ブラック・ブレット 紅き守り手 (フルフル真)
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第1章《紅き守り手》
人物紹介


これを見ても特に何かがあるわけではありません
取り敢えず詳細を書こうと思い書きました

見ても見なくてもストーリーには関係無いです!


人物紹介

 

古畑真莉

16歳、ブラック・ブレット 紅き守り手の主人公

勾田高校の2年生

黒髪を逆立て目の色は黒

 

身長は176センチ

体重は63キロ

 

視力は2.0を遥かに超える

 

目は若干つり目で初見の相手には怒ってると判断されてしまう

 

ある条件下で髪の色と目の色が赤く変わる

赤い状態になると戦闘能力が跳ね上がる

 

家はそこそこ大きく16歳まで一人で暮らしていたが万引きをして追われていた身寄りの無い呪われた子供を(アカネ)保護しそれ以来一緒に暮らす

 

学校では友達が少なく蓮太郎を含めてもたったの3人と少ない

しかし本人は気にしていない

 

戦闘では接近戦を主としているがあらゆる武器を使う事ができる

地の戦闘能力も高く赤い状態でなくてもステージ2のガストレアを圧倒できる

腕には基本籠手を付けて戦闘する、接近戦なら呪われた子供たちよりも強く無類の強さを誇る

更に赤くなれば巨大なステージ4のガストレアよりも高く飛んだりする事が出来る等圧倒的な戦闘能力を発揮する

 

重火器を使う事もあるが基本は使わないが使えないわけではない

 

 

呪われた子供たちと同様多少の傷なら瞬時に判断回復する事ができる

大きな怪我も赤い状態ならば一気に回復する程の回復力も持ち合わせる

 

 

 

 

 

アカネ

呪われた子供たち

年齢は10歳

モデル・ドッグの因子を持ち嗅覚と直感に優れ危機管理能力が高い

 

万引きをして追われていたところを真莉に助けられそのまま真莉の家に保護された

 

アニメ2話で登場したあの少女

アニメと違い真莉に助けられた事で延珠と仲良くなる

ボサボサだった髪はポニーテールで纏めている

真莉に教えられ戦闘自体はまだまだだが目のコントロールは出来るようになった

 

 

親に名前も与えられず捨てられ自分の名前もわからずに今まで生きてきた

IISOには行かず放浪していた

生きる為に色々とやっていた

 

戦闘では二本のバラニウム製の短剣と足に装着した脚甲に内蔵されたバラニウム製仕込み刃を用いる接近戦

モデル・ドッグ故に脚力が高くかなりのスピードを出す事ができるが延珠の様に各方面に対応出来るわけではなく直線的な動きしか出来ない

ストップ&ゴーでしか動けない

 

戦闘能力はまだそこまで高く無いが真莉に稽古を付けてもらい着実に実力を付けている

 

真莉の事を家族として見ていてお兄ちゃんと呼んで慕っている

 

影胤討伐戦の際に真莉に同行の許可を得ようとしたが結果は拒否

最初は諦めようとしたが諦めきれずヘリに潜り込み真莉を大層驚かした

家族の温かみに触れ一人でいる事に恐怖感を覚えてしまい一人で眠れなくなってしまった

寝るときはいつも真莉に寄り添い寝ている

 



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第1話

龍人記も書いてますがそのデータが入っている携帯が壊れてしまって何も出来ない状態になってしまいまして・・・

とりあえず治るまでこれを投稿したいと思います

待ってくれてる人がいるかはわかりませんがすいませんがよろしくお願いします!

厨二病の自分が書くのでクオリティなんかは気にしないでくださいm(__)m


ヒュゥゥゥ...

キャァァァー!!

ニゲローー!!

ウワァァァ!!

 

人々は逃げ惑う

あの...死の恐怖から...

 

その名は...ガストレア

 

 ガストレアウイルスに感染し、異形のバケモノと化した生物の総称であり、異常なまでの再生力と赤い眼、醜悪で巨大な体躯が特徴の化け物、そして人類の敵

 

 しかし、2021年。人類はこのガストレアとの戦争に敗北し巨大なモノリスと呼ばれる黒き壁の内側へと追いやられた。

 

 かつて人類が統治していた世界は異形のバケモノたちが闊歩する死の世界と成り果てた。その中で細々とエリアと呼ばれる箱庭で震えながら暮らす人類達だったが、戦争に負けてから数年。人類は民警と呼ばれる対ガストレアのスペシャリストを結成し、ガストレアを少しずつであるが狩っていた、しかし、ガストレアの数は一向として減らずむしろ増えてきている

 

時と共に世界情勢は変化していき...

 

2031年の東京エリア

 

 

ギシャァァァァ!!!

 

大きな奇声を上げ体長数メートルと言う大きさの蜘蛛のガストレアが大きく跳躍する、その着地地点には...青年としてはまだ若干の幼さを残す少年

 

しかしその少年は慌てる事も、その事に恐怖する事もなく冷静に対処し、その跳躍を避ける

 

ズッズゥゥゥン!!

 

尋常ではない程の振動が地面を揺らす、蜘蛛型のガストレアは避けられた事に気付いたのか少年の方に向き直り口元をもぐもぐと震わせるとその口から粘着性の高い糸を放出した

 

ギシャァァァァ!!(グググ...ガパァ)

ドバァ!!

 

???「っ!?(ビチャ!)うぉ!?(グググ...)うげ、取れねぇ...っ!?やべ!?」

 

蜘蛛型のガストレアは動けなくなったのを確認した後ゆっくりと、それでいて着実にその少年に歩み寄る、そして少年の命まで後数メートルに近づき大きく、それでいてかなりの悪臭を放つ口を大きく開けた...そして

 

バクン!もごもご

 

蜘蛛型「???」

 

しかし、確かにさっきまでここにいたたった1人の人間がいない、口の中にも何の味もしない、ガストレアは辺りを見渡すが見当たらない...その時

 

蜘蛛型「っ!?」(ッゴ!)

グギャォォゥ!?!?

 

蜘蛛型のガストレアは真下から衝撃で上空に跳ね飛ばされた、蜘蛛型のガストレアは真下を見る、そこには先ほど食べようとした少年がいた...しかしその少年は先程とは少し容姿が違う

その事を感じ取った瞬間その少年はその場から消えた

 

蜘蛛型「!?!?」

 

空中ではその大きな体は満足に動かせないガストレアは少年を見つける事ができない、その時ガストレアの真上から声が聞こえた

 

???「俺に喧嘩をふっかけてくる方が悪い、さっさと死んどけ、《剛掌断》(ごうしょうだん)」(グググ...ドッゴォォン!!)

 

ヒュン!ガッゴォォォォン!!

 

空中から叩き落されたガストレアはまだ辛うじて息があった、普通ならこのままの状態なら徐々に回復するだろう、しかしそれは敵がいない場合である、今このガストレアの前には...

 

???「んだよ、まだ生きてたのか、しぶといな...まぁこれで終いだけどな!」

 

グシャ!!

 

蜘蛛型のガストレアは少年の振り上げた拳で息絶えた、最後にその蜘蛛型のガストレアが見たのは炎の様に赤い髪と...真紅に染まった赤き眼だった

 

 

 

先程の戦闘していた《黒髪》の少年は先程の戦闘をしていた場所より数キロ離れた路地にいた

 

 

???「はぁ...またやっちまったか...これで服をダメにするのは何回目だろ...タダじゃねぇってのに...(ピク)其処に隠れているやつ、出て来い」

 

先程の戦闘で服がボロボロになってしまって憂鬱に浸っていた少年は何かに感づき暗闇に向って問いかける、そして暗闇からカツ、カツと音がする暗闇から仮面を付けた燕尾服の男が現れる

 

???「ヒヒヒ、先程の戦い拝見させて頂いたよ、実に興味深いね、君は」

 

???「...(見られていた?...っち、やっぱり使うのは不用心だったか誰かいるとは思わなかったな...どうすっかなぁ)」

この燕尾服の男は先程の戦いを見ていたという、少年は一気に警戒モードに入る、彼の戦いはあまり見られていいものでは無いから

 

蛭子「お初にお目にかかるねぇ?私は蛭子影胤(ひるこかげたね)と言う、君の名を聞いても?」

 

 

燕尾服の男は少年が何も言わなかったことに対して何か思う事があったのか一度手を顎に持って行き考える仕草をしたあと自己紹介をした、それを聞いた少年は

 

真莉「俺は古畑真莉(ふるはたしんり)それで?何の用だ?」

 

少年...真莉は嫌悪感を隠そうともせずに燕尾服の男...蛭子影胤に問いかける

 

影胤「君の力を貸してもらいたい、私の野望の為に」

 

すると嫌悪感を隠そうともしない相手に何も思う事なかったのか影胤は力を貸せと言ってきた

 

真莉「断る」

 

真莉はそれを二つ返事で断った、呆気にとられる影胤

 

影胤「...ヒヒヒ、何故か理由を聞いても?」

 

真莉「テメェの野望になんて興味は無いし俺にメリットが何一つ無い、なんで俺がそんなことしなきゃなんねぇ...それに決定的なのはその無駄に出してる殺気だ、そんなバレバレの殺気を出してちゃ誰も近よんねぇよ...後ろの隠れてるのも含めてな」

 

真莉は自分の後ろに顔を向けずに問いかける、すると影胤は何が楽しかったのか高笑いをし始めた

 

影胤「ヒヒヒ!気付いたのか!これでもかなり押さえ込んでいたんだけどねぇ...まぁいい、おいで小比奈」

 

トコトコと小比奈と呼ばれた少女が歩いて来る、両側に漆黒の刀をぶら下げながら

 

真莉「...(呪われた子供たち...か)」

 

呪われた子供たち

ガストレアウイルス抑制因子を持ち、ウイルスの宿主となっている人間であり、そのウイルスにより超人的な治癒力や運動能力など、さまざまな恩恵を受ける、特徴的なのはガストレアと同じ紅い眼をしている事である

 

小比奈「ねぇパパ?あいつこっちにずっと見てるよ?切っていい?」

 

なんとも物騒な事を言う子だなと真莉は思ったが何か違和感があった

 

真莉「...パパ?」

 

影胤「ヒヒヒ、そうだよ、小比奈挨拶だ」

 

小比奈「蛭子小比奈、10歳、モデルマンティスのイニシエーター、接近戦では私は無敵」

 

真莉「(モデルマンティス...成る程、随分と...)随分と血を吸ってるようだな、その刀、おそらくガストレアだけでは無いんだろ?」

 

小比奈「?」

 

真莉の問いに何を言っているのかわからず首をかしげる少女、真莉は少女の親に問いかける

 

真莉「お前がやらせてるのか?」

 

影胤「ヒヒヒ、この子の戦闘能力は高くてねぇ、私がやれと言えばやるしダメだと言えばやら無い、良い子だろう?」

 

真莉「そうか...お前とは典型的に合わん、さっさと俺の前から消えろ、目障りだ」

 

真莉はやはり嫌悪感と、今度は苛立ちを見せながらもう一度言った、しかし

 

影胤「そうか...なら、死んでもらおう、殺って良いよ、小比奈」

 

小比奈「はい!パパ!」(ッドン!)

 

一瞬、影胤が言った直後に既に少女は走り出した、目の前にいる少年の首を落とす、ただそれだけの為に...その筈だったが

 

ズドン!!

 

小比奈「...え?っ!?ゥゥゥ!?!?」(ギチギチ!)

 

 

ほんの一瞬で少女は少年に組み伏せられた、完全に関節を決められた少女は無理に動くとヤバイと判断したのか大人しくなる

 

影胤「...ほぅ、小比奈を...いや、呪われた子供たちを組み伏せられるのか...やはり君も彼女らの仲間...という事で良いのかな?」

 

影胤は真莉に問う、彼もまた信じられ無いものを見たのだがそこは場数を踏んでいるのだろう、目に見えての動揺はないように見える

 

真莉「俺がこの子達と?っは、俺をこの子達と同じにしてんじゃねぇよ」

 

真莉はその言葉の後、聞き取れるギリギリの声で言った

 

真莉「...俺よりも上の化け物なんざ、ガストレアのなかにもいねぇっての(ボソ)」

 

真莉はそう呟くと小比奈を解放する、そして表通りに歩いて行く

 

真莉「...もし、俺と戦うつもりならそれはそれで良い、だがな、ハッキリ言って俺は呪われた子供たちと戦うつもりはない、俺が守ってるのはお前らじゃなく、呪われた子供たちだからな」

 

真莉はハッキリとした口調でそう言った、その言葉の後、影胤は笑い出す

 

影胤「ヒヒ...ヒヒヒ!そうか、君はいわゆるロリコンというやつか、成る程、よく分かったよ」

 

小比奈「パパ?ロリコンってなに?」

 

どうやら物凄い勘違いをしてくれたらしい影胤、そして純粋に何か分かっていない小比奈はそれを聞く、しかし真莉は動揺せずに

 

真莉「別にロリコンと罵しろうとも構わないがな...そんじゃな、次会う時は...敵だ」(ッゴ!)

 

真莉が最後に発言した瞬間辺りを濃密な殺気が包む、その瞬間蛭子親子は戦闘態勢に入るがその時にはもう既に真莉はその場にはいなかった

 

小比奈「はぁ...はぁ...」

 

影胤「...大丈夫かい?小比奈?」

 

小比奈「パパァ...」

 

影胤「次は敵...か、敵とすら認められていなかったという事か...古畑真莉...か...ヒヒヒ、楽しみにしているよ、君と...里見君」

 

影胤はそう言うと既にその場にはいなかった、後に残ったのは静寂とほんの少しの《血痕》だけだった




誤字、脱字の報告、もしくは感想があればどうぞ!


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第2話

第2話です!

作者はアニメとssの知識しか無いのでグダグダになると思います...それでも良ければ今後とも見て下さいね!


チチチチチ

チュンチュン

 

真莉「ん...朝...か」

 

朝日が窓から差し込み真莉は目を覚ました、今日は火曜日という事で学校があるのだが...

 

真莉「いきたくねぇぇぇ...」

 

彼は布団の上をゴロゴロして行きたくないアピールをする、しかしこの家に彼以外誰もおらずそれにツッコミを入れるものは誰一人としていない

 

するとゴロゴロするのに飽きたのかピタリと止まり洗面所の方へ歩いていく

 

バシャバシャ!

 

春先で暖かくなってきたとはいえまだ朝は若干の寒さがあり水も冷たい、なかなかの冷たさで目がシャキッとして来たところで彼はある事に気づく

 

真莉「...タオル忘れた...」

 

寝起きの彼は頭が全く働かないようだった

 

真莉は制服に着替え学校に行く準備をしていると携帯に1件電話が来ている事に気が付いた

 

真莉「あ?誰の電話番号だ?」

 

電話は来ているが登録していない番号なので名前が出ない、間違い電話の可能性もあるのでこちらからかける事はまず無い、そんな風に考えていると今ぐらいに家を出ると《彼ら》に会えるだろうと判断しパンを加えながら家を出る

 

真莉「ふぃってふぃふぁーす(行ってきまーす)」

 

誰もいない家からはその言葉を返してくれるわけでもなく、彼はそのまま鍵を掛け学校に向かって歩き始めた

 

道中特に何かあるわけでもなく、途中で寄ってきた猫と30分ぐらい遊んでいたら待ち合わせ時間に迫っている事に気づく

 

真莉「あ...やっべ...行くか」

 

彼は特に急ぐ様子も見せずそのままの速度で歩いて行く、すると曲がり角を曲がってすぐに遠くから

 

おぉーい!!

おっせぇぞ〜!!

 

と、大きな声で手を振っている2人組が待っている、この2人が真莉が待ち合わせしていた真莉のクラスメイトである

 

???「もう!遅いよー、こっちまで遅刻しちゃうじゃん!」

 

???「そうだぞ!お前のせいで遅刻したら俺たちだって怒られるんだからな!!」

 

真莉「いや...それだったら先に行けばいいじゃんか、それで俺のせいにされてもこまんだけど...なんでお前ら2人で行かねぇの?」

 

???「だって綾(りょう)と真莉、3人でと一緒に行きたいじゃんか?(キョトン)」

 

綾夜「いや、じゃんかって言われても...ってか、そんな風に勘違いさせる言い方するから未だに男に告られるんだろうが...後、俺は綾夜(りょうや)だ、何度も言ってるが一文字にするの辞めろ沙耶(さや)」

 

沙耶「えぇぇ...別に良いじゃん、カッコよくって、僕なんて女の子みたいな名前だし...同じ男に告白されるし最悪なんだけど...」

 

真莉「未だに告白されんのか?」

 

沙耶「うん、まぁね、最近は男でも関係無いって言って言い寄ってくるんだよ...僕怖いんだけど...」

 

待ち合わせしていた2人は真莉の中学時代の友人である沙耶と綾夜、真莉が気兼ねなく話せる唯一の友達であり彼の秘密を知り、それでいて友達でいてくれる彼の良き理解者である

 

合流して大凡20分、3人の通う学校の勾田高校に到着した、彼らは学校内でも仲が良く、大概一緒にいる...約1名を除いて

 

綾夜「そんじゃあな、2人とも!また昼に来るぜ!」

 

沙耶「うん!また後でね!」

 

真莉「ちゃんと授業受けろよ〜」

 

綾夜「...お前らに言われたく無いぞ...」

 

綾夜は別のクラスなのでここでお別れする、真莉と沙耶は別れた後同時に少し騒がしい教室に入ると

 

ざわざわ...

 

違った意味でまた騒がしくなった真莉が教室に入ると大体がこんな感じだ

 

沙耶「...じゃあ僕は自分の机に行くね?また後でね〜」

 

真莉「おう、また後で」

 

2人の机は沙耶が窓側、真莉は廊下側と離れている、沙耶が自分の席に着いた途端騒がしかったクラスの子たち数名が沙耶の元へ行き何かを話している

 

真莉はその事に興味も無いのか机に着くと早々に腕を枕にして寝る態勢を取った、しかし普段なら誰も話しかけてこないのですぐに寝れるのだが今日は違った

 

トントン...

 

と、肩を叩かれたので渋々顔を上げる真莉、そこにいたのはこのクラス1の人気者である

 

真莉「...なんか用かよ...星染」

 

星染「用がなくちゃ話しかけちゃダメなのかい?(にっこり)」

 

誰もが見惚れる様な爽やかな笑顔でそう言ったこの人物は星染聖也(ほしぞめせいや)このクラス1、いや、この学年1の人気者で爽やか過ぎる好青年である

 

真莉「俺なんかに用がなくて話してくるのは沙耶か綾夜ぐらいなもんだ、それにお前とはクラスが同じってだけで何にもねぇ、だからなんか用かって聞いたんだよ」

 

嫌悪感丸出しでそう言う彼に星染は若干の苦笑いをした

その言葉を聞いていたであろうその取り巻きがぎゃあぎゃあと喚き出す、やれお前みたいなはみ出し者に声をかけてくれた聖也君が〜とかそんな態度してんじゃねぇよとかである

 

それを聞いていた聖也はその取り巻きを落ち着かせ改めて真莉に向き直る

 

聖也「俺は櫻井や希里江君と友達だ、だから君とも友達だと思っているんだけど...違うのかな?」

 

周囲はその言葉でシンとする、少ししたら流石聖也君!などと言ってはしゃぐやつ、キャーキャー色めきだって騒ぐ女子も出てきた、しかしその空気はすぐに壊れる

 

その中で1人だけ彼の雰囲気が変わったことに気付いた者がいる

 

モブ女「どうしたの?希里江君?」

 

沙耶「いや...やっちゃったなぁって...」

 

モブ女「?」

 

沙耶...希里江沙耶に質問した女の子は沙耶の返答に首をかしげる、なんのことだか分かってないらしい、すると

 

真莉「友達?っは!くっだらねぇ、お前が沙耶や綾夜と友達なのは俺には関係無いしあいつらの交友関係をとやかく言う権利は俺にはねぇ、だがなあいつらと友達だから俺と友達?それはちげぇだろ、友達の友達は友達って言うがな、そんなのデタラメだろ、ハッキリ言って俺はお前をなんとも思わない、友達とも思ってねぇしこれから先思うこともねぇよ、友達の友達は友達じゃなく、赤の他人だ」

 

真莉の言葉で言葉を失ったクラス一同、すると方々から罵声や怒声が聞こえて来た

その直後にガラ、と教室の扉が開き先生が入ってくる、先生はクラスの様子を見て唖然として固まっている、すると真莉が先生の元へ行き

 

先生「お、おぉ、古畑か、どうした?」

 

真莉「すいません、朝から体調が悪くって今日は早退させてもらいますね」

 

先生「え?あ!?ちょっと待て!」

 

真莉はそう言うと教室を出た、その直後硬直から解けた先生が彼を止めようと教室から出たが

 

先生「...あれ?いない?」

 

ほんの数秒で彼の姿は何処にも無かった、先生は首をかしげる、すると手を挙げた人物がいた

 

先生「どうした?希里江?」

 

沙耶「先生、後で真莉...古畑君には今日のこと伝えておくので授業を始めませんか?」

 

先生「お、おぉ、そうだ...な、良し!授業を始めるぞ!みんな席に着け〜」

 

はーい、と先程までの空気は何処かに行ってしまったのか各々の机に戻っていった、しかし1名納得できない様な顔をして自分の席に着く

 

星染「...違うよ真莉、友達の友達は...俺からしたら友達なんだ」

 

誰に聞こえるとも分からない声量で呟いた彼は直後に始まる抜き打ちテストと言う言葉を聞いた生徒たちの声で頭の中を切り替えるのだった

 

 

 

 

 

 

彼は教室を出た直後先生が出てくるタイミングで天井に張り付いてやり過ごし教室に戻ったところで天井から降りた、玄関まで行き自分の靴に履き替え校門を出て何処に行こうか思案する

 

真莉「(学校抜け出せたはいいがどうするか...家では何もやることねぇしなぁ...この時間でゲーセンってのも...ん?)」

 

ブルブルとポケットに入っている携帯が振動する、着信を告げているようだ

 

真莉「誰だ?綾夜も沙耶も授業中だろ?...この電話番号は」

 

ディスプレイに表示されたのは朝も来ていた番号からだった、少ししたら切れてしまったのでまぁいいかと思いふたたび歩き出そうとすると直ぐに

 

ブー!ブー!ブー!

 

また着信が来た、それも同じ番号から、流石におかしいと判断した彼は意を決して出る事にした

 

真莉「(ッピ)...もしもし?どちら様で?」

 

???「《ようやくつながりましたね》」

 

真莉「っ!?(どういう事だ!?)」

 

電話に出たら本来はあり得ない人物からの電話だったので流石の彼も驚愕の表情を抑えられない、その電話の相手とは

 

聖天子「《始めまして、私は聖天子と申します、古畑真莉さん、あなたにどうしてもお願いしたい依頼があるのです、聞いていただけないでしょうか?》」

 

東京エリアの国家元首、聖天子本人だった

 

流石の彼もこれには驚きを隠せない、少々焦った口調で聖天子に問うた

 

真莉「...国家元首殿ともあろうお方が1学生になんのご用ですかね、間違い電話でしたら至急切る事をお勧めしますよ」

 

聖天子「《間違い電話ではありません、ただ申し訳ありません、事態は急を要するので失礼だとは思ったのですが連絡先を調べさせてもらいました》」

 

真莉「...俺の力、と言ったが俺には力なんてないですよ、そんなに力が欲しいのであれば民警にも連絡すればいいじゃないですか、彼らなら力になってくれますよ、少なくとも俺は民警では無いのですから」

 

《民警》とは時折入ってくるガストレアを退治する専門の事である、専門といったが他にもやる事はあるのだろうが彼はほとんど知らない

 

聖天子「...《紅蓮》」

 

真莉「っ!?」

 

聖天子が呟いた一言、それは彼にとって知られるわけにはいかない人物に知られている証拠だった

 

真莉「...何処でそれを知った」

 

彼は相手が国家元首など御構い無しに威圧感のある声色を使い聞いた

 

聖天子「《教える事はできません、ただ、もし来ていただけないのであれば少々ひどいようですがこの情報を拡散させます》」

 

真莉「それは頼みってより脅迫だろうが」

 

聖天子「《今はそれぐらいでなければならないのです、それで、来ていただけますか?》」

 

真莉「...分かったよ、って、何処に行きゃいい?」

 

聖天子「《(っほ)一度ご自分のお宅に帰っておいてください、そこに車を向かわせます、それに乗ってきてください》」

 

真莉「あぁ、分かった、そんじゃ(っぷつ)」

 

聖天子が他にも言おうとしていたのを聞く気も無いのかすぐさま携帯を切り、ポケットにしまった、彼は大きく溜息を吐き呟いた

 

真莉「あ〜あ...面倒だ」




誤字、脱字、感想、こうしたらいいんじゃ無いか等の指摘などあれば感想欄にどうぞ!


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第3話

今回は少し短めです、クオリティは期待しないでください


 

あの後自宅に帰った真莉はシャワーを浴びて迎えが来るのを待っていた

 

真莉「...俺スーツなんて持ってねぇぞ...ま、いっか、制服で...呼び洗濯終わってたかな〜」

 

改めて制服を着て真莉は迎えが来るのを待つ、するとしばらくして外に何かが止まる音がした、その直後

 

ピンポーン

 

と呼び鈴が鳴る、真莉がドアに向かい鍵を開け訪問者に、応対する

 

真莉「はい、どちら様ですか?」

 

黒服「古畑真莉様ですね?お話は聞いているとは思いますが一緒にご同行願えますでしょうか?」

 

真莉「話は聞いてるが何処に連れて行くのかわからん以上警戒はするぞ」

 

黒服「分かっております、それとこれから行くのは防衛省です」

 

ピクリと真莉の眉がほんの少し上がる

 

真莉「...防衛省?」

 

黒服「はい、詳しい話はあちらで行いますのでよろしいでしょうか?」

 

ハァ、と真莉は溜息を吐き頷いた

 

真莉「あぁ、どうせ行かなきゃ面倒ごとが増えそうだしなぁ...」

 

黒服「それではこちらにお乗りください」

 

真莉「(はぁ)あぁ(一様念のためこれ持ってくかな...)」

 

ガチャ!バタン!ブゥゥゥン!

 

真莉は簡易的な荷物を持ち車に乗り込むとすぐに車は発信する

 

防衛省迄は車ならそこまで長い距離では無く10数分あれば到着する距離である

 

真莉「すいません、運転手さん、ちょっと寝ますね、着いたら適当に起こしてください」

 

真莉はそう言うと運転手の返事を待たずに意識を落とし眠りについた、次に起きる頃には着いてるだろうなと思いながら眠った

 

《防衛省》

 

黒服「起きてください!古畑様!到着しましたよ!」

 

黒服を着た運転手に揺すぶられて真莉は目を覚ました

 

真莉「...(ふわぁ)すいませんね、どうも...」

 

黒服「ではこのまま進み○階まで上がってください、その先の扉でお待ちください、それでは」

 

黒服は進むべき道を教えて防衛省の中に入っていった

 

真莉「...案内ぐらいしてけっての...え〜っと○階だったか」

 

真莉はエレベーターを見つけて言われた階数を押す、エレベーターは静かに目的の階数に上がっていく

直ぐに目的の階数に到着し真莉は降りる、すると直ぐに目的の場所を見つけ歩いていく

 

真莉「ここか...ん?この感じ...」

 

扉に手をかける寸前に感じた違和感で真莉は手を止めた

中に他に誰かいる事に感づいたのだろう

 

真莉「...人数が多い?これは...民警か?なんでこんな人数...きな臭いな、まぁいっか」

 

真莉は思考するが結果的にどうでもいいと思ったのか扉に手を掛け扉を開く

扉を開くと少々騒がしかった中がシンと静まり返った、何故ここに子供が?とでも思っているのだろう

 

すると1人の青年が驚いた様子で詰め寄ってきた

 

???「な!?なんで古畑がここにいるんだよ!?」

 

真莉「...あ?...お前里見か?なんでこんなところにいるんだよ?学校は?サボりか?」

 

真莉は彼《里見蓮太郎》に思った疑問を投げ掛ける、すると彼は

 

里見「お前よりは大丈夫だよ、この時間なら部活以外はみんな終わってる...ってかお前櫻井が怒ってたぞ、電話に出ねぇって」

 

真莉「うげ...だりぃ」

 

???「おいおい!!ガキがもう1人来てんだよ!!テメェ場所間違えてんだろ!出口は後ろだとっとと帰りやがれ!」

 

真莉が里見から聞いた言葉でだるそうにしていると里見の後ろから一際大きな怒声で言い放ってくる髑髏のスカーフを口元まで巻いている大きな大剣を背負っている大男が現れる

 

すると里見は見るからに嫌そうな顔をする、しかし真莉は

 

真莉「あぁ、今から電話かければ何とかなるか?いや、あいつ一回切れるとめんどいしなぁ...(ぶつぶつ)」

 

里見「お!?おい!?真莉!?」

 

???「こ、この...クソガキィィィ!!」(グワァ!)

 

真莉はその言葉自体聞いていなかったようでどうやれば友人の怒りを鎮められるか考えていた

すると髑髏スカーフは上半身を反らし、頭突きの構えを取る

 

真莉「...うぜぇんだよ(ぼそ)」(ッグン!)

 

ッゴ!!

 

???「ッグォ!?!?」(グラァ...ドサァ!)

 

真莉は髑髏スカーフの頭突きに合わせ自分の頭突きをぶつけた

物凄い音がした瞬間髑髏スカーフが地面に尻餅をつく、それを見た他の民警やその会社のおそらく社長クラスであろう者たちはみなありえない者を見たような目で2人を...というより真莉を見ていた

 

 

???「こ...このガキィィ!!(ッバ!)」

 

髑髏スカーフが自分の身の丈ほどもある大剣を構える、すると後ろで座っていた人物が

 

???「止めないか!将監!!」

 

将監と呼ばれた人物...髑髏スカーフはその声にびくりと反応し反論する

 

将監「そりゃねぇぜ!三ヶ島さん!こんなガキに舐められてちゃ!」

 

三ヶ島「今の一瞬で自分と彼の実力差も分からんのか!さっきも言ったが我々が流血沙汰を起こしてみろ!これからの事に響くだろ!それが守れないのなら帰れ!」

 

三ヶ島と言われた男の一言で将監は大人しくなる、しかしまだ納得の行かない様子で真莉を睨む

 

将監「...おいガキ、テメェ名前なんて言う?」

 

真莉「古畑真莉...の前に普通はお前が先に名乗るんだけど...」

 

将監「ぐぬ!?このガキィィ...俺は伊熊将監だ!覚えとけよ!ぜってぇぶっ殺す!」

 

三ヶ島「...すまない、少々ヒートアップしやすいのだ、許してあげてほしい」

 

真莉「いえ、こちらこそ反撃なんてしてしまい申し訳ありませんでした、こんなこというのはあれですがお互いに今回の件、なかったことにしていただけませんかね?」

 

三ヶ島「こちらが先に手を出したのだ、こちらが悪い、そちらがそれでいいならそうさせて貰うよ」

 

三ヶ島はそう言うと自分の席に座った、真莉は誰かに見られていると察して辺りを見渡す

すると三ヶ島という男の背後にいた少女がこちらを見ているのに気づく、少女はおもむろに自分の腕を自分自身のお腹に持って行きあるジェスチャーをした

 

真莉「...?(お腹?空きました?...いや、知らねぇけど...なんかあったかな...ねぇな、悪りぃ)」

 

???「(しゅん)」

 

真莉は何も持ってないと両手をあげてアピールすると少女は落ち込んだ様子を見せ引き下がった

 

すると前の方の扉から男が入ってくる、すると先程まで少々騒がしかった会議場が一気に静まり返る

近くにいた里見もいつの間にか自分の所属する会社の近くにいた

 

真莉には座る席が用意されていないようだったので近くの壁に背を預け腕を組み話を聞く体制に入った

 

防衛長「...空席1...か」

 

入ってきた男は辺りを見渡し空席を見つけると頷き確認する

それが終わった後男は全員に問いかける

 

防衛長「本日集まってもらったのは他でもない、君たち民警に依頼があり、集まってもらった」

 

男は全員の顔を見渡し確認をとりながらまた問いかけた

 

防衛長「依頼を話す前にみなに行っておかねばならないことがある、今回の依頼は受ける受けないは諸君らの自由だ、腕に自信がない者は速やかに退室してもらって構わない」

 

男はそう言ってまた周りを見る

 

誰も動かないのを確認して満足したのか大きくうなずき続ける

 

防衛長「なるほど、自体者はいないか...では依頼の詳細はこの方からお伝えする手筈になっている、心して聞くようにしてくれ」

 

男はそう言うと扉から出て行く、すると前のモニターの電源が付けられそこにある人物が2人を映し出される

 

???「ごきげんよう、みなさん」

 

そこに映し出された人物にその場にいたほぼ全員が泡を食ったように慌てて立ち上がる

その中で本人から連絡をもらっていた真莉だけはそのままの姿勢で見ていた

 

映し出された人物は東京エリアの現当事者銀髪で純白の衣装を着る少女...聖天子その人だったのだ

 

真莉「これまた面白い登場の仕方だな...めんどくなりそうた(ぼそ)」




何故でしょう、自分が書くオリ主って何故か俺TUEEEになる...
もっと別パターンで書けないものか...

誤字、脱字、感想等がありましたらどうぞ!


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第4話

第4話です!

自分の話は殆どが脳内設定になっております!

ですので矛盾もあるでしょうし原作がある意味ぶっ飛んでしまうと思います、今更ですが色々注意ですかね!


モニターに東京エリアの当事者、聖天子が現れた直後に里見の前にいる恐らく里見の所属する会社の社長が目を見開き真っ先に立ち上がる

 

それにつられ他の民警の社長達も立ち上がり居住まいを正し正面のモニターに注視する

 

モニターに映る聖天子は苦笑し慌ただしく立ち上がった彼らに言う

 

聖天子「みなさん、楽にしてくれて構いませんよ」

 

聖天子はそう言うが流石に東京エリアの当事者を相手にして楽な姿勢を取れるわけもなくみなガッチガチに固まっている

 

それを見た真莉は

 

真莉「(くくく、泡食って立ち上がったな、見てるぶんには面白いな...つうかあの後ろにいるのって天童のジジイじゃねぇか?まぁ実力だけは頭おかしいくらいに強いから護衛としては一級品だからな...)」

 

真莉がそうやって考えていてチラッと里見の方を見る、里見の前のモニターの天童のジジイを睨んでいる女社長を見てふと思う

 

真莉「(ん?天童民間警備会社?天童...天童の所の令嬢か?スゲェ睨んでるな...)」

 

天童民間警備会社の女社長...天童は睨みを少し弱め聖天子の話を待つ

 

聖天子「...今回お呼びしたのは他でもありません、皆様に依頼があります、依頼というのは他でもありません、昨日東京エリアに侵入し男性の1人をガストレア化させた感染源のガストレアの排除とそのガストレアが保持していると思われるあるケースを無傷での回収です」

 

聖天子がそれを言うとモニターにそのケースと報酬金だと思われる金額が表示される

表示された金額に一同はざわめき立つ、その報酬額はたかが1ガストレアにしてはあり得ないほどの金額が表示されている

 

 

真莉「(感染源ガストレア?昨日?1匹殺したがその時は何もなかったよな...それにケースを無傷での回収?しかもこんな金額を報酬とするか...なんかきな臭いな...)」

 

すると三ヶ島ガーターの社長が手を挙げる

 

三ヶ島「ケースはガストレアの中にあると考えてよろしいでしょうか?」

 

聖天子「はい、そうです」

 

三ヶ島「もう一つよろしいですか?」

 

聖天子「どうぞ」

 

三ヶ島「こう言ってはなんですがここには民警のみだと思われるのですがあそこの彼はどう言うものなのですか?」

 

聖天子「彼は私が直接依頼しました、彼の力は充分に知っています」

 

ざわざわと辺りがまた騒ぎ出す、その中でも一番唖然としているのは同じ学校の里見だ

里見はお前そんな強いの?とでも言いたげな視線を送る

 

真莉「(まぁあのことに触れなければ問題はないんだが...注目を浴びるのは勘弁したいんだが...)」

 

そう考えてると天童が手を挙げる

 

天童「ケースの中身を教えてもらっても?」

 

聖天子「あなたは?」

 

天童「天童民間警備会社の天童木更と申します」

 

天童が聖天子に名前を告げると聖天子は少し目を見開き後ろをちらりと見る

 

聖天子「...お噂はかねがね聞いております...しかし天童社長、それはプライバシーを侵害していますのでお教えすることは出来ません」

 

天童「納得いきませんね、感染者が感染源と同じ遺伝子を受け継ぐということなら感染源はモデル・スパイダーのガストレアでしょう、それぐらいだったらうちのプロモーターでも対処できます...恐らくですが」

 

天童がそう言うと里見は肩を落とす

 

真莉「(はは、里見残念だったな...だがモデル・スパイダーか、俺が昨日やったのは確かにモデル・スパイダーだったが...それとは別なのか?...っ!?)」

 

天童と聖天子が意見を言い合っているのを見ているとほんの僅かな殺気を感じた真莉は入り口の扉を見た

するとそこには本来いないはずの男が立っていてこちらに歩いてくる

 

その男、蛭子影胤は真莉を見て、指を自分の口元に持って行き静かにのポーズをとる

真莉は何をするのか多少興味があったため見ていると空いていた空席に座る、座った瞬間に蛭子影胤は大声で笑い始めた

 

その姿を見た両隣にいた他の民警の社長は驚き尻餅をつき急に現れた侵入者を見る

 

侵入者...蛭子影胤は机の上に上がり聖天子に向き直る

 

聖天子「...誰です」

 

影胤「ヒヒヒ、お初にお目にかかるねぇ?無能な国家元首どの、私は蛭子、蛭子影胤と言う末端に言って君たちの敵だ」

 

影胤が両手を広げてそう言うと里見が拳銃を構えて食いかかる

 

里見「お前!どうやってここに!」

 

影胤「正面から堂々とだよ里見くん、古畑くんは気付いていたようだがねぇ、まぁそれでも邪魔者は排除させてもらったが...おいで、小比奈」

 

影胤がそう呼ぶと里見の後ろで待っていた影胤の娘、蛭子小比奈が机の上に登る、里見は気付いていなかったのか大層驚いていた

机の上に登った小比奈はスカートを摘み軽くお辞儀をする

 

小比奈「蛭子小比奈、10歳」

 

簡素な自己紹介をする

 

影胤「私のイニシエーターにして娘だ」

 

小比奈「パパ!真莉がいるよ!切っていい?後あいつ鉄砲向けてるよ?あいつも切っていい?」

 

影胤「よしよし、まだダメだよ、愚かな娘よ」

 

小比奈「む〜...パパァ...」

 

小比奈は影胤に縋り付くが影胤はそれを聞き入れない

 

真莉「相変わらず物騒な物言いだな、小比奈?」

 

小比奈「物騒?どう言う意味?」

 

真莉「...勉強ぐらいさせとけよそんぐらい...まだ10歳だろ」

 

影胤「ヒヒヒ、それもいいかもねぇ...今日はそんなことを言いに来たんじゃないんだ...今日は言いたいことがあってきたんだ」

 

真莉「言いたいこと?」

 

影胤「そう、私達も今回のレースに参加しようと思ってね...七星の遺産を貰い受けるためにね」

 

七星の遺産、そのセリフを聞いた聖天子は目を伏せ俯く、他の人達はそれが何なのか分からずにただ見ているだけだった...約1名を除いて

 

真莉「(七星の遺産?七星と言うのは聞いた事がある気がするな...なんだったかな...どっちにしても面倒くなったな...ここで...殺すか)」

 

真莉がそう思考した直後に大きな音が響く

 

ドゴン!

 

将監「ゴチャゴチャウルセェんだよ!要するにテメェをぶっ殺せば良いんだろう...が!」(ドン!)

 

一瞬、まさしく一瞬で伊熊将監が影胤の懐に潜り込む

 

影胤「ぉぉう!?」

 

ガギィィィン!!

 

影胤は驚いたと思わせた瞬間将監のバスターブレードと影胤の間に青白い光の膜が現れバスターブレードを弾く

 

真莉「(あれがあの余裕の正体か...随分と面倒くさいな...)」

 

弾かれた直後周りの民警の社長達や里見が拳銃を向ける

 

三ヶ島「下がれ!将監!」

 

将監「っちぃ!」

 

三ヶ島は将監を下がらせ拳銃の引き金を引こうとする、すると突然地面が大きく揺れる

 

グラグラ!

 

三ヶ島「っ!?なんだ!?」

 

里見「っ!木更さん!」(ッバ!)

 

揺れが収まるもそこに立ってるのは3人だけ

蛭子親子と...その振動を発生させた真莉だけだった

それを見た里見が真莉に問い詰める

 

里見「古畑!何のつもりだ!」

 

真莉「馬鹿かテメェらは、そこの筋肉ダルマの武器が弾き飛ばされたんだ、たかだか銃弾の2、30発弾かれて終わりだ、それに弾く場所を設定出来るとしたら?それでテメェら全滅することだってあんだぞ、ちったぁ考えろボケども」

 

真莉は蛭子親子から目を離さずに里見だけではなくみんなに言った

 

影胤「ヒヒヒ、残念、そこまで読まれてしまったか...それにしてもさっきのは驚いたよ、まさか地面を思いっきり踏んで簡易的な地震を起こすなんてね、簡単に出来ることじゃない...それにしてもこれなら私達の完勝かな、里見くん、これは君にプレゼントだ、受け取ってくれたまえ、それでは諸君、また会おう滅亡の日は近いよ」

 

影胤はそう言うと包装されラッピングされている箱を取り出し里見の前に置いた、そして先ほどの振動で割れた窓ガラスから影胤は飛び降りた

それにつられて娘の小比奈も一緒に飛び降りる

 

最後に残ったのは静寂だった、するとモニターの聖天子が

 

聖天子「...先ほどの依頼内容を変更しますケースの奪還は勿論のことですがまずあの男よりも先にケースを保護してくださいさも無ければ...東京エリアに大絶滅を引き起こしてしまいます」

 

聖天子の言葉に誰もか信じられないような表情をする

里見は真莉に掴みかからんとばかりの勢いで迫る

 

里見「古畑!お前いつあいつとあった!」

 

真莉「教える必要があんのかよ?別にねぇだろ、そんじゃ、俺は晩御飯の材料買わねぇと行けねぇから帰るぞ...安心しろよ、東京エリア全体と言われちゃ動かざるを得ない、やるだけやってやるよ」

 

真莉は他の人に目を向けずに出口へと向かった、彼の握り拳からは若干の血が滴り落ちていた

 

真莉「蛭子...影胤...か」

 

ぼそりと呟いた言葉は虚空に消え去る、真莉はエレベーターのボタンを押し来るのを待った




誤字、脱字、乾燥等あればお待ちしております!


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第5話

やっとあの子達が出せました!

結構矛盾しているところもあるかもです...


防衛省の騒ぎから数日が経過したある日、真莉は 学生の本分の学校に向かっていた

 

サボることが多い真莉にしてはなかなか珍しく1人で学校への道を歩く

いつもならば友人の2人と行くのだが今日はいない、何故なら今の時刻は9時過ぎだからだ

 

要するに真莉は寝坊したのだ、最初に起きた時にサボろうと考えて学校に連絡するつもりで携帯を取るとメールが2件来ていたので先にメールを開く、そこには

沙耶と綾夜からのメールだった

 

綾夜からは

綾夜《多分寝てるだろうから先に行くぞ?起きたら来いよ!待ってるぞ!》

 

沙耶からは《来なかったら...分かるよね?》

 

このメールを見た瞬間にはもう彼は制服に着替え家を出るところだった、綾夜はともかく沙耶を怒らすのは真莉としては嫌なものらしい

 

真莉「だりぃ...別にいいじゃねぇかよ学校なんていかなくって...はぁ」

 

彼は何度目かわからない溜息をついた、すると学校が見えてきた

真莉は校門を超え自分の教室に向かった

 

教室に入ると授業中だったため当然の事ながら注目を浴びる、注目を浴びても真莉は何も言わずに自分の席に着き教科書を開いた

 

先生「おい古畑〜...先生に何も言わないのか?」

 

先生は何も言わずに席に着いた真莉に問い掛ける

 

真莉「寝坊しました」

 

真莉は一言そう言うと先生は溜息を盛大に吐き授業に取り掛かる

 

先生「はぁ、まぁいい、先ほども言ったが今日は抜き打ちテストをやるぞ、教科は三種、国語、数学、英語だカンニングはするなよ?」

 

先生がそう言うと教室内は非難の声で埋め尽くされた

 

真莉「(テストかよ...めんどくせぇなぁ)」

 

先生からテスト用紙が配られる、そしてみんなに渡ったのを確認すると

 

先生「よし、始めろ!」

 

先生の合図で一斉にスタートする

 

真莉「(これ終わったら残りの授業全部寝るか...)」

 

真莉もテストに取り掛かった

 

 

 

 

学校終了後

 

沙耶「テストなんて聞いてなかったからびっくりしたよ〜」

 

綾夜「お前ら2人は頭良いから良いじゃねぇかよ...」

 

真莉「そうか?俺はそんな事ねぇと思うが」

 

沙耶「僕もそうだよ?」

 

綾夜「学年2位と3位にだけは言われたくねぇんだよ!」

 

綾夜は叫ぶ、綾夜自体も学力は悪くない、しかしそれでもこの2人はそれより高い学力を持つ

真莉は学年3位、沙耶は学年2位の実力だ

 

綾夜「何で真莉はあんまし学校にこねぇのにそんなに出来んだよ!あんまり勉強してるイメージねぇぞ!」

 

真莉「それは遠回しに俺をdisってんのか...まぁ確かに勉強は基本してねぇな」

 

沙耶「え!?そうなの?じゃあどうやって?」

 

真莉「感」

 

真莉の一言で2人は固まる、感だけで学年3位にまで登っているその感の強さに呆れていた

すると後ろから真莉呼ぶ声が聞こえた

 

???「おーい!古畑!」

 

真莉「あ?...里見?」

 

真莉を呼んだのは数日前防衛省であった里見だった

 

蓮太郎「古畑、ちょっとこの後時間良いか?」

 

里見の真剣な表情を見た真莉は沙耶と綾夜に悪いと告げて里見と別ルートに移った

 

蓮太郎「すまないな、友達と帰ってるのに」

 

真莉「別に、それで?話って言うのは蛭子影胤の事か?」

 

蓮太郎「あぁ、お前は何処であいつに会ったんだ?それになんで聖天子様から直接依頼なんて」

 

矢継ぎ早に真莉に説明を求める里見に真莉は両手をあげ押し留める

 

真莉「質問は一つ一つしろよ...焦り過ぎだぞ、もっとゆっくり考えてみろ...さて、先ずは蛭子親子との事か?あの2人に会ったのはついこないだだよ、それこそ防衛省に行く日のちょい前だ、聖天子は知らん、いつの間にか俺の事を調べてあったみたいでな、それで電話が来た」

 

真莉は一つ一つの質問に答えると交差点の向こう側から大きな声が聞こえた

 

???「おぉーい!!れんたろぉぉぉ!!」

 

真莉と里見はその方向を見ると蓮太郎は明らかに疲れるという表情を見せ手で顔を覆った

信号が青になりその子は走ってくる

ツインテールの活発な女の子だった、近くまで来るとその子は里見に抱き着く、抱き着かれた里見は

 

蓮太郎「っば!?延珠!?あぶねぇだろ!ってかなんでここにいんだよ!?」

 

真莉「お前の妹...では無いな、という事はお前のイニシエーターか?」

 

延珠「違うぞ?妾は蓮太郎のふぃあんせだぞ?お主は何者だ?」

 

真莉「お...おう、俺は古畑真莉だ...里見、お前...」

 

蓮太郎「っば!?ちげぇよ!?こいつは藍原延珠!俺のイニシエーターだよ!」

 

真莉「ま、そう言う事にしといてやるよ、そんで?この後は?」

 

蓮太郎「はぁ...確か今日の夜ご飯の材料を買わねぇと行けねぇんだ」

 

真莉「奇遇だな、俺も晩飯の材料を買う予定だった、一緒に行くか?」

 

蓮太郎「あぁ」

 

真莉「藍原だったか?お前も来るだろ?なんかしら買ってやるよ」

 

延珠「本当か!?」

 

真莉「あぁ」

 

延珠は小躍りでも始めるのでは無いかと思うほどのテンションで里見を引っ張っていく

真莉は苦笑しつつそれに着いていった

 

 

商店街に着き色々と回って軽いものを食べながら夕ご飯の買い物を済ませようと品物を探す

 

延珠「(もぐもぐ)ほれふまひぞ!!へんたほう!(これうまいぞ!れんたろう!!)」

 

蓮太郎「口に入れたまま喋るな、何いってんのかわからん...だけど俺まで良かったのか?」

 

真莉「構わねぇよ、別に、俺も小腹が空いてたからな、俺と藍原だけだとそれもちょっとな」

 

3人はコロッケを食べながら商店街を歩いていた

のんびり歩いていると遠くから怒声が聞こえて来た

 

店主「誰かそいつを捕まえろ!!」

 

人波を掻き分け女の子が現れ3人の目の前で止まった

髪はボサボサで衣服は所々破れている、何より周囲から畏怖の目で見られる原因はその赤い目だった、手にはおそらく盗品だろうかパンなどが抱えられている

すると店主が追い付き少女を地面に叩きつける

少女は押さえ付けられ苦しいのかジタバタと暴れる

 

少女「離せ!はなせぇぇぇ!!」

 

店主「この化け物め!人間様の食べ物を勝手に盗みやがって!!」

 

店主の声に反応し周りの連中は大声で罵声を浴びせ始める

少女は助けを求めて延珠に手を伸ばす

延珠も迷ったが手を出し始めた瞬間に里見に止められる

少女はそれを見て絶望したような顔をした

 

店主「っうぉ!?」(ドダン!)

 

店主が急に少女の上から滑り落ちた、少女もそれを見ていた野次馬も蓮太郎達も何が起こったかわかってはいなかった

しかし真莉だけがその場におらずいつ移動したのか店主の前にいた

真莉は地面に横たわっている少女の手を取り少々強引に立たせ衣服に着いた汚れやホコリを払っていく

 

少女を含め一同が唖然としているとこけさせられた店主が怒りの表情を見せ起き上がる

 

店主「テメェ!何邪魔してんだよ!こっちは盗まれてんだぞ!その化け物によ!」

 

店主のその言葉に耳を傾けずに真莉は少女に向き直る

 

真莉「...全く、渡したお金は何処にやったんだ?《アカネ》?もしかして落としたのか?あれだけ気をつけて行けと言っただろ?後でお仕置きだな」

 

真莉の物言いに少女を含め全員が唖然とした

 

真莉「...すみません、うちの《妹》がご迷惑をおかけしました、こちらの品物は全部お返しします、それでも足り無いのなら」

 

真莉はそこまで言うと財布から万札を5枚出して店主に渡した

 

真莉「これでなかった事にしてもらえませんかね?それでも足りなければまた言ってください、聞いた上で考えます」

 

真莉は他に何も言わさずに早口でまくし立てると少女の手を取り蓮太郎と延珠に手招きをして商店街を抜けようと歩き出した

残ったもの達はなにが起こったのか分からずにその場にただ佇んでいた

 

 

真莉宅

 

真莉「まぁ上がって適当に寛いでくれ、ちょっと着替えてくる」

 

商店街から離れ四人は真莉の家に来ていた、少女はあの後なにも言わずに真莉に連行されここに来させられていた

 

数分後真莉は着替え終えリビングに戻ってきた

 

真莉「さて、君は、外周区の子供か?なんであんなところに?」

 

真莉は話しかけるが少女は震えるだけでなにも話さない

 

真莉「ふむ...ちょっと待っててくれるか?」

 

蓮太郎「え?あ、あぁ」

 

未だに状況を理解出来ていない里見に待っててくれと頼んで真莉はリビングから出た

すると数分後に戻ってきた

 

真莉「とりあえず今はこの子をどうするか考える、この子の行きたい場所に行かせるのが俺はベストだと思う」

 

蓮太郎「だがそれだとまたさっきのようになるぞ?さっきはたまたま古畑がなんとか出来たが...」

 

真莉「それを決めるのはこの子だ、今日1日この子は俺が預かる」

 

真莉のその言葉に今まで俯き震えていた少女は顔をバッとあげ真莉を見る

 

真莉「俺は別に呪われた子供たちに対してなんの恨みも憎しみもあるわけじゃない、その点で言えばお前もそうだろ?里見?」

 

蓮太郎「あ、あぁ」

 

真莉「藍原もそうして欲しいみたいだしな」

 

延珠「...本当に頼んで良いのだな!?」

 

延珠は身体を乗り出し真莉に詰め寄る

 

真莉「あぁ、約束しよう...ただ勘違いすんな?《俺が》保護するのは1日だ」

 

そう真莉が言うと延珠は顔を曇らせる

 

真莉「その後を決めるのはこの子だ」

 

真莉は少女の頭にぽんと手を置きなで始める

少女はビクッとした後気持ち良いのか目を細めた

 

するとピンポーンと玄関のチャイムがなる

3人は頭にハテナマークを付け真莉を見る、真莉はやっと来たかと言って来訪者を迎え入れるために玄関へ行く

そして玄関から若干の騒がしさを感じた蓮太郎は嫌な予感がしていた

 

???「ひっさしぶりの真莉さんのお家だー!!」

 

沙耶「亜矢、迷惑になるよ?」

 

そこにいたのは真莉の友達の沙耶とその沙耶に亜矢と呼ばれた女の人だった




第5話です!
もしかしたら時系列めちゃくちゃになるかも知れないっすね...

原作見れば早いんでしょうが...
誤字、脱字、感想があればどうぞ!


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第6話

第6話です!
今回は若干真莉君のチート染みた物が...

クオリティは期待しないでくださいね!!(懇願)


亜矢と呼ばれた少女は真莉に抱き着きながら沙耶に反論する

 

亜矢「む〜!そんなこと言ったって《お兄ちゃん》!お兄ちゃんは学校で会えるけどあたしは会えないんだよ!ズルイ!」

 

蓮太郎「兄妹?」

 

真莉「あぁ、こいつは《希里江亜矢》(きりえあや)、沙耶の妹だ」

 

亜矢「始まして!希里江亜矢です!いつもお兄ちゃんがお世話になってます!」

 

元気な妹、希里江亜矢は深々と若干大げさな会釈をする

 

延珠「ところでなんで来たのだ?」

 

延珠の言うことはもっともなんだろう、何故このタイミングで来たのか他の3人には分からなかった

 

真莉「ちょっと頼みがあってな、ちょうど良かったんだ」

 

蓮太郎「頼み?」

 

真莉は少女に指を指すと

 

真莉「亜矢、こいつを《風呂》に入れてやってくれ、そんで風呂の事全部教えてやってくれ」

 

真莉はお風呂を提案した、それが一番意外だったのか少女は恐ろしいほど早いスピードで顔を上げた

 

延珠「お風呂?」

 

真莉「あぁ、流石にこの状態のままはちょっとな、藍原に頼むって手もあったがまだ藍原も小さいから色々とな、だから亜矢に頼んだんだ」

 

亜矢「ふっふーん!お姉さんに任せなさい!えっと藍原延珠ちゃんだっけ?じゃあ延珠ちゃんだ!延珠ちゃんも一緒入る?」

 

亜矢の提案に目をキラキラと輝かせて保護者的立場の蓮太郎に問う

 

延珠「れんたろう!良いか!?」

 

蓮太郎「いや、さすがに着替えとかないし...」

 

亜矢「蓮太郎先輩!心配には及びませんよ!着替えなら...じゃーん、ここにいっぱいあるので好きなの着れるよ!」

 

亜矢の持っていた袋には着替えがいっぱい入っていた

それを見た真莉は少し反応する

 

真莉「おい、流石に多くねぇか?着せ替え人形にでもする気かお前は」

 

真莉の疑問も最もで袋の中の服は2、3着では無く10着以上はある

 

沙耶「ごめん、真莉、止められなかった...」

 

真莉「...はあ、まぁいい、頼んだぞ?亜矢」

 

亜矢「はーい!任せてください!さぁ!行こ!延珠ちゃんと!...えぇ〜〜っと...」

 

亜矢がそこで止まる、名前が分からなくてなんて呼べばいいのか分からないようだ

 

真莉「そういや名前を聞いてなかったな...あん時は適当な名前を言っちまったが...なんて名前なんだ?」

 

真莉は名前を聞くと少女はまた俯き暗い顔をしてしまった

 

少女「...名前...分からない」

 

少女の言葉に一同驚いていた、流石の真莉もまさか名前が分からないとは思わなかったようで真莉も少なくとも驚いていた

 

少女「...ママは...私の事化け物としか呼ばなかったから...」

 

少女は震えていた、その時の事を思い出しているんだろう

すると真莉は少女の頭に手をポンと置きなで始めた

少女はビクッとしてなすがままになる

 

真莉「それじゃお前は《アカネ》でいいな、ここにいる間はアカネって呼んだら返事してくれ、気に入らなければ言ってくれれば別の呼びやすい名前を考える、遠慮はすんなよ?自分の家だと思ってくつろげ、お前や藍原見たいな子供は迷惑かけてナンボなんだしな」

 

真莉のそのセリフがきっかけだったのか少女...アカネは涙を流し始め次第に大きく声を上げ真莉に縋り付くように抱き着き泣き始めた

 

沙耶「やっぱりまだそういう親っているんだね...まだ僕たちには分からないや」

 

蓮太郎「それも含めて難しい問題になってるんだろ」

 

延珠「......」

 

亜矢「だよね...みんながみんなあたし達みたいに考えられないからね...」

 

数分後、ようやく泣き止んだアカネは恥ずかしそうに俯いていた

 

亜矢「良し!それじゃ延珠ちゃんとアカネちゃん!一緒にお風呂に〜!」

 

延珠「レッツゴー!!」

 

アカネ「お、おー...」

 

亜矢の言葉に延珠はノリノリで、アカネはオドオドしながらお風呂場に直行した

 

蓮太郎「それで俺たちはどうするんだ?」

 

真莉「里見、お前料理は出来るか?」

 

蓮太郎「あぁ、一様料理は俺が作ってる」

 

真莉「俺んとこの食材だけじゃこの人数は無理だから俺は材料の買い出しに行ってくる、里見の沙耶は料理の下準備しといてくれ、どうせあいつらは着せ替えしててしばらくは来ないだろうしな」

 

真莉は溜息を吐く

 

沙耶「あはは、亜矢はそういうの好きだからね〜...でも買い物一人で平気?重いと思うんだけど?」

 

真莉「俺だぞ?」

 

沙耶「あはは、そうだね、じゃあ大丈夫だ!」

 

真莉「そんじゃ行ってくる、里見、頼んだぞ?」

 

蓮太郎「わかった、ここは任せとけ」

 

沙耶「いってらっしゃーい!」

 

真莉「亜矢!ちょっと買いもんに行ってくる!上がったらリビングで待っててくれよ!」

 

はーーい!!

 

真莉はその言葉を聞くと外に出た、少し日が落ちて月が出始めていた

 

真莉「少々急ぐかな...」

 

真莉はそう言うと膝を折り曲げ力を入れる、その瞬間その場に真莉の姿は無く静寂だけが残されていた

 

 

スーパー

 

真莉は普通に歩いて行くと10数分で着くところをものの数分でスーパーに到着していた

道路を歩かず屋根伝いに走ったのでほぼ直線で済んだからである

 

真莉「さて、何にするかな...定番どころではカレーだが...あ、挽肉が安いな、これは買いだな...ん?」

 

カランカランと音がし始めた、その瞬間スーパー内の買い物客が一斉に動く、タイムセールの開始である

タイムセール時の奥様方は強力でそれこそガストレアと戦うより大変かもしれない

とは言ったものの真莉には奥様方のパワーは関係無く

 

真莉「よっと」

 

奥様方のほんの少しの隙間に体を収めなんの抵抗もなしにタイムセール品のものを次々ととって行く

 

真莉「あとはカレールーだな...」

 

真莉の買い物はもう少し続く...

 

 

 

買い物が終わり両手に買い物袋を持ち帰り道を歩いていると

 

真莉「...」

 

真莉が何かに気づき立ち止まる、辺りを見渡すが何もいない、真莉はそのまま進む

外は暗くなり始める、真莉は公園まで来た

公園に着いた瞬間に背後から銃撃音と地面を蹴る音が聞こえた

真莉は銃弾を飛んで躱す、それを待っていたかのように上空から二本の刀が振り下ろされる

 

真莉は両手の荷物を空中に放り投げ迫る刀の《刃》の部分を《蹴って》襲撃者を弾く

地面に着地し空中に放り投げた荷物をキャッチする

 

真莉「おいおい、卵が割れたらどうすんだ、あぶねぇなぁ」

 

真莉は平然として言う、襲撃者...蛭子親子は悠然と立つ

 

小比奈「...パパァ...真莉おかしい、刃を蹴って切れないよ?」

 

影胤「ヒヒヒ、流石に予想外だったね、まさか小比奈のバラニウム刀で切れないとは、実力かそれとも...」

 

真莉「俺は《化け物》だぞ?一般論なんざ通用しねぇっての、用事がそれだけで気が済んだんなら帰れ、こっちは色々と待たせてんだから、飯も作らにゃならん」

 

真莉の言葉に納得いったという感じで頷く影胤、しかし納得できない様子の小比奈は食いかかる

 

小比奈「パパ!切っていい?首だけにしていい?」

 

少し興奮している様子の小比奈に影胤はいう

 

影胤「ダメだよ、愚かな娘よ、今日は話があって来たのだから」

 

真莉はすぐに突っ込む

 

真莉「お前矛盾って言葉知ってるか?お前真っ先に撃ってきただろ...」

 

真莉は呆れた表情でそう言う、すると影胤は何が可笑しかったのか笑い始めた

 

影胤「ヒヒヒ、すまないね、あのままでは止まってくれないのではないかと思ってねぇ」

 

真莉「お前らには気付いてた、いつ来るかと思ったが来なかったからな、人目が少ないこの公園にしただけだ...それで?何の用だ」

 

真莉はダルそうなのを抑えずに影胤に問う

 

影胤「ふむ、単刀直入に言う我々の仲間になれ古畑真莉君」

 

真莉「普通にヤだけど」

 

影胤「君は東京エリアの在り方が間違っていると、そう思ったことはないかね?」

 

真莉「俺からすりゃお前ら全員...いや、俺も含めて間違ってんだよ、俺は誰の仲間にもならん、他を当たるんだな」

 

影胤の問い掛けに答える真莉

少々空気が固まる、すると影胤は笑い出す

 

影胤「ヒヒヒヒヒ、そう言うと思っていたよ...なら交渉は失敗だね、小比奈、切っていいよ」

 

影胤が小比奈に言った瞬間に小比奈は嬉々として答える

 

小比奈「はい!パパ!」

 

小比奈は二本のバラニウム刀を構え真莉に向かって突撃する

ッスカ

小比奈の刀は空を切った、先程までいたはずの真莉がおらず小比奈は辺りを見渡す

 

真莉「悪いな、そう言うことなら俺は帰るぞ、空腹にさせてる奴らを待たせてるんでな、これ以上遅くなると面倒だし...安心しろよ、今度会った時はちゃんと相手してやるからよ...そんじゃな」

 

真莉はそう言うとその場から跳躍し暗闇に消えていった、蛭子親子をその場に残し真莉はみんなが待っているであろう家に猛スピードで帰っていった

 

 

 

小比奈「む〜〜〜〜!!」

 

小比奈は相手にしてもらえなかったことに怒り地団駄を踏む

影胤は冷静に状況を把握していた

 

影胤「(小比奈の刀を見ずに交わし私が反応できないスピードを有するか...自分で化け物と言うだけのことはある...彼とやりあうなら覚悟を決めなければならないかもしれないね...)小比奈、次に行くよ」

 

小比奈「次は絶対に切る!」

 

蛭子親子はその場から消える、残ったのは銃痕と何かが抉れた後だけだった

 

 

 

 

家に着き鍵を開ける

ガチャリと扉を開けると中から影が飛び出して真莉のお腹に突撃してくる

 

ドスン!

 

真莉「ごは!?っつぅ...亜矢...いてぇよ」

 

飛び出してきたのは亜矢だった

身長は150台と少々小柄なだけに鳩尾に入ったのだ

 

亜矢「遅いよ!?大丈夫でした!?怪我とかありませんか!?」

 

亜矢は興奮を抑え切れずに真理に問い詰める

 

真莉「怪我なんてねぇから揺らすななななな」

 

首をガックンガックン揺らされ大変なことになっていると亜矢の兄、沙耶と蓮太郎が出てくる

 

沙耶「止めなよ亜矢、真莉倒れちゃうよ?」

 

蓮太郎「遅かったな?何かあったのか?」

 

沙耶は亜矢を止め蓮太郎は心配そうに問いかける

 

真莉「特に何もないさ、ちょっと面倒ごとがあっただけだ、気にしなくて良い...ところでアカネは?」

 

亜矢が退いた瞬間だった、亜矢が退いた隙間からまたしても影が飛び出してくる

さっき揺さぶられたばかりだった真莉は避けられずまた食らう

 

ドスン!

 

真莉「ぐほ!?二度目...かよ...アカネか?随分と見違えたぞ」

 

飛び出してきたのはボサボサだった黒髪をゴムで結びポニーテールにしてワンピースを来たアカネだった

アカネは真莉にしがみ付き震える

 

真莉「(どしたん?これ?)」

 

沙耶「(真莉がいつまでも帰って来ないから心配だったんじゃないかな?すっごいそわそわしてたし)」

 

真莉は沙耶にアイコンタクトで会話し状況を理解した

するとしがみ付いていたアカネは離れて真莉を見上げながら

 

アカネ「一人にしないで...」

 

その言葉を聞いた真莉は目を見開いた

そして頭に手を置き撫でる

 

真莉「...悪かったな、次からは気をつけよう」

 

アカネ「...うん...ん?(クンクン)」

 

アカネは何かを感じ取ったのか真莉の脛辺りの匂いを嗅ぎ始めた

 

真莉「アカネ?」

 

アカネ「...怪我してる」

 

アカネの一言で亜矢がまた暴走し始めた

まだ晩御飯にするのは先になりそうで真莉は深い溜息をついた

 




少々強引ですかね〜
正直アニメでも頭を撃たれたあの子の容姿が思い出せずに書いていたためなんか知らないですが赤髪の子だったよなぁなんて思ってアカネにしてしまいましたが...

あの子黒髪でしたね、ググれって話でしたorz

でもまぁこのまま行きます、だってあの子可愛いし...


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第7話

話を早く進めろよって話っすよね...
なんか書きたいこと書いてたら未だに感染源に辿り着いてないし...

ま、いっか!
今回も少し長いかもです!どうぞよろしくお願いします!

お気に入りして頂いた方々、本当に有難うございます!やる気が満ち溢れて来ました!


騒がしい晩御飯が終わり蓮太郎、延珠、沙耶と亜矢は帰るため玄関にいた

 

沙耶「それじゃあ長いことお邪魔しました」

 

亜矢「また来ます!アカネちゃんもまたね!」

 

アカネ「う、うん」

 

延珠「アカネ!次は妾のおすすめの天誅ガールズを一緒に見ようではないか!」

 

アカネ「うん!楽しみにしてるね延珠!」

 

アカネと延珠は大分仲良くなった

延珠の話によると延珠が蓮太郎と会う前...IISOに行く前に第39区に住んでいた時に話はしなかったようだが会ったことがあると言う

アカネはその時から気にはなっていた様だ

 

蓮太郎「古畑、アカネの件どうするつもりだ?IISOに引き渡すのか?」

 

真莉「知らん、それを決めるのはアカネだ、俺はあの子が決めた事に従うさ、ここにいたいというならここに住まわせる、まぁなんとかなんだろ」

 

真莉の言葉に蓮太郎は何かを考える仕草をしたがすぐに話した

 

蓮太郎「世の中お前みたいな考えのやつばかりだったらいいのにな」

 

真莉「っは、俺の考えをしてる奴らがいたらそれこそめんどくせぇ事になんぞ、俺の面倒くささは流石にお前も知ってんだろ?」

 

蓮太郎「はは、確かにな...以外と喋れるんだなお前」

 

真莉「お前は俺をなんだと...まぁいい、とにかく今日はお開きだ、気を付けて帰れよ?」

 

真莉の一言で全員が解散する、しかし古畑家はまだしばらく眠らない

 

 

 

 

蓮太郎と延珠は希里江兄妹を家まで送り真っ暗な道を二人して歩く

すると延珠が焦った様に言う

 

延珠「大変だ!蓮太郎!真莉から貰った色々入ったタッパーを忘れた!」

 

蓮太郎「それじゃあ戻るか?」

 

延珠「いや、妾だけで大丈夫だ!蓮太郎は先に戻っててくれ!」

 

延珠はそう言った後凄いスピードで走って行く

 

蓮太郎「あいつちょっと解放してねぇか?...まぁ良いか」

 

蓮太郎と延珠が分かれて数分

蓮太郎は路地付近を歩いていた

 

蓮太郎「はぁ、なんであいつは金をあんなに持ってるんだ?バイトしてるわけではないだろうし民警でも無い...分からん...っ!?」(ッバ!)

 

蓮太郎は不満を独り言で呟いていたが急に自分の腰にある拳銃を引き抜き路地の方に向ける

どうタイミングで自分の方にも拳銃が向けられる

蓮太郎は自分に向けられた殺気に気づき反応したのだ

暗闇から現れたのは蛭子影胤

 

蓮太郎「お前!?」

 

影胤「やあ、里見君...銃を下ろしてくれないかね?」

 

蓮太郎「断る!」

 

影胤「だろうね...小比奈、右腕を斬り落とせ」

 

小比奈「はい、パパ」

 

影胤はそう言うと暗闇から影胤の娘、小比奈が出てくる、小比奈は既に二本の刀を抜刀しており言われた通り右腕を斬り落とすべく蓮太郎の元へ走る

 

ガギィィン!

 

小比奈の刀は蓮太郎に届かず乱入者に弾かれる

 

小比奈「...斬れなかった」

 

乱入者は延珠だった

 

延珠「...蹴れなかった」

 

蓮太郎「延珠!」

 

影胤「今日は君に話があって来たんだ」

 

蓮太郎「話...だと?」

 

影胤「わたしの仲間にならないか?何故だか君の事が好きになってしまってね」

 

蓮太郎「っ!?なん...だと」

 

影胤「君はこの東京エリアの在り方が間違っていると一度も思った事は無いかね?」

 

影胤は続ける

 

影胤「君は延珠ちゃんを普通の子供のふりをさせて学校に通わせてるそうだね。なぜそんなことをする? 彼女達はホモサピエンスを越えた次世代の人類だよ。大絶滅の後、生き残るのは我々力のあるもの達だけだ、君がいくらヤツらに奉仕したところで、ヤツらは君を何度でも裏切るぞ?」

 

すると影胤はアタッシュケースを出し開ける

そこにはかなりの額の大金が入っていた

 

影胤「私に着けばこれだけでは無いがとりあえず最低これは君の物になる、私のバックにはデカイものが着いているからね、どうだい?君にとっても破格の条件では無いかい?」

 

影胤の言葉に蓮太郎は言葉ではなく行動で示した

 

ドン!ドン!ドン!

 

影胤「...それが答えかい?」

 

影胤の言葉に蓮太郎は睨むだけだった

 

影胤「そうか...君にもフられてしまったね...」

 

影胤のその言葉に蓮太郎は反応した

 

蓮太郎「他にも誰かに声をかけたってのか」

 

影胤「あぁ、古畑君に声を掛けたんだが古畑君にもフられてしまってね、残念だよ」

 

蓮太郎「な!?古畑にも会っていたのか!」

 

影胤「おや、彼は言わなかったのかい?心配をかけたくなかったのかな?」

 

???「んなわけねぇだろ、話す必要が無かったから話さなかっただけだ」

 

第三者の声にその場にいた四人は驚愕した

 

影胤「おや、まさかすぐに会えるとは思わなかったね」

 

蓮太郎「っ!?真莉!」

 

延珠「真莉!来てくれたのか!」

 

小比奈「パパ!真莉だよ!真莉!斬っていいよね!」

 

小比奈が興奮して影胤に問う、しかし影胤は首を振って否定する

 

影胤「今はその時じゃ無いよ我が娘よ」

 

小比奈「む〜〜!」

 

影胤「さて、何しに来たのかな?古畑君?」

 

真莉「そこのおバカ達が忘れ物をしていたからなぁ、それを届けに来たんだよ、届けたからさっさと帰って良いか?新しい住人が待ってるんでな」

 

相変わらずの真莉の物言いに影胤は笑いだす

 

影胤「ヒヒヒ、まぁ良い、水入りだ」

 

遠くからパトカーのサイレンが聞こえる、恐らく先程までの戦いの音を聞いた者が通報したのだろう

 

影胤「こう言うやり口は好きでは無いのだがね、明日学校に行ってみると良い、君たちも良い加減に現実をみると良い」

 

影胤は踵を返して去ろうとする、すると小比奈は振り返り延珠に問うた

 

小比奈「そこのちっちゃいの、名前教えて!」

 

小比奈の言葉に納得出来ずぴょんぴょんと跳ねながら異論を唱える延珠

 

延珠「お主だってちっちゃいだろ!無礼だな!妾は藍原延珠、モデル・ラビットのイニシエーターだ!」

 

小比奈は下を向いてぶつぶつと呟いている

 

小比奈「延珠、延珠、延珠...覚えた、私はモデル・マンティス、蛭子小比奈、接近戦では私は無敵...次は首だけにする」

 

小比奈はそう言うと影胤の後を追った

 

蓮太郎「...助かったぜ真莉」

 

真莉「まさかこんなところで戦ってるとはな、さて、あの変態仮面が妙な事言ってたが...まぁ気にする必要も無いか、俺は帰るぞ、さすがに送らなくても良いだろ?蓮太郎?」

 

蓮太郎「あぁ、サンキュー、また明日な」

 

真莉「延珠、ほらこれ、もう忘れてくなよ?」

 

延珠「助かったぞ!真莉!バイバイ!」

 

3人はそこで分かれた

家に着いた真莉はふと立ち止まった

 

真莉「...確か俺の布団はリビングに出してアカネは俺の部屋で寝かせるつもりだったんだがな...なんでこの子はここにいんの?」

 

真莉は気を利かせてベッドのある自分の部屋にあの後直ぐに疲れていたのか眠ってしまったアカネを連れて行きリビングに戻った時に机の上のタッパーに気付き面倒くさがりながら出たのだった

 

しかし今自分の部屋にいるはずのアカネは目の前の布団に寝ている

 

真莉「...1人にしないで...か」

 

真莉はそう呟きリビングの布団で寝る事にした、アカネを少々横に退け間に自分も入る

するとアカネの手が真莉の服を掴む

ギュッと力強く掴まれた手を真莉は解く事なく受け入れそのまま瞼を閉じ襲ってきた睡魔に身を委ねた

 

 

 

 

翌日

リビングで寝た為か朝日がいつもより眩しく感じ真莉は目を覚ました

寝起きで働かない頭を何とか動かし洗面所で顔を洗おうと起き上がろうとすると何かに遮られた

 

その方を見ると未だに寝てるアカネが服を掴んで離さないでいた

普通の人間より遥かに高い身体能力を有する呪われた子供たち故に寝ていてもかなりの力で掴んでいる、流石にこれでは何も出来ないので真莉はアカネを起こす事にした

 

真莉「アカネ、起きてくれ、動けない」

 

真莉はアカネを揺すり起こす、すると思いの外早くアカネは起床した

 

アカネ「ん...おは、よう?」

 

アカネは寝起きで完全に頭が回っていない

 

真莉「おう、おはよう、ご飯作るからとりあえず顔を洗いに行くぞ?」

 

アカネ「ん...」

 

 

顔を洗いアカネと真莉は完全に目を覚ました

そして真莉の作った朝食を食べる

意外と時間はあまり経ってなくまだ7時になったばかりであった

いつもの待ち合わせは7時50分、着替えもすみ後は時間が経つのを待つだけだった

するとアカネが真莉に話し掛ける

 

アカネ「あ、あの...いい?」

 

真莉「(ズズズ...)ん?どした?」

 

アカネ「えっと...あたしはどうしたら...」

 

真莉「あ〜...アカネがどうしたいか、だな」

 

アカネ「あたしがどうしたいか?」

 

真莉「あぁ、俺が決める気は無い、アカネが決めるといい...俺はとりあえず面倒いが学校に行ってくる、ここにいるのも良いし何処かに行くのも良い、一様お金はテーブルに置いておく、もう盗みをしないようにな」

 

アカネ「...あたしは...ここにいても良いんですか?」

 

真莉「構わない、どうせ独り身にしては無駄に広過ぎる家だ、1人増えたところで何も変わらんさ」

 

アカネはそれを聞きまた涙を流し真莉に抱き着く

 

真莉「おいおい...これから学校なんだが...まぁ良いか」

 

数分後ちょうど良い時間になったので真莉は家を出る為玄関にいた

 

真莉「そんじゃ行ってくるが何かあればそこの家の電話に電話するから取ってくれ、この電話は俺以外からは掛かってくることはない、安心して取ってくれ」

 

アカネ「うん!」

 

真莉「良し、それじゃあ行ってくるな?」

 

アカネ「真莉!」

 

真莉「ん?」

 

アカネ「行ってらっしゃい!」

 

アカネは万遍の笑みを浮かべて真莉に言った、真莉もつられて笑みを浮かべて返す

 

真莉「(ッフ)おう、行ってくる」

 

扉を閉め中から鍵が閉められたのを確認し真莉は待ち合わせ場所に向かった

 

 

 

真莉が先に待ち合わせ場所にいたので沙耶と綾夜は大層驚いていた

二人して何があったんだお前などいろいろと言われた

 

そんな話をしながら歩いていると学校が見えて来た、校門をくぐり外履から上履きに履き替えようと下駄箱に向かおうとした時ふと違和感に気付く

 

真莉「(見られてるな...そんなに俺がこの時間にいるのは予想外か?...いや、この視線は...恐怖、それと畏怖の視線か?)」

 

真莉が考え事をしていると何処からか紙が飛ばされて来た、それを綾夜がキャッチし見てみると綾夜は驚愕の表情を浮かべ大声を張り上げた

 

綾夜「っな!?何だよこりゃ!!」

 

沙耶「ど、どうしたの?」

 

真莉「綾夜?どした?」

 

沙耶と真莉も綾夜の手に持つ紙を覗き見た

すると沙耶も明らかに驚愕の表情を浮かべて驚き流石に少々予想外だったのか真莉も他人でも分かる位に驚いていた

 

沙耶「そんな!?どうして!?」

 

真莉「(あんにゃろ...)変態仮面め...そういうことかよ」

 

明日学校に行ってみると良い、君たちも良い加減に現実をみると良い

 

昨日の影胤の言葉を思い出し溜息を盛大に吐いた真莉

その手に持つ紙にはある写真が付けられていた

それは...真莉がモデル・スパイダーのガストレアと戦ってる写真

それだけなら民警だと誤魔化すことはできる、しかし誤魔化せない物まで写っている

 

真莉の隠しているバレてはならないもの、炎のように赤い髪と...赤熟した赤き目の写真がでかでかと貼られていた




次回辺りからオリ主の真莉君がちょっと無双するかも知れないです
そして彼の能力が明らかに?

