東方絵札録~Card In The Illusion Village~ (竹馬の猫友)
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第1話 始まりの隙間

鳴り響くクラクション。

眼前に迫る大型トラック。

甲高い音を立てこちらに突っ込んでこようとしている。

トラックと衝突するのが時が遅くなったかの如くスローモーションに感じる。

死へと少しずつ近づいているのがわかる。

このまま衝突すればきっと死ぬだろう。

それなのになぜか自分の頭は冷静に考えている。

いや、たぶんあきらめているのだろう。

 

「もう助からない。」

 

「避けられない。」

 

そんな考えが頭をよぎる。

周りもそう考えているだろう。

そんなことを考えていたとき、

 

「あなたはまだ生きたいかしら?」

 

女性の声が聞こえた。

生きたいに決まっている。

心の中でそうつぶやいた。

 

「なら一度だけ助けてあげる。ただし別の世界に行ってもらうけど。」

 

はい?別の世界って?

疑問に思った瞬間足元に違和感を覚え、視界が一瞬で変わる。

落ちている。

気味が悪い目玉だらけの空間の中を落下している。

上を見上げると穴、というよりも隙間のような部分から空が見える。

 

「あと、あ……に一つ…力をあげ…。」

 

まだ女性の声が聞こえるが風切音で部分的にしか聞き取れずついには聞こえなくなってしまった。

そして少年はあまりの現実離れしたこの状況に耐えられず意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体が浮いている感覚がする。

浮力で浮いている感じではない。

宙に浮いているような感じといえばいいのだろうか。

空でも飛んでるのかって?HAHAHA違いますよ。

ノーロープバンジーの真っ最中です。

 

「このまま地面に激突して死ぬのかな…。」

 

また意識を手放しそうになる。

 

「てか、どこ!?ここ!!」

 

叫んでなんとか意識を保つ。

周りを見渡しても雲の上ということしかわからない。

だが雲の上という割には意外と寒くない。

というより普通に過ごしやすい気温だ。

 

「普通もっと寒いものじゃないの?」

 

重量に任せて自由落下しているというのに気楽なものだ。

あまりにも現実離れした出来事を経験しすぎたせいだろうか。

そんなことを考えていると雲の中に突入した。

ここを抜ければ今いる場所が分かるだろう。

 

「はてさて、どの国の上にいるのやら。」

 

中国とかの上だったらまずい。

領空侵犯とか何やらで撃墜されるかもしれない。

あれ?人間って撃墜って言うの?

まぁどんな状況でも死ねるんだけどさ。

 

「あの女の人の声は何だったんだ?」

 

今になって考えてみると、生きたいか、とか、別の世界で、とかよくわからないことを言っていたな。

そんなことを考えていると緑が見えてきた。

 

「お、山らしきものが見えてきた。」

 

しかし一面の緑で場所は分からない。

ふと何となく視線を横に移してみると人が飛んでいる。

 

「え?」

 

人が…飛んで…る?

箒にまたがって飛んでいる人?のように見える。

 

「すごい、まるで魔法使いみたいだ。」

 

白と黒の服をまとった少女のような影はこちらに向かって飛んでくる。

しかもかなりのスピードで。

少女は手元のメモ?のようなものを見ているためこちらを見ていない。

このままだと激突してしまう。

まずい。

 

「おーい!ぶつかるから避けて!!」

 

もちろん自由落下中の自分は避けられないので避けるように促す。

しかし飛んでいるものと落下しているもの。

双方風の音で聞こえないらしい。

少女がふと前方、つまり自分のほうを向いた。

少女は驚いた顔をして落下中の僕を避けようと箒を横に向けて方向転換しようとした。

しかしそれは遅すぎたらしい。

少女と自分の距離はすでに1mも無いほどに近づいていた。

 

「あーこんなとき便利な能力とかあればいいのになぁ。」

 

死ぬ前にやってたゲームの能力が使えればなぁと頭の中にとあるカードを思い浮かべる。

1.5コストUC(アンコモン)高木清秀(1526~1610)。

戦国時代に生きた武将。生涯で四十五箇所もの傷を受け戦った猛将。

そしてその能力は、

「武力によるダメージを軽減する。」

そのカードを思い浮かべた瞬間身体が光だした。

そして俺はその現象を理解する前に、

 

ドンッ。

 

わき腹に鈍い衝撃。

どうやら箒の先が当たったらしい。

 

「ぐふぅっ…!」

 

獣みたいなうめき声を上げて僕はまた意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知らない天井だ…。」

 

はい。言ってみたかっただけです。

今日は意識を失うことが多いな。

 

「そんなことよりっと…。」

 

体は…動く。

頭を動かして周りを見てみる。ごく普通な和室だ。

少し昔の日本みたいな感じ?

 

「っとさっきのぶつかった場所はっと。」

 

体を起こして確認する。

痛みも無い。さっきぶつかったところに手を当ててみる。

痛くない。それどころか傷一つ無い。

 

「……まじか。」

 

これはさすがに驚く。

あの速度の物体がぶつかったら普通打撲、悪くて骨折とかのレベルだぞ。

 

「もしかしてあの身体が光ったのが原因かな?」

 

死ぬ前にやっていた、戦国大戦というアーケードカードゲームの

カードを思い浮かべた瞬間、身体が光りだした。

 

「思い浮かべたカードは武力ダメージ軽減できる高木さん。」

 

なるほど、どうやら僕は「戦国大戦のカードの能力を使える能力」があると考えていいらしい。たぶんだけど…。

もしかしたら他のカードゲームの能力も使えるのかな?

 

「…今度試してみよう。」

 

と一人能力に考えをめぐらせていると、

 

「あら、もう起きて大丈夫なの?ずいぶん丈夫なのね。もしかして妖怪の類かしら?」

 

えー…妖怪って…。

 

「僕人間なんだけどなぁ。」

 

少し抗議しながら声のするほうに顔を向ける。

自分よりちょっと下の年齢ぐらいの女の子が立っていた。

ただ少し変わった格好をしている。

赤と白の巫女服?にしてはずいぶん露出が高いな。主に脇の部分が。

 

「魔理沙とぶつかって地面に落ちて平気なわけ無いでしょ。そもそもただの人間だったらあんな場所にいないわよ。」

 

紅白の巫女服の女の子は訝しげな目線をこちらに向け話す。

あ、地面にたたきつけられたのか。

確かに人間だったら死んでるな。

 

「その魔理沙って誰?」

 

「あぁ、白と黒の魔法使いって言えばわかるかしら?んであなたは悪い妖怪?」

 

さっきのぶつかった魔法使いみたいなやつか。

ん?ちょっとまて。悪い妖怪て。さっきよりひどくなってるじゃないか。

あとその目線やめてください。

 

「なるほど。ありがとう。あと僕は人間だよ。どうやら僕の能力で体に受けるダメージを減らしたらしい。」

 

「らしいってあんたね…。自分の能力なのにわからないの?」

 

「まだ自分でも良くわかってないんだ。さっき気づいたばっかだし。」

 

というかよく自己紹介もせずにここまで話しているな。

それに気さくというかフランクというか、すごく話しやすいな。

 

「っとちょっと待って。自己紹介しとこう。」

 

そういうと少女は少し考え、

 

「まぁいいわ。私は博麗霊夢。この博麗神社の巫女をやってるわ。」

 

「僕は立花雪茂。ただの人間だからね?よろしく。」

 

と簡単な自己紹介をして手を差し出す。

 

「なに?」

 

何かされるとでも思ったのだろうか。霊夢は少し後ずさりをした。

 

「あ、ごめん。ただの握手のつもりだったんだけど。迷惑だったかな。」

 

迷惑だったら申し訳ない。男に耐性が無いかもしれないしな。

純粋に心に思ったことを口に出し霊夢に謝る。

その言葉を聞いた霊夢は少し驚いた表情をし、

 

「…こっちこそ悪かったわ。妖怪だとか疑って。あんたみたいなやつ妖怪にはいないわね。」

 

ようやく誤解が解けたようだ。

そこでさっきから疑問に思っていることを質問する。

 

「そういえばさっきから疑問に思っていたけれど妖怪ってほんとにいたんだ。」

 

「え?知らないの?もしかして外界の人間?そういえば見慣れない服着てるわね。」

 

外界?何の話をしているんだ?まるでここが別の世界みたいじゃないか。

服もごく普通の長袖のTシャツにジーパンというファッションセンスの欠片も無いものだ。この服装が珍しいのか。

そういえばここ少し古めかしい神社だけど日本じゃないのかな?

でも日本語通じてるしなぁ…。

一人で頭の中に考えを巡らせる。

 

「はぁ、紫の仕業ね…。」

 

「紫?」

 

「えぇ、この幻想郷の創設者八雲紫。」

 

 

……幻想郷?あぁ…どうやらこれがさっきの女性の言っていた別の世界か。

よし!もう割り切ろう。ここは幻想郷という場所で、

魔法使いとか、妖怪とか、特殊な能力とかが使える場所。OK!

 

「よし了解。詳しいことはいいや。ともかく世話になったよ。ありがとう。で、ところでどっか空き家とか無い?」

 

別の世界ということは自分の家は無いはずだ。行動を早く起こしてしまおう。

しかし、そう思っていた僕の考えは霊夢の一言で全て覆される。

 

「ここに住めばいいじゃない。」

 

「…え?さすがに異性二人で住むって言うのはまずいんじゃ…。」

 

「私は気にしないから安心していいわよ。」

 

えぇー…。それもそれでどうなの…。

 

「………霊夢がそう言うんだったらお言葉に甘えてもらおうかな。」

 

ぶっちゃけ霊夢可愛いし僕としてはありがたいんだけどね。

でも世間一般的にみて未成年の男性と女性が一緒に暮らすってどうなんだろうね?

あ、ここ幻想郷か。HAHAHA。

みたいな一人漫才を頭の中でしていると。

 

「よし!決まりね。んじゃ異変解決しにいくわよ。」

 

異変てなに?

もうわけがわからないよ……。

 

少年は本日3度目、意識を手放した。

 

 

 

 

 




はじめまして。竹馬の猫友と申します。
普段は絵とか描いてるんですがちょっと小説に興味が出たので少し書いてみました。
初めての作品で小説なんぞの知識なぞまったく持っていないもので、
大変読みづらい、下手な文章になってしまったと思います。
あと戦国大戦の話が出てくるときはできるだけ説明を入れてわからない人にも
わかるような文を書くよう努力します。
今後メジャーなカードゲームも出てくるかも…?
あと更新は不定期ですができるだけ早く投稿できるようがんばります。

8/12追記 文章の修正を行いました。それに従いサブタイトルを変更しました。
8/13追記 文章の修正を行いました。
10/6追記 文章の修正を行いました。


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第2話 新参者

霊夢「よし!決まりね。んじゃ異変解決しにいくわよ。」

雪茂「ごめん少し寝かせて。」

霊夢「ちょ!起きて!あ…気絶してるのね…。」




本編どうぞー。





「…ん……あ、れ?また気絶しちゃってたのか。」

 

先ほど見た天井。少年は先ほどと同じところで寝ていた。

 

どうやらまた僕は気を失っていたらしい。

とりあえず身体を起こす。

 

「霊夢が運んでくれたのかな?」

 

「いや、私が運んだんだぜ。」

 

後ろで聞きなれない少女の声がした。

 

「うわっ!?」

 

「わっ!?」

 

まさか返事が返ってくるとは思ってなかったので声を出して驚いてしまった。

その驚いた声でその少女も驚いてしまったようだ。

 

白と黒。その少女を言葉で表すとしたらそんな感じだろう。

白いシャツに黒いベスト。黒い帽子に白いフリルのついた黒いスカート。

まるで魔法使いのような少女がそこにいた。

 

「ご、ごめん。」

 

驚いて尻餅をついてしまった白黒の少女に謝る。

突然のこととはいえ大きな声を出して驚かせてしまったのだから謝っておくのが礼儀というものだろう。

 

「い、いや、別に気にしてないからいいんだぜ。」

 

白黒の少女はすこし震えた声で言う。

口では気にしてないというが、本当は少しの恐怖心があったのだと思う。

名も知らない赤の他人にいきなり大きな声を出されたら誰だって少しは驚くのではないだろうか。

 

「……ん?」

 

この白黒の女の子どっかで見たことあるような…?

もしかしてさっきぶつかった女の子じゃないのか?

 

雪茂はそう考察すると質問をした。

 

「あ、もしかして君僕とぶつかった子?」

 

「あぁ、そうだぜ。よく覚えてたな。」

 

あ、やっぱりそうだったんだ。

 

肯定の言葉を白黒の少女は口にする。

やはり自分の記憶は正しかったようだ。

 

「普通あんなことがあれば忘れようと思っても忘れないよ。」

 

「それもそうだな!それより悪かったな。あんなところに人間なんているわけないと思って余所見してたぜ。」

 

たしかに普通あんなところに人間はいない。

それより今更ながらに考えてみると下方向に落下している自分と横方向に移動している少女。

その両者がぶつかった。なかなかにすごいことだ。

確かに運は悪かったかも知れないが、それのおかげで能力について少しわかったのだからむしろ運が良いと捉えていいのかもしれない。

と、考えるのはこの辺にしておこう。

 

「まぁ、怪我も無いしもう大丈夫だから気にしないでよ。」

 

「そういってもらえるとありがたいんだぜ。」

 

自分だっていまだに信じがたいのだ。

だが不思議なのが目の前の少女もそこにいたということだ。

落下していた自分とは違い『飛んでいた』。

しかも箒にまたがって。魔法使いなのかな?

 

雪茂が考え事をしていると、

 

「あ、さっきの話だがお前をここまで運んだのは霊夢に頼まれたからやっただけだぜ。」

 

白黒の少女はここまで運んだのは霊夢に頼まれたからだという。

自分の中で少し冷たい少女という霊夢のイメージが変わった。

いわゆるクーデレってやつかな?たぶん霊夢の場合はそれに該当する気がする。

 

それより自分をここまで運んだと当たり前のように白黒の女の子は言うが、

一応それなりの身長と体重があるから女の子からしたら重いはずだ。

それなのに外で倒れた自分をここまで運ぶというのは重労働だろう。

 

「運んでくれてありがとうね。重かったでしょ?」

 

「ま、重かったけど想像してたのより軽かったから大丈夫だぜ。」

 

見た目によらず結構力あるんだな。

自分より背は小さいのに。

 

「……ん?」

 

そういえば先ほどから霊夢の姿が見えない。

雪茂が部屋を見回しているとその様子に気づいた魔理沙が、

 

「霊夢なら異変を解決しに行ったんだぜ。」

 

あぁそういえば気を失う前にそんなこと言ってたような気がする。

 

 

 

 

 

 

―――――『異変』それは普段見られない異常な現象のことを示す。

 

 

 

 

 

 

そんなことが幻想郷では起こってるのか。

それは人間に解決できるものなのか?

 

雪茂はすこし考え白黒の少女に聞くことにした。

 

「異変って?」

 

「そういえば外界の人間だって霊夢が言ってたし異変のことなんて知らないか。」

 

どうやら霊夢は自分のことを白黒の少女に少し説明してくれたらしい。

自分から説明する手間が省けて助かった。

また妖怪の類と思われたら誤解を解くのが面倒だ。

 

「っとごめん質問したのは僕だけどその前に自己紹介しよう。」

 

異変よりも先に自己紹介をしておこう。

そのほうがお互い話しやすいだろうし。

 

「そうだな!いつまでもお前じゃなんか悪いし。おっと、私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ。」

 

普通…?魔法使いである時点で普通じゃない気もするけど。

この幻想郷だと当たり前みたいなものなんだろうな。

と、考え事はやめて自分も簡単な自己紹介をする。

僕考え癖でもあるのかな…?

 

「僕は立花雪茂。普通の人間だよ。ただ能力はあるみたいだけどね。」

 

「雪茂か。よろしくだぜ。ところで能力ってどんな能力なんだ!?」

 

興味津々に魔理沙は聞いてくるが説明しようにも自分がよく分かっていない。

正直によく分からないって言っておこう。

 

「…うーん。実は能力なんだけど、自分でもまだよく分かってないんだよね。」

 

雪茂は少し考えてから答える。

 

「まぁ幻想郷に来たばっかりだし、よく分からないのも無理はないかもな。」

 

早く自分の能力を理解したほうがいいんだろうな。

 

「って僕のことは置いておいて異変ってのはなに?」

 

自分から脱線させてたけど話を戻す。

 

「おっとそうだったな。異変ってのは………。」

 

 

そこから魔理沙は異変のことについて話してくれた。

 

この幻想郷での異変とは、

 

・誰かが首謀者となり何かしらの事件を起こすということ。

・その事件は基本的に異変解決者が解決するということ。

・そして霊夢と魔理沙はその異変の解決者であること。いわゆる警察みたいなもの?

 

簡単に説明するとこんな感じだろうか。

それにしても現実離れしている。

普通そんな事件起こらないし起こったとしても警察とかが解決するだろうし。

 

「ありがとう。でも異変を解決するってどうやって?説得でもするの?」

 

「いんや。どうせ犯人なんて説得なんて聞かないから『弾幕ごっこ』で勝負を決めるんだぜ。」

 

また分からない言葉だ…。

 

「……ごめん。今度は弾幕ごっこについて教えてもらえる?」

 

「そうか。弾幕ごっこも分からないよな。」

 

そういうと魔理沙はまた説明をしてくれた。

掻い摘んで説明すると、

・ただやたらめったに弾幕を撃つのはナンセンス。

・美しさを追求すること。

・そして弾幕ごっこにはスペルカードというものも存在していてそれは、一種の必殺技のようなものであるということ。

簡単にまとめるとこんな感じかな。

細かいことはよく分からなかったけど。

 

「じゃあ魔理沙も異変を解決しに行くの?」

 

「そのつもりだったけどお前のこと頼まれちゃったし今回はパスかな。」

 

そうだったのか。てことは今霊夢は一人で解決しに行ってるってことか。

迷惑をかけてしまったかな。

 

「そんなばつの悪い顔をしなくても大丈夫だぜ?一人で行った霊夢を心配してるんだろ?」

 

「うん。僕はもう大丈夫だから霊夢の手助けに行ってあげて。」

 

その間に僕はお世話になったお礼にでも神社のなかの掃除でもしておこう。

と思っていたのだが、

 

「霊夢から頼まれてたのは雪茂の看病だけじゃなくて、雪茂の能力とか弾幕ごっこの練習も含まれてるんだぜ。」

 

「能力については分かるけど…僕が弾幕ごっこ?」

 

「そうだぜ。今度から雪茂も一緒に異変解決しに行くんだとさ。」

 

……ちょっとマジですか。その話。

出来れば争いごととかしたくないんだけどなぁ。

というか外界から来た人間が異変を解決しに行っていいものなのだろうか?

 

「ま、安心しとくといいぜ。なんせ私と霊夢がいるんだからな。」

 

「え、じゃあ僕要らないんじゃ…。」

 

安心しとけっていうのはそれほど二人が強いということなんだろう。

だったら僕が行く必要はないはずだ。

雑用でもあるのかな?

 

「なに言ってんだよ。人手は多ければ多いほどいいだろ?」

 

…単純な理由でした。

てことは僕もその弾幕ごっこに参加するのかな?

 

「ま、それは置いといてとりあえず、能力がどんなのか調べるところからはじめるとするぜ。」

 

雪茂の思考を遮り魔理沙は言った。

 

「そんなの簡単に出来るの?」

 

魔法でも使って調べるのだろうか。

しかし雪茂の質問の答えは予想外のものだった。

 

「ま、とりあえず外に出るんだぜ。」

 

魔理沙の言葉に従い雪茂は外に出る。

外で調べるのかな?

だがそれも違うようだ。

 

そして魔理沙はおもむろに箒を手に取ったかと思うとすぐさま跨った。

 

「よし。じゃあまず雪茂の能力の解明に行くぜ。さ、はやく後ろに乗るんだぜ。」

 

そんな自転車の二人乗りみたいなノリで乗れるのか?箒って。

雪茂はそんなことを考えながら魔理沙の後ろに跨り箒を持った。

なんだかんだで突拍子もないことに慣れてきてるのかな。

 

「そんな乗り方じゃ飛んでるうちに落ちちゃうぜ?」

 

魔理沙は雪茂の方を見てそう言った。

跨るのがいけなかったのだろうか?

雪茂は一度箒から降りると横向きに箒に座った。

 

「こう?」

 

「あはは、いや向きじゃなくて…。」

 

魔理沙は笑っておもむろに僕の両手をつかんできた。

そしてそのまま自分の腰に僕の手を回した。

つまり魔理沙に後ろから抱きついているような形である。

 

自分とは違い華奢な体。服の上からとはいえ十分にわかる。

今自分は女の子に抱きついているんだと、否応にも意識してしまう。

 

魔理沙は雪茂が色々考えているとも露知らず、

 

「よっし!んじゃ準備OKだな?しっかりつかまってるんだぜ?」

 

魔理沙がそう言ったかと思うと、地面を踏んでいた感覚が無くなり、視界が少しづつ高くなっている。

 

飛んでいる。

 

先ほどまで考えてたことが全て頭から飛んだ。

というよりいきなりのことだったので雪茂の思考が停止してしまっていた。

 

「…はっ!?」

 

やばい。やばい。今また意識飛びかけてた…。

 

雪茂の思考が働き出したころ、もう僕らを乗せた箒は神社の上まで上がっていた。

 

今ちらっと見たけど下を見るのはよそう…。

 

「んじゃ、しゅっぱーつ!」

 

その一言で上に向かっていた推進力が今度は横への推進力に変わり、急加速を始めた。

確かに魔理沙の言うとおりさっきみたいな乗り方じゃ落ちていたかもしれない。

 

 

 

魔理沙の腰に回した手に少し力が入った雪茂であった。




あぁ^~仕事が忙しいんじゃぁ^~

更新がほんとに不定期なので次はいつの更新になるやら…。

出来る限り早く更新できるようがんばりますー。


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第3話 居眠り門番

雪茂「(魔理沙いい匂い。)クンカクンカ」

魔理沙「(なんかすごく鼻を押し付けられてる気がする///)」

霊夢「次の私の出番いつだろ。」

雪茂、魔理沙「「知らん。」」

霊夢「てか前回の終わりとぜんぜん違うじゃない!雪茂変態っぽいし!」

うp主「男はみな変態である。」




本編どうぞー。


魔理沙の箒にまたがり飛んで数十分。

雪茂達は湖の上にいた。

 

「ねぇ!魔理沙!?今どこに向かってるの!?」

 

結構な速さで飛んでいてとても風切音がうるさいため少し声を張って魔理沙に聞く。

 

「紅魔館ってとこだぜ。そこに私の知り合いがいるから雪茂の能力を見てもらおうかと思ってさ。」

 

魔理沙が話をしやすいように飛ぶ速度を少し落として雪茂に答える。

 

「みんなもそうやって自分の能力を知ったの?」

 

もしそうだったとしたら、その魔理沙の知り合いはかなり大変そうだ。

 

「いや、こうやって調べてもらうのは結構珍しいんだぜ。大体は感覚で自分の能力がわかるからな。」

 

「なるほどね。」

 

そういった会話をしていると壁一面真紅色の建物が見えてきた。

…なんか目に悪そうだ。

 

「お?ようやく見えてきたな。んじゃ飛ばすぜ!」

 

「ちょ、まって!いきなり加速しないで!!」

 

先ほどまで速度を緩めていたために魔理沙にはほとんど手を添えるだけのような状態だったが、

いきなりの加速と落ちるかもしれないという不安感からか雪茂は魔理沙に再び抱きつくような形になってしまう。

しかも強めに。

 

「雪茂。お前結構大胆だな。」

 

魔理沙が少し顔を赤らめながらこちらを見ながら言うが、決してそういうことではない。

 

「ちがっ…。って前見て!前!」

 

「へ?」

 

少し間抜けな声を出し、雪茂の言われたとおり魔理沙は前を向く。

目の前に広がる一面の真紅の壁。まるで血でも塗りたくったような色だ。

そんな壁がぶつかるまで残り10mほどに近づいていた。

それもそのはず。

目の前に館が見えるほどの距離。

そこでGがかかるほどの加速をすればすぐに到着する。

ここまでは良かった。

しかしそこで魔理沙は余所見をしてしまった。(半分僕の所為)

そして止まるタイミングを完全に見逃してしまったわけだ。

ということは…。

 

「あ、やばい。雪茂。これぶつかる。」

 

「うん。わかってる。」

 

半ば二人ともあきらめてぶつかるのを覚悟した。

 

しかし、人間というのは不思議なもので、自分が危険に犯されるとタキサイキア現象というのが起こる。

簡単に説明すると、命の機器に脳以外の感覚機能を放棄し視覚情報処理に集中して、危機回避の可能性を探すため、通常よりずっと多い処理を行うため、そのわずかな時間帯だけ長く感じる。というようなもの。(諸説有り)

その現象が雪茂に起こった。

 

その短い時間の中で感覚的にだが、自分の能力をもう一度使うためカードを思い出していた。

 

こんなとき使うとしたら…、やはり武力軽減がある計略がいいのだろうか。

しかし高木さんだと自分しか効果が無い。でも采配って魔理沙にも効くのか?

いや、やってみなくちゃわからない。カードを考えるんだ。

雪茂は思考をフル回転させる。

転進系?いやそれだとどこに転進するのかわからない。

呪縛系?それもだめだ。あれはあくまで敵にかける計略。自分にかかるかわからない。

…いや。ある!味方と敵の速度を下げる珍しい計略。

 

 

C河合吉統(かわいよしむね)1521~1573

 

朝倉家の家臣であり、内政手腕に優れており、奉行衆を務めた。

そして家臣団では最高位に就き「一乗谷奉行人」と称された。

 

計略:『金縛の呪い』・・・敵と味方の移動速度を下げる。

 

 

頭の中でそのカードを思い浮かべる。

 

「金縛の呪いで止まれ!」

 

雪茂の体がピンク色のように発光した。

その瞬間二人の乗っている箒はとても遅くなる。

 

「あ、あぶなかった…。」

 

思いつきの行動だったがうまくいったようだ。

今更だけど采配ってどんな範囲で効果があるんだろ?

曖昧なままだと危なくて使えない。

 

「た、助かったんだぜ。」

 

そして箒はゆっくりと下に下りてゆく。

 

 

 

 

 

うp主「突然ですがここで専門用語の説明」

 

 

計略…他のゲームでいう必殺技のようなもの。

   実際のゲームでは、士気というコストを使い使用することが出来る。

 

士気…計略を使用するために必要なコスト。時間経過によって増える。(士気を増やせる計略や士気の上昇速度を上げるものも有り)

   最大は12士気まで貯めることができます。

   うp主「他のゲームでマナとかって言われてたりするものを想像してもらえるとわかりやすいかと。」

 

采配…計略の種類。前の話で使った高木さんは自身のみの強化ですが、采配と呼ばれるものは一定の範囲内の味方全てに影響する計略です。

   そのため自身単体強化するものよりも基本的に士気が高めに設定されています。(一部例外有り)

 

転進…計略の種類。戦国大戦では自城と敵城が存在します。転進系の計略は采配のような一定の範囲が有り、この計略を使うと範囲内の味方を自分の城にワープさせることができます。

   城のなかの味方は攻撃を受けることが無いので(稀に攻撃できる計略有り)体力(戦国大戦内では『兵力』と呼ばれます)を回復するのに専念することができます。

   士気は基本的に低め。

 

呪縛…計略の種類。武将は戦場を駆け回りますが、この計略を使うとその移送速度が低下します。移動速度の低下値によって士気が大きくなったり小さくなったりします。

 

 

うp主「では本編に戻ります。」

 

 

 

 

 

 

「いきなり飛ぶスピードが遅くなったけど何が起こったんだぜ?それに雪茂もピンク色に光ってたし。」

 

「たぶん僕の能力だと思うよ。」

 

「よしわかった!雪茂の能力は”周りの速度を遅くする程度の能力”だな!それならさっき私とぶつかったときもぶつかる寸前に速度を遅くすればダメージは少ないし。」

 

魔理沙はそう言うと一人でうんうん頷いている。

随分自信ありげに言うもんだから「いや違うみたい。」なんて言い出せなかった。

先ほどの高木さん然り河合さん然りたぶん僕の能力は”戦国大戦の武将の力を使う程度の能力”だと思う。

もしそうだったら色々試してみたい。

 

「ま、ほんとにその能力かどうかは今から見てもらえばわかるんだけどな。」

 

と魔理沙はいうと箒をもって歩き出した。

 

どうも自分たちがぶつかりそうになった場所はこの館の門の近くだったらしい。

少し歩くととても大きい門が見えた。

…あの門の柱に座って寄りかかって寝てる人は誰なんだろう。

 

「あ、めーりんまた寝てるし。」

 

めーりん。という言葉が魔理沙から聞こえた。どうもその寝ている人の名前みたいだ。

にしても面白い名前だな。

 

「…はっ!?寝てませんよ!?すこしうとうとしちゃっただけで…あ、なんだ魔理沙か。」

 

俺たちに気づいたらしく飛び起きた。自分の体の前で手をぶんぶん振ってあわてていたが魔理沙の方を見ると落ち着きを取り戻した。

 

「なんだってひどいんだぜ…。」

 

「で、それよりそちらの方は?」

 

めーりんと呼ばれた女性がこちらに視線を向けてきた。

自己紹介しといたほうが無難かな。なんか魔理沙がそれよりってなんだぜーとか叫んでる気がするけど気にしない。

 

「はじめまして。立花雪茂といいます。」

 

とりあえず名前だけ名乗ってお辞儀をする。

 

「こちらこそはじめまして。紅美鈴と申します。この館の門番をやっているものです。えっと先ほど寝ていたのは忘れていたd…。」

 

自己紹介をしていたらいきなり美鈴が倒れた。頭を見てみると後頭部にナイフが突き刺さっている。出血がすごい。このままでは死んでしまう。

にしても血がすごい。地面に血だまりができている。

 

「あ、なんかクラっと…。」

 

今までに見たことのない血の量といきなり襲ってきたナイフの恐怖に雪茂のメンタルがやられてしまったらしい。

襲われてもなんでもいない雪茂もそこに倒れる。

そして雪茂は徐々に落ちてゆく意識の中でこう思った。

 

「…メンタル面を強くしなきゃ駄目だね。この世界。」

 

そして意識が完全にブラックアウトした。




タキサイキア現象って始めて言いました…。
どもです。竹猫です。
いつ戦闘になるんだろうなーとかあれ?私の文字数少な過ぎ?とか思ってる日々です。
もっと文章力がほしいんじゃー。
いつか茶番とかも入れたいとか思ったりそうでもなかったり。
出来るだけ更新早くできるようがんばりますー。


※霊夢さんはしばらくでてきません。


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第4話 星屑の竜

雪茂「メンタル鍛えないと…。」

魔理沙「どうやって?」

雪茂「さぁ?」

美鈴「あれ?私の出番は?」

雪茂、魔理沙「「無い。」」

美鈴「そんなぁ~…。」

うp主「ほんとはもっとめーりん出したかった。」




本編どうぞー。

あ、今回戦国大戦あまり関係ないです。


どのぐらい気を失っていたのだろうか。

真っ赤の部屋の中で目を覚ました雪茂はぼんやりと天井を眺めていた。

そして一つ気になることがあった。

隣のこのメイドさん誰?

目が覚めてチラッと横に目を向けると、銀髪のメイドさんが自分の寝ているベッドの横で椅子に座っていた。

本を読んでいるらしく目を向けた自分には気づかなかった。

かといっていきなり声をかけるのはどうかと思ったので声をかけずに現在に至るというわけだ。

にしても本を読んでいるだけなのにすごく絵になる。

たまに本を読みながら微笑んだりするのだがそのたびにドキッとする。

と、メイドさんを観察するのもこれくらいにしよう。

 

雪茂は体を起こし銀髪メイドさんのほうを向く。

 

「おはようございます…であってますか?」

 

「どちらかというとこんにちはの方が正しいと思うわ。」

 

銀髪メイドさんは本を閉じ僕の質問に答える。

 

「体のほうは大丈夫?」

 

少し笑みを浮かべ銀髪メイドさんが聞いてくる。

 

「…あ、はい。なんともありません。」

 

少し見とれてしまいそうになった。

顔を真っ赤にし雪茂は答える。

 

「本当に?顔真っ赤だけど?」

 

そういうと銀髪メイドさんはこちらに近づき雪茂の頬に両手をあて顔を近づけてきた。

 

「(え、まってまってまって!これどういう状況!?いやうれしいけども!てか僕初めてなんだけど!?)」

 

コツン。

 

「え?」

 

額に何かがあたった。

銀髪メイドさんの顔が近くに来たときに目を閉じてしまった雪茂にはどういう状況かわからなかった。

そして少し整理をして気づく。

…あぁ、これ熱測ってるんだ。

ちょっと目を開けてみる。超至近距離に銀髪メイドさんの綺麗な顔。

銀髪メイドさんは目を閉じているみたいでこちらが目を開けても目は合わない。

 

「熱は無いみたいね。よかった。」

 

口元に銀髪メイドさんの息がかかる。

 

「(この状態でしゃべるのはやばいですって!)」

 

一人悶々としているとメイドさんが顔を離し姿勢を正した。

 

「申し遅れました。私、紅魔館のメイド長、十六夜咲夜と申します。」

 

「ふぅ…あ、いえこちらこそ遅くなってすみません。ただの一般人の立花雪茂といいます。」

 

すこし呼吸を整えてから雪茂も自己紹介をする。

そうしてわかったことはどうやらここは紅魔館というらしい。

 

「ちなみにここへ運んだのは魔理沙だから礼なら魔理沙にいうといいわ。」

 

また運んでもらったのか。僕。あとで絶対礼しとかなきゃ。

 

「あ、わかりました。ありがとうございます。十六夜さん。」

 

「咲夜でいいわよ。」

 

「あ、はいわかりました。咲夜さん。」

 

「じゃあ魔理沙のところに行きましょうか。」

 

咲夜さんの言葉に頷き部屋をあとにする。

部屋の扉を抜けると真っ赤な廊下だった。

どうやら先ほどの真っ赤な館は中も真っ赤らしい。

目が痛い。

 

そして雪茂がドアを閉めるのを待って彼女は歩き出す。

歩きながら雪茂はここに来た経緯を簡単に説明した。

 

「なるほど大体わかったわ。たぶんその調べてくれる人というのがパチュリー様ね。というかあなたも能力持ってるのね。」

 

「はい。そうみたいです。自分でも良くわからないですけど。」

 

早く知りたいという気持ちもあるが知ったところでどうしようという気持ちがある。

知ってしまったら確実に例の異変やら弾幕ごっこに参加させられるはずだ。

どちらにせよ参加させられる気はするけど…。

そう考えたら知っておいたほうがいいか。身体の安全にもつながるし。

 

「もう少しで着くわよ…ってあぶない!」

 

考え事に集中していていつの間にか図書館の近くまで来ていたようだ。

そこまではよかったが考え事をしていた僕は目の前の段差に気づかなかった。

そして咲夜さんは段差に気づかない僕に注意をしたが遅かったようだ。

 

「え?…ってあぶなっ!」

 

ドンッ

 

「いったー。ってごめんなさい!」

 

「い、いえ、こちらこそ。」

 

どうやら躓いて転びそうになった僕を支えようとした咲夜さんを僕は巻き込んでしまったようだ。

というかこの体勢すごく危ない。胸にやわらかいのが当たってるし、足はいわゆる股ドン状態だし、顔めっちゃ近いし。

この状態他の人に見られたら…。

 

「どうしたんだぜ?…ってお前ら何してんだぜ!?」

 

「随分熱烈ね。せめて部屋でやってもらえないかしら。」

 

どうやら僕は運が無いらしい。でもフラグ建築力はあるみたい。

近くの大きい扉から音を聞いて出てきた二人に目撃されてしまった。多分そこが図書館だろう。

もしそうなら図書館は目と鼻の先だ。ここならさっきの倒れたときの音も聞こえるだろう。

にしてもタイミングが悪い。

 

「お前ら何時からそんな関係に…。」

 

少し顔を赤らめて魔理沙。

 

「やっと咲夜にも春が来たのね。レミィは許すかわからないけど。」

 

冷静な口調で紫色の髪の少女。

 

「ちがうんです!これは転びそうになった彼を助けようと…。」

 

少し慌てて言いながら今の体勢に赤面する咲夜。

 

「とりあえず離れますね!ごめんなさい!」

 

あやまりつつ素早く起き上がる雪茂。

 

 

~少年少女説明中~

 

 

「とりあえずわかったわ。あ、私はパチュリー。パチュリー・ノーレッジ。気軽に呼んでもらってかまわないわ。」

 

「あ、僕は立花雪茂です。よろしくおねがします。パチュリーさん。」

 

「にしても本当に驚いたわ。いきなりあんなところで発情してヤりはじめたらどうしようかと思ったもの。」

 

発情て…ヤるて…。結構言うなパチュリーさん。

それを聞いて魔理沙&咲夜さん赤面中。

 

「というか咲夜なら時間とめて助ければよかったんじゃないの?」

 

「た、たしかにそうなのですが…。完全に忘れてまして…。」

 

すこし俯きながら彼女は言う。

 

「もしかして本当に彼に気があって動揺してたとか?」

 

すこし意地の悪い顔をしてパチュリーが言う。

赤い顔をさらに赤くして咲夜さんは俯く。

あれ?そこ否定しないの!?

 

「あ、あの!それより僕の能力を見ていただける聞いてきたのですが!」

 

この話は終わりにしたい。ついには僕のほうにも火の粉が飛んできそうだ。

あとこの状態で魔理沙が先ほどから顔を赤らめて俯いたまま動かない。純粋なのだろうな。

あと先ほどから咲夜さんがありがとうとばかりの目線を送ってくる。

 

「むきゅー…。わかったわ。じゃあそこに座ってもらえるかしら。」

 

むきゅー?まぁいいか。

とりあえず指定された場所に座る。

六芒星?だっけ?たしかそんな感じの模様が床に描かれており、その中に椅子がポツンと置いてある。

そこに雪茂は座っている。

 

「座りました。」

 

「じゃあはじめるわね。」

 

そう言うと手をこちらにかざし何かを詠唱し始めた。

それに呼応するように下の紋様が光りだす。

 

なんだろう。なんだか身体の中を見られているような不思議な感覚がする。

しばらくその感覚が続いたがいきなりその感覚が無くなった。

パチュリーさんが詠唱をやめたようだ。ということは僕の能力がわかったということかな。

しかしパチュリーさんは首を傾げている。

 

「どうかしましたか?」

 

魔理沙たちもすこし不安そうな顔をしている。

 

「いえ、別になんともないのだけど私の知識にない情報が入ってきて困ってるのよ。」

 

やはり戦国大戦のことだろうか。こちらにはそのようなゲーム無いだろうし。

 

「えっと、とりあえず雪茂。あなたの能力は”カードの力を操る程度の能力”よ。」

 

「え?カードなんですか?」

 

ということは戦国大戦以外のカードも使えるということか。

…あまり詳しくは無いけど。

 

「えぇそうね。カードよ。どうやらカードに書かれているものを具現化したり、能力を自分の力として使用できるらしいわ。」

 

チート乙。と言われそうな能力だ。

それにしてもすごいな。具現化まで出来るのか。

 

「ちょっと試しにやってみるんだぜ。」

 

「オッケー。」

 

なにをしようか。具現化をしてみたいな。

簡単なのにしておこう。そういえば前に学校行ってた時にすこし遊戯王をやったな。

かじった程度だけど少しはカードがわかるぞ。

 

「クリボー召喚!」

 

パァアンというような不思議な音とともに毛むくじゃらの毛玉が出現する。

 

「クリクリ~。」

 

 

クリボー 闇属性 悪魔族 効果モンスター

星1 攻:300 守:200

相手ターンの戦闘ダメージ計算時、このカードを手札から捨てて発動できる。

その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

 

 

たしか遊戯王の主人公の愛用していたカードのはずだ。

よく見ると愛嬌があって可愛い。気がする。

あとクリボーを出したときに少し力が抜けた気がする。

 

「うおっ!?なんだぜこいつ!?妖怪の一種か?」

 

「妖怪にしては可愛らしいわね。」

 

「ナイフで刺したらすぐに死んじゃいそうね。」

 

一人は妖怪だとか言ってるし一人は物騒なこと言ってるし。

好印象はパチュリーさんだけか。

 

「クリ~…。」

 

あ、すこし悲しそうな顔した。

さすが言葉はわかるらしい。

 

「ごめんね。戻っていいよ。」

 

「クリー。」

 

そう言うとふわぁっと細かい光の粒になって消えた。

あとそれに伴って先ほど抜けた力が戻ってきたような気がする。

微々たるものだからよくわからなかったけど。

 

「なるほど。かなり応用が利きそうな能力だな。」

 

「そうだね。ありがとね魔理沙。ここに連れてきてもらわなかったらわからなかったよ。あとさっきはまた運んでくれてありがとう。」

 

礼を言い損ねていたので今のうちに言っておく。

 

「別に気にしてないからいいんだぜ。」

 

にしても”カードの力を操る程度の能力”か。

今度は戦国大戦の武将でも出してみようかな。

話し相手にできそう。

 

「あとパチュリーさんと咲夜さんもありがとうね。」

 

「いえ、こちらこそ珍しいもの見せてもらったわ。ありがとう。」

 

「ま、暇なときはまた来なさい。図書館の整理ぐらいならさせてあげるわ。」

 

「う、うん。ありがとう?」

 

なんだかありがたくないけど一応お礼を言っておこう。

 

「よし、んじゃ帰るとするぜ。次は弾幕ごっこの練習をしなくちゃな。」

 

そういって二人に別れを告げ紅魔館を出る。

あ、美鈴生きてる!ってまた寝てる。

気にしないでおこう…。

 

「あ、帰りは自分の力で帰るから魔理沙は神社まで道案内(空だけど)してくれる?」

 

雪茂が魔理沙に提案する。

 

「雪茂がそう言うならそうするぜ。能力の練習にもなるしな。」

 

「んじゃちょっとまってて、いいカードを探すから。」

 

「わかったぜ。」

 

了承をもらい少し考えることにする。

 

遊戯王のカードは色々あるから鳥系のモンスターを召喚して帰ろう。

なにがいいかな。ぶっちゃけラーの翼神竜とかオシリスの天空竜とか出してみたいけどやめておいたほうがよさそうだな。

たぶん僕の能力は自分の体力を分けて具現化するのだろうし、そんな強大な力を持ったモンスターなんで出したら一気に体力を持っていかれそうだ。

もっとお手軽な鳥やドラゴンを探さないと。

 

よし。鳥系にしよう。

かじった程度といっても結構カードゲームショップに行ったりしてカードは見てたんだ。

確か霞の谷(ミストバレー)モンスターによさそうなのがいたはず。

……決めた。

 

霞の谷(ミストバレー)の風使いを召喚!」

 

そう言うと先ほどみたいにモンスターが現れる。

 

「ピー。」

 

 

霞の谷(ミストバレー)の風使い 風属性 鳥獣族 効果モンスター(チューナー)

星2 攻:400 守:800

1ターンに1度、お互いの手札が5枚以上の場合に発動できる。

お互いのプレイヤーは手札が4枚になるように手札を墓地へ送る。

 

 

あ、結構小さい。カラスより少し大きいぐらいだ。

ピヨピヨと僕の周りを飛び回る。可愛い。

それはいいのだが、さすが風使い。

僕の周りに突風が起きている。

 

「ず、随分可愛い鳥だな。」

 

すこし笑いながら魔理沙が言う。

 

「…ごめん。もどっていいよ。」

 

「ピー。」

 

一鳴きして風使いは消えていった。

もう一度探さなきゃ。やっぱりもっと大きいのにしないと駄目なのかな。

鳥にこだわらず。じゃああいつにしよう。

 

「出でよ!スターダスト・ドラゴン!!」

 

身体から力が抜ける感じがする。しかも今度はかなり持っていかれたようだ。

でもかろうじて立てるくらいの体力はあるらしい。

でも息切れがひどい。膝も笑ってる。

 

しかし目の前には大きい白い竜。それが力の大きさを物語っている。

頼もしい。だが良く考えてもらいたい。今からただ帰宅するだけなのだ。

明らかにオーバースペックだがいいだろう。

レベル8のモンスターは少し厳しい。そのことがわかったからよしとしよう。

 

「よ、よし。帰ろうか。ゼェゼェ」

 

「だ、大丈夫か?」

 

「まだ大丈夫…。早めに帰ろう…。」

 

そう言って目の前のスターダスト・ドラゴンに乗せてもらえるよう頼もうと思ったら、

言うより早くスターダスト・ドラゴンが僕を優しくつかみ背中に乗せた。

どうやら頭の中で会話が出来るらしい。便利だ。

 

「よし。行こうか。」

 

「んじゃ案内するぜ。」

 

スターダスト・ドラゴンに飛んで魔理沙についていくように頭の中で頼む。

 

グオァ。

 

やさしめに一鳴き。しかし凄みがある。

ちょっと休むから着いたら宜しくね。

と伝える。

 

少し首を縦に動かしたということは、了承したのだろう。

あとは任せて少し休むことにする。

 

「んじゃはぐれないように着いてくるんだぜ。」

 

その言葉を聞いて雪茂は少しの眠りについた。




ちょっぱやで書きました!
誤字?脱字?確認してません!
あ…はい。ごめんなさい。次からちゃんと確認します…。
カードの力全部操れるとかやっぱチート乙ですね。←今更。
といってもうp主が遊戯王とバトスピとデュエマ(ほんの少し)と戦国大戦しかわからないので(「しか」じゃない気がする)あまりカードの種類は出しません。(出ないとは言ってない。)
やはり文才がほしいです。というか書いてて途中Rのつくような展開に行きそうだったので修正に時間かかりました。

あとうp主の中の咲夜さんのイメージがブレイクしました。
もっとクールなキャラのはずだったのに書いてるうちに楽しくなってブレイクさせました。後悔はしていない。

長文失礼!ではまた次回。

9/10追記 文章修正


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第5話 大坂左右之大将

魔理沙「そういえばさっきの咲夜だけど…。」

雪茂「僕は何もしてない。」

咲夜「(雪茂って結構強引なのかな。)」

雪茂「なぜそこで顔を赤らめているのでしょうか。」

魔理沙「もうお前のキャラが分からないぜ。咲夜。」




はいはい。茶番です。
では本編どうぞー。


だるい。身体が重い。なんでこんなに辛いんだ?

先ほどまで寝ていたためにうまく思考が回らない。

 

雪茂はまだ寝ぼけている思考を起こそうとする。

あまり意識していなかったが先ほどから手に硬い突起物が当たる。

それに少しの浮遊感と風を感じる。

それを感じて少し脳が仕事をする。

 

「あ、そうか。能力使ってスターダスト・ドラゴン出したんだっけ。」

 

そうだ。今は能力を解明してもらって紅魔館から帰ってるところだったんだ。

どのくらい眠っていたのだろう。

先ほどまでとはあまり空は変わっていないようだ。

それもそうかそこまで長い時間紅魔館に滞在していたわけではないし、

神社までもそんなに距離は無い。

 

「そこまで眠れなかったんだな。道理で体力が回復しないわけだ。」

 

というか先ほどより減っている気がする。

あぁ、あまり寝れなかったのではなく、寝ていても召喚を維持していると体力は使うのか。

たぶんどんな状態でも体力を使うのだろう。

もしそうだったとしたらこれは召喚に頼る戦いはそこまで出来ないっていうことだ。

と、思考も十分に回りだし本調子に戻ってきたところで明るい声が前方から響く。

 

「おーい!雪茂!起きろー!そろそろ神社に着くぞー!!」

 

「大丈夫も。もう起きてるよー。」

 

こちらの顔を少し確認し、魔理沙は再び前を向き直す。

能力のことについてはまた帰ってから考えよう。

雪茂はそう考え自分が乗っているドラゴンに少し速度を上げるよう伝えた。

 

 

~5分後~

 

 

「ふぃ~。やっと到着だぜ。」

 

肩を回しながら魔理沙が言う。

 

「ごめんね。僕に合わせてもらっちゃって。」

 

別にいいんだぜ。と明るく言う。

 

「困ったときはお互い様だしな!それにこれから一緒に戦うかも知れないんだ。そう言うことがまだあるかもしれないのに一々そう言ってたらきり無いんだぜ。」

 

確かに魔理沙の言うとおりかもしれない。

てか僕戦うのほぼ決定なんだ。

でも今はやる気がある。なにせ能力がわかったことだし少しは手助けが出来るだろう。

……体力無いけど。

 

「そうだね。んじゃ今度からありがとうって言うよ。」

 

「それがいいな!」

 

ニカッっと魔理沙が笑う。

明るくて見ているこちらも元気になるような笑顔。

と、少し見とれてしまいそうになる。

 

「…っと、スターダスト。もう休んでていいよ。」

 

名前が少し長かったので少し略した。

 

グォ。

 

と短く一鳴き。そして光の粒になって消えてゆく。

ふわぁと身体が少し軽くなった気がする。

戻すとどうも体力が戻ってくるらしい。

だが戻ってきても全快というわけではない。

 

「なるほど。」

 

すこしわかってきたかもしれない。

 

「なにがだ?」

 

不意に出た一言に魔理沙が反応する。

 

「あぁ、僕の能力について少し考えてたんだ。パチュリーさんにはあくまでどんな能力か教えてもらっただけだしね。」

 

そう。パチュリーさんは能力の概要を教えてくれた。

たぶんあの魔法らしきものは能力の使い方まではわからないのだろう。

それもそうだと思う。能力には”程度”と付いていたし、そもそも能力というのは使い方に色々あるだろうし、

そこまで詳しく調べるとなるとあんな時間では済まないだろう。

 

「そうだったな。ま、とりあえずこんなところで突っ立ってるのもなんだし、中に入ろうぜ。」

 

そういえばそうだった。帰ってきてから考え事を始めてしまい、スターダストを返してから立ちっぱなしだった。

 

「そうだね。僕も少し能力についてまとめたいから中に入ろっか。」

 

「あ、そうだ。お茶ならあったと思うし飲みながら休もうぜ。」

 

と、そそくさと縁側から中に入り棚を漁りだす。

 

「あった!早速入れてくる!」

 

「いいの?霊夢の家なのに。」

 

随分と遠慮をしなかったので一応聞いてみた。

 

「ま、たぶんだいじょぶだぜ。」

 

「あ、うん。了解。」

 

あまり気にしないことにして、部屋の真ん中にあった卓袱台に向かって座る。

そしてまた能力について思考を巡らせる。

 

まず一つわかったこと。

 

”カードを実体化するときにはそのレベルやコストにあった体力を消費する。”

 

といっても今はモンスターしか出していないし魔法カードやトラップカードはどうなのかわからない。

それに今までに実体化したカードは遊戯王のカードのみ。

戦国大戦や他のカードゲームはまだ試していない。

今度は戦国大戦の武将でも出してみようか。

 

と、もう二つ先ほどわかったこと。

 

”カードの実体化で出現したモンスターは体力を持ち、その体力は実体化時に使った自身の体力分となる。”

 

”実体化を解除したときには出していたモンスターの体力が戻る。ただしこのときモンスターの体力が減っているとその分しか帰ってこない。”

 

つまり、モンスターに無茶をさせてしまうと自分にも大きく響いてくるということだ。

先ほどはただ召喚しただけだったり、飛んでいただけだったのでそこまで消費はしなかったが、

もし戦闘になって戦わせるとなるとやはりかなり消費してしまうだろう。

そこで考えたのがやはり身体を鍛えて体力をつけるということだ。

体力を増やせば純粋に戦うのが楽になるし、

予想ではあるが、大きいコストのカードの使用や、複数召喚なども出来るだろう。

 

大雑把ではあるがこんな感じだろうか。

もしかしたら自身にカードを憑依みたいなことも出来るかもしれない。

たとえば憑依するとカードのイラストに近づくとかね。

ドラゴンみたいな羽が生えるとか。

ちょっとわくわくする。

 

「…げ。ゆ……げ。」

 

今すぐにでも試してみたい。

そのぐらいわくわくしている。

まるで子供が新しい玩具を買ってもらったときのような気持ちの高揚感。

いかに現実離れしているか分かって少し興奮しているのだ。

 

「おい!雪茂ってば!」

 

「うわっ!」

 

考え事に集中し過ぎて魔理沙に呼ばれているのに気づかなかったようだ。

 

「ほら、お茶入れてきたから飲もうぜ。考え事は一旦やめてさ。」

 

「ありがとう。考えもかなりまとまったから休むとしようかな。それにあとで試したいことも色々あるし。」

 

自身への憑依や、武将の召喚。やり方は分からないが感覚的にやれば出来るだろう。

なんだかこちらに来てから随分楽観的になったような気がする。メンタル弱いけど。

 

「なら、弾幕ごっこの練習がてらその試したいことも一緒にやろうぜ。」

 

そうか弾幕ごっこにも慣れなきゃいけないんだった。

だがいい提案だと思う。弾幕ごっこにあわせた能力の使い方も練習できそうだ。

はやる気持ちを抑え、冷ましながらお茶を飲む。

ごく普通のお茶。しかし慣れているその味に少し気持ちが落ち着いた。

 

「んじゃ、お茶を飲んでちょっと休んだら庭に出て弾幕ごっこについてレクチャーするぜ。」

 

「了解。」

 

 

~少年少女休憩中~

 

 

お茶も飲み終わり一休みしてから庭に出る。

すごく大きい庭というわけではないが動くのには十分なスペースだと思う。

 

「よしとりあえず弾幕の出し方から教えるぜ。」

 

「宜しくお願いします!魔理沙先生!」

 

「先生はやめるんだぜ。」

 

ちょっと照れた様子で魔理沙が言う。

と、魔理沙が少し呼吸を落ち着けたと思ったら。

右手を前に出し、手のひらを上に向けた。

 

「とりあえず見てるんだぜ。」

 

するといきなり手のひらの上に丸い拳の大きさぐらいの光の球体が現れた。

青色のような言葉では表現しづらい色身をしている。

 

「これが弾幕ごっこに使われる弾だぜ。これがいっぱい飛んで来るんだ。」

 

それに色々な形もあるんだぜ。と付け加える。

 

「ちなみにあたると結構痛いぜ。ほれ。」

 

と指先に移動させた弾をこちらに向けて飛ばしてきた。

結構早い。そう思った瞬間被弾した。

 

「…ぐっ…!」

 

咄嗟に出した右腕に殴られたような痛み。

たしかに痛い。

 

「け、結構効くね。これ。」

 

我慢すれば何とかなるレベルかな。

 

「と、まぁためしにちょっと手をさっきの私みたいにしてみるんだぜ。」

 

「了解。」

 

先ほど弾を受けた右手と逆の左手を言われたとおりに手を前に出し手のひらを上に向ける。

ためしに目を瞑って感覚的にだけど力を入れてみる。

 

「んで、体の奥にあるちかr…。」

 

魔理沙が説明をやめた。

なぜかと思い目を開けてそちらを見る。

と、目の前に光の玉。人の顔ぐらいだろうか。

 

「あれ?出来てる。」

 

やってみたら案外簡単に成功してしまって少し拍子抜けしてしまう。

 

「説明は要らないみたいだな。ちなみに別に手じゃなくても弾は作れるぜ。」

 

「手じゃなくても?」

 

「たとえばこうやって箒の先端とかだぜ。」

 

そう言って魔理沙は箒の先端に先ほどの弾を出現させる。

 

「ただ、ちょっと慣れるまでに時間はかかるかもな。ま、それは置いといて試しにその手の弾を飛ばしてみるんだぜ。」

 

「うん。わかった。」

 

よし飛ばしてみよう。こうかな?

