リリカルでメカニカル (VISP)
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第一話

リリカルなのは世界でロボオタが転生。テロで殺された両親の仇討をしながらロマンを目指す話。


 リリカルでメカニカル プロローグ

 

 

 

 巷で見かける転生者になってしまった。

 

 特に神様だとか特典だとかは持ってない。

 そもそも神様という超常の存在が人間如きに謝罪する訳もない。

 とは言え、単に前世の記憶を思い出しただけでは何ともしようもない。

 だが、何とかしないと詰む。

 

 だってここ、治安がクッソ悪い事で知られるミッドチルダなんだもん。

 その中でもテロ組織が跋扈するクラナガンとかもうね、お先真っ暗。

 

 魔導士とかいう頭悪い連中が跋扈してる海、お前らそれ大丈夫なの?って心配になる位に予算分捕られてる陸という時空管理局が三権分立に喧嘩売りながら存在している世界なのだ。

 

 いやさ、つい半世紀前までは戦国時代も斯くやってな具合の混乱期からここまで立て直した三脳の優秀さについては脱帽なんだけどさ。

 あの三脳は創業者であって、次代を担う人材じゃない。

次世代の育成と交代の準備を疎かにしたのがあの三脳の敗因と言える。

 

 まぁそれはさて置き。

 問題なのはオレ(今世でも男でした、ちょっと残念)が現在、日本よりも遥かに治安の悪い地域に在住しているという点だ。

 何とか自衛手段を確保しない事には安心できない。

 取り敢えず、頑張って運動して飯食べて勉強して遊んで寝る日々を過ごす事にする。

 

 あ、言い忘れてたけど、うちの両親はデバイスマイスターで、管理局にも卸してる会社に勤めてる優秀な技術者だそうな。

 どーりで家の中に大量の工具やら訳分からん部品類が散らかってる訳だ。

 

 でも男の性というか、嘗て忘れ去った厨二と言うか、脇腹のロマン回路と言うべきか、そういったものが疼くので、両親の仕事とかパーツカタログとかはそれとなく見させてもらおう、うん。

 

 

 

 ………………………………

 

 

 

 新暦55年 4月2日

 

 今日から日記を始める。

 ただし、毎日じゃなく印象のある出来事だけを抜粋する。

 

 つい一週間前の事だが、両親が死亡した。

 これは他世界から流入したテロ組織によるものらしいが、詳しい事は今現在管理局が捜査しているとの事。

 胸の内にぽっかりと穴が開いた気分だが、呆然とばかりしていられない。

 今のミッドはレジアス中将(予定)が剛腕を振るってテロというテロを撲滅しているが、それに反撃する様にテロは激化の一途だ。

 オレの両親はそれに巻き込まれて、買い物中に無差別爆破により殺害された。

 この10年を共に過ごしてきた人達の死は悲しい。

 悲しいが、悲しんでばかりもいられない。

 賢しらで可愛げの無いオレを可愛がってくれた二人の仇を取る。

 なんでも二人がいたショッピングセンターを吹っ飛ばしたと目されるテロ組織は高ランク魔導士をそれなり以上に抱え込んでいるため、ミッドの現有戦力では首都航空隊位しか太刀打ちできない。

 そして首都航空隊は海の所属である。

 つまり、陸の地上本部とは頗る仲が悪い。

 その結果、情報の非共有とかアホみたいな事態が平然と起こっているのだが、それはさておき。

 平凡に過ごす事以外は特に目標の無かったこの人生に大きな目標が出来たのだ。

 何としても仇を討つべく、戦闘訓練、それも対高ランク魔導士向けのを受けねばならない。

 こうしちゃいられないとばかりに、オレは低年齢向けの管理局の訓練校へと応募した。

 

 幸いと言うべきか、両親は保険にもしっかり加入していたので財産はそこそこのものになった。

 これがあれば、数年は軽くどうにかなるだろうと思われる。

 んで、財産管理だが、両親の上司が後見人となって面倒を見てくれるそうな。

 普通の下町の頑固そうなおっちゃんだが、両親の結婚の際には仲人もしてくれて、割とよく酔いつぶれた父を連れてきてくれる人なのでオレとも面識がある。

 

 おっちゃんは心配してくれてか一緒に暮らそうと言ってくれたが、あっちは今は娘夫婦と同居して漸く孫が生まれたばかりなので忙しいだろう。

 なので、無理言って全寮制の訓練校へ行くことにした。

 渋られたが、俯きながら「二人の仇を討ちたいんです…」と言ったら翌日にはOKされた。

 今はちょっと卑怯だったかなと思う。反省はしている。

 

 

 

 

 新暦55年 5月1日

 

 現在、訓練校に入って1か月目。

 入校当初は100人以上はいた訓練生は現在70人を切る程に減っている。

 まぁこの学校にいる連中はどれも高ランク魔導士なんて間違っても言えない連中だし、必然的に身体能力の重要性の比重が高くなる。

 ただし、先にも言ったがここは低年齢向け。

 相応の体作りの訓練とは言え、余程の根性か理由でも無ければ踏ん張る事は出来ない。

 今現在残ってる連中の殆どはそうした訳ありだった。

 となると、オレに構うなとか思春期拗らせた連中も出るのだが、「お前それ高ランク魔導士でもないのに連携無視とかふざけんな」という有り難いお説教と共に教官に修正されるので大丈夫だろう。

 

 そんなオレだが、主にデバイス談義とかで割と交流を多く取っている。

 自前のを持ってない奴は支給品だが、それでも整備や個人向けの調整やカスタムとなると聞かざるを得ないからなー。

 特にデバイスの整備は必須科目だし、必然的に話題に上がる事が多い。

 

 斯く言うオレのデバイスは銃、それもアサルトライフル型の見るからに質量兵器じみたデザインである。

 ミッドの質量兵器アレルギーのせいで人気の低い銃型デバイスだが…敢えて言おう、銃火器万歳であると!

 つーか弓矢や剣や槍なら兎も角、よく杖なんかで狙いをつけられるなと小一時間問い詰めたい。

 銃がなんであの形状してるか知ってんの?発射時の反動を軽減して確実に命中するためだよ?

 つーか杖ってそもそも棍棒が祭祀の道具に発展したもんだぞ、つまり元々戦闘向けじゃないの!

 しかも射撃魔法!何が射撃だ、弾速遅すぎだしで光りまくって目立つわ!

 唯一の利点と言えば、誘導とか細かい調整が効き、弾丸自体が大きいから当たり判定が大きい事位か。

 つーわけで、現在自家用に組んだ射撃魔法をメインにしてます。

 通常の三倍もの高圧縮・高密度の魔法弾を高速で連射するという実用一点張りです。

 誘導弾?んなものを別口です、一つ辺りの魔法のリソースは有限なのです。

 てーか誘導のために余計な処理領域使う位なら連射した方が負担が無いんだよ!

 シンプル イズ ベスト。これが真理なのです。

 

 

 後、デバイスマイスターの勉強も平衡して続けている。

 マルチタスク覚えてからこっち、勉強速度が爆上がりしているオレにとって、自前で好き勝手デバイスを弄れる技術はバッチ来いである。

 今日も今日とてアサルトライフル型のデバイスを対物ライフル風にカスタマイズして他の訓練生にブッパしたり背後から奇襲されたりと汗と血と涙の入り混じる青春を謳歌している。

 やっぱ特化型は汎用性が足りんなるなぁ…。

 

 こんな感じに割と人生を謳歌しているオレであった。

 

 

 

 

 新暦55年 6月19日

 

 ねんがんの ぜんしんがたデバイス をかいはつした !

 

 嘘ですすいません。

 まだ基礎フレームとパワーアシスト機能しか出来てません…。

 なんでそんな物作ってるかって?

 そりゃまぁ来るべく対高ランク魔導士戦を目指してだよ。

 この訓練校、2年からは低ランク向けの訓練生も他学年や高ランク向けの士官学校の連中としょっちゅう模擬戦するんだわ。

 勿論実戦を想定してるんで、非殺傷魔法だけど盛大に撃ちあったりします。

 これ、当たり前だが評判悪いんだわ。

 数と連携の訓練校、質の士官学校て感じに。

 更にこれに低ランクと高ランク魔導士の格差、それぞれのOBである陸と海の確執がミックスされてどうにもならん。

 まぁ多分これ、お偉方は今の内に組織内抗争と実戦に慣れさせてるんだろうけど…前者は本来なら要らないんだよなぁ…。

 んな事して余計な諍い作んなよボケカス。

 お蔭で現場が余計な苦労背負い込むんだよアホかと。

 

 が、上空からの圧倒的火力で一方的に潰されるのも癪なので、頑張って全身型デバイスを完成させる所存です。

 年末に一度おじさんの所に戻って意見聞いとこう。

 後、ジャンクパーツとか分けて貰えれば嬉しい。

 

 

 

 

 新暦55年 9月29日

 

 ねんがんの ぜんしんがたデバイス がかんせいした !

 

 マジです。遂に完成しました。

 ちゅーてもまだまだ荒が目立ちますがね。

 それでも独力でやってた時よりも遥かに完成度が高い。

 信頼性を最重視し、肉体の可動範囲を損なわず、通常のバリアジャケットや身体強化魔法よりも高効率、又は低燃費で同じ効果を出す。

 言うは易し、行うは難しでしたよ、えぇ。

 

 具体的な構造は簡単で、基礎フレームに各種アシスト機能を付けた上で、装甲を被せている。

 更にこの上から対魔法防御特化のBJを被せて二重の装甲にする。

 この各種アシストだが、主に医療用器具のものをカスタムして使用している。

 病人やリハビリ患者向けの魔力を使用して可動するパワーアシスト器具の類なのだが、本来搭載されている安全リミットの上限を大幅に引き上げた上で耐久性を向上させ、戦闘に耐え得る構造にしている。

 また、装甲に関してだが、これはBJの特性を利用している。

 通常のBJは対物理・魔法がそれぞれ5:5と同じだけ分けられている。

 だが、実際の戦場ではどっちかの場合も多い。

 そのためのBJ調節機能を利用して、どちらかに敢えて偏らせて、防御性を高める訳だ。

 要はRPGなんかにあるメタ装備な訳だ。

 武装だが、愛用のアサルトライフル型の握りを調整したものと中古の銃型市販デバイス、更に左腕部の固定兵装に背面にあるウェポンキャリアと中々に多彩だ。

 このレイアウトで分かるかも知れないが、こいつは前世の自分の聖典のあるゲームに登場した機体のデザインを使用している。

 そう、こいつのはゲシュペンスト。

 なお、型式はPADー01(試製鎧型デバイス1号機)である。

 

 さて同級生諸君、こいつの試験運用を手伝ってくれたまえ。

 なお、断った奴は来月のデバイス関連課題には手を貸しませんからそのつもりで。

 絶望的な表情での命乞いも何処で習ったか知らん色仕掛けもささやかなお小遣いを使った買収も通じません。

 じゃあ行くぜ!コール、ゲシュペンスト!

 

 

 

 

 なお、掛け声無くても装備できます。

 

 

 

 

 新暦56年 4月21日

 

 漸く訓練校2年生である。

 なお、以前も言ったが訓練校の敷地には他にも管理局向けの訓練施設が複数ある。

 その一つが士官学校、所謂エリート向け、将来士官になる事が約束されている主に高ランク魔導士の卵が入る所だ。

 んで、新学期一回目の、待ちに待った合同訓練である。

 結果についてだが…惨敗である。

 オレ個人は4名を不意打って戦闘不能に追い込んだのだが、他の連中は一人二人を物量と連携で何とか倒したものの、流石に初見ではそれ以上は出来ず、じわじわと討たれていった。

 最終的に模擬戦の制限時間が終わる頃には訓練校側は一人残らず負けていた。

 完敗である。

 しかし、実のある敗北だったと負け惜しみではなくそう思う。

 

 今、オレのゲシュペンストに足りないもの。

 それは速さ、固さ、攻撃力、反応速度、そして糞度胸とその他諸々が足りない!

 教官からはデバイスで魔導士の戦力の底上げっていう思想は間違っていないとの事だが、そういった設計思想も考えにゃならん。

 何せこの試作一号機、汎用性・信頼性重視なのでこれと言った特徴の無い当たり触りのない代物なのだ。

 もうちょい色々尖らせないと高ランク魔導士の相手は辛い。

 それに、現在の構造のままだと収納できないから置き場所に困る(切実

 いやさ、性能UPのために余計な機能とか全部削っちゃったもんだから…今、オレの部屋は半分ゲシュちゃんとで埋まってます。

 同室にしょっちゅう怒られてます(悲しみ

 

 仕方ない、屋外に置いても大丈夫にするか、置き場所を確保するか…。

 

 

 

 

 新暦56年 5月4日

 

 今日は士官学校の連中を相手に机上演習である。

 要は指揮能力の訓練なのだが……現在、我が方が6:4で優勢です。

 っつーのも、士官学校組は結構な割合で脳筋(というか魔導筋?)が多く、座学や基礎訓練を軽視する連中が多いらしい。

 無論、カリキュラムとしてはちゃんとしてるんだろうが、そこまでやり込んだりしないのが多いとか。

 お前ら、そんなんだと前線から後方勤務になった時に辛いぞ?

 今は士官学校の非魔導士コースの連中が盛り返してるが、本当にこいつら大丈夫なのだろうかと柄にもなく心配になってしまった。

 

 そう言えば、この事で高ランク魔導士組を叱りつけてた非魔導士コースの女子、あんまりにもガミガミ言ってて委員長気質っぽい。

 髪や制服とかもキッチリ着こなしてて実にそれっぽい。

 結構な美少女だったが、あんなガミガミ言って恨まれんのだろうか?

 ……気づいてなさそうなぁ。

 

 あ、そうそう。

 先日から続けていたゲシュペンストの改修がひと段落した。

 ただし、まだ実戦での調整を続ける必要があるけど。

 具体的な内容としては今まで

 暫定的にPAD-02ゲシュペンストと呼称しつつ、今後もデータを取っていこうと思う。

 

 

 

 

 新暦56年 5月13日

 

 前回の日記の委員長だが、やっぱりと言うべきか、高ランク組との折り合いが悪いらしい。

 と言うのも、同期の連中から聞いたのだが、彼女の父親は陸の重鎮であり、基本的に海に行く連中とは折り合いが悪いらしい。

 なお、彼女の名前はオーリス・ゲイズ。

 あの陸の過激だが超優秀な治安組織の鑑の様な人の娘であり、彼女自身も文官としてだが相当に優秀らしい。

 

 さて、なーんでこんな話をしたかと言うと…彼女、校舎裏で高ランク魔導士の中でも柄の悪い連中に囲まれてました。

 よく校舎裏の射撃訓練場を利用してるオレは偶然ソレを見つけまして。

 後はもう勢いでしたね。

 一応即座に同期の連中に念話して教官達にチクッてもらったんだが、間に合いそうもなかったんで介入した。

 即効で制圧したんだが、高ランクだけあって固かったので、試作の手持ち式杭打機でシールドごと叩き潰す羽目になった。

 まだ反動制御の調整が甘いらしく、手首を痛めちまった、泣きたい。

 教官らが駆け付けてから連中を引き渡してその日は終わり。

 なんか呼ばれた気がしたけど、今は疲れてるんで後日にお願いします。

 

 

 

 

 新暦56年 6月2日

 

 以前馬鹿やらかした連中が退学処分になった…のだが、こっちもやりすぎと言う事で反省レポート5枚提出を命じられた。

 本当なら高官連中の子息を再起不能な程度にボコればこっちも退学なのだが…どうやらオーリスの父である髭達磨もといレジアス中将(予定)が手回ししてくれたらしい。

 本人にもお礼言われたし、中々万々歳な終わりだった。

 なお、レポートの中身は制圧時の反省点を挙げ、どうすればより効率よく制圧できるかを纏めて提出した。

 

 後日、レポートが倍になった。

 

 あ、そうそう。

 インテリジェントデバイスのコアだけを貰ったので今度改装して使用しようと思う。

 …言っとくけどギャグじゃないよ?

 

 

 

 

 新暦56年 7月11日

 

 あれから一週間、どうにも先日の事件から高ランク連中が絡んでくると思ったら、如何やらオレがこの前のボンボン共に敢えて喧嘩売らせて退学に追いやったという噂が流れているらしい。

 知らんがな、と言うのは容易いが、うっとおしいので全員正面から制圧していった。

 とは言え、こっちは高ランクじゃないので、模擬戦時に多対多か一対一の時だけだが。

 勿論袋にしようとした奴らもいたが、そういったのは正面から念入りに潰したから大丈夫だろう。

 具体的にはゼロ距離から顔面に銃弾を気絶するまで叩き込む。

 まぁ非殺傷設定なら大丈夫だよね!

 

 あ、そうそう。

 レジアス中将(予定)にデバイスの事聞かれたんで基礎設計図とか渡しといた。

 とは言え、まだまだ荒があるから、本職にとってはあくまで新しいアイディアになるかどうかだろう。

 

 ちなみに現在のPAD-02 ゲシュペンスト二号機だけど、01に比較して基本性能と信頼性の向上に努めた。

 具体的に言うと、先ず全身の各部をそれぞれ独立したアームドデバイスに分割、更にこれを効率的に管理するためのインテリジェントデバイスのコアを足す事でデバイス本来の収納機能を取り戻し、分解整備も容易になった。

 また、分割された部分はそれぞれが独立して使用できる。

 ただ、インテリジェントコアにブッコんだ管理システムはまだまだ未熟なので、繰り返し調整が必要だろう。

 更にフレームと装甲材を武器型デバイス(ストレージ・アームド問わず)に使用される特殊合金に変更して強度UP。

 お蔭で素手の格闘戦でもマニュピレーターが壊れたりしなくなった!

 そして対高ランク魔導士を主眼とした武装の開発。例、手持ち式杭打機、スラッシュリッパー、ニュートロンビーム等。

 最後に、デバイスに内蔵されている魔力受容器の大容量化とカートリッジシステムの搭載。

 カートリッジに関しては原作でも出てるけど、魔力受容器ってのはデバイスや魔力式の兵器の多くに搭載されている一時的に魔力をため込んでおくためのコンデンサの事だ。

 魔法を使う際、魔導士の魔力がデバイスのこれに流れ込んで、プログラムで魔力を加工して魔法という現象を作り出す訳だ。

 このコンデンサの大容量化は以前から模索されていたが、次元航行艦とかなら兎も角、携行兵器であるデバイスでは大型化しずらい。

 のだが、オレのゲシュは全身装着型なので、容量の縛りが緩いため、割かし簡単に実現できたのだ。

 更にカートリッジシステムも、既存のリンカーコアに魔力を追加する方式ではなく、このコンデンサーに追加する方式に変更したので、リンカーコアへの負担も大幅に減少した。

 ただその分魔法使用時の魔力使用に関する処理が少々面倒になったが、それは許容範囲という奴だろう。

 

 それと、これはオレの問題なのだが…ぶっちゃけ戦闘が怖い。

 冗談じゃないんだなこれが。

 今現在はあくまで訓練で、大怪我する可能性はあっても、死ぬ可能性はかなり低い。

 しかし、両親の仇を取るとなれば、相手は質量兵器万歳、非殺傷設定何それ美味しいの?なテロリストだ。

 殉職の可能性は常に襲い掛かってくる。

 正直、そんな連中の相手はしたくない。

 だが、しない訳にはいかない。

 ではどうするか?

 

 (以下、様々な数式や考察が書かれているが全て黒く塗りつぶされている。)

 

 

 

 

 新暦56年 8月1日

 

 とうとう訓練校二年目の後半、つまり卒業間近になった訳だ。

 今現在の戦績だが、はっきり言って伸び悩んでいる。

 こっちの対高ランク向けの戦術や兵装はネタ切れ感が否めない。

まともな空戦戦力が自分位しかいないので制空権は取られっぱなしで自分はマークされている。

 他の陸士候補が決して無能な訳ではない。

 寧ろ彼らは彼らなりに努力をし、必死に食らいついてきている。

 

 だが、自分は伸び悩んでいる。

 それは咄嗟の時の糞度胸、そして判断力によるものだと思う。

 純粋な魔力量は入学当初のBからAまで増えたし、身体能力も同様。

 戦術・デバイス知識も増え、連携の仕方も心得た。

 足りない。足りない。何かが足りない。

 

 捨てたりない?

 

 

 (また様々な術式や数式、考察で埋められている。)

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 魔導士にとって、ランクとは強さの目安であり、同時にその才能をはっきりと突き付けてくる。

 基本、高ランク魔導士に低ランク魔導士は勝てない。

 無論、物量を揃えればある程度対抗できるが、AAAランク以上、つまり一対一で戦えば都市一つが壊滅する程の者を相手にした場合、ほぼ不可能に近い。

 だが、何事も例外は存在する。

 例えば、未だ成長し切っていない高ランク魔導士の卵や高齢や健康上の理由により魔導士ランクが低下した者等だ。

 そしてもう一つが魔導士ランクこそ低いものの、戦闘者としての技量が高く、AやBといったある程度高ランク魔導士に迫れるだけの能力を持った者。

 時に彼らは持ち前の技量を生かし、AAAランクオーバーの魔導士ですら撃破し得る。

 技量という面で管理局内でも優秀とされる者が多いのもこのランクである。

 だが、彼らの戦いが称賛される機会は少ない。

 それは彼らの戦いの多くが泥臭く、凄惨なもので、高ランク魔導士の持つ華やかさとはかけ離れているため、宣伝がしにくいのだ。

 つまり何が言いたいかと言うと…

 

 「ジェット・マグナム!」

 「ぐあぁぁぁぁ!!」

 「ジェームズー!?」

 

 確固とした対策とかが無いと、高ランクでも経験が無ければガンガン撃破されてしまうという事だ。

 

 「リーとキャシーは弾幕形成!奴を近寄らせるな!」

 

 高ランク魔導士の多くは空戦、又は対空攻撃手段を持っている。

 そのため、いきなり単騎で突貫してきた馬鹿を沈める位は十分対応できる、そう思っていた。

 

 「くそ、なんで当たらないんだ!?」

 

 色とりどりの各種の射撃魔法が周囲を照らす中、空に墨を流した様な全身鎧が地上を滑る様に移動していく。

 ただ地面から10cm程宙に浮くだけの魔法と高速移動魔法を掛け合わせて地上を滑走するその姿からは目にも映らぬ程の弾速と驚く程の精度で砂利程度の射撃魔法が連射される。

 当たらなければ誘導弾で。

 そう判断して放たれた誘導弾は速度差により追い切れず、或は急激過ぎる横移動により回避されてしまう。

 未知の魔法に未知のデバイス、未知の戦法に、管理局を支える未来の高ランク魔導士達は有効な手を打てずにいた。

 とは言え、初見殺しの魔法や戦術などはどんな分野にも往々にして存在するものであり…

 

 (やはり誘導弾だけじゃなく、射撃魔法も弾速が低すぎる。)

 

 一方、この状況を作り上げている側は、冷静に戦況を分析していた。

 

 (現状のまま推移すると、17分後に魔力切れ。初撃で一人落とせたが…!)

 

 自分のいる周辺一帯を薙ぎ払う形で放たれた砲撃魔法に、黒い全身型デバイスも大きく飛び退く事で回避する。

 直後、今までのそれを超える空対地攻撃に一気に周囲が耕され、被弾し始める。

 如何に早く、動きが読み辛くとも飽和攻撃を凌ぎ切る事はまだ出来ない。

 しかし、全身装着型としての特性、即ち防御用の魔法を展開せずともある程度の防御力を持つ事から、瓦礫や余波程度ではダメージが通らない。

 装甲表面をBJで覆い、その下に更に実体装甲がある事もあり、低ランク魔導士であっても直撃以外は然したるダメージにはならない。

 

 (モードを徹甲榴弾へ。)

 

 努めて冷静に兵装を選択、保持する突撃銃型のデバイスの銃口を標的の中で最も遅く、固い者に向け、セミオートで放つ。

 

 「単発だけで墜ちるk、がッ!?」

 

 着弾し、敵の張ったシールド魔法を貫いてから、一拍置いて爆発。

 多重殻弾を参考に作成されたこの魔法は純粋な貫通力では本家に劣るが、威力と衝撃による隙を作るという意味では優れている。

 後は至近距離での爆発に態勢を崩した所を通常弾頭を集中して仕留めるだけだ。

 

 「次。」

 

 淡々と、まるで流れ作業の様に、本来なら一方的になる筈の模擬戦は、全く逆の結果となって終了する事となった。

 

 

 ―――――――――――――――――――――

 

 

 

 新暦56年 11月7日

 

 苦節三か月、遂に完成してしまった。

 PAD-03 ゲシュペンスト三号機

 ただし、これは量産しない。つまり、オレ専用機という事だ。

 レジアス中将(もう少しで)には先日のPAD-02のデータを既に渡してるので、是非とも活用していただきたい。

 まぁ何かのネタ位にはなるとは思う。

 それはさて置き、このPAD-03に搭載されているシステムだが、モーション・セレクト・システムと言う。

 処理能力の高いインテリジェントデバイスを一つと医療用魔法があるだけで良い。

 インテリジェントの役割はPAD-03の各種サポートの他、一定のモーションを登録、即座にデバイス全体に指令を出す事だ。

 これにより、全身鎧型デバイスのパワーアシストを利用して、登録したモーション通りの動きをする事が出来る。

 それはミリ単位で正確で揺らぎも発生しにくいし、勿論ながら緊急時はキャンセルして他の動作に移る事も出来る。

 要は人体を3DアクションゲームのPCの様に操作可能になるのだ。

 そして医療用魔法だが、こっちは単にストレスを軽減させ、リラックスさせる割と一般的なものだ。

 ただし、一般的なものよりもかなり強力で、恐怖や高揚といった当たり前の情動すら抑制しきってしまう。

 このデバイスへの動作登録及び医療用魔法を組み合わせれば、デバイスと魔力さえあれば誰でも即席でそれなりの兵士になる事が出来る。

 そして何より痛みや恐怖、高揚によって判断を誤る事が無い。

 疲労や痛覚を感じないだけで消えている訳ではないが、それを数値化して管理しているため、限界まで無理が効くのも長所だ。

 だが、管理局上層部とも繋がっていると実しやかに囁かれるテロ組織を少数で潰すとなれば、これ位は必要だ。

 これが卒業前に形になって良かった。

 実戦前に高ランク魔導士相手に試験が出来るのだから。

 ただし、戦闘に出す前に幾度か起動実験をした方が良いだろう。

 

 

 

 追記 実験は成功。

 ただし、副作用として使用後は数時間、デバイスを展開していなくとも感情が抑制される模様。

 今後の検証と改良が必要と考えられる。

 また、量産・汎用仕様ではなく、今後を視野に入れ、高ランク向けの特化仕様機の開発が急務と考えられる。

 

 

 

 

 新暦57年 2月17日

 

 間もなく卒業というこの時期に高ランク組から模擬戦の申請があった。

 既に単位としては十二分に行っているのだが、どうやら先日から黒星が続いている状況に耐えかねたらしい。

 卒業間際に問題起こしたら進路に響くのだが、彼らは解っているのだろうか?

 

 模擬戦はいつも通りの低ランクと高ランクに分かれての同数、制限時間内に相手よりも多く生き残っていれば勝利となる。無論、全滅させるのも有りだ。

 とは言え、既に互いに殆どの手札は晒し済み。

 こっちもゼロシステムは使用している。

 なので、ここに来て新型(の更に試作機)のお披露目とする。

 PAD-03-B ゲシュペンスト強襲突撃仕様。

 PAD-03に各種突撃用の装備をブチ込んだ機体、つまりあのアルトアイゼンの前身となる機体だ。

 装備は以前と違って小口径化による反動低下・弾倉増加、更に右腕部固定式で安定性を増した杭打機、肩部マシンキャノン、左腕にシールド&三連マシンキャノン、脚部外側に設置したクレイモア(ほぼ使い捨て)、いつものアサルトライフルに強襲用ブースターのみ。

 勿論戦法はただ只管突撃あるのみ。

 ただし装甲はそのままなので一撃離脱戦法のが向いてる。

 これだとなんかフリッケライ・ガイストの方が近い気がする(汗

 んで、それをゼロシステムにより死を感じぬ兵士が搭乗する、正直言って近づきたくない。

 まぁ使いづらい杭打機は以前からオプションとしてしょっちゅう使っていたので詳細なデータも多いし、十二分に使える。

 他のに関しては既に模擬戦で使用済みの奴を調整しただけだ。

 ただ、強襲用ブースターは初見だからデータが少ない。

 そのため、地上をかっとぶ装甲の塊と杭打機で事故が起きるかもだが。

 

 まぁ、論より証拠、先ずは試してみよう。

 

 

 

 

 新暦57年 2月18日

 

 先日の模擬戦だが、勝ったが負けた。

 やはり初見ではアサルトの加速に対応が遅れ、それで3割を喰われたのが敗因だった。

 まぁ逆に小回り効かないので遠間から牽制されてる内に味方がどんどん落とされたが(汗

 結果的には勝利したが、明らかにオレがおかしい事を指摘され、医務室で検査を受けさせられ、デバイスも一時取り上げられた。

 まぁ普通に感情あった奴がある日いきなり無表情になるとか怪しまれても仕方ない。

 んでまぁ色々発覚した訳なんだが…使ってるのは医療用魔法で、後は特に法に抵触しないので、規制のしようがない。

 しかも密かに通常のゼロシステム未搭載のPADが陸で研究中らしく、この一件は表沙汰にする事も出来ないらしい。

 まぁリラックス魔法はちょっと出力が強すぎるとの事なので、そっちはもう少し効果を下げるとしよう(何時でも上げられるが)。

 現在の保護者であるおやっさんにも怒られたが、PAD自体は気に入ってくれて自分でも弄ってくれるとのこと。

 後でデザイン元になりそうな資料(=各種娯楽作品)を渡しておこう。

 

 そう言えば、なんであの時オーリスがオレを怒ったのだろうか?

 

 

 

 

 Side オーリス・ゲイズ

 

 (なんて事…!)

