転生して主人公の姉になりました。ダンまち編《凍結》 (フリーメア)
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プロローグ
また転生


SAOが全然終わってないのに違う作品に手を出してしまったナナシ猫です
理由は下の方に書いてあります
ではどうぞ


真っ白な空間の中、二人の男女がいた。

片方は腰まで届く黒髪で左目を隠した160センチほどの少女、和葉。もう片方は逆立てた髪が青い180センチほどの青年、リョウ。

 

「帰ったか、和葉」

 

リョウは顔に笑みを浮かべながら言った。

 

「ええ、ただいまです

ていうか、なんで僕はまたここにいるんですか?」

 

和葉は疑問に思ったことを言った。

 

「うむ、前回転生したときに言い忘れていてな

お前にはいくつかの世界に転生してもらう予定なのだ」

 

それを聞いた和葉は理由を聞いた。

 

「なぜです?」

 

「たまたまだな。次に死んだ者をいろんな世界に転生させるというのを決めていてな

和葉は運がよかった」

 

「なるほど」

 

和葉は納得した。

リョウはほかにも言うことを思い出した。

 

「あぁ、ほかにも言い忘れたことがあったな

主人公の姉になって貰うと言うことだが、必ずしも血縁上の姉になるわけではない

義理の姉になることもあると言うことだな」

 

「分かりました

それで?今回は何の世界ですか?」

 

「ちょっとまて・・・『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』通称ダンまちの世界で、ベル・クラネルの血縁上の姉だな」

 

またしても和葉が前世で見ていた大好きな小説の一つだ。

 

「了解です

それとリョウ、一つ気になったことがあったのですが」

 

「何だ?」

 

「あのですね、なんで前回の転生で僕の身体能力がチートじみていたのでしょうか?」

 

和葉は恐い笑顔で言った。

前回の転生先、『SAO』の世界では和葉の身体能力がチートじみていた。

和葉はチートな能力はいらないと言ったはずなのだが...

リョウはため息をつき

 

「はぁ、もともとのお前の身体能力が高かった(おかしかった)のだ

前世のお前もほとんど同じことをできていただろうが」

 

「そういえば...」

 

...どうやら前世の和葉の身体能力自体が高かった(おかしかった)ようだ。

リョウはそのままの身体能力で転生させたにすぎないのだ。

 

「はぁ、こんなことになるって分かってたら余計なことはしなかったんですけどね」

 

「それは無理だろう、お前は非情にもなれるがそれ以上にお人好しだ

どちらにしろ強盗五人は余裕で倒せただろうな」

 

もう突っ込み放棄したい...

 

 

閑話休題(それはともかく)

 

 

「転生する前にもう一度特典を決めて貰おう

お前の関係者からは記憶を消してあるからそれ以外でな」

 

「了解です。といっても前回と一緒ですが」

 

リョウはため息をついたが「分かった」と了承した。

 

「それでは行って来ます」

 

「行ってこい」

 

和葉はいつの間にかあった扉に入っていった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ここからは作者の言い訳コーナー(というなの文字数稼ぎ)

 

出演者

作者

和葉

 

作者「どーも、ナナシ猫です」

 

和葉「和葉です。ていうかなんで呼んだんですか?」

 

作者「だってさ、こういうのって一人でやるの寂しいし何より突っ込み役居た方が書きやすいからね」

 

和葉「君、後で斬ります」

 

作者「和葉の言った物騒な言葉は聞こえないことにして、えぇ、これは何故『SAO』が全然終わってないにもかかわらず、ダンまちのssを書き始めたのかという作者の言い訳+文字数稼ぎです

飛ばしても構いません」

 

和葉「ほんとになんで書き始めたんですか。バカですか」

 

作者「グハッ、和葉のドストレートな言い方が僕につきささr「いいから早く言いなさい、駄目作者が」...うっす

仕方ないじゃん、SAOの圏内事件のネタが思いつかないだもん」

 

和葉「だもんとか男が言ってんじゃないですよ。気持ち悪い」

 

作者「相変わらずの毒舌なことで...」

 

和葉「黙りなさい、君が決めたこと(設定)です

それはそうと、なんで『ダンまち』なんですか?」

 

作者「いやぁ、他にも書きたいやつはあったんだけどさ、GOT EATERとか、でなんで『ダンまち』なのかというと」

 

和葉「いうと?」

 

作者「一番書きやすいと思ったからだ!!」ドャァ

 

和葉「...」

 

作者「あのぉ、和葉さん?なんで黙るんですか?そしてなんで居合いの構えしてるんですか?てか刀どっから出した!?」

 

和葉「刀は望んだら出た」

 

作者「あぁなるほど、ってアホか!ここはそういう空間にしてねぇ!てか敬語消えてるんですけど!?」

 

和葉「そりゃあキレてるからね

とりあえず作者殺す、慈悲?あるわけない」

 

作者「ギャアアアアアアア!!」

 

作 者 は 切 り 刻 ま れ た !!




ここまで見ていただきありがとうございます
最後は悪ふざけです
ダンまちを書こうと思ったのは書きやすいと思ったのと普通に書きたかったからです
ただ、それだけd「まだ生きてたか」∑何故ここに居る!?ここには呼んでn「死ね」ちょっ、まっ、ギャアアアアアアア!


和葉の転生特典
・生前の記憶消去
・居合の才能



【挿絵表示】


※12/4
和葉の姿絵を追加しました。

和葉は友達に頼み描いて貰いました


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第一章
剣姫との出合い


いきなり原作スタートです
ではどうぞ


「ほあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!?」

 

ここは迷宮都市オラリア、冒険者が集まる世界で唯一ダンジョンがある都市。

そしてそのダンジョンの第五階層に二人の男女がいた、というより逃げていた。

男の方は髪の色は白く目は赤い、兎を連想させるような見た目をしていて、叫び声を上げたベル・クラネル。

女の方は目は黒く髪の色もベルとは反対で黒い、腰まで届く髪で左目を隠しているのはベルの姉、和葉・クラネル。

二人は少し前に冒険者になったばかりの駆け出し冒険者だ。

そして二人が逃げている相手は、Lv.2にカテゴライズされている本来ならもっと下の階層に居るはずの牛の顔を持つ亜人モンスター、ミノタウロス。

この世界でのLv.は1違うだけでも倍以上ステータスが違う。つまり駆け出し冒険者である二人はミノタウロスから逃げるしかない。

 

「ていうかなんでここにミノタウロスが居るんでしょうか?」

 

「僕はなんで姉さんがそんなに落ち着いているのかが気になるよ!!

あ、そこ右曲がろう!」

 

二人は通路の右を曲がったが

 

「行き止まりですね」

 

「だからなんでそんなに落ち着いてるのさ!」

 

行き止まりだった。

もはや絶体絶命のはずなのだが...

 

「もう殺りましょうか」

 

「出たよ!姉さんの戦闘症(バトルジャンキー)!ていうか無理でしょ!僕らはまだLv.1なんだよ!?Lv.2のミノタウロスに勝てるわけないじゃん!」

 

和葉は自他共に認める戦闘症(バトルジャンキー)であり狂戦士(バーサーカー)である。

 

「そんなのやってみなきゃ分からないでしょう

どちらにしろ、逃げられないのですから」

 

「え?」

 

ベルが振り向くとちょうど通路からミノタウロスの顔が出てくる所だった。

 

「...はぁ、死んだら恨むからね」

 

ベルは自分の武器である支給品のナイフを取り出した。

 

「それでこそ僕の弟です」

 

和葉も自分の武器である刀、【神楽】を鞘に入れたまま腰に構えた。

 

「グォォォォォォォォオ!!!」

 

ミノタウロスが雄叫びを上げながらこちらに走り寄ってくる。そのままミノタウロスは腕を振り下ろしてきた。

それを二人は左右に別れかわした直後に和葉がミノタウロスに突っ込み一閃、が足につけた傷は浅い。

 

(やはり硬いですね)

 

ベルもミノタウロスに向かう。

それに気づきミノタウロスは腕を振るうがベルはジャンプで避けながら肩にナイフで二回攻撃するが今度は血すら出ない。

 

「硬すぎでしょ!?」

 

「ベル!後ろです!!」

 

ベルが着地した直後にミノタウロスが突っ込んできて拳を振るう。

それを避けようとするが間に合わず直撃した。

 

「がっ!?」

 

そのまま壁まで吹き飛ばされた。

ミノタウロスはベルに止めをさすために近付こうとするが和葉が剣を振るい行かせない。

和葉はそのままミノタウロスに連続で居合いを叩き込む。

ミノタウロスも反撃するがすんでの所で避け攻撃する。

ミノタウロスの体中に血が流れ始めた。

一撃は浅いがそれが何回も続けば化け物であろうと生物である以上ダメージもでかくなる。

 

(これなら、いけます!)

 

だからこそだろう。和葉はこのままなら勝てると思ってしまった。

突如ミノタウロスは咆吼をした。先ほどの雄叫びより大きく。

 

「グォォォォォォォォオ!!」

 

和葉は耳を塞いだ。ミノタウロスはその隙をつき腕を振るう。

和葉は慌てて刀でガードをするが元のパワーが違う。和葉はいとも簡単に吹き飛ばされ壁に背中からぶつかった。

 

「かはっ」

 

和葉はそのまま前に倒れた。

ミノタウロスは倒れた和葉には向かわずいまだに動けないベルに向かった。今度こそベルに止めをさす気だ。

和葉もベルも動こうとするが動けない。ダメージがでかすぎた。絶体絶命だ。

ミノタウロスはベルの前まで行き腕を振り上げた。

刹那、和葉の前を風が吹いた、否、人影が通り過ぎた。

その人物はミノタウロスを切り裂いた。

 

「え?」

 

「グォ?」

 

現状把握が出来ていないベルとミノタウロスは間抜けな声を上げた。

そのままその人物はミノタウロスを細切りにした。ベルは近くに居たせいでミノタウロスの血を頭から浴びた。

ここでやっと和葉とベルはその人物が誰か分かった。

その人物をこのオラリアで知らない者はいない。

オラリア最大ファミリアの一つ【ロキ・ファミリア】所属、Lv.5で〖剣姫〗の異名を持つ女性冒険者、アイズ・ヴァレンシュタイン。

 

「大丈夫?」

 

アイズは返り血を浴びて真っ赤になったベルに大丈夫か聞いた。

ベルは唖然としていた。元々ベルがここに来たのは祖父の影響で異性との出会いを求めて来たのだ。(和葉は一人じゃ危険だからと付き添いで来た。)

今ベルの目の前には第一級冒険者のアイズがいる。ベルが思ったことは

 

─やっぱりダンジョンに出会いを求めるのは間違ってなかった─

 

アイズは返事がないベルにもう一度聞いた。

 

「あの、大丈夫?」

 

そこでベルはハッとなった。顔がみるみる赤くなり

 

「だ...」

 

「だ?」

 

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!?」

 

...意味不明な叫び声を上げてその場から逃げた。

それをポカンとアイズは見た。

そこに、なんとか動けるようになった和葉が近づいてきた。

 

「アイズ・ヴァレンシュタインさん...ですよね?」

 

「あ、うん、そうだよ...」

 

「すいません、うちの弟が...

あと弟を助けていただきありがとうございます」

 

和葉は頭を下げお礼をした。

アイズは首を横に振り

 

「ううん、半分は、私達の、せいだから...」

 

「どういうことです?」

 

アイズは説明した。

【ロキ・ファミリア】は遠征に出ていて、その帰りに第十五階層でミノタウロスの群れを発見、放っておくと危険だからと倒し始めた。

だが、途中で何匹かのミノタウロスが逃げ始め、そのうちの一匹がここまで逃げてきたらしい。

とりあえず和葉が思ったことは

 

─ミノタウロスの群れを普通に駆除できる【ロキ・ファミリア】はやばい─

 

と人によっては失礼なことを思った。

だが、それと同時に

 

─いつになったら追い越せるか─

 

和葉は静かに笑みを浮かべ、いつか【ロキ・ファミリア】を必ず越えると誓った。

といきなりアイズが

 

「さっき、刀に風がまとってたけど、魔法?」

 

「...はい?」




アイズの喋り方これで合ってます?
間違ってたらごめんなさい<m(__)m>
あと誤字、脱字がありましたらご報告ください
和葉「一回報告があるごとに君の手足一本切り刻みます」
∑ちょっとまていっ!!不死身とはいえ痛みはあるんだぞ!!
和葉「ほう、それは良いことを聞きました」
あ、やべ 


※8/17和葉の刀は支給品ではなくなりました

えぇ、和葉の刀は祖父からもらいました


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自然操作(ネイチャーオペレーション) ※ルビ訂正

お気に入り登録ありがとうございます!!

独自設定として魔法はステイタス更新前の場合は無意識に使えることにしました


あの後、和葉には身に覚えのないことだったのでその場にいた【ロキ・ファミリア】含めた全員が頭に?を浮かべた。(この時【ロキ・ファミリア】所属、〖凶狼(ヴァナルガンド)〗の異名を持つLv.5の狼人(ウェアウルフ)のベート・ローガが「分からねぇならさっきと同じ目に合わせればいいんじゃねぇか?」と言ったときにまわりから鉄拳制裁をくらっていた。)

結局なにも分からないまま和葉はもう一度お礼をして【ロキ・ファミリア】と別れベルを追うためにダンジョンを出た。

和葉はとりあえず魔石を換金するためにギルドに向かった

魔石とはモンスターを倒すと手に入る石だ。

この魔石がモンスターの動力になっているらしい。証拠かどうかは分からないが、モンスターの胸部分にある魔石を狙って破壊するとモンスターは一発で死ぬ。

 

和葉はギルドに入り、顔見知りのヒューマンであるミーシャ・フロットにギルドの受付嬢兼自分達の担当アドバイザーであるハーフエルフのエイナ・チュールを呼んで貰う。すると「エイナは奥の部屋に兎君と一緒にいるよ」と教えてもらい頭を下げて部屋に入った。

部屋に入るとなぜか床に正座させられているベルとベルの前に立っている、もとい仁王立ちしているエイナがいた。エイナはこちらに気づき

 

「あ、和葉ちゃん、待ってたよ」

 

とにこやかな笑顔で言ってきた。

...なぜだろうか、その笑顔を見た瞬間この場から逃げたくなった。

和葉はくるっと180°まわり扉を出て行こうとしたがその前に和葉の肩をガシッとエイナの腕がつかんだ。

和葉は振り向き挨拶をした。

 

「...こんにちは、エイナさん」

 

「うん、こんにちは和葉ちゃん

それより、私の警告無視して五階層に行ったんだって?」

 

和葉の顔が引きつる。

なるほど、ベルが正座させられていたのはこれが理由か。

それと同時にエイナの笑顔が怖い理由が分かった。

 

「君達にちゃぁんと言ったよね?今の状態じゃ五階層は危険だって

それを無視して君達は・・・・」

 

それから一時間に及ぶ説教をくらった。

 

 

 

一時間後

 

「ふう、まぁ説教はこれぐらいにして、えっとアイズ・ヴァレンシュタイン氏の情報だっけ?」

 

どうやらベルはエイナにアイズの情報を教えてもらおうとしたらしい。返り血を浴びたまま...

 

「ん?ベルもしかして、アイズ・ヴァレンシュタイン氏に一目惚れしました?」

 

和葉がそう言うと

 

「っ!ち、ちちち違うって!!ななななんでそんなことを!?」

 

分かりやすいぐらい動揺した。それではyesと言っているようなもんだ。

そこにエイナが入り

 

「まぁ、ベル君が惚れたとしてもつきあうことは無理だと思うよ?」

 

とベルにとって落ち込む言葉を言った。

案の定ベルは落ち込んだ。

 

「ああ!ベル君そんなにおちこまないで!そう言う意味で言ったんじゃなくて違うファミリア同士じゃつきあえないってことを言いたかったんだよ!」

 

エイナは慌ててフォローした。

和葉はそれを苦笑しながら見ていた。

 

 

あの後、なんとかベルを立て直し、アイズの情報ももらったので二人は帰ろうとしたがエイナがベルを呼び止めた。

 

「あのねベル君、女性はやっぱり頼りがいがあって強い男の人に魅力を感じるから...」

 

そこで一回切り

 

「めげずに頑張っていれば、きっと、ね?

ヴァレンシュタイン氏もベル君に振り向いてくれると思うよ?」

 

するとベルの顔の笑みがどんどん深まり

 

「エイナさん、大好きーーー!!!」

 

「うえっ!?」

 

聞いてる人によっては爆弾発言をした。

 

「ありがとぉーー!!」

 

ベルはそのまま出て行った。

残されたのは顔を真っ赤にしているエイナとニヤニヤしている和葉。

 

「前から思っていたのですが、エイナさんって、もしかしてベルのこt「うわ、うわああああああああ!!それ以上はいわないでえええええ!!」」

 

良いことを知ったと和葉はほくそ笑んだ。

 

 

 

ギルドを出て二人は自分達の家である古い教会に入っていった。

 

「ただいま神様」

 

「今帰りましたよ、ヘスティア」

 

中にはソファに寝そべっていた、黒髪をツインテールにした少女がいた。

この少女こそが【ヘスティア・ファミリア】の主神である神ヘスティア。

ヘスティアは二人が帰ってきたことを確認すると髪をピコピコ揺らしながらトトトトと走ってきた。

 

「お帰り、ベル君、和葉君

大丈夫だったかい?」

 

「五階層で探索してたらミノタウロスに襲われてしまいまして...」

 

「【ロキ・ファミリア】のアイズ・ヴァレンシュタイン氏に助けて貰いました」

 

「おいおい、本当に大丈夫かい?

君達が死んだらボクは柄にもなく泣いてしまうかもしれない」

 

ヘスティアは心配そうに言ってきた。

 

「大丈夫ですよ。僕達は神様を悲しませることはしません」

 

「僕はベルとヘスティアが幸せにならない限り死ぬつもりはないですよ

まぁ、幸せになったところで死ぬつもりはありませんが」

 

この言葉にヘスティアが反応して

 

「な、ななな何を言っているんだい和葉君!ぼ、ボクは別に...」

 

「どうしたんですか?神様?」

 

「ヘスティアこそ何を言っているんですか?僕は普通のことを言っただけですよ?」

 

ベルは何も分かってないが和葉は確信犯だ。現に口元に笑みを浮かべている。

 

「~~っ、ステイタス更新をするよ!!」

 

ヘスティアは顔を真っ赤にして怒るように言った。

和葉は、ヘスティアがベルと相思相愛になりたいと思っていることを知っていてさっきの言葉を言った。

何も分かってないベルだけが頭に?を浮かべていた。

 

 

ベル・クラネル Lv.1

 

力:I 80⇒I 85│耐久:I 23⇒I 23│器用:I 93⇒I 96│敏捷:H 148⇒H 172│魔力I 0⇒I 0

 

魔法:【】

 

スキル:【】

 

 

ベルの更新が終わり部屋を出て貰い和葉の更新を始めた。

 

「ヘスティア、ベルのステータスで何かあったんですか?若干苛ついてるように見えますが...」

 

ヘスティアはしばらく黙っていたが「まぁ、和葉君なら大丈夫か」といい「絶対誰にも話さないでね」と前置きをもらい

 

「ベル君にスキルが発動してね

名前は【憧憬一途(リアリスフリーゼ)

効果は、早熱する、懸想(おもい)が続く限り効果持続、懸想(おもい)の丈により効果向上、というレアスキルが発動したのさ」

 

ヘスティアがご機嫌斜めになった。

 

「それって、もしかしなくても...」

 

「そうさ!ベル君はさっき話してくれたヴァレン何某とやらに惚れたんだよ!何でボクじゃないのさ!?一番近くにいるのはボクなのに!」

 

「ヘスティア、落ち着いてください

それで、なんでベルに教えなかったんですか?まぁ理由は分かりますが」

 

ヘスティアは少し落ち着き

 

「ベル君は嘘をつくことが苦手な子だからね

レアスキルが発動したと言うことが広まったら他の神の玩具にされかねないからね」

 

「確かに」

 

 

 

和葉・クラネル Lv.1

 

力:H 105⇒H 120│耐久:I 52⇒I 61│器用:H102 ⇒H 114│敏捷:H146 ⇒H 170│魔力:I 0⇒I 9

 

魔法:【自然操作(ネイチャーオペレーション)

・造形魔法

 

スキル:【】

 

 

「はい?」

 

和葉は間抜けな声を出した。

ヘスティアが書き写してくれた紙に魔法があったからだ。

 

「ヘスティア、これは...」

 

「正真正銘、君のステータスだよ

ボクもびっくりだよ。こんなに早く魔法が発現するなんて、しかも魔力が上がってるってことは使ったんじゃないのかい?」

 

そういえば、アイズに刀に風がまとっていたと言われていた。

 

(本当に魔法だったんですか)

 

しばらくばれないようにしないと、と和葉は思った。

 

 

 

(まさか和葉君も似たようなスキルが発動するなんて)

 

スキル:【家族思い(ファミリア・タイズ)

・早熟する

・想いが続く限り効果持続

・想いが続く限り効果向上

 

(それだけ家族が好きってことなんだけど)

 

とりあえず誰にもばれないようにしなきゃとヘスティアは思った。




自然操作(ネイチャーオペレーション)の補足説明
名の通り自然界にあるものなら何でも操ることができる
ただしその場にあるもののみ使うことができる(自ら氷などを生成することはできない)
詠唱は自由

【◯よ、敵を切り裂く刃となれ】【◯◯◯カッター】
など
◯の中には風や水などが入る


家族思い(ファミリア・タイズ)の補足説明
簡単に言えば【憧憬一途(リアリス・フリーゼ)
違うのはその対象が家族なことだけ

英語の意味が違う?気にするな、適当だ


和葉「この魔法、チートっぽくないですか?」

作者「思いついた魔法がこれだから仕方ない」


※8/16ベルのステータスを追加しました
敏捷と器用、魔力以外を少し強化しました
それにともない和葉のステータスも変更しました

魔法のルビ訂正しました


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豊饒の女主人

えぇ、早速間違いを報告してもらい、うちの和葉に右足を切り刻まれました...

