不良少年と裏表のない少女 (自宅警備員改)
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プロローグ

吐く息も白くなり始めた初冬のある日、輝日東高校に通う赤井正一は一人屋上で煙草を吸っていた。

 

時間はこれから授業が始まる直前の時間であった。

 

もちろん授業にも出る気などさらさら無いし、周りからも特に咎められることもなかった。

 

理由は簡単。赤井正一は世に言う不良だったのだ。

 

身長は180あろうという長身、見た目はイケメンに属し、髪は金髪、喧嘩も強かった。

 

1年の頃から絡まれるも全て喧嘩でねじ伏せてきた。

 

その結果輝日東高校で彼に喧嘩で勝てる人間はいなくなっていた。

 

教師たちも最初の頃は授業や煙草を吸う彼に苦言を呈し、注意したが意味を為さなかった。

 

結局は怖かったのだ。

 

自分がいつあの男に絡まれ、殴られるのかビクビクしている、ならば関わらずにおとなしくしていた方がずっと安全。

 

これが教師陣の暗黙の了解であった。

 

「寒いな・・・」

 

白い息を吐きながらそうつぶやいた赤井正一は、ぼーっと空を眺めていた。

 

別に何もすることはない。

 

ただ学校に来て、ただ煙草を吸い、一日を過ごす、これだけである。

 

キンコーンカンコーン

 

何度目かの鐘が鳴る。おそらく昼休みだろう。

 

その証拠に1階の学食の騒がしい声がここまで届く。

 

基本的に彼は昼食を取らないことが多い、というか腹が減らなければご飯を食べないだけなのだが

 

ギーッと屋上の扉が開く。

 

誰かが屋上に来た。

 

屋上に彼がいついてからここに来る人間はあまり多くない。

 

理由は簡単、出会いたくないからだ。

 

手すりに捕まり、煙草を吸いながら景色を見ていた赤井正一は屋上に来た人物を確認し、再度景色を見始めた。

 

「煙草は体に悪いから止めたほうが良いってずっと言ってるよね、僕」

 

そう言い、近づいてきたのはクラスメイトの橘純一である。

 

「大将、無理だって。この男に何言っても通じないって。」

 

その純一の後ろから来た人物は梅原 正吉であった。

 

2人が来たことを確認すると、彼は煙草を消しながら言った。

 

「わざわざ、何の用だよ。」

 

この3人は言わば友達であった。

 

いや、赤井正一にとっては掛け替えの無い友であった。

 

「うん、ちょっと正一に話したいことがあってね。」

 

なんでも重要な話だってよ、梅原が口を挟み、純一は買ってきたカツサンドを開ける。

 

「重要なこと?」

 

「うん、えっと、僕が森島先輩が好きなのは知ってるよね。」

 

「ああ。」

 

この3人で純一が森島はるかのことが好きなのは百も承知である。

 

純一が彼女のことを話す目は異常だが

 

「・・・」

 

「何照れてんだよ。」

 

話している途中で照れてしまった純一を梅原が突っ込む。

 

「まあ、大将が言うには今年のクリスマスは彼女作って楽しく過ごすってことらしいぜ。」

 

「ちょ・・・梅原何言ってるんだよ!!」

 

「事実だろ。」

 

 

この発言に対し正一は外には出していないが、驚いていた。

 

あの恋愛とクリスマスに苦手意識を持っていた純一が彼女を作ろうとしている。

 

口だけかもしれないが、何にせよ純一は前を向いて歩き出しトラウマを克服しようとしている。

 

キンコーンカンコーン

 

昼休み終了の鐘がなる。

 

「あ、正一放課後また詳しく話すぜ、じゃな!」

 

「待てよ!梅原!」

 

2人はどだどだと走りながら去っていった。

 

「相変わらず騒がしい奴等だ。」

 

正一は笑いながら、煙草を吸う。

 

吸いながら彼は思った。

 

「今年のクリスマスは何かありそうだな」

 

この言葉は純一に向けられたものだったが、後に正一本人も関係することになるのはまだ、先の話。




アマガミをプレイして唐突に書きたくなったので書いてみました。
感想・評価などお待ちしております。


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不良少年と仮面優等生

ヒロインは秘密どころか、タイトルでもろバレしている件について。
作者の管理体制ははもうボロボロ


2年A組に所属している絢辻 詞はクラス担任の高橋 麻耶からあるお願いを受けていた。

 

「ごめんなさいね、絢辻さん。こんなこと頼んで」

 

「いえいえ、先生。気にしないでください。先生が気に掛けるのも分かります。」

 

「クラス委員と創設祭実行委員を掛け持ちしてる絢辻さんにこんなお願いするのも気が引けるけどお願いね。」

 

「はい、分かりました。ところで、その赤井正一君のことなんですが、確か橘君と梅原君が仲が良かったように認識しているのですが、」

 

そう、高橋 麻耶と絢辻 詞は問題児赤井 正一の対策を考えていた。

 

担任の高橋 麻耶からすれば授業にでるもしくは最低でも煙草をやめさせたかった。

 

未成年には体の影響が悪すぎるし、学校のイメージも悪い。

 

注意もしたが、全く聞き入れてはくれなかった。

 

そんななか、絢辻 詞ならばどうにかしてくれるのではないかという一筋の希望にすがったのだ。先生が生徒に頼るのもどうかとは思うが。。。と自己嫌悪に陥ったのは秘密である。

 

「あー・・・あの2人も頼んでみたんだけどね・・・」

 

「「無理です」」

 

「って言われちゃってね。」

 

「あははは・・・」

 

苦笑するしかない、詞であった。

 

 

 

------

 

 

 

放課後、詞は橘と梅原に声をかけた。

 

「橘君、梅原君、ちょっといいかな?」

 

「絢辻さん、うんいいよ、何か用?」

 

「俺も、いいぜ。」

 

純一、梅原は答える。

 

「えっと、赤井正一君のことなんだけど」

 

