海の香りと揺れる髪 (RR(れいび))
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1話

書いていくうちに、どんどん月日が経ってしまい気付けばもう8月の後半…!
7月中に出す予定だったんだけどなw
しかも、まだ上だから終わってないし…
とりあえず、見てやってください(*゚▽゚*)


エアコンのおかけで涼しい。

やっぱり、夏の季節の電車は最高だ。

快適に過ごせる電車に揺られながら、窓の外に広がる海の移り変わる変わらない景色を眺めていた。

そのうち視界が悪くなり、気がつけば眠っていた。

目を覚ますと車内アナウンスで車掌が次に止まるのが海夜《かいや》駅だと告げた。

海夜駅は東光大市の中にある。

丁度、俺が降りる駅だった。

レールとタイヤが擦れ合い、お互いに鳴き声を出す。

鳴き止んだ後、ドアが開き、海の香りが一斉に乗車してくる。

ちょっと浮かれ気分で小さなジャンプをしながら電車から降りた。

夏の匂いを吸い込んで吐き出す。

海の匂いはしょっぱくて臭いからあまり好きじゃないけど、海夜の海の匂いはなんだか好きだ。

例えるなら、パン屋に入った時のような感覚だ。

ほんわかと温かくて、幸せな気持ちになる。

そして、なんだか恋しくなる。

 

誰もいないホームでは、歩くたびに足音が鳴り響く。

駅員も観光客も誰もいない。

いるとしたら、のんびりとあくびをする野良猫くらいだ。

改札に切符を通す。

そして海夜へと足を踏み入れた。

東光大といえば、大きな病院があって、空が見えないくらいの高さのビルが立ち並び、3時間いれば一人くらいは芸能人を見つけることができるくらいの大都市というイメージを持たれがちだけれど、そんな訳でもなく市の半分は田舎なのだ。

そんな田舎に中学校からの友達の「聖」が住んでいる。

聖は彼女である「里珠」と同じ高校に行っている。

ちょっと妬ましいという思いもあるが、あの二人の関係は切っても切れないほどに強い糸で結ばれているから、俺は精一杯応援している。

そんな二人に着いたと報告するためにポケットからスマホを取り出す。

電話をかけようとしたとき、道の向こうに大きく手を振っている聖の姿が見えた。

田舎だから障害物がなく、ずっと遠くまで見える。

俺はスマホをポケットにしまい、手を振り返した。

徐々に距離が近づいていく。

そして距離が1mになったとき、お互いに「久しぶり」と言い合った。

里珠とは初めて会うから「はじめまして」と丁寧にお辞儀しあった。

「川清友梧です」と名前も付け足した。

聖が「とりあえず、荷物を家に置きに来なよ」と格好よく後ろを親指でクイクイと指差した。

そして3人で横1列になって歩き始める。

車が全く来ないので、道路を悠々と歩ける。

5分くらい歩くと、「懐かしい」という感覚が消え、昔通りに話していた。

里珠とも完全に打ち解け、気楽に会話することができた。

そして、聖が「ここだよ」と一軒の家を指差す。

里珠は買い物に行ってくると駅に戻った。

建ってから何十年も経っていそうな雰囲気を漂わせているけれど、ヒビやカビが無く、ペンキも塗りたてのような綺麗さだった。

そして、とにかく大きい。

「実はここ、もう何年も使われていなかったから、僕が綺麗にして勝手に使っちゃってるんだ」と聖が少し照れながら言った。

さらに「前までは旅館だったらしいんだけど、過疎化が進んで人が来なくなっちゃったから営業できなくなったんだって」と付け足した。

広い家の中も綺麗にしていて、特に感動したのは部屋から一面に海が見えることだ。

太陽の光を反射してキラキラと光っている。

俺は何でか知らないけれど感動してしまった。

自分の住む街がどれだけ二酸化炭素で汚れていて、どれだけ空が小さいのか思い知らされた気がした。

こんなに自然が豊かなのに近くに高校などあるのだろうか?

