうございます!


 今回は真美が夢の中でゼット達に出会う物語でありながら、実際にゼットの世界で起こった事と言う“別世界を超えた正夢”という要素も入れてみました。


 ウルトラマンZは、“ゼロの弟子”と発表された時点で期待は上々でしたし、いざ本編を見てみるとその期待を遥かに上回る面白さと感動に大満足でしたね!

 現在、絶賛ゼットロス中です!(劇場版やってくれないかな…?笑)

 どの形態もカッコよくて強くて最高でした! 因みに私はアルファエッジが特にお気に入りです!(まぁ、ぶっちゃけどれも好きなんだけどね笑)

 セブンガーやウインダム等が防衛チームのロボットとして登場したのも非常に面白かったし、なにより隊長の正体がジャグラス・ジャグラーだったのも驚きでしたね。

 また、ゼロやジードだけでなく、ウルトラマンエースが客演してくれたのも非常に嬉しかったですね(好きな昭和ウルトラマンの中でも上位に入るものなので)

 ゼットもまたいつか、本作に登場させたいです!


 また、現在配信中の『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』も、毎週楽しみに視聴しています!

 毎回サプライズの連続で、前回に引き続き活躍しているリブットの他に、80、グレート、パワード、ネオス、セブン21、ジャスティス、マックス、ゼノンなどの最近不遇気味だったウルトラ戦士も活躍したり、ベリアルのみならずトレギアのアーリースタイルも登場したり、更にはレジェンドも登場したりと、ウルトラマン好きの私としても、Zに負けず劣らず非常に満足な作品になっていると思います!

 今後登場するジョーニアスやアンドロメロスとかの活躍も楽しみですね!


 後書きが長くなって申し訳ありません。


 今年も時間を見つけては作品を制作して行こうと思いますので、宜しければ今年もよろしくお願いします!


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています!


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番外編「笑顔と幸せの光」

 新年、明けましておめでとうございます!


 まず最初に、去年はまたしても一話しか投稿できなかった事をお詫び申し上げますm(__)m


 今回は年末年始特別編と言う意味も込めた番外編で、登場するのは去年活躍された、『ウルトラマンティガ』25周年を記して登場したあの超古代のウルトラマンです!

 相変わらず文才は無く、粗が目立つかもしれませんが、とりあえず楽しんでもらえたら幸いです(笑)


 そして宜しければ、今年も本作やその他の作品、そして、特撮ヒーロー(特にウルトラマン)大好きな私・剣音レツをよろしくお願いします!


 では、どうぞ!


 (OP:ULTRA BRAVE)

 

 

 とある世界の地球にて。

 

 ビルや民家が並び立っている中、何処か田舎の名残も感じ、その街を企業城下町へと発展するキッカケとなった巨大ベンチャー企業『アイゼンテック』のタワーのような本社ビルが目立つ街『綾香市』。

 

 その綾香市から少し離れた山中にて、とある1人のウルトラマンは光線の特訓をしていた。

 

 あ、正確には“ウルトラウーマン”だが。

 

 

 特訓しているのは小柄な体に、メタリックオレンジと銀の体色、胸周りや肩のアーマーが特徴の『ウルトラウーマングリージョ』である。

 

 ウルトラウーマングリージョ。 それは元は『マコトクリスタル』の化身であったが、後にそこから人格が分離された少女『湊アサヒ』が、『美剣サキ』から受け継いだ『ルーブジャイロ』で変身した姿であり、争いを好まない優しい性格のアサヒが変身している事もあってバリアやヒーリングなどのサポート能力に長けている。

 

 彼女には同じウルトラマンである、彼女よりも経験値がある兄が2人(ウルトラマンロッソの湊カツミ、ウルトラマンブルの湊イサミ)いるのだが、今は2人とも海外に留学していて今は綾香市にいないため、彼らに代わって綾香市を守るため、そしてまだウルトラマンとして未熟な自分を鍛えるために、時々街から離れた場所で練習をしているのだ。

 

 因みに今回は、比較的岩山が多い場所で練習をしていた。

 

 

 光線技の練習をしていたグリージョは、現時点唯一の光線技である『グリージョショット』を岩山に打って破壊した後、一息つく。

 

 「カツ兄とイサ兄が留学している今、綾香市の平和は、私が守らなきゃです!」

 

 そう言い聞かせるように呟いた後、グリージョは引き続き次の特訓に入ろうとした。

 

 

 その時。

 

 「まずはこここら荒らして行こうか!」

 

「…ん?」

 

 突然、何処からか声が聞こえた方へグリージョは振り向く。

 

 そこには人間大の『悪質宇宙人レギュラン星人』が、何やら赤い玉を持って立っていた。

 

 

 (見た事ない姿…宇宙人かしら…?)

 

グリージョ(アサヒ)はそのレギュラン星人に声をかけてみる。

 

 「誰なのですか?あなたは。」

 

 その声により、レギュラン星人はグリージョに気づく。

 

 「あぁん? なんだよ、ウルトラマンもいやがるのかここ…、」

 

レギュラン星人は、ウルトラマンがいる事が想定外だったのか、苛立ちの発言をする。

 

 「まぁいい。 どちらにしろ、こいつさえあればここの世界も破壊するのは容易いからな!」

 

 そう言うとレギュラン星人は、手に持っていた赤い玉を見せびらかす。

 

 「何なんですかそれ? 大きな飴ちゃん?」

 

 「ガクッ! …これはなぁ、望めばなんでも願いを叶えてくれるスッゲーものなんだよ! これさえあれば世界、いや、宇宙を征服する事だって容易いだろうなぁ!」

 

 

 レギュラン星人が持っているの赤い玉は、かつて『ウルトラマンガイア』がテレビ放送されているパラレルワールドにも出現した事があり、手にした者の願いを叶える事が出来る。

 

 その正体は、別のパラレルワールドで生み出された存在であり、「物質文明の最終到達地点」として「心に思い描いたものを全て現実のものとする」という目的で制作されたのだが、同時に人々の果てしない欲望の結果、多くの世界を滅ぼしてしまった事もある。

 

 実際、登場したパラレルワールドでも、そこの邪な心の少年たちの手に渡った事より怪獣を誕生させ、世界を滅びへと進めてしまった事もある。

 

 また、人間の欲望をエネルギーにする特質を持っており、人間を負の感情で支配して操る事が出来る。 恐らくレギュラン星人は、既に支配されてる状態なのであろう。

 

 

 「何でも願いを叶えるですって? じゃあ、それがあれば世界中の人をハッピーにする事も出来そうですね。」

 

「くっ…呑気な奴め、調子狂うな…。」

 

「宇宙人さん、何故それを悪い事に使おうとするのですか? もっとみんなで仲良く、幸せに暮らせるようにお願いすればいいのに…。」

 

「宇宙人さんじゃねぇ! 俺様はレギュラン星人だ! 知った事か!俺様は目的のためなら仲間などどうでもいい! 俺様はただ、世界、いや宇宙の頂点に立ちたいだけなのだ! この赤い玉も、突然現れた金ピカ野郎から「それを使えばどんな望みも叶う」と受け取ったモノだしなぁ!」

 

「なんですって…!」

 

レギュラン星人の冷徹さ、そして目的をようやく理解したグリージョ(アサヒ)は、言葉を失う。

 

 

 「その為にもまずは手始めにこの世界から壊してやる! 暴れろ!俺の怪獣!!」

 

レギュラン星人がそう叫びながら赤い玉を高く揚げると、やがてそれが不気味に赤く光った後、稲妻状のエネルギーが上空に注がれ、それにより現れた黒雲から稲妻状のエネルギーが地上に注がれ、そこから一体の怪獣が現れる!

 

 現れたのは甲虫のような外見に、サソリのような鋏状の尻尾が特徴の『怪獣兵器スコーピス』である。

 

 

「はっ…怪獣が!」

 

怪獣の出現に、グリージョは咄嗟に少々ぎこちない感じで身構える。

 

 「手始めにこの世界を破壊しろ。 そしてついでにあの呑気な女ウルトラマンも殺していい。」

 

 レギュラン星人の命を受けたスコーピスは、手始めに目の前の森林を口からの破壊光弾や腐食光線で破壊して焼いて行く!

 

 それらを受けた森林は木々が燃えたり、腐食して灰のようになったりして行く…!

 

 

 「はっ…! やめて〜!」

 

木々とはいえそれらも生命。それが破壊されてるのを目にしたグリージョは思わずスコーピスに向かって行き体当たりをする。

 

 それを受けたスコーピスだが、それにより気が散って光弾や光線の発射が止まっただけで、大したダメージを受けていないようであった。

 

 スコーピスは狙いをグリージョに変え、彼女に光弾や光線を放つが、グリージョは咄嗟に光のバリア『グリージョ・バーリア』を展開してそれらを防ぐ。

 

 防ぎ切ったグリージョはバリアを消すが、その直後にスコーピスは巨体に似合わない勢いでグリージョに向かって行き、両手の爪を活かした打撃を2発打ち込んで怯ませた後、尻尾を伸ばして先端の鋏で彼女の首を挟み込み、そのまま地面に引きずった後にその先にあった岩山に叩きつけ、更に放り投げて地面に叩きつけた!

 

 「ぐっ…やっぱり…まだ一人で怪獣さんと戦う事は…!」

 

 まだ一人で怪獣と戦う事に慣れてなく、たちまち劣勢になったグリージョは、悔しそうにそう言った。

 

 更に、既に特訓である程度エネルギーを使っていたのか、カラータイマーが赤く点滅を始める。

 

 

 スコーピスは、今度はグリージョに情け容赦なく光弾を連射し始め、グリージョはそれらが周囲で爆発する中、更にダメージを受け、悲鳴を上げて地面に倒れ伏す。

 

 「フハハハハハ! たわいもない! スコーピス!その調子でどんどん…」

 

 高笑いしながら引き続きスコーピスに指示を出そうとしたレギュラン星人だが、光弾の流れ弾が自身の近くで爆発してしまい、吹っ飛ぶと同時に赤い玉を手放してしまう。

 

 「おいコラ! もっと気をつけて打てーッ!!」

 

 

 スコーピスの猛攻により、エネルギーが残り少なくなるまでに追い詰められたグリージョは、正に絶体絶命の状態であった。

 

 「一体…どうすれば…。」

 

その時、アサヒは地面に転がっている赤い玉を見てある事を思い出す。

 

「はっ…あの赤い玉は確か…何でも願いを叶える物…!」

 

グリージョは最後の力を振り絞って赤い玉を手に取り、それにより赤い玉はインナースペースでのアサヒの手に渡る。

 

 「あっ…おい! それを返せ〜!」

 

 

叫ぶレギュラン星人を他所に、アサヒは早速赤い玉にお願いをし始める。

 

 「お願いです! あの怪獣さんを消してください!」

 

必死な思いで願うアサヒ。

 

 …しかし、スコーピスは消滅する様子も無く、満身創痍なグリージョにトドメを刺そうと歩みを進めていた。

 

 「…そんな…まさか、一度実体化させてものは…もうそのまま…?」

 

アサヒの察した通り、赤い玉は一度実体化させたものを消す事は出来ないのである…!

 

 

 絶望しそうになる中、更にある事を考える。

 

 「そんな…はっ、そういえばあの怪獣さんは、あの悪い人の願いを受けたこの玉が召喚した…。 怪獣さんが召喚出来たのなら、ウルトラマンさんも召喚出来るはず…!」

 

アサヒはいい事に気づいた。 実際、かつて現れたパラレルワールドでは、最後まで諦めなかった少年たちの願いを受けて『ウルトラマンティガ』と『ウルトラマンダイナ』を登場させ、それにガイアを加えた3人が世界を救っている。

 

 

 早速、ウルトラマンを呼ぶ事を実行しようとするアサヒだが、彼女は迷っていた。

 

 「でもどうしよう…お兄ちゃん達は留学中だし、ジードさんは何やら別の任務があるとか言ってたし…!」

 

こんな状況なのに他人の事を思えるとは、どこまでも優しい少女である。

 

 こうしてる間にも、スコーピスはグリージョの目前にまで来ていた…!

 

 

 「お願いです…何でもいいので私に力をください…! 私に、希望の光を!!」

 

 

 アサヒの必死な思いの叫びを受けた赤い玉は、再び赤く発光する!

 

 だが、同じ赤い発光でも先程みたいに不穏な感じでは無く、何処か希望を感じる明るさを感じるものだった…!

 

 余りの眩しさに、アサヒは玉を手にしたまま目をつぶって顔を背ける。

 

 

 やがて玉の発光が収まり、アサヒは恐る恐る目を開ける。

 

 そして辺りを見渡し始める。

 

 「…誰か…来てくれたのですか…?」

 

 辺りを見渡して行くアサヒ。 やがて、自身の目の前に一人の青年が現れていた事に気づく。

 

 その青年は、爽やかなイケメン顔に、黒をベースに赤と白で彩られたレザー風のジャケットを着ている。

 

 

 「…ここは…どこだ…?」

 

現れた青年は、自身の今立っている空間(グリージョのインナースペース)に戸惑いを隠せない。

 

 「あなたは…?」

 

 問いかけたアサヒに青年は気づく。

 

 「もしかして君が、僕を呼んだのか?」

 

「ぇ…あ、はい。ある意味、そういう事になるというか…。」

 

「そうか…突然、何処からか助けを求める声が聞こえたかと思えば、それと同時に謎の空間も現れて、僕は思わずそれに手を伸ばしたんだ。 そして気づいたら、この空間にいて…。」

 

「そうだったんですね。」

 

青年の説明を聞いたアサヒは、彼は自身が赤い玉で呼んだ者だったんだと理解する。

 

 

 やがて青年は外の状況に気づく。

 

 外ではスコーピスが間近まで迫って来ているが、止まっている状態であった。

 

 恐らく、赤い玉の力によりインナースペース以外の外の世界の動きが一時的に止められているのであろう。

 

 「あの怪獣は、一体…?」

 

青年の問いかけにアサヒは答える。

 

 「あの怪獣さんは、突然現れた悪い人が連れて来たんです。」

 

外に現れている怪獣、そして奴がこちらに向かっているという状況、そして自身が今いる場所…これらを見て青年は確信した。

 

 「あの怪獣、そしてこの空間…もしかして、君もウルトラマンなのかい?」

 

「…ぇ? ど、どうして? それに、“も”って…?」

 

「君を見てると、特別なモノを感じてね。 僕もウルトラマンだから、なんとなく感じるんだ。」

 

「実は私も、あなたを見て光を感じました。 はい!私は湊アサヒです! ウルトラウーマングリージョとして、1日でももっと強くなるために頑張っています!」

 

元気よく自己紹介したアサヒだが、次の瞬間俯き始める。

 

 「…でも、私はまだまだ未熟で、まだ一人で怪獣さんと戦う事に慣れてなくて…見ての通り苦戦しちゃっています。 一人前のウルトラマンになるには、まだ遠いみたいです。 私のお兄ちゃん達もウルトラマンなんですけど、いつまでも頼るワケにもいかないし…。」

 

自身がまだ一人で怪獣と戦い慣れてない現実を思い出し少し気落ちするアサヒ。 そんな彼女に、青年はこう言った。

 

 「確かに、ウルトラマンやってると色々あるよね。 時に、運命の重さに押し潰されそうになる事も。 でもこれだけは忘れてはいけない。 僕たちウルトラマンは“光であり、人である”という事を。」

 

 青年言葉にアサヒははっとなる。

 

 (そうだ…確かに私はウルトラマンだけど…それであり、お父さんとお母さん、そしてお兄ちゃん達と、家族として暮らす一人の人間、湊アサヒ。)

 

 「ありがとうございます。思い出させてくれて。 肩の荷がちょっと下りました。」

 

 見失いかけてたモノを思い出したアサヒに、青年は笑顔で語りかける。

 

 「僕は“みんなが笑顔でいられる世界”を理想としているけど、それはウルトラマンとしてであり、人間としてでもあるんだ。」

 

「私も、ウルトラマンとして、一人の人間として、みんなのハッピーを守りたいです。」

 

 青年とアサヒは、笑顔で見つめ合う。

 

 「きっと君は、これからもっと強くなれる。 今回は僕も力を貸すよ。」

 

 青年はそう言うと、スコーピスに視線を向け、変身アイテムの『GUTSスパークレンス』(以降:ガッツスパークレンス)と『GUTSハイパーキー』(以降:ガッツハイパーキー)を取り出す。

 

 「僕はマナカ・ケンゴ。 ウルトラマントリガーだ。」

 

 その青年は『ウルトラマントリガー』に変身する『マナカ・ケンゴ』であった!

 

 

 ウルトラマントリガー。 それは、3000万年前に闇の巨人達との戦いの後に力尽いて火星へと辿り着き、そこの地下に埋もれた逆ピラミッド型の地下遺跡の最下層で石像となって眠りについていた光の巨人である。

 

 ケンゴはそこでトリガーと出会い、合体する事で変身能力を得たのだが、実は彼自身もトリガーであり、芽生えた光が3000万年かけて人間の姿に転生した化身である。

 

 かつて3000万年前の超古代に飛ばされ、そこで『暗黒勇士トリガーダーク』と邂逅した際、それを自覚した事で、トリガーダークをトリガーの姿に変えさせた事もある。

 

 

 トリガーと一体化した後、地球平和同盟『TPU』(Terrestrial Peaceable Union)が、シズマ財団の協力の元に結成した対怪獣・宇宙人用のエキスパートチーム『GUTS-SELECT』(以降:ガッツセレクト)に入隊し、そこの仲間と共に怪獣や宇宙人、そして闇の巨人達と戦って来た。

 

 

 “笑顔を守る希望の光”とも言われるトリガー。 恐らく赤い玉は、アサヒの願いの中にあった“希望の光”というワードに反応して、ケンゴを呼び出したのであろう。

 

 

 「ウルトラマン…トリガー。 素敵な名前ですね。」

 

「共に奴らを倒そう!」

 

ケンゴは遂に変身の体勢に入る!

 

 

 《ULTRAMAN TRIGGER MULTI TYPE》

 

《BOOT UP! ZEPERION》

 

 ケンゴは、取り出したガッツハイパーキーの『ウルトラマントリガー マルチタイプキー』のスイッチを押して起動させ、ハイパーガンモードのガッツスパークレンスのグリップの底面に装填する。

 

 そして銃身を円弧上に展開してウルトラマンに変身するためのスパークレンスモードに変形させる。

 

 

 「未来を築く、希望の光! ウルトラマン、トリガー!!」

 

 

ケンゴはガッツスパークレンスを持った右手を大きく回して両腕を十字に組んだ後、ガッツスパークレンスを高く揚げて叫んだ後にトリガーを引く!

 

 ケンゴは眩い光に包まれ、そこから変身が完了した『ウルトラマントリガー マルチタイプ』が右拳を突き出して飛び出す!

 

 《ULTRAMAN TRIGGER MULTI TYPE!》

 

「デァッ!!」

 

 現れたトリガーは、グリージョのカラータイマーから眩い光と共に飛び出し、同時に彼女に迫っていたスコーピスの一体にパンチを叩き込んで吹っ飛ばす!

 

 そして着地した後、再び右拳を突き出したポーズで立ち上がり、体を包んでいた光を消して姿を現し、構えを取る。

 

 

 「あれが…ウルトラマントリガーさん…!」

 

アサヒは、初めて見るウルトラマンを目の前にして驚きと同時に嬉しそうな表情を浮かべる。

 

 

 『何だ!?あのウルトラマンは…!」

 

レギュラン星人も、トリガーという見た事ないウルトラマンの突然の登場に驚きを隠せない。

 

 「…まぁいい、どこの誰だか知らねーが、相手が誰だろうと潰すまでだ!」

 

 

 (ウルトラマントリガー戦闘BGM)

 

 スコーピスは起き上がると狙いをトリガーに変え、頭部から破壊光弾を連射するが、トリガーは即座に両手を突き出して円形の光の盾を展開してそれを跳ね返し、スコーピスはそれに被弾する。

 

 怯んだスコーピスにトリガーは颯爽と駆け寄り、頭部に手刀、続けて一回転して胸部に手刀を打ち込み、その後頭部を掴んで腹部に膝蹴りを打ち込む。

 

 スコーピスは、更に攻撃を加えようとするトリガーの両腕を鋭い爪の生えた両手で掴んで止めるが、トリガーはショルダータックルをスコーピスの体に叩き込む事で振りほどき、更に胸部にキックを叩き込む!

 

 赤と青紫のボディカラーに、肩から胸部にかけての金のプロテクターが特徴のマルチタイプはパワー・スピード共にバランスに優れており、陸・海・空問わず戦える、その名の通りのマルチな戦闘を得意としているのである。

 

 

 スコーピスはトリガーと数秒間対峙した後、頭部から破壊光弾を数発発射し、トリガーがそれらをかわしている隙に先端がハサミ状になっている尻尾を伸ばしてトリガーの右腕を挟んで動きを止める!

 

 その隙にスコーピスは、口からの腐食光線ポイズニクトを浴びせようとしていた!

 

 

 《CIRCLE ARMS!》

 

 トリガーは即座に、円形の赤い持ち手に、鋭い刀身が生えた形状が特徴の、超古代の神秘のアイテム『サークルアームズ』を召喚して左手に取り、剣形態『マルチソード』を振るってスコーピスの尻尾の先端を切り落とし、続けてスコーピスの発射し始めた腐食光線を刀身で防ぎ、そのまま踏ん張り始める。

 

 やがて光線を防ぎ続けたトリガーは、その力のぶつかり合いにより自身の周囲に起こる大爆発に飲み込まれて行く…!

 

 「はっ…!」

 

 爆炎に包まれるトリガーを見て一瞬焦るグリージョ(アサヒ)。

 

 しかし、トリガーはその爆炎を消し飛ばしながらマルチソードを手に飛び出し、そのまま飛行しながらスコーピスに突撃する!

 

 《MAXIMUM BOOT UP! MULTI! ZEPERION SWORD FINISH!》

 

ケンゴはマルチソードにマルチタイプキーを装填して構えを取り、それにより刀身にエネルギーがチャージされる。

 

 そして、マルチソードでの必殺技『ソードフィニッシュ』を発動したトリガーは、そのままスコーピスに突っ込み、すれ違いざまに横一直線の斬撃を決める!

 

 地面に足を滑らせながら着地したトリガーは、大爆発して砕け散るスコーピスを背に、起き上がってマルチソードを払ってポーズを決めた。

 

 

 「わぁ〜!凄いです!」

 

見事、スコーピス一体を撃破したトリガーを見てグリージョは拍手をする。

 

 

 「なかなかやるな!見た事ないウルトラマンよ! だがしかし、まだ終わりではないぞ〜!」

 

レギュラン星人がそう言うと、上空に再び黒雲が現れ、そこから計7体のスコーピスの大群が現れて飛び回る!

 

 スコーピスは一体では無かったのだ!

 

 「…まだあんなにいっぱいいるなんて…。」

 

 無数の敵の出現に、怖気付きそうになるグリージョ。

 

 トリガーはそんな彼女の元に歩み寄り、腕を貸して起き上がらせる。

 

 そして両手を顔の前方でクロスさせた後に腰に当て、額のクリスタルからグリージョのカラータイマーにエネルギーを注ぐ。

 

 そしてエネルギーが回復したグリージョのカラータイマーは赤から青に戻った。

 

 「わぁ…!力が戻りました! ありがとうございます!」

 

元気いっぱいになったグリージョはトリガーに頭を下げて礼を言う。

 

 

 スコーピスの大群の一部(4体)はトリガーとグリージョに、そしてもう一部(3体)は綾香市を狙っているようである。

 

 インナースペースにて、ケンゴはアサヒに指示を出す。

 

 「アサヒちゃんは奴らを町に侵入させないよう、出来る限り頑張ってくれ!」

 

「分かりました!」

 

「行くぞっ!!」

 

 「はい!」

 

 

(BGM:Trigger)

 

 

 トリガーとグリージョは、気合を入れて構えを取った後、グリージョは綾香市に向かおうとする方、そしてトリガーは自身を狙っている方へと向かって行く!

 

 「グリージョ・バーリア!!」

 

グリージョは大きく腕を広げていつもより広範囲グリージョ・バーリアを展開し、綾香市に向かおうとするスコーピスの群れを阻み始める。

 

 スコーピス達は弾き飛ばされながらもバリアに突撃し続けるが、グリージョは尚も力を緩めず踏ん張る。

 

 「必ず…守ってみせる…私の生まれ育った町を…!」

 

 

トリガーは、スコーピス達が上空から放つ破壊光弾や腐食光線を身軽な動きでかわして行き、腕を十字に組んで発射する『マルチ・スペシウム光線』や腕を突き出して放つ青白い光弾「トリガーハンドスラッシュ』で反撃して行く。

 

 スコーピス達もそれらを飛び回ってかわしながら引き続き攻撃を続けるが、やがてマルチ・スペシウム光線が被弾した一体が上空でバランスを崩して落下するが、すぐに低空飛行に切り替えてトリガーに体当たりを繰り出す!

 

 トリガーは飛び上がると、オーバーヘッドキックの如く地面に背を向け、自身に向かって来るスコーピスにキックを叩き込む!

 

 スコーピスはたまらず地面に激突するが、その後すぐさま再び飛び上がり、トリガー目掛けて一直線に向かう。

 

 

 「勝利を掴む、剛力の光!」

 

 《ULTRAMAN TRIGGER POWER TYPE!》

 

 ケンゴの口上と共に、トリガーは頭部のクリスタルの前で腕を交叉させて左右に振り下ろす。

 

 するとトリガーの身体は赤と青紫から赤一色に変わり、そこから体の各部も徐々に変形して行く。

 

 そして、筋骨隆々な体型に、V字のスリットが施された胸部アーマー、曲線状に変形した頭部、襷状に伸びた金色のプロテクターが特徴の剛力形態『パワータイプ』へとタイプチェンジが完了する!

 

 トリガーはパワータイプにチェンジすると同時に、右拳にエネルギーを溜めながら大きく振りかぶる。

 

 それを見たトリガーに向かっていたスコーピスは慌てて方向転換しようとするが時すでに遅し、飛ぶスピードの勢いは止まらず、そのままトリガーの間近まで来てしまった。

 

 トリガーはそのままスコーピスの顔面にエネルギーを溜めたストレートパンチ『トリガー 電撃パンチ』を叩き込み、スコーピスはそれがめり込んだ顔面から順に体が粉々に砕け散った!

 

 スコーピスの別の一体が地面に降り立ってトリガーに接近戦を挑むが、パワータイプのトリガーはスコーピスの攻撃を往なして行き、力強いパンチの連続や右足蹴りを体に打ち込むと、頭部を掴んで一本背負いで地面に叩きつける。

 

 更にトリガーは、スコーピスを頭を下にする体勢で持ち上げ、豪快に地面に叩きつける『ウルトラヘッドクラッシャー』を決める!

 

 このようにパワータイプは怪力を活かした肉弾戦が得意であり、その強さはかつてマルチタイプを圧倒した闇の巨人『剛力闘士ダーゴン』とも互角に戦った程である。

 

 スコーピスの更に別の個体が上空からトリガーに尻尾を伸ばして鋏で挟み込もうとするが、逆にトリガーは尻尾を掴み、そのままジャイアントスイングで振り回し、先程の攻撃で頭部が地面に刺さった個体にぶつけるように叩きつける!

 

 そしてトリガーは両腕に燃え盛るエネルギーを集めた後、右手で投げつける必殺光線『デラシウム光流』を放ち、二体のスコーピスを纏めて撃破した!

 

 トリガーと戦っていたスコーピスの大群の残りの一体は、上空から地上のトリガー目掛けて破壊光弾を連射するが、トリガーはそれを避けると同時に上空に飛び上がる。

 

 

 「天空を駆ける、高速の光!」

 

 《ULTRAMAN TRIGGER SKY TYPE!》

 

 トリガーは飛び上がりながら、再び両腕をクリスタルの前で交差して左右に振り下ろす。

 

 するとトリガーの身体は今度は赤一色から青紫やスカイブルーに変わり、体も徐々に変化して行く。

 

 今度はスリムな体型に、両肩部から胸部、両腕部、両腿部にスカイブルーのアクセントカラーが施され、頭頂部と両の耳元に金の装飾が施されてるのが特徴の高速形態『スカイタイプ』へとタイプチェンジが完了する!

 

 スカイタイプへとチェンジしたトリガーは、そのまま高速で飛びながらスコーピスを体当たりで吹っ飛ばす!

 

 スコーピスは再び破壊光弾や腐食光線を放って反撃するが、トリガーはそれを縦横無尽に飛び回りながらかわして行き、そのあまりの速さにやがてスコーピスはトリガーを見失ってしまう。

 

 そしてトリガーは、スコーピスが辺りを見渡してる隙に真下からアッパーカットを叩き込んで真上に飛ばし、更にその上に回り込んで連続蹴りの形で『トリガースカイキック』を打ち込んで吹っ飛ばし、地面に叩きつけた。

 

 このようにスカイタイプは高速戦闘と空中戦に長けており、かつて同じスピード自慢の闇の巨人『俊敏策士ヒュドラム』とも互角に戦い、一度は勝った事もある程である。

 

 スコーピスが怯んだ隙にトリガーは、両腕にエネルギーの渦を集めた後、右手で投げつける必殺光線『ランバルト光弾』を放ち、それを受けたスコーピスはガラスが割れるように粉々に砕け散った。

 

 

 自身を狙っていたスコーピスの大群を見事撃破したトリガー。それも束の間、グリージョの悲鳴が聞こえてその方を振り向く。

 

 綾香市に向かおうとしていたスコーピスの3体が、グリージョがそれを阻むために長時間張っていたグリージョ・バーリアに破壊光弾や腐食光線を集中攻撃をし始め、それによりグリージョのバリアーにヒビが入り始め、維持が困難になって行く…。

 

 やがて限界が来てグリージョ・バーリアは砕けてしまい、グリージョは尻餅をつき、スコーピス達は綾香市に向かおうとする!

 

 

 トリガー・スカイタイプは再びサークルアームズを手にすると、高速で飛んで瞬時にマルチソードで3体を斬りつける。

 

 《SKY ARROW》

 

 更に刃を一文字に展開して弓形態『スカイアロー』に変形させ、光の矢を放って打ち込んで追い討ちをかける。

 

 《MAXIMUM BOOT UP! SKY! RUNBOLDT ARROW STRIKE!》

 

ケンゴはスカイアローにスカイタイプキーを装填して構えを取り、それにより刀身にエネルギーがチャージされる。

 

 やがて弓幹部からエネルギーの弦が出現し、それを大きく引いたトリガーは、銃口部から現れた青いエネルギーの矢『アローストライク』を放ち、スコーピス2体を纏めて貫いて撃破した!

 

 

 残るスコーピスは一体となり、その個体は最後の力を使ってトリガーとグリージョに向かう!

 

 スカイタイプからマルチタイプに戻ったトリガーは、グリージョと合流する。

 

 「一緒に決めるぞ!」

 

「はい!」

 

 体制を立て直した2人。グリージョは両腕で円の軌道を描いてグリージョショットのエネルギーを溜め始める。

 

 そしてトリガーは両腕を腰の位置まで引き前方で交叉した後、左右に大きく広げてエネルギーを集約する。

 

 「グリージョショット!」

 

グリージョは腕を十字に組んでグリージョショットを放ち、トリガーもそれに合わせて腕をL字に組んで必殺光線「ゼペリオン光線』を放つ!

 

 二つの光線はスコーピスの体を直撃し、スコーピスはそれを浴びながらも踏ん張って歩みを進めるが、やがて耐え切れず頭部から順に粉々に砕け散った!

 

 

 (BGM終了)

 

 

 「フゥ〜…やりましたね!」

 

 見事、スコーピスの大群を撃破したトリガーとグリージョ。 グリージョ(アサヒ)は喜びの声を上げ、それを見たトリガーは振り向き、グリージョとクロスタッチをする。

 

 「ハッピー!」

 

グリージョはもう片方の手で親指と小指を立てるハッピーポーズを決め、それを見たトリガーもゆっくりともう片方の手でハッピーポーズをしてみせた。

 

 

 「喜ぶのはまだ早いぜぇ!!」

 

2人は叫んだレギュラン星人の方を振り向く。

 

 「俺様が赤い玉で呼んだのは怪獣兵器スコーピス! そしてそれを操る、異形生命体だ!」

 

「まだ黒幕がいるという事か…!」

 

インナースペースでのケンゴは驚愕する。

 

 

 すると、2人の前方の上空から黒雲のようなものが赤黒い稲妻と共に降って地面に広がり、やがてその中から赤黒い稲妻とともにおぞましい姿の破滅魔超獣が現れる…!

 

 奴こそ、スコーピス達と同じく赤い玉で召喚され、それらを操っていた巨悪『異形生命体サンドロス』である!

 

 かつては別宇宙の『コスモスペース』に存在し、地球人とよく似た思考の持ち主である事もあり、将来は危険な存在になり得ると判断した宇宙正義の守護者『デラシオン』によってリセットされかけたが、そのデラシオンの勢力に属していた『ウルトラマンジャスティス 』によって猶予を与えられた。

 

 だがその結果、奴は宇宙の秩序を乱す巨悪になってしまい、スコーピスの大群と共に地球にも攻め入ったが、その時に『ウルトラマンコスモス』と、サンドロスが巨悪になった事に責任を感じたジャスティスによって倒されている。

 

 

 そんなサンドロス、そしてスコーピスが、レギュラン星人が何処からか手にした赤い玉の力によって召喚されたという事である!

 

 柱のような2本の角に、花のような腕が特徴であり、四方に分かれる大きく裂けた方からは涎を垂らしている。

 

 トリガーは再び構えを取り、グリージョもサンドロスの迫力に少し怯みながらも遅れて構えを取る。

 

 

 「どうだウルトラマン共!! これで貴様らに勝ち目はない!! これでこの宇宙は、このレギュラン星人のm…」

 

レギュラン星人が勝利を確信したその時、サンドロスは腕から念力『ハードキネシス』を放ってなんとレギュラン星人を上空に拘束する!

 

 「なっ…何を!? …離しやがれ!! お前を呼んだのは俺様だぞ!!」

 

レギュラン星人は必死にもがきながら抵抗するが、無情にもサンドロスは口から放つ火炎弾『ギガレントラッシュ』を放つ!

 

 「ぐぁぁぁぁぁ!!」

 

その直撃を受けたレギュラン星人は、瞬く間に大爆発して跡形もなく消し飛んでしまった…!

 

 自身の野望のために、知性のある生命体を呼んでしまったのが、奴の運の尽きだったと言った所であろう…。

 

 

 「なんで酷い…!」

 

グリージョは両手で口を押さえてそう言う。

 

 「酷い? これは当然の事だ。 強い者が弱い者を全て滅ぼし、支配するのはこの宇宙のルールである。」

 

サンドロスは野太い声でそう言うと、角から黒煙を吐き出し始める。

 

 木々も一瞬に塵に変えてしまうその黒煙は瞬く間に広がり、サンドロス、そしてトリガーとグリージョの周辺も包み込み、暗黒の空間に変えてしまった…!

 

 2人が視界の悪い暗黒の空間で戸惑いながら周囲を見渡す中、サンドロスは左腕を剣『ダークローベル』に変形させる。

 

 「周りが全然見えません! …キャアッ!!」

 

 サンドロスは戸惑うグリージョを剣で斬りつけて吹っ飛ばした!

 

 「アサヒちゃん!」

 

グリージョ(アサヒ)の身を案じるトリガー(ケンゴ)だが、そのトリガーも剣で斬りつけられる!

 

 即座にトリガーは両腕を前に突き出して青白い光刃『トリガースライサー』を放つが、サンドロスは闇の中へと姿を消す事でそれをかわす。

 

 サンドロスは苦戦する2人を嘲笑うかのように闇から闇へと移動しつつ、再びトリガーに剣の一撃を放ち、トリガーはそれを敢えて肩で受け、その隙にその腕を掴んで捕らえようとするが、それを見切っていたサンドロスの右腕から放つハードキネシスで弾き飛ばされ、更に火炎弾による追い討ちを受ける。

 

 その後もサンドロスは闇から闇へと移動しながらトリガーとグリージョに剣の攻撃を加え続けて行き、そして2人が怯んだ隙に火炎弾を連射して更にダメージを与えた!

 

 大ダメージにより地に伏してしまう2人。既に点滅し始めていたカラータイマーも、点滅が早まって行く…!

 

 

 しかし、トリガー(ケンゴ)はまだ諦めていなかった…!