バレーボールでサーブを打つときのようにボールを上に投げる動作をしてみる。

 

「おぉ!」

 

驚く魔理沙。自分でも驚いている。

まさかこんなに簡単にいくとは思っていなかった。

先ほどの弾は勢いよく飛んで行き見えなくなってしまった。

 

「よし!習うより慣れろだ!実践あるのみ!早速やってみるぜ!」

 

「え、まって!空の飛び方は!?」

 

そう。魔理沙は飛び方も教えてくれると言った。

しかし、教わっていない。

さすがに飛ぶのは感覚では出来ない。なにせ人間は本来自分の力で浮遊は出来ない。

そんな未知の感覚など想像は出来ない。

 

「なんかモンスター出せばいいんじゃないか?」

 

色々考えていたらそんな提案が来た。

たしかにそうすれば空は飛べる。しかし、体力を使ってしまうのでうまく戦えるか心配になってしまう。

なので今回は先ほどから考えてることを実行することにした。

 

「あー、それも考えたけど、今回は陸上で戦うよ。」

 

まず一つ。

そう、雪茂は陸上で迎え撃つことにした。

普通で考えれば明らかに不利である。

しかし、先ほどの弾を見て思った。

 

「(あのぐらい飛ぶなら下からでも狙えるはず。難しいかもしれないけど。)」

 

そしてもう一つの考えを実行する。

 

「能力は使っていいんだよね?」

 

「もちろんだぜ。」

 

了承をもらった。

まだ試したことは無いが実行に移す。

 

「憑依!雑賀孫市!!」

 

”憑依”

そう簡単ではあるがそう命名した能力の使い方。

カードの力、能力を自分に適用し、そのカードの力を得る能力の使い方。

今回呼び出すのは戦国大戦のカードの宴SR雑賀孫市。

 

 

宴SR雑賀孫市(さいかまごいち) 1534~1589?

武力9 統率6 コスト2.5

 

鉄砲をいち早く取り入れ、天下に名だたる雑賀の鉄砲衆を築く。

そして石山本願寺に雑賀衆を率いて入り、織田信長を負傷させ苦しめた、

 

計略…『銃舞の極み』・・・武力と移動速度が上がり、特技「車撃」効果を持つようになる。

さらに2部隊同時に射撃できるようになる。

 

 

うp主「またまた突然ですが説明のコーナー」

 

ちなみに今回から武将のステータスを書いてます。

 

では用語の説明。

 

車撃・・・移動しながら鉄砲撃てるハイスペックな人。ちなみに雑賀孫市は「狙撃」という特技も持っています。

 

狙撃・・・普通に鉄砲を撃つのではなく狙って撃つことにより精密さと威力が上がるというもの。(簡単に説明しているので実際は少し違います。)

 

武力、統率・・・武力は攻撃力。統率は、幻想郷ではあまり意味無いかもしれないです。高ければ高いほどいいです。(一概にそう言えない場合もある。)

 

コスト・・・戦国大戦では1~4まで0.5刻みでコストがあります。実際にゲームをするときにはそのコストを9以内に抑えてデッキを作ります。

 

デッキ・・・他のゲームでも良く使われるものですが山札のようなものはありません。あと同盟カードは1枚までです。重複は出来ません。ちなみにデッキの枚数は基本的に3~8枚です。うp主は基本的に4枚型が好きです。

 

 

と、こんな感じです。分からなければ質問してもらえるとありがたいです。

 

うp主「では本編戻ります。」

 

 

憑依。その言葉を発し、武将の名前を言う。

その瞬間一瞬雪茂が光に包まれる。

 

「憑依ってなんだぜ!?ってまぶしっ!」

 

魔理沙は咄嗟に目を覆う。

そして徐々に光が弱まっていく。

 

光が完全に無くなり雪茂の姿を確認できるようになったとき魔理沙は驚いた。

 

「雪…茂だよな?」

 

そう魔理沙が疑うのも仕方が無い。

なにせ雪茂の姿が変わっていたからだ。

だがあくまで雪茂の顔や身長などは変わっていない。

 

変わったのは髪の色や服装。そして両手に持った銃。

たしかにぱっと見たときに今までの雪茂を知っている人物ならば分からないかもしれない。

 

髪はオレンジ色。そしてオレンジのマフラー。服はまるでウエスタンのようなジャケットに迷彩のズボン。

両手の銃は火縄銃ではあるのだが形状が普通とは異なっている。大きさはまるでハンドガンのような大きさになっている。

だが、機能は火縄銃のそれとよく似ているみたいだ。

 

「そうだ。俺は雪茂だ。こんな格好だけどな。(え、なんか口調が勝手に変わる!)」

 

「…雪茂の口調がなんか荒いんだぜ…。」

 

なぜか口調が変わってしまった。もしかしたら憑依した武将の口調に近づくのかもしれない。

今一つ分かったこととして体力の消費が憑依は少ないらしい。

しかしそう簡単に使わせてくれない気がする。

なにせ元の戦国大戦は時間制限ありの勝負だった。

もしかしたらこうやって憑依をしているのも時間制限があるかもしれない。

それにまだ動いていないために疲れていないだけかもしれない。もしかしたら動くと体力消費が激しいという可能性もある。

 

「深く考えても仕方ねぇな…。」

 

と一言雪茂が言う。

 

「その口調どうにかならないのか?」

 

「わりぃな。どうも憑依している状態だとこうなっちまうみたいだ。」

 

自分で喋っていておかしくなってくる。

聞いてる側は性格でも変わったのではと誤解するのではないだろうか。

 

「んー、まぁいいんだぜ!とりあえず弾幕ごっこの練習だ!」

 

頭をボリボリ掻いた後に魔理沙が提案する。

 

「おうよ!」

 

同意の声を上げる。

この溢れるぐらいの力。僕は早く動いてみたかった。

この力があれば僕も役に立てるかもしれない。

 

「よし。ルールは先に3回被弾したほうの負け。スペルカードは教えてないから無しでやるぜ。」

 

「了解!」

 

スペルカードか。僕もいつか使えるのだろうか。というか見てみたい。

と思っていると、おもむろに魔理沙がポケットに手を入れたかと思うとごそごそし始めた。

あった。と小さく声をあげて手をポケットから出す。

その手には小さいコインが握られていた。

 

「んじゃこのコインを投げて地面に落ちたらスタートだぜ。」

 

なるほど、分かりやすくていい。

僕は首を縦に振る。

 

「よし、んじゃ投げるぜ。」

 

魔理沙はそう言うと親指でコインを弾いた。

 

キィン。

 

と甲高い音と同時、魔理沙が勢いよく空に飛び上がる。

それにあわせて僕も銃の撃つ準備をする。

これがもう一つの考え。

といっても憑依して銃が出てくるのは賭けだったけど。

予想してたカードのイラストにここまで近づけるのはうれしい誤算だ。

ちょっと気分が乗ってくる。

 

「天下最強・孫市の狙撃をかわせるか!?」

 

手に持った銃を魔理沙に向け、ゲーム内での台詞を言う。

気持ちいい。なんだろう。やはりわくわくする。

ゲームの中にいるみたいだ。

 

「やっぱお前雪茂じゃないぜ…。」

 

 

そしてコインが、

 

 

地面に落ちた。




文才がほしいです。(切実
ついに次回戦闘回です。孫市さん出せた…。(歓喜
なんか回を重ねるごとに文字数が多くなってる気がします。
大丈夫かな?
とりあえず更新早めにがんばります。
次回も見ていただけるとうれしいです。


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第6話 龍、天を穿ち、地を駆ける

雪茂「よっしゃいくぜ!魔理沙!」

魔理沙「お、おう。」

雪茂「覇気が感じられんぞ!」

魔理沙「誰か雪茂止めて…。」

雪茂「うおぉぉぉ!戦じゃあぁぁぁ!」

キ ャ ラ 崩 壊

あ、本編どぞー。

あと遅くなりましたがお気に入り登録&UA200越えしました!ありがとうございます!!


チリィン

 

 

コインの落ちる音。つまり開戦の合図。

殺し合いでもなんでも無いのになぜか緊張する。

練習だが初めて弾幕ごっこをするからだろう。

魔理沙はすでに弾をこちらに向かって撃ち始めている。

 

こちらも応戦しなければなるまい。

「さて、こっちも挨拶代わりの弾丸でもプレゼントするか。」

 

聞こえないであろう独り言(本心では無い)を言って、魔理沙の撃った弾幕を避けつつ雪茂はニヤリと笑い(本心でry)、一旦足を止め両手の火縄銃を魔理沙に向かって構える(これは本心)。

銃なんて触ったことすらなかった雪茂だが今の状態では、そんなことは関係無い。

雪茂は今、天下最強の用兵軍団、雑賀衆の頭領「雑賀孫市」が乗り移っている状態。

銃は自分の手足のように扱うことが出来る。

それが現在の雪茂だった。

 

両手に持っている銃のトリガーに指を掛け、引く。

 

バンッ!バンッ!

 

両手の火縄銃から弾が一発ずつ発射される音がする。

しかし、発射されるのは普通の鉛玉ではない。

幻想郷で言う「弾幕」を発射した。

ショットガンの様に一つの銃身から大量に弾丸が射出される。

 

「(なるほど。弾はこんな感じに出るのか。)」

 

「お、やるじゃないか!でもまだ甘いんだぜ!」

 

僕の撃った玉を軽々避ける魔理沙。

 

「ふ、まだまだこんなもんじゃないぜ?俺の銃撃の嵐は。避けられるものなら避けてみな。」

 

あぁ、駄目だ。思っても無い言葉が出てくる。

どんな風に思っても口から出る言葉は変わらない。

 

「ちょっと早いが勝負をつけるとするか!!『銃舞の極み』!!」

 

雪茂は雑賀孫市の計略名叫んだ。

その瞬間、頭の中に無機質な音声が流れる。

 

 

――計略使用確認。士気ヲ5ツ使用シマス。残リ士気10。残リ憑依回数2。

 

 

言葉の意味はすぐに理解できた。きちんと計略は使用できたということだろう。

しかし憑依回数に制限があるということが今判明した。まだ二回憑依できるらしい。

 

「(気をつけて憑依しないと。)」

 

計略を使用した為か身体が軽い感じがするし身体の奥から力が湧き出てくるような感じがする。

軽くなったというのは移動速度の上昇、力が湧き出る感じは武力の上昇だろう。

 

「なっ…!?スペカ使えないんじゃなかったのか!?」

「スペカ?知らねぇな。これは俺の『計略』だ。」

「計略ってなんなんだぜ?」

「あとで教えてやるよ。ほら、舞え、銃撃の嵐の中で。」

 

魔理沙が驚いているが銃撃を開始する。

魔理沙の方へ移動しながら両手の銃で乱射する。

トリガーを引くたびに火薬の破裂音のような音がする。そして鉄砲の弾の形をした弾幕が撒き散らされる。

まさに弾幕の嵐。避けるのは困難だろう。

 

「っ…!ははっ!」

 

一瞬歯を食いしばったように見えた魔理沙は笑った。

その表情はとても楽しそうに見える。

 

「私からも反撃いくぜ!恋符「マスタースパーク」!!」

 

魔理沙がポケットから八角形の箱を取り出し前に突き出し技名のようなものを叫んだ。

その瞬間目の前が光に包まれ自分の撃った弾幕が消される。

 

「(あたったらまずい!)」

 

感覚的に避けようとするがどうにも間に合いそうにない。

計略を使った孫市の速度でも避け切れないのだ。

身体の危険。脳が危険信号を出し周りの景色をとても遅くする。

ただ思考回路だけはフル回転する。

 

「(さすがに素人の僕でも当たったら危ないとわかる。どうする?武力軽減じゃ駄目そうだ。それぐらい力を感じる。ならどうする?)」

 

 

――避けるしかない。

 

 

速い計略を使えるカードを憑依させる。憑依してすぐに計略を使えば間に合うはず…!でも体力はもつのかな?…考えちゃ駄目だ!やらなくちゃ!!

 

覚悟を決めとあるカード名を叫ぶ。

 

「憑依!上杉謙信!!発動『毘沙門天の化身』!!!」

 

その瞬間雪茂がいた場所に魔理沙の放ったスペルカードの光が通り抜ける。

 

「やっべ、やりすぎたか?」

 

いつもの調子で放ってしまったため力加減を出来なかったのか心配そうな顔で先ほど雪茂が立っていた場所に飛んでいく。

そこに雪茂の姿は無かった。

魔理沙は顔の血の気が引いていくのが分かった。きっと真っ白になっているだろう。

 

「やば…。やりすぎた…。「軍神がその程度の攻撃避けられぬとでも思ったのか?」っ!?」

 

突然後ろから声が掛けられ驚き魔理沙はそちらを見る。

そこには馬に乗り白い頭巾のようなものを被り、鎧を着用し、白いマントをたなびかせ、日本刀を持った雪茂の姿があった。

 

「雪茂!よかった…。」

「さぁ戦の続きだ。」

「へ…?」

 

安心し、魔理沙が一息つこうとしていたが、雪茂は気にせず魔理沙のほうにとても馬とは思えない速度で走ってきた。

左手で手綱を握り、右手で刀を握り颯爽と走る姿はまさに武将であった。

 

「呆けている暇は与えんぞ。」

 

雪茂は魔理沙の横を駆け抜ける。

早過ぎた為かほんの少し遅れて魔理沙の髪と服が風で揺れる。

 

「?当たってないんだぜ?……っ!」

 

当たってないと言った魔理沙だったが、ふと自分の右肩を見て気付く。

 

「(服が切れてる!?でも肌まで到達してない。やっぱり外したのか?)」

「どうした?とりあえずこれで一回の被弾ということでいいのだろう?」

「あ、あぁ。一回だな。」

「怪我はしてないか?」

「?してないんだぜ。」

「よし。ならば万全の状態で戦が開始できるな。…さぁはじめるぞ!」

 

雪茂はまたこちらに向かって走ろうとする。

しかしその行動は中断することになる。

 

「ま、まった!私の負けだぜ。そんな速さじゃ私の攻撃は当たらないからこれ以上やっても意味無いんだぜ。」

 

魔理沙が両手を上に挙げ降参した。

 

「ふむ。負けた相手を切る必要は無いな。今回は私の勝ちだ。」

 

そういったかと思うと雪茂の乗っていた馬や刀が消え始める。

雪茂は馬から降りると同時に先ほど憑依の影響で出現していた謙信のモチーフが全て消えた。

 

バタッ。

 

そして雪茂はその場に倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん。」

 

意識を取り戻し目を開ける。

 

「…あれ?僕魔理沙と戦ってたんじゃ…。」

 

なにかとお世話になっている和室の部屋に僕は寝ているらしい。

とりあえず横になっている為上半身を起こそうとする。

しかしそのとき自分のお腹の部分に重さを感じる。

頭だけそちらに向ける。

 

「あっ…。」

 

足は正座状態で上半身だけ倒し頭を雪茂のお腹に乗せた魔理沙が寝ていた。

 

「起こすのは申し訳ないな。にしても辛そうな寝方だな。」

 

少し苦笑をする。さてどうしようかな。

ふと外に目をやる。あぁ、もう夕方になっちゃってる。

結構な時間気を失っていたらしい。

頭の横には水の入った桶と手ぬぐいがあった。

たぶん魔理沙が見てくれていたのだろう。世話になりっぱなしだ。

 

「やさしい子なんだな。ありがとう。」

 

独り言のように雪茂はつぶやく。

そして無意識にだが魔理沙の頭に手を乗っける。

もうちょっと休んでいよう。そう決めて少しだけ眠ることにした。

 

 

 

 

~魔理沙side~

 

雪茂が馬に乗ってから雪茂の霊力がものすごく大きくなった。

そして雪茂のあまりの速さに私は両手を挙げ降参した。

 

「ふむ。負けた相手を切る必要は無いな。今回は私の勝ちだ。」

 

悔しかったがこれ以上となると練習ではすまなくなってしまいそうだったのでこちらが折れた。

そして雪茂が馬から降りたと思った瞬間馬やマントは消え雪茂が倒れた。

 

「お、おい!雪茂!?」

 

突然のことだったので急いで倒れている雪茂に駆け寄る。

 

「おーい。雪茂ー。大丈夫かー?」

 

肩をたたき反応を確認する。

幸い気絶しているだけのようだ。

 

「(中に連れて行ってちゃんと布団に寝かせよう。)」

 

そう思った魔理沙はすぐ行動に移した。

雪茂の左腕をもち自分の肩に掛ける。

肩を貸して歩いているような状態だ。まぁ肩を借りている方は気絶しているため歩いてはいないが。

 

「今日雪茂を運ぶの何度目なんだぜ…。」

 

少し悪態をつく。

しかしその表情は言葉とは裏腹に笑っていた。

そして部屋に上がるといったん雪茂を横にして押入れから布団をだした。

その手際はまるで自分の家のようだ。

敷き布団を敷いて、雪茂をそこに寝かせて布団を掛ける。

 

「にしても改めて思うけど雪茂、女みたいだな。」

 

内面的ではなく外面的にで。

髪はあまり長くはないが何より顔が女形なのだ。

そして身長も魔理沙より少し高いくらいだ。170cmぐらいだろうか。

男性の中ではあまり高いほうではない。

そして声も男性にしては高め。

何も知らない人が見たら「僕っ子かな?」と勘違いしてしまいそうな感じだ。

 

「まぁ世の中いろんなやつがいるしな。それより水と手ぬぐいでも持ってくるか。」

 

考えごとは止め風呂場に行き手ぬぐいなどを取りに行く。

水を桶に汲み零さないように雪茂の寝ている部屋に持って行く。

桶を下に置き手ぬぐいを濡らして絞る。

そして手ぬぐいを雪茂の額に乗せる。

 

「にしても疲れたんだぜ。雪茂の能力はたぶん、いや、かなり強いな。」

 

改めて先ほどの戦闘を思い出す。

最初に言っていた「さいかまごいち」というのは人名だろうか。

誰かの力を借りているのだろうか。

そういえば鉄砲みたいなものを持っていた。

あと口調が悪くなってた。

そして私がスペカを使ってそれを避けたあの馬に乗った状態。

あれも誰かの力なのだろうか。

すごく早くてちょっと怖かった。

あとあの霊力の量は普通の人間の量ではない。

それも雪茂の能力の一部だろう。

 

考え事をしているが、雪茂の額に乗せている手ぬぐいを一旦外しまた濡らして絞り乗せる。

 

 

~2時間後~

 

 

「そろそろ大丈夫かな。」

 

そういって雪茂の額の手ぬぐいをとり桶のふちに掛ける。

 

「ふあぁ。」

 

口に手を当て欠伸をする。

 

「私もちょっとだけ眠るか。さすがに疲れた。」

 

かといって布団で眠るほどではない。

 

「ちょっと身体借りるぜ。そのぐらい許されるだろ。」

 

ちょっと雪茂のお腹の部分を借りて枕代わりにすることにした。

 

 

~3時間後~

 

 

自分の身体が少し揺れる。

どうやら雪茂が起きたみたいだ。

 

「起こ…のは…し訳ない…。…して…辛そう…寝方…な。」

 

なにか雪茂が言っている。

だが私も寝ぼけている所為かはっきり聞こえない。

 

「やさしい子なんだな。ありがとう。」

 

次の言葉ははっきり聞こえた。

 

「…っ!」

 

声が出そうだったが抑える。

 

「(初めてそんなこと言われた…。)」

 

顔が熱い。たぶん真っ赤になっているだろう。

そして頭に手が乗っている。

 

「(は、はずいんだぜ…。)」

 

しばらくそのままでいると雪茂のほうから規則的な寝息が聞こえる。

また眠ったのだろう。

ゆっくり頭に乗っている手を外し起きることにする。

 

「まだドキドキしてるんだぜ…。意外と雪茂の手、大きかったな。」

 

自分の頭に手を乗せ先ほどの状態を思い出す。

 

「…っ。よし!とりあえず夕飯作るとするか!」

 

雪茂を起こさないように小さめの声で自分に言う。

 

 

 

このときはまだ誰も気付いていない。

今回の異変がただの異変では無いことに。




更新遅くなってすみませんでしたー!(スライディング土下座)
今回書き方を少し変えてみましたが難しいですね。
なんかごちゃごちゃしちゃったような気がします。
あと戦闘シーン短いですね。書いてて思いましたが苦手です。
もっと書いて慣れなきゃなぁ…。
そういえば書いててこれR18のほういけr…げふんげふん。なんでもありません。
なんか色々雪茂くんがフラグを立てているような気がするようなしないような…。
まぁとりあえず次回異変に動きがあると思います。
次は遊戯王のカードもっと出したいなぁ。
閲覧ありがとうございました!
(あとがき長いかな…)


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第7話 その紙は平和を崩す

雪茂「前回の終わりがとても気になる。」

魔理沙「だな。」

うp主「あ、今回で結構動くよ。」

雪茂、魔理沙「「それここで言う!?」」

うp主「それより良く考えてみてくれよ。まだ雪茂幻想入りして一日経ってないんだぜ?」

雪茂、魔理沙「「お前が執筆するの遅いからだ!!」」

うp主「す、すまん。」



本編どぞー。


いい匂いがする…。

霊夢が帰ってきてご飯作ってるのかな。

二度寝をしてまだ完全に覚醒しきってない頭に鞭をうって動かし体を起こそうとする。

 

「痛っ!?」

 

上半身を起こそうとすると全身に痛みが走った。

なんというか激しい運動をした後の翌日みたいな痛みだ。

 

「ってそれ筋肉痛じゃん…。」

 

自分に突っ込みを入れる。

と、その痛みから先ほどの勝負を思い出す。

最後辺りになんかぶっといレーザーみたいなのが迫ってきて、無我夢中で謙信を憑依させてまではいいんだけど、どうもそこからの記憶が曖昧だ。とりあえず疲れたというのは覚えている。

ふと戦国大戦の謙信のカードを思い出してみる。

 

 

 

SR上杉謙信(うえすぎけんしん) 1530~1578

 

武力12 統率7 コスト4

越後の大名。幾度となく信玄と名勝負を繰り広げた。

「毘」の軍旗を翻し戦場を駆け、軍神と畏れられた。

 

計略…『毘天の化身』・・・武力と移動速度が大幅に上がり、兵力が回復する。

 

戦国大戦の数少ない4コストカード。デッキのコスト制限が9の為その大半を占める為デッキの作成が難しい。

が、大半を占めるだけのことはあり、そのカードの戦場での制圧力はとても高い。

それ相応の力をそのカードは持っている。

 

 

 

あ、もしかして疲れた原因ってコストが重かった所為か?

遊戯王のモンスターを召喚したときは一時的に体力を外に出すようなイメージだが、今回は違うみたいだ。

直接自分の体力を使い戦う。それが憑依のようだ。

そうなるとやっぱり身体を鍛えないと駄目だな。

たとえ憑依させても僕の素の体力、戦闘能力が低ければレベルが高い相手と戦えないだろう。

今回は練習だったから良いものの、本当に異変とやらを解決する手伝いをするとなると今のままでは些か心配がある。

 

と考えているとふと辺りが暗いことに気付く。

 

「あれ?そういえば今何時?って時計無いな。」

 

部屋の中を見回してみるが時計は無い。

雪茂が外に目を向けるともうすでに日は落ち茜色の空が広がっていた。

感覚的には5時とか6時ぐらいだろうか。

 

「ちょっと寝すぎちゃったかな。」

 

まだ僕たちが戦っていたときは太陽がほぼ上にあった気がする。

それほど寝ていたのだがまだ身体が若干だるい。

このまま寝ていたい。

 

ぐぅ~

 

しかし、そうは許さないと腹の虫が鳴く。

寝ていたいのは山々だがここは腹の虫に従うほうが良いだろう。

食べなければ体力も付かなければ身体に悪いだろう。

とは言ってもいかんせん身体が痛い。

しかしこれも一つの鍛錬と自分に言い聞かせ身体を起こす。

下手に辛そうな顔をしていると魔理沙や霊夢にまた心配を掛けてしまうだろう。

あくまで表面上は笑顔でいよう。

 

 

となにやら大それたことを言ってるような感じに聞こえるがあくまでただの筋肉痛である。

 

 

「よし。とりあえず挨拶してこよ。」

 

布団から出て、匂いのする方へ向かう。

台所へは行ったことは無かったが簡単に見つけることが出来た。

と、そこには霊夢ではなく魔理沙が料理をしていた。

 

「おはよ。いやこんばんはかな?」

「お、やっと目が覚めたか。」

 

料理をしているためこちらを向かず声だけ返してくる。

 

「うん。そういえば倒れた僕を看ていてくれたよね。ありがと。」

「べ、別に大したことはしてないんだぜ。」

 

ちらりと見える横顔が少し赤かったような気がするが気のせいだろう。

火を使ってるし熱いのだろう。

 

「ほ、ほら、そろそろ出来るぞ。居間で待っててくれ。」

「うん。了解。」

 

魔理沙に言われたとおりに居間へ向かい卓袱台を前にして座る。

しかし身体が痛い。

で、それよりも霊夢の姿が見えない。

まだ異変解決できてないのかな?だが朝に出て日が暮れても帰ってこないというのは遅くないのだろうか。

あとで魔理沙に聞いてみることにしよう。

 

それから5分ほどしてから鍋を持った魔理沙がきて鍋を卓袱台に置き、僕の対面に座った。

 

「今日はきのこ鍋だぜ。ちょっと多過ぎたかもな。」

「おぉ~おいし…そ…う?え?」

 

感嘆の声が不安の声に変わる。

何せ見た目が明らかに危険そうなきのこが鍋の中に入っているからだ。

 

「ん?どうした?食べようぜ。」

「ごめん魔理沙。ちなみに毒とかは大丈夫?」

「それに関しては大丈夫だぜ。見た目はあれだけど結構おいしいんだ。」

「ならよかった。」

 

ほっと胸を撫で下ろす。

あまり食欲の沸く色ではないけど食べてみよう。

魔理沙が鍋と一緒に持ってきた箸できのこを一つつまむ。

 

 

~少年少女食事中~

 

 

たしかに味はおいしかった。

ただあの紫色で赤い縞々の入ったきのこは見た目的にもう食べたくない。

もう一度言う。味はおいしかった。

 

「おいしかった。ご馳走様。魔理沙。」

「どういたしましてだぜ。」

 

と、魔理沙が片付けに入ろうと鍋を持とうとする。

しかしさすがに作ってもらって看病までしてもらったのに何もしないというのはどうももやもやする。

 

「ちょっと待って魔理沙。僕が片付けるよ。」

「別にこのくらい大丈夫だぜ。さっきまで倒れてたんだ。ゆっくりしとけって。」

「う、うん。」

 

少しもやもやするがここは優しさに甘えておこう。

明日何かお礼をしよう。

少しすると魔理沙が戻ってきて僕の対面に座った。

先ほどから姿が見えない霊夢のことを聞かなければ。

 

「そういえば霊夢はまだ帰ってきてないの?」

「まだ帰ってないぜ。というか帰ってたら私も自分の家に帰るんだぜ。」

「そりゃそうだね。」

 

と少し会話をしていると魔理沙がちょっとだけ席を外すと言って立ち上がった。

どこへ行くのか聞こうとしたのだが、「おぉっとそれを聞くのは野暮ってもんだぜ。」と江戸っ子かよ!と突っ込みを入れたくなる言葉を残して行ってしまった。

ってことはまだ異変は解決していないらしい。

それか危険な目に遭っているとか。

…あまり深く考えても仕方ないか。

たぶん霊夢が遅いのは前者の方だろう。

きっともう少しすれば帰ってく…。

 

 

パサリ。

 

 

いきなり目の前の卓袱台に紙が落ちてきた。

 

「へ?」

 

突然のことだったので間抜けな声を上げてしまう。

見たところ普通の封筒のようだが、ここは非常識が常識の幻想郷。

この封筒も普通ではない可能性がある。

とりあえず先ほど席を外した魔理沙を待とう。

 

目の前の封筒とにらめっこをしてから約二分。

魔理沙が帰ってきた。

 

「おかえり。」

「ただいまだぜ。それよりその机の上の紙袋は何だ?」

 

魔理沙は対面に座って聞いてくる。

というか紙袋って…。あ、そうか。

たぶんこっちじゃ封筒なんて使わないのだろう。

だから存在を知らないのか。

 

と一人で納得する。

 

「いや、それがさっきいきなり目の前に現れてまだ中身は確認してないんだ。」

「ふーん。そうか。んじゃ空けてみようぜ!」

 

魔理沙は言うよりも早く卓袱台の上の封筒を取ると開封した。

なにか面白いものが入ってるのではないかと思ったのだろうか。

ちょっとテンションが高い。

なにかしら仕込んでるんじゃないかと思ったがそれは杞憂に終わったようだ。

中身はただの手紙だった。

そもそも封筒だったら入ってるものは大体手紙だろう。

 

「なんだただの手紙なんだぜ。雪茂読んでみたらどうだ?」

 

と、先ほどまでのテンションが目に見えて下がった魔理沙は、興味がなさそうに僕に手紙を渡してきた。

 

「了解。」

 

魔理沙から手紙を受け取る。そして魔理沙は机に突っ伏した。

「つまらないんだぜー。」とか言ってるけど気にせずに几帳面に三つ折りにされた手紙を開く。

そこには、

 

 

拝啓 立花雪茂殿 霧雨魔理沙殿

 

時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。

あ、堅苦しいのやめるわ。

んでいきなりなんだけど、異変?とか言うのを起こしたんだわ。

したら霊夢とかいう紅白の巫女さんが来てあんたを退治するとか言うから、

ちょっとだけ痛い目見てもらって今こっちで監禁してる。

助けたかったら来いよ。ただ来ていいのは人間だけだ。

だからこの手紙は秘密だ。他のやつらに話してみろ。

 

巫女を殺すぞ?

 

 

殺されたくなければ、俺らで殺し合おうぜ?

 

 

日時は3日後の昼頃。

場所は人里から少しはなれた森の中だ。

近くまでくりゃわかる。

 

それじゃあ楽しみにしてるぜ?

 

P.S.あ、おまけ付けたから見とけ。

 

見ていて気分の悪くなる手紙だった。

というか語学力が無いのかこの犯人は。

あとおまけを付けたと書いてあった。

あまり良い予感がしないが、封筒の中を見てみる。

と中には、さっきは気付かなかった写真が一枚入っていた。

そこには、手足を縛られ猿轡をさせられ横たわる霊夢の姿があった。

それだけだったらまだ良かったかもしれない。

 

――霊夢は血まみれだった。

身体のそこら中に切り傷が見て取れる。

たぶん出血の原因がそれだろう。

あと目はうつろでどこを見ているか分からない。

そして涙の跡なのか鼻水の跡なのか良く分からないほど顔を汚していた。

一瞬見ると死んでしまっているのではないかと錯覚してしまうほどに霊夢はやられていた。

 

「ッッッ!?」

 

吐き気なのかよく分からないものがこみ上げてきた。

咄嗟に手で口を押さえる。

手が震える。恐怖なのか、怒りなのか、悲しみなのか。

自分でよく分からなくなる。

 

途中で魔理沙がそんな僕の状態に気付き背中を擦ってくれる。

だんだん落ち着いてくる。

この写真は魔理沙には見せないほうがいいだろう。

座布団の下に隠した。

 

「とりあえず落ち着いたか?」

「…うん。ありがとう。」

 

心配そうな顔で魔理沙は俯いている僕の顔を覗き込んでくる。

精神的にはだいぶ参っているが何時までもそうしていられない。

少し息を整えてから魔理沙に手紙の内容を簡単に伝えた。

 

「てかこのふざけた手紙の差出人誰なんだぜ?」

「それが分からないんだ。手紙にも外の袋にも名前が書いてないし。」

「そうなのか。」

 

そう。外の封筒も手紙にも名前が書いていない。

だから知っている人物かどうかすら分からない。

といっても僕はまだ来て間もないからどの道分からないんだけどさ。

 

「あ、そういえば。異変を起こしたって書いてあったけどその異変ってどんなの?」

「あー、えーっとな人里の人間がみんなして引きこもっちまったんだ。」

 

引きこもる?それだけなのか。

たしかに一斉に引きこもるというのは変な話だが、妖怪に襲われて恐怖で外に出ないという可能性もある。と思う。

先ほどの心の乱れが嘘のように頭が回る。

 

それは霊夢を助けたいが一心が故に雪茂をそうさせているのだろう。

 

「と、まぁそれだけじゃなくてだな。村人全員が「怖い。食われる。」って口にしてるんだと。」

「なるほど。」

 

とは言ったもののそれだけの情報だとよく分からない。

 

…3日後か…。

さすがに身体を鍛えるのには厳しい期間だな。

 

「…どうするかな。」

「なにがだ?」

「いや、残り2日で何が出来るかなと思ってね。」

 

「う~ん。」と唸る魔理沙。

僕はもっと自分の能力について調べよう。

相手は殺し合おうと言っている。先ほどの弾幕ごっこなんて生易しいものじゃないだろう。

とりあえず明日は能力について考えるのと、練習。

明後日は身体を休めて魔理沙とよく話そう。

 

「とりあえず風呂に入るか。身体を暖めてリラックスすればいい案も浮かぶだろう。」

「…うん。そうだね。」

「んじゃ沸かしてくるぜ。」

 

タタタッと外に出て行く魔理沙。

そうか、現代じゃないからボタン一つでって言うわけにはいかないのか。

また魔理沙には面倒をかけちゃったな。

だが、霊夢が酷い目に遭っているのに自分たちはこれでいいのかと少し自己嫌悪してしまう。

だが魔理沙の言うことにも一理あると思う。

しかし、それよりも違う不安が頭の中を埋める。

 

「(名前も素性も分からない。そんな得体の知れないものに、果たして自分や魔理沙が太刀打ちできるのだろうか?)」

 

玉砕覚悟で今から突撃して奇襲を掛けたほうがいいんじゃないのか?

……いや、それは駄目だ。まず具体的な場所が分からない。

突撃して相手を倒せず逆鱗に触れて霊夢を殺される。そんなオチは絶対駄目だ。

霊夢が心配だからといってあまり焦ってもいい結果は出ないだろう。

 

「はぁ…。」

 

霊夢も魔理沙もいない部屋で雪茂はため息を吐く。

 

 

 

決戦まであと―――3日




閲覧ありがとうございます。

秋の山 緑の中に 赤く映え
瞳に映る 椛の葉かな

あ、三連休なんとなく姉と短歌作ってました。
上手じゃないんですけどね。

というわけで(どういうわけだろう)話が動きましたね。
出来るだけ早めに更新します!(何時とは言わない)
次も宜しくお願いします。



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第8話 恐怖と自尊心

霊夢「久しぶりの出番だけど超痛い。」

雪茂、魔理沙「「で、でたぁ~~!」」

霊夢「人を幽霊みたいに言うな!」

雪茂「(霊夢気付いてないみたいだ。教える?身体透けてるの。)」

魔理沙「(やめとけ。そのほうが霊夢は幸せかもしれない。)」

霊夢「聞こえてんのよっぉぉぉ!」





あ、本編とは関係ないです。
では本編どぞー。

UA300超えました!ありがとうございます!


~とある森の小屋~

 

 

「なぁ巫女さんよぉ?」

「…………。」

 

小屋は簡素なもので椅子と小さい机しかない。まるで生活感の無い部屋だ。

そんな部屋の椅子に座った白い服に斑な赤い模様の付いた服を着た男が、地面に横たわった巫女と呼ばれた少女に話しかける。

しかしその少女は答えない。

正確に言うと答えられない。

口に猿轡をされており、喋ることが困難であることと、この男に恐怖を感じているためだ。

その証拠に身体が少し震えている。

 

「そんな震えてどうした?何か怖いのか?」

 

男は笑いながら言う。

それでも少女は質問に答えず、震えるばかりだ。

男は「まぁいいか。」と一言呟くと椅子の背もたれに身体を預け目を瞑った。

 

「俺はこれから寝る。妙な真似はするなよ?まぁできねぇだろうけど。」

 

一度瞑った目を薄く開き少女に向かって男が言う。

そして再び目を瞑り、今度こそ寝息を立て始めた。

 

 

私はこれからどうなるのか。

博霊の巫女ともあろうものが、こんなやつに屈するなどありえないことなのに。

しかしそんなプライドよりも恐怖が頭を支配する。

傷による痛みでまともに働かない脳で考える。

誰も助けに来ないんじゃないか、助けに来ても返り討ちに遭ってしまうのではないか。

恐怖からか後ろ向きな考えだけが頭をよぎり脳内を支配してゆく。

そしてたまらなく不安になり、目から涙が零れる。

 

「(助けて……魔理沙、雪茂。)」

 

今頃神社で私の帰りを待っているであろう二人のことを考える。

今頃何をしているだろうか。心配してくれているのだろうか。

そんなことを考えながら私は泣き疲れて眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

~博麗神社~

「雪茂ー!風呂沸いたから入っていいぜー!」

「ありがとー。」

 

お風呂場のほうから魔理沙の声が聞こえる。返事をして声のするほうに向かう。

…今更だけど魔理沙はなんでまだ神社にいるんだろう?家に帰らないのかな。

後で聞こう。今は風呂だ。

着替えは持ってきてないし…、しょうがない。

もう一度この服を着よう。

 

風呂場に向かう途中に魔理沙とすれ違う。

そのときに「のんびり入ってくるといいぜ。」と言われた。

気を使ってくれているのだろうか。

 

「ありがとう。」

「気にするなって。」

 

そう言って魔理沙は居間の方に向かっていった。

僕も風呂場への歩みを再開する。

 

 

 

 

 

風呂場に着くと手ぬぐいが折りたたんで置いてあった。

使ってくれと言うことだろう。ありがたい。

服を脱ぎ、適当な場所に置く。

ちなみに浴槽は普通の浴槽だった。

 

「あれ?さっき魔理沙は外に沸かしに行ったような。」

 

たしかに湯沸かし器のようなものは無い。

と、よく見ると浴槽に河童のマークが書いてある。

メーカーのロゴかな?まぁいいか。

どんな仕組みか分からないがとりあえず温かい風呂に入れるのならそれでいい。

温かいというより少し熱そうだ。

 

「一番風呂いただきます。」

 

そう言って近くにあった桶を手にとりかけ湯をする。

一通り掛け終わり桶を置いてお風呂に足を入れる。

 

「っ…ふぅ。」

 

やはり少し熱い。

だが身体の疲れは吹き飛びそうだ。

浴槽に寄りかかりながら周りに目を配らせると石鹸などが置いてある。

 

「そうか、よく考えたら霊夢も普段ここ使って…っ。」

 

そう考えたとたん急に顔が熱くなる。

よく考えたらここ神社だけど霊夢の家じゃん。

女の子の家じゃん!

 

と、雪茂が一人悶々としているところに急に声がかかる。

 

「雪茂ー。私も入るぞー。」

「うんー。……は?」

 

考え事をしていたために適当に返事をしてしまった。

 

「ちょ、ちょっとまって!今出るから!」

「もう遅いんだぜー。」

 

あたふたしてるうちにお風呂場の引き戸が開く。

 

「ちょ!?魔理沙なんて格好してんの!?」

「いやお風呂だしこれが当たり前だろ?」

 

そこには服を脱いで手ぬぐいで前を隠している魔理沙がいた。

結構胸あるんだな……いやいやいやいや!そうじゃなくて!

 

「僕男なんだけど!?」

「知ってるぜ。」

 

あ、人生で口にすることが無いと思っていた言葉が頭に浮かぶ。

これなんてエロゲ?

さすがに口には出さないが。まぁ出しても意味は通じないと思うけど。

ってだからそんな一人漫才をしてる場合じゃなくて。

 

「とりあえず隣入っていいか?このままじゃ風邪を引いちゃうぜ。」

「あ、はい。どうぞ……。」

 

魔理沙も当たり前のように掛け湯をする。

もう突っ込んだら負けな気がする。

でもなぜいきなり魔理沙も入ると言い出したんだ?

…聞いたほうが早いか。

 

「なんで一緒に?」

 

出来るだけ魔理沙のほうを向かずに質問する。

 

「あぁ、いや、ほらさっきの手紙を見て雪茂震えてたろ?それ見た後で一人で風呂って言うのもどうかと思ってさ。」

「…なるほど。」

 

答えが分かると幾分か落ち着いた。

やはり魔理沙は色々気を使ってくれているらしい。

 

「私だってかなり恥ずかしいんだぜ?知り合って間もない、それに彼氏でもなんでもない男と一緒に入るんだからな。」

 

そういって僕に背を向ける。

色々魔理沙に心配掛けちゃったな。

 

「…ありがとう。元気出たよ。絶対に霊夢を助けよう!」

「おー!」

 

後々どちらが先に出るかで少し揉めた。

「私が先出ると後ろ見えちゃうじゃないか!」「見ないよ!」ワーワーギャーギャー

 

結局雪茂が目隠しをして魔理沙が出ることになりました。

 

 

 

 

 

~居間~

「ところで魔理沙は何で家に帰らないの?」

「さっきお風呂場で言ったとおりだぜ。雪茂が心配だったから。」

 

こちらを見てまじめに話してくれる。

もしかしたら魔理沙の中ではもう僕は友人になれているのかもしれない。

 

「なんてったって雪茂はもう親友みたいなものだからな。」

「…っ。ありがとう。魔理沙。」

 

屈託の無い笑顔で魔理沙が言う。

親友になれるほど長い時間いたわけでもなければドラマティックな展開も無かった。

それなのに僕のことを親友と言ってくれる。

非常識が常識に。

そんな幻想郷で魔理沙に会えたのは本当によかった。

 

「霊夢を助けるまでの間私はここにいるぜ。」

「ありがとう。」

 

そういって頭を下げる。

「別にいいって。」と魔理沙が言っているがこうでもしないと気がすまない。

 

「それより、」

「何?」

 

頭を下げたままでいると魔理沙が口を開く。

さすがに頭を下げたまま話すのはどうかと思ったので顔を上げる。

 

「とりあえず、明日雪茂はなにかするのか?」

 

そう聞かれたのでお風呂に入る前に考えていたことを話す。

 

「…なるほどな。たぶん雪茂の能力は私じゃどうしようもないし、そこらへんは雪茂に任せるぜ。」

「了解。魔理沙は?明日何してるの?」

「私か?私は、えーっと、うーんと。」

 

腕組みをして本格的に考え始めてしまった。

なるほど、それほど色々対策や用意があるn…。

 

「特に無いな。」

「無いのかよ!?まぁでも魔理沙っぽいな。」

「あんまり褒めるなよ。照れるぜ。」

 

そういってヘヘーと魔理沙が笑う。

褒めては無いんだけどなぁ…。まぁいいか。

 

「んじゃさ、僕の能力の実験っていうか、それに付き合ってよ。」

「おう!まかせとけ!」

 

そういってガッツポーズを魔理沙がとる。

頼もしい限りだ。

そしてやっと戦国大戦のカードと遊戯王のカードの実験が出来る。

…体力もつかな?

まぁなんとかなるか。

 

「んじゃ明日はその予定でいいんだな?」

「うん。お願いね。」

「了解だぜ。じゃあ今日は寝るか。もう結構遅いし。」

 

外に目をやる確かに暗くなっている。

まぁというか電気を点けてる時点で十分遅いって分かるんだけどね。

 

「そうだね。それに結構疲れたし早く寝て回復したいな。」

「んじゃ布団敷きに行ってくるぜ。ちょっとまっててな。」

「…うん?わかった。」

 

あれ?魔理沙どこで寝るんだろ?

あ、もしかして僕の布団をこっちに運んでさっき僕が使っていた部屋で寝るのかな。

ん?でもだったら僕が直接行けばいいような?

と一人疑問を抱えていると魔理沙が帰ってきた。

しかし手ぶらだ。あ、卑猥な意味じゃ無いよ?

 

「んじゃ寝ようぜー。」

「え?どこで?」

 

と聞くと魔理沙が「そんなの当たり前だろー。」と言ってくる。

 

「さっきお前が寝てた部屋だぜ。」

「あぁ、なるほど。…じゃなくて!せめて別の部屋とかじゃないの!?」

「なんで別の部屋で寝る必要があるんだぜ?」

 

さも当たり前のように魔理沙が言う。

さっき親友みたいなものとは言っていたけどさすがに同じ部屋で異性が眠るのはどうかと思う。

 

「それとも同じ部屋じゃ寝たくないのか?」

「う…。」

 

なぜここに来て上目遣いをする!?

いや、落ち着け雪茂。

あくまで親友。深く考えるな。

そうだ。親友だったら家に泊まることもする。

 

「…いや、寝ようか。」

「よーし寝室へゴーだぜ。」

 

 

 

 

~寝室(さっき雪茂が寝てたところ)~

「魔理沙さん。」

「いきなりさん付けなんてどうしたんだぜ?」

「それよりもこれはどういうことでしょうか。」

 

先ほど魔理沙は「布団を敷きに行ってくる。」といったはずだ。

なのになんで目の前には、

 

「一枚の布団の上に二つ枕があるんですかねぇ!?」

「足りなかったんだぜ☆」

 

もう一度言うぞ。

これなんてエロゲだよ!?

…なんていうか疲れた。

 

「はぁ…もういいや。寝よっか。」

「やっとあきらめたか。んじゃ電気消すぜ。」

 

内心眠れるか不安な雪茂であった。




どうしてこうなった。(困惑)
自分で書いてて途中まじでエロゲの展開になってしまい修正しました。
修正してこれですけどね。(遠い目)
昨日そういうゲームやったせいかなぁ。
番外編でその修正箇所出してもいいかもしれませんね。
というか魔理沙ってこんなに気が利く人でしたっけ?まぁいいや。
と、相変わらず文章力が低いですが閲覧ありがとうございました。
また次回おねがいしますー。

霊夢好きの人本当にごめんなさい。
さすがに死人は出さないので大丈夫です。(ただし主要キャラに限る)
モブは知りませぬ。


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第9話 プレゼント

魔理沙「や、やさしくするんだぜ…?」

雪茂「う、うん。」

魔理沙「んっ…んやっ…んん…そこっ…。」

霊夢「あんたらうちでなにやらかしてんのよーーーー!」

魔理沙、雪茂「「マッサージですが何か。」」

霊夢「ですよねーーー!」





ねぇエロゲの展開だと思った?ねぇねぇエロゲの展開だと思った?
残念。さやk(ryげふんげふん
本編どぞー。(ほんとは美人だと思った?っていう流れにしたかった)


「すぅ…。」

 

とても静かな部屋の中で隣から安らかな寝息が聞こえる。

その隣で僕は考え事をしていた。

というより目が冴えてしまって眠れなくて色々考えていたのだ。

まぁ冴えてしまった理由はその隣で暢気に寝ている魔理沙の所為だ。

今日は色々と驚かされた。

挙げると色々ありすぎるが、一番驚かされたのは魔理沙だな。

お風呂に入ってきたり、一緒に寝るといったり。

今こうやって考えてみるとずいぶん濃い一日だったな。

それに加えて僕に具わった能力。

つくづく現実離れしているな。

…もう一度能力について考えてみよう。

 

 

僕の能力はほとんどが体力に依存する。鍛えなければ長時間は使えないだろう。

それに憑依の回数の制限。それも加わってくるとなると使用するのがとても難しい。

そこで明日実験しようと思っているのが身体の一部のみの憑依。

それともう一つ。僕の知っているカードゲームの一つの遊戯王に登場するカードの種類である、魔法カードと罠カード。

それをまだ試していない。

 

…あ、魔法カードとかだったら別に今でも試せるじゃん。

思い立ったが吉日。早速やってみよう。

と言っても余り派手なのはいけないよね。

何がいいだろうか。

…あまり影響のなさそうなイラストのカードだったら大丈夫そう…かな?

ならあれにしよう。

 

「魔法カード発動。月の書。」

 

魔理沙を起こさないように出来るだけ小声で言う。

しかし、特にこれと言って何かが起こるわけではない。

 

「ん?何も起きない?」

 

ということは罠カードも駄目かな?。

 

「罠カード発動。ギフトカード。」

 

比較的被害がなさそうなものを発動しようとする。

しかしやはり何も反応が無い。

 

「なんで駄目なんだろ。僕の能力はカードを操れるはずなんだけどな。」

 

と、考えていると不意に睡魔が襲ってきた。

先ほどまでは目が冴えていたのに嘘みたいに眠い。

小難しいことを考え過ぎたのか、純粋に時間が経ったためか分からないがこの睡魔に負けておこう。

じゃないと何時寝られるか分からない。

まぁ明日また考えればいいか。

 

そして雪茂は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…。」

 

外から入ってくる日差しがまぶしくて目が覚める。

いつもどおり身体を起こそうとするところで違和感に気付く。

 

「え…?」

 

身体の自由がうまく利かない。

隣を見ると魔理沙が僕に抱きついた状態で寝ていた。

 

「ちょっ!?」

 

ちょっと!と言おうとしたところでやめる。

魔理沙の気持ち良さそうに寝ている顔を見たらこのままでもいいやと思ってしまった。

しかしやわらかいものが腕に当たる。

 

「んっ…。」

 

と急に魔理沙が身じろぐ。やめて!そんな抱きついた状態で動かないで!

僕だって男なのだ。いやでも反応してしまう。……何処とは言わないが。

このままでは色々と危ないので魔理沙を起こさないよう慎重に布団を出る。

 

「はぁ…。とりあえず顔洗って朝食でも作るかな。」

 

そう思い台所のほうに向かう。たぶん水もそこにあるだろう。

 

 

 

「…えっと。これは…。」

 

台所に着くと吃驚した。

 

「なんでこれが…。」

 

そこには昨日は詳しく見ていなかったため気付かなかったが、ガスコンロと冷蔵庫、それに電子レンジや水道があった。

あまりにも家や周りの世界観とはかけ離れている電化製品をみて驚いたのだが、よく考えると昨日入ったお風呂も普通の浴槽だったなと思い出しちょっと落ち着く。

 

「しかし、電線とかは見当たらないんだけどなぁ。」

 

外を見てもそれらしきものは無い。

やはりこの世界は不思議だ。

そしてその家電にはやはり河童のようなマークが描かれていた。

このブランドここじゃ有名なんだな。

そんなことを思いつつ蛇口を捻る。

勢いよく水が出る。ちょっと掬って飲んでみる。

 

「…美味しい。ミネラルウォーターみたいだ。」

 

市販されているような水の味というか柔らかさというかなんともいえないが普通の水道水とはちょっと違う気がする。

もう一回掬い顔を洗う。

冷たくて気持ちがいい。さきほどまで少し寝ぼけていた頭がスッキリする。

と、近場にあった手ぬぐいで顔を拭く。

後で洗っておけば問題ないだろう。

 

と、手ぬぐいをその場に置き、冷蔵庫に向かう。

人の家の冷蔵庫を勝手に開けるのはどうかと思ったが、後で何とかすればいいだろう。

…たぶん何とかなる。

 

ガバッと開けるとそこにはなんと、

 

「な、何も無い…?」

 

いや、正確に言えばあるにはあるのだが、それを果たして朝食に使える量かというと疑問がある。

ちなみに冷蔵庫内にあるのは胡瓜1本、玉ねぎ1個半、ジャガイモ2個。

 

「…まじで?」

 

ご飯は?と思いまわりを見渡す。

…それらしきものは無い。

 

「どうしようか…。」

 

さすがにこの材料だけでは厳しい。

というか何も思いつかない。

せめてマヨネーズでもあればポテトサラダが出来そうだったのだが、こちらの世界にマヨネーズがあるかどうかがまず不明。

 

「しょうがない。魔理沙を起こして考えるか。」

 

冷蔵庫を閉めて寝室に戻る。

 

 

 

 

 

「魔理沙ー。起きてー朝だよー。」

 

寝室に戻り、寝ている魔理沙の肩を揺する。

 

「んー。……りょーかいなんだぜー。」

 

少し間延びした声で魔理沙が返事をする。

むくりと、魔理沙が身体を起こす。

 

「おはよー、だぜ。」

「うん。おはよう。」

 

魔理沙が起きたので顔を洗ってくるように言って僕は布団を片付けることにした。

僕が布団を出したわけではなかったので何処にしまうのか分からなかったが、押入れを開けていったら一つ空いていたところがあったので、とりあえず畳んでそこに入れた。

 

布団をしまい終わり、居間に戻ると魔理沙もちょうど顔を洗って手ぬぐいで顔を拭きながら戻ってきた。

あ、そういえばさっき使った手ぬぐい洗っとかないと。と思い台所に目を向けると手ぬぐいが無かった。

 

「あれ?魔理沙あそこにあった手ぬぐい知らない?」

「ん?あぁそれなら今使わせてもらってるぜ。」

「あぁ魔理沙が使ってるのか…、え?」

「どうしたんだぜ?」

 

僕が使ったのを魔理沙が使ってるということを考えて赤面する。

 

「ごめん。それ僕使ったやつだ。片付け忘れてただけなんだよ。」

「……え?あ、そ、そうか。雪茂が使ったやつか!き、気にしてないから大丈夫だぜ!ほ、ほら!このとおり。」

 

といって顔をごしごし手ぬぐいでこする。

時折見え隠れする顔が真っ赤なのはこすっている所為なのかどうなのか分からない。

 

「と、とりあえずそのことは置いて置こう。」

「そ、そうだな。」

 

と、少し落ち着きを戻すのと恥ずかしさを隠すために卓袱台のほうに向かい座る。

魔理沙も僕の後に続いて座る。

…とりあえず魔理沙さん。その手に握り締めている手ぬぐいを片付けてほしいのですが。

 

「そ、そうだ!雪茂。」

「は、はい!?」

 

急に声を掛けられ吃驚して返事を返す。

 

「朝食どうするんだぜ?私が作るか?」

「あ、えっとね、さっき僕も作ろうと思ったんだけど冷蔵庫を見たら何も食材が無くてね…。」

「昨日の夕飯は私が持参してたしなぁ。」

「どうする?」

 

二人して考える。こっちはたぶんスーパーとか無いよなぁ…。

しかし、何か店があったとしても問題はある。

元の世界で使っていたお金が使えるかどうか。

先ほど気づいたのだが部屋の隅に僕の持ち物と思われる見慣れたショルダーバッグがあった。

確認してみると財布に携帯、音楽プレイヤー、学生証、筆記用具一式、ノートが入っていた。

財布の中にお金は入ってるけど…聞いてみるか。

 

「ねぇ魔理沙?」

「ん?」

「ここの世界の通貨って何?」

「あぁ、これだぜ。」

 

といってポケットから一枚の紙切れを出す。

 

「あ、それなんだ。ありがとう。」

 

見せられたものはなんと元の世界と同じ貨幣だった。

…しかしなんで同じものが?

