とある転生者の教皇代理 (オールライト)
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プロローグ

私の好きなキャラクターで書いてみたくなりました。
駄文ですがよろしくお願いします。

あと、自分の勝手なタイミングでチラシの裏から出るかもしれません。
そうなったら、またよろしくお願いいたします。


 魔術、というものがこの世界には存在する。

 人間が神や宗教の奇跡に羨望し、その奇跡に手を伸ばそうとした結果、異世界の法則を世界に適用し、様々な超常現象を生み出す事に成功した。

 その技術の名前がすなわち魔術である。

 そしてその魔術を行使する人間の事を『魔術師』と呼ぶ。

 異世界は宗教が生み出したものであるため、異世界を力の源とする魔術は宗教との関わりが深く、宗教に所属する者が魔術師になっていることも少なくはない。

 そのため十字教旧教三大宗派であるイギリス清教やローマ正教などには魔術師が多数所属しており、イギリス清教には魔術師狩り専門の必要悪の教会と呼ばれる部署も存在したりしている。

 

 そんな非科学的な力を持っている十字教の中に天草式十字凄教と呼ばれる十字教の一派がある。

 日本でまだ十字教が迫害されていた時、その幕府からの迫害から逃れるために仏教や神道でカモフラージュに偽装を重ねた宗派であり、多角宗教融合型十字教と称されることもある宗教団体だ。

 彼等もまた魔術を行使する魔術師の集団であり、その実力は少数ながらも高い戦闘能力を保持している。

 

 その天草式十字凄教に一人の男が所属していた。

 黒く染め直した髪をツンツンに固めたクワガタのような髪型を持ち、

 衣類も白地に斜めの赤十字が染め抜かれたぶかぶかのTシャツにだぼだぼのジーンズ、

 1m程もの長さの靴紐、首には小型の扇風機×4という天草式としては奇抜な格好をした男。

 彼の名前は建宮斎字、現在の天草式十字凄教の教皇『代理』を勤めている。

 彼は少しだけ他の人間とは違うところがあった。

 それは、一度死んでいるということ。

 つまり、彼には前世の記憶があったのだ。

 彼の前世ではこの世界はとある魔術の禁書目録というアニメであり、彼はその登場人物ということになっている。

 彼自身もこのアニメと小説を少しだけ見ており、ほとんどおまけのような知識は持っていた。

 彼はその事実に少しだけ驚いたが、折角の二度目の人生を棒に振る訳のももったいないと考え、この世界で生きていく覚悟を決めた。

 彼の両親は元から天草式の教徒にして魔術師であり、彼もその影響で自然と天草式の魔術師となった。

 やはり、魔術というファンタジーのようなものの魅力は男である彼が夢中になるには十分すぎたのだろう。

 そして、彼が天草式に入って何年か経った。

 彼は天草式の中でもトップクラスの実力でありながらも決して驕らず、常に周りを気遣う優しい人柄で多くの者達に慕われていた。

 そんな時、天草式に一人の少女が入ってきた。

 その少女の名前は神裂火織。

 世界に20人といない聖人の一人にして、ロンドンでも屈指の実力を持つ魔術師。

 この少女こそが天草式の女教皇(プリエステス)となる者だった。

 実際彼女は10にも満たない年齢でありながら女教皇となり、その実力をありありと見せつけた。

 そんな少女に彼は嫉妬も恨みも持つことなく、ただ尊敬、いや崇拝の念をいだいていた。

 彼女が前世で有名なキャラクターだったからではない。

 むしろ彼はもうほとんど原作の知識は覚えていなかった。

 覚えているのは主人公が神裂火織を始め、神裂の一年後に入ってきた五和という少女などにフラグを建てていたくらいであり、その主人公がどうフラグを建てたか、どんな物語があったのかはほとんど忘れてしまっていた。