誤字、脱字の報告等お待ちしておりますね!


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第8話

第8話です!
正直真莉くんのスペックやり過ぎ感否めないですがまぁ自分が良ければよしとします...
戦闘はやはり苦手ですね...なんと言いますか自分の書き方が悪いんですか疾走感があまり...まぁいずれ頑張りますよ!


学校内...それも特に教室内は異様な雰囲気に晒されていた

その中心にいるのは先程ある秘密が露見したばかりの真莉だった

 

しかし真莉は多少よ動揺はあっても慌てる事は無く教室に到着しイヤホンをつけ音楽を聴きながら寝る体制に入った

 

急に寝る体制に入った真莉を見たクラスメイトたちは更に唖然とする

そこで動いたのは行動力のある星染聖也だった

 

聖也「古畑くん、ちょっと良いかな?」

 

真莉話し掛けた瞬間に周りの取り巻きたちは星染を止めるために騒ぎ立てる

やれこんな化け物に話す必要は無いだの聖也くんも化け物の仲間内にされるだの言っている

 

しかし星染はその言葉に聞く耳持たず真莉に話し掛ける

すると流石にうるさかったのか真莉が、目を覚ましイヤホンを外し星染に向き直る

 

真莉「何の用だ?」

 

聖也「分かってるだろう?噂の真相だよ」

 

真莉「言ってどうする?俺はそんな事していない、何かの間違いだ、とでも言えばお前らは信じるか?」

 

聖也「それは...」

 

真莉の言葉に言葉を詰まらせる聖也、真莉は当然の如く続ける

 

真莉「お前らはもとより俺の事なんざ信じても無かったろうが、さっきまでの罵声等が証拠だ、まぁ別に俺はお前らの事なんとも思ってねぇから気にはしねぇがな」

 

真莉の傍若無人な態度に教室内の生徒が全員罵声や怒声を浴びせ始める

真莉はそれに耳を貸さず窓側の席に座って今にも爆発しそうな沙耶の元へ向かった

 

真莉「沙耶」

 

沙耶「真莉?なに?今僕すっごいムカついてるんだけど...(ボソ)」

 

沙耶の内情を示すかのように外は雨が降り始めた

 

真莉「...降ってきたな」

 

沙耶「ん?そうだね」

 

真莉は沙耶に更に近づき耳元でかなり小さな声で沙耶にお願いをした

 

真莉「沙耶、もし俺が帰って来なかったらアカネの事宜しく頼めるか?」

 

真莉のそのセリフに沙耶は立ち上がり驚愕の顔をする

 

沙耶「え!?真莉!?どうしたの!?」

 

沙耶の急な豹変に教室内は騒然とした

普段温厚な性格な沙耶の豹変はそれだけ驚愕のものだったのだろう

すると真莉は窓を開け放った、そして上から轟音が鳴り響く

轟音の正体はヘリコプターだった

 

先ほど寝たふりをしてイヤホンを付けていたのは携帯からの電話を取っていたのだ、電話の相手は東京エリアの当事者の聖天子だった

 

真莉《何の用だ?》

 

聖天子《こんな時間にすいません、感染源のガストレアが見つかりました、ヘリコプターを手配しましたのでそれに乗って現場まで行ってもらえませんか?》

 

真莉《随分と早くに見つかったんだな...分かった、すぐに向かう》

 

聖天子《申し訳ありません、お願いします》

 

 

 

真莉は少し思考をした後また沙耶に向き直った

 

真莉「沙耶、悪いな、これから仕事だ...ちっと今までよりもめんどくさくなりそうでな、頼めないか?」

 

沙耶「...真莉はいつもそうだよ、僕たちには何にも教えてくれないんだ...絶対にヤダ、それくらい自分でやってよ」

 

沙耶は怒りながらそう言った、真莉は少し唖然としやがてクスリと笑う

 

真莉「ッフフ、じゃあ戻ってこねぇといけねぇなぁ...」

 

2人だけの会話になっていたが星染が話し掛ける

 

聖也「古畑くん!なんなんだよこれは!?」

 

真莉「言う必要はない、待たせんのもあれだし悪いが行かせてもらう」

 

聖也「っ!待ってくれ!」

 

聖也はそう言うが真莉のある変化に目を見開いた

 

彼の黒髪は真っ赤な炎のように赤く染まっていた

そして振り向いたその目は本来の黒ではなく真紅の炎のように真っ赤だった

それはまさに呪われた子供たちと同じ赤い目だった

それを見たクラスメイトは皆驚愕した表情を浮かべた

 

真莉「これがテメェらに対する答えだ、分かったろ?俺の事なんざ気にすんなってよ...じゃあな」

 

真莉はそう言うと教室の窓から飛び降りた

 

沙耶「真莉!気をつけてね!!」

 

沙耶の言葉に真莉は振り向かずに手を挙げた、それを見て沙耶は満足そうに頷いた

 

その後沙耶はクラス中の人々が沙耶に詰め寄って質問攻めにされたそうだ

 

 

 

 

所変わってヘリの中である

既に彼の髪と目はいつもの黒に戻っていた

クラスメイトに説明が面倒で赤髪赤目になっただけだった

 

雨が更に振り、豪雨と言ってもいいような雨になってきた

すると操縦士が真莉に問う

 

操縦士「古畑さん!そろそろ目的地なのですがこうも視界が悪いと降りる場所を見つけるのがこんなんなんです!もう少しさきでもいいですか!?」

 

操縦士は当たり前のことを言う、しかし真莉は

 

真莉「いや、ここで大丈夫、ありがと!」

 

操縦士「は?」

 

ガゴン!!

 

真莉はそう言うとヘリコプターのトビラを開け放った

かなりの強風と雨が横殴りに真莉に襲いかかる

しかしそんなものは意にも返さないとばかりに真莉は下を覗く

 

真莉「俺が飛び降りたらそのまま離脱してくれて構わない!後の事は俺一人で十分だ、ここまで運んでくれてサンキュー!」

 

操縦士「っな!?命綱なしで!?無茶です!」

 

操縦士がそういった直後、真莉は飛び降りる

飛び降りた瞬間真莉は赤髪赤目になっていた、地面まであっという間に落下していく

すると真莉は地面に向かって拳を振り抜いた

 

真莉「ッォォォッラァァァ!!」

 

ドッゴォォン!!

 

轟音と共に泥や石が辺りに吹き飛ぶ、真莉は無傷で立っていた

 

真莉「ふう、なかなか経験する事はねぇな、紐なしバンジーは」

 

真莉が冗談を言って警戒を始めると不意に後ろから衝撃を食らった

衝撃と言ってもそこまで大きな衝撃でもなく殺気も無かったので避けなかった

 

真莉は首だけ後ろに向け衝突してきたのを確認する、すると見覚えのあるツインテールが視界に写った

 

真莉「延珠か?蓮太郎はどうした?」

 

ぶつかって来たのは里見蓮太郎のイニシエーター、藍原延珠だった

真莉は延珠に問いかけるが違和感に気付く

延珠が震えているのだ

すると延珠は涙でぐしゃぐしゃにした顔を真莉に向け大声で叫んだ

 

延珠「真莉!お願いだ!蓮太郎を助けて!このままじゃ...蓮太郎が...」

 

延珠の言葉に状況を瞬時に理解した真莉は延珠の頭に手を当て指示を出す

 

真莉「延珠、この先に医療班が待機してる、そこに行って治療の用意をして貰ってくれ」

 

延珠は泣き止み大きく頷く

真莉は頷いたのを確認すると手を退ける

 

延珠「真莉...蓮太郎を...お願いだ!」

 

真莉「任せとけ、蓮太郎は数少ない俺の友達なんだ、悪いようにはしねぇよ」

 

真莉の言葉に延珠は花が咲いたような笑みを浮かべた、そして走り出した

そして真莉は延珠が来た方を向き友達を助ける為に走り出す

 

しばらく走ると雨の音の中に銃声が聞こえた

そしてようやく見えた先には影胤に追い詰められている蓮太郎の姿があった

 

真莉「(っち、マズイか...しゃあない!)」

 

 

間に合わないと思った真莉は目を瞑った

すると髪の色が根元から変わり始め毛先から赤くなっていく、全部の髪が真っ赤に変わる頃目を開き全力で拳を握り振り抜く

 

真莉「オッッラァァァ!!」

 

ゴッ!

 

空気が振動する、真莉は拳圧を飛ばした

その攻撃にいち早く気が付いた影胤は焦りもせず冷静に対処した

 

影胤「《イマジナリーギミック》!」

 

影胤の周辺に青白い膜が出来、真莉の飛ばした拳圧を防ぐ

影胤は飛んできた方向に目を向ける、しかしそこには誰もいない

すると《真下》から声が聞こえた

 

真莉「よう、余所見とは随分と余裕じゃねぇか?」

 

影胤「っな!?」

 

さすがの影胤もそれには焦りの雰囲気を醸し出した

真莉はそんなの御構い無しと拳を放つ

影胤はも先程の技よりも強力な奴を使う

 

真莉「《剛掌断》(ごうしょうだん)!」

 

影胤「《マキシマム・ペイン》!」

 

2つの力がぶつかり辺りに衝撃が巻き起こる

先に飛ばされたのは...影胤だった

 

影胤「っぬぅ!?」ズザザザ!

 

影胤「マキシマム・ペインで吹き飛ばせなかっただと...小比奈!」

 

影胤は流石に飛ばされるとは思ってなかったのか驚愕と言った雰囲気を醸し出し小比奈を呼んだ、それだけで小比奈は何をするのか分かったようで

 

小比奈「はい!パパ!...やっと斬れるね!!真莉!!」ッドン!

 

真莉「だから俺はイニシエーターとあんまり戦いたくねぇんだけど...」

 

小比奈は二本の小太刀を構え地面を蹴り真莉に近づく

小比奈の射程圏内に入ると迷わずに首に向かって小太刀を振るうが

その小太刀は空振りした

 

小比奈「あれ?いなくなった?」

 

小比奈は真莉を探すがいない、すると影胤が叫ぶ

 

影胤「上だ!愚かな娘よ!」

 

影胤の声に瞬時に上を向く、あの一瞬で上に跳んだ真莉は空中で回転しカカト落としを放つ

 

真莉「《空牙》(くうが)!」

 

小比奈は避けられないと判断したのか小太刀て受け止めようとするがその前に衝突する物があった

 

影胤「ダメだよ、愚かな娘よ、あのままやっていたら小太刀が壊れていた」

 

小比奈「ごめんなさい、パパ...」

 

影胤のイマジナリーギミックが真莉を吹き飛ばした

真莉は蓮太郎の前で着地し蓮太郎に話し掛ける

 

真莉「よう、無事で何よりだ、蓮太郎」

 

蓮太郎「無事?ッはこれが無事とは言えない...かな」

 

真莉「いや、生きていればそれは無事なんだよ、よく覚えとけ」

 

蓮太郎「あぁ...ところで...ッグ...」

 

蓮太郎が何かを言おうとしたがお腹からの出血があったため碌に話せない

それを見た真莉は

 

真莉「...それが七星の遺産って奴だな?」

 

影胤「そうだよ、東京エリアに大絶滅を引き起こすね」

 

真莉「そ、そんじゃさっさとそれ持ってって俺の前から消えろ」

 

真莉の言葉に蓮太郎は驚愕した

 

蓮太郎「っな!?真莉!」

 

真莉「だまってろ、お前流石に死ぬぞ」

 

影胤「ヒヒヒ、良いのかい?」

 

真莉「別に、どうせお前らじゃ無理だしな」

 

影胤「どういうことだい?」

 

真莉は挑発とも取れる言葉を言う

 

真莉「別にここでお前らと最後までやりあっても良いがそうすると蓮太郎は死ぬかもしれねぇしな、こいつのイニシエーターに助けろって言われたんだ、だったらそんなすぐに取り返せるアタッシュケースより人命を大事にするさ」

 

真莉はそう言うと蓮太郎を背中に乗せる

 

真莉「あぁ、そうそう、お前の相手は最後まで俺じゃない」

 

真莉の言葉に影胤は首をかしげる

 

真莉「お前の相手はこの蓮太郎だ、どうせお前は負ける、もし蓮太郎に、勝ったら俺が相手をしてやるよ」

 

その挑発に影胤は笑い小比奈は気に食わないと言った表情を、見せる

次の瞬間にはもう真莉はそこにはいなかった

 

 

 

ザザザザザザサ!

 

走る、真莉は背に乗せた蓮太郎を医療班が待機してるところまで全力で走る

 

蓮太郎「しん...り...悪い、おれはだいじょうぶ...だからケースを...」

 

真莉「アホタレが、このままだと死ぬって言ってんだ、お前が死ねば延珠はどうなる?もっとよく考えろ」

 

蓮太郎「えん...じゅ...」

 

蓮太郎はそう言うと気を失った

 

真莉「おい!蓮太郎!ッチィ!」

 

真莉は力を解放し更にスピードをあげ医療班待機場に走った




そう言えばこういう書き方って見やすい方なんですかね?
自分はこう書いた方がわかりやすいなと思って書いてはいるんですが...
見にくいと言う方がいらっしゃれば頑張って変えてみます!


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第9話

なんか長くなりました...

書きたい事が多すぎて微妙になったかもしれません

そして案の定話が進んでない...が、頑張る...


 

最初に聞こえて来たのはシャリ、シャリと何かを切る音だった

そして身体は何かに包まれており非常に暖かくて心地良い

次に薬臭い刺激臭が鼻の粘膜を刺す

目蓋の裏からほのかに光を感じる

 

やがて意識が完全に回復する

 

蓮太郎「ッグ...生きてる...のか?」

 

重たい目蓋を開け何度も目を瞬かせる

すると天井がぼんやりと見えてきた、ベッドに寝かされている、蓮太郎はやっとそう理解できた

するとすぐ隣りから薬品の匂いではなくシャンプーの良い匂いがした

 

その蓮太郎を覗き込んできた蓮太郎の上司の天童木更は蓮太郎を眺めていた

 

蓮太郎「...よう、木更さん」

 

蓮太郎の言葉に少し涙を浮かべながら木更は答える

 

木更「お帰りなさい、里見くん」

 

蓮太郎は苦笑して話す

 

蓮太郎「ここは天国かよ?」

 

木更「まだ地獄よおバカ...」

 

木更の言葉に蓮太郎は苦笑を漏らしテーブルを見るとテーブルにはカットされたリンゴが置いてあった

 

蓮太郎「...リンゴ、剥いてくれたんだな」

 

木更「食べる?」

 

木更は袖で涙を拭い蓮太郎に聞く

 

蓮太郎「いや、大丈夫だ、何も食べてないはずなのにお腹が空いてないんだよ...」

 

蓮太郎はダルそうに首を動かし窓に顔を向ける

外は澄んだ夜空が広がっていた

 

蓮太郎「...俺はどれくらい寝てた?」

 

木更「丸1日と3時間くらい、それでも手術は少し厳しかったけどドクターヘリの中で真莉くんが里見くんの応急処置をしててくれたの」

 

蓮太郎「助けられた...な...真莉は?」

 

木更「一旦家に帰ったわ、貴方の無事だと分かったからって」

 

 

 

 

 

木更《古畑くん、本当にありがとう、里見くんを助けてくれて...》

 

真莉《いや、こっちももっと早く到着できれば良かったんだが...悪いな》

 

木更《ううん、君が来てくれなかったら里見くんは...》

 

木更は震えていた

 

真莉《ッフ、仮に俺が行かなくてもあいつは死ななかったろうな、あいつを見てると何でも解決出来そうだ...俺と違ってな(ボソ)》

 

木更《えっと、古畑くん?》

 

真莉《苗字はあんま好きじゃない、普通に真莉で良いぞ》

 

木更《何処に行くの?》

 

真莉《どうせ直ぐに七星の遺産は見つかる、今のままじゃ俺にも覚悟が足りなかった、ちょっと自分を見直してくる、蓮太郎を頼んだぞ?天童社長》

 

真莉の言葉で木更は驚愕した表情を浮かべた、真莉の口から七星の遺産が出るとは思わなかったのだ

 

木更《っまって!真莉くん!もしかして...真莉くんは七星の遺産について知っているの?》

 

真莉《あぁ、最初聞いたときはどっかで聞いたと思っていたんだがな、影胤の言葉の大絶滅を引き起こすって言葉を思い出してな、それでまた考えてみたら、あ、聞いたことあったと思ってな》

 

木更《七星の遺産ってなんなの?》

 

真莉《七星の遺産ってのはな...》

 

 

 

木更「七星の遺産はステージVを呼び出す為の何らかの触媒らしいの、これは真莉くんが帰った後民警を集められて今回の依頼の本当の裏を教えに来たから間違いないわ」

 

蓮太郎は驚愕した

 

蓮太郎「ステージVって世界を滅ぼした11体のガストレア...だよな?」

 

木更「それ以外に何かいる?」

 

蓮太郎「だから大絶滅か...」

 

ガストレアはステージによって大きさや個体能力が異なる

その中でもステージVは大きさも個体能力も桁違いにデカイ、それにバラニウムから発生される磁場の影響も受けない

故にステージVが召喚されてしまえば...

 

蓮太郎「ステージVを擬似的にでも呼び出すのは不可能だ!」

 

木更「それが可能なのよ、私も始め聞いたときは驚いたわ、聖天子一派...と言うよりお偉いさん達が隠していたみたいね」

 

蓮太郎は目蓋を閉じ浮かんできた聖天子と天童菊之丞に舌打ちをした

 

蓮太郎「続けてくれ」

 

蓮太郎は続きを促す

 

木更「民警の代表者達はみんな気丈だったわ、失神もしないしパニックにも陥らない、洗面台に駆け込む人が数人いたぐらいで後は静かだったわ...」

 

蓮太郎は何も発さない

すると木更は

 

木更「延珠ちゃんから聞いたわ。里見くん、貴方蛭子影胤に遭遇したのよね?どうだったの?」

 

蓮太郎は震える

 

蓮太郎「強すぎる、人間業じゃねぇ...」

 

すると扉が開く、蓮太郎と木更がそちらに目を向けるとそこにいたのは真莉とアカネだった

 

真莉「お、起きてたか蓮太郎、無事で何よりだ」

 

アカネ「無事?良かったぁ」

 

真莉とアカネの登場に少しビックリしていた

 

蓮太郎「あぁ、真莉のお陰でな...」

 

蓮太郎は思い出したかのように真莉に問うた

 

蓮太郎「そうだ!真莉!お前あれなんだったんだ?」

 

理解していないアカネと木更は首をかしげる、真莉は面倒くさそうに目を細めたがやがて溜め息を吐き椅子に座った

 

真莉「いつだか言わなかったか?俺は化け物だと」

 

蓮太郎「言ってねぇよ!てか冗談でも自分を化け物呼ばわりするのはやめといたほうが良いぞ」

 

蓮太郎は親切心で言ったのだろうが2人、アカネと木更が絶句しているのを見てもう一度真莉の方を見た、そして蓮太郎もそれを見て絶句した

 

そこにいたのは炎を思わせる程に真っ赤な髪に真っ赤な目になった真莉がいた

 

真莉「これは俺の力の副産物でな、ちっとばかし本気になるとこうなる、前は制御出来なくてな、今は制御できるようになった、この状態だとまぁそうだな...イニシエーターとほぼ同クラスと思ってくれた方が楽だな」

 

真莉はそう言うと元の黒髪黒目に戻った

 

真莉「...そういや延珠は?」

 

真莉の言葉で蓮太郎はやっと延珠がいないことに気がついた

首を振って探すと木更は苦笑しながら言った

 

木更「里見くん、布団の中よ」

 

蓮太郎は驚き布団を捲る、すると気持ち良さそうに眠っている延珠がいた

 

木更「延珠ちゃんは里見くんが起きるのを待っていたのよ、寝ちゃったみたいだけどね」

 

蓮太郎はそれを聞き笑顔を見せ延珠の頭を撫でる

すると延珠は目を覚ました、蓮太郎を見ると万遍の笑みを見せ抱きつく

 

延珠「蓮太郎!良かった!目を覚ましたのだな!」

 

延珠はその後蓮太郎に抱きついたまま真莉とアカネが居ることに驚いたり少々騒がしい病室となった

 

 

騒がしいのも収まり本題に入る

 

真莉「さて、とりあえずどうすれば影胤に勝てるかを考えるか」

 

延珠「真莉なら勝てるのでは無いか?」

 

蓮太郎「そうだよ、お前影胤にあんだけの接近戦をやってたんだから」

 

真莉「まぁ可能だろうな、だが多分俺では本当の意味では勝てない」

 

蓮太郎達は首をかしげる

 

蓮太郎「どうして?」

 

真莉「その前に聞いときたいことがある」

 

蓮太郎「え?」

 

真莉「蓮太郎、天童、お前らは《新人類創造計画》ってのは知ってるな?」

 

真莉の言葉に蓮太郎は驚愕した

 

真莉「とくに蓮太郎、お前はよく知ってるだろ?」

 

蓮太郎「お前...何処でそれを!」

 

真莉「それは内緒だ...さて、なんでこんな話をしたかというとだな、蛭子影胤、あいつはその新人類創造計画の生き残りだ」

 

木更、蓮太郎、延珠は驚く

 

木更「どうして分かるの?」

 

真莉「それも内緒だ...と言いたいところだが流石に教えとかなきゃな、俺はな、バラニウムの磁場を感じることが出来る、あいつとやりあった時あいつからバラニウムの磁場をほんの少しだが感じた、それだけだとどうなんだってところだがちゃんと調べたよ」

 

蓮太郎「じゃあ俺のことも?」

 

真莉「お前をおぶった時にな、まぁ諸々はあの変人の室戸に聞いた、悪いとは思ってるがまぁ今はそれどころじゃ無いからな」

 

そこまで言って真莉は一息付く

すると今まで黙っていたアカネが口を開く

 

アカネ「ねぇ、その新人類創造計画って何なの?」

 

真莉「それはな...」

 

真莉がそう言おうとした瞬間真莉の携帯が鳴る

 

真莉「...悪りぃ、ちょっと待ってくれ」

 

ディスプレイには聖天子の文字、真莉は顔を真剣にさせ電話に出る

その表情を読んだのか蓮太郎も木更もアカネも延珠も真剣な表情になる

 

真莉「もしもし、電話がきたということはそう捉えていいんだな?」

 

相手が聖天子と言えど何時もと同じ口調で話す真莉に蓮太郎と木更は更に驚愕の表情をした

 

真莉「あぁ、あぁ、あ?今は病院だよ、里見の入院しているところだけど...ちょっと待っててくれるか?」

 

真莉はそう言うと携帯を蓮太郎に渡した

 

蓮太郎「え?」

 

蓮太郎は驚愕する

しかし受け取るまでこのままだぞとでも言いたそうな表情をした真莉に蓮太郎は折れた

 

蓮太郎「...もしもし?」

 

聖天子《里見さん、私です》

 

電話からの声はやはり聖天子だった

 

蓮太郎「...今さら何の用だよ?聖天子様」

 

聖天子《里見さん、蛭子影胤追撃作戦が始まります、多数の民警が参加する史上最大規模の作戦です、病み上がりで申し訳ありませんが私はあなたにも参加して欲しいと思っています》

 

聖天子の言葉に蓮太郎は目を閉じ答える

 

蓮太郎「一つ聞きたいことがある、蛭子影胤、あの男は」

 

蓮太郎の言葉を遮り聖天子は答える

 

聖天子《彼は元民警で問題ばかり起こしライセンスは停止処分にされていますが処分時のIP序列134位でした》

 

蓮太郎は驚愕し声を張り上げる

 

蓮太郎「134位!?」

 

木更と延珠は、その言葉でどういう会話か理解し同じく驚愕した

蓮太郎は怒りを隠さずに聖天子に言う

 

蓮太郎「...どうして何も対策を打たなかった!」

 

聖天子《...新人類創造計画は存在し無い計画です、存在し無い兵士は脱走出来ません》

 

蓮太郎は携帯を握りつぶさんとばかりに力を込める

 

蓮太郎「ッ!ふざけんな!何人殺されたと思ってる!全部あんたらのせいだ!どうしてあんたらの尻拭いをさせられなきゃなんねぇ!やってられっか!」

 

蓮太郎は怒りをぶつけるが電話口の聖天子は凛とした声で言う

 

聖天子《里見さん、今あなたが戦わなければもっと多くの人が、あなたの大事な人が死にます、あなたに耐えられますか?》

 

非情とも言える発言に蓮太郎は手で顔を覆い首を振った

 

蓮太郎「なんで俺なんだ...ッ!それこそ真莉でもいいじゃないか!真莉は俺なんかより...いや、それこそ影胤よりも強い!」

 

蓮太郎はそう言うと聖天子は答えた

 

聖天子《その古畑さんからの進言なのです、政府は古畑さんに更なる依頼をしました、しかし古畑さんはそれを断ったのです》

 

蓮太郎「ッ!?真莉!なんで断った!」

 

蓮太郎の矛先は真莉に向かう

 

真莉「理由は諸々あるが一番の理由は俺は民警じゃ無い、それだけだ」

 

真莉のセリフに唖然とする一同

東京エリアが絶滅するかもしれない時に民警じゃないからやらないと言ったのだ、当然だろう

 

聖天子《それに私はあなたなら蛭子影胤に勝てる、そう思ったのです、彼を止めれるのはあなたしかいません、その理由はあなたが一番よくわかっていると思います》

 

聖天子はそう言うと蓮太郎は諦めたのか大きく息を吐いた

 

蓮太郎「分かった...ただしあんたらのためにやるわけじゃないことを忘れんな」

 

聖天子《結構です、ご武運を、里見さん》

 

そう言うと電話を切って真莉に携帯を投げ返した

少し怒りもあったのか強目に投げた携帯だったが真莉は何事もなかったかのようにキャッチした

 

蓮太郎は身体に付いている電極や針などを慎重に外し起き上がる

傷口に少し触れたのか顔をしかめるが無理さえしなければなんとか動ける、棚の上の紙袋に自分の制服があるのを確認し病院服を脱ぐ

木更は「おバカ」といって頬を染めながら後ろを向いた

真莉はアカネに見せないように自分の身体で目隠しをした

 

木更「...勝てるの?里見くん?」

 

蓮太郎「勝たなきゃみんな死ぬ、だから勝たなきゃダメなんだよ」

 

木更「死ぬわよ」

 

蓮太郎「覚悟の上だ」

 

木更「...分かったわ...里見くん、社長として命令します、影胤、小比奈ペアを撃破してステージVの召還を止めなさい!君は私の為に今までの百倍働いて、私は君の千倍働くから」

 

蓮太郎「絶対に止めます!あなたの為にも!」

 

蓮太郎はそう言う、すると今まで黙っていた延珠と真莉も言う

 

延珠「蓮太郎は死なないぞ!妾が守るからな!」

 

真莉「死ぬ覚悟なんて捨てちまえ、最初っから死ぬ気で行くんなら足手纏いになる、安心しろ、政府の依頼を受けなかったのは受けたらいろいろ行動を制限されるからな...平気さ、友達は守ってやるさ」

 

真莉はニヤッと笑う

蓮太郎もつられて笑う

 

蓮太郎「それじゃ頼もうかな」

 

真莉「ッフ、まぁお前は殺しても死ななさそうだし平気かな」

 

そう言うと二人して笑い合う

二人はガッチリと握手しあった




お気に入りが10いった!
そしてUAがいつの間にか1000超えてました!
お気に入りしてくれた皆様、そして見てくださってる皆様!ありがとうございます!!

これからも頑張ります!


誤字、脱字、感想等お待ちしております!


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第10話

今回は今までで一番短いですorz

ちょっとやらなければならないことが出来てしまい2〜3日は投稿出来ないです...

次は元の長さになる筈です、よろしくお願いします!


 

side蓮太郎

 

翌日、午後九時

蓮太郎たちはヘリコプターに乗り移動していた

大きなローターの羽音を聞きながら蓮太郎は眼下に広がる暗い森を見る

 

蓮太郎「こんな短いインターバルでヘリに乗るとはな...」

 

蓮太郎はぼそりと呟いた

森には月明かり程度では到底見通せない程の深い闇が広がっていた

 

蓮太郎「真莉とアカネは大丈夫なのか...」

 

蓮太郎は比較的近くを飛んでるもう一機のヘリに乗っている二人の友人を心配する

すると真横から声が聞こえた

 

延珠「大丈夫だ蓮太郎!真莉が守ってくれるみたいだしな!」

 

蓮太郎「だが最後まで真莉はアカネが付いてくるのを拒否してたからさ」

 

延珠「でも確かあれっていつの間にかアカネが乗っておったのではなかったか?」

 

蓮太郎「確かそうだったな、それで真莉は折れたんだったな」

 

延珠「流石に飛んでるヘリからはどうしようもないからな、でもアカネ怒られるのではないか?」

 

蓮太郎「だろうなぁ、あんだけ真莉が拒否してたからな」

 

数時間前

 

アカネ「私も行く!」

 

真莉「は?」

 

アカネの一言に一同驚いた

その中で驚いていたのは意外にも真莉だった

 

真莉「ダメだ、連れて行けない」

 

真莉はアカネの言葉をバッサリと切った

 

アカネ「どうして!?」

 

真莉「当然だろ、訓練も受けてない子供を危険な死地に連れて来るわけにいかねぇよ、こればっかりは許可出来ない」

 

真莉の言葉に蓮太郎は頷く

 

蓮太郎「そうだな、いくら呪われた子供たちは戦闘能力が高いって言っても訓練も何もしてない子が行くのは俺も反対だ」

 

蓮太郎にも反対されたアカネは頬を膨らませた

 

真莉「お前は待ってろ、今回ばかりは流石に無理だ、どうしてもって言うんだったら俺が生きて帰ってきたら戦い方教えてやる」

 

真莉の言葉に未だ納得出来ない様子のアカネだったが真莉が準備の為に戻ると言ったのでそれについて行った

 

 

 

 

蓮太郎「その後ヘリに乗ってしばらくしたら電話が来たんだよな...アカネがいつの間にか乗っていたとか、あいつのあの切羽詰まった声初めて聞いたぞ」

 

延珠「それだけアカネの事を思ったのだろ!蓮太郎も妾の事を思っても良いのだぞ!」

 

蓮太郎「はいはい、分かった分かった」

 

蓮太郎の素っ気ない言葉に延珠は頬を膨らませ不機嫌ですと言わんばかりの表情をする

 

延珠「素っ気ないぞ!蓮太郎!」

 

ぎゃあぎゃあと蓮太郎たちは騒ぐが周りの民警に睨まれて少し静かになる

数分後ようやく落ち着いた延珠は外を見ている

蓮太郎は延珠を見て言う

 

蓮太郎「そういやお前は未踏捜査域に出るのは初めてか?」

 

延珠は頷く

モノリスの外で活動するような事など中に住んでいればそうそうあるものではない、蓮太郎は自分がサポートしてやらなければと思い延珠と作戦等の話をし始めた

 

 

 

 

side真莉

 

真莉とアカネが乗るヘリには若干の不穏な空気が流れている

アカネは真莉を見ているが真莉は目を瞑ったまま動かない

ヘリの音だけが機内に鳴り響く

 

アカネは流石にここまでしたら怒ると思っていたが1人で留守番は嫌だったのだ

だから駄目と言われても不意をついてヘリに乗り込み真莉を困らせてしまった

 

アカネ「...ごめんなさい」

 

アカネは謝るが真莉は目を瞑ったまま動かない

 

アカネはそれを見て瞳を潤ませる、嗚咽が聞こえ始めたところで真莉は目を開ける、泣き始めているアカネを見て真莉は焦った

 

真莉「っちょ!?アカネ?どうした?」

 

アカネ「グス...ヒック...私が...困らせて...」

 

真莉は更に焦る

 

真莉「ちょっと待ってくれ!?落ち着いてくれ!?どうした!?」

 

アカネ「ごめんなさい...困らせてごめんなさい...(グス)」

 

真莉「待った!?なんの事だ!?困ってないから!落ち着いてくれ!」

 

真莉はなんとかアカネを落ち着かせる事に成功した

 

真莉「まぁアカネがヘリに乗ってたのは予想外だったし最初はどうするかと思ったがここまで来たんだ、それを踏まえての作戦等を考えていたんだよ」

 

アカネ「本当?」

 

真莉「あぁ、今回はかなり危険を伴うから流石に多少は真剣に考えなきゃならんからな、考えが纏まらないからちょっとどうするかなぁってな」

 

アカネ「...でもごめんなさい...」

 

アカネの言葉に真莉は苦笑を浮かべアカネの頭に手を乗せ撫でる

 

真莉「とりあえず戦闘にはなる、戦闘になったらとりあえず...ッ!?」

 

真莉が言おうとした瞬間何かの違和感を感じた真莉はアカネを抱える、抱えた瞬間ヘリは大きく揺れる

ヘリから見えたのは大きな羽

 

真莉「ガストレア!?やべぇ!?全員こっちに!っ!?(間に合わねぇ!くそったれ!)」

 

アカネ「ッ!?」

 

次の瞬間...

ドッゴォォォォォン!!

 

真莉達の乗ったヘリコプターは突如として現れたガストレアによって爆破された

 

 

 

 

蓮太郎side

 

蓮太郎たちは驚愕の眼差しを外に向ける、このヘリはかなり改良されており地上からならあまり駆動音などは聞こえない仕様になっている

そうしておかなければ夜行性のガストレアや夜活動しないガストレアなどを呼び寄せてしまうからだ

 

しかしそれでもガストレアは感知して襲ってきた、その事実はヘリの操縦士により一層の恐怖を刻んだ

 

操縦士「す、スピードを上げます!至急に目的のポイントまで行きます!捕まっていてください!!」

 

ヘリは更にスピードを上げる

 

蓮太郎「クッソォォォ!!」

 

蓮太郎の咆哮は暗い闇に吸い込まれていった



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第11話

なんとか投稿できた!

原作2巻しかなかったけど買ってきました!
なので最後ら辺まで原作に合わせて書きました
(楽してるし...)


目的地に到着したヘリはすぐさまその場を離れた

蓮太郎はそれを見て思考する

 

蓮太郎「(大丈夫、真莉は生きてる筈だ、あいつはあんなんで死ぬやつじゃない...絶対に)」

 

延珠「...蓮太郎...」

 

延珠は不安そうな顔を蓮太郎に向ける

 

蓮太郎「大丈夫だ、絶対に生きてる、とにかく俺たちはまず影胤を倒す事に専念するぞ!」

 

延珠「...分かった!」

 

蓮太郎と延珠は目的を確認し、道を進む

蓮太郎は腰に差したナイフを取り後ろにいる延珠の邪魔にならないように周囲の邪魔になってる枝などを切っていく

 

森はかなり大きくなった木々のせいで月を隠してしまい森の中はひどく暗い

誤算だったのは事前に持ってきていた地図が全く役に立たない事と当初の予定では真莉と合流しツーペアで進む予定だったのだが(アカネがいるため)ヘリが襲われ破壊された、真莉なら恐らく平気だろうが何処に墜落したか分からないため合流は不可能に近い

 

蓮太郎は早々に懐中電灯を使い明かりをつける

本当は敵性のガストレアや影胤達に見つかる可能性が高くなるためあまり使いたくなかったのだがそうも言ってられなかった

 

懐中電灯の明かりが多少なりとも辺りを照らす、すると蓮太郎は驚愕した

気温はやや肌寒いくらいなのに熱帯雨林にしか生えないような植物や灌木が光の届く限り何処までも続いている

 

延珠「れ、蓮太郎...」

 

流石の延珠もこれには少し恐怖を感じていた

蓮太郎は少しの間思考し結論を出す

 

蓮太郎「延珠、町の方に行こう」

 

延珠「でもいいのか?ここら辺にいるっていう話ではなかったか?」

 

蓮太郎「その線は少し薄い、こんな所常人なら直ぐに気がどうにかなっちまう、恐らく影胤は町にいる筈だ」

 

延珠は異論は無いのか黙って頷いた

 

しばらく歩き土からアスファルトになり始めた

そのまましばらく歩くと近くで大きな足音と唸り声が聞こえ蓮太郎はすぐさま懐中電灯の明かりを消しその場にしゃがむ

蓮太郎は腰からXD拳銃とワンタッチ式サイレンサーを取り出しXDの銃口に取り付けるとゆっくりと音の方に近づいた

 

遠くから小川の音が聞こえそれは近づくとどんどん大きくなる

音を忍ばせながら1分ぐらい進み茂みをゆっくり掻き分ける

思いがけず近く、それこそ目の前にそれはいた

一瞬立ちすくんでしまって蓮太郎は慌てて茂みにしゃがむ

最初に見えたのは赤く光る眼の中に見える細い瞳だった

 

細長い口には鋭い歯がびっしりと生え、頭から長い尾まで鎧のように覆われた硬い外皮はヌラヌラと光っていた

川から半分ほど身を乗り出し鎮座しているその姿はまるで重戦車の様だった

 

蓮太郎「これは...ワニだ...よな?」

 

ガストレアウイルスで肥大化した身体は今更驚くには値しないが足が6本も生えており、眼が本来付いている所以外にもあと4つも付いている

 

恐らく体をデザインする上で細胞に何らかのエラーが出てあのような異形の姿になったのだろう

 

あちらもこちらにきづいている、しかし今だに襲ってくる気配は無い、それでも横目でじっとこちらを見ている、蓮太郎は掌に嫌な汗をかく

 

蓮太郎「(どうする...やるか?)」

 

蓮太郎は自分の銃に視線を落とす

現在、蓮太郎の銃はサイレンサーの効果を最大限に発揮するために弱装弾と呼ばれる火薬を減らし銃弾初速を音速以下まで落とした亜音速仕様のバラニウム弾を装填している

しかし相手は元々強靭な肉体を持つワニの皮にガストレアウイルスの強化が加わっていることを考えると例え頭部に当てても頭蓋骨辺りで止まってしまうのでは無いか...

 

すると延珠が袖を引いて不安げな瞳で小さく首を横に降る

延珠の無視しようという意思は読み取れた

それがだめ押しだった、蓮太郎は銃を構えながらゆっくりと後ずさりした

 

6本足のワニは何を考えているのか分からない瞳でこちらの様子をじっと見ていた

ワニの姿が見えなくなると足早にその場から離脱した

 

おおよそ安全圏まで来たと判断して蓮太郎は大きく息を吐いた

自分の臆病を笑い飛ばす余裕もなかった

 

すると横から不機嫌な声が聞こえた

 

延珠「お主、妾が止めなければ突っ込んでおっただろう?」

 

蓮太郎はそれに答えられなかった

延珠は続ける

 

延珠「蓮太郎は妾より脆いのに妾の前に出たがり過ぎだ!」

 

冷静になって考えてみれば弾幕の温存やリスクの管理など様々な問題があった

あのまま倒そうと飛び出して行ったらよしんば勝てたとしてもかなりのダメージを受けることになっただろう

蓮太郎は首を振って答える

 

蓮太郎「悪い、気をつけ...ッ!?」

 

ドゴォォォォン...

 

言い終わる前に重低音の爆発音が響き空気を、辺りを振動させた

蓮太郎は直ぐにその音の正体に気づき舌打ちした

 

蓮太郎「馬鹿野郎!何処かのペアが爆発物を使いやがったな!?...何て事を...」

 

その時、バサバサバサと何処にいたのか森の中からコウモリが一斉に飛び立ちキィキィ鳴きながら蓮太郎たちの頭上を狂ったように飛び回る

 

蓮太郎は冷や汗をかいた

 

蓮太郎「(まずい...森が起きるッ!?)」

 

そう思った矢先直ぐにさっきの音とは別の重低音が足元から伝わってくる

それは巨体が地面を踏みしめる地鳴り

その音は四方に響き音の出所がわからない

続いて聞こえたのは腹の底に響くような低い唸り声

さっきのワニの方向かと思ったがもっといびつで禍々しい...

 

すると延珠は顔面を蒼白にしある一点を見つめる

 

延珠「蓮太郎...あれは、なんだ?」

 

延珠の見ている方向を見てもそこには巨大な影があるだけ、意を決してライトを点けるが思わず驚愕し懐中電灯を取り落としそうになった

 

身長はおおよそ6メートル以上ある

爬虫類特有の獰猛な顔を首は長く、口から赤い舌がチロチロと覗いている

その姿はお伽話な出てくるようなドラゴンに似ていた

間違いなくステージ4のガストレア

恐らく鳥類と爬虫類が何種類か混ざっているがここまでステージが進行すると元が何の生物なのか分からない

 

ドラゴンは神経質そうに右足で地面を蹴る、さながらそれはランナーが走り出す前の如く

視線を釘付けにされながら直ぐにあの巨大な生き物に抗える武器を思考するがそんなの持ち合わせているわけもない

あそこまででかいとバラニウム弾仕様の重機関銃か対戦車用ライフルでも無ければとても太刀打ちできない

 

蓮太郎「延珠、俺を連れて走れるか?」

 

延珠は視線だけで了解の旨を伝えた

 

視線はドラゴンに向けながら延珠の肩に負ぶさる、身長が随分違うのでもたれかかるようになるが今は気にしていられない

 

蓮太郎「延珠、逃げ切れないようなら俺を捨てろ」

蓮太郎の言葉に延珠は大声を張り上げる

 

延珠「そんな事、出来るわけないであろう!」

 

声と共に延珠は地面を蹴る、冷たい風が頬を叩き、風圧に抗いながら薄く目を開けたときそこはもう空中だった

延珠が飛んだのだ、延珠は蓮太郎を背負ったまま二十メートル近く跳躍していた

 

服の裾がはためき、空中で一旦静止する、一瞬の後自由落下の軌道を描き猛烈なスピードで森が迫ってくる

延珠は太い枝を一つ見定めるとそこに両足で着地し再跳躍、今度は短く五メートルほど離れた木の枝に飛び移ると目にも止まらない速さで再々跳躍

延珠が飛ぶたびに強力なGが掛かり振り回されて落ちそうになるがなんとか堪える

 

蓮太郎は後ろを見ると驚愕する

獰猛なハンターは前傾姿勢になると木々を踏み倒しながら追跡、木々をバキバキと粉砕しながら猛追してくる、想像以上のプレッシャーに叫びたくなる

 

延珠は前を見て逃げ場所を探していると前方に人影が見えた

 

延珠「おい!そこのもの!逃げるのだ!」

 

影はそれに気付いたのかこちらを向いた

延珠はそれに気づき後ろにハンターが迫っているのに急停止してしまった

それに一番驚いたのは延珠に負ぶさっていた蓮太郎だった

 

蓮太郎「お、おい!?延珠!?」

 

すると影が喋る

 

???「ふむ...待っててくれるか?」

 

???「うん!」

 

影は一つではなく二つ、若干小さくて見えなかったのだ、小さい影は元気に言う

その二つに聞き覚えがあった二人は驚愕の、それでいて安堵の表情を見せた

しかしその間も後ろのハンターは迫ってくる

影の一つがその場から消える

 

後ろのドラゴンは獲物を食えると判断し大きく口を開けるが直ぐにその口を閉じた

閉じたと言うよりは...頭上からの衝撃で強制的に閉じさせられたのだ

ドラゴンは体長おおよそ6メートルを超えるのにさらにその上からの衝撃はドラゴンは流石に考えていなかっただろう

 

それに驚愕している二人を小さな影が...アカネが二人を呼ぶ

 

アカネ「延珠!蓮太郎さん!早く早く!」

 

延珠「アカネ!!」

 

蓮太郎「やっぱり無事だったんだな!真莉!アカネ!」

 

真莉「諸々の話は後だ、ここは引くぞ、この先に休める場所があった、そこに行くぞ!走れ!」

 

真莉はそう言うと蓮太郎達を連れ走り出した

 

取り残されたドラゴンは大きな咆哮を上げその場で暴れていた




やはりタグにチート系を増やすべきでしょうか?...
どうしてもそうなってしまうんですよねぇ〜...


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第12話

なんか書いてたら5000文字超えてるし
初めてこんなに書きましたよ!

クオリティは期待してはいけませんよ!


 

ドラゴンの脅威から救われた蓮太郎と延珠は真莉とアカネの先導で森を歩いていた

 

蓮太郎「どうやって助かった?」

 

蓮太郎の疑問は間違っていない、あの高度でガストレアに襲われヘリは大破、森の上空で爆発したのだ

普通なら生きている方がおかしい、仮に生きていたとしても骨折等の相当な大怪我を負ったはずだ、それなのに真莉はそれすら見せずあの6メートル級のステージ4の上から一撃を食らわせた

それが蓮太郎には信じられなかった

 

真莉は黙っていたがやがて息を吐き問いに答えた

 

真莉「確かにあん時はさすがに冷や汗をかいたさ、でもまぁガストレアが来ることをいち早くアカネがキャッチしてな、対策は打てたんだよ」

 

蓮太郎「対策?そうじゃなくて俺はどうやって生き残ったかって聞いてんだよ」

 

真莉「話は最後まで聞け、ったく、まぁ対策って言っても単純にヘリの底を《ブチ抜いた》だけなんだがな」

 

蓮太郎「は?」

 

蓮太郎は真莉の言葉に耳を疑った、ヘリの底をぶち抜いたのだ、あの高さで、そしてガストレアに襲われていながら何をしているのかと問おうとしたらその前に真莉は言う

 

真莉「あぁ、そうそう、一緒に乗ってた民警たちと操縦士も無事だ、みんな生きてるよ」

 

真莉の言葉に蓮太郎と延珠は安堵の表情を浮かべる

すると延珠は疑問を口にした

 

延珠「蓮太郎も言ってたがあの高さだぞ?どうやったのだ?」

 

真莉「ん?あぁ、ぶち抜いた後当然落下するだろ?ヘリの残ってるパーツを蹴り飛ばして先に下に降りたんだよ、そんでそこらにあった木を蹴り飛ばしてクッションにしたわけ、最終的な着地は殆どイニシエーターにやらせたがな」

 

真莉の言ってることに頭を抱える蓮太郎、延珠はアカネに質問する

 

延珠「アカネはどうやってガストレアに気づけたのだ?」

 

アカネ「私はモデル・ドッグだからね、ヘリの音とは違う音が聞こえたんだ、それでお兄ちゃんに教えたの」

 

蓮太郎「そんなことが...」

 

真莉「それでも問題はそこそこあったんだがな」

 

蓮太郎「問題?」

 

真莉「あんだけ大きな音がしたんだ、俺たちのいた方のガストレアは起きてしまってな、襲ってきたんだよ」

 

真莉は軽く言うが蓮太郎は驚いた、襲って来たのは恐らく数十体はいただろう、真莉がここにいるということはそれを全て倒して来たのか?と

 

蓮太郎「そういえば真莉はどうしてあそこにいたんだ?」

 

真莉「ん?お前を探してたんだよ」

 

蓮太郎「こんなに広いのに良く探せたな?」

 

真莉「言ったろ?俺はバラニウムの磁場を感知できるって、それを頼りに来たに決まってるだろ」

 

蓮太郎「そういえばそうだったなぁ...」

 

真莉はバラニウムの発生させる磁場を感知することが出来る

それを聞いて蓮太郎は一つ思い付いた

 

蓮太郎「そうだ、真莉は磁場を感知出来るんだろ?じゃあ影胤の居場所もわかるんじゃないか?」

 

真莉「いや、ただでさえエリアの方の磁場が大きいんだ、蓮太郎のは何回か感じてるから分かっただけだ、変態仮面の磁場はたかだか2、3回しかねぇ、覚えられんさ...」

 

真莉の言葉に少々がっかりする蓮太郎

すると木々を抜けた所で明らかに人工物と思える土嚢が積まれている建物が見えた、ガストレア大戦時に築かれた防衛陣地《トーチカ》だろう、所々風化していて機能は失わられているが風除けにはなるだろう

 

蓮太郎は真莉と顔を合わせ頷きあう

蓮太郎はハンドシグナルで延珠に指示を送り蓮太郎は腰から銃を抜き壁伝いに裏手から回る

真莉とアカネは何時の間にやら消えていた

 

中からパチパチと薪が爆ぜる音が聞こえる、どうやら焚き火をしているようだ

石の破れ目から炎の明かりが見える

 

蓮太郎は壁に背を預け2、3回深呼吸をする

そして銃を構え一気に飛び込む

 

蓮太郎「動くな!」

 

蓮太郎のXDと中の人物のショットガンが交錯するのはほぼ同時だった

その瞬間ショットガンとXDの上から手が現れ二つの銃を抑える、瞬間、人物の背後から二つの影がその人物を倒さんと迫るがその人物が誰か分かった蓮太郎と真莉はそれぞれ声を上げる

 

蓮太郎「待て!延珠!敵じゃない!」

 

真莉「アカネ!ストップ!」

 

延珠とアカネの蹴りは人物のすぐ後ろで止まる

 

蓮太郎は相手を見て絶句した、相手は荒い息を吐き虚ろな瞳を向けていた

落ち着いた色の長袖にスパッツ、このような地獄に似つかわしくない格好だった

だが蓮太郎と真莉は見覚えがあった

 

延珠「銃を下ろさぬとその首を叩き落とすぞ?」

 

アカネ「銃を下ろさないとその首を食いちぎるよ?」

 

真莉「少女と思えないような台詞だなお前ら...やめとけ、この子は敵じゃない」

 

蓮太郎「お前確か防衛省で会ったよな?俺たちを覚えてるか?」

 

少女は頷く

 

???「はい、覚えています」

 

苦しげな息を吐きながら辛そうに答える

 

蓮太郎「...とりあえず止血だ、話はそれからだな」

 

ふと横を見ると不機嫌な顔の延珠が居た

 

延珠「ちょっと待つのだ蓮太郎!妾はこんな女知らんぞ!」

 

蓮太郎「延珠とアカネは初めてだな、こいつは伊熊将監っていうプロモーターのイニシエーターだ」

 

 

拾ってきた枯れ木を火に入れ勢いを上げる

真莉が持って来ていた救急キットで止血をし消毒を終え包帯を巻くとガストレアウイルスの恩恵で傷の再生が始まる

ただ速度としては延珠やアカネに比べて随分と遅かった

 

治療中に敵の接近を警戒してか延珠の真莉は外を警戒する事にした、ただその際何が気に入らなかったのか延珠は

 

延珠「妾はそんな女認めないぞ!」

とか

延珠「妾ならそんな傷3秒で治る!」

 

と言って真莉を連れて外に出て行ってしまった

蓮太郎は3秒はねぇだろと突っ込みたかったか酷く不機嫌だったのでやめた

 

蓮太郎「お前名前は?」

 

夏世「千寿夏世です」

 

少女は千寿夏世と言うらしい、蓮太郎はお腹空きました少女の名前を初めてこの時に知った

 

夏世「どうやらあなたの相棒を怒らせてしまったようですね」

 

少女は酷く落ち着いた様子で喋る、蓮太郎は延珠が出てった方を見る、延珠は真莉に愚痴を言っているようで腕を上下して何かを話している

 

蓮太郎「っち、なんであいつあんなに不機嫌なんだよ...まさかもう反抗期か?」

 

夏世「理由は明確だと思いますが」

 

まるで感情が無いかのような口調に蓮太郎は困惑していた、この少女は年齢に似つかわしく無い落ち着きがある、感情が読みにくいのだ

 

防衛省で会った時はもっとユーモアのある少女だと思ったのだが蓮太郎の勘違いだったのだろうか?

すると今まで黙っていたアカネが口を開く

 

アカネ「千寿ちゃんはモデルはなに?そこまで落ち着いた対処ができるんだったらそこそこのやつだよね?」

 

夏世は目を瞑り手を胸に当て答える

 

夏世「私はモデル・ドルフィンのイニシエーターです、直接的な戦闘能力は皆無ですが普通のイニシエーターよりIQが遥かに高いのと記憶力があるのが特徴です、因みにIQは210ほどあります」

 

蓮太郎はそれを聞いてぎょっとした

 

蓮太郎「俺の倍近くあるのかよ...」

 

すると入口の方から声が聞こえた

 

真莉「俺よりも上か...と言うよりだったら作戦参謀の方が良かったような気がするがな、今回の討伐戦はおおよそ戦闘能力に秀でた奴らが中心だろう?」

 

アカネ「お兄ちゃん!」

 

アカネは真莉に抱きつく

 

真莉「アカネ、悪りぃけど延珠んとこ言ってやってくれるか?」

 

アカネ「うん!」

 

アカネは二つ返事で延珠の元に走って行った

 

蓮太郎「真莉、警戒はどうした?」

 

真莉は呆れた顔で言った

 

真莉「あのまま愚痴を聞いてても良かったんだがな...聞きたい事もあったからな、ちょっとこっちに来た」

 

蓮太郎「聞きたい事?」

 

真莉「あぁ...さて、千寿、お前に聞いとかなきゃいけ無い事がある」

 

夏世「はい、なんでしょうか?」

 

真莉「何故お前は...いや、お前とあの筋肉ダルマは森で《爆発物》を使った?」

 

夏世の肩が僅かに上がる、蓮太郎は驚愕した顔を見せる

 

夏世「何故私だと?」

 

真莉「お前から爆薬の匂いがする、まぁ微かにだが爆発物を使ったのはあの時大きな音のみ、それを考えての発言だ、違ったか?」

 

夏世「...私たちはガストレアに騙されました、おかげで怪我をした上に今は将監さんとも別行動になってしまいました」

 

蓮太郎「だまされた?」

 

夏世「えぇ、私たちも降りたのは深い森の中だったのですがしばらく進んだら森の奥から短く点滅するライトパターンが見えましてね、味方だと思って無警戒で近づて行ったんです」

 

夏世は膝を抱え小さくなる

 

夏世「もっと注意していればあんな薄青い鬼火みたいな色のライトなんて誰も使ってい無いことが分かったのでしょうが...」

 

蓮太郎はゴクリと唾を飲んだ、真莉は理解したというような顔をして頷いた

 

真莉「なるほど、そういう事か」

 

蓮太郎「...それはなんだったんだ?」

 

夏世はこちらをチラリと見て視線を戻す

 

夏世「最初に感じたのは腐臭でした、物が腐ったかのような強烈な悪臭がしてハエが大量にたかっているんです、そのガストレアは気持ち悪い花のようなのがあちこちに咲いていて、尾部が発光していました、こちらを見ると気持ち悪くブルブル震えて歓喜みたいなものを表していました」

 

夏世は1度落ち着きまた話す

 

夏世「いろいろなガストレアを見てきましたがあれには足が竦みました、殺されると思って咄嗟に榴弾を使ってしまったんです、そこから先は里見さんと古畑さんのご想像どうりです」

 

真莉「森のガストレアどもが起きて追われているうちに筋肉ダルマとはぐれて腕を噛まれたのか」

 

夏世「はい、幸い注入された体液は極少量だったので大勢に影響は無さそうです」

 

真莉「まぁそれでもこの作戦が終われば病院で診てもらった方がいいな、生きていればだがな」

 

今まで黙っていた蓮太郎が言葉を発する

 

蓮太郎「...そいつはおそらくホタルのガストレアだ」

 

蓮太郎の言葉に夏世と真莉は首をかしげる

 

夏世「ホタル?」

 

真莉「ホタルってあれだろ?あのお尻が光ってるあれ?」

 

蓮太郎「あぁ、ホタルは花粉や蜜を取って生きてるけど獰猛な肉食性のホタルもいるって知ってるか?他のホタルの発光パターンを真似して近寄ってきたホタルを捕食するんだよ、おそらく人間を捕食するために近寄ってきそうな発光パターンを生み出した特殊進化型だろう」

 

真莉「なるほど、そんな奴がいるのか...ようはそれにお前らは騙されたのか、って事はさっきの話に出てきた気持ち悪い花ってのはラン科の奴かな、確かカビや尿、腐肉みたいな匂いを出してハエや羽虫を誘き寄せて花粉を運んでもらう種があるはずだ」

 

蓮太郎「多分な、おそらく人間を誘い込む匂いを合成していたんだろう、珍しいな、植物種と混ざったガストレアだ、恐らくそこまで特殊進化した個体だとステージIIIってとこだろう」

 

夏世は目を丸くしていた

 

夏世「そんな事があるのですか?」

 

真莉「あいつらに常識は通用しねぇよ、それは俺が一番それを知ってるからな(ぼそ)」

 

夏世はしばらく思考していたがやがて張り詰めていた肩の緊張を解くと息を吐いた

 

夏世「...よく見てもい無いガストレアの種類を当てられますね、里見さんってオタクなんですね」

 

真莉「だろうな、こいつは虫オタクだな」

 

蓮太郎「ッグ...それを言うなよ」

 

夏世「アリの巣を水没させて悦に浸ってた陰湿な幼少期がありそうですね、『ほーら、溺れろぉ、ノアの大洪水だぁ〜、神の怒りを思い知れ〜〜』みたいな感じですか?えぇ、楽しいですものね、わかります」

 

蓮太郎「あぁ、そうだよ、楽しかったよ悪いか!フン!」

 

夏世は初めて楽しそうに目を細める、すると黒い受話器のような機械から野太いノイズのようなものが聞こえてきてハッとさせられた

 

どうやら無線機らしい、夏世は飛びついてダイヤルを回すと音は鮮明になっていきやがて聞きたくもない声が聞こえてきた

 

???『い...おい!生きてんだったら返事しやがれ!』

 

夏世は目配せをし喋るなと伝えてきた

真莉と蓮太郎は頷く、一から説明するのは面倒だったからだ

 

夏世「音信不通だったので心配しました、ご無事で何やりです、将監さん」

 

将監『ったりめぇだろ!んなことより夏世、良いニュースがある』

 

勿体ぶった将監は一旦言葉を切った、無線越しに髑髏スカーフの下で笑っている姿が目に浮かぶ

 

将監『仮面野郎を見つけたぜ』

 

蓮太郎と夏世と真莉は顔を見合わせる、真莉は延珠とアカネを呼ぶ

 

夏世「場所はどこですか?」

 

蓮太郎は地図を取り出し将監が言ったポイントを探すとすぐに見つかる、海辺の市街地か、ここからならそこそこ近い

 

将監『今近くにいる民警が集まって総出で奴を奇襲する手筈になってる、ホントは出し抜きてぇがまぁ仮にも序列が上の相手だし肝心のイニシエーターがいねぇ、いま荒れてた手柄の話がようやくまとまったところだ、仲良く山分けだってよら面白くもねぇ話だ、お前もとっとと合流しろ』

 

夏世の返答も聞かずに通信は切れる確かに将監の後ろでやかましい声が聞こえていた、襲撃計画が進みつつあるのだろう

夏世は荷物を持ち焚火を踏み消し始めた

 

蓮太郎「やっぱり行くのか?」

 

夏世「えぇ、あんな人でも私の相棒なので、里見さんたちは?」

 

蓮太郎は考える、このままもしかしたら自分たちが行かなくても勝てるのではないか?そう思ってしまう

すると真莉が喋る

 

真莉「そうた、千寿、お前腕はどうだ?」

 

真莉の問いに夏世は黙って包帯を外すと傷は残らず治癒していた

 

蓮太郎「...行こう、結果だけでも見届け無いと」

 

蓮太郎の言葉に真莉とアカネ、延珠は頷く

蓮太郎は街の方向を見ながらぼそりと真莉に問う

 

蓮太郎「勝てると思うか?」

 

真莉「普通に考えて始まる前から報酬の話をしている時点で無理だろ、早い段階で俺たちが行って生存者を探すのが難しい感じだろ」

 

蓮太郎「...行こう!」

 

蓮太郎たちは街に向かって動き出した




未だに先頭に入らないこの作品...
だって戦闘に入ったら真莉くん無双しちゃう...

まぁ次は戦闘に入りますがね!(多分)

誤字、脱字、感想等あればどうぞ!


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第13話

書いてると時間を忘れますね
区切るところここかよって思うかもしれませんがスルーします!

色々間違えてるかもしれませんがあったらご指摘ください!

では第13話始まりですよ!
ハレルゥゥゥヤァ!


午前四時、外で長時間見張りをしていてくれた延珠の方が暗闇に目が慣れているので先頭に立たせる事にした

 

しばらく歩くと森は途切れ見晴らしの良い平野部に出た、そこから道なりに進めば数キロで街に入れるだろうが蓮太郎たちはあえて回り込むように小高い丘を目指す

 

街までの、直線は身を隠すものは何もない

ここは慎重に行くべきだという判断を全員でした上での行動だ

歩くに連れて鼻腔に潮の匂いが運ばれてくる、海が近い

途中周りを背の高い草木で囲まれた場所に夜営の跡を見つけた

煙が出るのを恐れてか煮炊きをした形跡はないが携帯食料の袋が散らばっている

思ったよりも所帯が大きいようだ

 

すると真莉が何かに反応した

 

真莉「...っち」

 

蓮太郎「真莉?」

 

真莉「黙ってろ」

 

真莉の真剣な表情を見て蓮太郎は息を飲む

すぐに真莉答えを言う

 

真莉「あのバカどもが、もう突撃してるようだな、戦闘の音がする」

 

真莉のセリフに一同は焦る

すると蓮太郎たちにも聞こえるほどの大きな銃声が聞こえて来た

その音が嚆矢となり破裂音にも似た銃声や剣戟音が続く

始まってる

延珠が叫ぶ

 

延珠「蓮太郎!」

 

蓮太郎「よし!俺たちも行くぞ!」

 

しかし夏世はその場を動かず蓮太郎に言う

 

夏世「私は残ります」

 

蓮太郎は驚いて振り返ると夏世はこちらに背を向けていた

 

蓮太郎「っ!?どうして!?」

 

その問いに答えたのは夏世はでは無く真莉だった

 

真莉「そりゃ誰かしらがアレを止めなきゃ勝手も負けても俺たちに明日はねぇからだろ」

 

真莉が言葉を放った瞬間に蓮太郎たちが歩いてきた道から四本足の獣が弾丸の様な速度で飛び出してきた

夏世は力を解放すると正面からその突進を受けようとした、しかしその手前でその獣は止まる、止めたのは他でもない真莉だった

 

飛び出してきた獣はシカのガストレアだった、上半身の皮膚の至る所から突き破ってツノが生えている

真莉はツノの何本かを受けていた、それを見た夏世は唖然とした表情で叫ぶ

 

夏世「っな!?なんでそんな事を!私ならすぐに治るのに!」

 

真莉「っはは、幼女を身代わりにする?そんなバカな事するわけねぇだろ...」

 

真莉はそう言う、シカのガストレアはそれでも前に進もうと踏ん張っている

 

真莉「...鬱陶しいんだよシカ肉が!」

ズドン!

 

真莉の声とともに打ち出された掌底がシカのガストレアを打ち抜き遠くに飛ばす、シカのガストレアは動かなくなった

まさかの一撃に夏世も蓮太郎も延珠も驚いていた

それだけでなく貫かれた筈の傷がみるみる回復していく

 

真莉「...行け、蓮太郎、アカネ達を連れて行け」

 

そのセリフに一同は驚愕した

 

夏世「ダメです!私が残ります、あなたが行かなければだれが影胤をたおすのですか!?」

 

蓮太郎「っ!そうだ!それにその役目だったら俺らで...ッ!?」

 

蓮太郎達の言葉の返答は有無を言わさないほどに放たれた威圧感だった

ゆっくり振り返った真莉の目は赤く染まっていた

 

夏世「(え?赤い目?私たちと同じ...どういう事?)」

 

真莉「いいから行け、はっきり言って邪魔だ、影胤なら蓮太郎、お前が一番勝率が高い、だからお前に任せる、もし如何してもっていうんだったら街近くまで下がれ、そんで俺が抜かれた奴だけ対処しろ...こいつらは俺がやる」

 

夏世「ですが!」

 

未だに引き下がらない夏世に真莉は怒声を浴びせる

 

真莉「さっさと行けっていうのが分かんねぇのか!!戦闘能力皆無で重火器が武器のお前がこの数相手にしてみろ!間違いなく死ぬぞ!!おい!アカネ!!」

 

アカネ「うん!気をつけてね!お兄ちゃん!!」

 

夏世「ッ!?アカネさん!?待ってください!」

 

蓮太郎「...絶対生きろよ」

 

延珠「妾達がすぐにやっつけて助けにくるからな!」

 

蓮太郎と延珠はそう言ってアカネを追った

真莉は独り言の様に愚痴る

 

真莉「ったく、だったら多少でも期待してやろうかな...おら、雑魚ども、かかって来やがれ、ここから先は...一歩足りとも、一匹たりとも遠さねぇぞ」

 

そう言った真莉の目は黒に戻っていた

 

 

 

 

 

夏世「離してください!良いんですか!?あのままでは古畑さんは死んでしまいますよ!?」

 

夏世のセリフに蓮太郎は歯噛みした

延珠は拳を握りアカネはただ前を見据えて走る

 

アカネ「...」

 

すると突然アカネは夏世を下ろす

 

アカネ「蓮太郎さん、ここは私が残る、もしお兄ちゃんの撃ち漏らしが来ても私が仕留めるから」

 

蓮太郎「っな!?お前までかよ!?」

 

アカネ「大丈夫!一人じゃないから!」

 

延珠「え?」

 

アカネ「一緒に戦ってくれる?千寿ちゃん?」

 

夏世「っ!?...はい、私で良ければ」

 

夏世は弾幕を全て地面に放り戦闘態勢に入る

アカネは小型のナイフを二本逆手に持つ

 

アカネ「さぁ!蓮太郎さん!早く!」

 

夏世「大丈夫です、もしも何かあれば私たちも逃げますから...将監さんをお願いします」

 

夏世とアカネの言葉に蓮太郎は目をぎゅっと瞑り思考する

そして一気に目を開く

 

蓮太郎「頼んだぞ!二人とも!行くぞ延珠!」

 

延珠「うむ!二人とも頑張るのだぞ!」

 

蓮太郎と延珠は街の中に走るアカネと夏世は警戒しながら会話をする

 

夏世「...私だけでも良かったんですよ?」

 

アカネ「お兄ちゃんが言ってたでしょ?1人だと死んじゃうよって、千寿ちゃんのスタイルじゃすぐに限界がくる、だから私みたいな近距離特化の人がいないときついと思うよ」

 

夏世「...いざという時は本当に逃げますよ?」

 

アカネ「うん、私も死にたくはないもん...お兄ちゃん...頑張ってね(ぼそり)」

 

 

 

 

蓮太郎side

 

蓮太郎たちは街に入った、しかし街の中は先ほどの戦闘音は聞こえず異様な程に静まり返っている

 

蓮太郎「(...もう戦闘は終わったのか?)」

 

蓮太郎は警戒を怠らずに周囲を見る、するとビルとビルの間から影が現れた

そちらの方にXDを向けるとすぐに正体が分かる

蓮太郎や真莉に因縁を付けてきた髑髏スカーフの筋骨隆々の男伊熊将監だった

 

しかし将監の目は焦点が合わず足取りもフラフラしている、将監が口を開く

 

将監「お、おい、あんた...俺の、俺の剣を...知らないか?あれがあれば...まだ...戦え...る」

 

蓮太郎は驚愕する、伊熊将監の求める剣はその背に突き刺さっていたからだ、将監は蓮太郎の脇を抜け大量に喀血して地面に倒れそのまま動かなくなった

 

蓮太郎「(IP序列1584位の上位序列者がこんなに簡単に!?)」

 

真莉の予感が当たってしまったと蓮太郎は理解した

 

蓮太郎「延珠、このまま大通りまで行こう、ただ何があっても我慢するんだ」

 

延珠「何があっても?これ以上何があると言うのだ...」

 

延珠は声を震わせながら蓮太郎に問うが蓮太郎は首を振るだけで何も言わない

やがて大通りに出るとそこはまさに死地だった

かなりの数のプロモーターとイニシエーターの死体がそこら中に転がっている

 

延珠はそれを見て叫びそうになるがなんとか踏ん張る、足は震え今にも膝から崩れ落ちそうなのを必死でこらえていた

 

すると突然笑い声が聞こえた

 

???「パパァ、やっぱり真莉じゃ無かったよ〜、でもこいつらを斬れば真莉も来るよね?」

 

???「ヒヒヒ、そうだね、小比奈、きっと来るだろうね」

 

現れたのは今回の討伐戦のターゲットであり最強の敵、蛭子影胤とその娘蛭子小比奈だった

 

影胤「こんばんは里見くん、いい夜だね、大絶滅を起こすにはもってこいだ...決着を付けよう!」

 

 

 

 

 

影胤討伐作戦本部

 

作戦本部では聖天子を始め各お偉いどころが集まって見守っていた、すると突然扉が開き全員がそちらに向く

現れたのは天童民間警備会社社長、天童木更だった

木更の登場に真っ先に反応したのは木更の祖父天童菊之丞だった

 

菊之丞「木更...」

菊之丞が何かを言おうとした瞬間聖天子がそれを遮る

 

聖天子「私がお呼びしました...天童社長、里見さんは影胤に勝てますか?」

 

聖天子の問いに木更は答える

木更「私の期待を加味して良いのであれば...勝ちます、絶対に」

 

それに意を唱えたのは別の男性だった

 

男「馬鹿な!相手は新人類創造計画の生き残りなんだぞ!?勝てるわけが...」

 

男はそこまで言うが木更がそれを遮る

 

木更「10年前、私の家にガストレアが侵入しました、そのガストレアに私の父と母は食い殺されました」

木更はそこまで言うと天童菊之丞を睨みながら続ける

 

木更「私はそのストレスで腎臓の機能がほぼ停止していますその時里見蓮太郎は私を庇って左目、右腕、右足をガストレアに奪われました...瀕死の彼が運ばれたのはsection22...執刀医は室戸菫医師」

 

木更言葉を反復するようにつぶやく男

男「室戸菫?...っ!?まさか彼も!」

 

男は何かに感づき狼狽えた、木更はもう語ることは無いとばかりにモニターを見る

そこには今にでもやりあいそうな四人が映っていた

 

 

影胤「君はケースを取り戻せないよ、なぜなら...私たちが立ちはだかっているからだ!」

 

蓮太郎「...二度の敗北、そして味方の全滅...願ってもねぇ展開だ糞ヤロォ!お前の語る未来!断じて許容出来ねぇ!」

 

影胤「ふふふ(パチン)」

 

影胤は不敵に笑い指を鳴らす、すると影胤から青白い円形の膜が現れ迫ってくる

蓮太郎はその膜に向かって拳を振り抜く

 

蓮太郎「天童式戦闘術!一の型三番!轆轤鹿伏鬼!!」

 

青白い膜と蓮太郎の拳が激突する、影胤は余裕を見せるが蓮太郎の右腕から薬莢が排出され勢いがます

蓮太郎の拳が青白い膜を突き破り影胤の顔面に命中し影胤は吹き飛ばされる

 

影胤「ぐぬう!?(ズザザザザ!)ック!マキシマム・ペインを破った!?」

 

影胤は驚愕の眼差しを蓮太郎に向ける

蓮太郎の右腕と右脚の皮膚が破れたかと思ったらその皮膚の下から黒い義肢が現れる

 

影胤「バラニウムの義肢だと!?まさか里見くん!君は!?」

 

蓮太郎「俺も名乗るぞ、影胤、元自衛隊東部方面隊、第787機械化特殊部隊、新人類創造計画...里見蓮太郎!」

 

影胤は惚けていたと思ったら突然笑い始めた

 

影胤「そうか、君も...うぐ!?...私は痛い、私は生きてる!素晴らしきかな人生!ハレルゥゥゥヤァァァ!!」

 

影胤はそう言うと二人の間から小さな影が飛び出す

 

小比奈「パパをいじめるなぁぁぁ!!」

 

小比奈の二振りの小太刀は蓮太郎の延珠の蹴りで相殺される

最終決戦が始まった瞬間だった




まぁ将監さんは死にますよね...

真莉くんがガストレアを引き付ける役目を負いました
因みに蓮太郎、延珠ペア、影胤、小比奈ペアの戦闘は書きませんよ?
原作やアニメ通りに進行しますので書いてもなぁと思って次は書きません

次回は真莉くんの戦闘に力を入れてみようと思います!
それでは!

誤字、脱字や感想等あればよろしくですー


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第14話

やはり戦闘シーンって難しいんですのネェェ...

まぁここら辺が限界なので大目にみてください...


 

恐らくゴリラのガストレアだろう、恐らくというのは普通のゴリラと違い丸太のように太い腕が4本もあるからだ

 

ゴリラのガストレアは大きく咆哮し目下の相手にその腕を振りかざす

目下の相手...真莉はその腕にそのまま自分の拳をぶつける

 

拮抗はほんのわずか、吹き飛んだのはゴリラのガストレアだった

ゴリラのガストレアの腕は一本根元から千切れ後ろにいた別のガストレアに命中する

ゴリラのガストレアは痛いのかさらに大きな咆哮を上げ暴れまわる、不意に真莉が消える

現れたのはゴリラのガストレアの懐だった

 

真莉「...うるせぇんだよ、クソ猿が」

 

普段より更に低い声で放った言葉をゴリラのガストレアは最後まで聞くことは出来なかった

真莉の拳かそのガストレアの顔面を吹き飛ばしたのだ

 

真莉は荒い息を吐く、もうかれこれ10数分、迫るガストレアを殺しているからか真莉の体は返り血で真っ赤に染まっており赤くないのがどこなのか分からないくらいだった

 

体の至る所にある傷もどんどんと回復していく

 

真莉「(体は回復しても体力までは回復しねぇからな...流石にキツイか...)」

 

インターバルもなしに続々と現れるガストレアに真莉は嫌気がさしてきた

すると今まで最大で三体ほどが同時に迫って来たのに今回に限っては視認できる数で八体のガストレアが一気に襲ってくる

 

真莉「(っち、しゃあねぇか...ここを通すわけにはいかねぇ)」

 

真莉は襲い来るガストレアに対して目を瞑った

一体のガストレアが彼を食べようと大口を開け迫る、いざ食べようと口を閉じた瞬間彼はもうその場にいなかった

食べようとしていたガストレアは首を振り探す

後ろから何かが倒れる音がして反射的にガストレアはそちらを見る

そこには先ほど食べようとしていた人間がいた、その下には飛び出した七体のガストレアが全て横たわっていた

 

殆どのガストレアが首から上を吹き飛ばされていた

ガストレアはその人物に特攻を仕掛ける、しかし動こうとした瞬間にもう彼は懐にいた

 

真莉「...鈍い...《剛掌断》!」

 

ドグシャ!ズッズゥゥン

鈍い音かあたりに木霊する

ガストレアは上半身が吹き飛び絶命する

その一撃に一番驚いていたのはその様子を見ていた影胤討伐作戦本部一同だった

 

 

作戦本部

 

作戦本部内は騒ついていた、ガストレアはどれもがステージ2からステージ4までかなりの数なのにそれを全て倒しているのがまだ成人にもなっていない高校生の少年がたったの1人で

 

しかもそのどれもがほぼ一撃で仕留めているのだ、驚愕しないわけがなかった

 

男1「なんだあの少年は!ありえないぞ!」

 

男2「あの数のガストレアを...たった一人で...」

 

男3「というより最初に貫かれなかったか!?どうしてあんな動きができるのだ!?」

 

聖天子「お静かに、目の前で起こっているのが現実です、彼はそういうものを持っている、そう捉えるしかありません」

 

聖天子の言葉に誰もが息を飲んだ

聖天子はチラリと隣にいる自分の補佐である天童菊之丞を見た

菊之丞は何かを考える仕草をしている

 

聖天子「どうしました?菊之丞さん?」

 

菊之丞「いえ、ただ...何を焦っているのかと思いましてね」

 

菊之丞の言葉に聖天子を含めた全員が菊之丞を見る

 

聖天子「どういうことですか?」

 

菊之丞「私は奴と戦った事があります」

 

菊之丞の発言に更に驚愕する一同

 

菊之丞「その時は彼が撤退したからなんともなかったのですが...正直そのまま続けていれば私とてやばかったかもしれませんな」

 

聖天子「そんな話は初めて聞きました、私はあなたがこう言えば彼は協力してくれるといったから行っただけなのですよ?いつそんな事を」

 

菊之丞「あれはそうですね...今からおおよそ8年前でしたかな、私からではなく、彼から挑んで来ました、その時はまさしく獣そのものでしたが」

 

木更「そんなの信じられるとでも?」

 

木更は菊之丞を睨みながら問う

菊之丞はふん、と鼻を鳴らす

 

菊之丞「オーバーペースだ、このままではやばいやもしれぬ」

 

本部内の全員がまたモニターに釘付けになる

 

菊之丞「何故力を使わぬ......(ボソ)」

 

菊之丞の呟きは誰にも聞こえなかった

 

 

 

真莉side

 

どんどん迫るガストレアを一体ずつ、確実に、的確に仕留めていく

しかし最初にいた場所よりもどんどんと下げられていく

 

真莉「(っち、まだか!?ぶっちゃけ賭けだが方法はそれしかねぇんだぞ...)」

 

真莉が考えながらガストレアを仕留めていると急に真莉の動きがピタリと止まるそれが好機と見たのか一体の狼のガストレアが一気に真莉に迫る

 

真莉は明後日の方向を向いて止まったまま

 

ガブリ!