詞にとって、赤井正一という人物は良く知っている。知っているといってもどんな人物か程度ではあるが。あの強烈な金髪、そして誰も寄せ付けないあの目。

詞は彼が屋上にいても普通に訪れ、そして帰っていく。純一、梅原とは別の意味で正一を恐れていない人物である。

 

そして、詞は正一に興味を持っていた。輝日東高校に彼のような不良がいない目新しさかと思ったが違った。彼は1人であった。純一や梅原という友人もいるが、それはおそらく自分の周りにいるただ普通に話すクラスメイトみたいなものだろう。彼は飽いている。この生活、この環境に。

 

そういう意味で考えると、詞と正一は似たもの同志なのかもしれない。第三者からみると、クラス委員と創設祭実行委員を掛け持ちし、文武両道で、クラスメイトのみならず教師からも一目置かれる優等生の女のこ。一方、授業にも出席せず、煙草を吸い、クラスメイトや教師に対し関わらおうとしない、不良の男。

 

全く接点がないかもしれないが、詞は学校では猫を被っていた。一方では仮面優等生、本当の彼女とは・・・?その彼女の本当の顔を知るものはいないし、そして知らせることもないだろう。

 

「あ~、もしかして絢辻さん、あいつを説得しようと考えてるとか?」

 

考えが長くなってしまったようだ。梅原が答える。

 

「うん、高橋先生に頼まれたの。確か橘君と梅原君は彼と仲が良いから一緒に来てもらえたら有り難いなと思って声を掛けたの。」

 

別に、詞からすれば2人に来てもらう必要はないが、利用できるものは利用する。これが詞の考えだ。また、この1回で説得できるなんて考えていないし、出来なくても無理でしたと先生に報告するだけだ。

 

しかし、無理でしたというのは自分のプライドに反するし、諦めることもしないだろう。それよりどういう風に説得するか考えるだけで体がぞくぞくする感じもある。詞は攻めるのが大好きなのである。

 

「う~ん、でもなあ・・・なあ?」

 

梅原が目で純一に投げかける。

 

「うん、絢辻さん、気持ちは分かるけど難しいとは思うよ。」

 

2人の目は無理だから、諦めなよという空気をかもし出している。

 

「うん、難しいかもしれないけど、先生から頼まれたことだしね。一応声だけでも掛けておきたいの。」

 

詞からすると、いいから速くあたしをあの男の元に連れて行けという、若干黒い部分が出ているが、2人は気づくはずもなかった。

 

 

 

「なあ、大将、正一は屋上だっけか。」

 

「うん、多分ね。昼休みまともに話せなかったからね」

 

と純一は梅原を睨む。当の梅原は知らん顔をしているが。

 

そして屋上についた。ギーッとたてつきの悪いドアを純一が開ける。

 

「正一!」

 

梅原が声を掛ける。

 

手すりに捕まり、外を眺めていた赤井正一はゆっくり振り返る。

 

仮面優等生と不良少年の出会い。

 

この出会いが2人を大きく動かすのはまだ先の話である。

 

 

 

 

 




主人公と絢辻さんの出会い。
この2人会わせてはダメな気がする(小並感)


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不良少年と仮面優等生2

もう主人公が不良ではなくてただ性格の悪い人間な件について。
まあ不良は性格悪いからね、しょうがないね。


 

正一が振り返った先に自分の見知った友人2人と1人の女子生徒がいた。正一はその女子生徒は見たことがあった。彼女は昼休みや、放課後にたまに屋上に来て時間を潰して帰って行く。自分がいようといまいと関係ないかのように屋上に訪れる人物だった。彼女が来た時に、単純に関わりたくないのか、きまずさなのか分からないが、彼は席を外す。

 

良く分からなかった。

 

彼が何故屋上を離れなければならないのか、その理由が分からなかった。今まで誰が屋上を来ても自分から離れることは無かった。分からない。分からない。まるで鏡を映しているかのような。。。

 

だからかしれないが、彼は彼女と一言も話したことは無かったが、彼女に対して苦手意識を持っていた。

 

「こんにちは、赤井君、いや今はこんばんはかな。ここでたまに出会うけど自己紹介をしたことが無かったわね。私、絢辻詞って言います。」

 

そう言い、詞は笑う。近くで見ていた、純一と梅原はその笑顔に見惚れていた。それほど詞の笑顔は美しくそして綺麗だったのだ。

 

「で、その絢辻さんが俺に何の用で?」

 

「正一!」

 

「お、おい!」

 

正一の発言に対し、純一、梅原が咎める。純一、梅原からすれば、自分の友達の為に説得に来たクラスメイトはとてもありがたいと思うが故に、彼の素っ気無い発言はあまり好ましく無かった。まあ、この反応は予想内と言えば予想内なのだが。

 

「まあ、正一のその反応は分かってたけどよ。絢辻さんはお前を説得しに来たんだよ。」

 

「説得ってそんな大きな物じゃないわ、梅原君。赤井君が授業に出てくれたらありがたいなって言いに来たのよ。クラスメイトの皆は言わないけど、赤井君が来てくれる事を願っているわ。少なくとも私はそう思っているわ」

 

「(この女、心にも無いことをぺらぺらと・・・だが、本当の部分はある。この女自身が俺にクラスに戻ること願っているのは本心だろう。それが、俺のためなのか、自分のためなのかは知らないが)」

 

「ねえ、どうかな?」

 

純一、梅原はまあ、無理だろうなという感じは察していた。この赤井正一が自分たち以外に素直に耳を貸すことはないと分かっていた。それが純一、梅原の小さな自慢でもあった。しかし、それは同性の場合であればだ。相手が女性しかも美人し、文武両道かつ誰からも慕われる女性だ。そんな人にクラスに来て欲しいとお願いされたら、コロッと落ちてしまう。男とはとても単純な生き物なのだ。

 

彼はどちらなのか。この誘惑に耐える男なのか、それとも堕ちるのか。

なお、この考えは梅原だけであり、純一は対して何も考えていないことを記す。

 

 

「分かった。絢辻さんがそこまで言うなら出るしかないな。」

 

堕ちた!梅原は目を見開く。正一!それでいいのか!!という重いと共に嬉しさもあった。正一が真っ当な道に進むという期待があった。

 