 彼女の義理堅い性格、神の加護ともいえる幸運、そして何より、救いを求める者に何の見返りもなく救いの手を差し出す聖女のような行動。

 その全てに建宮を含めた天草式の者達は感動を覚えた。

 そして、誓った。彼女に一生ついていくと。

 例えどんなにつらく苦しい道のりになろうとも彼女の隣を歩み続けようと、そう心に誓い、覚悟を持った。

 しかし、彼等は彼女達の隣を歩むことができなかった。

 彼女に追いつこう、彼女の背中を守ろうと努力をしても、いつも彼女は彼等のはるか先へ行ってしまった。

 そして、それを見ていた彼女はいつしか一人で戦うようになってしまった。

 自分の仲間を守るために、一人で戦場におもむき、一人で敵を殲滅し、天草式の者達が少しでも傷つかないように。

 そんな女教皇の姿をみた天草式の者達は自分たちの無力さに絶望した。

 自分達は彼女の足枷にしかなっていなかったことに。

 絶望をしった彼等は彼女の背中を追うことを半ば諦めかけてしまっていた。

 しかし、ただ一人諦めない者がいた。

 その男は、建宮斎字である。

 彼は彼女の足枷にしかなっていなかった事実を知っても、ただひたすらに努力を続けた。

 練磨を絶やさず、実力を磨き、いつの日か神裂火織の隣に立てることができるように、それこそ血反吐を吐きそうになりながらも戦うことも、力を磨くこともやめなかった。

 そして彼は、仲間達を叱咜した。

 自分達はなんのために力を身につけたのか、彼女の隣に立ち、救われぬ者達に救いを与えるためではなかったのか。

 ならば、足枷になっていたからといって追うことをやめていいはずがないだろう。

 その彼の言葉を聞いて、天草式の者達は再び立ち上がった。

 たとえ今は足枷でも、いつかは彼女の隣に立つために。

 しかし、運命は一つの残酷な結果を叩きつけた。

 とある戦いで、多くの者達がその命を落としたのだ。

 その敵は卑劣にも、神裂火織ではなく、それ以外の天草式の者達を狙ってきたのだ。

 敵は神裂をわざとおびき出し、一人で戦わせ、その間に主力を天草式にぶつけた。

 彼女が仲間を傷つけないために常に一人で戦っていた、その隙を利用したのだ。

 結果、天草式はその猛攻をなんとか退け、敵を逆に殲滅したものの、多くの死者を出してしまった。

 天草式のメンバーは68人から52人にまで減ってしまった。

 その中には長年、天草式の魔術師として戦っていた建宮の両親もいた。

 だが、建宮を始めとした天草式の者達は悲しみを抱いたものの、絶望を感じることはなかった。

 彼等は犬死にではなく、きちんと神裂の役に立てたのだから。

 そして、仲間が死に、自分達が傷ついたのは自分達の力が足りなかったからなのだ。

 これからは仲間の死を無駄にしないためにも力を付け、彼女の隣に立つためにさらに努力していけばいいのだから。

 建宮も、悲しみに沈むことはなかった。

 両親に死ぬ間際言われたからだ。

「女教皇を頼む」そう経った一言、彼の耳元で囁かれたからだ。

 両親や死んだ仲間達の覚悟も自分に託された。彼女にであったその日から彼女の背中に追いつき、ずっと隣を歩いていこうと心に誓いを立てていた。

 彼が立ち止まる理由はどこにもなかったのだ。

 しかし、神裂にとってはそうではなかった。

 彼女は、自分の『幸運』のせいで彼等が『不運』な目にあってしまった、自分が、彼等を傷つけてしまったのだと、そう考えてしまったのだ。

 そして、神裂火織はこれ以上自分の押し付ける『不運』で仲間を傷つけるのを恐れ、弱冠12歳にして天草式を離れ、単身英国へと渡り、必要悪の教会所属の魔術師となったのだ。

 天草式は彼女の押し付ける『不運』に耐えられないと、そう思われてしまったのだ。

 彼女にその気は無くとも、彼等にはそのように思えてしまったのだ。

 自分達が弱さが、自分達が未熟さが、彼女を苦しめ、そして一人にさせてしまったのだ。

 そして彼等は決意する。

 絶えず力を高め続け、彼女がいつかまたこの天草式に戻れるようにすると。絶対に彼女を一人にせず、共に歩みを進められるように練磨を続けようと。

 そして彼等は彼女無き後、実力もあり、かつて自分達を奮い立たせてくれた建宮斎字を教皇代理とし、一つの行動理念を掲げ、その歩みを進め始めた。

 その行動理念は、彼らの崇拝する者の魔法名、『救われぬ者に救いの手を』。

 