 

 「強い者が弱い者を、支配するだと…? 違う!! 強い力は、弱い者を助けるためにあるんだ!!」

 

 ケンゴの叫びと共にふらつきながらも立ち上がろうとするトリガーに、サンドロスはダメ出しとばかりに情け容赦ない剣の一撃を打ち込んで再び地面に倒した。

 

 

 絶体絶命の危機! その時、グリージョはふらつきながらもトリガーの方を向いて言った。

 

 「ケンゴさん…すみません…私…もう、限界です…。」

 

 慣れない連戦により、体力が持たなくなった事を告げるグリージョ。それを聞いたトリガーは大丈夫かと言わんばかりにグリージョに手を伸ばす。

 

 その手を見たグリージョは、最後の力を振り絞って飴玉状のエネルギーに変え、トリガーの手に渡す。

 

 これは、グリージョの特殊能力の一つであり、仲間にエネルギーを送って回復させる『グリージョチアチャージ』である。

 

 今回は、自身に残されたエネルギーの全てをトリガーに与える形で発動したのだ。

 

 

 トリガーが、自身の送ったエネルギーを受け取ったのを確認すると、グリージョの体は光の粒子状になり、徐々に消えて行く。

 

 「頑張ってください…私の分まで…。」

 

 そう言い残すとグリージョは完全に消滅し、アサヒの姿に戻る。

 

 疲れ切ったアサヒはその場に座り込み、汗を一拭きしてトリガーを見上げる。

 

 「私、信じてますから…。」

 

 それを見たトリガーは一回頷くと、グリージョから受け取ったエネルギーを自身の体に流して行く。

 

 やがてエネルギーがフルコンディションまでに回復し、カラータイマーも青に戻ったトリガーは再び立ち上がり、尚も嘲笑うように暗闇を飛び回るサンドロスに鋭い視線を向ける。

 

 「ありがとうアサヒちゃん。 君は十分頑張った。 君の思い、絶対に無駄にしない!」

 

 そう決心したケンゴは、最後のタイプチェンジに入る!

 

 

 《GLITTER TRIGGER ETERNITY!》

 

 《BOOT UP! GLITTER ZEPERION!》

 

 ケンゴは、取り出した『グリッタートリガーエタニティキー』のスイッチを押して起動させ、ガッツスパークレンスのグリップの底面に装填する。

 

 

 「宇宙を照らす、超古代の光! ウルトラマン、トリガァァァーッ!!」

 

 

 ケンゴはガッツスパークレンスを持った右手を大きく回して両腕を十字に組んだ後、ガッツスパークレンスを高く揚げて叫んだ後にトリガーを引く!

 

 ケンゴは金色も混ざった眩い光に包まれ、そしてダイヤ型の3色の光が飛び込んだ後、迸る金色のオーラの中で交差した光の中央から、変身が完了した『ウルトラマントリガー グリッタートリガーエタニティ』が右拳を突き出して飛び出す!

 

 《GLITTER TRIGGER ETERNITY!》

 

「デュアッ!!」

 

 体色は橙がかかった赤が主体で、手足やプロテクター部に金のアクセントカラーが施され、頭頂部から側頭部にかけて金の鋭角状の飾りが伸びており、3つに増えた菱形のカラータイマー『トライアングルクリスタル』が特徴の、神々しさに溢れている外見が特徴のグリッタートリガーエタニティは、金色のオーラを全身に纏いながら右拳を突き出して現れる。

 

 そしてそのまま両腕を交差した後、全身にエネルギーを集中させてカラータイマーから光を放出する!

 

 これは『トリガー・タイマーフラッシュ』のグリッターバージョンである!

 

 直視できない程の金色の眩い光は瞬く間に広範囲に広がって行き、その眩しさはグリージョも顔を両腕で覆って背ける程であり、サンドロスも闇から闇への移動を強制中断される程である。

 

 やがてグリッタートリガーエタニティの光は、闇を完全に消し飛ばし、太陽の光を取り戻す。

 

 そしてトリガーも、自身を覆っていた金色のオーラを消失させて姿を表す。

 

 「わぁ〜、とても煌びやかでカッコいいです!」

 

アサヒも、疲れすら忘れる程にその神々しい姿に見惚れていた。

 

 自身の闇を消し飛ばされたサンドロスは少し動揺するも、雄叫びを上げてトリガーに向かい始める!

 

 

 (BGM:Higher Fighter)

 

 

 トリガーも構えを取り、颯爽とサンドロスに走って向かい、やがて両者が組み合うと、その強力な力を持つ者同士のぶつかり合いにより周囲の地面から土砂が巻き上がる!

 

 トリガーはサンドロスの花状の右手と剣状の左手による攻撃を手刀で的確に弾く事で防いで行き、そして頭部に両手でチョップ、続けて右手で水平チョップを打ち込み、その後にサンドロスが反撃で振るった左手を回転しながらしゃがんでかわし、そのまま腹部に右肘を打ち込み、更に腹部に右足蹴りを叩き込んだ。

 

 サンドロスも負けてなく、トリガーがチョップを放った左手に噛み付く。

 

 トリガーは一瞬痛がるが、すぐさまサンドロスの頭部に右肘を打つ事で噛みつきを振り解き、更にアッパーで頭部をかち上げた後、胸部に後ろ回し蹴りを叩き込んで後退させる。

 

 トリガーは更に右腕に黄金のオーラを集め、パンチの動作に合わせて螺旋状の衝撃波を放ち、その直撃を受けたサンドロスは吹っ飛んだ!

 

 

 『妖麗戦士カルミラ』率いる闇の三巨人も狙っている、宇宙開闢と同等のエネルギーを秘めるとされる、超古代文明の秘密に関わる謎の物体『エタニティ・コア』の欠片の力で変身しているだけあって、闇の三巨人すら圧倒する強さを発揮してサンドロスと互角以上に戦うグリッタートリガーエタニティ。

 

 当初はその強大な力を制御出来ず消耗が激しくなるのが欠点だったが、『ウルトラマンリブット』との特訓を経てそれを克服して以降、3タイプで苦戦する相手を悉く撃破して来たのだ。

 

 

 一旦距離を取るトリガーとサンドロス。 サンドロスはトリガー目掛けて火炎弾を連射し始める。

 

 《GLITTER BLADE!》

 

 トリガーは右手をトライアングルクリスタルに翳す事でそこから出現する専用武器『グリッターブレード』を装着し、迫り来る火炎弾を次々と切り飛ばしながら走って接近して行く。

 

 そしてブレードをサンドロスの肩に当ててそのまま斜めに斬りつけ、その後回転しながら横一直線に斬撃を決め、更に先端の一突きを胸部に決めて後退させる。

 

 グリッターブレードでの攻撃が決まる度に、その部位から火花が飛び散る。

 

 サンドロスも左手の剣でグリッターブレードを受け止め、その隙に花状の左手で殴りつけようとするが、トリガーはそれを蹴りで弾き飛ばすと、グリッターブレードを振り上げ、頭部から縦一直線に斬撃を決め、サンドロスはブレードが走った部位から火花を散らしながら吹っ飛ぶ。

 

 押され始めたサンドロスは再び周囲を暗黒に染めようと再び頭部の角から黒煙を噴射し始める。

 

 「させるか!」

 

 ケンゴはそう叫ぶと、グリッターブレードのトライアングルクリスタル状のパーツを回転させ、赤色に合わせてパワーモードにしてトリガーを引いて『パワーフォトン』を発動させる。

 

 《POWER PHOTON!》

 

 トリガーは大地から激しく土砂を巻き上げながらジャンプし、赤いエネルギーを帯びた刀身を突き立て、それによりサンドロスの頭部の角は粉々に破壊され、黒煙放射は阻止された!

 

 

 続けてケンゴはグリッターブレードのトリガーを長押しした後、再びクリスタルを回転させ、青色に合わせたスカイモードにしてトリガーを引き、『エタニティバニッシュ』を発動させる。

 

 《COBALT!》

 

 《ETERNITY VANISH!》

 

 トリガーは全身に青い竜巻のようなエネルギーを纏い、サンドロスの周囲を高速旋回しながら切り刻む!

 

 そしてトリガーはサンドロスの胸部を蹴り、その反動を利用して一回転しながら飛んで着地する。

 

 

 グリッターブレードによる攻撃の連続によりだいぶ弱り、動きも鈍って来たサンドロス。

 

 今こそトドメの時である!

 

 

 ケンゴはグリッターブレードのトリガーを長押しした後、クリスタルを回転させ、紫色に合わせたマルチモードにしてトリガーを引き、『エタニティゼラデス』を発動させる。

 

 《VIOLET!》

 

 《ETERNITY ZERADES!》

 

 グリッタートリガーエタニティは全身で大の字を描いた後、全身を金色に輝かせ、その周囲に紫色の波動が巻き起こる。

 

 やがて横一直線状に三日月型の刃が生成され、グリッターブレードから放射される破壊光線と共に発射する!

 

 巨大な三日月型の光の刃はサンドロスの体を直撃し、やがて縦一直線に切り裂く形で貫通し、サンドロスは切り口から光を放ちながら動きを止める。

 

 

 トリガーは右手をトライアングルクリスタルに当てる事でグリッターブレードを収納すると、先程のマルチタイプのゼペリオン光線と同じ動作でエネルギーを溜めて行き、腕をL字に組んで必殺光線『グリッターゼペリオン光線』を放つ!

 

 グリッターの力により金色に強化されたゼペリオン光線はサンドロスを直撃し、やがてそれを浴びたサンドロスは金色の稲妻を放ちながら大爆発し、跡形も無く消し飛んだ!

 

 サンドロスを撃破したトリガーは、その爆発を前に、ゆっくりと光線の体勢を解いて悠然と立ってみせる。

 

 

 (BGM終了)

 

 

 「やったー!!」

 

 サンドロスを撃破したトリガーを見届けたアサヒは喜びの声を上げる。

 

 トリガーはその方に顔だけを向けて、ゆっくりと頷いた。

 

 

 変身を解除したケンゴは、地上でアサヒと合流する。

 

 「ありがとうございました。 ケンゴさんが来てくれたお陰です。」

 

 アサヒはケンゴに元気よくお礼を言う。

 

 「最後まで頑張ったアサヒちゃんのお陰でもあるよ。 現に君がエネルギーを譲ってくれたお陰で、僕は勝てたんだから。」

 

「あと…必死だったとはいえ、勝手に呼び出してすいませんでした。」

 

アサヒは再び赤い玉を手にし、ケンゴに一言謝罪した。

 

 「気にしないでいいよ。 たとえ違う世界でも、誰かの笑顔が曇りそうになっていたのなら、それを救えて僕は嬉しい。」

 

 笑顔でそう言うケンゴに、アサヒも再び嬉しそうな表情になる。

 

 

 アサヒは手にした赤い玉をしばらく見つめ始める。

 

 何でも願いを叶えるというワケで、数え切れない程の自身の欲しいものを浮かべるが、やがて赤い玉に頼らない事を選択する。

 

 「やっぱり、欲しいものは自分で頑張って手にする方が、ハッピーも大きいですもんね。」

 

それを聞いたケンゴもこう言った。

 

 「そうだね。それに、それが悪い人の手に渡ると、世界を滅ぼしかねない。 そうなると、笑顔も幸せも、全部消えちゃうし。」

 

 「私、この玉に、消えてもらうようにお願いしたいと思います。 …つまり、お別れになりますね。」

 

 アサヒは玉に消えるようにお願いする事にしたが、つまりそれは、その力によりこの世界に来たケンゴとの別れも意味する事を察する。

 

 「うん。でも離れていても、きっといつかまたどこかで会えるはず。 僕たちウルトラマンの絆は、永遠だからね。」

 

 ケンゴは笑顔でそう言いながら拳を突き出す。

 

 「はい! では私も、その絆を決して諦めません!」

 

 アサヒも満面の笑顔でそう言い、ケンゴの拳に自身の拳を合わせる。

 

 

 「あ、そうだ! お別れの前にお礼をさせてください! 最近、私の街で極上に美味しいラーメン屋さんが出来たんですよ!」

 

「お、いいね!食べてみたいな〜。 …“極上”か。」

 

 快くアサヒの誘いに乗りつつ、極上という言葉に反応するケンゴ。

 

 

 その頃、ケンゴの世界のそれが口癖でもある宇宙のトレジャーハンター『イグニス』は…。

 

 「へっ…へっ…ぶぇっくしょん!!」

 

 豪快にくしゃみをしてしまっていた。

 

 「誰だ誰だ? 俺の噂してんのは…?」

 

 

 ケンゴはアサヒの導きで綾香市に行き、お礼に新しく出来たラーメン屋をご馳走して貰った。

 

 そして、アサヒの実家でもあるセレクトショップ『クワトロM』にも寄った。

 

 最も、アサヒは父・ウシオと母・ミオにも、「新しい友達」としてケンゴを紹介したのだが、ウシオは彼氏と勘違いして取り乱した事も付け加えておこう(笑)

 

 更に余談だが、ウシオはまたしても独特なセンスのTシャツを開発してしまっていた…。

 

 赤と青、そして紫で彩られており、デカデカと金色で「引き金」と文字がプリントされたTシャツである。

 

 

 そして、いよいよ本当にケンゴとアサヒの別れの時が来た。

 

 (これ以上アサヒと二人っきりでい過ぎると、何処かの“ファルコン1”達が黙ってないだろうしね(笑))

 

 「はい、飴ちゃん。」

 

そう言ってアサヒは、飴を一つケンゴに手渡した。

 

 「最後のお礼です。 あと、仲良くなれた記念として。」

 

「ありがとう、アサヒちゃん。」

 

 「私、応援しています。 頑張ってくださいね。みんなのハッピーのために。」

 

「アサヒちゃんも、同じウルトラマンのお兄さん達と、みんなの笑顔のために力を合わせて頑張るんだぞ。」

 

 「はい!」

 

 元気よく返事をしたアサヒは、赤い玉を取り出して祈り始める。

 

 「玉よ…消えてください!」

 

 アサヒの願いを聞いた赤い玉は、青く変色し、やがて粒子状になって消滅する。

 

 それにより、ケンゴも光の粒子状になって消え始める。

 

 「ケンゴさん、本当にありがとうございました。 あなたに会えて私、ハッピーです!」

 

アサヒの最後のお礼の言葉を聞いたケンゴも、満面の笑顔を見せて最後の言葉をかけた。

 

 「アサヒちゃん、いいスマイルだ!」

 

やがてケンゴは笑顔のまま完全に光の粒子となって消え、元の世界に戻った。

 

 

 (BGM:なないろのたね)

 

 

 玉が消え、ケンゴが帰ったのを見届けた後、アサヒは新たに決心を決めた。

 

 「私、もっともっと頑張らなくちゃ! ウルトラマンとしても、人間としても。 お兄ちゃん達と肩を並べられるように。 そして、次またケンゴさんと会う時のために…!」

 

そう言うとアサヒは、ルンルンと歩きながら家へと向かって行った…。

 

 

 一方ケンゴは、いつの間にか気を失っていたみたいであり、目を覚ます。

 

 視界がまだ虚な中、辺りを見渡すと、見慣れた部屋の雰囲気が広がっており、やがて自身が、対怪獣用戦闘艇でもあるガッツセレクトの浮遊基地『ナースデッセイ号』のブリッジにいる事に気づく。

 

 「さっきのは…夢だったの…?」

 

譫言のようにそう呟いたその時、誰かがけたたましく手を叩く音により完全に目が覚める。

 

 「お〜い寝坊助!いつまで寝てんだ?出動だ。」

 

手を叩きながらそう言ったのは、ガッツセレクトのオペレーターの宇宙人隊員『メトロン星人マルゥル』である。

 

 「出動…もしかして怪獣?」

 

「違う。異常な現象が起きたから、その調査だって。」

 

そう言ったのは、シズマ財団の令嬢でもある女子高生隊員『シズマ・ユナ』である。

 

 因みに彼女は、かつて3000万年前、闇の軍勢に対抗する「地球星警護団」の一人としてトリガーと共に戦った超古代人の巫女『ユザレ』の末裔であるという運命も背負っている。

 

 「先程クララシティに異常な現象が発生し、怪獣の恐れもあるという事から、調査の依頼が来た。 マナカ隊員とヒジリ、シズマ隊員は現地の調査、ナナセ隊員は万が一のためにガッツファルコンのスタンバイをしておけ!」

 

「「「ラジャー!」」」

 

「喜んで。」

 

ガッツセレクトの隊長の『タツミ・セイヤ』の指示を受けて3人、そしてガッツファルコンのパイロットである隊員『ナナセヒマリ』は了解の返事をする。

 

 「よ〜し!俺も万が一のため、スタンバイだ!」

 

 ナースデッセイ号のパイロットでもある、体育会系の最年長隊員『サクマ・テッシン』もやる気十分である。

 

 

 皆がそれぞれ出動や出撃の準備に入る中、ケンゴはふと胸のポケットに手を当て、その中から何かを取り出した。

 

 それは、先程アサヒから、別れ際に貰った一つの飴玉であった。

 

 「…あれは、夢じゃなかったんだ…!」

 

 別世界のウルトラウーマンと共闘、交流した事が夢じゃなかった事を確信したケンゴは、満面の笑顔になる。

 

 「なーに一人でニヤニヤしてんだ?」

 

 そうケンゴに声をかけたのは、ガッツセレクトの技術開発担当でもあり、ケンゴとユナと出動する事も多い高校生隊員『ヒジリ・アキト』である。

 

 因みに彼は、変身アイテムのガッツスパークレンスとガッツハイパーキーの開発者でもある。

 

 「ううん、なんでもない。」 ケンゴは少し慌て気味にそう言った。

 

「フッ、行くぞ。」

 

そう言うとアキトはユナと共に出動を始め、ケンゴも少し遅れて後を追う。

 

 

 (アサヒちゃん、俺は引き続き頑張る。 だからアサヒちゃんも頑張ってね。 みんなの笑顔、そして、幸せを守るために…!)

 

 

 異世界を超えて出会った、ウルトラマンに変身する二人の若者。

 

 彼らはこれからももっと強くなれるであろう。

 

 それぞれの、守りたいモノたちのために。

 

 

 (BGM終了)

 

 

 (ED:明日見る者たち)

 

 

〈エピローグ〉

 

 

 地球の目前にある宇宙空間にて。

 

 突如、大きな金色のワームホールが開き、その中から三体の黄金の巨人が現れる。

 

 この3人は、究極生命体を自称し、様々な次元・時間軸で暗躍する知的生命体『アブソリューティアン』の戦士達である。

 

 これまで多くの謎に包まれていた一族だったが、その正体はディファレター光線で進化したウルトラ戦士達と同様に、カスケード光線というエネルギーで究極生命体に進化した一族だという事が最近判明している。

 

 現時点で確認出来る戦士は、両手の赤いクリスタルから「ナラク」とも言われる先程のワームホールを出現させる事が出来る『アブソリュートタルタロス』、マッシブな体型と、頭部の牛のような角が特徴の『アブソリュートディアボロ』、騎士や兵士のようなマスクに、剣を武器にするのが特徴の『アブソリュートティターン』の3人である。

 

 「赤い玉にスコーピスの大群、そしてサンドロス…欲しいものは全て与えたはず。」

 

 このタルタロスの発言から、恐らく先程レギュラン星人が持っていて、アサヒの願いにより消滅した赤い玉はタルタロスが与えたものであり、そしてそれにより呼び出されたサンドロスにスコーピスの大群も、タルタロスが連れて来た並行同位体だと思われる。

 

「レギュラン星人め、それらを全部無駄にしやがって!」

 

「まぁ良いだろう。 我々の計画に支障が出るわけでもないからな。」

 

レギュラン星人に苛立ちを感じるディアボロを、ティターンは宥めた。

 

 「そうだ。 我々の計画は、新たなザ・キングダムを築く事。 行くぞ。」(とはいえ、少しはウルトラ戦士達を誘き寄せる囮になってくれると思っていたがな…。)

 

 タルタロスはそう言うと、ワームホールを出現させ、ディアボロ、ティターンと共にその中へと入って行き、やがて3人が入った後ワームホールは消えた。

 

 

 奴らの狙いは、ディファレター光線よりも強力なカスケード光線の制御出来ない力により母星の寿命が削れているため、ウルトラマン達の故郷・光の国をアブソリューティアンの新たな母星とし、新たな『ザ・キングダム』を築く事である…。

 

 

 果たしてウルトラ戦士達はそれを止められるのか? そして、囚われたユリアンの運命は…?

 

 

 彼らとウルトラ戦士達の今後のバトルの行方も気になる所である…。

 

 

 〈完〉




 読んでいただきありがとうございます!


 今回は「私なりのトリガーとグリージョの出会いを書いてみたい」という、所謂ちょっとした遊び心として制作してみました。

 なので、本作のオリジナル主要人物(竜野櫂、新田真美など)が一切登場しないという異色の回にもなりました(笑)


 ウルトラマントリガーは、正に令和のティガって感じがしてとてもカッコよく、内容もハードで見応えあるもので、毎週楽しみに見ています!

 今後、闇の巨人達とどう決着が着くのか…非常に楽しみですね!(年内にウルトラマンが終わらなかったのって結構久しぶりな気がする…メビウス以来か?)

 どのタイプもカッコよくて強くて最高ですね! 因みに私はバトルシーンだとゼットやリブット、ティガとの共闘、そしてアボラス&バニラ戦で見せてくれた、トリガーダークとのタッグ戦ですね!

 トリガーもグリージョもまたいつか、本作に登場させたいです!


 また、今年情報が解禁された『ウルトラギャラクシーファイト 運命の衝突』もとても楽しみですね!

 今年配信されるらしいですが、前作以上に隠し球があって、ボリューム満点の作品になりそうな予感がします!

 最近配信されたプロローグの時点でもコスモスの3形態、そしてリドリアスも登場してかなり衝撃を受けました!

 あと、個人的にはゼアス&ナイス&ボーイVSレイバトスも早く見たいです!(絶対コミカルなバトルになりそう笑)

 まだ謎に包まれてる新ウルトラマン・レグロスもカッコいいので、早く活躍シーンが見たいですね!

更に、今年の春公開される劇場版トリガーに登場するイーヴィルトリガーもとてもカッコいいから楽しみですし、他にもウルクロD、シン・ウルトラマンなど、既に楽しみが目白押しです!


 後書きが長くなって&勝手に興奮してしまって申し訳ありません。


 今年も時間を見つけては作品を制作して行こうと思いますので、宜しければ今年もよろしくお願いします!


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています!


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番外編「明日の彼方へ」

 新年、明けましておめでとうございます!


 去年も一話しか投稿出来ませんでしたが、今年も頑張って行きたいと思います!


 今回は年末年始特別編と言う意味も込めた番外編で、登場するのは去年、『ウルトラマンダイナ25周年』を記して登場したあのウルトラマンです!

 相変わらず文才は無く、ストーリー展開も少々強引な所もあるかもしれませんが、とりあえず楽しんでもらえたら幸いです!


 そして宜しければ、今年も本作やその他の作品、そして、特撮ヒーロー(特にウルトラマン)大好きな私・剣音レツをよろしくお願いします!


 では、どうぞ!


 (OP:ULTRA BRAVE)

 

 

 これは、宇宙進出に向けての開発技術が飛躍的に進んだ『ネオフロンティア時代』を迎えたとある世界。

 

 そこで戦う若者たちの物語である…。

 

 

 ある日の晴れ渡った昼下がり。 1人の少女と、1匹の珍獣の出会いから始まった。

 

 

 その少女は、ルンルンと町を歩きながらとある小さな公園を通り過ぎようとした時、何かに気づいて振り向く。

 

 そこには、晴れの日差しを全身に浴びるかの如く元気よくそびえ立つ公園の木の根本で、座り込んで泣いている1匹の珍獣がいた。

 

 その珍獣は、小さな体に黄色を基調とした体毛、青い目、細長い耳、そして背中に羽が生えているのが特徴であり、更に鳴き声は「パムー」と、少なくとも地球上では見た事ないような姿をしていた。

 

 大粒の涙を流しながら泣き続けるその珍獣に、少女は話しかけてみる。

 

 「ねぇ君、大丈夫?」

 

 少女に声をかけられた珍獣は一旦涙を止め、恐る恐る顔を上げる。 そこには優しい表情で自身を見つめる少女の顔があった。

 

 「何を泣いてるの?」

 

少女は再び声をかけるが、珍獣は再び泣き始めてしまい、さっきよりも勢いよく涙を噴き出すその姿に少女は少し困惑も含めた表情で体を少しのけぞって驚く。

 

 

 泣いてばかりいる珍獣に困り果てた少女は、とりあえずこう声をかける。

 

 「じゃあさ、私と遊ぼ?」

 

 そう言って手を差し伸べる少女に、珍獣は再び涙を止めて顔を上げる。

 

 「私、ユウコ。 よろしくね。」

 

 更に満面の笑みで自己紹介をする少女・ユウコを見て、珍獣はやがて完全に泣き止む。

 

 見ず知らずながら、自身を心配してくれる彼女に心を開き始めたのであろうか。

 

 

 その後、ユウコはその珍獣と公園でボール遊びをしたり、マンションに戻ってお絵描きをしたりなどして遊び、夜は一緒に寝るほどまでに仲良くなっていた。

 

 

 私・ユウコは、街の小さな公園で出会ったその珍獣と、すぐに仲良くなりした。

 

 一体どこから来たのかまだわからないけど、その子と過ごす時間はとても楽しく、その子は私とエリーの本当の家族のようになって行きました。

 

 え?エリーって何かって? それはね、私のお友達。

 

 

 因みに実は彼女・ユウコは地球人ではなく、『変身怪人ピット星人』の少女である。

 

 元々は1人で宇宙を旅していたが、宇宙船の故障により地球に不時着し、そのまま仲間の救援を待っていたが、そこにこの地球にやって来た『宇宙浮遊物体スフィア』の襲来によりそれが叶わぬ事態となり、右も左も分からぬまま地球での生活をスタートさせた。

 

 エリーはそんな彼女の宇宙一人旅の際に行動を共にしていた『宇宙怪獣エレキング』のペットである。

 

 

 スフィアとは、突如宇宙から襲来した球状の地球外生命体であり、他の物体や生命体に寄生して『スフィア合成獣』を生み出したり、人間の同化・吸収、電磁パルスを発して人類側の無人操縦兵器を無力化させる事も出来る。

 

 更に奴らは襲来の際に地球を自身らのバリアで覆っており、ユウコが地球から出られなくなったのもそのためである。

 

 母機と思われる『巨大宇宙球体キングスフィア』や、そのキングスフィアから生み出される『精強宇宙球体スフィアソルジャー』の2種類存在し、その正体は、数百年後の更なる宇宙へ進出した人類が遭遇する「宇宙の摂理」とも言われており、その目的は、進んだ文明のある惑星や強い力を持った生物を呑み込み、自らの一部とする事とも言われているが、その多くはまだ謎に包まれた存在でもある。

 

 

 そう、この地球は、スフィアがバリアで覆った事により、地球内のモノは地球外に出られなく、地球外のモノは地球内に入られなくなっている状態でもあった。

 

 

 そんな状況でも、ユウコは地球人で元気に暮らし、そこでの様々な出会いを経て今では馴染んでいる状態であった。

 

 

 数日後の晴れ渡った昼間、ユウコはその珍獣と散歩をしていた。

 

 「今日は何して遊ぼうか?ハネちゃん。」

 

「パムー!」

 

 ユウコの満面の笑みでの問いかけに元気よく返事をする『ハネちゃん』と名付けられた珍獣。

 

 因みに名付けた理由は、「羽が生えているから」という割と安直なものであった(笑)

 

 

 …実を言うと、別世界でも、このハネちゃんと姿や鳴き声が全く同じ珍獣が、「羽が生えているから」という安直な理由で『ハネジロー』と呼ばれた事がある。

 

 その世界では、そう名付けられて以降しばらくはその世界の防衛チーム『スーパーGUTS』のマスコット的存在となっていたが、その正体は『ムーキット』という名のファビラス星の生物であり、そこの住人の『ファビラス星人』から「平和を招く神」として崇められていた存在であった。

 

 ファビラス星人とは、惑星の衝突で故郷であるファビラス星及びほとんどのムーキットを失った後、ミクロ化した80億もの同胞たちを乗せた宇宙船で新たな新天地を探している宇宙人である。

 

 

 このハネちゃんは、恐らくこの時空のファビラス星人のムーキットの一匹であり、何かしらの形で主人とはぐれたのであろう…。

 

 

 ここで一旦場面を戻そう。

 

 「かけっことか、かくれんぼとか…。」

 

ルンルンと歩きながらそう言うユウコ。

 

 

 因みにこの時、もう1人のとある少女も一緒であった。

 

「悪いね、2人とも。私のトレーニングに付き合わせちゃった。」

 

その少女は首にかけたタオルで額の汗をふきながら気さくにそう言う。

 

 「いいよいいよミカちゃん。 私もハネちゃんも楽しかったし。」

 

 「パムー!」

 

 ミカという名のその少女に、ユウコもハネちゃんも元気よく返事をした。

 

 

 因みに言うと、このミカという少女も地球人ではない。

 

 彼女は「ヘラクレス座M-16惑星グレゴール星」出身の、『宇宙格闘士グレゴール人』の1人である。

 

 彼女には「宇宙最強の格闘チャンピオン」「鋼の魔人」の異名を持つ格闘家の『グレース』という父が存在し、元々はかつてこの地球の守りについていた超古代の光の巨人『ウルトラマントリガー』と決闘するために、娘と共に地球に来訪したが、地球がすっかり平和になった事で諦めてグレゴール星に帰ろうとした所、今度はスフィアの侵略により帰れなくなってしまった。

 

 そう、彼ら親子も、ユウコと同様、スフィアの被害を受けた難民である。

 

 やむを得ず地球で働きながら生活を始めたが、元々格闘家一本だった故にどの仕事も上手く行かない父・グレースをサポートしながら、夕食がパンの耳になる程までの困窮した生活を送っていたが、この地球のとある組織、そしてとある光の巨人との出会いを経て、現在はそれらが改善されつつある。

 

 

 そのとある組織、及び巨人についてはまた後ほど。

 

 

 ユウコとミカは、境遇が似ているという事もあっていつの間にか仲良くなっていた。

 

 そして、一人ぼっちで寂しそうにしていたハネちゃんを見て、ふと以前の自分と重なって放っておけなかったのであろう。

 

 そんなハネちゃんも、今では彼女たちとすっかり仲良くなっていた。

 

 そんな2人と1匹は、尚も楽しそうな話しながら公園の歩道を歩いていた。

 

 

 「じゃあ、トレーニングと一石二鳥にもなるし、かけっこにしよっか!」

 

「賛成!」 「パムー!」

 

 ミカの提案にユウコは賛成し、ハネちゃんも「僕も負けないぞ」とばかりに元気よく浮遊しながら賛成する。

 

 「それにしてもミカちゃん、ほんとにストイックだね。」

 

 「パパが引退したら、今度は私が格闘チャンピオンになるんだから! でもハネちゃん、飛べちゃうなんてちょっとズルいな〜。」

 

 一同が笑い合っていたその時であった。

 

 

 「ちょっといいかな? お嬢ちゃん達。」

 

 何処からか、聞き覚えのない男性の声が聞こえて、2人は振り向く。

 

 しかし、何故かハネちゃんだけはその声を聞いた瞬間、ユウコの後ろに隠れた。

 

 

 2人が振り向いた先には、茶髪で、ベージュのステンカラーコートを着用した長身の男性が立っていた。

 

 「ちょっとこの辺で、ゴクジョー見かけなかったかい?」

 

 男性は続けて軽い口調で問いかけるが、2人はいきなりな事に困惑するだけである。

 

 「極上…?って、一体何の事ですか…?」 「そもそも、あなた誰なのですか?」

 

 「俺か? 俺は宇宙一のトレジャーハンター。 銀河を股にかけ、ゴクジョーなものだけを手に入れる。」

 

 「ゴクジョー…?」

 

 男はユウコ達の問いかけに自己紹介らしきものをした後、ユウコの疑問の発言を他所に写真を取り出して2人に見せつける。

 

 「んで、今俺はこのゴクジョー探してるんだけど、何か心当たりある?」

 

 ユウコとミカは写真を覗き込むように見てみる。男が差し出した写真には、綺麗な半透明の結晶が集まって出来たアートのようなものが写っていた。

 

 「う〜ん…見覚えは、無いかな。」 「こんな綺麗なもの、一度見たらハッキリ覚えてるはずだもんね。」

 

 どうやら2人とも案の定、覚えがないみたいである。

 

 

 一方で、ユウコの後ろに隠れているハネちゃんは、怯えるような様子ながら、その写真のものが気になっているかのように時折顔を少し出したりしていた。

 

 

 「そうか〜、悪いね。手間取らせちゃって。」

 

 男はそう言いながら写真をしまう。

 

 「ま、もしそれらしきものを見かけたら教えてよ。 最も、君たちが知らせる前に、こっちから来ちゃうかもしれないけどね。 んじゃ。」

 

 男は最後にそう言うと、あっという間にその場から姿を消すように立ち去った。

 

 

 「…何だったんだろう? さっきの人…。」

 

「さぁね…。 私たちと同じ、スフィアの難民なのかな? ちょっと風変わりな感じだったけどね。」

 

 ユウコもミカも困惑がまだ取れきっていなかった。

 

 

 その時、ユウコはここでハネちゃんの異変に気づく。

 

 男が現れた時から、何やらさっきまでの元気は少し無くなっているようであった。

 

 「どうしたの?ハネちゃん…。」 「パム〜…。」

 

 ユウコは優しく話しかけるが、ハネちゃんは尚も俯いたまま弱々しく鳴くだけであった…。

 

 

 一方、先程2人の前から姿を消した男は、2人からある程度離れた木の影に隠れて、様子を伺っていた。

 

 「あのスノーアートを一刻も早く奴から奪い返して俺のものにしないとな…。 それに、あのムーキットも一緒って事は、程なくしてあの子たちも巻き込まれる可能性もある…。 その時、間違いなく奴も出て来るだろうしな。」

 

 男はそう呟くと、引き続き様子を伺い始めた。 どうやら発言からして、単にそのスノーアートを狙っているだけでは無く、何やらそのスノーアートも関わる大事に彼女たちを巻き込まないように奪う事も考えているようであり、少なくとも悪党ではない様子である。

 

 

 ここで、その男について紹介しよう。

 

 彼の名はリシュリア星出身のトレジャーハンター『イグニス』である。

 

 先程も言っていたように「ゴクジョー」が口癖であり、自身にとって極上なお宝だけを手に入れるために銀河を旅する者である。

 

 以前に、100年以上前にリシュリア星を滅ぼした、闇の巨人の1人『俊敏策士ヒュドラム』を狙って地球に来た事もあり、その当時、地球の守りについていた防衛チーム『GUTS-SELECT』(以降:ガッツセレクト)と接触を繰り返すなどをして行き、その経緯で入手した『暗黒勇士トリガーダーク』の力も使い、彼らやトリガーの協力も得ながらヒュドラムを伐った後、トリガーと共に引き続き闇の力に立ち向かい、全ての戦いが終わった後、リシュリア星を復活させる方法を探すためにトレジャーハンターとして何処かへ去っている。

 

 今回は、その写真に写っているスノーアートを狙って来たと思われる。

 

 

 場面を2人に戻そう。2人がハネちゃんの心配をしている時、また新たに話しかけて来る声が聞こえ始める。

 

 「あれ? ユウコちゃんにミカちゃん。」

 

 突然、名前を呼ばれた2人は、ほぼ反射的にその声の方を振り向く。

 

 その反応の速さは、その声にまるで聞き覚えがあるかのようである。

 

 2人の目線の先には、爽やかなイケメン顔に、黒とグレー、オレンジが基調の上下セパレート式の隊員服にグローブやヘルメットを着用している青年がいた。

 

 「あ、カナタさん…!」 「久しぶり〜!」

 

 「久しぶりだな〜!」

 

 2人も、どうやらその青年とは顔見知りな様子であった。

 

 

 彼の名は、トリガーと闇の巨人たちの激闘から8年後、対スフィア部隊として再編成されたガッツセレクトの隊員『アスミ・カナタ』である。

 

 すると、カナタに少し遅れて更に2人の隊員『リュウモン・ソウマ』と『キリノ・イチカ』も合流する。

 

 「あ、イチカちゃんも久しぶり!」 「久しぶり、ユウコちゃん。」

 

 どうやら、イチカとユウコも以前知り合い済みな模様。

 

 「奇遇だな、ここでいっぺんに再会するとは。」

 

 リュウモンはそう言った。

 

 「どうしたのカナタ。 パパはまだ病み上がりだから万全じゃないよ。」

 

 「そうか、それは残念…いや、君のパパと試合がしたいんじゃなくて、2人は何か近くで怪しいものとか見なかった?」

 

 ミカの発言にカナタはノリツッコミ気味で反応した後、2人に問いかけた。

 

 なんでも、ガッツセレクトはここ最近、各地で異常な電波反応等をキャッチしており、更に、4日前の夜は近くの街で『電脳魔人テラフェイザー』が怪獣と戦ったと言う情報まで入っていると言う。

 

 

 様々な気になる情報を耳にしつつも、特にそれらしきものを見た覚えがない彼女らは、困惑しつつも、とりあえず先程、ゴクジョーの男の人(イグニス)に似たような質問をされた事を伝える。

 

 それを聞いた3人は、その「ゴクジョー」というワードをヒントに、何か心当たりがありそうな感じであった。

 