今回は作者の中で書きたかったところの一つです
ではどうぞ


魔法に関しては誰もいないときに使うか緊急事態の時だけ使うことになった。

和葉の魔法をベルに話したら「いいなぁ、僕も早く使いたい」と言っていた。

 

 

次の日

 

和葉とベルはヘスティアと朝ごはんを食べ、教会を出て行った。

 

「行ってきます、神様」

 

「行ってきます、ヘスティア」

 

「いってらっしゃい、ベル君、和葉君」

 

ヘスティアは笑顔で見送った。

 

 

ダンジョンに向かっている最中、和葉とベルは視線を感じその場に止まり、まわりを見た。

だがいくら探しても視線を送ってくる人物は見つからない。

いつの間にか視線を感じなくなったので気のせいかと思い始めた。

するとベルの後ろから声がした。

 

「あの、どうかしたんですか?」

 

その声にベルは驚き急いで後ろに振り返った。

ベルの後ろにいたのは人間(ヒューマン)の女性だった。

その女性はベルがいきなり振り向いたせいか固まっている。

 

「ベル、その人固まっていますよ」

 

「あ、す、すいませんっ!!驚かしてしまって!」

 

慌ててベルは謝るが

 

「い、いえ、こちらこそ驚かしてしまってごめんなさい」

 

どうやら二人があたりを見回していたのでそれが気になっただけらしい。

 

「お二人は冒険者なのですか?」

 

「えぇ、そうですよ

自己紹介がまだでしたね。僕の名前は和葉・クラネルです

でこちらが」

 

「弟のベル・クラネルです」

 

「和葉さんとベルさんですね

私はシル・フローヴァです

シルと呼んでください」

 

シルはにこやかな笑顔で言った。

 

 

 

どうやらシルは三人が立っているすぐ目の前にある〖豊饒の女主人〗と言うところで働いているらしい。

二人がダンジョンに行こうとするとシルに「今日の夜はうちで食べていってくださいね」と言われ、二人は了承した。

 

 

二人はダンジョンに入った。

昨日は五階層に行って死にかけたので今日はおとなしく三階層で稼ぐつもりだ。

もちろん魔法を試すつもりでもある。

 

「姉さん、今なら誰もいないよ」

 

「それなら使ってみますか」

 

ちょうど三体のダンジョン・リザードが現れたところなので試し撃ちしてみることにした。

ダンジョン・リザードとは壁に張り付いて移動をするトカゲ型モンスターだ。

 

「自然を操る造形魔法...無難に風で行きますか

詠唱は何でもいいと思うのですが...

【風よ、敵を切り裂く刃となれ】」

 

和葉が両手を前に出し詠唱を始めるとまず和葉の両手に風が集まり、徐々に刃の形になっていく。

 

「【ウィンドカッター】」

 

その言葉を合図に三枚の刃の形をした風がダンジョン・リザード一体につき一枚ずつ向かっていった。

すると

 

「「(はい/え)?」」

 

ダンジョン・リザード達を真っ二つにした。

いや、ここまではいい、想定内だ。

ではなぜ二人は驚いたのか、それは

 

「まさか、壁までも切り裂くとは...

完璧に予想外です...」

 

そう、風の刃はダンジョンの壁も切り裂いたのだ。

普通、ダンジョンの壁には傷つけることは難しい。ましてやまだLv.1で支給品の武器で傷つけることは到底不可能だ。

それを風の刃はパックリと簡単に切り裂いた。

ここでふと和葉は思った。

さっき集めた風を一つの刃にしたらどうなるだろうと...

思ったら出来ることなら即実行が和葉だ。

 

「【風よ、敵を切り裂く刃となれ】【ウィンドカッター】」

 

和葉は先ほどと同じ詠唱をした。

一つに集めた風は先ほどの刃よりも二回りほどでかい。

それを壁に放つ。

すると

 

「「...」」

 

二人は絶句した。

なぜならその刃は奥行き一メートル、幅二十センチ、高さ二メートルほどの傷をつけたからだ。

 

「姉さん」

 

「何ですか、ベル」

 

「その魔法、僕が前にいるときは使わないでね...」

 

「完璧にコントロール出来るようになるまでは使いませんよ...(多分)」

 

「今絶対多分とか思ったよね!?絶対使わないでよ!?」

 

 

他にも詠唱なしでも簡単な操作なら使えることが判明した。

ちなみに和葉が「これ、空気を操って敵のまわりの酸素を抜けば窒息しますよね」と言ったらベルが「なにそれこわい」と真顔で言っていた。

 

 

ダンジョンから出て二人は自分達の家に帰り、ステータス更新をした。

 

 

ベル・クラネル Lv.1

 

力:I 85⇒H 123│耐久:I 23⇒I 63│器用:I 96⇒H 139│敏捷:H 172⇒G 225│魔力:I 0⇒I 0

 

魔法:【】

 

スキル:【】

 

 

 

和葉・クラネル Lv.1

 

力:H 120⇒H 157│耐久:I 61⇒I 95│器用:H 114⇒H 158│敏捷:H 170⇒G 223│魔力:I 9⇒I 30

 

魔法:【自然操作(ネイチャーオペレーション)

・造形魔法

 

スキル:【】

 

 

 

ステータスの上がり具合がおかしいが、モンスターを三桁近く倒したからだろうと判断し納得した。

二人はヘスティアにこの後一緒にご飯を食べに行かないかと誘うとヘスティアのテンションが上がったが、ベルが今朝あったシルのことを話している間に機嫌が下がっていって最終的には「今日はバイトの打ち上げがあるから二人で行って来なよっ!!」と怒って出て行ってしまった。

ベルは相も変わらず理由が分かっていないが、分かっている和葉はため息をついた。

 

 

夕方、約束通りに和葉とベルは〖豊饒の女主人〗に食べに来た。

中に入るとシルがいて奥の席に案内された。

 

「あんたらが今朝シルが言っていた姉弟かい

今日は奮発してくれるそうじゃないか

たらふく食っていきな」

 

今話しかけてくれたのはこの店の主人、ドワーフのミア・グランド、元一流冒険者らしい。

そこまで奮発する予定ではないのだが...シルを見ると舌を出して「ごめんなさい」と笑顔で謝っていた。

ベルは(ごめんじゃねぇ!!)と思った。

 

店の料理を食べていると何やら騒がしくなった。

気になりそちらを見てみると大人数で店に入ってきた。

 

「皆!遠征お疲れさん!ということで宴やぁー!」

 

どうやら今入ってきたのは【ロキ・ファミリア】みたいだ

エセ関西弁で話している少女がこのファミリアの主神、ロキ。

【ロキ・ファミリア】の中には当然アイズがいた。

ベルは食事の手を止めアイズを見ていた。

するとおそらく酔っているのであろうベートがアイズに話しかけた。

 

「そうだアイズ、あれ、皆に聞かせてやれよ」

 

「あれ?」

 

「あれだよあれ、昨日助けたトマト野郎のことだよ」

 

その一言でベルは自分のことだと分かった。

 

「なんやなんやぁ?昨日なにかあったんかいな?」

 

ベートの言葉が気になった者達が集まっていった。

 

「それがよぉ、遠征から帰ってくる途中でな?ミノタウロスの群れに会ったんだよ

そいつらを片付けていたらよぉ、何匹か逃げやがってよ

そのうちの一匹が五階層まで上がってな?そこで雑魚二人がミノタウロスとやりあってたんだよ」

 

ベルはもうそれ以上聞きたくなかった。

その先にあることを言って欲しくなかった。

 

「でな?女の方はミノタウロスに傷をつけたんだがよぉ、男の方は傷がつけられなくてな?そのままミノタウロスに吹き飛ばされたんだよ

そっから女が一人でやっててな

はっきりいって男の方は足手まといだったな」

 

その言葉でベルは立ち上がり店から出て行った。

 

「なんやぁ?」

 

和葉は静かにお茶を飲んでいたが立ち上がり

 

「ごちそうさまでした

シル、これお会計です」

 

お金を払い出て行こうとしたが誰かが呼び止めた。

 

「待って」

 

振り向くとアイズがいた。

 

「おや、ヴァレンシュタインさんじゃないですか

どうしたんですか?」

 

「ごめん...あの子にも、伝えて欲しい...」

 

どうやらアイズは先程のベートの言葉でベルが傷つき出て行ったと思ったらしい。

 

「いえ、ベルは傷ついたのではなく、悔しかったんですよ、何も出来なかった自分が...」

 

そこで和葉はベートを見た。

 

「あぁ?んだよ、文句あんのか?雑魚が」

 

「いえ、文句があるわけではないですよ、本当のことですしね

ただ...」

 

そこで切り、和葉は─

 

「僕をあんまり怒らせない方がいい

何をするか、自分でもわからないから」

 

─殺気を出した。

その殺気は店の中にいたロキを除く下級冒険者からアイズ達、一流冒険者達までも固まらせた。

和葉は殺気をおさめ「それでは」と出て行こうとしたがロキに「ちょっと待ちぃや」と止められた。

 

「何ですか?神ロキ」

 

「呼び止めたんは、嬢ちゃんの所属ファミリアと名前を教えて欲しいんよ」

 

「なぜです?」

 

「こんな尋常やない殺気をだしたらそらぁ気になるやろ

安心しぃや、別に報復とか考えとらん。普通に気になっただけや」

 

しばらく和葉は考え、別にいいかという結論にいたった。

 

「分かりました

僕は【ヘスティア・ファミリア】所属、名前は和葉・クラネルです

それでは弟を追いかけなきゃ行けないので僕はこれで」

 

和葉は店を出て行った。

 

 

 

「あんのドチビ、ヤバイ子をいれよったな」

 

ロキは先程の少女を思い出していた。

 

「にしても可愛かったなぁ、ウチに入ってくれんかなぁ?」

 

...結局ロキはロキである。




なんか和葉がチートっぽくなってしまった...
何だよ、一流冒険者をも固まらせる殺気って...
和葉「書いたのは君でしょう」
...ま、まぁ!原作を壊さなければいいよね!


※8/17二人のステータスを追加しました


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強くなる

タイトルが思い付かずこんなタイトルになってしまいました


〖豊饒の女主人〗を出た後、和葉は真っ直ぐダンジョンへ向かった。ベルはおそらくそこにいるだろうと思ったからだ。

だがベルの装備は支給品のナイフだけ、防具は何も着けていない。急いで向かわないと間に合わない可能性がある。

和葉はさらにスピードを上げ、ダンジョンに入っていった。

 

 

 

和葉はダンジョンに入ってもスピードを落とさず、かつ向かってくるモンスターには刀で斬ったり、魔法で一撃で葬りながらどんどん下にもぐっていった。

 

 

ついに和葉は六階層まで来てしまった。

五階層までにベルはいなかったのでここにいるのであろう。

六階層に来ても和葉はスピードを緩めない。

六階層からは今までとはモンスターの生まれてくる数が段違いに多いとエイナは言っていた。

そしてこの階層から新しいモンスターが生まれてくる。

ウォーシャドウ、真っ黒い体と鋭い爪を持つ人型モンスターだ。

単純な強さでは六階層随一の強さを持つ。

そのウォーシャドウが壁から生まれた。、和葉の直横の壁からだ。

本来ならLv.1の状態のステータスが、少なくともオールHにいかないと苦戦する相手だ。

だが和葉は

 

「邪魔です」

 

そのウォーシャドウ相手に何の戸惑いもなく一閃、一撃で沈めた。

今の和葉には何のモンスターだろうと、自分より強かろうと関係ない。、ベルの捜索の邪魔をするなら斬るだけだ。

...生まれてくる数が段違いに多いというのは本当のようだ。

今和葉の向かっている先にモンスターの大群がいる。その数およそ三十。

普通なら絶望するところだろう。そう普通(・・・)なら...

和葉は普通ではない。いつもならこの数相手に嬉々として突っ込んでは一撃の元に葬り去っていく。

だが今はベルの捜索が第一、そんなことをしている暇はない。

邪魔をするモンスターがいるなら─

 

「殺すだけです」

 

 

 

 

ベルは今、六階層でウォーシャドウの群れに囲まれていた。

その数、十匹。

だがベルは諦めていない、諦めない。

ヘスティアと約束したからだ。ヘスティアに悲しませないと...

 

(約束は守らないとね)

 

それともう一つ、ある人物に追いつくためにはこれぐらいは倒せないと駄目だ。

その人物はアイズ・ヴァレンシュタイン。

だからこんなところで死ねない。

ヘスティアを悲しませないためにも、アイズに追いつくためにも...

こいつらを─

 

「ああああああああっ!!」

 

─倒す。

 

 

ウォーシャドウが爪を振り下ろしてくるが、ベルはそれをナイフで右に受け流し、斬る。

ウォーシャドウが怯み、その隙をつき連続で攻撃をする。

攻撃が魔石にあたり、死んだ。

ベルはそのまま違う個体に目にもとまらぬ速さで向かう。

そのまま首を一閃、ウォーシャドウは反応できず首をはねられた。

ベルの後ろから三匹のウォーシャドウが一斉に攻撃してきた。

避けるのは無理と判断、防御をしようとすると─

 

「【風よ、敵を貫く槍となれ】【ウィンドランス】」

 

─聞き慣れた詠唱が聞こえた。

詠唱が終わると、何かが三匹のウォーシャドウの頭を貫いた。

ベルは詠唱が聞こえた方を向いた。そこには予想通り自分の姉である和葉がいた。

 

 

 

あの後、和葉は十数秒でモンスターの群れを(魔法を使わず)全滅させ、六階層の奥に向かった。

すると、奥にはベルが複数のウォーシャドウに囲まれているのを発見、すぐさま魔法の詠唱を開始、ベルに向かっていった三匹のウォーシャドウを葬った。

 

「ベル!!」

 

といきなり和葉はベルの名前を呼んだ。

ベルは驚き

 

「はいっ!?」

 

うわづった声で返事をした。

 

「言いたいことは山ほどありますが、とりあえず今はこいつらを全滅させます

後で説教ですからね」

 

と和葉は恐い笑顔でベルにとってはかなりヤヴァイことを言った。

和葉の説教はものすごく恐いのだ。後ろに鬼を通り越して魔王が見えるほどに...

...訂正しよう、魔王が裸足で逃げるほどに...

余談だが、和葉とエイナから二人同時に説教をくらうと気絶する。

 

 

あの後、ウォーシャドウの群れを数秒で全滅させ、説教をくらったベルの顔は真っ青通り越して真っ白になっていたが小さい頃から説教はされていたので、数分で回復した。(モンスターも避けていた気がするが、気のせいだろうか?)

 

 

 

ヘスティアは焦っていた。いくらなんでも遅すぎる。

もう深夜をまわっている。いつもなら二人とも帰ってきてる時間だ。

 

(なにかあったんだろうか...)

 

今朝はベルが他の女のことを話していたので嫉妬してしまい強く当たってしまったが、あれぐらいで家出をするような子達ではない、これは断言出来る。

ヘスティアは二人を探しに行こうと決心をし、ドアを開けようとしたが─

 

「ぶっ!」

 

─空振りをし、顔面を床に強打した。

詳しく話せばヘスティアがドアを開けようとドアノブに手をかけた瞬間、ドアが開き、ヘスティアは勢いのまま床に強打したということである。

ヘスティアが顔を上げるとそこには、探しに行こうとしていたベルと和葉がいた。

 

「「(ヘスティア/神様)、大丈夫ですか?」」

 

ヘスティアは大丈夫だよと言おうとしたが

 

「君たち、その傷はどうしたんだい!?特にベル君!!」

 

和葉とベルについた傷に気づいた。

ヘスティアが言ったようにベルの方が傷は大きい、と言っても和葉はほぼ無傷、ベルも切り傷が目立つだけだ。

 

「いえ、その...ダンジョンにもぐってまして...」

 

それにヘスティアは驚いた。

 

「ば、バカかい!?君たちは!?そんな装備で何でダンジョンなんかに行ったんだい!?」

 

その質問にベルと和葉はすぐに答えられず、黙ってしまった。

 

「...はぁ、分かったよ、このことに関してはもう聞かないよ

とりあえず今日は更新をやめて明日にしようか」

 

 

 

そして、就寝時間になった。

 

「今日はベル君と和葉君はベッドで寝ること、いいね」

 

「いいんですか?」

 

「さすがにそこまで疲れている子をソファで寝ろとは言えないからね」

 

そこでヘスティアは一回区切り、悪戯(いたずら)を思いついたような笑みを浮かべた。

和葉はその笑みで何かを悟った。

 

「そのかわりボクをベル君の隣で寝させてくれよ。それぐらいはいいだろう?」

 

和葉の予想通りになり軽くため息をついた。

いつもならここでベルは慌てるのだが...

 

「もちろん、いいですよ

では寝ましょうか」

 

「うえっ!?」

 

ベルは普通に返した。ヘスティアは冗談(キラーパス)のつもりだったが綺麗にスルーされたのでびっくりした。

どうやら疲れ果てて思考能力が落ちているようだ。

ヘスティアは

 

(絶対抱きついてやるっ!)

 

と思った。ボクは悪くない、思考能力が落ちているベル君が悪いんだと責任転換をした。

 

 

そんなこんなでベッドに三人で入った。少々狭いが寝れる。

ヘスティアが真ん中でその左右に和葉とベルが寝ていて、ヘスティアはベルに抱きついている。

すると

 

「神様...」

 

「!にゃっ、にゃんだいっ?」

 

いきなりベルがヘスティアを呼んだのでヘスティアは驚き、上づった声で返事をした。

 

「僕、強くなりたいです」

 

「っ!」

 

ヘスティアがベルの瞳をのぞくと、そこには決心がついた瞳をしていた。

ヘスティアは小さく「うん...」と言った。




すいませんっ!!
ステータスまで行けませんでした...

えぇ、ステータスは敏捷だけ、ベルの方が上です
和葉のステータスはいろいろ高い(おかしい)のでそれにあわせてベルの敏捷も高く(おかしく)なると思います
和葉「てことはベルの敏捷は原作よりもかなり高くなると言うことですね」
そうなるね


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力になりたい

お気に入り50件突破!!ありがとうございます!!

原作を4巻まで買ったのでこれまでより原作引用が多くなると思います

それではどうぞ


翌日、ステータス更新を行うとヘスティアは驚いた。

 

 

ベル・クラネル Lv.1

 

力:H 123⇒G 225│耐久:I 63⇒H 113│器用:H 139⇒G 232│敏捷:G 225⇒F 398│魔力:I 0⇒I 0

 

魔法:【】

 

スキル:【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

・早熱する

・懸想(おもい)が続く限り効果持続

・懸想(おもい)が続く限り効果向上

 

 

和葉・クラネル Lv.1

 

力:H 157⇒G 267│耐久:I 95⇒H 147│器用:H 158⇒G 289│敏捷:G 223⇒F 392│魔力:I 30⇒H 106

 

魔法:【自然操作(ネイチャーオペレーション)

・造形魔法

 

スキル:【家族想い(ファミリア・タイズ)

・早熟する

・想いが続く限り効果持続

・想いが続く限り効果向上

 

 

(早すぎるっ!)