 これはこの世界に転生し、天草式十字凄教の教皇代理として日々を過ごすある男とそれを取り巻いた物語である。




......何書いてあるんですかねこれ
グダグダすぎてわかんねぇです......。
これチラシの裏から外したらどうなんだろ?
......怖い。


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〜第一話〜

サブタイトル難しいですね。
私には無理です。
相変わらずの駄文ですが、どうぞ


 日本のとあるところに木製の寮が二つ隣り合って建っていた。

 外見は、所々色が剥がれてはいるが、特に目立つような傷や損傷はなく、比較的状態が良い寮だった。

 周りにはその二つの寮以外の建物はたっておらず、余計に二つの寮が目立ってしまいそうなのにも関わらず何故かそこまでの存在感を感じさせない不思議な寮だった。

 その二つの寮はそれぞれ三階建てになっており、一階には台所やリビングがありテーブルや椅子、大きなテレビ置いて合った。

 そのリビングにある食器棚の中には木製のスプーンやお皿などが置いてあり、ここが大勢で食事をしたり、談笑などをしていることが想像できる。

 二階と三階にはそれぞれこの寮の住人が住んでいるであろう部屋が合わせて13室程ある。

 隣り合っている寮の部屋も合わせると26室程になることから、それなりの数の人間がこの寮に泊まっているのだろう。

 その片方の寮にある三階の一番端の部屋。

 その部屋の中に置いてある、木製の二段ベッドの下で仰向けで寝ている一人の男がいた。

 彼の名前は建宮斎字、この二つの寮を隠れ家としている天草式十字凄教の教皇代理をしている男である。

 天草式は、集団に溶け込むことに特化した十字教であり、こと偽装に関してはプロの魔術師顔負けの技術をもっている。

 他人が見てもただの台所に見えてもそこが実は儀式場だったりするのだから、かなりの技術だというのがわかる。

 この二つの寮がこんなにも目立ちそうな建て方をしているにも関わらず不思議と目立っていないのは彼等の技術のおかげというわけだ。

 そんな実は凄い十字教一派の教皇代理をしている彼だが、実は前世で死を経験してから二度目の人生を歩んでいる転生者でもあるのだが、神様に会ったことはないし、なにか転生者の特典を貰ったわけでもなく、突然建宮斎字として生まれてきただけだった。

 本人も前世のことは過去の物とすっぱり割り切っており、むしろこちらでの世界が大変すぎて前世のことは印象のある思い出くらいしか残っておらず、この世界のことなども主な登場人物の名前くらいしか覚えていなかった。

 そんな色々非日常的な経験をしている彼はベッドの上で若干寝苦しそうに身を揺らしながらも眠っていた。

 7月も中旬に入り、日に日に増していく夏の暑さはこの部屋を蒸し暑くしてしまうには十分すぎるのだろう。

 しかし、眠っていた彼の意識は突然覚醒した。

 なぜなら、いきなり自分のすぐ近くで誰かが勢いよく硬いものに当たったような音がしたからである。

 いくら無防備に寝ていたとしても建宮は数々の死線を幾度となく乗り越えてきたプロの魔術師である。

 周りに誰かがいたらすぐに眠りから覚め、近くにいたのが誰かを確認する。

 そして、それが敵や侵入者だった場合すぐに臨戦態勢に入るはずである。

 ところが今回は相手が自分の部屋に入るまでまったく気付けなかったのだ。

 ここまで気配を隠して近づくということは十中八九自分を狙っている敵だと考えていいだろう。

 あるいは自分の仲間である天草式の誰かかもしれないと考えたが、彼らのほとんどは今現在仕事に行っており、ここいるのはバイトが休みの自分を含め二人だけであるためすぐに選択肢から除外した。

 じゃあ、その一人はどうだろうと考えたが、『彼女』は自分が自室で眠る前に用事だかがあるだかで出かけているため彼女も除外である。

 となると、やはり自分を狙う敵という線が濃厚になる。

 

(ここまで接近を許すとは、修練が足りなかったようなのよな!だが、相手も最後の最後で失敗しちまったのよ!このまま飛び起きて先手必勝で打ち砕く!)

 

 建宮は自分のベッドから勢いよく飛び起き、侵入者への迎撃のために即興で魔術を組み上げ攻撃をしようとして

 すんでのところで動きを止めて、組み上げた魔術を消した。

 なぜならば、そこにいたのは自分の命を狙う敵ではなく

 自分の部下でもあり、仲間でもある一人の少女がいたからだ。

 何故か頭を痛そうに両手で抑えながら。

 

「...あれ、五和?どうして五和が俺の部屋にいるのよな?用事でどっかに出かけてたんじゃなかったのよ?」

 

 そう言って建宮は不思議そうに目の前の少女を見た。

 五和と呼ばれた二重まぶたが特徴的なショートの髪をした可愛らしい少女は、建宮に声をかけられた途端、頭を抑えていた両手を離して勢いよく立ち上がり建宮の方を物凄い勢いで振り向いた。

 

「っ!!?た、たたた、建宮さん!?いい、いつ起きられたんですか!?」

「いや、ついさっき起きたのよ。誰かが物に当たる音がしたもんだから敵かと思って飛び起きたんだが...もしかして五和が犯人なのよな?」

「は、はい!え、えーとその......そう!机に小指が当たっちゃって!」

(......おかしいのよな。俺が見た感じだとどう見ても小指じゃなくて頭を抑えていたのよ。...寝ぼけてたせいで見間違えたか?)