気になったので「高校ってどこら辺にあるの?」と聞いてみた。

「海夜駅から東光大駅まで乗って、そこから乗り換えて駅に着いてから歩いて3分だよ」と丁寧に教えてくれた。

ふーん…と自分で聞いたくせに曖昧な返事をした。

そんなやりとりを約1時間もしていた。

 

日が落ち始めた。

 

「明日、どこ行く?」

突然、聖がそんな話を切り出した。

少し驚いた俺は適当に目の前にあった「海」と答えた。

「海か…海はちょっと飽きちゃったかな…」と却下された。

せっかく東光大に来たから、街の方に行ったら面白い施設とか色々あると言われたけど、俺の心は自然を満喫したいという事ばかりで頭が一杯だった。

二人で頭を抱えていると、里珠が帰ってきた。

しかも、友達を連れて。

「道で偶然会ったから連れてきちゃった。友梧も来てるしね。紹介するね。名前は真田心。高校で同じクラスなんだ」

その友達は背は低くもなく高くもなく、長い髪が特徴的で肌が白かった。

本当に肌が白かった。

コピー用紙くらい。

俺は今日だけで他校の知り合いを二人も作った。

そんな事、滅多に無い。

ちょっと浮かれ気分になってきている。

でも、俺は調子に乗ると思ってもない事を言ったり、知らぬ間に誰かを傷つけたりするから一度深呼吸して心を落ち着かした。

 

日が落ちている。

 

「聖、さっきの話なんだけどさ…俺、海で花火するのが夢だったんだ。だから、明日の夜は海に行かせて」と言うと

「いいよ。海で花火は僕も海夜に来てからやった事が無かったな…」と言ってくれた。

「私も行きたい」と様子を伺うように控えめに心が言った。

「大賛成!その方が100%楽しいよ!」と誰よりもビッグボイスで里珠が言った。

「じゃあ、明日1日中、このメンバーで遊ぼうよ」と聖が提案した。

当たり前のようにみんなが頷いた。

 

日が落ちた。

 

「あぁ、もうこんな時間だ。帰らないと…」

心が時計を見て急に焦りを見せる。

「泊まってく?ここは元旅館なんだから部屋なら余る程あるよ」

その言葉に心は動揺していたけれど、後に意を決して笑顔で頷いた。

「ママに電話してくる」

心は部屋を出た。

 

月が出ている。

 

里珠の特製手作りカレーを食べた後、4人でテーブルを囲みトランプをした。

トランプというのは飽きるように見せかけておいて、それなりの時間を食っていく。

時計は11時を指している。

普段なら近所の迷惑に配慮して小声になる時間だけど、海夜はそんな心配ない。

声が枯れてしまうのではないかと思うくらい大声で「やったー」や「うわあぁぁ」などの叫び声をあげる。

遊びは人生ゲームに変わっても、相変わらずの盛り上がりを見せる。

遊びが終わったのは時計が12時を差した時だった。

ちゃんと寝ておこうという意見で満場一致し、広い部屋で眠った

 

月が雲に隠れている。

 

静かに眠っている。

 

太陽が昇り始めている。

 

多分、4時くらいだったと思う。

何かが俺の頬を摩った。

そのせいで俺の静かな深い眠りは終わりを迎えた。

その犯人を探すべく部屋を見回した。

すると中指ほどの大きさの蝶が部屋に入り込んでいた。

虫嫌いな俺は昨日のトランプや人生ゲームに勝るくらいの叫び声で叫んだ。

何事かとドアから三人が一斉に駆け込んでくる。

俺は「虫がいて…」と言うと、緊迫とした三つの顔が呆れ顔に変わり、それぞれの部屋に戻っていった。

 

太陽が光っている。

 

やっぱり海夜の海の匂いは好きだ。

そう思うと同時に悲しみが止まらなくなる。

あの日の事を思い出す。

10年前の事を…

 

 

 

 

 

父と母と弟と俺の4人で家族で海夜に来ていた。

聖の家からはだいぶ遠い所だったけど、海夜の海で遊んでいた。

朝から来て夜まで、ずっといた。

海で泳ぎ、海の家でかき氷を食べ、また海で泳ぐ。

当時は今よりも人がいて、海は混雑していた。

夜になると人が少なくなり、家族で花火をした。

開始から3分、父が異変に気付く。

 