「本当!赤井君ありがとう!」

 

詞は喜ぶ。その顔は本当に喜んでいる顔だった。

 

「ああ、だから絢辻さんは高橋先生?だっけか報告に行ったら良いよ。」

 

「うん、そうさせてもらうわ。橘君、梅原君付いてきてもらってありがとう。私は先生に報告しに行ってくるね。」

 

「ああ。」

 

「うん。」

 

2人はそう言い彼女が去るのを見つめる。

 

ギーッ、バタンとドアが閉められる。

 

「梅原やったよ!やっぱり絢辻さんすごいや!」

 

「おい、正一お前本当に、、、」

 

「出るわけ無いだろ。」

 

笑いながら言う。

 

「え、でもさっき。」

 

と純一が聞く。

 

「まあ、かわいい嘘だよ。純一や梅原が絢辻の話をするから、ちょっとしたいたずらよ。ああいう奴が俺が気に食わないの知ってるだろ。」

 

「確かに、正一はああいうタイプ嫌いだもんな。短所ないもんな。絢辻さん。」

 

「明日、俺がクラスにいないことに対して担任は聞くだろう。そのときのあの女の顔が見れないのは悔しいが、まあそこはお前らに任す。はははは」

 

性格悪いなこいつと2人の心が繋がったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

---------

 

次の日

 

「くくく、今頃あの女顔が青ざめているだろうよ」

 

「ハロー赤井君。」

 

「!?」

 

後ろを振り向くと絢辻詞がいた。笑顔だった。その後ろには純一、梅原がいた。後ろの2人の顔は自分と同じく良く分かっていない顔をしていた。

 

「よお、何の用だよ。」

 

「用って訳でもないけど、1つ言っておきたいことがあったから。」

 

「ああ、今日来れなかったのは・・・」

 

「ん?ああ、違うの。今日クラスに来なかった理由を聞きに来たわけじゃないの。」

 

正一の話を妨げ詞は言う。

 

「私、今日クラスにあなたが来ること高橋先生に言ってないの。」

 

「なっ・・・」

 

そして、正一は後ろの2人を見る。2人は知らないと首を振る。

 

「別に、後ろの2人には聞いてないわよ。単純に赤井君が来てから、高橋先生に報告した方がいいと思って。やっぱり情報って確実になってから伝えたほうが良いから。それに、」

 

詞の笑顔がさらに深くなる。

 

「嘘でも付けられたら嫌だなって。」

 

「(この女!!!!)」

 

これから始まろうとする。この修羅場どのようになっていくのか。ただただ、後ろの2人は怯えながら見守るだけだった。

 




やっぱりパッケージヒロインは格が違った。


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不良少年と仮面優等生3

ゲームでは梨穂子が純一を救う話がありますが、ここでは違う方が出ます。
梨穂子ファンの皆様すいません。

2015/08/14
誤字を修正。



絢辻詞はすべて分かっていたのだ。いや、分かっていたよりもこうなることを予測していた。おそらく彼女は昨日の屋上の出来事から考えうる全てのパターンを考えベストな選択をした。あの場合、担任に報告し彼が来なかった場合、詞にとって不利なことがおこる。だから回避策を考え実行した。それだけのことである。

 

「どうしたの?赤井君。顔が強張っているけど。」

 

笑顔で詞は言う。この女は自分の状況を買っているくせに聞いてくる。性格の悪い女である。

この女を武力で制圧するのは容易だろうが、これで勝っても意味はないのである。第一、彼自身女には暴力を振るわない。男でかつ喧嘩が強い奴を殴り征服するのが良いのである。

 

「チッ!」

 

正一は1つ舌打ちをし、その場を去ろうとした。しかし、1つ詞に言っておかなければ気がすまなかった。そして、正一は詞の隣で止まり、純一、梅原に聞こえない声で詞に言った。

 

「長い付き合いになりそうだな。」

 

「ふふっ、そうかもね。」

 

詞は笑顔のまま答える。

 

「そんな仮面付けて生活するなんざ俺には出来ねーな」

 

「!」

 

初めて詞の顔色が変わる。正一は笑いながらそのまま純一、梅原の傍を通って屋上から去ろうとする。

 

「おい、正一待てよ!」

 

「正一、待ってよ!」

 

2人は正一と共に屋上から去って行った。

 

残った詞は屋上の手すりに近寄り、思いっきり蹴った。思い出すのは先ほどの言葉。

 

「(そんな仮面付けて生活するなんざ俺には出来ねーな)」

 

「!!」

 

ガン!ガン!ガン!

 

「分かってるわよ!私だって好きでこんな生活してるわけじゃないのよ!この!この!」

 

むかつく!むかつく!!むかつく!!!

 

「何なの!あの男!私が!私が勝ったのよ!」

 

普段の詞はこんなにも腹を立てることは無い。あの男の言葉は自分の心を抉って直接心に響いてくる。あの男は単純に思ったこと言って来る。それだけに純粋なのだ。

 

「ふう、ふう。」

 

心を落ち着かせ、詞も屋上を去る。もう少しで授業が始まる。

 

 

---------

その日の休憩時間

 

橘純一が廊下を歩いていると、とある女子に話しかけられた。

 

「ちょっと良いかな。」

 

「え、僕?」

 

「ここだと人目に付くから、付いてきてくれない?」

 

「う、うん、いいけど。」

 

純一は彼女のことを知らなかったが、人目に付くから来てくれと言うことはもしかして、告白されるのかな。と期待に満ち溢れていた。そして、純一はその女子の後を付いていった。ある、クラスメイトの女子に見られているとも知らずに。

 

「連れてきたわ。」

 

純一が女子に付いて行くとその場には10人以上の女子がいた。明らかに告白とは違う雰囲気だった。

 

「遅いんだけど。」

 

「あっごめん。」

 

「あ、謝った。やっぱりあんただったのね。」

 

「最悪。カヨコのスカートをめくるなんて。」

 

「カヨコにちゃんにちゃんと謝って。」

 

「えっ・・・あの・・・」

 

訳が分からない。カヨコって誰?スカートって何のことだ。

 

「知らないよ。そんなこと。」

 

「さっき謝ったじゃん。」

 

「それは君の遅いに対するに対して謝ったんだけど。。。」

 

「はあ?何なのあんた。あんたあの不良の友達だからって調子に乗ってるんじゃないの。」

 

「そうそう、あいつの傍にいるから自分も強くなってるつもり?馬鹿じゃないの?やっぱり不良の周りはダメな奴ばっかりね。」

 

「正一は関係ないだろ!」

 

「何、怒ってるの?うけるー」

 

「笑えるー。」

 

許せない。気付くと自分の手を強く握り締めていた。自分の友達を、掛け替えのない友達を!