真莉の肩にガストレアが噛み付く、肩からかなりの量の血が噴出する

他のガストレアもどんどん真莉に群がり真莉に噛み付きやがてガストレアで真莉の姿が見えなくなってしまった

 

 

作戦本部

 

真莉の肩をガストレアが思いっきり噛み付いていたのを聖天子は見てしまった

 

悲鳴を上げようとした瞬間他の場所から歓声が上がった

 

監視官「蛭子影胤の反応消失!」

 

おぉぉぉぉ!

と大きな大歓声が包む、しかし聖天子は手放しで喜べなかった

真莉が大量のガストレアに襲われているのだ

もしかしたら死んでしまっているかもしれない

更に追い討ちをかける出来事が起こる

 

ビー!ビー!

モニターからけたたましい程の警告音が鳴り響く

 

監視官が急いでそれを見る、監視官は驚愕する

 

監視官「こ、これは!?大変です!!聖天子様!!」

 

 

 

蓮太郎side

 

蓮太郎の携帯が不意になる、相手は蓮太郎が勤めている会社ら天童民間警備会社の社長、天童木更だった

蓮太郎はそのまま出る

 

蓮太郎「もしもし?木更さん?約束、守ったぞ」

 

木更「えぇ、見てたわ里見くん」

 

木更はそこで区切ると真剣な声色で蓮太郎に言う

 

木更「だけどね里見くん、残念なお知らせがあるの...ステージVのガストレアが現れたの」

 

木更の言葉は蓮太郎を驚愕させるには十分過ぎた

 

蓮太郎「そんな...もう、終わりなのか?」

 

木更「まだ終わらせない!良い?里見くん?聖天子様から私の作戦のお許しが出たわ、答えは貴方から見て南東の方角にあるわ!」

 

木更の言葉で蓮太郎はその方角を見る

そこにはガストレア大戦期末期の遺物

完成はしたが遂に一度の試運転もしないまま陣地放棄を余儀無くされ敗戦の日を見ることになった超巨大兵器...通称天の梯子

またの名を線形超電磁投射装置、直径八百ミリ以下の金属飛翔体を亜光速まで加速し打ち出すことの出来るレールガンモジュールだった

 

木更「里見くん、貴方はそのまま天の梯子まで走って!古畑くんを護衛に向かわせるわ!」

 

蓮太郎「...分かった!行くぞ!延珠!」

 

延珠「うむ!」

 

蓮太郎と延珠は南東にある巨大な兵器、天の梯子まで走った

 

 

 

作戦本部side

 

時は数分前に遡る

 

真莉に噛み付いていたガストレア達は一向に動く気配がない

他のガストレアも動きがない

 

それにモニターを見ていた一同は不自然に思う

 

何故ガストレア達は動かない?

 

すると噛み付いていたガストレア達に変化が現れる

ガストレア達の体のが膨れたり縮んだりしている

そして...バァァン!!

 

ガストレア達は体内から爆散した

作戦本部の一同は全員この現象に唖然としてみていた

降り注ぐガストレアの血の雨の中真莉は佇んでいた

真莉はモニターの方をちらりと見た、分からない筈のカメラに気づいた真莉にもそうだが真莉のその目に一同呆然とする

 

その目は...真っ赤に染まっていた

 

 

 

 

 

 

真莉side

 

真莉はガストレアに噛み付かれガストレアに潰されている中あることを考えていた

 

「(やっと...来たのか...)」

 

声には出せなかったがそれで十分だった、真莉の目に力が宿る

暗闇の中その力の本流が吹き荒れる

 

噛み付いていたガストレア達は内側から全て爆散した

 

真莉「...見られてる?そこか...」

 

真莉はモニターの位置を的確に見つけた

その目は赤く染まっている

 

真莉はすぐに目線をまた明後日の方向に向けた

 

そして...

 

真莉「...ォォォォォオオオオオオオ!!!」

 

ビリビリと空気が振動する

人間が出せる声を遥かに超えた声量の咆哮に待機していたガストレアは全てその場から消えていった

 

真莉は同じ方向を見続ける

その方角は東京エリアの近くの海の方

...ちょうどそのタイミングで突如として現れたのは...ステージVのガストレアだった

 

 

 

 

 

 

アカネ&夏世side

 

 

...ォォォォォオオオオオオオ!!!

 

 

アカネと夏世はビックリする、真莉に言われて街より少し離れた位置で待機していた2人は突如として聞こえた咆哮に2人は戦闘態勢に入る

 

夏世「...今のは何でしょうか?」

 

アカネ「わかんない、でも...何かが起きてる」

 

すると2人の上空に影が出来る、夏世はショットガンを、アカネは真莉から受け取った二振りの小型のナイフを構える

 

すると上から降りてきたのは...

 

夏世「っあ...ご無事でしたか、古畑さん...なんですかその目は!?私たちと...同じ?」

 

アカネ「お兄ちゃん!無事でよかった!...お兄ちゃん?」

 

真莉は真剣な表情で2人に言う

 

真莉「千寿、アカネ、お前らに頼みがある」

 

その真剣な表情で言われた2人は顔を引き締める

 

真莉「よく聞け?ステージVが現れた」

 

その発言に2人は驚愕する

 

夏世「ステージV!?」

 

アカネ「そんな!?ダメだったの!?」

 

真莉は首を振って否定する

 

真莉「いや、おそらく別の作戦を開始すんだろ、俺の予想だが天の梯子を使うだろ、それを動かすのは蓮太郎が生きていれば蓮太郎だろう」

 

真莉の言葉に意を唱えたのは千寿夏世だった

 

夏世「本当にその作戦になるとお思いですか?もし里見さん達が負けてしまっていたら...」

 

真莉「あいつは負けない」

 

夏世の言葉に即答で答える真莉

 

真莉「友達を信じなきゃな...話を戻そうお前ら2人にはもし天の梯子に迫ってくるガストレアがいればそれを潰してほしい」

 

真莉の提案は当然だった、ステージVを倒せる唯一の方法の天の梯子、これが破壊されれば東京エリアは本当に終わる、終わってしまう

 

夏世「その話だと古畑さん、貴方はどうするんですか?」

 

アカネ「お兄ちゃん?」

 

真莉は街の方を見て2人に言う

 

真莉「流石に血だらけだからな、ちょっと洗ってくる...ついでに人助けだ、頼んだぞ、2人とも」

 

そう言うと真莉はその場から消える

残された2人も頷きあいその場から天の梯子を目指し走り出した



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第15話

ちょっと長くなりました
次で原作1巻の内容が終わり第2巻に移りますね

色々如何しようかなと考えながらなのでもしかしたら更新が遅くなるかもしれませんが頑張っていきますよ!

それでは第15話をどうぞ!


真莉は街の中を走っていた

目的の場所は近い

 

真莉「(ん?あれは...ちぃ!間に合え!)」

 

真莉は地面を思いっきり蹴り上げる、先ほどよりもさらに早く空を滑空した、目的地は壊れてもう動かなくなっている船の甲板

目の前の船の甲板にいたのはボロボロのスカートを地面につけ大声を上げ泣いている少女...

 

その少女を食べようとしている最初に会ったワニのガストレア

 

食べようと大口を開け丸呑みしようとしていた

少女はそれに気づきもしないで涙を流し叫んでいる

 

《空破掌》(くうはしょう)

 

ワニのガストレアは突如として襲われた下からの衝撃で空中に吹き飛ばされた

 

ズッズゥゥン!

空中に放り出されたガストレアは地面に叩きつけられジタバタと動いている

 

吹き飛ばした人物...真莉はそのままの勢いを維持し甲板から海に飛び降りる

ドッボォォン!

と、白い波が高々と上がる、泣いていた少女...蛭子小比奈は唖然とした表情を浮かべた

 

少しして海から人影が二つ現れる

ボコボコ...ボコボコ!ザッバァァン!!

 

真莉「(ぷはぁ)けほ、けほ...しょっぺぇ...」

 

小比奈「真莉!パパ!」

 

真莉は肩に今回のターゲットである蛭子影胤を抱えて海から顔を出す

小比奈はそれを見て顔に喜色の色を出し辺りを見渡しロープになるものを探す

少し長い紐のようなものを見つけ海に放り投げる

 

真莉「サンキュ...よっと」

 

真莉は紐を影胤を背負ってない肩の方に巻きそのまま上に上がる

甲板に上がり影胤を横にする

 

横にした瞬間先ほど吹き飛ばしたワニ型のガストレアが明らかに怒ってますと言える様な目をして真莉と小比奈、影胤に襲い始めた

 

真莉はカウンターで撃滅しようとした瞬間目の前に青白い膜の様なものが現れガストレアの攻撃を食い止めた

 

その方を見ると影胤が横になりながら手をかざし止めていた

真莉は空いている横に瞬時に移動し真横からガストレアの脇腹あたりに一撃を入れる

その威力にガストレアは苦悶の声を上げ船から落とされ地面に転がった

真莉さ影胤の方を向く、影胤は小比奈に支えられながら座る

 

影胤「ゲホ...ゲホ...どういうつもりだい?何故私を助けた?」

 

影胤は真莉に問うが真莉は海の向こうを見続ける

 

影胤はそれでも続ける

 

影胤「私を生かしておけばまた同じ様にするぞ、私の目的はガストレア戦争を引き起こす事なのだからな!」

 

影胤は高らかに宣言した、真莉は海の向こうを見ながら答える

 

真莉「別にお前だから助けたわけじゃない、お前の娘が泣いてお前の無事を祈った、理由はそれだけだ...誰が好き好んでお前なんか助けなきゃなんねぇんだよ」

 

影胤「...ステージVはどうなったかね?」

 

真莉「...ステージV、スコーピオンはちゃんと召喚されたさ、良かったな、お前のこれで仕事は終わりだろ?」

 

影胤「...いいのかね?こんな所にいて、戻って対策でも打たねば本当に東京エリアはおしまいだよ?」

 

真莉「スコーピオンは他のステージV...タウルスやリブラ、サジタリウスと比べて特に秀でた能力は存在しない、ただデカイだけの存在だし対策なんてもう上の連中が決めて作戦を始めてるさ」

 

遠くからゴゴゴゴゴと大きな音が聞こえる

影胤はそちらの方を見ると合点がいったとばかりに頷いた

 

影胤「なるほど...天の梯子...か...ん?」

 

影胤は何かの違和感を感じながらも真莉に問う

 

影胤「君は他のステージV...ゾディアックの詳細を知っているのかい?」

 

真莉「...まぁよく知ってはいるかな...お前ら人間よりは(ぼそ)」

 

影胤はそれに何も答えずに真莉を見る

真莉は未だに海の方を向いている、影胤はやっと違和感が何かに気づく

 

影胤「君は...何故...」

言おうとした瞬間に真莉は先に言う

 

真莉「お前の聞きたい事は俺の現状か?」

 

真莉の今の姿は真っ赤に染まった赤髪と目、本来の黒髪に黒目しか知らない影胤と小比奈はそれをじっと見ていた

 

真莉は海の方から影胤の方を改めて向く

 

真莉「単純に化け物だからで良いだろ、説明なんかしようがねぇ、見たまんま、それで終わりだ...ついでに」

 

真莉は真横に飛ぶ、影胤は瞬時に青白い膜を張る

鈍い音がして先ほど吹き飛ばしたガストレアがまた来ていた

 

真莉は着地し側に落ちていた小比奈の武器であるバラニウム刀を拾い逆さまに構え地面を蹴る

ガストレアは真莉をターゲットとして定め巨大な尻尾を振りぬく

 

真莉は尻尾を交わしそのまま刀を振り下ろしガストレアの尻尾を切り落とす

ガストレアは苦悶の声を大きくあげ尻尾から大量の血を噴出させる、ガストレアは大口を開け咬みつこうと迫る

もう少しで口が届くと思いきやまた寸前で膜に阻まれ弾かれる

真莉はバラニウム刀を小比奈に放り投げ自分は空中に飛ぶ

 

バラニウム刀を受け取った小比奈も瞬時に地面を蹴りガストレアに迫る

 

真莉「小比奈!影胤!」

 

小比奈「うん!」

 

影胤「正直今は動きたくはないのだが...ね!」

 

真莉は上から、小比奈は右、影胤は真正面からガストレアに迫った

 

真莉「《空牙》(くうが)!」

 

真莉は空中で回転しガストレアの頭部に向けカカト落としを

 

小比奈「斬!」

 

小比奈は右からバラニウム刀を

 

影胤「《エンドレス・スクリーム》!」

 

影胤は真正面から自分の斥力フィールドを自分の掌から槍状に射出する

 

 

ガストレアは声も上げれずに一瞬で殲滅された

 

真莉は着地した時には元の黒髪と黒目に戻っていた

 

真莉「こっちは終わったな...蓮太郎もやったか(ぼそ)」

 

真莉の呟きは大きな轟音によって誰にも聞かれなかった

轟音と衝撃で飛びそうになるのを必死で堪える小比奈、一直線に飛んだ光をじっと見つめる影胤と真莉、かなり遠くで大きな衝撃音が聞こえた

 

真莉「次に動くのは...どいつだろうな...なぁ、スコーピオン(ぼそ)」

 

真莉の携帯が鳴る

真莉はその携帯を...海に放り投げた

チャポンと小さな音がして携帯が海に沈む

 

影胤「良かったのかい?国家元首殿からの連絡だろう?」

 

真莉「別に、俺の役目自体すでに失敗で終わってる、今回俺がこの戦いに参戦したのは自分の尻拭いだしな...そんじゃな、俺はもう行く、妹と友達を待たせてるんでな...死ぬんだったら勝手に死ぬと良い、俺の知らないところでな」

 

真莉はそこまで言うと地面を蹴り走り出す

残された蛭子親子はその姿が小さくなるまで見ていた

 

影胤「...私たちの完全敗北だね」

 

小比奈「...真莉」

 

影胤「また会えるさ、近いうちにね」

 

小比奈「うん、パパ」

 

 

 

 

 

 

数日後

 

真莉と蓮太郎はなぜか聖居にいた

聖居の中は形容するなら金殿玉楼といった趣きだった

蓮太郎は頭を掻きながら着慣れない真っ白なフォーマルスーツの襟を正す

真莉はおよそ聖居には似つかわしくない極々普通の服、上は黒地のTシャツ、下はジーパンとありえない姿でこの場にいた

真莉が呼ばれたのは蓮太郎が家に来たからだった

 

 

真莉「お前コスプレ趣味だったか...なんだ、ここまで来るの大変だったろう」

 

真莉は冷めた目で蓮太郎を見る、蓮太郎は真莉に全力で反論する

 

蓮太郎「ちげぇよ!これは木更さんに渡されたんだ!」

 

真莉「ここにいるのとなんか関係あんのか?」

 

蓮太郎「木更さん伝いで聖天子様からでお前もこいってよ、お前電話壊したんだろ?かわねぇのか?」

 

真莉「あ〜...あん?俺は別に民警じゃねぇし行く意味なくないか?」

 

蓮太郎「わからん、でも来いって言われてるから行かないわけにもいかないだろ...」

 

真莉「はぁ...わぁったよ、しゃあねぇ、ちょっと待っててくれ、着替えてくる」

 

蓮太郎「あ、おう」

 

 

 

そんなこんなで真莉達は聖居まで来ていた

真莉は未だに自分が何故ここにいるのか分かっていなかった

 

真莉「今回呼ばれたのは目覚しい戦果を挙げた民警に対する受勲式だろ?やっぱり呼ばれた理由が分からねぇ、帰っていいか?俺」

 

それに意を唱えたのは木更だった

 

木更「ダメよ、聖天子様は貴方にも来いって言ったのだから、何されるか分かったもんじゃないわよ?相手は東京エリアの国家元首なんだから」

 

蓮太郎「木更さん」

 

真莉「よう、天童社長、別に俺には相手が誰だろうと関係無いがな、誰かに媚び売るつもりもねぇしな、俺は自然体さ、誰に対してもな」

 

蓮太郎「それは問題じゃねぇのか...」

 

木更「まぁでも今日の主賓は里見くんよ、だからお上りさんみたいにきょろきょろしないでね、社長である私が恥ずかしくなるから」

 

木更はそこまで言うと時計を確認する

 

木更「時間よ、いい?さっきも言ったけどこういう式典は聖天子様の政務の時間を削って行われるんだからなるべく早く終わらせるのが暗黙の了解なの、だから彼女が聞いてきた質問は、はいかいいえとかなるべく簡潔に、決して質問を挟まないこと、良いわね?」

 

蓮太郎「はい」

 

木更「いい返事ね、古畑くんも良いわね?」

 

真莉「めんどくせぇが俺も早く帰りたいんだ、さっさとするさ」

 

広間に続く大扉を木更は開ける蓮太郎は背後を見る

それに気づいた木更は蓮太郎に言う

 

木更「今回の顛末、里見くんにしては良くやったわね、偉いわよ、これからも頑張って戦ってね?私のナイト様?」

 

その言葉に蓮太郎は何かを言いたげにしたがとっさに言葉が出てこなかった、大扉が閉まり首を巡らせると正面にはレッドカーペットと小さくつづらに折れた大理石の階段が伸びており頂上の玉座には聖天子が座っていた

 

聖天子「よくいらっしゃいましたね、里見さん、そして無理を言って来ていただいてありがとうございます、古畑さん」

 

聖天子を生で見るのは初めてだった蓮太郎は自然と背筋が伸びるのを感じた

 

聖天子「古畑さんはどうしてそんなところに?」

 

聖天子の一言で隣に真莉がいないことに気付いた蓮太郎は焦り小声で真莉を呼ぶ

 

蓮太郎「おい!真莉!なんでそんな離れてんだよ!?」

 

真莉は溜め息を吐き改めて蓮太郎に近づく

 

聖天子は階段をゆっくり降りてくる

 

聖天子「お二人のお怪我はもう大丈夫ですか?」

 

蓮太郎「はい、おかげさまでだいぶ良くなりました」

 

真莉「そもそも俺は怪我してねぇよ、大丈夫も何も無い」

 

真莉のまさかの態度に一同が騒然とする

 

国家元首を相手にそこまでの傍若無人の態度をとった真莉に全員が敵意を向けるが聖天子は微笑むにとどまった

 

聖天子「どうですか?東京エリアの救世主になった気分は?」

 

蓮太郎「はい、周りの反応が少し変わったのでなんと言うかこそばゆいです」

 

蓮太郎達が放った神速の狙撃弾は寸分違わずスコーピオンの頭部に巨大な風穴を開け脳髄を吹き飛ばした、いくらステージVと言えど即死だった

 

 

聖天子「あなた方のような優位な人材があの場にいてくださったことに私は誇りに思います、里見さん、古畑さん、あなた方はこれからも東京エリアのために尽力してくださいますね?」

 

蓮太郎「はい、この命にかえても」

 

真莉「自分の住む家を無くすわけにはいかんしな、その時はまた力を振るう、約束はしよう」

 

蓮太郎は教わった通りに跪くが真莉は相変わらずダルそうに佇む

聖天子はなにもいわず大きく両手を広げ厳かに告げた

 

聖天子「お集まりの皆様、お聞きになられたでしょうか?ここにいる英雄はこれからも東京エリアのために戦ってくれることを誓ってくれました」

 

聖天子は続ける

 

聖天子「ゾディアック、《天蠍宮》(スコーピオン)の撃破、並びにIPS序列元百三十四位、蛭子影胤、蛭子小比奈ペアの撃破、以上の事から私とIISOは協議の結果今回の戦果を特一級戦果と見なし、里見蓮太郎と藍原延珠ペアをIP序列千番に昇格する事に決めました」

 

観衆がどっと喜びに沸く、彼女は蓮太郎に向き直り微笑む

 

聖天子「里見蓮太郎、あなたはこの決定を受けますか?」

 

蓮太郎「はい、喜んで」

 

聖天子はいたずらっぽく笑う

 

聖天子「里見・藍原ペアは元は序列十二万三千四百五十二位ですから、これは凄まじい昇格ですよ、おそらく史上初でしょう、ギネスブックに載るかもしれませんね」

 

蓮太郎「は、はい」

 

聖天子「古畑さんの報酬はまた後日お伝えします、それで良いですか?」

 

真莉は明らかに嫌そうな顔をした

 

真莉「じゃあ俺来る意味なかったじゃねぇか...」

 

聖天子は苦笑し蓮太郎に向き直る

 

聖天子「では最後に、何か言いたい事はありますか?」

 

ここでいいえ、ありませんとそう言えばこの場は万事滞りなく終える事が出来ただろう、しかし蓮太郎の、発言は別の言葉だった

 

蓮太郎「あります」

 

聖天子は驚き目を見開きあたりの空気が一変して張り詰めた

その中で真莉はやっぱりこうなったかと言うような表情をし大きく溜め息を吐いた




ワニ型どこから現れたって思いましたな...
まぁ良いかと判断して出しました
何故か共闘してるし、でもまぁこれで真莉くんtueeeが始まってしまうと思います...色々考えねば

お気に入りが20件行きました!入れてくださった方々ありがとうございます!
これからも頑張って行きますのでよろしくお願いします!


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第16話

次で終わるって言いましたが長くなり過ぎたので二話に分割しました

この話の次で終わりの予定です!


蓮太郎のまさかの一言で辺りはより一層空気が張り詰める

本来なら聖天子の政務を削りすぎない為早い段階で区切るのが暗黙の了解なのだが蓮太郎はそうしなかった

 

聖天子は驚きから覚め凛とした表情を作り蓮太郎に問う

 

聖天子「...聞きましょう」

 

蓮太郎「...俺はケースの中身を見た」

 

蓮太郎の言葉で聖天子は瞳を見開いた、周囲の人間は話の流れが見えず困惑した様なざわめきが生まれる

その中で聖天子程ではないがもう一人驚いている人物もいた

 

真莉「(そっか、見られていたか...失敗したな)」

 

真莉も少し驚きながらも真剣な表情を崩さない

 

蓮太郎は跪きながら続ける

 

蓮太郎「悪いとは思ってる、ゾディアックガストレアを倒した後ミサイルに教会が焼かれるまでの短い間に取り返したケースを開けて見たんだよ、その中には...」

 

蓮太郎は一旦区切り続ける

 

蓮太郎「...壊れた三輪車が入ってたんだ...どういう事だよ!何故!あれがステージVを呼び出す触媒になりえたんだ!いや、そもそも突如世界に現れた適性生物ガストレアってなんなんだ!十年前、この世界に何があったんだ!教えてくれ聖天子様!」

 

場にぶちまけられた喧噪はもはや収拾がつかないほど大きくなっていた、その中で真莉は目を瞑り思考していた

 

真莉「(そっか...あれから、十年か...色々変わるもんだな...っと、流石に止めなきゃな、ってかもしかして俺このために呼ばれたのか?はぁ)おら、蓮太郎、そこまでにしとけ」

 

まさかの横槍で蓮太郎は不機嫌に真莉を見る

真莉は意を介さずに続ける

 

真莉「お前だってコスプレ好きってのがバレるのは嫌だろう?聞かれたくねぇ事、言いたくねぇことだって誰にでもある、それこそ俺にだってな、そんぐらいわかるだろ?」

 

蓮太郎「っちょ!?バカ!?コスプレ好きじゃねぇよ!!」

 

周囲がまさかの一言で周囲は先ほどと違い笑いが生まれてきた

聖天子は蓮太郎と真莉に近づき二人に聞こえるぐらいの声量で言う

 

聖天子「七星の遺産は東京エリアの外、未踏査領域のとある場所に隠しておいたものなのですがその一つが今回奪われてしまったのです、あれは本来破壊した場合どうなるか予想がつかないものでした、ゾディアックはそれを取り戻しに来たのです、それ以上はお教えする事はできません」

 

蓮太郎「お教えできませんってオイ...」

 

そこまで言うと蓮太郎が何故か浮く、蓮太郎が驚愕する

 

蓮太郎「っな!?おい!?真莉!?」

 

真莉が蓮太郎の襟を掴み絶妙な力加減で持ち上げる、周囲の人間が驚愕の眼差しを向ける中真莉は蓮太郎に言う

 

真莉「おら、分かったろ?これ以上聞いたって無駄だ、今のお前じゃなんもわかんねぇよ、分かったところで何もできねぇけどな(ボソ)」

 

真莉が言うとなんも言ってこない蓮太郎に視線を向けると蓮太郎が若干青い顔をして空気を求め口をパクパクしていた

 

真莉「あ、わりぃ」

 

真莉は謝ると蓮太郎を解放する

蓮太郎はやっと吸えた空気を一心不乱に吸い真莉に怒りを向ける

 

蓮太郎「なにしやがる!?死ぬとこだぞ!」

 

真莉「はいはい、そこらへんも含めて行くぞ、外でその話は聞いてやる」

 

蓮太郎はまだ何か言いたげだったが溜め息を吐き真莉に続く

大扉に近づいて来た時後ろから聖天子の声が聞こえた

 

聖天子「...彼女たちイニシエーターは可能性です、知っての通り序列が向上すれば民警のペアには様々な特権が与えられます、擬似的な階級もそうですがその中でも機密情報のアクセスキーは魅力的でしょう、貴方は序列が千番なのでアクセスレベルは三です、そして並み居るライバルを倒しIP序列十番以内に入れば最高アクセスキーであるレベル十二が与えられます...里見さん、勝ち取りなさい、欠番の《巨蟹宮》(キャンサー)を除く十一体、現存するゾディアック八体全てを倒し、藍原延珠と共に序列の階梯を駆け上がるのです、その時里見さんは知るでしょう、自分が何者で何をなすために生まれてきたのかを、強くなってください、そして最強になるのです、貴方が里見高春(たかはる)と里見舞風優(まふゆ)の息子を名乗るなら、貴方に真実を知る義務がある」

 

蓮太郎は弾かれたように振り向き聖天子に向かって突撃する

しかしすんでのところで真莉によって地面に抑えつけられる

蓮太郎は暴れるが真莉に拘束されているため身動きが取れない、地面に横たわりながら蓮太郎は続ける

 

蓮太郎「どういう事だよ!どうしてここで父さんと母さんの名前が出てくんだ!」

 

いつまで待っても答えを返さない聖天子に蓮太郎は噛み付かんとばかりに吠える、すると聖天子は冷ややかな瞳を向ける

蓮太郎はそれに射すくめられ動きを止める

真莉はもう良いと判断し蓮太郎の拘束を解く

 

聖天子「この場で私に掴みかかれば不敬罪で処刑されますよ」

 

蓮太郎は背筋が凍るような殺意が部屋に満ちている事に気がつく

しかし次の瞬間その場にいた聖天子と蓮太郎以外の人たちが急激に青ざめる

蓮太郎が気付いたのは先ほどと比べられないほどに吹き出した殺気だった

蓮太郎はその殺気を放っている真莉に顔を移す

真莉はダルそうに、それでいて普段より若干低い声で言う

 

真莉「別にお前らがどう考えようと俺には一切関係ねぇ...だがなぁ、俺の友達を目の前で殺そうなんて考えてんだったら...俺が相手になんぞ?」

 

ッゴ!っと風がなびく様な錯覚を覚えるほどの殺気にあたりが更に青ざめる

 

真莉「蓮太郎、お前もそんな事でぎゃあぎゃあうるせぇ、こんなとこで問題を起こしてみろ、お前だけの問題じゃなくなんだぞ、天童社長や延珠、それと夏世にこれ以上迷惑かけるつもりかお前は?」

 

真莉の言葉でハッとした蓮太郎は歯を食いしばり握った拳を震わせながら手を下ろし大扉に走り体当たりして外に出た

残された真莉は頭をガジガジと掻き蓮太郎を追うため踵を返す

すると聖天子が真莉に言う

 

聖天子「古畑さん、里見さんのこと、よろしくお願いいたします」

 

聖天子はぺこりとお辞儀をする、それを横目で見ていた真莉は言う

 

真莉「言われなくてもそのつもりだ、友達ってだけじゃねぇ...それが高春と舞風優との約束だしな...まぁつい最近なんだがな、あいつがあの二人の子供って知ったのは...最後にこれだけは言っとくぞ?あんたは隠し事向いてねぇ、さっさと話した方が楽になるとは思うがね...そんじゃな」

 

真莉は最後まで傍若無人な態度を取り大扉から出る、ゆっくりと扉が閉まる、聖天子は目を閉じ思考していた

 

聖天子「貴方は一体何がしたいんですか?真莉さん(ボソ)」

 

 

 

 

真莉と別れた蓮太郎は天童の屋敷に来ていた、天童本家は東京エリア第一区の一等地に立つ豪邸で屋敷というよりカントリーハウスを思わせる巨大な洋風建築だ

幼い蓮太郎が引き取られ育てられたのもこの家だった現在蓮太郎は八畳一間に二人暮らしだし木更も本家を出て自立している、こうやってこの家に訪れるのも随分と久しぶりだった

 

蓮太郎は合鍵で中に入ると目的の部屋まで一気に上がる、途中で老年のハウスキーパーとすれ違う

彼女は蓮太郎を見ると

 

女「ぼっちゃま...なのですか?」

と呟き持っていたお盆を落としてしまう

蓮太郎は何かを言おうとしたが早くしないと奴が帰って来てしまうと思い顔を伏せ知らないふりをして目的の場所に急ぐ

 

やがて目的の部屋の前まで来るとXD拳銃を抜き歯と膝を器用に使いサイレンサーを取り付けて連続で発砲

蝶番を撃ち抜く、やはり義手が無いと不便だなと蓮太郎は思いながらサイレンサーを取り外し空薬莢を拾い集めるとドアを破って部屋に入る

中は広く暖かなカーペットと反面の壁を埋める書架、そして中央には大きな紫檀材の執務机があった

 

蓮太郎は手早く済ませようとそう思って机の引き出しを開け書類を探し始める

 

すると突如蓮太郎の携帯が着信を知らせる

知らない番号からの電話だった

蓮太郎は一瞬迷ったが出る事にした

受話器を耳に当てて待つと聞こえて来たのは...

 

???『やぁ、里見くん、こんにちは』

 

背筋がぞわりとした、蓮太郎は暴れだしそうな心臓を押さえつけて大きく息を吐いた

 

蓮太郎「...生きていたのか、影胤」

 

蓮太郎は足のあたりがむずむずして蛭子影胤を蹴り飛ばした時の感触が蘇るのを感じた

あの戦いの後直ぐにステージVが現れたのでその後どうなったのか知らなかったが

流石に生きているとは不覚にも思っていた

 

影胤『いやいや、なんとかね、友人に助けられてね、中々効いたよ、今はその友人が安静にしろというのでね、しばらくは仕事ができなくて困っている』

 

蓮太郎「人殺しの仕事か?これを機会にやめたらどうだ?」

 

影胤『いや、表の仕事さ、そのうちまたどこかで会う事になるだろう、今日はその挨拶だ、次に会う時は...負けないよ』

 

蓮太郎「...次に勝つのも俺だ、お前にはもう負けねぇ」

 

実際のところあれは相手の裏をかいた奇策中の奇策を山程用いて辛くも勝利した戦いだった、万全の準備を整えた影胤ペアに正面から勝てるのは自分が知っている中では恐らく1人...いや、2人だろう

 

影胤『もう一つ、そろそろ里見くんにも私の依頼主を紹介しておこうと思ってね』

 

蓮太郎の背後で撃鉄を起こす音がして反射的に蓮太郎は携帯電話を捨て後ろを見ずにXDをドロウ、音をした方に向ける

 

蓮太郎は覚悟を決めゆっくりと立ち上がりながら振り返る

 

そこには蓮太郎に銃を向けている天童菊之丞がいた

蓮太郎の鼻先にはマグナム弾仕様の二連発ピストルが向けられていた

蓮太郎のXDも回避不可能な距離でトリガーに指がかかっている

 

菊之丞「コソコソと賊の真似か?蓮太郎?」

 

蓮太郎「...もう帰ったのかよ?夜まで帰ってこないとばかり思ってたぜ...天童閣下」

 

菊之丞「ここでなにをしている?」

 

蓮太郎「証拠になりそうなものを探してたんだよ、けどもういい、本人に直接聞いたほうが早い、天童菊之丞...表立っては今回の事件、轡田(くつわだ)防衛大臣の暴走って事になってる、だが俺はそうは思わねぇ、今回の一連の事件の黒幕、それはあんただ、天童菊之丞」

 

菊之丞は眉一つ動かさなかったが引き金に掛かった手に僅かに力がこもるのを感じて脈が早くなる

 

菊之丞「木更の差し金か?」

 

蓮太郎は少し考える仕草を見せ答える

 

蓮太郎「...俺の友達に相談して二人で決めたことだ」

 

菊之丞「...あの小僧か、相変わらず碌なことをせんな...」

 

菊之丞のまさかの言葉に蓮太郎は言う

 

蓮太郎「っ!?あんた、真莉に会ったことあるのか?」

 

菊之丞「そんなことはどうでもいいだろう、それより私が黒幕か...何故私がそのようなことをしなければならない?私の目的が東京エリアの破滅だと思ったのか?馬鹿らしい」

 

蓮太郎「俺も最初はそこがわからなかった、けれど影胤がケースを奪ってステージV召喚のために未踏査領域に逃げ込んだ時、何故かその情報が組織的にリークされる寸前だったんだよ、もしそんなことになれば東京エリアに壊滅的なパニックに陥って誰にもメリットが無いはずなのに...」

 

菊之丞「貴様は答えを見つけたというのか?」

 

蓮太郎「ガストレア新法」

 

蓮太郎の一言で菊之丞の眉がピクリと動く

蓮太郎は続ける

 

蓮太郎「聖天子様が他の反対を押し切って捩じ込もうとした法案だ、呪われた子供たちの社会的地位を向上させ共存していくための法律、十年前の大戦中にあんたは奥さんをガストレアに殺されて以来筋金入りのイニシエーター差別主義だ」

 

そこまで蓮太郎が言った瞬間何の前触れもなく腹を蹴られ蓮太郎は地面に転がる

菊之丞は憤怒の形相で蓮太郎に拳銃を押し付ける

 

菊之丞「貴様に何が分かる!!」

 

菊之丞の怒声に反論を加えたのは蓮太郎では無く新たに現れた第三者だった

 



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最終話

やっと書けた...

ちくしょう、無駄な仕事増やしやがってあのクソ上司どもが...

結構グダグダになってしまったのであんまし面白くないかも...



反論を加えたのは第三者、いつものようにダルそうな感じで話す真莉だった

 

真莉「分かるわけねぇだろうが、テメェの考えはテメェしかわかんねぇ、まぁジジイの考えなんざ分かる気もねぇけどな」

 

驚愕の眼差しを向ける蓮太郎

敵意丸出しといった表情を向ける菊之丞

それに意を返さずに欠伸をしてノビをする

 

真莉「ふわぁ、ったく、せっかく聖居での事が終わったら寝ようと思ってたのによぉ...面倒ごと増やしてくれたな蓮太郎」

 

蓮太郎「真莉!?なんでお前ここに!?」

 

菊之丞「小僧...何故ここにいる」

 

真莉「お前が下に敷いてる男は俺の友達何でな、それをそこまでやられてもって感じだ...まぁ、俺はお前の考えってのは大体わかっちゃうんだがなぁ」

 

菊之丞「...どういう事だ?」

 

真莉「それに俺だけじゃ無くて蓮太郎だって答えは見えてるはずだしな、答えは蓮太郎が出してくれるだろ」

 

蓮太郎「お前何の為に来たんだよ...改めて言うぞ!菊之丞!今回の事件の経過はこうだ、あんたは聖天子様が七星の遺産と呼んでいたステージV召喚の触媒を部下の一人に未踏査領域に取りに行かせた、首尾よく触媒を手に入れケースを影胤に受け渡して滞り無く終わるはずだった、だが部下は未踏査領域から帰る途中にガストレアに襲われて体液を送り込まれた、部下は命からがらモノリスの中に逃げ込んだが敢え無くガストレア化、モデル・スパイダーのガストレアになって一人の人間を感染させる事態になった...その証拠に連判状に名前が書かれている中で1人だけ未だに行方不明とされている、恐らく俺と延珠が倒した感染源ガストレアがそいつなんだろ」

 

蓮太郎がそこまで言うとその後に続いたのは真莉だった

 

真莉「最終的にあれだろ?影胤はケースを取り返したが今度はリークする筈の情報が報道管制によって素早く聖天子に封じられる、お前はガストレア新法を潰してガストレアの恐怖を思い出させる為にステージV召喚を実行させる事を是認した、東京エリアに大絶滅を引き起こすって分かっていながらな〜」

 

真莉がそこまで言うと菊之丞は火が付いたように叫ぶ

 

菊之丞「そうだとも!!全ては平和ボケした連中の目を覚まさせる為だ!何故忘れられる?何故だ!十年前のあの日、日が堕ち、地が裂け、この世界から人間が駆除されようとした!あの虫けらどもの血を宿したガキどもが何食わぬ顔でこの街を闊歩しているのだぞ!あの赤眼共はこの世全てを破滅させる悪魔だ!何故冷静でいられる?奴等にまともな人権を与えるだと?ふざけるな!」

 

菊之丞の言葉にいち早く反応したのは蓮太郎だった、蓮太郎は一瞬の隙をついて銃を持った手を払う、直後に銃声が轟き蓮太郎の頬を銃弾がかする

真莉は一拍遅れて動き銃を持っている手を蹴り上げ銃を吹き飛ばす

続けて蓮太郎は菊之丞の足を払い転倒させると肋骨の隙間に膝を打ち込む

ミシリという手応えとともに菊之丞が苦悶の声を上げる

 

蓮太郎「そんなのみんなそうだ!確かにあんたの奥さんは殺されたかもしれない!だが、木更さんも両親を殺された、先生は恋人を失っている...けれど!みんなみんな自分の過去と折り合いをつけて生きてんだよ!あんたは亡霊だ!天童菊之丞!!十年前の憎悪を引きずった亡霊、聖天子様を補佐する立場でありながら彼女を出し抜こうとした、あんたは聖天子様が嫌いなのか?」

 

菊之丞は咳き込みながらも告げる

 

菊之丞「ッゲホ、バカなこと言うな、敬愛している、彼女こそ歴代の聖天子の中でも名君と呼ばれる類の人間だ、真に私が支えようと思う女王だ」

 

蓮太郎「じゃあ!」

 

菊之丞「だからこそ許せぬこともある!」

 

菊之丞の燃える瞳を蓮太郎は銃を突き付けながら見る、この男は、聖天子への忠誠とガストレアへの憎悪が等分に持ったまま狂気へと身を投じていた

 

蓮太郎「...木更さんも真実に気付いてるぜ」

 

菊之丞「だろうな、だが証拠がない、何も出来ん」

 

蓮太郎は長い間菊之丞の瞳を見つめていた

やがて真莉が蓮太郎に言う

 

真莉「蓮太郎、そろそろ」

 

真莉の言葉に蓮太郎は膝を退けるとXDをベルトの間に挟むと踵を返す

 

菊之丞「...どういうつもりだ、私を今殺さねば後悔するぞ?」

 

蓮太郎「もうしてるよ、あんたは木更さんの最大の敵だからな」

 

菊之丞「貴様は...どうだと言うのだ?蓮太郎、古畑」

 

蓮太郎「なに?」

 

真莉「べっつに、俺は後悔なんかと無縁の男だしな、それに前のお前だったらともかく年老いたジジイの相手なんざ余裕すぎてヤル気にもなれん、俺に殺されてぇなら若返ってから来るんだな」

 

二人は振り返ると菊之丞は顔中の皺を吊り上げた凄絶な表情を浮かべていた

 

菊之丞「まずは貴様だ蓮太郎、お前は手足を食われ、貴春や舞風優を奪われたのだろう?何故奴らを許せる?奴等を恨んでいないのか?」

 

蓮太郎「恨んでいたさ!八つ裂きにしても足りない、ガストレアも、呪われた子供たちもこの手でブチ殺してやりたいと思っていた!」

 

菊之丞「では何故だ!」

 

蓮太郎「あんたは彼女たちと一人でも接したことがあるのかよ?彼女たちはつまらないことで泣き、笑い、スネて、柔らかくて人間のぬくもりに満ちている、彼女たちが虫けらだと?あいつらは人間だ!俺は...里見蓮太郎は藍原延珠を信じる!!」

 

菊之丞「蓮太郎...貴様というやつは...次は貴様だ、古畑真莉」

 

真莉「俺は別に誰がどうとか関係ねぇよ」

 

菊之丞「貴様もガストレアによって家族と引き離されたのだろう?何故許せる?」

 

真莉「...さぁな、ただ、それはガストレアであって彼女たちじゃねぇ、確かに彼女たちにはガストレアの血が流れている、だがな、それでも生きてる人間に変わりはねぇ、化け物って言うなら形象崩壊した時に言え、少なくともあの子達に比べれば俺の方が万倍も化け物だしな」

 

真莉がそこまで言うと蓮太郎は眼を瞑り言う

 

蓮太郎「天童菊之丞、あんたは俺の命を救ってくれた、『死にたくなければ生きろ、蓮太郎』ってな、簡潔であんたらしい、絶望に両眼を閉じた時折に触れてこの言葉を思い出して乗り切れた...十年前のあの日のこと、一日たりとも忘れた事はありません...ありがとう...さようなら、お義父さん」

 

蓮太郎はそう言うと屋敷を出た、真莉も続こうと歩こうとしたら菊之丞に止められた

 

菊之丞「古畑真莉」

 

真莉「んだよ」

 

菊之丞「...蓮太郎を頼む」

 

真莉「...言ったろ、友達だって、ただでさえ少ない友達だ、少なくするわけにはいかねぇ、お前に言われなくてもやってやるさ...まぁ、あいつも自分の事は自分で出来るさ、自分の義理の息子だろ?もっと信じてやれ...それが父親ってもんだ」

 

今度こそ真莉は歩き始めた、後ろで菊之丞が何かを行った気がしたが気には止めなかった

 

 

 

 

自宅近くになり真莉は大きくノビをしながら大きな欠伸をした

すると自分の家の前に見覚えのある人物が二人はいることに気づく、真莉は眼が良いので誰だかすぐに分かった

 

真莉「...夏世?」

 

そこにいたのは青いワンピース姿で大きなケースを二つ持っている元三ヶ島ロイヤルガーター所属のイニシエーター、千寿夏世だった

夏世はペアだった伊熊将監が殺されペアを解消してしまいその事を三ヶ島ロイヤルガーターの社長、三ヶ島社長に報告したら死亡扱いとしてIISOに報告し自由に生きろと言われその時は天童民間警備会社に無理やり置いてきた筈だったが...

 

夏世「あぁ、古畑さん、お待ちしてました」

 

真莉「どうした?こんな所で?天童たちは?」

 

夏世「はい、その事でお話があるのですが宜しいですか?」

 

真莉「あぁ、まぁこんな所じゃなんだ、家に入ると良い」

 

夏世「お邪魔します」

 

真莉は鍵を開け夏世を中に招き入れる

すると真莉はある違和感に気づく

今日はアカネに買い物を頼んでいるのでまだこの時間は誰もいない筈なのに...誰かいる

 

真莉は夏世にハンドシグナルで警戒を促し自身も最大限の警戒モードに入る

真莉は家の中に入りリビングの前に来た、リビングの中に誰かいるのを確認し一気に扉を開けるとそこにいたのは意外な人物が二人

 

???「おや、ようやく帰ってきたのかい?遅かったね、入り口の鍵が開いていたから不用心だと思って入って待たせてもらっていたよ」

 

???「おかえり、真莉、お菓子貰ってるよ(もしゃもしゃ)」

 

その姿を見た夏世はいち早く反応しショットガンを構えた

 

夏世「ッ!?蛭子...影胤!!」

 

そこにいたのは蛭子親子だった

影胤はお茶をすすり小比奈はお菓子を頬張っている

真莉は今にも発砲しそうな夏世を手で制する

 

夏世「っ!?何故邪魔するのですか!?」

 

真莉「俺ん家ぶっ壊れるだろ...お前の考えはわかる、将監はこいつらに殺されてる、だがその仇を取れるほどお前は強くない、今ここで死ぬつもりか?」

 

真莉の言葉に屈辱の表情を見せ夏世はショットガンをしまった

 

影胤「すまないね、手間が省けるよ」

 

真莉「お前の為じゃねぇよ...後、小比奈、どっからその菓子持って来た...ってか不法侵入だぞおめぇら」

 

真莉は盛大に溜め息を吐いた

それに影胤はくつくつと笑い答える

 

影胤「ふふふ、今更そんな事で言われるとは思わなかったね...今回は君に恩を返しに来たんだ」

 

夏世は首をかしげる

 

夏世「恩...ですか?」

 

真莉「まぁ、こいつを助けたのは俺だしな、ってそんな事言いに来たわけじゃねぇんだろ?さっさと言え、また海に落とすぞ」

 

影胤「ヒヒヒ、それは怖いね...大阪エリアの代表が動き出した...と言えば君には伝わるかな?」

 

影胤の言葉に真莉はいきなり赤髪赤眼になり影胤に問いかける

 

真莉「っ...本当か?」

 

影胤「ヒヒヒ、本当さ、この眼で見てきた、近々内密に来るだろうね、気をつける事だよ、いくら君が《その力》を持っているといっても彼らもその力を欲しがっている、手段は選ばんだろうね」

 

真莉は眼を閉じ思考する、既に髪の色は元の黒に戻っていた

真莉は眼を開けると先ほどよりも深い溜め息を吐く

 

真莉「ハァァァ...分かった、それだけ聞ければこちらとしても対策できるだろ...めんどくせぇ...」

 

夏世「どういう事ですか?」

 

真莉「...はぁ、しゃあねぇ、アカネが帰ってきたらお前が聞きたい事も含めて教える、こいつの前で言う気はねぇよ」

 

真莉は影胤の方を向きながら言った

影胤はこれまた笑いながら小比奈を連れて出て行く

 

影胤「ヒヒヒ、さぁやるべき事はやった、小比奈、帰るよ」

 

小比奈「はい、パパ」

 

帰る寸前で小比奈は立ち止まり真莉の所に戻ってきた

 

真莉「あん?どした?小比奈?」

 

くいくいとしゃがめと裾を引っ張り催促する

真莉はそれに従いしゃがむと小比奈は真莉の耳元に近付き小声で喋った

 

小比奈「真莉、パパを助けてくれてありがとう」

 

真莉は目を丸くして小比奈を見る、小比奈はトテトテと影胤の元へ走っていく

影胤は小比奈に一言二言言って歩いて行く小比奈は何かを言いながら影胤に付いていく、若干の静寂の後先ほどより騒がしい騒音娘が帰ってきた

 

アカネ「たっだいまぁぁぁ!!」

 

真莉と夏世はお互いを見あい苦笑しあう

 

夏世「それではお話を聞かせてもらいますね?」

 

真莉「なんか一気にめんどくなったな...まぁいい、そんじゃ、アカネを呼ぶか...とりあえずココアを入れるから座っとけ」

 

夏世「はい、ありがとうございます」

 

ガチャ!っとドアが勢いよく開く

 

アカネ「お兄ちゃん!ただいま!...あれ!?夏世!どうしたの!」

 

真莉「アカネ、話があるから夏世と座って待っとけ、今ココア淹れてる」

 

アカネ「は〜い!」

 

 

真莉はアカネと夏世を座らせてココアを淹れる、不意に窓から外を見て空を見る

真莉の目は赤く染まり憎しみの篭った目を外に向けていた

 

真莉「...斉武宗玄...か...覚悟を決めなきゃ...か」

 

 

真莉の呟きは2人の騒音で掻き消され消えていった

 

この平和な生活はそんなに続かない、真莉はそう思い本日3度目の深い溜め息を吐いた




これで第1巻の内容は終わりです!

なんか異様に長くなりましたね...

次の章では色々オリジナリティを加えていきます
真莉くんの過去もどんどん明かしていきますよ!


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第2章《紅き守り手&機械化兵士VS最強のスナイパー》
第1話


遅くなりました!考えが纏まらず悩み切ってました
これから第2章になりますね
早くティナちゃん出したい...


ピピピピピ

部屋の中でけたたましい音がなる、私はその音の出所に手を伸ばし音を止める

音が止み時計を見ると設定した時間ジャストになっていることを確認し一つ大きくノビをする

 

階段を降り洗面所に向かう、洗面所に着き私は水で顔を洗い意識を完全に覚醒させる

目が完全に覚めたあとはこの家の所有者を起こす為もう一度二階に上がりその人物の部屋まで行く

 

コンコンとノックをするがやはり返事が無い、ここ2週間ほど毎回の事なので慣れてしまった自分がいるのに少し笑みが溢れてくるのが分かる

 

私...千寿夏世がこの家にやってきたのは約一ヶ月前、最初はここの家の所有者、古畑真莉さんに天童民間警備会社の天童木更社長のところを紹介されたのですが天童社長は私の今の財政じゃ厳しいわと言われ天童社長は次に天童民間警備会社の唯一の男社員

里見蓮太郎さんの場所を教えてくれましたが里見さんも延珠だけで手一杯だ、すまんと言って断られました、このまま放浪しているとまた迷惑がかかると思いどうしようかと思考していたら里見さんがじゃあ真莉ほところはどうだと進めてきました

 

私としては少々抵抗があったのですが行く当ても無いので分かりましたと言って真莉さんの家の地図を書いてもらいそこに向かいました

 

意外にも里見さんの家から数分の距離であった事に驚きながら真莉さんの家のインターフォンを鳴らすが留守なのか待っても出てきません

しょうがないと思い少しぶらつこうと考えた直後に背後から声がかけられそちらを向くとそこには古畑真莉さんがいました

 

私の今の現状を伝えると苦笑しながらではありますがそれならとここに居候という形で居させてもらう事になりました

 

その過程の前に色々とありましたが真莉さんがなんとかしてくれました、本来ならあの戦いで私は死ぬかもしれなかった、真莉さんがいなければ私は...

 

思考をここで区切り未だに返事のないこの家の主の部屋に入る

 

規則正しい寝息が聞こえる、やっぱり寝てましたか...

ん?やけに胸のあたりが膨らんでいるような...

まさか...

ばさりと布団をちらりと捲ってみると真莉さんに抱き着き寝息を立てているもう一人の居候、アカネがいました

 

...なんでしょう、この胸のモヤモヤ感は...ちょっとイラつきます

なので力を解放しちょっと強引に布団を引っぺがす

 

アカネ「ッきゃあ!?」

 

真莉「うぉ!?」

 

夏世「おはようございます、朝ですよ」

 

少々イライラしたような声色だったのかもしれない

無理矢理起こされた真莉さんは多少こちらにジト目を向けてきた

私は意にも返さず答える

 

夏世「もう7時半ですよ?朝食も作ってありますから起きて下さい」

 

真莉「わりぃな、だけど起こすにしたってもうちょっとやりようがあったんじゃね?」

 

アカネ「そうだよ!私ビックリしたんだから!」

 

夏世「アカネさんが悪いです」

 

アカネ「え!?私!?」

 

夏世「いえ、なんでもないです、ご飯にしませんか?冷めてしまいますよ?」

 

アカネ「え〜!?」

 

真莉「はぁ、ま、冷めたご飯はあんま好きじゃねぇからな、食いに行くか...アカネ、先に洗面所で顔洗ってこい、俺は着替える」

 

アカネ「む〜...分かった、待ってるね!」

 

アカネは納得してませんという表情で部屋を出て階段を駆け下りて行きました

私はなんでこんなにイライラしているんでしょうか?分かりません、少しの間思考している真莉さんがこっちを見ていることに気づきました

 

夏世「あの?なんでしょうか?」

 

真莉「いや、着替えるから出てってもらえると助かるんだが...」

 

夏世「...すいませんでした!」

 

バタン!

私はなんでこんなに焦っているのでしょうか?

ドキドキが止まりません...この感情はいったい...

 

 

 

 

 

夏世が来て一ヶ月、特に何もなく怠惰に過ごしていたがこれはこれで良いものだな...頭に浮かぶのは変態仮面...蛭子影胤の言っていた言葉大阪エリアの代表が動くという言葉...まぁ考えていてもしゃあねぇな

それよりも飯うめぇ

 

真莉「ごちそうさま、わりぃな、作らせちまって」

 

夏世「いえいえ、居候させてもらっている身ですから、これぐらいは...今日のご予定は?」

 

真莉「ん〜、アカネに勉強教える以外にやる事何もねぇからな、その後に考えようかな」

 

アカネ「え〜、今日も〜?今日ぐらい良いじゃん」

 

真莉「駄目だ、おバカ扱いされんぞ?」

 

 

俺はあの戦いの後から学校に行かなくなった

別に学校に戦闘中に髪と目が赤くなった状態を取られたのがバレたからじゃない、元々学校なんてもんに行く気も無かったから丁度良かった

 

数週間前、アカネの学力を知ろうと思ったのだが予想外に悪く、俺とアカネと同い年だが圧倒的にIQが高い夏世でアカネの勉強を見ている、アカネのやる気は長時間続かないためやる気を出させる方法を考えているがほとんど空回りしている

 

アカネ「別に良いよぅ、前より頭良くなったもん」

 

アカネは確かに前より頭が良くなった、まぁそれでも普通に同い年ぐらいの平均の学力になっただけだが

 

夏世「駄目です、私と真莉さんが教えてるんですから少なくとも高校ぐらいの学力に...」

 

アカネ「...ダッシュ!」

 

これだ...夏世が意外とこういう性格だったのが予想外だ、そんで2人で力を解放しての鬼ごっこ...まぁ騒がしくも楽しい生活が起きている以上俺に止める気は無いんだが...どうもなんか妙な...いや、いやな予感がする、平和ってのは続か無いもんだよな

 

プルルルル、プルルルル

 

電話がなり先程まで鬼ごっこしていた二人が止まる

っち、めんどくさくなりそうだ

俺はすぐに電話に出る

 

真莉「もしもし、古畑ですが?」

 

木更『もしもし?古畑くん?私よ、木更よ』

 

電話口の相手は天童民間警備会社の社長で俺の友人の想い人でもある天童木更だった

 

真莉「あ?天童社長?どうしたよ、こんな時間に?学校だろ、遅刻じゃねぇのかよ?」

 

木更『天童社長って言わないで!って言うかあなただって学校行ってないじゃない!』

 

真莉「俺はもとより行く気がねぇだけだ...そんで?話があんだろ?」

 

木更『依頼よ、古畑くん』

 

真莉「おい、ちょっと待て、なんでお前が俺に依頼を持ってくる?意味がわからんのだが?」

 

木更『しょうがないのよ、今回の依頼はなんと、聖天子様直々の依頼なのよ、うちの里見くんとあなたに直接ね』

 

真莉「それでもお前から来るのはおかしいだろうが、なんで直接言わねぇんだ?」

 

木更『そこらへんはわかん無いわよ、だけど今回の依頼は不思議な事にうちの里見くんと古畑くんの合同任務って事でどちらが欠けても駄目らしいのよ...お願い!古畑くん!私を助けると思って!』

 

真莉「...助けるって事はおおよその予想だと金が大量に入るんだろ?だけどこないだの戦いの報酬があったろ?あれは?」

 

木更『実は...私の学費に...』

 

真莉「はぁぁぁ」

 

木更『っちょ!?そんなふかぶかと!?しょうがないじゃない!?』

 

真莉「...まぁいい、分かった、依頼の内容だけ聞いてからやるかは決める」

 

木更『わかったわ、聖天子様には報告しておくわ、一様今日の午後に聖居に向かって頂戴、そこで里見くんと合流して聖天子様の話を聞いて頂戴』

 

真莉「しゃあねぇな、分かった」

 

木更『それじゃあ』

 

ップツっと電話が切れる

案の定面倒事を持って来やがって...

はぁ、さて、どうやって拒否するか考えなきゃいけねぇな

どうすっかなぁ...

 

するとアカネと夏世がこっちに来る

 

夏世「天童社長からですか?なんのお話でした?」

 

アカネ「お仕事?やった!勉強をしなくて良いんだ!」

 

真莉「あぁ、まぁ受けるかどうかは話を聞いてからだがな」

 

アカネ「早く早く!準備しよう!」

 

アカネは勉強したくないからさっさと行こうとしてるな...まぁ残念ながら

 

真莉「いや、今回は聞くだけだ、だからアカネと夏世はここに残って待っててくれ」

 

俺がそう言うと夏世はコクリと頷きアカネは絶望染みた顔をした

いい気味だ、たまにはしっかりと勉強しろアホの子

 

真莉「さぁて...やるか」

 

めんどい事は全部終わらせとかなきゃならんしな...これからの事、これまでの事もな



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第2話

遅くてすいません!
なんとか早く書こうと思ってはいるのですが...
とにかくしっかり書いていきたいです!!


午後になり真莉は聖居付近に来ていた

...誰に言ってんだ俺は自分で自分の名前を言うとか、っは、くっだらねぇ...さてと、蓮太郎は何処に...お、いた

 

真莉「おい、蓮太郎」

 

蓮太郎「真莉、やっと来たのか...ってかお前今日も学校に来なかったな!沙耶と綾夜に問い詰められて怖かったんだぞ!」

 

真莉「いや、知らねぇよ、あいつらが家に来りゃ良いだけだろうが」

 

俺がそう言うと蓮太郎は動きを止める

何がそんなに不思議だったんだ?

 

蓮太郎「お前の家って普通に行っていいのか?」

 

...は?え?今更?

 

真莉「...お前俺ん家なんだと思ってんの?」

 

蓮太郎「いや、なんか行ったら速攻で追い返されそうだって事で行かなかったらしいぞ」

 

真莉「俺ってそんなイメージか...まぁいい、ともかく行くぞ、そこらへんはまた今度あいつらに直接聞く」

 

あいつらに俺のイメージどんなのか聞くか、この際学校に行ってでも聞いてやる...

 

 

聖居前に到着した真莉と蓮太郎は守衛に名前と来意を告げる、守衛は数回中と連絡を取ると直ぐに案内される

案内された場所は会見場だった、パイプ椅子が悠然と並び報道陣と思われる人々がちらほら眼に映る、登壇しているのが聖天子本人だったので蓮太郎は驚いた

彼女の正面には何人かの記者がまばらに座っておりどうやら演説の練習中らしい、こちらに気づく様子はまだない

 

聖天子が演説のおそらく練習だろう、堅苦しい挨拶をし始めた、真莉は蓮太郎にハンドシグナルで合図し後ろにあった椅子に座る、まだ時間もあったので聞きながら待ってようとしたのだ

 

 

およそ10分ほど経っただろう、聖天子の演説の練習が終わる、聖天子が辺りを見渡すと蓮太郎と目が合う、蓮太郎は一瞬見惚れて固まったが直ぐに立ち上がる

しかし隣の真莉が立ち上がる気配を見せないので隣に目をやると違う意味で固まる

 

真莉「zzzz」

 

蓮太郎「寝てんじゃねぇよ!」

 

蓮太郎の拳が真莉の頭にヒットする

ゴン!と音がし真莉が地面に激突する

 

真莉「ってぇなぁ...んだよ、人がせっかく寝てんのに...」

 

蓮太郎「聖天子の前で寝てんじゃねぇよ(ぼそ)」

 

真莉「あ?あぁ、もう終わったのか、そりゃ悪かったな」

 

真莉の言葉に聖天子は笑みを浮かべてこちらに歩み寄る

 

聖天子「ごきげんよう、里見さん、古畑さん、時間通りですね」

 

蓮太郎は聖天子に掴みかかった事を思い出し俯き加減に後ろ頭をかく

 

蓮太郎「その、この前は悪かったな」

 

聖天子「気にしていません」

 

聖天子の薄い微笑みを見ながら蓮太郎は見た目だけでなく性格も良いのかと内心で呟く

聖天子は真莉に向き直る

 

聖天子「古畑さんも今回は急なお呼びたてで申し訳ありません」

 

真莉「まぁ別に良いんだが...天童社長を使うのはやめろ、あいつ全力だったぞ...」

 

聖天子「その点を含めてもです」

 

真莉「確信犯かよ...貧乏くじを引いたかなぁ俺...」

 

その言葉にムッとした表情をした秘書らしき女性が鋭角的なメガネをくいっと上げながら近づいてくる

 

秘書「こちらの方たちはどなたですか?かなり無遠慮な方みたいですが?」

 

聖天子「清美さんは初めてになりますね、こちらの方がガストレアステージVを退けた東京エリアの英雄、天童民間警備会社の里見蓮太郎さんとその作戦を支えてくれていた私が直接依頼をしたもう一人の英雄、古畑真莉さんです」

 

清美「里見蓮太郎って...元歌のお兄さんでゲイバーのストリッパーの...あの里見蓮太郎!?」

 

聖天子の秘書、清美の言葉に蓮太郎は反論する

 

蓮太郎「誰れがゲイバーのストリッパーだよ!?ってか誰れだよそんな良い加減な噂を流してるやつは!」

 

蓮太郎の反論に隣にいた真莉は大爆笑する

清美は次に真莉を見て先ほどよりも厳しい目をして問いかける

 

清美「まぁそんなことはどうでも良いんです、しかしこの男はなんですか?聖天子様にお声をかけていただいたのに対してあんな物言い、常識を知らなさすぎです!」

 

真莉「あ?あ〜、俺は誰れにでもこんな口調だ、別に誰かを特別に思ったことなんかねぇし、それが例え聖天子でも俺は変わらねぇよ」

 

清美「っ!?あなた!?」

 

清美が今にも掴みかかろうとした時聖天子はそれを止める

 

聖天子「良いんですよ、清美さん、古畑さんの事は分かっているつもりですから」

 

清美「しかし!?」

 

真莉「そう言う内輪揉めも後でやってくれ、今回の依頼の件、なんも聞いてないんだが?」

 

蓮太郎「おい、真莉」

 

真莉「何もなければ帰るぜ?俺も意外や意外忙しいんだ」

 

聖天子「わかりました、今回の依頼の内容をお話しします」

 

聖天子はそう言うと目で合図し報道陣と秘書である清美を下がらせる、清美は渋ったが聖天子が一言二言行ったらおとなしく引き下がった

 

聖天子「簡潔にお話ししますね、近々大阪エリアの代表、斉武大統領が東京エリアに非公式で来ます、なので私の護衛をお願いしたいのです」

 

聖天子の言葉で蓮太郎は驚きの表情を浮かべ真莉はやはりかとでも言うような顔でため息を吐いた

 

真莉「...何故俺らなんだ?菊之丞は何処行った?」

 

蓮太郎「ジジィは確かロシアだか中国に行ってていねぇらしいぞ」

 

真莉「まためんどい時にいねぇもんだな...」

 

聖天子「いえ、おそらく菊之丞さんがいない今だからこそ、なのかも知れません」

 

真莉「...なるほど...な」

 

聖天子「なので移動中は私の両隣に、会談中は後ろに控えて警護して欲しいのです」

 

聖天子の言葉に蓮太郎は答える

 

蓮太郎「護衛ならいるだろ?」

 

聖天子「はい、います...御紹介しますね」

 

聖天子が手招きをするとビシッと隊列を組みこちらにやってくる白を基調とした制服を着ている集団が近づいてくる

聖天子の後ろで止まると先頭にいた眼鏡をかけた男がこちらに向き人の良い笑顔で蓮太郎達に話し掛けて来た

 

保脇「護衛隊長の保脇卓人(やすわきたくと)三尉です、よろしく」

 

護衛隊長の保脇は手を差し出し握手を求めるが

 

蓮太郎「...まだ受けるか決めてねぇよ」

 

真莉「ま、蓮太郎が分かんねぇって言うんなら俺も分かんねぇな、こいつが受けなきゃ俺が受けるメリットがねぇし」

 

二人はそう言って突っぱねる

 

保脇は二人を睨むが聖天子はそれに気付かずに二人に言う

 

聖天子「お二人とも、良い返事を期待しています」

 

蓮太郎「あんまり期待すんなよ」

 

蓮太郎はそう言うと出口に向かって歩く、その後ろを真莉も歩く

真莉は途中で止まり後ろを振り返る

そこにはこちらを睨んでいる保脇たち護衛陣がいた

真莉は目を向けたが直ぐに出口の方を向き歩き出す

 

少し、ほんの少し離れただけだったのに蓮太郎を見失い先に聖居の外に出てしまった真莉はどうしようか悩んでいた

 

真莉「...あいつ何処行きやがった?まさか聖居の中で迷ってんじゃねぇだろうなあの馬鹿...ん?声?」

 

すると遠くから怒声のようなものが聞こえた

真莉は面倒くさく思いながら先程よりも鮮明に聞こえてきた怒声の方に向かって歩き出す

 

 

そこにいたのはおそらく夏世やアカネと同じぐらいの年であろう少女におそらく不良であろうか三人の男が群がっていた

 

男1「ってぇなぁ!おい!テメェ何処見てやがんだよオラァ!」

 

男2「おい!何黙ってんだよ!こいつの足自転車で踏んでおいてよ!」

 

男3「あ〜あ、こりゃ足の骨折れてるわ、慰謝料だ慰謝料!」

 

少女は何が起きているのかわからずポカンと口を開けている、周囲の人間は前にも増して少女を助けようともせず避けて通り過ぎる

巻き込まれるのを嫌い踵を返す者まで現れた

 

真莉は片目を瞑りながら頭をボリボリと掻きながら少女と男3人の場所に向かった

 

リーダー格であろう男が少女の足を自分の足で小突いている

男1「おめぇじゃ話にならねぇ、親呼べや!」

 

そんなことを言っている男の肩に手をやりこちらを向かせる

 

男1「あ?んだよテメェ!」

 

男は真莉を睨む、次の瞬間男は宙を舞い背中からアスファルトに激突した

 

男1「ッガハ!?」

 

男2「お、おい!?」

 

男3「なにしやがる!?」

 

真莉「寄ってたかってこんな子供に金をせびるね、アホらしい、もうちょっと頭使えよバカどもが」

 

真莉のまさかの言葉に男たちはキレる

真莉をブン殴ろうと拳を振り上げ迫ってくる

 

真莉はそのすべての攻撃をカスリもせずにかわしていく

かわしながら順番に足を払いコケさせていく、数回同じことをやっていると聞き覚えのある声が聞こえてきた

 

蓮太郎「おい!何やってんだよ!真莉!」

 

真莉「あ?おう、迷子の蓮太郎くんじゃん、お帰り」

 

蓮太郎「迷子じゃねぇ!...なるほど、だいたいは把握した」

 

蓮太郎は辺りを見渡し状況を理解した

男たち立ち上がりまた真莉に襲い掛かろうとするが蓮太郎に止められる

 

蓮太郎「待て!...ん」

 

蓮太郎がみせたのは民警のライセンスだった

男たちは焦ったように逃げ出す

 

真莉「ほぉ、便利だなそれ」

 

蓮太郎「お前も取ったらどうだ?」

 

真莉「っは、冗談だろ、俺が政府の犬になるわけねぇだろ」

 

蓮太郎「だよな」

 

真莉は未だに何が起こっているのか分かっていない少女の所に行き膝を地面につけ目線を合わせながら問いかける

 

真莉「おう、無事そうだな...なんか随分と...あれだな」

 

少女の格好はパジャマで所々泥だらけになっていた

 

少女は2人を見て目をキラキラと輝かせていた

蓮太郎は面倒ごとに巻き込まれたなと思った

 

少女「...正義のヒーロー...初めて見ました」

 

真莉「俺が正義のヒーローなら世の中はみんなヒーローだ...さて、もうあんな奴らに会わないとは思うが気をつけて帰れよ?」

 

真莉は踵を返して帰ろうとすると裾を引っ張られて立ち止まる

振り向くと少女は真莉と蓮太郎に向かってこう言った

 

少女「あの...ここ何処ですか?」

 

真莉と蓮太郎は顔を見合わせ盛大に溜め息を吐いた

 

 

近くの緑地公園に移動し真莉は蓮太郎にタオルを渡し水で濡らして来てもらう

蓮太郎が戻り真莉にタオルを渡し真莉はそのタオルで所々泥だらけになっている顔をゆっくり拭いていく

ある程度拭けたのでやめる

 

少女「なんだか慣れていますね?」

 

真莉「子供の扱いは得意だしな」

 

少女はぺこりとお辞儀するが一向に顔を上げない少女に真莉と蓮太郎は首をかしげる

 

蓮太郎「...おい!」

 

蓮太郎の声に少女はビクッとして顔を上げた

どうやら寝ていたようだ

少女はポケットを弄り中から錠剤を取り出し飲む

蓮太郎はギョッとしたが真莉が錠剤が入っていたボトルを指差す、カフェインの錠剤だと確認し蓮太郎はホッとした

 

少女「私は夜型なので...昼はこうしていないと起きていられないんです...」

 

蓮太郎は頭を掻き少女に尋ねる

 

蓮太郎「...お前何処から来た?名前は?保護者は?なんでパジャマとスリッパなんだ?」

 

少女は自分の服に視線を落としゆっくりと首をかしげた

 

少女「...さぁ?」

 

真莉と蓮太郎は肩を落とす

 

真莉「さぁって...まぁいい、んじゃ名前は?」

 

少女「それは...」

 

少女の視線が一瞬泳ぐがやがて諦めたように顔を上げた

 

ティナ「ティナ...です、ティナ・スプラウト」

 

蓮太郎「里見蓮太郎だ」

 

真莉「んで俺が古畑真莉だ、よろしくな」

 

ティナ「私の事はティナで」

 

蓮太郎「じゃあ俺も蓮太郎でいいぞ」

 

真莉「俺も真莉でいい」

 

ティナ「...蓮太郎、さんと真莉さん...」

 

ティナは口を半開きにさせボケっと2人を見ていた

 

蓮太郎「なんだよ?」

 

ティナ「呼んでみただけですが?」

 

蓮太郎はがくりと肩を落とす、蓮太郎はそれでもなんとか少女、ティナの親の情報などを聞き出そうと色々質問していた

その中で真莉は何かの違和感を感じて何かを思案していた

 



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第3話

今回は戦闘シーンを少し、ほんの少しだけ頑張りました!

まぁあんま変わんないんですけどねぇ




不良に絡まれていた頭の中ふわふわ少女ことティナ・スプラウトと蓮太郎の会話は良くわからない感じで終結しそうにもない、なので真莉がティナに直接聞くことにした

 

真莉「話しが進まん...とりあえずほら、これ」

 

真莉は自身の携帯の番号を書いた紙を渡す

ティナはそれを受け取りぽかんとした表情をした

 

真莉「もしなんかあれば連絡すると良い、だから今はとりあえずあれだ、警察のところに行くと良い、そっちの方が色々手間が省ける」

 

真莉の言葉でそれもそうかと蓮太郎が小声で呟き自分の携帯番号もティナに渡す

するとティナはベンチに座っている状態で2人に背を向け自身の携帯を操作し番号を打ち始めた

 

蓮太郎「...なにしてんの?」

 

ティナ「蓮太郎さんと真莉さんが偽の電話番号を渡している可能性もあるので」

 

真莉「ちゃっかりしてらっしゃる」

 

すると直ぐに真莉の携帯に着信が入る

真莉は直ぐにでてその電話番号が間違い無い事を確認させると直ぐに電話を切る

同じ様に蓮太郎にも掛け蓮太郎も直ぐに出る

 

蓮太郎「...もしもし」

 

ティナ「突然ですが蓮太郎さんは10歳の少女に興味がありますね?」

 

蓮太郎「...は?」

 

真莉「く...くくく...」

 

ティナの言葉に蓮太郎は驚愕し真莉は笑いを堪える

 

ティナ「私のパジャマから覗く肌をちらちら眺めていたのをひしひしと感じました」

 

蓮太郎「眼科行け」

 

ティナ「面と向かって言うのは憚れたのですが、蓮太郎さんは本当に不幸そうな顔をしていますね」

 

蓮太郎「うるせぇよ」

 

ティナ「あと、これも言いそびれましたが、私、自分のアパートの場所、分かりますよ」

 

真莉「くっははははは!!」

 

真莉は堪えられないとばかりに大笑いし蓮太郎はずっこけそうになった

 

蓮太郎「...じゃあ俺は一体何のためにこいつに付き合ってたんだ?」

 

ティナは微笑むとゆっくりとした動作で携帯を折り畳む

 

ティナ「今日はとても楽しい一日でした」

 

ティナはゆっくりとベンチから降りるとゆっくり微笑む

 

ティナ「また会えると良いですね」

 

蓮太郎は頭を掻き諦めとともに頷き手で追い払う

真莉はまだ先ほどの笑いがまだ抜けていないのか笑いながら手を振る

 

ティナ「では、さようなら、蓮太郎さん、真莉さん」

 

ティナは丁寧にお辞儀をし多少おぼつかない足取りで公園を出て行く

蓮太郎と真莉はその姿が見えなくなるまで見送ってから安堵の吐息をつく

 

真莉「くくく、お疲れさん」

 

蓮太郎「本当だよ...ってかお前!なんで先に行っちまうんだよ!後!携帯電話を持ってたのかよ!なんで教えねぇんだよ!」

 

蓮太郎はずいっと真莉に近づくが真莉はデコピンの準備をしてきたので蓮太郎は止まる

 

真莉「まず最初の質問だが先に行ったのはお前だぞ?俺は先に出てるもんだと思っていたがお前いねぇし、んで二つ目と三つ目は教える必要無くねぇか?ってかお前に教えたらあの2人にも拡散するだろうが、だからヤなんだよ」

 

真莉はそう言うと蓮太郎はぐぬぬっといった表情を見せる

 

真莉「そんで?結局どうすんだ?依頼は?」

 

蓮太郎「受ける、その事で少し話しがある」

 

蓮太郎から事の顛末を聞き真莉も頷く

その後、真莉は溜め息を吐き踵を返しながら驚きの事を話す

 

真莉「はぁ、あ、そうだ、明日俺《学校》行くから」

 

真莉は手を後ろ手に振りながら家に帰ろうと歩き出した

公園を出る寸前で蓮太郎の大声が聞こえ真莉は内心してやったりと言った感じでほくそ笑んだ

 

 

 

真莉「...忘れてた」

 

アカネ「ふぇぇぇぇん!!おにぃちゃぁぁぁんんん!!」

 

夏世「アカネさん、まだ勉強は終わってません...真莉さん、お帰りなさい、アカネさんを貰っても?」

 

真莉「...はぁぁ、一旦ストップだ夏世、アカネも落ち着け、これからちっと大事な話しがある」

 

夏世と大泣きしていたアカネは頭にハテナマークをつけながらもしっかりと(アカネは半ベソを掻きながら)頷いた

 

 

 

 

 

真莉side

 

今回の依頼の件を2人に話して2人の反応を見ようと思ったんだが...

 

アカネ「聖天子ってそんなに偉いんだ〜」

 

夏世「まぁ東京エリアの代表ですからね、狙われるのは当然と思いますが...問題は大阪エリアの代表が非公式で来ることです、非公式と言うことは確実に何か目論見があってのことでしょうから、どうするんですか?」

 

相変わらずの2人だな...アカネはまぁいつも通りほとんど分かってないおバカちゃんだが夏世の方は俺と同じかちょい上のIQがあるんだっけか?俺の考えも大体分かっちまうか...

 

真莉「今回の依頼、本来なら受ける必要性はねぇ、でも天童社長があんなにヤバそうなんだ、今回は大きな借りを作っておくのも後々楽かもしれん、だから俺も受ける、それであまり帰ってこれなくなると思うが平気か?」

 

いくらこの子達が呪われた子供たちで普通の大人より断然に強いとはいえまだ子供だ、それを抜きにしたって色々やらなきゃならないこともある、夏世が率先してやってくれるとは思うんだがな...

 

夏世「嫌ですよ?」

アカネ「嫌!」

 

...2人して即答かよ...こんのガキンチョ共め...しゃあねぇな

 

真莉「はぁぁ、分かった、なんとか帰ってこれるように「そうじゃないよ!」...アカネ?」

 

アカネ「私たちが嫌なのはまたお兄ちゃんが1人で無茶して怪我して帰ってくることだよ!もう何もしないでただボケっとしてるなんて絶対に嫌!行くなら私も行く!」

 

夏世「私は確かに今の生活が気に入っています、それはアカネさんがいて、さらには真莉さん、あなたがいるから今が楽しいのです、だからその楽しいのをあなたは私から奪うのですか?」

 

...言いたいことはわかる、だが今回は危険すぎる

、斉武は例えるならアドルフ・ヒトラー、いわば独裁者だ、今回の件で何を企んでいるか分かったもんじゃない

恐らく奴も手練の護衛を連れてくる、もしそれ相応の奴が来られれば守りながらではまず勝ち目はない...さて、どうするか...

 

真莉「しかしだな...」

 

アカネ「もう!私たちは決めたの!とにかくそれでおしまい!!」

 

夏世「それにもう天童社長にはお話をしています、如何あっても変わりませんよ?」

 

...こいつら...はぁ、覚悟を決めなきゃいけないか

 

真莉「ったく、わかったよ、ただし、俺の考えで動いてもらう、無理は絶対にするなよ?」

 

俺がそう言うと2人は笑みを浮かべ大きく頷く

...俺ももうちょっと言葉をを強くしないといけねぇかな

...ッ!?見られてる?...ッヤベェ!?