 

 一人だけの自宅、その自室のベッドの上でオーリスは後悔で頭を抱えていた。

彼女が思い悩んでいるのは今日あった訓練校の最後の模擬戦での出来事だった。

 

 キョウスケ・ナンブ

 

 以前、彼女を助けてくれた訓練生だ。

 両親がテロに殺された孤児という、ミッドでは割と普通の育ちの彼は、両親の仇討のために管理局員を目指して訓練校に入ったのだと、何時だったか聞いた事がある。

 普段の彼は積極的に他者と絡もうとはしないが、己の得意なデバイスの事となると語り始めて、割と童顔なのを気にしていて、普段は暢気過ぎる位の少年だった。

 それが今日、演習で豹変した。

 それまでも何処か前に出過ぎな気はしていたが、その日はまるで捨て身であるかのように同期の高ランク魔導士の卵らへと突貫していた。

 砲撃、誘導弾、直射、照射、散弾、バインドetc…。

 それらを前に、たった一人で切り込み、陣営を崩し、勝利をもぎ取っていく。

 普段は高ランク魔導士(弱)を相手に数名程度が限界だったが(彼のランクからすればそれでも十分異常だが)、この日だけは10人は落としていた。

 普段は中距離からの射撃中心に巧みに立ち回る彼が、滅多にない接近戦を行い、更には自滅する様に前に出る。

 明らかにおかしいと感じて、彼のメンタルチェックを教師陣に申し出たが…案の定、危険な事をしていた。

 

 モーション・セレクト・システム

 より本質を突く呼び方は動作選択及び情動域欠落化装置、つまりデバイスの持ち主の情動を消し、極めて合理的な判断を下せるようにした上で、一定の動作をデバイスに登録し、それを選択する事で練度の低い魔導士でも一定以上の戦闘力を強制的に発揮させるシステムだ。

 感情を消去する事で恐怖で鈍る事も高揚で出過ぎる事も無い、使用者を極めて効率的な戦闘機械へと変貌させるシステム。

 模擬戦が終わった時、自作の全身型デバイスを脱いだ彼に表情はなかった。

 まるで彼自身が機械になったかの様な、完全な無表情。

 それもその筈、彼はその時システムの副作用によって感情が殺されていたのだ。

 このモーション・セレクト・システム、一見極めて強力なシステムだが、相応の欠点が存在する。

 それは感情消去がデバイスを解除した後も暫く継続する事だ。

 本人曰く数時間程度で収まるらしいが、医師はもしこのまま彼が使用を続けた場合はもっと伸びる可能性がある事、或はほぼ完全に感情が消える可能性もあると告げ、システムの一部、情動欠落機能の凍結を申し出た。

 彼はそれを受け入れたが、そのロックはその気になれば何時でも解除できる程度のものだった。

 つまり、彼は必要ならば今後も使い続けるつもりだという事だ。

 この事は直ぐに地上本部の重鎮たる父の耳にも入れたが…生憎と万年人手不足の地上本部ではどうなるか分からない。

 それに、管理局にだって全員が善人という訳ではない。

 何だかんだと予算を絞りつくしていく海とか海とか本部とかだ。

 だが、感情が無い人など無人兵器に等しい。

 何とか彼に使用を思い留まってほしい。

 けど、何時か聞いた彼の本音が脳裏を過る。

 

 『オレは…両親を殺した奴らを殺さないと、前に進めないんだ…。』

 

 まるで呪詛の様に吐かれた言葉を今も覚えている。

 だが、それでは何も残らない。

 復讐は空しいなんて綺麗事を言うつもりはない。

 でも、それではいけない。

 

 「それじゃ、あなたが幸せになれないじゃない…ッ」

 

 知らず知らずに流れた涙で視界がぼやける。

 あぁ、こんな事で泣いてしまうなんて、やっぱりまだまだ小娘だ。

 こんなんじゃ父に顔向けできやしない。

 

 

 

 

 やがて、泣き疲れた少女は眠りについた。

 その胸に抱く悲しみが、何の感情に起因するのかを知らぬままに。

 

 

 

 

 

 




なお、オーリスの聞いたセリフは某狙撃兄さんのパクリです。


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第二話 孤狼、大地に立つ

今回は日記形式無し。

推奨BGM 「鉄のラ○バイ」


 

 新暦59年 某日 夜

 

 数あるミッドチルダ再開発地区の一つ、そこに居を構えている者達がいた。

 大型の商業施設だったそこは、現在テロリスト達の拠点として機能していた。

 屋上駐車場には機関砲が設置され、駐車場にはテントと共に武装化された一般車両が何台も屯し、現在も多数の歩兵が周辺を警戒している。

 だが、彼らの顔はどれもこれも何処か怯えや焦り、警戒が走っており、とてもではないが多数の装備を擁したテロ集団らしい傲慢が見えない。

 

 

 ヴゥー!ヴゥー!

 

 

 そこに、唐突にサイレンが鳴り響いた。

 このサイレンが意味する所は二つ。

 一つは敵の侵入。

 もう一つは…

 

 

 ドドォォンッ!!

 ズガァァンッつ!!

 

 

 敵の襲撃である。

 

 「状況知らせー!」

 「車と砲台がやられた!弾薬に引火するぞ!」

 「持ち場につけ!迎撃しろ!」

 

 敵の先制攻撃により、貴重な戦力である武装車両が破壊された。

 しかし、彼らは逃げ出そうとせず、正規の訓練を受けていないにしては素早い迎撃行動に出る。

 全員知っているからだ、逃げ出そうとした所で逃げられないと。

 

 「来たぞー!」

 

 闇夜に紛れる形で、拠点の正面からその素早さに比して殆ど音もなく、滑る様に「亡霊」が近づいてきた。

 AD-01 ゲシュペンストmk-Ⅱ

 つい半年前、正式に時空管理局ミッドチルダ地上本部にて採用された初の全身装着型デバイス。

 それが総勢4機、関節部に防塵用コートを施した上に夜間迷彩を施した亡霊達が獲物目掛けてやってきた。

 視認の僅か数秒後、一斉に拠点の各所から銃弾と魔法が放たれる。

 てんでバラバラに発射されるものの、弾幕という点では正しい攻撃が開始された。

 しかし、地上を高速でホバー移動する上に両肩のスラスターを用いた横移動、更に規則性を見いだせない巧みな機動を持つゲシュペンストには余程の腕前か運が無ければ当てられない。

 しかも、テロリストが使用している小銃ではゲシュペンストmk-Ⅱの装甲を抜く事が出来ず、どれも空しく弾かれていく。

 更にもっと悪い事に、彼らの兵器の中で有効打となりそうなものは屋上に設置された機関砲と車載の機銃、そしてロケット砲のみ。

 前者二つは既に破壊され、ロケット砲はそもそも高速目標に当てられるものではない。

 それでも幾人かが武器庫から持ち出し、せめて爆風に巻き込もうと狙いを定めるが…

 

 ズギュゥン!ズドドォン!

 

 精密な遠方からの支援狙撃・砲撃魔法により、あっけなく無力化された。

 そして、遂にゲシュペンストmk-Ⅱが標的を射程内に収めた。

 

 ヴドドドドドドドド!

 

 拠点目掛けて射撃魔法が連射され、次々とテロリストが沈黙していく。

 だが、彼らとしてこの位は予測していた。

 

 ズガァッ!!

 

 装甲を傘に着て一方的に蹂躙していた亡霊達の不意を突く形で、突然黄色の砲撃魔法が発射された。

 持ち前の機動性で直撃こそしなかったものの、巻き込まれた2機の第一装甲であるBJが一瞬で剥がされ、内部構造にもダメージが発生した。

 

 「狗共が!これ以上はさせん!」

 

 拠点の屋上から姿を現した男による砲撃魔法、明らかにこの戦場で最大の火力の持ち主にゲシュペンスト隊は即座に反撃を放ち…呆気なく男が展開した結界魔法に阻まれた。

 

 『敵高ランク魔導士を確認!推定魔力量AAAランク!』

 『支援要請!使用魔法を徹甲弾へ!』

 

 途端、遠方から放たれる狙撃・砲撃魔法と4機分の徹甲弾が集中し、敵高ランク魔導士に命中した。

 しかし、その結界を破るには至らない。

 どうやら機動性を捨てて防御・火力に長けているらしく、結界には罅も入っていない。

 

 「はははは!痩せ狗共め!我らが神の贄になるがいい!」

 

 哄笑と共に20近い誘導弾が放たれ、亡霊を打ち砕かんと降り注ぐ。

 

 『誘導弾、来ます!』

 『スモーク!散布対空迎撃!』

 

 対し、ゲシュペンスト隊はそれを持ち前の機動性を生かしながら、散弾迎撃とスモーク散布で対処する。

 特にこのスモーク、デバイス等の素材として使用される魔力絶縁体を粉末状にしたものを使用しているため、後に登場するAMF程ではないが魔法の減衰効果を持つ。

 ゲシュペンストはこれらを後先考えず使用して、多数の誘導弾を全て回避、迎撃してみせる。

 

 「猪口才な!」

 

 その姿に泡を飛ばしながら叫ぶ男は、砲撃魔法の準備に入る。

 非殺傷設定など入れていない、直撃すればビルすら貫通し、倒壊させ得る一撃を受ければ、如何に装甲が厚い全身型デバイスと言えど殉職は免れない。

 砲撃を阻止するために火線を集中させるが、刻一刻とチャージが完成する砲撃魔法に全員がそれぞれ焦りを滲ませる。

 

 

 

 所で、ある喧嘩師が言う「スピード×握力×体重=破壊力」という公式をご存じだろか?

 

 

 

 これは必ずしも当てはまる訳ではないが、殊素手か拳に近いものであれば大体当てはまる。

 但し、握力はあくまで拳の固さを示すものなので、武器が有りの場合は単なる筋力に置き換えても構わないだろう。

 さて、スピード、重量、パワーを兼ね備えた一撃が極めて強力である事、それは事実である。

 だから、もし総重量500㎏近い物体が、音速に近い速度で、力の限りぶん殴ってきた時。

 相手にどれだけの衝撃を与えるのだろうか?

 

 

 

 拠点の後方から、屋上で砲撃魔法を構える魔導士目掛けて真っ直ぐに加速、そして藍色の夜間迷彩色に身を染めた全身鎧がその右腕の杭を真芯目掛けて叩き付けた。

 

 ドガッ!!

 

 「、っ!?」

 

 その衝撃は先ほどまで鉄壁を誇っていた障壁を一瞬にして粉砕した。

 鋼鉄の塊は更に加速しながらBJを貫通、その内部にある肉体へと到達しながら、拠点の屋上にあった給水塔へと向かっていく。

 加速を加味すれば大型トラックの衝突をも超える衝撃を受け、魔導士の肺から全ての空気が強制的に吐き出され、視界がブラックアウトする。

 そして、給水塔へと激突する瞬間…

 

 「トリガー。」

 

 ドンッッ!!!!

 

 右腕部に内蔵された大型の回転式カートリッジシステムが起動、一般的なカートリッジの倍以上の魔力を一気に供給する大型弾が撃発する。

 その一撃はBJを貫通した杭を通ると同時にその魔力の9割以上を敵魔導士の肉体に強制的に流し込む。

 如何に高ランクの魔導士でも、一度に制御し切れる魔力量には限界があり、得てしてそれは総魔力量に大きく劣る。

 また、どんな魔法でも味方からの支援魔法を防ぐ事は出来ない。

 プログラムの隙に付けこんだ必殺の一撃。

 無論、非殺傷設定があるためギリギリで死にはしないが、リンカーコア及び全身に魔力を流す伝達系が過剰な魔力の流入によりズタズタに引き裂かれる。

 更に背中もほぼ空だったとは言え給水塔への衝突から、脊髄損傷は免れない。

 だがしかし、これでも本来の全魔力を物理的衝撃力に変換する一撃よりも遥かに軽症なのだ。

 例え全ての肋骨が折れ砕け、その一部が内臓に刺さっていても、本来の仕様よりも軽症なのだ。

 凡そ即死しない方が稀な程の致命傷に比べれば、と頭に付くが。

 

 『既に増援部隊は排除した。残敵の掃討を行う。』

 『『『『了解!』』』』

 

 こうしてまた一つ、ミッドの平和を乱す輩は消え去った。

 

 

 

 

 

 新暦59年、とある実験部隊がミッドチルダ地上本部に設立された。

 その部隊の戦力は隊長含め陸士7人だけ。後は後方支援要員か技術者のみ。

 レジアス少将肝いりの新型の全身装着型デバイスの試験小隊、それがこの部隊が設立された理由だった。

 2年前、ある訓練生が生み出し、その後実戦証明してみせた全くの新型。

 その質量兵器染みた装備群は確かにこの一年間に強力な地上本部の戦力として機能してきた。

 だが、それと同時に悪名もまた野火の様に広がっていた。

 

 曰く、死地から必ず生還する。

 曰く、民間人ごと犯罪者を撃った。

 曰く、不死身の化け物。

 曰く、鋼鉄の孤狼。

 

 そんな様々な逸話から、彼は何時しかこう呼ばれるようになった。

 管理外世界のとある伝承から取られた不死身の英雄、ベーオウルフ。

 そして、彼の旗下となった部隊に送れられた名はベーオウルブズ。

 鋼鉄の鎧を身に纏い、ミッドチルダの、クラナガンの治安を守る地上本部の猟犬達。

 

 彼らの戦い方は苛烈だった。

 時にテロリストを人質ごと撃ち抜き、時に建物ごと砲撃し、時に重要物資ごと吹き飛ばした。

 無論、テロリスト達も黙ってはいない。

 戦闘ヘリ、戦車、装甲車、雇われ魔導士、自爆テロ等々。

 思いつく限りの手段を用いて排除を試みた。

 だが、出来なかった。

 攻撃すればする程、より苛烈に彼らは犯罪者を攻撃する。

 時には局内からもやり過ぎとの声が上がるが、その圧倒的戦果と損耗率の低さから黙殺される。

 そして、詰み上がる戦果は地上本部全体への全身型デバイスの配備決定という形で結実する。

 

 今現在、地上本部はその設立以来、初めてと言ってよい程の強大な戦力を備える事に成功していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『由々しき事態だな。』

 『だが、この検挙率上昇は良い傾向でもある。』

 『あの全身型デバイス、地上以外では使えんのか?』

 『高ランク魔導士にとっては、既存デバイスの方がコスト面では優れている。メリットよりもデメリットの方が多い。』

 『使用している魔法も通常のデバイスでも使用可能だ。そう角を立てる事もあるまい。』

 『とは言え、地上の手綱を離す訳にはいかん。』

 『ではどうする?』

 『…奴を使うか。』

 『無限の欲望か?どの程度にする?』

 『彼奴らがつまらん欲を抱かん程度に、だ。過ぎる様なら別の手を考える。』

 

 

 

 

 

 『やれやれ、ご老人方も無茶を仰る。』

 『ドクター、如何いたしましょう?』

 『丁度良い玩具が出来たからね。彼らに流すとしよう。あの英雄殿とも因縁ある相手だ。必ず食いついてくれるさ。』

 『畏まりました。ではそのように致しましょう。』

 『あぁ、頼むよウーノ。』

 

 

 

 

 

 



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第三話 狼煙

最近続いてるけど完結まで走り抜けられるかめっちゃ不安(汗


 

 新暦59年 8月○日

 

 小規模テロ組織を殲滅。

 多数の質量兵器不法所持並び売買、公務執行妨害、傷害罪、殺人罪、他多数により逮捕。

 ウルフ3が被弾、軽傷を負うも数日で回復見込み。

 

 

 今日も今日とてクラナガンの平和を守るため、ロマンと勇気と熱血と根性を胸に頑張ります。

 でもクソ熱いのでうだる。

 AD着てればエアコン(温度調整)効くんだけど、今基地施設のエアコンが点検中で夜までこのままだとか。

 うだー……。

 表情筋はモーションセレクトシステムの副作用で麻痺して久しいけど、感情も感覚もあるんです。

 そんな所にお近くのスーパーにかき氷セットを発見、購入して基地に持ち帰り、いざかき氷タイム!という所で鳴り響く警報。高まる殺意。これは許せまへんわー。

 

 今日のmk-Ⅲは血に飢えておるって具合にテロリストをしばきました。

 

 

 

 

新暦59年 8月×△日

 

 エアコンが効いて涼しい室内なら書類仕事も苦じゃありません。

 パッパと終わらせてまた図面引こう。

 うへへへへ次はロマン溢れる特機でも…と思ったらお客さん。

 何かと思えば最近キャリアウーマンとして順調にキャリアを積み上げてるオーリスさんじゃありませんか。

 え、弁当作った?どうせ栄養補助食品ばっかりだろうからって?

 いやーすいませんねぇ、給料の殆どは貯金と研究のどっちか行きなんで、食費は切り詰めまくってるんですよー(揉み手

 

 

 

 …あれ、これ餌付k(ry

 

 

 

 

新暦59年 9月×日

 

 手配中の高ランク魔導士を確認したため、急遽都市部で戦闘を開始。

 その際、戦闘の余波で被害が出るも作戦目標は達成。

 罰則として始末書3枚及び来月給料3割削減。

 

 

 いやー参った参った。

 まさか非番の時に指名手配中の魔導士に会うとか。

 即効で通報して追跡に移ったんだけど、その時手持ちのデバイスがナハトしか無くてねー。

 あ、そう言えば書いてなかったけどナハトの待機形態は腕輪、何時でも着けられるからね。

 んで、やっこさんが大通りから一本ずれた所で近くの陸士隊が来たんだけど…あいつら、周辺住民の避難も終わらない内に投降勧告するんだもん、マジで馬鹿だね。

 最低限として通路の封鎖はしてたけど、んなもん高ランク魔導士に在って無きが如しじゃん。

 まぁ即効で蹴散らされてたので、その瞬間に一般人の振りして後ろから突撃→ステークして終わらせました。

 助走距離が短かったんでちょっち不安だったけど、不意を突けたからいけました。

 最初からそうしろって?だから周辺住民も避難させてないのに(ry

 

 

 追記、何でもその陸士隊の隊長は本局高官の息子だとか。死ね。

 

 

 

 

 新暦59年 9月○▼日

 

 質量兵器及び違法薬物の密輸組織の取引現場を強襲、多数の犯罪者を逮捕。

 途中、質量兵器を所持した犯罪者並びに雇用された高ランク魔導士の抵抗に会うも制圧。

 現場である港湾の倉庫街が壊滅するも、人的被害は皆無。

 罰則として始末書5枚並びに次期ボーナスを5割削減。

 

 

 いやー今日は大変だった。

 まぁ、今回の被害は大体オレのせいだしね、給料カットも仕方ないけどさ…これ以上は流石に将来の貯蓄に響くのですが(汗

 今日相手にした魔導士は近代ベルカ式、つまり原作にも登場したミッド式でベルカ式を再現した魔導士だね。得物は剣でした。

 速さ重視で割とヤバかったんだけど、その分そこまで固くなかったんでマシンキャノンで牽制してから近接距離になった所をクレイモアで一気に削って終わらせました。

 まぁ地上走ってりゃ軌道は予測できるしねぇ。

 ただ、その際に結構な量の流れ弾が発生しまして…ほらクレイモアって制御しきれない位の散弾撃つからさ。

 密輸してた弾薬に当たって現場が吹っ飛んじゃった☆

 すいません反省してますごめんなさい許してくださいオーリスs(ry

 

 

 いごこのようなことがないようにはんせいしたいさくをねります

 

 

 

 

 新暦59年 10月◇日

 

 さて、そろそろ給料がヤバいのでいい加減に普段使いの機体を作るかぁ。

 最初はさ、用途毎にゲシュペンストかナハトで分けてたのよ。

 でも最近はゲシュペンストだとオレの動きに追従できないのさ。

 反応速度重視でチェーンはしてるんだけど、それにしても最早誤魔化してる感が否めないし。

 かと言って量産仕様のゲシュペンストmk-Ⅱじゃダメだし、早けりゃいいのかってヴァイス系列は流石に紙装甲過ぎて嫌だし(部下乗ってるのに失礼だとは思うけど)

 と言う訳で、目指せゲシュペンストmk-Ⅲ!

 先ずは要求仕様から考えようか、うん。

 

 

 

 

 新暦59年 10月×▽日

 

 大体mk-Ⅲの要求仕様?が出来たので書く。

 ・反応性、追従性の向上

 ・後の機体の開発元となるだけの発展性

 ・対高ランク魔導士及び質量兵器戦を想定

 大体こんな感じだけど…ぶっちゃけいつも通りな気がする(汗

 まぁ現在のナハトとゲシュではオレにとって追従性が悪いので、今後の基礎となる新型機は欲しかったのもあるし、丁度良かった。

 と言う訳で開発スタート!

 

 と思ったら緊急連絡で出動です。クソが!

 

 

 

 

新暦59年 11月○日

 

 久しぶりに日記を書く。

 前回は情報部から大規模テロの垂れ込みがあったのでその対応に大わらわだった。

 幸いにも初動が早かったから最終的には鎮圧できたものの、また暫く忙しい日々が続くだろう。

 取り敢えず、技術班に要求仕様だけ投げておこうそうしよう。

 また暫くは忙しい日々なので職場に缶詰だろう。

 あぁ、癒しが欲しい…うちの隊員は全部曲者揃いだから癒しが足りない…。

 

 

 

 

 新暦59年 12月○○日

 

 小規模テロ組織の拠点が判明したため、これを強襲。

 損耗は軽微なるも、戦闘員の一部が流通していない全く新型の質量兵器を保持しており、今後も調査続行が必要。

 

 

 ふぃー、今日も今日とてお仕事お仕事。

 ただ、レールガンやコイルガンといった電力で可動する対装甲兵器をテロリストが持ってたのでちょっとビビった。

 まぁ当たらなければどうと言う事もないし、当たっても個人携行可能な出力には限度があるのでBJを貫通して、通常装甲にちょっと傷がついた程度だった。

 それでも普通の魔導士やAD相手にはヤバい代物なので、鎮圧後はそれをお持ち帰りして技術班にポイーしておく。

 彼らならきっと解析&魔改造をしてくれるに違いないと思いながら吉報を待つ。

そうそう、以前要求仕様投げた新型の試作機が出来たらしいので、今度行ってみるとしよう。

 

 追記、いきなりオーリスから飲みに誘われた。

 日々の愚痴をマシンガントークで語られてオレは本当にタジタジでした。

 いやーこの時は自分が鉄面皮であって良かったと心底思ったね。

 後、なんだか知らん内に来年の年始に一緒に出掛ける事を約束されました。

 あれー?

 

 

 

 

 新暦60年 1月1日

 

 今日はオーリスと一緒に近くのベルカ教会に行った。

 何でも第97管理外世界出身組から広まった「初詣」なるものらしい。

 地球、しかも日本まであるらしいから今度一度行ってみるとしよう。

 いやしかし、オーリスったら何時の間に振袖なんて買ったんでしょうね。

 マジで似合ってますね、うん。

 髪も結い上げてて項が大変セクシーです、はい。

 今までに無い程動揺しちゃったので、急遽モーション・セレクト・システムを限定的に使用、感情を押し殺す。

 オレは紳士、紳士なのです。

 例え前世アラサーまで生きて女の子との関わり絶無だとしても、だからこそ紳士であらねばならないのです。心頭滅却、色即是空。

 

 

 追記、地上本部に侵入者あり。標的は技術部であり、新型のADが奪取される。

 今後、ベーオウルブズはこれを行ったテロ組織の追跡及び逮捕、可能ならば奪取された新型ADの奪還乃至破壊を目的として行動を開始する。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 新暦57年末、ある事件が起きた。

 第41管理世界で起きた大規模テロ。

 現地固有の宗教組織、その中でも管理局による管理世界への加入に徹頭徹尾反対していた過激派によるそれは、同世界全体に広がる程であり、即座に次元航空隊から制圧のために次元航空艦3隻からなる大部隊が派遣された。

 だが、現地住民の多くを味方に付けていた、又は消極的賛成を取り付けていたテロ組織の監視網により艦隊所属の魔導士の動きは筒抜けだった。

 最終的には高練度の魔導士を持つ艦隊側の敵司令部への奇襲作戦を決行、敵味方に多くの戦死者を出しながらもテロ組織の主力並び首脳部に壊滅的な打撃を与える事に成功し、事態は収束した。

 しかし、彼らは知らなかった。

 宗教とは追い詰めれば追い詰める程に狂信的になるのだと。

 事実、その後も第41管理世界では散発的なテロが止まず、未だに情勢は不安定なままだったし、管理局を標的としたテロ活動も止むことが無い。

 特にここ数年のミッドチルダにおいて彼らの活動は活発化し、大規模な破壊活動の兆候も見られたが…その多くが事前に叩き潰されている。

 それは彼らの存在を心底憎悪する孤狼が睨みを利かせているからに他ならない。

 

 だが、機密事項とされた故に多くの人々は知らない。

 そもそも、この孤狼こそがテロリストらにとって、最大の怨敵であり標的である事を。

 彼が件のテロ組織の首脳部を壊滅させた事を。

 それを知る者は、ほんの僅かにしかいない。

 

 だがしかし、確かに存在するのだ。

 孤狼に復讐を誓う狂信者達は。

 

 

 

 

 『首尾は上々の様だね。』

 『はいドクター。目標の奪取は成功、試作型ガジェット群の実戦データも採取できました。』

 『うん、全機自爆した上で監視カメラも無効化したし、これで足が着く事は無いだろう。』

 『既に奪取したデバイスは例の残党に送りました。遠からず動くかと。』

 『…パーフェクトだ、ウーノ。』

 『感謝の極みです。』

 

 

 

 




 Q 勤務歴3年未満の小僧のデバイスが量産されたのって…。
 
 A 実戦で大戦果挙げててヤバい部分はオミット出来るから。



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第四話 亡霊VS亡霊

第4話

 

 地上本部技術班を襲撃したテロ勢力、その多くは無人機械であり、戦闘した警備の陸士の話で「戦闘中に魔法の威力が低下した」等の証言から、極めて高い技術力を保有した未知なる敵勢力である可能性が高い事は解った。

 詳細は無事だった技術班の解析待ちだが、目下の問題は新型ADが奪取された後、とあるテロ組織に流された事が容易に判明した事だった。

 容易に、と言ったのは地上の情報部が調査した結果、これ見よがしにと残された痕跡や情報を探った結果だとか。

 

 「罠だな。」

 

 ベーオウルブズの出撃前ブリーフィングでの言葉に、隊員達が揃って頷く。

 全員が「あ、これアカン奴や」と各々が感じ取っていた。

 

 「よって、今回は全員にオプションの自由搭載を許可する。整備班にも声をかけておいたから、明日にでも出撃が可能だ。」

 

 「取り敢えず全身に反応装甲とスプリットミサイル4発は定番だろー。」

 「反応装甲+ナイフも肩部正面装甲に二本ずつ、主兵装はガトリング砲に背部には大型弾倉で…。」

 「通常の探査魔法だけじゃダメみたいですし、電子戦装備詰みますね。」

 「反応装甲にー背部にはチェインガン×2でー。」

 「じゃーその分スラッシュリッパー貰うよ。」

 「僕は普段から重いんですけど…取り敢えず、正面にだけ反応装甲つけて、足回りに高機動装備と対誘導兵器チャフ載せますね。」

 

 部下達がわやくちゃしながら装備プランを練る姿に、キョウスケも内心で(オレも色々いじりてぇ…!混ざりてぇ…!)と考えるが、生憎と表情筋が死んで久しいのでその顔面が動く事は無い。

 

 「予想される戦域は荒野、そこに廃棄された企業の実験場だ。既にその企業は倒産し、利権者もいない。」

 

 つまり、やり放題だ。

 その一言に、隊員達は拍手喝采を挙げた。

 

 (いやね、こいつらだって最初はオレの方針(犯罪者潰すためなら多少の被害は~)には反対だったんだよ?

 でもうちの隊が投入される場所って、大抵はガチヤバな所なんで、人質の安否とか気遣おうにも無理な状況が多いんだ。

 それに災害救助なら兎も角、テロリストの人質なんて大抵は死ぬしね☆

 まぁコラテラルダメージっって事で、非殺傷設定での攻撃は有りとして戦闘します。

 まぁ質量兵器じゃどう足掻いても死ぬんだし、目や重要臓器とかは避けてるんだから、感謝してくれても良いのよ?)

 

 「だが油断するな。相手は慣れてないとは言え、奪取されたS型は極めて高性能だ。高ランク魔導士向けに開発されたADで、防御力ならオレのナハトに並ぶ。生半可な攻撃では奴を倒せん。各自、出撃前にスペックデータに目を通すように。」

 

 真面目な事を話してるのに鉄面皮の下でそんな事を考えているとは本人以外誰も知らないが、取り敢えず恙なく会議は終了した。

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 唐突だが、以前オレは隊員達に「局の方針」についてどう思っているか?と問われた事がある。

 現状に対してはYesと答えた。

 だって、管理局のトップって有能なんだもん。

 実質的なトップ=三脳だが、あれらの能力の高さは現状が示している。

 明らかに怪しい敵勢力からの攻撃、しかしソレはこっち側のトップが何らかの形で暗躍している。

 つまり、どちらも管理局のコントロール下にあり、無秩序な混乱が起きない事が決まっているのだ。

 外道な所業は多いものの、最初から出来レースなら、被害は想定の範囲内で終了する。

 そして人々に管理局の力を、必要性を示す事にもなる。

 

 魔法という周辺被害が比較的少なく応用性の高い技術を用いて、周辺の次元世界の秩序と安定を確立するために、周辺世界の危険物を排除する。

 この場合の危険物とは質量兵器、大量破壊系ロストロギア、非魔法技術の一部(原子力等)の事だ。

 結果として、現在知られている次元世界の多くは時空管理局の下に危険な兵器・技術を無くしながら、そこそこ平和になったのだ。

 核兵器やらアルカンシェルに匹敵する魔導砲がブッパされる世界よりも、現在は遥かに平和だ。

 たった50年かそこらでここまで平和な世界を築いてみせたその手腕には脱帽する。

 だが、それも現在の拡張政策が続く限りは何時かは破綻するだろう。

 魔導士の人口は少ない。

 現在確認されている次元世界の中ではミッドが最多であるが、それとて全人口の何%と言った所なのだ。

 治安を維持するためには絶対的にマンパワーが足りない。

 かと言って、周辺世界の何所かに大量破壊系のロストロギアが眠っていたら…となると、不安で夜も寝られなくなるのがその当時の生き証人となる三脳他老人達だ。

 故に拡張政策を止められず、外へ外へと広がっていく。

 

 きっと、三脳達はスカリエッティが誕生せずとも、何時か破滅していただろう。

 ガンダムにおけるティターンズと一緒で、組織の規模が広がり過ぎた故に末端の行動を管理できずに破綻してしまう。

 それを理解している故に彼らの体制を揺るがしかねない存在は例え体制側であっても容赦しない。

 

 故に彼らはオレを許しはしないだろう。

 

 魔導士、魔力を持った人々に課せられる高貴な義務。

 力を持った者達へそんな世相を醸造する事で、管理局へと奉仕させる。

 つまり、オレのADの様な技術は連中にとっては邪魔な訳だ。

 低ランク魔導士でも戦力化可能とする技術は現場としては大歓迎だが、体制側としては邪魔になるし、余り把握していない所からいきなり戦力が湧き出る等、管理面で一大事だ。

 それならもっと初期に潰されそうだが、流石に最高権力者が一訓練校の一訓練生にまで目を向けてられる程暇ではないし、恐らくだがレジアス少将が手を回していたのだと思われる。

 まぁあの御人もオーリスのダチ+万年戦力不足の陸ってな要素があったからこそだと思うけどね。

 つまり、今後はもう少し自重しろって事だよね、うん。

 この一件さえ超せば暫くは大丈夫だろうし、頑張りますか。

 

 

 ……あれ?今気づいたけどオレって微妙に死亡フラグ建ててない?