 

二人のステータスの伸びがおかしい。だがヘスティアはこの伸びの原因が分かっていた。

 

(【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】と【家族想い(ファミリア・タイズ)】、おそらくこのスキルが原因)

 

ステータスの紙を渡された二人も驚いていた。確かに昨日の夜も三桁近く倒したが耐久値がここまで上がるのはおかしい。なぜなら和葉は昨日ほとんど攻撃を受けていないからだ。

だがベルのステータスの伸びの原因に和葉は心当たりがあった。

 

(ベルの方は例のスキルでしょうね

となると、僕のステータスの伸びもスキルでしょうか...)

 

ヘスティアに聞いてみる必要がありますね、と和葉は思った。

そして思ったら即行動が和葉である。

 

「ベル、先に外に行っててもらえませんか?すぐに行くので」

 

ヘスティアと話していたベルは一瞬?を浮かべたがとりあえず出て行った。

 

「ヘスティア」

 

もう少しベルと話したかったのか、ちょっと寂しそうにしていたが、和葉の呼びかけにすぐに答えた。

 

「なんだい?和葉君」

 

「僕に何か、ベルに似たスキルは発動していますか?」

 

和葉はストレートに聞いた。

少しの間ヘスティアは黙っていたが、ため息をついた。

 

「はぁ、やっぱり和葉君は分かっちゃうよね...」

 

「と、いうことはやはり僕にも発動しているんですね?」

 

「あぁ、そうだよ

名前は【家族想い(ファミリア・タイズ)】、効果はほとんどベル君と一緒さ

ただ、おもいの先が異性なのか家族なのかの違いだけだ」

 

和葉はなるほどと思った、これで自分のステータスの伸びの原因が分かりスッキリした。

とヘスティアが真面目な顔で

 

「和葉君、分かっているとは思うけど...他の人にはばれないようにしなよ?」

 

もちろん和葉は

 

「ええ、分かってますよ」

 

 

 

和葉は外に出てベルと合流した。

 

「そういえばベル、さっきヘスティアと何を話してたんですか?」

 

和葉は先ほどのベルとヘスティアの会話が気になりベルに聞いた。

 

「今日もダンジョンに行くのかって聞かれたのと、神様しばらくの間帰ってこないって言ってたよ」

 

そうですかと和葉は言い、二人は〖豊饒の女主人〗に向かった。

 

 

〖豊饒の女主人〗についた二人はしばらくその場に止まっていた、というのもまだ店にcloseの札がかかっているのと、ベルが気まずくて入りにくいのだ。

二人(ベルだけだが)はしばらくその場で悩んでたが、意を決して中に入った。

すると

 

「すいませんお客様、当店はまだ準備中ですので、時間をおいてからまたお越しになっていただけないでしょうか?」

 

「まだ、ミャー達のお店はやってにゃいのにゃ」

 

中にはエルフの女性とキャットピープルの女性がいた。

 

「いえ僕たちは客ではなく...シルさん、シル・フローヴァさんはいらっしゃいますか?あと女将さんも...」

 

ベルは中にいた二人の店員にシルがいるかどうかを聞いたのだが...

 

「ああ!おみゃーはあんときの食い逃げにゃ!あんときのクソ白髪兎野郎にゃ!」

 

「貴方は黙っててください」

 

「ぷにゃっ!?」

 

キャットピープルの人がベルを指さし、あの時、ベルが店をお金を払わずに出て行ったことを言っているとシルフの人に叩かれた。(ドガッとすさまじい音が聞こえたが...)

 

「失礼しました、今シルとミアお母さんを呼んできます」

 

「...は、はい」

 

先ほど叩かれたと言ったが二人にはその一撃がかろうじて見えただけだ。

シルフの人はキャットピープルの人の襟首を持ちずるずると店の奥に入っていった。

 

「姉さん、さっきの一撃見えた?」

 

「…全くというわけではありませんが、ぶれて見えました

あれを不意打ちでやられたら防げる自信がありませんね」

 

それから二人は黙り、シル達が来るまで店内を見回していると

 

「ベルさん!?和葉さん!?」

 

シルが店の奥から現れた。

 

「シルさん、すいません…

昨日はお金を払わず出て行ってしまって...」

 

ベルはシルの前まで行き頭を下げた。

 

「いえ、それに関しては和葉さんが払ってくれたので別に大丈夫ですよ」

 

 

それから少し雑談をしていると、シルが「あっ」と何かを思い出したように言い、また店の奥に入っていった。

それに二人が首をかしげていると、すぐに戻ってきた。手にバスケットを持って。

 

「ダンジョンに行かれるんですよね?これ、良かったらお昼に食べてください」

 

まぁもちろん反論するわけで

 

「いやいやいや、悪いですよ!!」

 

「それなら、これをあげるかわりに今日の夜もうちで食べに来てください」

 

ここまで言われては断れないので素直に受け取った。

すると

 

「昨日の姉弟が来たんだって?」

 

店の奥からこの〖豊饒の女主人〗の女将、ドワーフのミア・グランドが出て来た。

 

「あぁなるほど、昨日のことを謝りに来たのかい。関心じゃないか」

 

「ど、どうも...」

 

「おはようこざいます、ミアさん」

 

ベルはミアの迫力におされているが、和葉は普通に挨拶をした。

 

「ほら、シル、あんたはさっさと戻りな。仕事ほっぽり出して来たんだろう?」

 

「あ、はい!ではお二人とも、また」

 

シルはお辞儀をしながら奥に戻っていった。

ミアは顔に豪傑な笑みを浮かべながら、その太い指でベルの胸をどついた。

曰く、「このまま戻ってこなかったらこっちからけじめ(・・・)をつけにいってやった」、曰く、「久しぶりにアタシの得物(スコップ)が轟き叫ぶところだった」、ベルは本気(ガチ)で今日謝りに来て良かったと心の底から思った。

 

『シル、あれをあげては貴方の分の昼食が無くなってしまいますが...』

 

『お昼ぐらいは我慢できるよ?』

 

『にゃんであんにゃ奴に自分の昼食を渡すにゃ?冒険者にゃんだから自分の昼食ぐらいは買えるはずにゃ』

 

『い、いや...それは…』

 

『おーおー、お二人にゃん、不躾にゃことは聞くもんじゃにゃいにゃ、つまりあの少年はシルにとっての...これにゃ?』

 

『違いますっ!!』

 

そんな声が奥から聞こえ、和葉はまたか、と思いため息をついた。

なぜかベルは年上に受けがいい。(おそらく見た目が兎みたいで可愛いからだろうが...)田舎にいたときも年上の女性からモテていた。(ベルはまっっっっったく気づいてないが。)

まわりでベルのことを想っている人を思い浮かべてみる。自分達の主神であるヘスティア、自分達の担当アドバイザーであるエイナ、そしてここで働いているシル。

...いずれも年上である。

 

 

閑話休題(それはともかく)

 

 

「シルに礼を言っておきな。ここにはアタシも含めて血の気が多い奴が多くてねぇ。シルが止めてなきゃ今頃アンタは血の海に沈んでるよ」

 

「「...」」

 

なんだそれ笑えない...

 

「飛び出して行ったアンタをシルが追いかけたみたいだけど結局会わなかったんだろう?

塞ぎ込んで帰ってきたシルを見て、ほれ、あのエルフのリューが自分の得物(真剣)を研いでいてねぇ。止めるのに一苦労したもんさ」

 

...どうやらベルの命はわりと本気(マジ)で危なかったらしい。

 

「坊主、よく聞きな。冒険者なんてかっこつけるだけ無駄な職業さ。最初のうちは生き残ることだけを考えていりゃあいい」

 

ベルはちらりと自分の姉を見た。和葉は頭に?を浮かべた。

 

(ミアお母さん、最初から生き残ることだけじゃなくて、戦うことを常に考えている人がここにいるよ...)

 

そしてミアはニッと笑みを浮かべ

 

「惨めだろうがなんだろうが、最後まで立ってた奴が一番さ

そうすりゃあアタシがそいつに酒を振る舞ってやる。ほら勝ち組だろ?」

 

そんなことを言われ、ベルはもちろん和葉も感謝の念がつきなかった。

ベルの心にあった影がすっと消えた。

 

「坊主達、アタシにここまで言わせたんだ

くたばったら覚悟しなよ」

 

「「はい!ありがとうございます!」」

 

二人は『豊饒の女主人』をでてダンジョンへ向かった。

 

 

 

 

その夜、【ガネーシャ・ファミリア】のホームで神々が宴をやっている時、ロキとヘスティアが「ドチビんとこの黒髪の女の子ワイによこせぇー!!」「何で君みたいなところのファミリアにボクの眷属()をあげなきゃならないんだ!!」とこんな言い合いをしていたとか。




にゃが軽くゲシュタルト崩壊した←意味間違ってたらごめんなさい<m(__)m>
これでやっと原作1巻の半分...先は長いなぁ...
和葉「ミノタウロス戦を書きたいんだったらもっとペースを上げればいいんですよ」
それはそうだけどさぁ、僕文章力ないからどうしても時間をくうんだよね
和葉「なら国語力をあげればいいだけの話ですよ」
んなあっさりと言うなよ...


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怪物祭(モンスターフィリア)

翌日、二人は今日も朝からダンジョンにいた。

 

「ふっ!」

 

『ぐぎゃぁ!!』

 

「しっ!」

 

『ぎっ!?』

 

そんでもって無双していた、四階層で。

五階層だと前みたいなことになる可能性がある。だったら四階層ならいいんじゃね?という結論にいたった。

...どういう思考をしているんだこの姉弟は。

 

「ん~、もっと強いモンスターはいないんですかねぇ」

 

『げっ!!?』

 

「ハハハ...この階層じゃ無理だと思うよ?」

 

『ごっ!』

 

二人は話ながらモンスターを葬っていた。無論油断などしない。いつイレギュラーが来てもいいようにしていた。

和葉的にはイレギュラーが来たら倒すつもりでいる。

 

「ふっ!」

 

『っ!!!!??』

 

...こんな風に。

今和葉が斬ったのは、本来は七階層にいる骸骨モンスター、スケルトン、たまにこいつみたいに上がってくる奴がいる。

こいつも結構強い。特殊な攻撃はしてこないが攻撃力は高い。あと骸骨のくせに防御力が意外と高かったりする。具体的には七階層に出てくる。新人殺しとして有名なキラーアントの一歩手前の硬さである。支給品の武器では斬れない。

だが和葉の刀は支給品ではなく、かなりの業物だ。

名前は【神楽】、ハンパない切れ味を持つ。

そんな切れ味を持つ【神楽】でスケルトンを斬るとどうなるか、答えは簡単、真っ二つである。

むしろ和葉は細切りにする。

オーバーキル?和葉の辞書にそんな言葉はない。むしろ和葉は「え?なに言ってるんですか?敵にはやり過ぎなぐらいがちょうどいいんですよ」なんてことを言う。

 

 

 

 

モンスターを全滅させた二人は上に向かっている。

するとベルが唐突に

 

「強くなってるよね...」

 

と言った。

和葉は少しの間黙っていたがクスッと笑い

 

「何を今さら、ベルは、もちろん僕もですが、最初に比べてだいぶ強くなってますよ

(まぁ、成長速度が異状ですが)」

 

そこで一回区切りベルを呼んだ。

 

「ベル」

 

「何?姉さん」

 

「アイズ・ヴァレンシュタイン氏に追いつきたいんでしょう?いいじゃないですか、目標は高い方がいいんですよ、そっちの方が頑張れるでしょう?」

 

フッと笑みを浮かべた。

 

 

二人がダンジョンの入り口までくるとそこには沢山の人と巨大なカーゴがあり、その中にはなんとモンスターが入っていた。

モンスターをダンジョンから出すのは【ギルド】が禁止にしている。

その光景に二人は唖然としていると、その冒険者達の近くにエイナ含めギルドの職員がいたのでこれはギルド公認か、と納得した。

後ろからカーゴを持った冒険者が来たので道の脇にどいた

すると会話が聞こえてきた。

 

「今年もやるのか、怪物祭(モンスターフィリア)

 

「全く、毎年毎年よくやるよな。その度に俺達がモンスターを捕獲してきてよぉ。まぁ金を貰えるからいいけど」

 

「そりゃあお前あの【群衆の王(ガネーシャ)】様だからなぁ」

 

(怪物祭(モンスターフィリア)?)

 

二人は聞き覚えのない言葉を聞いたが仕事が終わった後にエイナさんに聞けばいいかと思い協会に帰っていった。(ちなみに二人とも返り血で真っ赤であるため、まわりがギョッとしていた。)

 

 

 

返り血を洗い流すために和葉はシャワーを浴びていた。

ふと和葉は風呂場にある鏡を見た。そこには左目にひどい傷がある自分の顔があった。

和葉がこの傷をおったのは3歳の時、ベルが村の外でモンスターに襲われたときに庇ったせいで出来た傷だ。

 

(やはり冒険者になったところで、この傷は消えませんか...)

 

和葉としてはもう一度両目で景色をちゃんと見たかったのだ。

和葉は自分の左目に手を添えた。

 

 

 

ヘスティアが出かけてから三日目、今日も二人はダンジョンへ行こうとしていた。

今日こそは五階層に行こうとしたが、呼び止められた。

 

「おーい、待つにゃそこの兎姉弟ー!」

 

二人が声のした方向を向くと、『豊饒の女主人』で働いているキャットピープルの少女がこちらに手をブンブンと振っていた。

二人はそちらに向かった。

 

「おはようこざいます、にゃ

いきなり呼び止めて悪かったにゃ」

 

「「おはようこざいます」僕達になにか用ですか?」

 

和葉は早速用を聞いた。

 

「おみゃー達はシルのマブダチにゃ。だからコレをあのおっちょこちょいに渡して欲しいにゃ」

 

といきなり『がま口財布』を渡してきた。

渡してきたところで行き先が分からなければ渡せないのだが...

 

「アーニャ、それでは説明不足です。お二人が困っています」

 

すると中からエルフの店員、リューが現れた。

 

「リューは(にゃに)を言ってるにゃ?店番サボって祭りに行ったシルに忘れていった財布を届けて欲しいにゃんて言わにゃくとも分かるはずにゃ。ニャア?」

 

「と言うわけです。すいません

先に言っておきますがシルはサボったわけではありませんよ」

 

「は、はぁ、まぁそのぐらいならやりますけど」

 

 

 

というわけでただいま二人は怪物祭(モンスターフィリア)をやっている大通りにやってきた。

 

「すごい人だね」

 

「まあ、祭りと呼ばれるぐらいですからね」

 

二人はシルを探しながら歩いていた。

すると

 

「おーい、ベルくーん!和葉くーん!」

 

「(え/はい)?」

 

聞き覚えのある声、というか自分達の主神の声がした。

そちらを向くと予想通りヘスティアがいた。

 

「神様!?どうしてここに!?」

 

「どうしてって、二人に会いたかったからに決まってるじゃないか」

 

「僕達もヘスティアに会いたかったのですがそう言う意味ではなく何でここにいるかを聞いているのですが...

あとどこに行ってたんですか?」

 

「まぁまぁ、細かいことはいいじゃないか

それより3人でまわろうぜ?」

 

ヘスティアにはぐらかされてしまった。

和葉はここにいる理由を言った。

 

「いえ僕達は遊びに来たわけではなく、人を探しに来たんですよ」

 

とここで和葉はあることを思いついた。

 

「ベルはヘスティアと向こうにシルを探しに行ってください。僕はあちらを探しに行きますので

別れて探した方が見つけやすいでしょうから

あ、あと待ち合わせ場所は闘技場で」

 

と言った。

ベルは何の疑問も持たず了承した。

ヘスティアへ顔を向けると目が合い

 

(ありがとう和葉君)

 

(二人で楽しんでくださいね)

 

アイコンタクトをした。

 

 

二人と別れた後、すぐにシルを見つけ財布を渡した。(凄い勢いで謝ってきたが「大丈夫ですよ」といった。)

和葉はシルと別れ闘技場で二人を待っていた。

するといきなり和葉を悪寒が襲った。

途端

 

「モンスターだぁぁあ!!モンスターが逃げたぁぁあ!!」

 

モンスターが逃げたと悲鳴が聞こえた。

もちろん和葉は悲鳴が聞こえた方へ向かった。

今日はもともとダンジョンに行く予定だったので刀を持っている。

和葉は走りながらモンスターを斬り捨てていった。

和葉は妙だと思った。モンスターはまるで何かを探しているかのように徘徊をしていたからだ。

 

(何者かが裏で手をひいている?一体誰が...)

 

和葉はそこで思考を止めた。何故なら視界の端に巨大なモンスターを見たからだ。そこら辺の建物より大きい。

そしてそいつと戦っている人物達を発見した。一人はアイズ・ヴァレンシュタイン、もう3人いるが誰かは分からないがおそらく【ロキ・ファミリア】だろう。

和葉はそちらに向かった。和葉はLv.1なので(武器を持っていないとはいえ)四人が苦戦している相手にはなにも出来ないはずなのだが、今の和葉はそんなこと考えていなかった。和葉は強者に飢えていた(・・・・・)、和葉が向かったのはそれだけの理由。

和葉はそこについた瞬間、モンスターのツタらしきものを切り裂いた。

 

「「「「え?」」」」

 

それに四人は驚いた。いきなり人が現れたと思ったらすでに切り裂いたのだから。

アイズはその人物が分かった瞬間疑問が浮かんだ。なぜここにいるのかと。

一方の和葉は口元に笑みを浮かべた。

 

─やっと強いモンスター(獲物)と戦える─

 

そんなことを思ってい、そして

 

「アハッ」

 

嗤った。

モンスターがなぎ払ってきたが和葉はジャンプで避け屋根の上に着地、すぐさま詠唱を開始した。

 

「【風よ、敵を貫く槍となれ】

【ウィンドランス】!!」

 

和葉が創った風の槍はモンスターを貫いた。

 

「今のうちに攻撃をお願いします!!」

 

そこで四人はハッとなりそれぞれの行動を起こした。

レフィーヤは強力な詠唱を開始、アイズ、ティオナ、ティオネはレフィーヤに攻撃がいかないよう注意をそらしていた。

和葉の魔法で怯んでいるモンスターに四人は怒濤の攻撃をした。

そしてレフィーヤの魔法が直撃し、モンスターは死んだ。

和葉は気配を消してその場から去った。いろいろ聞かれると面倒くさいからだ。

 

 

 

 

教会に戻るとヘスティアがベッドに寝ておりベルが面倒を見ていた。

何があったかを聞けばベルもモンスターに襲われていたらしいが、ヘスティアからもらった武器のおかげで無事に討伐出来たが、ヘスティアが過労で倒れてしまったらしい。

 

その後はその武器のことで一悶着あったが割愛させてもらう。

ただ、ベルはこれで一歩アイズに追いつけたかなと思った。




これ、チートタグつけたほうがいいのかな?
あと最後の方、ソード・オラトリア持ってないからグダグダになってしまった...
和葉「安心しなさい、もともとグダグダですから」
...否定出来ない


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第二章
フレイヤ


皆さんお久しぶりです、ナナシ猫です
SAOの方でも書きましたがこれからは一ヶ月に1回投稿出来ればいい方だと思います
ではどうぞ


二人は今、七階層にいた。

それには理由があり、二人のステータスが怪物祭(モンスターフィリア)の時に七階層まで通用するレベルまで上がったのだ。

戦闘症(バトルジャンキー)二人組の様子は描写しなくともおわかり頂けると思う。

 

「待って!?僕戦闘症(バトルジャンキー)じゃないよ!?」

 

「え?君、自覚してなかったんですか?

というかいきなりどうしたんですか?」

 

そういえば忘れるところだったのだが、和葉にスキルが発動した。名前は【形態変化(カンビオフォルマ)】、効果は自分の武器の性質、形態を変えるスキルだそうだ。

例とするならば

 

形態変化(カンビオフォルマ)

 

和葉がそう言うと【神楽】の見た目が変わっていった。鉄の刃から氷で造られたような刃に変わった。

 

「【氷刃】」

 

それを横にふるうとあたり一面に氷を張った。

まぁこのように【神楽】の性質、形態を変え、状況に応じた戦い方が出来るのだ。

先ほど描写したように【氷刃】は斬った際に氷を生み出す、この氷は和葉の魔法で操ることが出来る。

無論他にも形態はあり、それぞれに特殊な能力がある(例、雷を生み出す、衝撃波を飛ばす、毒を与えるetc....)