 「“ゴクジョー”が口癖の男の人…その人ってまさか…。」

 

 リュウモンが何か思い出しそうになったその時。

 

 

 「…ん…?」

 

 カナタが何かに気づき、イチカも続いてその方を向く。

 

 2人の目に入ったのは、ユウコの後ろに隠れてたがいつの間にか姿を見せていたハネちゃんだった。

 

 「「ハネジローそっくり!」」

 

 「ホントだ…!」

 

 カナタとイチカの声がハモり、リュウモンもそれに続いて反応した。

 

 

 一方、ガッツセレクトの移動作戦司令室兼対怪獣用戦闘艇『ナースデッセイ号』の司令室で待機しているその“ハネジロー”も、モニターでその様子を見て反応していた。

 

 「…確かに、私に似ている…!」

 

 ハネジロー。正式名は『電脳友機HANE2』であり、TPU宇宙開発センターにより開発・製造されたAIユニットである。

 

 

 自分達のAIユニットにソックリとはいえ、見た事のない生命体を珍しがりながらも、カナタ達はハネちゃんについてユウコ達に問いかける。

 

 「その子、一体どこで知り合ったんだ?」

 

「3日前、近くの公園で1人寂しそうにしてたのを見つけて、それをキッカケに仲良くなったの。 どこから来たかはまだ分からないけど…。」

 

「3日前…? テラフェイザーが怪獣と戦った翌日で、ちょうど謎の電磁波をキャッチし始めた日でもあるわね。」

 

 ユウコの返答に対し、イチカはそう言った。

 

 「どうやらこの子が鍵になりそうだな。 良かったら話してくれないか?」

 

 カナタはハネちゃんの目線までしゃがんで語りかけるが、それでもハネちゃんは俯いたまま、話すのを渋り続ける…。

 

 この様子から、カナタ達が探っているものと何かしら関係があるのは確かみたいだが…。

 

 

 その時、リュウモンは何かに気づき、声をかける。

 

 「どうやら何か知ってるっぽいな。 姿を現したらどうなんだ?」

 

リュウモンの発言を合図に、その方向に、カナタとイチカ、そしてユウコ達も振り向く。

 

 

 「やれやれ、どうやら既に、見通されてたってワケか。」

 

 一同の視線の先の木の後ろから現れたのは、イグニスであった。

 

 どうやらリュウモンは、イグニスが隠れてこちらのやり取りを伺っていたのに気づき、それと同時にその様子から、ハネちゃんの事情等も何か知っているのだろうと見抜いたのであろう。

 

 流石は“見つめる天才”と言われるだけはある。

 

 「あ、さっきのゴクジョーの人…!」

 

「アンタは…もしかして、イグニス?」

 

 ミカが反応した直後、カナタは見事に名前を当てて見せる。

 

 「お?まさか俺の名を知ってる者がここにもいたとは、俺も有名になったものだね〜。」

 

 イグニスは軽い口調でそう言った。

 

恐らくカナタは、以前トリガーと共闘した際、その変身者の『マナカ・ケンゴ』からイグニスの事も多少聞いていたのであろう。

 

 「イグニス…もしかして、あのトレジャーハンターのか?」

 

 「先輩たちと、何度か共闘もしたという…?」

 

 誰かから聞いたのか、ガッツセレクトにデータが残っていたのか、リュウモンやイチカもイグニスを知っているようであった。

 

 「そ、俺は宇宙一のトレジャーハンター・イグニスだ。 そこのお坊ちゃんの言う通り、そのムーキットちゃんの事も知っている。」

 

 「本当?」 「教えてください。ハネちゃんに何があったか。」

 

 「おけおけ、これから話すからよ〜く聞いてな。」

 

 ミカやユウコの食い入るような申し出を軽く宥めると、イグニスは語り始めた。

 

 

 イグニスは元々、『友好宇宙人ルリヤ星人』の決死の努力により中に“宇宙の悪魔”を封印し閉じ込めたと言われている結晶体・スノーアートを、新たなゴクジョーとして狙っていた。

 

 だがその最中、同じくスノーアートを狙っていた『泥棒怪獣ドロボン』によって先を越され、スノーアートを横取りされてしまった。

 

 イグニスは取り返そうと試みたが、他人から盗んだものだけで生活するとも言われているドロボンが、何処かの宇宙人を殺害し、その宇宙人から盗んだ『バトルナイザー』から繰り出される怪獣、そして、ドロボン自身の戦闘力により攻めあぐね、まんまと逃げられてしまう。

 

 そしてドロボンは、新たに地球を盗みの場に決めて侵入し、イグニスもそれを追って地球に来た。

 

 またイグニスは、その最中にドロボンの「いずれは太陽系の惑星全てを征服する」という壮大な企みも知ったという。

 

 恐らく盗みを働いているのは、そのための戦力を集めるためでもあるのだろう。

 

 

 「マジかよ…そんなやべぇ宇宙人が、地球に侵入していたなんて…!」

 

 驚愕を隠せないカナタ。

 

 「でも、地球は今、スフィアのバリアに覆われてるはず…あなたはどうやって地球に入れたの?」

 

 イチカは問いかけた。

 

「ちょっとした、天才君の力も借りてね。」

 

 そう言うとイグニスが自慢げに取り出したのは、スフィアソルジャーの『ガッツハイパーキー』であった。

 

 ドロボンを追う道中、スフィアバリヤーにより地球に入れない事に気づいたイグニスは、火星に立ち寄り、そこで宇宙開発のために活動していた旧ガッツセレクトのメンバーの1人『ヒジリ・アキト』に、バリアを突破して地球に入るための手段として作ってもらったのだろう。

 

 アキトも、地球に向かうのをケンゴ(トリガー)ではなくイグニスに任せたのは、その頃ケンゴはちょうど火星の別の基地を襲撃しているスフィアの相手をしている最中だったからである。

 

 

 そしてイグニスは次にハネちゃんの事を話し始める。

 

 以前は主人のファビラス星人と共に宇宙を旅しており、その道中に地球に辿り着いたのだが、運悪くそのタイミングでスフィアがバリアを張ったため、地球から出られなくなってしまった。

 

 その後、地球のあちこちを宇宙船で飛び回って旅しながら、主人のファビラス星人と共にいつか地球から出られると信じながら楽しく生活していた。

 

 だが、4日前に地球に侵入したドロボンの襲撃に遭い、その際に主人と離れ離れになってしまったのだと言う。

 

 

 「俺がもうちょい早く来れてれば、その子が一人ぼっちになる事はなかったハズなんだけどな…。」

 

 イグニスは少し罪悪感も含めて呟いた。

 

 

 すると、ハネちゃんは遂に意を決したのか、目を発行させて、一同の前にモニターを映し始める。

 

 ムーキットが持つ能力であり、自身の記憶を映像化して投影する能力である。

 

 

 一同が見るその映像には、とある夜の街でテラフェイザーが『宇宙伝説魔獣メツオーガ』と戦っている様子が映っていた。

 

 テラフェイザーは右腕のクローアームによる打撃や、左腕のTRビーム砲からのビームで応戦する。近くにあるものを食らい尽くす生態を持つメツオーガも、その巨体を振るわせながら、体当たりなどで反撃し、大口でテラフェイザーを捕食するために噛みつこうとするが、テラフェイザーは即座に上空に飛び立つ事で回避し、再びクローアームによる連続パンチやビームなどで反撃して行く。

 

 その激しい激闘の最中、たまたま近くを飛んでいたファビラス星人の宇宙船は、急いでその場から退避しようとしたが、運悪くメツオーガの尻尾に当たってしまい、操縦不能になった宇宙船が落下していく中、ハネちゃんの身を案じた主人は、ハネちゃんだけたまご型のカプセルで緊急脱出させた。

 

 それ後、宇宙船は地上に不時着し、ハネちゃんを入れたカプセルは、そこから離れた場所に落下し、ハネちゃんはそこで1人寂しい1夜を過ごしたのだと言う。

 

 

 因みにその後、メツオーガはテラフェイザーのビームを大口で食らって行き、パンチを放ったクロウアームに噛みつきそのまま捕食しようとするが、そこにTRビーム砲から放った、エレキングの力を使った三日月型電撃ビームを受けた事で離してしまう。

 

 そしてテラフェイザーは、続けてゴモラの力を使った超振動波の効果を持った赤色のビームを放ち、メツオーガはそれを正面から食らって行く。

 

 だが、それにより一旦吸い込んだエネルギーが喉袋に相当する器官に集積された事により隙が出来てしまい、そこを突いたテラフェイザーのクロウアームで首を掴まれてそのまま持ち上げられると、その間にチャージが完了していた最大の砲撃武装『TRメガバスター』が発射され、その直撃を喰らったメツオーガは動きを止めた。

 

 

 メツオーガが沈黙したのを確認すると、テラフェイザーはその場から姿を消して去ったが、その直後にメツオーガはカード型のエネルギー体となって何処かへと飛んで行ったのは誰も知らない…。

 

 

 因みにテラフェイザーは、数百年後の未来から時空を超えてやって来て、TPUの技術局に『アサカゲ・ユウイチロウ』博士として潜伏もしていた異星人『バズド星人アガムス』が開発した、対ウルトラマンデッカー用戦闘兵器である。

 

 アガムスがこの時代の地球に来たのは、故郷のバズド星がスフィアにより危機的状況に陥ったのは、地球が宇宙進出した事によるものであるという考えから地球に復讐心を持つようになったからである。

 

 恐らく今回は、現れたメツオーガが自身の野望の妨げになると判断して対処したのだと思われ、対処出来たのも、TPUにいた頃、以前メツオーガと戦った事がある旧ガッツセレクトが残したと思われるデータをどこかで見たためなのであろう。

 

 邪魔になると判断したのも、その際にそのメツオーガの恐ろしい生態を知り、放っておけば地球だけでなく自身も食われる恐れがあって危険だと判断したためだと思われる。

 

 

 映像が終わると、一同は少し深刻そうな表情になる。 

 

 「そうか…お前の主人は、あの怪獣に…。」 「パム〜…。」

 

 カナタの発言に、ハネちゃんは元気無く返事をする。

 

 

 イグニスがハネちゃんの事情や、その主人のファビラス星人の事を知っているのは、以前、宇宙のゴクジョー探しの旅の最中、とある惑星でその主人のファビラス星人と知り合った事があるからである。

 

 その際に、彼の宇宙船も覚えおり、イグニスが地球に着いたのも、ちょうどその宇宙船がメツオーガに撃墜されている時で、イグニスはそれを目撃した後、不時着の衝撃でだいぶ弱っていたそのファビラス星人になんとか会って、諸々の事情を聞く事が出来たのだが、その直後に謎の黒いエネルギー体のようなものにファビラス星人が連れ去られ、それにより離れ離れになってしまったのだという。

 

 

 「そっか…それは辛かったね。」

 

 ユウコはそう言いながらハネちゃんを優しく撫でた。

 

 

 やがてカナタは、このしんみりした空気を振り払うかのように、一旦悩むのをやめて提案する。

 

 「よし分かった! じゃあ、この子の主人を見つけるために、TPUの上層部にも掛け合うよう、隊長に頼んでみるか!」

 カナタの思いもしない提案に、ユウコとミカは少し驚く。

 

 「え…?そういう事も出来るの?」 「そもそも生きてるかどうかも分からないのに…?」

 

 そこにリュウモンとイチカも発言する。

 

 「そもそも、もし仮に死んでたとしたら、3日の間に遅かれ早かれTPUがその遺骸を見つけてるハズだしな。」

 

「その情報がガッツセレクトにも来てないって事は、もしかしたらまだ何処かで生きてる可能性もありそうじゃない?」

 

 3人の発言に、ユウコもミカも納得しつつあった。

 

 「俺、じいちゃんに言われた事あるんだ。「お前はお前の信じる道を行け」と。 俺は信じる。その子の主人がまだ生きてると。 だから、ミカちゃん達ももし少しでもその気があるのなら、信じてみようぜ!」

 

 爽やかな笑顔でそう言うカナタの発言が決め手となり、ユウコとミカもハネちゃんの主人捜索の協力をTPUに頼む決心をする。

 

 「私と出会った時のハネちゃん、とても悲しそうだった…。 私も、そんなハネちゃんの力になりたい。」

 

「同じスフィアの難民同士でもあるもんね。 困った時はお互い様だし。」

 

 

 「よし、決まりだな!」

 

カナタはそう言うが、ハネちゃんは何やら不安そうに鳴き声を発していた。

 

 「どうしたの?ハネちゃん。」とユウコ。

 

 すると、イグニスはハネちゃんが何が言いたいのかを代弁する。

 

 「その子、TPUが自分の主人を見つけたら、事情とか関係なしに自分と共に捕獲して尋問したり検査したりするんじゃないか?と不安になってるんじゃないのか?」

 

イグニスの代弁に、ハネちゃんはゆっくりと頷き、そのまま俯いた。

 

 

 「大丈夫だよ。 TPUは、そんな融通の効かない組織なんかじゃない。」

 

 歩み寄ってそう語りかけるイチカに、ハネちゃんは顔を上げ始める。

 

 「そうだよハネちゃん。 私たちだって、TPUに助けてもらった事もあるし。」

 

ユウコもそう続けた。 以前、ユウコはエリーが電気を食べ過ぎて巨大化して暴れた際、ミカは父・グレースと共に困窮した生活を送っていた際に、TPUの助けを得ている。

 

 また、グレースが、(ミカの想いもあって)ガッツセレクトに試合を申し込んだ際も、それを引き受けた事もある。

 

 

 次に、幼い頃に怪獣災害からTPUに助けられた事もあるリュウモンが、その際に「勇気の証」として手渡されたTPUのワッペンを手に言った。

 

 「TPUは、いつも弱い者の味方だ。 俺の今があるのも、TPUのお陰でもあるしな。」

 

 

 ハネちゃんは、さっきまで俯いていた顔が気がつけば上がっていて、まっすぐカナタ達の方を見ていた。

 

 次第にガッツセレクト3人にも心を開いているのである。

 

 「必ず、主人に会わせてやる。約束しよう。」

 

 カナタはそう言うと、ハネちゃんに軽く拳を向ける。

 

 やがてハネちゃんは、その拳に軽くタッチをした。 どうやら完全にカナタ達を信じる気になったみたいである。

 

 「よし、決まりだな!」 「ありがとうハネちゃん。」

 

 カナタもイチカも嬉しそうにそう言った。

 

 

 イグニスは、その様子を見てほくそ笑みながら感慨深そうに呟いた。

 

 「フッ…この子達も、あの3人に負けず劣らず、いいチームじゃねぇか…。」

 

 困った者のために一生懸命になるカナタ達を見て、かつて一緒に戦ったりもした旧ガッツセレクトのケンゴ達と重ね合わせていた。

 

 

 「そうと決まれば、早速隊長に報告を…。」

 

 リュウモンが司令室に通信を入れようとしたその時。

 

 

 「折角だが、そのつもりはないぜぇ?」

 

 

 「! 誰だ!?」

 

 突如、何処からか聞き覚えのない声が響き、反応したカナタをはじめ、一同は辺りを見渡して警戒を始める。

 

 「上だ!」とリュウモン。

 

 「ふははははは!」

 

 一同が上を向くと、上空に棍棒を持った1人の人型の未知の生物が、高笑いをしながら浮かんでいた。

 

 「ドロボン!!」

 

 イグニスは即座にそう叫ぶ。 奴こそ、イグニスが追っていたドロボンである!

 

 「そう!我こそがドロボン星の宇宙戦闘員、ドロボンだ!」

 

 「あれがドロボン…?」とユウコ。

 

 「その必要は無いって…どういう事だ!?」 「お前、スノーアートを何処へやった!?」

 

 カナタとイグニスは問いかける。

 

 「リシュリア星人! 残念だがお前さんのゴクジョーはもう無い! 見よ!」

 

 ドロボンがそう言ったのを合図に、その更に上空には一機の宇宙船が現れる。

 

 「あれは…ファビラス星人の宇宙船…!?」

 

 イグニスの言う通り、それは、行方不明になっていたハネちゃんの主人のファビラス星人の宇宙船であった!

 

 それを見たハネちゃんは、その中の主人に呼びかけるように鳴き始める。

 

「…何かがおかしい…。」

 

 …リュウモンは、また何かを見抜いているようであった。

 

 

 「…やれ…!」

 

 ドロボンがそう言ったのを合図に、なんと宇宙船は、地上のカナタ達目掛けてレーザーを放つ!

 

 「はっ、危ない!!」

 

 カナタが叫ぶと同時に一同は即座にその場に伏せる。 レーザーは一同に直撃せず、近くの地面に当たって爆発した。

 

 

 「一体どういう事!? あれは、ハネちゃんの主人なんじゃないの!?」

 

 ミカはまだ状況が読めていないようであった。

 

 「お前! まさかスノーアートを…!」

 

「ふっふっふ、そのまさかだよリシュリア星人…!」

 

 どうやらドロボンは、スノーアートを盗んだ後、間も無くしてそれを破壊して、中に封印されていた『テレパシー怪獣デビロン』を解放し、即座に盗んだバトルナイザーに回収する事で自身のものにしてしまったのである。

 

 そして、その足で地球に着いた後、ヴィランギルドから盗んだメツオーガをお試しとして暴れさせていた際、たまたまそれに巻き込まれたファビラス星人に目をつけ、能力を試す事も目的に、デビロンにそれに憑依するように命じたのだという。

 

 ハネちゃんが先ほどスノーアートの写真を見た際に不安げな様子を見せていたのは、ユウコと出会う前日の夜、1人寂しくしていた際に、少し離れた場所でドロボンがスノーアートのカケラを手にしていたのを目撃しており、またその時のドロボンの発言から、たまたま巻き込まれた自身の主人を利用している事も知ったからである。

 

 その際にドロボンは、「コイツ(スノーアート)に眠っていた悪魔をあのファビラス星人に取り憑かせてみたが…案の定、スゲェ憑依力だぜ!」と言っていたのだという。

 

 デビロンは他の生物に対し、憑依したり、テレパシーで操ったりする事が出来る能力を持っている。 恐らくスフィアバリアも、そのテレパシー能力でその部位を構成するスフィアのみを操る形で穴を開けさせる事で、地球への侵入に成功したのであろう。

 

 ここ数日、各地からキャッチされていた異常な電波反応の正体は、デビロンに操られて各地で宇宙船で暴れていたファビラス星人であったのだ。

 

 

 「…そんな…なんて酷い事を…。」

 

 ドロボンの身勝手で非道な所業に、ハネちゃんは再び悲しそうに鳴き声をあげ、一同は怒りのあまり一瞬だけ言葉を失う。

 

 特にハネちゃんの事を人一倍心配していたユウコは心を痛めているようであった。

 

 「マジか…ゴクジョーちゃん、もうねぇのかよ…。」

 

 イグニスには、狙っていたゴクジョーがもう無いどころか、悪用されている事へのショックもあった。

 

 

 「おいお前!! 今すぐハネちゃんの主人を返すんだ!!」

 

「おいおいお前、盗んだものを返せと言われて返す泥棒がいるか? 俺は自分のものにした怪獣の強さや性能を試したいのだよ。コイツはその生贄だ。」

 

 ドロボンはカナタの発言をそう一蹴すると、バトルナイザーを取り出して揚げる。

 

 「更に、もう二体の怪獣の強さも試してみよっかな? 行けっ!!」

 

 《バトルナイザー、モンスロード!》

 

ドロボンの掛け声と共に、バトルナイザーは電子音声と共に二つのカード状のエネルギー体を放ちそれが実体化する事で二体の怪獣が地響きと共に現れる!

 

 現れたのは『超古代怪獣ファイヤーゴルザ 』、もう一体は『最凶獣ヘルベロス』である!

 

 二体は現れると早速、降り立った街で我が物顔に暴れ始める。

 

 ファイヤーゴルザは剛腕や太くて長い尻尾、ヘルベロスは身体中の刃や口からの火炎などを駆使して、逃げ惑う人々を嘲笑うかのように暴れ続ける。

 

 

 「こいつはえらい事になって来たな…!」とイグニス。

 

 「まずは奴らを止めないと!」

 

 そう言ったリュウモンをはじめとするガッツセレクトの3人は、暴れ始めた怪獣達への対処のため、司令室の隊長『ムラホシ・タイジ』と副隊長『カイザキ・サワ』と通信を取り始める。

 

 「現在、市民の避難がまだ完了していません。 リュウモン隊員とキリノ隊員は怪獣達を牽制しつつ市民の避難誘導に当たってください!」

 

「アスミ隊員は基地に戻ってガッツファルコンで出撃、ハネジローはGUTSホークで出撃してください!」

 

 隊長と副隊長がそれぞれ指示を出す。

 

 「「「「ラジャー!!」」」」

 

 隊員一同はそれに了解し、行動を開始する!

 

 「待ってろ…! すぐに駆けつけるからな!」

 

 カナタはそう言うと基地へと急ぎ始め、リュウモンとイチカは避難誘導を優先的に行おうと街へと向かう。

 

 「イグニスさん、ユウコちゃん達を頼みます!」

 

 イチカは去る前にそう言い残した。

 

 「やれやれ、勝手に頼まれちゃったな、俺。」

 

 イグニスはそう言いつつも了解する。 ユウコ達は、不安げな表情ながらもイグニスの近くに移動し、イチカ達の奮闘を見守り初める。

 

 「さて、俺はしばらく、見物と行きますか。」

 

 ちょっと離れた場所にいるドロボンはそう言うと、その場に座り込んで見物を始める。

 

 

 リュウモンとイチカは避難誘導の合間を見て、携帯用のハンドガン『セレクトハイパーガン』での銃撃を始めるが、怪獣達にとっては豆鉄砲に当たってるのも同然な感覚なのかほとんど効き目がなく、暴れる手を緩めない。

 

 「怯むな! 少しでも食い止めるぞ!」

 

 リュウモンの言葉を合図に、2人はカートリッジを交換して火炎、電撃などに属性を変えつつ銃撃を続ける。

 

 それでも二体はそれらをほとんど寄せ付けずに暴れ続け、やがてファイヤーゴルザの頭部からの強化超音波光線や、ヘルベロスの頭部の角からの電撃・ヘルホーンサンダーがリュウモンとイチカの近くのビルや地面に直撃して爆発し、2人はその暴風に吹っ飛ばされる。

 

 「このままじゃ…!」

 

 弱気になりかけるイチカ。その時、目の前に逃げ遅れて泣いている1人の少女を見つけ、即座にその子の元に駆け寄る。

 

 「大丈夫!?早くここから…」

 

 イチカは急いで少女を避難させようとするが、そこにヘルベロスが火炎を噴射し始める!

 

 イチカは彼女だけでも守ろうと覆いかぶさるように抱き寄せ、ここまでかと顔を伏せた…その時。

 

 

 何処からか飛んで来た一機の赤い戦闘機が、イチカ達の目の前を通り過ぎると同時に盾となり、ヘルベロスの火炎から2人を守った後に空高く飛び立つ!

 

 「ハネジロー…!」

 

 イチカは飛び上がった機体を見て嬉しそうな表情で言った。

 

 ハネジローが頭脳となって操縦する無人戦闘機『GUTSホーク』(以降:ガッツホーク)が到着したのだ!

 

 「攻撃を開始する!」

 

 ハネジローのその言葉と共に、ガッツホークはコックピット部分両側の機関砲や、両翼下部にあるタロンアームズからのホークタロンビームによる攻撃を二体の怪獣に始める。

 

 流石に気が散る程度には効き始めているのか、怪獣たちは狙いを一旦ガッツホークに変え、はたき落とそうと腕を振るったり、火炎や光線を放ったりして行くが、ガッツホークはそれらを縦横無尽に飛び回ってかわしながら攻撃を続ける。

 

 「ゴルザは体表が硬い皮膚で覆われてるわ。 頭部の光線の発射口を狙って!」

 

 怪獣研究室出身でもある副隊長はファイヤーゴルザの弱点をハネジローに伝え、ハネジローはそれに了解する。

 

 「ハネジローを援護するぞ!」

 

 リュウモンとイチカはヘルベロスへと集中攻撃を始める。 それによりヘルベロスの注意を向ける事に成功する。

 

 その間にガッツホークは尚もファイヤーゴルザの攻撃をかわしながら隙を伺い、やがてファイヤーゴルザの右足の甲にビームを当てるのに成功する!

 

 それによりファイヤーゴルザが怯んだ隙に、ガッツホークはファイヤーゴルザの真正面に回り込み、エネルギーをチャージしながら照準を合わせ始める。

 

 「今だ! ホークタロンビーム、最大出力、発s…」

 

“ドゴン”

 

ハネジローが渾身の一撃を撃ち込もうとしたその時、何かの衝撃を受けてそれが止まってしまう。

 

 「何だ?」

 

ガッツホークの攻撃を妨害したのは、デビロンに憑依・洗脳されているファビラス星人が操縦する宇宙船の攻撃であった!

 

 宇宙船は尚もガッツホークへの攻撃を続けて行き、それによりガッツホークは怪獣達への攻撃に専念出来なくなる。

 

 

 「クソッ…!こんな時に…!」

 

「あれにはハネちゃんの主人が乗ってるし、迂闊に攻撃出来ない…!」

 

 リュウモンとイチカが途方に暮れる中、尚もガッツホークは宇宙船の妨害と怪獣達の攻撃に手こずっている。

 

 「ありゃあ叩き落とされるのも時間の問題だなぁ。 ファイヤーゴルザ!その間に、この小娘どもをひねり潰せ!」

 

ドロボンの指示を受けたファイヤーゴルザはユウコ達に狙いを定め、向かい始める。

 

「やべぇっ!」

 

 イグニスは急いで2人を避難させようとするが、そこにドロボンが金棒を振るって殴りかかって来てそれを妨害する。

 

 イグニスがやむなくそれの相手をする中、ファイヤーゴルザは尚も逃げるユウコ達を追いかけて行き、やがて強化超音波光線を彼女たちの近くの地面に当てて爆発させ、その衝撃で2人を転倒させる!

 

 「ユウコ!ミカ!」

 

 イグニスは2人を救出しに向かおうとするが、ドロボンに後ろから金棒で羽交い締めにされて妨害される。

 

 

 やがてファイヤーゴルザは2人を踏み潰そうと足を大きく上げ、その影に覆われた事により諦めかける2人。 ユウコはハネちゃんを庇うように抱き寄せ、ミカは強く目を瞑り、もうここまでかと顔を背けた…!

 

 その時!

 

 「トァーッ!!」

 

 力強い掛け声と共に、何処からか飛び出て来た1人の巨人が、2人を踏み潰そうとしたファイヤーゴルザに飛び蹴りを叩き込み、その直撃を受けたファイヤーゴルザは吹っ飛んで地面に倒れ込む。

 

 

 助かった事が分かった2人は恐る恐る顔を上げると、現れた巨人のその姿を見た2人、特にミカは嬉しそうな表情になる。

 

 「パパ!」

 

 現れたのは、先ほど紹介したミカの父親のグレゴール人・グレースだ!

 

 

 「フッ、いい所で来てくれるじゃない!」

 

 「ぐはっ!」

 

 イグニスはそう言うと、思わぬ横槍が入った事により動揺しているドロボンの腹に肘打ちを打ち込んで怯ませる事で羽交締めから逃れる。

 

 

 「我こそは、宇宙最強の格闘チャンピオン! 鋼の魔人、グレース! 絶望へのスリーカウントを、始めろ!」

 

 

 グレースは決め台詞と共にポーズを決めた。

 

 「大丈夫か?ミカ。」

 

 「パパありがとう! 大丈夫なの!?まだ病み上がりなのに…!」

 

「街の、娘の危機を、黙って見過ごすわけにはいかないだろう。」

 

 グレースは以前ガッツセレクトと試合をした際、その時点で、若い頃の無茶の影響もあって体の限界を感じており、ガッツセレクトとの試合、及びその最中に乱入したどくろ合成獣スフィアレッドキングとの戦いの後、体調が悪化し、TPUの医療施設に入院している。

 

 恐らく今現在は、そこから退院したばかり、所謂病み上がりなためまだ万全ではないなのだが、街や娘の危機に体を押して立ち上がったのである。

 

 彼は、困っている人を放っておけず、そのためなら自己犠牲も躊躇わない強い正義感を持っているのである。

 

 

 いきなり蹴られて怒ったファイヤーゴルザは、立ち上がってグレースを睨みつけるように構える。

 

 グレースは身に付けていたマントを投げ捨てると、構をとってファイヤーゴルザ目掛けて駆け始める。

 

 グレースは先手必勝の前蹴りをファイヤーゴルザの胸部に打ち込むが、ファイヤーゴルザはそれに怯まず剛腕を振るう等して反撃を始め、グレースもそれらをキレのいい動きでいなしつつパンチやキックで攻撃して行く。

 

 

 一方で、宇宙船とヘルベロスの攻撃に手こずるガッツホーク。 遂に隙を突いてヘルベロスが火炎を放って撃ち落とそうとしたその時、何処からか飛んで来た一発のミサイルを受けたヘルベロスはそれが止まる。

 

 更に、ヘルベロスにミサイルを当てたその機体はガッツホークと宇宙船の間を高速で通過し、それにより二機を引き離す。

 

 カナタが操縦する『GUTSファルコン』も現場に到着したのである!

 

 「大丈夫かハネジロー!」

 

 「カナタ…ったく遅いぞ!」

 

 ハネジローはそう言いつつも、何処か嬉しそうだった。

 

 「宇宙船は俺が引きつける! ハネジローは怪獣への攻撃を続けてくれ!」

 

「了解した!」

 

 “空の相棒”同士でもあるカナタとハネジローは、互いの信頼を胸に、それぞれ行動に移る!

 

 「こっちだ!」

 

 カナタの操縦するガッツファルコンは、敢えて当たらない程度に弾丸を発射して宇宙船を引きつけ始め、その間にガッツホークはヘルベロスへの攻撃を再開し始める。

 

 リュウモンとイチカも、それぞれヘルベロス、ファイヤーゴルザへと攻撃する事でカナタとグレースを援護し始める。

 

 

怪獣達を相手に奮闘するガッツセレクトとグレースの姿を見て、イグニスも遂に決心した。

 

 「やれやれ…あんなん見ちゃったら、こっちも燃えずにはいられないっしょ。」

 

 そう呟くと、イグニスはトリガーダークへの変身アイテムの『ブラックスパークレンス』と『トリガーダークキー』を取り出し、前へ数歩進む。

 

 「イグニスさん…もしかして…。」

 

 戦場に向かおうとするイグニスに、心配そうに声をかけるユウコ。イグニスは振り向き、不敵な笑みで言った。

 

 「俺が欲しかったゴクジョーは、ただの泥棒が悪用した事で、ゴクジョーじゃなくなっちまった…。 それどころか、それによって、君たちにも迷惑をかけちまった。 それに対する償いも含めて、けじめをつけて来るぜ。」

 

「そうですか…。」 「気をつけてくださいね。」

 

 イグニスの決心の言葉を聞いたユウコとミカも、彼を送り出す決心をした。

 

 「俺のもう一つの故郷(地球)も、リシュリアと同じ道は辿らせられねぇからな…!」

 

 イグニスはそう言うと、戦場向かって駆け始める。

 

 

 この言葉から、恐らくイグニスがスノーアートを狙っていたのは、自身の宝にするためだけめはなく、いち早く自身のものにする事で、その中に封印されているデビロンが誰かの手によって解放されて暴れるのを事前に防ぐためでもあったのであろう…。

 

 デビロンは、これまで数々の星を滅ぼして来たとも言われている宇宙の悪魔。かつて自身の星・リシュリア星がヒュドラムに滅ぼされた身として、星を滅ぼされた人の辛さは特に痛いほど分かるのだ。

 

 

 イグニスは戦場の近くまで走って止まると、変身の態勢に入る!

 

 《TRIGGER DARK…!》

 

《BOOT UP…! DARK ZEPERION…!》

 

 イグニスは、トリガーダークキーのスイッチを押して起動させ、ブラックスパークレンスのグリップの底面に装填する。

 

 そして銃身を円弧状に展開してスパークレンスモードに変形させる。

 

 

 「未来を染める漆黒の闇…! トリガーダーク…!」

 

 

 イグニスはブラックスパークレンスを高く揚げてトリガーを引く!

 

 イグニスは赤黒い闇に包まれ、そこから変身が完了した『トリガーダーク』が右拳を突き出して飛び出す!

 

 《TRIGGER DARK…!》

 

 「デヤァッ…!」

 

 

 ファイヤーゴルザと交戦していたグレースは、隙を突かれてファイヤーゴルザに腕を掴まれて大きく投げ飛ばされてしまう。

 

 グレースを投げ飛ばした後、ファイヤーゴルザはヘルベロスと合流し、再び同時攻撃でガッツホークを叩き落とそうとする…!

 

 

 その時、現れたトリガーダークが、走りながらファイヤーゴルザとヘルベロスにそれぞれ片腕のラリアットを同時に叩き込んで、地面に叩きつけた!

 

 二体の怪獣をダウンさせた後、トリガーダークは振り向いて構えを取る。

 

 「あれが…トリガーダーク…?」

 

「本物を見るの初めてかも…!」

 

 そう言ったカナタとイチカをはじめ、一同はトリガーダークの登場に驚く。

 

 トリガーダークは、かつてトリガーと共に闇の力やイーヴィルトリガー等に立ち向かった事により、トリガーと共に戦い世界を救った戦士として人々に認知されているのだ。

 

 

 「リシュリア星人め、またしても…だが、構わん。 やってしまえ!」

 

 ドロボンの指示を受けた二体の怪獣はトリガーダークに狙いを変え、トリガーダークも怪獣達に立ち向かい始める。

 

 ヘルベロスが先陣を切って突進して来たのをトリガーダークは両手で角を掴む事でそれを食い止め、そのまま顔面に右膝蹴り、左拳でのアッパーを続けて打ち込んで頭部をかち上げた後、ヘルベロスに組み付く。

 

 その間にファイヤーゴルザが向かって来るが、トリガーダークはヘルベロスに組み付いたままファイヤーゴルザの腹部に左足蹴りを打ち込み、怯んだ隙にヘルベロスにヘッドロックをかけ、その状態のまま再度向かって来たファイヤーゴルザに跳び上がっての両足蹴りを頭部に叩き込み、その後着地の勢いも加えてヘルベロスを首投げで地面に叩きつけた。

 

 

 「仕切り直しだ!」

 

 トリガーダークがアウトローな格闘戦法で怪獣達の相手をしている中、グレースはそう言って体制を立て直すと、再び怪獣達に立ち向かう。

 

 ファイヤーゴルザとヘルベロスは、トリガーダークを挟み撃ちしようと双方から駆け寄るが、トリガーダークがそれを真上に跳躍してかわす事で二体はぶつかり合ってしまい、その間にトリガーダークはその二体の肩を踏み台にして更に空高く跳び上がり、ガッツファルコンと交戦していたファビラス星人の宇宙船を両手でキャッチして着地する。

 

 二体の怪獣は再度トリガーダークに襲い掛かろうとするが、そこにグレース、そしてガッツホークが再度攻撃に入った事により妨害される。

 

 

 「イグニスさん…一体、何をするつもりだ…?」

 

 カナタは不思議がりながらも、トリガーダークの行動を見守る事にする。

 

 トリガーダーク(イグニス)は、捕らえた宇宙船の中にいるファビラス星人を見つめる。

 

 「ちと我慢してな。 行くぜ!」

 

 そう言うとトリガーダーク(イグニス)は、持っている宇宙船に闇の力を込め始める…!

 

 トリガーダークの赤黒い闇の力に包まれた宇宙船は、まるで取り憑いている者がもがき苦しんでいるかのように小刻みに動き始める。

 

 よく見てみると、中のファビラス星人も苦しんでいるようであった。 トリガーダークはどうやら、闇のエネルギーを浴びせて直接苦しめる事で、取り憑いている者を炙り出そうとしているのである。

 

 だが、それは同時に取り憑かれている者も苦しめてしまうため、所謂“諸刃の剣”にもなりかねない、一か八かの方法でもあったのだ…!

 

 「もうちょいだぜぇ〜…!」

 

 トリガーダーク(イグニス)が尚も踏ん張り、ユウコとミカ、そしてハネちゃんがその様子を祈るように見守る中、遂に宇宙船、つまりファビラス星人の中からエネルギー体が飛び出す!

 

 見事、ファビラス星人の中からデビロンを追い出す事に成功したのだ!

 

 

 トリガーダークはそれを確認すると宇宙船を包んでいた闇のエネルギーを消し、宇宙船の中を再度確認する。

 

 数日間もデビロンに取り憑かれていたファビラス星人は、疲れ切っていたのか気を失うように眠っていた。

 

 ファビラス星人の安否を確認したトリガーダークは、少し離れた場所まで歩き、宇宙船を地面に下ろすと、「もう大丈夫だ」と言わんばかりに一回頷いた。

 

 

 エネルギー体となってファビラス星人から飛び出たデビロンは、次第に形を作って実体となって行き、やがて何処か悪魔を彷彿とさせる醜悪な本来の姿を現す!