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 荒野に爆音にも似たローター音が響き渡る中、間もなく夕暮れという時間に、ソレは現れた。

 

59式兵員輸送ヘリ改

 

 外見上は既存の兵員輸送ヘリよりも多少ゴツくなっただけだが、換装された装甲は元は次元航空艦にも採用される代物で、近年次元航空艦隊で進められている次世代艦の配備と共に廃艦となった艦からまだ使えるものを流用している。

既存のヘリに比べて高い防御力を誇り、特に側面・底面の装甲が厚くなっている。

 また、機体前部の左右のドアを倒す事で機銃座を展開、支援射撃を行える等、兵員輸送のための手段とされてきた地上本部のヘリ運用をより柔軟にした機体だ。

 最近では漸く一般部隊にも配備が開始されたそうだが、それはさておき。

 肝心なのはこのヘリが今、戦地に向けて飛んでいるという事だ。

 

 「ウルフ6、先行します。」

 

 言葉と同時、この中で一番若く階級の低い陸士が言葉と同時に全身にADを纏う。

 PAD-05 ヴァイスリッター。

 本来純白の筈の騎士は、今だけは夜間迷彩に彩られている。

 通常、陸戦兵器の範疇にいるADを、空戦に特化させ、飛翔能力を得たソレは熟練の空戦魔導士に匹敵する戦力だ。

 反面、その機動性は装甲を犠牲にして得たものであり、生存性は極めて低い。

 ソレを最も年若い隊員に預ける事には紆余曲折あったものの、ソレを使いこなせる者が今現在彼女しかいない事もまた事実であった。

 ハッチ開放と共に、騎士が槍の名を持つ愛銃を手に空を往く。

 その高い加速力によりアッという間にヘリを引き離し、戦地へと向かっていく。

 ヴァイスリッターはその優れたセンサー系を用いて、前線での偵察や索敵、航空支援を主として行動する。

 彼らベーオウルブズにとっては何時もの編成である。

 

 「各員に通達、後10分で戦域に到達します!」

 「後5分後で全機投下開始。ヘリは連絡あるまで戦域外で退避。」

 

 ヘリパイロットの言葉にベーオウルフその人が答える。

 その意味する所は、この先が極めて危険な戦場である事を指していた。

 そして5分後、その指示は的確だった事が知れた。

 

 「ロックオン確認!チャフ散布に乱数回避!」

 

 突然、地上から合計3発の地対空ミサイルが放たれた。

 地上に目を向ければ、そこにはシートの様なものを被った携行ミサイルを構えるテロリストが視認できただろう。

 電子的なステルスだけでなく、恐らく光学迷彩も使用したのだろうとキョウスケならば当たりを付けたが、今は関係ない。

 激しく揺れ動くヘリ内の全隊員が一斉にADを展開、それぞれ普段以上に重装備となったゲシュペンストとその派生機を纏うと、同時にヘリが激しく振動した。

 

 「後部ハッチに一発被弾!下部ハッチを3秒後に緊急展開!ご武運を!」

 

 そして3秒後、ベーオウルブズは数時間ぶりの地上へと熱烈なダイブを敢行した。

 

 

 

 

 時を同じくしてウルフ6、ヴァイスリッターに乗った陸曹も接敵していた。

 

 「こいつら、やる!?」

 

 それは航空機を無理矢理人型にした様な、航空機に無理に機械の手足を付けた様な、そんなフォルムをしていた。

 それが3機、ヴァイスリッター程ではないが、それでも並の空戦魔導士よりも上の機動性で空を舞っている。

 

 シュドドド! ガゥンガゥン!

 

 斉射されたミサイルと火砲に慌ててブレイクすると共に全力でジャマーを起動、誘導をジャミングされ、ミサイルは何もない空中を通り過ぎていく。

 

 「ウルフ6から1へ!敵の奇襲を受けた!繰り返す、奇襲を受けた!敵は機動兵器3!」

 

 だが、必死の通信も入ってくるのはジャミングによるノイズだけ。

 既に戦闘が開始されてから5分以上経過し、このままでは味方も奇襲を受けかねない。

 

 (くそ、このままじゃ…!)

 

 自分はまだ良い。

 普段から足の速い自分は逃げ切れるし、ミサイルだって電子戦装備の今なら対処し切れる。

 しかし、他の面々はチャフはあっても対空戦闘はそこまで得手じゃないし、この速さの敵ではいくらゲシュペンストの高密度・高初速の射撃魔法とて当たり辛いだろう。

 

 (私が、落とさないと…!)

 

 そう覚悟を決め、行動を牽制と回避から、本格的な機動戦へと移行する。

 だから、敵の背後から突っ込んできた隊長の姿を視認した時は、目が点になった。

 

 『抜けられると思うなよ。』

 

 両肩の装甲が展開、露出した発射口から無数の散弾が吐き出された。

 位置的に丁度範囲外だったヴァイスリッターは兎も角、最も近かった敵航空兵器は直撃、数秒後に爆発四散した。

 

 『ウルフ6、気を抜くな。』

 『は、はい!』

 

 言葉と同時、動揺も少なく応戦してくる敵機2機にアルトアイゼンとヴァイスリッターが示し合わせた様に3連マシンキャノンを連射する。

 しかし、届かない。

 しかも、ブースターで無理矢理カッ飛んできたアルトは、滞空限界を迎えれば落ちていくだけだった。

 

 『た、隊長!?』

 

 そこを好機と捕えた敵機が殺到、自由落下状態のアルトに火力を集中する。

 

 『いや、早いのに止まったらダメだろ?』

 

 そこに遠方からの一対の砲撃魔法が狙い澄ました様に発射、片方が直撃を受けて装甲を一撃で貫通、爆散し、もう一機は右腕を捥がれ、大きくバランスを崩した。

 そこをヴァイスリッターは見逃さなかった。

 全AD中最高精度のセンサー系とベーオウルブズ中最高の狙撃能力を持った期待の新人の射撃は、正確に敵機の胴体を射抜き、撃墜した。

 

 『ウルフ6、状況報告。』

 『はい!敵のジャミングにより遠距離での通信は不可能、索敵は機械・魔法共に低下中!望遠による目視確認中に3機の敵航空兵器の迎撃に遭遇し、撃破しました!』

 『各機損耗は無し、任務を続行する。ウルフ6は直上にて制空・索敵を担当、離れるなよ。』

 『『『『『了解!』』』』』

 

 そこからは一方的だった。

 本来のフォーメーションを取り戻したベーオウルブズはその後、多数の武装化した車両と歩兵部隊に遭遇したが、数だけのそれらに彼らが遅れを取る事は無く、15分後には目標施設へと到着した。

 

 『…索敵範囲内に動体反応無し。魔力・電力共にありません。』

 『ウルフ4から1、明らかに罠ですぜこりゃ。』

 『ウルフ3より4へ、無駄口を叩くな…とは言え、罠だらけの敵地に入りますか?』

 『あからさま過ぎますなぁ。』

 『あの、ウルフ6から1へ、無理して突入するべきじゃないと思います…。』

 

 明らかに誘っている雰囲気に、隊員達はいやそーな顔をして口々に文句を言う。

 まぁ怪しすぎと言えばそうなので、その意見にはキョウスケとしても賛成だったが。

 

 『ウルフ1より5へ、通風孔自体は無事か?』

 『え?えぇ、無事です。地下通路もありません。』

 『では、今から言う事を実行しろ。先ず……』

 

 だから、彼が卑怯臭い手段を取ったとして仕方ない事なのだ、うん。

 決して邪魔者扱いされた事にむかっ腹が立った訳ではないのだ…多分。

 

 

 

 

 

 一方、施設内、その最奥部となる地下実験場では奪取されたゲシュペンストmk-Ⅱ S型が今か今かと敵を待ち構えていた。

 

 (早く来いベーオウルフ、今日こそ貴様に引導を渡してやる!)

 

 搭乗者である男は、嘗てある次元世界の国軍に所属していた。

 魔法技術はミッド程発達していない、極々普通の戦乱に溢れた、でも良くも悪くも自由な世界。

 信仰か自己の利益程度しか物差しにしかならない様なその世界で、男は信仰を選んだ口だった。

 だが、男の信仰は殺された。

 攻め寄せてきて、嘗ては敗北した管理局の軍勢を遂に一か所に追い詰めて止めを刺そうという時、彼のいた司令部が吹き飛んだ。

 そこには彼の他にも多くの兵士と、そして彼の信仰する宗教、その指導者たる教祖もいたのだ。

 司令部の警備は万全で、こちらの勝ちは決まっていた。

 それを、たった一匹の孤狼に覆された。

 司令部は壊滅し、彼の目の前では教祖が虫の息の状態で、奴の頭部から伸びる角に背中から串刺しにされていた。

 そして、教祖を串刺しにしながら、奴は悠々と司令部跡を去っていった。

 その時はそれで意識が限界だったが、生き残りの話では奴は教祖を盾にしながらこちらの味方を殺し尽くし、最終的には向かってきた対戦車ミサイルに投げつけ、挽肉にしたとの事だ。

 惨い、惨たらしい死に方だった。

 到底許せるものではなかった。

 しかし、息を吹き返した管理局に逆撃され、最終的には地位も名誉も無くした男には何もできない筈だった。

 

 (目には目を、刃には刃を、血は血によって贖いを!我らが祖国の、信仰の、教祖様の仇を!)

 

 男が復讐に胸を焦がしながら待ち続けていた時、不意に音が聞こえてきた。

 

 (地上部隊が交戦に入った?いや、遠すぎるし、衝撃なら兎も角ここまで聞こえる訳が…。)

 

 不審に思い、耳を澄ますと同時、驚くべき内容が聞こえてきた。

 

 『…えします!この施設は間もなく空爆されます!繰り返します!この施設は間もなく空爆されます!対地下爆弾を投下しますから、人がいるなら逃げて下さい!』

 

 ギョッとした。

 この施設は極秘という訳ではないので地下脱出路なんて洒落たものは無い。

 災害時の緊急通路も上の入り口に向けてのものだし、そもそも空爆なんて想定していない。

 先ず間違いなく生き埋めになる。

 それを悟った時、男はしてやられた、と悟った。

 

 (抜かった!管理局ならば直接奪還か破壊に来ると判断したのが甘かった!あの悪魔ならこの程度はやる!)

 

 このADならば生き埋めになったとしても、無傷とはいかないが無事だろう。

しかし生き埋めになった後、掘り出された所で無様に回収されるだけ。

 

(かと言って、表に出た所で集中砲火か!悪魔め!)

 

だが、戦わずに敗北する事は認められなかった。

だから、切りたくない札を切る事にした。

 

「…聞こえるか、医者の。」

『おお、聞こえるとも。何か困り事かね?』

 

 

 

 

 

 『意外とあっさり落とされましたね。』

 『いやいや、試作品であれだけ出来れば十分さ。さて、これで終わったらつまらないし、彼にはもう少しだけ後押ししてあげようか。』

 『では?』

 『うん、アレを起動させよう。いい加減倉庫の肥やしになってたしね。』

 『大きすぎるのも考えものですから、次からは考えて作ってください。』

 

 

 

 

 

 無論の事、ベーオウルブズはバンカーバスターなんて持ってきていない。

 単に通風孔を伝声管代わりにブラフを仕掛けただけだ。

 まぁ、反応が無ければ気化性の高い液体燃料を流し込み、火をつけるぐらいはしたが。

 幸いと言うべきか、表の鉄屑にはそういったものが沢山詰まれていた。

 ウルフ6があんまりな策にガクブルってるが、これで敵も出てきてくれる事だろう。

 今は全員が半包囲する形で施設の入り口付近に布陣して待ち伏せている。

 

 『来てくれますかね?』

 『来なければそれで良い。一定時間経てばヘリが増援を連れてくるしな。』

 『あ、振動センサーに感、来ますよ!』

 『各員、攻撃準備。』

 

 全員が今か今かと施設の入り口を見守る中、ふとウルフ1、ベーオウルフは思考を反らしていた。

 

 (今回の敵は明らかに暗部の息がかかっている。そんな連中がこの程度で終わるか?出所不明の航空兵器、奪取されたAD、多様な質量兵器に歩兵向けステルス装備。まだある筈だ)

 

 (地下施設、罠の他に隔壁での分断か?否、明らかに消耗させる事が目的。だとすれば、本命は別…!)

 

 唐突にウルフ1、キョウスケの背筋に悪寒が走った。

 

 『全機退避!緊急回避!』

 

 その声に、全員の動きが反応するのとほぼ同時。

 

 『メガ・グラビトン・ウェーブ発射。』

 

 基地周辺に重力の嵐が襲い掛かった。

 

 

 

 

 ガラン、と音がなると同時、5機のADが瓦礫の中から立ち上がった。

 

 『全機、状況報告。』

 『ウルフ2、問題無し。』

 『ウルフ3、装甲に中度の損傷。』

 『ウルフ4、ライフルが一つ全損。後は大丈夫です。』

 『ウルフ5、装甲に軽度の損傷。』

 

 そして、最後にウルフ6の報告が入った。

 

 『こちらウルフ6!無事ですけど、敵を目視で確認!10m級の人型兵器です!』

 

 最早報告の必要も無かった。

 宙に浮きながらその巨体でこちらを威圧するソレの姿に、全員が静かに戦意を滾らせていた。

 格納型の四指のマニュピレーター、全体的にずんぐりむっくりな機体、なのに魔力も無く浮遊する巨体。

 明らかに現在の一般的な技術とは隔絶していた。

 

 『さっきの人型モドキに似てますね。』

 『同系統の技術かと。』

 『考え事は壊してから考えようぜ!』

 『んじゃ、いつも通りに。』

 『各機、敵大型兵器を撃破しろ。オレは…』

 

 ガキィン!

 

 『こいつの相手をしよう。』

 『待っていたぞ、ベーオウルフ…ッ!』

 

 アルトアイゼンが後ろにステークを構えたと同時、局所的に結界を展開した腕部が叩き付けられる。

 ゲシュペンストmk-Ⅱ S型。

 奪取された新型機がそこにあった。

 

 『あーもう!うちの隊は色物の相手ばっかりかよ!』

 『グダグダ言うな!目標に集中しろ!』

 『さっきの範囲攻撃以外にも武装がある筈だ、警戒してかかれ!』

 『航空支援はお任せを!』

 『取り敢えず、最初の花火を上げようか。』

 

 そして、ベーオウルブズの中で一番重く、一番鈍く、一番火力のある機体が最大の特徴である砲身を構えた。

 

 『ツインキャノン、シュート!』

 

 砲撃特化型AD、シュッツバルトがその本領を発揮した。

 

 

 ベーオウルブズ VS ??????

 

 

 

 

 

 『貴様の事は忘れた事が無かった!我が同胞と故郷、教祖様の無念、晴らさせてもらう!』

 『…行くぞ、ナハト。』(あー宗教テロの人か。取り敢えず8割殺しで。)

 

 アルトアイゼンとmk-Ⅱ S型。

 親を同じくする二機は互いに敵同士になりながら、ほぼ同時に踏み込んだ。

 

 

 PAD-04 アルトアイゼン(ナハト) VS ゲシュペンストmk-Ⅱ S型

 

 

 

 

 

 

 

 




レコード・オブ・ATX 最新話出てたねぇ。
まさかキョウスケがグルンガスト乗るとは思わなんだ(小並感

後、私はグルンガストとかダブルG、他原作有りの勇者ロボなら兎も角バンプレストオリジナルではちょっと…だから今度のBFは見送ろうかと。
前回のUXは傑作だったのになぁ…。


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機体解説

大体出したい機体を出し切ったので、ここらで解説をば。


 

 機体解説その1

 

 PDA-01 ゲシュペンスト

 

 メカオタクの主人公が作成した魔力式パワードスーツ風のデバイス。

 外観こそゲシュペンストのそれだが、この時点では兵装の再現は不完全。

 ただし、筋力強化と浮遊&加速魔法を用いたホバー風の高速機動は可能であり、ドム染みた機動を行う。

 筋力強化は通常の強化魔法ではなく、医療用に開発されていた低燃費の身体強化魔法をアレンジしたものを使用している。

 全身の装甲は通常のデバイスの白兵向け装甲の上にBJを展開する事で二重の装甲を持つ。

 また、BJは設定を変更して対魔法・物理等の何れかに特化させる事も出来るため、パイロットの魔導士ランクよりも上の防御力を発揮できる。

 

 主兵装としてアサルトライフル型デバイスを装備する。

 こちらは通常の射撃魔法よりも高密度・高速で射撃を行うため、当たり判定こそ小さいものの、減衰しにくい上に回避し辛い。

 また、他にも徹甲弾・徹甲榴弾・散弾と言った他の弾種に切り替える事が出来る。

 

 近接兵装?身体強化した上で鎧着てんだから殴れ。(ただし壊れやすい。)

 

 後、外観上の違いとしては背部の特徴的な安定翼が無い。

 

 

 

 

 PDA-02 ゲシュペンスト二号機

 

 一号機をより洗練した機体であり、基礎性能や信頼性の向上を目的として改修された。

 全身を一つのデバイスとするのではなく、複数のアームドデバイスとそれを統括するインテリジェントデバイスで構成される。

 また、フレームと装甲にアームドデバイスに採用されている特殊装甲に換装する事で耐久性も向上している。

 また、デバイスに内蔵されている魔力受容器の大容量化とカートリッジシステムの搭載により、出力も大幅に強化された。

 兵装面では対高ランク魔導士に手持ち式杭打機、スラッシュリッパー、ニュートロンビーム、プラズマカッター、ジェットマグナムが追加された。

 ※手持ち式杭打機はOGクロニクル(コミック作品)に登場する番外編を参照されたし。

 

 また、デバイスとしては大型であるため、容量が大きく、拡張性に優れている。

 この拡張性の高さから後に地上本部で採用される量産型モデルの原型となる。

 

 

 

 

 PAD-03 ゲシュペンスト三号機

 

 純粋な試作機である前の二機とは異なり、設計者であるキョウスケ・ナンブ専用機として開発された機体。

 素の機体性能自体は大して変わりないものの、モーション・セレクト・システムを採用した事で極めて高い戦闘能力を獲得した。

 ただし、余りにも早い反射速度に関節部の摩耗が早く、結果として活動時間が短くなった。

 

 

 

 

 PAD-03-B ゲシュペンスト・強襲突撃仕様

 

 PAD-03に敵陣への突撃用の兵装を追加した仕様。

 関節部の材質を最新の素材に交換する事で、モーション・セレクト・システム発動による関節部の急激な劣化を抑えている。

 兵装は小口径化・弾倉増加・右腕部固定式にしてやや使い易くなった杭打機、肩部マシンキャノン、左腕にショートシールド&三連マシンキャノン、脚部外側にレイモアを追加した。

 また、強襲用ブースターを背面に増設し、突破力を強化している。

 ただし、装甲自体はそのままなため、一撃離脱戦法の方が向いている。

 武装面から解る通り、アルトアイゼン作成のための試金石的な機体であり、後にこの機体の運用データを参考にアルトアイゼンが誕生する。

 

 

 

 

 AD-01 ゲシュペンストmk-Ⅱ(N型) ※Normalの略

 

 時空管理局地上本部にて正式採用されたゲシュペンスト。

 PAD-02を参考に開発され、低ランク魔導士でも本来のランクより総合ランクを二つは上げてくれる新装備として注目されている。

 オリジナルとの違いは装甲をBJを用いた二重装甲をオミットし、通常装甲をより強化し、関節部の可動範囲を改善している。

 そのため、若干だが重量増加している。

 兵装面はほぼそのまま受け継いだ他、PAD-03-Bを参考に、脚部・背部・腕部にウェポンラックが設けられており、多数のオプションを装着できる。

 拡張性・発展性に優れているため、各種状況に応じた仕様や個人向けカスタマイズされた機体も存在する。

 現在、着々と配備が進められているが、デザインが質量兵器そのままであるため、一部からは反対の声も上がっている。

 また、コスト面では既存デバイスを装備した方が優れているため、海の方では殆ど注目されていない。

 

 

 

 

 PAD-04 アルトアイゼン(ナハト)

 

 PAD-03-Bを母体として開発されたゲシュペンストの亜種にして徒花。

 兵装面においてはほぼ原作通りだが、その両肩のクレイモア(散弾地雷)は両肩にそれぞれ10ある発射口から無数の散弾を直接発射する対高機動兵装であり、マルチロックも可能なため、対群兵装としても使用可能であるが、その特性上流れ弾の危険性が高い。

 右腕の杭打機は既存のそれに比べて大型化され、大口径の特注カートリッジシステムからほぼそのまま魔力を供給され、新開発の攻撃的支援魔法によりその魔力を標的に直接叩き込む事で標的のリンカーコア並び魔力伝達系ズタズタにする。

 そのため、例え非殺傷設定であっても直撃すれば魔導士としては致命的となる。

 とは言え、常に使用している訳ではなく、相手が宗教系テロリストの場合のみに使用する。

 普段は割と一般的な衝撃魔法(非殺傷設定)を用いるため、後遺症も無い。

 高ランク魔導士であればある程強力に作用するため、後に魔導士殺しとも呼ばれ恐れられる。

 ただし、その最大威力を出すには打撃とトリガーのタイミングが僅かにずれているため、使いこなすには習熟が必要となる。

外見上の差異として機体カラーリングが青であるため、ナハトとも呼ばれる。

 「圧倒的な火力と装甲、突撃力を以って正面突破を可能とする機体」を開発コンセプトとし、限定的であるが高ランク魔導士をデバイスによって人為的に再現する事を目的としている。

 モーション・セレクト・システムと合わせる事で、極めて高い戦闘能力を発揮する。

 だが、欠点として極めてバランスが悪く、汎用性も低い上に極めて扱いずらい。

 更に試作兵装や新型素材を多く採用したため、高コスト化を招いてしまい、結果として試作一機のみが実戦投入された。

 しかし、この機体の開発・運用経験は後に高ランク魔導士向けのS型の開発に生かされる。

 

 

 

 

 AD―02 シュッツバルト

 

 AD-01ゲシュペンストを母体に重装化された機体。

 両腕に三連キャノン、両肩にツインキャノンを装備する純粋な砲撃特化機体。

 レジアス一佐(当時)の「低ランク魔導士でも使用可能な砲撃魔法の開発」という要請に応え、大容量の魔力受容器と大型弾倉付きのカートリッジシステムを搭載する事を前提に開発された。

 低ランク魔導士でも要求されたAAランク相当の砲撃魔法の使用が可能となり、各弾種を使用する事も出来るため、高い攻撃力を持つ。

 しかし、砲撃能力の付与のために重量増加し、生存性を高めるために重装甲化してやっぱり重量増加したため、運動性が大きく低下した上にコストまで大幅に上昇したので生産数はゲシュペンストの半分にも満たない。

 現在はクラナガンを中心に徐々に配備が進んでいる。

 

 

 

 

 PAD-03-C ゲシュペンスト空戦仕様

 

 レジアス准将(当時)の「低ランク魔導士でも空戦魔導士になるための機体」という要請を受けて開発された。

 それまでオミットされ、精々空挺作戦にしか使用されなかった安定翼を再度設置し、大容量魔力受容器とスラスターを追加した機体。

 滞空時間を延ばすために装甲を3割近く削減したのにコストの割りに機動性や滞空時間、燃費が悪すぎるので不採用となった。

 後にこの機体を改装し、ヴァイスリッターが開発される。

 

 

 

 

 PAD-05 ヴァイスリッター

 

 PAD-03-Cを母体として、空戦能力にのみ特化させた機体。

 そのため、装甲は完全に撤廃して空力カウルに換装し、軽量化・機動性の強化を図った結果、装備含む全重量がゲシュペンストの7割程にまで低下し、要求性能もクリアした。

 脆弱な装甲をカバーするために遠距離戦向けのロングライフルを主兵装とし、それに伴いセンサー系を強化したため、航空支援型とも呼べる機体に仕上がった。

 このロングライフルは通常の射撃魔法の他、各弾種を使用可能な上に、マニュアルで出力調整も可能であり、強化されたセンサー系と併用する事で高い命中率を誇る。

 しかし、その構造上どうしても生存性が低い事から採用される事は無く、試作一機がデータ取りのために運用されている。

 

 

 

 

 PAD-06 ゲシュペンストmk-Ⅱ S型

 

 既存の全てのADのデータを元に開発された機体。

 本来低ランク魔導士向けのゲシュペンストを高ランクの魔導士向け(最低でもA以上)に再設計したもので、最新の装甲材や大容量魔力受容器、カートリッジシステムを採用する事で、総合性能が大幅に強化されている。

 追加兵装は胸部に速射可能は砲撃魔法ユニットとしてメガブラスターキャノン、格闘時に結界を拳や足に纏わせての打撃、オミットされていた飛行機能も備える等、攻撃力も機動性も通常のゲシュペンストとは一線を画す。

 元々はゲシュペンストmk-Ⅱに次ぐ次世代主力AD開発のための雛形として開発されたが、高コストかつ地上では運用可能な高ランク魔導士が少ない事もあって正式配備には至らず、完成早々に開発研究所にお蔵入りとなる。

 後に奪取され、テロリスト側が鹵獲機として運用し、実戦に投入された。

 そのデータは後に地上本部技術班に生かされ、ゲシュペンストmk-Ⅲとして結実する。

 

 

 

 



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第五話 さよなら古鉄 微修正

今回突っ込み所多数ですが、先ずは最後まで見てってください。


 第5話 さよなら古鉄

 

 

 

 『こいつ、固すぎる!』

 

 戦闘開始から1分、ウルフ4の悲鳴が響いた。

 敵大型兵器の装甲、それは先程彼らが撃破した装甲車のソレを軽々と超えている。

 計器を信じるならば、以前戦った戦車の正面装甲並の堅牢性を示していた。

 しかも、その全身を覆う様に何らかの力場が展開しており、魔法の威力が僅かながら減衰するのだ。

 相性が悪い処の話ではない。

 しかも、その装甲を貫くだけの一撃を加えるには、敵の弾幕が厚すぎた。

 

 『ッ、ミサイル来ます!』

 『電子支援行きます!ジャマー全開!』

 

 大型兵器の全身からミサイルが次々と発射、雨の様に降り注いてくる。

 その一斉発射数は実に48門と、砲兵隊の全力攻撃に匹敵或は勝る程の大火力だった。

 しかし、ジャミングによって誘導出来なくては、大雑把な狙いしかつけられない。

 誘導さえなければ、危険性は大きく減少する。

 

 『各機迎撃!』

 

 何時かの様に散弾の連射によって、命中又は至近弾のミサイルはあっさりと迎撃された。

 その様子に業を煮やしたかの様に、大型兵器の腹部に当たる部分が輝く。

 

 『砲撃来るぞ!』

 

 誰かが言った警告とほぼ同時、大出力のビーム砲撃が薙ぎ払う様に発射された。

 

 『く、ウルフ3、右肩部装甲破壊…!』

 

 それは一機だけ中破していたウルフ3の声だった。

 出会い頭の広範囲攻撃に、手練れの隊員も流石に回避し切れず、ダメージを重ねていた。

 

 『この野郎!』

 

 ウルフ4が苛立ちと共に両手のライフルを連射するが、フィールドによって減衰された上に強固な装甲があって内部構造まで攻撃が届く事は無かった。

 

 『ウルフ6、目標の解析はまだか?』

 『もうちょっとです!』

 

 シュッツバルトに搭乗するウルフ2の問いに、ウルフ6が焦りと共に言葉を返す。

 ウルフ6のヴァイスリッターは今回電子戦仕様となっている。

 右腕に追加の大型カメラ、左腕に盾の様にレドームを装備し、後頭部には垂直のレーダーアンテナが追加されている。

 これを用いた広範囲の索敵能力と電子戦能力を獲得した訳だが、それは敵の装備や建築物の解析等にも用いる事が出来る。

 

 『あーもー!何時まで待つのさ!?』

 『我慢しろ、ウルフ5!後で何か奢ってやるから!』

 

 今現在、最も動きの良いウルフ4と5が大型兵器の狙いを引き付けているが、それとて何時まで持つかは分からない。

 

 (敵の装甲は圧倒的。こっちの火力が貫けない!なら、貫けるチャンスを待つか、探らないと!)

 

 だが…

 

 『メガ・グラビトン・ウェーブ、発射。』

 

 合成音声と共に、無情にも二発目の重力衝撃波が放たれた。

 

 

 

 

 

 ズガァッ!! ヴドドドッ! ゴ、ガギ!!

 

 振動と共に、荒野に銃声と打撃音が響き渡る。

 明らかに人力で出せる音ではない。

 それもそうだ。

 今ここにいるのは亡霊の名を冠した魔性の鎧。

 人にあらざる所業は寧ろ当然の事だった。

 

 『どうしたベーオウルフ!データよりも動きが悪いぞ!』

 

 一機は漆黒の亡霊、ゲシュペンストmk-Ⅱ S型。

 

 『………。』

 

 一機は濃紺の古き鉄、アルトアイゼン。

 二機は地上を高速で駆け抜けながら、時折交差する様に射撃しながら、思い出した様に打撃戦を行っていた。

 

 『そんな様ではな!部下を庇うとはお優しい事だ!』

 

 強固な装甲を持つADの中でも、最高の防御力を持つアルトアイゼン。

 その装甲は生半可な事では貫けられないが、先程受けた一撃は到底生半可なものではなかった。

 部下達の内、回避が遅れたその一機を、キョウスケは庇った。

 その結果、重力衝撃波がアルトの脇腹を抉り、ADの力を持ってもなお収まり切らない程の重傷を負った。

 

 『死ねぇぇ!』

 

 言葉と同時、S型の胸部装甲が展開、そこに収められた発射口から砲撃魔法が速射される。

 当たれば今のアルトでは危険なその一撃に、アルトアイゼンは鈍重な機体を更に加速、一瞬で安全圏内に離脱する。

 

 『阿呆が!』

 

 だが、その動きは読まれていた。

 負傷により普段より鈍い動き、敵との性能差、そして敵の執念。

 キョウスケが知り得ない事だが、このテロリストの男は以前から彼に復讐心を抱き、陸の戦力としてメディアへの露出の多い彼の情報を集め、その対策を講じ続けていた。

 そこに互角に動けるADを与えられ、更に練度の低い彼にも扱えるようにとある科学者によって改造されている。

 ここまでお膳立てすれば、寧ろ負ける方が難しいとも言える。

 

 『シィァッ!』

 『…ッ。』

 

 一見すれば単なるチョップ。

 だが、カタログスペックを把握し、何より開発に携わる彼だからこそ、その武装に気付けた。

 シールドスライサー。

 腕部にシールドを鋭角に展開し、打撃・斬撃に転用したもの。

 レンジは零距離だが、機体のパワーアシストと相まって、直撃すれば戦車の正面装甲すら切り裂くだろう。

 だが、ここで練度の差が生きてくる。

 キョウスケは加速中に無理矢理身を捩らせ、機動に回転を加え、手刀が通る軌道から退避、同時に回転の勢いをそのままに上から叩き付ける様に蹴りを浴びせた。

 

 『ガッ!? 貴、様ぁ!』

 

 怒りと共に飛び掛かってくるS型に三連マシンキャノンを連射、接近速度を下げ、助走距離を稼ぐため、最適な位置取りと好機を探して只管待ちの手を打つ。

 だが、S型はその装甲を生かして回避機動すらまともに取らずに再び肉薄しようと接近してくる。

 その動きに迷いは無く、ともすれば熟練兵のそれにすら見えてくる。

 

 (こいつの動きは良い。だが、行動時は必ず一定のモーションを繰り返している。非搭載だった筈だが、モーション・セレクト・システムを搭載しているな。)

 

 モーション・セレクト・システム。

 キョウスケ自身が開発し、今も使用している禁断のシステム。

 感情を排し、痛覚や疲労を感覚ではなく数値化させ、動作を選択式にする事で新兵でも即座に戦力化を可能とする反面、初期ではシステム終了後も感情が排されたままになったと言う曰く付きのシステム。

 現在はリミッターを設け、感情並び痛覚や疲労の排除は最低限に留めてある。

 

 (言動からして感情の排除はしていないが…他は明らかに人体の限界反応速度を超えている。勝った所で死ぬな。)

 

 高速の中・近距離の打撃戦の中で、キョウスケはシステムの恩恵を考えてもなお、異常なまでに平静だった。

 

 (とは言え時間が無いのはこちらも同様。モーションの癖を把握するまでチキンレースか。)

 

 逆襲の時は、近い。

 

 

 

 

 

 『解析データ出ました!敵は無人機です!』

 

 そして、もう一つの戦場では遂にウルフ6の努力が報われた。

 

 『敵の主機関は体幹中央!装甲さえ抜ければ、後はミサイルに誘爆して吹き飛びます!』

 『そいつぁ朗報だ!んで、どうやって奴の装甲を抜くんだ!?』

 

 今も必死に敵の攻撃をかわすウルフ4が揶揄する様に声を上げる。

 実際、彼我の火力差は絶対であり、打つ手は無い様に見える。

 

 『ウルフ6、僕と君でミサイル発射口の一つに攻撃を集中する。トリガータイミングをこちらに。ウルフ5は撃ち漏らしたら止め。他は援護を。』

 

 副官であり、この場では上官に当たるウルフ2の言葉に、全員が無言実行とばかりに行動に移る。

 

 『オラオラオラオラ!こっちだデカ物!』

 

 叫びと同時、ライフル一丁、両肩のチェインガン2基からなる怒涛の弾幕が放たれる。

 余りの連射に元々気休め程度でしかなかった減衰フィールドが、効果を表す前に次々と銃弾が装甲に着弾する。

 威力こそ脅威にならないレベルだが、無視すればミサイル発射口にダメージを負う可能性が高い。

 流石に無視が出来なくなったのか、大型兵器はその左腕をウルフ4に向け、ビーム砲を連射する。

 一発一発が地面を爆散させる程の一撃だが、ウルフ4は至近弾を幾つも貰うが、小刻みな機動を繰り返す事で回避する。

 既にロックオン速度や攻撃時のモーション、武器毎の射撃精度すら実地で掴んだ彼らに、人工知性のルーチン任せの攻撃を回避する事は欠伸が出そうになる程度には簡単な事だった。

 

 『これで看板だ。全弾くれてやる。』

 

 そして、この場で最も破損の酷いウルフ3が、その得物をデカ物に向ける。

 口径で言えば20mm、6銃身を誇る化け物の様なガトリング砲。

 地球におけるM61バルカンにも似たソレは、今日まで「弾薬費が嵩み過ぎる」との事で最大速度で連射した事は開発時の試射実験以来無かった。

 だが、相手は強敵で、出し惜しみをして勝てる相手ではない。

 つまり、好きなだけ撃って良いのだ。

 その事実にバイザーフェイスの奥で満面の笑みを浮かべながら、ウルフ3はモーターを最速値に設定、弾切れ上等とばかりに引き金を引いた。

 

 『レッツパァァァァァリィィィィィィィイェアァァァァァァァッ!!!』

 

 明らかに逝っちゃってる叫びと共に、毎分6000発もの弾幕が発射された。

 余りの連射速度に銃身があっという間に余剰魔力によって加熱され、赤く光り始める。

 だが、そんな事はどうでも良いと言わんばかりに連射は続く。

 この猛攻に、流石の大型兵器も明確な危険を感じ取ったのか、はたまた射撃魔法にしては強すぎる光にセンサーが焼かれる事を恐れたのか、その巨大な両手を頭部を守る様に交差した。

 つまり、目を塞いだのだ。

 

 『『今!』』

 

 同時、今までチャージしていたシュッツバルトのツインキャノンとヴァイスリッターのロングライフルが火を噴いた。

 この時、安全使用範囲の限界以上にまでチャージしたツインキャノンは、ニアSランク相当の出力を誇り、その上で収束率を高め、貫通力を強化していた。

 ヴァイスリッターのロングライフルは精度を優先しており、機体特性上からも砲撃魔法へのアシストも無い。

 しかし、カートリッジ2発を消費した高速徹甲弾による精密な一撃は、閃光溢れるこの戦場で、迷いなく放たれた。

 

 ずどぉぉぉぉぉぉぉん!!