 

「それは私が広めたからよ。」

「うおあ!」

 

急に真上から声を掛けられびっくりして大きな声を出してしまう。

びっくりしたのはそれだけでは無く、心を読まれたような発言をされたからだ。

 

「もっと普通に入れないのか?」

「私にとってはこれが普通なのよ。」

「と、ところであなたは?」

 

とりあえず、両端がリボンで括られた次元の切れ目のようなものから身体を出している女性に自己紹介を求める。

 

「あぁ、まだ自己紹介してなかったわね。私h」

「BBAだz「あぁん!?」なんでも無いんだぜ…。」

「八雲紫。幻想郷の創設者よ。」

 

自己紹介をしながら紫さんは地面に下りた。

なにやら途中で魔理沙がBBAとか言っていたが紫さんの様子を見るに禁句なんだろう。

 

「僕は立花雪茂といいます。あなたが僕をこちらの世界に連れてきたんですよね?」

「えぇ、そうよ。」

「紫さん、ありがとうございます。」

 

といって紫さんに向かって頭を下げる。

 

「どうってこと無いわ。それより、さっきの話なんだけど、私がこの世界に現代日本の通貨を広めたわ。最近だけどね。」

 

どうやら紫さんの話を聞くと現代日本と通貨などは合わせているらしい。

 

「あ、そうそう、今の霊夢の状態だけど。」

「知ってるんですか!?」

 

ごく普通に僕たちしか知りえない情報をぱっと口に出す。

それに驚き食い気味に質問してしまった。

 

「えぇ、もちろんよ。だけど、今回は私は手出しできないわね。」

「紫のスキマは使えないのか?」

 

隙間?先程の次元の切れ目のような物のことだろうか。

まぁ今はそれより話を聞いておこう。

 

「どうやら今回の犯人は一人じゃなくて二人のようなの。」

「それがどうしたんだぜ?」

「片方の能力の所為でスキマが使えないのよ。正確に言えばその場にいる三人に干渉できないのよ。」

「それはやばいんだぜ…。」

 

今の話を聞くに普通なら紫さんの能力で簡単に解決できるが、今回は犯人の一人の能力がそれを不可能にしていると。

 

「だから今回私はアドバイスだけしか出来ないのよ。」

「なるほどなんだぜ。」

「ちなみに、今日ここに来たのはその話だけじゃなくて雪茂君にプレゼントがあるからよ。」

「プレゼント…ですか?」

 

なんだろう?今僕が望んでいるものは特にこれと言ってないんだけど。

 

「えぇ、これをあげるわ。」

 

すると紫さんが指を鳴らした。

その瞬間裂け目が現れてそこからなにやら大量に落ちてきた。

 

「な、何なんだぜこれ!?」

「こ、これは…。」

「雪茂君は分かるわね。」

 

そう、今落ちてきたものの正体は、

 

「あなたの元いた世界のカードゲームよ。まぁ寄せ集めだから良く分からないのも混じってるけどね。」

 

見慣れないカードや、遊戯王、デュエルマスターズ、トランプ、花札、それに戦国大戦。

大量の山積みのカードがそこにはあった。

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

これで、やっとこれで戦略に幅が広がる!

今日はこれの整理から始めよう!

 

「ふふっ、喜んでもらえてよかったわ。」

「本当にありがとうございます!」

 

 

 

どうやら今日一日は忙しくなりそうだ。




閲覧ありがとうございます。
文才がほs(ry
更新遅くなりましたーーーーー。(スライディング土下座
というわけで、(どういうわけだろうね)紫さん登場です。
んで最後の大量のカードですが実はほとんど使えません。
その理由は後々分かります。
では次回も宜しくです。


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第10話 時間制限

雪茂「なんか別世界の僕がうらやmゲフンゲフン…何でも無いです。」

うp主「どうした?言ってみ?ほらほら?うらやましいっていt」

魔理沙「雪茂いじめてんじゃねーよ!」マスパドーン

魔理沙「大丈夫か!?早くうちに戻るんだぜ、そして私とセ」

雪茂、うp主「「それ以上はいけない。」」





いつも通り本編とはまったく関係ありません。
本編どぞー。




「それにしても結構な種類と数集めましたね。」

 

目の前の山積みのカードを見ながら紫さんに話しかける。

 

「ふふ、そうでしょう?でもほとんどが忘れられていたり、捨てられていたものなのよ。」

「そうなんですか。」

 

それでも十分だ。

今はカードの知識が増えるだけでかなり大きい。

といっても知識が増えてもそれに見合った体力は無いわけだが。

それは今はどうしようもない。

あとでどうにかしよう。

やっぱりトレーニングが必要かぁ。

と、まぁ考え事はここらへんにして、カードを見てみますか。

 

「さて、どんなカードが…。」

 

適当に何枚か手にとって見る。

 

絵柄が剥げて何が書いてあるか分からないカード、印刷ミスのトランプ、裏表どちらもカードの裏、デュエルマスターズのカード…だが、なぜか「たけし」と黒マジックで名前が書いてあるもの。

と、まぁ残念な品揃えだった。

 

「えぇっと…。」

「ゴミだな。」

「ひどい!せっかく集めてきたのに!」

 

魔理沙がズバッと言い放つと紫さんが机に突っ伏した。

あぁ、これしばらくこのままだぞ。きっと。

まぁいいか。それより、紫さんには悪いけど使えるものと使えないもので選別しないと。

 

 

~少年整理中~

 

 

「よし。こんなものかな。」

 

約30分ぐらいだろうか。

そのぐらい掛けてカードを分けた。

まぁまだ結構残ってるけれどまた後でやればいいだろう。

僕が整理してる間、紫さんはかまってもらえないと察したのか、すぐになんとも無かったかのような顔で僕の作業を見ていた。

 

「あまり使えそうなカードが無かったみたいね。」

「まぁそれでも僕の知らなかったカードが多く見つかったんで良かったです。」

 

僕の前に置かれた小さなカードの束を見て話す。

おおよそ60枚ぐらいだろうか。

にしても少ない。

多過ぎても使いきれないとは思うけど。

 

「ためしに何か試してみたら?」

「そうですね。ちょっと外で試してみます。」

 

カードの束を持って外に出る。

色々なカードが混ざっているためサイズが不揃いでちょっと持ちにくい。

だが、そんなことより早く試してみたい。

さて、どのカードを使ってみようか。

 

「これにしてみよう。」

 

そういって一枚カードを取りだす。

 

「発動!眩しい光!」

 

そういって白色のカードを唱える。

マジック・ザ・ギャザリングというカードらしい。

名前ぐらいは聞いたことはあるが実際やってなかったため詳しくは分からない。

だが僕の能力はカードの力を操る程度の能力。

だったらどんなカードでも扱えるはず!

……昨日の夜のはきっと何かの間違いだ。

今日は大丈夫…な、はず。

 

しかし、

 

「おーい、雪茂ー。何も起こらないぞー。」

「わ、わかってるって。」

 

しばらくしても特に何も起こらない。

名前の読み間違えでもしたのだろうかと思ったのだが、そんなことはなかった。

 

「なんでだろ?」

「……あなたそのカードゲームやったことは?」

 

今まで黙っていた紫さんが口を開いた。

 

「このカードゲームはやったこと無いですね。ルールとかもさっぱりです。」

「たぶんそれね。」

 

え?と思わず口に出てしまう。

 

「もしかして一度でもやったことがないとそのカードゲームのカードは使用できないってことですか?」

「そうだと思うわ。そうじゃないとどのようにしてそのカードを使えばいいのかとか分からないでしょ?」

 

なるほど。と紫さんに言われてようやく理解する。

…ん?待って。

 

「すいません。前にやったことがあるカードゲームのカードを使ってみたんですけどその中で何も起こらなかったものがあるんですが。それは?」

「どのような状況で使ったかが分からないからなんとも言いようが無いわね。まぁ、それが無くても戦えるだろうし、今は自分の出来ることを伸ばしたほうがいいんじゃないかしら。」

「…はい。そうします。」

 

これで原因が分かればもう少し戦いやすくなったかも知れないんだけれど。

少し残念だが仕方ないだろう。

それに紫さんの言うことにも一理ある。

今新しいことに手を伸ばして中途半端にスキルを伸ばすのでは無く、今自分が出来ることを伸ばしたほうが効率もいいだろうし実践にも使えるだろう。

 

「とりあえず、今のあなたが出来ることはどんなことなの?」

「えっとですね、大まかに分けて今のところ3つ出来ることがあります。まず一つ目、カードのイラストに描かれているものを具現化。二つ目にカードの効果を使用。三つ目に自身にそのカードを憑依、というか力を借りるというものですかね。」

「なるほどね。ためしに何かやってみてくれる?」

 

わかりました、と言って何をしようか考える。一番体力の消費が少ないのはモンスターの召喚かな。

コストが軽いの出せばいいし。すぐに戻せば体力はほとんど削れることは無い。

…よし。そうしよう。

 

「あ、ごめんなさい。今あなたに出来ることの中で一番強いものをお願い。」

 

あ、駄目だ、これ。節約とか出来ないやつだ。

 

「……分かりました。ちょっと待っててください。考えますんで。」

「はいな。」

 

どうするかな。

憑依のほうが強いのかな?それとも召喚?

どちらもコストが大きければ強いしなぁ。

でも召喚するほうはまだ最高コストのものを出してないし、憑依のほうがいいか。

んじゃどうしようかな。

また謙信?んーでもこの際他のも試してみたいな。

あ、戦国大戦じゃなくて遊戯王でも憑依できるのかな?

…わからないし今は戦国大戦にしておこう。

さて、それじゃ最高コストの武将といえば、

上杉謙信、織田信長、最近ので前田慶次か。

んじゃ信長にしてみよう。

 

「はい。決まりました。それじゃ今からやります。」

「じゃあ早速やってみて頂戴。」

「憑依!織田信長!」

 

瞬間雪茂から青い光があふれる。

 

「っ…眩しいんだぜ。私と戦ったときと似てるな。」

「………。」

 

魔理沙は驚きの表情を、紫は扇子で口元を隠しながら雪茂の様子を見ていた。

そして十秒としないうちに光が収まる。

そこには胴と腰に織田家の家紋の付いた甲冑を付け、青いマントを纏い、片手に火縄銃、腰に刀といういでたちの雪茂がそこにいた。

 

「我、君臨せん。」

 

その一言と共に周りの空気が震える。

しかし雪茂が何かしたわけではない。

ただ、そこにいて言葉を発しただけなのだ。

それは、まるで魔王の降臨。自然と周りを威圧する。

 

「…っ!」

「確かにこれは…。」

 

魔理沙は反射的に構えを取る。

紫は雪茂の様子をじっくりと見つめていた。

 

「どうした。我と一戦交えるのではないのか。」

「いえ、そのつもりは無いわ。ただ、あなたの力が知りたかっただけよ。もう力解いていいわよ。」

「で、あるか。」

 

そしてその瞬間今まで周りを制圧していた重圧が一気に無くなり、雪茂の甲冑などが消えてゆく。

 

「ふぅ…。短い時間で助かった…。」

 

さっきまでとは打って変わり今までの雪茂がそこにいた。

しかし昨日の魔理沙との弾幕ごっこのときとは違い、気絶するようなことはなかった。

 

「さっきのは雪茂だよ…な?」

「紛れも無く僕だよ。いつも通り性格というか最早人間が変わってたような気がするけど。」

 

ただ、記憶はあるけどね。そう心の中で呟く。

警戒を解いた魔理沙の質問に答えながら僕は神社の中に向かう。

 

「とりあえずあなたはその憑依だったかしら。それを伸ばしたほうがいいかも知れないわね。」

「分かりました。とりあえず一息ついたら練習を始めようと思います。」

 

そういって僕は魔理沙の向かいに座る。

 

「どうやって練習するつもりなのかしら?今日を含めて残り二日よ?」

「それは…。」

 

確かに今から体力をつけるといっても無理がある。

色々考えるが答えが出ない。

そして僕が黙っていると紫さんが口を開いた。

 

「…今回私は手を出せないわ。」

「はい。分かっています。だから今から死ぬ気で特訓を…」

「手を出せないだけで今手伝うことは出来るわ。」

「え?」

 

僕の言葉を遮って紫さんが話す。

 

「今のあなたの特訓に協力することは出来るのよ。そこまで犯人は言って無いしね。」

「なるほど…。でもどういったことをするんですか?」

「それはまずあなたの時間との境界を無くすわ。それからあなたに師匠を付けるわ。」

「………はい?」

 

時間との境界を無くす?あまりにも急なことに思わず聞き返してしまった。

と、僕が困惑していると魔理沙が口を開いた。

 

「紫は境界を操ることが出来るんだぜ。」

「それってある意味反則的な能力だね。」

「まぁとりあえずそういうことよ。じゃあ早速無くすわね。」

 

そういって紫さんは指を鳴らす。

その瞬間、身体に違和感を感じた。

なにかが抜けるような、消えるような感じ。

しかしうまく言葉に出来ない。

とりあえずそれが時間との境界を無くしたということなのだろう。

 

「境界を無くしたといっても永遠に無くしておくとあなたの生命に関わるからこれを渡しておくわ。」

 

そういって紫さんは僕に腕時計を渡してきた。

文字盤もあってカレンダー機能も付いている。

しかし普通の時計とは違う。

一つの時計の中に二つ隣り合わせに文字盤が並んでいた。

左側は普通に動いている。

右側のカレンダーは1週間後の日付を表し、針は12時を差していた。

 

「まぁ見て分かると思うけど一週間後の午前12時、そのときにあなたの境界は戻るわ。」

「なるほど、わかりました。それはいいんですけど、」

 

と言いかけ魔理沙のほうを見る。

そこには固まって動かない魔理沙がいた。

 

「今動いてるのはあなたと私ぐらいよ。」

「え、じゃあ師匠って。」

「それは今境界を無くして動けるようにしたわ。」

 

なんでも有りかこの人は。

と心の中で呟く。

…ん?だったら相手の能力の境界を無くせば…って干渉が出来ないから駄目なのか。

 

「んじゃ、早速行ってらっしゃーい。」

「へ?…ええええぇぇぇぇぇぇ!?」

 

いきなり足元に空いた穴に僕は抵抗も無く落ちていった。

 

…これ、落ちて死ぬんじゃないかな。

 

そういった不安を感じつつ落ちていく。

 

「あ、計略使えばいいじゃん。高木さんでOKだ。」

 

そして出口が見え始めたところで計略を使う。

 

「発動。翠煌の構え!」

 

そして穴を抜ける。

地面が目の前に見えた。

 

「まじで!?」

 

さすがにこれは体勢を変える暇は無い。

腕を前でクロスさせ、身体を丸めて落ちる。

考えずにとりあえず身体を守る体勢をとる。

 

 

ズドンッ!

 

 

小さい爆発かと思うような音がした。

まぁ僕が原因だけど。

 

「…よし。痛みや怪我は無いな。」

 

にしても大きい穴あけちゃったな。

綺麗な道だったのに。

ごめんね。誰かさん。

 

そう思っていると、後ろから声が聞こえた。

 

「貴様が侵入者か!進入だけならまだしも、石畳を壊すとは!」

 

その声には明らかな怒気と敵意が混じっていた。

そして声の主のほうに顔を向けようとしたところで、

 

―――――――僕は切られた。

 

 




閲覧ありがとうございます。
もっと更新ペース上げたいなぁ…。
さて、やっと話に動きがありました。
まぁ動かさなかったのは僕ですが。雪「おいこら。」ごめんって。
とりあえず修行編って感じですかね。
そんか感じで続き書いていきます。
それじゃまた次回宜しくです。

11/11 追記 文章の修正を行いました。


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第11話 剣士との出会い

うp主「久しぶりの連日投稿。」

雪茂「いつもこうならいいのに。」

魔理沙「今までペースだとこの小説の一週間とかリアルで何日かかるか分からないな。」

霊夢「早く助けてほしいんだけど…。」

うp主「わ、私だって頑張ってるんです!」

雪、魔、霊「「「じゃあ書けや。」」」

うp主「あ、はい。UA700超えました!ありがとうございます!!」

雪、魔、霊「「「この流れで言うのか!?」」」





いつも通りの茶番。更新頑張ります。
本編どぞー。


~??side~

いきなり私の居候している家の敷地内に落ちてきた侵入者。

確実に、迅速に、正確に私はそいつを切った。背中をバッサリと。

少し浅い気もするが手ごたえからしておそらく気絶しているだろう。

だが、一撃で殺さなかったのはまだ修行が足りないからか。

 

「精進しないと…っ!?」

 

そう呟き近づいた瞬間、先ほど切った侵入者が動いた。

確実に切ったはず!

なのになんで!?

 

「痛ったー!?いきなり切るのはひどくないかな?勝手に入ったのは申し訳ないけど。」

 

そして目の前の侵入者は身体を起こして何てこと無かったかのように話し始めた。

血も流れていない。

 

「き、貴様!私に切られて無事なのか!?」

「まぁ無事も何もこうして立ってるし話してるしね。」

「妖怪の類か!」

「違うよ!てかこれで二回目だよ!間違えられるの!」

 

なんとも調子の狂うやつだ。

こうなればもう一回切り伏せて…、

私が考え事をしていると「憑依」とか聞こえてきたが気のせいだろう。

そうして顔を上げると私に硬い鉄の塊が突きつけられた。

 

「とりあえず動かないでもらおうか。いきなり切られて少し頭にきてるんだ。」

「ふっ、そんなもので何をしようと?こちらは刀を持っているそれなのにこんなに近づいていいのか?」

 

そうだ、起き上がったからとはいえまた切ればいい。

それにこの鉄の塊。刃がついていない。刀では無いようだ。

つまり切られることは無い。

だから、私はこの状況を軽く見ていた。

軽く見てしまっていた。

 

「一射一殺。」

 

ズドン!

 

 

その音を聞き届ける前に私の意識は遠のいていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~雪茂side~

切られて倒れた後で安堵した。

「(計略中でよかったー。でなければやばかった。少し様子を見よう。)」

 

相手が動かない、と思った瞬間、「精進しないと。」という言葉が聞こえてイラっとした。

人間を切って、罪悪感も無しに、自分のことだけを考えるだと?…っと落ち着かないと。

 

「痛ったー!?いきなり切るのはひどくないかな?勝手に入ったのは申し訳ないけど。」

 

一応こちらが勝手に入ったのだし謝っておこう。

と声の主のほうを向くとそこには黒髪のポニーテールの少女がいた。

ただ手には大太刀を持っているが。

それになにやら服装が古めかしいというか、剣道の胴着のような格好をしている。

 

「き、貴様!私に切られて無事なのか!?」

「まぁ無事も何もこうして立ってるし話してるしね。」

「妖怪の類か!」

「違うよ!てかこれで二回目だよ!間違えられるの!」

 

霊夢に続き二回目。ほんとにやめてくれないかな?

僕は人間なのに。

 

先ほど切られたのと、人間扱いされなかったことと、先ほどの態度。

それらが原因か分からないがそろそろ限界だ。

 

「憑依。土橋守重。」

 

相手が考え事をしている間に相手にばれないように憑依をする。

今回憑依したのは宴SR土橋守重(つちばしもりしげ)という武将。

 

 

宴SR土橋守重 兵種:鉄砲隊

武力8 統率7 コスト2.5

 

紀伊の豪族。雑賀衆の一人。石山合戦では4人の子とともに本願寺に籠城して戦い、信長

軍を苦しめた。石山本願寺降伏後、雑賀衆のあいだで信長恭順派の雑賀孫市と敵対派の守

重は対立。孫市に謀殺された。

 

計略…『一射一殺』・・・ 範囲内の最も近い敵に射撃によるダメージを与え、移動速度を下げる。ダメージはお互いの武力で上下する。

 

 

うp主「お久しぶりの説明コーナー。飛ばしても大丈夫かもです。」

 

今回雪茂君が憑依したのは宴SR土橋守重というカード。

SRなら聞いたことはある人は多いかもしれません。

しかしその前に「宴」の文字が付いています。(少し前に登場した宴SR雑賀孫市も同じです。)

これはゲームの中で手に入るカード。つまり現実には無いカードです。(最近実物可されたものがあります。このカードもその一枚です。前回の孫市さんもそうです。)

それを総称して「宴カード」もしくは「電影カード」と呼ばれています。

ちなみに今回の武将は「ダメージ計略」というものを持っています。

これはその名のとおり的にダメージを与える計略です。

この武将はそれに付け加え相手の速度を下げるという効果も付いています。

まぁその代わりダメージは低いのですが。

とまぁ結構便利な人です。うp主は良く使います。

あ、最後に今回から武将の説明に兵種を書いています。

兵種については色々種類があるのでこの武将の兵種以外はその都度説明します。

 

鉄砲隊・・・遠距離から鉄砲によるダメージを与えることの出来る兵種。ただし一度に撃てる数は5発。それに撃ち切るともちろんのことリロードをしなくてはなりません。鉄砲を撃ってる間は動けません。(一部を除く。)

相手の武力が高ければダメージは低いです。

 

と、簡単ですが説明終わりです。

本編戻ります。

 

 

刀を手に持ち考え事をしている相手に銃を突きつける。

 

「とりあえず動かないでもらおうか。いきなり切られて少し頭にきてるんだ。」

 

結構頭にきている。それに色々と聞かなければ。名前とか、ここが何処なのか。

 

「ふっ、そんなもので何をしようと?こちらは刀を持っているそれなのにこんなに近づいていいのか?」

 

プチン

銃を突きつけられて未だ余裕でこちらを挑発してくる相手に本気で頭にきた。

 

「一射一殺。」

 

そう呟き相手に向かって計略を使用し、銃を放った。

そして相手は動かなくなった。

 

「しまった!!そんなことするつもりじゃなかったのに!」

 

とは言っても相手もかなり強いらしく血は出ていない。

 

「いや、どんな作りしてんのさ…。いや、力量差があったのかな?たぶん戦国大戦の武力がこちらの世界の力だろうし。」

 

まぁいいか、とりあえず倒れている子の息を確認したけど生きてるみたいだし。

と、生きているならこんなところに寝かしておいちゃ駄目だな。

 

「でもなぁ…。」

 

目の前を見てみるとそこにはとても長い階段があった。

 

「上るのだけでも中々大変そうだな。」

「なら私が手伝うわ~。」

「うわっ!」

 

いきなり後ろから声を掛けられ驚き声をだしてしまう。

「(なんかこっちの世界に来てから驚いてばかりだな。って今更か。)」

 

「んもー大きな声出してびっくりしちゃうじゃない。」

「いきなり後ろに現れるのはどうかと思いますけど!?」

「まぁそれもそうね~。」

 

やけにのんびり話す人だ。

なんていうか雰囲気が全体的にぽわ~としているような気がする。

 

「にしてもうちの祢々を倒すとはねぇ。中々やるじゃない。」

「”うちの”ってことは…すみませんでした!」

 

思わずそこに土下座してしまう。

”うちの”ということはつまりこの人は親か親戚かまぁ身内の人だろう。

死んでないとはいえ危害を加えてしまった。

さすがに謝らないとまずいだろう。

 

「?別に気にしないわよ~。うちの居候はもっと鍛錬が必要ね~。」

「へ?居候、ですか?」

 

思わず顔を上げて聞き返してしまう。

 

「そうよ~。居候。少し前にこの世界に迷い込んだらしいけれど、うちの庭師と気が合っちゃってうちに住まわせてあげてるのよ。」

 

この祢々っていう子も外から来たのか。

一応僕と同じ境遇なんだな。

あと、庭師がいるらしい。

家は屋敷か何かかな?

 

 

「だから楽にしていいわよ~。負けたってことはまだ実力が足りてないってことだしね。」

「はぁ…。」

 

そういわれて体勢を直す。

 

「まぁ紫から色々聞いてるわ。まずはうちにいらっしゃい。祢々は…そこに寝かせておいていいわよ。」

「いや、そう言うわけにはいきませんので僕が責任を持って運びます。あと、あなたの名前は?」

「そういえば自己紹介がまだだったわね。私は西行寺幽々子よ。」

「僕は立花雪茂といいます。えっと、西行寺さん、」

「幽々子でいいわよ。」

 

僕の言葉を遮るように言ってきた。

いきなり初対面の女性を名前呼びというのは、と言おうとして今までを思い出す。

…今までの人全員名前で読んでるじゃん。あ、でも咲夜さんは一度苗字で呼んでるか。

まぁここは言われたとおり名前で呼んでおくのが良いだろう。

 

「…じゃあ幽々子さん。」

「はぁ~い。」

「とりあえず祢々さんは僕がおぶって行きますんで道案内お願いします。」

「わかったわ。といっても道順も何もこの階段を上っていけば分かるんだけどね。」

 

まぁ今更だが道は一本の階段のみ。

ならそこを登っていけばいいのは必然的に分かるがなんとなく聞いてしまう。

 

「(というかこの長い階段を僕は女の子おぶって上るのか…。言った手前無理だなんていえないけど。)」

「さ、じゃあいきましょうか。」

「あ、はい。」

そういえば、師匠とはどんな人なのだろうか。

まさかこの祢々という子だろうか。

それともこの子と気が合ったという庭師だろうか。

まさか幽々子さん…?

まぁ誰にせよこの時間が止まっている一週間。

その師匠とやらに全力で教えを被らなければならない。

僕はどれぐらい強くなれるのだろうか。




雪茂「オリキャラ増やしたな?」
うp主「はい。なんとなく増やしました。」
雪茂「この後深く関係してきたり?」
うp主「さぁ?」
雪茂「はぁ…。」

まぁそんなこんなで冥界来ちゃいました。
本当はオリキャラについてはどうなるか考えています。
なら、茶番やるなって感じですけどね。
でも、好きなんですもん!

とりあえず次話の更新も早めにします。
また次回宜しくですー。

というかこの流れ他の小説でも良く見るよう…。
気のせいですね!!(オリジナリティ強くしないと…。)


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第12話 激昂

雪茂「そういえば霊夢との絡み全然無いなぁ。」

うp主「ちなみに第一話のボツ話でなら霊夢との絡みはかなりある。R付いちゃうけど。」

雪茂「っ///」

うp主「顔赤らめんな気色悪い。」

雪茂「ひどいっ!?」





本編どぞー
あ、今回の茶番に出てきたボツ話は番外編で公開するかもしれません。
番外編はR-18なのであしからず。


雪茂が祢々を背負い階段を上り始めて10分ぐらい経った頃―――

 

 

「………ん…、は、こばれ、てる?」

「あ、起きました?」

 

どうやら後ろにおぶっている祢々さんが目を覚ましたようだ。

無事でよかった。内心、やっと軽くなる。と思ったのは内緒だ。

まぁ、祢々さんは小柄なためさほど重くは無いのだが、階段を上るとなるとやはりきつい。

ぶっちゃけ降りてもらうととても楽だ。

ちなみに祢々さんの大太刀は幽々子さんに持ってもらっている。

 

「だ、誰?…っていうか男の人!?いやっ!!すぐに降ろして!!」

「え…?だ、ちょ、まって、暴れないで!今降ろすから!」

 

一瞬誰かと思うような言葉遣い。

先ほどの迫力はまったく無く、見た目相応な女の子のような言葉遣いになっていた。

そんなことを考えながら暴れる祢々さんを何とか降ろす。

そして幽々子さんの後ろに隠れてしまう。

 

「ごめんね、いきなり目を覚ましたら知らない男の人の背中なんてびっくりしちゃうよね。ごめん。」

 

なんというか、先ほどの反応を見ると男性恐怖症なのだろうか。

もしそうだとしたら申し訳ないことをした。と思い、謝り頭を下げる。

 

「ち、違うの!ただ、ちょっとびっくりして…。それにそんな丁寧な言葉遣いの人だったら悪い人じゃなさそうだもん。こちらこそごめんなさい。」

 

そう言って祢々さんも頭を下げる。

あ、この子いい子だ。詐欺とか引っかかっちゃう子だ。

 

「ならいいんだけど。それより、もう一人で歩ける?」

「う、うん。大丈夫、だと思う。」

「駄目だったら言ってね。」

「は、はい!」

「あなた達自己紹介はしないのかしら?一応初対面でしょ?というか私に隠れてないで出たらどう?」

 

「はい…。」と少し恥ずかしそうに祢々さんが幽々子さんの後ろから出てきた。

ん?初対面?さっき一応会ってるんだけど…?

まぁあれじゃ顔を合わせたとは言えないか。

ここは幽々子さんに従っておこう。

 

「そうですね。えっと、僕は立花雪茂。一応、一般人。よろしくね。」

「は、はい。私は、五月雨祢々(さみだれねね)と申します。よ、よろしくおねがいします!」

 

そういって祢々さんはまた頭を下げる。

祢々さん…というより祢々ちゃんの方がイメージ的に合っているかな。

今度からそう呼ぼう。

 

「さ、じゃあそろそろ歩き始めましょうか。」

「はい。」

「は、はい。」

 

祢々ちゃん、緊張しいなのかな?

でも、さっきの戦闘の時と…、

 

「ほら、雪茂くん置いてくわよ~。」

「は、はい!」

 

まぁいいか。今は幽々子さんの家に行こう。

 

 

 

 

 

「ここが我が家、白玉楼よ。」

「お、大きい…。」

 

純日本家屋というような感じだろうか。

それと庭がとても綺麗だ。所謂日本庭園というやつだ。

ここの庭師さんはきっと腕の立つベテランの方なのだろう。

きっと鉢巻とか巻いて元祖江戸っ子とかそんな人物像が頭に広がる。

 

「妖夢~。お客様連れてきたわよ~。」

「はーい。」

 

玄関に着くと幽々子さんがおもむろに声を出した。

それに反応して帰ってきたのは女の子の声。

 

「いらっしゃいませ。白玉楼へようこそ。」

 

とても礼儀正しそうな銀髪ボブヘアーの女の子が出迎えてくれた。

たぶんこの子が妖夢という子だろう。

随分物騒なものを腰に二本ぶら下げてることを除けば普通の女の子…って周りに浮いてる白いのなんだろう?

 

「ところで、幽々子様が迷惑かけませんでしたか?」

「へ?いや、うん、ぜんぜん大丈夫だったよ?」

「なぁに妖夢?私がいつも迷惑かけてるような言い方じゃない。」

「い、いえそんなことは、そ、それより、お客様もいて立ち話もあれなので中に入ったらどうでしょうか?お茶菓子もありますよ?」

 

…話をそらしたな?って、幽々子さんがお茶菓子と聞いて即行中に入っていったんだけど…。

 

「はぁ…。」

「なんていうかお疲れ様。」

「いえ、いつものことですので。あ、祢々もおかえりなさい。」

「ただいま妖夢。」

 

祢々ちゃんもそう言って靴を脱ぎ中に入る。それに僕も続く。

僕が上がったのを確認すると妖夢ちゃんは歩き出した。

たぶん付いて来いということだろう。

少し歩くとそこは広い茶の間だった。

…えっと、幽々子さんがどら焼きをすごい勢いで食べてるのが見えるけど気のせいかな?

 

「えっと、いつものことですので…。」

「あ、はい…。」

 

思わず妖夢ちゃんに同情してしまう。

これは食費がかさむなぁ。

 

そんなことを思いつつ茶の間に通され幽々子さんの正面に座る。

ちなみに右に妖夢ちゃん、その正面に祢々ちゃんだ。

そして何時の間にやらどら焼きは全部無くなっていた。

 

「改めて、えっと、紫さんの能力でここに連れて来られました。立花雪茂です。」

 

妖夢ちゃんとは初めて会うので改めて自己紹介をする。

 

「私と祢々はもう済んでるからいいわね。じゃあ妖夢、自己紹介しておきなさい。」

「はい。魂魄妖夢と申します。ここの庭師兼幽々子様の護衛兼家事全般をやっています。宜しくお願いします。」

 

そういって妖夢と名乗った子は頭を下げる。

さっきのイメージ通り礼儀のなってる子だなぁ…って、庭師!?

 

「君が、庭師!?この広い庭を?一人で?」

「は、はい。そうです。」

「すごいね!最初庭師がいるって聞いておじさんをイメージしてたけど、君みたいな可愛い女の子がやってるなんて!」

 

思わず少し興奮気味に話してしまう。

それほど、衝撃を受けたのだ。

さきほどの庭の手入れはとても行き届いていて、雑草も無く、木々はきちんと剪定をされており、所謂枯山水、その模様もしっかりしている。

それを目の前の少女が全て一人でやっているというのだ。家事もやりながら主人の危機を守り、なおかつ本業の庭の手入れの手を抜かない。完璧じゃないか!

………はっ!?つい、衝撃を受けて頭の中で熱弁してしまっていた。

 

「…か、可愛いなんて…。」

 

と、妖夢ちゃんは顔を赤くして俯いてしまう。

 

「雪茂君、あなた”たらし”ね。」

「…へ?何がです?」

「いえ、何でも無いわ。(自覚無いのね。)」

 

何も僕はたらしていないけど?何のことだろうか。

で、妖夢ちゃんは顔真っ赤にして俯いたままだし、祢々ちゃんもなんかこっちジトッと見てるし、幽々子さんはこちらの様子を微笑みながら見てるし、どういうこと?

 

 

「まぁそれは置いておいて、紫から色々聞いたわ。随分と厄介なことになってるのね。」

 

どうやら紫さんが説明してくれていたようだ。

説明の手間が省けて助かる。

 

「はい。それでこちらに師匠がいると聞いたのですが、どちらにいらっしゃいますか?」

「んもう言葉が硬いわねぇ。まぁいいわ~そのお師匠さんはここにいるわよ。」

 

そういって幽々子さんは祢々ちゃんと妖夢ちゃんを指差す。

 

「…え、はい?ほんとですか?」

「ほんとよ~大真面目よ~。というわけで後はゆっくり話し合ってちょうだいな。私は自分の部屋に行くわ~。頼んだわよ二人とも。」

「「はい。」」

 

祢々ちゃんと妖夢ちゃんが同時に返事をする。

それを聞き届けた後幽々子さんは部屋を出た。

 

「えっと、君たちが僕の師匠?」

「はい。そのように聞かされています。」

「わ、私も言われたのですが、私なんかじゃ師匠なんて無理ですよぉ。」

 

妖夢ちゃんはしっかり受け答えるが、祢々ちゃんのほうはどうも師匠はやりたくないらしい。

 

「祢々だって刀持てば大丈夫だよ。あれだけ強いんだから。」

「そ、それは、そうかもしれないけど…。」

「そういえば祢々ちゃんはさっき戦ったときと雰囲気がまったく違うんだけど気のせい?」

 

先ほどから気になっていたことを口に出す。

 

「い、いえ気のせいではないです。実は私は二重人格のようなもので、刀を持つと人が変わっちゃうというか、豹変するというか。」

「なるほどね。なんとなく分かったよ。だからさっきはあれだけ迷いも無く切れたんだね。」

「ほ、本当にすみませんでした!」

「大丈夫だって。傷も無いしね。ただ、服は切れちゃったけど。」

 

全力で頭を下げてきたので笑いながら言う。

しかし最後の言葉は余計な気もする。

 

「ごめんなさい!い、今すぐ着替えを…!」

 

そう言って祢々ちゃんが立ち上がりどこかへ行ってしまった。

 

「えっと、妖夢ちゃん?」

「え、は、はい!(ちゃん付けで始めて呼ばれた。)」

「とりあえず、これから宜しくね?…祢々ちゃんにも後で言っておかないと。」

「は、はい!不束者ですが!」

「…それ、お嫁さんに来た人が言うやつだよ。」

 

笑いながら軽くつっこむ。

 

「お、お嫁さん。…はうぁ。」

 

え、倒れた。

顔を真っ赤にして、後ろに倒れた。

 

「えー…どうしよ。」

 

まぁ家の中だしこのままでもいいだろう。

ただ体勢だけ少し直しておいてあげよう。

 

「て、いうか初日からこれで大丈夫なのかな。」

 

あ、ていうか時間止まってるんなら今のうちに霊夢を助ければ…、

 

「それは出来ないのよ。」

「うわっ!ってだからいきなり話しかけないでくださいよ!」

「仕方ないじゃない。」

「ていうか心読まないでください!」

 

先ほどまで誰もいなかった僕の隣にいきなり出てきて話しかけられたら誰だってびっくりするだろう。

 

「読んでないわ。ただあなたから心の声が漏れてたから聞いてただけよ。」

「え、ほんとですか?」

 

考え事をしているとそこらへんは散漫になってしまうのか。

初めて知った。

 

「まぁそれはいいとして、どうして無理なんです…って、そうか。干渉できないんでしたっけ。」

「えぇ、ちなみに今、例の犯人と霊夢は動けているわ。」

「そうなんですか……、って、え…それってまずいんじゃ…?」

「そうね。まずいわね。」

 

さも当たり前のように紫さんが言う。

 

「じゃあなんで!」

「そうじゃないといけないのよ。霊夢には悪いけど。」

 

それじゃあ…まるで…。

 

「見捨てるっていうんですか!?」

 

この異変に気付けば犯人はたぶん霊夢を殺すだろう。

 

「大丈夫よ。殺されはしないわ。それは分かってる。」

「どうしてそんなことが分かるんですか!?」

「まぁ、そんなに声を荒げないでちょうだいな。あなたらしくも無い。」

「すみません…。」

 

最近僕変だな。前より感情的?になったのかな。

 

「…この幻想郷には運命を操る程度の能力を持った妖怪がいるわ。そいつに頼んで見てもらったのよ。」

「なるほど…。でも、なんで殺さないんでしょうか。」

 

普通の犯人であれば頭にきて人質を殺すというのはよくある話だ。

なにか考えがあるのか…?

 

「それがね、犯人はかなりの変人みたいね。」

「変人…ですか。」

「えぇ、二人いるうちの片方がね。それとさっきちょっと様子を見てきたのだけれど、こんなことを言っていたわ。―――時間が止まっているから日は過ぎない。つまり二日後はこの時間が直るまで来ない。かといってそれを行った犯人に頭にきてこの巫女さんを殺すのは些か綺麗じゃない。だから時間が直るのを待とう。―――って言ってたのよ。」

「…ふざけてますね。」

 

少しばかり、いや、かなり頭にきた。

人を殺すのにためらいが無いばかりか、それに美を求める?

ふざけてる。人として狂ってる。

胸焼けするような怒りが込み上げてくる。

 

「と、まぁそんなことがあってそちらのほうは心配は無いわ。だからあなたは今、自分のことを考えなさい。」

「…はい。わかりました。」

「わかったならいいわ。それじゃあがんばるのよ。」

 

それだけ言うと紫さんはスキマの中に入って消えた。

 

「……少し冷静になろう。熱くなっても仕方ない。やっぱりいつもの僕らしくない。」

 

自分の心に言い聞かせる。

軽い自己暗示のようなもの。

心から熱が引いていくような感じがする。

 

「………よし。」

 

だいぶ頭が冷えた。

さっき紫さんも言っていたように今は自分のことを考えなければ。

…とりあえず妖夢ちゃんを起こそう。

今日はそれからだ。

 

 

 

―――時間が戻るまであと6日と約12時間。




5000文字もうちょいで行きそう。
どのぐらいの長さがいいんだろうなぁ。
目安に出来る文字数考えとこーとか考えてる竹馬の猫友です。
最近雪茂君の感情が豊かですねぇ。
なにかいいことでもあったのかい?と聞きたくなります。
とまぁ更新早めにがんばってます。
この調子でいきたいなぁ。
ではまた次回宜しくですー。


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第13話 庭師と居候

雪茂「そういえば魔理沙に計略の説明するって言ってたような気が。」

魔理沙「確かにそんな気がするぜ。」

うp主「そうだったっけ?」

雪茂、魔理沙「「お前が書いてるんだろ!」」

うp主「ひぃぃごめんなさい。」





雪茂「あ、本編どぞー。」


「おーい、大丈夫ー?」

 

とりあえずなぜか倒れてしまった妖夢ちゃんの肩を揺らしてみる。

 

「……んん、はっ!?私何を!?」

「分からないけどなんか急に倒れちゃって心配しちゃったよ。」

「す、すみません。」

「そうそう、それで師匠になってくれるらしいけどどんなことをするの?」

 

そう、やっぱり師匠というからにはそれほどに強いのだろう。

だが見た目が完全にか弱そうな女の子であるためどうも妖夢ちゃんが刀を振り回すというのが想像できない。

 

「えっとですね、とりあえずは実践あるのみということで私と祢々と戦っていただきます。」

「あ、やっぱりそうなんだ。」

「はい。でも、ただ戦うだけではさすがに足りないのでこの重りを付けてもらいます。」

 

と、どこからか手首や足首に付ける重りを妖夢ちゃんが出して僕の目の前に置く。

 

ズシン。

 

「へ…?」

「どうかしましたか?」

 

きょとんとした顔でこちらを見る妖夢ちゃん。

うん。やっぱり可愛いな…じゃなくて。

 

「いやいや、ズシンて。さすがに重くない?」

「そうですね、さすがに普通の人だったらいきなり実践というのは難しいですね。」

 

ほっ…よかった。軽くしてくれるのだろうか。

 

「ですので、とりあえず付けて薪割りからしてもらうことにします。」

「ていうか、重りを着けないではじめれば良いんじゃないかな!?」

「あ、いえ、なんていうか時間が惜しいので最初から飛ばして行こうかなと。だめですか?」

「ま、まぁ確かに時間は惜しいもんね。」

 

頼むから上目遣いはやめてほしい。断れなくなるから。

結局付けることになるのか…。

とりあえず手に取ってみる。

 

「重っ!?」

「そうですかね?」

 

といって妖夢ちゃんはその重りをヒョイと持ち上げる。

…僕もあんなふうになれるのかなぁ。でも一週間か。

 

「頑張らないと…。」

「そうですね。霊夢さんを助けるためです。」

 

妖夢ちゃんと話をしているとしまっていた部屋の扉が開く。

 

「すみません!遅くなりました!」

 

声のした方に顔を向ける。

そこには着物を持った祢々ちゃんがいた。

 

「す、すみません。遅くなりました。お客様用の着物なんて滅多に使うことが無いみたいでどこにあるか分からなくて…。」

 

と、少し表情を暗くして祢々ちゃんが言う。

初対面なのにそこまで真剣になってくれるとは…。

 

「へ!?あ、あの?ゆ、雪茂さん!?」

「ん?あ、ご、ごめん。つい。」

 

いつの間にか祢々ちゃんの頭を撫でていたようだ。

自分に妹や弟はいないけどもしいたらこんな感じなのかな、と思っていたら手が勝手に伸びていた。

 

祢々の身長は160cmに満たない程度。

雪茂の身長は170cmを少し超えるぐらいだ。

周りから見れば仲のいい姉妹のように見えてしまうかも知れない。

 

「い、いえ別に嫌ではない、です。むしろもっと…。」

「ん?」

 

祢々ちゃんが嫌ではないと顔を赤らめて言う。

あと最後のほうが聞き取れなかった。なので思わず聞き返してしまう。

 

「い、いえ!なんでもないです!!し、失礼します!」

 

そういって着物を置いてまたどこかに行ってしまった。

なんなのだろうか。

 

「…なるほど、幽々子様の言っていたことが分かりました…。」

「え?何か言った?」

 

後ろのほうからぼそぼそっと何か妖夢ちゃんが言ったのが分かったが、小声だったためよく聞こえず思わず聞き返してしまう。

 

「な、なんでもないです!ちょっと修行の用意をしてきます!」

 

そういって妖夢ちゃんもどこかへ行ってしまう。

その間に着替えてしまおう。

 

「って、二人ともいなくなっちゃったなぁ。」

 

着替えながら周りを見渡す。

幽々子さんも自分の部屋に行くって言って行っちゃったし、妖夢ちゃんと祢々ちゃんの二人もいなくなっちゃったし、なにかやることないかな。

さすがに手持ち無沙汰では待っていても暇だ。

すぐに戻る可能性もあるけれど。

 

「どうしようかな。うーん。あ、そうだ。こういうときは…。」

 

自分の能力について考えるのが良いだろう。

紫さんに言われて前回は織田信長を憑依させたけど、今までは戦国大戦のカードばっかりで遊戯王のカードを憑依させたことは無かった。

軽いコストのカードを今実験的に憑依させてみよう。

…これから修行かも知れないけど自分のやることを理解することはいけないことではないはずだ。

体力をあまり使わないようにしないと。

 

「思い立ったが吉日。早速やってみよう。」

 

どれにしようか…。

普段よく使われるのは星3のカードや星4のカードだ。

今回はその辺にしておこう。

 

「じゃあ、あれにしよう。」

 

思いついたのが”魔導戦士ブレイカー”少し古いが印象の強いカード。

何よりアニメの主人公の使っていたカードという印象が強いためだろうか。

とりあえずそれにしてみよう。

 

「憑依。魔導戦士ブレイカー!」

 

 

効果モンスター

星4/闇属性/魔法使い族/攻1600/守1000

(1):このカードが召喚に成功した場合に発動する。

このカードに魔力カウンターを1つ置く(最大1つまで)。

(2):このカードの攻撃力は、このカードの魔力カウンターの数×300アップする。

(3):このカードの魔力カウンターを1つ取り除き、

フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。

その魔法・罠カードを破壊する。

 

 

 

雪茂の身体が言葉を言い終わると同時に発光する。

発光するというより光に包まれるといったほうが正しいだろうか。

しかしその光は明るいものではなく禍々しい黒い光だった。

そして数秒も経たないうちにその光は収まった。

 

「出来た…のかな?」

 

と、自分の身体を確認する。

今の姿は頭に手を当ててみると何もつけていない状態で首から下が金色の装飾の付いた赤い鎧、赤いマント、レイピアのように細い刀、それに真ん中に青い石のついた赤い盾といったものだ。先ほどまで着ていた着物は感じられない。

その代わりに身体に密着する布を感じる。アンダーウェアのようなものだろうか。

 

タッタッタッタと廊下のほうから走ってこちらに近づいてくる足音が聞こえる。

 

「雪茂さん!!突然魔力が…ってその姿は?」

 

部屋の扉が勢いよく開く。

憑依の力が周りに漏れたのか妖夢ちゃんが血相を変えて戻ってきた。

 

「あ、妖夢ちゃん。えっと、ちょっと能力について調べててね。まだよく分からないことがあったから試してたところなんだ。」

「そ、そうだったんですか。びっくりしました。気を張らないとよく分からないレベルの魔力でしたが、いきなり魔力が発生するのはおかしいので。」

「なるほどね。ところで魔力って?」

 

ゲームなどではよく聞く単語だが実際に自分の身に起きているとなるとよく分からないものである。

身体に違和感は無いし、いつも通りだ。

少し重いけど。鎧の所為で。

と考えていると妖夢ちゃんが口を開いた。

 

「えぇっと魔力ですか。人間には霊力があるというのは知っていますか?」

 

霊力。…うん、分からない。

 

「ごめん。分からないや。そこからかな。」

「あ、はい。分かりました。まず霊力というのは人間の力の源のようなものです。基本的には誰しも持っているものです。量に差はありますが。」

「なるほど。だけど今の僕からは魔力っていうのが感じられると。」

「そのとおりです。魔力というのは…まぁ簡単に言えば魔法使いが持っているものです。人間も学べば扱える…と聞いた覚えがあります。ちなみに今の雪茂さんから感じられる魔力の量は普通の魔法使いよりも少し少ない位です。」

 

なるほど、星4のカードだとそのレベルなのか。

って、そういえば憑依は回数制限あったんだった。

色々夢中で前に頭の中に響いてきたアナウンスを聞いていなかった。

今の一回とさっきの土橋守重で二回。たぶんあと1回だろう。

まぁ今日はもう使うことは無いだろう。

 

「なので今の雪茂さんはどちらかというと人間から離れてますね。まぁ魔力があるからといって出来ることは私には分からないです。」

「ありがとう。それだけ分かれば十分だよ。」

 

まぁ出来ることが分からないからなんともいえないのが本音だけど。

 

「にしても面白い能力ですね。自身に魔力を付与して強化する能力ですか?…でもそれだけだと戦いにくいですね。」

「あ、いや違うんだ。僕の能力は”カードの力を操る程度の能力”だよ。」

「カードの力ですか?」

 

妖夢ちゃんが?マークを浮かべて質問してくる。

こちらの世界にはカードゲームというものが無い。

そのため分からないのは当然だろう。

 

「まぁよく分からないよね。僕も祢々ちゃんと外の世界から来たんだけどその世界だとカードゲームって言うものがあるんだ。まぁカードゲームに関しては弾幕ごっこの札版って感じかな。その使われているカードの力を使えるってこと。」

「え、それってかなり強いんじゃ…。」

「といっても体力がないとすぐバテちゃうからあまり使えないんだけどね」

 

そう、いくら強くてもそれを使いこなす技量と体力が無ければ宝の持ち腐れだ。

「なるほどそれで修行を…。」と妖夢ちゃんが呟く。

なんとなく理解してくれたようだ。

 

「じゃあその能力で今その姿になっているということですね。」

「そうだね。まぁどんなことが出来るかよく分からないんだけど。」

 

そう言って僕の刀に妖夢ちゃんが視線を移す。

 

「…なかなかいい刀ですね。」

 

今僕が持っている刀を見たとたん妖夢ちゃんの目つきが変わった…?

 

「今、雪茂さんはどのぐらい戦えますか?」

「どのぐらいって言われてもなぁ…。あ、魔理沙と戦って一応勝ったよ。」

 

その言葉を聴いて妖夢ちゃんがびっくりして目を見開く。

 

「えっと、何かまずかった?」

「い、いえ異変解決をしている魔理沙さんを倒したというので驚きました。…雪茂さん。私と戦っていただけませんか?」

 

異変解決者を倒したという雪茂。

主人の護衛という任務がある妖夢にとって手合わせをする相手にふさわしいと感じたのだろう。

 

「まって!?いきなりすぎじゃない!?」

 

しかし、さすがに雪茂にやる気は無い。

なにより、会ってすぐの自分より身長の低い女の子。

そんな子と戦うのは躊躇するのは普通の考えだろう。

 

「そうでしょうか。言われて見れば確かに少し急かもしれませんね。ですが、強い人と戦うことで私の技術の向上にも繋がります。そして雪茂さんの修行の一環にもなります。一石二鳥だと思うのですが。」

 

しかし、幻想郷では元の世界の常識は通じない。

強い相手と戦いたい。

そういう考えを持つ者は多くいるだろう。

妖夢は主人の護衛という任務がある。

それゆえに強くなければならない。

だから異変解決者を倒した雪茂と戦ってみたいという衝動が起きたのだろう。

 

「たしかに一理あるけど…。でもなぁ…。」

 

 

 

こうして雪茂は乗り気じゃない中、犯人との対決までの波乱の一週間が幕を開けた。




書いててたまに書きたいことが多すぎて自分でよく分からなくなることがある。
今度ちゃんと小説の書き方とか勉強してみようかな。
あと、もっと本を読もう。

そう思い始めてます。(今更感)

次回も宜しくですー。

地味に連日投稿できなかったのが少し悔しかったです。


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第14話 英毅大略

雪茂「戦いたくなーい。(棒読み)」

紫「ならこの勝負勝ったら一つ何かあげるわ。」

雪茂「本当ですか!?」

紫「えぇ本当よ。」

雪茂「じゃあたいりょk「それは駄目よ。物語に影響するわ。」そんなぁ。」





ドンマイ雪茂。
本編どぞー。

11/16 追記 サブタイトルが無かったので追加しました。


「……わかったよ。そこまで言うならやろうか。」

「ありがとうございます!」

 

そういって妖夢ちゃんはこちらに頭を下げる。

しかしそこまで大層なことはしていないのでそこまで感謝してもらわなくてもいいような気がする。

むしろ僕が感謝しなければいけないような気もする。

僕と戦うのは自分が戦いたいからという理由が大きいのかもしれないがその中でもちゃんと僕のことも考えてくれているというのはありがたいし、うれしい。

だから僕は戦うことを了承した。

 

「弾幕ごっこでいいんだよね?」

 

そう聞くと妖夢ちゃんは頭を上げて頷く。

でも剣士なのに弾幕ごっこでいいのだろうか。

剣から弾幕が出るのかな?

それを想像すると少しシュールだけど。

 

「じゃあルールは?どうしようか。」

「被弾は2回まで。スペルカードは…雪茂さんは使えますか?」

「使えないけど似たようなものがあるから妖夢ちゃんは使っていいよ。」

 

似たようなものというのはもちろん計略のことだ。

士気を使って行うため実質スペルカードと似たようなものだ。

そういえば前回計略を使ったとき頭の中に流れたアナウンスで、使える士気の残量を言っていたな。

あの時は確か孫市の士気5の計略を使って残り10と言われた。

全部で15使えるのか。しかしそう考えると士気5で3回。

また必要士気の量が多くなれば使える回数は少なくなる。

…難しいな。

 

「?雪茂さんがそうおっしゃるなら使わせていただきます。」

「あ、能力使うのは有りだよね?じゃないと僕戦えないし。」

 

と自嘲気味に笑っていう。

実質その通りだ。能力は持っているがそれ以外は普通の人間なのだ。

素の状態で戦えば秒殺されるだろう。

 

「大丈夫ですよ。私も使いますし。」

「よかった。ところで妖夢ちゃんの能力って?」

「えっとですね”剣術を扱う程度の能力”というものです。まぁ名前のままの能力です。」

 

なるほど。

純粋に強そうな能力だ。

ただ応用などが出来なさそうな純粋で真っ直ぐな能力な気がする。

妖夢ちゃんらしい能力かもしれない。

って幽々子さんが音も立てずに部屋の中に入ってきた。

位置的にはちょうど妖夢ちゃんの視界に入らないように歩いている。

ちなみに僕と妖夢ちゃんは部屋の卓袱台に向かい合わせで座っている。

先ほどまで立っていたのだがさすがにそのままというのはどうかと思ったので先ほど座るよう促したのだ。

あとついでに憑依も解いた。

じゃないとそろそろ疲れが響いてきそうな時間能力を使っていたため、妖夢ちゃんとの戦闘に悪影響が出るとまずいので解除しておいた。

…きっと今のままだと短期決戦に持ち込まないと勝ち目が無いんだろうな。

と色々考えていると妖夢ちゃんが口を開く。

 

「これだけ決めれば大丈夫そうですね。」

「そうだね。…あまり気乗りはしないけどじゃあやろうか。」

「はい!えっとじゃあ場所は…。」

 

妖夢ちゃんが場所について考えていると先ほど入ってきた幽々子さんが妖夢ちゃんに後ろから近づいた。

…あ、これ驚かす気満々だ。

すごく悪い笑顔を浮かべている。

そして耳元に顔を近づけ…。

 

「うちの庭でいいんじゃないかしら~。」

「ひゃうっ!?」

 

いきなり耳元でささやかれた妖夢ちゃんは予想通り盛大に驚いた。

 

「驚かさないでくださいよ!幽々子様!」

「いいじゃないの~。面白いんだから。」

「私は面白くありません!」

 

見事に幽々子さんにいじられている妖夢ちゃん。

たぶんいつもこんな感じなんだろうな。

 

「まぁそれよりもあなた達弾幕ごっこするんでしょ?さっきも言った通りここの庭を使っていいわよ。」

 

確かに広いし動きやすいだろう。

ただ、こんなところで弾を撃ったりしたら庭がひどい状態になるのでは?