 

 「遂に姿を現したな、ゴクジョーちゃんの中に入っていた悪魔め!」

 

 トリガーダーク(イグニス)はそう言うと、デビロンに向かい颯爽と駆け始める。

 

 

 トリガーダークはデビロンに殴り掛かるが、デビロンはテレパシーの他にも戦闘力自体も高く、素早く跳躍する等してかわしながら手の爪による引っ掻きやキックなどで攻撃して行き、トリガーダークもそれらをかわしたり防いだりしながらパンチやキックで攻撃して行く…両者は一進一退の攻防を繰り広げていた。

 

 

 トリガーダークはデビロン、グレースはファイヤーゴルザ、そしてガッツファルコンとガッツホークはヘルベロスとそれぞれ戦っていて、リュウモンとイチカはそれらを地上からの攻撃でサポートをしている。

 

 その様子を、何やら余裕げな様子で見ているドロボン。

 

 「結構頑張ってるみたいだけど、どこまで持ち堪えられるかな〜? …ん?」

 

 油断していたドロボンに、ガッツファルコンがかわしたヘルベロスの火炎の流れ弾が向かう!

 

 「なんだと〜!?」

 

火炎が自身の近くの地面に命中して爆発し、その爆風により吹っ飛んでしまったドロボンは、地面を転がり、その先にあった木に頭をぶつけて気を失ってしまった事は誰も知らない…(笑)

 

 

 尚も、怪獣軍団を相手に奮闘するガッツセレクトとグレース、そしてトリガーダーク。

 

 だが、怪獣たちは思った以上に強力で、トリガーダークはデビロンに殴り飛ばされた後、続けてデビロンが放った口からの青白い破壊光線の直撃を受け、グレースはそもそも病み上がりなため、それも手伝って古傷がまた痛み始め、その隙にファイヤーゴルザの頭突きで吹っ飛ばされる。

 

 ガッツファルコンとガッツホークも、ヘルベロスの火炎や電撃、更には腕の刃から放つカッター状のエネルギー波・ヘルスラッシュをかわしつつ攻撃するが、相手の手数の多さにやがて避けるのが精一杯になって行く…!

 

 

 次第に押されて行く一同。 しかし、そんな中、上空に更なる援軍が駆けつける!

 

 ナースデッセイ号も、遂に現場に到着したのだ!

 

 「あれは…!」

 

 真っ先に反応したのはグレースであった。

 

 「隊長! 副隊長!」 「来たぜ新たな援軍が!」

 

 カナタやイグニスも嬉しそうに反応する。

 

 「我々も援護しますよ! 皆さん!」

 

 隊長の頼もしい言葉と共に、副隊長は発射準備に入る。

 

 「ナースキャノン、発射!」

 

 副隊長の掛け声と共に、ナースデッセイ号の機体右舷に装備された大型荷電粒子砲『ナースキャノン』が発射される!

 

 グレースとトリガーダーク、そしてガッツファルコン、ガッツホークは即座にその場から退避し、その直後に大型のビームはデビロン、ファイヤーゴルザ、ヘルベロスと順に直撃して爆発!

 

 3体はたまらず地面に倒れ込んだ。

 

 「フゥ〜! こりゃあスゲェ一発だぜ!」 「助かった!」

 

 イグニス(トリガーダーク)とグレースはそれぞれそう言うと体制を立て直す。

 

 「ここから仕切り直しだ!」

 

 ハネジローもそう言うとガッツホークを再び飛ばし始め、ガッツファルコンもそれに続く。

 

 

 やがてハネジローは、ガッツホークの操縦兼ガッツファルコンの遠隔操作を買って出て、カナタにゴーサインを出す。

 

 「カナタ! ファルコンはこっちに任せて、お前は行って来い!」

 

 「ハネジロー…分かった!行って来るぜぇ!!」

 

カナタは気合を込めてそう言うと前方に手を伸ばし、その手には七色の光と共に変身アイテムが現れて握られる。

 

 カナタは『ウルトラマンデッカー』に変身しようとしていた!

 

 

 ウルトラマンデッカー。それは、この世界ではトリガーの次に現れた光の巨人であり、カナタの手に現れたのは変身アイテム『ウルトラDフラッシャー』である。

 

 かつて、無謀ながらもスフィアに立ち向かい、取り込まれかけるが、自我を取り戻したカナタの意志に呼応し、彼の前に巨大な幻影の姿で出現し、一体化を果たしている。

 

 それ以降はガッツセレクトと共に、スフィアやスフィア合成獣等と戦って来たが、当初はその出自が不明であった。

 

 そして後に、数百年後の地球圏にてスフィアと戦うデッカーの本来の変身者であり、カナタの遠い子孫でもある男性『デッカー・アスミ』が、アガムスが時間転移システムでスフィアと共に過去に遡った際、同時に転移システムを破壊してしまったが、カナタの内からの「光」をレーダーで感知する事に成功し、辛うじて可能だった非生物のみの物質転移によってウルトラDフラッシャーと『ウルトラディメンションカード』を一か八かで転送して使用を促した事により、カナタが力を得たものである事が判明している。

 

 因みにアガムスとも因縁があるデッカー・アスミは一度、転送によって現代に現れた際、カナタから一時的に取ったウルトラDフラッシャーで変身して戦い、満身創痍になりながらもアガムスと決着をつけようとしたが、カナタに生きるように諭されたと同時に彼の熱意の言葉を受け、更に彼の戦いをサポートしつつも見届けた事により、再びウルトラDフラッシャーを彼に託すと同時に、アガムスを救ってくれという懇望の言葉を残して元の時代へと帰っている。

 

 その後もカナタは、そのデッカー・アスミの言葉を胸に、時に苦悩しながらも、アガムスやスフィア、怪獣達などと戦い続けて来た。

 

 

 ウルトラDフラッシャーを手に取ったカナタは、腰にある『ウルトラディメンションカードホルダー』から『ウルトラマンデッカー・フラッシュタイプ』のウルトラディメンションカードを取り出す。

 

 《ULTRA DIMENSION!》

 

 カナタはカードをウルトラDフラッシャーの後部のカードスロットにリードした後、本体下部のレバーを引く事でクリスタルが本体から展開し、カナタの周囲には宇宙空間のような空間が広がる。

 

 

 「輝け、フラッシュ! デッカー!!」

 

 

 カナタはウルトラDフラッシャーを高く揚げて掛け声を叫んだ後、顔の前にかざしてトリガーを引く!

 

 カナタは眩い光に包まれ、その中から変身が完了した『ウルトラマンデッカー・フラッシュタイプ』が右拳を突き出して飛び出す!

 

 

 《ULTRAMAN DECKER! FLASH TYPE!》

 

 

 「デヤァッ!!」

 

 

 遂に戦場に降り立ったデッカーは、自身を覆っていた光が完全に消えると、右拳を突き出したポーズを解いて構を取る。

 

 「デッカー!」

 

 嬉しそうに反応するイチカをはじめ、リュウモンやユウコ、ミカも安心の表情になる。

 

 「現れましたね、真打が。」

 

 そう言う隊長も、副隊長と共に戦いを見守り始める。

 

 「久しぶりだな! デッカー!」 「あれが新たな光の巨人、デッカー…!」

 

 グレースはファイヤーゴルザと組み合いながらも再開を喜ぶように反応し、トリガーダーク(イグニス)も何処か感慨深そうに反応した。

 

 

 「しゃっ! 行くぞぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 (BGM:Wake up Decker!)

 

 

 カナタの気合いの叫びと共に、デッカーは怪獣軍団目掛けて勢いよく駆け出す!

 

 「こっちも負けてられねぇな!」

 

 そう言ったトリガーダークをはじめ、グレース、そしてガッツセレクトの面々も再び気合が入り、攻撃の手を強めて行く…!

 

 

 デッカーは、ヘルベロスが放つ火炎や電撃などを光のカッター『デッカースラッシュ』で相殺したり、パンチやキックで弾くなどして防ぎながら尚も走り続け、やがて至近距離まで接近すると渾身の右拳のパンチを顔面に叩き込む!

 

 ヘルベロスは怯まず反撃の頭突きを放つが、デッカーはそれを頭部を掴んで受け止めてそのまま喉元に膝蹴りを打ち込み、続けて右手のアッパーで頭部をかち上げる。

 

 その後も、ヘルベロスの放つ両手の刃を生かした殴り込みを拳で弾き返すなどして防ぎ、隙を突いて左手のチョップを右肩、両手を合わせて握ったパンチを胸部に決め、跳躍しての右足蹴りを胸部に叩き込んで後退させる。

 

 ヘルベロスは再度突進を繰り出すが、デッカーはそれをかわすと同時に、その勢いを利用して首投げを決めて地面に叩きつけた。

 

 フラッシュタイプは、バランスに優れているのに加え、カナタの真っ直ぐさも相まって、一撃一撃が重いパワフルで豪快な戦い方が特徴で、それによりヘルベロスとも一歩も引かない戦闘を繰り広げる。

 

 ヘルベロスは立ち上がると、背中の棘・ヘルスパイクから剣状の稲妻・ヘルエッジサンダーを放って反撃に出る。

 

 デッカーは頭上から横一列に迫る稲妻の雨あられに向かい、両腕を横一直線に広げて光線『デッカーフラッシュサイクラー』を放ってそれらをいっぺんに相殺し、それにより発生した爆風の中から勢いよく飛び出し、そのまま飛び蹴りをヘルベロスの頭部に叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 

 着地したデッカーは、両手を額に当てて右手に赤、左手に青のエネルギーを発生させた後、両腕を大きく回して握り拳にした両腕のエネルギーを紫色にスパークさせる事でエネルギーを溜めた後、両腕を十字に組んで必殺光線『セルジェンド光線』を放つ!

 

 怯んでいたヘルベロスは光線の直撃を受け、オレンジ色のリングを発生させた後大爆発した。

 

 

 ヘルベロスを撃破したデッカーは、次はファイヤーゴルザと戦うグレースの加勢に入る。

 

 グレースを蹴飛ばしたファイヤーゴルザにデッカーは組み付き、そのまま力比べを始めるが、やがて怪力を誇るファイヤーゴルザに徐々に抑え込まれて行く…!

 

 

 《ULTRA DIMENSION!》

 

 カナタは次に『ウルトラマンデッカー・ストロングタイプ』のカードをスロットにリードする。

 

 「弾けろ!ストロング! デッカー!!」

 

 カナタはウルトラDフラッシャーを高く揚げて掛け声を叫んだ後、顔の前にかざしてトリガーを引く!

 

 

《ULTRAMAN DECKER! STRONG TYPE!》

 

 デッカーは燃え盛る炎に包まれ、やがてその中からパワーに秀でた形態・ストロングタイプにタイプチェンジが完了したデッカーが、現れると同時にファイヤーゴルザの下顎に強烈なアッパーカット『デッカーストロングアッパー』を叩き込み、それを受けたファイヤーゴルザはその勢いで後ろに吹っ飛ぶように後退りをする。

 

 デッカーは構を取るとファイヤーゴルザに駆け寄ると同時に右肩の体当たりを決めるが、ファイヤーゴルザはそれを両腕を大きく広げて胸筋で防ぎ切る。

 

 その後もデッカーとファイヤーゴルザは互角なパンチの応酬を繰り広げ、やがて互いに互いに両手を掴んで力比べを始める。

 

 両者の力は互角であったが、やがてデッカーがファイヤーゴルザの頭部に頭突きを打ち込む事で相手のペースを崩す事に成功し、その隙にファイヤーゴルザの胴体に抱き付いてそのまま鯖折りで締め上げてダメージを与えた後、頭部を両足で挟み込んでフランケンシュタイナーを決めて地面に叩きつけた。

 

 ストロングタイプとファイヤーゴルザの戦いは正にパワーVSパワーであるため、両者がぶつかり合う度に周囲の土砂が巻き上がる程、激しいものである。

 

 「一緒に行くぞデッカー!」

 

 体制を立て直したグレースは、デッカーと共闘する事を決め、デッカーもそれに了解するように一回頷く。

 

 立ち上がったファイヤーゴルザは、尻尾を大きく振るって叩きのめそうとするが、デッカーはそれを両腕で掴んで受け止め、そのまま体を横回転させてドラゴンスクリューを決めてファイヤーゴルザを地面に叩きつけ、その後すかさずグレースが倒れたファイヤーゴルザにエルボードロップを決める。

 

 グレースはファイヤーゴルザの頭部を掴んで起き上がらせると、そのまま一回転をして勢いをつけてデッカーの方へと投げつけ、その先に待機していたデッカーは走って来るファイヤーゴルザにカウンターのラリアットを決めて地面に叩きつける。

 

 ファイヤーゴルザはふらつきながらも再度立ち上がるが、デッカーとグレースの放ったダブルドロップキックを胸部に食らい、その部位が爆発すると共に大きく吹っ飛んで地面を転がる。

 

 

 ファイヤーゴルザはすっかり弱ってフラフラ状態である。 その隙に、とっくにガッツファルコンとガッツホークを連結させて『GUTSグリフォン』を完成させていたハネジローは、ファイヤーゴルザの真正面に回り込む。

 

 「今だ! グリフォンタロンビーム、発射!」

 

ガッツグリフォンは高出力の光線・グリフォンタロンビームを放ち、見事、ファイヤーゴルザの頭部の光線発射口に命中させた!

 

 

 完全にグロッキーになったファイヤーゴルザにトドメを刺すために、デッカーはかつて共闘したトリガーから託された武器『ウルトラデュアルソード(デッカーモード)』を手に取り構える。

 

 《Dual! Standby! Ready?》

 

カナタは『ウルトラデュアルキー』のスイッチを押して起動させてソードのグリップの底面に装填した後、ウルトラマントリガー・マルチタイプ、ウルトラマントリガー・パワータイプ、ウルトラマントリガー・スカイタイプの3枚のウルトラディメンションカードを中央のスキャナーにスキャンした後、トリガーを引く。

 

 《TRIGGER MULTI!》 《TRIGGER POWER!》 《TRIGGER SKY!》

 

 《ULTRA COMBO!》

 

《Dual! TRIPLE TRIGGER SCRAM!》

 

 トリガーの3形態の力を一つにした必殺技『トリプルトリガースクラム』を発動したデッカーは、刀身にエネルギーを溜めたデュアルソードを手にファイヤーゴルザに駆け寄る!

 

 まずはマルチタイプの力の紫の光の斬撃ですれ違い様に胴体を斬りつけ、続けて振り向きざまにパワータイプの力の赤い光の斬撃を右斜めに、スカイタイプの力の青い光の斬撃を左斜めに振り下ろして斬りつけ、更に逆手持ちに持ち替えて全タイプの力の力が合わさった紫、赤、青の光が合わさった斬撃で横一直線に斬りつけると同時に相手に背を向けてポーズを決める!

 

 滅多斬りにされたファイヤーゴルザはそれぞれの切り口から紫、赤、青の光を発生させながら倒れ込み、大爆発して砕け散った!

 

 

 ファイヤーゴルザを撃破したデッカーは、デビロンと戦うトリガーダークの様子を見てみる。

 

 トリガーダークは戦いを有意に進めており、デビロンを右足蹴りで吹っ飛ばすが、デビロンは格闘戦では不利と見たのか、体を再びエネルギー体に変え、トリガーダークに纏わり付く!

 

 トリガーダークはそれを振り払おうともがくが、やがて完全にデビロンに憑依されてしまう。

 

 「大丈夫か?」

 

グレースは心配そうに歩み寄るが、憑依しているデビロンに操られているトリガーダークはグレースを殴り飛ばしてしまい、グレースはそれに動揺しつつも続けて殴りかかって来るトリガーダークの攻撃をかわして行く。

 

 デッカーはトリガーダークを止めようと組み付き、右の掌で胸を突いて飛ばす事で一旦距離を置く。

 

 

 《ULTRA DIMENSION!》

 

 カナタは次に『ウルトラマンデッカー・ミラクルタイプ』のカードをスロットにリードする。

 

 「飛び出せ、ミラクル! デッカー!!」

 

 カナタはウルトラDフラッシャーを高く揚げて掛け声を叫んだ後、顔の前にかざしてトリガーを引く!

 

 

《ULTRAMAN DECKER! MIRACLE TYPE!》

 

 デッカーは神秘的な光に包まれ、その中から超能力とスピードに秀でた形態・ミラクルタイプへとタイプチェンジが完了して姿を現してポーズを取ると、デビロンに操られるがままにパンチやキックで攻撃して来るトリガーダークの攻撃を流れるような素早い動きでいなして行き、やがて胸部にパンチを打ち込んで怯ませた隙に肩に、前転をして後ろに回り込む。

 

 「ちょっと我慢してくれよ!」

 

 デッカー(カナタ)はそう言うと、後ろからトリガーダークの首に右腕を巻き付け、そのまま締め上げ始める!

 

 恐らくデッカーは、先ほどファビラス星人からデビロンを追い出したトリガーダークのやり方を参考に、取り憑いた身ごと直接苦しめる事でデビロンをトリガーダークの中から追い出そうとしているのだ!

 

 実際、デビロンは真空状態によるエアポケット現象で呼吸が止まるのが弱点でもある。

 

 デビロンは呼吸を止められ、苦しみでもがきながらも、やがてたまらなくなりトリガーダークの体を離れ、デッカーに取り憑いてしまう。

 

 デビロンから解放されたトリガーダークは前転して一旦距離を取ると、振り向いて構を取る。

 

 

 一方でデビロンは、デッカーに取り付いたはずが、どうした事かその姿はデッカーではなく、自身の姿そのものになっていた。

 

 動揺するデビロンの前に、デッカー・ミラクルタイプが現れる。

 

 デビロンは動揺しながらもとりあえず攻撃に移り、双方から挟み込むような両手のパンチを放つが、デッカーはそれをそれぞれ片手で防ぐと、左脇腹に右足蹴りを打ち込み、続けて右腕を掴んで捻って締め上げる事で自身に背を向けさせる。

 

 すると、デビロンの目の前にもう1人のデッカー・ミラクルタイプが現れ、回し蹴りを顔面に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 

 吹っ飛んだデビロンが再度振り向くと、そこには2人のデッカーが立っており、やがて片方がもう一方にスライドする事で1人に戻る。

 

 デッカーは実は、ミラクルタイプにタイプチェンジが完了すると同時に『デッカーマジック』を発動して3人に分身していたのだ。

 

 そしてそのうちの1人をデビロンをトリガーダークから追い出すついでに取り憑かせる囮として使ったのである。

 

 

 更に怒ったデビロンは、デッカーに破壊光線を放つが、デッカーは頭上にプロテクター型の異空間ゲートを開き、デビロンの破壊光線を吸収し、逆にそこから撃ち返す超能力を発動させ、自身の光線の直撃を受けたデビロンは怯む。

 

 

 カナタ、そしてデッカーは再びウルトラデュアルソードを手に持ち、カナタは次は『ミクラス』『アギラ』『ウインダム』の3枚の『ディメンションカード怪獣』のカードをスキャンしてトリガーを引く。

 

 《MICLAS!》 《AGIRA!》 《WINDOM!》

 

 《MONS COMBO!》

 

《Dual! TRIPLE MONS SCRAM!》

 

ディメンションカード怪獣3体の力を組み合わせた技『トリプルモンススクラム』を発動を発動したデッカーは、ミクラス、アギラ、ウインダムをリング状の光の中から一斉に出現させ、3体はデビロンに向かって行く。

 

 

 まずはミクラスが正面からデビロンに突進する。デビロンはミクラスの角を掴んで押さえ込もうとするが、逆にミクラスのパワーにより踏ん張る足で地面を削りながら押され始める。

 

 その隙にウインダムが背後から額からのレーザーショットをデビロンの背中に打ち込み、それによりデビロンが怯んだ隙にアギラがしゃがんだミクラスを飛び越えてデビロンに角を突き立てた頭突きを決める!

 

 更にデビロンは、ミクラスのパンチ、アギラの頭突き、ウインダムのチョップを同時に胴体に食らい吹っ飛ぶ。

 

 見事な連携プレーでデビロンを攻撃したディメンションカード怪獣達は、粒子状の光と共に姿を消した。

 

 

 デビロンはふらつきながらも再度立ち上がり、デッカー目掛けて走り始めるが、デッカーは『デッカーテレポータル』を発動させ、腕を大きく回して自身とデビロンの間にゲートを生成し、それに入ってしまったデビロンは空中に転送される。

 

 いきなり違う場所に移動させられたデビロンは動揺により辺りを見渡すが、その隙に真下から飛んで来たトリガーダークのアッパーパンチを食らって上空高くに打ち上げられ、更にその上からデッカーの飛び蹴りを受けて吹っ飛ぶ形で降下を始め、更にそこにデッカーのキックとトリガーダークのパンチを同時に食らい、地面に叩き落とされる!

 

 

 デッカーとトリガーダークはそれぞれデビロンの左右に降り立つ。

 

 デッカーは右手の中に空間を圧縮してブラックホールを生成し、青い光球状にした超衝撃波『レアリュートウェーブ』を放つ!

 

 デビロンはそれを最後の力を振り絞って放つ破壊光線で相殺しようとするが、その隙に背後のトリガーダークは両腕を腰の位置まで引き前方で交叉した後、左右に大きく広げて闇のエネルギーを集約する。

 

 「あばよ…! 俺のゴクジョーちゃん!」

 

 イグニスのその言葉と共に、トリガーダークは腕をL字に組んで必殺光線『ダークゼペリオン光線』を放つ!

 

 デビロンは闇の光線を無防備になっていた背中に食らい、更に破壊光線が止まった事により再び飛んで来た光球を前方から食らい、やがてもがき苦しんだ後、大爆発して完全に消し飛んだ…!

 

 

 (BGM終了)

 

 

 「やったー!」 「パパもかっこいいー!」 「パムー!」

 

 連携により怪獣軍団を撃滅したデッカーとガッツセレクト、トリガーダーク、イグニス。見守っていたユウコとミカ、そしてハネちゃんは喜び合う。

 

 すると、グレースは流石に無理をし過ぎてしまったのか、よろけると同時に光に包まれて小さくなって行く。

 

 やがて温和な雰囲気の壮年の男性の姿になったグレースの元に、ミカが駆けつけ、遅れてユウコも駆けつける。

 

 「パパ大丈夫?」

 

「へへっ…! 流石に、無理しすぎちまった…。」

 

「もう! パパったら!」

 

ユウコと共に疲れ切った父・グレースの身を案じながら、父と笑い合うミカ。 ユウコもそんは親子のやり取りをハネちゃんと共に満面の笑みで見つめていた。

 

 

 フラッシュタイプに戻っていたデッカーとトリガーダークは合流して、お互いの腕を合わせるタッチを決める。

 

 トリガーダークは、赤黒い闇を纏いながら小さくなって行き、イグニスの姿に戻る。

 

 「なかなかやるじゃん。 デッカーも。」

 

 そして次に、ユウコ達の方を向いて言った。

 

 「けじめ、つけて来たぜ!」

 

 

 だがそこに、いつの間にか意識を取り戻していたドロボンの声が聞こえ始める。

 

 「ふふふっ…! まさか俺が気を失っているうちにここまでやられていたとはな…! だが、貴様らの運もここまでだ!」

 

「どう言う事だ?」

 

 イチカと共に駆けつけたリュウモンは問いかける。

 

 するとドロボンは、再度バトルナイザーを取り出して揚げる。

 

 「先日、倒されたメツオーガは、俺のバトルナイザーの中で回復と共に進化を進め、遂に最凶最悪の姿へと覚醒したのだ…! 行けーっ!!」

 

《バトルナイザー、モンスロード…!》

 

 バトルナイザーは、中にいる強大なエネルギーに耐えられなくなったのか、禍々しい赤黒いオーラに覆われたカード状のエネルギーを割れた音声と共に放出した後、爆発して大破してしまった…!

 

 

 エネルギー体はやがて禍々しいオーラを纏いながら巨大な生物へと巨大化・変形して行き、やがて完全な姿を現す!

 

 現れたのは、メツオーガの亡骸から生まれた魔獣の進化形態『新宇宙伝説魔獣メツオロチ』である!

 

 メツオロチは現れると、大地を揺るがすような大きな咆哮を上げる。

 

 

 「メツオロチ…!」

 

 以前、メツオロチと交戦した事があるイグニスは、その強さ、遅らしさを知っている故に真剣な表情で呟く。

 

 「まさか、再びご対面することになるとはな…!」

 

 それは、幼少期に暴れたメツオロチの被害に遭った事があるリュウモンも同じであった。

 

 「まだ、切り札が残ってたという事か…!」

 

 カナタがそう言うと同時に、デッカーは再び構えを取る。

 

 

「行け!!メツオロチ!! 奴らにトドメを刺してしまえ!!」

 

ドロボンの指示を受けたのか、それとも本能で暴れようとしているのか、メツオロチは再度咆哮を上げて暴れようとする。

 

 

 「させるか!」

 

カナタがそう言うと同時にデッカーはメツオロチにデッカースラッシュを放つ。

 

 だが、メツオロチは背中の突起物から自身を360度覆う吸収フィールドを展開して、迫り来る光弾を防ぐと同時にそのエネルギーを吸収し、そしてフィールドを消すと同時に頭上に発生させたエネルギーの渦から赤黒い反射光線を放つ!

 

 その光線の威力は凄まじく、周囲の建物等が次々と破壊されて行き、ガッツグリフォンも回避し切れず、ガッツファルコンの右の翼の部分が破損してしまい、そしてデッカーも咄嗟に光の壁『デッカーサークルバリアー』を展開するが、光線を防ぎ切れずにバリアが砕けてしまい、それにより光線の直撃を受けたデッカーは吹っ飛ぶ!

 

 更に、それにより大きなダメージを受けた影響か、カラータイマーが赤く点滅を始める!

 

 

 「ふははははっ!! 見たか!! これで、まずは地球は、俺のものだな!!」

 

 ドロボンは既に勝ちを確信し、高笑いをしていた。

 

 

 「なんて力…!」 「あれじゃあ勝ち目がないよ…!」

 

メツオロチの圧倒的な強さを見たユウコとミカ、そしてハネちゃんは、弱気になり始めていた…!

 

 

 だが、他の面々は違っていた…!

 

 「大丈夫だよ、ユウコちゃん、ミカちゃん。」

 

 そう声をかけたイチカの方に2人は振り向く。

 

 「奴には、先代が残してくれたデータもあるからな…!」

 

 リュウモンもそう言った。 そう、メツオロチは以前に旧ガッツセレクト、そしてトリガーと交戦した事もある。

 

 その時のデータもしっかり残っていたため、いざまた現れた時も、即座に対策を立てる事が出来るのだ。

 

 

 「メツオロチは、吸収したエネルギーを増幅している間、吸収力が鈍る。 その隙に角を破壊すれば、勝機はあるわ!」

 

 怪獣研究室出身の副隊長も、メツオロチの弱点をバッチリ把握していた。

 

 「私たちも全力でサポートします。 ナースデッセイ号、バトルモード!」

 

 隊長の掛け声と共に、ナースデッセイ号は戦艦型のハンガーモードから、竜のような姿の戦闘形態・バトルモードへと変形する。

 

 

 「俺もまだ、諦めてないぜ!」

 

 ハネジローも、ガッツグリフォンから破損したガッツファルコンを分離させてガッツホークだけになりながらも、再び飛び立つ。

 

 

 「流石は、ガッツセレクトだな!」 「だね、パパ。」

 

 グレースはガッツセレクトの面々を見て笑顔でそう言い、それを聞いたミカも笑顔になる。

 

 「私も、最後まで信じてる。」 「パムー!」

 

 ユウコとハネちゃんも、ガッツセレクト、そしてデッカーを最後まで応援する姿勢を改めた。

 

 

 「お前らのガッツ、アイツらに負けず劣らず、ゴクジョー級だな。」

 

 イグニスも、彼らを見て、何処か嬉しそうに呟いた。

 

 「イグニスさんは、ユウコちゃん達をお願いします。」

 

「おうよ!」

 

 リュウモンはユウコ達の護衛を改めてイグニスに任せ、イグニスもそれに了解する。

 

 

 まだ諦めていない仲間たち、応援してくれる人達を見て、カナタも再び闘志が湧き上がり始める。

 

 「そうだよな…! 戦いはまだ、終わっていない…! 俺は決めたんだ…! 守りたいものを全部守ると…! デッカーのおっさんとの約束のためにも、ここでやられるわけにはいかない…!」

 

 カナタの闘志に呼応するように、デッカーも再び立ち上がり始める。

 

 「自信があるからやるんじゃない…! やるしかねぇ…! 今、やるしかねぇんだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 (BGM:君だけを守りたい(ボイジャーver.))

 

 

「行くぞぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 カナタの気合いの叫びと共に、デッカーも雄叫びを上げるように上を向いた後、メツオロチ向かって走り始める!

 

 メツオロチは全身の棘から青い光弾を放ち迎え撃つが、デッカーはそれが周囲で爆発したり、自身も数発被弾したりしながらも怯まず走りを止めず、ナースデッセイ号は胴体からレーザーレインを、ガッツホークもホークタロンビームをリュウモンとイチカはセレクトハイパーガンからの銃撃をそれぞれ放ち、光弾を相殺したり、メツオロチに直接当てる等して援護をして行く。

 

 デッカーはメツオロチに走りの勢いも加えたタックルを胴体に打ち込むが、メツオロチはほとんど効いていないようであり、即座に怪力を誇る両腕を振るって反撃を仕掛けるが、デッカーもそれらを必死に食らい付くように手刀で弾いたり、受け止めたりして防ぎ、更にパンチやチョップを連続で打ち込む。

 

 メツオロチは周囲に光芒を発生させて爆破する技を繰り出し、それを受けたデッカーは大きく吹っ飛ばされて地面に叩きつけられる。

 

 

 「まだまだぁ!!」

 

 デッカーは怯まず、跳ね起きで起き上がると、両腕をクロスさせて左右に広げ、それによりクリスタルから溢れた光と共にミラクルタイプへとタイプチェンジをする。

 

 《ULTRAMAN DECKER! MIRACLE TYPE!》

 

 タイプチェンジが完了したデッカーは、デッカーマジックで無数の分身を作り出し、一斉にメツオロチに向かう!

 

 無数のデッカーの分身はメツオロチの周囲を高速で移動しつつあらゆる方向からそれぞれが攻撃を仕掛けるが、メツオロチもそれらを受けながらも分身の何体かを剛腕や光弾等で吹っ飛ばす等して一歩も引かない反撃を繰り出して行く。

 

 デッカーは分身達を消滅させると、次は念動力『デッカーサイキック』を発動し、周囲の岩を浮遊させ、それらを一斉にメツオロチに飛ばす!

 

 メツオロチは再度反射光線を放ち、迫り来る岩を次々と消し飛ばして行き、やがてそのままデッカーにも放射し、デッカーは咄嗟に両腕で顔を覆いながらも自身の周囲の地面に光線が当たった事による爆発の炎に包まれて行く…!

 

 

 一同はデッカーがやられたのかと一周焦りを見せる…!

 

 《ULTRAMAN DECKER! STRONG TYPE!》

 

 やがて音声と共に、爆炎の中からストロングタイプにタイプチェンジしたデッカーが、ガッツホークを背中にドッキングした状態で飛び出す!

 

「俺が避ける! 真っ直ぐ前だけ見てろ!」

 

ハネジローのその言葉と共に、デッカーと合体したガッツホークはメツオロチの光弾攻撃をかわして行き、デッカーはその間に真っ直ぐメツオロチの方を見て狙いを定めながら、右拳に炎のエネルギーを溜めて行く…!

 

 「今だ!マキシマナースキャノン、発射!」

 

 隊長の掛け声と共に、ナースデッセイ号の頭部の主砲から最大出力のナースキャノンが放たれる!

 

 メツオロチは再度吸収フィールドを展開してそれを防ぐと同時に吸収して行き、光線の照射が止まるとフィールドを消滅させ、頭部の角にエネルギーを増幅させ始める…!

 

 「今です!デッカー!」

 

 隊長は叫んだ。 先ほどのマキシマナースキャノンは、メツオロチに吸収させてエネルギーを増幅する間の隙を与えるために放ったのである。

 

 

 「行け!カナタ!」

 

ハネジローの叫びと共に、右拳へのエネルギー集中が完了したデッカーはガッツホークから飛び出し、上空から突撃する形で超強力なパンチ技『ドルネイドブレイカー』を放つ!

 

 超強力な炎のパンチは、カナタの真っ直ぐな思いに応えるように見事、メツオロチの頭部の角に命中し、それを爆発と共に破壊した!

 

 

 「よしっ!」 「やった!」

 

 リュウモンとイチカは相手の戦力が大幅に削れた事に喜びの声を上げる。

 

 

 角を破壊された事により弱体化したメツオロチは、さっきまで赤かった目も白くなっていた。

 

 だが、弱体化したとはいえそれでも戦えるほどのパワーは残っており、尚もしぶとくデッカーと互角な肉弾戦を繰り広げる。

 

 

 「ラストスパートだぁぁぁ!!」

 

 そう言うとカナタは、最後のタイプチェンジに入る!

 

 

 《ULTRA DIMENSION!》

 

 カナタは『ウルトラマンデッカー・ ダイナミックタイプ』のカードをスロットにリードする。

 

 「迸れ!ダイナミック! デッカァァーッ!!」

 

 カナタはウルトラDフラッシャーを高く揚げて掛け声を叫んだ後、顔の前にかざしてトリガーを引く!

 

 カナタは黄金の空間から、金色も混じった眩い光に包まれ、その中からダイナミックタイプへとタイプチェンジが完了したデッカーが右拳を突き出して飛び出す!

 

 《ULTRAMAN DECKER! DYNAMIC TYPE!》

 

 

 メツオロチと組み合った状態のまま、フラッシュ、ストロング、ミラクルの3タイプの力を併せ持つ最強形態・ダイナミックタイプへとタイプチェンジが完了したデッカーは、全身を覆う黄金の光が完全に消え去ると、黄金のオーラと共に両腕を勢いよく振り上げる事で一旦組み付きを離す。

 

 その後メツオロチが放った右フックを左手で受け止め、右手の手刀で叩き落とした後、右腕のチョップを胸部に打ち込み、続けてメツオロチが放った頭突きを頭部を掴む事で受け止めるとそのまま跳躍して頭部に左肘を叩き込み、その後パンチを放って来た左腕を掴むとそのまま左脚のミドルキックを胴体に叩き込み、続けて右フックを頭部に決める。

 

 更にデッカーは連続パンチを腹部や胸部に打ち込んで行き、その後下顎にパンチ、更に跳躍して回し蹴り・ローリングソバットを叩き込んで後退させる!

 

 ダイナミックタイプはデッカーの最強形態だけあって、格闘能力も大きく上昇しており、一撃一撃が決まる度に、黄金のエネルギーが迸る…!

 

 

 デッカーは一旦距離を取ると、頭部のクリスタルから光と共に現れた攻防一体の専用装備アイテム『デッカーシールドカリバー』を左手に、そしてウルトラデュアルソードを右手に取って構える。

 

 メツオロチは再度、体の棘から光弾を放つが、デッカーはそれをシールドモードのデッカーシールドカリバーで吸収して行き、その吸収した光弾を光輪に変えて投げつける!

 

 光輪はメツオロチの胴体に命中し、体を横一直線に斬られたメツオロチは大ダメージを受ける。

 

 

 《CALIBUR MODE!》

 

 デッカーはデッカーシールドカリバーの両側の刃部分を展開させて双剣型のカリバーモードへと変形させると、ウルトラデュアルソードとの二刀流でメツオロチに駆け寄り、ソードとカリバーで同時に斬りつける斬撃を決めるとそのまま半回転して相手に背を向ける。

 

 

 《MIRACLE!》

 

 カナタは、デッカーシールドカリバーのトリガーを1回押してエネルギーをチャージさせて構を取る。

 

 デッカーはミラクルタイプの力を使うデッカーシールドカリバーの必殺技『デッカーミラクルダイナミック』を発動させ、刀身を青いオーラで包み、ウルトラデュアルソードに伝導させ、メツオロチに斬撃を放つと同時に動きを拘束する!

 

 

 メツオロチの動きを封じたデッカーは宙返りをして距離をとって着地すると、ウルトラデュアルソードを地面に突き立て、デッカーシールドカリバーを頭部のクリスタルに当てて光と共に収納する。

 

 そして、セルジェンド光線と同じ動作の後、胸の前で両拳を合わせて右手を斜め上、左手を斜め下に伸ばしてエネルギーを溜めた後、腕を十字に組んで必殺光線『ダイミュード光線』を放つ!

 

 黄金色の巨大な光線はメツオロチに直撃し、超火力でその巨体を焼き尽くして行き、やがてメツオロチは大爆発して砕け散った…!