 

 発射された3条の閃光は、狙い違わず大型兵器の左肩を貫き、爆散させた。

 だが…

 

 『まだ動く!?』

 

 咄嗟に左肩を自切したのか、大型兵器はボロボロになりながらもまだ活動していた。

 

 『残念。予想済み。』

 

 そこに、今まで黙していたウルフ5が襲い掛かる。

 その装備は一見では通常のゲシュペンストmk-Ⅱに反応装甲を足しただけだ、その手に持った小皿を繋げた様な代物を除けば。

 

 『プレゼント、フォーユー!』

 

 真横からすれ違う様に駆け抜けると同時、ペタリと大型兵器の肩口に、関節部が露出している場所に張り付けた。

 本来なら隔壁等を破壊するための、指向性対戦車地雷を10個も繋げた代物を。

 

 『無人機なら別に木っ端微塵で良いよね!』

 

 直後、轟音と閃光と共に、大型兵器の上半身が吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 そして、もう一つの戦場もまた佳境にあった。

 

 【警告 出血量が危険域に到達】

 【警告 右腹部に致命的な損傷】

 

 網膜に直接投影された映像から、既に自身が限界だという事は解っていた。

 それでもキョウスケはS型との戦闘を止めない、止められない。

 この敵の相手はまだ彼らには危険だし、大型兵器と連携されたら目も当てられない。

 何よりも、この敵は自分に用意されたのだと打ち合って直ぐに分かった。

 私怨で戦い、今日までそれを引き摺る己だからこそ、この敵にはきっちり止めを刺さなければならない。

 

 『ナハト、フルドライブ。』

 【フルドライブ開始 終了まで60秒】

 

 カートリッジロードの際、魔力受容器から零れた魔力を輩出するのではなく、予備電源に当たる小型受容器に溜めこみ、一気に開放する事で魔力出力を一時的に向上させると。

 その用途は身体強化、出力向上のみ。

 基本性能を底上げするだけで派手さは一切ない、しかしそれ故に付け入る隙が無い。

 無論、デバイスへの負担が大き過ぎるのでおいそれとは使えないが、リンカーコアへの負担が既存のシステムに比べてかなり減少しているのが大きな利点だ。

 しかし、未だに改良の余地が大きく、全ての魔力を生かし切る事は出来ない。

 制御できない魔力は機体の廃熱と共に装甲表面から排出されるため、装甲の多くがお殆どが廃熱と過剰な魔力により赤く染まり、陽炎の様に魔力が揺らめく。

 己の血に塗れ、生きながら炎に巻かれている様な姿は地獄の悪鬼を連想させた。

 

 『ここで終われ、ベーオウルフ。』

 

 S型もその右の手刀に結界を展開、今度こそと必殺の意思を込めて突撃の姿勢を取った。

 キョウスケもガキンと右腕のステークの撃鉄を起こし、弓の弦の様に右腕を引いた。

 後は、互いに好機を待つ。

 静寂が広がる。

 1分、5分、10分、1時間。

 互いに時間の感覚が麻痺する中、もう一つの戦場で盛大な爆発が起きた時…

 

 ドッッ!!!

 

 互いにスラスターを全開にして踏み込んだ。

 

 『シィアァッ!』

 

 迫りくる右の貫手に、キョウスケは敢えて正面から突っ込む。

 

 (何かの策か!?だが、小細工など諸共ぶち抜く!)

 

 既に止められない現状、考える事を放棄して、S型は直撃すれば先ず必殺となる一撃に力を籠める。

 だが、その愚直なまでの真っ直ぐさ故に、最後まで勝ちを求めて思考し続ける孤狼に敗れるのだ。

 キョウスケは敢えて手刀に当たりにいった。

 勝利を掴むために、敵の手刀に左肩が当たる様に、敢えて機動を捻じ曲げた。

 

 (まだ、まだ…。)

 

 手刀が肩部装甲を突破し、基礎フレームに、そして肉体に到達するまで耐え続ける。

 痛覚を遮断しているとは言え、刹那を見切り、自身の肉体が破壊される様を見送るのは並大抵の精神ではできない。

 だが、感情を捨て、勝利に貪欲に食らいつかんとする孤狼は、それを成し遂げた。

 そして、敵の手刀が手首まで完全に自分の肩に埋まった時…

 

 (クレイモア!)

 

 ズバンッ!!

 

 自らの左腕を切り捨てた。

 

 『が、あぁ!?』

 【警告 右腕大破】

 

 自身が見たものが信じられず、S型を纏う男が有りもしない痛覚に悶絶する。

 手刀が完全に肩に食い込むと同時にクレイモアを発動、己の左肩ごと相手の右腕を吹き飛ばす。

 視覚から来る情報に、モーション・セレクト・システムに慣れていないが故に影響を受けたのだ。

 無論、肉体の保護と言う観点からすればそれは正常な反応だ。

 だが、この時この場ではその隙が即座に勝敗へと影響する。

 

 『おぉぉ!』

 『………ッ。』

 【警告 左腕喪失】

 

 それでも、男は執念で残った左拳に結界を展開、目前にいる片腕となった仇敵へと振り抜く。

 だが既に、孤狼もまた次の一撃を放っていた。

 

 ゴ、ガガガがガガッ!!

 

 【警告 左腕全損】

 【警告 頭部兵装全損 左顔面装甲剥離】

 

 互いのデバイスが警告を表示する。

 S型は左腕を、アルトアイゼンはヒートホーンを真っ向からぶつけ合い、またも痛み分けとしては大き過ぎるダメージを負った。

 此処まで来て、S型の男は漸く相手の異常性を思い知った。

 

 (こいつは、本当に自分の命がどうでも良いのか!?)

 『まだだぁッ!!』

 

 そんな事は認められない。

 命を何とも思っていない様な外道に、負ける訳にはいかない。

 胸部装甲を展開し、最後に残ったメガブラスターキャノンを発射体制へと移行させる。

 それが相手の狙いだと知らずに。

 

 『残ったぞ、ナハト。』

 

 固い殻を持った貝を、無理に割る必要はない。

 砂を吐かせて熱湯で茹でるなり、火で焼けば、殻は自然と開く事になる。

 キョウスケは、ただこの瞬間を待っていた。

 

 『やはりこれが…』

 

 ステーク内蔵術式を衝撃術式に変更、全力加速と共に全6発の大型カートリッジを順次ロード、装甲を展開中の胸部目掛けて突貫する。

 

 『オレ達の切り札だ。』

 

 発射される砲撃魔法に、右拳が溶解、蒸発していく。

 しかし、主力次元航空艦の主装甲を加工した特殊合金製の杭はカートリッジロードを繰り返しながら衝撃術式を放つ事で砲撃魔法を押し返しながら前に進む。

 遂に杭は胸部発射口に深々と突き刺さり、一拍置いてから最後のカートリッジロードと共に、衝撃術式を叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 「はは、は…まさか、本当に、気狂いだったか…。」

 

 「我らが主よ…どうか、この、孤独な男に祝福あれ。」

 

 「戦乱の中、武功を掲げ、血に塗れた人生を永劫の彼方まで」

 

 「教主さま…いま…おそ、ばに………。」

 

 

 

 

 

 

 【警告 右手喪失 残り機能21%】

 

 【警告 戦闘力を完全に喪失しています 現在救難信号を発信しています 直ちに後方で治療を受けてください】

 

 【警告 出血量1500mlを超過 これ以上の失血は危険です】

 

 【警告 意識を失わないでください 間もなく友軍が到着します】

 

 【警告 間もなく生命維持機能が停止します】

 

 【警告 マスター、起きてください】

 

 【警告】 【警告】 【警告】

 

 【警告】 【警告】 【警告】

 

 【警告】 【警告】 【警告】

 

 【警告】 【警告】 【警告】

 

 【誰か】 【警告】 【誰か】 

 

 

 【助けてください】

 

 

 【誰か マスターを助けてください】

 

 

 

 

 

 「ならば、私が助けよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 Q1、非殺傷設定何処行ったの?

 A2、ちゃんと言い訳があります。
 
 クレイモア…内臓されたカートリッジを一斉にリロードさせて自爆。なので事故(=罰せられませんor言い訳が効く)

 ヒートホーン…そもそも実体剣で非殺傷設定ってなに?魔力刃出した上で普通に振り抜いただけ。よってギリセーフ。

 ステーク…砲撃中にそれを掻き分けながら魔法ぶち込んだだけ。例え発射口が速射機能を実現するために魔力受容器やカートリッジシステム、リンカーコアと近い場所にあっても非殺傷でやったのだから合法。

 結論、ギリギリグレーなのでセーフ。


 Q2、前話の航空兵器と大型兵器ってあれ何?

 A2、既に気づいた人いるかもだけど、リオンとグラビリオンです。


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第六話 新生

 ベーオウルブズが大型兵器を撃破し、通信障害が解除された後に行った事は、隊長の捜索だった。

 そして彼らが見つけた時、彼らの信頼する隊長は虫の息だった。

 

 左腕は肩から先が吹き飛び、右腕は手首から先が骨しか残らず、右脇腹には穴が開き、左目は潰されていた。

 

 その状態の彼を最初に見つけた時のウルフ6の気持ちは、果たして如何なるものだったのか?

 少なくとも、彼女が錯乱しながら味方に通信する程度には動揺していた事は確かだった。

 

 幸いと言うべきか、迎えのヘリは5分程度で直ぐに来てくれた。

 その場で出来る限りの処置も終え、彼らに出来る事は後は少しでも早く病院に到着できる事を祈るだけだった。

 最寄りの緊急病院に到着後、直ぐに緊急手術が始まった。

 だが、助かるかどうかは運次第だった。

 18時間に及ぶ手術が終わった時、キョウスケ・ナンブは生きていた。

 

 そして事件から一週間後、未だに彼は目覚めない。

 

 

 

 

 

 「それで、件の大型兵器の解析は?」

 「判明した限りでは、やはり先日技術班に攻撃を仕掛けてきた無人兵器と酷似した技術で作成されたものかと。特に注目すべきはこの魔力結合阻害力場の展開ですね。」

 

 一方、地上の御大ことレジアス・ゲイズ少将は部下の報告に耳を澄ましていた。

 

 「これにより、一般的なミッド式魔法の多くは弱体化を免れません。元々魔力の豊富なミッドで成立した術式ですので、それ以外の環境下では本領を発揮できないのかと。」

 「して、具体的にはどの程度減衰するのかね?」

 「使用する魔法と力場出力にもよりますが、収束砲撃の様な大規模なものではその威力は最大4割は減衰するかと。」

 「対策は?」

 「魔法によらない質量兵器や身体強化の様な肉体等の物質を介する魔法、そしてADで使用されている魔力を高密度化させる術式等はこの力場の影響が低いですね。」

 「根本的な対策は無いのかね?」

 「何分つい先日発見されたものでして、これ以上はその後の研究を待つ必要があるかと。」

 

 執務室の重厚な机の上で、レジアスは顔を顰めながら次の話題に移った。

 

 「ベーオウルブズの状況は?」

 「既に隊長を除く隊員達は装備の修理・補給を終え、通常任務に復帰していますが…。」

 「芳しくない、と。」

 「はい。副長の指揮で活動中ですが、やはり…。」

 「解った。下がっていたまえ。」

 「は。」

 

 部下を下がらせ、一人になった執務室で、レジアスは深い、深ーい溜息をついた。

 

 「馬鹿者め。オーリスを泣かせる気か?」

 

 

 

 

 

 父の穏やかならざる心境も露知らず、オーリス・ゲイズは今日、漸く捥ぎ取った休暇で腐れ縁の友人の入院するクラナガン郊外の病院へとやってきた。

 

 「ご存じかと思いますが、今は絶対安静ですので…。」

 「えぇ、解ってます。時間になったら退室しますので。」

 

 カツコツとヒールを鳴らしながら廊下を速足で歩くオーリスと看護師。

 オーリスとしては一刻も早く見舞いに生きたいのだが、しかし、彼女の立場がそれを許さず、今日まで遅れてしまった。

 

 「こちらです。」

 「ありがとうございます。」

 

 そして、ノックもせずにガラリと戸を開けた先で

 

 

 皿に盛ってあったリンゴを貪っている馬鹿を見つけた。

 

 

 「「…………………。」」

 シャクシャクシャクシャク…

 

 静まり返った室内に、器用にも口と手首から先のない右腕だけでリンゴを咀嚼する音だけが響き渡る。

 

 「…ッ…こ、の……!」

 「オーリス」

 

 顔を怒りで赤黒く染めたオーリスが名前を呼ばれてぴたりと止まる。

 

 「ただいま。」

 「~~~~~~~~ッ!!」

 

 その場で地団太を踏んだり、叫び出さなかっただけ、オーリスの理性は強靭だった。

 

 「心配、かけさせないで…ッ。」

 「すまん。」

 

 俯いて涙を堪える、年に似合わぬ程に優秀な、でもまだまだ子供な少女と、それを優し気に見つめる新進気鋭の新設部隊の隊長たる少年。

 年の頃は同じ筈なのに、どうして二人の姿はまるで父子か兄妹の関係に似ていて。

 でも傍目からは完全にカップルの姿だった。

 

 (若いって良いわねぇ…。)

 

 それを看護師が微笑まし気に見つめていた。

 ナースコールで呼ばれた医者が駆け付ける1分後まで、二人+1は静かに過ごしていた。

 

 

 

 

 

 新暦60年 2月○日

 

 いやー、日記を書くのもガチで久々に感じる。

 前回の出動で奪取されたS型相手にガチバトルして死にかけました、マジで。

 相手、どうやら肉体改造した上にモーションセレクトシステムを不完全ながら搭載してたんで、そりゃもう手強いのなんの。

 左腕なんて肩から吹っ飛んで、右腕も手首から先が蒸発したし、左目も潰れちゃった。

 それでも一人の欠員も出さずに済んだんだから儲け儲け。

 オーリス他部下達にはガチで怒られたし、世話になってるレジアス少将からもがっつり怒られたし、少将のマブダチであるゼスト隊長殿からもがっつり説教されてしまった。

 しかもナハトもコア回り残してスクラップ状態。

 完全に新造しないとダメとの事、がっくり…。

 

 あ、任務の方は果たしましたよ、ちゃんと。

 奪取されたS型はスクラップになってましたけど戻ってきましたし。

 データ取得用のブラックボックスは生きてましたので、今後に生かせるそうですし。

 …だから予算が削られる事は無いと思いたい(震え声

 取り敢えず、予備のパーツでS型を組んで、それにナハトのコア回りと予備パーツとかを取り込んだ新生ナハトの建造を予定してます。

 良いデータが取れたし、折角なので要求仕様と共に技術班に丸投げして、自分は暫くリハビリに励みます。

 今は完全医療用の義肢型デバイスを両手に付けて、左目には眼帯をしてるけど、これらも予備のデバイス組み込んでおこう。

 義眼は兎も角、両手はリハビリ入念に。

 しかし誰だよ折り紙とか綾取りとか輸入したの。

 どうせ地球からの漂流者なんだろうけどさ。

 

 追記 戦闘用義肢型デバイスって無いらしい。

 久々に図面とにらめっこの日々が続きそうだ。

 

 追記の追記 部下に聞いたが、発見当時既に応急処置が成されていたとの事。

 処置そのものも的確で、それが無ければ手遅れだったとの事。

 状況的に考えて、一番ありそうなのがあのキ印博士だが、なんでだろ?

 

 

 

 

 新暦60年 2月○◇日

 

 今日から担当医が変わるとの事。

 んで来たのがなんかファッキンで本物の○○○○な医者と言うよりもマッドサイエンティストを名乗れと言いたくなるハイテンションな白衣の人と美人秘書風ナースのお二人。

 つーかスカさんと長女さん。何しに来たの。

 

 でも技術に関しては流石マッド。

 手早く診察を終わらせると色々と議論した。

 

 AD、特にモーション・セレクト・システムに関しては「人を機械にする面白みの無いシステム」と酷評されたが、「それはそれでロマン」と言ったら納得された。

 逆に今度義肢型デバイスを戦闘用向けに作るんだけどサイボーグとかどう思う?と聞いたら出るわ出るわ色々とヤバげな知識が。

 最終的に身体機能を底上げしつつ、取って置きの武器を隠しておく形で落ち着いた。

 仕込み刀とか銃って燃えるよね? つまりはそういう事だ。

 ただ、今後のサイボーグ系技術に関してはスカさんが先天的に植え込むのに対し、オレはあくまで義肢として負傷してしまった局員や被害者らの復帰のために官民どちらでも使えて量産可能なものを目指す事で対立してしまった。

でも「ハイエンドと量産型、作業用もそれはそれでロマン」と言う事で平和に握手した。

 

 最終的に時間外まで話し込んでしまい、スカさんは長女さんにお持ち帰りされてしまった。

 オレはオーリスに呆れられてしまった。

 うん、実に有意義な日だった。また今度~ノシ

 

 

 

 

 新暦60年 3月○日

 

 ヒャッハー退院だー!娑婆の空気がうめぇぜー!

 病院スタッフの皆さんが露骨に清々した!って顔してるけど気にしない!

 

 いやぁ病院内だと図面は書けても工具とか持ち込めないし、スカさんとロマンを発散できても実践はできないし、ついつい車椅子を魔改造しては長女さんやオーリスに怒られたり、ロケットパンチ型義手を真面目に検討してたら却下されたりと自由に過ごせなかったから今日は楽しむぜー!

 

 と思ったら部下達から復帰祝いでパーティー開催。

 あ、酒は流石に控えます。オーリスも出席してますし。

 ちょっと多めに飲むとまーたグチグチと言い始めたので、強制的に膝枕して鎮圧成功。

 これで動きは封じた!でもオレも逃げらんない…

 そのまま解散まで何故か動かずに過ごしてた。

 オーリスの髪、荒れてそうなのにサラサラで触ってて気持ち良い。

 

 

 

 

 新暦60年 3月◇日

 

 取り敢えずS型の2号機が出来たので技術班の所に行って受領してきた。

 えーと、コストと安全性の観点からブラスターキャノンはオミット、飛行機能はオン・オフ可能と。

 純粋にmk-Ⅱの性能向上型って感じになったのね。

 これの素材ダウングレード版が次期主力ADの最有力候補と。まぁ順当かな。

 

 んで、ナハトに関してだけど、こっちは寧ろ装甲とかを思いっきり最新の素材に変更するか厚くして、更にスラスター出力を上げて、長所をより伸ばす形で強化された。

短所?据え置き又は悪化してますが何か?

 デザインは完全に原典のベーオウルフのそれ、実に悪役面である。

 だが、それが良い。

 ただし、まだ出来上がってないので暫ーくはお預け。

 代わりに装甲&ブースターを追加した強襲突撃仕様の装備を渡された。

 こっちでリハビリしろとの事。残念。

 

 追記 受領した途端レジアス少将のマブダチのゼスト隊の皆さんとの模擬戦に強制参加しました。

 だからあんまり地上本部には来たくないんだよ!

 しかも部隊長になってからは忙しいからと遠慮してたから容赦無いし!

 

 

 

 

 新暦60年 4月▽日

 

 そう言えば、うちの部隊でも使ってる兵員輸送ヘリのカスタマイズが地上本部で全面的に行われるらしい。

 ゲシュが生産コストと今までに無い運用なので機種転換訓練が鮨詰め状態なので、配備が遅め(完了まで最低10年)なのに対し、ヘリの改良はドアと装甲部分だけなので、大して手間もコストもかからないからだそうだ。

 実際海としても旧式艦の廃品利用なので寧ろもっと貰っていってほしい位なんだとか。

 とは言え、組織力学的な後ろ暗いお話もあるので、配備完了も直ぐにとはいかないらしい。

 今はドアガン機能を付けたドアだけを作って、次々と既存のドアと交換してるのだとか。

 

 そうそう、S型2号機だけど、かなり良い。

 オレ向けに火力よりも反応速度重視でチェーンしてもらっているため、前のゲシュで抱えてた問題が殆ど解決している。

 ただ高性能な分、どうしても魔力消費だけは悪くなっている感がある。

 勿論、大容量受容器とカートリッジで余り気にならなくなっているのだが、量産化する際はやっぱりマイナーチェンジが必要だろう。

 まぁ多少機能が限定したり出力が下がっても、この頑丈さなら確実に殉職者は減るだろう。

 

 

 

 

 新暦60年 5月×日

 

 何か来月当たりに本局航空隊と模擬戦する事になった。

 うん、ちょっと待とうか。

 何でも本局付きの航空隊の中からうちの隊の能力を疑問視する声が上がってるとか。

 そんな噂がやっかみ半分で広まり始めた頃にオレが重傷負ったもんだから色々言ってきてるそうな。へーほーふーん。

 んで、レジアス少将から「ちょっと黙らせてこい」との事。

 おけーおけー、シンプルに叩き潰せば良いのね解りました。

 そう言えば丁度ナハトの外装が出来上がったんですよねーははははははは。

 

 追記 まーたゼスト隊の訓練に参加した。あの、召喚術からの広域攻撃で対処させた隙を突いての至近距離での打撃戦とかナハトではきついので止めてくださいませんかねぇ(震え声

 

 追記の追記 なんか最近オレ個人の戦力を磨き過ぎてる様な気がする。

 ここはやはり部隊全体の練度向上のために皆にもゼスト隊との合同訓練を提案しよう!

 …オレだけが苦しむのは不公平だからね(暗黒微笑

 

 

 

 

 新暦60年 7月○日

 

 今日は某航空隊との模擬戦がありましたが…結果は勝利A。

Sは逃してしまったが十二分な成果だろう。

 今回の模擬戦ではオレは殆ど指揮を取らなかった。

 部隊員の独自の判断と連携に殆ど任せてたんだけど、ものの見事に勝ってしまった。

 事前の敵の装備や戦力、戦場となる訓練場等の情報を収集し、有効な戦術を構築する。

 相手が典型的なミッド式の空戦魔導士だったから、対空戦闘こそやや不得手なものの、危なげなく勝利してみせた。

 基本戦術としては低速の空中移動砲台が相手なので、通常のゲシュペンストmk-Ⅱに乗るウルフ3・4・5が誘導を担当し、隙を見せた所でピンポイントの狙撃で落としていた。

 この戦術、うちの副官が立てたんだぜ?

 やだ、うちの隊員達有能過ぎ? と言うか、オレの出番が無い件について。

 仕方ないので後方でボッチしてた相手さんの一人を相手にペㇱペㇱやってた、先行量産型ゲシュmk-Ⅲ(過日のS型の量産モデル)で。

 いやさ、ナハトでもしステーク直撃させると軽くても検査入院なもんだから気軽に模擬戦で使えないのよ。

 だから両手にライフル持って中距離保って撃ち合いしてた。

 派手さが無いと言ってはいけません、堅実だと言いなさい。

 

 あ、そうそう。新生ナハトことアルトアイゼン・ナハトについてだけど、かなり良い具合に仕上がった。

 今メインで使ってるmk-Ⅲから外装を変更して原典のナハトの姿になる。

 四つの目に特徴的な頭部センサーと大型化された武器群に、追加されたクレイモア内蔵型のガトリングシールド。

 長所である装甲・中近距離の攻撃力・加速性を更に伸ばし、短所である機体バランスと重量・操作性は更に低下した。

 何という特化型と自分でも思うが、使ってみて分かった。

 

 これ、模擬戦じゃ使えんわ。

 

 だって一番の特徴である遠・中距離から加速しての打撃戦が非殺傷設定でも重傷を負う可能性が高いんだもん!

 クレイモアとチェーンガンだけで勝てと!?機体特性ガン無視ですがな!

 と言う訳で模擬戦では時間稼ぎに終始してました(言い訳

 け、決して勝てなかった訳じゃないんだから、勘違いしないでよね!

 

 自分で言ってて気持ち悪くなった…もう寝よう…。

 

 

 

 

 新暦60年 8月▣日

 

 今度から暫くAD配備部隊の教導役を務める事になった。

 ちなみにうちの部隊は通常任務続行である。

 先日の模擬戦でオレがいなくとも機能するって見せつけたからね、仕方ないね。

 副長から「隊長ももう少し指揮とってくださいよ…」と言われたが、ちゃんともしもの時は責任取るからもうちょっと頑張ってて。

 何せ今の段階でこけたら今後の配備計画に問題が出るからね、問題は早めに対処するに限るんだよ。

 

 改めて考えると、この件に関してはうちの部隊を総出で教導役として使ってもまるで足りないな。

 新兵器って言うのは何時の世も嫌われるもんだし、それが新機軸であれば尚更。

 ひと昔前よりマシになったそうだが、それでもミッドの人達の質量兵器アレルギーは酷い。

 お蔭で銃型デバイスは一番人気が低いそうだしね。

 とは言え、過剰な軍拡やテロの抑止と言う点では今の方が良いのでその辺りは置いておく。

 取り敢えず、こんな時は頭の良い人の協力を仰ごう。

 

 と言う訳で以前連絡先を貰ってたドクターに相談してみた。

 結果、「じゃぁシミュレーターを作ってみよう。」と言われた。

 何でも現状の局員では通常の杖型を始めとしたデバイスを用いた者の方が圧倒的多数な訳だが、今まで戦力外と見なされていたD以下の魔導士を中心に希望者を募り、集中的に訓練させる事で即席戦力とする。

 無論の事、練度は低いが、それでも死に辛く、経験さえ積めばそれなり以上の戦力となる事が期待できるのなら、予算も出るだろうとか。

 で、恐らく大量に出るであろう希望者を一斉に訓練するにはゲシュの数がまだまだ足りないから、シミュレーターで補おうとの考え。

 ついでにゲーセンにも簡易版を置いて小金も稼いじゃおう☆とは秘書もとい長女さんの提案だとか。

 中々いい案なので直属の上司にあたるレジアス少将に投げておく。

 

 追記 取り敢えず、試作品作る予算が出たので作ってもらった。

 感想としては中々の出来だったと思う。

 でもちょっと再現したGとか被撃時の衝撃が弱いので、上級者向けはもっと強くしてもらおう。

 

 

 

 

 新暦60年 10月○○日

 

 教導が終わらねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!

 希望者多すぎ!オレ一人じゃ無理だよ!馬鹿なの死ぬの!?

 基礎訓練とかは既存の訓練校で出来るけどAD向けの訓練オレ一人で全部見るとか無理だから!!!

 てゆーか新任の希望者+配備された既存部隊の教導とか過労死しろってか!?!

 仕方ないからうちの部隊の連中総出だよ!文句は言わせん!

 またドクターにシミュレーター増産頼まなきゃ!

 ほんっとドクターに相談しといてよかった!

 無ければ死んでたね、過労で!

 

 追記 ゲーセンの方でも利益ガンガン出てて笑いが止まらないんだとさ。へー。

 状況打破の知恵貸してくださいと頼んだら無理って言われた。ぐすん…。

 

 

 

 

 新暦60年 10月○×日

 

 もうだめぽ/(^o^)\

 

 

 

 

 

 新暦60年 11月▽日

 

 休暇!久しぶりの!休暇!

 自宅に帰ってくるの何か月ぶりだろうか…(震え声

 おじさんにも久々の挨拶も早々にベッドに叩き込まれた。

 曰く、死相が出る位働くな、と。ごもっともです。

 今週はお休み貰ったから、只管体力回復に励みます。

 

 

 

 

 新暦60年 11月□○日

 

 休暇二日目にしてオーリス登場により惰眠の時間はボッシュートされました。

 まぁ良いけどね、入院中も世話になったし、ここは恩返しと言う事で全力でエスコートさせて頂きます。

 

 追記 夜、自宅まで送ったら、寧ろ不満顔をされてしまった。

 いや、流石に送り狼とかできませんからね?

 そう言うのはちゃんと告白してからでお願いします。

 

 と言うかオレらまだ15歳だからね?

 幾ら魔導士は就業年齢とか飲酒とか甘くてもエロはまだ早いからね?

 

 

 

 

 新暦60年  12月■日

 

 教導教導また教導…オレの役職は!普通の!部隊長だってば!

 査定に+なるからって、いい加減に別の仕事させてよ!

 

 追記 教導に行った駐屯地の近くでテロリストを発見したとな。

 でも高ランク魔導士なので増援要請だって。

 だから行ってきまーす!

 

 追記の追記 調子乗って「切り札」のモーション使ったら、現地の捜査官にやり過ぎだと言われました。

 すいませんすいませんすいません反省文はもう勘弁ですオーリスさんすいませんすいませんすいまs(ry

 

 

 

 

 

 Side ウルフ6

 

 え、部隊長についてですか?

 部隊長はとても変わった人だと思います。

 不愛想というか無表情で、でもよく気配りの出来る人で。

 それで、とっても強い人です。

 

初めてあの人に会った時は現場でした。

 その時の私はまだ普通のBランクの新米で、私の部隊が壊滅して戦闘不能になった時に隊長が…あ、その当時はまだ個人で動いてたそうです。

 特例措置なんだそうで、凄いですよね!