能力がなくとも切れ味がヤバイやつもある。

 

形態変化(カンビオフォルマ)】は和葉が転生する前の知識から武器の形を変える。無論和葉自信はそんなことは知らない。なぜか武器の名前を知っているだけ。

今回は試しに使ってみたがこれからはあまり使わないだろうと和葉は思った。なぜなら()()()ことが出来なくなるのだから...

 

 

 

二人はある程度魔石を集めたので換金するためにギルドに戻ってきた。

二人はついこの間、五階層に言ったことでエイナに怒られたばっかりなのだ。今回は黙って七階層に行ったので

 

「な~な~か~い~そ~う?」

 

「ひっ」

 

とまぁ怒られるわけである。

和葉は普通に見えるがよく見ると震えている。普段は恐怖を感じない和葉もエイナに怒られると恐怖を感じるのだ。現に今、ベルと一緒に顔面蒼白(そこまでではないが)になって冷や汗がたれまくっている。

 

「ま~た君達は!!どうして私の忠告を無視するの!!今の段階じゃ危ないって前にも言ったよね!?また危ない目にあったらどうするの!!」

 

「エ、エイナさん落ち着いてください!僕達あの頃より強くなったんですよ!」

 

「そんなこと言って!せいぜいHが限界のくせに、な~にが強くなったよ!」

 

「ホントに強くなったんですよ!敏捷のステータスだけですがCに到達しました!」

 

そこでピタリとエイナは動きを止めた。

 

「......C?」

 

動きを止めたエイナだがすぐに眉間にしわを寄せ

 

「そんな嘘で私が騙せるとおもってるの?」

 

「嘘ではないですよ。さすがに僕らの成長速度は異常だと思ってますが」

 

「...本当に?」

 

ベルはブンブンと首を縦にふった。

エイナはしばらく考える素振りをして

 

「ベル君、和葉ちゃん、二人のステータスを見せて貰ってもいい?」

 

「はぁ、それぐらいならいいですよ?

姉さんは?」

 

「僕もいいですよ。エイナさんなら秘密にしてくれると信じてますからね」

 

 

 

ベル・クラネル Lv.1

力:E 427│耐久:G 216│器用:E 439│敏捷:C 615│魔力:I 0

 

魔法:【】

 

スキル:【】

 

 

和葉・クラネル Lv.1

力:E 472│耐久:G 254│器用:E 483│敏捷:C 607│魔力:G204

 

魔法:【自然操作(ネイチャーオペレーション)

・造形魔法

 

スキル:【形態変化(カンビオフォルマ)

・武器の性質、形態を変化させる

 

 

 

(うそ...)

 

二人のステータスを見せてもらったエイナは絶句した。

二人はまだ冒険者になってから一ヶ月ほどしか経ってないのだから絶句するのも当然だろう。(和葉にいたっては、魔法もスキルも発動してる。)

 

「...和葉ちゃん、ベル君」

 

「「何ですか?」」

 

しばらく黙っていたエイナは二人を呼んだ。

 

「明日、予定ある?」

 

 

 

翌日、和葉とベルはエイナとの待ち合わせ場所に来ていた。エイナが「七階層より下に行くなら防具ぐらいはちゃんとしないと駄目」と言ったので防具を買いに行くのだ。

一応護身用として武器は持ってきているが今日は買い物だけなので私服だ。

 

「おはよう、二人とも」

 

「あ、おはようござ...」

 

「おはようございます」

 

二人が雑談しているとエイナがやってきた。和葉は普通に挨拶したがベルは途中で固まった。何故ならエイナの服装が(当たり前だが)ギルドの制服ではなく私服で眼鏡をかけていなく綺麗だったからだ。

 

「ベル、固まってないでなにかいうことがあるでしょう」

 

和葉は固まっていたベルを肘で小突いた。

ベルはハッとなりエイナを改めて見た。エイナは期待するような目で見ていた。

 

「えっと...いつもより若々しいです!!」

 

「私はまだ19だ!!ほら謝れ謝れ!!」

 

「いだただだだだだだ!!ごめんなさい!!ごめんなさぁぁぁぁぉぁい!!」

 

エイナはベルに、どこかで習ってたのか?というほどに見事なヘッドロックをかけた。

和葉はその光景にため息をついた。

 

 

 

バベルの塔最上階、『美の女神』フレイヤはそこから和葉達三人を、正確には和葉とベルの二人を見ていた。フレイヤはこの二人に興味を持っている。

フレイヤが二人を見つけたのは全くの偶然だった。あるときふと大通りに目を通すと魂の色が透明な下界の者(子供)がいた。それがベルだ。

魂が透明な下界の者(子供)は珍しい、だからこの先どんな色に染まるのか興味が湧いた。

ベルの近くにいた和葉もその時見つけた。そして魂の色を見れるフレイヤだから気づいたのだろう。

 

─和葉がこの世界の住人ではないことを─

 

和葉の魂の色は虹色、常にどんな色にも染まれる、否染まり続けている(・・・・・・・・)

魂が常にどんな色にも染まり続けているのはありえない。だからフレイヤは和葉がこの世界の住人ではない、つまり転生者ということに気づいた。(魂の色を見れる神なら全員気づけるが。)

それからフレイヤはすぐに考えた。和葉を始末すべきかを...

和葉はこの世界にいるはずではなかった人間、つまり異物のような存在だ。

だがフレイヤはその考えを放棄した。この世界に害があれば始末すればいい。それまでは透明な魂を持つ下界の者(子供)と虹色の魂は持つ下界の者(子供)としての二人がこれからどうなるかを見てみたい。

特にフレイヤはベルの魂が何色に染まるかを知りたい。そのために試練を与えた。怪物際(モンスターフィリア)の騒ぎはフレイヤが起こした物だ。あくまでベルに試練を与えるために沢山のモンスターを解き放った。

 

─これからも試練を与え続けよう、ベルの魂が何色かに染まるまで─

 

フレイヤがここまで下界の者(子供)に興味を持ったのは初めてだ。ベルが死ねば今の地位を捨ててでもベルの魂を追いかけ捕まえるだろうことをフレイヤ自身確信していた。

 

「フフフ、初めてね。こんな気持ちになったのは」

 

フレイヤは笑みを浮かべた。

 

「それにしても何かしら?あの子が他の女と話していると殺意が湧くわね」

 

・・・どうやらまたしてもベルは年上の女(神)を落とした模様。

 

 

 

 

「誰かと出かけるのって久しぶりだなぁ」

 

「そうなんですか?てっきりエイナさんなら普通に男引っかけて出かけているのかと...」

 

「私はどんなキャラよ!!違うよ!最近までは仕事一筋だったってことだよ!」

 

「へぇ、最近までは(・・・・・)ですか~」ニヤニヤ

 

「うぅ...」

 

空は快晴、三人は楽しく(?)会話をしながらメインストリートを歩いていた。

エイナに声をかけてくる冒険者もいたが、エイナは愛想よく手をふっただけだ。

 

「エイナさん、これからどこに行くんですか?このままだとダンジョンに着いちゃいますけど...」

 

「着いてからのお楽しみ、と言いたいところだけど教えてあげる」

 

ベルの言ったとおり三人はダンジョンがあるバベルの塔に向かっていた。

ベルはエイナの返答をまった。

 

「今日行くところはダンジョンよ」

 

「ええっ!?」

 

「おそらく、正確にはダンジョンの上にある摩天楼(バベル)でしょうか」

 

「和葉ちゃん正解」

 

エイナはニコッと和葉に笑いかけた。

 

「えっと、バベルには冒険者用のシャワールームとか公共用の施設しかないんじゃないんですか?」

 

「それだけじゃありませんよ、ベル」

 

「ベル君は本当になにも知らないんだねぇ。まぁ冒険者になってまだ一ヶ月だから仕方ないのかな?むしろ和葉ちゃんが知りすぎてるぐらいだし、今から掻い摘まんで教えるね」

 

エイナの話によると、バベルにはベルが言ったとおり公共施設の役割として換金所、食堂、治療施設がある。これらの他にもバベルの一部の空いたスペースをいろんな商業者にテナントとして貸しているという。

 

「てことは僕達はこれからその商業者の方のところに行くってことですか?」

 

「理解が早くてよろしい」

 

さらにテナントには【ヘファイストス・ファミリア】の武具もあるらしく、これからそこに行くらしい。

 

 

 

というわけで三人はバベルの塔の【ヘファイストス・ファミリア】のテナントに来た。

【ヘファイストス・ファミリア】は鍛冶屋が多いファミリアであり、このファミリアのロゴがついた武具は破格の値段がつく。

だがファミリアのロゴがつくのはそれに値する武具でなければならない。それにいくら性能がよくても客が来なければ売れない。だから【ヘファイストス・ファミリア】は新米鍛冶屋のテナントを出している。

和葉達三人は一回分かれてそれぞれの武具を探しにいった

和葉は軽くてできるだけ丈夫な防具を探した。和葉自身スピード重視の戦い方をしているため重い防具は論外、適当な物を選ぶとエイナに怒られるため、できるだけ硬い物を探した。

ふと店の端にあるボックスに目が止まった。決して派手な見た目でもなく目立たないところにあったのだが和葉はボックスの前まで行った。さらにボックスに詰め込まれている防具で和葉が気に入った防具があった。黒のプレートアーマー一式、手に取って軽さを確認、見た目ほど重くはなく軽さに反してかなり丈夫だ。防具を作った人物を確認、名前は【ヴェルフ・クロッゾ】。

 

(もしこの防具が壊れたらまた買いに来ましょう)

 

値段も余裕で買えるので和葉はこの防具を買った。

時間になったので三人は集まった。

 

「はい、ベル君、和葉ちゃん、これあげる」

 

そう言ってエイナが渡してきたのは緑玉石(エメラルド)色のプロテクターと黒色のプロテクターだ。

 

「「え?」」

 

「私からのプレゼント、ちゃんと使ってあげてね?」

 

「いやいやいや、それは悪いですよ!」

 

「私はもらって欲しいな、他でもないキミたちのために」

 

そう言ったエイナの顔は悲しみを持っていた。

 

「私はこの職業に就いてから沢山の冒険者を見てきた。そして沢山の冒険者がいなくなった。だから私はキミたちにいなくなって欲しくないんだ

あはは、やっぱりこれじゃあ私のためかな?」

 

エイナはおどけたように笑った。




テナントの意味これであってます?
間違っていたら教えて下さい
ちなみにベルは無自覚バトルジャンキーです

※10/21
後付けしました


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サポーターとの出会い

こちらも何とか10月以内に投稿できた...


時間は流れ黄昏時、あの後エイナを家まで届けた二人は急いで帰路についていた。二人は西のメインストリートから路地裏に入ると他の足音が聞こえた。数は大小それぞれ一つずつ、足音が和葉達に近づいてくる。

ここはもう教会の近くなので面倒ごとが起きるとまずい、そんなことを考えていると目の前の角から影が出てきた。

 

「あうっ!」

 

「「(え/ん)?」」

 

角から出て来たのは小さい少女。ぱっと見は人間(ヒューマン)の子供だが体のパーツが物凄く小さい。ここで二人はある種族を思い浮かべた。小人族(パルゥム)亜人族(デミヒューマン)だ。、

 

「あのぉ、大丈夫ですか?」

 

「ぅ......」

 

小さい方の足音はこの小人族(パルゥム)で間違いないだろう。もう一つの方はというともうすぐそこまで来ていた。

 

「追いついたぞ、この糞小人族(パルゥム)が...!!」

 

角から出て来たのは人間(ヒューマン)の青年だ。

 

「もう逃がさねぇぞ...!!」

 

青年は悪魔のごとき表情をしていた。その表情は小人族(パルゥム)の少女に向けられていた。

 

─この人は小人族(パルゥム)の子になにをするつもりなのだろう─

 

そう思ったらベルの体は勝手に小人族(パルゥム)の前までに動いていた。それを見た和葉は軽くため息をついた。

 

「あぁ?邪魔だ糞ガキ、そこをどきやがれ」

 

青年は今の今までベル達が見えていなかったのだろう。今ベル達がいたことに気づいたようだ。

ベルははっきりとした口調で言った。

 

「この子に何をするつもりですか」

 

「うるせぇぞ糞ガキっ!!どかねぇと後ろのそいつごと叩っ切るぞっ!!」

 

ああ、これはどけないとベルと和葉は思った。

 

「どきませんっ」

 

「あぁ!?てめぇもそいつの仲間かぁ!?」

 

「困ってる人がいたら普通助けますよね?」

 

和葉もベルの横に並んだ。そこでやっと男は和葉のことも認識したようだ。

 

「糞ガキどもぉ...!もういい!!叩っ切ってやる!!」

 

そう言って男は腰の武器に手をかけた。ベルは自分の武器に手をかけ、和葉は格闘術の構えをとった瞬間

 

「やめなさい」

 

女の人の声が聞こえた。和葉もベルも聞き覚えがあった。声のした方を見るとそこには『豊穣の女主人』で働いているエルフのリュー・リオンがいた。手に食材を持っていることから買い物の帰りだったのだろう。

 

「そこにいる人は同僚のかけがえのない伴侶になる人です。危害を加えないでいただきたい」

 

「うるせぇ!!邪魔をするならてめぇも─」

 

「吼えるな」

 

リューのその一言だけでその場は静まりかえり、和葉を除き誰も動けなくなった。それほどの殺気をリューは出したのだ。

 

「争いはしたくない、私はいつも()()()()()()()()

 

事実なのだろう。そう思わせるだけの威圧があった。

男はリューに圧倒されていたが男としてのプライドが許せなかったのだろう、震えながらも剣を取ろうとした。それを見たリューは最後の警告を告げるかのように空いている手に剣を装備した。男はそれを見て顔を青くしながら撤退した。

 

「助けていただきありがとうございます、リュー・リオンさん」

 

唯一リューの出した殺気に硬直しなかった和葉はお礼を言った。

 

「礼には及びません。それと私のことはリューで構いません」

 

「それではリューと呼ばせていただきます。僕のことも和葉と呼んでください」

 

それをリューは了承した。とベルに向き直り

 

「ところでクラネルさん達はどうしてここに?」

 

「あっ、あの子はっ?」

 

ベルがあたりを見回すが先ほどの小人族(パルゥム)はいなくなっていた。

 

小人族(パルゥム)の人なら男性が逃げたときにいなくましたよ」

 

「姉さん、あの子がいなくなってたの気づいてたの?」

 

和葉は頷いた。

 

「魔法の影響か空気の流れが分かるようになったんですよ」

 

和葉はもともと気配察知は得意なのだがそれに加え空気の流れが意識しなくとも分かるようになった。つまり和葉に不意打ちは効かない。(それが和葉の反射速度で防げるなら、と付くが。)

和葉は空気の流れが分かると言ったがそれだけではない、水、土、風などの自然に存在する全ての物の流れが分かるが、水の場合は体の一部が浸かっていなければ分からない。

 

「誰かいたのですか?」

 

「そうなんですけど...」

 

「それより貴方達が無事でよかった。最近は物を盗まれている人もいるようなので」

 

リューは「ではこれで」とお辞儀をして帰って行った。ベルと和葉もお辞儀をして教会に戻った。

戻りながら和葉は先程リューの言った言葉を考えていた。

 

(盗っ人、ですか)

 

あの小人族(パルゥム)じゃないよな、と思いながらも結局は巻き込まれなければ問題ないと結論づけた。

 

 

 

 

次の日、ベルと和葉は昨日買った防具と貰ったプロテクターを装備した。

 

「「行ってきます、(神様/ヘスティア)」」

 

「行ってらっしゃ~い、ベルく~ん、和葉く~ん」

 

いまだにベッドに沈んでいる自分達の主神に苦笑しながら二人は出入り口に向かった。出る前に鏡でもう一度装備を確認、一昨日までの間に合わせの支給品から一転、ようやく(と言ってもまだ一ヶ月なのだが)()()()なってきたとベルは少しだけ得意気になった。ベルは腰に《短刀》と《神の(ヘスティア)ナイフ》、和葉も左腰に《神楽》を装備し教会を出た。

今日の天気は良好、良いことがあるかなぁとベルは思い口元をゆるめた。

 

二人はバベルまでやって来た。今日も頑張ろうと口に出そうとしたのだが

 

「お兄さんお兄さん、白い髪のお兄さん」

 

「へっ?」

 

ベルを呼んでいると思われる声がした。だが周りを見渡すのだが見あたらない。

 

「ベル、下ですよ」

 

「下?」

 

下を見ると、そこには身長およそ100C(セルチ)、その体よりかなり大きいバックパックを背負っていた。ベルは昨日の記憶を掘り出した。

 

「き、君はっ...」

 

()()()()()。突然ですがお二人はサポーターなんかを探していませんか?」

 

少女はベルの声を遮り、その小さな指をベルと和葉の背に指した。二人の背中には小さなバックパック、二人が『サポーターの人がいてくれたらなぁ』と思っていたのを彼女は反ば確信して二人に声をかけた。

 

「え、ええっ?」

 

「混乱していますか?でも状況は簡単ですよ?冒険者様のおこぼれに与りたい貧乏なサポーターが自分を売り込みに来ているんです」

 

目を丸くするベル、無反応な和葉、そんな二人とは逆に少女はニコッと笑った。

 

「え、いやそうじゃなく...君は、昨日の...」

 

「?お兄さん、リリとお会いしたことありますか?リリは覚えていませんが...」

 

少女は首を傾げ、あれぇ?とベルも首を傾げそうになった。と少女はいきなりハッとして、一歩後ろに下がった。

 

「失敬、リリは自己紹介もしていませんでした

リリの名前はリリルカ・アーデと言います。それでお兄さん方、どうですか?雇ってくれますか?」

 

えっと...と若干混乱しているベルに変わり和葉が答えた。

 

「リリルカ・アーデさんですね?僕の名前は和葉・クラネルと言います。それでこちらが弟のベル・クラネルです

ちょうどサポーターの人がいてくれたらと思っていた所なのでもちろん雇いますよ」

 

いいですよね、といまだに混乱しているベルに向き直り、問われたベルは慌てて「うんっ」と頷いた。それを聞いた少女─リリルカ・アーデ─は喜んだ。

 

「本当ですかっ?ありがとうございます!!

ベル様に和葉様ですね?これからよろしくお願いします!」

 

とリリルカは頭を下げた。和葉は突然こんなことを言った。

 

「ということで契約書、書きに行きましょうか」

 

「「へっ?」」

 

その言葉にベルとリリルカは間抜けな声を出した。リリルカは慌てて

 

「い、いや、和葉様っ?契約書なんて作らなくてもリリは働きますよっ?」

 

「なに言ってるんですか。貴方が働いたとしても僕達が報酬を払わなければ意味ないでしょう?善は急げと言いますし、早速ギルドに向かいましょう」

 

「えっ?ちょ、ちょっとお待ちを~!?」

 

和葉はリリルカの手を取ってギルドに歩いていった。(引きずっていった?)珍しく今回はベルが苦笑し、軽くため息をついた。

 

 

 

「ということなのですが、よろしいですか?」

 

「和葉ちゃん、相談してくれるのは嬉しいけど、決定早すぎるよ...

別にいいけど...」

 

ギルドに入った和葉は早速エイナを呼んで貰い、事情を説明し、エイナは早速ため息をついた。

 

「それで?サポーターはこの子?」

 

エイナは気を取り直しリリルカの方を向いた。リリルカは姿勢を直し

 

「は、はいっ、リリルカ・アーデと言いますっ」

 

「そっ、リリルカちゃんね、それでどっか所属している【ファミリア】はある?」

 

「はいっ、リリは【ソーマ・ファミリア】に所属していますっ」

 

緊張しているのだろうか?リリルカの声が若干上づっている。

【ファミリア】の名前を聞いたエイナは顔をしかめ、それに気づいたベルは尋ねた。

 

「どうしたんですか?」

 

「【ソーマ・ファミリア】はちょっと良くない噂とか流れてるんだ...」

 

それを聞いてベルは少し身構えた。

 

「あぁ、その【ファミリア】確かに良くない噂流れてますね。まぁリリルカ・アーデさんとは関係ないのではないですか?」

 

その反対に和葉は少し陽気に言った。エイナはため息をつき

 

「あのね和葉ちゃん、そんなことを言って何かあってからじゃ遅いよ?」

 

和葉は「ふむ」と考えてから

 

「確かに何かあってからじゃ遅いですね。まぁ大丈夫でしょう」

 

「そんなお気楽な...」

 

和葉ちゃんってこんなキャラだっけ?とエイナは少し困惑した。和葉はそんなことはお構いなしに「もし」と続けた。

 

「もしリリルカ・アーデさんが当事者だった場合は

 

 

 

 

 

どうしてくれましょうか?」

 

フフと和葉は嗤い、エイナとリリルカはゾッとした。




おかしな所があったらご指摘ください


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契約条件

あるぇ~?こんなに早く投稿するつもりなかったのにな~?
なんか五千字超えてるんだけど...ここまで長くするつもりもなかった...