 

 

 (BGM終了)

 

 

 最後まで諦めず、連携して強大な敵を粉砕した一同は、さっきまでとは比べ物にならないくらい喜び合い、戦いを見守っていたグレースはガッツポーズを決め、ユウコとミカも互いに手を繋いで飛び跳ね、ハネちゃんもその周囲を飛び回る。

 

 デッカーも、そんな一同にお礼を言うかのようにサムズアップを向ける。

 

 

 「チキショー!! まさかやられちまうとは…! ここは一旦引くか…!」

 

 ドロボンは、自身の切り札もやられてしまった事を悔しがりながらも、潔く退散する事を決めた。

 

 そこで、何処からか取り出した、スフィアのような模様のタイツみたいなのを着用して飛び立ち始める。

 

 どうやら、予め盗んでいたスフィアの死骸で作ったスーツのようで、いざという時はこれを着用してスフィアのバリアを突破するつもりだったのだろう。

 

 「覚えとけよ! 更に強い怪獣を盗んで我が物にして、再びこの地球に来るからな!!」

 

 ドロボンは、三流の悪役のような捨て台詞を吐いた後、一目散に空の彼方へと飛び去って行った…。

 

 

 その様子を、シラけたような表情で見つめていた一同。

 

 「何度でも来ればいいさ…。 最も、これだけの惨敗をしたんだ。多分、もう来ないだろう。」

 

 イグニスは軽い口調で、特に根拠は無いが確かっぽい事を言う。

 

 

 (BGM:カナタトオク)

 

 

 大団円。

 

 ユウコとグレース・ミカ親子、ハネちゃんは、戦いを終えたガッツセレクト、そしてデッカーから戻ったカナタと合流する。

 

 そこには、息を吹き返したファビラス星人の姿もあった。

 

 「この度は、何とお礼をしたらいいやら…本当に、ありがとうございます。」

 

 ハネちゃんを抱いた状態で、ガッツセレクトの面々にお礼を言うファビラス星人。

 

 地球から出るため、イグニスがバリアの外まで連れて行こうかと提案したが、ファビラス星人は、デビロンに操られていたとはいえガッツセレクト、そして地球人に迷惑をかけてしまったため、TPUに行って事情を説明し、支援をしてもらう事にした。

 

 それに彼らとしては、いつかスフィアバリアが消滅した時、その喜びを味わうため、自分達の宇宙船で地球から出たいからでもある。

 

 ハネちゃんもそれについて行く事にする。

 

 「ちゃんと説明すれば、罪はそれほど重くないでしょう。」と隊長。

 

 「デビロンの破片も入手したし、証拠も準備万端ですからね。」

 

 自慢げに拾ったデビロンの砕け散った破片の一部を見せながら副隊長も言った。

 

 恐らくそれを、この後怪獣研究室で研究もするつもりなのだろう。

 

 

 「行っちゃうんだね、ハネちゃん…。」

 

 ユウコは寂しそうな表情で言った。

 

 「ユウコ…僕…行く…。」

 

さっきまで「パムー」しか言わなかったハネちゃんは、ユウコ達と交流して行くうちに地球の言葉を少し理解したのか、カタコトながらもユウコに別れを告げる。

 

 「…またいつか遊ぼうね。」 「約束だね。」

 

ユウコは涙を堪え、約束の言葉と共にハネちゃんの手を軽く握り、ミカもその上に手を重ねる。

 

 

 イグニスは、カナタの肩に手を置いて言った。

 

 「じゃあな、カナタくん。 目的のゴクジョーは残念だったけど、その代わりに新しいゴクジョーに出会えたからさ。」

 

 「もう、行っちゃうんだな…。」

 

 「あぁ。宇宙中のゴクジョーちゃんが、俺を待ってるからね。」

 

カナタ達新生ガッツセレクトと戦えた事、そこで彼らの、旧ガッツセレクトに負けない抜群なチームワークを見れた事…どうやらそれらが、イグニスの今回のゴクジョーになったみたいである。

 

 「あ、そうだ! 良かったらこれ!」

 

「ん?」

 

 カナタがイグニスに差し出したのは、実家でもある商店街老舗の煎餅屋『明日見屋』の名物の『宇宙煎餅』である。

 

 「ちょっとした地球のお土産として。 あ、固いんで気をつけてくださいね。」

 

 カナタは冗談混じりでそう言い、イグニスは宇宙煎餅を受け取った。

 

 「いいねぇ。 これもゴクジョーとして貰っておくよ。」

 

 「イグニス! 元気でな!」

 

「おぅ!」

 

 イグニスと知り合いでもあるファビラス星人もイグニスに別れの言葉をかけ、イグニスはそれに返事をした。

 

 

 《TRIGGER DARK…!》

 

 「デヤァッ!」

 

 イグニスはトリガーダークに変身して飛び立ち、カナタ達ガッツセレクトはそれを空の彼方まで飛び去って見えなくなるまで見送った…。

 

 

「私たちもそろそろ帰ろっか。 エリーもお腹を空かせて待ってるだろうし。」

 

 「そうだね。 無茶しちゃったパパを休ませないといけないし。」

 

 ユウコとグレース・ミカ親子は笑い合い、その後ガッツセレクトにお礼、ハネちゃんに別れを言い、帰り道を歩き始めた。

 

 

 「私たちも、戻りましょうか。」と隊長。

 

 「ですね。」とリュウモン。

 

 「物凄い疲れている誰かさんも休ませないとねー。」

 

 イチカは笑顔でそう言うと、息が切れているカナタの方を指差す。 先程、デッカーとしてギリギリまで戦い抜いた影響で、結構消耗しているみたいである。

 

 「はぁ? それって…俺の事?」

 

 そう言うカナタをはじめ、ガッツセレクトの面々、そしてファビラス星人とハネちゃんは、笑い合いながら基地へと帰るため歩き始める。

 

 

 (BGM終了)

 

 

 基地に帰ったカナタは、隊長の休むようにという指示も受けたのもあって、休むために入った医務室のベッドの上に座り、そこにハネジローもお見舞いとして来ていた。

 

 「あーほんっと疲れたー!」

 

 「ったくカナタ、君は無茶し過ぎだ。 …でも、よく頑張ったな。」

 

 「お? そうだよな! 俺1番頑張ったもんな〜!」

 

「すぐに調子に乗るな。 危なっかしいのは確かなんだから…。」

 

「なんだよ、ハネジローだって最後まで無茶してたじゃねーか!」

 

 カナタとハネジローは、いつものやり取りを、どこかお互い楽しそうに始めていた…。

 

 

 頼もしいガッツセレクトの仲間たちと一緒に、真っ直ぐで諦めを知らないカナタ(デッカー)ならきっと、スフィアから地球を守り抜く事が出来るであろう。

 

 そして、デッカー・アスミとの約束でもある、アガムスを救う事も。

 

 

“明日を見る、彼方まで”という意味の名前を持つ男、アスミ・カナタなら絶対…!

 

 

 我々も、是非見守って行きたい。

 

 

 (ED:ヒカリノカナタ)

 

 

 〈エピローグ〉

 

 

 宇宙空間にて。

 

 先程、自分の(盗んだ)怪獣たちが全てやられた事により退散したドロボンは、無事スフィアバリアを突破して宇宙に出れた後、とある近くの小惑星に着陸し、スフィアの死骸で作ったスーツを脱ぎ捨てる。

 

 「クソッ! ウルトラ戦士どもめ…! だが、俺は野望を諦めないぞ! こうなったら更にもっと強い怪獣を盗んで、今度こそ太陽系を…!」

 

 ドロボンが新しい事を企み始めたその時。

 

 

 「ストップ! それ以上はさせない!」

 

 

 「誰だ!?」

 

 突然、声のした方にドロボンが振り向くと、そこには新たに現れた、1人の巨人が立っていた。

 

 全体的に筋肉質な体つきで、鋭い目つき、獅子の立髪を思わせる形状の頭部、L77星人を思わせるような鼻筋のある顔立ちに、左右の肩にそれぞれ龍と虎の紋章が描かれているのが特徴のその真紅の巨人は、仁王立ちをして立っている。

 

 「貴様、何者だ!?」

 

 ドロボンの問いかけに、その巨人は腕組みをゆっくりと解きながら答える。

 

 

 「俺はコスモ幻獣拳の総師…ウルトラマンレグロスだ!」

 

 

 『ウルトラマンレグロス』と名乗ったそのウルトラマン。 彼は、りゅう座の『惑星D60』から来たと言われているが、それは修行をした星でもあるため、正確な出自等はまだ不明である。

 

 彼は一時期、アブソリューティアンの戦士『アブソリュートタルタロス』によってナラクに投獄されていた事もあり、何やら『アブソリュートディアボロ』とも因縁があるかのような感じではあった。

 

 また、その後、共闘した『ウルトラマンレオ』『アストラ』の兄弟と、お互いに知っていたかのような口調で話していた事から、L77星出身者とゆかりのある戦士である事も確かみたいだが、まだ多くは謎に包まれている戦士である…。

 

 彼は、宇宙最強の拳法とも言われている『コスモ幻獣拳』の流派『赤龍白虎拳』を体得しており、左右の肩にある紋章はその象徴でもあり、それぞれ『火炎赤龍拳』『電撃白虎拳』と言われている。

 

 恐らく今回は、誰かから聞いたのかそれとも自分で突き止めたのかは不明だが、宇宙で悪事を続けるドロボンを止めるために現れたのだと思われる。

 

 

「これ以上の悪事、許すわけにはいかない…!」

 

 「コスモ幻獣拳か…噂では聞いている。 だが!誰だろうと、俺の邪魔する奴には、容赦せん!」

 

 ドロボンは威嚇をするように金棒を振り上げ、戦闘体制に入る。

 

 

 「見切ってみろよ…! 俺の赤龍白虎拳を!」

 

そう言うとレグロスは構を取り、その背後に龍と虎の紋章が燃えるように浮かび上がる!

 

 

 (BGM:Now or Never!)

 

 

 レグロスは、金棒を振り回して襲い掛かるドロボンに果敢に立ち向かう!

 

 ドロボンは金棒を無茶苦茶に振り回して攻撃を仕掛けるが、レグロスはまるでそれらを動きが全て読めているかのようにかわしたり、拳や膝で受け止めたりして行き、やがて真上から振り下ろした金棒をクロスさせた両腕で受け止める。

 

 「武器に頼れば、隙が生じる…!」

 

 レグロスはそう言うと、金棒を小脇に抱えるように両腕で持ち、そのままドロボンの腕に膝蹴りを打ち込む。

 

 ドロボンはそれにより金棒を手放してしまった。

 

 金棒を手放しも尚、動揺しながらも格闘戦に切り替えるドロボンだが、レグロスはそれらを拳や足で弾き返して行き、やがてドロボンの左脇腹に打ち込んだ右足蹴りを皮切りに、爪を立てた形の右手による電撃を伴った引っ掻きのような打撃、左拳による炎を纏ったパンチ等で目にも止まらぬ速さでドロボンを攻め立てて行く!

 

 その戦闘スタイルはまるで、荒れ狂う龍や虎のようでもある。

 

 レグロスは火炎と電撃を纏った両拳のパンチを叩き込み、それを食らったドロボンは大きく吹っ飛びその先の岩山に激突する…!

 

 

 「これで終わりだ…!」

 

レグロスはそう言うと、全身の紋章を燃え上がらせながら、両腕を大きく広げた後、胸の前でクロスさせてエネルギーを溜めて行く。

 

 「閃光烈破弾!!」

 

レグロスは叫びと共に、溜めたエネルギーを両手に込めて、光弾として放つ必殺技『閃光烈破弾』を放つ!

 

 

 「バカなっ…! 俺の野望が、こんな所でぇぇぇぇぇぇ…!」

 

 ドロボンは、光弾を受け止めて踏ん張ろうとするが、やがてその威力に耐え切れず、直撃した光弾に体を貫かれ、そのまま大爆発して消し飛んだ…!

 

 

 ドロボンを撃破したレグロスは構を取り、しばらくその場に立ち尽くす。

 

 「ま、こんなもんか。」

 

 やがてレグロスはそう言うと、その場から飛び立つ。

 

 

 レグロスは何処へ帰って行くのか…? それは誰も知らない、大宇宙の謎である…。

 

 

 〈完〉




 読んでいただきありがとうございます!


 今回は「私なりのデッカーの世界でのストーリー」という意識で、所謂ちょっとした遊び心として制作してみました。

 なので、今回も前回同様、本作のオリジナル主要人物(竜野櫂、新田真美など)が一切登場しませんでした。

 最初、ユウコとミカの2人を海羽と真美の2人にする(つまり、デッカーの世界での海羽と真美)という案もありましたが、今回はデッカーの世界が舞台なので、折角だからガッツセレクトと関わりのあった人物の中で、私が特に印象に残った2人を選んで登場させました。(その方がグレースも参戦させやすいしね(笑))

 また、前回のトリガーとグリージョの回で登場させたかったけど叶わなかったイグニス(トリガーダーク)も、今回絡ませる事が出来たのも個人的に嬉しかったですね。(トリガーとデッカーが同じ世界線だからこそでもあります)

 あと、登場怪獣は、前座の3体はそれぞれ昭和・平成・令和から一体ずつ選出してみました。


 ウルトラマンデッカーは、正に令和のダイナって感じがしてとてもカッコよく、内容もダイナを彷彿とさせる明るく堅実で面白い作風で、毎週楽しみに見ています!

 トリガーと何度も共闘したり、ダイナとも共闘したりと、戦闘シーンも熱いものばかりですね。

 今後、スフィアとどう決着が着くのか…果たしてアガムスを救えるのか…非常に楽しみですね!

 どのタイプもカッコよくて強くて最高ですね! ダイナミックタイプも、何処かアメコミヒーローも彷彿とさせる斬新なボディのデザインに、剣と盾を持って戦うスタイルもカッコよく、そして、これまでのウルトラマンに無かった要素を感じて面白いですね。


 また、昨年は他にも『ウルトラギャラクシーファイト 運命の衝突』の配信、『シン・ウルトラマン』の公開もあった等と、ウルトラマン関連が豊作でしたね!

 どちらも思った以上の面白さと満足度でした!

 ウルトラマンレグロスもカッコよくて早速好きになりましたね。(今回も、顔見せ感覚で登場させました笑)


 来年は『ウルトラマン ニュージェネレーションスターズ』の放送、『ウルトラマンデッカー 最終章 旅立ちの彼方へ…』の配信&公開もあるみたいなので、それらも非常に楽しみです!


 後書きが長くなってしまって&勝手に興奮してしまって申し訳ありません。


 今年も時間を見つけては作品を制作して行こうと思いますので、宜しければ今年もよろしくお願いします!


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています!


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番外編「ウルトラファミリービッグマッチ!」

 皆さん、お久しぶりです。

 そして、メリークリスマス(笑)

 今回は年末年始特別編のつもりで制作した番外編で、今年で50周年を迎えたウルトラマンと、その家族が活躍します!

 相変わらず文才は無く、ストーリー展開も少々強引な所もあるかもしれませんが、とりあえず楽しんでもらえたら幸いです!

 そして、今年もあと少しですが、これからもよろしくお願いします!

 では、どうぞ!


 これは、遡る事50年前にとある“ウルトラマンNo.6”の戦士が降り立ち、守り抜いた地球での物語である…。

 

 (OP:ULTRA BRAVE)

 

 ハロー!みんな、元気にしてるかな?

 

 私は眞鍋海羽!

 

 いつもどんな時も元気と笑顔を絶やさないのがモットー…なんだけど、それ故なのかな?みんなからはよく「可愛い」とか「癒される」とか「元気もらえる」…たまには「なでなでしたい」とも言われるの。

 

 最後に関しては私が小柄で子供っぽく見えるからなのかな〜…くぅぅ、もうちょっと身体があればな〜(自分でも認めてるとはいえやっぱりちょっと悔しい)。

 

 でも、これだけは言える。

 

 いつも元気でいるのは、周りの人達にも常に元気でいてほしいから。

 

 だから、もし落ち込んでる、困っている人がいるのなら、あまり適切なアドバイスは出来ないかもだけど、せめてその人の話を聞いてあげて、そして私なりに笑顔にさせることが出来たらな~って思ったりしてるの。

 

 

 おっと、前置きが長くなっちゃったね。じゃ、ここからが本編だよ。

 

 

 私は今、冬休みという事で通っている大学から地元に帰省してるの。

 

 今日は12月24日、クリスマスイブ!

 

 クリスマスという、今年も一年で一度のハッピーな日が来たという事で、私も今とてもハッピーな気分になってるの。

 

 そしてクリスマスイブということで、この日私はボランティアに参加してクリスマスセール中のお店などのチラシとかをクリスマスで賑わう街中で配ることになってるの。

 

 

 ちゃっかりとサンタさんのコスプレをして、他の皆と共に商店街でチラシ配りのボランティアを始める私。

 

 午前中にも関わらず商店街は既にこの時間から賑わっており、至る所にツリーが置いてあったり、ある店はクリスマスセール、ある店はクリスマス限定商品やパーティーの食品を売ったりなどしており、更にあらゆる場所から色んなクリスマスの歌が優しく鳴り響いていて、正に全体がクリスマスムードだったわ。

 

 「よろしくお願いしまーす!…キャッ!」

 

 元気よく道行く人々に声を掛けながらチラシを配って行く私。 その時、ある1人の男性とぶつかってしまい、それによりチラシをばら撒いてしまった。

 

「ああっ…ごめんごめん!ついよそ見してた。」

 

 イケメン顔のその男の人はそう謝りながらチラシを拾い始める。

 

 「いえいえ、私も鈍臭かったんです。」

 

 そう言って私も拾い始める。

 

 …え?その光景、ラブドラマのワンシーンの、運命の出会いみたいだって? やだ〜もう!やめてよ(照)

 

 男性は拾ったチラシを綺麗に揃えると、私に手渡す。

 

 「ありがとうございます。」 「いいって事よ。頑張れよ。」

 

 男性は笑顔でそう言いながら私の肩を軽く叩くと、何処かへと歩き去って行った。

 

 ちょっとだけの交流だったけど、素敵な人だったな〜。 もし出来たら彼氏にしたいぐらい!

 

 しかし、あの人が身に付けてた紺色のジャケットと黒い帽子に書かれてた文字は一体何なんだろう…?確か「E.G.I.S. SQUAD」と書かれてたような…。

 

 ま、なんでもいいや。とにかくちょっとだけ、素敵な出会いをしちゃった!

 

 

 先程、海羽と別れたその青年は、海羽から受け取ったチラシを見つめながら呟いた。

 

 「この地球では今、クリスマスの時期か…。 じゃ、尚更守り抜かないとな!」

 

 そう言うと再び歩き始める。

 

 彼は一体何者なのか…?

 

 

 私、海羽がボランティアで配るチラシもあっという間に捌けて行き、特に私の所には(特に男子で)多くの人だかりが出来てあっという間に無くなっちゃったわ(笑)

 

 中には握手を求めて来る人もいたから、それにも応じちゃった…。 もうすっかりアイドルみたいになっちゃってるね、私(苦笑)

 

 因みにボランティアに参加する人もほとんどがコスプレしていて、サンタの他にもトナカイとかツリーとか雪だるまとか、様々で結構面白かったわ。

 

 

 昼から賑わってるし、更に夜には近くのセンチュリープラザの敷地内でイルミネーション大会もあるし、今年もみんながハッピーで楽しいクリスマスになりそうだな〜!

 

 因みにそのイルミネーション大会内では、毎年『ウルトラの父降臨祭』と言う祭りも開催されるの。

 

 昔から何度かウルトラの父が冬に現れて奇跡の力を発揮している事に因んで、毎年冬に開催されているという事なんだけど…。

 

 私、ウルトラマンは噂に聞いたり、書籍などで写真などを見た程度で本物は一度も見た事ないな…いつかどこかで会えるといいな〜。

 

 

 …なんて事を考えながら、ボランティアを終えた私は解散後、帰り道をルンルンと歩いていた。

 

 「今夜は何のケーキ食べよっかな〜。 苺のショートもいいけど、たまにはチョコレートも食べたいし〜、いっそどれも頂いちゃおうかな〜。」

 

 そう言いながらルンルンと歩いていると、とある公園の前まで来た時、ふと私は立ち止まる。

 

 耳をすましてみると、公園の方から歌声が聞こえて来る。 その歌声は、遠くまで響き渡るように真っ直ぐで、透明感がある、とても聴いてて心地がいい素晴らしいもの。

 

 …そして、どこか聞き覚えがある声。

 

 

 歌声が止んだ時、私はその方へと振り向くと、そこには見覚えある人物が立っていた。

 

 可憐で何処か儚げな雰囲気もある…間違いない、『富坂奈緒』(とみさか なお)ちゃんだわ。

 

 彼女は私の高校時代の同級生であり友人で、優しく温かい物腰に癒される事からクラスでも特に人気があったっけ。

 

 それに1番の人気の秘訣は、先程も言ったその歌声。

 

 実際、高校のカラオケ大会でも優勝した事があって、更に県内ののど自慢大会でもグランプリを獲得した事から、そこの審査員でもあった有名な音楽家、『白鳥さゆり』さんに気に入られ、彼女も教師として勤めている音楽大学に合格・入学後、直属の生徒にもなったくらいなの。

 

 それに、身長も私よりちょっと高いし…くぅぅ〜…羨ましい要素が多過ぎる…!

 

 確か今夜のイルミネーション大会でのステージでも出場予定で、きよしこの夜を披露する予定なんだっけ。

 

 きっとその練習をしてるんだわ。

 

 …でも、よく見てみると、奈緒ちゃんどこか曇った表情で俯いてるっぽい…?

 

 気になった私は、久しぶりの友人との再会というのもあって、奈緒ちゃんに歩み寄って話しかけてみる。

 

 

 「奈〜緒ちゃん!」

 

 うさぎのように飛び跳ねながら近づいて話しかける海羽に、奈緒は「はっ」と少し驚きつつも振り向き、海羽だと気づく。

 

 「海羽…ちゃん?」

 

 「久しぶり!」

 

 「ほんと、高校卒業以来じゃない? てか何その格好?サンタさん?」

 

 海羽はボランティアの帰りであるため、サンタ姿のままであった。

 

 「えへへ、似合うでしょ〜?」

 

 海羽は満面の笑みで、一回転した後、首を傾げながらサンタ衣装を自慢するように裾を軽く引っ張って広げた。

 

 2人は会った途端、一気に高校の頃に戻ったかのように弾む会話を展開した。

 

 「相変わらず元気いっぱいだね、海羽ちゃん。」

 

 「えへへ、奈緒ちゃんも、やっぱり最高の歌声だよ!」

 

 「えぇ…。」

 

  海羽の褒め言葉に、奈緒は曖昧な返事と共に俯き始める。

 

 「奈緒ちゃんの歌声も聴けるし、今夜のイルミネーション大会楽しみだな〜!」

 

 期待と共に楽しみを膨らませる海羽。だが、奈緒は尚も俯いたままであり、それに気づいた海羽は上目遣いで覗き込むように話しかける。

 

 「どうしたの…? 気分でも悪いの?」

 

「あ、いや…体はこの通り元気なんだけど…。」

 

 そう言いながら奈緒は、その場で一回転してみせる。

 

 その様子は、風に吹かれて揺れる花のように優雅であり、靡く白いドレスのような服から甘い香りが辺り一面に広がるようであった。因みに彼女、少しだけダンスの心得もあるのである。

 

 

 「良かったら私に話してみてよ。折角偶然再会出来たんだし、何かの縁かもしれないし、久々に奈緒ちゃんと共有したいな〜。」

 

 海羽の言葉に、奈緒は何かを思い出したかのように明るさが戻りつつある顔を上げ始める。

 

 「…そうね。思えば高校の時、好きな事とか、楽しい事とか、悩み事とか…なんでも海羽と共有して来た。 久々にそうしちゃおっかしら。」

 

 奈緒は話す決心をした。

 

 

 それは、遡る事1週間前、白鳥さゆり先生と最後の練習をした時の事である。

 

 歌唱の練習が終わり、終わる頃に先生からこう言われたのだという。

 

 「歌声については、文句ないわね。 十分に人前で歌ってもいいレベルだわ。 ただ、あなたには人に歌を届ける事で、もう一つ欠けている所がある。当日までに、それが何なのかを自分で見つける事。」

 

 この発言がずっと引っ掛かっていた奈緒は、それが何なのか一向に分からず、それ故にいくら練習して人から上手いと褒められても嬉しくなれず、そして遂にそのまま当日(今日)を迎えてしまったのだという。

 

 「そう…なんだ。」

 

 奈緒の悩み、それ故の苦しみを聞いた海羽は、少し言葉を詰まらせる。

 

 「何なんだろう?欠けてる所って…。歌は聞いての通り抜群に上手いし、現にこれまで様々な大会で賞を取って来たのにね。」

 

「ありがとう。でも…私も思ってはいるんだ。歌が上手いだけじゃダメだって。単に上手い歌を人に届けるだけじゃ、何かが足りない…頭では分かってるんだけど…。」

 

 

 海羽は、奈緒の思わぬ悩みを聞いてビックリした故なのか、尚も言葉を失っている…。

 

 だが、大切な友達の悩みだから何とかしてあげたい気持ちから、考えに考え抜いた後、話してみた。

 

 「私、歌は奈緒ちゃんほど上手くないし、知識も疎いけど…でもこれだけは言える。 奈緒ちゃんならすぐに見つけられるよ。」

 

 「…え?」

 

「だって奈緒ちゃん、私なんかよりも音楽を得意とし、ずっとそれと向き合って頑張ってるんだもん。 それに、今夜は人もいっぱい見に来てくれるだろうし、何よりクリスマスイブ、聖夜、聖なる夜だもん。きっと頑張ってる奈緒ちゃんをいい方向に導いてくれると思うよ。」

 

「…そうね。クリスマスだし、みんなを笑顔にするためにも、私がいつまでも曇ってちゃいけないよね!」

 

「その意気その意気!やっぱ奈緒ちゃんは笑ってる顔が1番似合うよ!」

 

「思えば高校時代も、海羽の明るさに何度も助けられて来た。 海羽にも恩返ししなきゃね。 また頑張ってみるよ。」

 

 元気を取り戻した奈緒と、海羽は笑顔で見つめ合う。

 

 そして奈緒は、一度海羽に一から聞いて欲しいというのもあって、もう一度練習の歌唱を始める。

 

 先程と同じく、真っ直ぐで透明感のある歌声は、耳に入った途端に優しく全身に響くような心地よさもあり、海羽も目を閉じてリラックスした顔でスッカリ聞き入っていた。

 

 

 奈緒が歌い終わった瞬間、海羽は感動で涙を出しながら勢いよく拍手を始める。

 

 「うぅ…最高だよ奈緒ちゃん!私泣けて来たよ〜!」

 

 「やだ、そんな…やめてよ〜。」

 

 奈緒は照れながらも、嬉しそうな顔で言った。

 

 

 すると、そんな2人の元に、とある通りすがりの1人の男性が声をかける。

 

 「やぁ、なかなかいい歌声だね。」

 

 「…ありがとうございます…。」

 

 奈緒は照れと、いきなり話しかけられた事への困惑の中、とりあえずお礼を言う。

 

 「ありがとうございます!いいですよね〜!奈緒ちゃんの歌は、最高なんですから!」

 

 海羽も、男性にお礼を言った後、奈緒の歌をベタ褒めし、それを聞いた奈緒は照れ臭そうにしながらも何処か満更でもない表情を見せる。

 

 海羽達に話しかけた、黒い着物に身を包み、首には白いスカーフを巻いたその男性は見た感じ年配寄りの大人の男性なのだが、爽やかな笑顔がとても似合うものであり、若い頃は好青年だった事が感じ取れる。

 

 海羽も奈緒も、初対面ながらその雰囲気から怪しい者ではないと確信し、その男性と気がつけば楽しく会話を続けていた。

 

 「その歌声、是非オルフィにも聴かせてあげたいよ。」

 

「オルフィって確か…あの歌好きな怪獣?」

 

「知ってるんですか?」

 

 男性の発言に、奈緒も海羽も食い付く。

 

 この世界では、秩父のボッチ谷に何百年も前からオルフィという歌が好きな怪獣が暮らしているという言い伝えがあるのである。

 

 「ああ、実はね、おじさん、オルフィに会った事があるんだよ。」

 

「え?本当ですか?」 「他にも聞かせてください!」

 

 男性は、2人にオルフィ以外にも様々な怪獣に出会った事がある話をした。

 

 何故かケチャップが好きなセイウチの怪獣、親子のカンガルーの怪獣、餅が大好物な臼みたいな怪獣、食いしん坊で野菜ばかりを食べる怪獣、たまたま地球に迷い込んでしまった旅好きのわんぱく宇宙人、お酒が大好きでいつも酔っ払っている怪獣、ボール遊びが好きな怪獣など。

 

 どうやらその男性は年相応、いや、もしかしたらそれ以上の人生経験を積んでいると思われる。

 

 海羽と奈緒は、その男性とある程度話し合った後に別れる事にした。

 

 「じゃ、僕はここで、頑張れよ!」

 

「こちらこそありがとうございます。」 「お元気で〜!」

 

 お互い手を振りながら別れ、男性は2人が見えなくなるまで歩いた後、感慨深そうに呟く。

 

 「若さっていいな。 俺もあの頃を思い出すよ。」

 

 色んな怪獣と会った事があり、海羽達を見て自身の若い頃を振り返るその男性…どうも彼はただの人間ではない気もして来るが、果たして何者なのであろうか…?

 

 

 男性と別れた後、海羽と奈緒も一旦別れ、後に夜に会場で待ち合わせする事にした。

 

 「じゃ、頑張ってね、奈緒ちゃん。」 「海羽ちゃんも、一緒に楽しもうね。」

 

 

 私、海羽は互いに手を振って奈緒ちゃんと一旦別れた後、再びルンルンと帰り道を歩き始める。

 

 でも公園を出て少し歩いた後、私の目の前で(クリスマスが来て嬉しかったのか)はしゃいで走っていた1人の男の子が転んでしまい、その子はなんとか座り体勢になるも、擦りむいた右膝を見て涙目になり始める。

 

 いけない!折角のクリスマスなんだから、特に子ども達は笑顔でいなくちゃ…!

 

 「泣かないで。サンタさんがここにいるよ。」

 

 私はその子の元に歩み寄り、肩に手を当てて優しく話しかける。

 

 するとその子は私の方に顔を向けると、半泣き状態だった顔が徐々に笑顔になって行く。

 

 「わぁ、サンタさんだ!」

 

 「まだ昼間だけど…メリークリスマス!」(満面の笑み)

 

 「プレゼント絶対にちょうだいね!」

 

 「もちろん!」

 

 「ありがとう!サンタさん大好き!」

 

 そう元気よく言いながらその子は私に抱き付いた。よしっ!サンタの格好を活かした元気付け作戦、大成功!

 

 その時、何処からか1人の女性がこちらに歩いて来る。

 

 「あら大変、大丈夫?」

 

 子どもに歩み寄って優しく話しかけるその年配寄りの大人の女性は、緑の服を着ていて、手に「横断中」と書かれた黄色い旗を持っている。多分「緑のおばさん」だろうね。

 

 「あとはおばさんに任せてちょうだい。」

 

 緑のおばさんは私にそう言うと、手際良く手当てを始める。その手慣れた感じからして、きっと他にも色んな怪我をした子供の手当てをして来たんだろうな〜…。

 

 そうこう思っているうちに緑のおばさんは手当てを終え、それによってその子は更に元気を取り戻し、私達に手を振ってお礼を言いながら去って行く。

 

 「ありがとう緑のおばさん! サンタさんも!」

 

 私達は去って行くその子を手を振りながら見送った。

 

 すると、緑のおばさんは今度は私の方を向く。

 

 「お嬢ちゃんもいい子ね。 そうだ、いいものあげる。これお守りなの。 大切に持っててちょうだい。」

 

そう言いながら、懐から取り出した、黄色を基調として、中央にはルビーのような赤いクリスタルが付いているバッジ型のアイテムを私に手渡す。

 

 「…ありがとうございます。」

 

 知らない、初対面の人にいきなり話しかけられ、更に物を手渡されたワケだけど、何故だか私はその緑のおばさんの優しく微笑む顔から怪しい人ではないという事を確信し、笑顔でお礼を言った。

 

 それに、お守りとしてくれたこのバッジからは、なんだか不思議な力を感じ取れるし…。

 

 「ねぇ、あなた、やりかけた事は最後までおやりなさいよ。途中でやめたらダメですよ。」

 

「…イエス!」(ダブルピース)

 

 私は緑のおばさんと別れた。

 

 

 ボランティア中に会ったお兄さんに、様々な怪獣と出会った事がある男の人、そして優しい緑のおばさん…なんだか今日は、久しぶりの再会に加え、新しい出会いも多いわね…。

 

 なんだか例年以上に、凄い事が起こるクリスマスイブになりそうな予感…!

 

 

 再びルンルンと帰り道を歩き始めた海羽。

 

 だがしかし、そんな様子を何処からか見ながら、不気味に笑う1人の影がいた…!

 

 「フッフッフッフッ…そうやって笑っていられるのも今の内だ人間ども…!」

 

 そう言いながら、影で真っ黒になっていて隠れていたその姿を徐々に現し始める…。

 

 その姿は、赤紫に緑などの毒々しい体色に、脳髄が肥大化したような頭部が特徴で、とても人間とは言えないものである…!

 

 奴はその姿の通り地球人ではなく、『凶悪宇宙人ドルズ星人』であり、『グズド』という名を持つ奴は、近くに奇妙な機械を置いたまま高笑いを続けていた。

 

 「我がドルズ星の宇宙船団も着々と近づいている。ウルトラ戦士のいない今だからこそ、この地球を我が物にするチャンスだ…!その暁には、全人類をメモールに改造して我が配下にしてやる…!待ってろよ人類ども…我が最高傑作が、お前らへのクリスマスプレゼントだ…! ヒッヒッヒッヒ…!」

 

 果たしてグズドがこの地球を征服するためのその“最高傑作”とは…?

 

 

 一方で、先程海羽が出会った3人が合流していた。

 

 「やはり、この周辺の彼方此方から、微弱ながら邪悪な力を感じる…!」

 

「少なくとも、グズドがこの地球に来ているのは間違いないみたいだな。」

 

 青年、そして男性はそれぞれそう言った。

 

 「引き続き捜査をした方が良さそうね…。私は街の人達の様子を見て来るわ。 2人も、気をつけて。」

 

 「「はい!」」

 

 緑のおばさんの言葉に2人は返事をし、3人は再び散らばり始めた。

 

 やり取りからしてグズドを追っているであろうこの3人も、一体何者なのであろうか…?

 

 少なくとも普通の人間ではなさそうであり、もしかすると海羽がこの3人に出会ったのは、“偶然”ではなく“必然”だったのかもしれない…!

 

 

 そんな事を露とも知らない海羽は、私服に着替えた状態で、夜になっていよいよ開会したイルミネーション大会、そしてウルトラの父降臨祭に足を運ぶ。

 

 私、海羽は、一旦私服に着替えた後、日が沈んだ頃に始まったセンチュリープラザのイルミネーション大会に足を運んだ。

 

 流石はクリスマスね。このイルミネーション大会も沢山の人が来ていて、昼間と同じく、いや、それ以上に賑わってるかも…!

 

 近くのウルトラの父降臨祭の方も賑わってて、ケーキを食べる人もいればプレゼント交換をする人達もいたり、他にもウルトラの父のソフビや、ウルトラの父の角のカチューシャなどと言ったウルトラの父をメインとした様々なグッズを売っていたり、くじ引きや福引等を開催しているコーナーもあり、とても楽しそうだわ…。

 

 私も後で寄ってみよっと!

 

 

 やがて、イルミネーションのライトアップが始まった。

 

 サンタさんやトナカイちゃんはもちろん、スノーマン君、他にも星や、屋根に雪の積もった煙突の付いた家、雪が降っている街など、様々なものが彩りのライトが付いた蔦で作られていて、更にバックには様々なクリスマスソングも流れていて、まるで私達は幻想的で心地いい別世界に招待されてるみたいな素敵な感覚でいるわ。

 

 あ、展示物の中には勿論、ウルトラの父もあるわ。

 

 ウルトラの父の他にもその妻のウルトラの母、そして息子のウルトラマンタロウも。

 

 ウルトラファミリー勢揃いね、よく出来てるわ〜。まるで今にも動き出しそうなほど!(笑)

 

 

 クリスマスの夜の幻想的な世界を歩いていたら私は、やがて1人の友人と合流する。

 

 奈緒ちゃんだわ。

 

 「あ、やっほー!奈緒ちゃん。」 「あ、海羽ちゃん。」

 

 紺色を基調に、キラキラした色とりどりの装飾が散りばめられた、まるで夜空のようなワンピース風のドレスを見に纏った奈緒ちゃんは、私に笑顔で手を振る。

 

 すぐそこのステージで開催されているクリスマスコンサートでの自分の出番が来るまでに待機している状態だった。

 

 「綺麗〜!とっても似合ってるよ!」

 

 「ありがとう。」

 

 奈緒ちゃんはちょっと照れ臭そうにお礼を言った。

 

 

 「いよいよだね〜! 私、最前列で見るから!」

 

「えぇ、私、これまで培った分をフルに活かして、心を込めて歌うわ。」

 

 奈緒は小さくガッツポーズを決めた。

 

 不思議にも、奈緒の表情は昼間の時のどこか少し曇りがある感じではなく、何処か晴れやかになったかのような自然な明るい表情になっているようであった。

 

 先生に言われた、一つだけ欠けている所がもう分かったのであろうか…?