 

「どんなに荒らしても手入れするのは妖夢だしね。」

 

ほんとにみんな読心術でもあるのではないだろうかと思ってしまう。

それとも顔に出やすいのかな。

 

「まぁ手入れは慣れているので大丈夫ですよ。幽々子様の許可も出たので早速やりましょう。」

「なら祢々も読んでくるわ~。あの子の勉強にもなるでしょ。」

 

そういって幽々子さんは部屋を出て行った。

 

「ならそれまで待ってましょう。」

「そうだね。僕もさっきの憑依で少し疲れちゃった。慣れないことはするもんじゃないね。」

 

とりあえず座りなおし二人を待つことにした。

 

そして二人は5分も経たずに戻ってきた。

 

「祢々も連れてきたし始めていいわよ~。」

「じゃあやりましょう。」

「了解。あまり乗り気じゃ無いけどね。」

 

「そういわずに。」と妖夢ちゃんに背中を押され庭に出る。

とどちらからというわけでもなく自然に間合いをとる。

僕はなんとなくだけど。

あ、始める前に憑依するカード決めないと。

 

「ちょっとまっててね。能力の準備があるから。」

「わかりました。」

 

どうしようか。

相手は刀。たぶん能力の関係で剣術は達人レベルだろう。

こちらも刀で行くのはあまり得策ではない気がする。

妖夢ちゃんには申し訳ないけど遠距離の武器がいいだろう。

弾幕ごっこにはそちらのほうが向いている。

あ、そうか。

遊戯王で考えていたけど戦国大戦にはもっと今回の戦闘で使える種類のカードがあるな。

スピードも兼ね備えてなおかつ鉄砲の射撃も存在する。

そんな兵種が存在する。

カードは…あれにしよう。

実際自分で動くとなるとどんな感じになるか分からないけどたぶん何とかなるだろう。

 

「よし。憑依!SR伊達成実!」

 

 

SR伊達成実(だてしげざね) 1568~1646

武力9 統率5 コスト2.5 竜騎馬隊

 

政宗の重臣として、片倉小十郎とともに活躍。

伊達家随一の猛将として、政宗の奥州制圧に大きく貢献した。

 

計略…『英毅大略』・・・武力と移動速度が上がり、弾数の回復速度と射撃時の攻撃回数が上がる。さらに敵を撤退させるたびに、武力と移動速度が上がる。

 

 

雪茂がそのカードの名前を言った途端雪茂から光が漏れ出す。

こんどは青い光。いや、閃光といったほうが正しいだろうか。

一瞬光ったと思うとそこには先ほどまでの雪茂の姿は無かった。

まず何より服装が着物では無く、袖の無いジャケット、その下には何も着ていない。下は銀色のズボンを。それにほぼ身体のそこら中にシルバーアクセサリーを付けて馬に跨り鉄砲を持つ姿は一見すると武将のイメージとは程遠い。そしてその雪茂が少し笑みを浮かべながら口を開く。

 

「よう。待たせたな。」

「え、えっとゆき…しげさんですよね?」

「あぁそのとおり俺様が雪茂だ。」

 

あまりにも先ほどの雰囲気と違うため困惑する妖夢。

祢々も同じように困惑しているようだ。

しかし幽々子だけは表情からは読み取れない。

 

「先ほどとあまりにも雰囲気が違うというかなんというか…。」

「すまねぇな。俺様の能力はカードに依存するから性格とかも色々変わっちまうみたいだ。」

「わ、わかりました。…ではでは始めましょうか。」

 

そう言って妖夢が腰に下げている二本の刀を抜く。

その瞬間妖夢も雰囲気が変わる。

先ほどとは違う鋭く研ぎ澄まされた空気が周りを包む。

そしてそれは緊張感を生む。

だが今の雪茂にはそれは関係無かった。

 

「お?妖夢もやる気になったみたいだな。んじゃ始めるか!」

「宜しくお願い致します。」

「二人とも準備はいいわね?…じゃあ始め!」

 

幽々子の掛け声で二人は動き出す。

妖夢は構えを作り雪茂はそこに突っ込む。

このままいけば雪茂はただカウンターを食らうだけだろう。

だが、雪茂はある程度近づいた段階で手綱から両手を離し鉄砲を構える。

 

「ぶち抜く!」

 

ズドン!

 

ショットガンのように弾幕が撒かれる。

 

「っ!」

 

いきなりの出来事だったので妖夢はサイドステップでその弾をかわす。

雪茂は手綱を握り直しまた馬で走り距離を空ける。

 

「なるほど、それがあなたの戦い方というわけですか。」

「あぁヒット&アウェイ。それがこいつの得意とする戦術だ。」

 

 

 

うp主「いきなりですがここで解説のコーナー。」

 

どうもです。今回また新しく出た兵種の説明をしたいと思います。

 

竜騎馬隊:馬の速さに鉄砲の瞬間火力が混ざった兵種。

ただ鉄砲の仕様は普通の鉄砲とは違っており、

・斜線が扇状。(ショットガンのイメージ)

・一発のみの発射。(ヒット数は5発)

・リロードに時間がかかる。

・手動で射線を動かさなければならない。

といったものです。結構上級者向けです。(たぶん)

ちなみにこの兵種は伊達家にしか存在しません。

という少しトリッキーな種類のカードです。

本当はもう少し色々あるのですがここで話してもあまり意味は無いので割愛します。

他の兵種の場合も割愛多々あると思います。ご了承ください。

 

うp主「と、簡単ですが説明終わりです。本編戻ります。」

 

 

 

そう言って雪茂は走る。

 

「あなたがそう言う戦法なら…これならどうですか!?」

 

妖夢が刀を横一線に振る。

いや正確に言うと振ったのだろう。

常人には見えないスピードで振ったため音しか聞こえない。

そして振った瞬間半月型の衝撃波が雪茂に向かって飛ぶ。

 

「っ!?そんなことも出来るのか驚きだぜ。まぁ当たらないけどな!」

 

雪茂はそう言って馬のスピードを上げぎりぎり掠りそうなところでかわす。

妖夢は何度も刀を振りこちらに斬撃を飛ばしてくるが、紙一重で雪茂は全部かわす。

 

「中々やりますね。」

「だろ?俺様だぜ?舐めてもらっちゃこまる。」

 

相変わらず真剣な表情の妖夢と余裕の笑みを浮かべる雪茂。

 

「なら少し本気を出します!」

「いいぜ!かかってこい!」

「人符「現世斬」!!」

 

そう言って妖夢はなんども刀を振る。

それに伴って周りに先ほどより大きい斬撃が飛んでくる。

 

「!!これはやべーな。なら俺も!計略発動!英毅大略!!」

 

 

雪茂も対抗し計略を発動する。

 

――計略使用確認。士気ヲ5ツ使用シマス。残リ士気9。残リ憑依回数1。

 

そして雪茂の頭の中にアナウンスが流れる。

 

「(あれ?士気はいいとして憑依回数が残ってる?これで3回目のはずなのに。…後で考えよう。)」

その瞬間雪茂の乗っている馬が一鳴きし、速度が上がる。

 

「こいつは手ごたえがあっておもしれぇ!」

「余裕ぶっていられるのも今のうちですよ!」

 

妖夢が刀を振るスピードを上げる。

普通だったら避けることは困難だがそのなかを雪茂は何とか避けていく。

と、妖夢は気付かないが雪茂はただ避けているのではなく少しづつ妖夢に近づいていた。

そして気付くともう雪茂自身は鉄砲の射程圏内に妖夢を入れていた。

 

「…っ!何時の間に!」

「お前の技は大きい斬撃が多く出るからそれで視界が少しふさがれちまう。自分の技が仇になったなぁ!くらいな!!」

 

 

ズドンズドンズドン!!!

 

計略により強化された鉄砲で妖夢に向かって近距離で3発放つ。

そしてそれは、フルヒットした。

 

「わ、たしの…まけ…で、す。」

 

バタッと妖夢が倒れる。

 

「わりぃな手加減できなくて。」

 

そう言って雪茂は馬から降りる。

そしてまた青い閃光が走る。

 

「ごめん!大丈夫!?妖夢ちゃん!」

 

先ほどの雪茂に戻り妖夢に駆けつける。

 

「だ、大丈夫ですよ。ちょっと痛いですけど。」

 

そういって微笑む。

どうしようかとあたふたしていると後ろから声がかかる。

 

「心配しなくても大丈夫よ~。妖夢は半分幽霊だから死なないわ~。」

 

半人半霊…。だから大丈夫なのか。だからと言ってこのままここには寝かせられないな。

中に連れて行こう。

そう思い妖夢ちゃんを抱きかかえる。

所謂お姫様抱っこというやつだ。

 

「へ?あの、ゆ、雪茂さん大丈夫ですって!降ろしてください!恥ずかしいです!」

 

いきなり抱っこをしたため驚いたのだろうか少し抵抗してくる。

まぁ先ほど力を使ったためにあまり口での抵抗だが。

 

「ほら負けた人は勝った人に従わなきゃ~。」

「うぐぐ…。」

 

そして悔しそうにしている妖夢ちゃんを中に運ぶ。

 

「お、お疲れ様です。」

 

そう言って祢々ちゃんが僕にお茶を差し出してくれる。

 

「お、ありがとう。祢々ちゃん。喉渇いてたんだ。」

 

そして一口飲んで一旦卓袱台に置く。

そこで幽々子さんから声がかかる。

 

「にしてもすごいわねぇ。妖夢をあんな簡単に倒しちゃうなんて。」

「い、いえそうでもないですよ。今だってやせ我慢してますが、疲れて体のそこら中が大変なことになってます。」

 

そう、みっともないためやせ我慢していたが膝は笑ってるし手もプルプルする。

勝ってもそんな状態じゃ格好が付かないので隠していた。

 

「あら、そうだったの~。まぁゆっくり休みなさいな。いいもの見させてもらったわよ。」

 

そういって幽々子さんは部屋から出て行った。

また自室に戻ったのだろうか。

 

「ほ、本当にすごかったです。まるで雪茂さんじゃないみたいでした。」

「まぁたしかに僕では無いように見えるよね。でも意識はちゃんとあるし記憶もあるからね。」

「そうなんですね。」

 

なんてことの無い会話をしつつ僕も休憩する。

だが今回は寝るまでも無いようだ。

ちなみに妖夢ちゃんはいつの間にか眠っていた。

 

「(今回は勝てたけど次は分からない。それに相性という問題もある。…もっと強くならなくちゃ。)」

 

 

と心の中で改めて決心した雪茂だった。     




一日に2度投稿するとは…。
あ、雪茂つええーとか書いてて思いました。
というかカードが強いんだと思います。
にしても戦闘描写下手だなぁ。
もっとうまくなりたいです。
あ、あと原作とちょっと違う部分があります。(今更

もっとバランスとったほうがいいかなぁ。これじゃほんとに雪茂夢想しちゃうし。
まぁ後々考えます。

ではまた次回宜しくですー。


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第15話 修行の始まり

うp主「サブタイ思いつかない…。」

雪茂「今回無難。」

うp主「んじゃ次のタイトルは『雪茂の暴走!?~欲に溺れた獣に襲われる幻想郷~』とでもしておくか?」

雪茂「やめーや。」

うp主「すんません。」





ちゃんと真面目なサブタイ付けるんで怒らないでください。
本編どぞー。

UA1000超えました!ありがとうございます!



妖夢ちゃんと戦ってから一時間後。

近距離射撃をあれだけ喰らってダメージが大きかったのか妖夢ちゃんは少し気絶に近い状態で寝ていた。

しかし寝ていたのも30分ぐらいのことですぐに起きて「服を変えてきます。」と言って出て行ってしまった。

射撃を喰らって服の所々が破けてしまったらしい。

申し訳ないことをした。と思い謝ったが幽々子さんにいくらでも代えはあるから構わないとのことだった。

しかし、服が破けたということはまぁ色々と危険なわけで。

何かと言うと…その、白い薄い布が…。

なので途中目の行き場にとても困った。

それを見て幽々子さんは面白がって「もっと見てもいいのよ?私の従者だし。」とか言うし、祢々ちゃんは「白が好みなのかな…。」とか呟いてた。

と、さっきのことを思い出していると妖夢ちゃんが着替え終わって帰ってきた。

身体も洗ってきたようだ。

 

「雪茂さん。今更ですがお手合わせありがとうございました。」

 

と言って妖夢ちゃんは頭を下げる。

しかしこちらとしてもいい勉強になったのでお礼を言いたいが、それをやっていると堂々巡りになり収集が付かなくなりそうなので「いえいえ、どういたしまして。」と素直に受け取っておいた。

 

「ところでそろそろお昼時ね。」

「え、時計も無いのに分かるんですか?」

「えぇお腹の具合で分かるわ。」

「す、凄いですね。」

 

時計いらないのか。

あまり確実ではなさそうだけど、よく考えたらこの世界はあまり時間にこだわりが無いみたいだし、構わないのだろう。

 

「あ、じゃあすぐに作り始めますね。」

 

そういって妖夢ちゃんが立ち上がり部屋から出て行こうとする。

 

「あ、私も手伝います。」

 

台所に向かう妖夢ちゃんに祢々ちゃんも付いていった。

 

それから待っている間幽々子さんとは他愛の無い話をして過ごした。

いきなり居候に来てしまい申し訳ないです、と言ったところ普段から部屋を持て余してるから構わない、とのことだ。

そうやって話していると美味しそうな匂いが漂ってくる。

 

「今日は張り切ってるわね。」

「妖夢ちゃんですか?」

「まぁそれもあるけど祢々も張り切ってるみたいね。」

 

なるほど。一応お客が来てるから張り切って美味しいものを出そうとしてくれているのだろう。

こちらとしてはとてもありがたい。

 

「…ところで、雪茂君。」

「なんでしょうか?」

 

いきなり幽々子さんが真剣な顔つきで声を掛けてくる。

なんだろうか。今回の事件、いや、こちらの世界の言葉でいえば異変と言ったほうが正しいのだろうか。

もしかしたらそれについての話かもしれない。

そういえば例の犯人は異変を起こした。と言っていたが何か起こっているのだろうか。

きっとこの真剣具合から見てその話だろう。

 

「あなたどっちがタイプ?」

「………へ?」

 

予想の斜め上の質問が来たため間抜けな声を上げてしまう。

タイプって何のだろう?

 

「妖夢と祢々よ。」

「え?…あ、そういう意味ですか!?」

 

なぜそこまで真剣な顔つきで話したのだろうか。

こういうのはもっと軽い感じで聞くものではないのだろうか。

と困惑していると幽々子さんが口を開く。

 

「だってこれから一週間同じ屋根の下で男女が暮らすのよ?何も無いほうがおかしいじゃない。」

 

確かに二人とも可愛いけど…ってそうじゃなくて!

 

「十分おかしいですよ!」

 

と自分の頭に自制して反論する。

 

「硬いわね~。もっと気楽にしてていいと思うわよ。…というかもっと肩の力を抜きなさい。今みたいにね。じゃないと犯人と戦うとき周りが良く見えなくなるわ。」

「………。」

 

この人は…。

一見ふざけているように見えて実際はまじめに考えているんだな。

確かにあまりにも頭が固い状態だと周りも良く見えなくなってしまいへまをしてしまう可能性もある。

それをこうやってふざけているような会話に織り交ぜてくるのだからこの人は食わせ者かもしれない。

 

「で、結局どっちがタイプ?」

「あれ?さっきの真面目な雰囲気は!?」

 

軽い漫才のような展開になってしまった。

だが、先ほどの適度に力を抜くというのは良く覚えておこう。

と、いったところで部屋の戸が開き妖夢ちゃんと祢々ちゃんがお盆を持って部屋に入ってきた。

 

「お待たせしました。」

 

妖夢ちゃんが手馴れた手つきで机に料理を載せていく。

祢々ちゃんも少しぎこちなく載せていく。

のはいいのだが…。

 

「量多くない…?」

「あら、そうかしら?普通よね?」

 

と妖夢ちゃんに幽々子さんが声を掛ける。

 

「まぁうちでは普通ですね。」

「わ、私も見慣れました。」

 

あ、なるほど。幽々子さんが多く食べるのか。

この二人の反応からしてそうだろう。

妖夢ちゃんは普通ですね。と笑みを浮かべながら言ったが目が笑っていない。

…お疲れ様です。

心の中で頭を下げる。

 

そして料理が完全に並べ終わったところでみんな席に着き手を合わせる。

 

「いただきます。」

 

みんなで声を合わせる。

それからは大変というか妖夢ちゃんが大変そうだった。

幽々子さんは何度も御代わりをしてその度にご飯を山盛りに盛っていた。

それなのにも関わらずおかずもどんどん幽々子さんの中に消えていった。

あまりにもすごかったので僕も食べていたが実際味はあまり覚えていない。

…ちょっと申し訳ない。

でも美味しかったのは確かだと思う。

 

「ふぅ~美味しかったわぁ~。」

 

そういって幽々子さんがお腹を擦る。

しかしお腹は膨れていないためあれだけ食べたものが何処に消えたのかとても不思議だ。

 

「えっと、雪茂さん。」

「ん?何?」

 

祢々ちゃんが少し遠慮がちに話しかけてくる。

 

「卵焼き、どうでしたか?」

「ん?卵焼き?…あぁ食べる前に幽々子さんに食べられちゃって分からないんだ。」

 

そう。確かに卵焼きはあったのだがいつの間にか幽々子さんのお腹の中に消えていた。

と素直に答えるとちょっと残念そうにする。

たぶん祢々ちゃんが作ったものなのだろう。

 

「ごめんね。…あ、じゃあ僕の為に作ってよ。」

「えっ!?い、いい、いいですけど。私なんかでよければ宜しくお願いします!」

 

え、なんか急に三つ指立てて頭を下げられて逆にお願いされちゃったんだけど。

どういうこと?

…あ、次こそ食べてください。ってことかな。

 

「いえいえ、こちらこそ。」

 

と言うと幽々子さんがこちらに近づいて小声で喋る。

 

「雪茂君。さっきの言葉、聞き様によってはプロポーズみたいに聞こえるわよ。」

 

えっ!?と驚きで大きな声が出そうになるがとっさに手で塞ぐ。

 

「じゃあさっきから祢々ちゃんが顔真っ赤でそわそわしてるのって…。」

「完全に勘違いしてるわね。」

 

…まじか。とりあえず訂正しないと。

そして幽々子さんはそれだけ伝えると愉快そうに自身の席に戻った。

 

「えっと祢々ちゃん?」

「は、はい!!」

「とりあえず落ち着いてね。今度は僕という”お客さん”の為に卵焼きを作ってね。」

「…は、はい。」

 

お客さんのところを強調して言った。

これで誤解は解けただろう。

しかしなぜ祢々ちゃんは残念そうな顔をしているのだろうか。

「雪茂さんって…。」「えぇ罪作りな人ね。」

こそこそ妖夢ちゃんと幽々子さんが話しているが全部聞こえてますからね?

まぁ聞こえない振りしますけど。面倒なことになりそうだし。

というか僕そんな罪なんて作ってないと思うんだけど。

 

「まぁとりあえず食器を片付けたらお昼休みね。」

「はい。」

 

全員で先ほどの食器を片付ける。

やっぱりすごい量だな。

食器も何かのパーティのあとみたいな量をしている。

…あとで食器洗い手伝おう。

 

 

無事食器が全て片付いた後は少しゆったりしていた。

食後だし急に動くのは良くないということなのだろう。

学校のときみたいなお昼休みがあるらしい。

 

そして一時間ぐらいゆったりして休憩は終了。

それからは幽々子さんはまた自分の部屋に行き、三人が残った。

 

「とりあえず今後の予定を決めましょう。」

「そうだね。無計画だとさすがにダメだもんね。」

 

そういって今後の予定を決める話になった。

まずは筋トレというか体力を無理やり上げる。とのことらしい。

内容は僕の身体に重りをつけるというもの。

最初に出したあれはほんのジョークだったらしくあれよりかなり軽い重りが用意された。

それを両腕、両足、腰、につけてこれから過ごすらしい。

重りはかなり軽くなったとはいえ、一つ3、4Kgぐらいある。それを四肢と腰に付けるのだからかなりきついだろう。外すのはこの一週間の期間が終わるころにとるらしい。

それに付け加えて真剣を帯刀するように。とのことで刀を一振り貸してもらうことになった。

今後はそれを使って実践練習をするらしい。

とはいえさすがに身体能力に差があるので憑依はして行うとのことだ。

その状態で貸してもらった刀で練習。

簡単ではあるがとりあえずはそんなところ。

追々また色々追加する可能性があると言っていた。

 

「では雪茂さん早速重りをつけましょうか。」

「うん。了解。」

 

そういって僕の両腕に妖夢ちゃんが重りを付けてくれる。

足と腰は自分で付けた。

座った状態で付けたためそうでもなかったため「結構楽かも。」と思って立ってみたらこれが意外とつらい。

 

「とりあえずその状態でまともに動けるようになる練習をしましょうか。」

「は、はい。お願いします。」

「とりあえず先ほど貸した真剣で素振りでもしましょう。」

 

そう言って2人で外に出る。

祢々ちゃんは刀を持ってくると行って部屋に戻っていった。

 

「じゃあそこに立って抜刀してください。あ、ただ抜くだけでいいですからね?」

「了解。」

 

そういって腰の刀に手をかける。

…しかし身体の負担が結構くる。

刀を抜く動作一つで少し疲れる。

 

「さすがに早いと今は厳しいと思うのでちょっとづつやりましょう。」

 

そういって素振りを始める。

上段切り、中段切り、下段切り、返し切り、色々やった。

なんか学校の体育のときの剣道を思い出した。

途中で祢々ちゃんも混ざり練習した。

しかしそのときの祢々ちゃんの刀が木刀だったのに少し疑問を持ち聞いてみると、「今はこっちで練習したいんです。」という言葉が返ってきて良く分からなかったが、「そうなんだ。」と返した。

実際辛くてそれどころじゃなかったの方が正しいが。

 

「ほら!雪茂さん少し振りが遅くなってますよ!」

「は、はい!」

 

 

「ゆ、雪茂さん。駄目そうだったら少し休んだほうが…。」

「だ、大丈夫。祢々ちゃん。心配ありがと。」

「い、いえ。」

 

 

「素振りのペースを上げますよ!」

「は、はいっ!」

 

 

―――体感で2時間ぐらいだろうか。

これで一旦休憩だそうだ。

まだ続くらしい。

にしても妖夢ちゃんって結構スパルタなんだなと気付く。

 

「雪茂さんすごいですね。根性があります。」

「そ、そうかな。」

「あ、お茶どうぞ。」

「お、ありがと。」

 

根性があると妖夢ちゃんに言われ少し照れくさくなる。

祢々ちゃんから渡されたお茶を飲む。

先ほどまで乾いていた喉が潤っていく。

 

「この休憩が終わったら先ほどの続きといいたいのですが雪茂さんには課題を一つ設けます。」

「え、あれに何を追加するの?」

 

あれでも結構辛かったのにそれにまだ何か追加するらしい。

 

「私達が少なめに弾幕を雪茂さんに向かって放ちます。それを避けながらがんばって素振りをしてください。型はどのようなものでもいいです。我流でも先ほどの素振りでも。当たらないように刀を振ることが大切です。」

「…了解です。」

 

そういえば僕ってこんなに体力あったっけ?

普通だったらもうばててるころなんだけど。

と考えていると祢々ちゃんが声を掛けてきた。

 

「雪茂さん。どうしたんですか?」

「ん?あぁ、いや僕ってこんなに体力あったかなって。いつもだったらもう倒れてるかもしれないなと思ってね。」

「あぁそれはですね、今雪茂さんが付けてる重りに秘密があります。」

 

と横から妖夢ちゃんが僕の疑問に答える。

重りに秘密?

 

「秘密って?」

「実はその重りは疲れを感じさせなくする効果があるです。」

「え!!?それってすごくない!?ずっと付けてられるじゃん!」

 

と少し興奮気味に話してしまう。

だが現実は甘くないようで、

 

「まぁその分デメリットもあります。それはその疲れを吸って少しずつ重くなっていくんです。」

「てことは…。」

「終わるごろには大変なことになってるかもしれません。とはいっても劇的に増えるわけではないので大丈夫です。一日確か1、2Kgしか増えなかったと思うので。」

 

それでも十分重くなると思う。

まぁそれも修行のうちか。と考える。

 

「と、そろそろ始めましょうか。」

「妖夢ちゃん、祢々ちゃん、宜しくお願いします。」

 

 

こうして僕の修行は始まった。




閲覧ありがとうございます。
土日に投稿できないのは……まぁ色々あります。
といっても理由はうっすいものですが。
姉がゲームを見たいと言って私にやらせるのです。
で、結局そのままわいわいPCのホラゲーやったりで時間使ってしまうので小説が書けないでいます。
「自分でやらんの?」と言ってみたら「下手だから無理。」と言われましたし。
姉なんてそんなものです。
あ、愚痴みたいになりましたね。すみません。
ではまた次回宜しくですー。


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第16話 雪茂の魂

雪茂「遊戯王のカードもっと出したい。」

うp主「もうちょっとしたら出すよ。」

雪茂「お、よかった。このままじゃ戦国大戦のカードのイメージしか付かないなって。」

うp主「(ほんとは何も考えてないなんて言えない。)」





大丈夫です。ちゃんと考えてます。
本編どぞー。


「では行きますよ!」

「いつでも!」

 

その一言で僕のほうに弾が飛んでくる。

あくまで僕は素振りをしながらそれを避ける。

だが素振りをしながらというのは存外難しく変な体勢で刀を振ってしまったり、足運びが下手で躓きそうになってしまった。

だがそれでも弾は避け続ける。

先ほど妖夢ちゃんはあくまで弾に当たらず刀を振ることが大切と言っていた。

…そういえば魔理沙が手じゃなくても弾幕は出せると言っていた。

たしかに僕も憑依をしているときは鉄砲から出したりしていた。

てことは刀も…?

 

「ほら、ぼけっとしてると当たっちゃいますよ!」

 

そう妖夢ちゃんに言われてハッとする。

気付くのが遅ければ目の前の弾に当たっていただろう

 

「さすがに慣れてきましたか?」

「すこ…しはね…っ!」

 

避け続けながら刀を振るのはやっぱり大変だ。

ん?まてよ?そういえば妖夢ちゃんは”当たらないように”って言ってたな。

この刀で弾の軌道をそらせば…。

いやそもそも刀で弾は切れたり触れたり出来るのか?

…そうか。それこそ魔理沙の話で物からも弾が出せるということは自分の持っているものには自分のエネルギーが伝わるということなのだろう。

そのエネルギーを弾を撃つために使うのではなく刀に纏わせることが出来たら…?

…やってみよう。

刀に力を集中させる。

すると刀からゆらゆらとオーラのようなものが漂っているのがわかる。

思いのほか簡単に成功したらしい。

あとはこれで…。

 

「雪茂さん!」

 

再び妖夢ちゃんから声が掛けられる。

目の前には弾。

それを刀で下から切り上げる。

 

ザンッ

 

そのような音と共に弾が二つに割れて僕の横を通り過ぎる。

 

「ゆ、雪茂さん。それは…。」

「ん?これ?やってみたら出来た。」

 

と笑いながら言う。

そう。純粋に嬉しいのと楽しいという感情が沸きあがってきた。

なんでだろう。僕はもともと争いごとはあまり好まないんだけどなぁ。

 

「…すごいですね。こんなこといきなり出来るようになるなんて。」

「難しいの?」

「えぇ普通の人間ならば難しいでしょう。それに今気付きました。雪茂さんの霊力はどこか普通の人とは違います。」

「違う?」

「えぇなんていったらいいかわかりませんが。」

 

霊力に違いなんてあるのか。

指紋みたいな感じで人それぞれ違うって言うのなら分かる。

ただ今妖夢ちゃんが言ったのは普通の人とは違うと言った。

それが何を意味するのかは分からないけど今はあまり関係ないだろう。

 

「えっととりあえずその霊力を纏わせるのはすぐに出来ますか?」

「ちょっとまってて。」

 

一旦刀から意識を離す。

すると途端に刀からオーラが消えた。

もう一度刀に意識を集中する。

 

「…大丈夫。いつでも出来るね。」

「なるほど。雪茂さんは遠距離、近距離どちらの戦い方も出来そうです。」

 

おぉ。それって万能じゃないか。と心の中で歓喜する。

と妖夢ちゃんから「ただ、」と声が聞こえた。まだ続きがあるらしい。

 

「両方出来るということは中途半端になりがちです。私は近距離専門なので遠距離については何も言えませんがそのことは頭に入れておいたほうがいいと思います。」

「確かに。」

 

妖夢ちゃんの言うとおりだ。

どちらか伸ばすのであれば簡単だ。

しかし二つの戦闘方法となると練習方法も違うし、戦い方のスタンスも変わってくる。

難しいところだ。

 

「とりあえずその話は置いておいて練習に戻ってあと一時間ほどやりましょう。」

「了解です。師匠。」

 

「師匠。」とわざとらしくそこだけ強調して言うと顔を赤くして離れていった。

幽々子さんの気持ちが少し分かった気がした。

 

 

それから一時間ほど先ほど習得した技と回避を使用しながら弾を避け刀を振り続けた。

そして「終了」の合図がかかる。

 

「いくら、疲れが取れ、るっていっても、さすがに息、は、切れる、ね。」

 

と少し息を切らしながら話す。

 

「それもありますしなれない力の使い方をしたためだと思いますよ。」

「なるほど。」

 

縁側に座って話しているとそこに祢々ちゃんもやってきた。

ちなみに祢々ちゃんは木刀なのにヒュンという音が聞こえるほどの速さで振り続けていた。

それなのに全然余裕そうだ。

たしかに少し汗はかいているようだが。

 

「お疲れ様です。お二人とも。」

「お疲れ、祢々。」「お疲れ様。祢々ちゃん。」

 

二人でほぼ同時に喋ってしまう。

その為うまく聞こえなかったがたぶん祢々ちゃんには伝わっただろう。

 

「雪茂さん。」

「ん?」

 

妖夢ちゃんから話しかけられる。

 

「今日やってみてどうでしたか?」

「そうだね~えっとね、とりあえずは動けるようにはなったし、弾幕も切れるようになったしかなり進歩できたんじゃないかなって思ったよ。」

 

「なるほど。」となにやら考え込む妖夢ちゃん。

 

「そういえば今日の雪茂さんすごかったですね。なんか昔のお父さんとか思い出します。」

「お父さん?」

 

祢々ちゃんが手ぬぐいで汗をぬぐいながら今日のことを話す。

お父さんか。動きとか似てたのかな。

 

「はい。お父さんは武将だったんです。」

「武将!?」

「は、はいぃ。」

「あっとごめんごめん。いきなり大きな声出しちゃって。」

 

「大丈夫です。」とって微笑む祢々ちゃん。

武将…。何時の時代の子だ?

今の時代武将なんていない。つまり昔の人物ってことか。

 

「お父さんの名前は?」

「戸次統虎といいます。」

「べっきむねとら…。ってそれ立花宗茂じゃん!」

「そ、そうです。ご存知でしたか。」

 

いや、さすがにこれは驚く。

というより祢々ちゃんは五月雨という苗字だ。

誰が予想できるだろうか。

 

「って待って宗茂ってたしか子に恵まれないんじゃなかったっけ?」

「?いえ私は生まれてますよ?現にここにいますし。」

「じ、じゃあお母さんは?」

 

そうだ。宗茂は立花誾千代と結婚した。

もし祢々ちゃんが宗茂の子ならばお母さんは誾千代となる。はず。

 

「立花誾千代といいます。」

「やっぱりかーーー!」

 

この子は歴史上にはいないはずの子なのだ。

隠蔽?されたのだろうか。

そして何よりびっくりしたことは祢々ちゃんと僕は遠い時間の壁を越えて会っているということだ。

 

「お母さんのことも知っている…。それに今更ですが立花の姓…。もしかして雪茂さんも立花家の方なのでしょうか。」

「残念ながらそれは違うんだ。僕は祢々ちゃんから見ればかなり未来から来てるんだよ。」

 

そう、僕と祢々ちゃんは約500~600年の時間の差がある。

なので確かに立花家の人間なのだが昔と今では意味が違う。

僕は一般家庭の立花家の人間なのだ。

 

「そうなんですね。」

「でもびっくりしたよ。僕からしたら歴史上の人物に会えたんだから。」

「そうね。びっくりしたわ。」

 

いきなり後ろから声がかかる。

 

「…紫さんですか。」

「あら今回はびっくりしないのね。」

「…慣れたんです。」

 

後ろを見るとスキマから紫さんが出てきた。

もうかれこれ3、4回目だいくらなんでも慣れる。

というより少し図太くなったのかもしれない。

 

「たしかにこれだけの時間の差があるのはびっくりですね。」

「あぁ確かにそれもそうだけど、私がびっくりしたのはそこではなくて、あなた霊に取り付かれてるわよ。」

「はぁ!?」

 

なぜこのタイミングなのだろうか。

しかも霊って。

話の流れが急過ぎないだろうか。

 

「なんでこのタイミングで?」

「その取り付いている霊がさっきの話に関係しているからよ。」

 

霊が関係している?

さっきの話に?

 

「正確に言うとあなたの魂と一緒になっているといったほうが正しいかしらね。」

「魂に?」

「えぇ。」

 

現実とはかけ離れている話だ。

たしかに今も歴史上の人物と会っているし、まず何より世界が違う。

それだけでもびっくりだが、今度は僕の魂に関わることと来た。

 

「あなたの魂には武将が取り付いているわ。それもあなた達が良く知っている人物よ。」

「よく知っている…。」

 

織田信長?豊臣秀吉?徳川家康?

さすがに無いだろう。

でも良く知っているといえばこのあたりが有力だろう。

 

「名前は立花宗茂と言うわ。」

「はぁあああああ!!?」

 

随分とタイムリーな名前が出てきたものだ。

隣の祢々ちゃんも口を開けて呆けている。

妖夢ちゃんも先ほどの話を聞いていたためかびっくりしている。

 

「僕の中に!?」

「えぇそうよ。さっき妖夢が感じた霊力の違いはたぶんそれから来てるわね。」

 

これはすごいことになった。先祖が~とかなら分かる。

まさか魂に取り付いているとは。

 

「ただもうかなり昔の人物だから意識とかは無くて力だけ雪茂君に残ってるみたいね。」

「もしかして僕がいきなり戦えたのとかも…。」

「関係しているかもね。」

 

 

これからも驚くことはいっぱいあるだろうと思っていたがここまで驚くことがあるとは思わなかった。

しかしその日驚くことは尽きないことをこのときの雪茂はまだ知らない。




閲覧ありがとうございます。
ちょっと今回は短めになりました。
やっと最初に考えていた設定を出せました。
けれどその反面遊戯王要素というか他のカードゲーム要素うっすいなぁと感じている今日この頃。
なんとかコテ入れしたいと思います。
ではまた次回宜しくですー。


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第17話 もう一人の祢々

祢々「お父さん…。」

雪茂「ちがうよ!?」

祢々「パパ…。」

雪茂「君の時代その言葉まだ日本に伝わってないよね!?」

祢々「ダディ(キリッ)。」

雪茂「誰だお前。」



はいはい茶番茶番。
本編どぞー。


戦国時代が好きな人ならば知っている人が多いであろうあの立花宗茂の魂が僕に…。

それに歴史上ではいないとされた宗茂の子供が今目の前にいる。

これは現代ならば大騒ぎになるほどの事態だ。

 

「先ほど雪茂君は立花家の人間か?と聞いたわね。」

 

と紫さんが祢々ちゃんに向かって質問する。

だがその答えを待たずに紫さんは口を開く。

 

「そのとおりよ。雪茂君は立花家の人間よ。」

 

何を言ってるのだろうか。

当たり前じゃないか。立花姓の家に生まれたのだから僕は立花家の人間だ。

祢々ちゃんもよく分からなかったのか首を傾げている。

 

「ごめんなさいね。分かりやすく言うわね。雪茂君はあなたの子孫よ。」

 

一つ間を空けて。

 

「「えええええええええ!!?」」

 

祢々ちゃんと僕は揃って驚きの声を上げた。

 

「つ、つまり祢々ちゃんは僕の先祖ってことですか!?」

 

紫さんは「そうよ。」と言って頷く。

妖夢ちゃんはぼけーっとこちらの様子を見ている。

話が飛躍しすぎて付いていけなくなったのだろうか。

祢々ちゃんはあわあわと擬音が聞こえるかの如くあたふたしている。

 

「なんでそんなことわかったんですか?……あぁ境界ってもしかして操れば過去にも飛べます?」

「鋭いわね。その通りよ。ちょっと気になって見てきたのよ。」

 

ちょっと気になったから時空を飛ぶと言うのは科学者が聞いたらどれだけ羨ましがられることやら。

もしかしたら祢々ちゃんも僕と似たような感じで過去に死に直面し紫さんに助けられたのだろうか。

でももしそうだとしてこのまま祢々ちゃんがこちらに居たら僕は生まれないことになってしまうのでは…?

 

「なにか難しいこと考えてるかしら?」

「あ、いえ、その…。」

「大丈夫よ。あなたと今目の前に居る祢々は違う時間軸の人間だから。雪茂君の生きていた時間軸の祢々はこちらに居ないわ。」

 

ついに時間軸という言葉も出てきた。

いよいよSFチックになってきたな。と思ったがそもそも僕がここに居る時点でファンタジーじゃないか。

と自分に突っ込みをいれる。

それよりも僕の考えを読まれたのに驚く。

 

「んーとりあえずなんとなく分かりました。」

「んじゃとりあえず伝えることは伝えたから私は行くわ。それじゃあ。」

 

そう言って紫さんはスキマを出現させ中に入って消えた。

「なんのために伝えに来たのだろうか。」そう考えた雪茂だったが答えは出なかった。

そして紫さんが消えてから3人でしばらく放心していた。

それを幽々子さんが見つけて「あなたたち何を呆けているのかしらぁ?」といつもの間延びした声で話しかけたところで3人の意識が現実に戻された。

 

意外と長い間話聞いていたようでもう外は日が落ちかけていた。

 

「そろそろお夕飯にしましょうか。」

「賛成~。」

 

と妖夢ちゃんの提案に幽々子さんが真っ先に声を上げる。

それを聞いて妖夢ちゃんが立ち上がり台所に向かう。

お昼の時と同じように祢々ちゃんも一緒に着いていく。

僕も料理が出来れば手伝うんだけど…。

 

「雪茂君は私の話し相手よ。」

 

どうやら僕の周りは読心術が使える人が多いらしい。

 

そこからはお昼と同じような流れだった。

ただ違う点を挙げるとすれば祢々ちゃんが僕のために卵焼きを作ってくれていたことだろうか。

幽々子さんが羨ましそうに見ていたが幽々子さんは幽々子さんで他の物を大量に食べていたので分けなかった。

あともう一つ。

先ほどの紫さんの話があったため少し祢々ちゃんと少し気まずくなるかなと思っていたが存外僕も適応力があるようで普通に接することが出来た。

祢々ちゃんはそんな僕の態度で緊張が和らいだのか先ほどより自然に話してくれるようになった。

 

「少し休んだらお風呂にしましょう。」

 

と妖夢ちゃんが言って立ち上がり「用意をしてきます。」と言って部屋から出て行った。

祢々ちゃんは「刀の手入れをしてきます。」と言って自室に戻っていった。

二人残され少し考え事をする。

何気なく一日が終わりに近づいてるけどここって博麗神社から遠いのだろうか。

外を見ても何てことない…いや、何てことあるか。

なにやら白いふわふわしたものがそこら中に浮いている。

それさえなければ普通の景色なんだけれど。

なんなのだろうか。

…どちらも聞いてみたほうが早いか。

 

「幽々子さんすみません。」

「何かしら?」

「そういえばいきなり連れられてきてなんとなく流れでここにいますけどここって博麗神社から遠いんですか?」

「えぇかなり遠いわね。というか普通だったら来れないわね。」

 

来ることが出来ない?

…どういう意味だ?

 

「来れない…と言うと?」

「ここは”冥界”。まぁ簡単に言えば生と死の境目って言うところかしらね。」

「…僕死ぬんですか?」

「んもうそう悲しい顔しないの。紫に連れてこられたのならあなたは死なないわ。」

 

そこから少し話を聞いたところ幽々子さんはここで魂の管理をしているらしい。

成仏させたり元の体に戻したりだとか色々あるらしい。

詳しくは話しても分からないだろうからと端折って説明してもらった。

 

「じゃあそこら辺に浮いているのは魂なんですね。」

「そうよ。ちなみに妖夢は半人半霊よ。」

「…なるほどあの白いのも本体なんですね。」

「もう驚かないのね?」

「はい。そうじゃないとやっていける気がしないので。」

 

そんなこんなで話していると妖夢ちゃんが戻ってきた。

 

「あと30分ほどしたら沸くので沸いたら雪茂さんお先に入ってください。」

「え、なんか申し訳ないんだけど。いいの?」

「お客様ですから当然です。」

 

と笑顔で返されたので一番風呂をいただくことにした。

まぁたしかに女性の後に入ると言うのは色々と気が引ける。

そう思っていたので少し安心した。

 

 

それから30分。これといって何かあったわけでもなくゆっくり時間が過ぎていった。

 

「そろそろ沸いたと思うので雪茂さんどうぞごゆっくり。」

「うん。ありがとう。そうさせてもらうよ。」

 

と二人に告げお風呂場に向かう。

ちなみに祢々ちゃんはまだ自室らしい。

と大事なことに気付き部屋に戻る。

 

「…すみません。お風呂場何処でしょうか。」

 

妖夢ちゃんに案内してもらいお風呂場に到着する。

 

「ありがとね。あと色々世話掛けちゃってごめんね。」

「大丈夫です!むしろもっと頼ってもらって構わないんですよ?」

 

随分と嬉しいことを言ってくれる。

と自然と妖夢ちゃんの頭に手が伸びる。

 

「ふぇっ!?な、なな、なんですか!?」

「えっと、お礼?」

「何で疑問系なんですか!?」

 

顔を真っ赤にして僕に突っ込んでくる。

 

「あらあらお暑いわね~。」

「うえっ!?」「ひゃうっ!?」

 

いきなり声を掛けられたので二人で声を上げて驚く。

さっきまで部屋にいたんじゃ…。

 

「妖夢がすぐに帰ってこないものだから雪茂君に襲われちゃってるんじゃないかと思って見に来たのよ~。」

「しませんよ!」

 

なるほど。なんだかんだいって妖夢ちゃんのことが大切なんだな。

それで心配して…。

 

「それと渡すものがあるのと妖夢に一つ命令があるわ。」

 

と真剣な顔をする幽々子さん。

思わず生唾を飲んでしまう。

妖夢ちゃんも真剣な顔をして幽々子さんのほうを見る。

 

「まず妖夢。」

「はい。」

「あなた雪茂君と一緒にお風呂に入りなさい。」

 

………。

 

「な、何を言い出すと思ったら!」

 

妖夢ちゃんが噛み付くぐらいの勢いで幽々子さんに詰め寄る。

だがそれをヒョイと避けて僕のほうに来る。

 

「はい。あとこれ雪茂君に。」

「…へ?僕ですか?」

 

つい幽々子さんの言葉にびっくりして呆けていると幽々子さんから小さいビニールの個包装の袋を貰う。

 

「これは?」

「いずれ必要になるわ。」

 

なんだろうか。と渡されたものをじっくりと見る。

…待て。なぜこれがここにある。

というかなぜ幽々子さんはこれを渡した?

渡されたものは所謂男用の避妊具。

それを幽々子さんは満面の笑みで渡してきたのだ。

 

「ありがとうございま…っていりませんよ!」

 

ビターンと音が鳴りそうな勢いで床にたたきつける。

 

「軽い冗談よ。ゆっくり浸かってきなさい。あ、妖夢は冗談じゃないからちゃんと命令通りにするのよ?」

「はいぃぃぃ!?」

 

と妖夢ちゃんが驚いて大きな声を上げたのを見て心底愉快そうに部屋に戻っていった。

残された二人の間に微妙な沈黙が出来る。

しかも足元に先ほどの避妊具。

 

「エ、エットヨウムチャン?」

「ナ、ナンデショウカ?」

 

お互い片言になる。

さすがに一緒に入るつもりは無いが一瞬でもその想像をしてしまったため僕は若干気まずいのだ。

もしかしたら妖夢ちゃんも同じなのかもしれない。

 

「一緒には入らなくていいからあとで適当に話を合わせよう。」

「そ、そうですね。宜しくお願いします。」

「こそこそするのは気に入らんな。」

「へ?」

 

と声のするほうに顔を向ける。

そこには祢々ちゃんがいた。

ただ刀を持っているが。

 

「祢々ちゃんどしたの?」

「先ほど妖夢の声が聞こえたから来てみたらちょうど二人が話しているのが聞こえたのだ。あとちゃん付けはよせ。」

 

…?なんだろう先ほどの祢々ちゃんとかなり雰囲気が変わっている。

妖夢ちゃんが小声で「今の祢々のことはあとで説明します。」といわれたのでうなずいて了解したことを伝える。

と祢々ちゃ…祢々が口を開く。

 

「そうだ。私も入ろう。それなら構わないだろう?」

「いや構うよ!僕が!」

「強情だな。まぁそれもいいだろう。私を倒した男だ。それぐらいの強情さがあったほうがいい。」

 

とスタスタと脱衣所の中に祢々が入っていってしまった。

 

「どうしよう。」

「どうしようもないです。あれになった祢々はかなり厄介です。」

「あれって?」

「あの子は刀を持つと人格が豹変するんです。」

 

そうだったのか。

じゃあ最初に会ったあの時とさっきまでの雰囲気が違っていたのはそのためなのか。

ならお風呂に入るときは服を脱ぐために刀を離すだろうから安心だ。

と少し外で待っていると中から「あれ?私さっきまで刀の手入れを…って何で脱いでるの!?」という声が聞こえてきた。

そして脱衣所のほうから服を持った祢々ちゃんが出てくる。

 

「え…?」

「え、えっと…。」

 

僕と祢々ちゃんの視線が交差する。

後ろでは妖夢ちゃんが「あちゃー。」と言って姿は見ていないがたぶん額に手を当てている気がする。

 

「~~~~っ!」

「ご、ごめん!大丈夫!何も見てないから!」

 

目が合った瞬間僕は自分の手で目を隠した。

幸い祢々ちゃんは服で隠していたために何も見えなくて済んだ。

 

そして一人心の中で「最近こういうこと多いなぁ。」と思う雪茂だった。




また暴走しかけてたのであっち路線に行きそうでした。
色々修正してたのでおかしいところ多々あるかもしれません。
あとこの話の番外編はほぼ決定ですね(ニンマリ)。
もう別の小説でRの付く話を書けばよかろうとか思ったことは何度もありますが一旦これはこれで集中したいのであとにします。
この小説何話ぐらいで終わるんだろ…?
もっとペースアップしたほうがいいかなぁ~。

また次回も宜しくです~。


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第18話 甘味はこちらでも人気

雪茂「この重りすごいな。」

紫「原材料に人の魂を使っているのよ。」

雪茂「ファッ!?」

紫「冗談よ。」

雪茂「(マジで信じかけた僕がいた…。)」





本編どぞー。
UA1500超えました!ありがとうございます!