 

「(人を殴れない奴が喧嘩をするな。)」

 

そう正一に言われた。しかし今の自分は我慢が出来なかった。怒りに身を任せ女子達に向かおうとしていると、

 

「ちょっと待って。」

 

自分の後ろには純一のクラスメイトの絢辻詞が立っていた。

 




絢辻さん>>>>>ベルリンの壁>>>>>10人の女子
終わったな()
感想、評価まっております。


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不良少年と仮面優等生4

投稿遅れて申し訳ありません。
主人公が最後にちょこっとだけ出てくるとはなんて陰の薄いキャラですこと。。。
まあ、絢辻さんがメインだからしょうがないね(にっこり)
感想などどしどしお待ちしております!



 

「ちょっと待って」

 

そう言ったのは純一のクラスメイトの絢辻詞だった。

 

「絢辻さん・・・」

 

「何ですか。今取り込んでいるのですけど。」

 

「偶然通りかかって気になったの。どうかしたの?」

 

「この人が私の親友のカヨコのスカートを覗いたの!」

 

「さっきはめくったって」

 

「やっぱりめくったのね」

 

もう滅茶苦茶である。怒り心頭のリーダー格の女子。訳が分からず混乱している純一。傍観しているように見える詞。

 

「信じられない本当に!あなたも最低だと思わない?」

 

「その話が本当なら酷いわね。」

 

「でしょ。こいつ痴漢よ!有罪!もう先生に言いに行ってくる!!」

 

ぞろぞろと取り巻きの女子生徒は教員室に行こうとしていた。

 

「待って。」

 

女子生徒達が行く前に詞がとめた。

 

「私はその話が本当ならって言ったわよね。早とちりしすぎよ。まず、スカートを覗かれたか、めくられたか知らないけどそれをされたのはいつか本人に聞く必要があるわ、またそれが本当に橘君がやったのか確認しないとね。」

 

「ついさっきよ!それにこの男がやったに決まってるんだから!!」

 

「あなたに聞いてないわ。本人に聞いてるの。」

 

「カヨコどうなのよ。」

 

「グスッ、グスッ」

 

カヨコは泣いているのか答えようとしない。

 

イライライライライライラ

 

詞は腕を組んで額に青筋を浮かべている。落ち着こうとしているのか、指でトン、トンとリズムを取っているがまるで意味を為していない。近くにいた、純一は「ヒエッ」と声を漏らしている。それほどまでに彼女の姿は威圧と恐怖があったのだ。そしてこの威圧感というか雰囲気が正一が怒ったときの感じに似ていることを彼はなんとなく気付いていた。

 

「で、カヨコさんはどうなのよ。」

 

「え、えっと、確か昼休みです。」

 

「場所は。」

 

「教室です。」

 

カヨコはおどおどしながら答える。彼女もまた詞の雰囲気を察したのである。

 

 

 

「あまりこういう主観的なことは言いたくないけど、彼はやってないと思うわ。」

 

詞が答える。物事を筋道を立てる、かつ理論的な説明をする彼女からしてみれば、珍しい発言である。

 

「何をいってるのよ!そんなはず無いわ!!こいつがやったに決まってるんだから!!!」

 

リーダー格の女子は怒り心頭の様子で答える。

 

「やったの?」

 

「え・・・ううん、やってないよ僕は!それに昼休みは梅原や正一と一緒にいたし。」

 

そう、純一は昼休みとか、休み時間で暇な時は梅原を連れて正一に会いに行ってたのだ。

正一はわざわざ来るなよ、と言っていたが純一からすれば3人で過ごす時間が何よりも好きだったのだ。

 

「え、でもあんたさっき謝っていたじゃない!あれはカヨコに痴漢していたのを認めたってことでしょ!」

 

「それは僕がここに来るのが遅れたことを謝っただけだし・・・」

 

「はあ?紛らわしいんですけど。はっきり言わなきゃ分からないじゃない!」

 

「・・・」

 

純一は女子の言葉に返すことが出来なかった。いや、返す言葉があったが、言う事が出来なかった。純一は自分で他人に対し、悪口を言えない性格であった。さっきの女子生徒の言葉にも、言い返すと必ず相手を攻める言葉になってしまう。それが言えない理由であり、彼の優しさでもあった。

 

「滑稽ね。」

 

静かな呟きであったがこの場にいた全員が、彼女、詞の言葉が聞こえた。

 

「でしょ。あなたもそう思うわよね。本当、この男って滑稽。」

 

「違うわ。私が言ったのは、彼ではなくあなたに言ったの。」

 

「はあ?私が何が滑稽なのよ?」

 

「分かってないようだから言ってあげるけど、何も証拠も根拠もないのに関係ない人間を犯人呼ばわりして、しかも本人に聞いた、事が起こった場所とあなたの言ってた場所も違うし、しかも彼は教室にいなかった。よくこんなので彼を犯人呼ばわり出来るわね。あまりの図々しさに尊敬に値するわ。それに大体、あなたはせっかちなのよ。人の話を聞いてないようだし。後ろの取り巻達も言葉には出さないけどそう思ってるんじゃないの。」

 

「そんなはず・・・!?」

 

言われた女子が後ろを向くと、女子たちは目をそらす。さきほど詞が言ったことは暗にあてはまっていることを示していた。

 

「兆候はあったみたいね。」

 