 

 やがて自分の出番が来た奈緒はステージに上がろうとする。

 

 「じゃ、行って来るね。」

 

 「うん!頑張ってね!」

 

 

 だがその時、何処からか響く叫び声に、海羽と奈緒をはじめ、辺りが騒然となる。

 

 「…何…?」

 

 戸惑いながら辺りを見渡す海羽、すると何やら地面に倒れてもがき苦しんでいる男性2人を発見して奈緒と共に歩み寄る。

 

 「大丈夫ですか?」

 

 奈緒は手を差し伸べようとするが、何やらその人の体から出ている赤黒い煙のようなものに気づき思わず手を引っ込める。

 

 「なんなのこれ…?」

 

 2人が動揺していると、再び別の方向から悲鳴が聞こえる。しかも今度は数カ所から!

 

 

 次々と、謎の赤黒いオーラを発しながら倒れる人達。海羽と奈緒は辺りを見渡すと、やがて近くの高台の上に1人の影を見つける!

 

 「フッフッフッフッフ、やはりすごい効果だぜ。」

 

 人々が次々と倒れる謎のエネルギーを撃っているであろう手持ちの小型銃を撫でながら不気味にそう笑って、高い所からその様子を傍観するその者はドルズ星人グズドであった!

 

 海羽たちをはじめ、徐々に人々が自身に気づいて視線を向け始めた所でグズドは名乗り出る。

 

 「ご機嫌麗しゅう!!浮かれた人間ども!!」

 

 「あそこにいるのは一体…!?」 「人じゃないみたい…?」

 

 海羽と奈緒はグズドに気づくや、この不気味な姿に早くも人間じゃないと即座に気づく。

 

 海羽たちの周りの人々(特に子供たち)も、怯え始める人が多数出始める。

 

 「俺はドルズ星から来た、グズドという者だ!」

 

 「異星人…?」

 

 グズドの自己紹介に、奈緒は反応する。

 

 「ウルトラマンがいなくなり、人間どもが平和に浮かれている今だからこそ、地球を我が物に出来るチャンスだ…!」

 

 「そんな、なんて事を…!」

 

 グズドが宣言した地球侵略を聞いた海羽は驚愕する。

 

 

 「さぁ、ちょうどクリスマスという事で、楽しいショーの開始と行こうではないか! イッツ!ショータイム!!」

 

 グズドが高らかにそう叫ぶと、少し遠く離れた先の夜空に暗雲のようなものが広がって、やがて竜巻のように回転して大きな穴が出来上がり、その中から1人の巨人の影が街中に土砂や土煙を巻き上げながら着地する!

 

 着地による衝撃と強風に、海羽達も含める人々が思わず顔を背けた後、徐々に視界を前に戻して行くと、そこには一体の巨人が凄まじい威圧感を放ちながら立っており、その姿はウルトラマンのようだが、黒一色の体に複雑な赤いラインが走っている禍々しいものであり、釣り上がった目は赤みを帯びた黄色、カラータイマーは紫であり、両手には鋭い爪が付いている。

 

 やがてその巨人は下顎を上下しながら不気味に笑い始め、それを見た人々も、邪悪なものを感じ取ったのか怯える人が続出し始める。

 

 

 「あれは…ウルトラマン…?」 「でも、なんか禍々しい…。」

 

 海羽と奈緒も、その邪悪なオーラをひしひしと感じる姿に身構える。

 

 「でも…なんか、手がバナナみたい…?」と海羽は口走る。

 

 「バナナとは何だ!?バナナとは! あれこそ、ヴィラン・ギルドで手に入れたベリアル因子に宇宙で拾ったデビルスプリンター、マブゼ達が遺した装置、そして我がドルズ星の技術を駆使して作り上げた俺の最高傑作だ!」

 

グズドが召喚したのは、先程挙げたものたちで作った『ウルトラマンベリアル』、いや、正確には模造品であるため、『ニセウルトラマンベリアル』である!

 

 因みに先程の海羽の発言の通り、偽物だからか、爪やトサカの部分が黄色に染まっている。

 

 マブゼとは、かつて別次元の地球でニセベリアルを作って暴れさせた事があるチブル星人であり、最終的にはニセベリアルが暴れて自身がいたビルも壊してしまった際にその瓦礫の下敷きになって最期を迎えたのだが、どうやら装置だけは辛うじて無事だったみたいであり、グズドはそれを密かに回収した後、ドルズ星の技術も加えて改良し、そしてそこにベリアル因子とデビルスプリンターを入れて作り上げたと思われる。

 

 グズドはこのニセベリアルにより、ウルトラマンのいないこの地球を襲撃し、征服しようと企んでいるのだ…!

 

 

 「暴れろ!!ウルトラマンベリアル!!」

 

 グズドの指示を受けたニセベリアルは、自身の両手を不思議そうに眺めたり、辺りを見渡した後、腕を突き出して電撃を放つベリアルサンダーを放ち辺りに爆発を起こすのを皮切りに暴れ始める!

 

 不気味な笑い声を上げながらビルを殴り壊したり、道路を踏みつけるように破壊などしながら暴れ回るニセベリアル。

 

 ビルやガラスの破壊音、逃げ惑う人々の悲鳴。さっきまでクリスマスソングが流れ、人々が思い思いにクリスマスを過ごしていた街が凄惨なモノへと変わって行く…!

 

 そしてニセベリアルが破壊した建物の瓦礫などで、逃げ惑う人々の中に負傷者も続出し始める…!

 

 因みにこのニセベリアルは偽物だからかオリジナルの人格や知性はほとんど無いようで、終始唸り声か笑い声しか上げておらず、それがまた不気味さに拍車をかけていた。

 

 「どうだこの破壊力!!流石は黒き王!!さぁ、どんどんやれー!!」

 

 自身の自信作の暴れっぷりに高笑うグズド。逃げ惑う人々の中には怪我で苦しむ者や、恐怖で泣き出す子供までもが出始め、楽しいクリスマスだったのが地獄に変わって行く…!

 

 

 「どうしてこんな…。」

 

 「奈緒ちゃんしっかり!」

 

 逃げ惑う人々の波の中、奈緒はショックでその場に膝から崩れ落ち、海羽はそれに必死に呼びかける。

 

 だが、そんな海羽も「もうダメだ」という気持ちが強くなりそうになっていたが、ふと近くのウルトラの父降臨祭の、ウルトラの父がプリントされた巨大バルーンを見て、気力を保ちつつ祈り始める。

 

 

 「きっと、来てくれるはず…! 以前もこの地球を守ってくれたんだもん…! 私は信じる…ウルトラの奇跡を!」

 

 

 海羽は、両手を合わせて強く握りながら強く祈り続けた…!

 

 

 そんな海羽の願いを嘲笑うかのように暴れるニセベリアルは、海羽達のいる会場に迫ろうとしていた…!

 

 

 だがその時、そんな海羽の祈りが、遂に奇跡を呼び起こそうとしている…!

 

 

 海羽達の前に、何処からか1人の人が現れ、海羽と奈緒はその人に視線を向ける。

 

 その人はなんと、プレゼントの袋を担いだサンタクロースであった!

 

 「サンタさん!?」

 

 「メリークリスマス!」

 

 突如現れたサンタは、驚く海羽をよそに、状況に合わぬクリスマスの挨拶をする。

 

 「メリークリスマス…じゃなくて!どうしてサンタさんが今ここに…!?」

 

 「ここにいたら危ないですよ!」

 

 海羽と奈緒は動揺を隠せないながらも、サンタに呼びかける。

 

「ふむ、確かにこれでは、良い子達にプレゼントを配れそうにないな…。」

 

 やがてグズドもサンタに気づく。

 

 「誰だ貴様は!?」

 

「見ての通り、通りすがりのサンタクロースさ。」

 

 海羽はなおもサンタに必死に呼びかける。

 

 「サンタさんも、今は早く避難してください!」

 

 「あぁ、だが、奴を倒してからだな。」

 

 サンタはニセベリアルの方を指差しながらそう言った。

 

「…え?」

 

 戸惑う海羽の元にサンタは歩み寄り、肩にそっと手を当てる。

 

 「安心しなさい…。」

 

 サンタがそう海羽に優しく語りかけた時、サンタの頭部にさっきまで無かった銀の角が現れる…!

 

 「はっ、角が…まさか…?」

 

 何かを察したであろう海羽にサンタは無言で頷いた後、視線をグズドの方に向ける。

 

 「貴様…まさか…!?」

 

 グズドも角を見て何かを察したのか、さっきまでの余裕が崩れ動揺し始める…!

 

 

 「ドルズ星人グズドよ! ベリアル因子で宇宙の各地で暗躍した後に、ウルトラマンのいないこの地球を狙ったみたいだが、残念だったな!」

 

 そう言うと、サンタの体が緑に光り始める…!

 

 「我々ウルトラ戦士は、決して地球を見捨てない! 人々が、我々を信じてくれる限り…!」

 

 やがてサンタの体は緑の巨大な光の球体に変わり、その場から離れ、ニセベリアルの暴れる方へと向かい始める…!

 

 

 海羽と奈緒は、神々しいそれを見送りながら何かを確信したのか安心な表情になり、やがて逃げ惑っていた人々もふと立ち止まり、その球体を見つめ始める。

 

 「あれは…?」 「まさか…!」

 

 中には既に勘づいている人も出始めていた…!

 

 ニセベリアルも、球体が自身の近くまでに来ると、それに気づいて暴れるのを一旦止め、不思議そうに見つめ始める… !

 

 

 やがて緑の光の球体は眩い光を放ち始め、目の前のニセベリアル、そしてそれを見ていた人々が目を覆ったり顔を背けたりする中、その光の中から1人の巨人が仁王立ちで現れる!

 

 光が止んだ後、人々は視線を戻し始め、それはニセベリアルも同様であった。

 

 現れたその巨人は、ウルトラマンのようだが、赤いマント(ファザーマント)を身に付けて仁王立ちしている姿から何やら凄まじい貫禄を感じるものであり、頭部には先程のサンタクロースの姿の時もあった角(ウルトラホーン)が付いている。

 

 

 現れたのは、ウルトラマン達の故郷・M78星雲光の国出身であり、宇宙警備隊の大隊長を務めるウルトラ戦士『ウルトラの父』(本名:ウルトラマンケン)である!

 

 

 人々は、絶望的な状況のタイミングで、しかもウルトラの父降臨祭が開催されていた日にウルトラの父が正に“降臨”した事により、一斉に歓喜の声を上げ始める!

 

 海羽と奈緒も同様に、その神々しい姿の本物を初めて見た事により、一気に希望を感じ始める。

 

 「祈りが…奇跡を呼んでくれた…!」

 

 

 人々が歓喜の声や声援を上げる中、ニセベリアルは目の前のウルトラの父に対し何やら怒り狂うような悶え方をする。

 

 どうやら偽物でも、オリジナルにとっては元戦友、所謂、因縁の相手でもあるウルトラの父への怨念は遺伝子レベルで刻み込まれているようである。

 

 グズドも同じく焦りを見せながらも、ニセベリアルに指令を出す。

 

 「まさか、宇宙警備隊の大隊長が直々にお出ましとは…! だが、俺の最高傑作の強さは本物と同様、やれるものならやってみやがれ…! 行けベリアル!!」

 

 

 ニセベリアルは顔を突き出して威嚇するような動作をした後、ウルトラの父に猛然と襲い掛かる!

 

 ウルトラの父はそれに対してマントを脱いで投げつけ、ニセベリアルはそれを片手であっさりと払い除けつつ尚も駆け寄るが、ウルトラの父は続けて羽型の武器『ウルトラフェザー』を投げつけ、ニセベリアルはそれを真剣白刃取りのような動作で受け止めるが、そこから電撃が体中に走り始め苦しむように動きが止まる!

 

 その隙にウルトラの父は、ある方向へとアイコンタクトを向ける。

 

 海羽もその視線の先へと振り向くと、そこには先程公園で会った緑のおばさんが…!

 

 「緑のおばさん…?」

 

 海羽が驚いている間にも、緑のおばさんは無言で頷いた後、目を閉じて胸に手を当て、そのまま優しい光に包まれ始め、やがてそれが巨大化して行く…!

 

 人々が見つめられる程度に優しく光る光が徐々に消えて行き、頭部に赤い角とツインテールの髪型のような飾りを付けたのが特徴の1人の巨人がお淑やかな立ち姿で現れる。

 

 

 続いて現れたのは、ウルトラの父同様光の国出身であり、銀十字軍隊長であり、そしてウルトラの父の妻でもあるウルトラ戦士『ウルトラの母』(本名:ウルトラウーマンマリー)である!

 

 

 (BGM:ウルトラの奇跡)

 

 

 ウルトラの父に続き、ウルトラの母も現れた事により、人々、特に女性達は更なる歓声を上げる。

 

 「まさか…緑のおばさんがウルトラの母だったなんて…!」(どうりで何処か特別なものを感じたと思った…!)

 

 海羽も、緑のおばさんのまさかの正体に驚きつつも、奈緒と共にウルトラの父とウルトラの母に声援を送り始める。

 

 

 現れたウルトラの母は、ウルトラの父と見つめ合い無言で頷き合う。

 

 ウルトラフェザーを無理矢理地面に叩き付ける事で電撃から解放されたニセベリアルは、再びウルトラの父に襲い掛かる!

 

 ウルトラの父はファイティングポーズを取ると、ニセベリアルと組み合い、その衝撃で周囲の地面から土砂や瓦礫が巻き上がる!

 

 ニセベリアルはベリアルクローを活かした引っ掻きやパンチ、キックを荒々しく放つが、ウルトラの父はそれらを拳や脚でいなして行き、やがてお互いにパンチの応酬を始めるが、一瞬の隙をついてハイキックを放ち、ニセベリアルはそれを腕で防ぐが、あまりの威力に少し吹っ飛ぶ。

 

 ニセベリアルは続けて吹っ飛んだ先の近くにいたウルトラの母に襲い掛かり攻撃を始めるが、ウルトラの母もその攻撃を打撃技のマザーパンチやマザーキックなどでいなして行き、やがて一瞬の隙をついてニセベリアルの腹部に手刀を決める!

 

 だがニセベリアルはすぐさま体勢を立て直すとウルトラの母に飛び膝蹴りを放ち、ウルトラの母はなんとかそれを両腕をクロスさせて防ぐが、その隙を突かれて引っ掻き攻撃の一撃を受けて後退する。

 

 

 ニセベリアルはウルトラの母に追い討ちをかけようとするが、それをウルトラの父が食い止める。

 

 「ベリアルは私が、そっちは任せたマリー!」

 

 「いいわ、ケン。」

 

 ウルトラの父の指示を受けたウルトラの母は、左腕のマザーブルーにエネルギーを込めて、腕を突き出す事で黄色い粒子状の『マザー光線』を、ベリアル因子に侵された街の人々、そして暴れたニセベリアルにより怪我をしてしまった人々に浴びせ始める。

 

 どうやらウルトラの父はニセベリアルの相手、そしてウルトラの母は街の人々の回復と、予め役割を決めていたようである。

 

 

 ウルトラの母の光線がベリアル因子を消失させ、人々を回復させて行く中、ウルトラの父はニセベリアルと一進一退の攻防戦を続ける。

 

 偽物とはいえ、本物とほぼ同じ強さを持つニセベリアルは、ウルトラの父と互角に渡り合うが、ウルトラの父は決して怯む事は無かった。

 

 「お前は、ベリアルのようで、ベリアルではない!」

 

 そう言うとウルトラの父は、ニセベリアルの胸部に強烈な右拳の一撃を叩き込んで後退させる。

 

 「私の知っているベリアルは、邪ながらも、一撃一撃に魂が込もっていた…! だが、お前からはそれが感じられない…。 お前は、ベリアルの形に作られ、力を入れられただけの人形だ!」

 

 そう言って自身の方を指差すウルトラの父に、ニセベリアルは苛立つように首元をかく仕草を見せた後、再び飛び掛かるが、ウルトラの父は跳躍しての右足蹴りを放ち、ニセベリアルはそれを両腕で防ごうとするも防ぎ切れずに吹っ飛んだ。

 

 

 (BGM終了)

 

 

 「くそぅ…ウルトラの父め、私の最高傑作を愚弄するか…! それにウルトラの母まで現れるとはな…!」

 

 グズドは少し焦りを見せるが、何やら不敵に笑い始める。

 

 「…だが、俺の最高傑作はベリアルだけではないのだよ…!」

 

 

 グズドがそう言うと、街中に不穏な効果音と共に巨大な魔法陣が現れ、その中から先に右手だけが現れてウルトラの母の首根っこを掴み、やがてそのまま全身が現れる…!

 

 現れたのは、青を基調とした体に、胸部のX字型のプロテクター、腕や足のベルトなど、全身に拘束器具を身に付けているような姿、黒い仮面を付けたような顔に釣り上がった赤い目が特徴の、ベリアル同様、邪悪なオーラを感じる巨人…!

 

 「やれ!ウルトラマントレギア!!」

 

 なんとグズドは、デビルスプリンターと、何処からか手に入れていたトレギア因子を使用し、『ウルトラマントレギア』も作って隠し持っていたのだ!

 

 これもまた模造品であるため、正確には『ニセウルトラマントレギア』であり、外見もニセベリアル同様、オリジナルとは異なり手先や頭頂部が黄色になっている。

 

 「また新たに闇の巨人が!?」

 

 驚く海羽をはじめ、人々も再び不安な表情になり始める!

 

 「マリー!」

 

 ニセベリアルと交戦しているウルトラの父も、トレギアの出現と妻の危機に驚きを隠さなかった。

 

 ニセトレギアは、不気味な笑い声と共に右手でウルトラの母の首を掴んだまま、顔に向かって左手で指を差すなどしておちょくるような仕草を見せる。

 

 ニセトレギアもニセベリアルと同様、知性や人格はほとんど無く、掛け声や笑い声のみを発している。

 

 ウルトラの母はニセトレギアの首締めをなんとか振り解くと、パンチやキック等で応戦するが、ニセトレギアはそれらを手刀や、体を後ろに反らす動きなどでいなして行き、逆に貫手や手刀を中心とした打撃技で次第にダメージを与えて行き、やがて後ろから右手で右腕を掴み、左腕で首を締め付ける事により動きを止める。

 

 

 「攻撃を止めろ!!ウルトラの父!! 街の人々と、愛する妻の命が惜しければなぁ!!」

 

 ウルトラの母の危機に、グズドの言葉により、ウルトラの父は攻撃の手が緩み始める…!

 

 「宇宙警備隊の大隊長さんなら、賢明な判断が出来るはずだろ? フッフッフッ…!」

 

 「なんて卑怯な事を!!」

 

「ケッ、卑怯もラッキョウもあるか!!」

 

 グズドは、海羽の非難の声を一蹴した。

 

 

 ウルトラの母を人質に取られた事により、攻撃の手が止まってしまったウルトラの父は、ニセベリアルの猛攻に対し防戦一方になって行く…!

 

 だが、そんな状況になっても、人々は2人に声援を送り続ける!

 

 ウルトラ戦士を信じ続ける気持ち、それは奈緒と海羽も同じであった!

 

 「ウルトラ戦士は絶対に負けない…そうだよね!」

 

 「イエス! …この世界を…ウルトラの父と母を助ける力を…!」

 

 海羽は、左腕に付けている、先程緑のおばさんからお守りと称して貰ったバッジを握りながら、再度祈った…!

 

 

 そして、海羽が力が欲しいと願ったその時、腕のバッジが輝いた…!

 

 

 そのバッジは輝きを放ちながら、海羽の腕を離れ、何処かへと飛んで行く…!

 

 そして、その先にいた1人の男の手に握られる!

 

 

 それを見た海羽は、奈緒と共に驚愕する!

 

「あの人達…!」

 

 バッジを手に取った男は、先程海羽と奈緒が公園で出会ったその人であり、更に隣には海羽がボランティアの際に出会った青年も立っており、彼は右腕にガントレット状のアイテムを付けていた…!

 

 

 「俺達も行くぞ!タイガ!」 「ああ!父さん!」

 

2人の男の正体、それは、ウルトラの父とウルトラの母の実の息子であり、ウルトラ兄弟6番目、所謂“ウルトラマンNo.6”の戦士『ウルトラマンタロウ』と、その息子である“光の勇者”の若き戦士『ウルトラマンタイガ』が、それぞれ嘗て一体化した地球人『東光太郎』と『工藤ヒロユキ』の姿に擬態した姿であった!

 

 緑のおばさん、即ちウルトラの母が海羽に預けていたバッジは、タロウの変身アイテム『ウルトラバッジ』でり、地球人がウルトラマンを信じる気持ちが強まると、それが戦いの時としてタロウの元に戻るようにインプットされていたのだ。

 

 

 2人は変身の体勢に入る!

 

 光太郎はウルトラバッジを右手で持ち両腕を左右に大きく広げ、ヒロユキは『タイガスパーク』の下部のレバーを左手でスライドさせて「カモン!」という音声と共に起動させ、それを付けている右手で『タイガキーホルダー』を掴む。

 

 「バディー、ゴー!!」

 

 「タロウー!!」

 

 2人は叫びと共にアイテムを高く揚げ、眩い光に包まれる…!

 

《ウルトラマンタイガ!》

 

「シュアーッ!!」

 

鮮やかな光の中から、波紋のような銀のリングと共にまずはタイガがパーにした右手を突き出して飛び出し、続けてタロウが同様のポーズで飛び出す!

 

 

(BGM:ウルトラマンタロウ)

 

 

タイガとタロウは上空で風を切る音と共に何度もスピンを決めた後、急降下しながらタロウは『スワローキック』、タイガは『タイガキック』を放つ!

 

 2人の急降下キックはそれぞれニセトレギアの左右の肩に命中し、ニセトレギアがたまらず吹っ飛んだ事によりウルトラの母は解放される。

 

 着地したタロウとタイガはファイティングポーズを決める。

 

 更なるウルトラマンの援軍に人々は再び、それも先程以上に大きな歓喜の声と声援を送り始める。

 

 息子と孫の登場に、ウルトラの父と母も安心したかのように頷き、ウルトラの父はニセベリアルとの戦いを再開し、ウルトラの母は街の人々の回復を再開する。

 

 ニセトレギアは何やら苛立つかのように首元を掻きむしる仕草を見せた後に2人に襲いかかり始め、タロウとタイガもそんなニセトレギアに果敢と立ち向かう!

 

 どうやらニセトレギアも、オリジナルにとっては元親友、所謂、因縁の相手でもあるウルトラのタロウとタイガへの怨念は遺伝子レベルで刻み込まれているようである。

 

 まずは先手を打ったタロウがニセトレギアと格闘技の応酬に入る。

 

 ニセトレギアは手刀や貫手を中心とした格闘技なのに対し、タロウはパンチやキックを主体としたスピーディーな格闘技で挑み、ニセトレギアの水平チョップをしゃがんでかわすと同時に腹部にパンチを決め、続けてタイガが腕を十字に組んで『スワローバレット』を放って追い打ちをかける。

 

 続けてタイガが駆け寄ると同時に飛び蹴りを放ち、ニセトレギアはそれを腕をクロスさせて防ぐがタイガは怯まず父親同様スピーディーな格闘技で応戦し、やがて手刀を放ったトレギアの腕を掴んで押さえ込んでいる隙にタロウがウルトラホーンに当てた両手を突き出して『アロー光線』を放って攻撃し、被弾して怯んだニセトレギアにタイガが右足蹴りを腹部に打ち込み、続けてタロウが胸部に連続パンチ、タイガが顔面に右ストレートを叩き込んで畳みかけ、更にタロウが右足、タイガが左足で同時にキックを放ち、その威力で腕をクロスさせて防ごうとしたニセトレギアを後退させる。

 

 そしてタロウは両手を突き出して『シューティングビーム』、タイガも同じく両手を突き出して『ハンドビーム』を放ってニセトレギアを攻撃した後、再度ファイティングポーズを決める。

 

 

 (BGM終了)

 

 

 ニセベリアルと五角に渡り合うウルトラの父、抜群な親子のコンビネーションでニセトレギアと戦うタロウとタイガに、尚も声援を送り続ける人々。

 

 グズドは焦りを見せながらも、更なる手に入る。

 

 「ベリアルはレイブラッド星人の力も持っている…即ち、レイオニクスの力も使えるのだ!」

 

グズドのその言葉と共に、ウルトラの父と組み合っていたニセベリアルは、ガラ空きの右手を突き出し、ベリアルクローから赤黒いエネルギーを放ち始め、やがてそれは形を作って行き、2体の怪獣の姿を生み出した。

 

 現れたのは『雪超獣スノーギラン』と『宇宙三面魔像ジャシュライン』である!

 

 「ウルトラの母を襲え!!スノーギラン!ジャシュライン!」

 

 グズドの命を受けた2体は、地響きを起こしながらウルトラの母へと歩みを進め、ウルトラの母もそれに気づき身構える。

 

 回復させる能力のあるウルトラの母から先に片付けてしまおうという魂胆だ!

 

 因みにこの2体はオリジナルと違って人格や知性の無いニセベリアルが召喚しただけあって、生前と違って生気を感じられない、傀儡のようなものであり、本来なら3兄弟の人格を共有しているジャシュラインが終始喋らず奇妙な音を発しているばかりなのが、それを物語っている。

 

 

 ウルトラの母は回復に力を使うのに専念している事を知っているタロウは、ニセトレギアに組み付き押さえ込んでいる状態でタイガに指示を出す。

 

 「タイガ!トレギアは俺に任せて、母さんを!」

 

「…はい!父さん!」

 

了解したタイガは、その場を離れると、地面を蹴って高く飛び上がって宙返りを決めた後、ウルトラの母と2大怪獣の間に着地し、2体の相手を始める。

 

「ばあちゃん!コイツらは俺に任せて!」

 

「任せましたよ、タイガ。」

 

 再び安心したウルトラの母は、回復行動を再開する。

 

 

 ニセベリアルは更なる怪獣を召喚しようと両手を突き出してベリアルクローからエネルギーを放とうとするが、ウルトラの父は即座に鉄アレイのような武器『ウルトラアレイ』を取り出して突き出し、それが両端から強烈な閃光を放つと、ニセベリアルの両手のベリアルクローを粉々に破壊した!

 

 攻撃手段の一つを破壊されたニセベリアルは、飛び跳ねる等して更なる怒りのような仕草を見せた後、ウルトラの父との戦いを再開する。

 

 

 タイガは、2対1という状況ながらもスノーギランとジャシュラインに果敢に挑む。

 

 ジャシュラインの剛腕を活かしたパンチなどを軽快にかわして行き、懐に飛び込んで3発パンチを決めた後、ジャシュラインと組み合い、そのまま振り回されるが、逆にそれを活かして後ろから襲い掛かっていたスノーギランに二段蹴りを決め、そのまま両足を着地させると同時に回転の遠心力を活かしてジャシュラインを地面に叩きつけた。

 

 立ち上がったジャシュラインは、3兄弟のランプを一斉に点灯させて相手を黄金像に変える必殺光線・ゴールジャシュラーを放つ!

 

「輝きの力を手に!!」

 

タイガの叫びと共にタイガの前方に黄金の鎧が現れて光線からタイガを守り切った後、そのままタイガの体に装着される事でタイガは強化形態の『フォトンアース』へと変身が完了する。

 

 タイガは構えを取るとそのまま2体へと駆け始め、同じく駆け寄って来たスノーギランに強烈なラリアットを叩き込んで地面に叩きつけ、続けて倒れたスノーギランにエルボードロップを決める。

 

 ジャシュラインは腕の盾を変形させたブーメランを手に取り、それをタイガに振り下ろすが、タイガはそれを左腕の肘から先だけで受け止め、逆に黄金のオーラを纏った右拳を叩き込んで後退させる。

 

 ジャシュラインは尚もブーメランを振り回しながら襲い掛かるが、タイガは側転をしてそれをかわすと同時に距離を取った後、跳躍して両足のドロップキックを叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 スノーギランは頭部の発光部から目潰し閃光を放つが、タイガはそれを数回スピンしながら横に飛んでかわす事で目潰しを免れる。

 

 「タイガエメリウムブラスター!」

 

 タイガは左腕を横に伸ばした後、右腕を胸部に当てて額のランプから光線技・タイガエメリウムブラスターを放ち、スノーギランの頭部の発光部に命中させて破壊した!

 

 スノーギランは目潰し閃光が使えなくなりながらも、今度は両手やホース状の口から吹雪のような冷凍光線を放つ。

 

 「ワイドタイガショット!」

 

 タイガは今度は左腕を横に伸ばした後、腕をL字に組んで必殺光線・ワイドタイガショットを放ち、その光線は冷凍光線を消し飛ばしながら飛んで行き、やがてスノーギランに命中し、スノーギランは大爆発して消し飛んだ!

 

 スノーギランを撃破したタイガは、ジャシュラインとの交戦を再開する。

 

 

 「おのれ…!おのれウルトラ戦士ども! だが、今現在の戦力が無くなっても、更にドルズ星の宇宙船団が迫っているのだ…! 貴様らが疲弊した隙に、一気に殲滅してやる!」

 

 グズドはそう言うが、ウルトラ戦士達は怯む事は無かった。 既にその事も想定済みだったのだ。

 

 「それなら、今頃とっくに相手してるはずだぜ? 俺の頼もしい仲間達が!」

 

 

 タイガのその言葉の通り、地球から出てすぐの宇宙空間では、そのドルズ星の宇宙船団を相手に、待機していた2人のウルトラ戦士が立ち向かっていた!

 

 タイガと3人で『トライスクワッド』というチームを組む2人のウルトラ戦士、“力の賢者”の『ウルトラマンタイタス』と、“風の覇者”の『ウルトラマンフーマ』である!

 

 「私達がここで食い止める! 行くぞフーマ!」 「ああ旦那!ぶっちぎるぜ!」

 

 「賢者の拳は全てを砕く!」

 

タイタスは宇宙船団の攻撃を持ち前の筋肉(ウルトラマッスル)で弾き返しつつ、パンチ技『ワイズマンズフィスト』や、一機を掴んでハンマー投げや円盤投げ等の要領で投げつけて他の戦艦にぶつける等で次々と破壊して行く!

 

「疾風怒濤!俺のスピードについて来れるかよ!」

 

 フーマも高速で縦横無尽に飛び回ったり、煙幕を放って瞬間移動をする等して攻撃をかわしつつ、そのスピードを活かした目にも止まらぬ手刀や突撃で次々と破壊して行く!

 

「星の一閃、アストロビーム!」「極星光波手裏剣!」

 

タイタスとフーマは一旦合流すると、それぞれ額のアストロスポットから放つ光線技・アストロビームと、タイガスパークで形成した光の手裏剣・極星光波手裏剣を放ち、大量の宇宙船を一気に破壊した!

 

 

 自身の計画を悉く破って行くウルトラ戦士に、グズドは変わらず苛立ちを隠せないながらも、問いかける。

 

 「何故だ…! 何故ウルトラ戦士はそこまで地球人に味方する…! こんなちっぽけな生き物を!」

 

 

 (BGM:超勇者BUDDY GO!)

 

 

 そんなグズドの愚問とも取れる問いかけに、ウルトラ戦士達は口々に答える。

 

 「命の価値に、大きさなど関係ない…!」とタイガ。

 

 「私達は、宇宙の全ての罪なき命を守る!」とウルトラの母。

 

 「例え、強大な悪がそれを奪おうとするのなら…!」とタロウ。

 

 「私達が、それを何度でも守って行くだけだ!」とウルトラの父。

 

 

 ここから、ウルトラファミリーは一気に攻勢に出る!

 

 

 タイガは、再度ブーメランを振り下ろして来たジャシュラインに対し黄金のオーラを纏ったパンチを放ち、それはブーメランを粉々に破壊し、そのままジャシュラインの顔面に命中し、怯んだ隙に続けて上段回し蹴りを叩き込んで吹っ飛ばした。

 

 ジャシュラインは最後の手段として、一気に倒してしまおうと高速回転しながら突っ込んで行く!

 

 「オーラムストリウム!!」

 

タイガは両拳を腰に当てるポーズで大気中の光エネルギーを吸収した後、T字に組んだ腕から必殺光線・オーラムストリウムを放ち、それを浴びたジャシュラインは、タイガに突っ込む前に大爆発して消し飛んだ!

 

 

 「お前たちのような悪人のために、多くのいい人を見捨てるわけにはいかないんだ!」

 

タロウはニセトレギアと組み合った状態でグズドにそう言った後、ウルトラホーンから『ブルーレーザー』を放ち、それに対しニセトレギアも即座に両手を突き出して『トレラアルディガ』を放ち、両者は光線のぶつかり合いの反動を利用して後ろに飛んで一旦距離を取る。

 

 タロウは再度飛びかかりながら右足蹴りを放つが、ニセトレギアはそれを左腕で掴む事で受け止め、それでもタロウは怯まずそのまま続けて左足蹴りを放ち、ニセトレギアはそれも右腕で受け止める事で防ぐが、タロウはそのまま脚全体から『フット光線』を放って浴びせ、ニセトレギアはたまらず手を離す。

 

 タロウは全身を真っ赤な炎で燃え上がらせて『ウルトラダイナマイト』を発動してそのままニセトレギアに突撃し始め、対してニセトレギアも全身を青紫の炎で燃え上がらせて突撃する。

 

 両者は燃え上がる体で激しくぶつかり合い、炎を散らしながら激しくパンチやキックの応酬を始める。

 

 目にも止まらぬ速さのその応酬はやがて上空にまで及んだ後にタロウの方に軍配が上がり、タロウは一瞬の隙を突いてニセトレギアの体に連続パンチを打ち込んだ後、胸部に強力な飛び蹴りを決めて大きく吹っ飛ばす。

 

 ニセトレギアは再びタロウ向かって飛びながら両腕から10本のカッター光線『トレラテムノー』を放つが、タロウは即座に腕を十字に組んで放った『タロウカッター』でそれらを相殺して砕いた後、自身の体を包んでいる炎を放射する形で『ファイヤーダッシュ』を繰り出し、それをモロに浴びたニセトレギアは全身の炎が消し飛ぶと同時に大爆発して吹っ飛び、地面に落下して転がる。

 

 

 全身の炎が消えたタロウは着地をする。

 

 なんとか起き上がったニセトレギアは、自身が押されてる事を受け入れられないかのように再び首元を掻く仕草を見せた後、魔法陣を発生させながら両腕に全身のエネルギーを集め始める…!

 

 「ストリウム光線!!」(50年前の東光太郎ボイス)

 

 タロウは技名を叫んだ後、両手を頭上で合わせた後、両腰に当てて全身を七色に輝かせながらエネルギーを充填していく…!

 

 

 そしてニセトレギアは両手を突き出して『トレラアルティガイザー』を、タロウは両手をT字に組んで『ストリウム光線』を放ち、二つの必殺光線は激しくぶつかり合い、そのまま押し合いになる!

 

 「…トレギア…!」

 

 タロウは一瞬だけ俯いて意味深げにそう呟いた後、顔を上げて光線の照射に更に力を込める!

 

 ニセベリアル同様、生気を感じない攻撃を繰り出す偽物とはいえ、やはり嘗ての親友であるトレギアと戦うのは何か来るものがあるのだろうか…。

 

 タロウが力を込めた事により太さや勢いが増したストリウム光線は次第にトレラアルティガイザーに押し勝ちながらニセトレギアに迫って行き、やがてニセトレギアの体を直撃し、ニセトレギアはしばらくもがき苦しんだ後、断末魔のような叫び声を上げながら大爆発して消し飛び、青い火花が飛び散った…!

 

 タロウは光線の体勢を解いてトレギアの最期を見届けるかのようにその場に立ち尽くした。

 

 

 ニセベリアルと戦うウルトラの父は、戦いを優位に進めていた。

 

 ウルトラの父は大きく跳躍してニセベリアルの胸部に飛び蹴りを叩き込み、それによって後退するがすぐさま体勢を立て直したニセベリアルの放った『デス光輪』を、即座に右手を突き出して放つ『クレセントショット』で相殺し、その際に発生した爆発と煙でニセベリアルが目眩しに遭っている隙に胸部に強力な『ファザーパンチ』を叩き込んで吹っ飛ばした!

 

 ニセベリアルは立ち上がると、近くのビルを引き抜いてそのままウルトラの父向かって突撃し始める!

 

 ウルトラの父は精神統一をするようにファイティングポーズを取り、ニセベリアルが迫って来るのをギリギリまで待ち構え、やがて完全に間合いを詰めたニセベリアルがビルを自身に叩きつけようとしたのと同時に、地面に滑り込んでそれをかわすと同時に腹部に渾身の右拳の一撃を叩き込み、それによってニセベリアルは吹っ飛ぶと同時にビルを手放す。

 

 ウルトラの父は即座に起き上がり、ニセベリアルが手放したビルを両手でキャッチして地面におろした。

 

 

 ニセベリアルは飛び跳ねたり等で更に苛立つような仕草を見せた後、最後の手段とばかりに両手に赤黒い稲妻状のエネルギーを溜め始める…!