やっちまったーーーー!間違えてこっちに番外編の話を投稿してしまいました。
すぐに削除しました。ご迷惑をお分けしましたことを今ここでお詫び申し上げます。
以後気をつけるように致します。


なんやかんやあったが二人には自室に戻ってもらい、のんびり入浴してからお風呂からあがった。

ちなみに風呂に入るときは重りを外して良いそうなので外して入った。

現在またちゃんと重りを付けている。

それと祢々ちゃんの刀が脱衣所に置きっぱなしになっていたのでそれを持っていってあげた。

しかし脱衣所で刀を持ったとき少し違和感があった。

言葉には表せない違和感。

 

――嬉しい。

 

いや、刀をもって嬉しいなんて感覚はおかしい。

そもそも嬉しいってどうなんだ…。

まるで刀マニアか、殺人鬼か。

当たり前だが僕は殺人なんて生まれてこのかたやったことなんてないし、そもそも刀だってさっき憑依したときに持ったのが初めてで脱衣所で持ったのが二回目だ。

それなのにどこか「やっと手元に戻ってきた。」のような感情が心のどこかにあった。

…きっと疲れているのだろう。

そう思いつつ僕は茶の間から出たところの縁側でゆっくりしていた。

他のみんなも風呂に入った。

そういえば先ほど幽々子さんが妖夢ちゃんに言った命令も冗談だったとのことだ。

本当に幽々子さんは悪戯が好きらしい。

 

「そういえば雪茂さん。」

「ん?何?」

 

特に何もすることが無く外をのんびり見ていると隣に妖夢ちゃんが座り声を掛けてきた。

 

「例の霊夢さんを攫った犯人との対決。あれって私達も加勢してはいけないんですか?」

「うん。僕と魔理沙宛に手紙が来たからたぶんそれ以外の人はダメなんだと思う。」

「…そうですか。」

 

残念そうな声を上げる。

やはり霊夢が心配なのだろう。

 

「…とりあえず明日もあるし今日は早めに休むね。」

「あ、はい。分かりました。」

 

このままだとちょっと空気が重たくなりそうだと思ったので部屋に戻ることにする。

 

幽々子さん達に「おやすみなさい。」と伝え部屋を出る。

その際にまた「妖夢と祢々の添い寝は?」と聞かれたが軽く流しておいた。

添い寝なんてされたら寝られない気がする。

そう思いつつ昼に案内された部屋に向かう。

茶の間からはそこまで離れていないので迷わずに行くことができた。

襖を開けるとそこにはいつの間にか布団が敷かれていた。

妖夢ちゃんに感謝しつつ布団に寝転ぶ。

たぶん時間的にはまだ8時ぐらいだろうが布団の香りと先ほど入浴したためか睡魔が襲ってきた。

この睡魔に抗うことも無いだろうと思いそのまま瞼を閉じる。

明日も頑張ろう…。

 

 

 

ふと閉じていた目に光を感じ、先ほどまで眠っていた脳が覚醒し始める。

目を開け身体を起こそうとして少し抵抗を感じる。

 

「…あれ?似たような展開どこかで…。」

 

確かに手と足と腰に重りは付いているがそういった抵抗ではない。

なにかと思いながら顔だけ上げ身体の脇を見る。

そこには僕に抱きついて眠る妖夢ちゃんと祢々ちゃんの姿があった。

二人とも顔を赤くし寝息を立てている。

もしかして寝たふりなのでは?と思い試しに祢々ちゃんの頬をつついてみるが反応が無い。

と、そのとき部屋の扉が開く。

 

「…へ?」

「あらあら~両手に花ね~。昨晩はお楽しみだったのかしら?」

「違いますよ!」

 

と二人を起こさないように少し小さめの声で突っ込む。

 

「冗談よ~。ごめんなさいね。二人と晩酌をしたらどっちも酔っちゃたみたいなのよ。」

「え、晩酌って、この二人未成年じゃないんですか?…って幻想郷だからそこらへんも特に決まりは無いのか。」

 

と質問をしておきながら自己解決をする。

「それじゃあとは頼んだわよ~。」と言い残しいつの間にか幽々子さんがいなくなっていた。

って二人を離さないと。

と腰に巻きついている手を離す。

何とか動ける状況になったので二人を布団の中に寝かして茶の間へ向かう。

幽々子さんは見当たらないのでたぶん自室に戻ったのだろう。

二人もまだ寝ているためやることが無い。

 

「…よっし。朝ごはん作ろう。」

 

昨日は全て妖夢ちゃんと祢々ちゃんに作ってもらったからそのお礼を込めて。

それに今二人とも寝てるので自分が作ることにした。

メニューは…食材を見てから決めよう。

そう思い台所へ向かう。

場所は昨日雑談をしているときに聞いていたので迷うことは無い。

台所に到着し部屋の中を確認する。

冷蔵庫を発見して扉を開けようとする。

 

「って、人の家の冷蔵庫勝手に開けていいのかな?」

「大丈夫よ~。」

「うぇい!?」

 

うぇいってなんだよ…。

後ろから声を掛けられびっくりして思わず変な声が出てしまった。

後ろを見るとやはり幽々子さん。

「好きに使っていいわよ~。」とだけ残しまたどこかへ行ってしまった。

 

「せめて足音ぐらいあればまだそこまでびっくりしないんだけど…。」

 

そう言いつつびっくりして閉めてしまった冷蔵庫の扉を開け中を確認する。

そこには大量の食材。

普通に暮らしていればいくらかの食材は使い切れず腐ってしまうだろう。

しかし中には新鮮なものばかりが入っていた。

 

「これだけあれば色々作れるな。」

 

内心うきうきしている僕がいた。

 

 

それから30分ほど経った頃。

 

 

「おはようございまふ…。」

「おはようございます…です。」

 

と二人がふらふらとした足つきで起きてきた。

妖夢ちゃんのほうは結構響いているようだ。

その反面祢々ちゃんは大丈夫そうで少し喋るのがのんびりしているのは起きたばかりだからだろう。

 

「おはよう二人とも。朝ごはんもう少しで出来るしちょっと待っててね。」

「ふぁい。」

「はい。」

 

…妖夢ちゃん大丈夫だろうか。

修行に響かないといいけど。

というか幽々子さんの分を加味して作るとなるとかなり大変だな。

ちょっと張り切り過ぎたかなっていうレベルじゃきかない量になってしまった。

まぁ大丈夫だろう。

しかしほんとにこの重りはすごい。

たしかに重いのだが包丁を使うぐらいなら疲れない。

 

「さて、そろそろ配膳しますか。」

 

そう言って後ろの料理を載せたテーブルを改めて見る。

 

「はぁ…。やっぱり作り過ぎたかな。」

 

一人で運ぶのが少し憂鬱だ。

まぁ二人とも顔洗ったり服着替えたりしているうちに運び終わるだろう。

もしかしたら幽々子さんも手伝ってくれるかもしれないし。

 

「あら~美味しそうじゃない。」

「ありがとうございます…。」

「ほんとにありがとうございます。私達の代わりに作ってもらってしまって。」

「うん。大丈夫。気にしないで。」

 

というわけで全員集合して今机を囲んでいるところだ。

ちなみに幽々子さんは決して手伝ってくれることは無かった。

逆に二人は手伝いたそうにそわそわしていたが先ほどの様子を見てしまうと手伝わせるのが申し訳なくなってしまったので結局自分で全てやった。

と幽々子さんが手を合わせたので僕達も手を合わせ食べ始める。

 

「これ美味しいわね~。」

「初めて見るものが多いです。」

「今度教えてもらえませんか!?」

 

いつの間にか二人の調子も良くなっていたようで今日の修行には響かなそうで安心した。

 

幽々子さんがいたためあっという間に料理は無くなった。

二人も結構食べてたな。

あの量がなくなるのは本当にすごい。

もしかしたら幽々子さんのお腹の中は紫さんのスキマでもあるのではないか。と思うほどの量を食べていた。

最後に食後のデザートということで簡易的なプリンを出したらみんなあれだけ食べたというのにあっという間に平らげてしまった。

 

「この甘味はとても美味しいですね!」

「たしかにこれだったらいくらでも食べられそうだわ~。」

「今度教えてもry」

 

冷蔵庫にバニラビーンズがあったので簡単に作れるプリンを作ったがかなりの好評価だった。

それだけ美味しそうに食べてもらえると作った甲斐があるというものだ。

趣味で色々やっておいて良かったと今思う。

 

 

「では少し休んだら昨日の続きをやりましょう。詳しいことはまた直前に伝えますので。」

 

そういって妖夢ちゃんは自室へ向かっていった。

 

「私はここにいます。」

 

祢々ちゃんは修行が始まるまでここで待つそうだ。

別段僕も特にすることは無いので一緒に待つことにした。

その間祢々ちゃんとは色々話をした。

祢々ちゃんが持っている刀は父親、つまり宗茂のものということ。

性格が変わるのは刀を抜き身で持ったときのみ。

それと能力を持っているらしくその能力は少し変わっているそうだ。

あとで実践してくれるらしい。

と、祢々ちゃんと話していると後ろから足音が聞こえてくる。

そちらを見ると妖夢ちゃんがタオルなどを持ってきていた。

準備と言っても今回は特別に道具を使うわけではないらしい。

 

「では始めましょうか。」

「「はい。」」

 

二人で返事をし庭に出る。

 

「では今回は祢々と実戦形式で戦ってもらいます。」

「え!?」

 

能力を見せるとはこのことだったのか、と察した雪茂だった。




なんだかんだで結構投稿遅れてしまいました。
3日ぶりに書くとなると色々忘れちゃってダメですね。
と話は替わりまして今週の金曜日に戦国大戦の大会があるので頑張りますー。

ではまた次回宜しくですー。

あ、そういえば一応ツイッターとかやってます。
気が向いたらどぞ。
ID:@casio_bulelens
https://twitter.com/casio_bulelens


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第19話 祢々の能力

雪茂「おいうp主!さっき間違えてR18用の小説こっちに投稿しただろ!」

うp主「それに関しては本当に申し訳ないと思っている。」

雪茂「違う時間軸の俺とさっき会っちまったけど俺他の世界だとやばいな…。」

うp主「え、会っちゃったの!?」

雪茂「え、ダメだったのか?」

うp主「いや、別に何にもならないけど。」

雪茂「じゃあ言うな!」


先ほどは本当にすみませんでした。
以後気をつけます。
本編どぞー。


というわけで祢々ちゃんと実践練習をするために庭へ。

 

「まずルールの確認です。まずお二人とも能力を使ってもらいます。」

「やっぱり使うんだね。」

「はい。弾幕ごっこで無く普通の戦いならば能力を使わないなんて甘いことは言ってられません。ましてや今回相手は幻想郷の巫女を人質にとっています。負けることは許されません。」

 

思わずゴクリと喉がなる。

先ほどまでの緩やかな空気は一転しピンと張り詰めた空気になった。

目指す未来は勝つこと、そして霊夢の無事のみ。

 

「ただ、熱くなり過ぎてはいけません。頭に血が上ると正常な判断が下せなくなる可能性があります。常に冷静で決して揺らぐことの無い心を持つことも大切です。」

「…わかった。」

 

祢々ちゃんも隣で真剣な眼差しで聞いている。

にしてもやはり色々な相手と戦ってきたのだろうか。

妖夢ちゃんの言うこと一つ一つがじつに的を得ている。

 

「まぁ今回は練習で死ぬことは無いので少し気は抜いてもいいですが手は抜いてはダメですよ?」

「了解。」

「では改めてルールの確認です。お互い能力を使い実践に近い戦闘を行う。どちらかが降参したらその時点で止め。またこちらがみて明らかに勝敗が付いていると判断した場合その時点で止めます。また時間制限として3時間設けます。その間に勝敗を決めてください。」

 

あくまでゲーム性は無し。

真剣に取り組まないと負けてしまうだろう。

それに制限時間がある。

逃げたり防御ばかりしていたら勝つことは出来ない。

がんばらなくては。

 

「では始めましょう。お二人とも位置についてください。」

 

そういわれてなんとなく剣道の一足一刀の間合いのようなものを取る。

最後に憑依するものを決めよう。

今回はどうしようか。遊戯王のカードを憑依して戦ってみよう。

出来れば剣で戦いたいな…あ、いいカードがいるじゃないか。

 

「憑依!六武衆-イロウ!」

 

効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/攻1700/守1200

自分フィールド上に「六武衆-イロウ」以外の

「六武衆」と名のついたモンスターが存在し、

このカードが裏側守備表示のモンスターを攻撃した場合、

ダメージ計算を行わず裏側守備表示のままそのモンスターを破壊する。

また、フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される場合、

代わりにこのカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在する

「六武衆」と名のついたモンスター1体を破壊できる。

 

僕がこのカードを選んだ理由はただ一つ。

 

「長い刀…。」

「そう。今回はこの野太刀で戦ってみるよ。」

 

祢々ちゃんの刀は比較的短い。

所謂脇差のようなものだ。

それに対抗して長い刀を持ったイラストを選んだ。

たしか佐々木小次郎をイメージしたカードだったと思う。

すこし卑怯かもしれないがこれも立派な戦術だろう。

 

「では私も準備を。」

 

そう言って祢々ちゃんが刀に手を掛け鞘から抜いた。

瞬間祢々ちゃ…祢々の雰囲気が明らかに変わる。

とはいえ二回も対面しているのでそこまでの驚きは無い。

 

「さぁでは戦うとしようか。雪茂殿。」

「よろしく。祢々。」

「ではお好きなタイミングで始めてください。」

 

そう言って妖夢ちゃんは縁側に座る。

いつの間にか幽々子さんも来ていたようだ。

 

「ほら余所見をしている暇があればかかってきてはどうだ?」

「相手の心配とは優しいね…っ!」

 

喋り終わるとほぼ同時かそれより早く前に踏み込む。

そして居合い抜きの要領で刀を横一閃に振るう。

 

「でぇりゃぁっ!」

 

ヒュンと聞こえそうな速度で刀を振るう。

しかし、

 

「まだ遅いな。ほれ。」

 

そういって少し祢々の姿がぶれたかと思うと僕の持っている刀に強い衝撃が走る。

 

「っ!?」

 

その衝撃に耐えられずに刀を上に振り上げてしまう。

いつ攻撃した?

いや、それよりまずい。

何がまずいって僕の刀は大太刀もっと正確に言うと野太刀。

約1mぐらいの刀身の刀だ。

そのためどうしても振る速度が遅くなってしまう。

ただリーチがあるため相手の間合いに入らず攻撃しようとしたのだが相手にその攻撃を防げる手段があるとなるとこちらからの攻撃は全て当てることが出来ない。

それに刀が短い理由。出来る限り軽くしてより速さと強さを求めた結果あの長さになったのだろう。

 

「ほらぼけっとしていると切られてしまうぞ?」

「ぐっ…。」

 

腹部に鋭い痛み。

見てみるといつの間にかお腹に×印の切り傷が出来ていた。

しかしそこまで深くは無い。

狙ったのだろう。

 

「なるほど。これは厳しいね。憑依解除。」

 

たまらず先ほどのイロウの憑依を解く。

次の憑依を考える。

次は戦国大戦から。

 

「憑依!SR風魔小太郎!」

 

 

SR風魔小太郎 兵種:槍足軽

武力:9 統率:3 コスト:2.5 特技:忍・疾駆

 

北条家に仕えた忍者集団・風魔一党の五代目頭目。情報収集や敵地撹乱に奔走し、北条家の治政を影から支えた

人間離れした容姿をしていたといわれ、身の丈七尺二寸、目は逆さまに裂け、口からは牙が4本飛び出ていたという。

 

計略:『忍法風魔手裏剣』・・・武力と移動速度が上がり、敵にダメージを与える手裏剣を自身の周囲に出現させる。さらにタッチをすると手裏剣を飛ばすことができる。

 

 

うp主「お久しぶりの説明コーナー。」

 

とまぁまた新しい用語が出てきたので解説をば。

特技:各武将が大体持っているオプションみたいなもの。

特技『忍』:この特技を持っている武将を相手は視認出来ない。ただし相手の城に近づいたり、敵の武将に近づくと姿が見えるようになる。離れると一定時間後また見えなくなる。

特技『疾駆』:普通の武将カードより少し移動するのが早い。

他にも特技はあるのですがそれはまた出てきたときで。

兵種『槍足軽』:槍オーラというものが正面に出ておりそのオーラを敵に接触させるとわずかにダメージが与えられる。またカードをタイミングよくすばやく移動させるとよりダメージの大きい槍撃が出せる。

 

とまぁ簡単ですが説明を終わります。ご不明な点などございましたら感想にてお願いします。

では本編戻ります。

 

 

雪茂が憑依を宣言した瞬間また雪茂の見た目が変わる。

所謂忍び装束を着て手には大きい手裏剣。そして何より真っ白な髪の毛。

 

「さあぁ、勝負の続きといこうか。」

 

そう言って両手の手裏剣をくるくると器用に回す。

ちなみにこの行動全て僕は意識をしてやっていない。

 

「随分とおぞましい様相になったものだな。だがそれだけでは私には勝てん!」

 

そう言って今度は見える速度で斬りつけてくる。

しかしその攻撃を後ろに下がりやり過ごす。

そしてこの武将の特技の『忍』を生かす。

 

「なっ…消えた!?」

「ふふふ、さぁ迷えそして恐怖しろ。そしてその甘美な死の調べを聞かせてくれ。」

 

なんかすっごい恐ろしいことを喋っている。

こればっかりはどうしようもないしなぁ。

だけど身体は自分の好きに動くんだから不思議だ。

ちなみに今は祢々の周りを回りながら話しかけていた。

これで少し錯乱するだろう。

 

「くっ…四方八方から声が…!?」

 

そう言って祢々は刀を闇雲に振り回す。

それを見て僕は祢々から結構な距離を置く。

そして祢々は当たらないと分かったのか振り回すのをやめる。

 

「わかった。ならばこちらも少し本気を出すとしよう。」

 

祢々は刀と腕をだらんと下げる。

 

「(能力を使うのだろうか。だが今僕の姿は見えないはずならばどんな攻撃でも当てるのは難しいだろう。そして隙を見て手裏剣で斬る!)」

「さぁ我が体内に眠る(いかずち)よ!今こそ我が力となれ!」

 

だらんと下げた刀を上に掲げそう叫ぶ。

刹那閃光で目が眩み直後轟音が鳴り響く。

まるで雷が目の前で落ちたようだ。

 

そして目を開ける。

そこには雷が刀と自身に帯電し結んでいた髪の毛が解けまるで雷を模しているかのような髪型の祢々がそこにいた。

 

「お待たせした。我が母上から受け継いだこの檄雷の力で改めて勝負といこう。」

「憑依解除。了解。ならば僕もそれにふさわしい憑依でいくよ。」

 

先程の雷の影響かは分からないが相手に僕の姿が見えてしまったみたいだ。

なので憑依を一旦解除する。またアナウンスを聞くのをすっかり忘れていたが少なくとも残り一回は憑依できるだろう。

そして祢々が宗茂の子供ということを思い出す。

ということは祢々は誾千代の娘でもあるんだ。

そして雷の技を使う。まるで戦国大戦の立花誾千代みたいだ。

ならば僕は…。

 

そして雪茂は一つのカードの名前を叫び憑依した。




閲覧ありがとうございます。
また先ほどのミスの話ですがかなりパニくってました。
まだ30分ほどで気付けたから良かったもののそのまま投稿したままだったら消されてたかもしれないと思うと怖いです。
本編の話に戻りまして、本当は今日は投稿する予定ではなかったのですが先ほどのことがあったので予定を変更して投稿しました。
ちょっと文章に分かりづらい部分があるかもしれません。
申し訳ないです。

とあまり長々書いても仕方ないのでこの辺で。
ではまた次回宜しくです~。


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第20話 檄雷と雷切

うp主「記念すべき20話目!」

雪茂「おお!なんかするの?」

うp主「特に考えてません。」

雪茂「バシィ(叩く音)。」

うp主「無言で叩くのいくない!」

雪茂「記念すべき20話なんだからなんかやれや!」

うp主「割と本気でごめんなさい。なんか考えときます。」

雪茂「よろしい。」



では本編どぞー。
あ、お気に入り登録ありがとうございます!


「憑依!SR立花道雪!」

 

SR立花道雪 兵種:槍足軽

武力:10 統率:11 特技:制圧・防柵

 

大友家重臣。元の名は戸次鑑連。勇猛で家臣の統率にも長けた、大友家最強の将であった。

九州に侵攻した毛利家を退け、筑前の秋月文種を滅ぼすなどして数々の武功をたてる。

これらの活躍と、戦場で落雷を斬った逸話から「鬼道雪」や「雷神」と呼ばれ、畏怖された。

 

計略:『雷切』・・・敵と味方に雷によるダメージを与え、移動速度を下げる。ダメージはお互いの統率力で上下する。

 

うp主「また解説…と行きたいのですが今回の新しい特技はこちらの世界では特に関係ないので説明は無しです。本編どうぞ。」

 

とある武将の名前を口に出した途端雪茂に雷が落ちる。

先程の祢々のものより強い閃光を放ち轟音を轟かす。

 

「さぁ良き戦にしようぞ。」

 

そう喋る雪茂の姿はまた変わっていた。

髪の毛は元のまま服が白い稲妻の模様がかかれた羽織を着用し、白い袴を履いており、雪茂の周りに電気が帯電しているようでパチパチと電気が走っている。それと雪茂の手にはまるで電気を固定化したような刀が握られている。

ただ片方の足にプロテクターのようなものがついており自由に動かすことが出来なさそうだ。

そして雪茂が放つ威圧。

それは明らかに少年が放つようなものではない。

その証拠に妖夢も幽々子も目を見開いて驚いているようだ。

ただ祢々だけは違った。

好敵手。やっと会えた。かのような表情をしている。

そう、笑っている。

そして祢々が口を開く。

 

「その放つ威圧。まるで私のおじい様を見ているようだ。そして何よりその刀。雷切ではないのか?」

「その通りだ。この刀は雷をたたっ切ったことから千鳥を改め雷切と号している。」

「やはりそうか。改めてお手合わせ宜しく願おう。」

 

そう言って祢々は刀を構え直す。

 

「さぁ雷切よ。敵を切り裂こうではないか。」

「では行きます。」

 

今の言葉をこちらの準備よし、と受け取ったのか祢々がすさまじい速度でこちらに踏み込んできた。

その姿はまるで稲妻。

そして刀を振るために構え直す。

 

ヒュンと音とほぼ同時にガキンというような音が鳴る。

 

「ほう、早いな。しかし我は雷神。雷如きの速さでは我を討つことは出来ん。」

 

そう言って僕は受け止めた刀を払いのける。

今の行動は反射的なもので自分本来の運動能力ではない。

それにしても、だ。体力の消費が著し過ぎる。

先日の信長を憑依したときとは違い重りを付けており、なおかつ3回目の憑依。

さすがの体力を軽減してくれる重りもキャパを超えたのか身体に疲労感が溜まっていく。

これは短期決戦に持ち込まないと危ないかもしれない。

 

「今の一撃を止めるか。ならば…っ!」

 

そう言って祢々が後ろへ飛び退き姿がぶれたかと思うと消えた。

すさまじい速度で移動しているのだろう。

時折周りの砂が煙を立てる。

先程僕が忍の状態で行ったことと似ている。

きっと僕を錯乱させ隙を突く作戦なのだろう。

確かにこれではこちらから攻撃は出来ない。

さて、どうするか。

 

「こんなときに考え事とは悠長だな!」

 

祢々の声が聞こえたかと思うと右後ろから切りつけられる。

しかし移動する速度が速すぎるためか狙いが定まっていないようだ。

掠り傷程度の切り傷で済んだ。

 

「くっ…やはり試したことが無い戦法は難しいな。」

「だが我に一撃を入れたことそれは誇るがいい。」

 

どんだけ上から目線だよ。と自分に突っ込みを入れつつ刀を横一閃に振るう。

その刀の軌道に合わせて三日月のような形の雷撃が飛ぶ。

そしてその雷撃が祢々に掠る。

もうここまで来ると人間技ではないような気がするが今はそんなことは言ってられない。

 

「これでおあいこだな。」

「やはり雷を使うか。ならば…!」

 

そう言って祢々は高く跳躍する。

ちょうど太陽の方角に飛んだため下からだと眩しくて視認出来ない。

 

「我が檄雷受け取るがいい!」

 

その声と共に強い衝撃が身体に走る。

おそらく祢々が自分と同じような雷撃を飛ばしてきたのだろう。

しかもかなり力を込めて。

 

「ぐあぁ…っ。」

 

先程の考え事は全て吹き飛びあまりの衝撃に膝を着く。

 

シュタッという音と共に祢々が降りてくる。

そしてこちらに近寄ってくる。

 

「どうやら私の檄雷のほうが雪茂殿の雷撃より上のようだな?」

「戦は最後まで油断をしてはならないと誰かに教わらなかったか?」

「何を今更………っ!」

 

僕の違和感に気付いたようで祢々が途端に逃げる体勢を取る。

しかしそれをみすみす逃すわけにはいかない。

 

「吼えよ!雷切!!」

 

――計略使用確認。士気ヲ8ツ使用シマス。残リ士気7。残リ憑依回数0。

 

久しぶりにまともに聞くアナウンス。

その刹那僕と祢々をまばゆい光が包み込み爆音を立てる。

 

「が…はぁっ。」

「ぐ……ぅぁ。」

 

お互いに雷が落ちた。

今使ったのは道雪の計略『雷切』。

敵味方関係無しに無差別にダメージを与える技。

体力が満タンの状態で使っても自身に約半分のダメージが入る。

それゆえに敵に与えるダメージも大きい。

そしてダメージを与えたあとで移動速度を減退させる効果を付与させる。

そんなダメージの大きい技を疲弊している自分と油断していた祢々が食らえばおおよそ結果は予想できる。

 

「………。」

「がぁ…はぁっ…。」

 

僕は仰向けに祢々は立った状態から崩れ落ちた。

 

「憑、依…か、い除…。」

 

祢々はそのまま崩れ落ちどうなったか分からない。大丈夫かどうかを確認する前に憑依を解き意識を手放した。

 

 

 

 

 

「ん…痛っ!?」

「あ、起きましたか。」

 

身体の痛みで目を覚まし体を起こすと僕の横で手ぬぐいを絞っている祢々ちゃんと目が合う。

 

「あ、れ?崩れ落ちて気を失ったんじゃ…。」

「あぁ、あのあと私はすぐに目を覚ましたんですよ。」

 

まじか。

僕の渾身の一撃があまり効果が無かったって言うのか…。

と露骨に凹むと祢々ちゃんがあたふたしながら「い、いえ強かったんですよ!?」とフォローしてきた。

 

「だってぇ効いてないんでしょぉ?」

「い、いや効いたんですよ。痛かったです。ただ私の能力は『雷を操る程度の能力』です。雪茂さんの雷は喰らったんですがその力を私の体力に変換したんです。まぁ痛みは残りますけど。」

 

えぇ…。むしろ回復させちゃってるじゃん。

まぁこれもいい勉強だ。

相手の特性をよく考えて戦わないと。

相手が雷を使うから僕も!なんて考えは今度からよそう。

 

「はぁ…まぁ僕の負けか。」

「す、すみません。」

「大丈夫大丈夫。気にしてないから……はぁ~。」

 

「あうあう。」とあたふたする祢々ちゃんが面白くてつい大げさに凹む振りをしてしまう。

そのあと笑ってしまい、「え、演技だったんですかー!?」とポカポカと痛くない攻撃を受けた。

「ごめんごめん。」と笑って謝ると「じゃあ罰として今度例のぷりんとやらを作ってください。」という罰に約束をして第2の争いは終結した。

 

「ではとりあえず茶の間のほうに向かいましょう。」

「了解。」

 

と痛む身体を引きずりながら茶の間へと向かう雪茂だった。




はい。というわけで20話目でした。
特に何も無い普通の回です。
ちなみに今度余裕があれば雪茂とか祢々とかのイラストを描こうかなと思ったり。
最近全然描いてなかったので描けるかどうか…。
まぁあまり期待はしないでください。

なんだかんだで今回雪茂初負けだったり(たしか)。

ではまた次回宜しくです~。


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第21話 見えざる箱と刃

今回は本編とは少しだけ離れて白玉楼に雪茂が向かった直後の犯人二人について書きました。
ちょっとだけグロかったり気分を害したりしちゃうかもしれないです。
まぁそこまで酷い描写は無い(と思う)ので安心してください。
あ、ただ少しだけ霊夢がいじめられます。(精神的に)
とまぁたまには真面目な前書きで。

本編どぞ~。


雪茂が白玉楼に向かった直後―――

 

「なぁ。」

 

ぶっきらぼうな言葉で一人の男が声を掛ける。

その男は椅子に寄りかかって座っておりまるで自分は王様だとでも言わんばかりに偉そうに座っている。

まぁ本人にそのつもりは無くただなんとなくそう座っているだけなのだが。

それに見た目が完全に王様のそれとは違っている。

とても顔立ちが整っていて目はグリーン、それに足も長く一見するとモデルや俳優なのでは?と思う人がいるかもしれないような外見。

髪はブラウンでショートヘアー。と、ここまではまだいいかもしれない。

服装。それに装備。

その二つが完全にその男を王様なんて高貴な身分ではないと主張している。

上は長く黒いボロボロのロングコート。前は開けっ放しており、中には黒いシャツ。

そして下にはダメージジーンズ。というかただのぼろぼろのジーンズを履いている。

男の手の部分には鉄のガントレットのようなものが付けられており、足元にはナイフが散らばっている。

 

「…気付いた?」

 

とそんな男に声を掛けられたもう一人の男が冷たい声色で反応する。

椅子に座らず床に体育座りをしている。

先程の男とは打って変わり見た目はとても大人しそうな少年のような外見をしている。

童顔で髪はクリーム色で少し癖のあるミドルショート。

チェックのパーカーに紺のハープパンツ。

見た目は普通だ。

そして反応した少年に向かって男が口を開く。

 

「あぁ、動き出したみてぇだ。」

「…だね。………無駄なのに。」

 

二人が何かの異変を感知しそれについて話す。

しかしみなまで言わない。あまり喋りたくないのだろうか。

それともみなまで言わずとも分かるほどの関係なのだろうか。

口ぶりからしてたぶん後者だろう。

 

「もしかしたらこの間に攻め込むとか考えてるんじゃねぇのか?」

「…かもね。………無理なのに。」

「それか今のうちに打開策とか考えてたり、練習とかしたりしてな。」

「…そうだったらおもしろいかも。」

「だよな。」

 

口では”面白い”と言っているが表情は変わらない。

その一方で椅子に座る男は楽しそうにニヤリと顔を歪める。

 

「やっぱりよぉ二人じゃ物足りねぇって。」

「同感。…僕もそう思ってた。」

「もう一回手紙送るぞ。」

「…OK」

 

そう言って男は何処からとも無く紙を出現させる。

それと同時にペンも。

そしてその紙にペンで書きなぐる。

 

「…字、汚い。」

「ならお前書けよ。」

「…断る。……面倒。」

「なら文句言うんじゃねぇ。そもそもお前が読むものじゃねぇだろうが。」

 

男はそう話しながら続きを書く。

内容は簡潔。

「二人だとつまんねぇだろうからもう二人増やしていいぞ。」

簡単に言うとこんな感じだ。

 

「まぁこれでいいだろ。」

「…異議なし。」

「んじゃ送るぜ。」

「…異議なし。」

 

少年は同じ返事を繰り返す。

それ以上語る必要は無いという意味なのだろう。

その瞬間その男の持っている紙が消えた。

 

「にしても俺らが起こした異変てやつだっけか?あれってそんなにやばいのか?」

「…知らない。………ただ村人の一人を家族の前で殺しただけだって言うのに。」

「なぁ?」

 

ごく当たり前のように二人は言う。

そしてそのことを思い出したのか男はニヤリと笑う。

 

「にしてもあのときの殺したやつの嫁と子供、良い声で悲鳴を上げてたなぁ。」

「…うん。あれはよかった。」

 

クヒヒと男は笑う。

その言葉に反応した少年は笑ってはいないが若干声色が先程より明るい気がする。

内心では笑っているのだろう。

 

「まぁでも一人だったからあまり物足りなかったけどなぁ。」

「…うん。でも、」

「あぁ、仕方ない。これも”あいつ”の命令だからな。」

 

めんどくさそうに男が椅子に体を預ける。

 

「…ねぇ、巫女さん。」

 

少年が床に横たわる白と紅色の巫女服を着た少女に声を掛ける。

それに巫女は答えない。正確に言うと答えられない。

口には猿轡。その為満足に言葉を発することができない。

しかしあくまで目線はその少年に向ける。

 

「…自分の知り合いを目の前で殺されるってどんな感じなんだろうね…?」

 

なんともいえない冷たく鋭い殺気を出しながら横たわる巫女に聞く。

その言葉に目を見開き怯えた表情をする巫女。しかしそれに構わず少年は喋る。

 

「…わからないよね?……大丈夫。もう少しで味わえるよ…。」

 

そう言ってふふっと笑う。

ただし表情は笑っていないが。

そんなやり取りを聞いていたもう一人の男が口を開く。

 

「あんまいじめてやるなよ?カロン。」

「…分かってる。…楽しかったのに。」

 

”カロン”と呼ばれた少年が少し残念そうな声色で若干の抗議をする。

カロンが「でも、」と口を開く。

 

「ジェイドも殺し(あそび)足りないでしょ…?」

「まぁそうなんだけどよ。」

 

”ジェイド”呼ばれた男は少しだるそうに言う。

手でナイフを弄びながら。

とジェイドがヒュッとそのナイフを巫女のほうに投げる。

ザッという音と共にナイフが巫女の顔の横に刺さる。あと1cmでもずれていたら刺さっていただろう。

その事を数秒遅れで巫女が認識する。

 

「―――――――っっ!?」

 

もしかしたら死んでいたかもしれない。もし死ななくてもかなりの痛みが襲ってきたかもしれない。

そんなことが急に起こったのだ。動揺し、恐怖せずにはいられない。

目からは自然と涙が流れ、体は振るえ、じんわりと下半身の部分にシミが出来ていく。

粗相をしてしまったのにもかかわらず恐怖でそちらに気が行かない。

ただ震える。

その状態の巫女を見てジェイドはクヒヒと笑い、カロンはじっと見つめている。

 

「安心しろよ。おめぇは絶対殺さねーし、死なせねーから。」

「…じゃないと恐怖を味わえないでしょ…?」

 

巫女はその言葉にまたも恐怖する。

そして心のそこから助けを願う。

決して届くことが無いといってもそうでもしてないと心が持ちそうに無かった。

いや、最早心が壊れかけていたかもしれないが。

 

「早く殺し(あそび)てぇな。」

「…うん。…元の世界じゃこんなに出来なかった。」

「だな。」

 

 

 

 

 

そう、この二人も雪茂、祢々と同じく違う世界で生きていた。

ジェイドとカロンはとある殺人事件に興味を持ち元の世界で過ごしていたのだが、とある日幻想入りをする。

 

 

 

――もともとジェイドはイギリスに住んでいた。

今までは普通に暮らしていた。ただ少しだけほんのちょっとだけ”殺人”に興味があったことを除けば。

そして1888年イギリスでとある猟奇的殺人事件があった。

犯人の名前は、ジャック・ザ・リッパー。またの名を切り裂きジャックとも呼ばれる。

そして表沙汰にはなっていないがその事件の一年後、またも猟奇的殺人事件が起きた。

察しの良い方は分かったかもしれないがその犯人こそ、このジェイド。ジェイド・メイブラック(19)と言う男だ。

殺害方法はいたって簡単。ナイフで切り裂かれた。ただそれだけだ。

だが不思議な点があった。

それは被害者の遺体には何の抵抗もした後も無く、それに目立つような場所で切り裂かれていた。

そして被害者は全員で32人。

それだけの人数をたった一ヶ月で殺しているのだ。

誰の目にも触れず静かに殺した。

当然目立つような場所で殺されていたのだからその現場を見ている人もいる。

だがみな言うことは同じ。

「いきなり被害者が体中から血を流し叫びながら倒れた。」

そのようなことしか言わなかった。

住人はみな「見えざる恐怖の刃(インビジブルナイフ)」と呼び怯えた。

だがそんな事件もパッと人知れず終焉を迎えた。

警察に捕まったのではない。ただ犯人、そう、ジェイドが幻想入りしたのだ。

その犯人の消えた事件はそのまま迷宮入りとなった。

 

そしてその事件の真相はこうだ。

 

日頃から「人間を殺してみたい。」そう思っていた直後にあの”切り裂きジャック”の事件が起きる。

どんな殺し方をしたのか?どういった人を殺したのか?そして―――殺す気分とはどのようなものなのか?

そう思いその事件について色々調べ始めた。

さすがに気持ちまでは分からなかったがある程度までは分かった。

とある日ジェイドに異変が起きる。

特に意識していなかったのだが目の前にあったナイフを「あれが遠くから操れればいいのに。」と念じたところそのナイフがカタカタと揺れたのだ。

そう、ジェイドは能力を発現させた。

何が原因かは分からないがジェイドは”無機物を操る程度の能力”を手に入れた。

そしてためしに自分の住んでいる家の二階から道を歩いている年配の男性に向かって「ナイフよ、飛んでいけ。」とその能力を使い、ナイフを操り切り裂いた。

これを境にジェイドは殺人に楽しみを覚え、見境無しにそこら中の人間を殺した。

そして幻想入り。紫以外の人物によって幻想郷に招かれた招かざる客の一人。

 

 

 

もう一人の少年、カロン、カロン・クリストファーはフランスで暮らしていた。

だが少年はいつも家に引きこもっていた。

なぜか?

つまらなかったから。

学校がつまらない。

友人がつまらない。

勉強がつまらない。

運動がつまらない。

読書がつまらない。

そう、何事にも興味が沸かなく意欲も出なかった。

とある日ふと何の気なしに開いた本に目を奪われる。

その本には切り裂きジャックについて書かれていた。

なんの偶然かこちらの少年も切り裂きジャックに興味を持った。

しかしこちらは少し考え方が違った。

この被害者はどんな声で鳴いたのだろう。

殺すのではなく極限の孤独や衣食住を完全に絶てばどのようになるのだろう?

この少年は殺すのではなく、どれだけ人間を恐怖や絶望に立たせられるかを考えた。

「…完全に誰からも干渉されない空間作り出せれば完全に孤立させられるね。」そう独り言を呟いた。

今キッチンでは母親が昼ごはんの用意をしている。

もしその母親がいきなり誰にも干渉されない孤独な空間に閉じ込められたらどうなるのだろう?

とキッチンにいる母親が閉じ込められるのを想像した瞬間、キッチンから「~~~~~っ!」と声にならないような叫び声がかすかに聞こえた。

そこに行ってみると母親が見えない壁のようなものを叩いてこちらに向かって叫んでいるような様子が伺えた。

その母親のそばに行って母親の叩いているところに手を当ててみる。

すると手に冷たく硬い感覚があった。

そこには紛れも無く透明な壁があった。ただ中からこちらは見えていないようだ。

僕が手を振っても何をしても反応が無い。

それに触って分かったのだが人一人分ぐらいしかスペースが無いようだ。

たぶんこのままにしておいたら母親は窒息するのだろう。

そんな母親は喉元を押さえ肩で息をしながら見えない壁を叩き続ける。

そして数十分ほどした頃だろうか。

母親が叩くのを止め壁に寄りかかった。正確に言えば倒れるだけのスペースが無く倒れることが出来なかったと言ったほうが正しいのだろう。まだ息は合ったが時間の問題だ。

目は空ろで何処を見ているか分からない。

窒息により糞尿を撒き散らしていた。

しかし少年はずっと観察していた。救急車も警察も呼ばずただ観察していた。

表情は無表情だったがどことなくこの状態を楽しんでいるような様子が見て取れる。

目の前で人が苦しんでいる。

そしてその情景はこの少年が想像したものと同じだった。

そんな願ったものが今目の前で起きている。

「…ふふっ。」

少年は(わら)った。

そしてカロンという少年は”干渉と非干渉を操る程度の能力”を手に入れた。

そしてその後、この少年も猟奇的殺人事件を起こす。

こちらは4人しか殺してないがこちらも異常だった。

まずみな窒息であるのにもかかわらず首や口等にはなんの後もないということ。

それにみんな外出中であったということ。

こちらも証言者は「いきなり苦しみだした。」としか言わなかった。

そして後にこの事件の犯人は「突如現れる絶望の箱(ブロークン・ハート・スクエア)」と呼ばれ恐怖された。

しかしこの少年、カロンも幻想入りをし、事件は迷宮入りとなった。

この少年も招かざる客の一人と言うことだ。

 

幻想入りをした二人が意気投合するのはまた別のお話。




更新が遅くなってしまい申し訳ないです。
どうもこの時期になると会社が繁忙期で忙しくなってしょうがないです。
べ、別に言い訳してるわけじゃないですよ?
と言うわけで犯人二人でした。
次回本編戻ります。
ではまた次回も宜しくです~。


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第22話 恐怖は人を簡単に壊す

どもです。最近更新が少し遅くなってしまっている竹猫です。
今回も少し暗い(たぶん)です。
多少のグロ表現はありますがたぶん耐性がない方でも大丈夫です。
そこまで詳しく書いてないので。



では本編どぞー。


~幽々子side~

雪茂君と祢々の戦いが終わったあとで私は少し迷っていた。

雪茂君が白玉楼に来た日、私の部屋に戻ると一枚の紙が置いてあった。

もちろん私が置いたものでもないし、その紙に書いてある字を見たところ妖夢や祢々の筆跡じゃないのは明らかだった。ということは私達以外のものが置いていったということになる。私達は外に出ていて家には誰もいなかった。

つまり誰かが入っても気付かないのだが、そもそもここは冥界。来る者なんてまずいない。普段ここに来る者がいるとすれば紫ぐらいだ。だが紙に書かれている字は乱雑で紫が書くような字ではない。

それにその紙に書いてある内容がよく分からない。

「雪茂へ 前回2人に書いた手紙があったと思うがこちらに来る人数は4人でも構わない。楽しみに待ってるぜ。みんなお誘い合わせの上来てくれや。」

…なんというか語彙力が足りない気がする。…じゃなくてたぶんこの内容からしてこの手紙を送ったのは例の犯人ね。どうやって私の部屋に送り込んだかは分からないけど。

でもなんで自分達に不利な状態にしようとしているのかしら。それほど自分の力に自信があるのだろうか。

とまぁそんな不思議な紙(手紙)を雪茂君に渡すかどうか迷っていた。

渡したほうがいいとも思うし渡さないほうがいいとも思う。

まぁ順当に考えたら渡したほうがいいだろう。そのほうが戦力も上がるし霊夢を助けられる可能性が上がる。

けど、罠だったとしたら?

4人まとめてやられてしまうのと2人の犠牲で2人助かる。「犠牲」なんて言い方は悪いが安全性を求めるならこっちだ。

…深く考え過ぎるのもあまり良くないだろう。ここは素直に渡しておこう。いつものように「そういえばこんな紙が私の部屋に置いてあったわ~。」なんていつもの調子で渡せばいいだろう。

そんなことを考えているとガラッと茶の間の襖が開いて雪茂君と祢々が入ってきた。

 

 

 

 

 

~雪茂side~

茶の間の襖を開け中に入ると妖夢ちゃんと幽々子さんの二人がお茶を飲んでいた。

いつもと同じ場所に座ると妖夢ちゃんが声を掛けてきた。

 

「おはようございます…ってもう夕方なのでこんばんわでしょうか。」

「あれ?僕達が戦ってたときはまだ午前中だったよね?…もしかして僕ずっと寝てた?」

「ぐっすりだったわよ~。」

 

…まじか。午後の時間つぶしちゃったのか。折角の特訓の時間が…。

まぁでもその反面今日の特訓はかなりためになった。

相手のことを良く見て使う能力を選ぶこと。

なによりそれが今回身に染みてよく分かった。

相手にダメージを与えるはずがむしろ回復させていた。なんて、実践だったら致命的だ。

と一人心の中で反省していると幽々子さんから声が掛かった。

 

「そういえば雪茂君がこっちに来た日に私の机に手紙が置いてあったんだけど雪茂君分かるかしら?」

「僕ですか?」

「えぇたぶんね。ちょっと見てもらえるかしら。」

 

そういって幽々子さんに手紙を渡してもらう。内容は簡潔に言うと「4人で来い。」ということ。

どういう意図があって4人にしたのか分からない。ただ人数が増えると言うのはこちらにとっては好都合だ。戦力は大いに越したことは無い。ただ問題は誰が行くかだ。

 

「4人ですか。まず僕と魔理沙は確定として、残り2人。となると…。」

 

そう言って僕は妖夢ちゃんと祢々ちゃんに視線を配る。それに気付いたのか二人は頷く。

 

「もちろん残り2人の枠は私達が行きます。」

「わ、私も微力ながらお手伝いさせていただきます。」

「ありがとう。2人とも。」

 

相手は異変を起こした犯人だっていうのに2人は臆せずに了承してくれる。心強い。

…そういえば犯人が起こした異変って何なんだろ?

幽々子さんたちが知ってるとは思えないし…。

こういうときに紫さんがいれば教えてくれそうなんだけ…、

 

「呼んだかしら?」

「うわぁっ!?って紫さん!?」

 

後ろから急に声がかかり驚きで少し体が跳ねる。

後ろを見ると声の主はやはり紫さん。…やっぱりこの人心読めるんじゃ…。

 

「はーい。若くて綺麗なゆかりんでーす。」

「………。」

「なんでそこ黙るのかしら?」

「い、いえ何でもないです。それよりも丁度いい所に。ちょっと質問いいですか?例の犯人が異変を起こしたって

 

言ってましたけどどういった異変なのか分かりますか?」

冗談なのか本気なのか分からない紫さんの言葉をスルーし先程の疑問に思ったことを聞く。

少し紫さんは面白くなさそうにしながら口を開く。

 

「…教えてもいいけど冷静に聞きなさい?いいわね?」

「…はい。」

 

先程とはうって変わり真剣な声色と表情で紫さんがこちらに向き直す。

こちらも姿勢を正して紫さんの言葉を待つ。冷静に聞けとはどういった意味なのだろうか。

それほど大変な事態なのだろうか。

しかしそんな僕の考えは甘かったと次の紫さんの言葉で思い知ることになる。

 

「この世界にも普通の人間の住んでいる人里があるわ。そこは普段妖怪などには襲われないようになってるの。まぁいたって平和な里ね。…だけどとある日。そんな平和が崩れたわ。例の犯人2人組みがその里にやってきたの。里の人間は2人の服を見てまだこちらに来て間もない外来人だと思ったのかしらね。里の人間は2人に優しく接しようとしたわ。だけど…、」

「そのときその異変が起きた、と?」

「…えぇ。その通りよ。だけど今回のは異変と言うより事件と言ったほうが正しいのかもしれないわね。2人は身長の高い男と少年のような男の2人組みだったのだけど身長の高いほうの男が1人の少年を捕まえてナイフを取り出しこう言ったわ。「こいつの親は何処にいる?出てこい!さもなければこいつは今すぐに切り刻む!」一方的で身勝手な男の要求に里の人間は従うしか無かった。そして先程の言葉で少しざわつきを見せ始めた群集の中から2人の中年の男女が出てきたわ。」

 

いきなり来てそんな凶行をするなんて普通は思わないだろう。

そしていきなりのことに里の人間や家族は従うしかない。

 

「そして2人の親を確認した男は「おい。どっちかこのガキと交代しろ。さもないと…、」そういってどこからともなく取り出したナイフを子供の首に当てたわ。少し皮膚が切れて血を流し涙を零す子供を見て血相を変えた父親が交代を申し出たの。そして男は自分の仲間の少年とその家族を引き連れてその家族の家に向かった。その家の扉を閉めてからはひどかったわ。まず父親の両腕をナイフで串刺しにして壁に(はりつけ)。もちろん両足も。苦しむ断末魔のような声を聞いて家族は悲鳴を上げた。それは男を興奮させたみたいで父親に死なない用に調節しながらナイフを突き刺して母親と子供に向けてこう言ったわ。」

 

そこまで聞いて怒りと吐き気がこみ上げてきた。家族の心情を考えると涙も出てきそうになるが堪える。

だが考えても見るとかなりひどい。平和だった日常が一瞬にして崩れ去る。

昨日まで、いやさっきまで一緒だった家族が目の前で苦痛の声を上げながら痛めつけられる。

…考えたくもない。

 

「「お前らは生きたいか?それともここで死ぬか。選ばせてやる。まぁ条件はあるけどな。」そういわれた母親と子供はもちろん「生きたい。」そういったわ。それを聞いた男はニヤリと笑ってナイフを差し出して口を開いた。「なら俺は優しいから一回で良い。2人でこのナイフを使って(はりつけ)の父親を死なないように刺せ。そうすれば生かしてやる。まぁこの父親は死ぬかもしれないけどな。」」

 

ダメだ。涙が溢れる。その男は狂っている…!家族である父親に死なないようにナイフを刺せ?

ありえない。常人の考えることじゃない。

 

「…大丈夫?苦しいならやめるわよ。」

「…いえ。大丈夫です。聞かせてください。」

 

本当ならここでやめたい。だけど聞いておかなくてはならない。そんな気がした。

 

「なら続けるわね。その言葉を聞いた親子はナイフを受け取ってひたすら「ごめんなさい。」と連呼しながら父親を一回ずつ刺したわ。周りから見ると躊躇いもなしに刺したらしいわ。…たぶん恐怖から正常な判断が出来なかったのでしょうね。そして男が「オッケーだ。お前らは生かしてやる。…まぁこいつは死ぬんだけどな!」そう言った直後(はりつけ)られていた父親が急に苦しみだして断末魔のようなものを上げたかと思うと肉塊になってしまったわ。」

「肉…塊ですか…?」

 

ありえない。先程まで刺されていたのに急に肉塊になるなんて。

やはり能力なのだろう。

といきなり吐き気を催し手で口を押さえる。

幸い吐き出すことはなかったが苦い胃液が上がってきて少し気持ちが悪い。

「続けるわよ。」と紫さんがまた話し出す。

 

「残された二人はもう放心状態だったわ。心ここにあらずと言った感じね。それを見て男はつまらなそうにして「その父親だった(・・・)ものは残しといてやる。まぁ最後の俺からの優しさだ。」それだけ言うと二人はその家を出て行ったわ。そしてその出来事はすぐさま人里を駆け巡った。そして恐怖によりみんな家に引きこもったわ。…簡単な説明だけどそれが今回起こった異変。いや、事件よ。」

 

話の全てを聞いて僕は口を開けずにいた。体が震える。

たぶん恐怖から来るものだろう。

そんな快楽殺人をするような男と戦わなければいけないのだ。恐怖以外に何があるというのか。

ましてや僕はまだこちらに来て1週間も経っていない。そんな最中にこれだ。

甘く見すぎていた。

僕は幻想郷を、能力を(あなど)っていた。

 

僕は、本当に勝てるのだろうか…?




閲覧ありがとうございます。
と言うわけで22話でした。だんだんと犯人のことが雪茂に伝わっていきます。
なんかゆかりんに喋らせ過ぎたかなと思いましたが説明なんだから仕方ない!…よね?
また少し更新遅れるかもしれませんが次回も宜しくです~。

雪茂「あれ?珍しく前書き後書きに僕の出番がないぞ?」

うp主「安心しろ。次回はまた茶番が入る。(予定)」

雪茂「お手柔らかに…。」


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第23話 Wanted dead or alive.

雪茂「なんか最近話の内容暗くない?」

うp主「そう言う風にしてるからね。」

雪茂「なんか気が滅入るなぁ。」

うp主「いいじゃん。お前他のところでいちゃこらしてるじゃん。」

雪茂「それ別世界の僕だから!」

うp主「てか英語のサブタイかっけー!」

雪茂「関係なくなっちゃった!」


久しぶりの茶番。
本編どぞー。
UA2000超えました!ありがとうございます!


紫さんが話し終わったときにはみんな黙っていた。

幽々子さんたちのほうを見てみると三者三様の反応をしていた。

幽々子さんは特に変わりはなく静か。

妖夢ちゃんはその犯人が許せないという憤りが良く感じられる。

祢々ちゃんは僕と同じようで恐怖からか震えていた。

 

「…雪茂君。」

「……はい。なんでしょうか。」

 

震える手を押さえ、うまく動かない口を開き返事をする。

 

「普段異変の解決というのは異変の首謀者を懲らしめればよしなんだけど今回は違う。」

「…違う?」

「えぇ、”Wanted dead or alive.”よ。…どちらでも構わないわ。」

 

幽々子さん以外の僕を含めた3人がハッとした表情で紫さんを見る。

…今、紫さんは”Wanted dead or alive.”つまり”殺しても構わない”と言ったのだ。

弾幕ごっこではまず死ぬほどのダメージは出ない。正確に言うと出さない。弾幕ごっこは人を殺めるゲームではないから。つまり犯人を捕まえるのは弾幕”ごっこ”でなくて構わないということになる。

 

「…い、いのですか…?」

 

妖夢ちゃんが声を震わせて紫さんに質問する。

先程まで感じられた憤りは困惑にかき消されていた。

 

「えぇ構わないわ。…こいつらは生かしておいてはいけない。…ただ無理をして殺せと言ってるわけではないことだけは理解してね。」

「…わかり、ました。」

 

話し始めたときは真剣な表情をしていた紫さんだったが、後半は子供をなだめる親のような優しい顔になっていた。

さすがに紫さんもいくら殺人鬼だからと言って殺めてほしくはないのだろう。

その言葉を聞いた妖夢ちゃんは少し安心した表情をしていた。

 

「と、夜も遅いし今日はこの辺でお暇(おいとま)するわね。」

「えぇわかったわ~。また何かあったらよろしくね。」

「えぇ。それじゃみんな期待してるわよ。」

 

とこちらに紫さんが手を振ったあとでスキマを出してその中に消えていった。

そのあとすぐに幽々子さんも「私も部屋に戻るわ~。何かあったら言って頂戴ね。」とだけ残して茶の間を出て行ってしまった。

残された三人に残るのは静寂。

先程の話を受けてそれぞれ戸惑い、恐怖、葛藤、その他色々な感情が巡っているのだろう。

さすがにこのままではいけないと思い口を開く。

 

「…そ、そうだ。夕ご飯作らないとね。」

「……そうですね。」

 

返事をしてくれたのは妖夢ちゃんだけ。

祢々ちゃんは先程から震えて縮こまってしまっている。

だが夕ご飯を作ると言ったもののまったく食欲が沸かない。

 

「…ごめん。少し休もうか。」

「はい…。」

 

祢々ちゃんもこくりと頷いてくれた。

どうしたものか。とりあえずお茶でも入れよう。

そう思い立ち上がりお茶を入れに行こうとする。

すると祢々ちゃんの横を通りかかったときにふと足に抵抗を感じた。

そちらを見ると祢々ちゃんが僕の着物の裾を握っていた。

座っている祢々ちゃんの視線に合わせてしゃがみ話しかける。

 

「どうしたの?」

「…怖い、んです。」

 

目に涙を浮かべながらこちらを見て怖いと訴えてくる。

そりゃそうだろう。今回相手をするのは殺人鬼。しかも能力持ちと来たものだ。

怖いに決まっている。そしてたぶん祢々ちゃんは先程の話の内容を鮮明に思い描いてしまったのだろう。

下手をすれば軽くトラウマになってしまうかもしれない。

それほど先程の話は現実離れしすぎていた。…幻想郷(ここ)も大概だが。

と目の前で震えている祢々ちゃんを僕はそっと抱きしめた。

変な意味では無くただ安心させるために一番良いと思ったからだ。

 

「…ゆ、きしげさん?」

「大丈夫。無理に祢々ちゃんに戦わせはしないよ。」

 

そう言いつつ祢々ちゃんの頭を撫でる。

普段こんなことはしたことが無かったが体が勝手に動いた。

 

「僕が守る。みんなを。それほど大きい力があるわけじゃないけどそれでも守るよ。」

 

自然と口からこぼれる。僕の本音だ。言った後で少し恥ずかしくなったが先程まで震えていた祢々ちゃんの体の震えが少しずつ収まっていったのでよしとしよう。

「…ありがとうございます。もう大丈夫です。」そう耳元で声が聞こえたのでそっと祢々ちゃんから離れる。

ふと妖夢ちゃんのほうを見ると妖夢ちゃんも少し安心したような表情を浮かべていた。

 

「…よし。今度こそ夕ご飯作ろうか。」

「はい!」

「了解しました!」

 

みんな元気になったようでよかった。

さて今日の夕ご飯は何にしようか。

 

 

 

~幽々子side~

私は部屋に戻ると嘘をついて茶の間の襖の前に立っていた。

 

「僕が守る。みんなを。それほど大きい力があるわけじゃないけどそれでも守るよ。」

 

そう雪茂君の声が聞こえてくる。

すると先程まで静寂が支配していた部屋に少し喧騒が戻った。

それを聞いて私は本当に部屋に戻る。

頼もしい居候を招きいれたものだ。

 

「7日間限定っていうのは少しもったいないわね~。」

 

いっそ紫と雪茂君に話してここに住んでもらおうか。

それもいいかもしれない。

 

「そう思わない?紫。」

 

そう私が虚空に声を掛けるとスキマが出現しそこから紫がスキマに腰を掛けるようにして出てくる。

 

「ばれてたのね。」

「もちろんよ。あなたも盗み聞きしてたんでしょ?」

 

「えぇ。」と言って頷く紫。

やはり親友。考えることが似ている。

 

「あの子はきっとこの異変、いえ、幻想郷を救ってくれるかもしれない特異点(イレギュラー)よ。」

「特異点?」

「えぇ。と、それはまた今度話すわ。さすがに長居するとあれだしね。」

 

私は気にしないのだけれど紫がそう言うのなら無理に引き留めはしない。

 

「わかったわ。それじゃあまた。」

「えぇ。」

 

先程と同じようにして紫はスキマに消えていった。

…それにしても特異点。どういうことなのだろうか。

また随分と気になることをほのめかして帰ったものだ。

…楽しみが増える一方じゃないの。

そう笑みを浮かべ、夕ご飯が出来るのを待つことにした。

 

 

 

~雪茂side~

結局夕ご飯は僕の提案でカレーライスと言うことになった。

なぜここにバー○ントカレーがあるのかは知らないがあるのだから使おう。

というわけで絶賛煮込み中。

久しぶりの家庭的なカレー匂い。美味しそうだ。

2人は作るもの見るのも初めてのようで終始興味津々だった。(あとで聞いたが作り方がわからなかったらしい。)

おかずは簡単にサラダ。(ただし大盛り)

ドレッシングは無かったので簡単に作った。

とまぁカレーなのでそこまで時間もかからず作ることが出来た。

ご飯を盛りカレーを皿の空いた部分に流す。上からかける派の人もいるが僕はこっちだ。

何派というのだろうか?

とそんなことを考えているうちに盛り付けが終わり幽々子さんも部屋から出てきた。

そしてみんな座ったところで手を合わせて食べ始める。

ちなみに今回もプリンを作っておいた。ただ時間的にあと1時間ぐらいしないと固まらないだろう。

 

「あら、美味しいわね~。初めて食べたわ~。」

 

と少し多めに盛った幽々子さんの皿のカレーライスがどんどん消えてゆく。

2人も「美味しい!」と言って食べ進めている。

ちなみに甘口と辛口を混ぜて作ったのでちょっとスパイシーになっているのだが、初めて食べた人には分からないか。

と、あっという間に3人とも食べ終わりお代わりを所望してきたのでそれに答える。

あれ?僕って主夫?

 

「あ、そういえばスープ作るの忘れてたなぁ。失敗した。」

 

ご飯を盛っているときに気付く。まだ僕は主夫にはなれないらしい。

 

「はい。どうぞー。」

 

「ありがとう。」とお礼を言ってまたみんな食べ進める。

 

 

こんな平和がずっと続けばいいのに。

しかしそんな雪茂の考えは翌朝崩れ去るのだがそんなことは雪茂が知る由はない。




閲覧ありがとうございます。
冒頭でも書いたように最近ちょっと話の内容が少し暗いです。
で、ちょっと残念なお知らせ。
これからもっと暗くなります。(ニッコリ)
最初のゆるかった雰囲気は何処へ…。

あーネタばれしたいなぁー。○○○がまさか○○○になるとは!