“弟がいない”

 

当時の俺で5歳。

弟は3歳だった。

まだ遠くへは行っていないはずだと、よくある推理小説のような台詞を言った父は懐中電灯で辺りを照らした。

弟は海の中で発見された。

近くに東光大総合病院という世界でも有名な病院に運ばれ、無事、命は救われたが、酸素欠乏症という症状が発生してしまった。

そのせいで弟は中学生になった今でも、急な吐き気や痙攣を起こす事がある。

嫌な思い出がある場所だ。

なのに、なぜか海夜の海が大好きだ。

変な安心感があって、妙な温かさがある。

この包み込まれるような感覚がどこから来るのか、きっとその理由を忘れてしまったんだ。

モヤモヤしながらも、新聞紙を取って丸めた。

勢い良く振り回して、窓の方へと蝶を誘導する。

「さっさとどっか行けよ!」

小さい声ながらも怒鳴りつける。

「おい…行けよ!俺の嫌な思い出と一緒に…」

蝶は窓からギラギラと照り続ける太陽に向かって消えていった。

太陽というのは大きくて、世界中のみんなが知っている。

俺なんか太陽から見たら蟻くらい小さくて、太陽から見た蟻なんかもはや微生物だ。

そう思うと、自分がどんなに上に立とうとも、偉く振舞おうとも何だかちっぽけに見えてきて泣きたくなる。

そういえば、最近泣いていない。

どんなに悲しくても、泣きたくなっても、泣けないんだ。

溢れる心がないんだ。

自分はどれだけ変な強さを持ってしまったのだろうか。

何だか色々考えてしまって、辛くなってしまった。

何も考えたくない。

再び布団に潜って眠ろうとしたけど、こんな時に限って眠れない。

眠りたい。

でもやっぱり眠れない。

そうだ、全部洗い流せばいいんだ。

俺は身支度を始めた。

 

太陽が照りつけている。

 

海パンを履き、目の前にある砂浜へ飛び出した。

目の前に広がる海に入ろうとした。

でも、普通に入るだけでは物足りない。

洗い流している気がしない。

刺激を求めた俺は、高さ3mくらいの崖を探した。

 

あった。

結構デコボコしていて登りやすそうだ。

そびえ立つその崖を登った。

都会では高さ何百mもある建物をたった30秒で登るのに、美しい大自然では高さ3mの崖を30分もかけるんだ。

だから自然は美しいんだ。

工夫をしても、必ず苦労をする。

自然には逆らえない。

そんな事を考えながら3mを登りきる。

美しい。

都会の何百mの高さから見るゴチャゴチャした景色より、自然の3mの高さから見る海と空の青一色の方が、よっぽど美しい。

こうなると太陽までもが青く見える。

小股で7歩下がる。

そして3歩走る。

青に向かって飛び込む。

高い。結構高い。

分かった。どうして、嫌いな思い出のある海夜の海が好きなのか。どうして、この海の匂いはこんなにも温かいのか。

あの子から聞いたんだ。

俺が5歳の時、公園で出会った女の子と仲良くなった。

その子は海夜に住んでいたらしく、海夜の大自然の話をたくさんしてくれた。

「私が海で泳いでいたら大きな魚がいたの。そのお魚さんに乗せて欲しいってお願いしたら、いいよって言ってくれたの。ずっと乗ってて、気付いたら空を泳いでいたの。お魚さんは海も空も青いから間違ってここまで泳いできちゃったんだって」

今思うと絵本に出てきそうな夢のある話だ。

でも、当時の俺はその子の話を夢中になって聞いた。

今でもその小さい時にしか味わえないようなワクワクを覚えている。

 