 

 すると、ウルトラの父の元に街の人々の回復が済んだウルトラの母が合流する。

 

 「私達で、ベリアルを楽にしてあげましょう。」

 

 「そうだな。」

 

 ウルトラの母の言葉にウルトラの父は了解する。いかにも心優しい性格のウルトラの母らしい発言である。

 

 ニセベリアルは腕を十字に組んで闇の力を込めた必殺光線『デスシウム光線』を放ち、それに対してウルトラの母は前方に伸ばした右腕に左手を添えて『マザー破壊光線』を、そしてウルトラの父は腕をL字に組んで『ファザーショット』を放つ!

 

 1本の闇の光線と、2本の光の光線は激しくぶつかり合い押し合うが、ウルトラの父と母が次第に更に力を込めて光線の太さや勢いを上げて行き、やがてファザーショットとマザー破壊光線はデスシウム光線に完全に押し勝ちニセベリアルを直撃する!

 

 ニセベリアルはもがき苦しみつつも、何やら不気味な笑い事を上げて行き、やがて赤黒い稲妻を発生させながら大爆発して消し飛んだ…!

 

 偽物とはいえ、オリジナルの本能的な所は遺伝子レベルに刻み込まれてたニセベリアル。ひょっとすると、最期に因縁の相手、それも強い相手と戦えた事に満足感を覚えたのかもしれない…。

 

 

 「プラニウムバスター!!」 「光波剣・大蛇!!」

 

 一方、宇宙空間でも、タイタスとフーマが必殺技を同時に放ち、最後の宇宙船団を全滅させた。

 

 ドルズ星の宇宙船団を片付けた2人は、得意げにポーズを決める。(タイタスに関しては、腕を斜め上に上げるマッスルポーズだが(笑))

 

 

 グズドが召喚したニセ悪のウルトラマンと怪獣たちを撃破した4人のウルトラファミリーは、人々の歓喜や感謝の言葉を受けながら合流し、互いに労を労うように頷き合う。

 

 その様子を、海羽と奈緒も笑顔で見つめていた。

 

 

 「あとは、グズドを連行するだけだな。」

 

 ウルトラの父がそう言ったその時!

 

 

 「そうは、いかねぇ…!」

 

 何処からかグズドのさっきとは違ったドスの効いた声が聞こえ、ウルトラファミリー、そして人々もその声の方を振り向く。

 

 そこには、いつの間にか巨大化していたグズドが立っていた。しかし、その姿も先程とは違い筋骨隆々な体型となっており、腕、体、足など、あらゆる部位の筋肉が血管が浮き出るほどに肥大化しており、更に湿っている体中からは蒸気のように湯気が上がっている。

 

 更によく聞いてみると軋むような音が聞こえる事から、どうやら無理矢理体を強化・巨大化させたようである。

 

 そして、体色も右半身はベリアルを彷彿とさせる赤と黒、左半身はトレギアを彷彿とさせる青を基調とするものに変わっており、背後から差す逆光がより威圧感を駆り立てる。

 

 声も、不気味な感じにエコーがかかっているものになっている。

 

 「その姿は一体!?」

 

 タイガはグズドの変わり果てた姿に驚きつつも問いかける。

 

 「クックック…最後の手段として残りのベリアル因子とトレギア因子を全て飲み込んで、自らを強化させたのだ…! ウルトラ戦士ども、この俺自らの手で葬ってやる…!」

 

 強力な悪のウルトラマン2人のエネルギーでパワーアップしたというグズド、身体中からはベリアルを思わせる赤黒、トレギアを思わせる青、2色のオーラのようなものが常に溢れ出ている。

 

 そして、時たまそこから発生する稲妻が周囲を徐々に破壊して行く…!

 

 因みに、ニセベリアルやニセトレギアを作ったり、自身にそれらのエネルギーを注いだりする際に使った装置は、いよいよ負荷に耐えられなくなったのか大破してしまっていた。

 

 正に、グズドにとっては最後の手段なのである。

 

 「奴は、強大なエネルギーを取り込んだ事により理性を削らせながら衝動の赴くままに全てを破壊する体になってしまっている! ここで倒すしかない…!」

 

ウルトラの父はそう言うが、ウルトラファミリーのうち、父はニセベリアルとの戦い、タロウはニセトレギアとの戦い、ウルトラの母は街の人々の回復や時折入った妨害などにエネルギーの大半を使い果たしたのか、既にカラータイマーが赤く点滅を始めていた…!

 

 タイガだけが、カラータイマーがまだ辛うじて青のままであった…!

 

 

 タイガは消耗している父や祖父母を見つめ、少し考え込むように俯いた後、顔を上げて宣言する。

 

 「俺が行きます!」

 

 自身の発言に父と母、そしてタロウが少し驚くように顔を上げる中、タイガは数歩前に出る。

 

 「奴は、俺に任せてください…!」

 

 タイガの決意に満ちたその言葉に、彼の父と祖父母は彼に任せる決心をする。

 

 「分かった。」「任せましたよ、タイガ。」

 

 「行って来い。今のお前なら、絶対に負けないはずだ!」

 

 父と母、そしてタロウの言葉を受けたタイガは、気合いを入れるようにファイティングポーズを決める。

 

 「見ててください! 爺ちゃん!婆ちゃん! 父さん!」

 

 

 タイガはグズド向かって走り始め、駆け寄ると同時に先手必勝の飛び蹴りを放つが、グズドはそれを腕をクロスさせて防いで弾き飛ばし、タイガは宙返りした後着地する。

 

 タイガはグズドと激しい格闘技の応酬を始め、最初は互角に立ち回るが、無理矢理の強化とはいえ強力なウルトラマンの力を取り込んでいるグズドの強さは本物であり、タイガは次第に押され気味になるが、それでも負けじと喰らい付くようにパンチやキックで反撃を続ける。

 

 「スワローバレット!!」

 

 タイガは逆転の糸口を狙ってスワローバレットを放つが、グズドが両手を突き出して放った赤、黒、青の三色の稲妻のような光線に打ち消され、そのまま自身も直撃を受けて光線に押される形で吹っ飛び、地面に落下して転がる。

 

 タイガはなんとか両手を使い、片膝ついた状態まで立ち上がるが、自身も先程の2大怪獣との戦いでそれなりにエネルギーを使っている上に、強化されたグズドの攻撃による大ダメージにより既に消耗している事によりふらついており、カラータイマーも赤に点滅を始める…!

 

 「まだだ…! ここで、倒れるわけには…!」

 

声を絞り出して踏ん張るタイガを、グズドは尚も不気味なオーラを放ちながら嘲笑う。

 

 「ウルトラファミリーのボンボン1人ごときで俺を止められるわけがない! 俺はベリアルとトレギア、2人のウルトラマンの力を使えるのだ! 貴様をとっとと片付けて、親父共もまとめてやっつけてやる!」

 

 

 …だが、タイガはまだ折れていなかった…!

 

 タイガはふらつきながらもゆっくりと立ち上がりながらグズドに語りかける。

 

 「確かに…ベリアルもトレギアも、強力なウルトラマンだ…! だが、お前は、結局その力に頼っているだけだ…!」

 

「なんだと!?」

 

「俺たちウルトラマンは、自分達が持つ力だけで戦ってるんじゃない…!」

 

 タイガのその言葉に、グズドはふと辺りを見渡すと、そこには最後までウルトラマンの勝利を信じ、絶えず声援を送り続ける人々の姿があった…!

 

 「頑張って!!ウルトラマン!!」 「負けないで!!」

 

  海羽と奈緒も同様であった!

 

 絶えず自身に声援を送る人々を見て狼狽えるグズドにタイガは続けて語りかける。

 

 「地球人達の、最後まで俺たちを信じる気持ちが、俺たちウルトラマンに持ってる以上の力をくれる…! だから俺は、立ち上がれるんだ!!」

 

 「みんな!もっと大きな声で応援しよう! みんなの思いを一つにして…!」

 

 奈緒の言葉を受け、人々は声を揃えて叫んだ。

 

 「頑張れ!!ウルトラマン!!」

 

 

 (BGM:Buddy,steady,go!)

 

 

 「うぉぉぉぉぁ!!人々が信じてくれる限り、俺は負けない!!」

 

 タイガは燃える炎のようなオーラを発生させて気合を入れた後、ポーズを決めてグズド目掛けて走り始める!

 

 「ほざけぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 グズドも逆上しながらタイガ目掛けて突進する!

 

 タイガは先程と同じく駆け寄って飛び蹴りを繰り出し、今度は先程と違いグズドの胸部にクリーンヒットしグズドは突進の勢いが弱まる。

 

 そのまま両者は接近戦に入るが、自身の振り絞った力に、人々の思いの強さがプラスされたタイガはパンチ、キック等の一撃一撃が先程よりも重く、グズドは押され気味になる。

 

 グズドは至近距離でタイガに赤黒い稲妻のような光線を浴びせ、それによりタイガがよろけた隙に後ろから両手で首を掴んでそのまま締め上げようとするが、タイガは背を向けたままグズドの両腕を掴んで力を入れ始め、カラータイマーの点滅が早まって行く中それを力づくで引き剥がし、そのまま前方へと投げ飛ばして地面に叩きつける。

 

 続けてタイガはグズドの右フックを左腕で受け止めてガードした後、グズドの体に連続パンチを打ち込んで行く…!

 

 「アトミック、パーンチ!!」

 

 タイガは叫びと共に渾身の力を込め、父親・タロウ譲りのパンチ技『アトミックパンチ』を繰り出し、それを腹部に受けたグズドは、体を貫かれるようにパンチが当たった部位と背中が爆発すると同時に吹っ飛び、地面を転がる。

 

 

 タイガの猛攻に劣勢になりつつあるグズドは、立ち上がると最後の手段とばかりに両手にそれぞれベリアル、トレギアのエネルギーを溜め込み、突き出す事でデスシウム光線とトレラアルティガイザーを合わせたような破壊光線を放つ!

 

 「これで決める!」

 

 タイガはそう言うと、両手を頭上で合わせた後、両腰に当てて全身を七色に輝かせながらエネルギーを充填していく…!

 

 「ストリゥゥゥム!ブラスター!!」

 

 タイガは渾身の叫びと共に腕をT字に組み、必殺光線の『ストリウムブラスター』を放つ!

 

 二つの光線はぶつかり合い、その威力の高さに周囲に暴風と共に瓦礫等が飛び上がる中、光線の押し合いが続く…!

 

 「これがっ! タロウの息子の、力だと言うのか…!?」

 

 「俺は!ウルトラマン!タイガだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 タイガは叫びと共に最後の力を振り絞って光線の威力を上げて行き、やがてストリウムブラスターが完全に押し勝ってグズドに直撃する!

 

 「そんなっ!? この俺が…有り得ぬぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 グズドは、自身の敗北を受け入れられないまま、赤と黒と青の稲妻を発しながら大爆発し、粉々に砕け散った…!

 

 

 (BGM終了)

 

 

 侵略のボスも破られた事により完全勝利したウルトラマン達に、人々は喜び合い、ウルトラ戦士達に感謝の声をかけ始め、平和なクリスマスイブが戻った事を象徴するかのように雪がちらちらと降り始め、クリスマスソングもしっとりと鳴り始める。

 

 タイガは人々の方を振り向き、「どういたしまして」とばかりに頷くが、戦いで力を使い果たしたのか、その直後にふらついてうつぶせに倒れそうになるが、そこにタロウが腕を腹部に添えて支える。

 

 「よくやったな、タイガ。」

 

 「父さん…。」

 

 労いの言葉をかけるタロウに、タイガは息が切れながらも嬉しそうに反応した。

 

 「やはり、我々の自慢の子孫だ。」 「本当に立派になりましたね、タイガ。」

 

 ウルトラの父と母も、孫のタイガをベタ褒めに近い形でたたえる。

 

 タロウの腕を借りて体勢を立て直したタイガは、家族と共に尚も自分らに歓喜と感謝の言葉をかける人々の方を振り向く。

 

 

 タイガの最後の戦いを宇宙空間から見ていたタイタスとフーマも、タイガ達の完全勝利に安心しているようであった。

 

 「ドルズ星人グズドは、最初からベリアルとトレギアの力を使いこなせていなかった。 常時、体から漏れていたのが、その証拠だ。」

 

 タイタスの言ったように、実はベリアル因子とトレギア因子を取り込んで強化したグズドの体から出ていたオーラのようなものは、実は単に力が体に入り切らず外に漏れていただけだったのである。

 

 つまりやがて力が完全に抜ける、もしくは体が強大な力に耐え切れず自滅する可能性もあったワケであり、いずれにせよグズドが敗北するのは必然だったというわけでもある。

 

 「生き物には器がある。 奴の器は、その強大な力を使うには小さ過ぎたって事だな。」

 

 「だが、大幅に強化されていたのも確かだ。タイガも、更に力を上げたというわけだ。」

 

「俺達も負けてられないな旦那。」

 

 タイタスとフーマは語り合った後、その場から去る事にする。

 

 「では、あとは親子水入らずで。」「お先だぜ、タイガ。」

 

 2人は地球を背に、何処かへと飛び去って行った。

 

 

 尚もウルトラ戦士達に感謝する人達。

 

 「ありがとう、ウルトラマン。」海羽もウルトラ戦士への感謝の言葉を笑顔で呟いた。

 

 「私、今なら自信を持って歌えるわ。」

 

 奈緒はそう言うと、ステージの階段を静かに歩いて上がり、そしてイントロを背にマイクを手に取り、きよしこの夜を歌い始める。

 

 その真っ直ぐで透明感のある歌声は、会場どころか街中に響き渡るようであり、耳から入ってそのまま優しく流れて心の澱みを全て洗い流してくれる澄んだ水であるかのようである。

 

 聞いている人々も海羽を始め、その歌声に魅了されており、騒いでいた中高生も、泣いていた子どもも静まり返り、皆癒されてるかのようにリラックスした顔で聞き入っており、実は密かに会場に来ていた白鳥さゆり先生も、無言で笑顔で頷いた。

 

 奈緒の欠けていたもの、それは“相手のことを思って歌う事”であった。

 

 これまでその抜群の歌声で様々な大会で賞を取って来た奈緒だが、それ故に常に完璧に歌う事、誰よりも上手く歌う事ばかりを意識して歌って来ていた。

 

 だが、昼間に海羽に励まされた際に既に潜在的にその事に気づいており、そこで歌った際に海羽が心から感動していたのがその証拠である。

 

 そして今、ウルトラ戦士達が危機から救ってくれた事により、その感謝の気持ちから、ハッキリと気付く事が出来たのである。

 

 奈緒は、自身を元気付けてくれた海羽、会場で自分の歌を楽しみに待ってくれていた人たち、そして、自分達を守ってくれたウルトラ戦士達、いろんな人達への感謝の意を込めて歌っているのである。

 

 タイガ達ウルトラファミリーは、その歌声を最後まで聴いた後、人々に手を振りながら飛び立ち始める。

 

 その際、ウルトラの父の『ウルトラクラウン』、ウルトラの母の『マザーシャワー』、タロウの『リライブ光線』の力を合わせ、残りの街の壊された所と、死んでしまった人々の回復を済ます。

 

 クリスマスは、みんなが幸せでいて欲しい、その気持ちは、ウルトラ戦士達も同じなのだ。

 

 タロウは更に、左手首のキングブレスレットから神秘的な光を放ち、東京スカイツリーに浴びせると、スカイツリーはあっという間にデコレーションされ、クリスマスツリーに変わった。

 

 50年ぶりの、そして更にスケールアップしたウルトラのクリスマスツリーである。

 

人々にちょっとしたサービスをした後、ウルトラファミリーは空の彼方へと飛び去って行き、空に新たに四つの星が輝いた…。

 

 

 私、海羽は、さっきまで目の前で起こった出来事に、まだ信じられない気持ちもありつつも感激していた…!

 

 ウルトラの父が来て、ウルトラの母が来て、そしてタロウがやって来て、私達を悪魔から守ってくれた…。

 

 50年以上経った今でも、ウルトラマン達が私たち地球人を守ってくれる事、それはとてもありがたく、感謝すべき事なんだなと改めて確信したわ。

 

 それにしても、まさかタロウに息子が出来てて、ウルトラの父と母が祖父母になってたとはね(笑)

 

 名前は確かタイガだったかな?

 

 そのウルトラマンからもカッコよさの他にも何やら大きな可能性を感じたし、ウルトラマンも子孫を残してるんだなと思うと、絶対的な神様というワケではなく、ある意味私達とさほど変わらない存在なのかなと思うと、尚更駆けつけてくれた事への感謝の気持ちが強くなって来る…!

 

 とにかく、クリスマスをまた平和で楽しい状態に戻してくれた事に、とても感謝してる!

 

 本当に、ありがとう!

 

 

 やがて、歌い終えて拍手喝采を浴びながら一礼してステージから降りた奈緒と、海羽は合流する。

 

 「奈緒ちゃん、と〜ってもいい歌だったよ!」

 

「ありがとう。海羽のお陰だよ。」

 

「…え?私の…?」

 

「私、これまで、とにかく上手く歌わきゃ、って気持ちで歌って来て、聴いてくれる相手の事をあまり思った事が無かった…でも、海羽が励ましてくれたお陰で、初めて相手の事を思って歌う事も大事だと気づけたの。」

 

「奈緒ちゃん…。」

 

 海羽は嬉しそうな表情になる。

 

 「だから、海羽をはじめ、色んな人達への感謝を込めて歌ったの。私の歌を聴いてくれている観客、そして、私達を助けてくれたウルトラマン達に。」

 

 奈緒は、さっきよりも晴れやかな表情で言った。

 

 「だからありがとう!」

 

 奈緒は、満面の笑みでお礼を言い、それを聞いた海羽は思わず嬉し涙が出始め、奈緒は少し困惑しつつも変わらず笑顔で海羽の背中をさすった。

 

 2人は、クリスマスツリー状にデコレーションされたスカイツリーを見上げる。

 

 「綺麗ね〜。」「そうねー。」

 

 2人の楽しそうなトークは続く。

 

 「ねぇ、折角再会出来た事だし、クリスマスの日の明日、一緒にケーキ食べない?チキンも予約してるの。」

 

「いいの?やろうやろう! 奈緒ちゃん家、確かお兄ちゃんと妹もいるんだよね?」

 

「何気に会いたがってたよ、海羽に。」

 

「え?本当に? それも楽しみだな〜! 正月には鍋パもしない?」

 

「それもいいね! やろうよ!」

 

 このように、クリスマス以降の楽しみも作りながら、2人は楽しく会話を弾ませていた。

 

 ウルトラ戦士達が守り抜いたクリスマス、そしてその後のお正月も、他の人々も、是非とも楽しんで欲しい!

 

 

 私、海羽と奈緒は、楽しい会話をしつつ、“ウルトラマンレストラン ウルトラの父降臨祭フェア”へと向かって行く。

 

クリスマスも、その後のお正月も含め、楽しい年末年始になりますように!

 

 

 イルミネーション大会、そして、ウルトラの父降臨祭は、ウルトラマンが来てくれた、助けてくれた事への嬉しさや興奮、そして、自身達に迫った危機が完全に消えた事での安心からか、さっきよりも賑わっていた。

 

 「メリークリスマス!」

 

 降臨祭の方はというと、なんとさっき海羽と奈緒の前に現れたサンタが再び現れ、子ども達にプレゼントを配っていた。

 

 ウルトラの父が再びサンタクロースに扮して、人々、特に子供たちに最後のサービスをしているのだ。

 

 その様子を、同じく再び光太郎に擬態したタロウ、ヒロユキに擬態したタイガ、そして緑のおばさんに擬態したウルトラの母は、笑顔で見つめていた。

 

 「爺ちゃんったら、すっかりサンタさんになりきってるな。」

 

 タイガは軽く笑いながら言った。

 

 「この地球の人達も、50年前と変わらず立派な人ばかりだ。」とタロウ。

 

 「ひとまず、この世界は大丈夫そうですね。」とウルトラの母。

 

 そこに、子供たちにプレゼントを配り終えたウルトラの父が合流する。

 

 「だが油断は禁物だ。ベリアル因子を利用して悪さをしている者がまだ宇宙のどこかにいる可能性もある。 引き続き警戒を怠らないように。」

 

 「これからも頼みますよ。」

 

「「はい!」」

 

 父と母の言葉に、タロウとタイガは元気よく返事をした。

 

 そして、ウルトラファミリーもしばらく人間の姿でクリスマスを楽しむ事にした。

 

 

 50年以上経ち、時代が変わっても、地球を、人々を守り続けてくれるウルトラ戦士。

 

 これからも地球、そして宇宙の平和のために戦い続けて行くであろう。

 

 

 (ED:Sign)

 

 

 〈完〉




 読んでいただきありがとうございます!

 今年は大好きなウルトラマンの1人であるウルトラマンタロウが50周年を迎え、また来年はその息子のウルトラマンタイガが5周年を迎えるという事で、制作するのは今しかないと思い制作しました(笑)

 また彼らにとって両親(祖父母)であるウルトラの父とウルトラの母も、登場させるのは今だと思い、タロウ一家を揃えて登場させる事に決め、更にウルトラの父も登場させるならと思い舞台をクリスマスの時期を迎えた嘗てタロウが守った地球にしました。

 つまり今回人間側での主役だった海羽も、その世界の地球の住人、所謂M78時空の海羽という事です。

 敵側のキャラクターもマストで考えましたが、やはり錚々たるメンバーであるタロウ一家を相手するとなるとそれ相応に強大な敵が必要という事で、そこでタイガでニセベリアルが登場した回を思い出し、それをキッカケにニセベリアルを再登場させ、更にそれを元にニセトレギアも登場させる事を決めました。

 黒幕も、最初はヒッポリト星人かテンペラー星人辺りも候補でしたが、タロウファンなら知る人ぞ知る外道な宇宙人、ドルズ星人に選定しました(笑)


 来年も時間を見つけては作品を制作して行こうと思いますので、宜しければ来年もよろしくお願いします!


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています!

 それでは皆さん、よいお年を!


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ウルトラマンブレーザー番外編「アナザー・ミッション」

 新年、明けましておめでとうございます!

 今年も出来る範囲で頑張って行きたいと思います!

 今回は年末年始特別編と言う意味も込めた番外編で、タイトルの通り「ウルトラマンブレーザー」のオリジナルストーリーです!

 相変わらず文才は無く、ストーリー展開も少々強引な所もあるかもしれませんが、とりあえず楽しんでもらえたら幸いです!

 そして宜しければ、今年も本作やその他の作品、そして、特撮ヒーロー(特にウルトラマン)大好きな私・剣音レツをよろしくお願いします!

 では、どうぞ!


 一面に青がどこまでも広がる程の晴天に恵まれた空。

 

 

 そんな中を、一機の“鋼の体を持つ獣”が、戦場に向かって飛び続けていた。

 

 

 二足歩行の恐竜型怪獣のような見た目をしたそのロボット兵器は、特殊怪獣対応分遣隊『SKaRD』(以降:スカード)が運用する「特戦獣」と呼ばれる主力巨大兵器『23式特殊戦術機甲獣アースガロン』である。

 

 スカードとは、地球防衛隊『GGF』日本支部内に設立された特殊部隊であり、部隊名は『Special Kaiju Reaction Detachment』の略である。

 

「怪獣の動向を調査・分析し、必要な場合は直接行動によって排除する」が設立理由であり、単純な怪獣撃退のみならず、その情報入手や対応の為に身分を隠した潜入捜査なども行われる。

 

 今回も、怪獣の現出を受け、アースガロンを駆ってその現場に向かっているのである。

 

 搭乗しているのは、アースガロンの操縦士であり、開発にも関わっていたスカードのメカニック『バンドウヤスノブ』、そして同じくアースガロンの操縦士であり、生身の戦闘が得意な女性隊員『ミナミアンリ』である。

 

 因みに今回のアースガロンは、右肩に『600㎜電磁榴弾砲レールキャノン』、左肩に『多目的レーザー』と言った特殊戦闘支援ユニット『Mod.2ユニット』を実装した『アースガロンMod.2(モッドツー)』の状態で出撃している。

 

 

 一方、地上では、同じくスカードのメカであり、移動指揮車でもあるワゴン車『スカード移動前哨』(以降:モッピー)が、アースガロン同様、現場に向かい走っていた。

 

 アースガロンよりも先に出発していたため、一足早く現場に到着したモッピーは安全な場所で停車し、中から乗車していた2人が出て来る。

 

 まず出て来たのは、スカードの副隊長であり、怪獣の情報収集・分析を担当する参謀『ナグラテルアキ』。

 

 そして少し遅れて出て来たのは、元地球防衛隊の『第一特殊機動団(特機団)』の隊長でもあるスカードの隊長『ヒルマゲント』である。

 

 現場・府東市多摩川付近に到着したゲントとテルアキは、双眼鏡等を駆使して現場の状況を確認する。

 

 「目測約2キロメートル先、目標を確認しました。」

 

 テルアキがそう告げると、ゲントもそれを確認する。

 

 「ああ、俺も見えた。概ね、予想作戦区域内と言った所か。」

 

 2人の視線の先では、一体の巨大怪獣が多摩川付近の市街地で我が物顔に暴れている。

 

 小さい爆発やそれによる煙を連続で起こしながら前進して行き、立ち塞がるビルを剛腕や頭突きで破壊するなどして暴れ回るその怪獣を見て、ゲントは、何処か神妙な表情になる。

 

 「これまた派手に暴れてくれてるな…コスモリキッド…!」

 

 怪獣の名は『液体大怪獣コスモリキッド』であり、以前も地球防衛隊と交戦した事があり、実はゲントもその時、討伐に参加した事がある。

 

 今回の個体はその時と同一なのか別個体なのかは不明だが、今回はスカードとして、再び相手する事になったという事だ。

 

 

 (OP:僕らのスペクトラ)

 

 

 ゲントはアースガロンに通信を送り始める。

 

 「こちらゲント、アースガロン応答せよ。」

 

 「こちらアースガロン。」ヤスノブが返答した。

 

「念のための確認だが、作戦内容は頭に叩き込んでいるな?」

 

「もちろんです。」ゲントの問いかけにアンリが返事した。

 

 

 今回の作戦内容をざっと言うと、既に人々の避難が完了している府東市多摩川を中心とした半径約3キロメートルを作戦区域とし、アースガロンを駆使してまずは格闘戦でコスモリキッドを川まで誘い込み、コスモリキッドが川に浸かった所に超電磁誘導弾を放って感電させて動きを止めた所で更に液体窒素弾を撃って凍結させて粉砕するというものである。

 

 ゲントは以前コスモリキッドと交戦した際、奴が液体化する事も知ったため、そしてテルアキも豊富な怪獣の知識を持っている故、その事も知っていたため、スカードとしてコスモリキッドを殲滅する作戦としてメンバーでアイデアを出し合って考えた作戦でもある。

 

 超電磁誘導弾とは、以前出現してスカードとも交戦した怪獣の一体であり、強度の電磁エネルギーを体内に備蓄しており、それを放出する能力も持っていた怪獣『宇宙電磁怪獣ゲバルガ』の残骸の一部を回収し、そこに宿っていた電磁エネルギーを元に作り上げた兵器であり、電気を通すものが広範囲にあればあるほど感電力を発揮する代物である。

 

 コスモリキッドを完全に感電させる効果を発揮させる為には、奴が川に浸かった所に足元ギリギリの位置に打ち込む必要があるのだ。

 

 「いつもよりイレギュラーな編成だが、今回の作戦を確実に成功させる為だ。アンリは格闘戦に専念、そしてヤスノブはその後超電磁誘導弾と液体窒素弾を正確に決める事に集中するんだ。」

 

 ゲントの言葉に、2人は改めて気を引き締める。

 

 いつもはアースガロンは機長にゲントかテルアキが、操縦士にヤスノブかアンリかが、ローテーションで乗る事になっているのだが、今回は2人の長所がどちらも必要不可欠な作戦のため、それぞれ機長にヤスノブ、操縦士にアンリを指名したという事だ。

 

 そしてゲントは現場の状況、テルアキは怪獣の動向をそれぞれ確認しながら指示を出すという役割である。

 

 「あと、大事な事がもう一つある。 “そして全員、無事に帰還する事”だ!」

 

「「「ウィルコー!」」」

 

 ゲントの言葉にヤスノブとアンリ、そしてテルアキは同時に返答した。

 

 「アースガロン、あと約5分程で現着予定です。」

 

 ヤスノブは言った。

 

 「適材適所って事ですね。存分に発揮しましょうねヤスノブさん。」

 

 アンリは士気が上がるようであった。

 

 『あのー…私からも一言宜しいでしょうか?』

 

「どうしたの?」

 

 そこに、アースガロンに搭載されている新型AI対話システム『EGOISS』(イーゴイス)(以降:アーくん)も話しかけ、アンリはそれに反応する。

 

 

 『間もなく、目的地周辺です。』

 

 

 「いやカーナビやないねんから!」

 

 2人はズコッとなり、ヤスノブは苦笑いで関西弁でツッコむ。

 

 

 「アースガロン、間もなく現着ですね。」テルアキは言った。

 

 「ああ…2人ならやってくれる。 “あの穴”に、何も起こらなければな。」

 

 

一方、多摩川の、ゲント達から離れた河川敷にて、同じくスカードの隊員の1人であり、主に情報収集のための潜入捜査・諜報活動を担当する『アオベエミ』が、何やら地面に空いた直径約2メートルぐらいの大きな穴を監視していた。

 

地面にぽっかりと空いた謎の穴。当初は以前現れた怪獣『幻視怪獣モグージョン』の別個体が現れてそれによるものではないかと思われたが、以前そいつが開けた穴よりもずっと小さく、また周囲の人が幻覚で苦しむという情報も無かった。

 

 そして実は他にも数日前から各地でも似たような穴が目撃されているのである。

 

 一晩にして家畜や鶏がごっそりいなくなる事件が各地牧場や養鶏場などで発生し、エミがそれらの場所に赴いて情報収集をした結果、現場には必ず謎の穴だけが残されていて、時折そこから何やら笑い声のような不気味な音も聞こえていたという。

 

 今回河川敷に現れたそれも、直径がほぼ一致しており、その不気味な音も聞こえる事から同一のものであると確信した。

 

 上記の現象から、怪獣が潜んでいる可能性が濃厚になりつつあるが、穴から下の熱反応は日によって大きくなったかと思えば小さくなったりとまちまちであり、まだ怪獣と断定するには乏しい事から、判明するまでは『脅威警戒態勢アルファ』として、隊員が日替わりで監視する事になったという。

 

そして今回は、作戦の編成上、エミが監視する事になった。

 

 「こちらエミ。以前、穴には何も変化はありません。 熱反応も微弱であり…相変わらず、不気味な声が聞こえるだけですね。」

 

 『分かった。引き続き監視を続けててくれ。 だが無理はするな、少しでも身の危険を感じたら離脱するんだ。』

 

 「ウィルコー。」

 

 ゲントとの通信を切ったエミは、改めてその穴の監視を始めた。

 

 

 やがてアースガロンは、コスモリキッドが暴れている現場上空に到着する。

 

 「目標、コスモリキッド確認!相対距離100でランディング!」

 

 「逆噴射、相対距離100でランディング!」

 

 ヤスノブの指示にアンリは了解し、コスモリキッドから約100メートル離れた場所に着地する。

 

 遂に戦場に降り立ったアースガロンは、逆光を背に、隊員達の気合に呼応するかのように咆哮を上げる。

 

 ゲントとテルアキも、アースガロンの現着を確認する。

 

 「奴は大ダメージを受けると体を液状化してダメージを回復させる。凍結させるまでは武装での直接攻撃は極力控えて格闘戦で誘い込むんだ。」

 

 「了解。それなら私に任せてください。」

 

 テルアキのアドバイスを受けたアンリは、自信満々に返事をする。

 

 「よし、では予定通り作戦を決行する!」

 

 「「ウィルコー!」」

 

 ゲントの言葉を合図に、遂に作戦が開始される!

 

 まずアースガロンは、ヤスノブの操作により右手から『105㎜機関榴弾砲アースガン』を発射し、それが近くの地面に命中して爆発した事により、コスモリキッドはアースガロンの存在に気づき威嚇するように身構える。

 

 自身の縄張りに、外敵が侵入したと思っているのであろうか。

 

 「近接戦闘CQCモード、交戦開始!」

 

「ウィルコー!CQCモード、エンゲージ!」

 

 ヤスノブの指示にアンリは了解し、彼女の操縦によりアースガロンはコスモリキッド目掛けて前進し始め、コスモリキッドもアースガロンに襲いかかる。

 

 2体はまずはお互い肩での体当たりでぶつかり合うのを皮切りに、格闘戦を始める。

 

 お互いに抱き合って押し合う形での力比べの後に、コスモリキッドは腕を振るってパンチ攻撃を繰り出すが、アースガロンはそれらを腕を振るって悉くいなして行き、頭部や胸部などにパンチやチョップなど打ち込んで行く。

 

 コスモリキッドも負けじとアースガロンの胴体に頭部の角を活かした頭突き、剛腕を活かしたパンチを打ち込むが、アースガロンは怯まずに反撃を続ける。

 

 アースガロンでの戦闘だとCQC(近接戦闘)モードを得意とするアンリの操縦テクニックにより、上手い事格闘戦をしながら移動して行き、今の所徐々に現在地と多摩川の距離が縮まって行く。

 

 「多摩川までの距離、目測であと約1.5キロ…今の所着実ですね。」

 

 テルアキは双眼鏡で確認して言った。

 

 「あぁ…この調子で…!?」

 

 ゲントは何かを言いかけたその時、突然何かにいきなり話しかけられるような衝撃を感じ、喋るのが止まる。

 

 「…どうしました?ゲント隊長。」

 

「…そうだな…万が一のために…。」

 

 テルアキが心配して話しかけている間に、何やら小声で呟くゲント。

 

 「すまんが、しばらくここを頼めるか? 俺は逃げ遅れた人の確認も兼ねて、万が一のために援護出来るように備えておく。」

 

「…分かりました。ですが、くれぐれも無茶しないでくださいね?」

 

「大丈夫だ、俺はそう簡単にくたばらない。 それに、2人ならきっとやってくれると信じてるからな。」

 

ゲントはテルアキと少し笑って見つめ合った後、アサルトライフルの『23式電磁小銃(RAR-23)』と拳銃『23式電磁拳銃(RHG-23)』を持って、アースガロンがコスモリキッドと戦闘をしている街へと向かう。

 

 …しかし、先程のゲントの謎の動きは何なのだろうか…?

 

 何やら誰かと会話をしているようにも見え、この判断もゲント自身のみの判断ではないようにも見えるが…。

 

 

 アースガロンの方はというと、コスモリキッドの反撃に多少手こずりつつも、尚も着実に川との距離を縮めつつあった。

 

 アースガロンはコスモリキッドの右フックを掴んで受け止めると、そのまま腹部に右足蹴りを決め、続けて右ストレートを胸部に打ち込んで後退させる。

 

 コスモリキッドは体勢を立て直すと、口から長い舌を伸ばしてアースガロンの右腕に絡み付け、そのまま引き寄せ始める!

 

 舌だけとは思えないその力は想像を超えるものであり、徐々に引き寄せられて行くアースガロン。

 

 「ぐっ!…虫(タガヌラー)よりはずっとマシだけど…これもこれで気持ち悪い…!」

 

 アンリはコスモリキッドの長い舌の思わぬ力に手こずりつつ、その気持ち悪さをぼやく。

 

 「モグージョンと同じく、あの舌で獲物を捕らえて捕食する…これまでも多くの作業員や釣り人が犠牲になった…。」

 

 テルアキはコスモリキッドの舌の恐ろしさを噛み締める。

 

 「俺に任せるんや!」

 

 ヤスノブはそう言うとアースガンのスイッチを押し、アースガロンの左手から発射された弾丸は見事にコスモリキッドの舌を焼き切り、それによりアースガロンは解放された。

 

 「良かった…ヤスノブさんナイス!」

 

 だが安心するのも束の間、その焼き切られた舌は即座に緑色の液状に変形し、やがてコスモリキッドの口内に戻って行く。

 

 やはりどうやら体の一部でも、切り落としてもそれが即座に液状化して元に戻るようである。

 

 だがアンリはそれでも怯まず、体勢を立て直してアースガロンの操縦を再開する。

 

 左右フック、両拳を同時に突き出すダブルパンチなど、アースガロンの格闘技が徐々に決まって行き、コスモリキッドは遂に川まで残り約500メートルの所まで追い込まれた。

 

 「このまま一気に行くよ!」

 

 アンリの気合いの言葉と共にアースガロンは再度パンチを放つが、なんとコスモリキッドの喉元に命中するどころか、そこをまるで水の中に手を突っ込んだかのようにすり抜け、水飛沫が飛ぶ。

 

コスモリキッドは、姿形はそのままで、即座に自身の体を液体化して打撃攻撃を防いだのだ!