 あ、話戻しますね。

 後から聞いたんですけど、隊長も当時はAだったんですけど…相手の犯罪者はニアSランクだったのに、他の取り巻きも全然退かずに倒しちゃったんです。

 時間にしたら…そうですね、10分程かと。

 それでニアS含む7人の魔導士を鎮圧してました。

 それから半年後位ですね、新設部隊の話が聞こえてきたのは。

 その部隊が以前助けて頂いた人の部隊だって聞いて、もういても立ってもいられなくなって志願したんですよ。

 今では当時の自分に拍手喝采ですね。

 任務自体は厳しいですし、訓練もきついですけど、今までみたいにランク差に押し潰されないで済むって言うのは私みたいな人には福音ですよ。

 

 それに、隊長には部隊に入ってからもお世話になりっぱなしで…あの、その、とても尊敬しています!

 

 

 

 

 

 『どうする?』

 『路線自体はこのままでも構わんが…諜報の方は?』

 『幸いと言うべきか、未だに犯罪者には漏れておらんよ。』

 『スカリエッティを除けば、か。』

 『奴の事だ、必ず一度は遊ぶぞ。我らの指示も無く、そう遠くない内にな。』

 『心配するな。これを見てみろ。』

 『ん?あぁ、成程。』

 『最近少し灸を据えて大人しくなったかと思えば…。』

 『まぁ丁度良いのは確かだ。これを利用するとしよう。』

 『まだ先ではあるが、な。』

 

 

 

 

 

 『やれやれ、老人達にも困ったものだ。』

 『如何なさいますか?』

 『妹達の起動を急ぐとしよう。とは言え、まだ表に出る気は無いけどね。』

 『ではその様に。』

 『あぁ、それと引っ越し先の選定も頼むよ。まだ大丈夫だとは思うけど。』

 『畏まりました。それとドクター、今日の夕飯はどうしますか?』

 『…サプリメントじゃダメかい?』

 『ダメです。それで消化系が弱まってるんですから、少しでも良いので普通の食事をお取り下さい。』

 『…じゃぁたまには麺類で頼むよ。』

 『畏まりました。』

 

 

 

 

 

 (最近忙しいけど妙に平和だなー。ま、いっか。)

 

 

 

 

 

 

 

 




何とか来週中に完結させる…!頑張れオレ…!

でも中古でまとめ買いした東京喰種がオレを誘惑する…!
手が、手が勝手に!?


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第七話 時は流れて

 

 新暦61年から暫くの間、キョウスケらにとっては割と穏やかな日常が続いた。

 犯罪者を、テロリストを、狂人を血祭りに上げたり、希望者に地獄の様な訓練を強いたり、偶に娘との事で上司に弄られたりしたが、それでも今までのハードモードが基準の彼の人生では比較的穏やかな時間が続いた。

 そんな日々がなんと5年も続いたので特段記す事も無いので、この際年表と共にダイジェストで語っていく。

 

 

 新暦62年 ミッドチルダ全域にADデバイスの配備及び希望者の機種転換訓練が終了。

 

 新暦63年 ミッドチルダの犯罪発生率が過去最低、検挙率は過去最高を記録する。

 この成果にはAD他新型兵器配備によるものとされ、主導したレジアス・ゲイズ少将は中将に昇進。

 AD教導隊ベーオウルブズ隊長キョウスケ・ナンブ三等陸尉は二等陸尉へ昇進。

 

 新暦64年 クイント・ナカジマが任務にて戦闘機人2名を保護、以後は養子として引き取る。

 

 新暦65年 PT事件発生。また、地上本部にて次期主力ADの先行量産型モデルがAD教導隊に配備される。

 

 そして新暦66年現在、ある管理外世界を舞台に、第○○次闇の書事件の発生が確認された。

 これは本来、キョウスケらには関係の無い事件だった。

 海の連中がまた何か必死にやってるなー位のものだった。

 問題なのは闇の書の使役する叢雲の騎士ことヴォルケンリッターズが、よりにもよってベーオウルブズがテロ鎮圧のために赴いた管理世界に現れてしまった事だった。

 

 

 

 

 

 第41管理世界。

 現地宗教の過激派によるテロ、民族紛争、そして管理局の支配体制反対派と管理局駐留部隊との間で常に緊張状態のこの世界に、彼らはやってきた。

 全ては主の御命ため。

 終われば我らの首を差し出してでも、あの方に平穏を。

 それだけを胸に騎士達は年から年中戦争状態の現地住民らを襲撃した。

 リンカーコアの質そのものは低いものの、それでも人口密集地であり、管理局がおいおいそれを介入できない場所であるため、数だけは多く集まった。

 彼らの使命を邪魔する者はいない。

 これ幸いにと騎士達は蒐集作業に没頭した。

 勿論、現地住民の質量兵器や低ランクながらも魔法を用いた抵抗はあった。

 だが、騎士達は古代ベルカ式の、それも一騎当百は下らない猛者達だ。

 小銃弾なんて効かないし、対装甲兵器なんて当たらない。

 そして何より、彼らは戦乱の時代を延々と戦い抜いた、文字通りの怪物だ。

 今更罠や奸計や謀略程度でどうにかなる程に軟な存在ではない。

 インテリジェンスデバイスの真価がその稼働年数にある様に、彼らもまた圧倒的過ぎる経験によって、あらゆる策を戦術を戦略を捻じ伏せ続け、蒐集を続けた。

 無論、管理局もこれを黙って見ている事は無かった。

 だが、現地住民との不和や散発するテロリストからの襲撃やテロ活動や現地政府のボイコットが彼らの行動を阻む。

 上層部もまた一連の動きには手を焼いており、遂には一部から「管理外世界とその一歩手前の世界にだけ被害が出るのなら放置」という日和見的な意見まで出る始末だった。

 だが、彼らは知らなかった。

 只今、この世界で最大の憎まれ者とその部下達が、各地のテロリストの拠点を襲撃中であった事を。

 その彼らが昨年に最新式のADを受領している事を。

 たまたま狙いを付けて襲撃した場所が、寸前まで彼らの戦場であった事を。

 騎士達は、知らなかったのだ。

 それがどんな事を意味するかもまた、彼らは知らなかった。

 

 

 

 

『転移反応4!北東3と西1!』

 

それに最初に気付いたのはセンサー系が最も充実しているヴァイスリッターⅡ、ウルフ6だった。

すっかり新人っぽさも消えた彼女の言葉に、戦闘終了直後と言う事で気が緩みかけだったベーオウルブズに一瞬で喝が入った。

 

 「シュワルベ・フリーゲン!」

 

 赤い魔力を纏った鉄球4個による同時攻撃。

 軌道からして4個それぞれが個別目標を追尾、バリア貫通機能も付随されているようだが…如何せん、遅すぎた。

 

 『対空迎撃!』

 

 連射される散弾魔法に、4個の鉄球はあっさりと破壊された。

 だが、その際の爆炎に紛れ、高速で接近する影には当たらない。

 

 「紫電…ッ」

 

 炎熱変換された魔力を纏い、炎の魔剣と化したアームドデバイスを手に、シグナムが地へと激突する勢いで疾駆する。

 目指すは敵指揮官、この見慣れぬ集団の中で、対空迎撃に参加しなかった者!

 

 「一閃!!」

 

 同ランクのミッド式の魔導士では防御は愚か、反応する事さえ難しい直上からの斬撃は、しかし、この時ばかりは相手が悪かったとしか言う他ない。

 

 ガギィン!

 

 硬質な音と共に、その刃は特殊合金製の杭で受け止められていた。

 

 『クレイモア。』

 

 同時、敵指揮官の装甲服の肩部装甲が展開すると同時、己の直感を信じて、シグナムは後先考えずにカートリッジをロード、バリアすら発生させる時間も惜しみ、騎士甲冑の強化に回して全力で防御した。

 

 ズバァン!

 

 だが、それで正解だった。

 敵指揮官の両肩から放たれた無数の散弾は、まるで散弾地雷のそれだった。

 少なくとも、真っ当な魔導士の取る手段ではない。

 幸いにも無数とは言え小粒の散弾だったため、命中数は相当のものだが、頑丈な古代ベルカ式の騎士甲冑はそれを全て防ぎ切った。

 

 ジャキ

 

 だが、あくまでそれは第一弾に過ぎない。

 向けられたチェインガンに、シグナムの背筋に寒気が走った。

 

 「うぅおおおおおおおおおおおおおおんッ!!」

 

 そこに青い狼の守護獣、ヴォルケンリッターが盾、ザフィーラが咆哮と共に正面にシールドを展開、左側面から突進を敢行し、カバーに入る。

 

 『…。』

 

 だが、不死身の英雄は怯まない。

 追撃を中止し、左腕のチェインガン付きシールドを構え、姿勢を低くし、真っ向からぶつかり合った。

 

 ドガッシャァァァンッッ!!!

 

 大型車同士が正面衝突した様な派手な破砕音が響き渡る。

 同時に、重量差を勢いで押し切ったザフィーラが、衝突時に罅が入ったフィールドをそのままに更に加速する。

 目指すは進行方向にあるビル。

 その荒れ果てたコンクリート製の壁に、二人は轟音と砂煙と共に砕きながら、室内に突入した。

 

 『隊長!』

 「フランメ・シュラァァァァァクッ!」

 『ッ!』

 

 咄嗟にウルフ4が隊長のカバーに入ろうとするが、意識を反らした瞬間に赤いドレスの様な騎士甲冑を纏ったヴィータが降下と共にハンマー型のアームドデバイスであるグラーフアイゼンを振り下ろした。

 が、この世界に来て、トラップや不意打ちは散々慣れさせられていたウルフ4は咄嗟にゲシュペンストmk-Ⅲの左肩部スラスターを吹かしてそれを回避、射撃で牽制しながら距離を取ろうとする。

 

 「んな小粒弾が効くかぁ!!」

 

 だが、ヴィータは騎士甲冑の防御力頼りに直進、再度グラーフアイゼンを振り被りながら突撃する。

 

 『ほう?これでもか?』

 

 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッ!!

 

 「うが!?」

 

 だが、彼女の突撃は無数に連射され続ける射撃魔法によって吹き飛ばされる事で強制終了された。

 ゆらりと銃口から余剰魔力を煙の様に立ち上らせながら、ウルフ3のゲシュペンストmk-Ⅲが5連装チェインガンの銃身を向ける。

 その視線は油断なく、瓦礫の中から立ち上がるヴィータに向けられていた。

 

 『固いな、古代ベルカ式の高ランク魔導士か。』

 『各機、近接戦闘は避けろ!射撃は全て徹甲、又は徹甲榴弾に切り替え!ツーマンセルを崩すな!』

 『隊長が使い魔の狼とビル内に!あと、空戦可能な魔導士がもう一人来て…わぁぁ!?』

 『魔力反応を見落とすな!もう一人、支援役が居るはずだ!』

 

 各々が初撃を乗り切った事で、途端に通信が慌ただしくなる。

 どれもこれも切迫した状況を示すものであり、殆ど指揮を取っているウルフ2としても敵4人中、既に3人が高ランク魔導士級、しかも内二人が空戦という実に頭の痛い状況だった。

 

 『識別出ました!例の闇の書の攻性プログラムです!空戦Sと空戦AAA、陸戦AAAと支援役AAAの4名!』

 『くそ、海の連中の仕事だろうが!』

 

 嫌すぎる情報に喚きながら、ウルフ4が徹甲弾を連射、接近を試みるヴィータの騎士甲冑に損傷を与えるも、まともなダメージが入った様子は無い。

 

 『シグナム、こいつら手強いぞ!』

 『あぁ、こちらも中々だ、が…。』

 

 「我らの敵ではない。」

 

 音速に近い飛翔速度で、烈火の将シグナムが空を駆ける。

 目標は目の前の白い奴、指揮官ではないが、空中にて索敵等を行う支援役を落とせば、少なくとも追ってはこれない。

 それを見越してこそ、先程の指揮官をザフィーラに任せているのだが…。

 

 『スラッシュリッパー、アクティブ。』

 

 フォン、と奇妙な音と共に三枚の刃が付いた円盤が飛来、こちらを切り裂かんとそれぞれ別々の軌道を描きながら迫ってくる。

 同時、ウルフ5の空戦高機動仕様のゲシュペンストmk-Ⅲが徹甲弾を敢えて散らばらせる形で連射する。

 回避した所でどれか一つは命中する、そんな攻撃にシグナムは

 

 「シュランゲフォルム。」

 『カートリッジロード。』

 「飛竜一閃!」

 

 蛇腹剣となり、鞭に近い動きが可能となったレヴァンテインが、まるで炎の蛇の様に唸り、全てを迎撃、更に返す刃で二機の連結刃が迫り…

 

 バシュゥッ!

 

 「ッ!」

 『パンツァーガイスト。』

 

 二条の砲撃が足の止まったシグナムに放たれ、轟音と共に着弾する。

 

 『防ぎましたか…。』

 「ご苦労、レヴァンテイン。」

 

 寸前にデバイスによって発動された防御魔法が、それを防いだ。

 とは言え、急な事だったためか、全てを防ぎ切る事は出来ず、騎士甲冑の所々が欠けていたが。

 砲撃元に視線をやれば、スゥ…と中から滲む様に現れたのは重装仕様のゲシュペンストmk-Ⅲの姿だ。

 

 (光学迷彩からの不意を打っての砲撃か。面倒な。)

 『…やるね。ウルフ2・6はカバーを。』

 『任されました。』

 『了解です!』

 

 だが、生憎と強敵は上司含め慣れている。

 ベーオウルブズで数少ない空戦可能なウルフ5と6は眼前の強敵に再度アタックを仕掛け、ウルフ2は二人の突撃の隙を作るべく、再度砲撃を放った。

 

 

 

 

 

 ドガァン!!

 

 「ぬぅぅ!?」

 『………。』

 

 互いに同じ色を持つ両雄が、反対方向に弾き合い、建物に突っ込み、倒壊させる。

 だが、その視線は眼前の敵に向けられたまままだ。

 

 (いかんな。こいつを通せば、他が押し負けかねん。)

 

 ザフィーラは既に眼前の敵指揮官が尋常の手合いではない事を実感として思い知っていた。

 ヴォルケンリッターの中で最も硬い自分のシールドが既に何度も破壊されている。

 これ以上はデバイスを持たない自分にはおいそれと張れないと言うのに、奴の右腕の得物はそれを一撃で突破してくる。

 

 (この爆発力は危険だ。何としても食い止める!)

 

 そう覚悟を決め、再度手足にシールドを展開し、踏み込む。

 防御力の方が目立つが、その実、最も仲間達の中で素の身体能力が高いのもザフィーラだ。

 獣特有の動体視力も相まって、素手でのインファイトなら誰にも負けない。

 そんな彼だからこそ、眼前の敵と自分の相性の良さを悟っていた。

 

 「ぜぇあぁッ!!」

 『…。』

 

 ガキン、とナハトの右腕から撃鉄の音が響く。

 当たれば一撃、プログラム体の自分でも間違いなく致命傷になる。

 だが、それは奴が最大速度になればこそ。

 

 (死中に…)

 

 ゴゥ…ッ!!

 

 (活あり!)

 

 だから、敢えて奴の懐に飛び込んだ。

 圧倒的な加速力と共に左腕を前に構え、その盾で身を防ぎながら、必殺の右腕の杭を叩き込む。

 それが敵の戦い方。

 恐らく、数多くの格上すら屠ったであろう、致命の一撃。

 そのための姿勢は効果的かつ正確無比。

 相手の必殺であろうそれは、しかし、それ故に隙が存在する。

 

 ズガァッ!!

 

 杭が最大威力に到達する前=敵が加速に乗る前に杭を盾で流しながら、敵の両拳をこちらの拳で受け止める。

 

 『押せよ、mk-Ⅲ。』

 

ギャギャギャギャギャギャギャ…!!

 

「ぬぅぅッ!」

 

 だが、身体能力は多少勝るも、加速力に優れ、質量にもかなりの差がある相手を完全には止め切れない。

 それもまたザフィーラは予想していた。

 

 「でぇぇありゃぁぁッ!!」

 『…ッ。』

 

 相手を前に崩し、体を丸めて転がる様に真後ろに倒れこみ、片足の裏を相手腹部に当てて、押し上げるように真後ろへ頭越しに投げる技。

 柔道における巴投げ。

 スポーツはさて置き、実戦でこれを行う事は訓練した者でも極めて難しい。

 しかも、相手が1トン近い重量と地上で音速に近い加速を行う事が出来る馬鹿みたいな存在となれば、寧ろどうしてやる気になったのか、仕掛けた側の正気を疑うレベルだ。

 だが、ザフィーラは別にこのクラスの加速性も、重量も、パワーも、別段初めてと言う訳ではない。

 寧ろ、これを超える相手とすら戦った事もある。

 彼らの戦闘経験とは、そういう物なのだ。

 魑魅魍魎が如き敵が蠢く古代ベルカにおいて、その勇名が知られた騎士達は多かった。

 だが、彼ら程長きに渡る時代を戦い抜いた者は存在しない。

 その経験故に、ザフィーラは冗談の様に刹那のタイミングと神業的な身体操作を可能とした。

 そして、轟音と共に再び廃屋に叩き込まれた孤狼に、盾の狼が追撃する。

 

 「貴様はそこで沈んでいろ!」

 『ッ!』

 

 廃屋内の床、壁、天井と言う正面を除いた全方位から、ザフィーラの鋼の軛が迫る。

 咄嗟に身を起して前に出ようとするも、既に正面には先ほどよりも頑丈に魔力を込められた障壁が展開され、屋外に出るには壁を破壊するしかない。

 だがその前に、ほぼ全方位からの攻撃が、アルトアイゼン・ナハトを貫いた。

 

 

 

 

 一方、シャマルは戦闘が開始してから直ぐにベーオウルブズが鎮圧したテロリスト達からリンカーコアを蒐集していた。

 全員が完全に無力化され、しかもそれなりのランクの魔導士も混ざっている事から、蒐集結果は一度の蒐集にしては中々のものだった。

 しかし…

 

 (皆は今、これ全部を無力化した相手と戦っているのよね…。)

 

 やべーぜ、どー考えてもやべーぜ。

 彼女の思考を要約してしまえばこれに尽きた。

 勿論シャマルだって仲間達の強さは知っているし、何が相手でもおいそれと遅れを取る事は無いと信じている。

 が、どうにも嫌な予感が拭えない。

 気になって索敵すれば、なんと今戦っている魔導士は腕が立つものの、一番上でランクはAA程度でしかない。

 つまり、まだ親玉や別動隊が控えている可能性が高い。

 そして、こういう時はさっさと撤退した方が良いと長年の軍師としての勘が告げている。

 

 (皆、蒐集ノルマは達成したから撤退よ。)

 (ぬ、もうか?)

 (あいよ!んじゃジャミングと転送タイミングはそっちに任せた!)

 

 ヴィータは兎も角、本来リーダーである将がまた脳筋を拗らせている事に頭痛を感じつつ、シャマルはふともう一人の仲間からの連絡が無い事に気づいた。

 

 (ザフィーラ、どうしたの?)

 (…すまん。手傷を負った。これから合流する。)

 (おいおいマジかよ!?)

 

 その知らせに内心で驚きつつ、素早くザフィーラのバイタルをチェックする。

 結果、腹部に中程度の負傷があり、長時間の戦闘続行は不可能な状態だった。

 

 (無理せず撤退するわ。指定ポイントに集結次第跳ぶわよ。)

 (((了解!)))

 

 幸いにも封鎖結界も無かった事から、騎士達はあっさりと撤退に成功した。

 

 

 

 

 

 『退いたか…各員、状況知らせ。』

 『こちらウルフ3、被弾無しですが弾薬がイエローです。』

 『ウルフ4、同じく。』

 『ウルフ5、ギリギリ小破。』

 『ウルフ6です!被弾ありません!』

 

 瓦礫の中に立ちながら、敵の撤退を見届けたウルフ2が各員に連絡すると、一人を除いて直ぐに返事があった。

 

 『隊長は?誰か見ませんでしたか?』

 『青い使い魔とやり合いながら郊外の住宅地の方に向かいました。』

 『あ、魔力反応ありました。確かに住宅代の方です。』

 『通信機が逝かれたか?ウルフ6、先行してバイタルチェック。必要なら医療班に連絡を。』

 『了解!』

 

 フォン、と独特の音と共にヴァイスリッターⅡが飛翔する。

 目指すは戦闘の収束した旧住宅街方面のいるであろう隊長だ。

 そして、お目当ての人物は直ぐに見つかった。

 

 ただし、全身ボロボロの状態で

 

 『た、隊長!?』

 『ウルフ6か。問題ない。』

 『大有りですよぉ!ウルフ2、隊長が負傷してます!医療班急いでくださいぃぃ!』

 

 見れば、機体の装甲のあちこちが剥げ、左腕は肩から先が無い。

 

 『って、負傷は義手だけですか?』

 『掠り傷だ。』

 『良いから詳しくお願いします。』

 

 が、戦闘が激しかった場合、上司が無痛症状態になる事がよくよくあるので、直ぐにウルフ6は負けずに詰問した。

 

 『打ち身があちこちにあるだけだ。』

 『じゃぁ念のため医療班の所に行きましょうね。』

 『分かった。』

 

 念には念を入れるべきとウルフ6はしっかりと釘を刺しておく。

 嘘ついても医者の前じゃ無駄だぞ、と。

 それが通じたのか、キョウスケも肩の力を抜いて大人しくする事にした。

 

 (どっか骨に罅入ってますね、呼吸音が微妙におかしかったです。)

 (気づかれたかなー?まぁ戦闘中は殆ど無痛症状態だしね仕方ないね!)

 

 

 

 

 

 

 「してザフィーラ、先日の指揮官はどの程度だった?」

 「あぁ、奴か。」

 

 主の家に帰宅後、シグナムは興味本位から狼状態のザフィーラに問うた。

 先日の奇妙な全身甲冑の魔導士の部隊、その中でも特に危険だと感じた青い指揮官。

 その相手をザフィーラ一人に任せてしまい(=楽しませてしまい)、(羨ましいと)気がかりだったシグナムは珍しくもザフィーラに話しかけていた。

 

 「…次にやるとしたら、相性の問題でオレだろう。」

 「そういう事が必要なレベルか?」

 「あぁ、手強かった。」

 

 ザフィーラの脳裏には鋼の楔に捕えられ、身動きが封じられたあの敵指揮官の姿があった。

 奴はあの時、左腕を肩の武装と共に完全に串刺しにされた状態で沈黙していた。

 だが、ザフィーラが止めを刺そうと屋内に踏み込んだ瞬間、奴は動いていた。

 左腕を自切し、右腕を先ほどの様に引き絞って。

 無論、ザフィーラもその一撃の攻略方法が解っているため、直ぐに反撃に移ろうとし…

 

 その左肩を敵の額の角に貫かれた。

 

 咄嗟に膝蹴りを叩き込んでいなかったら、そのまま左腕を引き千切られるか、奴の杭を撃ち込まれて戦闘不能にさせられていただろう。

 そんな時にシャマルからの通信があったので、正直あのタイミングは神がかっていたと思う。

 

 「シャマルに直ぐに治療してもらったが、出来れば会いたくない手合いだな。」

 「何故だ?中々に心躍りそうなものだが。」

 「奴の目は死人だった。」

 

 ザフィーラの言う死人は死兵、つまりは自分が死んだものとして考え、ただ組織や仲間、主君への忠義を尽くさんとする者の事だ。

 ヴォルケンリッターもかなり近い精神性を持っているが、あんな機械の様な冷え冷えとした目はしていない。

 

 「本格的にやり合うなら、次は誰か欠けるだろう。」

 「それは勘弁だな。主はやてを泣かせたくはない。」

 「その通りだ。」

 

 だが、何れ再会する事になる。

 不思議とザフィーラにはそんな考えが浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本作のザッフィー
1、不遇さ軽減
2、見せ場増し増し
3、仲間の皆に頼りにされてる

本作のヴォルケンズ
1、基本的に経験豊富
2、役割分担と連携はきっちり
3、日常ではへっぽこ

以上の方針でお送りします。


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第八話 死闘

 

 新暦65年 11月○日

 

 やべぇヴォルケンズぱねぇ(小並感。

 あれだ、アニメで小学生に蹴散らされてたりしたもんだから、てっきりそこまで強いとは思ってなかったんだわ。

 海の武装隊にしても、高ランクは一人もいなかったし、尺の都合か直ぐ退場がデフォだからさ。

 だっつーのにあの練度、マジやばでした(白目

 魔力資質だけなら本局でも探せばいる。

 だが、あいつらに勝る経験値を持った人間は存在しない。

 いたら、そりゃ記憶受け継いでる連中とかだけで、決して個人ではない。

 特にザッフィー、影が薄いとか言ってごめんよ、だからその拳で室内戦とか止めて。

 オレ、狭いフィールド不得意なの。加速=壁ドン(セルフ)だから。

 

 今回出張先で襲われたのはかなり驚いたけど、まぁ原作始まってるし、こんな事もあらぁな。

 でも、闇の書のデータとか古代ベルカのデバイスのデータは正直欲しかったりする。

 

 それは兎も角、一度本格的な整備を行うためにクラナガンに戻るとレジアス中将にお呼ばれされる。

 はて、最近は問題起こしてないんだが?と思いつつ行ってみると、何と海から援護要請が来てるのだとか。

 何でも主要な魔導士は他に出張り済みで、管理外世界を根城にあーだこーだしてる闇の書にこれ以上戦力割きたくないからお前らも人出して☆(要約)とか言われたらしい。

 うわぁ父子二人がガチ切れしてるなりぃ、とか思いつつ、命じられれば行きますよ、と適当に答えておく。

 すると中将が顔を苦虫に換算すれば20匹分位顰めて、書類を渡してきた。

 次元航空艦アースラへ、陸からの対闇の書部隊への派遣の命令書だった。

 拒否権はあるぞ、との事だが、ちょっとボコしてデバイス頂いてから帰ってきますと言ったら二人に呆れられた。

 オーリスから無事に帰ってくるように、と言われた。

 うん、頑張ってくるよ。

 

 

 

 

 新暦65年 12月3日

 

 アースラに派遣されて早10日、漸く補足した!と思ったらなの覇さんに被害が!?

 いやまぁ強化フラグなんでしょうけど、子供相手に必殺リンカーコア握りは惨い。

 勿論無防備な所を横殴りさせて頂きましたけどね☆

 え、原作キャラへの愛着?そこはほれ、転生者だけどオレそこまでファンタジーの人じゃないし、リリカルもネタの宝庫として見てただけだし、生粋のロボオタでガチガチの軍属にそんな事言われても、その、なんだ、困る。

 それにテロリストなんて須らく死ぬべきでしょ?

 結局撤退を許したが、支援役のシャルル?(うろ覚え)には手傷を与えたからよしとしておこう。

 

 

 

 

 

 彼らが結界の展開を察知して出撃した時、既に一人の犠牲者が出ていた。

 高町なのは。

 何れ未来において魔王と称される、AAAランクのミッド式空戦砲撃魔導士だ。

 そんな彼女が経験差と相性故に遅れを取り、増援として現れたフェイトとシグナムがそれぞれ戦闘を開始し、その隙になのはがそのリンカーコアを蒐集されるという瞬間…

 

 『そこまでだ。』

 

 旅の扉から伸ばされた手によるリンカーコアの直接蒐集。

 白魚の様な綺麗な手は、しかし、手首から先を赤化した刃に切断された。

 

 「え?」

 『ぎッ!?』

 

 それにより蒐集されようとしていたリンカーコアは体内に戻り、轟音と共に落下してきた全身を機械に包んだ人物の登場もあって、なのはは無理に行使しようとしていた砲撃魔法を停止していた。

 

 「あ、ありがとうございます?」

 『要救助者確保。高町なのは、君は一度アースラに後退しろ。』

 「え、あ、えと」

 『無理せず下がり、手当を受けなさい。』

 「は、はい!」

 

 それが未来の魔王と鋼鉄の孤狼の、初めての邂逅だった。

 

 

 

 

 Side なのは

 

 その人達を初めて見たのは、私がヴィータちゃんに初めて会った時の事でした。

 私が蒐集を受けて動けなくなった時、フェイトちゃんが駆け付けてくれると同時に、あの人達が来てくれました。

 今まで見たどの魔法使いの人とも違う恰好で、まるでゲームに出てくるロボットみたいでした。

 その人達が来てからは本当にあっという間に助けられました。

 どうやらヴォルケンリッターの人達とは顔見知りらしく、向こうが退いていったそうです。

 お礼は後で言えたけど…実は今でも会って聞きたい事があるんです。

 

 あのメカメカしいBJってどうやって作るんですかって。

 

 

 

 

 新暦65年 12月4日

 

 なの覇さんが退院したが、最低でも数日は魔法禁止との事。

 しょんぼりするなの覇さんに一応先輩として魔法を使わないトレーニング方法を教える。

 それは周囲に存在する魔力、その流れを感じ取る事。

 近接得意な連中は経験則なんかでこれをしてるのだが、知っておいて損は無い。

 これを用いる事で、魔力を通して大気の流動や魔力の流れを把握し、感知範囲内の索敵向上に繋がる上に、極めれば近接距離なら限定的な未来予知染みた感覚を得る事が出来る。

 まぁ大抵は殺気を読んだりして不意打ちに気付きやすくなる程度のものだが、暇潰しにはなるだろう。

 なお、ADのセンサー系は通常のデバイスよりも高性能なので、ある程度感知出来ます。

 

 追記 何やらフェイトそんも同じベンチで並んで訓練してた。天才なのに向上心が良すぎる子供達に感心する。

 

 追記の追記 アースラクルーに子供に何を教えたんですかと結構厳しく詰問された。一体オレが何をした。

 

 

 

 

 

 新暦65年 12月7日

 

 今日、ユーノきゅんが遂にあの悪名高き無限書庫へと旅立つ事を決意したそうな。

 彼の未来に幸多からん事を願う…。

 分類後の資料は通常の図書管理システムに則って検索できる様に支援しとくか、うん。

 

 ここ暫くはアースラで訓練かヴォルケンズの戦闘データとか記録を漁って対策考案中。

 あの連中、全員が専門分野違う上に一番弱いと思われるシャマルですらAAAランク相当とか強いってもんじゃねーぞ!

 こっちは装備充実させて得意分野に特化させて戦術練って隙突いてどうにかこうにかだっつーのに、これだからmade inベルカは!しかも大概故障するし!

 

 追記 途中でアースラの執務官(背が気になるお年頃)が参加してきたが、普通のミッド式らしく弾速が遅い、誘導弾に頼り過ぎ、BJが脆いの三拍子で即効で畳み掛けられてた。南無。

質量兵器染みた武器なんて…とか言うが、非殺傷設定可能で魔力で動いてるんだからセーフセーフ合法合法。

 

 追記の追記 後日この時のデータを見たなの覇さんが目を輝かせていたそうな。…流石にゼオライマーとかは作れんよ?いや、チャージ等させるものかはロマンだけどさ、MAD動画的に考えて。

 

 

 

 

 新暦65年 12月8日

 

 いやはや、今日も大変だった。

 丁度結界展開時に間に合った我らベーオウルブズ。

 その後、アースラの嘱託組がそれぞれの相手をし始めて戦闘が膠着し始めるまで待つ。

 特に未来の痴女と魔王様はデバイスを新調してハッスルしておられるが、コアに直接魔力を足す通常のカートリッジ式は負担がでかいというのに若い頃から常用してちゃ後で困るぞー。…まさか注意書きとか見てない処か渡してないのか?(汗

 そんな我らは光学迷彩&ステルスしながら支援役の湖の騎士を発見、アースラの武装隊と共に包囲殲滅を図るも返り討ちに会いました。やべーやべー。

まぁ支援役なんて開戦と同時に潰される訳だし、そりゃ自衛位出来ても不思議ではないよね!

 最後にはページ消費からの範囲攻撃で足止めされた上に変なマスク付けたミッド式の魔導士の攻撃を受けて取り逃がした。

 邪魔してくれたマスク野郎は取り逃がしてしまった…でも猫姉妹、実はアホなのか?