俺の下に海が近づいている。

そして、痛みを極限に抑えられるように足を差し出し、面積を小さくする。

海との距離が0になって、一瞬だけ意識が消えた。

意識を取り戻したときは、海の中だった。

海面が揺らいでいる。

青の中に太陽の光が差し込んで輝き、まるで大空を見ているような感覚だった。

あぁ、あの子が言っていた“空を泳いだ”というのはこういう事だったのか。

俺は10年の時を越えて意味を理解した。

そろそろ息が苦しくなってきた。

海から顔を出し、岸に向かって泳いでいく。

岸に着くと、窓から聖の顔が見えた。

「朝ご飯できたよ。早く戻ってきて」

聖の声が響く。

「分かった。あと5分待って」

俺の声を響かせる。

急いで体を拭き、着替える。

なんだか、体も心もやけに軽くなって、今まで悪霊がとり憑いていたのではないかと思うくらい軽くなっていた。

重力が半分くらい小さくなった気分で、家に戻る。

俺の中の汚染物を全て海夜の海が洗い流してくれた。

そう思いながら、笑顔で食卓につく。

「今日の夜は海で花火をするのは決定だけど、昼は何する?」

里珠が話を持ち出してきた。

映画・カラオケ・ボウリング・ショッピングなど色々な案が出てきた。

昨日までは自然を満喫したいという思いでいっぱいだったけど、邪念が全て洗い流されて海よりも広くなった心を持った俺はどこでも大賛成だった。

 

「私、野菜育ててみたい」

意外な一声が心の口から飛び出した。

「野菜…?」

何秒かの沈黙の後「良いかもね」という言葉が次々と出た。

聖の家の周りには元々畑だった場所がありえないくらいある。

今では、野良猫のたまり場だけど、思い返してみるとせっかく良い土があるのにもったいないと思う。

「うん。種を買ってきて植えて、収穫の時期にはまたここで集合しようよ」

少しずつみんなが乗り気になっていく。

まず、種を買うために海夜駅へと向かった。

1日1回だけ止まる駅で電車へ乗り込み、東光大駅を目指した。

海夜と東光大の差が激しく、目がくらむ。

人混みに流されながら、ようやく家庭菜園の専門店に着く。

都会の真ん中にあるせいか、または別の理由か、店の中がガラッと空いている。

いるのは定年を迎えたようなお婆ちゃんだけだ。

それでも、店員は花の一輪一輪に丁寧に霧吹きで水をかけている。

「来たのはいいものの、何をする?」

“野菜を育てる”ということに対して無知だったのは、俺だけじゃないはずだ。

感じ良さげな店員に聖が「すいません。僕達、野菜を育ててみたいと考えているのですが、今の時期が旬だというような野菜はありますか?」と丁寧に質問する。

すると、店員は思った通りに感じが良く、笑顔で「今の時期に植えるのでしたら、にんじんや大根、じゃがいもなどが良いですよ。今の夏の終わり頃に植えるのでしたら収穫時期は11月くらいですね」と丁寧に教えてくれた。

なんて感じの良い人なんだろう。

その店員の説明を俺達の後ろでお婆ちゃんが盗み聞きしてる。

俺達は店員に教えられたままに、にんじん・大根・じゃがいもの3つと肥料を買った。

「楽しみだね」などと言いながら浮かれ気分で家に帰る。

それぞれがジャージやスウェットに着替えて、目星をつけていた畑へと向かう。

腕捲くりをして、種を植えるための穴を地面に空けていく。

人差し指で軽く押す、店員から教わった通りにやっていく。

「猫に掘られないかな」

「暑ーい」

「元気に育ってね」

「トトロみたいにどんぐり植えたら生えないかな」

思い思いの独り言を言う。

そして聖は相変わらず独り言を言った後に溜め息をつく。

2時間経った後にやっと種植えが終わった。

達成感が半端じゃない。

最後に、全体に水をかけて作業が終わる。

汗が吹き出るのも、いつの間にか気にならなくなっていた。

そして、田んぼの前で4人で並んだ。

昼ごはんを食べずに動いたから、相当お腹が空いている。

海を見て、里珠手作りのおにぎりを食べながら、花火の打ち合わせをする。

「そういえば、さっきわざわざ東光大まで行って花火買って来なかったね」

みんなが間抜けな顔でお互いを見合う。

すると聖がいきなり「あっ、多分押し入れにしまってあると思う」と救いの言葉を放った。

「良かった」と胸をなでおろす。

くだらない話をしながら時間が経っていく。

海の向こうに太陽が沈んでいく様子を見守った。

そろそろ家に帰って花火の準備をしよう、話の続きはまたそこでしよう、となった。

家に着くとそれぞれが準備をした。

汗を流すために風呂に入ったり、泥まみれになった服を洗濯したり、こういう点でも“元旅館”は便利だ。

風呂は人数分あるし、洗濯機もここで働いていたであろう人が置いていったドラム式のものがたくさんあった。

4人とも花火の準備が終わり、すぐそこにある海へと向かう。

袋から取り出した花火に火をつける。

 