 

 「嘘?そんな事も出来るんや!?」

 

 思わぬ相手の防御法にヤスノブが驚愕している間に、コスモリキッドは体を緑色の液体状に変化させ、そのままアースガロンに飛び込み、大蛇のように絡み付き、怪獣の姿に戻ってアースガロンに背後から組み付いて押さえ込み始める。

 

 「コイツっ…意外とパワーが凄い…!」

 

 流石のアンリの操縦でも、振り解くのに手間取っている。

 

 

 「やはりお前の野生の勘は当たっていたか!」

 

 予め街に駆け出していたゲントはそう言うとアースガロンの援護を始め、まずは23式電磁拳銃をコスモリキッドに撃ち始める。

 

 それにしても、ゲントが先ほど言っていた“お前”とは一体誰の事だろうか…?

 

 コスモリキッドは銃撃が体に当たるも全く意に介さず、それに対してゲントは23式電磁小銃の攻撃に切り替えるが、コスモリキッドは再び即座に姿はそのままで姿を液体化する事で無効化する。

 

 「思った以上に学習できる奴だな…!」

 

 ゲントは少し感心するようにぼやく。

 

 

 アースガロンは尚もコスモリキッドに押さえ込まれている。

 

 『この状況を打破するには、テイルVLSが最も妥当かと思われます。』

 

アーくんはアドバイスをする。確かに後ろからしがみ付かれてる故、格闘技どころかアースガンもMod.2ユニットも非常に当てづらい状況であるため。尾部からミサイルを発射するテイルVLSの方が有効的であろう。

 

 「まだ武装攻撃は極力避けるべき段階だが、やむを得ん、テイルVLSの使用、2発だけ許可する!」

 

 「ウィルコー! テイルVLS、発射!」

 

 ゲントの指示に了解したヤスノブの操作で、アースガロンは尾部からミサイルを2発発射する。

 

 2発のミサイルは上空を飛んだ後、コスモリキッド目掛けて垂直に落下し、1発目が背部に命中して爆発した事によりコスモリキッドはダメージや驚きでアースガロンから離れる。

 

 しかし、時間差で降って来た2発目は、コスモリキッドがそれに気づくや頭部を振るっての角攻撃で弾き飛ばされてしまう…!

 

 そして、そのミサイルが向かった先は、なんとエミが待機・監視している穴の方向であった!

 

 「嘘でしょ…?」

 

 エミは自身の現在地にミサイルが飛んで来るのに気づくや、その場から全力で走って離脱し始める。

 

 やがてミサイルは穴にスッポリ嵌まる形で地面に落下して爆発し、ギリギリ爆発圏内まで逃げ切れていたエミはその爆風で前方に吹っ飛んで地面に叩き付けられ、更に時間差で飛んで来た土砂がかかる。

 

 「んもう〜、危ないなぁ…。」

 

 エミはそうぼやきながら立ち上がり、体に付いた土砂をはたき落とすが、その最中に何やら地震が起こり始め、それと同時に何かに気付き、即座にゲントに通信を入れる。

 

 「こちらゲント!どうしたエミ?」

 

 「穴の下の熱源が急速に増大中!そして、地上に上がって来ます!」

 

 なんと、ミサイルが落ちて爆発した直後、さっきまで熱反応がほとんど無かった穴の下から何かが地上目掛けて上がって来ているのである!

 

「急いでその場から離れろ!」「ウィルコー!」

 

 エミはその場から走って離れ、やがて地面の穴のある所から勢いよく土砂が巻き上がり、そこから頭頂部から徐々に、一体の巨大怪獣が地上に上がって姿を現す!

 

 新たに現れたその怪獣は、カモノハシのような顔に、首元にぶら下がる無数の緑色のコブ、大きな出っ腹と出べそが特徴のコミカルな外見をしており、しかも現れるや何やら笑い声を上げ続けている…!

 

 名前は『再生怪獣ライブキング』である。

 

 「新たな怪獣現出! 恐らく謎の穴の正体だと思われます!」

 

 エミは通信で新たな怪獣・ライブキングの現出を知らせる。

 

 「あれは…私も見た事がない…!」

 

 どうやらこの世界では初めての個体みたいであり、テルアキですらまだ知らない状態であった。

 

 テルアキは、双眼鏡等でライブキングを観察して行き、やがてある事に気づく。

 

 「あの鼻の穴…地面に空いていた穴とそっくりだ…そうか!」

 

 テルアキが確信した事。それは、謎の穴は、落ちたが最後、鼻の穴を入り口にライブキングの体内に飲み込まれるものであり、それを出して落ちて来たものを次々と捕食していたのである。

 

 熱反応がほとんど無かったのは恐らく眠っている間は体温が極限まで下がっているからであり、また日によって熱反応の大きさがまちまちだったのは、恐らくその日、その時に飲み込まれて捕食された者の熱反応であり、飲み込んだ量によって変化していたという事だ。

 

 そして今日も、眠りながら鼻の穴だけを出して何かが落ちるのを待ち構えていたのだが、そこにミサイル(テイルVLS)が入って爆発した事により叩き起こされ、地上に上がって来たのであろう。

 

 

 現れたライブキングにコスモリキッド、そしてそれと対峙していたアースガロンも気づく。

 

 「新たな怪獣?」 「でもなんか、随分間抜けっぽい見た目だな。」

 

 コックピットの2人が驚愕している間にも、ライブキングは飛び跳ねるような動きをしながら笑い続ける。

 

 「何笑ってんねんこの怪獣…?」「なんか、気味悪いですね、怪獣が、しかも人間みたいに笑うなんて…。」

 

 ヤスノブもアンリも若干引き気味である。

 

 「満腹になってそんなに嬉しいのか…!?」

 

 ゲントはそう軽口を言いながらライブキングに23式電磁小銃を放つが、ライブキングはそれが体に命中したにも関わらず、その部分を軽く手で擦って再び笑い始める。

 

 アースガロンは現在は前方にコスモリキッド、後方にライブキングと、ニ体に挟まれてる状態であり、それにより戸惑っている隙に、ライブキングは口から火炎放射を放つ!

 

 「危ない!」

 

アンリの咄嗟の操縦でアースガロンは横に逸れてかわすが、再度振り向くとライブキングがその巨体に似合わず全速力で走って来ており、想定外の行動に避けきれずそのままライブキングの出っ腹を活かした体当たりを受けて転倒する。

 

 地面に倒れたアースガロンを見てライブキングは再度手や腹を叩いたりして笑い始める。

 

 コスモリキッドは、縄張りに新たな余所者が入った事への怒りか、単にライブキングの仕草が気に入らないのか、ライブキングを威嚇するように吠え始め、それに気づいたライブキングは今度はコスモリキッドの方を振り向いて笑い始める。

 

 ライブキングが笑い続ける事で馬鹿にされたと思ったのか、コスモリキッドはライブキングに向かって行き、両者は戦い始める。

 

 両者は共にパワーのある腕で殴り合うが、殴られても笑い続けるライブキングがいかにも不気味である。

 

 思わぬ乱入者により作戦遂行に狂いが生じ始めたが、それでも挫けずアースガロンは立ち上がるとニ体を引き離そうと接近するが、二体、特にコスモリキッドは「邪魔だ」と言わんばかりに払い除けて戦い続けるためなかなか接近できない…!

 

 接近するのが無理ならばと、アースガロンは今度は距離を置き、ライブキング目掛けて多目的レーザーを撃って命中させ、それが右肩に当たって爆発したライブキングは驚きからかコスモリキッドから数歩後ずさって離れる。

 

 その隙にコスモリキッドは近くのガスタンクを引き抜き、それをライブキング目掛けて投げつける!

 

 ガスタンクが腹に当たり大爆発するが、ライブキングは少し驚くような仕草をしたのみであり、爆風が晴れると再び笑い始め、それを見たコスモリキッドはイラつくように地団駄を踏む。

 

 「これはかなりまずいな…。」

 

 二大怪獣の戦いにより、作戦遂行が困難になって来たスカード。ゲントも焦りを見せる。

 

 「ゲント隊長!」そこに武装を携えたエミが合流する。

 

 

 「ヤスノブさん、もういっそこのままあの二体に超電磁誘導弾を撃ってみてはどうでしょうか?」とアンリ。

 

「今撃っても、電撃の威力が二体分に分散されて十分な効果が得られない、それに超電磁誘導弾は、相手が水に浸かっている時が1番ベストな効果を発揮出来るんです…!」とヤスノブ。

 

 『既に破損部分が数カ所、このままだと作戦遂行する前にアースガロンのエネルギーが尽きてしまいます。』とアーくん。

 

 

 「これは、かなりやばいですね…。」

 

 不利な状況に立たされたアースガロンを見て、エミも先程のゲントと同じように焦りを見せる。

 

 そこでゲントは目を瞑り、右のこめかみを指で押さえ始める。彼は何か考え事をする際に、よくこういう仕草をするのだ。

 

 そして数秒考えた後、ゲントは言った。

 

 「俺が行く…!」

 

 「え?」

 

 自身の発言にエミが困惑している間に、ゲントはアースガロンに通信を入れ始める。

 

 「アンリヤスノブ!俺があの太っちょ怪獣を引き付ける!その間に作戦を再開しろ!」

 

『『ウィルコー!』』

 

「ゲント隊長、何をする気ですか?」

 

「流石に至近距離からの銃撃なら、奴も注意が逸れるだろう。 エミはここから援護射撃をしててくれ!」

 

「え?そんなゲント隊長、無茶ですよ!」

 

 エミの制止の言葉も他所に、ゲントはコスモリキッドと戦い合うライブキングの方へと向かい走り始める!

 

 

 戦い合う二体により瓦礫等が飛んで来る中、ゲントはそれらをなんとかかわしながら向かって行き、やがて一旦コスモリキッドと距離を取ったライブキングの足元近くまで辿り着く。

 

 ゲントは真下から、持ってる武装での銃撃を始め、ライブキングの出っ腹や下顎などに命中させる。

 

 ゲントからの攻撃を受けたライブキングは、ゆっくりと彼のいる真下に顔を向ける。

 

 「おい!!そこの太っちょ!!狙うから俺を狙え!!」

 

 自身の方を向いたライブキングに、ゲントは両腕を大きく振りながら叫んで注意を引こうとするが、ライブキングはそれを見ながら首を少し傾げた後、再度笑い始め、子どもが足元の蟻を蹴飛ばすように足元のゲント目掛けて足を振り、ゲントはなんとかその直撃を回避出来たがそれにより発生した強風により吹っ飛び地面を転がる。

 

 ライブキングはゲントを吹っ飛ばした後、再度コスモリキッドと組み付き戦い合い始める。

 

 

 陽動作戦も失敗し、戦い合うコスモリキッドとライブキングにより周囲の街が破壊されて行き、アースガロンもそんな二体相手に攻めあぐねている…!

 

 スカードの作戦はこのまま失敗し、街はこのまま二体に蹂躙されてしまうのであろうか…!?

 

 

 「このままでは…!」

 

ゲントがそう呟いたらその時、光と共にゲントの左腕にブレス型のアイテムが装着され、それを見たゲントは不敵に笑いながら言った。

 

 「ブレーザー…俺もちょうど行こうと思ってた所だ…!」

 

 ブレーザー、それはゲントが変身するウルトラマンの名前であり、彼の腕に現れたアイテムはその変身アイテム『ブレーザーブレス』である!

 

 

 『ウルトラマンブレーザー』、それは、遠い銀河の天体『M421』からやって来た未確認大型宇宙人であり、揺るがぬ正義感を持ち、ゲントの人命を救うために力を欲する強い心に共鳴して一体化した。

 

 宇宙飛行士たちの間では何十年も前から噂されていたらしく、「ウルトラマン」のコードネームで呼称されていた。名前の由来はゲントが一体化した瞬間に見た銀河の光景から「遠い銀河のブレーザー」という意味である。

 

 当初は見た目からは想像できない蛮族っぽい荒々しい戦いぶりや、言葉をほとんど喋らない事もあって、意思疎通が難しく、互いの意思が噛み合わずそれにより苦戦を強いられたり、上手く戦えない事もあったが、戦いを重ねて行くうちに互いに「命を救う」という共通の意思を知り、言葉による意思疎通こそは出来ないもののそれを皮切りに互いを知って行き、2人の結束は強いものとなって行ったのだ。

 

 先程、ゲントが唐突にアースガロンの援護のために街に出始めたのも、ブレーザーが、戦うゲントの仲間達にもしもの事があってはいけないという野生の勘からそれを促したためである。

 

 その後ゲントがライブキングの足元まで接近するという側から見れば無謀な行動に出たのも、恐らくブレーザーに変身するきっかけを作るためも含まれており、ブレーザーもそれを汲み取って今、変身を促しているのであろう。

 

 

 ゲントはブレーザーストーンをブレーザーブレスの赤ライン部分に装填し、それによりブレスの結晶体が外側に展開し、同時に本体が赤と青の円状の光を放ち始める。

 

 「行くぞブレーザー!」

 

そしてゲントはそう叫ぶと、ブレスの青ライン部分のボタンを右手で押し込み、それによりブレスの輝きが増して外へはみ出し、そのままゲントを包む。

 

 そしてその光の中からブレーザーは無色の状態で現れ、それに赤と青のラインが色付くと同時に左拳を突き出して飛び出す!

 

 「ルロロロロロロロロロロィ‼︎」

 

 飛び出して現れたブレーザーはそのままその先にある高層ビルに飛び付いてよじ登り、そしてビルを蹴って飛び、そのまま急降下しながら組み合っていたコスモリキッドとライブキングに両膝蹴りを叩き込んだ。

 

 いきなり蹴られて同時に吹っ飛んだ二体が即座に立ち上がって振り向くと、そこには着地をして立っているウルトラマンブレーザーの姿があった。

 

 ブレーザーは両腕を大きく回して片膝を上げた後、地面に深く身を沈めて両手を突き出すという祈祷の動作をした後に構えを取る。

 

 「ブレーザー…!」「来てくれたのですね!」

 

「いい所に来てくれた…!」

 

 ブレーザーの登場にヤスノブとアンリは安心したように反応し、テルアキはいいタイミングで来てくれた事に感謝するように呟く。

 

 

 ブレーザーはまずはライブキングの注意を引こうと、手を振って赤と青のエネルギーが渦巻く光弾『サプレッシブ・スプライト』を数発放ちライブキングに命中させ、それによりライブキングが自身の方を振り向いて笑い始めると、更に威嚇をするように吠え始める。

 

 側から見ると、やたら爆笑する怪獣と、ひたすら吠え続ける巨人が対峙しているという、なんとも奇妙な光景である。

 

 「今だ!」

 

 ブレーザーがライブキングを引き付けてる隙に、アースガロンはアンリの言葉と共にコスモリキッドとの戦闘を再開する。

 

 ブレーザーはそれを確認したのか吠えるのをやめてライブキングに飛びかかると同時に頭部に右肘を打ち込み、続けて腹に膝蹴りを決め、それを皮切りにライブキングと激しい格闘戦を始める。

 

 ライブキングも怪力を誇る腕を大振りにしてブレーザーに殴りかかるが、ブレーザーはそれらを避けたり多少喰らったりしながらも、肘打ちや膝蹴りを中心とした格闘技を決めて行く。

 

 やがてブレーザーとライブキングはお互いの手を掴んで力比べを始め、ブレーザーはライブキングの怪力に徐々に手を下にひねられてそのまま持ち上げられそうになるが、咄嗟にライブキングの足を踏み、ライブキングが「いってっ!」という叫びと共に手を離した所で、更に跳躍して両足蹴りを胸部に叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 ブレーザーは再度ライブキングに接近すると、右腕でヘッドロックをかけてそのまま左肘を何度も頭部に打ち込んだ後、跳躍して腹部、胸部と二段蹴りを決めて後退させる。

 

 常に笑いながら怪力を活かして襲い掛かるライブキングに対し、巻き舌を伴う叫び声のような掛け声を上げながら、野生的な荒々しい戦闘スタイルで戦うブレーザー。

 

 同時にバトルをしているアースガロンとコスモリキッドの方が、外見、鳴き声などどれも比較的正統派な怪獣・ロボット怪獣である事から、よし異質さが目立つバトルである。

 

 ゲントは以前『天弓怪獣ニジカガチ』と戦った際に入手した『ニジカガチストーン』をブレーザーブレスに装填してスイッチを押し、それによりブレスに円状の鮮やかな虹のエフェクトが浮かぶ。

 

 ブレーザーは構えを取った後、一旦両手を合わせてそこから放出された虹のエネルギーを凝縮して、7色の刃を持つ光輪にして投げつける『レインボー光輪』を放つ!

 

 7色の巨大な光輪はライブキングを真っ二つにしようと縦に回転しながら飛んで行くが、なんとライブキングはそれを出っ腹で受け止めてしまい、しばらく自身の腹に接触した状態で回転する光輪を笑いながら見つめた後、両腕を振るって光輪を弾き飛ばし、弾き飛ばされた光輪はライブキングの背後の地面に落下し爆発して砕け散った…!

 

 ブレーザーはレインボー光輪を無効化された事に驚愕するように顔を上げるが、更に驚く事に、ライブキングはレインボー光輪を受けた腹に切り傷が出来ていたのだが、それもあっという間に塞いで回復してしまった!

 

 ライブキングはブレーザーが動揺している隙に急接近し、出っ腹を活かした体当たりを決め、そのまま倒れるブレーザーにマウントポジションを決めてそのまま押し潰そうとする。

 

 ブレーザーは必死に手で押さえる、殴るなどして抵抗するが、ライブキングの重量を誇る巨体の下敷き状態からなかなか逃れる事が出来ない…!

 

 その時、何処からか飛んで来た銃撃がライブキングの頭部に命中し、それによりライブキングは注意が逸れる。

 

 

 ブレーザーの援護射撃をしたのは、地上のエミであった。

 

 「さっき脅かしてくれたお返し。」

 

 エミは23式電磁小銃を下げた後、不適な笑みでそう言った。

 

 

 一瞬だけ動きが止まったライブキングに、ブレーザーはすかさず喉突きを決め、ライブキングがえずいている隙に更に両足蹴りを顔面に打ち込み、そのまま後転して立ち上がる事でマウントから逃れる。

 

 そして再びライブキングと組み合い、泥臭い格闘戦を再開する…。

 

 果たしてブレーザーは、驚異的な生命力・再生能力を持つライブキングをどう倒すのだろうか…?

 

 

 コスモリキッドと交戦を再開したアースガロンは、格闘戦では比較的優位だったが、相変わらずコスモリキッドはそれらを体を液体化して回避したりするため、作戦がスムーズに進んでいるわけでは無かった。

 

 アースガロンはコスモリキッドに両拳のパンチを決めて後退させる事で一旦距離を取る。

 

 コスモリキッドと多摩川の距離はとうとう100メートルを切ったのだが、アースガロンはその間に立たされている状態だった。

 

 「後少しですが…この状態でどうやって奴を川に…。」

 

 アンリは頭を悩ませる。

 

 「奴は既に、アースガロンの様々な格闘攻撃を学習してますからね。」とヤスノブ。

 

 『それに、何やら我々が何をしようとしているかも勘付いている感じがしますね。』とアーくん。

 

 「こうなったら、急上昇して一気に奴の背後に回り込んで…あかん、上昇してから回り込むまで、多少のタイムラグがある…。こうなったら、液体化で回避されるのも覚悟で武装を使うしか…。」

 

 万策が尽きかけ、やむを得ず武装攻撃を決行しようとしたその時。

 

 「アースガロン応答せよ。こちらテルアキ。」

 

 「副隊長…?」

 

 突然入ったテルアキからの通信にヤスノブは反応する。

 

 「実は、私に一つだけ提案があります。」

 

 「本当ですか?」

 

 思いもよらぬ発言にアンリは嬉しそうに反応する。

 

 「ですが、これはかなりの賭けでもあります。 それでも乗りますか?」

 

 テルアキがこれからする提案は、一か八かの行動でもあると知らされるが、それでもパイロット2人の意思は揺るがなかった。

 

 「テルアキ副隊長、あなたの提案なら、喜んで乗ります!」とアンリ。

 

 「この際、やれる事は全てやっちゃいましょう!」とヤスノブ。

 

 『右に同じです。』とアーくん。

 

 「…分かった!」

 

 自分を信頼してくれる部下たちに、テルアキは少し嬉しそうに了解した。

 

 

 しばらくするとアースガロンは再びコスモリキッドの方を振り向き、それを見たコスモリキッドも再び身構える。

 

 すると、アースガロンは何やら右手を掌を上にして突き出し、指先を数回曲げる動きをし、それを見たコスモリキッドが首を傾げた所に、更に左手も同じように突き出し、今度は両手で同じ動作をする。

 

 アースガロンは、所謂“挑発”のポーズをやっているのだ。

 

 コスモリキッドは両腕を挙げて地団駄を踏み始める。どうやら見事挑発に乗って逆上したみたいであり、闘牛のように数回地面を蹴った後、アースガロン目掛けて勢いよく飛びかかり始める!

 

 「今だー!!」

 

アンリの叫びと共に、アースガロンは即座に最大出力で横に飛んでかわし、アースガロンによけられた事によりコスモリキッドはそのまま川に向かって飛んで行き、そのまま落下した!

 

 コスモリキッドの巨体が水面を叩いた後にそのまま沈み、それにより水飛沫が飛び散る中、アースガロンはすぐさま水に浸かっているコスモリキッドの方を振り向き、ヤスノブが照準を合わせ始める。

 

 

 テルアキは作戦開始からずっと観戦していて、コスモリキッドがライブキングの笑っているのを見て苛立っていた様子から挑発に弱いと洞察し、アースガロンからはまだ挑発されてない故に学習されるリスクも比較的少ない事から、わざと挑発して怒らせて、突っ込んで来た所で回避して一気に川の中に飛び込ませるという作戦を思いついたのだ。

 

 挑発に乗らない可能性もある、もしくは予想外の動きをする可能性もあった事から、発案者のテルアキも言っていたように、半分は賭けでもあったこの作戦は、見事に成功したのである。

 

 川の水に浸かった状態でコスモリキッドは水飛沫を上げながら立ち上がり、再びアースガロンに向かって行こうとする。

 

 

 「今や!! 超電磁誘導弾、発射!!」

 

 遂に照準が定まり、ヤスノブの操作でアースガロンはMod.2ユニットの右肩のレールキャノンから、装填していた超電磁誘導弾を発射する!

 

 強力な電気を込めた弾丸は、見事、川の水に浸かっているコスモリキッドの足元ギリギリの所に命中し、破裂した弾丸の中から一斉に流れ始めた強力な電気はあっという間にコスモリキッドの体を包み、またそれを中心に電気は多摩川の前後半径約1キロ先までにも広がる!

 

 強力な電気が身体中に走るコスモリキッドはもがき苦しみ始め、また感電している事により身動きが取れず、液体化も出来なくなった。

 

 「続けて、液体窒素弾発射!!」

 

 続けてヤスノブの操作によりアースガロンはレールキャノンから液体窒素弾を発射し、発射された弾丸はコスモリキッドの頭上で爆発・破裂してそこから冷気がコスモリキッドの体を包むように一気に広がり、冷気を全身に浴びたコスモリキッドは体が凍りつくにつれて徐々に動きが鈍って行き、やがて完全に凍り付いて動きを止める。

 

 「今だ!全兵装一斉射!!」

 

 「オールウェポン!!」「ファイヤー!!」

 

 テルアキの指示を受けたヤスノブとアンリの叫びと共に、アースガロンはアースガンとテイルVLS、Mod.2ユニット、そして口部からの荷電粒子砲『アースファイア』を一斉に放ち、鋼鉄の獣の攻撃の乱舞は凍結したコスモリキッドの体を包むように一気に命中し、瞬く間に粉々に砕いた!

 

 砕け散ったコスモリキッドの凍った残骸は、テルアキやエミの元にも飛び散り、それにより彼らも勝利・作戦成功を確信する。

 

 『ミッション、完了ですね。』

 

 アーくんの言葉を皮切りに、見事作戦が成功した事にコックピットのヤスノブとアンリは喜び合い、地上で観戦していたテルアキはガッツポーズを決め、エミもふと笑顔を見せる。

 

 

 アースガロンの勝利及びコスモリキッド撃破の瞬間を、ブレーザーとライブキングも組み合った状態で止まって見ていた…。

 

 やがてお互い相手の方をゆっくりと振り向き、目が合った瞬間に同時に驚くような仕草を見せる。

 

 だがブレーザーは即座に切り替え、ライブキングの腹部に飛び膝蹴りを打ち込み、脛に蹴りを入れてバランスを崩した所に更に大きく前転してあびせ蹴りを叩き込んで地面に叩きつけた!

 

 

 ゲントは『ガラモンストーン』をブレーザーブレスに装填してスイッチを押し、それによりガラモンの足音のような音と共にブレスに電撃のエフェクトが浮かぶ。

 

 ブレーザーは稲妻状のエネルギーと共に生成されたガラダマ雷鳴剣『チルソナイトソード』を手に取り、右手持ちで、左手で刃先を撫でるような形で構えを取る。

 

 そしてライブキングに接近し、チルソナイトソードで左右斜めに斬撃を決めた後に胸部にぶっ刺し、その状態のままレバーを一回引いて引き抜いた後、一回転しつつ横一直線に振り抜いて稲妻状のエネルギー波を3発発射する『イナズマスラッシュ』を放ち、それをゼロ距離で受けたライブキングは爆発と共に吹っ飛んで仰向けに地面に倒れ、その状態のまま再び笑い始める。

 

 相手を挑発してるのか、自身の攻撃が決まっているのが嬉しいのか、ブレーザーは吠えながら数回地団駄を踏むように飛び跳ねた後、チルソナイトソードを地面にぶっ刺して構える。

 

 

 ゲントは今度は『ファードランストーン』をブレーザーブレスに装填してスイッチを押し、それにより炎のエフェクトが浮かび上がる。

 

 そしてそれにより、上空から真っ赤な炎と共に、ブレーザーの相棒でもある赤い炎を纏った不死鳥のような怪獣『炎竜怪獣ファードラン』が飛びながら現れる。

 

 ライブキングは上空を見上げてそれに気づくと再び手を叩いて飛び跳ねながら笑った後、ファードラン目掛けて火炎放射を放つが、ファードランはそれを周囲を旋回する形でかわすと同時に火炎を吹き返し、それを浴びたライブキングは「あっちっ!」と口走りながら後退りをするが、炎を受けた影響で出べそが焦げてしまっていた。

 

 次にファードランは飛びながらコスモリキッドの破片が散らばっている地面スレスレを通り過ぎ、それによりファードランの炎を受けた液体大怪獣の凍った破片はその熱により解凍される事も無く瞬時に蒸発した…!

 

 これによりコスモリキッドは完全に復活出来なくなった。

 

 

 ファードランは、両腕を広げて待ち構えているブレーザーの元に飛んで行き、接触した瞬間、ブレーザーの右手から順に鎧として装着されて行き、やがてブレーザーは鎧となったファードランを右半身に纏った後、燃え盛る炎を背に右拳を握って突き上げて飛び出す!

 

 

 (BGM:僕らのスペクトラ)

 

 

 自身の体を包む炎を振り払って現れたのは、ファードランが変化した炎のような装甲を右半身に纏ったブレーザーの強化形態『ウルトラマンブレーザー(ファードランアーマー)』である!

 

 ブレーザーは更にチルソナイトソードを引き抜くと、それを燃える炎のエフェクトと共にファードランと合体させて双刃の長剣『チルソファードランサー』に変えて構える!

 

 ライブキングは尚も笑いながらブレーザー目掛けて頭を突き出して突進するが、ブレーザーはチルソファードランサーのファードランの部分で受け止めて、そのまま地面を削りながら後ろに下がって耐え抜いた後、炎を纏わせる事でライブキングが熱さで離れた隙に、チルソナイトソードの部分の稲妻を纏った斬撃で下から振り上げる形で斬りつけ、続けて数回転しながら連続で交互に炎と雷の斬撃で斬りつけて行き、ライブキングの腹を蹴ってその反動で宙返りしながら後ろに飛んで着地する事で距離を取る。

 

 ライブキングは再び火炎を放射して反撃に出るが、ブレーザーはチルソファードランサーを突き出して両手で回す事で防ぐと同時に火炎を絡み取りながら接近して行き、やがて距離を詰めた所で、ファードランの炎に絡め取ったライブキングの炎を上乗せした巨大な火球を先端に生成し、それを上から大きく振り下ろして叩きつけ、それを受けたライブキングは大爆発と共に吹っ飛んで地面を転がる。

 

 流石に大ダメージを受けたのか、ライブキングは笑いながら立ち上がるもふらつきが目立ち、動きも若干鈍っていた。

 

 ブレーザーはトドメとして、チルソファードランサーのレバーを4回引き、チルソファードランサーを弓の要領で構え、右肩の鎧を燃え上がらせながら雷と炎の矢を放つ必殺技『チルソファード炎竜射』を放ち、それに体を貫かれたライブキングは動きこそはもがき苦しんでるものだが、最期の最期まで笑い続け、雷と炎のエフェクトを発しながら大爆発して砕け散った…!

 

 大爆発した後もしばらくライブキングの笑い声が木霊し続けており、ブレーザーは発射態勢を解いた後、炎を纏った後にファードランアーマーを消失させて通常の姿に戻った。

 

 

 (BGM終了)

 

 

 カラータイマーが赤く点滅を始めている中、ブレーザーはライブキングが爆発した場所の爆風がある程度消えた時、その場所に散らばっている肉片の中に何やら一定のリズムで鼓動を刻んでいるものを見つける。

 

 恐らくライブキングの心臓であろう。

 

 ブレーザーの強力な攻撃や技を受けて体自体はバラバラになったにも関わらず無事であり、そして今でも動き続けている…恐らくライブキングの驚異的な生命力の秘訣はこの心臓からだと思われ、そして今まさにそこから再生して行こうとしてるのであろう…!

 

 ブレーザーは野生の勘でそれに気づいたのか、ライブキングの心臓を若干気持ち悪そうな手つきになりながらも掴み上げると、そのまま上空に飛び上がり、ある程度低空飛行で飛んだ後、手を後ろに伸ばすと同時に高速飛行に移行し、赤と青の光が残るソニックブームを発生させながら空の彼方へと飛び去って行く。

 

 そして宇宙空間に入ったブレーザーは一旦止まると、手に持ったライブキングの心臓を思い切り前方へと投げつけた後、右手から発生させたブラックホールのような空間から光り輝く槍『スパイラルバレード』を取り出し、それを大きく回しながら右手に持ち替えて構えた後、上下左右に激しく回転して勢いをつけた後に投擲する!

 

 赤と青の二重螺旋状の光の槍はライブキングの心臓を貫通し、それによりライブキングの心臓は爆発して砕け散った…!

 

 ライブキングを完全に倒したブレーザーは、勝利の雄叫びなのか、その場で大きく顔を上げて獣が吠えるような叫び声を上げた。

 

 

 こうして、恐怖の二大怪獣はスカードの作戦、そしてブレーザーの活躍により破られ、人々に束の間の平和が戻ったのである…。

 

 

 翌日、スカードの作戦室にて、各々が各自の作業をしながら昨日の作戦を振り返っていた。

 

 「それにしても昨日の液体怪獣には参りましたね。」とヤスノブ。

 

 「しかも、あの穴から別の怪獣も出て来るなんて…。」とエミ。

 

 「それにしても、テルアキさんの咄嗟の作戦は見事でしたね。」とアンリ。

 

 「いやいや、ブレーザーがサポートしてくれたお陰でもある。」テルアキは照れ隠しも含めた表情で言った。

 

 「やっぱブレーザーも我々の仲間。間違い無いですね。」

 

 ヤスノブの言葉に一同は笑顔で頷いた。

 

 

 「それにしてもあの太っちょの怪獣、なんであんなに笑っていたんだろう…?」

 

 エミは、例え攻撃を受けようと常に笑っていたライブキングに疑問を持ち始める。

 

 「きっと、どんな事されても生きていられるのがよっぽど嬉しかったんだろうな。」「なんせ、奴は驚異的な再生能力を持ってましたからね。」

 

 テルアキとヤスノブは少し困惑しながらも、それっぽい理由付けという形で答えた。

 

 「しっかし気持ち悪かったですね、あの笑い声…夢に出て来そう…。」

 

 アンリはそう言いながらふと身震いした。

 

 「タガヌラーとどっちがキモいっすか?」「ちょ…やめてくださいよ〜!」

 

 ヤスノブが軽くからかい、アンリがそれに嫌がる様子を、テルアキとエミは笑顔で見つめた。

 

 

 「そういえば今本人いないから言えるんですけど、あの太っちょ怪獣、ゲント隊長は…「ライブキングでどうだろうか?」と言ってましたよ。」

 

 エミは言った。

 

 「なんやそれ?生命力凄いから?」「流石に直球過ぎるでしょ。」

 

 ヤスノブとアンリは苦笑いしながら言った。

 

 「いやそれが、上層部もそれをそのまま採用したらしいですよ。」とエミ。

 

 スカードの一同は、本人がいないというのもあって、ゲントの独特なネーミングセンスと、上層部の変なノリについて笑い合った。

 

 「しかしゲント隊長、今頃楽しんでるんだろうな〜。」とエミ。

 

 

 そのゲントはと言うと、その日は休みを取り、家族である妻のサトコと息子のジュンと一緒にお出掛けをしていた。

 

 コンサートである。

 

 既に開演されており、ヒルマ家、そしてその他会場の観客達は、演奏されている『BLACK STAR』に合わせて振り付けをしながら盛り上がっていた。

 

 そんな中、ゲントは会場の喧騒に紛れて、1人呟いていた。

 

 「昨日の作戦は、スカードの力のみでは成功するのは怪しかったし、ブレーザーがいてくれたお陰で成功したのも事実だ。 俺は君を信じている。 これからも頼むぞ。」

 

その時、ブレーザーは嬉しくなったのか(それか同じくライブで盛り上がって来たのか)、ゲントのポケットの中に入っているブレーザーストーンが赤くなって熱を発する。

 

 「あっちぃぃぃ!!」

 

 ゲントは、ライブで観客達がちょうど拳を突き出して跳ぶタイミングで、熱さのあまりその人達以上に飛び上がったのであった。

 

 

 (ED:Brave Blazar)

 

 

 〈完〉




 読んでいただきありがとうございます!

 今回は劇中の時系列とか関係なく、私なりのブレーザーの物語の1話を作ってみたいなという気持ちで制作しました。

 なので、今回も前回、前々回同様、本作のオリジナル主要人物(竜野
櫂、新田真美など)が一切登場しませんでした(笑)

 最初は、それなりにドラマパートも入れるつもりでしたが、恥ずかしながら私自身、ミリタリにそれほど詳しく無いのと、ブレーザーの第1話を意識してというのもあって、最初から既に怪獣が登場していて戦闘開始という形にしました。

 登場怪獣をコスモリキッドとライブキングにしたのは、それぞれブレーザーとアースガロンを相手するという事でセットで登場させやすいのと、昨年のタロウ50周年を記念してでもありますね。

 ウルトラマンブレーザーは、初見時はザ・ネクスト辺りを彷彿とさせつつ斬新なデザインで神秘的だなと思ってたら、いざ戦闘シーンを見てみると想像の斜め上、いや真上を行くワイルドさで、そのギャップも素晴らしかったですね。

 出演者も演技力高い方ばかりで、何より主人公が嘗て(何気に今年10周年を迎えた)「仮面ライダードライブ」でハートという主人公のライバル的存在でもある人気キャラを演じられた方という事で、そういう点でも放送開始前から期待値上がりまくりでしたね。

 登場怪獣もまさかの大半が新規怪獣で、毎回こいつはどんな攻撃をして来るのだろう、こいつとはどう戦うのだろう等と毎回ワクワクしながら見てましたね。

 因みに私はブレーザーの新規怪獣だとザンギルが1番好きで、他にもタガヌラー、ニジカガチ、デルタンダル辺りも気に入りました。(特にタガヌラーは第23話を見て一気に見方が変わりました。)

 毎回毎回が見応えある回ばかりで、いよいよクライマックスに突入するという事で、最終バトル、そして今年2月に公開される劇場版もとても楽しみです!


 ウルトラマンの他にも「シン・仮面ライダー」や「ゴジラ−1.0」など、昨年も特撮映画が豊作でしたね。(何気にどちらも私の好きな女優さんが出てるという(笑)) あとは特撮ではないですが、円谷関連だと「グリッドマンユニバース」もですね。

 そして、ネトフリ配信の「ULTRAMAN:RISING」も楽しみです!


 後書きが長くなってしまって&勝手に興奮してしまって申し訳ありません。


 今年も時間を見つけては作品を制作して行こうと思いますので、宜しければ今年もよろしくお願いします!


 感想・指摘・アドバイス等をお待ちしています!


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