「もういい!帰る!!」

 

女子は顔を真っ赤にしながらその場を去ろうとする。しかし、

 

「待ちなさい。あなたは無実の彼を犯人呼ばわりしたのよ。謝罪の一つもあっても良いんじゃない?」

 

「何でこいつに謝罪しなきゃいけないのよ!」

 

「自分のしたことも分かってないなんて滑稽というか、何ていうかもう哀れみさえ感じるわ。」

 

「この・・・!」

 

「あ・・・絢辻さん。もう良いよ。僕がはっきり言わなかったのも悪いし、犯人じゃないことも分かったから満足だよ。」

 

純一としては速くこの場を終わらせたかった。このままでは詞と女子生徒の溝が深まるし、今以上の騒動になるかもしれない。だからこのまま終焉させる必要があるのだ。断じて、この場から送球に立ち去りたかったからではない、断じて。

 

「まあ、あなたがそう言うなら良いけど、けどこういうのははっきりさせておいたほうが良いわよ。後々めんどくさいことになるから。」

 

「ううん、これで良いよ。」

 

 

「ふん!」

 

リーダー格の女子はプンスカ怒りながら去っていった。その後ろを取り巻きの女の子も付いていく。

 

「あの、さっきはすいませんでした。」

 

痴漢の被害者のカヨコが話しかけてきた。

 

「え、ああうん、別に良いよ。気にしないで。」

 

純一は笑顔でそう言った。はっきり言わなかったカヨコ自身も悪いがこうして謝るのならば、彼は特に気にしないことにした。

カヨコはぺこりと頭を下げ去っていった。

 

彼女たちがいなくなったことを確認して、詞も去ろうとする。

 

「絢辻さん、ありがとう。おかげで助かったよ。」

 

純一はお礼を言う。この騒動を解決に導いたのは詞のおかげだった。彼女がいたから、自分は助けられたし無実も証明できた。

 

「別に良いわ。さっきも言ったけど、偶然通りかかっただけだし、ああいう群れないと何も出来ない連中が嫌いだからちょっと懲らしめたかっただけよ、それに・・・・」

 

「それに?」

 

「ううん。何でもない。」

 

そう言い、詞は去っていった。

 

---------

 

放課後、詞は通学路を通って帰宅途中であった。クラス委員と創設祭実行委員を掛け持ちしている彼女はいつも帰る時間が遅い。しかし今日は思ったより作業が片付いたので、いつもより速く帰っていた。そして近くの公園を通りすぎようとした矢先、

 

「よお、遅かったじゃねーか。」

 

声を掛けられた。自分じゃないかもしれないが、周辺には自分しかいなかった。

 

「あら、どうしたの赤井君。何か用かしら。」

 

努めて笑顔で返す、詞。声を掛けて来たのは赤井正一であった。

 




梨穂子だと平和に解決することも絢辻さんだと、殺伐とした結末にしかならないのがこのお方の性格。
悲しいね、バナージ・・・


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不良少年と仮面優等生5

更新期間空きすぎぃ!!!
本当に申し訳ありません。
最終更新履歴:2015/11/08 02:56
で草も生えない


「あら、どうしたの赤井君。何か用かしら。」

 

そう言い笑顔で自分を見る顔は誰もが虜になるであろう表情であった。相変わらず食えない野郎だ…と正一は感じていた。

 

「話がある。ちょっと付き合えよ」

 

と正一は詞の答えも聞かずに公園の中に入っていった。正一がふと後ろを見れば、詞も付いてきたのでこれからの予定はないだろうと感じれた。まあ、用事などあったとしても彼は詞と話していたと思われるが…

公園内に人はほぼいなかった。冬という季節上辺りが暗くなるのも速く何分寒い。こんな日に好き好んで公園で遊ぶ人も多くはない。そういう理由もあってか、詞と正一が2人で話すには最適な場所だった。

 

正一に連れてこられた詞は彼から何を言われるか判断がつかない状態であった。何せ詞と正一は学校でよく話す方ではなく、授業中は正一はクラスにいない。学校にいる間自分からもしくは彼から探そうとしない限りはすれ違うことも珍しいのだ。

そんな彼が下校時に時間に自分を待っていた。ただ単純な話ではないと感じていた。

確かに、自分と彼では性格が合わないといえる。それは詞自身も感じているし、正一自身も思っている。詞は正一の姿が自分を映している鏡のようだと思ったことがある。

彼の行動は何かと過激である。自分の意見を通すためらな暴力だって何だってするし、歯向かう人間は徹底的に叩く、喧嘩をしても相手の腕を折ったりする、そういう男である。当たり前だがその行動に多数の否定的な意見は多い。暴力は良くない、相手を思いやれなどクラスメイト、友人、教師などは口をそろえて言う。当たり前である。

しかし詞は割と正一の行動には友好的であった。彼女も彼と方法は違えど自分の意見を通すために論破し、歯向かわないように徹底的に叩く。それも相手が自分に一生勝てないと思わせるまでにだ。正一の場合は相手の外面を折るが詞の場合は相手の心を折るのだ。

 

「で、話っていうのは何かしら?」

 

詞から切り出した。彼から話を待ってもよかったが、あまり時間を掛けるのもバカバカしいので自分から切り出した。

 

「・・・」

 

「?」

 

正一にしては珍しく口が重かった。これから話す内容は自分が嫌いとしている詞に対して出来ることなら話したくないものであった。

このまま何事もなく帰るか…とも考えたが正一の頭の中に掛かる言葉。

 

“恩のある人間には感謝せよ”

 

「今日は純一を助けてくれて感謝する。」

 

そうぶっきらぼうに礼を述べ、頭を下げた。

 

---

 

 