 

 そう考えて少しだけ首をひねる建宮だったがそんな重要なことではないのでとりあえず放っておこうと決め、次の行動へ移した。

 もしかしたら面白い反応が見れるかも、と期待を込めながら。

 

「それにしても...五和。」

「...?えっと、どうされたんですか?建宮さん?」

 

 急に落ち込んだように顔を下に向けた建宮を見て、心配そうな顔をして建宮に声をかけた。

 その言葉を聞いた途端建宮バッと顔をあげた。

 

「お前さんがここまで俺のことを恨んでいるとは思わなかったのよな。」

「......はい?」

 

 建宮の言葉に思わず呆けた顔をしてしまう五和。

 彼が何を言っているのかが彼女にはまったく理解できなかったからだ。

 

「確かに、俺はよく五和をからかったり、五和をネタにして話しを作ったりしていたが、まさか、まさか俺を殺したくなるほど不満を抱えていたなんて...」

「え、ええ!?ちち、違います!別に私は建宮さんを殺すつもりなんてないですよ!?」

「だって、さっき自分で犯人だということを認めていたのよな...。」

「それは、大きな音を出した犯人だ、ということを認めただけであって、敵だということを認めたわけでは...」

「隠さなくていいのよな五和。お前さんの不満がわからずにいたなんて、俺は教皇代理としてやっちゃいけないことをしたのよな...。」

「いや、ですから私は別に...」

「だから、だから俺は......教皇代理をやめるのよな!」

「......ええええ!!!?」

 

 自分の話を聞いてもらえず、更にはとんでもないことを口にした建宮に驚きの声をあげる五和。

 そんな彼女を見て建宮はふと目を細めて、悲しそうにつぶやいた。

 

「今まで、世話になったのよな五和。......お前達の無事を遠くで祈ってるのよ。...うぅ、うわぁぁぁぁん!!」

「ちょ、ちょっと建宮さん?建宮さぁぁぁん!?」

 

 片手で、まるで涙を隠すように目を抑え、叫びながら部屋を飛び出す建宮。

 それを止めようと手を伸ばす五和だが、割と結構な速さで部屋を飛び出した建宮を捕まえる事ができず、その手は空を掴む。

 そして、そのままの姿勢でしばらく止まってしまった五和は、もしかして、なんかとんでもないことになっちゃったんじゃ?と冷や汗を流した後、急いで建宮を追いかけようとして、

 

「建宮さ」

「ってな具合で飛び出したらかなりドラマチックになると俺は思うのよな。五和はそこんとこどう思う?」

 

 部屋のドアの前で笑って立っている建宮を見て盛大にずっこけた。

 それはもう芸人もかくやというほどずっこけた。

 そんな彼女を見た建宮は満足そうに何度も頷いた。

 

「うんうん、やはり期待どおりの反応をしてくれるのよな五和は。見てて全く飽きることがないのよ。」

「...はぁ〜、心臓に悪いですよ建宮さん。私もう汗がとまりませんでしたよ、夏なのに...。」

 

 そう言ってガックリとうなだれた五和はこちらを笑顔で見ている建宮を恨めしそうに見つめた。

 そんな五和の視線も何処吹く風というように建宮は声を出して笑った。

 

「なはは!それは悪かったのよな。ていうか、俺が本気で教皇代理をやめるだなんて冗談でもありえないのよ。この地位はあの方が帰るまで空ける気は絶対にないからな。」

「...建宮さんって冗談を言う時の目と本気で言っている時の目が一緒だから冗談なのか本気なのかがわからないんですよ〜。ていうかさっき冗談で辞めるって言ったじゃないですかぁ...。」

 

 そう言って可愛らしく頬をふくらませる五和。

 控えめに頬が膨らんだその顔は小動物のようでとても可愛らしくなっていた。

 だが、その五和の言い分に建宮は「悪い悪い。」と片眼を閉じて右手を顔の前に出して謝罪のポーズを出して小さく笑うだけだった。

 