 

アカネ「ッ!?お兄ちゃん!夏世!伏せて!!」

 

side out

 

 

 

 

真っ先に動いたのはアカネだった、アカネは力を解放し下を蹴り夏世の元に一気に跳ぶ

そのすぐ直後に真莉は目の前の手をついていたテーブルを掴み窓の方にぶん投げる

その直後窓ガラスは大きな音を立て割れ真莉が投げたテーブルに何かが当たりテーブルを砕く、真莉は首を横に避ける、避けた瞬間さっきまで顔があった場所に銃弾が通り真莉の頬を切り頬から鮮血が滴る

 

すぐさま真莉は状況を判断しアカネと夏世にハンドシグナルで伏せていろと指示を出し庭に躍り出る

袖を振りそこから二本の小太刀を出し逆手に構え銃弾が飛んできたであろう方を凝視する

すると何かが光る、その瞬間に真莉は左手の小太刀を振り、飛んできた銃弾を弾く

地面に弾かれた銃弾が落ちる、真莉はそれに目を落とさずにじっと同じ方向を見る

もう一度光る、次は右手の小太刀を同じように振り銃弾を弾く

それを2、3回続けた後真莉は地面を思いっきりけり隣の家の屋根に飛び乗り射撃しているであろうポイントに向かって屋根伝いに走る

 

そこそこの家の屋根を走っていくと少し先にローブを着た人物の姿を見つける

ローブはこちらに照準を合わせトリガーを引く

真莉は左右の手の小太刀を振り飛んできた銃弾を斬り捨てる

 

ローブは構えていた銃を捨て懐から同じく二本の小太刀を取り出し構えた

 

真莉「(...逃げる必要はねぇってか...そんじゃ)遠慮はしねぇ...ぞ!」

 

真莉は足場である屋根を思いっきり蹴りローブに迫り左手の小太刀を振り切る

ローブも同じように右手の小太刀を振り2人の小太刀が激突し甲高い金属音が当たりに響く

 

真莉「(...っち、こいつ...)」

 

ローブ「...」

 

2人はお互いの力量を把握しある程度距離を取り武器を構えたまま静止する

静止したまま真莉はローブの人物に話しかける

 

真莉「テメェ何者だ?何故俺を狙う?」

 

ローブは問いに答えずに真莉の方をじっと見つめ武器を構えている

 

真莉「...はぁぁ、まぁ期待はしてねぇけど...あいつらを危険に晒したんだ、覚悟は...出来てんだろうなぁ!」

 

真莉は一足飛びで駆ける、直ぐに距離がつまりゼロ距離になる

お互いの小太刀が小太刀を弾く、甲高い金属音が辺りに更に響く

ローブはこの斬り合いを嫌ったのかバックステップで下がろうとする

しかし真莉は当然それをさせずと距離を詰める

 

ローブは焦ったように両手の小太刀を振るが真莉は低い姿勢から上に切り上げローブの小太刀を上に弾く

 

ローブ「ッ!?」

 

真莉「...チェックメイトだ、さて、お前の素顔、見せてもらうぞ」

 

真莉はローブの首元に小太刀を当てながらローブに手を伸ばす

 

真莉「...ッ!?ちぃ!」

 

真莉は何かを感じその場からバックステップで離れる、真莉のいた場所に何発もの銃弾が撃ち込まれる

 

真莉「一人じゃ無かったか...めんどくせぇ」

 

真莉は銃弾が飛んできた方を見やり睨む

そこにはもう一人のローブを被った人物が拳銃を構えこちらを見ていた

先ほど真莉が戦っていたローブの人物はいつの間にかもう一人のローブの隣にいた

 

真莉「改めて聞こうか...お前らは何者だ?目的はなんだ?」

 

ローブ達は答えない、真莉は面倒くさそうに頭をガシガシと掻く

 

真莉「めんどくせぇ...本当にめんどくせぇ、もう何も聞かねぇよ、だから...ここで殺す」

 

真莉の眼と髪が紅蓮に染まる、辺りに殺気が充満し空気が重くなる

 

すると銃弾を撃ったローブの方が前に出て懐から手紙を出し真莉に投げてきた

真莉はその手紙を取る

一瞬、一瞬だけ意識が手紙に移った瞬間にもう既に2人のローブを被った人物はその場にはいなかった

真莉は警戒を緩めず手紙を開け内容を確認する

手紙にはこう書かれていた

 

 

約束の地にて、貴方を待つ

貴方は世界を手中に収められる力がある、一緒に行こう

返事は次会った時に、期待してる

 

私はいつでも貴方を見ているよ

 




UAが4000超えてました!
見てくださっている皆様に感謝です!
本当に有難うございます!!

これからも頑張りますね!
引き続き感想等も受け付けてますよ!


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第4話

今回は長めで学校編ですね、まぁすぐに終わりますけどね


次の日

 

あの後真莉は家に戻りアカネと夏世と一緒に壊れた箇所を修復に追われ1日を終えた

 

そして朝になり真莉は珍しく早起きし勾田高校の制服に身を包む

 

コンコン

とドアがノックされる音が聞こえた

 

真莉「ん?どうぞ?」

 

がちゃりと開き夏世が顔を見せる

夏世は驚いた表情を見せた

 

夏世「あれ?真莉さん、今日は珍しく早起きなんですね?...制服ですか?学校に行くんですか?」

 

真莉「あれ?言わなかったっけか?今日はちょっと用事があってな、少し学校に行ってくる」

 

夏世「聞いていません、そうですか、では今日はいないんですね?」

 

夏世は少し残念とばかりに肩を落とす、そんな夏世の頭を撫でながら真莉は言う

 

真莉「なるべく早く帰るさ、それまでアカネの勉強を頼んだぞ?」

 

夏世は嬉しそうに微笑み頷いた

 

 

しばし時間が経ち朝食をみんなで食べながら話を聞いていないであろうアカネにも今日のスケジュールを話すと明らかに絶望したような顔をし真莉が家を出るまで足にしがみつき行かないように懇願していた

最終的に夏世に勉強するからと強制的に連行されたのを見て真莉は帰りにケーキでも買おうと考えて家を出る

 

 

真莉は学校に向かう途中ずっと昨日のことを考えていた

 

真莉「(昨日の奴ら、強かったな...東京エリアの民警か?いや、民警ならなんで俺を...あの変態仮面なら知ってるか?いやぁぁ、あいつに会いたくねぇぇぇ...)」

 

いつの間にか教室に着いていた真莉は自分の机に座る

そのまま真莉はまた思考の海に沈む

 

真莉「(俺の事を知ってるのはこの東京エリアの中だけだったら菊之丞とあの死体フェチ、それと沙耶と亜矢と綾夜ぐらいのはずなんだが...何処かで漏れた?いや、ありえねぇ、影胤には写真撮られたが詳しくはしらねぇはずだし...)」

 

トントン

誰かに肩を叩かれるが未だに思考の海から戻らない

 

真莉「(可能性があるとすれば斉武か...って事は...いや、確信にならないな...)」

 

トントン、トントン

連続で肩を叩かれ流石に気付いたのか真莉は思考の海から現実に戻る

 

真莉「あん?沙耶?何の用だ?」

 

真莉の肩を叩いていたのは真莉の数少ない友人の一人で同じクラスの希里江沙耶だった

沙耶は真莉を見て自分は怒っていますといったような表情で詰め寄る

 

沙耶「真莉!!今までなんで学校に来なかったの!!心配してたんだよ!?」

 

真莉「あ?あー...(一様内緒なわけなんだよなぁぁ、どうすっかな、沙耶がここまで起こるとは思わなかったな、そこまでの事なんかあったっけか?)」

 

沙耶「...真莉もしかして忘れてる?」

 

沙耶は少し暗い顔をする、真莉はふむと考えて辺りを見回すと合点がいったとばかりに頷いた

 

クラス中でヒソヒソと内緒話が聞こえて来た

真莉が学校に行かなくなった直前、ステージVのガストレア召喚の危機で触媒となる中身が入ったケースを回収する任務の時、蛭子影胤によって真莉の隠していた秘密でもある紅蓮の眼と髪がバラされてしまった

その時から真莉は学校に行かなかったから完全に忘れていたのだ

 

真莉「あ〜、そういやそんな事あったな〜」

 

真莉のまさかの言葉に沙耶はずっこけそうになる

 

沙耶「え!?そんな簡単な!?」

 

するとクラスメイトの一人である星染聖也が近づいて来る

 

聖也「やぁ、古畑くん、久しぶりだね、来なかったから何かあったのかな?」

 

真莉「別に、お前には関係ねぇよ」

 

真莉はぶっきらぼうにそう言う、聖也は苦笑いを浮かべる

すると取り巻きたちは騒ぎ出すが聖也がそれを止める

 

聖也「まぁまぁ、少し気になったからさ、君の事はね」

 

真莉「お前はホモかよ、お前はそこら辺の奴らとリア充しとけよ、そっちの方がお似合いだぜ」

 

沙耶「っちょ!?真莉!?」

 

真莉の一言は聖也の取り巻きだけでなくクラス中の人を敵に回した

クラスがぎゃあぎゃあと騒ぎ出す

やれお前みたいなのが学校に来んなとか何やら色々と非難の声がそこら中から上がる

真莉は大きく溜息を吐く

すると取り巻きの一人が言ってはならない言葉を言ってしまう

 

取り巻きの女「貴方なんかただの《化け物》じゃない!!...ッあ」

 

聖也「っ!?加古(かこ)!!」

 

聖也が加古と呼んだ人物は手を口に当てしまったという表情を浮かべる

真莉は顔を壁に向けているため表情を見る事ができない

真っ先に反論したのは真莉の友人にして親友の沙耶だった

 

沙耶「化け物?...ふざけるな!!お前達なんか真莉の事を何一つ知らないくせに!!」

 

沙耶の言葉を真莉は手で制する

 

沙耶「っ!?なんで!?」

 

真莉は扉を指差しながら言う

 

真莉「騒ぐのは勝手だが先生来てんだからさっさと席につけ、授業が始まらん」

 

まさかの言葉に一同はずっこける

先生は何が何だか分からずに教卓に着く

 

先生「古畑、今まで休みだったがどうしたんだ?」

 

真莉「体調不良とかではないです、少々混み合った事情がありまして、携帯も壊れてしまい学校に連絡が遅れてしまった事は素直に謝ります、申し訳ありません」

 

真莉はぺこりと頭を下げた

先生はそれ以上何も言わずに出席を取り始める

真莉はまた思考し始めた

 

 

 

 

昼休み

 

お昼を告げる鐘が学校中に鳴り響き真莉は思考の海から戻る、授業が始まった時からずっと思考していたのでいつの間にかお昼になっていたようだ

 

真莉は自分の席から立ち上がりいつもの場所に向かおうとするがそれを止めたのはまたしても聖也だった

 

聖也「お昼かい?一緒に食べても?」

 

真莉「はぁ?意味がわからん、俺は一人で、もしくは仲間内で食うのが好きなんだ、お前はその括りには入ってねぇよ」

 

真莉はそう言うとさっさと行ってしまう

その後ろを沙耶が走って追いかける

残された聖也は苦笑いを浮かべながらそのあとに続いた

 

屋上に着き真莉はフェンスの近くにすぐさま向かいフェンスに背中を預け弁当箱を広げる

とから入ってきた沙耶と途中であったであろう綾夜と綾夜と同じクラスの里見蓮太郎、そして着いてきた聖也が入ってきた

 

蓮太郎「本当に来てたし」

 

綾夜「沙耶の言った通りだったな、ってかお前!なんで挨拶もしてこねぇんだよ!心配してたんだぞ!」

 

真莉「あ?あ〜、忘れてわ、わりぃわりぃ(モグモグ)」

 

沙耶「忘れないでよ!...まぁ蓮くんに聞いたから許すけどさ...」

 

蓮太郎「蓮くんって俺の事かよ...ってか真莉は本当に二人に言ってなかったんだな」

 

真莉「まぁ言ったところでって思ったしな...ってかなんでお前いんの?」

 

聖也「ダメかな?俺だって久し振りにあったクラスメイトと一緒に食べたいのさ」

 

真莉「くっだらねぇ、別のやつと食えし...ま、強制なんざ出来ねぇし別に良いが」

 

聖也「...てっきりもっと嫌がると思ったんだが」

 

真莉「めんどくせぇ」

 

聖也「あはは...」

 

沙耶「相変わらずなんだけど...」

 

綾夜「これがこいつだって、今更だろ...さて、さっさと飯喰っちまおう、休みが無くなるぞ」

 

蓮太郎「だな、とりあえず食おうぜ」

 

 

 

 

食事が終わり一同は一息つく

今は真莉はお茶を啜っている、沙耶と綾夜は聖也と何かを話していた

蓮太郎が近くに寄ってきて三人に聞こえないような声量で喋る

 

蓮太郎「真莉、聖天子護衛の件で話があるんだが」

 

真莉「あぁ、丁度いい、お前にも伝えなきゃと思ってたんだ」

 

蓮太郎「?なんだ?」

 

真莉「昨日、ローブを着た二人組に襲撃された」

 

蓮太郎は予想外の言葉に体を強張らせ真莉に問う

 

蓮太郎「なに!?大丈夫だったのか?」

 

真莉「あぁ、そこら辺はな、俺もあの子らも無事だ、だが今回の依頼、かなり面倒な事になる、その覚悟だけはしとけよ」

 

蓮太郎は一気に真剣な顔になり頷く

蓮太郎「ってか真莉は今回1人で来るのか?」

 

真莉「最初はそのつもりだったんだがなぁ〜、あの子たちがそれを許さなくてな、今回はちゃんと連れてくって約束した、俺だけだと何かと面倒くさそうだし丁度いい」

 

蓮太郎「はは、相変わらずだな、だけど今回は5人か、どうするか考えないとな」

 

蓮太郎がそこまで言うとグラウンドの方から大きな悲鳴が聞こえて来た

その声に真っ先に反応したのは真莉、その次に蓮太郎がフェンスに近づきグラウンドの方を見る

 

蓮太郎「っ!?あれは...」

 

真莉「...あいつ確かお前の取り巻きの女だろ?」

 

聖也「あぁ、加古だ、なんであんなところに...っ!?」

 

グラウンドには聖也の取り巻きの1人である加古がいた、そしてその加古の目の前には

 

蓮太郎「っ!?あいつは...ヤバいぞ!なんでこんなところに《感染者》がいやがる!?」

 

沙耶「なにあの怪我!?何であれで生きてるの!?」

 

綾夜「蓮太郎が言っただろ!感染者だ!もう人間じゃない!ちぃ!早く避難させなきゃ!」

 

聖也「このままじゃ間に合わない!?」

 

全員が焦っている中真莉は落ち着いて状況を分析していた、そして全員に指示を出す

 

真莉「沙耶、確か放送委員長と友達だったよな?すぐに連絡して生徒を一箇所に集める様に誘導させてくれ

 

沙耶「え!?あ、うん!」

 

沙耶は言われた通りすぐに連絡する

 

真莉「綾夜は今すぐにここを降りて近くの先生に状況を知らせてくれ、ついでに聖也だったか?お前も行け、放送委員長が何処にいるかによって動くのを早くしなきゃならん、頼めるか?」

 

綾夜「任せろ!」

 

聖也「っ!?あぁ!」

 

蓮太郎「俺は?」

 

真莉「蓮太郎は階段駆け下りてグラウンドで俺と落ち合うぞ、お前が来るまで俺がなんとかする」

 

蓮太郎「お前はどうやっていくんだよ!?」

 

真莉「?《ここから飛び降りる》」

 

真莉の言葉に全員が驚愕する

 

真莉「さっさとしろ!手遅れになんぞ!!」

 

真莉は声を荒げる、グラウンドでは感染者と思わしき男が体を維持出来なくなり遂にガストレアとなる

グラウンドに偶然いた加古は逃げるどころか地面にへたり込んでしまった

 

真莉はフェンスを乗り越え屋上から飛び降りる

そして空中で数回転した後加古の目の前に着地する

加古は驚愕の眼差しを向ける、その直後に学校中に放送が流れる

 

放送『全校生徒、全教員に告げます!ただいまグラウンドにてガストレアが現れました!至急指定の場所まで避難してください!繰り返します!』

 

真莉「ほう、案外近くにいたんだな、ラッキーだったかな...おい、立てるか?」

 

加古「あ...あぁ...(ふるふる)」

 

真莉「(っち、無理か...まぁ、だと思ったよ)守りながら...か、さっさと来いよ蓮太郎」

 

真莉は目の前のガストレア、大きな甲羅と巨大な口、大きな爪を持つ亀のガストレアを見る

亀のガストレアは大きく口を開け咆哮する

 

ガストレア『ギュァァァァ!!』

 

加古「いやぁぁぁぁ!!」

 

ガストレアは走ってくる、亀だからといって遅いわけではなくそこそこ早い

真莉は舌打ちをし未だ座り込んで立てないでいる加古を横抱きで抱え上げガストレアの突進を交わす

しかしガストレアはそれが分かっていたのか尻尾を使い突進の方向を変え真莉に迫る

 

真莉「(っち、当たるか...くっそ)蓮太郎!!受け取れ!!」

 

走って出てきた蓮太郎に向かって横抱きで抱えていた加古を真莉は放り投げた、加古は悲鳴をあげ落下していく

蓮太郎は滑り込みなんとか加古をキャッチする

キャッチした瞬間ドゴンと大きな音がし蓮太郎がそちらを見るとガストレアが真莉を校舎の方に吹き飛ばしていた

 

蓮太郎「っ!?真莉!」

 

蓮太郎の声に反応したのかガストレアは蓮太郎の方を見るとまた同じ突進をし始めた

蓮太郎は舌打ちしXDをドロウし発砲

しかし亀のガストレアは甲羅に入りそれを防ぐ、防いだ後また突進を開始する

 

しかし今度は前に進まない、ガストレアは踏ん張り進もうとするがそれでも前に進まない

蓮太郎はそれに首をかしげるが後ろを見て驚愕した

 

ガストレアの尻尾を真莉が掴み食い止めていた

 

真莉「ぐぬ...れん、たろう!さっさとその足手まとい連れてけ!邪魔!」

 

蓮太郎「っ!?わかった!」

 

蓮太郎は加古を横抱きに抱えて校舎の中に走る

真莉はようやくかと言った様にため息を吐いた

そして未だに暴れているガストレアの尻尾を持つ手にさらに力を加える

するとガストレアは徐々に地面から浮き始めた

 

真莉「ッ...ぉぉぉぉらぁぁぁ!!!」

 

真莉はガストレアを振り回しぶん投げた

 

ズッズゥゥン!

と、大きな土煙と共に轟音がなる、ちらりと校舎の方を見ると沙耶たちがこちらを見ているのがわかる

蓮太郎も加古を送り届けたのか戻ってきて真莉の隣に立った

 

蓮太郎「お前相変わらずすげぇな、あんだけデカくて重そうなのにぶん投げるとか」

 

真莉「まぁそこらへんはほら、俺だからな...やれるな?蓮太郎?」

 

蓮太郎「俺は大丈夫だが...お前は大丈夫なのか?」

 

真莉は目を瞑り思考する

 

真莉「別に、特になんも考えることはねぇ、ただ、友達を守るだけさ」

 

真莉の髪と眼は紅蓮に染まる

蓮太郎はそれを見てXDをドロウし構える

 

真莉「やるぞ、蓮太郎、俺が攻めるからお前は援護を頼む」

 

蓮太郎「わかった、無理すんなよ!」

 

真莉「おう、んじゃ、やるか!」

 




シルバーウィークは昨日から三連休ですがやる事多くて本当に休みなん?

まぁこうやって書けてるからまだ良いか

お気に入りを入れて下さった方々ありがとうございます!
これからもご期待に備えて頑張ります!


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第5話

戦闘シーンをちょっと頑張って見ましたがどうだろうか...

まさかの1日に2話更新です!
まぁ期待はしないでくださいね(苦笑)


亀のガストレアは大きく体を反らし逆さま状態から起き上がり大きく咆哮する

それに合わせて真莉はガストレアに肉薄する

腕を振り上げ攻撃しようとした瞬間ガストレアは大きな甲羅の中に籠る

ガゴォン!

大きな衝撃音と共に砂塵が舞う

砂塵の中から真莉がバックステップで飛び出してくる、ガストレアは甲羅から首を出し真莉に噛みつこうと首を伸ばす

真莉はギリギリで回避し蓮太郎の元に戻った

 

真莉の手からはポタポタと血が滴り落ちていた

 

蓮太郎「大丈夫か?真莉?」

 

真莉「ッてて、硬え、あそこまで硬いとは思わなかったな...それに亀の癖に何かと早いぞ、めんどくせぇな」

 

蓮太郎「っちぃ、真莉の攻撃でビクともしないんじゃ拳銃なんか無意味じゃねぇか」

 

真莉「だろうな、あの甲羅をなんとかするかカウンターを狙うか、どっちかだな、あまり長いことやってらんねぇぞ、学校ならまだしも東京エリア全域に俺の事が広がるのは避けたい」

 

蓮太郎「分かってる、とりあえずカウンターで行くか?」

 

真莉「それが手っ取り早いな、ん?」

 

蓮太郎「どうした?」

 

真莉「...いや、とりあえずやるぞ、このままだといつあの亀野郎が校舎に突っ込むともわからん」

 

蓮太郎「?あぁ、そうだな!急ごう!」

 

蓮太郎と真莉は駆け出すガストレアは突進を始める

真莉と蓮太郎は左右に分かれる

ガストレアは最初の様に尻尾で方向転換し蓮太郎に向かって突進する

 

蓮太郎は落ち着いて横に飛びそれを避ける

避けた瞬間に蓮太郎は攻撃する

 

蓮太郎「天童式戦闘術!一の型十五番!雲嶺毘湖鯉鮒!!(うねびこりゅう)」

 

ガギィン!!

 

蓮太郎「っぐあ!?」

 

真莉の攻撃すら通らなかった甲羅に蓮太郎の攻撃も通るわけもなく蓮太郎は弾かれる

蓮太郎は地面に叩きつけられ肺から空気が抜ける

 

蓮太郎「がは!」

 

叩きつけられた蓮太郎はすぐには動けずに止まる

ガストレアはまた突進する

しかしガストレアの上からの衝撃に苦悶の声を上げる

 

ガストレア「グォォォン!?」

 

真莉「っち、結構《溜めた》んだがまだぶっ壊せねぇか...蓮太郎!無事か!」

 

蓮太郎「げほ、あぁ!問題ない!」

 

真莉「にしても硬え、んだよ、あいつ超硬えじゃねぇか、亀の分際でムカつくなぁ」

 

蓮太郎「ガストレア相手で分際も何もないだろ...」

 

真莉「さて、本当にどうするか...(外すか...いや、外すとかなりめんどい...人目があるならなおさら無理か...ちぃ)」

 

蓮太郎「延珠がいればまだなんとかなるはずだけど...爆弾も使うわけにはいかねぇし」

 

真莉「...ふむ...」

 

蓮太郎「?どうした?」

 

真莉は何かを考えているようだった

 

真莉「蓮太郎、少し、ほんの少しの間あの亀の相手をしてくんねぇか?」

 

蓮太郎「何か策があるのか?」

 

真莉「あぁ、1分あれば良い、頼めるか?」

 

蓮太郎「1分なんかいつでも持ってやる、だから頼むぞ!真莉!」

 

蓮太郎はガストレアに向かって駆け出す

走りながら通用しないとわかっていながら愛用の銃であるXDを抜き発砲する

案の定甲羅で弾かれるが意識をこちらに向けることが出来たようだ

蓮太郎はガストレアが真莉の方に向かない様に銃弾を放ちながら後退していく

 

しかしここで予想外の事態が起きる

 

蓮太郎「(おい待て!あいつなんであっちを見てる!?)」

 

ガストレアは校舎の方を見ている

校舎の方から大きな声が聞こえた

 

さっさとガストレアなんか殺しちまえ!!

やれー!ブチ殺せ!!

そんな化け物殺せー!!

 

蓮太郎はしまったといった表情を見せる

ガストレアの意識が学校にいる連中に向いてしまった

ガストレアは学校に向かって突進を開始する、学校の連中は悲鳴をあげ逃げる

蓮太郎は舌打ちしガストレアに銃弾を与えるがやがて弾切れを起こす

もう少しで校舎に突っ込む寸前でガストレアの動きが急に止まる

ガストレアは足をバタバタとするが前に進まない、真莉がガストレアの尻尾を掴んでいた

 

真莉「お前はぁぁ...こっち...だぁぁ!!」

 

真莉はガストレアをもう一度振り回しぶん投げた

ズッズゥゥンとまた大きな音がしガストレアが逆さまになる

 

真莉「蓮太郎!合わせろ!」

 

蓮太郎「っ!おう!」

 

真莉は地面を蹴りジャンプしガストレアの上に飛んだ

蓮太郎も地面を蹴りガストレアに肉薄する

 

蓮太郎「天童式戦闘術!一の型三番!《轆轤鹿伏鬼》(ろくろかぶと)!!」

 

真莉「流石にここまで溜めりゃあ...打ち砕く!《狼虎掌破断》(ろうこしょうはだん)!!」

 

ビキビキ!ビキビキ!!

 

ガストレアから甲羅だけじゃなくガストレア本体からも尋常じゃない音がする

 

真莉「(っ!?ちぃ、こいつ本当に普通のガストレアなのか?インパクトの瞬間に軸をずらすだと...まさかこいつ...)蓮太郎!ズレろ!」

 

蓮太郎「っ!?」

 

真莉「(決める、ここで殺す!)ぉぉぉぉらぁぁぁ!!《空閃断》(くうせんだん)!!」

 

バキィィンと大きな音を立てガストレアの甲羅が割れ破片が散乱しガストレアは大きな断末魔をあげ絶命した

すると学校中の生徒たちが歓声をあげる

しかし真莉はまだ紅蓮の髪と眼を戻しておらず明後日の方向を向いたまま動かない

蓮太郎は怪訝な眼差しを向ける

 

蓮太郎「真莉?」

 

真莉「...あそこか」

 

真莉はボソリとつぶやき散らばっているガストレアの甲羅の破片の中でも手のひら大の大きさの破片を手にとり投擲の構えを取る

助走を取り構えていた破片を見ていた方角に全力で放り投げる

蓮太郎たちはその行動に驚き言葉を失った

しばらくの静寂の後遠くで何かに当たる音がし何かが崩れる音がした

 

蓮太郎「っちょ!?お前何してんの!?」

 

真莉「...ちぃ、外したか、逃げ足の速い奴らだ...」

 

街の方からサイレンの音が聞こえて来る

戦闘音、更に学校から恐らく連絡があったのだろう、多くのパトカーのサイレンが近づいて来る

 

真莉「...めんどくさ...俺はパスだ、蓮太郎頼んだ」

 

蓮太郎「は?あ!?おい!?真莉!?」

 

真莉は地面を思いっきり蹴り飛んだ、学校の足場を数回蹴り屋上に逃げた

パトカーがそこそこの台数が到着し警官隊がかなり降りてきて蓮太郎のもとに殺到する

 

蓮太郎「(あいつ...逃げやがったぁぁぁ!!)」

 

 

 

真莉「...あれはやっぱりそういうやつか...斉武か...それとも...終わった《実験》を蒸し返しやがって...クソが」

 

真莉はイラつきながら呟く

 

真莉「...あん?なんであいつらここにいるんだ?」

 

真莉の目線の先には本来ならここにいるはずのない少女が2人...アカネと夏世が勾田高校に来ていた

2人はキョロキョロと辺りを見渡し何かを探しているみたいだった

 

真莉「ふむ...(ピュイィ)」

 

真莉は口に指を当て鳴らす、するとアカネが上を見て真莉を見つけると走って校舎に入ってきた、それに続いて夏世も走って校舎に入る

少しして屋上の扉が思いっきり開かれそこから小さな影...アカネが飛び出し真莉に飛びついてきた

 

アカネ「お兄ちゃん!!大丈夫!?怪我は!?」

 

真莉「お前が掴んでる左腕がめちゃめちゃ痛い、今その腕折れてんだからやめろ」

 

アカネ「折れてるの!?病院!お医者さん!」

 

アカネの暴走に後から屋上に上がってきた夏世が止める

 

夏世「やめなさい、アカネさん、真莉さんが痛がってますよ」

 

アカネ「だってだって!」

 

真莉「とにかく離してくれ、どうせ骨折ぐらい《すぐ治る》」

 

夏世「骨折ぐらいって言うのもまたどうかと思うのですが...本当に大丈夫ですか?」

 

真莉「ん、ちょっと待っててくれ」

 

真莉はそういうと左腕をプラプラさせると手首をコキコキ鳴らし左腕で正拳突きを放つ

ブン!と空気が振動する音が聞こえる骨折は本当に治ったようだった

 

アカネ「治ってる...すっごい!」

 

夏世「相変わらずの回復力ですね...下手したら私たち呪われた子供たちよりも速いのではないですか?」

 

真莉「だろうな、それが《俺》だからな...んで、なんでここに来たんだ?」

 

アカネ「あのね!ドッカーンって音がして危ないって思って走ってきたの!」

 

真莉「...夏世、説明頼む、何を言ってんのかよく分からん」

 

夏世「勉強している時に急に立ち上がったから何かと思って聞いてみたら近くで大きな音がした!って言うものですから近場を探してたんです、そうしたら二度目の音は私にも聞こえたので走って来たら勾田高校だったんですよ」

 

真莉「...俺ん家からそこそこ離れてるんだが...よく聞こえたな?」

 

アカネ「うん!私の耳はロバの耳!」

 

夏世「それを言うならば地獄耳です、ロバの耳なんてほとんど意味ありませんよ」

 

真莉「はぁ...ところで、いつまでそこで見てるつもりだ、出て来い」

 

夏世「...」

 

アカネ「ふぇ?」

 

扉の方には聖也とその取り巻きの加古が立っていた

 

真莉「何の用だ?」

 

聖也「加古を助けてくれて、本当にありがとう」

 

加古「あの...ありが...とう」

 

真莉「...別にお前らのためにやったわけじゃねぇよ、ただ、あのままだと俺の友達がヤバかった、ただ、それだけだ」

 

聖也「それでもさ、俺の友達を助けてくれた、本当にありがとう」

 

聖也は頭を下げる、それに続き加古も頭を下げる

真莉は溜め息を吐き面倒くさそうに頭をガシガシと掻く

 

真莉「別に関係ねぇって言ってんだろ、掌返しなんざ受けたって嬉しかねぇよ」

 

聖也は苦笑いを浮かべる

 

聖也「掌返しか...そうかも知れない、そう思われても仕方ないよな...だけどこれだけは信じてほしい、みんな本心で言ったわけじゃない」

 

真莉「っは、どうだっていいな、そんなもん」

 

加古「どうでもよくないわ!」

 

加古が大声を張り上げる、聖也は驚きの表情を浮かべた

 

加古「私はあなたの事を化け物と呼んだのよ...許されるわけないじゃない...」

 

真莉はその言葉に対して笑う

 

真莉「はは、化け物は当たってっから良いんだっつうの、信じられねぇなら...」

 

真莉は自分のポケットから小型のナイフを取り出し自分の腕に当てる

一同が驚愕した

真莉が自分の腕をそのナイフで切りつける

 

聖也「っな!?」

 

加古「っちょ!?何し...て...」

 

そこには驚愕の光景が広がった

普通なら、普通の人間だったら腕を切りつけたら当然辺りが血だらけになる、なのに真莉の腕から切りつけたにもかかわらず血が一滴も流れなかったのである

 

それにはアカネと夏世も唖然とした

 

夏世「...流石にここまでとは思いませんでした」

 

アカネ「ふわぁぁ、切ったのに切れてない?あれれ?」

 

加古「うそ...」

 

聖也「真莉...君は一体」

 

真莉「お前らが言ったろ、俺は化け物だ、これでわかっただろ?俺にとっては高々こんなちゃちなオモチャなんかでは傷つかねぇし着いたところですぐに治る、それに」

 

そこまで言った真莉はまた目を瞑りすぐに目を開ける

真莉の眼は紅蓮に染まる、眼だけでなく髪も紅蓮に染まっていた

 

真莉「髪と眼が真っ赤に変わる、男でそんなことができるやつなんか化け物以外にいるわけねぇだろうが」

 

聖也と加古は言葉が見つからず固まってしまう

真莉は2人に背中を向け扉に歩き出す

 

真莉「アカネ、夏世、帰るぞ」

 

アカネ「え?もう?」

 

夏世「学校は...成る程、どうせこの騒ぎですから授業が無いのですか、帰るのも自由、騒ぎが静まっていない今が帰るのも今のうちの方が良いということですね?」

 

真莉「話が早くて助かるぜ...と、言うわけで俺らは帰る、明日は多分こねぇから、沙耶と綾夜には伝えといてくれ...そんじゃな」

 

真莉達は聖也達の制止を受け入れず帰路に着いた

明日の午後はいよいよ護衛の任務の初日を迎える

真莉の目には憎悪が映り込んでいた

 

真莉「斉武...宗玄...か」

 

ぼそりと呟いた言葉は虚空に消え去った




やっぱり戦闘シーンって難しいっすね...
これでオリジナルの学校編終わりっすね
たったの2話ぐらいでしたが...
次からは原作に戻りますよ!


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第6話

またまたオリジナルです!

投稿が遅くて本当にすいません!
なんとか早くやろうとは思うのですが...

とにかく頑張りますよ!


真莉達は家に着く

アカネと夏世は自分の部屋に一直線に戻っていく

帰り道に話し合い明日の護衛の事で最善かつ、確実に任務を遂行する為武器の手入れや色々な準備をする為部屋に篭る事にしたのだ

 

真莉は自分の部屋に戻る訳ではなく、夕ご飯の支度を始める

 

 

 

夕ご飯を作っているとインターフォンが鳴る

 

真莉「あ?誰だ?アカネ〜!わりぃ!出てくれ〜!」

 

真莉が大声で呼ぶとアカネは部屋を飛び出し分かった〜と言いながら玄関に向かう

 

玄関の方で騒がしい騒音が聞こえる、真莉は首をかしげる

 

真莉「...誰だ?アカネ〜!誰だった〜?」

 

ドタバタと誰かが近づいてくるのが分かる

すると腰のあたりに小さな衝撃が入る

ウッと真莉は呻き声を上げ首だけ後ろに振り返ると意外な人物がそこにいた

 

真莉「...なんでここに《小比奈》がいるんだよ」

 

真莉の腰に抱きついてきたのは蛭子小比奈だった

 

小比奈「私がここにいるのはダメ?」

 

真莉「ダメではないが...アカネはどうした?」

 

小比奈「アカネなら玄関で固まってる、だからここに来た」

 

どうやら訪問者を迎えに行ったアカネは予想外の人物がいた為固まっているようだった

 

真莉「...影胤からか?」

 

小比奈「うん、パパのデンゴン?だよ」

 

真莉「一様聞こうかな、なんて?」

 

小比奈「えっとね、『いつまでも隠しておく事は出来ないよ、不安はあれど何よりも仲間を信じる事だ』...だって」

 

真莉「...どこまで知ってるんだよあの仮面は...まぁ肝に銘じておくさ...小比奈は夜ご飯食べてくか?」

 

小比奈「良いの?」

 

真莉「あぁ、別に1人増えたところで何ともない」

 

小比奈「じゃあ食べる」

 

真莉「オーケーだ、そんじゃ座って待って...「ピンポーン」」

 

またしてもインターフォンが鳴る、真莉は小比奈を見るが小比奈は首を振る

小比奈は関係無いようだった

となると誰だか分からない

 

真莉は火を止め小比奈に近くに置いておいたお菓子を渡し玄関に向かう

玄関先に固まっていたアカネの頭をひと撫でし覚醒させる

真莉はそのまま玄関を開ける

 

ガチャ

 

真莉「ほい、どちら様で?」

 

するとドサリと中に倒れこんでくる三つの影が現れる

真莉は倒れこんでくる瞬間に横によけ追突を避ける

倒れ込んできたのは天童民間警備会社の3人、社長の天童木更、プロモーターの里見蓮太郎、そして里見蓮太郎のイニシエーターの藍原延珠だった

 

真莉「...何しに来たお前ら」

 

真莉の問いに答えたのは蓮太郎だった

 

蓮太郎「悪い...真莉...これでなんか作って...くれ...」

 

続けて木更も答える

 

木更「お願い...もう、お腹、減った...」

 

真莉「はぁぁぁ」

 

真莉は盛大に溜息を吐き二階の自身の部屋にいる夏世を呼んだ

 

真莉「夏〜世〜!」

 

二階から扉が閉まる音がし夏世が降りてくる

 

夏世「どうしましたか?...何でここに里見さん達が?」

 

真莉「とりあえず2人で協力して中にぶち込んどいてくれるか?玄関先だと迷惑だ」

 

夏世「分かりました」

 

アカネ「うん!...そうだ!何であの子ここにいるの!?仮面の人...影胤さん?って人はいなかったのに?」

 

真莉はやべ、と言った表情を見せる

アカネの言葉に倒れていた3人は即座に起きリビングに一気に走った

 

蓮太郎「!?おまえ!」

 

蓮太郎は椅子に座っていた小比奈を見るとすぐにXD拳銃を引き抜き小比奈に向けるが小比奈はお菓子を食べていて眼中に無い

すると延珠も来て大声で驚きの声を上げた

 

延珠「んな!?何でこやつがここにおるのだ!?」

 

延珠は今にも飛びかかりそうだったが頭に拳骨を受けその場にうずくまる

蓮太郎はそれを見て驚くが直後自分にも拳骨が飛んできて避けれずに当たる

 

ゴン!

 

蓮太郎「いってぇ!?なにすんだ!?真莉!?」

 

真莉「ここ、俺の家、争い、禁止」

 

拳骨を放ったのはこの家の主人の真莉だった

真莉はカタコトに喋るがその目は細められ少し怒っているようだった

 

延珠「なにをするのだ!真莉!こいつは、小比奈は東京エリアを破滅させようとしたのだぞ!?」

 

真莉「今は俺の客だ、この子をどうするかも俺が決める...お前らも飯食うんだろ?だったらそこに座ってるかなんかして待ってろ、3人も増えたから色々練らなきゃならん」

 

真莉は台所に戻る

蓮太郎達は小比奈から視線を変えずにずっと動きを見ていた

数分後突如小比奈が立ち上がる、蓮太郎達はいつ来ても良いように構えたが小比奈は蓮太郎達の方ではなく真莉の方に行く

蓮太郎は真莉が危ないと思ったのか台所の方に行く

 

真莉「ん〜?どした?」

 

小比奈「水欲しい」

 

小比奈のまさかの言葉に蓮太郎はずっこける

お菓子を食べてて喉が渇いただけだったようだ

 

真莉「分かった、ちょっと待ってろ」

 

真莉は冷蔵庫を開け中からオレンジジュースを取り出す、コップを6個だしそれぞれに注ぐ

お盆に乗せテーブルに持ってくように指示する

 

そこで小比奈と蓮太郎は目を合わせた

しばし見つめ合ったのち真莉に向かって小比奈はこう言った

 

小比奈「...いつからいたの?」

 

どうやら認識すらされていなかったようだった

 

 

 

 

 

騒がしい夕飯が終わり小比奈は

 

小比奈「帰る」

 

と言いいつの間にか帰っていった

蓮太郎は最後まで小比奈をIISOに引き渡すと言っていたが真莉はのらりくらりとちゃんとした返事をしなかったため渋々引き下がった

 

蓮太郎達も帰り元の静けさを取り戻した古畑家はリビングで最終確認をしていた

主に作戦を考えるのはこの家で1番頭が良い夏世が率先して考え真莉とアカネがおおよその作戦が出た後に疑問と質問を投げかけていた

 

それを続けていると時刻はいつの間にか22時を超えていた

アカネは眠いのか船を漕いでいた

真莉「ん、もうこんな時間か...あとはなるようになるか、今日はここまでにしておくか」

 

夏世「分かりました、ではアカネさんは私が連れて行きますね」

 

真莉「あぁ、頼む、お休み、夏世」

 

夏世「はい、お休みなさい」

 

夏世は挨拶を済ませ完全に眠ってしまったアカネを抱き上げ階段を上がっていった

すると真莉の携帯から着信が入る

見ると登録していない(と言うか登録しているのが少ない)電話番号からの着信だった

 

真莉はしばし考えた末電話に出る

 

真莉「もしもし?」

 

影胤「私だ」

 

真莉「誰だか知らねぇから切るぞ」

 

影胤「ひひひ、つれないね、もう少し乗ってくれても良いんでは無いかな?」

 

真莉「(はぁ)...何の用だ影胤」

 

電話の相手は東京エリアを破滅に陥れようとしていた人物で何かと気に入られてしまっている蛭子影胤だった

 

影胤「礼を言っておこうと思ってね、小比奈にご飯を食べさせてくれたそうじゃ無いか、助かったよ」

 

真莉「子供は良く食べて良く寝るのが1番なんでな、別にそれがどんな事をしでかしたやつだとしても俺には関係ねぇしな」

 

影胤「君は随分と難儀な正確なようだね」

 

真莉「それが俺だ、面倒ごとが嫌いなのに自分から面倒に首を突っ込んじまう...やってられっか」

 

影胤「自分でわかっているのならば何故だい?」

 

真莉「...それは今回の件か?お前は何を知っている?」

 

影胤「私は知らない、大阪エリアの代表が来ることしかね、その後のことは私が知ったことでは無いよ」

 

真莉「...そ、あぁ、そうだ、伝言の件だが」

 

影胤「小比奈はちゃんと言えたかい?」

 

真莉「自分の娘だろ、信じてやれよ...まぁ結論から言えばお前には関係無い、俺は自分自身しか信じない...それが答えだ」

 

影胤「...本当にそれで良いのかい?」

 

真莉「俺はもう信じるのはやめてるんでな、あの時からずっとな」

 

影胤「あの時?」

 

真莉「...いや、何でもねぇよ、それだけか?だったら切るぞ、お前と違って明日は失敗出来ない仕事なんでな」

 

影胤「そうか...生きていたら君の料理を食べてみたいねぇ、小比奈が大絶賛していたから気になるんだよ」

 

真莉「勝手に殺すな、ま、来る時は小比奈を連れて来い、お前1人に食わす気はねぇよ」

 

影胤「なるほど...君は世に言う露理魂(ろりこん)という奴なのかな?」

 

真莉「...ちげぇよ...そんじゃ切るぜ、もう寝る」

 

影胤「違うのか...まぁ私は君を高く買っている、だから死ぬなよ」

 

真莉「...殺せるなら殺してみて欲しいがな...(ぼそ)まぁ、肝に銘じておく」

 

影胤「そうか、それでは」

 

プツっと通話が切れる、真莉は溜め息を吐き玄関に行き靴を履き外に出た

 

 

しばらく歩くと公園に着いた、真莉は公園の中央に行き真莉は空を見上げ盛大に息を吐き《ずっとついて来ていた》人物に話しかける

 

真莉「イヤな夜だな...どうも血生臭い臭いがする、あのままいたらアカネが起きるんだよ...あいつは俺と同じで起こされるとスッゲェ機嫌悪くなるから臭いを落としてから来いよ...ってか何なの《お前ら》来るなら全員で来いよ、もうあと2人程いるだろ、ここにはいなさそうだが...ッツ!?」

 

真莉がそこまで言った瞬間に左肩に激痛が走る

 

真莉「(狙撃...か、何処だ...)」

 

何処からか銃撃された真莉は落ち着いて辺りを見渡す

意識を他に向けたからか真莉の後をつけてきた一人の人物は懐からククリナイフを取り出し距離を詰める

ナイフを振りかざし真莉に斬りつけようとするが真莉はそれに合わせ蹴りを放ちナイフを弾き放った蹴りの流れで軸足を回転させ回し蹴りを放ちローブの人物を蹴り飛ばす

 

真莉「(っ...浅いか、随分と動ける奴だな...こないだの奴か?いや、初めてやりあう奴か...さて、どうすっか)」

 

真莉はローブの人物を見るが未だに動く気配が無い

 

真莉「さて、こんなもんで終わりじゃねぇだろ、さっさと立て、ここ最近テメェらが何を考えて俺に付きまとってるかは知らねぇし知る気もねぇ、だがウザい、とにかくウゼェ、テメェらみてぇなのが一番嫌いなんだよな...これ以上何かしらするってんだったら...殺すぞ」

 

真莉の目が紅蓮に染まる

何処かからか風切り音が聞こえ真莉はその場から離れる

先ほどまでいた場所に銃弾が炸裂する

 

真莉「銃を変えたか...この音はショットガン...か(音の方角がバラけてるのは何故だ?後ろからも聞こえるが着弾点には片方の音の銃弾のみだし...どういう事だ?)」

 

真莉が思考していると倒れていたローブの人物が起き上がる

ローブはボロボロになり所々破れていた

ローブの人物はそのローブがもう必要無いのかローブを外し放り投げる

 

現れたのは恐らく年齢は真莉と同じか少し下ぐらいの男で髪は真莉と同じ紅蓮の赤、瞳は暗くて見えず身長は恐らく170を超えているだろうか、そんな人物が弾かれたククリナイフを拾い真莉に向かって睨んでいた

 

真莉「以外と若いな...ローブを脱いだって事は別に見られても構わないって事か、さて初めましてか?いや、お前は俺を知ってんだよな、とりあえず聞いておこうかな...俺に何の用だ?」

 

???「.....」

 

真莉「答えず...か、あぁめんどくせぇな」

 

元ローブの人物は真莉に向かって一気に距離を詰める

片手にククリナイフを、もう片方の手には小型の拳銃を持って迫る

 

真莉「ぬるい、あと遅い」

 

???「っ!?」

 

真莉は相手が拳銃で照準を合わせる瞬間に既に懐に迫り右腕を振り抜く

振り抜いた右腕は相手の鳩尾にクリーンヒットする

 

真莉「手応えあり...ッおっと」

 

真莉の元に銃弾の雨が降り注ぐ

真莉は走り全てかわす

 

真莉「流石にめんどくせぇな...弾切れになりゃいいが...お、丁度いい」

 

真莉は銃弾を避けながら隠れ場所を見つけそこに隠れる

しかし隠れた矢先に真莉の目の前に新たなローブを着た人物が現れる

 

真莉「...三人目か、かったりぃな」

 

真莉は面倒くさそうに頭を掻く

新たな来訪者は先ほどよりもいくらか華奢に見えた

 

???「相変わらずなんだね」

 

真莉「ッ!?」

 

ローブの人物は真莉に話しかける

声からして女性、それも若いようだ

真莉はその声を聞き驚愕の表情を見せる

 

???「やっぱりカノくんじゃ役不足だったかなぁ〜、まさか一発で終わっちゃうとは思わなかったよ〜」

 

ローブの人物はケラケラと笑う

 

???「あはは!そう!あなたのその顔が見たかったの!」

 

真莉「...」

 

ローブの人物はローブを思いっきり投げすてる

そこから出てきたのは紅蓮の長い髪を横に一つにまとめている小柄な少女がそこにはいた

 

真莉は驚愕でその場を動けない

 

真莉「ッ!?」

 

ドス!

 

真莉の胸にナイフが深々と刺さっていた

首だけ後ろに向けると先ほど倒したはずの男が憎しみの籠った目を向けナイフを刺していた

少女は更に大きく笑う

 

???「あっははは!やっと、一緒になれるね!ね?《兄さん》?」

 

真莉は目の前が真っ暗になっていった




多分次辺りから真面目に原作に行くと思います

あと自分は小比奈ちゃんが大好きです!

あの子可愛く無いっすか?ぶった切られそうだけど...
次は早く上げれるように頑張ります!

感想や誤字、脱字など常にお待ちしておりますよ!


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第7話

なんか迷走してる気分だぜぃ...

何を書きたいやら...無駄に文字数が伸びたし
まぁ今は投稿する事だけ考えてやりますわ〜

それでは第2章第7話、どうぞ〜


声がする...

いつも聞いていて他の誰よりも長い付き合いのよく知る声が聞こえる

 

なんだよ、普段はそんな事言わねぇだろ...

あ?いや、別にこんぐらい...はぁ、分かったよ、なんでそんなにやる気出してんだよ、いつもは本当にやらねぇ癖によ

...俺がそう考えてる?そんなわけねぇだろ、俺はもう割り切ったさ

 

お前は何を言ってるんだよ?俺にはわから...っておい、あからさまにため息を吐いて消えるな...ったく、分かってんよ、俺が迷ってるなんてな...さて、第二ラウンドと行くか...悪いが加減はしねぇぞ...そんじゃ、悪いが頼むぞ...《 》

 

 

真莉「...ってぇな、この服ちょっとだけお気に入りだったんだけど...どうしてくれんだ?」

 

???女「...あれ?」

 

???男「っ!?」

 

真莉は男の方に向かって拳を振り抜き男に当て男は吹き飛ぶ

 

???男「っが!?」

 

男の肺から空気が抜ける、女はバックステップで距離をとる

 

???女「(傷が治ってる...やっぱりそうなんだね、兄さん)っ!?」

 

真莉「どこに行くつもりだ?お前にも受けてもらう...ぞ!」

 

真莉の蹴りが女を吹き飛ばし木に命中させる

 

???女「っ!?ケフ...ふふ、自分の妹に...こんな一撃を浴びせるなんてね...ゲホ、ゲホ...いったぁ...」

 

真莉「妹だ?俺にそんなのはいねぇよ、俺は一人っ子だ...テメェなんかしらねぇよ」

 

???男「ァァァァァァァァ!!!!」

 

男は咆哮を上げながら突進してくる

 

真莉「血の気が多いな...」

 

男が迫る、しかし真莉はその場から消える

 

???男「っ!?どこ行きやがった!?」

 

???女「っ!?翔!上!」

 

女に翔と呼ばれた男は上を見る

真莉は上に飛んでいた

真莉は男に向かい空中で連続で回転し踵落としを放つ

 

真莉「《空牙》!」

 

ドゴォと鈍い音が辺りに響く

男は腕をクロスし踵落としを防ぐ、防いだ事により地面が少し陥没する

真莉は防がれたと判断した瞬間に踵落としを放った足とは別の足で男の顔面を蹴り飛ばした

 

バギィと音が響き男はまた吹き飛ぶ

真莉は地面に着地しすぐさま女の方に意識を切り替え仕掛ける

 

???女「っちょ!?(速い!?)」

 

真莉は女の懐深くに入り込み下から相手の顎に向けて掌底を放つ

 

???女「ちょ!?危な!?(これは...さっきより速くなってる...それに傷も消えてるし、あの方の言う通りかな...となるとここは!)」

 

女は連続でバク転し距離を離そうとするが真莉はそれにぴったりとくっつき掌底を連発する

 

???女「かわせない!?やば!?」

 

真莉は下から蹴り上げる

 

真莉「《昇天牙》(しょうてんが)!」

 

女は真莉の攻撃を腕をクロスし受ける

女は思いっきり吹き飛ばされる

数メートル先で着地し女は腕を振る

 

???「いった〜...ちょっと!可憐な乙女の腕に何すんのよ!?それでもあたしの兄さんなの!?遠慮なしなの!?」

 

真莉「ウゼェ、お前なんか知らねぇって言ってんだろ...おっと」

 

真莉はその場から横に飛び避ける

先ほどまでいたところにククリナイフが刺さる

 

真莉「結構いいのを当てたと思ってたんだがな...どういうカラクリだ?」

 

 

真莉は呟く

翔と呼ばれた男は真莉をずっと睨んでいる

やがて口を開く

 

翔「殺す...殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!」

 

男は走り出そうとするが女に止められる

 

翔「離せ!!こいつは殺す!殺さなきゃ!」

 

???女「黙りなさい」

 

翔「っひ!?」

 

男は今にも噛みつきそうになるが女がそれを止める

 

???女「今はもう無理よ、引くわよ」

 

真莉はその場から消えた

 

???女「っ!?」

 

翔「っな!?」

 

真莉「悪いが...もう逃がさねえぞ」

 

???女「いつのまに!?(いや、それより...どうして!?さっきよりも力も、スピードも...桁違いに!?)」

 

翔「っあか!?」

 

真莉は二人の真ん中に移動し拳を地面にぶつける

 

真莉「《剛破断》(ごうはだん)」

 

先ほどよりも遥かに大きな音が響き拳をぶつけた地面は大きなクレーターを作った

二人はそれぞれ左右にギリギリで避けた

 

 

???女「うっそん...(って言うかさっきから援護が無い...何かあったって考えるのが妥当...ね、予想外ね、ここまでなんて)」

 

翔「っ!!殺す!!」

 

???女「っ!?待ちなさい翔!?」

 

男は真莉に向かって走り出す

女は焦ったように声を荒げる

 

男は真莉に向かってナイフを振りかざす

真莉はそれを見ずにその場からまた消える

 

翔「っ!?また上か!同じようなことばかりで!」

 

翔は上を見るがその場にいない

 

真莉「んなわけねぇだろバカが」

 

真莉は真下から男の足を払う、払ったあと相手をそのまま蹴り上げる

 

真莉「《裂空牙》(れっくうが)!」

 

翔「っがは!?」

 

その攻撃で浮かした相手よりさらに上に飛び回転し踵落としを放つ

 

真莉「《空牙》!」

 

空中から男は叩き落とされ地面に新たなに小さなクレーターを作る

真莉は地面に着地する

 

真莉「そういやあの射撃止んだな...お前らが何がしたいのか知らねぇが...俺の日常を壊すって言うんだったら...容赦はしねぇぞ」

 

真莉から殺気が溢れ出し辺りを包む

女は冷や汗を溢れさせる

 

???女「...ここで撤退させてくれたりは...」

 

真莉「するわけねぇだろ」

 

真莉は答えるや否や女との距離を詰める

だがすんでのところで別の影が現れ真莉を殴り飛ばす

真莉は空中で一回転し地面に着地する

 

真莉「三人目か...って事は狙撃した奴を合わせると四人か...めんどくせぇな(それよりも...どこから現れたこいつ...気配を全く感知できなかったが...)次はテメェか」

 

三人目のローブの男はいつの間にか両手に二人を担ぎ真莉に背を向けていた

 

真莉「(こいつ...)」

 

真莉は一気に距離を詰め拳を振り抜く

 

真莉「《剛破断》!」

 

しかし真莉の攻撃は三人目のローブの人物は振り向きもせずに足だけで相殺する

いや、真莉の方が吹き飛ばされた

 

真莉「(っちぃ、こいつ...)強いな...って」

 

一瞬の内にローブたちはその場から消える

 

真莉はそれを見て目を閉じる

 

真莉「...ちぃ(もういい、悪かったな、心配かけた...あぁ、だから悪かったって...あ?っげ)」

 

辺りに静けさが戻った矢先遠くからサイレンが聞こえてくる

深夜のこの時間でこんな大きな音がしていれば当然の結果だった

 

真莉「(はぁ、分かった、また近々借りるかもしれん、その時は...すまんな)」

 

真莉は目を開ける、その目はいつもの黒に戻り髪も元に戻っていた

その場から真莉は逃げるように走って家に向かう

公園に残ったのは大きなクレーターと小さなクレーターが残されていた

 

 

 

 

次の日

 

真莉たちは豪勢なリムジンに乗っていた

家でゆっくりと集合時間まで待っていたのだがいざ出ようとした時に玄関からインターフォンが鳴る

 

真莉が出るとそこに延珠がいた

アカネは延珠の来訪を大歓迎していた

延珠の後ろには延珠の保護者でもある里見蓮太郎がいてその後ろには黒い大きなリムジンがあった

窓が開き中から聖天子が顔を出す

 

聖天子「こんにちは、古畑さん、アカネさん、千寿さん」

 

夏世「こんにちは、聖天子様...その節はどうもありがとうございます」

 

アカネ「ありがとうございま〜〜す!!」

 

真莉「あん?もうそんな時間だったか?まだ余裕があったと思ったが...」

 

聖天子「すいません、ご迷惑かと思ったのですが少しでも楽をしていただきたかったのでお迎えにあがりました」

 

真莉「普通は俺らが迎えに行く側なんだが...まぁ俺個人としては多少楽になったからありがたいが...(ぼそ)ほんの少しだけ待っててくれ、すぐに荷物を持ってくる」

 

真莉たちは一度家に戻り荷物を持ちまた出てきた

 

アカネ「それじゃあレッツゴー!」

 

夏世「アカネさん、遠足ではないんですから...もっと緊張感を持ちましょうよ」

 

真莉「まぁ良いんじゃねぇの、アカネはそのままで」

 

夏世「真莉さんまで...しょうがないですね...よろしくお願いします」

 

聖天子「お願いするのはこちらの方です、それでは皆さん、よろしくお願いします」

 

真莉たちはリムジンに乗り込む

席順は真ん中の聖天子を挟んで右にアカネ、左に真莉反対側の真ん中には蓮太郎、蓮太郎を挟んで右に延珠、左に夏世が座る

 

数時間後ようやく目的地に到着した

扉を開け先に真莉が出てすぐに蓮太郎も出る

二人で辺りを警戒し安全を確認した後聖天子を下す

 

蓮太郎は目の前の巨大な建物を見上げる

今回の非公式会談の場所は地上八十六階建ての超高級ホテルだった

要人のセーフハウスの代わりにエリア別の大使館など良く利用されていると聞く

 

延珠「蓮太郎!お仕事頑張ってくるのだ!」

 

アカネ「お兄ちゃん!頑張ってね!」

 

夏世「行ってらっしゃい、この子たちのお世話はお任せください」

 

延珠たちはリムジンの窓から手を振る

蓮太郎たちは手を振り返して先を歩く白い少女、聖天子の後ろに続く

蓮太郎はふとした疑問を口にした

 

蓮太郎「延珠たちは置いてってよかったのか?あいつらがいた方がより安全だぜ?」

 

聖天子「こういう真面目な場に子供を連れて行けません」

 

真莉「夏世はまだしも延珠とアカネは下手したら寝るぞ、いや、アカネは100%寝るぞ」

 

蓮太郎はしょうがないとばかりに溜め息を吐いた

聖天子は回転扉をくぐるといかにも貴人専用という豪奢なホテルのフロントに来意を告げる

途端に支配人に取り次がれかしこまった支配人はカチコチに緊張しながら丁重に鍵を持って聖天子に握らせる

聖天子が薄く微笑んで礼を言うと支配人は脂下がった笑みを浮かべた

 

エレベーターに乗ると鍵穴に受け取った鍵を差し込み捻りながら本来表示されていない最上階のボタンを押す

何度乗ってもなれないエレベーターの感触に真莉は苦い顔をする

蓮太郎は急に真面目な顔を作り聖天子に問う

 

蓮太郎「...なぁ、アンタ、本当に斉武がどうして非公式会談を組んでくるかわからねぇのかよ?」

 

聖天子「えぇ、さっぱりです...と言うより」

 

聖天子は一瞬ちらりとこちらを振り向いた

 

聖天子「私は斉武大統領と一度もお会いしたことがありません」

 

蓮太郎はハッとする、そう言われてみればそうかもしれない

東京エリアの代表は何度か交代している

敗戦後東京エリアに改称した初代、たった一年弱で病没した二代目、そして目の前にいるこの少女はまだ政治家一年生であるはずだ

 

聖天子「里見さん、貴方は斉武大統領と面識があるのですよね?」

 

蓮太郎「...あぁ、まぁな、俺が昔、天童の屋敷に引き取られていた頃あのクソジジイは俺を政治家にしようとしていて色んなパーティとかに連れ回してたからな、斉武とも一応面識はあんよ、もうずいぶん昔の話だけどな」

 

聖天子「逆に私からお聞きしたいのですが、貴方から見た斉武大統領はどのような人なのですか?菊之丞さんに斉武さんの話題を出すと露骨に不機嫌になるので...」

 

蓮太郎「アドルフ・ヒトラー」

 

聖天子「は?」

 

聖天子の声は裏返り目をパチクリとさせると見たこともないほど面白い表情をした

聖天子は身体ごとこちらに向けると目頭を軽く揉む

 

聖天子「...すみません里見さん、最近政務が忙しくて疲れているようなのです...もう一度言ってもらえませんか?」

 

蓮太郎が言う前に先に真莉が言う

 

真莉「だから、アドルフ・ヒトラーだって」

 

蓮太郎「真莉も知ってるのか?」

 

真莉「まぁな」

 

聖天子「冗談ですよね?」

 

蓮太郎「マジだよ、斉武が大阪エリア市民に十七回も暗殺されかけてるのはあんたも知ってんだろ?あんな重い税金かけたら誰だってぶちギレるだろうに、それに札幌エリアや仙台エリア、博多エリアのトップたちもそうだが奴らはガストレア大戦後の荒廃期からたった一代でエリアを立て直した極めつきの連中だぞ?そして危険な奴らだ、どの当事者も我こそは日本の代表とか寝言を真顔で言う連中だからな、中でも斉武は一番やばい、気を付けろ」

 

蓮太郎の真剣な眼差しに聖天子は息を飲んだ

 

聖天子「わ、分かりました、ご忠告ありがとうございました」

 

蓮太郎は顔を上げ最上階を睨む

真莉は目を閉じ瞑想していた

聖天子は不安げに二人に話す

 

聖天子「お二人とも私の傍を離れないでくださいね」

 

蓮太郎「へいへい」

 

真莉「あんたがいなくなると斉武の奴が色々仕掛けてくる、そんなのさせねぇよ、安心してくれ、俺は俺の全力を持ってあんたを守ろう」

 

聖天子は真莉の言葉には微笑んで頷き蓮太郎の言葉にはムッとし人差し指を蓮太郎の鼻面に突き付けた

 

聖天子「あと、里見さんは短気なので自制するようにお願いします、里見さんが斉武さんに殴りかかってエリア間の戦争になったら目も当てられません、うっせぇなとか、ざけんじゃねぇよとか汚い言葉を絶対に使わないでくださいね」

 

蓮太郎「っち、んなこと言うわけねぇだろうが」

 

真莉「賭けようか?お前のそれ100%無理だぞ」

 

蓮太郎「うっせぇな...あ」

 

真莉「くくく、ほらな」

 

蓮太郎「っち」

 

やがてインジケーターが最上階で止まり重々しい音を立て扉が開くと思いがけず最初に目に飛び込んできたのは青空で蓮太郎は度肝を抜かれた

半円のドーム状に張り巡らされた六角形の強化ガラスは透明でそこから見渡せる奥行きは無限の広がりを感じる

 

一人の白髪の男がこちらに背を向けソファに腰掛け六枚のペーパーディスプレイに視線を落としていた

やがてソファから腰を上げた男が振り返り立ち上がる

 

斉武「初めまして、聖天子様」

 

そこで斉武は蓮太郎に気づいたのか急に声のトーンが下がる

 

斉武「隣にいるのは天童のもらわれっ子か」

 

蓮太郎「テメェこそまだ生きてたのか、いい加減死ねよジジイ」

 

斉武「口を慎め民警風情が!ここをどこだと心得ている!」

 

稲妻の如き一括が走り隣の聖天子がびくりと震える

すると隣の真莉からクスクスと笑い声が上がり斉武はそちらを睨む

 

真莉「くくく...やっぱり無理だったじゃん、何がわかったよ...おもしれー」

 

斉武「っ!?貴様は...」

 

斉武が何かを言おうとしたら斉武の護衛だろうか、一人の女が口を開いた

 

???「あはは!やっぱり変わらないんだね!...ね?《兄さん》?」

 

女のまさかの言葉に蓮太郎と聖天子は驚愕の眼差しを真莉に向ける

真莉は目を閉じたまま何も答えない

すると女は

 

???「ん〜、やっぱり忘れてる?私は一度たりとも忘れたことなんてないよ?」

 

 

真莉は目を開け失笑する

 

真莉「は、随分と面白いこと言うな、昨日は《殺しあった》だろうが」

 

今度は斉武も驚いたのか三人とも驚愕した

 

斉武「...一体どういうことだ?」

 

???「...ん〜、申し訳ございません、ご主人様、こればっかりは...ね?」

 

斉武「...まぁお前たちの事情は知っている...それはお前ら《家族》の問題だ」

 

蓮太郎「家族...?」

 

女は嬉々として答えた

 

???「うん!私たちとそこにいる人はちゃんと血の繋がった家族だよ!あ、申し遅れたね!」

 

女はくるりと回りスカートの端を摘み優雅に一礼する

 

???「初めまして、聖天子様、私の名前は《古火田朱音》(こかだあかね)です、以後お見知り置きを」

 

蓮太郎「こかだ...あかね...?」

 

聖天子「あかねさんって...」

 

真莉「...」

 

真莉は盛大にため息を吐いた




初めてかも知れませんよ6,000文字超えたの

お気に入りが40件を超えました!皆様ありがとうございます!


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第8話

ごめんなさい!投稿がこんなに遅れてしまいました!

少々仕事が忙しくなかなか書けない事がありました...なんとか更新していきたいと思います!頑張りますよ!


古火田朱音と名乗った少女は優雅に一礼する

聖天子と蓮太郎は真莉を見る

真莉は目を閉じ溜め息を吐く

 

真莉「時間がねぇんじゃねぇのかよ、さっさと始めろ、こっちは暇じゃねぇんだ...なんもねぇんなら俺は帰る」

 

真莉はすぐにエレベーターに戻ろうとするが蓮太郎に止められ渋々残った

聖天子は真莉の言ったことに頷き斉武に話しかける

 

聖天子「それでは会談を始めましょう」

 

聖天子は椅子に座る、斉武も釈然としない様子で渋々と座る

先に斉武が口を開く

 

斉武「蓮太郎、風の噂で聞いたぞ、天童の女狐にそそのかされて天童を出奔とは...愚かな真似をしたな、今の貴様は天童の政治家ではない、地虫の如く地を這う民警よ!俺も貴様をそう扱う、貴様も自分の分際を忘れるな!」

 

蓮太郎はポケットに両手を突っ込み剣呑な表情で斉武を見る

 

蓮太郎「ゴタゴタとうるせぇジジイだな!地位?家柄?そんなのを背後にそびやかさないと満足にお喋り出来ないってんならお前こそ大阪エリアに引きこもって出てくんなよ!俺が天童だろうがそうじゃなかろうが俺は俺だ!」

 

斉武は少しだけ思案する仕草を見せふと口元を緩めた

どうやらとりあえずは合格だったようだ

次に斉武が矛先を向けたのは真莉だった

 

斉武「お前は古火田の次期当主だったはずだな?何故このような場所にいる?」

 

それに反応したのは聖天子だった

 

聖天子「古火田の次期当主?どういうことでしょうか?」

 

斉武「古火田一族は大阪エリアでもかなり実力のある家なのです」

 

斉武はそれだけ言うと後ろに控えている朱音に首を回した

それを見て朱音は少し前に出て話し始める

 

朱音「私たちの特徴として」

 

朱音の髪が徐々に紅蓮に染まる

それを見て聖天子と蓮太郎は唖然とした

 

朱音「私たちの一族は主に戦闘になると髪が紅蓮に染まるんです、こうなっているときは戦闘能力も身体能力も大幅に跳ね上がるんです、まぁ訓練すればいつでも変えられるんですけどね」

 

蓮太郎「眼は紅くならないのか?」

 

朱音「眼?なるわけ無いじゃない、私たちは呪われた子供たちじゃないのよ?ありえないわよ」

 

蓮太郎「(じゃあなんで真莉は...)」

 

真莉「そんなことを話すためにここに来たんじゃねぇって言っただろ、いい加減にしろ」

 

真莉のイライラしたような声が響いた

斉武はやれやれと言ったばかりに溜め息を吐き思い出したかのように蓮太郎に言った

 

斉武「蓮太郎、貴様ステージVのガストレアを倒す際、レールガンモジュールを使って修復不可能なまでに破壊したそうだな?貴様、あれがどれほど大事なものか分かっておろうな?」

 

蓮太郎「なんだと?」

 

斉武「戦争はな、敵の上空を取ったものが勝つと孫子の兵法から決まっておる、兵の上から矢を射掛けた軍が勝ち、飛行機で敵の上空に爆弾を落とした軍が勝ち、衛星で敵の行動を盗んだ軍が勝ち...では次はなんだ?貴様が壊したあのレールガンは本来月面に移設して月面から地表のガストレアを狙い撃つ次世代兵器だったのだそれを貴様は...」

 

蓮太郎「待てよジジイ、仮に月面にレールガンをくっつけたとして本当にガストレアだけに使うんだろうな?」

 

斉武は小馬鹿にしたように鼻をフンと鳴らして答える

 

斉武「使うわけなかろうが馬鹿めが、貴様の想像どうりよ、すべて、次世代の抑止力の一つとして日本を世界の超大国に押し上げる布石よ」

 

聖天子「他国を暴力で脅そうと言うのですか!?」

 

たまらず聖天子は口を挟むが斉武はクツクツと短く笑いゆっくりと立ち上がると大仰に手を広げる

 

斉武「聖天子様、貴女にはビジョンがない、我々はすべてのガストレアを駆逐したあとの世界の事も考えねばならぬのだよ、日本は世界の超大国として君臨すべきなのだ、貴女も気づいているはずだ、十年前、世界の列強は国家として機能しなくなる寸前までガストレアに様々なものを奪われ破壊された、そして十年後の今、あの未曾有の災害からいち早く復興した国こそが次世代の世界のリーダーになる権利を獲得出来る。そして日本はそれを目指すべきだ!これこそが大局を見据えたグランド・デザインと言うものなのだよ!邪魔立てする者、俺に従わない者はすべて力ずくでも排除する!」

 

斉武が大きく宣言した瞬間真莉はその場から消える

その数瞬前、違和感を感じたであろう斉武の後ろに控えていた朱音ではないもう一人の無精髭を蓄え鋭い目つきをしていた中年の男も消える

斉武の首に真莉の手刀が添えられるが真莉の首にも同じく中年の男の手刀が添えられた

 

聖天子も蓮太郎も驚愕の表情を見せる

朱音も動こうとしたのか姿勢を低くし固まっていた

男は低い声で言う

 

男「相も変わらずお茶目だな、まったく誰に似たのか...だが我らのご主人様には手を出させんぞ、言うことを少しは聴いたらどうだ?真莉よ?」

 

男は真莉の事を良く知っているような口ぶりだった

 

真莉「手を出させんぞ...か、この距離でならお前が動くよりも早くにこいつの首を落とすことが出来るが...っつうかお前なに?なんで俺がテメェなんかの言うことを聞かなきゃならねぇんだよ、俺は誰の言うことも聞くつもりはない、それこそたとえそれが聖天子だろうが関係ねぇ...こいつは言った、俺に従わない者は全力で排除すると...俺は従う気は更々ない、だったら全力で潰される前にここで殺る、それのどこに間違いがある?」

 

男「ご主人様は大阪エリアの大統領だ、ここで殺されるわけにはいかない、それ故に我ら古火田一族に依頼が来た...それは分かるな?」

 

真莉「知るかよ、テメェらの事情なんざ俺には関係ねぇ」

 

斉武「やめろ、《和眞》(かずま)」

 

和眞と呼ばれた男性は驚きの表情を見せる

 

和眞「しかし...」

 

斉武「良い、俺に従え」

 

和眞「...申し訳ございません」

 

和眞は渋々真莉から離れる

 

真莉「...死ぬ覚悟はあると?っは、大層な自信だな...そんなんで俺が躊躇すると思ってんのか?」

 

斉武「思ってはいないさ、例えここで俺が殺られたとしても俺の思想を伝えてあるからな、変わりはしない」

 

真莉「...」

 

真莉の腕がピクリと動く、いつでも動けるようにと朱音と和眞は姿勢を前に倒す

 

聖天子「古畑さん、そこら辺で」

 

聖天子の一言で思ったよりもすんなりと真莉は斉武の首元から手を引いた

 

真莉「...まぁいい、今回は聖天子様の護衛が任務だ、止めておく...後で怒られるが(ぼそ)」

 

真莉は聖天子の後ろに戻った

聖天子は戻った真莉に小声で一言二言言ってまた斉武に向き直った

 

斉武「今回はこちらの護衛も《悪い》事をした、だからこれでおあいこといこうではないか?どうだね?古火田の次期当主よ?」

 

真莉「次期当主だ?誰のことだよ...俺は古畑真莉、古火田だかわけのわからん一族にいた事はねぇよ」

 

真莉はそう言う、蓮太郎は真莉を見る

蓮太郎は真莉が左腕を抑えているのに気がつく

真莉はアイコンタクトで大丈夫と告げる

 

聖天子「本当にその気を変えるつもりはないのですか?」

 

斉武「無い、俺の意思は日の本の意思!そして日の本の意思は...俺の意思だ!」

 

聖天子「.....」

 

斉武「レールガンモジュールの話に戻るが蓮太郎、それを貴様は無理な負荷を掛けてレールガンを鉄屑に変えおって...俺の夢を踏みにじったその罪、万死に値すると知れ」

 

蓮太郎「わり〜かよ、俺が性能をテストしてやっただけありがたいと思え、それに欲しかったら自分で未開領域に取りに行ったらどうだ?まだ残骸が残ってるからよ、そっちの奴ら連れてけば楽だろ?真莉のあの速度に目が付いて行ったんだ、それ相応の実力だろ?」

 

斉武「フン、まぁ俺も将たる器の一人よ、貴様らに贖罪の機会をやらんでも無い」

 

蓮太郎と真莉は2人で斉武を見る

 

斉武「蓮太郎、貴様はIP序列元百三十四位のペアを下したようだな?蓮太郎、東京エリアなど脆弱なエリアはいずれ滅ぶ、五年後、亡国の民でいたくなければ俺の元に来い、古火田の次期当主の小僧もだ、お前のその力はこんな脆弱な場所では発揮できん、俺とともに来ればそんな窮屈な思いはさせんぞ?俺とお前ら、三人で国取りをしようでは無いか、三人で盃片手に見渡す創世の風景、さぞや見物となろうぞ」

 

蓮太郎は吠え真莉は呆れたように言い放つ

 

蓮太郎「ざっけんじゃねぇぞ!エリアに帰れ!」

 

真莉「くっだらねぇ、言ったろ、俺は誰にも従うつもりも無い、それにお前なんかにそんなこと言われたって嬉しくもなんともねぇよ、つうわけでさっさと巣に帰れ、後何回も言わせんな、俺は古畑真莉だ、古火田一族じゃねぇよ」

 

斉武は執念深そうな瞳を爛々と狂気の光をたたえるが聖天子が静かにドレスの前で手を重ね背筋を伸ばし凛とした態度で斉武に言う

 

聖天子「斉武大統領、そろそろ本題に入ってもよろしいですか?」

 

斉武は毒気を抜かれたように舌打ちしあぁ、構わないと手を振った

ここでようやく非公式会談が始まった

 

 

 

それからおおよそ2時間後第一回の非公式会談が終了した

この会談で唯一の成果らしい成果は聖天子と斉武が決して相容れない水と油のような存在だと両方か理解した事ぐらいだった

 

聖天子達が帰るためにエレベーターに乗り込もうとした瞬間に男...和眞が真莉に向かって話し始める

 

和眞「真莉、戻ってくる気があるならばいつでも言え、我々は歓迎しよう」

 

真莉はフンと鼻を鳴らし振り返る

 

真莉「お前らの元に戻る?は?意味が分かんねぇ俺はここに住んでいる勾田高校の古畑真莉だ、テメェら何か知らねぇよ、誰と勘違いしてやがる」

 

真莉の問いに和眞は驚愕の事を言う

 

和眞「お前と俺達は《家族》だ、父親が息子を間違えるわけが無い、生きていてくれて嬉しいんだぞ」

 

蓮太郎「....家族だと?」

 

聖天子「古畑さん?」

 

真莉は目を瞑っている

 

和眞「お前はあの時俺たちを囮にして逃げた...そんな事はどうでもいい、ただあの後お前のことが心配だったのだ、ガストレア達はお前の方に行ってしまったからな、生きてはいないと思っていたが...生きていてくれてありがとう」

 

和眞がそう言うと真莉から尋常じゃ無いほどの殺気が溢れ出し辺りを包む

蓮太郎と聖天子にもその殺意は降りかかり2人は顔を青ざめ真莉の顔を見る

真莉の瞳は紅蓮に染まってはいなかったがその瞳からは尋常じゃ無いほどの憎しみが込められていた

 

真莉「ありがとう...だと...囮にしただと...どの口が...そんな事を言う...ざけんじゃねぇぞ...っち」

 

真莉は舌打ちしエレベーターに乗り込む

聖天子と蓮太郎も殺気から解放され冷や汗をかきながら真莉の後を追いエレベーターに乗り込む

 

エレベーターの扉が閉まる寸前に真莉はもう一度斉武達を睨む

すると和眞と朱音はこちらを見て不敵に笑った

 

 

 

帰りのリムジンに乗る頃には辺りには濃い闇が下りていた

車で長時間待たされていた延珠とアカネと夏世はと言うと

アカネは目が冴えているのか真莉にベッタリとくっつき夏世は真莉の肩にもたれて寝ている、真莉は起きているのか寝ているのか分からないが目を瞑り微動だにしない

延珠に至っては蓮太郎の膝枕されたまま気持ち良さそうによだれを垂らしながら寝ていた

 

このまま聖居に着けば無事に初日の依頼は完遂である、何事もなかったことを喜ぶべきだろうが...