 少なくともミッド式である事、魔力の波長(色とか)、獣臭さとか全然消せてないんだが。

 取り敢えず、後方(本局と地上本部)に取得したデータを投げておこう。

 …決して幼女を孤独死させようとした畜生を失脚させようとか思ってはいませんよ?

 ただ局員としての義務を果たしているだけで。

 

 追記 本局に送ったデータは一部巧妙に改竄されたとか。おーおー厄い厄い。後はこういうのにがっつり噛み付く我らが頼りになる上司に任せるとしよう。

 

 

 

 

 

 第97管理外世界において、現在現地の人々の与り知らぬ所で、激戦が繰り広げられていた。

 未来の魔王ことなの覇さんはハンマー幼女ことヴィータと。

 未来の痴女執務官ことフェイトは劣化の将ことシグナム

 痴女の使い魔兼未来ニート幼女のアルフとペット枠兼肉盾のザフィーラ号。

 未来のオールスターが互いに色取り取りの魔力光を放つ魔法の応酬しながら、海鳴の町を照らしていた。

 同時刻、光学迷彩を展開しながら、身体強化魔法すら使わずに自力でビルの階段を駆け上がる者達がいた。

 

 『各員、予定ポイントに到着次第、一斉に仕掛ける。』

 

 クロノ・ハラオウン執務官率いるアースラ所属の武装隊の予備隊、そしてテロリスト絶対殺すマンことキョウスケ率いるベーオウルブズだ。

 

 『にしても、意外だな。君達がこちらの指揮下に入ってくれるなんて。』

 『指揮系統の一本化。その点に異論は無いし、そちらの方が階級は上だ。』

 

 魔法ではなく、通常の無線を用いながら話す二人に隔意は見られない。

 陸と海、地上本部と次元航空艦隊。

 陸の予算と人員を乾いた雑巾から絞るが如く搾取する海のやり方から、地上本部では蛇蝎の如く嫌われている。

 近年になり、新型のAD配備に当たり、犯罪者検挙率の向上に伴い、治安の改善と経済の活発化により、予算に関しては改善されたものの、高ランク魔導士の資質を持った人材に関しては未だに海の方に優先的に配備されているため、未だ両者の隔意は根強い。

 だが、そんなものは関係ないとばかりに地上の治安改善の立役者たるベーオウルフは振る舞っている。

 これに関してはマスコミからの取材の際、本人から「我々が憎むべくは犯罪者であり、同じ局員ではない」とコメントされている。

 

 『間もなくポイントに到達する。各員、敵は支援担当とは言え、歴戦の高ランク魔導士だ。油断するな!』

 『こちらは予定ポイントに到達した。緊急時には支援を行う。』

 

 今回、武装隊とベーオウルブズはそれぞれ別の役割が振られていた。

 敵の主力は3人、しかしそれを支え、撤退や奇襲時の転移、結界の構築や索敵を行うのは常に一人、湖の騎士ことシャマルだ。

 それを潰せば、連中の作戦能力はかなり限定される。

 後は同じような状況を何回か用意すれば、その度に物量で押し切れる。

 こちらに騎士達を単独で抑えられる戦力が複数あるが故の戦術だった。

 実に「支援役は真っ先に潰す」、「囲んで棒に叩け」に忠実な戦術である。

 勿論、基本だからこそ、敵からも警戒されるのだが。

 

 

 

 

 「あら?」

 

 ビルの屋上から戦場を俯瞰していたシャマルが不意に気づいた。

 

 「何方かしら?」

 

 彼女が振り返ると同時、光学迷彩を解いて武装隊員達とクロノが彼女を包囲していた。

 

 「クロノ・ハラオウン執務官だ。投降すれば、悪い用にはしない。」

 

 前回の闇の書事件において、父親を亡くした身であっても、クロノは己の役割を見失っていなかった。

 また、今回は幸いにもまだ一人も人死にが出ていない。

 実際、投降さえすれば、扱いは以前の事件に比べれば、まだ軽い方だろう。

 

 「ごめんなさい。」

 

 だが、ぺこりと礼儀正しく頭を下げる彼女からは、不退転の意思があった。

 

 「各自、戦闘開始。」

 

 それを見取った隊員達は即座に標準の杖型デバイスを構える。

 幾ら彼女が古代ベルカ式の使い手であっても、この人数からの集中砲火を貰えば、一溜まりもないだろう。

 

 「撃てぇ!」

 

 だが、それは…

 

 「はい、残念♪」

 

 命中すれば、の話だ。

 武装隊が放った魔法は空中に浮かんだ幾つものワームホールに飲み込まれた。

 更に、余りの光景に硬直した武装隊の真上に再度開かれたワームホールから、彼ら自身が放った魔法が降り注いできた。

 

 「クッ!?」

 

 辛うじて一歩下がった位置にいたクロノは回避するが、武装隊の面々は一部が防御魔法を展開したものの、殆ど直撃していた。

 だが、シャマルとて無傷では済んでいなかった。

 二度目のワームホールが開いた直後、四方の別のビルから一斉に高速徹甲弾が飛来、シャマルのBJを貫通し、その身体を貫通した。

 

 「ッ!」

 『ウルフ5、オレと前に出る。他は突撃を支援しろ。』

 『『『『『了解。』』』』』

 

 ゴッ!と大気を引き裂く轟音と共に、今まで魔力すら控えてほぼフルステルス状態だったベーオウルブズが動き出す。

 同時に、クロノもまたS2Uを構えて走り出す。

 

 「はい残念。」

 『「ッ!?」』

 

 避けられない速度とタイミングだった。

 だからこそ、それを捌かれた時の動揺は大きかった。

 空中に設置された幾つもの小型のシールド魔法、一枚一枚はそれなり程度の防御力しか持たないそれらはベーオウルフとウルフ5の突撃に対して斜めに、傾斜する形で展開されていた。

 二人の放ったリボルビングブレイカーとジェットマグナムはシールド魔法を砕きながらも、傾斜により厚みを増された故に貫通し切れず、斜め後方に反らされてしまう。

 これが単に強力な障壁や結界だったら確実とは言えないが破壊できた。

 しかし、敵の攻撃力を予想し、敢えて捌く事を選択した辺り、彼女もまた歴戦の猛者たるヴォルケンリッターという事だろう。

 そして同時、クロノはその全身をバインドに絡め捕られ、捕獲されていた。

 

 (バインド!?それもステルス式か!)

 

 通常、魔法と言うのはどうしても発動中は魔導士固有の魔力光を放つ。

 これは戦闘中とは言えかなり目立つため、古代ベルカ式では遠距離は質量兵器、近接は魔導士という住み分けがされる程には戦闘に邪魔だった。

 なので、一部の魔法ではこれを無くし、被発見性を低くする研究も為されている。

 とは言え、余り高出力の魔法ではどうしても隠蔽し切れず、専らバインドや防御、索敵等の支援系魔法に限定されている。

 また、完全に隠蔽し切れるものではなく、激化した戦闘中での罠か戦闘終了後に拘束具として用いるのが一般的だ。

 

 (ここまでの精度のステルスを維持した上で、空間跳躍系と盾魔法の並列展開だと!?)

 

 なんて奴だ!というクロノの感想は至極真っ当だった。

 そして、バインドブレイクを行おうとするが、その前に敵の攻撃の方が早かった。

 

 「貴方達のリンカーコア、貰いますね。」

 「ぐ、ああああぁぁぁぁぁッ!!」

 

 クロノの胸に旅の扉を通して現れたシャマルの手が突き刺さり、リンカーコアが取り出されると同時、闇の書から伸びた触手に胸を貫かれ、武装隊のリンカーコアも蒐集されてしまった。

 

 『ベーオウルブズ、カバーに入れ。』

 

 キョウスケの命令と同時、高速徹甲弾が四方からシャマル目掛けて殺到する。

 

 「そう何度も食らいませんよ!」

 

 だが、先程と同じ様に多数のシールド魔法が展開、高速で飛来する特殊な徹甲弾は先ほどよりも厚みを増したそれらを半ばまでしか貫通できない。

 

 『どうやらあの空間跳躍はそう簡単には連続使用できないらしいですね。』

 『とは言え脅威には変わらん。再使用までに蹴りを付けるぞ。』

 

 そして、ベーオウルブズ全員がステルスを解除、各々の得物を構え、一斉に射撃を開始する。

 バルカン砲が、チェインガンが、アサルトライフルが、ツインカノンが火力演習も斯くやと言わんばかりに一斉に火を噴き始める。

 これは流石に辛かったのか、シャマルも急ぎ結界を展開する事で耐えるが、見る見る内に結界に罅が入り始める。

 それはそうだろう、彼女の役目は支援一般。

 単純な防御力では他の3人には大きく劣る上に、支援魔法を攻撃に生かそうにも強力なもの程インターバルは長いし、手軽に使用できない。

 そして動きが止まった現在、仕留めるには絶好の機会だ。

 先程捌かれたアルトアイゼン・ナハトが再度加速する。

 ウルフ5のゲシュペンストmk-Ⅲの支援の下、狙うのは右腕のリボルビングバンカーによる一撃だ。

 盾の守護獣すら完全に防ぎ切るのは難しいそれを、今の彼女では防ぐ事は適わない。

 受ければ、この戦闘において彼女は間違いなく敗北し、状況的に捕虜となる事も確実だろう。

 だからこそ、それを望まない者には介入の機会となる。

 

 「シィッ!」

 『…。』

 

 突撃するベーオウルフの左側から、光学迷彩の解除と共に仮面の男が跳び蹴りを放ってきた。

 その速度と感知された魔力出力から推測される身体強化の具合から算出すると、その一撃は確実にナハトの装甲をしてもダメージは免れないだろう。

 ならば、まともに受けなければ良い。

 

 『クレイモア。』

 「ッ!?」

 

 左腕のシールドの表面装甲が展開、露出した発射口から散弾魔法が発射される。

 無数の散弾は今まさに蹴りを当てようとする不審者に、至近距離から情熱的に抱擁した。

 

 「ぎ、がぁ!」

 『む。』

 

 だが敵もさる者、魔力ダメージによる脱力と苦痛を無視して、その蹴りをシールド越しとは言え、確かにナハトに命中させた。

 結果、進行方向を反らされ、必殺の一撃は不発に終わってしまった。

 

 「闇の書のページを使え、急ぐんだ!」

 「礼は言っておきますね!」

 

 シャマルの手にしていた闇の書のページが呪文と共に捲られていく。

 そこに記されている多種多様な魔法から、この状況を打破するための魔法を蒐集したページを消費する事で行使する。

 例え本来の主以外の人間でも、闇の書の蒐集に協力するなら、限定的とは言え、その機能を用いる事が出来るのだ。

 …そんな裏機能ばっかり付けるから故障するのだと思うが、それはさて置き。

 

 『阻止しろ!』

 「させん!」

 

 だが、そうは問屋が卸さんとばかりにベーオウルブズから射撃が再開される。

 しかし、結界の構築にも長けているのか、仮面の男が咄嗟に展開した結界はそれなりの強度を持っており、ミッド式とは言え、10秒は持ち堪える事だろう。

 

 「闇の書よ、守護者シャマルが命じます。眼下の敵を打ち砕く力を今ここに。撃って、破壊の雷!」

 『全機、防御専念。』

 

 だが、詠唱が完了するには10秒で十分だった。

 上空に発生した黒雲から、雷鳴と共に巨大な雷が町の一角を包み込んだ巨大な結界を直撃、破砕する。

 その余波はまだ完全に砕かれ切っていない結界内を無数に駆け巡り、嵐の様に吹き荒れた。

 

 後に残ったのは呻き声を上げるクロノ執務官と武装隊、装甲表面が融解したベーオウルブズだけだった。

 

 

 

 

 

 新暦65年 12月10日

 

 午前は部下達と共に機体装甲の全面交換と整備点検で潰れた。

 午後は休暇休暇!ヒャッハーとばかりに遊びにいく部下達を放って町の書店で軍事・科学・SF・ロボ系ゲームを買い漁る。

 ゲームやPCはミッドじゃ電源的に無理だ?馬鹿言え、変換器位自作できるわ!

 偶然会ったなの覇さんがまたも目を輝かせていたが、あの、何か御用でしょうか?(震え声

 まだあてくしあなた様に頭冷やされる覚えは無いのですが…?

 

 

 

 

 新暦65年 12月15日

 

 あれから事態は一時沈静化。なので一旦地上本部に戻って装備を強化しようか(マジ基地スマイル

 先日の戦闘から高速徹甲弾が有効なのは証明されたが、それだと今後の闇の書暴走体をぶっ潰すには純然たる火力が足りない。

 なーのーで、こちらにゲシュⅢの重装追加パーツを人数分と以前に一度だけ使った自作の追加兵装の一部をリニューアルしたいと思いまーす。

 なんで今まで使わなかったって?全機重装備だと汎用性と即応性が落ちるんだもん。

 ナハトの兵装も使ったのがあの41管理世界の害基地の巣にカチコミかました時だけだから、あんまり表に出すのも忍ばれたんだよねぇ。いやーあの時は若かったね!

 とりま、直ぐに換装できる様にアースラに持っていくとしよう。

 本局への情報流出?少なくとも犯罪者に流出しない程度はあの三脳も頑張ってくれるっしょ(楽観)

 

 追記(最近多いな) なの覇さんがうちらのデバイスをうっとりとした顔で見ておられた…(戦慄) 献上用にレイジングハート組み込んだ追加兵装でもプランニングしとこう。

 

 

 

 

 新暦65年 12月17日

 

 未来の痴女死神の感知能力が凄まじいレベルで上昇しているナウ。

 や、魔力の流れの把握は教えたけどさ、ここまで化けるとか思わんわ普通。

 訓練中のシューターの十字処か6方向砲火すら掠りもしないってどういう事?

 …そう言えば原作ブーストがかかってるよね君達そうだったねうん。

 取り敢えず、この子敵にしたくない。敵に回すと最も厄介なタイプだわな。

 

 だがまぁ、幸いと言うべきか、実働戦力は実質ネームドとうちの部隊のみ。

 んで、うちの部隊は高ランクは一人だけで旨味は少ないのにピリリと辛いし、度重なる襲撃で大体居場所は特定済みときている。

 人海戦術こそ取れないが、賭け時は近いと経験的に解った。

 

 

 

 

 

 




闇の書もとい夜天の書は何でもかんでもMOD突っ込むんじゃなく、いっそ機能ごとに別デバイス化すれば暴走なんてしなかったのにねぇ…。

取り敢えず、明日は総力戦執筆するためにAS見直すか。


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第九話 大惨事世界大戦

 

 

 新暦65年 12月24日

 

 遂にヴォルケンズの居場所および主の特定に成功した…が、この時丁度後方に行って幼女生贄にしてた老害の使い魔共を逮捕してたので盛大に出遅れた。

 コラテラルダメージと判断して動いてたのは解るが、凍結しただけじゃあのDG染みた化け物は出てくると思う。

 やるなら虚数空間に沈めるかブラックホールか恒星にでも転移させなきゃ(小並感

 

 んで、戦闘の流れとしてはリィンⅠが出てくるまでは原作通り→なの覇さんとフェイトそんとそのお供2名と共にリィンⅠとガチ戦闘→オレ氏、救援に来るもフェイトそんと共に飲み込まれる→ヒャッハー観測じゃー!とばかりにデータ収集しながら暴れる→盛大にダメージを与えてグロ一歩手前状態に追い詰める形で復活→虫の息のリィンを治療しつつヴォルケンズ復活→一触即発になりそうだったが「決着は後で」と言う事で総力戦開始→コアを月面裏に空間跳躍させてアルカンシェルで焼いて終了。

これで地球周辺の人工衛星の被害は無くなった…!

 

 なお、戦闘終了後は休んでから翌日にはミッドにリターン。

 最大の目的である闇の書のデータも確保できたし、本局のアホ共の弱みも握れたので良しとしよう。

 

 

 

 

 

 Side キョウスケ

 

 「キョウスケー何処ー?」

 「もう夕飯の時間だぞー。」

 

 此処は三途の川か死後の世界か何かか?

 てっきり地獄にでも落ちたのかと思ったが…

 

 「今日はキョウスケの大好きなすき焼きだぞ。」

 「デザートにケーキも買ったから、後で食べましょうね。」

 

 しかし、まぁ、これは無いな。

 

 「クレイモア。」

 

 今では殆ど寄り付かない「真新しい」自宅が、一瞬にして散弾により吹き飛ばされる。

 同時、自分の前に立っていた両親の姿をした何かもまた、一瞬で血霞となって消え失せた。

 その顔が、何処か悲しそうに歪んでいたのは、きっと単なる幻覚だ。

 

 「ナハト、モーションセレクトシステムのリミッターを解除。ワームプログラムを散布開始と同時に情報蒐集始め。」

 【了解。モーションセレクトシステム、リミッター全解除。ワームプログラムの散布及び情報蒐集開始。】

 

 先程まであった「ノイズ」が消え、思考が明瞭になっていく。

 万全の状態を告げるナハトの声に従い、事前に用意していた手札を切っていく。

 腰部両脇にあったコンテナから大量の虫に似た小型機械が周囲へと散っていく。

 同時、頭部両脇のレーダーマストが伸長、周辺状況を観測し、その結果を記録する共に網膜へ順次投影していく。

 

 (古代ベルカ式やミッド式は兎も角、辺境次元世界の絶滅寸前の術式言語に旧式の術式が幾つも…。この辺りは蒐集した術式だな。もっと奥、闇の書が夜天の書だった時の基礎プログラムは…。)

 

 意識を失う前、態々間に合わないのに盾代わりとばかりに前に出たのは、自己犠牲精神からではない。

 闇の書のデータを奪い取るために、敢えて中に入る必要があったからだ。

 古代ベルカ、それも王の名が付く代物は凄まじく高性能で厄介なロストロギアが多い。

 特に闇の書はその代名詞であり、管理局でも転生プログラムの存在もあって厄介者扱いだった。

 だからこそ、それを戦力化できた時の利益は大きい。

 

 (最低限、無力化に繋がる発見があれば…。)

 

 だが、悠長にしていられる時間は過ぎた様だ。

 見慣れたクラナガンの自宅を模していた周辺の空間が罅割れていき、残ったのは何もない、真っ暗な空間だけだった。

 

 【警告 敵攻性防御プログラムに発見されました。後7秒で攻撃が開始されます。】

 『目的の情報を蒐集するまでの時間は?』

 【推測では約10分。】

 『終了まで遅滞戦闘を行う。』

 【了解。】

 

 そして、暗闇の中から現れた敵の姿は意外なものだった。

 

 「S型か。」

 【警告 こちらの機密データの漏洩を確認。】

 『ここで死ね、ベーオウルフ。』

 

 直後、同時に踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 一方その頃、外では一旦戦闘が収まっていた。

 指揮権のある執務官と復活した闇の書の主と騎士達が成り行きで着々と対策案を話し合う中、隊長を欠いたベーオウルブズは念話で早口に通信をしていた。

 

 『どうする?隊長、まだ出て来てないけど。』

 『あの人が殺そうとして死ぬ玉か?』

 『このままだと隊長、アルカンシェルの砲撃に巻き込まれるんじゃ…。』

 『取り敢えず、現地被害を考えて、コアを転送する座標は月の裏側にするよう具申してくる。』

 『任せた。』

 『頑張って副隊長。』

 『一先ず、隊長が用意してくれてた重装パーツ配りますね。』

 『取り敢えずオレらがする事は…』

 

『『『『『局員としての職務を果たす。』』』』』

 

 『さて、装備終わったな?各員、最大火力を準備しろ。出し惜しみは無しだ!』

 

 

 

 

 

 『く、そ…最後の最後まで、貴様に…。』

 「死ね。」

 

 闇の書の暴走体の中、漸くもう一つの戦場が終わった。

 ゲシュペンストmk-Ⅱ S型。

 高ランク魔導士にも匹敵する性能を誇るソレのコピーは今、胸部を鉄杭に貫かれ、静かにその機能を停止し、直後に霧散した。

 

 『情報収集の進捗は?』

 【予定データの蒐集完了。】

 『では攻城兵器の用意をしろ。突破する。』

 【了解。】

 

 ナハトからの返答の直後、異相空間に格納されていたアタッシュケース大のコンテナが現れる。

 同時に展開を開始したコンテナはあっと言う間に右腕に接続、変形を開始する。

 

 【警告 不明なユニットが接続されました。】

【警告 システムに深刻な障害が発生しています。】

【警告 直ちに使用を停止してください。】

 

 ナハトの合成音声とは別の音声が警告を吐き出し続ける。

 明らかにヤバめの警告が網膜に投影されるものの、キョウスケは一切関知せずに変形を続行させる。

 何故なら、此処から出るにはそれ位せねばならないと解っているからだ。

 コンテナの中身が右腕に接続された部位とそれ以外に分離する。

 接続した部位は収縮・格納された部位を展開し、長大な鉄塊を形成する。

 分離した部位は内蔵されていた大出力ロケットエンジンを展開、ゆっくりとその出力を上昇させていく。

 そして、変形を完了したコンテナは分離した互いを今度はケーブルによって繋がり、遂にその全容を現した。

 

 全長5m、総重量2トンを超える打撃兵器。

 

 本来は管理世界では旧式も旧式の燃料式のロケットエンジンを無理矢理個人が用いる事が出来る様に小型化し、それによって得られる暴力的な加速を、打撃に変換するために旧式の次元航行艦のフレームを流用した鉄塊を用いて打撃力に変換する。

 極めて原始的で、暴力的な、紛う事無き兵器だった。

 

 『カートリッジ、全弾ロード。』

 【了解。】

 

 ガシュガシュガシュガシュガシュガシュン!

 

 一発一発が砲弾に匹敵する特大サイズのカートリッジが連続して6発も使用される。

 直後、その圧倒的な魔力はその殆どが身体強化に、ついで鉄塊の強化に使用されていく。

 

 『フルドライブ開始。』

 【了解、フルドライブ開始。】

 

 その装甲が真紅に染まると共に、出力が更に上昇していく。

 文字通りの乾坤一擲、失敗したそこで死ぬ。

 だが、感情の無い彼には、そんな事は何でもない。

 ただ何時もの通り、やるべき事をやるだけだ。

 

 『行け、マスブレード。』

 

 直後、一秒にも満たない時間にナハトは全身のスラスターとロケットブースターを全力で吹かして音速を突破、無限と思われる暗闇を限界まで加速し、その巨大過ぎる鉄塊を轟音と共に振り抜き、闇を打ち砕いた。

 

 

 

 

 

 封鎖結界の中、海鳴市の沖合で漸く決着が付こうとしていた。

 暴走体は次々と結界を破られ、砲撃を、斬撃を、バインドを、射撃を、冷凍を、石化を叩き付けられ、それでもなお再生し続ける。

 だがそれも…

 

 ズガッシャァァァァァァンッ!!

 

 冗談の様に内側から背中の辺りをブチ破られるまでだった。

 

 ぎぃぃぃぃぃぃぃぃッ!?

 

 まるで金属が擦れ合ったかの様な悲鳴と共に、暴走体の三分の一近い体積を吹き飛ばされた。

 

 『何をしている。』

 

 余りの光景に全員が絶句する中、飛び出してきた当人の声が響き渡る。

 その姿は以前を知る者でも絶句する程に変わっていた。

 右腕に接続された鉄塊、背部に無理矢理繋いだ様なブースター、赤熱する装甲。

 確実にデバイスと肉体双方に負担がかかる、インパクトのあり過ぎる姿。

 

 『職務を果たせ。』

 

 でも、その声にはそんな様子は一切見受けられず、先ず最初にベーオウルブズが反応した。

 

 『全機、射撃再開!全弾撃ち尽くせ!』

 

 ウルフ2の声に、一斉にベーオウルブズが正気に戻った。

 

 『マジかよ隊長生きてたー!』

 『よし、これでオーリスの奴を泣かさずに済むぞ!』

 『ヒーハー今夜は祝杯だー!』

 

 ドガガガガガガガガガガガッ!

 

 射撃、狙撃、砲撃が雨霰と暴走体に降り注ぐ。

 数だけなら今日一番の砲火が夜の海を明るく染め上げていく。

 

 「なのは、はやて、私達も!」

 「「うん!」」

 

 その様子にこのメンバーの中で最大の火力を持った三人がそれぞれの最大攻撃魔法を放つ。

 

 「スターライトぉ…」

 「プラズマザンバー…」

 「ラグナロク…」

 

 【警告 急速離脱を推奨。】

 

 「「「ブレイカァァァァァァァッ!!」」」

 

 三方向からの一斉攻撃に、暴走体は凄まじい爆音と共に、その体積の殆どを吹き飛ばされた。

 

 「行きます!」

 「長距離ゲート展開!」

 「座標は月面裏側!」

 

 直後、暴走体のコアは地球から消え去り…

 

 『再生反応、ありません!お疲れさまでした!』

 

 こうして、今回を最後に、闇の書事件は完全に終結した。

 

 

 

 

 

 新暦66年 1月○日

 

 帰ったばっかだし、久々の休暇中に積み本とゲームを消化するぞーと思ってたら…

 新年早々テロリストが地上ではしゃいでるとか、ハハハ死にたいらしいな。

 鎮圧鎮圧鎮圧ゥ! 良いテロリストは制圧されたテロリストだけだ!全くミッドチルダは世紀末だぜフーハハハハハァ!

 

 あ、そう言えばはやて嬢の身の上だが、情状酌量の余地ありありなので、本局でご奉仕10年とベルカ系技術研究への協力と相成った。

 まぁあんまり裁判長引いても畜生元提督の件を突かれそうだしね!

 それに自分達の戦力とその技術を秘匿して管理局の目の上のたん瘤扱いの聖王教会とは別口で技術とかを吸収でき、更にはAAAランク以上の戦力を5人も確保できるが故の温情措置だが…次元世界一つ滅ぼしかけた彼女達にはミッドに来てほしくないのが正直な所だ。

 是非次元航空艦にでも乗って、月間世界の危機を相手に戦っていてもらいたいものである。

 スカ?本局目指すなら地上本部に喧嘩売らずに隠密かつ速やかに逝ってください。

 こちとら今調子づいたテロリストを粛正するので忙しいんだよ!

 

 後、この件でカードが増えたと嗤ってるレジアス中将は実に頼りになる上司である。

 

 

 

 

 

 新暦66年 1月○×日

 

 地上本部に出頭して、報告書を纏めて提出した後、久々にオーリスと一緒に飲みに行った。

 何気に新しい店が増えてたので新規開拓してみる。

 他にもラーメン屋と牛丼屋とカレー屋とかが出来ていたので今度行ってみるとする。

 

 

 

 オーリスにこくはくされたどうしよう

 

 (以下、文章に成らない落書きで埋められている。)

 

 

 

 

 

 



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機体解説 その2

 

 

 

 PAD-06-B ゲシュペンストmk-Ⅱ S型改

 

 破壊されたS型の残骸と予備パーツから再構成されたS型。

 戦闘の結果、防御性能が著しく低下する固定射撃兵装は排除し、信頼性と防御性能、堅牢性を最優先とした構造となっている。

 後に大破したアルトアイゼンのコアと予備パーツを追加する事で、真なるナハトへと生まれ変わる事となる。

 ただし、操縦性に関してはパワフルな分、mk-Ⅱに比べて難しくなっている。

 

 

 

 

 AD-03 量産型ゲシュペンストmk-Ⅲ

 

 ゲシュペンストシリーズの最新型にして、最新の量産型AD。

 通常のmk-Ⅱの運用で得られたノウハウとS型のデータを元に量産を目標作成された機体で、S型に匹敵する防御性能を誇りながらも、装甲材を除いたパーツの6割近くがmk-Ⅱと共通しているため、性能の割りにコストも据え置きであり、武装や各種オプションはほぼ全てが共有可能である。

 ただし、飛行機能に関しては最低でもB+程度の魔力ランクが必要であり、現在配備されている多くの機体ではオミットした状態で運用されている。

 基本的に生存性を最優先しており、そのため、防御性能を下げる内蔵兵器等は搭載されておらず、結果として搭乗者である魔導士の生存性の向上とコストダウンに繋がった。

 

 

 

 

 AD-04 ヴァイスリッターⅡ

 

 PAD-05をAD-03を元に再設計した機体。

 外見はオプション用ラックが追加された以外はほぼそのままだが、装甲は軽量装甲兼空力カウルなので、脆弱さはある程度改善されている。

 また、苦手としていた近接戦闘を行うだけの防御性能を得たため、遠近共に隙の無い機体に仕上がった。

 ただし、全性能を発揮するには最低でもAAランク程度の魔力と空戦適正が必要な上に、並の高ランク空戦魔導士程度の性能であるので、地上では完全受注制でしか生産されていない。

 

 

 

 

 PAD-07 アルトアイゼン・ナハト

 

 S型をベースにアルトアイゼンのコアと予備パーツをベースに突撃強襲仕様として生まれ変わった機体。

 極めて高い防御力と突破力を誇り、以前のアルトアイゼンの運用思想を継承している。

 しかも追従性や反応速度等は改善されており、武装も大型化され、更に強化されている。

 ただし、搭乗者にかかるGは更に上昇しており、加速時は必ず身体強化を施さなければ最悪圧死しかねない。

 ミッドチルダやその近郊の次元世界からはその容赦の無さと戦闘力から恐れられている。

 

 

 

 

 ???? リオン

 

 ???????博士が作った無人航空兵器。

 武装は全て質量兵器でバッテリー駆動だが、純粋科学で慣性制御を実現しており、既存の傀儡兵を遥かに超え、高ランク空戦魔導士に迫る機動性を確立している。

 反面、博士の作品の特徴であるAMF発生器を搭載するには出力が足りず、高性能だけど単なる兵器という博士からすれば面白みのない機体に仕上がった。

 ミサイルやレールガン、機銃等を主武装とするが、割と簡易な構造から量産や改良も容易であり、もし大量生産されれば極めて厄介となる。

 

 

 

 

 ???? グラビリオン

 

 ???????博士が作った試作型無人兵器。

 10mを超える巨体であり、機動性は皆無な分、凄まじい火力と防御力を誇る。

 全身に配された無数のミサイル、胴体の大出力粒子砲、腕部の連射可能な比較的小型な粒子砲、そして広域重力操作兵器グラビトンウェーブと重力障壁を装備する。

 元々は重力兵器の試験用だったが、試験後は倉庫の肥やしとなっていたので、急遽武装を追加して実戦配備された。

 回避こそ全く出来ないものの、火力と装甲を生かしてゆっくり進行しながらの制圧戦や拠点防衛に向く。

 この機体のデータは既に???????博士と地上本部に入手されており、後にそれぞれの思想に基づいたADとして完成する事となる。

 

 

 

 

 ???? マスブレード

 

 以前キョウスケがテロリスト絶対殺す作戦を行った時に使用した武器の再設計品。

 一辺1m程度のコンテナから鉄塊状のブレード部分とブースター部分に分離し、それぞれ右腕と背部に装着される。

 要はブースターでカッ飛んで、鉄塊でぶん殴るための武器である。

 その威力たるや、次元航空艦の主装甲すらぶち抜く程のものだが、でかい、邪魔、消費が激しい、威力があり過ぎて使い処に困ると苦情ばかりの欠陥兵器である。

 だが、使い方を間違えなければ、一瞬で戦場の情勢を覆し得る。

 キョウスケは以前、これに加えて大量の重火器を左腕に無理矢理括り付けてテロリストの本陣に特攻、一薙ぎで大量のテロリストを殺傷している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第十話 束の間

今回のみ、日記形式ではありません。
また、砂糖吐きそうになるかもですので、読み飛ばしても問題ありません。


 Side キョウスケ

 

 

 (告白ねぇ…。)

 

 先日、オーリスと共に食事に、それも安い早い美味いが標語の様なチェーン店に行った時、その帰りに彼女に告白された。

 

 「あなたが好きです。私と一緒になってください。」

 

 真摯に自分の言葉を告げる様は何処か彼女の父親を彷彿とさせるもので、あぁ血は争えないなと思った。

 寧ろ、あんな偉大な人の背中を見て育ったのならさもありなん。

 

 「すまない、なんて答えたら良いか分からない。」

 「じゃぁ、待ちますから、ちゃんと答えを出してくださいね。」

 

 そう言って別れたのが昨日で、今日はオフだった。

 

 (部下に相談するのもなんだし、ここは上司に相談するか。)

 

 

 

 

 Side レジアス・ゲイズ

 

 

 (それで私に相談するとか、色々と間違っちゃいないか…。)

 

 レジアスは直属の部下から緊急の連絡と言う事で通信に出たのだが…その話の内容を聞いて、思わず天を仰いだ。

 自分が妻を娶った時は相手方の父親と殴り合いの大喧嘩の末だったが…うちの娘と此奴の場合、全力で後押ししないと確実に二人とも生涯独身で過ごす=孫の顔を見れない事になるだろう。

 

 『話が話ですし、レジアス中将にとっては場合によっては後継者問題になりそうですので。』

 「生憎と、組織内での後継者は既に選定済みだ。その中継ぎになりそうな人材にも見当はついておる。いらぬ心配をするな。」

 『は、申し訳ありません。』

 

 こういう所だけを取れば、優秀で何処にも出しても恥ずかしくない、立派な部下なんだがなぁ…とレジアスは現実逃避して遠い目になる。

 

 「私としてはこの話は良いと思っている。お前もそろそろ身を固めても良い歳だしな。…それとも、オーリスは気に入らんか?」

 『いえ、そんな事は。オレには勿体無いと思う程素晴らしい女性です。』

 

 実は家庭では家事一般はレジアスの方が得意なのは言わない方が良いな、うん。

 と言うか、そう思ってるならとっとと貰って孫の顔を見せてほしい。

 一体お前たち二人を見てどれだけの人間が進展しない関係にやきもきしていると思ってるのだ?