「それで?何の用なのよ?さっきも言ったが確かお前さん、用事があるとかで出かけてたんじゃなかったのよな?」

「建宮さん、外を見てくださいよ。もう夕方ですよ?もう私はとっくに帰ってきました。」

「夕方?...うぉ!ほんとなのよな。部屋の窓から赤い夕日が見えるのよ。確か俺が寝たのは昼過ぎだったから...こりゃかなりの時間寝ていたのよな。ていうか、夕方なのにまだこんなに暑いのか...。」

 

 部屋の窓からさしこむ夕日を見て少し大袈裟に驚く建宮。

 そんな建宮を見て小さく笑みを浮かべる五和。

 

「少し疲れが溜まってたんじゃないですか?最近はその...女教皇の件もありましたから。」

「...そうなのよな。あの人の事で調べることが多くなっちまってたからな。たしかにここんとこ、ろくに寝れなかったし五和の言う通り、少し疲れが溜まってたのかもしれないのよ。」

 

 そう言って少しだけ目を細めて真剣な表情を浮かべる建宮。

 彼等の言っている女教皇の件とは、英国に渡ってはや六年になる神裂火織が日本にいるかもしれないといった情報が手に入ったからである。

 彼女は現在、イギリス清教の必要悪の教会に所属している10万3000冊の魔導書をその頭に抱えている禁書目録の保護をしている。

 その保護対象である禁書目録がついこの間日本に入ってきたのである。

 ということは、必然的に神裂火織も日本に来ることになるだろう。

 天草式の面々は禁書目録の情報を見つけた時は当然大騒ぎとなり、何としても女教皇の動向を探ろうと躍起になっていた。

 中には禁書目録を見つけ、周辺を女教皇が出るまで張り込もうとする冷静さを欠いてしまったメンバーもいた。

 そんなメンバーをなんとか諌めつつ、更には神裂や禁書目録の動向についての情報も探り続けていたのが教皇代理の建宮だったのだ。

 おかげで昼は生活資金を稼ぐためのバイト、夜は情報を探るために外出をしたりなどしなければならなかったため、寝る時間が中々無かったのである。

 疲れが溜まるのも無理もない程働きっぱなしだった。

 

「それじゃあ、五和はわざわざ俺を起に来てくれたのよ?それは悪いことしちまったのよな。」

「いえいえ、そんなことはないですよ。それに......その...私にも役得が...あったというか...。」

「役得?そりゃ一体......」

「なな、なんでもないです!なんでもないんです!」

 

 小さくつぶやいた役得という言葉が気になったものの、五和のその慌てた様子に思わず「お、おう」と頷いてしまう建宮。

 五和は両手をぶんぶんと横に振ったあと、その両手を胸の前へと置き大きく深呼吸をした。

 そして少しもじもじしているような様子で声をかけた。

 

「それで、その......じ、実は!建宮さんに、手伝って貰いたい事が、あの、あるんですけど...。」

「手伝い?」

 

 五和の少しもじもじした様子には全く気にかけず、手伝いという単語に反応する建宮。

 

「手伝いっつったてなぁー、一体何を手伝えばいいのよな?見たところわざわざ俺を起こしてまで手伝ってもらうようなことがあるようには思えんのよ。寮の掃除だって寝る前に終わらせたはずだし。はぁあ~......。」

 

 五和の言葉を聞いた建宮はだるそうにベッドの端に座る。

 そして眠そうにあくびをしてからボリボリとクワガタのように黒光りする頭を右手で掻いた。

 正直な所、昼前に五和と一緒に寮を掃除したところで大分疲れてしまった上に、暑さのせいで寝苦しかったのか睡眠をあれだけとったのにもかかわらず、だるさが抜けていないため今はあまり働きたくないのである。

 それが外に出るような手伝いだったら特に、である。

 

「とりあえず話を聞いてみてからなのよな。」

「は、はい!その、もう少しで寮にある食材が切れてしまいそうなんです。なので、買い物に行こうと思ったんです。

 それで......その建宮さんにも、お手伝いしてもらえたらと思って...。あの...建宮さんが良かったら...てつ」

「すまないのよ五和。俺は夕方にも関わらずこんなにも暑い日に外になんてでたくないのよな。俺はこんな髪型をしちゃぁいるが、別に夏によく出るかっこいいクワガタとは違うのよ。涼しいところでだら~としている方が俺のしょうに合ってるのよな。」

 

 建宮は外へ行く手伝いだとわかった瞬間、五和が言い終わるよりもはやく即答した。

 その直後、何故か五和の目から色が一瞬だけ無くなった。

 その瞬間、ゾクゾクッと何かが這うような寒気が建宮の背中を襲った。

(な、なんなのよな?この異様な寒気は?さっきまでの暑さがどこかにかっ飛ばされちまったのよ...)