雪茂「やめーや。」

うp主「ごめんなさい自重します。あ、上に書いたの特に関係ないです。」


また次回も宜しくですー。


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第24話 予定変更

魔理沙「…………………。(そろそろ体が痛くなってきたんだぜ。)」

雪茂、妖夢、祢々「プリン美味しーーー。」

魔理沙「…………………。(イラッ)」

雪茂「もちろん魔理沙の分は別で作ってあるから安心してね。」

魔理沙「…………………。(雪茂お前…ホロリ)」

紫「プリンウマー。」

雪茂「……。」

魔理沙「キサマァァァァァ!!!(血涙)」




本編どぞー。



腕時計に目をやる。

修行の為に設けられた期間の終了日までまだ時間はある。

だが、それは許されないらしい。

それを示しているのは今手元にある一枚の紙だ。

先程夕ご飯を食べ終わり、お風呂に入って、茶の間でみんなと雑談をしたり、修行の話をして、もう寝ようと自分の寝室に入ったときその紙はあった。

内容を簡単に言うと「待ちきれないから明日殺りあおう。場所は人里の入り口付近。時間は太陽がほぼ真上に来たぐらい。もし受け答えなければ巫女(霊夢)を殺す。」というもの。

確かにこちらから勝手に時間を止めていたのだから相手が何もしてこないという補償は無い。

むしろ今まで黙っていたのが奇跡のようなものだ。

だがあまりにも急な出来事にその場に立ち尽くしてしまった。

明日、先程紫さんの話していた殺人犯と対決することになる。それを考えると急に心臓の鼓動が早くなる。

そういえば魔理沙にも説明しなくてはならない。…今考えると魔理沙も時間の境界を無くしておいたほうが良かったのでは?まぁ今更と言うものだ。それに魔理沙なら戦いなれているだろうし心配も要らないと言うことで今回は省いたのだろう。

…立ち尽くして考えに耽ってる場合じゃない。今ならまだみんな起きているだろう。知らせないと。

そう思い僕は先程の紙を持ち茶の間に戻った。

 

 

 

「すみません。まだ起きてますか?」

 

そう言って茶の間の襖を開ける。3人はまだ寝ていなかったようでみんな揃っていた。

と、このまま立っているのもあれなのでいつも座らせてもらっている場所に座る。

そして手に持っている紙を机に置き口を開く。

 

「この紙が僕が使わせてもらっている寝室に置かれていました。内容は”予定を早めて明日戦う”と言うものです。急ですが従わないと霊夢の身が危ういです。」

 

そう言うと妖夢ちゃんと祢々ちゃんは驚いた表情を浮かべていた。

幽々子さんは「やっぱりね…。」と呟いているところを見るとある程度このような状況になるのを予測していたのだろう。やはり幽々子さんはかなり頭が切れる人なのだろう。

 

「急なのですが明日戦ってきます。妖夢ちゃんと祢々ちゃんもいいかな?」

「もちろんです!」

「わ、私も大丈夫です。」

「ま、私も特に止める理由も無いから大丈夫よ~。」

 

みんなの同意を貰い、後は時間を戻してもらうだけ。

しかし今紫さんを呼んでも大丈夫なのだろうか?結構夜遅くなってしまっているし、もう寝てしまっている可能性もある。と心配だったので幽々子さんに聞いてみたら大丈夫だろうとの事だったので呼んでみることにする。

 

「紫さーん!」

「そんなに大きな声を上げなくても大丈夫よ。」

 

いきなり後ろから聞こえてきた声にビクッと無意識に体が反応して跳ねる。

相変わらず心臓に悪い。

後ろを見てみるといつも通りに紫さんと、中国の民族衣装のようなものを身に纏った金髪ショートヘアーの女性が紫さんの横に立っていた。

ファサとその女性の後ろで何かが動く。…尻尾?1、2、3、…9本?多くない?

妖怪ということに驚かなくなったあたり僕も成長したんだろうな。

 

「どうしたの雪茂君?そんなに藍のこと見つめちゃって。一目惚れ?」

「違いますよ!誰かなと思ってみてただけです!」

 

先程の空気はどこへやら。

いつもの調子で話しかけられてしまったのでついいつも通り突っ込んでしまう。

 

「あらぁ、藍、あなたに雪茂君は魅力を感じなかったらしいわよ?」

「そう、ですか。」

「い、いえ、その、藍さん?はすごく魅力的ですよ!とってもお綺麗ですし!」

 

あ、やべ。これ嵌められた。紫さんめっちゃにやけてるし。

ちょっと周りを確認するとやはりにやけ顔の幽々子さん。なぜかじとーと見つめてくる剣士2人組。

 

「あらー大胆ね。とまぁ冗談はこのくらいにして…って藍!呆けてないの!」

「は、はいっ!」

 

なぜ藍さんが一喝されているのだろうか。

あ、もしかして僕の所為?…い、いや元を正せば紫さんが…。

と考えているうちに紫さんが話し始めた。

 

「さっきの話は聞かせてもらったわ。時間の境界だけど明日の朝戻すわ。理由は時間の境界を無くしたときが朝だったからね。まぁ数十分の誤差だったらなんとも無いからそこらへんは安心しなさい。あと問題は…」

「たぶん僕です。」

 

そう、僕以外の3人は戦闘経験もあるし強い。心配はほぼ無いだろう。

だがその点僕はどうだ?

戦ったことがあるといっても練習やお試し程度で魔理沙と戦ったぐらいだ。ましてや元の世界で喧嘩をしていたわけでもない。

それに覚悟。紫さんは”殺しても構わない”と言った。つまりそれほど危険だということだろう。しかし僕は今までそんな危険な相手と戦ったことも会ったことすらも無い。

そして僕の力。まだ完全に能力を把握出来てないし、それに体力もほぼ伸びていない。まぁ持久力はついたと思うが。

そんな3つの要素が僕を不安にさせる。

 

「…そうね。言いにくいけどあなたはまだ弱いわ。だけど自分にもっと自信を持って良いと思うわよ。あなたは臨機応変に能力を使っている。それは普通元の世界から来た人間だったら出来ない芸当だわ。なんたって難しいもの。普段からそういうことをやっていれば別だけど、元の世界にそんな要素は無い。…それが出来るあなたは器用だわ。」

 

そう優しい顔で紫さんが僕に話しかける。

器用…それに自信を持て、か。

 

「はい。ありがとうございます!」

「お礼を言われるようなことはしてないわ。とりあえず時間の境界についてはさっき言ったとおり。これ以上は特に私からは言うことは無いけど質問とかはある?」

 

質問か…。ならさっきから気になっていることを聞こう。

と、学校みたいに手を上げる。

 

「はい。雪茂君。」

 

紫さんもわかっているのか先生みたいに僕に当ててくる。

ちょっとクスッとしながら質問の内容を言う。

 

「今回はなぜ紫さんだけでなく、藍さんも一緒だったのですか?」

「あ、完全に忘れてたわ。ただ単にこれからも会うことがある可能性があるから一応顔合わせをさせようかと思ったのよ。」

 

なるほど。つまり別にこのタイミングじゃなくても良かったと。

もしかして藍さんも結構苦労人なのでは?なんか妖夢ちゃんとかと同じ雰囲気を感じる。

お疲れ様です。

と心の中で同情の念を送る。

そんなこちらの視線に気付いたのか藍さんがこちらにニコッと微笑んだ。

そんな笑顔にちょっとどぎまぎしつつ「分かりました。」と紫さんに言う。

 

「ならついでだわ。今のうち自己紹介済ませちゃいなさい。」

「了解です。」

「分かりました。紫様。」

 

そういってこちらに藍さんが近づいてくる。僕も座ったままなのはマナー違反だろうと思い立ち上が、ろうとしたのだが、立ち上がった瞬間足の力が一気に抜けた。そのままガクンと前に崩れ落ちる。

倒れる瞬間に紫さんがまたもや先程のにやけ顔をしていたのは何でだろうか。

と倒れかかった瞬間自然と目を閉じてしまう。

床にぶつかるのを覚悟していたがポフンという柔らかい弾性のある物体に僕は顔から突っ込んだ。

おそるおそる目を開けるとそこには二2つの大きい肉まんが…って!

 

「ごごごごめんなさい!」

「い、いや、私は大丈夫だ。…結構大胆なのだな。」

「え、あの、違っ…!」

 

あらぬ誤解を受けてしまったようだ。藍さんは顔を赤らめてるし。紫さんは先から笑いを堪えてるし。後ろを見れば「うわー。」とでも言いたそうな目で3人して僕を見てるし。

 

「ゆ、雪茂君。ぶふっ…せ、せめて、ひ、人のいないところで…ぶふぁっ!」

 

もう紫さん完全に笑ってますやん。

確信犯だな。と思っているとみんなも気付いたようで紫さんをジト目で見る。

そんな目線に気付いたのか慌てて紫さんがいつもの冷静な表情を繕う。

…さっきもそうすればよかったのに。

 

「と、まぁ冗談は抜きにして、改めて式神の藍よ。」

「紫様から紹介に預かったとおり紫様の式の八雲藍だ。以後よろしく頼む。」

「僕は外来人の立花雪茂です。こちらこそ宜しくお願いします。」

 

そういって握手をする。

それを見届けてから2人はスキマの中に消えていった。

もしかしたら紫さんは僕らの緊張を解くために先程のことをしたのかもしれないな。

と思っていると不意にまたスキマが開く。そこから紫さんが上半身だけ乗り出し一枚の写真を取り出す。

 

「さっきの写真いる?」

「いりませんよ!!」

 

紫さんはどうやらそこまで考えていないらしい。

てかいつ写真撮ったんだよ。

…別にほしくなんてないし。う、嘘じゃないぞ!

って誰に言ってるんだか…。

疲れているのだろう。早く寝よう。

 

残っているみんなに「おやすみなさい。」とだけ言って自分の寝室に戻る。

明日は急に訪れた決戦の日。

勝たなくちゃ。誰も犠牲も出さずに。




閲覧ありがとうございます。
犯人の身勝手さ、サイコパス感をもっと出したいと思っている今日この頃。
身勝手さはちょっとずつ出せてきたかなと。
こう言うと私があれな人に思われるかもですが犯人組の会話書いててちょっと楽しい。
と日常会話を書いてて思っちゃいました。
安心してください。狂ってませんよ。(とにかく明るいあの人風に)
余談ですが犯人組の名前の由来はありません(キリッ)。

ジェイド「ほう?なるほどなぁ。だってよ。カロン。」
カロン「…むかつく。…死ねば?」
うp主「申し訳ございませんでしたぁぁぁあっぁぁあ!冗談です。」

ザクッ

うp主「んぎゃああああぁぁぁ」

はい。本当は由来はありましてジェイドのほうは実際にいた切り裂きジャックの犯人の名前をもじって。
カロンのほうはギリシャ語で冥界の川の渡し守から。です。



ちょっと長くなってしまいました。
また次回よろしくですー。


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第25話 The destiny which changes suddenly.

雪茂「英語はまり過ぎじゃない?」

うp主「だってかっこいいんだもの。」

雪茂「ちなみに意味は?」

うp主「………なんだっけ?」

雪茂「(#^ω^)ピキピキ」





本当は「急転する運命」です。
本編どぞー。あ、少しグロ注意です。ほんの少しなので安心してください。


~翌朝~

いつもより少し早めに目を覚ました僕は顔を洗って寝室に戻り自分の戦い方について整理していた。

僕の体力は平均的なの男子高校生ぐらいしかない。そのため自分の体力をガンガン削ってごり押して戦うというやり方ではダメだ。冷静に確実に対処をしなければならない。

観察眼。それが大切になってくる。

相手の一挙一動、それに周りの状況把握。それらを含めて広い視野で周りを見なければならない。

体力面はそういった小さい心がけで少しはましになるだろう。

ただもう一つの問題は憑依の回数が安定しないことと、モンスター、武将それぞれで効果諸々の使い勝手がいろいろ変わってくるということ。

基本的に僕は武将ばかりを憑依させている。なぜか?楽だからだ。

戦国大戦のカードは遊戯王とは違い、決まったタイミングでなくても計略が発動できる。回数制限も無い。遊戯王はそもそも1ターンなどのターンを数えるのがどのタイミングなのかがこの幻想郷(せかい)では良く分からないため、効果を発動できるタイミングを見失ってしまう可能性がある。

というか未だにレベル1のモンスターとレベル4のモンスター2体しか憑依した事が無いため不安要素が多過ぎてまだ実戦ではあまり使いたくないと言うのが本心だ。

もし遊戯王のカードを使うならばならば召喚したほうがいいだろう。

と、色々考えてみたが今回はたぶんいつも通りの憑依をして戦うやり方がいいと思う。多少は慣れているし。

それか召喚。それを場合によって使い分けないと。

戦い方のスタンスはこれでいいだろう。

次の問題がカードだ。

召喚するものと憑依するものを場面ごとに対処できるように考えておこう。

種類はその都度考えるとして。

まず召喚。

カードによるが基本的にドラゴン族のモンスターは強いものが多く、体も大きい。

主に使っていくことになるだろう。だが、森の中であればどうだろうか。

木が生えているため体の大きいドラゴンでは自由に動けない可能性がある。

そうなると必然的に戦士族か獣戦士、獣族と選択肢が狭められてくる。もしくは小型の鳥獣族か。

天使などでもいいのだろうが、やはり森の中などではそういった種類のモンスターが強いだろう。

まぁでもそこらへんは臨機応変に考えなければいけない。

遊戯王はカードの枚数がとても多い。こちらは戦況を把握して使うのがベストだろう。

次に憑依。

こちらは主に戦国大戦の武将を使っていくことになる。

戦国大戦の兵種は、

足軽、槍足軽、弓足軽、鉄砲隊、騎馬隊、軽騎馬隊、竜騎馬隊、砲兵、の8種類と意外に多い。

と兵種を上げてみたがたぶん足軽は使わないだろう。これは使いにくい。

特に特出した長所が無いのだ。強いて言うなら同じコストの違う兵種と比べるとスペック(ステータス)が少し良いぐらいだろうか。

ちなみに兵種の中でも多いのが槍足軽と騎馬隊だ。

戦国大戦の使われているデッキの多くがこの二種類で構成されていることが多い。

癖が無く使いやすい。

まぁたぶん使うのはその槍足軽、騎馬隊と鉄砲隊の三種類ぐらいだろうな。

 

とここまで考えたあたりで「おはようございます。」と襖の向こうから祢々ちゃんの声がする。

思考を一時中断し襖のほうに向かい「おはよう。」と襖を開けながら祢々ちゃんに挨拶をする。

 

「起きていたんですね。」

「うん。ちょっと早めに目が覚めちゃってね。能力について色々考えてたところ。」

「あ、もしかして邪魔しちゃいましたか?」

 

「大丈夫。もうやめるところだったから。」と言って祢々ちゃんの頭を軽く撫でる。

と、祢々ちゃんのほうを見るとこちらをみて顔を赤らめポカンとしていた。

 

「ん?どうしたの?」

「い、いえ、なんか雪茂さんらしくないなぁと。」

 

確かに僕らしくないかもしれない。

なぜだろうか。特に意味は無いのだがなんとなく撫でていた。

恋愛感情とかではなくしておかないといけない。ような気がしたのだ。

 

「まぁ気にしないでよ。なんとなくだから。」

「そ、そうですか?…ならいいですけど。」

 

嫌がるそぶりを見せないのでそのまま少し撫で続けた。

そのあとその様子を幽々子さんに見つかり言うまでも無くいじられ続けた。

 

 

 

 

 

「いよいよ、ですね。」

「うん。」

 

あのあと少し早めに昼ご飯を作りみんなで食べた。あまりこだわったことをせずに普通のメニューにした。そして昨日作っておいて忘れていたプリンを食べた。

きちんと砂糖を入れたはずなのだがなぜか甘くなかった。というより甘く感じなかった。

他の3人は「美味しい。」と言っていたので問題は無かったのだろう。

まぁ緊張している所為なのだろう。

そしてそのあとに現れた紫さんに「なんで私の分はないのぉ~。」と駄々をこねられた。プリンが無いと駄々をこねていた紫さんに簡易プリンを作って機嫌を直してもらった。まぁ紫さんが来たのはプリンを食べに来たのではなくて言うまでもなく時間の境界を戻すためだ。

プリンを食べ終わり機嫌が直った紫さんは「それじゃあ戻すわね。」と軽い調子で指を鳴らし境界を戻した。

実感は無いがきっと戻ったのだろう。

 

そして先程妖夢ちゃんが口に出したようにあと一時間ぐらいで太陽が真上に来る。

なので用意をして白玉楼から外に出る。その際に重りを外したのだが体が軽く感じる。

久しぶりの感じに感動していた。

ちなみに幽々子さんは終始いつも通りだった。僕らを余計に緊張させないようにしていたのだろう。多分。

そしてこれからは一緒に外に出た紫さんにスキマで博麗神社のほうに送ってもらう流れだ。

 

「そろそろかしらね。」

 

懐中時計を取り出し紫さんが時間を確認する。

 

「残り30分ぐらいで正午になるわ。ちょっと早めに博麗神社に行って魔理沙と会っておきましょう。」

「了解です。」

 

僕の言葉に続き二人も頷く。

そして紫さんが博麗神社へとつながるスキマを開く。

久しぶりに博麗神社に戻る。といってもまだ2日しか経っていないのだが。

過ごした日々が濃くてどうも長い期間ここで過ごした気がする。

そしてその居候生活も予定とは違い早いが今日で終わる。なんだか感慨深いものがある。

異変が解決したらまた来たいものだ。

 

「それじゃみんなスキマに入ってもらえるかしら。」

「はい。」

 

進んで自分から入っていく。後ろから「そのまま真っ直ぐ歩いていれば着くわよー。」と聞こえたのでその通りに歩く。後ろの妖夢ちゃんたちもちゃんと付いてきているようだ。

と数分もしないうちに目の前にスキマから光が差し込んできていた。

ここを潜れば博麗神社。

未だに犯人と戦うという緊張から体が震えるがここで立ち止まってはいけない。

そう決意をし、僕はそのスキマを潜った。

 

 

 

 

「お、雪茂修行お疲れ様だぜ。」

「ありがと。紫さんから聞いたんだね。」

 

久しぶりーと声を掛けようとしたが魔理沙は時間が止まっていたため僕と離れていたのは3時間ぐらいだろう。多分。

 

「おう。一週間だっけか?ま、私には一瞬なんだけどな。」

「と、それなんだけどね一週間じゃなくて2日に短縮になっちゃったんだ。犯人から手紙が届いてね。今すぐ戦いたいだそうだ。」

 

「そうだったのか。」と腕を組み何かを考える魔理沙。視線の先を追ってみると二人の剣士。

なるほど、僕だけじゃないのは説明されてないのか。

と自己解釈をし2人のことを魔理沙に説明する。犯人からきた手紙を見せたところ納得したようで祢々と握手をしていた。どうやら祢々と魔理沙はこれが初顔合わせらしい。

そこまでギクシャクもしていないようなので大丈夫だろう。

 

「さ、のんびりしてる暇は無いんだろ?人里のほうへ行こうぜ。」

「そうだね。」

「了解です。」「わ、分かりました。」

 

あまりここで力は使いたくないので僕は魔理沙の後ろへ乗せてもらった。

祢々ちゃんは飛べるらしく僕らの後に妖夢ちゃんとついてきた。

そして少しのんびり目に十数分ほど飛んでいると村のようなものが見えてきた。たぶんあれが人里なのだろう。

しかし道を誰も歩いておらず一見するとゴーストタウンかと思うような里だった。

おおよそ例の犯人の所為だろう。

外へ出れば殺される。そういう情報が村に広がったのだろう。だからみんな家の中へ避難しているのだ。

 

だが里の中には用は無い。僕達は人里の入り口に来いとの指示があった。

入り口のところに人影は無い。

なので里の中には入らず里の門の前で待つことにした。

 

「ちょっとはえぇな。随分と殊勝なこった。」

「…眠い。…面倒。………()っていい?」

 

ビクッとして声のしたほうをを振り返る。

確かに今僕らは誰もいないことを確認したはずだ。なのにいつの間にか僕らの隣にまるで俳優のような容姿の男と見た目相応の格好をした少年が立っていた。しかしびっくりしたのはそれだけが原因ではなく、この2人から発せられる異様なまでの殺意を感じたからだ。魔理沙たちも驚きバックステップを取り臨戦態勢を取った。

 

「まてまてお楽しみはこれからだろうがよ。早まんじゃねーよ。」

「…分かってる。…冗談。」

「おめーがいうと冗談に聞こえねーんだよ。っとお前ら。」

 

まるで漫才をしているかのような軽い調子で話していた二人だったが内容が内容であるために笑えない。

紫さんから聞いた話を今思い出す。たぶんこの2人が例の犯人だろう。というか間違いない。僕の勘がそう言っている。

 

「…なんでしょうか。」

「そんなに警戒すんなって。とりま俺らの拠点に行こうぜ。例の巫女ともあわせてやるよ。」

 

分かりました!とは言えない。相手の拠点。それが何を意味するのか良く分かる。

自分達のホームグラウンドに付いていってしまうのはまずい。そこで戦闘にでもなってしまえば相手の思う壺だ。

なので先程の男の発言に同意することが出来ない。

 

「だからよ、そんなに警戒するなって。何もしやしねーよ。…わかった。カロン、こいつを置いていく。どうだ?」

「…え、面倒。」

「面倒って、お前待つだけだっての。少しぐらい待てや。」

「…了解。」

 

この男は相方のカロンと呼ばれた少年を置いていくと言う。そうすればこちらが4人に相手が1人。少なくとも不利ではないだろう。そもそも4人と2人の時点でもこちらが人数が多いのだが。

…ここは大人しくしたがっていたほうが良いのだろうか。

と僕が迷っていると妖夢ちゃんが口を開いた。

 

「分かりました。その拠点とやらに連れて行ってください。」

「おぉー物分りの良い譲ちゃんじゃねーの。殺し…遊びたくなるぜ。」

 

こいつ、今「殺したくなる」とでも言おうとしたのだろうか。やはり危険だ。

しかし妖夢ちゃんと魔理沙はこのあふれ出る殺意に慣れたようで少し余裕な顔をしている。…きっと大丈夫だろう。

 

「っ…さぁ早く行きましょう。」

「おう。んじゃカロン少し待っててくれや。」

「…早めに。」

「わーってるての。じゃ付いてきてくれ。すぐそこだ。」

 

そう言うと男は森のほうへと歩き出す。それに妖夢ちゃんが先頭となり僕らも付いていく。

カロンと呼ばれた少年は入り口の前にしゃがみこみじっと空を見始めていた。

 

―3分ぐらいだろうか。男が言ったとおり歩いてすぐのところに一軒の小屋があった。外に薪が置いてあるところを見ると木こりの小屋だったのだろうか。しかし外装はボロボロで人が暮らしていくには少し厳しいものを感じる。

と前を歩いていた男がこちらのほうを向く。

 

「到着だ。まぁ連れてきたのは他でもないただ巫女さんとあわせたかっただけだ。鍵は付いてない。ほら、久しぶりに再開してきな。」

「魔理沙さん。雪茂さん。2人で行ってください。私達はこの男を見張っています。」

「おいおい。だからなにもしねーって。信用ねーな。」

 

そりゃそうだろ。と突っ込みたくなるがそれを無視して妖夢ちゃんの言うとおりに2人で中に入る。

そこには送られてきたときとはまったく違う霊夢が椅子に座っていた。ただし後ろで手を縛られているようだ。

見た目は少し傷は付いているがほぼ治りかけている。服は少し破れているが大丈夫だろう。

だが見た目に反して本人の表情が暗い。俯きっぱなしでこちらに気付かない。

 

「霊夢。…助けに来たよ。」

 

なので声を掛ける。

その声に反応し霊夢がバッとこちらに顔を向ける。こちらに気付いた途端目に涙を浮かべる。

 

「…ゆ、ぎしげ。まりざぁ…。」

 

ここまで弱々しい霊夢を見たのは初めてだったため少しびっくりする。

 

「ああああああああああぁっ!?」

 

急に外から妖夢ちゃんの叫び声が聞こえる。

何事かと思いすぐに扉を開け外を確認する。

 

「…なんだよ。これ。」

 

目の前に広がった光景はあまりにも残酷で急なものだった。

横たわる祢々ちゃん。

それだけならまだ良かったかもしれない。

しかしその祢々ちゃんからは赤い液体が止めどなくあふれ出ている。

―――首の離れた胴体から。




閲覧ありがとうございます。
急展開です。やはりこういうのは一つは無いと。(ゲス顔)
本当は殺す予定では無かったんですけどね。
どうも平和な話が多かったので物語に緩急を付けたかったんですねぇ。
え?急すぎるって?
いいじゃないですかジェットコースターみたいで。


祢々ちゃんごめんよ。(涙)
もっと使ってあげたかった。
また次回よろしくです~。


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第26話 もう一つの能力

祢々「私の出番少なくない?」

うp主「申し訳ないと思っている。」

祢々「まだ雪茂さんと×××も○○○も△△△△すらしてないんだよっ!」

うp主「止めろ!それ以上言うんじゃない!(伏字修正待ったなしだな。)」

祢々「うぅ~~~……グスッ。」

うp主「そんなあなたに朗報です。祢々さんの登場する番外編を書いてありますのでご安心を。」

祢々「それ別世界の私でしょぉ~~~!」




ほんとにごめんよ。
本編どぞ~。

12/15 13:03 追記 文章の修正を行いました。


目の前には真っ赤な血の池を作る祢々ちゃん”だったもの”。

横たわる胴体の近くにその首は転がっていた。顔の部分が下になっている為表情が分からない。

叫び声が妖夢ちゃんだけだったことから多分一瞬にして殺されたのだろう。

そしてその胴体の傍らには涙を流し両膝を付いて嗚咽する妖夢ちゃんの姿。祢々ちゃんが切られた時に浴びたと思われる血が顔の右半分を濡らしていた。

そしてその光景をみて笑っている男の姿。

その手にはナイフ。血で濡れていることからそれが凶器だと分かる。

だが常人には普通ナイフで苦しむ声を上げる暇も与えず首を落とすなど出来ないはずだ。

と、男が僕が扉を開けてその光景を見たのに気付き口を三日月の形に歪める。

 

「クヒッ…クヒヒッ…。」

 

何が、何がおかしいんだよ。

声に出そうとしても出ない。あまりの光景に絶句してしまっていた。

以前美鈴がナイフで刺されたのを見た。だが、そのときとは違う。明確な死。

それが僕を恐怖に突き落とす。

 

「よぉ雪茂君よぉ?どうした?巫女は大丈夫だったか?」

 

違う。霊夢も大切だが今はそうじゃない。

 

「ん?こいつか?」

 

僕が声を出せずに目線だけ祢々ちゃんのほうにやると、男はその視線に気付いたらしく僕に聞いてくる。

そして歪めた口をさらに歪ませ、

 

「殺したけどなにか?なんとなく殺したけどなにかあるか?」

 

ごく自然に普通に日常的に「おはよう。今日も良い朝だね。」のように気軽に言ってきた。

ただ口は不気味に歪んでいたが。

魔理沙が後ろから「どうしたんだぜ?」と言って外の様子を見ようとするがそれを静止させる。

そして魔理沙と霊夢を残して外に出ると扉を閉めた。

 

「どうした?いや、どんな気持ちだ?」

 

なぜ、僕はあの時2人を外に待たせておくことに了承してしまったのだろう。

なぜ、この拠点に来ることを了承してしまったのだろう。

そんな今更遅い後悔の念が僕の頭をグルグルと巡る。

…僕は気が付くと祢々ちゃんの死体のところに向かっていた。

男は黙ってみているだけのようだ。先程の質問に答えなかったことで逆上しなかったところを見ると結構短気ではないらしい。

そしてそんなことを思いつつ祢々ちゃんの死体の横に跪く。

 

「ごめん……僕が…ぼく……が…ああああああああぁぁっっっっ!」

 

叫んだ。涙を流しながら叫んだ。

たった数日の間だったが祢々ちゃんは僕に色々と親切にしてくれた。

修行を終え僕に「お疲れ様です。」と笑顔で手拭いを渡してくれた祢々ちゃんが頭の中に思い浮かぶ。

しかし目を真っ直ぐ前に向けてみるとどうだろうか。

そこにはもう祢々ちゃんはいない。あるのは首と胴体。

いつでも刀を抜ける体勢にしていたのにも関わらず首を切られてしまった無残な死体。

気が付くと僕はその手に握られていた祢々ちゃんの刀をいつの間にか手に取っていた。

 

「なぁ、感動的で涙を誘うような悲劇の映画のワンシーンのところ申し訳ないがそろそろいいか?」

「…なにが。」

 

自分でもびっくりするぐらい冷たい声が出た。

そして涙を拭い、男のほうに向かって立つ。

 

「なにがって早く()ろうぜ。もう一人いねぇけどな。」

 

男はそう言うとクヒヒッと不気味に笑う。先程の一件があったというのにいつの間にか僕の頭はとても冷静になっていた。感情が抜け落ちたように冷たい目で、冷たい表情で、冷たい感情で男を見る。

 

「相方…。」

「んぁ?」

「…あぁ、相方連れてこいよ。」

 

「そうだったな。ちょっと待ってろ。」と嬉しそうな表情を浮かべ人里のほうに男が向かっていたのを確認すると、妖夢ちゃんに駆け寄る。

 

「…大丈夫?」

「ね、ね?…ね…ね?ごめん、ごめん、なさい。わ、わた、私!私!!」

「落ち着け。とりあえず小屋の中に行こう。まだ男が来るまで少しは時間があるはず。」

 

取り乱して足取りもおぼつかない妖夢ちゃんを抱えて小屋へ向かう。

中にいた魔理沙に「終わったら全部話すから今は2人をお願い。」とそれだけ伝えると僕は外に出る。

なぜだろう。頭はこんなにクリアーなのに2対1という明らかに不利な状況にしてしまったんだろう。

だけどなぜか負けないビジョンしか沸いてこなかった。

と、祢々の死体を何時までもそのままにしておくのはまずいと思ったので、血で汚れることも構わず小屋の近くに移動させた。申し訳程度に首は元の場所に、手を組ませて瞼を閉ざしておいた。そのときの祢々の表情は驚きの表情をしていた。しかしそこから苦痛の表情は読み取れなかった。

そして先程祢々の手から拝借した刀を改めて見る。

あのお風呂場のとき感じたあの感覚。嬉しい。と言う感覚がまた感じられる。

そして何の気無しにその刀を鞘から抜く。

その瞬間頭に声が鳴り響く。

 

「やっとお主と話が出来るのぅ。」

 

ハッと周りを見渡すが誰もいない。

 

「すまんな驚かせて。儂は宗茂。お主の魂に眠る老いぼれの魂じゃ。」

「それがどうして今になって…?」

 

思わず疑問を声に出してしまう。

しかしあの男達、遅い。そろそろ来ても良い頃なのではないか?

と考えているとまた声が頭に響く。

 

「その刀じゃよ。その刀に儂の魂の欠片、とでも言うんじゃろうか。それが眠っていての。その欠片がお主の魂に眠る儂を呼び覚ましたのじゃよ。」

「…まぁわかりました。…でなんの用です?」

「冷たいのぅ。まぁいいじゃろう。お主に力添えをしてやろうと思ってな。」

 

力添え。魂の存在なのにそんなことが出来るのだろうか。

 

「出来るんじゃよ。あ、思ったことは儂にも伝わるから口に出さんでも良いぞ。ちなみに力添えというのは、お主が良く使っている”憑依”と言う技。あれを生き物の魂でも出来るようにしてやるぞ。」

 

そんなことが出来るようになるのか。いや、それは嬉しいけれどその対象の魂はどうなる?

 

「一時的に借りるだけじゃよ。解けば戻る。ただ借りてる間はその者は寝てしまうがな。ちなみに4人まで憑依させられるぞ。…まぁその分お主の体力の消費もひどいんじゃがの。」

 

力については分かった。

ですがなんであなたがその力添えを出来るんですか?

 

「儂も能力もちじゃったからじゃよ。その能力のおかげで西国無双とか呼ばれたんじゃ。力添えが出来る理由は分からん。」

 

なるほど。と理屈は理解できませんが分かりました。

今から僕は二つの能力を使える、と言うことか。

 

「そうじゃ。ほれ先程のやつらが来たようじゃぞ。」

 

そういわれて人里のほうへと視線を向ける。

先程の男と、その後ろに随分とのんびりとした足取りでこちらに向かっているカロンと呼ばれた少年が付いてきていた。

 

「よう。またせたな。お別れは済んだか?」

「あぁ。大丈夫だ。」

 

また男はクヒヒッと不気味に笑う。

…その笑い声は精神衛生上良くないな。どうにも腹が立ってくる。

 

「他のやつらは?」

「避難させた。俺一人でやる。」

 

あくまで強い自分を演じるため一人称を変える。

 

「…随分と舐められたもんだな。まぁいいか。カロン。お前は?」

「…OK.…No problem.」

「なんで英語なんだよ…。まぁいいか。んじゃやろうぜ。おっとちなみに俺はジェイドだ。よろしくしなくていいぜ。んでこいつはカロン。」

「お前達に名乗る名前は生憎持ち合わせてないんだ。悪いな。て、言ってもお前らはもう知ってるだろうけどな。」

 

怒りでどうにかしてしまったのだろうか。

勝手に言葉が口から漏れ出してくる。

しかしこれだけ挑発紛いの事をしても怒らないあたり、変わっている犯人だ。

 

「まぁいいか。…It's show time!」

「…ジェイドも英語。…後悔しないでね?」

「お前らは俺が叩っ切る!!」

 

そう言って刀を居合い抜きの要領で構え、僕は踏み出した。




閲覧ありがとうございます。
覚醒ですわぁ~。
といっても力を借りてるだけなので雪茂の能力ではないんですがね。
出来れば暗い雰囲気を早く脱したいところなのですが…。


まぁ次回また宜しくです~。

ちなみに投稿時間がやたら早いですが予約投稿なので早起きして書いてるわけじゃないです。…ってさすがに分かるか。


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第27話 殺人者

とことん雪茂をいじめてくスタイル。
うまいこと狂気に満ち溢れている感じを出したいと思っている今日この頃です。



本編どぞー。

雪茂「あれ?今日出番無し?」

うp主「安心しなさい。本編にはちゃんと出るから。」


「おっと、そうはさせねぇぜ。」

 

僕がジェイドに向かって走り出そうとした瞬間足元にナイフが突き刺さる。

いや、正確に言えば刺さっていた(・・)

気付かぬほどの速さでこちらに投げたのだろうか。

と、少しそのナイフに目を取られていると途端に体の自由が利かなくなる。

 

「…君の体に干渉させてもらった。…これで終わり。」

 

カロンの今にも消え入りそうな声が聞こえる。

…やはり、能力か。

能力を使わずに行こうとした俺が馬鹿だった。

しかし「干渉させてもらった」と言っていたがどんな能力なのだろうか。

もしかしたら体だけでなく空気との干渉やら俺と犯人2人を干渉させないなんてことも…。

 

………なるほど。紫さんの言ってた「干渉できない」能力っていうのはこいつの能力のことか。

ほぼ無敵じゃないか。

 

「クヒヒッ。どうだ?体の自由が利かなくなる感じは?ほんとはカロンの趣味に合わせて圧死とかでも良かったんだけどな。クヒヒヒッ。」

「…趣味、違う。…僕はただ苦しむ姿が好きなだけ。それを効率よく見られるのが圧死。…よって趣味ではない。」

「あーはいはい。んで殺していいか?」

 

相変わらずの漫才のような会話を終え俺に向かって話しかけてくる。

…万事休す、とは言えないか。まだ能力が使えればチャンスはある。そういえば先程から宗茂さんの声が聞こえないけどどうしたのだろうか。

…まぁいいか。今は目の前の事態をどうにかしよう。

何か召喚してみるか。

 

「…召喚。速攻の黒い忍者(そっこうのブラックにんじゃ)。」

 

 

効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/攻1700/守1200

自分の墓地の闇属性モンスター2体をゲームから除外する事で、

このターンのエンドフェイズまでこのカードをゲームから除外する事ができる。

この効果は相手ターンにも使用する事ができる。

この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

パァァァンという音と共に黒い忍装束に包まれた忍者が召喚される。

きっと名前からして動作は早いだろう。その早さでちょっと時間稼ぎをしてくれればいい。と考え召喚した。

こいつに撹乱してもらってなんとか打開できる策を考えなければ。

 

「…行け。黒い忍者。」

 

御意とばかりに首を縦に振ったかと思うとその場に幻影を残し相手の2m~3m後に移動したと思うとクナイをジェイドに向かって投げた。

…いや、速攻で決着付けてくれるんならありがたいんだけどさ。もっと、こう俺の考えに……っ!?

 

目の前で起こったことを理解するのには少し時間がかかった。

速攻で決着?なにを慢心しているんだ。分かっていたはずだ。相手がそんなに簡単な相手じゃないって事ぐらい。

じゃ無ければ祢々ちゃんだってあんなにあっさり殺されることは無かった。

そんなことをジェイドの後ろで光となって消えてゆく忍者を見て思う。

忍者が消える際に額にクナイが刺さっているのが見えた。

ジェイドを見ていたがこいつはクナイなんて持っていなかったはずだ。腕も動いた様子は無かった。

たぶん刃物を自由に動かせるとかそういった能力だろうか。

 

「今の誰だ?いや、”なんだ”?殺せなかったぞ。」

 

「なんだ?殺せなかった。」とジェイドは言った。…そうか、あくまで生物じゃないからそう言ったのか。

というかさっきので分かるのか。

 

「今のは俺の能力で召喚した忍者だ。」

「随分とあっけない終わりだったな。もっと楽しませてくれよ。」

「…まって、僕も()りたい。」

 

ほんとに好き勝手言ってくれる犯人だ。

いつでも殺せる状況にしているがための余裕なのだろうか。

それとも純粋に楽しんでいるのだろうか。

…どちらにせよ許せない。

 

「一つだけ聞きたい。」

「んぁ?いいぜ?何でも言ってみろ答えてやる。あ、一つと言わず何個でもいいぜ。」

「………。んじゃ3つ。まず1つ目。お前らはいつからここにいる?」

 

先程の忍者は時間稼ぎにもならなかった。なので今度は自分から時間を稼ぐ。

こいつらに話させているその間に何かカードを…。

 

「んーいつからだ?覚えてるか?カロン。」

「…知らない。…そんなの殺しに必要ない。」

「だそうだ。たぶんそんなに前じゃねーぜ。たぶん一ヶ月前かそこらだ。」

 

なるほどこいつらはそこまでここでは暮らしてないと。

まぁ俺より暮らしてる日数は多いらしい。

…にしてもなにかないか?いい能力をもったカード。

 

「わかった。んじゃ2つ目。お前らの能力を教えてもらうことは?」

 

さすがにこの質問は厳しいか。普通自分が不利になるようなことは話さないだろう。

まぁ教えても対処のしようのない能力だったら別で教えるだろうけど。

そう思っていると目の前の男は簡単に口を開いた。

 

「おう、いいぜ。俺の能力は”無機物を操る程度の能力”。その名の通り無機物だったら何でも操れる。ただ範囲に限りがあるけどな。さすがにその範囲は教えられない。ちなみにカロンは”干渉と非干渉を操る程度の能力”だ。説明は俺はできねーからカロンに任せる。」

「…面倒。はぁ………。さっきやったような相手に干渉する。相手から干渉されない。相手に干渉するものをシャットアウト。周りとの干渉を徐々に狭めていって圧死。そんなことが出来る能力。多分最強。だけどこれも範囲がある。教えられないけど強いて言うなら狭い。」

「…そこまで話してもらえるとは思わなかった。一応礼をしておく。」

 

行幸。まさか本当に教えてもらえるとは思わなかった。

ジェイドという男はたぶん普通の能力だ。しかし能力に反して使い手のほうが凶悪過ぎる。

圧倒的な殺意。そして、この男は人を殺すことに何の躊躇いも無いらしい。

そしてもう片方のカロン。こちらの能力は先程自称していたように強い。

それこそ紫さんのスキマを操る能力も使い手によって真価を発揮する操るのが難しいが強い能力だ。

その反面カロンの能力は簡単だ。例えば”あいつを世界から隔絶したい。”と考えて能力を使えば簡単に対象者は全てのものから干渉されなくなり窒息死するだろう。空気だけを干渉させて餓死と言うこともできる。

そして先程俺にやった体を干渉する。と言うことが出来るあたり何でも干渉できるのだろう。

また厄介なのが”あいつからの攻撃は喰らいたくない。”と使えばこちらの攻撃は全て効かない。…厄介だ。

…普通の人間、妖怪ならの話だが。

いいカードが思いついた。あのカードならいけるはず。

 

「んじゃ最後だ。今からお前らを倒すって言ったら信じるか?」

「クヒヒッ、そんなのやろうと思えば出来るんじゃねーの?お前も能力持ちだしな。ほらもっと強いやつ召喚してみてくれよ。」

 

随分と舐められたもんだ。

とは言っても強いカードは僕にかなりの負担がかかる。

だけど憑依なら何とかなりそうな策を思いついた。だけどまだだ。

もう少し相手に近寄ってもらわないと。

 

「なるほどな。だけど残念だ。俺はそこまで強いカードは出せない。」

「ふーん。んじゃもしかしてお前自身が戦ったほうが強いのか?」

「そうかもしれないな。」

 

嘘だ。遊戯王のモンスターはたとえレベル3でもモンスターによっては強いものもいる。

だけどあえて自分のほうがモンスターより強いと言っておく。

 

「だったらお前とやったほうが楽しいじゃねーか。おいカロン。」

「…はぁ。…僕にも楽しみ分けてよ。」

「次はお前にやるって。それにまだ中に3人いるだろ?」

 

こいつら…っ!もう俺のことなんてほとんど眼中に無いじゃないか。

っと少し冷静になれ。

たぶんこの俺の体の自由は解かれるはず。だから今のうちに。

 

「発動。二天一流・虎振。」

 

と小さな声で呟く。憑依ではなく、計略の発動。自身の武将による強化が無いため体への負担がほとんど無い。

ちなみにこの計略はSR宮本武蔵の計略。自身の武力と移動速度を上げ、チャージする(力を溜める)ことで一度だけとても大きいダメージを相手に与えることが出来、一定時間経つとダメージの与えられる剣撃(相手にダメージ与える攻撃)を使うことが出来る。

なぜそんなものを今使ったのか?

理由は二つ。

一つはこの計略はチャージを始めてしまうと自身が動けなくなってしまう。その為、相手に自由を取られ動けなくなっている状態でチャージを始めて、相手がこの拘束を解除した途端に攻撃をするため。安直だが簡単でいい。

もう一つはこのチャージは意外と時間がかかるために早めに使っておかないと相手に避けられるか反撃を喰らってしまうためだ。

とそんなことを考えている俺のことは梅雨知らず、

 

「…解除。」

 

とカロンが言った瞬間、体が少し楽になる。

だが体は硬直したままだ。

ちなみにチャージは3段階有り、現在2段階目。もう少しだ。

 

「お?どうしたよ。さっきの言葉はどうした?恐怖で動けなくなったのか?」

「ち、ちが…。」

 

チャンス。ジェイドが俺に声を描けながら近寄ってくる。これは怯えた振りをするしかない。そのまま俺に近づいて来い。…だけどこれは賭けだ。もし相手がナイフを投げてきたらうまくかわせないだろう。

タイミングが大事だ。

そう考えつつ足を振るわせるような演技をする。

 

「足が震えてるじゃねーか。…そんなにこえーか。なら………今すぐ俺の手で楽にしてやるよ。」

 

来た!

なにも警戒せずに歩いてきたジェイドを完全に攻撃の範囲に捉えた。

いける!そんな確信めいた考えを頭に浮かべつつ。

未だに震える演技をしながら弱々しく刀を居合いの構えに持って行く。

 

…今だ!

 

「喰らえぇっ!!!」

 

ザクッという音と共にパタタッという音がして液体が地面に滴る。

液体の正体は言うまでも無く血液。

 

「があああああああああああああぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!??」

「はっそんなこったろうと思ったぜ。あぶねぇあぶねぇ。」

「な、んで…?」

 

叫び声が聞こえる。

だがジェイドの声ではない男の声だ。

切った。確かに僕は切った。

だけど僕が切ったのは違う男だった。

目の前には丁度上半身と下半身の間を僕に切られて地面にドサリと崩れ落ちる男。

最大チャージの斬撃を喰らってその体は二等分されている。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁっっっ!!」

 

断末魔を上げながら首と腕は忙しなく動き、目もグルグルと回り焦点は合っていない。その目からは涙を流し、鼻と口からでた液体で顔はぐしゃぐしゃになっていた。

痛みによる苦しみ。自分の命がここで終わる絶望。そんな感情が周りから見ていて痛いほど分かる。

だが、なぜ?なんで?この人間はいきなり僕の前に現れた?

頭の中で自分の一人称が元に戻っていることを気にせず考える。

 

「おい。」

「………。」

 

ジェイドに話しかけられるが僕は言葉を口から出せない。いや、今の状況に思考がついていかず言葉が出ないのだ。

 

「まぁいいか。聞こえてるだろうから話す。お前が今斬ったのは里の人間だ。ちなみにカロンの能力でお前との干渉を遮断していた。だからお前には見えていなかった。それに気付かずお前は能力を使って斬る前に能力を解いたってわけだ。あとお前演技下手糞すぎるぜ。」

「………う、そだ。…き、きっと、それもお前らの能力か何かで僕に幻覚を、み、見せてるんだろ?そ、そうなんだろ?」

 

分かりきっているが他の希望にすがるしか今は無かった。

だが男はそんなことを気にも留めず口を再び開く。

歪に三日月のように口を歪めながら。

 

「Welcome. To this.お前も晴れて殺人者だ。」

「……僕の獲物が……。」

「……だ。う……だ。………………嘘だウソだうソダ嘘だあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!」

 

僕は悲鳴にも似た叫び声を上げた。




閲覧ありがとうございます。
いやー書いてるとき悦に入ってました。
あ、やめ、そんな目で見ないでぇぇぇぇ。
ち、違いますよ。途中で楽しくなっちゃってとかそんなの無いですから!
振りじゃないよ?

とまぁ雪茂君初殺人でございました。
ホントはシナリオ考えてるときは違ったのですが少しばかり予定変更して雪茂君をさらに苦しめるルートへと変更しました。
さて雪茂君は今後どうなるのでしょうか?

また次回宜しくですー。

※私自身は頭は正常なので上の茶番は本気にしないでくださいね。


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第28話 必要なもの

雪茂「あれ、僕って新しい能力貰って強くなったんじゃ?」

うp主「誰も新しい能力を与えたからって強くなるとは言ってないぞ。」

雪茂「・・・。」

うp主「ま、いつか役に立つって。」

雪茂「あぁ、うん。」



いつか(いつとは言っていない。)
本編どぞー。

UA2500超えました!ありがとうございます!


人を一人殺した。

能力でその存在が気付けなかった所為だといえばそれまでだろう。だがそれでも僕は人を一人殺した。

今自分の目の前に転がっている死体にも家族がいたかもしれない。家族の稼ぎ頭だったかもしれない。そんな人の命を僕は奪ってしまった。

 

「うっ…。」

 

唐突に吐き気を催す。刀から手を離し、両膝を付いて必死に吐き気を堪える。

死体からとめどなく流れる血が僕の手に触れる。ヌチャッとした粘性の液体が僕に不快感を与えてくる。男達がまだ何か言っているが僕の耳には届いてこない。ただ、自分の行った、偶発的とはいえ犯した殺人にとても傷心していた。少し冷静になろうと男達のほうに思考を向ける。

 

「なぁ、おいってば。おい!…おい、どうするよ。壊れたかもしれねーぞ。」

「…知らない。壊れたならそれまで。…次のを用意すれば良い。…こいつもたった一人死んだだけでこうなっちゃった。」

「…はぁ、興醒めだ。完全にやる気なくなった。帰んぞ。」

 

そう言うやり取りが聞こえたと思うと男達の気配がどんどん遠ざかっていった。その間僕は終始下を向いていた。前を向くといやでも自分の切った死体が見えてしまうから。

そして男達が完全に離れて気配も感じなくなったところで僕は泣いた。誰とも分からない、面識の無い死体の前で泣いた。なぜ泣いたのかは自分でも分からない。

演技をしていたのを読まれて計略をかわされたことだろうか。犯人を逃したことだろうか。それとも人を切ってしまったことか。なにが原因か自分にも分からない。

ただ目からは涙がとめどなく溢れて両の頬を伝い、地面に落ちた。

ガチャッと小屋の扉が開く音がする。犯人の気配が消えたのを感じ誰かが確認の為にあけたのだろう。

 

「…あのー、大丈…夫……?―――え?……ゆ、雪茂さん!」

 

どうやら妖夢ちゃんだったらしい。先程まで慎重に開けていた扉を勢い良く開けこちらに駆け寄ってくる。トンと左腕に軽い衝撃がくる。そちらに目をやると妖夢ちゃんが左腕ごと僕のことを抱きしめていた。悲しそうな顔で。

 

「…犯人は、」

「…はい。」

「犯人は逃げたよ。ごめん。祢々ちゃんの仇討てなかった。」

 

そう、祢々ちゃんを殺したあいつらを僕は倒そうとしていたはずだった。それこそ殺す気で挑んでいた。はずなのに、

 

「それに僕は人を一人殺してしまった。」

「…この死体は雪茂さんが…。」

「…あぁ。」

 

僕はそれ以上何も言わなかった。妖夢ちゃんも僕の言葉に耳を傾け返事をするだけでそれ以上何も言わなかった。同情しているのだろうか。それとも人を一人殺した殺人者として僕を見下げているのだろうか。しかし妖夢ちゃんの表情からはそういった感情は受けて取れなかった。

 

「大丈夫です。」

「…何が?」

「こう言っては雪茂さんを少し傷つけてしまうかもしれませんが、確かに祢々は守れなかったですし、里の方でしょうか。その方の命を奪ってしまいました。ですが今回犯人を逃がし人を一人命を奪ってしまったのは雪茂さんが弱かったからです。」

 

ズキンと心が痛む。そうだ。妖夢ちゃんの言うとおりだ。何がチートのような能力だ。それを使いこなす人間が弱ければ駄目じゃないか。それにさっき魂に取り憑いている宗茂さんから与えられた能力を混乱により使うのを忘れていた。完全に僕が弱い所為だ。体も心も。

 

「…だからあなたは鍛えなければいけません。今後こういったことのないように。過ちを繰り返さないために。」

「…うん。」

 

僕はただ弱々しく返事をすることしか出来なかった。そんな僕達を悲しむように空から雨が降ってくる。豪雨と言うまでではないが強い雨。僕を、妖夢ちゃんを濡らし、体についた返り血を流していく。ただ服に付いた血は完全には流れずじんわりと服に広がっていくだけだった。

 

「雪茂さん。とりあえずあなたは今休まなければ駄目です。」

「そうね。そうしたほうがいいわ。」

 

先程までいなかったのに急に妖夢ちゃんの後ろから声が掛けられる。その声に妖夢ちゃんはビクッとして僕から離れる。そして少し間を置いて声の人物は気にせずこちらに話しかけてくる。

 

「雪茂君。また白玉楼に行きなさい。今のあなたにはそっちの方がいいわ。」

 

そう言ってその声の人物は指を鳴らす。すると僕の右隣に空間の裂け目が現れる。…あぁ紫さんだったのか。ならばこのスキマはおそらく白玉楼に繋がっているのだろう。しかし、

 

「…行けません。僕は幽々子さんに顔向け出来ません。」

 

僕は断った。

祢々ちゃんを守れなかった。祢々ちゃんは白玉楼の居候。たぶん妖夢ちゃんとは友達のような関係で幽々子さんとは主従のような関係だったのだろう。だがその祢々ちゃんはもういない。

 

「僕は祢々ちゃんを守れなかった。犯人も逃した。きっと幽々子さんはそんな僕を蔑むでしょう。せめて謝罪はしたいです。ですが僕には白玉楼で過ごす権利は無いです。」

「そんなことっ!」

「ちょっとまって妖夢。」

 

妖夢ちゃんが僕の言葉に異論を唱えようとしたがそれを紫さんが手で制止させる。何かを言いたそうにしているが紫さんは気にせず口を開く。

 

「雪茂君。私はあなた達が犯人と対峙している間白玉楼にいたわ。幽々子と話をしながらあなた達を待っていたのよ。そんな時ね幽々子がこう言ったのよ。「これは勘だけどたぶん祢々は近いうちに死んでしまうわ。あっけなくね。でも私は悲しまない。なんでかわかる?」と。雪茂君は幽々子がこの後なんて言ったかわかる?」

「…わかりません。」

「まぁ普通分からないわよね。なぜ?と幽々子に尋ねると随分あっさりとした口調でこう言ったわ。「死んでも祢々という魂まで完全に消えることは無いわ。ならばその魂を何かに定着させてその中で生かせればいい。」そういったのよ。」

 

魂を…定着させる。

そういえば宗茂さんは僕の魂に取り憑いてるといってたっけ。そのような感じだろうか。

今の紫さんの説明で少し気が楽になった。幽々子さんは悲しんでいない。祢々ちゃんの死を死ぬ前からもう受け入れている。ならば僕もここで引きずっているわけにはいかない。

 

「…あり、がとう、ございます。」

「ほら、いつまでも泣いてちゃだめよ。涙を流した分だけ強くなれるというけれど流し過ぎると心が涙に飲まれてしまうわ。だから今は前を向いて今自分がすべきことを考えなさい。…ここの処理と霊夢と魔理沙は私に任せて妖夢と行きなさい。」

 

いつの間にか流れていた涙を服の袖で拭い少し枯れた声で「はい。」と答える。妖夢ちゃんも心配そうな顔から少し安堵した顔で僕の元へと歩いてきた。そして両膝を付き座っている僕に手を差し伸べてくる。

 

「…行きましょう。」

「…うん。ありがとう。」

 

その手を取り僕は立ち上がる。いつの間にか雨は止み、体と服に付着した血液はほとんど流れていた。

 

「少しはいい顔になったわね。最後に一つアドバイスよ。」

「…なんでしょうか。」

 

アドバイスか。能力に関することだろうか。戦い方に関するもの、修行方法。色々考えてみる。紫さんだったらどれでもありえそうだ。

 

「あなたはもっと人を頼りなさい。あと信頼できる人を一人作りなさい。…ってこれじゃ二つね。まぁいいわ。アドバイスはそれだけ。それじゃ行きなさい。」

「はい。」

 

人を頼る、か。確かに先程の戦いは最終的に僕が全て背負ってしまっていた。その背負ったものを半分に出来ていたら今回のような結果にならなかったのかもしれない。だが、僕はそれをしなかった。いや、出来なかった。まだこちらに来て日は浅い。そこまで親しい人もいない。紫さんはそれを見越していたらしい。たぶんそのために信頼できる人を作れと言ったのだろう。

紫さんから与えられたアドバイスについて考えていると不意に手を引かれる。

 

「さぁ帰りましょう。私()の家に。」

「…うん!」

 

その様子を見て紫さんは顔に笑みを浮かべていた。紫さんに一礼をしてスキマを妖夢ちゃんと潜る。

紫さん。もしかしたら僕には信頼できる人がもう出来たかもしれません。




閲覧ありがとうございます。
と言うわけで一旦戦いは終了です。
そもそも戦いと言っていいものだったのかは分かりませんがね。
そういえば章分けとかしてみようかなとか考えてみたり。
気が向いたらしますねー。

また次回も宜しくですー。

てか、最近カード要素少ないなー。もう別の話になってる気がする、のは気のせいですよね?きっと気のせいです。


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第29話 新たな覚悟

新年明けましておめでとうございます。
また今年もがんばって更新していこうと思います。
ほんとは元旦に投稿したかったんですがね…。
久しぶりに書いたらなんだか違和感が…。
もしかしたら文章に変なところとかあるかもしれません。
そのときはコメントしてもらえるとありがたいです。

とまぁ今回は茶番なしで。
本編どぞー。


 スキマを通って白玉楼へと到着する。その際ずっと妖夢ちゃんに手を引かれていた。妖夢ちゃんに到着してからその事を言うと真っ赤になってあたふたしていた。と、そこまでは先程までの陰鬱とした空気は薄くなっていた。少しはいつもの調子を取り戻せたが、幽々子さんに対面してからまた先程の空気が戻ってしまった。さすがに先程の出来事を思い出してしまうとどうも暗くなってしまう。

 そして幽々子さんに先程あったことを伝えた。僕の話を聞いて、幽々子さんは涙こそ流さなかったが悲しそうな表情をしていた。きっと祢々ちゃんは幽々子さんにとっては家族も同然だったのだろう。先程の紫さんの話ではもう少し平然としているものだと思っていたがそうでもないらしい。

 

「説明ありがとう。雪茂君。…祢々のことは気にしないでいいわ」

「でも…」

 

 気にするな、と言うほうが無理である。祢々ちゃんはさっきまで一緒に修行をしたりご飯を共にした仲なのだ。家族、とまでは行かないが、僕もそれほどに仲良くなれたつもりだ。そんな人が死んでしまったのだ。そんなことを思い出し、さっき紫さんに慰めてもらったはずなのにまた目が潤んできてしまう。そして耐え切れずに頬を涙が一筋伝う。それに気付きすぐに手で拭う。

 

「…あなたは人の命を思い泣ける。とても優しい心を持っているのね。…気にするなと言ったのはあくまでも「いつまでも祢々の死に囚われるな」と言っているのよ」

 

 幽々子さんの表情からは先程の悲しい顔はもう見て取れなかった。代わりに僕を全てを包み込んでくれるような優しい笑みを浮かべていた。

 

「だからあなたは祢々の分まで精一杯生きていけばいいのよ」

 

 それを聞いて僕はまた涙してしまう。幽々子さんは優しい。きっと自分も悲しいだろうにそれを表に過剰に出すことはなく、僕のことを考えてくれている。本当は泣きたいのかもしれない。しかし、ここで泣いてしまうと僕達に不安を与えてしまう。だから今は出来るだけ哀の感情は外には出していないのかもしれない。

 そんなことを考えていると顔に笑みを浮かべながら幽々子さんが口を開く。…笑みと言うのは間違いかも知れない。ちょっと頬がヒクヒクしている。……どうしてだ?