暗闇の中に光る輝き

 

何だかそれに心を奪われた。

どうか消えないで。

無理な願いばかりが思い浮かぶ。

火が消えてしまう。

俺の命がいつか無くなるかのように。

でも、花火は火が消える最後の最後まで輝き続ける。

弱くても、迫力が無くなっても、消えるまで輝き続ける。

俺もどんなに弱い火だとしても輝き続けたい。

最後の最後まで。

 

花火がどんどん減っていき、線香花火(4人で競う用)、変色花火、ねずみ花火、ミニ打ち上げ花火が残ったところで一度花火を止め、昼間の話の続きになった。

話の内容は自分の今までにあった実話を話すだけだったけど、意外と盛り上がる。

 

聖と里珠がトラックに轢かれ、里珠が意識不明になり、聖が記憶喪失になった話

心が小さい時に幽霊を見た事がある話

俺の弟が海夜で溺れた話

 

みんな驚くような印象深い話ばかりした。

そして、俺は小さい時に出会った女の子の話をした。

 

「10年前、俺が5歳だった時、公園で見慣れない女の子がいたんだ。俺と同い年であろうその子が色んな話をしてくれたんだ。その話の1つ1つが楽しくてさ。しかも、その子の出身が海夜だったんだよ。俺、幼心でありながらも、その子に恋しちゃって…“好き”という感情を持っちゃってるまま、離れ離れになっちゃって。一途なのか、しつこいのか知らないけど、“好き”という感情を捨てられなくて、でも“普通”に変わるきっかけがなくて、結局今でもその子の事を思い出す度、不思議な気持ちになるんだよね。だから、まだ好きなんだよな。もし、会えるのなら伝えたいよ。今でも好きだって事…」

 

「友梧、きっとお前ロリコンなんだよ」その話の後に聖が言う。

「何でだよ」

「だって、5歳の女の子を好きなんて高校生にもなっちゃえば、ロリコンだろ!」

くだらない話し合いを里珠が笑う。

「その人も今は俺と同い年だよ」必死で答えるも、何だか本当に自分が5歳の時に好きだった子を今でも好きだという事が馬鹿らしく思えてきた。

そんな話の間に心が「その子がしてくれた話って何?」と聞いてくれた。

きっと、場の雰囲気を変えたかったのだろう。

だから俺は話を続けた。

 

「その子、海夜の海を泳いでいたら、デカイ魚が来たんだって。その魚に乗せてって頼んだら、乗せてくれたから、楽しく乗ってたら、魚が海と空が同じ青だから間違って空まで泳いだって話」

 

「何だそれ」

「でも、俺も今日、空を泳いだ」

「泳げる訳ないじゃん」

また里珠が笑う。

「いや、海に潜って上を見るんだ。そしたら空を泳いでる錯覚をしたんだ」必死で答える。

そしてまた心が口を挟む。

「多分、友梧が言うその女の子…」

 

 

「…私だ」

 

 

満天の空の満天の星の下

波の音が静かに揺れる

夏も終わりに近づき、肌寒く感じる

なぜか涙が溢れ出した

10年の時を越えて

偶然の出会いが奇跡に変わった

好きな人がすぐ隣に居る

波の音と共に心の長い髪が風に揺れた




前に書いたroomはBUMP OF CHICKENのレムという曲をイメージしながら書いたと言いましたが、今回もイメージがありまして、indigo la Endの夏夜のマジックという曲を元にして書いていきました!
物語の途中にも「夏の匂いを吸い込んで吐き出す」という場面があったのですが、それは完全に歌詞を引用していますw

下も8月中に出せるように書いていくつもりです。
起承転結の無い話でしたが、見てくださってありがとうございました。
これからもよろしくおねがいします!


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