 

蓮太郎が顔を上げると蓮太郎の正面に座る聖天子は膝の上で掌を重ねた美しい姿勢のまま窓の外の闇に向かって鬱っぽい表情を浮かべていた

 

蓮太郎「そんなに落ち込むなよ」

 

聖天子「落ち込んでなど...」

 

聖天子はそこまで言ってから静かに首を振る

 

聖天子「そうですね、少し...漠然と、こちらが誠意をもって話せばどんな人でもわかってくれると信じていたから...なおのことそう思うのかもしれません」

 

蓮太郎「別にあんたが悪いわけじゃねえ、斉武は菊之丞も手を焼くようなやつだ、あんたは良くやったよ」

 

聖天子は顎に手をやりながらイタズラっぽく微笑した

 

聖天子「意外と優しいんですね、里見さん、それにしても今日は驚かされることばかりでした、里見さんは政治家の卵だったり仏様を掘っていたり、新人類創造計画の兵士だったり...古畑さんに至ってはあの古火田一族の次期当主だったというではありませんか、驚きもここまでくるとこんな風に感じられるのですね」

 

蓮太郎「そういやその古火田一族ってのはなんなんだ?かなり有名っぽいけど」

 

すると目を閉じていた真莉が目を開ける

 

真莉「...古火田一族は本来対人戦闘を主とし暗殺を得意とする一族だ、物心が付いた時から戦闘よ訓練を受ける、そして5歳の誕生日の日には一族の当主が用意した生贄をその手で殺すことになっている、そうした後は慣れるまで殺しをさせられる、そのすべては大罪人だったり死刑囚だったりするがな...ガストレアが現れてからは対人から対ガストレアへとシフトチェンジしたがな...それでも殺しをやる事は変わらない、年齢を重ねるごとに多くの人間を殺しているってことだ、そんなクソみたいな一族だよ、古火田は」

 

聖天子「そんな事は無いと思いますが...」

 

真莉「そんなことがあるんだよ...古火田の特徴は」

 

真莉がそこまで言った後髪が紅蓮に染まった

 

真莉「こんな感じで紅蓮に染まる、紅蓮状態って呼ばれてたがこの状態になるとまぁ短絡的に言えば身体能力が跳ね上がる、それだけなんだがな」

 

真莉はそこまで言って運転手に止まるように指示する

運転手はその言葉で路上に止まる

聖天子と蓮太郎、アカネは怪訝な表情を見せ夏世は止まったことで目を覚ました

 

真莉「わりぃ蓮太郎、ここから後は頼んだ、ちょっとこの近くに知り合いの家があってな、ある物を取りに行かなきゃならなくてな、護衛は蓮太郎たちで頼めるか?」

 

聖天子「待っていますよ?」

 

真莉「時間は有限だろ?この後も確か政務があるだろうしな、蓮太郎、頼めるか?」

 

蓮太郎「俺はいいけど」

 

アカネ「お兄ちゃん!私も行くよ?」

 

夏世「私も行きますよ?」

 

真莉「護衛はしっかりとしないとな、音で敵の位置を把握出来るアカネと頭脳明晰の夏世、2人いればそれだけ聖天子の安全度合いは上がる、頼めるか?」

 

アカネ「ん〜、分かった」

 

夏世「分かりました、気をつけてくださいね?」

 

真莉「あぁ...蓮太郎、頼むぞ」

 

蓮太郎「あぁ」

 

リムジンは音を立てて走り去る

真莉は辺りを見渡し溜め息を吐き身体を伸ばしポキポキ鳴らす

 

真莉「くぅぅぅ...はぁぁぁ...さて、行くかぁ...」

 

真莉は暗闇の中を歩き始めた

目には憎しみの炎が灯っていた




結構好き勝手にやってる気がします...
おおよその展開は出来てるんですがクオリティの面だと...どうでしょうね
もうちょっと色々と考えて見ますね!

誤字、脱字や感想などお待ちしております!


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第9話

なんか戦闘シーンって本当に難しくて大変なんですな〜

頑張って書いてみましたけど...うぅーんってとこですね

次も早く上げれる様に頑張ります!


蓮太郎side

 

真莉がリムジンから降りて数分、リムジンの中の座っている順番は聖天子の右隣にはアカネ、左隣には夏世聖天子の正面には蓮太郎、その膝の上で未だに寝ているのが延珠だ

 

聖天子は蓮太郎を見て微笑を浮かべ話す

 

聖天子「里見さん、お話が途中でしたが今度私の為に何か掘ってくれませんか?」

 

蓮太郎「嫌だ」

 

聖天子は口元に手をやってクスクスと笑う

僅かだが車内にホッとした雰囲気が流れる

 

聖天子「でも里見さんも古畑さんも凄いです、斉武さんに一歩も引きませんでしたから...お二人のああいうところが、私はきっと気に入っているのだと思います」

 

蓮太郎「気に入ってる?」

 

聖天子「えぇ、私のが接する人は家庭教師から菊之丞さんに至るまで全て敬語で接してくる人ばかりでしたから、里見さんや古畑さんみたいにはっきりと物を言う人は周りには誰もいないのでとても新鮮に映ります」

 

蓮太郎はなるほどと合点がいったような表情をする

蛭子影胤のテロ事件の時も蓮太郎や真莉は聖天子に好かれる発言をしていないどころか噛み付くような発言をしている、なぜ、聖天子が自分たちを名指しして依頼を入れてくるのかずっと不思議に思っていたが...

単純に戦闘能力だけで言ったら蓮太郎の知り合いの中で真莉を超える手練れはあまり見たことはない

真莉なら護衛として優秀だ、だけど蓮太郎自体そこまでという訳ではないと自分で思っていた

 

蓮太郎「でもどうして民警なんだ?あんたには手持ちの護衛官がいるだろ?ほら、あの憲兵隊みたいなやつ」

 

聖天子「保脇(やすわき)さんですか?あの人は...ギラギラしていて、一緒にいて少し、怖いです」

 

蓮太郎は気の無い返事をするも内心ではいい気味だと思っていた、保脇の方はちゃっかり聖天子の気を引こうという魂胆だったようだが、当の聖天子には脈はなさそうだ

聖天子は小型の冷蔵庫から桃果汁のジュースを取り出しみんなのグラスに注ぐ

蓮太郎にも勧めてくるので一杯もらう事にする

一口のつもりだったが飲むと冷たい糖分が五臓六腑に染み渡り瞬く間に飲み干してしまう、どうやら想像以上に喉が渇いていたらしい

 

杯から顔を上げると聖天子は一転凛々しい顔に戻っていた

蓮太郎は彼女から視線を外しボソリと呟く

 

蓮太郎「あんただったらもっと上手く立ち回れるはずだ、上手く立ち回ってみろ」

 

聖天子「....」

 

蓮太郎「本当、真莉も言ってたがあんたバカだな...嫌いじゃねぇけど」

 

聖天子は僅かに頬を染める

 

聖天子「あ、ありがとうございます」

 

すると今まで黙っていたアカネが言う

 

アカネ「わぁ!ラブラブだね!」

 

蓮太郎「ちょ!?ッバカ!ちげぇよ!?」

 

蓮太郎がそういった瞬間不意に下顎に激痛、アッパーカットを食らったかのごとく脳が揺れた

延珠が飛び起きたのだ

延珠は視線を左右に彷徨わせていた、どうやら起き抜けのヘッドバットをもらったらしい

蓮太郎は涙をこらえながら言う

 

蓮太郎「ど、どうしたんだよお前、急に」

 

延珠は口元のヨダレを吹き聖天子に視線を固定した

 

聖天子「な、なんでしょう?」

 

延珠「蓮太郎は駄目だぞ」

 

聖天子「あ、あの、何を仰っているのかよく...」

 

延珠「蓮太郎はおっぱい星人だから木更より、おっぱいが小さいと女だと認識されないぞ、だから無理、諦めるのだ」

 

夏世は横を向き笑いを堪えている

アカネは自分の胸を見て何かを考えている

聖天子は軽蔑しきった目で蓮太郎を見た

 

聖天子「里見さん...不潔です」

 

蓮太郎「言い掛かりも甚だしいだろ!」

 

するとアカネが瞬間的に窓の方を見る

延珠も顔を引き締め蓮太郎に言う

 

延珠「蓮太郎、嫌な感じがする」

 

その言葉に蓮太郎達は気を引き締めた

車は十字路に差し掛かり赤信号にゆっくりと停車する

いつの間にか外はパラパラと小雨が降っており窓から見える景色を歪ませていた

数十秒止まっていた車はすぐに動き出す

航空誘導灯がいくつものビルを赤く照らしている以外何にも変化はない

 

しかしそれもつかの間ビルの屋上付近で、ほんの一瞬チカッと何かが閃いた

それが銃口炎だと認識した瞬間背筋が凍りつき延珠の頭を押さえつける

アカネはいち早く聖天子と夏世を屈ませていた

 

直後に激甚な厄災が襲ってきた

 

ガラスの破砕音にリムジンの甲高い急ブレーキ音に振り回され聖天子は悲鳴をあげる

そのまま車体が横に滑り標識に激突

蓮太郎はなすすべなく車内にかかるGに振り回されドアに叩きつけられる

 

蓮太郎「(街中で狙撃!?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真莉side

 

蓮太郎達と別れた真莉はビルとビルの間の路地裏にいた

 

真莉「風が出てきたな...よっと」

 

真莉はビルとビルの壁を蹴りながら屋上に着地する

真莉は辺りを見渡す

 

真莉「(この風と距離...聖天子の車は...あった...と、なると射撃するとしたらポイントは...)」

 

真莉は一点を見つめる

 

真莉「(...あそこか)」

 

真莉は数百メートル先のビルに目を付けた

そのビルで微かに動くものを捉えたのだ

 

真莉はすぐに向かうべく足に力を込める

いざ行こうとした瞬間真莉はその場から真上に飛んだ

真莉がつい数瞬前にいた場所に弾丸が放たれていた

 

重力に従い真莉はビルの上に着地する

真莉は銃弾が飛んできた方を睨む、そこにいたのはローブを羽織った《4人》の人物がいた

 

真莉「...これで全員か?めんどくせぇからさっさと終わらせてぇんだが...」

 

真莉が言うと4人のうち1人がローブを剥ぐ

現れたのは先程まで斉武の護衛として勤めていた古火田朱音だった

 

朱音「え〜、もうちょっとお話ししようよ?兄さん?」

 

真莉「うざってぇ、テメェらと話す気なんざこれっぽっちもねぇよ...邪魔するってんだったら...排除すんぞ」

 

真莉の髪が紅蓮に染まり出す朱音はフフっと不敵に笑う

 

朱音「うん、やっぱり兄さんはこっちにいるべきなんだよ、ね?」

 

朱音がそう言うと他の3人もフードを取る

そこにいたのは朱音と共に斉武の護衛を務めていた無精ひげを蓄え眼光が鋭い中年の男、古火田和眞

和眞の右隣にいたのは大きなライフル銃を持ち、朱音が年をもう少し重ねればこんな感じになるであろう女性が立つ

 

和眞の左隣にはあの公園で真莉に一方的に敵意を持ち襲ってきた翔と呼ばれた男だった

 

翔と呼ばれた男は早くも真莉に殺意をぶつけていた

 

翔「やっと...やっとだ...やっとお前を殺せる!!」

 

和眞「翔、いい加減にしないか」

 

???「全く、何でこの子はこんなに落ち着きがないのかしら...久し振りね、会いたかったわ、真莉」

 

真莉「...《榛名》(はるな)」

 

真莉が榛名と呼んだ人物はいかにも怒っていますとでも言わんばかりに頬を膨らませた

 

榛名「こら!《母親》を呼び捨てにするんじゃありません!」

 

和眞「そうだぞ、俺ならともかく母さんには呼び捨てはしてはならない、そう教えただろ?」

 

榛名は自分を真莉の母親と言い真莉を叱る

真莉は姿勢を低くしすぐにでも動ける準備をした

 

榛名「今日は戦いに来たわけではないの、あなたを迎えに来たのよ?さぁ、一緒に帰りましょう?ずっと探していたんだから」

 

榛名の目から一筋の涙が溢れる

その瞬間ゴォ!っと辺りに濃密な殺気が溢れ出す

榛名達は身構える

その殺気の発生元はすぐ目の前の少年

 

真莉「言っただろ邪魔するってんだったら...排除するって...もう一度言う、邪魔だ、消え失せろ...さも無ければ...死ね」

 

その言葉を言った直後に真莉はその場から消える

再び現れたのは無精髭の男、古火田和眞の真正面だった

真莉は右の膝を和眞の顔面に目掛け放つ

和眞は腕をクロスさせ真莉の膝蹴りを受ける

ゴキィと言う鈍い音がなり和眞は後方に吹き飛ばされフェンスに激突する

 

翔「っな!?この!!」

 

翔は真莉の着地を狙いククリナイフを振りかざす

真莉はそれを見て回転し片腕を地面に付け左足で翔の顎を蹴り上げる

翔は呻き声を上げバックステップで距離を離す

 

朱音と榛名は元いた場所から動かずにいた

 

真莉「...ちぃ」

 

ポタ...ポタと真莉の右膝から血が滴り落ちる

膝には何本もの黒色の小型のナイフが刺さっていた

真莉に蹴られる寸前で小型のナイフを真莉の膝に刺したのだ

真莉はナイフを無理やり引き抜き自分の後ろに投げ捨てる

 

すると真莉の目の前にいきなり先ほど吹き飛ばした和眞が現れる

和眞はすでに攻撃のモーションに入っていた

左腕を目一杯引き右腕を掌底の構えをし真莉に放つ

 

和眞「古火田流戦闘術、四式《剛破掌》(ごうはしょう)」

 

真莉は腕をクロスし防ごうとするがぶつかった瞬間ボキボキと鈍い音が響き遥か上空に吹き飛ばされる

痛む腕の間から下を見ると和眞がいない

 

真莉「(ちぃ、上か)」

 

真莉は背中に衝撃を受けビルの屋上に叩きつけられる

屋上は崩れ真莉と共に下に落ちていく

真莉は落ちながらも空中で体勢を立て直し着地する

 

真莉「ってぇ...(早い、目で追い切れねぇとは思わなかったな)っ!?」

 

ガシっと後ろから首を絞められる

何とか首を後ろに回すと翔が真莉の首を腕で絞めていた

 

翔「さっさと死んじまえよ...俺の全てを奪った逃走者!」

 

真莉「(ちぃ...うざってぇ)ォォォォォオオオオオオオ!!」

 

翔「っなに!?」

 

真莉はフロアの床を思いっきり踏み抜く

大音量の破砕音が辺りに響き下に落ちる

翔は予想外な事で腕を離す

真莉は離れた瞬間に逆に翔の首に足をかけ空中で回転し下に放る

 

真莉は下のフロアに着地する

真莉の目の前には和眞と榛名

後ろには翔と朱音がいつでも襲いかかれる状態にあった

 

真莉は目を瞑る

 

《必要か?》

 

何処かから、真莉にしか聴こえない声が聞こえる

 

正直厳しい

 

真莉はその言葉に返事をする

 

《お前に死なれるとこちらもたまったものでは無いからな、今回は貸しにしておこう》

 

真莉の口元に笑みが浮かぶ

 

和眞「どうした?何か楽しいことでもあったか?」

 

榛名「私たちと戻る決意が固まったのよ、だから喜んでるんだわ」

 

朱音「でもとりあえずは...ね?」

 

翔「俺的には殺したいが...とりあえず両方の手足は捥いでも良いよね?」

 

和眞「まぁ...良いだろう」

 

翔「ははははは!!オラァ!」

 

翔は真莉に迫る

真莉は動かない

翔は真莉まであと少しといったところである違和感に気付く

先程までの傷が何処にもない

 

 

 

 

前回のも貸しだったろ?まぁ助かる...そんじゃ借りるぞ《 》

 

 

 

翔は真莉に向けククリナイフを振り下ろす

 

和眞「っな!?」

 

和眞はいつの間にか襲ってきた衝撃で吹き飛ばされた

翔の攻撃は空を切る

真莉は先程いた場所におらず和眞のいた場所にいた

榛名は驚愕の視線を送るがすぐさま吹き飛ばされる

 

榛名「きゃあ!?」

 

朱音「お母さん!?兄さん!!」

 

朱音は真莉に迫る、真莉は朱音の方に視線をやる

すると朱音は恐怖に襲われる

 

真莉の瞳が紅蓮に染まっていた

しかし一番の変化は紅蓮に染まっていた髪が毛先から少しだが白く変わっていた

 

朱音「どういう...事?っ!?」

 

朱音は目の前に現れた真莉に驚愕する

真莉は右腕を引き左腕を掌底の形を取る

放とうとした瞬間に真莉は真横から吹き飛ばされた

 

朱音「あ...お父さん」

 

そこには無傷の和眞が立っていた

 

和眞「...どういう事だ、スピードも力も上がっている...何があった」

 

真莉「元に戻しているだけだ、昔の様に...な」

 

和眞「...昔の様にだと?何を言っている?」

 

真莉「関係ねぇ、お前らはどうせここで...殺す」

 

真莉は姿勢を低くし特攻する

先ほどよりもさらに速い速度で和眞に近付き殴ろうとする

当たる寸前で真莉は拳を止めバク転をしてその場から離れる

真莉がいた場所に銃弾が着弾する

 

真莉は舌打ちし辺りを見渡す

しかし何処にもいない

ほんの少し視線を外したのが運の尽きだった

 

和眞はほんの少しだけ離れた視線を見逃さず真莉に近付き真莉の鳩尾に拳をぶつける

ドゴォとすさまじい音が響く

 

真莉「ッカハ!?」

 

真莉の口から血が溢れ後ろに吹き飛ばされる

壁に激突しようやく止まった

真莉は膝立ちの形になりながらも和眞の方を向く

しかし正面に和眞はいない

いたのはライフル銃を構えて引き金に指を掛けた状態で静止していた榛名だった

 

榛名「もう、お母さんに手を上げるなんて...教育し直さなきゃ...さて、とりあえずはこれでチェックメイトね、大丈夫よ、起きたらちゃんと全てが分かるはずだから...それとも自分から一緒に来るって宣言する?それでも私は良いのよ?自分の息子を撃たなきゃいけないなんて...世も酷な物ね...どうかしら?」

 

真莉は口から流れる血を乱雑に拭い言い放つ

 

真莉「寝言は寝ていうものだ...テメェらとなんざ時間を共にするつもりはねぇ、俺の道は...俺が決める!」

 

榛名は本当に残念そうな表情を浮かべた

 

榛名「そう...それじゃあまた後でね?」

 

榛名はそう言うとライフル銃の引き金を引いた

 

ダァン!と大きな銃声が辺りに響いた

 

 

 




もうそろそろで《》内の事も触れていこうと思います
自己解釈が多いですが出来れば気にしないで貰いたいです!

それでは!


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第10話

今回はごめんなさい、短いです!

和眞と真莉の戦闘シーンでは脳内BGMはGガンダムの『我が心 明鏡止水 されど〜この拳は烈火の如く』で書いたのでそれでお楽しみください


真莉に向かって放たれた銃弾は...真莉の目の前で停止していた

 

榛名は驚愕の眼差しを向けた、真莉に至っても目を見開きこの事態に驚愕していた

真莉の目の前には《青白い膜》の様なものが展開されていた

真莉はその膜に見覚えがあった

真莉の攻撃をも軽々と防ぎ対戦車用の弾丸でさえも防ぐと聞かされていたある人物の能力

辺りに笑い声が響く

真莉は口元に若干の笑みを浮かべてその人物を見た

 

真莉「なんで、ここにいんのか知らねぇが...俺に恩でも売ろうってか?影胤」

 

影胤「ヒヒヒ、恩など売る気は無いよ、我々は友人では無いか、それに私の眠りを妨げた彼らを正直許せなくてねぇ」

 

真莉「なんでここでの戦いがお前の眠りを妨げる原因になる?」

 

影胤「この隣のビルは廃ビルでね、そこで寝ていたんだが...どんぱち煩かったものでねぇ、様子を見に来たら我が友が危ないでは無いか、ならば助かるしかないなとね」

 

真莉「極論だな...だがまぁ...礼を言う、助かった」

 

影胤「ヒヒヒ、どうも...さて、彼らは一体何者なのかな?相手がたとえ四人だとしても君ならば平気だと思ったんだけど...相当な実力者なのかな?」

 

真莉「つえぇのはあの無精髭のクソ野郎ぐらいだ、他の三人はそれほどじゃ無い」

 

影胤「一対一なら?」

 

真莉「愚問だな」

 

影胤「ならばあっちの三人は...《私達》でやろう...斬って良いよ」

 

影胤は虚空に向かって呟くとライフルを構えていた榛名はその場から後ろに飛ぶ

ライフルの先端付近が突如現れた剣戟に斬られる

現れた第三の人物である影胤の娘でありモデル・マンティスのイニシエーター、蛭子小比奈だった

 

小比奈「真莉を苛めた悪いやつ...絶対に斬る!」

 

真莉「...頼んだ...俺は、こいつをやる」

 

真莉は無精髭の男、和眞を睨む

 

和眞「...ふむ、そちらの都合に合わせてやろうか...良いな?みんな」

 

榛名「えぇ、この子にはちょっと教育しなければならない様だしね」

 

朱音「どうせこいつらやっちゃえばすぐに兄さんの元に行けるんでしょ?だったら早く終わらせるよ、お父さん、ちゃんと残しておいてね?」

 

翔「っち、親父、腕くらい残しといてよ」

 

和眞「さて、真莉、場所を移そうか」

 

真莉「...影胤、小比奈、頼んだぞ...終わり次第戻る」

 

影胤「ヒヒヒ、それは無理だ、こちらが先に終わる、終わり次第私は寝るからね、ここにはもう来ないさ」

 

小比奈「大丈夫、すぐに斬ってそっち行く」

 

真莉「意見は統一しろ...」

 

真莉と和眞は同時にその場から消える

残された影胤と小比奈、朱音、翔、榛名はその瞬間に激突した

 

 

 

 

 

先程のビルから数百メートル離れた廃ビルに真莉と和眞はいた

 

和眞「こんなところまで来て...良いのか?奴らの助けはなおさら来ないぞ」

 

真莉「助け?こっちのセリフだ、テメェはここで殺す、たとえ俺が首だけになろうともな」

 

和眞「なかなか強い言葉を使う、はっきり言おうか、お前では俺に勝てんぞ」

 

真莉「やってみるか」

 

辺りに殺気が充満する眠っていた鳥たちはけたたましく飛び立つ

真莉は不意にその場でしゃがむ、先程まであった頭の位置を何かが通過する

目の前に一瞬で現れた和眞がハイキックを繰り出したのだ

真莉はそれを避け軸足に狙いを定め足払いを掛ける

 

和眞「甘い」

 

和眞は軸足に力を込め軸足だけでジャンプする

 

真莉「(マジか...どうやって軸足だけで飛ぶんだよ...)」

 

真莉は足払いの回転を生かして逆の足で蹴りを放つ

和眞も拳を繰り出し激突する

 

真莉「《昇天牙》!」

 

和眞「古火田流戦闘術三式《扇空牙》(せんくうが)」

 

ガゴォォンと大きな衝撃が辺りに響く

二つの技がぶつかるが地面に足を付けているはずの真莉が吹き飛ばされる

 

真莉「(クソッタレが、《30》でもここまでの差があんのか...予想外っちゃ予想外だ...ちくしょう)」

 

和眞「分かっただろう、真莉、お前クラスなら一合打ち合えば互いの力量が図れるだろう?これが俺とお前...父と息子の差だ」

 

和眞は真莉に近づく、真莉は膝立ちの状態から起き上がり構える

和眞は大きくため息を吐いた

 

和眞「何がお前をそこまでここにいさせようとする?家族は一緒にいた方が良いに決まっている、お前が何と言おうと俺とお前の血は繋がっている...何が気に食わない?」

 

真莉は目を瞑って言う

 

真莉「何が...だと...本当に忘れてんのか...」

 

和眞「どういう事だ?とにかく!そんなことはどうでも良い!お前があの時のことを気にしているというなら気にしなくて良い、俺も、母さんも、朱音だってお前を許している、翔には俺が言い聞かせる!だから戻ってこい!」

 

真莉「(ギリ)」

 

真莉の拳から血が滴り落ちる、強く握りすぎて血が出て来たのだ

真莉の髪が毛先から根元に向かってどんどんと白く変色していく

 

未だ目を開けずに真莉は続ける

 

真莉「...分かった」

 

和眞はそれを聞き安堵の表情を浮かべた

 

和眞「(ッホ)よし、一様あっちが不安だから戻ろう、みんな喜ぶだろうしな...っ!?」

 

和眞はゾッとしその場から一気にバックステップで距離を取った

和眞のいた場所には小規模のクレーターが出来ている

 

和眞「(どういうことだ?音もなくあのクレーターを作る?どんな原理だ)どうした?」

 

真莉「お前を殺す...髪の毛一本も...この世に残ると思うな!!!」

 

真莉は目を見開き大きく咆哮する

真莉の目は紅蓮の赤で動物の様に縦に瞳孔が開いていた

髪は限りなく白に近くなっていた

和眞は怪訝な表情を見せる

 

和眞「...その髪...それにその目はいったい...っ!?」

 

真莉は一気に動き和眞の懐に入る

和眞は真莉の髪と目の変化に目を奪われ気付くのが一瞬とはいえ遅れてしまった

戦闘においてほんの一瞬でも隙を見せればそれが致命傷にもなる

 

真莉「ガァァァァァ!!!」

 

真莉は右腕を振りかぶり和眞の鳩尾に向かって放つ

和眞は驚異の反射神経を見せ片腕だけでその攻撃を防ぐ、だが

 

和眞「(っ!?さっきよりも遥かに!?不味い!?)ぐぉ!?」

 

和眞は吹き飛ばされ剥き出しだった鉄骨に激突する

大きな破砕音がし和眞が吹き飛ばされたところから土埃が舞う

土埃が払われ姿勢を極限まで低くし和眞が突っ込んでくる

真莉は拳を握り和眞に放つ

 

和眞「古火田流戦闘術七式《扇鵞蒸雷断》(せんかじょうらいだん)!」

 

真莉「《剛破断》(ごうはだん)!!」

 

辺りにまた衝撃が吹き荒れる、次はお互いが吹き飛ぶ

真莉はコンクリートに手を突っ込み勢いを無理やり殺す

和眞は吹き飛ぶ瞬間に後ろに飛んだのかさほど距離は飛ばなかった

 

和眞「...なにがあったんだ?真莉、あの日、あの時、あの場所でなにがあった!お前は本当に真莉なのか!」

 

真莉「...あの日、あの時、あの場所で...ね、あの日ってことはお前らが俺を捨てた日のことか?あの時って言うのはお前らが自分達だけの保身に走った時か!あの場所って言うのは...俺の...《古火田真莉》が《死んだところか》!!!」

 

真莉の言葉に和眞は驚愕に目を見開いた

 

和眞「死んだ?そんな馬鹿な、なら何故お前は俺の目の前にいる!どういう事だ!」

 

真莉「お前が知る必要はない...ここで殺すからだ!」

 

真莉の髪が完全に白に変色していた、目は野獣のごとき眼光に変わり和眞を見据えていた

真莉は地面を砕きながら和眞に突っ込む

和眞は今度はしっかりと真莉を見ていたので見逃す事はなかった

突っ込んでくるのに合わせ拳を繰り出す

 

和眞「《扇鵞蒸雷断》!」

 

真莉「ガァァァァァ!!」

 

真莉は咆哮しながら和眞の攻撃に自分の拳を合わせる

バキバキと何かが折れる音と拳と拳がぶつかった衝撃音が辺りを包む

 

真莉「がは!?」

 

吹き飛ばされたのは真莉の方だった

腕から血が噴出し辺りを赤く染める、真莉は壁にぶつかり地面に顔面から倒れこんだ

和眞はぶつけた右腕を庇いながら真莉に近づく

 

和眞「...この力、お前はいったい...」

 

真莉はピクリとも動かない

和眞は左腕で真莉を掴もうと手を伸ばすと真莉の体からある異変が生じた

 

和眞「っ!?ばかな...傷が...治っている?」

 

先程まで全身に傷がありボロボロだった体はどこを見ても傷はなく、服がボロボロになっているだけだった

真莉がよろりと立ち上がる

和眞はそれを見て後ずさる

 

和眞「...お前は...何者だ?」

 

真莉は顔を上げ和眞を見る

真莉の口角が上がり目からは先程までの憎しみや殺意の色は消えていた

その目にあったのは...

 

真莉「ハハ...アッハハハハハ!!」

 

目を爛々と輝かせていた

それはさながら...新しいオモチャを貰った子供のようだった




次回は覚醒真莉vs最強の敵和眞決着ですね...多分


お気に入りが50件行きました!嬉しいです!皆様本当にありがとうございます!!


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第11話

本当に遅くなってすいません!

言い訳ですがいざ投稿しようと思った矢先間違って消してしまいまして...眠かった事もあり操作を誤りました...

次こそは!次こそはしっかりとします!


真莉?「アハ...アッハハハハハ!」

 

爛々とした目をした真莉の姿をした人物が大きな声で笑う

和眞は急激な真莉の豹変に少し後ずさる

 

和眞「...貴様は...誰だ?」

 

真莉の姿をした何者かは和眞の方を見る

 

真莉?「アハハ!ダレカ?オカシイヨ?サッキマデヨンデタジャナイ?オレハ?ワタシ?ン?アァ、ボクカ、ボクハシンリダヨ?ナニヲイッテイルノカナ?アッハハハハハ!」

 

自身を真莉だと呼称する者は再び大声で笑いだす

和眞は大声で言い放った

 

和眞「ふざけるな!貴様は断じて真莉では無い!!」

 

シンリ「ン〜...ン?アレレ?チョットマッテテ」

 

真莉...シンリは喉をン、ンと鳴らし声を整える

 

シンリ「ん、やっとちゃんと発声する事が出来た」

 

シンリは喉の調子を整えると再び和眞に視線を戻し言う

 

シンリ「何を持ってそう言うのかな?ボクはシンリで合ってるよ?」

 

和眞「違う、真莉とはうまく言えないが内部的に違う...お前は別種の生物だ...真莉の体に寄生していやがるのか?」

 

シンリ「ん〜...40点かな〜、別にこの子に寄生しているってわけじゃ無いんだよね〜」

 

和眞「やはり貴様は真莉とは違うものか...真莉をどうした!!」

 

シンリ「だからボクも...あぁもう、面倒くさいな、これだから《人間》ってのは嫌なんだ」

 

和眞「人間だと...何者だと言っている、そろそろ答えなければ...」

 

シンリ「ん?答えなければ何?」

 

和眞の姿がブレ、その場から消える

瞬間シンリは頭を下げる、その上を和眞の蹴りが通過する

シンリはそのままの姿勢で逆立ちの要領で和眞に蹴りを入れた

和眞は完全に不意をついたと思っていたのかその攻撃を避けれなかった

 

和眞「っぐ!?この!」

 

和眞は直ぐに動く

シンリはケラケラと笑っていた

 

シンリ「アハハ!もしかしてこれって答えなければ死ぬとかそんなオチ?アッハハハハハ!無理無理、君たち《人間》じゃボクはコロセナイよ」

 

和眞「お前を殴り続ければ自ずと答えは出る!行くぞ!」

 

和眞は疾走する

シンリを掴みそのまま放り投げる

放り投げた瞬間に和眞は投げた方向に飛び上からシンリを殴り地面に叩きつける

地面に小規模のクレーターが形成され辺りに粉塵が舞う

和眞は地面に落としたシンリを殴り続ける

小規模だったクレーターは徐々に大きくなり辺りにさらなる粉塵が舞う

 

しかし和眞はある違和感に気付いた

 

和眞「(おかしい、何故...《動こうとしない》?)」

 

シンリはやられても、殴られても、掴まれてもほんの少したりとも動く気配が無い

それは現在進行形で殴り続けられている状況でも変わらずに動かない

まるで...《観察》しているかのように...

 

和眞「(動かぬならば...そのまま)打ち砕く!」

 

和眞のラッシュは更に勢いを増す

辺りはドンドン破壊されていく

ふと和眞のラッシュが止む

和眞は驚愕の表情を浮かべる

 

和眞「(バカな...いない!?)」

 

シンリ「ん〜、なるほどね〜、人間ってここまで強くなったのかな?それとも君が他の人間よりも強いのかな?」

 

和眞「っ!?いつのまに...」

 

シンリ「うんうん、これは人間は随分と進化したってことなのかな?いや、この人間が普通の人間よりも遥かに強いってだけの可能性も...(ぶつぶつ)」

 

シンリはぶつぶつと何かを呟く

和眞は姿勢を直しすぐさま駆け出す

 

和眞「ぶつぶつと煩い!黙って潰れてろ!!」

 

和眞は腕を振り上げ掌底を繰り出す

当たる寸前でシンリの姿がその場から消え和眞の掌底は空を切る

 

和眞「っな!?」

 

シンリ「ふんふん、なるほど、筋肉もかなり引き締まっていて...なるほどなるほど〜、むむむ?これ以上の伸びは期待出来ないか〜、うん、残念だね〜」

 

シンリはいつの間にか和眞の後ろにおり和眞の腕や肩や足などを触り勝手に納得していた

 

 

和眞「っく!?離せ!(バカな!俺が見えなかっただと!?なんなんだこいつは!?)」

 

和眞はすぐさま離れる、シンリは触っていた姿勢のまま静止していた

 

シンリ「ん〜、あんまり...触れなかったな〜...もっかい調べさせてくんないかな?」

 

和眞は後ずさる、シンリの百獣の王のような目が猛獣の如く鋭い光を放つ

 

シンリ「別に逃げなくても...あぁ、ボクが何者かわかんないからかな?気にしなくていいよ、別に取って食おうなんて思わないさ〜、ただ人間ってのが気になっているだけだからさ〜」

 

シンリの姿が再びブレた

和眞は後ろに向かって蹴りを放った、先程気付かれもせずに背後にいた事から再び背後だろうと安易に考え後ろに蹴りを放ったのだ

 

しかしその蹴りは空を切った

シンリは確かに後ろにいたが...シンリはそれを見越していたのか地面に限りなく低い態勢を取っており蹴り自体がシンリの遥か上を通過した

 

和眞「っく!?」

 

シンリは和眞が脚を引く前に前方に走り和眞の腕や肩などを再び触りだす

 

シンリ「やっぱりこれは...へ〜、お?あぁ〜、なるほどなるほど、ふむふむ...」

 

シンリはまた同じようなことをし始めるが今度は和眞はシンリの腕を掴み上げ引き剥がすように遠くにぶん投げた

シンリはネコのようにクルクル回りピタリと着地して見せた

 

シンリは面白く無いのか頬をプク〜っと膨らませ和眞を見る

 

シンリ「む〜...良いじゃんかよ〜、別に減るもんじゃ無いし〜」

 

和眞「真莉の顔で...真莉の声で...そんな言葉を吐くな!!」

 

シンリ「ん?気に食わない?何でだろ〜...ん、んん...確かこの子はこんなし先程ゃべり方だったか?ったく、喋り方なんざどうだって良い気がすんだがな...本当に人間って奴はめんどくせぇ」

 

和眞「っ!?本当にお前は...何なんだ!!」

 

和眞は怒りに任せ突進する

シンリはそれでも笑みを浮かべたままそこに佇む

 

シンリ「へ〜...もう、せっかくこの子の口調を真似たのに...」

 

シンリは和眞の突進を避ける

和眞はもう一度突進する

シンリはゆっくりと振り向く...その目には...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つっまんねぇなぁ」

 

明確な、凶悪な殺意が含まれていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蛭子親子VS榛名、朱音、翔

 

 

蛭子親子達と榛名達は最初の位置から動かずじっとお互いに見つめ合いいつでも動けるような態勢を取っている

 

榛名「さて、今更ながらあなた方はあの子とどういった関係で?」

 

影胤「それを言う必要はないね、君たちには関係無いはずだ、と言うよりつい先ほど答えは言ったような気はするがね」

 

榛名「あらそうだったかしら?ごめんなさい、変な仮面が来たなと思ってそれしか考えてなかったから聞き逃したわ...もっかいお願い出来るかしら?」

 

影胤「まぁ、それはそれで良いのだがね...私は私のやりたい事を、なすべき事をやるだけだ...小比奈、斬っていいよ」

 

小比奈「はい!パパ!」

 

小比奈はようやくといった様子で二本のバラニウム製の小太刀を抜刀し駈け出す

それに真っ先に反応したのは小比奈と同じく二本のククリナイフを構えていた翔だった

 

翔「叩っ斬る!お前らを切ってあの男もぶった斬る!」

 

小比奈と翔の武器が衝突し甲高い音が辺りに響く

朱音は二丁の拳銃を抜き放ち照準を影胤に向け榛名もライフルの照準を影胤に向け放つ

 

影胤はその場を動かずに青白い膜...自身の能力であるイマジナリー・ギミックを発動し銃弾を止める

先ほど見ていたが本当に止めることが出来るとは思って無かったのか唖然とする

 

影胤「ヒヒヒ、まぁわかりきっていたことだが...やはりつまらないね、君たちでは私は...私たちは倒せない、それこそ彼ほどの力もなければ君たちの言う真莉くんほどの技術も無い、故に君たちに私のイマジナリー・ギミックは破れない」

 

影胤は指を鳴らす、すると停止していた銃弾が榛名達に向かって反射する

榛名達はそれを交わす、小比奈は翔が交わすために跳んだところを下から小太刀を振り上げククリナイフを思いっきり弾く

翔はあ!っと声をあげる、小比奈は追撃と迄に翔に斬りかかる

ズバッと小脇を斬られた翔は血を流しながら地面に着地する

 

翔「ッゥゥゥゥ!!!」

 

翔は脇に手を当てながら小比奈を睨み付ける

 

朱音「翔!大丈夫!?」

 

榛名「っ!?待ちなさい!朱音!!」

 

朱音「え?っ!?」

 

朱音は翔に駆け寄ろうとするがゾクッとしその場からバックステップで離れる

先ほどより進んでいればどうなっていたか、その場所に何発もの銃弾が放たれた

朱音がキッと睨むと影胤は二丁の拳銃を持っていた

 

影胤「ヒヒヒ、鳴け、ソドミー!唄え、ゴスペル!」

 

影胤から何発もの銃弾が放たれる朱音と榛名は何とか交わす、着地した瞬間フッと榛名の上に影が出来る

榛名はゾクっとしライフルを盾のようにし上に構えた、瞬間にガギィィンと甲高い音と共にライフルの根元辺りがズバッと斬られていた

 

斬った本人である小比奈は瞬時に対象を蹴り飛ばし次の対象である朱音に意識を向け地面を蹴り走った

 

朱音は二丁の拳銃を乱射するが小比奈は自分に当たるものだけを小太刀で弾き更に接近する

もう少しで射程距離という位置で朱音は背後に飛び距離を開けようとする、すると小比奈は追撃では無くバックステップをする

上から影胤が降って来て掌を朱音に合わせる

朱音は二丁の拳銃をクロスしその掌を防ぐが

 

影胤「《エンドレス・スクリーム》」

 

尋常じゃ無いほどの衝撃が朱音を襲い遥か後方に吹き飛ばされる

クロスしてガードしていた拳銃はバラバラに破壊され辺りに散らばった

 

影胤「ヒヒヒ、小比奈、もう良いだろう、彼らにはもう戦う意思なんて存在しないだろうからね」

 

小比奈「パパ、まだ首だけにしてない、もうちょっと!」

 

影胤「ダメだよ、愚かな娘よ、彼らにはまだ使い道がありそうだ...ふむ、この子はとりあえず預かっておくよ」

 

影胤は気絶している朱音を抱え込む

 

榛名「っく...待ちなさい!」

 

影胤「この子には《何かされている》私が治そう、なに、殺しはしないさ、行くよ、小比奈」

 

小比奈「む〜...はい、パパ」

 

影胤と小比奈はビルから飛び降りる

痛む身体にムチを打ち榛名はビルから飛び降りた影胤達を探すが

 

榛名「いない...っく」

 

榛名はそこまで来て気を失った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モノリスの外ではバラニウムの磁場が無いため色々なガストレアが闊歩する超危険区域

唯一の救いはガストレアは大半が日中に活動するため夜は眠っていることが多く大きな音が無ければ目をさますことは基本的には無い

 

しかし今日は違った

 

何かに触発されてなのかわからないがそこらかしこで眠っていたガストレアが全て目を覚まし散り散りになり逃げていく

まるでそれは...

 

 

 

 

 

何かの存在を恐怖しそれから逃げるように



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第12話

少し更新が遅くなってますよねぇ...
もうちょっと早く更新していきたいのですがなかなか融通が利かない仕事なので...
ちくせう...


和眞はシンリの変化に驚愕し恐怖する

先程までのシンリは言わば大好きなオモチャを欲しがる子供の様な感じで和眞と話していた

 

しかし、今のシンリはその感じとは遥かに違う

その目の野獣の眼光はさらなる光を放ち和眞を見ている

シンリは腕をグルグル回し和眞に近づく

 

シンリ「つまんないなぁ本当に、だから人間は嫌なんだ...うん、ようやく色々と思い出してきたよ」

 

和眞「思い出した...だと?」

 

シンリ「ボクは基本的にはこの子の中で寝ている...寝ていなければならない存在だ、本来こうやって起きる事は許されない、ボクが起きたのはこれで《二回目》何だよね〜...ずっと寝てるから記憶も磨耗しててさぁ、この子の記憶なら受け継げるんだけど...ボク自身の記憶までは無理なんだよ...だけどこんだけ時間が経って尚且つこんなに長くこの子から出られるなんて無かったからね...相当なダメージを負ったんだろうね、引っ込んで回復しなきゃならないって事はさ」

 

シンリは一息つきまた話し始める

 

シンリ「まぁ、いつまでもこの子の身体を傷つけるわけにはいかないからね〜...もう君の攻撃は当たらないって断言するよん」

 

シンリはウィンクしながらそう言った

和眞は額に青筋を浮かび上がらせ吠える

 

和眞「偽物風情が...やれるものならやってみろ!」

 

和眞はシンリに向かって走る

シンリも先ほどまではのらりくらりと立っていただけだったが頭の中が戦闘モードになったのか姿勢を低くし陸上競技でよく見るクラウチングスタートの様な態勢をとる

 

和眞は一足でシンリの頭上に移動し踵落としの体制に入る

シンリはその踵落としを見向きもせずにその場から文字通り消える

和眞の踵落としはシンリに当たる事は無く地面に当たり地面に轟音と共に中規模のクレーターを作る

辺りに粉塵が舞い上がり視界を悪くする

和眞の脳裏に警報が鳴り響き背後に振り向き腕をクロスさせる

 

瞬間ドゴォと尋常じゃ無いほどの衝撃が和眞に腕から全体に広がる

和眞は攻撃のインパクトの瞬間に背後に飛び衝撃をある程度逃す

 

和眞「っくう!?」

 

シンリ「そんなんで終わるわけ無いじゃん?」

 

和眞「っが!?」

 

和眞の着地した場所に既に先回りしていたシンリは和眞の背中に拳をぶつけまた吹き飛ばす

 

吹き飛ばす先々でシンリは先回りをし和眞に連続して攻撃し地面に足がつくのが短くなる

 

和眞「(ぐ!?これは...速すぎる!?)」

 

和眞のスピードは確かに速い、しかしその和眞ですら視認が難しい程のスピードをシンリは出していた

 

和眞「(攻撃自体はそれ程威力は無いが...これ以上は...)ぐぅぅぅ...ヌォォォォ!!」

 

和眞は着地寸前で地面に蹴りをし高く飛びシンリの攻撃から逃れる

シンリは拳を前に突き出した体制で止まる

 

シンリ「...へぇ、そんなに効いてる様子も無いかぁ〜、うん、なかなか楽しくなってきた...結構殴った思ったんだけど〜...加減し過ぎたかな?」

 

和眞「...確かに速い、だが結局は真莉の力だ、お前が何者であろうと真莉の力では俺にそこまでのダメージを与える事はできんぞ」

 

シンリ「にゃはは、もう一回言おうか?《加減》し過ぎたって言ったんだよ...あんたみたいな強い奴と殺り合うことなんてまず無いだろうしね〜、んじゃ、次は...もっと上げていくよ」

 

和眞「分からんか?真莉の力ではいくらやったところで...っ!?」

 

シンリ「へぇ、かわすんだ〜」

 

和眞は首を横にして急激に目の前に来た拳をかわすが恐らく風圧で切れたのだろう、頬から血が流れ出る

 

シンリ「そんじゃあ、ガンガン行こっ...か!」

 

シンリの姿が再び消える

和眞は地面に向かって拳をぶつける

 

和眞「古火田流戦闘術二式《小破断》(しょうはだん)!」

 

和眞は地面に連続で拳をぶつける

その衝撃で廃ビルが今までの衝撃で耐え切れなくなったのか崩れだす

シンリは辺りに飛び散る瓦礫等を器用にかわしながら和眞の懐に入る

和眞は瞬時に迎撃に意識を向けるがシンリのスピードについてこれずシンリの掌が和眞の鳩尾に当てられる

 

シンリ「《※※※※※※※》」

 

おおよそ人間に発音できない様な声で何かを言うと和眞の鳩尾に添えられていたシンリの掌底から尋常じゃ無いほどの衝撃が和眞を襲う

和眞は背後にかなりのスピードで吹き飛ばされ崩れ始めているビルの壁にぶち当たる

シンリは崩れるビルから脱出する

 

シンリ「ありゃりゃ、これはボクのせい...かなぁ?まぁ良いかな、別にボクが払うわけじゃ無いし実質廃ビルだし〜...さて、これで一様はひと段落かな〜、出てくる気配しないし...えっと〜...あ、そうそう、里見蓮太郎達の元に行かなきゃいけないんだよね〜、あ、あの仮面のやつは〜...もうここら辺にはいないか、んで里見蓮太郎達は...遠!?車ってやつは速いんだな〜...5分ぐらいで着くかな?」

 

 

シンリは何かを感じる様に目を閉じて辺りを探りその場から消え辺りには崩れたビルの残骸と数多くのクレーターが残されていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガゴォォンと大きな衝突音がし標識に追突したリムジンは止まる

 

延珠「蓮太郎!!」

 

蓮太郎はハッとして叫ぶ

 

蓮太郎「延珠!外に出ろ!ドライバーを連れて!夏世とアカネは周囲を警戒してくれ!!」

 

蓮太郎はドアを蹴破ると未だショック状態の聖天子の手を引いて車外に転がり出る

市街地のど真ん中、十時交差点...とにかく隠れる必要がある

 

アカネ「(ピク!ピク!)もっかい来るよ!」

 

アカネがそう言ってすぐ、爆裂音が響く

燃料タンクを撃ち抜いた狙撃弾がリムジンを爆発炎上させ辺りに熱波が広がり周囲の一般人が悲鳴をあげパニックが伝染し爆発衝撃波に聖天子がつんのめって転倒する

助け起こそうとするが聖天子が強張った表情を見せ首を振った

 

聖天子「さ、里見さん...私...腰が抜けて.....」

 

蓮太郎は奥歯を食いしばりビルを見る

マズイ

三射目の光、咄嗟に彼女を庇おうと前に立ったところで痛恨の表情を見せる

駄目だ、貫通して彼女に当たる!

 

直撃弾である事を脊髄で悟りぎゅっと目を瞑る

 

延珠「ハァァァァァッ!!!」

 

直後に延珠の叫びと甲高い衝撃音、弾き飛ばされた延珠が何回転もしながら地面を転がる

最初何が起こったのか分からなかったが、すぐに延珠が靴の裏で狙撃弾を弾いたことに気付く

凄い...

 

今までどこにいたのか、保脇たち聖天子護衛官が彼女の周りを囲み壁を作りながら交代していく

去っていく聖天子はショックが抜けきらないのか顔を真っ青にして怯えながらきつくドレスの裾を握っていた

 

蓮太郎がふともう一度狙撃して来たであろうビルを見ると4回目の光が灯る

 

蓮太郎「四発目!?延珠!!」

 

蓮太郎は延珠を呼ぼうとするが先程弾いた時かなり弾き飛ばされたようですぐに来れる距離では無い

蓮太郎は絶望する

間に合わない

 

数秒先の未来を、絶望を変えられない自分の不甲斐なさに蓮太郎は歯噛みする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしいつまでもその様な未来は来ず辺りは民間人の悲鳴が聞こえるだけ

聖天子や保脇たち聖天子護衛官たちも同じ方向を見ていた

 

蓮太郎と延珠と夏世は目を見開くそこにいたのは自分たちが知っている人物と極端に似ている人物

 

違うのは髪の色と目...そして自身に纏う圧倒的威圧感

 

髪は本来知っている黒や紅ではなく真っ白

目は確かに普段本気で戦う時に見せる紅蓮の紅だがその眼には野獣の...猛獣の眼光が光っている

 

その者はつい数十分前に別れ今日はもう会わないと思っていた人物、自分の数少ない友人の中でも圧倒的な実力を持ちあの天童菊之丞ですらその実力を認めている実質最強クラスの男

 

 

 

 

 

 

古畑真莉が聖天子の前に立ち握り拳を前にし目を爛々と輝かせていた

 

 

シンリ「にゃはは、こっちもこっちで面白そうだなぁ〜、にしてもスゲェ距離から狙ってんな〜」

 

シンリは握り拳をゆっくり解いていくと手から何かが落ちる

落ちたのは恐らく撃たれたであろう狙撃弾だった

保脇たち護衛官たちは驚愕の眼差しをシンリに向けていた

 

狙撃弾を弾くならともかく狙撃弾を掴むなど人間の出来ることではないからだ

蓮太郎はシンリを見て話す

 

蓮太郎「真莉!気を付けろ!まだ来るかもしれねぇぞ!」

 

シンリ「.....」

 

蓮太郎の言葉に彼は答えない

 

蓮太郎「?真莉?」

 

シンリ「?あ、ボクか、そうだそうだ、うん、ボクが真莉だよ〜、でも平気でしょもう視線も感じないし...妙な音はするけどね〜」

 

蓮太郎「真莉?...ん?なんだこの音...」

 

ブゥゥゥンと何かの羽音の様なものが聞こえたが直ぐに消える

 

蓮太郎は真莉の変化に戸惑いながらも銃弾が飛んで来たであろうビルの方を向きぼそりと呟く

 

蓮太郎「...お前は誰だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

???「すみません、マスター、失敗です、護衛に手練れの民警がいました...《シェンフィールド》回収後、速やかに撤退します」

 

???『民警だと?情報にないぞ、あのマヌケな聖天子付護衛官だけではないのか?』

 

癇癪を起こしかけた無線越しに『クソッ、クソッ』と毒づく主を尻目に《ティナ》はバレット社製の対戦車用狙撃ライフルをケースにしまう

 

???『おい、民警の姿を見たか?』

 

ティナ「はい、しかし遠すぎて顔立ちまでは見えませんでした」

 

ティナの見間違いでなければ三発目の狙撃弾はイニシエーターが蹴って弾き四発目は突如現れた人物が狙撃弾を掴んだ様に見えた

ティナの使った対戦車狙撃弾は大砲やバルカン砲などを除いてこの世に存在するすべての銃弾の王者的な位置にあり、とてつもない運動エネルギーを有しているそれを弾くならまだ相当な実力者と納得は出来る...しかしそれを掴むなど人間の出来る事の範疇をはるかに超えている

 

撤退の準備を終えたティナはビル風に吹かれる髪を押さえながら背後に振り返り、眼下の凍った眼差しで睨んだ

 

ティナ「私を邪魔したあなたたちは....誰?」




ようやく話を進められましたね...
考えてる事が色々あり過ぎてどうまとめようか悩んでいます...

まぁなるようになりますよね...(汗)

誤字や脱字があれば指摘お願いします!

あと感想も募集しますね!


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第13話

もう遅過ぎてアレですね...みんな激おこですよね...

ごめんなさいm(__)m
仕事で使えねぇゴミどもがいすぎて...自分の仕事が倍以上に膨らんでしまったのでなかなか更新も出来ないし書けませんでした...

なんとか頑張って更新はしていこうとは思ってます!
休みの日になればおそらく2話ほど更新できるとは思います!


蓮太郎は今までに無いほどに緊張していた

今、目の前にいるのは確かに真莉の筈なのに何かが違う、圧倒的に何かが違う感覚に戸惑う

すると横から何かが弾かれる様に真莉に向かって飛び出した

 

蓮太郎「っな!?おい!アカネ!?」

 

飛び出したのはアカネだった

 

アカネ「ハァァァァァ!!」

 

アカネは小さくジャンプし真莉に向かって蹴りを放つ

真莉はアカネの方を見ていない

 

バキィと鈍い音がなり真莉にアカネの蹴りが炸裂した

アカネは地面に着地し真莉を睨み大きく吠える

 

アカネ「あなた誰!お兄ちゃんをどこにやったの!!」

 

シンリ「???ボクには君が何を言っているのかよく分からないな、この身体は確かに君たちの言う真莉の物でもあるしボクの物でもあるんだよ?どこにやったと言われてもここにいるじゃ無いか...やっぱよく分からないな、人間って(ボソ)」

 

アカネ「うるさいうるさい!お兄ちゃんを...私の家族を返せ!!」

 

アカネは全速力で走りシンリの懐に入り蹴りあげる

 

しかしシンリはアカネの蹴りはシンリの顔の目の前でシンリに掴まれ阻まれてしまう

そのままシンリはアカネを持ち上げる

アカネは足を掴まれているので必然的に逆さまの状態で吊り上げられる

 

アカネ「うわわわわ!?」

 

アカネは慌ててスカートを押さえる

蓮太郎は瞬時にシンリに詰め寄り蹴りを放つ

 

蓮太郎「天童式戦闘術二の型十六番!隠禅・黒天風!!」

 

シンリ「おっと」

 

シンリは避けたついでにアカネを離す

アカネはバックステップで離れシンリを見据える

蓮太郎も瞬時にアカネの隣に戻り汗を拭う

 

蓮太郎「(完全に不意打ちだった...それを避けた?なんちゅう反応速度だ...これが真莉の本来の力なのか?それにしても...この違和感は...)お前は...本当に真莉なのか?」

 

シンリ「ん〜、まぁ確かにボクは真莉であってシンリでない...これは答えになるからダメかなぁ...あまり言ってると本当にこの子に怒られるからな〜」

 

アカネ「うるさい!早く返せ!!」(ガルルルル)

 

蓮太郎「まて!アカネ!!」

 

シンリ「あはは、うん、元気な子だね〜...そろそろ時間だしちゃんと返すよ、って言うかボクが《本来の持ち主》なんだけど...まぁ良いや、さて、里見蓮太郎だったかな?」

 

蓮太郎は名前を呼ばれてピクリとしてシンリの方を見る

 

シンリ「この子は無理ばかりする、その癖強がって自分を傷つけるんだ...君にこんなことをお願いするのは変だがこの子は君を信頼しているようだから君に頼むとしよう...この子を頼んでも良いかな?」

 

蓮太郎「...まるで親の様に真莉を見ているんだな...お前は何者だ?真莉の何なんだ!」

 

シンリ「...親の様に...ね、ボクは...まぁそんなもんかな、ボクはもう寝るよ、ボクが寝ればこの子は起きるけど結構暴れたしダメージも受けた、しばらくは起きないだろうからゆっくりと寝かせてあげてくれ...それじゃ...おや...すみ...zzzz」

 

真莉の身体はぐらりと傾き倒れ始める

違和感を感じていた夏世はすぐに駆け寄っており倒れる前に真莉を支える

真莉の髪は白から元の黒に戻る

辺りに残ったのは悲鳴と雨の音、それと燃えている車の音だけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後、真莉宅

 

 

アカネ「む〜...まだ起きないの?」

 

夏世「相当な疲労とダメージが蓄積されていると言っていたでは無いですか、もう暫くは起きないのでは無いでしょうか?」

 

沙耶「う〜ん...真莉がこんなに寝ること自体初めての事だからね〜、僕にはさっぱり...綾夜はどう?」

 

綾夜「俺が知ってるわけ無いだろ...強いのは知っていたけど真莉があそこまで強いなんてあん時初めて知ったんだからな」

 

夏世「真莉さんの御学友でも分からないとなるともう難しいですかね...ずっと待っているというのも少々退屈です...」

 

アカネ「もう勉強いやーーーーー!!」

 

夏世「まだこの問題が解けていませんよ、正座も崩してはいけません」

 

アカネ「夏世ちゃんのオニーーー!!」

 

沙耶「あはは...」

 

綾夜「お、おう...」

 

 

真莉宅にはそこに住んでいる2人以外の人物、真莉の学友で友人の沙耶と綾夜が来ていた

 

ピンポーン

 

インターフォンがなり響きアカネと夏世は瞬時に警戒モードに入る

沙耶と綾夜はぽかんとしていたが2人の真剣な表情を見て警戒を強める

再びピンポーンとインターフォンがなると夏世が玄関まで行き扉をほんの少し開け外を覗く

 

夏世「...どちら様ですか?」

 

扉の先から聞こえてきたのは男の声

 

聖也「こんにちは、真莉くんが寝込んでいると聞いたのでお見舞いに来ました星染聖也とクラスメイトです、真莉くんはまだ治らないのですか?」

 

そこにいたのは星染聖也とその取り巻きの4人だった

 

夏世「あぁ、お兄さんのクラスメイトですか...すいません、まだお兄さんは「お兄ちゃん起きたーーー!!」...どうやら起きた様です、上がって行きますか?」

 

聖也「...この人数は入れないのでは?」

 

夏世はチェーンを外し聖也達を迎え入れる

 

夏世「もう既に2人の御学友が来ていますし今更数人増えたところで気にはならないと思いますよ...お兄さんが起きたそうなので私は行きますが入って来られるのならば鍵は閉めてくださいね」

 

夏世は真莉が起きたと聞いてからずっとソワソワしていたので扉を開けたまま真莉の寝室まで走って行ってしまった

 

 

聖也「...じゃあ行こっか?」

 

加古「でも良いのかな?」

 

聖也「あの子が許可したんだ、大丈夫だろ、それにもし何か言われたら俺が謝るよ」

 

加古「そういうことじゃ無いんだけど...」

 

聖也はお邪魔しますと行って入っていく、それに続き2人の取り巻きも聖也に続く

残された加古もしょうがないとため息をつき家の中に入る

 

加古「お、おじゃましま〜す...」

 

加古はしっかりと鍵を閉めたことを確認し靴を脱ぎ上に上がり騒がしくなっている二階に登った

 

 

 

 

真莉宅の二階ではある意味では宴会状態になっていた

 

元からいた沙耶と綾夜は突如来訪して来た聖也達を歓迎しなかった

部屋のベットには上半身だけを起こした状態のこの家の持ち主である真莉がいた

 

真莉の膝に縋り付いて離れないアカネを夏世は力づくで退かそうとしているのを真莉は微笑ましい顔で見ていた

 

加古「あの...大丈夫?あれ?」

 

加古はある違和感を感じ真莉を見て固まる

 

真莉「...お前まで来たのか...今日はサービスデイか?悪いが凄まじくダルいんだ、あんまり構ってやれんぞ」

 

そう言う真莉は本当に怠そうにしていた

先程まで睨み合っていた聖也の取り巻き2人と沙耶&綾夜もそれを聞き押し黙る

聖也は真莉に話し掛ける

 

聖也「真莉くん、本当になんとも無いんだね?あの時現れたガストレアとの戦闘で負傷したわけでは無いんだね?」

 

真莉「あ?なんで俺があんな亀の相手をして負傷せねばならん、全くと言っていいほど関係ねぇよ、これは俺自身がミスった証拠だ」

 

聖也「そうか...本当に助かった、改めて礼を言うよ、ありがとう」

 

真莉「別に前にも言ったがお前らを守るために戦ったわけじゃねぇ、あくまでついでだ、そのことを履き違えるなよ」

 

聖也「はは、そう言うことにしておくさ」

 

一区切りついたと判断した加古は先程言えなかったことを言う

 

加古「あの!...片目」

 

加古が感じた違和感、それは...真莉の顔だっただった

 

真莉の本来の目の色は黒でどこにでもいる日本人の持つ目だったのだが左目だけがシンリの時と同じ猛獣の様な目になっており髪も所々に白い髪がちらほら混じっていた

 

 

真莉「あ?まぁこれは気にするな、説明すんのもめんどくせえし...俺はもう一度寝るぞ、少々疲れた」

 

真莉は起こしていた上体を倒し布団に潜る

 

真莉「あぁ、もしお前らが帰らないのであれば...夏世」

 

夏世「なんでしょう?」

 

真莉「こいつらが帰らないのであれば適当に案内してやってくれるか?」

 

夏世「分かりました、やっておきますね」

 

真莉「そんじゃ頼むぞ?」

 

真莉はそのまま眠りにつく、他の人達はポカンとしてその様子を見ていた

 

 

 

 

 

 

《???》

 

 

漂っている...

 

身体がふわふわと浮いている感じがし立っているのか、横になっているのか、はたまた座っているのかは分からない...

 

俺意外にも、この空間には誰かが...いる、俺はこいつを知っている

十数年間もの月日を共に過ごし、俺に戦いの全てを教え、俺の...《復讐》に手を貸してくれている者...

 

「随分と好き勝手に体を酷使してくれたな...お陰で全く身体が動かせん、どうしてくれる?」

 

『にゃっはは、どっちにしてもボクが出て来なかったら死んでいたんじゃ無いかな?』

 

「いや...無いとは言えないか...今回は本当に助かった、ダメだな、どうしても最後の場面で...」

 

『それは分かってる、君と何年一緒に過ごしているんだ、ボクは君の事ならなんでも知っているさ』

 

「...それもそれで気持ちわりぃわ...」

 

『ふふ、本当に君は優しい...だけど君の...古畑真莉の優しさは周りを救うだけの物をもう持っている...だけどボクには分かる、それでいて最終的に損をするのは真莉、君だよ、その事...分かってないとは言わないよね?どうするつもりなんだい?』

 

 

成る程...俺をここに《呼んだ》のか...まったく

 

「俺はもう、答えは出てるさ...俺は《 》」

 

『.......ふふふ、そっか、それなら仕方ないなぁぁ、それじゃあもう少しの間ボクの力を貸してあげよう!ありがたく思えよ〜?』

 

意識が遠のく...

 

いつもここに来れるのは睡眠に入るほんの数分だけ...それもこいつに呼ばれなければろくに入ることもできない場所

 

数分経てばそのまま深い眠りについてしまう

 

「...は、なんで上か...ら...目線だよ...そろそろ...時間だし...もう行くぞ?」

 

『うん、ボクもまた寝るからもう行くよ』

 

「そっか...それじゃあ...おやす...み...《 》」

 

『うん、おやすみ...ボクの《 》』

 

最後まで聞こえなかったが何を言ったのかは伝わった

 

分かってる、俺はお前には本当に感謝しているさ...

 

次はもうお前に心配はかけない、だから...しばらくは寝てていいぜ...俺が...和眞を倒すから...そして最後には...




お気に入り入れてくださった方、投票を入れてくださった方
どうもありがとうございます!!

なんとか頑張りますので応援宜しくお願いします!!


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第14話

今回は直接話とは全く関係ありません!そして短いです!
それなのにこんな長い間更新出来てないとか...マジごめんなさい!!!

おそらく安定して書けるようになるまで毎週土曜か日曜のどちらかの更新になると思います
安定すれば3日に一回ぐらいのペースで書いていきます!


突然ですがこの家、お兄さんの持つ家は大きいです

私とアカネさん、そしてお兄さんが住んでいても部屋はまだ数ヶ所余っていて今回のお客様である沙耶さん、綾夜さん、それと名前の知らない人が4人いてもまだ部屋には余裕があります

 

お兄さんが眠ってしまい他の人たちをアカネさんと一緒に案内をして今は夕ご飯も食べ終わり(ご飯は沙耶さんとお兄さんのお見舞いに来た人...確か加古さんだったと...と一緒に作りました、沙耶さんは男の人ですよね?何故あの様に手際がいいのでしょうか?)それぞれ部屋に行きしばらく経った後問題は起きました

 

この家の中には今、物凄い殺気に満ち溢れています

意外にも沙耶さんも殺気だっています...正直結構怖いです...

 

私の隣にいるアカネさんも力を解放しているのか目が赤く染まっている

多分こう言わないといけないのかもしれないです...

 

どうしてこうなったんでしょう...

 

 

 

 

 

 

 

真莉宅の周りには鳥などの動物達は全て消えていた

虫すらもこの周りに寄り付かないほどに殺気が充満していた

そんな殺気に気付かないわけはなく真莉は重たい瞼を開けた

 

真莉「...なんだ?家の中か...今は...22時過ぎか...アカネもいるし夏世もいるんだがな...(ち、まだ余り身体が動かねぇんだがな...)」

 

真莉が思考していると扉が開き外の光が中に入ってくる

扉の外から真莉の部屋に入って来たのは今やこの家の頭脳でもある夏世だった

 

夏世「あ、ごめんなさい、起こしてしまいましたか?」

 

入って来た夏世も普通に接してきてはいるが目は赤く染まっていて戦闘モードとなっている

 

真莉「何があった?」

 

真莉は頭を瞬時に切り替え小声で夏世に状況説明を求める

夏世は首を傾げていたが合点がいったとばかりに頷き真莉の近くまで行き耳元で現状を喋る

 

 

真莉「.....問題無いな、後は任せる」

 

夏世「はい、任せてください」

 

 

 

真莉は現状を聞き問題無いと判断しふたたび身体をベットへと倒し目を閉じる

 

夏世「やはり起こしてしまいましたか...それを危惧してましたが...全く、あの人達は本当に...」

 

夏世はため息を吐きゆっくりと扉を閉める

 

夏世「さて、そろそろ止めましょうか、これ以上お兄さんのお休みを潰すわけにはいきませんからね」

 

夏世は自分の部屋に戻り唯一と言っていい武器を手に取り部屋を出る

夏世は足早に殺気が濃密な場所に向かって歩き出す

 

その手に持つ武器......

 

 

 

 

《まくら》を構えながら...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間前...

 

『まくら投げ!?』

 

大声がリビングに響く

その提案をしたのは星染聖也だった

 

聖也「そう、真莉くんが寝ているから余りうるさくは出来ないけどこういうお泊まり会的なのは初めてなんだ、こういう時ってまくら投げをするんだよね?」

 

綾夜「それは主に旅館とかそういうところでやるから楽しいんだ、何故この家で、しかも家主が寝ているのに...」

 

加古「そうだよ、櫻井くんの言う通りだと思うよ?」

 

聖也「もしかして負けるのが怖いのかい?まぁ、そういうことならしょうがないかな、うん、ゴメンね、変なこと聞いたよ」

 

分かりやすい挑発を放つ聖也に綾夜は物の見事に引っかかる

 

綾夜「...良いだろう!なら相手してやるよ!」

 

沙耶「おバカ...」

 

沙耶は額に手を当て思いっきりため息を吐いた

 

聖也「勝手に決めてしまったけど君たちはどうかな?」

 

アカネ「まくら投げって寝るときに使うまくらだよね?それで何するの?投げて遊ぶの?」

 

綾夜「遊びじゃ無い、これは...戦争だ!」

 

夏世「何故そんなにやる気を出しているんですか...私はやりませんよ、お兄さんの様子も見なければならないですしね」

 

沙耶「それにまくら何てそんなに無いでしょ、諦めなよ?」

 

聖也「いや、それならそろそろ(ピリリリリ)お、来た...あぁ、今行くよ(ッピ)ちょっと待っててくれ」

 

聖也はリビングを出て玄関に向かった

十数秒後、聖也は大きな袋を持ち戻ってきた

 

 

加古「聖也、それなに?」

 

聖也「ん?これかい?これは...これだ!」

 

袋からバラバラと出て来たのはそこそこの量のまくらだった

 

綾夜「...お前これ持って来させたのか?」

 

綾夜すらもため息を吐いた

 

 

 

 

そんなこんなでまくら投げを開始して大凡1時間が経過していた

最初は和気藹々と静かにやっていたのだが人間と言うのは(それも高校生)負けず嫌いな種族でもあるため次第に勢いが増して来た

その中心だったのが聖也と綾夜の2人

何かと衝突する2人だったがここで決着をつけるためだろうか真っ先に2人の戦いは激化

それに触発されるかのように聖也の取り巻きの男2人が勢いよくまくらを投げ始める

 

やがて戦いだと判断したのかアカネも力を解放し始めてしまう

沙耶と加古と夏世はもう既に二階に退避しており無事だがリビングは既にひっちゃかめっちゃかになっていた

 

沙耶「下は凄い盛り上がってるね」

 

加古「そうね...どうして男ってこんな奴ばかりなのかしら」

 

沙耶「僕も一様男なんだけど」

 

加古「あ...ごめんなさい、悪気があったわけでは無いのよ?ただ希里江くんは何ていうか...男っぽく無いっていうか(アセアセ)」

 

沙耶「それもどうかと思うよ...(´・ω・`)」

 

加古「あ...あはは」

 

唐突に真莉の部屋が開く、夏世はリビングを見てきますと言ってここにはいない、と言うと出てきたのは間違いなくこの家の家主の真莉だ...しかし真莉は顔を俯かせたままで表情が見えない

 

加古「ふ、古畑...くん?」

 

沙耶「...真莉?どうしたの?」

 

すると部屋の開閉音を聞いたのかひょっこりと夏世が顔を見せた

 

夏世「あれ?お兄さん?起きたのですか?」

 

夏世の問いかけにも応じず真莉は階段を降りていった

 

夏世「.....沙耶さん、加古さん、もう我々も寝ましょう」

 

沙耶「え?どうやって止めるか考えないと...」

 

夏世「いや、すぐに終わりますよ...お兄さんが終わらせると思いま(バギィィ!!)『ギャァァァァ!!ゴメンナサィィィィィィ!!!』...終わったようですね」

 

加古「...怖い」

 

沙耶「はぁ...」

 

 

その日大騒ぎだった真莉宅は一瞬で静まり返った

辺りに撒き散らしていた殺気も瞬時に消え夜の静けさだけが辺りを包み込んだ

 

翌日に綾夜と聖也は真莉に土下座して謝っていた

 



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第15話

あの暗殺未遂から1週間ほど経過していた

 

あの後真莉が動ける様になった直後に反省会という名の対策会議が行われた

 

護衛ユニットのどこに問題があったのか明確にして次からの事件を防ぐため前向きに事件を見つめ直す...などという美しい会議であったならどれほど良かっただろうか

 

蓮太郎と真莉もその会議に出たが蓮太郎は失望の色を濃くし真莉も既に飽きて来たのか後ろの壁にもたれ船を漕ぎ始める

 

会議は『聖天子の帰りのルートに狙撃手が待ち伏せしていたのはどうしてなのか?』という責任の押し付け合いに終始したからだ

 

当然真っ先に責められるべきは保脇を含めた警護計画書を作成した聖天子付護衛官だったが保脇は会議の場で

 

保脇「こいつらが!!こいつらが犯人です!!」

と口角泡を飛ばしながら片隅の壁に背を預けていた2人を指差してきた

 

なんでも彼の言い分では『今まで一度としてい聖天子が狙われることはなかったのに、蓮太郎たちが雇われた途端、聖天子の暗殺未遂が起きている、ゆえに蓮太郎たちは暗殺者と内通している』とのことらしい

 

これは二つの意味でおかしな話だった

蓮太郎たちが依頼を受ける旨を電話で伝えた時『では、当日は聖居まで来てください』と事務官の一人に告げられた

そして当日聖居に行くとリムジンに乗せられ会議の場まで行き、帰りに襲われたのである

真莉に至っては会議の場の後少しして別の場所で戦いを行っていた

さらに言えば2人は護衛として雇われたにもかかわらず一切護衛に関するブリーフィングを受けてはいない、おそらく、蓮太郎たちをよく思っていない保脇たちが意図的に2人をのけ者にした結果だろう

 

皮肉にもそれが、蓮太郎たちに鉄壁のアリバイを証明してしまっている

百歩譲って蓮太郎たちが暗殺者となんらかの形で内通していたとしても護送ルートを知らない2人は暗殺者に教えるべき情報がないのだ

というより極論を言って仕舞えば真莉が本気で聖天子殺害を目論んでいるのならば護衛官や蓮太郎などこの場で瞬殺されている

 

当然蓮太郎は(真莉の事は言わずに)弁明したが途中何度も大声で保脇が蓮太郎の発言を遮った

「騙されるな!」だの「みなさんこいつの意見を聞いてはいけません!」だので始めてから言葉巧みに会議列席者を丸め込もうとする

ライバルを様々な手管で蹴落としてきたと息巻く保脇はさすがと言うべきか弁が立ち、酷いこじつけと屁理屈をそれらしく伝える能力には長けていた

 

一言で彼の言い分をまとめると『私は悪くない』であり、どうやら彼としては如何あっても蓮太郎たちが罪を被らないと我慢ならないらしい

 

会議の場で劣勢に立たされた蓮太郎を救ってくれたのは隣で眠っている男....ではなく意外にも途中で乱入してきた聖天子だった

 

聖天子「里見さんと古畑さんに依頼したのは私の意志であります、その里見さんと古畑さんを疑うという事は即ちわたくしの判断を疑うということ...何より保脇さん、東京エリアを救ってくれた英雄を犯人扱いするとは何事ですか!恥を知りなさい!」

とピシャリと言いつける

保脇はぐうの音も出ない様子で悔しそうに席に座った

だが彼が諦めていないのはその修羅に燃える執念深い瞳を見た瞬間にわかる

薄気味悪く笑いながら口の中で小さくブツブツと呟く保脇の視線は蓮太郎の背筋に充分以上に寒いものを走らせた

 

後で蓮太郎に同情的な職員から話を聞くと保脇は蓮太郎と聖天子の中を民警と国家元首以上のものであると勘違いしているらしい

はた迷惑な話だと蓮太郎は思った

 

 

 

 

 

 

 

「あぅぁ」

ベチャリ

 

という音が聞こえ蓮太郎の意識が戻ってくる

蓮太郎「...お前何個落とすんだよ」

 

蓮太郎が地面を見ると大粒のたこ焼きが3個ほど舗装路に墜落していた

 

蓮太郎は彼女...ティナ・スプラウトに呼び出され国定公園に来ていた

国定公園は燦々と陽光が降り注ぎ草木ともに風に吹かれ気持ち良さそうにしている

 

横目でベンチを見ると先程そこでなけなしのお金を叩いて買ったたこ焼きのトレイを持っているティナを見るといつぞやのパジャマと比べて随分と気合の入ったドレス姿だった

だが胸元のボタンを一段かけちがっており、髪留めの位置もおかしい

おそらく眠くてそこまで気が回らなかったのだろう

 

 

ティナはしばらく地面に落ちたたこ焼きを眺めた後、ゆるゆると顔を上げ至極真面目な表情を作った

 

ティナ「蓮太郎さん、このたこ焼き、私の口から逃げるようなのです、まだ、内部のタコが生きている可能性が...」

 

蓮太郎「ねぇよ、ちょっと貸せ!」

 

蓮太郎はトレイを奪い取ると爪楊枝で一個刺し無理やり口に放り込む

ティナは束の間驚いた顔をしていたが、もそもそと咀嚼し始めると徐々に表情筋が緩んでいき、なんとも幸福そうな顔になる

 

ティナ「れんたろうひゃん、もっと、くらひゃい」

 

ティナは半分ベンチから身を乗り出しながら目を閉じ、小さな口を開ける

なんだかキスをせがまれているようで一瞬どきりとするが、どちらかというと鳥のヒナに餌付けしているような感覚に近いなと思い直す

ひょいぱく、ひょいぱくと食べていくごとに幸福なオーラを発散して弛緩するのが面白くなり気付けば自分のたこ焼きも全部ティナに上げてしまっていた

 

蓮太郎「ちょっとじっとしてろよ」

 

蓮太郎はハンカチを出してソースまみれになった口を拭こうとするとティナら目を細め顔を上げ蓮太郎のされるがままになる

すると後ろから声が聞こえた

 

???「これは事案か...とりあえず通報しとくか...お前んとこの社長に」

 

蓮太郎「それはやめろ!!...って、真莉?何してんだここで?」

 

後ろにいたのは真莉だった

 

真莉「俺が公園にいちゃまずいのかよ...って俺が好き好んで公園にいる様子なんて想像できねぇな...んなことより何やってんだお前?」

 

蓮太郎「ティナにここら辺を案内してたんだよ、そんでここでたこ焼き食ってたんだよ」

 

真莉「へぇ、お前金ねぇのに良くやるな...さて、確かティナ・スプラウト...だったっけか?久し振りだな」

 

ティナ「はい、お久しぶりです、真莉さん」

 

ティナは真莉に挨拶する、真莉はティナをじーっと見ている

ティナは首をかしげながら真莉を見る

 

ティナ「どうしました?」

 

真莉「ん?あぁ、わりぃ、何でもない、前回のパジャマとは大きく違ってたからな、ちょっと見とれてたわ」

 

真莉のまさかの言葉にティナはちょっと固まり次第に頬を染め俯いてしまった

 

真莉「...俺なんか言ったか?」

 

蓮太郎「お前...まぁ良いか」

 

真莉と蓮太郎が喋っていると無機質な音が響く

ティナの持っている携帯が鳴ったようだった

ティナは画面を見ると急に恐ろしいまでに強張った

 

蓮太郎「お、おい」

 

蓮太郎は心配になり手を伸ばすがそれをすり抜けティナがベンチを飛び降りる

 

ティナ「蓮太郎さん、真莉さん、私、もう行かなきゃ」

 

ティナはこちらの返事を聞かずに2人に背を向ける

 

蓮太郎「お、おい!待てよ!」

 

なぜか蓮太郎はとてつもない不安に駆られて声をかけると彼女は半分だけ振り返る

風が強く吹き、あたりの木々を強く揺する

ティナは金髪を抑えながらうっすらと笑った

 

ティナ「また会いましょう、蓮太郎さん、真莉さん」

 

丁寧に一礼して去っていく彼女の背を2人は見ていた

 

 

 

 

 

 

ティナは国定公園を歩きながら折り返して電話をかける

 

『遅いぞ』

 

ティナ「すみませんマスター、どうしても電話を取れない状態にありました」

 

マスターと呼ばれた人物は溜息を吐く

ティナ「それで?」

 

『次の聖天子の警護計画書が流れてきた』

 

ティナ「早いですね」

 

てっきり二回目は警戒されて計画書が漏れてくることはないと諦めていただけに拍子抜けした、よほど無能な人間が聖天子の側近にいるのだろう

 

『我らの依頼主は東京エリアに逗留してる間にカタをつけたいとお望みだ』

 

ティナ「しかしまたあの民警が邪魔しますよマスター?」

 

『奴らの正体も分かった』

 

ティナ「本当ですか?」

 

ティナは携帯を強く耳に押し当てた

 

『天童民間警備会社というらしい、また次の会議まで少し時間がある、今度も邪魔されてはかなわんよ』

フッと彼女の主人が笑った

 

『ティナ・スプラウト、次の任務を伝える...天童民間警備会社社長、天童木更を殺害せよ』

 

ティナ「はい、マスター」

 



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第16話

遅くなりました...仕事でなんも出来ない日々が続き大変でした...