詞は正一からの言葉に驚き、自分の正一に対する認識が間違っていたことを感じた。彼は勉強などは出来ず、喧嘩などするがバカではなかった。馬鹿ではあるが。知能レベルでは馬鹿ではあるが、相手に対し礼をするべきところで礼が出来るバカではないという意味である。このバカは基本的に治すことは難しい。知能レベルの馬鹿は勉強をすればいくらでも解決方法があるが、こちらのバカはそうやすやすと解決はできないのだ。なぜなら人間にはプライドがあるからだ。詞自身はどうかと聞かれればその時の状態によるしかない。簡単に言えばその状況下で自分のプライドを守るか取り下げるか天秤に掛けて判断する。臨機応変というやつだ。まあ、彼女自身プライドはあるので自分から取り下げるのはほぼないが。

おそらくこの事は純一本人から正一に言ったのであろうと予測された。純一、梅原、正一は一緒にいることが多いため話を聞く機会もあったのであろう。

 

「別に気にしなくて良いわよ。私はああいう集団で群れないと何も出来ない連中が気に入らないの。」

 

人が少なく話してる人間も正一であったからか詞の言葉は素を出していた。普段の詞を知っている人間には少し驚くかもしれない。今まで、容姿端麗、成績優秀な絵に描いたような優等生の発言とは少し離れているようだった。しかし正一自身は特に気にすることもなく、

 

「ああ、俺もその意見には同感だ。」

 

詞と正一は近くのベンチに座っていた。端と端に座り言葉を交わさないでいた。何分話すことがないのだ。第三者から見ればどういう関係なのか分からないものである。正一は一服しようと煙草に火をかけようとした矢先、

 

「一つ聞いてもいいかな。」

 

「何だ?」

 

「今日の事が起こったとき、橘君はずっとオドオドしているばっかりだったの。」

 

「まあ、あいつらしいな。」

 

「自分の意見も言えない彼にイライラしたけど、相手の女子生徒があなたのことを馬鹿にしたの。その時、橘君雰囲気が変わったの。すごく怒ってた、他人の目にもわかるぐらい。自分がいくらけなされても、馬鹿にされても、反応しなかった橘君があそこまで怒るなんて意外と感じたわ。友人とはいえ他人にあそこまで怒れるには何か理由があるんじゃないかと思って。」

 

「…」

 

「ごめんなさい。出来過ぎた事を聞いたわね。まあ、今日のことは私も気に入らないだけだったから気にしなくて良いわ。じゃあ、私は帰るわね。」

 

と言い、詞は席を立ち帰ろうとした矢先

 

「純一と俺が初めてあったのは街の中だった。」

 

突然話し始めた正一に少しばかり固まる詞であったが、詞は自分がした質問に対し答えてくれるのだろうと感じたので席に戻ることにした。

 

「純一は妹と幼なじみと遊びに出かけていて、その時その幼なじみが持っていたアイスを他人にぶつけてな。純一含めた3人はひたすらに謝ったが、まあ許してくれなくてな。付けられた奴らも不良みたいな奴で2,3人いたっけか。そいつらは幼なじみの女と妹を連れて行こうとした際に俺が表れてな。」

 

「まあ、何となく予測は付くけどあなたが助けたのね。でも珍しいわね、あなたが他人を助けるなんて。」

 

詞は彼が他人を助けたことに疑問を感じていた。自分なら絶対に助けない。それは自分対しよっぽど得になるような人物ならとにかく、親でも友人でもないクラスメイトに助けるような真似はしない。気が付かない振りをして立ち去るだけだ。だから彼の行動はおかしいと感じた。彼なら絶対しない、絶対。

 

「別に俺も助けたくて助けたわけじゃない。純一が2人守ろうとしたときに相手側が殴ろうとした際に振りかぶってな、その腕が偶々歩いてた俺にぶつかってな。」

 

「まさか、それに腹を立てて殴ったんじゃないでしょうね。」

 

「だったらなんだよ。」

 

「あなたらしいといえばあなたらしいわね。それでどうなったの。」

 

「次の日から純一が俺を見つけては強くしてくれって懇願してきてな。俺は全く相手にしてなかったんだが、あまりにもしつこくてなボコボコにしてた。それからだな、毎日、毎日来ては殴られ、次の日には絆創膏や湿布を張って来たな、何度も殴られに。かなりしつこかったな。そこから今のような関係にな。梅原も同じ時期くらいに純一から知り合った。」

 

「じゃあ、橘君も梅原君も喧嘩には強いのね。」

 

「梅原は元々センスはあったが、純一はダメだな。あいつに喧嘩は出来ない。なぜなら」

 

「なぜなら?」

 

「あいつは人を殴ることができないからだ。」

 

 

 

「じゃあ、俺は帰る。」

 

そう言い正一は公園を去っていった。詞はしばらくベンチから立たずに考えていた。自分と正一との違いに。第三者から見れば詞と正一どちらの方が良いかと言われると、大抵詞の方が良い答える。ただそれは他人からみた考えであり、本人の意見とは違っていた。詞は今の自分がとてつもなく嫌いだった。猫を被り、この先の人生をより良くするためとはいえ自分を偽っている事実に何も変わりはなかった。その事実は今も自分を苦しめている。

詞は初めて他人、正一が羨ましいと感じた。詞は成績優秀、容姿端麗、また性格が良く知り合いもたくさんいる。しかしそれだけなのだ。正一にはあって詞にないもの、それは本当の自分を出せる”親友”もしくは”友達”の存在だ。

そんなもの必要ない、そんなものこの先何も役に立たない、知り合いだけで十分。そう考えながら帰路につくがその足取りはとても重かった。そして自分が持っている手帳を出す。その手帳の中身は絶対に他人に知らたくない内容が書かれていた。その手帳の呪縛から逃れることが彼女には出来なかった。その手帳を手放すことは今までの自分を全て否定することになる。それはどうしても出来なかった。

 

「くっ・・・」

 

詞は苦しそうに息を吐き自宅への道を歩むのであった。

 




久しぶりにアマガミプレイして理穂子ルート行こうと思ったら、いつの間にか絢辻さんルートに入っていた。何言ってるかわからねーとは思うが、俺も何をされたのかわからねーんだ…
感想などお待ちしております!!!


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不良少年と仮面優等生6

絢辻さんが登場しないだと・・・?