あ、今回最初の方だけベルの一人称視点が入ります
初めての一人称視点なのでおかしいところもあるかと思いますがよろしくお願いします
ではどうぞ


ベルside

 

姉さんの笑みを見て二人が顔を青くしていたけど今はそれぞれの意見を言い合いながら契約書を書いている。確かに初めてあの笑みを見ると背筋がゾッとするよね。僕もそうだったし。え?今?もう慣れたよ

姉さんがあの嗤い方(笑い方、ではない)をするときは大体ヤバイことを考えてるときだ。まだ村に居たとき、僕は虐められていたことがあってそれを家族にばれないようにしてたんだけど、ばれないわけがなく、そのことを知った姉さんがあの嗤い方をしてたんだよねぇ。ちなみにその後、僕を虐めていた人をボコボコにしていた。どういう風にとかは聞かないで欲しい。見てただけの僕もあれはトラウマだから(遠い目)。もちろんボコボコにされた人もトラウマを負った

あ、契約書書き終わったみたいだ

まぁ僕がこんなに長々と姉さんの嗤い方について話したのは訳があるんだよ。察しがいい人は気づいたんじゃないかなぁ?結局僕が言いたいことは一つだけなんだ

 

 

 

アーデさん、お願いだからなにもしないでねっ!!?もう僕はトラウマ見たくないし、誰かがトラウマは負うのも見たくないんだよっ!!!

 

----------------------

三人称side

 

契約書を書き終わり三人がダンジョンに向かっている最中、リリルカが和葉に話しかけた。

 

「あのぉ...和葉様?」

 

「ん?なんですか?リリルカ・アーデさん」

 

「フルネームではなくリリと呼んでください、ってそう言いたいのではなく、本当にこれでいいのですか?」

 

「不満がありますか?」

 

「いえ、むしろありがたいのですが...

本当にリリなんかがこんなに貰っても良いのかと思いまして...」

 

そう言ってリリルカは契約書に書いてあった内容を思い出した。内容は『報酬は人数分の一にする』という簡潔なものだ。今回は三人なので三等分だ。リリルカ的には三割貰えればよかったし、初日は貰うつもりもなかった。それがいつものリリルカのやり方(・・・)だ。だが和葉とベル的にはパーティー内で報酬を分け合うのは当然なのだ。

 

「ベル様はこれで良いのですか?」

 

「なんで?報酬を分け合うのは当然でしょ?」

 

ベルは笑いながら言い、二人はダンジョンに向かって再び歩き出した。

 

「変な人達...」

 

リリルカはそんなことを呟いた。

その呟きを、和葉は聞き逃さなかった。

 

 

 

 

道中、ベルが本当に会ったことないかとリリルカに聞いたり、リリルカの種族が獣人の犬人(シアンスロープ)だったり、【ファミリア】内だとパーティーに入れて貰えず稼ぎが悪いなどと、リリルカのことを少し知ることが出来た。

 

「和葉様、本日はどこの階層に行く予定ですか?一応エイナ様には十階層までなら行ってもいいと言われましたが」

 

「そうですね、今日はとりあえず七階層に行きましょうか。リリルカ・アーデさんの実力も知りたいですし」

 

「フルネームではなくリリと呼んでください」

 

リリルカは和葉に呼び方に対して抗議をあげるが仕方のないことであろう。なぜなら

 

「ごめんねリリ、姉さんは信頼した人じゃないとフルネームで呼ぶんだよ」

 

まぁそういうことである。逆に言えば信頼されたかどうかは和葉がフルネームで呼ばなくなった時だ。

ちなみにベルはリリルカに呼び方を訂正された。

 

「はぁ、そう言うことなら早く信頼されるようにならないといけませんね」

 

「まぁそういうことです」

 

 

 

 

ダンジョン七階層、ほんの二日前に勝手にここまで来てエイナに怒られたのは苦い思い出だ。

この二人が異常過ぎて忘れがちなのだが、ここ七階層からは『キラーアント』を初めとするいやらしい(・・・・・)モンスターが多数出現する。さらにダンジョン自体の構造も複雑となる。四階層などで慣れたつもりの冒険者はここで屍とかす。しかし

 

「ふっ!」

 

『ギシャァアっ!?』

 

先程も言ったがこの二人は異常なのだ。なにが異常かってまず成長速度がかなり速い。普通一ヶ月ぐらいでは七階層まで来れない。もう一つは二人が戦闘を楽しむ戦闘症(バトルジャンキー)と言う点だ。(ベルは無自覚であるが。)

現に

 

「しっ!」

 

『っ!!?』

 

二人は口に笑みを浮かべながら押し寄せるモンスターを殲滅していた。

本来キラーアントの甲殻はかなり硬く、倒すためには首の柔らかい所を斬り裂くのが普通なのだがこの二人は「甲殻?なにそれ美味しいの?」とでも言うような感じで甲殻の上から容赦なく斬り裂いていた。

だからといって二人が技術を身に付けていないわけではない。ベルはかなりの切れ味をもつ《ヘスティアナイフ》と普通の切れ味しかない《短刀》の二刀で戦っている。《ヘスティアナイフ》はともかく《短刀》では甲殻の上からは斬り裂けない。だから《短刀》で斬る場合は首の付け根を狙っている。

とこんな感じで今日はいつもより暴走(常人からすれば)しながらモンスターの群れを殲滅していく。

 

「お二人ともお強い~!」

 

リリルカは二人が葬ったモンスターを二人の邪魔にならないように手慣れた動きで一カ所に集めていた。リリルカはかなり優秀なサポーターだ。笑いながらも周囲の警戒を怠らず的確に動き回る。なぜここまで優秀なのに稼ぎが悪いのだろうか、いや理由は分かっている。サポーターは役立たずと言う冒険者がなん癖をつけて報酬を払わないのだろう。正直に言えばバカなのかと言いたくなる。サポーターだって立派な冒険者だ。戦闘が苦手だから、戦闘では役に立てないから、そういう人がいるからサポーターがいる。サポーターがいるから冒険者は足元を気にせず戦えるし、荷物の心配もしなくてもいい。(こちらに関しては不本意だが。)

今回いつもより暴走しているのはそう言うことだ。サポーターに報酬を払わない奴らに対しての怒りをモンスターに向けているのだ。ただの八つ当たりである。

 

『グジュッ...シャアアアアアアアっ!!』

 

「わああっ!べ、ベル様ーっ、和葉様ーっ、また生まれましたぁー!?」

 

生まれたモンスターの数はおよそ十体のキラーアントとパープル・モス。前者は瀕死になると仲間を呼び、後者は毒の鱗粉を巻き散らかしてくるとかなり厄介なモンスターだが、二人からすればただの獲物でしかない。

地上にいるキラーアントはベルが二刀で縦横無尽に動き回りながら斬り裂く。空中にいるパープル・モスは和葉が壁けりを行いながら跳んで居合で斬り裂く。

ものの数十秒で生まれたモンスターもいなくなり、ルーム内に静寂が訪れ、三人はモンスターから魔石の回収作業を行う、と言ってもここからはサポーターであるリリルカの独壇場であり二人は周囲を警戒することぐらいしかやることがない。

 

「ほぉ~、上手いもんですねぇ」

 

「リリにはこれぐらいしか取り柄がありませんから、この数のモンスターを倒したベル様と和葉様のほうがよっぽど凄いですよ」

 

リリルカは話しながらも手を動かし魔石を回収している。ベルは先程から気になっていることを言った。

 

「...あのさリリ、流石にベル様って言うのはやめてくれないかなぁ?」

 

「そう言うわけにも行きません。契約をしたのですから上下関係はハッキリしないといけません」

 

「どうして...」

 

リリルカは一旦作業を止めてベルの方に顔を上げた。

 

「いいですか、ベル様?サポーターなんて簡単に言ってしまえばただの荷物係です。命がけでモンスターと戦っている冒険者様からすればリリ達は安全な場所から傍観するだけの臆病者です。何もしてないくせに甘い蜜を吸おうとする寄生虫なのです

リリ達が冒険者様と同格であろうとすることは傲慢です。そんなことをしてしまえば冒険者様は怒って報酬を恵んでくれなくなるでしょう」

 

「っ!?そんなことっ!?」

 

「ベル様達がお優しいことは会ったばかりのリリにも分かっていますが、ケジメをつけなければいけません。もしリリがベル様達を敬わず生意気なサポーターだという風評が広がったらリリは他の冒険者様に連れて行って貰えなくなるでしょう。よくてただ働きです」

 

「......」

 

ベルは下を向き拳を握り締めた。

そんなことはないと言いたかった。自分達のことなら言えただろう。だが他の冒険者のことを言われると口を挟めない。自分達にとっての間違いは他の冒険者からすれば当たり前なのだろう。

と今まで黙っていた和葉が喋りだした。

 

「...なら、これからも僕達と組めば問題ないですよね?」

 

「へっ?」

 

「だってそうでしょう?他のパーティーと組めなくなる可能性があるならずっと僕達と組めば良いんですよ。そうすれば貴方は阻害されることはないです。少なくとも僕達はするつもりもありません」

 

「...ありがとうございます。考えておきます

ところで話は変わりますが、本当にお二人は駆け出しの冒険者様なのですか?こんな数のモンスターをお二人だけで倒すなんて...」

 

リリルカはいきなり話題を変えた。まるでそういう話はしたくないとでも言うように。

 

「そう?別に普通じゃない?」

 

「いえ、全然普通じゃないですよ...」

 

そう言ってリリルカは二人が倒したモンスターを数え始めた。キラーアントがおよそ三十、ニードルラビットがおよそ二五、パープル・モスがおよそ二十の合計およそ七十五匹、およそがつくのは実際の数が分からなかったのだ。なにせ二人が暴走してしまい魔石ごと砕いてしまったモンスターも多いのだ。もしかしたらこれより多いかもしれないし、少ないかもしれない。(ちなみに実際の数は三桁を超えているとだけ記しておこう。)

 

「絶対に普通じゃないですっ!!おかしいですよっ!!倒すだけならともかくなんでお二人だけで七十五もの数のモンスターをたった数分足らずで倒せるのですかっ!?」

 

リリルカはもう限界とでも言うように叫びだした。まぁ叫びたくなる気持ちも分かる。普通、駆け出し冒険者は、たとえ二人いたとしてもこの数のモンスターを数分では倒せない。つまり二人は、何度も言うようだが異常なのだ。

 

「そうは言っても僕達より強いLv.1の冒険者は一杯いるでしょ?」

 

「確かにそうですが...」

 

「じゃあ僕達はまだまだだよ」

 

「まぁそうですね」

 

苦笑するベルと和葉にリリルカは困ったような顔をした。そもそもの論点がずれているからだ。

リリルカが問題にしているのは二人だけでこなせることではない。本当に一ヶ月経っていないのかということだ。

 

「まぁ、ベル様達の強さは【ステイタス】以外にも武器(・・)によるところもあるでしょうが...」

 

リリルカの声の調子が変わった。リリルカの視線の先には《ヘスティアナイフ》があった。それに気づかないベルは照れくさそうに笑った。

 

「この武器は、僕達の神様が友達に無理に頼んで作って貰ったものなんだ...、無茶するよね」

 

「...お優しいのですね」

 

「うん、大切な人だよ」

 

リリルカの声に隠れた動揺と、僅かな嫉妬にベルは気づかなかった。

 

 

 

 

「本日はありがとうございました」

 

ギルドで換金した三人は外にでて、ぺこりとリリルカは頭を下げた。

 

「いえいえ、こちらも楽になりましたしお互い様です」

 

それに対して和葉はお互い様と言った。

 

「それで報酬のお話なのですが...」

 

「あ、そうだよね、はいっ」

 

「え?」

 

ベルはリリルカの前に約束通り稼ぎの三分の一を渡した。

 

「い、いえ、リリは本日の報酬はいらないと言うつもりだったのですが...」

 

「だって全然稼げてないんでしょ?それに分け合うのは当然だよ」

 

ニコッとベルは笑った。それにあるのは純粋な優しさのみ。リリルカは呆然と立ち尽くしてしまう。

 

「......」

 

「リリルカ・アーデさん」

 

とそこに和葉が歩いてきた。和葉は顔をリリルカの耳の直そばまで寄せ、周囲に、特にベルに聞こえないように言った。

 

「もう一つ契約条件を追加します。それは

 

 

 

 

『自主的に盗みをしない』です」

 

「っ!?」

 

リリルカの体が強張った。何故?なんでばれた?、そんなことばかり考えた。

 

「貴方がベルの《ヘスティアナイフ》を見たとき、獲物を見るときの様な目をしてました。これでも僕は人間観察には自身があるんですよ。安心してください。これに関してはベルにもエイナさんにも、僕達の主神にも言うつもりはありません。あくまで先程の条件は口頭のみです

ベルはあの通り人を疑うことが苦手です。だから代わりに僕が人を疑います

僕は貴方を信頼はしていませんが信用はしています。だから出来れば貴方に危害を加えたくないんです

もし貴方が()()()に盗みを行った場合はそれ相応の罰を与えます」

 

その言葉を最後に和葉はリリルカから離れ「また明日」と言い、ベルも「また明日」と言って二人はまたギルドの中に戻っていった。

リリルカは先程とは違う事でその場に立ち尽くしてしまった。




どうでしたか?おかしいところがありましたらご指摘ください

うちの和葉は観察眼凄いんですよ~
和葉「これ、リリルカ・アーデさんはベルのナイフ取ってないんですか?」
取ってないよ~、てか取れるわけないじゃん、和葉が近くにいるのにさ
和葉「それもそうですが...」


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事情

こっちも無事投稿出来ました!


「それで?どんな感じだった?」

 

リリルカと別れエイナに今日の報告をした直後、早速リリルカのことを聞かれた。

 

「僕的には良い子だと思いましたよ?」

 

「あ~、ベル君はお人好し過ぎてちょっとあてにならないかなぁ」

 

「ちょっ!?」

 

若干泣き崩れているベルをスルーし、「和葉ちゃんは?」と聞いた。

 

「そうですねぇ、確かにサポーターとしては非情に優秀でしたが、信頼は出来ないけど信用は出来る、というとこでしょうか」

 

和葉は今日一日リリルカと行動して自分の思ったことを言った。

 

「そうなんだぁ、和葉ちゃんが言うなら大丈夫だね」

 

と笑顔で言ったら急に真剣な顔になり

 

「でも本当に気をつけてね。たとえリリルカちゃんが良い子でも基本的に【ソーマ・ファミリア】は良い噂はあまり聞かないから」

 

「もちろん、分かっていますよ」

 

 

しばらくして、二人は帰ることにした。

 

「それではエイナさん、また明日」

 

「うん、気をつけてね~」

 

二人はドアをくぐろうとしたが

 

「あれ?」

 

エイナの声で引き止められた。

 

「?どうしました?」

 

「ベル君、ナイフどうしたの?」

 

「へっ?」

 

ベルは腰にあるはずのナイフを手をかけた、否、かけようとした、何故ならナイフが無かったからだ。

 

「お、落としたぁぁぁぁぁあ!!?」

 

 

 

現在、和葉とベルの二人は路地裏を走っていた。

 

「迂闊でした...空気の流れをよめると言っても小さな物は意識しなければ察知出来ないようです...」

 

「え!?じ、じゃあ、落ちているナイフって察知出来ないの!?」

 

「動いていないので、恐らく難しいでしょうね」

 

と走っていると前方にリューとシルがいた。

 

「あ、シルさん!リューさん!」

 

ベルが呼ぶと二人は振り向いた。

 

「あ、ベルさん、和葉さん、どうしたんですか?」

 

「落とし物をしてしまいまして...これくらいの黒いナイフを見ませんでしたか?」

 

和葉が手でナイフの大きさを表すと二人は

 

「あれ?それって...」

 

「こちらのことですか?」

 

リューがそう言って差し出した手には《神の(ヘスティア)ナイフ》があった。

 

「ああああああああああ!?」

 

「昨日お会いしたときに珍しい武器だったので覚えていまして」

 

そこまで言った所でベルがガシッとリューの手をつかんだ。

 

「ありがとうごさいますっ!!本っ当にありがとうごさいますっ!!」

 

「クラネルさん、その、困る、このようなことは私にではなくシルにむけてもらわないと...」

 

「リューはなに言ってるの!?」

 

ベルに手を掴まれ、至近距離で子供のような泣き顔を見せられて珍しくリューは困惑していた。

その様子を見ていた和葉は苦笑していた。

 

「ところで、ベルのナイフはどこにありましたか?」

 

和葉の質問に答えたのはシルだった。

 

「あそこの路地裏に落ちていましたよ?」

 

やはり落としていたようだ。最悪リリルカを疑わなければならなかったところだ。まぁ和葉がきょうはk...おどs...説得していたから大丈夫だと思うが...。

ベルがいまだに「ありがとうごさいますっ」を繰り返しているので、首根っこをつかんで帰ることにした。

 

「それではリュー、シル、ありがとうごさいました」

 

「本っ当にありがとうごさいましたっ!!」

 

シルもリューも二人に(苦笑しながら)手を振った。

 

 

 

教会にて二人は今日のことをヘスティアに話していた。

 

「ふむ、よそのサポーターかぁ...」

 

「やっぱり不味いですか?」

 

「う~ん、ボクが直接見たわけではないし、そもそも下界に降りてきて日が浅いから【ファミリア】同士でのいざこざに関してはなにも言えないなぁ

でも和葉君がいるから大丈夫なんじゃないかい?」

 

「結局、僕頼みですか...」

 

ベルも悪意に敏感ならいいんですけどねぇ、と呟いた、ヘスティアは苦笑しながらも、まぁね、と同意しベルはまたしても若干泣き崩れた。

 

 

 

翌日、二人はリリルカを待っているのだが

 

「リリ、来ないね」

 

三十分ほど待ち合わせ場所に待っているのだがリリルカが見えないのだ。

 

(...昨日は言いすぎたでしょうか?)

 

などと和葉が思っていると

 

「あ!リリ~!」

 

とベルがリリルカを発見したのか名前を呼びながら手を振っていた。和葉もそちらを見ると確かにリリルカがこちらに走ってきていた、全速力で。

 

「はぁ...はぁ...す、すいませんお二人とも...遅れてしまいまして...」

 

「ううん、大丈夫だよ?それより、なんで全速力で走ってきたの?」

 

「い、いえ、ただでさえ遅れていたのにお二人を待たせるのは悪いと思いまして...」

 

そこでチラッとリリルカは和葉を見たのを和葉は気づかないふりをした。別に和葉は遅れたぐらいではなにもするつもりもないのだが...

 

「さて、そろったので行きますか」

 

 

道中

 

「...?ベル様、ナイフが見えないようですがいったいどこに?」

 

「え?あぁ、昨日ナイフを落としちゃったんだ。それでこのプロテクターに武器が仕舞えるみたいだから落とさないように仕舞ってるんだ」

 

「今あるということは見つけられたのですよね?」

 

「知り合いの人が僕の武器を覚えててくれたんだ。だから拾ってくれたみたい」

 

「気をつけてくださいね?知り合いの方が拾ってくれたのでよかったですが、最悪、盗られてた可能性もあるんですよ?」

 

「心配してくれてありがとう」

 

和葉は会話を聞きながら静かにホッと息をはいた。恐らく今のリリルカの言葉は本当に心配をしてくれているのだろう。これなら自主的に盗みをすることはなさそうだ。

 

一方のリリルカは改心したわけではない、と自分で思っている。盗みをするのと、盗みを行わず報酬を貰う、どちらの方が利益が高くリスクが低いのか天秤にかけ、報酬を貰った方が利益が高くリスクが低いと判断しただけだ。

 

自主的に盗みをすることはないとは言っても、改心したわけではないと和葉は確信している。そんなすぐに人は変われない。理由がどうあれ、盗みを行わなければいい。和葉はそう思った。

 

 

 

さて、ダンジョンに向かい、和葉とベルはいつもどおり大暴れした。ただ、いつもと違うのはいつもより長くダンジョンに潜っていたことだろうか。いつもは持ち物がいっぱいになり、下の階層に行くにつれて往復時間が長くなるので短時間しか潜れなかったのだ。だが今回はサポーターのリリルカがいるので、非常に不本意ながら、持ち物の心配をしなくてもいい。

今回、長く潜っていた=多くのモンスターを倒したことになる。倒したモンスターの数はおよそ三百、この数の魔石+ドロップしたアイテムを課金した結果。

 

「「......」」

 

大きな袋いっぱいに金貨金貨金貨金貨。大小さまざまな金貨が狭苦しいと言わんばかりにひしめきあっていた。その金額は...