 得体のしれない危機感を覚えた建宮の耳に五和の感情が無くなったかのような声が耳に入った。

 

「...建宮さん、知ってますか?夏の夜でも木で作られている床で寝ると意外と冷たかったりするんですよ。」

「...!?わかった!わかりました!全力でお買い物を手伝わせてもらうのよな!?だからその手に持った海軍用船上槍で俺ごとベッドを壊すのだけは勘弁なのよ!」

 

 いつの間にか彼女の両手に握られていた彼女の得物の海軍用船上槍を見て慌ててベッドから起き上がり身支度をしていく建宮。

 五和の目が若干本気だった事に少しだけ冷や汗を流しながら。

 こんなのでも女教皇が居なくなってしまった天草式をその身を使って存続させている優秀で頼れる教皇代理なのだ。

 大体はふざけていることが多いが。

 いそいそと身支度を進める建宮を見て彼女は取り出していた海軍用船上槍をいくつかのパーツに分け、コンパクトにしてから鏡が立てかけてある建宮のテーブルの上にいつのまにか置いてあった彼女の収納用バックにしまっていた。

 

(あれだけ離れているところから一体どうやってあの速さで武器をとりだせるのよな?五和って時々ほんとすごいやつに思えてくる...。ていうか、何時からあんなに強引な子になっちゃったのよな五和...。)

 

 そんな五和を見て思わずそう感心してしまう建宮。と、同時に若干の恐怖も覚えてしまったが...。

 そんな中その本人は支度の遅い建宮を見てまた頬を少しだけ膨らませた。

 先程までの様子がなりをひそめているので建宮はとりあえず肩をなでおろし、小さく安堵のため息を吐いた。

 

「あの...建宮さん、できるだけ急いでくださいね?」

「わかったわかった!だからそう急かさないで欲しいのよな、まったく。昔は俺が外出や買い物に誘っただけでガチガチに緊張して準備した物をぶちまけてしまうほどのドジっ子っぷりを見せてくれてたというのに、一体いつからそんな子供を待つお母さんみたいになっちまったのよ?俺は悲しいのよな......よよよ」

 

 そう言って両手で顔を覆い、大げさに泣き真似をする建宮。

 そんな彼の言葉を聞いた五和は恥ずかしかったのか顔を少しだけ赤くした。

 

「なっ......!?そ、そんな昔のことはわすれました!それよりも速く支度をしてください!」

「えー、そんな昔の話でもないのよな?確か女教皇が去ったくらいの時だったからおよそ四、五年くらい前の話なはず...」

「いいから支度を急いでください!速くしないと置いていきますよ?」

「わわっ!ちょっと待つのよな!?もう少し、もう少しで終わるから!もうちょっとでここの髪がちゃんと立ってくれるはずなのよな!」

 

 そう言ってわたわたしながら髪の毛をセットし始める建宮を見て、小さくため息をもらす五和。

 

「別に、緊張してなかった訳じゃないんですよ?むしろ今の方がずっと......。」

「ん?なにか言ったのよな?」

「べ、別に何も言ってません!それより、用意ができたなら早く行きますよ!皆さんがお腹を空かせて待ってますから!」

「いや、あいつらは今仕事の帰り途中くらいだろうから別に待っているというわけではないのよな...。ってちょっとちょっと!さらーっと俺のツッコミを無視して歩みを進めないで欲しいのよ!おーい、五和ー!!」

 

 そう言ってずんずんと歩いていく五和の背中を慌てて追いかけていく建宮。

 建宮には届かなかった小さな呟きを口にした五和の頬は夕日のせいか、少しだけ朱に染まっていた。




...キャラの口調って難しいですね。
誰が誰だかわからないです。
住居についてはオリジナルです。
少しおかしな点があったら教えてください。
といってもそんな見てる人いませんけど......。
五和と建宮の会話の仕方ってこんな感じなんでしょうかね...。
ん、五和の様子がなんかおかしい?
(ΦωΦ)フフフ…



私の文章力の低さのせいですか?
......すいません。


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