(2016/05/09 23:47)
基本的な文言修正&本文追加いたしました。


「女の子とデートするだって!?」

 

いつものように正一、純一、梅原は屋上で昼飯を食べている時に純一が言った言葉に梅原は驚きを隠せないでいた。

 

「あのクリスマスに絶望を通り越して常に賢者モードの大将がデートだとお!!このお!このお!!」

 

「い…痛いよ!梅原!」

 

と梅原が純一にチョークスリーパーを掛けながら絡んでいる。当の本人の純一は苦しみもがいている。

 

「で、誰と行くんだ?」

 

それを見ながら正一は煙草を吹かしながら純一に聞いた。

 

「梨、梨穂子と行くんだ…」

 

「梨穂子っておまえ、桜井さんかよ!」

 

桜井 梨穂子。彼女は純一の幼稚園時代からの幼なじみの女の子でその付き合いはかなり長い。正一は純一と初めて会った時に助けた(?)女の子である。

その時から正一も梨穂子と付き合いはあった。正一は梨穂子が苦手だった、別に嫌いとかではなく彼女と正一は住む世界が違うものであった。

ある時、梨穂子は純一と正一を招いて食事会を開いてもらったことがあった。理由は単純で梨穂子の両親が梨穂子を助けた男の子にお礼がしたいというものであった。純一は正一の友達という立場で招待された。まあ、梨穂子と正一が2人で話なんてできないのでその間を保つ潤滑油みたいなものだった。梅原も誘ったが、実家の東寿司の手伝いのため来れなかった。正一は最初渋ったが、純一の必死の願いで行くことにした。何だかんだ言って正一は純一や梅原のお願いには弱いのだ。

行った結果はとても良かった。梨穂子の両親は正一の金髪で不良の外見にも特に気にせずに梨穂子を助けてくれたことに対しお礼を言った。正一は特に文句を言うことなく頭を下げていた。頭を下げる理由は無いが何て言葉を返せば良いか分からなかった。今まで、説教や文句を言われることはあれどお礼を言われることはほぼ無いため困惑していた。その後は鍋をつつきながら食事をしていたが、正一はどこかその光景を他人の様に見ていた。最初は分からなかった、そこにいるのは自分で純一、梨穂子、そして梨穂子の両親がみんな笑いながら食事している。そして分かったのだ。自分はこの場にふさわしくないと、この場が楽しくないわけではない、自分には合わないのだ。だから、正一は食事中で楽しい雰囲気の中で静かに言った。

 

 

 

 

“すいません、俺…帰ります”

 

 

 

 

純一、梨穂子、そして梨穂子の両親は驚いたように正一を見た。

 

“料理がおいしくなかったかい?””何か気に障ること言ったかしら?””どうしたの正一?”など正一を心配する言葉を皆言った。その言葉は慈善とか偽善とかそういうものでは無く、本当に正一を心配する声だった。だが、その声は正一にとって嬉しくもなくただただ苦痛であった。この優しさに慣れたら自分が自分でいられなくなるそんな恐怖があった。

それ以降、梨穂子と正一はきまずい関係が続いた。梨穂子はただただ、正一に謝罪をした。自分や家族が正一に対し何か悪いことをした記憶はないがあの食事の時にきっと正一の気分を悪くした、そんな考えで謝った。しかし正一はその梨穂子の謝罪に対し

 

“別に、何でもないから気にするな”

 

というばかりであった。そんなのこと言われれば気にする梨穂子であったが純一の気遣いもあり、梨穂子が正一と会う機会は激減していた。

そんなこともあったが、正一は桜井梨穂子という女性を認めていた。純一とくっつくにはとても良い女性であると感じていた。ただ2人ともかなりのおせっかいであるが。

 

「そこで梅原や正一に相談があって」

 

「おうおう、何よ、この梅原に任せろ。」

 

「何だよ、相談って。」

 

梅原、正一は純一からの相談に耳を傾けた。親友の頼みだ。2人は自分の出来ることなら何でもする勢いで聞いた。

 

「あ、遊びに行くときの服とかどこがお勧めの場所を聞きたいんだ。」

 

純一は服やデートプランとか知らないかと相談した。勿論服とかはあるが、それは男同士で行くおしゃれも欠片もないものであった。しかも遊びに行く場所もゲーセンとかが主でどこが女の子に流行るとか絶望的に知らなかった。

 

「何だそんなことか、なら俺に任せろ!」

 

梅原はその性格ゆえ明るく面倒見が良いため友人は多い。それに伴いそれなりの情報を持っている。この街のお勧めスポットとか服とかは今から情報を集めて週末にでも見に行けば遅くはない。

 

「俺は情報を集める。そして集めた情報で週末見に行くとするか。ただ、土曜日は実家の手伝いがあるから日曜日でも問題ないか?」

 

「俺は構わん」

 

「僕も良いよ。」

 

「よし、じゃあ決まりだな。女の子から情報集めている少し待っててくれ。」

 

そういい梅原は走って屋上を去っていった。

 

「相変わらず騒がしい奴だ。」

 

梅原の気持ち満更分からなくもない正一であった。正一も純一のため何が出来るか考えていた。自分には梅原のように友人から情報を聞いたりすることは出来なかった。理由は簡単で彼にはそういう知り合いがいないからだ。ましてや彼にはそういうまどろっこしいことは苦手であり出来なかった。ふと考えが閃いた正一はスタスタと正一は屋上を去ろうとする。

 

「えっ、正一どこに行くの?」

 

「俺は俺なりに出来ることをする。」

 

「でも、情報は梅原が手に入れるし。」

 

「あいつが間接的に情報を集めるなら、俺は直接情報を集める。じゃあな」

 

「直接って正一何するんだろう…」

 

何か大変なことが起きそうな予感を純一は感じていた。

 

 

-----

 