しかも文字数少ないし大して面白くもないかもしれないです...つ、次こそは!


蓮太郎と延珠と真莉は勾田高校病院まで来ていた

蓮太郎は物凄く暗い顔をしている

 

真莉「お前どうした?失恋してこれから自殺しますみてぇな顔してっけど」

 

延珠「だ!?ダメだぞ蓮太郎!?妾がそんなこと許さぬ!?」

 

蓮太郎「そんなに酷くねぇよ!?ただちょっとな...」

 

真莉「まぁ俺には全くもって関係ねぇけどな...ってかなんで俺まで来なきゃいけねぇんだよ?」

 

蓮太郎「仕方ねぇだろ、『先生』がお前も連れて来いって言って聞かねぇんだから、俺だって何で呼んだのかわかんねぇよ」

 

真莉「先生...室戸菫か...(確か四賢人の1人だな、そんな奴が何の用だ?)」

 

蓮太郎「はぁ、とりあえず延珠、特に真莉は気をつけたほうが良い」

 

蓮太郎の言葉に真莉は怪訝な表情をし延珠の頭にははてなマークが付いていた

 

延珠「む?どうしてだ?」

 

真莉「あ?」

 

蓮太郎「先生が2人を呼ぶ理由が分からない、なんか嫌な予感がする」

 

延珠「そうなのか?妾は菫と会うのは久しぶりだから楽しみだぞ」

 

真莉「お前の予感は当たるか知らんが...まぁ俺には関係ねぇよ、ここまで来たんだ、帰るのもめんどい」

 

蓮太郎「どんだけ面倒くさがりなんだよ...」

 

延珠は握った拳を嬉しそうに上下させる、真莉は面倒くさそうにため息を吐く

菫に会えるのが楽しみという人間なんて世界中探しても延珠だけのような気がすると蓮太郎は思った

 

掃き清められた清潔な廊下をしばらく歩くと馴染みの地下への階段を下りていく

相変わらず薄暗くキツイ芳香剤の匂いがする上に今日はけたたましい笑い声まで聞こえて壁に反響して蓮太郎の耳朶に届く声は魔女の哄笑に似ていて通い慣れた蓮太郎ですら思わず二の足を踏む

真莉はこの芳香剤の臭いにしかめっ面をし鼻をつまむ

 

真莉「(この臭いはいささかキツイぞ俺には...)」

 

うんざりしながら悪魔のバストアップが刻まれた人除けをくぐると、菫がテーブルに大の字になって笑い転げていた

彼女がテーブルの上で暴れるたびに試験管やビーカーが押し出されてパリンパリンと割れていく

 

菫「おい蓮太郎くん、この記事を見てくれ!ヤクザが月面移住計画のエイプリルフールネタに騙されて、月の土地を地上げして回ってるんだ!ヤクザのくせに何というドリーマー!ハハハハハ!!」

 

蓮太郎の胸は早くも帰りたい気持ちで一杯になった

蓮太郎がチラリと真莉を見ると真莉も同じ気持ちなのか既に目が死にかけている

 

世界的な名医である室戸菫には死体安置室を勝手に増設してそこで死体と一緒に暮らしている重度の死体愛好家(ネクロファイル)の顔もある

 

蓮太郎「(そういやこいつ異常に嗅覚が優れてなかったっけ?相当キツそうだな)」

 

蓮太郎はそう思った後延珠が嬉しそうに手を振る

 

延珠「菫、遊びに来たぞ!」

 

菫は体を起こし、伸び放題の髪をかき上げる、そしてテーブルの上にあぐらを掻き白衣の裾を払いながら芝居がかかった調子で両手を広げる

 

菫「そうこそ、蓮太郎くん、延珠ちゃん、そして君は初めましてだね、古畑真莉くん、私の悪夢にようこそ」

 

菫は蓮太郎と延珠、真莉の顔を次々に眺めるとうっとりとした顔になる

 

菫「やっぱり蓮太郎くんは剥製にするよりミイラの方が似合うな、木更なら断然ミイラより剥製だな、ミイラにするとおっぱいがしぼんじゃうから似合わない、延珠ちゃんは.......ミイラでいいな、うんいいな...それで真莉くんは〜...剥製だな、うん」

 

延珠「む、今妾のどこを見ながらそう言ったのだ?」

 

真莉「つうか初対面でいきなり人を剥製にすんな、何だこいつは」

 

菫「誰でもいいから早く死なないもんかな、こっちは死体不足で死にそうだ、おっと忘れていた、久しぶりだね、蓮太郎くん、相変わらず不幸そうな顔だね。見ているだけで鬱病になりそうだ。悪いんだが明日までにその顔整形してきてくれないか?見ていられない」

 

蓮太郎「そんなに俺は絶望的かよ!?」

 

菫は立ち上がるとコーヒー豆をコーヒーサーバーにつっこみ、ビーカーを受け口においてスイッチを入れるとミルを引くガリガリという音が響く

 

菫「それより蓮太郎くん、今回はそこにいる真莉くんとともに護衛とか面白いことをやってるそうだね、聞いたよ」

 

蓮太郎「耳が早いな」

 

菫「私はそっち方面にはあんまり詳しくないんだが、今回は狙撃手だとか...蓮太郎くん、私は前々から君にも大いに狙撃の腕があると思ってた、何たって君は自宅の二階から双眼鏡で登校中の幼女をながめる集中力と、温泉で親娘連れが入ってくるまで何時間でも湯に浸かっている驚異的な忍耐力を併せ持つ男だからね、ラブ・スナイパーと呼ばせてくれこのロリコンめ死ね!」

 

蓮太郎「事実無根だろ!?」

 

真莉「蓮太郎...お前...」

 

延珠「そうだったのか、蓮太郎!」

 

蓮太郎「違う!」

 

真莉「まぁ、蓮太郎の幼女を舐め回すように見る趣味なのは別に興味もねぇからどうでもいい、結局何で俺は呼ばれたんだよ?四賢人の室戸菫」

 

 

真莉は少し目を細め室戸菫を睨んだ

菫は肩を竦め軽く息を吐く

 

菫「まぁ少し与太話に付き合ってくれてもいいじゃないか、つまらないな〜」

 

真莉「知るか、俺は一様やる事が多いんだ、程々にしてくんねぇか?」

 

菫「うむ、君は...君の触れてほしくはないところに触れるが君は古火田一族の生まれなのだろう?それを証明できるかい?」

 

蓮太郎「古火田って...確かこないだの会談の時にも言ってたな、特徴は確か髪が紅くなる事だよな?」

 

延珠「古火田?真莉は古畑では無いのか?」

 

真莉は菫を睨む

 

真莉「...お前はどこまで知っている?」

 

菫「私が知っているのは君が古火田の一族だという事と古火田一族が何をしていたのかという事だけだよ」

 

真莉「..........」

 

真莉は目を瞑り思考する、やがて大きく息を吐き目を開けた

 

真莉「まぁ、蓮太郎と延珠ならかまわねぇか、どうせいずれ言うつもりだったしな...」

 

真莉はそう言うともう一度目を閉じる、すると真莉の髪がみるみる紅蓮に染まっていく

 

真莉「これでいいか、あまり戦闘以外でこうなりたくねぇんだよ」

 

菫はそれを見ると大きく目を開き興奮したように詰め寄る

 

菫「おぉ!これは興味深い!どうだね?一度私に君を解剖させてくれはしないか?」

 

真莉「馬鹿かお前は、んな事したら普通に死ぬわ」

 

 

すると蓮太郎は真莉を呼び耳打ちする

 

蓮太郎「お前に聞こうと思ってたんだがなんでお前は目が紅くなる?」

 

真莉「...まぁそれも含めて話すさ」

 

真莉は諦めたような表情を作り顔を菫たちに向ける

 

 

その目は紅蓮に染まっていた



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第17話

大変遅くなり申し訳ありません!m(__)m

自分もここまで投稿できないとは思いませんでした...
もう少しで仕事も落ち着いてくるはずなのでそうしたら更新頻度を上げていきたいと思います!

しばらくはこのぐらいで区切るかもしれません、ご了承くださいm(__)m

(話が進まねぇぜ!)


真莉は病院を後にし街中を歩いていた

 

真莉「(まぁ、あんな話をしてびっくりしないほうがおかしいよな)」

 

???(本当に良かったのかい?教えちゃって、教えるのすっごく嫌がっていたじゃ無いか)

 

真莉の頭の中に直接声が聞こえる、それは自身の事をシンリと名乗っていた者の声だった

その声は呆れを含ませた声色をしていた

 

真莉「(...まぁどっちみちお前を見られてるしな、隠しきれるか分からないからな、ちょうど良いかなとな...マズったか?)」

 

シンリ(ん〜、僕は別に構わないんだけどさ、君が良いならさ〜、ただこれで彼、蓮太郎は君に対しての対応が変わると思うよ)

 

真莉「(関係ねぇよ、それはそれで良い、俺はただ目の前の問題をどう片付けるかだけを今考えてる、先の事はその時考えるさ)」

 

シンリ(ん〜...まぁ君が言うなら別に良いか、ボクには直接的には関係無いしね〜)

 

真莉「(いや、普通に今回の原因を作ったのはお前だからな?和眞が逃げた後俺に『戻して』くれればこんなめんどい事にはなってねぇんだよ)」

 

シンリ(.......おっやすみ〜)

 

真莉「(っておいこら、ちょっとまちやがれ....寝やがった....)はぁ、めんどくせぇ」

 

 

真莉は大きくため息を吐き止まっていた足を動かした

 

スーパーに寄り夕飯の食材を買い家に帰るため再び歩き出す

 

 

真莉「(こんな所に業務用スーパーあるとはな...ちょっと遠いけどな、あいつらも最近かなり食べる様になってきたしな〜、作んのめんどくせぇんだけど...)」

 

真莉がそんな事を考えながら歩いているとポツリ、ポツリと雨が降って来る

 

真莉「(雨か...傘持ってねぇが...まぁいっか)...っ!?」(ッバ!)

 

真莉は上を向き雨を見ていると真莉の脳内に警報が鳴り響き背後に思いっきり飛ぶ

すると先ほどまで真莉のいた場所に銃弾が撃ち込まれる

 

真莉はギロリと銃弾が飛んで来た方を睨む

そこには2人の男女が立っていた

両方とも真莉にとって一番会いたく無い相手の2人、つい先日全力でぶつかり合い敗北した相手

 

古火田和眞と古火田榛名の2人だった

 

真莉「(おい、起きろ、寝てる場合じゃなくなった)」

 

シンリ(どうやらその様だね〜、ってもさ、別にボクを使わなくても勝てるんじゃ無いかな?キミだってかなり強い方だ)

 

真莉「(普通に勝てればお前を呼ばねえよ、和眞1人でも今の俺じゃほぼ勝ち目はねぇ、それなのに榛名まで出て来られると流石にな...もしかしたら3rdまで使うかもしれねぇ)

 

シンリ(ほいほい、別に構わないけど...無理はするなよ?)

 

真莉「(無理しなきゃ勝てねぇよ...殺るぞ)」

 

 

真莉は一気に戦闘モードに入る

眼と髪が紅蓮に染まり荷物を建物の影に起き2人を見る

 

真莉「(...あ?)」

 

 

瞬間真莉はある違和感を抱く

 

真莉「.....」

 

シンリ(どしたの?)

 

真莉「(...いや)」

 

 

 

真莉が何かを感じ取り考えていると和眞が近寄ってくる

真莉との距離が後数歩というところで和眞は止まる

お互いに手を伸ばせば充分に届く距離まで接近した

ほんの少し遅れながら榛名も真莉の近くまで来て止まる

 

シンリ(...何か考えがあることなんだろうけど...気を付けなよ?)

 

真莉「(あぁ、分かってる)...何の用だ」

 

真莉は目をキッと細め和眞を睨みつける

 

和眞「...親が我が子を見に来てはいけないのか?」

 

真莉「くだらねぇ、テメェらを親と思ったことなんざねぇよ、そんなくだらねぇことを言いに来たんならさっさと消えろ、こっちはテメェらと違って忙しいんだ」

 

真莉は非常に迷惑と言った感じで和眞に言い放つ

 

榛名「そんなこと言わないでよ、貴方は私たちの大事な息子よ?あんなことがあったけどそれでもそれだけは変わらないわ」

 

真莉「よく言うぜ、今もそうだがテメェらの言う家族ってのは普通に急所を狙って銃弾を撃ち込むのかよ、それにあんな事だと?あれはテメェらが俺を捨てた結果だろうが...今更どのツラ下げて俺のところに来やがった」

 

榛名「その件は悪いと思っているわ...和眞さんにも聞いたけど真莉、もしかしたら私たちはお互いの記憶が全然違うのでは無いかしら?」

 

真莉「...んだと?」

 

和眞「少し時間あるか?ほんの少しでいい、お前の時間を俺に...俺たちに貸してくれ、お前に伝えなければならない事がある」

 

真莉は目を閉じ思考する、十数秒思考し真莉は目を開けた

その目は紅蓮に染まってはおらず元の黒に戻っていた

 

真莉「...くだらねぇ話ならすぐに帰るぞ、テメェらに付き合ってやる義理はねぇからな」

 

真莉がそう言うと和眞はホッとしたような表情を見せ榛名は安堵の息を吐いた

 

和眞「すまない、とりあえず近くにカフェとやらがあった、そこで話そう」

 

真莉「勝手にしてくれ」

 

真莉は渋々和眞たちの後ろについて行った

 

シンリ(本当にいいの?このままついて行って?)

 

真莉「(最悪巻き込んじまう奴がいるかもしれねぇけどなんか聞いとかなきゃいけねぇ気がしてな...もしなんかあったら頼むわ)」

 

シンリ(まぁ、ボクとしては暴れられるからいいんだけどね...こないだの借りもあるしね〜)

 

真莉「(前みたいに勝手に出てくんなよ)」

 

シンリ(いや、あん時ボクが出ないと死んでたでしょ...キミに死なれるとボクも死んじゃうんだ、いくらボクでもそれは困る、キミも知ってるでしょボクの....)

 

真莉「(あー...分かった分かった...悪かったって...まぁ大丈夫だろ)」

 

シンリ(だといいけどね...いつでも変わるよ、準備はしておく)

 

真莉「(お前に頼りきる気はねぇ、今日は俺だけでやる、勝手に決めて悪いが今日は出ないでくれ)」

 

シンリ(....分かったよ、まぁ自分の『子供』の成長を間近で見れるチャンスだもんね〜、今日は本当に命の危険が無い限りボクは出ない事にするよ、気をつけてね)

 

真莉「(....誰がお前の子供か...まぁ良い、悪いな)」

 

シンリ(ん〜ん、大丈夫)

 

頭に直接聞こえて来ていたシンリの声がどんどん遠ざかりやがて聞こえなくなる

目の前を歩く2人、古火田和眞と古火田榛名は何かを話しながら真剣な表情を浮かべている

 

真莉「はぁ(何やらメンドクセェ事になりそうだな...早く帰りたい)」

 

真莉はこれから起きるであろう事に対して大きくため息を吐いた



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第18話

なかなか長文に纏めるのは難しいです
って言うか時間が無い!!

言い訳に過ぎませんがね...

ある程度仕事が落ち着いてきたので徐々に伸ばしていこうと思います!


歩く事数分、和眞、榛名、真莉の三人は小さな喫茶店に着いた

三人は席に着き店員に注文をした

 

店員が注文の品を持ってくるまで三人は口を開かず無言の時間が続く

数分後店員が品を持ってきてすぐに去る

各々が注文した物を一口飲む

 

真莉が頼んだのはアイスコーヒー

真莉はそれをそのまま口に含む

 

口の中に苦味が広がる

 

シンリ(あのさ、せめてそこの...え〜...甘くなるやつ、それ入れてくれない?苦いんだけど)

 

真莉「(俺はこれが良いんだよ、お前どんだけ苦いのダメなんだよ...)」

 

シンリ(うぇぇぇ...)

 

真莉はそんな事を考えていると口を閉じていた和眞が口を開いた

 

和眞「...あの戦いをした後でこうやって会うとは思わなかった」

 

真莉「は、別にもともとあんな戦いが無くたってテメェらと会うつもりなんざ無かったさ」

 

和眞「はは、まぁそうだろうな...とりあえずこれだけは言わせてくれ、来てくれてありがとう、実際きてくれるとは思っていなかった...現状ならな」

 

榛名「えぇ、今私たちは...敵同士...何故きてくれたの?」

 

真莉「...知るかよ、ただの気分だ...いつでもお前らを殺すことだってできる、それが今じゃねぇだけだ」

 

榛名「...私達としては貴方はこちら側に来て欲しいのだけどね」

 

真莉「お前らの言うこちら側って言うのは聖天子を暗殺する側...つまりは斉武宗玄につけという事か?」

 

和眞「...言葉を濁してもしょうがないな、そうだ、お前は古火田一族、俺たちの子供だ...子供と殺し合いたい親が何処にいると言うんだ」

 

真莉は目を閉じたまま答えずにコーヒーを飲む

 

和眞「俺の方からご主人様には伝える、ご主人様もお前の実力は承知している、だから悪いようにはならない」

 

真莉は目を閉じたまま話す

 

真莉「くだらねぇ、本当にそんな考えをしているんだったら時間の無駄だぜ...俺は誰の下にもつかねぇしつく気もねぇ...くだらねぇ勧誘なら他所を当たれ二度と俺に近づくな」

 

榛名「...どうして」

 

真莉「どうして...だと?テメェらに教えるつもりはねぇよ」

 

和眞「真莉、俺にはそれでいいが榛名には母親と言ってやれ」

 

真莉「........」

 

榛名「貴方、別に良いわ...恐らく考えにくいのだけど...私たちと真莉の記憶が違っているのではないかしら?」

 

和眞「恐らくな...多分、俺たちが分かれた時だろう」

 

真莉「(......)」

 

シンリ(あの〜)

 

真莉「(何がだ)」

 

シンリ(うぉう、分かってる?今キミすっごい殺気が内から湧き上がってるんだけど)

 

真莉「(知るか...今ムカついてんだ、黙ってろ)」

 

シンリ(ん〜...あのさ、《代わって》くれないかな?)

 

真莉「(っ!?ふざけてんのかお前)」

 

シンリ(いや、ふざけてはないよ、単純にこのままだと絶対話進まないしさ、ボクが聞いてキミがコッチで判断すれば良い、何があってもすぐに対応出来るボクの方が良いでしょ?)

 

真莉「(...ふざけてんじゃねぇか)」

 

シンリ(まぁとにかくしばらく大人しくしててね〜)

 

真莉「(っあ!おいコラ!)」

 

 

 

真莉の体がビクリと跳ねる

急にそんな動きをしたからだろうか話し合いをしていた榛名と和眞がビックリしたような表情で真莉に話しかける

 

榛名「し、真莉?どうかしたの?」

 

和眞「っ!?この感じは...」

 

 

真莉は目を開ける、そこには先ほどまでの黒い目ではなく紅蓮に染まった赤い目になっていた

 

和眞「貴様...」

 

榛名「っ...だれ?」

 

シンリ「ふふふ、誰って酷いな〜...ボクはシンリさ」

 

和眞「やはり貴様は...」

 

シンリ「やぁやぁ、こないだぶりだね〜、あの時は楽しかったよ〜、久し振りに燃えたな〜」

 

榛名「貴方、目の前にいるのが」

 

和眞「あぁ、間違いない...あの時の...貴様は真莉の中にいるのか?」

 

シンリ「ん〜、目で見えることだけが真実では無いんだよ?」

 

シンリはケラケラとしながら訳のわからないことを言う

それに対して怪訝な目を向けながら榛名は問う

 

榛名「...どういう意味かしら?」

 

シンリ「まぁ確かにボクはこの子の中にいる別種の個体だよ、この子に力を貸す代わりにボクのお願いを聞いてもらってるのだ」

 

和眞「願いだと?」

 

シンリ「ん〜、やっぱりボクは口が軽いかな、この子にどやされるわけだ...さて、話は変わるけどさ」

 

シンリは飄々とそんなことを言った

和眞は明らかにイライラしながら言い放つ

 

和眞「っち、何だ?」

 

シンリ「君たちとこの子の記憶の違いについてさ〜」

 

シンリの言葉に榛名と和眞は一気に顔を強張らせあたりを緊張が包んだ

 

シンリ「はっきり言ってこの子の記憶に誤りは無い、ボクはこの子に《憑いて》からずっとこの子の記憶を、現状を見て来たんだよ、間違いない」

 

和眞「...何故わかる?」

 

榛名「正体不明なあなたの言うことを信じろと?」

 

榛名の言う事も最もな意見だった

相手の正体も目的もわからない以上その言葉を信じる者がいるだろうか

否、そんな者はほぼいないだろう

 

 

和眞「俺たちはお前のことを知らん、お前の正体と目的を教えるのが先だ」

 

シンリはうーんと唸る

しばらくすると辺りを見渡しシンリは手をポンと叩き和眞たちに言い放った

 

 

 

シンリ「うん、じゃあいっか!君たちがおおよそで感じてる通り、ボクは君たちの言う...《ガストレア》さ」

 

 

シンリのその言葉を聞いた2人は同時にシンリの目の前に現れ和眞はシンリの首に手刀を

榛名はシンリの額に銃口を向けた

 



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第19話

今回は一番短いと思います...

しかしやっと話が進むと思います!


だってボクは君たちの言う...ガストレアだからね

 

シンリのその言葉を聞いた2人は同時にシンリの目の前に現れ和眞はシンリの首に手刀を

榛名はシンリの額に銃口を向けた

 

シンリは二人の行動に何も反応せずにただコーヒーに砂糖とミルクをたっぷり入れそれを啜る

 

 

和眞「.....今すぐに真莉から出て行け、出ていかないのであれば...お前を殺してでも」

 

和眞の言葉にシンリは笑みを浮かべて答える

 

シンリ「ん〜、殺されるのは無理かな〜、それにボクだけを殺すのは無理だよ」

 

和眞「やってみなければ...シンリ「分かるよ」何だと?」

 

シンリ「ボクを殺せばこの子も死ぬ」

 

榛名「そんなのを信じろと言うの?」

 

シンリはうんうんと頷き持っていたコーヒーを飲み干す

 

シンリ「ボクの正体は聞かせるとこの子めちゃくちゃ怒るから教えないけどボクのタイプは教えてあげるよ、ボクは寄生タイプのガストレアさ、今まで動物に寄生したり他のガストレアに寄生したりして過ごしてたんだ、それでどんぐらい経ったか忘れたけどボクはこの子に出会ったんだ、それからボクはずっとこの子の中にいるのさ」

 

シンリは説明しながら左腕を出し力を込めた、その行動に和眞と榛名はシンリから離れる

シンリの腕からビキビキと軋む音がし腕からホネが飛び出して来た

 

それを見た榛名は口に手を当て唖然とし和眞は目を細めシンリを睨む

 

榛名「何よ...それ...」

 

シンリ「ん?普通にホネの形状を変えただけさ、ボクが表に出てる時だけ出来る芸当さ、安心してよ、この子にはなんの損傷も無いからさ」

 

和眞「だとしてもそれを見て良しとするわけ無いだろうが!」

 

シンリ「この子を殺そうとしていた人とは思えないセリフだね、やっぱり人間ってのは分からないな〜」

 

シンリは呆れたかのように大袈裟に両手を広げる

するとシンリの懐からピリリリリと機械音が鳴り響く

 

シンリ「おりょ?電話?.....ちょっと待ってって、無理矢理変わろうとしないで!わかった!分かったから!」

 

シンリが何やら独り言を言いだし身悶え始め目を瞑った

その瞬間シンリはピタリと止まり目を開ける

その目は先ほどまでの赤い目ではなく普通の黒に戻っていた

纏っていた雰囲気も先ほどまでの軽々しいものではなく最初の様な威圧とも取れる雰囲気が発せられた

 

和眞「....今のお前はどっちだ?」

 

真莉「俺は俺だ、話しかけんなウザってぇ」

 

真莉は面倒くさそうに懐から携帯を取り出した

ディスプレイには電話をかけてきた人物の名前が映し出されており真莉は溜息を吐き通話ボタンを押した

 

真莉「...もしもし?どうした蓮太郎?」

 

蓮太郎『良かった!やっと出てくれた!』

 

真莉「あ?どうした?そんな切羽詰まって?」

 

電話の相手は真莉の友人であり今回の依頼を共にする仲間、里見蓮太郎だった

蓮太郎は何かあったのかかなり慌てている様子だった

真莉は電話先の相手をなんとか落ち着かせようと言葉を発した

 

真莉「落ち着け、何を言ってるのかわからん」

 

蓮太郎『わ、悪りぃ!それより大変なんだ!!』

 

真莉「(よっぽどの事か?全く落ち着いてねぇけど...)とにかく何があった?」

 

蓮太郎『あ、あぁ!大変だ!天童民間警備会社が...木更さんが襲撃された!』

 

蓮太郎の言葉に真莉の表情が険しいものになる

天童民間警備会社が襲撃された、恐らくは例の聖天子を狙撃したやつかそれとも別のやつのどちらかだろうと真莉は考えていた

しかし蓮太郎から告げられたのは予想を超えたものだった

 

蓮太郎『襲って来たのは....ティナ・スプラウトだ!』

 

真莉の表情はいよいよ厳しさが増した

真莉はふぅ...と息を吐き和眞たちを見ながら話を続ける

 

真莉「そうか...《やっぱりか》」

 

真莉のやっぱりかと言った瞬間電話先から驚愕の声が上がる

 

蓮太郎『っな!?やっぱりってどういう事だよ!?お前まさか知ってたのか!?』

 

真莉は面倒くさそうに話す

 

真莉「お前今どこにいる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後真莉は和眞と榛名が止めるのを無視し指定された病院に文字どおり走る

普通の道を真莉が全力で走ると大変迷惑を掛けるのでビルの上や屋根伝いに走る

 

真莉は病院に向かう際色々と考えていた

 

真莉「(俺の悪い予想ってのは当たっちまうのな、やれやれだぜ)」

 

シンリ(って言ってる割には色々も考えてるみたいだけど?)

 

真莉「(まぁ、言ったところで予想を超えたってわけではねぇからな、ある程度の予想を立てていたのが良かったかもな...まぁ、蓮太郎のショックはわかるが...)」

 

シンリ(それで?どうするの?)

 

 

真莉はビルの上で立ち止まり思考する

暫くそのままだったがやがて空を見上げ呟く

 

 

 

 

 

真莉「出来ることなら止めてやるのが大人なんだろうがな...」



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第20話

真莉「出来ることなら止めてやるのが大人なんだろうが...そう簡単にはいかねぇだろ」

 

シンリ(そうだろうね、人間って言うのは本当に面倒くさいんだね〜)

 

真莉「そうなんだろうな...さて、さっさと行かなきゃな、あいつに色々と説明せにゃならんのな...だりぃな」

 

シンリ(まぁまぁ、どうせすぐに無意味だってわかるでしょ〜)

 

真莉「ならいいんだがな」

 

 

真莉は立ち止まっていた足を動かしまた走り出す

 

数分後には病院が見えてきた

真莉は路地裏を見つけそこに降りる、誰にも見られていないことを確認し路地裏から大通りに出て病院に入っていく

真莉は病院のスタッフに天童木更の病室を聞き病院内を歩き出す

やがて木更の病室の前にやって来て立ち止まりコンコンコンとノックをする

 

 

真莉「...返事がない、ただの屍のようだ」

 

シンリ(いや、そういうのいいから...空いてるんじゃないの?)

 

 

真莉は扉を横にスライドさせ病室に入る

そこで真莉が目にしたのは...

 

 

 

木更「ッア!ちょっ!?ちょっと!?里見くん!?どこ触ってるの!?わ、私そこまで許した訳じゃないわ!?って聞いてる!?」

 

延珠「むぅ、この大きさ、形、弾力...悔しいがAAAクラスを付けねばなるまい...」

 

木更「って!?延珠ちゃん!?何してるの!?」

 

延珠「聞きたいのは妾の方だ!事務所に帰ったら穴だらけになっているし!ここへ来たら木更がオッパイ放り出して蓮太郎を誘惑しているし!」

 

延珠の言葉に蓮太郎は溜息を吐きそれを見つめていた

木更は延珠の言葉に顔を羞恥に染め大きく反論する

 

木更「放り出しても誘惑もしていないわよ!」

 

ぎゃあぎゃあとうるさくなった病室に真莉は大きく、そして深い溜息を吐き三人の元へ近づいて行く

それに気付いた蓮太郎が真莉に声を掛ける

 

蓮太郎「やっと来たのか真莉」

 

真莉「以外と遠いんだぞ...それにしても、天童民間警備会社が襲われて社長殿が病院に運ばれたと聞いてとりあえず来たんだが...」

 

真莉は未だに睨み合っている二人を見て軽く今日何回目かになる溜息を吐いた

 

真莉「元気そうで何よりだな」

 

延珠は真莉にやっと気づいたのか手を振り始めた

 

延珠「お、真莉ではないか!さっきぶりだな!」

 

木更「っななな!?一体いつからいたの!?古畑君!?」

 

木更は先ほどのやりとりを見られたと思っているのか顔が赤く染まっていた

 

真莉「はぁ、俺が来たのはつい今さっきだ、それより天童民間警備会社...って言うより天童木更を襲ったやつってのは...」

 

そこまで言うとその先を答えたのは蓮太郎だった

蓮太郎は拳を強く握り微かに震えていた

 

蓮太郎「あぁ、電話でも言った通り、ティナ・スプラウトだった」

 

真莉「...そうか...《やっぱり》か」

 

真莉の言葉に蓮太郎は驚きの表情を見せすぐに真莉に詰め寄った

 

蓮太郎「お前...知ってたのか!?」

 

真莉「確証はなかったがな...あいつに一番最初に会った時流石に覚えてるだろ?」

 

蓮太郎「あぁ...それが?」

 

真莉「俺はこう見えて鼻が良い、集中すれば流石にアカネ程ではないがある程度は嗅ぎ分けることが出来る、あん時ちょっと気になったんでな、集中してたら微かに、本当に微かにだが鉄の匂いがした」

 

蓮太郎「だが、それはティナが乗ってた三輪車の可能性が高いだろ?それに今時鉄なんてどこにでもある」

 

真莉「あぁ、だからこそ俺は最初は気にも止めなかった、だがその後、最初に聖天子が狙撃された時に俺はあの狙撃弾を掴んだだろ?」

 

蓮太郎「あぁ...っ!?」

 

蓮太郎は生返事をするがすぐにそれがどういうことなのか理解し目を大きく開け真莉を見た

 

真莉「気付いたか...そうだよ、俺は一度覚えた匂いを忘れねぇ、その時に思い出したんだよ、あの時、スプラウトから感知できた匂いはこの弾丸と似ていたとな」

 

そこまで言うとそれまで静寂を保っていた木更が話に割り込んでくる

 

木更「でもそれでも気のせいと思わなかったの?自分の勘違いって?」

 

真莉は若干のドヤ顔をして木更に言う

 

真莉「俺は自分に自信を持ってるからな」

 

蓮太郎「うわ、ウザい」

 

蓮太郎は言って後悔した

すぐに真莉は蓮太郎の後ろに行き蓮太郎の関節を決める

ミシミシと鳴り響き蓮太郎がやめてくれ!と叫びようやく離す

 

真莉「...さて、遊びは終わりだ、これからどうする?」

 

真莉の言葉に全員の表情に真剣味が増す

 

真莉「現状俺らに打てる手は少ない、このままじゃ先手を取られるばかりだぞ?」

 

蓮太郎「と言ってもな...相手は何処から撃ってくるのかわからない以上探しようも無い...俺もティナに見られてるからこっちからコンタクトは取れないだろうし...そうだ!真莉なら!」

 

真莉「アホか、無理だ」

 

蓮太郎の言葉をバッサリと切り捨てる

蓮太郎はジロッと真莉を睨む

 

蓮太郎「なんでだよ?」

 

真莉「恐らくスプラウトには俺も敵方だってバレてる、だから無理だ」

 

蓮太郎はそうかと明らかに落胆した表情を見せた

木更は思った疑問を真莉に問い掛ける

 

 

木更「ねぇ、真莉くんとアカネちゃんと里見くんと延珠ちゃんの四人でやればすぐに倒せるんじゃないの?」

 

真莉「アホか、んなことしたら誰が聖天子を守るんだよ、あの使えねぇ護衛どもなんざ信用の欠片もねぇよ...それに単純に今回俺はスプラウトと闘うことはできねぇ」

 

真莉の言葉に蓮太郎たちは驚く

 

蓮太郎「なんでだよ!?」

 

真莉「...あの会談の時の二人組いただろ?」

 

蓮太郎は記憶を呼び起こす

確かにいた、真莉の事を兄と呼ぶ女と無精髭を蓄え鋭い目付きをした中年の男性だ

 

 

真莉「あいつらは...古火田一族の現当主とその娘だ、あいつらも今回の件は依頼として入っているはずだ、古火田一族は暗殺から要人警護までなんでもやる一族だ、まぁそれ相応の額を貰うから早々依頼なんて来ないがな」

 

真莉は虚空に溜息を吐き続ける

 

真莉「古火田一族は何があろうと、自分自身がどんな目に会おうと依頼を完遂するのが一族の教えだ、恐らくだが今回の依頼は相応の依頼なんだろうな、当主とその娘が来ているんだし」

 

どんだけの金を使ったんだか...と真莉は呟く

 

蓮太郎「それとこれとは別じゃないのか?」

 

真莉「間違いなくあいつらは邪魔をしてくる、むしろこれからは率先して聖天子暗殺をしてくるだろ、そうなったら少なくとも聖天子を守りながらの戦いになるしそれよりも現状、俺は古火田の当主には勝てない理由がある」

 

真莉をも勝てないと言わしめるあの男はどんなやつなのだろうと蓮太郎は思考する

すると横から袖をくいくいと引っ張られ蓮太郎はその方向を見ると延珠が膨れっ面で蓮太郎を見ていた

 

延珠「蓮太郎蓮太郎蓮太郎!何が何だかさっぱりだぞ?」

 

蓮太郎は屈んで延珠に目線を合わせ簡単に事務所襲撃の顛末とそれが聖天子暗殺未遂とリンクしていることを告げる

 

延珠「なんだそんなことか、じゃあ妾たちが聖天子様を守り抜けば良いではないか」

 

延珠は先ほどの事を聞いていなかったのかそんなことを言った

真莉はポカンとしていた

 

蓮太郎「お、お前なぁ...そんな簡単に言うけど...」

 

蓮太郎はそこまで言うとふと考える

確かに延珠の言うとうりだしそれもわかる...しかしそれはここにいる真莉を含めた上での話だ

 

確かに聖天子を守ると言う点では延珠の言うのは正しい

しかしそれは先ほど真莉が言った問題点が無ければの話だ、真莉ですら勝てない相手...その人物が本気で聖天子を殺しに来たとしたら...蓮太郎は少し身震いをした

すると先ほどの延珠の言葉で固まっていた真莉が笑い出した

 

真莉「くくく....あっはっはっは!そっかそっか!そりゃあそうだな、延珠の言うとうりだ」

 

延珠「む?何があったのだ?」

 

木更「ど、どうしたの?」

 

真莉「聖天子を守り抜けば良い...確かにその通りだなってよ、蓮太郎、ちょっと話がある」

 

真莉がそう言った瞬間に病院の電気が全部消えた

どうやら消灯時間の様だ

 

木更は少し溜息をし居住まいを正すと月をバックにパッと黒髪を書き上げる

 

木更「社長として命令します、里見くん、聖天子様を狙う狙撃手を排除し正義を遂げなさい!真莉くんには友達としてお願いするわ、聖天子様や里見くんたちを守って!」

 

蓮太郎は目を閉じると胸に手を当て自分の良心に問う

 

蓮太郎「止めるよ、必ず...あいつは俺が止める!」

 

真莉はふぅと息を吐き木更をしっかりと見る

 

真莉「友人の頼みだ、しっかりとやるさ...蓮太郎、ちょっと話がある、このあと時間作ってくれ」

 

蓮太郎「分かった」

 



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第21話

本年度最後の更新になります!

長らく待たせて申し訳ございませんm(__)m

今年はだいぶ忙しい年でした...
来年はなんとか更新日を増やして皆様に楽しんでもらえるように頑張ります!!

それでは皆様良いお年をお迎えくださいm(__)m


聖天子「そんなことがあったのですか...」

 

車中、聖天子は膝の上で上品に手を重ねると顔を伏せた

 

聖天子「すみません、良かれと思ってあなたがたに依頼をしたのですが...まさかこんなことになるとは...」

 

延珠「お主、そんなこと気にすることないぞ!依頼が来た時木更はカンテンの雨が降ってきたみたいで嬉しかったと言っていたしな」

 

延珠だ、上手なフォローである...『干天の慈雨』と『カンテンの雨』を間違って使っていなければの話だが...するとその横から声が聞こえた

 

 

夏世「延珠さん、それはもしかして干天の慈雨と言いたいのではないでしょうか?いや、まぁ確かに延珠さんの例えでも間違ってはいませんけどね」

 

I.Q200を超える頭脳を持つモデル・ドルフィンのイニシエーター、千寿夏世だ

 

蓮太郎も頷きながら合皮のシートに背を深くもたせかけながらその尻馬に乗る

 

蓮太郎「延寿の言う通りだ、ウチとしてはきちんとリスクこみで金をもらってるんだからアンタが気にすることなんて何もねぇよ、真莉はどう思ってるかはしらねぇけど、それに建物は保険もおりそうだしな...ただ、保脇は俺と真莉が犯人と通じてると思ってるからやりにくいったらねぇけどよ...」

 

聖天子「犯人と通じているんですか?」

 

聖天子が微笑を浮かべながら打ち返してきて蓮太郎は口をつぐまざるを得なかった、通じてはいないが俺も真莉も知り合いだ、と言ってらこの国家元首はどんな顔をするのだろうか...

 

今日の第二非公式会談は河岸を変えて料亭で行われ、時刻は午後八時から深夜までのスケジュールになっている

現在の時刻は午後七時半

 

前回の調子から考えると、今回の会談も実りあるものになるとは思えなかったが、それは護衛の領分を超えているので蓮太郎も真莉も口を挟んだりする事ではない

 

延珠「蓮太郎、上手くいくかな?」

 

延珠の期待と不安が入り混じった瞳を見てから前方に囮のリムジンが走っているのを確認し最後に首をめぐらせて車内を見る

 

蓮太郎「どうだろうな」

 

聖居の職員のものを借り受けたバンは、サスペンションがへたっているのか揺れがひどく、間違ってもリムジンの乗り心地と比べられるものではないが、特に聖天子は不平を述べるでもなくちょこんと座っている

 

先日、木更のお見舞いのあと真莉の家で夜通し作戦会議をして土壇場で聖天子の乗る車を変えようと二人で話し聖天子にそれを提案した蓮太郎だった

 

それも信用できそうな聖天子の側近のいる目の前でいきなりだ

側近たちは最初、目を剥いてこちらを見た、どうやら聖室の貴人を一般乗用車に乗せるという提案自体が信じがたいほどの非常識なものだったらしい

 

だが、常識的な奇策は奇策たり得ない、非常識であればあるほど、ティナへの目くらましには効果的な筈だ

今回の警護計画書の漏洩は聖居内に裏切り者がいると考えるのが妥当だろう

 

裏切り者が、計画書を作成している聖天子付護衛官だった場合面倒なことになるが...そうでなければ早晩逮捕されるに違いない...と言うよりそうでなければすぐに真莉に捕まるだろう

真莉は依頼があった後からずっと聖天子の周りの事を全て調べていた

 

すでに内務調査班も動き始めて聖居内の情報リーク者を洗い出そうという動きがあるらしい

犯人さえ捕まって仕舞えばほんの少しだけ肩の力を抜いて護衛できるのだが...

 

蓮太郎はそこで嫌な人物の顔を思い出して拳で膝を叩く

 

蓮太郎「.....斉武宗玄、あいつが犯人に決まっている」

 

聖天子の頭がピクリと動き、悲しそうな表情で振り返る

 

聖天子「里見さん...それは....」

 

蓮太郎「証拠はまだ出てこない、でもあんたが死んで一番得するやつは誰かって考えるとあいつ以外考えられない...大体、奴はなんだって非公式にコソコソと東京エリアに来てるんだ?そこからしておかしいし、あんたはその会談の帰りに襲われてるんだぞ、それにおかしいと言えばもう一つ」

 

蓮太郎は一旦言葉を切って聖天子の瞳を見つめた

 

蓮太郎「聖天子様、アンタの側近はみんなクズだ、警護計画書が何処から漏れたかっていう責任のなすりつけあいばかりするくせに肝心の防止策は講じない。そもそも奴らはどうして暗殺の依頼人は誰かって話はしないんだ?これは、ちょっと考えればわかる筈だ、けれど本当に斉武が今回の事件の黒幕だとあばいてしまったら、一歩間違えればエリア間の戦争が勃発する、あいつらはそれを考えるのが怖いんだ」

 

高い唸りを上げて車が横を通過し、ヘッドライトの光が後ろに流れていく

話の雲行きが怪しくなってきたのを悟った運転手は、運転席で座りが悪そうに尻をもぞもぞとさせている

 

聖天子は目を瞑る

 

蓮太郎「それにあの時の襲撃、真莉は別の場所で、それも四人を相手取って戦っていたみたいだ、俺としてはこれ以上あいつに負荷を掛けたくない」

 

聖天子はやがて目蓋を開けるとこちらを見返した

 

聖天子「里見さん、前半の話は私の胸にだけ止めておきます、決してそのようなことを他言しないでください...古畑さんの件はこちらも...いえ、私自身も考えています、しかし私自身も古火田一族のことを調べてはいましたが...分からないことが多く、彼にしか対処が出来ないのも現状なのです...」

 

言外に意味するところを知って、蓮太郎はおもわず立ち上がりかけるが、聖天子はゆっくりと首を振る

 

聖天子「私は仮にも国家元首です、証拠もないのに会談を中止することなどできません、里見さん、これは仕方のないことなのです」

 

蓮太郎「殺されるぞ!」

 

聖天子「それが天の選んだ私の運命ならば、いたしかたありません、私は私の中の神に従います」

 

蓮太郎は突如灼熱の感情がこみ上げてきて気が付けば聖天子の胸ぐらを掴み上げ拳を振り上げていた

 

延珠「っ!?蓮太郎!」

 

夏世「それをしてしまえば貴方も、それにお兄さんもこの依頼クビになります、やめてもらえませんか?」

 

夏世は冷静に、延珠は慌てて取りなすが蓮太郎はギリギリと歯を食いしばりながら握った拳を震わせる

されるがままの聖天子は静かに蓮太郎の瞳を覗き込んでいるだけだった

ぎゅっと目を瞑る

どれくらいそうしていただろうか、蓮太郎は聖天子を突き飛ばしムシャクシャしながらどっかりと腰を下ろす

 

夏世は突き飛ばされた聖天子を受け止めほっと一息ついた

蓮太郎はどうしてこうも自分の周りにいる女は馬鹿ばかりなんだろうと、真が強いにもほどがある、羨望せずにはいられないではないかとそう思った

 

蓮太郎「俺は守るぞ、アンタをみすみす殺させるために護衛を引き受けたわけじゃない、俺が無理でも真莉がいる、真莉だって俺と同じ気持ちだ」

 

聖天子「.....ありがとう、里見さん.....ところで古畑さんは何処に?」

 

蓮太郎「あいつなら多分そこらへん走ってると思うぜ」

 

聖天子「そうですか」

 

それからしばらくして、バンは高級料亭『鵜登呂亭』(うとろてい)に着く

率直して料亭内を検索・消毒していた護衛ユニットが車を誘導して、料亭の横につける

蓮太郎はスライドドアを引くと、聖天子の方に手を伸ばす

 

蓮太郎「さ、お姫様、いくぜ」

 

聖天子は反射的に「私はお姫様ではなく.....」と口を開きかけるが、恥ずかしそうに俯くと黙って蓮太郎が差し出した手を取る

車外に出てやや冷たい空気に身をさらしながら料亭入り口に視線をやって、そこで蓮太郎は顔をしかめた

出迎えてきたのは、面倒なことに憤怒の形相をした保脇だった

 

保脇「里見蓮太郎!!貴様これはどういうことだ!何故聖天子様をこんな粗末な車に乗せている!!」

 

蓮太郎「...車を変えた、リムジンじゃ危険だと判断した」

蓮太郎は無言で保脇を睨む、お前の能力が信用出来ないと暗にそう言っているようだった

 

それに気が付いているのか保脇は歯をギリギリと食いしばる

 

保脇「貴様ぁ....貴様のような勘違いしたスタンドプレイヤーがチームを崩壊させるのだ!貴様のようなクズが...」

 

保脇がそこまで言うと一瞬、一陣の風が吹くすると近くの木から声が聞こえた

 

真莉「その提案を決めたのは俺だ、テメェらみてぇなアホどもに護衛プラン任せると色々と穴だらけになりそうなんでな」

 

真莉はそこまで言うと木から飛び蓮太郎の近くに着地する

 

真莉「よ、蓮太郎、悪りぃな押し付けて」

 

蓮太郎「気にしてねぇよ」

 

保脇は無視されてるのに腹を立てたのか怒り余った保脇が腰の拳銃に手をか伸ばしかけるのに応じて蓮太郎も牽制の為腰のXDに手を掛ける

真莉の後ろに控えていたアカネは眼を紅く染め腰を低くしすぐにでも飛び書かれる体制をとり

延珠も眼を紅く染め靴の裏で路面をにじる

 

突如、アカネと真莉は顔をパッと上げ周囲を見渡し始めた

蓮太郎もその異変に気付き耳を澄ませた、すると虫の羽音めいた音が聞こえてきて蓮太郎は弾かれるように辺りを見渡すが何も見つからない

 

まただ...

前回の狙撃事件の時にも聞こえてきた虫の羽のような音、あれは一体.....

 

だがそうやって神経を張り詰めていたことが結果的に、視界の端...巨大ビルの屋上が明滅するのを先んじて捉えることに一役買った

 

背筋がゾッとする、見間違えようもない、先日と同じ狙撃の銃口炎

 

真っ先に動いたのは真莉

真莉は聖天子を守るように聖天子の前に立ちはだかりそれにコンマ数秒遅れて蓮太郎が叫びながら聖天子の腰に体当たりをして上体を倒す

 

次の瞬間、体に鋭い痛み、真莉は飛来してきた銃弾を蹴りで僅かにずらす、蓮太郎の身体真横を対戦車弾の熱せられた銃弾頭が擦過するのを感じる

 

一拍置いて、場に狂乱がぶちまけられた



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第22話

やっと投稿出来たぜよ...

今回は地の文が多いです、見づらかったらごめんなさいm(__)m


一拍置いて、場に狂乱がぶちまけられた

 

蓮太郎の意図を汲んだ護衛のうち数人が素早く盾になる

真莉と蓮太郎は素早く目配せをし、蓮太郎は聖天子をバンに押し込んで運転席を叩き「だせ!」と命じる

 

前を塞いでいたリムジンと、乗り込んだバンがほぼ同時にもう発車する

バンとリムジンが動いた瞬間再び銃口炎が光る

 

真莉は瞬時に反応し狙われたであろうリムジンの側に移動し飛んできた銃弾を再び蹴り飛ばす

今度はさっきの様に反らすだけでなく、確実に誰もいないところに弾く

 

しかし相手は対戦車用ライフルから撃たれた対戦車弾

弾いた拍子に吹き飛ばされる

 

真莉は落ち着いて着地しようとした瞬間それは現れた

 

真莉「(っ!?ちぃ!)」

 

両足で着地しようとしたのを変え、片手を下に向け指だけで自分の体をもう一度空中に浮く

真莉の着地地点に二振りの刃が通り過ぎる

 

刃が内側に曲がっている特徴的な形状をしている武器を使う者など真莉は今の所一人しか知らない

着地をしてその人物をギロリと睨むと相手もこちらを睨んでいた

 

真莉「...またテメェか...翔とか呼ばれていたか」

 

翔「...真莉...お前だけは俺が殺す!!」

 

真莉は未だにざわついている聖天子の護衛達に聞こえる様に声を飛ばす

 

真莉「おら、さっさと聖天子を追え、使えねぇテメェらでも聖天子の盾になんだろう...ってか邪魔だ、消えろ」

 

保脇「き...貴様ァァ...お前ら!行くぞ!」

 

保脇たちは真莉を睨みながら聖天子の乗った車を追った

真莉はため息を吐き大きな殺気を放ってくる者に相対した

 

真莉「さて、やっと邪魔者は消えたか...隠れてる奴も出て来い、どうせテメェだけじゃねぇんだろ?」

 

真莉がそう言うと辺りにさらに濃い殺気が放たれた

近くに来たアカネの目が紅く染まり身を低くし瞬時に飛び出せる様に戦闘態勢をとる

 

暗闇から現れたのは真莉が一番警戒している人物

現古火田一族当主、古火田和眞とその妻である古火田榛名だった

和眞と榛名はゆっくりと歩いて来て翔の横に並びこちらを見ていた

その目は何処か悲しそうで、それでいて何かを決心した様な目をしていた

 

和眞「真莉...今ばかりはこの巡り合わせを俺は恨むぞ」

 

榛名「お願いよ真莉...私たちと一緒に来て?その子も一緒でいいから!」

 

翔「俺は嫌だね!こいつだけは俺が殺すんだ!」

 

三人とも思い思いに真莉に言い放ってくる

真莉はフンと鼻を鳴らし目を閉じる

 

真莉「ッハ、くだらねぇ、俺は自分の決めた道を決して変えねぇ...例えそれが間違った道だとしても、俺は俺の道を行く...その邪魔をするのであれば..,」

 

そこまで言って真莉はゆっくりと目を開ける

その目は呪われた子供達の様に紅蓮に染まっていた

 

真莉「ただ、蹴ちらすまでだ」

 

真莉は右手を上げ中央に持ってくると右手の指を全て曲げる

左手は拳を握り後ろに引き腰の辺りに持って行った

右足を前に、左足を後ろに構え何時でも飛び出せる態勢をとる

 

和眞達もそれを見て自身の髪を紅蓮に変色させ戦闘モードに入る

和眞は真莉と真逆ではあるが同じ構えを取る

榛名は両手に中型のマグナムを持ち真莉とアカネ、それぞれに狙いを定めた

 

翔は変わらずに姿勢を低く、両手に持つククリナイフを交差させて今にも飛び出しそうな顔をしていた

 

その場にいる五人はそれぞれ動かずほんの数瞬の隙が生まれるのを待つ

 

 

時間は1分も経ってはいないだろうが体感時間的には数十分は経ったであろう緊張感が五人に訪れた

 

その状況に焦れたのか真っ先に飛び出してきたのはククリナイフを交差させていた翔だった

 

翔は真莉に一直線に向かってくる、しかしその手前で翔の行く道を塞いだのはアカネ

 

目を紅蓮に染め真莉に貰ったバラニウム製の特徴である真っ黒な籠手に同じく真っ黒な脚絆を付け右から来るナイフを右足で防ぎお互いにノックバックする

 

真莉はアカネに目配せをし自身の想いを伝えた

アカネは渋々といった表情で頷いた

それを見た真莉も同じく頷き視線を未だに動かない古火田和眞と古火田榛名に向ける

 

榛名は変わらず真莉とアカネに銃口を向けておりアカネはそれをチラチラと見ながら何時でも撃てるように準備をしている

 

真莉と和眞はお互いを見据え静止したまま動かない

どちらもほぼ隙がなく攻めあぐねていた

 

 

 

 

 

 

アカネと翔は二人ともかなりのスピードで衝突を繰り返していた

 

二人がぶつかるたびに甲高い金属音が辺りにこだまする

翔は両手のククリナイフを自在に操りアカネに切り掛かる

アカネはそれを見て確実に刃を躱す、躱せないと判断した攻撃だけを的確に両手の籠手と両足の脚絆で弾いていた

翔は躱され続ける事に苛立ちを募らせていた

 

翔「この!ちょこまかと!」

 

アカネ「.....」

 

躱す、躱す、躱す躱す躱す躱す

 

 

アカネは更に激しくなる攻撃を全て躱す

数十回に及ぶ斬り込みの中でアカネは極々一部の隙を見つけ翔の懐に飛び込んだ

 

翔は怒りで普段よりも僅かに大きく振り切ってしまった

その僅かな差を瞬時に判断しアカネは地面を全力で蹴り一瞬で相手との距離をゼロにした

 

アカネ「ッ!やぁ!」

 

翔「っぐ!?」

 

アカネの掌底が翔の鳩尾に当たり翔を後方へと吹き飛ばす

しかしアカネは怪訝な表情を作った

 

アカネ「...後ろにとっさに飛んだんだ...あぁもう!もうちょっとだったのに!」

 

翔は咄嗟の判断でアカネの掌底が当たる瞬間に僅かに後方へと飛んだのだ

衝撃を多少なりとも後ろに逃がし直撃を避けたのであった

 

翔はゆっくりと、しかしその目には明確な殺意を纏わせアカネの元へと戻ってきた

 

翔「...お前を殺して...あいつの眼の前でその四肢ぶった切ってやる!!!」

 

アカネはふぅと息を吐き再び構え迫る相手を迎え会おうとした瞬間...

 

ドッッゴォォ!!

と辺りに風圧が吹き荒れ、何かが衝突する音が響いた

アカネと翔はそれに驚きその衝撃の方を向くと

 

お互いの拳をぶつけ合い静止している和眞と真莉が見えた

 

和眞は顔に若干の笑みを浮かべている

真莉はその表情に変わりは無いが瞳の奥は殺気で満ち溢れていた

 

二人は弾かれるように後方へと飛び地面に着地し再び地面を蹴り拳をぶつけ合った

 

辺りに再びドゴォと言う鈍い音がなり衝撃が飛んでくる

先ほどはお互い静止したが今度はそうはいかなかった

 

真莉「っ!?」

 

和眞「ォォォォォオオオオオ!!!」

 

和眞は咆哮と共に力を更に上げ真莉を押し切った

吹き飛ばされた真莉は木々にぶつかりながら飛んでいった

何本かの木を貫通しようやく止まる

 

真莉「(ッぺ)」

 

ビチャっと真莉は口から血を吐き捨て和眞を見据えた

 

真莉は足に力を入れ立ち上がる

 

アカネはそれを見て焦り援護しようとするも

 

翔「はは!俺に後ろを見せるなんてな!」

 

アカネ「ッ...あ...」

 

アカネの背中から鮮血が飛び散る

後ろから背中を斬られたのだ

アカネは獰猛な笑みを浮かべてこちらを見る翔を睨みつけるが体は動かずそのまま地面に倒れこんだ

 




誤字、脱字は無いようにはしているんですがもしあればご報告お願いします!


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第23話

大変長らくお待たせいたしました!!

投稿できず申し訳御座いません!
色々とやる事が多かったり仕事場の人が色々辞めたりと大変でした...

少し更新頻度は上げれるかなと思ってますが何が起こるかわからないので程々で頑張りたいです..,


翔side

 

弱い

こんなガキがなんでこんな所にいたのか分からない

 

最初こそ確かにこいつの速さに一撃貰ったがそれだけ

俺の敵じゃなかった...やっぱり俺の殺すべき敵は...古火田真莉のみ!!

 

side out

 

 

 

翔は先ほどよりも遥かに濃密な殺意をその目に宿し地面に膝をついている真莉の元へ向かう

 

しかし翔は真莉の方へ向かっていた足が止まる

 

おかしい

翔の脳内にその言葉が降りてきた

かなりの勢いを付けククリナイフで切りつけたのにたかだかあれだけしか『血が出なかった?』

 

翔の脳内にその言葉の次に降りてきたのは

 

『キケン』

 

翔「ッ!?」

 

ッバっとその場から翔は飛ぶ

飛んだ瞬間、翔のいた場所に小さな影が現れ大きな音とともに若干のクレーターを作った

 

ドゴォォン!!

 

 

翔は体勢を立て直し現れた小さな影を見据える

小さな影...アカネは舌をべぇと出してその場でぴょんぴょんと跳ねていた

 

アカネ「む〜...もうちょっとなんだけど...なんで気づいちゃうかなぁ〜」

 

翔「...なんでだ」

 

アカネ「?」

 

何を言っているのか分かっていないアカネは首を傾げた

 

翔「お前は確かに俺が斬った...なのになんで生きてる!」

 

アカネ「え?生きてるもんは生きてるでしょ...何言ってんだか」

 

アカネは両手を広げ小馬鹿にしたかのような仕草を取り相手を挑発した態度を取った

 

翔「このガキ...」

 

アカネ「(あ、意外と沸点?が低いんだ)まぁ簡単だよ、お兄ちゃんからあらかじめ聞いてたからね、それに合わせて少しだけ重心を落としたの...まさかこんな簡単なものにかかるとは思わなかった〜」

 

翔「...殺す」

 

翔はそう一言言い放つとアカネに向かって突進を開始した

走り出した瞬間に両手にククリナイフを持ちアカネの首目掛けて振る

 

アカネは慌てずに翔の動きを見て連続で振るわれるナイフを細かいステップで躱す

何回か交わされたことでイラついてしまったのか翔は大振りになっているのに気付くのが遅れてしまう

 

それを見逃さずにアカネは翔のナイフを避けその隙に翔が手に持つナイフを蹴り飛ばす

 

翔はチッと舌打ちをし距離を取ろうと後ろに飛ぶ

 

アカネ「ここからは私のターンだよ!」

 

翔「ッ!?」

 

翔はある程度距離を取ったはずだったがアカネはその距離を即座に縮める

ほぼゼロ距離まで縮めるとアカネは拳を握る力をさらに増やす

 

アカネ「やぁ!」

 

可愛らしい声とは裏腹に勢いよく振り抜かれた拳を防ごうと翔は残ったもう片方のナイフの腹の部分で防ぐ

しかし防いだと思った瞬間にバキィンと音が鳴り響く

 

翔「な...ッグ!?」

 

持っていたナイフが腹の部分から砕け拳はそのまま翔のお腹の部分に当たり後方に吹き飛ばされる

アカネは自慢の脚力を生かしそれを追撃しに行く

 

ワンバウンドした翔に追いつきクルッと一回転し翔の鳩尾目掛けてかかと落としを当て地面に叩きつけた

 

翔「ッガ!?」

 

翔は地面に沈み込んだ

 

アカネはそれを見てもう上がってこないと確信し少し離れてしまった真莉の元へ走った

 

 

残された翔は焦点の合わない目を空に向け手を伸ばす

 

翔「俺は...もう...」

 

そのまま空に伸びた手は地面に落ちた

辺りに静けさが残された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辺りには銃声や何かがぶつかり合う音が鳴り響く

その戦いはとてつもない速度で行われていた

一般の人ならば影だけが動いて見えるだろう、それ程までに速い戦いとなっている

 

真莉「ォォォォォオオオオオオオ!!」

和眞「ォォォォォオオオオオオオ!!」

 

二人の咆哮とそれに負けないかの如く響く打撃音が辺りには木霊していた

 

お互いの拳は血で溢れており痛々しいものになっている

しかし、それでもどちらかと言えば真莉の方がダメージがデカかった

 

お互いに何十回かも分からないぶつかり合いの後、お互いに距離を取った

 

和眞も多少なりとも息が上がっているが真莉はそれの遥か上を行く程の息切れをしている

汗も尋常ではなく誰が見てもどちらかが優勢かなんかは一目瞭然だった

 

和眞「ふぅ、前回よりも強くなっているな...あまり時間がなかったがなぜそこまで強くなれた?」

 

和眞は呼吸を整え真莉に聞いた

 

真莉「はぁ...はぁ...答える義理はねぇよ...」

 

真莉は息も絶え絶えながらに答える

 

真リ「そんなら...タイケンシテミルカ?」

 

和眞「なんだと?」

 

 

 

 

真莉side

 

強い...比喩なしに本当に強い

こいつは本当に別格だし恐らくこいつはまだ底を見せていない...はは、本当に化け物かよ

 

だがまぁ、大分目も慣れたし呼吸も掴めた...アカネがあいつを引き離してくれたからかなりやり易いしな...

 

あとは...どこまで持つか...だな

 

 

(本当にやるのかい?)

 

...あぁ、それしか、それしかこいつに勝つ方法を思い付かねぇんだよ...

 

(ボクとしてはオススメしないんだけどね〜)

 

...それは俺が負けるってことかよ?

 

(ボクが言ってるのは君の身体のことさ、はっきり言って耐えられる保証はない、ボクは別に良いんだけどそれで君にどんな悪影響が起こるかわからない、だから聞いているんだ)

 

...そんなこと...

 

(無いなんて言わせないよ、ボクは君より君の中を知っている...もう限界でしょ、ボクに代わりな)

 

ッ!?ふざけんな!またお前にやらせたら俺は!

 

(ボクからの特別講義だよ、それに...あいつは今君を見ているようで見ていない、分かっているだろう?)

 

.....

 

(大丈夫)

 

.....

 

(大丈夫)

 

...分かった...勝手にしやがれ!

 

(ありゃ、拗ねちゃった...さて、それじゃあ...)

 

 

 

 

シンリ「やらせて貰おうかな」

 

side out

 

 

和眞「(ッ!?来たか!)」

 

和眞は一気に自身の警戒レベルを数段階引き上げる

下を向いていた真莉は今こちらを見ていた

先ほどと同じに見える...しかし纏っている雰囲気が段違いに重くそしてその両眼は呪われた子供たちの様に紅蓮に染まっている

 

和眞は武者震いをしていた

和眞よりも強い相手、それも自分の息子なのだ、震えないわけがなかった

 

和眞「...お前はあの時のヤツだな?何故今出てくる?」

 

シンリ「やぁやぁ、こないだぶりだね〜?人間?何で出てくるか〜って?ん〜...講義...かな?」

 

和眞「講義だと?」

 

シンリ「ん、この子は色々と...ねぇ?」

 

シンリはぽりぽりと頬を掻く

和眞は自身の頬が引きつっているのが分かった

和眞も彼の言う色々というのが分かっているのか何も言えなかった

 

シンリ「まぁ、今回もボクが相手してあげるよ...人間相手に本気も何も無いし、手加減してあげるから2人まとめてかかってきな?油断してると...」

 

シンリから先ほどよりもさらに強い殺気が溢れ出す

それを受け和眞と榛名は警戒を最大限高めた

 

シンリ「死んじゃうかも...ッネ!」



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第24話

なんかアレですね...

いつもいつも遅くてすいませんm(._.)m

なかなか時間が取れない日が続き、本来ならば先月も、今月も暇な時期なはずなんです...なのに今年は尋常じゃないほどに忙しいんです...

言い訳っすな...サーセンorz

今回はいつもより駄文だと思います...

なんとか時間を見てやって行きたいです!


銃声が絶え間なく辺りに響く

銃声の他にも何か重たいものが衝突したかの様な鈍い音が響く

 

その音の中心にいるのは古畑シンリ、古火田和眞&古火田榛名がぶつかり合っていた

 

榛名が両手に持っている銃をシンリに向け連射するがシンリはどこに来るのか分かっているかの様に最小限の動きでかわしていく

 

榛名は真莉の事を思い出していた

 

 

榛名と和眞は基本的に現役を引退し朱音に古火田の当主として引き継いだが朱音の手に余ると判断した依頼などは2人で行い達成してきた

 

そのどれもがかなり強い相手だったが2人の長年培った経験とお互いの相性の良さで軒並み仕留めてきた

今回の依頼を受けた時は当初朱音と翔でやらせる予定だったが嫌な予感がした為急遽2人も付いて行くことにした

 

しかしその予想は的中する

 

 

 

和眞が珍しくダメージを受けて帰ってきた

 

榛名「和眞?...っ!?どうしたの!?」

 

和眞「真莉の中に...化け物がいる」

 

和眞は息を吐き両手をぷらぷらとさせていた

 

【化け物】

 

和眞はそう真莉のことを称した

 

榛名は最初こそ信じてはいなかったが和眞が傷つき帰ってきたことを考えその事を本当の事と判断し冷や汗を流した

 

 

榛名はその事を聞く前に言わなければならないことがあったがそれを聞き言ってもいいものか悩んでいた

 

しかし和眞はやはり長年連れ添っていたからか榛名のほんの少しの違和感を感じていた

 

その日は夜を徹して話し合いを行い今後の方針を固めたのだった

 

 

 

 

 

榛名「(まさか...ここまでなの!?)」

 

榛名の放つ銃弾はシンリに擦りもせずにいた

榛名も和眞程ではないにしてもかなりの実力を有している

引退したとはいえ古火田の名を持つものとして日々の鍛錬などは怠ったことが無い

それ故にコンディションは常に完璧にしていた

 

それは夫でもある和眞も同じ事なのだが

それでも...

 

 

 

シンリ「あっははは!まだまだこんなもんでは無いでしょ?この子の中から見てたけどもっと上にいけるっしょ?全力で来いってば〜」

 

 

 

それでも、この男にはかすり傷一つ負わせる事が出来ていなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和眞side

 

なんなんだこいつは...

 

俺と榛名の攻撃を笑いながらかわしている...

 

前回もそうだったがやはり真莉の中のこの化け物には寄生した奴の身体的な能力を何十倍にも跳ね上げる事ができるんだろう...

 

でなければ真莉が我々2人の攻撃をここまで擦りもせずにかわすことなど出来るわけがない...

 

現に前は俺とやりあって俺が勝っている(まぁその後にこいつが出てきて引き分け的なのになったのだが)

それなのに今回は最初から出てきた...

 

最初は真莉が殺されるなどの状況でしか出てこれない...言わばバーサク状態の様なものだと思ってはいたのだが今回の事でそれが違うとわかる

 

真莉の中に確かに別の意思が存在している

 

これはもう疑いようのない事実だ

問題はそれの正体

 

真莉が居なくなった後の事は当然分からない

 

真莉が何処かの研究所(確か機械化特殊部隊?だったか?)の様なところで何かしらの実験をされていたのではないか

もしくはそれに似通った何か良からぬ薬でこうなってしまったのではないか

 

など色々と考えてしまう...

 

あの時、俺は動けなかった、動かなければならなかったのに動けなかった...今更悔いても過去の過ちが消えるわけではないがやはり考えてしまう

 

あの時あいつを1人にしなければと...

 

やはり直接聞くしかないか...とは言ったものの...答えてくれるかはわからないが...な

 

 

side out

 

 

 

 

和眞は榛名にアイコンタクトで合図をし射撃を止めさせる

突如止んだ銃撃にシンリは若干の怪訝な目をしたがすぐにいつもの様にヘラヘラとした感じに戻った

 

お互いの距離はそこそこ開いてはいるが和眞もシンリもお互いに一歩で攻撃を再開できる(迎撃できる)様に構えていた

 

 

シンリ「なんだ、もう終わり?あんま時間をかけたくないんだよね...多分そろそろあの子くるし」

 

シンリはぼそりと呟くが和眞はそれを無視しシンリに向かって指を指し言い放った

 

 

和眞「お前は真莉の中に潜むもう1人の真莉と言う解釈でいいのか?」

 

シンリはそれを聞きポカーンとした表情をしていた

和眞はそれを意に介さず続ける

 

和眞「お前の力ははっきり言って異常だ、本来の真莉ははっきり言ってもっと弱い、俺がもっとしっかりと修行させていれば誰にも負けない男になっただろう...だが真莉はあの時勝手に俺たちの前から消えてしまった、その日から今までの事を計算しても真莉がそこまで強くなっているのには何か理由があるはずだ」

 

和眞はそこまで言って一回切りすぐに続けた

 

和眞「お前が何かしらの影響で真莉の中から出て来た存在であるのなら、今すぐに真莉から出て行け、真莉にはこれから毎日しっかりと修行を付けさせ今まで出来なかった事を体験させるつもりだ...だがな、お前が真莉の内側から真莉をそそのかしている以上、真莉はこちらに来ない!お前がいつから真莉の中にいたのかは知らないがこれ以上真莉の成長を邪魔するな!」

 

和眞の言葉を目を瞑って聞いていたシンリは...笑い出した

 

シンリ「ふ...ふふふふふ...あっははははは!!」

 

シンリが大声で笑い出したのを榛名と和眞は怪訝な目で見ていた

 

和眞「何がおかしい!」

 

シンリ「あ...あはは...ひぃーひぃー...ふふふふふ...はー...はー...いやぁ、何を言うのかと思えば...くくく...おっと、危ない危ない...久しぶりに心の底から大爆笑出来たよ、ありがとうねー」

 

シンリはようやく治まったのかふぅと息を吐き出した

 

シンリ「うん、取り敢えず君たちは盛大な勘違いをしているよ、おそらくそっちの無精髭の方はアレでしょ?この子が小さい時にどっかの組織に捕まって薬やら人体実験やらやられてボクが生まれた〜とか思ってるんでしょ?」

 

和眞は顔には出さなかったが少なからず驚愕した

自分の頭の中で考えていた事を言い当てられたのだから無理はなかった

 

 

シンリ「んじゃもう別に答え言っちゃって良いかな〜...あぁ、安心して良いよ、今回はしっかりとこの子には寝てもらってるから、今起きてるボクたちの会話もボクがどんな事をやってどんな事を言ったのかとかもこの子にはわからないから...んでどうする?ボクの正体...知りたい?」

 

和眞はバカにされていると自分の中で判断するとともに何者なのかどうかが気になってしまった

 

自分よりも遥かに強い相手の事を知りたくないわけがなかった

しかし、シンリから告げられたのは思いもよらぬ一言だった

 

 

 

 

「ん〜、ま、いっか...ボクの正体はね...ううん、ボクの本当の名前を教えようかな...

 

ボクの名前はね...

 

 

ゾディアック・ガストレアの一体『キャンサー』だよ

 

以後よろしくね〜」

 




今更ですがお気に入りが100を超えました!!

皆様ありがとうございます!!


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第25話

なかなか更新頻度が上がりませんがもっと頑張ります!!

応援お願いします!!


ゾディアックガストレア

 

感染して間もないステージIから完成形であるステージIVまで4段階に分けられる

 

ステージの進行段階でさまざまな生物のDNAを取り込むため、ステージII以降のガストレアはそれぞれに異なる異形の姿と特徴を持ち、「オリジナル」とも呼ばれる

 

主だった個体には星座にちなんだ識別名が付けられている

 

 

 

和眞と榛名は驚愕の眼差しを向けていたがすぐに冷静になりキッと目を細めた

 

 

和眞「ゾディアックガストレアだと?寝言は寝て言え、ゾディアックガストレアは現在11体しか確認されていない!ふざけるのも大概にしろ!」

 

和眞の言葉にシンリ...キャンサーは相も変わらずケラケラと笑っていた

 

キャンサー「そりゃあ【確認】されているのはね〜」

 

キャンサーの言葉に何かを思ったのか榛名がハッとした表情になり徐々に驚愕に染まる

和眞は怪訝な顔をしながらも何かを理解したのか警戒を極限まで高めた

 

 

キャンサー「あんま教える気もないけど...ボクは君ら人間で言うと【寄生型】のガストレアさ

 

ボクは生まれてからずっと...いや、まぁどうやって生まれたかわからないけどさ...ずっと色々な生物に寄生して来た、ボクは本来寄生した生物の脳を操る

 

そこからその生物が今までどうやって生きてきたのかとかをそのまま自分のものとして吸収していくんだ」

 

キャンサーは一旦区切りすぐさま続ける

 

キャンサー「どのくらいの期間を生きてきたか忘れたけどある時にボクもヤバイ時があってね〜

 

寄生先をミスってね、ステージIの雑魚に寄生しちゃったんだよね〜

 

しかもそいつほぼ死にかけでね、流石のボクもこればっかりはヤバイと思ったんだよ

 

ボクが寄生出来る条件は寄生状態の生物を食べる...もしくはボクが相手に噛み付いてボク自信が対象に移動する事でしか移れないんだ、

 

ボクの周りにはもう寄生する相手もいないし口も開けれない状態だったから流石にこれは死ぬかなって覚悟を決めたんだよ」

 

キャンサーは懐かしむように目を細め虚空を見つめる

 

和眞「...それと真莉に何の関係がある」

 

和眞はイライラを隠す事もせずに言い放った

 

キャンサー「えぇぇぇ...これからなのに...まぁいっか

 

そんでヤバイと思ってたら1人の子供がフラフラと現れたのさ...それがこの子、古火田真莉...現古畑真莉さ

 

この子はボロボロでフラフラしててね、ボクの眼の前でドサリと倒れたんだよ

 

空腹で限界だったみたいだし相当ヤバかったんだろうね

ボクを見るなりボクを...【喰らった】んだよ」

 

キャンサーの言葉に流石の和眞も驚きを隠せずにいた

それもそうだ、いくら子供とは言え、動けずに倒れているとは言え相手はステージIでも人間を軽く食べることが出来る巨大な化け物だ

 

それを喰らうなどどんなに危機的な状況だろうと出来ないだろう

 

キャンサー「言っちゃあ何だけどボクがここまで喋れてこういう風な考えが出来るようになったのもこの子のおかげだからね

 

まぁ最初は今までと同じ様に乗っ取って終わりだと思ったんだけど...この子の記憶や感情に興味が湧いたんだよ

今だから言えるけど何であんな危険な場所にいたのかとかね

 

まぁ答えはすぐにわかったけど」

 

キャンサーはそこまで言うと今までの飄々とした態度とは打って変わり真剣な表情になり濃密な殺気が辺りに溢れ出た

それを受けた和眞と榛名は額から汗を流し無意識に後ずさりをした

 

キャンサー「この子と君らの記憶の違い、ボクはずっとそれが気になっていたんだよ

確かにこの子がボクのところに来たのはこの子がまだ今の呪われた子供達とほぼ一緒か2、3歳ぐらい若い時期だ

そのぐらいなら確かに記憶違いもあるかも知れない、だけど流石にここまでの記憶違いもありえないって

 

結論からすれば君たちの記憶を弄りバラバラにした人物がいるって思ってる

少なくとも1人2人じゃなくだいぶ大きな組織での動きじゃないかと思ってる」

 

和眞「...ありえないな、そんな実験など受けるはずが無い

それにそれをして何の得になる?はっきり言って無意味だ」

 

和眞はしっかりとした言葉で返す

真莉はそれを聞いても先ほどの真剣な表情を崩さない

 

それどころか更に迫力が増していく

 

キャンサー「いや、まぁそれがわからない様にするのが普通なんだけどな...それすらも分かんないか...

 

まぁいいや、そんじゃあそろそろ...殺ろうか」

 

キャンサーは今までの動きよりも更に速いスピードで2人に迫る

和眞と榛名はいつ来られてもいい様に準備をしていたのでギリギリのタイミングでキャンサーの攻撃をかわすことに成功した だが...

 

ドッゴォォォン!!!

 

和眞「っ嘘だろ!?」

 

榛名「っきゃあ!?」

 

 

キャンサーの攻撃をかわした2人だか当然キャンサーの攻撃は止まらずに地面に命中する

 

すると地面は轟音を立て大きなクレーターを形成する

 

和眞と榛名はその威力に驚愕しゾッとした

 

キャンサーは瞬時に榛名の方に迫る

迫られた榛名は瞬時に迎撃に意識を向け両手に持った銃で応戦しようと銃口を向ける

 

いざ放とうとした瞬間

 

和眞「榛名!後ろだ!!」

 

榛名「え?っぅぁ!?」

 

榛名は吹き飛ばされる、ほんの一瞬前まで目の前に居たのに気が付いたら、本当に気が付いたら目の前から消え後ろに現れ殴られたのだ

 

和眞「榛名!!」

 

和眞は吹き飛ばされた榛名に駆け寄る

 

榛名「ゲホ...ゲホ...ごめんなさい...油断しました...」

 

和眞「いや、いい...すまんな...あとは俺に任せろ」

 

榛名「ごめんなさい...」

 

キャンサー「ふ〜ん、家族で助け合いか〜...おぉ、この状況!なんかボク悪役っぽい!」

 

先ほどまでの真剣な表情がまたしても子供の様なケラケラとした表情を出していた

 

和眞は殺気を更に増大させキャンサーに向かい合う

 

和眞「シンリ...いや、キャンサー、お前は寄生した相手の身体能力を跳ね上げることが出来るんだな」

 

和眞は核心をついたといった様な表情を見せる

キャンサーはポカーンとした顔をするがすぐに破顔し大声でケラケラで笑い始めた

 

和眞はそれを見てキッと目を細めた

それに気付いたキャンサーはひぃーひぃー言いながら和眞に言う

 

キャンサー「ふふふ...あははは!いやぁ、ごめんごめん、そう思われてもしょうがないよね〜

だけど残念ながらボクにはそんな能力は備えてないんだよね〜」

 

和眞「それはありえないだろ...真莉の能力はここまで高く無い

なのに榛名が反応できない速度、更にはこのレベルの力

どう考えてもおかしい、だからお前が寄生した生物の細胞自体を進化させその生物の身体的能力を上げている...違うか?」

 

和眞は歴戦の戦いで培った観察力でキャンサーの能力を分析した

しかし次に言い放ったキャンサーの言葉に和眞は驚愕した

 

キャンサー「ボクは何もしてないよ...これは正真正銘...この子の、真莉の力そのものだよ

 

だけどさ、この子は何だろうね〜、優しすぎるんだよね...ンン!