 

「「四五〇〇〇ヴァリス...」」

 

「わぉ、すごい稼ぎましたねぇ」

 

「「やあぁーーーーーーーっ!!!」」

 

ベルとリリルカの二人は奇声を上げ飛び上がった。

 

「すごいっ!すごいですっ!!ドロップアイテムは数えられるほど(およそ二十)しかなかったのにっ!!」

 

「わっ、わっ、わっ!夢じゃないよね!?現実だよね!?サポーター万歳!!」

 

「いつもは二〇〇〇〇ヴァリスぐらいしか稼げてませんもんね。今回はいつもの倍以上の稼ぎになりました。これもリリルカ・アーデさんのおかげです」

 

「馬鹿言っちゃいけないですよ、ベル様っ!和葉様っ!モンスターの種類やドロップアイテムにもよりますけど、Lv.1の五人組パーティーが一日で稼げるのが二五〇〇〇ヴァリスちょうどぐらいなのですっ!つまりベル様と和葉様のお二人だけで彼等を優に凌ぐ稼ぎをしたことになりますっ!」

 

「ほら、兎もおだてりゃ木に登るって言うじゃない!それだよそれ!」

 

「ベル様が何を言いたいのかリリには全くわけがわかりませんが、とりあえず便乗しときます!」

 

「正確には、豚もおだてりゃ木に登る、ですけどね」

 

ベルとリリルカは稼ぎについてはしゃぎ、和葉はベルの言った言葉を訂正した。

そして今日の稼ぎの三分の一、一五〇〇〇ヴァリスをリリルカに渡した。

 

「はい、リリ」

 

「...今回も分け前をくださるのですね...」

 

「当然です」

 

和葉の言葉にベルはウンウンと頷いていた。

 

「...」

 

「なんでリリが遠慮しているのか僕には分からないけど、僕達はパーティーなんだから遠慮しなくてもいいんだよ?」

 

ベルには何故リリルカが俯いているのかは分からない。だけどベルはリリルカに笑ってみせる。

 

「これからもよろしくね!」




盗られていないは言ったが、落としてないとは言ってない(`・ω・´)ドヤァ
和葉「ドヤ顔しないでください。イラッときますので」
(´・ω・`)ショボーン
和葉「ていうか魔法の設定無理ありません?」
仕方ないよ。ナイフを落とさない方向も考えたけど、そうするとリューの手をとるシーンがなくなってしまうからね
リューの手をとらないと一八階層の会話が成り立たなくなっちゃうと思ったんだよ
和葉「そうでしょうか?」
多分ね

おかしい所がありましたらご指摘よろしくお願いします。


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秘密

なぜにダンまちはここまで早く投稿出来るのだろうか...
和葉「向こうで現在書いているのが難しいのでは?」
かもね。こっちの方がネタが浮かぶんだよね

まぁそんな話はおいといて
和葉「ではどうぞ」


今日も今日とてダンジョンに稼ぎに、もとい強いモンスター(獲物)を探しに行く。が今回はベルが不在であった。

先日、二人はヘスティアをホームで待っていたのだが帰ってきたのは深夜近く、しかも【ミアハ・ファミリア】の主神、ミアハに担がれて帰ってきたのだ。どうやらミアハと飲みに行ったらしくそこで酒を飲み過ぎたようだ。ミアハ曰く「少し()()()()()()()()。少しでもいい、構ってやってくれ」だ、そうだ。

それだけでヘスティアが飲み過ぎた理由をある程度悟った和葉は、ヘスティアをベルに任せ一人で待ち合わせ場所に来た、と言うわけだ。

 

「和葉様、ヘスティア様は大丈夫なのですか?」

 

「ベルに任せてあるから大丈夫でしょう。ヘスティアもベルと一日一緒なら明日には元気になっているでしょうし...下手したら午後から元気になっている可能性もありますね」

 

後半から呆れ混じりの声で言った。

 

「...まさかと思いますが、ヘスティア様はベル様のことを...?」

 

「おや、鋭い。恐らくリリルカ・アーデさんの思っているとおりだと思いますよ」

 

「そんなことあるのですか?」

 

「そう言われましてもねぇ、実際にヘスティアはベルのことが好きなのですから

あの子はああいう見た目と性格ですから、年上の女性にモテやすいんですよ」

 

和葉のいうことは事実である。実際にヘスティア以外では四人ほどいる。内一人(フレイヤのこと)は和葉も認識していないが。

 

 

 

 

ダンジョン内にて

リリルカは今日初めて和葉のソロを見ることが出来た。だがリリルカは和葉の戦い方に違和感があった。

 

(一体なにが...?)

 

リリルカは和葉をよく観察した。今も和葉にはモンスターの群れが襲いかかっていた(やられにきていた)。そして一匹のモンスターが和葉に襲いかかった。がすぐに斬り伏せた。

 

(あ、もしかして...)

 

リリルカはさらに観察を続け、そして確信した。

 

 

 

ダンジョンからの帰り道にて、リリルカは先ほどの戦闘から思っていたことを言った。

 

「和葉様」

 

「何ですか?リリルカ・アーデさん」

 

「和葉様は、()()()()()()()()()()()?」

 

確信を持った問いに和葉はピクッと反応した。

 

「...根拠は?」

 

「和葉様は右から来るモンスターには普通に反応していましたが、左から来るモンスターには少し反応が遅れていました。といっても右に比べれば、ですけど」

 

和葉は驚愕した。リリルカとダンジョンに行ったのは今回で三回目だ。たったそれだけの回数で自分の秘密を知られるとは思っていなかったし、左目は髪に隠れていて傷は見えていないので、ばれるとは思わなかったのだ。

 

「まさか、こんなすぐにばれるとは思いませんでした。本当なら貴方を信頼してから教えようと思っていたのですが」

 

「それは失礼しました。ですがリリはサポーターです。冒険者様のカバーもリリ達の仕事ですから」

 

(少しドヤ顔になっていますが、自分で気づいているのでしょうか?)

 

まぁそんなことより、これならもう盗みを働くことはなさそうだ。実際、最近は盗みの噂を聞かない(と言っても三日間ほどだが)それでも警戒しておくにこしたことはない。秘密がばれてしまったが理由までは教える必要はない。教えるのは、信頼してからでいい

 

─さて、僕がリリルカ・アーデさんを信頼するまであとどれくらいでしょうか?─

 

 

 

 

 

ダンジョンから出て来て換金したときには、すでに日が暮れかけていた。今回の稼ぎは二〇〇〇〇ヴァリスほど、今日は少しモンスターのいる数がいつもより少なかったのだ。ちなみに今回は人数が二人なので二等分だ。がリリルカは少し申し訳なさそうにしていた。

 

「和葉様、本当に山分けでよろしいのですか?ベル様やヘスティア様がいるのに...」

 

「昨日は稼がせてもらいましたのでこれぐらいなら平気ですよ。貴方がいなかったときも結構稼いでいたので

それに契約書には貴方への報酬は『人数分の一にする』と書いてあったでしょう?」

 

「それは、そうですが...」

 

いまだに申し訳なさそうにしているリリルカに和葉は言った。

 

「それ以前にベルがいないだけで大幅に稼ぎを減らしてしまった僕に落ち度がありますよ」

 

「それは違います。そもそも本日はモンスターの出が悪かったのです。和葉様のせいではありません」

 

「そう言われましてもねぇ」

 

などなど今日の稼ぎについて言い争っていると、前方にベルを発見した。

 

「ベルじゃないですか」

 

「本当ですね。誰か待っているのでしょうか」

 

ベルのことを少し遠くから見ているとそこにヘスティアが現れた。がヘスティアはいつものツインテールではなく、髪をストレートに流していた。

 

「ほう、これから(ヘスティアの一方的な)デートに行くのですかね」

 

「あの方がヘスティア様ですか?」

 

「ええ、そうですよ。ふふ、微笑ましいですねぇ

 

...ん?」

 

和葉は言葉通り微笑ましい表情で見ていたが、途中で怪訝な表情になりベル達とは反対の方向を向いた

 

「どうかしたのですか?」

 

「いえ、向こうからたくさんの気配がしますので」

 

その気配の正体はすぐに分かった。ベルとヘスティアの二人はいくらか話をして(ベルがどもっていたのは和葉達がいるところからもハッキリ分かったので褒めたのであろう)ベルがヘスティアの手をとろうとした寸前─

 

「あ!いた!」

 

「ヘスティアがおったぞー!!」

 

「てことはあの隣にいるのがっ!?」

 

「全員、ただちに捕まえろぉ!!」

 

「「「「「おぉーー!!」」」」」

 

─七、八人の女神が来た。唖然として棒立ちになるベルの隣でヘスティアは目を大きく開いた。そして女神達はヘスティアを押しのけてベルのことを捕まえた。

 

「うわぁっ!?」

 

「ゲットー!!」

 

「ちっちゃくて可愛い~」

 

「ヘスティアはこういう男が好みなのか...」

 

「ねぇねぇ次触らして!!」

 

その状況を見ていた和葉達はポカーンとしていた。

 

「これは...」

 

「なんというか...」

 

「「カオスですね...」」

 

そんなことを言っている間も状況は進む。

 

「ごめんなさいね、ヘスティア。私たちどうしても貴方の子が気になっちゃって...

あら、本当に兎みたい」

 

「んーーーーっ、んんーーーーーーーーっっ!!?」

 

「べ、ベルくーーーーーーんっ!?」

 

ヘスティアの悲鳴が炸裂した。女神の中でもかなり大きい(どこが、とは言わない)デメテルに抱かれ、ベルは窒息しかけていた。それに対して、明らかにうわぁ...という表情をする和葉達、が意味合いが違う。リリルカは落ち込み和葉は...どちらかと言えばそれを見て楽しんでいる意味合いの方が強い。

ぼろぼろになったベルが女神達の中から出てきて、何を言ったのかは分からないがヘスティアがベルの脛を蹴った。そしてヘスティアはベルの腕を掴んで逃げた。

 

「あ、逃げた!」

 

「追いかけろぉ!!」

 

女神達はベル達を追いかける、が

 

「えっ!?なに!?」

 

「体が、動かない!?」

 

女神達はその場でピタッと制止した。女神達を止めたのは手を伸ばしている和葉であった。伸ばす必要はないのだが、こうした方が和葉的にイメージがしやすい。

 

「和葉様?」

 

「まぁ、あの子達には今日ぐらいゆっくりしてほしいので」

 

和葉は女神達の周りの空気を操り、空気をその場で固めたのだ。ちなみにリリルカは和葉の魔法を見るのは初めてである。

 

「さて今のうちに僕達も...」

 

移動しましょう、と言おうとしたのだが

 

「ねぇ、これやってるのあの子じゃない!?」

 

「...不味いですね」

 

手を伸ばしているのを見られたのか、今度は和葉が標的にされた。しかも間の悪いことにちょうど拘束を解いたとこなのだ。和葉の顔が引きつる。

 

「あの子達を捕まえろぉ!」

 

「達って、リリもですかっ!?」

 

「逃げましょう」

 

和葉はリリルカの腕を掴みその場を去った。無論女神達は追いかけてきたのだが、速度が物凄く速い。それはもう、冒険者である和葉の速度についていけるほどに。

 

「女神様達速くないですか!?リリの記憶だと神様達は下界で神の力(アルカナム)を使えない筈なのですが!?」

 

「あれ、神の力(アルカナム)使ってませんね。物凄く興味をそそられて一時的に身体能力が飛躍的に上昇しているのでしょう。そこら辺は下界の者(僕達)も神様も変わりませんね」

 

「冷静に言ってる場合ですかっ!?」

 

「仕方ありません、加速します。先に言っておきますが喋ってると舌噛みますよ」

 

「へっ?」

 

宣言通り和葉は風を使って加速した。チラリと後ろを見てみると女神達が遠くにいた。さすがにこの速度にはついて来れないようだ。そしてそのままメインストリートの外れまで疾走した。(疾走している間、リリルカはずっと声にならない悲鳴を上げていた。)

 

 

メインストリートから外れ、古びた鐘楼まで来た。おそらく一昔前まではここから鐘をならして時間を知らせていたのだろう。今は手入れがされてなく、さびがひどくて動きそうにもないが。

 

「あの時点で僕達のことを見失っていたのでもう大丈夫でしょう」

 

「め、目が回りました~」

 

目を回しているリリルカを見て和葉は苦笑し、さすがに加速しすぎたか、と少し反省した。和葉は風を使って三、四倍ほどまで速度を上げたのだ。目を回して当然である。

ふと和葉が鐘楼の陰を見てみるとそこにはベルとヘスティアが楽しげに話していた。こちらには気づいていないようだ。それを見てまた微笑ましくなった和葉は邪魔をしないようにその場を去ることにした。

 

「リリルカ・アーデさん、あの二人の邪魔をするのは悪いので今日は解散しましょう。近くまで送りますよ」

 

「え?

あぁ、なるほど、そういうことですか。

分かりました、お願いします」

 

そしてその場を去った。

 

 

 

 

解散した後、和葉は教会に食材がないことを思い出し、買い出しをした。和葉は教会で料理をしながら二人を待っていると

 

「「ただいま~」」

 

「お帰りなさい、二人とも」

 

その後は三人で夕食を食べながら本日の報告をしあい、順番に風呂に入り、就寝した。




普通動いていれば髪も動いて左目見えるだろ、というツッコミはしないでください。ご都合主義です
和葉「眼帯をつけるという選択はないのですか?」
眼帯をつけるのは個人的になんか違う気がするんだよね
普段は見えないところに傷があるのって、なんか良くない?
和葉「知りませんよ」

あ、あと、和葉が魔法で女神達の動きを止めたのも目をつむってください。危害を加えてないのでセーフですよね?
和葉「...微妙なとこじゃないですか?」


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憧れていたこと

タイトル適当デス
和葉「...」
無言で刀出さないで


「...?」

 

「ん?」

 

一階層と二階層をつなぐ階段を上っている途中、ベルと和葉は立ち止まり下を向いた。

 

「お二人とも、どうしました?」

 

「今、ダンジョンが揺れなかった?」

 

「僕も感じました」

 

そう言って姉弟は二階層に、いやその更に下にある下層に視線を向けた。

 

「揺れ、ですか?リリは何も感じませんでしたが」

 

「気のせいかな?」

 

三人はしばらく下層に意識を向けていたが何も感じないので気のせいということにした、和葉以外は

 

「...」

 

和葉はしばらく下を向いていたが、数秒もせずに前を向きベル達の後を追った。

 

「今日はちょっと長引いちゃったね」

 

「はい。ちょっとどころか、かなり、ですけど。もう夜中の十二時を回りますよ」

 

「えっ、嘘!?」

 

ええ、とリリルカは金色の懐中時計をベルに見せながら応えた。時計の短針と長針が見事に十二に重なろうとしていたのを見てベルはあちゃーという顔をした。

 

「どおりで眠いと思いました。いつもなら寝てる時間ですよ」

 

「最後の方はモンスターに群がられてしまいましたからね」

 

と言っても和葉様とベル様が瞬殺していましたが、と付け加え、それにベルは苦笑し和葉は肩をすくめた。

三人が契約をしてから数日が経とうとしていた。三日目ともなるとリリルカは和葉とベルの暴れっぷりに慣れてきた、というか慣れざるをえなかった。いちいち驚いていたらきりがないからだ。だからリリルカは何があっても、この姉弟は何をしでかしても不思議ではない、と(無理矢理)納得するようにしていた。...サポーターとして、それはいかがなものか。

そして和葉達はリリルカが入ったことによって、モンスターを狩る効率と稼ぎが跳ね上がり、己らの目標へ突き進むための全力疾走態勢が整備された。サポーター一人でこんなに違うものか、とベルはもちろん和葉も驚くばかりである。一方で、駆け出し冒険者ではあり得ないモンスター撃破記録(スコア)を連日叩き出す二人にリリルカは舌を巻いていたが。

 

「それじゃあ、リリ。今日も報酬は稼ぎの山分けでいい?」

 

「...それ聞く意味ありますか?」

 

「ないですね。そもそも契約書に人数分の一と書いてありますから」

 

リリルカの言った言葉を和葉はバッサリと切った。

 

「...そうだとしても、ベル様と和葉様はもう少し物欲と言うものを知った方がいいと思います。有難く頂戴しているリリが言えることではありませんが...」

 

「でもリリはお金が必要なんでしょ?」

 

心底不思議、とでも思っているようにベルは首をかしげた。

 

「そうなんですけど...リリはベル様が危なっかしくて見てられないというか、知人に預けられた(ペット)にハラハラさせられてつい世話を焼き過ぎてしまうというか...。う~、なんだか最近お二人に毒されているような気がしますぅ~」

 

「僕達だから何をしでかしても不思議ではない、と思っている時点でかなり毒されていますよね。もう遅いです」

 

「...たまに和葉様は人の傷をえぐるようなことを言いますよね。それと人の心を勝手に読まないでください」

 

「おや、侵害ですね、リリルカさん。ような、ではなく、えぐっているんですよ。後、読心術は基本ですよね?」

 

「そっちの方が酷いですよっ!?ていうか、サラリと読心術は誰でも出来るみたいな言い方してませんかっ!?普通は誰でも出来るようなものではありませんよっ!?」

 

「なに言ってるんですか?当たり前じゃないですか。そんな誰でも習得出来たら苦労しませんよ」

 

「...和葉様の言っていることが滅茶苦茶でリリはもう疲れてきました...」

 

「滅茶苦茶なのは当たり前ですよ。リリルカさんを弄っているのですから」

 

「...」

 

和葉とリリルカの話を聞いていてベルは、仲良くなってきたなぁ、と思っていた。最初は主人と従者のような関係を一方的に張られていたが、最近はこのように他人行儀の体が崩れつつある。というか、一方的にリリルカが和葉に弄られている。和葉は気に入った人物を弄るのが好きなのだ。(ベルもちょくちょく弄られている)まぁこれは信頼しつつある、ということだが。その証拠に和葉のリリルカの呼び方が《リリルカ・アーデさん》から《リリルカさん》に変わっている。愛称で呼んだときは心から信頼したことになるので、和葉が《リリ》と呼ぶまでそう遠くないだろう。

 

 

三人は襲ってきた(わざわざやられにきた)モンスターを倒しながら上に向かいダンジョンを出た。

 

「うわぁ...すっかり夜になっちゃってるよ」

 

リリルカの言ったとおり中央広場(セントラルパーク)は夜に包まれていた。

 

「バベルって何でこんなに高いんだろう?テナントを貸し出すにも五十階までいくのは大変だと思うんだけど」

 

「ベル様、ギルドがテナントを貸し出しているのは二十階までですよ?」

 

「え、そうなの?」

 

目を丸くするベルにリリルカと和葉は苦笑した。自分だけ知らなかったのは少し気恥ずかしいがベルは素直に尋ねた。

 

「お店がないんだったら、二十階から上はなにがあるの?」

 

「神様達が住まわれているんですよ、ベル様」

 

「神様達が?」

 

「えぇ、僕の知っている限りではオラリアの中でも有数な【ファミリア】の主神ぐらいのようですが、二十階から最上階まで彼等がいるようです」

 

バベルはギルドが管理しているので住むには法外な入居費等を払うことになるがその分、オラリアでも最高級の住み心地を手に入れることが出来る。

 

「へぇ~、ホームに住まないで別の所に住む神様もいるんだ」

 

下界の子(リリ)達と交流することが好きな神様もいれば、孤高が好きな神様もいるということです」

 

なるほど、とベルは頷いた。

 