正一が屋上から来た教室は2年B組であった。純一、梅原、詞の教室は2年A組でありその隣のクラスである。そう、梨穂子の教室である。昼休みの時間はまだあり、梨穂子はクラスで親友の伊藤 香苗と昼食を食べていた。その光景を見た正一はまたの時にするかとも考えたが、別に遠慮をする必要はないと教室に入っていった。別にドアを開けて音を立てたわけでもないのに教室に入った瞬間クラス中の視線を感じた。正一はこの輝日東高校内の唯一の不良であり、素行も悪い。別な意味で正一はこの学園の生徒に注目されていた。そんな人物が関係ないクラスに来たということは誰かが正一の癪に障ることをしたんだという考えに結び付いた。そんな周りのざわつきを無視し正一は目的の人物の席に歩いて行った。

 

「久しぶりだな桜井。」

 

「あ~、正一だぁ、久しぶりだね~どしたの?」

 

気の抜けた声で言葉を返した梨穂子であった。正一と梨穂子にとっては何の変哲もないあいさつだがクラスの連中は違った。”えっ、何あの子普通に話ししてんの!?”と驚きの感想を持った。

 

「ちょっと良いか?時間は取らせん。」

 

「あっ、うん、香苗ちゃんごめんね。ちょっと行ってくるね~」

 

「えっ、桜井、大丈夫なの?」

 

「??大丈夫って何が?」

 

「だって、相手はあの赤井君だよ。桜井の身に何かあるんじゃ…」

 

「正一は見た目あんなんだけど優しいから大丈夫だよ。」

 

「こんな見た目で悪かったな。問題ないなら行くぞ。廊下ですぐ済む話だ。」

 

そういい、梨穂子を連れ立って教室を出ようした矢先、

 

「ちょっと待てよ。」

 

声を掛けられた。正一がその声の方向を見ると、男子生徒が3人立っていた。

 

「松平君。」

 

「大丈夫だよ。桜井さんこんなゴミは僕達が処分してあげるから。」

 

「正一はゴミなんかじゃないよ!」

 

「桜井さん、あなたは誰にでも優しい。だけどその優しさは誰にでも向けていいものではない。例えばこんなゴミとかね」

 

「桜井、どうでも良いから来い。こんな馬鹿に時間取られるのも面倒だ。」

 

「馬鹿だと・・・!」

 

正一はそう言い教室の外に出ようとするが松平は正一の肩に手を置き、”誰が馬鹿かもう一回言ってみろ!”と叫ぶ。

 

「その手を離せ。」

 

「はあ?」

 

「2度は言わん、その手を離せ。」

 

「何で僕がお前のようなゴミの言うことを聞かなk」

 

松平はその先の言葉を言うことが出来ず、吹っ飛ばされた。なんてことはない、正一が彼を殴ったのだ。クラスから”きゃあ”という軽い悲鳴なども聞こえた。

 

「松平君!」

 

そういい梨穂子は駆け寄った。正一は少し罰が悪い顔をした。行内で問題を起こすなと純一や梅原からしつこく言われていたのにそれを破ってしまった。反省をしようとしたが、そこの男が絡まなければ問題は起こらなかったと責任転嫁をすることにした。

 

「もう、正一はすぐに手を出すからダメだって言ってるじゃん。ここはいいから正一は教室から出た方が良いよ。先生も来るかもしれないから」

 

「分かった。話は放課後でいいか?桜井。」

 

「うん、分かった。」

 

そういい、桜井は松平の看病に移った。松平は意識があり腫れた頬のまま先ほどの光景を見て、腹が立っていた。

(何でこんなゴミと桜井さんと仲良く…俺とはあまり話してくれないのにこんなゴミと話せるんだ…何で…何で…そうか桜井さんはこのゴミに脅されているから仲良くしているんだ。そうかやっぱりゴミは掃除しないと)

そう考え松平は近くのイスを手に持ち、振り上げ正一の元に走っていった。

 

「正一!!!」

 

「死ねええええええええええええええええええええええ!!!」

 

梨穂子が声を上げるのと同時か振り上げたイスが正一の頭上に落ち…なかった!正一はそのイスを手で持ち受け止めていた。そしてそのまま松平を蹴飛ばした。がはっ、という声のまま松平は床に転んだ。そのまま正一はイスを持ったまま松平の元に行き

 

「相手に死ねということは自分のその覚悟があってやったことだよな。じゃあ、俺がお前を殺す気で殴っても問題ないな」

 

「ああ…いや…すいません、許してください。」

 

「自分がやったと時は良くて自分がされる時に良くないのは調子が良すぎるよな。まあ、別に殺さないから大丈夫だから安心しろ。じゃあな」

 

そういい、イスを振り下ろそうとした際に梨穂子が松平の前に立ちふさがった。

 

「どけ、桜井。お前に用はない。」

 

「正一は何しに来たの。人を殴るために来たの?違うでしょ。正一ならこんなことやっちゃダメだって分かっているよね。」

 

----- (2016/05/09 23:47 追加スタート)

「これは俺とそいつに関係することだ。桜井には何も関係ない。速く消えろ。」

 

「私にも関係あるよ・・・正一は私の友達だもん!!」

 

"友達"他人から見れば何も根拠も意味のない発言ではあるが正一には心に響くものがあった。

 

"そうか、桜井はまだ俺を…"

 

大抵知り合いを家に招き何も理由を言わずに帰るのは失礼である。しかもその訳を離さずに長い年月関わらずにいた場合友人だなんて思わない、それが普通である。しかも正一は素行の悪い不良である。ますます関わろうとはしない。関わっても何も得なんてないからだ。そんな自分を彼女は友達と言ってくれた。それがうれしかった。なぜなら正一は今まで1人だったからだ。

----- (2016/05/09 23:47 追加エンド)

 

そして正一はこういう自分の意思を持った目にどうしても弱かった。誰しも自分の外見、素行などで判断するため自分に意見を言える人間はそういなかった。だからか自分に対し恐れずに物事を言う人間を苦手としていた。

 

ガシャンと音を立て正一はイスを放り捨てた。そして正一は何も言わずに教室を去ろうとした。

 

「放課後待っているからね~」

 

先ほどと打って変わってのほほんとする声に安堵を抱きながら正一はその発言に頷き、本当に教室を去るのであった。

-----

 




この小説のメインヒロインを梨穂子に変えよう(提案)
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