さてさて、あんまり時間が無いしそろそろ良いかな〜」

 

キャンサーは不自然な形で会話を終わらせ一気に先ほどの真剣な表情に変わり前傾姿勢を取る

 

和眞はキャンサーの動きを見て同じく前傾姿勢を取った

次の瞬間

 

2人の距離がゼロになる

 

ガゴォォン!

 

周囲に大きな衝突音が響く

和眞の拳とキャンサーの拳が衝突しお互いに弾かれ若干の距離が開く

 

しかしキャンサーがいち早く地面に着地しそこから超スピードで和眞に接近する

和眞はそれを見て落ち着いて対処する

 

キャンサーのから次々と繰り出される連続攻撃を和眞は捌いていく

 

しかし徐々に捌ききれなくなった和眞の体にキャンサーの攻撃が少しずつ当たり始める

 

和眞「(っぐぅ!?捌ききれん!こうなったら!)」

 

和眞は若干のダメージを気にせずにキャンサーに攻撃を仕掛けた

しかし充分な体勢で放つことが出来ずに若干大振りになってしまった

それを見逃すわけがなくキャンサーは大振りの攻撃を首の動きだけでかわし左手を振り抜いた

 

和眞「ごふ!?!?」

 

和眞の鳩尾にキャンサーの拳が命中し和眞は吹き飛ばされる

 

キャンサーはその体勢のまま和眞が飛んでいった方向を見つめる

 

すると和眞が飛ばされた方向とは別の方向から何者かが走ってくる足音が聞こえる

キャンサーはその足音に聞き覚えがあった様で目を閉じ自身の中の眠っている本来の人物に問いかけた

 

キャンサー(もう終わったよ〜)

 

真莉(ん...って!?お前!なに勝手に俺の体使ってんだよ!!)

 

キャンサー(にゃは〜、ごめんごめん!だけどボクが知りたい事とか色々分かったからそれで良しとしてくれない?)

 

真莉(...これは俺の戦いだぞ...)

 

キャンサー(.....ぼ、ボクだってたまには全開で動きたいんだよーーー!!確かにこの身体は君のだけど...君のだけど!一様ボクだってこの身体を動かせるんだからさーーー!!)

 

真莉(...はぁ)

 

キャンサー(っけ!!もう良いよ!ボクはもう満足したし!ボクは寝る!!)

 

真莉(っあ!?おい!キャンサー!!...っち、一方的に切りやがって...ん?)

 

キャンサーから真莉に精神が戻った瞬間に真莉の腰付近にボスンと小さな衝撃が入る

真莉に戻りキャンサーが完全に眠ってしまった為真莉の目は黒に戻っていた

 

瞑っていた目を開けた真莉は自身の腰を見るとそこには泣きそうな顔をしたアカネがしがみ付いていた

 

アカネ「お兄ちゃん...だいじょぶ?」

 

アカネは悲しげな顔をしながら真莉に問いかける

 

真莉は薄く微笑みアカネに返す

 

真莉「あぁ、心配かけたな...アカネ、お疲れさん」

 

アカネはぱぁと表情を明るくした



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第26話

最近ダンスにハマってしまいました...

書かなきゃいけないんですがね...

ようやく少しずつ進んでいきますよ!


多田島「よう、来たな民警、早速だが現場を見てもらうぞ」

 

エラの張った顔をした捜査一課の多田島茂徳(ただじましげとく)は蓮太郎の顔を見て一瞬同情っぽい表情をしたが、努めて淡々と振る舞う

 

蓮太郎は青白くなった手で自分の顔にそっと触れると、肌はパサつき、唇はひび割れていた

 

いったい今、自分はどんな表情をしているんだろうか...

蓮太郎は重い頭を振って左右を見渡す

窓枠も何もないコンクリが打ちっぱなしになっている床面は弾痕で穴だらけになっているら蓮太郎がいるのは建設途中のビル6階だった

 

周囲にはせわしなく現場刑事や鑑識の人間が行き来している

 

殺人課とも揶揄される警視庁捜査一課の活動内容に事件性の高いガストレア犯罪全般も含まれるようになって久しい

 

科学捜査研究所の仕事も一部民営化されて、弾道分析のような複雑な計算式を使用するものは、証拠保全と守秘を徹底した上で、司馬重工や他の大企業に委託されている

 

蓮太郎は首を振った、自分は何を考えているのだろうか...

 

初めてだった、なにしろ、被害者は自分のよく知っている人間かもしれないのだ

頭が上手く働かない、自分が今地面に立って呼吸をしているのがテレビの向こうの映像のように、妙に他人事めいて感じられる

 

多田島「おい、大丈夫か?民警」

 

方を揺すぶられて脇腹の痛みとともに我に帰ると多田島の手を払う

 

蓮太郎「.....いいから、現場を...見せてくれ」

 

多田島は物問いたげな表情を見せたが、黙って蓮太郎に道を開ける

奥に歩いて行くと、青いツナギを着た鑑識の人間たちが蓮太郎に気付き、気まずそうに俯く

蓮太郎はやがて立ち止まると地面を見つめた

 

コンクリの床面なそこだけひときわ弾痕だらけになっており、飛び石状に無数の血痕が飛び、その周辺はチョークで小さな丸が書かれている

 

連日、今年の最高気温を更新しつつある昨今だが、今日は格別な蒸し暑さを感じ、蓮太郎はネクタイを緩める

 

多田島「ここで被害者(ガイシャ)は撃たれている」

 

ちょっとキツイぞと断って差し出された写真を見た瞬間、吐き気がこみ上げてきて蓮太郎は口元を抑える

 

多田島「.....最近暑かったからハエがたかってて仕方なかったんだ、だからキツイと言ったろ」

 

こみ上げてくる嘔吐感を飲み下し、もう一度蓮太郎は束ねられた写真群を見て、次々とめくっていく

 

それは主に肉片が写っている写真だった

時折その中に見える白いものは骨片だろうか、見ているだけなのに、蒸せ返る血臭さえする気がする

 

蓮太郎が口元を押さえているとポンと肩を叩かれる

蓮太郎は首だけその方を向くとそこにいたのは頬から若干の出血をしているが元気そうなアカネと真剣な表情をしながらも無事だった事にホッとした様に息を吐いた真莉がそこにいた

 

 

蓮太郎「...無事だったのか」

 

真莉「まぁな...まぁ、現状を見る限りある程度予想はつくんだが...」

 

蓮太郎「...延珠が...負けた...んだ...」

 

真莉「...延珠も充分強いんだがな...わりぃ、俺らのどちらかでもいりゃあちょっと違ったんだろうが...」

 

蓮太郎「.......」

 

すると多田島は真莉を見た

一瞬険しい表情をするが直ぐに蓮太郎と話しているのを確認すると表情を戻した

蓮太郎と真莉、アカネは多田島の所までに来た

 

多田島が指差す方向を見ると、多田島から見て右、左、正面、斜め右上の四方向にあるビルを指差した

 

多田島「それぞれのビルの屋上三箇所から重機関銃の残骸が見つかった、証拠を残さないためなのかはわからんが、使用された機関銃はプラスチック爆弾で破壊されて放置されている

 

司馬重工に鑑定に出しているが、今わかっているのは、銃は製造番号などが削り取られていること、あと、本来の機関銃のパーツ以外にもおかしな装置が取り付けられて......」

 

蓮太郎「延珠は、死んだのか?」

 

蓮太郎は視線を上げる

 

多田島「....わかんねぇ、今飛び散ったガイシャと思わしきDNAとお前のイニシエーターのDNAを照合している最中だ」

 

蓮太郎「....延珠だ、間違いない、写真のコートの切れっ端が写っていた」

 

多田島「そうか....」

 

多田島は沈鬱そうな顔で俯き、やがて現場を見渡す

 

多田島「ヤケになるな、弾が当たったのは土手っ腹じゃないかと言われているし、現場に死体がない

 

そして回収された弾丸に使われていたのはバラニウムじゃなくて普通の鉛だ

 

イニシエーターは心臓か脳を一撃されない限り死なないんだろ?」

 

蓮太郎「だとしても!!延珠が敵に連れ去られたんだぞ!!いっつ!?」

 

蓮太郎が叫ぶと肩から徐々に痛みが溢れてくる

蓮太郎が肩に手をやっている人物、真莉を睨む

 

真莉は蓮太郎の目をしっかりと見て発言する

 

真莉「落ち着けっての...確かに連れ去られたのは色々とマズイだろ...お前の気持ち、分からんでもない

 

それでもここで吠えていても何もかわらねぇ、今何すべきかを考えろ」

 

真莉の言葉にグッと口を紡いだ

 

真莉はそのあと多田島に言った

 

真莉「それと警部さん?あんたはどんだけイニシエーターたちのことを知っているのかはしらねぇが...

 

あの子達をそうゆう風に見るのは感心しねぇな、確かにイニシエーターは普通の鉛なら心臓か脳を撃たれなければ直ぐに死ぬことは無い

 

だがな、それでもこの子たちは人間でもある、それに今回延珠に直撃したのは対戦車ライフルの弾丸だろ?

 

そんなもの普通にガストレア相手でも撃ちどころが良けりゃ殺せるほどの威力を誇る

 

この意味、理解出来ねぇわけじゃないでしょ」

 

多田島は真莉の言葉にギュッと目を瞑りすまんとぼそりと呟く

 

真莉「はぁ...蓮太郎、延珠の捜索は俺とアカネに任せろ」

 

真莉の言葉に蓮太郎はパッと顔を上げた

 

真莉「とりあえず俺とアカネは直ぐに動く、何かあれば夏世に知恵を借りろ、あいつ俺なんかよりも遥かに頭いいから色々といい作戦も思いつくはずだ」

 

真莉はそこまで言うと傍にいるアカネに行くぞと目で合図し走って去っていく

 

後ろから蓮太郎の声が聞こえたが真莉はそれを無視しスピードを上げ暗闇に消えた

 

真莉「(とりあえず無事ならいいんだが...時間がねぇからな...キャンサー!)」

 

キャンサー(分かってるよ)

 

真莉の中に存在しているキャンサーは真莉の言いたいことがわかっているかのような声色を出した

 

すると直後に真莉に変化が現れる

 

真莉「アカネ!捕まれ!」

 

アカネ「はーい!」

 

真莉「匂いでわかるか?」

 

アカネ「うん!延珠ちゃんの匂いは覚えてるよ!」

 

真莉「頼んだ」

 

アカネの眼が赤くなりしきりに鼻をクンクンと動かす

 

真莉も眼が赤く染まり更に髪も同じく赤く染まった

それだけでなく真莉の脚にも変化があった

明らかに真莉の年齢の平均よりも何倍も膨らんでいた

 

真莉「行くぞ!」

 

真莉はギリギリと脚に力を込めそれを解き放つ

 

真莉とアカネはかなりのスピードを持って夜の街へと駆け出した



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第27話

UAが20000を突破しました!

みなさん!どうもありがとうございます!!

今回、書き方を少しだけ変えました

前の方が良いという方がいればまた考えてみます!

みなさんのご意見、ご感想、お待ちしておりますo(^▽^)o


蓮太郎は逃げるように家に帰った

そして絶望を抱きしめながらその日は眠った...

 

次の日、蓮太郎は学校を休んだ、布団から一歩も出る気になれなかった

 

八畳一間と言うのは2人で使うには狭すぎるのに、1人で使うには広すぎる

(真莉の家はそこそこ広いが)

 

蓮太郎は携帯電話の電源を入れるとそこには木更、未織、菫や綾夜、沙耶からもメールが届いていた

すると新着のメールが届いた

しかし蓮太郎は携帯電話の中身を見る気になれず放り出す

 

眠りはなかなか訪れず、意識は散漫だった

 

何かがぽっかりと失われてしまった喪失感があるのに、心が麻痺してしまったかのようだった

 

何時間も寝て起きるとだんだんと昼夜の区別がつかなくなっていく

昨日のうちに遮光カーテンを引いて窓という窓、隙間という隙間にマスキングテープを張っていたので、蓮太郎の居住空間は闇が充満していた

 

胃が痛いほどに空腹を訴えていたが、聞いてやる義理はない

薄い微睡みの中、蓮太郎は何度も夢を見た

 

インターフォンが押され、表に出ると惨たらしく殺された延珠の死体が置いてあるのだ

ある時は胎児の様に体を丸めた焼け焦げた死体、首に索状痕がついた締殺死体。

首を切り落とされたもの...全ての延珠は不言のの言を放っていた

 

【どうして妾を助けに来てくれなかったの?蓮太郎?】

 

蓮太郎は枕を顔に押し付け、必死に妄想を振り払おうとのたうち回った

更に数時間程度経過すると、脳裏を渦巻いていた自罰的な被害妄想すら見なくなる

 

もう胃は空腹すら訴えてこない

耐えかねて自分の内臓を消化する算段をつけたのかもしれない

 

延珠が死んだら...これから自分はどうすればいいのだろうか...

 

左に行けばいいのか?

何を成せばいいのか?

何もしなければいいのか?

生きればいいのか?

死ねばいいのか?

それすらもわからない...

 

「延珠...延珠...」

 

帰ってきてくれ...会いたい、延珠...

 

ふと、気が遠くなっていく、絶食による昏倒だろうか?

もう何も考えたくない

 

自分を呼ぶ声がする、幻聴かと思ったが違った

 

ガゴォォォン!!

 

勢いよくドアが吹き飛ぶ

あまりの音に蓮太郎は飛び起きる

そしてすぐにあまりの眩しさに目を眇める

 

そして中に入ってきたのは息を切らしている木更と真剣な目をしてふぅと息を吐いている夏世

そして蓮太郎の無事が確認できたことに安堵しているアカネがいた

 

木更は潤んだ瞳で、両手を口にあてがっていた

 

「延珠ちゃんが...延珠ちゃんが...」

 

 

 

 

 

 

蓮太郎は体当たりする様な勢いで病室に飛び込んだ

生けた花瓶にかすみ草、開けっ放した窓から吹き込む風にカーテンが揺れている

病室中央、盛り上がったベッドの膨らみの上に少女が横たわっていた

小さく胸が上下しているので呼吸をしているのがわかる

 

見間違えようなど...なかった

 

蓮太郎は忘我の表情でベッド脇に跪き、両肘をついて延珠の手を握ると、震えながら祈った

 

(神様!神様!神様!)

 

声も無く、蓮太郎は延珠の無事を感謝し続ける

ふと、後ろから木更にきつく抱きしめられる

 

「こんなにやつれて...怪我も治りきってないのに、お馬鹿...どうして自分にひどいことするの?る延珠ちゃんに続いて里見くんまでいなくなっちゃったら私...どうすればいいのよ.....」

 

「ごめん、木更さん...本当に...」

 

語尾は涙でかすれて消えそうだった

 

蓮太郎は木更の掌の上に自分の掌を重ね目を閉じる

 

蓮太郎は後ろめたさを感じつつも、延珠の病院服の裾をたくし上げると、安堵の吐息をつく

すると夏世が声をかける

 

「里見さん、良かったですね、銃創は痕も残らないそうですよ」

 

「そうか...木更さん...これで全部終わったのか?」

 

一度狙撃に失敗した暗殺者が危険を冒してまで二度目の狙撃に出た

さすがに三度目は...

 

木更は不安に揺れる瞳で上目遣いに蓮太郎を見る

 

「里見くん、メール送ったけど...みた?

.....聖天子様の第3回の非公式会談の日取りが昨日決まったのよ」

 

「っ!?いつだ!?会談の日時は!?」

 

「明日の夜8時だそうです」

 

「...明日?」

 

「そ、明日〜」

 

蓮太郎の言葉にアカネが腕を後ろに回しふらふらと揺れていた

 

蓮太郎が何か言おうとした瞬間にドアを引き上げる音がして振り返ると、壮年の医者と看護師が入室してきた

 

蓮太郎はハッとして詰め寄る

 

「延珠は大丈夫なのか?後遺症は?延珠はどこで見つかったんだ?彼女と話したい、起こしても...構わないか?」

蓮太郎の矢継ぎ早の質問に対して医者は看護師と顔を見合わせ困った顔をする

 

「はっきりとしたことは彼女が起きてからですが、おそらく後遺症の心配はないでしょう、ただ、今は無理に起こさないほうがいい

 

致死量の何十倍もの麻酔を静脈注射されて廃墟の一室に放置されていたところを、君の友だと言う男の人が保護してここに連れてきてくれたのだ

 

彼女が一命を取りとめられたのは迅速に適切な処置をしてここに連れてきてくれた彼とガストレアウイルスが宿主を守ったからなんですよ」

 

致死量の何十倍もの麻酔.....?

医者と看護師は言い辛そうにチラチラと目配せをする

 

「一つ、里見さんにお伝えしなければならないことがあります...あなたのイニシエーターの体内侵食率ですが...今回の大きな傷を修復する過程で少し上昇していました」

 

蓮太郎は拳を握り、歯噛みしながら俯いた

 

(俺の...せいだ)

やがて、悔恨に下唇を噛みながら顔を上げる

 

「.......延珠はどれくらいで起きるんだ?」

 

「そうですね...二日は見てもらいたいですな」

 

「二日...」

 

何か、おかしい

 

蓮太郎は違和感の正体を探ろうとこめかみを抑えるが、唐突に視界が瞬き体がぐらりと傾く

 

気付けば木更に抱きとめられていた

そう言えば自分は死にかけていたのだったか...

 

自覚してしまうと今までどうやって立っていたのかと思うほど気だるい疲労と傷の痛みに襲われ、視界が闇に閉ざされた...

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッとしてベッドから跳ね起きる

食べ散らかしたジャンクフードの袋と、惣菜の発砲トレイが少女...ティナの視界に写る

 

首を巡らせると自室の仮住まいに青白い月光が窓から差し込んでいた

 

水道の蛇口から水滴が滴り、ピチョンと音を立てて茶碗の中に落ち、壁掛け時計が秒針を刻む音が徐々に大きく耳に迫ってくる

 

時刻は午前三時だった

 

汗で下着がぐっしょりと濡れており瞼の裏がズキズキして首を振りながらこめかみをさに手を当てる

 

ティナが起きるのを見計らったかの如く、傍に転がった携帯電話が鳴る

 

「私です」

 

『何をしていた、何度もコールしたのだぞ』

 

「すみません、マスター....少し仮眠を取っていました」

 

『第三回の警護計画書が流れてきた、今からそちらの端末に送る』

 

ティナの端末器に警護計画書が流れてくる

ホロディスプレイモードに切り替えて空中に画像を投影しざっと目を通す

 

ティナは眉をひそめた.....これは.....?

 

『愚かな連中だ.....いったい何度同じミスを繰り返すことやら、まあ我らとしては期せずして三回目の暗殺の機会を得たわけだ』

 

「しかしマスター.....これはおかしくありませんか?」

 

『何がだ?』

 

「なぜこんな遠回りな護送ルートを使うのでしょうか?それにこのルート、まるであつらえたように一箇所絶好の狙撃ポイントがあります」

 

ティナは言葉に出さず、しかも、と付け加える

この狙撃ポイントは、お互いの正体が露見する前

蓮太郎と一度だけ足を運んだ外周区の第三十九区だ

わずかなれど、ティナには土地勘さえある

 

『....つまり、お前は何が言いたいのだ?』

 

「罠ではないかと」

 

ランドが電話の向こうで黙考する

 

『まだ聖居の内通者が露見した形跡はない』

 

「マスター、嫌な予感がします、今回ばかりは様子を見たほうがいいと思います」

 

『ならぬ!二度も絶好の機会をふいにして、我らが依頼主はご立腹だ、失敗は許されぬのだ!』

 

そこで何を思い出したのか、そこで彼女の主は声を落としていう

 

『おい、ティナ.....ティナ・スプラウトよ』

 

「はい」

 

『私が殺せと命じた警官と、あのイニシエーターが生きているという情報が入った』

 

不意に居心地の悪い沈黙が降りる

 

「とどめを刺したと思ったのですが...」

 

ティナは少し大げさに驚いてみせる、すぐにやりすぎたかもしれないと自戒した

 

『ティナよ、私の可愛い作品、貴様...よもや私の命令に背いてはおらぬよな?』

 

「もちろんです、マスター」

 

『ティナよ、お前の主は誰だ?私に聞かせておくれ』

 

「あなたです、マスター...いえ、プロフェッサー・ランド」

 

『お前は誰のおかげで生かされている?』

 

「全てあなたのおかげです、プロフェッサー・ランド」

 

『お前はなんだ?』

 

「あなたの道具です、プロフェッサー・ランド」

 

『.......まぁいい、やることに変わりはない、だが、わかっていると思うが、失敗は許されんぞ』

 

「もし罠だった場合は?」

 

『自力で突破せよ、それくらいの力はお前にあるはずだ、だが万が一、敗北するような事態になったら...』

 

ランドはふむと呟くと言葉を切って言葉を続ける

 

『死ね』

 

ティナはスカートの裾を両手でぎゅっと握った

 

『自害せよ』

 

ティナは呼吸を落ち着けて心臓に手を当て、そのまま目を閉じる

 

「了解しました、マスター」

 

 

それだけ聞くとランドは挨拶もなしに通話を切った

 

ティナは首を巡らせてアパート内部を眺める、もうここも引き払わなければ

 

ティナはベッドの傍らにあるポリタンクのフタを開けるとら、中身のガソリンを部屋の中に全てぶちまける

 

 

頭が痛くなるガソリンの気化臭の中、ティナは扉まで下がりライターをこすると中に放る

 

炎蛇が伸び上がり部屋の中央まで行くと、部屋中を紅蓮の炎が包んだ

火災報知器が作動したのを確認してからアパートを離脱する

 

すぐに消防車が現れ、野次馬が詰めかけ喚声を上げ始める

 

ティナは少し離れたところから、夜天に火柱を吹き上げ、燃えるアパートを眺めた

柱が燃え落ちると、大量の火の粉を巻き上げながらアパートが倒壊していく

 

ランドも科学者とはいえ、今はさらに上の人間に命令されている立場の人間なのだ

 

彼に不満を訴えたところで彼が意見を翻すことなどありえない

ならばティナは与えられた命令を履行するだけ

 

それに警護計画書が罠だとして、それがなんなのか

 

自分のイニシエーターとしての戦績は今の所百戦不敗、誰も自分に届かない...

 

だが、黒服の少年と矛を交えた時、かつてティナは思ったのだ

 

自分を倒すことが出来る存在がいるとしたら...もしかしたら...と

 

そしてまだ矛を交えてはいないが自分の狙撃に瞬時に反応し銃弾を蹴り飛ばしたもう1人の人

 

おそらく、今まで戦った中で最も強いであろうその人...

 

かつて私を助けてくれた(夜モードでは無かった)人

 

 

 

肌に当たる熱波は火傷しそうなほどだというのに、ティナは自分の体をかき抱き、寒さに震え俯いた

 

すると暗闇から今は聞きたくない声が聞こえてきた

 

 

 

「随分と...勿体ねぇ事してんだなぁ...ティナ・スプラウト」

 

ビクリ...ティナは体を震わせ顔をパッと上げる

目の前にいたのは先ほど頭の中に浮かんできた人物が佇んでいた

 

 

「直接会うのは久し振りってな感じだな...随分と元気無さそうだな、そんなんで...『聖天子』暗殺なんて出来んのかよ」

 

 

ティナ「なんで....ここに....真莉さん...」

 

 

その人物は眼を紅蓮に染め、同じく髪も紅蓮に染まり殺気を辺りに撒き散らしながらこちらにゆっくりとティナに近づいて来た



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第28話

今回はほぼ原作通りです
ただあの子が蓮太郎と共にいます

今回はある意味では蓮太郎sideの話でほぼ話は進まないかなと思っています...

なるべく早くこのvs.神出鬼没の狙撃兵編を終わらせたいのですが...詰め込みすぎでしょうか???


決戦の夜になった

 

シンと静まり返った夜の病室で、蓮太郎はじっとベッドで眠る延珠を見る

延珠は昨日と変わることなく健やかな寝息を立てており、その寝顔は穏やかだった

結局、予想より早く麻酔が切れて彼女が目を覚ますのでは、という淡い期待は叶わなかった

 

彼女がティナとどのように戦い、どのように敗北したのかはもはや想像するほかないが、あの弾痕だらけの現場で、延珠が対戦車ライフル弾を一発腹にもらったことは間違いないだろう

 

さぞや怖かっただろう、恐ろしかっただろう

蓮太郎は窓の外の輝く満月を見て、延珠の頭を撫でる

.....延珠、もしお前に意識があったら、やっぱり先生と同じように反対するんだろうか?

 

だが、と視線を上げて立ち上がる

 

ティナ・スプラウトはこの狂った世界の被害者だ、世界の歪みを正す力が自分にあるなら、それは自分の命を賭けるに値すると思うんだ、延珠...

 

蓮太郎は眠る延珠の、頭にそっと手を置いた

 

そのまま延珠の病室を出る、すると出てすぐに蓮太郎に声が掛けられる

 

「もう良いんですか?」

 

落ち着いた声が蓮太郎の耳に届く

蓮太郎はその声のほうを向く

そこにいたのは千寿夏世が肩にデカイケースを持ち佇んでいた

 

「あぁ、でも良いのか?」

 

「何がですか?」

 

「.....勝てる保証がない、お前まで死ぬかもしれないんだぞ」

 

「お兄さんが私に蓮太郎さんを頼むと言いました...まぁそれだけではないんですが、流石に知り合いが死にそうな場面に直面するって言うのに何も出来ないのは嫌ですからね」

 

夏世ら淡々と言う、それを聞いた蓮太郎は苦笑を浮かべる

 

「...お前だけは守ってやるよ」

 

夏世はぽかんとした後クスリと笑う

 

「何故私を守るんですか...まぁ期待はしておきます、お互いがお互いを守るとしましょう」

 

「...だな...行くか」

 

「はい、行きましょう」

 

 

話が終わった2人はそのまま病院を出て終電の列車に乗り外周区に向かった

 

蓮太郎と夏世が降りたのは第三十九区

ティナとは一度、ここを訪れていた

 

お互いが不倶戴天の敵だなどとは、夢にも思わずに...

 

駅から離れるにつれて、周囲から音が消えていき、2人の靴音や呼吸音が大きく聞こえる

気温は暑くも寒くもない。

風は強いが、あの狙撃手にとってこれくらいハンデにもならないだろうと思いながら歩を進める

 

街灯がないせいか目が慣れるまで少し時間がかかったが、やがて視界に死に絶えた外周区の廃墟が浮かび上がってくる

 

舗装路を割って伸びてきた蔓が絡んでいる建物、火災で全焼している建物

火災はガストレアの仕業ではなく、都市部などは人間がいなくなった後集めるもののいない枯葉や落ち葉が堆積し、それに雷が落ちれば、容易に大災害に発展するのだ

 

人工的な環境は人間が手を入れないと容易に崩壊していく

 

錆だらけになった自動車は玉突きになっていたり、乗り捨てていったものがそこかしこに見られた

自動車や携帯電話の中には白金やパラジウム、金などの希少金属が微量ながら含まれているので『都市の鉱脈』とも呼ばれ、外周区のマンホールチルドレンの貴重な財源になっている

 

三十九区の都市中心部に足を踏み入れた頃、不意に蓮太郎の携帯電話が震える

あっちがこちらを見つけてくれるまで外周区を歩き回るつもりだったが、案に相違して、かなり早い

 

当然、電話のヌシが誰なのか迷うことはなかった

チラリと夏世を見ると夏世はすでに準備万端なようで目が赤く染まっていた

 

『やはりここはスカでしたか...一杯食わされましたね』

 

蓮太郎は携帯電話を耳に当てながら周囲を見渡すがティナの姿は見えない

夏世も首を横に振っている

 

だがおそらくあの幼き狙撃兵からはこちらの姿が見えているだろう

蓮太郎は正面に屹立する牌ビル群に視線を据える

 

『あなたはこれで狙撃を防いだつもりですか?非公式会談が行われている場所は掴んでいます

今からならまだ、聖天子が会談場所から出たところを狙えます』

 

「俺たちの依頼はそれをさせないことだ」

 

『私の依頼は聖天子を殺すことです』

 

「どうしてだティナ!なぜ人を殺す!」

 

ティナがわずかに言い淀む

 

『もう、私はこうすること以外、自分の存在理由を証明できない』

 

「悲しいなティナ、お前...悲しいよ、お前それで良いのかよ?」

 

『ッ.....』

 

「俺たちが戦わなきゃ、お前が聖天子様を殺しに行くって言うなら...行かせられねぇよ!

あのお姫様の両肩には、この国の未来がかかっているんだ!

あいつを殺したいなら俺を殺してから行け!!」

 

蓮太郎は制服の右腕と右足の裾をまくり、腕をピンと伸ばす

僅かな痛みのあと、みしりと音がして右腕と右足に亀裂が走り、人工皮膚が反り返りながら剥落、月の光を反射するブラッククロームの義肢が現れる

 

夏世は溜息をつきつつも肩に提げていた大きなケースを解放し中からライフル銃を取り出した

 

 

『わかりません、剣士・天童木更の敗北

エース・藍原延珠の敗北...そして古畑真莉さんはここには来ない、それはアカネさんも一緒です...

残りはあなたたち2人です、そしてあなたたちでは私は倒せない』

 

「やってみなけりゃ...わかんねぇだろ!」

 

同時に義眼を解放、左眼に仕込まれた義眼内部が回転、黒目内部に幾何学的な模様が浮かび上がる

 

鼻の奥がつんとして、身体が熱い

力を解放し終えると蓮太郎は腰を落とし静かに構える

 

天童式戦闘術『百載無窮の構え』天地は永久無限の存在であることを意味する攻防一体の型

 

「さぁ、決着をつようぜ!ティナ!!」

構えをとったまま闇見据える

 

「蓮太郎さん、連続での援護射撃は出来ません、私の技量では全ての弾丸を弾くことはまず不可能です、その事を忘れないでくださいね」

 

夏世はライフルを構えながら蓮太郎に言う

 

蓮太郎はこくりと頷いた

 

蓮太郎は息苦しいまでに殺気に襲われ、歯を食いしばりブーツの裏でしっかりと土をにじる

 

敵は思考駆動型インターフェイス『シェンフィールド』のビットを用いてこちらを偵察してくる

ビットをさに捕捉された瞬間、正確無比な狙撃弾が飛んでくると見て間違いない

 

決戦の舞台は廃ビルが立ち並んな一画だ、三十九区の中でも都市部にあたり、当然全て廃墟なので暴れても周囲に被害が及ばない

 

蓮太郎はありったけの秘策を未織に授けてもらってきた

だがティナも丸腰できたわけではあるまい

五感を研ぎ澄まし、個を滅し自然と一体化

ひゅうひゅうと風が首筋から頬にかけて撫でていく

蓮太郎は身じろぎもせず触覚と聴覚に全神経を集中させる

 

「初撃は任せてください」

 

凛とした声が聞こえる

蓮太郎はこくりと頷いた

チカっと一瞬、遠くの摩天楼屋上が光る、かすかに大気が振動し、大気を切り裂いて飛翔する弾丸を...

 

「ッふ!」

 

ッドン!!...バギィィン!!

 

静かな夜に大音量の破砕音が響いた

本来聞こえるはずがないが蓮太郎は確かにティナが驚愕に息を飲む音を聞いた

 

夏世は飛翔してくるライフル弾を見事相殺して見せたのだ

 

蓮太郎は左眼のレンジファインダーを作動

射撃方向から射手の位置を割り出す

 

ティナまでの距離.....正面一.五キロ

 

信じがたい超遠距離狙撃だ

 

蓮太郎はおもむろに両手を地面につき、尻を上げ、スプリンターのスタートダッシュのごとく構えると、視線を上げ轟然とそびえ立つ摩天楼を睨み据える

 

「蓮太郎さん...行ってください!」

 

蓮太郎はその言葉を聞いた次の瞬間、脚部カートリッジ底部を疑似伏在神経内部のストライカーが叩き、炸裂

 

空薬莢をイジェクト、脚部稼働型スラスターが火を噴き、吹き飛ばされるような加速感のともに前方を疾る

 

「行くぞ!ティナ・スプラウト!!」

 



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第29話

遅くなりましたm(_ _)m
オリキャラのみ動かすと時間が掛かりますね...

今回は短いです!申し訳ないです...

そう言えば!外伝を含めるとこの話で50話目となります!

みなさん貴重な御意見やご感想をいただきありがとうございます!

これからも頑張っていきますよ!!


プルルル

 

無機質な音が夜の闇に木霊する

その音の発信源はポケットの中から聞こえた

男はポケットから音の正体...スマホを取り出し画面を見て顔を少し歪ませた

 

ッピと通話ボタンを押し男はスマホを耳に当て相手の言葉を待った

 

 

『ようやく出たな...貴様、今どこにいる?』

電話先の相手はドスの効いた声で男に問いかけると男は...

 

「すいません、少々トラブルが起きまして...」

 

『トラブルだと?』

男が表情も変えずに言うと電話先の人物は更に強めの口調で言う

 

『そんなもの瞬時に終わらせろ、お前はそんな簡単な仕事もできんのか!』

 

男の声に喉元まで出た声にならない声をなんとか押しとどめあくまで平坦に...男、古火田和眞は答える

 

「申し訳ありません、ご主人様

しかし今回ばかりは...我々でもスムーズに行かない可能性があります」

 

和眞は自身の目の前にいる男...古畑真莉から目を離すことなく言う

 

『おい、詳しく説明を...』ッグシャ!

 

和眞は電話の話を聞かずにスマホを握り潰した

 

「...折角待ってやってたのに...最期の電話ぐらいしっかり終わらせなくて良かったのかよ」

 

真莉は面倒くささを全面に押し出しながら和眞に言った

 

「...必要無いさ、このままお前を捉えてすぐに大阪エリアに帰るからな」

 

「(ッフ)そりゃ無理だ...お前はここで殺す」

 

真莉は和眞の言葉を鼻で笑う、その直後に濃密な殺気が辺りに溢れ出した

 

 

「真莉、最後のお願いだ...俺たちと共に来い

お前はまだ子供だしお前にはまだまだ教えなければならないことが沢山あるんだ」

 

和眞は懇願する...しかし真莉は首を振るだけだった

和眞はそれを見てふぅと短く息を吐き出す

 

「.....本気なんだな?」

 

「俺は嘘は言わない...お前は...お前だけはここでコロ...っち!」

 

真莉が最後の言葉を言おうとした瞬間、和眞の脇から猛スピードで真莉に突っ込んでくる黒い影があった

 

真莉はそれを見て後方に跳ぶ

先程まで真莉のいた場所に十文字の切り傷がつけられた

 

真莉はその人物に視線を移す

 

その人物は両手にククリナイフをもち、頬には大きなアザがある少年だった

 

「...またテメェかよ...」

 

真莉はぼそりと呟く

 

「お前だけは...お前だけは...お前だけは...」

 

「.....あ?」

 

その少年、翔はブツブツと何かを呟いていた

真莉はその光景に怪訝な目を向ける

翔は一気に真莉に接近する...がその前に別の小さな影が現れ翔を吹き飛ばす

 

「っつぅ!?」

 

「やらせないよ...お兄ちゃんと戦いたいなら私を倒してからだよ!」

 

「この...クソ女ァァァァ...」

 

横から翔を吹き飛ばしたのは髪を後ろに一つにまとめその瞳は紅蓮に染まった少女、アカネが立ちはだかった

 

真莉はアカネを横目で見てお互いに頷きあう

 

真莉は瞬時に意識を和眞、榛名に向ける

 

「...全く、どんな躾してやがんだよ、話も何も無しにイノシシみてぇに突っ込んできやがって」

 

真莉は額に手を当て言い放つ

 

「...正直俺たちの手にも余っているんだよ」

 

「普段は聞き分けのある子なのだけれどね...」

 

和眞は溜息をつきながら、榛名は遠い目をしながら呟いた

 

「...ま、んなのはどうでもいいか...」

 

真莉はふぅと息を吐きぼそりと呟いた

和眞は真莉の今までとは全く違う態度に対して怪訝な表情を浮かべる

 

こないだまで、本当についこないだ顔を合わせれば殺気が隠しきれず多少なりとも漏れ出していたり

すぐに衝突するような男だった

 

それこそ今回も会った瞬間に殺気が溢れ出し今にも衝突しそうな雰囲気を出していたが翔が特攻を仕掛けた後からまるっきり別人かのように雰囲気がスッと変わった

 

最初こそ真莉の中に潜む化け物...ゾディアック・ガストレア最後の一体であるガストレア・キャンサーに変わったのかと思っていたがすぐに違うと判断した

 

キャンサーと真莉が入れ替わった時すぐに分かるのはまず声が少し高くなり一人称がボクとなる

それよりも真っ先に分かりやすくなるのが瞳だ

普段は漆黒の色の瞳はキャンサーに変わると呪われた子供達のように瞳が紅蓮に染まるのだ

 

だが今の真莉にはそのどれもが見られない...だからこそおかしい

その違和感に榛名も気付いている

 

「...何があった?」

 

「.....要領を得ないな...何の話だ」

 

和眞の疑問に真莉はごく普通に答える

 

「真莉、今のお前はどっちだ?」

 

和眞は目を細めて言う、真莉は一瞬ぽかんとするがすぐにクツクツと笑いだした

 

「どっちって、俺は俺だ、キャンサーではねぇよ...そうだなぁ、言っちまえば...自分に『正直』になったってだけだな」

 

真莉は大袈裟に溜息を吐いた

 

「どういうこ...「和眞!」っ!?」

 

 

「余所見している余裕があって羨ましいぜ...なぁ?『親父』」

 

「...ふぅ、お前の考えは全くわからん...だからもっとお前と話をしたい...だが!今はあまり時間がない、だからお前をここで捉え後で話を聞くとしよう!」

 

和眞は真莉の口から出た親父と言う言葉に思考が飛びかけたかすぐに立て直す

 

そして和眞は目を細めると髪が紅蓮に染まりだす

 

「親父と『母さん』じゃ無理さ...もう俺は負けない...俺はもう、迷わない」

 

真莉の髪も紅蓮に染まりだす

榛名は目を閉じ何かに震えていたが決意したのか目をキッと開け腰から二丁の銃を取り出し両手を交差させ真莉に向ける

 

和眞は目を細めたまま腰を落とし右腕を腰のあたりまで引き、左腕を真莉に向けいつでも飛びかかれるよう態勢をとった

 

真莉はトン、トンと両足でジャンプしそのまま着地するという動きを数回した後ふぅともう一度息を吐き左腕を腰のあたりまで引き、右腕を和眞の方に向ける

和眞と真莉の構えは腰を落としていないだけでほぼ同じ構えを取っていた

 

和眞はそれを見て僅かに微笑するがすぐに顔を引き締め榛名に聞こえるかギリギリのトーンで言う

 

「俺が突っ込む、援護を」

 

「えぇ」

 

僅かな言葉に確かな信頼と安心感を覚え和眞は真莉に向かって突っ込んでいく

 

真莉は和眞から目を離さずに、それでいて榛名の腕の動きも一緒に見ながら動く

瞬時に和眞と真莉の距離が迫りお互いに引いていた腕を相手にぶつけるために振り抜く

 

「オォォォォォ!!!!」

 

「ハァァァァァ!!」

 

ッゴ!!!っと両者の腕がぶつかり周囲に物凄い音と衝撃が走る

 

最大にして最後の『親子喧嘩』が今、始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君は本当に何故あの男に勝てないのか分からないの?

 

ボクはすぐにその理由が分かったけどね...

 

それはダメさ、ボクは答えを知ってはいるけどそれは君のためにはならないからね...ほら、いつまでも不貞腐れてないでさ

 

うん、時間になったらボクが起こすさ...しっかりと寝て自分がどうしたら良いか、どうしなきゃいけないのか考える事だよ.....

 

ふふ、そりゃボクは君の育ての親だからね、君の事は君以上に知ってるよ...君が本当はどうしたら良いかもう分かっているって事もね....ううん、何でもないよ、うん、おやすみ、次の戦いではボクは一切ても出さないし口も出さないよ、だから安心してね

 

 

 

全く、いつまで続くんだろうねー、この意地っ張りの親子喧嘩は...




誤字、脱字らご感想などがありましたら気軽にどうぞ!


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第30話

大変遅くなりましたm(__)m

待っていてくださった方がもしもいたのでしたら本当に申し訳有りませんorz

最近...と言ってもちょいちょい前ですがやたらと俺ガイルにハマってしまい更には仕事で色々な人が辞めてしまい更に更に割と仕事で重要なポジションも任されてしまいここ1ヶ月ぐらいてんてこ舞いでした...

そしておいと思われるかもしれませんがpixivの方でも小説を投稿したりなんだりしていてここに投稿するのが遅くなりました...

まっことに申し負けございませぬ!?m(__)m

これからも自分の作品を見て頂けたら幸いです!


暗闇の中からありえないような轟音が鳴り響いてる中、その場所から少し離れた場所でも別の戦いが始まっていた...

 

「ヤァァァァ!!」

 

「あぁ!もう!!鬱陶しいんだよ糞ガキィィィ!!」

 

「ガキじゃないもん!立派なレディーなんだから!それに見たところあんたもガキじゃない!」

 

「調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」

 

両者罵倒し合っているが体は傷だらけであった

 

片方は服の上から色々な箇所を斬られており血が滴り落ちている

もう一方は痣が所々についておりお互いがボロボロの状態であった

 

斬り傷の多い少女、アカネはバックステップを上手く使い罵倒相手であり、戦いの相手である『翔』から距離をとる

 

翔の方も一旦仕切り直しとしたのか追うこともなくその場で両手のククリナイフを構え直す

 

「テメェは何もわかってねぇ、お前はあの化け物をこの世に生かしちゃ行けねぇんだよ!良いか?これは言わば全世界の人々の為なんだ!だから邪魔すんじゃねぇ!」

 

翔の言葉にカチンと来たのか紅い目を鋭くさせ反論する

 

「化け物?確かにお兄ちゃんは体内に化け物を住まわせてるのかもしれない...でも、それでも!!私たちだって体内に化け物を持ってる!それじゃああなた達は私たち呪われた子供たちも皆殺しだというの!?」

 

「そうさ!だから聖天子の理想がきにいらねぇ!古火田一族の協力のもとご主人様の理想を叶えようと俺が...俺様がご主人様の理想を!!ァァァァァァァァ!!!」

 

「(話が通じないし!?)」

 

急に咆哮しだし、一気に距離を詰めてくる翔、それを見てアカネはしっかりと地面を踏みしめ回し蹴りを繰り出しククリナイフに当てる

ガギィィンと甲高い音が響きくるくると空中にナイフが飛んでいき地面に刺さる

 

翔は目を開き驚愕の表情を見せる、その隙を見逃さず振り抜いた足の勢いを止めずに降り空中で回転し逆足で翔の横っ腹を蹴り飛ばす

 

「ッグゥ!?」

 

呻き声とともに翔は地面を転がる、アカネはそれに追撃する為に着地後すぐに跳躍し、空中で回転し踵落としを放つ...が

 

 

「(なんで俺はこんなところで倒れてる?俺は力を貰った、両親を殺したガストレアどもを皆殺し出来るように、ご主人様から力を貰ったんだ...なのになんで俺はこんな...ガストレアもどきに倒されてる?

なんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで.....)う....ァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

「っえ!?きゃあ!?」

 

突如として訪れた翔の変化に対応出来ず突如飛来した物になす術なく吹き飛ばされる

アカネは空中で態勢を整え着地する、しかし先ほど打たれた腹部に鈍痛を感じ手を当て翔の方を見る

 

「.....うそ」

 

そこにいたのはまさに異形というに相応しい姿をした翔だった

全身から触手のようなものを生やし目は虚ろで口からは絶え間なく唾液が滴り落ちている

 

「あ....ゥ....ゥァァァァァ!!!!」

 

翔は大量の触手をアカネに向け伸ばす、アカネは何とか避けているが先ほど食らった腹部へのダメージで一瞬動きが止まる

そこを逃さなかった触手の攻撃は全てアカネに命中する

触手の乱打にアカネのガードは弾かれ全身を強打する

乱打のラストだったのか再び先ほどと同じ腹部を思い切り強打されアカネは口から血を吐き地面を転がっていく

 

地面に横たわり片目だけ何とか開けたアカネは翔を見る

先ほどよりも人間としての色を失いだし皮膚からは緑色とも言え色をした血液のようなものが溢れ出していた

アカネはその様子を見て何度も見てきた光景だと思い出す

 

『形状崩壊』

 

ガストレアウィルスが体内に入り一定の基準値を超えるとガストレア化してしまう呪われた子供たちにとって避けられない死の現実

 

それがたった今目の前で起こっている

 

しかし本来ならばすぐにガストレアとなるはずなのだが何故か未だに翔は若干ではあるが人間としての身体と自我を有しているようで絶え間なくアカネに対し自身の触手を次々と繰り出してくる

アカネは足をやられたのか足がもつれこけてしまう

 

刹那、アカネは悟る

 

『これは避けられない』

 

アカネの脳内に色々な思い出が浮かんでくる

俗に言う走馬灯だ、思い出が浮かんでは消えていく

アカネの目には涙こそ浮かんでいなかったが後悔だけが浮かんでいた

 

「(ごめんなさい、お兄ちゃん...)」

 

アカネは目を閉じこれから来る痛みに備える

 

 

 

 

 

 

「(あれ?)」

 

いつまでたっても来ない衝撃に違和感を覚えうっすらと目を開けると...

 

「ヒヒヒ、なかなかに面白いことになっているようだねぇ?お嬢ちゃん?」

 

そこにいたのは人を小馬鹿にした態度をとり怪しげなお面をつけ飄々とした態度をとっている現状真莉の戦ったなかでもかなり上位に位置する男

 

「さすがの私も初めての相手に心躍っているよ、私の斥力フィールドにヒビを入れる程の力...ヒヒヒ、里見くんと古畑くん以来だねぇ」

 

燕尾服をまといシルクハットを被っている男

 

蛭子影胤がそこにいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶え間なく銃声や打撃音が暗闇の中より聞こえる

暗闇故に銃口から出る銃口炎も鮮明に見える

どちらかといえば銃声よりも打撃音が多い

 

その打撃音を出している人物たち

古火田家現当主の古火田和眞

その息子、古畑真莉

 

二人はお互いの目をしっかりと見て連打に連打を重ねる

しかし、2対1

しかも相手は真莉の実の両親で幼き頃の真莉に戦闘技術を叩き込んでいる

わずかな癖すらも熟知している、さらには培った技術の面でも和眞に劣る真莉は徐々に押され始めていた

 

最初こそ真莉のまさしく縦横無尽の動きに苦戦していた和眞と和眞の妻の榛名だったが持ち前の状況把握能力と長年の経験で徐々に対応していき今では二人のいつもの戦闘パターンに移行していた

 

和眞がゼロ距離まで一気に詰め連打を用いて相手の行動を徐々に制限していき榛名が両手に持つ銃にて撃つ

シンプルにして確実な戦闘パターンがこの二人の基本の戦闘時の動きだった

 

真莉も徐々に対応出来なくなり始めまだ直に当たってはいないがそれも時間の問題となりつつあった

鈍い考えをしていた真莉は和眞の攻撃を今までは拳に拳をぶつけ弾いていたが今回はそれを腕でガードしてしまう

 

それが悪手となる、当然、和眞と真莉なら大人であり暗殺業や要人警護など、様々な依頼をこなしている和眞の方が力があった

 

ガードをした腕を跳ね上げられ真莉の懐は完全に無防備となった

 

真莉はマズイと思考するがすでに時は遅い

和眞はその僅かな隙を見逃しはしなかった

 

「古火田流戦闘術五式『一閃頸羅』《いっせんけいら》」

 

和眞は左足を踏み込み真莉の懐に入り肘打ちを真莉の鳩尾にめり込ませる、めり込ませ相手が吹き飛ぶ瞬間にそのままその肘打ちをした腕を伸ばし裏拳を同じ箇所に当て吹き飛ばした

 

真莉は吹き飛び近くの廃ビルに突っ込んだ

瓦礫が吹き飛び辺りに砂塵が舞う

榛名と和磨はその場を動かず様子を見る

 

 

「どんな感じだった?」

 

榛名が和磨の方を向かずに問いかける

 

「...しっかりと当てた、衝撃は逃がしていなかったように思える、後はわからん...が、油断だけはするなよ」

 

「ええま、分かってるわ」

 

和磨の忠告に頷く榛名、するとようやく砂塵が晴れる

 

2人の目に映ったのは...

 

口の端から血を流し倒れ伏している真莉の姿だった

 




誤字、脱字などありましたら報告をお願いしますm(__)m

それと前書きでも書きましたがpixivにも自分のこの作品ではありませんが作品を出しています

そちらも時間がありましたら見ていただけると嬉しいです

pixivでの自分の名はフル真で出しておりますm(__)m


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第31話

吹き飛ばされた真莉は廃ビルにぶつかり辺りに砂塵を撒き散らしながら飛んでいく

ようやく止まり真莉は口の端から血を流し倒れ伏す

 

(っち、やっぱり強いな...)

 

真莉は身体を起こさずに思考する

しかしあちこちからくる鈍痛に思考も上手くまとまらずにいた

 

(どうする...このままじゃ勝てる戦いも勝てない.....ってかアカネは大丈夫なのか?)

 

などと今は関係ない思考までも生まれていた

 

ざり、ざり

 

とこちらに歩いてくる足音が真莉の耳に届く

真莉は身体を仰向けにし上を見る

上を見たところで廃ビルのコンクリートや剥き出しの鉄筋しか見えず更には先程真莉が突っ込んだときの衝撃からか上からパラパラと色々な物が落ちてきている

 

(さて、どうするかな...やっぱり現状じゃ勝つのは無理なのかねぇ...)

 

真莉は大きく息を吐きついでに口の中の血も外に吐き出す

 

やがて足音は大きくなり恐らく廃ビルの前で停止した

和眞は戦闘経験が豊富な男だからかいくら相手が隠したであろうとも手を抜く事はない、それ故に本来ならば生まれるであろう僅かな隙ですら容易に見せる事はない

 

それ自体は真莉も当然知ってはいた、幼き頃は真莉も古火田一族にいたし戦闘技術も父である和眞にしっかりと叩き込まれている

しかし叩き込まれているからこそ真莉の技術は和眞が教えたことでもあるので和眞自身には通じない

真莉はそれについて悩んでいた、実際のところ、和眞よりも真莉の方がスピードの面では上だ、しかし和眞はそれを自身の戦闘経験からくる予測と真莉の僅かな癖から行動を読み先に手を打っている、それ故に真莉の攻撃は全て受け流されてしまっていた

 

 

《やっぱりボクも動こうか?》

 

不意に真莉の頭の中にもう一つの声が響く

その声は鈴のなるように高く、それでいてハッキリとした発音で聞こえてくる

 

(.....悪りぃ、予想以上に受けすぎたか?)

 

真莉はその声に語りかける、その声の主、真莉の中に住まう世界を滅ぼしかけた11体のガストレアとは別のガストレア、本来ならば...いや、世間一般には欠番扱いとして存在しないことになっているもう一体のステージVのガストレア

 

ステージV、《寄生型》ゾディアック・ガストレア、《キャンサー》

 

《いや、別にボクは良いんだけどさ...いや、良くもないか!キミがここでもし、死んでしまうとボクまで死んじゃうんだ、それだけ分かってればボクも直接いうような事はしないんだけどさ〜》

 

キャンサーは飄々とした態度で真莉に問い掛ける

 

キャンサーはその能力上、宿主が死ねば死んでしまう、しかしゾディアックガストレアとしての再生能力を宿主に与えるため宿主が死ぬ事は本来ならば中々にないことである

 

しかし今回の件はまた別で真莉は今、自身の力のみで戦っている

 

本来真莉の戦闘パターンは圧倒的な再生能力と驚異的な速度、強靭なパワーでの一撃離脱の戦闘スタイルである

 

キャンサーの恩恵である再生能力はあるもののそれに対応しきる体力を人間は持ち合わせていない、故に真莉は直接の打ち合いは今まででほとんどやっては来なかった

 

しかし今回は事前にキャンサーに説得を行いキャンサーの力を使わずに戦うことにしていた真莉は当初の予定とは異なる展開になってしまい少々自分に対しイラつきというものを覚えていた

 

キャンサーもそれが分かっているため今までで危険でも助言をしてこなかったが危険と判断し真莉に語りかけるまでに至っていた

 

《それで?分かったかい?現状をさ?》

 

「.....悔しいが...お前の言うとおりなのかもしれないな.....」

 

ボソリと、真莉の呟いた言葉はスッと消えていった

 

「悪い、キャンサー...もう、ワガママは終わりだ、今はそう....しっかりと聖天子を守らなきゃいけねぇんだもんな....」

 

真莉は何かを決意し目を開けるその目にはもう迷いは見受けられなかった

 

《それじゃあ行くんだね?本当に良いんだね?》

 

キャンサーは最終確認をしてくるが真莉はもう起き上がり始めていた

それを感じ取ったキャンサーはもう何も言うでもなく真莉の中深くに戻っていった

 

「あぁ、行くぞ...相棒」

 

《うん、それじゃあ行こっかね〜〜》

 

真莉の眼が黒から徐々に紅蓮に染まりだす、そしてその眼は呪われた子供たちの様に紅蓮に染まった

真莉の眼からはもう既に先程までの迷いは存在しなかった

 

 

 

「!?...?ようやく...遊び飽きたのか?真莉」

 

真莉の目を見て警戒の色を強める和眞と榛名

和眞は左腕を引き右拳をグッと握る

榛名は自身の持つ二丁の銃の狙いをしっかりと定めいつ来ても対処できる様に構えていた

 

「遊び...か、まぁ、お前からすれば遊びなのかもな...だがな、これは俺の、俺個人の問題だしな...でももう終わった、結論は出たしな」

 

真莉の言葉に2人は怪訝な顔をみせる

 

「結論...貴方はもう私たちに勝てないって事?それともまだ私達に勝てる考えでもあるの?」

 

榛名は警戒しながら問い掛ける

 

「あぁ、俺だけじゃお前らには勝てないってのが分かった」

 

真莉の言葉に流石の和眞と榛名も驚愕に目を見開く

 

今まで何を言っても自分の敗北を疑わなかった真莉がこの戦いで急に自分では勝てないと言い出したのだ、驚愕するのも無理はなかった

 

榛名は安堵の息を吐きだす...が

 

「だからこそ、俺《たち》でお前らを倒す事にする」

 

ダァァン!!

 

「っ!?」

 

「っきゃ!?」

 

突如銃声が鳴り響き何処からか飛んできた銃弾が榛名の左手にあった銃を粉砕した

 

「狙撃だと...何処から!?榛名!無事か?」

 

「え、えぇ、私は大丈夫...でも、この狙撃って」

 

榛名の元へと動いた和眞のその隙を真莉は見逃さなかった

 

「戦いの中での余所見は何やられても言い訳できねぇぞ」

 

「っ!?」

 

和眞はほんの僅かな隙により真莉は今まで出来なかった和眞の懐深くに一瞬で入る

真莉はそのまま左足を思いっきり踏みしめ和眞を蹴り上げる

 

「《空蹴牙》(くうしゅうが)」

 

真莉の蹴りは和眞の顎をしっかりと捉える...が

 

「(っち、ズラしたか...)」

 

《あのタイミングでズラすのは至難の技なんだけど〜...ボクもやりあった時に全てズラされてたからね、ここからだよ、分かってる?》

 

「(分かってる)」

 

空中で態勢を整え着地する和眞

真莉は追い打ちを掛けずにバックステップで距離を取った

榛名は先ほど銃撃を受けた方角を向いてジッとしていた

その目には先ほどよりも驚愕に染まっていた

 

「まさか....なんであなたが....朱音」

 

榛名が見ていたのは廃ビルの中

その中からの狙撃だと分かった榛名はジッと見ていた

すると狙撃した人物が出てきたのだ、その人物は...本来は相手方にいるはずの少女

髪はストレートで真莉や和眞の様に紅蓮に染まっており目には迷いのない目をした少女

 

古火田朱音がライフル銃を担ぎこちらを見下ろしていたのだった

 

「(来たか...こっちに来てないって事はあいつはあっちに行ったんだな...ならアカネは無事だろうな...さて)ここからが本番だよな、古火田家当主、古火田和眞!」

 

真莉は和眞に再び突っ込んだ




誤字、脱字、感想等ありましたらよろしくです!


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第32話

遅くなりましたね...見てくれてる方いるんすよね...いつもありがとうございます!

なんとか更新を早めたいのですが難しいです(汗)

多分次、もしくはその次あたりでこの長ったらしいお話は終わると思います!


 

 

真莉は和眞に突っ込む、和眞は冷静に真莉の攻撃をかわす

何度か同じ応酬を繰り返しお互いに距離を取る

 

「....真莉、諦めろ、お前では俺には勝てない、分かっているだろう?」

 

和眞は優しげな顔をしながら真莉に問う

それはまるでわがままを言う子供をあやす様な声質で言った、和眞にとってはこの戦いなどは取るに足らない小さな親子喧嘩の様なものなのかも知れない

 

「.....確かにお前は強い...今の俺じゃ勝てるかもわからない...」

 

真莉から漏れたのは今までの様な強気な発言ではなく、弱気な発言であった

和眞はそれを聞きホッと軽く息を吐く、しかしすぐに警戒を強めた

 

何故なら、真莉の言葉とは裏腹に真莉の眼には未だ戦意はなくなっておらず、さらにギラギラと輝いていたからだった

 

(不思議だな、勝ち目は薄いのに.....)

 

《負ける気がしないのかな?》

 

(キャンサーか....何でだろうな、一対一になったからか...それとも何か別の事があるのか....ともかく、思ってたよりはやれそうだ)

 

《そっか、いつでもボクの力を使うといい、ボクはいつでも君の味方だ、君が勝つことを信じているよ〜》

 

(おう、ここまでしてもらっておいて負けるわけにはいかねえよ、ありがとうな)

 

真莉は再び和眞に向かい突撃する、しかし先ほどと違うのはその速度だった、先ほどよりもさらに速く和眞の懐に接近し、和眞の鳩尾目掛けて掌底を放つ

 

しかし和眞はそれを予期していたかの様に半歩後ろにズレる

 

「《閃空打》(せんくうだ)!」

 

真莉の攻撃は確かに和眞に当たりはしたが先ほどと同じくインパクトの瞬間に後ろに飛ばれ衝撃を全て流されてしまう

 

「確かにお前は速い、俺ですらほんの数瞬遅れてしまうほどにな...だがそれだけだ、たかだか少し速いだけで俺には勝てん」

 

(まだだ....もっと、もっと速く....もっともっと、深く...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(もっと......深く!!)

 

真莉の眼は....狩りをする狩人の様に変わった

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

「ヒヒヒ、なかなか頑張ったじゃないか、小さな少女よ」

 

なんで...なんでこいつがここにいるの....だめ、こいつをお兄ちゃんに近付けたらだめ...っぅぅ、足が動かない.....なんでこんな時に....

 

「おや?ふむ....安心するといい、私たちがここに来たのは彼には関係ないよ、安心してくれていい」

 

信じられるか、お前はお兄ちゃんの敵なんだ...絶対に信じない!

 

「パパァ!こいつおかしい!切っても切ってもすぐに治っちゃう!」

 

ってかあの子....小比奈ちゃんだったっけ?がずっと切ってるけどこの人なんで何もしないんだろう....

 

「ふむ、君はここでゆっくりするといい、あとは我々に任せておきなさい....小比奈、下がれ」

 

この男....蛭子影胤が前で姿形が異形化したあの男の子と超速の接近戦を行っていた少女、蛭子影胤の娘の蛭子小比奈に指示した

 

「鳴けソドミー、唄えゴスペル!」

 

両手で持ったお兄ちゃん曰く趣味の悪い?銃をあの男の子に向け連射する....カッコいいと思うんだけどなぁ、あの銃....

 

「....ねぇ、アカネ」

 

私があの銃に思いを馳せていると小比奈ちゃんが話してきた....なんだろう...

 

「もう動けるでしょ、さっさと立って、あの変なの相手だとキツイよ、だから速く立って、立ったらあいつを殺るよ」

 

.....えぇぇぇ、いや、確かに私ももう動けるけど....やるしかないよね

 

「むぅぅ...こう見えても外はともかく内側はボロボロなんだけど.....よし!」

 

でも、そうだよね、確かに敵だったら凄いアレだったけど.....味方だとここまで頼もしい?のはいないのかな....待っててね!お兄ちゃん!このよくわからない変なのを倒したら、すぐに向かうから!!

 

 

 

side out

 

 

 

 

真莉と和眞が戦っている場所から少し離れた廃墟の中に二人の女性がいた、その二人の女性...一人は出るところは出て、腰はキュッと引き締まり女性らしさが出てる女性、古火田榛名

 

そしてもう一人、姿そのものは古火田榛名と似通ってはいるが榛名よりかは女性らしさは若干無く、榛名はストレートな髪をしているがこの少女はポニーテールな少女、榛名の娘でもある古火田家の少女、古火田朱音(あかね)

 

二人はお互いの武器である銃を構えずに抱き合っていた

 

「何処に行っていたの?心配してたのよ?」

 

「ごめんなさい、お母さん....よく分かんない仮面に捕まってたの、でも、もう大丈夫だから」

 

榛名は目に涙を溜めながら抱き合う、朱音は前の戦いで蛭子影胤&小比奈と戦い敗れ、そのまま連れ去られていた

 

榛名は依頼を遂行するのもそうだったが実の娘も心配していた、故に、ここで会えたのは彼女にとっては本当に良かったのだろう

 

 

「それで、なんであそこで邪魔をしたの?」

 

榛名は朱音から離れて問い掛ける、先程、真莉を追い詰めてあと少しで詰みだったところなのだが突如として狙撃されそれを中断、和眞は榛名に様子を見て来いと指示されここの場所に来ていた

 

そこで待っていたのは行方が分からなかった娘の朱音だった

 

「.....うん、今までずっと考えて来たの、私は、何がしたかったのかなって....やっと答えが出たからさ...」

 

朱音は目を伏せ榛名から距離を取る、榛名はか細く「っあ」と囁く

朱音はある程度距離を取り、榛名に向き直り目を開く

 

「っ!?...朱音...」

 

「私は、お兄ちゃんを助けたい、そばで支えてあげたい、だから、それを邪魔するお父さんとお母さんは...邪魔!」

 

朱音の目は決意を秘めた目になり髪は古火田家特有の紅蓮の紅に染まっていた

 

 



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第33話

遅くなりました!!

今回なんか駆け足になってしまった感が...




 

 

(なんだ?雰囲気が変わった?)

 

和眞は警戒を強めた、先ほどまでの真莉とは何かが違う事を瞬時に見抜き一定の距離を開けた

 

真莉はその場で数回ジャンプして何かを確かめているようだった

 

(.....ふ、ここまで警戒をしたのはいつぶりだ...その相手が実の息子とはな....真莉、お前は何処まで.....)

 

和眞は視線を一切動かさずに真莉を見つめる、いつ動かれてもすぐに反応出来るように体全体をリラックスさせる

 

(っ!?)

 

ぶん!!

 

突如和眞はその場でしゃがみこむ、それは和眞自身も予期していなかった動きだった

和眞は真莉を確かに見ていていつでも上にも下にも後ろにもそれこそ左右にでも避ける準備は出来ていた

 

だがそれでも、それでも和眞がしゃがみ込んだのは余裕を持っていたからではなく無意識の中での行動であった

現に和眞の顔は驚愕に染まっていた

 

(見えなかったわけじゃない......だが....速い)

 

先ほどまでの速度に慣れていたからではなく、そして比喩でもなく真莉の速度は和眞の反応速度を僅かに上回ったのだ

 

和眞が避けれたのは長年の経験とその類稀なる戦闘センスによるものだった

その二つが瞬時に脳に指令を与えしゃがむという電気信号を体に送ったのだった

 

和眞はその場からバックステップで離れ真莉から距離をとる

 

「.....驚いたな、まだ本気ですら無かったのか?」

 

和眞は内心に湧いて溢れてくる疑問に内心混乱しながらもそれを悟られないように真莉に軽口を言う

 

「.........」

 

「.....真莉?」

 

しかし真莉から帰って来たのは無言だった、顔を上げてないため表情をうかがい知ることが出来ない

すると真莉は姿勢を低くしさながら肉食獣のように四肢を地面に着く

そして真莉は顔を上げ和眞を睨む

 

それを見た和眞は思う

 

「(まさか.....)内の中の化け物に....ゾディアックに食われたか.....バカタレが....」

 

真莉の目は肉食獣のように、俗に言うネコ目と呼ばれる目になり明らかに敵意、そして殺意が見て取れる

口元からは伸びたのか牙が見えている

 

「....ここでお前を人間として殺してやるのが親としての義務なのかもしれないな....」

 

和眞はこの戦いで初めて戦闘態勢に入った

先ほどまでなら真莉にどうやってもこの男には勝てないと判断させ自らの敗北を促すために基本攻撃を逸らし相手に実力の差を見せつけるつもりだったのだが真莉が自身の中に宿している人類の敵にしてその頂点に立つ11体の最強のガストレア、その11体の最強のガストレアと同格の隠されていた最後の最強のガストレアである12体目のゾディアック・ガストレア、キャンサーに意識も人格も乗っ取られた

 

ならば彼はもう和眞たちの知っている古火田真莉では無く、ただの人類の敵となってしまったということだった

 

真莉は全身で地面を弾き和眞に接敵する

 

先ほどまでのほんの少しの警戒状態ならばいざ知らず、今回は完全に警戒している状態で真莉を見ていた為和眞には真莉の動きがしっかりと見えていた

その為和眞は真莉がきた瞬間にその顔面にめがけカウンターを放つ

 

「!?!?」

 

グシャっと鈍い感覚が和眞の腕に響き真莉は地面を転がる

和眞は追撃の為に真莉のすぐ目の前に瞬時に動き左手の指の第一関節をすべて折り曲げそのまま真莉に振り下ろす

 

「古火田流戦闘術二式《鍵衝蛇》(かぎしょうだ)!」

 

ドゴォォという音とともに血が浮き出る.....一拍....

 

「っぐぁ!?!?」

 

苦悶の声をあげたのは攻撃を放ったはずの和眞の方だった

和眞の左手からは血が流れ出ておりあるはずの指、小指と薬指が存在していなかった

 

和眞は後方に跳躍し距離を取りすぐに止血をする

 

 

(ばかな....確かに真莉に当てた、感触もあった...なのに何故俺がこんなに.....まだ何かを隠しているのか?)

 

ッブ!

っと何かを吐き出す音とそれに似合わないぽとりという音が静けさを消し飛ばし辺りに響いた

出た音は一瞬、それでもそれが未だに鳴り響いているような錯覚を和眞は起こしていた

 

和眞はこの時初めて.....恐怖を覚えた

 

こいつは...

 

「ふぅ....待たせたな、っつうか口の中が気持ち悪りぃんだけど...」

 

この男は、自分の知っている

 

「これがラストバトルだ、お前をぶっ飛ばして....俺は聖天子も、蓮太郎も、延珠もアカネも....俺の大事な奴らを、絶対に守る!

それがたとえ、俺が....オレで無くなろうとも、オレはあんたを絶対にぶっ飛ばす!」

 

古火田真莉では無い....

 

和眞はようやくそれを認めた、そして何故か清々しい気分になり口角が上がっていくのが自分でもわかった

 

「ふ、ふふふ、あっははははは!」

 

急に笑った和眞に怪訝な表情を見せる真莉だったがすぐに警戒を強めた

 

「いや、すまないな...ただ、俺も認めなきゃいけないな...自身の息子の成長を...古火田真莉....いや、古畑真莉!」

 

古火田では無く真莉が自分で繋げ自身の名としている古畑の性を呼ばれ真莉は姿勢を崩す

その見た目は何処からでも攻撃出来るような無防備な姿だった

 

「お前は...いや、もう充分自分のやりたいことをやっていると自分で言うのだろうが敢えて言わせてもらう、これは古火田家現当主である古火田和眞の言葉にあらず、お前の、真莉のただ一人の父親としての言葉だ....聞いてくれるか?」

 

和眞の真剣な表情に真莉も同じく真剣な表情で返す

 

和眞はゆっくりと一歩一歩真莉に近付いて行く、真莉はそれをただ見つめるだけだった

やがて和眞と真莉の距離はお互いの手が届く距離になる

それでも和眞は歩みを止めない、そして.....

 

 

 

 

 

 

二人の距離はゼロになった

 

和眞は真莉を抱きしめたのだ、真莉は身じろぎひとつせずそれを甘んじて受ける

 

「真莉、もう、俺はお前に自分からは干渉しない、それを誓おう...お前は自分の道を見つけ自身の護りたいものを見つけた

俺はそれでいい」

 

和眞の言葉に僅かに体を揺らした真莉はそのままの姿勢で顔を上げずに言う

 

「良いのかよ、オレが言うのもアレだが依頼人には俺を連れて来るようにと言われてるんだろうが...」

 

「確かに、古火田家当主として、長年のしきたりを壊してしまう事にはご先祖達には悪いと思っている...だがな、ここにいるのは家がどうこうよりも一組の親子だ、ならば俺はお前を好きにさせる道を選ぶ、例えそれが間違った道だとしても、年のいった俺より、未来をまだ見れるお前ならいくらでも修正は効くだろう」

 

和眞の言葉に真莉は目を閉じながら一字一句噛み締めながら自身の中へと入れていく

 

だが...と和眞は呟き抱き締めていた体を離しゆっくりと離れていく

 

そしてある程度離れたところで和眞は真莉に向かい合う

 

「っ!?」

 

真莉は冷や汗をかく、先ほどまで圧倒的に有利になったと思っていたのに今は最初の段階よりも遥かに上回るほどの圧力を和眞が放っていたのだ

 

「俺は俺の中の最大の一撃を今からお前に放つ、お前はそれを避けてみろ、当たれば.....死ぬぞ」

 

和眞は右腕をゆっくりと腰まで引き左腕をだらりと下ろす

左足を前、右足を後ろにして腰を落とした

 

真莉はすぐに悟る、これは、避けなければ死ぬ

 

だが真莉の口角は自身が思っているよりも上がっていた

それは自身が唯一認める絶対的な強者にして自身の戦闘スタイルの基礎を教えてくれ、自信を僅かではあるが育ててくれた親の最強の一撃を受けてみたい、受けきりそしてそれを上回るほどの技を俺は持っていると教えたかったのだ

 

その思想になった真莉は両腕を交差させ拳を半開きにして左足を前、右足を後ろにして迎え撃つ構えをとる

その構えを見た瞬間和眞は目を見開くがすぐに意図を理解し笑みを浮かべる

そして静けさが辺りを包む.....刹那

 

和眞が一気に距離を縮め真莉に腕を振るう

 

「古火田流戦闘術奥義!《月光》!!(げっこう)」

 

和眞の腕はあまりの速度に一瞬消えたと思う程に早くなり真莉に襲いかかる

真莉は交差した腕をその和眞の技に合わせる様に一気に引く

 

「《刃砕》(じんさい)」

 

お互いの技がぶつかり合い辺りには凄まじい轟音が響き衝撃が辺りを包む

あまりの衝撃に真莉は吹き飛ばされ廃ビルに激突し今までのダメージのせいか真莉がぶつかった衝撃でその廃ビルは崩れ落ち真莉のいる場所に降り落ちてくる

 

それを見た和眞はすぐに助け出そうとしたが自身の全力の技を使った反動でその場から動けずにいた

そして.....

 

ズガァァン!!

 

廃ビルは崩れ落ち崩壊した

 

 

辺りは瓦礫とその瓦礫が出した粉塵が舞う

和眞は真莉の身が心配だったがそれは杞憂に終わる、何故なら....

 

 

 

ピシ、ピシピシ

 

と落ちた瓦礫からピシピシとヒビ割れる音が聞こえしたから何かが飛び出してくる

和眞はそれを見た瞬間驚愕する

 

瓦礫の下にいたのは確かに真莉だったはずなのだが瓦礫から飛び出して来たのは......

 

《ォォォォォォ.....ゥゥゥゥゥ》

 

体長おおよそ3メートルを超えるだろうか、それ程の巨体が瓦礫を粉砕してその場に出現した

 

神話に出てくる様な幻獣、ユニコーンの様な一本の角に強靭と呼ぶのも生ぬるいのでは無いかと思う程の四肢、そしてその四肢ほどもある尻尾と背中にはライオンの様なたてがみが付いている、そしてその二つの双眼はしっかりと和眞を見つめていた

 

和眞はその目に見覚えがあった

 

「まさか.....お前がキャンサーなのか?」

 

和眞の呟きに応えるかの様にその巨大なモノは伏せをする

 

《いかにも、ボクが君たちの言うところのゾディアック・ガストレアのキャンサーだよ.....まぁただほんのちょっとだけ力をこの子に貸しただけなんだけどね、気を失っちゃったしね》

 

和眞はこのガストレアが喋るとは思っておらずいささかびっくりした様だった

 

《今回は完全にこっちの負けだね、いやぁ、人間って強いんだねぇ、この子の中から見てたけど....いや、前回戦った時も思ったけどなかなか強いよ、君は、この子が強くなるのもわかる...》

 

「.....キャンサー、君に頼みが《言われるまでもないね、ボクはこの子が好きだからね、例え何があろうともこの子を守る選択肢をとるよ》

...そうか」

 

和眞はそれを聞くとホッとしたかの様に息を吐き軋む体を動かしキャンサーに背を向け歩き出そうとすると巨大な尻尾が和眞に絡みつく

 

流石の和眞も驚愕の顔をした

 

《待った、そのまんまだとそこら辺の野良ガストレアに殺られるよ...ボクの血を一滴飲むといい、この子の親である君なら適合するはずだ》

 

和眞は怪訝な顔をする、確かに現状の状態なら野良ガストレアとの連戦になるとキツイ

さらに妻も回収しなければならないので相当キツイものがあった

 

《まぁ、信用は出来ないだろう、だから君の自由だ、ボクは単純にこの子の為を思っての行動だ》

 

和眞は意を決して腕に近付いて来た尻尾をほんの少し傷付け一滴指に取り口に含む...すると

 

「っ!?....これは驚いたな」

 

《うん、適合したね、これで君はほぼ完全に戻ったよ》

 

和眞の体から目立つ傷が消えていった

 

すると役目は終わったとばかりにキャンサーの尻尾は元に戻る

 

「...真莉を、息子を頼んだぞ?」

 

《君に言われるまでもない、それにこの子に死なれるとボクも死んじゃうしね、それ相応にやるさ》

 

 

 

そこまで言うと和眞はその場から走って行ってしまった

残されたキャンサーは誰に言うでもなく呟く

 

《この敗戦は決して無駄じゃない、だからそんなに泣かないの...ね?真莉?》

 

(.....泣くわけねぇだろ....黙って....ろ)

 

《ん、そだね》

 

(....次は....絶対に負けねぇ....絶対に負けねぇから!!)

 

《うん、頑張ろう!》

 

 

やがてキャンサーはその場から消えて辺りには再び静寂が訪れたのだった



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最終話

大変長らくお待たせしました!
仕事が忙しくなり何もできない状態が続きました...
久しぶりの休みなのでなんとか投稿することができました〜....

今回かなり急ぎ足な感じになってしまいました...ですがこれでようやく二巻の内容が終わりました、長すぎですね(^◇^;)

3巻と4巻の内容、VSアルデバラン編はもう少し話数を減らそう...
てもそうしたら文字数が...ぐぬぬ

ま、まぁとにかくこれでとりあえずひと段落ですかね?それでは駄文ですがごゆっくり!



間違えて外伝の方に投稿してしまったので修正しましたm(__)m
内容は変わりません


一つの戦闘が終焉を迎えたその少し前、もう一つの戦闘も終わりが見えていた

 

 

辺りの地形は原型が分かりづらく陥没しておりひび割れていないところが無い程のものだった

 

そしてそこら中ではおびただしい程の血が付いていた

血だけで無く、何やらぴちぴちと蠢めく触手の様なものも辺りには落ちていた

 

 

「ねぇ、パパ〜、もう飽きちゃった〜...つまんない」

 

両手にバラニウム刀を持ち、赤眼の少女、蛭子小比奈は小さく呟く

その両刀からは少し血が滴り落ちていた

 

「...こいつは研究対象なのだがねぇ、やはり真莉くんの様に完全に制御出来ているわけでは無いんだね、まぁガストレアとを内蔵して共に生きていくことなど出来ようが無いんだがねぇ...」

 

ボソリと呟く燕尾服を着た仮面の男、蛭子小比奈の父である蛭子影胤は仮面で表情はわからないが落胆した声色をしていた

そのすぐそばでは人としての姿をなくした...いや、人だったものが倒れ伏していた

 

体は傷だらけで血濡れていない場所は無く、ボロボロではあるが人間には無い触手が未だに元気に蠢いている

しかし、本体と言える部分は全く動く気配が無く生きているのか死んでいるのかわからない状態であった

 

「まだわかんないでしょ...ってかお兄ちゃんの事知ってるんだ...」

 

「ヒヒヒ、まぁ私が無理やり聞いたわけでは無いからね、彼から言ってきたんだよ...まぁ、彼にも考えがあってのことなんだろうけどねぇ」

 

未だに敵意を隠さないもう一人の少女、アカネは警戒心を解かずずっと化け物の方を見ているが声色は若干震えて多少の動揺が見て取れた

 

ズルルル.....ズルルル....