「ですが、昔はバベルはこれほど巨大ではなかったそうですよ、ベル。ダンジョンを抑える『蓋』としての役割をするためだけにここまで大きくする必要はありませんからね」

 

「じゃあなんでここまで大きいの?」

 

「最初に下りてきた神様達が壊してしまったようです。こう...流れ星みたいに」

 

リリルカの説明を聞いたベルは、わざと壊したんだろうなぁ、と思った。やっと完成した建物を玉砕した神がゲラゲラ笑いながら謝っているのが容易に想像できてしまったベルは乾いた笑いをした。

リリルカが言うにはお詫びということで塔の再建...というよりダンジョンの抑止に大きく貢献したらしい、他ならない『神の恩恵(ファルナ)』によって。

 

「何となくわかったけど...。神様達の話を聞くたび思うけど『天界』ってそんなに暇なのかな?」

 

「お仕事が嫌になって逃げ出してきたのかもしれませんよ?」

 

「仕事?」

 

リリルカの言った聞き慣れない言葉にベルは首をかしげた。

 

「神様達にはやらなければならない義務があると聞きます。主に地上で眠りについた下界の者(子供)達の処理だそうです」

 

「そんなこともするのか...」

 

処理、といってもその者を転生させるか否か、というかんじである。転生出来るかどうかは生前での善悪は関係ない。神によっては天界での生活を許したり、苦痛を与えたり、無意味な重労働をやらされたり、等々例を挙げればきりがない。簡単に言ってしまえば神に気に入られるか、気に入られないか、さらには神の気分によっても変わってしまう、ということだ。

 

「まぁ、最終的にはほとんどの者が転生させてもらえるようです。とにかく、そんなこともあり激減した神様達のために居残り組の神様達がかなり殺気立ちながら穴埋めをしているそうです」

 

ベルはそれを聞いて死にたくない、そんなところに逝きたくないと思った、少なくとも今は。今天界に逝ってしまったら家族が悲しむ...それもあるが、問答無用で(憂さ晴らしとして)地獄に逝かされそうな気がするのだ。それを勘づいたのかリリルカはクスクスと笑っていた。ベルも何だか可笑しくなって笑う。

だからか、リリルカの言った言葉は不意打ちだった。

 

「でも、リリは死ぬことに憧れていた時期もありました」

 

「...え?」

 

「一度神様達の所に還れれば、今度産まれるリリは昔よりマシになっているかなって...」

 

リリルカはそう言ってバベルの、その更に上にある空を見上げ、その大きな瞳は遠い目をしている。まるで黒く染まった夜空を思い焦がれるかのように。

ベルがなにかを言わなきゃと思ったその時、リリルカのすぐ横、耳のそばでキイィンと甲高い音がした。リリルカは勿論、ベルも驚き仰け反った。音の鳴った所を見てみると和葉の手があり指を鳴らした状態になっていた。音の発信源はどうやら和葉の指のようだ。

 

「目、醒めました?」

 

当の本人はニコニコと笑っているだけだが。

 

「いきなり何するんですか和葉様!?」

 

「いえ、ちょっと空気が重くなっていたので吹き飛ばしただけですよ」

 

「それにしたって他にやり方があるよね!?」

 

「あったとしてもやりませんね」

 

「「まさかの即答(ですか)!?」」

 

ズーンと肩を落とす二人に対して陽気にクスクスと笑う和葉。

明らかに盗みを行っていた時より苦労している。

 

(...だけど)

 

今、この二人といるのは悪くない、とリリルカは笑みをこぼしながら思った。




魔法習得するところまで行きたかったのに行けなかったorz


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ソーマ・ファミリア

先月は投稿できず申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁあ!!!(スライディング土下座 )
和葉「そして今月はもう一つの作品が投稿出来ない、と。そして相変わらず駄文ですね」
いや、うん、ホントスミマセン…
和葉「さて、言い訳はありますか?」
…受験で忙sザシュ「ダウトです」ギャァァァァァア!?
和葉「君、推薦取れたでしょう?他には?」
…チーン
和葉「返事がない、ただの屍のようだ。まぁ、茶番はさておき、どうぞ」


「いけません、ベル様!足元っ!」

 

「えっ?」

 

現在、ベル達は七階層にいた。《ヘスティアナイフ》を手に、キラーアントへと向かっていったベルはリリルカの警告に間抜けな声を出した。だが、ベルは数秒後に警告の意味を悟る。

 

『キィッ!』

 

「!?」

 

ニードルラビット。額に鋭い角を持つ兎のモンスターが死角からベルに迫った。武器の材料に重宝される程のその角で、ベルの左足を狙う。ちょうど踏み込みの足だったため回避は間に合わない。

 

「っ!」

 

そのためベルは左足を折り曲げ、プレートを装着している膝を突き出した。瞬間、寸分違わず一角兎の角は膝当てにガードされる。甲高い金属音が聞こえ、ベルはバランスを失いながらも、すれ違いざまにニードルラビットの首をはねた。

 

『グシャァァァアっ!!』

 

そのタイミングを待っていたかのように本来の目標だった二匹のキラーアントが、両足が地に着いていないベルに襲いかかる。空中にいるベルに避けるすべはない。

 

「ふっ!」

 

だがベルは、振り払われた四本の鉤爪を空中で回転し斬り落とす。着地し難を逃れたと思い油断していたベルに、残りのキラーアントが迫る。まずいと思ったときにはもう遅い。顔を上げたベルの目の前には、口を大きく開いたキラーアント。死が近づくにつれベルの思考は真っ白になっていった。ベルが喰われるかと思い、リリルカが腰からなにかを出そうとしたその時、キラーアントが縦に真っ二つになった。

 

「全く、なに油断しているんですか」

 

キラーアントを斬ったのはため息をついている和葉だった。いつの間にか周囲にいたキラーアントも絶命していた。そして和葉はそのままベルの説教を始める。リリルカはベルが無事で安心しホッと息をついたのだが、思った。

 

(ここで説教しなくてもいいのでは?)

 

確かに今はダンジョンの中、しかも安全空間(セーフルーム)ですらないのだ。いつモンスターが産まれるか分からないのに何故、今説教をするのか。答えは簡単、産まれた所で即座に和葉が倒すからだ。和葉の気配察知を駆使すれば、産まれた場所に魔法で攻撃をするぐらい容易だ。(余談だが、リリルカが和葉の説教を見たのは初だ。)

一通り説教が終わったのか(ベルは魂が抜けたような顔をしている)、唐突に和葉はリリルカに気になったことを聞いた。

 

「そういえばリリルカさん、先ほどベルが襲われそうになったとき腰からなにかを出そうとしてませんでした?」

 

「うっ...気づかれてましたか」

 

本当ならリリルカは()()を見せたくはないのだが、この二人なら大丈夫だろうと思い腰から出した。リリルカが手に取ったのは、小さな紅のナイフ。それを見て和葉は興味深そうに呟いた。

 

「ほぉ、『魔剣』ですか」

 

『魔剣』とは魔力が籠もっている武器のことではなく、魔法を放てる武器のことだ。『魔剣』には使用回数があり、それを超えると壊れてしまう、威力も“一部の物を除けば”、正式魔法(オリジナル)より弱い。だが、これを使えばどんな冒険者でも魔法を使え、武器を振るうだけなので詠唱も必要ない。そのためかなり価値が高い。

 

「それは何を放出するタイプですか?」

 

「リリの持ってる『魔剣』は炎を放出するタイプです」

 

「それで助けてくれようとしてくれたんだ...。ありがとう」

 

「か、勘違いしないでくださいねっ!?ベル様を助けようとしたのではなく、ベル様がいなくなったら稼ぎが悪くなるから助けようとしただけですからねっ!?」

 

「え、えっと...?」

 

ベルが対応に困っているとリリルカがハッとなり「リリは何を言っているのですか...?」と頭を抱えた。さすがにフォロー出来なくなり、ベルは話題を変えた。

 

「と、所で、リリって『魔剣』持ってたんだね」

 

「え、ええまぁ。たまたま、リリの所に転がり込んできて...」

 

「ですが『魔剣』は使いすぎると壊れてしまいますよ?」

 

「和葉様の言うとおり、使いすぎると壊れてしまうのでリリはここぞという時にしか使わないようにしています。ですが、ベル様達を助ける為なら出し惜しみはしません!」

 

さっきと言っていることが真逆なのだが、リリルカ自身は気づいているのだろうか?

 

 

リリルカがモンスターから魔石を取り終えた後、三人は休憩ついでに昼食を取るために空間(ルーム)の中央に陣取る。壁際だとモンスターが産まれた瞬間に殺られる可能性があるのでダンジョンで休憩を取るときは大抵この位置で取る。

 

(そういえば、シルさんから貰ったバスケット返してないや...)

 

和葉の作った昼食を食べながらベルは、昨日シルから貰ったランチのことを思い出す。『豊饒の女主人』に通い始めてから、なにかと理由を付けられてシルからランチを受け取って(押しつけられて?)いるのだ。昨日はダンジョンから出たのが夜遅くだったので朝返そう、と決めたのだが...

今朝は寝坊をしてしまい、『豊饒の女主人』を寄る暇がなかった。そろそろ返しに行かないと後が怖い。

それから和葉達は雑談に興じた。コロコロと表情を変えるリリルカを見ながら、ベルは意を決してずっと思っていたことを言った。

 

「...リリ、昨日は【ファミリア】に行ってたみたいだったけど大丈夫だった?」

 

その言葉を聞いた瞬間、リリルカの顔が固まった。

 

「…何故そんなことを聞くのですか?」

 

「えっと...前聞いたときリリと身内(ファミリア)の人の関係があんまりよくないと思って...」

 

以前ベル達は、【ファミリア】でリリルカが孤立していることを彼女の口から直接聞き、敏感になってしまっている。リリルカが一人で【ファミリア】に戻ると聞いて心配するほどに。

 

「…心配していただきありがとうございます。ですがベル様達の心配しているようなことはおきていません」

 

「本当ですか?」

 

「はい。昨日は一ヶ月に一度ある集会のようなものでしたので」

 

「集会?」

 

「…長くなるので詳しい説明は省きますが、ようは一人一人が定められた金額を集めて納品する日です。先に言っておきますが、別にノルマを達成出来なかったからといって何か罰を受けることはありません」

 

「では逆に、ノルマをクリアすれば何か褒美はあるのですか?」

 

「はい。そして【ソーマ・ファミリア】の団員達は…ご褒美を受け取るために、ダンジョンに潜っている方がほとんどです…」

 

和葉の質問を肯定したが途中から言葉を濁し、最後の方の声は冒険者になっていなければ聞こえないほどに小さくなっていた。

 

「そ、そういえばさ、確か【ソーマ・ファミリア】ってお酒も販売してるんだよね?」

 

すぐにこのままではまずいと思ったベルは咄嗟に話題を変え、それに和葉も便乗する。

 

「あぁ、確か【ソーマ・ファミリア】の販売しているお酒はとても美味しいと評判ですよね。僕も一度でいいから飲んでみたいです」

 

「そう言えばオラリア(ここ)に来てから、まだ一度もお酒飲んでないね。ん~、そろそろ僕も何でもいいから飲みたいかも」

 

「ベル様達はお酒がお好きなのですか?」

 

ベルと和葉が酒好きなのが意外なのか、リリルカは首を傾げながら聞いた。

 

「ええまぁ、村にいた頃はよく祖父から分けて貰っていましたね」

 

「まぁ僕達がお酒を飲むようになったのもおじいちゃんのせいというかおかげというか…」

 

どういうことかとリリルカが聞けば、まだベル達が小さい頃、八歳くらいの頃に無理矢理、祖父に酒を飲まされたとのこと。そのせいでベルが二日酔いに陥ったようだ。和葉は?とリリルカが聞けば、自分はどうやら酒に強いらしい、と和葉は返答する。

 

「姉さんは本当に強いからねぇ。今まで一回も酔ったところ見たことないもん」

 

「【ソーマ・ファミリア】で販売されているお酒がどの程度強いか分かりませんが、多分いけるでしょう」

 

「お楽しみにしているところ申し訳ございませんが、『あれ』は失敗作ですよ」

 

リリルカの発言に、ベルは軽く目を見開いた。

 

「え、でもとても美味しいって評判なんでしょ?」

 

「失敗作ですら、それほどの美味だということです」

 

ベルは想像した。失敗作ですら数々の人が美味と称しているなら、本物はどんな物なのか。

 

「それなら僕も一度飲んでみたいかな」

 

「…やめといた方がいいですよ」

 

ベルは冗談で言ったつもりなのだが、リリルカに真面目に返され少し困惑した。

 

「お酒を造っているのは団員達ですか?」

 

和葉は空気を変えるためにまた話題を変えた。リリルカはそれに気づいていないのか、それとも気づいていてなにも言わないのか、和葉に便乗した。

 

「いえ、ソーマ様自身が造っています。それが、ソーマ様の()()のご趣味なので」

 

リリルカ曰く、神ソーマは完全な趣味神であるために、毎日趣味である酒造りに没頭しているらしい。眷属(自分)達には見向きもせずに。

それを聞いた二人は眉をひそめた。

 

「それって…」

 

「…ソーマ様はリリ達にステイタス更新とノルマのご褒美を与えてくれる以外はなにもしてくれません。団員達をまとめることも【ファミリア】の方針を決めることも…。よって、現在【ファミリア】の支配権を握っているのは事実上団長です」

 

「〖酒守(ガンダルヴァ)〗、でしたっけ」

 

和葉の呟いた名は【ソーマ・ファミリア】団長、Lv.2第三級冒険者であるザニス・ルストラの二つ名である。

リリルカの話を聞いた和葉は【ソーマ・ファミリア】の悪い噂の原因はザニスにあると予想した。と同時にザニスが自分の嫌いなタイプの人間だと確信した。

 

(少し、探ってみますか)

 

ベルとリリルカの為に調べるつもりのようだ。

一方のベルはというと

 

(なんか、嫌な予感がするなぁ…。具体的には近いうちに誰かが余計なことをして姉さんがブチ切れそうな予感が…。

 

 

 

…本っ当になにも起きませんようにっ…!)

 

祈っていた。和葉のスイッチが入らないように(自分のトラウマが刺激されないように)

だが、その祈りが無駄になることを知るのはもう少し後になってからである。




テッテレー、ベルがフラグを立てました~
和葉「…本当に僕ブチ切れるんですか?」
本当だぜ。今回のサポーター編で二回ブチ切れる予定


和葉「話題変えすぎじゃありませんか?ていうか話題変わってるんですか?」
うん、ゴメン。でも仕方ない、何故なら俺だからだ
和葉「何開き直ってるんですか。切り刻みますよ」
…もう…やって…んじゃん…ガク


あ、ベルの酒好きはオリジナル(のはず)です。実際に好きなのかは分かっておりません
和葉「君、ダンまちの小説持っているでしょう」
まぁね


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ファイアボルト

セーフ!!
和葉「遅いですよ、今月は投稿しないと思ったじゃないですか」
うん、俺も思った。けど出来たぜ…


翌日

今日から三日間リリルカは外せない用があるらしい。ここ最近ほぼ毎日ダンジョンに行っていたので、ベルと和葉の二人はちょうどいいと思い、迷宮探索を休みにすることにした。

 

現在、和葉は一人でホームにいる。ヘスティアは朝からバイトだ。和葉達が予想以上に稼いでいるのでやらなくてはいいと思うのだが、「ベル君と和葉君に頼りすぎるのはボクのプライドが許さない!!」とのこと。そう思うなら料理ぐらいは出来るようにしてほしい、と和葉は思った。

ベルはシルにバケットを返しに行った。まぁ昨日の時点で和葉がベルに「明日返しに行きなさいよ?でないと後が怖いですからね。特にリューとミアさんですが」と言っていたのだ。「姉さんは?」とベルが聞けば「僕は少しやりたいことがあるので」と言い、ベルだけ返しに行った、というわけだ。

 

和葉のやりたいことというのは、自身の魔法がどの程度まで自由に出来るか確かめることだ。

現在は神の恩恵(ファルナ)によって一人一人に適した魔法があるので魔法爆発(イグニス・ファトゥス)─魔法を使う際に魔力を制御仕切れず暴走させてしまい爆発すること─が起こる心配はあまり無い。だが、神達が下界に下りてくる前の冒険者達、古代の冒険者達は(当たり前の事だが)神の恩恵(ファルナ)による『ステイタス』などはなかった。そのため魔法爆発(イグニス・ファトゥス)が起こることなど日常茶飯事だったらしい。そして魔道士達は魔力を制御し、魔法爆発(イグニス・ファトゥス)が起こらないように魔法の術式に改良を加えていった。今となってはその努力が水の泡になったわけだが。

和葉はこのことを聞いたとき思った。自身の魔法は『造形魔法』、自然を自由に操ることが可能だ。それなら、術式を改良し、攻撃以外にも使えるのでは無いのか?と。

 

(探索(サーチ)魔法などが出来ればいつでも探しに行けますしね)

 

 

しばらく試行錯誤しているとベルが帰ってきた。その手には厚い本を持っている。

 

「ベル、その本どうしたんですか?」

 

「他の人の物かもしれないけどシルさんが貸してくれたんだ」

 

「そうですか、まぁちょうどいいんじゃないですか?昔から君は『迷宮英雄譚(ダンジョン・オラトリア)』ばかりを読んでいましたし。英雄に憧れるのはいいですが、魔法を発現したいのでしたらそういう本を読んだ方がいいですよ」

 

「うん、そうするよ。姉さんは何をしてるの?」

 

「魔法の術式をかいz…改良してるんですよ。僕の魔法は『造形魔法』なので攻撃以外にも使えないかと思いまして」

 

「へぇ~、それなら僕、本読んじゃうね」

 

「そうしなさい」

 

…ベルよ、今和葉が改造と言おうとしたのを気づいていたか?いや違う、気付いていてスルーしたのだ。

 

 

ホームにはベルが本をめくる音だけが響く。和葉は無言で術式を改良中だ。術式を改良するならそれを解読出来なければ話にならないのだが…自身の魔法だからか、和葉は感覚で術式を改良している。

良い感じに仕上がってきたのでそろそろ休憩しようかと思ったその時、ふいにドカン!と何かが落ちる音が聞こえた。和葉は振り返り音の正体を見てみると、ベルの頭がテーブルの上に乗っかっている。すぐそばには開きっぱなしの本がある。どうやら読んでいる最中に眠ってしまい頭を打ち付けたようだ。

 

(仕方ありませんね)

 

和葉は軽くため息をつきながらベルを起こそうとする。そしてベルの後ろまで来たとき、気づいた。本の中身は()()()、つまり、何も()()()()()()()()()。先程までベルはこれを読んでいた。にも関わらず何も書かれていないのは明らかにおかしい。和葉は本を手にとりめくってみたが何も判らない。この本はなんなのか。

 

(『魔道書(グリモア)』でしょうか…?)