 

「暗い話のあとで言うのはちょっとあれかもしれないけれど、祢々を幽霊としてこの白玉楼に住まわせることが出来るわ。まぁ死んでることに変わりは無いのだけれどね」

「…は?」

 

 えっと、今なんていった?幽霊として白玉楼に住まわすことが出来る?

 

「なんで先に言わないんですか!?」

「いやぁ雪茂君の真剣な表情を見るためよ~。先に、”幽霊に出来る”なんて言ったら緊張感の欠片もなくてそんな真剣な表情しないでしょ?」

 

 幽々子さんはくすくすと笑いながら「雪茂君の泣き顔いいわね~」なんて言っている。僕の横で真剣な面持ちで僕らのやり取りを見ていた妖夢ちゃんも、今の一言で力が抜けてしまったようだ。きちんと正座をして座っていたのだが少し崩れている。

 

「…まぁこの際そんなことはどうでもいいです。つまり祢々ちゃんは幽霊ではあるけどここにいられるってことですね?」

「そうよ~」

 

 先程までの僕の涙を返してほしい。いや、まぁ人が一人死んでるのだから涙は流して当たり前な気もするけど。まさか幽霊になって住むことが出来るようになるなんて思いもしないし。

 …やっぱり幻想郷はすごい。いろんな意味で。

 

「というかもうそこにいるわよ」

「へ?」

 

 幽々子さんが僕の後ろのほうへと指を指しながらそう言う。

 少し間抜けな声を上げながら妖夢ちゃんと2人で幽々子さんの指差したほうへと顔を向ける。そこにはいつも見ていた姿ととまったく変わらない祢々ちゃんがいた。

 しかしさっきから周りをキョロキョロしたり首を手で触っていたりと少し落ち着きが無い。なので話しかけてみることにする。

 

「祢々ちゃん…だよね?」

「は、はい。そうです。祢々です。えっと…私首切られましたよね?何でここに?」

 

 現状を把握できてない祢々ちゃんに現在の状態になった経緯を全て説明する。説明が終わった後、祢々ちゃんは自分が幽霊になったということに少し違和感を感じていたようだったが「きっと過ごしていれば少しずつ慣れていくと思います」と言っていたので大丈夫だろう。

 そして説明が終わったのを見計らったのか幽々子さんが口を開く。

 

「雪茂君」

「はい。なんでしょうか?」

「…ちょっとこれから厳しいことを言うわ。…聞く勇気はあるかしら?」

「…はい」

 

 いつもに増して真剣な表情と声色で話す幽々子さん。思わず言葉に詰まってしまったが返事をする。そして僕の返事を聞いたかと思うと、幽々子さんが祢々ちゃんと妖夢ちゃんの2人を一旦部屋の外へ行くように告げた。その言葉を聞いてすぐさま2人は退出した。足音が遠ざかっていくのが聞こえたのできっと自室か違う部屋へと向かったのだろう。それを確認して幽々子さんが改めて口を開く。

 

「話すことは三つ。一つ目、あなたは弱い。それは体のことでもあるし、技術的な部分。そして精神的にも言えるわ。戦闘に関して弱いのは、まぁ当たり前ね。あなたは外の世界から来た外来人だし、戦闘経験があるほうが稀だわ。そこに関しては経験で何とかなるわね。…でも精神面が脆すぎるわね。精神は鍛えようが無いけど覚悟一つで結構変わるわ。あなたは、あなたには覚悟と言うものがあるかしら?」

「覚悟…ですか…」

 

 覚悟か。そういえば明確な覚悟なんて考えたこと無かったな。犯人達と戦ったときは祢々ちゃんを殺され頭に血が上っていて覚悟なんて頭に全然無かった。それに元の世界でも考えたこと無かった。

 …そうか。…僕は覚悟を決めていなかったんだ。

 

「その様子だと無いようね」

「………」

 

 僕は頷くことしか出来なかった。再び発せられた幽々子さんの声が思っていた以上に冷たかったからだ。先程の言葉にため息でもオプションとして追加されていたら今にも心がポッキリ折れそうな勢いだ。

 しかしそれでも幽々子さんを見据え、次の言葉を待つ。

 

「…あなたは覚悟を決めなさい。それもとびっきりの覚悟を。そうすれば精神的にもっと強くなれるわ」

「僕の覚悟は…」

 

 誰よりも強くなる?もう負けない?今回のようなことを繰り返させない?

 頭の中で色々な考えが渦巻く。しかしいまいちどれもしっくり来ない。そんな僕の様子を見かねてか幽々子さんが僕に声を掛ける。

 

「…普通は自分で決めるものなんだけれど、もし決まらないようなら私が……」

「いえ大丈夫です。決まりました」

 

 少し失礼だと思ったが幽々子さんの言葉を切る。そして少し言うべきか悩んだが今決めた僕の覚悟を口に出す。

 

「全て守ります。全て切り伏せます。全て許します」

 

 自分で言っておいてあまりにも滅茶苦茶だ。全て守ると言っているのに切り伏せる。切り伏せると言っているのに許す。きっと僕以外は理解は出来ないだろう。…まぁ少し難しく言っているだけで実際は、守るべき存在は守り、切るべき存在は切り、許すべき存在は許すと言うものだ。だが、その言葉では少し弱い。だから僕は”全て”と言ったんだ。それほどの規模じゃないと僕には足りないと思ったからだ。限界はあるだろうけど出来るだけその言葉を守ろうと思う。

 

「………」

「…幽々子さん?」

 

 と、僕の言葉を聞いて黙っている幽々子さんに声を掛ける。もしかして怒らせてしまったのだろうか。あまりにも無責任だ。と怒られるかもしれない。…もしかしたら呆れているのかもしれない。そんな想像が頭の中を過ぎる。しかし返ってきた言葉はそんな考えを覆すものだった。

 

「いいわ、いいわね!いい表情をするようになったじゃない。そのぐらいの覚悟が無いと駄目よ」

「…はい!」

 

 先程の少し冷たかった幽々子さんの言葉ではなく、いつもの明るい口調で言葉が返ってきた。そして僕の覚悟をとやかく言わずに、むしろ肯定的な返事が返ってきたので少し安堵した。

 

「とまぁこれでやっと一つ目ね。二つ目なんだけれど、さっき口に出しちゃったのよね。それで二つ目、あなたは戦闘経験が無さ過ぎるわ。さっきも言ったけどこれは仕方がないわ」

「はい」

「だけどこのままではきっとその経験不足が大きな弊害を及ぼす危険があるわ。先程の覚悟で守る、切り伏せる、というのはこの経験があってこそ達成できるものだわ。しかしあなたにはそれが無い。単刀直入に言うとあなたにはもっと戦闘、こちらで言う弾幕ごっこをもっと経験するべきね。」

 

 僕は頷きながら幽々子さんの言葉に耳を傾ける。確かに幽々子さんの言うとおりだ。弾幕ごっこをやれば技術も経験も上がるだろう。

 

「最後に…能力の事についてだけれど、これはあなたの中にいる人に聞いたほうが早いかしら?」

「…なんじゃ分かっておったのか」

 

 いきなり声が僕の隣から聞こえてくる。そちらを見ると高齢の男性が座っていた。前に話した宗茂さんだろうか。見た目は…悪く言って落ち武者、良く言って武士の休日と言ったところだろうか。髪の毛は結っておらず後ろに流しており、着物は白い薄手のもの。

 

「え、あなたが宗茂さん?」

「おう。そうじゃ。お初にお目にかかる。主殿よ」

 

 えー…こんなおじさんに主殿って呼ばれるとは思わなかった…。なんか…こそばゆい。てか前に話したときそんな風に呼んでなかったような…。それに外出れるのか。紫さん前に「僕の魂と一緒になっている」とか言ってなかったっけ。まぁいいか。細かいことは気にしないでおこう。…細かくないか。

 

 

 

そして次の幽々子さんの一言でまた僕は驚くことになる。




閲覧ありがとうございます。
なんだかんだで10日以上経ってるんですね…。
もっと更新ペースを上げなければ(使命感

改めまして今年も宜しくお願いします!


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第30話 Arcana

一応自分の思い描いていた話の流れのはずだけど展開が急すぎるなぁと思いつつ書いてました。
短くまとめようとしすぎた結果ですね。今後注意したいです。(っていうか加筆修正したい!)

本編どぞー。今回短めです。
UA3000超えました!ありがとうございます!


「あなたの今使っている能力は”本来の能力”ではないわ」

「え…?でもパチュリーさんに見てもらったときは…」

 

 そう、パチュリーさんに魔法で見てもらったときに今使っている能力が判明したのだ。しかし、幽々子さんはそれが本来の能力ではないと言う。もしそうだったとしても…なぜ幽々子さんがそれを知っている?

 

「なぜそんな事を知っている?っていうような顔をしてるわね」

「…やっぱり分かるんですね」

 

 ええ、と幽々子さんが短く返事をする。僕は顔に出やすいタイプなのだろうか。…そういえばババ抜きとか弱かったなぁ。ふと元の世界のことを思い出していると「続きいいかしら」と幽々子さんが僕に言う。それに頷くと幽々子さんは 僕の能力のことについて喋り始めた。

 

「まず、なぜ雪茂君の能力を知っていたか。それは雪茂君の魂を見ればすぐ分かるわ。それに雪茂君に記憶は無いけれどあなたは転生した人物なの。で、その元の人間が能力を持っていたってわけなのよ。まぁ転生云々って言うのは今はまったく関係ないわね。珍しいことじゃないし。今回は偶々能力が引き継がれたってだけね。次にあなたの本当の能力は、「アルカナを使用する程度の能力」よ」

「アルカナ…」

 

 アルカナ?英語なのだろうか。能力の内容が分からない。

 

「そんなに不安そうな顔しないの。能力については後で教えるわ。今はなぜ元の能力が変化していたかね」

「…はい」

 

 そうだ。何で僕の能力は「カードの力を操る程度の能力」に変わっていたのだろうか。…そういえば何で宗茂さん呼んだの?隣ですごい暇そうにしてるんだけど。鬚めっちゃいじっているし。ていうか今更だけど顎鬚長っ。サンタとまでは行かないけどそのぐらいはあるぞ。っと今は幽々子さんの話に集中しよう。

 別のほうへと意識が行っていた僕の意識を幽々子さんに向ける。それが分かったかのように幽々子さんは喋りだす。

 

「で、なんで変化をしたかと言うとあなたにはそこの落ち武s…じゃ無くて、その人が取り憑いていたためね。」

 

 そう言って幽々子さんは宗茂さんのほうを指差す。っていうか今この人落ち武者って言おうとしてたよ。宗茂さんそれに気付いてなかったみたいだけど。

 

「本来ならこちらの世界に来てタロットのほうの能力が開花するはずだったものが、その人の能力がなぜか混ざってしまってカードの力を操る程度の能力に変わったのよ」

「なるほど。でもそのおかげで今まで戦えてきましたよ?」

「でも中途半端な能力は欠点がどこかしらにあるわ。あなたの場合は燃費ね」

「燃費…」

 

 そうだった。僕の能力は体力をがっつり持って行ってしまう。最近は慣れてきたがそれでも大型のものは使えそうに無い。というか使いたくない。疲れるから。…ん?欠点ってことは本来の能力はここまで体力を使わないのか?

 

「本来の能力ならそこまで体力を使わないわ。だから長時間の戦闘も出来るし、前より戦術の幅が広がると思って良いわね」

 

 それは素晴らしいことだ。今までの能力の使い方だとどうしても一発勝負のような感じになってしまう。…ん?そういえば、

 

「すいません。質問良いですか?」

「ええ、いいわよ」

「その本来の能力と言うのはどうすれば使えるようになるんですか?」

「それはすぐに分かるわ」

「?」

 

 すぐに分かるとはどういうことなのだろうか。

 

―――2分後

 

「すいません。まだでしょうか?」

「もう少しね」

 

―――5分後

 

「もう5分経ちましたけど?」

「…まだ、みたいね」

 

 と言って幽々子さんは宗茂さんのほうへと視線を向ける。ん?宗茂さんなんか薄くなってない?あ、いや髪の毛じゃなくて、なんというか存在というか影というか。と目を瞑っていた宗茂さんが僕らの視線に気付いたのか目を開けこちらに視線を向ける。

 

「気付いたのか。主殿」

「…えーっと宗茂さんの気配が薄くなってることですか?」

 

 宗茂さんは縦に首を振る。宗茂さんから話を聞いたのだがどうやら魂の限界が来ている。とのことらしい。つまり成仏だ。それを聞いてなんとなく分かった。多分宗茂さんが成仏することにより能力が変わるのだろう。…そういえば宗茂さんの能力使わなかったな。ってそういえば幽々子さんさっき「中にいる人に聞いたほうが早い」って言ってたけど結局宗茂さん何も説明してないな。

 そんな事を考えているといよいよ宗茂さんの体が消え始める。

 

「短い間じゃったが実に有意義な時間じゃったわい。礼を言うぞ主殿」

「礼を言われるようなことはしてないけどね」

「…そうじゃ。儂の魂の欠片が篭っている刀。あれを主殿が使うと良い」

 

 そう言って部屋の片隅に置かれている祢々ちゃんの刀を指差す。使うといい、というがあれは元々祢々ちゃんの刀だ。今は死んでしまっていないけど、幽霊になってしまえばまたここにいることが出来る。その時に刀を渡そうと思っていたのだ。持ち主だからね。

 

「あとで考えておきます」

「っとそろそろ本格的にお別れのようじゃ」

 

 座っている宗茂さんの足はすでに消えてなくなり残り胸より上の部分だけだ。話したことも少なく短い間だったがなんだかもの悲しくなる。「そう悲しい顔をするでない」と宗茂さんが言う。それに無言で頷き消えていく宗茂さんを見る。それから間もなくして、いよいよ頭だけとなってしまった。

 

「最後に一つ。主殿は強くなれる。決して今の心を忘れなければ。では、いつの日かまたあおう。我が子孫、立花雪茂よ」

 

 そういうと細かい光の粒になって宗茂さんは消えていった。

 

「最後の言葉。今の心を忘れない」

 

 宗茂さんの言葉を口にする。そして幽々子さんがこちらに喋りかけてくる。

 

「たぶんもう予測は出来ているかもしれないけれど雪茂君の魂に取り憑いていたのが成仏したことであなたの能力は元に戻っているはずよ。それじゃあ最後に能力について教えるわね」

「はい。お願いします」

 

 幽々子さんの説明は結構長かった。と言うより初めての言葉ばかりで質問をしていた所為かもしれないが。僕の能力を簡単にまとめると、

 

 ・アルカナとはタロットカードの「大アルカナ」と「小アルカナ」のことらしい。ちなみにアルカナの意味は「秘密」とかそう言うものらしい

 ・能力は大アルカナと小アルカナの二つを組み合わせて使う。その二枚の種類により効果が変わる

 ・能力には時間制限がある

 ・能力が強いとその分比例して使用できる時間が短くなる。同じように使用する霊力の量も比例する

 ・この能力の為か分からないが僕はスペルカードが使用できない

 

こんな感じだろうか。

 

「それじゃあ雪茂君。ためしに能力発動してみて…と言いたいところなんだけど多分タロットカードなんて分からないわよね」

「はい。見たことぐらいしかないです」

「だったらパチュリーに言ってタロットの本を借りてみることから雪茂君は始めたほうが良いわね」

「わかりました」

 

そしてまた僕の修行が始まったのだった。




閲覧ありがとうございます。
と言うわけで本当の雪茂くんの能力の話でした。
この小説のタイトルの「絵札」は本来タロットのことだったんですが、プロットを書いてるうちに「あ、戦国の武将とか出したい」とか思って現在の状態になっております。
話の流れが急なのは無理やり話を元の離しに戻している為です。&前書きの通り短くしようとした為。
文章がおかしくなっていたらすみません。

また次回も宜しくです~。


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第31話 能力を知る為に

雪茂「なんか僕の能力変わりすぎじゃない?」

うp主「すまぬ」

紫「どうせやりたいことぜんぶやろうとしてよく考えずにやった結果なんでしょ」

うp主「………はい」

雪茂「皆さんも執筆は計画的に」

うp主、紫「なに上手いこと言った気になってんだよ」

雪茂「なってないよ!?」



久しぶりの茶番

本編どぞ~


 まず僕が始めたのはアルカナ、つまりタロットについて調べることだった。そのために前に訪れた紅魔館へと向かった。硬く閉ざされた門の傍らであいかわらず美鈴さんが居眠りをしていた。中に入っても良いか聞く為にとりあえず肩を揺すって起こそうと試みる。その瞬間、美鈴さんの頭がカクンカクンと前後すると共に美鈴さんの大きな二つのメロンが上下に大きく揺れる。それを見た瞬間鼻の奥のほうにツンとした違和感を感じる。「あ、やばい」と本能的に察知しすぐさま手を引っ込める。と、結構激し目に揺らしたのにも関わらず美鈴さんは起きない。どうしようかと考えているとふといいことを思いつく。すぐさま美鈴さんに近寄り美鈴さんの顔の横に自分の顔を持って行く。何も知らない人が見たら抱き合っているように見えるかもしれないが、周りに気配は感じない。なので先程思いついたことを実行する。

 

「美鈴さん起きてください」

 

 一応もう一度起きるように話しかけてみる。が、反応なし。なので今度は違う言葉をかける

 

「咲夜さんが仁王立ちして睨んでますよ」

 

瞬間、

 

「はっ!!??ご、ごごごごめんなさい!!いや、あのですね決して居眠りをしていたというわけではなく、………そうです!瞑想して集中力を高めていたんですよ!だから、すみませんゆるし、て………あれ?」

 

 僕が「咲夜さんが見ている」と耳元で囁いた瞬間、飛び起きた美鈴さんは良く周りを確認することなくすぐさま土下座の体勢に入った。そのために僕も巻き込まれ美鈴さんのメロンの下敷きになっているところです。体勢としては土下座をしている美鈴さんの体と地面の隙間にちょうど頭が横から入り込んだ形だ。

 そのメロンの持ち主、美鈴さんは顔を上げたのか咲夜さんがいないのに気付いたようだ。それにあわせて自分の胸の違和感に気付いたらしい。不意に僕の胸の辺りにふっと誰かが触れる感触がする。この場の状況で考えるとその手の持ち主は美鈴さんしかいないが。

 

「あら?この体は雪茂さんですか?ごめんなさい!今どきますね!」

 

 どうやら自分が僕を押しつぶしているということに気付いたようだ。すぐに僕の視界が開ける。…にしても柔らかっなぁ。と若干先程のことを思い出し顔がニヤケそうになってしまうのを自制する。と、そんなところに美鈴さんが声を掛けてくる。

 

「咲夜さんがいなかったので良かったです。そういえば雪茂さんはなぜこちらに?」

「あ、そうでした。すみませんが図書館のほうへ入らせてもらうことは可能でしょうか?」

 

 「ちょっと待っててください」とだけ美鈴さんは言うと門を開け中に入っていった。恐らく許可を聞きに言ったのだろう。と、門のほうへ視線を向けていると首筋に冷たいものが当たる。恐らくは刃物だろう。切れない程度に食い込んでおり軽く首を動かせばすぐにでも切れてしまうだろう。なので首は動かさずにその刃物の持ち主に問う。

 

「あなたは?」

「そんなことどうでも良いわ。それより、………かったかしら」

「へ?」

 

 僕の問いに凛とした声で応答する女性。どっかで聞き覚えがあるような…。というか最後のほうが聞こえなかったな。思わず聞き返してしまったが大丈夫だろうか。

 

「だから!柔らかかったのかって聞いたのよ!」

 

 という若干の怒気が含まれている言葉と同時に首筋に当てられているナイフがプルプルと震える。怒っているのだろうか。…というか思い出したぞ。この声の主。

 

「…咲夜さんとりあえずそのナイフをどけてください」

「………離したら逃げない?」

「逃げませんって」

 

 僕の言葉を信じたのか首筋からナイフが離れる。…生きた心地がしなかったな。

 

「で、柔らかかったというのはなんのことでしょうか?」

「…見てたわよ。美鈴があなたを押し倒してその、む、胸を、す、す、す、」

「す?」

「吸わせてたのを見たのよ!」

 

 一瞬頭の中がはてなマークでいっぱいになる。…そうかさっきの場面を他の人が見たらそう言う風に見えるのか。って吸わせてたって何!?さすがにそうは見えないと思うけど!?

 完全に誤解されていると確信した僕は若干の錯乱状態の咲夜さんを落ち着かせることにする。

 

「と、とりあえず落ち着いてください。僕は押し倒されたっちゃ、押し倒されましたが、」

「やっぱり押し倒されたんじゃない!」

 

 咲夜さんが若干涙目になりしゃがみこむ。…可愛いなんていったら切り刻まれるかもしれないな。と馬鹿なことを考えつつもう一度慰めにかかる。

 

「落ち着いてください。あと泣かないでください。僕は美鈴さんの土下座に巻き込まれて押し倒されたんです」

 

 自分で言っておいて変な言葉だな。なんだ「土下座に巻き込まれる」って。今後の人生多分その言葉使うこと無いぞ。と、自分に突っ込みを入れつつ言葉を続ける。

 

「その結果先ほどの体勢になってしまったんです。納得できたでしょうか?」

「…そう、だったのね。ごめんなさい。取り乱してしまって」

「いえ、大丈夫ですよ。はい、とりあえず涙拭いてください」

 

 と、かなり落ち着いたようだがその目にはまだ涙が残っていた為にハンカチを渡す。素直に受け取ってくれたということは完全に理解したのだろう。誤解が晴れてよかった。…にしてもなぜそこまで怒っていたのだろうか。

 咲夜さんのほうを見てみる。グスッと安心から来た涙あったのだろうかまだハンカチで目元を押さえている。こうしてみるとこの館のメイド長なんて嘘みたいだ。年相応な女の子の姿にしか見えない。そんな姿を見ていると不意に手が伸び、咲夜さんの頭を撫でてしまっていた。あ、やばい。失礼だったかな。と不安になっていると咲夜さんは特に嫌がるそぶりも見せずに僕の手を受け入れていた。とそんな時後ろの門がギギーと開く音がしたと同時に明るい女性の声がする。

 

「雪茂さーん!図書館大丈夫、だそう、です、よ?」

 

 その声の主のほうへ顔を向けると先程の美鈴さん。僕らをみてポカーンとした後、すぐににやぁっとした顔になり「私は邪魔でしたね。庭の手入れでもしてきますね。ごゆっくり~」と再び門を閉めて中へ行ってしまった。その顔は終始ニヤついていた。それこそデュフフとか言いそうな顔で。

 対するこっちは美鈴さんの姿を見た瞬間に咲夜さんが硬直、僕は撫でる手を止め美鈴さんのほうへと視線移動。で、美鈴さんがいなくなった瞬間咲夜さんの姿が消えた。能力でも使ったのだろうか。僕の手元には「洗って返します」という一枚のメモ。先程のハンカチのことだろう。その後間もなく「ギャーー」という女性の断末魔のような声が聞こえたのは気のせいだろう。うん。気のせいだ。

 

 とりあえず先程の美鈴さんの話では中に入っていいようなので中に入ることにした。庭先のほうでなにやらザクザクというような音が聞こえたが気にせずに中に入る。

 

 改めて中の紅一色に統一してある家具、壁、床に目を奪われる。綺麗という感情と目に優しくないという感情が入り混じる。まぁ僕も赤が好きだし、構わないのだけれど。

 そういえば図書館はどこだろうか。自分から向かったことが無いために分からない。それに何よりこの館は大きすぎる。下手に歩けば迷子になりそうだ。とりあえず誰かに聞くのが良いのだろうがどうしようか。周りには羽を生やした小さい女の子達が飛んで掃除をしたり、服を運んでいたりしている。なので手っ取り早く一番近くにいた子に話しかけてみる。

 

「お仕事中ごめんね。図書館に行きたいのだけれど場所を教えてもらえるかな?」

 

 そう言うと小さな女の子は少し考えた仕草をした後回りの子達と話し出した。どうしたのだろうか。しばらく待っていると最初に話しかけた女の子が僕の服の袖を持ったと思うとチョイチョイと引っ張ってくる。恐らく連れて行ってくれるのだろう。

 

「ありがと」

 

 と一言伝えその子の後に続く。…にしてもさっきの女の子達みんな顔が赤くなってたけど大丈夫かな。そんな事を考えつつ僕は紅い廊下を歩いていった。

 

「ふぅ~んあれが例の人間ね。あなたは面白い運命を見せてくれるのかしら」

 

 その呟きは誰にも聞こえず真紅の館に溶けていった。




閲覧ありがとうございます。
やっぱりもう一つの小説とは文章の感じを変えてるので書き心地が違いますね。
てか書いてて雪茂てめーフラグ立て過ぎたろとか思ってました。
はい。自分が書いてるんですけどね。
どうも自分の願望とかご都合が出ちゃうんですよねー。
もう一つの小説はそれを抑えてやろうとしてます。

というわけで31話でした。
また次回も宜しくです。


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第32話 二枚のアルカナ

雪茂「そういえばアルカナって遊戯王でそんなシリーズあったような」

うp主「あったね」

雪茂「あ、やっぱり?ってことはあれに似た能力?」

うp主「んなわけねーです」

雪茂「ですよねー」



本編どぞー
一週間以上更新空いちゃったなぁ


 屋敷、というか洋館と言ったほうが正しいのだろう。現在その洋館もとい、紅魔館の中を歩いているのだが、先程から僕の頭の後ろにふわふわと何かが浮いているような感じがする。気になって首をそちらに向けるのだが何も無い。なので試しに手をそちらに伸ばしてみる。するとなにやら硬質の薄いものに触れる。すかさず掴むがスルっと手から逃げるようにまた先程の位置へと戻ってしまう。

 

「くすぐったいじゃないのよ」

「誰っ!?」

 

 いきなり聞こえて来た声に思わず身構えてしまう。周りを見回してみるが誰も居ない。突如放った僕の声は思ったよりも大きく、先ほどの小さい女の子たちがビクッとしているのが目に入り頭を下げておく。少し気恥ずかしさを感じながらも先程の声の主を探す。先程聞こえた声は随分と落ち着いた女性の声だったのだが、その声に見合うような者は回りに見当たらない。周りにいるのはメイド服を着た羽の生えた子達だけだ。

 

「そんなに探さなくてもここにいるじゃない」

「って言われても…」

 

 また後ろから声が聞こえてくる。振り返るが誰もいない。しかしさっきとは違う点が一つあった。何かカードのようなものが目の前に浮かんでいるのだ。天使のような女性の姿が描かれた黒く縁取られたカード。上に”Ⅵ”、下には”The Lovers”と書かれている。

 もしかするとこのカードが言葉を発していたのだろうか。

 

「さっきの声の主は…」

「そうよ。私よ」

 

 絵の中の女性が口を動かし僕の質問に答える。まるで意思を持っているかのようだ。と、カードのほうに気が行っていて気がつかなかったが、先ほどのメイド服の子がそわそわと僕の周りを飛んでいるので「もう大丈夫」と伝えその場を離れてもらった。今更だけど羽を使って飛んでいるのはまるで妖精みたいだったな。そんな事を思いつつ、目の前のカードと話そうと思ったが人の家に来て場所を借りて住人の人以外と話すというのは失礼に当たるのではないかと考えカードに場所を変えて話さないか、と聞いてみたら「私は別に構わない」とのことだ。その返事を了承とし館を後にする。その際頭から出血している美鈴さんに「随分早いですね?」と聞かれたので「少し用事を思い出したので図書館はまた今度お邪魔します」と言って少し離れた森のほうへと移動しようとするといきなり美鈴さんに袖を掴まれる。「どうしました?」と聞くと美鈴さんが顔を赤くしながら「また、来てくれますよね?」と上目遣い気味に言うのでどぎまぎしながらまた来ると伝えその場を後にした。頭の血に関してはなんとなく察したので気に留めなかった。…それにしてもさっきの美鈴さんどうしたのだろうか。熱でもあったのかな?と考えながら森の中へと入る。

 座りやすそうな石に腰を掛け先程のカードを見る。少し縦に長いカード。ちょっと変わっている。それに何よりこのカードは意思を持っているようだ。…考えても分からない。聞いてみるのが早いだろう。

 

「君は、」

「君、じゃなくて”恋人(ザ・ラバース)”よ。まぁラバースとでも呼んで頂戴」

 

 僕の前に来てラバースと名乗ったカードが言う。

 

「…了解。で、ラバースはどうして僕に付いて来てたの?」

 

 そう質問をすると不思議そうに絵の中の女性が首を傾げる。…結構自由に動けるんだな。

 

「付いてきたんじゃなくて出てきたのよ。」

「出てきた?」

 

 まるでどこかに入っていたかのような物言いだ。偶然僕のところに来たのだろうか。と、僕が悩んでいるとラバースがはぁとため息をついた。…僕なんか悪いことしたかな…。

 

「まだ分からないの?私はあなたの能力によって生み出されたタロットよ」

「え?僕まだ能力使ってないんだけど」

 

 それにタロットが分からないから調べようとしていたところなのだ。僕がそう言うとラバースがもう一度ため息をつく。…なんかごめんなさい。

 

「この際だからあなたの能力を説明しちゃうわ。まずあなたの能力は常時発動状態にあるわ。正確に言うと発動準備状態って言ったほうがいいかしらね。今は私しか出てないけど私と同じ大アルカナはあと21枚いるわ。他はそのうち出てくるでしょ。ちょっと話は逸れちゃったけどあなたはいつでも私達を呼び出し使役、もしくは能力を使用することが出来るわ。」

「なるほど」

 

 前に使っていた能力とさほど大差はなさそうだ。にしても残り21枚もあるのか。…やることは多そうだ。僕が残りの21枚を考えて少し渋い顔でもしてしまったのだろうか。ラバースがこちらをのぞきこんでくるように移動してくる。心配してくれるのだろうか。案外優しいところもあるらしい。

 

「あ、そうそう。残り21って言ったけど正確に言うと小、大アルカナ全部あわせて78枚あるわよ?」

「………」

 

 まるで僕が考えていることなぞお見通しとばかりに意地の悪い笑顔で僕に言う。それを聞いて絶句。今の僕は正にその言葉どおりの状態だった。驚きから一言も口から言葉が出てこなかった。「まぁそこは慣れと勉強よ」とラバースが言う。

 

「まぁそれは置いといて、とりあえずあなたの能力のルールを説明するわね」

 

 まさかのルール追加ときましたか。もう良いですよこの際。何でも来てよ。

 

 

 

 

 

 そう軽く思っていたのだが僕の能力は案外めんどくさいらしい。とりあえず一つ一つ挙げてみるとしよう。

・基本的には大アルカナと小アルカナを組み合わせ能力を使用する。それをスキルと呼ぶ。(ことにする

・大アルカナのみでもスキルは使用可能。小アルカナは不可。

・組み合わせは大アルカナ+小アルカナ、大アルカナ+大アルカナのみ。

・大アルカナ同士を組み合わせた場合すさまじい効力があるがその代わりに使用した日から2日の間その二枚は使用不可になる。

・大アルカナの中には意思があるものが存在する。その者に使用を拒まれてしまうとその大アルカナは使用不可。また能力の代償を求められる場合がある。

・大アルカナに限った話で、そのカードを召喚することが出来る。これは前の能力とほぼ同じ。ただこれも対象の大アルカナに拒まれると使用不可。

・この能力は弾幕ごっこにおいてスペルカードと同じ扱いで使用することが出来る。(らしい

・アルカナの組み合わせには色々あるが一日に使用できる技の数は12。

 

 こんな感じだろうか。…軽く挙げたつもりだったのだがやはり多い。僕もよく覚えていたものだ。それと残りの小アルカナについては後でまとめて情報をくれるらしい。ラバーズ曰く「やって慣れろ」とのことだ。

 

「大まかな説明はこのぐらいにしてとりあえずあたしの能力を教えるわね。改めて、私は”タロットNO.Ⅵ The Lovers”。正位置能力は他者との共鳴。逆位置能力は他者への誘惑よ」

「ごめんちょっと質問」

 

 説明の途中で申し訳ないと思いつつラバースの言葉を一旦切る。ここにきてまた聞きなれないワードが出てきてしまったのだ。正位置能力と、逆位置能力。とりあえずこの二つの意味を知りたい。そう伝えると「そういえば説明してなかったわね」という言葉が返ってきた。

 

「正位置、逆位置はタロットで占いとかをするときによく使われたりするわね。あなたの能力で説明すると正位置は任意発動のアクティブスキル。逆位置は常時発動のパッシブスキルってところね。もう一つ説明を加えるとあなたの能力の発動方法は二つあって、一つがあなたが他のアルカナと組み合わせてスキルを発動させる方法。これが正位置ね。もう一つはあなたの意思で私達を具現化、もしくは私達が勝手に自分を具現化させた場合に発動しまわりに影響を与えるもの。これが逆位置ね」

「…ということはもしかして今って」

「理解できたみたいね。あなたの考えている通り今は私の”他者への誘惑”が発動してるわ。対象はもちろんあなた」

 

 カードの中の女性が薄く笑いながら僕に言う。ラバースの能力のことが分かったところでふと僕は先程での館のことを思い出す。玄関を抜けた後からカードの気配を僕は感じていた。それに呼応するように周りの子の顔が赤くなったのを今思い出す。そして玄関から出て美鈴さんと話し分かれようとしたときの美鈴さんのあの行動。恐らく能力に当てられた結果なのだろう。

 

「色々分かったようね。説明しようと思ってたことも分かったみたいだし私からの説明は以上よ」

「了解。改めてよろしく」

「えぇ」

 

 その後「話し疲れた」とラバースは姿を消した。どうやら具現化をやめたらしい。恐らくもう一度僕が呼べば出てきてくれるのだろうが今はやめておこう。さて、とりあえず22枚中1枚。残りもいつか出てきてくれるのだろうか。そう思いつつ僕は今後の予定について考える。

 とりあえず考えたのは白玉楼に戻ること。しかし、あそこから出てきたのは良いが帰り道が分からない。しかし自分の荷物は持ってきていたのでそちらに関しては問題は無い。と、白玉楼へ戻るという選択肢は削除。もう一つ思いついたのは紅魔館へと向かうこと。だが一日に二回も行くというのはなんだか無駄足のような気がして嫌だったのでパス。

 

「だったらあれだな」

 

 そう考え紅魔館とは反対方向に歩き始める。僕が思いついたのは行き当たりばったりの修行旅。修行と付いているが簡単に言うとただの幻想今日巡りだ。霊夢は助かったし今やらなきゃいけないことは僕自身の強化。ならば旅の途中で出会った妖怪などにお手合わせ願ったりして力を付けていくのが良いのではないかと考えたのだ。

 

 

 

 

 

 旅を始めて2時間。下手をすればまだ散歩のレベルである。

 

「はぁっ…はっ……はっ、あっ…」

 

 しかし僕は息を切らしながら走っていた。ムカデみたいな大きい妖怪に追われながら。森の中を歩き続けること1時間30分ぐらい経ったころだろうか。妖怪と一回も顔を合わせることなく僕は歩いていた。

 

「だれかいないかな」

 

 そう口にしたときだった。地面が地震のように揺れ周りの木々が揺れて葉っぱを落としたかと思ったら木の陰から大きい2mは超えるであろう大ムカデが現れたのだ。なんとそれだけではなく、そのムカデが口を開いたかと思うと、

 

「ニニ、ニンゲ、ン、コ、コココ、コロ、コロ、コロスススススゥゥゥゥゥッッッ!!!!!」

 

 いきなりサイコさんになってしまいました。それから僕とムカデの鬼ごっこが始まり現在に至る。対抗策を考えたのだが今までの遊戯王、戦国大戦の能力が使えなくなったことを思い出し逃げることに専念することにした。しかし、相手の走る速度は劣ることを知らず、ただ僕の体力だけをどんどん削っていった。その時だった。

 

「はあっ、はっ、はぁっ………ぐ、あっ…!」

 

 足元の木の根っこに足を引っ掛け盛大に転んでしまった。幸い体を捻ることで顔面から転ぶことは無かったが左腕に大きな擦過傷が出来てしまった。だがまだましなほうだ。木の枝などがあれば下手をすれば裂傷を負っていたかもしれない。しかし今の問題は今出来た傷ではなく、今も僕に迫ってきている大ムカデだ。痛む左腕を押さえながら何とか立ち上がろうとするが上手く力が入らない。それに目の前の明確な殺意に恐怖を覚え、足が、手が震えてしまっていた。

 そしてついに大ムカデに追いつかれてしまった。ムカデはもう言葉らしい言葉は発しておらずフシューフシューと息を荒くしていた。大量に蠢く足。うねる胴体。人間を軽く食いちぎれるような鋭い牙。それを見た瞬間「あぁきっと僕はココで死ぬんだな」と諦めかけた。そして大ムカデが大きく口を開きこちらに向かってくる。目を瞑り死の瞬間を待つ。

 

ガキィィィィン!

 

 まるで金属と金属がぶつかり合ったような音が森に鳴り響き、もちろんそれが僕の耳にも入る。そう。襲ってくるはずの痛みが一向に僕を襲ってこないのだ。恐る恐る目を開けるとそこには大きな剣でムカデを押さえている女性がいた。

 

「大丈夫か。主よ」

「…う、うん」

 

 いきなりのことに戸惑いながらも僕は返事をする。そして先程の女性が「ふんっ」と剣を払うと大ムカデが後ろへ5mほど飛んでいった。その怪力に驚きつつも僕は尋ねる。

 

「えっと、助けていただきありがとうございます。僕のことを主とおっしゃっていましたがもしかして…」

「あぁ、私は大アルカナの一枚”The Strength(ザ・ストレングス)”、力の大アルカナだ」

 

 と、ムカデが飛ばされたほうからがさがさと音が聞こえるが、徐々にその音は遠ざかっていく。どうやらムカデが逃げたらしい。その証拠に2人で警戒しつつ待ってみるが一向に襲ってくる気配が無い。それが分かると僕はその場に座り込む。左腕がズキズキと疼くが今はそれよりも助かったという安堵感が大きい。それに左腕の傷の痛みが生を実感させてくれる。

 先程のThe Strengthと名乗った女性は「傷を見せてみろ」と僕の傷を一瞥したかと思うと「ちょっとまっていてくれ」とだけ残しどこかへ走っていった。その速さは普通の人間の速さではなかった。まぁ力っていう名前なのだから当たり前なのか。それにしても綺麗とか可愛いとかじゃなくてかっこいいが似合う人だったな。まぁ人じゃなくてカードなんだけど。そう自分に突っ込みを入れつつ先程の女性を思い出す。先程のラバースとは違ったベクトルの美人さんだった。ウェーブのかかったライトブラウンのロングヘアーにカチューシャのようなもの―――クラウンというものだろうか―――を頭に付け、服はローマ時代とかをイメージさせるような布の服で鎧はつけていなかった。それに力と名乗っている割には目に見えて筋肉がすごいというわけでもない。身長も僕と同じぐらいだろう。その見た目で力が強いというのはやはり能力なのだと実感する。と、ザッという音と共にThe Strengsが戻ってきた。手に水で濡らした布となにかの草を何種類か持って。




閲覧ありがとうございました。
というわけで二枚のアルカナとの対面でした。
カードのイラストのイメージとかは本来のタロットと違いがありますのであしからず。
それと若干タロットの意味合いを変えている場合がありますん。

また次回もよろしくですー。


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第33話 その道化は愚か者と名乗る

やばい。本格的に東方の原作キャラ出さないとオリジナル小説みたいになってる…。

雪茂「とか言ってるけど今回も出てこないじゃん」

うp主「ネタバレはいかんですよ」



次回は原作キャラ出します。

では本編どぞー。


「お待たせした」

「い、いえ、全然」

 

 ストレングスは申し訳なさそうにしているが、僕の言葉の通りほんとに全然待っていないのだ。恐らく一分弱ぐらいなのではないだろうか。名前が”The Strengs”なのだ。さっきの動きを見るに脚力、腕力、体力、恐らく力に関係するものならば人間や普通の妖怪などと比べると恐ろしい差になるのだろう。

 そう言う風にストレングスのことについて考察していると不意に先程怪我をした左腕を掴まれる。力加減はまったくといって問題なかったため痛みは無かった。何をするのかと見ていると先程集めてきた草を右手で握り締める。その結果として右手からは緑色の液体が滴る。その液体を僕の傷口へと垂らしていく。少し染みるが別に我慢できないほどではない。少しジンジンする程度だ。「すまない。染みただろうか」というストレングスの言葉に首を横に振って否定する。そして傷口ほぼ全体に液体が行き届いたのか僕の左腕に布を巻きつけた。なぜ濡れているのか聞いたところ途中で勢いあまり水溜りに落としてしまったらしい。ちゃんと湖で洗ったらしいので別に構わないけれども。

 そんなこんなで僕の傷の処置も終わり改めてストレングスと自己紹介をする。適当な岩を見つけそこに腰を掛ける。ストレングスにも座るように行ったのだが「畏れ多い」と言って座らなかった。その結果僕の座る岩の前で肩膝を付き、忠誠を誓う騎士のような座り方をしていた。背中に背負っている大剣は下に降ろしている。

 

「改めまして僕は一応君の主。立花雪茂。よろしく」

「私は”タロットNO.Ⅷ The Strengs”呼び方は何でも構わない。私は主の剣となり、盾となり、馬となることを誓おう」

 

 そう言って僕に頭を下げる。随分と固い人だな、と思いつつ僕は改めて「よろしく」と言った。周りから見ればまるで僕が王様かのような状態で少し気恥ずかしくなったので「そこまで畏まらなくて構わない」と伝えたが「これが私なのだ」と言われてしまいどうしようも出来なかった。でも言葉遣いがその姿とミスマッチしていてなんだかシュールだ。

 

「そういえば君の効果は?」

「申し訳ない説明を忘れていた。私の正位置効果は”不撓不屈(ふこうふくつ)の力”。逆位置効果は”無気力による甘え”だ。詳しく説明すると正位置効果は不撓不屈の名の通り何にも屈しない強靭な力を与える効果。逆位置効果は簡単に言うと相手の戦意をそぎ落とす効果だ。至極簡単な効果だと思うぞ。それとラバースが説明し忘れていたようだが私達アルカナの力は相手の力量によって力が増減する」

「なるほど。了解」

 

 本人も言っていたがかなり単純な効果だ。故に難しいともいえるのだがここではあえて言うまい。ストレングスは恐らく一番多様するカードではなかろうか。弾幕ごっこ以外での話だが。攻めるとき、守るとき、逃げるときそのどれでも使える能力だ。ただし戦闘方法は近距離によるものになってしまうだろう。そう考察しているとストレングスが「自己紹介と効果の説明を終えたから戻る」と言いカードになって姿を消した。

 今回の件で色々分かったことがある。まず一つに大アルカナが自身の意思で姿を現す場合、カードの形態か人の形態かは自由らしい。”らしい”と言ったのはまだ2人…2枚?まぁどちらでもいいけれどそれしか姿を見ていないから断言できないのだ。もしかしたらカードによって出来る出来ないもある可能性がある。

 それとストレングスが補足説明をしてくれた相手の力量による力の増減。単純に考えて相手の力が強ければこちらの効力が薄くなるということだろう。しかし、力が数値で見えない世界でそれを考えながら勝負するというのは中々に難しいものがある。…例の犯人2人組みにはどのぐらい効果があるのだろうか。もし、またどこかで事件を起こしたならば次こそ僕が捕まえる。

 

「とりあえず腹パンだな」

「ひぃっ!」

「へ?」

 

 突如後ろから聞こえてきた声に間抜けな声を上げてしまう。気弱そうな少年、いや青年だろうか、そんな声が後ろから聞こえてきたのだ。そちらを見てみると随分と奇抜な服を着た男性とその傍らに座る真っ白な犬が目に入った。この世界と似つかない服装からして恐らくこの人達も僕の能力から生まれたのだろう。

 

「痛いのは駄目ですってぇぇぇ」

「いや、あなたを殴ると言ったわけじゃないんだけど…」

 

 どうやらこの男性、僕が口にした「腹パン」に過剰に反応してしまったらしい。現に今も僕のほうを見てびくびくしている。その反面犬はお座りをしてじっとしている。…この差はなんなのだろうか。

 

「あ、そうなの?なんだぁーびっくりしちゃうじゃんさー」

 

 AHAHAHAとさながら外国のバラエティーのような笑い方をしながら僕の肩を叩く。そのピエロのような奇抜な格好とその言動が見事に胡散臭さを醸し出している。苦手だ。と心のどこかで感じた。だが、もし自分の能力から生まれたのならせめて言葉を交わしておく必要があるだろう。

 

「えっと、一つ質問なんですけど、あなたは僕の能力の一部であってますか?」

「お?やっぱり気付いちゃう?気付いちゃう感じですか?………だーいせーいかーい!」

 

 と、男がどこからか取り出したクラッカーをパンッと鳴らす。…その言葉遣いというか喋り方はどうにかならないのだろうか。どこかイラッときてしまう。

 

「じゃ、私の自己紹介をば。”タロットNO.0 The Fool”と申します。愚者と書いてThe Foolでございます。どうぞフールとお呼びください」

 

 と言ってくるりと一回転。その後に綺麗なお辞儀を見せてくれたと思ったらこちらに手を差し出してきた。握手かと思い手を差し出してみるとフールの手からポポンと2輪の赤い花が出現した。言動が完全に道化師(クラウン)なんですが、という突っ込みは無粋だろうか。そう思いつつ花を貰おうとするとその手を背中のほうへと移動させる。その結果僕の手は空を切ることになり、フールのほうを見るとにっこりと実に人当たりのいい笑顔で笑う。その瞬間フールが後ろに回した手を前に持ってくる。その手に握られていたのは2輪の赤い花ではなく100輪は超えるであろう花束だった。その光景に圧倒されていると「おぉっと大切なことを忘れていました」とフールが言ったかと思うと花束が一瞬にして花びらを散らして消える。

 

「何を忘れていたんですか?」

「いえ、ただ私の効果について言っていなかったと思い出しまして」

 

 あぁなるほど。と心の中で納得する。フールの手品に圧倒されていて完全に忘れていた。フールのやっていることはTVでよく見るマジシャンの手品のようなのだが、フールがやるとなにやら引き込まれるものがある。やはり愚者というより道化といったほうが正しいような…。

 そう考えているとフールが説明を始めた。

 

「私の効果は珍しくてですね、正位置、逆位置共に二つ効果があるのですよ。まず、正位置効果の一つ目は”無邪気な自由”。これはゲームで言うところのデバフ効果を受けないというものです。例に漏れずこの効果は相手の力量により変化します。もう一つは”天真爛漫な発想力”。まぁ簡単に言いますと頭の回転が速くなります。かなり。代償として楽観主義の考え方に近しくなります。まぁあまり影響は無いでしょう。多分。では続きまして逆位置効果です、といいたいところですが、メモ等よろしいでしょうか?と言っても気にせず続けますけど。」

 

 じゃあ聞くなよといいたくなったがその言葉を飲み込む。こんなところで関係を悪くしたくないのだ。といってもそんな言葉でフールが怒るとは到底思えないけれど。

 この短時間で分かったのはフールは一言で言うと変わり者だ。愚者の癖に道化を振る舞い、そのくせ僕への忠誠は感じられる。それが先程の説明の口調から感じられる。自分の効果をきちんと知ってもらおうとしたのだろう。まぁ僕の予想ではあるが。

 

「まず一つ目の逆位置効果は、”我侭な落ちこぼれ”。簡単です。相手を幼児退行させます。」

「…ふーん。え、まってそれ強くない?」

 

 正位置効果は存外普通というか地味だったものに対して逆位置効果がひど過ぎる。チートだ。そういわれても仕方が無いくらい強いだろう。なにせ幼児退行だ。そうなってしまったら勝負ではない。一方的にこちらから攻撃出来るであろう。それか相手が勝負を投げてどこかへ行ってしまうか。そんな強い効果なのだからデメリットがあっても釣り合うか分からない。と色々言おうとしたのだがフールの言葉によって遮られる。

 

「もう一つ私の能力の説明をするのを忘れていました。私の能力はランダム発動です。”我侭な落ちこぼれ”は私の効果の中、大アルカナの中でも上位の能力です。まぁ上には上がいるんですけどね。そのためのランダム発動なのですが当たる確立が極端に低くなっております。そのため狙って使うことが出来ないとだけ付け加えておきます」

 

 なるほど。と、少しは納得できた。ただ、さっきのフールの言葉。大アルカナの中でも上位。他にもっと強い効果を持っているものがいるらしい言葉回しに少し怖くなってきた自分がいた。そんな強い効果、僕に使いこなせるのだろうか。そんな不安が頭を過ぎる。しかしパンッというクラッカーの音でその考えはかき消される。

 

「はいはい。暗い顔をしての考え事はBADですよ。もう一つの効果の説明しますね。”愚者への嫌悪”。これだけ例外でして常時発動です。どの効果を使っても絶対に付随してきます。内容は周りをイライラさせます。なんででしょうね?HAHAHAHA」

 

 それだよ。と突っ込みたくなるが押さえる。なるほど、さっきから感じる謎のイライラはその効果の所為か。…ただ単純にフールの言動に対してイラついてるって言うのも絶対含まれているだろうけど。癖はあるし効果の強弱の差が大きすぎて使いずらそうなイメージを受ける。まぁ状況判断して使わなければいけないだろう。

 

「あ、ちなみにこの犬の名前はタマって言います」

「わ゛んっ!!!」

「ごめんって…すみません!ウソです。本当の名前はミケで、いやーーーーやめて噛まないで!ただの冗談じゃないですか!すみませんって!ほら謝りますから!ほら土下座です!ジャパニーズDOGEZAで、ぎゃああああああ!そ、そこ!喉は駄目ですって!!さすがにカードとはいえ痛いんですって!!てかあなたもフールの一部でしょう!?ぎゃぁああああぁぁああ!」

 

 冗談を言ったら犬に全力でしばかれるフール。もしかしたら犬もイライラしていたのではと思える。いいぞもっとやれ。僕のその気持ちが伝わったのか犬は噛むことをしばらく止めなかった。

 一頻り噛み終わった後の満足そうなあの犬の顔は一生忘れまい。ちなみにフールは「…こんな僕ですが宜しくお願いします」とさっきとはまったく違うテンションで一言僕に言うと消えていった。




愚者さん。マジ道化。
この小説書いてて最近「戦国と遊戯王の要素いらなかったのでは」とか軽く後悔しています。まぁ今更なんですけどね!
章でも変えれば何とかなるか…?
まぁ処女作だししょうがないね!
先生の次回作にごk(ry
いや、まだ終わらないよ?