 

「「「っ!?」」」

 

三人は一気に後ろに飛び距離を取った

今まで動かなかった触手の本体が唐突に動き出したのだ

 

しかし先ほどまでのめちゃくちゃな動きをしていた触手は一変して統率がとれておりこちらに一気に迫って来る

 

「パパ!」

 

真っ先に狙われたのは影胤

 

しかし影胤は焦りもせずに向かってくる触手を片っ端から両手に持つ銃で撃ち落としてバラバラにしていく

 

《ギィィィィィ!!!》

 

ビリビリと空気が震える

 

「....人間の言語すら喋れなくなったか、やはり、彼になろうとしたところでそれは無理なのだろうね...終わらせようか、小比奈」

 

「はい、パパ!」

 

影胤が小比奈に指示を出す、小比奈はすぐに両手のバラニウム刀を構え触手の化け物に向かって突撃した

 

しかし、小比奈の足元に散らばっていた触手の欠片たちが小比奈の足にまとわりつき動きを止める

 

「うわ!にゅるにゅる気持ち悪い!」

 

触手の本体から大型の触手が小比奈に向かって飛んでくる

 

「っ!?」

 

小比奈は迫ってくる触手を見るが動けないのでどうしようもない

迫る衝撃に備えるが目の前に青白い膜の様なものが現れ触手を防ぐ

影胤が小比奈の前に自身の能力である斥力フィールドを展開し小比奈を守った

 

そしてその横からアカネが速度を上げて一気に相手に近づく

 

「見よう見まね...《昇天牙》!」

 

相手の足元を蹴りその勢いを利用して回し蹴りを放つ

真莉が和眞に放ち躱された技をアカネは見よう見まねだがしっかりと、完璧に本体に当てる

 

触手の本体はうめき声の様なものを上げる、更に追い討ちをかけるかの様に影胤がゼロ距離まで詰め寄り腕を引き触手本体に向け技を放つ

 

「お終いにしようか...《エンドレス・スクリーム》!」

 

掌から槍状のエネルギーを放出し触手の化け物の土手っ腹に風穴をあける

触手の化け物は立ったまま動かなくなり周りの触手たちも完全に機能を停止した.....と言うより徐々に触手たちが溶けていき触手まみれになっていた男、翔が残された

 

「.....なんで...この力があれば誰にでも勝てるはずなのに....なんでこんな...」

 

翔はそこまで言うと地面にうつ伏せに倒れ、やがて静かにその命の灯火を消した

 

 

「ふう、ようやく終わったね、まさかここまで消耗させられるとは思わなかった」

 

流石の影胤も未知の敵との闘いに疲労を隠せないでいた

 

「3対1だったし私だけでも勝てたのに...」

 

アカネはふくれっ面を見せ文句を垂れた、それに対して小比奈は目ざとく反応する

 

「パパと私がいなければ死んでたくせに...弱いくせによく言うよ、次はアカネを切るから」

 

小比奈の目はギロリと鋭くアカネを射抜く、アカネもそれに負けじと小比奈を睨む

するとぱんぱんと軽い音が聞こえ2人はその音の方を向いた

そこには影胤が仮面では分かりづらいが呆れた雰囲気を出していた

 

「今はそんな事より君の依頼を優先すべきではないのかな?それに、迎えも来たみたいだしねぇ」

 

影胤はそう言うと別の方向を見る、暗闇からは少しボロボロの状態の真莉が歩いてきた

 

真莉は影胤がいるのが意外だったのか少々意外な顔をしながら近づいてきた

アカネは真莉を見た瞬間花が咲く様な笑顔を見せ真莉に抱きつく

 

「お兄ちゃん!!無事だったんだ!」

 

真莉はアカネの突進を受け一瞬顔を歪めたがすぐに安堵した顔を見せる

 

「まぁ、無事とは言えないがな...今回も助かった、すまなかったな、影胤」

 

「ひひひ、まぁ君には色々と借りを作っておきたいからね...と言っても今回のは君にもらった恩を返しただけだ」

 

「そうかい、なら次何かしらあればなんか考えてやるよ...

アカネ、蓮太郎のところに急がなきゃならけぇんだ、行けるか?」

 

「うん!私はもう大丈夫!早く行って蓮太郎を助けなきゃ!」

 

アカネはふんすと鼻息を荒くする、どうやら完全に色々と出来上がっている様だった

 

「悪いな、俺らはここらで行かなきゃならん...小比奈もありがとうな?」

 

「う、うん!」

 

真莉の言葉に満開の笑顔を見せる小比奈は頬に少し赤みがかかり照れている様だった

影胤はそれに気付き笑いをこらえていた

 

その後は特に何を話すでもなく真莉とアカネはすぐにその場から猛スピードで走って消える

残された2人は互いを見合いくつくつと笑いその場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蓮、太郎....さん、私、分からないんです、どうしてこんなことになったのか....どうすればよかったのか、全然、こんなはずじゃなかったんです...でも、蓮太郎さんと真莉さんと会って...こんな風な生き方もあったんじゃないかなって...思ったんです...」

 

「喋るな、傷に障る....」

 

蓮太郎はつい先ほど打ち倒したティナ・スプラウトに肩を貸しながら一歩ずつゆっくりと階段を下りていく

ようやくかびくさい建物の外に出た蓮太郎は清涼な空気をゆっくりと吸い顔を上げる

 

(とりあえずは病院だな...)

 

蓮太郎がそう思考しているとティナから声が聞こえる

 

「責任...とってもらいますからね」

 

蓮太郎は驚いて横を見ると、ティナは泣きはらした瞳のままうっすらと微笑んでいた

 

「私を倒したんですから、その責任を取ってもらいますから」

 

蓮太郎は一瞬呆気にとられたがすぐに朗らかに頷く

 

「あぁ、わかった」

 

 

 

 

 

 

パァン!!

 

 

 

突如銃声がして、ティナが膝を崩した

 

 

「.....ぁ」

 

ティナは信じられない様な表情で胸に空いた黒い穴を見ていた

穴から漏れ出した鮮血が服をじわじわと侵食していく

ティナは小さく口を開け、声を出そうとするが声は出ず、困り果てた様に小首を傾げて微笑しようと努力する

 

ツカツカと近づいてきた制帽に白マントの男が拳銃を撃ち込む、ティナの喉から鮮血がほとばしり、背後に倒れる

 

保脇がティナの腹を思いっきり蹴飛ばすと、ティナの体は軽々と宙を舞い、ぐしゃりと音を立てて落下する

蓮太郎はその光景をただただ呆然と、悪い冗談の様な光景を眺めていた

 

「殺し屋風情がッ!てこずらせおって!!」

 

(何で、コイツが....)

 

麻痺した脳で首を傾けるとその疑問に答える様に保脇がこちらを見る

 

「聖天子様は無事に送り届けている、今頃会談中だろうよ

あぁ、会談が終わる前には帰らねばならんからこちらも忙しいんだ...そんなことより」

 

保脇はニヤニヤと薄汚い笑みを浮かべる

 

「なんだ?その表情は?ゴミを一つお前の代わりに処分してやったんだぞ?感謝の一つぐらいしたらどうだ?」

 

直後に憤激が脊髄を貫き、脳を焼き尽くす

 

「ぶっ殺してやるッ!!」

 

蓮太郎が拳銃をホルスターから引き抜こうとした瞬間、ミシリと音がして背後から衝撃が来る

 

「か.....ハッ....」

 

肺から空気を絞り出されながら背後を見ると、仲間の聖天子付護衛官の拳が背中にめり込んでいる

 

息も絶え絶えになりながらお返しに裏拳を食らわす

だが、もう1人に腰を押さえられ、足が払われ、地面が迫ってきたと思うや強靭な力で頭を押さえ込まれ、地面に叩きつけられる

 

ビキリと筋が張って腕に激痛がはしり、無理やり背後を見ると他の護衛官が三人、蓮太郎の背に乗り、後ろ手に拘束していた

奥歯が砕けんばかりに歯を食いしばり、うなり声をあげながらめちゃくちゃに暴れるが、戒めは緩みもしない

 

「保脇いいいいいッ!!!貴ッ様あああああ!!」

 

「クハハハハハッ!漁夫の利ってのはまさにこのことだね」

 

その時、ティナの体が弓なりに沿ったかと思うと強く血を吐く

 

(ティナ!生きてる!)

 

保脇が自分の拳銃を見つめた後薄気味悪そうにティナを見る

 

「やはり、バラニウム弾でなければ死ににくいな」

 

そこで何か思いついたのか、他の護衛官に向かって薄ら笑いを向ける

 

「おいお前ら、一つ、生物的実験をしないか?お題は、『赤目』は鉛弾で何回撃ったら死ぬのか、だ」

 

他の護衛官が肩を揺すって忍笑いを漏らす

保脇は倒れたティナの体をまたぐと連続で拳銃の引き金を引いた

 

ティナの体が踊り、ほとばしる鮮血が保脇の顔にかかる

ティナの足が突っ張り、何度も地面を引っ掻く

 

「ヤメロォォォォォッ!!殺してやる!保脇いいいぃぃッ!貴ッッ様ぁぁぁ!!」

 

保脇が両手を広げ狂笑する

 

「ヒハハハハ!そうだ!その表情が見たかったよ、里見蓮太郎!ヒャハハハハっ!」

 

保脇は銃口を上げるとティナの眉間に照準する

 

「フィナーレだ!.....は?」

 

保脇は驚愕に目を見開く

ほんの一瞬の出来事だった、真下にいたはずのティナがその場から消えたのだ、しかしすぐに居場所がわかる

ティナを救出したのは赤目の少女、古畑アカネだった

彼女がここにいる、その事が意味するのは...蓮太郎は自身の口角が間違いなく上がっていることを理解した

 

「おい、クソガキ、そのガキをこっちによこせ、そのガキは殺し屋だ、聖天子様を狙った薄汚い呪われたクソガキなんだよ!

お前も殺されたくなければさっさとそのガキをこっちによこしやがれ!.....ッひ!?」

 

保脇はアカネを睨むがすぐに全身から冷や汗が溢れ出す

何故なら、蓮太郎を押さえつけていた三人のうちの1人の『首』が自身の目の前に転がってきたのだ

保脇は蓮太郎の方を恐る恐る見ると...

 

「.....お前らは調子に乗り過ぎたな...少しは我慢してやったが....これ以上は流石に無理だわ」

 

蓮太郎を押さえつけていた残りの2人もほぼバラバラに殺されていた

彼は...いや、彼らは唯一怒らせてはいけない者を怒らせてしまったのだった

 

すると

 

 

「そこまでです!」

 

厳粛な一括がその場に存在した人間を凍らせた

 

死を覚悟していた保脇も、殺意がこれでもかと溢れ出している真莉も聖天子の到着に少なくない驚愕を見せていた

 

「保脇さん、あなたたちが独断専行したと聞いたので、斉武大統領との会談を中座して参りました」

 

「馬鹿なッ!たかが民警と用心棒如きのために大阪エリアの国家元首との会談を投げてきたですとッ!」

 

「わたくしにとって里見さんと古畑さんはあなたの言うたかがではありません、そして、あなたたちの狼藉をこれ以上見過ごすわけにはいきません...なので申し訳有りませんが古畑さん、その男を殺すのは勘弁していただけませんか?あなたの気持ちは分かっているつもりなので嫌だとは思いますが」

 

真莉は横目で見ていたがすぐに大きな溜息を吐きアカネといつの間にかいてティナの治療をしている夏世、そして血だらけのティナの方に歩いて行った

 

「里見さん、わたくしに教えてください、わたくしの命を救ってくれたあなたが、わたくしに望むものは何なのかを」

 

「.....力が欲しい!俺の守りたい者を守れる力が欲しい!」

 

「里見さん、力には責任がついて回ります、あなたが剣を振り下ろした時、あなたには夥しい返り血が降りかかることを忘れてはいけません

力に過ぎればそれは暴君となり、責任が過ぎれば心を砕かれてしまう、天地開闢より力と責任のバランスが取れたことは一度としてありません、あなたはそれを両立させなさい...与えましょう、その力」

 

夜天に厳かな声が響き渡る

 

「東京エリア国家元首の特権によりIISOの事例をスキップ、里見蓮太郎の序列を1000番から300番までに昇格させます

里見さんの機密情報アクセスキーのレベルを五に、そして擬似階級は二尉に承認...つまり、保脇さんの一つ上です、この意味がわかりますか?」

 

「はい」

 

「力なき正義に価値はありません、もっと強くなって里見さん、誰よりも強く」

 

蓮太郎は顔を上げると自身の拳銃、XD拳銃をホルスターから引き抜き三発発砲する

 

保脇の右肩、左脇に着弾し、右の親指を付け根から吹き飛ばす

 

「アギャッ、ギャァァァァァァァァッ!!」

 

蓮太郎は悠然と歩を進め保脇の前に立ち、彼を見下ろす

保脇は驚懼におののきながら必死に尻であとずさりをする

 

「ひゃああああ!く、来るなッ...来るなぁぁぁ!!」

 

「失せろ、そして二度とティナに近づくな...拒否するのならば、上官反逆罪により貴官をこの場で射殺する」

 

保脇は足をもたつかせながらなんとか立ち、立ち去ろうとするがその背後を真莉が思いっきり蹴り飛ばす

保脇は地面を滑り気を失った

 

「ティナの受けた痛みはこんなもんじゃねぇ、これからは俺にも怯えて生きていくんだな、俺はテメェをゆるさねぇ、もし次会えば殺すかもしれねぇぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの戦いから一週間、未だにボロボロの体の蓮太郎は何処をどう歩いたのかほとんど覚えていないにもかかわらず、いつの間にか天童民間警備会社の前まで来ていた

 

習慣とはまことに恐ろしいものである

 

愛すべきボロビル、ハッピービルディングの外観は大きく変化していた

ティナと木更が好き放題暴れてくれたおかげであちこちが崩落しており、青の防水シートがかかった二階のキャバクラは未だに営業中止らしい

 

漫然と階段を上りながらふとティナは元気だろうかと思った

ティナは手術の末、一命を取り留めた

彼女の身柄は聖天子預かりという異例の措置を受け、聖居にて軟禁と事情聴取が続いているらしい

願わくば、彼女に下される沙汰が寛大なものであって欲しい

 

気分を切り替え事務所の扉をくぐると

 

「あ、里見くん」

 

「蓮太郎!」

 

という2人の女性の声が出迎えてくれる、快復した木更と延珠だ

 

麻酔が切れた延珠はほどなく全快して退院すると、もう普段と変わらないように振舞っている

蓮太郎の前に来た延珠がくりっとした大きな瞳で小首をかしげる

 

「どうしたのだ?蓮太郎?妾の顔に何か付いているのか?」

 

「........いや、お前がいるのといないのじゃ、やっぱ事務所の雰囲気が全然違うなって思ったんだよ」

 

延珠は束の間驚いた顔をした後、くすぐったそうに笑う

 

「ふふふ、そうであろうそうであろう」

 

「えぇぇ、本当にそれだけなの?蓮太郎?」

 

「俺の予想だと今まで寂しかったから延珠がいて本当によかった〜って言ってるんじゃねぇの、ほら、蓮太郎はヒネデレだからな」

 

延珠は他の2人の声にキラキラとした顔を見せ蓮太郎を見る

蓮太郎はうるせぇよと言って来客用のソファーにどっかりと腰を下ろし大きく伸びをする、するとパキポキと骨がなった

 

(さて、今日も儲からない仕事をしようじゃねぇかよ)

 

「蓮太郎さん、お水をどうぞ」

 

「お、悪い、気が利くな、ティナ」

 

水を干して、そこで今までの違和感がどっと押し寄せてきてはてと思い至った瞬間、盛大に口から水を噴き出していた

 

「キャッ!」と悲鳴が上がってお盆を持った少女が顔だけ防水をガード、お盆を半分だけずらすと上目遣いにこちらを見る

 

金髪、少し眠そうな目....間違いなくティナだった

 

「何するんですかッ?」

 

「なんでいるんですかッ?」思わず口調が移る

 

「って!それよかなんで真莉とアカネと....もう1人の朱音がいるんだよ!」

 

「やっとかよ、お前も意外と天然なのな」

 

木更がニコニコしながらティナの背後に回ると、彼女の両肩に手を置いてこちらを見る

 

「うふふ、ティナちゃんと古畑くん、アカネちゃんと古火田ちゃん雇っちゃった♪」

 

「いや...『雇っちゃった♪』って....」

 

蓮太郎の記憶が確かならば、木更はガトリングガンで蜂の巣にされかけて、延珠は対戦車ライフルで腹を打ち抜かれたはずだ

蓮太郎に至っては至近距離をピュンピュン対戦車弾がかすめてぶっちゃけ泣きそうだった

 

「ちょっと里見くんッ?何よその目!釈放されてティナちゃん帰るお家ないのよ?かわいそうだと思わないの?」

 

「でも.....こいつ殺し屋だぞ?」

 

「妾は別に構わないぞ!」

 

「俺は俺で雇われた身だからな、相手が例え誰だろうと社長が決めたことならそれに従うさ」

 

「お兄ちゃん、もっと素直に...まぁいっか!私は仲良くしたかったからティナ大歓迎だけどね!」

 

「兄さんはこういう人だから...あたしは前会った時からしっかり話し合いたかったから....それにある意味あたしも殺し屋だしね.....」

 

延珠は喜色満面で手を振る、真莉は面倒臭がりながら、アカネは延珠の様にぴょんぴょん跳ねながら、朱音は少し顔を暗くしながら答えた

 

「ついに妾にも後輩が出来るのだ!妾のことは延珠先輩でいいぞ!」

 

蓮太郎が小さく口を開けたまま固まっていると、事務所を単身全滅させかけた少女がはにかみながら一歩こちらに進みでる

 

「今日から天童民間警備会社でお世話になることになりました、宜しくお願いします、蓮太郎さん」

 

嬉しそうにぺこりと一礼する

蓮太郎はあきれと脱力でソファごと後ろにひっくり返りそうになった

天井を見ながら大きく溜息をつく

 

合縁奇縁、袖振り合うも他生の縁とは言うが....どうなっても知らないぞと蓮太郎は独りごちる

 

「事務所が騒がしくなりそうだな」

 

ボソリと蓮太郎は呟いたがそれも事務所の騒音にかき消されていった

 

 



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外伝
外伝〜クリスマス?


今回はクリスマスという事でくだらない話を適当に...
早く進めろよって話ですよね〜汗


皆さんどうもこんにちは、僕は勾田高校の二年生、希里江沙耶です

ただいまの時刻はお昼

そして今日の日付は12月24日

世の中はクリスマス・イブとして騒がれています

 

この教室...いえ、この学校でも大分騒がしく皆が今日何処に行く?や今日...暇ですか?などといったお誘いをちらほら聞きます...って言うより最後のは僕が誘われたんですけどね...同じ男の子に...

僕は男なのに....

そんな事をこのお昼の時間に僕の親友の二人の櫻井綾夜と古畑真莉に愚痴っていたら二人とも苦笑いして聞いてくれました

 

っと思ったら真莉の顔に真剣味が増し食べてる手を止めたので僕も綾夜も気になり話しかけてみることにしました

 

 

綾夜「どうした?まさかもう腹一杯なのか?」

 

真莉「いや、そうじゃ無いんだが...気になることがあってな...」

 

沙耶「気になること?何?」

 

真莉「いや、別に聞かなくても良いんだが」

 

真莉はこういう時にすぐに引いちゃうよね...まぁ最初の時よりは遥かにマシなんだけど...最初は話しかけることさえ出来なかったし...

 

助けてもらった時のお礼が言いたかったのに...おっと話が脱線しちゃった...とにかく僕が気になるから聞かなきゃね!

 

沙耶「良いから教えてよ〜」

 

真莉「いや、特にくだらないことだから」

 

むぅ、こうなったら強行手段しかないかな...

 

真莉「だからこの話は沙耶「良いから言え」...はい」

 

...ちょっと強めに言っただけなのになんでそこまで怯えてるんだろ...しかも直接言ってない綾夜まで...も〜

なんてちょっと内心落ち込んでいると綾夜が話を切り出していた

 

綾夜「んで?何なんだよ?」

 

真莉「あぁ...」

 

真莉の顔が先ほどのように真剣な表情となり僕も綾夜もゴクリと喉を鳴らし次に紡がれる言葉を待った

 

 

真莉「朝からよく聞くんだがクリスマス・イブとかクリスマスって何なんだ?」

 

.....僕たちは盛大に机に頭をぶつけた

っと言うよりクラス全員の空気が凍った

 

そうか、僕たちは真莉の事情を知っている、でも僕たち以外は知らないんだっけ

ちらりと隣を見ると綾夜と目があった、言いたいことがわかったから頷く

 

真莉「...んだよ?」

 

真莉は予想通りの反応だったのかちょっとムッとしていた...って言うか最近大分表情豊かになったよね...

 

沙耶「いや、ごめん、何でも無いんだ...ちょっと良い外で話そうか?」

 

真莉「あ?何でわざわざ外出なきゃいけねぇんだよ...まぁ良いけどよ...」

 

とりあえず引き離すことに成功かな...ここでチラリと綾夜を見ると綾夜もコクリと頷く

それを見てゆっくりと扉を閉めて外へ行く

...どう説明したら良いんだろう...

 

 

 

 

 

 

さて、中庭に来たよ!

とりあえず説明だね、何処から説明すれば良いんだろ?僕たちは当たり前にあった行事だったから何にも考えなかったけど...

 

真莉「そんで?そのクリスマスとやらは何なんだ?」

 

沙耶「えっと...真莉はクリスマスについて何処まで知っているの?」

 

真莉「あ?そうだな...サンタ・クロースとかいう全身返り血で染まった奴が人の家に侵入して他の家から奪った物を各家に置いて行くとかいうわけのわからない奴が出てくる時期がクリスマスとやらだと聞いた、だがクラスの奴らの話を聞いているとそんな奴がいると言うのに怯えた様子もなしに外に遊びに行こうってやつばかりだろ?だから気になってな...あ?どうした?」

 

何でこの人こんな間違った知識を持っているの!?怖いよ!?

返り血で染まった奴とか普通に殺人犯じゃん!

いち早く教えなきゃ!!

 

沙耶「えっと...クリスマスって言うのはね諸説あるんだけれど...」

 

十数分後

 

僕は説明をやりきった...んだけど...

 

真莉「zzzz」

 

真莉は草むらの上に寝っ転がってすでに寝てた...

開始直後から寝っ転がってたからもしかしたらと思ったんだけど案の定だった...

 

とりあえず

 

沙耶「(すぅぅぅ)おっきろーーー!!!」

 

キィィィィンと真莉の耳元で大きな声を張り上げ真莉を起こそうと試みる

 

流石の真莉もビックリしたのか飛び起きた

 

真莉「...何だよウルセェなぁ...」

 

相変わらず寝起きは機嫌が悪いんだね...でも流石に僕もこんだけ説明して無意味だったじゃ気が済まないよ

だから僕はちょっとムッとした表情を作って真莉を睨んで見た

 

沙耶「ねぇ、グッスリと眠っていたけれど...僕の説明分かったのかな?」

 

真莉はそれこそ珍しく視線を逸らし気まずそうにしている

 

真莉「お、おう...アレだろ?えっと...サンタクロースってのは良い子にしていたガキどもにプレゼントを配ってクリスマスってのは...え〜...チキンとかケーキを食べる?」

 

肝心な所が全部抜けてる...僕はハァっと溜息をついた

...平気だよね?僕の幸せって逃げないよね?

僕がそんなことを考えていると真莉は僕に向き直る

...何だろう?

 

 

真莉「沙耶...付き合ってくれないか?」

 

 

.....ホワァァァァァ!?!?

 

 

 

真莉「.....わかってるとは思うが...買い物だぞ?」

 

 

.....分かってるよ!!!

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

真莉side

 

 

真莉宅

 

今日はクリスマス・イブとやらだそうだ、朝っぱらから学校の連中が浮き足立っているのが目立った

俺は最初は真面目にクリスマスとやらはサンタ・クロースを捕まえてボコす気でいた

 

うちのガキどもに何かしらの危害が加わる前に先手を取ろうと思っていたのだが...どうやら杞憂に終わったようだ

 

学校で沙耶に聞いたクリスマスの本当の意味、あいつは諸説あると言っていた、という事はあいつが言った事以外にも語られていると言う事か...

 

メンドクセェな

 

ちなみに今俺は夜ご飯を作っている

時刻は午後の18時頃

ガキどもは蓮太郎に預けてあるから後1時間ばかしで帰ってくるだろう、それまでの間で作らなければならない...余裕だな

 

 

 

 

 

ピンポーンと玄関から家の中にチャイムが鳴り響いた、どうやらボーッと料理を作っていたらもう1時間経っていたようだった

 

時間って言うのは早いもんだな...

さて、お出迎えと行くかな

 

side out

 

 

 

真莉は玄関のドアを開け外に居た人物たちを家の中に招き入れた

 

真莉「ほい、おかえり...みんな」

 

外からわらわらと帰ってきた者たちは各々ただいまやお邪魔しますなど様々な言葉を同時に言い放ち家の中に入って行く

 

最後に入ってきた人物に真莉は労いの言葉を掛けた

 

真莉「悪りぃな、蓮太郎、面倒事を押し付けちまってよ」

 

蓮太郎「本当だよ...何だよあいつら...スッゲェ元気なんだけど...途中から木更さんも悪ノリし始めるし」

 

蓮太郎はかなり疲れているようだった

真莉は今日の事を沙耶に聞いて今回の事を思い付き蓮太郎と沙耶に協力を仰いだのだった

 

そんな話をしていると先に中に入った子供達(+木更)から大きな声が響いた

 

その声の筆頭であろう藍原延珠がリビングからひょっこりと顔をだ真莉に言う

 

延珠「真莉!何なのだ!この豪華な料理は!?」

 

するとそれをきっかけにリビングの方からアカネと木更が飛んでくる

 

アカネ「お兄ちゃん!!食べて良いの!?」

木更「真莉くん!!食べて良いの!?」

 

アカネと木更のシンクロに真莉は苦笑し頷く

 

真莉「別に良いけど手洗いとうがいはしろよ?」

 

それを聞いた瞬間にもう既にアカネと木更はもういなかった

 

真莉「蓮太郎、お前も早く行け、この勢いならすぐに無くなるぞ?」

 

蓮太郎「でも良いのかよ?俺らまでご馳走になっちまって?」

 

真莉「気にすんな、お前らがいなきゃこのパーティは企画すら出来なかったからな...それにこう言うのは初めてだし、経験あるやつの意見も聞きたかったしな...まぁ正直お前に経験あるかと聞く気はねぇがな」

 

真莉は笑いながら蓮太郎に言う

蓮太郎はムッとしながら真莉に言う

 

蓮太郎「ウルセェよ、返り血で染まったサンタの話をする奴に言われたくはねぇ」

 

蓮太郎の返しに真莉はグェと珍しい声を上げる

蓮太郎は靴を脱ぎ洗面所に向かい手を洗いうがいをしてリビングに戻ってくる

そこには既に大量に頬張りハムスターの様に頬を膨らませている天童木更とアカネが幸せそうな表情を浮かべ料理を食べていた

蓮太郎は苦笑しながらリビングを見渡す

 

真莉は作ってあった料理をテーブルに運んでいた

幼女の癖に大人以上に落ち着きがある千寿夏世とティナ・スプラウトは二人で話しながら皿に盛った料理を食べていた

 

延珠は蓮太郎が来るまで待っていたのか両手に皿を持ちながら蓮太郎を見つけ走ってくる

 

蓮太郎はその様子を見てフッと微笑みみんなに言った

 

 

蓮太郎「おい!俺の分残しとけよ!」

 

 

 

 

 

 

みんなでぎゃあぎゃあ騒いだ後イニシエーター組+天童木更は疲れてしまったのか眠ってしまっていた

 

真莉「まぁこうなるとは思っていたがな〜」

 

蓮太郎「良かったのかよ?俺まで泊まっちまって」

 

真莉「お前一人だけ返すとこの家に男が俺しかいなくなるだろ、そんなのやってられっか」

 

蓮太郎「まぁお前が良いなら良いけど...それで?本当にやるのか?」

 

真莉「あぁ、その為にこれを買ったんだしな」

 

真莉が手に持つのは包装されたプレゼントの品々だった

沙耶と買い物に行った時に色々と買ったのだ

みんなが寝静まった後にプレゼントを置く為に

 

蓮太郎「だけど木更さんの分まで必要だったのか?」

 

真莉「なんかあの人自分だけ貰わなかったら拗ねそうだからな」

 

真莉の言葉に蓮太郎はあ〜と微妙な表情をする

 

真莉「さてと...それじゃあ始めるか」

 

蓮太郎「分かった」

 

その夜真莉と蓮太郎は戦闘モードよろしく完全に気配を消し各部屋にプレゼントを配った

音を立てずに動いていたので大分時間がかかってしまい今は深夜になってしまった

 

真莉「さて、これで終わりだな」

 

蓮太郎「だな...ふわぁ」

 

蓮太郎は大きくあくびをして船を漕ぎ始める

 

真莉「蓮太郎、俺の部屋で寝ろ」

 

蓮太郎「おう...悪りぃな...」

 

蓮太郎はもう限界なのかフラフラしながら部屋に入っていきすぐに寝息を立て始める

真莉は頃合いを見て蓮太郎の枕元に忍び寄りプレゼントを置きその場を離れた

 

 

真莉「...確かこう言うんだったな...メリークリスマス」

 

 

真莉はそう言うと全ての電気を消しソファに体を沈め目を閉じ眠りについた

 

ようやく騒がしい古畑家のクリスマスは幕を閉じたのであった

 

 

 

 

 

 

翌日の早朝早くに起きたアカネの大声のせいで全員が叩き起こされたのは余談だ



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バレンタインデー

ギリギリか!
何とか間に合いましたリア充が喜び自分みたいな非リア充が発狂するこの日...みなさんは貰えましたでしょうか?チョコレート

自分は..._| ̄|○


まぁ話はぶった斬りますが今回は外伝です!見ても見なくても良いと思います!


 

夏世side

 

2月14日

世の中はバレンタインというイベントがあるらしいです

世の中の女性が好意を持っている男性にチョコレートを贈る日の事らしいのですが...

 

最近では女性が友チョコ?とやらで女性にあげたり

逆に男性が女性にあげたりしたりすることもあるそうです

 

私...千寿夏世は今...最大の危機に直面しています...

 

 

 

 

 

 

夏世「ちょっと待ってください、アカネさん、延珠さん、何故チョコレートに練乳をそんなにぶっかけてるんですか?」

 

アカネ「え?だってチョコレートって甘いでしょ?ならもっと甘くても良いかなって!」

 

延珠「妾は蓮太郎が疲れてると糖分?が欲しくなるって言ってたからとびっきり甘くするのだ!」

 

夏世「糖尿病にするつもりですか...少しは翠さんや古火田さんを見習ってください...だからかけちゃダメですって!あと!ティナさんは起きてください!」

 

ティナ「ふわぁ...」

 

翠「あ、あはは...夏世さん...大変ですね...」

 

朱音「なんかみんなのお母さんって感じがするね〜」

 

 

 

もう一度言います、今日は2月14日...バレンタインデーです...

色々と先行きが不安です...

 

料理が出来ないメンバーは以下の通りです...

 

アカネさん、延珠さん、ティナさん(ティナさんはピザは作れるのに何故他のはできないのでしょうか?)

あとは弓月さんですか...弓月さんのお兄さんは料理が物凄く上手でしたけど...お兄さんの方が作ってるから作る機会が無いんですかね?

 

そして出来るメンバーは

 

(自分で言うのもアレですが)私、翠さん、木更社長、美織さん、(それとかなり意外ですが)小比奈さんです(しかも意外としっかりとしているんですね...流石に二振りの小太刀は回収させてもらいましたが...と言うより小太刀無ければこの子は大人しいのでは?)

 

 

今お兄さん達には悪いのですが外に出てもらっています

私は今回のバレンタインは失敗出来ません

あの時死ぬはずだった私を助けてくれたお兄さんの為に私の気持ちのこもったチョコレートを何としても渡すんです!

 

 

 

 

 

 

 

男性陣side

 

男性陣...真莉と里見蓮太郎、片桐玉樹、薙沢彰磨...そして何故か蛭子影胤が外周区の外れの方で戦闘訓練を行っていた

 

蓮太郎「はぁぁぁ!!」

 

玉樹「オォラァ!」

 

蓮太郎と玉樹の拳がぶつかり合いお互いに弾き合い距離を取る

間を置かずに2人は切迫するが何処からかジリリリリと甲高い機械音が鳴り響きお互いの眼の前で拳が止まった

 

蓮太郎「っち、終わりかよ」

 

玉樹「そりゃあこっちのセリフだボーイ、時計がならなければ俺の勝ちだったぞ」

 

蓮太郎「いや、俺の勝ちは揺るがなかった」

 

玉樹と蓮太郎はにらみ合い威嚇しあっていた

すると別の方から2人を止める声が届いた

 

 

彰磨「ほら、2人とも、時計がなったんだ、それ以上やる必要は無いよ」

 

影胤「ヒヒヒ、2人ともまだまだやり足りないのなら私とヤろうか?」

 

蓮太郎「断る、お前とやると次は殺されそうだ」

 

玉樹「あんたとやると容赦なくやられるから断る」

 

影胤「ヒヒヒ、それは残念」

 

薙沢彰磨と蛭子影胤は別の場所で蓮太郎たちの様に戦っていた様だったがお互いに目立った傷もなかった

 

彰磨「ところで真莉君はまだ寝てるのかい?」

 

彰磨が言う通り真莉は岩に寄りかかり寝息を立てていた

 

影胤「まぁ、ここら一帯のガストレア共はみんな殺したから安全といえば安全なのだがね」

 

影胤の言う通りここで訓練を行うにあたって辺りにいるガストレアたちは真莉たちが全て排除していた

 

真莉「....んんっ...ふわぁ...終わったのか?」

 

辺りが多少騒がしくなった事を感じ取った真莉は目を覚まして周りを確認した

 

蓮太郎「お、起きたのか...お前は良かったのか?訓練しなくて?」

 

真莉「あ?まぁな、久し振りにゆっくり出来るんだ、当初の予定だと普通に寝る予定だったんだが...夏世に追い出されてな、なんであんな張り切ってたんだあいつら?」

 

玉樹「あ〜、お前もなのか...俺っちも弓月に追い出されてな...それでフラフラしてたらそこのボーイに出会ったわけさ」

 

蓮太郎「うちの延珠は朝早くからいなくなってた、木更さんとティナと一緒にどっか行くって言ってた」

 

彰磨「君たちは本当に分かってないのか?」

 

蓮太郎「彰磨にぃは分かるのか?」

 

影胤「おそらく分かってないのは君たちだけだと思うがね」

 

彰磨は苦笑を、影胤は何が面白いのかくつくつと笑っていた

それを見て3人はさらに頭にハテナマークを付けながらも各々帰宅の途についた

 

 

 

 

side out

 

 

真莉はのんびりと帰り道を歩いていた

辺りは徐々に暗くなり始めてはいるがまだギリギリで明るい

 

真莉「ん?」

 

真莉はピタリと足を止めた

目の前から誰かが走ってくるのが分かった

その走ってきた人物は真莉の腰辺りに抱きつき止まる

そこそこのスピードを出していた為若干真莉は「っう」と呻き声を漏らした

 

腰に抱きついてきたのは...

 

 

真莉「小比奈か...どうしたんだ?」

 

蛭子小比奈だった

 

小比奈「おかえり、真莉...えっと...その...」

 

小比奈はもじもじと身をよじる、心なしか顔も少し紅くなっていた

 

真莉「どうした?」

 

小比奈「えっと...これ!」

 

小比奈は手に持っていた袋を真莉に押し付けた

真莉は若干驚きながらその袋を持った

 

真莉が持った事を確認すると小比奈はそそくさと走り去っていってしまった

真莉は袋の中を確認すると何やらメッセージが書かれたカードと多少いびつではあるが真莉でさえもしっかりと手作りだと分かるチョコレートだった

 

真莉「これは...ふふ、変わったもんだな」

 

真莉は微笑みながら自宅へと足を進めた

 

途中で小比奈が作ったチョコを食べ更に表情を柔らかくさせた

 

 

 

ガチャリと自分の家の扉を開け中にいるであろう家族(プラス居候)に帰った事を伝える

 

真莉「今戻ったぞ〜」

 

そう言うと奥からドタドタと大きな足音を鳴らしアカネが飛び込んできた

 

アカネ「お兄ちゃんおかえり!!」

 

真莉はアカネをしっかりと抱き留める

 

真莉「おう、ただいま」

 

アカネに続き残りの2人

アカネと同じ読み方の古火田朱音と千寿夏世が現れる

 

朱音「おかえり、兄さん」

 

夏世「お兄さん、お帰りなさい、今日はすみませんでした」

 

真莉「おう、ただいま...気にしてねぇよ、なんらかの用事があったんだろ?別にそれはそれでいいさ」

 

真莉はアカネを下ろし靴を脱ぎ家の中に入る

 

真莉「今日の夜ご飯はどうする?」

 

アカネ「お兄ちゃん!」

 

真莉が提案するとアカネは大声を出し真莉の意識をこちらに向かせる

 

真莉「あん?」

 

真莉は首を傾け何事かという空気を出した

すると夏世を除く2人がサッと何かを取り出した

 

真莉「これは...チョコか?」

 

アカネ「うん!今日ってバレンタイン?デー?何でしょ?だから大好きなお兄ちゃんにチョコをあげる!」

 

朱音「ごめんね兄さん、私がこないだ教えちゃったんだ...ってことで私からもはいこれ!あ、言っとくけど本命だからね!忘れないでね!」

 

朱音はそっぽを向きながら言うが頬はほんのり紅みがかっていた

それに我慢できなかったのか何かをぶつぶつ言いながらダッシュで二階に上がっていってしまった

 

真莉がそれを見ているとクイッと服が引っ張られるのを感じその方向を見ると夏世が顔を紅く染めながら両手で持ったチョコをこちらに向けていた

 

真莉は内心でふふっと笑いながらそれを受け取る

受け取った拍子に頭を撫でてしまいそれを見ていたアカネが私も撫でろと騒ぎ始め大騒ぎになってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

夜ご飯も食べ終わり風呂も入り終わって皆が寝る時間

全員自分の部屋に入り寝入った頃真莉はまだ起きていた

 

もらったチョコを少しずつ食べ進めていた

 

真莉(うまいっちゃうまいが...いかんせん量が多いな...まぁこれは全部しっかりと味わって食わなければならないから頑張らなきゃな)

 

真莉は机の上に置いた4枚のメッセージカードを一つずつ声には出さずに読んでしっかりとチョコを完食しようと胸に決めたのだった

 

 

 

 

小比奈【いつもあそんでくれてありがとう!そしてパパをたすけてくれてほんとうにありがとう!!】

 

 

 

 

朱音【このチョコは今まで会えなかった分の想いも一緒に詰めたから味わって食べてね!いつもありがとう!兄さん!】

 

 

 

アカネ【いつもべんきょうとかをおしえてくれてありがとう!これからもよろしくお願いします!!お兄ちゃん!大好き!】

 

 

 

 

夏世【死ぬはずだった私を助けてくださったこと、一生忘れる事はありません、本当にありがとうございます...大好きです、これからもよろしくお願いしますね、お兄さん】

 

 

 

真莉「ま、やるだけはやるさ...しっかりとな」



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「外伝」お正月

新年明けましておめでとうございますm(__)m
(え?今ごろ?)

新年からちょい忙しいですわ...なんなのん?これ?

今年は更新頻度をなんとか上げていきますよ!


ごーん...ごーん.....ごーん...

 

遠くの方から大きな鐘の音が聞こえて来て少女、古畑アカネは微睡みから眼を覚ました

 

ふと両側に違和感を覚えまず右側を見る

そこには金髪のツインテールで普段のパンクファッションとは離れたワンピースを着た少女、片桐弓月が右側に抱きつき眠っていた

では左は?

そう思い左の方を見るとそこには最近何かと一緒にいることが増えた元気印の赤髪のツインテールの少女

藍原延珠がアカネの左から抱き着き眠っていた

ただ眠っているだけだったらよかったのだが...

 

アカネ「(っちょ!?よだれよだれ!?)」

 

延珠は何か良い夢を見ているのか口元は緩みよだれが垂れそうになっていた

なんとか身を捩りよだれの攻撃をかわしたアカネは二人を起こさないようにゆっくりとベットから抜け出した

 

アカネ「(眠っちゃったんだ...)」

 

アカネは眠る前までの行動を思い出し少し伸びをしてふと時計を見る

時刻は00:10と表記されていた

 

アカネ「(最後に時計見たのって確か21:00だったよね...)」

 

アカネは降り慣れた階段をゆっくりと降りる

リビングの方からは談笑が聞こえみんなが起きている事を教えてくれた

アカネは口元に笑みを浮かべながらリビングの扉を開けそこにいるみんなに挨拶をした

 

アカネ「みなさん!明けましておめでとうございます!」

 

 

 

今日の日付は1月1日新たな年がつい10分前に始まったのだった

 

 

 

 

 

 

みんながそれぞれアカネに挨拶を返してくる

アカネは嬉しそうにしながらリビングの端の方にあるコタツへと一直線に進んだ

そのコタツにすでに入っていたのは天童民間警備会社の社長、天童木更

その天童民間警備会社に所属しアカネがライバルだと思っている金髪のふわふわ少女、ティナ・スプラウト

 

それと家の中では帽子を被らなくなりガストレアウイルスにより生えた新たな耳をピコピコ動かしコタツの魔力に魅了されている少女、布施翠がコタツに陣取っていた

空いてる場所に自分の体を入れあったまる

すぐにコタツのじんわりとした温かみが広がりアカネはふぃぃぃと息を吐いた

 

それを見た木更はふふっと笑いアカネに言った

 

木更「ふふ、アカネちゃん、なんか年寄りくさいわよ?」

 

アカネ「だってぇぇ、寒いんだも〜ん」

 

アカネもコタツの魔力にやられているのか言葉のそこらかしこで間延びしている

 

ティナ「そうは言いますが木更さんも入った時そんなようなこと言ってましたよね?」

 

ティナのまさかのフレンドリーファイアにより顔を赤くした木更は顔を覆い突っ伏した

それを見た翠とアカネは笑いあった

アカネはある人物がいないことに気づいた

 

アカネ「あれ?男の人たちは?」

 

ティナ「真莉さんとお兄さんは二人で買い物に行きました、何か足りないものがあったとかで大急ぎで行きましたよ」

 

翠「彰磨さんと玉樹さんも付いて行きました、それぞれが別々の物を買いに行こうとのことでしたので、多分もうそろそろ帰ってくると思いますよ」

 

翠の言葉の後にすぐにアカネの耳が何かの音を捉えたのかピクピクと反応した

 

翠「どうやら帰ってきたみたいですね?」

 

ガチャリと玄関のドアが開きそこからただいま〜と声が4種類聞こえてきた

アカネはそれだけで嬉しくなりコタツから飛び出し玄関へと駆け出しある人物の胸元に飛び込んだ

 

アカネ「おかえりなさい!お兄ちゃん!明けましておめでとう!」

 

アカネにお兄ちゃんと呼ばれた人物...古畑真莉は笑みを浮かべて飛び込んできた少女を抱きとめた

 

真莉「おう、明けましておめでとう...起きたんだな」

 

アカネ「うん!」

 

そのやり取りを見ていた他の三人は微笑みを浮かべながら言った

 

玉樹「おう、寒いからそこどいてくんねぇかな?ってか嬢ちゃんが起きたってことはうちの弓月も起きたのか?」

 

アカネ「あ、いたんだ、グラサン...ゆずちゃんはまだ寝てるよ」

 

玉樹「...俺に対してだけ辛辣すぎねぇかおい」

 

彰磨「まぁまぁ」

 

彰磨はそんな玉樹を慰めながら家の中に入って行った

その後ろを蓮太郎が何かブツブツ言っていたが聞き取れなかった

真莉は苦笑しながらアカネに言った

 

真莉「寒いだろ、早く中に入るぞ...騒がしいガキンチョどもも起きたようだしな」

 

アカネ「うん!」

 

中ではぎゃあぎゃあと騒ぎ声が聞こえてきた

どうやら眠っていた二人も起きたようだった

騒がしい1日が今始まった

 

 

 

 

 

 

ざわざわざわ

辺りからざわざわと騒がしくなってきた

今真莉たちは神社にいた

初詣に来たのだ

 

木更が初詣に行きたいと駄々をこねた為数名が渋々とついて行った

 

ちびっ子軍団は元気が有り余っているようであれ食べたい、これ食べたいなどはしゃいでいる

何故か同じようにはしゃいでいる天童木更もいたが...

 

 

真莉「さみぃ...なんで俺がこんなとこに来なきゃなんねぇんだよ...」

 

彰磨「まぁまぁ、真莉、しょうがないだろう、彼女たちにはある意味では勝てないだろう?」

 

真莉「まぁそうなんだが...それよりも薙沢、お前そんな格好で寒くねぇのかよ?」

 

薙沢彰磨の格好はいつものロングコートのようなものにマフラーを巻いただけの簡素な格好だった

 

彰磨「まぁ、寒くはあるな、だがこれしきなら平気だよ」

 

真莉「そうかい...はぁ、さみぃ」

 

蓮太郎「お前ってそんな寒がりだったっけか?」

 

蓮太郎は両手に色々持って戻ってきた、どうやら買わされたようだ

あまり金に余裕が無いのによく買うものだ

 

真莉「俺は元々寒がりだ...」

 

玉樹「意外な弱点っていう奴だな、完璧超人だと思っていたがな」

 

金髪にグラサン、パンクファッションと見た目完全に不良のような青年、片桐玉樹がふらっと寄って来た

 

真莉「まぁ誰にでも苦手なものはある...完璧超人なんてこの世に存在しねぇんだよ」

 

そうやって話していると遠くからちびっ子軍団が真莉達を呼んでいるのが聞こえた

真莉は「迷惑になんだろうが」と呟き片手を上げ歩きを早めた

 

 

 

やがて本堂の近くになり自分たちの出番が来た

それぞれに賽銭を渡しやり方も教えた

まぁ多少間違えても微笑ましいものだなと蓮太郎は思う

全員では出来ないので男性陣と女性陣で別れて参拝する事にした

先に女性陣をやらせてすぐに男性陣が参拝に入る

 

1分にも満たない様な短い時間で全員顔を上げる

それぞれの表情は多少の違いはあれどみんながみんないい表情をしていた

 

 

 

その後家に帰りみんなでおせちを食べたりお餅を食べたりして正月は過ぎて行った

 



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第3章《VSアルデバラン編》
第1話


今回から新章、アルデバラン編です!
今回は原作をほんの少しだけ変えてるだけでほぼ原作です、最後らへんを除いて

楽しんでもらえると嬉しいです!


 

蒸し暑い夜の見回りほどうんざりさせられるものはない

 

肩に食い込む帯紐で重い小銃を吊ったまま、すでに歩き詰めで二時間、日課とはいえとうに集中を切らしている

 

首に巻いたタオルで拭っても拭っても汗が噴き出し、時折ねっとりとした微風にした草が揺れるが、分厚いコットン地の迷彩服の下の肌はわずかな涼すら感じられない

たった一人、ザクザクとジャングルブーツの底で地面を踏みしめながら歩く陸上自衛官・佐藤良房三曹(さとうよしふさ)は今日もまたパトロールに出ていた

 

先輩たちにカードゲームで負けて見回りを押し付けられるのは三日目になる

歩きながら、調子悪く明滅する電灯を鬱憤を込めてガツガツと叩く

やけになって思い切り力を込めて叩くと不意に点灯、よしと思いながらライトで周囲を照らしていく

 

彼、良房がパトロールしているのはこの狭い世界の天国と地獄を分ける境界だった

良房から見て左手側にはライトの光が届く限り林が続いており、そして右手には一面の漆黒の壁面が垂直に立ちはだかっていた

 

良房は立ち止まり、一分間だけ空を見るが、空をも壁が貫いて屹立しており、その根元付近にいる良房から頂が見えない

 

『モノリス』

 

縦に一.六一八キロメートル、横に一キロメートルもある長方形の巨大なバラニウムの構造物、闇よりもさらに濃い黒光りする金属塊だ

 

こんなものが十キロおきに建って万里の長城よろしく無虜何百キロも東京エリアを取り巻いているのだ

 

物思いにふけっていたその時、何かが高速で目の前を横切っていくところだった、草むらに飛び込む寸前にそれがネズミだとかろうじて判別がつく

心臓がバクバクと鳴り、束の間、息の吸い方を忘れて激しく喘ぐ

良房は首を振る、馬鹿馬鹿しいと、俺は何を怯えているんだと

 

十年前のガストレア戦争からこの方、ステージV以外のガストレアが真正面から侵入に成功したことなど、一例たりともないのだ

思考を断ち切ろうとしたその時、不意にツンとくるほどの汚臭が鼻腔に運ばれてきて鼻を押さえた、どぶのようなひどい臭いだ

 

その時、頭上から肉食獣の荒い呼吸めいた声が聞こえ、良房の総身が強張る

 

噴出す汗の種類が変質している、先ほどまでは蒸し暑くて仕方がなかったと言うのにいまはとてつもない寒さと寄る辺のなさに嘔吐官すら覚える

 

パニックに陥らないように一呼吸置くとゆっくりとライトをそちらに向ける

ぬらぬらと光る代表がライトを反射して良房の網膜に映る

ライトを取り落とし、直後に下肢から力が抜け膝から崩れ落ちそうになった

 

良房「あ.....あ.....」

 

良房のいるモノリスの根元付近から50メートルほど直上に巨大な生き物がいる

天を覆い尽くさんばかりに巨体が視界いっぱいに広がり、モノリスに取り付いていた

 

闇の中、シルエットの胸郭が上下、凄まじい熱量を持って、吐き出す息が重低音を伴いながら大気を振動させている

ここからでは縮尺が掴みづらいが大きさにしてジャンボジェットほどもあるのではないか

 

良房「そんな....ガストレア.....なのか?」

 

わけもわからぬままに、さらに異常事態は加速する

突如、夜天に銃声が一発木霊する、すぐに怒声と悲鳴が連鎖し、銃声が断続的に続く

銃声は良房の正面、自衛隊官舎からした、モノリスのすぐ内壁に設営されている良房たち自衛隊員の家でもある場所だ

 

『敵襲』

 

良房は呆然と立ち尽くす

自分の頭が変になったとは思えなかった、だが、異常事態の連続に対して脳に合理的な解釈を与えることができない

ハッとして我に変えるとともかく官舎に全力で走り扉に体当たりをして中に飛び込む

 

そこには....

 

 

 

 

 

倒れた仲間の隊員たちの体をむさぼっていた

 

 

怪物はアリの姿をしていた、だが、ただのアリではない

ガストレアウィルスの恩恵で肥大化した体は四つん這いでも良房の胸元まである、巨大アリのガストレア、モデル・アントである

 

アリたちはおぞましい饗宴を止めてL字型の触覚ごと頭部をこっちに向ける

良房は呆然と、もう何度目になるかわからない『どうして』の疑問を宙に投げる

モノリスには、絶対に地上ガストレアは近付けない、その定説が最も忌むべき形で眼前で蹂躙されている

ただ一つわかるのは自分が想像していた以上の最悪の事態が起ころうとしていると言うことだ

 

良房「仲間を、放せええええ!!」

 

怒りに任せて肩に担いでいたライフルのトリガーを絞る、派手な銃口炎を上げて傍らのアリの右目を吹き飛ばし、天井にガストレアの破片が飛散、付着

ほとんど条件反射に至るまで研鑽された良房の水際立った動きは次の標的を求め、連続で発砲、着弾と共に凄まじい悲鳴をあげるガストレアに後退しながら連続で浴びせていく

 

勝てる

そう思った瞬間、不意に背中に悪寒が走る

反射的に右に飛んで顔をあげると、たったいま良房が居た空間をアリの凶悪なハサミが通過したところであった

何事かと思って照準具から顔をあげるとそこには絶望があった

 

いつの間にかモデル・アントのガストレアが良房を取り囲んでいる、その数は百はくだらない

 

その瞬間突如何処からか大きな、それでいて軽めの声が響く

 

「伏せててね〜、じゃ〜ま」

 

良房はその声に即座に反応し伏せる、瞬間

 

ぐしゃっと音がし良房の目の前にモデル・アントの首が転がってくる

ヒッと良房は小さく悲鳴をあげる

ゆっくりと顔をあげるとそこには紅蓮の髪をし紅蓮の瞳を持った自身よりまだ若い、恐らくは学生であろう青年であった

 

その青年はこちらをちらりと見てすぐにモデル・アントの軍団に顔を向ける

 

「ん〜...違和感を感じてきてみたけど...こうなってたか、もうこのモノリスはダメっぽいね〜...そこの君、さっさと聖天子だっけ?に伝えたほうがいいよ、このままじゃ恐らく一週間弱でこのモノリスは崩壊するよ、ここはボクがやっとくから」

 

青年の言葉に驚愕な表情を見せる良房

 

良房「ダメだ!君も逃げなければ!」

 

「ん〜めんどくさいなぁ...さっさと行ってよ、邪魔だから」

 

こちらを向かずに言い放つ彼を見て良房は恐怖を覚える

赤目となれば呪われた子供たちを連想させるが彼は男で青年、どう考えても勝ち目がない

 

ならばこの場はこの子を生贄にすれば自分は生き残れるのではないか?

ふとそう考えつく、すぐに頭を振りその考えを打ち消そうとするが一度考えてしまった自身が助かる道を捨てることができないでいる

 

「はぁ、どうでもいいから早く行けって...君から食っちゃうぞ」

 

軽めな口調とは裏腹に殺意のこもった目を向けられた良房は先ほどまで動かなかった体が跳ねるように動く

 

怖い

ただそれだけだった、ただ一言言われただけで今まで感じたことのない程の殺意を感じた

良房はすぐに走り出し震える手で電話を取り自身たちの上司に連絡を入れたのだった

 

 

 

 

 

 

その数十分後、現場に現れた自衛隊の集団は周囲の惨劇に唖然とする

 

辺りには血とみられるものやモデル・アントの首やら触手やらが散乱しそこらかしこの木が全てなぎ倒されていた

 

自衛隊員たちは辺りを警戒しながら状況を把握していたがすぐにモノリスの異変に気付き聖天子に連絡したのだった

 

 

 

 

 

「ん〜、あのガストレアは確か.....タウロスだっけ?あの子の側近的なやつだったよねぇ〜.....めんどくさい相手だなぁ、今回ばかりは『全開放』でもしないとキツイかもよ?考えておいてね、全てを捨てる覚悟を...」

 

青年、真莉の中に潜むガストレア、キャンサーはそう言うと瞬時にその場から消えた辺りには自衛隊たちの騒音だけが木霊していた



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第2話

遅れて申し訳有りません(>人<;)

今回も全然話が進みません(^_^;)

どないしよ...


里見蓮太郎、古畑真莉、天童木更の背後には黒板があった

直上には太陽が、足元には芝生が、そして正面には蓮太郎の苦手な子供がいた...それもうじゃうじゃと

 

左隣を見るとカチコチに緊張した真っ黒セーラー服少女、天童木更が直立不動の体制で口元を引き結んでいる

逆を見ると大きくあくびをして今にも寝そうな黒のシャツにジーパンというラフな格好をしている

 

蓮太郎は覇気のない瞳でもう一度正面を見る

子供達が好奇心を隠そうともせずにこちらを見上げていた

彼らは芝生に直接体育座りをしており、机がわりに渡された長い板切れの上には鉛筆と消しゴム、ノートが広げられている

 

蓮太郎は肘で木更の脇を小突き小声で語りかける

 

「どっちから自己紹介するよ?」

 

「さ、里見くんからお願い、私、緊張で口から心臓が飛び出しちゃいそう」

 

「それはそれで見てみたい気もするが...まぁ良いや、とりあえず蓮太郎、俺から行くわ」

 

木更の声は細かく震えていた、それを見た真莉は面倒くさそうに頭をガシガシと掻き一歩前に出る

 

真莉は子供達の顔を見渡しながら話し始める

 

「よし、今日からお前たちの先生をやることになった、古畑真莉だ、よろしくな」

 

軽く手を挙げ挨拶する真莉だったが子供達は反応を示さずにじっと真莉の方を見つめている

(他にもなんか言えってか...)

 

「ん〜...趣味は特にないな、いや、料理を作るのが趣味?なのか?まぁそんなところだ、一応自己流の戦闘術、及び格闘技も出来る」

 

真莉がそういうもの未だに無言、それを見て何かを悟った真莉ははぁとため息をつく

 

「.....何か質問のある子はいるか?」

 

『ハイハイハイハイハイハイハイハイ!!!!』

 

途端にクラス全員が猛烈な勢いで手を挙げ、そのあまりにも無軌道な元気っぷりに真莉は苦笑し蓮太郎は改めてうげっとした顔をする

空に雲はなく、青空、風はなく航空機が飛行機雲を引きながら通過して、空に轟音をまき散らしている

太陽に掌をかざし、目を細める、3人は東京エリア外周区展第三十九区、青空教室に真莉たちはいた

 

「頑張って下さ〜い、先生方〜〜」

 

ふと、生徒たちのさらに後ろ側から間延びした声が聞こえてくる

蓮太郎は恨みがましい目でそちらを見ると、折りたたみ椅子に腰掛け喜色満面で撞木杖を振り回している男性がいた

 

百六十にも満たない身長、薄く日焼けした肌には苦労を重ねた深いシワが刻まれている

 

外周区のマンホールチルドレンたちの保護者を買って出ている初老の男性で名前は《松崎》と言い蓮太郎は蛭子影胤テロ事件の際、延珠共々世話になっていた

 

真莉もこの男性とは面識があるようであった時にはお互いにお久しぶりと話をしていた

 

蓮太郎はなぜ自分たちなのだろうと思いながら首を傾け、生徒たちの中に混じってニコニコと手を振ってくる藍原延珠に視線を向けた

隣のティナ・スプラウトは大胆にもホームルームの時間から机に突っ伏して寝ていた

 

それをなんとか起こそうと必死に揺すっているアカネは大変そうだった

 

『里見さんと天童さん、古畑さんに外周区の子供達を教えてやってほしいのです』

 

延珠たちを外周区の小学校に入学させて数日経って

突然松崎からそう切り出された

提案を受けた直後、3人は困惑した

 

「どうして俺たちに先生なんてやらせようと思ったんだよ?」

 

松崎は笑顔を崩さない

「いえね、私ほどの老骨になると教え方がいまいち古くなっていけません、新しい風を入れたいんですよ

ご覧の通り新しい先生は外周区には来ないし、ウチは半分ボランティアの形で運営されている吹けば飛ぶような学校です

現役の学生さんである里見さんたちにぜひ教鞭を摂っていただけないかと」

 

木更の眉が八の字にして手をこまねいてしまう

 

「私たちだって学校があるわ」

 

「まぁ確かにな、俺的にはあの場所は行かなくても良いんだが....あいつらが良しとしねぇだろうしな」

 

「はい、ですので土日の空いている時間だけでも、何卒お願いできないでしょうか?」

 

3人は困惑して顔を見合わせた

 

 

 

『『『ハイハイハイハイハイハイハイハイ!!!!』』』

 

かまびすしい声に我に帰る蓮太郎、少女たちの剣山のような挙手攻勢がまだ続いており真莉がそれに答えていた、見るからに疲労が見えていた

 

二十人からなる女生徒たちの服はボロボロでいつ風呂に入ったともしれない汚い身なりをしている

それも当然で生徒は皆、外周区に捨てられた『呪われた子供たち』と呼ばれる女児なのだから

 

真莉が女児たちのパワーに若干ながら押されていると横から蓮太郎が出てくる

 

「よし!ガキども!俺は里見蓮太郎だ!俺がなんでも答えてやるよ...じゃあまずはそこ!」

 

「はい!先生!先生は延珠ちゃんと結婚を前提に同棲してるって本当ですか?」

 

いきなりヘビー級もびっくりなパンチが飛んできて蓮太郎は呻く、その隙に

 

「おう、そうだぞ、こいつは延珠と結婚秒読み状態だ」

 

真莉のまさかのフレンドリーファイアで女生徒たちは更にテンションが跳ね上がる

 

「待て待て!真莉!テメェ何言ってやがる!んなわけねぇだろ!居候だ居候!....ったく、はい、次!」

 

「里見先生って呼べば良いんですか?蓮太郎先生って呼べば良いんですか?」

 

蓮太郎はなんだそんなことかとほっとしながら蓮太郎は顔の前でさっと手を振る

 

「まぁ、好きに呼んでくれ」

 

「変態!」

「ロリコン!」

「不幸顔!」

 

「ぶっ飛ばすぞテメェら!!」

 

そんなやかましく騒がしい時間はだんだんと過ぎて行くのであった



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第3話

pixivの方にもこれとは別に俺ガイルのオリ主作品を投稿しており、こっちを投稿したらつぎはpixivの方というやり方をしているので登校が遅れてますが良ければこの作品もこのまま愛してやってください(苦笑)

それではVSアルデバラン編、第3話をお楽しみくださいm(__)m

駄文に注意でござる(^_^;)


 

様々な質問に対応した蓮太郎はなかなかの疲労度だったが途中で木更に代わったり真莉に代わったりとなんとかひと段落していった

 

今現在の質問は木更の学校の事だった、木更の学校、美和女学園(みわじょがくえん)の話になりそこに聖天子も在籍していると説明をする木更だったが歓声が上がる少女たちの中から申し訳なさそうに肩を丸めた女生徒の一人がおずおずと手を上げる

 

「私、聖天子様見たことない...」

 

それを聞いた木更は顔を暗くする

 

「.....あら」

 

「聖天子様とはあんな奴だぞ!」

 

延珠が立ち上がって指差す方向を、なにを馬鹿なと思いながら蓮太郎たちは振り返ると...飛び上がりそうになった

 

 

草原の二十メートルほど向こうの路肩に停車したリムジンの中からいままさに聖天子が降り立ち、レース付きの日傘を片手に一直線にこちらに歩いてくる

ウェディングドレスに似た白い礼装に身を包んだ絶対的な美貌の持ち主、間違いなく本物の聖天子だった

 

蓮太郎や木更だけでなく、珍しく真莉も驚いた表情をしていた

聖天子は絶句している蓮太郎を尻目にさっと横を通り抜けて生徒たちの前に立ちにっこりと微笑んだまま小さく手を振る

 

「ごきげんようみなさん、勉強は楽しいですか?」

 

生徒たちは口を開けたまま固まってしまった

 

「ふぁ?」という声を上げていままで寝ていた二人、ティナと夏世が目を覚ました

やがて聖天子は振り返り真っ直ぐ三人を見る

 

「里見さん、天童社長、古畑さん、国家の存亡に関わる非常事態です、あなたたちにお願いがあります」

 

聖天子の言葉に三人の表情が変わった

 

 

 

 

ハッピービルディング三F、天童民間警備会社事務所内には、重い沈黙が流れていた

応接ソファセットの向かいには聖天子、ガラステーブルを挟んで反対側ニの二人掛けソファには蓮太郎と木更が並んで座り、その近くの真莉が実費で買ったリクライニングチェアに真莉が座り真莉の肩にアカネが、膝にはティナと夏世が座っておりバランスを取るのが大変そうになっている

 

真莉の実妹の朱音は全員分のお茶を用意しにキッチンに向かった

朱音が戻ってきて全員分のお茶を配り終えようやく話が始まった

 

しばらくして話を聞き終えた面々は渋い顔をした

チリンチリンと場違いに澄み切った風鈴の音が室内に響く、不快な顔の汗を拭う、抑えたこめかみは熱く脈打っていた

蓮太郎はゆっくり首を振りながら顔を上げる

 

「聖天子様、確認させてくれ、あと六日でモノリスが倒壊してガストレアが乗り込んできて、東京エリアはパンデミックで壊滅するんだな?」

 

「なにも対策を打たなければそうなります」

 

蓮太郎たちは改めてガラステーブルの上に広げられたモノリス白化写真と目をそらしたくなるおぞましいガストレア頭部の写真を見た

 

「昨日たまたまニュースを見たが...モノリスに近づいたガストレアはすぐ追い払えたと言ってたような気がしましたが?」

 

真莉は聖天子を見て言う

 

「マスコミの方には、事情を話して協力していただきました」

 

「言論の自由が聞いて呆れるな」

 

「いま東京エリアが昨日不全に陥るのは里見さんたちも望まないはずです、知るべきではない情報、毒にしかならない情報は私の元で管理させていただきたいのです」

 

「独裁者も、あんたとそっくりのこと言うぜ」

 

「おい、蓮太郎...」

 

「ちょ、ちょっと里見くんッ?」

 

聖天子が「構いません」と言いながら小さく首を振る

 

「どちらにせよ、数日のうちにはモノリスの白化が遠方からでも確認できるようになります

いま、アルデバランの号令の下、モノリスの外にガストレアが集結しつつあります、最終的には集結したガストレアは二千体に及ぶと予想されています」

 

「二千体!?冗談でしょッ!?」

 

木更の驚愕に蓮太郎も深く俯き、流石の真莉も表情を曇らせる

 

「無茶だ、殺される、全滅だ...」

 

「それが起こらないように、私たちも全力で奔走しているのです」

 

真莉はふと考えた事を言う

 

「アルデバランは....何で近くまで来れた?」

 

真莉の言葉に聖天子はゆっくりと首を振った

 

「私にもわかりません、現在調査中です」

 

「え?どういう事?」

 

木更が困惑の声を上げる、それに答えたのは蓮太郎だった

 

「木更さん、アンタ、アルデバランについてどれくらい知ってる?」

 

「えーっと、確か結構早い段階から確認されている ステージIVのガストレアで、ガストレア同時多発的に暴れまわった十年前、アジアを中心に猛威を振るった個体よね?」

 

「何でアルデバランなんて識別コードが与えられてるか分かるか?」

 

「それは...知らないけど....」

 

真莉は膝に乗っていた二人と肩に乗っていたアカネを下ろし立ち上がり話す

 

「アルデバランはステージV・金牛宮(タウロス)にいつもくっついて現れた古参のガストレアだ

タウロスは群れで行動していた珍しいステージVでアルデバランは奴の右腕的なポジションにいたんだ、だから十二星座の牡牛座の中で一番明るい星であるアルデバランの名前が個体識別コードに据られたらしい」

 

「で、でも、古畑くん、タウロスって確か...」

 

聖天子がその疑問を引き取って頷く

 

「その通りです、十一体存在するゾディアックガストレアの中で、現状四体の撃滅が確認されています

一体は里見さんが倒した天蠍宮(スコーピオン)、一体はドイツのイニシエーターにして現在の序列二位が倒した処女宮(バルゴ)

そして一体は古畑さんのお父様でいらっしゃる古火田一族、現当主の古火田和眞さんが倒したとされる人馬宮(サジタリアス)

最後の一体はかつて無敵のガストレアと恐れられていた金牛宮(タウロス)の軍団は現在序列一位、世界最強のイニシエーターによって撃滅が確認されているのです、そして、一番重要なのはアルデバランは完全体(ステージIV)であってステージV(ゾディアック)ではないという事」

 

木更は口に手を当て「あっ」と小さく漏らす

 

「アルデバランはステージIV、本来ならステージV以外のガストレアはモノリスの磁場の影響を受ける、中に入ってくる事はおろか近くに寄ってくる事すら出来ないはずだ」

 

真莉は淡々と言うが目は何かを見据えているようだった

 

「でも、アルデバランは現実にモノリスに取り付いてバラニウム侵食液を注入して撤退している.....」

 

「そう、それなんだよなぁ...ありえない事が現実に起きてる...それなんだよなぁ」

 

木更も考え込んでしまった、蓮太郎は「ただ」といって聖天子を見る

 

「そっちはわからないけど、アリの一件はきっと陽動だったんだろうな」

 

「陽動、ですか?」

 

聖天子たちは目を白黒させる、真莉は成る程と頷く

 

「里見さん、それは考えられません、幼体(ステージI)ではモノリスへの侵入は不可能です、入ってこれないガストレアは陽動には使えません」

 

「聖天子様、アンタ、『アリの自己犠牲』って知ってるか?

南米のアリの一種は日暮れどきになると巣を守るために巣穴を覆って塞ぐんだけど、その際働きアリのうち何匹かが外に残って外から作業を行い、翌朝までには死んでしまう

つまり、巣というネットワークを守るための捨て石として職務をまっとうするんだ」

 

「里見さんは、自衛隊施設を襲ったモデル・アントの行動は自己犠牲の末のものだとお考えなのですか?」

 

「そうとしか考えられねぇだろ、百歩譲って完全体(ステージIV)がモノリスに取り付く事ができる何かがあって末端の幼体(ステージI)まで侵入できるはずが無い」

 

体内にガストレアウィルスを保菌しているだけの『呪われた子供たち』でさえ、モノリスに至近距離まで接近すると体調が悪くなったり、失神したりする場合がある

ステージIのモデル・アントならば、自衛隊や真莉の肉体を使ったキャンサーが殲滅するまでもなく放っておいても磁場の影響で衰弱死しただろう

 

「つまり奴等はアルデバランがモノリスに取り付いてバラニウム侵食液を注入するまでの時間を稼ぐためにモノリスを突破したんだ、自分たちが死ぬ事は百も承知でな」

 

「随分と...組織的な行動ですね.....今までになく、統率がとれている.....」

 

今まで黙っていた真莉が口を開きある事を告げた

 

「そりゃ統率が取れるだろ、アルデバランは特別な『フェロモン』を使う、それによって周りのガストレアを自在に動かしてるんだ、めんどくせぇ相手だな.....」

 

「何故、古畑さんはそこまで知っているのですか?」

 

「.....まぁ、昔一度だけやりあった事があるだけだよ...」

 

真莉の言葉に一同は驚愕した、蓮太郎が驚きながらも真莉に聞く

 

「結果は?」

 

真莉はその言葉に遠くを見て言う

 

「アルデバランが生きている事で察しろ.....俺が負けたんだよ....全くダメージを与える事もなく完膚なきまでに、俺の負けだ」

 

一同に更に重たい雰囲気が流れた



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第4話

UAが3万超えてて唖然としました(笑)

みなさんいつもありがとうございます!

なるべく早く登校できる様に頑張りますね!!


 

真莉の言葉に一同はシーンとしてしまう、だが、それを受けても真莉はさして態度を変えずに聖天子に言う

 

「そんで?聖天子さまは何の目的が?」

 

真莉の言葉に聖天子は静かにお茶に口をつけ顔を上げる

風鈴がなり、その隙間から新調されたクーラーの動作音が室内に響く

 

「里見さんに『アジュバント』を結成して欲しいのです」

 

「アジュバント?」

 

真莉と蓮太郎は首をかしげる、蓮太郎が隣を見ると木更が緊張に体を強張らせている

どうやら木更にはアジュバントとやらがわかるらしい

 

「木更さん、何だよ?そのアジュバントってのは?」

 

木更が愕然とした表情でこちらを見る

 

「ちょっと里見くん?『アジュバント・システム』知らないの?

え?古畑くんも?民警許可証(ライセンス)取るとき座学で習ったじゃない」

 

木更の言葉に蓮太郎と真莉は同時に答えた

 

『しらねぇよ(しらん)座学なんて寝てた』

 

木更が呆れたと言って額に手を当てながら続ける

 

「政府は緊急措置として民警を、自衛隊組織に組み込んで運用することができるの

アジュバントは部隊を構成する民警の分隊システムの事よ」

 

「分隊システム?俺にチームを組んで戦えってことかよ?」

 

聖天子はその通りですと頷きそのまま続ける

 

「アジュバントはチームリーダーの上にそれを統率する軍団長を置いて戦います

つまり、『蛭子影胤テロ事件』の際の依頼形式とは全く異なるものなのです

現在私たちは大規模な民警の部隊を組織するため主要な民警会社に呼びかけています、里見さんたちにも民警分隊のチームリーダーとなるためにメンバーを集めてもらい、来るガストレアとの決戦に参加して欲しいのです

里見さん、古畑さん、代替モノリスの建造着手までの三日間、崩壊したラインから侵入してくるガストレアを一体残らず迎撃して欲しいのです」

 

聖天子は膝の上で手を重ねると背筋を伸ばした

 

「突然のことで混乱しているのはわかります、しかしお願いします!里見さん、古畑さん、国家のために、今一度力を貸していただけませんか?」

 

 

 

「大変なことになったな...」

 

「まぁ予想外っちゃ予想外だな」

 

蓮太郎は両手をポケットに突っ込んだまま、真莉は視線を真上に浮かぶ月を見ながら帰路についていた

 

二人は一旦立ち止まり遥か遠くにあるモノリスの方向を睨む

 

十年間も人を守ってきた不倒の壁、強固極まる頼もしい壁、人類の叡智が築き上げたモノリスは倒壊する、六日後、確実に

 

二人は再び帰路を急ぐ

蓮太郎の頭の中には一つの事がずっと浮かんでいた

 

『この依頼は危険度を遥かに超えている』

 

そもそもスタンドプレイヤーの代名詞のような民警がチームを組んで戦う?こんな状況でなければ冗談もほどほどにしろと蓮太郎は言うだろう

 

いくら個人の戦闘能力が高くても戦争などの軍団戦では全く意味をなさない、それは近代戦史が証明している

 

蓮太郎の頭にはもうひとつ別の事が浮かんだ

 

自分は延珠に何て言えば良いのか...だ

 

蛭子影胤テロ事件や聖天子狙撃事件の記憶も新しいうちに自分は延珠に命をかけろと言うのか...

 

「なぁ、真莉、どうしたら良いと思う?」

 

蓮太郎の問いかけに今まで上を見ていた真莉は蓮太郎に顔を向ける

 

「主語がねぇからわかんねぇよ...」

 

「俺は...延珠にもう一度命をかけて戦ってくれって言ったほうが良いのかなとな...」

 

真莉はふぅとため息を吐く

 

「そんなもん他人に聞くな、それを決めるのはあいつの保護者であるお前が決めることだ」

 

真莉は淡々と答える

 

「.....お前はあの子達にそういう風に言えるのかよ?命をかけて戦えって、まだ十歳ばかしの子供たちなんだぞ」

 

蓮太郎は少し語気を強めながら真莉に言う、その目はキッと細められ敵意のようなものが見え隠れしている

 

「さぁな」

 

真莉は蓮太郎から視線を外しまた上を見た

蓮太郎はそれを見て抑えきれなくなったのか真莉の胸倉を掴みあげる

 

「お前は!本当に何も考えてねぇのかよ!あの子達を!お前もあの子達を兵器として見てるのか!?」

 

蓮太郎の叫びをその身に浴びた真莉の眼は一気に緋眼に変わり黒の髪が紅く染まりだした

 

「.....離せ、蓮太郎」

 

「ッ!?」

 

真莉の迫力に蓮太郎は気圧され手を離し視線を外す

 

「.....えて....ねぇ.....だろ(ボソリ)」

 

「っえ?」

 

「何でもねぇよ....俺も何かしら考える、テメェもその足りねぇ頭振り絞って考えやがれ」

 

真莉はボソリと何かつぶやいた後足を進めた、少し遅れて蓮太郎も後に続く、意外と真莉の家の近くまで来ていたようですぐに真莉の家の前に着く

 

最近...と言うよりあの戦いが終わった後から蓮太郎たちは真莉の家に居候の様な感じになっている

 

真莉の家はそこそこデカく、蓮太郎と延珠が入ったところでまだまだ余裕がある

真莉が家の鍵を開け蓮太郎と同時に中に入ろうとドアノブを回し開けた瞬間...

 

突然、鋭利な刃物が四つ、蓮太郎に一つ、真莉に三つ突き付けられ流石の真莉もギョッとする

戸口には魔法少女が『五人』立っていた

 

正確には赤穂浪士系魔法少女アニメ『天誅ガールズ』のコスプレをした少女たちである

 

よく見れば刃物に見えたのはオモチャの刀身で、それにマジカルステっけの柄を組み合わせた『ステッキブレード』というおもちゃだとわかる

 

このおもちゃやコスプレ衣装は真莉が延珠やアカネがどうしてもというので買ってあげたものだった

 

「ほ、本当にやるんですか?延珠さん?アカネさん?」

 

天誅ピンクこと、ティナの不安そうな声に、真っ先に反応したのは天誅グリーンの格好をしたアカネだった

 

「もっちろんだよ!お兄ちゃんに可愛いとこ見せようよ!」

 

「そうです、ただでさえわたしはこういう風にしないと近付けないのです、頑張るしかないんです」

 

普段のだるそうな目に力を入れている天誅ブルーのコスプレをした千歳夏世はふんすと鼻息を荒くする

 

そしてその次に天誅レッドこと延珠が胸を張る

 

「何を言う!こういうのに男という生き物はクラッと来るのだ!よし!それでは皆の者!行くぞ!」

 

小さく延珠がいっせーのーでとつぶやくと五人は可愛らしくポーズをとり声をハモらせる

 

『あなたのハートに天誅、天誅♫』

「あ、あなたのハートに...天誅、天誅♫」

 

それを受けいち早く復活した真莉が物凄く緊張しており服の丈が若干合ってない少女、古火田朱音に問う

 

「.....こいつらはまぁわかるが何でお前までコスプレしてんの?」

 

天誅ブラックのコスプレをしている朱音は顔を真っ赤にしてわたわたしながら言う

 

「ち、違うんだよお兄ちゃん!わ、私は嫌だって言ったんだよ!?だけど延珠ちゃんたちがどうしてもって.....「何を言う?朱音だってノリノリに練習していたではないか?」ニャァァァ////やめてぇぇぇ////延珠ちゃん!?////もぉぉぉぉ////」

 

完全に茹で上がったタコの如く真っ赤にした朱音は走って自身の部屋に逃げて行ってしまった

 

真莉ははぁと再びため息を吐き、話はまた後でだなと改めて考えるのであった



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