 

 「取り敢えず、落ち着いて考えるべきだな。期限は無いのだろう?」

 『はい。既婚者であり関係者である中将の意見も参考にしたいと思いまして。』

 

 つまり、未だキョウスケの中ではこの件に関する答えが見つからない、と。

 

 「折角の休日だ。天気も良い事だし、散歩でもしながら考えると良い。私の経験や考えを話すのはその後の方が良かろう。」

 『は、了解しました。』

 

 そして通信が切れた。

 

 「ふぅ…。」

 

 何かどっと疲れた気がするレジアスは、そっと執務机の上に置いてある家族写真を手に取る。

 そこには未だ幼いオーリスとまだ若いレジアスに、今のオーリスから検を取って穏やかにした様な女性の姿があった。

 

 「なぁ母さん…私達の娘も、遂に結婚したい相手を見つけたらしいな。」

 

 前途多難過ぎるが、とは言えなかった。

 

 

 

 

 Side ゲンヤ・ナカジマ

 

 

 「で、今度はオレの所に来たと?」

 「はい。ゲンヤさんなら何か解るかと。」

 

 ゲンヤはこの鉄面皮の後輩の言葉に、思わず手で目を覆った。

 

 (レジアスの奴、苦労してんなぁ…。)

 

 ここはゲンヤの自宅だ。

 久々の休みに娘と妻が買い物に行っている間、自分はゴロゴロしていた所、唐突な訪問に出くわしたのだ。

 

 「クイントは…無いな、うん。」

 「はい。」

 

 自他共に認める肉食系の妻にこの手の話はし辛かった。

 

 「取り敢えず、オーリスの事は嫌ってないんだよな?」

 「はい。」

 

 まぁこの辺りは予想通りだ。

 寧ろもし違ったらオーリスが哀れ過ぎるが。

 

 「あー…いきなり結婚ってのも急だし、一先ず交際始めて、そっからどうするか決めるかも手だぞ?」

 「解りました。」

 

 そしてキョウスケは丁寧に礼を告げてから、手土産のドーナツ30個程を置いて去っていった。

 

 「どーなんのかねー、これは…。」

 

 二人の事を思うと、深ーい深ーい嘆息しか出なかった。

 

 

 

 

 Side ????・???????

 

 

 『と言う訳なのですが。』

 「そこでまさかの私に相談かね!?わはははははははは!」

 

 まさかの驚きを提供され、通信越しに爆笑してしまった。

 

 『ドクターなら、女所帯での生活での経験もあるかと。』

 「あー、まー確かにそうだがね。結婚生活となると色々違うと思うよ?」

 

 確かにウーノを始めとした娘達に色々とやってもらってる身だが、彼女のそれはどちらかと言うと造物主に対する敬虔な信徒のそれだと思うのだが。

 

 「取り敢えず、この手の事は自分の気持ちをよく考え、それを正直に告げた方が後腐れが無いと思うよ。」

 『とは言え、恋愛とかはした事がないものでして…。』

 

 うん、その点は私も予想済みだとも。

 と言うか十代前半からテロリスト絶対殺すマンだった君がプレイボーイだと言われても逆に信じられないしね。

 

 「なら、その事も一緒に言えば良いのさ。恋愛もした事が無いから、結婚を申し込まれてもピンと来ないのだと。」

 『分かりました。ありがとうございます。』

 「あぁ、別に良いとも。所で義手の調子はどうかね?」

 『調子は良好です。ただ先日無理をさせた事もあったので、近々調整に行きます。』

 「うん、待ってるよ。ではね。」

 

 そうして通信を切ったのだが…実に面白そうだね、うん。

 

 「ウーノ。」

 「既にステルスドローンを出撃させています。きっと面白い絵を撮ってくれるかと。」

 

 うん、うちの子は実に完璧に私の趣向を理解してくれるなぁ。

 

 「…それに、将来の参考になりそうですし。」ボソッ

 「ん?どうかしたかい?」

 「いえ何も。」

 

 ま、良いか。

 あぁ、実に楽しみだなぁ!

 

 

 

 

 Side ナハト

 

 

 「お前はどう思う?」

 『そこで私に聞きますか?』

 

 私は確かに貴方の長年の相棒ですが、あくまでデバイスなのでそういった感情とは無縁なのですが。

 ちなみに戦闘時こそ無駄な事は話しませんし、平時でもおしゃべりが好きな質ではないので静かにしていますが、主からの相談となれば無碍にできません。

 

 『先程までの皆さんの助言は的確だと思いますので、それに従ってみては如何でしょうか?』

 「…正直な気持ちと言われても、それが解らん。」

 

 私と出会った頃からモーションセレクトシステムを使用し続けた影響でしょうか、主は表情筋が麻痺され、普段から感情の波が凄まじく小さいのです。

 割と喜怒哀楽はある方なのですが、一つ一つの波がどうしても小さいので、不愛想と見られてしまうのです。

 特に戦闘時はシステムを発動するのでそれが顕著になります。

 

 『では、逆に考えましょう。オーリス女史がマスター以外の男性と交際している光景を思い浮かべてください。』

 「む」

 

 おや?これは行ける?

 私としては主と主と長い付き合いのあるオーリス女史がくっつく事は大歓迎なのですが…この反応、まさかのまさかですか?

 いえ、落ち着きなさいナハト。

 先ずはちゃんと主の意見を聞いてから、外堀を埋めていくのです。

 

 『どうかしましたか?』

 「…確かにオーリスは好ましいと思う。彼女には色々と世話になりっぱなしだったからな。」

 

 その好意、友情ですか恋愛ですか?と聞きたいのをぐっと我慢しますよ、ナハトは出来る子なので。

 

 「だが、彼女はその立場上、どうしても政略結婚の色合いが強くなる。そう簡単に相手が見つかるとも思えん。」

 

 そこは抜かして考えてください頼みますから。

 そう言いたいのをぐっと我慢しますよ、えぇ。

 

 『では、もし見つかったら?』

 「…祝福したい、と思う。」

 『本当に、ですか?』

 「何が言いたい?」

 

 好機が来ましたよ、えぇ。

 

 『普段のマスターなら言い淀む事も無いのに、どうしたのですか?』

 「……。」

 『ほら、今日はそんな風によく言い淀みますね。』

 

 あと一押しあと一押し、焦るな、焦るな…!

 

 『では、オーリス様と同じ家に住み、同じ時を過ごすご自分を想像してください。』

 「………………。」

 

 まだ、まだ…!

 …ッ!?

 来た!表情筋が僅かに緩んだ!これでかつる!

 

『今抱いた感情が答えです。その気持ちを正直にオーリス女史にお話しください。』

「解った。ありがとう、ナハト。」

『いえいえ、マスターのお役に立てる事こそ、我が喜びです故。』

 

 今日は他の者達に報告会ですね。

 大仕事をやり遂げた爽快感とはこんな感じなのでしょうか…。

 

 

 

 もうそろそろ、マスターも幸せになっても良いのです。

 仇討だけで、人生を消費してほしくはありませんから。

 

 

 

 

 

 

 「オーリス、返事をしに来た。」

 

 「えぇ…。」

 

 「オレは、お前が傍にいないのが、嫌だ。だから、どうかこれからも、オレの傍にいてほしい。」

 

 「!」

 

 「答えを、聞かせてくれ。」

 

 「わ、わたしも、あなたと、一緒に、いたい…!」

 

 「解った。」

 

 「き、キョウスケ、キョウスケ…!」

 

 「オーリス…ずっと、一緒だ。」

 

 「うん、うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




甘いの書くのはもう前に十分やったから良いんだ…。

追記
こんな時間帯に投下したというのに、この感想の速さよ…
君達一体何処に潜んでたのさ(汗


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第十一話 軍拡

 

 

 新暦66年 2月○日

 

 遂にオーリスと正式に婚約した。

 大分悩んだし、方々と相談して、漸く自分の気持ちに気付けた感じだ。

 詳細な告白シーンはカットする。

 もしこの日記が知り合いに見つかったらと思うと、公開処刑されるかもだからね!

 

 なお、陸の方では相変わらずな毎日だ。

 最近は大規模テロも無いし、小さい騒ぎはあるが、未然に防ぐか徹底的に鎮圧するかで終わっている。

 うちの様な火薬使ってない筈なのに硝煙臭い部隊の出番はめっきり減って定時で帰れる。

 勿論、オーリスは事務方だから余り早くない時も多いが、その場合はオレが家事をする。

 入局した後は殆ど独身者向けの寮に入ってたので自炊や家事その他は人並みには出来る。

 オーリスはオーリスで普通に出来る方だが、料理はあれだ、結構な割合で男飯って感じだ。

 婚約してからこっち、お互いの職場の中間地点辺りにマンションを借りて住んでいる。

 愛の巣とかほざく部下は粛正しようとしたが、照れたオーリスが可愛かったので良しとする。

 なお、婚約して指輪を買った時のオーリスの顔は脳内メモリに永久保存致しました。

 

 

 おい、肝心なエロはどうしたって?

 残念ながら婚前交渉はAまでだってさ…。

 

 

 

 

 新暦66年 3月○×日

 

 結婚予定日は6月だってさヒャッハー!

 しかし、レジアス中将もとい義父の関係者とか呼ばないとだから凄まじい数の参加者が…。

 それ+オレとオーリスの同期や部下も招待せんといかんから…今らか準備が憂鬱だ。

 

 そして結婚が正式になったので、オーリスと共に家飲みパーティした。

 意外といける口かと思ったら、なんとオーリスさん、顔に出ないだけでべろんべろんに酔ってました。

 ビールのロング缶1本で泥酔、だと…?

 そこからはオーリスがオレにしな垂れかかるという理性耐久試練が始まった。

 色即是空、空即是色。

でもダメだった、だってオレだって男なんだよ。

手出しても良い婚約者が酔って誘惑してくるとか、オレには断る事は出来ん。

と言う訳で、頂きます。

 

 追記 明日休みで良かった。初めてで抜かずの3段撃ちとか我ながらよくやったもんだ、うん。勿論オーリスには涙目で「このケダモノ!」とか言われたけど、可愛いからまたやっちゃったんだ☆

 

 追記の追記 ビンタ痛いお…。

 

 

 

 

 新暦66年 4月×▽日

 

 さぁ家に帰ろう、と言う所でテロ事件発生。

 さぁお前の罪を数えろ!とばかりに現場に行って犯人グループをぼこぼこにする。

 奴ら、最近はオレを視認すると即座に逃げに走るんだよなぁ…つまらん。

 なので主犯格に念入りに杭を叩き込んで確保した。

 下っ端共が「アイエエエエエエエエ!?」とか叫んでたが、オレは忍者じゃないぞ。

 取り敢えず煩い連中にはクレイモアをあげて静かにさせよう。

 

 追記 残虐非道な局員とか一部で報道されたが今更過ぎるわ。

 

 

 

 

 新暦66年 5月▼日

 

 先日あーだこーだ言ってた報道の一部が汚職やら何やら見つかって経営陣が逮捕されたそうな。

 こわいなーおそろしいなー(棒

 いや、本当に何も知らないよ?ただ、情報部の連中が良い仕事したって感じで笑ってたのを見ただけだし(汗

 

 あ、そう言えばなの覇さんが先日通信よこしてきて「是非レイジングハートの改修をお願いします」と五体投地してきた。なにをいって(ry

 取り敢えず、経緯と注文を聞いた所によると「闇の書事件で自分の力不足を実感した」、「そんな所に低魔力かつ高性能なデバイスの活躍を見て、自分も欲しくなった」「メカは浪漫」と言われ、最後の部分で親指立て合った。

 取り敢えず、ADシリーズとその運用思想に関する資料を送ったので、それを見て納得できた場合に作成する事を約束した。

 これでもデバイスマイスター、仕事はきっちり致します。

 

 追記 この後、子供相手にやきもちを焼くオーリスの相手をした。かわいい。

 

 

 

 

 新暦66年 6月○○日

 

 遂にオーリスと結婚した。

 結婚式はそりゃもう盛大だった。

 しかも陸だけじゃなく、何故か海の方から「前の事件でお世話になった」と言う事でリリカル三人娘とその愉快な仲間達も来ていた。

 正直来てほしくはなかったのだが…ま、将来的に世話になるかもしれんし、良しとしよう。

 あ、ゼスト隊の皆さんからは手荒い歓迎を受けました。

 クイントさん、貴方の夫婦円満の方法(正直に体当たりで往く)にゲンヤさんが溜息ついてますよ、何やったんですか。

 メガーヌさんは…やっぱ良いです。良いですからその監禁の秘訣とかいう物騒な本はしまってください。

 ゼストさんはダメダメ、さっきから号泣中のレジアス義父さんと一緒に飲んでるもん。

 

 にしてもウェディングドレスを纏ったオーリスはマジで美人だった、天使だった、美の女神だった。

 控室に様子を見に行った時、柄にもなく目を奪われて、そのまま2度目のプロローズをしたオレ悪くない。

 表情筋が死んで久しい身だが、そんな自分を選んでくれた彼女には感謝が尽きない。

 その後、お色直しで来た水色から紺色のグラデーションが入ったドレス姿も最高でした。

 

 追記 さぁ初夜に、と言う所でテロリストが会場のホテルに襲撃してきたので、部下や他の部隊と共に非戦闘員の参加者を守りながら戦闘開始。

 三人娘と愉快な仲間達の協力により、30分程で鎮圧完了。

 

 追記の追記 結局事後処理や情報漏洩元の特定等で三日程仕事しっぱなしだった。

 ちゃんと初夜に入れたのは式から一週間後になった。

 

 

 

 

 新暦66年 7月×日

 

 ふぅ…(満足気)

 結婚してからこっち、オーリス共々ほぼ定時で帰宅しているが、それと同じ位に毎夜毎夜オーリスに負担をかけてしまって申し訳ない。

 いやだって、うちの嫁さん可愛いんだもん!

 お互い耳年増なもんで、あれこれ試して「どう?」とか聞いてくるのがもうねもうね!

 

 (以下、暫く惚気が続く)

 

 そう言えば、以前なの覇さんから注文を受けたデバイスなのだが、基本的な内容は「砲撃能力の強化」だった。

 現状、彼女が選んでいるのは単なる出力強化であり、それではデバイスと彼女本人への負担が大き過ぎる。

 そのため、考えるのは負担の大きいエクセリオンモードに代わり、砲撃時の低負担化及びミッド式の欠点の改善、そして艦砲射撃並の魔力受容器と大型カートリッジシステムの搭載にデバイスの形状の改善だ。

 杖はそもそも打撃武器から祭器へと発展したものなので、そもそも射撃には適しない。

 そこで、コア回りを残して、形状を長銃身の銃型デバイスに変更する。

 外見は大型化したMG42くさいが、これはこれで味があるので良しとする。

 これにより照準精度と速度、反動抑制を向上できる。

 次にカートリッジを大容量ドラムマガジン、或は弾帯と背負い式の大型弾倉へと交換した上で、大容量魔力受容器を追加する。

 後者の方が総弾数は上だが、前者の方が取り回しが良いので、その辺りは本人の好みで使い分けてもらおう。

 これに射撃・砲撃魔法を高密度式に変え、当たり判定こそ小さくなるが、その分射程と貫通力、射撃精度が向上するし、何より彼女自身への負担が小さくなる。

 更に、砲撃時は確実に無防備になるので、4枚程のスラスター内蔵型の浮遊装甲を別のストレージデバイスとして用意する。

 更に更に、先日の礼として、高精度スコープや各種センサー、索敵魔法等を搭載したインカムを追加して射程距離、射撃精度、索敵能力他諸々をUP!

 これにより、浮遊装甲で身を守りつつ、数km先から一方的にSランク以上の砲撃を狙撃並の命中率で撃ってくる上に、逃げようとしても浮遊装甲のスラスターによってしっかり機動性を確保しているため、余程足が速い奴か転移の速い奴しか逃げられない人型砲戦MAが誕生した訳だ。

 しかも、ゲシュで採用してる各種射撃魔法を始めとして、対高防御の装甲兵器や魔法生物、大型艦船向けに多重殻弾頭を各種サイズで形成し、加速魔法によって音速の3~12倍で射出するという試作段階の魔法も登録しておいた。

 これで高濃度AMF下だろうが、一定以上の攻撃力を確保できるだろう。

 近距離?以前の形態に戻すか、バリアorシールドでタックルかブレイク、浮遊装甲による打撃で対処しなさい。

 

 

 ざっと出来たので、これで問題ないか仕様書をなの覇さんに送っておく。

 なお、お値段に関しては通常の陸士隊の杖型デバイス一個中隊分だった事を言っておく。

 

 

 追記 とても感動したので直ぐに作成してほしいとの事。ただし支払いはローンで、だそうな。

 

 

 

 

 新暦66年 7月○■日

 

 なの覇様に追加パーツとして納入した所、大変感動されて通信で小一時間語られた。名前はレイジングハート・グロスフスだとか。ボスけて

 レジアス中将に言ったら、自業自得だと鼻で笑われた。ぐすん

 オーリスが膝枕してくれた。嬉しい。

 

 でもテロリストは許さない。

 結婚したからと言って、手を緩めるつもりは無いよ?

 と言う訳で、銀行に立て籠もった馬鹿共を非殺傷設定で人質ごと攻撃する。

 投降?先ずは腹に巻いた爆弾を外してから言い給え。

 

 

 

 

 新暦66年 8月×日

 

 今度は痴女死神から連絡が来た。どういう事なの…。

 何でも、最近なの覇様に勝てないらしい。

 具体的には超遠距離から高精度で圧倒的火力をぶつけてくるそうな。

 先読みだけでは近接信管を用いた対空散弾に落とされそうなるとか。

 近づいても盾で防がれるか、バリアブレイクによる全方位攻撃により切り掛かれないので困っている。

 射撃?益々固くなっててもう自分の攻撃では通らない。

 是非自分にもデバイスを新調してほしい、と頭を下げられた。

その場でざっとした要求仕様を聞くと、より早く、より高く飛んで、一撃の下に斬り伏せる、そんな感じにしてほしいとの事。

 大体わかったので、今度仕様書出すから、それ見て判断してほしいと告げるとお願いしますと言われた。

 まぁやるけどさ…君達海の人なんだから、そっちに頼んでほしいのだが。

 

 追記 家で仕様書纏めてたらオーリスが嫉妬して構ってほしそうに見てた。可愛い(断言

 

 

 

 

 新暦66年 9月×日

 

 今回のテロリストは気合が入っているらしく、高性能の対地攻撃ヘリ、それもAMF搭載型を使ってきた。

 現地部隊曰く、装甲もそれなりにあるらしく、通常の射撃魔法では通り辛いとの事。

 ジ○バチと言いたくなる形状だったが、射程外から音速を突破して接近してからのブレイカーで沈黙した。

 残骸は回収後に技術班にドナドナされました。

 

 さて、フェイトそんのデバイス改良案だが…あんまり面白くはならなかった。

 取り敢えず、カートリッジ回りとレイジングハートと同様に改良して大出力・大容量化。

 なお、カートリッジの口径そのものは重量の関係上そのままだ。

 更にザンバーフォームの魔力刃を分厚くデカいのから、普通の両手剣程度の太さにまで圧縮して切れ味と剛性を強化。

 んで、ザンバーフォーム時の四肢の加速用ウイングを背面、肩、足裏の合計6個に移動&増設して機動性と運動性をUP。

 更に最大速度上昇のため、スラスター内蔵浮遊装甲を2枚、周囲に滞空させる。

 今回はなの覇様の六角形ではなく、二等辺三角形にする事で、加速してからの突撃時に衝角として使用できる。

 また、加速時にはシールドを全翼機の様な薄い角錐に展開する事で、空気抵抗を大幅に下げる事に成功している。

 そして、殆どニュータイプばりの反応速度を見せるフェイトそんのために、なの覇様にやったインカムと同程度の精度を持つバイザーを、近接高機動向けに調整したものを付ける。

 また、射撃魔法をゲシュ用の各種射撃魔法に変更し、飛行魔法の構成を小回り重視に慣性制御の辺りを弄っておく。

 更に今ならこのレーダーだけでなく対索敵魔法も対応しているステルスマントもセットでお得!

 更に更に、BJの表面数百分の一を剥離する事で、チャフ兼分身の術を再現しました!

 質量も僅かながらある上に、魔力を含む残像なので、既存の索敵系では早々捕えられないだろう。

 問題と言えば…あまり長時間の使用はお勧めできない事だろう、脱げ女的な意味で。

 まぁその点は若干BJを厚めにしておく事で対処しておこう、うん。

 後は本人が注意して使用してくれる事を祈る。

 盾以外はそう目立たないが、これでかなりやられ辛くなる筈だ。

 と言う事で、仕様書を送っておく。

 

 追記 今日はオーリスとお高めのレストランでゆっくり外食でした。

 

 追記の追記 これでお願いしますとフェイトそんからお辞儀された。おkおk任せな。

 でもやっぱりお支払いは分割だった。君の場合、まだなの覇様よりも安いんだけどなぁ、弾薬費的な意味で。

 

 

 

 

 新暦66年 10月×▽日

 

 新型が出来たのでレイジングハートの様子見を兼ねて本局に訪れたのだが…なの覇様とフェイトそんに一緒にお礼を言われた。な、何を言って(ry

 何でも、お蔭で任務でも訓練でも張り合いが出て来て楽しいのだとか。

 お二人の訓練を見学させて頂いた所、まるで難易度ルナティックのスピリット・オブ・マザーウィルとネクストの戦闘の様でした。

 途中会ったハラオウン執務官(with死んだ魚の目)の言によれば、訓練所の損壊率が7割増しになったとか。

 こんな二人と戦う羽目になるテロリストが哀れでならない。

 少なくとも銀行強盗に行ったからって、逃走用の車と一緒に砲撃の余波で5回位バウンドさせるのはきついと思うんだ。

 いや、オレだって似た様な事ばっかりしてるけどね?

 折角精密砲撃できるんだから、普通に無力化してあげなよ(汗

 スカさん、早めに降伏する事をお勧めするよ。

 

 追記 オレもお二人と模擬戦する事になりました死ぬ

 

 

 いきた いきのびた おれはやったんだ

 

 

 

 

 新暦66年 11月▲日

 

 クラナガンも寒くなり、雪が積もる日もある。

 休日は日本から輸入した炬燵でオーリス共々丸くなる。

 二人で炬燵の同じ辺に入り、いちゃいちゃぬくぬく…。

 夜は夜で二人でベッドでいちゃいちゃぬくぬく…。

 最近爛れてるなーとは思うが、新婚なんだから大目に見てほしい。

 

 追記 最近職場でオーリスの態度が柔らかくなったとの事。馬鹿が出ないとも限らんし、護衛用のADでも作っとくか。

 しかしリンカーコア無しだと動力面をどうすべきか…。

 いや待てよ、低級ロストロギアの傀儡兵を使えば…いける!

 

 

 

 

 新暦66年 12月○×日

 

 今日も今日とてテロリストを殲滅殲滅ぅ!

 ふーはははは!本当にミッドチルダは地獄だぜぇ!

 麻薬売買組織なんぞ消毒だー!

 あ、今使ってる火炎放射器は炎の属性変換した非殺傷設定の銃型デバイスの一種なので、死にはしませんよ。

 

 早々、遂にオーリス用の護身用ADが出来ました。

 その名もスヴァンヒルド。

 だが、デバイスかと言われるとちょっと困る機体でもある。

 何せ本体の主機関は大容量魔力受容器をバッテリー代わりとして駆動するが、リンカーコアを必要としないのだ。

 これは低級ロストロギアとして管理局管轄のオークションでも売買される傀儡兵を材料にしたためで、AIさえ積めば無人でも稼働する。

 武装面はカートリッジと魔力受容器を使用しているが、やはりリンカーコアが無くても使用できる。

 つまり、これでオーリスでも使用可能なのだ。

 武装は警備会社でも使用される電磁警棒を頑丈にしたものとゲシュ系のアサルトライフル、各種チャフ弾等、シンプルだが、素人が乗るのだからシンプル過ぎる位で良い。

 装甲はゲシュmk-Ⅲの装甲を更に重装甲化したものを使用している。

 素人でも動かせる操縦性と戦車並の頑丈さの上、バランサーとショックアブソーバーも最新式を使用しているので悪路でも大丈夫。

 通信機も良いものを搭載したので、ミッドチルダなら何処でも救援を呼べる!

 と言う訳で、これをオーリスにプレゼントしてきます。

 なお、待機形態は見た目シルバーの腕輪です。

 クリスマスプレゼントとしては物騒だし、まだ早いけど、護身のためには早い位が丁度良いよね!

 

 

 

 

 

   こども  できたって

 

 

 

 (以下、判読不明)

 

 

 

 

 

 




さて、そろそろ幸せタイムを壊す頃合いだな(にっこり


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第十二話 罅

ふぅ、難産だったぜ…。


※なお、漸く始めた艦これと東京喰種の新刊を読む時間はあった模様。


 

 

 新暦67年 1月×日

 

 あービックリした。

 オーリスの知らせに無表情のまま狂喜乱舞して我ながら実に不気味だったと思うが、オーリスも慣れたもので、右斜め45度からチョップをかまして止めてくれた。

 さて、取り敢えず即効で病院に行ってもらって検査してもらい、妊娠8週目との事なのでレジアス義父に連絡を出すと、義父も狂喜乱舞した、が丁度来ていたゼストさんに苦笑しながら止められていた。

 相談した結果、安定期に入るまで自宅で療養してもらい、安定期に入ってつわりが酷くなるまでは仕事をする事となった。

 ただし、体調管理はしっかりとし、つわりが酷いようなら産休を取るという事で落ち着いた。

 

 取り敢えず、マンションのセキュリティを見直さなきゃ(使命感

 

 追記 ついついうっかり現場でレッツパーリィして弾薬を無駄に消費してしまった。いや、全弾当てたけどね?

 

 

 

 

 新暦66年 2月○日

 

 とち狂った馬鹿な犯罪者共が自宅周辺に湧いたので、局に連絡しつつ蹴散らした。

 うちの奥さん達を人質にしようとしたらしいが、生憎と今日は非番なのですよ(にっこり

 別動隊が侵入しようとしていたが、生憎と此処は地上本部の局員専用の集合住宅でもありまして…数の暴力でボコボコにされました。

 まぁ侵入段階で即効で最新式に換装していたセンサーが反応してくれたが故の即応だったが。

 うむむ、これは用心を込めて更なる改良を施した方が良いか。

 

 追記 流石にセンサー系とリンクした自動対空砲台群はやり過ぎと奥さんに怒られた。仕方ないから警備用の傀儡兵の配備を具申したら通ってしまった。

また図面とにらめっこの日々だお…。

 

 

 

 

 新暦66年 3月○○日

 

 漸く傀儡兵が出来た。

 基本、以前作ってオーリスにプレゼントして怒られたスヴァンヒルドを更に重装化して非殺傷兵器(ゴム・ネット・トリモチ・閃光・音響・スタン・催涙ガス弾等)をこれでもかと搭載しまくった一品だ。名前はランドグリーズとしよう。

 重装化しているとは言え、傀儡兵も装甲材も武装も元々割と安いものを使用しているので地上本部向けに発売したり、性能を下げて民間に売るのも良いだろう。

 取り敢えず、早速義父に提出して予算を獲得だ!

 

 

 これ書く暇あるならオーリスに構えって怒られたお…。

 

 

 追記 嫁さんにちょっと怒られた後、「あんまり無理しちゃダメよ?」と言われた。うちの嫁マジ天使、聖女、女神!

 

 (以下、嫁への惚気で埋め尽くされる)

 

 

 

 

 新暦66年 4月×日

 

 レジアス義父中将(もうすぐ昇格の噂有り)とゼストさんから今度違法研究所の摘発をするとか。

 元々近年テロリストに流れている特殊な質量兵器(レールガン、コイルガン、粒子砲等)の出荷元として調査候補となっていたのだが、この度調査が終わり、所有している企業の方にも同時にがさ入れする予定なのだとか。

 ただし、施設はかなり広大な地下空間を持っているらしく、直ぐに制圧できずに逃げられる公算が高いそうな。

 んで、施設への突入はゼスト隊が主に行うのだが、人手が足りないのでこっちに御鉢が回ってきた訳だ。

 取り敢えず、色々思いついたから、ちょっと待っててほしい。

 でもゼストさん、一応AD導入しないの?

 あ、やっぱり使い慣れた道具の方が馴染みますかそうですか・

 AMF対策に多重殻弾と物体加速に身体強化を重点的に鍛えているとは言え、何処までやれるか…何にせよ、対策を練らねば。

 

 

 

 

 新暦67年 5月∴日

 

 今日は実にいい天気だったが、実に不愉快で、遣る瀬無く、そして腸が煮えたぎる日だった。

 

 先月相談された施設制圧だが、①最初にベーオウルブズが地上施設を制圧し、制空権を確保する。②施設外周の土地(無人)目掛け高高度から輸送機により試作バンカーバスター×10を射出して地下にあるであろう脱出路を破壊する。③その後、OWグラインドブレードを用いて地下施設を掘削して侵入路を確保する。④ゼスト隊による地下区画の制圧開始。

 大まかな流れはこんな感じだ。

 味噌はゼスト隊は無傷かつ消費無しで突入してもらう事だ。

 また、その気になればこっちで穴掘りして救出にも行けるし、まぁ大丈夫でしょ。

 なお、バンカーバスターは先日のマスブレードのブレード部分を改良したもので、地下深くまで突き刺さった後に内部の大量に埋め込まれたカートリッジと共に起爆します。火薬ではなく魔力を使用し、あくまで廃材の塊を投下するのであって、質量兵器ではありません。

 グラインドブレードは背部のロケットブースターは共通だが、ブレード部分を6本の掘削用ブレードを束ね、回転機構に載せた野蛮極まりない代物だが…これはあくまで工具であり、兵器でありません。よって合法です。

 まぁ初期の問題は制空権が確保できるかどうかと通常の輸送機では高度を確保できなかったので、急いで改良した事なんだけどね。

 

 割と地上部分で敵航空兵器(何年か前にやりあった人型モドキ=リオン)が20近くいたので部下達が手古摺った様だが、いい加減対空戦闘も慣れた部下達によって30分待たずに制空権は確保された。

 その後は手順④まで恙なく完了したのだが、施設内が高濃度AMF下にあり、更にAMFに左右されない改造人間、それも高ランク魔導士級が複数存在するため、苦戦しているとの事。

 仕方ないから掘削しまくって施設を露天掘りにしてAMFの密度を下げていたのだが…いきなり不意打ちを食らった。

 いやさ、ガチでセンサー系に何の反応もねぇでやんの。

 ただ、こちらの装甲を抜く程の攻撃力は無いのか、頭部のカメラアイや推進系を狙ってきた。

 でもまぁ、存在するならやりようはあるよね?