と言うわけでちょっとテンションの高めのあとがきでした。
ではまた次回宜しくですー。


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第34話 人里へ

たいっっっっへん遅くなりました!
正直に理由を話しますとイラスト描いたり、シャドーボックスというものを作ったり、シャドーボックスを作ったり、シャドボを作ったりしてました。
はい。シャドボ作りに嵌りました。
ただ単にそれだけです。はい。特に体調とか崩してないです。仕事は忙しいですけど。
こんど東方のシャドボとかも作ってみようと思います。
ごめんなさい小説も書きます。



 先程大ムカデから逃げるときに出来た傷がまだ痛む中、僕は森を進む。先程みたいに妖怪に襲われたらどうしよう。と考えたが立ち止まっているままでは何も進まないため、少し休んだ後に歩みを進めた。

 鬱蒼とした森の中を歩いているとどうも周りの音に敏感になってしまう。たとえそれが小動物の発した音だったとしてもそちらに過敏に反応し振り向いてしまう。木々が生い茂っている為に空から日は差し込むことは少ない。まったく差し込まないというわけではないのだが昼間だと言うのに薄暗いほどだ。だが、次第に木々が少なくなっていき、目の前に人里が見え始めた。

 歩き始めてから30分ぐらいだろうか。やっとの思いで見つけた村に歩みを向ける。恐らく村の入り口と思われる場所には体つきのいい男が2人立っている。恐らく門番だろう。その2人のほうへと向かっていく。

 

「すみません。ちょっとよろしいでしょうか」

 

 そう声を掛けると右の男が反応し少しこちらに歩み寄ってくる。

 

「どうした。旅人か?…と、怪我をしておるではないか。少し待っておれ」

 

 そう言ったかと思うと門番の1人がもう片方の門番へ目配せをする。もう一人の門番が首を縦に振ったかと思うと先程の門番が駆け足で里の中へ行ってしまった。ほとんど会話もせずに勝手に話が進んでいるので少し不安になる。

 そう思っていると左の門番が声を掛けてくる。

 

「ほら、こっちに来て座ってるといい。直に来るだろうが少しでも休んでいたほうが体にも良いだろう」

「ありがとうございます」

 

 突如来たのにも関わらず優しくしてくれることに驚きつつ呼ばれた門番の方へと向かう。そこには小さな切り株があった。恐らくこれを腰掛として使っているのだろう。なのでお言葉に甘えて座らせてもらう。

 切り株は適度な高さで切られており座り心地がいい。少し硬いが。と、座ったところで自己紹介をすることにする。

 

「…休ませて頂きありがとうございます。僕は立花雪茂と言います。えっと…ただの旅人です」

 

 旅人と言ったのは今の僕の置かれている状況が少し複雑な為に適当に言った言葉だ。まぁ強ち間違ってはいないのだが。まさか、自分の知り合いを殺され犯人にトラウマを植え付けられた挙句見逃され、そいつらを倒す為に強くなるために修行中なんて言えない。………長いな。僕の経緯。いきなり聞いても内容が入ってこないのではないだろうか。

 と、事件のことを思い出し若干落ち込みかけていると残った門番が少し明るめの口調で話しかけてきた。

 

「おう。俺は雪斎(せっさい)。見ての通り門番をやっている。旅人と言っていたが随分軽装なのではないか?…まぁ細かいことは詮索せんが」

「武器などは逃げる途中で投げてしまったので無いのですよ。特に深い理由はありません。…でもどうして僕みたいなよそ者に優しくしてくれるのですか?」

 

 嘘をつく必要は無いのだが流れに身を任せ武器などは投げ捨てたということにした。正確に言うと白玉楼に祢々ちゃんの刀を忘れてきてしまっただけなんだけど。取りに戻ろうと思っても紫さんのスキマで移動してきてしまった為に戻りようが無いのだ。…別に恥ずかしかったからごまかしたわけじゃないし。

 もちろん僕の嘘に気付くことは無く雪斎さんは先程と変わらぬ声で説明し始めた。

 

「そうだったのか。まぁ武器はいくらでも代わりが効くから大丈夫か。あと、俺らが警戒しないのは能力でお前を見たからだ。俺は能力者でなぁ、対象の人物や動物を見ると人間か妖怪か分かるのさ。だからこうして休ませたり、康友…さっきの門番な。あいつに里の警備隊のリーダーへ報告させに行かせたのさ。」

「能力…ですか」

「あぁ。”妖怪かどうか見抜く程度の能力”っていう能力だ。この里の警護には打ってつけの能力だわな」

 

 なるほど。さっきもう一人の門番とアイコンタクトをしていたのはそう言う意味があったのか。しかし、能力にも色々あるんだな。この人の能力は完全に戦闘向きじゃない。僕の能力が戦闘に使えるもので助かった。

 お互いに自己紹介済ませ、世間話をしていると東條さんが「おっ」という声を上げ里のほうへと顔を向ける。僕も釣られてそちらのほうへと視線を運ぶ。そこには先程の康友と呼ばれた門番の人と、青い服を着た髪の長い女性が歩いてきていた。

 

「この者です。慧音さん」

「なるほど…確かに妖力は感じられないな」

 

 髪の長い女性、慧音と呼ばれた女性は僕のほうを落ち着いた様子で一瞥すると腕の怪我に気付いたらしくこちらに駆け寄ってくる。

 

「少年!怪我をしてるではないか!大丈夫か!?痛みは?出血は?誰にやられた?この怪我の処置は自分でやったのか?」

「え、えっと…」

 

 えー…冷静な人だと思っていたけど一瞬でそのイメージが崩れ去った。慧音さんに肩を掴まれガタガタと体を揺さぶられながら慧音さんのイメージを頭の中で変える。

 

「慧音さん。その状態だと質問しても答えが返ってこないですよ」

 

 と、雪斎さんが見かねて止めるよう促す。心の中で「ナイス!雪斎さん!」と言いながらサムズアップをする。その言葉に慧音さんがハッとし僕の肩から手を退ける。

 

「す、すまない。つい怪我を見て心配になってしまって…」

「大丈夫ですよ。痛みもあまり酷くは無いですし、知り合いに処置してもらったので大丈夫です。ちなみにこの怪我の張本人はでっかいムカデみたいな妖怪でしたけど、それも知り合いが撃退してくれたので大丈夫だと思います

 

それとなく僕の能力については知り合いとして説明しておくことにした。…そのほうがややこしくならなくてすみそうだし。

 

「知り合い…か。少年は今一人のようだが……そうかお気の毒に…」

「へ?」

 

どうやら慧音さんは勘違いをしているらしい。と言っても一人で森から抜けてきたというのを考えればそう言う風に考えてもおかしくは無いか。

 

「あー、いえ、その知り合いはですね…」

「私が直接説明したほうが早いのではないだろうか。主よ」

「…っ!?」

 

呼んでもいないのに絶妙なタイミングで出てくるストレングス。いきなり僕の後ろに現れるものだから慧音さんがびっくりしてバックステップを取る。雪斎さんは目を見開き驚き、康友さん…だったか。もう一人のほうは何がなにやらという様子で不思議そうにストレングスのほうを見ている。

 

「少年!離れろ!貴様!今までどこに隠れていた!?…気配を感じなかったことを考えるとかなり強い妖怪か…」

「いえ、ちょっとまっ」

「ちょっと待ってください慧音さん」

 

慧音さんが完全に敵意をストレングスに向け戦闘体勢を取る。今にも攻撃しそうな状態だったので僕が止めさせようと声を掛けようとすると、雪斎さんが僕の言葉を遮って慧音さんに止めるよう話しかける。

 

「いきなり後ろから出てきたんだ!怪しすぎる!」

「私の能力でこの方を見てみたんです。まず最初にこの方は妖怪ではありません。何よりこの方には神力が宿っています。つまり…」

「まさか…神…?」

「え、そうなの?ストレングス」

「さぁ?私には分かりかねます」

「知り合いだったのか!」

 

ナイス突っ込みです、慧音さん。とは言わない。と、知り合いだと分かってしまったのに気付く。果たして話してよいものなのだろうか。まぁ助けてくれた(休憩しただけだけど)恩もあるし、この3人には話しておいても良いだろう。

 

「ところで主よ。どこかで飯を取らぬか?」

 

ごめんストレングス。ちょっと引っ込んでて。

 

意外と無頓着なストレングスに頭が痛くなるのを覚える僕だった。




閲覧ありがとうございます。
里の登場人物ですがまぁ戦国武将から取ってます。
あ、ちなみにシャドボ見たいって方はぜひツイッターをば。たぶん”竹馬の竹猫”で検索すれば出ると思います。(露骨な宣伝)

次回の更新できるだけ早めにがんばりますー。


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第35話 命令権は大切に使わねばならない

うp主「早めの投稿!」

雪茂「でもどうせ」

霊夢「えぇこんな調子いつまでも続かないわ」

うp主「…頑張るし」



本編どぞー


「とりあえずこの女性は僕の能力の一部です。名前は”The Strengs”。力という意味の名前です。僕は単純にストレングスと呼ばせてもらってます」

 

 ストレングスのことは華麗にスルーし3人に説明を始める。

 

「主であればどのような呼び方でも構わないぞ。例えばスーちゃんとかスッちんとかでも」

「ごめん。一旦戻って」

 

 「あぁ…」と小さく不満の声を出しストレングスは消えた。…スーちゃんて…スッちんて…。あんたそんなキャラじゃないから!どっちかって言うとスーさんのほうがしっくり来るわ!…いや、そうじゃなくて今は慧音さん達に能力の説明をしないと。

 そう思いコホンと咳をし、仕切り直す。

 

「えっと、さっきの説明から分かるように僕も能力者です。能力は”アルカナを使用する程度の能力”を持っています」

「そうか、能力者だったのか。ところでアルカナ?とはなんなのだ?」

 

 慧音さんから疑問の声が上がる。無理も無いだろう。外界から来た僕でさえ知らなかったのだ。タロットも詳しくは知らない。

 

「やはり分からないですよね。簡単に説明をするとタロットカードのことという認識でいいと思います」

「タロットカードか…なるほど了解した」

 

 慧音さんはタロットカードを知っているようだ。門番2人は………まぁ、お察しの通りだ。

 

「でもタロットカードでどう戦うんだ?」

「んーとですね…実際に見せたほうが早いかもしれないですね」

 

 そう言いつつも僕自身ぶっつけ本番でやるので成功するのか分からない。…練習だと思って気楽にやろう。しかしやり方がわからないのでスーさんもといストレングスに頭の中で会話を試みる。

 

「(ところでストレングス?)」

「(なんだ?)」

 

お、意外と簡単に会話できるのね。

 

「(ストレングスと小アルカナの組み合わせで一番分かりやすい効果って何かな?ついでにどうやって発動すればいいのかな?)」

「(少し待っていてくれ)」

 

 頭の中でストレングスと会話をする。そして数秒もしないうちに返事が返ってくる。どうやら”The Strengs”と”剣のK”の小アルカナがいいのではないかということだ。内容は”圧倒的な剣の指令”。効果は対象一人への制限時間有りの命令権。それだけ聞くとやたら強く感じるが、”死”に直結する命令は出来ないそうだ。当たり前だな。あと、それに付け加え対象の力が強ければ強いほど制限時間は短くなる、物理的に不可能な命令は自動的にキャンセル。など色々制約はある。

 ちなみに発動方法は意外と自由らしく、心の中でカードを思い浮かべて口に出すだけで発動できるらしい。物は試し。早速やってみよう。

 

「…大アルカナ”NO.Ⅷ The Strengs”。小アルカナ”剣のK”発動!」

 

 瞬間、僕の体が光を帯びる。しかしそれは一瞬で光は消える。気付くと僕の右手にはストレングスが持っていた剣とデザインが似ている片手剣、そして、頭には王冠のようなものをかぶり、赤いマントをつけていた。

 

「っ!」

 

 慧音さんがバックステップで僕から距離を取る。門番2人はなぜか腰を抜かしてしまった。3人ともこちらを見て驚愕の表情を浮かべている。まるで猫がライオンや虎と会ったときのようなイメージだろうか。

 

「あのー…どうかされました?」

「っ!…すまない。って、私が謝る必要はないような気が…。まぁいいか。いや、いきなり少年から強い力を感じたものでな。思わず警戒してしまったんだ」

「…強い力ですか?」

「(すまない主よ。一つ説明が抜けていた。小アルカナは後半の番号になるほど力が増大してゆく。正確に言えば11から力が倍増する。その反動でかなり疲れるかもしれないので気をつけてくれ)」

 

 頭の中でストレングスが遅すぎる補足説明を入れてくる。ストレングスめ……。今度出てきたらお小言の一つも言ってやらないとな。

 

「とりあえず強い力があるのは分かった。だが、それだけか?」

「いえいえ、本来の効果は違いますよ。慧音さん。『僕に愛の告白をしてください。』」

「「はぁっ!?」」

 

 門番2人が腰を抜かしたまま驚愕の表情と声を上げる。いや、僕だって普段だったらこんなこと言わないんだけどね。死に直結しない命令ならOKって言われたらそりゃね?僕だって男ですし。慧音さん美人ですし。言われてみたいじゃないですか。

 と心の中でごちゃごちゃ言っていると慧音さんが俯く。そしてそのまま僕に近づいてくる。肩もプルプルしてるし、もしかして効いて無くて怒ってるんじゃ?と思ったがそれは杞憂に終わった。

 慧音さんは僕のマントの裾をチョンと掴むと顔を赤らめこちらを向く。

 

「少年。ところで名前は?」

「え?えっと、立花雪茂と言います」

「そうか。雪茂か良い名だな。それに随分と愛らしい顔をしているじゃないか。守ってやりたくなる。だが、そんな顔をしているのにもかかわらずこの力。…惚れ惚れする」

 

 そう言って慧音さんは恍惚な表情を浮かべ、僕の顔を両手で挟み固定する。何をするのかと思ったら目を閉じこちらに顔を近づけてくる。まずい!そこまでしてしまったらさすがに失礼だ!

 …よく考えてみたらまだ慧音さん告白してないじゃん!キャンセル!キャンセル!!

 

「(あ、すまぬ主よ。もう一つ忘れていた。命令はキャンセル不可能だ)」

 

 今度飯とか言っても絶対食わせない。そう考えていると、もう目の前に慧音さんの顔が近づいている。ぶっちゃけこんだけ美人な人にキスをされるのはありがたいのだけれどさすがに断り無しでやるのはまずい。だから一旦慧音さんを止めないと。あくまで顔が動かせないだけで両手は動く。慧音さんの肩に手をやって離そう。

 そう思い慧音さんの肩に手をやり抵抗しようとしたのだが、その手は慧音さんの肩には届かなかった。

 

「まぁ、待ってくだせぇや。雪茂さん」

「あぁそうだぜ。雪茂のあんちゃんよ。折角慧音先生がこんだけ勇気を出して迫ってくれてるんだ。男として据え膳はくわなきゃあいかんねぇ?」

 

 両手を門番2人組みに抑えられてました。って、あんたら見ず知らずの男に慧音さんがキスするのを許すんかい!肯定派かよ!むしろ推奨しちゃってる感が否めないんだけど!?

 

「「おう」」

 

 心を読むなぁぁぁ!てか二人揃って了承すんなや!と、心の中で叫んでるつもりだったのだがそれが駄々漏れしていることに僕は気付かない。門番2人が返事をしたのはそのためである。

 慧音さんを拒むことも出来ず半ば諦め僕も眼を瞑る。いずれやってくるであろう、柔らかい唇の感触だけでも楽しんでおこうと割り切る。

 …やってこない?

 待っても唇には感触は来ない。片目をうっすらと空けるとそこには両目を潤ませる慧音さんがいた。

 

「どう、したんですか?」

「そんなに、目をギュって瞑って強張るということは私のことは嫌いなのだろう?」

 

 慧音さんの瞳から一筋の涙が流れる。不意に右手の拘束が緩んだので右手でその涙を拭う。

 

「そんなはず無いじゃないですか」

「だったら!お、お前から、その、キ、キスしてはくれないか?」

 

 やばい。もっと逃げられなくなった。おい。そこの門番2人。抱き合って喜んでんじゃねぇ!「あの年齢=付き合ってない暦の慧音さんにやっと伴侶が…!」「これは一大事だ。みなに知らせ、祭りの準備だ!」「おうよ!」そう言って二人は里の中へと走ってゆく。

 えー…。どうしよう。本格的に逃げられない。…そうだ!

 

「慧音さん」

「なんだ?私はいつでも良いぞ?」

 

 そう言って慧音さんは再び目を瞑りこちらに桜色の血色の良い唇を突き出してくる。その唇に視線が思わず奪われる。そしてそのまま吸い込まれるようにキスを…じゃなくって!

 

「いえ、そうでは無くて、僕のことどう思ってます?」

「ん?いきなりどうしたのだ?好きに決まって、い、る…」

 

 お!上手くいったか?慧音さんは顔をさっきより真っ赤にしプルプルと震えている。僕の顔に添えられた手も震えているので僕の頬もプルプルと揺れる。あ、何これ。若干気持ちいい。

 

「私、は今まで何を…」

「と、とりあえず両手を顔から離しません?」

「う、うむ」

 

 ふう。やっと開放された。ムカデにあったときより緊張してるってどういうことだ。

 

「…!そうだ!慧音さん早く門番2人を止めないと!」

「何かあったのか?」

「さっきの光景見て祭りがどうとか付き合ってない暦がどうとか話してました」

 

 僕がその言葉を言うよりも早く慧音さんは里の中へと走っていった。門番2人の名前を呼びながら。

 




閲覧ありがとうございます。
一回没にしようとしましたがそのまま投稿。
R-18までは言ってないのでセフセフ。

慧音さんはチョロそう。

次回も宜しくです。


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第36話 人は見かけによらない

迅っ・速っ・投っ・稿っ!!!!

どうせそのペース続かないんだろ、とか言わないの。

本編どぞー

タイトル思いつかない…ヤベェよヤベェよ…


 慧音さんへの命令が解け、門番2人を捕まえたり、里の中を散策して住人に挨拶をしていたりと色々やっているといつの間にか太陽が沈みかける時間になっていた。まさか里にここまで長居をするとは思っていなかった。この時間から里の外に出るのは危険だろう。宿みたいな場所は無いか探してみたほうが良いだろう。

 と宿を探しぷらぷら歩いていると先程の門番2人組みが前から歩いてくる。少し薄暗かったがどうやら僕だと分かったらしくこちらに近づいてくる。

 

「よお雪茂」

「雪茂さんじゃねぇですか。こんばんわ」

 

 ほぼ同時に2人から声を掛けられる。雪斎さんはすでに僕のことを呼び捨てにしていたが、康友さんは未だにさん付けだ。今日その事について話していたら雪斎さん曰くこれが素だそうだ。まぁ喋り方が最初に会ったときと比べればかなり柔らかくなっているので友好的には思われているのだろう。

 

「こんばんは雪斎さん、康友さん。門番の仕事はいいんですか?」

「あぁ、あれは昼夜の交代制だからな。まぁつっても夜はあぶねーから見張り程度なんだけどな」

 

 なるほど。今日聞いた話では夜になると妖怪が活発化するらしく、夜に外に出るのは危険とのことだ。いくら門番とはいえ活発化した妖怪と戦うのは些か厳しいものがあるだろう。能力者なら別だろうが。もしくは同じ妖怪とか。

 

「ところで雪茂さんはどうしたんでさい?こんな時間に」

「あぁ、いえ宿を探しておりまして」

「むぅ、申し訳ないがこの里に宿はないのだ。…そうだ!雪茂。俺の家に来るといい」

 

 これは願ってもない申しつけ。断る理由は無い。僕は雪斎さんの誘いに二つ返事で返した。

 

 

 

 雪斎さんの家は歩いて数分もしないうちに到着した。歩いている最中に聞いたのだがどうやら雪斎さんの家ではなく雪斎さんと康友さんの家らしい。門番をやっている関係上一緒にいたほうがいいということらしい。決してそっちの気があるわけではないらしい。疑ってないんですけどね。

 というわけで中へ案内されると男2人が住んでいるのでもうちょっと散らかっている、言い方を悪くすれば汚いイメージがあったのだが中は案外綺麗だった。

 

「雪茂、お前さん今、意外と綺麗だな。とか思ってただろ」

「うっ…はい」

「素直でよろしい。実は俺はこんな見た目で口調も少し粗めだが意外と綺麗好きなのさ」

 

 雪斎さんが掃除をしているのか。イメージ的には康友さんがやってそうなんだけどな。っとと下手なこと考えてまた心の声が漏れるとまずい。このことについてはあまり考えないで置こう。綺麗だからオールオッケー。

 中は所謂3LDKの造りに似ている。そこまで大きいわけではないので2人で暮らすには丁度良い大きさの家といえるだろう。現代で言うリビングに位置する部屋には、テーブル―――どちらかと言うと卓袱台のほうが正しいかもしれない―――が一つと座布団が4枚程度、部屋の片隅には本棚が2つ並んでいた。残りは寝室と客間で特に何も無いらしいので説明は省く。つまりかなり殺風景なお部屋なのだ。

 

「よし、久しぶりのお客さんだ今日はぱぁっといこうじゃないか」

「お、じゃあ雪斎よ。あれを出すか」

「そうしよう」

 

 そう言って二人は僕を部屋に残し出て行った。どうやら外に出たらしい。しかし外のほうからガサガサと音がしているところを見ると家の近くで何かしているらしい。と思っていたら玄関の扉が開く。戻ってきたらしい。

 

「これよこれ」

 

 そう言って雪斎さんは茶色の瓶を掲げる。これって…。

 

「お、雪茂も分かったみたいだな。そう。日本酒だ。結構良い値段するんだぜ」

「僕まだ、未成年なんですけど」

「ん?そんなの幻想郷じゃ関係ないぜ。まぁ飲みな…と言いたい所だが、いま康友が料理を作ってるからもう少しお預けだな。」

 

 なるほどだから雪斎さんの姿しか見えないのか。キッチンは玄関から入って別の扉から入るためこの部屋からだと確認できないのだ。…なんか不便じゃない?この家。

 

 

 

 

「お待たせしました」

 

 そう言って康友さんが料理を運び部屋に入ってくる。…すんません。その着けてるものなんですかね?なんでハートをあしらったエプロンなんですかね!?しかもフリルでフリッフリしてるやつ!えっ?ホモじゃないよね?ホモじゃないんだよね?

 

「ん?どうしました?…あぁこのエプロンですか。どうです?良いデザインでしょ?」

「え、あ、は、はい」

 

 どうやら康友さんは純粋に良いデザインだと思っているらしい。これ絶対他の人に見せちゃ駄目なやつだ。絶対誤解される。いや、まぁ康友さん結構イケメンだし、いいか…よくねぇよ!

 と自分にノリ突っ込みをしていると卓袱台に料理が所狭しと並ぶ。それを見計らって雪斎さんがお酒をグラスに注いで各自座っている席の前に置く。なぜグラスがあるのかはもう聞くまい。ここは幻想郷だ。2人がグラスを持ったので僕も習い持つ。

 

「今日は久しぶりの客人だ。ぱぁっと行こう!乾杯!」

「「乾杯!」」

 

 先程聞いたような言葉を言って3人で乾杯をする。

 

 

 

 そして気付けば朝になっていた。え?何を食べたかって?お酒を一口飲んでそっから記憶無いですよ。僕がこんなに飲めないとは知らなかった。ちなみに2人とももう門番の仕事に出たようで家には誰もいなかった。テーブルには置手紙と料理が置かれており、手紙には「ちゃんと残さず食べてくださいね 康友」と、どっかの家政婦さんか何かかですかねぇ?と突っ込みを入れたくなったが頭が痛くそれどころではなかった。洗面台をお借りし顔を粗い水を飲む。ひんやりとした水が二日酔いと思われる体に染みる。目も酔いも少し醒めたところで用意されていた朝ごはんを食べる。

 食べ終わってからは暇だったので、また里の散策に出ようとしたところ丁度慧音さんがこちらに歩いてきていた。どうやら心配で里の中を探していて、雪斎さんの家に泊まっているという話を聞きこちらに向かってきていたのだという。なぜか慧音さんは少し顔を赤らめていた。

 

「と、ところで雪茂」

「はい?」

「これから暇か?」

「えぇ大丈夫ですよ。暇で何をしようか考えてたところですし」

 

 脳内で誰かが「能力の修行しろー」って言ってる気がするけど気にしない。そもそも聞き覚えの無い声だし、挨拶、自己紹介無しの人に言われたくない。誰だよ。

 なので慧音さんについていくとする。

 

 

 

 慧音さんについていくとそこは寺子屋と書かれた建物だった。慧音さんは先生をやっているらしく、ここで里の子供達に勉強を教えているらしい。今日は休日らしく子供はいないが中へ入ってみないか?とのことだったのでお邪魔する。

 中は大きめな畳の部屋が一つ、教員室だと思われる部屋が一つ、厠、つまりトイレが男女1つずつという意外とこじんまりした学校だった。それもそのはず先生は慧音さんだけらしい。だが子供の数も少ないので十分やっていけるらしい。

 

「私は普段ここで里の子供達に勉強を教えているのだが、その傍ら里の守護者という重役も担っている。今まではなんとかなってきていたのだが、最近になり妖怪が力をつけてきたらしいんだ。そこでもし、もしも行く宛てが無いのであればこの里で一緒に人々を守ってはくれないか?」

 

 なるほど。恐らく昨日の僕の能力を見て判断したのだろうな。本当なら二つ返事で引き受けたいのだが、何せ僕がこうやって旅(修行)を行っているのは例の犯人を倒す力を手に入れるためだ。なのでここに留まっているのは少し厳しいものがある。

 

「も、もし、何か不都合があれば全てこちらで受け持とう!金か?食か?住だって私が保証しよう。……のはけ口として私を使ってもいいぞ」

「え?最後なんていいました?」

 

 最後のほうだけ尻すぼみになって話すものだから聞き取ることが出来なかった。なので聞き返したのだが、慧音さんは顔を真っ赤にし「気にするな!忘れてくれ!」と言って追求を拒んだ。怒らせるわけにも行かないので大人しく引き下がる。

 それにしてもの好待遇。慧音さんがここまで頼み込んでいるのだ。…能力で瞬間移動みたいなものが出来れば僕も遠慮なく受けるんだけどな。

 

「(我を使えば迅速に行動は出来るぞ)」

「(すんません。誰?)」

 

 最近、唐突に頭の中に声が聞こえてきてもびっくりしなくなってきている自分に驚きつつ、声の主に質問する。

 

「(私は”The Chariot”。NO.7、戦車のタロットカードだ)」

「(戦車、ねぇ?早いの?)」

 

 どうも戦車と聞くと遅いイメージしかわかないのだ。というか戦車と僕喋ってるの?…僕の能力は何でもありか。無機物でも話せるとは。まぁ能力だし、幻想郷だし、気にしないで置こう。

 

「(安心するとよい。主殿には我に乗っていただくのではなく、あくまで主殿の身体能力を我の正位置能力で強化し里に戻るのだ)」

「(戦車が人を乗せないとは、これ如何に。まぁいいか。で、能力を教えてくれる?出来るだけ早めに)」

 

 じゃないと、そろっと慧音さんが泣きそうでやばい。そりゃそうだ。さっきから黙りこくってるんだ。てか慧音さん以外と涙もろいんだな。と、それより戦車との会話の続きだ。

 

「(了承した。まず我の正位置能力は無限大の行動力。文字の通りと思ってもらって構わない。ただし、戦闘には向かない能力であると言っておこう。移動に関しては圧倒的な体力、脚力、判断力、土地理解力などが上がる。使い方は最初に移動したい場所を思い浮かべ発動するだけ。後は勝手に体が動き出すだろう。ただし、その移動したい点に動くまで何も出来ない。次に逆位置能力だが、これが中々癖があってな)」

「(癖?)」

「(うむ。自分勝手な焦りと言うのだが自分を含めた周り、そうだな、半径5m以内の敵味方関係無しにみんな焦燥感に駆られる)」

 

 つまりあれか。「早く○○しないと!」とかそう言う考えで埋め尽くされるわけか。錯乱にはいいのかもしれないけど自分もかかるのか。確かに癖、というか難があるな。まぁでも自分は移動しなきゃと焦るはずだからあまり構わないか。

 

「(了解。今度使ってみるさ)」

「(では我は体のメンテナンスを行ってのんびりするとしよう)」

 

 そう言ったかと思うと声が止んだ。顔を上げるともう駄目なんじゃないかと半ば諦めかけている表情の慧音さん。そんなに妖怪は強力になっているのか。早く安心させてあげないと。

 

「慧音さん」

「あぁ、大丈夫だ。この里は私一人で…」

「え?いや、僕残りますけど」

「え?」

「え?」

 

 2人して少し間抜けな顔をすること数瞬、どちらからともなく笑いが零れた。




閲覧ありがとうございます。
慧音さんマジ可愛い。
きもけーねとか言わせない。

たまには短く前、後書きを書いてみた。
次回も宜しくです。


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第37話 一人と十枚

今回少し短いです。申し訳ないです。
あ、土日はまた相変わらずシャドーボックス作ってました。
そのうち東方のカードでも作ってみたいなと思いつつヴァンガードのシャドボ作ってました。



本編どぞー


「あぁ、でも一つだけ条件があります」

「条件?いいぞ。受け入れられるものなら喜んで受けよう」

「基本的に外出等自由にしていただきたいのです。それにもしかしたらこの里に留まることができなくなる日が来るかもかもしれません。それだけです」

 

 慧音さんは「なんだそのぐらいか」と言って喜んで受け入れてくれた。それから話を聞いてみると僕は慧音さんの代理のようなものとして扱うらしい。まだ会って1日も経っていないのに僕に任せて良いのか。と聞いたら、「雪茂は絶対に裏切ったり、こちらに害を与えることは無いと信じている」と、妙に強い信頼を得ていた。なぜかは分からないがそこまで信頼されているのならそれに答えなければいけないだろう。

 そうして僕の里での生活は始まった。

 

 普段は里の中をパトロールもとい、散歩をし、気が向けば森の中へ向かい能力の修行をしよう。と簡易的な予定を組む。ちなみに家は慧音さんの家の近くに一軒空き家があるらしいのでそちらを使わせてもらうことになった。少し小さいが僕一人だけ使うのであれば全然問題のない大きさだ。仮にも里の守護をやっていると言うことで少ないながらも慧音さんからお給金が出るらしい。…ボランティアのつもりだったのだけれどくれると言うのなら貰っておく。

 と、その他にも聞きたいことがあったので聞こうと思ったのだが、慧音さんは学校があるらしくそちらへと向かっていった。やることがなくなってしまったのでパトロールをしようかと思ったのだがそれ以前に自身の能力についてもっと知っておいたほうが良いだろう。と思い先程説明されたこれからの自身の住まいに移動する。

 中はしばらく使われていなかったのか少しほこりっぽかった為掃除をし、ある程度綺麗に整える。家具などはあとで揃えるとしよう。

 掃除をしてから僕のやったことはまず今までに僕の前にでた、もしくは言葉を交わしたタロットカードの整理だった。申し訳程度に持ってきていた鞄の中からノートとシャーペンを出し、書き連ねていく。

 今までに出てきたのは、道化師みたいなNO.0”The Fool”、一番最初に会ったNO.Ⅵ”The Lovers”、姿は見ていないけどNO.Ⅶ”The Chariot”、なんだかんだで助けられているNO.Ⅷ”The Strength”。

 

「まだ4枚…意外と全員と分かり合える日が来るのは長そうだ」

「そうですね。しかしよく考えるとこの約二日の間に4人と会えていると考えれば早いほうなのではないでしょうか?」

「そうかもしれ、な、い…ってあなたは!?」

 

 独り言を呟くとそれに返事をしてくる女性の声。思わず気にせずスルーするところだった。僕の左のほうからその声は聞こえてきたのでそちらに目を向けるとそこには所謂金髪縦ロールの身分の高そうな女性がいた。もう慣れてきているのか驚きはしない。おおよそ僕の能力の一つだろう。雰囲気はまるで女王。かといってそこまで威圧的ではない。凛とそこに座りこちらを見ている。女性の顔は端正な顔立ちをしており翡翠色の瞳に吸い込まれそうな感覚を覚える。

 

「……人。ご…人。…ご主人?」

「あ、すみません。少しボーっとしてました。何の話でしたっけ?」

 

 ご主人と言われているが気にしないで置こう。彼女らの僕の呼び方は別になんでも構わないことにする。あまりにもひどい場合はさすがに直してもらわなければいけないが。まぁでもそこまでひどい呼び方をする人はいないだろう。…フラグかな?

 と、またボーっとしていたらしく目の前の女性に「ご主人!」と少し強めに言われ姿勢を正す。

 

「いいですか?私はNO.Ⅲ”The Empress”、女帝の名を冠するタロットでございます。あくまでタロットカードでの身分ですのでどうぞ気軽に接してください。まくし立てるようで申し訳ないのですが、私の正位置能力は情熱的な包容力。効果は対象を決め、その対象を何の力にも干渉されない障壁で守る能力です。簡単ですね。ただし、対象に選択できるものは生物でなくてはならず、尚且つ5人、または5匹までが限度となります。あと、守る対象に対する思いの強さで障壁の強度が上下します。ですので例えば5人守る場合、一人でも嫌いや、苦手と言った感情をもつ人物がいたならば強度は著しく下がります。そこらへんの弱小妖怪でも簡単に敗れるでしょう。まぁ何にも干渉されない障壁なのでそのぐらいのデメリットは無いと困りますね」

 

 と、女帝は説明するが、実際この能力はかなり有効だろう。効果範囲などは分からないが何にも干渉されない障壁、これはかなり有用だと思う。まぁ逆位置能力にもよるけれど。逆位置能力まで有用となれば女帝とストレングスの二つの能力があれば大抵何とかなりそうだ。

 

「さて、もう一つの逆位置能力は、感情的な嫉妬。これは相手によっては少し危険な能力になってしまいます。呼んで字のごとく相手はご主人に対して嫉妬心を無意識に抱きます。ここまでなら良いのですがその嫉妬の大きさによって相手の力が増減します。つまり、相手が嫉妬すれば嫉妬するほど強くなります。ただ、無意識に発動しているので相手はその嫉妬心をコントロールすることが出来ません。つまり、意図的に嫉妬することが出来ないので力の増減は一定を保つはずです」

「なるほどね。戦車といい、少し癖のある能力だね」

 

 まぁ正位置の能力が十分強いから何とかなりそうだけど。…まてよ、今思い出したけどラバースって能力の説明してなくないか?正位置と逆位置の能力名言っただけだったような…。今度聞いてみよう。と、考えていると女帝から願っても無い言葉が投げかけられた。

 

「そういえば、能力を使う目的で無ければ力の量を極限まで減らして多数のカードを呼べますがやってみますか?」

「お、複数出せるのなら是非に」

 

 「了解しました」と言って女帝は目を閉じる。瞬間先程まで抜けていたような僕の力が少し戻ってくるのを感じた。恐らく女帝の力のほとんどが帰ってきたのだろう。そして女帝は目を開け「0からⅨまでお願いします」と言ったかと思うと狭い部屋に僕を含めて11人。人が終結した。そのうち10人は僕の能力だけど。

 

「こ、こうやって10人集まるとなんかすごいね。始めましての人も多いし、なんか緊張するな」

「そう緊張するでな「私まだ寝てたかったん「主とは初対面じ「HAHAHAすごいね!この人の「こんな老いぼれがまだ力になれるとはのう」」」」」

「あんたら!一人一人話しなさいな!」

 

 と、見慣れない女性が声を出したかと思うと途端に静かになる。今まで騒がしかった室内が落ち着きを取り戻す。僕がその光景に呆けていると「自己紹介がまだの方、NO.の低い順から自己紹介を」と女帝が自己紹介を促す。

 確かに能力による疲れは出なかったが、別の疲れが雪茂を襲ったのは言うまでもあるまい。そしてその自己紹介が終わるのは約2時間後のことだった。雪茂はその事をまだ知らない。




閲覧ありがとうございました。
と言うわけで雪茂の里での暮らしの始まりです。
ついでにラバースが能力について説明してましたが、あれが全てではないです。
しっかり者の女帝さんが補足説明をしてくださります。
ありがたくお聞きしておきましょう(次回)。

ではまた次回も宜しくです。


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第38話 灯台は足元を照らせない

なんだかんだで4月になってしまいました。
そういえば、最近友人がこの小説を見たらしく感想を述べてくれました。

友「お前、21話書いてるときなんか嫌なことでもあったのか?」
うp主「いんや?どして?」
友「(こちらを憐れむような目)」
うp主「ん?」
友「俺は友達だからな?」
うp主「う、うん?」

最初聞いてたときはほんとに意味が分からなかったのですが、後々に友人のあの視線とかの意味をなんとなく理解しました。
だから一つ言っておこう。

私はノーマルだ!

本編どぞー。あ、ちょっとグロっちぃ表現入ります。まぁそこまで酷くないので大丈夫だと思います。


「長くない…?二時間て…。小学校とかの自己紹介とかですらそこまで行かないよ。」

「仕方ないじゃないですか。能力の説明。それに使い方。呼び方とか色々あったんですから。」

「最後のそこまで重要じゃないよね?」

 

 女帝の言葉に突っ込みつつ、先程聞いた能力等をノートに纏めていく。いくら自分の能力とはいえ全てを一回聞いただけで覚えると言うのは些か厳しいものがあるのだ。説明の途中に居眠りをしそうになった僕はきっと悪くない。説明が長いのがいけないんだ!とは声を大にしていえないけど。みんな僕のことを考えて説明してくれたわけだし。だけど、前に聞いた人(カード)の説明は省いても良かったと思う。

 

「それにしても便利な能力と使いどころが限定される能力がいくつかあったね。」

「そうですね。特に魔術師が限定的でしょうか。次点では戦車かと。」

 

 魔術師の正位置効果。チャンスの創造。魔術師、魔法使えよと突っ込んでも怒られない気がする。ちなみに効果は、その時の状況で変わるらしい。つまり、チャンスを作るのだ。そうとしか言いようが無い。しかもこの能力、正位置逆位置まとめての能力らしい。つまり、ギャンブル。何が起こるかわからない。それがこの能力。だから、魔法使えよ。お願いしますから。

 戦車は言わずもがな移動オンリーの能力の為、限定的な使い方に自然となってしまう。てか女帝話しやすくて良いな。普段から実体化してくれないかな。

 

「無理ですよ。いや、正確に言えば出来るのですけどご主人の力が尽きてしまいます。」

「また、心を…あ、そうか、ある程度心と考えがみんなには分かるんだっけ。」

「実体化しているとき限定ですね。実体化していないときは頭の中で話せますね。」

 

 つまり、女性のカード、ラバースやら、女帝やらを対象にピンク色の妄想なんてしまってほとんど筒抜け状態で伝わってしまったら色々とまずい。…やば、少し想像しちゃったよ。ほら、その証拠に女帝が引いて…ない?顔を赤らめて少し俯いている。…まさか、

 

「初心ですか?」

「っ!いいじゃないですか!そうですよ!どうせこの歳になっても恋愛とかそう言う行為とか知らないですよ!」

 

 ちょっと涙目になりながら言う女帝。少し可愛らしい。てかこの歳って言っても僕の能力だから歳とか関係ないんじゃ。そもそも、もし、能力が発現したときを誕生日とするなら、まだ1歳にもなっていない。つまりオールオッケーじゃないか?

 

「って、そんなことはどうでもいいんです!で、ご主人には明日から里のパトロールをしつつ能力を勉強、修行していただきます。」

「オッケー。さっき説明してた通りだね。」

 

 まず何より今日教わった分の能力の暗記。まずはこれからだ。次に力を抑えての能力発動。これは、力のコントロールの練習とどうやって使うのかを知る為にやるらしい。本来なら今日からでもやろうかと思ったのだが、外はまだ4時だというのに少し暗くなり始めていた。こちらの世界は日が暮れるのが早いのかな。そう思い外に出るのは控えるようにしたいのだ。なので、このノートをある程度纏め終わったら夕ご飯を作るつもりだ。ちなみに食材とかはすでに慧音さんがある程度用意してくれていた。感謝。

 

「よし、今日はありがとう。またよろしく。」

「えぇ、いくらでも頼ってください。もちろん私以外にも。それでは。」

 

 そういって女帝は消えていく。一緒に食べようと誘ったのだが能力はおなかが空かないからのと味覚が無いからいらない、だそうだ。少し寂しいが一人で作って食べるとしよう。

 そう思っていたら玄関の扉がこんこんと叩かれる音がする。お客さんだろうか。まだ、里の人たちと面識そんなに無いんだけどな。あ、ご近所の挨拶まだ行ってないや。明日やろう。そう考えつつ玄関の扉を開ける。

 

「はいはーい。どなたですかー、って慧音さんでしたか。こんばんは。」

「一応まだ、こんにちはだな。って、それは別にいいんだ。突然なのだが門番2人の姿が見えないんだ。それに私の教え子が2人、見当たらないんだ。もしかしたら妖怪に攫われてしまったのかもしれない。一緒に探してはもらえないか?」

 

 そう少し慌てた様子で慧音さんは言った。門番2人に教え子2人。門番は今の時間だと恐らく雪斎さんと康友さんだろう。そして慧音さんの教え子。つまり、まだ子供だろう。門番は里の外で見張りをしている為いつの間にかいなくなっていても分からない。ただ…。

 

「教え子さんが見当たらないと言うのは不思議ですね。」

「ちなみにその2人は朝親御さんのほうから具合が悪いから休ませてくれ。との連絡があったためその時はあまり気にしていなかったんだ。で、授業も終わり、一応様子を見に行こうと思ってその子らの家に行ったんだ。だが、そこには教え子はいなかった。」

「親御さんはいたんですよね?」

 

 もし、親がいたなら事情を聞くなり何でもすればいい。しかし、慧音さんは僕のところへ来た。つまり、情報が何も無く、手詰まりの状態なのだろう。そして僕の予想は当たる。家に親御さんはいたのだが、縛りあげられ耳栓、目隠し、猿轡、と完全に拘束されていた。その拘束を解き話を聞いたところ「何も分からない」だそうだ。朝、自分の子供が具合が悪いなんて連絡した覚えは無い。と言っていたらしい。

 

「能力、ですかね。」

「やはりそう思うか。」

「えぇ、まだこちらに来て日は浅いですがなんとなくそんな気がします。…慧音さん。とりあえず出て探してみましょう。」

 

 慧音さんが縦に首を振る。

 

「恐らくだが里の中にはもう4人はいないだろう。」

「どうしてそう思うんですか?」

「この里全てを調べたわけではないが、今まで聴取した中で4人の姿を見たという者が誰もいないんだ。」

「なるほど。」

 

 でも、もし犯人の能力が姿を隠す程度の能力とかだったらそうとは言い切れないな。そう考えるが今は慧音さんの後について歩く。もし進展が無ければ僕の意見を言おう。そう思ったときだった。とある一枚のタロットの能力を思い出す。

 

「ほいほい。呼びましたかな?雪茂殿。」

「うん。まだ呼んでないけど出てくれてありがとうございます。隠者さん。」

「ほっほ。そんな畏まらんでもよかろうに。」

 

 いきなり現れた、赤茶色のローブを身にまとった腰の曲がった老人。この人はタロットNO.Ⅷ The Hermit。先程僕が言葉にしたように「隠者」をつかさどる大アルカナの一枚だ。そしてその能力が今回のこの事件に役に立つだろうと思ったのだ。

 

「それじゃあ早速お願いしますね。」

「ほいよ。ちょっとまっとれ。」

 

 そう言うと隠者は目を閉じ瞑想のような形を取る。先程までいきなり現れた老人に警戒心を持っていた慧音さんだったが、僕と老人が親しげに話している姿を見て警戒を解いたのか、何も言わずに僕の隣で老人のことを見ている。

 数秒も経たないうちに老人は目を開く。しかし先程のような優しげな表情では無く、無機質な機械的な顔が張り付いていた。

 

「…助言は2つ。犯人は2人。そして、………灯台下暗し。」

 

 その灯台下暗しが何を意味しているのかははっきりと分からなかった。しかし、不意に嫌な予感が頭を、悪寒が背中を走った。

 隠者の正位置能力は高尚な助言。自分が欲している応えにつながるヒントをくれる能力。逆位置能力は悲観的な誤解。逆位置は簡単に言えば勘違いが起こりやすくなる効果。それを自身と周りの見方に付与する。本来ならば具現化していると逆位置能力はパッシブ発動なのだが、意図的に抑えることも出来るらしい。ただそれが出来るものと出来ないもので分かれるらしい。ちなみにラバースは抑えることができない。そのため最初の説明で具現化時は逆位置能力は常時発動と言っていたのだ。

 

「慧音さん!」

「どうした?」

「嫌な予感がします。とりあえず門番さん2人の家に!」

「良く分からないが、分かった!」

 

 そう言って僕らは先日僕の泊めてもらった家に向かって走り出す。まさか。そんなはずは無い。なんたって確証がないじゃないか。きっと大丈夫。

 そう心の中で呟きつつ走ること数分僕らは門番さんの家に到着した。外見は問題ない。慧音さんに家の周りを確認するように頼み僕は玄関の戸に手を掛ける。

 やめろ。後悔するぞ。そんな声が聞こえたような気がする。なぜか戸にかけた手が震える。嫌な予感がする。

 

ガラッ

 

 僕は戸を開けた。そこは特に変哲も無い玄関。ただ、一つ。そう。一つだけこの場に相応しくない、あってはならないものが落ちていた。

 

「-――――っ!」

 

 思わず叫びそうになり手で口を塞ぐ。落ちているのは本来人間の手についているもの。そう。人の指がそこに落ちていた。赤い小さい水溜りを作ってそれはそこに落ちていた。大きさからして恐らく子供のものだろう。見ていられなくなり顔を左に逸らす。その判断がいけなかったのかもしれない。顔を逸らした僕の視界に入ったのは靴箱。入ったときには気付かなかったのだ。ただの靴箱だったら良かった。しかし、閉められた扉の隙間から赤い液体が流れている靴箱はただの靴箱ではないだろう。

 開けようとする手が本能的に止まる。しかし、確認しておかなければならないだろう。意を決して僕は扉を開いた。

 

「う、ぶっ………。」

 

 汚物が込み上げてくる。それを必死に押さえた。喉がヒリヒリと痛んだがそんなことは気にならなかった。目に映るのは草履。子供の小さい草履。まだ人が脱いでいない草履。

 足首から下を切られた足がまだ草履を履いていたのだ。それが2組。つまり2人分の足だ。

 

「おーい。雪茂ー?と、こんなところいたか。どう、し―――――――――っ!」

 

 一瞬言葉を詰まらせる慧音さん。慧音さんも僕の見た本来ここにあってはならないものを見たのだろう。

 僕は吐き気からか、それとも一つの最悪の結末を想像した所為かは分からないが涙があふれ出ていた。そのため慧音さんの様子は分からない。しかし、慧音さんも僕と同じ想像をしてしまったのだろう。「あ、あぁ……。」と声にならない声を出している。

 

 

 恐らく、子供は…………死んでいる、と。




閲覧ありがとうございます。
多分この事件は後3話ぐらいで終わるはず。多分きっとmaybe。
また次回宜しくです。


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第38話 命のやり取り

感想でもあったようにグロっちぃ表現はこれから少し抑え目で行こうかと。
あ、でも完全にやめるわけではないです。あしからず。



本編どぞー。


目の前の非日常に驚き視界が揺らぎ体がふらつく。体を支える為に靴箱に手を着く。その瞬間ガタンと大きな音が鳴ってしまう。しまったと思いつつも体は動かない。あぁ、こんな場所で何をやってるんだ僕は。

 犯人がいる可能性が高い場所で腰を抜かしている余裕は無い。僕一人ではどうにもならなかっただろうが、慧音さんが必死に僕の体を支え立たせてくれる。しかし、もう遅かった。

 

「お、これハこレは。慧音さんと雪茂さんじゃアァありませんカ。」

「こんナ所でナにヲしてるンですカい?コんな所デ立ち話モあれナンで中に入りまセんカ?…クヒヒ。」

「…っ!」

 

 玄関に、僕らの目の前に門番2人が出てきてしまった。どこか人間らしさが抜けている喋り方をしながらこちらに近づいてくる。慧音さんは僕を自身の後ろへと隠す。恐らくまともに動けない僕を庇ってくれているのだろう。

 

「オやおヤ。なんデそんナニ警戒してルんでスカ?中でお茶でモしナガらゆッくりトお話なンテいかガでショうか?」

「誰が、そんな誘いに…っ!」

「これヲ見てもデスカ?…いイでスカ?アなタ方に拒ヒ権はナいんデす。いいカラ中ヘ入レ。ア、そウソう。慧ネさンは外で待っテイて下さイヨ?…順番におハナシしましょウ。」

 

 慧音さんが警戒の態勢を解かずに相手に抵抗しようとするが、門番の片方が居間へと通ずる戸を開ける。その光景を見た慧音さんは黙ってしまい、手を血が滲んでしまいそうなほど強い力で握り締める。僕からは見えなかったのだが恐らく子供がいたのだろう。

 しかし、子供を後ろ盾にするということはまだ生きているという可能性が高いだろう。まだ、希望はある。しかし、今の現状は絶望的だ。子供を人質に捕られ、2対1で話しをしようというふざけた申し出。余計なことをしたら恐らく殺されるだろう。僕も、子供も。

 …ここは大人しく従って置くしかないだろう。

 

「…分かりました。中へ入ります。」

「雪茂!?」

「大丈夫です。だから、慧音さんは待っていてください。」

 

 あぁ、これ死亡フラグビンビンに立ってるじゃないですか。やだー。そんな冗談を心の中で呟きつつ一人で居間の中へと入る。慧音さんがこちらを追いかけてこようとしたが、門番の一人に睨まれ悔しそうな声を漏らしつつそこに留まった。

 血の匂い。それが居間に入った瞬間の第一印象だった。その次に倒れている子供2人。指と足の無い虫の息の2人。顔や服の隙間から見えている肌には青黒い痣が出来ている。こいつらは僕と慧音さんをここに呼び寄せるためにこの2人をここまで痛めつけたのだろう。そして、恐らくそこまでして僕らを呼んだということは僕らを殺すつもりなのだろう。理由は分からない。しかし、そのような気がする。半ば諦めのような感情を感じつつ2人に話しかける。

 

「…それでお話とは。」

「ほほウ。この状況デよクそんナニ冷静ニいられマすネェ。虚勢でスか?」

「…諦め、ですよ。」

 

 そう呟くと門番2人の顔が一気に無表情になる。つまらない。無言でそう言われている気がした。その瞬間グチャ、とこの場では相応しくない音がなる。それが二回。伏し目がちにしていた視線をすぐさま音のほうへ向ける。

 だめだ。理解してはいけない。二人の頭が潰れているなんて。だけど理解してしまう。

 

「あ゛っぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁあああっぁぁああっ!?」

 

 自分の声とは思えないような叫び声。ふと頭の中に思い浮かんだのは絶望の二文字。やばい。逃げなければ。そう頭は判断するがまたも体は動いてくれない。だからせめてもの反抗として2人を睨みつける。

 

「いイですネェ。そノ表情ですヨ。ソの絶望に満ちタ表情。それヲ見たかったんデスよ。…なんてな。」

 

 唐突に門番の声質がガラリと変わる。忘れもしない。あの男の声。僕を殺人者にしたあいつ。僕の友人を殺したアイツ。

 

「…ジェイ、ド。」

 

 男の名前を口にした瞬間、門番だった男の顔がばらばらと崩れていき中から見覚えのある男の顔が出てくる。能力による変装だろうか。もう一人の門番から―――確かカロンだったか―――もう一人が出てくる。そちらは元々ずっと居間に入らず玄関のほうを見ていたようで、こちらからは顔は窺えない。

 

「ご名答。覚えてもらえてて光栄だ。んで、どうする?」

 

 嫌な笑顔を浮かべながらこちらに聞いてくるジェイド。

 

―――汝、命に触れることを厭わないか。

 

 心の中で誰かが囁く。

 

―――汝、人を殺し、心を保てるだけの精神は持っているか。

 

 分からない。

 

―――ならば自身の心を壊す可能性があるが目の前の男を殺し、子供を生き返らせる選択と、全てから逃げる選択。どちらを取るか。

 

「そんなの、決まってるだろ。」

「ほう。」

 

―――ほう。

 

 心の中の声とジェイドの声が重なる。そして僕はジェイドに明確な敵意を向ける。

 

「それが答えか。」

 

―――よかろう。我が力。お主に貸そうではないか。その自己犠牲も厭わぬ精神。気に入った。

 

 瞬間、目の前に一枚のカードが現れる。それを手に取り、無意識に叫ぶ。

 

「タロットNO.ⅩⅢ。DEATH!正位置効果、人生の清算!」

「がッ!?」

 

 いきなり首を押さえ悶えだすジェイド。そしてどこからとも無く手に大きい鎌を持った黒いローブを着た骸骨が現れる。恐らくこれがタロットNO.ⅩⅢ、DEATHなのだろう。そして無意識に発動させた人生の清算という能力。その情報が頭の中に流れ込んでくる。簡潔に言えば命を移し変える能力。ただし、命を取る相手は犯罪者で無ければならない。という制約がつく。また、罪の重さによりその命の価値が決まり、命を移し変える対象が増減する。つまり、こいつ、ジェイドの罪の重さが大きければ、命の価値が高ければ、先程の子供を生き返らせることが出来る。そう理解した。

 

「…貴様の人生は、ふむ。なるほど。これなら子供2人ぐらいなら生き返らせることが出来る。」

 

 その言葉を聞いた瞬間僕は安堵し、崩れ落ちそうになる。しかし、今回は気合で踏みとどまる。だが、全身から力が抜けていってしまう。床に倒れ視界が暗くなっていく。そんな中で「すまぬ。お主の力を使いすぎたようだ。」と声が聞こえた。起きたら説明を求め、ない、と。 

 

 

 

慧音side

 

 雪茂が中へ入って何分もしないうちに雪茂のものと思われる叫び声が聞こえる。その声を聴いた瞬間に中へ入ろうとするが透明な壁にぶつかり入れない。

 

「雪茂!大丈夫か!!」

 

 喉が裂けそうになるほどの大声を出すが中から反応は無い。

 

「私が無理にでも止めていれば…!」

 

 最悪の事態を想定し先程まったく動けなかった自分自身を攻める。その時、透明な壁の目の前にいつの間にか門番ではなく一人の少年が立っていた。見覚えの無い少年。だが、そんなところにいては危険だ。そう判断し声を掛けようとする。しかし、少年から発せられる不気味な気配を感じ、後ろへと跳ぶ。

 瞬間目の前の空間からパンッとはじけるような音がする。少年はわずかに悔しそうな顔をする。

 

 そして慧音は理解する。この少年も敵だと。

 

 そう感じた瞬間今度は中から強大な力を感じる。恐らく雪茂のものだろう。と力の雰囲気からそう判断する。しかし、どこか恐ろしい不気味な気配も感じる。果たして大丈夫なのだろうか。外から心配をすることしか出来ない自分を恨む。と、少年が目を見開き居間のほうへと視線を向ける。まるでありえないことが起きたかのような表情だった。瞬間、見えない壁が音を立てて崩れるのを感じた。実際に崩れたかどうかは見えないので分からない。手を伸ばしてみる。

 

「―――当たらない。…今しかない!」

 

 居間へと飛び込む。少年はどうやら呆けているようだ。こちらに少しも意識を向けていない。居間の中に入ったと同時にドサリという音が聞こえる。そちらを見ると雪茂の倒れる姿。駆け寄りたい気持ちを抑え、部屋の中の状況を確認する。

 倒れている雪茂、それに同じく倒れている見覚えの無い男、血まみれの床に横になっている2人の子供。足も指も無事だ。そして私の後ろでぺたりと座り込む少年。まずはこの少年を捕らえておいたほうがいいだろう。身近にあった麻縄で腕と足を縛っておく。その間も抵抗は無く、どこを見ているか分からない目をしていた。

 次に雪茂と見知らぬ男と子供の確認。雪茂は息がある。だが、もう見知らぬ男はすでに死んでいた。外傷は無い。雪茂に聞いたら分かるかもしれない。これは後回しだ。最後に子供。2人とも気を失っているだけのようで息があった。傷も一つも無い。心配しなくても大丈夫だろう。さすがにこの人数を運び出すのには些か骨が折れる。そのため私はこのまま誰かしら気がつくのを待つことにした。

 

 

 

―――ジェイド・ブラック:死亡  死因:命の譲渡 




閲覧ありがとうございます。
第二のジャック・ザ・リッパー(笑)さんがお亡くなりになられました。随分あっさりと死にましたがこの男は元々このくらいの扱いの予定でした。

更新速度遅くてごめんなさい。(スライディング土下座)
また次回も宜しくお願いします。


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