 

話でしか聞いたこと無いが可能性はある。しかし和葉は、これ以上判らないことを考えても無駄であり、ベルに異常がないのなら問題はないと判断、自分の作業に戻った(ベルを起こさなかったのはもう少し寝かせてあげようと思ったため)。

 

 

 

「ただいまー!ベル君、和葉君!」

 

空が夕焼けに染まる頃、探索(サーチ)魔法が完成した時、ヘスティアが帰ってきた。

 

「お帰りなさい、ヘスティア」

 

「ただいま和葉君。何をしてるんだい?」

 

探索(サーチ)魔法を作っていた所ですよ。もう完成しましたが」

 

それに対してヘスティアは「そうかい」と言っただけだった。普通なら驚く所だろうが、和葉なら何をやっても不思議ではないも思っているのでさほど驚かない。

と、ヘスティアはベルが寝ていることに気づいた。

 

「ベル君は寝てるのかい?」

 

「ええ、本を見ていたら眠ってしまいました。本を見る程度で眠くなる子ではないのですがね」

 

和葉は笑みを浮かべながらため息をつき、ヘスティアはあっはっはと笑った。そしてヘスティアはベルを起こす。

 

「ほらベル君、起きなって」

 

「んん…、神様…?」

 

「うんそうだよ、ただいまベル君」

 

眠そうに目をこすりながらベルはゆっくりと上半身を起こした。どうやらまだ寝ぼけているようだ。焦点がハッキリしていない。

 

「ふふ、本を見ていたら眠ってしまうなんて可愛いね。昨日は出来なかったから、ステータス更新をしようか。あ、その本ボクにも見せてくれよ?暇なときは本を読みたいからね」

 

ベルは寝ぼけながらも返事をしてステータス更新の為にヘスティアについて行った。

基本的にベルの後に和葉がステータス更新をすることになっている。和葉が先にステータス更新をしてしまうとベルと和葉のレアスキルについてヘスティアと和葉の話し合いで、結果的にベルのステータス更新が遅くなってしまうからだ。

和葉はいつ探索(サーチ)魔法を試そうか考えていた。自分には試せない。となるとベルに頼んで試すしかない。

 

(ですが、いつ頼みましょうかねぇ…)

 

と考えていると、隣の部屋から叫び声が聞こえた。

 

「えぇぇぇぇぇぇえ!!?」

 

考え事をしている時にいきなり大声で叫ばれたものだから和葉は一瞬ビクッとなった。心配することはないだろうが、ベルが叫んだ理由が気になるので隣の部屋に向かった。

 

「どうしたんですか、いきなり叫びだして」

 

「姉さん姉さん!!聞いて!僕、魔法を発現したよ!!」

 

隣の部屋に入ると、何やらベルが興奮している。それを和葉は落ち着かせる。

 

「ベル、魔法を使えるようになったことが嬉しいのは分かりますが、少し落ち着きなさい。ヘスティア、ベルのステータスを見せてください」

 

ベルを落ち着かせた(実際はまだ興奮しているが)和葉はヘスティアにベルのステータスを見せてもらった。

 

 

 

ベル・クラネル Lv.1

 

力:B 756⇒A 876│耐久:F 325⇒E 412│器用:B 713⇒B 799│敏捷:A 843⇒S 957│魔力:I 0⇒I 0

 

魔法:【ファイアボルト】

・速攻魔法

 

スキル:【】

 

 

「わぉ、本当に魔法を使えるようになったのですね」

 

和葉はベルのステータスにSが出てることを無視して魔法を発現したことに驚いた。というより【憧憬一途(リアリスフレーゼ)】の効果を知ってるので驚く必要はないのだ。

しかし、いくら何でも魔法関連の本を読んでいないベルがいきなり魔法を発現するなんておかしい。となれば、やはりあの本は『魔道書(グリモア)』の可能性が高い。和葉はベルに喜びを感じるのと同時に不安を感じた。ベルが強くなることは喜ばしいことだ。ベルが憧れの人(アイズ)に追いつくには強くならなければならない。和葉はベルの成長を自分のことのように思う。

そして不安、といってもたいしたことではない。『魔道書(グリモア)』のことだ。これは読むだけで()()()魔法を取得出来るかなり貴重なものだ。作るには《魔道》と《神秘》の二つのスキルが必要だ。これを買おうとするなら【ヘファイストス・ファミリア】のロゴが入った武具並、もしくはそれ以上の大金が必要となる。

 

(これ、言わない方がいいですかねぇ…)

 

唯でさえ『ヘスティア・ナイフ』のことで一悶着があったのだ。ちなみに『魔道書(グリモア)』は一度使えばただの本になる、らしい。

 

(黙っていてもヘスティアが読めば分かってしまいますし…

もうなるようになれ、ですね)

 

和葉は考えることをやめた。わざわざ自分から言うことではないだろうと思ったのだ。それと本命は別にある。

 

(それに、黙っていた方が面白そうです)

 

おわかりいただけただろう。和葉は基本的に(特に親しい人に)ドSだということを。

 

 

和葉のステータス更新中、ヘスティアはやはり不機嫌であった。おかげで和葉はベルの【憧憬一途(リアリスフレーゼ)】のことで愚痴を聞かされるはめになった。後はベルの魔法についても話し合った。結論だけ言うとベルの魔法は詠唱を必要とせず、最悪【ファイアボルト】と言うだけで発動する可能性がある、という結論に至った。

夕食を食べ終え、寝る準備をしていると、和葉は唐突に言った。

 

「ベル、少しだけならダンジョンに行ってきていいですよ」

 

「えっ!?」

 

「な、何を言ってるんだ和葉君!!」

 

和葉の言葉にベルは驚きヘスティアは反論する。

 

「いえ、先程からベルがそわそわしているので魔法の試し撃ちをしたいのだと思いまして。今は夜ですから他の冒険者も少ないと思うので試すならちょうどいい時間ですよ」

 

ベルは和葉に詰め寄る。

 

「ほ、ホントにいいの!?」

 

「いいですよ。ただし、試して貰うことがありますが」

 

そう言って和葉は手のひらに透明な球体上の物を作り出し、それをベルの肩につける。

 

「姉さんこれは?」

 

探索(サーチ)魔法です。別に害はないのでご安心を」

 

「最後の言葉逆に不安になるからやめて」

 

というわけでベルはダンジョンに向かった。ただし遅くても一時間で帰ってくることを約束されたが。

ベルのことだ、魔法を使うのが楽しくなり時間を忘れる可能性がある。というか100%そうなるだろう。

 

(40分経ったら向かいに行きますか)

 

時間になるまで和葉は本を読むことにした(ヘスティアも本を読んでいる)。




中途半端に終わった…
和葉「ヘスティアの存在感、薄いような…」
気にしないで

和葉のステータス

和葉・クラネル Lv.1
力:A 894│耐久:E 455│器用:A 872│敏捷:S 904│魔力:B 794

魔法:【自然操作(ネイチャーオペレーション)
・造形魔法

スキル:【形態変化(カンビオフォルマ)
・武器の性質、形態を変化させる

家族想い(ファミリアタイズ)
・早熟する
・想いの続く限り効果持続
・想いの続く限り効果向上


誤字脱字がありましたらご報告よろしくお願いします。


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亜種(とついでに膝枕)

和葉「皆さん、先月は投稿出来ず誠に申し訳ございません。今後もこのようなことがあると思いますが、よろしくお願いします
ん?駄作者ですか?ぼくの足元でバラバラになっていますよ」


和葉「ではどうぞ」


現在、ベルはダンジョンの六階層にて魔法の試し撃ちに来ていた。

ベルの魔法【ファイアボルト】は、和葉とヘスティアが予想したように魔法名を言うだけの詠唱の必要ない魔法だった。勿論これにはメリットとデメリットがある。メリットは、詠唱が必要ないので連射が出来る、ということだ。仮に相手が魔法の詠唱を警戒して近づいてきたとしても、至近距離で当てることが出来る。デメリットは、威力が低い、ということだ。基本的に魔法の威力は詠唱の長さに比例する。短文詠唱であれば威力は低く射程距離も短い。逆に長文詠唱であれば威力は高く射程距離も長い。そのため無詠唱である【ファイアボルト】は威力が短文詠唱魔法よりも低い。といっても、ベルのステータスなら八階層までなら一撃で葬れるだろうが。それに加え【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】で威力が上がりやすいので、威力が低いというデメリットは解消されるだろう。

 

 

最初ベルは数発試し撃ちをしたら帰るつもりだった、のだが…

 

「【ファイアボルト】【ファイアボルト】【ファイアボルト】【ファイアボルト】【ファイアボルト】【ファイアボルト】!!」

 

『『『『『『チョッ!!!??』』』』』』

 

「あははははは!!楽しい!!【ファイアボルト】!!」

 

『ギャッ!?』

 

魔法を撃つことが楽しすぎてそんなことは忘れてしまっている。今まで出来なかったことが出来るようになれば楽しくなるものだが…どう見てもやりすぎだ。ベルを知っている人物が今の彼を見たら必ず思うだろう。お前誰だ…、と。キャラ崩壊を起こすほどに楽しいらしい。連射しまくってモンスターも変な奇声を発している(言葉に聞こえるのは気のせい、と言うことにする)。もはや可哀想になるレベルである。

 

ある程度暴れまくって正常に戻ったベルは慌てて時計を確認した。和葉の指定した時間まであと十分。

 

(よかった…。まだ余裕はある)

 

これでもし一時間を過ぎていたらと思うと顔を青くする。和葉の説教だけは絶対にくらいたくない。

もう帰ろうと思い道を翻すと、通路の奥にモンスターの影が見えた。よく見れば『ウォーシャドウ』のようだ。ベルにとっては相手にならない。まだこちらに気付いていない様なので、ベルは気付かれない内に倒そうと思い極力気配と足音を消し接近をする。後二歩でナイフの間合いまで来たとき、違和感を持った。

 

─なにかが違う─

 

冒険者としての勘が今すぐ離れろと叫ぶ。ベルはその勘に従い即座に距離をとった。その時ベルのいたところに産まれたばかりの『ウォーシャドウ』が爪を振り下ろした。しかしモンスターが自身の真横から産まれてくるのはなんとなく分かっていた。それでは何故?その疑問はすぐに分かった。違和感を持った『ウォーシャドウ』が、産まれたばかりの『ウォーシャドウ』を()()()()()()()()()()。その光景にベルは目を見開く。モンスターがモンスターを殺すなんて異常だ。

そこで最初の違和感の正体が分かった。その『ウォーシャドウ』の爪が異常発達しているのだ。いつも見る『ウォーシャドウ』より二倍近い長さがある。

 

(あれは…、亜種!?)

 

ベルはつい最近、和葉と一緒にエイナから教えられたことを思い出した。あれは和葉が亜種について聞いたときだ。

 

─エイナさん、亜種について少し聞かせてくれませんか?─

 

─ん~まだ必要ないかもしれないけど、勉強熱心な和葉ちゃんの為に教えてあげようか。亜種っていうのは通常種のモンスターに比べて体のどこかが異常発達したり、体の色が変わっているモンスターのことを言うんだ。少し前に『漆黒のコボルト』ってモンスターがいたんだ。【ロキ・ファミリア】の人が退治したけど、その『コボルト』は通常種の『コボルト』より強かったの。Lv.2の冒険者がやられちゃうほどに…。

 

─『コボルト』が、ですか?─

 

─うん、そうだよ。亜種の厄介な所は通常種と同じ階層に産まれることなんだ。

心配しなくて大丈夫だよ。亜種なんてそうそう産まれてくるものじゃないからね。

でも、もし亜種と出会ったら戦おうとしちゃ駄目。絶対に逃げてね?─

 

この時、エイナは一つだけ間違った情報を教えてしまっていた。確かに亜種は通常種と何かしら違うところがあり知能も高いが、それだけだ。産まれたときの強さは通常種より多少は高いがさほど変わらない。では何故『漆黒のコボルト』はLv.2冒険者を倒せたのかのか。答えは簡単だ、魔石を喰らい強くなったからだ。他のモンスターより知能が高かった『漆黒のコボルト』は自分より強い者は避け、同程度もしくは弱いモンスターの魔石を喰らい続けた結果、Lv.2まで這い上がった。

しかしそんなことを知らないベルはエイナに教えられた通り、逃げようとした。次の瞬間、ベルの体は吹き飛んだ。何度も床を跳ね、壁にぶつかりようやく止まる。誰が自分を吹き飛ばしたのか考えなくとも分かった。あの『ウォーシャドウ』だ。ベルと『ウォーシャドウ』の距離はそこまで離れていなかったが、それでも近づいてきたことに気付かなかった。いつもなら気付くはずなのに、だ。

実はこの時のベルは精神疲弊(マインドダウン)を起こしていた。精神疲弊(マインドダウン)とは、簡単に言えば魔法の使いすぎで疲れることのことだ。疲れるというよりは酔いや目眩に近いかもしれない。

ベルは意識が朦朧としているせいで目の前に『ウォーシャドウ』が来てもなにも出来ない。

 

(あ…ヤバい…意識が…でも….ここで…..落ちたら……死….…ぬ……..)

 

そこでベルの意識は落ちた。『ウォーシャドウ』はそんなベルに構わず爪を振り上げる。しかし爪を振り下ろす前に体を横に斬られ、更に上半身を縦に斬られた、二人の剣士によって。

一人は言うまでもなく和葉だ。そしてもう一人は─

 

「おや、アイズ・ヴァレンシュタインさんじゃないですか。お久しぶりですね」

 

「ん、久しぶり」

 

─アイズ・ヴァレンシュタインであった。

 

 

 

ベルが出て四十分後、和葉はダンジョンに向かい始めた。ベルには探索(サーチ)魔法を付けているのでどこにいるか分かる。どうやらベルは今、六階層にいるようだ。

和葉は襲ってきたモンスターを葬りながら六階層へと向かう。探索(サーチ)魔法はあくまで対象者の位置が分かるだけなので、対象者がどんな状態なのかは分からない。だが、嫌な予感がした和葉はペースを上げた。そして、その嫌な予感は当たった。壁に寄りかかりグッタリとしてるベルに、『ウォーシャドウ』が爪を振り下ろそうとしてる所だった。

 

(通常より爪が長いですね…。亜種でしょうか─)

 

─だからどうしたというのだ。亜種だろうが何だろうが自分の家族に害するものは全て排除するのみ。

和葉は更に加速、そのまま横に一閃。更に縦に斬ろうとしたとき、別の誰かが『ウォーシャドウ』の上半身を斬り裂いた。

 

「おや、アイズ・ヴァレンシュタインさんじゃないですが。お久しぶりですね」

 

「ん、久しぶり」

 

その人物はアイズだった。そして、この場にはもう一人─

 

「アイズ、いきなり先に行くなと…。ん?君は…」

 

─Lv.6、エルフの第一級女性冒険者、リヴェリア・リヨス・アールブ、二つ名は〖九魔姫(ナインヘル)〗。和葉はさながら、執事のようにお辞儀をして自己紹介をした。

 

「初めまして、というべきでしょうか。【ヘスティア・ファミリア】所属、和葉・クラネルです。以後お見知りおきを」

 

「あぁ、あの時の君か。リヴェリア・リヨス・アールブだ。よろしく頼む

あの時はうちのベート(馬鹿者)が失礼した」

 

リヴェリアは酒場の一件を覚えていたようだ。忘れる方が難しいだろうが。

リヴェリアの言葉に和葉は苦笑しながら答えた。

 

「あの時も言いましたが、本当の事なのでそこまで気にしていません。ですが─」

 

和葉は不敵に笑い、言った。

 

「─僕達は弱者のままでいるつもりはありません。目標は第一級冒険者(あなた方)を超えることですので」

 

リヴェリアとアイズは、和葉の発言に目を丸くしたが、リヴェリアは目を細め和葉同様不敵に笑う。

 

「ほう?それは楽しみだ」

 

笑い合う二人、ちなみにこの時点の二人はベルの事を忘れている。

 

「…リヴェリア、その子、大丈夫?」

 

アイズの一言でハッとなった二人はベルを看る。といっても、看ているのはリヴェリアだが。

 

「どうですか?」

 

「…外傷は無し、どうやら精神疲弊(マインドダウン)を起こしただけのようだ」

 

それを聞いた和葉はしまった、という顔をした。

 

「?どうしたの?」

 

「いえ、ベルに精神疲弊(マインドダウン)には気を付けるということを言い忘れてしまったので。そうですよね、魔法を使うことを楽しみにしていたベルが精神疲弊(マインドダウン)を起こすのは予測できたことですよね。…ナァーザの所にポーションを買いに行きますか」

 

後半を一人言のように言った和葉は大きく溜息をついた。因みに和葉自身は精神疲弊(マインドダウン)を起こしたことがないので、余計に忘れていた。

 

「アイズ、お前はこの子についていてあげろ。その子に謝りたいんだろう?和葉、と言ったか、君は私が地上まで届けよう」

 

突然リヴェリアが立ち上がりそんなことを言った。アイズはキョトンとしたが、和葉に異論はない。

 

「ではお言葉に甘えて。アイズ・ヴァレンシュタインさん、ベルの事をよろしくお願いします」

 

「…でも、何をすればいいか、わからない」

 

「仕方のない奴だ」

 

リヴェリアはアイズの耳元で何かをささやいた。アイズは首をかしげながら聞く。

 

「そんなことで、いいの?」

 

「お前だったら喜ばない男はいないだろう」

 

「…分かった」

 

ほんの少し考えたアイズはうなずく。

 

 

 

「弟を看ていただきありがとうございました」

 

「礼を言われることじゃないさ。あの子を助けたのはアイズだ。君も一緒だったが」

 

ベルをアイズに任せ、和葉はリヴェリアと地上に向かっていた。

 

「ところで思ったことがあるのですが、アイズ・ヴァレンシュタインさんってなんと言いますか、少し天然と言いますか、とにかく聞いていたよりも普通な女の人ですね」

 

頬をかきながら和葉がこう言ったのは、アイズが恥ずかしげもなくベルに膝枕をしたからだ。普通、謝罪をしたいからといって膝枕をするのだろうか。少なくとも和葉は聞いたことはない。たとえするのだとしても顔を赤くしたりするのではないだろうか。

どちらにしろベルはお礼もなにも言わずに帰ってきそうだ。

 

(その場合はシバきますか)

 

なんとも危ない姉である。

 

「確かにあの子は天然が入っていてね。それで苦労することも多々ある、がこういう事態では有効だろう?」

 

ほんの少しだけ悪い笑みを浮かべるリヴェリアに和葉は苦笑する。

 

「リヴェリア・リヨス・アールブさん、貴女も案外悪い部分をお持ちのようで」

 

「フルネームで呼ばなくていい。気軽にリヴェリアと呼んでくれ」

 

「すいません、僕の悪い癖でして。失礼だと思いますが僕自身が信頼しないと名前で呼べないんですよ」

 

少しバツの悪そうな顔をする和葉。リヴェリアはそれに気分を害した様子もなく

 

「なるほど、こう言ってはなんだが少し変な癖だな」

 

と言った。和葉は目を軽く見開く。

 

「あまり気分を害していないのですか?」

 

「これくらいで気分を害していたら【ロキ・ファミリア】の幹部は務まらんよ」

 

「そういうものですか」

 

そう言いながら和葉は通路から出てきたモンスターを空気を使って圧殺する。それはもう見事にグシャッと音をたてて全身が潰れた。見る人が見ればトラウマになること間違いなしである。そしてちゃっかりと風を使い魔石とドロップアイテムの回収はしている。因みに会話の最中にこれを何度もやっていた。おかげで通路が血塗れである。

 

「ふむ、先程からモンスターが潰れていたが、それが君の魔法か?詠唱もなにも言ってないように見えるが」

 

「まぁそうですね。あまり言えませんが造形魔法なんですよ、僕の魔法」

 

リヴェリアは目を見開いた。今までそんな魔法を聞いたこと無かったのだ。そしてもう一つ、あっさりと隠すことも無く答えた事にも驚いた。それに和葉は苦笑する。

 

「貴女は【ロキ・ファミリア】、しかも幹部の人ですから他の人には言わないだろうと勝手に信用させてもらいました」

 

「信頼は得ていないが信用は得ている、ということか」

 

「そういうことです」

 

 

 

ダンジョンの入り口でリヴェリアと別れた和葉は換金所には行かず、そのまま教会に帰った。

 

「ただいま帰りましたよ、ヘスティア」

 

「お帰り和葉君、ベル…ってベル君はどこだい?」

 

和葉はベルをどうしたかというのを説明すると

 

「なんでベル君をヴァレン(なにがし)君に任せたんだい!!?和葉君が連れて帰ってくればよかったじゃないか!!?唯でさえベル君は惚れているんだぞ!?更に惚れてしまうじゃないか!!」

 

案の定ヘスティアは暴れた。和葉がニッコリと笑顔を見せたらおとなしくなったが。

 

「別にベルが誰に惚れようとあの子の勝手でしょう?ヘスティアがベルに振り向いて欲しいのは分かりますがね」

 

そこで一回区切り

 

「ベルの人生ですからあの子が選んだ人ならなにもいいません。ですが、僕としては─」

 

それ以上は言葉を発さず黙った。ヘスティアは首を傾げながら言う。

 

「?和葉君?」

 

「…いえ、なんでもありません」

 

和葉は軽く笑みを浮かべ、それ以上の追求を許さなかった。

 

 

 

数十分後、顔を真っ赤にして帰ってきたベルに和葉が「目覚めたときどうしましたか?」と笑顔で聞いたとき「な、なにもせず帰ってきました…」と顔を青くしながら答え、白兎の悲鳴が夜のオラリアに響き渡った。

余談だが、別の場所にてエルフの女性冒険者の笑い声も響き渡ったとか。




『漆黒のコボルト』って原作にいませんでしたっけ?それを出したつもりですが、もし他の方の作品から盗っていたらお許しください。決してパクったわけではありません。

あ、それと亜種の設定はオリジナル(のつもり)です


誤字脱字がありましたらご報告お願いします。


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