 推進系の逝かれたOWを外し、大体どの辺にいるか当たりをつけてから跳んでかーら-の、広範囲へのクレイモア!

 そしてクレイモアが防がれた当たりに部下達と共にドカスカ撃ち込む。

 そしたらスーっと出てきたのは何処のマブラウ?ってなデザインのボディースーツに身を包んだ眼鏡の少女。

 そう、数の子の4番だった。

 しめしめと捕えようとしたのだが、その前に地面にトプンと現れた腕に掴まれて、これまたトプンと地面に沈んでいった。

 どうやら6番まで実戦投入されているらしい。

 そこに人型モドキの大量増援が来てしまい、増援に行けなくなってしまった。

 しかも通信も妨害されていたのか、近隣の部隊と本部に向けた通信は届いていなかったそうな。

 全てが終わったのは、手遅れになってしまった後だった。

 

 ゼスト隊の隊長陣は重傷、メガーヌさんとクイントさんに至っては連れ去られたらしい。

 メガーヌさんはゼストさんとは長年恋人関係だったし、クイントさんは自分のクローンとは言え二人の娘と夫であるゲンヤさんがいる。

 皆泣いていた。やり切れない。

 病院で消沈するあの人達に、なんて声をかけたらよいのか分からない。

 十分対策を練っていたつもりだったのに、嘗てからの恩人方にオレは何も出来なかった。

 しかも、ドクターとその一派には逃げられた。

 まぁその点はあの6番がロールアウトしてたのだから仕方ないが。

 

 追記 ゼストさんは回復後は局に戻らず、一度フリーの魔導士になってメガーヌさんの行方を追うそうな。

 ゼスト隊自体は損耗が激しく、解散になるとか。

 嘗ての古巣が消える事を残念に思うが、もううろ覚えな原作の流れでは全滅?だったし、被害は軽減できたので良しとしよう。

 

 

 

 やはり、まだ、オレは捨て切れていないのだろう。

 何だかんだ言って、オレは人並みの幸せを得ようとしているのだから。

 だが、このままではその幸せはオレの掌から零れ落ちるだろう、間違いなく。

 スカ博士?否、オレは今更だが恨みを買い過ぎた。

 今更第一線を退いた所で、犯罪者が喜々としてやってくることだろう。

 それら全てを薙ぎ払い、それら全てを踏み躙るだけの力が必要だ。

 そのためには権力はいらない。分かり易い恐怖こそが必要だ。

 

 ならばあの場所へ行く必要があるだろう。

 管理局創設からの全ての知識がある場所、無限書庫へ。

 

 

 

 

 試作高高度超音速輸送機クレーエ

 元々設計が開始されていた新型輸送機を原型として、改装と言うよりは殆ど新造に近い程弄り倒されたこの輸送機はその最高巡航速度がマッハ7を誇る。

そんなから化け物級輸送機から10個の試作バンカーバスターが次々と投下される。

 既に試験を終えているとは言え、実戦投入は初めてのそれらは上手く着弾の5秒後に爆発し、地下施設の一部を破壊した。

 

 『ベーオウルブズ、降下開始。』

 

 それを確認した直後、大型コンテナと共にアルトアイゼン・ナハトが空へと身を投げる。

 それに続く様に、本来空戦用の装備を空挺作戦に代用したベーオウルブズもまた空へと踊り出す。

 

 『ヒュー!雲より上から落ちるたぁすっげぇな!』

 『騒ぐな。既に作戦は開始されている。』

 『私は何時も通りなんですけど…。』

 『雲、綺麗。』

 『各機、次期に対空砲火が来る!散開して火線を散らせ!隊長の邪魔をさせるな!』

 『『『『了解!』』』』

 

 降下しながら、コンテナは原型が分からぬ程に変形していき、次々とナハトへと展開したパーツを接続していく。

 

 【警告 不明なユニットが接続されました。】

 【警告 システムに深刻な障害が発生しています。】

 【警告 直ちに使用を停止してください。】

 

 背面には追加されたロケットブースターが、右腕部には一列に並んだチェーンソーが接続され、更に6本ものチェーンソーが右腕に巻き付く様にして巨大な円柱形のドリルユニットへと変貌する。

 直後、鋼の擦れ合う音と共にドリルユニットの無数の刃が回転を始め、火花を散らしながら赤熱し始める。

 

 「撃ち貫く。」

 

 そして、高高度から真っ逆さまに落ちてきたドリルは施設からの対空砲火を更に加速する事で振り切り、轟音と共に装甲をぶち抜き、地下施設目掛け突貫した。

 

 

 

 

 

 開幕の一撃によって地下5階までぶち抜いた後、ワラワラと集合してきたカプセル型と球体型、全翼機型の無人兵器を掃討した後、ゼスト隊は地下施設の制圧しに向かい、ベーオウルブズは地上で警戒のために残っていた。

 

 『随分な数でしたね…。』

 『確実に何処かに大規模な生産拠点があるな、こりゃ。』

 『二人とも、無駄口は叩くな。』

 

 ウルフ4と6の無駄口をウルフ3が咎めるが、彼女も内心では二人と同意見だった。

 

 (このタイプの無人兵器は以前から散見されたが…誰の仕業だ?)

 

 明らかに管理世界内の技術水準を超えている。

 否、自分達の隊長の様な異物染みた人物なら可能だろうが、それとて誰の支援もなく、こんなものは大量生産できないだろう。

 

 (そこまでの規模を持ち、尚且つ管理局に気取られない組織…一体何処に…。)

 

 大量の敵を文字通り全滅させ、後は退路を確保しながら、精鋭で知られるゼスト隊からの報告を後詰として待つ。

 この配置はサイズが2m以上あるADを主力とするベーオウルブズよりも既存の通常デバイスを主力とするゼスト隊の方が地下空間内で自由に動ける事を考慮したものだ。

 無論、ADが弱いという事は無いが、それ以上にゼスト隊が精鋭として知られ、レジアス中将からの信任も厚いための選択だった。

 だが、だからこそ、地上で騒ぎを起こせば、その二つ部隊のどちらか、或は両方を釣る事が出来る。

 特にベーオウルフは技術者としての側面も大きく、近年の地上本部の戦力拡充の立役者でもある。

 それは地上本部が力を持つ事を厭う者にとって、周知の事実だった。

 

 「狼さん、死んでくださいな♡」

 

 それを察知できたのは、理性でもセンサーでも偶然でもない。

 戦場を梯子し続けた、孤狼の持つ直感だった。

 突然、何も無かった空間から、ベーオウルフ目掛け粒子刀が突き出される。

 瞬時に感知したセンサーによれば、その威力は至近距離かつ装甲の継ぎ目や関節を狙えればナハトの装甲を抜くに十分な熱量を保有していた。

 

 『…。』

 

 現状、至近からの一撃を回避するだけの出力は瞬時に出せない。

 何せもしもの時の支援のためにデカブツを背負ったままだからだ。

 だから、瞬時に左半身のスラスターに命じた。

 全力噴射と。

 

 「がッ!?」

 

 結果、ナハトはその場で大きく旋回した。

 機体本体よりも更に大きな、グラインドブレードを鈍器として。

 無論、敵の粒子刀の脅威が消えた訳でもない。

 強引にブースターユニットとグラインドブレードを鈍器代わりに旋回させたがために、ブースターユニットが損傷してしまった。

 これではもう容易に地下への直通路を作る事は出来ない。

 

 【警告 ブースターユニット損傷 パージします。】

 「は、ははは!やってくれるわね狼さん…!」

 

 少女と言ってよい声音が、姿も無く聞こえてくる。

 周囲に感じる殺意が消えていない事から、未だに彼女は近くにいるのだろう事は解る。

 だが、音も匂いもセンサーも感知する事は出来ない。

 完全に敵のステルスがこちらのセンサーを上回っていた。

 

 【警告 撤退を推奨。】

 『却下。』

 【…至近距離なら敵の粒子刀の熱量を感知可能。】

 

 「あはははは!さっきはよくもやってくれちゃって!このまま死んじゃなさいな!」

 

 哄笑と共に、次々にナハトの表面装甲に傷が走る。

 まるで甚振る様に重要箇所を傷つけないその行動は、彼女のプライドの高さと先程味わった屈辱の程を語っていた。

 

 「じゃぁそろそろ死んで頂戴!」

 『ナハト、フルブースト。』

 

 そして、最後の言葉が吐かれたと同時、ナハトは直上に飛んだ。

 後に残ったのは、姿形は無くとも粒子刀の熱量を止めのために最大値にしていた間抜けだけだ。

 

 『抜けられると思うなよ。』

 

 そして、両肩の散弾魔法が真下目掛けて発射された。

 

 「ッ、この程度で!」

 

 だが、彼女の装備の中にはガジェットに用いられるものよりも高出力のAMF発生装置もあるため、小粒過ぎる散弾では落としきれない。

 

 『えぇ、その程度で。』

 『狙うには十分だな。』

 「か、ぁ?」

 

 AMFを展開し、余計な被弾を止めるために動きを止めた瞬間。

 本来なら散弾でボロボロになる筈の所に、ぽっかりと空いた綺麗な場所。

 そこに遠方から砲撃・狙撃魔法が放たれた。

 次いで、次々と射撃魔法が降り注ぎ、ボロ雑巾の様にそこにいるであろう間抜けを蜂の巣にしていく。

 

 『乱戦なら兎も角なー、つか暗殺者が正面から来るなよ。』

 『馬鹿なのだろう。ステルスを過信し過ぎだ。』

 『取り敢えずボコりましょう!』

 『どうせ降伏とかせんだろ。意識無くすまで撃っとけ。』

 『終わったら腱をチョキチョキ…。』

 

 間抜けな彼女が救出されるのはそれから3分後、二つ下の妹が急いで駆けつけてくるまでだった。

 それまでずっと執拗に撃たれ続けていた。

 

 

 

 

 

 『z…ザザ…ッ…k…ゼス…隊!…救…乞う!繰り……救援…う!』

 

 ベーオウルブズが馬鹿を取り逃がした直後、地下から救援要請が届いた。

 ゼスト隊程の面々が窮地に陥る程の何かがある。

 それを確信しながら、ベーオウルブズの動きは速かった。

 

 『ウルフ2から5は地下へ。ウルフ6はオレと共に残り、本部にも増援を要請。』

 『『『『『了解!』』』』』

 

 繰り返すが、彼らの動きは速かった。

 救援要請が届いて一分もせずに行動を決定、実行に移そうとした。

 だが…

 

 『ッ、センサーに感あり!敵増援来ます!』

 

 この場においては、敵の方が上手だった。

 数は先程の無人兵器よりも少ない、半数程だろうか。

 だが、それら全てが空戦A相当の機動性を持つ人型モドキなら、後者の方が遥かに厄介だろう。

 

 『…命令を変更。全機、この場で戦闘続行。』

 『『『『『了解!』』』』』

 

 この選択が例え味方を見殺しにするものであっても、それでもまだマシな事は確かだった。

 

 

 

 

 

 『クレイモア。』

 

 無数の散弾魔法が一度に数機の人型モドキを撃墜する。

 だが、その倍以上の数のリオンが範囲内にあったにも関わらず、一瞬で間合いから離脱してしまう。

 ナハトはあくまで重装の陸戦仕様機で、人型モドキは空戦特化。

 つまり、相性以前の問題だった。

 

 『この、何機いるんだ此奴ら!?』

 『ウルフ4、陣形を崩すな!』

 『後ろに付かれました!ブレイク、ブレイク!』

 『一部にレドーム装備がいる?指揮官機か?』

 

 だが、彼らとて修羅場は腐る程に通ってきた。

 装甲と障害物の多い地の利を生かして、次々と人型モドキを撃墜していく。

 この場でこいつらを撃破しなければ退路を確保する事も出来ない。

 救援に行きたい気持ちを抑えながら、それでも彼らは己が職務に忠実だった。

 

 『ウルフ1、前に出る。』

 

 ナハトがその推力で強引に前に出る。

 その動きに釣られ、人型モドキの照準がナハトに集中する。

 

 『モーションセレクトシステム、リミット解除。フルドライブ、オーバードブースト開始。』

 【了解。MSSリミット解除。オーバードブースト開始、終了まで30秒。】

 

 本来、陸戦仕様のナハトが、強引に推力任せに空を飛んだ。

 飛行のための慣性制御も重量軽減も無い、強引で無謀な突撃。

 だけどそれは、突拍子もない事態には弱い無人兵器にとって、ほんの半秒程度のロスとなって現れる。

 大気を押しのけながら、ナハトが加速を開始、敵中に向けて切り込んだ。

 

 『一つ。』

 

一番手前の機体に破砕音と共にステークを叩き込み、そのまま盾代わりにしながら加速。

 

 『二つ。』

 

 盾代わりにした人型モドキごと更にステークで貫き、カートリッジロードと共に衝撃変換術式を発動させ、吹き飛ばしながら更に加速。

 

 『四つ。』

 

 左右から迫り、接近戦を仕掛けようとした人型モドキを両手で鷲摑み、更に加速。

 

 『六つ。』

 

 それらを正面の弾幕を張る二機目掛け投げつけ、射撃が鈍ったと同時にクレイモアで全機撃墜しながら加速。

 

 『七つ。』

 

 正面から大型砲を持って突撃してくる機体をヒートホーンで両断する。

 そこで、限界が来た。

 

 【警告、排熱限界。フルドライブ、オーバードブースト緊急停止。】

 

 一瞬の振動と共に、ナハトの突撃が停止する。

 魔力・体力双方の消費は蓄積し、機体にかかった負荷も限界が見えてきている。

 それを残った人型モドキは見逃さず、一斉に火器を向ける。

 それらが放たれれば、消耗したナハトでは撃墜は必至だろう。

 だが、それは…

 

 『オレらを無視しんなや、なぁ?』

 『所詮は機械か。』

 『ヴァイス、照射射撃に変更。』

 『死ね。』

 『つまらん物だが貰ってくれ。』

 

 先程から戦っていた目の前の敵から目を外した事に他ならない。

 ルーチンに欠陥のある様な機械が晒した隙を、ベーオウルブズは逃さなかった。

 

 

 この日、彼らが挙げた戦果は目覚ましいものであり、普段であれば褒められた事だろう。

 だがしかし、彼らが眼前の敵を倒した時、本当に大事なものはもう掌から滑り落ちていた。

 

 

 

 

 

 新暦67年 7月○日

 

 幾度もの理論の構築と検証の結果、現状取り得る手段として一つの回答が出た。

 嘗て闇の書事件で手に入れた、闇の書の根幹データ。

 解析するだけして、後回しにしていたこの危険物の封を解く日が来たのだと。

 こいつのデータに関しては義父にすら秘密にしているし、流石のスカさんも知らないだろう。

 否、知っていた所でそう簡単に対処できるものではない。

 念のため、うちで今使っているPCとは別のオフラインの端末を用意し、更に通常使用しているナハトとも接続しないで開発しているので、情報漏洩は早々無いだろう。

 あるとしたら数の子の6番が端末を丸ごと奪取する事だが、用心のために勝手に起動・移動したら自爆する様にセットしておく。

 少なくとも室内に鉄片の嵐が吹き荒れる事は間違いないだろう。

 

 早々、用心と言えば義父だ。

 オーリスはもう腹が目立っておいそれと動かせないし、警備状況は万全とは言え、義父は数の子らに暗殺されかねない。

 そのため、義父にももしもの時を考え、オーリスに送った自衛用ADの二号機を送った。

 銘をシグルーン、緑のカラーリングに変更されたスヴァンヒルドの二号機だ。

 ただ、シグルーンはあくまで自衛用の装備でしかない。

 陸の、ミッドチルダ地上本部の実質的指導者であるレジアス・ゲイズの乗機としては物足りない。

 戦を行う者、そのTOPに立つ者には相応の責任がある。

 嘗て義父は酒の席で「本当は親友の隣に立って戦いたかった」と零した事がある。

 酒の席の話だ、と笑い飛ばすにはその言葉は余りに真摯だった。

 

 だからこそ、長年の夢を是非とも果たしてもらおう。

 オレもまた、全力で以てそれに応えよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、時代は流れる。

 

 A`sからStrikersへ。

 

 少女から女性となった魔法少女と

 

 青年から父親となった男と

 

 人形から人間となった狂人の

 

 地球から鉄風雷火の限りを尽くされる異世界へ

 

 

 

 

 魔法少女リリカルなのは二次創作

 

 ~ リリカルでメカニカル Strikers ~

 

   ミッドチルダ争乱編

 

 

 

     乞うご期待!

 

 

 

 

 




なお、暫く更新が遅れる模様。


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人物紹介

キョウスケ・ナンブ

 

 主人公。ミッドチルダのクラナガン出身の第97管理外世界の極東系の男性。

 中身はメカ・ロボオタクの転生者だが、第二の生で両親を宗教テロで爆殺されてから、テロリスト絶対殺すマンとして管理局に入局した。

 デバイスマイスターだった父とその上司の教えを受け、アーマードデバイスを開発し、それを主兵装として愛用する。

 また、後に全面的に禁止される戦闘用プログラム「モーションセレクトシステム」を完成、ADに搭載する事で自己を顧みない戦術を冷徹な判断力の下に実行する事を可能とし、自身の感情と肉体を犠牲にして高い戦果を出し続けている。

 入局直後は一陸士としてゼスト隊に入り、ゼストらの薫陶を受けるが、その後、管理局の作戦に紛れて秘密裏に両親の仇であるテロ組織を壊滅させた。

 以後はADの開発主任としてベーオウルブズを率い、ADの技術試験隊及び教導隊としてミッドチルダの治安を守り続ける。

 最近ようやく士官学校の同期にして本人としては腐れ縁、周囲からは恋人だったオーリスとゴールインして子供も出来てゆったりめだった所にスカリエッティ一派の行動により古巣であったゼスト隊が壊滅し、テロリスト絶対絶滅させるマンに進化した。

 

 

 

 

 デバイス アルトアイゼン・ナハト

 

 キョウスケの愛用のデバイス。

 中枢を司るインテリジェンスデバイスとは士官学校時代からの付き合いであり、戦友でもある。

 割と機械的な対応をするが、ガチでピンチの時にはデレたりする可愛い奴。

 漸く主が結婚して幸せになったと思いきやまーた悪化したので悩んでいる。

 

 

 

 

 オーリス・ゲイズ

 

 眼鏡美人秘書が好きな作者によってヒロインに決定した人。

 主人公とは士官学校の頃からの付き合いであり、危ない所を助けられて以来、ずっと傍で無茶苦茶するのを見続けていた。

 いつも主人公を想ってハラハラしていたが、結婚を機に落ち着いてくれて心底安堵した…かと思いきやゼスト隊壊滅でSAN値が削れた妊婦さん。

 的確な仕事ぶりと自他共に厳しめだが、旦那には何故か強く出れない。

 恐らく、作中で唯一、主人公をプライベート面から止める事の出来る人。

 

 

 

 

 レジアス・ゲイズ

 

 地上本部の古狸、又は髭達磨扱いの常識人にして努力家にして実質的なTOP。

 原作に比べ、ADのお蔭で戦力に余裕はあるものの、やっぱり予算と人員を持っていく海に怒りを募らせている。

 地上本部におけるADの普及の立役者であり、キョウスケの直属の上司にして第二の父。

 最近、愛娘と信頼する部下が長い交際を経て漸く結婚し、孫まで妊娠したので喜んでいたら、今度は親友の部隊が壊滅してSAN値が崖っぷち。

 親友と色々お話してまだまだ引退出来ないと踏ん張っている。

 最近のお悩みはSAN値が完全に振り切った義息子と続発する無人兵器によるテロと再燃した宗教系テロ、その裏でチラチラと見える最高評議会への対処。

 実はSts編に入る頃にはまた昇進して大将になった。

 

 

 

 

 ゼスト・グランガイツ

 

 レジアスの幼い頃からの親友にして陸戦Sの近代ベルカ式魔導士。

 キョウスケの嘗ての上官にして、戦闘における師でもある。

 AD普及前は実質陸の最高戦力の一角だった。

 同部隊のメガーヌ女史とは以前から恋仲で、近年漸く娘を設けたが、忙しさにかまけて式を挙げていなかった。

 テロリストにメガーヌを攫われて娘と共に妻奪還の旅に出る。

 

 

 

 

 メガーヌ・アルピーノ

 

 大体原作通りだが、ゼストと結婚してルーテシアを設けた点のみ異なる。

 実はちゃんとウェディングドレスを着て式を挙げたかったので、最近では結婚式場のカタログを読んでゼストにプレッシャーを与えていた。

 

 

 

 

 クイント・ナカジマ

 

 大体原作通りだが、スカ側の戦力が充実していたために生け捕りにされた。

 後に数の子の戦闘訓練を担当する。

 自分の家族に関しては「ま、旦那がいりゃ大丈夫でしょ!」とあっけらかんとしている。

 

 

 

 

 ベーオウルブズ

 

 キョウスケとその愉快な仲間達その1~5。

 これからもきっと名前が出る事は無い。

 

 ウルフ2…ベーオウルブズの最年長者にして副長。

 指揮能力及び火力支援を得意とする常識人のおじさん。

 最近の悩みは娘に「パパ、下着一緒に洗わないで!」と言われた事。

 デバイスはゲシュペンストmk-Ⅲ 砲撃仕様。

 

 ウルフ3…ベーオウルブズ一のハッピートリガー♀。

 中距離射撃を中心としてバランス型だが、ガトリングとかチェーンガンとか連射できる重火器をこよなく愛する。

 実はウルフ4と交際中のアラサー。

 デバイスはゲシュペンストmk-Ⅲ 通常仕様。

 

 ウルフ4…ベーオウルブズのチャラオ担当。

 中~近接戦闘を得意とするバランス型だが、何気に散弾による対空迎撃が隊内で一番上手い。

 最近の悩みはクーデレの恋人=ウルフ3と何時プロポーズするかタイミングが掴めない事。

 デバイスはゲシュペンストmk-Ⅲ 通常仕様。

 

 ウルフ5…ベーオウルブズの無口担当。

 近接特化型かつ高速戦闘が得意な未成年。

 ADで関節技や投げ技をやったりする変わり種。

 基本的に無口で、一言だけしか喋らない。

 デバイスはゲシュペンストmk-Ⅲ 高機動仕様。

 

 ウルフ6…ベーオウルブズの最年少にしてボケ&巨乳担当。

 隊内で最高の魔導士ランク空戦AAの魔力を持ち、航空支援を主任務とするが、目が良いために狙撃や高機動戦闘を得意とする。

 隊内の最後の良心であり、皆から大事にされている。

 デバイスはヴァイスリッターⅡ

 

 

 

 

 

 ジェイル・スカリエッティ

 

 設定は大体原作通り。

 本作におけるラスボスにして次元世界レベルで最高位の科学者にして医者。

 何気に全二次創作中、本作において初めて結婚相談を担当してしまったマッドサイエンティスト。

 人型モドキことリオンシリーズやガジェットシリーズ、ナンバーズの開発・生産を行い、管理局に反旗を翻しているテロリストなのだが…家庭内ではズボラなせいで長女に良い様にされている。

 現在、記憶洗浄した筈なのにPTSDを患って部屋に引きこもっている4番に手を焼いている。

 メガーヌとクイント?医療ポッドで養生中です。

 

 

 

 

 高町なのは

 

 職業魔法少女→魔砲少女→魔王と見事にジョブチェンジし続けている管理局の白い魔王。

 設定は大体原作通りだが、ゲーム好きが向上してA`s時に共闘したADに惚れてしまい、デバイスを魔改造してもらった結果、火力と防御、機動性において大幅に強化されてしまったが、現在頑張って分割支払い中。

 単独で大都市一つを焼け野原にできる程度の単体火力を有するが、現在は如何に精密かつ必要最小限度の火力を発揮できるかと工夫中。

 デバイスはレイジングハート・グロスフス。

 

 

 

 

 フェイト・T・ハラオウン

 

 魔王様の大親友の一人にして職業痴女の執務官志望。

 主人公による魔力流把握の訓練により、NTばりの直感と回避能力を獲得してしまった。

 なのはに合わせ、自身もデバイスを魔改造してもらったが、ステルス性の付与に機動性、近接戦闘力の強化、そして痴女な点も合わせて実にアサシンスタイルと言える。

 なお、なのはと模擬戦をするとルナティックのスピリットオブマザーウィルVSネクストみたいな凄惨な光景になる。

 やっぱり分割支払い中で、うっかり演習場を壊さない様に気を付けている。

 

 

 

 

 

 八神はやて

 

 大体原作通りの豆狸にしておっぱい聖闘士。

 なお、親友二人と違って強化フラグは無い。

 

 

 

 

 

 ヴォルケンリッターズ

 

 皆大好き合法ロリと巨乳ニート侍と飯不味看護師と青犬で構成される。

 幾百年と戦い続けた高ランク魔導士級のプログラム生命体(魔力さえあれば復活可能)と言う割とガチで厄介な存在。

 現在は死に戻りも高速再生もないので若干弱体化したが、リミッターを設けても十二分にヤバい程度には強い。

 

 

 

 



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リリカルでメカニカル 嘘予告STS編

 最近勝ったレコードオブATXが面白過ぎたのがいけない

 なお、更新はFGOが新たなイベント始まったので更に遅れる模様


 役者は揃った。

 舞台も万全。

 小道具も抜かり無し。

 

 「さぁ、これより喜劇を始めよう。」

 

 無限の欲望は自分の自由と夢のため、両手を広げて娘と人形達に宣言した。

 

 

 

 

 「クソ、あの人型モドキは早すぎる!」

 「航空魔導士隊は連携を崩すな!囲い込まれるぞ!」

 「ッ、上位機種を確認!注意されたし!」

 「ブレイク!ブレイク!後ろを取られ…!」

 『しね、きえろ、いきょうとたち』

 『てんには われらのかみ のみ』

 『きえろ きえろ きえろ』

 

 ミッドチルダの空を、AMと言われる航空人型機動兵器群がその性能と物量に任せて蹂躙する。

 並の航空魔導士よりも早く、量産可能で、常にアップデートを繰り返す機械の群れに、ミッドチルダの空は瞬く間に制圧されていった。

 

 

 

 

 「これは…馬鹿な…そんな…。」

 『HQよりブルーム2、何があった?』

 「此処にはの…が…。」

 『ブルーム2、通信が不明瞭。何があった?」

 「人間の脳が、大量にある!」

 

 後に質量兵器生産の疑いのある企業への強制捜査の際、AMの上位機種には通常の無人機用AIではなく、第41管理世界由来の宗教系テロリスト達の脳髄を用いた生体CPUを搭載している事が発覚した。

 これにより、無人機に近いGを気にしない機動性と有人機の高い判断力を両立させていた。

 

 

 

 

 「ティア!そっちに大砲型が!」

 「あぁもう!やっぱり本局の部隊になんか出向するんじゃなかった!」

 

 ティアナ・ランスター二等陸士。

 AD教習訓練を良好な成績で終了後、同期のスバル・ナカジマと共に本局なのにクラナガンに拠点を持つ本局所属の機動六課へと人事部の決定により配属される。

 なお、この人事には人手不足の六課のために地上本部からも人員を供出すべしと言う本局からの圧力があったと言われるが、真相は定かではない。

 

 

 

 

 「何よアレ…。ADにしてはフレームからして別物じゃない。」

 「考え事をしている暇はあるのか?」

 「ッ、ティア!?」

 

 ホテルアグスタ警備任務にて、機動六課は敵不明ADと交戦する。

 大型かつ重装甲でありながら、高い運動性と圧倒的出力を持つ正体不明のADに、六課の新人達は容易く蹴散らされ、隊長陣も敵の撤退を許す事となった。

 後に盗難された試作型の近接系エース級魔導士用ADの試作機である「グルンガスト」のフレームが流用されている事が発覚し、敵新型ADの呼称は「スレードゲルミル」と命名された。

 が、地上本部のウェットワーク部門から非公式にゼスト・グランガイツに引き渡されたものと分かっていたため、親友であるレジアス大将は眉間を揉み解しながら深ーい溜息をついたそうな。

 

 

 

 

 「私は大丈夫私は大丈夫私は大丈夫私は大丈夫私は大丈夫私は大丈夫…!」

 『クア姉、指揮を…。』

 「あ、ごめんなさいね。最低限の目標は達成したから撤退を開始。今から20秒後に幻影で撤退支援をするから、撤退時の指定座標へ移動して頂戴。」

 『あ、敵ADを確認。』

 「ヒィィィィィ!?」

 『あちゃー………。』

 

 スカリエッティ製戦闘機人ナンバーズ4号機クアットロ。

 記憶洗浄するも、未だADに対するトラウマが強く、割としょっちゅう発作を起こす。

 それ以外は面倒見の良い姉ちゃんなんすけどねー byセイン

 

 

 

 

 『武装組織のTOPたる者、よって立つ形と言うものがある。』

 「おいおいおい冗談じゃねぇぞ!?」

 『敵は多いぞ、レジアス。』

 『あぁ、だが今回はオレとお前の二人だ。』

 『あぁ、ならば…。』

 『『相手にとって不足なし!』』

 

 地上本部公開意見陳述会襲撃事件にて

 無数の人型モドキことAMとガジェット群に戦闘機人にて防衛部隊が圧されるも、本部ビルへの攻撃はレジアス大将の搭乗する拠点防衛用新型重装AD「ヴァルシオン」と駆け付けたゼストの駆る「スレードゲルミル」によって押し返された。

 

 

 

 

 「素晴らしい…本当に素晴らしい!」

 「これでは私も本気を出さざるを得ないな。」

 「では行こうか、グランゾン。」

 「グラビトロンカノン、発射!」

 

 しかし、戦闘開始から30分、圧し切れぬと見たスカリエッティは自身の専用機たる重力制御搭載型AD「グランゾン」に搭乗、地上本部防衛戦力の実に7割を広範囲重力場兵器によって撃破した。

 ほぼ同時刻、スカリエッティ一味は機動六課にも襲撃を仕掛け、聖王のクローン体を奪還している。

 

 

 

 

 『アインスト・プログラム、起動。』

 『これより本機は自立戦闘状態へ移行。』

 『暫定名称をアインストヴォルフに設定。』

 『戦闘行動、開始します。』

 

 スカリエッティの研究所にて、スカリエッティ本人の身柄を確保すべくテスタロッサ執務官らと共にベーオウルブズは敵基地へと突入した。

 そこで部隊は各所に分断され、グランゾンを前にしたキョウスケは遂にナハトヴァールプログラム、通称「闇の書の闇」から作成したプログラムを開始してしまう。

 

 

 

 

 「何だそれは…。」

 『機体損傷率69%を突破……稼働率、40%…。』

 「それが君の成果だと言うのか?友人として、君には期待していたんだが……興醒めだ。此処で消えたまえ。」

 『アインスト・プログラム……達成率……97……98……99…。』

 「ディストリオン…!」

 『100% 完了しました。』

 「ブレイク!」

 

 

 「起て、アルトアイゼン・リーゼ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リリカルでメカニカル STS編  連載予定無し!

 

 

 

 

 

 



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